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「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(35)平成21年 4月28日 大阪地裁 平19(わ)4648号 談合被告事件

「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(35)平成21年 4月28日 大阪地裁 平19(わ)4648号 談合被告事件

裁判年月日  平成21年 4月28日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  平19(わ)4648号
事件名  談合被告事件
裁判結果  有罪  文献番号  2009WLJPCA04289008

要旨
◆市長であった被告人が、当時の同市議会議員、大阪府警察官、建設会社の談合担当者らと共謀の上、同市が制限付き一般競争入札に付した清掃工場の土木建築工事に関して、入札の公正な価格を害する目的で談合したという事案について、信用性が認められる共犯者らの供述、及び任意性が認められる被告人の捜査段階での供述等から、被告人は、自己の犯罪として本件犯行に加担したものといえ、本件談合の共謀共同正犯の成立を認めることができるとした上で、被告人が、本件により長く務めてきた市長の職を辞するなど一定の社会的制裁を受けていること等、被告人のために酌むべき事情を考慮して、被告人に懲役1年6月、執行猶予3年を言い渡した事例

出典
裁判所ウェブサイト

参照条文
刑法60条
刑法96条の3第2項

裁判年月日  平成21年 4月28日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  平19(わ)4648号
事件名  談合被告事件
裁判結果  有罪  文献番号  2009WLJPCA04289008

主文

被告人を懲役1年6月に処する。
この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)
被告人は,a市長であったものであるが,同市議会議員であったA1,大阪府警察官として勤務する傍ら,かねて公共工事に関する情報等を建設業者に提供するなどしていたA2,株式会社B1の談合担当者であったA3,同社の営業担当者であったA4,株式会社B2の談合担当者であったA5,B3株式会社b支店副支店長A6及びB4株式会社c支店支店次長A7らと共謀の上,a市が平成17年11月10日に開札した「仮称第2清掃工場建設工事(土木建築工事)」の制限付き一般競争入札に,B1・B2共同企業体のほか,B3株式会社b支店及びB4株式会社c支店が参加するに際し,公正な価格を害する目的で,同年10月20日ころから同年11月10日ころまでの間,大阪府下又はその周辺において,B1・B2共同企業体に同工事を落札させることで合意するとともに,そのころ,B3株式会社b支店及びB4株式会社c支店のそれぞれの入札金額をB1・B2共同企業体の入札金額を超える金額とする旨の協定をし,もって,入札の公正な価格を害する目的で談合したものである。
(証拠の標目)
省略
(事実認定の補足説明)
1  争点
被告人は,公判廷において,a市発注の「仮称第2清掃工場建設工事(土木建築工事)」(以下,同工場を「本件清掃工場」といい,同工事中,建屋の建設工事を「本件工事」という。)の入札に関し,自身が談合を共謀したことはなく,業者が談合をしていること自体を認識していなかった旨供述し,弁護人も,被告人の当該供述を前提として,被告人は無罪である旨主張するので,当裁判所が,被告人に判示の談合罪が成立すると認定した理由について,以下補足して説明する。
2  前提事実
関係各証拠によれば,以下の事実が認められ,これらについては,被告人及び弁護人も概ね争っていない。
(1)  被告人とその関係者について
被告人は,平成7年4月にa市長選挙に当選し,以後,平成19年9月に辞職するまで4期12年余りの間,a市長の職にあった。また,被告人は,青年会議所の活動を通じてA1と知り合い,平成7年にA1もa市議会議員に当選した後には,被告人の政治姿勢に共感するなどしているA1と親交を深めていった。さらに,被告人は,大阪府警察官のA2と知り合い,平成12年ころ,A2をA1に紹介し,以後,3人でA1方において情報交換等のために会うようになった。
(2)  本件工事が落札された経緯について
ア 平成5年ころ,a市では,本件清掃工場の建設工事に関する検討委員会(以下,「検討委員会」という。)が組織され,建設予定地の住民に対する説明等の準備を行っていた。同工事の発注形態や予算の積算等は,C1部(平成16年4月に「C2部C3室」と改称)が担当しており,C1部の担当助役(副市長)は,平成15年5月まではD,同月22日以降はA8であった。
イ 平成14年には,市長の諮問機関として「第2清掃工場建設検討会議」(以下,「検討会議」という。)が組織され,以後,同会議において,焼却炉の焼却方式や発注方式について検討が行われた。C3室の担当者は,当初,本件清掃工場の建設工事の発注方式について,従来の方針を踏まえて,プラント(焼却炉)と建屋の工事を一括発注とすることで計画を進めていたが,検討会議においては,平成15年1月から同年8月まで議論がなされ,同年8月29日,プラントと建屋とで分離発注することが妥当である旨の結論が示された。
ウ 同年9月,検討委員会において,発注方式は検討会議の結論を尊重することが確認され,同年10月7日,同委員会は,被告人に対し,「プラント設備工事と建屋の建設工事を分離発注することが適当である。但し,建屋の基礎工事をプラント工事に含めるなどの方法により,分離することによる工事期間の長期化を避けるものとする」旨の報告を行い,後日,被告人は,プラントと建屋の工事を分離発注する旨の決裁をした。
エ 平成16年3月,検討委員会において,本件清掃工場の設計の発注方式についても,プラントと建屋とを分離発注することが決定された。また,同年3月,a市議会において,本件清掃工場の予算が99億680万円で承認された。
オ 同年5月,本件工事の設計業務を株式会社Eが落札した。
カ 同年6月10日,本件清掃工場のプラント設備工事の入札が予定価格59億2346万2000円(税抜き)で実施され,F株式会社が57億7500万円で落札した。その結果,本件工事の予算は,a市が本件清掃工場の建設工事全体の予算として計上していた99億680万円の残額の約39億円(税抜き)となった。
キ a市は,株式会社Eから提出された本件工事の見積額が,予算額を大幅に上回っていたことから,その減額を何度か指示していたが,平成16年12月27日に提出された概算見積額が56億6600万円であったことから,前記予算の範囲内で本件工事を発注するため,建屋の建設工事をⅠ期工事(工場棟等の本体工事)とⅡ期工事(管理棟等の付属工事)とに分割し,平成17年度はⅠ期工事だけを発注することとした上,同工事の見積額につき,当初積算した額から20パーセントをカットする,いわゆる「歩切り」を行い,同工事を約39億円(税抜き)の予算内に収めた。
ク 平成17年7月21日,本件工事は予定価格を39億2564万8000円(税抜き)として公告され,開札日が同年8月10日に予定されていたが,同月8日までの入札期間中に1社も応札がなく,入札は不調となった(以下,これを「1回目の入札」という。)。
ケ 同月19日,a市の財政課及びC3室の関係職員が協議し,同年9月の市議会において,本件工事のために18億円の補正予算を計上する方針となった。同月31日,補正後の予算額を57億214万1000円とする補正予算案の市議会への提出が被告人によって決裁された。
コ 同年10月20日,本件工事は予定価格を56億4896万6000円(税抜き)として再度公告され,同年11月10日に入札が実施されて,株式会社B1と株式会社B2の共同企業体(JV。以下,このJVを「B1・B2JV」という。)が55億6000万円(税抜き)で落札した(以下,これを「2回目の入札」という。)。同入札においては,B1・B2JV以外に,B4株式会社c支店(以下,「B4株式会社」という。)が55億9800万円で,B3株式会社b支店(以下,「B3株式会社」という。)が56億2500万円(いずれも税抜き)でそれぞれ入札をしていた。
サ 同年12月5日,本件工事について,これを落札したB1・B2JVとの請負契約がa市議会で承認された。
3  業者間の談合について
以上を前提に,まず,本件工事の受注に関し,業者間で談合が行われたかについて検討することとする。
(1)  関係各証拠によれば,関西の建設業界における受注調整の慣行,本件工事の受注に向けた株式会社B1の活動等について,以下の事実が認められる。
ア 関西の建設業界においては,平成17年12月に談合決別宣言が出されるまでの間,長年にわたり,建設工事の受注に関して,受注調整が恒常的に行われていた。そこでは,受注を希望する特定の工事について,各社が営業活動等により落札するための「条件」を獲得し,業者間での話し合いによって,最も条件的に優位な建設会社が当該工事を落札する資格を有する「選手」になるというルールが確立していた。選手になるための条件には,発注者の意向である「天の声」,元施工業者であること,設計会社への技術協力,工事計画地付近に用地を取得していること,設計図面の入手等があり,「天の声」は,その中で最も有利な条件とされていた。
イ 株式会社B1は,平成7年末ころから,本件清掃工場の建設予定地の隣地を賃借するなどし,本件工事の受注に向けて準備していたが,その一方で,株式会社B2も,株式会社Eとの間で本件清掃工場の設計業務について協力することを合意していたところ,株式会社B1の談合担当者であるA3という。)と株式会社B2の談合担当者であるA5が協議をし,株式会社B1と株式会社B2がJVとなって本件工事を受注する方針が立てられた。その結果,株式会社B1は,株式会社Eとの間で設計協力の約束を取り付け,さらに,株式会社Eからその見返りに図面をもらうなどして,本件工事の「選手」となるための条件面で他社よりも優位に立っており,そのことについては,競争相手となる可能性のある他社の談合担当者らに知れ渡っていた。
