政治と選挙Q&A「告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター 政党 議員 政治家」に関する裁判例(31)平成25年12月19日 東京地裁 平24(行ウ)59号 懲戒処分取消等請求事件
政治と選挙Q&A「告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター 政党 議員 政治家」に関する裁判例(31)平成25年12月19日 東京地裁 平24(行ウ)59号 懲戒処分取消等請求事件
裁判年月日 平成25年12月19日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平24(行ウ)59号
事件名 懲戒処分取消等請求事件
裁判結果 認容 文献番号 2013WLJPCA12198006
要旨
◆都立高校の教諭であった原告が、平成16年度卒業式の国歌斉唱の際の不起立行為を理由とする1か月間の減給を内容とする懲戒処分(本件懲戒処分)に伴って服務事故再発防止研修を受講するよう命じられたのに、同研修を受講しなかったとして、教育委員会から6か月間の減給を内容とする懲戒処分(本件処分)を受けたため、本件処分を不服としてその取消しを求めた事案について、本件処分は、原告の平成16年度卒業式の不起立行為を理由とする本件懲戒処分を重要な要素とするものであるところ、過去の原告の処分歴や、不起立行為の原因、動機、性質、態様等に照らすと、少なくとも本件懲戒処分に係る不起立行為は本件処分当時減給処分の事由とするに相当でなく、本件処分は過去の処分歴等の評価・判断を誤った裁量権の逸脱・濫用があり、違法判断の基準時を処分時とすることとの矛盾もないとして、原告の請求を認容した事例
参照条文
行政事件訴訟法3条2項
行政事件訴訟法30条
日本国憲法19条
教育基本法10条1項(平18法120改正前)
地方公務員法32条
地方公務員法33条
裁判年月日 平成25年12月19日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平24(行ウ)59号
事件名 懲戒処分取消等請求事件
裁判結果 認容 文献番号 2013WLJPCA12198006
東京都八王子市〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 尾山宏
同 菊池紘
同 平松真二郎
同 澤藤統一郎
同 関島保雄
同 加藤文也
同 白井劍
同 水口洋介
同 山中眞人
同 穂積匡史
同 雪竹奈緒
同 川口彩子
同 金哲敏
同 金井知明
同 谷田和一郎
東京都新宿区〈以下省略〉
被告 東京都
同代表者兼処分行政庁 東京都教育委員会
同代表者委員長 A
被告訴訟代理人弁護士 石津廣司
同指定代理人 小関浩志
同 浅野理在子
主文
1 東京都教育委員会が平成17年12月1日付けで原告に対してした6か月間給料の10分の1を減ずる旨の懲戒処分を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
1 本件は,東京都立a高等学校(以下「a高校」という。)教諭として同校に勤務していた原告が,東京都教育委員会(以下「都教委」という。)から,後記のとおり,平成17年12月1日付けで減給(6か月間給料の10分の1を減ずる内容)とする懲戒処分(以下「本件処分」という。)を受けたことから,同処分は,憲法19条,23条,26条,教育基本法(平成18年12月22日号外法律第120号による全部改正前のもの。以下同じ。)10条等に違反してなされた違法があるなどと主張して,被告に対し,その取消しを求めた処分取消しの訴えの事案である。
2 前提事実(当事者間に争いがないか,証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる事実)
(1) 原告は,昭和51年4月1日,都教委から東京都公立学校教員に任命され,同日付けで東京都立b高等学校教諭に補され,以降,東京都立c高等学校教諭等を経て,平成15年4月1日からa高校教諭に補され,同校に勤務していた者である。
(2) 原告は,平成16年2月18日午後4時50分頃,a高校職員会議において,同校第31回卒業式(以下「平成15年度卒業式」という。)の国歌斉唱の際には起立して斉唱するよう同校校長から職務命令を口頭で受け,また,同年3月9日午後1時20分頃,同校校長室において,同様の内容の職務命令を同校校長から文書で受けたが,同月12日午前10時頃,同校体育館で行われた同校平成15年度卒業式の国歌斉唱において,起立しなかった(以下「本件不起立行為①」という。)。
(3) 都教委は,本件不起立行為①が,地方公務員法32条に違反するとともに,全体の奉仕者たるにふさわしくない行為であって,教育公務員としての職の信用を傷つけ,職全体の不名誉となるものであり,同法33条に違反するとして,原告に対し,平成16年3月31日,戒告の懲戒処分をした(以下「本件懲戒処分①」という。)。
(4) そして,都教委は,原告に対し,服務事故再発防止研修(基本研修)の受講を命じ,原告は,平成16年8月頃,これを受講した。
(5) 原告は,平成17年2月9日午後5時20分頃,a高校職員会議において,同校第32回卒業式(以下「平成16年度卒業式」という。)の国歌斉唱の際は指定された席で起立して国旗に向かい国歌を斉唱するよう同校校長から職務命令を口頭で受け,また,同年3月8日午後2時55分頃,同校職員室において,同様の内容の職務命令を同校校長から文書で受けたが,同月11日午前10時5分頃,同校体育館で行われた同校平成16年度卒業式の国歌斉唱において,起立しなかった(以下「本件不起立行為②」という。)。
(6) 都教委は,本件不起立行為②が,上記(3)と同様の理由により,地方公務員法32,33条に違反するとして,原告に対し,平成17年3月31日,減給(1か月間給料の10分の1を減ずる内容)の懲戒処分をした(以下「本件懲戒処分②」という。)
(7) そして,都教委は,以上の経過を踏まえ,原告に対し,平成17年6月8日付けで,同年7月21日実施の服務事故再発防止研修(基本研修)の受講を命じ,原告は,これを受講した。
(8) また,都教委は,原告に対し,平成17年9月13日東京都教職員研修センター(以下「研修センター」という。)で実施予定の服務事故再発防止研修(専門研修)(以下「本件研修」という。)の受講を命じることとし,その旨記載された同年7月14日付け発令通知書(乙2。以下「7月14日付け通知書」という。)を原告に交付し,同年9月13日には,同研修を受講するために同センターに出張することを職務命令として命じる旨の同月9日付け文書を同校校長から交付したが,原告は,上記受講命令(以下「本件受講命令」という。)に反し,同月13日に行われた同研修を受講しなかった(以下「本件不受講行為」という。)。
(9) 都教委は,本件不受講行為が,地方公務員法32,33条に違反し,同法29条1号ないし3号に該当するとして,原告に対し,平成17年12月1日付けで減給(6か月間給料の10分の1を減ずる内容)とする懲戒処分(本件処分。甲1,2)をした。
(10) 原告は,平成18年1月20日,本件処分につき,東京都人事委員会に対し,審査請求を申し立てたが,同委員会は,平成23年8月3日付けで同申立てを棄却する旨の裁決(甲3)をし,同月6日,同裁決は,原告に通知された。そこで,原告は,平成24年2月2日,本件訴訟を提起した。
(11) 原告は,本件処分後の平成18年3月7日,a高校職員室において,同校第33回(平成17年度)卒業式における国歌斉唱時に,国旗に向かって起立して国歌を斉唱することを命じる同校校長の職務命令を受けたが,平成18年3月10日に実施された同卒業式の国歌斉唱において,起立しなかった(以下「本件不起立行為③」という。)
(12) 都教委は,本件不起立行為③が,同様,地方公務員法32,33条に違反するとして,原告に対し,平成18年3月30日付けで,1か月間の停職を命じる旨の懲戒処分をした(以下「本件懲戒処分③」という。以下,本件懲戒処分①ないし③を併せて「本件各懲戒処分」ということがある。)。
(13) 原告は,本件懲戒処分②及び同③につき,同②については平成17年4月5日,同③については平成18年4月24日,それぞれ東京都人事委員会に対して審査請求を申し立て,さらに,平成19年9月21日,被告に対し,これら処分の取消しを求めるとともに,国家賠償法に基づく慰謝料の支払を求める訴訟を東京地方裁判所に提起した(同裁判所平成19年(行ウ)第591号事件)。
これに対し,同裁判所は,平成23年7月25日,原告の請求をいずれも棄却する旨の判決をした。
そこで,原告は,同判決を不服として東京高等裁判所に控訴したところ(同裁判所平成23年(行コ)第279号事件),同裁判所は,平成24年10月31日,原告に対する上記懲戒処分をいずれも取り消し,慰謝料請求を棄却する旨の判決(甲198)をした。
被告は,上記判決中敗訴部分につき,最高裁判所に対し,上告受理の申立てをし(同裁判所平成25年(行ヒ)第181号事件),原告も同判決中敗訴部分を不服として上告したが(同裁判所平成25年(行ツ)第140号事件),最高裁判所は,上記上告受理申立てについて,平成25年7月12日,上告審として受理しない旨の決定(甲200)をし,上記上告について,同年9月6日,上告を棄却する旨の判決(甲201)をした。
(14) 都教委の通達
ア 都教委のB教育長は,平成15年10月23日,都立高等学校長及び都立盲・ろう・養護学校長(以下,これらの学校を併せて「都立学校」といい,その校長を単に「校長」という。)に対し,校長に対する職務命令として,以下の内容の「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」(甲4。以下「本件通達」といい,本件通達の別紙「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針」を「本件実施指針」という。)を発出した。
「1 学習指導要領に基づき、入学式、卒業式等を適正に実施すること。
2 入学式、卒業式等の実施に当たっては、別紙『入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針』のとおり行うものとすること。
3 国旗掲揚及び国歌斉唱の実施に当たり、教職員が本通達に基づく校長の職務命令に従わない場合は、服務上の責任を問われることを、教職員に周知すること。」
「別紙
入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針
1 国旗の掲揚について
入学式、卒業式等における国旗の取扱いは、次のとおりとする。
(1) 国旗は、式典会場の舞台壇上正面に掲揚する。
(2) 国旗とともに都旗を併せて掲揚する。この場合、国旗にあっては舞台壇上正面に向かって左、都旗にあっては右に掲揚する。
(3) 屋外における国旗の掲揚については、掲揚塔、校門、玄関等、国旗の掲揚状況が児童・生徒、保護者その他来校者が十分認知できる場所に掲揚する。
(4) 国旗を掲揚する時間は、式典当日の児童・生徒の始業時刻から終業時刻とする。
2 国歌の斉唱について
入学式、卒業式等における国歌の取扱いは、次のとおりとする。
(1) 式次第には、「国歌斉唱」と記載する。
(2) 国歌斉唱に当たっては、式典の司会者が、「国歌斉唱」と発声し、起立を促す。
(3) 式典会場において、教職員は、会場の指定された席で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する。
(4) 国歌斉唱は、ピアノ伴奏等により行う。
3 会場設営等について
入学式、卒業式等における会場設営等は、次のとおりとする。
(1) 卒業式を体育館で実施する場合には、舞台壇上に演台を置き、卒業証書を授与する。
(2) 卒業式をその他の会場で行う場合には、会場の正面に演台を置き,卒業証書を授与する。
(3) 入学式、卒業式等における式典会場は、児童・生徒が正面を向いて着席するように設営する。
(4) 入学式、卒業式等における教職員の服装は、厳粛かつ清新な雰囲気の中で行われる式典にふさわしいものとする。」
イ 都教委は,同日,校長を対象者として,「教育課程の適正実施にかかわる説明会」(以下「本件説明会」という。)を開催し,校長らに本件通達を交付した。
3 被告の主張
(1) 非違行為に至る経緯
ア 原告は,前記前提事実(2)記載のとおり,平成16年3月12日に実施された平成15年度卒業式において,同校校長の職務命令に反して国歌斉唱時に起立せず,都教委は,同月31日,原告を戒告の懲戒処分に付した(本件懲戒処分①)。
そして,都教委は,原告が上記のとおり戒告処分を受けたことから,原告に対し,服務事故再発防止研修(基本研修)の受講を命じ,原告はこれを受講した。
