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「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(93)昭和60年 9月26日 東京地裁 昭53(行ウ)120号 権利変換処分取消請求事件

「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(93)昭和60年 9月26日 東京地裁 昭53(行ウ)120号 権利変換処分取消請求事件

裁判年月日  昭和60年 9月26日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  昭53(行ウ)120号
事件名  権利変換処分取消請求事件
裁判結果  棄却、控訴  文献番号  1985WLJPCA09261008

要旨
◆都市再開発法による権利変換計画が、同法七七条二項所定の従前の価額と右計画に基づいて与えられる施設建築物の一部等の価額との間に著しい差額が生じてはならないとする価額の均衡の原則に適合しているかどうかを裁判所が審査する場合には、従前の価額について同法八五条所定の裁決の申請及び訴えの提起がなく、したがつて清算金の関係では右価額が確定しているときであつても、右価額を証拠によつて認定することができ、また、認定しなければならないとした事例
◆都がした都市再開発法による第一種市街地再開発事業の権利変換処分が、手続上又は内容上の瑕疵がなく、適法であるとされた事例

裁判経過
控訴審 昭和61年 5月29日 東京高裁 判決 昭60(行コ)84号 権利変換処分取消請求控訴事件

出典
行集 36巻9号1338頁
判時 1173号26頁
判例地方自治 19号50頁

評釈
下山洋文・ジュリ別冊 103号114頁
下山洋之・ジュリ別冊 103号114頁(街づくり国づくり判例百選)
見上崇洋・判例地方自治 27号37頁
伊藤治彦・法学論集(西南学院大学学術研究所) 19巻2号137頁

参照条文
都市再開発法74条2項
都市再開発法77条2項
都市再開発法85条
都市再開発法86条2項

裁判年月日  昭和60年 9月26日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  昭53(行ウ)120号
事件名  権利変換処分取消請求事件
裁判結果  棄却、控訴  文献番号  1985WLJPCA09261008

原告 森田正吉 外五名
被告 東京都

 

主  文

原告らの請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。

 

事  実

第一  当事者の求めた裁判
一  請求の趣旨
1  被告が原告らに対して昭和五三年六月一〇日付五三市再権第三八号による通知をすることによつて行つた東京都市計画事業西大久保地区第一種市街地再開発事業に係る別紙目録一ないし六記載の各権利変換の処分はいずれもこれを取り消す。
2  訴訟費用は被告の負担とする。
二  請求の趣旨に対する答弁
主文同旨
第二  当事者の主張
一  請求原因
1  被告は、東京都新宿区西大久保四丁目及び同区高田馬場一丁目の各一部を施行地区に含まれる地域とする東京都市計画事業西大久保地区第一種市街地再開発事業(施行区域を高度利用地区とする都市計画決定は昭和四七年三月一三日に告示され、事業計画決定は昭和五二年九月七日に公告された。以下「本件事業」という。)の施行者であり、原告らはいずれも本件事業の施行区域内に土地又は建物を所有し、もしくは建物の賃借権を有するものである。
2  被告は、本件事業において原告らに対し昭和五三年六月一〇日付五三市再権第三八号による通知をすることによつて別紙目録一ないし六記載の各権利変換の処分(以下「本件処分」といい、各原告らに対する本件処分を「本件各処分」と総称する。)をなした。
3  しかしながら本件各処分に至る手続には次のとおり各原告らに共通する違法事由及び各原告らに固有の違法事由がある。
(一) 各原告らに共通する違法事由
(1)〈1〉 本件事業施行区域内の地元商店街は昭和四八年ころ本件事業の計画に対応すべく諏訪通り西大久保地区再開発対策会(以下「対策会」という。)を結成し、対策会が本件事業の遂行について地元商店街の窓口として被告と折衝を重ねるなどしてきたものであるが、本件各処分に至る手続は、対策会の役員の地位を独占する特定の者達にとつて都合の良いように進められてきたのであつて、被告は、右特定の者達に同調し、事業の遂行について原告らを終始疎外し、右特定の者達の自己の利を図るやり方を利用して(又は、少くとも右やり方を放任して)、本件事業を推進したのであつて、右のような本件各処分に至る手続には、不公正、不平等の違法がある。
〈2〉 すなわち、本件事業の施行地区は東京都市計画道路補助線街路第七四号線(通称諏訪通り、以下「諏訪通り」又は「補助七四号線」という。)の南側に面する商店街が主要なものであるところ、昭和四〇年代に至り再開発の話がもちあがり、昭和四七年ころから本件事業が動き出したので、右商店街に属する住民等によつて対策会が結成されたのであるが、昭和四九年一〇月斉藤宏が会長に就任してからは、同人、金木敏光及び吉瀬みち子ら特定の地元有力者グループ(以下「役員グループ」という。)が対策会の役員としての地位を独占し(会長斉藤宏、総務部長金木敏光、副会長吉瀬みち子で、このメンバーは原告森田正吉(以下「原告森田」という。)が会長となつた昭和五一年末から昭和五二年初めまでの期間を除いてはほぼ同一で、昭和四九年から対策会が解散した昭和五二年一〇月までの間で斉藤宏以外に会長になつたのは原告森田だけである。)、専ら役員グループのためにする対策会の運営が行われるようになつた。
〈3〉 役員グループは、本件事業の施行により、施行区域に建設されることとなる高層の施設建築物(以下「再開発ビル」という。)に権利変換の処分により入居する権利者が少なければ少ないほど自己の権限を思うように行使して自己の利益を追求できると考え、なるべく多くの地元権利者を追い出そうとした。このため、右グループは昭和五〇年一〇月ころ対策会として再開発ビル完成後の駐車場の申込みを受け付けると称して地元権利者の家を廻り、一台分四五〇万円という法外な値段を呈示し、また、再開発ビルの管理は対策会が行うと称して管理費は一坪一万円はかかると吹聴したため、地元権利者のうちかなりの数の者が再開発ビル入居後の生活設計に不安をいだいて、都の先行買収に応じ地域外に移転していつた。
〈4〉 役員グループの対策会運営の方法は、専ら同グループに属する者の利益を図る目的に出たものであつて、形式上、会合を開くものの、彼らの意に沿わぬ出席者に対しては本件事業についての情報は全く知らせなかつたし、彼らの意に反する発言をする者に対しては威圧的にそれ以上の発言を封じるなどしたのである。
しかるところ昭和五一年一一月二四日会員の意思に基づく投票による役員改選が行われ、その結果原告森田が新会長に当選した。すると斉藤宏らは昭和五一年一二月中旬ころ、同原告宅を訪れ、ささいなことを取り上げて会長辞任を迫り、同原告がこれを拒否するや翌五二年二月対策会総会において対策会の解散を決議させるに至つた。
斉藤宏らはその上で同月中旬ころ原告ら及び他のかなりの数の権利者を排除し約一五名の権利者をもつて入居促進会なるものを結成し、斉藤宏がその会長となつた(事務局長金木敏光、副会長吉瀬みち子)。そして、その後右入居促進会の名称を再び諏訪通り西大久保地区再開発対策会と変更し地元権利者を代表するとして被告側と交渉に当たるようになつた。このため、原告らは昭和五一年二月以降本件事業計画の進行については何ら知らされずに推移したのである。
〈5〉 被告は役員グループと同調して、原告らを終始疎外し、右グループの右のようなやり方を利用し、又は少くとも右のようなやり方を是正することなく放任して本件事業を推進したのである。
(2)〈1〉 本件各処分のうち再開発ビルの店舗部分へ入居する権利変換の処分は、役員グループと被告の依頼を受けた店舗配置設計のコンサルタント日本エヌ・シー・アール株式会社(以下「NCR」という。)との間で策定された店舗配置計画に基づいて行われたものであるが、右計画においては、右グループに属する者のみが優先的に都合のよい場所を確保し、原告らの希望を全く容れずに、原告らには残つた部分を押し付けたのであつて、被告は、この事情を知悉しながら本件各処分を行つたのであるから、その手続は著しく不公正、不平等であつて違法というべきである。
〈2〉 すなわち、斉藤宏は、昭和五〇年ころ対策会内部にシヨツピングセンター研究会(会長斉藤宏、総務部長金木敏光、会員吉瀬みち子、同大海精一、同成田勝利等、以下「SC会」という。)を設置し、再開発ビルの店舗部分の配置計画案作成に乗り出し、これとともに、対策会は、昭和五二年六月八日NCRを店舗配置設計のコンサルタントとして参画させるよう被告に要望し、被告は同年七月五日ころ右要望を入れてNCRに対し店舗配置設計のコンサルタントを依頼した。
〈3〉 SC会は当初は対策会の一部会にすぎず、実質的には役員グループが牛耳る会員わずか一〇名の組織で到底関係権利者を代表するものではなかつたにもかかわらず、次第にその権限を強化し、被告及びNCRとの交渉は実質的にはSC会が担当し、被告と関係権利者との間で、店舗配置設計が正式に決定される以前に、裏で実質的合意をなし、SC会のメンバーが他の権利者に先だち自己の欲する位置の店舗を取得してしまつた。
〈4〉 このことは、役員グループの斉藤宏、金木敏光(敏子)、吉瀬みち子、大海精一らが昭和五二年七月一五日に配布されたNCR案とほぼ一致した権利変換を受けたことからも明らかで、役員グループは、被告が関係権利者に対し再開発ビルの入居に伴う各種の希望申出書を提出するよう要望した昭和五二年九月二六日以前に都合の良い店舗を早い者勝ちに奪い、被告は右事実を知りながら本件各処分を行つたのである。
被告のした右希望申出書提出の要望は、全く形式的なもので、役員グループの恣意的な店舗配置設計を隠ぺいするにすぎないものであつたのである。
右のとおり、被告は役員グループと共謀し、原告らを排除したまま店舗配置を決定したのである。
(3) 被告は、役員グループの斉藤宏、金木敏光外一名を都市再開発法(以下「法」という。)五七条四項二号に定める市街地再開発審査会(以下「本件審査会」という。)委員(いわゆる二号委員)に任命し、彼らが自己の利益追求をめざすのに手を貸したものであり、その結果本件各処分がなされたものであるから、その手続には違法がある。
(二) 各原告らに固有の違法事由
(1) 原告森田について
〈1〉 原告森田に対する本件処分において同原告に割り当てられた店舗の位置は、役員グループに対する店舗配置決定後に決定されたものであり、同原告が昭和五二年七月中旬及び同年八月一四日のNCRとの個別面談の際、別紙図面一表示のナンバー一八の店舗(以下「ナンバー一八の店舗」という、以下のナンバー一ないし三〇の各店舗はすべて同図面表示のものである。)を希望したにもかかわらず、被告の担当官である本間永治再開発事務所権利変換課権利変換第一係長(以下「本間係長」という。)は既に割当てが決まつているとしてこれを拒否し、原告森田をして他の位置(ナンバー一の店舗)を選択するのを強制したもので不公正、不公平の違法がある。
〈2〉 原告森田に対する本件処分において同原告に割り当てられた住宅の位置については、被告の担当官は、昭和五二年一〇月六日同原告と話し合つたうえこれを決定する旨約束したにもかかわらず、一方的にこれを決定し、割り当てたもので不公正の違法がある。
(2) 原告井上好晴について
〈1〉 原告井上好晴(以下「原告井上」という。)に対して本件処分をするまでの間において、被告は、昭和五二年七月一一日の「コンサルタント(NCR)紹介等の説明会」の開催についての電話による通知以外に説明会、各種書類の提出等についての通知をせず、そのため同原告は店舗配置設計が実質的に決定される時期に手続から排除されたため、同原告の店舗配置についての希望の調査がされずに本件処分がなされたものであるところ、被告は、他の関係権利者からは右の希望を調査していたのであるから、同原告に対する本件処分の手続には不平等の違法がある。
〈2〉 原告井上に対する本件処分において同原告に割り当てられた店舗の位置は役員グループに対する店舗配置決定後に決定されたものであり、同原告が、昭和五三年四月三日被告の担当官にナンバー一八の店舗を希望したにもかかわらず、同原告の右希望を拒否して他の位置を強制したもので不公正、不公平の違法がある。
〈3〉 原告井上に対する本件処分において同原告に割り当てられた住宅部分については、被告は、本間係長が、昭和五三年二月二七日同原告に対してした八七・七二平方メートルの四LDKを割り当てる旨の約束を無視して八〇・九二平方メートルの四LDK(実質的には四DKである。)を割り当てた不公正がある。
(3) 原告村田安彦について
原告村田安彦(以下「原告村田」という。)に対する本件処分は、他の関係権利者とは別異の取扱いのもとになされ、かつ、同原告は、昭和五二年一〇月六日ナンバー一七の店舗を希望したにもかかわらず、同原告の右希望を無視して他の位置を割り当てたもので、不公平、不公正の違法がある。
(4) 原告木村友治、同木村邦子、同有限会社理工社について
原告木村両名、同有限会社理工社(以下「原告理工社」という。)に対する本件処分は、他の関係権利者とは別異の取扱いのもとになされ、かつ、原告木村友治は、昭和五二年九月七日本間係長にナンバー二四の店舗を希望する旨述べ、また同年一〇月六日にも希望申出書にナンバー二四の店舗を希望する旨記載したにもかかわらず同原告の右希望を無視して他の位置を割り当てたもので不公平、不公正の違法がある。
4  本件各処分は次のとおりその内容においても違法がある。
(一) (関係権利者間の利害の衡平に考慮を払わなかつた違法)
権利変換計画は、関係権利者間の利害の衡平に十分の考慮を払つて定めなければならないものとされている(法七四条二項)。
しかるに、本件各処分は右3で主張したとおりの違法な手続でなされており、関係権利者間の利害の衡平を考慮したものでないことはもちろん、かえつて、役員グループのみを優遇し、原告らをことさら不利益に扱つたものであるから同法七四条二項に反する違法がある。
(二) (従前資産と変換資産との間に著しい差額を生じさせた違法)
権利変換計画においては、権利者に与えられる施設建築物の一部の価額と従前の価額との間に著しい差額が生じないように右建築物の一部が定められなければならないものとされている(法七七条二項)。
しかるに原告らの従前の総資産額と権利変換後の総資産額との間には次のとおり著しい差額が生じているから本件各処分には法七七条二項に反する違法がある。
(1) 被告の原告らの従前の総資産額に対する評価は、その算定方法を誤つたため不当に低額となつている。
〈1〉 被告は本件事業地域内の土地(以下「本件土地」という。)の評価を路線価式評価法によりなしたが原告らに右手法を適用するのは誤りであつて標準地比準評価法を適用すべきである。
すなわち、路線価式評価法による評価は、本件事業のように評価対象地が多数ある場合にその評価を一律簡便に行うことを可能とし、もつて効率的な公共事業の遂行に資するものとして採用されたものである。しかし、評価対象地の価額について争いが生じた場合には、かかる一律の評価でなく個別具体的な評価がなされるべきである。このことは、昭和四四年九月二九日の住宅宅地審議会答申(建設省住宅地審発第一五号)により設定された不動産鑑定評価基準第七、六「鑑定評価方式の適用」によれば、不動産の価額の鑑定については原則として原価方式、比較方式及び収益方式の三方式を併用すべきであり、対象不動産の種類、所在地の実情、資料の信頼性等により三方式の併用が困難な場合においても、その考え方をできるだけ参酌するよう努めるべきであるとされていることからも明らかである。
また、本件土地内の個々の土地の具体的な評価において、路線価式評価法によれば路線価に奥行逓減、側道加算及び私道減価の修正しかなされないが、標準地比準評価法によれば、標準地比準価額に各種の増減要因が加味され、より適切な評価がなされるのである。
〈2〉 よつて、以下標準地比準評価法により本件事業の評価基準日である昭和五二年一〇月七日時点の原告らの従前の総資産額を算定することとする。
(ア) 原告らが、評価基準日に所有していた土地の状況は左のとおりである(但し、原告理工社は土地、建物を所有していなかつた。)。
(あ) 土地の表示  別表(一)のとおり
(い) 各土地の状況 別表(二)のとおり
(う) 周辺の状況
周辺の地域特性は、木造二階建店舗住宅が存する諏訪通り商店街で、道路は、幅員八メートルの補助七四号線であり、沿道は、日常生活用品小売りを主とした近隣型商勢圏で商況は普通である。商業地としては商業背後地が狭く、道路の幅員及び背後地への連続性がやや良好ではないが、交通条件、環境条件等が優れており、商店及び住宅地としての二面的利用性を有する。
(え) 法令上の規制
法令上の規制は住居地域、日影二種、高度利用地区、容積率四〇〇パーセント、建ぺい率七〇パーセントである。
(イ) 原告らの土地の存する諏訪通り商店街の標準的比準価格は左のとおり一平方メートル当たり少くとも四三万五六〇〇円である。
(あ) 取引事例比較法による評価
本件土地周辺の取引事例、地価公示地及び都基準地のそれぞれの所在地、取引年月日、取引価額及び査定価額は、別表(三)のとおりであつて、これにより検討すると、諏訪通り商店街の標準的比準価額は、一平方メートル当たり四三万五六〇〇円を下まわることはない。
(い) 収益還元法による評価
左記の事例を補正して原告らの土地の収益価額を求めると一平方メートル当たり四二万四〇〇〇円となる。

