【選挙から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「公職選挙法 ポスター」に関する裁判例(15)平成25年10月16日 東京地裁 平23(行ウ)292号 報酬返還請求事件

「公職選挙法 ポスター」に関する裁判例(15)平成25年10月16日 東京地裁 平23(行ウ)292号 報酬返還請求事件

裁判年月日  平成25年10月16日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(行ウ)292号
事件名  報酬返還請求事件
裁判結果  一部認容、一部却下、一部棄却  上訴等  控訴(控訴棄却)、上告受理申立て(不受理)  文献番号  2013WLJPCA10166003

要旨
◆ある選挙管理委員が、疾病により勤務実態がないにもかかわらず区から月額報酬を受領していたことにつき、勤務実態が存在しなくても月額報酬の満額支給を認める区の条例の規定は地方自治法に反して違法、無効であるなどとして、区の住民である原告らが、被告区長に対し、本件委員に不当利得の返還請求をするよう求め、また、被告区長が同請求をすることを怠る事実の違法確認を求めた住民訴訟の事案において、本件訴えのうち訴えの変更に係る部分については、住民監査請求を経ていないとして却下した上で、本件条例は、選挙管理委員としての業務を一切行っていなかった本件委員のような場合も含めて一律に月額報酬全額を支給する点で、地方自治法203条の2第2項に反しているといえ、その結果、本件委員に対してされた本件報酬の支給は、法律又は条例に基づかずにされたものであるから無効であるなどとして、不当利得返還請求及び確認請求を一部認容した事例

新判例体系
公法編 > 組織法 > 公職選挙法〔昭和二五… > 第一七章 補則 > 第二六六条 > ○市に関する規定の特… > (一)選挙管理委員会の設置
◆非常勤職員である杉並区選挙管理委員会委員に対して勤務実態の不存在の場合を含め勤務態様等を考慮することなく一律に月額報酬の満額を支給することと規定する杉並区条例(杉並区行政委員会の委員の報酬及び費用弁償に関する条例。昭和三一年杉並区条例第二一号)は、その限りにおいて地方自治法第二〇三条の二第二項の規定の趣旨に照らした合理性の観点から議会の裁量権の範囲を超えるものとして同規定に違反して無効である。

公法編 > 組織法 > 地方自治法〔昭和二二… > 第二編 普通地方公共… > 第八章 給与その他の… > 第二〇三条の二 > ○委員会委員の報酬等 > (三)違法とした事例
◆非常勤職員である杉並区選挙管理委員会委員に対して勤務実態の不存在の場合を含め勤務態様等を考慮することなく一律に月額報酬の満額を支給することと規定する杉並区条例(杉並区行政委員会の委員の報酬及び費用弁償に関する条例。昭和三一年杉並区条例第二一号)は、その限りにおいて地方自治法第二〇三条の二第二項の規定の趣旨に照らした合理性の観点から議会の裁量権の範囲を超えるものとして同規定に違反して無効である。

公法編 > 組織法 > 地方自治法〔昭和二二… > 第二編 普通地方公共… > 第九章 財務 > 第一〇節 住民による… > 第二四二条の二 > ○住民訴訟 > (六)違法確認請求 > B 肯定した事例
◆非常勤職員である杉並区選挙管理委員会委員に対して勤務実態の不存在の場合を含め勤務態様等を考慮することなく一律に月額報酬の満額を支給することと規定する杉並区条例(杉並区行政委員会の委員の報酬及び費用弁償に関する条例。昭和三一年杉並区条例第二一号)は、その限りにおいて地方自治法第二〇三条の二第二項の規定の趣旨に照らした合理性の観点から議会の裁量権の範囲を超えるものとして同規定に違反して無効である。

公法編 > 組織法 > 地方自治法〔昭和二二… > 第三編 特別地方公共… > 第二章 特別区 > 第二八一条 > ○市の事務の特別区に… > (一)行政委員会委員の報酬決定
◆非常勤職員である杉並区選挙管理委員会委員に対して勤務実態の不存在の場合を含め勤務態様等を考慮することなく一律に月額報酬の満額を支給することと規定する杉並区条例(杉並区行政委員会の委員の報酬及び費用弁償に関する条例。昭和三一年杉並区条例第二一号)は、その限りにおいて地方自治法第二〇三条の二第二項の規定の趣旨に照らした合理性の観点から議会の裁量権の範囲を超えるものとして同規定に違反して無効である。

公法編 > 組織法 > 地方自治法〔昭和二二… > 第三編 特別地方公共… > 第二章 特別区 > 第二八三条 > ○市に関する規定の特… > (一)行政委員会委員の報酬決定
◆非常勤職員である杉並区選挙管理委員会委員に対して勤務実態の不存在の場合を含め勤務態様等を考慮することなく一律に月額報酬の満額を支給することと規定する杉並区条例(杉並区行政委員会の委員の報酬及び費用弁償に関する条例。昭和三一年杉並区条例第二一号)は、その限りにおいて地方自治法第二〇三条の二第二項の規定の趣旨に照らした合理性の観点から議会の裁量権の範囲を超えるものとして同規定に違反して無効である。

 

裁判経過
上告受理申立審 平成27年11月18日 最高裁 決定 平27(行ヒ)347号
控訴審 平成26年 4月24日 東京高裁 判決 平25(行コ)384号 報酬返還請求控訴事件

評釈
池田敏雄・判例地方自治 391号25頁

参照条文
地方自治法203条の2
地方自治法242条1項
地方自治法242条の2第1項
地方自治法281条2項
地方自治法283条
公職選挙法266条1項
杉並区行政委員会の委員の報酬及び費用弁償に関する条例1条(昭31杉並区条例21)
杉並区行政委員会の委員の報酬及び費用弁償に関する条例2条(昭31杉並区条例21)
杉並区行政委員会の委員の報酬及び費用弁償に関する条例3条(昭31杉並区条例21)
杉並区行政委員会の委員の報酬及び費用弁償に関する条例4条2号(昭31杉並区条例21)

裁判年月日  平成25年10月16日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(行ウ)292号
事件名  報酬返還請求事件
裁判結果  一部認容、一部却下、一部棄却  上訴等  控訴(控訴棄却)、上告受理申立て(不受理)  文献番号  2013WLJPCA10166003

当事者の表示 別紙1当事者目録記載のとおり

 

 

