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政治と選挙Q&A「告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター 政党 公報 広報」に関する裁判例(42)平成23年12月 8日 東京地裁 平21(行ウ)341号 観察処分期間更新処分取消請求事件

政治と選挙Q&A「告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター 政党 公報 広報」に関する裁判例(42)平成23年12月 8日 東京地裁 平21(行ウ)341号 観察処分期間更新処分取消請求事件

裁判年月日  平成23年12月 8日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(行ウ)341号
事件名  観察処分期間更新処分取消請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴  文献番号  2011WLJPCA12088002

要旨
◆公安審査委員会から団体規制法に基づく観察処分の期間更新決定を受けた原告が、同法及びこれに基づく本件更新決定は違憲であるほか、原告を含めた本団体は、同法が規制する団体である「特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体」に当たらないし、観察処分を受けた団体と同一性はなく、また、観察処分を課するための要件を満たさない上、原告の活動状況を継続して明らかにする必要性がないなどとして、本件更新決定の取消しを求めた事案において、本件更新決定をする際に、新規に報告事項を追加した部分は法律上の根拠なくされた違法なものであるとして取り消したが、その余の点については原告の主張をいずれも排斥して請求を棄却した事例

裁判経過
控訴審 平成25年 1月16日 東京高裁 判決 平24(行コ)36号 観察処分期間更新処分取消請求控訴事件

出典
訟月 59巻8号2012頁
裁判所ウェブサイト

評釈
坂本和寛・訟月 59巻8号2012頁

参照条文
無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律3条
無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律4条
無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律5条
無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律32条
行政事件訴訟法3条
日本国憲法20条
日本国憲法13条
日本国憲法31条
日本国憲法35条

裁判年月日  平成23年12月 8日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(行ウ)341号
事件名  観察処分期間更新処分取消請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴  文献番号  2011WLJPCA12088002

埼玉県越谷市〈以下省略〉
原告 X教
同代表者 A1
A2
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 国
同代表者法務大臣 A3
処分行政庁 公安審査委員会
同代表者委員長 A4
原告の決定書上の表示は別紙処分1目録1のとおり
当事者の訴訟代理人及び指定代理人は別紙代理人目録のとおり

 

主文

1  処分行政庁が平成21年1月23日付けで原告に対してした別紙処分1目録記載の処分のうち,同2(2)ウの報告義務を課する部分を取り消す。
2  原告のその余の請求を棄却する。
3  訴訟費用はこれを5分し,その4を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。

 

