【選挙から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(25)平成26年10月27日 熊本地裁 平23(行ウ)9号 損害賠償履行請求事件

「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(25)平成26年10月27日 熊本地裁 平23(行ウ)9号 損害賠償履行請求事件

裁判年月日  平成26年10月27日  裁判所名  熊本地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(行ウ)9号
事件名  損害賠償履行請求事件
裁判結果  一部認容、一部棄却  上訴等  控訴(取下げ)  文献番号  2014WLJPCA10276002

要旨
◆町が、竹バイオマス事業の中止により国からの交付金を返還したことにつき、町の住民である原告らが、事業実施会社(本件会社)に対する補助金交付及び国への交付金返還は違法な財務会計上の行為に当たり、補助金交付決定を取り消して本件会社に対する不当利得返還請求権を行使せずA町長に対する損害賠償請求権を行使しなかったことは違法に財産の管理を怠る事実に当たるとして、A町長に損害賠償を請求するよう求めた住民訴訟の事案において、本件会社の財務状況等につきさほど調査もせずに補助金を交付したことは社会通念上著しく妥当性を欠く違法行為に当たるほか、被告が損害賠償請求権を行使せず、本件補助金交付決定を取り消して本件会社に対する不当利得返還請求権を行使しないことに正当理由はないから各権利行使を違法に怠っているといえるものの、本件交付金の返還は手続的にも実体的にも違法はないとして、請求を一部認容した事例
◆地方自治法232条の2における公益上の必要性の有無については、当該地方公共団体における社会的、経済的、地域的諸事情の下において当該支出に係る様々な行政目的を斟酌した政策的な考慮に基づいて個別具体的に決せられるべきものであり、その判断には地方公共団体の長の裁量権が認められるから、地方公共団体の長がした補助金交付は、その裁量権の行使が社会通念に照らし著しく妥当性を欠き裁量権を逸脱又は濫用したものと評価できる場合に限り違法となるとされた事例

出典
判例地方自治 398号13頁

評釈
楠井嘉行=福岡智彦・判例地方自治 402号4頁

参照条文
地方自治法232条の2
地方自治法242条2項
地方自治法242条の2
地方財政法26条1項

裁判年月日  平成26年10月27日  裁判所名  熊本地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(行ウ)9号
事件名  損害賠償履行請求事件
裁判結果  一部認容、一部棄却  上訴等  控訴(取下げ)  文献番号  2014WLJPCA10276002

主文

1  被告は、Aに対し、9279万3000円及びこれに対する平成23年1月31日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める請求をせよ。
2  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
3  訴訟費用は、これを10分し、その3を被告の負担とし、その余は原告らの負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
被告は、Aに対し、2億9279万3000円及びこれに対する平成21年5月29日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める請求をせよ。
第2  事案の概要等
1  事案の概要
(1)  熊本県上益城郡御船町(以下「御船町」という。)は、放置竹林の再生等を目的とする竹バイオマス事業(以下「本件事業」という。)を実施するため、国(九州農政局)から平成20年度地域バイオマス利活用交付金合計2億9279万3000円の交付を受け、事業実施主体であるa社(以下「本件会社」という。)に同額の補助金(以下「本件補助金」という。)を交付した。
しかし、本件会社が予定されていた本件補助金以外の資金を調達することができなかったため、結局、本件補助金を利用した本件事業の実施は中止されることとなった。御船町は、本件会社から本件補助金の返還を受けていなかったが、本件事業の実施が中止となった以上、国からの交付金を返還する必要があると考え、自主的にこれを返還した。
(2)  本件は、御船町の住民である原告らが、御船町長のA町長がした本件会社への本件補助金の支出及び国に対する交付金の返還はいずれも違法な財務会計上の行為に当たり、また、本件会社が自己資金を調達できない可能性が高まった段階で補助金交付決定を取り消して、同社に対する不当利得返還請求権を行使しなかったこと及び上記の違法な財務会計上の行為により発生したA町長に対する損害賠償請求権を行使しないことはいずれも違法に財産の管理を怠る事実に当たると主張して、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、御船町の執行機関である被告に対し、A町長に対する債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求権を行使するよう求めた住民訴訟である。
2  前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠(以下、書証番号の表示については、特に断らない限り、枝番号の記載を省略する。)及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
(1)  当事者等
ア 原告らは、御船町に居住する住民である。
イ 被告は、御船町の町長である。
ウ A町長は、平成19年4月の御船町の統一地方選挙において当選し、現在に至るまで、御船町長の職に就いている。
エ 本件会社は、平成20年10月17日、竹とその他のバイオマス資源を原料とした製品の開発、製造及び販売並びにバイオマス資源を活用した製品、エネルギーの開発、研究及び販売等を目的として設立された会社であり、設立当初は、Bが同社の代表取締役に就任していたが、平成21年5月26日にCが代表取締役に就任した(甲29、乙16)。
(2)  地域バイオマス利活用交付金実施要綱(甲16、乙6)
ア 趣旨
バイオマスの利活用については、「バイオマス・ニッポン総合戦略」(平成18年3月31日閣議決定)等に基づき、地球温暖化の防止、循環型社会の形成、農山漁村の活性化、戦略的産業の育成の観点から、その有効利用について、各般の対策が講じられているところである。
一方、バイオマスの利活用は、地域が自主的に取り組むための目標を掲げて、地域の実情に即したシステムを構築することが重要であり、地域の特性や利用方法に応じ、多様な展開が期待されるところである。
このような背景を踏まえ、地域で発生・排出されるバイオマス資源を、その地域でエネルギー、工業原料、材料、製品へ変換し、可能な限り循環利用する総合的利活用システムを構築するため、バイオマスタウン構想の策定、バイオマスの変換・利用施設等の一体的な整備等、バイオマスタウンの実現に向けた地域の創意工夫を凝らした主体的な取組を支援する。
イ 地域バイオマス利活用交付金は、上記アの趣旨を踏まえ、バイオマスの利活用の推進を図るための必要な経費に充当するものとする。
交付金の交付率は、原則として3分の1であるが、本件事業については例外的に2分の1になる場合に該当する。
ウ 実施等の手続
(ア) 都道府県及び市町村(特別区を含む。以下同じ。)を除く事業実施主体は、事業実施計画を作成し、市町村長(事業実施地区の範囲が複数の市町村の区域に及ぶ場合にあっては、原則として主たる市町村長とする。以下同じ。)に提出するものとする。
(イ) 別に定める事業でバイオマスタウン構想が公表されている市町村又は別に定める市町村にあっては、事業実施主体から事業実施計画が提出された場合には、その内容を審査し、必要な指導及び調整を行うとともに、別に定めるところにより、市町村事業実施計画を作成し、都道府県知事を経由せずに地方農政局長に提出し、協議することができるものとする。
(ウ) 地方農政局長は、提出された事業実施計画について、その目標の妥当性、その達成の可能性及び地域提案型事業の適切性について審査し、必要な指導及び調整を行うものとする。
(3)  御船町におけるバイオマスタウン構想(乙10)
御船町は、地域バイオマス利活用交付金の交付を受けるため、御船町バイオマスタウン構想を策定した。
御船町バイオマスタウン構想には竹のマテリアル利用及びエネルギー利用について次の記載がある。
ア 地域のバイオマス利活用方法
未利用バイオマスとして竹が挙げられる。御船町全体では、約763haの竹林があり県内でも有数の竹林面積を誇る。
以前は、たけのこ生産、竹炭、割り箸製造など竹を利用した産業が盛んであったため、整備の行き届いた竹林がほとんどであったが、海外の安価な製品の大量輸入に押され、竹産業が衰退したことで、現在では、個人での竹炭製造など、ごくわずかな利用にとどまっている状況である。
今後は、竹林管理者の高齢化等に伴い、未整備放置竹林が拡大していくことが予想される。
その結果、竹林の荒廃化や隣接するスギ、ヒノキの人工林地への侵入により育林が阻害され、森林の保水力低下などによる自然災害のリスク上昇などが懸念される。
よって、今後の利活用の対策の整備を緊急に進めていく必要がある。
このため、町と地元NPO、森林組合、竹の専門家等が一体となり、効率よく持続的に竹林の適正管理を行い、竹資源の安定供給を目的とした事業(竹林管理・竹材収集運搬事業)、竹を原料としたマテリアル生産事業(エコ住宅用床材生産事業・竹成分利用製品生産事業)及び放置竹林整備時に発生した枯竹等、マテリアル生産に不向きな幹末材や枝葉を原料とした熱電併供給事業(オンサイト熱電供給事業)を立ち上げ、未利用となっている竹バイオマス利活用を進める。
また、現在活用されていない遊休地や耕作放棄地にススキを栽培し、熱電併供給事業の原料として利用する。
イ 利活用目標
未利用バイオマスの利用率 4.6%→53.9%
未利用バイオマスのうち最大のバイオマス資源である竹については、まず幹材は竹床材などへのマテリアル利用を拡大すると同時に表皮・精油等竹成分利用製品としての活用を図る。
また、マテリアル利用に適さない幹末材・枝葉については熱電供給や液体燃料生産のエネルギー利用を図る。
竹バイオマスについては現在の利用率0%から50%を目指すとともに稲わら、麦わらも現在鋤きこみしているものを堆肥・畜産飼料として利用することにより利用率100%を目指す。
将来的には遊休地や耕作放棄地を利用した資源作物等(ススキ・ナタネ)の栽培を行い、エネルギー利用に充てることとする。
ウ 期待される効果
(ア) 環境負荷軽減・二酸化炭素の削減効果
未利用バイオマスである竹から製造されるバイオエタノールの利用により、二酸化炭素の抑制がなされるとともに未利用資源の循環利用、森林及び竹林の適正管理によるこれらのもつ公益的機能の保全が期待される。
(イ) 新たなバイオマス産業と雇用創生効果
本構想策定後、バイオマスタウン化へ向け利活用システム設備が導入されることとなるが、これに伴い既存の関連民間事業者が圧迫されることはない。
元来、廃棄物としてきたものを資源として利用し、再生、再エネルギー化することは新たな産業と雇用を生み出すこととなる。利活用システムの稼動に伴い、個々に事業を行っていた地元の資源回収業者や廃棄物処理事業者及び森林組合との連携が必要となるので、各事業者の役割の分担やノウハウが活かされ、各業者との共存共栄を目指せることとなる。
(ウ) 地域の活性化
バイオマスタウン構想に基づくまちづくりを進めることにより、廃棄物系及び未利用バイオマスの利活用量が向上し、新たなバイオマス関連産業が生まれることで、地域の担い手となる若者の雇用先が確保され、地域の活性化につながるとともに持続可能な本町の経済発展に寄与できる。
(4)  補助金交付に至る経緯等
ア 補助金の交付決定等
(ア) 御船町の九州農政局に対する地域バイオマス利活用交付金申請(乙86)
御船町は、平成20年12月15日、九州農政局に対し、地域に豊富にある竹資源を有効活用し、里山の再生と中山間地域の活性化を図るべく、「御船町バイオマスタウン構想」の具体化としての事業を実施するため、本件会社を事業実施主体とし、竹資源を活用したマテリアル(床材・竹綿・竹粉末・竹綿プラスチックシート)生産及びバイオマスボイラーによるエネルギー変換事業を実施したいとして、平成20年度地域バイオマス利活用交付金5億2085万7000円の交付申請をした。
(イ) 九州農政局の御船町に対する交付決定(乙96)
九州農政局は、平成20年12月18日、上記(ア)の御船町からの交付申請に対し、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下「補助金適正化法」という。)6条1項により平成20年度地域バイオマス利活用交付金5億2085万7000円を交付する旨決定した。
(ウ) 本件会社の御船町に対する補助金交付申請(乙97)
本件会社は、平成21年1月13日、御船町が有する未利用の地域バイオマス資源を活用した突板及び竹綿、竹粉末の加工・製造を行うことを通じて、①バイオマス資源の農業・エネルギー分野での地産地消(持続可能な竹の有効活用)、②荒廃した御船町里山の再生による景観の維持と生態系の保守、③農山村(御船町)地域の活性化に貢献するとともに、④バイオマスタウン構想における未利用資源活用事業の先駆者として役割を果たすことを目的とする本件事業を行いたいとして、御船町に対し、補助金5億2085万7000円の交付を申請した。
(エ) 御船町の本件会社に対する補助金交付決定(乙104)
御船町は、平成21年1月28日、上記(ウ)の本件会社からの申請に対し、平成20年度地域バイオマス利活用事業(竹を活用したバイオマス事業)を補助事業等の目的として、本件会社に対し平成20年度地域バイオマス利活用補助金5億2085万7000円を交付する旨決定した。
イ 2億円の概算払等
(ア) 本件会社の御船町に対する概算払請求(乙98)
本件会社は、平成21年1月13日、御船町に対し、本件補助金のうち2億円の概算払請求をした。
(イ) 御船町の九州農政局に対する概算払請求(乙99)
御船町は、平成21年1月14日、上記(ア)の本件会社からの概算払請求を受けて、九州農政局に対し、平成20年度地域バイオマス利活用交付金のうち2億円の概算払請求をした。
(ウ) 九州農政局から御船町に対する支払(乙7)
九州農政局は、平成21年1月27日、上記(イ)の御船町からの概算払請求を受けて、御船町に対し、2億円を支払った。
(エ) 御船町の本件会社に対する支払(乙103、106)
御船町は、平成21年2月10日、上記(ア)の本件会社からの概算払請求を受けて、本件会社に対し、2億円を支払った(以下「本件支出1」という。)。
ウ 金融機関による融資拒絶
本件会社は、本件事業を実施するために、本件補助金の他に、金融機関から融資を受けることを予定していたが、本件会社と融資の協議をしていた株式会社日本政策金融公庫(以下「日本政策金融公庫」という。)は、平成21年2月16日、本件会社及び御船町に対し、本件会社に対する融資はできない旨報告した(乙108)。
同じく本件会社と融資の協議をしていたb銀行は、同月18日、御船町に対し、本件会社に対する融資はできない旨報告した(乙123、124)。
エ 本件補助金の減額変更等
(ア) 本件会社の御船町に対する減額変更申請(乙111)
本件会社は、平成21年3月19日、御船町に対し、用地取得及び建築確認に時間を要し、予定より着工が遅れ収支予算額に変更が生じたため、本件補助金を5億2085万7000円から2億2806万4000円減額し、2億9279万3000円とすることにつき承認を求める申請をした。
(イ) 御船町の九州農政局に対する減額変更申請(乙112ないし114)
御船町は、平成21年3月23日、上記(ア)の本件会社の申請を受けて、九州農政局に対し、交付金を5億2085万7000円から2億2806万4000円減額し、2億9279万3000円することにつき承認を求める申請をした。
(ウ) 九州農政局の御船町に対する減額変更決定(乙131)
九州農政局は、平成21年3月30日、上記(イ)の御船町の申請を受けて、御船町に対し、平成20年度地域バイオマス利活用交付金の額を2億9279万3000円とする旨の交付決定の変更及び減額交付決定をした。
(エ) 御船町の本件会社に対する減額変更決定(乙132)
御船町は、平成21年3月31日、前記(ア)の本件会社の申請を受けて、本件会社に対し、平成20年度地域バイオマス利活用補助金の額を2億9279万3000円とする旨の交付変更決定をした。
オ 本件会社による自己株式取得(甲32、48)
本件会社は、平成21年5月25日、c社との間で、本件会社の株式合計540株を2700万円で買い取る旨合意し、そのうち2400万円を支払った。
カ 9279万3000円の支払等
(ア) 御船町の九州農政局に対する交付申請(乙126)
御船町は、平成21年4月6日、九州農政局に対し、平成20年度地域バイオマス利活用交付金のうち9279万3000円の交付申請をした。
(イ) 九州農政局の御船町に対する支払(乙134)
九州農政局は、平成21年4月23日、上記(ア)の御船町の申請を受けて、御船町に対し、9279万3000円を支払った。
(ウ) 本件会社の御船町に対する交付申請(甲47)
本件会社は、平成21年5月22日、御船町に対し、本件補助金のうち9279万3000円の交付申請をした。
(エ) 御船町の本件会社に対する支払(乙135)
御船町は、平成21年5月29日、上記(ウ)の本件会社の申請を受けて、本件会社に対し、9279万3000円を支払った(以下「本件支出2」といい、本件支出1と併せて「本件各支出」という。)。
(5)  本件事業の中止及び交付金返還に至る経緯等
ア 本件補助金を利用した本件事業の実施の断念(乙136)
本件会社は、平成22年2月9日、御船町に対し、自己資金の確保ができず、本件補助金を利用した本件事業の実施を断念すること及び既に交付を受けた本件補助金2億9279万3000円は同年3月31日までに返還することを通知した。
イ 100条委員会の調査(甲21)
御船町では、平成22年4月7日、本件事業が中止となったことについて調査を行うため、地方自治法100条1項の規定により、御船町バイオマス資源利活用事業に関する調査特別委員会が設置された。同委員会は、同年10月25日、A町長は、融資・投資を受けられるという本件会社の不確かな話を信じて本件会社をこのまま応援するなどしており、A町長の判断力は欠如している旨指摘し、同委員会としては、本件会社に返還命令を出し、法的手続をするよう要請する旨の調査報告書を作成した。
