【選挙から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(56)平成17年 2月22日 福島地裁郡山支部 平14(ワ)115号 損害賠償請求事件

「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(56)平成17年 2月22日 福島地裁郡山支部 平14(ワ)115号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成17年 2月22日  裁判所名  福島地裁郡山支部  裁判区分  判決
事件番号  平14(ワ)115号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容、一部棄却  上訴等  控訴  文献番号  2005WLJPCA02226003

出典
判例地方自治 269号84頁

裁判年月日  平成17年 2月22日  裁判所名  福島地裁郡山支部  裁判区分  判決
事件番号  平14(ワ)115号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容、一部棄却  上訴等  控訴  文献番号  2005WLJPCA02226003

原告 X株式会社
代表者代表取締役 A
訴訟代理人弁護士 馬場恒雄
田中史郎
佐藤祐介
被告 大越町
代表者町長 宗像紀人
訴訟代理人弁護士 斎藤利幸

 

 

主文

1  被告は、原告に対し、3416万1754円及びうち3309万1020円に対する平成5年9月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  原告のその余の請求を棄却する。
3  訴訟費用は、これを7分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
4  この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
5  ただし、被告が2800万円の担保を供するときは、その仮執行を免れることができる。

 

 

事実及び理由

第1  請求
被告は、原告に対し、2億3074万1041円、並びに、うち2億2544万1041円に対する平成5年9月15日から、及び、うち530万円に対する平成13年7月31日から、それぞれ支払済みまで年6分の割合による各金員を支払え。
第2  事案の概要
ゴルフ場等の開発業を営む原告は、被告からの誘致を受けて大越町にゴルフ場等を開設しようとしたが(以下この事業を「本件事業」という。)、被告が協力を怠るなどしたため、開発計画が頓挫し、しかも、その後、被告との間で、代替事業として産業廃棄物処分場を建設・運営することを合意したが、これも被告が協力を拒んだため、頓挫したとして、被告に対し、不法行為又は債務不履行に基づき、損害賠償金2億3074万1041円及びこれに対する商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めている。
1  前提事実(争いのない事実及び証拠等により容易に認められる事実)
(1)  当事者等
ア 原告は、ゴルフ場等のスポーツ施設の設計、管理及び経営等を業とする株式会社であり、B(以下「B社長」という。)を代表取締役、資本金を1億円として、昭和63年10月19日に設立された。
イ 大越町は、福島県田村郡に位置する町であり、昭和63年当時、松本長人(以下「松本町長」という。)が被告の町長を務めていた。
ウ X商事株式会社(後に「X株式会社」に商号変更。以下まとめて「X商事」という。)は、神奈川県平塚市に本店を、東京都中央区に東京事務所(後に東京本社と呼称。)を、それぞれ設け、B社長が代表取締役を務める株式会社である。
(2)  ゴルフ場等の開発計画とその頓挫に至る経緯等
ア 被告は、昭和63年ころから、町の活性化を図るべく、ゴルフ場を中心とするリゾート開発を奨励する政策をとるようになった。
そのころ、被告は、交渉相手をX商事に絞って、大越町にゴルフ場や関連リゾート施設を開設してもらいたいなどと勧誘し、その結果、同年11月10日、X商事のグループ会社として設立された原告との間で、原告が大越町にゴルフ場及び関連リゾート施設(以下「本件ゴルフ場等」という。)を開設し、その開設のために、被告が、地権者会を設立して用地交渉の場を設定するとともに、自己の範ちゅうに属する規制解除や許認可関係の事務手続に遅滞なく対応するなどして、原告に協力するなどという内容の協定及び覚書(以下「本件協定等」という。)を締結した。
イ 原告は、平成元年1月9日、福島県(以下単に「県」という。)に対し、本件ゴルフ場等の用地取得に関する大規模土地取引事前指導申出書(事前協議書)を提出した。
ウ 本件ゴルフ場等の開設予定地に係る地権者で構成される大越ゴルフ場等リゾート開発地権者会(以下「本件地権者会」という。)が、平成元年2月16日、結成された。
エ 県は、県内に乱立するゴルフ場の開発計画に歯止めを掛けるため、平成元年6月20日、1市町村内におけるゴルフ場の合計面積をおおむね3%までに制限する旨の総量規制等を定めた福島県ゴルフ場開発指導要綱(以下「旧要綱」という。)を施行した。
オ 林野庁は、平成2年6月11日、森林法に基づく林地開発行為の許可基準の運用細則に関する通達を一部改正した。
この改正により、原告は、林地開発の事前協議については、経過措置の適用を受け、同年7月26日に旧基準で申請することができたが、林地開発の本申請については、平成4年6月10日までに地権者等の同意を得た上でなければ旧基準で申請することができなくなった。(〔証拠略〕)
カ 県は、平成3年6月1日、開発に必要な地権者の同意率を90%以上とするなど、旧要綱の規制を強化した改正福島県ゴルフ場開発指導要綱(以下「新要綱」という。)を施行した。
この改正により、原告は、新要綱の趣旨が適用され、平成4年5月25日までに地権者の同意を得た上で農地転用の事前協議を申請しなければ、大規模土地取引に基づく事前協議を受けられなくなった。(〔証拠略〕)
キ X商事は、平成3年9月上旬ころ、A(以下「A社長」という。)が代表取締役を務める株式会社a建設(以下「a建設」という。)に対して原告の全株式を譲渡し、同月18日、原告の代表取締役がB社長からA社長に変更された(〔証拠略〕)。
ク 被告議会は、原告の代表取締役が変更された経緯等を調査するため、平成3年9月24日には地方自治法110条に基づく特別委員会(以下「110条委員会」という。)を、同年12月20日には同条に基づいて同法100条による調査を行う特別委員会(以下「100条委員会」という。)を、それぞれ設置した。110条委員会は、平成3年9月24日から同年12月10日まで、100条委員会は、同月20日から平成4年6月10日まで、それぞれ開催された。(開催期間につき〔証拠略〕)
ケ 原告は、平成4年5月の農地転用事前協議の完了期限や同年6月の林地開発本申請の完了期限にいずれも間に合わなかったため、本件事業の遂行が事実上困難となった。
さらに、本件地権者会も、同年6月ころに解散し、同年11月25日には原告に対して同意書の返還を求めたため、本件事業の遂行が事実上不可能となった。
コ A社長と松本町長は、平成5年9月27日、大越町公民館で打合せを行い、その結果、原告は本件事業から手を引く代わりに、原告の関連業者が大越町において他の事業を行う場合、松本町長は新町長に対して被告が行政の範ちゅうにおいてできる限りの努力を惜しまないことを申し送ることを合意した(以下この合意を「本件合意」という。内容につき〔証拠略〕。)。
サ 宗像紀人(以下「宗像町長」という。)は、平成5年10月の被告町長選挙に当選し、同月16日、被告町長に就任した。
シ 原告は、平成6年4月25日、大規模土地取引事前指導の申出を取り下げ、本件事業が完全に終結した。
2  争点
本件の主な争点は、〈1〉本件協定等に基づく被告の義務、行為及び責任、〈2〉本件合意に基づく被告の義務、行為及び責任、〈3〉被告の抗弁事由(和解契約による請求権の消滅及び商事消滅時効の成否)、〈4〉原告の損害である。
第3  争点に関する当事者の主張
1  本件協定等に関する損害賠償請求
(1)  本件協定等に基づく被告の義務
ア 原告の主張