事実及び理由

第1章  請求
処分行政庁が,平成21年1月23日付けで原告に対してした別紙処分1目録記載の処分を取り消す。
第2章  事案の概要等
第1  事案の概要
本件は,原告が,処分行政庁から,平成21年1月23日付けで団体規制法5条4項の規定に基づいて別紙処分1目録記載のとおり本件観察処分の期間を更新する旨の本件更新決定を受けたため,被告に対し,団体規制法及び本件更新決定は違憲であり,また,① 原告を含めた本団体は団体規制法4条2項にいう「団体」に当たらず,本件観察処分を受けた団体との同一性はなく,② 団体規制法5条1項各号や同条4項の定める要件を満たしておらず,③ 同条5項で準用する同条3項6号で更新決定の際に観察処分の際には課されていなかった新たな報告義務を課すことはできないから本件更新決定は違法であると主張して,本件更新決定の取消しを求めている事案である。
第2  関係法令の定め
団体規制法及び施行令の定めは以下のとおりである。
1  目的(団体規制法1条)
団体規制法は,団体の活動として役職員(代表者,主幹者その他いかなる名称であるかを問わず当該団体の事務に従事する者をいう。以下同じ。)又は構成員が,例えばサリンを使用するなどして,無差別大量殺人行為を行った団体につき,その活動状況を明らかにし又は当該行為の再発を防止するために必要な規制措置を定め,もって国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保に寄与することを目的とすると定めている。
2  定義(団体規制法4条)
団体規制法4条1項は,「無差別大量殺人行為」とは,破防法4条1項2号ヘに掲げる暴力主義的破壊活動(政治上の主義若しくは施策を推進し,支持し,又はこれに反対する目的をもって,刑法199条(殺人)に規定する行為をすることが,これに当たる。)であって,不特定かつ多数の者を殺害し,又はその実行に着手してこれを遂げないもの(この法律の施行の日から起算して10年以前にその行為が終わったものを除く。)であると定めている。
3  観察処分(5条)
(1) 団体規制法5条1項は,公安審査委員会(以下「公安審」という。)は,その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体が,以下の各号の掲げる事項のいずれかに該当し,その活動状況を継続して明らかにする必要があると認められる場合は,当該団体に対し,3年を超えない期間を定めて,公安調査庁長官の観察に付する処分(以下「観察処分」という。)を行うことができると定めている。
ア 当該無差別大量殺人行為の首謀者が当該団体の活動に影響力を有していること(1号)
イ 当該無差別大量殺人行為に関与した者の全部又は一部が当該団体の役職員又は構成員であること(2号)
ウ 当該無差別大量殺人行為が行われた時に当該団体の役員(団体の意思決定に関与し得る者であって,当該団体の事務に従事するものをいう。以下同法において同じ。)であった者の全部又は一部が当該団体の役員であること(3号)
エ 当該団体が殺人を明示的に又は暗示的に勧める綱領を保持していること(4号)
オ 上記アないしエに掲げるもののほか,当該団体に無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があること(5号)
(2) 団体規制法5条2項は,観察処分を受けた団体は,政令で定めるところにより,当該処分が効力を生じた日から起算して30日以内に,以下に掲げる各号の事項を公安調査庁長官に報告しなければならないと定めている。
ア 当該処分が効力を生じた日における当該団体の役職員の氏名,住所及び役職名並びに構成員の氏名及び住所(1号)
イ 当該処分が効力を生じた日における当該団体の活動の用に供されている土地の所在,地積及び用途(2号)
ウ 当該処分が効力を生じた日における当該団体の活動の用に供されている建物の所在,規模及び用途(3号)
エ 当該処分が効力を生じた日における当該団体の資産及び負債のうち政令で定めるもの(4号)
オ その他前項の処分に際し公安審が特に必要と認める事項(5号)
(3) 団体規制法5条3項は,観察処分を受けた団体は,政令で定めるところにより,当該処分が効力を生じた日からその効力を失う日の前日までの期間を3月ごとに区分した各期間(最後に3月未満の区分した期間が生じた場合には,その期間とする。以下同項において同じ。)ごとに,当該各期間の経過後15日以内に,以下に掲げる各号の事項を公安調査庁長官に報告しなければならないと定めている。
ア 当該各期間の末日における上記(2)アないしエに掲げる事項(1号ないし4号)
イ 当該各期間中における当該団体の活動に関する事項のうち政令で定めるもの(5号)
ウ その他第1項の処分(観察処分)に際し公安審が特に必要と認める事項(6号)
なお,上記イを受けて,施行令3条は,団体の活動に関する事項として,支部,分会その他の下部組織を含む当該団体がした当該団体の活動に関する意思決定の内容と,当該団体の機関誌紙の名称及び発行部数並びに編集人及び発行人の氏名を報告すべき事項として定めている。
(4) 団体規制法5条4項は,公安審は,観察処分を受けた団体が上記(1)アないしオに掲げる事項のいずれかに該当する場合であって,引き続き当該団体の活動状況を継続して明らかにする必要があると認められるときは,その期間を更新すること(以下「更新決定」という。)ができると定めている。
(5) 団体規制法5条5項は,上記(3)の同条3項の規定を,同条4項の規定により期間が更新された場合(更新決定)について準用すると定めており,この場合において,同条3項柱書きの「当該処分が効力を生じた日から」とあるのは「期間が更新された日から」と読み替えると定めている。
4  観察処分の実施等(7条,32条,39条)
(1) 団体規制法7条1項は,公安調査庁長官は,観察処分又は更新決定を受けている団体の活動状況を明らかにするため,公安調査官に必要な調査をさせることができると定めている。
(2) 団体規制法7条2項は,公安調査庁長官は,観察処分又は更新決定を受けている団体の活動状況を明らかにするために特に必要があると認められるときは,公安調査官に,観察処分又は更新決定を受けている団体が所有し又は管理する土地又は建物に立ち入らせ,設備,帳簿書類その他必要な物件を検査させることができると定めており,同法39条は,この立入り又は検査を拒み,妨げ,又は忌避した者について,1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する旨の罰則規定を定めている。
(3) 団体規制法32条は,公安調査庁長官は,関係都道府県又は関係市町村(特別区を含む。)の長から請求があったときは,当該請求を行った者に対して,個人の秘密又は公共の安全を害するおそれがあると認める事項を除き,観察処分に基づく調査の結果を提供することができると定めている。
5  再発防止処分等(8条,9条,14条,39条)
(1) 団体規制法8条1項は,公安審は,その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体が,上記3(1)アないしオのいずれかに該当する場合であって,以下に掲げる各号に該当するときは,当該団体に対し,6月を超えない期間を定めて,下記(2)アないしオに掲げる処分の全部又は一部を行うこと(以下「再発防止処分」という。)ができると定めており,また,観察処分又は更新決定を受けている団体について,上記3(2)又は(3)の報告がされず,若しくは虚偽の報告がされた場合,又は上記4(2)の立入検査が拒まれ,妨げられ,若しくは忌避された場合であって,当該団体の無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の程度を把握することが困難であると認められるときも,同様とすると定めている。
ア 当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,人を殺害し若しくは殺害しようとしているとき,人の身体を傷害し若しくは傷害しようとしているとき又は人に暴行を加え若しくは加えようとしているとき(1号)
イ 当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,人を略取し若しくは略取しようとしているとき又は人を誘拐し若しくは誘拐しようとしているとき(2号)
ウ 当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,人を監禁し又は監禁しようとしているとき(3号)
エ 当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,爆発物,毒性物質若しくはこれらの原材料若しくは銃砲若しくはその部品を保有し若しくは保有しようとしているとき又はこれらの製造に用いられる設備を有し若しくは保有しようとしているとき(4号)
オ 当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,当該団体に加入することを強要し若しくは強要しようとしているとき又は当該団体からの脱退を妨害し若しくは妨害しようとしているとき(5号)
カ 当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,殺人を明示的に又は暗示的に勧める綱領に従って役職員または構成員に対する指導を行い又は行おうとしているとき(6号)
キ 当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,構成員の総数又は土地,建物,設備その他資産を急激に増加させ又は増加させようとしているとき(7号)
ク 上記アないしキに掲げるもののほか,当該団体の無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の増大を防止する必要があるとき(8号)
(2) 団体規制法8条2項は,以下に掲げる各号を再発防止処分と定めている。
ア いかなる名義をもってするかを問わず,土地又は建物を新たに取得し又は借り受けることを,地域を特定して,又は特定しないで禁止すること(1号)
イ 当該団体が所有し又は管理する特定の土地又は建物(専ら居住の用に供しているものを除く。)の全部又は一部の使用を禁止すること(2号)。
ウ 当該無差別大量殺人行為に関与した者又は当該無差別大量殺人行為が行われた時に当該団体の役員であった者に当該団体の活動の用に供されている土地又は建物において,当該団体の活動の全部又は一部に参加させ又は従事させることを禁止すること(3号)
エ 当該団体に加入することを強要し,若しくは勧誘し,又は当該団体からの脱退を妨害することを禁止すること(4号)
オ 金品その他の財産上の利益の贈与を受けることを禁止し,又は制限すること(5号)
(3) 団体規制法9条1項は,再発防止処分を受けている団体の役職員又は構成員は,団体の活動として,当該処分に違反する行為をしてはならないと定めており,同条2項は,当該処分が効力を生じた後は,その処分の内容に応じて,一定の行為をすることを禁止する旨定めている。
また,同条3項は,当該団体が上記(2)ウの再発防止処分を受けている場合にあっては,当該無差別大量殺人行為の関与者等は,当該処分が効力を生じた後は,当該処分により参加させ又は従事させることを禁止された当該団体の活動に参加し又は従事してはならないと定めている。
そして,団体規制法38条は,団体規制法9条に違反した者について,2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する旨の罰則規定を定めている。
(4) 団体規制法14条1項は,公安調査庁長官のする再発防止処分の請求に関して警察庁長官が意見を述べる必要があると認められるときは,観察処分又は更新決定を受けている団体について,相当と認める都道府県警察に必要な調査を行うことを指示することができると定めているが,同条2項は,この指示を受けた都道府県警察の警視総監又は道府県警察本部長は,調査を行うために特に必要があると認められるときは,あらかじめ警察庁長官の承認を得て,当該都道府県警察の職員に,上記団体が所有し又は管理する土地又は建物に立ち入らせ,設備,帳簿書類その他必要な物件を検査させることができると定めている。
団体規制法39条は,上記の立入り又は検査を拒み,妨げ,又は忌避した者について,1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する旨の罰則規定を定めている。
第3  前提事実(当事者間に争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
1  本団体等の沿革等
(1) 本団体は,Bを教祖・創始者として,昭和59年2月頃,「a1の会」の名称で活動を開始し,昭和62年7月頃,「a教」にその名称を変更し,Bの説くa教の教義を広め,これを実現することを目的として活動を続け,平成元年8月25日,東京都知事から宗教法人法に基づく規則の認証を受けて,同月29日,宗教法人「a教」(a教。代表役員「B」)の設立の登記をした。(乙B2の1,乙C20ないし22)
(2) 本団体の構成員は,人間の神経伝達機能に障害を与えて人を死に至らしめる毒性物質であり,極めて殺傷能力の高い(例えば体重50kgの人間の致死量は0.5mgである。)化学兵器として使用されるサリンを使用して,平成6年6月27日,長野県松本市内で松本サリン事件を,平成7年3月20日,東京都内で地下鉄サリン事件を相次いで敢行し,不特定多数の者を死傷させた。(乙B2の1・2,乙C12,24)
(3) a教については,平成7年12月19日,宗教法人法に基づく解散命令が確定し,さらに,その清算手続中の平成8年3月28日,破産宣告がされた。(乙B2の1・2,乙C24)
公安調査庁長官は,同年7月11日,公安審に対し,a教について破防法7条の解散指定処分の請求(以下「解散指定請求」という。)をしたが,公安審は,平成9年1月31日,同請求を棄却する旨の決定をした。(乙A7)
(4) a教は,平成12年2月4日,「宗教団体・b教」(以下「b教」という。)を正式に発足させた旨及びA5がその代表者に就任した旨を公表した。
b教は,平成15年2月6日には,その名称を「宗教団体b1教」(以下「b1教」という。)に変更し,b1教は,平成20年5月20日,その名称を「X教」に変更した。
なお,Cらは,平成19年3月7日付けでb1教から脱退し,同年5月7日,「b2教」の設立を発表した。(乙B2の1・3・4)
2  本団体等に対する観察処分等
(1)ア 両サリン事件を契機として,団体規制法が制定された。
公安調査庁長官は,平成11年12月27日,公安審に対し,別紙処分2目録記載の被請求団体につき,公安調査庁長官の観察に付する処分の請求をし,公安審は,平成12年1月28日,被請求団体に対し,別紙処分2目録記載のとおりの決定をし,同年2月1日,これを官報に公示した。(乙A8,9)
イ これに対し,b教は,東京地方裁判所に,本件観察処分の取消訴訟を提起したが,平成13年6月13日,これを棄却する旨の判決がされ,同判決は確定した。
(2)ア 公安調査庁長官は,平成14年12月2日,公安審に対し,被請求団体(本件観察処分の決定書上の被請求団体の表示と同様である。)につき,観察処分の期間の更新を請求し,公安審は,平成15年1月23日,被請求団体に対し,以下の決定(以下「第1回更新決定」という。)をし,同月29日,これを官報に公示した。(乙A10,11)
(ア) 被請求団体に対する平成12年1月28日付け当委員会決定に係る被請求団体を3年間公安調査庁長官の観察に付する処分の期間を更新する。
(イ) 被請求団体は,団体規制法5条5項において準用する同条3項6号に規定する「公安審査委員会が特に必要と認める事項」として,次の事項を公安調査庁長官に報告しなければならない。
a 被請求団体の構成員に関する出家信徒及び在家信徒の別並びに出家信徒の位階
b 被請求団体作成のインターネット上のホームページに係る接続業者名,契約名義人の氏名及び掲載の管理・運営責任者の氏名
イ これに対し,b1教は,東京地方裁判所に,上記更新決定の取消訴訟を提起したが,平成16年10月29日,これを棄却する旨の判決がされ,同判決は確定した。
(3)ア 公安調査庁長官は,平成17年11月25日,公安審に対し,被請求団体(本件観察処分の決定書上の被請求団体の表示と同様である。)につき,観察処分の期間の更新を請求し,公安審は,平成18年1月23日,被請求団体に対し,以下の決定(以下「第2回更新決定」という。)をし,同月30日,これを官報に公示した。(乙A12,13)
(ア) 平成15年1月23日付けで期間更新決定を受けた,平成12年1月28日付け当委員会決定に係る被請求団体を3年間公安調査庁長官の観察に付する処分の期間を更新する。
(イ) 被請求団体は,団体規制法5条5項において準用する同条3項6号に規定する「公安審査委員会が特に必要と認める事項」として,次の事項を公安調査庁長官に報告しなければならない。
a 被請求団体の構成員に関する出家信徒及び在家信徒の別並びに出家信徒の位階
b 被請求団体作成のインターネット上のホームページに係る接続業者名,契約名義人の氏名及び掲載の管理・運営責任者の氏名
c 被請求団体(その支部,分会その他の下部組織を含む。以下,この項において同じ。)の営む収益事業(いかなる名義をもってするかを問わず,実質的に被請求団体が経営しているものをいう。)の種類及び概要,事業所の名称及びその所在地,当該事業の責任者及び従事する構成員の氏名並びに各事業に関する会計帳簿を備え置いている場所(その会計帳簿が電磁的記録で作成されている場合には,当該電磁的記録媒体の保管場所)
イ 被請求団体は,上記決定に対し,取消訴訟を提起していない。
(4)ア 公安調査庁長官は,平成20年12月1日,公安審に対し,被請求団体につき,観察処分の期間の更新を請求し,公安審は,平成21年1月23日,被請求団体に対し,別紙処分1目録記載の決定(本件更新決定)をし,同月30日,これを官報に公示した。(乙A1,5)
イ これに対し,原告は,平成21年7月8日,東京地方裁判所に,本件更新決定の取消訴訟を提起した。(顕著な事実)
第4  争点
1  団体規制法及び本件更新決定の合憲性等
(1) 立法事実の存否(争点1)
(2) 平等原則違反の有無(争点2)
(3) 憲法20条等違反の有無(争点3)
(4) 憲法13条等違反の有無(争点4)
(5) 憲法31条等違反の有無(争点5)
(6) 憲法35条等違反の有無(争点6)
2  本件更新決定の適法性等
(1) 原告を含む本団体と本件観察処分を受けた団体との同一性(争点7)
(2) 団体規制法5条1項1号該当性(争点8)
(3) 団体規制法5条1項2号及び3号該当性(争点9)
(4) 団体規制法5条1項4号該当性(争点10)
(5) 団体規制法5条1項5号該当性(争点11)
(6) 原告を含む本団体の活動状況を継続して明らかにする必要性の有無(争点12)
(7) 更新決定時に新規の報告義務を課すことの適法性(争点13)
第5  争点に関する当事者の主張の要旨
1  争点1(立法事実の存否)
(原告の主張の要旨)
(1) 団体規制法は,破防法2条,3条にそれぞれ対応する団体規制法2条,3条の規定からも,基本的人権を著しく制約する性格の法律であるところ,観察処分については,①役職員の氏名,住所,役職名のみならず構成員全員の氏名,住所の報告,②団体の所有・管理する資産又は使用に供されているあらゆる資産の報告(その方法として土地についてはその具体的使用状況を含めて,建物については各部屋ごとに具体的な使用状況を含めかつ平面図を添付しての報告),③貸付金については貸付先,貸付残高,弁済期日,担保権の有無の報告,借入金についても同様の報告,④預貯金・有価証券の種類銘柄などあらゆる財産の報告,⑤本部,支部分会に至るまでの会議及び意思決定の内容の報告,⑥機関誌紙の名称,発行部数,編集人,発行人の氏名の報告,⑦公安調査官による土地建物への立入り,設備・帳簿書類その他必要な物件の検査,警察職員による同様の立入検査(検査妨害,検査忌避等の罰則や現行犯逮捕を可能とする旨の規定もされている。),⑧都道府県知事,市町村長は請求により同法5条の処分の結果得た情報の提供を受け,一般市民も知る機会を得ることなどの規制があり,また,再発防止処分は,不動産の新規取得の禁止,既存施設の使用禁止,布教,寄付の受付の禁止処分及び幹部の活動全般の禁止など,観察処分以上に更に厳しい規制が掛けられており,破防法が規定する解散処分に匹敵する厳しい効果を持つ処分を規定している。
(2) 団体規制法は,制定の過程において,地域住民の不安感が高まったため,これを解消することを目的として立法されたと説明されている。
しかし,主観的な住民の不安感の解消のために,上記(1)のような人権制約立法ができるかは法律上問題があるし,① 団体規制法の立法理由とされた住民の不安感とは,漠然として実体を伴わない不安感にすぎず,② 同法制定以前の平成9年には,公安審がa教に係る破防法に基づく解散指定請求を棄却していて,組織として無差別大量殺人行為に及ぶ危険性はなかったことからすれば,立法の必要性を欠く憲法違反の人権制約立法である。
なお,仮に団体規制法を合憲というためには,立法者が,無差別大量殺人行為を行った団体が,なお危険な体質を有することを立法の要件としていることからすると,少なくとも無差別大量殺人行為に結び付く現在の具体的危険性が存することが必要である。
(被告の主張の要旨)
(1) 原告は,団体規制法は,地域住民の漠然として実体を伴わない不安感を解消するために立法されたもので,立法の必要性(立法事実)を欠く憲法違反の人権制約立法であると主張している。
しかしながら,団体規制法制定当時は,現実に我が国において両サリン事件という無差別大量殺人行為が発生し,また,国際情勢をみても,多数の一般市民を犠牲にする無差別大量殺人行為による事件が多発していたものであり,その後も,全世界で同様の無差別大量殺人行為が繰り返されている状況にあるところ,これらの無差別大量殺人行為を団体が行う場合は,秘密裏に計画,準備されて実行に移されるため,犯行の事前把握が極めて困難であり,犯行の実現可能性が高い上,団体の持つ一定の目的達成のために反復して行われる可能性も高い。
したがって,過去にその役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体について,現在も無差別大量殺人行為に及ぶ危険な要素を保持している場合には,その活動状況を継続的に明らかにするための措置を講ずるなどして迅速かつ適切に対処しなければ,国民の生活の平穏を含む公共の安全を確保することはできない。
団体規制法は,このような無差別大量殺人行為を団体が敢行する場合の特性に鑑みて,国民の生命・身体に対する重大な危害を防止するという公共の安全を確保するために必要な規制措置を定めるものであって(第146回国会の法案趣旨説明),原告の主張するような単なる住民の漠然として実体を伴わない不安感を解消するための立法でないことは明らかであるから,原告の主張は理由がない。
(2) また,原告は,公安審がa教に係る破防法に基づく解散指定請求を棄却していて,組織として無差別大量殺人行為に及ぶ危険性はなかったので,団体規制法の立法は必要がなかったなどと主張している。
しかし,公安審は,a教に係る破防法に基づく解散指定請求に対し,破防法5条1項柱書きに定める「継続又は反覆して将来さらに団体の活動として暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由」という極めて厳格な要件の充足は認め難いとしつつも,被請求団体の危険性は消失していないことを明確に指摘し,その動向を警察及び公安調査庁が引き続き注視していく必要性を指摘しているのであって,公安審の破防法に基づく解散指定請求の棄却決定が原告の危険性の消失を意味するものでないことは明らかである。
したがって,原告の主張は理由がない。
(3) なお,原告は,仮に団体規制法を合憲というためには,少なくとも無差別大量殺人に結び付く現在の具体的危険性が存することが必要であると主張している。
しかし,無差別大量殺人行為は,犯行の事前把握が極めて困難であるという点に特徴があり,外部から,当該団体が再び無差別大量殺人行為に及ぶ現在の具体的危険を把握・確認できたときには,既に団体内部において,無差別大量殺人行為に容易に着手できる状態にあるものと考えられ,この段階にまで至らなければ観察処分に付することができないというのでは,無差別大量殺人行為の再発を未然に防止し,国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保を図るという同法の目的を達することはできない。
また,過去に団体の活動として現実に無差別大量殺人行為を行った団体において,団体規制法5条1項各号に掲げる事項に該当するということは,現在も過去の無差別大量殺人行為に及んだものと共通の要素が継続されており,再びそのような行為に及ぶ危険性があると認めるに足る事実が存することにほかならず,このような危険性を払拭し得る特段の事由が認められない限り,そのような危険性が存するものといわざるを得ない。一方,このような団体に対し団体規制法の定める内容の観察処分を行っても,その観察処分は,当該団体に当該団体の活動に関する一定の事項の報告義務と立入検査を受忍することを求めるものにすぎず,公共の福祉の観点からは合理的かつ必要でやむを得ない範囲にとどまるものであって,不当な人権侵害に当たらない。
したがって,原告の主張は理由がない。
2  争点2(平等原則違反の有無)
(原告の主張の要旨)
(1) 団体規制法は,その立法の経過,法律の内容・要件,a教に対する観察処分請求の内容からして,a教という特定の団体及びその関係者のみを対象にした処分的法律であり,一般的・抽象的法規範ではなく,憲法14条の平等原則に明白に違反する。
このような明白に平等原則に違反する法律が,仮に合憲として許容されるとしても,その根拠はいわゆる「緊急避難の法理」に求められ,この法理からすると,① サリンを使用するなど防御不能の方法による無差別大量殺人行為を犯す現実的危険性の存在と,② 団体規制法の適用の結果,侵害される基本的人権よりも保全される保護法益の方が優越しているという法益優越性が必要である。
(2) まず,上記(1)①については,  公安審が,平成9年1月31日の破防法7条のa教に対する解散指定請求に対し,請求後の状況の大きな変化により,「将来さらに暴力主義的破壊活動を行う危険性は遠のいた」として,請求を棄却していること,  タントラ・ヴァジラヤーナ等の教義を殺人を肯定する教義と位置付けるのは誤りであるところ,a教は,誤解を避けるため,平成7年7月29日に上記教義の一部を排除するなどし,平成12年1月18日の声明においてもこの点を確認していることからすると,現実的危険性は存在しない。
(3) 次に,上記(1)②については,団体規制法の立法目的で確保すべき「公共の安全」の内実は,「国民の生活の平穏」(団体規制法1条)であり,これはa教の関連施設周辺の住民が抱いている漠然とした不安感や理由のない恐怖感のみが保護法益にすぎず,思想,良心及び宗教の自由を保障し,厳格に例外事由を定めたB規約18条1項,3項に照らせば,上記の保護法益を保全することをもって,信教の自由の制約根拠とすることはできない。
(4) 以上のとおり,団体規制法は,a教を唯一の適用対象とする特別措置法であり,また,その平等原則違反を「緊急避難の法理」によって正当化することは到底できないから,憲法14条,B規約2条及び26条に違反する無効な法律である。
(被告の主張の要旨)
(1) 原告は,団体規制法がa教を唯一の適用対象とした処分的法律であり,平等原則(憲法14条)に違反すると主張する。
しかし,団体規制法5条1項の文言をみても,その適用対象について,a教のみに限定したものとはいえず,また,同法1条において「例えばサリンを使用する」と規定されているものの,これは単なる例示として使用されているにすぎず,あくまで,同法5条1項各号の要件を充足する無差別大量殺人行為を行った団体について等しく適用される一般的・抽象的法規範であり,何ら憲法14条に反するものではない。
また,立法の経過や法案審議の経過などからすると,両サリン事件が団体規制法の立法契機の一つとなったことは明らかであるが,当時,国際的に見ても爆弾等を使用した無差別大量殺人行為が発生しており,被害の甚大性・脅威性,犯行の密行性・実現可能性,犯行の反復可能性等という無差別大量殺人行為の持つ特性に対し,迅速かつ実効的な対応をする必要から,団体規制法が制定されたのであるし,原告主張のように立法の契機としてa教及びその関係者のみを対象としていたことをそのまま団体規制法の解釈に持ち込むことは,法解釈として正当とはいえない。
以上のとおり,団体規制法は憲法14条の平等原則に違反しないから,原告の上記主張は理由がない。
(2) これに対し,原告は,平等原則に違反するとの上記主張を前提として,そのような平等原則違反の立法が許容されるのは「緊急避難の法理」しかなく,①現実的危険性の要件と②法益優越性の要件を満たす必要があると主張している。
しかし,上記(1)のとおり,団体規制法は平等原則に違反するとは認められないから,原告の主張は前提において理由がないし,原告主張の「緊急避難の法理」についても,その内容,根拠,要件,効果について,いずれも明らかではなく,その主張自体理由がない。なお,原告は,憲法14条違反の主張に併せてB規約2条及び26条違反にも言及するが,この点についても,憲法14条違反の主張に対する上記反論と同様に理由がない。
3  争点3(憲法20条等違反の有無)
(原告の主張の要旨)
(1) 信仰を告白しない自由の侵害
憲法20条1項前段の信教の自由の内容のうち,内心における信仰の自由は,思想・良心の自由の宗教の分野における一態様であるから,内心の自由の絶対的保障に属し,公権力による干渉は許されない。
このような信仰の自由が保障される結果,内面的信仰の外部への表現である信仰告白の自由も当然に認められ,他方,B規約18条2項の規定からも,公権力が個人に対し信仰の告白を強制することも許されず,宗教と関係のない行政上・司法上の要請によっても,個人に信仰の証明を要求してはならないことになる(信仰を告白しない自由(以下「信仰不告白の自由」という。)の保障)。そして,信仰不告白の自由は,そもそも外部的行為を伴わないのであるから,絶対的な保障の下にあるというべきであり,国家権力が,個人に対し,信仰それ自体,あるいは,信仰を推知する事柄の告白を強制することは,いかなる理由があろうと,絶対に許されないのである。
しかるに,団体規制法5条5項が更新決定に際して準用する同条3項1号の「構成員の氏名及び住所」の報告徴収は,信者個人の信仰不告白の自由を間接的に侵害している点で,憲法20条1項前段及びB規約18条2項に反し,違憲・無効の結論を免れない。
また,本件観察処分によっても,① 2名の公安調査官が,平成21年3月上旬に,香川県の原告の在家構成員の女性の実家に来訪し,女性の入信の事実が両親に暴露されて,両親から棄教を迫られたこと,② 公安調査官が,平成12年3月下旬頃,原告の在家構成員が勤務していた滋賀県内の人材派遣会社の事務所を訪問し,原告との関係を暴露した結果,当該構成員が解雇されたことがあり,実際にも信仰不告白の自由が侵害されているから,団体規制法及び本件更新決定は違憲である。
(2) 宗教的行為及び宗教的結社の自由の侵害
ア 憲法20条1項前段及びB規約18条の信教の自由の内容のうち,宗教的行為の自由及び宗教的結社の自由は,それぞれに外部的行為を伴うものであるから,国家権力による規制の対象とはなり得るものの,外部的行為は内心の自由と密接不可分の関係にあるから,表見的には,信教の自由の外部的行為に対する規制のように見えながら,実際には,当該規制が内心の信仰の自由をも侵害する危険性が常に存在する。
したがって,このような精神的自由権を制約する法規については,厳格な違憲審査基準が適用されるべきであるから,規制の目的審査の基準としては,制限の対象となっている行為と害悪発生との間の関連性の程度について危険の「明白性」と「現在性」とが具体的裏付けをもって示されることが必要であり(「明白かつ現在の危険」の基準),制限の程度及び手段の審査の基準としては比例原則にしたがった「必要最小限度の基準」に従うことが必要である。
イ まず,団体規制法の規制の目的については,同法制定の過程において,観察処分によってどのような具体的効果がもたらされ,どのようにして「国民の生活の平穏を含む公共の安全」が確保されるか全く検証されておらず,信教の自由を侵害してまで観察処分をすることが必要か否かという点に議論が尽くされていないし,目的対効果の観点からの因果関係の検証もされていない。
また,公安審が平成9年1月31日に破防法に基づく解散指定請求を棄却するに際して,a教に暴力主義的破壊活動の危険性がないと認定した時点から,a教に無差別大量殺人行為を犯す「明白かつ現在の危険」は存在しないことが明らかといえる。
よって,団体規制法は,信教の自由を制約するのに必要な「明白かつ現在の危険」の基準を充足していないから,憲法20条に違反している。
ウ(ア) 観察処分の結果,立入検査が実施されると,当該立入検査権の行使は担当の公安調査官の裁量的判断に委ねられていることもあり,当該団体に所属する個々の信者は,国家機関の監視下に置かれ,宗教的行為の自由は一方的に侵害されることになるし,過去に無差別大量殺人行為があったことを理由に当該団体に属する構成員全員を観察処分の対象とするものであるから,過去の個人の刑事責任と何らの関わりを持たない信者をも規制し,連座責任を負わせることになるのは明らかに行き過ぎである。
しかるところ,法案審議の過程において,いかなる手段を用いることによって制限を最小化できるか,また,同じ目的を達成するのに他にどのような代替手段があるのか(より制限的でない代替手段。less restrictive alternativeの原則)の検証を経て手段審査の基準が検討された形跡もなく,団体規制法は,「必要最小限度の基準」を超えて過度の制限を信教の自由に加えるものであるから,手段審査の基準の適用においても,憲法20条に違反している。
(イ) 次に,団体規制法5条3項1号は,観察処分を受けた団体の役職員のみならず,構成員の氏名及び住所も報告するよう義務付けており,当該団体の構成員になった場合には,自己の信仰を公権力に対して告白させられることになり,団体加入希望者は,当該団体の構成員になることを躊躇せざるを得ない。また,本件観察処分により,平成20年12月25日現在で,延べ174回,延べ326施設(実数124施設)に対して,ほぼ定期的に,まんべんなく同処分に基づく立入検査が行われてきた(延べ約5000人に上る公安調査官等を動員し,1000時間を超える時間を費やして実施されてきた。)。
以上のような報告義務及び立入検査によって,信者は,事実上,信仰生活を継続することを断念し,改宗の強要につながるのであって,結局は原告を瓦解させることにつながり,宗教的結社の自由を侵害することになる。
エ B規約20条2項,27条に照らせば,締約国は,宗教的少数者の権利侵害に対し,締約国が宗教集団に向けられる暴力行為又は迫害行為に対する保護措置を講ずることを要請している。
しかし,団体規制法は,右翼や地域住民によるa教に対する暴力行為や地方自治体がa教の信者の住民登録を拒否するといった明白な人権侵害行為に対しては何ら是正措置を講じていないばかりか,かえって,国家自身が,観察処分によって,「国民の生活の平穏」といった極めて抽象的な法益保護を理由として,個々の信者に対し,事実上,a教の信仰にとどまることを断念させ,改宗することを強要して抑圧して,宗教的少数者の権利を侵害しているから,B規約18条2項にも違反する。
オ 以上のとおり,団体規制法は,精神的自由権の制約に関する違憲審査基準に照らせば,目的審査及び手段審査の双方の基準において,信教の自由の制約を正当化することができず,憲法20条及びB規約18条に違反している。
(被告の主張の要旨)
(1) 信仰を告白しない自由について
原告は,観察処分を受けた団体が当該団体の構成員の氏名及び住所を公安調査庁長官に報告することを求められる(団体規制法5条2項1号)ことは,絶対的保障を受ける信者個人の信仰不告白の自由を間接的に侵害していると主張している。
しかし,観察処分は,過去に団体の活動として無差別大量殺人行為を行い,かつ,現在もなおその危険な要素を保持し,社会的に非難を受けるべき危険な当該団体に対し,その危険な要素の程度及び活動状況を継続して明らかにする必要性・公益性から,その人的要素に着目して,当該団体の活動への参加・従事という外部的行為を捉え,当該者の氏名及び住所の報告を行わしめるものである。
このように観察処分による報告義務は,特定宗教の信徒を名宛人とするものではなく,あくまで団体の活動として過去に無差別大量殺人行為を行った団体を対象とするものである上,報告を求める事項も構成員の氏名及び住所という信仰とは無関係の事項であり,当該団体又はその構成員の精神的・宗教的側面に容かいする意図によるものではないことからすると,このような報告を求めることが原告の主張する信仰不告白の自由を侵害することにはならない。
(2) 宗教的行為及び宗教的結社の自由について
ア 憲法20条が保障する信教の自由のうち,外部的行為として現れる宗教的行為等に関するものについては,絶対無制限のものではなく,公共の福祉の観点から必要かつ合理的な制約を受けるものである。
団体規制法の目的(同法1条)によれば,同法は,無差別大量殺人行為を行った団体を適用対象とし,現在もその危険な要素を保持している場合であって,当該団体の活動状況を継続して明らかにする必要があると認められるときに,その活動状況を明らかにし,もって国民生活の平穏を含む公共の安全を図ろうとするものであり,宗教団体及び当該団体に属する信者の宗教上の活動自体を規制することを目的とした法律でもなければ,当該団体及びそれに属する信徒の精神的・宗教的側面に容かいする意図で立法されたものでもなく,その目的は合理的である。
また,観察処分を受けた団体は,当該団体の役職員及び構成員の氏名及び住所等並びに団体が保有する資産・負債等といった団体の活動状況を支える主要な要素である人的及び物的要素並びに団体の活動に関する事項を公安調査庁長官に報告する義務(団体規制法5条2項,3項)や,公安調査官が団体の活動状況を明らかにするために行う土地建物への立入検査を受忍する義務(同法7条2項)を負うという公共の安全の確保という上記法の目的を達成するための必要かつ合理的なものにとどまり,当該団体の(宗教上の活動を含む)活動を何ら禁止したり制限するものではなく,仮に観察処分に伴い一定の義務が課されることによって当該団体や構成員らが行う宗教上の行為に何らかの支障が生ずることがあるとしても,それは間接的で事実上のものにとどまる。
さらに,観察処分は,準司法機関である公安審(公安審査委員会設置法1条,3条ないし5条参照)が,個々の具体的な事案について,その必要性に応じ合理性の認められる限度で行うものであり,しかも,その手続も団体側からの意見も徴した上で証拠書類等に基づいて行われる(団体規制法20条)など,手続の適正が確保されている。
以上のとおり,観察処分は,立法目的において合理性がある上,規制内容も,当該団体の活動を直接制限するものではなく,当該団体の活動状況を継続して明らかにする必要があると認められるときに,当該団体に一定の作為義務(報告義務)ないし不作為義務(立入検査の受忍義務)を課すものにすぎず,その手続の適正も担保されていることにも鑑みれば,上記の団体規制法の目的に照らし,合理的かつ必要でやむを得ない法的措置であって,憲法20条に違反していない。
イ これに対し,原告は,表見的には信教の自由の外部的行為に対する制約のようにみえるものでも,実際には,内心の信仰の自由をも侵害する危険が存在するので,厳格な違憲審査基準を適用すべきであり,団体規制法5条1項の観察処分は,原告ないしその構成員の信教の自由を制約するものであるのに,① 目的審査の基準について,「明白かつ現在の危険」の基準を充足しておらず,また,② 手段審査の基準について,「必要最小限度の基準」を超えて過度の制限を加えていることから,憲法20条1項前段に違反すると主張している。
しかし,目的審査の基準につき,「明白かつ現在の危険」を団体規制法の合憲性の判断基準とすべきとの主張は,前記1で原告が主張した「現在の具体的危険性の要件」を求めることと相等しく,観察処分の要件としてこれが必要とされるものでないことは前述したとおりであるから,原告の主張は,前提において理由がない。
また,観察処分は,過去に無差別大量殺人行為を行い,現在もそのような行為に関する危険な要素を属性として保持している団体に対し,その危険性を有するか否かを明らかにするために,一定の期間当該団体の活動状況を明らかにする処分であるから,その合憲性の判定に「明白かつ現在の危険」を要求することは背理である。
さらに,原告は,上記の報告義務及び立入検査によって,個々の信者は,事実上,信仰生活を継続することを断念し,改宗を強要することにつながるのであって,ひいては原告を瓦解させる効果をもたらし,宗教的結社の自由を侵害している旨主張する。
しかし,観察処分は,当該団体の構成員が宗教上の行為を行うことを禁止したり,制限したりする法的効果を伴っておらず,何ら改宗を強要する効果を有しないし,仮に,観察処分によって当該団体の構成員の宗教上の行為に支障を生ずる場合があるとしても,それは観察処分に伴う間接的なものにとどまり,団体規制法の目的を達成するために合理的かつ必要でやむを得ないものというべきであるから,原告の主張は理由がない。
なお,原告は,上記憲法違反の主張に加え,B規約18条違反を主張しているが,同条の内容は憲法20条が保障する内容と同一であるから,上記で述べたとおり,この点に関する原告の主張も理由がない。
4  争点4(憲法13条等違反の有無)
(原告の主張の要旨)
(1) プライバシーは人格権の内容をなすものとして憲法上保護されるべき人権であるが(なお,B規約17条1項参照),他の人権との相互調整を理由に制約を受けることがあり得るものの,個人のプライバシーの制約を正当化する法律及び規則は,「干渉が許される条件を正確に細部に渡って明記して」(一般的意見16の8)置かなければならず,この事前抑制方法と並んで事後的にプライバシー侵害に対する救済制度が設けられるべきことが義務付けられる(B規約17条2項参照)。
(2) 観察処分の結果,立入検査が実施されると,当該立入検査権の行使は担当の公安調査官の裁量的判断に委ねられていることもあり,当該団体に所属する個々の信者は,国家機関の監視下に置かれ,プライバシー権は恣意的かつ一方的に侵害されることになる。
実際の立入検査においても,施設内の設備にとどまらず,個人所有の教材・写真に至るまで一点一点記録・接写し,個々の信者ごとの私物の検査は常態化している。
また,立入検査を受ける施設や道場には,出家信者が居住の場としてもいるのであって,プライバシーのみならず,個人の住居の平穏が恣意的な立入検査によって脅かされる結果となる。
これに対し,立入検査の結果,信者のプライバシー,住居の平穏,通信の秘密が侵害されたとしても,団体規制法には,その侵害に対し効果的な救済を求め得る規定が整備されておらず,B規約17条2項やその一般的意見16の11に照らし,致命的欠陥があるといわざるを得ない。
したがって,団体規制法は,目的及び手段の非限定性に照らして,恣意的な干渉に該当すると言わなければならない。
(3) 以上のとおり,団体規制法は,信者のプライバシー及び住居の平穏を侵害する点で憲法13条及びB規約17条に違反している。
(4) 公安調査庁は,平成22年11月1日,本件更新決定に基づき,原告の全国24か所の施設・住居等で,全国一斉立入検査(以下「本件一斉立入検査」という。)を実施し,その際,各現場の公安調査官によって,① 検査対象物かどうかの判断は,公安調査官が行う,② 立会人が私物だから検査対象外であるなどと勝手に判断して検査を拒むことは検査拒否となる,③ 立会人が私物と主張する物件も,団体活動に関している検査対象物であると,判断すれば検査を実施し,その検査を拒否した場合,検査拒否と判断する,④ 施設内にある現金についても一円単位まで勘定する,⑤ 記録の方法も公安調査官が必要かつ合理的と判断した方法で行うので,交渉には応じないなどと原告構成員に通告した。
そして,本件一斉立入検査では,原告構成員である立会人らの所持する団体の活動とは全く関係のない私物である現金,キャッシュカード,預貯金通帳,病院の診察券等を写真撮影し,記録したが,これらはいずれも,憲法13条を根拠とするプライバシー権の保障によって保護されるべき情報にほかならず,公安調査庁はこれらの情報を恣意的に収集,記録しており,実際にプライバシー権を侵害している。
(被告の主張の要旨)
(1) 原告は,① 観察処分の内容として行われる立入検査は,担当の公安調査官の裁量的判断で行われ,信者個人のプライバシーが恣意的かつ一方的に侵害されている,② 立入検査を受ける施設を居住の場としている出家信者も存在しているので,これらの者のプライバシーのみならず,個人の住居の平穏も侵害されるなどと主張している。
プライバシーや住居の平穏は,制限の必要性の程度と制限される基本的人権の内容,これに加えられる具体的制限とを衡量した結果,当該制限が必要かつ合理的なものである場合には,その制限も許されるものであるところ,団体規制法が定める立入検査は,団体の活動状況を明らかにするために特に必要があると認められるときに限り,立入検査権を認めるものであって,信者の信仰生活の継続を断念したり,改宗したりすることを強要するものではないし,原告の施設に居住する出家信者らも,過去に団体の活動として無差別大量殺人行為を行い,かつ,現在もなお危険な要素を保持し,社会的に非難を受けるべき危険な団体であることを承知しながら,その活動に積極的に参加・従事するものであるから,立入検査の必要性及び公益性にかんがみれば,これに伴う程度の不利益は甘受すべきである。
また,当該立入検査権の行使が担当の公安調査官の裁量的判断に委ねられているとの非難の点についても,立入検査権の付与を含む観察処分制度の憲法適合性に関わる問題ではなく,あらかじめあらゆる場面を想定して行為規範を詳細に定めることは不可能を強いるものといえるし,その目的に照らし必要かつ合理的な範囲内でしか立入検査権も行使されることがなく(団体規制法2条,3条,7条2項),公安調査官が職権を濫用することのないよう刑法の職権乱用罪の特則として加重した処罰規定を設けるなど(同法42条),法の担保もされているから,公安調査官において恣意的かつ一方的なプライバシー侵害のおそれはない。
(2) 以上のとおり,団体規制法による信者のプライバシー及び住居の平穏に対する制限は必要かつ合理的な範囲内にとどまるから,憲法13条及びB規約17条には違反していない。
(3) なお,原告は,本件一斉立入検査が憲法13条のプライバシー権侵害であると主張しているが,立入検査の際の公安調査官の個々の行為の当否は,立入検査権限の付与を含む観察処分制度を設けることの憲法適合性の有無に関わる問題ではなく,原告の主張は明らかに理由がない。
5  争点5(憲法31条等違反の有無)
(原告の主張の要旨)
(1) 憲法31条の定める法定手続の保障は,直接には刑事手続に関するものであるが,行政手続においても準用され得るところ,団体規制法は,前記1(1)の原告の主張のとおり,観察処分に基づく報告義務,立入検査,再発防止処分に基づく不作為義務によって,当該団体及び当該団体の職員又は構成員とみなされた個人のプライバシー権(憲法13条),信教の自由(憲法20条),結社の自由,表現の自由(憲法21条)といった,基本的人権の中でも,特に中核的な人権が制限を受けることになる。
そして,その制限の程度は,極めて重大な制限であり,被る不利益の程度も極めて重大である。
(2) このため,団体規制法は,その不利益処分が,上記のような中核的な基本的人権に関係するものであることに鑑み,処分の審査,決定に当たって,当該団体及びその役職員等の個人の権利保障をより手厚くしなければならず,行政手続法第3章の規定を適用除外とし(団体規制法33条),独自の意見聴取手続を定めているが,これは,以下に述べるとおり,不十分であり,憲法31条の法意に反している。
ア 通知期間
公安審は,意見聴取を行うに当たり,意見聴取期日の7日前までに,団体規制法17条1項各号の事項を当該団体に通知すればよいこととされている。
しかし,観察処分又は再発防止処分に服する要件は,団体規制法5条1項各号の事項,同法8条1項各号の事項と多岐にわたっている上,同法5条1項5号,同法8条1項8号の規定は明確でなく,これら事項に関する処分請求書は,膨大な量の記述があり,これらを証するための証拠書類等も膨大な量に及び,かつ,判読不能な外国語で書かれた書面まで含まれていたところ,原告が,このような処分請求書を精査し,適切に弁解,防御を行うには,以下に述べる証拠書類等の閲覧権が保障された上での検討を鑑みても,7日間という短期間では到底不可能である。
イ 証拠書類等の閲覧権がないこと
団体規制法の意見聴取手続には,当該団体に処分請求書に添付された証拠書類等の閲覧権を定めた規定がない。
もっとも,これまで,公安審は,意見聴取手続において,原告に対し,任意に証拠書類等のコピーを交付,閲覧をさせたことがあるが,これもあくまで公安審の裁量に基づくものにすぎず,原告は,膨大な量の証拠書類等について,限られた時間・方法での閲覧しか許されず,処分請求書に添付された証拠書類等について,十分検討する機会は保障されていないから,原告の事前の弁解,防御の保障は全く不十分といわざるを得ない。
ウ 更新請求手続において口頭意見陳述権がないこと
観察処分の期間更新の手続(団体規制法26条)では,観察処分請求手続とは異なり口頭意見陳述権はなく,意見陳述は,陳述書及び証拠書類等を提出して行うものとされている。
しかし,通常,更に観察処分の期間を更新するに当たっては,「無差別大量殺人の実行に関連性を有する危険性」の有無について,より一層慎重な検討が必要とされるはずであるところ,更新請求時において,意見聴取手続を簡略化しているのは,団体規制法が,a教という特定の団体のみを対象として制定されたことと無関係ではない。
エ 公安審による慎重な審査が予定されていないこと
団体規制法22条2項は,公安審において,同法17条2項の規定による公示があった日から30日以内に,処分の請求に係る事件につき決定をするように努めなければならないと定めており,同法における事前の告知,弁解,防御の機会が,被侵害利益の重大性に比して,極端に軽視されているといわざるを得ない。
したがって,このような努力義務を定める団体規制法は,憲法31条の法意に反している。
オ 再発防止処分と観察処分の意見聴取手続が同じ手続であること
再発防止処分は,当該団体の団体としての活動及びこれに付随して,当該団体の役職員等の個人の活動を大幅に制限するものであり,信教の自由,結社の自由に重大な侵害を及ぼし,その罰則規定の法定刑の重さ(団体規制法38条)からも,観察処分に比して,より重大な不利益処分である。
しかし,再発防止処分の際の意見聴取手続は,観察処分の時と同じ手続しか定められておらず,事後の手続保障についても,取消しを促すことができるという確認的な規定(団体規制法10条2項)しか設けられていないから,憲法31条の法意に反するといわざるを得ない。
(3) 以上のとおり,団体規制法が定める意見聴取手続は,被侵害利益の重大性に比して,あまりに不十分な手続保障しかしていないといわざるを得ず,憲法31条に違反している。
(被告の主張の要旨)
(1) 憲法31条の法定手続の保障は,それが行政手続にも及ぶと解すべき場合であっても,一般に,行政手続は,その性質において刑事手続と差異があり,また,行政目的に応じて多種多様であるから,行政処分の相手方に事前の告知,弁解,防御の機会を与えるかどうかは,行政処分により制限を受ける権利利益の内容,性質,制限の程度,行政処分により達成しようとする公益の内容,程度,緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって,常にこのような機会を与えることを必要とするとは解されない。
(2) 団体規制法の立法目的,規制措置の内容及び手続は以下のとおりである。
ア 団体規制法の目的(同法1条)によれば,当該規制措置により達成しようとする公益の内容,程度,緊急性等は,国民の生活の平穏を含む公共の安全であって,公共性,公益性が極めて高いといえる。
イ 規制措置の内容も,当該団体に一定の作為義務(報告義務)ないし不作為義務(立入検査の受忍義務)を課すにとどまるものであり,当該団体及びその構成員の行為を規制するものではない。
ウ また,団体規制法は,処分の審査,決定に当たって,以下のとおり,十分な手続保障のための措置を講じている。
すなわち,団体規制法は,① 観察処分は,公安審という準司法機関の中立・公正な判断の下に行われ(同法12条1項,5条1項),② 公安審は,観察処分の請求があったときは,当該団体に意見聴取を行わなければならず(同法16条),③ 請求に係る処分の内容及び根拠となる法令の条項,請求の原因となる事実等について,意見聴取期日の7日前までに官報で公示するとともに通知書を送付して当該団体に通知した上で(同法17条),意見聴取期日の冒頭において公安調査庁の職員が説明するものとし(同法19条2項),これに対し,④ 当該団体の役職員等は,意見聴取期日に出頭して意見を述べ証拠書類等を提出できるのみならず,指名委員等の許可を得て公安調査庁の職員に対して質問を発することもでき,あるいは意見聴取期日までに陳述書及び証拠書類等を提出することができるものとされ(同法20条1項ないし3項),さらに,⑤ 観察処分の期間更新請求があったときは,公安審は,当該団体に意見陳述の機会を付与しなければならず(同法26条3項),⑥ 陳述書の提出期限の7日前までに,更新が予定される処分の内容及び更新の根拠となる法令の条項,更新の理由となる事実等について,官報で公示するとともに通知書を送付して対象団体に通知するものとされ(同法26条4項,5項,17条2項,3項),⑦ 当該団体は,陳述書及び証拠書類等を提出して意見陳述を行うものと定めている(同法26条3項)。
さらに,団体規制法は,不利益処分を課する場合の意見陳述のための手続等を定めた行政手続法第3章の規定を適用しないものとしているが(団体規制法33条),仮に観察処分に行政手続法が適用されるとした場合,同法13条1項1号のいずれにも該当しないため,同項2号の規定により,弁明の機会の付与の手続によることとなる。そうすると,団体規制法の定める手続は,上記①ないし⑦に加えて,観察処分の請求があった場合には,原則として公開の場で意見聴取が行われ,団体の役職員等は,その期日に出頭して,口頭で意見を述べ(行政手続法では,行政庁が認めた場合に限って,口頭の弁明ができるとされている(同法29条1項)。),更には公安調査庁の職員に対する質問を発することもできるとされており,行政手続法が定める弁明の機会の付与の手続よりも,むしろ当該団体の権利ないし利益保護に手厚い内容となっている。
以上のとおり,団体規制法の立法の目的,規制措置の内容及び手続からみて,本件更新決定は手続の適正を何ら欠くものでないから,団体規制法は憲法31条に違反していない。
(3) これに対し,原告は,団体規制法の定める意見聴取手続について,① 意見聴取手続を行うに際し,団体規制法17条1項各号の事項の当該団体に対する通知を期日の7日前までに行うとしているのはあまりに短く,② 処分請求書に添付された証拠書類等の閲覧権を当該団体に認めておらず,③ 観察処分の期間更新手続の際に,口頭での意見陳述を行うことが認められていないこと,④ 処分請求の公示のあった日から30日以内に決定するよう努めると規定されており,慎重な審査が予定されていないことを指摘し,団体規制法が憲法31条に違反すると主張している。
しかし,上記①の点については,団体規制法の定める規制措置の公共性・公益性及び緊急性の高さに加え,同通知と共に公示が行われる旨規定され(同法17条2項),その公示から30日以内で決定を出すことに努めなければならないと規定されているところ,7日という期間は,その決定までの期間の実に約4分の1を占めていることも併せて考慮すれば,同期間が決して不当に短期間とはいえないし,また,原告が指摘する行政手続法15条1項についても,聴聞手続に関する条文であることはさておき,同項が定める「相当な期間」を具体的に何日とするかは行政庁がケースバイケースで判断するものとされ,1週間から2週間とすることが多いとされていることからすれば,7日間は行政手続法と比較して手続保障に欠けるものとは認められない。
また,上記②及び③については,証拠書類等の閲覧や口頭での意見陳述を行わせる手続までもが憲法上要請されると解すべき根拠はない上,団体規制法は,前述したとおり,処分の審査・決定に関する手続保障のための十分な措置を講じていることから,その主張には理由がない(なお,処分行政庁は,団体規制法の定めはないものの,本件更新決定等の際に原告に証拠書類等の閲覧を実施するとともに口頭での意見陳述の機会を与え,意見を聴取している。)。
さらに,上記④については,前記のとおり,団体規制法が定める規制措置は,その目的の公共性・公益性が極めて高い上,これを講ずる緊急性も高いことから審査を30日以内に行うとの努力目標が置かれているのであって(同法22条2項),これによって公安審の審理が不十分にならざるを得ないとする根拠はない。実際にも審理に不都合な結果など全く生じていない上,当該団体に与えられている手続保障が有名無実のものになることもない。
以上のとおり,原告の主張はいずれも理由がない。
6  争点6(憲法35条等違反の有無)
(原告の主張の要旨)
(1) 憲法35条の定める令状主義は,本来,主として刑事責任追求の手続に係る強制処分について,事前の司法審査を経るべきことを保障したものであり,行政手続においても準用され得るところ,前記1(1)の原告の主張のとおり,団体規制法の定める立入検査は,基本的人権の中でも,特に中核的な人権を制約するものであり,当該団体が無差別大量殺人に及ぶ危険性を明らかにするという,刑事責任追及に極めて密接に関連した目的を有している。
また,公安調査官のみならず刑事手続上の捜査機関となり得る都道府県警察官も,裁判所はおろか準司法機関である公安審の事前審査も経ずに,何時でも,広範囲にわたって,刑事訴訟法における「捜索」と同内容の処分を観察処分を受けている団体に行うことができる(団体規制法12条3項,14条1項,2項)。
これに対し,施行規則上は,立入検査につき,公安審に事前,事後の通報をすることとなっているが,団体規制法の違憲性を論ずるに当たっては,法律より下位の規範である施行規則を考慮することはできない。
さらに,団体規制法は,立入検査の検査妨害,検査忌避等について罰則規定を設けており(39条),観察処分より重大な人権侵害をもたらす再発防止処分を課すこともできるものとしている(8条)。
そして,立入検査の実効性を強固に確保することができる規定となっている以上,これを拒否等することは実際上不可能であるというべきであり,「捜索」と同様の強制処分というべきである。
(2) したがって,団体規制法は,裁判所はおろか公安審の事前審査も経ることなく立入検査を行うことを認めており,憲法35条に違反している。
(3) 本件一斉立入検査は,前記4(4)で主張したとおりの態様で行われ,法律上の根拠もなく,私物に対する検査が実施されており,手続的に歯止めが利かないため,検査の範囲は恣意的に拡大される可能性が高く,上記のとおり検査妨害,検査忌避等に対する罰則規定や再発防止処分が存することも考慮すれば,実質上,直接的物理的な強制と同視すべき程度にまで達しているということができ,事前の司法審査や公安審の審査を経ない「捜索」と同様の強制処分といえる。
(被告の主張の要旨)
(1) 原告は,観察処分に伴う立入検査につき,裁判官による司法審査を経ず,また,準司法機関である公安審の事前審査も経ていない点で,憲法35条の定める令状主義に違反し,かかる立入検査を正当化する団体規制法も,憲法35条に違反すると主張する。
憲法35条1項が,刑事責任追及の手続における強制処分以外の手続における強制処分にも及ぶと解すべき場合であっても,当該手続が憲法35条の法意に反するか否かは,手続の一般的性質が刑事責任追及を目的とする手続であるか否か,手続の一般的機能が,実質上も刑事責任追及のための資料収集に直接結び付く作用を一般的に有しているか否か,強制の態様・程度が直接的か,間接的か,公益性が高度か否か,公益性と強制手段との均衡が失われていないかを総合較量して決せられる。
そこで,この観点から,団体規制法の立入検査をみると,① 立入検査は,刑事上の処罰を目的としておらず,一般的に刑事責任追及のための資料収集に直接結び付く作用は有していない(7条4項,14条7項),② 立入検査実施の際,当該団体等から抵抗があっても,直接強制ではなく,検査妨害・検査忌避等について刑罰を科すという間接強制による実効性確保しか認められていないし,③ 当該団体の活動を明らかにする必要性・公益性は極めて大きく,立入検査はこの目的を実現する上で必要不可欠であるところ,一般的に,行政庁の行う立入検査には,当該行政庁以外の機関による審査,承認などの手続を整備する措置は求められておらず,そのような措置をするかは立法政策に属する事柄であり,④ 公安調査官による立入検査については,公安審が当該団体を観察処分に付する決定を行う際に,公安調査庁長官が警察庁長官の意見を聴取するなどした上で公安審に対してその処分を請求し(12条,13条,15条),これを受けて,準司法機関である公安審が公開による意見聴取を実施するなど(16条ないし21条)の極めて慎重な手続が踏まれ,⑤ 都道府県警察の職員による立入検査(14条2項)についても,上記④の手続が前提となっている上(14条1項),上記立入検査を行うに当たっては,警察庁長官の事前の承認が必要であって(14条2項),さらに,警察庁長官は上記承認に際しては事前に公安調査庁長官と協議しなければならない(14条3項)とされている。
(2) 以上によれば,立入検査が,あらかじめ裁判官の発する令状によることを要件とせず,また,個別の立入検査ごとに公安審の事前審査を経ていないとしても,何ら憲法35条の法意に反しないというべきである。
(3) 原告は,本件一斉立入検査が憲法35条に違反するかのように主張しているが,上記に鑑みれば,理由がない。
7  争点7(原告を含む本団体と本件観察処分を受けた団体との同一性)
(被告の主張の要旨)
(1) 団体規制法の団体概念及び団体の同一性の判断基準
ア 団体概念
団体規制法にいう団体とは,「特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体」(4条2項)であり,ここにいう「結合体」とは,多数人の組織体であって,その構成単位たる個人を離れて「結合体としての独自の意思を決定し得る」ものをいうとされている。