(一) 所在地        新宿区高田馬場一―二〇―五
(二) 構造等        鉄筋コンクリート造陸屋根五階共同住宅浴場
(三) 年間総収益      三三、八一六、四〇〇円
(四) 年間総費用      一〇、二五二、八〇〇円
(五) 純収益        二三、五六三、六〇〇円
(六) 土地に帰属する純収益 一三、二四三、六〇〇円(一平方メートル当たり一九、八二三円)
(う) その他の方法による評価
相続税路線価より推定する価額は左記(一)式のとおり一平方メートル当たり四三万六九〇〇円、固定資産税評価額より推定する価額は左記(二)式のとおり一平方メートル当たり四三万六〇〇〇円、地元精通者の意見価額は一平方メートル当たり四二万五〇〇〇円から四四万五〇〇〇円である。

(一) 式 一七〇、〇〇〇(円)(相続税路線価)×二・五七=四三六、九〇〇(円)
(二) 式 一一三、二五八(円)(固定資産評価額)×三・八五=四三六、〇〇〇(円)
(え) 以上を総合評価すると、更地については原告らの土地は一平方メートル当たり四三万五六〇〇円を下まわることはない。
また、私道部分については更地価額の五〇パーセントを下まわることはない。
(ウ) 原告らの土地の評価は標準的比準価額に各種の増減要因を加味して計算すると、少くとも別表(四)の金額となる。
(エ) これに、被告の評価額による原告ら所有の各建物の価額を加算すると、原告らの従前の総資産額は別表(五)の原告らの主張における従前の総資産額欄記載の額を下まわることはない。
〈3〉 仮に本件土地の評価について路線価式評価法に拠るとしても、その標準画地の評価、いわゆる路線価は左のとおり低すぎるのであつて、到底正当なものということはできず、また、個別的要因が無視されており、不当なものである。
(ア) 被告は本件事業の対象地域についてA路線からO路線までの一五の路線を設定して、従前資産の価額を各路線価額を基に算出したところ、原告らの従前資産のうち土地の評価はA路線の価額(一平方メートル当たり三六万七八〇〇円)を基準に評価されたが、これはC路線の価額(二七万九八〇〇円)に比べ不当に安く評価されており、違法というべきである。
すなわち、A路線価が適用される土地は、交通の便及び公共施設に恵まれ、商業地としての条件も大変良く、電気ガス上下水道も完備しており、住居地域、日影二種、高度利用地区、容積率四〇〇パーセント、建ぺい率七〇パーセントである。一方C路線価が適用される都有地は交通の便が劣り、住宅地で下水道も完備されておらず建ぺい率も三〇パーセントにすぎないものであるから、被告の昭和四七年八月一日の評価においてもA路線価が適用される土地は、C路線価が適用される土地よりも五二・八ないし六一・五パーセント高く評価されている。
したがつて、A路線価はC路線価よりも少なくとも六〇パーセント以上高く評価すべきである。
しかるに、被告は昭和四七年八月一日から昭和五二年一〇月七日(評価基準日)までのA路線価の土地価格上昇率はC路線価のそれに比して不当に低く押さえ、このため三一・四パーセントしか高く評価されなくなつたのである。
被告の評価基準日における評価は本件事業の進行により建物がまばらになり、寂れた状況となつてからの評価であり、諏訪通り一帯が従来有していた繁華性が考慮されておらず、このためA路線価が不当に低く評価されたものである。
(イ) 更に、被告の評価においてはA路線価の適用される土地の延長が長すぎ個別的要因が無視されていて不当である。
(2) 他方、原告らの権利変換後の総資産額は左のとおりである。
〈1〉 原告らの権利変換後の総資産を被告が評価した額は別表(五)の権利変換における権利変換後の総資産額欄記載の金額であるところ、これらは左のとおり不当に高額に評価されている。
〈2〉 原告井上について
原告井上は一階シヨツピング・モール内にナンバー一九の一の店舗を割り当てられたが、右店舗は間口が三メートルしかなく、トイレがなく、ガス、水道メーターが前面にあつて有効面積が少なく、サービス通路もなく、換気が悪く、クーラーも設置されていないものである。したがつて店舗としての利用価値はかなり低いからその交換価値は被告の評価額より二割以上低く評価すべきである。そうすると原告井上の総資産の評価額は次式のとおり、四一八四万六〇〇〇円となる。
(式)七、四五〇、〇〇〇(円)×〇・八+三五、八八六、〇〇〇(円)=四一、八四六、〇〇〇(円)
〈3〉 原告村田について
原告村田は一階と地下一階の二つの店舗を割り当てられたが、これらの店舗は、左のとおり他の店舗に比べてその価値が著しく劣るものである。
(ア) 一階シヨツピング・モール内の店舗(ナンバー一六の店舗)
この店舗には、店舗として必要不可欠な設備であるガス、水道、トイレがなく、サービス通路もないからかなり低く評価すべきであつて、被告の評価額は少くとも三割以上高い。
(イ) 地下一階の店舗(別紙図面二表示のナンバー三一の二の店舗、以下「ナンバー三一の二の店舗」という。)
この店舗は、もともと駐車場のスペースとして予定されていた地階の部分に無理に設けられたため、階段下にあることから人の流れはほとんどなく、前面の植込みと地下駐車場への車の出入りによつて買物客の動線が分断され北側は植込み、東側は歩道橋及び階段、西側は坂道であり孤立した場所となつていて店舗には不向きであり、そこでの商売は成りたたない。
また、店舗の床面積は一八・二八平方メートルと狭いため機械等を設置すると暗室における現像、プリント、小洗い仕上げの作業を行うことが不可能でDPE、カメラ器具販売店としての機能が果たせず、また、右店舗の間口が一七〇センチメートルしかないため、商売に必要なウインドーも置けず、倉庫としてしか使用できないものであるから、この店舗も被告の評価額より三割以上低く評価すべきである。
(ウ) そうすると、原告村田の総資産の評価額は次式のとおり、二八二〇万四三〇〇円となる。
(式)一五、三九九、〇〇〇(円)×〇・七+一七、四二五、〇〇〇(円)=二八、二〇四、三〇〇(円)
〈4〉 原告木村両名について
原告木村両名も、原告村田と同様地下一階の別紙図面二表示のナンバー三一の一の店舗(以下「ナンバー三一の一の店舗」という。)を割り当てられたが、この店舗にも右〈3〉(イ)と同様の欠点があり、製図器具販売店として使用できず、このため開店の目途さえ立つていない。この店舗も被告の評価額よりも三割以上低く評価すべきである。
そうすると、原告木村両名の総資産の評価額は次式のとおり二八三八万八五〇〇円となる。
(式)六、九四五、〇〇〇(円)×〇・七+二三、五二七、〇〇〇(円)=二八、三八八、五〇〇(円)
したがつて、原告らの従前の総資産の価額と権利変換後の総資産の価額との間には著しい差額があるといわざるを得ない。
(三) (権利者相互間に不均衡を生じさせた違法)
権利変換計画においては、権利者に与えられた施設建築物の一部は、権利者相互間に不均衡が生じないように定めなければならないものとされている(法七七条二項)。しかるに本件権利変換は関係権利者相互間に不均衡を生じさせているから、本件各処分は法七七条二項に違反するものである。
(1) 右(二)の従前の総資産額と権利変換後の総資産額との割合(交換率)において、原告らと他の権利者との間に不均衡がある。
すなわち、原告らの交換率は、従前の総資産額と権利変換後の総資産額の双方とも右(二)の原告の計算値(別表(五)記載、以下同じ。)をもとに算出すると別表(六)の〈1〉欄記載のとおりであり、従前の総資産額は原告の右計算値により、権利変換後の総資産は被告の評価額により算出すると同表〈2〉欄記載のとおりであり、従前の総資産額と権利変換後の総資産額の双方とも被告の評価額により算出すると同表〈3〉欄記載のとおりとなる。他方、役員グループの金木敏光のそれ(被告の評価額により算出されたもの)は一六〇、同じく吉瀬みち子のそれ(同様)は一二六であるから、これを原告らの交換率と比較すれば、その間に不均衡があるのは明らかである。
(2) 本件処分のうち原告らに店舗部分を割り当てた分には左のとおり施設建築物の一部を権利者相互間に不均衡が生じないように定めるべきことを規定した法七七条二項に違反する。
すなわち原告らと役員グループの斉藤宏、金木敏子、金木敏光、吉瀬みち子及び大海精一との従前の土地及び建物の位置、従前の土地の総面積及び価額、従前の建物の総床面積及び価額、従前の総資産額、権利変換後の店舗の位置、店舗の床面積及び居宅の総床面積、店舗及び居宅の価額、権利変換後の総資産額並びに清算金を比較すると別表(七)の権利変換計画のとおりであるところ、この権利変換計画によると、店舗に関して役員グループの者には場所の良い、しかも、床面積の広いものを割り当て、原告らには場所の悪いものを割り当てていることが一見して明らかであり、この点において原告らと役員グループの者との間に不均衡が生じているのである。
また、原告森田及び同村田に割り当てられた店舗の存する物販サービスゾーン(店舗ナンバー一ないし一六)は全館冷暖房のため営業時間が制限され、休日も一斉にとらねばならず、また、管理費も飲食サービスゾーン(店舗ナンバー一七ないし二四)に比べて割高であるなど、一般に飲食サービスゾーンに比べ不利となつており、かかる不利なゾーンへの店舗の割り当ては不当である。
(3) 本件処分のうち、原告井上に住居部分を割り当てた分は左のとおり、施設建築物の一部を権利者相互間に不均衡が生じないように定めるべきことを規定した法七七条二項に違反する。
すなわち原告井上は居宅として八〇・九二平方メートルの四LDK(実質的には四DK)及び二LKを割り当てられたのであるが、同原告と八七・七二平方メートルの四LDKの割当てを受けた役員グループの金木敏光及び吉瀬みち子との間で従前の総資産額、床面積、家族数及び清算金を比較すると左記のとおりであつて、原告井上に八七・七二平方メートルの四LDKを割り当てなかつた本件処分には、右役員グループの二名との間に不均衡を生じさせた違法がある。

従前の総資産額(円) 従前の床面積(m2) 家族数(人) 取得床面積(m2) 清算金(千円)
井上好晴 四三、八六九、六〇七 一三七・二一 六 店舗二〇・三五
居宅八〇・九二
〃五二・六四
(+)  五三三
金木敏光 一四、六九六、七二〇 五四・八四 四 居宅八七・七二 (-)八、八三一
吉瀬みち子 三八、二六六、一五四 一一〇・五五 一 店舗六七・二二
居宅八七・七二
(-)九、八六九

