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「政治活動 選挙運動」に関する裁判例(2)平成30年 5月15日 東京地裁 平28(行ウ)332号 難民の認定をしない処分取消等請求事件

「政治活動 選挙運動」に関する裁判例(2)平成30年 5月15日 東京地裁 平28(行ウ)332号 難民の認定をしない処分取消等請求事件

裁判年月日  平成30年 5月15日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(行ウ)332号
事件名  難民の認定をしない処分取消等請求事件
文献番号  2018WLJPCA05158003

裁判年月日  平成30年 5月15日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(行ウ)332号
事件名  難民の認定をしない処分取消等請求事件
文献番号  2018WLJPCA05158003

さいたま市〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 田島浩
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 国
同代表者兼処分行政庁 法務大臣 A
処分行政庁兼裁決行政庁 東京入国管理局長 B
処分行政庁 東京入国管理局主任審査官 C
同指定代理人 別紙1指定代理人目録記載のとおり

 

 

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  法務大臣が平成24年10月22日付けで原告に対してした難民の認定をしない処分を取り消す。
2  東京入国管理局長が平成24年11月13日付けで原告に対してした出入国管理及び難民認定法61条の2の2第2項による在留特別許可をしない処分は無効であることを確認する。
3  東京入国管理局長が平成24年11月21日付けで原告に対してした出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出に理由がない旨の裁決は無効であることを確認する。
4  東京入国管理局主任審査官が平成24年12月4日付けで原告に対してした退去強制令書発付処分は無効であることを確認する。
第2  事案の概要
本件は,トルコ共和国(以下「トルコ」又は「本国」という。)国籍を有する外国人である原告が,出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)61条の2第1項に基づいてした難民認定の申請(以下「本件難民認定申請」という。)に対して法務大臣から受けた難民の認定をしない旨の処分(以下「本件不認定処分」という。)の取消し,東京入国管理局長(以下「東京入管局長」という。)からされた入管法61条の2の2第2項による在留特別許可をしない処分(以下「本件在特不許可処分」という。)の無効確認,並びに,難民認定の申請中にされた退去強制手続につき,法務大臣から権限の委任を受けた裁決行政庁からされた入管法49条1項の規定による異議の申出には理由がない旨の裁決(以下「本件裁決」という。)及び東京入国管理局(以下「東京入管」という。)主任審査官からされたトルコを送還先とする退去強制令書の発付処分(以下「本件退令処分」という。)の各無効確認を求める事案である。
1  関係法令の定め
関係法令の定めは,別紙2「関係法令の定め」に記載のとおりである(同別紙で定義した略語は,本文においても用いることとする。)。
2  前提事実(証拠等を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)
(1)  原告の身分事項
原告は,1993年(平成5年)○月○日,トルコにおいて出生したトルコ国籍を有する外国人男性である。
(2)  原告の入国及びその後の在留の状況
ア 原告は,平成24年8月15日,成田国際空港に到着し,東京入管成田空港支局(以下「成田空港支局」という。)入国審査官に対し,渡航目的を「観光」として上陸の申請をしたが,同入国審査官は,原告が入管法7条1項に規定する上陸のための条件に適合していると認定できないとして,原告を成田空港支局特別審理官に引き渡した(乙A1)。
イ 成田空港支局特別審理官は,平成24年8月15日,原告に係る口頭審理を行い,その結果,原告が入管法7条1項2号に規定する上陸のための条件に適合していないと認定し,原告にその旨を通知したところ,原告は,同日,入管法11条1項に基づき法務大臣に対して異議の申出をした。
ウ 法務大臣から権限の委任を受けた東京入管局長は,平成24年8月16日,原告の異議の申出には理由がない旨の裁決をし,同日,成田空港支局主任審査官にその旨通知した。
エ 上記ウの通知を受けた成田空港支局主任審査官は,平成24年8月16日,原告に対し,上記ウの裁決を通知するとともに本邦からの退去を命じた。
オ 原告は,平成24年8月16日,指定された出国便により出国することなく本邦にとどまった。
(3)  原告の退去強制手続に至るまでの経緯
ア 成田空港支局入国警備官は,平成24年8月16日,原告に係る違反調査を行った。
イ 成田空港支局入国警備官は,平成24年8月16日,原告が入管法24条5号の2(不退去)に該当すると疑うに足りる相当の理由があるとして,成田空港支局主任審査官から収容令書の発付を受けた。
成田空港支局入国警備官は,同日,上記収容令書を執行して,原告を成田空港支局収容場に収容し,同月17日,原告を同号該当容疑者として,成田空港支局入国審査官に引き渡した。
ウ 成田空港支局入国審査官は,平成24年8月19日,原告に対する違反審査をし,その結果,原告が入管法24条5号の2(不退去)に該当する旨認定し,原告にその旨通知したところ,原告は,同日,特別審理官による口頭審理を請求した。
エ 成田空港支局主任審査官は,平成24年9月12日,原告に対し,仮放免を許可し,原告は,同日,成田空港支局収容場を出所した。
オ 東京入管特別審理官は,平成24年10月19日,原告に係る口頭審理を行い,その結果,入国審査官の上記ウの認定に誤りがない旨判定し,原告にその旨通知したところ,原告は,同日,法務大臣に対し,異議の申出をした。
カ 法務大臣から権限の委任を受けた裁決行政庁は,平成24年11月21日,上記オの異議の申出には理由がない旨の本件裁決をし,東京入管主任審査官に本件裁決を通知した。
キ 上記カの通知を受けた東京入管主任審査官は,平成24年12月4日,原告に対し,本件裁決を通知するとともに,本件退令処分をした。東京入管入国警備官は,同日,本件退令処分に係る退去強制令書を執行し,原告を東京入管収容場に収容した。
ク 東京入管主任審査官は,平成24年12月4日,原告の仮放免を許可し,原告は,同日,東京入管収容場を出所した。
(4)  本件難民認定申請に係る経緯
ア 原告は,平成24年8月20日,成田空港支局において,法務大臣に対し,本件難民認定申請をした。
イ 成田空港支局難民調査官は,平成24年8月30日,原告に係る難民調査をした。
法務大臣から権限の委任を受けた東京入管局長は,同日,本件難民認定申請に係る仮滞在を許可しないこととした。
ウ 法務大臣は,平成24年10月22日,原告に対し,難民の認定をしない旨の本件不認定処分をした。
エ 法務大臣から権限の委任を受けた東京入管局長は,平成24年11月13日,原告に対し,入管法61条の2の2第2項による在留特別許可をしない旨の本件在特不許可処分をした。