団体規制法は,多数人が「特定の共同目的を達成するため」に「団体の活動として」の行為を行う関係に基づいて「団体の活動として」過去に無差別大量殺人行為を行った団体が,現在も団体の属性としてなおその危険な要素を保持している場合に,当該団体を規制の対象とするものであるところ,このような団体規制法1条の趣旨・目的に照らせば,団体規制法は,多数人の間に特定の共同目的が存在し,当該共同目的を達成するために当該個々の多数人を離れて独自の意思決定が行われ,当該意思決定を当該多数人に属する者が実現する行為を行うことになるという関係が,当該多数人の間に継続的に存在している場合に,そこに規制を必要とする団体性を見いだしたものと解される。
そうすると,団体規制法の団体概念の要素となる結合体概念については,名称や組織構成等の表面的・形式的な変化にとらわれるべきではなく,構成員の間に特定の共同目的が存在し,当該共同目的を達成するために個々の構成員を離れて決定された団体の意思を各構成員が実現する行為(団体の活動としての行為)と認められるか否かといった実質的な指標をもって結合関係の有無を判定するのが相当である。
したがって,団体規制法の団体性の要件となる「結合体」概念に関し,「結合体としての独自の意思を決定し得る」か否かについても,当該意思決定により,構成員が「特定の共同目的を達成するため」の「団体の活動として」の行為を行うことになるか否かが最も重視されるべきである。
イ 団体の同一性の判断基準
団体規制法5条4項は,更新決定の対象を同条1項の処分を受けた団体と規定しているから,適法に更新決定を行うには,その前提として,更新決定を受ける団体と当初の観察処分を受けた団体との間に同一性が認められなければならない。
更新決定は,観察処分から相当期間が経過した後に行われることが予定されているところ,当該団体において,観察処分後の期間の経過によって,具体的な団体の名称,構成員又は組織構成等に変動が生じ得たり,あるいは,更新決定を免れるために,殊更にその名称を変更したり,あるいは組織の分裂を装うなどして,外形上団体としての同一性がなくなったかのように見せかけることも容易に想定されるところであるが,「国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保に寄与する」(団体規制法1条)という同法の目的からは,上記のような変動があったとしても,「特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体」としての同一性が保持されている限りにおいては,対象団体の同一性を前提として観察処分の更新決定を認めるのが同法の趣旨と解され,このような場合にこそ団体の活動状況を明らかにする必要性は観察処分当時に比べて高まっているということもでき,このような場合に安易に団体としての同一性を否定し,更新決定が認められないとしてしまうと,団体規制法の趣旨が没却されてしまうことになる。
団体規制法は,上記アのとおり,特定の共同目的が存在し,当該共同目的を達成するために団体独自の意思決定が行われ,個々の構成員が当該意思決定を実現する行為を行うことになるという関係が,当該多数人の間に継続的に存在している場合に,そこに規制を必要とする団体性を見いだしたものと解されるから,更新決定を受ける団体と当初の観察処分を受けた団体との間の同一性の判断に当たっては,団体の名称や構成員,組織構成の変更等の表面的・形式的事情にとらわれるのではなく,構成員の間に同一の特定の共同目的が存在するか否か,その同一の共同目的を達成するために個々の構成員を離れて決定された団体の意思を各構成員が実現する行為を行うことになるという基本的な結合関係がなお保持されているか否かに着目して判断すべきである。そして,更新決定を受ける団体と当初の観察処分を受けた団体との間に,① 構成員の間に同一の特定の共同目的が存在し,② 同一の共同目的を達成するために決定された団体の意思を各構成員が実現するという基本的な結合関係がなお保持されていると認められれば,そこに団体規制法の規制を必要とする団体の同一性を見いだすことができ,上記各団体の同一性を肯定すべきである。
(2) 本団体の団体性
ア 本団体は,本件観察処分において,「B1ことBを教祖・創始者とするa教の教義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体」として特定されたものであり,本団体には,「B及び同教義に従う者」という多数人の間に,「Bを教祖・創始者とするa教の教義を広め,これを実現する」という特定の共同目的が存在し,当該共同目的を達成するために個々の構成員を離れて独自の意思決定が行われ,当該意思決定をB及びa教の教義に従う者らが実現する行為をするという基本的な結合関係が認められる。
すなわち,a教の教義の核心は,「主神をシヴァ神」として崇拝し,「シヴァ神の化身」であるBに対して絶対的に帰依することにあり,換言すれば,その教義に従う者が,自らの意思を捨てて,Bに絶対的に帰依してその意思に従い,これを自らの唯一絶対の行動規範とすることにあり,本団体の構成員は,「B及び同教義に従う者」といえる。
また,本団体においては,Bが明示的な意思や指示を示した場合は,本団体の構成員がこれに従い,これがない場合であっても,Bの過去の説法等や本団体の教義に顕現されたBの意思を推し量って行動することによって,「a教の教義を広め,これを実現する」という共同目的が存在し,上記の基本的な結合関係が形成されているといえる。
イ これに対し,原告は,本団体が「特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体」に該当するには,構成員相互間に意思の連絡が不可欠であり,これがない以上,「結合体」に該当せず,団体に当たらないとした上で,(a) 原告及びb2教以外の「その他の構成員」には意思の連絡がないこと,(b) 原告及びb2教の対立・確執の結果として,b2教が分派したことや,その後もb2教が自派への信徒勧誘等を行っていることなどに照らせば,両者の間に意思の連絡はないこと,また,(c) 原告とb2教の活動方針の不一致は,「B隠し」(真実は,Bに対する絶対的帰依を維持しつつ,Bの説く教義を広め,Bの意思を実現することを目的としながら,外形上,Bの影響力を払拭したかのように装うこと。以下同じ。)を行うことが,真正なBの意思か否かという「Bの意思」をめぐる意見の対立によるものであるから,意思の連絡の不存在を意味することなどを指摘して,これらを根拠に本団体が団体ないし結合体に該当しないと主張している。
しかし,本団体については,① 本団体が結合体として認められるゆえんとして,構成員の相互間に意思の連絡がない場合でも,各構成員は,「a教の教義を広め,これを実現する」という特定の共同目的を達成するために,個々の構成員を離れて決定された団体の意思を実現する行為を行うことは可能な状況にあることが認められ,② 団体の意思決定にBの意思が唯一絶対の意味を持ち,構成員がこれに絶対的に服従することが当然の前提となっている以上,本団体においては,構成員相互の直接の意思の連絡は,本団体の意思決定や団体の活動としての行為を行う上で必要ではないし,③ かえって,構成員相互の意思の連絡を団体,結合体の概念に要求してしまうと,分派して別組織になった場合,各組織の構成員相互で連絡を取らない場合もあるため,分派という事実を介して観察処分時の団体との同一性を喪失することにもなりかねず,団体規制法の規制の趣旨を容易に没却してしまうことになりかねないから,団体性について意思の連絡を必要とする原告の上記(a)の主張は理由がない。
この点をおくとしても,原告が指摘する(b)及び(c)の事情は,本団体において,各構成員が,Bが明示的な意思や指示を示した場合はこれに従い,これがなくても,Bの過去の説法等や本団体の教義に顕現されたBの意思を推し量って行動すると認められることの妨げになるものでもない。
仮に(b)のような事情が存するとしても,このような事情は,原告及びb2教の本質的な性格が,いずれもBを絶対的帰依の対象とし,Bの意思や指示に基づき,あるいはその意思を推し量って行動しているとの推認を妨げるものではなく,かえって,b2教の分派は,繰り返される観察処分期間更新決定による規制措置を免れるために,Cらが,対外的にはBの影響力を隠した「別団体」を設立し,それが本件観察処分を受けた団体とは別個の団体と装って活動するというBの意思に沿ってあるいはその意思を推し量った上での団体の行動として,分派に踏み切ったと認められるから,原告の(b)の主張は理由がない。
また,(c)の「B隠し」に関する事情は,Bの教義の根本的・本質的部分というより派生的・付随的な部分にすぎず,この点に対立があったからといって,「a教の教義を広め,これを実現する」という団体の本質的な性格に影響を及ぼすとはいえないし,「B隠し」を行うことに関し,Bの真意か否かを巡る意見の対立があること自体,本団体の構成員がBの意思を推し量って活動していることの証左というべきであるから,原告の(c)の主張も理由がない。
(3) 原告を含む本団体と本件観察処分を受けた団体との同一性
ア 前記(1)イからすると,原告を含む本団体が本件観察処分を受けた団体と同一性を有するか否かは,本団体の結合関係において同一性が保持されているかどうか,すなわち,構成員らが,Bを絶対的な帰依の対象とし,Bが明示的な意思や指示を示した場合はこれに従い,これがない場合でも,Bの過去の説法等や本団体の教義に顕現されたBの意思を推し量って行動することにより,a教の教義を広め,これを実現するという特定の共同目的を達成するために活動しているか否かによって判断すべきである。
そこで,上記の観点から本団体を見るに,① 本団体は,本件観察処分時において「a教」の名称で活動していたが,その後,名称変更と分派を繰り返し,本件更新決定時には,その構成員には,「X教」(原告。平成20年5月20日より改称)という集団名を称して活動している構成員及びb2教という集団名を称して活動している構成員のほか,本件観察処分を受けた団体の構成員,あるいは,かつて「b教」,「b1教」の名称を使用して活動していた集団に明示的に加入していた構成員らで,現在は,原告や「b2教」とは一定の距離を置いて活動している者も存在しており,その一部には,「c団体」,「dクラブ」といった名称を用いて活動する構成員も存在しているが,② これらの本団体の構成員は,そのほとんどが,本件観察処分を受けた団体の構成員と同一で,人員構成に大きな変更がみられないし(本団体の構成員のうち,出家した構成員のほぼ全員及び在家の構成員の約7割が地下鉄サリン事件以前にa教に加入し,現在に至るまで継続して本団体の構成員となっている。),③ 原告,b2教及びその他の構成員らは,その形式的な名称の違いはあるものの,いずれもBが説き,実現しようとするa教の教義に従い,Bの絶対的影響力の下,Bを絶対的帰依の対象とし,Bの説くa教の教義を広め,これを実現するための活動を継続していることが認められ,このことだけでも,本団体と本件観察処分を受けた団体との同一性は優に認められる。
さらに,上記の事情に加えて,④ 本団体の中心的な内部集団である原告及びb2教は,いずれも,a教の教義を広め,これを実現する目的で活動しているところ,施設,資産の平穏な分割によって分派した経緯や双方の構成員がa教の教義を広め,これを実現するための活動を継続し,同一の構成員が双方の施設に出入りしたり,説法会などへの参加を通じて各構成員が交流している実態が存すること,⑤ Bは,規制措置を免れるために,対外的にはBの影響力を隠し,本件観察処分を受けた団体とは別個の団体を装った別団体を設立して活動することを企図していたところ,Cらは,そのBの意向を受け,更新決定が繰り返されることによる入信者の減少,現役信者の減少,立入検査に伴う活動の牽制,立退費用の出費,収益事業への圧迫,信者逮捕に伴う刑事弁護費用の増大,全般的な活動の不活発化によって,教団の財務内容がますます悪化し,教団の活動が束縛されることなどを危惧して,本団体の「団体の活動」の一環としてb2教の分派を行ったことも考え併せれば,本件更新決定時において,各構成員らが,Bを絶対的な帰依の対象とし,Bが明示的な意思や指示を示した場合はこれに従い,これがない場合でも,Bの過去の説法等や本団体の教義に顕現されたBの意思を推し量って行動することにより,a教の教義を広め,これを実現するという特定の共同目的を達成するために活動していたと認められ,本団体と本件観察処分を受けた団体との同一性が肯定できる。
イ これに対し,原告は,団体の同一性判断は,手続規則18条が準用する手続規則2条2項所定の「団体を特定するに足りる事項」として示された各事項に基づいて行われるべきであり,具体的には,①構成員の同一性,②共同目的の同一性,③主宰者の同一性により判断されるべきであるところ,本団体の構成員相互の間に意思の連絡がないことなどから,上記①ないし③の同一性は認められないなどと主張する。
しかしながら,被告は,本団体を「特定するに足りる事項」に基づき,団体規制法の団体概念に即して本団体の団体性を明らかにした上で,本団体と本件観察処分を受けた団体との同一性の主張をしているのであり,何ら欠けるところはないというべきである。
まず,①及び②から同一性が認められないとの主張については,要するに,構成員や共同目的の同一性が認められる前提として,構成員相互に意思の連絡が必要とするものであると解され,この点に関する主張に理由がないことは,上記(2)イで主張したとおりである。
また,③の主宰者の同一性について,原告は,「主宰」とは,人々の上に立ち,または中心となって物事を取り計らうことを意味するところ,収監中のBが本団体を「主宰」しているとは認められないと主張している。
しかし,「主宰」の概念は,団体規制法に定められた概念ではなく,「その団体を特定するに足りる事項」(手続規則18条,2条2項)として,本件観察処分の決定書において本団体を特定するための一要素として用いられたものにすぎず,公安審も本件観察処分において,本団体をB以外の構成員の側からみてBの意思を唯一絶対のものとするとともに,Bの側からみてその余の構成員に対して絶対的な影響力を及ぼす団体であるという理解に基づき,本件観察処分において,本団体を他の団体から区別し特定する趣旨で,「主宰」という概念を用いているから,「主宰」の具体的な意義も,この特性に応じて解釈すべきである。
そうすると,「主宰」とは,むしろ,Bの側から,Bが本団体において絶対的な帰依の対象とされるなど,絶対的な影響力を保持している実態を表すことを意味すると解すべきであり,この観点からは,Bが収監されているか否かは「主宰」の意義に何らの影響を及ぼさないし,意思能力を現に有しているか否かも「主宰」の意義に何らの影響はないというべきである。
よって,上記③の点に関する原告の主張も理由がない。
(4) 本団体が現在に至るまで政治上の主義を保持していること
ア(ア) 本団体は,その最終目的である衆生救済の成否は解脱者(成就者)の多寡によって決せられるとし,世界をa教一色のシャンバラ(理想郷)と化する必要があるなどと説き,これを実現することを目的とし,昭和63年頃から,世界をシャンバラ化するための第一歩として日本のシャンバラ化を実現するため「日本シャンバラ化計画」と称して,全国各地に拠点施設を次々と開設し,その教義に沿った理想郷(シャンバラ)を我が国に建設することを目指し,布施集めや勢力拡大を図っていた。そして,Bは,平成元年頃から,a教の教義を実践し,「日本シャンバラ化計画」を実現するためには,政治と宗教を切り離すことはできず,現実社会における政治的な力を獲得する必要があると強調するようになり,Bを独裁者とする祭政一致の専制国家体制を樹立するという政治上の主義を有するに至った。a教は,その政治上の主義を推進する目的で,Bを含むa教幹部構成員25名が平成2年2月18施行の衆議院議員総選挙(以下「本件総選挙」という。)に立候補したが,ほとんど票を獲得できず,全員が大差で落選した。一方,この頃,全国各地でa教の活動拠点の拡大に対する反対運動が活発化し,殊に,熊本県阿蘇郡波野村(現同県阿蘇市)内の道場建設を巡っては,同年5月頃,地元住民による強い反対運動が起こり,また,同建設に関連してa教構成員数名が国土利用計画法違反により検挙・起訴されるなどし,a教に対する社会的非難が強まっていった。
a教は,このような状況を教団を弾圧し壊滅させるものであると捉えて社会に対する反発を強め,これと対決する姿勢を示すようになり,もはや現行の民主主義政治体制において政治的な支配力を強めることによって「日本シャンバラ化計画」を実現することは不可能であると認識するに至った。そして,Bを独裁者とする祭政一致の専制国家を建設するためには,武力によって我が国の現行国家体制を破壊する必要があり,また,a教の活動に反対する勢力は真理の実践を妨げる悪業を積む者であるとして,これを殺害する以外にないという政治上の主義の下,本件総選挙惨敗の直後である同年3月頃から,ボツリヌス菌などの生物兵器の開発を開始し,以後,自動小銃の製造,サリン等の化学兵器やその撒布手法の開発・製造に努めて教団の武装化を強力に推進し,上記政治上の主義を推進する目的で,両サリン事件を敢行するに至った。
また,Bは,平成6年6月27日,a教の内部組織を,それまでの総務部,法務部,経理部等の部班制から,我が国の行政組織を模した法皇内庁,法皇官房,法務省,大蔵省等の「省庁制」に改め,位階の高い信徒をこれら省庁の大臣や次官と称する地位に任命するとともに,そのころ,これらの地位のうち「法務大臣」に就任した弁護士のA6らに命じて,自ら絶対的主権者である「神聖法皇」と称し,祭政一致の国家の統治機構等を定めた国家の憲法に相当する「太陽寂静国基本律第一次草案」や刑法に当たる「太陽寂静国刑律草案」等を作成・起案させるとともに,今後編纂すべき法典として「僧侶法(衣服令)」,「教育法」,「税法」,「徴兵法」,「政府組織法」,「国籍法」,「軍事法(戒厳令)」等の38件にわたる法案作成の準備をさせた。
このように,a教の教義の根幹は「衆生救済」にあるが,Bは,武力によって我が国の現行国家体制を破壊し,また,悪業を積む者を殺害することもその救済の実践であると説き,シヴァ神の化身であるBが独裁者として統治する専制国家体制を樹立することは,救済のための理想郷の建設を意味するものとしており,このようにa教の教義には,その枢要な一部として上記の政治上の主義が内包されている。
(イ) 本団体構成員は,今もなお,Bに対して絶対的に帰依しつつ,現に第2回更新決定後も本団体の幹部構成員が衆生救済ないしシャンバラ化の実現を明示的に強調する説法を繰り返しており,教学に使用している教材においても依然として「日本シャンバラ化計画」等に関するBの説法を掲載して末端構成員まで周知していて,Bの説く教義を実質的に変更することもなく実践する修行・活動を行っていることからみても,Bは,実質的には,依然として本団体における教祖として,絶対者と位置付けられており,同人が現在も本団体の活動に絶対的ともいえる影響力を有している。このことに徴すれば,Bの意思とは無関係に本団体が前記の政治上の主義を破棄することは不可能であるところ,Bがこの政治上の主義を破棄したと認めるべき証拠はない。
したがって,本団体は,現在も,依然としてこの政治上の主義を有していると認められる。
イ これに対し,原告は,本団体には政治上の主義が存在せず,① 「政治上の主義」の有無を争うことは既判力に抵触しない,② 日本シャンバラ化計画は政治上の主義ではない,③ 「衆生救済」は本団体の最終目的ではない,④ 「政治上の主義」について意思決定や周知徹底がされていない,⑤ 構成員らのBに対する「絶対的帰依」の存在が立証されていないなどと主張する。
上記の原告の主張のうち,まず,①については,本団体が「政治上の主義若しくは施策を推進し,支持し,又はこれに反対する目的をもって」(破防法4条1項2号)いるか否かは「無差別大量殺人を行った団体」(団体規制法4条)の要件であって,単なる事実に対する評価ではないから,これについても東京地方裁判所平成12年(行ウ)第35号同13年6月13日判決(以下「平成13年判決」という。)の既判力が生ずることになるし,次に,②ないし④の原告の主張についても,Bの説法等の内容に照らせば,上記のとおり,「日本シャンバラ化計画」は,本団体の教義や政治上の主義と不可分のものであり,かつ,本団体において,この政治上の主義を実現することが団体の意思として決定され,これが構成員らの間に周知されていると認められ,さらに,⑤の主張についても,本団体の構成員らがBに対して絶対的に帰依していることは,前記のとおりであるから,いずれの主張も理由がない。
(原告の主張の要旨)
(1) 団体規制法の団体概念及び団体の同一性の判断基準
ア 団体概念
本件更新決定は,団体規制法5条4項に基づく処分であり,本団体は,本件観察処分の決定を受けた団体との同一性を有していることが必要である。ここで,団体規制法にいう「団体」とは,特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体(団体規制法4条2項)であり,「結合体」とは,多数人の組織体であって,その構成単位たる個人を離れて結合体としての独自の意思を決定し得るものをいう。これに対し,「群衆」は,多数人の偶然の集合であって,組織体ではなく,この多数人の間には,意思の連絡はなく,単に心理的連絡が存するにすぎない。
そうすると,「結合体」は,「群衆」とは異なり,少なくとも,当該結合体において独自に決定された意思について,構成員間において,その意思の連絡が必要と解されるところ,本団体が「団体」,すなわち,特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体であるとするならば,第2回更新決定から本件更新決定に至るまでの3年間に本団体の組織構成に顕著な変化をもたらした平成7年当時のBの意思に基づく本団体としての独自の意思決定について,その構成員の間に意思の連絡が当然存在しなければならない。
そして,ここにいう「意思の連絡」とは,少なくとも,団体の本体(原告)のほかに,新たに別団体(b2教)を設立して相互に役割分担して共同目的を達成しようとしていること及びその相互の認識が必要と解される。
イ 団体の同一性の判断基準
本件更新決定を受けた原告を含む本団体が本件観察処分を受けた団体との同一性を保持しているといい得るためには,本団体が,① 団体規制法4条2項にいう「団体」に該当するというだけでは足りず,② 手続規則18条が準用する手続規則2条2項に基づく,本件観察処分を受けた団体を「特定するに足りる事項」として記載された各事項と合致するという条件を満たしていることが必要である。
すなわち,「(その団体を)特定するに足りる事項」として,各事項が具体的に抽出されていることからすれば,これら各事項の一致・不一致を個々に確かめていく作業こそが,正に団体の同一性判断そのものということができ,被告が,これを無視して,「実質的にみて,団体規制法4条2項にいう「特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体」として同一性があるか否かを基準に判断すべき」などという解釈をするのは,団体規制法2条が禁止する拡張解釈に該当する。
(2) 本団体が団体性を欠如していること
そこで,上記(1)アからすると,上記のような意味での「意思の連絡」が,本団体の多数人の構成員とされる者ら(原告,b2教(原告及びb2教で合計約1000人)及びそのいずれにも属さないその他の構成員(約700人))の間で存在していることが必要である。
しかし,上記のその他の構成員について,被告はその存在を主張するものの,何らの裏付けもしておらず,その存在すら疑わしいから,このような構成員との間に上記の意思の連絡があるなどとはいうことができないし,このうち,被告が指摘するc団体,dクラブといった名称を用い,集団を構成しているかのような体裁で活動している者やロシア国内で活動する者についても,これらに属する者らの特定を含めた活動実態は何ら明らかにされていないし,これらの者と原告及びb2教との間に上記にいう意思の連絡があるとは認められない。
また,原告とb2教の間で開催された財務運営等について話し合うための会合(「財政分離及びk施設の住み分けに関する会合」(なお,k施設とは東京都世田谷区□□e丁目33番15号に所在する「fマンション」(以下「原告マンション」という。),同33番14号に所在する「gマンション」及び同30番19号に所在する「hマンション」(以下「b2教マンション」という。)の3棟で構成される。以下同じ。))は,原告といわゆる「C派」との間の財務運営と居住場所の完全な切り離しを行い,両派の確執・対立をさらに根深いものとさせ,原告(当時は宗教団体b1教)の構成員としての結合関係を名実ともに破棄・解消していくための手続,協議であったということができる。
これに加えて,① b2教ないしC派を中心に,自派への信徒取り込みが,施設及び財務運営を原告と分離した後も継続されていること,② 被告が指摘するように本団体がBの意思やそれを忖度した内容に従って「B隠し」を行ったという点も,実際は,「B隠し」を行うことが,真正なBの意思なのかどうかについて,原告とC派が対立していたことからすると,原告とb2教との間には,相互に役割分担をして共同の目的を達成しようとするような結合関係は存在しないし,本団体の一部であると認めるに足る上記の意思の連絡は認められず,本団体は,「団体」すなわち特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体とは認められない。
(3) 原告を含む本団体と本件観察処分を受けた団体が同一性を欠如していること
ア 本件観察処分ないし本件更新決定の決定書には,手続規則18条が準用する手続規則2条2項に基づいて,「その団体を特定するに足りる事項」として「B1ことBを教祖・創始者とするa教の教義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体」と記載されている。
そして,団体規制法5条1項,4項によれば,本団体は,本件観察処分を受けた団体との「同一性」を有していることが必要とされるところ,ここでの同一性の判断は,本件観察処分やこれまでの更新決定の際,公安審が採った判断手法と同様に,上記の団体を特定するに足りる事項として抽出された各事項,すなわち,① Bを教祖・創始者とするa教の教義及び教義に基づく共同目的の同一性,② 代表者・主宰者の同一性,③ 団体の構成(構成員)及びその性質(位階など構成員間の結合関係等)の同一性を基準として行うべきである。
イ 以上を踏まえて,本団体と本件観察処分を受けた団体との同一性を検討するに,① 本団体の共同目的の具体的内容は「Bを独裁者とする祭政一致の専制国家体制を樹立するという政治上の主義」を指すものとされており,この「政治上の主義」は,「本団体」の教義の枢要な一部を構成するとされているところ,被告の主張する共同目的が存在するためには,各構成員が,その目的を相互に認識し,役割を分担しながらその目的を達成又は保持しようとする結合関係が必要であるが,原告,b2教及びその他の構成員間には,共同の目的を有しているかの相互の認識すらないから,共同の目的は存しない,② 本団体の主宰者は,Bと特定されているが,「主宰」とは,一般に人々の上に立ち,又は中心となって物事を取り計らうことを意味し,主宰者の周囲の者が,主宰者を上位又は中心に据え,主宰者に対して物事の取り計らいを委託する相互の関係が成立していることが必要と解されるが,Bと原告構成員との間に,そのような相互の関係はもはや存在しておらず,主宰者の同一性は存しない,③ 構成員間の結合関係から構成員の同一性を見ると,上記のとおり,本団体は,その構成員とされる者である原告,b2教及びその他の構成員の間に意思の連絡(団体の本体(原告)のほかに,新たに別団体(b2教)を設立して相互に役割分担して共同目的を達成しようとしていること及びその相互の認識)を欠いていて,構成員間の結合関係がなく,その同一性も存しないから,本団体と本件観察処分を受けた団体との同一性は認められない。
以上により,団体特定事項のいずれにおいても,その同一性は認められないから,団体の同一性は存在しない。
ウ これに対し,被告は,同一性の判断基準をBの絶対的影響力の下,その構成員が,a教の教義を広め,これを実現するとの共同目的を達成するために活動しているという実態に同一性が認められるか否かによって判断すべきであり,このことからすれば,「主宰」の概念についても,Bの意思能力の有無は問題とならないなどと主張して,同一性を画する要件から外している。
しかし,上記主張は,被告が代表者・主宰者の同一性を基準に団体の同一性判断が行なわれると,そのような実態を有していないことが明白であり,同一性がないとの結論にならざるを得なくなるがために,この要件を実質的に外そうとしているのであって,被告は,本件観察処分以来,一貫して,同処分を継続する唯一にして最大の根拠である現実のBの存在が変容し,代表者・主宰者の同一性の基準を維持することが困難となったがために,要件自体の変更をするものである。
また,「主宰」の概念についても,上記イの一般的意味からすれば,主宰者の意思能力が問題とならないなどということはあり得ないし,被告の主張するとおり解したとしても,本件観察処分の事実認定中には,Bが団体の事務に従事することを要件とする代表者(対内的には団体を統轄し,対外的には団体を代表する権限を付与されている者)であることの認定及びBが自らの直接的な言動によって構成員への指示等を行う可能性があることの認定がされていて,意思能力と無関係とは言い切れないところ,本件観察処分時において公安審が認定した事実に基づいて「主宰者」を理解すべきとする被告の主張と明らかに矛盾している。
このように,被告の主張は,「主宰者」の概念を「絶対的影響力」に置き換え,たとえBその人の存在がなくても,観察処分の継続を永続的に可能とすることを企図しているというほかない。
以上から,被告の上記主張は理由がない。
(4) 本団体における政治上の主義の不存在
ア 被告は,本訴において両サリン事件が政治上の主義を推進する目的で敢行されたことを争うことについて,平成13年判決の既判力に抵触すると主張しているが,① 「政治上の主義の有無」は事実に対する評価であり,その評価にまで既判力は及ばないし,② また,団体規制法5条1項5号は「無差別大量殺人行為の及ぶ危険性」,すなわち,「政治上の主義若しくは施策を推進し,支持し,又はこれに反対する目的による殺人」の危険性を観察処分の期間更新の要件として規定し,同条1項1号から4号の要件にも係るものと解釈すべきであるから,「政治上の主義の存在」は,観察処分期間更新の要件にもなっており,既判力によって,主張が制限されることはないから,被告の上記主張は理由がない。
イ 被告は,Bを独裁者とする祭政一致の専制国家体制の樹立という政治上の主義の存在については,我が国をa教の教義に従う社会にする「日本シャンバラ化計画」によって裏付けようとしているが,① 日本シャンバラ化計画の概要は,  全国主要都市に支部を開設,  七つの主要都市に総本部道場を建設,  ロータス・ヴィレッジ(蓮華の村)構想というものであり,Bの説法等を見ても,支部・総本部・病院・学校など,瞑想に適した修行施設を全国に展開するという純粋に宗教的な計画に過ぎず,「専制国家体制の樹立」という目的は全く含まれていないし,これが本団体の政治上の主義であることを示す証拠等は一切示されていない,② 被告が指摘する「本団体の最終目的」が「衆生救済」であるという点も,Bは,「衆生救済」という言葉を説法で使ったことがなく,これをa教の最終目的とする教義解釈は誤りであるし,これが「世界シャンバラ化と同義」とする教義も存在しない,③ a教の教義において,日本シャンバラ化計画の先に世界シャンバラ化計画という構想はあったものの,日本シャンバラ化計画が世界シャンバラ化計画の具体的計画であるとの解釈は,被告独自のものにすぎず,以上からすれば,上記の被告の主張は,被告の主観的かつ恣意的な独自の教義解釈に基づくものにすぎず,理由がない。
ウ また,被告は,Bへの絶対的帰依を唯一の根拠として,本件の政治上の主義が,団体として意思決定がされたこと及び構成員に周知徹底されているなどと主張しているが,① 「帰依」とは,優れた者に帰順し,よりすがることを意味し,宗教は,その教祖や神や教義が,多かれ少なかれ信者に帰依を要求するものであるところ,信者においてその要求の受容姿勢は千差万別であるし,絶対的帰依と呼べるほどに到達するには相当な資質と条件が揃わなければならず,本団体のように大量の信者全員が一律に絶対的帰依を有していたとはいえないこと,② また,Bは,「帰依」の定義を聖なる流れに身を任せるという意味であり,帰依の対象は,三宝(仏・法・僧)であると説いてはいるものの,Bに対する絶対的帰依を要求はしていないし,その存在は被告の独自の教義解釈があるだけで,立証されていないことからすると,教祖と本団体を媒介するとされる絶対的帰依自体が存在し得ないことになるから,教祖の意思が個々の信者にそのままコピーされ,教祖の意思がすなわち団体の意思であるとする被告の上記主張は,理由がない。
エ 以上からすれば,被告が,政治上の主義が本団体において意思決定されたとか,本団体が現在に至るまで政治上の主義を保持していると主張している点も理由がないこととなる。
8  争点8(団体規制法5条1項1号該当性)
(被告の主張の要旨)
(1) Bが無差別大量殺人行為の首謀者であること
ア a教は,前記7(4)で主張した政治上の主義の下,サリン等の化学兵器やその撒布手法の開発・製造に努めて教団の武装化を強力に推進し,① その武装化の一環として,化学兵器としてのサリンの効果を試し,その使用方法に習熟するとともに,長野県松本市の支部道場建設を巡る裁判において不利な裁判をするおそれがある長野地方裁判所松本支部の裁判官及び反対運動を展開する住民らは上記の政治上の主義を推進する上で障害となるとして,これらを排除する目的で,松本サリン事件を敢行し,② さらに,その後,真近に迫っていた目黒区公証役場事務長拉致事件の,警察の強制捜査をa教が受けることになれば,その政治上の主義を推進する上で,大きな障害となるとの危惧感から,首都中心部で大混乱を生じさせて強制捜査を回避するなどして,これを排除する目的で,地下鉄サリン事件を敢行したものである。
したがって,両サリン事件は,政治上の主義を推進する目的を有しており,無差別大量殺人行為に該当する。
イ 首謀者とは,無差別大量殺人行為そのものの計画,遂行について,組織集団での最高の主導的役割を担う者を意味する。
しかるところ,a教の教義はBに対する絶対的帰依を構成員に要求し,Bが終始a教を統轄,主導してきた。そして,Bは,松本サリン事件では,サリンを撒布して裁判官や付近住民など不特定かつ多数の者を殺害することを決定した上,A7ほかa教の構成員らに対し,その実行及び役割分担等を指示した。また,Bは,地下鉄サリン事件では,A7の提案を受けて,サリンを地下鉄電車内で撒布して不特定かつ多数の乗客らを殺害することを決定し,A7に犯行計画の総指揮を指示するとともに,実行役などの人選を行う一方,a教役員のA8にサリンの生成を指示した。このようにA7に指揮された実行役のa教構成員らは,両サリン事件において,Bの指示によるものであると認識しつつ,サリンを撒布した。
したがって,Bは両サリン事件の首謀者に該当する。
ウ これに対し,原告は,a教が無差別大量殺人行為を行った団体に該当せず,両サリン事件は,政治目的を持って敢行された犯行ではないとし,そうである以上,「当該無差別大量殺人行為の首謀者」も存在せず,それをBと断定することはできないなどと主張する。
しかし,この点に関する原告の主張は上記ア及びイに照らせば,理由がない。
(2) 首謀者であるBが現在も本団体の活動に影響力を有していること
ア 「影響力を有している」とは,団体規制法の立法趣旨からすると,特定の者の言動が,団体の活動の方向性を左右する力あるいは内容に変化を生じさせる力を有していることをいい,ここにいう特定の者の言動には,現時点の直接的な言動のみならず,現時点で本人によって否定されていない過去の言動も含まれると解する。
イ(ア) 本団体の教義は,シヴァ神を主神とし,教祖・創始者であるBがシヴァ神の化身であるとして,これに対する絶対的な帰依を要求するものであり,本団体は,その教義に従う者により構成されており,絶対者であるBの存在はその存立の基盤と認められる。そして,本団体におけるBの影響力についてみると,両サリン事件を始めとする事件が常軌を逸するほど重大なものである上,その準備には多大な資金及び労力等が投下され,かなりの組織力と時間を要したとうかがわれるにもかかわらず,これを秘密裏に実行できたことからすると,Bの本団体に対する影響力は非常に大きく,かつ深い浸透力を有していると認められる。
そうすると,Bの本団体に対する影響力は容易に払拭されることはない。
(イ) 現に,Bが身柄拘束された後の平成11年3月頃から平成12年6月頃までの間,ロシア人信徒であるD(以下「D」という。)が,自動小銃,手りゅう弾,爆薬等を準備し,勾留中のBの奪還を目的として我が国の複数の場所で連続爆弾テロの実行を計画するという事件(以下「D事件」という。)が発生した。ロシア連邦保安庁が,平成12年7月,Dを逮捕したため,上記計画は実現に至らなかったものの,Dの活動資金は,その当時,b教の役員であり構成員でもあったA9(以下「A9」という。)から団体の事業資金として提供されたものであった。
このように,同事件は,B及びその教義に絶対的に帰依すること自体が,無差別大量殺人行為に直結し得るものであることを如実に表しており,また,Bの信徒に対する絶対的影響力が,Bが身柄拘束されているかどうかに関わりがないものであることも端的に示している。
ウ このように,Bの本団体に対する影響力は容易に払拭されるものではないとうかがわれるところ,現に本団体においては,第2回更新決定後も,① Bを組織の頂点に位置付け,Bが拘置されている状況下でも,B及びBの説く教義への絶対的な帰依を培い,Bの意思を実現することをその根本的な目的としていること,② 構成員に対し,Bへの絶対的な帰依心を扶植することを目的とし,マインドコントロールの手法を用いた修行・儀式を受けさせていること,③ 構成員の言動にもBに対する深い帰依やBの説く教義に従う意思を示すものが随所に認められること,④ 構成員らが,教義及び位階制度など本団体の運営の根本部分はBだけしか変えられないとの認識を有していること,⑤ Bの言動に基づき,その意思を推し量りながら活動方針や体制に関する重要事項を決定していることが認められる。
また,本件更新決定後においても,本団体が,⑥ Bの説く危険な教義である「タントラ・ヴァジラヤーナ」を含むa教の教義を継承することをそのホームページ上で公言していること,⑦ 本団体の多数の施設において,Bの肖像写真が掲示されていること,⑧ 「チェンバー」と称するBの意思に基づく宗教的実践として実施されてきた修行用設備を復活させていることも認められるのである。
以上に照らせば,Bは,現在も本団体の活動に依然として影響力を有している。
エ(ア) これに対し,原告は,団体規制法5条1項1号の「影響力を有している」とは,首謀者が再び無差別大量殺人行為の実行を命じ,団体の構成員らにその準備行為に着手させるに足りる影響力を有していることと限定解釈すべきであるし,立法府の公式見解によれば,「無差別大量殺人行為の首謀者」から影響力を受けていても,それが「平和的影響力」であれば,同号には該当しないから,このような限定解釈が正当であると主張している。
しかし,同号の文理解釈を超えて殊更これを限定して解釈することは許されないし,団体規制法の定める観察処分等は何ら憲法等の規定に抵触するものではないから,そのような合憲限定解釈を行うべき前提を欠いて,上記のような限定解釈をすることに合理性は認められない。
また,原告のいう「平和的影響力」なる概念も立法府の公式見解として述べられたものではなく,団体規制法5条1項1号の解釈におよそ影響しない。
よって,上記の原告の主張は理由がない。
(イ) 原告は,上記限定解釈を前提として,Bが原告の活動に対して有する影響力は「平和的影響力」であり,団体規制法5条1項1号の「影響力」には該当しないなどと主張している。
しかし,団体規制法5条1項1号の「影響力を有している」との要件については,その影響力の内容の如何を問わず,特定の者が,団体の活動の方向性を左右する力あるいは内容に変化を生じさせる力を有していることをいうから,原告の上記主張は,原告自らBが本団体の活動に対し影響力を有していることを自認するものということができるし,以下の各主張に照らせば,Bの本団体に対する影響力は「平和的影響力」とはいえず,原告の上記主張は理由がない。
a Bは,両サリン事件等の刑事事件の公判において,自己の責任を終始否定して何ら反省の態度を示しておらず,Bが無差別大量殺人行為の首謀者としての考えを全く改めていないことからすれば,Bが本団体に対し「平和的影響力」を有するにすぎないことを裏付ける事情などは存在しない。
b 原告の上記主張は,破防法弁明手続における違法行為又は破壊活動の禁止や危険な教義の封印に関するBの陳述に依拠したものであるが,破防法の定める処分等の規制措置を回避する意図をもって体裁を整えるためにされたものにすぎず,その真意に基づく陳述とは認められないから,原告の主張を裏付けるものとはいえない。
c 実際にも,本団体は,Bの上記陳述の後も,表面的・形式的には教団改革などと称して,無差別大量殺人を行わないことや,法令を遵守する旨を定め,危険とされる教義を破棄したと発表するなどしているものの,その実態は,従前と同様にBを絶対的帰依の対象とし,Bの説く危険性を有するa教の教義を広め,これを実現するために活動を継続していることからすれば,本団体は,Bの上記陳述を破防法の規制措置を回避するための虚言として,依然としてBの真意に従って活動しているものと推認される。
d この他,原告は,① 教義の危険性はBの説く「タントラ・ヴァジラヤーナ」にはなく,「五仏の法則」のみに存在し,これは完全に破棄し,② Bが,破防法弁明手続において封印の対象としたのは「タントラ・ヴァジラヤーナ」ではなく,「ヴァジラヤーナコース教学システム教本」,カセットテープ及びビデオテープ,そして「五仏の法則」であり,「タントラ・ヴァジラヤーナ」の封印が全く実践されていないとの指摘は失当であり,さらには,③ 危険と誤解を招く教義は,完全に破棄されており,全く使用されていないと主張する。
しかし,上記①については,Bの説く「タントラ・ヴァジラヤーナ」は,宗教一般におけるタントラ・ヴァジラヤーナの概念とは異なり,危険な教義である「五仏の法則」と不可分一体をなす危険な教義であるから,原告の主張は理由がないし,また,②については,破防法弁明手続のBの陳述内容等に照らせば,Bが封印の対象としたのは,「タントラ・ヴァジラヤーナ」を意味するのが相当であるところ,これは前記のとおり,危険な教義である「五仏の法則」と不可分一体の教義であるから,これを一貫して保持している本団体に対し上記指摘をしても失当とはいえず,③についても,本団体は,「五仏の法則」を封印ないし破棄するどころか,「タントラ・ヴァジラヤーナ」とともに,これを教学に積極的に活用するなどして,その内容を構成員に指導,浸透させ続けていることからすれば,原告の上記主張はいずれも理由がない。
(3) 以上のとおり,無差別大量殺人行為(両サリン事件)の首謀者であるBが,現在も本団体の活動に依然として影響力を有しており,本団体は団体規制法5条1項1号に該当する。
(原告の主張の要旨)
(1) 当該無差別大量殺人行為の首謀者
両サリン事件が「B1を独裁者とする祭政一致の専制国家体制を樹立するという政治上の主義を推進する目的」で行われたという点については,刑事裁判において否定されている。
したがって,「B1を独裁者とする祭政一致の専制国家体制を樹立するという政治上の主義を推進する目的」という動機すら,一連の刑事裁判において否定されていることからすれば,無差別大量殺人行為の存在自体も否定されているということができ,当該無差別大量殺人行為の「首謀者」も存在しないし,それがBであると断定することもできない。
(2) 原告がBから影響力を受けることがないこと等
ア 被告は,団体規制法5条1項1号の「影響力を有している」とは,特定の者の言動が,団体の活動の方向性を左右する力あるいは内容に変化を生じさせる力を有していることをいい,ここにいう特定の者の言動には,現時点における直接的な言動のみならず,現時点で本人によって否定されていない過去の言動も含まれると主張している。
しかし,同号における「影響力」は,特定の者の言動が,団体の活動の方向性を左右する力あるいは内容に変化を生じさせる力を有していれば,何でも当てはまるというわけではなく,自己の影響力を利用して当該団体の役職員及び構成員に対し,平和的な活動を行うべき旨を指導するなどの「平和的影響力」の概念が,団体規制法立法時の国の公式見解に基づくものであるから,同号にいう「影響力」とは,この「平和的影響力」の対極にある再び無差別大量殺人行為の実行を命じ,団体の構成員らにその準備行為に着手させるに足りる影響力に限定して解釈すべきである
イ(ア) 仮に「首謀者」がBであるとしても,本件更新決定時において,本団体の活動を把握して,団体の活動に対する何らかの言動をすることがまったくできない状態にあるから,被告の主張するように,Bの言動が,団体の活動の方向性を左右することも内容に変化を生じさせることもありえず,「影響力」は認められない。
(イ) 上記アの「影響力」の定義から,本件をみても,原告の教義では「不殺生」を説いて,全ての構成員の行動規範ともいえる基本的な戒律として徹底していることからすれば,たとえ,Bが無差別大量殺人行為を肯定し,実行すべきとの何らかの言動を行ったとしても,これに従うことはないし,従わざるをえない状況もないから,Bの「影響力」は認められない。
また,原告は,被告が殺人を暗示的に勧める教義としている「五仏の法則」を採用しておらず,「タントラ・ヴァジラヤーナ」や「ポワ」等の一般に誤解されやすい宗教上の用語や概念等については,事件や犯罪の肯定に結び付くことがないことを明示した語義やその解釈を規定しており,Bの言動に従うことにはならないし,その他運営面においても,一人ないし少数の指導者の能力・判断に従属する上意下達式の組織形態を見直し,多面的な判断や相互のチェック機能が働くよう,徹底した合議による集団指導体制である合同会議を採用していることからも,原告がBの言動に従い,無差別大量殺人行為に及ぶことはない。
そして,実際に,本件更新決定後に原告の構成員が無差別大量殺人行為に及ぶ危険性を推認させるような事実はまったく確認されていないことからも,原告に危険な影響力は及んでいない。
(ウ) 被告は,本団体の教義の根幹は衆生の救済にあるが,武力によって我が国の現行国家体制を破壊し,また,悪業を積む者を殺害することもその救済の実践であると説き,Bが独裁者として統治する専制国家体制の樹立することは,救済のための理想郷の建設を意味していたなどとして,Bの説いた教義が両サリン事件の背景にあると主張している。
この被告の主張に理由はないが,仮に被告の主張どおりであったとしても,Bの最後の言葉は,破防法弁明手続時のものであり,上記教義はBによって,現時点で本人によって否定された過去の言動となり,何ら「影響力」とは関係がない。
ウ 仮に,Bが原告に影響力を及ばすことがあったとしても,① Bは過去における言動(破防法弁明手続)において破壊活動を厳禁しており,② 原告構成員が日常的に耳目に触れる教義(Bの説法)は,徹底した不殺生を説くものばかりであり,③ Bは,危険な教義と誤解を招いた「タントラ・ヴァジラヤーナ」における「五仏の法則」を封印して,当該教義を使用禁止とし,これらはいずれも,現時点で本人によって否定されていない過去の言動であり,これを被告が主張する「影響力」の定義に従えば,団体の活動の方向性を左右する力あるいは内容に変化を生じさせる力を有しており,Bの原告に対する影響力は,無差別大量殺人行為を防止する方向で作用する平和的影響力となる。
これに対し,被告は,原告構成員が破防法弁明手続におけるBの陳述が虚偽であるという前提で活動していると主張し,Bの有する平和的影響力の根拠を否定しようとしている。
しかし,この主張は,これまで被告が一貫して,本団体の構成員は,Bの判断・指示には全て絶対的に従うと主張し続けてきたことと矛盾しており,Bの破防法弁明手続における陳述のみを虚偽として,それについてだけ従わないというのは,一貫性がないし,逆に当該陳述を同人の真正な意思であると捉えて,原告はその平和的影響力に基づいた実践をしているという原告の主張は,論理的にも実態的にも整合性があるから,被告の上記主張は理由がない。
エ その他,被告は,Bがその活動に絶対的な影響力を有していることの根拠とする各事実を指摘しているが,これがあるとしても,Bは不殺生を勧めているから,むしろ無差別大量殺人行為を防止する影響力が存在することになるし,構成員もこれに帰依しようとするから,危険な影響力はない。また,いわゆるD事件は,Bが破防法弁明手続において奪還テロを明確に禁じた言動をしていたことと明確に反し,帰依を表しているものと評価することはできない。
よって,被告のその他の主張も理由がない。
9  争点9(団体規制法5条1項2号及び3号該当性)
(被告の主張の要旨)
(1) 団体規制法5条1項2号該当性
ア 団体規制法5条1項2号の「構成員」とは,特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体への加入者を指し,「構成員」と認められるためには,明示的な加入行為の存在は必ずしも必要ではなく,当該団体から加入者として認知されていれば足りる。
そして,団体から加入者として認知されているか否かは,虚偽の報告等といった手段を介して容易に団体規制法の規制を回避する途を与え,同法1条の趣旨・目的を実現できなくなる事態を防止するため,当該団体がその者を構成員として報告しているかどうか,当該団体の構成員名簿等に記載されているかどうかといった形式的・表面的な事由によって判断すべきではなく,実質的な見地からその認知の有無を判断すべきである。
本件に即していえば,本団体がいわゆるa教であることを認識しながら,本団体の管理下の施設に出入りするなどして,本団体の構成員から指導を受けてa教の教義を学び,これを修行等で実践している者などは,構成員名簿等に登載されているか否かを問わず,本団体の加入者として認知された構成員というべきである。
これに対し,原告は,原告構成員との間に「構成員」相互の結合性(特定の共同目的を共に知悉し,相協力し,達成しようとする結合性)が必要であるなどという独自の団体概念を前提として,構成員相互の意思の連絡を重視して「構成員」該当性を主張しているが,上記7で主張したとおり,その団体概念自体が誤りであるから,原告の主張は理由がない。
イ まず,団体規制法5条1項2号にいう「無差別大量殺人行為に関与した者」とは,無差別大量殺人行為を実行し,あるいは教唆し又は幇助した者をいうところ,これをA10,A11,E及びA12の4名についてみると,A10ら4名は,いずれも「無差別大量殺人行為」に当たる両サリン事件のいずれか又は双方に関与しているから,これに該当する。
また,上記アから,A10ら4名が「構成員」に該当するか否かについて見ると,A10は,平成15年4月5日付けで本団体への再度の入会手続を行っており,本団体も,同年5月15日付けの公安調査庁長官宛ての第14回報告書以降,A10を在家の構成員として報告するなどしており,原告を含む本団体から一貫して本団体の構成員として扱われ,原告も,A10がその構成員であることを認めている。
次に,A11ら3名について見ると,① 同人らは,いずれも自らの刑事裁判の公判において,依然として本団体を脱退する旨の意思を表明せず,本団体の構成員であるとの意思を示している上,本団体からも除名等の処分を受けていないこと,② 本団体も公安調査庁長官に対して提出した報告書において,平成16年2月まではA11ら3名を構成員であると報告していること,③ 本団体を構成するc団体も,A11ら3名に現金等を差し入れたり,同人らと構成員との面会日程を調整したりするなどの裁判支援活動を行っていること,④ 本団体の構成員は,A11ら3名を賞賛し,面会を奨励するような発言をし,現にA11ら3名に対する面会を多数回にわたり繰り返すなどしていることなどの事実が認められ,これらの事実を総合すれば,本団体は,A11ら3名を加入者として認知しており,A11ら3名が現在も本団体の構成員に該当する。
(2) 団体規制法5条1項3号該当性
ア 団体規制法5条1項3号の「役員」とは,「団体の意思決定に関与し得る者であって,当該団体の事務に従事するものをいう。」と規定されており,「当該団体の事務に従事する」とは,広く当該団体のためにする行為全般のいずれかに携わることをいい,団体規制法4条2項にいう「団体」も同項において特段の限定がされていないことからすると,当該団体のためにする行為の態様は当該団体の性質に応じて多様なものがあり得ると解すべきである。
また,当該団体の「役員」が,何らかの事情により,現に当該団体の意思決定に関与せず,又は割り当てられた事務を行わないことがあっても,このことから当然にその者の「役員」性が消失することにはならず,殊に決定権限が強い者については,当該団体の基本的な方針を過去に示し,その影響の下に個別具体的な事務処理を他の構成員に行わせるなどの一定の関与が認められる場合などは,その者は依然として「役員」に該当すると解するのが相当である。
イ Cは,両サリン事件当時,「尊師」に次ぐ位階である「正大師」の位階にあり,いわゆる「省庁制」の下では,当時数万人の構成員を擁するロシア支部を統括する「ロシア支部大臣」として活動し,また,両サリン事件直後には,Bから全権を委任される形で「a教緊急対策本部」の本部長として活動していて,本団体の意思決定に関与し得る立場にあり,本団体の「役員」に該当する。
また,Cは,本件更新決定時に,本団体の重要な一部を構成するb2教の代表役員として活動しており,本団体の意思決定に関与し,かつ,事務に従事していたから,本件更新決定時点でも本団体の「役員」に該当する。
(3) 原告の主張に対する反論
これに対し,原告は,団体規制法5条1項2号及び3号に該当するためには,実質的に「当該団体に無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があること」が必要であると主張するが,このような限定解釈は誤りであるから,原告の主張は理由がない。
また,原告は,上記の限定解釈を前提に,A11ら3名は構成員ではないし,Cも,平成19年3月に原告を退会していて,原告の役員に就任しておらず,b2教の役員であることをもって,団体規制法5条1項3号の「役員」に該当するということはできないなどと主張しているが,これも上記(1)及び(2)に鑑みれば,理由がない。
(原告の主張の要旨)
(1) 団体規制法5条1項2号について
ア 被告は,団体規制法5条1項2号の「役職員または構成員」とは,特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体への加入者を指し,「役職員または構成員」と認められるためには,当該団体から加入者として認知されていれば足りるなどと主張しているが,「役職員または構成員」に該当するには,団体への加入意思があり,構成員としての権利義務関係が存在し,団体との継続的結合関係が存在することが必要である。
また,団体規制法5条1項各号には,当該団体に無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実の存在が必要と解されているから,この要件も満たす必要がある。
そうすると,団体規制法5条1項2号にいう「役職員または構成員」とは,Bの指示若しくは影響力により,又はそれとは無関係に,無差別大量殺人行為の準備行為に着手し得る権限ないし影響力を伴った地位を有することと解すべきである。
イ 上記アから,A11,E及びA12についてみると,この3名は,そもそも原告への入会手続を取っておらず,構成員としての権利義務関係も,原告との継続的結合関係も存在しないから,2号の「役職員または構成員」に該当しない。
これに対し,被告は,本団体の一部であるc団体が,この3名に対する裁判等支援活動を行っていることから,この3名は「構成員」に該当すると主張している。しかし,c団体の代表者は本団体の構成員ではないから,本団体の一部となり得ることはありえないから,被告の主張は理由がない。
他方,A10は服役後,原告に在家構成員として入会したが,在家構成員は,教団運営に関わりえない原告組織の末端の者であり,構成員としての権利義務関係は希薄である。
また,同人は事件関与者とはいえ,事件の目的や計画を認識することもなく言われるままに動いた者にすぎず,さらに,入会時には違法行為について十分に反省している。
そうすると,A10は,再びBの指示により,又はその指示とは無関係に無差別大量殺人の準備行為に着手し得る権限ないし影響力を伴った地位を有するという実質的要件は満たしておらず,「役職員または構成員」に該当しない。
(2) 団体規制法5条1項3号について
ア 団体規制法5条1項3号にいう「役員」も,上記(1)アで主張したことからすれば,再びB(B1)の指示により,又はその指示とは無関係に無差別大量殺人の準備行為に着手し得る権限ないし影響力を伴った地位を有することが必要であると解すべきである。
イ 本件更新決定は,Cが「役員」に該当するとしているが,Cは,平成19年3月に原告を退会しており,原告の役員どころか構成員ですらなく,原告においてその運営・監督を受け持っていることはなく,3号の「役員」に該当しない。
このように,原告と別団体の役員の存在を指摘して,原告が3号に該当するとする主張は,法の拡張解釈であり,団体規制法2条に違反している。
(3) 小括
以上のとおり,現在の原告には,団体規制法5条1項2号及び同3号要件に該当する事実は存在しない
10  争点10(団体規制法5条1項4号該当性)
(被告の主張の要旨)
(1) 本団体の教義が殺人を「暗示的に勧める綱領」に該当すること
ア 団体規制法5条1項4号が観察処分ないし期間更新決定の要件とされている趣旨は,過去に無差別大量殺人行為を行った団体が,当該団体の構成員をして団体の活動として無差別大量殺人行為を行うよりどころとなり得る「綱領」を保持している場合には,その属性として危険な要素を保持していると認められることにある。
したがって,同号の「綱領」とは,文書化されているか否かを問わず,また,「綱領」という名称が付与されているか否かにかかわらず,実質的にその内容が,団体の立場・目的・計画・方針又は運動の順序・規範などを要約し,当該団体の各構成員にそれを伝達することができるものであれば足りる。
そうすると,宗教団体における教義についても,当該団体の方針等となるべき事項を明確に構成員に示し,かつ,構成員の行動の規範となっている場合には,その名称,形式のいかんにかかわらず,当該教義は当然に「綱領」に該当する。
イ(ア) a教の教義の要旨は,「主神をシヴァ神として崇拝し,創始者であるB1の説く教えを根本とし,すべての生き物を輪廻の苦しみから救済して,絶対自由・絶対幸福・絶対歓喜の世界(マハー・ニルヴァーナ,涅槃の境地)に導くことを最終の目的として,シヴァ神の化身であるB1に対する絶対的な浄信と帰依を培った上,自己の解脱・悟りに到達する道である小乗(ヒナヤーナ)を修めるとともに,衆生の救済を主眼とする道である大乗(マハーヤーナ)及び衆生救済の最速の道である秘密金剛乗(タントラ・ヴァジラヤーナ)の各修行を実践する。」(以下「教義要旨」という。)というものである。この教義は,本団体の最終目的である「衆生救済」及びこれを実現するための方針として,徹底した布教活動による教団の拡大とBが説く修行の実践による3万人の解脱(成就)者の輩出による「世界シャンバラ化」,これを実現するための具体的計画としての「日本シャンバラ化計画」をそれぞれ含み,これらがBの説法等を通じて本団体の構成員に対して深く浸透しており,本団体の方針としても明示されているから,団体規制法5条1項4号にいう「綱領」に該当する。
(イ) また,上記教義は,① 教祖であるBに絶対的に帰依すること,② Bの説法によって,「日本シャンバラ化計画」を実現するため最も早い道で解脱することが必要であり,「タントラ・ヴァジラヤーナ」を実践すれば必ずや最終解脱することができること,③ この「タントラ・ヴァジラヤーナ」(a教の教義である秘密金剛乗)の実践(修行)の特色は,悪業をもって善業に転換するという理論に基づき,たとえ自己は悪業を積むことになっても他者に対して善業となるならば,それを最高の実践課題として実践するという点にあり,その際の具体的規範として,「アクショーブヤの法則」(悪業を積んでいる魂は早く命を絶つべきであるとするもの)や「アモーガシッディの法則」(真理の実践を行う者にとっては結果が第一であり,結果のためには手段を選ばないとするもの)など,目的のためには手段を選ばず,Bの指示があれば殺人を行うことも正当化される内容を含む「五仏の法則」が重要とされていることなどの危険な教義であり,これは殺人を「暗示的に勧める」内容に該当するといえる。
そして,a教の構成員らは,実際に政治上の主義を推進し,その最終目的である衆生救済を実現するため,「マハームドラーの修行」(「タントラ・ヴァジラヤーナ」に関する修行方法として,弟子である構成員が自己の意思を捨て,絶対的存在であるBが課した課題・試練を乗り越えることをいう。)の名の下に,「タントラ・ヴァジラヤーナ」及びその具体的規範である「五仏の法則」にのっとって,両サリン事件などの重大凶悪事件を次々に敢行したことからすると,a教の構成員らは,Bの説く殺人をも勧める危険な教義を行動規範として受け入れ,実際にこの教義に従って行動したと認められる。
ウ 以上からすると,Bの説く教義が団体規制法5条1項4号所定の「綱領」に該当し,そしてこの「綱領」が,殺人を勧める内容を含むものであると認められる。
エ(ア) 原告は,宗教団体における教義は,政党・労働組合などのいわゆる「綱領」とは全く性格が異なり,「綱領」には該当しない旨主張する。
しかし,団体規制法5条1項4号の「綱領」該当性については,名称の如何を問わず,実質的観点から判断すべきものであるから,宗教団体の教義であれば一般的に「綱領」に該当しないとの原告の主張は理由がない。
(イ) また,原告は,本団体の教義は,大小2000から成る膨大な説法群であって,団体の立場・目的・計画・方針等を要約したものでないことはもとより,このような内容も読み取ることはできず,当該団体の各構成員に伝達できるものでもないから,「綱領」には該当しない旨主張する。
しかし,Bの具体的な説法等の内容を見ると,その要旨が,教義要旨と同内容であることは明瞭であり,これが正に本団体の教義であって,そこには本団体の立場,目的・計画・方針などが要約して示されているし,「綱領」の該当性を判断する際に,原告の主張するような大小2000からなる膨大な説法群が要約されたものであるかどうかや,その形式的な長短は教義が「綱領」に該当することを否定する根拠とはならないから,原告の上記主張は理由がない。
(ウ) さらに,原告は,a教の教義における「タントラ・ヴァジラヤーナ」の内容は何ら危険なものではないから,殺人を勧める綱領は存在していなかった旨主張する。
しかし,本団体がa教と名乗っていた当時,Bの説いた「タントラ・ヴァジラヤーナ」が殺人を勧める内容の危険なものであったことは上記のとおりであるし,現にこれに従って両サリン事件などが敢行されたことに照らしても,「タントラ・ヴァジラヤーナ」が構成員の行動規範たる綱領として,殺人を勧める内容のものであったと認められる。