(4) 被告は、特定の者に対して、再開発ビルの権利床をことさら安く評価して割り当てている。
すなわち、被告は、シロアム教会に対しては、これに割り当てる再開発ビルの一部を一平方メートル当たり二四万五五〇〇円と他の権利床より安く評価している。また、昭和五六年にはスーパー・サンコーに対し、再開発ビルの店舗部分を他の権利床の価格より四割も安い価額で(一般分譲価格の半値)分譲しており、これらの措置によつて原告らとこれらの者との間に不均衡を生じさせているものである。
(5) 更に、対策会会長斉藤宏は、被告の先行買収に応じ、多額な補償と融資を得て既に施行地区外に移りクリーニング店を経営しているにも拘らず、その後施行地区内の自己のアパートの一室に極めてそまつなクリーニング受付所を設けて営業しているとの形式をととのえていたところ、被告は右斉藤に対し不当にも場所のよい床面積の広い店舗(ナンバー一八の店舗)を権利変換計画で割り当てており、このような措置によつて右斉藤と原告らとの間に不均衡を生じさせているものである。
よつて、原告らは被告に対し、本件各処分の取消しを求める。
二  請求原因に対する認否
1  請求原因1及び2の事実は認める。
2  同3(一)(1)のうち〈1〉の主張は争う、〈2〉のうち昭和四〇年代に至り再開発の話がもちあがり、昭和四七年ころから本件事業が動き出したこと、地元商店街はこれに対応すべく、本件事業にかかわる都市計画決定(昭和四七年三月一三日)以前に対策会を結成したこと、昭和四九年一〇月斉藤宏が会長に就任したこと、会長斉藤宏、総務部長金木敏光、副会長吉瀬みち子であつたこと、このメンバーは原告森田が会長となつた昭和五一年一一月から昭和五二年二月までの間を除いてはほぼ同一であつたこと、昭和四九年から対策会が解散した昭和五二年一〇月までの間で斉藤宏以外に会長になつたのは原告森田だけであつたことは認めるが、その余の事実は否認し、主張は争う、〈3〉の事実は否認する、〈4〉のうち昭和五一年一一月二四日対策会の役員改選が行われ原告森田が当選したこと、昭和五一年一二月中旬ころ斉藤宏外一名が森田宅を訪れたこと、昭和五二年二月対策会総会が開かれ、解散決議がなされたこと、斉藤宏らは「会」を結成したこと(但し、会員数は一九名であつた。)は認めるが、その余の事実は否認する、〈5〉の主張は争う、(2)のうち〈1〉の主張は争う、〈2〉の事実は認める、〈3〉の事実は否認する、〈4〉の事実中、役員グループの斉藤宏、金木敏光(敏子)、吉瀬みち子、大海精一らが昭和五二年七月一五日配布のNCR案とほぼ一致した割当てを受けたことは認めるが、同年九月二六日以前に右の者らの店舗位置が確定していたとの点は否認し、その余の主張は争う、(3)のうち役員グループの斉藤宏、金木敏光外一名が本件審査会の二号委員に就任したことは認めるが、その余の主張は争う。(二)(1)〈1〉のうち原告森田が、昭和五二年八月一四日施行者との個別面談の際(七月中旬のNCRとの個別面談とあるは誤りである。)、本間係長に対しナンバー一八の店舗を希望すると述べたことは認めるが、右面談の際本間係長からナンバー一八の店舗は既に割当てが決まつているとして拒否されたとの点は否認する。本間係長は当該場所については他に希望者がある旨を述べたにとどまり、この時点では当該場所が誰れに割り当てられるかは未確定であつたものである。また、同原告は、同年一〇月六日希望申出書を提出してナンバー一の店舗を希望したものである。〈2〉のうち、原告森田に対し住宅の位置について話し合つて決定する旨約束したことは否認し、その余の主張は争う、(2)〈1〉のうち、被告が原告井上に対し、昭和五二年七月一一日の「コンサルタント紹介等の説明会」の開催について電話で通知したことは認めるが、同原告に右電話通知以外に説明会、各種書類の提出等についての通知がなされていなかつたことは否認し、その余の主張は争う。〈2〉のうち同原告は、昭和五三年四月三日、被告に対しナンバー一八の店舗を希望する旨伝えたことは認めるが、その余の主張は争う。〈3〉のうち原告井上に対し八〇・九二平方メートルの四LDK(なお実質的にも四LDKである。)を割り当てたことは認め、その余の事実は否認する、(3)のうち原告村田は昭和五二年一〇月六日、ナンバー一七の店舗を希望したことは認め、その余の主張は争う、(4)のうち原告木村友治が昭和五二年九月四日(九月七日とあるのは誤りである。)本間係長にナンバー二四の店舗を希望する旨述べたこと、同年一〇月六日希望申出書において再度ナンバー二四の店舗を希望したことは認めるが、その余の主張は争う。
3  同4のうち(一)の主張は争う。そもそも、法七四条二項は、権利変換計画の決定の基準についての理念を定めた訓示規定である。したがつて、原告らの右主張は失当である、(二)(1)の冒頭の主張は争う。右主張が失当であることは後記被告の主張3(一)のとおりである。〈1〉の主張は争う、右主張に対する反論は後記被告の主張は3(二)のとおりである、〈2〉のうち(ア)(あ)の事実は認める、(い)のうち別表(二)「No.1」、「No.4」、「No.5」で「八メートル都道路」とあるのは否認する、正しくは、七・三メートル、六・七メートル、七・三メートルの区道路であり、「No.5」、「No.6」の「客足の流動性良好」との事実も否認する、その余の事実は認める、(う)のうち「道路は幅員八メートル都道補助七四号線」とあるのは否認する、正しくは、六メートルないし八メートルの区道(東京都市計道路補助七四号線)である。その余の事実は争わない。(え)のうち日影二種に指定されていることは否認するが、その余の事実は認める、また、防火地域にも指定されているものである、(イ)の冒頭の主張は争う、(あ)のうち地価公示地、都基準地の所在地、取引年月日、価額は認めるが、その余の取引事例及び右地価公示地、都基準地に関する時点修正以下の係数及び標準価額は知らない、(い)ないし(え)の各主張は争い、(ウ)、(エ)の各主張もすべて争う、〈3〉のうち冒頭の主張は争う、(ア)のうち被告がA路線からC路線までの一五の路線価格により従前資産の土地の評価をしたこと、原告らの従前資産のうち土地の評価はA路線の価額(一平方メートル当たり三六万七八〇〇円)を基準に評価されたこと、C路線の価額は二七万九八〇〇円であることは認めるが、その余の主張は争う。(イ)の主張は争う、(2)〈1〉の主張は争う、〈2〉のうち原告井上に割り当てられたナンバー一九の一の店舗の間口が約三メートルであること、右店舗にクーラーが設置されていないことは認めるが、その余の事実は否認し、評価額に関する主張は争う、〈3〉の冒頭の主張は争う、(ア)の事実は否認する、(イ)のうち右店舗がもともと駐車場のスペースとして予定されていた部分に設けられたこと、店舗の床面積が一八・二八平方メートルであることは認めるが、商売が成りたたないことは知らない、その余の事実は否認する、(ウ)の主張は争う、〈4〉のうち原告木村両名に割り当てられたナンバー三一の一の店舗が地下であることは認め、開店の目途さえたつていないことは知らない、その余の事実は否認し、評価額に関する主張は争う、(三)の冒頭の主張は争う、(1)の主張も争う、(2)のうち権利変換計画がおおむね別表(七)のとおりであることは認める(但し、清算金については否認する。)、その余の主張は争う、物販サービスゾーンは全館冷暖房により快適な環境となり、その結果客の入りがよくなる場合もあり、また個別に冷暖房を行う場合に比べ管理費もさ程高いとはいえず、またメインテナンスの面でも優れていることに照らせば、物販サービスゾーンが全館冷暖房のために飲食サービスゾーンより不利な店舗となつているということはできない、(3)のうち原告井上が居宅として四LDK(八〇・九二平方メートル)及び二LK(五二・六四平方メートル)の権利変換を受けたことは認めるが、その余の事実は否認する、なお、原告井上と金木敏光及び吉瀬みち子との間の従前の総資産額、従前の床面積、権利変換後の床面積及び家族数を比較すると別表(八)のとおりである、(4)のうち、被告がシロアム教会に対する権利床を一平方メートル当たり二四万五五〇〇円と評価したことは認めるが、その余の主張は争う、(5)のうち、斉藤宏が、被告の先行買収に応じたこと、既に施行地区外に移り、クリーニング店を経営していること及び店舗の権利変換を受けたことは認めるが、その余の主張は争う。
三  被告の主張
1  手続上の違法のうち各原告らに共通する違法事由の主張に対する反論
(一) 原告らは、本件各処分に至る手続は、役員グループに都合のよい方法で進められたにもかかわらず、被告はこれに加担し又はこれを放任して手続を進めた違法があると主張するが、右主張は左のとおり失当である。
(1) 本件事業の施行地区は、国鉄山手線高田馬場駅の東南約六〇〇メートルに位置し、七四号線に沿つた東西に長い南高北低の地形で区域の面積は約二・八五ヘクタールである。
従前、諏訪通りに沿つて約三〇〇メートルの間、日用品販売中心の小規模な商店街が形成されていたが、老朽化した店舗併用住宅が多かつた。また、右商店街の裏側は、老朽化した共同住宅や個人住宅が密集しており、公共施設も補助七四号線、環状五の一号線、戸山公園等の都市計画があるものの未整備な状態であつた。
そこで、法の目的に沿い、地区内の細分化された土地の合理的かつ健全な高度利用を図り、老朽化した店舗の不燃共同化による商店街の近代化、密集した住宅の不燃高層化による居住環境の改善をなし、あわせて補助七四号線、区画街路、緑地を整備し、さらには隣接する都営住宅を収容して戸山公園の造成を促すことを目的として本件事業が計画された。
(2) しかしながら、本件事業施行地区に居住する住民は、本件事業に係る都市計画決定(以下「本件都市計画決定」という。)がなされる以前の被告の都市計画プラン発表段階では、本件事業に対する知識不足理解不足もあつて、本件事業にすべての住民が積極的に賛意を示しているわけではなかつた。すなわち、本件都市計画が告示された時期(昭和四七年三月一三日告示)の前後に地元住民で本件事業に条件付で賛成する者約一〇〇名で構成する対策会と、本件事業の実施そのものに反対する者約三〇名で構成する「西大久保共栄会」(以下「共栄会」という。)との二派に分かれて、本件都市計画に対処する住民団体が結成された。
そして、二つの会は、それぞれの会の設立の趣旨に沿つた申入れを被告に行つてきた。被告としては右の地元住民の動向に対応して、本件都市計画決定後には、精力的に地元住民に本件事業の目的、必要性を周知すべく相談所の開設、本件事業の説明会、地元住民との懇談会、対策会及び共栄会との話し合いを行つて、本件事業の推進を図るため、地元住民の理解を求め、協力を依頼してきた。その結果、従来本件事業の実施に反対していた住民も、本件事業の実施に理解を示し協力的な態度に変つてきた。
そこで、被告は、昭和四七年一〇月から測量調査をはじめとして各種調査を行い、昭和四八年一二月には第一回の権利変換の試算発表を行つた。これと併行して、昭和四八年当初に「公共事業の施行に伴う移転資金貸付条例」の制定により、再開発事業にもこれが適用されることになつたことから、都市計画法五六条に基づく土地の買取り申出をする関係権利者が多数にのぼり、昭和五二年度までに八七件(八六二〇平方メートル、施行地区内の民有地の約七五・七パーセント)の先行買収を行つた。この先行買収により本件事業の実施そのものに反対していた共栄会の構成員たる権利者のほとんどが、本件事業区域外に転出し、事実上右会は昭和五〇年度で消滅した。被告は、右先行買収と併行してその間、本件事業完了後の再開発ビルの店舗計画等について、権利者との個別相談を行うとともに対策会の内部に設置された専門部会と数十回にわたる協議を精力的に行つてきた。
(3) 右のとおり、本件都市計画決定後は、被告は、本件事業に対する理解を得るべく、被告の出先機関である東京都市街地再開発事務所(以下「再開発事務所」という。)の職員を中心に精力的に住民との折衝を重ね、それらの折衝経過をふまえて、昭和四八年一二月一一日の権利変換試算の第一回発表をはじめとして、計三回にわたり試算を発表して、関係権利者に本件事業についての判断資料を提供し、あわせて本件事業の内容と関係権利者の本件事業に係る将来の展望を示して、事業内容をより具体的に説明し、事業についての協力を得る努力をしてきた。もちろん、右折衝経過のなかで、原告らをことさら除外してきた事実は全くないのである。そうであればこそ、原告らも本件事業の施行について、充分に理解したうえで、被告に対し、再開発ビルへの入居を希望したのである。そうでなければ、原告らが、対策会の会員として、本件事業の推進に協力してきた意図が理解できなくなるばかりか、特に、原告森田にいたつては、長く対策会の要職にあり、しかも一時期は会長職にもあつて、一般の関係権利者以上に本件事業の内容、手続に熟知していたのであり、その者が軽率に再開発ビルへの入居希望を表明するはずがないのである。
(4) ところで、原告らも会員であつた対策会は、右(2)のとおり、基本的には本件事業の施行に賛意を表して事業の推進について協力の態度を示してきた。
しかも、対策会は、関係権利者が自主的に結成したもので、本件事業の施行者たる被告との交渉において関係権利者の個人の問題を除いて、本件事業の全体像について関係権利者の意向を集約的かつ効率的に反映する団体であるとして、被告に対し、対策会を地元関係権利者の窓口として交渉して欲しい旨を申し入れてきた。被告は、対策会の構成員等を勘案して、右申入れを妥当と考え、また、被告としても事業の全体像について、関係権利者の集約的意見が把握できることが望ましいと考え、対策会を交渉の相手方として、種々の折衝をしてきたという経過がある。
(5) しかし、対策会との話合いが、あくまで再開発ビルの基本設計、事業の進め方等の本件事業の全体像に関する事項に限られたのは当然であつて、権利者個人の問題が被告と対策会との間で検討された事実はないのである。
なぜならば、権利者個人の問題、すなわち、個別の権利変換処分の内容は、権利者の財産及び将来の生活設計に係わるもので、そもそも団体的交渉になじみ得ないからである。
したがつて、原告らの右主張は理由がない。
(二) また、原告らは、店舗配置設計が、役員グループ(兼SC会の役員ら)により恣意的に行われ、役員グループが、自己の都合のよい場所を優先的に確保し、その残りを原告らに押しつけ、また、NCRの店舗配置設計についてもその作成過程において原告らの希望が入れられなかつた違法がある旨主張する。
しかし、右主張は次のとおり、失当である。
(1) SC会は、対策会会員中で、現に店舗を経営し、商業を営むもので、かつ、再開発ビルに入居を希望し、再開発ビル入居後も店舗の経営を希望する者の大多数が加入して、対策会内のひとつの専門部会として組織され、その後、発展的に改組されたものである。このことは、対策会と被告との協議の過程で確認されている。
(2) ところでSC会は、店舗配置設計について被告との具体的な話合いに入る以前から、すでに店舗配置設計について専門家であるNCRに相談をしており、その相談の過程で店舗配置設計については、専門家の知識の導入が是非とも必要であることを認識し、被告に対して、店舗配置設計にあたつては、専門家、特に同会が従来から相談しているNCRに店舗配置設計委託をして欲しい旨を対策会を通して要望してきた。
(3) ところで、本件再開発ビルの設計は、数回にわたつて、練り直されていたが、その際の設計変更の検討の中心課題は、再開発ビルの中の店舗形態をいかにすべきかという点であつた。
当初の基本設計では、補助七四号線に沿つて、ビルの前面を従来と同様に路線商業型に並べる案であつたが、その後、地元の要望もあつて、被告は、本件再開発ビルにおける店舗形態としては当初の案とは異なるシヨツピングセンター型の店舗形態が相当と考え、この店舗形態を内容とする数種の実施設計試案を作成するとともに、シヨツピングセンターの適正規模の設定・性格づけなどのために商業診断調査等各種の調査を行つて検討を重ねてきた。
そして、被告は、右検討の一環として、店舗配置設計についてSC会の要望も考慮して民間の専門家の知識も導入することにし、民間の専門家に委託することにしたのである。