オ 原告は,平成24年11月20日,本件不認定処分及び本件在特不許可処分の通知を受け,同日,本件不認定処分に対する異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)をした。
原告は,平成26年9月22日,本件異議申立てに係る申述書を提出した。
カ 平成27年11月6日,原告の口頭意見陳述及び審尋が行われた。
キ 法務大臣は,平成27年12月21日,本件異議申立てを棄却する旨の決定をし,平成28年1月27日,原告に対し,その旨の通知をした。
ク 原告は,平成28年2月26日,東京入管において,法務大臣に対し,2回目の難民認定申請をした。
(5)  本件訴えの提起
原告は,平成28年7月26日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。
3  争点
(1)  本件不認定処分の適法性(原告の難民該当性)
(2)  本件在特不許可処分の無効事由の有無
(3)  本件裁決及び本件退令処分の無効事由の有無
4  争点に対する当事者の主張
(1)  争点(1)(本件不認定処分の適法性(原告の難民該当性))について
(原告の主張)
ア 「迫害」には,生命又は身体の自由の侵害又は抑圧のほか,その他の人権の重大な侵害が含まれるものと解すべきであり,その立証責任は,本国における自身の社会的地位その他の身分関係や,迫害を受けるおそれの根拠となる活動などについての説明が求められるものの,その説明が一応の合理性を有している場合,原告の説明にもかかわらず,その出身国ないし迫害を受けるおそれのある領域において,迫害を受けるおそれに十分な理由がないことの立証責任を被告が負うことになるというべきである。
イ 次のとおり,原告は,迫害を受けており,迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する。
(ア) 原告は,クルド人であって,クルド人であることを理由として差別を受けてきたが,クルド人であることを理由としてトルコ人から激しい暴行を受けたこともあった。原告は,いまだ中学生であった頃に,クルド人であることを理由にトルコ人から殴られ,また,2009年(平成21年)2月5日には,原告が仕事帰りにバスから降りた際に,同じ学校に通っており,近隣に住むトルコ人の3人組から襲われた。原告は,普段からその者らに,自分はクルド人であることを主張していたが,同人らは,クルド人を敵視しており,原告とは以前から仲が悪く,以前から機会があれば,原告をやっつけてやろうと思っていたのか,あるいは原告が民主社会党(以下「DTP」という。)の活動に参加していることを知って,さらに敵意がわいたのか,原告がバスを降りたところで原告に殴る蹴るの暴行を加えたものである。そのうちの一人はナイフを持っており,原告の左手の甲と右腕のひじの近くを刺し,さらに,原告が倒れると,原告の身体を引きずったものであり,原告は,その際,路上に落ちていたガラス片で右上腕を切った。
(イ) 原告は中学生だった2007年(平成19年)頃から,DTPの集会に参加したりするようになり,クルド人に対する差別や迫害その他様々な不当な扱いが広く行われていることを知った。そこで,原告は,クルド人のための活動をしたいと考え,2009年(平成21年)にはDTPのシェヒットキャミル支部の青年部に加入し,同年12月の同党に対する解散命令の後は,後継政党である平和民主党(以下「BDP」という。)の青年部に参加した。DTPやBDPでは,クルドの歴史や政治問題についての勉強会が行われ,また,原告は,選挙の際に選挙運動の手伝いをしたり,地域で起きている様々なクルド人に対する不当な扱いについて,調査して記録し,党に報告したりするという活動もしていた。なお,原告は,今は政党で活動したいとは思っていない。
(ウ) 原告は,2009年(平成21年)3月にシェヒットキャムルで行われたネブルーズ祭の際に,仲間と共に,クルド民族の旗だと考えている緑と赤と黄色の3色旗を掲げ,また,アブドラ・オジャラン(以下「オジャラン」という。)の写真を掲げて,オジャランの釈放を求めたりした。
ところが,その日,原告が帰宅する際に,トルコ人青年5人から暴行を受けた。同人らは,原告の帰宅途中に,原告に対し,なぜ原告がテロリストであるクルド労働者党(以下「PKK」という。)の旗を掲げたりするのかということを言ったので,原告は,当該旗がPKKの旗ではなくクルド民族の旗である旨を答えた。すると,上記5人のトルコ人は,原告に殴りかかったため,原告の顔は腫れ上がり,鼻血が出たりした。そして,原告及びその仲間3人と上記5人のトルコ人が殴り合いのような形になり,警察が介入し,双方が警察署に連行された。原告は,警察署において,なぜ,オジャランの旗やPKKの旗を掲げるのか等の尋問を受けたが,結局,原告の父親が保証人となって釈放された。その後,原告の父親が電話で警察に呼ばれ,いつか裁判所から呼出しが来るであろうと言われた。その結果,トルコ官憲から,存在を把握され,本国に帰国すれば兵役忌避を理由として身柄拘束を受け,拷問を受けるおそれがある。原告は,2012年(平成24年)になって,上記ネブルーズ祭の際の事件のことで呼出しを受けたが,上記事件の3年後に呼出状が来たのは,少年の間は政治的な犯罪で処罰するのは難しいため,成年に達するのを待っていたからであると考えられる。
(エ) トルコにおいては,満19歳から兵役を課されるところ,原告は,2012年(平成24年)○月○日に満19歳になり,兵役対象年齢となり,徴兵検査の健康診断の通知を受けた。しかし,当時,トルコ軍はPKKと戦闘中であったところ,原告はそもそも人を殺したり殺されたりということ自体に反対であり,かつ,同じクルド人であり,クルド民族独立という同じ目的を持つPKKと戦いたくないという「政治的意見」を有している。
ウ このように,原告には,クルド人であるというその人種,国籍,及びクルド民族のアイデンティティーを主張するという政治的意見によって,迫害を受けるおそれがあるというべきであって,原告は,難民条約1条A(2)に規定する難民に該当する。なお,原告が,難民調査官の調査において,クルド人かどうか分からない旨等を供述した記録があるが,通訳の過誤で原告の供述内容が伝わらなかったものであって,原告は,飽くまでクルド人である。
したがって,本件不認定処分は,違法である。
(被告の主張)
ア(ア) 入管法が定める「難民」とは,難民条約1条又は難民議定書1条の規定により,難民条約の適用を受ける難民をいい,これらの各規定によれば,難民とは,人種,宗教,国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために,国籍国の外にいる者であって,その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの等をいう。
(イ) 上記「迫害」とは,通常人において受忍し得ない苦痛をもたらす攻撃ないし圧迫であって,生命又は身体の自由の侵害又は抑圧を意味し,また,「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」というためには,当該人が迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱いているという主観的事情のほかに,通常人が当該人の立場に置かれた場合にも迫害の恐怖を抱くような客観的事情が存在していることが必要である。さらに,「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖」とは,単に迫害を受けるおそれがあるという抽象的な可能性が存するにすぎないといった事情では足りず,当該難民認定申請者について迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱くような個別かつ具体的な事情が存することが必要である。
