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「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(12)平成29年 3月28日 東京地裁 平25(ワ)28292号 謝罪広告等請求事件

「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(12)平成29年 3月28日 東京地裁 平25(ワ)28292号 謝罪広告等請求事件

裁判年月日  平成29年 3月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平25(ワ)28292号
事件名  謝罪広告等請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2017WLJPCA03289007

事案の概要
◇原告a及び原告bが、被告発行の週刊誌に掲載された「本件記事1」及び「本件記事2」によって、名誉を毀損され、プライバシー権が侵害されたとして、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき損害金等の支払を求めるとともに、民法723条所定の名誉を回復するのに適当な処分として、被告の発行する雑誌、被告のウェブサイト、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日本経済新聞及び産経新聞に謝罪広告を掲載することを求めた事案

裁判年月日  平成29年 3月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平25(ワ)28292号
事件名  謝罪広告等請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2017WLJPCA03289007

主文

1  被告は,原告aに対し,198万円及びこれに対する平成25年10月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告は,原告bに対し,165万円及びこれに対する平成25年10月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
4  訴訟費用は,これを18分し,その1を被告の負担とし,その余を原告らの負担とする。
5  この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1  請求
1  被告は,原告aに対し,3300万円及びこれに対する平成25年10月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告は,原告bに対し,3300万円及びこれに対する平成25年10月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  被告は,別紙1記載の謝罪広告を,別紙2記載の掲載要領により,被告の発行する雑誌「週刊文春」,被告のウェブサイト「週刊文春WEB」,朝日新聞,毎日新聞,読売新聞,日本経済新聞及び産経新聞に掲載せよ。
第2  事案の概要
1  本件は,⑴原告aが,被告発行の週刊誌「週刊文春」平成25年10月10日号(以下「本件雑誌1」という。)に掲載された「徳洲会マネー100億円を貪る『わるいやつら』」と題する記事(以下「本件記事1」という。)及び同誌同月17日号(以下「本件雑誌2」という。)に掲載された「徳洲会マネーに群がった政治家の実名」と題する記事(以下「本件記事2」という。なお,本件記事1及び本件記事2を併せて,以下「本件各記事」という。)によって,名誉を毀損され,プライバシー権が侵害されたとして,被告に対し,①不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき損害金合計3300万円(慰謝料3000万円及び弁護士費用300万円)及び最後の不法行為の日(本件雑誌2の発売日)である同月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,②民法723条所定の名誉を回復するのに適当な処分として前記第1の3のとおり謝罪広告を掲載することを求め,⑵原告bが,本件雑誌1に掲載された本件記事1によって,名誉を毀損され,プライバシー権が侵害されたとして,被告に対し,①不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき損害金合計3300万円(慰謝料3000万円及び弁護士費用300万円)及び不法行為の日(本件雑誌1の発売日)である同月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,②民法723条所定の名誉を回復するのに適当な処分として前記第1の3のとおり謝罪広告を掲載することを求める事案である。
2  前提事実(証拠等を掲記しないものは,当事者間に争いがない。)
⑴ア  原告aは,昭和54年4月,医療法人徳洲会に就職し,昭和55年に理事長秘書,平成8年に理事長室長,平成16年に有限責任中間法人徳洲会(平成21年5月31日に一般社団法人徳洲会に移行した法人。以下,移行の前後を問わず「一般社団法人徳洲会」という。)の理事兼事務総長,平成20年に一般社団法人徳洲会の専務理事兼事務総長,医療法人徳洲会の専務理事等にそれぞれ就任するなどした。また,原告aは,インターナショナル・ホスピタル・サービス株式会社(以下「IHS」という。)の社長を務めていたことがあり,政治団体ないし政党である自由連合で会計の責任者も務めていた。しかし,原告aは,平成24年9月に一般社団法人徳洲会の事務総長を解任され,平成25年2月13日,同法人の専務理事の職を解任されるとともに懲戒解雇された(ただし,原告aは,この懲戒解雇が無効であるとして,東京地方裁判所で係争中である。)。(甲50,原告a)
さらに,原告aは,平成25年12月3日,IHSの資金3000万円を着服したとして業務上横領の容疑で逮捕され,同月24日に起訴された。そして,東京地方裁判所は,平成28年10月12日,原告aにつき,平成19年9月及び平成20年1月にIHSの預金口座から合計3000万円を仮払金名目で引き出して着服したとして,業務上横領罪で有罪とする判決を宣告した。この判決に対し,原告aは,控訴して係争中である。(甲50,乙1〔枝番号があるのに個別に掲記しない場合その全てを含む。以下同じ。〕,17)
イ  原告bは,以前,株式会社新潮社(以下「新潮社」という。)に勤務し,「週刊新潮」等の記者を務めたことがあり,現在は,株式会社ヒルダ(以下「ヒルダ」という。)の代表者である。原告bないしヒルダは,平成13年4月頃から,医療法人徳洲会に係る広報誌である「徳洲新聞」の編集発行を行っていた。(後段につき甲58,弁論の全趣旨)
ヒルダは,新聞業等を目的とする平成12年に設立された株式会社であり,代表取締役が原告b,取締役が原告bの妻c1及び原告bの娘c2である。(乙7,弁論の全趣旨)
ウ  被告は,「週刊文春」を始めとする雑誌,書籍等を発行する出版社である。
⑵ア  d1は,医療法人徳洲会を設立してその理事長となっているほか,数々のグループ法人(以下,これらを総称して「徳洲会」ないし「徳洲会グループ」という。)を設立した,元衆議院議員である。d1は,平成14年頃,難病である筋萎縮性側索硬化症(以下「ALS」という。)を発症した。
d2は,d1の息子であり,元衆議院議員である。
イ  IHSは,徳洲会グループの一社で,不動産賃貸や医療機器販売等を業とする。主要な取引先は徳洲会グループの病院であり,平成27年3月に徳洲会グループの一社である株式会社徳洲会に吸収合併された。(甲1,39,乙17の3,弁論の全趣旨)
また,インターナショナル・メディカル・リース株式会社(以下「IML」という。)も徳洲会グループの一社で,医療機器リース等を業とし,主要な取引先は徳洲会グループの病院である。(甲1,39,弁論の全趣旨)
ウ  自由連合は,d1が平成2年頃に発足させた政治団体であり,平成6年頃に政党となって法人格を取得した。自由連合には,d1を含む複数の衆議院議員及び参議院議員が所属していたが,平成18年11月以降,所属する国会議員がいなくなり,平成19年7月に政党要件を失った。そして,自由連合は,平成22年8月7日に任意解散し,その後清算した。(甲1,39,乙5,弁論の全趣旨)
エ  徳洲会は,平成25年9月17日,公職選挙法違反被疑事件につき,その東京本部等が東京地方検察庁特別捜査部(以下「東京地検特捜部」という。)による捜索差押えを受けた。
そして,d1の娘であるd3,d1の妻であるd4,徳洲会グループ幹部のe等徳洲会の関係者6人は,平成25年12月24日,平成24年に実施された衆議院議員選挙に係る公職選挙法違反の罪により起訴された。(甲1,7,乙1の2)
⑶  被告は,平成25年10月2日,その発行する本件雑誌1において,別紙3のとおりの「徳洲会マネー100億円を貪る『わるいやつら』」と題する本件記事1を公表し,同月9日,同じく被告が発行する本件雑誌2において,別紙4のとおりの「徳洲会マネーに群がった政治家の実名」と題する本件記事2を公表した。