ウ その後,1回目の入札が行われたが,株式会社B1は,その際の予定価格が社内での見積額を大きく下回っており,受注しても採算がとれないと判断したため,応札しないこととした。そのため,株式会社B1の談合担当者であるGは,入札資格を有する他の業者の談合担当者らに連絡し,株式会社B1のほかに落札意欲のある業者がいないことを確認するとともに,株式会社B1に落札意欲があることを示した。
エ 2回目の入札の際には,株式会社B1において,見積額やその採算等に関する検討を重ねてこれに応札をすることを決定したが,Gは,既に1回目の入札の際,株式会社B1のほかに落札意欲がある業者がいないと判断したことから,改めて他の業者の談合担当者らにこの件では連絡をとらなかったが,その一方で,B4株式会社の談合担当者であるA7及びB3株式会社の談合担当者であるA6に連絡をとり,株式会社B1の決めた金額で入札するよう依頼した。A7及びA6は,いずれも自社において落札する意思はなかったが,業者間の慣行であるいわゆる「おつき合い」として,株式会社B1が確実に本件工事を落札できるよう協力することとし,Gが指定した金額で前記2(2)コのとおり応札した。
(2)  以上によれば,B1・B2JVが前記2(2)コのとおり本件工事を落札するにあたっては,前記(1)イないしエのとおり,株式会社B1,株式会社B2,B4株式会社及びB3株式会社の各談合担当者により,順次,同JVの受注に向けた話し合いが行われており,かかる話し合いは,刑法96条の3第2項所定の「談合」に該当する。
(3)  これに対し,弁護人は,「本件工事については,株式会社B1以外に受注意欲を持った業者が存在しなかった上,業者間における条件闘争や裁定は行われておらず,B4株式会社及びB3株式会社が入札に参加したのは,談合が行われていないことを装うための形式的なものに過ぎないから,談合罪における談合にあたらない」旨主張する。
しかしながら,①前記(1)アの建設業界のルールは,公共工事の競争入札において純粋な自由競争が行われると,いわゆる叩き合いとなって落札価格が低額化し,落札業者が十分な利益を確保できなくなる可能性があることから,業者間の共同の利益を保持することを主目的として慣行化されたものと解されること,②2回目の入札における株式会社B1の応札もまた,かかるルールに従って行われたものといえること,③B4株式会社及びB3株式会社の応札が前記のような経緯でなされたとはいえ,そのような競争者の存在は,株式会社B1が本件工事を自由競争によって落札したことを仮装するための有効な手段であること,④かかる仮装も,結局は,受注調整に参加している同業者間の相互利益を図ることを目的としており,前記(1)アの慣行に包含されると解されることなどからすれば,本件工事につきB4株式会社及びB3株式会社が実際には受注意欲を有していなかったことを前提としても,前記(1)イないしエの業者間の話し合いは,刑法96条の3第2項所定の「談合」に該当するとみるのが相当である。
したがって,弁護人の前記主張は採用できない。
(4)  さらに,弁護人は,「本件工事の入札については,a市が,予算に合わせるために,いわゆる『歩切り』を行って採算性のない工事を発注し,株式会社B1も無理にこれを落札しようとしているから,公正な価格が害されたことの立証が十分になされていない」旨主張する。
しかしながら,公共工事における競争入札は,可能かつ相当な範囲で,その工事費用を低額に抑えることをも企図しているものというべきであるから,前記(3)①のように十分な利益が確保された入札額は,そもそも,かかる企図に明らかに反しており,当該入札における公正な価格を害するものであることが,それ自体で相当程度推認される。しかも,株式会社B1において,1回目の入札では,予定価格が低すぎるとの判断から応札しなかったにもかかわらず,2回目の入札では,採算性等に関する検討をした上で,前記2(2)コの入札額で応札し,確実に受注できるよう他の2社に依頼して「おつき合い」による入札をさせ,正常な競争入札を装っていることからすれば,その額が株式会社B1の利益を十分に確保することが見込めるものでなかったとは考えがたい。
また,株式会社B2の工務部で本件工事の見積業務を担当していたHは,「株式会社B2が単体で受注した場合の直接工事費の応札ネットに近い価格は50億3700万円程度,最低価格(限界ネット)は48億7000万円となった,これらには一般管理費は含まれてはいないが,過去の実績で判断したものだから株式会社B2が後者の金額で工事を施工することは可能と考えている」旨供述し,本件工事の予定価格の積算を担当したC3室のIも,2回目の入札の予定価格につき,「国の積算基準に基づいて積算を行い,a市の基準に基づいて一般管理費等も通常通り算出しているので,一定利益を見込めると考えていた」旨供述しているところ,両名の供述に特段不自然,不合理な点は認められない。また,A4も,後記のとおり,2回目の入札に応札することを決断した理由につき,赤字を出さずに済む工事であると判断したからであると明確に供述している。
そして,B4株式会社及びB3株式会社の談合担当者においても,前記(1)アのルールの下で株式会社B1の円滑な受注のために「おつき合い」をしている以上,株式会社B1が自由競争によらずに自社の利益を図るべく応札したことを認識していなかったとは到底考えられない。
以上によれば,弁護人の前記主張は採用できない。
4  被告人の共謀の成否について
(1)  関係各証拠によれば,前記2及び3の各事実に加え,以下の事実が認められ,これらについては,被告人及び弁護人も概ね争いがない。
ア 被告人は,a市議会議員のJが,a市の公共工事に関し,建設業者と結託して談合しているなどという噂を聞いていたことから,A1とその対応を検討していた。
イ A1は,被告人から紹介されて株式会社K社長のLと知り合ったが,平成11年ころ,Lから株式会社B1の営業担当者のA4を紹介された。以後,A4は,LとともにA1方を訪問するようになった。
ウ Jは,平成11年,本件清掃工場の建設予定地の隣地である汚泥処分地の対策工事に関し,M株式会社が作成した資料をDに送付し,同工事についてM株式会社の案を検討してみてはどうかと提案した。被告人は,Dからその旨報告を受け,A1と相談して,株式会社B1の幹部と会うことになった。
エ 同年12月末ころ,被告人,A1,L,株式会社B1営業担当役員であるN及びA4がb市内にあるホテルOの会議室で面談した(以下,この会合を「O会談」という。)。
オ A1は,O会談以降,自宅でA4と会っていたほか,自身が議会で入手した本件清掃工場の案件を含む議会資料を,Lを介するなどして,株式会社B1側に渡していた。
カ 被告人及びA1は,A2を含めて3人でA1方で会うようになってからは,A2にJの談合問題について相談していた。
キ 平成14年秋ころ,被告人,A1及びA2がA1方で会った際,本件清掃工場の建設工事に関し,Jが,F株式会社とM株式会社に,プラントと建屋の建設工事を一括で受注させようとしているという談合情報が話題に上った。
ク 平成15年4月1日,A1は,A1方において,A2とA4を引き合わせた。
ケ 平成15年前半ころ,被告人の依頼を受けたA2は,a市役所において,被告人の同席の下,市の幹部らに,本件清掃工場について「談合防止のためにはプラントと建屋の工事を分離発注するのがよい」旨説明した。
コ 平成16年1月16日,被告人及びA1の依頼を受けたA2は,a市役所において,被告人の同席の下,A8,D,Pらに,本件清掃工場について「談合防止のためには,プラントと建屋の設計業務も分離して発注するのがよい」旨本件清掃工場の設計業務の発注方式について説明した。
(2)  A4及びA2の供述について
ア A4の供述内容
A4は,自身が本件談合を共謀したことを認めた上,被告人と本件談合の関わり合いなどについて,次のように供述している。
(ア) 平成11年春ころ,A1方で,A1から「Jが一部の業者とつながってa市の公共工事を牛耳っているので,業界調整によってこれを排除してほしい。市長も同様の考えである」と依頼された。その後すぐに,A3にA1からの依頼を伝えたところ,A3は「本件清掃工場については,既に株式会社B1が建設予定地の隣地を賃借している」と言っていた。そこで,A4は,A3の動きに沿って本件清掃工場を受注目標としようと考え,A1にもその旨伝えると「頑張って下さい」と言われた。
(イ) O会談の際,被告人の隣にいたA1から「a市では,Jが公共工事を牛耳って困っている。今後,清掃工場や火葬場といった大型の公共工事が発注されるので,Jとつながっている業者を排除してもらいたい。A3の力を借りて,受注調整をしてもらいたい」と依頼された。Nは,「できるだけのことはやらしてもらう」と約束した上,「清掃工場について,株式会社B1が受注できるように,よろしくお願いします」と株式会社B1側の希望を述べた。すると,被告人が「全部が全部,取ったら駄目ですよ」などと言ったので,A4としては,被告人が株式会社B1の希望を了承してくれ,本件工事について,いわゆる「天の声」が示されたものと判断した。その後,A4は,A3に対し,「市長及びA1先生から,Jにつながっている業者を受注調整で排除するよう依頼されるとともに,本件工事を株式会社B1が受注することを了承してもらった」と報告すると,A3から「しっかり営業してくれよ」と言われた。
(ウ) O会談後,間もなく,A4は,A1に,「本件清掃工場の受注のため,他社に先がけて資料を持っていることが必要である」と説明し,議会資料の提供を依頼した。A1は,これを了承し,以後,直接又はLを介して,本件清掃工場に関する議会資料を渡してくれた。入手した資料は,QないしRを通じて,株式会社B1の談合担当者に渡していた。