(2) 本団体は現在も殺人を「暗示的に勧める綱領」を保持していること
ア 原告は,第2回更新決定後,現在に至るまで,幹部構成員の説法及び機関誌において,構成員に対し,① 「衆生救済」の実践が本団体の活動の目的であること,また,② 「衆生救済」を実現するため,教団の拡大とBが説く多数の解脱者を輩出することの重要性や,③ 「日本シャンバラ化計画」の実現の必要性を強調する指導を行っていて,これらの指導が在家の構成員に至るまで浸透しており,本団体の教義が現在においても団体規制法5条1項4号にいう「綱領」に該当すると認められる。
イ 原告は,第2回更新決定後も,現在に至るまで,幹部構成員が,構成員に対し,① 「衆生救済」のためにはBに従うしかないとして,Bへの絶対的帰依の徹底を強く説いていること,② 「タントラ・ヴァジラヤーナ」の実践や「日本シャンバラ化計画」等に関するBの説法を多数収録した教材を使用して指導したり,B及び同人の説く教義の教学(実践)の強化を図る修行月間等を連続して設定し,「マハームドラーの修行」を含む「タントラ・ヴァジラヤーナ」を実践するための修行を行っていることが認められる。
また,幹部構成員は,両サリン事件を始めとする一連の凶悪重大事件について,その罪を悔悟するどころか,「衆生救済」の実現のため「タントラ・ヴァジラヤーナ」の実践として正しいものであったなどとこれを肯定する指導を行い,そのような認識が一般の構成員にも深く浸透している。
ウ このように,本団体の構成員らが過去に敢行した両サリン事件等の凶悪重大事件を,Bの説く教義とその最終目的たる「衆生救済」の名の下に,正当化していることからすれば,Bの説く教義が団体規制法5条1項4号所定の「綱領」に該当し,この「綱領」が,殺人を勧める内容を含むものと認められる。
エ(ア) 原告は,第2回更新決定以後,① 両サリン事件等が「タントラ・ヴァジラヤーナ」の実践として正しいものであったとする指導が行われている事実等はなく,②   本団体が「衆生救済」を目的とし,その実現のため「日本シャンバラ化計画」等を保持していることや,  Bが説いた「タントラ・ヴァジラヤーナ」などの宗教体系を継承して実践する旨公言していることは,いずれも殺人を「暗示的に勧める綱領」とは関連性がないなどと主張している。
しかし,上記①については,公安調査官作成の調査書等によれば,原告は,説法,機関誌等を通じて,両サリン事件を始めとする一連の重大事件も,「タントラ・ヴァジラヤーナ」の実践として正しいものであったとする指導を行い,それが一般の構成員にも浸透しているなどの事実が認められるから(なお,原告は上記証拠の中に,供述者の氏名を明らかにしていない証拠があるとして証拠の信用性を争う主張もしているが,氏名を公表できないことに合理的事情が認められるから,理由がない。),上記①の主張には理由がないし,上記②についても,「タントラ・ヴァジラヤーナ」及びこれと不可分一体をなす「五仏の法則」の危険性は上記(1)のとおりであり,本団体は,上記イのとおり,これら危険な教義を現在に至るまで,説法や機関誌等を通じて本団体の構成員らに指導し,浸透させ,これを実践する際の具体的な規範となる「五仏の法則」と不可分一体をなすものであるところ,これが,危険な教義であることは上記(1)のとおりであり,本団体は「タントラ・ヴァジラヤーナ」を現在に至るまで教義とする旨公言しているし,「日本シャンバラ化計画」も危険な内容を有することは前記7(4)のとおりであるから,この点に関する原告の主張には理由がない。
(イ) 原告は,破防法弁明手続におけるBの危険な教義を封印する旨の陳述を根拠に,本団体が第2回更新決定後には殺人を「暗示的に勧める綱領」を保持していないかのような主張をしているが,前記8(2)エで指摘したように,Bの上記陳述は虚偽であるから,原告の主張はその前提を欠いており,理由がない。
(ウ) 原告は,被告が本団体の教義を主観的,恣意的に解釈しているかのように主張する。
しかし,被告は,本団体がいかなる内容の教義を有し,それが危険性を有するかどうかを証拠から認定できる事実に基づき明らかにしているのであって,当該教義につき,何ら主観的,恣意的な解釈をしていないから,原告の上記主張も理由がない。
(原告の主張の要旨)
(1) 教義が「綱領」に該当しないこと
ア 被告は,「綱領」を団体の立場・目的・計画・方針又は運動の順序・規範などを要約し,当該団体の各構成員に伝達できるものと定義し,これによれば,「綱領」には,① 「団体の立場・目的・計画・方針又は運動の順序・規範などを要約し」に当たる要約性と,② 「当該団体の各構成員に伝達できるもの」に当たる伝達性(又は明示性)の二つの要件が必要となる。
イ 上記①からすると,「綱領」は,要点を取りまとめて短く表現されたものでなければならず,また,この要約性は,団体規制法5条1項4号の「綱領」の定義の一部であり,曖昧な拡張解釈は同法2条から許されないところ,被告が主張する原告の「綱領」とは,大小2000からなる膨大な説法群であり,要点を取りまとめて短く表現されたものということはできない。
これに対し,被告は,教義要旨をもって,本団体の立場・目的・計画・方針などが要約して示されていると主張しているが,これは,公安調査庁が,膨大な教義を要約して教義要旨としたものにすぎず,実際には原告の教義とは掛け離れており,原告の教義の要旨とはいい得ないものであるし,他方で,被告は教義全体が「綱領」となるとも主張しており,教義要旨を「綱領」とする主張と矛盾している。
ウ また,上記②からすると,この「綱領」は,第2回更新決定以降の期間において,全ての構成員に伝達されなければならないところ,被告は,教義の伝達手段として,説法,機関誌,構成員向けDVDを挙げているが,本団体の構成員のうち,原告やb2教を離れた約500名と日本国外の約200名については,既に団体活動を離れており,上記伝達手段によって,本団体の教義が伝達されることはなく,少なくともこの約700名の者に対しては本団体の教義は明示されておらず,伝達性(明示性)の要件を欠くから,本団体の教義は「綱領」といい得ない。
エ 以上のとおり,原告の教義は,要約性も明示性も欠いているので,団体規制法5条1項4号の「綱領」に該当しない。
なお,むしろ,原告が主張するように,原告の「宗教理念」と「コンプライアンス規程」は,文書化されている上,「綱領」という名称は付与されていないものの,実質的に団体の立場・目的・計画・方針・規範等が要約されており,原告の各構成員に内部通知やインターネット等を通じて様々な形で伝達されているから,原告の「綱領」に該当するというべきである。
(2) 原告は殺人を「暗示的に勧める綱領」を保持したことがないこと
ア 被告は,a教時代に殺人を暗示的に勧める危険な教義が存在し,原告においてもその教義は変更されておらず,現在も本団体が危険な教義を保持していると主張している。
しかし,① 原告には様々な教材・書籍(「p1(改訂版)」,「改訂版 特別教学システム教本」,月刊誌「p2」,「p3」,「p4」及び「p5」)があるところ,これらによれば,不殺生を説く教義が単に繰り返し説かれているにとどまらず,実際に,ハエ,蚊,ゴキブリさえも殺さず,魚釣りなども決して行わない等という不殺生の実践がされており,原告各構成員に徹底的に浸透していて活動の規範となっていること,② また,両サリン事件の発生当時,実際に事件に関与した信者を除くほとんど全ての信者らは不殺生の教義を実践しており,信者が殺人を勧める教義を是認し,活動の規範としていなかったこと,③ Bの説く教義中に,被告が指摘する殺人を暗示的に勧めると解される部分は,誤解を生じさせる可能性があるとして,教材として一切採用していないことからすれば,仮に原告の教義が「綱領」に該当するとしても,不殺生を勧める教義であるから,殺人を暗示的に勧める綱領は原告に存在しない。
イ これに対し,被告は,本団体の教義が殺人を暗示的に勧める綱領に該当することの根拠として,「日本シャンバラ化計画」,「タントラ・ヴァジラヤーナ」,「五仏の法則」などの教義の危険性を指摘しているが,① 「シャンバラ化」という言葉は,聖なる瞑想修行を行なう場所を沢山作ることを意味するにすぎないし,② 「五仏の法則」についても,原告が危険性を指摘する教本は,いずれも既に回収しており,少なくとも第2回更新決定以降は,原告各構成員の耳目に触れることはなく,③ 「タントラ・ヴァジラヤーナ」に関し,第2回更新決定以降に原告が使用している教材は,「五仏の法則」を除いたものに限られて,不殺生の教義を浸透させるものとなっているから,これらが殺人を暗示的に勧めるものとは認められず,むしろ平和的作用を生じさせるものとなっているから,被告の指摘は理由がない。
その他,被告が提出するA13,A14,E,A15及びA16らの供述は,第2回更新決定以前に作成されたもので,原告の構成員でもないから,団体規制法5条1項4号該当性の理由にはならないし,原告構成員が両サリン事件等を正当化している証拠も,公安調査官の協力者の氏名を秘匿したりするなどの捏造の疑いさえあるものであって,証拠価値は全く認められない。
(3) 国家権力による教義解釈は許されないこと
団体規制法5条1項4号の要件該当性も行政処分の適法性に関するものであるから,誰が見ても殺人を勧める綱領といえる客観的外形を備えた証拠により判断されなければならないところ,行政権にせよ,司法権にせよ,国家作用が民間の宗教団体の教義につき主観的教義解釈を展開して,その危険性を判断することは,国家権力が思想・信教の自由に対する弾圧であって干渉となるから,許されない。
11  争点11(団体規制法5条1項5号該当性)
(被告の主張の要旨)
(1) 原告を含む本団体については以下の事実が認められる。
ア 両サリン事件の首謀者であるBは,現在も本団体の活動に絶対的な影響力を有し,本団体の構成員はBを絶対的帰依の対象としている。
イ a教は,両サリン事件当時,Bを頂点とした上命下服の位階制度を設け,一般社会と隔絶した独自の閉鎖社会を構築し,組織的かつ秘密裏に両サリン事件を計画準備し,敢行した。
本団体は,現在も,従前と同質の組織構造を継続して有しており,一般社会と隔絶した独自の閉鎖社会を維持している。
なお,両サリン事件を引き起こすに至ったのは,平成2年頃の全国各地でのa教の進出に対する反対運動を教団を弾圧し壊滅しようとするものであると捉えて,これと対決する姿勢を示すようになったことが一因であるところ,第2回更新決定後も現在に至るまで,本団体の管理下にある施設の周辺に居住する住民らが展開する反対運動に対して敵意をあらわにし,対決姿勢を強めている。
ウ 本団体の代表者であるBは,両サリン事件についての自己の責任を否定し何ら反省もしていない上,幹部構成員を含めた構成員らは,現在でも,両サリン事件等を正当化する言辞を述べている。
エ a教は,その政治上の主義を推進するための武装化の過程で,いわゆるサリン量産プラント建設事件(別紙刑事事件一覧表3)や武器等製造法違反事件(別紙刑事事件一覧表15)を敢行したが,それにより服役した構成員を含め,両サリン事件が実行された当時,構成員であった者を現在も多数構成員として擁している。
オ 原告を含む本団体は,現在も,従前と同様なマインドコントロールの手法を用いた儀式・修行を継続している。
カ 自動小銃,手りゅう弾,爆薬等を準備して勾留中のB奪還を目的として連続爆弾テロを計画したいわゆるD事件の関係者であり,自家製爆発装置を製造して爆発実験を行うなどしたA17(以下「A17」という。),拳銃,弾薬,自動小銃等の調達などをしたA18(以下「A18」という。)及び精神病院での強制治療を命じられて刑事責任を免除されたA19(以下「A19」という。)の少なくとも3名は,依然としてロシア国内にある本団体施設に出入りして,本団体と関係を持っている。
キ 以上の事実に照らせば,本団体は,第2回更新決定後,現在に至っても,無差別大量殺人行為に関する危険な要素を保持しており,「無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実」があるから,団体規制法5条1項5号に該当する。
(2) これに対し,原告は,危険な教義を廃棄し,意思決定機関を改変し大幅に民主化したこと,刑事事件への関与を認め,被害補償を行っていることなどを挙げ,無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実はないと主張しているが,上記(1)で主張したとおり,表面的にはともかく,実質的には本団体の本質は何ら変わっておらず,その危険な要素は何ら払拭されていない。
また,原告は,D事件等の本団体のロシア人構成員が敢行した事件は本団体とは無関係であると主張しているが,これらの事件がBの絶対的影響力の下で敢行されたことは証拠上明らかである。
さらに,原告は,団体規制法5条1項5号該当性について,Bは,現在,何ら影響力を及ぼすだけの身体的精神的能力はなく,さらに,不殺生に反する言動が仮にされたとしても,原告において影響を受けることはないし,現時点において本人によって否定されていないBの過去の言動は,違法行為や破壊活動の厳禁,不殺生の実践等であることからすれば,Bが影響力を有し,構成員がBを帰依の対象にしたとしても,無差別大量殺人行為の防止に資する要素であるなどと主張している。
しかし,Bに意思能力が認められるところ,Bは違法行為の禁止や「タントラ・ヴァジラヤーナ」の封印などは行っておらず,かえって,従前どおり,その過去の説法等を通じて,本団体の構成員らに対して絶対的な影響力を保持し続けている。
よって,原告らの上記主張は,いずれも理由がない。
(原告の主張の要旨)
(1) 原告については以下の事実が認められる。
ア 原告の正大師(C。平成19年3月に同人のグループは退会し,同年5月にb2教を発足させた。)及び正悟師(A20,A21,A5,A22)で構成されていた旧来の意思決定機関である役員会は,徐々に形骸化していき,原告は,平成18年7月に,33名の正大師や正悟師より下位の位階にある師もしくは聖準師からなる合同会議という合議制の意思決定機関を発足させ,かつての長老部のように突出した位階の者が加わらない中,十分な議論を尽くし原則として全会一致によって意思決定するなど第2回更新決定以降大幅に民主化している。
イ 原告構成員の住民票消除処分取消訴訟,原告構成員に対する家屋明渡請求訴訟等の判決や,学者や有識者,その他の人々の評価をみても,原告に無差別大量殺人行為を行う危険性があるとの一般的な評価が存在するとはいえない。
ウ 原告は,両サリン事件の被害者に対し,平成11年以降,一貫して,経済的補償を続けており,C派ないしb2教を除いた原告単独の支払総額は平成23年までで7億6481万4533円に上っており,サリン事件被害者に対する定期健診を毎年実施しているNPO法人「リカバリー・サポート・センター」への支援も,平成13年以来,定期的に行っており,総額は平成22年までで1750万円となっている,その他にも,アメリカ合衆国(以下「米国」という。)の赤十字社に対する寄付や対テロ戦争の被災者への慈善活動も行っており,これらの活動からすれば,原告の具体的な危険性は消滅している。
エ 公安調査庁は,原告に対し,平成12年2月の本件観察処分以降,3回の期間更新決定を経て,12年の間に,延べ220回,延べ428の施設(実数130)に対して,立入検査を実施し,また,警察も,本件観察処分以降,原告関連の施設等延べ約298か所に対して,延べ約80回にわたる家宅捜索を行ってきたが,いずれにおいても,原告の施設等の中から無差別大量殺人行為の準備や計画等を示す物件等が確認されることは一切なかった。
オ 以上からすると,原告は,団体規制法5条1項5号に該当しない。
(2) これに対し,被告は,以下の事実を団体規制法5条1項5号の根拠事実として指摘しているが,それぞれ,以下のとおり,いずれも理由がない。
ア 被告は,Bが依然として本団体に危険な影響力を及ぼしていることを指摘している。
しかし,上記8(2)で主張したとおり,Bには,現在,何ら影響力を及ぼすだけの身体的精神的能力はなく,仮に不殺生に反する言動がされても,原告においてそのような影響を受けることは,全くない。
イ 被告は,本団体は,現在も,両サリン事件を起こしたのと同質の組織構造を継続して有し,一般社会と隔絶した独自の閉鎖社会を維持し,施設の周辺住民と対決姿勢を強めていることを指摘しているが,上記(1)アのとおり,原告は民主的な形態に組織構成を変化させ,閉鎖社会を維持していない。
ウ 被告は,Bが,両サリン事件の責任を否定し反省していない上,幹部構成員を含めた構成員らが,両サリン事件を正当化する言辞を述べていることを指摘している。
しかし,被告主張の根拠となった証拠は,公安調査官の単なる聞き取り調査にすぎず,証拠価値がなく,被告主張の事実は認められない。
エ 被告は,サリン量産プラント建設事件や武器等製造法違反事件を敢行して服役した構成員を含め,両サリン事件が行われた時に構成員であった者を現在も多数構成員として擁していることを指摘している。
しかし,服役して原告に復帰した構成員は,いずれも事件への関与の程度が薄かった者であり,自己の行為を深く反省し,2度とこのような事件に関与しないことを誓約して原告に加入している上,技術的に見ても武器やサリン等の製造はもはや不可能である。
オ 被告は,本団体が,従前と同様のマインドコントロール手法を用いた儀式・修行を継続していることを指摘しているが,マインドコントロールの手法がいかなるものか不明であって,むしろ,このような要素はBの平和的影響力を考えれば無差別大量殺人行為の防止に資する要素である。
カ 被告は,D事件の関係者が本団体施設に依然として出入りしていることを指摘しているが,D事件は原告のあずかり知らぬところであって,全く防御不可能な事実であり,これを理由に不利益処分を課すことは違法であるし,A9もDに騙された被害者である。
12  争点12(原告を含む本団体の活動状況を継続して明らかにする必要性の有無)
(被告の主張の要旨)
(1) 団体規制法5条4項の意義等
団体規制法の趣旨・目的からは,過去に団体の活動として無差別大量殺人行為を行い,現在もその属性として危険な要素を保持している団体については,通常,その活動状況を継続して明らかにする必要があるところ,同法5条4項の趣旨は,当該団体が同法5条1項各号のいずれかに該当しつつも,危険な要素を払拭するような特段の事情がみられ,その活動を継続して明らかにする必要がなくなっている場合には,当該団体を観察処分に付す必要はないというものである。
したがって,団体規制法5条4項にいう「引き続き当該団体の活動状況を継続して明らかにする必要(以下「活動状況解明の必要性」という。)があると認められるとき」とは,観察処分に付された団体が,観察期間の更新決定時に,同条1項各号の事由のいずれかに該当し,なお無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険性を有している場合で,これを減殺するような特段の事情がない場合をいうものと解すべきである。
本団体は,団体規制法5条1項各号のいずれにも該当し,本件更新決定時においても無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素を保持していると認められ,このような危険な要素を減殺する特段の事情は認められない。それどころか,本団体には,第2回更新決定後も,活動状況解明の必要性を更に高める事情が以下のとおり指摘できる。
(2) 本団体の体質の閉鎖性及び不透明性
ア 原告は,① k施設に約40名の出家した構成員を居住させているほか,全国各地の本団体が管理する施設において,出家した構成員を集団居住させ,② 外部からの情報を遮断することの必要性を強調し,出家した構成員については,親族との縁を絶つことの重要性を強調する指導を行い,③ 原告の施設で製造した食品について,電気信号に変換したマントラ(真言。Bの唱える呪文をいう。以下同じ。)のデータが流れる電気コードを巻いた枠内に保管するなどしたり,その他の全国の施設においても,そのデータを水の入った容器に流したりするなどの「修法」と称する儀式を施した上で,「お供物」などと称して出家した構成員に配給したり,④ 出家した構成員の食事について,メニューを設定し,摂取すべき食品の内容,摂取量及び材料まで詳細に規定して,徹底的に管理統制するなどしている。
このように,原告は,出家した構成員を本団体管理下の施設に集団居住させ,一般社会と融和しない独自の閉鎖的な生活を継続している。
イ 原告は,公安調査官の立入検査の際の対応等について,出家した構成員らに対し,「検査対象物を検査させる義務はありますが,検査官の質問に答える義務までは課せられていません。」,「インターネット上の外部データ等は検査対象外です。」,「インターネットの接続を要求されても応じる義務はありません。」などと文書で指導し,現に本団体構成員が,公安調査官の立入検査の際に,極めて非協力的な態度を示すばかりでなく,隠蔽行為や検査対象物の写真撮影を拒否するなどの事例が認められる。
ウ b2教も,原告と同様に,出家した構成員を本団体管理下の施設に集団居住させ,一般社会と融和しない独自の閉鎖的な生活を継続したり,「聖音」と称するものを録音したCDを室内で再生し,「修法」の儀式を施した水や食材等を摂取するなどしている。
そして,第2回更新決定後も,公安調査官の立入検査の際に,非協力的な姿勢を示すばかりでなく,検査着手後に検査対象物であるパソコンの電源を無断で切断するなどの隠蔽行為にも及んでいる。
エ これに対し,原告は,① 破防法棄却決定時と本件更新決定時における公安審の各認定には矛盾が存在する,② 原告が出家信徒の食事を徹底的に管理統制している旨の被告の主張は誤っている,③ 被告が指摘する立入検査の非協力的態度や隠蔽行為とされる事例は,いずれも見境なく行き過ぎた態様で行われる立入検査により人権侵害が行われないように防衛手段を講じたにすぎない,④ 原告とb2教とは別の組織であり,b2教の事例に基づく主張は意味がないなどと主張している。
しかし,①については,破防法棄却決定時から本件更新決定時まで13年が経過しており,その間,破防法棄却決定時に両サリン事件等で逮捕されるなどしていた構成員が服役を終え,本団体への再入会手続をするなど,本団体を取り巻く状況に変化が生じているから,事実認定に変化が生じたとしても何ら不自然ではなく,理由がない。
また,②については,現に,原告が作成した「お供物の上限数(1人分)」,「味覚捨断コース」,「水煮」などの表題の付された食事に関する資料には,出家した構成員が摂取すべき食品の内容,摂取可能な食事量及びその材料や調理方法に至るまで詳細に記述されていることからすると,食事量やメニューの取捨選択に裁量が認められるといっても,おのずとその選択の幅は限られており,原告が出家した構成員の食事を徹底的に管理統制しているとの推認を妨げることにはならないから,原告の主張には理由がない。
原告の③の主張は,結局,組織ぐるみで非協力的な姿勢を採っているとの被告の主張する事実を自認するものにほかならないし,また,原告が問題視する事例は,いずれも公安調査庁の職員は,質問や説得をする以上に強制的な措置を何ら講じていないから,何ら違法性は認められず,理由がない。
そして,原告の④の主張についても,原告及びb2教が本団体の内部集団であることは,上記7で主張したとおりであるから,理由はない。
(3) 本団体が組織の実態及び活動状況を偽っていること等
ア 本団体は,団体規制法5条3項に基づき,公安調査庁長官に対し,3か月ごとに区分した各期間ごとに,同条項所定の事項,当該各期間中における当該団体の活動に関する事項のうち政令で定めるもの(同項5号。政令で定めるものには,当該団体がした当該団体の活動に関する意思決定の内容等(施行令3条)がある。)を書面により報告する義務が課せられている。
そうしたところ,原告は,構成員の一部について殊更報告書に記載せず,殊に本団体の代表者であり,かつ構成員でもあるBやロシア所在の構成員を記載していない。
また,原告は,本団体の活動に関する意思決定や収益事業についても実態に即した内容を報告書に記載しないなど,不正確な報告を繰り返しており,公安調査庁から再三にわたり報告内容の改善を具体的に指導されているにもかかわらず,一向にこれを改めようとせず,組織の実態や活動状況を隠蔽しようとする態度に終始している。
さらに,原告は,表向きは,法令の遵守や地域社会との協調を唱えながら,原告の幹部構成員は,構成員に対して,両サリン事件を正当化する説法を繰り返し行っていると認められる。
他方,b2教についても,「B隠し」の活動自体が,Bの意思の実現のため,法の規制を免れる意図に基づいており,本団体の欺まん性を示すものといえるし,施設確保に当たっては,その支部として使用している施設を,使用目的を偽るなどしている。
以上の事実からすると,本団体は,組織の実態や活動状況を偽っており,観察処分の継続の必要性が高い。
イ これに対し,原告は,① 道場に来ただけの構成員(以下「来道構成員」という。)は,Bを絶対的帰依の対象とする者ではないから,報告する義務がない,② これまで公安調査庁から意思決定の報告をするよう指導を受けたことは一切ないし,「Bと新たな意思疎通なくして,団体としての意思決定は不可能である」との被告の見解を前提に,Bとの意思疎通が途絶えたとして新たな意思決定に関する報告を求める被告の主張は原告に不可能を強いるものである,③ 公安調査庁に対し,事業報告のうち「被処分団体の営む収益事業」の定義を明確にし,その定義に基づく報告すべき項目とその理由を問い合わせたところ,回答がなかったことから,報告ができなかった,④ 地域住民や社会との対決姿勢を強めているとの被告の主張には全く根拠がなく,公安調査庁が恣意的に見せかけているにすぎない,⑤ 被害補償を行ってきており,両サリン事件について反省の態度を示していると主張している。
しかし,①については,被告は,全ての来道構成員を報告していなかったことを問題としているわけではなく,平成19年から平成20年にかけて,幹部構成員の説法などに参加している事実が認められる者,平成20年5月及び8月に開催された原告の集中セミナーの活動に加わっていた者,説法会において新規入会者として紹介された者を報告していないことを問題としているから,上記①の主張は理由がない。
次に②については,公安調査庁の指導の有無にかかわらず,意思決定の報告をすることは,団体規制法5条3項5号,施行令3条1号に基づく義務であり,その報告内容も正確なものでなければならないし,原告を含む本団体の意思決定の過程に関する被告の主張は,既にBが行った本団体の意思決定は,過去の説法等や本団体の教義に顕現されるなどの形で,本団体の構成員に伝達されているところ,このBの明示の意思に従い,あるいはそれを推し量り,本団体の活動のための意思決定として,原告やb2教等の集団が組織運営に係る意思決定等をしているという内容であるから,上記②の主張は理由がない。
また,③については,公安調査庁は,平成19年7月25日付けで,原告の求めに応じ,「被処分団体の営む収益事業」の定義とは,いかなる名義をもってするかを問わず,実質的に被処分団体が経営しているものをいい,例えば,本団体中の「i団体」と称するグループに所属する出家した構成員が営むコンピュータソフト開発事業等の個人事業などは,その収益を本団体が享受するなどしているから,上記の収益事業にあたると指導したものの,原告はこのコンピュータソフト開発事業等は,上記の収益事業に当たらないとして報告を拒絶しているから,上記③の主張は理由がない。
④については,幹部構成員の説法の内容等からも,地域住民や社会との対決姿勢を強めていると認められるし,⑤については,第2回更新決定後に限っても,本団体は,両サリン事件等の凶悪重大事件について,「衆生救済」の実現のための「タントラ・ヴァジラヤーナ」の実践として正当化する指導を行い,そのような認識が一般の構成員にも浸透していると認められるから,上記④及び⑤の主張はいずれも理由がない。
(4) 地域住民等の本団体に対する恐怖感・不安感
ア 本団体は,第2回更新決定後も,無差別大量殺人行為に及ぶ危険性がある上,組織体質として閉鎖性及び欺まん性にも変化が見られないことから,地域住民等は,本団体に対する恐怖感・不安感を抱いている。
特に,b2教の設立が観察処分を免れることにあったことから,地域住民等の本団体に対する恐怖感・不安感を以前よりも増している。
また,地域住民等は,第2回更新決定後及び本件更新決定後も,本団体の解散,当該施設の閉鎖及び本団体構成員の退去等を求める集会・デモを行って,本団体への恐怖感や不安感などを訴えているし,第2回更新決定後には,法務大臣や公安調査庁長官等に対し,観察処分の期間更新や新たな法整備などの要請等も行っている。
イ 関係地方公共団体等も,第2回更新決定後及び本件更新決定後のいずれにおいても,法務大臣や公安調査庁長官等に対し,観察処分の厳正な実施等を要請しているし,地元地方公共団体の長らは,第2回更新決定後に,公安調査庁長官に対し,団体規制法32条の調査結果の提供要請を行っている。
(5) 国際的なテロ対策の関係等
地下鉄サリン事件以降,近年,テロリズムの防止及び根絶を目的として,国際連合安全保障理事会(以下「安保理」という。)決議や関係するG8首脳会合などの国際会議において,テロ対策を推進するよう我が国を含む各国に対し要請がされている。
我が国も国際社会の一員として,この国際的な取組に寄与すべき責務を果たすことが求められているところ,米国,欧州連合,オーストラリア連邦(以下「オーストラリア」という。)及びカザフスタン共和国(以下「カザフスタン」という。)は,それぞれのテロ対策法等に基づき,a教やb教の名称を有する団体(本団体)の危険性を認定した上で,「外国テロリスト組織」に指定するなどの措置を講じ,現在まで,これに基づき資産凍結の規制を実施するなど,本団体を国際的な監視の対象としている。
このような国際的なテロ対策の取組からすれば,本団体の本拠がある我が国においても,これら諸外国の取組と軌を一にすべきであるから,観察処分を継続すべき必要性は大きい。
(6) 小括
以上からすれば,原告には,活動状況解明の必要性が認められる。
(原告の主張の要旨)
(1) 原告に閉鎖性がないこと
ア 被告が主張する原告の一般社会と隔絶した閉鎖性とは原告の出家制度のことを指している。
しかし,出家制度とは,もともと人里の喧騒から離れ,静かに自己の心を見つめることが仏教・ヨーガ等の修行においては必須条件であることから来た制度であり,我が国や世界の他宗派にも広く存在し,何ら特異なものではなく,集団居住や食事に対する節制も瞑想修行を深めるのに資するものであり,原告が構成員を管理統制しているというよりも,出家構成員はすべて自らの意思で望んで自己を律する出家生活に人生を投じ,真剣に仏道修行に日々いそしんでいるにすぎない。
また,その一方で,a教が富士山麓に拠点を置いていた時代とは異なり,出家構成員ですら,都市部に住居を構えたり,アルバイトや派遣会社を通じて労働したり,インターネットや携帯電話等の様々な情報環境に囲まれており,社会との多様な接点が生じている。
このことは,公安審の破防法棄却決定において,「本団体は,それまでの閉鎖隔離的信仰集団から社会内宗教生活団体へと変化しつつあることがうかがえる」と認定されているとおりである(なお,本件更新決定における公安審の「一般社会と融和しない独自の閉鎖社会」との認定は自らがした破防法棄却決定の認定と矛盾している。)。
その他にも,原告には,完全に一般社会の中で生活している在家構成員(平成23年4月30日時点で出家構成員227名,在家構成員757名)が存在している。
イ 被告が隠蔽行為と主張するものは,私物検査の常態化,再発防止処分をほのめかす恫喝的検査,日没後に開始された検査,私物検査を強行した全国一斉立入検査などのいずれも見境なく行き過ぎた態様で行われる立入検査に対して人権侵害が行われないように防衛手段として行われたものにすぎない。
むしろ,人権感覚に希薄な公安調査庁職員こそ,職権濫用という違法を犯しているから,被告の上記主張は理由がない。
ウ 被告は,b2教の事例を挙げて本団体の閉鎖性を主張しているが,構成員不詳の本団体全体の閉鎖性については,原告にとって防御不能であるから,被告の上記主張は理由がない。
(2) 原告が組織の実態及び活動状況を偽っていないこと
ア 被告は,「来道構成員」の氏名等を報告書に記載していないことが問題であると主張しているが,実際には,原告の道場に1度ないし数度だけ訪れて入会に至らない者も存在し,このような者については,Bに絶対的に帰依し,その意思に絶対的に服従している者ではないため,被告のいう「構成員」に該当せず,報告する義務はない。
その他,個々の事例においても,原告はすべて適正に報告している。
したがって,被告の上記主張には理由がない。
イ 被告は,原告の活動に関する意思決定の報告がされていないと主張するが,この点についてこれまで公安調査庁から指導を受けたことは一切ないから,被告が,本件訴訟においてこの点を主張しても失当である。
また,被告は,主幹者を含めたいかなる構成員も,Bと新たな意思疎通なくして本団体としての意思決定は不可能であると主張しているが,Bとの意思疎通が途絶えた原告において,新たな団体としての意思決定が何を指すのか,被告の主張は明確ではないから,上記主張は理由がない。
ウ 被告は,第2回更新決定以降,本団体の収益事業についても実態に即した内容を報告書に記載して報告しないなどと主張しているが,原告は公安調査庁に対し,「被処分団体の営む収益事業」の定義,報告すべき項目及びその理由を明らかにするよう求めたが,公安調査庁からは一切回答がなかったのであり,このように,公安調査庁が報告に必要な情報提供を原告に対して行なわなかったがゆえに,原告は報告ができなかったにすぎないから,被告の上記主張は理由がない。
エ 被告は,原告が地域住民や社会との対決姿勢を強めているなどと主張するが,当該主張の根拠は全く示されておらず,事実に反するから,理由がない。
その他,被告は,原告には両サリン事件につき反省の態度は全く見られないなどとも主張しているが,原告は,上記11(1)のとおり,被害者に対する謝罪や経済補償活動を行っているから,理由がない。
(3) 地域住民の恐怖感・不安感等
本件更新決定の決定は,全国各地の地域住民が原告に対して恐怖感・不安感を抱き,それに基づき観察処分期間更新の要請を行っていることを,活動状況解明の必要性の根拠の一つとしているが,その根拠となった事実は日常生活におけるトラブルにすぎず,根拠となり得ない。
仮に地域住民に漠然とした恐怖感・不安感があったとしても,法律上の根拠の疑わしい「地域住民との意見交換会」において公安調査庁が地域住民を扇動している疑いすらある。
(4) 国際的なテロ対策の関係等
被告は,我が国が国際的なテロ対策への取組に寄与すべき責務のあることを活動状況解明の必要性の理由として主張しているが,およそ根拠たり得ない。
むしろ,被告は,公安調査庁を通じて,原告の実情を十分に把握しているのであるから,G8首脳会議等の国際会議に対して,現在の原告にテロ思想が存在せず,核・化学・生物物質を使用するために必要な人・金・物が存在しないことを正しく伝えるべき責務があるというべきである。
また,被告は,各国が外国テロリスト組織として原告を含む本団体を指定していると主張しているが,a教ないしb教であって,本団体は指定されていないから,理由がない。
被告は,「本団体」,「a教」,「b教」等の定義を曖昧にしたままに,恣意的な主張を行っており,いずれも,活動を継続して明らかにする正当な理由を示してない。
(5) 小括
以上からすれば,原告には,活動状況解明の必要性は認められない。
13  争点13(更新決定時に新規の報告義務を課すことの適法性)
(被告の主張の要旨)
(1) 原告は,本件更新決定において団体規制法5条5項において準用する同条3項6号に規定する報告事項として別紙処分1目録2(2)ウの事項(以下「新規報告事項」という。)が付加されたことに関し(なお,第2回更新決定時から新規報告事項の報告義務は課されている。),① 同号は,報告すべき事項として観察処分に際し公安審が特に必要と認める事項と限定を付していて,観察処分発令時に必要と認めた事項だけがその後も報告対象となる,② 同条5項は,観察処分の期間更新について定めたものであるが,同項は,同条3項を準用しているところ,他の部分については読替えを行う規定があるにもかかわらず,同項中,6号の「第1項の処分に際し」については,「更新に際し」と読み替える旨の規定は設けられていないから更新手続によって新たな報告事項を定めることはできず,本件更新決定は違法であると主張している。
(2)ア しかし,団体規制法5条5項は,同条3項の報告に関する規定について,「期間が更新された場合について準用する。」と規定し,「適用する。」とは規定されていないところ,法文上,「準用」とは,そのままの形の規定として用いる「適用」とは異なり,ある事項に関する規定を,それに類似するが異なる事項について,必要な変更を加えた上で当てはめることをいい,異なる事項への当てはめのための変更を加える必要があるから,同条5項が準用する同条3項6号の「その他第1項の処分に際し」との文言も,当然更新決定に当てはめるための必要な変更を加えて適用されることになる。
また,原告は,団体規制法5条5項が,読替えを行っている部分として,同条3項の「当該処分が効力を生じた日から」については,明文をもって「期間が更新された日から」と読み替えていると指摘しているが,準用規定における読替規定については,誰しもが疑問なく変更が加えられるような部分については,わざわざ読替えのための規定を置かれることはないが,どう読み替えて当てはめればよいか気懸かりな部分や政策的考慮からの変更を加えるような部分については,読替規定を置く必要があると解されている。
そうしたところ,団体規制法5条5項が明文で読替えを規定した同条3項の「当該処分が効力を生じた日から」との文言は,同項各号の報告事項を公安調査庁長官に対し報告する時期を特定するためその基準となる始期を定めたものであるところ,同文言については,期間が更新された場合であっても性質上当然に変更される事項とは必ずしもいえず,期間更新後の基準となる始期として適用されるか疑義が生じ得る事項といえるから,この疑義が生じないように読替規定を設けたものと解することができる。他方,同条3項6号については,読替規定がなくても,同号の「第1項の処分」との文言を読み替えることができない理由とはならないのである。
イ 実質的にみても,観察処分決定時や以前の更新決定時には必要がなかった報告事項であっても,その後の団体の特性の変化や新たに判明した事情等に応じて新たな事項を報告させなければ観察処分の目的を達することができない場合も当然に想定され,そのような場合にも,更新決定時に新たな報告事項が追加できないとすれば,団体規制法の趣旨に反することとなる。
しかるに新規報告事項については,本団体が,① 収益事業を活発に営んでいる上,その中には構成員による薬事法違反や職業安定法違反に該当する違法行為を行うなどして多額の収益を上げて重要な資金源としている事例もあった,② 公安調査官による立入検査に際し,構成員が入金伝票及び現金を隠匿するなどの隠ぺい行為をし,収入の一部を会計帳簿に記載するなど,裏金化している疑いが生じていること,③ 平成12年6月頃発生したD事件の際には,武器の購入資金等として用いられた資金が本団体から拠出されていたことなどの事実に加え,前記のとおり,依然としてその属性として無差別大量殺人行為に及ぶ危険な要素を保持していることや,閉鎖性・欺まん的体質があることに鑑みれば,本団体が得た多額の収益を原資として危険物等を購入するおそれがあることから,資産及び負債や団体の活動等に関する報告だけでは,観察処分の目的を達することができないために追加されたものである。
ウ したがって,本件更新決定が,新規報告事項を追加したことに何ら違法はなく,原告の主張は理由がない。
(原告の主張の要旨)
(1) 被告は,新たな報告義務を課すことを禁止する明文はないなどと主張している。
しかし,新規報告事項は,本件観察処分の際には存在しなかった報告事項であるところ,団体規制法5条3項6号は,更新決定に基づき報告すべき事項として「第1項の処分に際し公安審査委員会が特に必要と認める事項」と明記しており,当初の観察処分時に公安審が特に必要と認めた事項のみが対象となっている。そして,観察処分の期間更新を定めた団体規制法5条5項は,同条3項を準用するも,「第3項中『当該処分が効力を生じた日から』とあるのは,『期間が更新された日から』と読み替えるものとする」としているが,3項6号の「第1項の処分に際し」の部分については,「更新に際し」と読み替える旨の規定は設けていない。
したがって,更新の場合も,団体規制法5条5項が準用する同条3項6号で報告を義務付けることができるのは,明文上,観察処分に際し公安審が特に必要と認める事項に限定され,更新に際して必要と認めた事項を報告対象とすることはできず,禁止されている。
これに対し,被告は,団体規制法5条5項は,同条3項の報告に関する規定について「準用する」としており「適用する」としておらず,更新決定の始期に関する読替規定と同様に更新決定の際に新たな報告義務を課すことができる旨の読替規定がなくても,疑義は生じないから,更新手続に当たっては,必要な変更を加えた上で適用されると解すべきであり,更新時に新たな報告事項を追加することは明文で許されると主張している。
しかし,「適用する」と「準用する」は,いずれも,ある元の規定と同じ法の規制を加えようとするときに使う用語であることに変わりはなく,適用場面の類似性の程度の差に応じて言葉を使い分けているだけで,その効果に差異はないから,新たな規定に,元の規定とは異なる新たな権利義務を付加する場合には,適用ないし準用では足りず,新たな明文の規定を定める立法措置が必要であるから,被告の上記主張は理由がない。
(2) 上記(1)のように団体規制法5条5項において準用する同条3項6号が報告事項の対象を「第1項の処分に際し」必要と認められた事項に限定している趣旨は,同号の報告事項が同項1ないし5号のように報告事項が明確に規定されていたり,政令で限定されておらず,「公安審査委員会が特に必要と認める事項」と要件が緩やかになっていることから,更新の際に新たな報告事項を課することができるとすれば,報告義務の対象が際限なく拡大する危険があるため,それを回避する趣旨であると解される。
そして,新規報告事項の「被請求団体の営む収益事業」の意味は極めて不明確であり,本件更新決定の決定主文はこれについて「いかなる名義をもってするかを問わず,実質的に被請求団体が経営しているものをいう」と説明しているが,この説明が輪をかけて対象範囲を不明確なものとしている。
このように報告対象をここまで拡大することは,「第1項の処分に際し」との限定を設けた団体規制法5条3項6号の趣旨に反する。
(3) 団体規制法の立法当時も,政府担当者は,団体規制法5条第1項の観察処分の際に決められた報告事項が更新後もそのまま繰り返され,更新の際に新たな報告事項の追加などないことを明言している。
(4) この他,被告は,本件更新決定で新規報告事項を追加したのは,資産及び負債や団体の活動等に関する報告だけでは,観察処分の目的を達することができないためであるなどと主張している。
しかし,必要性から,団体規制法5条3項6号の「第1項の処分に際し」という明文の規定を無視して良い理由はない。また,必要性があるのであれば,公安調査庁は,更新請求ではなく,団体規制法第5条1項に基づき新たな観察処分請求をすれば良いはずである。
したがって,上記被告の主張は理由がない。
(5) 以上のように,本件更新決定に当たり,公安審が新たな報告義務を課することは団体規制法5条5項,同条3項6号の明文に違反している。
第3章  当裁判所の判断
第1  争点1(立法事実の存否)及び争点2(平等原則違反の有無)について
1  原告の主張及び争点1及び争点2に関して認定した事実
原告は,① 団体規制法の立法事実に関し,  その立法理由が住民の不安感であり,これは漠然として実体を伴わないものにすぎず,  同法制定以前には,公安審がa教に係る破防法に基づく解散指定請求を棄却していて組織として無差別大量殺人行為に及ぶ危険性はなかったから,立法の必要性を欠いており,② 同法は,a教という特定の団体及びその関係者のみを対象にした処分的法律であり,一般的・抽象的法規範ではなく,憲法14条の平等原則に違反していると主張しているので,同法の立法過程や無差別大量殺人行為の特性等について検討する。
前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,団体規制法の立法過程や無差別大量殺人行為の特性等に関し次の事実が認められる。
(1) 両サリン事件の発生等
a教は,その教義における理想郷として,Bが独裁者として統治する祭政一致の専制国家体制を樹立するとの政治上の主義(以下「本件政治上の主義」という。)を有するようになり,これを実現するため,Bら構成員が本件総選挙に立候補したところ,全員落選したため,Bは,上記政治上の主義を武力によって実現するため,敵対勢力の排除及び現行国家体制の破壊を行うための手段として,サリンを生成するなどの武装化を推進した。(乙C24)
松本サリン事件は,サリンの殺傷能力・使用方法を構成員に習熟させ,a教の松本支部の建物を当初の予定よりも縮小させる原因を作り,上記政治上の主義を推進する上での障害であった長野地方裁判所松本支部の裁判官・反対派周辺住民を殺害するとのBの意思を実現するため,その構成員が,団体の活動として,組織的にサリンを生成して,平成6年6月27日,噴霧車を用いて長野県松本市内にサリンを撒布し,7名を殺害するとともに,144名に無酸素脳症等の傷害を負わせた事件である(別紙刑事事件一覧表6。甲22,乙C17)。(乙B3の2,乙C12)
また,地下鉄サリン事件は,いわゆる目黒区公証役場事務長拉致事件に関して,間近い時期にa教に対する警察の強制捜査が行われることが予期されていたところ,強制捜査が現実のものとなれば,a教の武装化計画も明るみになり,上記政治上の主義を実現することが不可能となるため,大規模な事件を起こして警察組織に打撃を与え,上記強制捜査を阻止するとのBの意思を実現するため,その構成員が,団体の活動として,組織的にサリンを生成し,平成7年3月20日,東京都内を走行中の地下鉄3路線5方面の電車内等にサリンを発散させて,乗客,乗員ら12名を殺害するとともに約3800名にサリン中毒症の重軽傷を負わせた事件である(別紙刑事事件一覧表12)。(乙B3の2,乙C13)
このように,両サリン事件は,武装化によるa教の勢力拡大を図り,ついには救済の名の下に王として日本国を支配するとのBの考えによって引き起こされたものである。(乙B3の2)
(2) 団体規制法制定前の国際情勢等
平成11年12月7日の団体規制法制定前には,平成10年8月7日にケニア共和国のナイロビやタンザニア連合共和国のダルエスサラームに所在する米国大使館の爆破事件(以下「米国大使館同時爆破事件」という。)などを始めとして,世界各地において,公共の場所で爆弾を爆発させて不特定多数の一般市民を殺害する無差別大量殺人行為が多発していた。(乙C18)
(3) 無差別大量殺人行為の特性
ア a教の構成員は,上記両サリン事件だけでなく,Bの本件政治上の主義の実現のため,あるいはこれに対する障害・妨害を排除するために,別紙刑事事件一覧表2のG弁護士一家殺人事件のように特定人を対象とした凶悪事件だけでなく,地下鉄サリン事件後にも,不特定多数の者を殺害する無差別大量殺人行為につながりかねない,新宿駅青酸ガス殺人未遂事件や東京都庁爆発物取締罰則違反事件などを引き起こしている。
これらの犯行は,いずれも,a教の教義及びBの説法又はその指示・命令を実現するために,「現世における一切のかかわり」を断った出家構成員を中心に秘密裏に綿密な計画が立案され,それに従って実行されたものである。
(以上につき,乙B2の1,乙C17)
イ また,団体規制法制定前10年間に国外テロ組織により敢行された無差別大量殺人行為に類する事件を見ても,「タミル・イーラム解放の虎」,「センデロ・ルミノソ」,「アイルランド共和軍」,「武装イスラム集団」,「ハマス」,「真のIRA」,「ダゲスタン解放軍」等,同一組織により繰り返される傾向が顕著であり,これによって多数の死傷者が生じている。
そして,その計画・準備は秘密裏に行われるため,事前に具体的な犯行日時・場所等が把握できた例はほとんどなく,こうした特性は,平成12年以降に発生した「アルカイダ」による平成13年9月11日の米国同時多発テロ事件,「アルカイダ」と密接な関係を持つ「ジェマー・イスラミア」による平成14年10月12日のバリ島(インドネシア共和国)でのディスコ等爆破事件や「ハマス」等により頻繁に繰り返されるテロ事件等からも明らかといえる。
(以上につき,乙C18,19)
(4) 団体規制法制定の際の国会における審議状況等
ア 平成11年11月5日,第146回国会の衆議院において,当時のA23法務大臣(以下「A23法相」という。)は,団体規制法案について,① 平成6年,7年に両サリン事件が相次いで発生し,不特定多数者の生命身体に対し極めて甚大な被害をもたらしたこと,② 最近の国際情勢を見ても,平成10年8月の米国大使館同時爆破事件に代表されるように,公共の場所で爆弾を爆発させるなどして多くの一般市民を犠牲にする無差別大量殺人事件が多発していること,③ 無差別大量殺人行為は,平穏な市民生活に重大な脅威となる上,これを団体が行う場合は,秘密裏に計画準備されて実行に移されるため,犯行の事前把握が極めて困難であることなどから,犯行の実現可能性も高く,また,団体が一定の目的を達成するための手段としてこれを敢行する場合には,反復して実行される危険性が高いという無差別大量殺人行為の特性があることから,過去に無差別大量殺人行為を行った団体について,現在も危険な要素を保持していると認められる場合に,迅速かつ適切に対処するため,必要な法整備を図るものとの趣旨説明を行った。
これに対し,A24衆議院議員(以下「A24議員」という。)から,団体規制法案の適用を過去10年間に無差別大量殺人行為が行われた場合に限定すべきであるなどの質問がされ,これを受けて,衆議院において同法案の修正がされ,  団体規制法1条につき,無差別大量殺人行為の手段として「例えばサリンを使用するなどして」が,同法の目的として「国民の生活の平穏を含む公共の安全」がそれぞれ加えられ,  同法4条1項の無差別大量殺人行為の定義について,「(この法律の施行の日から起算して10年以前にその行為が終わったものを除く。)」とその範囲を限定する修正がされ,  団体規制法附則2条において,同法施行の日から起算して5年ごとに,同法の施行状況について検討を加え,その結果に基づいて廃止を含めて見直しを行うものとするとの規定が加えられた。
(以上につき,乙C16,乙F17)
イ その後,団体規制法の衆議院修正案は,平成11年11月25日,第146回国会の参議院法務委員会において審議され,A23法相が,上記アと同様の趣旨説明を行い,A24議員が,同法案の修正の趣旨は,① 団体の活動としてサリンを使用して無差別大量殺人行為が行われ,その団体が依然として危険な要素を保持しつつ活動しており,そのことに国民が大きな不安と危惧の念を抱いている現状に鑑み,過去に無差別大量殺人行為を行った団体について,現在も危険な要素を保持していると認められる場合に,これに迅速かつ適切に対処するための必要な規制措置を定め,もって国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保に寄与することを目的とし,その趣旨を明記すること,② 同法案による規制処分の適用対象団体の範囲を明確に限定するため,団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として行った無差別大量殺人行為のうち,この法律の施行の日から起算して10年以前にその行為が終わったものを除外すること,③ 同法案は,サリンを使用して無差別大量殺人行為を行った団体が依然として危険な要素を保持し,そのことに国民が大きな不安と危惧の念を抱いているという特別な事情に対処することを念頭に置いたものであるので,施行の日から起算して5年後に,同法の施行状況について検討を加え,その結果に基づいて廃止を含めて見直しを行うこと等にあると説明した。
これに対し,各党の委員から,団体規制法の適用対象はa教に限定されるかとの質疑が行われ,A23法相やA24議員は,要旨,衆議院での修正を経た結果,事実上,現実にはa教に適用が限られ,臨時措置法的意味合いがあるものの,同法は,法文上,a教だけに適用を限定しているわけではなく,同法1条の無差別大量殺人行為の手段もサリンを使用した場合だけに限定はしていないし,同法4条1項の無差別大量殺人行為の定義としても,同法施行後に行われたものが対象に含まれることを前提として答弁をしている。
(以上につき,甲6,乙F17)
(5) 無差別大量殺人行為に対する国際的動向
米国,欧州連合,オーストラリア及びカザフスタンは,現在も,それぞれのテロ対策法等に基づき,a教の危険性を認定した上で,「外国テロリスト組織(FTO)」に指定するなどの措置を講じ,あるいは,資産凍結措置を講じるなどして,a教に対する監視等を実施している。
また,安保理やG8等の国際会議は,団体規制法制定前(安保理については平成11年10月19日の安保理決議1269号,G8については平成7年12月12日のテロリズムに対するオタワ閣僚宣言)から,テロリズムの防止及び根絶を目的として,テロ対策を推進するよう日本を含めた各国に対し要請している。
(以上につき,乙B8の1・59ないし63)
2  争点1について
上記1の事実からすると,団体規制法は,原告が主張するような,単に住民の漠然とした不安感・恐怖感の解消をすることを目的とした法律であるとは解されず,無差別大量殺人行為が行われれば,不特定多数者の生命身体に対し極めて甚大な被害を及ぼすものであるところ,団体が行う無差別大量殺人行為には密行性とこれによる高い実現可能性,反復累行性等の特性があることから,過去に無差別大量殺人行為を行った団体について,現在も危険な要素を保持していると認められる場合に,その危険の実現を迅速かつ適切に防止するため,団体の活動状況を明らかにし,無差別大量殺人行為の再発を防止するために必要な規制措置を定め,もって国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保を図ることを立法理由として制定されたものであることが明らかであり,同法が立法理由を欠いた違憲な法律であるとは認められない。
また,原告は,団体規制法制定以前には,公安審がa教に係る破防法に基づく解散指定請求を棄却していて,a教には無差別大量殺人行為の危険性はなかったと主張するが,公安審が平成9年1月31日に行ったa教に対する解散指定請求に対する棄却決定(乙A7)では,「今後ある程度近接した時期に継続又は反復して暴力主義的破壊活動に及ぶ明らかなおそれがあると認めるに足りるだけの十分な理由があると認めることはできない。」として,厳格な破防法の要件の充足は認め難いとする一方で,「本団体による過去一連の凶悪重大事犯に鑑み,警察は,今後とも,本団体構成員による犯罪の予防に留意し,犯罪が発生した場合の捜査に務めるものと思われる。一方,公安調査庁も,本団体を調査対象団体に指定しており,本団体の危険性が消失しているとはいえない以上,今後とも本団体が将来暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれがないか否か調査を継続するものと思われる。当委員会としては,警察及び公安調査庁が,その職責上,今後とも法令に則り,本団体の動向把握や所要の捜査,調査活動を継続するものと認識している。」と説示していて,a教による無差別大量殺人行為に及ぶ危険性が払拭されたとまでは認定していない以上,上記棄却決定をもって,原告主張の根拠とすることはできないというべきであるし,同法制定時には,上記棄却決定を受けて,なおも,a教が,両サリン事件への反省の意を全く示さず,殺人をも肯定する危険な教義を保持するなど危険な体質を維持しつつ,構成員・拠点を拡大する傾向にあったことが懸念され,その規制措置の必要性が国会で審議されていたことからすると,原告の上記主張は理由がなく,採用することができない。
なお,原告は,国会の審議状況からすると,仮に立法理由がないまま団体規制法を合憲とするには,少なくとも無差別大量殺人に結び付く現在の具体的危険性が必要であるなどと主張しているが,上記検討のとおり,原告の上記主張は前提を欠いていて理由がなく,採用することができない。
仮にこの点をおいて,原告の上記主張が,団体規制法5条にいう団体に当たるためには,無差別大量殺人行為に及ぶ蓋然性やそれを超えて破防法5条1項柱書きにあるように「当該団体が継続又は反復して将来さらに団体の活動として暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由があるとき」といった厳格な要件を充足することを必要とするという趣旨であると解しても,団体規制法には破防法5条1項柱書きのような厳格な要件を規定した文言は特に認められないし,国会の審議状況からも,「過去に無差別大量殺人行為を行い現在も危険な要素を保持している団体」(甲6・62頁の福島瑞穂委員に対するA23法相の答弁等)を団体規制法の規制対象としており,同法5条1項5号にいう「無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があること」はこのことを指すのであって,同法の規制対象団体について無差別大量殺人行為を行う蓋然性や破防法にいうような厳格な要件の充足が必要であるとしていた形跡は認められないから,団体規制法の合憲性の前提として無差別大量殺人行為に及ぶ現在の具体的危険性を要件としているとは解することができず,原告の上記主張はこの点でも理由がない(なお,原告は,a教が本件政治上の主義を有していなかったこと等を争っているが,後記第5の2,3において検討することとする。)。
3  争点2について
憲法14条1項は,法の下の平等を定めているが,これは合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって,各人に存する経済的,社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは,その区別が合理性を有する限り,何ら同項に違反するものではないこと(最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁,最高裁昭和37年(あ)第927号同39年11月18日大法廷判決・刑集18巻9号579頁等参照)からすると,原告が主張するように,団体規制法が処分的法律であったとしても,そのような同法の性格だけから,直ちに同法が憲法14条1項に違反するということはできない。
この点をおいて,団体規制法の性格を検討するに,上記1で認定した国会の審議状況や,衆議院での修正を経た同法1条,4条1項,制定附則2条の文言に照らせば,事実上,現実にはa教に適用が限られ,臨時措置法的意味合いがあることは否定し難い。
しかし,団体規制法の文言をみても,a教と名指しした上,同法の適用対象とするとした規定は特に見当たらないし,同法1条は,無差別大量殺人行為の手段につき,「例えばサリンを使用するなどして」と規定しており,あくまでサリンの使用は例示にとどまるし,同法4条1項の無差別大量殺人行為の対象の限定も,同法施行日から起算して10年以前にその行為が終わったものだけが除外されているにすぎず,同法施行後に行われた無差別大量殺人行為は除外されていないし,同法附則2条もa教あるいはその後継団体が全く存在しなくなった場合に同法を廃止する趣旨のものとはいえないし,国会の審議状況もこれら条文の規定の解釈内容と軌を一にするものであることからすると,同法が原告の主張するように処分的法律であって,一般的・抽象的法規範に該当しないと解することはできない。
よって,原告の上記主張は理由がなく,団体規制法が憲法14条に違反しているとは認められない(同様の理由に基づく主張であるB規約18条違反も認められない。)。
なお,原告は,団体規制法が憲法14条に違反する場合には,「緊急避難の法理」を充足しなければ,団体規制法は違憲であると主張しているが,上記検討のとおり,同法が憲法14条に違反しているとは認められず(同様の理由に基づく主張であるB規約2条,26条違反も認められない。),前提を欠いていて,理由がなく,採用することができない(「緊急避難の法理」についても,上記2で検討したとおり,団体規制法が合憲といえるためには,無差別大量殺人行為の現実的危険性が必要であるとは解されないし,同法の文言や国会の審議状況を見ても保護法益の優越性を必要としていたとは解されない。)。
第2  争点3(憲法20条等違反の有無)について
1  憲法20条の合憲性の判断基準
憲法20条は,1項で信教の自由を何人に対してもこれを保障すること,2項で何人も宗教上の行為,祝典,儀式又は行事に参加することを強制されないことを規定しており,重要な基本的人権の一つとして信教の自由を保障しているが,これが内心における信仰の自由にとどまる限りは絶対的な保障を受け得るものの,それにとどまらない外部的行為すなわち宗教上の行為や宗教上の結社については,絶対無制限のものではなく,公共の福祉の観点から必要かつ合理的な制約を受けるものと解するのが相当である(最高裁昭和36年(あ)第485号同38年5月15日大法廷判決・刑集17巻4号302頁参照)。
そして,信教の自由を制約する法律の規定が公共の福祉による必要かつ合理的なものといえるかどうかは,当該法律について,①規制目的の内容と規制の必要性,②規制される自由の内容及び性質,③具体的な規制の態様及び程度,④規制手続の内容等を比較較量して決するべきである(最高裁平成8年(ク)第8号同年1月30日第一小法廷決定・民集50巻1号199頁参照)。
これに対し,原告は,規制目的の審査基準としては,制限の対象となっている行為と害悪発生との間の関連性の程度について危険の明白性と現在性とが具体的裏付けをもって示されることが必要であり(「明白かつ現在の危険」の基準),規制手段の審査基準としては,より制限的でない他の選び得る手段の有無の検証を経ることが必要である(「必要最小限度の基準」)と主張している。
上記④にいう比較較量に際しては,「必要最小限度の基準」についての観点から規制手段を検討すべきものではあるが,他方,「明白かつ現在の危険の基準」については,団体規制法は過去に無差別大量殺人行為に及んだ団体が現在も無差別大量殺人行為に関する危険な要素を保持している場合に,規制手段を講じることができることからすると(同法5条ないし9条),一定程度の現在の危険性の有無は考慮の対象となるものの,前記第1でも検討したように無差別大量殺人行為が行われれば,不特定多数者の生命身体に対し極めて甚大な被害を及ぼすものであるところ,団体が行う無差別大量殺人行為には密行性とこれによる高い実現可能性,反復累行性等の特性があることから迅速かつ適切な対処が可能とするために同法が制定されたことからすれば,その危険性の程度が明白なものであることまでを要件としては,上記目的を達成し難いし,信教の自由が精神的自由に関する基本的人権の一つであることを考慮しても公共の福祉の観点からの規制立法の審査基準としては過度に厳格な審査基準であるといわざるを得ず,採用することができない。
2  憲法20条違反の有無