(ウ) いかなる手続を経て難民認定がされるべきかについては,難民条約に規定がなく,難民条約を締結した各国の立法政策に委ねられているところ,我が国の入管法及びその関係法令の規定や,難民の認定をする旨の処分の授益処分としての性質等に照らせば,難民であることの資料の提出義務と立証責任は難民認定申請者が負担し,同申請者において合理的な疑いを容れない程度の証明をしなければならないものと解される。
イ(ア) 原告は,クルド人であるとは認められない。
(イ) 原告は,難民該当性に係る主張を変遷させているところ,主張が変遷したことの合理的な理由を示す客観的証拠も何ら提出せず,自己に有利になるように場当たり的に主張を変遷させているにすぎず,原告の主張は,およそ認められないというべきである。
(ウ) 原告は,学生時代のけんかを端緒とする暴行事件について述べていたところ,仮に学生時代のけんかを端緒とする暴行事件とは別に,原告がクルド人であることを主張したために暴行を受けたとしても,単なる私人間の争いにすぎないというべきで,このような事情は難民該当性を基礎付ける事情に当たるということはできない。
(エ) また,原告は,2009年(平成21年)3月のネブルーズ祭に参加した当日に暴行を受けたと主張するが,難民調査においては,同年2月の暴行事件後には,何も被害はない旨述べた上,難民認定申請書及び難民調査においては,ネブルーズ祭に参加したことすら何ら記載ないし供述しておらず,原告がクルド人と認められないことからすれば,原告がネブルーズ祭に参加したことすら疑わしいといわざるを得ない。
さらに,原告は,同年3月のネブルーズ祭に関し,警察においてPKKの旗を掲げたこと等について尋問を受けたため,トルコ官憲から,存在を把握され,本国に帰国すれば兵役忌避を理由として身柄拘束を受け,拷問を受けるおそれがあると主張するが,国際的に認知されたテロ組織であるPKKに対する支援活動について,法に基づき捜査・訴追を行うことが,直ちに迫害に当たるということはできない。また,原告は,本件不認定処分に対する異議申立てに係る申述書においては,「逮捕状」ないし「署に呼び出すための文書」が何らかの政治的活動に対して発付されたものとは供述しておらず,警察に赴いたとも供述していない。仮に,原告がネブルーズ祭に参加して,政治的な活動を行ったとしても,トルコ政府は,ネブルーズ祭の祝賀行事それ自体については国家的祝祭として公認し,それが平和的活動である限り,同行事や同行事におけるクルド語による表現活動についても,それを直ちに禁ずることはなく,処罰の対象にもしていない。このようなトルコの一般情勢に加えて,原告の主張によっても,原告は,政治的な活動を行うグループを主導するような立場であったともうかがわれず,同年3月当時,いまだ15歳の未成年であったことからすれば,そのような原告に対し本国政府が殊更関心を寄せるとは考え難いところである。
(オ) その上,原告は,退去強制手続においては,兵役忌避を理由に身柄を拘束されるとは供述していないし,難民認定申請書には,トルコに迫害はないが,兵役の義務があるために迫害下にいる旨を記載しているのであって,このような供述ないし記載内容からすれば,原告自身,兵役忌避を理由として身柄を拘束されるとか,拷問を受けるという恐怖を有していなかったことは明らかといえる。
なお,原告がトルコに送還された場合に,兵役忌避を理由に,訴追及び処罰を受けるおそれがあるとしても,直ちに原告が難民に該当するとはいえないし,トルコ本国の実情からしても,原告が帰国した場合に拷問を受けるおそれがあるとは考え難いというべきである。
ウ 他方,原告は,トルコ政府から正規に自己名義の旅券の発給を受け,何らの問題もなく正規に本国を出国しているが,このような事情は,本国政府が原告を迫害の対象としておらず,原告が本国政府から迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱いていなかったことを示すものである。
エ 以上によれば,原告には,「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」ような個別具体的な客観的事情が存するとは認められないから,原告は,難民に該当しない。したがって,本件不認定処分は,適法である。
(2)  争点(2)(本件在特不許可処分の無効事由の有無)について
(原告の主張)
上記(1)(原告の主張)のとおり,原告は難民であるところ,難民については,第三国が受入れを表明している場合を除き,難民認定処分は当然に在留資格の付与を伴い,又はその後に予定しているものというべきである。一般的に在留特別許可の付与が裁量行為であるとしても,難民に対しては,第三国が受入れを表明している場合を除き,法務大臣の裁量権がなくなってき束行為となるべきものと解すべきである。したがって,本件在特不許可処分は違法である。
(被告の主張)
原告は,難民に該当せず,他に原告の在留特別許可の許否の判断において,特段考慮すべき事情も存しないから,原告につき在留特別許可の制度を設けた入管法の趣旨に明らかに反するような極めて特別な事情は認められず,原告に対して入管法61条の2の2第2項による在留特別許可を付与しなかった東京入管局長の判断に裁量権の範囲の逸脱,濫用はない。したがって,本件在特不許可処分は適法であり,その無効事由となるような重大かつ明白な瑕疵がないことは明らかである。
(3)  争点(3)(本件裁決及び本件退令処分の無効事由の有無)について
(原告の主張)
法務大臣又は法務大臣から権限の委任を受けた地方入国管理局長(以下「法務大臣等」という。)から入管法49条1項に基づく異議申出は理由がない旨の裁決をした旨の通知を受けた場合,主任審査官は,速やかに退去強制令書を発付しなければならないから(同条6項),同条1項に基づく異議申出は理由がない旨の裁決と入管法61条の2の2第1項の在留資格の取得許可ないしは同条2項による在留特別許可とは,完全に矛盾した処分ということになる。
難民認定申請がされれば,同条1項の在留資格の取得許可又は同条2項による在留特別許可の許否の判断は必ずなされるものであることなどからすれば,難民認定申請が退去強制手続の進行を妨害するためになされた濫用的なものであるような場合などを除き,入管法49条1項に基づく異議申出は理由がない旨の裁決より前に難民認定申請についての判断と入管法61条の2の2第1項の在留資格の取得許可,同条2項による在留特別許可の可否の判断がなされることが原則とされているというべきである。さらに,取消訴訟によって難民不認定処分が取り消され,難民と認定すべきであり,入管法61条の2の2第1項の在留資格の取得許可又は同条2項による在留特別許可がなされるべきであったと判断される場合,又は難民不認定処分は適法であったものの,入管法61条の2の2第2項による在留特別許可がなされるべきであったと判断される場合には,入管法61条の2の6第1項の規定により,退去強制手続を進めて入管法49条1項に基づく異議申出は理由がない旨の裁決をしてはならなかったはずであるのにこれをしたということになるから,それらの場合には入管法49条1項に基づく異議申出は理由がない旨の裁決もまた違法になり,退去強制令書発付処分も違法性を承継して違法となるというべきである。
そして,主任審査官は,法務大臣等から異議の申出に理由がないとの裁決をした旨の通知を受けた場合であっても,難民条約33条1項,拷問等禁止条約3条によれば,迫害を受けるおそれのある領域,拷問を受けるという実質的理由を有するおそれのある国を送還先と指定した退去強制令書を発付することはできないから,このような国を送還先と指定した退去強制令書は,入管法53条3項に違反し,違法である。
