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「政治活動 選挙運動」に関する裁判例(39)平成26年 8月25日 東京地裁 平24(行ウ)405号 不当労働行為救済命令一部取消請求事件(第1事件)、不当労働行為救済命令一部取消請求事件(第2事件)

「政治活動 選挙運動」に関する裁判例(39)平成26年 8月25日 東京地裁 平24(行ウ)405号 不当労働行為救済命令一部取消請求事件(第1事件)、不当労働行為救済命令一部取消請求事件(第2事件)

裁判年月日  平成26年 8月25日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(行ウ)405号・平24(行ウ)533号
事件名  不当労働行為救済命令一部取消請求事件(第1事件)、不当労働行為救済命令一部取消請求事件(第2事件)
裁判結果  第1事件認容、第2事件請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2014WLJPCA08258001

要旨
◆X社がZ組合の副執行委員長A5に対して行った無許可のビラ配布を理由とする本件訓告、A5の遅刻を理由とする本件戒告、本件雇止め、社員採用選考試験受験の無効の通告につき、本件訓告は労組法7条1号の不当労働行為に当たるとして中労委から同部分に係る文書手交を命じる旨の本件命令がなされたため、X社(第1事件)及びZ組合(第2事件)がその取消しを求めた事案において、X社の許可なく同社施設内で行われた本件ビラ配布につき、職場規律や職場秩序を乱すおそれのない特別の事情は認められず就業規則の各規定に反するなどとして本件訓戒の不当労働行為性を否定し、また、遅刻を繰り返したA5に対する本件戒告や本件雇止め、社員採用選考試験の募集要項にある採用予定日前日に契約社員として勤務する見込みという要件を欠くA5に対する本件通告の各不当労働行為性も否定してX社の請求を認容する一方、Z組合の請求は棄却した事例

参照条文
労働組合法7条
行政事件訴訟法3条2項
行政事件訴訟法30条

裁判年月日  平成26年 8月25日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(行ウ)405号・平24(行ウ)533号
事件名  不当労働行為救済命令一部取消請求事件(第1事件)、不当労働行為救済命令一部取消請求事件(第2事件)
裁判結果  第1事件認容、第2事件請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2014WLJPCA08258001

平成24年(行ウ)第405号 不当労働行為救済命令一部取消請求事件(以下「第1事件」という。)
同第533号 不当労働行為救済命令一部取消請求事件(以下「第2事件」という。)

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

 

 