(4) 右のとおり、SC会は、本件事業の施行について、被告が対策会と折衝を重ねていた過程で、右折衝と併行して、独自にNCRに再開発ビル入居後の店舗経営について相談しており、被告が、店舗配置設計について関係権利者の集約的意見を聴取するための窓口として、SC会と話し合いを進める時点では、すでに、NCRは、本件事業に関する地域の商業活動の実態及び本件事業に関する情報を収集していた。
被告は、以上の経過をふまえ、また、NCRが、多摩ニユータウンをはじめ、多くの都市計画事業に係る商業コンサルタントとして相当の実績をあげており、店舗配置設計の専門家として信頼するに足る会社であると認め、SC会の要望を入れて、同社に店舗配置設計を委託したのである。
(5) 店舗配置設計のNCRへの委託は、権利変換計画の内容である店舗配置設計について、再開発ビル内の各店舗の経営、換言すれば、シヨツピングセンターとしての成否が再開発ビル入居者の将来の生活を左右することの重大性にかんがみ、民間の専門家の経験と知識を導入することを目的としてなされたものである。
但し、NCRの作成する店舗配置設計は、関係権利者に対する個別的希望聴取、関係権利者間の調整を経て作成されるもので尊重すべきものではあるが、当然には法七七条の定める均衡原則を担保するものではなく、あくまでも権利変換計画策定に当たつての一つの資料以上のものではないのである。したがつて、直ちに権利変換計画の内容そのものになりえないことはいうまでもない。
右委託の内容は事項別に大別すると、〈1〉関係権利者の業種を意識しないゾーニング(業種別配置)設計、〈2〉ゾーニングと個別権利者が希望する業種との調整を図つた店舗配置設計となる。
(6) NCRは、被告の店舗配置設計の委託の趣旨に基づいて、店舗配置設計を作成する過程において、関係権利者のうち、再開発ビルに入居し、店舗経営を行うことを希望する者全員に対して個別的に面接し、その希望を最大限にとり入れるべく関係権利者相互の調整作業を進めた。被告としても、NCRの関係権利者相互の調整については、被告(施行者)の基本方針との整合をはかるため、個別の希望聴取にあたつては、できる限り、その場に同席してNCRに助言を与えた。
原告ら(但し、この時点では、原告井上は店舗経営を行う意思がない旨を表明していたためNCRの面接の対象から除外されており、また、原告村田は、意思表明を保留していた。)は、NCRの希望聴取についてNCRの再三の呼びかけにもかかわらずこれに応じなかつた。このため、NCRは、被告との間で締結した店舗配置設計委託契約上の期限の制約もあつて、結局、原告らとの面接をあきらめざるをえなかつた。
したがつて、原告らの希望は、NCRの店舗配置設計には入らなかつたのである。(なお、被告は、この間の事情をNCRの店舗配置設計が提出された際に了知した。)。
(7) NCRは、昭和五二年八月四日に被告に対して、被告の委託に基づく成果物たる店舗配置設計(以下「NCRの店舗配置設計」という。)を提出したが、これは、被告の立場からしても、法七七条に違背しない設計であると認められたので、被告は、右設計を被告(施行者)の素案づくりの「たたき台」とすることに内部的に決定した。
(8) そして、被告は、NCRの店舗配置設計に原告らの希望を入れたものを権利変換計画の一内容たる店舗配置設計の素案とすべく考え、昭和五二年八月なかばから同年一〇月にかけて、数回にわたり、原告らと個別相談を行つた。この個別相談では、被告は、NCRの店舗配置設計を提示し、原告らの希望、条件等を聴取した。そして、被告は、法七七条の均衡原則に従いつつ、ゾーニングを害さない範囲で原告らの希望を入れてNCRの店舗配置設計を修正した。これが本件権利変換計画の一内容である店舗配置設計の施行者(被告)素案となつたものである。
(9) その後、被告は、右素案に若干の微調整的修正を加えたものを施行者原案として本件審査会に付議したところ、右施行者原案は、何らの修正を加えられることなく承認されたのである。
(10) 以上要するに、本件権利変換計画の一内容である店舗配置設計は公正に行われ、最終的には原告らの意見も反映しているのである。NCRの店舗配置設計の段階においては、確かに原告らの意見は反映されていないが、それは、原告ら自身の行為に帰因するものであり、このことをもつて手続的瑕疵を云々するのはクリーンハンドの原則にもとるものである。
したがつて、店舗配置設計については、何ら瑕疵がないのであり、原告らの右主張は理由がない。
(三) 更に、原告らは、対策会は昭和五二年一〇月ごろ解散したが、対策会の役員であつた斉藤宏外二名の役員が本件審査会の二号委員に就任して、自己の利益追求をめざし、その結果、本件各処分が不公平になされた旨主張する。
しかし、原告らの右主張は、次のとおり、失当である。
本件審査会は、東京都市計画事業西大久保地区第一種市街地再開発事業施行規程(昭和五二年三月三〇日制定東京都条例第四二号)九条により設置され、委員の定数は九人である。このうち、二号委員は四人であり(半数未満)、その他の委員は、第三者でいわゆる学識経験者である。
したがつて、本件審査会における審議の公正性は、その委員の構成からして担保されており、本件審査会が、個人の利益追求の場となることはありえない。
被告は、二号委員の任命については、その性格から関係権利者の意向を本件審査会に反映させることができる者が任命されるべきであると考え、昭和五二年七月四日及び同月二九日に関係権利者との間で、二号委員の選出について懇談会を開いた。
その際、関係権利者から、選挙による方法、地元民が候補者を推挙して施行者の選任に委ねる方法などの意見が出されたが、いずれの方法によるかは話合いではまとまらず、結局、施行者(被告)に一任ということで関係権利者の意見が一致したのである。
そこで、被告は、再開発事業に明るく、関係権利者の意向を正確に反映させることのできる者を選任するという観点から具体的人選について検討した。その結果、斉藤宏、金木敏光及び吉瀬みち子は従来から、関係権利者の意見を集約するという機能を果してきた対策会においてその役員として活動してきており、二号委員としての適格性を有する者であると判断し同人らを二号委員に選任したのである。
したがつて、原告らの右主張は、単なる憶測に過ぎず、何らの根拠も有しないものである。
2  手続上の違法のうち各原告ら固有の違法事由の主張に対する反論
(一) 原告森田について
(1) 原告森田は、本件処分には、同原告の当初の希望が拒否され他の位置を強制された違法がある旨主張する。
しかし、右主張は、次のとおり、失当である。
〈1〉 原告森田の従前の資産状況等は、別表(九)のとおりである。
〈2〉 同原告は、昭和五二年一月二一日の被告との個別相談のときまでは、その従前の資産の半分につき転出し、その余で入居したい旨希望していたが同年三月二二日の個別相談では一部入居、一部転出につき迷つており、権利変換率については二〇〇パーセント以上を要求した。
また、同原告は、同年七月八日付のNCRへの店舗配置設計の委託に先立つた希望調査には応じたものの、その後に行われたコンサルタント紹介等の説明会及びNCRとの個別相談には、二〇〇パーセント以上の権利変換率が実現しないうちは、店舗配置設計の話合いに応じないとして参加しなかつた。
〈3〉 一方、同年八月四日に被告に提出されたNCRの店舗配置設計では、その作成に当たり同原告の希望を聞くことができなかつたものの、同原告が従前どおり、甘味喫茶店を経営するとの前提に立つて、その店舗は「物販サービスゾーン」のナンバー九の区画(三七・六五平方メートル)に配置された。
〈4〉 その後、被告は、NCRの店舗配置設計に当たつて同原告の希望を聞くことができなかつたことを考慮しながら同原告との折衝に当たつた。
同原告は、同年八月一四日の被告との個別相談において、被告に対して、次のとおりの申出をした。
(ア) 権利変換率は二〇〇パーセント以上を要求する。
(イ) 店舗については、業種はフアースト・フード、面積は一〇坪ないし一五坪で、区画はナンバー一八を希望する。
(ウ) 住宅については、四LDK一戸及び三LDK二戸を希望する。
これに対して、被告は、ナンバー一八の区画については、他に同区画を希望する権利者がいる旨を告げたところ、同原告は、直ちに右希望を撤回し、ナンバー一の区画(三一・六〇平方メートル)を希望する旨述べた。
したがつて、この際、同原告主張のように、被告が同原告の希望を拒否し、その希望を変更するよう強制した事実はなく、右希望の変更は同原告が自主的に行つたものであるのはいうまでもないことである。
すなわち、もし同原告がその希望を変更しなければ、被告としては、権利変換計画基準及び西大久保地区第一種市街地再開発事業権利変換計画作成方針(以下「権利変換計画作成方針」という。)に基づきナンバー一八の区画をいずれの希望者に割り当てるかを決定することになり、右決定は個別相談の場で直ちに行えるものではないからである。
(2) 次に、原告森田は、本件処分には、住宅の位置について事前に話し合つて決定する旨の約束が交されていたにもかかわらず、被告は右約束を無視して一方的に住宅の位置を割り当てた違法がある旨主張する。
しかし、右主張は、次のとおり、失当である。
〈1〉 原告森田は、昭和五二年一〇月六日付の再開発ビルの入居に伴う各種の希望申出書をもつて住宅について四LDK一戸及び三LDK二戸を希望したが、被告が同日同原告に対し三LDKの位置について話し合つて決定する旨を約束した事実はない。
〈2〉 被告は、本件権利変換計画案の作成に当たり、同原告の希望どおり、四LDK一戸及び三LDK二戸を権利変換することにしたが、そうすると清算金の概算額が一千万円を若干超えることとなるので、できるだけ一千万円を超過する額を減らすため同原告の意向を口頭で確かめたうえで、同一タイプでも価額の低いB棟の二階及び三階の住宅を割り当てることにしたものである。
〈3〉 なお、同原告から本件権利変換計画案の縦覧中に、(ア)権利床を増やして欲しい、(イ)清算金を少なくして欲しい旨の意見書が提出された。
しかし、被告は、本件権利変換計画案における同原告に係る権利変換の内容は、権利変換計画基準及び権利変換計画作成方針の範囲内で、最大限、同原告の希望を満たしたものであり、これ以上の好条件のものは考えられないので、その旨を審査会に付議したところ、審査会も被告の右見解を認め、同原告の意見書は不採択となつた。
以上のとおりであり、同原告の右主張は理由がない。
(二) 原告井上について
(1) 原告井上は、本件処分には事前にその希望を調査しなかつたという手続上の瑕疵がある旨主張するが、右主張は、次のとおり、失当である。
〈1〉 同原告の従前の資産状況等は、別表(一〇)のとおりであり、同原告は、おそくとも昭和四七年一一月以降は店舗を経営していなかつたものであつて、この点において同人はすでに、当然には店舗を権利床として取得できる地位にはなかつたのである。
〈2〉 同原告は、昭和五一年七月に行われた個別相談において代理人である井上武寅(原告井上の長男)、美枝夫妻を通じて、再開発ビルでは住宅は取得したいが、店舗を取得する意思はない旨述べた。
〈3〉 同原告は、昭和五二年一月二〇日に行われた個別相談において代理人である右武寅夫妻を通じて、再開発ビルでは三DKの住宅五戸を取得したいが店舗を取得する意思はない旨述べた。
なお、右個別相談において、右武寅夫妻は、当時、店舗を取得する意思がなかつた同原告に対してその意思を変更させ店舗を取得させるために、仮定の話として、同原告が二〇平方メートルの店舗を希望したとすると、住宅の方はどの程度になるかを被告の職員に質問し、これに対して、被告の職員が一二一平方メートル程度の住宅は取得できる旨答えたことがあつた。しかし、これは、武寅夫妻の自己のためにする発言であつて同原告を代理して行われたものではない。
また、同原告との個別相談は昭和五一年七月七日にも行われているがこの時も同原告は店舗を希望していない。
〈4〉 被告は、昭和五二年七月一一日現に店舗を経営している者又は現に店舗を経営していなくても再開発ビルに入居して店舗を経営しようという希望を表明している者を対象として「コンサルタント紹介等の説明会」を行つたが、これに先立つて右説明会に関する案内状を右対象者に配布した。しかし、同原告は、右対象者に含まれなかつたため配布されなかつた。
〈5〉 しかし、被告は、念を入れて、昭和五二年七月六日に同原告に電話で店舗部分の権利変換について希望の有無の確認をとつたところ、同原告は不在であつたが、井上美枝が電話に出て応対した。
そこで、被告は、店舗配置設計を商業コンサルタントに委託し調整を図ることになつたこと、同原告はこれまで権利変換として住宅のみを希望しているが、店舗も取得したいという意思があるならば、右調整に参加してほしいこと、店舗を取得する意思があるならば、おそくとも同月一一日までには知らせてほしいこと及び店舗の取得を希望しない場合は連絡は不要であることを申し入れた。
これに対して、井上美枝は、同原告自身は、権利変換として住宅のみを希望し、店舗を取得する意思はないこと、井上美枝としては店舗も欲しいが義父である同原告には申し入れにくいので、井上武寅名義で優先分譲による店舗を申し込むつもりでいること及び被告の申し入れの件は同原告に伝える旨答えた。
以上のとおり、この日の井上美枝の店舗に関する希望表明は同原告の代理人としてではなく、同原告の借家人である井上武寅の代理人としてなされたものである。
〈6〉 その後、同月一一日になつても同原告からは何の連絡もないので、被告は、同原告は権利変換による店舗を希望しないものと判断した。
なお、この日行われた右の説明会には、井上美枝が出席し、ラーメン屋を営業したい旨の希望を表明したが、井上武寅夫妻は以前から個別相談において優先分譲により店舗を取得したい旨述べているので、被告は、右発言は同夫妻が優先分譲により店舗を取得する意向を表明したものであると判断した。
〈7〉 同年八月一四日及び一五日の二日間にわたつて、被告は、同原告に対する個別相談を行つた。
右相談は同原告本人のほか井上武寅夫妻も出席して行われたが、結局、同原告は、権利変換の希望として四LDK一戸及び二DK二戸の住宅のみを希望し、店舗は希望しなかつた。
これに対し、被告は、右希望が実現されるとすると清算金が八〇〇万円程度徴収されることになる旨答えた。
そして、被告は、同月一五日、個別相談を終える際に同原告の右希望についてこれを双方が確認し合う意味で同原告本人に対し「再開発ビルの入居に伴う位置・面積の希望申出書」に署名を求めたところ、同原告本人は、右希望申出書に署名することを納得し、右希望申出書二通に自署した。
なお、同原告は、右個別相談において本間係長から、店舗配置についてこことここは既に割当てが決まつているから、別の場所を希望するよう強制された旨主張するが、その様な事実はあり得ないし、また、実際なかつたのである。
〈8〉 その後、同原告は、同年九月二四日の個別相談においてはじめて権利変換による店舗を希望する旨を口頭で申し出た。
これに対して、被告は、同年一〇月六日までに書面による申出をすれば右希望について検討する旨答えた。
〈9〉 その後、同原告は、同年一〇月五日付で再開発ビルの入居に伴う各種の希望申出書を提出したが、店舗二〇平方メートルの取得を希望するのみで、店舗の位置については希望を表示しなかつた。
〈10〉 そこで、被告は、同原告に対し、権利変換計画基準及び権利変換計画作成方針に基づき、飲食店は、飲食サービスゾーンに配置すべき業種であること及び希望があれば、清算金一〇〇〇万円の範囲で約五〇平方メートルの店舗を取得することができることを説明し、店舗の位置につき希望を聴取すべく努力した。ところが、同原告は、右〈6〉の説明会に自分を参加させなかつた旨主張するのみで、何ら積極的に自己の希望を表明しようとしなかつたので、話し合いは進展しなかつた。
〈11〉 以上を踏まえて、被告は、話合いによる解決はもはや困難であると判断し、本件権利変換計画案における同原告に係る権利変換の内容を権利変換計画基準及び権利変換計画作成方針に基づき、次のとおり、決定した。
店舗の面積については同原告の希望を容れ、また、その位置については、被告の判断により「飲食サービスゾーン」のナンバー一九の一(二〇・三五平方メートル)に配置する。