主文

1  被告は,甲山Bに対し,140万5161円の支払を請求せよ。
2  被告が甲山Bに140万5161円の不当利得返還の請求をすることを怠る事実が違法であることを確認する。
3  本件訴えのうち別紙2主文関係目録記載1及び2の各請求に係る部分を却下する。
4  本件訴えのその余の部分に係る原告らの請求をいずれも棄却する。
5  訴訟費用はこれを100分し,その3を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  被告は,元杉並区選挙管理委員・甲山Bに対し,不当利得である145万2000円を支払うよう請求せよ。
2  被告は,元杉並区選挙管理委員・甲山Bに対し,上記金員に相当する不当利得返還請求権を有するところ,この行使を怠ることは違法であることを確認せよ。
第2  事案の概要等
1  事案の要旨
本件は,杉並区の住民である原告らが,杉並区選挙管理委員会の委員(以下「杉並区選挙管理委員」という。)であった甲山B(以下「B元委員」という。)が平成22年5月1日から同年10月25日までの期間(以下「本件期間」という。)を含む各月において杉並区行政委員会の委員の報酬及び費用弁償に関する条例(昭和31年杉並区条例第21号。乙3。以下「本件条例」という。)の規定に基づき月額をもって定められた報酬(以下「月額報酬」という。)の支給を受けたことについて,B元委員においては同年5月8日以降は疾病により勤務実態がなく,このように勤務実態が存在しなくても月額報酬の満額の支給を認める本件条例の規定は地方自治法203条の2第2項の規定の趣旨に反し議会の裁量権を逸脱する違法なものであって無効であり,仮に本件条例の規定が無効でないとしても,上記のようにB元委員の勤務実態が皆無であるにもかかわらず漫然と月額報酬の満額を支給し続けた行為は職員による条例の濫用であってB元委員に対する報酬の支給は違法であり無効であるなどと主張して,杉並区の執行機関である被告に対し,①同法242条の2第1項4号に基づき,B元委員に上記の各月において報酬として支給された額に相当する145万2000円の不当利得返還の請求をすることを求めるとともに,②同項3号に基づき,被告が上記の請求をすることを怠る事実の違法確認を求める事案である。
2  関係法令等の定め
別紙3「関係法令等の定め」に記載したとおりである(同別紙で定める略称は,以下においても用いることとする。)。
3  前提となる事実(争いのない事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実並びに当裁判所に顕著な事実。以下「前提事実」という。)
(1)  当事者等
ア 原告らは,東京都の特別区である杉並区の住民である。
イ 被告は,杉並区の執行機関である。
ウ B元委員は,平成19年12月27日に杉並区選挙管理委員の職に就き,平成22年10月25日に辞職によりその職を離れた者である。
(2)  杉並区選挙管理委員会の事務
市区町村選挙管理委員会は,別紙4「市町村選挙管理委員会の事務について」に記載のとおりの事務を担任しており,杉並区に置かれる杉並区選挙管理委員会は,地方自治法281条2項及び283条2項並びに公職選挙法266条1項により,市区町村選挙管理委員会が担任することとされている上記事務を担任している。
(3)  B元委員の定例会等の欠席
杉並区選挙管理委員会は,本件期間(平成22年5月1日から同年10月25日までの間)中,別紙5「定例会等の開催状況」に記載のとおり,定例会等を開催した(甲9,甲35)が,B元委員は,これらの定例会等を全て欠席した。
(4)  報酬の支給等
ア 報酬の支給
杉並区の非常勤職員である杉並区選挙管理委員は,本件条例の規定に基づき月額報酬の支給を受けているところ,B元委員は,以下の(ア)から(カ)までの各月分として,以下のとおり,それぞれ報酬(以下,これらを併せて「本件報酬」という。)の支給を受けた。
(ア) 平成22年5月分
月額24万2000円
(イ) 平成22年6月分
月額24万2000円
(ウ) 平成22年7月分
月額24万2000円
(エ) 平成22年8月分
月額24万2000円
(オ) 平成22年9月分
月額24万2000円
(カ) 平成22年10月分
月額24万2000円
(キ) (ア)から(カ)までの合計額
145万2000円
イ 報酬の過払
B元委員は,月の中途である平成22年10月25日に辞職により杉並区選挙管理委員の職を離れたため(前記(1)ウ),B元委員の同月分の報酬は,本件条例3条2項本文の規定により,日割りにより計算された額である19万5161円が支給されるべきものであったことから,4万6839円が過払(以下「本件過払報酬」という。)となったところ,いずれもB元委員の名義の納入通知書兼領収証書を用いて,杉並区の指定した金融機関に,同年11月17日に4万6838円が,平成23年2月23日に1円が納付されている(なお,被告は,上記の納付によりB元委員から本件過払報酬の返還を受けたと主張し,原告らはこれを争っている。)。
(5)  B元委員の入院等
ア B元委員は,平成22年5月8日午前8時過ぎ頃,呂律が回っていない等の状態になったため,河北総合病院に救急搬送された(甲13の1)。
B元委員は,同病院の医師から脳動脈りゅう(左中大脳動脈りゅう)破裂による脳出血と診断され,同日から同病院に入院した。
イ B元委員は,平成22年5月28日,同病院において手術(左大脳動脈りゅう頚部クリッピング術,血腫除去術)を受け,術後,集中治療室に入った(甲13の1)。
ウ B元委員は,平成22年6月11日,再び手術(脳膿瘍摘出術)を受け,術後,集中治療室に入った(甲13の1)。
エ B元委員は,平成22年8月10日,河北総合病院から河北リハビリテーション病院に転院した。
オ B元委員は,平成22年10月25日,健康上の理由による辞職により杉並区選挙管理委員の職を離れた(辞職の理由については甲5,乙4)。
カ B元委員は,平成22年10月28日,河北リハビリテーション病院を退院した。
キ B元委員は,平成23年1月末,頭蓋骨を頭部に入れる手術を受けた。
(6)  住民監査請求,本件訴えの提起及び訴えの変更
ア 原告らは,平成23年2月10日付けで,杉並区監査委員に対し,地方自治法242条1項に基づき,被告がB元委員に対して平成22年5月分から同年10月分(日割計算により6日分を控除)までの合計140万5162円の報酬を支給したことは違法であるなどとして住民監査請求(以下「本件監査請求」という。)をし,併せて,同法252条の43第1項に基づき,監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査によることを求めた(甲1)。
イ 杉並区監査委員は,平成23年4月7日付けで,個別外部監査契約に基づく監査によることの求めは相当と認められないとして棄却した上で,本件監査請求を棄却する決定をした(甲1)。
ウ 原告らは,前記イの監査の結果を不服として,平成23年5月6日,請求の趣旨を,①被告は,B元委員に対し,不当利得である140万5162円を支払うよう請求せよ,②被告は,B元委員に対し,上記金員に相当する不当利得返還請求権を有するところ,この行使を怠ることは違法であることを確認せよとして,本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。
エ 原告らは,平成24年5月22日,請求の趣旨を,①被告は,B元委員に対し,不当利得である145万2000円を支払うよう請求せよ,②被告は,B元委員に対し,上記金員に相当する不当利得返還請求権を有するところ,この行使を怠ることは違法であることを確認せよと変更し,請求の原因のうち,B元委員の平成22年10月分の報酬に係る不当利得による返還金の額を24万2000円に変更し,併せて不当利得による返還金の合計額を145万2000円に変更した(以下,この訴えの変更を「本件訴えの変更」といい,本件訴えの変更により追加して提起された別紙2主文関係目録記載1及び2の各請求に係る部分を「本件訴えの変更に係る部分」という。)。
4  争点
(1)  本件訴えのうち本件訴えの変更に係る部分は適法か(争点(1))
(2)  本件条例は地方自治法203条の2第2項の規定又はその趣旨に反し違法,無効か(争点(2))
(3)  本件報酬の支給は本件条例を濫用したもので違法,無効か(争点(3))
5  争点に対する当事者の主張
(1)  本件訴えのうち本件訴えの変更に係る部分は適法か(争点(1))
(原告らの主張の要旨)
ア 被告は,①本件訴えの変更に係る部分が住民監査請求を欠いている,②仮に住民監査請求を欠いていないとしても,本件訴えの変更が,本件監査請求の結果の通知から30日以内にされていないとの理由で,本件訴えのうち本件訴えの変更に係る部分は不適法であると主張する。
しかし,本件訴えの変更が適法にされたことは,以下のとおり明らかである。
イ ア①について
本件監査請求及びそれに続く住民訴訟はB元委員に対する平成22年5月分から同年10月分までの報酬の全額を返還するよう求めたものであり,その趣旨は本件訴えの変更後においていささかも変わるものではない。訴訟の対象となる財務会計行為は同一であり,適法な住民監査請求を経ている。
ウ ア②について
本件訴えの変更が本件監査請求の結果の通知から30日を過ぎたことには正当な理由がある。
本件訴えの変更が本件監査請求の結果の通知から30日を過ぎた時期になったのは,訴訟の審理過程で,本件過払報酬4万6839円をみずほ銀行に納入したのが選挙管理委員会事務局の職員であったという予測不能な新事実が判明したためである。この事実を被告が明らかにしたのは平成24年5月23日付けの準備書面(3)であり,しかも,その開示は被告からの積極的なものではなく,原告らの求釈明に回答して開示したものである。そして,原告らは,この事実を知るや否や直ちに本件訴えの変更をした。
(被告の主張の要旨)
ア 原告らが行った本件訴えの変更は,本件訴えの変更に係る部分について新訴を提起することにほかならない。そして,住民訴訟の提起には,住民監査請求の前置を要するところ(地方自治法242条の2第1項),本件において,原告らは,平成23年2月10日付けで本件監査請求を行っており,そこでは本件過払報酬のうちの4万6838円は明確に除外され,本件監査請求の対象とはなっていない(甲1)。また,原告らが本件監査請求のほかに上記4万6838円について住民監査請求を行った事実はない。
以上のとおりであるから,本件訴えのうち本件訴えの変更に係る部分は,住民監査請求の前置を欠き,不適法なものといわざるを得ない。
イ 仮に,本件監査請求をもって,本件訴えの変更に係る部分の住民監査請求の前置に欠けるところはないと解されたとしても,本件訴えの変更は平成24年5月23日付けでされており,平成23年4月7日付け本件監査請求の結果の通知から30日以内にされていないことは明らかであるから,本件訴えの変更に係る部分の訴えの提起は,地方自治法242条の2第2項1号が定める出訴期間を徒過した不適法なものといわざるを得ない。
ウ ところで,原告らは,本件訴えの変更が本件監査請求の結果の通知から1年を過ぎたことには正当な理由があると主張するが,出訴期間は不変期間であるから(地方自治法242条の2第3項),住民監査請求期間(同法242条2項)と異なり,「正当な理由」の有無によって影響を受けない。
また,仮に原告らがその責めに帰することができない事由によって不変期間を遵守することができなかった(民事訴訟法97条)と主張するとしても,原告らは,被告の平成24年5月23日付け準備書面(3)を同月3日に受領して「過払い金4万6839円をみずほ銀行に納入したのは選管事務局職員だった」事実を知り,その翌日から8日以上過ぎてから,本件訴えの変更をしているから(平成24年5月23日付け「訴えの変更申し立て」及び同日付け「訴えの変更申し立て(補充)」),訴訟行為の追完も認められない。
したがって,原告らの主張は失当である。
(2)  本件条例は地方自治法203条の2第2項の規定又はその趣旨に反し違法,無効か(争点(2))
(原告らの主張の要旨)
ア 勤務実態がないにもかかわらず本件報酬を支給したこと
(ア) B元委員の勤務実態が皆無であったこと
a B元委員は,平成19年12月27日付けで杉並区選挙管理委員に就任した。その任期は,平成23年12月26日までの4年間であったが,同委員に在職中の平成22年5月8日,脳出血を発症して入院した。
B元委員は,同年10月25日付けで辞職した後の同月28日に退院したが,それまで一度も外泊していないので,入院中一度も杉並区庁舎に出勤していないことになるし,入院中,同人から杉並区に連絡がされることもなかった。
b B元委員には,約6か月という本件期間の間,杉並区選挙管理委員として,別紙5のとおり,定例会等の出勤を伴う職務が約30回予定されていたが,B元委員はこれらを全て欠勤し,職務を遂行しなかった。
平成22年7月には,参議院議員選挙,杉並区議会議員補欠選挙,杉並区長選挙という3つの選挙が行われ,また,これらの選挙の結果,無効票が多数発生したことに関連して区民より異議申立てが提起され,これらの選挙や争訟に伴う事務も選挙管理委員の仕事であったが,B元委員がこれらの事務を行った形跡もない。
被告も述べるとおり,選挙管理委員は,あらかじめ,あらゆる局面を想定し,周密な計画の下に,いかなる事態に遭遇しても迅速かつ適正に対処しなくてはならないが,例えば,同年5月29日には,前区長の辞任などに伴って杉並区長選挙や杉並区議会議員補欠選挙の執行が決まり,急きょ第1回臨時会が開催されたにもかかわらず,B元委員は「迅速かつ適正に対処」することができず,これにも出席していない。B元委員は,病気で欠勤を始めて以降,これらの職責も果たすことのできない状況にあったものである。