主文

1  中央労働委員会が中労委平成23年(不再)第38号,同第40号事件について平成24年4月4日付けでした命令のうち,主文第2項及び同第3項を取り消す。
2  第2事件原告の請求をいずれも棄却する。
3  訴訟費用(参加費用を含む。)は,第1事件について生じたもののうち補助参加に係る費用は同事件補助参加人の,その余は同事件被告の各負担とし,第2事件について生じたもの(参加費用を含む。)は同事件原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  第1事件
主文第1項同旨
2  第2事件
中央労働委員会が中労委平成23年(不再)第38号,同第40号事件について平成24年4月4日付けでした命令のうち,主文第1項及び第4項を取り消す。
第2  事案の概要
1  事案の要旨
第1事件補助参加人兼第2事件原告Z労働組合(以下「組合」という。)は,第1事件原告兼第2事件参加人X株式会社(以下「会社」という。)が,組合副執行委員長のA5(以下「A5」という。)に対し,①同人が,平成21年9月5日,同年10月19日及び同月21日,会社施設内において,会社の許可を得ないまま,ビラを配布したことを理由として,同年11月5日付けで訓告に付したこと(以下「本件訓告」という。),②A5が,同年10月2日,出務遅延(以下,単に「遅刻」という。)したことを理由として,同年12月28日付けで戒告処分に付したこと(以下「本件戒告」という。),③平成22年2月19日付けで雇止め事由書を交付し,同年3月31日,雇止めにしたこと(以下「本件雇止め」という。),④同人の社員採用選考試験受験の無効を通告したこと(以下「本件通告」という。)がそれぞれ労働組合法(以下「労組法」という。)7条所定の不当労働行為(①については同法7条1号,②については同条3号,③及び④については同条1号,3号及び4号)に当たるとして,同年1月12日及び同月26日,岡山県労働委員会(以下「岡山県労委」という。)に対し,要旨,別紙1記載の内容の救済を申し立てた(岡山県労委平成22年(不)第1号事件。以下「本件救済申立て」という。)。
これに対し,岡山県労委が,要旨,①本件訓告は,労組法7条1号の,②本件戒告は,同条3号の不当労働行為にそれぞれ該当するが,③本件雇止め及び④本件通告は不当労働行為に該当しないとして,平成23年5月20日,会社に対し,別紙2記載に係る文書の手交を命じ,その余の申立てを棄却する旨の命令をしたところ(以下「初審命令」といい,初審命令に係る手続を「初審」という。),組合及び会社は,初審命令を不服として,組合は同月24日,会社は同月31日,それぞれ中央労働委員会(以下「中労委」という。)に対し,再審査を申し立てた(中労委平成23年(不再)第38号及び同第40号事件)。
上記申立てに対し,中労委は,要旨,①本件訓告は,労組法7条1号の不当労働行為に当たるが,②本件戒告,③本件雇止め及び④本件通告は不当労働行為に該当しないとして,初審命令中,本件戒告に対する救済部分を取り消し,同救済申立てを棄却し(主文第1項),初審命令の主文第1項を別紙3記載に係る文書の手交を命じる内容に変更し(同第2項),会社のその余の再審査申立てを棄却し(同第3項),組合の再審査申立てを棄却する(同第4項)旨の命令をした(以下「本件命令」という。)。
本件は,本件命令を不服とする会社及び組合が,第1事件被告兼第2事件被告(以下,単に「被告」という。)に対し,それぞれ本件命令には後記3のとおり,事実を誤認し,あるいは法令の解釈適用を誤った違法があるなどと主張して,会社は本件命令のうち上記①に係る部分(主文第2項及び第3項)について,組合は本件命令のうち上記②ないし④に係る部分(主文第1項及び第4項)について,それぞれその取消しを求めた事案である。
2  前提事実(当事者間に争いがないか,証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実等)
(1)  会社は,日本国有鉄道改革法(以下「国鉄改革法」という。)に基づき,日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)が経営していた旅客鉄道事業等のうち,西日本地域における旅客鉄道事業を承継して昭和62年4月に設立された株式会社である。
肩書地に本社を,また,岡山市北区に岡山支社(以下「支社」という。)を置いている。
(2)  組合は,会社及びその関連会社に雇用される労働者により組織された労働組合であり,A4(以下「A4」という。)がその執行委員長を務めている(ただし,組合では執行部内における路線の対立があり,A4とは別に執行委員長の地位にあると主張する者があったため,会社は,これらの者との間で,「対象となる組合員」を明示した上で,当該組合員の労働条件に関する事柄についてのみ団体交渉を行い,その結果は当該組合員に限って適用することとする旨の確認書(以下「21年3月3日確認書」という。)を締結していた。)。
組合は,a労働組合(以下「a労組」という。)等とともに上部団体であるb労働組合総連合(以下「b総連」という。)に加盟しており,主たる事務所を肩書地に置いている。
組合には,初審申立時,A5を含め,4名の組合員がいた。
(3)  会社には,組合のほか,c労働組合(以下「c労組」という。上部団体は,d労働組合連合会(以下「d労連」という。)。),e労働組合(以下「e労組」という。),f労働組合(以下「f労組」という。上部団体は,g労働組合総連合会(以下「g総連」という。)。)及びh労働組合(以下「h労組」という。)といった複数の労働組合が存在しており,会社は,組合以外の労働組合とは組合掲示板の供与等を含む総合労働協約を締結していた。
(4)  A5は,平成17年12月19日,支社の契約社員として採用され,以降,i駅で運輸管理係として勤務するようになった。その契約期間は,初回は平成18年3月末日までであり,その後は1年毎と定められていた。
A5の主な業務内容は,i駅の切符販売(◎◎窓口),改札及び案内業務等であり,これらの業務を勤務指定表に記載された作業ダイヤに従って勤務を行うこととされていた。
(5)  A5は,平成21年1月28日,組合(当時は組合広島本部)に加入し,同年2月8日,組合広島支部臨時大会において広島支部副委員長に就任した。また,同年9月,A4が執行委員長に就任したのに際し,副執行委員長を務めるようになった。
なお,i駅における組合の組合員は,初審終結時までA5一人であった。
(6)  A5は,会社内において,平成21年9月5日,同年10月19日及び同月21日,後記のとおり4種類のビラ(以下,これらのビラを併せて「本件ビラ」という。)を会社に無許可で配布し(以下,これら3回にわたるビラ配布を併せて「本件ビラ配布」という。),同年11月5日,会社から訓告処分(本件訓告)を受けた。
本件ビラの内容は,要旨,①同年9月19日に開催される広島県労働者総決起集会への参加を呼びかけるもので,当日開催される組合の本部再建大会の案内が併せて記されているもの(以下「9・19集会ビラ」という。),②同月30日に開催される岡山県労働者総決起集会への参加を呼びかけるビラで,集会において,A4が「国鉄1047名解雇撤回を勝ち取ろう!」について報告を行い,A5が9・30実行委員会に参加していることが記載されているもの(以下「9・30集会ビラ」という。),③同年11月1日に開催される全国労働者総決起集会の開催への参加を呼びかけるもの(以下「11月集会ビラ①」という。),④同日に開催される全国労働者総決起集会への参加を呼びかける内容で,表紙下段にe労組共闘と記載されたもの(以下「11月集会ビラ②」という。)であった。
(7)  A5は,平成21年10月2日,勤務開始時刻に遅刻し(以下「本件遅刻」という。),会社から,同年12月28日付けで戒告処分を受けた(本件戒告)。
(8)  会社は,A5について雇止めとすることを決定し,平成22年2月19日,A5に雇止め事由書を交付して雇止めを通知した。同事由書には「勤務状況を勘案し,平成22年3月31日をもって,これ以降雇用契約を更新しないこととしますので,通知します。」と記載されていた。
これに伴い,A5は,同日をもって会社を雇止めとなった(本件雇止め)。
(9)  A5は,平成22年5月1日を入社予定日とする社員採用選考試験の申込みを行い,同年1月19日,支社において筆記試験と適性検査,同年2月6日に,会社本社(以下「本社」という。)において面接試験を受験していたが,本件雇止めに伴い,会社から社員採用選考試験の対象から除外され,同月19日,上記のとおり本件雇止めの通告を受ける際,その旨伝えられた(本件通告)。
(10)  本件に係る会社の就業規則の主な規定は,以下のとおりである。
ア 契約社員制度
会社における契約社員の雇用契約及び期間並びに雇用契約の終了について,契約社員就業規則は,次のとおり規定している。
(雇用契約及び期間)
第4条 契約社員を雇用する場合は,様式1に定める契約社員雇用契約書により雇用契約を締結する。ただし,日々雇用される契約社員については,これを省略することがある。
2 契約社員の雇用契約期間は1年以内とし,雇用の際にその期間を定める。
3  雇用契約期間の満了に際して,業務上の必要がある場合には雇用契約を更新することができる。ただし,雇用契約期間を通算し,原則として5年を限度とする。
(雇用契約の終了)
第6条 契約社員が次の各号の1に該当する場合は,雇用契約は終了するものとする。
(1) 雇用契約期間が満了し,契約を更新しない場合
(2) 死亡した場合
(3) 契約解除を申し出て,会社が承認した場合
(4) 3日間継続して,会社の承認を得ないで欠勤した場合
(5) 60日間継続して,私傷病により欠勤した場合
2  (略)
イ  契約社員の服務等
契約社員の服務について,会社の契約社員就業規則3条は,「契約社員の服務に関する事項は,就業規則(昭和62年4月社達第2号)の第2章(ただし第17条第3項を除く。)の定めを準用する。」と規定しているところ,当該就業規則(以下,単に「就業規則」という。)には次の規定がある。
(ア) 会社施設内等における集会,政治活動等
(会社施設内等における集会,政治活動等)
第22条 社員は,会社が許可した場合のほか,会社施設内において,演説,集会,貼紙,掲示,ビラの配付その他これに類する行為をしてはならない。
2 社員は,勤務時間中に又は会社施設内で,選挙運動その他の政治活動を行ってはならない。
(勤務時間中等の組合活動)
第23条 社員は,会社が許可した場合のほか,勤務時間中に又は会社施設内で,組合活動を行ってはならない。
(イ) 勤務の厳正及び出勤
(勤務の厳正)
第7条 社員は,みだりに欠勤し,遅刻し,若しくは早退し,又は会社の許可を得ないで,執務場所を離れ,勤務時間を変更し,若しくは職務を交換してはならない。
(出勤)
第8条 社員は,始業時刻前に出勤し,出勤したことを自ら会社に届け出なければならない。ただし,会社の許可を得た場合はこの限りでない。
2 社員は,始業時刻には,会社の指示する場所において,実作業に就かなければならない。
3 会社は,社員が始業時刻に遅れて出勤した場合は,就業させないことがある。
ウ  契約社員に対する懲戒
契約社員に対する懲戒の基準等について,契約社員就業規則は,次のとおり規定している。
(懲戒の基準)
第29条 契約社員が次の各号の1に該当する行為を行った場合は,戒告する。
(1) 法令,会社の諸規程等に違反した場合
(2)~(14) (略)
2  契約社員が次の各号の1に該当する行為を行った場合は,懲戒解雇する。ただし,情状によっては,戒告することがある。
(1)  法令,会社の諸規程等に著しく違反した場合
(2)~(14) (略)
(懲戒の種類)
第30条 懲戒の種類は,次のとおりとする。
(1)  懲戒解雇
(2)  戒告
2  前条に該当する行為のうち,懲戒を行う程度に至らないものは訓告又は厳重注意する。
(11) A5が受験した平成22年5月1日を入社予定日とする社員採用選考試験の募集要項には,応募資格について,要旨,次のとおり記載されていた。
ア  採用予定日の前日において,契約社員として勤務する見込みであること。
イ  採用予定日の前日まで,契約社員として,3年以上継続して勤務する見込みであること。
ウ  採用予定日の前日において,32歳以下であること。
エ  応募時から過去1年間の所定労働時間が1週平均20時間以上あること。
オ  過去1年間に,採用選考試験を受験していないこと。
3  争点及び当事者の主張
本件の争点は,前記第2,1①ないし④の各行為の不当労働行為該当性であり,これらに関する当事者の主張は概ね以下のとおりである。
(1)  争点(1)(本件訓告の不当労働行為該当性)について
(被告の主張)
ア A5が行った本件ビラ配布は,会社施設内での無許可のビラ配布を禁止した就業規則22条及び会社施設内の組合活動を禁止した就業規則23条に文言上抵触するものといえる。もっとも,このような就業規則の規定は,職場規律・企業秩序の維持を目的とするものであるから,形式的にこれに違反するように見える場合でも,ビラ配布の場所,内容,配布の態様等に照らして,企業秩序を乱すおそれのない特別の事情が認められる場合には,そのようなビラの配布は,実質的には上記規定の違反になるとはいえず,正当性を失うものではないと解される。そして,以下に述べるとおり,本件ビラ配布は,企業秩序を乱すおそれのあるものとはいえず,実質的には上記就業規則に違反するものではなかったと認められる。
イ 本件ビラ配布の態様
(ア) 配布場所
まず,本件ビラ配布の行われた場所(①i駅2階営業事務室内個人用小ロッカー前通路,②i駅2階男子ロッカー室(休養室)及び③i駅地下改札事務室内休憩室)のうち,②男子ロッカー室は,◎◎窓口や改札口等の営業区域からもそもそも離れた場所にあり,③駅地下改札事務室内休憩室も休憩の場所であって,ビラ配布が,そのような場所で行われたこと自体によって,職場秩序を乱すおそれがあったとは考え難い。
また,①の場所については,乗客やそれに対応する社員と近接した場所であったといえるにしても,本件ビラ配布の配布状況は,下記(イ)で述べるような平穏なものであり,また,A5が本件ビラ配布の際に,隣接する◎◎窓口等の周囲に聞こえるような大きな声を出していたといった事情も窺えないことからすると,本件ビラ配布は,配布場所に近いところで乗客への対応業務に当たっている社員の職務専念に支障を生じさせるおそれのあるようなものではなかったといえる。そうすると,本件ビラ配布が行われたのが,乗客やそれに対応する社員と近接した①の場所であったからといって,職場秩序を乱すおそれのあったものということはできない。
(イ) 配布の時間及び配布の状況
A5が本件ビラを配布した時間は,A5は休憩時間中であり,配布された駅社員も休憩時間中又は手待ち時間中であった。そして,A5によるビラ配布の方法は,ビラを3枚程度宛名のない封筒に入れ,手渡しにより配布するというものであり,相手がビラをいらないといった場合には持ち帰ったりしており,時間もほとんどかからないものであったといえる。本件ビラ配布においても,そのような方法で配布しており,その際,受け取った者が拒んだのに無理に押しつけるなどしたことは認められず,配布の状況は平穏なものであったといえる。そのため,配布態様は,ビラを受け取った者に精神的動揺等を与えるものではなく,ビラを受け取った者のその後の職務専念に支障を生じるおそれのあるものではなかったといえる。
なお,会社は,ビラを渡された社員が「職場内でビラを配布することを許してよいのか。」,「もらった趣旨が分からず困っている。」,「業務に関係のないものをもらって迷惑だ。」と話しており,本件ビラ配布によって精神的影響を受け,職務専念を阻害されたことは明らかであるとして,職場秩序を乱すおそれがないとはいえない旨主張するが,これらはi駅管理者による聴き取り調査に対してなされた回答であり,その内容も,職場内でのビラ配布そのものへの違和感ないし反対の念を示すものではあっても,本件ビラ配布によって,業務遂行や職務専念への支障が生じたことを推認させるものとはいえない。
(ウ) 本件ビラの内容
本件ビラの内容は,組合が参加を予定していた集会参加への呼びかけや,国鉄1047名問題等に関する組合の運動方針や政治的立場,他の労働組合の運動方針への批判等が記載されたものであった。
確かに,記載内容の中には,労働組合によって見解が異なり対立するものも認められるといえるが,その内容は虚偽の事実を記載したり個人を誹謗中傷するようなものである等労働組合の正当な行為を逸脱するものであるとはいえない。また,国鉄改革に関する記載にあっては,労働組合によって立場が違う問題も見られるが,これら立場の違いは会社に勤務する社員間においても了知されていたものと推測され,これをもって社員の職務専念に支障をきたしたり,職場秩序を乱すおそれのあるものとまではいい難い。
なお,本件ビラの一部には政治的な主張と捉えられるような表現も見受けられるが,そのほとんどは,社会情勢及び国の政策について,組合の運動方針や労働条件との関連を指摘して組合の見解及び評価等を記載したものであり,それらの見解や評価のほとんどが一般的,抽象的なスローガンともいうべきものであり,これを読んだ者が精神的動揺を受けるとは考え難く,職務専念に支障を来たしたり,職場秩序を乱すおそれのあるようなものとまではいい難い。
ウ 以上のとおり,本件ビラ配布においては,企業秩序を乱すおそれのない特別の事情が認められるといえる。
会社が主張する,会社の鉄道輸送事業の特性,複数の事業所や施設を有し,会社内に路線の異なる複数の労働組合が存在するといった事情を勘案しても,上記の本件ビラ配布の態様,内容等に鑑みると,本件ビラ配布が,会社の職場規律ないし職場秩序を維持するために設けられた就業規則の規定に形式的にはともかく実質的に違反するものであったとまではいうことはできない。
以上の点に鑑みれば,本件訓告は,労働組合の正当な行為をしたことの故の不利益取扱いとして,労組法7条1号の不当労働行為に該当するというべきである。
(組合の主張)
ア 労働組合のするビラ配布は,労働組合がその主張や方針を労働者に周知し,組織の拡大や組合活動の円滑な推進をはかる手段として,憲法28条によって保障された団結権の一環をなすものである。したがって,ビラ配布に対する制限は最小限にとどめられなければならない。
殊に会社には複数の労働組合が存在し,その中にあって組合は組合員数10名未満の少数組合である。しかも,会社が提案する総合労働協約は労働三権を不当に制限するものであるが故に組合としては締結することができず,その結果,組合掲示板や組合事務所の供与等が受けられず,また,新組合員の獲得にあたっても多数派労働組合に比して著しく不利な立場に置かれている(会社内において最大多数の労働組合であるc労組は,毎年新入社員に対して,入社式の前日に,まだ社員でないにもかかわらず,吹田市内の社員研修センターに前泊させ,アドバイザーと称する先輩(c労組組合員)を配置して,入社式当日,集団行動をさせている。そして,2週間程度,研修と称して,c労組組合員以外との接触をさせないで,c労組への加入を誘導している。さすがに,研修の中で同労組に加入させることはしないが,時間外にアドバイザーがc労組の役員を招き入れて,またはアドバイザー自身が加入を誘導している。このように,労使一体(会社とc労組)で,労働者の囲い込みが行われている。)。
このような不利な状況において,組合として,主張や闘争方針を明らかにするとともに,新たに組合員を獲得するなどして労働組合としての団結権を守るためには職場におけるビラ配布が極めて重要な手段となる。
イ 憲法28条による団結権保障の趣旨等に照らすと,以下に述べるような態様でなされた本件ビラ配布が,職場の秩序を乱すおそれのない特別の事情が認められる場合にあたることは明らかである。
(ア) 本件ビラ配布の態様
a 本件ビラ配布は,平成21年1月にA5が組合に加入し,それまで2名だった組合員が3名になったことを受けて,青年労働者をさらに獲得していくべく,同年4月21日に開かれた組合(広島支部)執行委員会で決定されたビラ配布を強化するという方針に基づいて行われたものである。
ビラ配布の方針を決定するに当たっては,就業規則22条,23条を考慮して,①封筒に入れて渡す,②相手の同意を得る,要らないと言った人には渡さない,③渡す側も渡す相手も双方とも休憩時間に行う,④休憩室とか更衣室といった客が入ってこない,目に付かない,業務を行っている場所を外した場所で行うなどの条件を遵守してビラ配布を行うことを確認した。
b 実際のビラ配布の態様
(a) 平成21年9月5日
①時間 午後8時すぎの休憩時間中
②場所 個人用ロッカー前通路(なお,個人用ロッカー前通路と◎◎窓口を隔てているパーティションのドアは通常閉められている。)
③対応 相手と50センチメートルほどの距離で普通に会話する程度の声で,「こういうビラを作ってみたんで,ちょっと読んでみてくれる。要らなかったら要らないでいいよ。」と言って手渡し,相手は「はい。」と言って受け取った。
④ビラ 長3形の茶封筒にビラ3枚とA5の名刺を入れたもの(なお,名刺を入れたのはビラに関して問い合わせがあった時の連絡先を示すという意味と責任の所在を明らかにするという意味があった。)
(b) 同年10月19日
①時間 午後8時すぎ(業務の終了後)
②場所 休養室(ドアが閉められており,A5と相手のほかに人はいなかった。)
③対応 上記(a)の③に同じ
④ビラ ビラの種類は違うものの形状は上記(a)の④に同じ
(c) 同月21日
①時間 厳密な時間は覚えていないが休憩時間である。
②場所 休憩室(ドアが閉められており,A5と相手のほかに人はいなかった。)
③対応 上記(a)の③に同じ
④ビラ 上記(b)の④に同じ
以上のビラ配布の場所は,客が立ち入ることができず,社員しかいない場所であり,なおかつ,直接,業務をしている場所ではない。
c 本件ビラの内容
本件ビラの内容は,組合が参加を予定していた集会への参加を呼びかけ,国鉄分割民営化の際に解雇された1047名のe労組組合員の問題に関する組合の運動方針や政治的立場,他の労働組合の運動方針への批判等が記されたものであり,違法不当な行為をあおり,そそのかす等の内容を含むものではないし,殊更に虚偽の事実を記載したり,個人を誹謗中傷するような労働組合の正当な行為を逸脱するものではない。また,一部に政治的な主張と捉えられる表現も見受けられるが,そのほとんどは社会情勢及び国の政策について組合の運動方針や労働条件との関連を指摘して見解及び評価を記載したものであった。本件ビラの各記載内容は,いずれも労働組合としての正当な主張と方針を述べたものであり,何ら問題はない。
(イ) 以上の諸事情に照らせば,本件命令のいうように,①本件ビラ配布は社員の職務専念上あるいは業務上支障を来たしたり,職場秩序を乱すおそれのほとんどない場所での配布であったこと,②A5の本件ビラ配布の時間や態様は相応の配慮がなされ,会社の業務運営に支障を及ぼさないように行われたものであったこと,③本件ビラの内容は組合の情報や主張の伝達を図るものであり,労働組合の正当な行為の範囲を逸脱したものとまではいえないことが認められ,他方,組合には組合掲示板が供与されていないので,本件ビラ配布は組合活動としての必要性が認められる。したがって,本件ビラ配布は,会社の職場規律ないし職場秩序を維持するために設けられた就業規則等の規定に形式的にはともかく実質的に違反するものであったとまではいえず,労働組合の正当な行為であると認められる。
むしろ,A5は,組合への加入以降,組合の副執行委員長を務めるなどして組合の組合活動の先頭に立ってきた。A5は,本件訓告を含めた処分や雇止め(本件雇止め)を組合加入通告後の平成21年2月から立て続けに受けてきたものであり,これらが組合活動の中心を担っていたA5を狙い打ちにしたものであることは明らかというべきである。
そして,契約社員の契約更新に当たっては,過去の勤務状況も考慮されることとなっているので,訓告に付されることは不利に影響する可能性があること等からすると,A5に対する本件訓告は労働関係上の不利益な取扱いと認められる。したがって,本件訓告は労働組合の正当な行為をしたことの故の不利益取扱いとして,労組法7条1号の不当労働行為に該当するというべきである。