上記の観点から,観察処分等に関する団体規制法の規定を検討する。
(1) 団体規制法の規制目的
団体規制法は,当該団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体につき,現在も無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素を有している場合に,必要な処分を行って,迅速かつ適切に対処することを目的としたものであり(同法1条),その立法の必要性があること等は,前記第1で検討したとおりである。
そして,観察処分や期間更新決定(以下,両者を併せて「観察処分等」といい,これに再発防止処分も併せて「再発防止処分等」という。)の対象が宗教団体であったとしても,過去に当該団体の役職員や構成員が無差別大量殺人行為を団体の行為として行った団体で,現在も無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素を有しているという専ら宗教団体の世俗的側面だけに着目して,無差別大量殺人行為に及ばぬよう専ら世俗的目的から観察処分等の規制を及ぼすものであり,当該団体や信者の信教の自由に介入するものとはいえない。
(2) 観察処分等の内容
団体規制法は,上記目的を達成するための規制手段として,当該団体の活動状況を継続的に明らかにさせるための観察処分(同法5条等)と当該団体の無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の増大を防止する必要が有ると認めるに足りる事由があるとき,又は観察処分中の団体について報告義務違反若しくは立入検査拒否等が行われ,無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の程度の把握が困難であると認められるときは,当該団体に対し,一時的に活動を停止させる再発防止処分(同法8条等)を設けている。
このうち,観察処分は,3年を超えない期間を定めて公安調査庁長官の観察に付する処分であって,この観察処分によって課される当該団体の義務は,①当該団体の役職員の氏名,住所及び役職名並びに構成員の氏名及び住所,当該団体の活動の用に供されている土地・建物の所在・地積・規模・用途,当該団体の資産及び負債等の当該団体の活動に関する一定の事項の報告義務と②当該団体の所有又は管理する土地・建物への立入り,設備,帳簿書類等の検査の受認義務であり,当該団体の結成や活動そのものを制約するものではない。
また,当該団体の活動そのものを全面的に禁止し,集団示威運動等や機関誌紙の印刷・頒布等を禁止し,役職員又は構成員の活動を禁止する破防法の解散指定処分(同法5条ないし9条)と比較しても,観察処分は,当該団体の活動の根幹部分を制限するほどのものではなく,限定的な内容の規制処分ということができる。
したがって,当該団体が宗教団体であったとしても,観察処分による報告事項や立入検査対象物件は,当該団体や信者個人の宗教上の活動そのものを対象としているわけではなく,無差別大量殺人行為の実行に関する危険な要素を保有している当該団体の専ら世俗的側面における活動状況を解明するものとして行われるものである。
(3) 観察処分等の手続
公安調査庁長官は,観察処分等については,準司法機関(公安審査委員会設置法1条,3条ないし5条参照。委員長及び委員の任命は国会同意事項となっている。)である公安審に対して,当該処分の請求をすることとされており,その際には,請求に係る処分の内容,根拠となる法令の条項,請求の原因事実を記載した処分請求書(証拠書類又は証拠物を添付しなければならないとされている。)を提出しなければならない(団体規制法15条,26条1項,2項)。
公安審は,観察処分請求があった場合,公開の意見聴取手続を実施しなければならず,当該団体の役職員や構成員及び代理人の口頭意見陳述権や証拠書類等の提出権が認められており,その上で,処分請求の当否を判断し,処分請求に対する決定をしなければならない(団体規制法16条,20条,22条。なお,期間更新請求があった場合は,同法26条3項により,意見聴取手続ではなく,陳述書及び証拠書類等を公安審に提出する意見陳述の機会が当該団体に付与される。)。
また,公安審は,観察処分等の必要がなくなったと認められるときは,これらの処分を取り消さなければならない(団体規制法6条)。
(4) 団体規制法の憲法20条違反の有無
そこで,上記1の観点から,以上検討した団体規制法の観察処分等の制度の憲法20条違反の有無を検討する。
まず,団体規制法の観察処分等の対象が宗教団体であったとしても,上記でみたとおり,観察処分等の規制は,専ら当該団体の世俗的側面を対象とし,かつ,専ら世俗的目的によるものであって,宗教団体や信者の精神的・宗教的側面に容かいする意図によるものではなく,制度の目的も極めて重要な公益を保護することを目的としており,合理的ということができる。
次に,観察処分等の規制措置は,現在も無差別大量殺人行為の実行に関連する危険な要素を保有している団体に対して,継続的に役職員や構成員の氏名・住所等の専ら世俗的側面に関する一定の事項を報告させ,当該団体の施設等への立入検査を受忍させるものであり,上記の危険な要素を保有する団体の活動状況を明らかにさせるには必要かつ適切な措置ということができる。
これに対し,原告は,構成員の氏名及び住所の報告徴収は,信者個人の信仰不告白の自由を間接的に侵害していると主張しているが,当該団体の構成員の氏名及び住所等の情報は当該団体の活動状況を把握する上で必要な専ら世俗的な事項であり,信者個人の宗教面の内心の自由の告白を求めるものではないし,観察処分等に基づく報告義務や立入検査受忍義務の履行に伴って信者個人の宗教上の行為の自由に支障が生じたとしても,それはあくまで間接的かつ事実上のものであるにとどまるものである。
他方,観察処分等によって実現される利益は,国民の生命・身体の安全を始めとする国民生活の平穏を含む公共の安全であり,前記第1でも検討したように,現に我が国で両サリン事件のような一般市民に極めて重大かつ深刻な被害をもたらした無差別大量殺人行為が発生していることや国際的にも一般市民を犠牲とした無差別大量殺人行為が断続的に発生していることにも鑑みれば,観察処分等による規制は必要やむを得ないものといえる。
また,観察処分等の手続は,調査期間・請求者側の公安調査庁とは別個の組織である準司法機関的性格を有する公安審の下で,対象団体の意見表明,証拠提出の機会等を付与するなど団体規制法第3章の手続規定に基づいて行われ,その手続の適正も担保されているということができる。
以上からすれば,団体規制法の定める観察処分等は,無差別大量殺人行為から国民の生命・身体の安全を始めとする国民の生活の平穏を含む公共の安全を保護するという公共の福祉の観点から行われる制約であって,観察処分等が宗教団体を対象とするものであっても,当該団体の結成や活動そのものを制約するものではなく,当該団体や構成員の精神的・宗教的側面に容かいするような性質のものではなく,これによって生じる支障も間接的かつ事実上のものであるにとどまるものであり,また,観察処分等を行うための手続の適正も担保されていることからすれば,必要かつやむを得ないものであって,合理的な制約であるということができるから,観察処分等を定めた同法が憲法20条に違反するとは認められない。
(5) 本件更新決定の憲法20条違反の有無等について
原告は,以上のほかに,① 2名の公安調査官が,原告の在家構成員の実家を来訪したことにより,同構成員の家族に入信の事実が発覚し,家族から棄教を迫られ(甲7),② 公安調査官が,原告の在家構成員が勤務していた人材派遣会社の事務所を訪問して原告との関係を暴露した結果,同構成員が解雇された(甲8)点については,実際にも信仰不告白の自由が侵害されていると主張している。
憲法20条の保障する信教の自由は,内心の信仰にとどまる限り,絶対的保障を受け得るものであり,その一内容として,公権力によって,信仰を告白させもしくは推知しようとしたり,または一定の信仰を受け入れるよう強制したり,信仰等を禁止することも許されないというべきである。
しかし,原告の上記①②の主張や原告指摘の証拠を見ても公安調査官の行為態様は必ずしも明らかでないところ,仮に,上記①②の行為が事実として認められ,それが団体規制法7条1項の観察処分等を受けている団体の活動状況を明らかにさせるための調査としてされた行為であったとしても,それが違法な調査権行使であるとして国家賠償法上の責任を負うかどうかはともかくとして,少なくとも,観察処分等を定めた同法や本件更新決定の憲法20条適合性には影響はないものと解される。
すなわち,団体規制法の調査権は,  同法1条の目的を達成するために必要最小限度においてのみ行うべきであって,いやしくも権限を逸脱して,思想,信教,集会,結社,表現及び学問の自由並びに勤労者の団結権,団体行動権その他憲法の保障する国民の自由を不当に制約するようなことがあってはならないとされており(団体規制法3条1項),  当該団体が宗教団体であったとしても,観察処分等を受けている当該団体あるいは観察処分等に関し,現在も無差別大量殺人行為の実行に関連する危険な要素を有する当該団体の活動状況を明らかにさせるためのものであって,専ら世俗的側面に関する事項の調査にとどまるものであり,当該団体やその構成員の内心の信仰の自由や宗教上の行為の自由,宗教的結社の自由に容かいするものではないことからすれば,同法の当該団体や構成員に対する調査権制度そのものが,宗教団体である当該団体の構成員の信仰内容の告白を強制する効果を伴うものとは認められず,観察処分等を定めた同法や本件更新決定そのものが憲法20条,19条に違反するということはできない。
そして,原告が上記①②で主張する限度で具体的な調査権の行使内容を見ても,公安調査官が原告の構成員らに原告主宰の宗教を信仰しているか否か自体を他者に暴露したというよりは,原告の構成員であることをほのめかすなどして,その結果,他者に上記原告構成員が原告主宰の宗教を信仰している蓋然性が暴露されてしまったと評価すべきものであって,信仰内容そのものを告白させることを直接の目的としてこれを直接強制したものとはいえず,このような調査権の行使がされたとしても,そのことから翻って調査権制度や観察処分等の制度を定めた団体規制法や本件更新決定に原告構成員の信仰内容の告白を強制する効果が内在しているとは認められない(公安調査官の調査権行使態様の相当性等は,公安調査官の調査権行使に国家賠償法上の違法性があるか否かの問題として捉えられるべきである。)。
よって,原告の上記①②の主張内容は,国家賠償法上の責任の成否はともかくとして,少なくとも観察処分等を定めた団体規制法や本件更新決定の憲法20条適合性を左右するものではなく,採用することはできないから,本件更新決定についても憲法20条に違反するとは認められない。
なお,原告は,その他にB規約18条違反も主張しているが,これらの主張は,憲法20条違反の主張と同様の理由に基づく主張であり,この点は上記で検討したとおりであるから,原告の主張は採用することはできず,団体規制法や本件更新決定がB規約18条に違反するとは認めらない。
第3  争点4(憲法13条等違反の有無)及び争点6(憲法35条等違反の有無について)について
1  合憲性判断基準
(1) 憲法13条の合憲性の判断基準
憲法13条は,「すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする。」と規定しており,これは,国民の私生活上の自由が,国家権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものということができ,原告が問題にする現金,キャッシュカード,預貯金通帳,病院の診察券等の私物についてもこれが写真撮影されたり記録されたりするとその利用方法次第では個人の私生活やプライバシーが侵害される危険性があるから,これらの私物について同意なく国家権力により写真撮影されたり記録されたりすることのない利益ないし自由や居住空間に同意なく国家権力に立ち入られることのない利益ないし自由も個人の私生活上の自由の一つとして,憲法13条により保護されるものと解される。しかし,上記のような利益ないし自由も,国家権力の行使から無制限に保護されるわけではなく,公共の福祉のため必要のある場合には相当の制限を受けることは同条の規定に照らして明らかである。
そして,当該国家権力の行使が,公共の福祉のため必要な制限として相当なものか否かは,立法目的の合理性,国家権力行使の必要性・緊急性,国家権力の行使態様の相当性があるか否かによって決せられるものと解される(最高裁昭和40年(あ)第1187号同44年12月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁,最高裁平成2年(あ)第848号同7年12月15日第三小法廷判決・刑集49巻10号842頁,最高裁平成6年(あ)第687号同9年11月17日第一小法廷判決・刑集51巻10号855頁等参照)。
(2) 憲法35条の合憲性の判断基準
憲法35条の規定は,本来,主として刑事手続における強制につき,それが司法権による事前の抑制の下に置かれるべきことを保障した趣旨のものであるが,当該手続が刑事責任追及を目的とするものではないとの理由のみで,その手続における一切の強制が当然に上記規定による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。しかしながら,行政手続は,刑事手続とその性質においておのずから差異があり,また,行政目的に応じて多種多様であるから,行政手続における強制の一種である立入検査に全て裁判官の令状等の事前の司法審査を要すると解するのは相当ではなく,当該立入検査が,公共の福祉の維持という行政目的を達成するために欠くべからざるものであるかどうか,刑事責任追及のための資料収集に直接結び付くものであるかどうか,また,強制の程度,態様が直接的なものであるかどうかなどを総合判断して,裁判官の令状等の事前の司法審査の要否を決めるべきである(最高裁昭和44年(あ)第734号同47年11月22日大法廷判決・刑集26巻9号554頁,最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁(以下「最高裁平成4年大法廷判決」という。)参照)。
2  団体規制法の定める立入検査制度
上記1の観点から,公安調査官や都道府県警察職員による立入検査を定めた団体規制法の目的,立入検査の必要性の程度等,立入検査の態様・強制の程度等を検討する。
(1) 団体による無差別大量殺人行為には,これまで検討してきたように,密行性,高度の実現可能性,反復累行性があり,犯行の事前把握が困難であり,多数の生命・身体に危害が加えられるおそれが高いという特性があるのに対し,このような無差別大量殺人行為の危険から国民の生活の平穏を含む公共の安全を保護するという団体規制法の目的は,国家的,公益的,人道的見地からみても極めて重要な公益であるということができる。
このような重要な公益を達成するために,団体規制法は観察処分,再発防止処分等を規制措置として定めているところ,公安調査庁長官は,団体の危険な要素の程度に応じてこれらの観察処分,再発防止処分等の請求をすることができ(同法5条1項,4項,8条1項,12条1項),他方,観察処分等を受けている団体が活動状況を継続して明らかにする必要がなくなったと認められるときには,公安審において観察処分等を取り消さなければならず,その際には,公安調査庁長官から意見聴取をするものとされている(同法6条,手続規則19条。なお,再発防止処分の取消しについては同法10条,手続規則19条が定められている。)。
また,公安調査庁長官が,再発防止処分等を請求する際には,あらかじめ警察庁長官の意見を聴くものとされ,警察庁長官は必要があると認められるときは,公安調査庁長官に対し,再発防止処分等の請求が必要である旨の意見を述べることができるとされており,このうち再発防止処分についての意見を述べるために必要があると認められるときは,都道府県警察において必要な調査を行うことを指示することができ,この調査のため特に必要があると認められるときは,警察庁長官の承認を得て,都道府県警察の職員は当該団体に対して立入検査を行うことができるとされている(団体規制法12条2項,3項,14条1項,2項)。
そうすると,公安調査庁長官は,上記各処分の請求を時宜に応じて適切に行い,観察処分等取消しの際に的確な意見を述べるためには,常に当該団体の無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素の程度等を含め当該団体の活動状況を把握しておく必要があり,そのため,団体規制法は,公安調査官による任意調査権の行使や団体の報告義務の履行のみでは不十分な場合もあることに鑑み,立入検査を認めたものと解されるし,都道府県警察職員による立入検査も,公共の安全及び秩序維持に責任を持つ警察庁長官(警察法1条)が,当該団体の無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素の程度等当該団体の活動状況を適格に把握し,団体規制法12条2項,3項に基づき公安調査庁長官に対して適切な意見を述べられるようにするために認められたものであると解される。
したがって,団体規制法が定める立入検査は,同法の定める極めて重要な公益を達成するためには必要不可欠なものであるということができる。
さらに,上記で述べた無差別大量殺人行為の特性からすると,迅速かつ適切な規制措置が必要であり,情報通信機器や情報電子データを容易に消去し得るソフト等が高度に発達した昨今においては,上記の危険な要素の有無に関し,検査対象物を迅速かつ適切に調査する必要もあり,緊急性の度合いも高いものと認められる。
(2) 団体規制法が定める公安調査官や都道府県警察職員による立入検査は,上記(1)の団体規制法が定める行政目的を達成するために認められたものであって,刑事責任の追及を目的とするものではなく,同法も,立入検査の権限は,犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならないと規定していることからすると(同法7条4項,14条7項),当該団体や構成員の刑事責任追及のための資料の取得収拾に直接結び付く作用を一般的に有しているとは解されない。
また,団体規制法は,立入検査の実施に際し,当該団体の構成員らが立入り又は検査を拒み,妨げ又は忌避した場合にこれらの妨害や抵抗を直接排除する直接強制を公安調査官や都道府県警察職員に認めておらず,このような立入検査拒否等の行為に対して同法39条の刑罰を課することによって,間接的心理的に立入検査の受忍を強制するにとどまるものであり,この強制の程度が実質的に立入検査受忍義務者に対する直接的物理的な強制と同視すべき程度にまで達しているとも解されない。
そして,団体規制法7条2項や14条2項に定める立入りが許されるのは,当該団体が所有し又は管理する建物であり,本来的に構成員の住居に立ち入ることは予定されていないから個人の私生活上の自由を通常侵害することはなく,検査の対象物も当該団体が所有し又は管理する設備,帳簿書類その他必要な物件であり,個人の人格,思想,信条,良心等の内面そのものを調査の対象とすることは予定されていない(原告のような宗教団体である場合には,教義等を記載した書籍も調査の対象となることは十分に考えられるが,これとても,当該団体において無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素があるかという専ら世俗的側面からの調査にとどまり,内心の信仰の自由に直接介入するものではないと解される。)。
3  憲法13条等,35条違反の有無
(1) 憲法13条等違反の有無
上記2で検討したとおり,団体による無差別大量殺人行為には密行性,高度の実現可能性,反復累行性があり,犯行の事前把握が困難であり,多数の生命・身体に危害が加えられるおそれが高いという特性があるところ,団体規制法は,このような危険な要素を有する団体に対し,必要な規制措置を迅速かつ適切に及ぼすことによって,国民の生活の平穏を含む公共の安全を保護するという極めて重要な公益の達成を目的とするものであるから,立法目的は合理的なものといえる。
この目的を達成するためには,必要な規制措置を迅速かつ適切に選択し,公安審に請求することが必要であり,それには当該団体の保有する無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素の有無・程度等を含めた活動状況を的確に把握することが前提として必要となり,このため公安調査官や都道府県警察職員に立入調査権の行使が認められたものと解されるから,立入検査制度についても,その立法目的には合理性があり,その必要性も優に認められる。
また,上記の犯行の事前把握が困難であること等の無差別大量殺人行為の特性にも鑑みれば,迅速かつ適切に当該団体の保有する上記の危険な要素等を含めた活動状況を把握する必要があるし,情報通信機器や情報電子データを容易に消去し得るソフト等が高度に発達した現在においては,検査対象物を緊急かつ迅速に調査する必要性も高い。
そして,立入りの対象は,本来的には当該団体の所有し又は管理する土地又は建物であるところ,原告は,原告の出家構成員の居住空間への立入りを問題としているが,原告の前身であるa教では,出家して教団の施設に集団居住する構成員らによって両サリン事件が秘密裏に計画され,事前に発覚することなく敢行されたことからすると,原告の出家構成員の居住空間も含めて立入りの対象とする高度の必要性が認められるし,立入りや検査の態様も個人の私生活上の自由の侵害の度合いが低い相当な方法で行われれば十分許容され得るものと解される。
これに対し,原告は,私物検査が常態化していて恣意的な検査が行われていると主張するが,当該団体の構成員の私物が当該団体の所有又は管理する物であるか否かを確認するための調査は,上記の団体規制法の目的からは必要であり(殊に当該団体の財務状況の把握は上記危険な要素等を含めた活動状況の把握としても重要であり,構成員個人の資産に属するのか当該団体の資産に属するのかは十分に解明する必要があるといえる。),十分許容されていると解されるし,捜索差押えにわたらない程度の相当な方法で行われる調査(例えば,帳簿類の提出や検査対象物が入っていると思料される金庫等の開扉を求める行為や,検査結果を記録するための写真撮影や複写行為等)も当然に許容されると解されるのであり,仮にこれを超える検査がされたとしても,公安調査官や都道府県警察職員の立入検査権行使の違法性,すなわち国家賠償法上の違法性の有無として問われるべきものにすぎず,これをもって,立入検査権を定めた団体規制法が直ちに憲法13条に違反するということはできない(本件一斉立入検査について,全国24か所の原告の施設等で,公安調査官が,① 立入検査は観察処分を受けている団体の活動状況を明らかにするために実施されるものであり,検査対象物かどうかの判断は,公安調査官が行う,② 立会人が私物だから検査対象外であるなどと勝手に判断して検査を拒むことは検査拒否となる,③ 立会人が私物と主張する物件も,団体活動に関している(原文ママ)検査対象物であると,公安調査官が判断すれば検査を行うし,その検査を拒否した場合,検査拒否と判断する,④ 施設内にある現金についても一円単位まで勘定する,⑤ 記録の方法も公安調査官が必要かつ合理的と判断した方法で行うので,交渉には応じないと,共通の宣言を行ったとしても(甲94),公安調査官の立入検査の現場における行動準則としては,上記検討結果に照らしても問題はない。また,原告は,本件立入検査は違法な私物検査であったとか身体捜索を強行されたとする原告構成員の陳述書(甲112,119,122ないし125等)を多数提出しているが,後記第5の5でも認定するように原告の受検態勢には不備が認められ,原告構成員にも検査妨害の疑いのある検査非協力が組織的に認められることに徴すれば,直ちにこれを全面的に信用することには躊躇を覚えるし,仮にこのような事実が認められ,原告構成員のプライバシー権が侵害されたとしても,上記のとおり,個々の公安調査官の立入検査権行使につき国家賠償法上の違法性があったか否かという問題として問われるべき事柄にすぎず,これをもって立入検査権を定めた団体規制法が憲法13条に違反するとは認められない。)。
よって,上記の原告の主張は理由がなく,採用することができない。
以上からすれば,立入検査制度を定めた団体規制法は憲法13条に違反しないものといえる。
なお,原告は,B規約17条違反も主張しているが,これらの主張は,憲法13条違反の主張と同様の理由に基づく主張であり,この点は上記で検討したとおりであるから,立入検査制度を定めた団体規制法がB規約17条に違反するとは認められず,原告の主張は採用することができない。
(2) 憲法35条等違反の有無
上記2や上記(1)で検討したとおり,団体規制法の定める立入検査は,国民の生活の平穏を含む公共の安全を保護するという極めて重要な公益を達成するために必要不可欠なものということができ,また,立入検査が刑事責任追及のための資料収集に直接結び付くものであるとは解されないし,その強制の程度・態様も直接強制ではなく,刑罰による間接的・心理的に当該団体や構成員に立入検査受忍義務を負わせるものにすぎないことからすれば,裁判官の令状等の事前の司法審査や原告が主張するような準司法機関である公安審の事前の審査がなくても,同法は憲法35条の法意に反するとはいえず,団体規制法が違憲であるということはできない。
そして,立入検査が刑事責任追及に極めて密接に関連した目的を有しているとの原告の主張も,上記検討からすれば,理由がないというべきであるし,原告の構成員に対する私物検査など検査範囲が恣意的に拡大され,拒否した場合には再発防止処分が課せられることを理由に実質的に刑事訴訟法の「捜索」と同内容の強制処分であるとの原告の主張も,立入検査行為そのものが,直接的な強制手段とは解されない以上,理由がない。
この点をおいて,原告主張の各点を検討するとしても,上記(1)で検討したように,団体規制法7条2項や14条2項に定める検査として,当該団体の構成員の私物が当該団体の所有又は管理する物であるか否かを確認するための調査を行うことは,同法の目的からは必要で,許容されるものと解されるし,捜索差押えにわたらない程度の相当な方法による調査も当然に許容されると解されるから,原告の主張には理由がないし,仮にこれを超える検査がされたとしても,上記(1)のとおり,公安調査官等の立入検査権行使についての国家賠償法上の違法性の有無として問われるべきものにすぎず,これをもって,直ちに立入検査権を定めた団体規制法が憲法35条に違反するものと解することはできない。
よって,原告の上記主張はいずれも理由がなく,採用することができない。
第4  争点5(憲法31条等違反の有無)について
1  憲法31条の合憲性の判断基準
憲法31条の定める法定手続の保障は,直接には刑事手続に関するものであるが,行政手続については,それが刑事手続ではないとの理由のみで,そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。
しかしながら,同条による保障が及ぶと解すべき場合であっても,一般に,行政手続は,刑事手続とその性質においておのずから差異があり,また,行政目的に応じて多種多様であるから,行政処分の相手方に事前の告知,弁解,防御の機会を与えるかどうかは,行政処分により制限を受ける権利利益の内容,性質,制限の程度,行政処分により達成しようとする公益の内容,程度,緊急性等を総合較量して決すべきものであって,常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である(最高裁平成4年大法廷判決参照)。
この行政処分の相手方に事前の告知,弁解,防御の機会を与えるか否かという点については,最高裁平成4年大法廷判決の後,行政処分等の行政手続に関し共通する事項を定め,行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り,もって国民の権利利益の保護に資することを目的とした行政手続法(平成15年法律第88号)が制定されたことにより,一般的に解決されているが,同法はあくまで,行政手続に関する一般法にとどまり,行政処分等の手続に関し他の法律に特別の定めがある場合は,これによることとなり(同法1条2項),観察処分の期間更新決定の手続についても,団体規制法33条により,行政手続法第3章は適用されず,団体規制法の定める手続によることとなる。
そして,団体規制法において,行政処分の相手方に対し,いかなる内容・手続で事前の告知,弁解,防御の機会を与えるかについても,行政処分により制限を受ける権利利益の内容,性質,制限の程度,行政処分により達成しようとする公益の内容,程度,緊急性等を総合較量して決すべきものであって,常に一定の内容・手続が定められていることを必要とするものではないと解するのが相当である。
2  憲法31条違反の有無
(1) 団体規制法上の規制措置の手続の概要
そこで,上記1の観点から,観察処分等の団体規制法上の規制措置の手続の概要を検討する。
ア 観察処分等は,いずれも調査期間である公安調査庁長官が自ら行うのではなく,公安調査庁長官の請求を受け,独立して職権を行使する委員長及び委員6名をもって組織される準司法機関である公安審が行うものとされている(団体規制法12条1項,5条1項,4項,公安審査委員会設置法4条)。
イ 公安審は,観察処分の請求があったときは,① 被請求団体から個人の秘密の保護のためやむを得ないと認める場合を除き公開の手続で意見聴取を行うこととされており(団体規制法16条),② そのために公安審は,あらかじめ,意見聴取を行う期日及び場所を定め,その期日の7日前までに,被請求団体に対し,  公安調査庁長官の請求に係る処分の内容及び根拠となる法令の条項,  請求の原因となる事実,  意見聴取の期日及び場所を通知することとされている(同法17条),③ また,観察処分請求に係る意見聴取の期日の冒頭において,公安調査庁の職員に請求に係る処分の内容及び根拠となる法令の条項並びに請求の原因となる事実を当該期日に出頭した者に対し説明させなければならないとされている(同法19条2項)。
他方,被請求団体の役職員,構成員及び代理人は,5人以内に限り意見聴取の期日に出頭して,意見を述べ,証拠書類等を提出することができ(団体規制法20条1項。なお,意見聴取の期日の出頭に代えて,陳述書及び証拠書類等を提出することもできる。),指名委員等の許可を得て公安調査庁の職員に対し質問をすることもできる(同法20条2項)。
なお,再発防止処分の請求に係る意見聴取の手続は観察処分の請求に係る意見聴取の手続と同様である(団体規制法12条1項前段,16条)。
ウ 公安審は,期間更新の請求があったときは,① 被請求団体に対し,意見陳述の機会(被請求団体は,陳述書及び証拠書類等を提出する方法により意見陳述を行うものとされている。)を付与するものとされており(団体規制法26条3項),② 陳述書の提出期限の7日前までに,被請求団体に対し,  更新が予定される処分の内容及び更新の根拠となる法令の条項,  更新の理由となる事実,  陳述書の提出先及び提出期限を通知しなければならないとされている(同法26条2項,3項)。
(2) 憲法31条違反の有無
再発防止処分等により制限される権利利益の内容・性質や制限の程度は,過去に団体の活動として,役職員又は構成員が,無差別大量殺人行為を行った団体で,現在も無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素を有する団体の活動状況等一定の事項について報告義務を課したり,団体や構成員らに立入検査受忍義務を課して,団体の土地・建物に立ち入らせ,設備,帳簿書類等必要な物件を検査されることにより,直接的には,構成員のプライバシー権等の私生活上の自由等を侵害し得るし,他方,間接的には,構成員や団体の活動を萎縮させ得る効果もないではないから,宗教的活動の自由や宗教的結社の自由も侵害し得る。
他方,再発防止処分等により達成しようとする公益の内容・程度としては,前記第1でも検討したように,国民の生活の平穏を含む公共の安全であり,団体による無差別大量殺人行為には,密行性,高度の実現可能性,反復累行性があるという特性があり,多数の生命・身体に危害が加えられるおそれが高いから,国家的,公益的,人道的見地からその安全の確保は極めて強く要請されているということができ,このような無差別大量殺人行為の特性と重要な公益の確保の観点からすると,迅速かつ適切な規制措置が必要であり,情報通信機器や情報電子データを容易に消去するソフトも高度に発達した昨今においては,上記の危険な要素の有無に関し,検査対象物を緊急・迅速にかつ適切に調査する必要性も高いものと認められる。
以上を総合較量すれば,観察処分等をするに当たっては,後者の公益の内容の重要性とその程度や必要性・緊急性の度合いの高さが,観察処分等により制限される権利利益の内容・性質,制限の程度の高さを凌駕していると認められ,観察処分等の相手方に対し,原告が主張する種々の内容・程度の事前の告知,弁解,防御の機会を与える旨の規定がなくても,(1)記載の手続保障を定める団体規制法が憲法31条に違反しているということはできない。
なお,原告が指摘する行政手続法第3章の適用除外の点も,仮に観察処分等について,行政手続に関する一般法である行政手続法が適用された場合,これらの処分は行政手続法13条1項1号のいずれにも該当しないことが明らかであるから,処分の相手方への事前の告知,弁解,防御の機会の付与としては,同項2号により弁明の機会の付与の手続となるところ,これと団体規制法の定める手続を比較しても,調査機関とは独立の準司法機関である公安審が意見聴取や意見陳述の手続を主宰し,観察処分の請求に係る意見聴取の手続に際しては,原則として公開の手続によることとされ,団体の役職員等は,その期日に出席して,口頭で意見陳述を行うことができ(これに対し,行政手続法による弁明の機会の付与手続においては,行政庁が認めた場合に限って,口頭の弁明を行うことができる(同法29条1項)。),公安調査庁の職員に対して質問を発することもできるなど,総じて,団体規制法の方が,処分の相手方に対し手厚い手続保障をしているものということができ,そうであるからこそ,同法は33条において一般法である行政手続法第3章の適用を排除しているものと解される。
そうすると,団体規制法が行政手続法よりも手続保障に手厚くないことを前提としている原告の主張は,理由がないといわざるを得ない。
また,原告は,手続保障に欠ける根拠として,① 団体規制法17条1項各号の事項を当該団体に伝えるのが意見聴取期日の7日前であるという点や,② 観察処分の請求に係る事件は,同法17条2項の公示があった日から30日以内に決定するものとされている(同法22条2項。努力義務)点については,上記のとおり,同法が定める規制措置は緊急性の度合いが高いことからすれば,このように明確かつ短期のうちに期限を区切ることは必要かつ合理的ということができるし,前者については,聴聞の通知の方式に関する規定であるが,行政手続法15条の一定の事項を聴聞期日までに不利益処分の名宛人に通知するのは「相当な期間」をおいてしなければならないとしているところ,この期間の長さの相当性の程度も処分の内容・性質によって千差万別であると解されており,1,2週間程度であることが多いとされていることと対比しても,著しく短いとはいえず,手続保障に欠けるということはできない。
次に,原告が意見聴取手続等において証拠閲覧権が規定されていないとする点や観察処分の期間更新決定の際には口頭意見陳述権が規定されていないとする点についても,観察処分等の手続については高度の緊急性があることからすると,証拠の閲覧権を認めなくても,請求の原因となる事実や更新の理由となる事実を事前に相手方に知らせることによっても防御権を行使することは十分可能であり,手続保障に欠けることはないといえるし,観察処分の期間更新の際に口頭意見陳述権を認めなくても,期間更新決定は,先行する観察処分との継続性が前提となっている処分であるから,先行する観察処分等における手続内容に基づき,陳述書や証拠書類等を提出することにより適切に防御権を行使することは十分可能というべきであるから,いずれについても手続保障に欠けるところはないといえる(なお,原告は,期間更新決定について,口頭意見陳述権がないのは,同法がa教という特定の団体のみを対象としていることと無関係ではないなどと主張しているが,前記第1で検討した立法経過においても原告主張のような事実は認められないから,原告の主張は理由がない。)。
その他,原告は,団体規制法が手続保障に欠ける根拠として,より権利侵害の程度が強い再発防止処分についても観察処分と同じ意見聴取手続にすぎない点を指摘している。
確かに,観察処分より制約される権利利益の内容,性質,制限の程度も再発防止処分の方がより高まっていることは否定できないものの,他面において,再発防止処分は観察処分よりその危険の要素が増大している場合に関する手続であるから,達成すべき公益の内容や程度,緊急性等も観察処分と比べてより高まっているということができるところであり,そうした中で,観察処分と同等の意見聴取の手続を認めたものというべきであり,手続保障に欠けるという批判は理由がない。
よって,原告の上記主張は理由がなく,採用することができず,団体規制法が憲法31条に違反しているとはいえない。
第5  本件更新決定の要件の有無等に関する判断について(争点7ないし争点12)
1  本件更新決定の要件の有無等に関して認定した事実
(1) a教の沿革・組織・活動実態等
ア a教の沿革,組織規模及び運営態勢等
(ア) a教は,前提事実1(1)のとおり,Bを教祖・創始者として活動を開始して,徐々に組織を拡大させ,昭和62年頃には,出家制度を導入した。出家信徒(サマナ)は,自己の全財産を「布施」と称してa教に寄進し,現世との関わりを一切断った上で,Bに絶対的に帰依して修行するとともに「ワーク」と称してa教のための無償労働に従事し,同施設内で起居する者である。他方,在家信徒とは,各自の居宅からa教の支部・道場などに通い,出家信徒の指導の下に,その教義を学び修行する者である。
a教は,平成元年8月29日,宗教法人「a教」の設立の登記をし,平成6年6月頃までに,国内に合計24か所の支部・道場及び附属医院を設け,構成員数を出家信徒約1000人,在家信徒約1万人に増大させるなどして,その勢力を拡大した。
(以上につき,前提事実1(1),乙C24,乙F17)
(イ) a教は,これらの構成員に対し,「修行の進度,精神の発達度」に応じて「心の成熟・霊性の高さ」の度合いを示すとする「ステージ」という独特の位階(最終解脱者でBの位階である「尊師」を頂点とし,「正大師」(大乗のヨーガを成就したと認定された者),「正悟師」(マハームドラーを成就したと認定された者),「師」(クンダリニー・ヨーガを成就したと認定された者),「小師」,「沙長」,「沙門」などの称号があり,平成6年7月以降改正されている。)を与え,この位階制度により,Bを頂点として位階の高い者が位階の低い者を支配・管理する上命下服の組織構造を有していた。a教は,このような組織構造の下,出家信徒を教団管理下の施設に集団居住させ,「お供物」と称する食事をとらせたり(出家制度),違法薬物を投与して構成員の脱会を阻止したりするなどして構成員を支配・管理し,一般社会と隔絶した独自の閉鎖社会を構築していった。
(以上につき,乙B3の1・83,乙B7の1,乙F17)
イ a教の教義
a教の教義の要旨は,創始者であるBの説く教えを根本として,シヴァ神の化身であるBに対する絶対的な帰依を培った上,自己の解脱・悟りに到達する道である小乗(ヒナヤーナ)を修めるとともに,衆生の救済を主眼とする道である大乗(マハーヤーナ)及び衆生救済の最速の道である秘密金剛乗(タントラ・ヴァジラヤーナ)の各修行を実践するというものである。(乙C24)
Bは,上記の教えの中でも,タントラ・ヴァジラヤーナを最上位に位置付け,これを実践する上での重要な具体的規範として「五仏の法則」があり(この中には,悪業を積んでいる魂は早く命を絶つべきであるとする「アクショーブヤの法則」や真理の実践を行う者にとっては結果が第一であり,結果のためには手段を選ばないとする「アモーガシッディの法則」がある。),「グルのためだったら死ねる,グルのためだったら殺しだってやるよと,こういうタイプの人は,クンダリニー・ヨーガに向いているということになる。…(途中略)…例えばグルがそれを殺せという時は,例えば相手はもう,死ぬ時期にきている。そして,弟子に殺させることによって,その相手をポアさせるというね,一番いい時期に殺させるわけだね。」(昭和62年1月4日丹沢集中セミナーでの説法),「わたしたちは,…(途中略)…すべての魂を救済したいと考える。…(途中略)…しかし,時がない場合,それをセレクトし,必要のない魂を殺してしまうこともやむなしと考える智慧あるもの,あるいは徳のある魂があったとしてもそれはおかしくはない。」(平成5年4月18日杉並道場での説法。)などと,真理のため,また,教祖であるBの指示ならば殺人も許されることを説き,死者の魂は「ポア」ないし「ポワ」されて高次の精神世界へ転生するなどと説いている。(乙B6の1・10・11・16・27・28,乙C24,25)
このBが説くタントラ・ヴァジラヤーナの特色は,たとえ自己は悪業を積むことになっても他に対して善業となるならば,それを最高の実践課題として実践する点にあり,グルであるBへの絶対的な帰依が必要であるとし,その実践として,苦しみの限界に自己を置き,そこにおいて一切乱れない心を形成する修行であるマハームドラーの修行を行い,心をグルと合一させることが重要であるとされている。(乙B6の1・38・39)
そして,両サリン事件に関与したa教の構成員らが,マハームドラーの修行の名の下に犯行を指示され,Bの説く衆生救済のため,タントラ・ヴァジラヤーナ及びその具体的規範である五仏の法則に則って犯行を実践したと概ね供述していること(乙B6の27・40ないし43・45)からも,これらのa教の教義は,両サリン事件の実行に際して構成員らの行動規範となっていた。
ウ a教の政治上の主義とその発現
(ア) a教は,その最終目的である衆生救済を実現するためには,世界をa教の教義に基づいた社会であるシャンバラ(理想郷)と化す必要があり,その第一段階として日本のシャンバラ化を実現するという日本シャンバラ化計画を打ち出し,それは,① 東京,大阪,名古屋,福岡,札幌,仙台,金沢の7つの主要都市にa教の支部開設し,② これら7つの主要都市に総本部道場を建設し,a教の教義の布教・実践の拠点とし,③ 教義に基づいた生活をすることができるa教の村「ロータス・ヴィレッジ(蓮華の村)」を建設するというものであった。
しかし,Bは,平成元年頃には,「わたしが政治に立とうとしたのも,宗教だけでは済度するスピードが遅いと。だから政治的な力を使って,何とか早くシャンバラ化計画を進めたい」(乙B6の9。「ヴァジラヤーナ教学システム教本」に掲載された平成元年9月12日のBの説法),「純粋な宗教活動のみでは,様々な社会問題は解決されないということ。それゆえ,根本的に政治と宗教は切り離せない。…(途中略)…徳によって政を行い,地上に真理を広める転輪聖王(引用注:インド神話において世界を統一支配する帝王の理想像,世界の政治的支配者を指す。)としての役割を果たしていきたい。」(乙B6の12。平成元年12月25日,a教出版発行「p5」No.27・147頁)などと説き,政治の力を使って上記のBの説くところの衆生救済を実現し,Bを独裁者とする祭政一致の専制国家を樹立するという政治上の主義(本件政治上の主義)を有するに至った。
(以上につき,乙B6の1,乙C24)
(イ) Bは,平成元年8月頃,「j党」という名称の政治団体を結成し,Bを始めとするa教構成員合計25名が,本件総選挙に立候補したが,いずれも落選したことや全国各地でa教の進出に反対する住民運動が起こったこともあり,社会に対する反発を強めるようになり,同年頃には,現行民主主義制度内で政治的支配力を強め日本シャンバラ化計画を実現することは不可能であり,本件政治上の主義の実現のためには,武力によって我が国の現行国家体制を破壊し,a教の活動に反対する勢力は教義の実践を妨げる悪業を積む者であるからこれを抹殺するしかないとの認識を有するに至り,「a教は,やはり,最終的には軍事力を有することになるんだろう…(途中略)…それはちょうど,ヒトラーが自分の運命に対して,全く抵抗できず,そして,第二次世界大戦の中心的な位置に据えられ,そして悪名だけを着せられて去って行かなきゃならなかったカルマ,これと,私のカルマというものはひょっとしたら似ているのかもしれないな,という印象があります。…(途中略)…a教の教団は,つまり単なる宗教集団ではなく,世界統治の機構に変化する時期がくるということが予言されています。」(乙B6の11。平成5年1月31日のBの説法),「1997年に日本の王になる。2003年には世界の大部分がa教の勢力になる。真理に仇なす者はできるだけ早く殺さなければならない。(平成6年2月下旬頃のBの言動)」(A16の公判廷での供述)などと説き,本件政治上の主義を実現するための手段として,ボツリヌス菌や炭疽菌などの生物兵器の開発(平成2年3月頃から),サリンの生成(平成6年2月中旬)・サリン量産用プラントの建設(平成6年12月頃),ロシア製自動小銃の模倣品の製造(平成6年6月下旬頃から)などの武装化を進めた。(乙B6の1,乙C24,28)
なお,a教は,本件政治上の主義の実現に向けて,Bの指示で,内部組織の呼称を国家組織を模倣したものに変更したり(「省庁制度」の導入),Bを主権者とし祭政一致の国家の憲法草案「太陽寂静国基本律第一次草案」などをA6に命じて立案させるなどしていった。(乙C24)
(ウ) a教は,本件政治上の主義を推進する上での障害を除去すること等を目的として,両サリン事件を敢行し,不特定多数の者を死傷させた。(前記第1の2(1))
(2) a教の組織等変更及びa教等に対する観察処分等
ア 本件観察処分の決定までの概況
(ア) a教については,平成7年5月16日に地下鉄サリン事件による殺人罪等によりBが逮捕された後,同年12月19日,東京地方裁判所が決定した宗教法人法に基づく解散命令に対する即時抗告が東京高等裁判所で棄却されたことにより,同解散命令は確定し,さらに,その清算手続中の平成8年3月28日,東京地方裁判所により破産宣告がされた。
また,公安調査庁長官は,同年7月11日,公安審に対し,a教について,破防法の解散指定請求をしたが,公安審は,平成9年1月31日,同請求を棄却する旨の決定をした。
(以上につき,前提事実1(3))
(イ) 上記(ア)の間,a教は,破防法による解散指定処分による団体の存亡に危機感を感じて,正悟師以上の「ステージ」の者による合議制の意思決定機関である「長老部」を設けるなどの組織改編をしたり,Bが教祖の地位を引退する旨表明したこともあったが,その一方で,正悟師ら幹部構成員は,地下鉄サリン事件等と修行は別であるとか,Bへの帰依を深めるよう説法するなどし,破防法の解散指定請求が棄却されると,パソコンショップ等による事業収益を拡大させ,破産手続により処分した支部・道場の再建・新設や組織機構の改革,脱会した構成員の復帰や新規の構成員獲得活動を推進していった。
このこともあり,a教は,平成8年11月時点で約1000名(出家信徒約500名,在家信徒約500名)まで減少していた構成員数が,平成11年12月の団体規制法制定時頃には,約1500名(出家信徒約500名,在家信徒約1000名)に増加していた。
これらの出家信徒は,ほぼ全員,在家信徒は半数以上が,両サリン事件以前から信徒であった者である。
なお,Bは,a教の構成員に対し,①平成7念12月頃,Bの長男らをBと観想すること(そうすることによって,構成員の霊的な道筋が確保されるとしていた。)を,② 平成8年頃,自己の刑事事件の弁護人のA25を介して,破防法による解散指定処分を受けた後の新団体の名称として,「b教」(ユダヤ文字でアルファを意味する。)とすることを指示していた。
(以上につき,前提事実1(3),乙B2の1,乙B3の1,乙B3の87,乙C20,24,乙F17)
(ウ) a教は,地下鉄サリン事件以前に,Bの説法を登載した教学用教本である「特別教学システム教本」を発刊していたほか,破防法7条に基づく解散指定処分等に備えて,団体の結束を維持し,Bの説く教えを集大成することを意図して,平成7年11月頃から平成8年1月頃にかけて,Bの説法集等を取りまとめた「p1」と題する書籍全4巻を刊行し,平成9年4月以降,構成員に閲読を義務付けていた。
これらの書籍には,上記1(1)イ及びウで認定したa教の教義やa教の政治上の主義に関するBの説法が登載されている。(以上につき,乙B3の1・23・36・37・64・78・97・105,乙B6の4・6・8・17・19・24・29・31・32・37ないし39)
イ 本件観察処分の決定から第1回更新決定までの概況
(ア) 公安審は,公安調査庁長官からの本団体を同長官の観察に付する処分の請求につき,平成12年1月28日,本団体に対し,本件観察処分の決定をし,本件観察処分は同年29日に官報への公告により効力が生じた(b教は,東京地方裁判所に本件観察処分の取消訴訟を提起していたが,東京地方裁判所は,平成13年6月13日,b教の請求を棄却する旨の平成13年判決を言い渡し,同判決は確定した。)。(前提事実2(1)アイ)
(イ) これに対し,a教は,平成12年2月4日,b教を正式に発足させ,A5がその代表者に就任したが,平成11年12月29日に広島刑務所を出所してa教の運営に携わっていたCが,平成14年1月30日,A5に代わって,b教の代表者に就任した。
b教は,本件観察処分やその取消訴訟の敗訴判決を受けて,以下の教団改革を発表した。
(以上につき,乙B1の10・12,乙B2の1,乙B3の1・88)
a b教は,平成12年1月18日,① Bの両サリン事件等の刑事事件の刑事責任については,係争中であるため断定し得ないものの,教団執行部の見解として,関与したのではないかと思われるという認識を有しており,② 新団体では教祖を置かず,Bは開祖であり,観想の対象・霊的存在であって,信者に指示する存在ではないと位置付け,③ 危険とされる教義を破棄し,Bが作ったa教のインドヨーガ,原始仏教,大乗仏教の教えに限定した教典を作成し,信者に周知徹底させ,④ 従来の信者から改めて入会申込書と無差別大量殺人行為を行わないことと等の誓約書の提出を求め,また,反省の意を示さない重大事件の関与者との連絡を禁止し,⑤ 「長老部」を廃止し,上層部への権力集中を緩和すること等からなる「事件に関する総合的見解表明及び抜本的教団改革の概要」と称する教団改革案(以下「平成12年改革案」という。)を発表した。
b b教は,平成13年8月24日,① 一般出家信者によるBの公判傍聴を平成14年度以降自粛すること(最後に傍聴を希望する者については,平成13年9月6日以降の公判につき,原則1回に限って認める。),② 全出家信者に配布されていた「p1」全4巻を全て回収し,b教で編纂した教義集を信者に配布すること,③ 各自治体・地域住民に対する主要施設の公開を今後も定期的に行い,公安調査庁に提出している活動報告書を基に自治体・地域住民に情報提供をし,市民と共存できる環境作りをしていくこと等の内容を盛り込んだ「宗教団体・b教 2001年度教団改革の指針」を発表した。
c その後,b教は,平成14年2月17日,a教が関係した一連の事件・犯罪を正当化するいかなる教義も信仰せず,Bを絶対者等とせず,構成員を指揮する教祖・代表・構成員としないとした上で,① Bの写真等を施設や構成員個人所有の祭壇等に備え付けず,Bにまつわる文書・説法・写真・ビデオ映像・マントラ・歌・楽曲等の教材は,これによって事件が引き起こされたものとは思わないものの,事件に関連した可能性がある内容を含むものは一切使用しないこととし,Bの公式呼称を「旧団体代表」とし,「尊師」,「開祖」等の呼称を禁止すること,② 構成員の犯罪行為を禁止し,過去に犯罪を犯し有罪判決を受けた者は,十分反省し,二度とそのような事態を招かない誓約をしなければならないこと,③ 被害者・遺族への謝罪と賠償を行っていくこと,④ 説法会や教材等において,Bを絶対者等としたり,事件・犯罪を肯定するかのような誤解を受けるおそれのある表現をしないこと,⑤ タントラ・ヴァジラヤーナやポワ等については,これ自体によって事件が起こされたとは思われないものの,これらの用語等の公式解釈をb教において示すこととし,公式解釈を無視して過去の教材を使用することを禁止すること,⑥ 「p1」については,必要な改訂を加え,改訂前のものについて使用を禁止すること,⑦ PSI(パーフェクト・サーヴェーション・イニシエーション。a教の修行用の機具であり,Bの脳波データを発生させるとする基盤部分と頭部に装着する電極付きのヘッドギア部分で構成される。これを装着するとBの脳波が注入されてBと同じ瞑想状態に至るとされている。以下同じ。)については,Bの脳波によるマインドコントロール装置であるとの誤解を受けており,そのような誤解を受けにくいものに改善していくこと,⑧ 地域住民に対する情報提供,対話の促進を図り,社会融和に務めること等を内容とした「宗教団体・b教活動規定」(以下「b教活動規定」という。)を制定し,同日から施行した。(乙B1の12)
(ウ) Cは,B及びa教の教義に対する絶対的な帰依を要求する指導を構成員に対して行う一方で,逮捕される前のBから,① a教とは別の宗教団体を作る,② 例えば,シヴァ大神を大黒天と呼び変えるような,衣替えをした団体にする,③ 日本人の常識から見て危険な説法はたとえa教にとって本質的な部分であっても外してもいい等の指示を受けていたなどとして,平成12年改革案やb教活動規定を制定するなどして,外形上,Bの影響力を払拭したかのように装いながら,真実はBに対する絶対的帰依を維持しつつ,Bの説く教義を広め,Bの意思を実現することを目的とする活動(「B隠し」)を展開していった。
なお,公安調査官が,平成14年9月10日に東京都世田谷区〈以下省略〉に所在する「k施設」の立入検査をしたところ,構成員2名が「p1」を使用していたことや,「事件についてよく考えると,その裏にグルの大いなるマハームドラーと大いなる慈愛が隠されていることに気づきます。」,「そしてグルに感謝しなければなりません。なぜなら,一人世間の矢面に立ち罪の償いをさせられ,ほふられた子羊の運命を引き受けられているのだから。」などと暗に地下鉄サリン事件を正当化し,Bへの帰依を示す内容の記述がある「日記」のデータが構成員の私物パソコンから発見された。
(以上につき,乙B1の1・15・16)
(エ) ロシア人のa教信者であるDは,ロシアを含む多くの国でa教の活動が禁止されたことに不満を抱き,日本国内でテロ行為を行うことでBを強制的に解放させる必要があると考え,平成11年3月頃から平成12年6月頃にかけて,自動小銃や手榴弾等の武器・弾薬,自家製爆発装置を調達・製造するなどし,2度にわたって,日本に入国して,これらの武器・弾薬,自家製爆発装置を隠匿・設置予定場所の下見をし,テロ行為を行うとの脅迫を日本政府にすることで,Bの開放等を要求することを計画していたが,平成13年7月1日,ロシア連邦保安庁に逮捕されたため,計画は実行されなかった(D事件)。
ロシア沿海地方裁判所は,平成14年1月23日,D,A18,A26(以下「A26」という。),A19に対し,ロシア連邦刑法222条(武器,弾薬,爆発物及び爆発装置の違法な入手,譲渡,売却,保管,輸送又は所持),同法223条(武器の違法製作)等の罪により,① Dを最低労働賃金の100倍の罰金刑,財産の没収を伴う8年の自由剥奪,② A18を財産の没収を伴う6年6か月の自由剥奪,③ A17を財産の没収を伴う4年6か月の自由剥奪,④ A26を3年の自由剥奪,2年6か月の観察期間を伴う執行猶予,⑤ A19の刑事責任を免除し,精神病院での一般的強制治療を命ずる判決を言い渡した。
なお,Dは,a教の出家構成員のA9に対し,平成11年8月中旬頃にロシアでのa教を発展させるとの名目で,同年11月にa教の宗教文献の出版活動を発展させるとの名目で金銭的支援を要請し,それぞれ,A9から,前者については,同年10月4日に3万米ドル,後者については,同年11月24日に900万円を借り受けた。
(以上につき,乙B7の1・29)
ウ 第1回更新決定から第2回更新決定までの概況
(ア) 公安審は,公安調査庁長官からの本団体の観察処分の期間の更新の請求につき,平成15年1月23日,第1回更新決定をし,同決定は,同月29日に官報への公告により効力が生じた(b1教は,東京地方裁判所に第1回更新決定の取消訴訟を提起していたが,東京地方裁判所は,平成16年10月29日,b1教の請求を棄却する旨の判決(東京地方裁判所平成15年(行ウ)第235号同16年10月29日判決。以下「平成16年判決」という。)を言渡し,同判決は確定した。)。(前提事実2(2)ア)
(イ) b教は,同年2月7日,同月6日付けで,ヘブライ語の「X」の本来の正確な発音は「b1」であることを理由として,その名称を「宗教団体b1教」に変更した。
一方,Bの妻であり正大師の位階にあるA27が,平成14年10月に刑務所を出所すると,従来の活動形態を維持し,Bを前面に出して活動することがBに対する真の帰依であるとして「B隠し」に反対する姿勢を示して,Bの三女と共に,b教の組織運営に介入するようになり,Cの「B隠し」による組織運営も新規構成員の獲得や財務運営面で功を奏しなかったことから,Cの活動方針に反対する者が増加していった。
このため,Cは形式的にはb教やb1教の代表者の地位にとどまったものの,b1教は,平成15年10月頃に,正悟師の位階にあるA5,F(以下「F」という。),A22,A21及びA20の5名による集団指導体制(「正悟師・正大師会合」ないし「正悟師・正大師会議」)に移行し,Bへの絶対的帰依を明示的に強調する指導を復活させ,Bの説法などを集約した「p1」の改訂版を発行するなどして,Bへの絶対的帰依を強調し始めた。
しかし,上記集団指導体制によっても,b1教の財務内容改善等が見られなかったことや,第1回更新決定による観察処分が継続されたこと等から,一部構成員の間でCの組織運営復帰の希望も出ていた。
そして,このころには,b1教内にも,Cの考えに賛同する者を中心とした一派である「C派」(あるいはCの団体内での名称の頭文字から「○○派」とも呼ばれている。)とCの方針に反対する「反C派」(あるいはBの三女の団体内での名称の頭文字から「△△派」とも呼ばれている。以下「△△派」という。)が存在し,他方,C派として活動するまでには至らないものの,これに理解を示す「中間派」と呼ばれる構成員も存在していた。
b1教の経理事務を担当する経理部は△△派が掌握しており,平成17年半ば頃から,それまでC派が納めていた布施の受け取りを拒否するようになった。
(以上につき,乙B1の1・21・33・45,乙B2の1,乙B3の1・89,乙F20)
(ウ) b1教は,平成16年1月17日から同年12月4日までの間に,Bの説法全186話を掲載した「p1(改訂版)3」(A5版)1ないし11分冊を順次発行し,これらを出家構成員に閲読させているが,「p1(改訂版)3」(A5版)は「p1」Ⅱ巻に掲載された昭和61年から平成元年までの間の説法合計167話中151話が収録されており,よりBの当時の発言内容を忠実に再現する一方で,「ポワ」を「ポワ(意識の移し替え)」などと加筆を加えているものの,「次にグルがマハームドラーをかけるとき,最も厳しいマハームドラーをかけるからであると。そうすると,最も厳しいマハームドラーをかけられると,当然,そのかけられた方は早く成就すると。」(「p1(改訂版)」分冊2・7頁),「いろんな持戒があるとして,その持戒を無視して,グルがこれをやりなさいと言った場合,それをなすことが最も功徳となる。」(「p1(改訂版)3」分冊3・30頁),「a教のためではないぞ,B1の意思は何か考えろ。それから,シヴァ神の意思は何かを考えろ。a教の意思と言ったときに,自分のエゴが入ってることがあるからね。そうなったならば,最もスピーディーに解脱するだろう。」(「p1(改訂版)3」分冊5・2頁)などと,Bへの絶対的帰依を求めたり,マハームドラーの修行の実践を強調する説法が記載されている。
また,b1教は,平成17年5月及び6月に,その機関誌においても,「この教団にグルという存在を抜きにしてそれらの教えがもたらされることは,教団の歴史においてただの一度もなかったのである。…(途中略)…わたしたちは,グルが説かれた煩悩破壊という最高の世界に至るための教えを,歪めてしまうことなく,時代を超えて継承していかねばならない。それがグルの願いなのである。」(平成17年5月発行の機関誌「p6・Vol.52」),「真理をこの世に残すに当たってまず大切になってくるのは,グルが説かれた教えの厳密性・純粋性を保持するということである。つまり,真理の教えにしろ経典(仏典)の翻訳にしろ,グルを介して提供されたもののみをよりどころとする―わかりやすく言えば,グルの言葉から外れないようにする―ということなのだ。」(同年6月発行の機関誌「p6・Vol.53」。なお,この記述は,平成20年1月発行の原告の機関誌「p2」Vol.13でもこの記事を参照するよう指導されている。)などと,Bへの絶対的帰依の重要性と教義の変更が不可能であることを説いている。
なお,Cも,平成17年2月頃,「私の根本的な考え方を確認しておきたいのですが,それは『今のグルの意思』を重視するということです。今のグルの意思とは,当然,今の衆生の現実に合わせて,もっとも多くの衆生を済度できるように,教団を運営すべきだ,ということに他なりません。」などとBへの絶対的帰依を説いている(乙B1の40)。)。
(以上につき,乙B3の1・4・5・19,乙B6の3)
エ 第2回更新決定からb2教の分派に至るまでの概況
(ア) 公安審は,公安調査庁長官からの本団体の観察処分の期間の更新の請求につき,平成18年1月23日,第2回更新決定をし,同決定は,同月30日に官報への公告により効力が生じた(b1教は第2回更新決定に対しては取消訴訟を提起していない。)。
また,Bに対する殺人等被告事件について,同年3月27日,東京高等裁判所において,東京高等裁判所が定めた期間内に控訴趣意書が提出されなかったことを理由として,控訴棄却決定がされた。
なお,Bは,平成11年9月22日の東京地方裁判所で開かれたA28及びA29に係る殺人等被告事件(地下鉄サリン事件)の公判期日に弁護人申請の証人として出廷した際,「地下鉄サリン事件は誰が指示したというふうに考えているのですか。」との弁護人の尋問に対して,「A13君が持ち込んだ,A13君自身の話ですよ」などと証言をし(乙B7の12),その後もA8の殺人等被告事件の公判期日(乙B7の14。平成13年2月2日の両サリン事件の公判期日)やA30の殺人等被告事件の公判期日(乙B7の15。平成13年2月25日の両サリン事件及びG弁護士一家殺害事件の公判期日)に弁護人申請の証人として出廷したが,裁判所の人定質問にすら答えず,自らの殺人等被告事件における公判においても,両サリン事件について,控訴審も含めて自己の責任を認めず,反省の弁を述べたことはない(甲13,14,乙B3の2,乙B7の16・17)。
(以上につき,前提事実2(3)アイ,甲13,乙B1の1・42,乙B7の1)