ウ 補助金返還のための補正予算の議決(乙166、167)
御船町では、平成22年11月29日、御船町議会第9回定例会(11月会議)が開催され、御船町財政調整基金を取り崩して国に地域バイオマス利活用交付金2億9279万3000円を返還するための平成22年度御船町一般会計補正予算(第12号)が賛成多数で可決された。
エ 御船町の本件会社に対する補助金交付決定の取消し及び返還命令(乙168)
御船町は、平成22年12月7日、本件会社に対し、本件補助金の交付決定を取り消し、本件各支出に係る補助金2億9279万3000円の返還を命じた。もっとも、現在に至るまで、本件会社から本件補助金は返還されていない。
オ 御船町の国に対する交付金の返還(乙173、174)
御船町は、平成23年1月31日、九州農政局に対し、平成20年度地域バイオマス利活用交付金返還金として2億9279万3000円を支払った(以下「本件返還」という。)。
(6)  住民監査請求及び本件訴えの提起等
ア 平成22年5月26日の住民監査請求
(ア) 原告らは、平成22年5月26日、御船町監査委員に対し、本件支出2について監査し、責任の所在を明らかにして、A町長及び責任者に対して、御船町に9279万3000円を支払うことを請求することを求める旨の住民監査請求をした(甲3。以下「本件監査請求1」という。)。
(イ) 御船町監査委員は、平成22年7月23日、本件監査請求1に対して、御船町が、近い将来、交付金を国に返還しなければならない事態が生じることは必至であるが、現時点では、御船町に損害が生じていないとして、A町長に損害賠償を求める請求には理由がないとした(甲4)。
イ 平成23年2月15日の住民監査請求
(ア) 原告らは、平成23年2月15日、御船町監査委員に対し、A町長が国に返還した2億9279万3000円について監査し、責任の所在を明らかにし、A町長に対して、御船町に2億9279万3000円を支払うことを請求することを求める旨の住民監査請求をした(甲5。以下「本件監査請求2」という。)。
(イ) 御船町監査委員は、平成23年4月15日、本件監査請求2について監査を行った結果、A町長が政府系金融機関等からの融資がなかったにもかかわらず、本件各支出を行ったことには重大な過失があったといわざるを得ないとして、A町長に対し、御船町に2億9279万3000円を支払うよう勧告した(甲1)。
ウ A町長による支払拒否(甲2)
A町長は、平成23年5月16日、上記イ(イ)の御船町監査委員の勧告に対し、請求に理由がなく御船町への支払には応じられない旨回答した。
エ 本件訴えの提起等
原告らは、平成23年6月14日、本件訴えを提起した。
原告らは、平成24年5月11日の本件第5回口頭弁論期日において、A町長は、本件各支出後、本件会社が自己資金を調達できない可能性が高まった段階で、補助金交付決定を取り消して、本件会社に対する不当利得返還請求権を行使すべきであったにもかかわらずこれを怠っており(以下「本件怠る事実1」という。)、これは財産の管理を違法に怠る事実に該当するとして、A町長は御船町に対し、本件怠る事実1により御船町が被った損害を賠償する義務を負う旨の主張をした。
3  関係法令の定め
別紙「関係法令の定め」記載のとおり〈省略〉
第3  争点及び当事者の主張
1  争点の概観
(1)  本案前の争点
ア 本件各支出及び本件返還は一連の財務会計上の行為といえるか否か(本案前の争点(1))
イ 本件各支出及び本件返還をそれぞれ別個の財務会計上の行為と捉えた場合に、本件各支出が違法な財務会計上の行為であることを原因として発生する御船町のA町長に対する損害賠償請求権の行使を求める訴えの適法性(本案前の争点(2))
(ア) 監査請求期間の起算日
(イ) 正当な理由の有無
ウ 本件怠る事実1に係る訴えの適法性(本案前の争点(3))
(ア) 本件監査請求2は本件怠る事実1をも対象としたものか否か
(イ) 出訴期間の遵守の有無
エ 本件各支出が違法な財務会計上の行為であることを原因として発生する御船町のA町長に対する損害賠償請求権の行使を被告が違法に怠っている(以下「本件怠る事実2」という。)ことを理由として、同損害賠償請求権の行使を求める訴え(以下「本件怠る事実2に係る訴え」という。)の適法性(本案前の争点(4))
(ア) 監査請求前置(本件監査請求2は本件怠る事実2をも対象としたものか否か、監査請求期間の起算日)
(イ) 出訴期間の遵守の有無
(2)  本案の争点
ア 本件各支出が違法な財務会計上の行為であることを原因として発生する御船町のA町長に対する損害賠償請求権の成否(本案の争点(1))
イ 本件返還が違法な財務会計上の行為であることを原因として発生する御船町のA町長に対する損害賠償請求権の成否(本案の争点(2))
ウ 本件怠る事実1が違法であることを原因として発生する御船町のA町長に対する損害賠償請求権の成否(本案の争点(3))
2  本案前の争点及び当事者の主張
(1)  本件各支出及び本件返還は一連の財務会計上の行為といえるか否か(本案前の争点(1))
(原告らの主張)
ア 形式的には複数の財務会計上の行為であっても、同一の事業に関する財務会計上の行為でその支出の権限が同一の者に帰属し、先行行為と後行行為に因果関係があるような場合であり、かつ、先行行為の時点では地方公共団体に損害が発生していないが、損害が発生した時点では監査請求期間を徒過しているため住民訴訟を提起して先行行為の違法性について責任追及できない場合は、これら一連の財務会計行為を包括して捉え、一つの行為に当たると解すべきである。
本件各支出及び本件返還は、いずれも本件事業に関連するものであり、その支出権限はいずれもA町長に属する。また、本件返還は、本件各支出がなければ必要がなかったものであり、強い因果関係が認められる。さらに、本件で御船町に損害が発生したのは、本件返還がされた平成23年1月31日であり、本件各支出を基準とする場合には、その日から1年以内に住民監査請求をしたとしてもいまだ御船町に損害が発生していないため、本件各支出について責任追及することは事実上不可能であった。
したがって、本件各支出と本件返還はこれを包括して一つの行為として捉えるべきであるところ、原告らは本件返還について適法な監査請求を経た上で本件訴えを提起しているため、本件訴えに違法な点はない。
イ 被告は、本件各支出と本件返還を一体的に捉えなくても、違法行為の差止め請求、処分の取消し・無効確認請求、怠る事実の違法確認請求等をすることが可能であった旨主張するが、地方自治法は、地方財務会計の適正化を図るために住民による各種是正手段を用意し、事案に即していかなる手段を講じるのかの選択権を住民に与えているのであるから、他の手段を講じることが可能であったか否かにかかわらず、住民らが地方自治法242条の2第1項4号の請求をなしえたのかという観点から検討すべきであり、被告の主張する他の手段は迂遠で、住民に過大な負担を与える結果となるため妥当でない。
(被告の主張)
ア 住民監査請求の対象となる財務会計上の行為は、個々の行為ごとに独立として捉えるべきである。本件各支出及び本件返還は、いずれも本件事業に関連するものとはいえ、本件各支出はそれぞれ各別の請求・報告に基づき各別の審査を経た上でなされるものであるし、本件返還も、議会での審議・議決を受けてなされた行為であるから、これらはそれぞれ別の独立した財務会計上の行為として捉えるべきである。
イ 原告らは、本件各支出と本件返還を一連の財務会計上の行為として包括的に捉えるべきである旨主張するが、そのような解釈は住民訴訟制度や出訴期間等が設けられている法の趣旨に反するものであり、また、原告らのいう基準も不明確であるから、原告らの主張は独自のものとして受け入れることはできない。
ウ また、原告らは、本件各支出の時点では御船町に損害が発生していなかった旨主張するが、本件補助金の支出行為が違法であるとの原告らの主張を前提とすれば、違法な本件補助金の支出それ自体が損害であるといえる。仮に損害が発生していないとしても、原告らは、損害論に踏み込まずに違法行為の差止め請求、処分の取消し・無効確認請求、怠る事実の違法確認請求等に及ぶことも可能であったはずであり、本件各支出と本件返還を一体のものとして捉えなければ、先行行為の違法性を是正することを裁判所に請求する機会が法的に与えられない旨の原告らの主張は失当である。
(2)  本件各支出及び本件返還をそれぞれ別個の財務会計上の行為と捉えた場合に、本件各支出が違法な財務会計上の行為であることを原因として発生する御船町のA町長に対する損害賠償請求権の行使を求める訴えの適法性(本案前の争点(2))
(原告らの主張)
ア 監査請求期間の起算日
(ア) 監査請求期間は、当該行為のあった日又は終わった日から起算され、1年を経過すると監査請求することができない。しかし、当該行為の違法・無効によって生じた地方公共団体の実体法上の請求権の行使を怠る事実に関し、最高裁は、同請求権が財務会計上の行為のされた時点においてはいまだ発生しておらず又はこれを行使することができない場合には、その実体法上の請求権が発生し、これを行使することができることになった日を基準として地方自治法242条2項本文の規定を適用すべきものと解するのが相当である旨判示している(最高裁平成6年(行ツ)第206号同9年1月28日第三小法廷判決・民集51巻1号287頁。以下「平成9年判決」という。)。これは、住民の請求により地方財政の適正化を実現するという住民の監査請求及び住民訴訟の道を閉ざすことにならないよう、監査請求をすることを住民に要求することが酷となる場合に、問題となっている財務会計上の行為よりも監査請求期間の起算日を後ろに設定し、監査請求期間の起算日を柔軟に解釈しうることを示しており、この趣旨は、違法又は不当な財務会計上の行為に対する監査請求を行う場合にも妥当する。
(イ) 本件補助金は国からの交付金を財源とするものであるが、本件補助金は法令により使用目的が限定されており、そもそも御船町独自の財源にはなりえないので、御船町が本件各支出をした時点では、いまだ御船町に法的な損害は生じておらず、本件返還をしてはじめて法的な損害が生じたと認められるというべきである。そのため、本件各支出の時点では、御船町のA町長に対する損害賠償請求権はいまだ発生しておらず又はこれを行使することができない状況であったということができる。
したがって、本件各支出をそれぞれ別個の財務会計上の行為と捉えた場合であっても、監査請求期間は本件返還をした平成23年1月31日から起算されると考えるべきであるから、監査請求前置の点において違法はない。
イ 正当な理由の有無
地方自治法242条2項ただし書における正当な理由の有無は、普通地方公共団体の住民が相当の注意力を持って調査を尽くせば客観的に見て監査請求をするに足りる程度に当該行為又は内容を知ることができたと解されるときから、相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断される。
本件各支出の時点では、御船町には何ら損害が生じていないだけでなく、この時点において、御船町の住民は国への交付金の返還方法については、どのような調査によっても知ることができなかったのであるから、この時点で、原告らが御船町の損害の有無及びその額を認識することは不可能であった。原告らがこれを初めて知ったのは本件返還の時点である。
そして、原告らは、本件返還から約2週間後の平成23年2月15日という短期間の間に本件監査請求2を行っているのであるから、原告らは、相当な期間内に住民監査請求をしたということができる。
したがって、本件では地方自治法242条2項ただし書の正当な理由があると認められるから、この点からしても監査請求前置の点において違法はない。
(被告の主張)
ア 監査請求期間の起算日
原告らは、平成9年判決を根拠に、財務会計上の行為について本件各支出及び本件返還をそれぞれ別個に捉えたとしても、監査請求期間の起算日は本件返還時である旨主張するが、平成9年判決は、「怠る事実」に係る監査請求期間の起算日について述べたものであって、この点に関する原告らの主張に上記判例をあてはめる理由はない。
そもそも、本件は本件各支出がなされた時点で損害賠償請求権がいまだ発生しておらず、又はこれを行使することができなかったという事案ではない。
何より、行為を離れて安易かつ恣意的に監査請求期間の起算日を定めることは相当でない。これを許すと、地方自治法242条の2第1項1号ないし4号の請求ごとに監査請求期間の起算日が異なることにもなりかねないが、法はこのような事態を予定しておらず、期間制限の趣旨から見ても許容されないというべきである。
イ 正当な理由の有無
原告らは、本件返還の前の時点では、住民に監査請求することを要求することは困難であったから正当な理由があると主張するが、原告らは実際に本件支出2について平成22年5月26日に本件監査請求1をしている。
本件各支出について、原告らが住民監査請求に及びうる程度にこれを知ったのは少なくとも平成22年5月26日以前のことであり、相当期間内に住民監査請求をすることができなかったことについて正当な理由など存在しない。
ウ したがって、原告らは、本件各支出について、監査請求期間を遵守した適法な住民監査請求を経ていないといえる。
(3)  本件怠る事実1に係る訴えの適法性(本案前の争点(3))
(原告らの主張)
ア 本件監査請求2の対象
地方自治法上、住民訴訟を提起するには監査請求を前置している必要があり、監査請求の内容と訴訟の内容は同一でなければならないことは当然である。しかし、監査請求の時点では全ての事実が判明しているわけではなく、また、監査の結果は必ずしも請求内容に拘束されるものではないから、住民監査請求の対象と住民訴訟の対象との間には、財務会計上の行為又は怠る事実に係る社会的経済的行為又は事実が実質的にみて同一であれば足りると解すべきである。
原告らがした本件監査請求2は、A町長が本件会社の自己資金調達状況等の確認を怠り漫然と本件各支出をし、その後、本件事業の中止により本件返還をせざるを得なくなったことにより御船町に損害が生じたことについて、A町長に対してその賠償請求をすることを求めたものである。
このような住民監査請求においては、A町長が、本件各支出後の経過を踏まえ御船町の損害の発生を防ぎ得たか否かについても、当然に審理の対象となっていたといえる。そうすると、本件監査請求2においては、本件怠る事実1についても住民監査請求の審査の対象となっていたというべきである。少なくとも、本件監査請求2の対象と本件訴訟の対象との間には、財務会計上の行為又は怠る事実に係る社会経済的行為又は事実が実質的にみて同一といえる関係がある。
したがって、原告らは、本件監査請求2をもって、本件怠る事実1に係る請求についても住民監査請求を経たということができる。
イ 出訴期間の遵守の有無
(ア) 訴えの追加的変更に該当するか否か
訴えの追加的変更は、追加請求については、新たな訴えの提起に他ならないから、出訴期間の遵守についても追加の時点を基準とすべきである。訴えの追加的変更に該当するか否かについては、従前の請求と追加された新請求の訴訟物の同一性が認められるか否かにより決せられる。地方自治法242条の2第1項4号前段の請求に係る訴訟物は、請求の主体、請求の相手方、請求の内容によって特定され、請求の内容である損害賠償請求権の同一性は違法行為及び損害の同一性により判断される。
本件では、原告らが、被告に対して請求するよう求めている権利は、いずれもA町長に対する損害賠償請求権であり金額も同一である。また、違法行為についても、いずれも本件補助金に関する作為又は不作為であり、実質的に同一の違法行為であるということができる。
したがって、原告らの本件怠る事実1に係る請求とこれ以外の主張に係る請求は、いずれも同一の訴訟物であると認められるから、本件怠る事実1に係る主張は訴えの追加的変更に該当せず、攻撃防御方法の追加に過ぎないということができる。
(イ) 特段の事情
仮に、これが訴えの追加的変更に該当する場合であっても、変更前後の請求の間に存する関係から、変更後の新請求に係る訴えを当初の訴えの提起の時に提起されたものと同視し、出訴期間の遵守において欠けるところがないと解すべき特段の事情があるときには、新請求に係る訴えについても当初の訴えの提起の時に提起したものとみなすべきである(最高裁昭和59年(行ツ)第70号同61年2月24日第2小法廷判決・民集40巻1号69頁。以下「昭和61年判決」という。)。
上記(ア)のとおり、本件怠る事実1に係る請求とそれ以外の請求は実質的に同一の訴訟物であると解することができることや原告らが訴状において主張した本件各支出及び本件返還を裏付ける社会的事実を前提とすれば、原告らは黙示的に本件怠る事実1に係る主張もしていたと評価すべきである。
したがって、本件においては、上記特段の事情が認められるため、本件怠る事実1に係る請求を求める訴えは出訴期間を遵守した適法な訴えであるといえる。
(被告の主張)
ア 本件監査請求2の対象
原告らは、本件第2回口頭弁論期日において、「住民訴訟の対象として、財務会計上の行為のみを主張し、怠る事実については主張しない。」と明言している。このことからすれば、原告らが、本件監査請求2において、本件怠る事実1を対象としていなかったことは明らかである。
イ 出訴期間の遵守の有無
仮に、本件監査請求2が本件怠る事実1に関する監査請求を含むものと言いうるとしても、これは、従前の請求とは訴訟物を異にした請求の追加的変更にほかならない。そして、出訴期間の遵守の有無は当該追加の時点を基準として決することになる以上、この点に関する原告らの訴えの追加的変更は出訴期間を徒過しているといえる。
(4)  本件怠る事実2に係る訴えの適法性について(本案前の争点(4))
(原告らの主張)
ア 監査請求前置
地方自治法242条1項にいう「怠る事実」については、住民監査請求の期間制限には服さないが、当該財務会計上の行為が違法であることに基づき地方公共団体に発生する実体法上の請求権の行使を怠っていること、いわゆる不真正怠る事実を対象とする監査請求については、当該財務会計上の行為のあった日を起算日として、同条2項の監査請求の期間の適用があるとされている。もっとも、同請求権が財務会計上の行為がなされた時点では発生しておらず、又は、これを行使することができない場合には、同請求権が発生し、これを行使することができるようになった日を住民監査請求の基準とすべきである(平成9年判決)。