本件記事1には,別表1「原告aの請求原因に係る整理表」の「番号」欄1から4までに対応する「記事」欄に記載の各記述及び別表2「原告bの請求原因に係る整理表」の「記事」欄に記載の各記述が含まれ,本件記事2には,上記別表1の「番号」欄5から7までに対応する「記事」欄に記載の各記述が含まれている。
3  争点及びこれに関する当事者の主張の要旨
⑴  本件各記事による原告aの社会的評価低下の有無
【原告aの主張】
本件各記事のうち,別表1「原告aの請求原因に係る整理表」の「記事」欄に記載の各記述は,当該欄に対応する「原告aの主張」欄に記載のとおりの各事実を摘示するものであって,これにより,原告aの社会的評価が低下した。
【被告の主張】
別表1「原告aの請求原因に係る整理表」の「被告の主張」欄に記載のとおり,本件各記事には,一部,原告aの社会的評価を低下させるものがあるものの,原告aの主張するとおりの事実を摘示するものではないし,原告aの主張するとおりに原告aの社会的評価を低下させるものではない。
⑵  本件各記事による原告bの社会的評価低下の有無
【原告bの主張】
本件記事1のうち,別表2「原告bの請求原因に係る整理表」の「記事」欄に記載の各記述は,当該欄に対応する「原告bの主張」欄に記載のとおりの各事実を摘示するものであり,これにより,原告bの社会的評価が低下した。
【被告の主張】
別表2「原告bの請求原因に係る整理表」の「被告の主張」欄に記載のとおり,本件記事1の掲載は,原告bの主張するとおりの事実を摘示するものではなく,原告bの社会的評価を低下させない。
⑶  原告aに対する名誉毀損の違法性阻却事由及び故意過失の有無
【被告の主張】
本件各記事は,これらが掲載された当時,徳洲会及びその関係者が公職選挙法違反の疑いで家宅捜査を受ける等しており,市民が徳洲会に関連する金の動きに関心を寄せていた中で,公訴提起に至っていない人の犯罪行為に関する事実に関連して,徳洲会の要職にあった原告らの情報を含む徳洲会の金の動きという公共の利害に関する事実を報道するもので,公衆の正当な関心に応えることになるものであるから,その目的は,専ら公益を図る目的に出たものである。そして,本件記述①から⑦までの各記述が摘示する事実は真実である。このことは,別表3「原告aに対する被告の抗弁に係る整理表」の「被告の主張」欄に記載の各事実から明らかである。
また,仮に当該各記述が摘示する事実が真実であると認められなかったとしても,上記別表3の「被告の主張」欄に記載の各事実からすれば,被告がこれらの事実が真実であると信じたことについて相当の理由があるから,被告に名誉毀損についての故意過失は認められない。
【原告aの主張】
本件記述①から⑦までの各記述が摘示する事実は,いずれも真実ではないし,被告がこれらの事実が真実であると信じたことについて相当の理由があるものではない。具体的には,別表3「原告aに対する被告の抗弁に係る整理表」の「原告aの主張」欄に記載のとおりである。
⑷  原告bに対する名誉毀損の違法性阻却事由及び故意過失の有無
【被告の主張】
本件記事1は,上述のとおり,公共の利害に関する事実を報道するもので,その目的は,専ら公益を図る目的に出たものである。そして,本件記述⑧から⑫までの各記述が摘示する事実は真実である。このことは,別表4「原告bに対する被告の抗弁に係る整理表」の「被告の主張」欄に記載の事実から明らかである。
また,仮に当該各記述が摘示する事実が真実であると認められなかったとしても,被告がこれらの事実が真実であると信じたことについて相当の理由があるから,被告に名誉毀損についての故意過失は認められない。
【原告bの主張】
本件記述⑧から⑫までの各記述が摘示する事実は,いずれも真実ではないし,被告がこれらの事実が真実であると信じたことについて相当の理由があるものではない。具体的には,別表4「原告bに対する被告の抗弁に係る整理表」の「原告bの主張」欄に記載のとおりである。
⑸  原告aに対するプライバシー権侵害による不法行為の成否
【原告aの主張】
本件記事1の記載のうち,①原告aが英國屋で高級スーツを仕立てている旨,②原告aがA公園近くのマンションに住んでいて家賃が月額100万円近くする旨,③原告aが競馬などのギャンブルをする旨,④原告aがギャンブルに1日当たり数百万円賭けたことがあり,万馬券が当たって最高で240万円の配当を受けた旨の記載は,一般人に未だ知られておらず,公表されれば私生活上の事実又はそれらしく受け取られるおそれのある事項で,一般人の感受性を基準にして,当該私人なら公開を欲しないであろうと認められる事項について述べるものであるから,原告aのプライバシー権を侵害するものである。また,上記①から④までの記載は,事実と全く異なることが述べられているものであるから,これらを報じる意義も必要性も認められず,違法である。
【被告の主張】
本件記事1は,d1が設立し,その後,政党化して原告aが会計責任者を務めた自由連合の資金27億円及び原告aが社長を務めたIHSの資金7億5500万円が使途不明となっていること等を前提事実として,原告らが徳洲会のお金を飽きることなく欲しがる悪行を行っていたことを報じたものである。これらを報じるに当たって,原告aが使途不明金をどのような事柄に費消したのかという情報を報じることは,公共の利害に関連する原告らの行動について,読者がより深く,より正確に知るために必要かつ有益な情報である。そして,本件記事1が掲載された当時,徳洲会及びその関係者が公職選挙法違反の疑いで家宅捜索を受けるなどしており,市民は徳洲会に関連する金の動きに関心を寄せていた。このように,公共の関心事である徳洲会に関連する金の動きとして,原告aの金遣いについての情報を報じることは,公共の関心に応える有益かつ必要な報道であることは明らかである。他方,被告は,原告aのギャンブルの態様,住居の家賃,スーツを仕立てている店,原告bの自宅の価値等について報じたにすぎず,通常の感受性を有する一般人が,公開されることによって過度の心理的な負担,不安を覚えるであろうと認められるような事柄ではなく,そもそも,プライバシーとして保護に値する事実とはいえない。
したがって,本件記事1の掲載当時,社会の関心の対象となっていた徳洲会の理事長であったd1を長年支えていた原告aに関して,これらの情報が報道されることは,原告aにとって受忍の範囲内であり,これを報道されない原告aの利益が,公共の関心事である徳洲会に関連する金の動きに関する有益かつ必要な報道に優先するものでないことは明らかであって,原告aが問題とする各記述は,原告aのプライバシー権を侵害するものではない。
⑹  原告bに対するプライバシー権侵害による不法行為の成否
【原告bの主張】
本件記事1の記載のうち,①原告bが年間数億円の収入を得ている旨,②原告bが千葉県船橋市内の閑静な住宅地で娘夫婦と暮らしている旨,③原告bが自宅の土地購入価格が1億円を下らない旨,④原告bに愛人がいて,原告bがその愛人に購入価格が1億円以上するマンションを買い与えた旨の記載は,一般人に未だ知られておらず,公表されれば私生活上の事実又はそれらしく受け取られるおそれのある事項で,一般人の感受性を基準にして,当該私人なら公開を欲しないであろうと認められる事項について述べるものであるから,原告bのプライバシー権を侵害するものである。また,上記①から④までの記載は,事実と全く異なることが述べられているものであるから,これらを報じる意義も必要性も認められず,違法である。
【被告の主張】
本件記事1には,原告bの設立した会社の受領した金銭についての記載は存在するが,原告b個人の収入に関する記載は存在せず,原告bに愛人がいるとの断定的な記載もない。
また,本件記事1は,原告aの設立した会社(株式会社徳洲出版社。以下「徳洲出版社」という。)から徳洲新聞の編集業務を請け負っていた,原告bの設立した会社(ヒルダ)が,徳洲会から年間6億円を受領していたこと等を前提事実として原告らが徳洲会のお金を飽きることなく欲しがる(貪る)悪行を行っていたことを報じたものであり,これらを報じるに当たって,原告bが徳洲新聞の編集業務の請負によって上げた利益を何に使ったのかという情報を報じることは,公共の利害に関連する原告らの行動について,読者がより深く,より正確に知るために必要かつ有益な情報である。そして,上述のとおり,本件記事1の掲載当時に公共の関心事であった徳洲会に関連する金の動きに関して,原告bのこれらの情報を報じることは,公共の関心に応える有益かつ必要な報道であることは明らかである。他方,これらの情報は,原告bの自宅の価値等について報じたにすぎず,通常の感受性を有する一般人が,公開されることによって過度の心理的な負担,不安を覚えるであろうと認められるような事柄ではなく,そもそも,プライバシーとして保護に値するといえない。
したがって,本件記事1の掲載当時,社会の関心の対象となっていた徳洲会の徳洲新聞の編集業務を請け負っていた会社の設立者である原告bに関して,これらの情報が報道されることは,原告bにとって受忍の範囲内であり,これを報道されない原告bの利益が,公共の関心事である徳洲会に関連する金の動きに関する有益かつ必要な報道に優先するものでないことは明らかであって,原告bが問題とする各記述は,原告bのプライバシー権を侵害するものではない。
⑺  損害額
【原告らの主張】
被告の原告らに対する不法行為によって原告らが被った精神的苦痛の慰謝料は,それぞれ3000万円を下らない。また,原告らは,当該損害の賠償を求めて本訴の提起及び追行を代理人弁護士に委任せざるを得なかったから,原告らそれぞれにつき,その弁護士費用のうち少なくとも損害額3000万円の1割に当たる300万円については,被告による不法行為との相当因果関係がある損害である。