前示第2の1(前提事実)(2)アのとおり、被告は、昭和63年ころから、ゴルフ場を中心とするリゾート開発を奨励する政策をとるようになったため、松本町長や被告議会議長等、被告の関係者が、X商事の東京事務所を度々訪問し、大越町にゴルフ場や関連リゾート施設を開設してもらいたいなどと積極的な勧誘をするようになった。その後、被告は、同年7月25日、X商事に対し、ゴルフ場等の開設を要請する文書を交付し、その文書や説明の中で、X商事にゴルフ場等を開設してもらえるならば、被告が、地権者会を設立して用地買収に遺漏なきを期し、許認可関係の手続について全面的に協力するとともに、X商事に対してだけゴルフ場等を開設する地位又は権利を認め、X商事以外の開発業者に対しては勧誘しない旨を約束した。そこで、X商事は、本件事業の遂行を決定し、グループ会社として原告を設立した上で、同年11月10日に本件協定等が締結されるに至った。
被告がとったゴルフ場等の開発を奨励するような企業誘致政策は、地権者等から同意を得ることを必要とするものであるから、一般的に、企業の参加を募るべく、地方自治体自身が同意を得るための説得や根回し等をすることが前提又は条件になっている。
したがって、本件協定等を締結して全町を挙げた協力態勢を敷いていた被告は、本件協定等により、原告に対し、前記の各約束を改めて確認するとともに、地権者等から同意を取得するための説得や根回し等をするなど、本件事業に積極的に協力すべき義務を負っていたというべきである。
イ 被告の主張
被告がX商事に対してゴルフ場等の開設を要請する文書を交付するに至った経緯は認めるが、被告が、地権者会を設立して用地買収に遺漏なきを期すことを約束したり、X商事に対してだけゴルフ場等を開設する地位又は権利を認め、X商事以外の開発業者に対しては勧誘しない旨を約束したりしたことはない。
前記の各約束を含まない本件協定等は、被告が行うべき具体的行為が確定していない上、予算を付する旨の被告議会による議決もないから、法的拘束力がなく、町として適法かつ妥当に行い得る限度での政治的な協力を約束したものにすぎない。
仮に松本町長が前記の各約束をしたとしても、被告による協力は町として適法かつ妥当に行い得る範囲に限られるところ、地権者会を設立したり地権者等から同意を取得するための説得や根回し等をしたりすることは、町が行い得る協力ではないから、松本町長個人の行為にすぎず、被告に対する法的拘束力がない。
(2)  被告の行為と責任
ア 原告の主張
(ア) 被告は、本件協定等を締結し、本件事業に積極的に協力する義務を負い、前示第2の1(前提事実)(2)ウのとおり、平成元年2月には地権者会を、同年12月には大越町ゴルフ場等リゾート開発推進協議会を、それぞれ設置するなど、全町を挙げた協力態勢を敷いたにもかかわらず、次のとおり、そのころから、本件事業への協力に消極的となった上、かえって意図的な妨害さえするようになった。
すなわち、前示第2の1(前提事実)(2)エのとおり、旧要綱によれば大越町に本件ゴルフ場等以外のゴルフ場を開設することはできなかったにもかかわらず、松本町長は、〈1〉同年10月には、県から、原告が計画するゴルフ場が広すぎるとして、その半分をリゾート施設の用地にするよう指導されていたところ、後に被告議会の議員となる遠藤善一(以下「遠藤」という。)を通じて、h興産株式会社から、大越町にゴルフ場を開設させてほしいと要請され、その見返りに、9億3000万円の寄付や地権者等に対する便益を図るなどという利益を提示されたため、遠藤との間で、リゾート施設の用地とすべき部分の開発を遠藤に任せる旨の密約を交わしたり、〈2〉平成2年1月には、株式会社b地産との間で、自己の所有地を含む大越町大林地区の土地を同社によるゴルフ場開発のために売却することを約束する旨の協定を締結したり、〈3〉同年10月には、遠藤を通じて、cグループ(いわゆる「dグループ」のことではない。)から、大越町にゴルフ場を開設させてほしいという要請を受けたりし、原告と競合他社とを両天びんに掛けていたため、このことを知った県は、旧要綱への抵触を指摘し、本件事業に対する認可を先延ばしにした。松本町長の上記対応は、被告の関係者を含む被告全体としての対応を指すものであるとともに、町長が町を代表して行い(地方自治法147条)、その外形をも有するものであるから、被告議会の議決や被告議会への報告の有無にかかわらず、被告の対応となる。
また、〈4〉被告は、当初、本件事業への協力を最優先とする旨約束していたにもかかわらず、平成2年には、最重点事業を工業団地の造成事業に変更する旨の政策転換を行い、買収価格を高騰させるということをした。
さらに、〈5〉平成3年に松本町長が原告と競合他社とを両天びんに掛けていたことが原告に明らかとなったため、同年8月、X商事が本件事業の遂行を断念し、前示第2の1(前提事実)(2)キのとおり、事業者の承継が行われて原告の代表取締役が変更されたにもかかわらず、松本町長は、その経緯を被告議会や本件地権者会に報告しなかった。このため、同(2)クのとおり、被告議会が110条委員会や100条委員会を設置して調査を始めることとなったが、これに対しても、被告は、調査結果を待つだけで、何ら事態の解決に向けた行動をとらないという傍観者の立場に終始した。
(イ) 被告が前記のような対応をとったため、原告や地権者等の間に不信感や不快感が生まれ、用地交渉が遅々として進まなくなった上、被告がなすべき許認可関係の手続も大幅に遅れた。そのうちに、前示第2の1(前提事実)(2)ケのとおり、原告は、平成4年5月や6月の期限に地権者等の同意の取得が間に合わなくなった上、本件地権者会から同意書の返還を求められたため、本件事業の完成が不能に帰した。被告が本件事業に積極的に協力していれば、本件事業は完成していたといえる。
なお、前示第2の1(前提事実)(2)キのとおり、平成3年9月に事業者の承継が行われて原告の代表取締役が変更されたが、原告は、その後も、本件事業に関する作業を進め、自らがなすべき作業を怠ったことはないから、原告側の要因で本件事業の完成が不能に帰したわけではない。
したがって、被告の前記対応と本件事業の完成が不能に帰したこととの間には因果関係がある。
(ウ) 以上のとおり、被告は、協力義務違反や信義則違反を犯しており、これにより、本件事業の完成が不能に帰し、後記のとおり、原告に多大な損害を被らせたから、不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償責任を負う。
イ 被告の主張
(ア) 原告が主張する被告の損害賠償責任は争う。
(イ) 仮に松本町長が原告の競合他社に対してゴルフ場開発の勧誘をしていたとしても、被告議会がその旨の議決をしたり報告を受けたりしたことはないから、松本町長の上記対応は、被告議会の意思に反した個人の行為にすぎず、被告の対応とはいえない。
(ウ) 原告が主張する被告の対応と本件事業の完成が不能に帰したこととの因果関係は否認する。
地権者等は、自由な意思に基づいて同意しなかっただけであって、被告の対応に影響されて同意しなかったわけではない。また、被告がなすべき許認可関係の手続は、すべて完了していた。原告は、平成3年ころから、バブル経済が崩壊するとともに、県のゴルフ場開発に対する規制も強化され、さらには、社内に内紛が生じて事業者が変更されるなどした結果、本件事業に対する情熱を失って自らがなすべき作業を怠った上、地権者等にも不信感を抱かせたために、本件事業の完成が不能に帰したにすぎない。
2  本件合意に関する損害賠償請求
(1)  本件合意に基づく被告の義務
ア 原告の主張
前示1(2)アのとおり、被告が本件事業への協力に消極的かつ背信的な行動をとったことにより、本件事業の完成が不能に帰した。このため、原告と被告は、平成5年9月以降、本件事業の事後処理の方法について協議を重ねた結果、前示第2の1(前提事実)(2)コのとおり、同月27日に、本件合意を締結し、原告は本件事業から手を引く代わりに、原告の関連業者が大越町において他の事業を行う場合、松本町長は新町長に対して被告が行政の範ちゅうにおいてできる限りの努力を惜しまないことを申し送ることとした。