(エ) 平成14年10月10日,A4は,A1から,A2と被告人及びA1との関係や,A2が本件工事を株式会社B1に受注させることを肯定していることを聞き,後日,A1方で,A1からA2を紹介されたが,その際,A2から「談合はいかんというようなちんけなことは言わない。やるんだったらきっちりやれ。市長とA1先生に迷惑を掛けるようなことは絶対あかん」などと言われたので,「分かっています」と答えた。
(オ) A4は,かねてから,A1に「株式会社B1が本件工事を受注するためには,プラントと建屋の工事を分離発注することが必要である」と説明していたが,平成14年秋ころ,A1から「発注方式を検討する部門がある」と聞き,a市への分離発注の働きかけを依頼するため,平成15年の初めころ,分離発注と一括発注のメリット,デメリットに関する資料を作成してA1に渡した。また,A4は,同年6月,他の自治体の発注例等の資料も作成してA1に渡した。
(カ) 平成15年秋ころ,A4がA1に建屋の設計業務の発注方法やその時期について質問したところ,A1から「後日,プラントメーカーに発注される予定になっている」と言われた。そこで,A4は,A1に「それではプラントメーカーの意向の設計業者になり,プラントメーカーの意向のゼネコンになるので,業界調整はできない。プラントメーカーから設計業務は分離してもらいたい」と依頼した。その際,A1から「建屋の設計業務をプラント設備工事と一体にして発注するのは,全体工期が延びるからである」と言われ,工程表も見せられたので,A4は,部下に指示して,プラントと建屋の設計業務を分離しても工期は変わらないことを示す別の工程表を作成し,A1に渡した。
(キ) 1回目の入札の公告の10日前ころ,A4が,A1に,最終的な予定価格や参加資格となる経営事項審査の点数(以下「経審点」という。),予算,参加資格等を電話で尋ねたところ,A1は「調べて連絡する」と言った。そして,1回目の入札の公告の1,2日前に,A2から予定価格等の回答があった。A2は「本件工事を取るように」と言ってきたが,A4は「公告を見てから判断する」と答えた。
(ク) 1回目の入札の公告後,株式会社B1内で本件工事の見積を行ったが,見積額が予定価格を大幅に上回ったことから,株式会社B1では応札しないこととした。そして,A4は,平成17年7月26日,株式会社B1を訪問してきたA1に,株式会社B1は本件工事に応札しない方針であることを伝えたところ,A1からは「A2さんに話をしてくれ」と言われた。そこで,A4は,同月28日,A2と会い,株式会社B1の見積額や株式会社Eの見積額のメモを示して,金額の乖離が大きく,本件工事を応札するのが困難であるため,入札を流す旨説明したところ,A2は理解したようだった。その際,A4は,A2に「経審点も1600点程度に厳しくできないか。予算を見直す場合には,株式会社Eの設計金額程度にしてもらいたい」と依頼すると,A2は一度副市長に話してみると言った。
(ケ) 同年8月26日,A4は,A2と会った際,「次回の入札では,予定価格が元の工事の39億円に付属棟等の工事を合わせて15億円を増額し,54億プラスアルファで2,3億円増額された金額になる予定である」旨言われた上,「今度こそ株式会社B1が落札するように」と求められた。そこで,A4は,A2に「予定価格を60億円程度まで増額するよう,市に対して話してもらいたい」と依頼すると,A2から,副市長と打合せしてみると言われた。同月30日ころ,A4は,A2から電話で「A8さんも動いてくれたがこれ以上の増額は困難である。これで落札するように」と求められたが,「公告が出てから株式会社B1で落札するかどうか検討する」旨答えるにとどめた。
(コ) 同年9月中旬ころ,A4は,株式会社B1が株式会社Eから入手した図面を基に行った見積を検討して,本件工事は赤字を出さずに株式会社B1が受注することが可能であると判断した。そこで,A4は,同年10月7日ころ,A2に会い,「次回の入札では,本件工事を株式会社B1で落札する方針である」と伝えるとともに,「2回目の入札についても予定価格や経審点を教えてもらいたい」と依頼し,A2もこれを引き受けた。
(サ) 2回目の入札公告直前,A4は,A2から電話で本件工事の予定価格及び経審点等を教えてもらった。
イ A2の供述内容
A2もまた,自身が本件談合を共謀したことを認めた上,被告人と本件談合との関わり合いなどについて,次のように供述している。
(ア) A1,被告人及びA2の3人がA1方で集まるようになり,その集まりの際の話の中で,A1及び被告人から,両名がJと政治的に対立していることや,Jがa市発注の公共工事に関してゼネコンと組んで利権をむさぼっていることなどを聞いた。
(イ) 平成14年の秋ころ,A1方で,A1,被告人及びA2が集まった際,A1から「Jがゼネコンをプラントメーカーと結びつけて本件工事を受注しようとしている。これを防ぐため,本件工事は株式会社B1に取らせたい。株式会社B1には仕切りを頼んでいる。Nに話してある」などと打ち明けられた。また,A1及び被告人は,「本件清掃工場はa市の重要な案件で,いいものを作りたいのできちんとした立派な業者に取ってもらいたい」とも言っていた。A2は,それが官製談合になることを察知したが,二人との関係から,これに協力する気になり,その場で「株式会社B1やったら間違いないし,ええんと違うか」と言ってその話に賛成した。
(ウ) それ以降,A1から,Nの部下で本件清掃工場の受注に動いているA4に一度会ってほしいと何度も勧められた。その際には,被告人も同席していた。平成15年4月,A1方でA4に会ったが,その際,A2は,A4に「談合したらあかんなんて,ちんけなことは言わん,やるんやったらちゃんとやれ。Jみたいなややこしい議員が入り込んできておかしなことにならんように,ちゃんとやったってくれ。甲市長やA1先生に迷惑掛けるようなことあったらあかん」などと言った。
(エ) 平成15年1月ころ,A1方で,A1,被告人及びA2が集まった際,A1から「本件清掃工場建設工事はプラントメーカーに対する一括発注になっているが,F株式会社とM株式会社がつながっており,一括発注では建屋をM株式会社がとり,株式会社B1に工事を受注させることができなくなる。建屋とプラント設備とを分離発注にするのはどうか」と尋ねられたので,「分離がいい」と答えた。
(オ) 同年5月か6月ころ,A1方で,A1,被告人及びA2が集まった際,A1から「分離発注やゼネコンに一括発注するという方法はどうか」と尋ねられたが,A2は,「ゼネコン一括発注については,工事の特殊性から無理であろう」と答えた。さらに,A2が「分離については,市長が直接言えばいい」と言ったところ,A1及び被告人から「それではトップダウンになってしまうので,今更できない。談合の防止にでもなるということで分離発注にするよう市に説明してほしい」と言われ,市の幹部への説明を引き受けた。そして,そのころ,A2は,a市役所において,A8,D及び数名の幹部の前で,被告人から,本件清掃工場について,談合情報が上がっているかを尋ねられ,ある旨答えると,それを防止する方法を聞かれたことから「プラントと建屋を分離発注にすれば談合防止に役立つ」旨の説明をした。すると被告人は,「今のA2さんの意見を参考にして十分検討するように」と幹部らに告げた。その説明の後,被告人から電話でお礼を言われた。
(カ) 平成16年1月ころ,A1方で,A1,被告人及びA2が集まった際,A2は,A1から「市の方ではプラントメーカーに建屋の設計もさせる流れで計画が進んでいる。設計も分離した方がいいよな。株式会社B1の方から設計業務を分離してほしいと頼まれている。工事の分離発注と同様,設計も分離する方向で談合防止になるということで市の幹部に説明してほしい」と頼まれ,これを引き受けると,A1と被告人は喜んでおり説明日の検討をしていた。同月中旬ころ,A2は,a市役所において,被告人,D,A8及びPらの前で,「プラントメーカーの談合のうわさがある以上談合される。建屋の設計業務を別途競争入札という形で分離して発注したらどうか」との説明をすると,被告人が「今のA2さんの意見を市としてよく聞いて検討して考えてくれ」と幹部らに告げた。その説明の後,被告人から電話でやはりお礼を言われた。
(キ) 平成17年7月10日ころ,A1から「入札が近付いてくるんで,A8さんと株式会社B1のA4さんの調整役をして欲しい。A8さんから情報を聞いてA4さんに伝えてやって欲しい」と言われた。そこで,A2は,同月19日ころ,A8と副市長室で会い,「予定価格が39億ぐらい,経審点のP点は,単体で1400点以上,JVで1200点以上,Y点が500点以上の条件となる」と聞いた。A2は,その後すぐにA8から聞いた予定価格や経審点をA4に伝え,「ちょっと安いようだがこれで取って欲しい」旨言ったが,A4は,予定価格が余りにも安すぎるという反応を示し,「ひょっとしたら流すかもしれない」と言っていた。そのため,A2が,A1に「A4が『予定価格が安すぎるから株式会社B1が取りに行くのはしんどい。流すかもしれない』と言っていた。補正予算でも付けて金額を上げたったらどうか」と話すと,A1は「それは難しいので,(株式会社B1に)取るように言って欲しい」と言った。同様の話は,被告人にもしたと思うが困った様子だった。その際,被告人が「補正予算を組むということであれば,自分が議会で頭を下げなあかんし,そんなことはできない」と言ったので,A2は「議会で頭ぐらい下げたらええがな」と言った。
(ク) 同月28日,A2は,A4と会い,A4から積算金額や予定価格を書いた紙を見せられ,「これでは無理だから今回は流したい。せめて株式会社Eの出した金額に近い額にしてもらいたい。経審点も上げてもらいたいと市のほうに言って欲しい」と言われた。株式会社B1が入札を流す意向であることは,A1にも伝えた。