【被告の主張】
争う。
⑻  謝罪広告の要否
【原告らの主張】
原告aは,本件記事1が掲載された本件雑誌1及び本件記事2が掲載された本件雑誌2が広く販売されたことによってその名誉を著しく毀損され,また,原告bは,本件記事1が掲載された本件雑誌1が広く販売されたことによってその名誉を著しく毀損されたものであり,原告らそれぞれの損害を回復するためには,損害賠償のみでは足りず,被告に対し,原告らそれぞれの名誉を回復するのに適当な処分として,被告の発行する「週刊文春」,被告のウェブサイト「週刊文春WEB」及び主要全国紙朝刊紙上に,別紙1記載の謝罪広告を,別紙2記載の掲載要領により掲載させる必要がある。
【被告の主張】
争う。
第3  当裁判所の判断
1  本件各記事による原告aの社会的評価低下の有無(争点⑴)について
⑴ア  本件記事1を一般の読者の普通の注意と読み方によって読めば,原告aの社会的評価を低下させるとして原告aが主張する事実のうち,①原告aが徳洲会グループの資金のうちの数十億円の金員を不正に取得して自己のために費消し着服した(本件記述①及び②による摘示事実。以下「本件摘示事実①」という。),②原告aが犯罪行為である文書偽造を行って徳洲会グループに対する支配権を奪おうとした(本件記述③による摘示事実。以下「本件摘示事実②」という。),③原告aが徳洲会の内部資料を東京地検特捜部に持ち込んだ動機が自らの悪事を隠すためであった(本件記述④による摘示事実。以下「本件摘示事実③」という。),④原告aが政治家に対して巨額の資金を提供していた(本件記述①及び②による摘示事実。以下「本件摘示事実④」という。),⑤原告aは,家賃が百万円近くするマンションに住み,高額の洋服を購入するなどといった,年俸千数百万円の給与では足りないほどの豪奢な暮らしをし,さらに,競馬に1日数百万円をつぎ込み,ブルガリア出張中にはホテルのカジノに入り浸った(本件記述①による摘示事実。以下「本件摘示事実⑤」という。)との事実の摘示があるものと認めるのが相当である。
また,本件記事2を一般の読者の普通の注意と読み方によって読めば,原告aの社会的評価を低下させるとして原告aが主張する事実のうち,⑥原告aは,徳洲会グループの会長であるd1の了承なく独断で徳洲会グループの資金を差配していて,民主党所属の衆議院議員であったgとの間で15億8000万円もの業務委託契約を結び,何の業務もしていないgに2億4140万円もの金額を支払い,このことや,自らも徳洲会グループの資金を着服したことなどを理由として徳洲会を懲戒解雇された(本件記述⑤及び⑦による摘示事実。以下「本件摘示事実⑥」という。),⑦原告aが,徳洲会の利益のために民主党を利用して,これを実現した(本件記述⑥による摘示事実。以下「本件摘示事実⑦」という。)との事実の摘示があるものと認めるのが相当である。
イ  本件摘示事実①は,一般の読者に対し,原告aが利己的な目的で,数十億円以上という巨額の資金の横領という犯罪を行って,私服を肥やしていたという印象を与えるものであり,本件摘示事実②は,一般の読者に対し,原告aが犯罪を行って徳洲会の支配権を奪い取ってほしいままにしようとしていたという印象を与えるものであって,いずれも,原告aの社会的評価を低下させるものであることが明らかである。また,本件摘示事実③は,一般の読者に対し,原告aが,横領等の犯罪をしただけにとどまらず,自らの悪事の発覚を隠そうとして他者を陥れたという印象を与えるものであって,原告aの社会的評価を低下させるものであると認められる。そして,本件摘示事実⑥を含む本件記事2は,本件摘示事実①を含む本件記事1が掲載された本件雑誌1とは別の本件雑誌2に掲載されたもので,本件摘示事実⑥により,一般の読者に対し,本件摘示事実①とは別に,原告aが徳洲会グループの資金を横領したほか,徳洲会グループの会長であるd1の了承を得ることなく多額の金員を衆議院議員に合理的理由なく支払い,そのために懲戒解雇されたとの印象を与えるものであって,原告aの社会的評価を新たに低下させるものと認められる。
ウ  一方,本件摘示事実④は,原告aが巨額の資金を政治家に提供していたというものであるが,民間人が政治家に資金を提供すること自体が直ちに違法不当なものとはいえず,本件摘示事実④のみにより,原告aの社会的評価が低下するとは認められない。本件摘示事実④に関する記述は,本件記事1のその余の記述と相まって,本件摘示事実①を摘示するものであるが,本件摘示事実①とは別個に原告aの社会的評価を低下させるものということはできない。
また,本件摘示事実⑤は,一般の読者に,原告aが年俸千数百万円の給与では足りないほどの豪奢な生活を送り,極度のギャンブル好きで高額のギャンブルを行っていたという印象を与えるものといえる。しかし,原告aは民間人であって,本件全証拠を精査しても,質素な生活や給与収入に見合った生活をしていることが評価されていたとは認められず,豪奢な生活をしていることが原告aの社会的評価を低下させるものとはいえないし,国内の競馬や外国でのギャンブルはそれ自体として直ちに違法不当なものとはいえず,本件摘示事実⑤のみにより原告aの社会的評価が低下するものとはいえない。本件摘示事実⑤は,本件記事1のその余の記述と相まって,本件摘示事実①を摘示するものであるが,本件摘示事実①とは別個に原告aの社会的評価を低下させるものということはできない。
さらに,本件摘示事実⑦は,原告aが,民間団体である徳洲会の利益のために政党を利用し,これを実現したというものであるが,政党ないしその所属の政治家を通じて利益の実現を図ること自体は,民間団体として直ちに非難されるべきことではなく,本件摘示事実⑦は,原告aの社会的評価を低下させるものとはいえない。本件摘示事実⑦は,本件記述⑤及び⑦により摘示された本件摘示事実⑥に関連するものではあるが,本件摘示事実⑥とは別個に原告aの社会的評価を低下させるものとはいえない。
⑵ア  被告は,本件記述①につき,一般の読者は,原告aが巨額の横領をしたと理解することはあっても,その横領の金額が数十億円とは理解しない旨主張する。
しかし,本件記述①には,「自由連合は,」,「約百億円の負債を抱えて解散しましたが,」,「このうち約二十七億円は原告aが勝手に引き出し,全く使途不明です。」,「原告aが引き出した仮払金七億五千五百万円も,同様に使途不明。これだけで三十五億円近くにも上る。他の事案も含めると,さらに途方もない金額になるはずです。」と記載され,原告aが自由連合の預金口座から引き出すなどした数十億が使途不明になっている旨が述べられた上で,「巨額のカネはいったいどこに消えたのだろう。」との記載に引き続き,原告aが給料では賄えないような生活をし,ギャンブルに多額の金銭をつぎ込んでいた旨を記載している。これらの記載について一般の読者は,上記数十億円が上記のような原告aの生活やギャンブルの資金に使われたと理解するものと認められる。また,本件記述①には,「しかし,一日に数百万円ものギャンブル資金を,どうやって捻出したのか。」,「その答えは,自由連合の預金通帳が物語っている。」と記載された上,金曜日や休前日に300万円から1000万円の資金が引き出されている旨が記載されており,これらの記載について一般の読者は,原告aが,自由連合の口座から引き出した使途不明金を,1日当たり数百万円ずつ競馬につぎ込んだと理解するものと認められる。
そうすると,本件記述①につき,一般の読者は,原告aが横領した金額が数十億円であると理解すると認めるべきものといえ,被告の上記主張は失当である。
イ  被告は,本件記述③につき,原告aが徳洲会を乗っ取ろうとしたとの記載は,原告aが徳洲会グループに属する企業の株を取得しようとしたこと,有力院長を担いで理事長の後釜に据えようとしたこと,原告aが平成25年2月に徳洲会グループを解雇されるとともに原告bも追放されたこと等を前提事実として,原告らが徳洲会を乗っ取ろうとしていたのではないかという推測を表明したもので,論評であって事実を摘示したものではないし,かかる論評は社会的評価を低下させるものではなく,上記前提事実は原告らの徳洲会の内部における動きを論じるものにすぎないから,原告らの社会的評価を低下させるものではない旨主張する。
しかし,企業の支配権を奪おうとしたか否かは,証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項といえるし,本件記述③等の「残された資料から判断すると,二人が徳洲会を乗っ取ろうとしていたとしか思えません。」,「グループ法人を支配できるからです。」,「クーデターに誘い込もうとした。が,理事長に見破られて失敗した。」,「本誌もこれらの疑惑を裏付ける資料を入手している。」との記載を総合すると,一般の読者は,本件記述③の執筆者の推測としてではなく,原告らが徳洲会グループの支配権を奪おうとした事実があったと読み取るのが普通であると認められる。また,穏当な手段で企業の支配権を譲り受けようとしたのではなく,奪おうとしたとの事実に対し,一般の読者が悪印象を抱くことは明らかであって,そのような原告らの悪行が徳洲会という組織の内部で行われたものであっても,原告aの社会的評価を低下させるものと認められる。
したがって,被告の上記主張は失当である。