ところで、本件合意において原告の関連業者が行う他の事業とは、当時、本件事業の代替事業に相当するものとして、被告が所有する焼却炉施設の払下げを受け、その場所に産業廃棄物処分場を建設して運営することくらいしかなかった。そこで、原告と松本町長は、同年10月5日ころ、被告が上記焼却炉施設を払い下げる場合、原告に対して最優先に払い下げるとともに、原告の関連業者が産業廃棄物処分場の建設・運営事業を行う際は、その事業にできる限り協力することをも合意し、その旨の書面を作成した。この合意は、町長が町を代表して締結し(地方自治法147条)、その外形をも有するものであるから、被告議会の議決や被告議会への報告の有無にかかわらず、被告が締結した合意となる。
そして、前記の産業廃棄物処分場に関する合意を前提とした本件合意は、同月29日、新町長に就任した宗像町長に対して書面で申し送られたものである。
したがって、本件合意により、被告は、原告に対し、原告がその関連業者に産業廃棄物処分場の建設・運営事業を行わせる場合、その事業に積極的に協力すべき義務を負っていたというべきである。
イ 被告の主張
原告と被告が本件合意を締結し、宗像町長に対して本件合意が文書で申し送られたことは認めるが、被告が所有する焼却炉施設を払い下げる場合、原告の関連業者に対して最優先に払い下げるとともに、原告の関連業者が産業廃棄物処分場の建設・運営事業を行う際は、その事業にできる限り協力することをも合意し、この合意を前提とした本件合意が宗像町長に対して申し送られたことは否認する。本件合意は、産業廃棄物処分場に関する合意を前提としていないから、被告に法的責任が生じるような内容を有しておらず、法的拘束力もない。
被告が所有する焼却炉施設を原告の関連業者に対して優先的に払い下げる合意は、被告議会の議決が必要である(地方自治法96条1項6号)。また、原告の関連業者が計画する産業廃棄物処分場の建設・運営事業に被告が協力する合意は、原告が本件事業の頓挫によって生じたとする損害賠償請求権を放棄して争いを収束させるものであるから、和解契約に該当し、これも被告議会の議決が必要である(同項12号)。しかし、被告議会の議決は存在しないから、仮に町長が締結したとしても、個人として締結した密約にすぎず、無効である。
(2)  被告の行為と責任
ア 原告の主張
(ア) 原告は、本件合意を締結した後の平成6年4月14日、郡山市内の料亭「大雅」において、宗像町長と面談を行ったところ、宗像町長から、原告が県に対して行っていた大規模土地取引事前指導の申出を取り下げるよう求められるとともに、焼却炉施設の用地で産業廃棄物処分場を建設・運営することは無理であるとして、他の場所で建設・運営する計画案を提出するよう求められた。
そこで、原告は、焼却炉施設以外の場所で産業廃棄物処分場を建設・運営することができるものと信頼し、前示第2の1(前提事実)(2)シのとおり、同月25日に大規模土地取引事前指導の申出を取り下げて本件事業を完全に終結させるとともに、宗像町長に対し、同年10月には大越町上大越大字早稲川字梨ノ木作地区に建設する計画案を、その後も宗像町長からの場所の変更依頼に応じて、同町大字下大越字百目木沢地区に建設する計画案や焼却炉施設の跡地に建設する計画案を提出したり、産業廃棄物処分場の運営事業者を推薦したりしながら、協議を重ねてきた。
これに対し、宗像町長は、被告側で地権者等を取りまとめることを約束し、A社長を百目本沢地区に案内したり、原告から地権者等の取りまとめ費用を預かって、地権者等との交渉を行ったりしていたようであるが、交渉は進まず、平成12年9月5日以降は、原告への協力を一切拒むようになり、ついには本件合意の存在までも否定するようになった。このため、原告の関連業者が大越町に産業廃棄物処分場を建設・運営する事業の完成も不能に帰した。原告が計画する産業廃棄物処分場の建設・運営事業に被告が積極的に協力していれば、この事業は完成していたといえる。
したがって、被告の前記対応と産業廃棄物処分場の建設・運営事業の完成が不能に帰したこととの間には因果関係がある。
(イ) 以上のとおり、被告は、協力義務違反や信義則違反を犯しており、これにより、上記事業の完成が不能に帰し、後記のとおり、原告に多額の損害を被らせたから、不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償責任を負う。
イ 被告の主張
(ア) 原告の主張は争う。
原告が、平成6年4月14日に料亭「大雅」において宗像町長と話をしたり、宗像町長に対し、大越町に産業廃棄物処分場を建設する計画案を提出したり、その運営事業者を推薦したりしたことや、宗像町長がA社長を百目木沢地区に案内したことは認めるが、その余の事実は不知又は否認する。
原告が大規模土地取引事前指導の申出を取り下げたのは、原告が産業廃棄物処分場を建設・運営することができるものと信頼したからではなく、県が、原告に対し、同年3月末までに上記申出を取り下げなければ、審査を終了する旨の通告をしたからである。
宗像町長は、本件合意にいう「行政の範ちゅうにおいてできる限りの」協力として、原告が一方的に提出する計画案を検討したことはあるが、付近を流れる河川の下流に居住する住民や下流に位置するダムの関係で規制される上、処分場の建設は広域的に行うこととなったため、原告が計画した事業の完成も不能に帰したにすぎない。
3  被告の抗弁事由
(1)  本件合意による損害賠償請求権の消滅
ア 被告の主張
仮に被告が損害賠償責任を負っていたとしても、本件合意は、原告が本件事業から手を引き、本件事業の頓挫によって生じたとする損害賠償請求権を放棄して争いを収束させるものであり、和解契約に該当するから、原告の本件協定等に関する損害賠償請求権は消滅した。
イ 原告の主張
争う。本件合意は、原告が本件事業から手を引く代わりに、原告やその関連業者が産業廃棄物処分場の建設・運営事業を計画する場合、被告がその事業に積極的に協力し、原告に生じた損害を補てんするものであったところ、結局、被告が協力せず、原告に生じた損害が補てんされなかったから、原告の本件協定等に関する損害賠償請求権は消滅していない。
(2)  商事消滅時効
ア 被告の主張
仮に被告が本件協定等に関する債務不履行責任を負うとしても、原告が被告に対して内容証明郵便で本件事業の頓挫によって生じた損害賠償金を支払うよう催告した平成5年8月31日から5年が経過している。また、本件合意を締結した同年9月27日からも5年が経過している。したがって、被告は、原告に対し、平成14年11月14日の本件口頭弁論期日において、商法522条の商事消滅時効を援用するとの意思表示をする。原告が主張する時効の中断事由は否認し、その効果は争う。
イ 原告の主張
確かに平成5年8月や9月から5年が経過しているが、被告は、平成5年以降も平成12年9月5日に協力拒否の態度をとるようになるまで、原告との間で、本件事業の代替事業として、産業廃棄物処分場の建設・運営事業に関する協議を重ねていたのであるから、原告に対して本件事業の頓挫によって生じた損害賠償債務の存在を継続的に承認し続けていたということができ、時効は中断している。
4  原告の損害
(1)  本件協定等に関する損害
ア 原告の主張
(ア) 原告は、被告の不法行為又は債務不履行により、次のとおり、回収不能の損害を被った。
a X商事に対して支払った株式譲渡代金 1億5000万円
A社長が代表取締役を務めるa建設は、平成3年9月上旬ころ、X商事から、原告の全株式を代金1億9800万円で譲り受け、上記代金のうち、A社長が全株式を保有するe株式会社が同月6日に1500万円を、a建設が同月18日に相殺処理を経た後の1億3500万円を、それぞれ支払った。
b 同意書取得費用・設計変更料等 3428万2285円
原告は、平成3年10月から平成4年4月の間にかけて、f興業土地建物有限会社や株式会社gコンサルタント等に対し、地権者等から同意を取得する作業に関する報酬3000万円や本件ゴルフ場等の設計変更料428万2285円を支払った。
c 前記a・bに対する確定遅延損害金 3407万7265円
前記a・bの各支出をしてから平成5年9月5日までの間に年9.5%の割合による遅延損害金が生じた。
d 諸経費 708万1491円
原告は、事業者が承継された平成3年9月18日から平成5年9月5日までの間に、諸経費として、合計708万1491円を支出した。
e 合計 2億2544万1041円
(イ) よって、原告は、被告に対し、不法行為又は債務不履行に基づき、損害賠償金2億2544万1041円及びこれに対する不法行為の後の日若しくは被告がこの損害額を確認した日である平成5年9月15日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。