(被告の主張)
難民の認定の申請を行った在留資格未取得外国人について,法務大臣等が退去強制手続の中で異議の申出に対する裁決を行う際には,入管法50条1項の適用はなく,法務大臣等は,専ら,当該外国人が退去強制事由に該当するかどうかに係る特別審理官の判定に誤りがあるか否かのみを判断するものであるところ(入管法61条の2の6第4項),原告は入管法24条5号の2所定の退去強制事由に該当するから,本件の特別審理官の判定に誤りはなく,本件裁決は適法である。
また,退去強制手続において,異議の申出に理由がないとの裁決をした旨の通知を受けた場合,主任審査官は,速やかに退去強制令書を発付しなければならないのであって,退去強制令書を発付するにつき全く裁量の余地はないから,本件裁決が適法である以上,本件退令処分も当然に適法である。
さらに,原告は難民に該当しないから,送還先をトルコとしている点にも何ら瑕疵はない。
したがって,本件裁決及び本件退令処分に無効事由となるような重大かつ明白な瑕疵がないことは明らかである。
第3  当裁判所の判断
1  争点(1)(本件不認定処分の適法性(原告の難民該当性))について
(1)  難民の意義等
ア 入管法2条3号の2は,入管法における「難民」の意義について,難民条約1条の規定又は難民議定書1条の規定により難民条約の適用を受ける難民をいうものと規定しているところ,難民条約及び難民議定書の上記規定によれば,入管法にいう「難民」(ただし,無国籍者を除く。以下,単に「難民」という。)とは,「人種,宗教,国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために,国籍国の外にいる者であって,その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの」をいうこととなる。そして,上記にいう「迫害」とは,通常人において受忍し得ない苦痛をもたらす攻撃ないし圧迫であって,生命又は身体の自由の侵害又は抑圧を意味するものと解するのが相当であり,また,上記にいう「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」というためには,当該人が迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱いているとの主観的事情があるだけでは足りず,通常人が当該人の立場に置かれた場合にも迫害の恐怖を抱くような客観的事情が存在していることが必要であると解するのが相当である。
イ 難民の認定における立証責任の帰属については,入管法61条の2第1項が,法務大臣は,難民認定申請者が提出した資料に基づき,その者が難民である旨の認定を行うことができる旨規定しており,難民認定について難民認定申請者が資料を提出することを前提としている。また,難民認定を受けた者は,入管法61条の2の2第1項に基づき定住者の在留資格を取得できるなど,有利な法的地位が与えられることになるから,難民認定は,いわゆる授益処分に当たるものであるところ,一般に,授益処分については,その処分を受ける者が,根拠法令の定める処分要件が充足されていることについて立証責任を負担するものと解される。以上によれば,難民該当性の立証責任は,難民認定申請者にあると解するのが相当である。
(2)  トルコの政治情勢
ア クルド民族
クルド民族とは,主にトルコ,イラク共和国(以下「イラク」という。),イラン・イスラム共和国等にまたがる地域に居住し,クルド語を母語とする民族であるとされ,トルコ国内には推定1000万人以上ものクルド系住民が居住しているといわれている(乙B1の1・2)。
イ クルド語の解禁
トルコにおいては,かねてクルド語の使用が禁止されていたところ,1991年(平成3年)春には,トルコ国内においてクルド語を使用することを禁止する根拠となっていた法律が廃止され,以来,トルコ国内の市場にはクルド語の出版物や音楽著作物が流通し,さらには,ラジオ,テレビ放送についてもクルド語による放送が一定の範囲内で事実上認められるようにもなり,クルド語による放送の合法化の是非も議論されるに至った(甲36〔56頁〕,49〔7.12〕,乙B2の1〔6.39,添付の報告書6.2.2〕乙B3〔訳文3,4,28及び33頁〕)。
そして,2004年(平成16年)6月には,国営放送において,ボスニア語,アラビア語,サーカシア語などと共に,トルコ国民が伝統的に日常生活で使用してきた言語として,クルド語(トルコにおける主要なクルド語であるクルマンジ語及びザザ語)による番組が開始され,同年4月以降,クルド人が多く居住している南東部を含む地域においてクルド語の教育施設が設立されている(乙A28〔20.13〕,乙B2の2〔6.230ないし6.238〕)。
ウ トルコの民主化と憲法改正
トルコでは,1970年代に国内情勢が不安定となり治安が悪化していたところ,1980年(昭和55年)9月にケナン・エヴレン国軍参謀長が率いる軍部が無血軍事クーデターを敢行し,その影響下で1982年(昭和57年)に制定されたトルコ憲法は,国家治安の維持を重視した内容であった(乙B2の1〔4.4,4.5,5.1〕)。
しかしながら,1990年代初頭から治安の安定と共に,トルコ社会における民主化が進んでおり,そのような社会情勢の変化を受けて,頻繁に憲法改正がされている。その背景には,トルコの欧州連合(以下「EU」という。)加盟問題があり,トルコ政府は,2001年(平成13年)3月,EU加盟に向けた国家プログラムを発表し,EU諸国と同等の法社会体制の実現に向けた改革を進めている。2001年(平成13年)10月の憲法改正では,クルド語の使用に対する制限が緩和されるなどの改革がなされ,2002年(平成14年)8月3日には,クルド語の教育や放送を解禁する法案を含む14改革法案がトルコ国会において一括可決されるに至った。(乙B2の1〔4.38ないし4.43〕,乙B4の1ないし3)
なお,原告の出生及び居住地域であるアディヤマン県及びガジアンテップ県においては,1986年(昭和61年)3月に,非常事態宣言が解除された(乙B2の1〔4.8〕)。
エ クルド系住民の社会進出
グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(以下「英国」という。)内務省のトルコの国内情勢に係る報告書は,国内におけるクルド人は,しばしばトルコ人と異民族間結婚しており,歴史的にはクルド民族であっても,完全にトルコ人社会に溶け込み,クルド語さえ話せなくなっている者も多く,トルコの議員及び他の政府高官の25パーセントは民族的にクルド人の血筋を受け継いでおり,元副総理大臣で,共和人民党(CHP)の党首であったヒクメット・チェティンや元大統領トルグト・オザルも,クルド人の血統を持っている旨を報告している(甲97,乙B2の1〔6.120ないし6.122,6.125,添付の報告書2.4.7〕)。
英国内務省の報告と同様に,アメリカ合衆国国務省の報告においても,多くの議員,政府高官及び専門家がクルド民族であるとし,国連難民高等弁務官事務所の報告も,トルコにおけるクルド系トルコ人がクルド人であることのみを理由に迫害を受けるおそれがあるとは認められない旨報告している(乙B2の1〔6.125,添付の報告書2.4.3,2.4.7〕)。
オ PKKについて
(ア) PKKは,1978年(昭和53年)にオジャランによって結成され,トルコ国内においてゲリラ戦やテロ活動を行ってきた反政府武装集団である(乙B1の1,乙B10ないし16の2)。