〈12〉 ところが、同原告は、本件権利変換計画案の縦覧開始の直前である昭和五三年四月三日に至り、突然、口頭でナンバー一八の希望を申し出てきた。
〈13〉 これに対し、被告は急拠検討したが、結局、ナンバー一九の一を変更する合理的理由はないと判断した。
なお、ナンバー一八は、金木敏子が権利変換を受けたのであるが、これは、被告が権利変換計画基準及び権利変換計画作成方針に基づき面積、用途等を勘案して、慎重に検討した結果なされたものである。
〈14〉 以上のとおりであつて、被告が同原告を希望調査から除外したという事実は全くなく、むしろ、当初同原告が店舗について権利変換を希望していなかつた際にも十分に連絡をとつており、更に、同原告が従前の態度をひるがえして店舗の権利変換を希望してからも、その申出の遅きにもかかわらず、同原告に対して親身の相談にのつていたのである。
したがつて、本件処分には事前に同原告の希望を調査しなかつたという手続上の瑕疵がある旨の同原告の主張は理由がない。
(2) 同原告は、また、本件処分には住宅の配置決定について四LDK(八七・七二平方メートル)を割り当てる旨の約束を無視し、これより狭い四LDKを割り当てた違法がある旨主張する。
しかし、右主張は、次のとおり、失当である。
〈1〉 同原告は、住宅については、昭和五二年九月二四日の個別相談において、四LDK一戸と二LK一戸を希望した。そして、結局、これが最終的希望となつた。
〈2〉 被告は、実施計画作成時点で、四LDKについては入居希望者数を勘案して八戸作成する計画を立てたが、その後、四LDKへの入居希望者が増加したので、設計の変更が可能な最上階に四LDKを三戸増設することを決め設計の変更を開始した。ところが、パイプスペース等の制約があつて、当初からの四LDK(八七・七二平方メートル)と全く同一の設計は不可能であつたため、最上階の四LDKの面積は、結局八〇・九二平方メートルとなつた。しかし、面積の相違はあつても両方の四LDKともタイプとしては同一のものである。
〈3〉 四LDKの配置設計をするに当たつて、被告は、これも話合いのうえ、各権利者の合意のもとに決定したいと考え、四LDKへの入居を希望している権利者を対象とする懇談会を開き(なお、この懇談会の開催通知は同原告に対してもなされている。)、実情を説明して、話合いを進めたが、最終的には権利者から階層の希望を聴いたうえで、被告が決定するとの合意になつた。そこで、被告は、後日電話により、同原告を含む右懇談会に欠席した権利者から希望を聴取したところ、同原告は、店舗配置の問題が落着しない限り返答できない旨答え、その希望は聴取できなかつた。
〈4〉 そこで、被告は、同原告の従前の使用面積、家族構成等を総合的に判断した結果、同原告に対し、最上階の新しく設計した四LDK(八〇・九二平方メートル)及び一〇階の二LKを割り当てることを決定した。
〈5〉 被告は、確かに、昭和五三年二月二七日同原告に対し四LDKと記したメモを渡しているが、右メモは、権利変換に係る概算説明のための簡易な資料にすぎないのであつて、右メモを渡したことをもつて、被告が四LDKの取得を約束したとするのは失当である。まして、八七・七二平方メートルと限定した四LDKの取得を約束したとは到底いえないのである。
以上のとおりであり、同原告の右主張は理由がない。
(3) 更に、同原告は、前記主張に関連して、本件処分には住宅の割当てにおいて、八七・八七平方メートルの四LDKの割当てを受けた対策会役員金木敏光及び吉瀬みち子に比べ著しい不利益を受けた違法がある旨主張する。
しかし、右主張は、次のとおり、失当である。
被告は、住宅の権利変換に際しては、前記のとおり、権利変換計画基準及び権利変換計画作成方針に基づき、各権利者の従前の使用面積、家族構成及び希望階数等を熟慮検討した結果これを決定しており、対策会の役員である者に対して有利に権利変換を行つたということは全くないのであり、またそのようなことはありえないのである。
したがつて、同原告の右主張もまた理由がない。
(三) 原告村田について
(1) 原告村田は、本件処分には、他の関係権利者とは別異の取扱いを受け、同原告の希望を無視して行われた違法がある旨主張する。
しかし、右主張は、次のとおり、失当である。
〈1〉 同原告の従前の資産状況等は、別表(一一)のとおりである。
〈2〉 当初、同原告は、地区外に転出するか、再開発ビルに入居するか迷つており、昭和五一年七月七日の被告との個別相談においてもまだ、その意思を決しかねていた。
しかし、その後、同年一二月二二日の個別相談においては、再開発ビルへの入居の可能性を留保しながらも、地区外への転出、従前資産の先行買収を希望するに至つた。そこで、被告は、その希望に応じて、土地価額、物件移転補償金額及び移転資金の貸付限度額等の提示を行つた。その結果、同原告は、昭和五二年七月二九日被告に対し、土地の買取請求を行い、同年八月二〇日同原告と被告との間に先行買収契約が成立した。
〈3〉 その間、同原告は、昭和五二年七月一一日に行われた「コンサルタント紹介等の説明会」及びその後のNCRが行つた個別相談について、いずれも開催通知、連絡を受けながら欠席した。
同原告のこのような行動は、再開発ビル入居の可能性を留保しながらも、事実上地区外への転出を前提としており、被告は、右先行買収契約の成立により、同原告の地区外への転出の意思が確定したものと判断した。
ところが、本件事業計画決定の公告日の直前の同年九月五日に至つて、突然、同原告は、被告に対して右先行買収契約を解除する旨また再開発ビルへ入居したい旨の意思表示を口頭でし、また、法七一条の申出をしなかつたので急拠、再開発ビル入居(権利変換)の取扱いとなつたのである。
なお、右意思表示は同年一一月に文書化されたが、日付はさかのぼつて同年九月五日付とされた。
〈4〉 一方、昭和五二年八月四日に被告に提出されたNCRの店舗配置設計では、同原告の希望を聞くことができなかつたものの同原告が、その当時、まだ再開発ビル入居の可能性を留保していたことから、従前どおり、DPEとカメラの販売を行うとの前提に立つて、その店舗を「物販・サービスゾーン」のナンバー一〇の区画(四〇・九六平方メートル)に配置した。
〈5〉 その後、被告は、NCRの店舗配置設計に当たつて同原告の希望を聞くことができなかつたことを考慮しながら同原告との折衝に当たつた。
(ア) 同原告は、昭和五二年九月二七日個別相談において、シヨツピング・モール(買物客のための歩道で、休息もできるような場所)のあるゾーン内では、シヨツピング・モールが早く閉められると商売にならないとして「物販・サービスゾーン」への配置に難色を示した。
(イ) そして、同原告は、同年一〇月六日の再開発ビルの入居に伴う各種希望申出書では、ナンバー一七の区画(一六・一三平方メートル)を希望するとともに、上申書を添付し、店舗配置設計に関する通知がなかつたので、店舗配置設計を白紙に戻すか、自己の希望を認めて欲しい旨を申し入れてきた。
これに対して、被告は、同原告に対してナンバー一七の区画については、他にも希望する権利者がいる旨を告げ、権利変換計画基準及び権利変換計画作成方針に基づき、いずれの者に右区画を割り当てるかを検討することにした。
なお、被告は、右上申書については、右〈3〉のとおり、店舗配置設計に関する個別相談等の開催通知、連絡は、同原告に対しても行つていたのであるから、右白紙撤回の要求には応じないことにした。
(ウ) その後、同原告は、被告に対し、口頭で、店舗配置設計に関し、(あ)暗室を設けるために、薬品のタンクや大型の乾燥機が設置できること、(い)営業だけでなく、DPEの作業をするため、時間や曜日によつて、開閉店・休業日の制約を受けないこと、(う)顧客の認知という点からも、道路に面した店舗がよく、シヨツピング・モールのあるゾーン内ではないこと、という条件を充足する区画を割り当てて欲しい旨を申し入れてきた。
〈6〉 そこで、被告は、右希望条件を考慮しながら、権利変換計画基準及び権利変換計画作成方針に基づき、次のような検討を行つた結果本件権利変換計画案における同原告に係る部分に関して、店舗についてはナンバー三一の二(一八・二八平方メートル)の区画を、住宅についてはA棟の三DK二戸を割り当てる旨決定した。
(ア) 店舗関係
業種配置上は、DPE・カメラ店は「物販・サービスゾーン」に配置すべき業種であるので、被告は、同原告の希望を考慮し、あらたに補助七四号線に面する約一〇〇平方メートルの区画の設計を変更し、地階(補助七四号線は東方に向かつて下つているため実際は一階に相当し、歩道に面する。)に店舗用区画を設け、これを「物販・サービスゾーン」とし、そのうちのナンバー三一の二の区画(一八・二八平方メートル)を同原告に割り当てる。
ナンバー三一の二の区画は、暗室や薬品タンクが設置でき、かつ、単独に排気設備の設置が可能で、営業上も、営業時間の制約もなく、道路に面しており、同原告の希望面積一六・一三平方メートル(ナンバー一七区画)以上の広さである。したがつて、同原告の希望をほぼ充足することになる。
(イ) 住宅関係
同原告の希望は、三LDK及び二LK各一戸であつたが、権利変換基準及び権利変換計画作成方針によれば、同原告の従前の資産では三LDKを割り当てると二LKは割り当てることができないため、A棟の三DK二戸を割り当てる。
〈7〉 その後、被告が、昭和五三年四月六日から同月一九日までの間、権利変換計画案を関係権利者の縦覧に供したところ、同原告から、(ア)店舗の位置は、ナンバー一六の区画に隣接する広場側通路部分を店舗とし、これを割り当てるか、又はナンバー一七の区画とすること、(イ)店舗の価格が高いこと、(ウ)従前の資産の評価が安いこと、(エ)住宅は三LDKを希望することを内容とする意見書が提出された。
〈8〉 そこで、被告は、あらためて同原告から希望を聴取したところ、同原告は、右意見書と同旨の意見を述べ住宅を一戸けずつても店舗を二戸欲しい旨を述べた。
〈9〉 そこで、被告は、右意見を踏まえて検討した結果、同原告に係る権利変換の内容を次のとおり修正した。
店舗については、ナンバー一六の区画(二三・七四平方メートル)及び三一の二の区画(一八・二八平方メートル)を、住宅については三LDK一戸を割り当てる。
そして、右修正は審査会において審議のうえ可決された。
以上のとおり、被告が同原告の希望を無視したという事実は全くないのであり、同原告の主張は理由がない。
(2) 次に、同原告は、本件処分によつて、同原告に割り当てられたナンバー三一の二の区画は、〈1〉植込みと駐車場に出入りのための自動車道によつて買物客の動線が分断され、孤立した不利益な場所であり、〈2〉床面積が少なくDPE・カメラ店としての機能が果たせない場所であつて、これらのため、DPE・カメラ店を営むことは不可能な場所であるにもかかわらず、これを割り当てた違法があると主張する。
しかしながら、右主張は、次のとおり、失当である。
〈1〉 ナンバー三一ないし三三の店舗用区画は、補助七四号線の歩道(幅員三・〇メートル)に面しており、右歩道は、高田馬場駅から公園、都営住宅、早稲田大学理工学部を結ぶ歩行者の通路となつている。また、右区画は、公園通路へ登る階段口付近にあるが、この階段は、一階のシヨツピングセンターへの入口の一つであり、この階段付近は必然的に人の流れが多くなると予想され、また事実、人の流れの多い場所である。
次に、植込みについては、駐車場に出入りする自動車から当該店舗への買物客を守るためのものであり、かつ、当該店舗の商業施設の美観を考慮して設置されたものであり買物客の動線を分断するものではない。
また、駐車場の入口については、本件再開発ビルの駐車場の収容台数が一〇〇台未満であり、この程度では、買物客の動線を分断することにはならない。
〈2〉 店舗面積については、同原告の希望に沿つたものであり、また、DPE・カメラ店の営業にとつて、過小な面積とはいえない。
(四) 原告木村友治、同木村邦子及び同理工社について
(1) 原告木村友治、同木村邦子及び同理工社は、被告が原告木村らそれぞれに対し行つた本件各処分には、他の権利者と別異の取扱いがなされ、同原告らの希望を無視して行われた違法がある旨主張する。
しかし、右主張は、次のとおり、失当である。
〈1〉 同原告らの従前の資産状況等は、別表(一二)のとおりである。
〈2〉 原告木村友治及び同木村邦子は、権利変換により取得することになる再開発ビルの床を共有したい旨の申出をしており、また、原告理工社は、原告木村友治所有の家屋の一部(九・〇九平方メートル)に借家権を有するが、権利変換に当たつては、所有者たる原告木村友治の専用する床と借家権が設定される床とを分離しない旨を申し出た。
右希望は、本件事業当初からのものであり、被告も、右希望に基づき原告木村らを一体のものとして折衝に当たつてきた。
〈3〉 原告木村らは、昭和五〇年一一月一一日の個別相談において店舗については五〇坪、最低でも三〇坪、また、住宅については五LDKもしあれば六LDKを希望した。
その後、同原告らは、昭和五一年七月六日の被告との個別相談において店舗については面積の希望はとくに示さなかつたが、営業が七時から二一時までの間可能であり、店舗の立地条件を客の流れにあうように配慮することを求め、また、住宅については、B棟五階で、四LDKと二DK各一戸を隣り合わせで欲しい旨を述べた。
その後、同原告らは、昭和五二年一月二一日の個別相談において店舗面積について三〇坪、最低でも二〇坪、また、住宅については四LDKを希望した。
〈4〉 また、同原告らは、昭和五二年七月のNCRへの店舗配置設計の委託に先立つた希望調査には応じたが、NCRの行つた個別相談には連絡を受けていたにもかかわらず、NCRと話す必要はないとしてすべて欠席した。
〈5〉 一方、NCRの店舗配置設計では、その作成に当たり同原告らの希望を聞くことができなかつたが、同原告らが設計・製図器具販売を継続するとの前提にたつて、その店舗は「物販・サービスゾーン」のナンバー三の区画の一部(八・〇〇平方メートル)に配置された。
〈6〉 その後、被告は、NCRの店舗配置設計に当たつて同原告らの希望を聞くことができなかつたことを考慮しながら同原告らとの折衝に当たつた。
(ア) 同原告らは、昭和五二年八月一二日個別相談において、店舗については、その面積は二〇坪、その位置は、シヨツピング・モールのあるゾーン内で他の店舗と開閉店等同一行動をとることは困難であるとして、シヨツピング・モール外を希望し、住宅については四LDKを強く希望した。
これに対して、被告は、(あ)権利床は、従前の資産の範囲内で取得し、それを超えて床を希望する場合は優先分譲で取得して欲しい、(い)同原告らの従前の資産で四LDKの住宅を取得すると清算金を徴収することになる、(う)店舗二〇坪と住宅四LDKとの両方を希望どおり権利変換することはできない、旨を同原告らに説明した。
(イ) 同原告らは、昭和五二年九月四日の被告との個別相談においても、店舗面積二〇坪、住宅四LDKという過大な希望に固執するとともに、新たに店舗の位置をナンバー二四の区画(六六・〇〇平方メートル)とすることを希望してきた。
これに対して、被告は、同原告らに対し、店舗面積二〇坪又は住宅四LDKのいずれか一方のみを権利床で取得しても、清算金が徴収されることになる旨を、また、店舗位置をナンバー二四の区画にして欲しいとの希望については他にも右区画を希望する権利者がいる旨を説明したが、同原告らは右希望に固執したため、店舗位置については権利変換計画基準及び権利変換計画作成方針によつていずれに割り当てるかを検討することとした。
なお、右説明に当たつて、被告が、ナンバー二四の区画について、すでに割当てがきまつているとして同原告らの希望を拒否した事実のないことはいうまでもない。
(ウ) 同原告らは、昭和五二年九月二七日の個別相談においてもなお、店舗面積二〇坪、住宅四LDKの条件に固執し、また、新たに店舗には倉庫も必要である旨を主張するに至つた。
これに対して、被告は、同原告らに対し、権利変換は従前の資産に見合つて行われるものであり、希望については、(あ)店舗二〇坪の権利変換と住宅の優先分譲(但し、四LDKの住宅は戸数が限られているので優先分譲で取得することは困難)、(い)住宅四LDKの権利変換と店舗の優先分譲、(う)住宅三LDKと店舗(但し、二〇坪などという広さは当然無理)の権利変換の三者から選ぶようにして欲しい旨を説明した。