ウ この点,会社は,職場内の秩序を乱すおそれのない特別の事情に関し,後記のとおり鉄道輸送事業の特性等について主張する。しかし,その主張は運転職については妥当するとしても,A5が所属する駅業務については他の一般的な営利企業で要請される水準と大差ないと考えられ,失当である。
また,会社は,国鉄がヤミ協定・悪慣行等による職場規律の乱れを一因として経営破綻に陥ったなどとして,職場規律の維持が経営上特別の必要となったなどとも主張する。しかし,国鉄の18兆円もの巨額な赤字の主たる原因は,余剰人員の人件費や地方交通線等の鉄道事業の経常収支にあったものではない。実際,分割民営化後も国鉄の長期債務は減少するどころか増加しており,新幹線建設等の巨額な設備投資を政府が国策の名の下,高利の財政投融資等によって国鉄に行わせたことによるものであった。したがって,この点を強調するのは不当である。
(会社の主張)
ア 企業施設内におけるビラ配布等の労働組合活動について,職場内の秩序を乱すおそれのない特別の事情が認められるときは就業規則違反とはならないが,その立証責任は,不当労働行為に該当すると主張する側(本件でいえば被告及び組合)にある。したがって,会社は,当該行為によって現実に職場秩序が乱れたとか業務が阻害されたことの立証責任を負担しないことはもとより,そのおそれが存したことの立証責任も負わない。
イ(ア) 鉄道輸送事業の特性
会社は,旅客鉄道輸送という極めて公共性の高い事業の遂行をその主な事業目的としており,安全に,かつ,定時に運行することが社会一般から強く要請されている。鉄道事業は,車両,線路,駅施設,電気設備,信号関係設備,保安設備等の物的設備等を有機的に統合し,これに営業関係,運転関係,保守・施設関係等に従事する多数の労働者を厳格な指揮命令系統のもとに配備・組織することにより,はじめてその安全かつ安定した輸送が可能となるのであるから,会社の各職場においては,旅客鉄道輸送という業務の特性から,他の企業で要請される水準を遙かに超えて,企業秩序の厳格な維持が必要とされている。
(イ) 国鉄時代以来の歴史的沿革
会社は,昭和62年4月に実施された国鉄改革により,国鉄の営んでいた本州西日本地域の鉄道事業を承継して発足したものであるが,国鉄改革は破産状態に陥った国鉄の経営の抜本的改革を目的として実施されたところ,昭和57年7月の臨時行政調査会の答申において,国鉄の経営悪化をもたらした原因の一つとして,ヤミ協定・悪慣行等の職場規律の乱れが指摘されていた。国鉄再建監理委員会も,昭和58年の報告書において,「職場規律は,およそ組織体が円滑に運営されていくための基盤であり,そこに乱れがあるという状態では,国鉄事業の再建は到底おぼつかない。」として,国鉄に対し,職場規律の確立を厳しく求めていた。そして,昭和62年4月1日に発足した会社は,国鉄当時の職場規律の乱れの二の舞を避けるため,職場規律の定立・維持については特段の意を払い,社員に対してその趣旨を徹底させるために,就業規則中の服務規律に関する規定を設け,その中で勤務の厳正(就業規則7条),会社施設内等における集会・政治活動の禁止(同22条),勤務時間中等の組合活動の禁止(同23条)等を明らかにした。会社が,企業秩序の維持・確立のため強い態度で臨むことには,経営上の必要性・合理性が存するというべきである。
(ウ) 複数労働組合の存在
会社においては,会社内に複数の労働組合が併存しており,それぞれ異なる路線を有している。すなわち,国鉄時代においては最大多数の労働組合であったe労組西日本本部(上部団体はj労連,なお,e労組の内部には,同労働組合の執行部の方針に反対し,組合と共闘関係にあるe労組共闘という集団がある。),現段階において最大多数の労働組合であるc労組(上部団体はd労連),乗務員を中心に組織しているf労組(上部団体はg総連),同じくh労組(上部団体はj労連),組合及び組合と同じ名称であるが代表者の異なる労働組合が存する。しかも,これら労働組合の路線や方針等が相互に異なり,労働組合間において尖鋭的な対立が存する。勤務時間中又は会社施設内における組合活動を放任すれば,組合間の紛争が惹起されて従業員間に軋轢が生じ,有機的一体的な事業の運用が阻害されることとなり,円滑な業務遂行に支障が生じる可能性が高い。
(エ) 多数の現業機関の存在
会社は鉄道事業を経営していることから,列車の乗務員や車両の点検整備等を行う社員の所属する運転区等,駅の社員が所属する駅等,施設・電気系統の社員が所属する電気区・信号区等,線路の保守等に従事する社員が所属する保線区等エリア内に多数の施設を保有し,その関係施設も加えればかなりの数にのぼる(例えば乗務員区では,行き先地に詰所や宿泊所があり,施設・電気系統では本所のほか支所も存する。)。具体的には営業エリアのある北陸・近畿・中国・九州北部の2府16県の府県に多数の現業機関を配しており,その数は700以上である。そして,そのうち複数組合の組合員が所属する箇所は428か所にものぼる。このように極めて多数の業務施設が散在していることから,各施設すべてにおいて職場規律の維持・確立を図るには,一定の明確な基準のもとに,厳正に服務に関する規定を解釈・適用することが必要であり,1か所でもその厳正な運用が弛緩すればそれが他の箇所にも波及し,ひいては列車の安全・安定した運行に悪影響が生じることになる。1か所でも労働組合のビラ配布が許されることになれば,対立する他の労働組合のビラ配布も許されることになり,多数の現業機関において,複数の労働組合による相手方組合員及び自組合員に対するビラ配布がいわば競争的に行われることになりかねない。それゆえ,会社は,これまでビラ配布に対して厳正に対処し,他の労働組合に対してもビラ配布事案については処分をしてきた。結局,企業秩序を乱すおそれのない特別の事情の存在については極めて限定的に解釈すべきであり,万人が見ても処分の対象とすべきではないと考えるような極めて例外的事象に限定すべきである。
ウ 本件ビラ配布
以下の点からすると,本件ビラ配布について,企業秩序を乱すおそれのない特別の事情は認められない。
(ア) 本件ビラ配布の場所
A5が平成21年9月5日にビラを配布した場所は,営業事務室内個人用小ロッカー前通路である。会社は,公金と私金が混同する現金事故を防止するため,営業事務室内個人用小ロッカーに社員個人の財布を入れるよう指示しており,社員によってはカウンターに表示する氏名札,業務上必要な印章,個人用IDカード等も収納している。すなわち,当該営業事務室内個人用小ロッカーは執務場所の直近にあって,執務の態勢を整えるためのものであり,ビラが配布された場所は,出札・改札といった接客業務に携わる社員が業務上必要な身支度を整える場,あるいは執務の前に気持ちの準備をする場として業務に密接に関連する場所である。社員が寛ぐような場所ではない。当該箇所には隣接して改札室,駅事務室,◎◎窓口があり,改札室と駅事務室では多くの社員が執務している。◎◎窓口では係員が利用客と対面して接客・発券業務を行っており,その間に設けられているパーティションは上部が開いているため,互いの声がよく聞こえる状態にある。
平成21年10月19日及び同月21日のビラ配布の場所は,それぞれi駅2階男子ロッカー室とi駅地下改札事務所内の休憩室であるが,これらの場所は,乗客と接する場所ではないとしても,勤務に備えて身だしなみを整えたり,寛いだり,気持ちの準備をしている場所であり,そのような場所でビラ配布が行われた場合には,今後の勤務に備えている他の社員に精神的動揺を与え,労働組合間の対立を招来させ,さらにまた社員間の緊張・摩擦・軋轢を生じさせるような政治的に激越な主張をしている本件ビラの内容も斟酌すれば,これを受領する他の社員に職務専念上の悪影響を及ぼすことは明らかである。
(イ) ビラ配布の時期
本件ビラ配布が,A5の休憩時間中に手待ち時間又は休憩時間中の他の社員に対してなされたとみるにしても,手待ち時間はいうまでもなく業務時間であり,その時間にビラ配布を受ければ業務に支障が生じるのは明らかである。また休憩時間は,その時間経過後はすぐに業務に従事するものであり,そのような時間帯に,労働組合間の対立を煽るような表現や政治的に激烈な主張が記されたビラが配布されれば,他の社員に対立や精神的動揺を与える可能性があることは明らかであり,職務遂行に悪影響を与えるというべきである。なお,前記のとおり,会社では,休憩室や詰所等が多数配置されているのであるから,1組合にビラ配布が許されるとすると,他の労働組合のビラ配布も許されることになり,かくては,多数の職場で複数の労働組合による,休憩中の社員に対するビラ配布も許されることになり,職場秩序の維持に与える影響は大きい。
(ウ) ビラ配布の態様
a A5は,ビラを封筒に入れた理由につき,ビラがむき出しであれば,他の人にビラを持って行くことが見られるので,見られないよう配慮して封筒に入れたというような供述をしている。その供述からすると,組合のビラであることを隠蔽しようとするため,ビラを封筒に入れたといえる。そのような行為をもって,企業秩序を乱すおそれのない特別の事情を根拠付けることはできず,むしろ,就業規則違反行為の違法性を強める要素というべきである。
b A5は,受領を断った相手については,ビラを渡さず持ち帰っているなどと供述しているが,相手方が受領を断っているにもかかわらず,無理に渡そうとすれば,かえって組合への支持を失うことも十分考えられるから,かかるビラ配布の態様をもって,職場秩序を乱すおそれのない特別の事情の認定根拠とすることはできない。そもそも,本件ビラ配布について,相手方3人ともビラを受領しているのであるから(なお,そのうち2人は後記のとおり受領を断ることが困難な見習い社員であった。),その事情は本件における就業規則違反の考慮要素とはならない。
(エ) 配布した相手
本件ビラ配布の相手方は,平成21年9月5日は同僚のA6社員,同年10月19日は見習いのA7社員,同月21日は見習いのA8社員である。A6社員を除くA7社員及びA8社員は,入社したばかりの若手社員であり,A5と同じ担当業務(担務)に入っていて,A5と行動を同じくして同人から駅社員の業務遂行方法や態度を見習い中の社員である。これらの見習い社員が,職務中や職務終了直後に業務を教示してくれる先輩社員からビラを受領するよう依頼されれば,その依頼を断ることは困難であったとみられる。したがって,A5は3件のうち2件については,職務上の地位を利用して,ビラ配布を行ったものであり,ビラの内容と相まって休憩時間中などの相手に強く心理的影響を与え,ひいてはその後の勤務における職務専念の障害となるおそれがあったというべきである。
(オ) 過去に30回程度のビラ配布を行っていること
A5は,本件の3回にわたるビラ配布以外に過去に30回程度のビラ配布を行っている。したがって,本件は過去30回程度行ってきたビラ配布行為の一環であり,いわば氷山の一角であって,かかる常習的ビラ配布行為が,企業秩序を乱すおそれのない特別の事情の存在を真っ向から否定するものであることは明らかである(過去30回の就業規則に違反するビラ配布行為すべてについて,企業秩序を乱すおそれがなかったことは経験則上もあり得ない。)。
(カ) 本件ビラの内容
本件ビラの内容は,以下のとおり,労働組合間の対立を煽り,かつ,政治的主張を含むものであって,これを受領した社員に精神的動揺を与えるものであり,職場秩序を乱すおそれのない特別の事情は到底認められない。
a 国鉄1047名問題,他の労働組合についての記載
A5が配布したビラの中には,「国鉄1047名解雇撤回!9/30岡山県労働者総決起集会」というものがあるところ,国鉄1047名問題は,会社ら○○グループ各社がその発足時から抱える大きな労働問題であり,そのため○○グループ社員にとっては非常に関心が高く,様々な見解の対立があったところである。このことはA5自身,e労組i駅分会長のA9から「わしらは,1047名問題に対しては政治解決の路線だから,政治解決絶対反対の主張をするあんたを組合に入れるわけにはいかない。」と言われて,e労組への加入を断られたという経緯を述べていたところから明らかである。したがって,1047名問題について,その一方的主張が記載されたビラを配布することは,各労働組合間,それに所属する社員間の対立・軋轢を生じさせる可能性は極めて高い。殊に,前年の平成20年7月には,東京高裁で行われた1047名問題に関する訴訟の控訴審口頭弁論期日で,裁判長が,この問題の解決に向けた裁判外での話合い解決を提案したこともあり,政治的解決の機運が高まってきた中でのA5の行為は,他労働組合を徒に刺激するものであった。さらに本件ビラには,「攻撃の先兵に,○○グループでいえばd労連・g総連がなるというのだ」,「○○グループと○○グループ御用労組(g総連やd労連・e労組など)との結託体勢を破綻においやり」,「e労組本部打倒の戦いをやりぬいている」といった記載があって,○○グループ内の特定の労働組合を激烈な表現により名指しで非難しており,これを見た当該労働組合員との間で,精神的軋轢を発生させることは,極めて明らかである。
b 政治的主張の記載
本件ビラには「資本主義打倒」,「道州制絶対反対」,「大恐慌と戦争に突き進む資本主義を打倒するときです」,「改憲・戦争と民営化・労組破壊に立ち向かう」,「民主党連合政権打倒を切り開き」,「○○グループと○○グループ御用組合(g総連やd労連・e労組など)との結託体制を破綻においやり」,「いかなる攻撃にもまけない,資本主義そのものを転覆する絶対非和解の団結をつくりだしているのだ」等の極めて政治的・イデオロギー的色彩の高い主張が記載されており,ビラを渡された者がこれに同調し,あるいは反対する者のいずれであっても,精神的に影響を受け,職務専念を阻害する程度は大きいといえる。
(キ) ビラを渡された社員及びその社員が所属する労働組合の反応
本件ビラ配布が発覚した経緯は,ビラを手渡された社員が問題視して,自己が所属する労働組合の役員に報告し,その組合役員が原告に抗議したというものであって,さらに,ビラを渡された社員は,「職場内でビラを配布することを許してよいのか。」,「もらった趣旨が分からず困っている。」,「業務と関係のないものをもらって迷惑だ。」と話しているとおり,本件ビラ配布によって精神的影響を受け,職務専念を阻害されたことが明らかである。
(ク) 組合掲示板が供与されていないこと
被告らは,組合に対して組合掲示板が供与されていないことについても指摘するが,組合掲示板は,そもそも会社が労働協約を締結している労働組合に対して,団体交渉の結果,一定の基準で便宜供与として貸与しているものであって,労働協約を締結している労使がギブアンドテイクの関係により生じた便宜供与である。すなわち,労働協約では労働組合は平和義務も定めるなど,団体交渉や争議行為について会社との間でルール作りをしており,その面で一定の譲歩もしている。その譲歩の見返りとして会社はこのような便宜供与を与えているのである。組合は,他の労働組合がしている譲歩をしていないのであって,ビラ配布に関して他の労働組合より有利になるという結論は不当である。また,組合に対して組合掲示板の使用を認めていないことを理由に,ビラ配布について,「企業秩序を乱すおそれのない特別の事情」の判断にあたって他の労働組合より緩やかな基準を定立するとすれば,それは会社の複数の労働組合に対する中立保持義務に反する結果となる。
エ 不当労働行為意思を欠くこと
会社では,前記のとおり,会社の就業規則により,勤務時間中又は会社施設内におけるビラ配布及び組合活動は禁止されており,会社は,禁止されたビラ配布に対して厳格に対処している。本件訓告にあたっても,会社は,過去になされた他の労働組合の例と同様,原則として企業秩序を乱すおそれのない特別の事情は認められないとの見解にしたがって,処分量定を行った。そこには,組合に対する反組合的な意図や動機は存在しない。したがって,不当労働行為意思も認められない。
この点,組合は,本件訓告を含むA5に対する一連の措置が,組合活動の中心にあったA5を狙い打ちにしたものであるなどと主張するが,組合員通告は平成21年1月30日,本件訓告は同年11月5日,本件戒告は同年12月28日,本件雇止めの通告は平成22年2月19日であって,時間的な近接性もない。そもそも,会社は,組合が分裂に至っていても21年3月3日確認書を締結して団体交渉権を保障するなどしており,嫌悪することなどあり得ない。
オ 以上の点からすると,本件訓告は不当労働行為に該当しない。
(2)  争点(2)(本件戒告の不当労働行為該当性)について
(組合の主張)
ア A5の当日の業務は新幹線改札案内であった。午前9時から午前9時15分までが点呼であり,午前9時15分から午後8時30分までが改札案内業務であった。A5は,自宅近くのバス停からバス(kバス停を午前8時27分に出発する予定のバス。同バスは,午前8時40分にはi駅前のバス停に到着し,このバスに乗れば遅刻しないで済む。)に乗ったが,降雨の影響で同バスが遅延し,kバス停にバスが到着したのは午前8時45分頃であった。そのため,i駅前のバス停に到着したのが午前9時過ぎとなった。A5は,午前9時3分に遅れる旨電話連絡を入れ,ちょうど点呼が終了する午前9時10分過ぎに職場に着いた。そして,午前9時15分の朝礼が終了したときに遅刻した旨の報告をし,営業当直であったA10係長から,「とにかく幹②改札へ行け。次の休憩時間に話をする。」などと告げられた。そこで,A5は,午前9時15分まで幹②改札で営業を行っていたA11(以下「A11」という。)と定刻に交代した。
以上のように,A5は,15分ほどの遅刻をしたものの,社会通念に照らし,戒告処分に値するほど重大なものとはいえない。遅刻の原因も,気象上の理由によるものである。
イ 契約社員に対する処分の量定は,重い順に懲戒解雇,戒告,訓告,厳重注意となっている。A5は,入社以来,本件遅刻までに3回の遅刻をしており,本件遅刻は4回目であった。A5の本件遅刻以前の遅刻に対する処分は,それぞれ注意指導,厳重注意,厳重注意であった。4回目にあたる本件遅刻に対して,訓告を経ることなくいきなり戒告が選択されている。会社内の他の先例に照らしても,処分量定として合理性を欠く。
ウ 会社は,A5の過去3回の遅刻の際には代務者を配置したことがあるが,本件遅刻においては代務者を配置していない。すなわち,本件遅刻による業務への具体的な支障が生じていないことは明らかである。そもそも,A5は,定刻にA11と交代している。他に本件遅刻により具体的な損害が生じたこともない。会社は,時間厳守の必要性につき鉄道事業の特性等を殊更強調するが,A5のような改札業務を行う者には妥当しない。
エ 本件遅刻から本件戒告発令までの期間は87日間と長期に及んでいる。A5の本件遅刻以前の過去の3回の遅刻における遅刻発生から処分発令までの期間は,1回目は26日間,2回目は48日間,3回目は27日間であり,そのことと比較して不自然である。
本件遅刻が発生した時期は,平成21年9月19日の組合の本部再建大会でA5が副執行委員長になり,A5が参加した同月30日の岡山県労働者総決起集会の直後であり,また,本件遅刻について賞罰審査委員会に付議を検討する時期は,会社がA5の本件訓告を検討していた時期であり,A5がビラに記載された全国労働者総決起集会に参加していた時期であった。
これらの状況と,87日間という異常な長期間を要したという事情を併せ考えると,本件遅刻に対して通常より重い処分を行うことによって組合活動を弱体化させようとする会社の不当労働行為意思が明らかというべきである。
さらに,A5が同年12月18日を申込締切日とする社員採用選考試験に応募したこと,また,同月20日にA5を含む組合員が支社包囲闘争を行っていたことを併せ考えると,処分発令日をあえて社員採用選考試験申込締切日後とすることで,A5への個人的な打撃を与えて組合活動を抑制しようとしたものであり,会社の不当労働行為意思は明らかである。
オ 以上の点からすると,本件戒告は組合への支配介入であって,労組法7条3号の不当労働行為に該当する。
(被告の主張)
ア 本件戒告に至る事情等
A5は,本件遅刻前にも3度遅刻をしたことがあり,遅刻の原因はいずれも寝過ごしであった。会社は,その度毎に,注意指導し,平成21年3月3日に行われたA5の平成21年度の雇用契約更新の面談においては,今後同種の事象が発生すれば次の契約更新の判断材料にする旨も伝え,遅刻をしないよう注意指導が行われてきた。そのような経緯にもかかわらず,A5は,直近の遅刻から約10か月後に,寝過ごしという同じ理由により本件遅刻をしたものであり,それにより,雇用契約期間4年弱の間に4回遅刻することとなったものである。この点,組合は,本件遅刻の当日は,雨によりバスが遅延したことに原因があると主張するが,A5は,普段,午前9時から勤務が始まるときは,午前8時に自宅を出ているところ,この日は寝過ごしにより午前8時25分に自宅を出た旨,普段も午前8時台は雨が降ったりすると道が混み,バスが遅れることがある旨述べている。そうすると,本件遅刻当日のバスの遅延も通常予想される範囲内のものであって,結局,寝過ごしたことが本件遅刻の原因であることに変わりはなく,本人の責めに帰すべきものであることに変わりはない。
また,組合は,本件遅刻によって,会社の業務に支障は生じていない旨主張する。しかし,本件遅刻の際,当日のA5の担当業務は午前9時からの新幹線改札案内という繁忙時間帯の業務であったところ,同人が出勤するまでの間,会社は代務者を配置できずに対応したこと,案内業務を開始する前には点呼が行われ,そこでは,現在販売している切符等商品の販売上の注意や臨時列車の状況等,注意事項が伝えられることになっていたが,会社は,繁忙時間帯であったことから遅刻したA5を直ちに案内業務に就かせざるを得ず,A5は,しばらくの間,それらの注意事項が伝えられないまま案内業務に従事することとなった。これらの点からすると,本件遅刻は,少なからず業務に支障が生じるようなものであったと考えられる。
そして,会社における遅刻案件に対する処分の状況としては,時間厳守という職場規律を重視して,遅刻の時間が短かったとしてもそのことをもって処分を軽くする取扱いをしているものではないことが認められ,また,過去の処分例と照らしても,A5の本件遅刻に対して訓告を経ることなく戒告としたことが,特に重い処分であるとまではいえない。
イ 会社に本件戒告により組合を弱体化させようとの意図があったとはいい難いこと
本件戒告が検討される時期にA5は活発な組合活動を行っていたものであるが,会社がA5のこれら組合活動に対して介入する言動を行ったことは窺えず,その後,組合からの申入れに基づき団体交渉も行われていることなどを考慮すると,会社が組合活動を嫌悪して本件戒告を行ったとまで直ちには推認し難い。
組合は,本件戒告までには時間がかかりすぎており不自然であって,このことも考慮すると,本件戒告が組合活動を弱体化させようとするものであったことは明らかであると主張する。しかし,会社の賞罰委員会への付議には一定の期間が必要と考えられるところ,A5の本件遅刻と間近い平成21年10月7日に遅刻した他の者の案件も,A5の本件遅刻について付議された同年11月30日開催の賞罰委員会に付議されていること,その後さらに,支社における人事課長の異動や,会社が慎重を期すため本件戒告発令につき弁護士に相談したり,本件戒告の辞令交付の日程調整といった事情から,A5への本件戒告の通知が同年12月28日となったものであり,不自然とまでいえるものではない。また,処分通知まで上記程度の時間を要したからといって,そのことが直ちに組合弱体化の意図に結びつくといえるものでもない。
ウ 小括
以上に照らせば,本件戒告が支配介入として不当労働行為に該当すると認めることはできないというべきである。なお,平成21年11月5日には,本件訓告がなされており,被告はこれを不当労働行為であると判断するものであるが,上記のとおり,本件遅刻に対して戒告として処分するだけの相当性があるといえることを考慮すると,本件訓告が行われたことを考慮しても,会社が組合を弱体化させようとして本件戒告を行ったとみるのは困難である。
(会社の主張)
ア 前記のとおり,鉄道輸送事業の特殊性や国鉄時代以来の歴史的沿革に鑑みると,会社においては企業秩序を維持すべき高度の必要性が存在するというべきところ,社員が,定められた出勤時刻までに出勤し,労務を提供すべきことは,雇用契約上の基本的義務というべきで,それは職場規律ないし企業秩序維持のため最低限要求される事柄である。