イ 被告の主張
否認又は争う。
(2)  本件合意に関する損害
ア 原告の主張
原告は、被告の不法行為又は債務不履行により、次のとおり、回収不能の損害を被った。
(ア) 諸経費 530万円
原告は、平成5年9月16日から平成13年7月31日までの間に、産業廃棄物処分場の建設・運営のための計画書作成や交通費等の諸経費として、合計530万円を支出したが、回収不能の損害となった。
(イ) よって、原告は、被告に対し、不法行為又は債務不履行に基づき、損害賠償金530万円及びこれに対する不法行為の後の日若しくは催告後相当期間が経過した後の日である平成13年7月31日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。
イ 被告の主張
否認又は争う。
第4  当裁判所の判断
1  前示の前提事実に、〔証拠略〕を総合すれば、次の事実が認められる。
(1)  本件協定等の締結に至る経緯等
ア 被告は、従前、葉たばこの生産を主な産業としていたが、たばこの消費量の減少等により衰退する傾向にあったため、町の活性化を図るべく、昭和58年度以降、大越町大字牧野地区に工業団地(以下「牧野工業団地」という。)を造成する事業を始め、昭和60年ころには、第1期造成工事が完成して完売した。
イ 被告は、更なる町の活性化を図るべく、昭和63年ころから、ゴルフ場を中心とするリゾート開発を奨励する政策をとるようになった。
松本町長や被告議会議長等の被告関係者は、同年2月ころ、X商事から引き合いがあったため、同社の東京事務所を度々訪ね、同社に対し、大越町にゴルフ場や関連リゾート施設を開設してもらいたいなどと熱心な勧誘を行った。また、被告は、同年7月25日、X商事に対し、ゴルフ場等の開設に必要な許認可関係の取得に協力したり地権者会を設立したりする方法で、ゴルフ場等の開設のために被告において許される範囲で協力する体勢を整えるとして、X商事によるゴルフ場等の開設を懇請する文書を提出した。
この懇請を受け、X商事は、社内で検討した結果、大越町の周辺では近く東北横断自動車道や福島空港の開港等が予定されているため、採算が取れる見通しがあると判断し、同年9月5日、被告に対し、グループ会社として設立する原告にゴルフ場等を開設させる旨回答するとともに、用地買収に当たっては虫食い状態が生じないように、地権者全員が賛同するよう被告が指導・協力すること等を要請する文書を提出した。
ウ 被告当局は、昭和63年10月18日、被告議会に対し、原告によるゴルフ場等の開発計画の概要や経過等を説明し、被告議会の同意を得た。
エ X商事は、昭和63年10月19日、大越町にゴルフ場等を開設するための会社として、原告を設立した。
オ 原告は、昭和63年10月20日、f興業土地建物有限会社(以下「f興業」という。)との間で、ゴルフ場等の用地取得に関する委任契約を締結した。
カ 原告と被告は、昭和63年11月9日、X商事の東京本社で、原告側において、B社長外2名が、被告側において、松本町長、被告議会議長及び被告当局担当者が、それぞれ出席して、合意すべき事項を検討した上、翌10日、次の要旨の本件協定等を締結した。
(ア) 原告は、次の開発計画に基づき、大越町に本件ゴルフ場等を開設する。
a ゴルフ場施設・クラブハウス・休憩所(買収予定面積:約60万~70万坪)
昭和63年度 用地買収
〃 64年度 許認可手続
〃 66年 約2年間の工事期間を経て、オープン
b リゾートホテル・テニスコート・屋内プール・アイススケートリンク・養魚場・鳴神城跡・ヘリポート等
昭和65年以降
(イ) 被告は、原告による本件ゴルフ場等の開設を歓迎して受け入れるとともに、本件事業が円滑に推進するよう、原告に協力する。
(ウ) 被告は、用地と地権者が特定された後、直ちに地権者会を設立して用地交渉の場を設定する。
(エ) 本件ゴルフ場等の用地取得を円滑に進めるため、原告と被告との間の連絡を密に行い、用地の虫食い状態を防止する万全の策を講じる。
(オ) 被告は、本件ゴルフ場等の用地について、農地法等の諸法令に基づく規制等の解除や許認可に関する諸手続のうち、被告の範ちゅうに属する事務手続は遅滞なく対応する。
(カ) 原告は、前記の開発計画に沿って、早期完成を目指し、被告との信頼関係で成り立つ本件協定等の履行に努める。
キ 原告は、被告の提案により、大越町大字上大越字鴻ノ巣地区に本件ゴルフ場等を開設することとし、地権者を特定した後、平成元年1月9日、県に対し、本件ゴルフ場等を開設するために上記地区の土地を取得することについて事前指導を求める大規模土地取引事前指導申出書を提出し、被告も、同年3月9日に意見書を提出した。
ク 本件ゴルフ場等の開設予定地に係る地権者らは、被告の呼び掛けに応じ、平成元年2月16日、本件地権者会を結成した。以後、被告は、原告による用地取得を円滑に進めるべく、本件地権者会の会合を招集したり、会合を通じて本件事業への協力を促していた。
(2)  旧要綱の制定と松本町長の妨害行為等
ア 県は、県内に乱立するゴルフ場の開発計画に歯止めを掛けるため、平成元年6月20日、1市町村内におけるゴルフ場の合計面積をおおむね3%までに制限する旨の総量規制やゴルフ場開発に必要な同意率を70%以上とする規制等を定めた旧要綱を施行した。
イ 本件事業において必要な許認可関係の手続は、主に、国土利用計画法に基づく大規模土地取引手続と農業振興地域の整備に関する法律に基づく農用地区域からの除外(以下「農振除外」という。)手続、農地法に基づく農地転用手続、森林法に基づく林地開発手続の4つであった。被告は、原告に対し、これらの手続が半年から約1年程度で完了する旨説明していた。
被告は、本件協定等を締結した後、農振除外手続に着手していたが、本件ゴルフ場等の開設予定地が広大であったために遅れ気味となり、原告や本件地権者会から催促されていた。被告は、平成元年9月22日、原告に対し、農振除外手続に関する問題を平成2年3月末までに解決することを文書で約束したものの、実際に上記手続が完了したのは同年5月末ころのことであり、本件協定等の締結から約1年半を経過していた。
ウ 被告は、平成元年10月、県から、原告の計画するゴルフ場の面積が大越町の面積の7%を超え、旧要綱に抵触しているとして、その半分をリゾート施設の用地にするよう指導された。
ところが、松本町長は、同月、遠藤を通じて、h興産株式会社(以下「h興産」という。)から、大越町にゴルフ場を開設させてほしいと要請され、その見返りに、9億3000万円の寄付や地権者等に対する便益を図るなどという利益を提示されたため、h興産の上記要請を前向きに検討することとし、同年12月には、h興産から交渉の委任を受けていた遠藤との間で、リゾート施設の用地とすべき部分の開発を遠藤に任せる旨の密約を取り交わした。
しかし、松本町長の前記行動は、間もなく明るみに出て、被告当局や県に知られるところとなり、被告は、同月20日、県から、松本町長の前記行動には重大な問題があるから、被告の責任で整理するよう警告された。そこで、松本町長は、同月22日、遠藤に対し、本件協定等の存在を理由としてh興産の要請を断る旨の回答書を交付した。これに対し、遅くともこのころには被告議会議員に就任していた遠藤は、松本町長との間で取り交わした前記密約をほごにされたとして憤概し、同月27日、被告当局に対し、今後は原告による開発に反対し、あらゆる手を使って妨害する旨通告した。
エ 松本町長や被告当局の助役、収入役、教育長、被告議会の正副議長・各議員、各種委員会の正副委員長・各委員、本件地権者会の役員、商工会会長等は、平成元年12月25日、原告と地権者らとの間の連絡調整を行うなどして本件事業を促進する目的の下、大越町ゴルフ場等リゾート開発推進協議会を結成した。
オ 松本町長は、平成2年1月26日、株式会社b地産(以下「b地産」という。)、との間で、自己所有地を含む大越町大林地区の土地を大規模開発のために売却することを約束する旨の協定を取り交わした。
ところが、その協定書は、暴力団関係者等の手に渡り、同月29日以降、被告当局に協定書を買い取るよう求める電話がかかってきたり脅迫状が送付されてきたりした。そこで、同年2月2日には、松本町長がb地産に対して前記協定の撤回を通告するとともに、同月6日には、被告当局が協定書の返還を受け、事態の収拾を図ったが、松本町長の前記行動は、再び県に知られるところとなり、同月28日には、県から、被告が事態を収拾できなければ県としても本件事業を認可することができないなどと警告を受けるに至った。