ウ  被告は,本件記述④は,原告らが徳洲会の内部資料を東京地検特捜部に持ち込んだ行為について,悪事を隠すために仕掛けたテロのようなものであると論評したにすぎず,原告らが徳洲会の内部資料を東京地検特捜部に持ち込んだ動機が「自分たちの悪事を隠すため」であると断定したものではないし,仮に,原告らが悪事を隠すために徳洲会の内部資料を東京地検特捜部に持ち込んだと理解する読者がいるとしても,原告aの横領行為等による社会的評価の低下と別に原告らの社会的評価を低下させるものではない旨主張する。
しかし,本件記述④のうち,「今回の事件は,自分たちの悪事を覆い隠すために二人が仕掛けたテロのようなものです」との部分における「のようなもの」という表現は,「テロ」が比ゆである旨を示すもので,「自分たちの悪事を覆い隠すために二人が仕掛けた」という部分は事実として断定的に摘示されていると認められるのであって,この部分が論評であるということはできない。また,本件記述④において,原告らによる内部資料の提供は,原告aの横領行為等の発覚を免れるための更なる悪行として記述されていると認められるのであって,本件摘示事実①及び②とは別に,原告aの社会的評価を低下させると認めるべきものといえる。
したがって,被告の上記主張は失当である。
⑶  小括
上記⑴及び⑵のとおり,本件摘示事実①から③まで及び⑥は,原告aの社会的評価を低下させるものと認められるが,本件摘示事実④,⑤及び⑦については,原告aの社会的評価を低下させるものとは認められない。
2  本件各記事による原告bの社会的評価低下の有無(争点⑵)について
⑴ア  本件記事1を一般の読者の普通の注意と読み方によって読めば,原告bの社会的評価を低下させるとして原告bが主張する事実のうち,①原告bがfら政治家と深く結びついていた(本件記述⑧による摘示事実。以下「本件摘示事実⑧」という。),②原告bが,自分の設立した会社を通じて徳洲会から年間数億円の不当な利益を得て,これにより,土地だけで1億円以上する自宅を購入したほか,不貞関係にある女性のために1億円を超えるマンションを購入するなどした(本件記述⑨及び⑩による摘示事実。以下「本件摘示事実⑨」という。),③原告bが原告aと共に徳洲会グループに対する支配権を奪おうとした(本件記述⑪による摘示事実。以下「本件摘示事実⑩」という。),④原告bが,原告aが東京地検特捜部に徳洲会の内部資料を持ち込むのに協力したのは,自らの悪事を隠すためであった(本件記述⑫による摘示事実。以下「本件摘示事実⑪」という。)との事実の摘示があるものと認めるのが相当である。
イ  本件摘示事実⑨は,一般の読者に対し,原告bが,年間数億円もの不当な利益を得ていわゆる私服を肥やしていた上,これにより,不貞行為という道義的に非難される関係を継続させていたとの印象を与えるものであって,原告bの社会的評価を低下させるものであることが明らかである。また,本件摘示事実⑩は,一般の読者に対し,原告bが徳洲会の支配権を奪い取ってほしいままにしようとしていたという印象を与えるもので,原告bの社会的評価を低下させるものであることが明らかである。さらに,本件摘示事実⑪は,一般の読者に対し,原告bが,自ら悪事を行ったにとどまらず,これを隠すために他者を陥れたとの印象を与えるものであって,原告bの社会的評価を低下させるものであると認められる。
ウ  しかし,本件摘示事実⑧は,一般の読者に対し,原告bが政治家と親交が深く,親密であったとの印象を与えるにすぎず,原告bの社会的評価を低下させるものとはいえない。本件記述⑧において,原告bとfとの関係につき「癒着」と表現されているところ,「癒着」という語には否定的なニュアンスがあるといえるが,本件記述⑧を含む本件記事1には,fと原告bとの関係において不正が行われたなど,その関係が不適切であることを示す内容はないし,原告bがfに違法不当な依頼をしたという趣旨の内容もない。そうすると,本件記述⑧について,原告bの社会的評価を低下させるものということはできない。
⑵ア  被告は,本件記述⑨及び⑩は,原告bが徳洲会から不当な利益を得ていた事実を摘示するものではなく,原告bの設立したヒルダが利益を上げていたという印象を与えるものにすぎず,原告bの社会的評価を低下させるものではない旨主張する。
しかし,本件記述⑨及び⑩には,原告bの設立したヒルダが,徳洲会から,年間2億円の報酬で十分である業務に対して年間6億円の報酬を得ていた旨の記載があるにとどまらず,「年間数億の剰余金があるはずだが,いったいどこに消えたのか」との記載に引き続き,原告bが,土地だけで1億円をくだらない自宅を借入金なしで購入し,更に1億円を超えるマンションを購入していた旨が記載されており,これらの記載を読めば,一般の読者は,原告bが,自己の設立した会社が徳洲会から得た異常に高額の利益を自らのものとして,高額な自宅やマンションを購入していると理解するものといえる。
そして,このような利益の由来,規模及び使途を考慮すれば,たとえこの利益が徳洲会との契約に基づく報酬として得たものであったとしても,一般の読者が,不当な利益を収受したものという印象を抱くことは当然といえ,本件記述⑨及び⑩による本件摘示事実⑨が原告bの社会的評価を低下させることは明らかであるといえる。
したがって,被告の上記主張は失当である。
イ  被告は,本件記述⑩は,Kが「原告bさんの愛人」と言われているという事実を摘示するものであり,本件記事1には,Kに関して「独身の熟女」と婚姻関係にないことが明示され,原告bに関しても婚姻関係にあることをうかがわせる記載はないから,原告bがKと不貞関係にあるとの事実の摘示は読み取れず,原告bの社会的評価を低下させるものではない旨主張する。
しかし,本件記事1には,原告bが独身であることをうかがわせる記載はない一方,あえて,婚姻関係にある者が婚姻外で性的関係を有する相手(情婦,情夫)という意味を有する「愛人」という語が用いられていることからすると,一般の読者の普通の注意と読み方によれば,原告bがKと不貞関係にあると理解するものと認められる。
したがって,被告の上記主張は失当である。
⑶  小括
上記⑴及び⑵のとおり,本件摘示事実⑨から⑪までは,原告bの社会的評価を低下させるものと認められるが,本件摘示事実⑧については,原告bの社会的評価を低下させるものとは認められない。
3  原告aに対する名誉毀損の違法性阻却事由及び故意過失の有無(争点⑶)について
⑴  本件各記事の内容によれば,本件各記事が公共の利害に関する事実を報道するもので,その目的が専ら公益を図る目的に出たものであると認めることができる。
⑵  証拠(甲1,11~14,25,29~35,37~43,45,46,50,乙2~5,12~14,18,証人h,原告a本人)及び弁論の全趣旨によれば,次のとおり認めることができる。
ア 解雇について
原告a(昭和31年9月23日生)は,昭和54年4月に医療法人徳洲会に就職した後,徳洲会グループの要職を歴任し,平成20年には,一般社団法人徳洲会の専務理事兼事務総長に就任していたが,平成25年2月13日,同法人から,懲戒解雇する旨の通知を受けた。この通知において懲戒解雇の理由とされたのは,反社会的勢力に属する者らによる詐欺に協力したことのみであった。(甲14,50)
他方,上記通知に先立ち,一般社団法人徳洲会では,d1の特命によるものとして懲罰委員会(以下「本件懲罰委員会」という。)が組織され,原告aの懲戒処分原因の有無等についての調査が行われ,原告aに対する聴聞も行われたところ,この調査においては,IMLに対する自由連合の債務に係るd1の保証に関する問題,IHSの仮払金名目の資金使途の問題,gに係る契約関係や支払の問題等の12項目が問題とされていた。なお,同処分の無効を前提に地位確認等を求めて原告aが提起した民事訴訟(東京地方裁判所平成25年(ワ)第7050号)において,一般社団法人徳洲会は,懲戒解雇理由として上記通知に記載した理由以外の理由も追加している。(乙3,4,原告a本人,弁論の全趣旨)
イ 刑事告訴について
原告a及びgに対しては,徳洲会グループにおいて約2億4000万円を着服したという業務上横領容疑で刑事告訴がされたが,平成26年4月頃,嫌疑不十分を理由に不起訴処分となった。(甲11,乙1の1,弁論の全趣旨)
ウ 自由連合の預金口座からの引き出しについて
自由連合の預金口座からは,次のとおり資金が引き出されている。(乙12)
(ア) 平成18年10月27日(金曜日)     300万円
(イ) 平成18年11月22日(祝前日・水曜日) 500万円
(ウ) 平成18年12月28日(木曜日)    1000万円
(エ) 平成18年12月28日(木曜日)     100万円
(オ) 平成19年 1月 5日(金曜日)     200万円
(カ) 平成19年 1月19日(金曜日)     100万円
(キ) 平成19年 2月 9日(金曜日)     100万円
(ク) 平成19年 6月29日(金曜日)     100万円
(ケ) 平成19年 7月27日(金曜日)      50万円
(コ) 平成19年 8月 3日(金曜日)     100万円
エ IHSの仮払金勘定について
被告が入手した「IHS仮払金一覧」と題する平成24年12月27日付け書面(乙13)には,IHSの会計上仮払金として計上されている資金について,その発生日,金額,出金方法などが時系列に沿って記載され,当該時系列と対照できるように,衆議院議員選挙,参議院議員選挙及び国民新党の動きが記載されていたが,資金使途が不明か否かについては明記されていなかった。(乙13)