本件怠る事実2は、本件各支出が違法であることを理由に発生する御船町のA町長に対する損害賠償請求権の行使を怠っているというものであり、いわゆる不真正怠る事実にあたる。
そして、本件各支出の時点では御船町に損害が発生しておらず、同時点では御船町のA町長に対する損害賠償請求権は発生していなかったため、当然これを行使することは不可能であった。A町長に対する損害賠償請求権は本件返還があってはじめて発生したということができるので、本件返還がなされた平成23年1月31日を住民監査請求の基準とすべきである。
本件においては、平成23年2月15日に本件監査請求2がなされているから、本件怠る事実2に係る請求については、監査請求期間を遵守した適法な監査請求があったといえる。
イ 出訴期間の遵守の有無
本件怠る事実2に係る請求と本件各支出を違法な財務会計上の行為とした場合の請求は、請求の主体、請求の相手方及び請求の内容を同一とするものであり、同請求権はいずれも本件各支出を原因とするもので、その損害も本件返還により御船町が国に返還した補助金2億9279万3000円と共通していることからすれば、上記の各請求は同一の訴訟物であるといえるため、本件怠る事実2に係る請求の追加は訴えの追加的変更には当たらない。
仮に、これが訴えの追加的変更に該当するとしても、両請求の関係からすれば、昭和61年判決のいう「特段の事情」が存することは明らかである。
(被告の主張)
ア 時機に後れた攻撃防御方法の提出
原告らは、従前より本件怠る事実2に関する主張をしてきたと主張するが、訴状に本件怠る事実2に関する主張と見ることのできる記載がないことはもちろん、平成26年4月18日の弁論終結に至るまで、本件怠る事実2に関する原告らの主張が行われた形跡はない。
最終準備書面に当たる原告ら第8準備書面(最終)においても、原告らは、本件怠る事実1の主張はしているものの、本件怠る事実2の主張はしていない。
また、原告らは、本件第2回口頭弁論期日において、「住民訴訟の対象として、財務会計上の行為のみを主張し、怠る事実については主張しない」と明確に弁論している。
原告らは、このような弁論をしながら、その半年後に本件怠る事実1の主張をし、さらにその2年後に本件怠る事実2の主張を始めているものであるから、本件怠る事実2に係る主張は時機に後れた攻撃防御方法として制限されなければならない。
イ 監査請求前置について
(ア) 監査請求期間の起算日
原告らは、本件返還まで御船町に損害が生じていないと主張するが、補助金の支出行為が違法であるとの原告らの主張を前提とすれば、違法な補助金の支出それ自体が損害であると認められる。
したがって、本件怠る事実2に係る請求についても、本件各支出の時点で監査請求期間が起算される。
(イ) 本件監査請求2の対象
原告らは、本件監査請求2をもって、本件怠る事実2についての監査請求を行っていたといえる旨主張する。
しかしながら、実体法上の権利そのものの行使を求める監査請求と行使の懈怠に係る「怠る事実」についての監査請求とが、一つの監査請求に併存しうることと、実際に、原告らが本件監査請求2をもって本件怠る事実2についての監査請求をも兼ねさせたのかは別の問題である。
上記アで述べた本件訴訟の経緯に照らせば、本件訴訟において、原告らが本件怠る事実2を対象としていなかったことは明らかであるから、本件訴訟に先立つ監査請求において、本件怠る事実2を監査請求の対象としていなかったことは明らかである。
したがって、本件怠る事実2に係る請求は、適法な住民監査請求を経ていないといえる。
ウ 出訴期間
本件怠る事実2に係る請求は、従前の請求とは訴訟物を異にした請求の追加的変更に他ならず、出訴期間の遵守の有無は当該追加の時点を基準として決することになるため、本件怠る事実2に係る請求の追加は、結局、出訴期間を徒過しているため違法である。
3  本案の争点及び当事者の主張
(1)  本件各支出が違法な財務会計上の行為であることを原因として発生する御船町のA町長に対する損害賠償請求権の成否(本案の争点(1))
(原告らの主張)
A町長には、本件各支出につき、次のアないしウの注意義務違反があり、これにより、御船町は、国に対して2億9279万3000円を返還せざるを得なくなったため、A町長は御船町に対して、同額の損害賠償金及び遅延損害金を賠償すべき義務を負う。
ア 自己資金調達可能性の確認義務違反
(ア) A町長は、御船町の執行責任者として、御船町に損害を与えることがないよう、御船町民の税金の使途について誠実に事務を執行しなければならない(地方自治法138条の2)。このような首長の地位・職務内容に照らせば、A町長と御船町の関係は本質的には委任関係にあるといえ、町長が委任関係に基づく善管注意義務に違反して御船町に損害を与えた場合には、A町長は御船町に対し、損害賠償義務を負うというべきである。
地域バイオマス利活用交付金実施要綱によれば、民間企業が事業実施主体となる事業については、補助金を事業用地の取得のために使用することができないとされている。事業用地が取得できなければ事業の実施が不可能であることは明らかであるから、民間企業である本件会社が実施する本件事業にとって、用地取得のための自己資金の調達は極めて重大な問題であった。そして、本件事業が開始できない場合は、御船町が自ら補助金相当額を国に返還しなければならない法的地位にあったこともまた明らかであるから、自己資金が調達できなければ御船町は自ら補助金相当額を返還しなければならない法的地位にあったといえる。
そうすると、A町長は、本件補助金を本件会社に支出するに当たっては、本件会社の事業遂行が不能ないし頓挫した場合に、御船町が自らの財政から国に対して補助金を返還することを可能な限り避けるべく、本件会社が事業を遂行可能な程度の自己資金を調達しうるか否かを慎重に確認すべき善管注意義務を負っているというべきである。
本件においては、本件会社の設立に当たって予定されていた資本金すら集まらない状況であり、設立後も本件会社には資本金以外に自己資金がなかったのであるから、A町長は本件会社が金融機関による融資を受けることができるか否かを極めて慎重に確認すべき義務を負っていたというべきである。
(イ) しかしながら、A町長は、本件会社が融資の申入れをしていた日本政策金融公庫から融資が実行されるか否かの確認を取らずに、国が認めた補助金事業であるから日本政策金融公庫から融資があるものと軽信し、仮に融資がなされなかった場合のことも全く想定せずに本件支出1をしたものであり、A町長には、自己資金調達状況の確認義務違反があるといえる。
(ウ) また、A町長は、平成21年2月16日に日本政策金融公庫から融資を拒絶され、民間の金融機関からの融資の可能性もなくなるなどして本件会社が自己資金を調達する可能性が低い状況となったにもかかわらず、資産調査をすることなく個人等から融資がなされるものと軽信し、さらに平成21年5月下旬には、本件会社の代表取締役の交代や、本件会社の株主であったc社による資本金2400万円の引上げ(本件会社による自己株取得)等の重要な組織変更の事実を認識しておきながら、本件支出2をしたものであり、A町長に自己資金調達状況の確認義務違反があることは明らかである。
イ 事業実施主体の信用性確認義務違反について
自己資金を調達するためには、事業実施主体が企業としての信用性を有していることが必要であり、また、地域バイオマス利活用交付金実施要綱等の法令の定めからすれば、補助金対象事業は少なくとも5年程度は継続しうるものであることを想定しているというべきである。そうすると、御船町長であるA町長は、補助金を交付する相手方である本件会社が、少なくとも5年程度は事業を継続できる程度の資力や自己資金を調達することができる信用性等を有するものであるか否かを確認すべき義務を負っているというべきである。加えて、本件会社は、本件事業の直前に、本件事業を行うことを唯一の目的として設立されたばかりの会社であり、過去の実績なども存在しないのであるから、その信用性を判断する際には、出資者ないし出資会社等の事業遂行能力や資金調達能力等を慎重かつ十分に検討しなければならない。
本件において、御船町は、本件事業等について、地域バイオマス利活用交付金(ハード支援)事業実施計画の審査時等におけるチェックマニュアルに基づき審査を行い、それをチェック表に記載していた。しかしながら、御船町は、上記チェック表に事実と異なる出資者を記載し、また、出資者の決算書類等の確認もせずに出資者の審査をするなど杜撰な審査をしており、さらに、設立時に予定されていた出資金の半分の出資しか得られないような社会的信用性の低い本件会社が金融機関から融資を拒絶されることは容易に予想できたのに、金融機関の融資を確約する文書などを求めるなどせずに漫然と本件各支出をしたものであって、A町長には著しい企業の信用性確認義務違反が認められる。
ウ 事業存続可能性の確認義務違反
本件会社が遂行する事業自体が存続不可能なものであれば、事業を維持することはできず、遅かれ早かれ事業は頓挫し、御船町は国に対し交付金を返還すべきこととなる。したがって、A町長には、そのような事態をできる限り避けるために事業自体が存続可能なものであるか否かについて慎重に確認すべき義務があるというべきである。
しかしながら、A町長は、用地の取得という本件事業存続に不可欠な事項について正確な知識を有さないまま本件事業を審査し、また、バイオマスの原料となる竹の調達や成果物の販路について十分な確認をしないまま、漫然と審査して本件各支出をしたものであって、A町長には事業存続可能性確認義務違反が認められる。
(被告の主張)
ア 手続的適法性
国は御船町への地域バイオマス利活用交付金交付決定にあたり、補助金適正化法などの法令等に照らし、その交付申請に係る交付金の交付が法令や予算で定めることに違反しないこと、本件事業の目的及び内容が適正であること、金額の算定に誤りがないことなどを調査した上、交付決定をしている。
さらに、御船町は、本件各支出にあたってその事業の事業計画及び収支予算を確認・検討の上、その公益上の必要性を認め、予算の範囲内において本件事業の実施に必要な経費の一部につき交付決定をし、補正予算の議決を経た上で、その予算の範囲内で支出負担行為をし、適法に支出をなしている。
以上のとおり、本件各支出において手続的違法は存在しない。
イ 実質的適法性
(ア) 本件事業は実現可能なものであったこと
本件事業における原料である竹については、竹林調査を実施しており、調査後には搬出可能な竹林から順次所有者との竹林管理契約を締結し、必要に応じて整理伐採、搬出を行う予定であるなど、原料調達は持続的に行われる見込みであった。
また、竹には、抗菌・防かび効果、消臭・脱臭機能があり、原料そのものに付加価値があることや竹を原料とした製品の活用が拡がっていることに加え、海外材の供給量が近年減少していることから竹は木材に代わる材料として注目を集めていたことなどの事情からすれば、本件事業による成果物販売は持続的に行われる見込みがあった。
資金面については、操業開始後の1、2年目まではフル稼働できないため赤字となるが、3年目からは経常利益がプラスに転じ、税引き後利益についても9年目には黒字になる試算であった。
本件事業における事業実施主体は、本件事業を実施することを目的として新たに設立した会社であり、持続的に整備した施設の管理運営をするに適している。
自己資金調達の点については、当時、日本政策金融公庫と中山間地域活性化資金を活用する方向で検討されており、事前協議中であり、内示後正式協議を予定していた。
また、事業用地については、d団地の購入又は賃借による検討がなされていた。
以上のとおり、本件事業については実現可能性があった。
(イ) 本件事業の計画は有益で、補助事業として適切な選択であったこと本件事業は、御船町内に約760haもある竹林を資源として有効に利活用するものであり、本件事業により、災害の要因ともなり、人工林や農地を浸食してゆく放置竹林につき、本件事業による効率的かつ十分量の竹林の活用・消費に伴う竹林の整備を通して適切な対策をとることができるようになる。さらに、本件事業は、中間山地域の活性化のための雇用対策や定住促進にもつながるものであり、御船町の地域経済、国民経済にとって有益であり、高度の必要性もあった。
(ウ) 上記(ア)及び(イ)の事情に加え、国も、御船町と同様の情報や資料を基礎に十分な検討をし、その実質的適正を認めて交付金決定に及んでいるように、御船町の本件各支出について実質的違法性は認められない。
ウ 主観的要件の欠如
(ア) 公務員がその職務を行うにあたって他人に損害を与えた場合、国家賠償法の建前では、公務員個人は対外的に責任を問われることはなく、故意又は重過失がある場合に求償されるにとどまる。
この趣旨からすれば、地方自治法242条の2第1項4号前段の訴訟の損害賠償責任についても、故意又は重過失がある場合に限定されなければならない。
(イ) 上記イのとおり、本件支出1の時点で、本件事業の開始や継続が困難であるという事情はなく、また、国や地方公共団体が事業の公益性を認め、交付金等の交付を決定した事業について、政府系金融機関である日本政策金融公庫が自己資金の融資をしないとの対応をすることは想定できなかった。
また、本件支出2についても、出来高検査や実績確認を経て、平成20年度の事業費を5億8558万6400円と認め、事業による経費及び交付金の額を2億9279万3000円と確定した上でなされた概算払済みの2億円との差額の支出であって、既になされた事業に要する経費を基礎とするものであり、また、既に交付済みの補助金2億円を死に金とせず事業を継続させて公益目的の実現を図るための適正な支出であった。
加えて、国から交付された交付金について市町村固有の判断で支出を留保できないという事情を考慮すれば、A町長に過失はない。
(2)  本件返還が違法な財務会計上の行為であることを原因として発生する御船町のA町長に対する損害賠償請求権の成否(本案の争点(2))
(原告らの主張)
以下のとおり、本件返還は違法であり、これにより、御船町は、国に対して2億9279万3000円を返還せざるを得なくなったため、A町長は御船町に対して、同額の損害賠償金及び遅延損害金を賠償すべき義務を負う。
ア 手続的違法
被告は、本件訴訟において、本件返還を行ったのは補助金返還命令の要件を欠いていたが、国から補助金返還命令が出されることが危惧されていた状態であったので、その場合の悪影響を考慮した旨主張しているが、A町長は、議会において、本件返還をしなければ加算金が課されるなどと本件訴訟での主張と異なる説明をしていた。
このように、A町長は、補助金返還命令の要件を満たすかどうかについて不確かな情報しか有しておらず、それゆえ、議会での議決も不十分かつ不正確な情報に基づいてなされたものである。
したがって、本件返還に係る補正予算が議会により可決されていたとしても、本件返還は手続的適正を欠いたものであるというべきである。
イ 実質的違法
(ア) 裁量権の範囲等
本件において、補助金適正化法上の返還命令及び加算金の付与の要件をいずれも欠いているという被告の主張を前提とすれば、本件返還は支出義務がないにもかかわらず、御船町が国に対して公金を支出したものであることとなり、その法的性質は贈与にあたるといえる。そして、贈与は反対給付を受けない片務的な契約であり、御船町が一方的に負担を強いられる行為であるから、その裁量は極めて厳格に考えるべきである。
また、本件は、御船町の財政調整基金の取崩しによる繰入金をその財源に充てたものであるが、このような積立金の処分は、地方財政法4条の4の要件も満たす必要がある。
(イ) 本件返還の目的
被告は、当時、国から返還命令が出される危惧があったため、今後の国との関係を円滑に保持し、地方交付税交付金の減額等の将来の御船町の各種事業に関する悪影響を最小限に抑えるために政治的、政策的判断から本件返還を行った旨主張する。
しかし、被告の主張によれば、そもそも返還命令の要件を満たさないのであるから、返還命令を出されるリスクやコストを考慮する必要性は乏しい。また、国との関係を円滑に保持するという抽象的で不確定な利益を保持する目的で約3億円もの多額の支出をする必要があるとは到底考えられない。さらに、国との関係悪化という抽象的な理由で国から地方交付税交付金が減額されることはない。
(ウ) 減額交渉について
A町長は、本件事業が頓挫したことについて、国にも責任があることから、補助金について全額ではなく一部のみを返還する考え方があることを認識していたにもかかわらず、御船町は、国との間で返還額の減額の交渉を全くせずに本件返還に及んでおり、御船町のために誠実に事務を遂行したものとはいえない。
(エ) その他の事情
A町長は本件会社の自己資金調達状況、本件会社の信用性及び事業の存続性の確認義務を怠って、本件各支出をした結果、本件返還をせざるを得なくなったのであるから、被告が本件返還について、公益上の必要性があることを主張することは不当である。
また、本件返還に係る支出は、御船町の財政規模に鑑みれば、その財政に与えた影響は極めて大きい。
さらに、A町長は、住民に対して、本件返還の理由について必要かつ十分な説明を行っていない。
(オ) 以上によれば、本件返還について、公益性が認められないことは明らかであり、本件返還をするための財政調整金の取崩しについて、必要やむを得ない理由(地方財政法4条の4第3号)があるとも認められない。
したがって、本件返還は実質的に見ても違法である。
ウ 違法性の承継
上記ア及びイのとおり、本件返還のみを見ても違法な財務会計上の行為であるといえるが、そもそも本件返還は本件各支出が原因となってなされたものであるから、本件返還の違法性を考えるにあたっては、本件各支出の違法性を考慮しなければならない。そして、本件各支出の違法性を考慮すれば、本件返還の違法性はより強いものとなる。
(被告の主張)
ア 手続的適法
本件返還は、議会における十分な審議や百条委員会での調査・検討も経た上で、議会の同意を得てなしたものであって、手続面における違法は一切認められない。
イ 実質的適法
本件返還は、今後の国との関係を円滑に保持し、各種補助金交付手続を円滑に行って将来の御船町の各種事業に関する悪影響を最小限に抑えるために政治的、政策的判断から行ったものである。
御船町においては、年間約22ないし23億円の地方交付税交付金を受けてその歳入をまかなっているところ、本件事業に関する補助金の自主返還の話が国から出された際には、自主返還をしない場合、結果として翌年の交付税額での調整を強く懸念せざるを得ない状況であった。御船町議会も、当然にこれらの事情は了解しており、他から工面しようのない自主返還の原資を積立金の取崩しによって確保することに必要やむを得ない理由(地方財政法4条の4第3号)を認めたからこそ、その取崩しによる自主返還につき、予算を可決している。