もっとも,原告は,前記前提事実(5)記載のとおり,平成17年3月11日に実施された平成16年度卒業式において,同校校長の職務命令に反して国歌斉唱時に起立せず,都教委は,同月31日,原告に対し,1か月間給料の10分の1を減ずる旨の懲戒処分をした(本件懲戒処分②)。
そこで,都教委は,まず同年6月8日付けで,原告に対し,同年7月21日に実施される服務事故再発防止研修(基本研修)の受講を命じ,原告はこれを受講した。
次いで,都教委は,原告に対する本件研修を同年9月13日に研修センターで実施することとし,7月14日付け通知書をもって,その受講を命じることとした。
イ 同月22日,a高校の校長であったC(以下「C」という。)は,原告を校長室に呼び,上記通知書を原告に渡そうとしたが,原告は,本件研修は必要ないことであると述べてこれを受け取らず,校長室から退室してしまった。
そこで,Cは,原告を追い,原告を校長室に戻して,上記通知書を渡したが,その際,原告は,本件研修は必要ないことであり,授業もあるから,同研修には行かないと述べた(このような原告の発言からすれば,原告主張のように,日程の都合がつけば研修に参加する意思があったなどとは到底いえない。)。
Cは,原告の上記言動から,同年9月9日には原告の授業予定がなかったことから同日の支障の有無について原告に聞いたところ,特に否定する発言もなかったことから,同日に変更することが可能であるかどうか研修センターに問い合わせてみたいと原告に伝えた。
同年7月26日,Cは,研修センターのD課長に電話し,本件研修の受講日の日程変更の可否について問い合わせたが,同課長は,受講日の変更は宿泊を伴う引率の業務があるなどやむを得ない事情がある場合だけであって,当日授業があるというだけでは認められないと回答し,担当者と話して追って連絡すると回答した。
同月27日,研修センターのE統括指導主事は,Cに電話し,原告の本件研修の受講日の日程変更は認められないこと,同年9月9日には他の受講者の専門研修が入っていて原告を入れる余地はないし,日程変更が認められるのは前記のようなやむを得ない場合であって,授業があるということで日程変更は認められないと連絡した(そもそも,研修日程というものは,年間研修計画を年度当初に策定し,講師や関係機関への周知,受講者の決定等事前準備が必要であり,まして,受講者の支援者が押しかけて騒ぎとなることもあって警備態勢も必要であること等から,原則として日程変更は認められない。)。
こうしたことから,Cは,原告に対し,研修センターから上記回答があった旨を話し,同月13日には本件研修に出張を命じると話した。
これに対し,原告は,本件研修は必要ない,授業があるから行かないと述べた。
ウ 同年8月16日,Cは,原告に対し,本件研修の研修課題を同月17日までに提出するよう指示した。
これに対し,原告は,生徒の仕事もあるから,できるかどうか分からないなどと述べた。
同日,原告は,E統括指導主事に対し,同日付け「服務事故再発防止研修(専門研修)の日程変更のお願い」と題する書面を郵送し,翌18日には,上記文書と同内容の同日付け「服務事故再発防止研修(専門研修)の日程変更のお願い」と題する書面を内容証明郵便をもって郵送した。
上記各文書には,同研修について,裁判所に執行停止の申立てをしていること及び原告の思料する参加可能日が記載されていたが,同時に,「9月13日あるいは他の私の授業のある日に「研修(専門研修)」が行われる場合,私は学校で通常の勤務を致します。それを理由としてのさらなる処分,事情聴取など行わぬようお願い致します。」などと記載されていた(原告は,Cから日程変更が認められない旨聞いていた上,内容証明郵便で上記文書を送付していることからすれば,研修実施日が変更され得ないことを十分承知の上,いわば後日の弁解の理由作りのために上記文言のある文書を送付したとみられる。)。
平成17年8月18日,Cが本件研修の研修課題の提出を求めた際,原告は,研修課題とともに前記の「服務事故再発防止研修(専門研修)の日程変更のお願い」と題する書面を研修センターに郵送したと述べ,その写しをCに渡した。
Cは,原告が上記書面で示していた日程変更のうち数日が週休日等の勤務を要しない日であったため,これらの日に研修はあり得ないと述べるとともに,研修受講日の日程変更については既に同月1日,できないことを伝え,同年9月13日に出張するよう伝えていると述べた。
一方,研修センターのE統括指導主事は,前記原告作成の書面の送付を受け,これら文書がCの了解を得ているものかどうか,了解を得ているとすると日程変更を必要とする特別な事情が発生したのか等を確認する必要があると考えていたが,Cが上記電話連絡により同校校長として日程変更の考えが全くないとのことであり,また,原告の示していた日程変更日のうち週休日等について研修を命令することはあり得ないし,その余の日についても,そもそも同年9月13日では教育活動に支障を来すとの話もCからなかったことから,日程変更は認められないと判断し,上記文書を返送するので日程変更しない旨を原告に伝えるようCに話した。
同年8月30日,Cは,前記書面を原告に返却しようとしたが,原告は受け取らなかった。Cは,その際,繰り返し研修受講日の日程変更については既に同月1日にできないことを伝え,同年9月13日に出張するよう伝えていると述べた。
同月9日,Cは,同月13日に本件研修を受講するために研修センターに出張するよう文書をもって命じた。
そして,Cは,原告に対し,同月13日に原告の授業のある1時間目,3時間目,4時間目については自習課題を出すよう指示し,5時間目については時間割変更すると伝えた。
しかし,原告は,研修は必要ない,同日は時間割どおり授業をすると言い張り,このためCは,時間割変更した場合に他教員の授業と原告の授業がぶつかるおそれがあると考え,最終的には,5時間目についても自習課題を出して出張するよう命じた。
エ こうして,原告は,同年9月13日に実施される本件研修を受講することを職務命令として都教委から7月14日付け通知書で命じられ,また,同年9月13日には同研修を受講するために研修センターに出張することを職務命令としてCから同月9日に文書で命じられた(本件受講命令)にもかかわらず,同研修を受講しなかったものである(本件不受講行為)。
(2) 上記原告の行為(本件不受講行為)は,地方公務員法32条に違反するとともに,同法33条にも違反し,同法29条1号から3号に該当する。
公立学校に勤務する教員は,教育公務員としての身分を有するものであり,地方公務員法等の関係法令が規定する服務上の義務の遵守が強く要請されるものであることはいうまでもない。とりわけ,地方公務員法32条が規定する職務命令遵守義務は組織体の構成員にとって基本的に重要な行為規範であり,その遵守が強く要請されるものである。
また,教育公務員は,一般的にも研修に努めなければならないとされているものであり(教育公務員特例法21条1項),研修を職務命令をもって命じられれば,それに応じて研修を行うことは当然のことである。特に,本件研修を含む服務事故再発防止研修は,地方公務員法29条に基づく懲戒処分を受けた教職員に対し,懲戒処分の原因となった服務事故の再発防止に向け,教育公務員としての自覚を促し,自己啓発に努めさせ,モラルの向上を図るために実施されるものであり,服務事故を起こして懲戒処分(本件懲戒処分②)を受けていた原告としては,本件研修を受講するのは当然のことである。
しかるに,原告は,その受講をしなかったのであり,原告の責任は重大である。
よって,都教委は,原告の職務命令違反行為に係る処分歴等をも考慮して本件処分を行った。本件処分は適法である。
(3)ア 憲法19条違反との原告主張について
卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱を命じる職務命令(以下「起立斉唱に係る職務命令」ということがある。)が憲法19条に反するものでないことは,最高裁判所平成23年5月30日第二小法廷判決をはじめとする累次の判決により明らかであって,これに反し,起立斉唱に係る職務命令が同条に違反することを前提とする原告の主張は理由がない。
また,かかる点に照らせば,有効な職務命令に違反する事態の再発防止を目的として発せられた本件受講命令も憲法19条に違反しないことが明らかである。
そもそも,本件研修自体,思想・信条に反する表白を迫ったり,思想良心の変更を迫り,著しい精神的苦痛を与えるような内容のものでもない。
本件処分も,本件不受講行為が故にされたものであって,原告の思想・信条を理由になされたものではなく,憲法19条に違反するものではない。
イ 憲法23条,26条違反との原告主張について
(ア) 普通教育の場において,教育の内容や方法に関する公権力の介入に一定の制約があるとしても,このことから当然に教師個人の人権を保障されていると解することについては疑問があるし,普通教育の場において教師の教育の自由が一定の範囲で認められるとしても,それはあくまで子供の人権保障の反射的効果にすぎない。憲法23条も,普通教育の教師に教育(教授)の自由を保障したものとは解されない。したがって,仮に教育の自由の侵害があるとしても,その侵害を主張できる適格を有するのは子供にすぎず,その侵害を主張する原告の主張は失当である。
(イ) 教育行政機関は,許容された目的のために必要かつ合理的な介入をすることが許される。
本件通達は,入学式,卒業式等の学校行事にかかわるものである。かかる儀式的行事については,儀式にふさわしい内容・方法でなされるべきものとして,もともと個々の教師の裁量は広いものではない。このことからすれば,本件通達は,個々の教師の教育の自由が妥当する教育活動にかかわるものではないし,また,教育課程の適正実施,すなわち,卒業式等を学習指導要領にのっとって適正に実施し,児童・生徒に国旗・国歌の適正な指導を行うために発せられたものであって,その内容も合理的であり,何ら教育の自由を侵害するものではない。本件通達に基づく起立斉唱に係る職務命令も,同様である。したがって,これらは憲法23条,26条に反しない。
(ウ) 以上の点は,本件受講命令についても同様であり,同命令が憲法23条,26条に反することはない。本件処分についても同様である。
ウ 教育基本法10条1項違反の点について
(ア) 原告は,教育基本法10条1項違反の点につき,後記4(3)ウ(ア)記載のとおり,同①ないし③によって同条違反を判定すべきとしているが,これらは,学力調査問題(行政調査)の事案に即した判断基準であって,本件に妥当するものではない。
(イ) 以下の点に照らすと,本件通達及びこれに基づく起立斉唱に係る職務命令が同条同項に違反しないことは明らかである。
a 同条同項が禁止する「不当な支配」とは,国民全体ではない一部の勢力(政党,官僚,政界,労働組合等)による介入である。教育は国民全体に対して直接に責任を負って行われるべきものであるため,国民の意思と教育が直結し,国民の教育に対する意思が表明され,それが教育の上に反映するような組織として,それぞれの地方に固有の権限を有する教育委員会が設置されている。そして,各地方の実情に適応した教育を行わせるのが教育の目的及び本質に適合するとの観念(地方自治の原則)に基づき,公立学校の教育に関する権限は,地方公共団体の教育委員会に属している(地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)23条,32条等)。こうしたことから,都教委を含め教育委員会は,国が設定した大綱的基準の範囲で,より具体的かつ詳細な基準を設定することができ,またそれが要請されているといえる(国の教育行政機関が普通教育の内容及び方法について遵守すべき基準を設定する場合に,教育における機会均等の確保と全国的な一定の水準の確保という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的基準にとどめられるべきものとされるのとは,この点で異なる。)。
地教行法23条5号は,学校の組織編成,教育課程,学習指導,生徒指導及び職業指導に関することを教育委員会の職務権限としており,教育委員会は,上記事項について管理し,執行することができると規定している。また,同法17条1項は,教育長は,教育委員会の指揮監督の下に,教育委員会の権限に属するすべての事務をつかさどると規定しており,教育長は,教育課程等に関する事項に関して,校長に対し,通達等により個別具体的な職務の遂行について職務命令を発することができる。したがって,教育基本法10条1項が禁止する「不当な支配」と地教行法23条5号及び同法17条1項との理論的整合性の観点からしても,教育委員会がその権限の行使として発出する通達ないし職務命令に関しては,大綱的基準にとどまるべきものと解することはできない。