他方,原告aは,平成24年9月5日頃までの間に,i財務部長等にIHSの仮払金の使途について説明した。その中で,原告aは,平成19年6月6日の200万円及び平成20年7月1日の1200万円については不明としたが,その他は,鹿児島での選挙における陣中見舞費用や平成21年8月に実施された衆議院議員選挙などの選挙その他の徳洲会の政治活動ないし選挙活動に使用した旨の説明をし,預金口座からの出金手続の担当者が誰であるかも説明した。上記平成24年12月27日付け書面(乙13)に原告aの上記説明内容を付加した同年9月5日付け書面(甲25)が作成されている。(甲25,甲50,原告a本人,弁論の全趣旨)
もっとも,上記仮払金のうち平成19年9月及び平成20年1月の合計3000万円分について,東京地方裁判所は,平成28年10月12日,原告aによる業務上横領に当たる旨認定し,有罪判決を宣告した。この判決に対し原告aは控訴し,無罪を主張している。(乙1,弁論の全趣旨)
オ 原告a等の年収について
原告aの収入は給与収入のみで,平成15年の収入額は1765万7669円(申告上の所得額は1507万4785円),平成16年の収入額は1850万2744円(申告上の所得額は1587万7606円)であった。また,原告aの妻は,原告aにおいて配偶者控除の適用が受けられる額までの収入しか得ていなかった。(甲29,原告a本人)
カ 原告aの居住マンションについて
原告aは,平成16年1月頃,神奈川県川崎市内のBの自宅マンションを売却し,A公園近くにある東京都港区Cの賃貸マンションに転居した。その賃料は月額58万円であったが,原告aが個人で負担していた。(甲29,50,原告a本人)
キ 競馬について
原告aは,少なくとも,平成6年2月6日,同年3月6日,同月19日,同年4月10日,同年5月8日,同月15日,同年6月12日,同月26日,同年7月2日,同月9日,同月24日,同年8月13日,同月27日,同年11月20日,平成7年5月14日及び同年11月12日の各日,1日当たり数万円から10万円の勝馬投票券を主としていわゆる馬番連勝の方式で購入した。これらのうち,少なくとも最後の4日を除く日において購入した勝馬投票券は,いずれもいわゆる万馬券となり,最高払戻額は240万円(平成6年7月9日の購入合計額5万円のうち1万円分の払戻額)であった。そして,原告aは,これらの勝馬投票券の写しを勤務先の机の引出し内で保管していた。(甲1,乙2)
ク 徳洲会の選挙等について
平成8年に実施された衆議院議員選挙には,徳洲会グループが擁立した88名の者が自由連合から立候補し,その後も,平成10年の参議院議員選挙,平成12年の衆議院議員選挙,平成13年の参議院議員選挙にも,それぞれ,徳洲会グループが擁立した者が立候補したため,これらの選挙活動に多額の資金が必要であった。(甲50,原告a本人)
また,医療法人徳洲会の開設する病院に勤務するj医師は,d1の指示を受けて,自由連合から衆議院議員選挙に3回,参議院議員選挙に2回立候補し,自由連合解散後の平成17年には,国民新党から衆議院議員選挙に立候補したが,これらの選挙や国民新党への参加に当たっても,多額の資金が必要であった。(甲30~34)
さらに,平成17年の衆議院議員選挙にはd2も立候補し,平成18年に自民党入りしたこと,平成19年に実施された統一地方選挙において,数多くの徳洲会関係者が立候補したことなどからも,徳洲会では様々な選挙資金を要した。(甲25,50)
ケ gについて
(ア) gは,平成18年頃,千葉県市川市の国立病院の払下げが中止になった件につき,国会等で問題とする活動に関与したことがあった。上記払下げの中止は,d1の意向に沿うものであり,gは,原告aを通じてd1の意向を受け,上記活動に関与した。(甲50,原告a本人)
(イ) 原告aは,平成22年3月4日,d1の知人であったgを,当時与党であった民主党の実力者につながる人物としてd1に面会させた。この面会でd1とgは意気投合し,同年5月25日に開催されたd1も参加した徳洲会の会議において,gが,外国人を健診や治療のため我が国の医療機関に呼び込むというメディカルツーリズム事業について説明をした。d1は,その場で,原告aに対し,メディカルツーリズムに関する業務をgと相談して行うよう指示した。そして,上記会議に引き続いて行われた原告a,g,徳洲会関係者のk及びd1による打合せにおいて,原告aが,メディカルツーリズムに関する業務について,初期立上げで8000万円,その後の2年間で場合によっては15億8000万円程度かかる可能性があるという見通しの下に,gが同業務に取り組むことに対する許可をd1に求めた。これに対し,d1は,gと原告aが上記見通しの下に同業務に取り組むことを指示するとともに,上記8000万円については,徳洲会の本部から支出するよう指示した。(甲13,44,50)
(ウ) その後,gは,メディカルツーリズムに関するコンサルタント業務について,報酬を15億8000万円とする業務委託契約書を作成しようとしたが,d1が,総額15億8000万円については高すぎるなどとしたため,上記契約書は作成されなかった。そこで,原告aは,平成22年9月4日のd1との面談において,gに徳洲会関連の名刺を使用させて上記業務に関する作業を行わせ,後に実費を精算することについてd1の了承を求め,これを得た。(甲43,50)
(エ) 原告aは,平成22年1月から,gないしその関連会社に,顧問料的な意味合いで徳洲会から毎月210万円の支払を行うようになり,同年8月からはメディカルツーリズムに関するコンサルタント業務に関する費用として月額1000万円を追加で支払うようになった。平成24年10月までの支払総額は,2億4140万円である。gは,同月に行われた徳洲会関係者によるヒアリングにおいて,業務内容は明確ではないが,徳洲会が解決困難な案件について何でも対応し,解決してきた,gと原告aで,d1から出された非常に困難な各種要求を的確に実現するため,頻繁に協議を行い対策を実施した,徳洲会と当時与党であった民主党との連携協力による成果を出してきたといった認識を述べた。また,対応の具体例として,上記(ア)の払下げ問題のほか,奄美の農産物の販売ルート開拓,東日本大震災における対応,医科大学の買収情報集約・分析等を挙げた。(甲46,50,原告a本人)
(オ) 原告aは,本件懲罰委員会の聴聞において上記(エ)の支払について問われ,要旨,民主党政権で徳洲会に必要な存在として契約を結んだ,特に政治的な物事は日頃からの付き合いがあって初めて成就するものである,いろいろな徳洲会案件が出てきたときに様々なアドバイスや根回しをしてもらうための契約であった,理事長の承認がなかったのは事実であるが,そのような案件で何ら問題とされていないものは他にもあり,流れの中でそれが必要という判断で行ったものであるといった説明をした。(乙4)
コ 自由連合の債務の連帯保証と原告aのIMLの株式取得について
(ア) IMLは,平成8年から平成13年にかけて,自由連合に貸付けを繰り返し(以下,これらの貸付けを「本件各貸付け」という。),平成23年1月当時,その残高は約100億円に達するとされていた。これらの貸付けに際して作成された金銭消費貸借書には,保証人の記載ないし署名押印はなく,保証契約書が作成されたこともなかった。もっとも,平成20年10月20日付けの朝日新聞が,本件各貸付けが返済不能となれば事実上の献金と同視でき,政治資金規正法による政治献金の量的制限の潜脱に当たる旨報道した際,d1は,徳洲会グループ代表として,「自由連合への関連企業からの貸付は弁護士のアドバイスを得て政治資金規正法上違法行為にあたらないものとして実行。借入金の処理について私は全ての責任は自分個人で取ると常々明言しています。借入先の関連企業は実質的には私の個人株主の会社であり,私の責任において徳洲会グループの医療法人や社会には一切の迷惑を掛ける事なく当局と相談の上処理いたします。」とするコメント(以下「本件コメント」という。)を発表した。(甲39~42,乙5)
(イ) 自由連合は,政党交付金の交付を受ける政党等に対する法人格の付与に関する法律に基づき法人格を付与されていたが,平成22年8月7日に任意解散し,清算手続が開始されていた。そして,IMLは,自由連合の清算人に対し,本件各貸付けにつき約100億円の残高がある旨を届け出ていた。しかし,自由連合自体には何らの資産もなかったため,本件各貸付けは返済不能となり,自由連合は同法の規定に基づき破産手続開始の申立てをすることになりかねない状況であった。仮にそのような状況となった場合,IMLに対してはIMSが,IMSに対してはIHSが,それぞれ100億円前後の貸金債権を有しているところ,これらが連鎖的に事実上無価値となり,徳洲会グループに対する金融機関の信用が失われることが懸念された。そこで,原告aは,本件各貸付けの際にd1が連帯保証をしていたことを前提として,d1に本件各貸付けの日を作成日付とする保証契約書を作成させた上で,上記連帯保証債務の履行として,d1が所有する株式会社徳洲会の株式をIMLに代物弁済させ,これに伴いd1が取得する求償権を放棄して,自由連合の清算を終わらせることを計画した(以下,この計画を「本件代物弁済スキーム」という。)。そして,原告aは,l総合法律事務所の弁護士2名に本件代物弁済スキームについての意見を求めたところ,上記弁護士らは,平成23年1月14日付けで徳洲会グループ宛ての意見書を提出した。この意見書には,d1が上記連帯保証の事実を認めていることのほか,平成13年及び平成14年において実施された国税庁による税務調査の際に,稟議書に基づきd1の保証の事実を説明し,国税庁担当者が上記保証があると認識したこと,d1が本件コメント等で保証意思を公表していることなどを前提に,本件代物弁済スキームを実行すべきであるなどと記載されている。また,現在も徳洲会の顧問をしているD弁護士等による同月23日付け意見書においても,d1がかつて連帯保証した旨を表明していること,税務当局もd1の連帯保証があるとして扱っていること,金融機関も連帯保証があると理解していることなどを根拠に,d1が本件各貸付けに連帯保証したことが認められるとした上,本件代物弁済スキームを選択するか否かは広く諸事情を検討して判断すべきであるが,d1による連帯保証の存在を前提とせざるを得ないなどとされた。(甲41,42,乙5,弁論の全趣旨)