殊に,駅の業務は,各個人に分単位で担務という形で割り当てられており,出勤時間に遅れることになれば,当該業務に従事する者がいない状況となって,他の者が代務(代理として業務に就くこと)としてその担務に就かなければならず,その間,代務に入った者は自分の業務を行うことができず,業務遂行に支障が生じる。また,代務に就く者がいない場合は,その担務は人がいないことになり,利用客に迷惑をかけることにもなる。所定の時刻に出勤しない場合には,各職場で始業時に業務連絡・情報伝達等を目的として行っている点呼にも出席できず(担務によっては,点呼を受けない担務もあるが,その場合でも出勤時に当直の係長から業務連絡・情報伝達を行っている。),必要な業務連絡・情報伝達を受けないことにもなり,業務遂行にも支障が生じる可能性がある。
このように,遅刻は職場全体の業務に影響を及ぼす重大な問題である。
イ 本件戒告の相当性
(ア) 企業が懲戒処分を行うに際して行う量定はその合理的裁量に委ねられており,必ずしも機械的一律の基準が存しなければならないわけではないところ,会社は,社員の遅刻に対して懲戒処分を行う場合,遅刻の理由や回数,近接した期間内に繰り返し発生させているか,上長からの指導があったか,遅刻が周囲に与えた影響等の諸事情を総合的に考慮するとともに,過去の同種事例の積み重ねも考慮に入れて決している。この点,会社は,遅刻に対する処分を行う際,その遅延時間の長さを特に重視することはない。鉄道職員にとっては,定められた時間を守ること自体が最も重要だからである。
(イ) 本件戒告の妥当性
a 寝過ごしによる遅刻
A5は,本人の注意不足による寝過ごしという全く同じ原因で,約3年半という比較的短期間に4回もの遅刻を繰り返した。会社が,その都度,遅刻を防ぐための教育・指導を行っていたにもかかわらず,本人の注意不足による遅刻を4回連続して発生させたことは,鉄道職員として業務への取り組み姿勢や職責に対する認識が著しく弛緩していると評価されてもやむを得ない。
b 本件遅刻による支障
A5は,本件遅刻の当日,午前9時から午後8時30分まで新幹線改札の案内担当として勤務予定であり(幹②改札),同種の業務を担当する社員は2名ないし3名いたものの,午前9時台は新幹線改札付近が最も多忙となる時間帯の一つであって,A5の遅刻によって本来は代務が必要であった。
ところが,係長等も自己の業務に忙殺されていたために代務に入ることができず,やむを得ずA5以外の2,3名で改札案内を担当した。これにより旅客案内業務等のサービスに支障が生じた。A5の代務者が配置されなかったのは,配置の必要性がなかったからではなく,業務多忙のため配置できなかったからである(この点,組合は,A5が午前9時15分にA11と交代したため支障はなかったなどと主張するが,そもそもA5自身が休暇届に記載しているように,A5が到着した時刻が既に午前9時15分になっていたものであるし,A5はA11と交代して業務に就くことになっていたものでもない。)。
さらに,A5は,午前9時に出勤してから5分ないし10分程度点呼を受ける予定であったが,上長は午前9時15分に出勤してきたA5に対し,点呼で伝達すべき業務連絡等を勤務中に随時伝達することにして,直ちに案内業務に就くよう指示したため,本来行われるべき業務連絡等にも支障が生じた。
c 同種事例との均衡
本件遅刻の原因は,寝過ごしという過去3度の遅刻の原因と同一であり,直近の遅刻から1年以内の再発であって,再三の注意指導にもかかわらず4回連続して本人の責めによる遅刻が繰り返された。
なお,組合は,懲戒処分が段階的に運用されていない本件処分は合理的ではない旨を主張している。しかし,会社は,遅刻に対して処分をするに当たり,上記諸事情を総合的に勘案することとしており,必ず一段階ずつ順次処分を繰り上げるとの運用はしていない。本件の同種事例でも,1年以内に3回目の遅刻をするなど,近接した期間内に遅刻を繰り返した例では,A5と同様に厳重注意から訓告を経ることなく戒告となっている。また別の例では,直近の遅刻から2年以上経っているが,4回目の遅刻により,やはり訓告を経ることなく戒告となっている。さらに別の社員では,2回目の遅刻から4回目の遅刻にかけての発生時期等がA5と類似しており,3回目の遅刻について厳重注意の後,4回目の遅刻においてやはり訓告を経ることなく戒告となっている。
以上のとおり,本件と同種の社員3名についてみても,いずれも前回が厳重注意であったにもかかわらず訓告を経ずに戒告とされており,A5が3回目の遅刻から約10か月後の4回目の遅刻により訓告を経ずに戒告を受けたことは,先例からみても合理的量定というべきである。
ウ 以上の点からすれば,本件戒告は相当であり,不当労働行為には該当しないというべきである。
(3)  争点(3)(本件雇止めの不当労働行為該当性)について
(組合の主張)
ア A5はすでに4回の契約更新を繰り返しており,その雇用契約は期間の定めのない雇用契約と実質的に異ならない状態にあったというべきである。また,この点を措くとしても,当該雇用の常用性・臨時性,更新の回数,雇用の通算期間,契約期間管理の状況,雇用継続の期待を持たせる言動,他の労働者の更新状況などを総合的に考慮し,雇用継続の合理的な期待を抱くべき場合には,解雇権濫用法理を類推適用すべきであり,客観的・合理的理由なく雇止めをすることはできない。
イ 本件雇止めにおける具体的事情
(ア) A5の業務は常用的な業務であること
A5は,i駅において改札業務に従事しており,これは常用的な業務であって,季節や期間によって限定されている臨時的業務ではない。
(イ) 採用面接時に契約更新を期待させる言動があったこと
また,本件では会社から,採用面接時に契約更新を期待させる言動があった。契約社員としての雇用が5年を限度とすることは採用時に明らかにされていたが,A5の面接の際には,「1年ごとの更新で,更新は5年までですよ。」と説明されており,会社からは,むしろ5年間は契約更新されると期待される言動があった。また,採用から3年を経過すると,正社員に登用される制度も用意されていた。
(ウ) 契約が反復更新され,長期にわたる勤務があったこと
A5の契約は,反復更新され,長期にわたる勤務実績があった。すなわち,平成17年12月19日から平成22年3月までの長期にわたって勤務し,4回の契約更新がされており,A5が契約更新の期待を持つことは極めて合理的であった。
(エ) 契約更新の手続や面接も更新を前提とした形式的なものであった
会社では,契約更新の手続は一応取られていたものの,面接も契約更新を前提とした極めて形式的なものであった。すなわち,契約社員については,有期労働契約更新の前に,支社の人事課社員が現場長立会いの下,本人と面談を行って,次回の契約更新について面談していた。
A5も,有期雇用契約の期間満了に先立ち,契約更新のための面談を受けていたが,これらの面談では,契約の更新を前提に,「契約の更新を希望されますか。」,「やりたい業務内容はありますか。」,「何か言いたいことはありますか。」などと聞かれるだけであった。
(オ) ほとんどの契約社員が契約更新されていたこと
A5以外にも,当時i駅で勤務していた契約社員約40名のうちほぼすべての契約社員が契約を更新されていた。
(カ) A5の業務は,厳密な時間管理が必要な業務ではなく,遅刻によって業務に支障は生じていないこと
A5は,i駅で改札業務を担当しており,遅刻しても列車の定時運行には支障がない。また,常に複数の担当者がおり,仮に1人が遅刻しても,代替要員が執務できるので,業務に支障はないし,ましてや鉄道の安全・定時の運行に支障が出ることは全くない。このような業務の社員は,通常の企業の営業や販売の社員と同様の時間管理で足り,1年に1回程度の遅刻があったからといって,雇止めをする合理的理由とはならない。実際,平成21年10月2日にA5が最後に遅刻をしたときにも,点呼の時間が終了するまでに間に合ったので,窓口業務の開始には遅れなかった。また,それ以前の遅刻の場合にも,窓口業務の代替要員が業務についていたので,特に業務に支障は生じていない。このような遅刻をとらえて,契約更新拒否の合理的理由とすることはできない。
本件遅刻に関しては,通勤交通機関のバスの遅れのために遅刻したのであり,バスが定時に運行していれば遅刻することはなかった。従って,遅刻はA5の責に帰する理由によるのではなく,更新拒否の理由とすべきではない。
ウ 以上の点を考慮すると,A5が雇用継続の合理的な期待を抱くべき場合であることは明らかであり,本件では,解雇権濫用法理を類推適用すべきであるところ,A5の遅刻は年に1回程度に留まるもので,その態様も業務に支障を及ぼすものではない。従って,契約更新拒否の客観的・合理的理由がないので,本件では雇止めをすることはできず,契約の更新が当然に認められるべきものであった。
エ 本件雇止めは不当労働行為に当たること
会社は,平成22年1月12日の本件救済申立てより前に契約更新のための面談が設定され,同月13日に面談が行われているので,本件雇止めは本件救済申立てにかかわらず行われたものであると主張する。しかし,同日に面談がなされた際には,契約更新をしない旨が決定されていたわけではなく,A5にそのような話もなされていない。契約更新をしない旨の通知は,同年2月19日になされており,同年1月12日に本件救済申立てが行われた1か月後である。また,同年2月初めには,A5は,会社に対し,春闘要求も提出している。このことからも,本件救済申立てやA5の組合活動が,本件雇止めに強く影響していることは明白である。そして,同月13日の組合関係の集会に参加する際には,A5は年次有給休暇を取得しており,会社はA5が組合活動に参加していることを認識していたはずである。本件雇止めは,こうしたA5の組合活動を嫌ってなされたものであり,不当労働行為であることは明らかである。本件雇止めは,労組法7条1号,3号,4号に該当する不当労働行為というべきである。
(被告の主張)
ア 会社は,事業の性格上,厳格な時間管理を求め,社員に対してその重要性について徹底した指導を行ってきており,A5に対しては,同人が遅刻する度毎に注意,指導を行い,さらに,平成21年度の契約更新に係る面談では,採用以来3回の遅刻を発生させ,厳重注意も2回受けていること及び今後同種の事象が発生すれば次の契約更新の判断材料にする旨を伝えて,遅刻をしないよう改めて注意喚起していた。それにもかかわらず,A5は,過去3回の遅刻と同様の理由により,本件遅刻に及んだものであることからすると,事業の性格上,厳格な時間管理を求め,従前からも徹底指導を行ってきた会社が,本件雇止めの判断をすることにも相応の理由があったといえる。また,支社においては,過去に度重なる遅刻を理由に雇止めとした契約社員が2名存在したこと,本件雇止め以前に4回以上遅刻をした契約社員の契約更新をした事例は存在しなかったことに照らすと,本件雇止めには理由がないとは到底いえない。
イ 組合は,A5の組合加入通知後,会社は活発な組合活動をするA5に対して立て続けに処分がなされていること等から,本件雇止めは,こうしたA5の組合活動を嫌ってなされたものであり,不当労働行為であることは明らかであると主張する。確かに,A5が活発な組合活動を行っていたとは認められるものの,会社がA5の組合活動に介入する言動を行ったことは窺えず,その後組合の求めに応じて団体交渉も行っている。また,A5が活発な組合活動をしているからといって,会社が組合ないしはA5を嫌悪しているとはいえず,平成22年2月13日に東京都内の代々木公園で行われた集会にA5が参加していたことは,そもそも会社が容易に認識し得るものとは考え難い。さらに,組合が本件救済申立てをした約1か月後に本件雇止めが通知されているものであるが,会社における雇止めの判断が通例2月,3月頃に行われていたところ,上記のとおり,会社が本件雇止めをすることについては相応の理由があるといえる事情があり,本件救済申立てと本件雇止めの時期が近接していることをもって,直ちに本件雇止めが本件救済申立てをしたことを受けての報復的な処分とみることはできない。
ウ 以上によれば,会社が,組合活動を嫌悪し,活発な活動を行うA5を排除しようなどといった不当労働行為意思に基づき本件雇止めを行ったとみることはできないというべきであり,本件雇止めが不当労働行為に当たるとはいえない。なお,被告は,A5の本件ビラ配布に対して会社が行った本件訓告につき,不当労働行為と判断しているものであるが,上記のとおり,会社が本件雇止めをすることにつき相応の理由があると考えられる事情があることからすると,会社が本件訓告を行ったということを考慮しても,本件雇止めが,不当労働行為意思に基づくものと認めることはできない。
(会社の主張)
ア A5の雇用形態
会社における契約社員の雇用契約の内容,期間及び終了について,契約社員就業規則は,「雇用契約期間の満了に際して,業務上の必要がある場合には雇用契約を更新することができる。ただし,雇用契約期間を通算し,原則として5年を限度とする。」と規定し(4条3項),雇用契約書も「業務上の必要性,勤務成績,健康状態等を勘案の上,雇用契約の更新(ただし1年を上限とする)を行うことがある。契約更新は最初の契約期間を含め5年を上限とする。」としているところ,会社において契約社員の雇用契約は期間満了によって終了し,契約更新の際は新たに雇用契約を締結する取扱いをしており,5年間の雇用が保障されているものではなく,そのことはA5も入社時に説明を受けていた。会社が5年間の雇用を保障したことも,正社員登用について期待を持たせるような言動をしたこともない。
イ 契約更新管理の厳格性
会社では契約社員本人と所属長(支社長)との間で有期労働契約が更新される前に,毎年度末に支社の人事課社員が現場長立会いの下,必ず本人と面談を行って,次回の契約更新の意思を確認している。当該面談後,その内容を踏まえて,支社において業務上の必要性,勤務成績,健康状態等を総合的に勘案して契約更新するか否かを決定し,その結果を本人に通知している。会社では有期労働契約の期間満了に先立って以上のような更新手続を厳格に行っていたため,社員において当然に契約が更新されるとの期待は生じ得ない状況にあった。なお,本件雇止めの直前にも,契約更新の意思確認は行われている。
ウ 改善の機会の付与
A5は,雇用契約期間中,平成18年6月17日に75分,同年8月15日に45分,平成20年11月27日に25分の遅刻を発生させていた。
会社は,A5との間で,平成21年4月1日から平成22年3月31日までの有期労働契約を締結するに先立ち,平成21年3月3日,i駅駅長室において契約更新の面談を行ったが,その面談において,A12副駅長(当時)とA13課長代理(当時)が,A5は平成20年11月に3回目の遅刻を発生させ,また許可なく掲示物を貼って厳重注意を2度受けたこと,他の契約社員と比べて遅刻が多いこと,今後も服務に反する事象が続くようであれば次回の契約更新の判断材料とすることを警告し,A5もこれを了承した。
ところが,A5はこの期待に反して,平成21年10月2日に4回目の本件遅刻を発生させ,同年12月28日,本件戒告を受けた。処分通知の際に,A14駅長(当時)とA12副駅長は,A5に対し,事前の警告どおり4回目の遅刻は平成22年4月1日からの契約更新の判断材料となること,過去には遅刻を繰り返したために契約を更新しなかった事例もあることを伝えた。
エ 出勤時刻を厳守すべきことは労働契約上も企業秩序遵守の面からも重要な義務というべく,寝過ごしを繰り返したことの責任は重大であると考えられた。これだけでも,契約更新の判断を消極に解する事情であったところ,他にその判断を覆すような優良な勤務成績を示す事象も存在しなかった。そこで,会社は,A5について雇止めとすることとし,これを通知した。
オ 以上によれば,本件雇止めが適法・妥当であることはいうまでもないところであり,これが組合に所属していることや組合活動を理由とする不利益扱い等の不当労働行為に該当すると解する余地もない。このことは,遅刻を繰り返した他の契約社員も雇止めとなっていることに照らしても明らかである。
カ この点,組合は,会社が本件雇止めをA5に通知したのは平成22年2月19日であるところ,組合は同年1月12日に本件救済申立てを行い,同年2月13日にA5が東京都内で行われた集会に参加しているから,本件雇止めは労組法7条4号にも当たるという。しかしながら,支社では翌年3月31日で終了する契約社員の雇用契約について,通常は2月から3月頃に契約更新を検討し,面談を行っているが,本件雇止めに関しては事前にA5に警告を与えていたこともあって,4回目の遅刻が発生した平成21年10月からこれを重大な事象と捉え,更新拒絶について問題意識をもって検討を進めていた。会社は,平成22年1月13日にA5と契約更新に関する面談を行っているが,当該面談を設定したのは本件救済申立てがなされる同月12日より以前のことである。本件雇止めが,組合による本件救済申立て,あるいはA5の集会での発言を契機とするものでないことは明白である。
また,組合は,他の契約社員は契約が更新されているなどとも主張するが,それは,A5のように遅刻を繰り返すなどの更新拒絶の理由が認められないからにすぎない。なお,支社では契約を更新しなかった例も複数存在する。
(4)  争点(4)(本件通告の不当労働行為該当性)について
(組合の主張)
上記(3)における組合の主張のとおり,本件雇止めには理由がなく,不当労働行為と認められるところ,同主張に照らせば,本件雇止めの通知の際,A5を社員採用選考対象から除外し,その旨通告したことも労組法7条1号,3号,4号に該当する不当労働行為であるといえる。
(被告の主張)
会社は,A5を社員採用選考対象から除外しているが,これは,社員募集要項において,採用予定日である平成22年5月1日の前日の時点で契約社員として勤務する見込みであることが応募の資格要件であるとともに社員採用に関する採用条件であるとされていたところ,雇止めとなったA5は,上記要項の条件を満たさなくなったものであって,本件通告に係る措置は不当労働行為意思に基づくものとはいえず,不当労働行為には該当しない(本件雇止め自体が不当労働行為ではないことは上記(3)被告の主張のとおりである。)。
(会社の主張)
契約社員を対象とする社員採用選考試験は,契約社員として勤務し,一定の条件を満たす者を対象に実施する社員登用制度であり,その募集要項には「採用予定日の前日において,契約社員として勤務する見込みであること。」と応募資格が記されているところ,採用予定日とは平成22年5月1日であるから,応募資格としては,その前日である同年4月30日において契約社員として勤務する見込みがあることが必要となる。ところが,A5は,上記のとおり,同年3月31日をもって雇止めとなったことにより,同年4月30日には契約社員として勤務する見込みがなかったため,上記の資格を満たさないとして社員採用選考試験の対象外となったものである。したがって,本件通告が,正当な組合活動を理由とする不利益取扱い・組合への支配介入・本件救済申立てを行ったことに対する報復的不利益取扱い等に該当する余地はない。
第3  当裁判所の判断
1  前記前提事実のほか,当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠(枝番があるものは,特に標記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨によれば,本件の基礎となる事実として,概ね以下の事実を認めることができ,かかる認定事実を左右するに足りる的確な証拠はない。
(1)ア  会社は,国鉄改革法に基づき,国鉄が経営していた旅客鉄道事業等のうち,西日本地域における旅客鉄道事業を承継して昭和62年4月に設立された。初審申立時の従業員は2万9870名である。
イ  会社の営業エリアは,北陸から近畿,中国,九州北部の2府16県にわたっており,極めて多数の現業機関(駅や運転・施設・電気・車両等の各本区所等の主たる業務を扱う場所のほか,管理者のいない付随する係員詰所,乗務員宿泊所,信号扱所,支所,管理室,派出等の建屋を含み,その数は700を超える。)を設置している。
(甲10,16,証人A15(以下「証人A15」という。))
ウ  会社は,岡山市北区に支社を設置している。A5の勤務していたi駅は,支社管内で最も大きい駅であり,駅の中で内勤,営業,輸送等多くの職種の多数の社員が勤務していた。
A5を含め,i駅で勤務する改札業務等営業担当の社員は,所定の勤務指定表で指定された作業ダイヤに基づき,15分から1時間の休憩時間を複数回挟みながら,1時間前後の時間で場所や担当業務を替えるなどして,交代で業務を受け持っていた。
(甲10,乙B6,7,C3(A16),5(A17))
(2)  会社における労使事情
ア 会社には,組合のほか,c労組(上部団体はd労連。),e労組,f労組(上部団体はg総連。)及びh労組といった複数の労働組合が存在していた。その最大の労働組合はc労組である。
会社は,組合以外の労働組合とは組合掲示板の貸与等を含む総合労働協約を締結していた。
なお,会社の現業機関のうち,勤務する社員の所属する労働組合が併存している拠点数は428か所にのぼり,i駅でも,c労組,e労組,f労組といった複数の労働組合の組合員が混在していた。
(甲16,17,乙A39,B24,25,35,C1,3(A16),5(A17),丙6,証人A15)
イ 組合は,昭和62年6月7日に結成された,会社及びその関連会社に雇用される労働者により組織された労働組合であり,a労組等とともに上部団体であるb総連に加盟している。
A4は,組合広島支部において支部長を務めていたものであるが,組合の執行部の路線対立を生じて,組合本部(臨時)執行部執行委員長を務めるようになり,平成21年9月19日には組合再建大会を開催して組合広島支部を組合本部として再建することとし,自ら執行委員長の地位に就いた。
A5も,これに伴い,組合の副執行委員長の地位に就いた。
以上の経緯で,A4とは別に組合の代表者の地位にあると主張する者を生じていたため,会社は,平成21年3月3日,これらの者との間で,「対象となる組合員」を明示した上で,当該組合員の労働条件に関する事柄についてのみ団体交渉を行い,その結果は当該組合員に限って適用することとする旨の確認書(21年3月3日確認書)を締結した。
初審申立時における組合の組合員は4名であった。
i駅における組合の組合員はA5・1名であった。
(乙A38,39,B26,C1,2)
ウ 組合と会社の関係
(ア) 組合の運動方針等
a 組合は,昭和62年6月の結成以降,国鉄分割民営化に反対し,「国鉄1047名解雇撤回」,「反合理化・運転保安確立」,「組織拡大」を主な運動方針として組合活動を行ってきた。「国鉄1047名解雇撤回」とは,昭和62年の国鉄改革の後,○○グループ各社らに採用されなかった旧国鉄社員が,その後,国鉄清算事業団を解雇となった1047名の解雇撤回を求めるものであり,同解雇者のうち9名はa労組の組合員,他はe労組及びh労組の組合員であった。
b 組合以外の労働組合のうち,e労組及びh労組は当事者として1047名問題の和解に応じる方針であり,c労組及びf労組はこれまでの国の姿勢を批判しながらも人道的立場から和解することには賛成であった。
c 組合が加盟するb総連及びe労組の一部組合員は,1047名の解雇撤回を強く主張し,国鉄1047名問題に対して和解に応じようとするe労組本部の方針を批判していた。
(以上につき,乙A38,39,B9~12,C1,2)
(イ) 労働協約及び団体交渉
a 組合は,会社に対し,団体交渉,就業時間内における組合活動及び組合事務所や組合掲示板の供与に関する3つの個別労働協約の締結を求めていた。それに対し,会社は,会社内の他の労働組合と同内容の総合労働協約の締結を提案したが,組合は,総合労働協約は労働組合の活動を制限するとの理由から,会社との間で総合労働協約を締結しておらず,組合掲示板の供与等は受けられていなかった。
(乙B24,25,35,C1,5(A4),丙5,9)
b 会社は,組合との団体交渉の窓口を本社としており,本社近くの会社関連施設で団体交渉を実施していた。
(乙C1,2)
c A5の入社及び組合加入
平成17年12月19日,A5は,支社の契約社員として採用され,i駅に運輸管理係として勤務するようになった。A5の業務内容は,i駅の切符販売(◎◎窓口),改札及び案内業務等であり,駅において,勤務指定表に記載された作業ダイヤに従って勤務を行っていた。