児童・生徒の側に十分な批判能力が備わっていないこと,学校,教師を選択する余地に乏しく,教育の機会均等を図る必要があること等に鑑みると,教育の内容が一定の水準であることの強い要請があり,この要請に応じるため,地方公共団体の教育委員会が学校管理機関として,具体的な基準を設定し,一般的な指示を与え,指導・助言し,必要な場合には具体的な命令を発しても,上記要請に応える上で合理的なものである限り,たとえそれが教師の教授の自由を制約するものであっても,教育基本法10条1項所定の不当な支配となるものではない。
b 学習指導要領は,入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとしている。本件通達は,国旗・国歌に関しては,都立学校において学ぶ児童・生徒に国旗・国歌に対する正しい認識を持たせ,それらを尊重する態度を育てるという目的の下で,普通教育において指導すべき国旗・国歌に関する基礎的知識を指導するために,また,その余の事項に関しては,卒業式,入学式,周年行事等の学校行事(儀式的行事)を学習指導要領に則して適正に実施するために発せられたものである。なお,都教委は,地教行法23条5号により都立学校の教育課程等に関する権限(編制権限)を有しており,後記国旗国歌条項の具体化として,上記の学校行事における国旗・国歌の指導の内容,方法を校長に指示できる。以上の点からすれば,学校管理機関としての都教委がその権限を適正に行使したものとして,所掌との関連における合理的関連性は優に肯認することができる。
c 本件通達は,本件実施指針において,卒業式等の式典の実施方法を定めているが,以下の点からすれば,その内容は,必要かつ合理的であって,原告が指摘するような不当な支配とみるべき要素はない。
(a) 卒業式等は,特別活動のうちの儀式的行事として実施されるものであるが,学習指導要領は,儀式的行事について,「学校生活に有意義な変化や折り目を付け,厳粛で清新な気分を味わい,新しい生活の発展への動機付けとなるような活動を行うこと。」と定め,「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」(国旗国歌条項)と定めている。
(b) 本件通達発出当時,都立学校の卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施状況は,実施率こそ100%となっていたが,校長が学習指導要領に沿って国旗・国歌の指導を含む適正な卒業式等の実施を教職員に指導ないし指示して実施しようとしても職員がボイコット等をして応じず,国歌斉唱時にも起立をしない,三脚で国旗を掲揚して舞台のそでの見えないところに設置する,音楽科担当の教員がいるのに国歌のピアノ伴奏をしない,式次第に国歌斉唱と明記しない,国歌斉唱が終わってから教員が式場に入場するなど,卒業式等における国旗・国歌の適正な指導がなされていない状況が引き続いていた。都教委は,都立学校における国旗・国歌の指導に関して,このような不適切な実態があったことから,都立学校において国旗・国歌の指導が適正に行われるようにするため,本件通達を発出して儀式的行事の在り方を明確に示す必要があった。本件通達は,以上のような状況下,学習指導要領の前記規定の趣旨に沿って卒業式等を実施することができるよう発出されたものであり,必要かつ合理的なものである。
(c) 本件で特に問題となるのは,本件実施指針のうち,「国歌斉唱に当たっては,式典の司会者が『国歌斉唱』と発声し,起立を促す。」及び「式典会場においては,教職員は,会場の指定された席で国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する。」の2項目であるが,儀式的行事における国歌斉唱は起立して行うことが国際儀礼上の常識であり,教職員がそれに沿った行動をとるものとしても不合理なものではないのであり,都教委が,その判断に基づき,卒業式等の式典を厳粛かつ清新なものとし,併せて国旗・国歌の指導をするための方式を示したとしても,必要かつ合理的な範囲を超えるものではない。
(d) 本件通達は,卒業式等の儀式的行事に限ってその実施方法を示しているものにすぎないものであって,年間を通じての国旗・国歌の指導について指示するものではなく,学校の日常的教育活動に大きく影響するものでもない。また,本件通達は,式典全体のうち国旗・国歌の指導及び会場設営に関してのみ指示するものであり,いつ国歌斉唱を行うかをはじめとして,それ以外の式典の進行等は各都立学校の創意工夫に任されており,実際に各都立学校において様々な創意工夫がされている。もとより原告が主張するような学校教育法(平成19年6月27日法律第96号による改正前のもの。以下同じ。)42条に反する点などない。
(ウ) 以上のとおり,本件通達及びこれに基づく職務命令は,何ら不当な支配に該当するものではない。そうである以上,本件受講命令,ひいては,本件受講命令違反に基づく本件処分が違法となることもない。
(エ) 原告は,本件受講命令自体も不当な支配に該当すると主張する。しかし,都教委は,都立学校の教職員の研修に関する事務につき,管理し,執行する権限を有しており(地教行法23条8号),本件受講命令が所掌と合理的関連性を有していることは明らかであるし,服務事故を起こした教職員に対し,再発防止の観点から研修を行うこととしても必要かつ合理的といえる。したがって,本件受講命令自体が不当な支配に該当するものでもない。
原告は,原告が本件研修を受けると,原告が本件研修の研修日である平成17年9月13日(以下「本件研修日」ということがある。)に授業を予定していた生徒に自習を余儀なくさせることになるなどとして,本件受講命令が子供の学習権を侵害するなどとも主張するが,自習課題となること自体は,子供の教育の機会を奪うものでも,子供の学習権を侵害するものでもなく,何ら違憲違法の問題を生ずるものではない。
エ 国際条約(国際人権規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約)(以下「自由権規約」という。),児童の権利に関する条約)への違背の点について
(ア) 本件通達が,思想良心の自由や宗教の自由を侵害するものでなく,自由権規約18条に違反するものでないことは,前記の点から明らかである。
(イ) 児童の権利に関する条約は,あくまで子供の権利のための条約であるところ,本件通達は各校長に対して発出され,本件通達に基づく職務命令は教師に対して発出されたものであって,いずれも子供に対する強制の要素を全く含まず,子供に対して不利益な処分をなすものでもない。生徒に対する関係ではあくまで教育上の指導として行うものであって,生徒の思想良心の自由や宗教の自由を侵害することはないし,国旗・国歌を尊重する態度を育てるための指導は,一方的な理論や観念を教え込むことに当たるものでもない。したがって,同条約12条,14条にも違反しない。そもそも,同条約12条,14条違反について主張することは,自己の法律上の利益に関係のない違法を理由とするものとして失当である。
オ 地方公務員法への該当性について
(ア) 原告は,校長が職務上の上司に当たらないなどとして,職務命令の有効性を争うが,そもそも本件受講命令は都教委から発令されており,校長も,校務を掌り所属職員を監督する権限を有し(学校教育法28条3項,51条),当該校務の中には教育活動そのものも含まれているのであるから,いずれにしても原告の上記主張は前提を誤っており失当である。
(イ) また,原告指摘の教育公務員特例法22条2項も,教育公務員の勤務時間内における自発的研修について定める規定であって,本件受講命令に関して適用のある規定ではないから,かかる原告の主張も失当である。
(ウ) 校長のCは,前記の経過で,本件研修日に,原告が担当していた授業を自習とすることとし,原告に自習課題の作成を指示していたのであるから,本件受講命令の内容が実現可能性を欠き無効であるなどとする原告の主張は失当である。なお,原告は,本件研修日において,自習監督の教員が不足し,生徒自身の自習に委ねるいわゆる「自学」になることが明らかであったなどと主張するが,そのような事実はない。
(エ) なお,原告は,本件通達及びこれに基づく職務命令が違憲違法であるから本件受講命令も違憲違法であるとしてその有効性を争うが,これらが違憲違法でないことは前記の点から明らかである。
カ 裁量権の逸脱濫用の点について
(ア) 公務員に対して懲戒処分をするに際し,懲戒権者は,懲戒事由に該当すると認められる行為の原因,動機,性質,態様,結果,影響等のほか,当該公務員の行為前後における態度,懲戒処分等の処分歴,選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等諸般の事情を考慮して,懲戒処分をすべきかどうか,また,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきか決定することができるところ,具体的事案においてこれらの要素をどの程度考慮するかは懲戒権者の裁量に委ねられている。
行政裁量につき,内部的準則が設けられたり,一般的基準として比例原則があげられたりするが,その違背は当然に裁量権の逸脱濫用として処分の違法を来すものではなく,その違背が,法の趣旨目的等に照らし,その許容する一定の限度を超えた場合に違法となる。公務員の懲戒処分についていえば,当該懲戒処分が比例原則等に違反し,裁量権の逸脱濫用と評価されるのは,選択された処分がおよそ合理的な選択と評価される余地のない極端な場合に限られるというべきである。
本件不受講行為は,公務員の職務命令遵守義務違反であり,それ自体,公務員関係の秩序維持の見地からして重大な非違行為である。原告は,Cから繰り返し本件研修の受講日の日程変更が認められないことを伝えられ,授業への支障をも理由として原告が申し立てた同研修の研修命令の執行停止申立ても裁判所から却下され,同研修を受講する義務があることを認識していたのに,なお,これを拒否し,不受講行為に及んでいるのであって,本件不受講行為は,確定的故意による職務命令違反であったといえる。原告は,公務を担う教育公務員であるのに,学習指導要領に基づき教育課程を適正に実施するために発せられた起立斉唱に係る職務命令に違反して不起立行為に及び,しかも,それは重要な学校行事である卒業式等の場で,来賓,保護者,生徒らの面前で,公然とされたものであったところ,原告は,同様の非違行為を繰り返し,懲戒処分を受けていたものであって,その再発を防止するために都教委が実施した同研修についての職務命令になお違反したものであったことに照らせば,およそ裁量権の逸脱濫用がないことは明らかである。
(イ) 最高裁判所平成23年(行ツ)第242号,同年(行ヒ)第265号平成24年1月16日第一小法廷判決・裁判集民事239号1頁及び最高裁判所平成23年(行ツ)第263号,同年(行ヒ)第294号平成24年1月16日第一小法廷判決・裁判集民事239号253頁(以下,併せて「最高裁平成24年判決」という。)が,不起立行為等に対する懲戒において戒告ないし減給を超えて減給ないし停職の処分を選択することが許容されるのは,過去の非違行為による懲戒処分等の処分歴や不起立行為等の前後における態度等(以下,併せて「過去の処分歴等」という。)に鑑み,学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であることを要すると判示していることは,原告主張のとおりである。
しかし,最高裁平成24年判決は,不起立行為に係る判断であるところ,不起立行為の動機・原因が,個人の歴史観ないし世界観等に起因するものであること,その性質・態様が,積極的な妨害等の作為でなく,物理的に式次第の遂行を妨げるものでないこと,その結果,影響も当該式典の進行に具体的にどの程度の支障や混乱をもたらしたかは客観的に明らかではないこと等の当該事案の性質を踏まえ,慎重な配慮を要するとして上記判断をしているものであって,原告の思想良心とかかわりがなく,本件研修の受講をしたからといってそのこと自体が原告の歴史観ないし世界観と相反するわけではなく,当日の原告に対する研修実施ができないという性質・態様,結果・影響であった本件不受講行為の場合とは,その事案の性質を異にする。
したがって,最高裁平成24年判決の法理は,本件不受講行為に適用されるものではない。
(ウ) 仮に本件不受講行為に最高裁平成24年判決の法理が適用されるとしても,本件不受講行為は公務員の職務命令遵守義務違反として重大な非違行為であること,原告は,本件懲戒処分②を受ける前に,本件懲戒処分①(戒告処分)を受け,これに基づく服務事故再発防止研修も受けていたこと,それにもかかわらず,平成16年度卒業式で,校長,副校長の指示を無視して本件不起立行為②に及んだこと,事前に起立斉唱に係る職務命令書を交付された際,原告は,「法的根拠がない」などと述べており,非違行為後の校長の事実確認や都教委の事情聴取をも拒否していたこと,上記再発防止研修においては,「失礼千万である」,「10.23より始まった一連の事柄に,これを読む方はどのように関わってきたのでしょうか?そのことに多少なりとも罪悪感はないのでしょうか。」などと,受講報告書に独自の見解に基づく不適切な批判等を記載していたこと,本件懲戒処分②の後も,服務事故再発防止研修(基本研修)は受講したが,本件研修については受講拒否を行ったこと,原告は,同研修については,Cから繰り返し日程変更が認められないことを伝えられ,同研修の研修命令の執行停止申立ても却下されていたのに,研修を拒否したこと,非違行為後の事情聴取の際にも,ネクタイに小型マイクを仕掛けて録音をしようとし,正常な事情聴取ができない状態に至らしめたといった事情がある。