以上のような配慮の下、議会の同意を得て、本件返還に及んだことは、行政裁量の範囲内であって違法ではない。
ウ 違法性の承継
原告らは、本件各支出が違法であることを前提に、その違法が本件返還に承継されるため、本件返還も違法である旨主張するが、そもそも本件各支出は違法ではない。
また、違法性の承継は、先行行為が無効又は違法であって、後行行為がこれに拘束されている場合の議論であるが、本件返還は、本件各支出が違法であるなどの理由により、国から補助金の返還命令がなされてしたものではなく、A町長及び議会の裁量に基づき、任意の事業中止という本件各支出後の事情を原因としてなされた別個独立の行為であって、原告らが主張するような違法性の承継は認められない。
(3)  本件怠る事実1が違法であることを原因として発生する御船町のA町長に対する損害賠償請求権の成否(本案の争点(3))
(原告らの主張)
御船町は、本件会社に対し本件補助金を交付した後であっても、本件会社が自己資金を調達できなければ、事業が遂行できず、将来、国に対して補助金を返還しなければならない法的地位にあった。A町長は、御船町の執行責任者として、御船町に損害を与えることがないよう、御船町の税金の使途につき誠実に事務を遂行しなければならないのであるから(地方自治法138条の2)、A町長は、御船町が本件会社に対して本件各支出をした後も、本件会社が自己資金を調達できない可能性が高まった段階で、速やかに補助金交付決定を取り消して、本件会社に対して、不当利得返還請求権を行使すべき義務を負っていたというべきである。
本件においては、予定の3分の1程度の出資金しか集まらなかった本件会社が、日本政策金融公庫から融資を断られた時点で、本件会社が新たな融資元から融資を得ることは困難であることを認識すべきであったことはもちろんのこと、その後の融資の実現可能性についても慎重に検討すべきであったにもかかわらず、その調査を何ら行っていないことに加え、平成21年5月25日にc社が自己株式の取得により本件会社から2400万円を引き上げていることからすれば、遅くとも、この時点で、本件会社が自己資金を調達できない可能性は極めて高いものとなったといわざるを得ない。
したがって、御船町が、本件会社からc社が2400万円を引き上げたことを知った同年5月27日の時点で、A町長は、速やかに補助金交付決定を取り消して、本件会社に対して不当利得返還請求権を行使すべきであったにもかかわらず、これを怠ったため御船町に損害を与えたということができる。
よって、A町長は御船町に対して、2億9279万3000円の損害賠償金及び遅延損害金を賠償すべき義務を負う。
(被告の主張)
御船町補助金交付規則によれば、町長は、補助金の交付を受けた者が、事業実績等の提出や流用禁止に違反したとき等に、補助金の交付を取り消し、又は既に交付した補助金の全部又は一部の返還を命じることができるとされており(7条)、この取消し及び返還命令の法的性質については、負担付き贈与契約の約定解除ないし債務不履行解除と位置づけられる。
本件においては、本件会社から本件事業を断念する旨の平成22年2月9日付けの申入れを受けるまでの間に、A町長が、本件補助金の交付を取消し又は既に交付した補助金の全部又は一部の返還を命じるべき理由は認められず、また、A町長においてこれを認識することもできなかった。
以上のとおりであるから、本件怠る事実1は違法ではなく、また、A町長には故意又は過失も認められない。
第4  当裁判所の判断
1  本案前の争点について
(1)  本件怠る事実2に係る訴えの適法性について(本案前の争点(4))
ア 時機に後れた攻撃防御方法か否かについて
原告らの本件怠る事実2に係る主張につき、被告は、原告らの主張は時機に後れた攻撃防御方法の提出であり、却下されるべきである旨主張する。
確かに、本件訴訟で主張された原告らの主張を見ると、当審第16回口頭弁論期日よりも前には明示的に本件怠る事実2に係る主張がなされたとは認められず、特に当審第2回口頭弁論において、原告らは「平成9年判決は怠る事実についての判例であるが、原告らは同判例の趣旨が財務会計上の行為にも妥当すると考え、住民訴訟の対象として、財務会計上の行為のみを主張し、怠る事実については主張しない」と陳述していることを考慮すれば、本件怠る事実2の主張を当審第16回口頭弁論期日において主張することは時機に後れた攻撃防御方法の提出であると解する余地がないではない。
もっとも、本件訴状では、被告がA町長に対し2億9279万3000円及びこれに対する遅延損害金の支払をすることを求める旨が請求の趣旨として主張されており、その理由として、A町長のした本件各支出は違法であり、本件返還がなされたことにより御船町に損害が発生したことを原因として、同人は、御船町に対し、善管注意義務又は不法行為に基づく損害賠償責任を負うことが挙げられている。他方、本件怠る事実2に係る請求は、本件各支出が違法であり、これにより発生した御船町のA町長に対する損害賠償請求権を行使しないことを理由とするものであって、請求の基礎となる損害賠償請求権は訴状記載のものと同一であり、請求の趣旨もA町長に対する同損害賠償請求権の行使をすることを求めるもので同一である。このように、原告らの訴状記載の請求と本件怠る事実2に係る請求は同一の請求権の行使を求めるものであることを踏まえると、本件怠る事実2に係る請求について、原告らがこれまで明確に区別することなく主張をしていたとしてもやむを得ないものということができる。加えて、本件怠る事実2の主張は、監査請求前置等の訴訟要件に関する法律上の主張を主眼とするものであり、新たな証拠調べを要するものでもないことを考慮すれば、本件において、原告らが本件怠る事実2の主張を明確にした時期が弁論再開後の期日であったことを考慮してもなお、本件怠る事実2に係る主張を時機に後れた攻撃防御方法として却下することは相当でないというべきである。
以上によれば、本件怠る事実2に係る主張は、時機に後れた攻撃防御方法の提出であるため却下すべきである旨の被告の主張は採用することができない。
イ 監査請求期間の起算日について
(ア) 財務会計上の行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実とする住民監査請求において、同請求権がその財務会計上の行為がされた時点においてはいまだ発生しておらず、又はこれを行使することができない場合には、その実体法上の請求権が発生し、これを行使することができることになった日を基準として地方自治法242条2項本文の規定を適用すべきものと解するのが相当である(平成9年判決)。
(イ) ところで、御船町が国から交付を受けた交付金については、補助金適正化法が適用されるところ、同法は、補助金等の交付の申請、決定等に関する事項その他補助金等に係る予算の執行に関する基本的事項を規定することにより、補助金等の交付の不正な申請及び補助金等の不正な使用の防止その他補助金等に係る予算の執行並びに補助金等の交付の決定の適正化を図ることを目的とし(1条)、補助事業者等は、法令の定め等に従い、善良な管理者の注意をもって補助事業等を行わなければならず、補助金等の他の用途への使用をしてはならないこととされている(11条1項)。また、各省各庁の長は、その者の補助事業等が補助金等の交付の決定の内容等に従って遂行されていないと認めるときは、これらに従って当該補助事業を遂行すべきことを命ずることができ(13条1項)、この命令に違反したときは、その者に対し、当該補助事業の遂行の一時停止を命ずることができることとされている(同条2項)。また、補助事業者等は、補助事業等が完了したときは、その成果を記載した補助事業等実績報告書等によりこれを各省各庁の長に報告しなければならず(14条)、これを受けた各省各庁の長は、報告書等の書類の審査及び必要に応じて行う現地調査等により、その報告に係る補助事業等の成果が補助金等の交付の決定の内容等に適合するものであるかどうかを調査し、適合すると認めたときは、交付すべき補助金等の額を確定したうえ、当該補助事業者等に通知をし(15条)、これが適合しないと認めるときは、当該補助事業等につき、これに適合させるための措置をとるべきことを当該補助事業者等に対して命ずることができることとされている(16条)。さらに、各省各庁の長は、補助事業者等が、補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容等に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができ(17条1項)、その取消しは、補助金等の額の確定があつた後においても行うことができるものであり(同条3項)、この場合、補助事業等の当該取消しに係る部分に関し、すでに補助金等が交付されているときは、各省各庁の長は、期限を定めて、その返還を命じなければならないこととされ(18条1項)、補助事業者等は、17条1項の規定又はこれに準ずる他の法律の規定による処分に関し、補助金等の返還を命ぜられたときは、加算金を国に納付しなければならないとされている(19条1項)。
上記の規定によれば、補助金適正化法による補助金等は、当該補助金等の交付決定に定められた補助事業のためにのみ使用されるべきもので、補助事業以外の用途に流用することは許されず、また、仮に補助事業者において当該交付決定に定められた補助事業を施行しない場合には、これを国に返還しなければならないという拘束を受けるものであるということができる。
そうすると、本件において、御船町が国からの交付金を本件会社に支出したとしても、御船町の財産に変動が生じることはないから、本件各支出をするのみでは、御船町はなんら実体法上の財産的損害を被ることにはならないというべきである。本件において、本件各支出が違法であるとした場合に、御船町に実体法上の財産的損害が生じるのは、本件会社から補助金の返還を受けることなく国に対して本件返還を行った時点であるといえる。
(ウ) これに対し、被告は、本件補助金の支出行為が違法であるとの原告らの主張を前提とすれば、法律上は違法な補助金の支出それ自体が損害であると認められる旨主張する。
しかしながら、補助金適正化法によれば、補助事業者等が補助金等の他の用途への使用をするなどした場合は、各省各庁の長は、補助金等の交付決定を取り消すことができるとされており(17条1項)、補助金の返還命令の前提としての補助金交付決定の取消しは各省各庁の長の裁量に委ねられていると解するのが担当である。そうすると、補助金の交付決定が取り消されるまでは、同交付決定が取り消されるかどうか、ひいては補助金を返還しなければならないかどうかは不確定の状態にあるというべきであって、このような状況下においては補助事業者等である御船町の損害は具体化しておらず、法律上の損害が発生したと認めることはできないというべきである。
したがって、本件各支出がなされた時点で御船町に法律上の損害が発生したという被告の主張は採用できない。
(エ) 以上のとおりであるから、本件各支出が違法であることを理由とする御船町のA町長に対する損害賠償請求権が発生するのは、御船町に損害が生じた時点、すなわち本件返還がなされた平成23年1月31日であると認められる。したがって、地方自治法242条2項本文の住民監査請求の期間制限の起算日は同日を基準として適用すべきである。
ウ 本件監査請求2の対象に本件怠る事実2が含まれるか否かについて
普通地方公共団体の住民が当該普通地方公共団体の長の財務会計上の行為を違法、不当であるとしてその是正措置を求める監査請求をした場合には、特段の事情が認められない限り、同監査請求は当該行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権を当該普通地方公共団体において行使しないことが違法、不当であるという財産の管理を怠る事実についての監査請求をもその対象として含むものと解するのが相当である(最高裁昭和57年(行ツ)第164号同62年2月20日第2小法廷判決・民集41巻1号122頁)。
したがって、特段の事情がない限り、本件監査請求2は本件怠る事実2をも対象とするものであるといえる。
この点に関し、被告は、本件訴訟における原告らの主張の経緯に照らせば、本件訴訟において、原告らが本件怠る事実2を対象としていなかったことは明らかであるから、本件訴訟に先立つ本件監査請求2においても、本件怠る事実2を監査請求の対象としていなかったこともまた明らかである旨主張するが、原告らは本件怠る事実2を対象としていなかったのではなく、この法的構成を明確に認識していなかったに過ぎないと解されるところ、このことのみをもって上記特段の事情があると評価することはできない。
エ 出訴期間について
被告は、本件怠る事実2に係る請求は、これ以外の請求とは訴訟物を異にした請求の追加的変更にあたるところ、出訴期間の遵守の有無は当該追加の時点を基準として決することになるため、本件怠る事実2に係る訴えは出訴期間(地方自治法242条の2第2項)を徒過していると主張する。
そこで、これらの訴訟物の同一性の有無について検討するに、地方自治法242条の2第1項4号の訴訟物は、執行機関等に対し、損害賠償等の請求をすべきことを義務づけるという法律関係を形成する形成権であると解されるところ、これは、請求の主体、請求の相手方及び行使を義務づける請求権の内容によって特定されると解するのが相当である。
本件においては、本件各支出を違法な財務会計上の行為とした場合の請求も、本件怠る事実2に係る請求も、原告らが請求の主体であり、被告が請求の相手方となる。また、行使を義務づける請求権についてみても、いずれも本件各支出が違法であることを理由として発生した御船町のA町長に対する債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求権を対象としている。以上によれば、本件各支出を違法な財務会計上の行為とした場合の請求と本件怠る事実2に係る請求権は同一の訴訟物であると評価できる。
したがって、これらが別の訴訟物であることを前提とする被告の主張は採用できない。
オ 以上のとおりであるから、本件怠る事実2を理由とする損害賠償請求権の行使を求める訴えは適法である。
(2)  本案前の争点(1)及び(2)について
原告らの主張のうち、本案前の争点(1)及び(2)についての原告らの主張は、いずれも本件各支出が違法であることを原因として発生する御船町のA町長に対する損害賠償請求権の行使を求める訴えが、訴訟要件を具備する適法なものであることを主張するものである(なお、本案前の争点(1)について、原告らは、本件各支出と本件返還を一体であると主張するが、本件返還は、先行行為である本件各支出の後行行為であるとしており、そこでも本件各支出が違法であることを前提とするものといえる)。他方、本件怠る事実2に係る訴えも、本件各支出が違法であることを理由として発生する御船町のA町長に対する損害賠償請求権の行使を求めるものである。そして、本件怠る事実2に係る訴えが訴訟要件を具備した適法な訴えであることは上記(1)で述べたとおりである。
このとおり、本件各支出が違法であることを理由として発生する御船町のA町長に対する損害賠償請求権の行使を求める訴えについては、本件怠る事実2に係る訴えが訴訟要件を具備している以上、これについて本案の判断をすることになるため、本件においては本案前の争点(1)及び(2)については判断する必要がないということができる。
(3)  本件怠る事実1に係る訴えの適法性について(本案前の争点(3))
ア 原告らが主張する本件怠る事実1の概要は、A町長は、遅くとも、御船町においてc社が自己株式の取得により本件会社から資本金2400万円を引き上げたことを知った平成21年5月27日の時点で、速やかに本件会社に対する補助金交付決定を取り消して、不当利得返還請求権を行使すべきであったにもかかわらず、これを怠り御船町に損害を与えたというものである。
イ 監査請求前置について
本件監査請求2は、平成23年1月31日にA町長がした本件返還に係る2億9279万3000円について監査し、責任の所在を明らかにして、A町長に対して、御船町に上記額を支払うよう請求することを求めるというもので、そこでは本件各支出及び本件返還が不当である旨の指摘がなされている。
このように、本件監査請求2では、御船町が本件返還をしたことにより被った2億9279万3000円の損害に係る責任の所在について明らかにすることを求めていることを考慮すると、本件監査請求2においては、本件各支出及び本件返還のみならず、これらの行為から派生する財務会計上の行為や怠る事実の違法又は不当についても当然に監査の対象となっているというべきである。したがって、本件監査請求2は、A町長が、本件各支出後の経過を踏まえて、本件補助金の交付決定を取り消すべきであったか否かという本件怠る事実1の有無についても監査の対象となっていたと認められる。
したがって、本件怠る事実1については適法な監査請求が前置されているということができる。(なお、監査請求期間については、御船町に損害が発生した時点から起算されることは上記(1)イで述べたのと同様である。)
ウ 出訴期間について
請求の追加的変更は、その追加に係る部分は、新訴の提起に他ならないから、出訴期間の遵守の有無は、当該追加の前後の請求の間に訴訟物の同一性が認められる場合、又は両者の間に存する関係から、当該追加に係る訴えを当初の訴え提起の時点に提起されたものと同視し、出訴期間の遵守において欠けるところがないと解すべき特段の事情がある場合を除き、当該追加の時点を基準として決しなければならないと解するのが相当である。
そこで検討するに、本件怠る事実1に係る請求の趣旨は、従来の請求と同様、A町長に対する損害賠償請求権の行使を求めるものである。その請求権の発生原因の要素の一つである違法行為の内容についてみると、従来の請求は本件各支出及び本件返還の違法であるのに対し、本件怠る事実1に係る請求は本件補助金交付の取消し及び不当利得返還請求権の不行使の違法という点で異なっているものの、いずれも本件事業に係る本件各支出や本件返還に至る経緯におけるA町長の対応を基礎としている。このような事情を考慮すれば、本件怠る事実1に係る請求については、従来の請求との間に存する関係から、これを本件訴えの提起時に提起されたものと同視し、出訴期間の遵守において欠けるところがないと解すべき特段の事情があると認めるのが相当である。
エ 以上のとおりであるから、本件怠る事実1に係る訴えは適法である。
(4)  小括
以上のとおりであるから、本件において、原告らの訴えについて監査請求前置をはじめとする訴訟要件を充足するものは、本件怠る事実2(本件支出1及び2の違法を前提とするもの)、本件返還及び本件怠る事実1がそれぞれ違法であることを理由に発生する御船町のA町長に対する損害賠償請求権の行使を求める訴えであり、以下では、これらについて本案の判断をする。