カ 原告は、平成2年1月12日、本件地権者会に対し、用地買収価格案を提示したが、不満が出たため、対案の提示を求めた。
そこで、本件地権者会は、同年2月23日、今後の用地売却価格交渉の進め方につき、まず、正副会長が大筋の話合いを行い、その後、地権者らから選出された大越町ゴルフ場等リゾート開発特別委員会(以下単に「開発特別委員会」という。)で決定することとした。これを受け、開発特別委員会は、同年3月2日、原告に対し、用地売却価格案として、1反歩当たり、山林が125万円、田が450万円、畑が375万円の提示をし、同月中の交渉成立を希望した。
キ 遠藤は、平成2年3月ころ、原告による開発を妨害するため、本件ゴルフ場等の用地内に鉱業権を設定するとともに、被告に対してその旨通告した。
ク 被告は、昭和59年度以降、牧野工業団地の第2期造成事業を進めていたところ、平成2年、造成工事を開始し、上記事業を同年度の最重点事業として位置付けた。
これを知った原告は、前記事業が本件ゴルフ場等の用地買収交渉に影響することを懸念し、同年4月17日、松本町長や被告議会議長に対して造成事業の延期等を申し入れたが、受け入れられなかったため、本件ゴルフ場等の用地買収交渉を延期することとした。また、本件地権者会も、同年5月24日、原告との用地売却交渉を牧野工業団地の用地価格が設定されるまで延期する旨決定した。
ケ 林野庁は、平成2年6月11日、森林法に基づく林地開発行為の許可基準の運用細則に関する通達を一部改正した。この改正により、原告は、林地開発の事前協議については、経過措置の適用を受け、同年7月26日に旧基準で申請することができたが、林地開発の本申請については、平成4年6月10日までに地権者等の同意を得た上で行わなければ旧基準で申請することができないことになった。
コ 県は、平成2年6月22日、原告に対し、本件ゴルフ場等がゴルフ場を含んでいること等を理由として、提出済みの大規模土地取引事前指導の申出を取り下げて、旧要綱に基づく申請を行うよう求めたが、原告はこれに反発した。
サ 原告と本件地権者会との用地価格交渉は、平成2年秋ころに再開され、同年10月5日には、f興業と開発特別委員会との間でほぼ合意に達するに至り、同年11月22日には、原告と開発特別委員会との間で、1反歩当たり、山林を90万円、田を270万円、畑を321万9000円とする旨の正式な合意をするに至った。そして、この合意内容が、同年12月4日、本件地権者会の総会で報告され、以後、各地権者らから同意書を取りまとめる作業が開始された。なお、被告当局は、本件地権者会の会合等を通じ、地権者らに対して同意をするよう促していた。
シ 松本町長は、平成2年10月、遠藤からの紹介を受け、はとや旅館でcグループの関係者と密会し、その席で、cグループの関係者に対し、大越町に同社のゴルフ場を開設させる旨の話をし、本件協定等は破棄する意向を示した。そして、松本町長は、遠藤と一緒になって、同年12月末ころから、地権者らに対し、X商事が金のないけちな会社であるなどと吹聴し、本件ゴルフ場等の用地交渉から手を引くよう促していた。このため、地権者らの中には、被告の対応に不信感を抱き、同意書の提出を拒む者も現れた。
しかし、同意書を取りまとめる作業は一応進行していったため、遠藤は、これを不満とし、平成3年2月末ころから、被告当局に対して松本町長がまた約束をほごにしたなどと不満を訴えたり、県に対して原告に事前協議の認可をしないよう働き掛けたりしていた。このため、県は、同年3月1日、被告に対し、被告が事態を収拾できなければ県としても本件事業を認可することができない旨警告した。
ス 本件地権者会は、本件事業の進行が予定よりも遅れていたため、平成3年2月ころ、被告当局で本件事業を担当していた地域振興課主幹兼課長補佐のCに対し、本件事業のこれまでの経過を整理するよう依頼し、同年3月末、f興業を通じて、Cがまとめた本件事業に関する経過整理書(以下「本件整理書」という。)を入手した。本件整理書には、松本町長がひそかにh興産やb地産、cグループとの間でゴルフ場等開発の交渉をしていた事実が記載されていた。
セ 本件地権者会のうち明部ヶ渕方部の地権者らは、水利問題等について不安を抱き、同意書の取りまとめが遅れていた。このため、原告と被告は、平成3年4月22日には、上記方部の地権者らを対象にした説明会を実施したり、同年5月21日には、本件地権者会との間で、本件事業によって水量減少や水質汚染等が生じた場合に原告が補償すること等を定めたゴルフ場等開発に伴う生活環境保全及び用地取得に関する協定を締結したりして、同意書の取りまとめ作業を促進させることに成功した。
(3)  a建設への本件事業の承継とその頓挫に至る経緯等
ア 県は、平成3年6月1日、ゴルフ場開発に必要な同意率を90%以上に引き上げるなど、旧要綱の規制を強化した新要綱を制定したが、原告が新要綱の適用を受けるか否かはいまだ未確定であった。
そこで、原告は、同月以降、県との間で協議を重ねた結果、同年7月5日、本件ゴルフ場等のうちゴルフ場の部分は新要綱に準じた審査が行われるが、提出済みの大規模土地取引事前指導の申出を取り下げる必要はなく、その変更申請で足りる旨の指導を受けた。その結果、原告は、平成4年5月25日までに地権者の同意を得た上で農地転用の事前協議を申請すべきこととなり、これができないと大規模土地取引事前協議を受けられないことになった。
こうして、原告は、前示(2)ケのとおり、林地開発の本申請と併せて、平成4年5月までに地権者等の同意を得なければ、本件事業の遂行が事実上困難になることとなった。
イ f興業は、昭和63年10月に原告との間で委任契約を締結して以来、本件事業に関する同意取得の業務等を担当し、平成3年7月の時点で、地権者323名のうちの約70.3%に相当する227名の同意を取得していた。しかし、上記委任契約は、昭和64年(平成元年)3月末までに用地交渉を完了させることを前提に、報酬の支払時期を交渉完了後とする内容であったのに、平成3年7月に至っても、用地交渉は完了せず、また、ゴルフ場予定地の地権者ら約40名から同意を取得する作業は困難なものとなることが予想されたため、f興業は、同月25日、原告に対し、委任契約を更新して報酬を出来高払いとする旨願い出たが、原告がこれに応じなかったため、以後、同意取得の業務を中断した。
ウ B社長は、平成元年ころから、松本町長が原告の競合他社との間でゴルフ場等開発の交渉をしていたことを聞き及んでいたが、平成3年7月下旬ころ、本件整理書の写しを入手してその確証を得るとともに、松本町長が本件地権者会に対して用地交渉から手を引くよう促していたことをも知った。
そこで、B社長は、同年8月1日、松本町長や被告議会議長、地域振興課課長がX商事の東京本社を訪ね、松本町長らから本件事業の促進を要請されると、松本町長らに対し、被告が本件事業の推進に協力しない旨非難するとともに、本件整理書の写しを持ち出し、松本町長が原告の競合地社との間でゴルフ場等開発の交渉をしていた事実や本件地権者会に対して用地交渉から手を引くよう促していた事実の真偽をただした。しかし、松本町長がこれらの事実を認めなかったため、B社長は、本件事業をこれ以上進めることは無理と判断し、松本町長らに対し、本件事業を断念する旨告げるとともに、被告に対する提訴を検討する旨申し向けた。
この事態を受け、松本町長らは、帰町後直ちに遠藤と面談し、同人に対して事情を説明した上で、原告の本件事業を引き継いでくれる者を探すよう依頼した。
エ 遠藤は、松本町長らから前記の依頼を受けた後、株式会社d商事を通じ、A社長に対して本件事業の承継を依頼した。
この依頼を受けて、A社長が全株式を保有するe株式会社の代表取締役等は、平成3年8月24日、郡山市熱海町の磐梯観光ホテルで、松本町長や本件地権者会会長、f興業・株式会社d商事の各代表取締役、Dと会談し、被告や本件地権者会に協力の意思があることを確認した上で、A社長は本件事業を承継することにした。
そこで、A社長が代表取締役を務めるa建設は、平成3年9月上旬ころ、X商事から、原告の全株式と本件事業に関する権利ないし地位等を代金1億9800万円で譲り受けるとともに、上記代金のうち、e株式会社が同月6日に1500万円を、a建設が同月18日に相殺処理を経た後の1億3500万円を、それぞれ支払い、同日、A社長がB社長から原告の代表取締役の地位を譲り受けた。