かかる経過からすれば,学校の規律や秩序の保持等の観点から到底容認することができなかったというべきであり,都教委において,本件処分の量定をするについて,相当性を基礎付ける具体的事情があったというべきである。
(エ) 以上のとおりであるから,本件処分について裁量権の逸脱濫用はない。
(オ) 原告は,本件懲戒処分②が取り消されれば,これを考慮してなされた本件処分も遡及的に違法となると主張するようであるが,抗告訴訟における処分の違法判断の基準時は処分時であって(最高裁判所昭和27年1月25日第二小法廷判決・行裁集3巻1号22頁,同裁判所昭和28年10月30日第二小法廷判決・行裁集4巻10号2316頁,同裁判所昭和34年7月15日第二小法廷判決・民集13巻7号1062頁,同裁判所昭和34年12月4日第二小法廷判決・民集13巻12号1599頁),本件処分当時,本件懲戒処分②が有効に存在していたことからすれば,都教委がこれを本件処分に当たり考慮したとしても違法とはならない。
キ 原告は,被告において,懲戒処分の回数を重ねる度に1段ずつ重くなるという累積加重システムが採用されているなどと主張するが,処分量定の加重は,繰り返し職務命令違反の服務事故を起こした教職員に対し個別に検討し,教職員懲戒分限審査委員会の答申を経て都教委において決定しており,そのような事実はない。
また,原告は,都教委が,校長に詳細な指示・指導をしたことにより校長には起立斉唱に係る職務命令を発するか否かの裁量など残されていなかったとも主張する。しかし,本件通達発出後の校長らに対する本件説明会において,都教委のF人事部長が,入学式及び卒業式の適正実施に向けた対応として一定の説明をしたことはあるが,これも校長がその権限と責任において教職員に職務命令を発したときという前提があっての説明であり,いずれにしても詳細な指示・指導はしていない。その後の校長連絡会等において指導があったと指摘する点についても,全体会等で話しきれない具体的内容について質問に答えたり,担当者が個別的具体的説明を行ったりしたほか,校長からの要望を受けて参考例を示した程度で,それ以上に校長らに対して職務命令を出すよう指示し,これを強制した事実などない。
原告指摘の「適格性に課題のある教育管理職の取扱いに関する要綱」も,都教委の開催日の関係から,本件通達と決定日がたまたま同じになったにすぎず,本件通達との関連性はない。その他,原告が指摘のような不当な監視・強制と思しき点もない。
4 原告の主張
(1) 非違行為に至る経過について
ア 原告は,平成17年7月22日,校長であるCに校長室に呼ばれ,研修センターで行われる本件研修が同年9月13日に設定されたことを告げられた。しかし,同日は火曜日であり,原告が受け持っている授業が5コマ(1時限目から5時限目)予定されていたことから,原告は,Cに対し,都教委に事情を説明して日程を変更してほしいと話をして,7月14日付け通知書を受け取らず,校長室を退室した。
なお,原告は,本件研修の根拠とされている原処分(本件懲戒処分②)について,東京都人事委員会に審査請求を申し立てており,同研修を命じられるいわれはないと考えていたことから,自分は本件研修の受講を命じられるいわれはないし,受講する必要があるとは考えていない旨の話をした。
その後,Cに校長室まで呼び戻されたが,原告は,Cに対して,同日には授業が5時限あること,そのうち3時限はほかの曜日に振り返ることができないものであることを説明したところ,Cは理解を示し,同月9日であれば授業がないので同研修の受講が可能であるかと聞かれた。そこで,原告は,同日であれば,授業はないので受講できることを伝えた。このやりとりの後,Cは,都教委の担当者に要請してみると話したため,原告は,同日に変更になるものと考え,7月14日付け通知書を受け取った。
なお,原告は,本件懲戒処分②について,不当な処分であるとは考えていたが,同年7月21日に実施された服務事故再発防止研修(基本研修)を受講していることからも明らかなとおり,日程調整がつけば本件研修についてボイコットする意思までは有していなかった。
イ 原告は,日程変更がされるものと期待をしていたところ,同年8月1日か同月2日になって,Cから,日程変更は認められなかったという話を聞かされた。
もっとも,その際,Cから,都教委に対し,どのように事情を説明していたかについて説明はなかったことから,原告は,前記事情をきちんと伝えてくれていないのではないかと疑念を抱くに至った。
なお,その際,Cからは同年9月13日に受講するよう話はされたが,同日,出張を命じる旨の話はなかった。
ウ 同年8月中旬,原告は,Cから,本件研修の研修課題を同月19日までに提出するよう指示を受けた。そこで,原告は,同課題を提出期限に間に合うよう期限前に郵送することとし,併せ,同月17日付けのE統括指導主事宛の「服務事故再発防止研修(専門研修)の日程変更のお願い」と題する書面を作成して同封し,これらを送付した(なお,同書面については,後日の紛争を避けるため,同月18日付け内容証明郵便で再送した。)。
同書面には,前記事情が記されており,同年9月9日,同月20日から同月22日,同月30日への日程変更を希望する旨が記載されていた。
以上のように,原告は事前課題を提出しており,日程変更が認められれば,本件研修を受講する意思を有していたことは明らかである。
エ その後,原告は,Cから本件研修の事前課題を提出したか確認されたことから,事前課題と併せて,上記「服務事故再発防止研修(専門研修)の日程変更のお願い」と題する文書を郵送したことを告げ,同文書の写しをCに渡した。Cは,「こういうことをされては困る。」,「自分を通して話をしてもらわないと困る。」などと述べていた。Cは,その際には,原告が提示した変更候補日について,特段の言及はしていない。また,その際,同年9月13日に出張するよう命じられたこともない。
オ 同年8月30日,Cは,原告に上記文書を返却しようとしたが,原告は,同文書をE宛に送付していたことから,その受取りを拒絶した。その際,Cから,研修日の日程変更ができないこと,原告が呈示した変更予定日には週休日等勤務を要しない日が含まれているなどとして,同年9月13日に本件研修を受講するよう話をされた。その際には,Cから出張を命じられてはない。
カ Cから同年9月9日,本件研修受講のために研修センターへの出張を文書で命じられ,本件研修日の授業のうち,1,3及び4時限目の授業について課題を出し,5時限目については時間割変更をするよう指示され,6時限目については,同研修受講後,学校に帰り,授業を行うよう指示された。しかし,原告は,一貫して,授業を行わず同研修を受講することはできない旨話したところ,Cは,再発防止研修は必要であるなどと述べ,同日,すべての授業について課題を出した上で出張するよう指示した。
その後,原告は,Cから時間割変更はしない旨を告げられたため,本件研修日に原告が授業を行うことを認めたものと受け止めた。
キ 本件研修日,原告はいつもどおり出勤し,教職員による朝の打合せをしていたところ,副校長から,「こっちに来ちゃったんですか。今からでも研修に行って下さい。」と言われたが,原告は,Cの命令を繰り返しているだけと受け止め,「授業がありますから。」と答えた。そうしたところ,副校長は,「まぁそうですね。仕方ないですね。」などと述べて立ち去った。
そして,担任をしているクラスのホームルームを済ませ,午前中に,1時限目の授業(2年生の生物Ⅰ。教室での授業)と,3,4時限目の授業(2コマ続きの3年生の選択科目の生物Ⅱ。生物室での授業)を行った。
4時限目の授業を終え,原告が,生物室に隣接する生物準備室に戻ると,Cが待ち構えており,原告に対し,「来なければだめじゃないか。」,「都教委の言うことを聞かないとどうされるかわからない。」などと発言した。そうしたことから,原告は,「教員の職務は教育です。教育の根幹は授業です。」と述べた。
その後,原告が生物準備室から職員室に戻る際にも,Cは原告につきまとうようにして同様の話をし続けた。
昼休み後,原告は,5時限目と6時限目の理科の授業をそれぞれ終えて,原告が勤務終了後,帰宅しようとすると,教務主任から「休暇をとった教員が2名出たため,その2名分の授業が自習となった」ことを聞かされた。教務主任は,2名分の自習監督の教員を探すことに苦労したと述べており,もし原告が自習としていたら,自習監督を割り当てられない,すなわち自学となるクラスが生じたと聞かされた。
ク その後,原告は,同年10月3日に至り,Cから,本件研修日に同研修を受講しなかったことについて,同月14日,事情聴取のために都教委に出頭するよう命じられたが,原告は,その際にも懲戒処分を受けるとは考えておらず,再度,日程調整の上,同研修の受講が命じられることになると考えていた。
そうしたところ,都教委は,前記前提事実(9)記載のとおり,原告に対し,本件処分をした。
(2) 本件通達の発出と,本件処分が本件通達以降の国歌斉唱強制の一環として行われたものであること
ア 都教委は,前記前提事実(14)記載のとおり,本件通達を発出しているところ,その内容は,同記載のとおり,入学式,卒業式等の式典を本件実施指針記載のとおり行うよう求めるものであり,教職員が本件通達に基づく校長の職務命令に従わない場合,服務上の責任を問われることを教職員に周知すべきとするものである。
イ 都教委は,本件通達発出の日である平成15年10月23日,都立学校長らを対象とした「教育課程の適正実施にかかわる説明会」(本件説明会)を開催し,校長らに対し,本件通達を交付した上,国歌斉唱の実施方法のみならず,教職員に対する職務命令の発令方法,教職員の不起立行為等の現認方法及び都教委の報告の方法の細部に至るまで,詳細な指導を行った。
そして,都教委は,その後も校長連絡会において,何度となく卒業式の内容,進行等について事細かに指導を行い,事前に実施要領を提出させ,問題がある場合,修正をさせるなどの指導を行った。校長らは,平成15年11月11日の校長連絡会において,本件通達と同日付けで都教委が発した「適格性に課題のある教育管理職の取扱いに関する要綱」の配布を受け,その説明を受けており,本件通達のとおりに卒業式等を実施できなければ,業務評価に響いたり,降任勧告を受ける可能性もあると受け止めた。
ウ 実際の卒業式では,教育庁の職員が派遣され,同職員によって,教職員による国歌斉唱時のピアノ伴奏の拒否や不起立行為(以下,両者を併せて「不起立行為等」ということがある。)の有無の確認がされた。そして,これらがあった場合,都教委に電話でその旨の連絡が行われた。
他方,教職員に不起立行為等があった校長は,所定の形式,文言による服務事故報告書の作成を余儀なくされた上,自らも事情聴取を受けることとなった。
エ こうして,校長らは,都教委による度重なる詳細な指導の下,本件通達どおりに卒業式等の式典を実施することを余儀なくされ,校長自ら式典の内容を決定することなどできなくなっていた。
オ 以上のとおり,都教委からは,校長から発出されるべき起立斉唱に係る職務命令の内容も示されており,校長がこれに反する判断をすることなどできない状態となっていた。そうしてみると,校長には,卒業式等の内容はおろか,教職員に対する上記職務命令についても,これを発するかどうかの裁量など残されていなかったというべきである。なお,当時の教育長も,都立学校長らが本件通達に従い教職員に起立斉唱に係る職務命令が発出されることを前提にしているものであることを認めている。
カ 以上の経過を経て,本件通達発出以降,ほぼすべての都立学校において,卒業式をはじめとする式典につき,本件実施指針どおりに会場設営等が行われるようになった。そして,都教委は,平成15年度の周年行事において不起立行為等に及んだ教職員6校10名を懲戒処分としたのを皮切りに,平成16年3月に行われた卒業式において不起立行為等に及んだ教職員170名余りについて,同年4月6日までに,171名を懲戒処分とし,5名を再雇用採用選考合格を取り消した。
以上の処分は,人事部職員課以外の者を借り出して事情聴取に当たらせ,持ち回りで分限審査を行うという前例のない手続の下で,極めて拙速に行われた。
そして,同年3月の卒業式で不起立行為等に及んだ教職員2名のほか,同年4月の入学式で不起立行為等に及んだ教職員36名について,同年5月25日,処分が発令されている。
以上のとおり,都教委は,平成15年度周年行事,卒業式及び平成16年度入学式における不起立行為等を理由として,延べ243名もの教職員に対し,教育庁あげての異例な態勢による事情聴取,さらには持ち回りによる分限審査を経て,大量の懲戒処分を強行した。