(エ) ところが、同原告らは、被告の説明に耳を貸すことなく、昭和五二年一〇月六日の再開発ビルの入居に伴う各種希望申出書において、従前どおり、店舗については二〇坪・ナンバー二四の区画、住宅については四LDKを希望してきた。
(オ) 被告は、昭和五二年一一月一五日個別相談において、同原告らに対し、次のような説明を行つた。
(あ) 再開発ビルの入居に伴う各種申出書のとおりに権利変換を行うことは不可能である。したがつて、どちらか一方を権利床でとり、他は優先分譲で取得して欲しい。
(い) 仮に、店舗を優先分譲で取得するとしても、優先分譲の区画は権利床を割り当てた残りのものとなるから、同原告らの希望どおりに取得できるとは限らない。
(う) 権利変換で店舗を取得するにしても、同原告らが希望する区画には他にも希望者がいるので、権利変換計画基準及び権利変換計画作成方針によらざるを得ない。
これに対して、同原告らは、なお次のような条件を主張し続けた。
(あ) 住宅については四LDKは是非欲しい。
(い) 店舗の面積については二〇坪を希望する。
(う) 店舗の位置については、次の理由によりシヨツピング・モールのあるゾーン外の店舗、具体的にはナンバー二四の区画を希望する。
(i) 原告理工社の主な客は早稲田大学理工学部の学生、先生であり、客に合わせて営業時間も不規則にならざるをえない。したがつて、シヨツピング・モールのあるゾーン内の店舗のように、将来営業時間が規制される恐れのある位置には入れない。
(ii) 製図器具販売の場合は、自動車が横付けできる道路に面し、また、道路を通る客にも認知される必要があり、シヨー・ウインドーが道路に面していた方が良い。
〈7〉 以上の折衝の後、被告は、本件権利変換計画を作成するに当たつて、権利変換計画作成基準及び権利変換計画作成方針に基づき、原告木村らの希望について次のような検討を行つた。
(ア) 店舗二〇坪と住宅四LDKという同原告らの希望を比較すると同原告らは住宅四LDKの方を強く希望している。
(イ) 四LDKの住宅は戸数が限られているため優先分譲では取得できない。
(ウ) 右〈6〉(オ)の店舗位置に関する希望条件を満足させる区画は存在しなかつたが、あらたに道路に面するナンバー三一ないし三三の店舗用区画を設け、そこを「物販・サービスゾーン」として、そのうちの一つを同原告らに割り当てる。
(エ) 製図器具販売のための店舗としては、従前の営業の規模からみて二〇平方メートル程度の面積があれば十分である。
〈8〉 右の検討の結果、被告は、本件権利変換計画案における同原告らの権利変換の内容を、次のとおり、決定した。
まず、店舗としてナンバー三一の一(二〇・五二平方メートル)を割り当て、残りの従前の資産で住宅として四LDKを割り当てる。
右決定は、店舗については、同原告らの希望に沿うものではないが、単に機械的に同原告らの希望どおりにまず住宅を権利変換することよりは有利な取扱いとなるものであつた。すなわち、仮に、住宅四LDKから権利変換したとするならば、同原告らは、店舗について全く権利変換を受けることができなかつたからである。
〈9〉 要するに、同原告らは、その従前の資産からして、権利変換計画基準及び権利変換計画作成方針の範囲内で、最大限の好条件で権利変換処分を受けることができたのである。
以上のとおり同原告らに対する本件各処分がその希望を無視して行われたものであるとする旨の主張は理由がない。
(2) 次に、同原告らは、本件処分によつて割り当てられたナンバー三一の一の区画は、買物客の動線が分断され、孤立した不利益な場所であり、また、床面積が少なく、製図器具販売店としての機能が果たせないものであつて、製図器具販売店を営むには不可能な場所であるにもかかわらず、これを割り当てた違法がある旨主張する。
しかしながら、右主張は、次のとおり、失当である。
まず、買物客の動線については、右(三)(2)〈1〉のとおり、駐車場の出入口及び植込みにより分断されることはない。
また、仮に、買物客の動線が分断されることがあるとしても、製図器具販売という営業の形態からみて、日用品・食料品等の販売の場合と異なり、動線分断の営業に対する影響はほとんどない。次に、店舗面積については、製図器具販売店として営業可能な面積であり、従前の店舗面積(九・〇九平方メートル)と比較しても過小な床面積とはいえない。
(3) なお、同原告らは、本件権利変換計画案について、〈1〉店舗の位置が不満であり、面積も狭すぎる、〈2〉店舗の価額が高すぎる、〈3〉再開発ビルの共用部分の共有持分の割合が不満である、〈4〉私道の評価が低すぎる旨の意見書を提出したが、被告は、右意見書の内容を審査した結果、これを採択すべきでないと判断し、その旨を審査会に付議したところ、本件審査会も被告の右見解を認めて同原告らの意見は不採択となつた。
3  処分内容に関する違法事由(法七七条二項関係)の主張に対する反論
(一) 原告らは、本件各処分は、原告らの従前資産と原告らに与えられる資産との評価を誤つてなされているから、法七七条二項の「その価額と従前の価額との間に著しい差額が生じないように定めなければならない」との条項に違反する旨主張している。
しかしながら、原告らの右主張は左のとおり失当である。
すなわち、法八五条一項は、「同法七三条一項三号、一一号又は一二号の価額について同法八三条三項の規定により同条二項の意見書を採択しない旨の通知を受けた者は、その通知を受けた日から起算して三〇日以内に、収用委員会にその価額の裁決を申請することができる。」旨規定し、そして法八五条三項は、「土地収用法九四条三項から八項まで、同法一三三条及び一三四条の規定は、法八五条一項の規定による収用委員会の裁決及びその裁決に不服がある場合の訴えについて準用する。」旨規定し、さらに法八五条四項は、「同条一項の規定による収用委員会の裁決及び同条三項の規定による訴えに対する裁判は、権利変換計画において与えられることと定められた施設建築敷地の共有持分又は施設建築物の一部等には影響を及ぼさないものとする。」旨規定している。右各条項を要約すると、従前資産の評価に関する意見書が採択されない場合になお不服のある者は、公正な評価機関である収用委員会に価額の裁決を申請することができることとし、さらに収用委員会の裁決にも不服があるときは裁判所に出訴できることとしているが、収用委員会の裁決又は裁判所の裁判の結果、従前の資産の価額に変更が生じても、すでに一旦権利変換計画において定められた施設建築敷地の共有持分又は施設建築物の一部等には影響を及ぼさず、法一〇四条の規定による清算等により、裁決又は裁判による価額の増加分に相当する金銭の授受が行われることになる、というものである。
このように仮に、右裁判等の結果、従前の資産の価額に変更が生じても、権利変換計画において定められた施設建築敷地の共有持分又は施設建築物の一部等には影響を及ぼさない、という右各条項の趣旨に照らせば、従前の資産の評価の誤りを理由として権利変換処分の取消しを求めることはできないものといわなければならない。
そうとすると、法七七条二項にいう「その価額と従前の価額」とは、法七二条の認可を受けた権利変換計画書に記載された権利変換処分によつて与えられる資産の価額(概算額)と従前資産の価額をいうものと解するのが相当であり、原告らの右主張は、右権利変換計画書に記載された前後の価額の差額を論難するものでなく、当該各価額の評価の誤りを論難するものであるから、主張自体失当というべきである。
(二) 仮にそうでないとしても、本件各処分については、取引事例比較法等の方法によつて従前の資産を評価すべきであり、路線価式評価法によるものとしても、A路線価の評価が低すぎ、そのため各従前資産(土地)の評価が低きに失することとなつているとの原告らの主張は、次のとおり失当である。
(1) 路線価式評価法の採用について
〈1〉 被告は、公共事業を行う場合においてそれに必要な用地を取得するときは、その対象用地の評価については原則として路線価式評価法を用いるものとし、右路線価式評価法により難い場合に例外として標準地比準評価法を用いる旨、路線価式評価法と標準地比準評価法の選択にあたつては、次の基本的考え方に沿つて行う旨土地評価事務要領によつて定めている。
(ア) 路線価式評価法は、原則として次の条件を満たす地域に適用する。
(あ) 市街地において用途地域としての性格が明確であること。
(い) 路線がある程度整備されていること。
(う) 複雑な形状の画地が少いこと。
(イ) 標準地比準評価法は、路線価式評価法に適さない地域に適用する。例えば、
(あ) 非市街地区域で、宅地見込地でない田、畑及び山林等の区域
(い) 複雑な形状の画地の多い地域
(う) いかなる市街化の方向をたどるか明確でない区域
本件事業地区は右(ア)(あ)ないし(う)の条件を満たす地域であるので、被告は権利者の従前資産(土地)の評価につき路線価式評価法を採用したのである。
〈2〉 被告が施行する他の公共事業においてもほとんどの場合路線価式評価法が採用されているが、これについては路線価式評価法の方が標準地比準評価法よりも評価担当者間における個人差が出にくいという利点があることが挙げられる。
(2) 路線の設定及び路線価の決定について
〈1〉 路線価式評価法による土地評価の基礎となる路線価は、設定された当該路線について土地価格形成要因である公共施設等の接近状況、街路状態、周辺の環境条件を比較衡量のうえ取引事例との比準価格、鑑定価格、地元精通者の意見、諸課税評価格、世評などを総合的に勘案して決定されるものである。
被告は、本件事業における従前資産(土地)の評価に当たり別紙図面三に示すとおり、AないしOの各路線を設定し、当該各路線につき右路線価決定の諸要素を勘案して各路線価を決定した。
〈2〉 A路線の設定について
原告はA路線は長すぎる旨主張しているが、A路線に面する土地は、路線型商店街を形成し、その繁華性は中央部附近において優れ、駅に近づくにつれて繁華性が逓減し、また駅との接近性は、中央部より西側に移行するにつれて優れているので総合的にその価格に差異がない。したがつて、さらに区分して、あえて異なる路線を設定する理由はないのである。
〈3〉 A路線価の決定について
原告らが不当に低いと主張するA路線価は、別紙図面三表示の鑑定地3につき北岡不動産鑑定事務所外三社に不動産鑑定評価を依頼し、その鑑定値を参考にするとともに、近傍類似地の取引事例との比準、地元精通者の意見、諸課税評価格、世評などを総合的に勘案して、三六万七八〇〇円と決定したものであり、妥当なものというべきである。
〈4〉 C路線価の決定について
原告らがA路線価と比較しているC路線価は、別紙図面三表示の鑑定地2、4、5、7の各土地につき北岡不動産鑑定事務所外三社に不動産鑑定評価を依頼し、それぞれの平均値を求めるとともに、近傍類似地の取引事例との比準、地元精通者の意見、諸課税評価格、世評などを総合的に勘案して、二七万九八〇〇円と決定したものであり、妥当なものというべきである。
〈5〉 路線価の上昇率について
被告は、本件事業地区内の数か所の土地につき土地価格を昭和四七年八月一日付で発表したほか、その後数度にわたり発表したが、これは権利変換試算の発表に当たり、関係権利者の参考に供し、また、先行買収に応じる関係権利者の参考に供するために行つたもので、路線価を決定するために行つたものではない。しかも、右発表に係る土地評価は、その都度、あらたに不動産鑑定評価を依頼するとともに、他の諸要素を勘案して総合的に決定したもので、単に従前に発表した土地評価に時点修正を行つたものではない。
被告は、本件権利変換処分の前提作業である従前資産(土地)の評価をするに当たり、従来発表した土地評価額に時点修正をするのみで評価額を算出したことなどなく、それとは無関係に新たに土地評価を行つたのである。
昭和四七年に発表したA路線価と本件A路線価との価格上昇率が昭和四七年に発表したC路線価と本件C路線価との価格上昇率よりも低かつたのはたまたま結果的にそうなつたにすぎない。
A路線価は、商店街に存する路線の価格であり、C路線価は、住宅地に存する路線の価格であつて、価格形成要因等の相異によつてそれぞれの価格上昇率も異なつてくるのである。
(3) 各画地の評価額の算定について
各路線価の決定後、被告は、被告の定めた「東京都の市街地再開発事業の施行に伴う評価及び損失補償基準実施細目」により個別的修正要因(側道加算、奥行逓減率、私道減価等)を勘案して別表(一三)のとおり各画地を評価し、その結果を法五七条により設置された東京都市計画事業西大久保地区市街地再開発審査会に付議し、各画地の評価を是とする議決を得て決定した。
(4) なお、東京都収用委員会の裁決における評価額は、被告の評価額を若干上まわるものであるが、この程度は評価上の誤差の範囲内のものである。また、これらの差額は、清算金によつて調整されている。以上のとおりであつて、本件各処分に係る従前資産(土地)の評価は相当というべきであり、したがつて、原告らの右主張は理由がない。
(三) 更に、法七七条二項は、権利者相互間及び前後の価額の相当程度の不一致を許容しているものと解するのが相当である。けだし、(1)同条項が「総合的に勘案して」と、また「著しい差額が生じないように」と各規定し、(2)さらに、実際上も、権利者相互間の均衡に関していえば、従前の資産における均衡の要素に「利用状況」があることから、また、法が土地の平面的利用の現状を立体的利用へと転換してゆくものであることから、その位置、面積、環境について権利者相互間で完全な均衡をとることは技術的に極めて困難である。従前の価額と権利変換処分によつて与えられる価額との均衡に関していえば、法が不良建築物を除去し、住宅、事務所等の建築物を建設するとともに地域に必要な公共施設等を確保し、土地の高度利用を行うことによつて、良好な市街地環境の創造、都市の安全性の確保等を図るというものであるから、全般的傾向として従前の資産の価額に比べ与えられる資産の価値が上昇し、その価額が高くなることは避けられず、その結果、両者の価額を一致させることは技術的にも極めて困難なのである。
このような理解に立てば、権利変換処分が右条項に違反し違法となるためには、例えば店舗を有しているAに店舗を与える一方、店舗を有しているBに他に合理的理由がないにもかかわらず店舗を与えないような場合、従前の価額と与えられた価額に数倍の差額が生じた場合等、著しい権利者相互間の不一致及び著しい前後の価額の不一致がある場合に限定されるべきである。
以上の見地に立つて、原告らが本件において問題としている原告ら及び役員グループの従前の資産の位置、地積又は床面積、利用状況等とそれらの者に与えられる施設建築物の一部の位置、床面積等をみると、別表(一四)のとおりである。
これによれば、本件各処分には、右のような著しい権利者相互間の不一致又は著しい前後の価額の不一致が存在しないことは明らかである。したがつて、本件各処分は、当該条項に違反せず、適法な処分というべきである。
四  被告の主張に対する原告の認否及び反論
1  被告の主張1について
(一)(1)のうち諏訪通り商店街の裏側には、老朽化した共同住宅や個人住宅が密集していたこと、公共施設も未整備な状態であつたことは否認し、その余の事実は認める。(2)のうち、対策会が結成されたこと、被告が相談所の開設、本件事業の説明会、地元住民との懇談会を行つたことは認めるが、その余の事実は知らない。(3)のうち、被告が、昭和四八年一二月一一日の権利変換試算の発表をはじめとして、計三回にわたり試算を発表したこと、原告らが被告に対し再開発ビルへの入居を希望したこと、原告森田が長く対策会の要職にあり、一時期は会長職にあつたことは認めるが、その余の主張は争う。(4)のうち原告らも会員であつた対策会が、基本的には本件事業の施行に賛意を表し、事業の推進について協力の態度を示してきたことは認めるが、その余の事実は知らない、(5)の事実は否認する。