2  本案の争点について
(1)  認定事実
前記前提事実、後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
ア 本件事業の背景
(ア) 竹をめぐる御船町の状況(乙7、178)
旧来より県内屈指の竹林面積を誇る御船町では、竹林産業が地域経済の一翼を担っていた。その後、時代の流れが石油製品へと変わり、竹製品の需要が低迷していく中、中国からの安価な竹製品の輸入も増えるなどして御船町の竹産業は急速に衰退していった。
竹産業の衰退により、御船町には放置竹林など荒廃した竹山林が増加した。放置竹林は人工林へ浸食し、健全な森林の破壊を導くものであるとともに災害の要因となるものであった。さらに、竹産業の衰退は、中山間地域の雇用の喪失を生み、労働者の流出を招き、住民の所得水準の低下の一因ともなっていた。
こうした中、A町長の就任前の町長であるD前町長の主導により、平成13年1月、森林の健全な育成と竹資源の有効利活用を目的とする「御船町竹振興会」が設置されたが、十分な竹林整備には至らなかった。
(イ) 国によるバイオマス事業への取組(甲18、乙23)
国は平成14年に「バイオマス・ニッポン総合戦略」を策定し、平成18年3月には新たに見直された総合戦略が開始され、平成22年度までにバイオマスタウンを300程度構築することを目標としていた。
イ 御船町バイオマスタウン構想の策定
平成19年4月、御船町の統一地方選挙において、A町長は、産業の振興による地域経済の活性化をマニフェストの一つの柱とし、その中においてバイオマスの推進を掲げ初当選した(乙7)。
竹バイオマス事業の実施にあたっては、国の「バイオマス・ニッポン総合戦略」による補助事業として行うことにより補助金の交付を受けることの検討が進められた。
国からの同補助金を利用するためには、御船町におけるバイオマスタウン構想を策定する必要があったため、御船町は、平成19年11月頃、御船町におけるバイオマスタウン構想策定に係る事業実施計画書を作成し、同計画書を九州農政局に提出した(乙8)。
同年12月5日、御船町は、九州農政局から地域バイオマス利活用交付金(平成19年度)の割当内示を受けた(乙9)。
その後、学識経験者や住民代表者などを構成員とするバイオマスタウン構想検討委員会において御船町バイオマスタウンの構想の検討が進められ、御船町は、平成20年3月25日、九州農政局に、御船町バイオマスタウン構想案を提出した(乙10)。竹の利用に関する同構想案の内容は前記前提事実(3)のとおりである。
御船町バイオマスタウン構想は、農林水産省により承認され、公表された(乙10)。
ウ 本件事業の用地に関する交渉等(甲35、乙78、177)
御船町と特定非営利法人e研究所(実質的に見て本件会社と関係が深い法人であると考えられる。)は、平成20年5月23日、熊本県との間で、本件事業の工場用地の候補であるd団地の分譲又は賃借の件について交渉を開始し、その後も交渉は続けられた。
もっとも、本件会社が自己資金を調達できず、最終的に本件事業の実施は中止されることとなったため、本件会社による分譲申込書が提出されるまでには至らなかった。
エ 本件事業参入企業への訪問(甲39ないし41)
御船町は、平成20年7月14日、香川県三豊市のf社を訪問した。その訪問において、同社の代表取締役であるEから、f社は自社開発した機器で竹繊維が集まった竹綿を製造していること、竹綿は綿花と同様の吸水性と価格に加え、抗菌・消毒効果に優れていること、御船町の竹事業に参入して竹綿の抗菌シートを作る考えであることなどを確認した。
オ 竹事業先進地への訪問(甲39ないし41)
御船町は、平成20年7月15日、竹事業の先進地である高知市春野町(以下「春野町」という。)を訪問した。その訪問で、春野町では用地もほぼ確定した段階であったが参画予定企業から震災対応面で工場建設予定地の再考を迫られ、事業が足踏みしている状況であること、国の補助金も一度返還する方針を示しており計画を再度検討した上で再申請したい希望をもっていること、参加事業者の中には初めは対応がいいが事業が進んでくると行政の考えを聞かず自社の利益を優先することになるものがあること、中山間地域の活性化という町の考えを事業者に理解してもらい、町も一つ一つ考えながら物事を進めることが必要であることなどの話がされた。
カ 地域説明会の開催(乙14、29)
御船町は、平成20年7月28日から同年8月2日までの間、本件事業の内容及び竹林調査事業の実施について、竹林所有者及び住民向けの地域説明会を開催した。同説明会において、竹林所有者から本件事業に対する反対意見は出なかった。
キ 事業計画(乙23)
本件会社は、本件事業の事業計画書を作成し、平成20年10月16日、これを御船町に提出し、御船町も、同事業計画書に沿って事業実施計画書を作成した。
本件会社が作成した事業計画書の概要は、要旨次のとおりである。
(ア) 事業の名称
御船町バイオマスタウン構想における竹のマテリアル利用及びエネルギー利用事業
(イ) 事業の目的
本件事業は、御船町が有する未活用の地域バイオマス資源を活用した突板及び竹綿、竹粉末の加工・製造を行うことを通じて、①バイオマス資源の農業、エネルギー分野での地産地消(持続可能な竹の有効活用)、②荒廃した御船町里山の再生による景観の維持と生態系の保守、③農山村(御船町)地域の活性化に貢献するとともに、④バイオマスタウン構想における未利用資源活用事業の先駆者としての役割を果たすことを目的としている。
(ウ) 事業の特徴
本件事業の特徴としては、次の5点が挙げられる。
①高度な竹林管理、竹材収集体制構築による優位性
②先進的な解繊技術等の活用
③原材料のカスケード(マテリアル/エネルギー)利用による優位性
④原材料供給の安定的確保による優位性
⑤関連組織・団体からの充実した支援体制による優位性
(エ) 事業実施体制
本件事業の実施主体である本件会社は、御船町が策定し農林水産省により承認された御船町バイオマスタウン構想に基づき、資金調達、施設設計・管理、各事業の運営管理などの事業運営管理を行う会社として、平成20年10月に設立した企業である。
(オ) 事業スケジュール
本件事業は、平成20年度より設備整備計画等の策定に着手し、平成21年度に工場の建設、平成22年度に事業開始(30%操業)、平成23年度には60%操業、平成24年度には100%操業を行う計画である。
(カ) 収支計画
a 事業開始初年度(平成22年度)及び次年度(平成23年度)は、竹林管理・資源収集運搬事業の稼動が30%、60%となるため、原材料調達の制約から赤字を計上することとなる。しかし、3年度以降は、原材料が確保できるため、安定的に黒字を計上できる。
b 設備投資額
突板生産設備工事費 3億7231万3000円
竹綿・竹粉末生産設備工事費 6億9246万3000円
熱供給設備工事費 2億1000万円
竹林管理・資源収集設備費 2億5110万9000円
工場棟建築費 5億7750万円
集積所建築費 5250万円
開業費 5000万円
合計 22億0588万5000円
c 資金調達内訳
バイオマス利活用整備交付金
(初年度) 5億2085万7000円
(2年目) 5億0575万5000円
銀行借入 11億7927万3000円
合計 22億0588万5000円
(キ) 事業内容
a 竹林管理、資源収集運搬事業
本件事業における突板生産事業、竹綿生産事業、竹粉末生産事業の三つの個別事業に対する竹原料の安定的な確保を目的として、竹林保有者及び遊休地等保有者と管理委託契約を結び、放置荒廃竹林の適正管理を行うこととなるg開発(株)(仮称)に対して、チョッパーシュレッダー、トラック等の必要整備のリースを行う。
b 突板生産事業
突板は、竹の幹元材を原料として、湿潤工程、プレス工程、糊付け、乾燥等の工程を経て生産される。竹材を利用した建材は、見た目の清潔感・清涼感だけでなく、抗菌・防かび機能、消臭・脱臭機能を有しており、シックハウス対策・アトピー対策として活用が拡がっていることから、建材メーカー、住宅メーカー、家具メーカーに販売していく。また、近年、海外材の供給量が制限、減少してきていることもあり、注目されている。
c 竹綿生産事業
竹綿は、竹の幹材を原料として、チップ化、解繊、圧縮梱包、シート化等の工程を経て生産される。オムツ、ペットシート、マスクなどの材料として、竹が有する抗菌・防かび、消臭・脱臭等の機能が注目されている。突板と同様に、近年、海外材の供給量が制限、減少してきていることもあり、需要の拡大が見込まれている。
d 竹粉末生産事業
竹粉末は、竹の幹材を原料として、微粉末工程を経て生産される。近年の原油価格の高騰を背景に、加工樹脂のコストを削減する添加剤として注目されている。例えば、ペットボトルのキャップなどへの活用等が具体的に検討されている。
ク 本件会社の設立(甲29、乙16)
平成20年10月17日、本件事業の実施主体として本件会社が設立された。
本件会社の設立に際しては、c社が3000万円(600株)、h社が10万円(2株)、Eが300万円(60株)をそれぞれ出資した。
ケ 本件事業の審査
(ア) 地域バイオマス利活用交付金にかかる事業計画の審査マニュアル
九州農政局は、地域バイオマス利活用交付金に係る施設整備事業について、事業実施の確実性等についての審査、確認が必ずしも十分でないことや整備した施設の運営初年度における利用率が低調であることについて国、都道府県等の指導が不十分である旨の指摘を踏まえ、事業計画の審査を充実させるため、審査に使用するチェックマニュアル(以下「本件チェックマニュアル」という。)を作成し、これを市町村段階での事業の審査においても活用するよう熊本県に通知した(甲26、乙24)。
(イ) 本件チェックマニュアルの内容
本件チェックマニュアルの主な内容は、要旨次のとおりであり、その手順は、市町村が本件チェックマニュアルに基づいてチェック表の個別ケース事項の記入を行い、その適格性が確認できる書類を記載した上、その写しを添付し、国は市町村の評価について書類と照合する審査を行うというものである(甲26、乙24)。
a 事業実施主体
実施要綱別表の「事業実施主体等」欄から該当する事業実施主体名であるかを確認する。
また、事業実施主体が都道府県、市町村以外の場合は、事業の実施が可能な団体等であるかを確認する。
直近の3年間の決算書類(新たに設立される民間事業者の場合は、出資者等)を記載する。
b 目標
バイオマス利用量と成果物量の確認方法と妥当性、実現性を確認する。
利活用割合(未利用バイオマス40%)が採択要件をクリアしているかを確認する。
c 事業費
自己負担能力があるかどうか又は金融機関から融資が受けられるかどうかの調整状況を確認する。
財務諸表、通帳(写し)、融資に関する文書等負担能力があることが確認できる資料を記載する。
d 施設計画
施設用地の確保はなされているか確認する。
施設整備に当たり住民の同意等は必要とされていないか、必要とされる場合はその同意が取られているかを確認する。
e 事業の持続性
(a) 原料の調達
原料の調達状況及び経費等を確認する。
バイオマス資源の排出業者等との間でバイオマス資源の搬入方法等について具体的な意向の調査、確認等が行われているか確認する。
(b) 成果物の販売
成果物の販売先の確保の状況及び経費等を確認する。
成果物の利用者等との間で利用方法等について具体的な意向の調査、確認等が行われているかを確認する。
f 収支計算
収支計算を確認して、赤字になる場合は、その対処方法及び見通しを確認する。
収支計画において、予想される社会情勢の変化等への対応方針等について確認する(予想される環境変化に対応して事業の継続実施は可能か等)。
(ウ) 御船町による審査
御船町は、平成20年10月27日、九州農政局に対し、本件会社が作成した事業計画書、御船町が作成した事業実施計画書及び本件チェックマニュアルに従って本件事業の審査をしたチェック表等を提出した(乙23)。
御船町は、同年11月5日、九州農政局に対し、成果物の販路について需要量も含めて報告した(乙26)。また、同月11日ないし同月19日までの間、御船町は、九州農政局からの、機材リース料、竹林管理協定、竹材代金、成果物販路等に関する問い合わせ等に応じた(乙29ないし49)。
そして、御船町は、同月21日に、本件会社が作成した事業計画について本件チェックマニュアルに従って審査を行い、九州農政局に対し、その最終版のチェック表を提出した(乙25)。その後も、九州農政局から製造会社の規模や成果物の販路等についての問い合わせがあり、御船町はこれに応じた(乙61ないし68、88ないし95)。
御船町がした審査結果の概要は、要旨次のとおりである。
a 事業実施主体
本件会社
御船町バイオマスタウン構想に掲げる竹資源の有効利活用を実現化するための事業目的会社(民間事業者)として平成20年10月17日に設立された企業である。設立当初は、県内企業1社及び県外企業2社の出資により設立し、後日県外企業1社が参加予定であり、それぞれ優良企業であり、事業実施主体として信頼できる企業である。
b 目標
利用量 年31万5000本
成果物 突板 100万8000m3/年
竹綿 954t/年
竹綿プラスチックシート 636t/年
竹粉末 477t/年
蒸気 980t/年
御船町の竹林面積763haのうち450haから伐り出しを計画しており、発生量に対する利用量も40%をクリアしており、適正な目標設定になっている。
c 事業費
日本政策金融公庫熊本支店と中山間地域活性化資金を活用する方向で検討しており、現在事前協議中である。内示後、正式協議を行う予定である。
d 施設計画
敷地面積 1万5000m2
建築面積 6160m2
生産能力 30m3/日(突板)
11.25t/日(竹綿)
5t/日(竹粉末)
稼動後数年は、3分の1、3分の2程度で稼動予定であるが、フル稼働時を想定して施設の規模が計画されている。
e 事業の持続性
(a) 原料の調達について
竹の調達については竹の伐採搬出体制を構築予定である。現在竹林調査を実施している。調査後、搬出可能な竹林から順次所有者との竹林管理契約を結び、必要に応じて整理伐採を行い、伐採搬出を行うこととしている。
伐採搬出については、御船町も所有者との管理委託契約を仲介するなど協力していく考えである。かつて竹産業が盛んだったこともあり、作業道についても整備率も高く、763haのうち約450haが搬出可能であり、フル稼働時にも原料調達は十分対応できる。
(b) 成果物販売について
突板 建材メーカー、住宅メーカー、家具メーカー
竹綿及び竹粉末 提携予定事業者
竹には、抗菌、防かび効果、消臭・脱臭機能があり原料そのものに付加価値がある。それを原料として、建材や竹綿等を生産することで、突板については、シックハウス対策、アトピー対策としての活用が拡がっており、また、竹綿については、おむつ、ペットシート、マスクなどの材料として既に引き合いが来ている。さらに近年の海外材の供給量が制限、減少していることからも木材に代わるものとして注目を集めており、販売において持続性が期待できる。
f 収支計算
操業後3年目には経常利益がプラスに転じる計画である。
収支についても詳細に積算されている。操業後1年目、2年目まではフル稼動ではないため赤字となるが、3年目から、は経常利益がプラスに転じ、税引き後利益についても9年目には黒字になる試算であり、事業の持続性が確認できる。
コ 平成20年度御船町議会第2回(11月)臨時会(乙70)
平成20年11月11日、御船町において、平成20年度御船町議会第2回(11月)臨時会が開催され、地域バイオマス利活用交付金5億2085万7000円を歳入に追加し、国庫補助金の本件会社への同額の歳出を追加する旨の平成20年度御船町一般会計補正予算案が可決された。
サ 地域バイオマス利活用交付金の申請及び交付決定
御船町は、平成20年11月27日、九州農政局から、平成20年度地域バイオマス利活用交付金5億2085万7000円の割当内示を受けた(乙76)。
そこで、御船町は、同年12月15日、九州農政局に対し、平成20年度地域バイオマス利活用交付金5億2085万7000円の交付を申請した。
これに対し、九州農政局は、同月18日、御船町に対し、平成20年地域バイオマス利活用交付金5億2085万7000円を交付する旨決定した。
シ 本件支出1に至る経緯
本件会社は、平成21年1月13日、御船町に対し、本件補助金のうち2億円の概算払請求をし、これを受けた御船町は、同月14日、九州農政局に対し、平成20年度地域バイオマス利活用交付金のうち2億円について概算払請求をした。
九州農政局は、同月27日、上記の御船町概算払請求を受けて、御船町に対し、2億円を支払った。
御船町は、同月28日、平成20年度地域バイオマス利活用事業(竹を活用したバイオマス事業)を補助事業等の目的として、本件会社に対し、平成20年度地域バイオマス利活用補助金5億2085万7000円を交付する旨決定した。
御船町は、同年2月10日、本件会社に対し、地域バイオマス利活用補助金概算請求分の2億円を支払った(本件支出1)。
ス 日本政策金融公庫との交渉経緯及び融資の拒絶
(ア) 前記前提事実(2)イのとおり、本件事業に対する補助金の交付率は2分の1であったため、本件会社は、補助金以外に金融機関等からの融資を受け資金を調達することが必要不可欠であり、日本政策金融公庫及びb銀行に対して融資を依頼した。
平成20年11月6日、御船町、本件会社及び日本政策金融公庫との間で、本件事業について農林漁業施設資金の利用をすることの可否について協議がなされ、本件会社は借入者資格に該当しないので同資金を利用することはできないが、中山間地域活性化資金を利用できる可能性はあることが確認された。また、融資の課題として、製品出口の協定、仮契約等ができれば早めに提出することなどが提示された。(以上につき乙69)
(イ) 平成20年12月8日、御船町、本件会社及び日本政策金融公庫との間で協議がなされ、伐採搬出会社との原料(竹)納入の協定書(覚書)、将来構想書、出資者の経営母体(f社)の決算書等の提出が必要であること、融資の課題として、出資者から保証がとれるかどうか融資額が大きいので早くても3月になることなどが確認された(乙80)。
(ウ) 平成21年1月15日、日本政策金融公庫から、御船町及び本件会社に対し、要旨次のとおりの問い合わせ及び要求等があった(乙81)。
a 経営母体について
f社及び御船町は、本件会社の事業の実施、経営についてのどのように関与するのか教えて欲しい。
b 事業内容について
土地、建物、機械等について見積もりを準備すること。