キ その後,都教委は,職務命令に違反したとする教職員について,個別の事情を顧慮することなく,1回目は戒告,2回目は減給10分の1・1か月,3回目は同6か月,4回目は停職1か月という基準で,一律に,かつ,回数を重ねる毎に1段ずつ重くなる懲戒処分を行っている。そして,不起立行為等を服務事故,非違行為と断定し,被処分者に再発防止研修を課している。
都教委が,執拗,かつ,苛烈な懲戒処分や研修命令を繰り返しているのは,見せしめによる萎縮効果を狙っているものとみるほかない。
ク 本件各懲戒処分も,こうした本件通達の下,国歌斉唱強制の一環としてなされたものであることは明らかである。そして,服務事故再発防止研修が,卒業式等において国歌斉唱時に起立斉唱に係る職務命令に反し不起立行為等に及んだことを理由に実施され,本件処分は,原告がこれを受講しなかったことにつきなされているのであるから,本件処分も,上記各懲戒処分同様,国歌斉唱強制の一環としてなされたものであることは明らかである。
(3) 本件処分の違法性
ア 憲法19条違反について
(ア) 原告は,先行する卒業式における国歌斉唱時に,起立斉唱に係る職務命令に反し,不起立行為(本件不起立行為②)に及んだとして,再発防止研修の受講を命じられ(本件受講命令),これに違反したことを理由として本件処分を受けている。
(イ) 原告が,上記不起立行為に及んだのは,起立斉唱をできない思想を持つ原告が,自己の思想に従って,職務命令に従わなかったものであって,憲法の保障する思想良心に基づいて,それに矛盾する行為を拒否したからにほかならない。
国旗に正対しながら起立し,国歌を斉唱する行為は,国旗に対して敬意を表する姿勢をとり,国歌の歌詞を発声する行為であり,国歌が表象する国家を賛美する性質を有する。我が国においては,君が代が国歌であることから,君が代が表象するもの,それが日本国であるのか天皇であるのか,歌詞の解釈によって分かれることはいうまでもないが,君が代の歌詞の解釈によっては天皇を賛美する性質を帯びることにもなる。したがって,国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する行為は,国旗及び国歌によって表象される国家に積極的な価値を認めるべきであるとする思想を前提として行われる行為であって,起立斉唱の強制は,一定の思想を前提として,そのような思想に基づく行為を強制することになる。
そして,本件通達及びこれに基づく校長の起立斉唱に係る職務命令は,教職員に対し,服務上の責任を問うことによって,卒業式等において国旗に向かって起立し国歌を斉唱することを強制しているのであり,これは都教委及び都立学校の校長という公権力が,一定の思想に基づく行為を強制することになる。
このような,国歌の起立斉唱の強制が,公権力による一定の思想の強制・干渉を禁じた憲法19条に違反することは明らかである。
以上のとおりであって,原告には,卒業式等の国歌斉唱時において,起立斉唱を拒否する自由が,思想良心の自由として保障されなければならない。卒業式等の国歌斉唱に際して,起立斉唱に係る職務命令に従わないことを理由として懲戒処分をすることは,原告の思想良心の自由を侵害し,違法である。
(ウ) また,国歌の起立斉唱が強制されるとき,それを拒否することによって,国旗や国歌,あるいは日の丸・君が代に対する自己の考え,あるいは学校現場における国旗国歌の強制に対する否定的評価を持っているという特定の思想良心が推知されることになる。このことは,思想の表明を迫ることにほかならず,憲法19条が保障する沈黙の自由も侵害する。
(エ) 本件処分は,前記のとおり,本件不起立行為②によって命じられた再発防止研修(本件研修)を受講しなかったことを理由としている。
本件処分は,前記のとおり,本件通達及びこれに基づく国歌斉唱強制の一環としてなされたものであるところ,原告に対して本件処分を課すことは,原告が上記のような思想を有することを理由としてなされた不利益取扱いにほかならない。したがって,本件処分は,憲法19条が保障する思想良心に基づく不利益処分の禁止にも違反する。
(オ) 以上の点からすれば,本件通達及び校長による起立斉唱に係る職務命令は,原告の思想良心の自由を侵害するものとして違憲違法であり,その職務命令違反を理由とする本件懲戒処分②も違憲無効であり,かかる処分に伴って命じられた本件受講命令もまた違憲無効であって,かかる違憲無効な本件受講命令に従わなかったことを理由とする本件処分も違憲無効というべきである。
(カ) 仮に,起立斉唱に係る職務命令が憲法19条に違反しないとしても,本件受講命令自体も,公権力による一定の思想の強制・干渉を伴うものとして,憲法19条に違反する。また,本件受講命令が憲法19条に反しないとしても,本件処分自体,思想の転換を迫る場への出頭を強制するものにほかならず,憲法19条に違反する。
イ 憲法23条,26条違反について
(ア) 教師は,学校教育において,子供の発達状況等に応じ,人格的接触を通じて,教育的働きかけを行う主体であるところ,教育が,自ら学んだことを子供に教授・伝達する行為であるとともに,教育学の学問的実践でもあるという文化的精神的活動であること,憲法26条の教育を受ける権利の前提として,憲法13条に由来する子供の学習権が存在し,教育を受ける権利は教師の教育の自由を前提としていること等からすれば,教師の教育の自由は憲法23条,26条により保障されていると解される。
そして,教育が,子供の学習権を充足するため,教師と子供の人格的接触を通じ,教師の主体的判断を踏まえて行われることをその本質的要素とすること等に鑑みると,教師の教育の自由には,少なくとも,公権力による自由な創意と工夫の余地を残さない介入を拒否する自由,公権力によって特定の見解のみを教授することを強制されない自由及び公権力によって教師としての人格の統一性の破壊をもたらす行為を強制されない自由が含まれるというべきである。
(イ) しかるところ,本件通達及びこれに基づく起立斉唱に係る職務命令は,教職員に対し,起立斉唱を命じ,座席の配置や式の進行を含め,式を都教委が適正と考えるやり方で行わせるものであり,原告を含む教職員においては,これに従うほかないものであり,本件通達及びこれに基づく上記職務命令が,公権力による自由な相違と工夫の余地を残さない介入を拒否する自由を侵害するものであることは明らかである。
また,本件通達及びこれに基づく上記職務命令は,都教委指定の方式による方法のみが適正で,それ以外は認めないとするものであって,生徒に国家のシンボルを受容させ,こうした行動により国旗に対して敬意を表させることを一方的に教え込むものである。こうした点からすると,本件通達及びこれに基づく上記職務命令が,公権力によって特定の見解のみを教授することを強制されない自由を侵害するものであることは明らかである。
さらに,本件通達及びこれに基づく上記職務命令は,自ら主体的に判断することを求めて指導を行ってきた教師に対し,権力に盲従する姿を生徒の前で示すことを求めるものであり,人格の破壊をもたらすものとして,公権力によって教師としての人格の統一性の破壊をもたらす行為を強制されない自由を侵害するものであることも明らかである。
(ウ) 以上のとおり,本件通達及びこれに基づく起立斉唱に係る職務命令は,憲法23条,26条に反し違憲無効であって,これに基づく本件各懲戒処分も違憲無効であり,それに基づき命じられる再発防止研修(本件研修)の本件受講命令も無効とならざるを得ないから,かかる違憲無効な受講命令に従わなかったことを理由とする本件処分も違憲無効というべきである。
(エ) 仮に,以上の点を措くとしても,本件受講命令は,原告が担当する授業を犠牲にする日程を指定して発令されており,子供の学習権を侵害し,原告の教育の自由を侵害するものとして,それ自体,憲法23条,26条に違反する。また,本件受講命令自体が上記憲法の法条に反しないとしても,本件処分は,子供の教育を受ける権利及びこれと一体をなす原告の教育の自由を侵害する公権力の行使として,これら法条に違反する。
ウ 教育基本法10条違反について
(ア) 本件処分時の教育基本法10条1項は,教育の政治的中立性確保の観点から,教育に対する不当な支配を禁止しているところ,同条に規定する不当な支配に該当するか否かは,①教師による創造的かつ弾力的な教育の余地や,地方毎の特殊性を反映した個別化の余地が十分残されているか,②教育における機会均等の確保と全国的な一定の水準維持といった目的のため必要かつ合理的と認められる大綱的な基準にとどまっているか,③教師に対し,一方的な一定の理論ないしは観念を生徒に教え込むことを強制するものではないかといった観点から判断されるべきものである。なお,教育行政であっても不当な支配の主体たり得ることはいうまでもない。
(イ) しかるところ,本件通達は,卒業式等の式典の実施方法につき学校現場における裁量を否定するものであり,各校長に対し,起立斉唱に係る職務命令の発令を強制するものとして,およそ,教師による創造的な教育の余地や地方毎の特殊性を反映した個別化の余地を残さないものであり,大綱的基準にとどまるものでもない(なお,本件通達及びこれに基づく都教委の指導は,社会について,広く深い理解と健全な批判力を養い,個性の確立に努めるべきことを規定する学校教育法42条3号にも反すると解される。)。したがって,本件通達は,不当な支配に該当するものであるといえるところ,これに基づく上記職務命令も,本件通達を実現するための手段として発出されたものとして違法というべきである。そして,違法な職務命令に違反したことを理由として課された本件受講命令も違法というべきである。
(ウ) 以上の点を措くとしても,本件受講命令は,本件通達に基づく国旗掲揚,国歌斉唱の実施の徹底のための一方策として発せられ,研修の内容や効果,教育活動への影響等は二の次とされていたこと,その他,授業を受ける生徒の学習権への侵害もあることに照らせば,都教委の介入は必要かつ合理的な範囲を超えるものとして,本件受講命令自体が不当な支配に該当し,違法というべきである。
(エ) したがって,本件処分も違法である。
エ 国際条約への違背について
(ア) 日本国が締結し批准した条約は,内容が自動執行力のあるものである限り,立法化を待たずに国内法としての効力が認められ,国内法に優位する。
(イ) 本件通達及びこれに基づく起立斉唱に係る職務命令は,自由権規約18条が保障する思想良心の自由を侵害し違法である。また,子供の意見表明権を保障し,思想良心の自由及び宗教の自由を保障している児童の権利に関する条約12条,14条1項にも違反する。そして,同条項に違反する懲戒処分に伴って命じられる本件受講命令も違法であって,これに違反したことを理由とする本件処分も違法である。
オ 地方公務員法32条,33条違反について
(ア) 同法32条所定の職務命令は,①職務上の上司がその職務権限に属することに関して発した職務命令であること,②部下の職務に関する命令であること,③部下の独立の職務に関するものでないこと,④その職務命令の内容が,憲法,法律,条例等に違反しないものであること,以上の要件を満たしたものであることが必要である。
(イ) しかるところ,学校教育法は,教諭については「児童(生徒)の教育をつかさどる」とするのに対し(同法28条6項,51条),校長については「校務をつかさどり,所属職員を監督する」と規定しており(同法28条3項,51条),このような学校教育法の規定の仕方からすると,校長の教職員に対する監督権限には,教師の教育活動の内容に関わる職務命令を出す権限は含まれないというべきである。したがって,本件受講命令について,校長は,原告との関係において職務上の上司に該当しない。
また,教育公務員特例法22条2項は,教員は,授業に支障のない限り,本属長の承認を受けて,勤務場所を離れて研修を行うことができると規定しているところ,本件受講命令は,授業に支障がない状態が確保されることなく発令されているから,同条同項に反する。
そして,原告は,本件研修日には5時限の授業が予定されており,これを放棄することはできなかったこと,他方で,研修を行うにしても都教委が日程調整を図ることは十分可能であったこと(なお,原告は,日程変更の申出もしていた。)に照らせば,本件受講命令はその内容が実現可能ではなかったというべきである。
(ウ) 以上のとおりであるから,本件受講命令は,適法要件を欠いているのであり,原告が本件研修を受講しなかったことを理由として地方公務員法32条違反に問うことは許されない。
そして,同法33条の信用失墜行為が,同法32条の服務義務違反と裏腹の関係にあることに照らせば,原告が本件研修を受講しなかったからといって同法33条違反となることもない。そもそも,同条にいう「その職の信用を傷つけ,又は職員の全体の不名誉となるような行為」とは,世間のひんしゅくを買う行為などと説明されている。しかし,少なくとも原告はそのようなことはしていないし,国民の間では起立斉唱等を強制することに反対する考え方の方が多く,原告らの不起立等は,決して世間のひんしゅくを買っているわけではないから,同条違反になるものでもない。