オ 松本町長は、被告議会に対し、平成3年8月1日にB社長との間で行った会談につき、原告の役員変更とだけ報告し、X商事が本件事業を断念したことは報告しなかった。このため、被告議会は、原告の代表取締役が変更されたことを問題視し、同年9月24日、その経緯等を調査するため、110条委員会を設置した。
これを受け、本件地権者会は、110条委員会の調査結果が出るまで、用地交渉を据え置くこととしたが、110条委員会は同年12月10日まで合計9回にわたって開催されたため、2か月以上の間、用地交渉が進まないこととなった。
カ 被告は、平成3年10月8日、原告に対し、原告の代表取締役が変更されてから作業が進んでいないとして、その事情についての説明を求めた。
この要請に対し、原告は、しばらくの間、承継した本件事業の分析に時間を要しているとして、被告に対して猶予を求めていたが、同月30日には、f興業に対し、同社がこれまでに取得した約83%に及ぶ同意書の引渡しと引き換えに一部報酬3000万円を支払うとともに、f興業との間で、5000万円の報酬で同社が平成4年5月末までに用地交渉を全部完了させる旨の協定を締結し、用地交渉の再開に備えた。また、原告やf興業等の関係者は、同年11月2日以降、被告や県から指導を受けながら、被告に対して約76億円の資金証明書を提出したり、県に対して事前協議書等の申請書類を提出したりしていた。
キ 110条委員会は、平成3年12月10日、a建設に本件事業が承継されたことを前提に、早急に本件地権者会の会合を開催して地権者らの不安を払しょくするべきである旨結論付けた。しかし、被告議会は、同月20日、X商事が本件事業を断念した経緯等を調査するため、100条委員会を設置した。
これを受け、本件地権者会は、100条委員会の調査結果が出るまで、用地交渉を更に据え置くこととしたが、100条委員会は平成4年6月10日まで合計22回にわたって開催されたため、約半年もの間、用地交渉が進ちょくしないこととなった。このため、原告は、同年5月の農地転用事前協議の完了期限や同年6月の林地開発本申請の完了期限に間に合わせることができず、本件事業の遂行が事実上困難となった。
ク 100条委員会は、平成4年6月10日、X商事が本件事業を断念したのは、松本町長が、遠藤からの紹介を受けるなどして、h興産やb地産、cグループとの間でゴルフ場等開発の交渉をしたり、本件地権者会に対して用地交渉から手を引くよう促したりしていたこと、また、バブル経済の崩壊によって本件事業がX商事にとって魅力ある事業ではなくなり、X商事が事業の推進を引き延ばしたこと等が原因であるとするとともに、毅然とした態度を欠き、軽率な行動をとった松本町長の政治的・道義的責任は重大であると結論付けた。
この結論を受け、被告議会は、同年9月16日、松本町長に対する問責決議案を全会一致で可決し、松本町長自身も、自らの給与を1か月間にわたって10%カットする条例案を提出した。
ケ 本件地権者会は、100条委員会の結論を受けて解散するとともに、平成4年11月25日には、原告に対して同意書の返還を求めたため、本件事業の遂行は事実上不可能となった。
(4)  代替事業とこれが頓挫するまでの経緯等
ア 原告は、本件事業の完成が不能に帰したことから、平成5年8月31日ころ、被告に対し、内容証明郵便で、本件事業の頓挫によって生じた損害を賠償するか、他の解決方法を提示することを求めた。
これに対し、被告当局は、同年9月6日以降、原告との間で協議を重ね、その結果、同月27日、原告との間で、原告が、本件事業から一切手を引くこととし、県に提出していた大規模土地取引事前指導申出書は取り下げるとともに、本件協定等は破棄して地権者らに対して同意書を返還する方向で検討し、その結果を被告に通知すること、一方、被告は、原告の関連業者が大越町において他の事業を行う場合、退任予定の松本町長が新町長に対して被告が行政の範ちゅうにおいてできる限りの努力を惜しまないことを申し送る旨を合意した(本件合意)。
イ A社長と被告当局は、本件合意を締結したころから、原告の関連業者が大越町において行う代替事業について協議を行い、その結果、平成5年10月5日、松本町長が、新町長に対し、被告の所有する焼却炉施設が不要になったとき、原告に対する払下げを一番に検討すること、また、原告の関連業者が行う事業に対してもできる限りの協力をすることを申し送る旨合意し(以下この合意を「本件払下げ合意」という。)、その旨を記載した「打合せ事項及申し合わせ事項」と題する書面を作成した。
ウ 被告当局は、原告との間で本件合意を締結した後から、A社長との間で本件合意を書面化する作業を進め、平成5年10月、宗像町長が被告町長選挙に当選し、被告新町長に就任すると、同月29日に新旧町長の事務引継ぎが行われた際に、宗像町長に対し、当時おおむね完成していた「打合せ事項」と題する書面を示して引継ぎを行い、宗像町長の了解を得た上で、同年11月9日、確定稿としての「打合せ事項」と題する書面を作成し、A社長に送付した。
エ 原告は、被告当局の意見をいれ、代替事業として、焼却炉施設の跡地に産業廃棄物処分場を建設して運営する事業を推進することとしたが、平成6年4月14日に宗像町長や被告助役と会談を行った際、大規模土地取引事前指導の申出を取り下げるよう改めて求められるとともに、焼却炉施設の跡地で産業廃棄物処分場を建設・運営することは無理であるとして、他の場所で建設・運営する計画案を提出するよう求められた。
そこで、原告は、同月25日には、大規模土地取引事前指導の申出を取り下げて本件事業を完全に終結させるとともに、同年10月には、宗像町長に対し、大越町上大越大字早稲川字梨ノ木作地区に建設する計画案を提出した。
しかし、前記梨ノ木作地区には同意を得るのが困難な地権者等がいることが判明したため、宗像町長は、平成9年1月、原告に対し、同町大字下大越字百目木沢地区に建設する計画案を提出するよう求めるとともに、宗像町長自ら、建設予定地に係る地権者等の取りまとめ作業を行う旨述べた。
そこで、原告は、宗像町長に対し、前記百目木沢地区に建設する計画案を再提出し、宗像町長による地権者等の取りまとめの結果を待っていた。
しかし、宗像町長は、原告に対し、一部の地権者等の同意を得ることが難しく時間がかかるなどと説明するだけで、地権者等の取りまとめ作業は一向に進んでおらず、平成12年9月以降には、代替事業に関わることを拒否するようになった。
オ 原告は、平成12年10月10日付けで、被告に対し、内容証明郵便による催告をしたところ、被告は、同年11月2日付けで、原告に対し、被告が原告に対して大越町の焼却炉施設の払下げ等を行うという約束をしたことはない、宗像町長は処分場施設等の施設を民間に委ねることを否定的に考えている旨の回答書を送付してきた。
2  本件協定等に関する損害賠償請求について
(1)  一般に、地方公共団体たる市町村が一定内容の将来にわたって継続すべき施策を決定した場合、その施策が社会情勢等の変動等に伴って変更されることがあることは当然であって、地方公共団体は、原則として、当該決定に拘束されるものではない。しかし、その決定が、単に一定内容の継続的な施策を定めるにとどまらず、特定の者に対して当該施策に適合する特定内容の活動をすることを促す個別的、具体的な勧告ないし勧誘を伴うものであり、かつ、その活動が相当長期にわたる当該施策の継続を前提として初めてこれに投入する資金又は労力に相応する効果を生じ得る性質のものである場合には、その特定の者は、当該施策がその活動の基盤として維持されるものと信頼し、これを前提としてその活動ないしその準備活動に入るのが通常であり、しかも、その勧誘等に応じてその者と市町村との間に当該施策の維持を前提とする契約が締結され、密接な交渉を持つに至った場合には、このような当事者間の関係を規律すべき信義衡平の原則に照らし、当該施策を信頼し、これを前提として活動に入った特定の者の信頼に対して法的保護が与えられなければならないものというべきである(最高裁昭和51年(オ)第1338号同56年1月27日第三小法廷判決・民集35巻1号35頁参照)。逆にいえば、市町村は、上記の勧誘等に動機付けられて上記のような活動に入った者との間に形成された信頼関係を不当に破壊してはならないのであって、社会情勢の変化等によるやむを得ない事情がないのに、その者の信頼に反する行動をとり、その者の所期の活動を妨げ、社会観念上看過することのできない程度の積極的損害を与えた場合には、違法性を帯び、市町村の不法行為責任を生ぜしめるものといわなければならない。