(二)(1)のうちSC会は被告主張の者の大多数が加入していたことは否認し、その余の事実は知らない。(2)の事実は認める。(3)の事実は知らない。(4)のうち被告がNCRに店舗配置設計を委託したことは認めるが、その余の事実は知らない。(5)のうち店舗配置設計のNCRへの委託が被告主張の目的でなされたこと、NCRの作成する店舗配置設計は法七七条の均衡原則を当然には担保するものではなく、権利変換計画策定に当たつての一つの資料に過ぎず、直ちに権利変換計画の内容そのものになりえないことは認める。その余の事実は知らない。(6)のうち原告らがNCRの希望聴取に応じなかつたこと、原告らの希望は、NCRの店舗配置設計には入らなかつたことは認め、NCRが関係権利者の希望を最大限にとり入れるべく関係権利者相互の調整作業を進めたこと、原告井上が店舗経営を行う意思がない旨を表明していたことは否認し、その余の事実は知らない。なお、原告らはそもそもNCRが店舗配置設計について重要な役割を果たす会社であることを知らされておらず、NCRからの希望聴取に応ずべき立場にはなかつた。確かに一度NCRとの面接の知らせはあつたが、それは、店舗の経営相談のためのものであるとされていたので、その必要はないものとして出席しなかつたのである。(7)の事実は知らない。(8)のうち被告が昭和五二年八月なかばから同年一〇月にかけて、原告らと個別相談を行つたことは認める。但しその回数は一、二回であつた。また、被告がNCRの店舗配置設計を示し原告らの希望を聴取したことは認めるが、単に希望等を聴取したのみで、原告らの希望を入れたことは否認し、その余の事実は知らない。(9)の事実は知らない。(10)の主張は争う。
(三)のうち、被告が、昭和五二年七月四日及び同月二九日に関係権利者との間で二号委員の選出について懇談会を開いたこと、その際、関係権利者から、選挙による方法、地元民が候補者を推挙して施行者の選任に委ねる方法などの意見が出されたが、いずれの方法によるかは話し合いではまとまらず、結局、施行者(被告)に一任ということで関係権利者の意見が一致したこと、被告が斉藤宏、金木敏光、吉瀬みち子を二号委員に選任したことは認めるが、その余の事実は知らない、その余の主張は争う。
2  被告の主張2について
(一)(1)のうち〈1〉、〈2〉の各事実は認める。但し、原告森田がNCRとの個別相談に応じなかつたのは、被告がNCRに委託したことを全く知らされていなかつたこと、同原告が将来の生活に大きな不安をもつていたのに、再開発ビルにどの程度の店舗、住宅を取得できるか予想もつかなかつた等からである。他方、変換率二〇〇パーセントの要求は全関係権利者の総意であり、同原告のみの不合理な要求ではなく、被告もその要求に沿うよう努力する旨言明していたものである。〈3〉のうちNCRの店舗配置設計では、同原告の店舗はナンバー九の区画に配置されたことは認めるが、その余の事実は争う。〈4〉のうち、同原告が、昭和五二年八月一四日の被告との個別相談において(ア)ないし(ウ)の申出をしたことは認めるが、被告が同原告に対し、ナンバー一八の区画については、他に同区画を希望する権利者がいる旨を告げたところ、原告森田が直ちに右希望を撤回したことは否認する。その余の主張は争う。(2)〈1〉のうち原告森田が昭和五二年一〇月六日付の再開発ビルの入居に伴う各種の希望申出書をもつて住宅について四LDK一戸及び三LDK二戸を希望したことは認めるが、その余の事実は否認する。〈2〉のうち被告が、本件権利変換計画案の作成にあたり原告森田の意向を口頭で確かめたことは否認し、その余の事実は知らない。〈3〉のうち原告森田が被告主張のとおりの意見書を提出したこと、右意見書は不採択となつたことは認めるが、その余の事実は知らない。
(二)(1)〈1〉のうち家族数が本人のみであることは否認し、占有者・法七一条転出者欄記載の各面積は知らない。また、原告井上が遅くとも昭和四七年一一月以降は店舗を経営していなかつたことは認めるが、昭和五三年二月から営業を再開した。同原告は十数年にわたり食料品店を営んでいたところ、妻の入院等から人手が足りず止むなく一時営業を休んでいたものであつて、同原告について「当然には店舗を権利床として取得できる地位にはなかつた。」ということはできない。更に、同原告の家族数は、同原告、武寅夫婦及びその子三人の計六名であつた。〈2〉、〈3〉の各事実は否認する。原告井上は、遅くとも昭和五二年一月二三日の個別相談の際、同原告の代理人として出席した武寅夫婦を通じて、再開発ビルに入居して店舗経営を行う旨の希望を表明した。〈4〉のうち原告井上が案内状の配布対象者に含まれていなかつたことは否認し、その余の事実は認める、案内状は、再開発ビルに入居するか否か検討中の者、入居希望のない者、権利変換を受けることができない者にまで配布されていたにかかわらず、店舗経営の希望を明らかにしていた原告井上に対しては配布されなかつたのである。〈5〉のうち被告が、昭和五二年七月六日、原告井上に電話で店舗部分の権利変換について希望の有無の確認をとつたところ、同原告は不在で、井上美枝が電話に出て応対したことは認めるが、その余の事実は争う。すなわち、井上美枝は被告の職員から店舗は原告井上の権利変換で取得するのか、武寅の借家権で取得するのかと電話で質問を受けた際、父の権利変換率をもつと上げて欲しい、できれば店舗は武寅の借家権で取りたいが、無理なら父の権利変換で取りたい旨答えた。これに対し被告の職員は武寅の借家権では優先分譲となり、一般公募と同様希望者多数の場合は抽選となる旨説明したので、井上美枝が地元の借家権者の優先分譲の条件を知らせて欲しい旨申し入れたが、まだ未定とのことであつた。被告の職員から、店舗を取得する意思があれば遅くとも七月一一日までに知らせて欲しい、希望しないときは連絡は不要であるとの申し入れはなかつた。井上美枝は、対策会発足以来、同会に入会し、以前から同会の総務部長金木敏光を通じて被告に対し、店舗は武寅の借家権で取れないときは、原告井上の権利で取る旨伝え、また対策会主催の店舗見学会にも積極的に参加していたのである。当時原告井上は、妻の病気看護のため山梨県の病院に長期間滞在しており、本件事業にかかる同原告の権限を武寅夫婦に委任していたのであるから、井上美枝の発言は武寅及び同原告の代理人としての発言である。被告も当時右事情は充分知つていたのである。〈6〉のうち昭和五二年七月一一日の説明会に井上美枝が出席してラーメン屋を営業したい旨希望を表明したことは認めるが、その余の事実は知らない。説明会における井上美枝の発言は、もし可能なら優先分譲で取りたいが、無理なら原告井上の権利変換で店舗を取得したいとの意見を明らかにしたものである。〈7〉のうち同年八月一四日及び一五日の二日間にわたつて、被告は、原告井上に対する個別相談を行つたこと、右相談は同原告のほか武寅夫婦も出席して行われたが、結局同原告は、権利変換の希望として四LDK一戸及び二DK二戸の住宅のみを希望したこと、同月一五日、原告井上が「再開発ビルの入居に伴う位置・面積の希望申出書」一通に自署したことは認めるが、その余の事実は否認する。個別相談の席上、被告の職員は原告井上らに店舗の配置図を示し、店舗の位置はNCRと地元の調整で既に決まつているので残つたところを希望するよう述べたため、原告井上は右職員の態度に抗議する意味から店舗の希望を表明しなかつたもので、同月一五日には、原告井上らは被告の職員に対し店舗配置設計を白紙に戻すよう要求した。原告井上が同日、右希望申出書に署名したのも、被告の職員から個別相談があつたことの確認の意味であると説明されたためであり、右署名は原告井上の希望を確認する趣旨でなされたものではない。〈8〉のうち、原告井上が、同年九月二四日の個別相談で店舗を希望する旨口頭で申し出たことは認めるが、それが、はじめてであつたことは否認する。同原告は、同年八月一六日にも被告の職員に対し電話で権利変換で店舗を取得したい旨伝えている。〈9〉の事実は認める。〈10〉の事実は否認する。〈11〉の事実は知らない。〈12〉の事実は認める。〈13〉のうちナンバー一八は、金木敏子が権利変換を受けたことは認め、被告が検討の結果ナンバー一九の一を変更する合理的理由がないと判断したことは知らない。その余の事実は否認する。〈14〉の主張は争う。(2)のうち〈1〉、〈2〉の各事実は認める。〈3〉のうち懇談会の開催通知が原告井上になされたこと、被告は後日電話により希望を聴取したことは否認し、その余の事実は知らない。なお、昭和五三年三月四日被告から同原告宅に明日、四LDKの抽選会を行うとの一方的通告があつたが、欠席した。右懇談会には四LDK希望者一一名中六名しか出席しておらず、成果のなかつたものである。〈4〉のうち被告が、原告井上に対し最上階の新しく設計した四LDK及び一〇階の二LKを割り当てることを決定したことは認めるが、その余の事実は否認する。〈5〉の主張は争う。(3)の主張は争う。
(三)(1)のうち〈1〉、〈2〉の各事実は認める。〈3〉のうち原告村田が、昭和五二年七月一一日の説明会及びその後のNCRの個別相談について開催通知、連絡を受けていたことは否認し、被告が、同原告の地区外への転出の意思が確定したものと判断したことは知らない。その余の事実は認める。同原告は、DPE、カメラ器具販売を業としていたのであるが、被告から右営業に必要不可欠な暗室は、再開発ビル内には設置できないと説明されたため、地区外に転出しようと考えたが、地区外に適当な土地を入手するためには四〇〇〇万円以上を要するところ、先行買収に応じて取得できる売却代金等の額が予想できなかつたため態度を決しかねていた。同原告は、一旦は被告の要望に応じて先行買収に応じることとしたが、被告から先行買収で四〇〇〇万円以上は出ないとの連絡があつたこと、当時固定客がいたことからも再開発ビルに入居することとしたものである。〈4〉の事実は認める。〈5〉のうち(ア)の事実は認める。(イ)のいう原告村田が、昭和五二年一〇月六日の再開発ビルの入居に伴う各種希望申出書においてナンバー一七の区画を希望し、被告主張のとおりの上申をなしたことは認めるが、その余の事実は否認する。ナンバー一七の区画は昭和五二年七月一五日に既に、和久井清一に割当てが決定されていたのである。(ウ)の事実は認める。〈6〉の冒頭の事実中、被告が原告村田に対し、店舗についてはナンバー三一の二の区画を、住宅についてはA棟の三DK二戸を割り当てる旨決定したことは認めるが、その余の事実は知らない。(ア)のうち店舗の割当てが同原告の希望をほぼ充足することは否認するが、その余の事実は認める。(イ)のうち同原告の希望が、三LDK及び二LK各一戸であつたこと、結局A棟の三DK二戸を割り当てたことは認め、その余の事実は知らない。〈7〉、〈8〉、〈9〉の各事実は認め、被告が原告村田の希望を無視した事実はないとの主張は争う。(2)〈1〉のうちナンバー三一ないし三三の店舗用区画は補助七四号線の歩道に面していることは認めるが、その余の事実は否認する(但し、駐車場の収用台数の点は除く。)。〈2〉の事実は否認する。
(四)(1)〈1〉のうち店舗部分が倉庫のように使用されていたとの点は否認し、その余の事実は認める。〈2〉の事実は認める。但し、原告木村友治、同木村邦子、同理工社はそれぞれ独自に再開発ビルに入居を希望していたのであるが、被告から権利床を分離すると権利変換の際に不利になると言われ、仕方なく応じたものである。〈3〉のうち原告木村らが昭和五一年七月六日の被告との個別相談において店舗の面積は特に希望しなかつたことは否認し、その余の事実は認める。〈4〉の事実は認める。NCRとの個別相談は、権利変換の相談ではなく、再開発ビル入居後の経営相談であつたので欠席したものである。〈5〉の事実は認める。〈6〉のうち(ア)の事実は認める。(イ)のうち原告木村らは昭和五二年九月四日の被告との個別相談において被告主張のとおりの希望をしたこと(但し、右希望が過大であるとの点を除く。)、これに対し、被告は被告主張のとおりの説明をしたことは認めるが、その余の事実は否認する。(ウ)の事実は認める。但し、原告木村らが倉庫を要求したのは、被告が賃貸するとのことであつたので、これを希望したのにすぎない。(エ)の事実は認める。(オ)のうち被告が(う)のとおりの説明をしたことは否認し、その余の事実は認める。(う)の説明は、ナンバー二四の区画は既に割当てが決まつているので他の場所を希望するようにとのことであつた。〈7〉の事実は知らない。〈8〉の事実は認める。但し、右決定が原告木村らにとつて有利な取扱いとなるとの主張は争う。〈9〉の事実は否認する。(2)の主張は争う。(3)のうち原告木村らが被告主張のとおりの意見書を提出したこと、右意見書は不採択となつたことは認めるが、その余の事実は知らない。
3  被告の主張3について
(一)の主張は争う。
法八五条の規定の存在は本件各処分が法七七条二項の「その価額と従前の価額との間に著しい差額が生じないように定めなければならない。」との条項に違反するか否かの判断の前提として裁判所が従前資産及び取得資産の評価をすることとは矛盾しない。
(1) 法八五条の規定は、権利者が第三者機関である収用委員会に従前資産の増額を請求し、清算金を増額ないし減額させることを認めたもので、このことは、収用委員会の裁決に不服がある場合の訴えの性格が給付請求であることからも明らかである。つまり、法八五条は清算金の額に関する規定であつて、権利変換処分とは直接関連しない。法八五条四項も右のことを規定したにすぎない。
(2) 一方法七七条二項は権利変換処分の均衡の原則を定めたもので、権利者が取得する床の価額と従前の価額との間に著しい差額が生ずれば、権利変換処分は違法とされ取消しを免れないのであるが、被告主張のように、価額均衡の原則を定めた右規定の判断に際し、取得資産及び従前資産の評価を施行者のそれを基準としなければならないとすると、権利変換処分の取消しの訴えにおいては施行者の資産評価を前提とし、その差額を問題とすることができるだけとなり、ひいては、施行者は、真の財産評価とは関係なく、権利変換計画においてその差額を少なくするよう資産を定めればよいこととなり、右規定の趣旨は失なわれてしまうのである。
(二)の主張は争う。(1)〈1〉のうち被告が公共事業を行う場合において対象用地の評価については原則として路線価式評価法を用いるものとされ、それにより難い場合に例外的に標準地比準評価法を用いるものとされていること、本件事業について路線価式評価法が用いられたことは認めるが、本件事業地区が(ア)(あ)の条件を満たすことは否認し、その余の事実は知らない。〈2〉の事実も知らない。(2)〈1〉のうち被告が本件路線価の決定につき被告主張の諸要素を勘案したことは否認し、その余の事実は認める。〈2〉のうちA路線に面する土地は、路線型商店街を形成していたことは認めるが、その余の主張は争う。〈3〉のうち鑑定地3につき北岡不動産鑑定事務所外三社に不動産鑑定評価を依頼したこと、A路線価を三六万七八〇〇円と決定したことは認めるが、その余の事実は知らない。〈4〉のうち鑑定地2、4、5、7の各土地につき北岡不動産鑑定事務所外三社に不動産鑑定評価を依頼したこと、C路線価を二七万九八〇〇円と決定したことは認めるが、その余の事実は知らない。なお、被告はA及びC路線価の決定につき近傍類似の取引事例との比準を勘案したとするが、取引日時及び取引事例地の位置からすればA及びC路線価を決定するのに参考となるような取引事例は昭和五一年一〇月七日当時存在しなかつた。また、地元精通者の意見、世評等を勘案したとしてもその信用性は極めて乏しいし、諸課税評価額を仮に勘案したとしても正常価格の参考とはならない。したがつて、被告の路線価決定は客観的資料に基づくものではなく、被告の主観的判断によるものにすぎない。〈5〉のうち被告が本件事業地区内の数か所の土地につき土地価額を昭和四七年八月一日付で発表したほか、その後数度にわたり発表したことは認めるが、その余の事実は知らない。被告の主張の趣旨は争う。被告の土地に対する鑑定評価は路線価を決定するために行われたものである。(3)のうち各画地の評価が審査会に付議され是とされたことは認めるが、その余の事実は知らない。(4)のうち東京都収用委員会の裁決における評価額が、被告の評価額を上まわるものであることは認める。その余の主張は争う。
(三)の主張は争う。
第三  証拠〈省略〉