カ 裁量権の逸脱濫用について
本件処分は,以下のとおり,裁量権を逸脱又は濫用した違法な処分であり,取り消されるべきものである。
(ア) 本件処分は,懲戒権の目的を逸脱する。
地方公務員法が任命権者に懲戒処分の権限を付与した目的は,公務員秩序を維持することにある。公務員秩序とは,単に階層的な命令伝達機能(上命下服)の整備又は徹底を意味するのではなく,公務員の勤務において国民全体に最大の利益を実現するシステムを意味し,その具体的な在り方は,各部門によって異なる。また,教育は,教師と生徒との全人格的な触れあいを通じて,生徒の人格形成を目指す営みであり,命令と服従からなる公務員秩序は,そのような教育部門にはなじまない。教育部門においては,生徒に対し,価値観の多様性と個性の尊重を保障する教育本来の在り方に適合したシステムとしての公務員秩序が形成されなくてはならない。しかるに,都教委は,特定の価値観(国旗国歌の尊重等)及び教育観を持ち,教育を支配,統制するという違法な意図と動機から,累積加重システムの下,懲戒処分を濫発したのであり,本件処分は,あるべき公務員秩序の形成に背馳し,地方公務員法における懲戒制度の趣旨,目的を逸脱するものである。
(イ) 本件処分は,非違性の程度と不利益の程度との権衡を著しく失し,比例原則に違反する。
本件研修日において,原告は,生徒に対する教育の職責を果たすために授業を行っていたものである。都教委から指定された研修日程において研修を受講すると,1,3,4,5時限目の授業を自習にせざるを得ず,しかも,自習監督を欠いたままの自学とせざるを得なかった。本件不受講行為の目的は,教育の責務と職務命令義務との衝突を自覚し,これを受け入れ難いとしたことによるものである。
その性質,態様も,欠席という消極的なものにすぎず,妨害する積極的な行動や妨げる態様の行為は皆無である。
その結果,影響としても研修の進行に支障を生じさせてはおらず,研修が混乱したなどという影響もない。
当該不受講行為前後の態度としても,原告は,校長,次いで都教委に日程変更を求め,職務命令に違反することのないよう努力をしていた。むしろ,都教委が日程変更を不当に拒んでいる。
以上の点からすれば,本件不起立等の非違性は,あったとしても極めて僅少である。
これに対し,本件処分は6か月間給料の10分の1を減ずるという極めて重いものであり,比例原則に違反していることは明らかである。
(ウ) 都教委は,本件処分において,原告が本件研修に出席していれば授業に支障が生じ,本件不受講行為はむしろ生徒の授業を受ける機会を保障するものであったこと,都教委が本件研修の日程を無配慮に,かつ,一方的に定め,原告のした申入れ等について考慮していないこと,日程変更に支障はなく,本件不受講行為について実害も生じていないこと等,考慮すべき事柄を不当かつ安易に軽視し,形式的に生じた職務命令違反という過大評価すべきでない事柄を過重に評価している。
そうすると,本件処分には,要考慮事項・不可考慮事項の判断過誤の違法があったというべきである。
(エ) 最高裁平成24年判決は,不起立行為について,減給以上の処分を選択するには,過去の処分歴等に鑑み,学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡との観点から,当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的事情が認められる場合であることを要するとしている。
都教委は,起立斉唱に係る職務命令と,その違反による再発防止研修を一体のものとし,再発防止研修の受講命令違反について,起立斉唱に係る職務命令違反の場合の処分に加重した内容の処分を行っているのであって,不受講行為を不起立行為と別個に捉えることは不自然である。そうすると,上記最高裁判決の法理は不受講行為の場合にも適用があると解すべきである。
しかるところ,本件処分時に本件処分で考慮された事実は,原告の処分歴だけであったこと,本件懲戒処分②について,同処分の取消しを求めて係争中であったことのほか,確定的故意に基づいてなされた職務命令違反としての不起立行為であったとしても,上記最高裁判決は減給以上の処分をするについて上記事情を要求しているのであり,処分を加重することを基礎付ける事情となるとは解し難いこと,原告は,本件研修日,授業を行っており,本件受講命令に従わなかったからといって,学校の規律や秩序を乱したものでもないこと,従前の不起立行為も積極的に式典の妨害をするものではなかったことを指摘することができ,これらの点からすれば,上記具体的事情がないことは明らかである。
(オ) 前記前提事実(13)記載のとおり,本件処分の累積加重の前提となっている本件懲戒処分②は取り消されている。そうすると,本件処分において,本件懲戒処分②は,そもそも処分歴として考慮することが許されないから,その意味においても,同処分を前提としてなされた本件処分は違法である。
第3 当裁判所の判断
1 本件処分の裁量権の逸脱・濫用の有無について
(1) 本件では,前記第2,3及び4記載のとおり,本件通達及びこれに基づく起立斉唱に係る職務命令の違法性のほか,本件受講命令の違法性について当事者間に争いがあるところ,事案に鑑み,本件処分の裁量権の逸脱・濫用の有無について検討する。
(2) 公務員に対する懲戒処分について,懲戒権者は,懲戒事由に該当すると認められる行為の原因,動機,性質,態様,結果,影響等のほか,当該公務員の上記行為の前後における態度,懲戒処分等の処分歴,選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等,諸般の事情を考慮して,懲戒処分をすべきかどうか,また,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきかを決定する裁量権を有しており,その判断は,それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したと認められる場合に,違法となるものと解される(最高裁判所昭和52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1101頁,最高裁判所平成2年1月18日第一小法廷判決・民集44巻1号1頁参照)。
(3)ア よって検討するに,本件処分は,前記前提事実(5)ないし同(9)記載のとおり,原告が本件不起立行為②に及び,本件懲戒処分②(1か月間給料の10分の1を減ずるとの処分)を受けることとなったことに伴って発令された本件受講命令の違反が懲戒事由とされており,その処分の量定(6か月間給料の10分の1を減ずる)が,同命令違反に係る経過のほか,原告の処分歴(前記前提事実(3),(6))をも踏まえてなされたものであることは,被告の主張自体からも明らかである。とりわけ,本件処分は,減給処分の中でも,本件懲戒処分②でされた処分(1か月間給料の10分の1を減ずる)よりもさらに重い処分量定がされているところであって,その処分量定に当たり,原告が,既に上記の内容の減給処分(本件懲戒処分②)を受けていたことが重要な要素として考慮されていたことは,証拠(甲3,143,185~187)のほか,上記各懲戒処分の処分内容自体からも明らかである。
イ(ア) ところで,本件処分が重要な要素としている本件懲戒処分②は,本件不起立行為②を懲戒事由とするものであるところ,不起立行為が,その性質,態様において,全校の生徒等の出席する重要な学校行事である卒業式等の式典において行われた教職員による職務命令違反を内容とし,その結果,影響として,学校の儀式的行事としての式典の秩序や雰囲気を一定程度損なう作用をもたらし,それにより式典に参列する生徒への影響も伴うものであることを否定し難いとしても,その動機,原因は,不起立行為に及ぶ教職員の歴史観ないし世界観等に由来する「君が代」や「日の丸」に対する否定的評価等に係る個人の歴史観ないし世界観等に起因するものであること,不起立行為の性質,態様は,積極的な妨害等の作為ではなく,物理的に式次第の遂行を妨げるものではないこと,そして,不起立行為の結果,影響も,当該行為のこのような性質,態様に鑑み,当該式典の進行に具体的にどの程度の支障や混乱をもたらしたかは客観的な評価の困難な事柄であるといえることを指摘でき,かかる点にも照らすと,不起立行為に対する懲戒において戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについては,事案の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要となるものといえる。
そして,減給処分は,処分それ自体によって教職員の法的地位に一定の期間における本給の一部の不支給という直接の給与上の不利益が及び,将来の昇給等にも相応の影響が及ぶ上,本件通達を踏まえて毎年度2回以上の卒業式や入学式等の式典のたびに懲戒処分が累積して加重されると短期間で反復継続的に不利益が拡大していくこと等を勘案すると,上記のような考慮の下で不起立行為に対する懲戒において戒告を超えて減給の処分を選択することが許容されるのは,過去の処分歴等に鑑み,学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であることを要すると解すべきである。
したがって,不起立行為に対する懲戒において減給処分を選択することについて,上記の相当性を基礎付ける具体的な事情が認められるためには,例えば過去の1回の卒業式等における不起立行為による懲戒処分の処分歴がある場合に,これのみをもって直ちにその相当性を基礎付けるには足りず,上記の場合に比べて過去の処分歴に係る非違行為がその内容や頻度等において規律や秩序を害する程度の相応に大きいものであるなど,過去の処分歴等が減給処分による不利益の内容との権衡を勘案してもなお規律や秩序の保持等の必要性の高さを十分に基礎付けるものであることを要するというべきである(最高裁平成24年判決参照)。
(イ) そこで,これを本件処分が重要な要素としている本件懲戒処分②についてみると,次のとおりである。
a 前記前提事実のほか,証拠(乙7,8,25~31)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(a) 原告は,平成16年3月12日施行された平成15年度卒業式において,起立斉唱するように同校校長から職務命令を受けたが,これに従わなかった(本件不起立行為①)。
原告は,上記卒業式の終了後,同校長からの事情聴取を再三にわたって拒否し,都教委からの平成16年3月23日の事情聴取に出頭しなかった。
都教委は,こうした経緯の後,原告に対し,本件不起立行為①につき,同月31日付けで戒告処分をした(本件懲戒処分①)。
(b) 原告は,同年8月2日,服務事故再発防止研修(基本研修)を受講したが,受講後に提出した受講報告書には,「失礼千万である。この報告書はどのような方が読むのでしょうか。その後,どうこれをあつかうのでしょうか。10・23より始まった一連の事柄に,これを読む方はどのように関ってきたのでしょうか。そのことに多少なりとも罪悪感はないのでしょうか。」などと記載した。
(c) 原告は,平成17年3月11日に施行された平成16年度卒業式において,起立斉唱するように同校長から職務命令を受けたが,これに従わず,不起立を現認した副校長から起立を促されたが,起立しなかった(本件不起立行為②)。
原告は,上記卒業式前の平成17年3月8日,同校長から職務命令書を渡された際,「法的根拠がないですね。」などと述べていた。
原告は,上記卒業式終了後の同校長からの事実確認に対し,本件懲戒処分①についての人事委員会の審理の結果が出ていないことを理由として回答を拒否した。また,原告は,都教委からの同月28日の事情聴取には出頭したが,同行した弁護士の同席を要求し,これが認められない旨告げられると,事情聴取を拒否して退去した。
以上の経過の後,都教委は,原告に対し,本件不起立行為②につき,同月31日付けで,1か月間給料の10分の1を減ずるとの内容の処分をした(本件懲戒処分②)。
(d) 上記各処分の対象となった不起立行為(本件不起立行為①,②)の動機,原因は,原告の歴史観ないし世界観等に由来する「君が代」や「日の丸」に対する否定的評価等のゆえに,職務命令により求められる行為と自らの歴史観ないし世界観等に由来する外部的行動とが相違することであり,個人の歴史観ないし世界観等に起因するものであった。
なお,いずれの行為も不起立にとどまるものであり,積極的に式典の進行を妨害する行為ではなく,卒業式の運営進行に支障を来した事実もなかった。
(e) 原告には,上記各処分の当時,上記各処分の対象とされた非違行為以外に非違行為と評価される業務実態は認められなかった。