見積もりがない場合、請負業者、納入業者、製造業者等を教えて欲しい。
c 工場の運営について
各製品の製造工程をまとめた資料を提出すること。
f社及びi社の派遣予定者、製造経験を教えて欲しい。
f社の竹綿製造、i社の突板製造について、①工場規模、②製造機械の概要、③製造実績(量・コスト等)、④販売実績(販売先・量・単価等)について教えて欲しい。
d 製品の販路について
販売先との話し合いの状況、担当者名を教えて欲しい。
日本政策金融公庫からも販売先に需要動向、取引計画等を確認する。
e 原材料(竹)の確保・集荷について
竹林管理・竹集荷会社について①事業実施主体(経営、運営責任は誰が負うのか)、②設立手続の進捗状況、③人員、機材、資金の調達見込みについて教えて欲しい。
竹林所有者との管理委託契約の締結見込みを教えて欲しい。
f 収支計画について
収支計画について、①製造、販売量、仕入量、②販売単価、仕入単価等の設定根拠について教えて欲しい。
g 資金について
協調融資、運転資金についての金融機関への相談状況(相談先、担当者)を教えて欲しい。
立ち上がり期、工場稼動後に必要な運転資金の程度はどの程度と見込んでいるのか教えて欲しい。
g その他
保証についての検討状況を教えて欲しい。
(エ) 御船町は、平成21年1月23日、日本政策金融公庫からの上記(ウ)の問い合わせ等について一部回答した(乙82)。
(オ) 日本政策金融公庫は、平成21年2月16日、本件会社に対し、本件事業は規模の割に全体事業費が大きいこと、事業計画の妥当性、原料調達、製品販路及び運転資金の調達等の点に疑問があること、公庫が負うリスクが大きいことなどの理由により、本件会社に融資をすることはできず、再度協議があった場合でも融資は困難である旨伝えた(乙108)。
セ b銀行との交渉及び融資の拒絶(乙84、124)
御船町は、平成21年1月9日、本件事業について日本政策金融公庫からの融資後の残りの資金についてb銀行と融資の協議をし、その後も交渉が継続されたが、平成21年2月18日、b銀行は、御船町に対し、融資ができない旨伝えた。
ソ 九州農政局への融資の経緯の報告(乙124)
御船町は、平成21年2月18日及び同月23日、九州農政局に対し、融資の経緯を説明した。
タ 本件補助金の減額変更
本件会社は、平成21年3月19日、用地取得及び建築確認に時間を要し、予定より着工が遅れ、収支予算額に変更が生じたことを理由として、本件補助金を2億2806万4000円減額し、2億9279万3000円とすることに承認を求める旨の申請をした。
これを受けた御船町は、同月23日、九州農政局に対し、同様の承認を求める旨の申請をした。
九州農政局は、同月30日、御船町に対し、平成20年度地域バイオマス利活用交付金の額を2億9279万3000円とする旨の交付決定の変更及び減額交付決定をした。
御船町は、同月31日、本件会社に対し、平成20年度地域バイオマス利活用補助金の額を2億9279万3000円とする旨の交付変更決定をした。
チ Fによる融資の確約等
本件会社は、日本政策金融公庫及びb銀行から融資を受けることができなかったため、これらに代わる融資元として、宮崎市在住のF及びGに対し、融資を依頼した(証人C)。
御船町は、平成21年3月28日、Fから、同月30日までに本件会社に対する融資を実行することを確約する書面の提出を受けた(甲22)。
また、御船町は、同年4月15日にも、Fから、同月17日までに本件会社に対する融資を実行することを確約する書面の提出を受けた(甲23)。
御船町は、同年3月30日から同年4月1日までの間、本件会社とFとの間の本件事業への融資の協議について確認するために担当者を宮崎市に派遣した(乙115)。同じく、同月5日から同月7日まで(乙116)、同月10日から同月12日まで(乙117)、さらに、同月14日(乙118)、同月15日から同月17日まで(乙119)の期間、御船町は、FやGによる融資に関する協議の確認のため担当者を宮崎市に派遣した。
もっとも、現在に至るまで、FやGによる本件会社に対する融資は実行されていない。また、A町長や御船町の担当者が、FやGが本件事業の実施に必要な額の融資をすることができるだけの資金を有しているか否かを確認した事実を認めるに足りる客観的証拠は提出されていない。
ツ 本件会社による自己株式取得
本件会社は、平成21年5月25日、c社との間で、本件会社の株式合計540株を2700万円で買い取る旨合意し、そのうち2400万円を支払った。
テ 本件支出2に至る経緯
御船町は、平成21年4月6日、九州農政局に対し、平成20年度地域バイオマス利活用交付金のうち9279万3000円の交付申請をした。
九州農政局は、同月23日、御船町に対し、9279万3000円を支払った。
本件会社は、同年5月22日、御船町に対し、本件補助金のうち9279万3000円の交付申請をした。
御船町は、同月29日、本件会社に対し、9279万3000円について支出命令及び本件支出2をした。
ト 本件事業の中止及び交付決定の取消し
本件会社は、平成22年2月9日、御船町に対し、自己資金の確保ができないため、本件事業を断念すること、既に交付を受けた本件補助金2億9279万3000円については、同年3月31日までに返還する旨通知した。しかし、現在に至るまで、本件会社は御船町に対し、上記金額を返還していない。
御船町は、同年2月18日、九州農政局に対し、本件会社が自己資金調達をすることができず、現在まで融資が確定していない状況であるため、地域バイオマス利活用交付金を活用した事業を継続することを中止する旨の協議の申し入れをした(乙137)。
九州農政局は、同年3月5日、御船町に対し、本件事業の中止については異議がなく、交付金の返還にあたっては速やかに予算措置を行い、返還時期等について同月15日までに文書で報告するよう通知し(乙139)、これに対し、御船町は、同月12日、九州農政局に対し、平成22年4月30日までに交付金2億9279万3000円を返還する旨通知した(甲53)。
さらに、御船町は、同年12月7日、本件会社に対し、本件補助金の交付の取消決定及び返還命令をした。
ナ 本件返還に至る経緯
御船町では、平成22年4月7日、平成22年度第1回御船町議会定例会(4月会議)において、本件返還をするための平成22年度御船町一般会計補正予算(第1号)が反対多数で否決された(乙144、145)。
御船町は、同月27日、九州農政局に対し、上記補正予算が否決されたため、交付金の返還期日を同年6月15日まで延期して欲しい旨申し入れ(乙148)、さらに、同月11日には、百条委員会が設置され、同委員会の調査終了期限(同年9月30日)まで本件返還に係る補正予算を上程しないよう求められているため、同日まで返還期日を延期して欲しい旨の申し入れをした(乙154)。
九州農政局は、同年11月2日、御船町に対し、速やかに本件返還を行うよう求めたところ(乙161)、同月10日、御船町は、同年12月28日までに本件返還を行う旨伝えた(乙162)。
御船町では、同年11月29日、平成22年御船町議会第9回定例会(11月会議)において、本件返還をするための平成22年度御船町一般会計補正予算(第12号)が賛成多数で可決された。
平成23年1月31日、御船町は、九州農政局に対し、本件返還をした。
(2)  本件支出1の違法性について(本案の争点(1))
ア 地方自治法232条の2によれば、「地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる」とされているところ、公益上の必要性の有無については、当該地方公共団体における社会的、経済的、地域的諸事情の下において、当該支出に係る様々な行政目的を斟酌した政策的な考慮に基づき、個別具体的に決せられるべきものであり、その判断には地方公共団体の長の裁量権が認められるというべきである。したがって、地方公共団体の長がした補助金交付は、その裁量権の行使が、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものであって、裁量権を逸脱又は濫用したものと評価できる場合に限り、違法となると解するのが相当である。
以下、これを前提に本件支出1の違法性について検討を加える。
なお、原告らは、本件各支出及び本件返還は一連の財務会計上の行為である旨主張するが、本件各支出はそれぞれ別の審査・検討を経てなされる別々の財務会計上の行為であるから、これを一つの財務会計上の行為であると解することはできず、以下ではそれぞれの財務会計上の行為ごとに検討を加える。
イ 本件事業の目的について
上記認定事実のとおり、御船町には広大な竹林があり、かつて竹林産業が御船町の経済を支えていたが、その後、石油製品の流通や中国からの安価な竹製品の輸入等により、御船町の竹産業は急速に衰退し、これにより、竹林の荒廃が進行している状況であった。そのため、御船町においては、住民(特に中山間地域)から、放置竹林の解消等の里山の再生を願う声が高まっていた。
本件事業は、御船町内に豊富にある竹をバイオマス資源として捉えることにより、放置竹林を適正に管理するとともに竹資源の有効に活用することを目的とするものであり、本件事業は御船町の竹林の再生をもたらし、住民の要請に応えるものであり、御船町にとって有益な事業であったということができる。
ウ 本件事業の調査・検討について
(ア) 本件チェックマニュアルについて
上記認定事実のとおり、御船町は、本件チェックマニュアルを利用して、本件会社が作成した事業計画(乙23)の審査を行っている。本件チェックマニュアルは、九州農政局が、地域バイオマス利活用交付金に係る施設整備事業について、事業実施の確実性等についての審査・確認が必ずしも十分でないことや施設の運営初年度における利用率が低調であることを解消するために作成されたものであり、その内容が不十分であるとか、決定的な欠陥が含まれているなどの事情は窺われない。
したがって、本件チェックマニュアルに従って適切に審査をした場合、特段の事情がない限り、その審査は合理的なものであったと評価できる。
(イ) 出資者について
原告らは、御船町は、本件チェックマニュアルによる審査において、出資者の把握について個人とすべきものを企業と記載し、また、本件会社の出資会社について何の根拠もなく優良企業であるなどと判断しており杜撰な審査を行っている旨主張する。
この点、御船町は、本件チェックマニュアルの審査の際に、本件会社の出資会社について、「設立当初は、県内企業1社及び県外企業2社の出資により設立し、後日県外企業1社が参加予定であり、それぞれ優良企業であり、事業実施主体として信頼できる企業である」と回答しているところ、証人Hは、ここでいう県内企業というのはc社であり、県外企業はf社とh社であり、設立後に出資する予定となっていたのが、j社であったと証言している(証人H)。他方、上記認定事実のとおり、本件会社の設立に係る実際の出資は、c社・3000万円(600株)、h社・10万円(2株)、E・300万円(60株)とされており、f社は最終的に出資者となっていないことが認められる。
もっとも、f社の代表取締役はEであり、同人により実際に出資がなされているのであるから、f社が出資者となっていないことをもって、A町長の出資者の審査が不十分であったとまでは言えない。また、そもそも何をもって優良企業というのかを定める明確な基準がない上、仮に、上記各企業が優良企業とは言い難いものであったとしても、A町長は、本件チェックマニュアルに従い、Eやh社の出資者についての決算報告書や課税証明書等を取り寄せるなどして財産状況等を調査し、これらの書面を九州農政局に提出しており(乙86)、九州農政局も出資者について特段問題があるとは考えていないことを考慮すると、このことをもって直ちに出資に関する御船町の調査が杜撰であったとまで評価することはできない。
(ウ) 原料調達について
本件事業における原料である竹について、御船町は、平成20年8月19日、本件事業の前段階として竹林の賦存量を把握するため御船町木質系竹未活用資源の利用可能性調査事業について特定非営利活動法人e研究所との間で委託契約を締結している(乙7、13)。また、御船町は、竹林所有者及び住民向けの地域説明会を開催しており、竹林所有者も本件事業により竹林が整備されることを期待していることが認められる(乙14、89)。
また、A町長は、調達可能な竹の量を算定するに当たっては、熊本県林業統計要覧平成17年度版の数値を参考にしつつ、その数値を検証するために、航空写真から竹林部分をトレースし、このうち利用効率の観点から塊として約2万m2以上の部分を93箇所拾い出して、当該箇所は、全箇所踏査して、その状況を確認した上で、原料として利用できる竹林部分が上空から見た平面積で300haであったので、斜面としての補正を1.5倍かけて450haと見積もっていることが認められる(弁論の全趣旨)。
このように、A町長は、御船町に存在する竹の量を調査し、竹林所有者に対して説明会を開催するなどして、本件事業における竹の調達の見込みについて調査をした上で、調達可能な竹の量を算定しており、その調査の程度について不十分な点があるとか、その算定方式が不合理であることを認めるに足りる事情は窺われない。
以上によれば、原料である竹の調達の調査等の点に関してA町長に不十分な点があるとは認められない。
(エ) 成果物販路について
証拠(乙26、30ないし32、34ないし38、42、43、61、63ないし68、88ないし92)及び弁論の全趣旨によれば、A町長は、販売先の候補であるk社やl社と協議を行い、また、製品価格等について聴取り等を行って成果物の販路について調査していることが認められ、これによると、上記会社を含む複数の会社による竹製品の需要があることが認められる。これらの事情を考慮すれば、A町長がした成果物販路の調査・検討が不十分であったとまではいえない。
これに対し、原告らは、日本政策公庫から融資を拒絶された際に、「販路について建材は現在の経済状況、建築事情から事業計画書のとおり販売できるのか難しい」、「事業規模に見合う販路があるのか」などと成果物の販路の不確実さを指摘されていることからすれば、A町長のした成果物販路に対する調査は不十分であり、販売先の業者について契約書や覚書といった書面を徴求すべきであった旨主張する。
しかしながら、本件事業が竹バイオマスを利用した商品の製造等の新規事業であることに加え、製品がいまだ製造されておらず、販売実績もない段階で契約書や覚書のような書面を取り交わすことは難しいと考えられることなどの事情を考慮すれば、契約書等を徴求していないことをもって成果物販路の点に関するA町長の調査が不十分であったということはできない。日本政策金融公庫が成果物の販路について疑念を抱いていることは明らかであるが、日本政策金融公庫が融資をしなかった理由は、成果物販路の点だけでなく、事業規模や資金調達等の点も含まれているのであるから、日本政策金融公庫の上記指摘のみをもって、直ちにA町長の成果物販路の点に関する調査が不十分であったということはできない。そして、その他に、成果物販路に関するA町長の調査・検討が不十分であったということを認めるに足りる証拠はない。
また、原告らは、A町長は専門のコンサルタントに市場調査等を依頼すべきであった旨主張するが、販売予定先への聴取り等に加え、このような調査をもしなければならない法的義務があるとは言い難く、原告らの主張は採用できない。
(オ) 収支計画について
上記認定事実のとおり、本件会社の作成した事業計画によれば、事業開始初年度(平成22年度)及び次年度(平成23年度)は、竹林管理、資源集運搬事業の稼動が30%、60%となるため、原材料調達の制約から赤字を計上することとなるが、3年度以降は、原材料が確保できるため、安定的に黒字を計上できるとされている。
原告らの主張や本件に係る証拠を見ても、本件事業が計画通りに実施された場合において、上記の収支計画が合理性を欠くもので実現不可能であったと認めるに足りる事情は窺われない。
(カ) 自己資金の調達の見込みについて
上記認定事実のとおり、本件事業は総額約22億円を超える事業であり、その半分を金融機関からの融資により調達する予定となっていた。したがって、補助金以外の自己資金を調達できなければ、本件事業の実施は事実上不可能であったということができる。そうすると、融資を受けられないことが確実な状況下で本件補助金を支出することは、実施不可能な事業への補助金の支出に他ならず、このような支出が本件補助金支出の趣旨に反する行為であることは明らかである。したがって、A町長は、自己資金の調達の見込みについて調査・検討を尽くす必要があり、これをせずに本件補助金を支出することは、裁量権の範囲を逸脱又は濫用した違法な支出に該当すると評価すべきである。
そこで検討するに、上記認定事実のとおり、本件事業の主な融資元としては日本政策金融公庫が検討されており、本件会社、御船町及び日本政策金融公庫との間では、融資に向けた交渉が進められ、A町長は、日本政策金融公庫からの求めに応じて、原料の調達や販路についての調査や説明を行っていたところ、本件支出1までにおける交渉経緯において、本件事業に対する融資を受けられないことが確実な状況であったことを認めるに足りる的確な証拠はない。加えて、実際に、本件補助金を交付することによって、融資の可能性が高まるということも併せ考えると、結果的に本件支出1の後に日本政策金融公庫から融資を拒絶されたとはいえ、本件支出1の時点において、融資を受けられないことが確実な状況であったとまではいえない。また、そうである以上、自己資金の調達についてA町長がした調査・検討に不十分・不合理な点があったとまでは認めることができない。
これに対し、原告らは、A町長において、日本政策金融公庫から融資を受けることは厳しい状況であったことを認識していたにもかかわらず、A町長は融資を受けられるものと軽信した旨主張し、その根拠として、御船町議会第1回(3月)定例会会議録(甲19)における、御船町職員のIの発言を指摘する。
確かに、同証拠によれば、同人が、同議会において、「融資が非常に難しいという感触は持っておりました。」、「総額的に20億円ということで、金額が多すぎるのではないかということを公庫から『なかなか難しいですよ』という話の中であったように記憶しています。」などと述べていることが認められ、当時、同人が、日本政策金融公庫の融資の審査が厳しいという認識を有していたことは否定できない。しかしながら、かえって、融資拒絶が伝えられる約3週間前まで御船町と日本政策金融公庫との間で融資の協議がなされていること、その交渉経緯において日本政策金融公庫から融資を受けることが確定的にできないと伝えられたことを窺わせる客観的な証拠はないこと、さらに、国から本件事業に対する補助金が御船町に交付されており、御船町がそれを実際に本件会社に支払えば日本政策金融公庫の融資が下りると考えることは不自然ではないことなどを併せ考慮すると、上記認定、判断を覆すには至らない。