トルコにおいては,PKKが武装闘争を開始した1984年(昭和59年)以来,治安部隊とPKKの戦闘やテロ行為により,市民を含めて3万人に上る犠牲者が出ているといわれており,また,1999年(平成11年)2月に,PKKのオジャラン党首が逮捕されたところ,その際にも,イスタンブール及びトルコ南東部において放火や無差別的爆弾テロ事件が散発的に発生し,トルコ国外においても,欧州各国やロシア連邦,カナダ等において,同党首の支持者らが,ギリシャ共和国の大使館・領事館及びその他の公的機関に乱入し又は一時占拠するなど,過激な抗議行動を起こしており,1997年(平成9年)には少なくとも130人の非武装の市民がPKKによって殺害されたとされている(乙B2の1〔6.137〕,乙B12の2,乙B13の1・2,乙B14の1・2)。
オジャランの逮捕以降,トルコの治安状況は大幅に好転し,2002年(平成14年)11月にはトルコ全土の全ての県で非常事態宣言の発令が解除されるなどしているものの,PKKは,2005年(平成17年)においても,公共の場所における爆弾テロを企図するなど,その危険性はいまだ失われていないことが指摘されるが,オジャランは,2013年(平成25年)3月には,暴力停止を呼びかけるメッセージを発出している(甲68,乙B2の1〔4.8〕,乙B16の1・2)。
(イ) 一方で,トルコ政府は,2000年(平成12年)12月21日,PKK等の非合法組織の支援者を含む刑法犯を対象として,減刑や恩赦による釈放を認める恩赦法を承認するなど,柔軟な対応を示しており,PKKの構成員及びこれと疑われている者の親族は,トルコ当局から監視されている可能性があるが,親族がPKKと無関係であることを当局が確信すれば,迫害されることはなく,トルコでは,PKKに親族の1人や2人がいる者は数多いが,それらの者はトルコ当局と何ら問題を起こすことなく生活をしている。また,PKK党首オジャランらの家族が拘束を受けることもなく生活し,公に政治的活動をしているとも報告されている(甲50〔5.123〕,乙B2の1〔5.43ないし5.45,6.188,6.189〕)。
カ ネブルーズ祭について
ネブルーズ祭は,クルド人の祭りであり,火を焚き,クルド民族の民族衣装を着てクルド民族の踊りを踊るなどする行事である(甲45〔49,51頁〕)。
トルコ政府は,クルド民族等の伝統的な行事であるネブルーズ祭について,1996年(平成8年)に国家的祝祭として公認し,2001年以降は,一部で警察と参加者との間の衝突が見られたものの,ネブルーズ祭の開催について寛容な態度をとり続けているとの報告がされている(甲45,乙A28〔20.52,20.53〕,乙B2の1〔6.144,添付の報告書6.2.8〕)。
キ 兵役について
トルコにおいては,新兵が基礎訓練を終えた後に配属される部署は,コンピューターで決定され,また,トルコ軍は,PKKとの紛争が激化したような場合には,南東部出身の新兵を紛争地域に配属しないような特別措置を施し,徴集兵ではなく兵役を終了し特殊訓練を受けた正規軍を配備しており,近時,治安の改善からPKKに対する作戦は散発的であることからも,クルド人が兵役に応じた場合,トルコ南東部出身者がPKKとの戦闘で紛争地域に配属され,PKKと戦う可能性は極めて低いとされている(乙B2の1〔5.55,5.94,5.96〕)。
(3)  原告の主張について
ア 原告は,クルド人であることから迫害を受け,2009年(平成21年)2月5日には,仕事から帰宅途中にバスから降車した際に,かねて顔見知りの3名のトルコ人に暴行を加えられ,傷害を負うに至った旨,同年3月にネブルーズ祭に参加した際に,クルド民族の旗だと考えている緑と赤と黄色の3色旗を掲げ,さらにはオジャランの写真を掲げるなどの政治活動をしたことにより,警察の取調べを受け,差別的な扱いをされた旨等を供述する。
しかし,原告がバスから降車した際に受けた暴行については,原告の供述によっても,原告が顔見知りの者から暴行を受けたというものであって,飽くまで私的な争いにすぎない。
また,原告がネブルーズ祭に参加した際に警察の取調べを受け,差別的な取扱いを受けた点について見ても,原告の主張によっても,警察から暴行,脅迫等の迫害を受けたものとはされておらず,他にこれを認めるに足りる証拠はなく,上記(2)カのとおり,近時,本国政府がネブルーズ祭をクルド人に対する迫害の契機としているとも認められない。
イ さらに,原告は,DTPないしBDPに加入していたことにより迫害を受けるおそれがあると主張するものと解されるが,これを認めるに足りる証拠はない。
ウ 加えて,原告は,トルコを離れていることにより,兵役を逃れたため,迫害を受けるおそれがあると主張するが,そもそも兵役義務が課されている国において,兵役を忌避する意思を有するからといって,直ちに難民に該当するといえるものではないことは明らかであり,また,兵役義務を履行しない場合に刑罰が科され得るとしても,それが法定の手続に従って訴追及び処罰が行われ,人種や宗教等を理由として恣意的な訴追及び処罰がされない限り,迫害には当たらないというべきところ,恣意的な訴追及び処罰がされていると認めるに足りる証拠はない。
また,原告は,兵役に就いた場合,PKKと戦闘することが予想されるところ,同じクルド人であるPKKと戦いたくないという「政治的意見」を有している旨を主張するが,原告が上記政治的意見を持っていたとしても,上記(2)キに認定したところによれば,これをもって直ちに難民に該当するとはいえないというべきである。
エ 以上によれば,原告が本国に帰国したとしても,本国政府から迫害を受けるおそれがあると認められるということはできず,また,通常人が原告の立場に置かれた場合に迫害の恐怖を抱くような客観的事情が存在しているということもできない。したがって,原告が難民であるということはできず,原告を難民と認めなかった本件不認定処分に違法な点はないから,本件不認定処分は,適法である。
オ なお,原告は,自らがクルド人であるかどうかについて,退去強制手続において,クルド人ではない旨を供述していたのに対し,(乙A3〔1,6頁〕,6〔1頁〕),難民調査においては,「自分がクルド人かどうかはわかりません。」(乙A18〔2頁〕)と供述し,口頭審理においては,「クルド民族です。」と供述し(乙A9〔2,14頁〕),自身がクルド人であるか否かについて供述を変遷させている。
また,ネブルーズ祭に際しての事情についてみるに,難民認定申請書において,逮捕,抑留,拘禁その他身体の拘束や暴力を受けたことはない旨を述べ(乙A17〔訳文5頁〕),難民調査においても,ネブルーズ祭に関する事情は供述せず(乙A18),退去強制手続においても,トルコ政府や警察から,差別や暴行などを受けたことはない旨を供述していたのであり(乙A3〔6頁〕),その後,本件異議申立て後に提出した原告代理人作成の「口頭意見陳述要旨」において,突如として,ネブルーズ祭に関する事情を述べるに至った(乙A26〔3頁〕)。その上,原告は,ネブルーズ祭における事情について,訴状においては,当日の午後に,仲間たち十数人と共に捕まり,2日間警察で身柄拘束を受けた旨,連行される際には警察官から首を絞められて,目的は何だと言われた旨を主張したのに対し,原告代理人作成の平成29年6月18日付け供述録取書においては,ネブルーズ祭の際に,知らないトルコ人と殴り合いになり,周りの人に止めてもらって逃げたところ,1ないし2週間後に,警察署に連行されて尋問を受け,尋問をした警察官から,ネブルーズ祭のときの写真を示して,なぜこのような活動をするのか等を言われ,その1週間後にまた警察に呼ばれた旨等を供述した旨が記載されている(甲100〔4,5頁〕)。さらに,原告は,本人尋問においては,ネブルーズ祭の際に知らないトルコ人から暴行を受けたところ,警備をしていた警察官らが間に入り,双方共に警察に連行され,なぜオジャランの写真を掲げるのかなどと言われた旨,その後は警察に行っていない旨を供述する(調書7ないし9頁)。