(イ) Cは,第2回更新決定がされたこと等を受けて,平成18年4月頃以降,b1教に対する観察処分が新規構成員の獲得や現役構成員の減少,収益事業への圧迫,全般的活動の不活発化につながっているとして,教団を潰さないというかねてからのBの意思を実現するためには,確実に観察処分を免れることが必要であり,「実は教団には古くからあるもので,そのファウンデーション理論というものとして存在しています。このファウンデーション理論というものは,要するに何かを存続させるためにどうしたら良いか,その場合,単一のシステムではなくて,多様なシステムを用意という考え方です。」(平成18年4月15日小諸施設でのCの説法)などと説いて,Bの教えであるファウンデーション理論等に基づいてb1教とは別団体の設立が必要であると考えるようになった。
こうしたCの活動に対し,b1教の集団指導体制を構成する5名の正悟師のうち,A22,A5,A21及びA20の4名は,Cの考えに理解を示すなどし,A5は,平成18年9月16日,Cに別団体を組織してほしくないが,組織した場合は,b1教とは持ち株会社のような連合体として役割分担をしながら活動していきたいという考えを表明するなどしていた。
しかし,C派と△△派は,平成18年3月25日から,b1教の経理部がC派から布施の受取を拒否する一方で,同派も使用するk施設の賃料(月428万5000円)全額を経理部から支出していたことから,b1教の財務内容がひっ迫しているとして,財務運営についての話し合いを数回行い,その結果,① 経理部とC派で同年6月末をもって財務運営を分離し,経理部は,同月末日以降,C派の経費支出を行わないこと,② k施設については,「fマンション」(原告マンション)または「gマンション」のいずれか一方に△△派の構成員が居住し,残りを解約し,「hマンション」(b2教マンション)にはC派の構成員が居住し,賃料は各派が負担すること等が決定された。
また,A5ら正悟師による集団指導体制も,師の位階にある中堅幹部構成員らが,A5らがC派に歩み寄ったこと等に反発するなどして,機能しなくなったことから,b1教は,平成18年7月,師クラスの中堅の構成員約30名からなる「合同ミーティング」(第6回目以降は「成就者合同会議」に名称を変更した。)を設置し,b1教の意思決定を行うようになった。
その後,Cは,平成19年3月8日,Cを中心とする出家信徒62名,在家信徒3名が同月7日付けで,b1教代表に就任していたA22に対し,b1教から脱退する旨を通知し,同年5月7日には,b2教を設立した旨発表した。
他方,b1教では,中堅幹部構成員らが,C派に歩み寄ったとして,Fを除く4人の正悟師を排除する動きを強めたことから,平成19年7月にA20とA21が脱会し,A22及びA5が役員を辞任し,これら中堅幹部構成員らを中心にBの医大生に関する体験談を疲労する「グル(尊師)を語る会」や大音量でBの説法の映像を長時間連続視聴させる「特別ビデオ教学セミナー」などを実施するなど,Bへの帰依を徹底していった。
(以上につき,甲127,128,乙B1の1・28,乙B2の1・11,乙F20)
(ウ) b1教は,平成17年7月30日から平成19年4月11日までの間に,「p1(改訂版)4」(A5版)の1ないし7分冊を順次発行し,これらを構成員に閲読させているが,「p1(改訂版)4」(A5版)は「p1」Ⅱ巻に掲載された平成2年から平成3年までの間のBの説法合計118話中100話が収録されている。
また,b1教は,前身のb教が平成12年10月から,発行してきた「p6」と称する機関誌の名称を,平成19年1月から,「p2」に変更して,機関誌として,インターネット配信したり,Bの説法の映像を収録したDVD「p2」を原告の施設に配布して在家構成員に視聴させており,「今回,この教学システムを行うことによって,もう一度信徒の皆さんが,グルの熱い思いというか,グルの神聖なデータを深い意識で吸収していただけたらいいな,と思いますね。…(途中略)…そしてもう一つは,この教学システムを進めていくことが,やがては救済につながるんだという,そういう意識を持っておいていただきたいということです。つまり,真理のデータを内側に根付かせ,グルからのエンパワーメントを受けるのは,自分のためでもあるし,また,自分を通して救済されていく人のためでもある,ということですね。」(平成20年1月発行の機関誌「p2・Vol.13」掲載)などとBへの絶対的帰依の重要性を構成員に説いている。
(以上につき,乙B3の1・20)
オ b2教分派から本件更新決定までの概況
(ア) 公安審は,公安調査庁長官からの本団体の観察処分の期間の更新の請求につき,平成21年1月23日,本件更新決定をし,同決定は,同月30日に官報への公告により効力が生じた(原告は,平成21年7月8日,東京地方裁判所に本件更新決定の取消訴訟を提起した。)。(前提事実2(4)アイ)
(イ) b1教は,b2教の設立表明や,A5ら正悟師の脱会や役員辞任を受けて,平成19年12月14日,合同会議内に6人の運営準備委員で構成される「運営準備委員会」を発足させて組織再編作業を開始し,平成12年のb教発足当初の基本方針に基づき,① Bについては,純粋に霊的な意味で瞑想修行等における「観想の対象」ないし「霊的存在」,あるいは,組織沿革上の歴史的な意味で教団創始者としての「開祖(宗祖・教祖【founder】)」とも認識されている一方,現実の教団運営を統括する者としての教祖【leader】・代表者,あるいは団体の意思決定に関与する役職員には位置付けていないこと,② 事件と無関係な教義ないし修行法・イニシエーション等については,a教から引き継いだものをb1教でも採用する一方,裁判等で事件との関係が指摘されている一部の教義(タントラ・ヴァジラヤーナの中の五仏の法則)については削除しており,一般に誤解を受けやすい用語等については,事件や犯罪の肯定に結び付けられる余地のないよう公式注釈書(甲25。b教は,平成14年3月27日に「p1」公式解釈書を作成し,  五仏の法則を破棄し,  タントラ・ヴァジラヤーナについて,日本の刑法に反する行為を正当化するものではなく,  ポワについて,殺生ではなく,意識を低い世界から高い世界へ移し替えることと解説している。)を作成・配布するなどして構成員に周知していること,③ 一人ないし少数の指導者の能力・判断に従属する上意下達式の組織形態を見直し,多面的な判断や相互のチェック機能が働くよう,集団指導体制である合同会議を採用していること等を内容とする「『合同会議』による運営とその基本方針」を発表した。
その後,b1教は,平成20年5月12日,合同会議において,「b2教の集団脱会に伴う内部的混乱の正常化や社会的環境の変化への対応」と「自己の解脱と悟りと,すべての魂を絶対自由・絶対幸福・絶対歓喜の境地に導くといった,本来の宗教団体としての役割を果たせるような教団にすること」を目的として,従来の綱領・規約・活動規定を以下のとおり改正するなどして,団体の名称を「宗教団体b1教」から「X」(日本語の発音は「b」)に改め,共同幹事としてA31,A32が就任したと発表した。
(以上につき,甲16ないし18,乙B2の11,乙B3の90,乙B19)
a 「宗教理念」の制定
原告は,新しい綱領として,① 私たちの団体の第一の目的は,解脱・悟りを追究し,仏教・ヨーガの教典で説かれている霊的・精神的な境地を体験し,それを体現することである,② 私たちの団体では,第一の目的を土台として,  「解脱・悟り」の道筋を提供する,  「この世の幸福」を提供する,  「病苦からの解放」を提供する活動を行うという内容の「宗教理念」を定めた。
b 「運営規則」の制定
原告は,新しい規約として,① 本団体の目的は,「X教」宗教理念に掲げるものとすること(第3条),② 本団体の構成員は,出家構成員と在家構成員からなり,「X教」宗教理念に掲げられた趣旨に賛同し,その実践を行い,「X教」コンプライアンス規程を遵守し,所定の会費を所定の期日までに納付しなければならないこと(第4条),③ 本団体の運営機関を合同会議とすること(第5条),④ 合同会議内に運営委員会を設け,合同会議の進行・調整に当たり,原則として,共同幹事2名,副幹事2名,委員2名で構成すること(第6条)等を内容とする「運営規則」を定めた。
c 「コンプライアンス規程」の制定
原告は,新しい活動規定として,① 国の法令や教団内の規程を遵守し,健全な宗教活動を行う(法令の遵守義務),② a教関連事件の一部の裁判で判決が確定したという事実を踏まえて,その道義上の責任に基づき,a教破産管財人による管財業務終結後も,関係機関と協議の上,事件被害者の方々に対して誠意ある対応を行う(事件被害者の方々に対する誠意),③ 未解決のa教関連事件の解決に向けて,a教関係特別手配被疑者に対する出頭呼び掛けを始めとする必要な捜査協力を行う(事件解決への協力),④ 事件・犯罪を否定する姿勢を明確に示し,地域社会で平穏に生活していくためのルールを遵守し,地域との協調に努める(地域社会との協調),⑤ 団体規制法に対して適法に対応し,将来にわたって教団に危険性が存在しないことを明らかにして観察処分の取り消しに努める(団体規制法への対応)こと等を内容とする「コンプライアンス規程」を定めた。
(ウ) b1教は,b教が平成14年10月に危険と誤解されるなどとして,回収を発表していたBの説法を収録した教学用教本である「特別教学システム教本」とBの説法を録音したカセットテープについて,平成19年11月,以下の内容の「改訂版 特別教学システム教本」に改訂し,Bの説法を録音したCDと共に復刊して,セミナーにおいて参加した在家構成員に教学させている。(乙3の1)
a a教の救済活動とは何かといったら,まずは真解脱者,アラハットを三万人だすことだ。…(途中略)…そして,三万人が世界に散ったならば,そのサットヴァのエネルギーによって,ね,例えば核兵器を持つことが無意味であるとか,例えば他の,ね,宗教理論の中に矛盾があるだとかいうことがどんどんどんどん暴露されてこよう。そしてつぶされよう。そして真理は一つになるはずだ,ね。(乙B3の22。「第1課3級A」(昭和62年7月26日のBの世田谷道場における説法))
b 実際に理想郷,理想的な社会をつくってみようじゃないか。…(途中略)…a教の自力によってね,雛形をつくろうじゃないかと。…(途中略)…この日本に,その社会の雛形をつくろうじゃないかと考えて,着実に進んできているのが,今のa教のシャンバラ化計画なんだね。(乙B3の22。「第3課5級C」(平成元年3月25日のBの広島支部における説法))
c タントラで成就する場合,金剛乗で成就する場合のポイントというものは何かというと,絶対的なグルに対する帰依であるということは挙げられる。(乙B3の22。「第7課5級B」(昭和63年9月27日のBの富士山総本部における説法))
(3) 本件更新決定の際の原告の組織・活動実態等
ア 原告の組織規模及び運営態勢等
(ア) 原告は,平成20年8月15日付けで,公安調査庁長官に対し,同年7月末時点における原告の国内構成員について815名(出家構成員275名,在家構成員540名)と報告し,「入会していないが,その活動に参加することがある者」として16名を報告している。このうち,出家構成員のほぼ全員,在家構成員の約7割が地下鉄サリン事件以前からa教に加入していた者であり,地下鉄サリン事件以降に検挙され,その後刑務所を出所したり,釈放された者473名のうち,平成20年7月31日時点で,114名(95名が原告に,18名がb2教に復帰し,1名が原告及びb2教双方で活動している。)が原告らに復帰している。
なお,このうち,原告に復帰したA33,A34,A35,A36,A10,A37の6名は,別紙復帰構成員一覧表記載のとおり,サリン量産プラント建設事件(別紙刑事事件一覧表3)や武器等製造法違反事件(別紙刑事事件一覧表15)等に関与し,それぞれ懲役刑に処せられ,服役を終えた者である。
原告は,平成20年8月15日時点で,埼玉県越谷市〈以下省略〉所在の「lマンション」101号室に主たる事務所を置き,北海道,茨城県,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,愛知県,滋賀県,石川県,京都府,大阪府,徳島県,福岡県に合計20の施設を保有し,ロシアにも数施設保有している。
(以上につき,乙B2の1,乙B7の18・19,乙B8の52,乙C1,2)
(イ) 原告の業務の多くは,平成20年10月31日時点で,団体の運営機関である合同会議及び同会議内に設置した各プロジェクトチームの業務に吸収されており,運営委員会は,合同会議の進行・調整を担っている。原告は,月に1回,合同会議を定期的に開催し,組織運営に関する意思決定を行っている。
また,原告は,Bが創設・発展させた位階制度の根本部分を維持しており,尊師,正大師,正悟師,師長,師長補,師,聖準師,準師,師補,サマナ長,サマナ,見習などの位階制度を有している。
b1教名義のものではあるが,平成17年4月には,その機関誌において,この位階制度について,「グルに帰依しなくなった段階で一気にステージが落ちてしまうということが現実問題として起こるわけなのである。もし,神通が自分だけの力で身に付いているのだとしたら,そんなことはあり得ないだろう。つまり,ステージも神通力もグルから与えられているものなのだ。」(平成17年4月発行「p6・Vol.51」)などと説明されている(なお,第1回更新決定後に師以上に昇格した構成員はいない。)。
また,原告の出家した構成員は,平成20年8月15日時点で,原告が3階建て12室全てを賃借している原告マンション(38名が集団居住している。)を始め,全国各地の原告管理下の施設で集団居住(原告マンションを除いた17施設で167名が集団居住している。)しており,その機関誌で「現世的な情報,煩悩を増大させるような情報は,できるだけ取り入れないようにしなくてはならない」(平成19年11月発行「p2・Vol.11」(b1教名義)掲載),「出家とは,基本的に自己の身,口,意のすべてをグルとシヴァ大神に捧げ,その代わりに解脱,悟りを与えてもらうという契約ですから,すべてを捨てて,自己の心の成熟,霊性の向上,そして解脱,悟りの達成を求めて修行に邁進するのがサマナとしての務めです。故に家族,親族,友人,異性を含めた現世的な人間関係,現世的役割,煩悩を増大させる情報は,必要でない限り徹底して捨断すべきです。」(平成19年12月10日のb1教の合同会議における指導)などと外部からの情報遮断や家族・親族との縁を断つことの重要性を指導し,また,原告が独自に製造した食品・水(Bが唱えるマントラのデータが流れている電気コードを巻いた枠内に一定時間保管するなどの「修法」と称する儀式を施している。)を出家した構成員に配給するなど,a教が導入していた出家制度を維持している。
そして,原告は,合同会議で決定された内容等を会議に参加した構成員を通じて,各部署または各支部に所属する構成員に伝達しているほか,中央部署や各施設をインターネット回線を通じて,これらの事項や幹部構成員の説法,集中セミナー等の開催状況を構成員に周知させ,また,月刊の機関誌「p2」を在家構成員に配布して,Bの説法や集中セミナーの開催状況等を周知させている。
(乙B2の1・13・15・17ないし19,乙B3の1,乙B3の85,乙B8の1・5)
イ 原告の教化活動状況と構成員の認識等
(ア) 原告は,第2回更新決定以降も,その構成員に対し,以下のとおり,セミナーにおける幹部構成員の説法や機関誌等を通じて,① Bの説く衆生救済の実践が原告の活動の目的であり(aないしc),② 衆生救済実現のためには,教団の拡大とBの説く修行の実践による多数の解脱者の輩出,日本シャンバラ化計画の実現が必要であり(aないしc),③ 天変地異の発生等により危機感を煽って,衆生救済のためにはBに帰依し,自己を捨て,Bと全く同じものの考え方や見方をしてBと合一するタントラ・ヴァジラヤーナの実践とBが課した課題・試練を乗り越えるマハームドラーの修行の実践の重要性を強調し(d及びe),④ Bの直接指導を受けられず,Bの後継者としてBの長男・二男からの指導を受けていない現状においては,教団の仕組みにしたがって修行を行うべきである(f)との教化活動を行っている(第2回更新決定以降のb1教によるものを含む。)。
(以上につき,乙B3の1,乙B6の1・62ないし64)
a 私たちの教団の存在意義というのは,救済にあります。自分自身が救われるだけではなくて,多くの人を真理の流れに導き入れ,本当の意味での解脱悟りといったプロセスを歩ませることによって,本当の幸福,自由,歓喜というのを与えていく。それが私たち教団の使命です。…(途中略)…尊師は,常々いろんな形で真理を説かれました。あるいは,いろんな形で行法を伝授してくださいました。…(途中略)…それによって,尊師が望まれていた救済の成功というのは確実にもたらされると思います。(乙B6の46。平成20年1月2日埼玉県八潮市内の施設における「年末年始セミナー」のA38の説法)
b ロータス・ヴィレッジ構想,3万人の成就者,シャンバラ化計画,これがもともとb1教に存在している段階的な救済計画です。b1教は3つの救済を救済活動の基盤として展開しています。それをベースに在家の信徒さんだけではなく,すべての人たちの真理の空間を考えたロータス・ヴィレッジ構想がある。その結果として,地球規模の救済のために必要とされる3万人の成就者というものが輩出されていく。そして最終的にこの地球を伝説の理想郷シャンバラへと移行していく。これが地球での段階的救済であり,最終目的なのである。(乙B6の49。平成20年4月27日京都市の施設におけるA39の説法)
c 三万人の成就者がこの地上に誕生するかどうかということは,地球規模のポワ(意識の移し替え)と関係している。つまり,一人の成就者の発するエネルギー,このエネルギーが,例えば一万人に対して,あるいは十万人に対して影響を与えることができるとするならば,それにより,例えばその空間にいる人たちの意識が一気に変容すると。…(途中略)…四無量心のデータがしっかりと乗っている意識状態の魂が三万人いるならば,この地上は地上楽園へと変わると。(乙B6の51。平成19年6月発行の機関誌「p2・Vol.6」掲載のBの説法)
d スマトラ沖地震で22万人が死んだりしているわけですが,そういうのが,これから起きてくる現象の単なる雛形でしかない。…(途中略)…尊師を死刑にしようとしているわけですから。この日本の国なんかもう跡形もなく崩れてしまって当然ですよね。…(途中略)…この日本の国がこれからどこまでひどい状態になるかというのは,日本の国が,国家権力が尊師に対してどれだけ悪業を積むかによって決まってくる。だから,日本の国の国家体制自体が跡形もなく崩壊していくのは当然のことなんです。…(途中略)…今回の救済は,尊師の弟子の同窓会と言われるくらい有力な弟子を相当数置いていっていますよね。これからひどい時代になってきたら目覚めて出てくるというのはあります。いざとなったときに力を発揮する弟子が出てくると言われています。そのためにもいろんなひどいことを起こさないといけない。起こすことによって目覚めるとかあるのではないかと思います。(乙B6の58。平成19年1月6日の大阪市生野区の施設におけるA40の発言)
e 私達が救済される方法というのは,尊師の説法にもあるわけだけど,…(途中略)…タントラ・ヴァジラヤーナの7つのプロセスの瞑想体系によってでしか,私達が解脱へ至ることができないんだと説かれています。…(途中略)…その中心を為すものは,グルに対する懺悔だとか,グルに対する供養だとか,要するにグルを通じて,自分自身の煩悩を体験する瞑想体験というわけですね。…(途中略)…私達は,この煩悩多き時代においては,自力における煩悩捨断っていうのは,当然努力する必要はあるわけだけど,それだけでは対処しきれない。…(途中略)…真理を自分自身で体現するにはどうしたら良いかと。そのためには,いかにグルに対しての関係を構築していくかということ,そしてグルに対しての帰依の実践をしていくかということ,更にその帰依に伴って,グルに対して懺悔やグルに対しての供養をいかに真剣に行っていくか,これに限るんだと思うわけです。(乙B6の67。平成19年9月27日の東京都足立区の施設におけるA32の発言)
f グルと直接指導を受けられないこういう状況にあっては,この教団の仕組みには,すがって修行していくのがグルの意思だろうと。二代目のA41猊下(Bの長男及び二男を指す。)がね,出てくるまでは,その過渡期はね,こういう,今,自分に与えられているものは教団の仕組みだから,グルが与えてくれてるのは,教団の仕組みだから,この仕組みに従って自分は修行をしていけばいいんだろうなと思うのがグルに対する信じゃないんじゃないかと思うんだね。(乙B3の96。平成20年3月1日の大阪市生野区の施設におけるA40の説法)
(イ) 原告は,構成員に対し,前記の幹部構成員によるセミナー等での説法や「p1(改訂版)4」,「改訂版 特別教学システム教本」,月刊の機関誌「p2」などのBの説法等を収録した発行物による指導だけでなく,出家構成員に対しては,「マハームドラーの道」と称し,立位礼拝(a),欲如意足(b)などに加え,「グルヨーガ・マイトレーヤ・イニシエーション」(c)などを内容とする集中修行を繰り返し行わせているほか,在家構成員に対しても,説法会等において,「大乗仏陀のイニシエーション」と称する詞章を唱えさせて,B及びBの説く教義への帰依心の扶植を行っているほか,a教時代から使用していたPSI(d)の装着を推奨し,Bが唱えるマントラを原告の施設で流し続けてBへの帰依心を扶植するなどの種々の儀式(e,f)を実施している。
また,公安調査官が,平成20年6月5日,原告の千葉県野田市に所在する施設に立入検査を実施した結果,同施設2階内部に,Bの説法映像を収録したマスターテープ約400本,Bの音声を収録したDVD約200枚などが施錠されたケースに入れられて保管されていた。
(以上につき,乙B3の1・82)
a 立位礼拝
両手を頭上で合わせた直立の姿勢から,Bの声に合わせて,「a教,グルとシヴァ大神とすべての真理勝者方に帰依し奉ります。私,※※(自分の名前)を速やかに解脱へとお導きください」などと大声で唱和しながら,すばやく両膝,両肘,額の順に地に着け,再び立ち上がる動作を合計100時間反復する修行をいう。
これは,a教以来の修行方法であり,これによって,構成員を疲労困憊の極限・意識朦朧の状態に陥らせ,幻覚や幻聴を体験させることによって,Bへの絶対的帰依心を扶植させることを目的としている。
(以上につき,乙B3の33)
b 欲如意足
Bの声が録音されたカセットテープの音声に合わせて,「わたしは自己の解放のために修行がしたい」,「わたしはすべての魂をマハー・ニルヴァーナに入れるために修行がしたい」,「徹底的に帰依するぞ」,「わたしは凡夫から離れる道を選んだんだ わたしは凡夫を超える道を選んだんだ」などと大声で360回唱和する修行をいう。(乙B3の30)
c グルヨーガ・マイトレーヤ・イニシエーション
別紙図面のとおり,王者の中の王であるマイトレーヤ如来の姿をさせたBのアニメーション画像を視聴させて,マイトレーヤ如来との合一を観想させるグルヨーガ・マイトレーヤの瞑想などから構成される修行をいう。(乙B3の61。平成20年5月に公安調査庁が原告から入手したDVD)
d PSI
原告が製作・使用する修行用の機具であり,Bの脳波データを発生させるとする基盤部分と頭部に装着する電極付きのヘッドギア部分で構成され,平成5年12月移行,構成員に着用が推奨されてきたものであり,平成13年8月には,より小型化・高性能化したとしており,原告の幹部構成員A42は,平成20年1月1日,原告の埼玉県八潮市所在の施設において,一般構成員に対し,「グルをより強く意識するには,グルとの縁を深めることだと思います。で,グルとの縁を深めるにはどうしたらよいかということですけれども,これは尊師がおっしゃってることなんですが,グルの教えを実践すること,これ以外に君たちのグルとの縁を深めることはできないとおっしゃってます。…(途中略)…例えば,パーフェクト・サーヴェーションですと,これは与えられて,94年に伝授されましたけれども,それ以来,着けられるときはだいたいいつも着けてます。…(途中略)…それほど自分では努力しなくても,グルの,まあデータですよね,データが入ってきたり,グルのエネルギーによって寝ているときも修行が進むと,エネルギーを,抱えるというより,が満たされるというのがあると思います。」などと説法して,PSIの着用を薦めている(乙B3の66)。
e ピラミッド・イニシエーション
Bが唱えるマントラの音声を大音響で流し続けて構成員に聴かせ,る宗教儀式であり,平成12年夏頃,原告の前身であるb教において導入されたものであり,平成20年7月末時点でも原告において行われている。
なお,マントラとは,「アー フーム ヴァジラ ナマシヴァヤ ヴァジラ ナマ ブッダヤ ヴァジラ ナマ グルヤ ヴァジラ ナマ サティアンヤ ヴァジラ ナマ タントラ・ヴァジラヤーナ ヤマニヤマヤ」と唱え,「身・口・意において,金剛心をもってシヴァ大神に帰依します,金剛心をもってブッダに帰依します,金剛心をもってグルに帰依します,金剛心をもって真理に帰依します,金剛心をもってタントラ・ヴァジラヤーナの勧善と禁戒に帰依します」という意味を有するBの呪文である。
(以上につき,乙B3の71)
f 新・音のイニシエーション
a教は,昭和63年4月以降,デジタル処理を施したとするBの唱えるマントラの音声を18個のスピーカーから次々と流し,構成員に聴かせる「音のイニシエーション」という宗教儀式を行っていたが,原告は,「音のイニシエーション」よりもBのマントラの音質を向上させたとする「新・音のイニシエーション」を各セミナーにおいて実施している。(乙B3の72・73)
(ウ) これに対し,原告の上記の教化活動は,「グルのお声を聞くと,心から感謝の気持ちがわいてきて,涙が出ることが多かったです。法則を聴けることにこんなに感謝の念が出てきたことは,今までなかったと思います。(札幌・女性) 教学に集中すればするほど,グルと合一できる感覚がありました。どの説法にも救済という愛と力が強く込められており,それが臨場感いっぱいに伝わってきました。身体が熱くなりました。(京都・女性)」(乙B6の54「p2・Vol.14に掲載されている在家構成員の発言),「皆さんには,大いなる大願に思いをはせていただきたい。自分の悩みなどはちっぽけで,そんなものは吹き飛んでしまうと思います。(F1(F))正悟師に『札幌をb1教市にしなさい』と言われましたが,これは尊師が仰ったこととして決意していました。ですが,いまではそれもちっぽけで,現在は『世界最高の宗教にするぞ。そして国教にするぞ』と決意しています。私自身,血反吐を吐くまで修行するぞ。」(乙B6の56。平成20年5月31日の東京都杉並区西荻所在の施設における勉強会「グルを語る会」における在家構成員の発言)などとあるように,原告の構成員にも強く浸透している。
(エ) 原告の幹部構成員は,第2回更新決定以降も,両サリン事件を始めとする一連の重大事件も,衆生救済を実現するためのタントラ・ヴァジラヤーナの実践として正しいものであったなどとの認識を有し,原告の構成員に対しても,その旨の発言ないし説法をしたりしている。(乙B6の1)
a 私は,遺族としてのA43さんの悲しい気持ちは理解できるが,尊師や教団を憎しみ続けることは,彼女にとって可哀想なことだと思う。彼女の夫が死んだのは,因果応報の因があったために死んだわけだから,むしろ,その因が何だったのだろうと見つめ直すことの方が大事だと思う。10年過ぎても,相手を憎しみ続けるということは,A43さん自身の身体に悪い影響が出るし,その憎しみが因で,さらに悪いことが起きるかもしれない。A43さんは,憎しみを開放させないといけない。そのためにも,教団は被害者賠償を頑張っている。まあ,このように因果応報の話をすると,「事件について反省していない」とか,すぐ誤解されてしまうが,因果応報,つまりカルマの法則は真理なのだから,そうとしか言えないのだ。(乙B6の68。平成18年9月16日の沖縄県浦添市所在のb1教施設の立入検査時のA5の発言)
b 地下鉄サリン事件など,教団が行ったとされる一連の事件は,現世においては有罪と判断されても仕方がない。事件の被害者は,前世において殺生を行うなどの悪業を積み,その報いとしてのカルマを受けた可能性がある。この問題は,現世の判断基準だけで考えることはできない複雑な問題なので,論じること自体無意味である。(乙B6の69。平成19年6月5日の東京都杉並区西荻所在の施設におけるA44の発言)
c グルは我々と全く次元の異なるところにいる方である。そのようなグルの行為に対して,我々が評価したり判断したりすることはとてもできない。確かに,地下鉄サリン事件は,人間的な価値基準から見たら,許されない行為であったし,法的にも問題のある行為であったことは間違いない。しかし,グルにとってみれば,遠い未来を見据えた遠大な救済計画の中の一つだったのかもしれない。(乙B6の70。平成20年5月21日の沖縄県内の在家構成員宅での勉強会におけるA45の発言)
(オ) 第2回更新決定以降,原告の一般構成員においても,両サリン事件を始めとする一連の重大事件は,衆生救済を実現するためのタントラ・ヴァジラヤーナの実践として正しいものであったという認識を有している。(乙B6の1)
a 尊師は,自分がいなくなっても私たち弟子たちがどれくらい自主的に修行を進めていけるかどうか試そうとしてあのような事件を起こした。私たちのカルマ落としのために尊師から与えられたのだから,そういう点では弟子は尊師に感謝すべきだと思う(乙B6の71。平成19年8月頃,出家構成員のA46の一般構成員に対する発言)。
b 一連の事件で殺害された人の数はそれほど多くないにも関わらず,現在,教団はものすごく叩かれている。…(途中略)…また「一連の事件は,尊師の弟子たちの修行が足りなかったからである」という見方もできる。つまり,「尊師が弟子たちのカルマを落とし,成就できない魂を成就させようとした結果である」…(途中略)…グルが弟子を成就させようとマハームドラーをかけた結果であるということだ。弟子たちのカルマを落とすために,尊師があえて仕向けたのだ。…(途中略)…「事件は預言の成就であった」とも捉えることもできる。…(途中略)…事件とその後の教団へのバッシングは,グル自身にとっては最終完全解脱のための修行であり,弟子たちにとってはカルマを落とし,ステージを上げるための修行であると解釈することもできる(乙B6の72。平成19年10月の福岡市南区所在の施設でA47師補の一般構成員に対する発言)。
c サリン事件はa教ではなくフリーメーソンが引き起こしたものであり,a教はその陰謀によって罪をなすりつけられているだけです。そのような冤罪によって,グルだけでなくE1師(E)などの高弟達にも次々と死刑判決が下るなど,今の世の中はまさに末法の世だと思います。仮に教団がサリン事件を引き起こしていたとしても,その被害者は高い世界にポアされ,被害者家族にはグルとの強い縁が出来たため,被害者は決して無駄な生ではなかったと思います。彼らは今生において,グルとの強い逆縁だったのでしょう(乙B6の73。平成20年5月の出家構成員の公安調査官に対する発言)。
d 世間の人々はタントラ・ヴァジラヤーナ=人殺しの教義のように勘違いしていて,それが地下鉄サリン事件などの一連の事件を起こしたとされていますが,それは明らかな間違いです。もし地下鉄サリン事件に尊師が関与していたのなら,救済に関係する何らかの意味合いがあったのだと思います。尊師は,完全解脱されているので私たちでは計り知れない思料(原文ママ)をお持ちですから(乙B6の74。平成20年7月の出家構成員の公安調査官に対する発言)。
(カ) 原告の幹部構成員は,Bに対する刑事被告事件の死刑判決が平成18年9月に確定した後,死刑執行されない状況として,被執行者が法律上心身喪失状態にあること,共犯者の刑が確定していないこと,共犯者が逃亡していること,被執行者本人又は共犯者が再審請求中であることなどがあると一般構成員に説明したり,以下のように,Bの死刑執行の回避や延命を祈願したり,復活を示唆したりする説法を行っている。(乙B3の1)
a 懇願は,グルに対して「どうか最高の解脱・悟りを得るまでは,決して自分の前から去らずにお導きください。加護をお願いします。真理の法を説き続けてください」と哀願するもので,とても神聖なものです。(乙B3の53。平成20年3月発行の機関誌「p2・Vol.15」に掲載された師の位階にあるA48の説法)
b 私たちの祈願,これは確実に尊師に届きます。ですから,尊師を強く意識して,祈願の瞑想を行います。…(途中略)…尊師が涅槃されないためには,弟子が真理の実践をすることが必要です。よって,しっかりと真理の実践を行う。心に強く思います。全ての魂が救済されるように心から祈願します。尊師が涅槃するということは,成就していない魂にとって大きな損失となります。尊師が涅槃されないように心から願います。…(途中略)…どうかこの現象界にお留まりください。この現象界にお留まりになって救済を続けてください。(乙B3の56。平成20年1月1日の埼玉県八潮市所在の原告の施設でのA49の説法)
c 私たち弟子として,いかに,一人一人の人たちが,グルに涅槃しては困るっていう形の実践,ね。…(途中略)…聖なる光っていうのがなくなってしまった場合には,私たちは,非常にね,未来世において,グルを,例えば,死刑に落っことしたという形のカルマを作るってことですよ。分かりますか。これは当然,みんな地獄に一斉に落っこちなきゃいけなくなるんです。…(途中略)…できるだけ,死刑が止まるような形に私たちが実践することが,これからの皆さん,グルの,長く生きていただくっていう形のね,涅槃されない形になっていくことになるわけなんですね。これを,皆さんは,今日は,肝に銘じていただいて,自分たちの修行というのを,もう一度初心に戻って,やり直しをしていただきたいと思います。(乙B3の58。平成20年4月27日の原告の横浜市に所在する施設におけるA50の説法)
ウ 原告と一般社会との関わりと立入検査の協力拒否
(ア) 原告の施設の周辺に居住する住民らは,原告がa教と同様の出家制度により集団居住生活をし,外部から容易にうかがい知ることのできない体質を依然として有し,また,原告が製造する食事等による異臭や夜間の騒音等に悩まされていることから,原告に対する恐怖感・不安感を抱き,原告の解散や退去等を求める協議会等を結成している。
地域住民の協議会等としては,埼玉県八潮市,烏山地域の2つの組織,名古屋市,金沢市,滋賀県湖南市,滋賀県甲貸市水口町,大阪市生野区,大阪市中央区などに組織が存在しており,これらの組織は,平成18年1月23日から平成20年11月25日までの間,延べ85回にわたって,原告らの解散,施設の閉鎖及び退去等を求める集会等を行い,また,法務大臣や公安調査庁長官等に対し,観察処分の期間更新や原告らの解散や新たな拠点作りを禁止する新法の整備等を求め,14回にわたる署名運動や要請等を行っている。
また,これらの組織がある地方公共団体や議会も,平成18年1月23日から平成20年11月25日までの間,法務大臣や公安調査庁長官等に対し,観察処分の厳正な執行等を求め,31回に及ぶ要請等を行っており,公安調査庁長官に対し,団体規制法32条に基づく,調査結果の提供要請を延べ128回にわたって行っている。
(以上につき,乙B8の1・54・55)
(イ) これに対し,原告は,上記(2)オのとおり,コンプライアンス規程において地域社会との協調を定めて,社会との融和に取り組む姿勢を示しているものの,原告においてそのような努力をした形跡は認められないばかりか,「今日は,住民運動がね,始まってしまったので,急遽,説法を放送する会場を変更して,行うことになりました。…(途中略)…毎度のことではありますが,彼らが向けてくる邪悪心というものは,本当にね,汚れてるし,その破壊的なエネルギーというものは,私の頭に強烈な頭痛を起こしてしまいます。…(途中略)…結局,住民運動っていうのは,住民の意思ではなくて,公安のね,策略によるものであるということを証明しているようなものなわけです。しかし,カルマっていうのは必ず帰ります。そして,彼らが行っていることがね,悪業であることの証拠として,この住民運動を扇動していた,元区長さんてのがいるんですけども,この人はお酒に酔ってですね,車にはねられて死んでしまったんですよね。」(平成19年5月27日のFの説法)などと地域住民の反対運動に対する敵意を露わにする説法を行うなどしている。
(以上につき,乙B7の1・6,乙B8の1・53ないし55)
(ウ) 原告は,第2回更新決定により更新された観察処分に基づく公安調査官の立入検査について,平成19年3月12日,① 立入検査は立会人の同意の上で始めること,② 立入検査の開始,問題・トラブル・疑問等が発生したら原告の法務部に連絡すること,③ 検査官には身分証提示義務があり,官職・生年月日・氏名を記録すること,④ 検査は立会人の立会いの下で進めること,⑤ 検査現場での質問に答える義務はないこと,⑥ パソコン関係の検査は立会人が自ら操作すること,⑦ インターネットに接続してアクセスする外部データは検査対象外であり,インターネットの接続を要求されても応じる義務はないこと,⑧ 写真撮影には立会人の同意・立会いが必要であること,⑨ 個人の私物やプライバシーに関わる物件は検査対象外であること,⑩ 検査の模様のビデオ撮影は原告側においても行うこと等を内容とする「立入検査時の注意点」と題する文書を通知し,出家構成員に対し,公安調査官の立入検査時に参照するよう指導し,原告の構成員にも公安調査官の立入検査の際の質問に対しては,任意であり,説明する義務はないとして回答を拒む者もいる。
また,原告の構成員が,公安調査官の立入検査の際に検査対象物の隠蔽ないし検査拒否の疑いのある行為をした事例として,以下の事実も認められる。
(以上につき,乙B8の1・14)
a 公安調査官が,平成20年2月5日,徳島県の原告の施設に立入検査を実施した際,同施設内に設置されたコルクボードの裏に,同年1月28日に集計された在家構成員の修行進度が記載されている紙片2枚が画鋲で貼り付けられており,上記2枚の紙片が隠蔽されていた疑いがある(立会人は上記2枚の紙片について「見られたくなかった」と供述している。)。(乙B8の19)
b 公安調査官が,平成20年5月15日,大阪市生野区の原告の施設に立入検査を実施した際,パソコンを検査していたところ,本団体構成員と見られる人物が写っている画像を現認したため,そのうち1枚を写真撮影したところ,出家構成員が在家の構成員の肖像権を侵害するとして,原告の法務部に所属する出家構成員の指示も受けた上で,上記画像の更なる写真撮影を拒否し,その後の公安調査官の説得にも応じず,上記画像の写真撮影を拒否した疑いがある。(乙B8の22ないし24)
(エ) 原告は,第2回更新決定以降に公安調査庁長官に対して提出した報告書で,以下のとおり,報告すべき事項を報告していない。
また,上記報告書中には,第2回更新決定から平成20年7月末までの原告の活動に関する意思決定について合計370件の記載がされているが,その記載の程度は,意思決定事項の内容を詳細に記載しているものも見受けられるが,意思決定の背景事情を含めた趣旨説明や審議内容を含めた意思決定過程等を記載したものになってはおらず,その内容を把握できるだけの十分なものとなっていない。
(以上につき,乙B8の1・30~34)
a 公安調査官が,平成19年5月10日に,名古屋市所在の原告の施設を立入検査した際に発見した「来道達成表」には,58名の氏名が掲載されており,このうち1名については,平成19年から平成20年にかけて,上記施設開催のセミナーに繰り返し参加しているところ,報告書に構成員として記載されたことがない。
b 平成20年5月及び同年8月に開催された京都市内の施設での集中セミナーにおける活動状況を公安調査官が調査した結果,1名について集中セミナーでの活動が確認されているのに,報告書に構成員として記載されていない。
c 公安調査官が,平成18年2月から平成20年8月まで,京都市南区に所在する原告の施設における活動状況を調査した結果,9名について,説法会等において,新規構成員として紹介されているところ,報告書に構成員として記載されたことがない。
エ 他の集団等との関係等
原告の在家構成員の中のうち,1名がb2教の非専従会員として,5名がb2教に入会していないが,b2教の活動に参加することがある者として報告されている。
c団体の開設するホームページの「登録ユーザー一覧」には,原告側のA32ら出家構成員79名,在家構成員5名が登録しており(なお,b2教の出家構成員5名も登録している。),また,c団体の展開する刑事事件の弁護活動費は,b1教の収入によって賄われており,平成20年2月時点でも,原告の構成員がいまだにa教の脱会を表明しておらず拘置所で勾留されているEら刑事被告人との面会をするに当たっては,c団体に接見希望を伝え,スケジュールを調整してもらうなどしていた。
また,平成20年5月22日時点で,ロシア内には,a教の構成員合計約200人が存在しているところ,原告側,b2教側にそれぞれ約100名ずつが所属し,原告側は,FやA40らが,インターネットを介して,ロシア人構成員に対して,Bへの帰依を一層強める説法を行っている(なお,b2教も,Cが,インターネットを介して,ロシア人構成員に対して説法を行うなどしている。)。
(以上につき,乙B2の8,乙B4の1・35・37・38・40,乙B7の31,乙B22)
(4) 本件更新決定の際のb2教及びその他集団の組織・活動実態等
ア b2教の組織・活動実態等
(ア) b2教の組織規模及び運営態勢等
a b2教は,平成20年8月15日付けで,公安調査庁長官に対し,同年7月末時点におけるb2教の国内構成員について170名(「専従会員」と称する出家構成員50名,「非専従会員」と称する在家構成員120名)と報告し,このうち,武器等製造法違反事件に関与したA51やサリン量産プラント建設事件等に関与したA52は,別紙復帰構成員一覧表記載のとおり,懲役刑に処せられ,服役した後,b2教に復帰している。
b2教は,平成20年8月15日時点で,東京都世田谷区〈以下省略〉所在の「hマンション」1階部分に主たる事務所を置き,宮城県,千葉県,神奈川県,東京都,長野県,愛知県,大阪府,福岡県に合計8の施設を保有し,ロシアにもモスクワ市内に「m-Klub」と称する施設を保有している。
(以上につき,乙B2の1,乙B7の18・19,乙B8の52)
b b2教は,平成19年5月の設立表明時に,Cを始めとする出家した構成員13名が役員に就任し,Cらで構成する役員会を設置し,不定期に開催して意思決定を行っている。
b2教では,位階制度を採用していないものの,a教時代に,正大師に認定されたCを始め,副代表役員や役員は師と認定された者8名によって構成されており,Cを頂点とし,部長が末端の出家構成員に指示をし,その出家構成員が在家構成員に指示・伝達するという上意下達の組織構造は基本的に維持されている。
また,b2教の出家した構成員である専従会員は,b2教が合計12室賃借しているb2教マンションを始め,各地のb2教管理下の施設で集団居住しており,密教法具によって生じる神聖な音であるとする「聖音」と称する音を再生し続けている室内に水や食材等を保管し,「修法」の儀式を施した上で,摂取するなどし,b2教においても閉鎖的な出家制度は維持されている。
b2教は,役員会で決定された内容等を会議に参加した構成員を通じて,各部署又は各施設に所属する構成員に伝達しているほか,中央部署や各施設をインターネット回線を通じて接続し,これらの事項や幹部構成員の説法,集中セミナー等の開催状況を構成員に周知させ,また,平成19年7月以降,聖地巡礼修行,集中セミナーの状況等を収録した「b2教NEWS」と題するDVDを,同年10月からはこれとCの説法を収録したDVDも併せた2枚組の「月刊b2教DVD」を製作し,毎月1回,在家の構成員である非専従会員に配布している。
(以上につき,乙B2の1・16・19,乙B3の1・133・135,乙B8の1・5・25)
(イ) b2教の教化活動状況と構成員の認識等
a b2教は,「基本理念」として,「いかなる特定の人物についても,他者と区別し絶対者と位置づけて盲目的に信仰しない」などと規定し,現在・過去・未来の三世の仏陀とされる釈迦牟尼,観音菩薩,弥勒菩薩の釈迦三尊を象徴仏とし,釈迦三尊の仏画を施設内に掲げ,釈迦三尊に対する礼拝を行うこととし,外形上,a教の教義やBへの絶対的帰依は説いていない。
しかし,他方で,b2教において,①原始仏教・小乗仏教的な修行,②大乗仏教・密教の修行,③ヨーガ系統の修行を実践するよう説かれている点は,a教においても,ほぼ同様の修行体系を有していた点で類似しているといえる(儀式面においても,例えば,Bが構成員の眉間に親指を当ててエネルギーを注入するとする「シャクティーパット」という儀式は,b2教でCが構成員の頭頂部に密教法具を当ててエネルギーを注入するとする「弥勒金剛法具エンパワーメント」と類似するなどしている。)。(乙B3の104)
これに加えて,b2教ないしCが,「教団からグルをはずし,教団が社会から受け入れられなければならない。教団が社会に認められたころにまたグルを前面に押し出していけば良いじゃないか。私はそう考えている。」(乙B6の78。平成14年頃のCの発言。),「ヴァジラヤーナとは,本来,自分のカルマにとっては悪いが,他人のカルマにとっては良い行為をする,というものである。…(途中略)…全ての衆生のために,自己を犠牲にするかどうかが,ヴァジラヤーナなのである。…(途中略)…よって,事件後の新しい時代において,…(途中略)…衆生済度のために,従来の宗教的な実践,布教の型を変えるものであっても,衆生済度のために,自己のカルマをけがす覚悟を伴う,慈悲の心によるものであるならば,それは,ヴァジラヤーナである,ということになるだろう。」(乙B6の84。平成17年2月20日のCがb1教代表当時の「真理の地球」と題するブログ掲載),「大黒天・マハーカーラ,観音菩薩といった宗教的な概念,すなわち,尊師と縁があるが,B1尊師という名前と姿自体でない崇拝対象を検討することは,グルの意思に反しない」(乙B1の36。平成17年5月26日のインターネット掲示板へのCの書込み。)などと説いていることに照らせば,b2教においても,依然として,実質的に,Bへの絶対的帰依と衆生救済が団体の目的として説かれ,タントラ・ヴァジラヤーナの実践が説かれ,その教化活動がされているものと認められる。(乙B1の1,乙B3の1,乙B6の1・84~87・91)
b b2教の教化活動については,「Cの『私がb1教とは別の救済を担う新団体を立ち上げることで,今後どちらかが生き残っていけば真理は残されていくだろう。』という発言に対し,我々のグルはというのは大乗のそのまた上のグルです。もしグルが小乗のグルでしたら,今のb1教のように自分の成就だけを考えて修行していればいいのです。しかし,我々のグルはそうではないということをCさんは一番よくわかっていますので,大乗,つまり他を救済するという使命を背負った団体を立ち上げたのです。そうすることでb1教と合わせて,グルの意思にかなう団体になっているのです。ですから,b2教を立ち上げることは,結局は,グルの意思通りにCさんが行動しているということなのです。」(乙B1の56。平成19年7月のb2教構成員の公安調査官に対する発言。),「(b2教の構成員の『いずれC代表が教祖になるのですか』の問に対し,b2教の大阪支部長であるA53が)C代表は教祖にはならない。あくまでも代表です。それは私たちのグルはB1尊師であり,帰依の対象にC代表がなることはありえない。あくまで兄弟子であり,尊師へ導くのが代表の役割です。」(乙B3の100。平成19年10月頃のA53のb2教の構成員に対する発言),「C正大師は,強く尊師を意識され,尊師の説かれた法則をもとに,ひとつひとつ慎重に考え行動されているのがわかります。…(途中略)…本来,真理とはこのようであるべきだと思い,私は帰依や救済の心が強まりました。」(乙B6の92。平成17年10月25日のb1教の「真実を見る」と題するブログに「体験談2 ~C正大師のお話を聞いての感想・体験」と題して掲載された構成員の発言)などとb2教の構成員が発言しているように,その教化活動によって,CのB1隠しの意図とBへの絶対的帰依に変わりがないことがb2教の構成員に浸透している。(乙B1の1,乙B3の1,乙B6の1)
c b2教は,a教が日本シャンバラ化計画で活動拠点を置くべきとしていた東京,大阪,名古屋,福岡,札幌,仙台,金沢の主要7都市のうち,札幌,金沢を除く5都市において活動拠点を有し,また,「聖地もある郊外の大自然の中で,心身を浄化して,悟りに近づいていく生活を送り,最後は,大自然に抱かれて死んでいくこと(大自然・聖地によるポア),また全ての生き物・全ての人々を助ける慈悲の実践を行うことなどを目的に,貪り・消費を抑制し慈悲を強調する仏教的な共同体をベースとして,さらに,食料等の資源やエネルギーを自給自足する,持続型・循環型の経済システムを加えた生活共同体を構築する」という「SCEHN構想」と称するロータス・ヴィレッジ構想と類似した構想を有している。(乙B6の1・81・82)
d Cは,b2教設立表明前ではあるが,平成14年4月18日,b教の横浜市に所在する施設で,「教団の事件というのは条件であって,また,その原因として,間接原因であって,根本的な原因は,彼らに煩悩があって,解脱していなくて転生していて,簡単に言うと,要するに,覚醒していないからだ。」,「事件に関して帰依とはなんだったのか。私の結論では,教団もこれから実践を深めていかなければいけないが,事件に関して,グルの責任を強調するのではなく,弟子の責任を強調することであろうと思う。そういう形で,グルと教えを守る。」などと説法するなどしており,サリン事件等を正当化し,Bの教えを守るかのような発言をしている。(乙B7の11)
(ウ) b2教の立入検査の協力拒否等
a b2教の構成員が,第2回更新決定により更新された観察処分に基づく公安調査官の立入検査の際に検査対象物の隠蔽ないし検査に対し協力を拒否した疑いのある行為をした事例として以下の事実が認められる。(乙B8の1・26)
(a) 公安調査官が,平成19年7月13日,b2教の福岡市に所在する施設に立入検査を実施した際,幹部構成員である出家構成員A54(以下「A54」という。)が,検査着手後,着替えを理由に室内に駆け戻り,検査を行っていないパソコンの操作をしていたため,公安調査官が,操作を中止しないと検査忌避行為として告発する旨警告したところ,A54は中止した。
しかし,その後パソコンを検査すると,起動しておらず,電源が切れた状態になるなどしていたため,公安調査官が故意にパソコンの電源を落としたのではないかと追及すると,A54は,「そんなつもりはない。強いて理由を言うならば,テレビを見ていて,来客があったら,テレビを切るでしょう。その感覚と同じで,単に人が来たので切っただけのことである。」などと説明した。
(b) 公安調査官が,平成19年11月15日,b2教の大阪市所在の施設に立入検査を実施した際,出家構成員が,「私物であるから見せることはできない。修法物なので見せられない。(同施設の4階道場及び5階倉庫は)神聖な空間なので検査はやめてほしい。」などの発言を繰り返し,パソコンを検査して,在家構成員に関するメモの写真撮影をしたところ,上記出家構成員は,「信徒に対するメモを写真撮影したのは,信徒のプライバシーに対する侵害であり,撮影は認められない。」,「撮影したデータを引き渡してほしい。それができないのであれば,この場で撮影したデータを消去してほしい。」などと40分にわたって抗議を続け,検査を遅滞させた。
b b2教は,第2回更新決定以降に公安調査庁長官に対して提出した報告書で,以下のとおり,報告すべき事項を報告していない。
(乙B8の1・41ないし43・51)
(a) 公安調査官が,平成19年5月10日に,千葉県鎌ヶ谷市所在のb2教の施設を立入検査した際に発見した来道者名簿において,27名の氏名が掲載されており,このうち1名については,平成18年から平成20年にかけて,Cの説法会に参加しているところ,報告書に構成員として記載されたことがない。
(b) 公安調査官が,長野県小諸市所在のb2教の施設における活動状況を調査した際,2名については,平成19年から平成20年にかけて,Cの説法会等に参加しているところ,平成17年11月15日付けの第24回報告書以降,報告書に構成員として記載されていない。
(c) 公安調査官が,大阪市に所在するb2教の施設における活動状況を調査した際,1名については,平成18年から平成20年にかけて,Cの説法会等に参加しているところ,平成15年11月17日付け第16回報告書以降,報告書に構成員として記載されていない。
(d) b2教は,仙台市所在の施設や愛知県豊明市所在の施設を購入しているところ,この購入に関するb2教の意思決定状況を報告書に記載して報告していない。
(e) b2教は,平成20年2月7日,横浜支部長が出家構成員のA55に,小諸支部長が出家構成員A56にそれぞれ変更した旨電子掲示板において掲載しているところ,この人事に関するb2教の意思決定状況を報告書に記載して報告していない。
イ dクラブについて
dクラブは,同集団内部では「d1団体」,同集団外部では「dクラブ」と呼称されている集団であり,その設立経緯は不明であるものの,平成16年2月の時点で,a教の構成員であるA57(以下「A57」という。)を中心として,約20人程度が,東京都練馬区〈以下省略〉に所在する同集団の施設に集まり,Bの説法を収録したビデオテープやカセットテープ等を修行用の教材として,Bの教義に基づく修行法を実践するなどして,Bへの帰依を深めている。
その後,A57ら8名は,同グループ内のメンバーに修行と称して竹刀で殴打する暴行を加えて死亡させたとして傷害致死罪等の被疑事実で逮捕されるなどしたが,平成19年12月の時点でも,同グループのメンバーは集まって修行をしている。(乙B2の1・7)
ウ c団体について
c団体は,人権活動家のA58を代表者とし,平成8年に組織された刑事弁護対策本部を前身とする組織で,a教に関する刑事事件において逮捕・勾留された信者たちを社会的な弾圧から守り公正な裁判を受けさせることを主な目的として,志を同じくする信者らが集まって支援活動を展開するための集団である。
c団体の具体的な活動状況やb1教からの資金支援については,上記(3)エのとおりであり,c団体は,受刑者や刑事被告人であるa教の信者の裁判支援や原告やb2教の構成員との接見調整をしている。
また,c団体に所属するA59は,教団の組織としての活動ではないと主張しているものの,c団体が開設する会員制ホームページの作成事務等を行う施設において,祭壇を設けてシヴァ神等の仏画を掲げたり,個人用祭壇にはBの写真等が供えられ,「p1(改訂版)3」,「p2」等のb1教の刊行物や「修行プログラム」などのDVD等が多数存在し,同施設の柱部分には修行計画として,「修行日は,毎週 火 金 土の3日間 時間は,23:00から05:00まで 6時間以上 修行内容:帰依マントラ・大乗の発願・苦の詞章 各20分…(途中略)… :グルヨーガ瞑想 約1時間 修行監督:毎週交替で担当(修行準備・修行管理等) 修行報告:修行監督が毎週報告(月曜日朝ミーティング) 報告内容:日時別参加者 欠席者はその理由」などと記載した文書が貼り付けられていること等に照らせば,A59らc団体の構成員がa教の教義に基づき修行を行い,Bへの帰依を深めていると認められる。(乙B4の34)
エ ロシアの構成員について
ロシア在住の構成員は,上記(3)エのとおり,原告あるいはb2教と交流を保って活動を続けている。
また,D事件に関与したDは,平成20年7月に刑期を終えたが,平成17年には,自己の宗教観を確立したい旨述べており,原告ないしb2教関連の施設に出入りしていることは確認されていないものの,A18は,b2教の「m-Klub」の施設に出入りし,A17は,原告と関連を有するロシアの構成員の活動に参加し,A19は当初原告と関連を有するロシアの構成員の活動に参加していたものの,平成20年7月時点では,「m-Klub」の施設に出入りしている。
(以上につき,乙B2の8)
(5) 原告の事実認定に関する主張について
原告は,例えば原告の構成員が両サリン事件を正当化する発言をしたこと等の公安調査官の作成した調査報告書は,公安調査官の協力者の氏名を秘匿したりするなど,捏造の疑いさえあるものであって,証拠価値は全く認められないなどと主張している。
しかし,原告が指摘する氏名の秘匿の点は,本件更新決定の際の本団体により,協力者に生命・身体・財産等への危害が加えられることを事前に防止するためのものであり,乙B6の1以下の調査書を見ても,部分的に個人を識別し得る情報に限って,事後的に塗りつぶしを施したものと認められ,その体裁自体から,捏造がうかがわれるものとはいえない。
また,前記1(3)イ(エ)(オ)をみても,両サリン事件を正当化する発言内容やその程度は,証拠によって一様ではないし,乙B6の74については,「タントラ・ヴァジラヤーナが危険な教えであるといわれていますが,決してそうではありません。」などと原告の主張に沿った有利な供述内容や本件とは関連性が希薄な説法会での模様なども報告書に記載されていることからすると,公安調査官において,一定の方向性をもって意図的に証拠の捏造をしたとうかがうことはできない。
そうすると,原告が主張するような証拠の捏造を認めることができず,原告の主張は採用することができない。
2  争点7(原告を含む本団体と本件観察処分を受けた団体との同一性)について
(1) 団体規制法にいう「団体」の意義(4条2項)及び観察処分を受けた団体と期間更新決定の対象となる団体との同一性の判断基準等
ア 団体規制法にいう「団体」の意義(4条2項)
団体規制法にいう「団体」とは,同法4条2項において「特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体」と規定されているところ,同法が観察処分等の対象としているのは,その役職員又は構成員が団体の活動として過去に無差別大量殺人行為を行った団体であり,現在も無差別大量殺人行為の実行に関連する危険な要素を有している団体であること(同法1条,5条1項,4項)も考慮すれば,「特定の共同目的」としては,多数人の集団に,個々の構成員個人の意思とは離れて独自に形成され,又は存在する目的であって,構成員各人が当該集団としての行動をする際の指針となり得ると評価できる程度の特定の共同の目的があれば足り,「結合体」としての多数人の集団の結び付きの強さの程度としても,各構成員がこの共同の目的を達成するためにこれに沿った行動をとり得る関係にあることをもって足り,それぞれが当該集団の共同の目的に沿った行動を行うような関係が当該集団の各構成員の間に認められれば,同法4条2項にいう「結合体」に該当し,「団体」に該当するものと解される。
これに対し,原告は,団体規制法の「団体」概念について定める同法4条2項にいう「結合体」とは,群衆とは異なり,少なくとも当該結合体において独自に決定された意思について,構成員間において,その意思の連絡を必要とする概念であるところ,被告が主張する本団体の構成員,すなわち,原告,b2教,c団体,dクラブの各構成員やロシア国内で活動する者らとの間には,このような意思の連絡は認められないから,被告が主張する本団体とは団体とはいえないと主張している。
しかし,団体規制法4条2項を見ても,「特定の共同目的」を達成すること等に関して,結合体の構成員間の具体的な意思の連絡を要件としているように読める文言は特に見当たらない。また,無差別大量殺人行為が行われれば,不特定多数者の生命身体に対し極めて甚大な被害を及ぼすものであるところ,団体が行う無差別大量殺人行為には密行性とこれによる高い実現可能性,反復累行性等の特性から,迅速かつ適切な対処をするため同法の観察処分等が定められていることに鑑みると,個々の構成員間での共同の目的等に関する具体的な意思の連絡がなければ,観察処分等の規制を及ぼすことができないというのでは,無差別大量殺人行為の実行に関する危険な要素を有する団体に対し,時宜に適った規制措置を及ぼすことに著しく支障を生じざるを得ず,厳格に過ぎるというべきであり,同法2条の規定を考慮したとしても,原告の主張は採用できない見解といわざるを得ない。
よって,原告の主張は理由がなく,採用することができない。
イ 観察処分を受けた団体と期間更新決定の対象となる団体との同一性の判断基準等
団体規制法5条4項にいう「第1項の処分を受けた団体」と同法5条1項にいう観察処分の対象となった「当該団体」の同一性の判断基準について,同法に明確な定めはないものの,同法4条2項の定めによれば,同法の「団体」とは,結合性や継続性等の人的関係・組織構成よりも,当該団体が特定の共同目的を有していることに着目し,その点に特色がある概念であるということができるから,上記の同一性の判断基準としては,上記双方の団体において,① 構成員個人の意思とは離れて当該団体としての行動をする際の指針となり得る特定の共同の目的に同一性があるかどうかが最も重要であり,② 団体の結合性や継続性といった人的関係・組織構成についても,構成員や役職員が上記双方の団体間で一致していなければならないということではなく,各構成員が,上記共同の目的を達成するための意思決定に従うなどの共同の目的に沿った行動をするという点において人的結合性や組織としての継続性が認められ,この点に双方の団体間に同一性があるかどうかを考慮して,団体の同一性を判断すべきものと解される。
これに対し,原告は,団体の同一性は,手続規則18条,2条2項の「その団体を特定するに足りる事項」として本件更新決定が認定した各事項を基準として判断すべきであり,具体的には,  Bを教祖・創始者とするa教の教義及び教義に基づく共同目的の同一性,  代表者・主宰者の同一性,  団体の構成(構成員)及びその性質(位階など構成員間の結合関係等)の同一性を基準とすべきであると主張している。
しかし,手続規則18条2項3号は,「被請求団体の名称,主たる事務所の所在地並びに代表者又は主幹者の氏名,年齢,職業及び住所又は居所」を観察処分等の決定書の必要的記載事項として定めているところ,同条3項は,2条2項及び3項を準用しており,被請求団体の名称が明らかでないときは,2条2項の準用により,その団体を特定するに足りる事項を代替的な記載事項として決定書に記載しなければならないとされるものの,他方,被請求団体の主たる事務所の所在地や代表者又は主幹者の氏名,年齢,職業及び住所又は居所について明らかでないときは,同条3項の準用により,その旨を記載しなければならないとされるだけで,上記のような代替的な記載事項を決定書に記載することは特に求められていない。
そして,手続規則18条3項,2条2項が,被請求団体の名称が明らかでない場合に,上記のような代替的記載を観察処分等の決定書や処分請求書に求めたのは,当該処分の名宛人を特定して,処分の効力すなわち権利侵害の及ぶ範囲を画するとともに,被請求団体に防御の機会を付与し,手続保障を与えることにあると解され,期間更新決定時においても,この点は特に変わることはなく,団体規制法や手続規則の他の規定を見ても,団体の同一性の直接の判断基準を定めたものとは到底解されない。
したがって,原告指摘の上記 ないし の事情は,上記①②の同一性を判断するに際して,これを推知する一つの事情という限度で考慮することはできるが,それ以上のものとはいえず,これらの点において厳格に同一性が保たれていなければ,団体の同一性がないものとは解することができない。
よって,原告の主張は理由がなく,採用することができない。