また、原告らは、本件会社に対する出資金が予定の半分程度しか集まらなかったのであるから、このような会社が10億円もの融資を受けることが難しいことは当然認識しえた旨主張するが、日本政策金融公庫が本件会社の出資金が予定の半分程度しか集まらなかったこと自体から直ちに融資が困難であると考えていた形跡はないことや本件補助金を実際に交付することにより融資への期待が向上すること等の事情を踏まえれば、本件会社の設立にあたっての出資金が十分に得られなかったことをもって、A町長が日本政策金融公庫からの出資を受けることが困難であることを認識し得たとまでは認められない。
さらに、原告らは、本件支出1の前に、金融機関からの融資確約書などを要求すべきであった旨主張するが、上記で述べた事情に加え、本件チェックマニュアルにおいて、融資の確約書等の提出が求められていないことを考慮すれば、本件支出1をするに当たって、A町長が金融機関からの融資確約書を要求すべき法的義務を負っているとまでは認められない。
(キ) 事業用地について
上記認定事実のとおり、事業用地については、熊本県との間で、d団地の分譲又は賃借についての協議をしていたことが認められる。
そして、その費用は、日本政策金融公庫や民間の金融機関からの融資により捻出することが予定されており、用地取得の点に関して、A町長のした調査が不十分であるとか、その検討内容が不合理であるなどといった事情は認められない。
これに対し、原告らは、本件チェックマニュアルを利用して記載したチェック表において、用地取得の進捗状況やそれを確認した書類も記載していないことからすれば、A町長は、事業用地の取得状況について確認することを怠っていたことが明らかである旨主張する。
しかしながら、上記認定事実のとおり、本件会社と熊本県の間でd団地の分譲についての交渉が行われており、その際に被告職員が立ち会っているのであるから、本件チェックマニュアルを利用して作成したチェック表にその交渉状況の記載がないとしても、これのみをもって直ちにA町長らの確認が不十分であったと認めることはできない。
その他にも、原告らは、A町長は事業用地の取得について売買によるのか賃貸借によるのかなどの点について正確な知識を有していないまま杜撰な審査を行ったなどと主張するが、上記のとおり、御船町及び本件会社と熊本県との交渉経緯に照らせば、A町長が本件事業の用地の取得を軽視していたとまでは認められず、原告らの上記主張は採用できない。
(ク) 上記までに述べた点の他に、原告らは、本件支出1が違法であることを基礎づける事情を縷々主張するが、いずれも本件支出1の評価に影響を与えるものではない。
エ 以上のとおり、本件事業の実施は御船町にとって有益な事業であり、本件支出1の時点で、本件事業の実現が困難であるとまで断ずるに足りる証拠はないし、また、A町長のした本件事業に係る調査・検討に不十分又は不合理な点があったと認めることはできない。
したがって、本件支出1が裁量権の範囲を逸脱又は濫用した違法な補助金の支出に当たるということはできない。
オ そうすると、本件支出1が違法であることを原因として発生する御船町のA町長に対する損害賠償請求はその余の点を判断するまでもなく理由がない。
(3)  本件支出2の違法性について(本案の争点(1))
ア 上記(2)ウ(カ)で指摘した判断基準により、本件支出2が、裁量権の範囲を逸脱又は濫用した違法な補助金の支出であったか否かを検討する。
イ この点、本件支出2の時点では、本件会社は政府系の金融機関である日本政策金融公庫から融資を拒絶された上、その直後にb銀行からも融資を拒絶されたことが認められる。そして、本件事業における資金の調達額が極めて大きいことに加え、特に政府系の金融機関である日本政策金融公庫からの融資が拒絶されたことで、他の金融機関から融資を受けることは極めて難しい状況となったということができる。実際に、本件会社が、日本政策金融公庫及びb銀行から融資を拒絶された後、他の金融機関から融資を受けるための交渉をしていたという事情は窺われない。
このような状況下においては、本件事業に必要な約10億円に上る自己資金を確実に調達できる融資元を本件会社が確保できない以上、融資を受けられないことが確実な状況に至ったといわざるを得ないし、A町長としても、本件支出2をするに当たって、そのような状況に至ったことを踏まえて、自己資金の調達の見込みにつきより慎重かつ十分な調査・検討を尽くす義務を負っているというべきである。
ウ そこで、A町長のした自己資金の調達に関する調査・検討についてみると、A町長は、FやGといった金融機関以外の個人から融資を受けられる見込みであることから、本件支出2の時点においても、なお、自己資金調達の見込みがあると判断したと主張し、上記判断の根拠として、被告担当者を通じてFと宮崎市で協議をし、さらに、同人から融資を確約する旨の確約書(甲22、23)を得るなどしていたことを挙げるものと解される。しかしながら、上記の融資元は、銀行のように資金力に問題のない金融機関ではない以上、その多額に上る融資金を融通するだけの資金の裏付けがあるかなどについて慎重かつ綿密に調査する必要があった。しかるに、上記融資確約書は融資金額の記載もなければ、融資実行日も同確約書作成日のわずか2日後に設定されるなどその信用性に疑問を抱かざるを得ない内容であるにもかかわらず、A町長は、上記の融資確約書を得る以外にFらの資産調査等はしておらず(甲24、被告本人)、C及び被告職員らの証人尋問の結果やその他本件の全証拠を見ても、融資元であるFやGの財産状況、融資に係る資金の調達手段等の情報が明らかになっているとは言い難い。このような事情やFらからの融資の確約は本件支出2までの間に少なくとも2回破られていることを併せ考えると、FやGといった人物から本件事業の開始、継続に必要な自己資金の融資を受ける可能性があったとは到底考えられず、本件支出2の時点においては、本件会社は本件事業に必要な資金の融資を受けられないことが確実な状況に至ったといわざるを得ない。また、A町長がなした自己資金調達についての上記の調査・検討は、本件支出2が9000万円を超える多額の支出であるということに比して、極めて軽率な対応であったと評価せざるを得ない。
したがって、A町長は、他の金融機関等から融資を受けることが極めて困難な状況であったにもかかわらず、さしたる調査もせずにFらから融資を受けることができると軽信して本件支出2をしたものといわざるを得ず、このような支出は、社会通念上著しく妥当性を欠いた行為であり、裁量権の範囲を逸脱又は濫用した違法な行為に該当するというべきである。
エ これに対し、被告は、実際に補助金が交付されることによって融資を受けることができる可能性がある旨主張するが、上記ウ説示のとおりそもそもFらが多額の融資をする意思及び必要な資金の調達手段を有していたか否かに強い疑問がある上、本件支出1により2億円もの補助金が交付されたにもかかわらず、日本政策金融公庫やb銀行から融資を拒絶されていることを考慮すると、本件支出2により融資を受けられる可能性が高まると考えることは合理的であるとはいえない。
既に本件支出1がされている以上、本件支出2をしなければ本件事業の実施が中止され本件支出1が無意味な「死に金」になってしまうということはあり得るが、融資を受けることが困難である以上、上記のように本件支出2をしたとしても本件事業の実施はもはや不可能な状況であって、本件支出1のみならず本件支出2までもが無意味な「死に金」になってしまうことに照らせば、このことをもって本件支出2が必要、適正な支出であったと評価することもできない。
オ また、被告は、国から交付を受けた本件補助金を市町村固有の判断で留保できないから本件支出2が違法となることはない旨主張し、その根拠として、農林畜水産業関係補助金等交付規則(乙176)において、「補助事業者等は、間接補助金等の財源に充てるべき補助金等の交付を概算払いにより受けた場合において、当該交付を受けた補助金等の額が、既に間接補助事業者等に対して交付している間接補助金等の額を超えているときは、遅滞なく、当該間接補助事業者等に対し、その超えている額に相当する金額の間接補助金等を交付しなければならない」(3条3号)とされていることや本件事業に対する国の平成20年度地域バイオマス利活用交付金の交付決定(乙96)においても「県等は、概算払により市町村等の事業に係る交付金の交付を受けた場合においては、当該概算払を受けた交付金の額を遅滞なく市町村等に交付しなければならない」と明記されていること(6項)を挙げる。
しかしながら、補助金の交付は、法律上、公益上の必要性が認められる場合に許される裁量行為であるから、補助金の交付が裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たり公益上の必要性が認められない場合ですら、市町村の判断で補助金の支出を留保できないと解することは相当ではない。被告が指摘する上記規則等は公益上の必要性が認められることが当然の前提となっていると解するのが相当である。
カ 以上によれば、A町長のした本件支出2は、社会通念上著しく妥当性を欠いた行為であり、裁量権の範囲を逸脱又は濫用した違法な行為であったといわざるを得ない。
キ そして、上記に認定したとおりの本件支出2に至る経緯等を前提とすれば、A町長が、本件支出2をすることについて、過失があったことは明らかである。
この点に関し、被告は、公務員がその職責を行うにあたって他人に損害を与えた場合、国家賠償法1条2項によれば、公務員個人は対外的に責任を問われることはなく、故意又は重過失がある場合に求償されるにとどまることを考慮すれば、A町長の責任についても、故意又は重過失がある場合に限定すべきである旨主張する。
しかし、国家賠償法1条2項は、公務員の第三者に対する加害行為について、国又は公共団体が損害を賠償した場合の求償権の行使に関する規定であって、長が直接国又は公共団体に賠償責任を負う場合に類推すべき理由はない。したがって、被告の主張は採用することができない。
ク そして、本件支出2を原因として御船町が被った損害額は、その支出額である9279万3000円であると認められるから、A町長は、御船町に対し、債務不履行又は不法行為に基づき、9279万3000円の損害賠償義務を負っているということができる。(なお、損害の発生時が本件返還時であることは、上記1(1)イで述べたとおりである。)
そして、被告は、現在に至るまで上記の損害賠償請求権を行使しておらず、そのことについて正当な理由があると認めることはできないから、被告は、上記の権利の行使を違法に怠っているものと認められる。
(4)  本件返還の違法性について(本案の争点(2))
ア 手続的違法
(ア) 本件返還については、上記認定事実のとおり、平成22年11月29日の御船町議会第9回定例会において、本件返還をするための補正予算案が可決され、これに基づいて本件返還がなされていることが認められる。
(イ) この点について、原告らは、本件返還をする理由は地方交付税交付金の確保等のため国との関係を維持することにあると被告は主張するが、A町長は、議会において、本件返還をしなければ加算金が付されることになることのみ説明し、国との関係を維持することについては一切説明しなかったため、本件返還に係る議会の議決は不十分かつ不正確な情報に基づきなされたものであるから、本件返還は手続的適正を欠いている旨主張する。
確かに、証拠(乙145、167)によれば、A町長は、平成22年度第1回御船町議会定例会(4月会議)において、「この補正が組まれない場合は、先ほどお話ししましたように3700万円ほどの加算金が付くということで、これについては議決をいただき、そして4月30日までに入れていただいて、後国に返すという形が一番理想であります。」などと述べるなど、議会に対し、本件返還をしなければ、国からの返還命令に加え、加算金が課される旨説明していることが認められる。一方、国からの地方交付税交付金が減額されることや国との関係を懸念していることを議会に明確に説明した形跡はない。
ところで、補助金適正化法19条1項によれば、「補助事業者等は、第17条1項の規定又はこれに準ずる他の法律の規定による処分に関し、補助金等の返還を命ぜられたときは、政令で定めるところにより、その命令に係る補助金等の受領の日から納付の日までの日数に応じ、当該補助金等の額(その一部を納付した場合におけるその後の期間については、既納額を控除した額)につき年10.95パーセントの割合で計算した加算金を国に納付しなければならない。」とされ、同法17条1項によれば、「各省各庁の長は、補助事業者等が、補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件その他法令又はこれに基づく各省各庁の長の処分に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。」とされている。もっとも、本件においては、補助事業者である御船町が同法17条1項に該当するような行為をしたわけではないから、本件において、加算金が付与される可能性は低いと認められる。そうすると、A町長は、本件返還をしなければ加算金が課されるという誤解を前提に、御船町議会に対して、加算金が課されると説明をしたということができ、この点において、A町長の説明には不適切な点があったといわざるを得ない。
もっとも、加算金が付与されるか否かという問題は補助金適正化法の解釈の問題であり議員各人で検証可能な事項であり、実際にも、本件返還が議決された御船町議会第9回定例会(11月会議)において、J議員は、「今日議決しなければ5000万円ほどの加算金が発生するかという事実は全くないのですよということをご報告をいただきました。」と発言している上(乙167)、加算金の発生の有無については100条委員会でも検討されるなど(甲21)、御船町議会では本件において加算金が付与されるのか否かという点についての問題意識があったことが窺われる。加えて、A町長が上記のような説明をしたのは、九州農政局が御船町に対して、補助金適正化法が適用されれば加算金が課される可能性があることを一般論として説明したこと(甲54)によると考えられ、A町長が意図的に虚偽の事実を述べたわけではないことをも考慮すれば、議会におけるA町長の説明に不適切な点があったとしても、このことは議会の議決の有効性に影響を与えるほどのことではないと評価すべきである。
したがって、原告らの主張は採用することができない。
(ウ) 以上によれば、本件返還に当たって、手続的違法があるとはいえない。
イ 実体的違法
(ア) 地方財政法26条1項によれば、「地方公共団体が法令の規定に違背して著しく多額の経費を支出し、又は確保すべき収入の徴収等を怠った場合においては、総務大臣は、当該地方公共団体に対して交付すべき地方交付税の額を減額し、又は既に交付した地方交付税の額の一部の返還を命ずることができる。」とされている。
上記で述べたとおり、本件支出2は裁量権の範囲を逸脱又は濫用してなされた違法な支出であり、その額は9279万3000円にも上るものであるから、このことを理由に、御船町は、国から地方交付税の減額又はその一部の返還を命じられるおそれがあったということができる。
そして、御船町の予算規模は、一般会計約60ないし70億円、特別会計約75億円であるのに対し、御船町は国から年額20億円を超える地方交付税交付金の交付を受けており(被告本人及び弁論の全趣旨)、御船町にとって国からの地方交付税交付金が極めて重要な財源であることを考慮すると、国との良好な関係を維持するために、本件返還をする必要性があったことは否定できないということができる。そして、何より、本件補助金を利用した本件事業の実施ができないことが明らかとなった以上、国から交付を受けた交付金はいずれ返還しなければならない可能性が高いことをも考慮すれば、本件返還は実体面でも違法でないと評価するのが妥当である。なお、以上によれば、地方財政法上も違法な点はないというべきである。
(イ) これに対し、原告らは、被告の主張によれば本件事業について何ら法令違反に当たる事実はないのであるから、地方交付税交付金が減額される理由はないし、そもそも、国との関係が悪化するというような抽象的な理由で地方交付税交付金が減額されるということはありえない旨主張する。
しかしながら、上記で述べたとおり、本件支出2は違法な支出であったと認められるから、原告らの主張は前提を欠くといえ、また、本件支出2が違法である以上、法律上、地方交付税交付金の減額ないし返還命令がなされる可能性を完全に否定することはできない。
(ウ) また、原告らは、A町長は、本件事業の頓挫については国にも責任があるから、交付金について全額ではなく一部のみを返還する考え方があることを認識していたにもかかわらず、国との間で返還額の減額交渉を全くせずに本件返還をしているから、A町長は御船町のために誠実に事務を遂行していない(地方自治法138条の2)旨主張する。
しかしながら、上記で述べたとおり、国から受けた交付金はいずれ返還しなければならないものである可能性が高いことや地方交付税交付金の減額に配慮する必要があることに加え、減額交渉をした場合にそれが奏功する可能性やその程度については不透明であることを考慮すると、本件においては、A町長に国と減額交渉をすべき法律上の義務があったということはできない。
(エ) さらに、原告らは、本件返還は本件各支出が原因となってなされたものであるから、本件返還の違法性を考えるにあたっては、本件各支出の違法性を当然考慮しなければならず、これを考慮した場合、本件返還の違法性はより強くなる旨主張する。
しかしながら、本件各支出のうち違法な財務会計上の行為ということができるのは本件支出2のみであるところ、本件支出2が違法であることを前提とした場合であっても、本件返還をする必要性があることに変わりはないから、本件返還の違法性の判断にあたって本件支出2の違法性を考慮したとしても、その評価に影響を与えることはない。
(オ) その他にも原告らは本件返還が違法である事情を縷々主張するが、いずれも本件返還が違法であるとの評価を基礎づけるものではない。
ウ 以上のとおりであるから、本件返還は違法な行為であったと認めることはできない。
なお、本件補助金を利用した本件事業が実施できない以上、本件返還をしなくても、国から交付を受けた交付金はいずれ返還しなければならないと考えられ、その全部又は一部につき返還を免れる蓋然性についてこれを裏付ける証拠は提出されていないことからすれば、仮に本件返還が違法であったとしても、これによって御船町に損害が発生したと認めることができない。