(2)  本件協定等に基づく被告の義務について
前示1(1)認定の事実によれば、被告は、〈1〉昭和63年ころから、ゴルフ場を中心とするリゾート開発を奨励する政策をとるようになっていたところ、〈2〉同年2月ころからは、松本町長や被告議会議長等の被告関係者がX商事に対して大越町にゴルフ場や関連リゾート施設を開設してもらいたいなどと積極的に誘致の懇請を行い、〈3〉同年7月には、許認可関係の取得に協力したり地権者会を設立したりする方法で可能な範囲で協力するとして、ゴルフ場等の開設を懇請する文書を提出し、〈4〉同年10月には被告議会の同意を得、〈5〉同年11月には、被告議会による承認の下、原告との間で、本件ゴルフ場等の開設のために、地権者会を設立して用地交渉の場を設定し、用地の虫食い状態を防止する万全の策を講じるとともに、被告の範ちゅうに属する規制解除や許認可関係の事務手続に遅滞なく対応するなどして、原告に協力し、少なくともゴルフ場部分については昭和66年(平成3年)のオープンを予定する旨の本件協定等を締結し、〈6〉実際、平成元年2月には、地権者らに呼び掛けて本件地権者会を結成させたものであり、このような事情の下で、原告は、本件事業につき当然に被告の協力を得られるものと信じ、被告との密接な交渉の下で、許認可関係の取得や用地取得交渉等を行っていたものである。
以上のような状況の下では、原告が抱いた本件事業の遂行につき被告の協力を得られるという信頼は、信義衡平の原則に照らし、法的保護が与えられるとともに、被告を法的に拘束するものというべきである。
この点につき、被告は、本件協定等につき、被告が行うべき具体的行為が確定していない上、予算を付する旨の被告議会による議決もないから、法的拘束力はなく、町として一定限度での政治的な協力を約束したのみであると主張する。しかしながら、被告が行うべき具体的行為が確定し、予算を付する旨の被告議会の議決があるかどうかは、信義衡平の原則に基づく原告の信頼の法的保護や被告に対する法的拘束力とは無関係であるから、被告の主張は失当である。なお、被告のいう政治的協力の意味は、必ずしも明らかではないが、少なくとも「政治」の名の下に、原告の抱いている正当な信頼を裏切ってもよいということにならないことはいうまでもないところである。
(3)  被告の行為と責任について
ア 前示1(2)認定の事実によれば、被告の行為と本件事業が頓挫した経過は、おおむね次のとおりである。
〈1〉 被告は、農振除外手続に手間取り、本件事業の進行が当初の予想より約1年くらい遅れた。
〈2〉 平成元年に旧要綱が施行され、大越町において原告以外の業者にゴルフ場を開設させることは旧要綱に抵触するにもかかわらず、松本町長は、あえて、平成元年10月にはh興産との間で、平成2年1月にはb地産との間で、同年10月にはcグループとの間で、それぞれゴルフ場等を開設させることなどについて県や被告当局に内密に交渉を行った上、同年12月末ころからは、地権者らに対し、X商事の悪口を吹聴し、用地交渉から手を引くよう画策した。
〈3〉 やがて松本町長の前記秘密交渉が明るみに出て、原告や地権者らの知るところとなると、原告や地権者らの間に本件事業の完成に対する不安感や被告に対する不信感が広がり、地権者らの中には同意書の提出を拒む者が現れたり、原告自身が本件事業に対する熱意を喪失したりして、用地交渉が遅れた。
〈4〉 そのような状況の中で、X商事が本件事業を断念してa建設に事業を承継させたにもかかわらず、松本町長が被告議会に対してその経緯を説明しなかったために、被告議会がこれを問題視して110条委員会や100条委員会が設置され、これを受けて、既に被告に対する不信感を抱いていた本件地権者会が各委員会の調査結果が出るまで用地交渉を据え置くこととしたところ、100条委員会の開催中に農地転用事前協議や林地開発本申請の各完了期限が経過し、本件事業の遂行が事実上困難となった。
〈5〉 本件地権者会は、100条委員会の結論を受けて解散し、原告に対して同意書の返還を求めたため、本件事業の完成が不能に帰した。
〈6〉 一方、本件事業における用地交渉は、これを円滑に進めるべく、本件地権者会や大越町ゴルフ場等リゾート開発推進協議会、開発特別委員会が相次いで設置されるなどした結果、平成2年11月には、原告と本件地権者会との間で用地価格が合意された。また、それ以後は、同意書を取りまとめる作業が進められ、取りまとめの作業が遅れていた地権者らについては、説明会を実施したり協定を締結したりすることで、地権者らの不安を取り除いて作業を促進させるなどした結果、同意率が、平成3年7月には約70%に、同年10月には約83%にそれぞれ到達し、必要とされる同意率である90%にあと少しの段階にまで至っていた。
イ 前記ア〈2〉ないし〈5〉に摘示したところによれば、松本町長は、やむを得ない事情もないのに、新たなゴルフ場開発業者を参入させようと企て、地権者との用地交渉を妨害し、その他原告と被告との間に形成された信頼関係を不当に破壊するものであって、違法性を帯び、被告について不法行為責任を生ぜしめるというべきである。
なお、前記ア〈6〉に照らせば、松本町長の前記一連の行為がなければ、本件事業が完成した高度の蓋然性が存在したことが明らかである。
ウ この点につき、被告は、松本町長の前記一連の行為は、被告議会がその旨の議決をしたり報告を受けたりしたことがないから、被告議会の意思に反した個人の行為にすぎず、被告の行為とはいえない旨主張するが、失当である。松本町長の前記一連の行為は、いずれも議会の議決を必要とするものではなく(地方自治法96条参照)、外形上、町長の職務行為として行われたものであるから(民法44条参照)、被告議会が議決をしたり報告を受けたりしたことがないことをもって、被告の不法行為責任を否定する根拠とはならない。
また、被告は、原告が本件事業に対する情熱を失って自らがなすべき作業を怠った上、地権者等にも不信感を抱かせたために、本件事業の完成が不能に帰した旨主張する。しかし、仮に原告が本件事業に対する熱意を喪失したとしても、その原因は専ら松本町長の一連の背信的な行為によるものであるといえる上、平成3年9月以降は、丙商事が本件事業を承継し、同年11月以降、作業を進めていたから、被告の主張は採用の限りでない。
エ 被告の債務不履行責任について
前示の事情の下では、被告が債務不履行責任をも負うべきと解釈し得る余地がある。しかしながら、仮に被告が債務不履行責任を負うと認められるとしても、時効により消滅している。すなわち、次のとおりである。
被告が負うべき債務不履行責任は、原告の商行為に関して生じた債務の不履行に基づく損害賠償責任であるから、商事消滅時効の適用を受けるものと解される。
〔証拠略〕によれば、被告当局は、平成5年11月9日、原告に対し、自己の不適切な事業推進により原告が2億2544万1041円の資金を投入してきた本件事業が不能に帰した経緯を認めた上で、本件合意を書面化した文書をファックス送信したことが認められるから、少なくともその時点では原告の債務不履行に基づく損害賠償請求権を承認していたものということができる。
原告は、被告が、平成5年以降も平成12年9月5日に協力拒否の態度をとるようになるまで、原告との間で、本件事業の代替事業として、産業廃棄物処分場の建設・運営事業に関する協議を重ねていたのであるから、原告に対して本件事業の頓挫によって生じた損害賠償債務の存在を継続的に承認し続けていたということができるとし、消滅時効の起算点を平成12年9月5日とすべき旨主張する。
時効の中断事由である承認とは、時効の利益を受ける者が権利者に対して債務の存在を認識している旨表示する行為をいうところ、和解をした紛争当事者は、通常、和解をしたからこそこれを履行するのであって、必ずしも紛争の対象となった債務の存在を認めたから履行するというものではない。このため、和解を履行する態度をとったことをもって、債務の存在を認識している旨の表示があったとみるのは相当でなく、改めて債務確認を行うなど、和解を履行する態度以外の態度をもって、債務の存在を認識している旨表示したような特段の事情がない限り、承認があったとはいえないと解される。
そうすると、たとい原告主張のような事実があったからといって、直ちに、被告が、原告に対して債務不履行に基づく損害賠償債務の存在を認識している旨表示したということはできない。