c C元杉並区選挙管理委員会事務局長(以下「C元事務局長」という。)の認識によれば,入院中,B元委員は,自己研さん及び自己啓発を行っていたとされるが,その内容は,B元委員の妻から伝え聞いた「新聞記事等はよく目を通していた。」という出来事と,C元事務局長がB元委員に対して選挙の報告を行ったという出来事の2つのみであった。これを勤務といえないことは社会通念上明白である。
d 杉並区選挙管理委員会事務局は,B元委員が入院した平成22年5月8日からB元委員が辞職した同年10月25日の間まで,B元委員の病状について一度も医師の意見を聞かず,C元事務局長は,B元委員が職場復帰する可能性について具体的な見通しを一切持っていなかった。そして,杉並区がB元委員の病状を客観的に把握したのは,本件訴えの提起後の平成24年3月以降であった。
そのB元委員のカルテには,入院期間中,全身麻酔による2度の脳外科手術を受け,脳出血発症時から平成22年8月上旬までは,意識レベルが不安定で合併症による症状も比較的重く,同月以後は,リハビリ治療が始まり回復傾向にあったものの,歩行障害や失禁・意識上の不調が続いており,自力生活は困難であったことや,頭蓋骨を外しており,転倒などの事故が危惧される状態にあったこと,また,入院期間中,「俺の名前?・・・B1だっけ」(同年7月4日)「選挙?なんの?」(同月11日)といった意識障害を疑わせる反応があったことが記載されており,B元委員が辞職したのは,治療に専念した方がいいという主治医の判断によるものであった。
そして,B元委員は,退院して自宅療養するに際しても,自宅施設の改良・トイレ介助など介護者の指導が必要であり,退院後の平成23年1月末には頭蓋骨を入れる再手術を受けている。
e 以上の各事実を見れば,本件期間において,B元委員の勤務実態が,いかなる意味においても皆無であったことは明らかである。
(イ) B元委員に対する本件条例に基づく報酬の支給
本件条例は,杉並区選挙管理委員の報酬について,月額で24万2000円を支給する旨定めているところ,杉並区選挙管理委員会事務局は,欠勤中のB元委員に対し,本件期間中,月額報酬24万2000円(合計145万2000円)を通常どおり支給した(前提事実(4)ア)。
イ 本件条例の違法性
(ア) 本件条例がよってたつ地方自治法203条の2第2項本文は,選挙管理委員など普通地方公共団体の非常勤職員の報酬について,その勤務日数に応じてこれを支給する旨定めている。そして,同項ただし書は,条例で特別の定めをした場合はこの限りではないとし,月額報酬を可能にしている。
これらの規定の前提となっているのは,非常勤職員の報酬が勤務実績に対する純粋な反対給付であり,生活給としての性格をいささかも持ち合わせていないという事実である。非常勤職員の報酬が「生活給」としての性格を持ち合わせていないことは最高裁判決によって確定した法の趣旨である。
そのため,報酬の支給が適法であるためには勤務量に即した支給であることが必要であり,そうでない場合には議会の裁量権の限界を超えている可能性がある。本件訴えの争点も,この議会に付与された裁量権の限界にあるところ,これは,勤務量に対する支給額が合理的かどうかによって判断されるべきである(大阪高裁平成21年(行コ)第23号同22年4月27日判決・判例タイムズ1362号111頁(甲12),最高裁平成22年(行ツ)第300号ほか同23年12月15日第一小法廷判決・民集65巻9号3393頁(甲29)参照)。
(イ) B元委員の職務の状況を見てみると,上記のとおり,勤務実態はいかなる意味でも皆無であった。また早期復帰のめども一切なかった。
被告は,選挙管理委員の職務が多様かつ重要であるなどとして,本件報酬の支給を適法とする理由をるる述べている。しかし,こうした勤務の質,多寡をめぐる議論は,勤務実態が存在していることが前提である。本件の場合,勤務実態が存在しておらず,かつ,勤務ができる健康状態にもなかった。ゆえに職務内容の多様性や重要性に関するいかなる主張も意味をなさない。仮に定例会等を欠勤したとしても早期に復帰が見込まれる場合には報酬支給が認められる余地がないともいえないが,B元委員についてみれば,早期復帰のめどはなかった。被告においても復帰の見通しを持っていなかった点はC元事務局長が認めるところである。
勤務実態が皆無である場合には,払われるべき報酬は1円も存在しないこととなるにもかかわらず,本件条例は,勤務実態が存在しなくても月額報酬を満額支給する旨定めているため,上記ア(ア)のとおりB元委員が杉並区選挙管理委員としての勤務実態が皆無であるのに半年もの長期にわたって月額報酬を満額支給するという社会通念上も理解し難い非常識な支給の在り方を可能にした。
本件条例は,B元委員に限らず,たとえいくら休んでも月額が定額で支給され,本来報酬は勤務の対価として支給されるはずであるが,選挙管理委員という地位に対する報酬になっているのである。どれだけ休んでも月額を定額で受給できるというのは,選挙管理委員自らが勤務量や勤務に対する単価を決めることができるということでもある。休めば休むほど1日当たりの報酬額は増加する。働いた量に対して報酬を払うのが原則であるはずなのに,働かない方がより高額の報酬を得られる構造になっているのである。こうした矛盾を抱える本件条例が,地方自治法の趣旨を大きく逸脱し,妥当性を欠いていることは明らかである。
(ウ) したがって,本件条例は,地方自治法203条の2第2項が定める法の趣旨に反し,区議会の裁量権を逸脱しており,違法・無効であって,本件条例には重大で明白な瑕疵がある。B元委員に対する本件報酬は,このような違法・無効な条例に基づいて支給されたものであるから,給与条例主義に反して違法・無効である。
ウ 被告の主張に対する反論
(ア) 被告は,B元委員は,平成22年5月8日に入院してから同年10月25日に辞職するまで,一度も定例会に出席することはなかったし,その他職務遂行について実績があるというわけではないが,このことをもって直ちに本件報酬の支給を違法とすることはできない,なぜなら,選挙管理委員の報酬は,厳密な対価性を有しているわけではない上,B元委員は,上記期間においても自己研さんや自己啓発を行うことによってその識見の維持,更なる向上を図っていたのであるから,選挙管理委員の職責を全て果たせなかったとまではいえないと主張する。
まず,選挙管理委員の報酬は,厳密な対価性を有しているわけではないという被告の主張についてであるが,これが失当であることは本件報酬の根拠法である地方自治法の立法趣旨からも明らかである。
同法203条2項本文及びただし書(現203条の2第2項本文及びただし書)は,昭和31年の第24回通常国会での法改正によって成立したものであるが,当時の自治省行政課長の降矢敬義は,著書「改正地方自治法詳解」(5刷・昭和32年4月25日)の中で,次のように解説している。
①「・・・常勤職員に対する給料が勤務に対する反対給付であると同時に当該職員及びその家族の生計を支えるところの生活給たる意味を有するのと異なり,非常勤職員に対する報酬はこのような生活給的意味はなくして純然たる勤務に対する反対給付のみを有するものであり,従って当然にそれは勤務量即ち具体的には勤務日数に応じて支給されるべき筋合いのものである。」。その原則にのっとった上で,②「勤務の実態が殆ど常勤と異ならず,常勤職員同様に月額年額をもって支給することが合理的である場合」,③「勤務日数の実態を把握することが困難であり,月額等による以外に支給方法がない」場合,④「月額等による以外に支給方法がないもの等特殊な場合」に限り,条例で特別な定めをすることで月額・年額支給を可能にするというものである(甲6)。
また,立法作業当時の自治省行政課長補佐であった林忠雄は,「自治研究」第32巻第6号記事「地方自治法一部改正の成立とその運営」(甲7)の中で,次のように述べて,非常勤職員の報酬は日払いであるとする原則を確認した上で,月額年額払いの例外を認めたただし書の濫用を戒めている。
「・・・非常勤職員は本業は別にもっており,団体から支給される報酬はまさに勤務に対する反対給付そのものであって生活給の意味は全くないものであるから,本改正による原則はできるだけ忠実に実施されるべきものであるが,特別の事情のある場合を考慮して,国会修正は但書を附け融通性を持たしめたものである。したがつて,この但書はみだりに援用されるべきものではない。」
これらの立法趣旨が今日も変わっていないことは,次のとおり現行の地方自治法逐条解説「新版 逐条地方自治法(第5次改訂版)」(松本英昭・元自治省事務次官等)(甲8)の記載にあるとおりである。
「・・・いわゆる生活給たる意味は全く有せず,純粋に勤務に対する反対給付としての性格のみをもつものであり,したがって,それは勤務量,すなわち,具体的には勤務日数に応じて支給されるべきものであるとする原則を明らかにしたのである。しかし,実際問題としては,非常勤職員の中にも勤務の実態が常勤職員とほとんど同様になされなければならないものがあり,その報酬も月額或いは年額をもって支給することがより適当であるものも少なくなく,常にこの原則を貫くことが困難な場合も考えられるので,ただし書を設け,条例で特別の定めをすれば勤務日数によれないことができるものとされている。」
つまり,非常勤職員である杉並区選挙管理委員に対する報酬は,厳密な意味で勤務実態に対する反対給付であり,原則として日額支給されるべき性格のものである。選挙管理委員の報酬は厳密な対価性を有しているわけではないという被告の主張は,法解釈の誤り,あるいは曲解であり失当である。報酬が払われるためには勤務の実態が存在することが絶対条件であり,勤務実態が存在しないところへの支給はあり得ない。この点については,前掲大阪高裁平成22年4月27日判決(甲12)及び前掲最高裁平成23年12月15日第一小法廷判決の補足意見(甲29)も同趣旨の判示をしている。
(イ)a 次に,被告は,B元委員は,自己研さんや自己啓発を行うことによってその識見の維持,更なる向上を図っていたのであるから,選挙管理委員の職責を全て果たせなかったとまではいえないと述べているところ,これは,B元委員が全ての定例会を欠席しながらも一部勤務実態が存在し,本件報酬はその勤務実態に対する支給であるから違法性はないといった趣旨と思われる。
しかし,仮にB元委員が自己研さんなり自己啓発なりに取り組んでいたとしても,それらは勤務ではない。選挙管理委員に多数の重責があることは被告が主張するとおりであり,それを全うするために自己研さんなどが必要であることは当然である。しかし,それらの自己研さん・自己啓発の類は,あくまで職責を果たすために行うのであって,それ自体に職務性はなく勤務には当たらない。むろん,勤務の一部として位置付けられる研修の類もあり得るが,本件の場合は具体性を欠き単なる健康管理や日常の情報収集にすぎないと思われる。本末転倒した理屈である。
b 被告は,別紙4において選挙管理委員会が負う事務項目を多数主張しているが,その中にも自己啓発などといった名称の事務は存在しない。自己研さんや自己啓発が勤務実績に当たらず,ましてや報酬を支払うべき対象になり得ないことは明白である。
c また,被告の主張する自己研さんや自己啓発が報酬の対象としての勤務に当たらないのは当然であるが,B元委員はこれらの自己研さんについても,それを行うほどの健康状態にはなかった。
平成23年9月21日の杉並区議会総務財政委員会で,B元委員と親しいD議員(以下「D議員」という。)が,B元委員の病状について,次のように発言している。
「前選管委員の病欠の内容について,例えば(2010年)5月にお倒れになって,7月の選挙が終わった後に意識を回復された経緯や,また意識回復後もですね,彼とは直接関係のない無効票問題など含めて私どもはたびたび議会の様子等もお伝えしておりました。その中で,私も直接話しましたが,よく記憶しておりますけれども,本人はリハビリして公務に復帰したい,できるんだ,という強い意欲を持っていたことを強く印象に残っています。しかし,その思いもかなわず結果的に,最終的には医師の判断も下って辞任をされたわけです。ですから,ある意味,公務にもどるんだという彼の強い意志や責任感が結果として辞任をする時期を遅らせて,ある意味仇になった経緯があるわけです。」。
D議員によれば,B元委員は一時意識不明になり,平成22年7月の選挙以降に意識を取り戻したという。長期間にわたって意識を失っている状態にあって,また,それほどの重病にあって,選挙管理委員の職責を果たすための自己研さんなど不可能である。B元委員は,自身の生命維持のため,治療・リハビリ行為に専念していたのであり,選挙管理委員の仕事をするような余裕のある状態にはなかった。こうした治療行為を自己研さんなどという曖昧な言葉に言い換えて報酬支給を正当化する被告の主張はき弁である。
d そもそも,B元委員は,選挙管理委員という立場にある者として,自己研さんをするのは当然のことであり,地方自治法203条の2第2項本文の原則に照らしても,また,社会通念から見ても,報酬を払うに値する勤務に当たらないのは明らかであるが,仮に自己研さんに対して対価を払い得ると善意に解釈したとしても,B元委員は脳血管障害という重い病気を患って入院治療を行っていたのであり,選挙管理委員の職責に見合う自己研さんなり自己啓発なりがされたとは到底考えられない。具体的にどんな自己研さん等がされたかについて,被告からの説明はない。
入院中における自己研さんなどを勤務だとみなしたところで,勤務量とみなされるのは1日~2日程度というのが妥当であろう。そして,勤務量を1日だとみた場合,月額報酬は24万2000円であるから,これを日額に換算してもその報酬額は24万2000円ということになる。一般職の職員の給与に関する法律(平成24年法律第2号による改正前のもの)が定めた国家公務員の非常勤職員の手当の上限である日額3万5100円に対して,実に6.89倍に達する。また,勤務量を2日とみなしたとしても,3.45倍である。甚だしく高額で妥当性を欠く金額である。