このように,原告の供述は変遷しているところ,難民認定申請に際し,難民調査官の調査に関する希望として,「通訳にはトルコ語が上手であるように」などと述べていることから(乙A17〔訳文12頁〕,原告本人〔調書14,22頁〕),原告の供述が正確に記録されているかは,通訳を介した供述であることによる限界があることは否定できないと解されること,前記(2)エで認定したトルコにおけるクルド系住民の社会進出の状況,ネブルーズ祭に関する事情についてはトラブルとなり警察官の介入を受けたとする点で大筋において内容が一致していることに照らし,上記変遷をもって直ちに原告の供述が根本から信用できないとまではいえないが,上記のとおり,原告が主張する事実をもってしても,難民と認められないというべきである。
2  争点(2)(本件在特不許可処分の無効事由の有無)について
原告は,原告が難民であるから本件在特不許可処分は違法かつ無効である旨主張するが,上記1で判断したとおり原告は難民に該当するとは認められないから原告の上記主張は採用の限りではなく,また,他に本件在特不許可処分の時点において原告の在留を特別に許可すべき事情があったとは認められないから,本件在特不許可処分に無効事由となるような重大かつ明白な瑕疵があるとは認められない。
3  争点(3)(本件裁決及び本件退令処分の無効事由の有無)について
(1)  法務大臣等が難民の認定の申請をした在留資格未取得外国人で仮滞在許可を受けていないものにつき退去強制の手続において異議の申出に対する裁決をする場合には,入管法50条1項の適用はなく(入管法61条の2の6第4項),法務大臣等は,異議の申出をした者が退去強制対象者に該当するか否かという点に関する特別審理官の判定についての異議の申出に理由があるか否かを判断すれば足りるものと解される。
前提事実(4)ア,イのとおり,原告は,難民の認定の申請をした在留資格未取得外国人であり,かつ,仮滞在の許可を受けていないものであったから,入管法50条1項の適用はないところ,前提事実(2)のとおり,原告は,入管法7条1項2号に規定する上陸のための条件に適合していないとして退去を命ぜられた者で,遅滞なく本邦から退去しなかったものであるから,入管法24条5号の2所定の退去強制事由に該当するものであって,東京入管特別審理官の判定に対する原告の異議の申出には理由がないことは明らかである。したがって,本件裁決は適法であり,無効事由となるような重大かつ明白な瑕疵があるとは認められない。
(2)  法務大臣等は,入管法49条1項に基づく異議の申出があったときは,異議の申出に理由があるか否かについての裁決をして,その結果を主任審査官に通知しなければならず(同条3項),主任審査官は,法務大臣等から異議の申出は理由がない旨の裁決をした旨の通知を受けたときは,当該容疑者に対し,速やかにその旨を知らせるとともに,入管法51条の規定による退去強制令書を発付しなければならない(入管法49条6項)。
前提事実(3)カのとおり,処分行政庁東京入管主任審査官は,裁決行政庁から本件裁決をした旨の通知を受けている。したがって,処分行政庁は,入管法上,これに従って退去強制令書を発付するほかなく,これを発付するか否かについて裁量を有するものではないところ,上記(1)のとおり,本件裁決は適法であり,さらに,前記1で認定判断したところによれば,トルコを送還先とすることが入管法53条3項に違反するものともいえないから,本件退令処分は適法であり,無効事由となるような重大かつ明白な瑕疵があるとは認められない。
第4  結論
よって,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部
(裁判長裁判官 林俊之 裁判官梶浦義嗣及び裁判官高橋心平は,転補につき,署名押印することができない。裁判長裁判官 林俊之)

 

別紙1
指定代理人目録〈省略〉
別紙2
関係法令の定め
第1 入管法
1 2条(定義)
入管法及びこれに基づく命令において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) 1ないし3号 〔略〕
(2) 3号の2
難民 難民の地位に関する条約(以下「難民条約」という。)1条の規定又は難民の地位に関する議定書(以下「難民議定書」という。)1条の規定により難民条約の適用を受ける難民をいう。
(3) 4ないし16号 〔略〕
2 53条(送還先)
(1) 1項
退去強制を受ける者は,その者の国籍又は市民権の属する国に送還されるものとする。
(2) 2項
前項の国に送還することができないときは,本人の希望により,左に掲げる国〔略〕のいずれかに送還されるものとする。
(3) 前2項の国には,次に掲げる国を含まないものとする。
ア 1号
難民条約33条1項に規定する領域の属する国(法務大臣が日本国の利益又は公安を著しく害すると認める場合を除く。)
イ 2号
拷問及び他の残虐な,非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約(以下「拷問等禁止条約」という。)3条1項に規定する国
ウ 3号 〔略〕
第2 難民条約
1 1条(「難民」の定義)
(1) A
この条約の適用上,「難民」とは,次の者をいう。
ア (1) 〔略〕
イ (2)
1951年1月1日前に生じた事件の結果として,かつ,人種,宗教,国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために,国籍国の外にいる者であって,その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの及びこれらの事件の結果として常居所を有していた国の外にいる無国籍者であって,当該常居所を有していた国に帰ることができないもの又はそのような恐怖を有するために当該常居所を有していた国に帰ることを望まないもの
〔以下略〕
(2) BないしF 〔略〕
2 33条(追求及び送還の禁止)1
締約国は,難民を,いかなる方法によつても,人種,宗教,国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見のためにその生命又は自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放し又は送還してはならない。
第3 難民議定書1条(一般規定)
1 1
この議定書の締約国は,2に定義する難民に対し,難民条約第2条から第34条までの規定を適用することを約束する。
2 2
この議定書の適用上,「難民」とは,3の規定の適用があることを条件として,難民条約第1条を同条A(2)の「1951年1月1日前に生じた事件の結果として,かつ,」及び「これらの事件の結果として」という文言が除かれているものとみなした場合に同条の定義に該当するすべての者をいう。
3 3 〔略〕
第4 拷問等禁止条約
3条1項
締約国は,いずれの者をも,その者に対する拷問が行われるおそれがあると信ずるに足りる実質的な根拠がある他の国へ追放し,送還し又は引き渡してはならない。
以上


「政治活動 選挙運動」に関する裁判例一覧
(1)平成30年10月31日 東京地裁 平27(ワ)18282号 損害賠償請求事件