平成21年1月28日,A5は組合広島本部に加入し,翌月2月頃には会社に対して組合員通告もなされた。
当時の組合員数は,A5を含め3名であった。
(乙A13,38,39,B2,6,7,29,C1,2)
d A5の組合加入後,本件戒告に至るまでの主な組合活動
(a) 平成21年2月18日,組合は,09春闘要求書を会社に提出した。
同要求書には,A5がi駅の契約社員に声を掛けて,意見を取りまとめた契約社員制度及びi駅についての職場改善に関する事項も記載されていた。
(乙A3,39,45,C2,5(A4))
(b) 平成21年3月6日,組合と会社は,本社近くのu会館において団体交渉を実施した。組合からはA5とともにA4及びA18組合員(以下「A18」という。)が参加し,会社からは本社人事課の担当者が出席した。組合の要求事項は,賃金等,契約社員,運転保安及び職場に関する事項であったが,すべての要求事項について,会社との団体交渉は決裂した。
(乙A39,C1,2)
(c) 平成21年3月14日,組合は,会社との団体交渉が決裂したため,契約社員の正社員化を要求するストライキをi駅で実施し,スト突入集会には組合員3名が参加した。
A5は,当日の勤務時間は午前10時15分から午後9時45分であったが,午後6時45分から午後7時45分までストライキを実施し,同時間帯の賃金をカットされた。
(乙A4,5,38,39,C1,2)
(d) 平成21年3月18日,組合は,l駅で決起集会を行い,同集会には,A5を含む組合員3名が参加した。
(乙A4,6,39,C2)
(e) その後も,A5は,平成21年4月25日,a労組が呼びかけた現地集会への参加を皮切りに,同年8月まで集会への参加等の組合活動を行った。
なお,この間の同年5月14日,l駅に勤務するA19(以下「A19」という。)が組合に加入し,組合は同日付けの文書で会社に対し組合員通告を行った。
(乙A11,13,29,39,C2,丙3,4)
(f) 前記のとおり,平成21年9月19日,組合本部再建大会が開催され,A4が執行委員長,A5が副執行委員長に就任した。
組合は,同大会において,「反合理化・運転保安確立」,「国鉄1047名解雇撤回」,「組織拡大」を運動方針として採択した。
(乙A18,28,38,39,C2,5(A4),丙3,4)
(g) 平成21年9月30日,A4とA5は,倉敷市内で開催された国鉄1047名解雇撤回等を求める岡山県労働者総決起集会に参加した。
同集会の主催には,他の労働組合とA5の名前が記載されていた。
(乙A39,B16,C2)
(h) 平成21年11月1日,全国労働者総決起集会が東京都内の日比谷野外音楽堂において開催され,組合からA5が参加した。
(乙A20,39)
(3)  契約社員の服務等
ア 契約社員の服務
契約社員の服務については,前記前提事実(10)記載のとおり,契約社員就業規則が就業規則の規定を準用し,会社施設内等における集会(ビラ配布を含む。),政治活動等を無許可で行うこと等を禁止し(就業規則22条,23条),勤務の厳正や出勤について規定されている(同7条,8条)。
(乙B1,5)
イ 契約社員に対する懲戒
また,契約社員就業規則は,前記前提事実(10)記載のとおり,上記規定に違反した場合における契約社員に対する懲戒の基準等について,厳重注意,訓告のほか,戒告や懲戒解雇を定めている(同29条,30条)。
(乙B1)
ウ 職場規律の確立・維持等に係る会社の取組み
会社には,運転の安全の確保に関する省令(昭和26年運輸省令第55号)等に基づき,昭和62年4月に定めた「運転安全規範」があるところ,その「綱領」として「(1)安全の確保は,輸送の生命である。(2)規程の遵守は,安全の基礎である。(3)執務の厳正は,安全の要件である。」と定められている。
また,会社が福知山線列車脱線事故が発生したことを踏まえて制定した「安全憲章」第1項,第3項には,「1.安全の確保は,規程の理解と遵守,執務の厳正および技術・技能の向上にはじまり,不断の努力によって築きあげられる。」,「3.安全の確保のためには,組織や職責をこえて一致協力しなければならない。」と定められている。
会社は,時間管理については,入社時から社員の時間管理教育を徹底し,講義のほか,朝の点呼で他の遅刻事例を摘示したり,遅刻を発生させた社員に個別の指導を実施するなどしていた。
(甲8,9,乙C3(A16),5(A17))
エ 賞罰審査委員会
(ア) 賞罰審査委員会の構成等
会社は,社員の表彰や懲戒等については,賞罰審査委員会において審議し,決定することとしている。支社の賞罰審査委員会は,支社長,次長及び人事課長のほか,必要に応じて臨時委員として関係課室長を招集して開催していた。
(乙B20,C3(A16))
(イ) 賞罰審査委員会の事務等
賞罰審査委員会の幹事は,人事課長が担当し,会務に関する具体的作業は人事課が担当していた。人事課は,審議する内容により懲戒等の必要があると思われる場合には,必要な調査等を行い,事実関係を把握して必要な資料を同委員会に提出し,その資料等を基に同委員会において審議,処分等を決定していた。
(乙B20,31,C3(A16))
(ウ) 賞罰審査委員会の流れ
賞罰審査委員会は,通常,毎月中下旬に開催されており,賞罰審査委員会の開催までに調査が終わった事案を付議することになっていたが,調査に一定の時間を要するため,翌月の賞罰審査委員会に付議することが多かった。また,事案によっては,賞罰審査委員会の決定から処分の発令まで,事務手続等で時間がかかることもあった。
(乙B31,C3(A16))
(4)  A5のビラ掲示,本件ビラ配布と本件訓告等
ア 平成20年10月のA5のビラ掲示と処分
(ア) A5の組合加入前のビラ掲示
平成20年10月8日,A5は,i駅地下改札事務所内にある会社の業務用掲示板に無許可でビラを掲示した。このとき,A5は組合には加入していなかった。
(乙A39,B8の2,20,32,C2,3(A16))
(イ) 掲示ビラの内容
A5が掲示したビラは,平成20年11月2日の日比谷野外音楽堂で開催予定の全国労働者総決起集会への参加を呼びかけるものであり,そのビラの中には,見出しに「国鉄1047名解雇撤回」といった文言が,裏面に「第一に,連合やj労連の屈服を突破する現場からの反乱を組織することです。」,「第二に,国鉄1047名の解雇撤回闘争を先頭に,民営化―労組破壊と,改憲―戦争に立ち向かう全ての労働者の怒りの声を結集することです。私たちは,解雇撤回を引き下ろし,a労組を排除して進められようとしている4者・4団体による政治解決に絶対に反対します。」といった文言が記載されていた。
(乙B13,14,C2,3(A16))
(ウ) ビラの掲示場所
ビラを掲示した掲示板は,i駅地下改札の裏に位置する社員休憩室にあるホワイトボードであり,会社の業務に関する掲示以外に,パン屋の広告やチラシ等も貼ってあった。
(乙A39,B8の2,32)
(エ) ビラ掲示を会社が把握した経緯
ビラが掲示された平成20年10月8日当日,会社は,A5のビラ掲示に気付いた社員からの連絡及び別の社員からの報告により,A5がビラを掲示したことを把握した。また,会社は,A5がビラを掲示したことに対して,他の労働組合の役員からクレームを受けた。
(乙A39,B20,C3(A16))
(オ) ビラ掲示に対する会社の対応
後日,i駅副駅長が,A5に確認したところ,同人はビラを会社の業務用掲示板に掲示したことを認めた。
会社は,A5のビラ掲示行為を平成20年11月期の賞罰審査委員会に付議し,同人が会社の業務用掲示板に会社に無断で政治活動ないし組合活動に関するビラを掲示し,職場秩序の維持を阻害したことが明白であり,就業規則22条及び23条に抵触するとして,同月25日付けでA5を厳重注意とした。
(乙B20,C3(A16))
イ 組合の動向及びA5のビラ配布
(ア) 組合の動向
平成21年4月21日,組合は,A4,A5及びA18ら3名が参加して,広島支部執行委員会を開催し,組織拡大を図るため,休憩時間に会社施設内でビラを封筒に入れ,相手の了承を得て手渡しで配る方針を決めた。
組合がビラを封筒に入れて配ることにしたのは,ビラをそのまま配布すると周囲の視線もあり,持って帰り易いように配慮したからであった。
同年9月19日の本部再建大会においても,組織拡大等の運動方針が採択された。
(乙A28,C2,5(A4),組合代表者A4,証人A5)
(イ) A5のビラ配布の状況
a 平成21年夏,A5は,i駅の社員に対し,休憩室等でビラ配布を始めた。ビラを手渡した相手は,20歳代や30歳代の若い社員であり,その多くは契約社員であったが,正社員に手渡すこともあった。
休憩室では,社員は,椅子に座って雑談したり,昼食や菓子を食べたり,ソファーで横になって休憩していた。
(乙C2)
b A5は,平成21年夏から30回程度ビラ配布を実施した。配布したビラは,組合広島支部発行の「△△」や組合発行の「□□」等であった。
(乙C2)
c ビラを相手に手渡す際にA5は,「こういうのちょっと読んでみてくれる。」,「いらんかったらいらないでいいよ。」と言って,相手がビラをいらないと言ってきた際には持ち帰っていた。
(乙A39,C2)
ウ 本件ビラ配布
(ア) 本件ビラ配布の概要
A5は,会社内において,平成21年9月5日,同年10月19日及び同月21日,以下の4種類のビラ(本件ビラ)を会社に無許可で配布(本件ビラ配布)したことにより,同年11月5日,本件訓告に付された。
本件ビラの種類は,①同年9月19日に開催される広島県労働者総決起集会への参加を呼びかけるもので,当日開催される組合の本部再建大会の案内が併せて記されているもの(9・19集会ビラ),②同月30日に開催される岡山県労働者総決起集会への参加を呼びかけるビラで,集会において,A4が「国鉄1047名解雇撤回を勝ち取ろう!」について報告を行い,A5が9・30実行委員会に参加していることが記載されているもの(9・30集会ビラ),③同年11月1日に開催される全国労働者総決起集会の開催への参加を呼びかけるもの(11月集会ビラ①),④同日に開催される全国労働者総決起集会への参加を呼びかける内容で,表紙下段にe労組共闘と記載されたもの(11月集会ビラ②)であった。
(乙A35,B15~18,20)
(イ) 本件ビラ配布の状況
a 平成21年9月5日午後8時頃,A5は,休憩時間中,i駅2階営業事務室内の個人用小ロッカーの前で社員にビラを封筒に入れて手渡した。封筒には,9・19集会ビラ,9・30集会ビラ,11月集会ビラ①の3種類のビラと組合名と役職名が記載されたA5の名刺が同封されていた。
(乙B15~17,19,20,32,C2,3(A16),証人A5)
b 平成21年10月19日午後8時頃,A5は,業務終了後,i駅2階の男子ロッカー室(休養室)において,同室に独りで在室していたA7社員(当時,見習い社員として勤務していた。)に対して,11月集会ビラ②を含むビラと名刺を封筒に入れ,手渡した。
(甲18の1,乙B18,20,32,C2,証人A5)
c 平成21年10月21日,A5は,休憩時間中,i駅地下改札事務所内の休憩室において,同室に独りで在室していたA8社員(当時,見習い社員として勤務していた。)に対してビラ(配布の時期等に照らせば,他に反証のない限り,上記bと同様のビラが含まれていたと認めるのが相当である。)と名刺を封筒に入れて手渡した。
(甲18の2,乙B20,32,C2,証人A5)
d ビラを配布する方法は,ビラ配布の1回当たりビラ3枚程度を宛名のない封筒に入れ,その封筒を2,3人分用意して,一人ずつ手渡しで配布するというものであった。本件ビラ配布においては,ビラを手渡す際に相手に封筒の中身を見せることもあった。
(乙C2)
(ウ) 本件ビラ配布の場所等
a 平成21年9月5日の配布場所であるi駅2階営業事務室内の個人用小ロッカー前の通路(別紙4①の場所)は,出札業務を行う◎◎窓口の裏にあり,◎◎窓口には,常時3名から7名の係員が勤務していた。同所(別紙4①の場所)は利用客の出入りのある場所ではないが,社員の休憩を目的とする場所でもない。同所は,◎◎窓口とパーティションで隔てられた通路の奥にあり,ロッカーを窓口から直接見ることができないが,パーティションの上部は開いていた。なお,窓口に通ずる扉は通例閉められていた。この個人用小ロッカーは,会社の公金と社員の私金が混入するといった現金事故防止のために,執務中,個人用の財布を入れておいたり,社員によっては,出札カウンター上に表示する氏名札,必要な印章,個人用のIDカードを収納するための場所であった。
(乙B8の1,19,20,32,C2,3(A16),5(A17),証人A5)
b 平成21年10月19日の配布場所であるi駅2階の男子ロッカー室は,同2階の休養室の中に設けられた社員の着替えのための場所であり(別紙4②の場所),◎◎窓口や改札口等の営業区域から離れた別の場所に設置されていた。同所は,利用客の出入りのある場所ではない。
本件ビラ配布当時は,同室のドアは閉められていた。
(乙B8の1,19,20,32,C2,3(A16),5(A17),証人A5)
c 平成21年10月21日の配布場所であるi駅地下改札休憩室は社員の休憩場所であり(別紙4③の場所),券売機室を隔て地下改札口に近接した場所にあった。同所は,利用客の出入りのある場所ではなく,社員が次の作業に行くまでの休憩時間を過ごすなどして利用していた。
本件ビラ配布当時は,同室のドアは閉められていた。
(乙B7,8の2,20,32,C2,証人A5)
(エ) 本件ビラ配布時の社員の反応等
A5が社員に対して本件ビラを配布した時間は,A5は休憩中か業務終了後であり,配布された社員は休憩中又は手待ち時間中であり,ビラを相手に手渡す際のA5の対応は,前記イ(イ)cのとおりであった。
A5からビラを配布された社員が,ビラを配布されたために休憩時間終了後,仕事に就けなかったり,A5とビラを渡された社員がその場で言い争ったりすることはなかったが,後記エのとおり,ビラを受け取った社員が所属する労働組合が会社に抗議をしたり,受け取った社員が会社に報告するといった事態は生じた。
(乙A39,C1~3(A16),5(A17)。この点,組合は,ビラの配布に伴い,抗議や報告があったことを争うが,その発覚の経緯に照らすと,その旨述べるA16やA17の供述は採用することができる。)
(オ) 本件ビラの記載内容
a 9・19集会ビラ
平成21年9月19日に開催される広島労働者総決起集会への参加を呼びかけるビラであり,内容は次のとおりである。
(見出し)
9/19広島労働者総決起集会
(スローガン)
11・1全国労働者集会1万人結集へ!
国鉄1047名解雇撤回!
道州制・民営化-360万人首切り粉砕!
非正規職撤廃!大恐慌・戦争と対決を!
(集会内容)
「a労組からの訴え」b総連書記長・a労組執行委員
「Z労組からの報告」A4・Z労組広島支部長
「基調提起」広島県労働組合交流センター事務局長
各労組,産別からの発言
(呼びかけ文)
「11月1日,3労組の呼びかけで日比谷野外音楽堂で,全国労働者総決起集会を開催します。1万人の労働者の怒りを結集しよう。a労組は国鉄1047名闘争にこだわって闘いの先頭に立ちます」(a労組委員長)
(集会の主催)
9・19集会実行委員会
(呼びかけ)
Z労働組合・広島支部,a労組を支援する会・広島,広島県労働組合交流センター
(案内)
当日,13時から同会場において「Z労組本部再建大会」が開催されます。全力で参加しよう。
(乙B15)
b 9・30集会ビラ
平成21年9月30日に開催される岡山県労働者総決起集会への参加を呼びかけるビラで表裏2頁からなり,内容は次のとおりである。
1頁
(見出し)
9/30岡山県労働者総決起集会
(スローガン)
11・1全国労働者総決起集会1万人結集へ
国鉄1047名解雇撤回!
道州制・民営化絶対反対!
非正規職撤廃!大恐慌・戦争と対決を!
(集会内容)
「国鉄1047名解雇撤回を勝ち取ろう!」
A4・Z労働組合広島支部長
「道州制・民営化-360万人首切りを阻止しよう!」
m組合委員長
青年からの決意表明
(呼びかけ文)
8月30日,賃下げ・失業・非正規雇用化に対する労働者の怒りが自民党を打倒しました。1987年の国鉄分割民営化から始まった民営化・労働組合破壊の攻撃に労働者の側が勝利しました。さらに,大恐慌と戦争に突き進む資本主義を打倒するときです。「一人の首切りも許さない」という国鉄1047解雇撤回闘争を軸に道州制・民営化=360万人首切りと対決する労働組合の団結を。11・1全国労働者総決起集会へ!
(主催)
9・30集会実行委員会
A5・Z労働組合広島支部副支部長,m組合委員長,n組合元書記長,oユニオン副委員長
2頁
(スローガン)
一人の首切りも許さない!
労働者の団結と国際連帯が歴史をつくり,社会を変革する!
首切り・賃下げに職場から反撃を!
(小見出しと要旨)
「大恐慌・戦争と対決を!」
新自由主義政策は大恐慌を引き起こして破綻した。
資本主義体制の危機は,保護主義を引き起こし,国家主義や排外主義があおられ,改憲・戦争へと突き進んでいる。
「労働者の時代が始まった」
8月30日の総選挙で労働者の怒りが自民党を打倒した。労働運動の新しい潮流が生まれようとしている。
「国鉄1047名闘争の勝利を」
国鉄1047名解雇撤回闘争が自民党支配を打ち倒す原動力になった。国鉄分割民営化は今日の新自由主義政策の出発点である。国鉄1047名闘争団が分割民営化攻撃の完成を阻んでいる。国鉄1047名解雇撤回闘争は全国の労働者・労働組合の結集軸となるものである。
「道州制絶対反対!11.1日比谷へ」
民主党の政策は道州制によって360万人の自治体労働者を解雇し,民営化によって社会全体をさらに非正規雇用化,賃下げ,大失業へたたき込むものだ。9・30岡山県労働者総決起集会に集まり,11月1日には日比谷野音で行われる全国労働者総決起集会へ。
(乙B16)
c 11月集会ビラ①
平成21年11月1日に開催される全国労働者総決起集会への参加を呼びかけるビラで,表裏2頁からなり,内容は次のとおりである。
1頁
(見出し)
11.1全国労働者総決起集会
(スローガン)
全世界の労働者の未来をかけて
国鉄1047名解雇撤回!
生きさせろ!派遣法撤廃!
改憲・戦争と民営化・労組破壊にたち向かう労働者の国際的団結を
(呼びかけ文)
現場労働者の団結した闘いこそ,歴史をつくり社会を変革する力です。世界で今,闘う労働運動の復権が始まっています。労働者の国際連帯を大きく発展させましょう。私たちは,国鉄1047名解雇撤回闘争を先頭に,改憲・戦争と民営化・労組破壊に立ち向かう,すべての労働者の怒りの総結集を呼びかけます。11・1日比谷への大結集をともに勝ち取りましょう!
(呼びかけ)
p労働組合,q労働組合,a労働組合
2頁
(スローガン)
労働者の団結と国際連帯が歴史をつくり,社会を変革する!たたかう労働組合の全国ネットワークをつくろう
(要旨)
新自由主義政策は,労働者の雇用と賃金,権利,社会保障制度,教育,医療,地方自治,農業を破壊して吹き荒れ破綻した。資本主義体制の危機は改憲と戦争への衝動に拍車をかけている。こうした攻撃が労働者人民を深い眠りから呼び覚まし,既成の労働組合の支配に抗し,現場からの怒りの声が噴出し,労働運動の新しい潮流が生まれ出ようとしている。
私たちは三つのことを訴える。労働者の団結した闘いこそが,歴史をつくり社会を変革する。
第一に,今の労働者と労働運動が置かれている困難な現実は,国鉄分割・民営化攻撃を突破口に生み出されたものであり,国鉄1047名解雇撤回闘争を先頭に,民営化・労組破壊と,改憲・戦争に立ち向かう全ての労働者の怒りの声を結集すること。
第二に,すべての犠牲が労働者への首切り,賃下げ,非正規職化等の攻撃となって襲いかかっている現実に対し,現場からの反乱を組織し,怒りの声を結集し,10春闘に向けて「ゼネストが必要な情勢だ!闘う労働運動を復権させよう!」と全国に発信すること。
第三に,労働者の国際連帯闘争を大きく発展させること。
(乙B17)
d 11月集会ビラ②
平成21年11月1日に開催される全国労働者総決起集会への参加を呼びかけるビラで4頁からなり,内容は次のとおりである。
1頁
(スローガン)
11月労働者集会への1万人結集で
1047名解雇撤回・○○グループ体制打倒をかちとろう!
前社長らX社総ぐるみで「事故調報告」改ざん
現場労働者に事故責任をおしつける○○グループ体制を打倒しよう!
(小見出しと要旨)
「○○グループ会社幹部らと「事故調」が卑劣な事故責任の改ざん策動」
「現場労働者には黙祷・献花・立哨を強制し事故責任押し付け」
前社長らは会社ぐるみで尼崎事故調査報告書の改ざん策動を行っていた。X社と事故調査委員会は,○○グループの事故責任逃れを行っている。
2頁
(スローガン)
現場における事故原因は「半径300mの魔の急カーブ」をつくったことだ
現場労働者の実力闘争,反合理化・運転保安闘争をたたきつけよう!
(要旨)
半径300mの急カーブがつくられたこと自身がハード面における最大の事故原因であり,ATS未設置は2次原因である。「営利優先・安全無視」で「魔の急カーブ」をつくり,運転士を懲罰的「日勤教育」で叩きのめし,運転士資格剥奪攻撃をかけていた○○グループ民営化体制こそ真の事故原因だ。
労働者の団結と闘いだけが資本に安全を強制することができる。しかしe労組を含む体制内労組執行部は尼崎事故の「共犯者」になりさがっている。○○グループのやりたい放題を追認し,事故後「労使安全会議」に参加し○○グループを救済・擁護し,腐った関係を継続してきた。○○グループ体制の安全崩壊に加担してきたのだ。こんなやつらを打倒して闘う労働組合を甦らせよう。
3頁
(スローガン)
○○グループ体制は安全・要員問題で完全に破綻した
大合理化と専制的労務支配をぶっ飛ばそう!
(要旨)
国鉄分割・民営化以降,○○グループの安全問題は危機に直面している。会社は事故が起きたら現場の労働者の責任にするが,その原因は,国鉄分割・民営化である。職場から,○○グループ体制を打倒する闘いを起こそう。
4頁
(スローガン)
国鉄分割・民営化攻撃を打ち破り勝利の展望を
切り開いてきたa労組と国鉄1047名闘争
(要旨)
新たに登場した民主党・連合政権は,歴史的命脈のつきた資本主義を救済するための政権であり,民主党の公約は,360万人の公務員労働者首切りの道州制攻撃であり,国鉄・分割民営化を全社会化し,国家丸ごと民営化するということである。その攻撃の先兵に,○○グループでいえばd労連・g総連がなるというのだ。いまこそ全労働者が団結して,民主党・連合政権打倒!首切り・大失業攻撃粉砕の闘いに団結してたちあがるべきときだ。
a労組,国鉄1047名闘争,1047名解雇撤回を掲げた11月労働者集会への1万人結集こそ,民主党・連合政権打倒を切り開き,1047名解雇撤回・○○グループ体制打倒し,世界を変える決定的闘いだ。
国鉄分割・民営化攻撃を打ち破り,民営化・戦争・改憲・労組破壊攻撃を阻んできた闘いを実現してきたのがa労組であり,国鉄1047名解雇撤回闘争だ。
1047名闘争は,国家権力や○○グループ体制と非和解に激突して闘われてきた。a労組は,○○グループと○○グループ御用労組(g総連やd労連・e労組など)との結託体制を破綻においやり,○○グループ労働運動の主流派として登場している。v労組は,強制配転攻撃にストライキで闘っている。5・27 e労組臨大闘争被告団は,尼崎事故弾劾の先頭に立ち,e労組本部打倒の闘いをやりぬいている。いかなる攻撃にもまけない,資本主義そのものを転覆する絶対非和解の団結をつくりだしているのだ。
この「資本との絶対非和解の団結」を実現する1万人の団結が実現したとき,世界を動かす原動力になる。○○グループで働く全ての労働者は11月労働者集会に結集しよう。
(乙B18)
エ 本件訓告
(ア) 平成21年9月5日ビラ配布の把握
平成21年9月5日にA5からビラを配布された社員が,その後,同社員所属の労働組合の役員に報告し,その役員が会社にA5のビラ配布についての抗議を行ったことから,会社はA5のビラ配布の事実を把握した。会社がA5のビラ配布の事実を確認したのは,同日のビラ配布が最初だった。
(乙C1,3(A16))
(イ) 平成21年9月5日ビラ配布の事実確認