自己研さんも自己啓発も,本来の勤務が存在し,区民生活に貢献した実績が存在するのが前提であり,その成果がない状態でいくら自己研さんをしても区民には何の利益もない。公益性の観点からみてそうした不毛なものに税金を使うことは著しく合理性を欠く。
エ 本件過払報酬の返還について(本件訴えの変更関係)
(ア) ところで,被告は,本件報酬145万2000円のうち,本件過払報酬4万6839円の返還を受けたと主張する。
しかし,後記(イ)から(キ)までのとおり,本件訴えにおける被告の主張には多くの不自然な点がある。
(イ) 被告は,当初,本件過払報酬のうち,4万6838円について,これはB元委員自身が戻入したものであると説明してきたが,平成24年3月に原告らが被告に求釈明したところ,同年4月27日になって,実は選挙管理委員会事務局職員が代納したと説明するに至り(乙18),本件過払報酬の戻入の納入通知書兼領収証書(乙1,乙2)の返還を失念したことも,このときに初めて明らかにした。本件監査請求の申立ては平成23年2月だが,なぜ監査を通してもこの事実が発覚しなかったのか,被告から合理的な説明はない。
(ウ) また,平成24年4月以降の被告の説明によれば,B元委員に納入通知書兼領収証書を返し忘れていることに気付いたのは,平成23年5月12日付けで原告X1が申し立てた情報公開請求のときであるとのことである。ところが,この情報公開請求の結果,返却を「失念」していたはずの納入通知書兼領収証書が開示されている(甲42)。すなわち,納入通知書兼領収証書を返還し忘れていることに気付いていながら,これを公文書として開示しているというのはいったいどういうことなのであろうか。
(エ) さらに,納入通知書兼領収証書を「保管」したという点に関する被告の説明も一貫していない。
平成24年9月5日の第6回口頭弁論で,被告は,後日,B元委員に渡すまでの亡失を防ぐため,杉並区選挙管理委員会事務局内のキャビネットに一時保管したが,B元委員に返還するのを失念し,そのまま保管していたと説明しているが,同年12月12日付けのE杉並区選挙管理委員会事務局次長(以下「E次長」という。)の陳述書(乙20)では,「しかし,当該職員には,後日返還することを伝えず,単に「これ,領収書」という程度しか指示をしなかった」と述べられており,「亡失を防ぐため」に保管したという被告の主張とE次長の陳述書の内容は矛盾する。
「これ,領収書」という程度の指示しかしなかったということは,すなわち,保管の指示がなかったことを表している。他人の領収証書を預かるということは通常業務ではあり得ないし,過去にもなかった業務である。保管せよとの指示がなければ,当然保管はされない。また,E次長から納入通知書兼領収証書を受け取った部下が,これが「後日返還すべき領収証書である」との認識を持っていなかったことも明らかである。
返還を忘れたことに気付きながら,これをB元委員の妻に返還したのは,気付いたときからほぼ1年が過ぎた同年5月18日だという。なぜそんなに時間がかかったのか説明はない。
さらに,返却すべきはずだった納入通知書兼領収証書(乙1,乙2)を本件訴えの証拠として提出した被告の行為自体,不自然極まりない。説明なく乙1,乙2の原本を提出されれば,これが被告所有のものであると理解するのは当然だからである。乙1,乙2は杉並区選挙管理委員会事務局が保有する公文書であるとの認識の下,被告が一連の処理をしてきたことは明らかである。返却を亡失という説明には信ぴょう性がない。
(オ) B元委員自身が本件過払報酬(4万6839円)を返したと述べていた被告は,本件訴えの提起から1年後に,実は選挙管理委員会職員が代納したのだと重大な事実を明らかにする。これは原告らの求釈明がきっかけだったが,その後,原告らの新たな指摘によって,被告はもう一度大きく主張を変えるのである。つまり,平成24年9月5日付けで,所得税還付金をめぐる疑問について釈明を求めたところ,実はB元委員から受け取ったのは,4万6838円ではなく,3万2238円であったと言い出した点である。
同日の第6回口頭弁論で,被告は,平成22年11月17日,E次長がB元委員宅に架電し,E次長が上記4万6838円の過払金の戻入が必要である旨説明すると,電話対応したB元委員の妻から,上記過払金の支払を託され,E次長はこれを承諾した,同日,E次長が,納入通知書兼領収証書(乙1)を持参してB元委員の自宅を訪問し,これを示してB元委員の妻から4万6838円を預かり,同日,E次長が区役所内みずほ銀行において,同金員を納入し,同行から納入通知書兼領収証書に領収印を押印されたと述べ,集金した金額は4万6838円であると明確に説明している。ところが,この主張がされた後,原告らにおいて,所得税還付の状況について釈明を求めたところ,B元委員の妻から預かったのは実は3万2238円であったという主張に変わってしまうのである。なぜ当初から正確な説明をしなかったのか理解に苦しむ。場当たり的なき弁というほかない。
(カ) 集金をめぐる選挙管理委員会事務局の事務作業にも不自然な点が数多く存在する。集金は本来の業務ではなく,金銭出納員を配置するという規則上必要な手続もされていない。また,納入通知書兼領収証書には公印・署名がなかった。納入通知書兼領収証書の返還「亡失」と併せて,極めて重大な不手際ということになるが,これに関し,調査・処分がされた形跡がない。所得税の還付に至っては,銀行振込をすれば済む話であるのに,「現金」で持参したという。なぜ現金で持参する必要があるのか,不可解である。
集金したという金額を裏付ける証拠も存在しない。E次長は,所得税の還付金を執務室内金庫に一旦保管し,B元委員の妻より集金した3万2238円と合わせたものを銀行で納入したと説明している。しかし,この会計処理を客観的に証明する書類は何もない。B元委員の妻から受け取った額が3万2238円であったことを立証するものは,E次長の陳述書だけなのである。客観的な証拠はない。還付金を一旦預けたという執務室内金庫内の金銭の出入りについても,金庫内の出納状況を証明する書類はないのである(C元事務局長の証言)。
(キ) 本来であれば,4万6839円(本件過払報酬)の納入通知書兼領収証書を作成してB元委員に送付し,同額の納付があったことを確認した後,所得税の還付金1万4600円を銀行振込すれば良いだけのことである。
しかし,杉並区選挙管理委員会はこのなすべき会計処理をしていないのである。
この一連の不自然な説明と行動は,次のように考えれば最も合理的に解釈できる。つまり,選挙管理委員会事務局の職員が何らかの原資を利用して本来B元委員が支払うべき金銭を立て替えて支払い,その際の納入通知書兼領収証書を内部文書に添付して処理していたというものである。被告説明に見るおびただしい矛盾は,本件訴えで追及されて説明がつかなくなったため,場当たり的な説明を行った結果である。
B元委員名義の納入通知書兼領収証書を使い4万6839円(本件過払報酬)を支払ったのが,B元委員又は代理人としての親族ではなく,選挙管理委員会事務局の職員であったことは明らかである。そして,B元委員が実際に支払ったことを裏付ける証拠はない。乙1,乙2だけをもって,B元委員が本件過払報酬を返還したことを立証することはできないのである。同時に杉並区が,戻入確認後,B元委員に対して還付金を支払ったことを裏付ける証拠も存在しないのである。B元委員は本件過払報酬を返還しておらず,何らかの原資でこれが支払われた可能性は高い。そして,この原資に公金が流用され,区に損害を与えた蓋然性は高いというべきである。B元委員が4万6839円(本件過払報酬)の不当利得を得ていることは明白であり,被告はこれをB元委員に請求する義務がある。
(被告の主張の要旨)
ア 勤務実態がないとはいえないこと
原告らは,勤務実態が存在しなくても月額報酬を満額支給する旨定めた本件条例は区議会の裁量権を逸脱し違法である旨主張する。
原告らの主張する「勤務実態」が何を指すかは明らかではないが,委員の職務内容あるいは職責は,選挙に関する啓発及び周知等並びに選挙人名簿及び在外選挙人名簿の調整,保管及び登録等に係るものを始めとして,相当程度に広範であり,会議等に出席して表決等をすることに尽きるものではないから,報酬の支給と委員として会議等への出席の実績が相関することと定めていない本件条例を直ちに違法とすることはできない。
また,B元委員は,平成22年5月8日に入院してから同年10月25日に辞職するまで,一度も定例会に出席することはなかったし,その他職務遂行について実績があるというわけではないが,このことをもって直ちに本件報酬の支給を違法とすることはできない。なぜなら,選挙管理委員の報酬は,厳密な対価性を有しているわけではない上,B元委員は,上記期間においても自己研さんや自己啓発を行うことによってその識見の維持,更なる向上を図っていたのであるから,選挙管理委員の職責を全く果たせなかったとまではいえない。少なくともB元委員は,同年7月17日,同月18日及び同月20日,新聞や本を読んでおり(甲13の1),これらは入院したB元委員にとっての自己研さん,自己啓発と考えられる。
イ 本件条例の適法性
(ア) 地方自治法203条の2第2項ただし書の立法趣旨について
この規定は,地方自治法の一部を改正する法律(昭和31年法律第147号)により付加された規定(ただし,当時は203条2項。以下同じ。)である。当時の国会質疑からその制定趣旨を要約すると,多種多様な非常勤職員について,一律にその勤務日数により報酬を支給する旨,法律で定めるのは合理的ではなく,地方公共団体が特定の職員(政府委員答弁によれば,教育委員会,選挙管理委員会等の行政委員会の委員とされている。)については,その職務内容及び勤務実態等を考慮して,実情によって特別の扱いをできるようにしたものであるとされている(乙6から乙10まで)。すなわち,非常勤職員の職務態様は様々であり,日額で報酬を定めるのが適当である勤務形態もあれば,日額の報酬に解消できない勤務形態もあることから,その報酬の支給方法は,そのような実態に応じて,地方自治体が,議会の議決を経て決定し得るという趣旨であると考えられる。
(イ) 選挙管理委員会の職務権限,職責等について
選挙管理委員会は,地方自治法180条の5第1項及び181条1項により,普通地方公共団体に置かなければならないこととされており,執行機関として,普通地方公共団体の条例,予算その他の議会の議決に基づく事務と法令,規則その他の規程に基づく事務を自らの判断と責任において誠実に管理し,執行する義務を負うとされており(同法138条の2),また,法律の定めるところにより,法令又は普通地方公共団体の条例若しくは規則に反しない限りにおいて,その権限に属する事務に関し,規則その他の規程を定めることができるとされている(同法138条の4第2項)。
杉並区は,同法1条の3第3項の特別地方公共団体たる特別区であるが,同法283条1項に基づき,同法2編及び4編中市に関する規定の適用を受け,また,公職選挙法266条1項により,同法中市の規定の適用を受けることで,選挙管理委員会が設置され,この杉並区選挙管理委員会については,市町村選挙管理委員会の規定が適用される。
市町村選挙管理委員会は,法律又はこれに基づく政令の定めるところにより,当該普通地方公共団体が処理する選挙に関する事務及びこれに関係のある事務を管理するとされている(地方自治法186条)。そして,市町村選挙管理委員会ないし委員長は,同法,公職選挙法等の定めるところにより,おおむね別紙4の事務を処理している。
そして,選挙は,一定の期日に処理されるものであり,かつ,やり直しの効かないものであるから,これを実施する選挙管理委員会の構成員たる委員は,あらかじめ,あらゆる局面を想定し,周密な計画の下に,いかなる事態に遭遇しても迅速かつ適正に対処しなくてはならない。
以上のような職責を十全に果たすため,選挙管理委員には公正な識見を維持し,常に選挙に関し,責任ある職務執行を実現するという選挙管理委員の立場にふさわしくあるため,平素から自己研さんや自己啓発を行うことによってその識見の維持,更なる向上を図ることもまた,職務として当然に期待されている(そうでないとすれば,選挙管理委員の職責が,十分に全うされないおそれが生じてくる。)。
一方で,選挙管理委員は,特別職の地方公務員であり,勤務日と勤務不要日,勤務時間の内外は,画然と区別されていない。このため,一たび職務執行の必要性が生じた場合は,勤務日あるいは勤務時間,更には勤務地にとらわれず,いつでも職責を果たすことが期待されているのである。したがって,その職務遂行の時間,場所等については,一般職の常勤職員のように厳格に把握することは困難である。
以上のような選挙管理委員の職務からすれば,その報酬を日額に解消することは困難であり,月額で定めることに合理性が認められるというべきであり,よって,本件条例が,地方自治法203条の2の趣旨に反するとはいえない。
(ウ)a 前掲最高裁平成23年12月15日第一小法廷判決は,普通地方公共団体の委員会の委員等の非常勤職員についての月額報酬制の違法性等が争点となった事案について,1日当たりの非常勤職員の報酬と国における非常勤職員の報酬の上限を比較検討し,月額報酬制を採るのが相当な特別の事情があると認めることは困難であるとした控訴審判決を破棄した上で,「普通地方公共団体の委員会の委員を含む非常勤職員について月額報酬制その他の日額報酬制以外の報酬制度を採る条例の規定が法203条の2第2項に違反し違法,無効となるか否かについては,上記のような議会の裁量権の性質に鑑みると,当該非常勤職員の職務の性質,内容,職責や勤務の態様,負担等の諸般の事情を総合考慮して,当該規定の内容が同項の趣旨に照らした合理性の観点から上記裁量権の範囲を超え又はこれを濫用するものであるか否かによって判断すべきものと解するのが相当である」と判示した。