そして、本件全証拠を検討しても、平成5年11月9日以降に、被告が原告に対して当該債務の存在を認識している旨表示したと認め得るような特段の事情を見いだすことはできない。
したがって、商事消滅時効は、平成5年11月9日に中断して、そこから再度進行し、平成10年11月9日の経過により、完成し、原告の被告に対する債務不履行に基づく損害賠償請求権は遡及的に消滅したものというべきである。
3  本件合意に関する損害賠償請求について
(1)  本件合意に基づく被告の義務について
前示1(4)ア認定の事実に、〔証拠略〕を併せれば、本件合意は、本件事業の頓挫によって原告と被告との間に損害賠償をめぐる争いが生じたため、原告と被告との間で、原告が本件事業から手を引く代わりに、原告の関連業者が大越町において他の事業を行う場合、松本町長が新町長に対して被告が行政の範ちゅうにおいてできる限りの努力を惜しまないことを申し送り、争いを終結させること等を合意したものと認められるから、これは和解契約に該当し、被告議会の議決を必要とする事件に当たるところ(地方自治法96条1項12号)、被告議会の議決が存在しないことは明らかであるから、本件合意は無効である。また、本件合意の内容を補充する関係にある本件払下げ合意も、同様に無効である。
加えるに、本件合意や本件払下げ合意において被告が行うべき行為は、これらの合意を併せて理解しても、被告の所有する焼却炉施設が不要になったとき、原告に対する払下げを一番に検討すること、また、原告の関連業者が大越町において事業を行う場合、被告が行政の範ちゅうにおいてできる限りの協力をすることを松本町長が新町長に対して申し送るだけであって、いまだ抽象的なものにとどまり、何らかの実効性を期待できるようなものであったとはいい難い。しかも、松本町長が新町長に対して申し送るという合意であって、原告と松本町長との間の個人的な合意という色彩が強く、被告や宗像町長は、この合意に敬意を払うべきではあっても、必ず遵守しなければならないものとはいえない。
そして、以上のような代替事業に関する事情や問題点は、原告において、容易に知り得たところと推察されるとともに、既に述べてきた事情の下では、たとい、原告が代替事業の実現に向けて時間と労力を費やしたことにより、ある程度の不利益を受けたとしても、新規事業におけるリスクの範囲内の問題であり、これに対して補償しなければ社会観念上看過することのできないような場合に当たるともいい難い。
そうすると、当該代替事業の遂行につき被告の協力を得られるという信頼を原告が抱いたとしても、いまだ法的保護が与えられるようなものとはいい難く、被告に対して不法行為責任や債務不履行責任を問うことは困難といわざるを得ない。
以上の次第で、原告の本件合意に関する請求は、その余の点につき判断するまでもなく、理由がない。
4  被告の被った損害等について
(1)  損害の発生とその程度について
ア X商事に対して支払った株式譲渡代金 0円
前示1(3)エのとおり、a建設は、平成3年9月上旬ころ、X商事から原告の全株式と本件事業の権利ないし地位等を代金1億9800万円で譲り受けるとともに、上記代金のうち、A社長が全株式を保有するe株式会社が同月6日に1500万円を、a建設が同月18日に相殺処理を経た後の1億3500万円を、それぞれ支払っているが、A社長(実際にはe株式会社及びa建設)がX商事に上記金員を支払ったとしても、その出捐行為はあくまでもA社長個人の行為にとどまるものであって、原告の出捐行為に代わるわけではないから、原告自身の損害として認める余地はない。
イ 同意書取得費用・設計変更料等 3428万2285円
前示1(3)カのとおり、原告は、平成3年10月30日には、f興業に対し、同社がこれまでに取得した約83%に及ぶ同意書の引渡しと引き換えに、一部報酬3000万円を支払っている。また、〔証拠略〕によれば、原告は、本件ゴルフ場等の設計変更料等として、平成3年12月10日に300万円、平成4年1月27日に50万円、同年4月30日に78万2285円の合計428万2285円を支払ったことが認められる。これらの支出は、本件事業の完成が不能に帰したことにより、回収不能の積極的損害となったものというべきである。
ウ 諸経費 708万1491円
〔証拠略〕によれば、原告は、a建設への事業承継が行われた平成3年9月18日から平成5年9月5日までの間に、本件事業の遂行又は残務整理のため、合計708万1491円の諸経費を支出したことが認められ、これらは相当な費用といえるから、本件事業の完成が不能に帰したことにより、回収不能の積極的損害となったものというべきである。
(2)  過失相殺
以上より、原告の損害額は、合計4136万3776円となるが、前示認定の諸事情を考慮した場合、本件事業の完成が不能に帰したのは、前示のとおり、被告の前記各対応に主な原因がある一方で、B社長が平成3年8月に本件事業をこれ以上進めることは無理と判断し、X商事がa建設に本件事業を承継させたことにも原因があるというべきである。被告当局は本件事業の完成を一応希望していたにもかかわらず、B社長が上記のような判断をしたことには、多少の早計さがうかがわれ、これは原告の落ち度というべきであるからろ原告の請求につき、職権によって2割の過失相殺をする。
そうすると、原告の損害として認める額は、3309万1020円となる。
(計算式)(3428万2285円+708万1491円)×0.8=3309万1020円(1円未満切捨て)
(3)  確定遅延損害金
ア 前示(1)イに対する確定遅延損害金 107万0734円
不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金の利率は法定利率の限度に限られる(民法419条1項本文)。
ところで、不法行為に基づく損害賠償債務は、催告を待たずして、損害発生と同時に遅滞に陥るところ(最高裁昭和34年(オ)第117号同37年9月4日第三小法廷判決・民集第16巻9号1834頁参照)、本件で前示イに関する損害が発生した日は、各支出をした日ではなく、本件事業の完成が不能に帰した平成4年11月25日であるというべきである。したがって、同日から平成5年9月5日までの285日間に生じた確定遅延損害金は、107万0734円となる。
(計算式)3428万2285円×0.8×0.05×285日/365日=107万0734円(1円未満切捨て)
イ 以上により、確定損害額は、合計で3416万1754円となるが、前示(1)イ、ウで認定した積極的損害は、過失相殺による減額を考慮しても、社会観念上看過することのできない程度の損害に当たるというべきである。
ウ 確定遅延損害金に対する遅延損害金について
原告は、前示第3の4(1)アのとおり、支出した同意書取得費用・設計変更料等の確定遅延損害金に対する遅延損害金を請求しているが、いわゆる法定重利を請求するためには、遅延損害金が1年分以上延滞していることを要するところ(民法405条)、前示アのとおり、確定遅延損害金は285日分しかないから、これを認めることができない。
5  本件合意による損害賠償請求権の消滅について
被告は、本件合意は、原告が本件事業から手を引き、本件事業の頓挫によって生じたとする損害賠償請求権を放棄して争いを収束させるものであり、和解契約に該当するから、原告の本件協定等に関する損害賠償請求権は消滅した旨主張する。
前述したとおり、本件合意は、和解契約に該当するところ、被告議会の議決が存在しないから無効というほかないのであって、有効な和解契約があったことを前提とする被告の上記主張は、採用の限りでない。
6  結論
以上の次第であるから、原告の請求は、被告に対し、3416万1754円及びうち3309万1020円に対する不法行為の後の日である平成5年9月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるので認容し、その余を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条、64条本文を、仮執行の宣言につき同法259条1項を、仮執行免脱の宣言につき同条3項を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 宍戸充 裁判官 伊藤清隆 志賀勝)

 

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