(ケ) 1回目の入札が不調になった後,同年8月20日ころに,A1方で,A1,被告人及びA2が集まった際,A1から「次は何が何でもB1さん(「株式会社B1」の隠語)に取ってもらわなあかん。次は頼みます」などと言われた。そこで,A2が,A1と被告人に「市の方も金額を上げるように」と言うと,A1と被告人は「分かっている」と言っていた。
(コ) その後すぐ,A1から電話で,「A8から『本件工事に,別に発注する予定であった工事をくっつけて,更に2,3億プラスアルファした形で工事費を増額する』と聞いてきた。56から57億くらいになる。これでA4と調整してほしい」と言われた。
(サ) 同月26日ころ,A2は,A4と会い,A1から聞いた増額の話をそのままして,落札を依頼した。A4は,「最低60億くらいにして欲しいので,市のほうに金額を上げるよう掛け合って欲しい」と言っていたが,反応は悪くはなかった。
(シ) 同月の終わりころ,A2は,副市長室へ行き,A8に「もうちょっと上がらないか。株式会社B1は60億くらいを希望している」と話したが,A8は「これ以上は無理だ」と言っていた。また,A8は「経審点はP点が単体で1500以上に上がる」などと言っていた。A2は,その後すぐ,A8の話を電話でA4に伝え,「今度は確実に落としてもらいたい」と依頼したところ,A4は「自分の一存では決められないが,持ち帰って検討します」と答えた。
(ス) 同年10月8日ころ,被告人は,A4と会い,A4から「うちのほうでいかしてもらいます。入札の条件,スケジュール,予定価格を聞いてほしい」と言われた。A2は,すぐにA1に電話して,株式会社B1が落札する方針であることを伝えた。
(セ) 同月中旬ころ,A2は,A8と副市長室で会い,A8から「予定価格が56億あまり,経審点が単体で1500点,JVで1300点以上」と聞き,「これでよろしくお願いします」と頼まれた。その後,A2は,A8から聞いた予定価格や経審の点数をA4に伝え,「もうこれで間違いなしに取るよう」に言ったところ,A4は「分かってます」と答えた。
ウ A4及びA2の供述の信用性
(ア) A4の供述について
A4は,個々の出来事の具体的な日付については,適宜,自身の手帳の記載等を参照しつつ記憶を喚起していたことが窺われるものの,A1と知り合ってから,Jの問題を聞かされ,O会談を経て,本件工事を落札・受注するまでの間のA1,被告人,A2らとの交渉状況等について,極めて具体的かつ詳細に供述しており,その供述内容に特段不自然,不合理な点は認められない。
また,A4の供述中,A1から議会資料を入手していた点や,A1に分離発注や工期に関する各種資料を提供した点に関しては,当時の部下であったRの供述ともよく符合している。
そして,A4は,記憶にあることと記憶にないことを明確に区別して供述しているところ,平成11年という古い時期のこととはいえ,O会談は,特定建設業者のみが市長及び市議会議員という要職にある者と市庁舎外のホテルという非公式な場で直接面談するという特殊な状況で行われたものである上,その際A1及び被告人とやり取りした内容も,極めて特異な内容であったことから,A4にとってもそのような場面は極めて印象的な出来事であったと考えられることからすれば,A4がその際の被告人及びA1とのやり取りの状況を誤って認識ないし記憶したとは相当に考えにくい。
さらに,A4は,その供述時,本件談合及びこれに関連するA1に対する贈賄事件につき,既に執行猶予付き懲役刑の有罪判決を受けて,これが確定していた上,本件に関わるような民事事件でも関係人とはなっておらず,本件談合当時に勤務していた株式会社B1も既に退職していたところ,かかるA4において,敢えて被告人に不利な虚偽の供述をする理由があるとは考えがたいし,その供述内容からしても,被告人に無実の罪を押しつけて,A4自身や株式会社B1の法的責任・社会的責任を回避するなどしている様子は全く窺われない。
加えて,A4は,公判廷において,「捜査段階で検察官には,O会談の際に主に発言したのはA1である旨供述したが,主に発言したのは被告人である旨の供述調書が作成された。検察官に訂正を申し入れたが聞き入れられず,検察官から,そのように述べている人がいると言われた。A4からみれば,A1と被告人は2人でセットであり,大きな違いはないと考えて署名指印した」などと供述しているところ,かかる供述態度は,捜査段階の供述調書に記載されていることとは異なる内容であっても,公判廷においては,記憶に忠実に真実を述べようとするA4の真摯な姿勢を窺わせるものといえる。
これに対し,弁護人は,O会談が行われた平成11年の時点では,未だ本件清掃工場の建設工事は具体化しておらず,いわゆる「天の声」が出せる状況ではなかった旨主張する。しかしながら,関係各証拠によれば,本件清掃工場の建設は,a市にとって,必要性の高い重要な公共事業の一つであったこと,株式会社B1においては,O会談の約4年前という時点から,談合担当者のA3らが,本件清掃工場の隣接地を借り受けて受注調整の条件獲得に動いていたこと,Jにおいても,O会談当時,前記(1)ウのように,特定建設業者と結びついて本件工事に関心を抱いていることを窺わせる動きを示していたこと,被告人及びA1においても,かかるJの動向を踏まえて,O会談に臨んでいることがそれぞれ認められるところ,かかる状況に照らしてみれば,O会談が行われた時点において,本件清掃工場の建設工事に関心を示す建設業者間の条件闘争は既に開始されており,かかる条件闘争の中で,株式会社B1関係者が被告人と私的に面談した機会をとらえて,最後の切り札ともなり得る発注者側の「天の声」を得ることは,業者にとって十分に意味があったものとみるのが相当である。したがって,弁護人の前記主張は採用できない。
また,A3は,本件談合にかかる自身の公判において,「A4から,本件清掃工場に関して『天の声』が出されたと聞いた記憶はない」旨供述しているところ,当該供述は,取り立てて本件談合の成立を争わず,自身がこれに関与したことも認めるA3が,情状立証のための被告人質問においてしたものに過ぎない上,A3においても,A4にそのように言われた可能性を積極的に否定しているわけではないことを考慮すれば,A3がかかる内容の供述をしていることは,O会談で被告人から前記の発言を聞いてこれを「天の声」と受け止めたとするA4の供述の信用性を特段減殺するものではないというべきである。
以上によれば,A4の前記供述には高い信用性が認められる。
(イ) A2の供述について
A2は,本件談合における自身とA1,被告人,A4,A8らとの間のやり取りを具体的かつ非常に詳細に供述しており,その供述内容は,その主要部分については主尋問,反対尋問を通じてほぼ一貫しており,取り立てて不自然,不合理な点は存しない。
そして,その供述内容は,前記2で認定した前提事実によく沿っているばかりか,前記(ア)のとおり高い信用性が認められるA4の供述とほぼ符合している上,後記(3)ア(イ)のとおり本件談合を共謀したこと自体は否定しているA1の公判供述とも,実質的に一致する部分が多々存在する。
なるほど,弁護人が指摘するように,A2は,本件及びこれに関わる収賄罪で起訴されていた者であるから,自己の刑責を少しでも軽減すべく,被告人を含む関係者に責任を転嫁する動機があり,その供述の信用性は慎重に検討する必要があるといえる。しかしながら,A2は,本件の証人尋問の時点においては,全ての事実を認めていた一審に引き続いて量刑不当で上訴していた控訴審でも既に実刑判決を言い渡されていた上,上告中ではあったものの,「最高裁で刑が覆るということはないと思っている」旨の供述をしていたことに鑑みれば,かかる責任転嫁の危険性は,相当程度低下していたというべきであるし,検察側に迎合して事実から乖離した供述をする必要性も乏しかったというべきである。しかも,A2は,本件談合罪だけでなくこれに絡んで,単独で1000万円を株式会社B1側から受領した収賄罪との併合罪で前記実刑判決を受けていたもので,後者の罪が前者の罪より遙かに重く,これが自分の量刑を大きく左右したことは,長年警察官をしていたA2には容易に理解できたはずであり,自らの裁判の上告審の段階で,談合罪で自己の果たした役割を実態よりも控え目に供述してみたところで,それが必ずしも自分に有利に働かないことについても理解していたと考えられる。そして,A2の供述内容をみても,被告人及びA1との関係において,自身が連絡役等の従属的立場にあったことを強調するかのような部分もないとはいえないが,その反面,被告人やA1に対する自らの提言や,A4に対する働きかけに関しては,自身の積極的な言動も包み隠さず供述していることが窺われる。
また,弁護人は,A2が,自身の控訴審の被告人質問において,収賄の経緯等については,捜査段階や一審とは異なる内容の供述を一部していたことを問題視するが,そもそも当該収賄の事実は,本件談合における被告人の罪責に直接関係するものではない上,A2が,控訴審において,自己に有利な情状を強調したいという思いから,刑責が重い収賄事件について一審における供述とは異なる供述をした可能性も十分考えられるから,A2のかかる供述の一部変遷は,本件における同人の供述の信用性を特に減殺するようなものではないというべきである。
さらに,弁護人は,A2が,平成16年1月初旬,b市内の料亭で,被告人及びA1と3人でA1の快気祝いをすることになっていた席に,特別の意図をもって独断でA4を呼びつけながら,A1がA4に連絡したと嘘を言っていることから,A2の供述は信用しがたいという。関係各証拠によれば,なるほど,A4を前記料亭に誘ったのはA1ではなく,A2であったとみるのが相当であり,この点に関するA2の供述は信用することはできず,A4を誘ったことにつきA2に何らかの思惑があった可能性もあながち否定できないが,前記料亭の席において,本件談合に関わるようなやり取りが全くなされなかったことは明らかである上,前記出来事の存在が,本件談合の経過や共謀の形成過程等に影響を及ぼした形跡は見当たらず,本件犯行状況等に関するA2供述の主要部分の信用性を何ら左右するようなものとはいえない。