b 市町村選挙管理委員会は,当該市町村の行政委員会として独自の執行権限を持ち,別紙4の広範な事務の管理及び執行に当たって自ら決定を行い,これを表示し得る執行機関であり(地方自治法138条の3),その業務に即した公正中立性,専門性等の要請から,普通地方公共団体の長から独立してその事務を自らの判断と責任において,誠実に管理し執行する立場にあり(同法138条の2),その担任する事務について訴訟が提起された場合には,その長に代わって普通地方公共団体を代表して訴訟追行をする権限も有する(同法192条)などその事務については最終的な責任を負う立場にある。
また,選挙管理委員の職務は,性質上,政治と大きな関わりを持つものであり,選挙違反を取り締まる等の権限を有することから,ともすると,政治の不当な圧力,介入を受けやすい。選挙管理委員が,このような不当な圧力,介入を受けると,それは,参政権という国民の重要な権利が適正に行使されることが阻害されるおそれが生じることとなる。このような職責,職務内容及び立場に照らして,選挙管理委員の資格については,「人格が高潔で,政治及び選挙に関し公正な識見を有するもののうちから,普通地方公共団体の議会においてこれを選挙する」とされており(同法182条1項),その職責に堪え得る一定の水準の適性を備えた人材が求められているのであり,選挙管理委員の人材の確保が重要な課題となっている。
一方で,選挙管理委員は,上記で述べた不当な介入を排除し,公正,適正にその職責を果たすことが求められており,このため,選挙管理委員の罷免事由は同法184条の2第1項所定の事由に限定されており,また,その手続は,議会の常任委員会又は特別委員会において公聴会を開かなければならないとされ,慎重な手続を経ることとされている。以上のとおり,選挙管理委員の身分は,このような規定によって一定の保障がされているのである。このようなことからすると,選挙管理委員が入院等により,一定期間会議に出席できないといった状態になったからといって,直ちに当該委員を罷免することはできないし,罷免すべきものともいうことはできない。
さらに,同法203条の2が,選挙管理委員等の非常勤職員について,月額報酬とすることを認めている一方で,同委員等について,一般職の休職に当たる規定は,同法上定められておらず,選挙管理委員の報酬が月額で支給される場合において,選挙管理委員が入院等により,定例会等に出席できない状況となった場合等に,その報酬の支給を停止,又は減額等の規定を設けることを一義的に同法203条の2が求めているとまではいうこともできない。
本件のように選挙管理委員が入院等により,定例会等に出席できない状況が一時的に発生した場合等に,直ちにその報酬の支給を停止又は減額の措置をとる旨の規定を設けていないことが,同法203条の2の規定により認められた議会の立法裁量の範囲を逸脱し,その立法不作為が違法となるとはいえない。
(エ) 上記のとおり,選挙管理委員の報酬を月額で定めることには合理性があり,選挙管理委員の職務のうち,最も重要な職務権限と解される選挙についてみれば,参議院議員通常選挙は3年に1回,地方議会及び長の選挙及び衆議院議員総選挙は,原則として4年に1回,それぞれ行われており,このため,選挙管理委員の職務遂行状況には,1年間を通じて月ごとに閑繁の差が生ずるにとどまらず,4年間を通じて年ごとに閑繁の差が顕著に生じているのである(例えば,B元委員の在職中(平成19年12月27日から平成22年10月25日まで)に限ってみても,平成21年は,7月12日執行の東京都議会議員選挙,8月30日執行の衆議院議員総選挙があったため,それぞれの選挙ごとに投開票に関する事務その他選挙の執行に関連する多くの事務処理の実績があるのに対し,前年の平成20年は,国政選挙,地方選挙のいずれも行われなかったため,これらの事務の実績が皆無であった。)。
これに加え,選挙管理委員の勤務体系は,上記のとおり勤務日,勤務時間等が画然と区別されていないものであり,それ故,その勤務の実態は,報酬支給者等第三者が明確に把握できるといったものではない。
以上のことからすると,選挙管理委員の職務遂行について,その対価を個々に算出することは困難といわざるを得ず,それ故,報酬については,月額として平準化された形で支給することは合理性が認められるというべきである(かえって,原告らのいうような職務の対価性を貫徹するならば,選挙管理委員に対する報酬は,繁忙期に増額されなければならないはずである。)。
また,地方自治法は,「選挙管理委員が心身の故障のため職務の遂行に堪えないと認めるとき」には,議会の議決により罷免することが可能であり(同法184条の2),選挙管理委員が自ら退職することができ(同法185条),そのような場合には,本件条例によって,当該罷免等の事由があった月の報酬をその事由があった日まで支給することとしている(本件条例3条)から,これらのことを考え合わせると,同法は,上記のような罷免等のような場合に初めて不支給とすることを想定していると解すべきである。
そうだとすると,本件条例に不支給規定等がないことが,直ちに同法203条の2の趣旨に反するということはできないというべきである。
ウ 本件過払報酬の返還を受けたことについて
杉並区は,B元委員に対し,本件期間の報酬として合計145万2000円を支給したが,平成22年10月分の報酬は,B元委員が月の途中である同月25日に辞職したため,本件条例に基づき,日割計算により算定した額を支給する必要が生じ,既に支給した上記145万2000円のうち4万6838円が過払となった(ただし,後日,本件過払報酬の額は4万6839円であったことが判明した。)。そのため,B元委員から過払となった報酬を徴する必要が生じた。
他方,同月分の報酬額が上記のとおり減少し,報酬の一部が過払となったため,B元委員の取得に係る同月分の所得税は,3万3700円から1万9100円となり,これによって,3万3700円と1万9100円との差額である1万4600円を杉並区がB元委員に還付する必要が生じた。
そのため,E次長はB元委員の妻に電話し,上記還付金が生じた事情を説明し,還付金1万4600円をお渡しに伺わなければならないところであるが,一方で,B元委員に対する4万6838円の過払報酬も生じているので,上記還付金を徴すべき金額の一部としたい旨申し伝え,同人もこれを了解した。さらに,E次長は,過払報酬から上記還付金を差し引いた3万2238円を用意してもらえれば,自分が受け取り,上記還付金と合わせてみずほ銀行に入金すると申し向けたところ,B元委員の妻は,この申出にも了解したので,E次長は,同年11月17日,B元委員宅を訪問してB元委員の妻から同金員を預かり,同日,区役所内みずほ銀行において,自己の保管する1万4600円とB元委員の妻から預かった3万2238円を合わせた4万6838円を納入した(乙1)。
そして,上記納入後,更に1円の報酬の過払が判明したため,杉並区は,B元委員から更に1円の戻入を受けた(乙2)。
したがって,杉並区は,本件報酬のうち,本件過払報酬の返還をB元委員から受けたから,B元委員に支給された本件期間の報酬額は合計140万5161円である。
原告らは,4万6839円(本件過払報酬)の戻入金の真の支払者が被告自身であった旨主張し,また,同額は,選挙管理委員会事務局の職員が何らかの原資を利用して本来B元委員が支払うべき金銭を立て替えて支払った旨主張するが,原告らの主張は憶測に基づくものにすぎず,失当といわざるを得ない。
(3)  本件報酬の支給は本件条例を濫用したもので違法・無効か(争点(3))
(原告らの主張の要旨)
仮に,本件条例が違法でないとしても,勤務実態が皆無であるにもかかわらず漫然と月額報酬を満額支給し続けた行為は職員による条例の濫用であり,本件報酬の支給は違法・無効である。
ところで,被告は,地方自治法の想定する事態,すなわち「心身の故障のため職務の遂行に堪えない」というときに同法184条の2及び本件条例3条の規定に基づいて選挙管理委員の報酬を不支給とすることができるのであるから,同報酬を不支給とするためにはこれらの法令の要件を満たす必要があると主張する。
しかし,病気で欠勤したB元委員に関して同条を運用するためには,杉並区議会議員全員がB元委員の欠勤及び病気の事実を知ることが大前提であるが,選挙管理委員会事務局から議会に対してB元委員の欠勤などについて自主的に報告がされた痕跡はなく,B元委員は元a党会派の区議会議員であり,先述したD議員を始め,政治的に近しい一部の議員は早くから事情を知っていたと思われる。しかし,議会全体が周知したのは少なくとも平成22年9月以降である。F議員が独自の調査によってB元委員が欠勤していた事実を把握し,その後議会で質問して選挙管理委員会事務局がこれを認めたというのがいきさつである。同条の罷免規定を理由に支給の正当性を主張するのであれば,選挙管理委員会事務局の方から議会に報告があってしかるべきである。議会に報告することを怠ったまま,議決を要件とする罷免規定を持ち出す被告の主張には矛盾があり,失当である。
また,同年5月8日から少なくとも同年10月27日までの入院期間において,B元委員については,上記の「心身の故障のため職務の遂行に堪えないと認める」状態だったことは明らかである。
報酬支給の問題と罷免は別問題であり,選挙管理委員に在籍していたとしても勤務実態がないというところに報酬を支払うことは違法・無効である。本件報酬は勤務実態のないところに支給したのであり,罷免されるか否かを問わず支出は違法・無効である。
(被告の主張の要旨)
ア(ア) 本件報酬の支給は,本件条例に基づきされたものであるから,上記支給が無効であるというためには,当該条例の規定が,著しく合理性を欠き,そのために予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合,すなわち,重大かつ明白な瑕疵が存する場合に限られると解される(最高裁昭和61年(行ツ)第133号平成4年12月15日第三小法廷判決・民集46巻9号2753頁参照)。この点,本件条例は,地方自治法203条の2第2項に基づき杉並区選挙管理委員等に対する報酬について定めたものであり,選挙管理委員の報酬を月額とするとした同条例の規定は,同項ただし書に基づき同項本文の日額支給の例外として定めたものであるところ,このただし書が,当該非常勤職員の職務の内容及び勤務の態様並びに当該地方公共団体における財政に係る個別的な事情等に照らし,議会の裁量判断に基づき日額以外の定めを許容するとされていることからすると,報酬を月額とするとした本件条例の規定は,このようなただし書の趣旨を逸脱していると認められないし,著しく合理性を欠き,そのために予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するということもできない。
したがって,本件条例についてそのような重大かつ明白な瑕疵が存しない以上,同条第1項の「当該職員」は,本件条例を尊重し,その内容に応じた財務会計上の措置を執るべき義務があり,これを拒むことは許されない。
(イ) 本件条例の概要は,以下のとおりとなっている。
まず,杉並区選挙管理委員の報酬は,月額で支給するとされており(本件条例2条及び別表),月額で支給する報酬は,就職日から離職日までの分を支給するとされ(本件条例3条1項2号),委員が月の途中に就職又は離職したときは,その月分の報酬は日割りにより支給するとされている(同条2項)。
そして,上記報酬について,本件条例は,上記各規定のほか4条に支給期日の定めがあるのみであり,杉並区選挙管理委員が定例会等の出席の実績がなかった場合に,その報酬の額を減額し,又は支給を停止することができるといった旨の規定は何ら存しない。
そうすると,本件条例の規定に従えば,在職によって,委員は報酬請求権を有することとなり,杉並区は,委員在任中に,当該委員に対して報酬を支給しないといった方法をとることはできないのであるから,杉並区には,B元委員に対して本件報酬を支給する義務があったといわざるを得ない。
(ウ) また,本件報酬の支給は,上記義務の履行として,後記aからdまでのとおり,法令の定める財務会計手続に従って適正にされたものである。
a 支出負担行為は,地方自治法232条の3により,法令又は予算の定めるところに従いしなければならないとされているところ,杉並区においては,杉並区予算事務規則(昭和39年杉並区規則第1号。以下「予算事務規則」という。乙11)20条により,各部局の長及び各課の長の権限とされており,選挙管理委員会事務局においては,杉並区選挙管理委員会事務局長(以下「選管事務局長」という。)の権限となる(同規則6条)。
また,杉並区は,支出負担行為の整理区分に関する規則(昭和39年杉並区規則第2号。乙11)により,費目ごとに支出負担行為として整理する時期及び支出負担行為の範囲等を定めている(同規則1項,別表第一)。選挙管理委員の報酬の支給については,同規則別表第一の区分「1 議員報酬及び報酬」がこれに当たり,支出負担行為として整理する時期については「支出決定のとき」としている。
b 上記支出負担行為を受けて行う,杉並区選挙管理委員の報酬の支給に係る支出命令の権限は,予算事務規則4条2号及び杉並区会計事務規則(昭和39年杉並区規則第5号。乙11)2条2号に基づき,選管事務局長が有している。
c 以上と併せて,杉並区選挙管理委員の報酬の支給に係る財務会計上の行為の手続について整理すると,選挙事務局長が,支出決定(支出負担行為)を行った後,会計管理者に対し支出命令をし,会計管理者が各選挙管理委員に対し口座振替により支出する。
d 本件報酬の支給は,上記規定に従い,選管事務局長が,平成22年5月分から同年10月分までの各報酬について支出負担行為を行い,その後,会計管理者に対して支出命令をし,会計管理者がB元委員に対して口座振替により支出したものである(乙12及び乙13。いずれも枝番を含む。)。