(ウ) 一方,m会計事務所の公認会計士兼税理士のm等は,本件代物弁済スキームにつき,d1個人への課税リスクが避けられるか疑問であること,株式会社徳洲会の株式を大量に保有することとなるIMLについて,その親会社であるIMSの株主がd1の親族以外の名義になっていることから危険があること,IMLの株式の5%をグループ法人税対策のために原告aに移転したという理由が不明確であることなどの理由を挙げて,これを避けるべきである旨記載した平成22年12月26日付け書簡(乙14)を,その頃,d1の長女が代表取締役である株式会社徳洲会宛てとして作成し,交付した。また,n法律事務所の弁護士ら3名は,d1の保証債務の存在を証明することは困難であること,d1に対する課税処分が想定されること,遡及日付による保証契約書の作成は犯罪行為になること,株式会社徳洲会の株式による代物弁済をする理由が明確でないこと,同株式のIMLへの譲渡は徳洲会グループ全体の安定した経営の阻害要因となることなどを理由として,本件代物弁済スキームを採用すべきではないとする「メモランダム」(乙5)を平成23年2月4日付けで作成し,株式会社徳洲会に提出した。ただし,このメモランダムにおいては,d1が本件各貸付けについて保証した覚えがないと述べていることが前提とされている。hは,取材において,上記書簡(乙14)及びメモランダム(乙5)を入手した。(乙5,14,18,証人h)
サ 資金の差配について
原告aは,本件懲罰委員会による聴聞通知書に対する回答(乙3)に,選挙費用にはIMLの貸付金が充てられたほか,帳簿外の費用も多くあり,また,民主党立上げ時などに,政治家等に億円単位の資金提供を行った旨を記載した。また,本件懲罰委員会による原告aに対する聴聞会の記録(乙4)には,上記ケのとおり,gへの資金提供につきd1の承認がなかった旨を認める発言のほか,d1が政治家に億円単位の資金提供を行ったとする旨の発言が記載されていた。hは,取材において,これらの回答ないし記録を入手した。(乙3,4,18)
⑶  本件摘示事実①について
ア 被告は,原告aが3000万円を横領した旨の事実が認定されて東京地方裁判所から有罪の判決を宣告されたことをもって,原告aの横領が真実であり,又は原告aが横領したと信じるについて相当な理由があったと主張する。
しかし,3000万円の横領と数十億円の横領では,その犯罪事実の同一性があるといえるものではなく,その摘示により社会的評価に与える影響も大きく異なるといえることから,原告aが3000万円を横領したとの事実で有罪となったことは,本件摘示事実①が真実であることの根拠や,被告がこれを真実であると信じたことに相当な理由があることを推認させる事情とはいえない。もとより,上記有罪とされた事実が真実であれば,IHSの仮払金に係る原告aの説明が少なくとも一部において虚偽であることとなるが,だからといって,数十億円の横領の事実が真実である,あるいは,被告においてそう信じるについて相当な理由があるということにはならない。
また,被告は,徳洲会が原告aを約2億4000万円の横領の容疑で刑事告訴したことも上記主張の根拠として挙げるが,刑事告訴がされたこと自体が直ちに上記根拠に当たるものとはいえず,金額も数十億円とは大きく異なっている上,結局,嫌疑不十分を理由として不起訴処分となっているのであるから,上記刑事告訴の点も,上記根拠となるものとはいえない。
イ 被告は,原告aが政治に対する関心が強いこと,gへの資金提供につきd1の承認を得ていないことを認めていたことなどをもって,原告aが徳洲会グループの資金を自己のために費消したことの根拠として主張するが,上記⑵の認定事実によれば,原告aは,自由連合やIHSの預金口座から引き出した資金のうちの相当額を,徳洲会グループやd1ないしその親族のための政治活動や選挙活動に支出したと推認される。原告a自身が政治に対する関心が強いことをうかがわせる証拠は,証人hの陳述及び証言中にある伝聞部分しかなく,gに対する資金供与についてd1の明示的承認を得ていなかったとしても,徳洲会の会計手続上は何ら隠匿しておらず,だからこそ,i財務部長から契約書の作成が求められるようなこともあった(甲45)といえることに加え,下記ウの事情も考慮すれば,少なくとも,原告aが数十億円に上る徳洲会の資金を自己のために費消したことが真実であるとはいえず,また,被告がそのように信じるについて相当な理由があるともいえない。
ウ 被告は,原告aの生活ぶりや1日数百万円をギャンブルに投じる暮らしぶりから,原告aが横領していたことが推認される旨を主張する。しかし,上記⑵ウ認定の自由連合の口座からの引出日及び引出金額と同キ認定の勝馬投票券の購入日及び購入金額のほか,平成18年の中央競馬は同年12月24日が最終日であったこと(甲12,弁論の全趣旨)を併せ考慮すれば,上記引出金額が原告aの勝馬投票券購入資金に充てられたと認めることはできない。そして,上記⑵において認定した原告aの生活ぶりやギャンブルにかかった費用等を考慮しても,同じく上記⑵において認定した原告aの年収に鑑みれば,原告aが数十億円の横領をしていなければ説明がつかないようなものではなく,そのような横領による資金を必要とするほどの生活ぶりやギャンブルをしていたことを認めるに足りる証拠はない。これに反するhの陳述及び証言は,的確な裏付けを欠くものであり,採用することができない。
エ 被告は,原告aが,本件各貸付けについてd1に保証意思がないのに保証契約書を作成しようとしたことや,徳洲会グループの資金横領等を理由に懲戒解雇されたという事情を原告aによる横領の真実性等の根拠として挙げるが,上記⑵コ認定の事実によれば,本件代物弁済スキームを検討し始めた時点においては,d1が保証意思を表明していたものと認められ,これを前提とすれば,本件各貸付け当時からd1に保証意思があったものとみることは十分に可能であり,むしろ,そのようにみることが自然であったといえる。そして,徳洲会内部には,本件代物弁済スキームの評価について複数の意見書等が存在していたのであり,hが「徳洲会の内部事情を知悉している幹部等」から適切に取材したというのであれば,その存在を認識し得なかったとは認め難い。もとより,本件各記事が掲載された当時,原告らと徳洲会との間に対立関係があったということは本件各記事の内容自体からも明らかであり,hないし被告としても,そのような状況を認識していたと認められる。そうであれば,徳洲会の関係者の中には,原告らに有利な事情や徳洲会に不利な事情についてはあえて明らかにしないことがあり,取材結果の評価については慎重な検討,分析が必要であったことは容易に想定されたといえるところ,hないし被告がこの点に配慮したことをうかがわせる証拠はない。したがって,被告が「徳洲会の内部事情を知悉している幹部等」から取材したからといって,そのことから直ちに,取材内容が真実であると信じる相当な理由があるといえるものではない。
以上によれば,被告の挙げる上記事情をもって,被告の主張の根拠と認めることはできない。
オ なお,被告は,原告aが取材を拒絶した旨を主張するが,仮に原告aが被告の取材を「拒絶した」とみる余地があるとしても,上記エのような被告の取材の在り方のほか,被告の主張する原告aに対する取材の時期及び方法を考慮すれば,そのことをもって,被告において本件摘示事実①が真実であると信じるについての相当な根拠になると認めることはできない。
カ 以上によれば,本件摘示事実①は,真実ではないし,被告がこれを真実であると信じたことについて相当な理由があると認めることはできない。
⑷  本件摘示事実②について
ア 被告は,原告aが徳洲会グループの支配権を奪おうとしていた旨を主張する。
しかし,原告aが取得した徳洲会グループの株式について,IMLの全株式のうちの5%の他にあることを認めるに足りる証拠はなく,d1が保証債務の代物弁済として株式会社徳洲会の株式をIMLに譲渡することによっても,原告aが徳洲会グループの支配権を奪えるというだけの根拠は見当たらない。確かに,上記⑵コ(ウ)の認定事実のとおり,弁護士から,本件代物弁済スキームを採用すると,d1の所持する株式会社徳洲会の株式数が減って,徳洲会グループの安定した経営が阻害される危険があるという指摘や,原告aがIMLの全株式の内の5%の株式を取得した理由が不明確であるとの指摘があるものの,このことをもって,原告aが徳洲会グループの支配権を奪おうとしていたとまでみることはできない。
イ また,被告は,d1には保証意思がなかったのに,原告aが保証契約書を偽造しようとしていた旨を主張するが,この主張に理由がないことは,上記⑶エで説示したとおりである。