エ したがって、本件返還が違法な財務会計上の行為であることを原因として発生する御船町のA町長に対する損害賠償請求権は成立しない。
(5)  本件怠る事実1の違法性について(本案の争点(3))
ア 御船町交付金規則7条によれば、「町長は、補助金の交付を受けた者が、補助金を他の経費に流用した場合(1号)や事務又は事業の施行方法が不適当と認められる場合(3号)には、補助金の交付を取消し、又は既に交付した補助金の全部又は一部の返還を命ずることができる」とされている。この規定によれば、補助金交付の取消し及び返還命令は、補助事業や取消事由の内容やその解消の見込み等の様々な事情を考慮して決められる裁量行為であると解することができる。もっとも、その裁量は無制約のものではなく、取消事由の内容等に照らして、A町長が補助金交付決定を取り消さないことが裁量権の範囲の逸脱又は濫用と評価すべき場合においては、補助金交付の取消しをしないことが違法の評価を受けることになると解するのが相当である。
イ そこで本件についてみると、まず、平成21年5月25日に、本件会社がc社から自己株式を取得していること、取得する自己株式数は発行済株式総数662株の約80%に及ぶ540株であることが認められることは上記で認定したとおりである。そして、平成21年2月16日に日本政策金融公庫から融資が拒絶されたことにより本件事業の実施が極めて困難となり、その後もFからの融資の確約が度々破られるなど融資を受けられる目処がついていない状況であったことなどを踏まえると、このような状況下で、本件会社がこのような多数の自己株式を取得して資金を流出させることは、本件事業の実施を妨げる極めて不適切な行為であって、このことは御船町補助金交付規則7条3号の「事務又は事業の施行方法が不適切」な場合に当たるというべきであり、その内容に照らせば、補助金交付の取消しに裁量が認められることを考慮してもなお、速やかに取り消す必要があったものと評価するのが相当である。
そして、被告本人尋問の結果によれば、A町長は、遅くとも平成21年6月末頃に本件会社がc社から自己株式を取得したことを知ったことが認められる。
以上の事情を踏まえれば、A町長は、本件会社による自己株式の取得の事実を知った平成21年6月末以降、速やかに、本件補助金の交付を取り消し、本件会社に対し、本件補助金の返還命令をする必要があったということができる。それにもかかわらず、A町長は、正当な理由なく、平成22年12月7日に至るまで本件補助金の交付の取消し及び返還命令をしていないのであるから、A町長は本件補助金の交付の取消し及び本件会社に対する不当利得返還請求権の行使を違法に怠ったものというべきである。
ウ A町長が本件補助金の交付決定を取り消すことが可能となったのはA町長が本件会社による自己株式取得を知った平成21年6月末頃であるから、この頃に本件会社に対し不当利得返還請求をすれば回収し得たであろう金額が、本件怠る事実1と相当因果関係のある損害であるということができる。
もっとも、証拠(甲61)によれば、本件会社の預金口座への入金は利息を除いて本件補助金のみであったところ、その残高は、平成21年2月10日に入金された本件支出1に係る2億円は同月中に使用されて残高は1500万円余りに減り、その後、同年5月29日に本件支出2に係る9279万3000円が入金されたものの、同年6月23日時点では既に残高が2634万1478円となっていることが認められ、本件会社にその他に見るべき財産があるといった事情は窺われない。本件事業の実施が不可能である以上、今後、本件会社の財産が増加する可能性もない。このような事情に照らすと、結局、御船町が本件会社に対して平成21年6月末頃以降に速やかに不当利得返還請求をしたとしても、本件支出1に係る2億円の回収は既に不可能であり、本件支出2に係る9279万3000円のうち一部の回収が可能であったというに止まる。してみると、本件怠る事実1により、御船町に上記(3)で認めた9279万3000円の損害に加えて何らかの損害が発生したとは認められず、他にこれを認めるに足りる的確な証拠はない。
(6)  まとめ
以上のとおりであるから、A町長は、御船町に対して、債務不履行又は不法行為に基づき、9279万3000円の損害を賠償する責任を負っているということができる。
したがって、原告らは、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、被告に対し、A町長に9279万3000円及びこれに対する損害発生時である平成23年1月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める旨の請求をすることができる。
第5  結論
以上によれば、原告らの請求は上記第4の2の(6)の限度で理由があるから、この限度で認容し、その余の請求をいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 中村心 裁判官 西田政博 木戸口恆成)

 

(別紙) 当事者目録〈省略〉
(別紙) 関係法令の定め〈省略〉


「選挙 コンサルタント」に関する裁判例一覧
(1)令和元年 9月 6日 大阪地裁 令元(わ)2059号 公職選挙法違反被告事件
(2)平成31年 3月 7日 知財高裁 平30(行ケ)10141号 審決取消請求事件
(3)平成30年12月18日 高知地裁 平28(行ウ)8号 損害賠償請求及び公金支出差止請求事件
(4)平成30年 9月28日 東京地裁 平26(ワ)10773号 損害賠償請求事件(本訴)、損害賠償請求反訴事件(反訴)
(5)平成30年 6月 6日 東京高裁 平29(ネ)2854号 株主代表訴訟控訴事件
(6)平成30年 4月25日 東京地裁 平28(ワ)31号 証書真否確認、立替金等返還債務不存在確認等請求事件、立替金返還請求反訴事件、立替金請求反訴事件
(7)平成30年 3月30日 東京地裁 平27(ワ)37147号 損害賠償請求事件
(8)平成30年 3月28日 東京地裁 平27(行ウ)616号 閲覧謄写請求事件
(9)平成30年 3月26日 東京地裁立川支部 平28(ワ)2678号 損害賠償請求事件
(10)平成30年 2月 8日 仙台高裁 平29(行コ)5号 政務調査費返還履行等請求控訴事件、同附帯控訴事件
(11)平成29年 5月22日 東京地裁 平28(特わ)807号 公職選挙法違反被告事件
(12)平成29年 3月28日 東京地裁 平25(ワ)28292号 謝罪広告等請求事件
(13)平成29年 3月 8日 東京地裁 平26(行ウ)300号 地位確認等請求事件
(14)平成29年 2月 2日 東京地裁 平26(ワ)25493号 株式代金等請求事件(本訴)、損害賠償請求反訴事件(反訴)
(15)平成29年 1月31日 仙台地裁 平25(行ウ)11号 政務調査費返還履行等請求事件
(16)平成28年 9月16日 福岡高裁那覇支部 平28(行ケ)3号 地方自治法251条の7第1項の規定に基づく不作為の違法確認請求事件
(17)平成28年 9月 2日 福岡高裁 平28(う)180号 入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反、公契約関係競売入札妨害、加重収賄被告事件
(18)平成28年 4月22日 新潟地裁 平25(行ウ)7号 政務調査費返還履行請求事件
(19)平成28年 3月30日 東京地裁 平21(行ウ)288号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(20)平成28年 3月17日 東京地裁 平26(ワ)23904号 地位確認等請求事件
(21)平成28年 3月17日 福岡地裁 平26(わ)1215号 入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反,公契約関係競売入札妨害,加重収賄被告事件
(22)平成28年 3月17日 福岡地裁 平26(わ)968号 入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反、公契約関係競売入札妨害、加重収賄被告事件
(23)平成27年 4月22日 東京地裁 平25(行ウ)792号 土地区画整理組合設立認可取消等請求事件
(24)平成27年 2月19日 東京地裁 平25(ワ)19575号 遺言無効確認請求事件、不当利得返還請求事件
(25)平成26年10月27日 熊本地裁 平23(行ウ)9号 損害賠償履行請求事件
(26)平成26年10月20日 東京地裁 平25(ワ)8482号 損害賠償請求事件
(27)平成26年 2月28日 東京地裁 平25(ヨ)21134号 配転命令無効確認仮処分申立事件 〔東京測器研究所(仮処分)事件〕
(28)平成26年 2月26日 東京地裁 平24(ワ)10342号 謝罪広告掲載等請求事件
(29)平成25年 1月29日 和歌山地裁 平19(行ウ)7号 政務調査費違法支出金返還請求事件
(30)平成24年 5月28日 東京地裁 平24(ヨ)20045号 職務執行停止・代行者選任等仮処分命令申立事件
(31)平成23年 8月31日 東京地裁 平22(行ウ)24号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(32)平成22年 7月22日 東京地裁 平20(ワ)15879号 損害賠償請求事件
(33)平成21年10月14日 東京高裁 平20(う)2284号
(34)平成21年 7月28日 東京地裁 平18(ワ)22579号 請負代金請求事件
(35)平成21年 4月28日 大阪地裁 平19(わ)4648号 談合被告事件
(36)平成21年 4月28日 大阪地裁 平19(わ)3456号 談合、収賄被告事件
(37)平成21年 3月27日 宮崎地裁 平18(わ)526号 競売入札妨害、事前収賄、第三者供賄被告事件
(38)平成21年 3月 3日 東京地裁 平19(ワ)10972号 謝罪広告等請求事件
(39)平成21年 3月 3日 水戸地裁 平18(行ウ)7号 小型風力発電機設置事業に係わる損害賠償請求事件
(40)平成21年 3月 2日 東京地裁 平20(ワ)6444号 売上代金請求事件
(41)平成20年10月31日 大阪地裁 平17(行ウ)3号 損害賠償請求、不当利得金返還請求事件(住民訴訟) 〔枚方市非常勤職員特別報酬住民訴訟〕
(42)平成20年 9月29日 東京地裁 平18(ワ)7294号 損害賠償請求事件 〔つくば市 対 早稲田大学 風力発電機事件・第一審〕
(43)平成20年 9月 9日 東京地裁 平18(ワ)18306号 損害賠償等請求事件
(44)平成20年 8月 8日 東京地裁 平18(刑わ)3785号 収賄、競売入札妨害被告事件〔福島県談合汚職事件〕
(45)平成20年 5月27日 東京地裁 平18(ワ)24618号 損害賠償請求事件
(46)平成20年 3月27日 東京地裁 平18(ワ)18305号 損害賠償等請求事件
(47)平成20年 1月18日 東京地裁 平18(ワ)28649号 損害賠償請求事件
(48)平成19年11月 2日 東京地裁 平19(ワ)4118号 損害賠償請求事件
(49)平成19年 3月13日 静岡地裁沼津支部 平17(ワ)21号 損害賠償請求事件
(50)平成17年11月18日 和歌山地裁 平15(わ)29号 収賄、背任被告事件
(51)平成17年 8月29日 東京地裁 平16(ワ)667号 保険金請求事件
(52)平成17年 7月 6日 東京地裁 平17(ワ)229号 請負代金等請求事件
(53)平成17年 5月31日 東京高裁 平16(ネ)5007号 損害賠償等請求控訴事件
(54)平成17年 5月24日 岡山地裁 平8(行ウ)23号 損害賠償等請求事件
(55)平成17年 2月23日 名古屋地裁 平13(ワ)1718号 労働契約上の地位確認等請求事件 〔山田紡績事件〕
(56)平成17年 2月22日 福島地裁郡山支部 平14(ワ)115号 損害賠償請求事件
(57)平成16年 9月 9日 名古屋地裁 平15(行ウ)34号 損害賠償請求事件
(58)平成16年 8月10日 青森地裁 平15(ワ)32号 名誉毀損に基づく損害賠償請求事件
(59)平成16年 5月28日 東京地裁 平5(刑わ)2335号 贈賄被告事件 〔ゼネコン汚職事件〕
(60)平成15年11月26日 大阪地裁 平14(行ウ)186号 不当労働行為救済命令取消請求事件 〔大阪地労委(大阪ローリー運輸労組・双辰商会)事件・第一審〕
(61)平成15年 7月28日 東京地裁 平14(ワ)21486号 損害賠償請求事件
(62)平成15年 4月10日 大阪地裁 平12(行ウ)107号 埋立不許可処分取消請求事件
(63)平成15年 3月 4日 東京地裁 平元(刑わ)1047号 日本電信電話株式会社法違反、贈賄被告事件 〔リクルート事件(政界・労働省ルート)社長室次長関係判決〕
(64)平成15年 2月20日 広島高裁 平14(う)140号 背任被告事件
(65)平成15年 1月29日 広島地裁 平12(ワ)1268号 漁業補償金支払に対する株主代表訴訟事件 〔中国電力株主代表訴訟事件・第一審〕
(66)平成14年10月10日 福岡地裁小倉支部 平11(ワ)754号 損害賠償請求事件
(67)平成14年10月 3日 新潟地裁 平13(行ウ)1号 仮換地指定取消請求事件
(68)平成14年 5月13日 東京地裁 平13(ワ)2570号 謝罪広告等請求事件
(69)平成13年 7月18日 大阪地裁 平12(ワ)4692号 社員代表訴訟等、共同訴訟参加事件 〔日本生命政治献金社員代表訴訟事件〕
(70)平成12年 8月24日 東京地裁 平10(ワ)8449号 損害賠償等請求事件
(71)平成12年 3月14日 名古屋高裁 平10(う)249号 収賄、贈賄被告事件
(72)平成12年 2月18日 徳島地裁 平7(行ウ)13号 住民訴訟による原状回復等請求事件
(73)平成10年 4月20日 大阪地裁 平6(ワ)11996号 損害賠償請求事件 〔誠光社事件・第一審〕
(74)平成10年 3月31日 東京地裁 平7(ワ)22711号 謝罪広告請求事件
(75)平成10年 3月26日 名古屋地裁 平3(ワ)1419号 損害賠償請求事件 〔青春を返せ名古屋訴訟判決〕
(76)平成 9年10月24日 最高裁第一小法廷 平7(あ)1178号 法人税法違反被告事件
(77)平成 9年 3月21日 東京地裁 平5(刑わ)2020号 収賄、贈賄等被告事件 〔ゼネコン汚職事件(宮城県知事ルート)〕
(78)平成 8年 2月14日 東京高裁 平6(う)342号 法人税法違反被告事件
(79)平成 7年 9月20日 福岡地裁 平5(行ウ)17号 地方労働委員会命令取消請求事件 〔西福岡自動車学校救済命令取消等事件〕
(80)平成 7年 2月23日 最高裁第一小法廷 平5(行ツ)99号 法人税更正処分等取消請求上告事件
(81)平成 6年12月21日 東京地裁 平元(刑わ)1048号 日本電信電話林式会社法違反、贈賄被告事件 〔リクルート事件政界ルート判決〕
(82)平成 6年 5月 6日 奈良地裁 昭60(わ)20号 法人税法違反被告事件
(83)平成 5年 3月16日 札幌地裁 平元(わ)559号 受託収賄被告事件 〔北海道新長計汚職事件〕
(84)平成 2年 8月30日 福岡地裁 昭58(ワ)1458号 損害賠償請求事件
(85)平成 2年 4月25日 東京高裁 昭63(う)1249号 相続税法違反被告事件
(86)平成 2年 3月30日 広島地裁呉支部 昭59(ワ)160号 慰謝料請求事件
(87)平成元年 3月27日 東京地裁 昭62(特わ)1889号 強盗殺人、死体遺棄、通貨偽造、銃砲刀剣類所持等取締法違反、火薬類取締法違反、強盗殺人幇助、死体遺棄幇助被告事件 〔板橋宝石商殺し事件・第一審〕
(88)昭和63年11月 2日 松山地裁 昭59(行ウ)4号 織田が浜埋立工事費用支出差止請求訴訟第一審判決
(89)昭和62年 7月29日 東京高裁 昭59(う)263号 受託収賄、外国為替及び外国貿易管理法違反、贈賄、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律違反被告事件 〔ロッキード事件丸紅ルート・控訴審〕
(90)昭和62年 2月19日 東京高裁 昭61(ネ)833号 損害賠償等請求控訴事件 〔総選挙当落予想表事件〕
(91)昭和61年 6月23日 大阪地裁 昭55(ワ)5741号
(92)昭和61年 3月31日 大阪地裁 昭59(ヨ)5089号
(93)昭和60年 9月26日 東京地裁 昭53(行ウ)120号 権利変換処分取消請求事件
(94)昭和60年 3月26日 東京地裁 昭56(刑わ)288号 恐喝、同未遂被告事件 〔創価学会恐喝事件〕
(95)昭和60年 3月22日 東京地裁 昭56(特わ)387号 所得税法違反事件 〔誠備グループ脱税事件〕
(96)昭和59年12月19日 那覇地裁 昭58(ワ)409号 損害賠償請求事件
(97)昭和58年10月12日 東京地裁 昭51(特わ)1948号 受託収賄、外国為替及び外国貿易管理法違反、贈賄、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律違反事件 〔ロッキード事件(丸紅ルート)〕
(98)昭和56年 9月 3日 旭川地裁 昭53(ワ)359号 謝罪広告等請求事件
(99)昭和55年 7月24日 東京地裁 昭54(特わ)996号 外国為替及び外国貿易管理法違反、有印私文書偽造、有印私文書偽造行使、業務上横領、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律違反事件 〔日商岩井不正事件(海部関係)判決〕
(100)昭和52年 9月30日 名古屋地裁 昭48(わ)2147号 商法違反、横領被告事件 〔いわゆる中日スタジアム事件・第一審〕
(101)昭和50年10月 1日 那覇地裁 昭49(ワ)51号 損害賠償請求事件 〔沖縄大蔵興業工場建設協力拒否事件・第一審〕


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選挙①【衆議院議員総選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙②【参議院議員通常選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
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