なお,原告は,本件更新決定時点において,Bが東京拘置所に収容されている上,身体的精神的能力を欠いているとして,Bは,代表者・主宰者ではないと主張しているが,上記で検討したとおり,決定書中に表示された代表者・主宰者については,共同の目的の同一性を推知する上での一事情として,これを考慮すれば足り,本件観察処分及び本件更新決定における代表者による実際の代表行為・主宰行為が認められなければ,本件更新決定自体が違法となるとは解されず,上記同一性を判断する上では,団体規制法5条1項1号との関係でも,Bが当該共同の目的に基づいた団体の行動に決定的な影響を及ぼし得る存在であれば足りると解されるから,その前提を欠いているといわざるを得ない。
(2) 原告を含む本団体の「団体性」及び本件観察処分を受けた団体との同一性
ア 本件更新決定を受けた本団体は,本件更新決定に係る決定書上,「B1ことBを教祖・創始者とするa教の教義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体」(別紙処分1目録1)とされており,被告は,具体的には,「X教」(原告)という集団名を称して活動している構成員及びb2教という集団名を称して活動している構成員のほか,かつてb教,b1教の名称を使用して活動していた集団に加入していた構成員らで,現在は原告やb2教と一定の距離をおいて活動している者(その一部としてc団体,dクラブの名称で活動する者が含まれる。)が本団体の構成員であると主張している。
そこで,上記(1)の観点から,前記第1や前記1で認定した事実に基づき,原告を含む本団体につき,本件観察処分を受けた団体との同一性の有無を以下検討する(なお,本件訴訟においては,原告と本件観察処分を受けた団体との同一性の有無を検討すれば足りるともいえるが,当事者間の主張内容に鑑み,原告を含む本団体に「団体性」があるか否か,それと本件観察処分を受けた団体との同一性があるか否かを検討することとする。)。
(ア) 本件観察処分を受けた団体は,「B1ことBを教祖・創始者とするa教の教義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体」(別紙処分2目録1)として特定されており,a教の教義は,前記1(1)で認定した事実によれば,衆生救済を最終目的としそれを最速で達成するためには,たとえ自己は悪業を積むことになっても他者に対して善業となるならば,それを最高の実践課題として実践するという点に特色があるタントラ・ヴァジラヤーナ(具体的規範として,悪業を積んでいる魂は早く命を絶つべきであるとか,結果のためには手段を選ばないとする五仏の法則がある。)を最上位の教えとして位置付け,その実践として,苦しみの限界に自己を置き,そこにおいて一切乱れない心を形成する修行であるマハームドラーの修行を行い,シヴァ神の化身であるBに対する絶対的帰依を培い,Bと心を合一させることにあるということができる。
また,a教の教義は,両サリン事件の犯行動機が本件政治上の主義を実現するためと認められ(前記第1),両サリン事件に関与した者の多くがマハームドラーの修行の一環としてこれらの犯行を実行したと供述していること等も考慮すれば,a教の教義の最終目的である衆生救済の実現のため,日本・世界をa教のシャンバラ(理想郷)とする必要があり,そのための具体的かつ世俗的側面を有する手段として,Bを王ないし独裁者とする祭政一致の専制国家体制を構築するという本件政治上の主義と密接不可分に結び付いていたと認められる。
そして,本件政治上の主義を実現するためという両サリン事件の犯行動機やその犯行態様,これらの犯行に至る過程の中で,a教が拠点拡大や構成員の獲得を進め,武装化を推進し,国家行政組織を模倣した「省庁制度」の導入や憲法草案等の立案作業等をしていったこと等からすれば,本件観察処分を受けた団体は,本件政治上の主義とも密接不可分なa教の教義を広め,これを実現することを共同の目的としていたということができ,その構成員もこの共同の目的を達成するために,a教という団体の構成員として,結合していたということができる。
(イ)a 原告は,その前身であるb1教が発表したように,外形上は,① Bについては,現実の教団運営を統括する教祖・代表者ではなく,純粋に霊的な意味での瞑想修行等における「観想の対象」ないし「霊的存在」と位置付け,② 両サリン事件等との関係が指摘されている五仏の法則については,削除して廃棄し,誤解を招く用語等については事件や犯罪の肯定に結び付けられる余地のないように公式解釈書を作成・配布し,事件と無関係な教義・修行法を採用すること等を方針として発表している(前記1(2)オ)。
しかし,原告の幹部構成員は,教祖がBから交替したとか,上記①のような変更があったことを構成員に周知するよう徹底しているとは認められず,むしろ,本件更新決定時においても,前記1(3)イのとおり,Bの説く衆生救済を原告の活動目的とし,その実践として,教団の拡大とBの説く修行の実践による多数の解脱者の輩出,日本シャンバラ化計画の実現が必要であり,そのためにはBに絶対的に帰依することが必要であり,a教の教義の重要部分を構成するタントラ・ヴァジラヤーナやマハームドラーの修行の実践などを引き続き説くなどしており,一般の構成員もこれと同様の認識を有して,実践しようとしていると認められる。また,原告の前身団体以来の度重なる名称変更はBの指示・着想の範囲を超えるものではなく,実際の教化活動の内容や位階制度で師以上の者を新規認定していないこと等からすると,原告の団体としての行動やそのための意思決定も,Bの意思を推量して行われていると認められる。
b b2教は,特定の人物を絶対者として信仰しないこと,釈迦三尊を象徴物として礼拝を行うことなどとし,外形上は,a教の教義やBへの絶対的帰依を説いてはおらず,また,位階制度も明示的には採用していない(前記1(4)ア)。
しかし,b2教の代表者を務め,原告の前身団体であるb1教の代表者を務めたこともあるCは,b2教の設立を表明する以前から,a教教団の存続・拡大のためには,a教の教義やBへの帰依を外形上廃した別団体を設立することが必要であり,それはBの意思・指示であると説いて,外形上,Bの影響力を払拭したかのように装ういわゆる「B隠し」を推進してきたのであり,b2教は,この方針に基づいて設立された集団であることが認められ,b2教が採用している外形的な教義等は,いわゆる「B隠し」の現れにすぎないと認められる(前記1(2)イ(ウ),エ,(4)ア)。
また,実際のCらの教化活動をみても,Bへの絶対的帰依と衆生救済が目的であることが説かれており,構成員の間でも,Bへの絶対的帰依の姿勢は依然として変わらず,CをあくまでBへの導きを行う者と位置付けていることが認められる。
b2教は,ロータス・ヴィレッジ構想と類似したSCEHN構想を保有し,日本シャンバラ化計画で定められた活動拠点を置くべき大半の都市に活動拠点を有し,構成員の獲得を推進していることからすると,Bの意思を推量して意思決定をし,活動しているということができる(前記1(4)ア(イ))。
c その他,原告やb2教に所属していない構成員らの中には,dクラブやc団体の名称で活動している者もおり,c団体については,刑事被告人や受刑者であるa教の構成員との接見を希望する原告ら構成員をユーザー登録して接見調整をし,原告らの前身であるb1教から資金支援を得ていたことからすると,刑事被告人や受刑者であるa教の構成員の裁判支援や接見調整活動を原告ら団体の中で一元的かつ独占的に行っている集団ということができ,その構成員らもc団体の施設においてb1教の刊行物を用いるなどして修行をし,Bへの帰依を深める活動を行っている(前記1(3)エ,(4)ウ)。
他方,dクラブについては,原告らやその前身団体との関係は明らかではないものの,Bの説法を収録したビデオテープ等によりBの教義に基づく修行を実践して,Bへの帰依を深める活動を行っている(前記1(4)イ)。
(ウ) 以上によれば,まず,本件観察処分を受けた団体は,前記(ア)でみたとおり,Bを教祖・創始者とするa教の教義を広め,これを実現することを共同の目的としていたものであって,その構成員もこの共同の目的を達成し,これに沿った行動をする結合性を有した「結合体」であったといえる。
他方,上記(イ)のaないしcの原告ら集団(以下「原告ら集団」という。)の構成員が信仰している教義内容や原告ら集団の活動状況をみると,原告ら構成員においても,依然として「Bを教祖・創始者とするa教の教義を広め,これを実現する」という特定の共同目的を有していると認められ,これらの原告ら集団は,上記教義やBの意思を推量して,上記特定の共同目的に沿って,団体としての意思決定をし,活動していると認められるから,上記共同の目的は構成員個人の意思とは離れて原告ら集団としての行動をする際の指針となっていると認められる。
また,これら原告ら集団の構成員らが有しているBへの帰依心や同構成員らが原告ら集団の方針に従って活動していることにも鑑みれば,同構成員らは互いに上記共同の目的を達成するためにこれに沿った行動をとり得る関係にあるといえる。
そうすると,原告ら集団は,上記2(1)アで検討した団体規制法4条2項にいう「共同目的」を有し,これを達成するための「結合体」としての基本的な結合関係は保たれており,団体規制法にいう「団体」に該当すると認められるし,原告を含む本団体と本件観察処分を受けた団体の間には同一性が認められる。
イ(ア) これに対し,原告は,① 日本シャンバラ化計画は7つの主要都市に総本部道場を設立することやロータス・ヴィレッジ構想という,瞑想に適した修行施設を全国に展開するという純粋な宗教的計画にとどまり,「専制国家体制の樹立」を目的としたものではないし,② Bはa教の最終目的が「衆生救済」にあることを説法で使ったことはなく,③ 日本シャンバラ化計画が世界シャンバラ化計画の具体的計画であるとも解されないから,本件観察処分を受けた団体には団体規制法5条1項,4条1項にいう「無差別大量殺人行為」の要件である破防法4条1項2号ヘ所定の政治上の主義がなく,④ Bは構成員に対して絶対的な帰依を要求はしていないから,被告の教義解釈は誤っているし,構成員の帰依心も千差万別であると主張している。
しかし,前記第1や前記1で認定した事実によれば,まず上記①の点については,Bは,a教の宗教的計画を実現するためには,「政治的な力を使って,何とか早くシャンバラ化計画を進めたい」,「政治と宗教は切り離せない」,「徳によって政を行い,地上に真理を広める転輪聖王としての役割を果たしていきたい」などと,宗教的計画と祭政一致の専制国家体制の樹立という本件政治上の主義とを密接に結び付けていったことは明らかであるといえるし,また,上記②の点についても,Bは,タントラ・ヴァジラヤーナが「衆生救済を主眼にした教えである」大乗(乙B6の15)よりも優位で「短い期間で同じ結果が得られる。」(乙B6の16)などとタントラ・ヴァジラヤーナの実践の重要性を説いた上で,構成員に第三次世界大戦の勃発等の不安を煽って,それを防ぐために,「a教の救済活動とは何かといったら,まずは真解脱者,アラハットを三万人出すことだ。」(乙B6の1・5)などと構成員の獲得・教団の拡大を強く訴え,それを仏教用語の衆生救済に当てはめていたと認められるから,明確に衆生救済が最終目的であると唱えていないとしても,本件政治上の主義を否定する根拠とはなり得ず,上記①②の主張は理由がない。
原告の上記③の主張についても,a教が発行している冊子中には,「『日本シャンバラ化計画』は世界シャンバラ化に向けての第一歩です。」(乙B6の5)などと記載されており,原告自身もこの構想が存在することは否定していないし,実際にロシア等にも教団の拠点を開設していたこと等も考え合わせれば,世界シャンバラ化計画の第一段階の構想として日本シャンバラ化計画が位置付けられるのは疑いの余地はないというべきであり,上記③の主張も理由がない。
さらに,上記④の点についても,Bは,タントラ・ヴァジラヤーナの優位性を説いていたところ,「タントラは,ヴァジラヤーナは完璧な帰依が必要であると。ねえ,大乗は,一応,尊敬,グルを尊敬すればよろしいと。この二つには,大きな違いがある。」(乙B6の16),「わたしの帰依というものの考え方は…(途中略)…自分のいっさいのものを捨てて,自分自身を投げ出すこと。…(途中略)…そして,この帰依の実践こそ,ヴァジラヤーナの菩薩の修行であると考えています。」(乙B6の33)などと述べており,構成員に対し,「絶対的帰依」という文言そのものを用いて,その要求をしていないとしても,上記説法の内容は,構成員に対して,実質的にBへの絶対的帰依を要求するものといえるし,構成員らの有している認識内容(前記1(3)イ(ウ))に鑑みても,上記④の主張は理由がない。
(なお,上記③の主張に関し,被告は,本件観察処分を受けた団体が団体規制法5条1項柱書きの「無差別大量殺人行為を行った団体」であることについては,確定した平成13年判決が,破防法4条1項2号ヘ所定の「政治上の主義」も含めて,その要件を充足していることについて判断していて,既判力が生じるから,原告はこれに反する主張をすることはできないと主張している。
しかし,行政事件訴訟法7条により,準用される民訴法114条1項は,「確定判決は,主文に包含するものに限り,既判力を有する」と定めており,判決の既判力は主文に包含される訴訟物とされた法律関係の存否に関する判断の結論そのもののみについて生ずるものと解されるところ(最高裁昭和28年(オ)第457号同昭和30年12月1日第一小法廷判決・民集9巻13号1903頁等参照),平成13年判決の観察処分取消訴訟における訴訟物は本件観察処分の違法性一般であって,観察処分取消訴訟の請求棄却判決は,観察処分の違法事由が一般にないことを確定するにとどまり,観察処分を受けた団体が過去に無差別大量殺人行為を行った団体であるか否かのように観察処分の個々の要件に具体的事実が該当するか否かまでを確定するものではなく,あくまで判決主文の理由中の判断にすぎないといえるから,観察処分を受けた団体が過去に無差別大量殺人行為を行ったことを認定した平成13年判決があるからといって,原告が本訴においてこれを争う旨の主張をすることが,直ちに平成13年判決の既判力に抵触するものとはいえない。
よって,被告の上記主張は理由がなく,採用することができない。)
(イ) その他,原告は,① 被告が主張するc団体やdクラブ等のその他の構成員については,何の裏付けもなく,その存在すら疑わしいから,このような者らと原告との間で意思の連絡は認められない,② 原告とb2教は,財務運営と居住場所の完全な切り離しを行うなど確執・対立が存在し,また,「B隠し」を行うことが,真正なBの意思なのか否かについて,双方に対立があったから,原告を含む本団体について結合関係は認められないと主張している。
しかし,構成員らの間で具体的な意思の連絡までは不要であることは上記アで検討したとおりであるから,上記①の主張は前提において理由がないし,これらの集団に属する者には,上記ア(イ)でみたように,原告構成員と同様の共同の目的が存在し,これに沿った行動をする関係が認められるから,上記①の主張は理由がなく,採用することができない。
他方,原告の上記②の主張については,原告とb2教が分派した経緯やそれぞれの教化活動の内容に鑑みると(前記1),確かに原告指摘のとおり,財務運営を分離したことや「B隠し」を行うことがBの意思に従ったものか否かについて双方に対立があることが認められる。
しかし,「B隠し」を行うことがBの意思に従ったものか否かいずれの立場を採ったとしても,究極的には,「Bを教祖・創始者とするa教の教義を広め,これを実現する」という共同の目的を有することになることには変わりはなく,いずれかの立場を採ったからといって,上記共同の目的の存在が否定されることにはならない。
また,原告とb2教が財務運営の分離を行った点についても,C派と△△派で話し合いを重ねた結果行われたものであり,内部抗争を経た深刻な対立の結果とまではいえず,上記の財務運営を分離した時点やb2教の設立表明をもって,直ちに原告とb2教が独立した団体となったとまでは評価することはできない(前記1(2)エ(イ))。現に,原告の前身のb1教には,C派と△△派のみではなく,いずれにも属さない,あるいは,両派の間を取り持っていた中間派の存在も少なからず認められるのであるし,b2教設立表明後にも,原告の活動にも参加する者の存在も少ないながら認められ,双方共にc団体を通してa教の構成員であった刑事被告人との接見等をしていることからすると(前記1(2)エ,(3)エ),財務運営の分離(平成18年6月30日)から約2年半,b2教設立表明(平成19年5月7日)から約1年半程度の期間を経過したにすぎない本件更新決定時においては,両者は物的側面のみならず人的側面においても完全に独立した団体とまでは認められないし,上記共同の目的の存在にも何ら影響はないものと認められる。
したがって,被告主張の本団体の定義に原告のみならずb2教を含めることは許容し得るものと解されるから,今回の本件更新決定に関しては,原告の上記②の主張は採用することができない(もっとも,今後の団体規制法に基づく規制措置の運用の在り方としては,物的に分離した両者につき,その実情を適切に把握し,① 両者が本件観察処分を受けた団体と同様の共同の目的を有するか否か,② 両者が共同の目的を有するとしても,物的側面のみならず人的側面においても独立性が認められるか否か,すなわち,両者が一体として,本件観察処分を受けた団体と同一性を有する同法4条2項の「結合体」に該当するのか,両者がそれぞれ「結合体」として独立性を有することを前提として,それぞれにつき,又は両者の「連合体」につき,観察処分請求をし直すべきなのか(あるいは,後者の場合も,期間更新決定請求をすることができるのか),③ 旧構成員で両者に属さないこととなった者の帰属をどう評価するのか等について,適切な検討が行われることが望まれる。)。
3  争点8(団体規制法5条1項1号該当性)について
(1) 団体規制法5条1項1号の無差別大量殺人行為の「首謀者」及び「影響力」の意義について
団体規制法5条1項は,過去に,その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行い,現在も,団体の属性として無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険性を有する団体については,「その活動状況を継続して明らかにする必要がある」と認められるとして,観察処分に付することとし,その危険性を示す事情として,同法5条1項各号の事由を列挙したものと解される。
したがって,団体規制法5条1項1号の事由についても,当該無差別大量殺人行為の「首謀者」とは,当該無差別大量殺人行為の計画遂行に関し主導的役割を担った者をいうと解され,また,首謀者が当該団体の活動に「影響力を有している」とは,首謀者の言動が,当該団体の活動の基本的方向性を左右する力を有し,これによって団体活動が実際に左右されている場合だけでなく,基本方針を具体化する手段・方法の選択という場面において,その内容を左右する力を有し,これによって団体の活動が実際に左右されている場合も含むものと解される。
そして,上記首謀者の言動については,現時点における直接的な言動のみに限られることはなく,過去における言動であって,現時点において首謀者本人において否定されていないものも含まれるものと解される。
これに対し,原告は,団体規制法5条1項1号の「影響力」とは,「平和的影響力」の対極にある再び無差別大量殺人行為の実行を命じ,団体の構成員らにその準備行為に着手させるに足りる影響力に限定して解釈すべきであると主張している。
しかし,原告の主張する「平和的影響力」なる概念は,その内容が明らかであるとはいえないし,原告の上記主張にいう「影響力」の程度につき,無差別大量殺人行為を行わせるだけの具体的危険性を有する場合に限定するとの趣旨であれば,前記第1の2で検討したとおり,無差別大量殺人行為の特性に鑑み,過去に団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体について,現在も危険な要素を保持していると認められる場合に,これに迅速かつ適切に対処するための必要な規制措置を定め,もって国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保に寄与することを目的として団体規制法が制定されたことからすると,およそ採用することができない見解であるといわざるを得ないから,原告の主張は採用することができない。
(2) Bの「首謀者」該当性について
原告は,内乱罪の適用の当否を争っていたEの刑事被告事件の東京地裁判決において,両サリン事件の「犯行の目的は,教団の組織防衛という点では共通しているものの,松本サリン事件のように,サリンの殺傷能力を検証するとともに教団を被告とする民事訴訟を妨害したり,地下鉄サリン事件のように,強制捜査を阻止したり,…(途中略)…憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを直接又は間接を問わずその目的として敢行されたものとは到底認められないのである。」(甲19,53等)などと説示されたこと等を根拠に,a教には政治上の主義などなく,無差別大量殺人行為の存在自体否定されており,その首謀者も存在しないなどと主張している。
しかし,前記第1の2や前記2(2)イで検討したとおり,a教ないし本件観察処分を受けた団体が政治上の主義を有していたことは優に認められ,また,両サリン事件が上記政治上の主義若しくは施策の推進等をすることを目的として実行されたものであって,Bがその計画立案・遂行に関して主導的役割を担った者であることは明らかであるから,原告の上記主張は理由がない。
また,原告の指摘するEの刑事被告事件に関する東京地裁判決についても,団体規制法4条1項の「無差別大量殺人行為」とは,破防法4条1項2号ヘにいう暴力主義的破壊活動(政治上の主義若しくは施策の推進等を目的として殺人罪に該当する行為を行うこと)であることを要件とするものであり,同項1号イの内乱罪に規定する行為に関する暴力主義的破壊活動を要件とするものではないことからすると,団体規制法と破防法は,政治上の主義若しくは施策の推進等を目的とすることと原告の指摘する内乱罪(刑法77条)にいう「国の統治機構を破壊し,又はその領土において国権を排除して権力を行使し,その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的」とすることとを明確に区別しているということができる。
そうすると,上記東京地裁判決は,確かに,上記のとおり説示しているものの,これは,あくまで,両サリン事件が,上記の内乱罪の目的を直接又は間接に実現するために実行されたものではないことを説示するにとどまり,政治上の主義若しくは施策の推進等を目的としているか否か(前記1(1))までを否定したものとはいえないことは明らかであるから,原告の上記主張は前提において理由がなく,採用することができない。
なお,この点をおくとしても,上記東京地裁判決では,前記第1や前記1及び2(2)イで検討したように,a教が,「B1は,…(途中略)…正しい政治が行われないがゆえに人々は苦しむ,宗教的なものだけでは救済は不可能であるから,政治的な力をしっかりと把握する必要があるなどと述べて,教団として世俗的な権力の獲得を目指す決意を明らかにした」(甲19・42頁)ことから,政治権力の獲得を志向し,本件総選挙の立候補,その惨敗後の武装化の推進,Bを主権者とする国家構想(「B1を主権者とする祭政一致の専制国家を樹立し,国名を太陽寂静国に改めるとして,A6らにより,その憲法草案が起草され,初代の主権者が神聖法皇たるB1であること」(甲19・69頁))を有していたことや,上記摘示の両サリン事件の犯行目的などの事実関係が認定されており,これらの認定内容に鑑みても,a教ないし本件観察処分を受けた団体が政治上の主義を有し,その推進等を目的として両サリン事件を実行したとの認定を左右するものとはいえない。
(3) Bの原告を含む団体の活動に対する「影響力」の有無について
前記第1及び前記1で認定した事実によれば,以下の事情が認められる。
ア a教及び原告らの沿革並びに両サリン事件の実行
a教は,Bを教祖・創始者として活動を開始した宗教団体であり,その教義は,衆生救済を最終的な目的とし,その実現のためにはたとえ悪業を積むことになっても他に対して善業となるならば,それを最高の実践課題とし,Bへの絶対的な帰依を必要とするタントラ・ヴァジラヤーナの教えの実践が必要であり,そのためには,苦しみの限界に自己を置き,そこにおいて一切乱れない心を形成する修行であるマハームドラーの修行を行って,心をグルであるBと合一させることが重要であるとするものである。
Bは,衆生救済を実現するために,日本シャンバラ化計画を進め,そのためにはBを王ないし独裁者とする祭政一致の専制国家体制を構築するという本件政治上の主義を推進する際の障害を除去すること等を目的として,両サリン事件を実行することを計画し,多数の構成員らがサリン量産プラントの建設やサリン撒布等を実行するなどし,構成員らは,これもBの教えの実践であると認識していたというのであるから,Bは絶対的な影響力を構成員らに対して有していたといえる。
a教の構成員は,その後,Bが両サリン事件等により逮捕された後も,Bの指示に従い,ユダヤ文字でアルファを意味するb教と改称し,その後もその範疇を出るものではないb1教,X教(原告)などと改称するに至っており,また,Cは,Bの影響力を外形的に廃した別団体を設立して,Bの教えを広めるのがBの意思であると主張して,b2教を設立するなどしていることからすると,Bの絶対的な影響力はこのような原告ら組織の沿革においても表れているといえる。
(以上につき,前記1(1),(2))
イ 原告らの教化活動の実態と構成員らの認識等
原告は,Bを原告の代表者や役職員に位置付けておらず,上意下達式の意思決定システムを改め,合同会議による集団指導体制を導入し,危険な教義と誤解されやすいものは廃棄するなり危険な意味を排除した公式解釈書を発出して,構成員に周知させるなどの教団改革を進めていると主張しており,確かに外形的な事実としては,このような教団改革も認められなくはない。
しかし,① 原告の幹部構成員の説法を見ると,依然として,Bの説法を引用するなどしてBへの絶対的帰依を深め,衆生救済を目的とし,タントラ・ヴァジラヤーナの実践を説くなどし,② 立位礼拝や新・音のイニシエーションなどa教以来の修行形態や儀式を維持し,③ 一般構成員もBに対する帰依を深め,その教えを広めて衆生救済を実現することが重要であるとの認識を有しており,④ 原告の管理している施設では,Bの説法映像を収録したマスターテープや音声を収録したDVDが厳重に保管されており,⑤ Bへの死刑執行の回避・延期等を祈願していることなどからすると,Bの原告の教化活動等に対する影響力は根深いものがあるといえるし(なお,原告は,b2教と分派し,A5ら正悟師が役員を辞任したり,脱会した後はこのBへの帰依の傾向をより強めている。),随所においてBの意思を推量して団体としての意思決定を行っていることが認められる。
また,b2教については,外形的には,Bを帰依の対象とせず,従来のa教の教義を採用していないが,これもCや幹部構成員が説くように,教団が社会に受け入れられ,維持・存続していくためには,外形的にBの影響力を排した別団体を設立しBの教えを実質的に広めていくとの「B隠し」に基づくものであり,あくまで帰依の対象がBであることには変わりはなく,構成員も同様の認識を有しており,Bのb2教に対する影響力が認められる。
(以上につき,前記1(2)ないし(4))
ウ 両サリン事件等に対する原告ら構成員の発言・認識内容
原告の幹部構成員の中には,両サリン事件を起こしたことについて,a教の教義に当てはめて,Bを正当化したり,賛美するなどし,帰依を深める内容の説法等をしている者がいることが認められ,原告の一般構成員の中にも,同内容の発言したり,認識を有しているものが認められる。
また,b2教の幹部構成員の中にも,両サリン事件を起こしたことを正当化する説法をしている者が存在することが認められる。
(以上につき,前記1(3)(4))
エ A27らの教団運営への介入
A27は,平成14年10月に刑務所を出所すると,Bの三女と共に,Bを前面に出して活動することがBに対する真の帰依であるなどとして,b教の運営に介入し,その結果,「B隠し」を推進していたCは教団運営から外れたことが認められる。
なお,Bの殺人等被告事件の判決が確定した後,平成18年9月28日には,接見禁止も解除され,Bの三女や長男・二男らがBと接見を繰り返すなどしており,家族を介して影響力を行使し得る状況にあるといえる(乙B4の5)。
(以上につき,前記1(2)ウ)
オ D事件の発生
ロシア人のa教信者であるDらが,武器・弾薬,自家製爆発装置を調達・製造して,これを日本に持ち込んで,日本政府にテロ行為を行うとの脅迫をしてBの解放を要求する計画を立てたD事件(平成13年7月1日発覚)は,当時,日本国内で両サリン事件等により刑事裁判中であり,東京拘置所に収容されていたBを奪還することを目的としたものであって,DらのBへの深い帰依心が発現したものということができるし,また,Dらがロシア国内等でのa教の活動が禁止されていることに不満を覚えてのものであったともいうのであるから,a教の教えを広め衆生を救済するとの教義に基づくものであったということができる。
Dらは,平成20年7月時点で全員刑期を終えて出所し,原告やb2教のロシアにおける関連施設に出入りしている者もいる。
(以上につき,前記1(2)イ(エ),(4)エ)
カ 小括
以上を総合すれば,原告においては公然とb2教においては非公然ではあるが実質的にBを絶対的な帰依の対象とし,一般構成員の言動もBへの帰依を示すものが認められるなど,少なくとも宗教的側面において,なお絶大な影響力を保持していることが認められ,原告らの教化活動もBへの帰依を深める点に力点が置かれているということができる。
そうした中,① 原告ら構成員の中には,両サリン事件について,衆生救済のためにはやむを得ないものであるなどとa教の教義に当てはめて正当化したり,Bを賛美し帰依を深める発言をしたりする者が認められるし,② 本件観察処分後には,ロシア人信者が無差別大量殺人行為にもつながり得るテロ行為を基にBの奪還を計画したり,③ 第1回更新決定のころには,A27やBの三女がBの威光を示して,原告やb2教の前身のb教の運営に介入し,執行部もこれに従って,「B隠し」を進めていたCが代表者としての実権を掌握することができなくなったりしたこともあり,④ 現在も,Bの子女らが平成18年9月以降Bと接見を繰り返していて,原告もBの長男や二男を宗教的指導者として待望している旨の説法をしているなどの具体的事実が認められることからすると,本件更新決定時においても,原告ら構成員は,B又はその意を体した者がa教の教義を基に原告らの活動の基本方針や原告らの具体的活動について指示を出した場合に,容易にこれに従う関係にあったと認められるから,Bは,なお原告ら団体の活動の基本的方向性を左右するだけの影響力を保持していたと認められる。
よって,原告を含む本件更新決定の被請求団体は,団体規制法5条1項1号の要件を満たしているといえる。
キ 原告の主張について
これに対し,原告は,① 五仏の法則は採用しておらず,タントラ・ヴァジラヤーナやポワなどの誤解されやすい宗教上の用語や概念等については,事件や犯罪の肯定に結び付くことがないように公式解釈書を出しており,② 上意下達式の意思決定システムを改め多面的な判断や相互チェックが働くよう合同会議を採用しているから,Bの影響力は受けようもないし,③ Bも,かねてから,徹底した不殺生を説いており,破防法弁明手続において,  破壊活動を禁止し,  五仏の法則の封印を宣言し,  奪還テロも禁じているから,Bから受けるのは平和的な影響力であり,D事件もBへの帰依を示すものではないから,団体規制法5条1項1号の影響力は認められないと主張している。
しかし,これまで見たように,上記①の点については,原告において,表面上,上記のような教義解釈や教義廃棄を行った形跡はあるものの,なお,「サリン事件を引き起こしていたとしても,その被害者は高い世界にポアされ」るなどと発言する者や両サリン事件を正当化する説法や発言をする者がいたり,これらの危険な教義を含む「p1」を保有している構成員が存在するなど,上記の回収措置や構成員への周知は徹底されていないといわざるを得ないし,上記②の点についても,原告らの主張や証拠を見ても,合同会議における意思決定過程を報告書に記載しておらず,監事に相当する機関の存在も認められず,A27やBの三女の介入を受けた従来の意思決定機関と比較してどのように具体的に相互チェック機能等を充実させたかも明らかでなく,構成員らのBに対する深い帰依心やC派やA5ら正悟師との対立状況からすれば,単に師クラスの中堅幹部構成員による合同会議という形で意思決定機関が独占されているにすぎないというべきであるから,いずれも理由がない。
また,上記③の点についても,Bの説法集の中には不殺生を説く記載部分(甲139ないし168)も認められるが,他方で,両サリン事件については何らの反省の態度も示さず,殺人をも厭わない五仏の法則を説いた説法(前記1(1)イ)や「真理に仇なす者はできるだけ早く殺さなければならない」などと殺人を勧める言動(前記1(1)ウ(イ))も認められるのであって,およそ不殺生を徹底して説いていたとは認められないし,他方で,原告の構成員の中には,本件更新時において,両サリン事件を正当化する発言をしている者も存在し,D事件もBに対する深い帰依からBの奪還を計画したと認められることからすると,破防法の弁明手続における ないし の言動も教団に対する観察指定処分を回避するための方便にすぎないと認められるから,理由がない。
よって,原告の主張はいずれも採用することができない。
なお,原告は,Bの影響力に関連して,Bには何ら影響力を及ぼすだけの身体的精神的能力がない等主張しているが,Bの刑事事件の第1審公判での供述状況や弁護人との面会状況,東京拘置所での生活状況を詳細に認定し,多数の医学的見解を検討した東京高等裁判所の控訴棄却決定等(甲13,14)に徴すれば,Bには拘禁反応の症状が見られ,精神活動の低下を来していると思われるものの,弁護人と意思疎通する能力があることは肯定されているから,何らかの影響力を全く行使しえない程度(心神喪失等)にまで陥っているとはいえず,採用することができない。
また,Bは,Bの子女らとの面会に際し,教団運営について具体的な指示をする言動は特にしていないものの,弁護人と意思疎通する能力があることは肯定されていることからすると,上記のような指示は決して不可能であるとはいえない。
4  争点11(団体規制法5条1項5号該当性)について
(1) 団体規制法5条1項5号該当性について
団体規制法5条1項5号にいう「無差別大量殺人行為に及ぶ危険性」とは,過去に,その役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体について,現時点においてその団体の属性として無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素を有していることをいうものと解され,それを超えて,その危険な要素が集積されるなどした結果,当該団体が無差別大量殺人行為を実行することそのものについての蓋然性を直接的に問題とするものではない(なお,同法8条を対比して参照。)。
ア そこで,上記の観点から,前記第1及び前記1で認定した事実並びに前記3で検討した事情によれば,原告らが行ったと主張する五仏の法則などの危険な教義の廃棄や宗教用語の誤解防止のための公式解釈書の発出等は,結局,徹底されたものとは認められず,依然として従来の教義内容を収録した「p1」を保有している構成員が存在していたり,幹部構成員もBの犯行を「遠大な救済計画であった」などと正当化ないし賛美する説法をしたり,一般構成員の中にもタントラ・ヴァジラヤーナやポワなどの宗教用語や教義に当てはめて両サリン事件を正当化する発言をする構成員が存在し,これらの者はCが代表者を務めていた前身団体よりも一層Bに対する帰依を深めていることからすると,団体としての基本的性格ないし素地として,無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険性が存在することはいまだに変わらず,根深いものが認められ,BないしBの意を体した者により,無差別大量殺人行為の実行に関連した指示が行われた場合,容易にこれに従う関係が認められる。
また,前記3で検討した事情によれば,Bの原告構成員に対する影響力は絶大なものがあり,D事件をみても,その影響力は無差別大量殺人行為につながるテロ行為を誘発し得るほどの危険性を有するものといえるし,A27や三女のBの威光を示しての教団運営への介入状況をみると,Bが精神活動の低下を来しているとはいえ,接見禁止が解除された後以降においては,Bがその子女らを介して影響力を行使することも不可能ではない。
そうすると,前記3で検討した事情のみによっても,原告らを含む本団体に無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素は優に認められ,原告らを含む本団体は団体規制法5条1項5号の要件も満たしていると認められる。
イ なお,被告が指摘するように,原告には,地下鉄サリン事件以降に刑事事件で検挙され,刑務所を出所したり,釈放された者96名(このうち1名はb2教の活動にも参加することがある構成員である。)が復帰し,このうち,6名については,サリン量産プラント建設事件や自動小銃の密造に関する武器等製造法違反事件等に関与して有罪判決を受け,服役を終えた者である(別紙復帰構成員一覧表参照)。これらの事情も,原告を含む本団体の基本的性格ないし素地として,無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素の存在を基礎付ける一つの事情として考慮することができる。
(2) 原告の主張について
これに対し,原告は,① 全会一致制の合同会議を設置して,意思決定を大幅に民主化させ,② 原告に関する訴訟の判決書や学者や有識者の評価をみても原告に無差別大量殺人行為を行う危険性があるとの一般的な評価は存しないし,③ 両サリン事件の被害者に一貫して経済的補償を行っており,その他にも慈善活動をしているから具体的危険性は消滅しているということができ,④ これまでの公安調査官や警察が実施した立入検査においても,無差別大量殺人行為の準備や計画等を示す物件等が確認されたことはないから,原告は団体規制法5条1項5号に該当しないと主張している。
しかし,上記①の主張は,前記3で検討したとおり,具体的に合同会議を導入したことにより,意思決定過程が従来よりもどのように改善されたが明らかにされておらず,単に意思決定機関の構成員数を増やしたにすぎないといわざるを得ない。
また,原告の上記②の主張についても,原告が主張するとおりの評価をする有識者等の存在も認められるが(甲39ないし46),これらの評価はいずれも公安調査官の調査報告書等も含めた本件訴訟の全証拠を検討した上での具体的評価ではなく,いずれも原告が主張するとおり,有識者としての一般的な評価にとどまるにすぎないし,原告が無差別大量殺人行為を将来実行する蓋然性があるという意味での危険性がないことをいうものと解され,原告に無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素がないことまでを論証するものとはいえず,理由がない。
その他,原告においては,上記③のように,両サリン事件の被害者に対して,原告(その前身団体を含む。),C派やその他a教の元構成員等も含めて,平成11年12月から平成20年11月26日にかけて7億2553万0533円の賠償金支払を履行する(破産者a教破産管財人弁護士A60,サリン事件等共助基金,リカバリー・サポート・センターに宛てて支払)などしていることも認められるが(甲48,49,183,乙B21。本件更新決定後にも原告において賠償金支払を履行していることも認められる。),これとても,破産者a教の債務を引き受けた原告として,また団体の活動としてその役職員・構成員が両サリン事件を起こしたことに関し,被害者救済のための当然の社会的・法的責任を履行しているものにすぎないし,上記④についても,単に無差別大量殺人行為を将来実行する蓋然性を示す証拠は発見されなかっただけにとどまり,いずれの事情についても,上記で認定した原告の無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素を減弱せしめるものとはいえないと解されるから,原告の上記各主張には理由がない。
よって,原告の上記主張はいずれについても理由がない。
5  争点12(原告を含む本団体の活動状況を継続して明らかにする必要性の有無)について
(1) 原告を含む本団体の「活動状況を継続して明らかにする必要」(活動状況解明の必要性)の有無について
以上これまで検討した事情からすれば,原告を含む本団体は団体規制法5条1項1号及び5号に該当し,本件更新決定時においても,団体として無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素を保持していると認められるところ,原告の主張及び証拠によっても,これを減殺するような特段の事情は認められないが,同法5条4項の活動状況解明の必要性に関し,以下の事情も指摘することができ,積極的にこれを基礎付ける事情ということができる。
(2) 原告の出家制度に関する不透明性
ア 前記1で認定した事実によると,原告の出家構成員は,原告マンションを含めた全国の原告管理下の施設で,外部からの情報遮断や親族との縁を断って修行に邁進すべきとの原告の指導に従って,親族と離れて集団で居住し,修法と称する儀式を施した食品や水の配給を受けるなどして,Bへの帰依を深める修行を実践する生活をしているものと認められ,一般社会と隔絶し,外部の者からは容易にうかがい知れない閉鎖的な居住空間を形成しているものと認められる。
原告においては,一般社会や構成員の親族等の外部の者に対する情報開示も「X教広報部」による原告のホームページで発信する情報に限られていると認められ,組織改編,賠償金支払の履行や立入検査の実施状況などをごく簡単に発信するのみで,構成員らの集団居住の状況や修行内容の状況については積極的な情報発信を行っていない(乙B8の39。かつて原告の前身団体で行われていた施設公開や定例記者会見については,本件更新決定時においては行われていない。)。
このことも相まって,原告の出家制度に関する一般社会との隔絶性や閉鎖性は,原告の活動実態に関する不透明性を強めるものといわざるを得ず,団体規制法5条4項の活動状況解明の必要性を基礎付ける事情の一つということができる。
イ これに対し,原告は,① 出家制度自体は,我が国や世界の他宗派にも広く存在し,特異な制度とはいえず,② 構成員を管理統制しているわけでなく,仏道修行に勤しんでいるだけであり,③ 出家構成員ですら,都市部に住居を構えたり,アルバイトや派遣会社で就労したり,インターネット等の様々な情報環境に囲まれていて,社会との多様な接点があると主張して,閉鎖性・不透明性はないと主張している。
しかし,上記①の点については,両サリン事件は,いずれもa教の施設で集団居住していた出家構成員により,Bの指示の下,秘密裏に計画され,閉鎖的な居住空間であったからこそ,事前に外部に漏れることなく,なしえた犯行ということができ,原告は,過去にこのような無差別大量殺人行為を行った団体と同一性を有する団体であることからすると,原告の出家制度は,他宗派にも存在する制度であることのみをもって,活動状況解明の必要性と結び付かないものとすることはできない。
また,上記②の主張についても,上記アで指摘したように,外部情報の遮断の必要性が説かれ,出家構成員がこれに従っている事実や食品や水など生活必需品について管理している状況からすれば,理由がないことは明らかであるし,上記③の主張も,書籍(甲68)の一般的見解を取り上げただけで,原告の主張する出家構成員の生活状況をうかがい知る具体的資料は特にないから,理由がない。
よって,原告の主張はいずれも理由がなく,採用することができない。
(3) 立入検査の受検態勢の不備及び立入検査の妨害行為等
ア 団体規制法7条2項は,観察処分に付された団体の活動状況を継続的に明らかにし,同法1条にいう国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保に寄与するためには,公安調査官による任意調査や団体が行う報告では不十分な場合もあり,活動状況解明の実効性を確保するため,団体が所有し又は管理する土地・建物に「立入り」,団体が所有し又は管理する設備,帳簿書類その他必要な物件の「検査」をすることを認めたものであり,当該団体に立入検査受忍義務を課している。
そして,団体規制法3条1項にも鑑み,立入検査の目的から立入検査を実効あらしめるものとするには,実質的に捜索差押えにわたらない限り,公安調査官において,合理的かつ必要な範囲で検査を行う際にその結果を写真撮影等により記録をすることや立入検査の現場にいる者に必要と認められる事項について任意の回答を求めて質問をすることができるものと解され,これも当該団体に対する立入検査権の範囲に含まれるものと解される。
もっとも,立入検査は,捜索差押えのような強制処分ではないため,調査活動としては限界もあり,当該団体の任意の協力が十分に得られなければ,当該団体の活動状況の解明が進まない面もあるところ,団体規制法1条や7条2項の趣旨からすれば,当該団体の活動状況の解明という目的に照らし,それが必要で,かつ,捜索差押え等の強制にわたらない程度の相当な範囲内のものであれば,写真撮影等の記録行為への協力や立入検査に伴う質問に対する任意の回答に協力をしたか否かも団体規制法5条4項にいう「活動状況を継続して明らかにする必要」(活動状況解明の必要性)の有無に影響を及ぼす一事情となり得ると解される。
これに対し,原告の前身であるb1教は,平成19年3月12日に,「立入検査時の注意点」と題する文書を発出し,出家構成員に対し,立入検査は立会人の同意の上で始めさせること(前記1(3)ウ(ウ)①),公安調査官の立入検査時の質問に対する回答義務はないこと(同⑤),インターネットの接続を要求されても応じる義務はないこと(同⑦),写真撮影には立会人の同意・立会いが必要であること(同⑧)等を周知させるなどし,原告においても,この取扱を特段改めた形跡がないことからすると,原告の構成員の大多数は,立入検査に際して,検査拒否罪等に該当しないよう最低限の協力のみをするにとどめる姿勢を採っていることは明らかであり,検査受忍義務に基づく受検態勢としては最低限のものにとどまっており,十分なものとなっていない。
そして,実際にも,原告ら構成員の中には,前記1(3)ウ(ウ)abで指摘したような立入検査に対する非協力行為にも出る者もおり,これは上記の原告の受検態勢の不十分さに基づくものであり,組織的なものと認められる。
以上のような原告の受検態勢の不十分さや原告構成員の組織的な検査非協力行為は,原告の活動実態に関する不透明性を強めるものといわざるを得ず,団体規制法5条4項の活動状況解明の必要性を基礎付ける事情の一つということができる。
イ これに対し,原告は,私物検査の常態化(甲9),再発防止処分をほのめかす恫喝的検査(甲60),日没後に開始された検査(甲93)など見境なく行き過ぎた態様で行われた立入検査による人権侵害への防衛手段であるなどと主張している。
しかし,原告らが指摘するような行き過ぎた立入検査権の行使があったとしても,それは個別的に公安調査官の立入検査権行使の違法すなわち国家賠償法1条1項の国家賠償責任の存否として問われるべき問題にすぎず,これをもって,直ちに上記のような不十分な受検態勢を改善せず,検査拒否行為を助長することを正当化するものとは到底解することができない。
そして,この点をおくとしても,原告が指摘する違法な私物検査との点については,公安調査官において,原告管理下の施設に所在する者が所持している物であっても,これが原告の所有又は管理に属する物か否かを確認するため,捜索差押えにわたらない限り,相当な方法で検査を行うことができると解されるところ,原告の提出する証拠(甲9等)を見ても,その具体的経緯は必ずしもつまびらかではないが,いずれも上記の限度にとどまっているものと認められる。
また,原告が指摘する恫喝的検査との点も,再発防止処分の警告をしたことをもって,直ちに違法な立入検査権の行使となるとは解されないところ,その証拠(甲60)だけでは,公安調査官をビデオ撮影したことと公安調査官が警告を発したことに関し具体的経緯が明らかとはいえないから,違法な立入検査権の行使であるとは認められない。
その他,日没後にされた検査であっても,当該施設の管理者,居住者等に検査の継続を受忍させるに足りる高度な必要性があり,住居の平穏やプライバシーの権利に対する被害を必要最小限度にとどめるための措置が採られていたなどの特段の事情があれば違法な検査とはいえないと解されるところ,原告提出の証拠(甲93)は,その全容が明らかでないものの,公安調査官は,金沢市に所在する原告施設で夜間に人の出入りが活発になっているとの情報を得たことにより,午後7時から午後9時40分の間,同施設に立ち入ったというものであるが,夜間に人の出入りが活発になっているか否かを確認するためには,上記時間帯で現に確認するのが最も合理的であるから上記にいう高度の必要性があるといえるし,約2時間程度で,深夜となる前には立入検査を切り上げていることからすると,必要最小限度の権利侵害にとどまるものということができるから,やはり,違法な立入検査権の行使であるとは認められない。
(4) 報告書の記載の不備等
原告は,第2回更新決定から平成20年7月末までに提出した報告書中で,その構成員に対して正確な報告をしなかった(前記1(3)ウ(エ)aないしc)ほか,合計370件の原告の活動に関する意思決定の記載をした報告書についても,意思決定事項の内容を詳細に記載しているものも中には見受けられるものの,意思決定の背景事情を含めた趣旨説明や審議内容を含めた意思決定過程等を記載したものになってはおらず,その内容を把握できるだけの十分なものとなっていない。
したがって,原告の報告書にはなお不備が認められ,これは,原告の活動実態に関する不透明性を強めるものといわざるを得ず,団体規制法5条4項の活動状況解明の必要性を基礎付ける事情の一つということができる(なお,「被告処分団体の営む収益事業」の報告不備を被告は主張しているが,後記第6で検討するとおり,観察処分時に報告義務を課していなかった報告事項を観察処分の期間更新決定において新たに追加することはできないから,この点については,同法5条4項の活動状況解明の必要性を基礎付ける事情と評価することはできない。)。
(5) 地域住民等の要望
原告の施設の周辺に居住する住民らは,原告がa教と同様の出家制度により集団居住生活をし,外部から容易にうかがい知ることのできない体質を依然として有し,また,原告が製造する食事等による異臭や夜間の騒音等に悩まされていることから,原告に対する恐怖感・不安感を抱き,原告の解散や退去等を求める協議会等を結成し,原告らの解散,施設の閉鎖及び退去等を求める集会等を行い,法務大臣や公安調査庁長官に対し,観察処分の期間更新等の要請等をしており,原告らの組織がある地方公共団体等も,同様の要請活動を行うなどしている。
以上の事情も,団体規制法1条の規制目的に鑑みれば,同法5条4項の活動状況解明の必要性を基礎付ける事情の一つということができる。
これに対し,原告は,以上の事情は,日常生活上のトラブルにすぎないし,公安調査庁が地域住民を扇動している疑いもあるなどと主張しているが,異臭や夜間の騒音と外部から容易にうかがい知ることのできない原告の出家構成員の集団居住生活の状況が相まって,地域住民にかつての両サリン事件等と関連した具体的な恐怖感・不安感を抱かせているということができ,単に日常生活上のトラブルにすぎないものということはできないし,証拠を見ても,原告が主張するような公安調査庁の扇動行為があったとは認められないから,原告の主張は理由がない。
(6) 小括
以上からすれば,原告を含む本団体について,団体規制法5条4項の活動状況解明の必要性が認められる(なお,前記1(4)で認定したとおり,b2教についても原告同様の立入検査非協力行為等が認められる。)。
第6  争点13(更新決定時に新規の報告義務を課すことの適法性)について
1  団体規制法5条3項及び5項の定めについて
団体規制法5条3項は,観察処分を受けた団体の報告義務を定めているが,その柱書きにおいて「第1項の処分を受けた団体は,政令で定めるところにより,当該処分が効力を生じた日からその効力を失う日の前日までの期間を3月ごとに区分した各期間(最後に3月未満の区分した期間が生じた場合には,その期間とする。以下この項において同じ。)ごとに,当該各期間の経過後15日以内に,次に掲げる事項を,公安調査庁長官に報告しなければならない。」と定め,同項6号において,報告事項の一つとして「その他第1項の処分に際し公安審査委員会が特に必要と認める事項」を定めている。
一方,団体規制法5条5項は,同条4項が観察処分の期間の更新について定めたのを受けて,「第3項の規定は,前項の規定により期間が更新された場合について準用する。この場合において,第3項中『当該処分が効力を生じた日から』とあるのは,『期間が更新された日から』と読み替えるものとする。」(以下,第2文につき「本件読替規定」という。)と定めている。
被告は,観察処分の際に課する報告義務を定めた団体規制法5条3項の規定について,同条5項が,期間更新の際に必要な変更を加えた上で当てはめる措置を施す「準用」の文言を使用していることからすると,同条3項6号に「第1項の処分に際し」とあるのも「更新に際し」と読み替えられるから,観察処分の期間更新の際に新たな報告事項を付加することができ,他方,同条5項の本件読替規定は,期間が更新された場合であっても性質上当然に変更される事項とは必ずしもいえず,期間更新後の基準となる始期について疑義が生じ得るから,あえて読替規定が設けられたものであり,同条3項6号の読替えとは問題が異なると主張している。
確かに,団体規制法5条3項によれば,観察処分決定の効力が発生した日からその効力を失う日の前日までの期間が報告義務の履行対象期間となっているのに対し,これを同条5項で,本件読替規定なく準用すると,期間更新決定の効力が発生した日からその効力を失う日の前日までの期間が報告義務の履行対象期間となり,期間更新決定の効力が発生するのは当該決定を官報によって公示した日(団体規制法26条,25条2号)であることからすると,当該決定の官報公示日次第で,観察処分決定の効力が消滅する前(期間が更新される前)や逆に観察処分決定の効力が消滅した後(期間が更新された後)に報告義務の履行対象期間の始期が生じることもあり得る。しかし,期間更新決定が観察処分を同一性・継続性を保って更新するものと解されること(団体規制法5条4項,26条。甲6の「委員御指摘のとおり,本法では更新という制度をとっておりますので,当初の処分内容がそのまま繰り返されることになります。したがって,その期間につきましても当初の決定の期間がまた繰り返される,こういうことになります。」とのA61政府参考人発言)にも鑑みると,当該期間更新決定の際の報告義務の履行対象期間の始期も観察処分や前回の期間更新決定における報告義務の履行対象期間と間断なく継続していることが予定されているということができ,そのような観点から,期間更新決定における報告義務の履行対象期間の始期を整序し,この点に疑義が生じないようにする趣旨で,本件読替規定が定められたものと解することができる。
これに対し,団体規制法5条3項6号については,特段の読替規定は定められておらず,被告主張のように,同条5項により,同条3項柱書きの「第1項の処分を受けた団体」を「第1項の処分につき期間の更新を受けた団体」又は「第4項の処分を受けた団体」と読み替え,同項6号の「その他第1項の処分に際し」を「その他第1項の処分につき期間を更新するに際し」又は「その他第4項の処分に際し」と読み替えることもできないではないとも思える。
しかし,上記以外に団体規制法5条,8条,26条等の規定を見ても,観察処分の期間更新決定時に観察処分では課していなかった新たな報告事項を追加することができるような定めは特に見当たらない。かえって,上記のとおり,期間更新決定は観察処分を同一性・継続性を保って更新するものと解される(団体規制法5条4項が「期間を更新することができる」としていることからも,その趣旨は明らかである。)上,観察処分等の処分請求書においては,請求に係る処分の内容を記載することとされている(同法15条1項1号)のに対し,期間の更新を請求する更新請求書においては,更新の理由となる事実等のみを記載することとされ,処分内容は記載事項とされておらず(同法26条1項,手続規則2条),新たな報告事項を追加することは予定していないものと認められる。
また,前記第4で検討したとおり,団体規制法26条3項が,期間更新決定時の手続として,口頭意見陳述権を認めた意見聴取手続ではなく,陳述書や証拠書類等だけしか提出できない意見陳述の手続を定めていて,観察処分時の意見聴取手続を前提として簡略化していることからしても,期間更新決定は,観察処分を受けた団体が,同法5条1項各号に掲げる事項を満たし,引き続き当該団体の活動状況を継続して明らかにする必要がある場合に,観察処分につき,同一性・継続性を保ってその期間を更新するものであり,報告義務のような派生的・付随的な処分も含めて何らかの新しい処分をすることは本来的に予定されていないことが前提となっているものといわざるを得ない(団体規制法26条4項1号が更新が予定される処分の内容を当該団体に通知しなければならないとされているのも,期間更新決定時において当該処分を同一性が保たれているか否かを判断するための資料とするものと解される。また,手続規則18条4項は,団体規制法5条3項6号に掲げる事項がある場合には,これを決定書の必要的記載事項である主文に記載しなければならないとしているが,これが期間更新決定にも適用されるとしても,法令上所定の報告事項でない報告事項を明記するという趣旨であって,そのことから更新の際に新たな報告事項を追加することが予定されていると解する余地がないことは明らかである。)。
以上に加え,新たな報告事項の追加は,当該団体に対し,新たな事項の報告義務を課すことにもなり,構成員個人のプライバシー権や間接的とはいえ当該団体の宗教的結社の自由や構成員個人の宗教的活動の自由にも制約を生ずることがあり得ることにも鑑みれば,期間更新決定時において観察処分時にはなかった新たな報告事項を追加することができるか否かは,期間更新決定時における報告義務の履行対象期間の始期と同程度に疑義を生じかねないものであるということができる(さらに,仮に新たな報告事項を追加することができるという立場に立っても,例えば,観察処分決定時に団体規制法5条3項6号の事由として報告事項Aを定め,期間更新決定時においては報告事項Aも維持しつつ,これ以外に報告事項Bも追加したいという場合,処分の同一性を保持しつつ期間更新をするとの観点から,「その他第1項の処分及び同処分につき期間を更新する際に」と読み替えるべきか,それとも「その他第1項の処分につき期間を更新する際に」と読み替えるべきか,直ちに明確な読替えをなし得るとはいい難い。)。
そうすると,「準用」の意義について被告主張のように解したとしても,本件読替規定のような適切な読替規定や根拠規定がなければ,誰しもが疑問なく変更が加えられるとして当然に読み替えられると解することはできず,この点に関する被告の主張には理由がない。
2  団体規制法の趣旨との関係について
これに対し,被告は,団体規制法5条3項6号につき,被告主張のように読み替えることができないと,観察処分決定時や前回の期間更新決定時以降に当該団体に生じた変化や新たに判明した事情等に応じて新たな事項を報告させることができないこととなり,そうすると観察処分の目的を達することができず,団体規制法の趣旨に反すると主張している。
しかし,このように,当該団体の報告だけでは当該団体の活動状況を解明するのに不十分である場合についてこそ,公安調査官等の立入検査権の行使によって,当該団体の活動状況の解明を補完するものと解され,被告が主張するような不都合は認められないと解される。
また,仮に定期的かつ定型的に,ある一定の事情を報告させなければ,適時・適切に当該団体の無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素等を含め活動状況を把握できない場合には,報告事項を追加するために,現行の団体規制法の枠組みの下で,観察処分を請求し直すことも考えられる。
このように解しても,観察処分と期間更新の要件は,① 団体規制法5条1項各号に掲げる事項のいずれかに該当すること,② (期間更新においては,「引き続き」が冒頭に入る。)その活動状況を継続して明らかにする必要があると認められる場合であることが要件となっていて,大部分が共通しているし,観察処分請求時には,「その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体」に当該団体が該当するか否かの立証の負担はあるものの,過去にその団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体であるか否かを問題とする要件であるから,第一次観察処分請求時とほぼ共通する立証で足りると考えられるから,特段の支障が出るとは考えられない。
また,手続面においても,観察処分請求においては,当該団体の役職員,構成員及び代理人の5人以内に限った口頭意見陳述権等の負担が生じるものの,新たな報告事項を追加し,当該団体や構成員個人の権利利益に制約を及ぼすことにも鑑みれば,過度の負担とはいえないし,手続保障の点からも望ましいというべきである(団体規制法20条等)。
よって,被告の上記主張は理由がない。
3  小括
以上の諸点に加えて,団体規制法においては,例えば26条5項,6項等に見られるように,丁寧に読替規定が設けられていることにも照らせば,同法5条3項6号は,同条5項において準用されるに当たり,本件読替規定のような読替規定もないまま,「その他第1項の処分につき期間を更新するに際し」,「その他第4項の処分に際し」などと読み替えることはできないと解される。
したがって,本件更新決定において,別紙処分1目録2(2)ウ記載の新規報告事項を追加した点は,法律の根拠なくしたものであって違法であるといわざるを得ない(なお,報告義務を課す点は,観察処分や期間更新決定そのものとの関係では付随的・派生的処分であるから,基本となる期間更新決定の効力そのものを取り消すだけの違法性は認められないものと解する。)。
第4章  結論
以上の次第で,原告の請求は,本件更新決定のうち,別紙処分1目録2(2)ウの部分の取消しを求める限度で理由があるから,その限度でこれを一部認容することとし,その余の請求は,その余の争点を検討するまでもなく理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民訴法61条,64条を適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 川神裕 裁判官 菅野昌彦 裁判官林史高は,在外研究のため,署名押印できない。裁判長裁判官 川神裕)