ウ したがって,本件摘示事実②は,真実ではないし,被告がこれを真実であると信じたことについて相当な理由があると認めることはできない。
⑸  本件摘示事実③について
証拠(甲50,原告a本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告aは,一般社団法人徳洲会を懲戒解雇された後に,東京地検特捜部に徳洲会の内部資料を持ち込んで,徳洲会に係る公職選挙法違反事件の捜査に協力したことが認められるが,その時期に照らし,徳洲会に対する意趣返しの趣旨があったことや懲戒解雇処分の効力を争う民事裁判への影響を考慮したとみる余地があることは否定し得ないものの,原告aの「悪事を隠す」という動機があったとまで認めるに足りる証拠はない。もとより,原告aは,後に,IHSの資金3000万円を横領したとして有罪判決を受けてはいるが,東京地検特捜部に協力すれば横領に係る捜査に手心を加えてもらえると認識していたことをうかがわせる証拠はなく,上記有罪判決を受けたことをもって,本件摘示事実③の真実性を認めることはできない。
したがって,本件摘示事実③は,真実ではないし,被告がこれを真実であると信じたことについて相当な理由があると認めることはできない。
⑹  本件摘示事実⑥について
ア 上記⑵ケ認定のとおり,本件摘示事実⑥のうち,原告aが民主党所属の国会議員であるgに2億4140万円を徳洲会の資金で支払ったことや,徳洲会から懲戒解雇されたことは真実である。また,上記認定によれば,原告aは,gに対する具体的な支払金額の決定自体についてはd1の了承を得ていなかったこと,原告aが徳洲会グループの資金について一定の差配をしていたこと,徳洲会グループが,gに対する支払や原告aによる徳洲会グループの資金の差配及び具体的使途について,疑念を抱いて調査していたことは認められる。
イ しかし,上記⑵ケ認定のとおり,原告aは,gに業務を委託することや一定の報酬を支払うことについて,d1の了承を得ていたものであり,また,徳洲会としては,gに対する支払を認識していたものである。そして,gへの支払の趣旨についての原告aやgの説明内容に照らし,上記支払が徳洲会にとって合理的理由がないものと直ちに認めることはできず,本件摘示事実⑥が真実であると認めることはできない。そして,この点に関する取材内容についてのhの陳述及び証言を考慮しても,本件摘示事実⑥が真実であると信じるについて相当な理由があると認めることはできない。
ウ したがって,本件摘示事実⑥は,真実ではないし,被告がこれを真実であると信じたことについて相当な理由があると認めることはできない。
⑺  小括
以上のとおり,本件摘示事実①から③まで及び⑥のいずれについても,真実であるとは認められず,被告において真実と信じるに足りる相当な理由があると認めることもできない。
4  原告bに対する名誉毀損の違法性阻却事由及び故意過失の有無(争点⑷)について
⑴  本件記事1の内容によれば,本件記事1が公共の利害に関する事実を報道するもので,その目的が専ら公益を図る目的に出たものであると認めることができる。
⑵  証拠(甲1,17,19,20~23,26,27,28,58,乙8,9,11,15,原告b本人)及び弁論の全趣旨によれば,次のとおり認めることができる。
ア 原告b(昭和17年5月4日生)は,かつて新潮社に勤務していたが,同社を退職する頃の平成12年12月9日,新聞業等を目的とするヒルダを設立した。(甲58,乙7,原告b本人)
イ ヒルダは,徳洲会の広報の役割を果たしていた徳洲新聞(原則として週1回発行。1部当たり鹿児島版は16面,鹿児島版以外は8面)について,平成13年4月頃,医療法人徳洲会から制作の委託を受けた徳洲出版社から,記事の編集業務を1号当たりの編集費550万円で請け負った。また,ヒルダは,平成18年7月頃からは,一般社団法人徳洲会から,徳洲新聞の印刷業務,梱包業務及び配送業務も併せて請け負い,これらの業務の報酬は,約16万0500部印刷する1号当たり約430万円(1部当たり約27円)であり,編集業務と併せた報酬代金額は年間約5億円であった。ヒルダは,徳洲会から,徳洲新聞に関する上記業務の他に,徳洲会グループのホームページの管理,医師向け広報誌であるドクターズネットワークの編集印刷業務,看護師向け広報誌であるVIVOの編集印刷業務等を請け負っていた。(甲26,58,乙8)
ウ 一般社団法人徳洲会の平成18年度の決算報告において,徳洲新聞を1部74円で販売し,その売上額が5億0544万4420円,徳洲新聞の仕入額が4億0416万9066円であることが報告された。(甲19)
また,平成21年5月31日に開催された一般社団法人徳洲会の定時社員総会で報告された平成20年度の決算において,徳洲新聞の売上額は6億7513万1600円,徳洲新聞の仕入額は5億1581万9680円であるとされ,この決算が上記総会で承認された。また,上記総会においては,平成21年度の事業計画も報告され,その中で,徳洲新聞について,1部74円で販売し,その売上額が6億6673万9000円となること,仕入れについては,900万9980部を1部56.46円,総額5億0867万8000円となる計画であることが報告され,承認された。(甲20,弁論の全趣旨)
エ 被告は,本件記事1の取材の過程で,株式会社徳洲会のoが平成23年12月10日頃に作成したとされる「(株)ヒルダに関する徳洲会グループよりの支払内容(ご報告)」と題する書面(乙8)を入手した。これには,上記イの内容を含む徳洲会からヒルダへの支払額がまとめられており,支払総額は年間約5億8000万円,消費税を含めると年間6億円超となる旨の記載があるほか,ドクターズネットワーク及びVIVOの印刷費用を見直すことで年間1200万円の経費削減が可能であること,これら2誌や徳洲新聞の編集作業を自前で行えば,その費用は大きく削減できることなどが記載されていた。(乙8)
オ 被告は,本件記事1の取材の過程で,平成25年3月7日付けでpが作成したとされる「ヒルダ(告訴メモ)」と題するメモ(乙15。以下「本件pメモ」という。)を入手した。これは,一般社団法人徳洲会が,原告aを,平成20年4月1日から平成24年3月31日までの間,ヒルダの利益を図る目的で,ヒルダに徳洲新聞の編集・印刷等の業務委託料名目で,適正価格を超える合計9億1059万2060円を支払い,一般社団法人徳洲会に6億5000万円を超える損害を与えたという事実につき,特別背任の罪で告訴することを見越して作成されたものであった。そして,本件pメモには,事実経緯として,①一般社団法人徳洲会とヒルダとの間で,平成18年7月頃に,徳洲新聞の編集,印刷,配送等の業務の委託契約が締結された旨,②同契約に基づき,一般社団法人徳洲会からヒルダに対し,編集費として年間2億6798万円ないし2億8050万円が,印刷配送費等として年間2億0755万円ないし2億3531万9680円がそれぞれ支払われた旨,③一般社団法人徳洲会の監事が,平成23年3月頃,ヒルダに対する出費が高すぎる旨の指摘をしたために,同法人において,ヒルダへの業務委託料について調査することとなった旨,④一般社団法人徳洲会が印刷配送費等について4社から見積もりをとったところ,その額は,年間3315万円ないし6369万9000円であった旨,⑤一般社団法人徳洲会は,平成24年3月頃,ヒルダとの業務委託契約を解約した旨,⑥上記④の見積額のうち最高額を前提としても,一般社団法人徳洲会の被った損害は,6億5579万6060円となる旨などが記載されていた。もっとも,本件pメモは,作成途上であることが一見して明らかで,その末尾には,「【作業】ダンボール2箱の資料を整理して,引用を正確にする必要がある。」との記載がある。(乙15)
カ 原告bは,平成14年7月3日,千葉県船橋市EF丁目所在の本件原告b自宅土地(当時の登記簿上の地積412.54㎡)を妻子と共同で7000万円で購入し,原告b持分が70分の30の持分を取得し,妻子がその余の持分を取得した旨の移転登記をした。この移転登記に際し,本件原告b自宅土地に担保権は設定されなかった。そして,原告bは,平成19年頃,本件原告b自宅土地上に,原告bの娘夫婦と原告b夫妻との二世帯住宅を,銀行からの融資を受けて建築した。ただし,本件原告b自宅土地にも建築された建物にも,抵当権は付されなかった。(甲1,27,58,乙9,原告b本人)
キ 本件記事1において「K」として記載されたqは,新潮社に勤務する者であるが,東京都千代田区G所在のマンション(地上14階建て,平成13年12月新築)のH号室(床面積71.35㎡。以下「本件マンション」という。)につき,平成14年2月16日に購入契約を締結し,同年3月22日,所有権保存登記をした。本件マンションの購入金額は6320万円であり,qは,このうち3500万円をみずほ銀行からの住宅ローンによって支払い,本件マンションには,同日付けで,上記住宅ローンに係る抵当権設定登記がされた。その余の購入代金については,従前居住していたマンションの売却代金,自己の預金及び父親からの贈与で賄い,原告bからその原資の提供を受けたことはなかった。(甲28,乙11)
⑶  本件摘示事実⑨について
ア 被告は,原告bがヒルダを通じて徳洲会から年間数億円の不当な利益を得ていたことの根拠として,徳洲会がヒルダ以外の会社にヒルダの業務について相見積もりをとったところ,見積額と比してヒルダが受け取っていた報酬が高額であった旨を主張する。