その他,弁護人がるる主張するところを子細に検討しても,本件に関するA2供述の主要部分の信用性を左右するような事情は見いだせない。
以上によれば,A2供述の主要部分には信用性が認められる。
(3)  A1の供述について
ア 供述内容
(ア) 捜査段階の供述(検察官調書謄本)
A1は,捜査段階における検察官の取調べにおいて,自身が本件談合を共謀したことを認め,次のように供述している。
① A1は,O会談よりも前に,A4に対し,株式会社B1が本件清掃工場を落札することを被告人ともども承認して協力する旨を表明していた。
② O会談においては,被告人が株式会社B1側にJの影響力排除について説明した。その際,Nが「清掃工場について頑張りたい」と言ったところ,被告人は,「いいですが,全部が全部株式会社B1というわけにはいきませんよ」と答えていた。
③ A1は,株式会社B1が本件工事を受注する意欲を持っていると知りながら,株式会社B1の意向に応じて,議会資料を渡したり,株式会社B1の要望を市側に伝えるなどした。このような資料の内容やその入手時期が,当該業者の受注に向けた努力を示すものとして受注調整において力を持つことは,LやA4から聞いて知っていた。議会資料を渡すことについては,被告人の了解も得ていた。
④ 平成14年ころ,A4から「(本件清掃工場の)プラントの工事部分と工場棟などの施設部分とを分離して発注して欲しい」との申し入れを受け,そのころA2からも「Jの関係するプラントメーカーとゼネコンが組んで受注するのを防止するためには,焼却炉と建屋の建設を分離して発注するのがよい」とアドバイスされた。そこで,A1は,被告人と資料等を検討した上,分離発注にするのがよいと思ったが,市長である被告人が分離発注がよいと提案した場合,被告人がゼネコンの利益を考えて提案したとの批判を受けかねない一方,A2であれば,警察官が談合防止のためにそのような提案をしていると見えるため,A2に市職員への説明を頼んだ。
⑤ 被告人とA1は,分離発注の関係でA8をA2に紹介することを相談し,平成15年夏前ころ,被告人がA8をA2に紹介した。また,被告人は,そのころ,A2に「A8さんには,前もって言うてある。A8さんには全部話してくれていいから」などと言っていた。
⑥ 平成16年秋ころ,建屋の予算の残額が40数億しかなく十分でないことを知り,これをA4に話した際,市が株式会社Eに積算の減額を求めていると聞かされたので,「株式会社Eには,株式会社B1から,減額しないで頑張るよう言ったほうがいい」とA4にアドバイスした。また,A4から「経審点を厳しくしてもらいたい」と言われたので,A1は,受注調整のためだと承知しつつ「A2のほうが詳しいから,A2を通じて市の方に言ってもらったらどうか」と提案し,A2にもその旨連絡した。
⑦ 平成17年夏前ころ,A4から電話で「株式会社B1の見積が60億を超えそうなのに,市は40億という話のようなので,何とかして欲しい」と言われたが,A1に予算増額の権限がなく,議員として動ける時点でもなかったので,「1回議会を通った予算なんやしねえ。それに,まだ公告もないしねえ」などと言った。入札公告の何日か前ころ,A4から電話があり,予定価格と経審点について聞かれたので,A1は,時期的に自ら動くのを差し控え,代わりにA2に対し,A8に聞いてA4に教えるよう頼んだ。A1が同年7月23日にオーストラリアから帰国した後,A2が,A1に予定価格と経審点を教え,「株式会社B1は『この額ではしんどい』と言っている」と怒っていたので,A1は,A2に「何とか株式会社B1に工事取らせるよう言ってください」と頼んだ。公告の数日後,A1は,A4から「今回は不調にします,次はもう少し金額を考え直してもらえませんか」などと言われたので,「何とかなりませんのか。A2さんとも話してみてくれませんか」と言った。A1は,A2に再び株式会社B1への説得を頼んだが,数日後A2からも「株式会社B1は流すと言っている」と立腹した様子で言われた。そのことをA1が被告人に伝えると,被告人は,「困ったなあ」と言っていた。
⑧ 1回目の入札が不調になって間もなく,A1方にA1,被告人及びA2が集まった際,A1がA2に「次の入札は絶対に株式会社B1に取らせて欲しい」と頼み,被告人もこれに同調していると,A2から「市の方でも金額の見直しはしてもらわんと」と言われた。それに対し,被告人は,「まあ,現場がちゃんとやりおるやろ」と答えた。
⑨ 予算増額の検討状況を聞くとともに,その理論武装を依頼する目的で,1回目の入札の10日後ころ,副市長室に行き,補正予算について,A8に「どんな具合ですか」と聞くと,A8は「本体だけでは予定価格を増額するわけにはいきませんから,付属工事なんかを加えて増額する予定です」などと言った。さらに,A1が「どのくらい増額できそうですか」と質問すると,A8は「15億円とあと2,3億くらいでしょうか」と答えた。A1は,そのころ,A2にA8から聞いた増額の話を伝え,「これで株式会社B1を説得して欲しい」と頼んだ。その数日後,A2は,「株式会社B1がまだ上げてくれ」と言っていると激怒しており,「A8さんに話をしたけど,これ以上の増額はできないと言っていた。あの金額で株式会社B1に行かすしかない」と言うので,株式会社B1への説得を頼んだ。
(イ) 公判供述
他方,A1は,公判廷において,本件工事に関し,株式会社B1の担当者らが受注調整を行い,それにより株式会社B1が落札することが事前に決まっていたことは知っていたが,自身が本件談合の共謀をしたことはないとして,次のように供述している。
① A1は,L及びA4に,a市議会の状況やゼネコン業界におけるJの影響力について相談していたが,Lから「業界を仕切っているのは株式会社B1であるから,a市の状況を株式会社B1に直接説明し,Jの後ろ盾がある企業が受注しないよう依頼してはどうか」と言われたため,被告人と相談した上で,O会談をセットしてもらった。そのころ,A4から「清掃工場を頑張りたい。よろしくお願いします」と言われたことはないし,A1が「頑張らはったらどうですか」などと言ったこともない。また,そのころ,A1は,Jが本件清掃工場と隣接する汚泥処分地の封じ込めの工法を記載したM株式会社の図面をa市に入れてきたことを聞き,そのままではM株式会社が本件工事の受注について有利になってしまい,問題だと感じていた。
② O会談では,被告人が株式会社B1側にa市の政治状況について説明し,A1が補足する形で「Jが後ろ盾になっている企業はaに入ってこないようにして欲しい。特に,今後大きな公共工事が控えているので,これについてはそのような形にならないように配慮してもらいたい」と申し入れ,了承された。同会談では,汚泥処分地の問題の1つの例として,汚泥処分地のコンサルタント会社の話題も出た。また,本件清掃工場の話題も出たが,株式会社B1から「本件清掃工場の工事を受注したい」という話はなかったし,被告人が「全部が全部株式会社B1というわけにはいきませんよ」と発言したこともなかった。
③ 被告人とA1は,A2から「株式会社B1の本社に捜索に入った」という話を聞かされたことから,O会談のことをA2に変に疑われないため,その内容を全部A2に話した。A2は,「そういう状況のことを相談するのに間違った相手ではない」などと言った。
④ A1は,株式会社B1側から「J排除のために資料が必要である」と言われていたため,Lを介して,議会資料を渡していた。議会資料を渡していることについては,どの資料を渡したのか細かくは報告していなかったが,被告人には話していた。
⑤ A1がA2とA4を引き合わせた際,A2は「談合はあかんというようなちんけなことは言わん。市長やA1に迷惑をかけるな」などと言っていた。A2とA4を引き合わせたことについては,事前にも事後にも被告人に報告した。事後の報告を聞いた被告人は,露骨な話が多く出ていたことから,「難儀やな」と言っていた。
⑥ 本件清掃工場の工事について,株式会社B1側から何らかの要望を受けたことはなく,A4から「本件清掃工場の建屋部分とプラント部分の工事を分離してもらいたい。そうでないと受注調整が仕切れない」などと言われたこともない。
⑦ A2から「F株式会社とM株式会社がJによって結び付いてる」と言われ,さらに,後日,A2から「Jの描いている構図を崩すには分離発注すればよい」と言われた。それに対し,A1は「a市は一括発注なので,違う方式に変えることはできない」と言い,被告人も「発注方式を市長から指示することはできない」と言った。その結果,A2に警察官の立場からa市側に談合情報を説明してもらうことを依頼した。
⑧ 1回目の入札の公告の前に,A4から予定価格や経審点の縛りについて尋ねられたことはなく,A2に「A8から情報を聞いて,A4に伝えてもらいたい」と依頼したこともない。
⑨ 1回目の入札の公告後で,その入札の前ころ,A2が「A4が『公示の価格が安い』と言って,言うことを聞かない」と言っていた。そのとき,「不調になったら困る」という話は出たかもしれないが,A2に「株式会社B1に取るよう言ってもらいたい」と依頼したことはない。1回目の入札の公告後,Lから,a市の予定価格と株式会社Eの価格を比較したメモを見せられ,「こんな状況ではどうにもならない」と言われた。「株式会社B1が取らないかもしれない」という話は被告人にも伝えた。1回目の入札の公告後,入札までの間には,A4と会ったことも,電話で話したこともなかった。
⑩ A2から「株式会社B1がいかない」という話は聞いたが,そのときA2に「A8に言っておいたほうがいいのではないか」と言ったことはない。
⑪ 平成17年8月20日ころ,A1方で,A1,被告人及びA2が集まった際,A2が,a市役所の積算を批判し,「2回目は価格を上げなければならない」と言ったが,被告人は「それは役所が考えることだ」と言っていた。その際,A2に「次は必ずA4に取らせて欲しい」と依頼したことはないし,A2が株式会社B1側の意向を受けているとも思っていなかった。