(エ) したがって,本件報酬の支給は適法である。
イ 原告らの主張に対する反論
(ア) 原告らは,仮に本件条例が違法でないとしても,B元委員の勤務実態が皆無であるにもかかわらず,漫然と同人に月額報酬を満額支給し続けた行為は条例の濫用であると主張する。
しかし,C元事務局長は,B元委員の妻からの電話により,B元委員の病状,回復状況,復帰の意思・意欲,医師の発言・見解等の報告を受け,さらに,自らB元委員の妻に架電し,2週間に1回程度はB元委員の病状等を確認していた上,自らB元委員との面会を行い,B元委員の病状・回復状況,復帰の意思・意欲等を確認していた。
上記の確認により,C元事務局長は,B元委員の病状等について,当初は手術が不要と見られており,二,三週間の入院の見込みであったこと,その後,手術が必要であることが分かり,手術を行ったが,その手術は成功し,医師から元に戻る,復帰の見込みがあるとの発言があったこと,B元委員の復帰の意欲が強く,実際の会話において言葉がつかえたり,なかなか出てこないといった様子がないこと,復帰については,選挙管理委員が務まるか,続けられるかについて,主治医のアドバイスを受けて,その上で自ら判断する意向であること等,経過を把握していたのである。
そして,C元事務局長は,これらの情報を,杉並区選挙管理委員会の委員長には速やかに電話で伝え,その他の委員には,直近の選挙管理委員会の定例会等の会議において,報告していた。選挙管理委員は,地方自治法184条の2に規定された事由を除くほか,その意に反して罷免されることがないとされ,その手続においても,公聴会を開かなくてはいけないとされており,特に慎重な手続をとることとされているところ,上記のB元委員の病状等の推移は,当初においては二,三週間程度の入院であり,その後,手術を行うこととなり,実際に手術を行ったが,当時,医者の見解によれば,回復し得るというものであり,その後は順調は回復していたのであるから,B元委員は,必ずしも同条に基づく罷免を行うべき状況であったとはいえず,加えて,B元委員の病状等の情報は選挙管理委員会の委員長等に報告されていたのであるから,杉並区として,B元委員に対して漫然と月額報酬を支給し続けたとまではいえないというべきである。
したがって,本件のB元委員の病状等,杉並区選挙管理委員会事務局の職員がB元委員及びその家族等に面会等した経緯並びにC元事務局長による面会の状況等の経緯に照らせば,漫然と本件報酬が支給されたとはいえず,原告らの主張には理由がない。
(イ) ところで,地方自治法の想定する事態,すなわち「心身の故障のため職務の執行に堪えない」というときに同法184条の2及び本件条例3条の規定に基づいて選挙管理委員の報酬を不支給とすることができるのであるから,同報酬を不支給とするためにはこれらの法令の要件を満たす必要があるところ,B元委員については,平成22年5月に入院後も,同年8月からはリハビリテーション病院に転院し,一日も早い回復,復帰を目指していたのであり,復帰さえすれば直ちにそれまで培い,醸成された選挙,政治に関する識見を発揮し,改めて,選挙管理委員としての職責を全うすることが予測,期待されていた。それが偶々,B元委員のその後の病状の回復が,本人や周囲の期待に反して思わしくなく,結果的に,本人の復帰の意思あるいは周囲の期待に反し,復職に至らないまま任期途中で辞職ということになってしまったというものである。
以上のような経緯からすると,この間,B元委員が,上記のような「心身の故障のため職務の遂行に堪えない」状態に至ったとまではいうことができないというべきである。
よって,本件報酬の支給は条例の濫用であり,違法かつ無効であるとの原告らの主張には理由がない。
第3  当裁判所の判断
1  争点(1)(本件訴えのうち本件訴えの変更に係る部分の適法性)について
(1)  原告らが本件監査請求をするに当たって提出した住民監査請求書(甲1)には,「請求の趣旨」として,「(1) 杉並区長は元選挙管理委員・甲山B氏に対し,2010年5月分から同年10月分の報酬額に相当する不当利得としての金員140万5162円を請求せよ。(2) 杉並区長は元選挙管理委員・甲山B氏に対し上記金員に相当する不当利得返還請求権を有するところ,この行使を怠ることは違法であることを確認せよ。」と記載され,「請求の原因」として,B元委員が支給を受けた報酬の額について,「B氏には就任以来「杉並区行政委員会の委員の報酬及び費用弁償に関する条例」(中略)に基づいて毎月24万2000円の月額報酬が払われてきた。ただし2010年10月分については日割計算により6日分を控除した19万5162円が支給された。」,「B氏が受け取った報酬の内訳は次のとおりである。2010年5月=24万2000円 6月=24万2000円 7月=24万2000円 8月=24万2000円 9月=24万2000円 10月=19万5162円(合計140万5162円)」,「本件の場合,勤務実態が皆無にもかかわらず約半年もの長期にわたって報酬を支払ったのである。こうした支出の根拠となった本件報酬条例の月額規定は地方自治法203条の2第2項本文ならびにただし書きの立法趣旨に反し違法である。議会の裁量権を逸脱している。本件支出は違法な条例に基づいて支払われたものであり,給与条例主義に反して違法・無効である。」,「選挙管理委員を欠勤していたにもかかわらず支払われた報酬・計140万5162円はB氏の不当利得にあたり,杉並区長はこれを返還請求する権利を有している。」等と記載されている(甲1)。
(2)  このような記載内容に照らせば,原告らは,本件監査請求において,監査の対象とする事項を本件条例の規定の有効性又はこれに基づく本件期間の分の報酬の支給の適法性とした上で,B元委員が支給を受けた上記の報酬に関し,平成22年5月分から同年9月分までについては各24万2000円としつつ,同年10月分については月額24万2000円から日割計算によって本件期間の末日より後の6日分を控除した19万5162円であると特定し,これらの合計額である140万5162円を不当利得による返還金の額として,被告がB元委員に不当利得返還の請求をすることを請求したものと認められる。
一方,前提事実(6)ウ及びエ並びに第2の5(2)(原告らの主張の要旨)エのとおり,本件訴えの変更の内容は,上記の点の判断のいかんにかかわらずいずれにせよ杉並区に返還すべきものであった過払の報酬の返還に関する事務について職員に違法な行為があったとし,同年10月分の報酬に係る不当利得による返還金の額を24万2000円に変更し,被告に対し,合計145万2000円の不当利得返還の請求をすることを求めるとともに,同請求をすることを怠る事実の違法確認を求めるものに変更したものであるから,本件訴えのうち本件訴えの変更に係る部分については,その対象とする職員の行為等につき住民監査請求を経ていないと認められる。
(3)  したがって,原告らの本件訴えのうち本件訴えの変更に係る部分については,地方自治法242条の2第1項の「前条第1項の規定による請求をした場合」に当たるとはいえないから,不適法であるといわざるを得ない。
2  争点(2)(本件条例は地方自治法203条の2第2項の規定又はその趣旨に反し違法,無効か)について
(1)  地方自治法283条1項,203条の2第2項ただし書は,普通地方公共団体又は特別区(以下(1)において「普通地方公共団体等」という。)が条例で非常勤職員の報酬の支給の在り方としていわゆる日額報酬制以外の報酬制度を定めることができる場合の実体的な要件について何ら規定していない。また,委員会の委員を含め,職務の性質,内容や勤務態様が多種多様である普通地方公共団体等の非常勤職員に関し,どのような報酬制度が当該非常勤職員に係る人材確保の必要性等を含む当該普通地方公共団体等の実情等に適合するかについては,各普通地方公共団体等ごとに,その財政の規模,状況等との権衡の観点を踏まえ,当該非常勤職員の職務の性質,内容,職責や勤務の態様,負担等の諸般の事情の総合考慮による政策的,技術的な見地からの判断を要するものということができる。このことに加え,証拠(甲7,乙6から乙10まで)により認められる昭和31年の同法の改正の経緯も併せ考慮すれば,同法283条1項,203条の2第2項は,普通地方公共団体等の委員会の委員等の非常勤職員について,その報酬を原則として勤務日数に応じて日額で支給するとする一方で,条例で定めることによりそれ以外の方法も採り得ることとし,その方法及び金額を含む内容に関しては,上記のような事柄について最もよく知り得る立場にある当該普通地方公共団体等の議決機関である議会において決定することとして,その決定をこのような議会による上記の諸般の事情を踏まえた政策的,技術的な見地からの裁量権に基づく判断に委ねたものと解される。したがって,普通地方公共団体等の委員会の委員を含む非常勤職員についていわゆる月額報酬制その他の日額報酬制以外の報酬制度を採る条例の規定が同法283条1項,203条の2第2項に違反し違法,無効となるか否かについては,上記のような議会の裁量権の性質に鑑みると,当該非常勤職員の職務の性質,内容,職責や勤務の態様,負担等の諸般の事情を総合考慮して,当該規定の内容が同項の趣旨に照らした合理性の観点から上記裁量権の範囲を超え又はこれを濫用するものであるか否かによって判断すべきものと解するのが相当である(前掲最高裁平成23年12月15日第一小法廷判決参照)。
(2)  前提事実,証拠(甲5,甲13の1・2,甲21,甲59,乙1,乙2,乙4,乙19,乙20,証人C元事務局長)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 杉並区選挙管理委員会の構成
東京都の特別区である杉並区において,選挙管理委員会は,4名の委員をもって組織され(地方自治法283条1項,181条2項),委員の中から1名が委員長に選挙される(同法283条1項,187条1項)。
イ 職務の性質,職責等
特別区に置かれる委員会としての選挙管理委員会は,独自の執行権限を有し,その担任する事務の管理及び執行に当たって自ら決定を行いこれを表示し得る執行機関であり(地方自治法283条1項,138条の3,138条の4,180条の5第1項2号),その業務に即した公正中立性,専門性等の要請から,特別区の長から独立してその事務を自らの判断と責任において誠実に管理し執行する立場にあり(同法283条1項,138条の2),その担任する事務について訴訟が提起された場合には,その長に代わって特別区を代表して訴訟追行をする権限も有する(同法283条1項,192条)など,その事務について最終的な責任を負う立場にある。
その委員の資格についても,一定の水準の知識経験や資質等を確保するための法定の基準又は手続が定められている(同法283条1項,182条1項)。
ウ 職務の内容,勤務の態様,負担等
選挙管理委員会は,法律又はこれに基づく政令の定めるところにより,当該特別区が処理する選挙に関する事務及びこれに関係のある事務を管理するものとされ(地方自治法283条1項,186条),杉並区選挙管理委員会は,具体的には,別紙4のとおり,広範で多岐にわたる事務について管理運営を行っている。
また,杉並区選挙管理委員は,定例会や選挙(杉並区議会議員選挙,杉並区長選挙,衆議院議員選挙及び参議院議員選挙)の施行時等に開催される臨時会に出席し,選挙に関連する事項について議決,協議等を行っており,本件期間(平成22年5月1日から同年10月25日までの間)の定例会等の開催状況は,別紙5のとおりであった。
エ B元委員の本件期間中の勤務状況
(ア) B元委員は,平成22年5月8日午前8時過ぎ頃,呂律が回っていない等の状態になったため,河北総合病院に救急搬送された。
B元委員は,同病院の医師から脳動脈りゅう(左中大脳動脈りゅう)破裂による脳出血と診断され,同日から同病院から入院した。
同日のB元委員の看護記録(甲13の1)には,午前10時40分頃の意識レベルについて,「JCSⅡ-10 傾眠がち」と記載され(JCSⅡ-10とは,普通の呼びかけで目を開け,「右手を握れ」などの指示に応じ,言葉も話せるが,間違いが多い状態の意識障害のレベルを指す。),B元委員の病院到着時の症状として,構音障害,右片麻痺,眼球の偏りなどがみられた旨記載されている。
(イ) B元委員の意識レベルは,入院日以降,後記(ウ)までの間,おおむねJCSⅠ-3(JCSⅠ-3とは,自分の名前や生年月日が言えない状態の意識障害のレベルを指す。以下同じ。)からJCSⅡ-20(JCSⅡ-20とは,大声で呼んだり,体を揺するなどすると目を開ける状態の意識障害のレベルを指す。)となっており,B元委員の看護記録(甲13の1)には,B元委員の発言として,「甲山 B 71歳 ここはどこだっけ?」,「甲山・・・ここはどこ?」,「甲山。えーとなんだっけ。ああBか」などの記載がある。
(ウ) B元委員は,平成22年5月28日,同病院において手術(左大脳動脈りゅう頚部クリッピング術,血腫除去術)を受けた。
同日のB元委員の手術室看護記録(甲13の1)には,「一度,気管内挿管抜管するも,呼吸状態悪く,(中略)覚醒不良もみられ,再度挿管し,ICUへ帰室となる。」と記載されている。
同月30日午前7時42分のB元委員の看護記録(甲13の1)には,「問いかけに対しうっすら開眼見られ」,「意識レベル改善傾向」との記載があったが,同日午後4時のB元委員の看護記録(甲13の1)には,B元委員の発語として,「おとはひ・・はい・・ごがつ・・にじゅうよん・・」との記載があるほか,「JCSⅡ群」(JCSⅡとは,刺激をすると覚醒する(刺激をやめると眠り込む)状態の意識障害のレベルを指す。),「完全に開眼はできず。」などの記載があり,同日午後8時50分以降のB元委員の看護記録(甲13の1)には,B元委員に38度台の発熱が見られるようになった旨が記載されている。