 

別紙
代理人目録
1 原告訴訟代理人弁護士 前田裕司 梶永圭 石田純 贄田健二郎 渡辺良平 竹内明美 氏家宏海 大庭秀俊 古山弘子 大久保聡子
2 被告指定代理人 近藤裕之 折原崇文 河村浩幸 嶋田憲明 三好一生 長澤範幸 高橋良昌 有馬克文 安藤剛 住永剛 山口修一郎

〈以下省略〉

 

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政治と選挙の裁判例「告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター 政党 公報 広報」に関する裁判例一覧
(1)昭和26年 3月 7日 大阪高裁 昭25(う)2385号 選挙運動の文書図画等の特例に関する法律違反被告事件
(2)昭和26年 3月 3日 金沢地裁 昭25(行)2号 県議会議長辞職許可決議無効事件
(3)昭和26年 2月26日 仙台高裁 昭25(う)1081号 昭和二二年勅令第一号違反事件
(4)昭和26年 2月19日 新潟地裁 昭25(行)14号 休職処分取消請求事件
(5)昭和26年 2月 2日 最高裁第二小法廷 昭25(れ)1505号 公務執行妨害教唆各被告事件
(6)昭和25年12月28日 岐阜地裁 昭25(モ)12号 仮処分異議申立事件 〔電産特別指令確認事件〕
(7)昭和25年12月20日 最高裁大法廷 昭25(れ)1021号 昭和二二年勅令第一号違反被告事件
(8)昭和25年12月20日 高松高裁 昭25(う)794号
(9)昭和25年12月19日 東京地裁 昭25(ワ)2251号 解雇無効確認請求事件 〔東京都職員免職事件〕
(10)昭和25年12月16日 東京地裁八王子支部 昭25(モ)165号 仮処分異義申立事件 〔富士工業工場閉鎖事件〕
(11)昭和25年12月14日 大阪地裁 昭25(ヨ)43号 仮処分申請事件 〔新家工業組合除名事件〕
(12)昭和25年12月13日 東京高裁 昭25(行ナ)12号 商標登録願拒絶査定不服抗告審決取消請求事件
(13)昭和25年12月 8日 最高裁第二小法廷 昭25(あ)2863号 公職選挙法違反・昭和二二年勅令第一号違反被告事件
(14)昭和25年12月 6日 高松高裁 事件番号不詳
(15)昭和25年11月22日 最高裁大法廷 昭25(れ)280号 賭場開張図利被告事件
(16)昭和25年11月10日 岡山地裁 昭24(ワ)107号 組合員除名決議無効確認等請求事件 〔倉敷レーヨン組合除名事件〕
(17)昭和25年10月27日 福岡高裁 事件番号不詳 解職処分無効確認等請求控訴事件 〔熊本電気鉄道事件・控訴審〕
(18)昭和25年10月18日 京都地裁 昭25(行)10号 議会議員除名決議取消請求事件
(19)昭和25年10月 4日 広島高裁 昭25(う)649号 公職選挙法違反・昭和二二年勅令第一号違反被告事件
(20)昭和25年10月 3日 秋田地裁 昭25(行)19号 休職ならびに懲戒免職処分取消請求事件 〔秋田県教員懲戒免職事件〕
(21)平成24年 4月13日 東京地裁 平23(行ウ)73号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(22)平成24年 4月12日 東京地裁 平23(行ウ)48号 難民の認定をしない処分等無効確認請求事件
(23)平成24年 4月10日 東京地裁 平23(行ウ)128号 難民の認定をしない処分等取消請求事件
(24)平成24年 3月27日 和歌山地裁 平19(行ウ)8号 政務調査費返還代位請求事件
(25)平成24年 3月26日 仙台地裁 平19(ワ)1648号・平20(ワ)430号・平20(ワ)1915号・平21(ワ)355号・平21(ワ)896号・平21(ワ)1398号 監視活動停止等請求事件
(26)平成24年 3月23日 東京地裁 平22(行ウ)368号 難民不認定処分取消請求事件
(27)平成24年 3月16日 東京地裁 平21(行ウ)311号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(28)平成24年 2月29日 東京地裁 平21(行ウ)585号 公金支出差止請求事件
(29)平成24年 2月23日 大阪地裁 平21(行ウ)154号 退去強制令書発付処分無効確認等請求事件
(30)平成24年 2月22日 東京地裁 平22(行ウ)445号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(31)平成24年 2月14日 東京地裁 平22(行ウ)323号 難民の認定をしない処分取消請求事件
(32)平成24年 2月 3日 青森地裁 平20(行ウ)4号 政務調査費返還代位請求事件
(33)平成24年 1月31日 大阪高裁 平23(行コ)96号 政務調査費違法支出損害賠償命令控訴事件
(34)平成24年 1月31日 福岡高裁 平23(行コ)13号 大分県政務調査費返還等請求事件
(35)平成24年 1月27日 東京地裁 平22(ワ)5552号 地位確認等請求事件 〔学校法人尚美学園事件〕
(36)平成24年 1月18日 横浜地裁 平19(行ウ)105号 政務調査費返還履行等代位請求事件
(37)平成24年 1月17日 東京地裁 平21(行ウ)600号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(38)平成24年 1月13日 東京地裁 平23(ワ)4292号 損害賠償等請求事件
(39)平成24年 1月12日 東京地裁 平22(行ウ)251号・平22(行ウ)256号・平22(行ウ)257号・平22(行ウ)258号・平22(行ウ)259号 退去強制令書発付処分取消等請求事件
(40)平成23年12月21日 東京地裁 平21(行ウ)636号 退去強制令書発付処分取消等請求事件
(41)平成23年12月 9日 徳島地裁 平19(行ウ)17号 政務調査費違法支出不当利得返還命令請求事件
(42)平成23年12月 8日 東京地裁 平21(行ウ)341号 観察処分期間更新処分取消請求事件
(43)平成23年12月 6日 東京地裁 平22(行ウ)215号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(44)平成23年11月30日 東京地裁 平22(行ウ)37号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(45)平成23年11月25日 東京地裁 平21(ワ)3923号・平21(ワ)20801号 損害賠償等請求事件、損害賠償請求事件
(46)平成23年10月27日 東京地裁 平20(行ウ)497号・平20(行ウ)530号・平20(行ウ)531号・平20(行ウ)532号・平20(行ウ)533号・平20(行ウ)487号・平20(行ウ)557号・平20(行ウ)690号 難民の認定をしない処分取消等請求事件、在留特別許可をしない処分無効確認請求事件、退去強制令書発付処分取消等請求事件
(47)平成23年10月25日 東京地裁 平21(行ウ)373号 退去強制令書発付処分取消等請求事件
(48)平成23年 9月30日 仙台高裁 平22(行コ)20号 政務調査費返還請求控訴事件
(49)平成23年 9月29日 東京地裁 平22(行ウ)460号 退去強制令書発付処分無効確認請求事件
(50)平成23年 9月16日 東京高裁 平21(ネ)2622号 各損害賠償請求控訴事件
(51)平成23年 9月 2日 東京地裁 平22(行ウ)36号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(52)平成23年 7月25日 東京地裁 平19(行ウ)591号 懲戒処分取消等請求事件
(53)平成23年 7月22日 東京地裁 平22(行ウ)555号・平23(行ウ)61号・平23(行ウ)171号 難民の認定をしない処分取消請求事件、追加的併合申立事件
(54)平成23年 7月19日 東京地裁 平21(行ウ)582号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(55)平成23年 7月12日 東京地裁 平20(行ウ)682号・平21(行ウ)537号・平22(行ウ)48号 退去強制令書発付処分取消等請求事件(第1事件)、在留特別許可をしない処分無効確認請求事件(第2事件)、難民の認定をしない処分取消請求事件(第3事件)
(56)平成23年 7月 8日 東京地裁 平22(行ウ)197号・平22(行ウ)210号・平22(行ウ)211号・平22(行ウ)212号・平22(行ウ)213号 在留特別許可をしない処分取消等請求事件
(57)平成23年 7月 6日 東京地裁 平22(ワ)15626号 除名処分無効確認等請求事件
(58)平成23年 6月29日 東京地裁 平21(ワ)40345号・平22(ワ)36010号 損害賠償等請求事件、不当利得返還請求事件
(59)平成23年 5月26日 神戸地裁 平21(ワ)913号 国家賠償請求事件 〔レッドパージ訴訟〕
(60)平成23年 5月25日 東京地裁 平22(行ウ)156号 難民の認定をしない処分取消請求事件
(61)平成23年 5月20日 仙台高裁 平22(行コ)8号 政府調査費返還代位請求控訴事件
(62)平成23年 5月18日 東京高裁 平22(行ケ)30号 裁決取消等請求事件
(63)平成23年 5月17日 東京地裁 平21(行ウ)17号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(64)平成23年 5月11日 神戸地裁 平21(行ウ)4号 政務調査費違法支出返還請求事件
(65)平成23年 4月26日 東京地裁 平22(行ウ)162号・平22(行ウ)448号・平22(行ウ)453号 在外日本人国民審査権確認等請求事件(甲事件)、在外日本人国民審査権確認等請求事件(乙事件)、在外日本人国民審査権確認等請求事件(丙事件)
(66)平成23年 4月 6日 大阪地裁 平20(ワ)14355号 損害賠償請求事件 〔目的外支出政務調査費損害賠償請求事件〕
(67)平成23年 3月24日 東京地裁 平20(ワ)17676号 損害賠償等請求事件
(68)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)303号 衆議院議員選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(69)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)268号 選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(70)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)257号 選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(71)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)256号 選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(72)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)235号 選挙無効請求事件
(73)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)234号 選挙無効請求事件
(74)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)207号 選挙無効請求事件
(75)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)206号 選挙無効請求事件
(76)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)203号 選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(77)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)201号 選挙無効請求事件
(78)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)200号 選挙無効請求事件
(79)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)199号 選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(80)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)189号 選挙無効請求事件
(81)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)188号 選挙無効請求事件
(82)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)130号 選挙無効請求事件
(83)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)129号 選挙無効請求事件
(84)平成23年 3月17日 名古屋高裁 平22(ネ)496号 損害賠償請求控訴事件
(85)平成23年 3月10日 東京高裁 平21(行コ)181号 懲戒処分取消等請求控訴事件
(86)平成23年 3月 8日 釧路地裁 平20(行ウ)5号 不当利得金返還請求事件
(87)平成23年 3月 8日 釧路地裁 平20(行ウ)1号 損害賠償請求事件
(88)平成23年 3月 4日 東京地裁 平21(行ウ)1号・平21(行ウ)7号 退去強制令書発付処分取消等請求事件
(89)平成23年 2月24日 大分地裁 平19(行ウ)9号 大分県政務調査費返還等請求事件
(90)平成23年 2月18日 東京地裁 平21(行ウ)513号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(91)平成23年 1月31日 東京高裁 平22(行コ)91号 損害賠償請求住民訴訟控訴事件
(92)平成23年 1月28日 福岡高裁宮崎支部 平22(行ケ)1号 選挙無効請求事件 〔参院選定数訴訟(違憲状態)・福岡高裁宮崎支部〕
(93)平成23年 1月26日 広島高裁松江支部 平22(行ケ)1号 選挙無効請求事件 〔参院選定数訴訟(違憲状態)・広島高裁松江支部〕
(94)平成23年 1月21日 福岡地裁 平21(行ウ)28号 政務調査費返還請求事件
(95)平成23年 1月20日 東京地裁 平20(ワ)13385号 損害賠償等請求事件
(96)平成23年 1月19日 宇都宮地裁 平20(行ウ)13号 政務調査費不当利得返還請求事件
(97)平成23年 1月14日 東京地裁 平21(行ウ)279号 在留特別許可をしない処分取消請求事件
(98)平成22年12月16日 東京高裁 平22(行ケ)24号 選挙無効請求事件 〔参院選定数訴訟(違憲状態)・東京高裁〕
(99)平成22年12月16日 広島高裁岡山支部 平22(行ケ)1号 選挙無効請求事件 〔参院選定数訴訟(違憲状態)・広島高裁岡山支部〕
(100)平成22年12月 1日 東京地裁 平21(行ウ)374号 退去強制令書発付処分取消等請求事件


政治と選挙の裁判例(裁判例リスト)

■「選挙 コンサルタント」に関する裁判例一覧【1-101】
https://www.senkyo.win/hanrei-senkyo-consultant/

■「選挙 立候補」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-senkyo-rikkouho/

■「政治活動 選挙運動」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seijikatsudou-senkyoundou/

■「公職選挙法 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kousyokusenkyohou-poster/

■「選挙 ビラ チラシ」に関する裁判例一覧【1~49】
https://www.senkyo.win/hanrei-senkyo-bira-chirashi/

■「政務活動費 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seimu-katsudouhi-poster/

■「演説会 告知 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/senkyo-seiji-enzetsukai-kokuchi-poster/

■「公職選挙法 ポスター 掲示交渉」に関する裁判例一覧【101~210】
https://www.senkyo.win/kousyokusenkyohou-negotiate-put-up-poster/

■「政治ポスター貼り 公職選挙法 解釈」に関する裁判例一覧【211~327】
https://www.senkyo.win/political-poster-kousyokusenkyohou-explanation/

■「公職選挙法」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kousyokusenkyohou/

■「選挙 公報 広報 ポスター ビラ」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/senkyo-kouhou-poster-bira/

■「選挙妨害」に関する裁判例一覧【1~90】
https://www.senkyo.win/hanrei-senkyo-bougai-poster/

■「二連(三連)ポスター 政党 公認 候補者」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-2ren-3ren-poster-political-party-official-candidate/

■「個人(単独)ポスター 政党 公認 候補者」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kojin-tandoku-poster-political-party-official-candidate/

■「政党 公認 候補者 公募 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-political-party-official-candidate-koubo-poster/

■「告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター 政党 議員 政治家」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kokuji-kouji-kouei-kousetsu-keijiban-poster-political-party-politician/

■「告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター 政党 公報 広報」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kokuji-kouji-kouei-kousetsu-keijiban-poster-political-party-campaign-bulletin-gazette-public-relations/

■「国政政党 地域政党 二連(三連)ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kokusei-seitou-chiiki-seitou-2ren-3ren-poster/

■「国政政党 地域政党 個人(単独)ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kokusei-seitou-chiiki-seitou-kojin-tandoku-poster/

■「公認 候補者 公募 ポスター 国政政党 地域政党」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-official-candidate-koubo-poster-kokusei-seitou-chiiki-seitou/

■「政治団体 公認 候補者 告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-political-organization-official-candidate-kokuji-kouji-kouei-kousetsu-keijiban-poster/

■「政治団体 後援会 選挙事務所 候補者 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-political-organization-kouenkai-senkyo-jimusho-official-candidate-poster/

■「政党 衆議院議員 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-shuugiin-giin-poster/

■「政党 参議院議員 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-sangiin-giin-poster/

■「政党 地方議員 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-chihou-giin-poster/

■「政党 代議士 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-daigishi-giin-poster/

■「政党 ポスター貼り ボランティア」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-poster-hari-volunteer/

■「政党 党員 入党 入会 獲得 募集 代行」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-touin-nyuutou-nyuukai-kakutoku-boshuu-daikou/

■「政治団体 党員 入党 入会 獲得 募集 代行」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seiji-dantai-nyuutou-nyuukai-kakutoku-boshuu-daikou/

■「後援会 入会 募集 獲得 代行」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kouenkai-nyuukai-boshuu-kakutoku-daikou/


■選挙の種類一覧
選挙①【衆議院議員総選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙②【参議院議員通常選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙③【一般選挙(地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙④【特別選挙(国政選挙|地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)


【資料】政治活動用事前街頭ポスター新規掲示交渉実績一覧【PRドットウィン!】選挙,ポスター,貼り,代行,ポスター貼り,業者,選挙,ポスター,貼り,業者,ポスター,貼り,依頼,タウン,ポスター,ポスター,貼る,許可,ポスター,貼ってもらう,頼み方,ポスター,貼れる場所,ポスター,貼付,街,貼り,ポスター,政治活動ポスター,演説会,告知,選挙ポスター,イラスト,選挙ポスター,画像,明るい選挙ポスター,書き方,明るい選挙ポスター,東京,中学生,選挙ポスター,デザイン


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(6)握手代行/戸別訪問/ご挨拶回り 御用聞きによる戸別訪問型ご挨拶回り代行をいたします!
ポスター掲示交渉×戸別訪問ご挨拶 100%のリーチ率で攻める御用聞き 1軒でも行くご挨拶訪問交渉支援
ご指定の地域(ターゲットエリア)の個人宅(有権者)を1軒1軒ご訪問し、ビラ・チラシの配布およびアンケート解答用紙の配布収集等の戸別訪問型ポスター新規掲示依頼プランです。

(7)地域密着型ポスターPR広告貼り 地域密着型ポスターPR広告(街頭外壁掲示許可交渉代行)
街頭外壁掲示許可交渉代行/全業種 期間限定!貴社(貴店)ポスター貼り サイズ/枚数/全国エリア対応可能!
【対応可能な業種リスト|名称一覧】地域密着型ポスターPR広告(街頭外壁掲示許可交渉代行)貼り「ガンガン注目される訴求型PRポスターを貼りたい!」街頭外壁掲示ポスター新規掲示プランです。

(8)貼る専門!ポスター新規掲示! ☆貼!勝つ!広報活動・事前街頭(単独/二連)選挙ポスター!
政治活動/選挙運動ポスター貼り 勝つ!選挙広報支援事前ポスター 1枚から貼る事前選挙ポスター!
「政治活動・選挙運動ポスターを貼りたい!」という選挙立候補(予定)者のための、選挙広報支援プロ集団「選挙.WIN!」の事前街頭ポスター新規掲示プランです。

(9)選挙立札看板設置/証票申請代行 絶対ここに設置したい!選挙立札看板(選挙事務所/後援会連絡所)
選挙事務所/後援会連絡所届出代行 公職選挙法の上限/立て札看板設置 1台から可能な選挙立札看板設置
最強の立札看板設置代行/広報(公報)支援/選挙立候補者後援会立札看板/選挙立候補者連絡所立札看板/政治活動用事務所に掲示する立て札・看板/証票申請代行/ガンガン独占設置!


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