平成21年9月14日,複数のi駅管理者が,A5に対して,同月5日のビラ配布について事実確認を行ったところ,A5は「職場内で数人にビラを配布した。」,「ロッカー等で配布した。」と回答した。会社は,A5からビラを受け取った社員に対しても事実確認を行った。その後,会社は,i駅駅長事務室(以下「駅長室」という。)において,i駅副駅長からA5に対して,「こういうビラをもらったという話をある社員から聞きました。組合活動はしてはいけない。」と注意をした。
(乙A39,B20,C2,3(A16))
(ウ) 平成21年10月19日及び同月21日ビラ配布の把握
平成21年10月19日及び同月21日のA5のビラ配布について,会社は,ビラを受け取った社員からの申し出を受けて,A5がビラ配布を行った事実を把握した。
(乙C3(A16))
(エ) 平成21年10月19日及び同月21日ビラ配布の事実確認
i駅管理者は,A5からビラを受け取った社員に対して,事実確認のために聴き取り調査を実施した。その内容は,i駅管理者から支社人事課に報告された。
(乙B20,C3(A16))
(オ) 本件ビラ配布の許可の有無,聴き取り調査時の社員の状況
本件ビラ配布について,A5は,会社からビラ配布の許可を得ていなかった。
聴き取り調査の対象となったビラを受け取った社員は,同調査に際し,「職場でビラを配布することを許してよいのか。」という指摘や,「もらった主旨が分からず困っている。」,「業務と関係ないものをもらって迷惑だ。」などと述べた。
(乙A39,B20,C3(A16))
(カ) 平成21年10月期賞罰審査委員会の決定
会社は,平成21年10月29日開催の賞罰審査委員会において,本件ビラ配布について付議し,就業規則22条及び23条違反として,A5を訓告に付すことを決定した。
なお,同月期の賞罰審査委員会に付議することとなったのは,会社が,A5の同年9月5日のビラ配布を付議するために準備を進めており,その後,同年10月19日及び同月21日ビラ配布が発覚し,同種の事象であり,一体として検討することが合理的であるとの判断からであった。
(乙B20,31,C5(A17))
(キ) 本件訓告
平成21年11月5日,会社は,A5を駅長室に呼び,A5に対し,i駅長から同日付け訓告辞令を手渡した(本件訓告)。
その文書には,「(事由)契約社員就業規則第29条第1項第1号及び第30条第2項による。」と記載されていた。
i駅長は,A5に対して,会社内でビラ配布等の組合活動をしてはいけない,組合活動を職場内で行ったことが就業規則に違反すると説明をした。
(乙A35,38,39,C2)
(ク) ビラ配布に係る会社の取扱い
会社は,無許可で会社施設内におけるビラ配布が確認された場合には,所属労働組合の如何にかかわらず,就業規則に反するとして厳格に対処しており,他の労働組合の組合員がビラの配布をしたことが確認された事例において,同組合員たる社員を厳重注意処分にするなどの措置を講じていた。
(甲16,証人A15)
(5)  A5の遅刻と本件戒告
ア 遅刻発生時の会社の対応
(ア) 休暇等願の作成
会社は,社員が遅刻した場合には,各箇所の管理者が,遅刻した事情について本人から聴取し,その理由を記録として残すために休暇等願を作成していた。休暇等願は,遅刻した期間,所定勤務及び遅刻した理由を記載する事由欄を当該社員が記載し,勤務認証,実遅延時分,箇所の概況,代務などの処理方法については会社側が記入することになっていた。休暇等願は,通常は遅刻した当日に作成されるが,本人が当日手続に来られない場合には作成が翌日になることもあった。
(乙B4,C2,3(A16))
(イ) 代務
会社では,代わりの社員が業務に就くことを代務と呼んでいた。社員は,作業ダイヤにより作業時間毎になすべき作業が決められていたので,社員が出勤時間に遅れると,他の社員がその業務を代務することになるが,代務を行わない場合もあった。
(乙B20,C3(A16))
イ 本件戒告までの経緯
(ア) 平成18年6月17日の遅刻及び同年7月13日の注意指導
a 平成18年6月17日,A5は,当日の所定勤務の始業時間が午前9時30分であったところ,午前10時45分に出勤し,1時間15分遅刻をした。A5の遅刻の原因は,目覚まし時計のかけ忘れであった。会社では,A5が遅刻したため,営業当直係長がA5の代務を行った。
b 会社は,上記遅刻について,平成18年7月期の賞罰審査委員会に付議し,遅刻の原因は,A5本人の注意不足による寝過ごしであり,初めての遅刻であることから,注意指導とすることを決定した。
c 平成18年7月13日,i駅管理者は,A5に対して,処分結果を口頭で伝えた。会社は,遅刻発生後,上司からA5に対し,時間管理の重要性や社員としての取組姿勢についての指導を行い,A5は,今後の遅刻を防止するため,目覚まし時計を2個にするという対策をとった。
(以上につき,乙B4の1,20,C3(A16))
(イ) 平成18年8月15日の遅刻と同年10月2日の厳重注意
a 平成18年8月15日,A5は,当日の所定勤務の始業時間が午前10時30分であったところ,午前11時15分に出勤し,45分遅刻した。A5の遅刻した原因は,二度寝したことであった。遅刻当日のA5の担当業務は,i駅新幹線改札案内担当であった。
b 平成18年8月18日,会社は,上記遅刻について,i駅企画助役と係長からA5に対し,勤務の厳正について1時間程度,注意指導を行い,「勤務前には早く寝るように」,「目覚まし時計の種類を変えてはどうか」,「電話での出勤確認を当分行う」などの防止対策を指導した。
c 会社は,上記遅刻を就業規則7条(勤務の厳正)に違反しているとして,平成18年9月期の賞罰審査委員会に付議した。
賞罰審査委員会は,遅刻の原因がA5本人の過失による二度寝であり,2回目の遅刻であり,前回の遅刻から1年以内の再発であったこと及びそのときの遅刻の反省が生かされていないこと等を踏まえて,厳重注意とすることを決定した。
d 平成18年10月2日,会社は,A5に対して,処分結果の厳重注意の文言と処分理由として就業規則に違反している旨の記載された文書を手渡し,A5に対し,今後,二度とこのようなことがないよう指導を行った。
(以上につき,乙A39,B4の2,20,C2,3(A16))
(ウ) 平成20年11月27日の遅刻と同年12月24日の厳重注意
a 平成20年11月27日,A5は,当日の所定勤務の始業時間が午後1時15分であったところ,午後1時40分に出勤し,25分遅刻した。A5の遅刻した原因は,二度寝したことであった。遅刻当日のA5の担当業務は,i駅新幹線改札担当であった。会社は,A5からの電話連絡を受け,i駅のA10係長の指示で他社員が午後1時15分から45分までA5の代務を行った。
当日,i駅営業係長が,A5に対して約30分間にわたり,「出勤遅れをしたことは,自分自身の責任であることをしっかりと自覚して,寝る前に次勤務と出勤時間の確認を行い目覚まし時計のセットを行うこと」の指導を行った。
b 会社は,上記遅刻を就業規則7条(勤務の厳正)に違反しているとして,平成20年12月期の賞罰審査委員会に付議した。
賞罰審査委員会は,遅刻の原因が,A5本人の過失による二度寝であって,本人の注意不足は否めないこと,今回で3回目の遅刻であり,職責に対する認識不足が明らかであること,平成18年8月15日の遅刻の後,目覚まし時計を2個にするという対策を行ってきたにもかかわらず再発させたこと,前回の遅刻の発生後から1年以上経過していること等を踏まえて,厳重注意とすることを決定した。
c 平成20年12月24日,会社は,A5に対して処分結果の厳重注意と記載された文書を手渡し,併せて口頭で注意指導を行った。
(以上につき,乙A39,B4の3,20,C2,3(A16))
ウ 平成21年10月2日の遅刻及び本件戒告
(ア) 平成21年10月2日の遅刻
平成21年10月2日,A5は,当日の所定勤務の始業時間が午前9時であったところ,午前9時15分に出勤し,15分遅刻した(本件遅刻)。
(乙A39,B4の4,20,C2,3(A16))
(イ) 通常の通勤状況
A5は,自宅最寄りのバス停(kバス停)からi駅前のバス停までをバス通勤していた。A5は,普段は勤務始業時間のおよそ1時間前に自宅を出ていた。勤務始業時間が午前9時の場合には,普段は午前8時から午前8時少し過ぎに自宅を出て,午前8時45分ないし50分頃に事務室に着いていた。
(乙C2)
(ウ) 本件遅刻の状況
平成21年10月2日,A5は,目覚まし時計2個と携帯電話のアラームをかけて寝たにもかかわらず起きることができず,起床が午前8時15分頃になり,午前8時25分頃に自宅を出発した。A5が乗車したバスは,午前9時過ぎにi駅バス停に着き,A5は,着替え等を経て,午前9時15分に勤務場所に到着した。当日の天候は,ぱらつき程度の雨が降っており,A5の出勤時間帯のバスの運行は遅延していた。なお,本件遅刻は,同年1月28日の組合加入後においては初めてのものであった。
(乙B4の4,20,36,C1,2,3(A16),5(A5)。この点,組合は,A5が遅刻の原因は気象上の理由にあることや,A5の到着時刻は午前9時10分頃であった旨を主張し,証人A5の証言にもこれに沿う部分はある。しかし,当日,寝過ごしてしまったことについてはA5自身が上司から作成を求められた休暇等願(乙B4の4)にその旨記載しており明らかというべきところ,当日雨が降っていた上,午前8時台のバスが遅延しがちであることはA5自身も供述しているところであって,バスの遅延は通常想定されるべき範囲のものであったといえるから,およそA5に帰責性がないなどとはいえない。また,到着時刻については,A5自身も午前9時15分まで休暇をとる旨休暇等願に記載している上,上司も午前9時15分に遅着したことを記載しており,これに反するA5の証言は採用できない。)
(エ) 本件遅刻当日の会社の対応
a 会社は,当日の点呼(身だしなみの確認のほか,点呼時に販売している切符等の商品の販売上の注意や臨時列車の状況等,注意事項の確認のため,毎日9時より10分から15分ほどかけて行われる。)のときにA5が出勤していないことに気付き,同人に電話連絡しようとした午前9時3分頃,A5から鉄道警察の入口付近にいる旨の電話連絡があり,会社は,A5に対して,着替えたら事務室に来るように指示した。そして,既に点呼が終わり,業務が開始していたことから,遅刻したA5に,同人に対する点呼を経ることなく直ちに担当業務に向かうよう指示をした。当日のA5の担当業務は新幹線改札案内であり,同種業務を担当する社員は2名から3名配置されていたが,A5の遅刻に対して他の社員が代務することはなく,午前9時15分から同人自身が担当業務を行った。なお,午前9時台は新幹線改札に関する業務が最も多忙となる時間帯であった。
(乙B4の4,20,C3(A16),5(A17),証人A5。この点,組合は,当日,A5は午前9時10分には到着しており,その後,午前9時15分に予定されていたA11との交代勤務に遅れることはなかったなどと主張し,証人A5の証言にもこれに沿う部分はあるが,そもそもA5が午前9時10分に到着していたとは見難いことは前記のとおりであり,上記指示内容からは点呼も終了していたとみるのが自然である。また,A11との交代勤務が予定されていたとする点についても,会社はこれを争い,そのようにみるべき的確な証拠はない。)
b A5は,本件遅刻の当日,会社に対して休暇等願を書いた。その際に遅刻理由をA10係長に説明した。
(乙A39,B4の4,C2)
(オ) 本件戒告
a 平成21年11月30日,会社は,本件遅刻を就業規則7条(勤務の厳正)に違反しているとして,賞罰審査委員会に付議し,同委員会は,A5を戒告処分とすることを決定した。
(乙B20,31,C3(A16))
b 会社が,本件遅刻に対して,戒告処分とした理由は,本件遅刻がA5の寝過ごしという過去3度の遅刻と全く同じ原因であり,しかも,過去直近の遅刻から1年以内という近接した時期に再発させたものであること,そして会社との全契約期間の約3年半の間に4回も全て本人の責めによる遅刻を繰り返したことからすれば,本件遅刻は勤務の厳正の観点から大きく問題があり,社員としての自覚と責任が著しく弛緩していると判断されるというものであった。
なお,同委員会において,同年10月7日に遅刻した社員についての事象も付議され,会社は,同年12月16日に本人に対して処分結果を通知した。
(乙B20,31,C3(A16),5(A17)。なお,組合は,戒告をした会社の真意について争うが,これについては後記3参照。)
(カ) 戒告処分に関する会社の先例等
会社は遅刻に対する処分量定の際に考慮する要素として,遅刻理由,遅刻回数,近接した期間における再発の有無,上長からの指導の有無及び遅刻発生による周囲に及ぼす影響等を総合的に判断して決定していた。
(乙C5(A17))
a 会社が,本件戒告を決定した際に,参考とした懲戒処分の先例は以下のとおりであった。
(a) A20契約社員
雇用期間 平成17年9月12日から平成19年6月30日
遅刻回数 3回
遅刻状況 1時間15分,1時間30分,55分
発生間隔 約2か月,約11か月
処分の種類 注意指導,厳重注意,訓告
(b) A21契約社員
雇用期間 平成17年3月9日から平成18年3月31日
遅刻回数 5回
遅刻状況 15分,15分,10分,10分,45分
発生間隔約 2か月,約1か月半,約1か月,約5か月
処分の種類 厳重注意,訓告,戒告,戒告,戒告
(乙C3(A16))
b 本件戒告後の事例を含め支社における遅刻事例としては,次のものがあった。
(a) r車掌区車掌
遅刻時期及び処分種類 平成18年11月24日注意指導
遅刻時期及び処分種類 平成19年1月26日厳重注意
遅刻時期及び処分種類 平成21年2月7日厳重注意
遅刻時期及び処分種類 平成23年4月30日戒告
(b) i駅運輸管理係
遅刻時期及び処分種類 平成20年3月30日注意指導
遅刻時期及び処分種類 平成21年7月5日厳重注意
遅刻時期及び処分種類 同年11月1日訓告
(c) s駅管理係(契約社員)
遅刻時期及び処分種類 平成21年8月29日注意指導
遅刻時期及び処分種類 同年11月10日厳重注意
遅刻時期及び処分種類 平成22年7月10日戒告
(d) t乗務センター運転士
遅刻時期及び処分種類 平成16年9月26日厳重注意
遅刻時期及び処分種類 平成18年6月30日注意指導
遅刻時期及び処分種類 平成20年11月3日厳重注意
遅刻時期及び処分種類 平成21年2月13日戒告
遅刻時期及び処分種類 平成22年1月2日減給
(乙B27,31,C5(A17))
c i駅営業部門における遅刻回数
i駅の営業部門において,社員及び契約社員のうち,A5が採用された平成17年12月から平成22年3月までの雇用期間中に遅刻を4回以上発生させた者はA5・1名であった。
(乙C3(A17))
(キ) 会社担当者の異動
平成21年12月10日,支社のA16人事課長が異動し,後任にA17人事課長が就任した。
(乙C3(A16,A17),5(A17))
(ク) 本件戒告に係る会社の検討
平成21年12月15日,会社は,本件戒告に係る法的解釈及び実務的措置について弁護士に相談した。
(乙B31,33,C5(A17))
(ケ) 本件戒告の通知
平成21年12月28日,会社は,A5を駅長室に呼び,A14駅長から同日付けで戒告する旨が記載された本件戒告辞令をA5に手渡した。それには戒告する事由として,契約社員就業規則第29条第1項第1号によると記載されていた。その際,同駅長は,遅刻が戒告処分の事由であることを説明し,A12副駅長は,A5が入社以来,遅刻を繰り返していること,今回の遅刻が来年度の契約更新に影響する可能性があること及び過去には遅刻を繰り返したことによって契約更新をしなかった例もあることを伝えた。
会社が,同日をA5に対する辞令交付日としたのは,平成21年12月16日以降において,同駅長と同副駅長とA5の勤務が重なっていた日は,同月22日,同月24日及び同月28日の3日であり,このうち同月28日以外は打合せや会議等の予定があったために実施することができなかったためであった。
(乙A36,38,39,B21,29,31,C2,3(A16,A17),5(A17)。なお,組合は,辞令交付が従前の処分時より遅れたのは不自然であり,不当労働行為意思の顕れであるなどとも主張するが,これについては後記3参照。)
(コ) 遅刻時の賃金
会社は,前記イの3回の遅刻及び本件遅刻のいずれにおいても,A5の遅刻した時間帯の賃金をカットした。
(乙C2)
(6)  本件雇止め及び本件通告
ア 契約社員制度
契約社員就業規則は,会社における契約社員の雇用契約及び期間並びに雇用契約の終了につき,前記前提事実(10)記載のとおり,契約社員の雇用契約期間は1年以内とし,雇用契約期間が満了し,契約を更新しない場合,雇用契約は終了することや,雇用契約期間の満了に際して,業務上の必要がある場合には雇用契約を更新することができるが,雇用契約期間を通算し,原則として5年を限度とすること等を定めている(4条,6条)。
(乙B1)
イ 契約社員の契約更新
(ア) 契約社員の募集等
会社では,契約社員制度を導入しており,駅営業職,客室乗務員及び事務職について,各職場の欠員等の必要性により契約社員の募集を随時行っており,選考方法は筆記及び面接等であった。
(イ) 契約社員に対する支社の権限
支社では,契約社員の雇用契約は,契約社員と支社長の間で締結しており,契約更新に関する包括的な権限は支社長が有していたが,契約社員の使用,配置等については,業務管理規程等によって,支社人事課長に権限が委任されていた。
(乙B21,C3(A17))
(ウ) 契約社員の更新手続
会社は,契約更新手続に先立ち,現場長立会いの下に契約社員と面談を行い,契約社員に契約更新の意思があるかどうかを確認していた。上記確認を踏まえ,会社は,業務上の必要性,過去の勤務状況及び健康状態等を総合的に勘案して,契約更新をするかどうかを判断し,更新する場合には本人に通知していた。
(乙B21,C3(A17))
(エ) 雇止めの判断材料
会社では,普段の勤務状況を把握するものとして,接客能力を測るフロントサービス調査,業務上の知識に関する知悉度把握テスト等があり,これらに加えて実務認定試験,社内通信教育等の成績が良好であることや表彰実績の有無,箇所長による意見等を勘案し,雇止めを判断していた。
(乙B21,34,C3(A17))
ウ 本件雇止めまでの経緯
(ア) A5の雇用契約
A5は,入社時に会社から雇用契約の更新年限について,1年毎に年度末に更新し,雇用期間は最長5年までであると説明を受けていた。会社とA5は,A5の入社した平成17年12月19日から平成18年3月31日までの雇用契約を締結し,その後は雇用契約を更新し,同年4月1日,平成19年4月1日,平成20年4月1日及び平成21年4月1日をそれぞれ契約始期とする1年間の雇用契約を締結していた。
(乙B2,C2)
(イ) 契約更新の期間
会社とA5が締結した契約社員雇用契約書には,契約更新の有無等について,「業務上の必要性,勤務状況及び健康状態等を勘案の上,雇用契約の更新(ただし1年を上限とする)を行うことがある。契約更新は最初の契約期間を含め5年を上限とする。」と記載されていた。
(乙B2の3~2の5)
(ウ) 過去の契約更新に係る面談
平成21年3月3日,駅長室において,A12副駅長とA13人事課課長代理は,A5と契約更新の面談を行い,次年度(平成21年度)の契約更新を行うことを伝えるとともに,採用以来,A5が厳重注意を2度受けていること,既に3回の遅刻を発生させていること及び今後同種の事象が発生すれば,次の契約更新の判断材料にすることを伝えた。
(乙B21,C3(A17),5(A5)。この点,組合は,A5が上記のような話を伝えられたことはないなどと主張するが,上記認定に沿う証拠がある上(乙C3(A17)),A5自身もこれに沿う供述をしていたものであり(乙C5(A5)),かかる組合の主張によって上記認定は左右されない。)
エ 本件雇止め
(ア) 契約更新に係る会社の対応
支社では,通常,年度末3月31日で終了する契約社員の雇用契約については,2月ないし3月頃から契約更新を検討し,面談を行っていたが,A5の契約更新については,平成21年10月に本件遅刻が発生したため,本件遅刻について契約更新を左右する重大な事象としてとらえ,その頃から問題意識を持って契約更新についての検討を進めていた。
(乙C3(A17))
(イ) 箇所長への意見聴取
i駅長は,本件遅刻の後,A5の平成22年の契約更新の可否について,箇所長としての意見を支社人事課に提出した。
(乙C3(A17))
(ウ) 契約更新の意思確認
平成22年1月13日,支社は,A5と契約更新に関する面談を行い,A5は来年度の契約更新を希望した。
(エ) 過去の雇止め
支社では,過去に遅刻が重なったために雇止めした契約社員が2名存在し,勤務成績等を勘案して契約社員の雇止めをすることがあった。
また,平成15年度から平成22年度に支社管内で採用された契約社員426名中,4回以上遅刻をした契約社員はA5を含む3名に留まったが,会社はこれらのいずれの者とも雇用契約を更新しておらず,A5を除く2名が所属した労働組合は組合とは異なっていた。
会社がA5の平成22年の契約更新の可否を判断するときに参考とした先例は上記(5)ウ(カ)のA20契約社員及びA21契約社員の例で,雇止め時期等は次のとおりである。
a A22社員
雇止め時期 平成19年6月
契約更新回数 3回
雇止め事由 遅刻
b A23社員
雇止め時期 平成18年3月
契約更新回数 1回
雇止め事由 遅刻
(乙C2,3(A17))
(オ) 本件雇止めの決定
会社は,A5について,前記のとおり遅刻を繰り返すなどの問題があるほか,表彰歴もなく,執務態度に問題があるとの箇所長の意見を踏まえ,雇止めとすることを決定した。
(乙B21,34,C3(A17))
(カ) A5への通知
平成22年2月19日,会社は,駅長室において,A14駅長,A12副駅長及び人事課課員らが同席の上,A24人事課課長代理からA5に対して,雇止め事由書を手渡した。雇止め事由書には「勤務状況を勘案し,平成22年3月31日をもって,これ以降雇用契約を更新しないこととしますので,通知します。」と記載されていた。その際,同人事課課長代理は,A5に対して,雇止めは勤務成績及び就業規則違反を勘案したこと及び同年3月31日をもって雇止めになるため,契約社員を対象とする社員採用試験の対象にならないことを伝えた(本件通告)。これに対し,A5からの質問等はなかった。
(乙A37,39,B21,C2)
(キ) A5の契約終了
平成22年3月31日,A5は,会社を雇止めとなった(本件雇止め)。
支社の契約社員で,同日に雇用契約が満了する者で契約更新を希望した者は,基本的には契約が更新された。
(乙C3(A17))
オ 社員採用選考試験
(ア) 社員採用選考試験の概要
会社では,平成18年度から契約社員を対象とする社員採用選考試験を導入しており,平成22年5月1日を入社予定日とする社員採用選考試験の募集要項には,前記前提事実(11)のとおり,応募資格について,採用予定日の前日において契約社員として勤務する見込みであること等が記載されていた。
(乙B3,C3(A17))
(イ) 社員採用選考試験への受験
A5は,平成22年5月1日を入社予定日とする社員採用選考試験に,平成21年12月18日の申込締切までに申込みを行い,平成22年1月19日,支社において筆記試験と適性検査,同年2月6日に,本社において面接試験を受験した。
(乙B3)
(ウ) 本件社員採用選考試験からの除外
平成22年2月19日,上記エ(カ)のとおり,会社は,A5に対して,社員採用選考試験の対象にならないことを伝えた。
(乙B21,C2)
(7)  A5の処分等に対する組合の対応等
ア 本件訓告以降の組合の動向
(ア) 本件訓告に関する申入れ
平成21年11月24日,組合は,A5の本件訓告を受け,A5への謝罪及び本件訓告の撤回を要求事項とする申入書を会社に提出した。
同月27日,申入書についての話合いが,A18と本社担当者との間で行われ,翌月15日又は16日に団体交渉を行うよう調整された。
(乙A29,B28,31)
(イ) 本件訓告に対する本社への抗議
平成21年12月3日,組合は,本件訓告に抗議して本社包囲デモを行い,A5はこれに参加した。
(乙A22,C2)
(ウ) b総連第24回定期大会への参加
平成21年12月14日,A5は,b総連第24回定期大会で,b総連の中央委員に就任した。
(乙A39,C2)
(エ) 平成21年12月15日団体交渉