⑫ A2は「2回目の入札公告までに,株式会社B1に取るよう何とか言ってやる」と言っていたが,そのことは被告人に報告した。
⑬ 株式会社B1が応札することは,2回目の入札の公告後,その入札の前にA2から聞き,被告人にも「株式会社B1がいけるようだ」と報告した。
イ 検察官調書謄本の特信性等について
(ア) 弁護人は,A1の検察官調書謄本(甲62,64ないし67)につき,A1を取り調べたS検察官は,体調が悪いA1を長時間取り調べ,その言い分を聞かず,調書の訂正にも応じず,A1自身の弁護人に不信感を抱かせるような発言をしてA1を混乱させた上,その取調べは可視化されていないから,特信性の立証はなされていない旨主張する。そして,A1は,当公判廷において,その取調状況につき,「S検察官は,訂正を申し入れても調書を訂正してくれず,同検察官から『否認するというのがどういうことか分かってるのか。ずっとここにおったらいい』などと言われたため,早く出たいという気持ちから署名をしてしまった」旨供述している。
(イ) しかしながら,A1は,本件談合の共同正犯及びそれに関連する収賄事件の正犯として別に起訴され,自身の公判で各公訴事実を争い,本件の証人尋問時点においても未だ一審公判が係属中であったところ,かかるA1が,自身の公判における弁解と同様の供述をしてその刑責を免れようとしたり,社会的評価を保持したりするために,自身の本件談合への関与やそれと密接に関わる被告人の関与のみならず,自分の取調状況についても,本件の証人尋問において虚偽供述をする動機は十分に認められる。
また,後記ウ(イ)のとおり,A1の公判供述の内容には,不自然不合理な部分が少なからず存するのに対し,A1の検察官調書謄本にかかる供述は,具体的かつ詳細であり,特段不自然,不合理な点も認められない上,前記2認定にかかる前提事実によく沿うもので,信用できるA4やA2の各供述ともほぼ符合している。
(ウ) 他方,A1は,当公判廷において,S検察官の取調時の言動についての不満をるる供述するが,それらの言動が,自身の供述のどの部分にどのような理由で影響を及ぼしたかについては,具体的な説明が欠けている。
また,A1の検察官調書謄本には,A1以外の者は供述していないと解されるA1の言い分や個人的事情等も記載されている上,A1の本件公判供述と実質的に一致する部分も多々存在し,かかる内容の供述をS検察官がA1に押しつけたとはにわかに考えがたく,同検察官がA1の訂正申し入れに何ら応じなかったとも考えにくい。
さらに,A1は,逮捕前から本件につき弁護士と相談していた上,逮捕後の身柄拘束中も弁護人とほぼ毎日接見し,その間に捜査への対応についての法的アドバイスを受ける機会が十分にあったとみられ,かかるA1がその意に反する検察官調書に安易に署名指印するとは相当に考えにくい。
加えて,S検察官の供述からも,同検察官において,弁護人が主張するようなA1の身体状況に配慮せず長時間にわたる取調べをしたり,説得の領域を超えて違法不当な発言をしたことは窺われない。
(エ) なお,弁護人は,S検察官の証人尋問調書(速記録)(甲95)を,A1の前記検察官調書謄本の特信性を判断するための資料として採用したことは違法である旨主張するところ,証拠能力の要件の立証には厳格な証明を要しない(最一小判昭和28年2月12日刑集7巻2号204頁,最二小判昭和28年10月9日刑集7巻10号1904頁)上,同証人尋問調書は,A1自身の談合,収賄事件において,A1の検察官調書の任意性を立証するために行われた証人尋問にかかるものであり,同事件の公判において,捜査段階から引き続き受任し,A1から詳細に事情を聴取することができた同人の弁護人が反対尋問し,その反対尋問が量,質ともに十分なものであったといえること,被告人の弁護人も,当公判において,検察官によるA1の2号書面の請求が予想される審理状況下で,A1の取調状況についてA1自身に尋問をしており,この点について被告人に防御の機会が与えられていたことなどにかんがみると,弁護人の前記主張は採用できない。
また,弁護人は,甲第64号証及び甲第65号証の各検察官調書謄本につき,検察官が当公判廷でそれらの署名の同一性をA1に確認していないから,それらについて作成の真正が立証されていない旨主張するところ,これらに記載された供述者の署名と,取調済みの他のA1の各検察官調書謄本(甲62,66,67)の供述者の署名(これについては当公判廷でA1が自身の署名であることを認めている)とを比較すれば,いずれの署名もすべてA1自身の筆跡によるものであることが優に認められるから,弁護人の前記主張も採用できない。
(オ) 以上によれば,A1の検察官調書謄本にはいずれも特信性が認められ,他に証拠能力を欠くような事情も存在しないからこれらには証拠能力が認められる。
ウ 信用性について
(ア) まず,A1の捜査段階の供述の信用性についてみるに,その供述内容は,具体的かつ詳細であり,特段不合理,不自然な点も認められない上,前記2認定にかかる前提事実に沿うもので,信用できるA4及びA2の供述ともよく符合している。加えて,前記イでみたことも併せ考慮すれば,A1の捜査段階の供述は十分に信用できる。
(イ) これに対し,A1の公判供述の信用性をみるに,同公判供述は,全体的にかなり曖昧とはいえるものの,そのうち,A1がA4とA2を引き合わせたことや,本件工事を株式会社B1が落札することを入札前に知っていたことなどを認める部分については,信用できるA4及びA2の供述と符合する上,そのようなA1自身に不利益な事実についてA1が虚偽の供述をする理由もないことからすれば,相応に信用できる。
他方,A1及び被告人が株式会社B1に本件工事を受注させるべく積極的に行動したことを否定する部分については,①A1の公判供述を前提とすると,株式会社B1側は,営利を目的とする民間企業でありながら,被告人らからの見返りも求めず,その期待もなくして,Jの利権排除を求める被告人らの要望に応じて受注調整の約束をしたことになり,不自然不合理であること,②A2において,A4と引き合わされた際,A1の面前で前記ア(イ)⑤のように談合を容認するかなり露骨な発言をしていながら,その後は,A2自身が株式会社B1のために積極的に行動していたことをA1に隠し立てしていたとは考えにくく,かかる隠し立てをしていたはずのA2が,前記ア(イ)⑫のような発言をいきなりA1にするというのもかなり不自然で一貫性に欠けた行動といえること,③信用できるA4及びA2の供述と明らかに食い違うことを考慮すれば,当該供述部分を信用することは困難である。
したがって,A1の公判供述中,客観的事実とA4及びA2の供述に符合する部分は信用できるが,それらに反する部分は信用できない。
(4)  被告人の供述について
ア 供述内容
(ア) 捜査段階の供述
被告人は,捜査段階において,検察官に対して,自身が本件談合を共謀したことを認め,次のように供述している。
① 被告人は,自身と政治的に対立しているJがa市の公共工事で利権をむさぼっていると聞いていたことから,Jの力を削ぐことによって,市政を円滑に運営していくため,a市の公共工事からJの関係する業者を排除したいと考えていた。
② A1と相談して,ホテルOで株式会社B1の幹部と会ったのは,Jを排除するための受注調整を株式会社B1に依頼するためだった。その席で,まず,株式会社B1側から汚泥処分地の汚染地下水等の拡散防止のための工法について説明を受けた上,被告人及びA1が「Jの勢力を排除したいので,株式会社B1に業者間の調整をして欲しい」と依頼したところ,株式会社B1側はこれを快く了承した。その際,株式会社B1側から「本件工事を株式会社B1が受注したい」と言われたが,自分達が依頼をしている立場上断ることができずに,「それは,がんばってもらったらいいですけど,あんまり好き勝手に全部ってわけにはいきませんよ」と言って,釘を刺しつつも,株式会社B1が本件工事を受注することを了承する旨の発言をした。
③ 被告人及びA1は,平成14年秋ころ,警察官であるA2に自分たちの計画を打ち明けて株式会社B1の「お目付役」になってもらえば,確実に株式会社B1を自分達の意向通りに動かすことができると思い,A2にO会談の内容を話したところ,A2は,「いいんやないか。株式会社B1にとらせたらいいわ」などと言って,本件工事を株式会社B1が談合により受注することを了承してくれた。
④ A2から「Jが特定のプラントメーカーやゼネコンと結託して,談合により本件工事を受注させようと画策しているらしい」と聞き,さらに,A1方で被告人,A1及びA2が集まった際,A2が「J排除のための方策として,プラント部分と建屋部分とを分離して発注すればいい」と提案してきたが,a市職員に働きかけ,分離発注の結論となるようにし向けるには,警察官であるA2から説明したほうが説得力があると思い,A2にa市職員への説明を頼み,これをしてもらった。
⑤ 平成15年10月ころ,検討委員会での検討結果の報告を受けたが,設計がプラントメーカーへの一括発注となっていたので,プラントと建屋の設計業務も分離する方向で検討し直して欲しいと指示した。そして,平成16年1月ころ,A2に依頼し,「分離発注の趣旨を徹底するためには,建屋部分の設計もプラント部分から分離して発注すべきだ」などと市職員に説明してもらった。
⑥ 被告人は,担当職員が本件工事に関する増額の補正予算案を策定して市議会に議案提出をすべく決裁を上げてきた際,2回目の入札予定価格が増額されることで株式会社B1が落札してくれたらいいと思いながら,これを了承して決裁した。
⑦ 談合が法律上許されないことは以前からよく分かっており,本件工事に関しても,自分たちの計画通りに株式会社B1が談合により落札受注することにより,自由競争原理下の入札に比べて落札価格が引き上げられ,その分a市から余分な税金が流出し,同市に損害を与えることは分かっていた。