b もとより,被告主張のとおり,本件不起立行為②は,重要な学校行事である卒業式の場で,来賓,保護者,生徒らの面前で,公然とされた確定的故意による公務員の職務命令遵守義務違反に係る非違行為と見る余地はある。
しかし,上記イ(ア)で判示した点に照らせば,減給以上の処分をするについては慎重な考慮が必要となるというべきところ,上記aからすると,原告の本件懲戒処分②の前の不起立行為による処分歴は本件懲戒処分①による戒告処分の1回だけであること,同処分の対象となった不起立行為(本件不起立行為①)及び上記減給処分(本件懲戒処分②)の対象となった不起立行為(本件不起立行為②)は,原告個人の歴史観ないし世界観等に起因するものであり,いずれも積極的に式典の進行を妨害する行為ではなく,卒業式の運営進行に支障を来した事実もなかったこと,上記各処分の事情聴取の際の原告の態度等に,被告主張のように,不起立行為を顧みる態度に乏しいとみる余地はあったといえるとしても,他に非違行為と評価される業務実態があったとは認められないことを指摘することができる。
してみると,本件懲戒処分②の当時において,原告の過去の処分歴等に鑑み,学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から本件懲戒処分②を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情があったと認めることは,上記被告の主張を踏まえても,上記イ(ア)で判示した点に鑑み,困難である。
c 以上のとおりであるから,本件処分が重要な要素としていた本件懲戒処分②に係る本件不起立行為②は,本件処分当時,少なくとも減給処分の事由とするに相当でないものであったといわざるを得ない(なお,同処分に関して,後にこれを取り消す旨の判決が確定していることは前記前提事実(13)記載のとおりである。)。
ウ そうしてみると,本件処分は,懲戒権者が処分の際,重要な要素として考慮した過去の処分歴等の評価・判断を誤ってなされたものといわざるを得ない。
この点,被告は,抗告訴訟における違法判断の基準時は処分時であるなどとして上記判断を争う。確かに,違法判断の基準時(本件処分の違法判断の基準時)は原則として処分時(本件処分時)に求めるべきであるが,本件不起立行為②については,本件処分当時,前記具体的な事情を欠いていたため,これを減給処分の事由とするに相当でない事情が存在していたということができるのであり,これは本件処分当時から存していた事情であったといえる。したがって,上記のように判断したからといって,違法判断の基準時が原則として処分時とされていることと相反するものではない。そもそも,被告の主張によれば,事後に誤った懲戒処分として取り消された処分を前提事実としてなされる懲戒処分は,その加重の程度が不当でない限り,たやすく取り消されることはないこととなるが,そのような事態を根拠法規たる行政法規(地方公務員法)が想定しているともにわかに解し難い。被告指摘の最高裁判決も本件のような場合に上記判断のように解することを許さない趣旨のものとは到底解されない。したがって,上記被告の主張は採用することができず,上記判断は何ら左右されない。
(4)ア 本件のような不受講行為についてみるに,再発防止研修(本件研修)は不起立行為に関してなされるものであるところ,一般的にいえば,不受講行為は,起立斉唱に係る職務命令違反に対する否定的評価等に係る個人の歴史観ないし世界観等とは無関係であるとは考え難いこと,不起立行為等による減給処分のほか,不受講行為による減給処分を受けることにより懲戒処分が累積して加重され,短期間で反復継続的に不利益が拡大していく場合における不利益の度合いが高いことなどを考慮すると,不起立行為にかかる研修の不受講行為に対する懲戒において戒告を超えて減給の処分を選択することには,やはり慎重な考慮が必要というべく,そのような処分量定が許容されるのは,不起立行為における場合と同様,学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であることを要すると解すべきである。
イ そして,本件不受講行為,それ自体の態様等について検討するに,同行為が,被告主張のように,確定的故意による公務員の職務命令遵守義務違反であり,原告の不受講によって,研修の効をあげることができないという実害を生じたと見る余地はあるにしても,原告の本件不受講行為は,原告が,本件研修予定日には出頭できない旨予告した上で研修センターに赴かなかったにすぎず,それ以上に積極的な加害行為を行ったものではない(甲197,198,乙7,8,33,弁論の全趣旨)。また,原告がCから繰り返し日程変更が認められないことを伝えられ,同研修の研修命令の執行停止申立ても却下されていたのに本件不受講行為に及んでいることや,非違行為後の事情聴取の際に,ネクタイに小型マイクを仕掛けて録音をしようとし,事情聴取がなされないこととなった事情等,被告主張の非違行為に至る経過等があったとしても,一方で,原告は,本件研修前の基本研修は受講した(前記前提事実(7))ほか,本件研修についても確定的に不受講の意向を示していたわけではなく,同研修予定日に既に授業が予定されていたことから,具体的に参加可能な候補日を複数掲げ,これらの日であれば本件研修に参加できるように調整を図りたい旨を示して,その期日の変更を求めていたという事情も認められる(甲197,198,乙8~10,33,弁論の全趣旨)。
そうすると,前記した本件不受講行為の態様に加えて,本件不起立行為②が減給はともかく戒告処分相当の行為と評価できることを考慮したとしても,前記アに説示したところの減給以上の処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であるとはいえず,本件処分量定は,被告の懲戒処分における裁量権を考慮したとしても,重きに過ぎるというべきである。
(5) 結局のところ,本件処分は,処分の量定が重きに失し,社会観念上著しく妥当を欠き,上記減給処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超えるものとして,違法の評価を免れない。
2 以上によれば,本件請求は,その余の点について判断するまでもなく理由があるから,これを認容すべきである。
よって,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 古久保正人 裁判官 大野博隆 裁判官 芝本昌征)
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政治と選挙の裁判例「告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター 政党 議員 政治家」に関する裁判例一覧
(1)平成26年 9月25日 東京地裁 平21(ワ)46404号・平22(ワ)16316号 損害賠償(株主代表訴訟)請求事件(第2事件)、損害賠償(株主代表訴訟)請求事件(第3事件)
(2)平成26年 9月17日 知財高裁 平26(行ケ)10090号 審決取消請求事件
(3)平成26年 9月11日 大阪高裁 平26(行コ)79号・平26(行コ)123号 政務調査費返還請求控訴事件、同附帯控訴事件
(4)平成26年 9月11日 知財高裁 平26(行ケ)10092号 審決取消請求事件
(5)平成26年 9月10日 大阪地裁 平24(行ウ)78号・平25(行ウ)80号・平26(行ウ)65号 行政財産使用不許可処分取消等請求事件・組合事務所使用不許可処分取消等請求事件
(6)平成26年 9月10日 大阪地裁 平24(行ウ)49号・平24(ワ)4909号・平25(行ウ)75号・平26(行ウ)59号 建物使用不許可処分取消等請求事件、建物明渡請求事件、使用不許可処分取消等請求事件 〔大阪市役所組合事務所使用不許可処分取〕
(7)平成26年 9月 3日 東京地裁 平25(行ウ)184号 政務調査費返還請求事件
(8)平成26年 8月 8日 東京地裁 平25(行ウ)590号 難民不認定処分取消請求事件
(9)平成26年 7月25日 東京地裁 平25(行ウ)277号 難民の認定をしない処分等取消請求事件
(10)平成26年 7月16日 東京地裁 平25(行ウ)259号 難民不認定処分取消等請求事件
(11)平成26年 7月11日 札幌地裁 平22(行ウ)42号 政務調査費返還履行請求事件
(12)平成26年 6月12日 東京地裁 平25(ワ)9239号・平25(ワ)21308号・平25(ワ)21318号 損害賠償請求本訴事件(本訴)、損害賠償請求反訴事件(反訴)
(13)平成26年 5月21日 横浜地裁 平19(ワ)4917号・平20(ワ)1532号 損害賠償等請求事件
(14)平成26年 5月14日 名古屋地裁 平22(ワ)5995号 損害賠償請求事件 〔S社(思想信条)事件〕
(15)平成26年 4月 9日 東京地裁 平24(ワ)33978号 損害賠償請求事件
(16)平成26年 3月26日 大阪地裁 平22(行ウ)27号・平23(行ウ)77号 政務調査費返還請求事件(住民訴訟)
(17)平成26年 3月25日 東京地裁 平25(ワ)18483号 損害賠償請求事件
(18)平成26年 3月18日 大阪高裁 平25(行コ)149号 政務調査費違法支出不当利得返還命令請求控訴事件
(19)平成26年 3月11日 東京地裁 平25(ワ)11889号 損害賠償等請求事件
(20)平成26年 2月26日 東京地裁 平24(ワ)10342号 謝罪広告掲載等請求事件
(21)平成26年 2月21日 東京地裁 平25(行ウ)52号 難民の認定をしない処分等取消請求事件
(22)平成26年 2月21日 宮崎地裁 平25(ワ)276号 謝罪放送等請求事件
(23)平成26年 1月31日 東京地裁 平24(行ウ)146号 難民の認定をしない処分取消請求事件
(24)平成26年 1月30日 大阪高裁 平25(行コ)40号 政務調査費違法支出金返還請求控訴事件
(25)平成26年 1月16日 名古屋地裁 平23(行ウ)68号 愛知県議会議員政務調査費住民訴訟事件
(26)平成25年12月25日 東京高裁 平25(行ケ)83号 選挙無効事件
(27)平成25年12月25日 広島高裁松江支部 平25(行ケ)1号 選挙無効請求事件
(28)平成25年12月24日 東京地裁 平24(行ウ)747号 難民不認定処分取消請求事件
(29)平成25年12月20日 東京高裁 平25(行ケ)70号・平25(行ケ)71号・平25(行ケ)72号・平25(行ケ)73号・平25(行ケ)74号・平25(行ケ)75号・平25(行ケ)76号・平25(行ケ)77号・平25(行ケ)78号・平25(行ケ)79号・平25(行ケ)80号 各選挙無効請求事件
(30)平成25年12月20日 仙台高裁 平25(行ケ)2号・平25(行ケ)3号・平25(行ケ)4号・平25(行ケ)5号・平25(行ケ)6号
(31)平成25年12月19日 東京地裁 平24(行ウ)59号 懲戒処分取消等請求事件
(32)平成25年12月18日 名古屋高裁 平25(行ケ)1号・平25(行ケ)2号・平25(行ケ)3号 選挙無効請求事件
(33)平成25年12月16日 名古屋高裁金沢支部 平25(行ケ)2号・平25(行ケ)3号・平25(行ケ)4号 選挙無効請求事件
(34)平成25年12月12日 東京地裁 平24(行ウ)719号 裁決取消等請求事件
(35)平成25年12月 6日 札幌高裁 平25(行ケ)1号 参議院議員選挙無効請求事件
(36)平成25年12月 5日 広島高裁 平25(行ケ)3号 選挙無効請求事件
(37)平成25年12月 3日 東京地裁 平24(行ウ)423号 難民不認定処分取消請求事件
(38)平成25年11月28日 広島高裁岡山支部 平25(行ケ)1号 選挙無効請求事件
(39)平成25年11月20日 最高裁大法廷 平25(行ツ)226号 選挙無効請求事件
(40)平成25年11月20日 最高裁大法廷 平25(行ツ)209号・平25(行ツ)210号・平25(行ツ)211号 選挙無効請求事件 〔平成24年衆議院議員総選挙定数訴訟大法廷判決〕
(41)平成25年11月19日 東京地裁 平24(行ウ)274号 難民の認定をしない処分無効確認等請求事件
(42)平成25年11月18日 福岡地裁 平19(行ウ)70号 政務調査費返還請求事件
(43)平成25年11月15日 東京地裁 平24(行ウ)753号 難民不認定処分無効確認等請求事件
(44)平成25年11月 8日 盛岡地裁 平24(ワ)319号 損害賠償請求事件
(45)平成25年10月21日 東京地裁 平24(ワ)2752号 損害賠償請求事件
(46)平成25年10月16日 東京地裁 平23(行ウ)292号 報酬返還請求事件
(47)平成25年10月 4日 東京地裁 平24(行ウ)76号・平24(行ウ)77号・平24(行ウ)78号・平24(行ウ)79号 退去強制令書発付処分取消等請求事件