平成21年12月15日,組合は,本社と団体交渉を実施し,会社に対して,本件訓告は団結権侵害である旨を主張した。
(乙B31)
(オ) 本件訓告に対する支社への抗議
平成21年12月20日,組合は,支社に対して,本件訓告の撤回を要求事項とする申入書を提出し,支社包囲闘争を実施した。
(乙A30,39,C2)
(カ) 本件訓告及び本件戒告に対する申入れ
平成22年1月12日,組合は,本件戒告について,会社に対し,本件訓告及び本件戒告の撤回を要求項目とする申入書を提出した。
(乙A31)
(キ) 本件訓告及び本件戒告に関する救済申立て
平成22年1月12日,組合は,本件訓告及び本件戒告が労組法7条の不当労働行為に当たるとして,岡山県労委に救済を申し立てた。
(乙A24)
(ク) 春闘要求等
平成22年2月2日,組合は,会社に対して,春闘要求書とA5の契約更新を行うことを要求事項とする申入書を提出した。
(乙A26,32,33,39,C2)
(ケ) 全国労働者総決起集会への参加
平成22年2月13日,A5は,東京都内の代々木公園で開催された全国労働者総決起集会に参加し,集会の壇上から会社の契約社員制度の廃止を訴えた。
(乙A25,27,39,C2)
(コ) 本件雇止めに対する申入れ
平成22年2月21日,組合は,本件雇止めについて,支社包囲闘争を実施するとともに,同月22日付けで,本件雇止めの撤回を要求事項とする申入書を会社に提出した。
(乙A34,39,C2)
(サ) 本件雇止め及び社員採用選考試験の無効に関する救済申立て
平成22年2月26日,組合は,本件雇止め及びA5に対して社員採用選考試験の無効を通告したことが,労組法7条の不当労働行為に当たるとして,岡山県労委に救済を申し立てた。
イ 本件救済申立て後の会社及び組合の動向等
(ア) 平成22年3月10日団体交渉
平成22年3月10日,組合は,本件雇止めの撤回を求めて,会社と団体交渉を実施した。
(乙A34,39)
(イ) 平成22年3月ストライキの実施
平成22年3月13日,組合は,本件雇止めの撤回や契約社員制度の廃止を求めるストライキを実施した。
ストライキは,同月31日までに計5回実施された。
(乙A39)
2  争点(1)(本件訓告の不当労働行為該当性)について
(1)  前記認定事実によれば,A5は,平成21年9月5日,同年10月19日及び同月21日,i駅2階営業事務室内個人用小ロッカー前通路ほか2か所において,会社の許可なく9・19集会ビラほか3種類のビラを他の社員に配布したものであるところ,会社において,許可なく会社施設内でビラの配布等をしてはならず,組合活動を行ってはならない旨の就業規則の規定があることは前記認定のとおりであり,A5の上記各行為(本件ビラ配布)は,形式的にその文言をみる限り,これに違反するものであるということができる。
もっとも,就業規則の上記各規定は,職場規律や職場秩序の維持を図るため,会社施設内での無許可のビラ配布活動や政治活動等を禁止し,勤務時間中又は会社施設内での組合活動を禁止したものと解され,かかる規定の趣旨に照らすと,形式的に就業規則の上記各規定に違反するようにみえる場合でも,会社施設内におけるビラの配布が職場規律,職場秩序を乱すおそれのない特別の事情が認められるときは,就業規則の上記各規定の違反になるとはいえないと解するのが相当である(最高裁判所昭和52年12月13日第三小法廷判決・民集31巻7号974頁,同裁判所平成6年12月20日第三小法廷判決・民集48巻8号1496頁参照)。
そこで,以上の見地から,前記認定事実を踏まえ,本件において上記特別の事情が認められるかにつき検討する。
(2)ア  本件ビラ配布の場所
本件ビラ配布の場所についてみると,本件ビラ配布は,①i駅2階営業事務室内個人用小ロッカー前通路,②i駅2階男子ロッカー室(休養室)及び③i駅地下改札事務室内休憩室で行われている。これらの場所は,いずれも利用客の出入りのある場所ではないところ,そのうち,②の場所は,◎◎窓口や改札口等の営業区域からも離れた場所にあり,直接業務を行う場所ではなく,③の場所は,改札室や券売機室に近接してはいるものの,休憩の場所として利用されていた場所である。
もっとも,①の場所は,改札室や駅事務室に通じ,隣接している◎◎窓口とは,上部が開放され,パーティションにより隔てられていたとはいえるものの,そもそも同所は,現金事故防止の観点から執務中に社員が個人用の財布等を保管するため設置された個人用小ロッカーを備え付けるための場所であり,社員が寛いだり,休憩をする場所ではない。むしろ,上記のような個人用小ロッカーの設置の趣旨に照らせば,業務に当たるための準備等をする場所として,業務と密接な関係を有する場所であるといえる。
また,②の場所も,直接,業務を行う場所ではないものの,社員が着替えをする場所であって,休憩を目的とする場所ではなく,業務に当たるための準備等をする場所として業務と関係を有する場所であるとはいえる。
イ  本件ビラ配布の時間と態様
次に,本件ビラ配布の時間と態様をみると,本件ビラを配布した時間は,A5は休憩時間中又は業務終了後であり,配布された社員も休憩時間中又は手待ち時間中であったものである。
また,A5は,ビラ配布に当たり,一般に,配布1回あたり,ビラ3枚程度と名刺を宛名のない封筒に入れたものを2,3人分用意し,一人ずつ手渡しにより配布しており,外部からはビラの内容が視認できない状態において配布している。ビラを手渡す際には,相手に封筒の中身を見せたり,相手がビラをいらないと言った場合には,持ち帰ったりしている。本件ビラ配布においてもこれと態様を異にしたとは認められない。
なお,本件ビラ配布においては,相手方に見習い社員もいたものの,ビラ配布の際,受け取った社員が受取りを拒んだのに無理に押しつけるなどした事実までは認められない。
そうすると,A5の本件ビラ配布の態様自体は,少なくとも交付の際は比較的平穏な方法で行われていたとはいえる。
ウ  本件ビラの内容
もっとも,本件ビラの内容についてみると,以下の点を指摘することができる。
すなわち,A5が配布したビラは,9・19集会ビラ,9・30集会ビラ,11月集会ビラ①及び同②を含むものであったところ,これらのビラの内容は前記認定のとおりであって,国鉄1047名問題について,他の複数の労働組合と異なり,政治解決に絶対反対する旨の主張が掲げられている。
会社には,前記認定事実記載のとおり,組合を含め,路線の異なる複数の労働組合が存在し,イデオロギー的対立もみられるところ(甲14。この点は,乙B14~18からも窺われる。),同問題は,会社の他の労働組合が組合内で路線対立を生ずるに至るまで対立を深めた問題であり,労働組合間相互においても見解の対立の大きいものであったといえる(この点は,証人A15のほか,組合代表者A4や証人A5も認める旨の供述をしている。)。
その上,本件ビラには,「大恐慌と戦争に突き進む資本主義を打倒」,「道州制絶対反対」,「改憲・戦争と民営化・労組破壊に立ち向かう」,「民主党・連合政権打倒を切り開き」,「いかなる攻撃にもまけない,資本主義そのものを転覆する絶対非和解の団結をつくりだしているのだ」といった,政治的・イデオロギー的色彩の高い主張も記載されていたほか,「攻撃の先兵に,○○グループでいえばd労連・g総連がなるというのだ」,「○○グループと○○グループ御用労組(g総連やd労連・e労組など)との結託体制を破綻においやり」,「e労組本部打倒の闘いをやりぬいている」というような記載があるものもあり,他の労働組合を激烈な表現で,名指しにより批判している。
もとより,本件ビラは,組合活動の一環として配布されたものと認められるところであり,会社や他の労働組合の対応,社会情勢及び国の施策に関する組合の見解や評価等を記載したものとは理解できるが,上記説示の点に照らせば,その内容は,労働組合間の対立を煽り,これを受領した社員を困惑させかねないものであったとはいえる。
この点,組合は,国鉄1047名問題の対立について社員は了知していると推測されるなどとして,本件ビラの内容が,社員の職務専念に支障を来したり,職場秩序を乱すおそれがあるものとは認められないなどと主張するが,同問題が尖鋭な対立の残る問題であり,併存する労働組合への批判を含むなど上記説示の本件ビラの内容に照らせば,少なくとも職場内において無許可で配布するビラの内容としては,そのおそれを生じさせるものであったことは否定し難い。
エ  本件ビラを交付された社員や他の労働組合の対応状況
そして,前記認定事実によれば,会社は,他の労働組合の組合員によるビラ配布を含め,ビラ配布について処分を含めた厳格な対応をしていたものであるところ,本件ビラ配布については,これを受け取った社員が自ら上司に報告したり,あるいは所属する労働組合に報告したことにより,当該労働組合が会社に抗議をするなどして,会社が事態を把握している。また,本件ビラを受け取った社員は,i駅管理者による聴き取り調査に対し,「職場内でビラを配布することを許してよいのか。」,「もらった主旨が分からず困っている。」,「業務と関係ないものをもらって迷惑だ。」などと回答している。
そうしてみると,本件ビラを受け取った社員が,これを受領したことに伴って困惑したといえるのであり,職場秩序を乱すおそれを生じさせかねないものであったということができる。
この点,被告は,上記社員の回答は,i駅管理者の聴き取り調査に対する回答としてされたものであり,その内容も職場内でのビラ配布そのものへの違和感ないし反対の念を示すものではあっても,本件ビラ配布によって,業務遂行や職務専念への支障が生じたことを推認させるものとはいえないなどと主張する。しかし,聴き取り調査時の回答であるからといって,ビラ受領当時にその回答が示すような困惑を生じていなかったことになるわけではなく,被告の主張は採用できない。
オ  そこで,以上を踏まえて,特別の事情が認められるかにつき検討するに,上記アないしエによれば,本件ビラ配布の場所については休憩室が含まれ,配布の態様も,休憩中又は手待ち時間中の社員に対し,ビラを封筒に入れて交付するなど比較的平穏な方法で行われた点もあると認められるが,配布の場所には,i駅2階営業事務室内個人用小ロッカーといった業務に密接に関連すると認められる場所も含まれていたこと,本件ビラの内容は,労働組合間の尖鋭的な対立のある問題や他の労働組合を激烈に批判する内容を含むものであったこと,そうしたビラの内容を受けて,受領した社員が上司に報告したり,他の労働組合の抗議を生じる結果ともなっていることを指摘することができる。
そして,以上の点のほか,鉄道事業が国民の社会経済生活に欠くべからざる公共性の極めて高い事業であって,企業秩序の乱れから安全,円滑な運送を脅かす事態の発生することを防止することは重要と考えられること(会社が,「運転安全規範」や「安全憲章」において,規程の遵守が安全の基礎として重要であることを示しているのも,これに沿うものと考えられる。),会社には,路線対立のある労働組合が複数存在し,多数の現業機関(労働組合が併存する現業機関だけでも400を超える。)内でビラ配布が会社に無許可でされることとなった場合における企業秩序の乱れは著しくなるおそれがあることをも併せ考慮すると,会社の許可なく会社の施設内でなされた本件ビラ配布について,前記特段の事情は認め難いというべきである。したがって,本件ビラ配布は,就業規則の前記各規定の違反になると認められる。
カ  以上に対し,組合は,ビラ配布は,憲法28条によって保障された団結権の一環をなすものであり,これに対する制限は必要最小限にとどめられるべきであるなどとして,上記判断を争う。しかし,ビラ配布が,労働組合の団結権行使の一環をなすものとして尊重されるべきものであることはいうまでもないが,他方,使用者も企業施設に対する管理権を有し,従業員においても,企業施設内でする施設内活動については,管理権の合理的な行使として是認される規制による制約を免れることはできないところであって,かかる組合の指摘から前記判断が左右されるものではない。この点,組合は,最大労組であるc労組が会社と結託して新規採用の社員を囲い込むなどしており,本件ビラ配布を含むビラ配布の必要性が高いなどと主張し,これに沿う陳述書を提出している(丙12)。しかし,会社は,上記組合の主張を否認し,上記陳述書による陳述内容についても争っているところ,同主張事実を裏付けるべき的確な証拠はなく,かかる組合の主張はその前提からして採用できない。組合は,会社提案に係る総合労働協約は組合活動に対する不当な制約を含むなど締結することのできないものであり,組合掲示板等の供与が受けられない現状においてはビラ配布の必要性は高いなどとも主張するが,会社提案に係る総合労働協約は他の労働組合も締結しているものであり,会社がかかる提案をしたとしても不合理ではないし,締結のなされていない組合に対して組合掲示板等の供与がないことも,その締結がなされていないことの結果としてやむを得ず,そのことからビラ配布行為が許容されるべきことにはならない。組合のこれら主張は採用できない。
(3)  以上によれば,本件ビラ配布に関して,就業規則の規定に基づき処分することは許されるものというべきところ,前記認定事実によれば,A5は,本件ビラ配布以前においても,会社に許可を得ないまま,施設内のホワイトボードにビラを貼付して厳重注意を受けたり,その他,本件ビラ配布以外にも30回ほど会社に無許可で施設内におけるビラ配布を行っていたものであって,本件ビラ配布につき,A5を訓告としたからといって,その処分が会社の合理的裁量を逸脱する不当に重いものということはできない。
そうしてみると,本件訓告は相当なものと認められる。
(4)  また,前記認定事実記載のとおり,会社は,他の労働組合の組合員によるものを含め,ビラ配布について処分を含めた厳格な対応をしていたものであり,上記のとおりA5に対して本件訓告としたからといって,これが殊更組合に対する反組合的な動機や意図に基づくものとも認め難い。
(5)  以上によれば,本件訓告が,労組法7条1号の不当労働行為に該当するということはできない。
この点,組合は,会社が,A5の組合加入通知後,活発な組合活動をするA5に対して立て続けに本件訓告を含む処分をし,本件雇止めに及んでいることからすれば,本件訓告は,正当な組合活動をしたことの故の不利益取扱いとして不当労働行為に該当すると主張する。しかし,上記判示の点のほか,本件訓告を含むA5に対する一連の措置にも後記のとおり相応の相当性が認められることからすると,かかる組合の主張は採用できない。
3  争点(2)(本件戒告の不当労働行為該当性)について
(1)  前記認定事実によれば,A5は,鉄道事業に関わる者として時間厳守が求められているにもかかわらず,本件遅刻前にも寝過ごしという同種の原因で3度遅刻をしており,会社は,その度毎に,A5に注意,指導をし,平成21年3月3日に行われたA5の平成21年度の雇用契約更新の面談においては,今後同種の事象が発生すれば次の契約更新の判断材料にする旨も伝え,遅刻をしないよう注意指導が行われてきたものであるところ,A5は,かかる注意,指導にもかかわらず,直近の遅刻から約10か月後とはいえ,寝過ごしという同じ理由により本件遅刻をしたものである(なお,本件遅刻の原因が気象上の理由であるとする組合主張が採用できず,宥恕すべき事由とならないことは,前記認定事実において説示したとおりである。)。
しかるところ,当日のA5の担当業務は,午前9時からの点呼後,新幹線改札案内に就くというものであり,繁忙時間帯の業務であったところ,本件遅刻により,会社は,遅刻したA5を,点呼を経ずに直ちに案内業務に就かせざるを得ず,A5は,しばらくの間,現在販売している切符等商品の販売上の注意や臨時列車の状況等の注意事項が伝えられないまま案内業務に従事することとなったことを指摘することができ,少なくとも以上のような業務への支障は生じたといえる。
そして,前記認定の遅刻に係る処分例に照らせば,会社は,時間厳守という職場規律を重視して,遅刻の時間が短かったとしてもそのことをもって処分を軽くする取扱いを必ずしもしていなかったといえるところ,本件遅刻が,繰り返された遅刻及びこれに対する注意指導の後になされた,寝過ごしという同一の原因に基づくものであったことにも照らせば,従前なされた厳重注意より一段重い訓告を超えて戒告としたとしても,その処分が会社の合理的裁量を逸脱する不当に重いものということはできない(この点,組合は,訓告を超えて戒告としている点を不当であると主張するが,上記説示の点から採用できない。)。
そうしてみると,本件戒告には相応の合理性があったということができる。
以上に対し,組合は,A5は遅刻したものの,定時にA11と業務を交代できており,本件遅刻による支障は何ら生じていないなどと主張する。しかし,そもそもA5がA11と交代勤務であったなどと認め難いことは前記認定のとおりであり,この点を措いても上記説示の支障を生じたとはいえ,従前の遅刻状況や注意指導の状況等を踏まえてA5を戒告としたとしても不合理ではないから,いずれにしても上記組合の主張によって上記判断が左右されるものではない。組合は,A5のような改札業務を担当していた社員は,運転職等と異なり,時間厳守等の企業秩序維持が求められるものではないなどとも主張し,上記判断を争う。しかし,有機的一体としての鉄道事業に関わっていることはA5であっても変わりはなく,A5のような改札業務の担当であっても,所定のダイヤグラムに従い担当業務を交代することが予定されていたこと,時間厳守の必要性については,組合代表者A4のほか証人A5もこれを認めていること(乙C1,2)にも照らせば,改札業務の担当であるからといってその点に顕著な差異を認めるべきものとは考え難い。いずれにしても,組合指摘の点から,上記判断が左右されることはない。
(2)  組合は,本件戒告までに時間がかかりすぎていて不自然であることや,A5が当時,組合活動に精力的に取り組んでいたことからすれば,会社が,組合活動を弱体化させようとして本件戒告に及んだものといえるなどと主張する。
しかし,会社の賞罰審査委員会への付議には一定の期間が通例必要と考えられるところ,前記認定事実記載のとおり,A5の本件遅刻と間近い平成21年10月7日に遅刻した他の者の案件もA5の本件遅刻について付議された同年11月30日開催の賞罰審査委員会に付議されていること,その後,支社における人事課長の異動もあり,会社が慎重を期すため本件戒告発令につき弁護士に相談したり,本件戒告の辞令交付につき,辞令交付者(駅長と副駅長)との日程調整を行う必要も生じたことを指摘することができ,かかる点を左右すべき的確な証拠はない。そうしてみると,A5への本件戒告の通知が同年12月28日となったからといって,そのことが直ちに不自然とまでいえるものではない。
そして,その他,会社が組合活動に対して介入する言動を行ったことは窺われず,むしろ,組合からの申入れに基づき団体交渉も行われている。
そうしてみると,A5が,当時,活発な組合活動を行っていたといえるにしても,会社が組合活動を嫌悪して本件戒告を行ったとまでは認め難い。
(3)  以上のとおりであるから,本件戒告が労組法7条3号の支配介入に係る不当労働行為に該当するということはできない。
4  争点(3)(本件雇止めの不当労働行為該当性)について
(1)  前記認定事実によれば,A5は,会社との間で,入社以降,1年を超えない期間の雇用契約を締結し,会社との間で,4回にわたり契約を更新してきたものである。もっとも,契約社員就業規則や契約社員雇用契約書では,業務上の必要があるときに1年を超えない期間で更新することがあることが定められており,更新につき通じて5年を超えることができない旨の記載もあったところ,更新に際しては更新希望についての面談が持たれ(同面談で会社は更新希望の有無を聴くなどしており,組合主張のように,必ずしも形式的なものであったとはいえない。),新たに契約書も作成されるといった手続を経ていたことを指摘することができる。そうしてみると,A5と会社との期間の定めのある雇用契約が実質的に期限の定めがないのと異ならないのと同様の状態にあったとみることはできない。
(2)  組合は,A5には雇用継続に対する合理的期待があり,解雇権濫用法理が類推適用される結果,本件雇止めも無効とみるべきである旨主張する。
しかしながら,A5を含む契約社員については上記(1)のような契約社員就業規則や契約社員雇用契約書の規定があり,同所説示のような更新手続もとられていたものである上,前記認定事実記載のとおり,支社だけでも,過去に度重なる遅刻を理由に雇止めとした契約社員も2名存在していたことに照らせば,A5の担当業務の内容(臨時的な業務ではない。)や更新手続がとられた回数を考慮しても,継続雇用に対する期待が合理的であるといえるかは疑問が残る。この点,組合は,最長5年と説明されたことや正社員への登用の制度もあることを指摘して継続雇用への期待が合理的であるなどとも主張するが,上記説明によっては継続雇用への期待が合理的であるとは評価し難いし,正社員への登用の制度があることも継続雇用への期待が合理的であることを根拠付けるものではない。
また,以上の点を措くとしても,会社は,その鉄道事業という公共的性質上,社員に対して厳格な時間管理を求め,その重要性について指導を行ってきており,A5に対しては,同人が過去3回にわたって遅刻する度毎に注意,指導を行い,平成21年度の契約更新に際しての面談においては,今後同種の事象が発生すれば次の契約更新の判断材料にする旨を伝えて,遅刻をしないよう改めて注意喚起もなされていたものであって,それにもかかわらず,A5は,過去3回の遅刻と同様の理由により,本件遅刻に及んでいる。そして,本件雇止め以前に4回以上遅刻をした契約社員の契約更新をした事例はなかったものであって,事業の性格上,厳格な時間管理を求め,従前からも徹底指導を行ってきた会社が,かかる事象に基づき本件雇止めの判断をしたとしても,相応の理由があったといえる。
そうしてみると,会社がA5を雇止めとしたからといって,本件雇止めが,客観的に合理的理由を欠き,社会通念上相当でないと認められない場合に当たるということもできず,むしろ,本件雇止めには相応の合理性があったといえる。
(3)  以上に対し,組合は,A5の組合加入通知後,会社は活発な組合活動をするA5に対して立て続けに処分をし,本件訓告や本件戒告に関する本件救済申立ての後,本件雇止めに及んでいることからすれば,本件雇止めは,こうしたA5の組合活動を嫌ってなされたものであり不当労働行為であることは明らかであると主張する。確かに,前記認定事実記載のとおり,A5が活発な組合活動を行っており,本件訓告や本件戒告に関する本件救済申立ての後,本件雇止めに及んでいることは認められるが,上記のとおり本件雇止めには相応の合理性が認められる上,会社は,組合の求めに応じて団体交渉にも応じており,組合が指摘するような時間的近接性があったからといって,直ちに本件雇止めが報復的な処分とみることもできない。
(4)  以上によれば,本件雇止めが,労組法7条1号,3号及び4号の不当労働行為に該当するということはできない。
5  争点(4)(本件通告の不当労働行為該当性)について
前記認定事実によれば,A5は,平成22年5月1日入社予定の社員採用選考試験に締め切り日までに申込み,平成22年1月19日には支社において筆記試験と適性検査を,同年2月6日には本社において面接試験を受験したものであったが,その募集要項では,採用予定日の前日において契約社員として勤務する見込みであることが必要とされていたものであり,本件雇止め(その効力に関しては前記4参照)に伴い,上記要項に定める採用条件を満たさなくなったものであるといえる。
そうしてみると,会社が,A5を同選考試験の対象から除外し,その旨を平成22年2月19日,本件雇止めの通知の際に説明したこと(本件通告)が不当なものとはいえず,組合主張のように,本件通告が労組法7条1号,3号,4号の不当労働行為に該当するということはできない。
6  以上によれば,本件命令中,本件訓告を労組法7条1号の不当労働行為であるとした部分は相当でなく違法というべきであるが,その余の部分は相当であり,違法であるとは認められない。
よって,会社の本件請求は理由があるからこれを認容し,組合の本件請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 古久保正人 裁判官 伊藤由紀子 裁判官 芝本昌征)