(イ) 公判供述
他方,被告人は,公判廷において,自身が談合を共謀したことはなく,業者が談合をしていること自体を認識していなかったとして,次のように供述している。
① Jが汚泥処分地の件でM株式会社の工法を記載した図面をa市に入れてきたため,A1に相談したところ,Jは汚泥処分地の工事で談合をしようとしているのではないかということで意見が一致した。そこで,既に工法を決めるコンサルタント会社の入札が行われていたことから,そのコンサルタント会社がM株式会社と関係があるかどうかを確認するため,Lのアドバイスにしたがって株式会社B1の幹部に会うことになった。A1との間で,a市の公共工事についてJの影響力を排除するために受注調整を依頼しようという話をしたことはない。
② O会談では,株式会社B1側から,既に決まっているコンサルタント会社がM株式会社とは関係ないことを聞いたほか,汚泥処分地の工法が複数あるのかについても質問した。その際,Jがa市で談合をしているという話はしたが,Jの息のかかった業者がa市の工事に参入してこないように調整を依頼したことはない。また,株式会社B1側から,a市でどんな工事があるか聞かれたため,清掃工場,火葬場,文化ホール等があると答えたところ,株式会社B1から「頑張りたい」という話はあったが,被告人は「そうですか」と軽く答えただけだった。
③ その後,A1が株式会社B1に情報提供していることは聞いていなかった。
④ 平成14年秋ころ,被告人とA1は,A2から株式会社B1に捜索に入った話を聞き,後でA2に誤解を与えないようにするため,A2にO会談のことを話したところ,A2は「会っただけなら大丈夫だ」と言っていた。
⑤ 平成14年末ころか平成15年初めころ,A2から,「Jが本件清掃工場の工事に関してF株式会社と組んで談合しており,このままでは事件になるかもしれない」と言われた。被告人がA2に対策を尋ねると,A2は「分離発注にすれば,今ある談合の形を崩せるので防げる」と言った。当時,発注方式については検討会議に任せていたが,被告人は,専門家の意見を職員に知ってもらい,情報を共有して理解してもらいたいと考え,A2に職員への説明を依頼した。そして,平成15年春ころ,A2にa市役所で説明してもらったが,その際,A2は「本件清掃工場ではプラントメーカーを中心に談合がされているので,それを防ぐためには分離発注が有効な手段であると考えている」と説明した。
⑥ 平成15年7月,検討会議で本件工事を分離発注することに決まった旨の報告を受け,同年10月,検討委員会でも本件工事を分離発注することに決まった旨の報告を受けた。他方,市職員のTから,建屋の設計をプラントメーカーにしてもらう旨の報告がなされたので,それでは分離発注を基本とする検討会議の結論に反すると思い,「それでは趣旨に反する。おかしいのではないか。もう一度検討するように」と指示した。
⑦ 平成16年1月ころ,A2が「設計をプラントメーカーにさせたら,プラントメーカーの意向が反映され,厳密な意味で分離発注にはならないのではないか」と言ったので,そのことについても市職員に説明してほしいと頼んだ。その説明の際には,A8,P及びDがいたと思う。A2は「本件清掃工場について談合されている。談合防止については分離発注が望ましい。設計をメーカーにさせると厳密には分離発注にならないのではないか」と説明していた。説明後,A2から「あれでよかったのか」と聞かれ,「よかった」と答えた。
⑧ 1回目の入札が不調になった後の平成17年8月20日ころ,A1方で被告人,A1及びA2が集まった際,A2が「このままでは,次もどこからも応札がないかもしれない」と言った。被告人は,A2が価格を上げなければならないと言っているのだと思ったが,予算については自分で決められないので,「担当が決めるので口出しできない」と言った。A1も同様のことを言っていた。
⑨ 本件清掃工場の建屋の工事については,談合の噂はなく,A2からも何の情報もなかったので,談合されているとはまったく思っていなかった。
イ 捜査段階の供述の任意性について
(ア) 弁護人は,被告人の捜査段階の供述につき,①当該供述には,逮捕前の被告人に対するU検察官の不当な言動による取調べが影響を及ぼしていること,②逮捕後の被告人に対するV検察官の取調べが長時間かつ深夜に及んでいること,③同検察官から,被告人の実父,妻の父及び被告人の事務所の事務局長を取り調べていると告げられ,それらの者の逮捕の可能性を示唆されたり,「供述調書に署名指印しなければ保釈されない」という不利益告知を受けたりしたことを理由として,当該供述には任意性がない旨主張する。
(イ) そこでまず,前記(ア)①の点についてみるに,関係各証拠によれば,U検察官の取調べは,いずれも被告人を身柄拘束せずに行われたものであること,被告人は,逮捕前から弁護士に本件捜査への対応を相談していたこと,被告人がU検察官による取調べにおいて最終的には犯行を否認したこと,被告人が逮捕後も当初はV検察官に対して犯行を否認していたこと,逮捕後の身柄拘束中も,当時受任していた3名の弁護人が,連日のように代わる代わる被告人と接見していたこと,その間,被告人が弁護人の助言に従って,V検察官が作成した供述調書の署名指印を拒否したことがあったことがそれぞれ認められるところ,かかる事実経過に加え,U検察官の取調べの状況がV検察官の取調べに対してどのような影響を及ぼしたかに関する被告人の説明に具体性が乏しいことを併せ考慮すれば,前記(ア)①の点にかかる弁護人の主張は採用できない。
(ウ) 次に,前記(ア)②の点についてみるに,なるほど,関係各証拠によれば,V検察官の被告人に対する勾留中の取調べは,勾留満期日を除いて連日行われており,その大半がかなりの時間にわたって行われており,その終了時刻が,午後11時台から午前零時の深夜にわたることもかなりの回数あったことは認められるものの,他方において,被告人の取調べは,その多くが,午後2時台から午後3時台に開始されており,午後5時台に開始された日も5日あり,午前中から取調べが開始された日は一日もないこと,取調べに際しては,適宜,夕食を含む休憩時間が相当程度確保されていたことが明らかであることなどに照らすと,このような取調べ方法自体が直ちに違法ということはできない上,被告人の公判供述を子細に検討しても,かかる取調状況が被告人の供述内容に具体的な影響を及ぼしたことは特段窺われないから,前記(ア)②の点にかかる弁護人の主張は採用できない。
(エ) 最後に,前記(ア)③の点についてみる。
V検察官は,公判廷において,被告人の弁護人が日ごろから任意性の問題について熱心に取り組んでいるのを知っていたことから,被告人に対する取調べに際しては,後日任意性が問題にならないように特に注意して行った旨供述しているところ,その供述内容に特段不合理,不自然な点は認められない。しかも,被告人の供述経過を立証趣旨として取り調べられた検察官調書(乙15ないし22)をみると,V検察官は,その取調べ中に,否認と自白の間で揺れ動く被告人の心境を被告人自身に語らせることによって,被告人の取調べ状況の適正及び被告人が自白した理由を明らかにしようと努めていたことが窺われ,前記V検察官の供述を的確に裏付けている。
なるほど,被告人が捜査段階において作成した被疑者ノート(弁(書)15)には,V検察官から,被告人の実父らを取り調べていることや,被告人に他の疑惑もあることなどを言われた旨の記載があり,かかる発言をV検察官がした可能性は認められるが,仮にそのようなことがあったとしても,それだけのことで,それらの者が逮捕されることを危惧する余り,被告人自身が,無実の罪を着ることになる虚偽の自白をするというのはかなり論理の飛躍があり,被告人が前記(イ)のように弁護人らと頻繁に接見する手厚い弁護活動の下にあり,そのような危惧があれば弁護人から十分に助言を得る機会があったことも併せ考慮すれば,かかる発言によって,被告人の供述が任意性を欠くことになったとは考えられない。
また,「供述調書に署名指印しなければ保釈されない」と言われたとする点についても,V検察官において,被告人に対する熱心な被疑者弁護活動が展開されていることを知りながら,現職の市長として相応の教養や識見を有しているはずの被告人に対して,そのような明らかに違法で露骨な利益誘導をするとはにわかに考えがたい上,そのような事実があったにもかかわらず,被告人において,弁護人にそのことを相談したり,弁護人がこれに応じて,適切な助言やV検察官に対する抗議をしなかったというのは相当に不自然である。この点につき,被告人は,当時の弁護人のうちの1名と接見した際,いつまで勾留が続くかという質問につき明確な回答をもらえなかったため,弁護人では今の状況を救ってくれないと思った旨の弁解もしているが,被告人としては,他の2名の弁護人にも同様の相談ができたはずであることや,勾留期間についてのみ質問して,かかる不当なV検察官の取調態度について具体的に相談をしなかったというのはかなり不自然不合理であることからすれば,被告人のこの点の弁解は信用できない。
さらに,被告人の自白が記載された検察官調書の内容をみても,同調書には,O会談において,本件清掃工場の話だけではなく,汚泥処分地の汚水除去の工法の説明を株式会社B1側から受けたこと,A8が「A2の動きがおかしい」などと市長室に言いに来たこと,既にJが引退しており,株式会社B1に本件工事を受注させる計画に積極的に関わりたくない気持ちになっていたため,A8の話を遮るためにソファから立ち上がり「気にせんでいいから」と言ったこと,同様の気持ちから,株式会社B1に本件工事を受注させようとしているA2やA1の動きを止める気になれなかったこと,A8にA2を紹介したことでA8を事件に巻き込んでしまい,A8やその家族に申し訳ない気持ちであることなど,他の関係者の供述とは異なる事実関係や,被告人にとって有利に働く事実あるいは当時の被告人の立場に即した心情等も記載されているほか,重要部分については問答形式で録取されており,さらにA8と前記やりとりをした場面については,被告人の自筆による図面と説明書が作成添付されていること(乙9)などに照らすと,かかる内容の供述をV検察官が被告人に無理やりに押しつけたとも考えがたい。