(48)平成25年10月 2日 東京地裁 平23(行ウ)657号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(49)平成25年 9月26日 大阪高裁 平25(行コ)82号・平25(行コ)114号 不当利得返還等請求行為請求控訴、同附帯控訴事件
(50)平成25年 8月27日 東京地裁 平24(行ウ)647号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(51)平成25年 8月23日 東京地裁 平24(行ウ)90号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(52)平成25年 8月 5日 東京地裁 平25(ワ)8154号 発信者情報開示請求事件
(53)平成25年 7月30日 東京地裁 平24(行ウ)427号・平25(行ウ)224号 難民不認定処分取消請求事件、追加的併合請求事件
(54)平成25年 7月26日 静岡地裁 平21(行ウ)19号 不当利得返還請求権行使請求事件
(55)平成25年 7月23日 東京地裁 平24(行ウ)393号 難民の認定をしない処分等取消請求事件
(56)平成25年 7月 4日 名古屋高裁 平25(行コ)18号 議員除名処分取消等請求控訴事件
(57)平成25年 7月 3日 名古屋高裁金沢支部 平24(行コ)16号 政務調査費返還請求控訴事件
(58)平成25年 6月19日 横浜地裁 平20(行ウ)19号 政務調査費返還履行等代位請求事件
(59)平成25年 6月 4日 東京高裁 平24(行コ)350号 政務調査費返還履行請求控訴事件
(60)平成25年 5月29日 広島地裁 平23(ワ)1500号 損害賠償等請求事件
(61)平成25年 5月15日 東京地裁 平23(行ウ)697号 難民の認定をしない処分取消請求事件
(62)平成25年 4月11日 東京地裁 平24(行ウ)115号・平24(行ウ)127号・平24(行ウ)128号・平24(行ウ)129号・平24(行ウ)130号・平24(行ウ)614号・平24(行ウ)620号・平24(行ウ)621号・平24(行ウ)622号・平24(行ウ)623号 在留特別許可をしない処分取消等請求事件、在留特別許可をしない処分無効確認請求事件
(63)平成25年 4月11日 東京地裁 平23(行ウ)757号・平24(行ウ)1号・平24(行ウ)2号・平24(行ウ)3号・平24(行ウ)4号・平24(行ウ)5号 難民の認定をしない処分取消請求事件
(64)平成25年 3月28日 京都地裁 平20(行ウ)10号 不当利得返還等請求行為請求事件
(65)平成25年 3月26日 東京高裁 平24(行ケ)26号・平24(行ケ)27号・平24(行ケ)28号・平24(行ケ)29号・平24(行ケ)30号・平24(行ケ)31号・平24(行ケ)32号 各選挙無効請求事件
(66)平成25年 3月25日 広島高裁 平24(行ケ)4号・平24(行ケ)5号 選挙無効請求事件
(67)平成25年 3月19日 東京地裁 平24(ワ)11787号 損害賠償請求事件
(68)平成25年 3月14日 名古屋高裁 平24(行ケ)1号・平24(行ケ)2号・平24(行ケ)3号・平24(行ケ)4号 選挙無効請求事件
(69)平成25年 3月14日 東京地裁 平23(行ウ)63号 選挙権確認請求事件 〔成年被後見人選挙件確認訴訟・第一審〕
(70)平成25年 3月 6日 東京高裁 平24(行ケ)21号 選挙無効請求事件
(71)平成25年 2月28日 東京地裁 平22(ワ)47235号 業務委託料請求事件
(72)平成25年 2月20日 宇都宮地裁 平23(行ウ)13号 政務調査費返還請求事件
(73)平成25年 2月15日 福岡地裁 平23(行ウ)25号 教育振興費補助金支出取消等請求事件
(74)平成25年 1月29日 岡山地裁 平22(行ウ)15号 不当利得返還請求事件
(75)平成25年 1月21日 東京地裁 平24(ワ)2152号 謝罪広告掲載要求等請求事件
(76)平成25年 1月18日 東京地裁 平23(行ウ)442号 難民の認定をしない処分取消請求事件
(77)平成25年 1月16日 東京地裁 平23(行ウ)52号 難民不認定処分取消請求事件
(78)平成25年 1月16日 大阪地裁 平19(行ウ)135号 不当利得返還等請求事件
(79)平成24年12月 7日 最高裁第二小法廷 平22(あ)957号 国家公務員法違反被告事件
(80)平成24年12月 7日 最高裁第二小法廷 平22(あ)762号 国家公務員法違反被告事件
(81)平成24年11月20日 東京地裁 平22(行ウ)563号 難民不認定処分取消請求事件
(82)平成24年11月 2日 東京地裁 平23(行ウ)492号 難民不認定処分取消等請求事件
(83)平成24年10月18日 大阪地裁 平22(行ウ)160号 政務調査費返還(住民訴訟)請求事件
(84)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)95号 選挙無効請求事件
(85)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)72号 選挙無効請求事件
(86)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)65号 選挙無効請求事件
(87)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)64号 選挙無効請求事件
(88)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)59号 選挙無効請求事件
(89)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)52号 選挙無効請求事件
(90)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)51号 選挙無効請求事件 〔参議院議員定数訴訟・大法廷判決〕
(91)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)179号
(92)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)174号 参議院議員選挙無効請求事件
(93)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)171号 選挙無効請求事件
(94)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)155号 選挙無効請求事件
(95)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)154号 選挙無効請求事件
(96)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)153号 選挙無効請求事件
(97)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)135号 選挙無効請求事件
(98)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)133号 選挙無効請求事件
(99)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)132号 選挙無効請求事件
(100)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)131号 選挙無効請求事件
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■「政治団体 党員 入党 入会 獲得 募集 代行」に関する裁判例一覧【1~100】
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■「後援会 入会 募集 獲得 代行」に関する裁判例一覧【1~100】
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■選挙の種類一覧
選挙①【衆議院議員総選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙②【参議院議員通常選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙③【一般選挙(地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙④【特別選挙(国政選挙|地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
(1)政治活動/選挙運動ポスター貼り ☆祝!勝つ!広報活動・事前街頭(単独/二連)選挙ポスター!
勝つ!選挙広報支援事前ポスター 政治選挙新規掲示ポスター貼付! 1枚から貼る事前選挙ポスター!
「政治活動・選挙運動ポスターを貼りたい!」という選挙立候補(予定)者のための、選挙広報支援プロ集団「選挙.WIN!」の事前街頭ポスター新規掲示プランです。
(2)圧倒的に政界No.1を誇る実績! 政治ポスター(演説会告知|政党|個人|二連三連)掲示交渉実績!
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政治ポスター貼りドットウィン!「ドブ板選挙を戦い抜く覚悟のあなたをぜひ応援したい!」事前街頭PRおよび選挙広報支援コンサルティング実績!
(3)今すぐ無料でお見積りのご相談 ☆大至急スピード無料見積もり!選挙広報支援プランご提案
ポスター掲示難易度ランク調査 ご希望のエリア/貼付箇所/貼付枚数 ☏03-3981-2990✉info@senkyo.win
「政治活動用のポスター貼り代行」や「選挙広報支援プラン」の概算お見積りがほしいというお客様に、選挙ドットウィンの公職選挙法に抵触しない広報支援プランのご提案が可能です。
(4)政界初!世界発!「ワッポン」 選挙管理委員会の認証確認済みPR型「ウィン!ワッポン」
完全無料使い放題でご提供可能! 外壁街頭ポスター掲示貼付ツール 1枚から対応/大至急/一斉貼付け!
「ガンガン注目される訴求型PRポスターを貼りたい!」というお客様に、選挙ドットウィンの「ウィン!ワッポン」を完全無料使い放題でご提供する、究極の広報支援ポスター新規掲示プランです。
(5)選べるドブ板選挙広報支援一覧 選挙.WIN!豊富な選挙立候補(予定)者広報支援プラン一覧!
政治家/選挙立候補予定者広報支援 祝!当選!選挙広報支援プロ集団 世のため人のため「SENKYO.WIN」
アポイントメント獲得代行/後援会イベントセミナー集客代行/組織構築支援/党員募集獲得代行(所属党本部要請案件)/演説コンサルティング/候補者ブランディング/敵対陣営/ネガティブキャンペーン(対策/対応)
(6)握手代行/戸別訪問/ご挨拶回り 御用聞きによる戸別訪問型ご挨拶回り代行をいたします!
ポスター掲示交渉×戸別訪問ご挨拶 100%のリーチ率で攻める御用聞き 1軒でも行くご挨拶訪問交渉支援
ご指定の地域(ターゲットエリア)の個人宅(有権者)を1軒1軒ご訪問し、ビラ・チラシの配布およびアンケート解答用紙の配布収集等の戸別訪問型ポスター新規掲示依頼プランです。
(7)地域密着型ポスターPR広告貼り 地域密着型ポスターPR広告(街頭外壁掲示許可交渉代行)
街頭外壁掲示許可交渉代行/全業種 期間限定!貴社(貴店)ポスター貼り サイズ/枚数/全国エリア対応可能!
【対応可能な業種リスト|名称一覧】地域密着型ポスターPR広告(街頭外壁掲示許可交渉代行)貼り「ガンガン注目される訴求型PRポスターを貼りたい!」街頭外壁掲示ポスター新規掲示プランです。
(8)貼る専門!ポスター新規掲示! ☆貼!勝つ!広報活動・事前街頭(単独/二連)選挙ポスター!
政治活動/選挙運動ポスター貼り 勝つ!選挙広報支援事前ポスター 1枚から貼る事前選挙ポスター!
「政治活動・選挙運動ポスターを貼りたい!」という選挙立候補(予定)者のための、選挙広報支援プロ集団「選挙.WIN!」の事前街頭ポスター新規掲示プランです。
(9)選挙立札看板設置/証票申請代行 絶対ここに設置したい!選挙立札看板(選挙事務所/後援会連絡所)
選挙事務所/後援会連絡所届出代行 公職選挙法の上限/立て札看板設置 1台から可能な選挙立札看板設置
最強の立札看板設置代行/広報(公報)支援/選挙立候補者後援会立札看板/選挙立候補者連絡所立札看板/政治活動用事務所に掲示する立て札・看板/証票申請代行/ガンガン独占設置!
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