しかし,被告は,上記見積額について,本件pメモの記載のほかには具体的な主張立証をしないところ,本件pメモは,作成途中のものであることが一見して明らかであるほか,その末尾には,資料の引用が正確ではない可能性について明記されているのであるから,本件pメモの記載が直ちに真実であると認めることはできず,また,その記載を真実と信じるに足りるものともいえない。平成24年3月でヒルダと徳洲会との契約が打ち切られたことは,この認定判断を左右するものではない。
イ また,原告bは,本件原告b自宅土地を妻子と共同で7000万円で購入したもので,原告bの持分は70分の30にとどまっている上,その購入時期である平成14年7月においては,ヒルダは徳洲新聞の編集業務のみしか受託しておらず,本件原告b自宅土地購入時点で上記印刷・配送業務についての費用で不当な利益を得ていた余地はない。そして,本件原告b自宅土地上に二世帯住宅が建築されたのは,ヒルダが徳洲新聞の印刷・配送業務を受託するようになった平成18年7月頃から間もない平成19年頃であることをも考慮すれば,原告bの自宅の取得をもって,本件摘示事実⑨が真実であることや,真実であると信じるに足りる相当な理由となるものと認めることはできない。
ウ 被告は,原告bがqに本件マンションを買い与えたもので,そのことは,徳洲会の幹部から聞き取ったと主張し,hはこれに沿う陳述及び証言をする。
しかし,上記⑵キ認定のとおり,qは,本件マンションを,一部父親からの援助を受けたものの,基本的には自らを債務者とする住宅ローンを含む自己資金で購入したものであって,原告bが買い与えたものではない。少なくとも上記住宅ローンの存在は,本件マンションの登記を確認すれば直ちに明らかになるところであり,hも同登記(乙11)を確認したとしつつ,上記住宅ローンの存在を無視したような本件記述⑩の記載をしたことは,理解し難い。いずれにしろ,hの上記陳述及び証言は採用することができない。
エ 原告bとqが不貞関係にある旨の被告の主張については,およそ事実と認めるに足りる証拠はなく,そのような事実があると信じるに足りる相当な理由も見出し難い。
オ したがって,本件摘示事実⑨は,真実ではないし,被告がこれを真実であると信じたことについて相当な理由があると認めることはできない。
(4) 本件摘示事実⑩について
上記3⑷において説示したとおり,原告aが徳洲会グループに対する支配権を奪おうとしたとの本件摘示事実②が真実ではなく,被告がこれを真実であると信じたことについて相当な理由があると認めることはできないことからすれば,本件摘示事実⑩についても,真実ではないし,被告がこれを真実であると信じたことについて相当な理由があると認めることはできないというべきである。
(5) 本件摘示事実⑪について
原告bについては,そもそも原告aが東京地検特捜部に徳洲会の内部資料を持ち込むに当たりどのような関与をしたかが明らかではないが,仮に何らかの関与があったとしても,上記⑴から(4)までの説示に照らせば,自らの悪事を隠匿しようとした意図があったとは認め難く,被告においてそのような意図があったと信じたことについて相当な理由があると認めることもできない。
したがって,本件摘示事実⑪は,真実ではないし,被告がこれを真実であると信じたことについて相当な理由があると認めることはできない。
(6) 小括
以上のとおり,本件摘示事実⑨から⑪までのいずれについても,真実であるとは認められず,被告において真実と信じるに足りる相当な理由があると認めることもできない。
5  原告aに対するプライバシー権侵害による不法行為の成否(争点⑸)について
⑴  原告aは,本件記事1中の,①原告aが英國屋で高級スーツを仕立てている旨,②原告aがA公園近くのマンションに住んでいて家賃が月額100万円近くする旨,③原告aが競馬などのギャンブルをする旨,④原告aがギャンブルに1日当たり数百万円賭けたことがあり,万馬券が当たって最高で240万円の配当を受けた旨の記載につき,原告aのプライバシー権を侵害するもので違法である旨主張する。
しかし,上記記載のうち月額家賃や1日当たりの賭け金額等,プライバシーとして保護の対象となり得る部分については,真実ではなく,本件記事1の他の記載と相まって原告aの名誉を毀損する不法行為が成立するものと認められるのであり,これらの点に関するプライバシー権の侵害の問題は,上記不法行為に係る評価に含まれているといえる。
⑵  原告aが競馬などの適法なギャンブルをしたことがあること自体など上記⑴のその余の部分については,原告aの私生活上の事実に関するものではあるが,一般人の感受性を基準とした場合,この記載が公表されたからといって,金銭によって慰謝すべきほどの精神的苦痛が生ずるものとまでは認められず,上記記載に違法性があるとまではいえない。
⑶  したがって,本件記事1について,原告aに対するプライバシー権の侵害による不法行為が成立するものとは認められない。
6  原告bに対するプライバシー権侵害による不法行為の成否(争点⑹)について
⑴  原告bは,本件記事1中の,①原告bが年間数億円の収入を得ている旨,②原告bが千葉県船橋市内の閑静な住宅地で娘夫婦と暮らしている旨,③原告bが自宅の土地購入価格が1億円を下らない旨,④原告bに愛人がいて,原告bがその愛人に購入価格が1億円以上するマンションを買い与えた旨の記載につき,原告bのプライバシー権を侵害するもので違法である旨主張する。
しかし,上記記載のうち①,③及び④については,その主要部分について真実ではなく,本件記事1の他の記載と相まって原告bの名誉を毀損する不法行為が成立するものと認められるのであり,これらの点に関するプライバシー権の侵害の問題は,上記不法行為に係る評価に含まれているといえる。
⑵  上記アの②の記載については,原告bの私生活上の事実に関するものではあるが,一般人の感受性を基準とした場合,この記載が公表されたからといって,金銭によって慰謝すべきほどの精神的苦痛が生ずるものとまでは認められず,上記記載に違法性があるとまではいえない。
⑶  したがって,本件記事1について,原告bに対するプライバシー権の侵害による不法行為が成立するものとは認められない。
7  損害額(争点⑺)について
⑴  慰謝料について
本件各記事が掲載された「週刊文春」が我が国で著名な週刊誌であることは当裁判所に顕著な事実であるところ,証拠(甲5)によれば,「週刊文春」は,平成25年4月ないし6月当時,1号当たりおよそ70万部発行されていたと認められ,本件雑誌1及び本件雑誌2が発行された当時も,同程度の部数が発行されていたと推認される。
そして,原告aについては,本件各記事により,徳洲会の要職を長年務めたことにより形成された社会的評価が大きく低下し,相当の精神的苦痛を被ったことが認められる。また,上記3において説示したとおり,被告は,不十分な取材により漫然と本件記事1を掲載した上で,原告らから抗議を受けたにもかかわらず(甲10),1週間後に本件記事2を掲載したもので,本件記事2掲載に当たり追加取材をしたことの主張立証もない。他方,原告aは,IHSの資金3000万円を横領したとして第1審で有罪判決を受けているという事情もある。このほか,原告aの名誉回復措置がとられたことをうかがわせる証拠はないこと,その他本件に現れた一切の事情を考慮すれば,原告aの上記精神的苦痛に対する慰謝料額は,180万円が相当と認められる。
また,原告bについては,本件記事1により,徳洲会から多額の不当な利益を受けた,愛人がいるなどと報じられ,その社会的評価が大きく低下し,相当の精神的苦痛を被ったことが認められる。そして,本件記事1についての取材が不十分であったこと,原告bの名誉回復措置がとられたことをうかがわせる証拠はないこと,その他本件に現れた一切の事情を総合考慮すれば,原告bの上記精神的苦痛に対する慰謝料額は,150万円が相当と認められる。
⑵  弁護士費用
本件における認容額,事案の内容その他一切の事情に照らすと,本件の被告による不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は,原告aにつき18万円,原告bにつき15万円と認めるのが相当である。
8  謝罪広告の要否(争点⑻)について
本件各記事による事実摘示によって原告らの社会的評価が低下した態様及びその内容,本件各記事の掲載から相当程度の期間が経過していること,本判決によって被告の損害賠償義務が認められることにより,原告らの名誉が相当程度回復することが想定されること等に鑑みれば,原告らの名誉を回復するために,金員による損害賠償のほかに,謝罪広告を掲載する必要があるとまで認めることはできない。
第4  結論
以上の次第で,原告aの請求は,被告に対し,198万円及びこれに対する最後の不法行為の日である平成25年10月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,原告bの請求は,被告に対し,165万円及びこれに対する不法行為の日である同月2日から支払済みまで上記年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
よって,原告らの請求を上記の限度で認容し,その余はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第12部
(裁判長裁判官 伊藤正晴 裁判官 井出弘隆 裁判官 村井佳奈)

別紙1
別紙2

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