 

別紙
当事者目録
大阪市〈以下省略〉
第1事件原告兼第2事件参加人 X株式会社
同代表者代表取締役 A2
同訴訟代理人弁護士 天野実
同 天野聡
同訴訟復代理人弁護士 得田英伺
東京都千代田区〈以下省略〉
第1事件被告兼第2事件被告 国
同代表者法務大臣 A1
処分行政庁 中央労働委員会
同代表者会長 A3
被告指定代理人 藤重由美子
同 増井啓秀
同 簑川雄一
同 熊谷一彦
同 横田裕子
広島市〈以下省略〉
第1事件補助参加人兼第2事件原告 Z労働組合
同代表者執行委員長 A4
同訴訟代理人弁護士 戸田綾美
同 萱野一樹
同訴訟復代理人弁護士 平河直
以上
別紙1
請求する救済の内容の要旨
(1) 本件訓告の撤回
(2) 本件戒告の撤回
(3) 本件雇止めの撤回及び雇用契約の更新
(4) 社員採用選考試験の無効通告の撤回
(5) 陳謝文の手交及び掲示
以上
別紙2
年 月 日
Z労働組合
執行委員長 A4殿
X株式会社
代表取締役社長 A25
当社が,貴組合所属のA5氏に対して,平成21年11月5日付け訓告処分を行ったことは労働組合法第7条第1号に,また,平成21年12月28日付け戒告処分を行ったことは同条第3号に該当する不当労働行為であると,岡山県労働委員会において認定されました。
今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
(注:年月日は文書を手交した日を記載すること。)
以上
別紙3
平成 年 月 日
Z労働組合
執行委員長 A4殿
X株式会社
代表取締役社長 A2
当社が,貴組合所属のA5氏に対して,平成21年11月5日付けで訓告に付したことは,中央労働委員会において,労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為であると認定されました。
今後このような行為を繰り返さないように留意します。

〈以下省略〉

 

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