(2)平成30年 5月15日 東京地裁 平28(行ウ)332号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(3)平成30年 4月18日 東京高裁 平29(行コ)302号 埼玉県議会政務調査費返還請求控訴事件
(4)平成30年 3月30日 東京地裁 平27(ワ)37147号 損害賠償請求事件
(5)平成30年 2月21日 東京地裁 平28(行ウ)6号 労働委員会救済命令取消請求事件
(6)平成29年12月20日 大阪地裁 平27(ワ)9169号 損害賠償請求事件
(7)平成29年11月 2日 仙台地裁 平26(行ウ)2号 政務調査費返還履行等請求事件
(8)平成29年10月11日 東京地裁 平28(ワ)38184号 損害賠償請求事件
(9)平成29年 9月28日 東京高裁 平28(う)2243号 業務上横領被告事件
(10)平成29年 9月28日 東京地裁 平26(行ウ)229号 難民不認定処分取消請求事件
(11)平成29年 9月 8日 東京地裁 平28(行ウ)117号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(12)平成29年 7月24日 東京地裁 平28(特わ)807号 公職選挙法違反被告事件
(13)平成29年 6月29日 宇都宮地裁 平23(行ウ)8号 政務調査費返還履行請求事件
(14)平成29年 5月18日 東京高裁 平28(う)1194号 公職選挙法違反被告事件
(15)平成29年 3月30日 広島高裁岡山支部 平28(行コ)2号 不当利得返還請求控訴事件
(16)平成29年 3月15日 東京地裁 平27(行ウ)403号 地位確認等請求事件
(17)平成29年 1月31日 大阪高裁 平28(ネ)1109号 損害賠償等請求控訴事件
(18)平成29年 1月31日 仙台地裁 平25(行ウ)11号 政務調査費返還履行等請求事件
(19)平成28年10月12日 東京地裁 平25(刑わ)2945号 業務上横領被告事件
(20)平成28年 8月23日 東京地裁 平27(行ウ)384号 難民不認定処分取消等請求事件
(21)平成28年 7月28日 名古屋高裁 平28(行コ)19号 難民不認定処分等取消請求控訴事件
(22)平成28年 7月19日 東京高裁 平27(ネ)3610号 株主代表訴訟控訴事件
(23)平成28年 6月 3日 静岡地裁 平27(わ)241号 公職選挙法違反被告事件
(24)平成28年 3月25日 大阪高裁 平27(ネ)1608号 損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件
(25)平成28年 3月15日 大阪地裁 平27(ワ)3109号 損害賠償等請求事件
(26)平成28年 2月17日 東京地裁 平26(行ウ)219号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(27)平成28年 1月28日 名古屋地裁 平23(行ウ)109号 難民不認定処分等取消請求事件
(28)平成27年12月16日 大阪高裁 平27(ネ)697号 損害賠償請求控訴事件、同附帯控訴事件
(29)平成27年12月11日 東京地裁 平26(行ウ)245号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(30)平成27年 7月 3日 東京地裁 平26(行ウ)13号 難民不認定処分取消請求事件
(31)平成27年 6月26日 大阪高裁 平26(行コ)163号 建物使用不許可処分取消等・建物明渡・使用不許可処分取消等請求控訴事件
(32)平成27年 6月24日 宇都宮地裁 平22(行ウ)8号 政務調査費返還履行請求事件
(33)平成27年 6月 1日 大阪地裁 平27(ヨ)290号 投稿動画削除等仮処分命令申立事件
(34)平成27年 3月30日 大阪地裁 平24(ワ)8227号 損害賠償請求事件(第一事件)、損害賠償請求事件(第二事件)
(35)平成27年 1月21日 大阪地裁 平24(ワ)4348号 損害賠償請求事件
(36)平成26年10月28日 東京地裁 平24(行ウ)496号 三鷹市議会議員および市長選挙公営費返還請求事件
(37)平成26年10月24日 和歌山地裁 平23(行ウ)7号 政務調査費違法支出金返還請求事件
(38)平成26年10月20日 東京地裁 平25(ワ)8482号 損害賠償請求事件
(39)平成26年 8月25日 東京地裁 平24(行ウ)405号 不当労働行為救済命令一部取消請求事件(第1事件)、不当労働行為救済命令一部取消請求事件(第2事件)
(40)平成26年 7月11日 札幌地裁 平22(行ウ)42号 政務調査費返還履行請求事件
(41)平成25年10月16日 東京地裁 平23(行ウ)292号 報酬返還請求事件
(42)平成25年 6月19日 横浜地裁 平20(行ウ)19号 政務調査費返還履行等代位請求事件
(43)平成25年 2月28日 東京地裁 平22(ワ)47235号 業務委託料請求事件
(44)平成25年 1月18日 東京地裁 平23(行ウ)442号 難民の認定をしない処分取消請求事件
(45)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)95号 選挙無効請求事件
(46)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)72号 選挙無効請求事件
(47)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)65号 選挙無効請求事件
(48)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)64号 選挙無効請求事件
(49)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)59号 選挙無効請求事件
(50)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)52号 選挙無効請求事件
(51)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)51号 選挙無効請求事件 〔参議院議員定数訴訟・大法廷判決〕
(52)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)179号 
(53)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)174号 参議院議員選挙無効請求事件
(54)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)171号 選挙無効請求事件
(55)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)155号 選挙無効請求事件
(56)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)154号 選挙無効請求事件
(57)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)153号 選挙無効請求事件
(58)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)135号 選挙無効請求事件
(59)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)133号 選挙無効請求事件