そして,同日夜以降,後記(エ)の手術までの間のB元委員の看護記録(甲13の1)には,B元委員にてんかん症状があったこと,38度台から39度までの発熱があり,座薬等による解熱処置を行ったこと,意識障害があり(最高時は,JCSⅢ-200ないしJCSⅢ-300であった。JCSⅢ-200とは,痛み刺激で少し手足を動かしたり,顔をしかめたりするが,覚醒しない状態の意識障害のレベルを,JCSⅢ-300とは,痛み刺激に反応しない状態の意識障害のレベルを指す。),寝返り,起き上がり,座位保持,移乗,口腔ケア,食事介助,衣服の着脱等の看護を要する状態が続いたことが記載されている。
医師は,同年6月10日午後6時49分,B元委員の家族に対し,「皮下に感染しており,骨弁も感染していると思われる。こうなると抗生物質を投与してもなかなか効果が出ず,開創して骨弁を除去,膿瘍腔内を綺麗に清掃してくる必要があります。」として,再度B元委員に対し手術を行う必要がある旨を説明し,家族はこれを了解した。
(エ) B元委員は,平成22年6月11日,皮膚膿瘍,硬膜下膿瘍により,再び手術(脳膿瘍摘出術)を受け,術後,集中治療室に入った。
同日午後10時及び11時42分のB元委員の看護記録(甲13の1)には,体温が39.2度まで上昇したこと,座薬を挿入したこと,寝返り,起き上がり,座位保持,移乗,口腔ケア,食事介助,衣服の着脱等の看護が必要であることなどが記載されている。
参議院議員選挙の告示日であった同月24日午後4時30分のB元委員の看護記録(甲13の1)には,「意識障害あり,体幹も大きく自分で体位変換行うことできず,看護師が2時間毎に体位変換行っている。」,「更衣も意識障害のため協力動作得られず,全介助」等の記載がある。
杉並区長選挙の告示日であった同年7月4日午前10時のB元委員の看護記録(甲13の1)には,B元委員の発語として,「おれのなまえ?・・・B1だっけ・・?」との記載があり,同人の意識障害レベルがJCSⅠ-3であることが記載されている。
また,参議院議員選挙,杉並区長選挙及び杉並区議会議員補欠選挙の投票日であった同月11日のB元委員の看護記録(甲13の1)には,B元委員の発語として,「選挙?なんの?」との記載があり,B元委員の状態として,「体温38.1度」,「意識障害あり自力体動困難で寝返りは看護師が時間毎に体位変換,起き上がりは安静度車椅子乗車可能だが介助量多く看護師サイドでは行っていない。座位保持はベッドの支えでできる。移乗は介助量多くリハビリでのみ実施。口腔ケアは看護師がブラッシング,口腔清拭,吸引を実施。食事は禁食中。更衣はオムツ着用しており協力動作なく全介助で交換した。」との記載がある。
その後も,同月14日までのB元委員の看護記録(甲13の1)には,38度台の発熱が見られること,意識障害があること,寝返り等の上記の看護が必要であることなどが記載されている。
同日以降,後記(オ)までの間のB元委員の看護記録には,発熱なし又は発熱があっても微熱程度であること,車いす乗車,起立,立位などのリハビリを実施していること,同月23日から嚥下での食事が開始されたことの記載があるものの,「声掛けに笑顔あり 名前返答可能 年齢曖昧 日付は数日ずれる」,「声掛けに開眼するものの傾眠傾向」,「認知力の低下あり」,「易疲労/傾眠傾向は持続しているものの表情良好で課題への取り組み/発動性も改善傾向」,「オムツ交換時,シーツまでの失禁多量にあり。」等の記載がある。
(オ) B元委員は,平成22年8月10日,河北総合病院から河北リハビリテーション病院に転院し,歩行訓練等のリハビリテーションを行った。
同病院のB元委員の入院経過サマリー(甲13の2)には,現病歴として,「2010年5月8日,右片麻痺で発症し本院入院。頭部CTで左被殻出血の診断で内科入院。保存的治療が行われていたが,左中大脳動脈に動脈瘤が発見され,出血源と考えられたため5月15日脳外科転科。5月28日開頭血腫除去・動脈瘤ネッククリッピング術施行。6月11日,創感染明らかとなり,再開頭・洗浄・骨弁除去・人工硬膜除去術施行。膿からMRSA検出され抗生剤投与を行った。誤嚥性肺炎の合併も繰り返した。肺炎改善し,経口摂取可能となり,リハビリ目的に8月10日当院入院。廃用症候群の診断。」と記載され,入院時現症として,「意識覚醒,礼節保たれるが,表情は乏しい。」,「受け応え可能だが,会話が遅く,認知機能低下はありと思われる。」と記載されている。
また,同サマリーには,認知機能について,「9月中は,歩行器使用の指示を守らないなど,安全管理が不十分だった。10月に入りだいぶ落ち着いた(近くのトイレに保護帽子なしで時々歩く程度)。」と記載され,復職について,「主治医に医学的な意見を求められた。頭蓋骨の手術がこれから必要なこと,判断力の低下の問題,体力の問題などから,頭蓋骨手術が終わるまでは仕事はしない方がよいと返答した。」と記載されている。
B元委員の入院診療計画書(甲13の2)には,「病状 治療により改善すべき点等」として,右手足麻痺,筋力低下,認知障害の疑いが記載され,全身状態の評価として,「活動度:車椅子介助 排泄:昼間 トイレ誘導(重介助) 夜間 オムツ対応 入浴:介助浴評価」と記載されている。
B元委員の理学・作業療法報告書(甲13の2)には,河北リハビリテーション病院への転院時点において,JCSⅡ-30(JCSⅡ-30とは,痛み刺激をしながら呼ぶと,かろうじて目を開け,「手を握れ」など簡単な指示に応じる状態の意識障害のレベルを指す。)の意識障害あり,中等度の注意障害及び記憶障害ありと記載されている。
(カ) B元委員は,医師から仕事は控えた方が良い等の助言を受け,自身の病気の治療に専念するため,河北リハビリテーション病院入院中の平成22年10月25日,健康上の理由による辞職により,杉並区選挙管理委員の職を離れた。
B元委員は,辞職の際,C元事務局長が持参した退職願(甲5,乙4)に署名し,辞職の理由を記載して提出したが,自署するのに若干手間取り,数分の時間を要した上,辞職の理由を記載する欄には,「健康上の理由」と記載する前に,「康伸の着押により」との記載をした。
(キ) B元委員は,平成22年10月28日,河北リハビリテーション病院を退院し,自宅での療養を開始した。
退院前日の同月27日時点において,B元委員の理学・作業療法報告書(甲13の2)には,JCSⅠ-1(JCSⅠ-1とは,ほぼ意識清明だが,今ひとつはっきりしない状態の意識障害のレベルを指す。)の意識障害あり,軽度の注意障害及び記憶障害ありと記載されている。
(ク) B元委員は,平成23年1月末,頭蓋骨を頭部に入れる手術を受けた。
(ケ) B元委員は,本件期間中に開催された別紙5の定例会等を全て欠席した。
(3)  上記(2)の事実を前提として,上記(1)に述べたところに照らし,本件条例の規定が違法であって無効であるか否かについて,以下,検討する。
ア 上記(2)イに認定したような杉並区選挙管理委員の職務の性質及び職責の重要性に照らせば,杉並区選挙管理委員については,その業務に堪え得る一定の水準の適性を備えた人材の一定数の確保が必要となるし,その業務内容が,選挙の管理という重要な事項に関わるものを中心とする広範で多岐にわたるものであることからすると,公正中立性に加えて,一定の専門性が求められるものであるというべきである。また,杉並区選挙管理委員が,上記(2)ウのように広範で多岐にわたる杉並区選挙管理委員会の担任する事務に係る一連の業務について執行権者として決定をするには,各般の決裁文書や資料の検討等のため登庁日以外にも相応の実質的な勤務をすることが必要となる上,選挙期間中における緊急事態への対応に加えて衆議院や杉並区議会の解散等による不定期な選挙への対応も随時必要となる。さらには,事件の審理や判断及びこれらの準備,検討等に相当の負担を伴う選挙争訟については争訟を裁定する権能を有しており,これらの争訟に係る案件についても,登庁日以外にも書類や資料の検討,準備,事務局等との打合せ等のために相応の実質的な勤務が必要となるものといえる。
そうすると,杉並区選挙管理委員の業務については,形式的な登庁日数のみをもって,その勤務の実質が評価し尽くされるものとはいえないというべきである。
イ 他方,上記(2)エ(ケ)のとおり,B元委員は,本件期間中に開催された定例会等を全て欠席し,そのほか上記アに述べたような杉並区選挙管理委員の業務を行った形跡もなく,本件期間中の同年5月8日以降,同年10月25日まで,脳出血の発症を原因として,2つの病院に入院し,その入院中,合計2度の手術を受け,少なくとも集中治療室に2回入室して治療を受け,発熱,てんかん症状等に対処する治療,看護等を受けていた。また,B元委員については,上記の入院期間中,程度の差こそあれ,継続して意識障害が見受けられており,結局,主治医の助言に従って,自身の治療に専念するため,健康上の理由による辞職により同年10月25日に杉並区選挙管理委員の職を離れるに至った。その辞職の際,B元委員は,退職願に自署したものの,その記載には数分を要し,理由の記載には「健康上の理由」との記載をする前に意味不明な誤った記載をしている。
このようなB元委員の定例会等の出席状況,継続的な意識障害の存在,辞職の経緯等を総合的に考慮すると,少なくとも上記の入院期間中,B元委員は,杉並区選挙管理委員として,前記アに述べたような業務を一切行っていなかったと認めるのが相当である。
被告は,B元委員が病院に入院中も新聞や本を読んでおり,自己研さんや自己啓発を行い,その識見の維持,更なる向上を図っていたと主張するが,既に述べたようなB元委員の症状の経過等に照らし,採用することができない。
ウ 前記アに述べたところに照らし,杉並区選挙管理委員の報酬の支給の在り方として月額報酬制を採用した本件条例の規定が直ちに地方自治法203条の2第2項の規定に違反するとはいえないとしても,同項の規定は,その本文に規定する内容から明らかなとおり,非常勤職員の報酬について,いわゆる生活給としての要素を含まず,飽くまで職務の遂行への対価として支給されるものであることを前提とするものと解されるところ,本件条例4条2号は,月額報酬は,これを受ける者に対し,その月の25日から末日までに支給する旨を定めており,これを含む本件条例の規定によれば,杉並区選挙管理委員がその職にあった特定の月の全て又はその大部分の日において疾病等のために職務を遂行することができなかった場合にも,当該月分として月額をもって定められた報酬の全額が支給されることになるのであって,本件にみられるように,上記のような場合を含め,その勤務の態様等を格別考慮することなく,一律に上記のように報酬の支給をするものとすることについては,その全額が当然に職務の遂行への対価として支給されるものと解することは困難であり,B元委員について,本件全証拠をもっても,これと異なって解すべき事情は格別認められない。
以上に述べたところによれば,杉並区選挙管理委員に対する月額報酬の支給を本件条例の上記の規定によるものとすることについては,本件期間中のB元委員におけるような場合を含めて一律に月額報酬の全額を支給するものとする限りにおいて,地方自治法203条の2第2項の規定の趣旨に照らした合理性の観点から議会の裁量権の範囲を超えるものとして,同規定に違反し,無効であるというのが相当である。そして,同条4項は,同条1項所定の非常勤職員に対する報酬等の額及びその支給方法は,条例でこれを定めなければならないものと規定しているところ,同法283条1項,204条の2の規定によれば,杉並区は,法律又はこれに基づく条例に基づかずには,非常勤職員に対して報酬を支給することはできないのであるから,上記に判断したところからすると,B元委員に対してされた本件報酬の支給については,法律又はこれに基づく条例に基づかずにされたものといわざるを得ず,無効であるというのが相当である。
被告は,①選挙管理委員の職務からすれば,その報酬を日額に解消することは困難であり,月額で定めることに合理性が認められ,報酬を月額として平準化された形で支給することは合理性が認められるというべきである,②地方自治法上,選挙管理委員については,一般職の休職に当たる規定は定められておらず,入院等により,定例会等に出席できない状況となった場合に,その報酬の支給を停止し,又は減額等の規定を設けることを一義的に同法203条の2が求めているとまではいえない,③選挙管理委員の罷免事由が同法184条の2第1項所定の事由に限定され,罷免等のような場合に初めて報酬を不支給とすることを想定していると解すべきであるなどと主張するが,既に述べたところに照らし,いずれも採用することができない。
エ 以上に述べたように,本件報酬のうち平成22年10月分について本件条例3条2項本文の規定に従って日割りによって計算された19万5161円を含む合計140万5161円については,B元委員において法律上の原因なく利益を受け,そのために杉並区に損失を及ぼしたものと認められるから,B元委員は,杉並区に対して同額に相当する金員を不当利得による返還金として支払うべき債務を負うものというべきである。
一方,前提事実(4)イのとおり杉並区に納付の手続が執られている本件過払報酬の額に相当する金員については,前記1に述べたとおりであるほか,いずれにせよ,本件全証拠によっても,B元委員において原告らの主張するような不当利得による返還金に係る債務を負うものと認めるに足りないというほかない。
第4  結論
以上のとおり,原告らの請求は主文1項及び2項の限度でいずれも理由があるから認容し,本件訴えのうち本件訴えの変更に係る部分(別紙2主文関係目録記載1及び2の各請求に係る部分)はいずれも不適法であるから却下し,本件訴えのその余の部分に係る原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 八木一洋 裁判官 品川英基 裁判官林優香子は,転補のため,署名押印をすることができない。裁判長裁判官 八木一洋)