(オ) 以上によれば,被告人の捜査段階の供述には任意性が認められる。
ウ 信用性
(ア) まず,被告人の捜査段階の供述の信用性をみるに,その内容は,相応に具体的であり,特段不自然,不合理な点は認められない上,信用できるA4及びA2の供述並びにA1の捜査段階の供述ともよく符合している。これに加えて,前記イで指摘した諸事情を併せ考慮すれば,被告人の捜査段階の供述は基本的に信用することができる。
(イ) これに対し,被告人の公判供述の信用性についてみるに,①コンサルタント会社とM株式会社とのつながりの有無を確認するだけの目的で,a市役所内の関係部署に調査もさせずに,いきなり市長である被告人本人が民間建設業者の営業担当者らと,わざわざ市庁舎外のホテルで非公式な会合を持つというのは,相当に不自然であること,②被告人の公判供述を前提とすると,株式会社B1側は,営利を目的とする民間企業でありながら,何らの見返りもなく,一地方公共団体の首長の要望に応じたことになり,これもまた相当に不自然であること,③被告人の公判供述が,信用できるA4及びA2並びに捜査段階のA1の各供述に明らかに相反しているだけではなく,一定の範囲で本件談合への関わりを認めるA1の公判供述とすら相反していることを考慮すれば,被告人の公判供述は信用できない。
(5)  共謀の成否
以上を踏まえて,被告人が本件談合の共謀をしたと認められるかについて検討する。
ア 株式会社B1は,O会談以前の段階から本件清掃工場の建設工事の受注を目指していたことが窺われるが,発注者側の「天の声」が業者間の受注調整において最も有力な条件とされていること,同社営業担当のA4が,積極的に本件工事の受注に向けて動き出したのが,O会談以後のことであること,株式会社B1に本件工事を受注させるというO会談における方針が,その後も維持され,最終的に,その方針どおりに株式会社B1が本件工事を落札していることからすれば,a市長である被告人が参加して株式会社B1による本件工事の受注を容認する発言をしたO会談が本件談合に及ぼした影響はかなり大きなものがあったと認められる。
イ なるほど,株式会社B1との間の直接的な窓口は,A1及びA2であり,もっぱら両名において,株式会社B1に資料や情報を提供してはいるが,被告人がA1及びA2と頻繁に接触し,本件工事の受注に関わる報告等を受けていたことなどに照らすと,それらは,被告人の意向に何ら反したものではなく,少なくともその包括的な了解の下に行われていたものと認められる。
また,業界の受注調整のルールに従えば,株式会社B1にとって,一般的に入手可能な議会資料を,市議会議員であるA1の手を通じ,他の業者よりも一日でも早く入手することには十分な意味があったといえるし,その他の情報提供も,直接的な利益を株式会社B1にもたらしたか否かは措くとしても,株式会社B1が前記ルールに則って本件工事を受注しようとする意欲を確固たるものとする効果があったと解される。
そして,A1が被告人の了解の下で現職の警察官で談合捜査に詳しいA2をA4に引き合わせたり,後記5のとおり共犯とはいえないものの,本件工事における実務の最高責任者であるA8をA2に引き合わせたりしたこともまた,本件談合を促進するかなり重要な要素であったというべきである。
さらに,プラントと建屋の工事ないし設計の分離発注に関しても,被告人とA1が,2度にわたりA2を通じてa市幹部職員に働きかけたことは,検討会議及び検討委員会の組織構成や運営状況からして,それらの検討結果にまったく影響を及ぼし得なかったとは考えがたい。
加えて,a市長として市政の最高責任者であった被告人としては,その職務上,同市発注の公共工事において不正行為が行われた場合には,それを市役所内外で問題化し,当該不正行為を極めて容易に阻止しうる立場にあったといえ,かかる行動を行わなかったこともまた,本件談合の成立推進に大きく寄与したといえる。
ウ また,本件工事を株式会社B1が落札することを市長として容認することは,Jと政治的に対立関係にあった被告人にとって,Jの関わる建設業者を本件工事から排除することができるという点で,十分に意味を持つ行動であったといえ,平成15年にJが市議会議員を引退し,次第にその影響力が弱まっていたことを考慮しても,被告人自身に本件談合を形成推進させる積極的動機もあったことが認められる。
エ 以上を総合すれば,被告人は,自己の犯罪として本件犯行に加担したものといえるから,本件談合の共謀共同正犯と認めることができる。
5  A8との共謀について
なお,検察官は,A8についても本件談合の共同正犯として公訴提起をしているところ,信用できるA2の供述及び被告人の捜査段階の供述によれば,被告人がA8に対して本件工事に関する情報をA1やA2に提供するようにし向けたことや,かかる指示にしたがってA8が当該情報をA1やA2に提供したことがあったことなどは認められるが,①全証拠に照らしても,A8と被告人,A2及びA1との間で,本件工事を株式会社B1に落札させることについての具体的な謀議が行われた形跡はまったく窺われないこと,とりわけ,A8がO会談における被告人ら関係者とのやりとりを具体的に知っていたことを示す証拠はなく,A8が,その際における被告人やA1の意図を知り得たことを示す証拠も見当たらないこと,②被告人において,自己保身等の目的から,本件に関する真意をA8に打ち明けないまま,警察官であるA2への情報提供を指示することもあり得ないことではないこと,③A8とA2の間でなされた株式会社B1に関する会話も,かなり抽象的で多義的な解釈を容れる表現が使われており,その際におけるA8の認識や発言の真意をそのことのみによって直ちに確定しがたいこと,④本件談合に加担することが,A8自身に特段の利益をもたらすわけではないこと(なお,これに反する検察官の主張は採用しがたい。)を考慮すると,本件において,A8が本件談合を共謀したことについて,検察官が合理的な疑いを超える程度に立証を尽くしているとは認められないから,A8については本件談合の共犯から除外して認定することとした。
(法令の適用)
省略
(量刑の理由)
本件は,a市長であった被告人が,当時の同市議会議員,大阪府警察官,株式会社B1談合担当者,同社営業担当者及び他の建設会社の談合担当者らと共謀の上,同市が制限付き一般競争入札に付した清掃工場の土木建築工事に関して,入札の公正な価格を害する目的で談合したという事案である。
被告人は,親密な関係にあった共犯議員とともに,当時,関西地区の公共工事の受注調整を主導していた株式会社B1の力を借りて,a市の公共工事の受注に大きな影響力を持ち,政治的に被告人らと対立していた有力市議会議員を本件清掃工場を含むa市の公共工事から排除することを目的として,株式会社B1関係者にその旨の依頼をし,その後,同議員が議員を引退したにもかかわらず,なおも同社との関係を解消することなく,株式会社B1による受注をめざした活動を積極的に支援し,本件犯行に至ったもので,その経緯や動機において全く酌むべきものは認められない。
本件談合の犯行態様は,a市の最高責任者である市長の被告人,被告人と親しい共犯議員,警察官,そして株式会社B1を含むゼネコン各社の営業ないし談合担当者ら多数の者が,それぞれの役割を事実上分担し合った上,相当長期間にわたって様々な事前工作を経た上,談合の協定が発覚しないよう各自が慎重に行動しつつ敢行された大規模で計画的かつ巧妙なもので相当に悪質である。とりわけ被告人は,共犯議員と一緒に株式会社B1関係者と面談して同社を主体としたa市の公共工事の受注調整を積極的に働きかけ,その一環として,本件清掃工場を株式会社B1が談合により落札受注することを了承したもので,まさに本件談合の端緒を作ったといえる上,その後も共犯議員を通じて株式会社B1営業担当者らに本件工事に関する市議会資料や情報の提供等を繰り返してその便宜を図ったり,途中からは談合捜査に詳しい現職警察官までをも計画に引き込んで,談合捜査を隠れ蓑とさせつつ,株式会社B1とa市側との連絡調整役として,積極的に活動させたものであって,本件で被告人が果たした役割には大きなものが認められる。
本件工事は,予定価格が56億円を超える高額の大規模公共事業であるところ,本件談合の結果,予定価格の約98.42パーセントという高率で協定どおりにB1・B2JVが落札しており,それによって,入札における健全な自由競争が大きく阻害されたばかりでなく,株式会社B1が多額の不正な利益を獲得できる地位を確保した一方で,a市にとっては無用な公金の支出を余儀なくされる事態を招いたことは明らかである。また,同市の最高責任者である被告人,共犯議員及び本来談合を取り締まるべき立場にあった警察官までもが,それぞれの私利や私欲等にかられて,かかる談合に深く関与したことが社会に与えた衝撃も見過ごせない。
加えて,被告人は,株式会社B1に対して受注調整を依頼したことすら否定して本件を全面的に争っており,反省の態度を示そうとはしていない。
以上によれば,犯情は芳しくなく,被告人の刑事責任を軽視することはできない。
他方において,被告人が,本件により長く務めてきたa市長の職を辞するなど一定の社会的制裁を受けていること,被告人に前科がないことなど,被告人のために酌むべき事情も認められる。
以上の諸事情を総合考慮すると,被告人に対しては,主文の刑の執行を猶予し,一度社会内における更生の機会を与えるのが相当である。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑・懲役2年)
(裁判長裁判官 樋口裕晃 裁判官 能宗美和)
裁判官橋本健は転補のため署名押印できない。裁判長裁判官 樋口裕晃
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