(60)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)132号 選挙無効請求事件
(61)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)131号 選挙無効請求事件
(62)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)130号 選挙無効請求事件
(63)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)113号 選挙無効請求事件
(64)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)112号 選挙無効請求事件
(65)平成24年 9月 6日 東京地裁 平24(ワ)2339号 損害賠償等請求事件、販売差止請求権不存在確認等請求事件
(66)平成24年 5月17日 東京地裁 平22(行ウ)456号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(67)平成24年 5月11日 名古屋高裁 平22(ネ)1281号 損害賠償請求控訴事件 〔議会代読拒否訴訟・控訴審〕
(68)平成24年 1月24日 東京地裁 平23(ワ)1471号 組合長選挙無効確認等請求事件 〔全日本海員組合事件〕
(69)平成23年12月21日 横浜地裁 平22(ワ)6435号 交通事故による損害賠償請求事件
(70)平成23年 9月 2日 東京地裁 平22(行ウ)36号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(71)平成23年 7月22日 東京地裁 平22(行ウ)555号 難民の認定をしない処分取消請求事件、追加的併合申立事件
(72)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)303号 衆議院議員選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(73)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)268号 選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(74)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)257号 選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(75)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)256号 選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(76)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)235号 選挙無効請求事件
(77)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)234号 選挙無効請求事件
(78)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)207号 選挙無効請求事件
(79)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)206号 選挙無効請求事件
(80)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)203号 選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(81)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)201号 選挙無効請求事件
(82)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)200号 選挙無効請求事件
(83)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)199号 選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(84)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)189号 選挙無効請求事件
(85)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)188号 選挙無効請求事件
(86)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)130号 選挙無効請求事件
(87)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)129号 選挙無効請求事件
(88)平成22年11月 9日 東京地裁 平21(行ウ)542号 政務調査費返還(住民訴訟)請求事件
(89)平成22年10月29日 東京地裁 平19(行ウ)472号 難民の認定をしない処分取消等請求事件、在留特別許可をしない処分取消請求事件
(90)平成22年 7月30日 東京地裁 平21(行ウ)281号 難民の認定をしない処分取消請求事件
(91)平成22年 6月 1日 札幌高裁 平22(う)62号 公職選挙法違反被告事件
(92)平成22年 3月31日 東京地裁 平21(行ウ)259号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(93)平成22年 2月12日 札幌地裁 平21(わ)1258号 公職選挙法違反被告事件
(94)平成22年 2月 3日 東京高裁 平21(行ケ)30号 選挙無効請求事件
(95)平成21年 3月27日 宮崎地裁 平18(わ)526号 競売入札妨害、事前収賄、第三者供賄被告事件
(96)平成21年 2月26日 名古屋高裁 平20(行コ)32号 損害賠償(住民訴訟)請求等控訴事件
(97)平成20年10月 8日 東京地裁 平13(ワ)12188号 各損害賠償請求事件
(98)平成20年 8月 8日 東京地裁 平18(刑わ)3785号 収賄、競売入札妨害被告事件〔福島県談合汚職事件〕
(99)平成20年 5月26日 長崎地裁 平19(わ)131号 殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反、公職選挙法違反等被告事件
(100)平成20年 4月22日 東京地裁 平18(ワ)21980号 地位確認等請求事件 〔財団法人市川房江記念会事件〕


■選挙の種類一覧
選挙①【衆議院議員総選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙②【参議院議員通常選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙③【一般選挙(地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙④【特別選挙(国政選挙|地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)


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