 

別紙1
当事者目録
東京都杉並区〈以下省略〉
原告 X1
東京都杉並区〈以下省略〉
原告 X2
東京都杉並区〈以下省略〉
原告 X3
東京都杉並区〈以下省略〉
原告 X4
東京都杉並区〈以下省略〉
原告 X5
東京都杉並区〈以下省略〉
被告 杉並区長 Y
被告指定代理人 南郷一英
木下元
雨貝信生
関谷隆
齊藤俊朗
佐野太一
別紙2
主文関係目録
1 被告が甲山Bに4万6838円の支払の請求をすることを求める請求に係る部分
2 被告が甲山Bに4万6838円の不当利得返還の請求をすることを怠る事実の違法確認の請求に係る部分
別紙3
関係法令等の定め
第1 地方自治法について
1 地方自治法203条の2第1項は,普通地方公共団体は,その委員会の委員,非常勤の監査委員その他の委員,自治紛争処理委員,審査会,審議会及び調査会等の委員その他の構成員,専門委員,投票管理者,開票管理者,選挙長,投票立会人,開票立会人及び選挙立会人その他普通地方公共団体の非常勤の職員(短時間勤務職員を除く。以下「非常勤職員」という。)に対し,報酬を支給しなければならない旨を定めている。
2 地方自治法203条の2第2項は,同条1項の職員に対する報酬は,その勤務日数に応じてこれを支給するが(同条2項本文),条例で特別の定めをした場合は,この限りでない(同項ただし書)旨を定めている。
3 地方自治法203条の2第4項は,報酬等の額及びその支給方法は,条例でこれを定めなければならない旨を定めている。
4 地方自治法281条2項は,特別区は,法律又はこれに基づく政令により都が処理することとされているものを除き,地域における事務並びにその他の事務で法律又はこれに基づく政令により市が処理することとされるもの及び法律又はこれに基づく政令により特別区が処理することとされるものを処理する旨を定めている。
5 地方自治法283条1項は,同法又は政令で特別の定めをするものを除くほか,同法第2編及び第4編中市に関する規定は,特別区にこれを適用する旨を定めている。
6 地方自治法283条2項は,他の法令の市に関する規定中法律又はこれに基づく政令により市が処理することとされている事務で地方自治法281条2項の規定により特別区が処理することされているものに関するものは,特別区にこれを適用する旨を定めている。
第2 公職選挙法について
公職選挙法266条1項前段は,同法中市に関する規定は,特別区に適用する旨を定めている。
第3 本件条例について(乙3)
1 本件条例1条(通則)は,杉並区行政委員会の委員の報酬は,本件条例の定めるところによる旨を定めている。
2 本件条例2条(報酬)は,委員の報酬は,本件条例別表のとおりとする旨を定め,同別表は,杉並区選挙管理委員の報酬の額を月額24万2000円と定めている。
3 本件条例3条(報酬の支給方法)は,報酬は,月額報酬を受ける者に対し,その者が,委員の職に就いたときはその日から,任期満了,辞職,失職,解職等によりその職を離れたときはその日まで,死亡したときはその日の属する月の末日まで支給し(同条1項2号),月額報酬を受ける委員が月の中途においてその職に就いたとき又はその職を離れたときのその月分の報酬は,その月の現日数を基礎として日割りにより支給する(同条2項本文)旨を定めている。
4 本件条例4条(報酬の支給期日)2号は,月額報酬は,これを受ける者に対し,毎月分を,その月の25日から末日までに支給する旨を定めている。
別紙4
市町村選挙管理委員会の事務について
1 選挙事務の管理執行
市町村選挙管理委員会は、市町村の議会及び市町村長の選挙を管理することとされているほか(公職選挙法5条)、第一号法定受託事務として、衆議院議員選挙及び参議院議員選挙に関し、市町村が処理することとされている事務を(同法275条1項1号、地方自治法別表第1)、第二号法定受託事務として、都道府県議会議員選挙及び都道府県知事選挙に関し、市町村が処理することとされている事務を(公職選挙法275条2項1号、地方自治法別表第2)、いずれも処理することとされている。つまり、市町村選挙管理委員会は、公職選挙法の適用を受ける全ての選挙について、管理ないし処理をすることとされているのであるが、具体的には、大要以下2ないし17に述べる事務を処理している。
2 選挙に関する啓発、周知等
市町村選挙管理委員会は、選挙が公明且つ適正に行われるように、常にあらゆる機会を通じて選挙人の政治常識の向上に努めるとともに、特に選挙に際しては投票の方法、選挙違反その他選挙に関し必要と認める事項を選挙人に周知させなければならないとされている(公職選挙法6条1項)。
また、市町村選挙管理委員会は、選挙に関する啓発として、総務大臣や中央選挙管理会から、「選挙に関する常時啓発事業」の委託を受けることにもよって(公職選挙法施行令133条、公職選挙法施行規則34条、選挙に関する常時啓発事業委託要綱(昭和38年自治省告示第131号))、選挙に関する啓発活動を常時行うこととされている。講演会、研修会などがこれに含まれ、その他に、選挙の際には、選挙時啓発として、投票の呼掛け等を行うこととされているが、選挙は、民主政治の基盤をなすものであり、選挙が公正に行わなければその健全な発達を期することができないものであるから、投開票のみならず、あらゆる点で公職選挙法1条の「選挙が選挙人の自由に表明せる意思によって公明かつ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期する」との目的の達成のための制度として、国民の政治常識の向上を図る手段として、各選挙管理機関には、選挙に関する啓発活動が義務づけられている。
特に、最近の投票率の低下傾向からすれば、このような啓発活動の重要性は以前よりも増加し、その分、市町村選挙管理委員会の役割、責任も重大となっている。
3 投票区の設置
公職選挙法17条1項によれば、投票を行う単位区域である「投票区」は、各選挙を通じて、市町村の区域とすることが原則とされているが、市町村選挙管理委員会は、必要があると認めるときは、当該市町村の区域を分けて数投票区を設けることができるとされており(同法同条2項)、この数投票区の設置、告示は、原則として、選挙の都度なされるべきとされている(同法同条3項)。
なお、杉並区においては、選挙人の投票の便宜のため、平成23年9月現在、460,395人の有権者に対し、66投票区設置している。
4 選挙人名簿の調製、保管、登録
市町村選挙管理委員会は、選挙人名簿の調整及び保管の任に当たるものとされ、毎年3、6、9、12の各月(登録月)及び選挙を行う場合に、選挙人名簿の登録を行うものとされている(公職選挙法19条2項)。
そして、選挙人名簿は、各選挙を通じて一の名簿とされ(同法19条1項)、数投票区を設けた場合は、投票区ごとに編製しなければならないとされている(同法20条2項)。したがって、市町村選挙管理委員会は、選挙人名簿に登録されている者が、当該市町村の区域内の他の投票区の区域内に住所を移したことを知ったときは、その者に係る登録の移し替えをしなければならない(公職選挙法施行令17条)。
さらに、市町村選挙管理委員会は、選挙人名簿に登録される資格を有する者を調査し、その者を選挙人名簿に登録するための整理をしておかなければならないとされ(公職選挙法21条4項)、原則として、登録月の一日現在、選挙人名簿に登録される資格を有する者を当該登録月の二日に、選挙人名簿に登録しなければならないほか(同法22条1項。定時登録)、選挙を行う場合においても、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会ないし中央選挙管理会が定めるところにより、選挙人名簿に登録される資格を有する者を選挙人名簿に登録しなければならないとされている(同法同条2項。選挙時登録)。そして、定時登録又は選挙時登録後に、選挙人名簿に脱漏があったことを知った場合には、直ちに補正登録をしなければならず(同法26条)、必要に応じて、選挙人名簿の表示(同法27条1項)や修正、訂正(同法同条2項)、登録の抹消(同法28条)、再調製(同法30条1項)を行わなければならないとされ、常時選挙人名簿の調製、保管、登録に当たり、選挙人名簿を適正な状態にしておかなければならないとされている。
また、市町村選挙管理委員会は、一定の場合に申出に応じて選挙人名簿の抄本を閲覧させなければならないとされ(同法28条の2、28条の3)、投票の際には、市町村選挙管理委員会は、投票所を開く時刻までに、選挙人名簿を各投票区の投票管理者に送付しなければならないとされている(公職選挙法施行令28条1項)。
5 在外選挙人名簿の調製、保管、登録
市町村選挙管理委員会は、選挙人名簿のほか、在外選挙人名簿の調整及び保管を行い(公職選挙法30条の2第1項)、申請に基づき登録を行うものとされている(同法同条3項、30条の5第1項、30条の6第1項)。
そして、在外選挙人名簿も、各選挙を通じて一の名簿とされ(同法30条の2第2項)、数投票区を設けた場合は、在外選挙人名簿を編製する―以上の投票区を指定しなければならないとされており(同法30条の3第2項)、在外選挙人名簿に関しても、必要に応じて、在外選挙人名簿の表示(同法30条の10第1項)や修正、訂正(同法同条2項)、登録の抹消(同法30条の11)、再調製(同法30条の15により準用される同法30条1項)を行わなければならないとされ、常時、在外選挙人名簿の調製、保管、登録に当たり、同名簿を適正な状態にしておかなければならないとされている。
また、市町村選挙管理委員会は、一定の場合に在外選挙人名簿を閲覧させなければならないとされているほか(同法30条の12により準用される同法28条の2、28条の3)、在外選挙人名簿に登録された者の氏名等につき縦覧に供さなければならないとされている(同法30条の7第1項)。
6 投票に関する事務
(1) 投票管理者の選任等市町村選挙管理委員会は、各選挙ごとに、当該選挙の選挙権を有する者の中から投票管理者を選任しなければならない(公職選挙法37条1項、2項)。投票管理者は、投票に関する事務を担任するのであるから(同法同条5項)、投票区ごとにそれぞれ置かれるものとされている。投票管理者には、厳正公正な人物であること、選挙事務能力があることが求められるので、選任に当たっては、そのような点を考慮してなされる必要があるとされている。
また、市町村選挙管理委員会は、投票管理者に事故がある場合等における職務代理者を選任しておかなければならず(公職選挙法施行令24条1項)市町村選挙管理委員会の委員長は、投票管理者及び上記職務代理者がともに事故がある場合等の投票管理者の職務を管掌すべき者を選任しなければならないとされている(同令同条2項)。
(2) 投票立会人の選任
市町村選挙管理委員会は、各選挙ごとに、各投票区における選挙人名簿に登録された者の中から、2人以上5人以下の投票立会人を選任しなければならないとされている(公職選挙法38条1項)。
(3) 投票所の設置等
市町村選挙管理委員会は、投票所を設置し(公職選挙法39条)、告示をしなくてはならないとされている(同法41条1項、2項)。そして、投票所内について、他人が選挙人の投票の記載を見たりするなど不正の手段が用いられないような設備を施さなければならないとされている(公職選挙法施行令32条)。
また、市町村選挙管理委員会は、選挙期日の公示ないし告示の日以後速やかに、選挙人に対し、投票所入場券を交付するよう努めなければならないとされている(同令31条1項)。
(4) 投票用紙の様式の決定及び調製
市町村選挙管理委員会は、市町村の議会の議員及び長の選挙について、投票用紙の様式を決定し、及び調製しなければならないとされている(公職選挙法45条2項)。
(5) 期日前投票
市町村選挙管理委員会は、期日前投票についても、その投票管理者及びその職務代理者等、さらには、投票立会人を選任しなければならない(公職選挙法48条の2第2項により準用される同法37条2項、38条(3項を除く)、公職選挙法施行令49条の7により準用される同令25条、27条)。
また、市町村選挙管理委員会は、期日前投票所を設置し(公職選挙法48条の2第3項により準用される同法39条)、告示をしなくてはならない(同法48条の2第3項により準用される同法41条1項、2項)。
(6) 不在者投票
市町村選挙管理委員会委員長は、当該市町村に所在ないし居住する選挙人に係る不在者投票管理者となり、不在者投票の管理をするものとされている(公職選挙法49条1項、公職選挙法施行令55条1項)。
また、市町村選挙管理委員会委員長は、入院中、老人ホーム入所中等の者に係る不在者投票に係る投票用紙等の交付(同令50条~54条)及びこれらの不在者投票の受理、投票管理者対する送致(同令60条1項)、郵便による不在者投票の管理(公職選挙法49条2項)等をしなければならないとされている。
7 開票に関する事務
(1) 開票所の設置等
市町村選挙管理委員会は、開票所を設置し(公職選挙法63条)、開票の場所、時刻を告示しなくてはならないとされている(同法64条)。
(2) 開票管理者等の選任
市町村選挙管理委員会等は、各選挙ごとに、当該選挙の選挙権を有する者の中から開票管理者を選任しなければならいとされている(公職選挙法61条1項、2項)。
また、市町村選挙管理委員会は、開票管理者の職務代理者等を選任しなければならないとされ(公職選挙法施行令67条1項、2項)、これら開票管理者等の住所及び氏名を告示しなければならないとされている(同令68条)。
(3) 開票立会人の届出受理等
市町村選挙管理委員会は、公職の候補者から、開票立会人の届出があった場合は、これを受理しなければならないとされている(公職選挙法62条1項)。また、開票立会人の届出があった者が10人を超えるときは、市町村選挙管理委員会は、くじで定めた者10人を開票立会人としなければならないとされている(同法同条2項)。そして、これらの場合は、市町村選挙管理委員会は、開票管理者に対し、開票立会人の氏名等を通知しなければならない(公職選挙法施行令70条の2第1項)。
8 選挙会に関する事務
(1) 選挙長の選任等
市町村選挙管理委員会は、市町村の議会及び市町村長の選挙の際、選挙長を選任しなくてはならないとされている(公職選挙法75条3項)。
また、市町村選挙管理委員会は、選挙長に事故がある場合等における職務代理者を選任しておかなければならず(公職選挙法施行令80条1項)、市町村選挙管理委員会の委員長は、選挙長及び上記職務代理者がともに事故がある場合等の選挙長の職務を管掌すべき者を選任しなければならないとされている(同令同条2項)。
(2) 選挙会の開催場所の指定
市町村選挙管理委員会は、市町村の議会及び市町村長の選挙の際、選挙会の開催場所を指定しなくてはならないとされている(公職選挙法77条1項)。
(3) 選挙録等の受領、保存
市町村選挙管理委員会は、選挙長から、選挙録等、投票の点検終了後の結果報告に関する書類を受領し(公職選挙法83条2項、公職選挙法施行令85条)、選挙会に関する書類は、市町村の議会の議員又は長の任期間保存しなければならないとされている(公職選挙法施行令86条1項)。
9 当選人に関する事務
市町村選挙管理委員会は、市町村の議会の議員又は長の選挙において、当選人が定まったときは、選挙長から当選人の住所、氏名、得票数等についての報告を受け(公職選挙法101条の3第1項)、直ちに当選人に当選の旨告知し、当選人の住所、氏名を告示しなければならないとされている(同法同条2項)。
10 選挙運動に関する事務
(1) 選挙事務所
市町村選挙管理委員会は、市町村の議会の議員又は長の選挙における選挙事務所が設置された場合、及びその他の選挙において、当該市町村の区域内に選挙事務所が設置された場合、その旨の届出を受理しなければならないとされている(公職選挙法130条2項)。
そして、上記の場合、市町村選挙管理委員会は、選挙事務所の設置に関し、設置者に関する制限(公職選挙法130条1項)、表示に関する制限(同法131条3項)、選挙当日の選挙事務所の制限(同法132条)又は選挙事務所の定数制限(同法131条1項)違反があったときは、選挙事務所の閉鎖命令をしなくてはならないとされている(公職選挙法134条)。
(2) 文書図画
市町村選挙管理委員会は、市町村の長の選挙の候補者が選挙運動のために使用するビラについて、頒布のために必要な証紙を交付するものとされている(公職選挙法142条7項)。
また、市町村選挙管理委員会は、市町村の議会の議員又は長の選挙の候補者等が政治活動のために使用する事務所に係る立札及び看板の類の表示を行うこととされている(同法143条17項)。
さらに、市町村選挙管理委員会は、市町村の議会の議員又は長の選挙の候補者が選挙運動のために使用するポスターに検印又は証紙を交付するものとされている(同法144条2項)。
(3) 表示板等
市町村選挙管理委員会は、市町村の議会の議員又は長の選挙の候補者が選挙運動のために使用する自動車ないし拡声機等の表示板、当該自動車に乗車する者の着ける腕章、街頭演説用の標旗及び腕章を交付するものとされている(公職選挙法141条5項、141条の2第2項、164条の5第2項、164条の7第2項)。
(4) 個人演説会等
市町村選挙管理委員会は、学校、公民館、公会堂以外で個人演説会等を開催できる施設を指定することとされている(公職選挙法161条1項3号、163条)。
(5) 選挙公報
市町村選挙管理委員会は、市町村の議会の議員又は長の選挙において、公職選挙法167条から171条までの規定に準じて、条例の定めるところにより、選挙公報を発行することができるとされている(公職選挙法172条の2)。
杉並区では、選挙公報を発行している。
(6) 投票記載所の氏名等の掲示
市町村選挙管理委員会は、各選挙につき、選挙の当日、投票所内の投票記載場所等に、候補者の氏名及び党派別、参議院議員の選挙の際には、これらに加えて比例代表選出に係る届出政党名及びその略称並びに名簿登載者の氏名等、衆議院議員選挙の際には、さらにこれらに加えて比例代表選出に係る届出政党内における候補者の順位(公職選挙法175条1項)並びに国民審査に係る最高裁判所裁判官の氏名等を掲示しなければならないとされている(最高裁判所裁判官国民審査法52条)。
(7) ポスター掲示場の設置
市町村選挙管理委員会は、衆議院議員選挙、参議院議員選挙及び都道府県知事選挙において、選挙運動用のポスター掲示場を設置しなくてはならないとされており(公職選挙法144条の2第1項)、都道府県議会議員選挙並びに市町村議会議員選挙及び市町村長選挙においては、それぞれ都道府県の条例ないし市町村の条例の定めるところにより、選挙運動用のポスター掲示場を設置することができるとされている(同法144条の2第8項、144条の4)。
杉並区では、ポスター掲示場を設置している。
11 争訟
市町村選挙管理委員会は、市町村議会議員選挙ないし市町村長の選挙において、その選挙の効力や当選の効力について不服がある選挙人、候補者から異議の申出があった場合に受理をしなければならず(公職選挙法202条1項、206条1項)、これら異議の申出に対し、決定をしなければならないとされている(同法213条1項)。
また、市町村選挙管理員会は、選挙人名簿の登録に関し不服がある選挙人から異議の申出があった場合に受理をしなければならず(同法24条1項)、これら異議の申出に対し、決定をしなければならないとされている(同法同条2項)。
12 最高裁判所裁判官国民審査の投開票に関する事務
上記のような選挙の管理、執行のほか、市町村選挙管理委員会は、最高裁判所裁判官国民審査の投開票に関する事務外下記13ないし16の事務を処理している。
最高裁判所裁判官国民審査は、衆議院議員総選挙の期日に行われ(最高裁判所裁判官国民審査法2条)、その投開票の事務が、市町村選挙管理委員会の任命する投票管理者、開票管理者、投票立会人、開票立会人の担任に属することから(同法12条、19条)、市町村選挙管理委員会は、最高裁判所裁判官国民審査の投開票に関する事務を執行している。
また、市町村選挙管理委員会は、最高裁判所裁判官国民審査の投票を、有効無効を区別し、開票録等とともに、10年間保存しなければならないとされている(同法24条)。
13 裁判員候補者予定者名簿の調製
市町村選挙管理委員会は、地方裁判所から、裁判員候補者の員数に係る通知を受け(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律20条1項)、選挙人名簿登録者の中から当該員数の裁判員候補者予定者をくじで選定し(同法21条1項)、裁判員候補者予定者名簿を調製し(同法同条2項、3項)、地方裁判所に送付しなければならないとされている(同法22条)。
14 検察審査員候補者名簿の調製
市町村選挙管理委員会は、検察審査会事務局長から、検察審査員候補者の員数に係る通知を受け(検察審査会法9条1項)、選挙人名簿登録者の中から当該員数の検察審査員候補者予定者をくじで選定し(同法10条1項)、検察審査員候補者予定者名簿を調製し(同法同条2項、3項)、管轄検察審査会事務局に送付しなければならないとされている(同法11条)。
15 農業委員会委員選挙の管理
農業委員会を置く市町村の市町村選挙管理委員会は、農業委員会の選挙による委員(農業委員会等に関する法律4条2項参照)の選挙に関する事務を管理するとされており(同法9条)、農業委員会委員選挙人名簿の調製等をしなければならないとされている(同法10条1項、2項、7項)。
杉並区には農業委員会が置かれており(乙3)、杉並区選挙管理委員会も上記事務を処理している。
16 直接請求
市町村選挙管理委員会は、直接請求に関し、以下の事務を処理している。
(1) 直接請求に要する署名数の告示(地方自治法74条5項、75条5項、76条4項、80条4項、81条2項、86条4項)
(2) 直接請求に係る署名の証明、署名簿の縦覧(地方自治法74条の2第1項~3項、75条5項、76条4項、80条4項、81条2項、86条4項)
(3) 議会の解散請求、議員や長の解職請求の受理(地方自治法76条1項、80条1項、81条1項)
(4) 直接請求に係る署名の効力に関する争訟等(地方自治法74条の2第4項~6項、75条5項、76条4項、80条4項、81条2項、86条4項)
17 憲法改正手続に関する国民投票
投票人名簿の調製を初め、投開票、在外票及び期日前投票に係る事務について各選挙における事務と同様の事務を行う(日本国憲法の改正手続に関する法律)。
以上

〈以下省略〉

 

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