 

理  由

一  被告が本件事業の施行者であること、原告らは、いずれも本件事業の施行区域内に土地又は建物を所有し、若しくは建物の賃借権を有していること、被告は原告らに対して昭和五三年六月一〇日付五三市再権第三八号による通知をすることによつて本件各処分をなしたことは、当事者間に争いがない。
二  本件のような地方公共団体が施行する第一種市街地再開発事業は、法律上、都市計画法八条に基づく高度利用地区の都市計画決定(その案の公告、縦覧計画の認可、計画の告示、縦覧)に始まり、権利変換に関する登記、清算、清算金の交付、徴収、施設建築物への入居に至る一連の手続からなるものであるところ、原告が、本件各処分の手続に違法があるとして主張するところは、右の法律上定められた手続そのものの不履践等の瑕疵ではなく、右の法律上の手続を踏むためにとることが必要である事実上の措置、例えば、権利変換計画策定のためあらかじめする関係権利者の意見の聴取やこれとの折衝又は関係権利者の代表者らとする計画案の協議等において、被告が原告らの意見を無視したとか、特定の関係権利者らを優遇したとかいうような不公正又は不公平な取扱い等の瑕疵である。ところで、本件のような市街地再開発事業は、憲法の保障する私有財産権である土地建物の所有権等を施設建築物の一部に対する権利等に変換することを目的とするものであるから、右権利変換を受ける関係権利者間における衡平には十分の考慮が払われなければならないことはいうまでもないことであつて、このことは、権利変換計画の決定の基準として直接法の定めるところであるが(七四条二項)、しかし、本件事業のように、施行区域が広く、関係権利者の数も多数にのぼるような事業にあつては、関係権利者の従前の権利の内容が、土地・建物の別、位置、広さの別等により千差万別である一方、権利変換によつて与えるべき施設建築物の区画は限られているものであるから、関係権利者の権利変換前の権利と変換後の権利との価値の均衡を比較するとき、与えられた施設の位置、広さ等について特定の者が優遇されたとか、自己が他より不利に取り扱われたとかいうような不平・不満を抱く者がでることは避けられないところというべく、このような不平・不満は、それが権利変換計画や清算金の徴収・交付に反映されなかつた以上は、大量・画一的な処理が要請されかつ権利変換の処分につき施行者にかなり幅の広い裁量権が認められる本件事業の施行上やむをえないものとしてこれを受忍すべきものとするのが法の趣旨とするところと解されるが、そうであるだけに、このような事業を遂行する施行者としては、単に前記の法の定める手続をその定められたとおり行えば足れりとしてはならず、計画案の策定のための関係権利者の意見の聴取等のような事実上の措置をするについても、かりそめにも関係権利者から施行者の偏頗や恣意を疑われるようなことのないように努めなければならないものというべく、万一施行者において、ことさら一部関係権利者の利益を優先したり、一部関係権利者の意見を無視するなど、客観的にみても不公平かつ不当な事業の遂行をしたと認められるような場合においては、そのような不公平、不当な取扱いによる事業の遂行には手続上の瑕疵があるものとして、権利変換の処分の内容いかんにかかわらず、当該処分が違法とされることもありうるものというべきである。
そこで、以下、このような見地に立つて、原告らが本件各処分について手続上の瑕疵があると主張するところを検討する。
1  まず、原告らは、本件各処分のための計画案の策定等は対策会の役員を占める一部特定の関係権利者にのみ都合のよい方法で進められたのにもかかわらず被告はこれに加担し又は放任して手続を進めた違法があると主張する。
成立に争いのない甲第三号証、乙第一号証の二、証人本間永治の証言(第一回)により成立の認められる乙第六号証の一、二、証人斉藤宏の証言により成立の認められる甲第五号証、第七、第八号証(第七号証は原本の存在とも。)、原告森田正吉本人尋問の結果により原本の存在及び成立の認められる甲第六号証、弁論の全趣旨により成立の認められる乙第一号証の一、第二号証、第三号証の一、二、第四、第五号証並びに証人本間永治(第一回)、同斉藤宏、同金木敏光の各証言、原告森田、同木村友治各本人尋問の結果によると、次の事実が認められる。すなわち、本件事業の施行地区は国鉄山手線高田馬場駅の東南約六〇〇メートル附近に位置し、補助七四号線に沿つた東西に長い南高北低の地形で、区域の面積は約二・八五ヘクタールであるが、従前、諏訪通りに沿つて約三〇〇メートルの間、日用品の販売を中心とする小規模な商店街が形成されていて、老朽化した店舗併用住宅が多かつたので、被告は、法の目的に沿い、地区内の細分化された土地の合理的かつ健全な高度利用を図り、老朽化した店舗の不燃共同化による商店街の近代化、密集した住宅の不燃高層化による居住環境の改善をなし、あわせて補助七四号線、区画街路、緑地を整備し、さらには隣接する都営住宅を収容して戸山公園の造成を促すことを目的として本件事業を計画した(各右事実は、当事者間に争いがない。)。本件事業地区内の土地、建物の所有権ないし賃借権を有する関係権利者約一五〇名は、本件都市計画が告示された昭和四七年三月ころには、本件事業に基本的に賛成する住民約一〇〇名で結成された対策会と、本件事業の実施そのものに反対する住民約三〇名で結成された共栄会とに分かれて、それぞれの立場から被告に対し要望等を行つていたが、被告は、これに対し、昭和四七年六月本件事業の事務所内に相談所を開設し、毎週定期的に住民の相談に応じたほか、同年九月二八日には事業の進行、土地の評価等についての説明会を開催し、その後も懇談会を開催するなどし、それ以降もしばしば対策会や共栄会といつた地元住民団体や住民全体との懇談会、説明会などを行つてきた(被告が、相談所を開設し、本件事業の説明会、地元住民との懇談会を行つたことは、当事者間に争いがない。)。この間、共栄会の会員は昭和四八年ころから先行買収に応じて地区外に転出してゆき、昭和五〇年末ころには右会は自然消滅した。そのため、以後、被告は、原告らを含む関係権利者の大部分が所属し(昭和五一年六月ころは会員数は二五、六名であつた。)、唯一の地元の住民団体である対策会を窓口として地元との協議を進めることとし、対策会との間に事業の全体計画、再開発ビルの基本設計に関する協議を行つてきたものであるが、右協議における対策会の主な要望は、工程を明確にすること、補償等に関する基準を明確にすること、権利変換の際、変換率二〇〇パーセントを確保すること、公園計画案についての要望及び地元の協議会組織を被告に作つてもらいたいということであつて、これらの事項に関する対策会との話合いは権利変換期日(昭和五三年七月一〇日)まで数十回行われたが、右協議において権利者個々人に利害関係のある具体的問題が話し合われたことはなく、また、被告は対策会に加入していない関係権利者に対しては、懇談会、説明会及び個別相談の機会における説明並びに広報である市街地再開発ニユースの発行を通じて事業の進行状況を明らかにしてきた。他方、対策会の内部の運営についてみると、対策会は昭和四九年一〇月からは、会長斉藤宏、総務部長金木敏光、副会長吉瀬みち子らの役員が中心となつて運営されてきたが、このメンバーは原告森田が会長となつた昭和五一年一一月二四日から昭和五二年二月までの間を除いてはほぼ同一であつた(右対策会の役員の構成については、当事者間に争いがない。)。ところで、右のように対策会の会長が昭和五一年一一月に斉藤宏から原告森田に交代した経緯は、斉藤宏と原告森田との間に再開発事業に対する対策会の運動方針等をめぐって意見の相異があり、昭和五一年一一月二四日の総会において原告森田が会長に選出されたことによるものであるが、その後、原告森田の会長としての対策会運営に対し、斉藤宏ら対策会の旧役員を中心に不満が生じ昭和五二年二月対策会の臨時総会において会長不信任のため対策会自体の解散決議がなされた(昭和五二年二月に対策会が解散したことは、当事者間に争いがない。)。そして、斉藤宏は、右臨時総会において直ちに新たに会を結成する旨を提案して支持され、自らがその会長に選任された。右会には、原告森田ら一部を除く従前の会員の多くがこれに参加し、右会は再度名称を対策会と命名して従前と同様に被告との交渉を行つたものであるが、右対策会の昭和五二年二月の解散及び再結成の結過は、当時施行者である被告側には知らされず、このため被告は、対策会の会長が原告森田から斉藤宏に交代したとのみ理解していた。以上の事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。
なお、原告らは、斉藤宏らの役員グループの者が再開発ビルに権利変換で入居する権利者が少なければ少ないほど自己の利益になるとして関係者に種々のことを吹聴し、このため多数の地元権利者が都の先行買収に応じて地域外に転出していつたと主張し、原告木村友治本人尋問の結果には、これに関連する部分があるが、右部分は昭和五一、二年ころ同原告宅を訪れた者が、同原告の妻に対し再開発ビルの駐車場は一台当たり四五〇万円かかるとか、再開発ビルの管理費は一坪当たり一万円かかるとかと述べたと妻から聞いたというものに過ぎず、極めてあいまいで原告らの右主張を裏付けるに足るものでなく、他の原告らの右主張を認めるに足る証拠はない。また、原告らは、斉藤宏ら役員グループの者が対策会運営に際して反対者に情報を与えず、対策会の会合においても反対意見を威圧的に封じたと主張し、原告木村友治本人尋問の結果中には、これに沿うかにみえる部分もあるが、右部分は、斉藤宏らによる対策会の会合においては物が言えないような圧力のある雰囲気であつたというにとどまるのであつて、同原告の尋問の結果の他の部分には、会合において斉藤宏らから具体的に発言を封じられたことはなかつたとの供述もあつて、彼此あわせてみれば、右尋問結果は結局のところ、原告らの右主張を裏付けるに足るものとはいえず、他の原告らの右主張を認めるべき証拠はない。
右認定事実によれば、対策会は昭和五〇年ころには、原告らを含む関係権利者の大部分が所属する唯一の地元の住民団体であつたのであるから、被告が、権利変換計画の策定に当たり、右対策会を地元権利者の意見を代表するものと認め、これを相手方として協議を行うこととしたこと自体は何ら不当なものではなく、また、右対策会との協議の内容も事業の全体計画や再開発ビルの基本設計に関すること等の一般的な事項にとどまり、個々の権利者の利害に関係する具体的権利内容に関することは協議の内容とされていなかつたのであるから、対策会の役員が右協議を通じ自己の個人的利益を優先させる方法で本件事業を行わせるなどということは到底ありえないものというべきである。また、被告は、本件事業の進行の状況については、対策会の会員以外の者にも説明会、懇談会、個別相談会等を通じて遂一これを明らかにしてきたものであるから、被告が対策会の役員以外の者を排除して本件手続を進行させたということはできない。なお、対策会内部において斉藤宏らと原告森田との間に会の運動方針をめぐつて意見の相異があり、運営の主導権をめぐつて確執が生じていたとしても、被告がそのうちの一方に加担したというような事情の認められないことは前記のとおりであり、被告としては終始会を代表する役員らと協議をしてきたに過ぎないものであるから、何ら不公正な点や偏頗な点を認めることができず、原告らの右主張は、いずれも理由がないというべきである。
2  次に、原告らは、再開発ビルの店舗配置設計がSC会の役員である一部関係権利者らにより恣意的に行われ、右の者らは自己に都合のよい場所を優先的に確保したのに、原告らは残りの場所を押しつけられたこと、また、NCRの店舗配置設計の作成過程において原告らの希望が入れられなかつたことは不公平、不公正であつて、本件手続はこの点において違法があると主張する。
前掲甲第八号証、原本の存在及び成立につき争いのない甲第九、第一〇号証、第一一号証の一ないし九、証人本間永治の証言(第一回)により成立の認められる乙第一九号証、二一号証、弁論の全趣旨により成立の認められる甲第二号証、乙第九号証、第二〇号証、第二二号証、第二三号証の一、二及び第二六号証の一、二(甲第二号証は原本の存在とも。)、証人本間永治(第一回)、同斉藤宏、同金木敏光及び同井上美枝の各証言並びに原告森田正吉、同村田安彦及び同木村友治各本人尋問の結果によると、次の事実が認められる。すなわち、対策会においては、昭和四九年一〇月からは、会員全体の総会のほかに関係権利者の権利の種類ごとにグループを設けて活動を行うこととし、同年一二月には、このうち土地建物所有者のグループ(Aグループ)内に店舗研究部会及び住宅研究部会が設立され、昭和五〇年三月には右各部会は全会員からも部員を募集して対策会役員会とは独立した対策会自体の分科会とされたのであるが、このうち店舗研究部会は、現に店舗を経営して商業を営む者でかつ再開発ビルに入居して店舗を経営することを希望する者三三名で発足し、その後同部会は、同年六月SC会として改組され、会長斉藤宏、会員金木敏光、吉瀬みち子、大海精一、成田勝利等で構成されていて(昭和五〇年ころ、SC会が組織されたこと、構成会員が右のとおりであることは、当事者間に争いがない。)、原告森田も右SC会の会員であつた。また、被告は、本件事業のうち商業の経営に関係する計画に関して地元権利者のうち商業従事者と施行者との相互理解を深めるため、対策会との間で、昭和五一年六月二五日商業計画協議会を発足させたが、右協議会は施行者である被告の代表(都委員)六名と地元側の権利者のうちSC会会員中から選出された委員(地元委員)四名で構成することとし、右四名の地元委員には、当時SC会の会員であつた斉藤宏、金木敏光、小菅及び原告森田が就任した(但し、原告森田がSC会の会員で地元委員であつたのは昭和五二年二月までであつた。)。右協議会の協議事項は、本件事業を達成するための事業の商業計画に関する基本事項とされ、右協議会での決定事項は、原則として対策会と都との決定とみなすが、対策会全員に影響を及ぼすとみられる重要事項については対策会に計り協議のうえ決定することとされていた。右協議会においては、ゾーニングやビルの基本的な設計事項について精力的に協議が重ねられたが、他方SC会においては、ゾーニングや店舗配置設計は、再開発ビルにおける商業経営の成否の基本事項であるとして、この点に関する専門家の知識の導入の必要性が早くから痛感され、右のような店舗配置設計等に実績のあるNCRと接触したうえ、昭和五二年三月八日及び同年六月八日被告にNCRの参画を求める要望書を提出した。被告は、右要望書を検討した結果、再開発ビルのゾーニングや各権利者間の調整を行い適正な店舗面積と位置を定めるためには専門的知識の導入が必要であるとして、同年七月一日NCRに対し、配置設計を行うための前提条件の整理、ゾーニングの設定、各権利者の適正店舗面積及び位置の設定の案の作成を委託した。そして、被告は、関係権利者にあらかじめ通知のうえ、同月一一日店舗配置設計をNCRに委託した旨を説明し、NCRの行う個別調査に応ずるよう求めるための説明会を行い、その後、NCRは被告の担当官立会のうえ関係権利者の個別調査に着手した。原告森田、同木村友治及び同井上(その長男の嫁である井上美枝が代理出席)は、右七月一一日の説明会(以下「一一日の説明会」という。)に出席したが、原告村田は、同月四日の懇談会において同月一一日にNCR紹介の説明会が行われ、また、NCRの調査活動は同月三〇日まで行われる旨の説明を受けていながら、一一日の説明会に欠席した。そのうえ、原告らはいずれも、その後に行われたNCRの個別調査には応じなかつた(右調査に応じなかつた原告らの個別の事情は、後記三原告ら各人についての固有の手続的違法の主張に対する判断の項に記載するとおりである。)。NCRの作成した店舗配置設計は同年八月四日被告に提出されたが、被告は右NCRの店舗配置設計に基づいて同年八月から一〇月にかけて原告らを含む関係権利者らと個別相談を行い、また、同年九月二六日ころには、関係権利者に対し再開発ビルの入居に伴う各種の希望申出書を提出させるなどして、原告ら関係権利者らの希望を聴取したうえ、各店舗の配置を調整した。その結果、店舗配置設計の施行者素案が作成され、右素案に基づいて権利変換計画が策定され、同計画は、昭和五三年三月二二日本件審査会で承認された。以上の事実が認められ、証人井上美枝の証言及び原告森田正吉、同村田安彦、同木村友治各本人尋問の結果中右認定に反する部分は、いずれもこれを措信することができず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。
右認定事実によれば、被告が右協議会を通じて店舗配置設計についてSC会の役員である一部関係権利者を他より有利に取り扱つたようなことはなく、右協議会の運営にも不平等、不公平の点があるということはできないし、また、被告が権利変換における店舗配置設計について、SC会の役員である一部関係権利者に対し、店舗の位置を優先的に割り当てたとか、残つた店舗を原告らに押しつけたとかいうようなことがあつたということもできない。
確かに、対策会の役員であつた斉藤宏、金木敏光(敏子)、吉瀬みち子、大海精一らがNCRの店舗配置設計とほぼ一致した権利変換を受けたことは、当事者間に争いがなく、かつ、右NCR案においては必ずしも原告らの希望が反映されているとはいえないが、それは、専ら右のとおりNCRの配置設計案作成のための個別調査に右の斉藤らは応じたのに原告らは応じなかつたことによるものというべきである。
よつて、本件手続に原告ら主張のような違反があるということはできない。
3  更に、原告らは、対策会の役員らが審査会の二号委員に就任して自己の利益を追求し、その結果本件各処分が不公平になされたと主張する。
前掲乙第二六号証の一、二及び弁論の全趣旨により成立の認められる乙第一七号証並びに証人本間永治の証言(第一回)によると、東京都市計画事業西大久保地区第一種市街地再開発事業施行規程(昭和五二年三月三〇日公布、東京都条例第四二号)おいて、法五七条一項の規定によつて置かれる審査会の構成は、同条四項一号に規定するいわゆる一号委員五名、同項二号に規定するいわゆる二号委員四名とすることとされているが、被告担当者が昭和五二年七月二九日右二号委員の選任方法について関係権利者との懇談会を開催したところ、関係権利者から様々な意見が出されたものの、結局、地元側としては施行者に選任を一任することとなつたので、被告は、二号委員は施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者で、本件事業の内容、経過について比較的理解を有している者の中から選任することとし、右要件に合致する者として、斉藤宏、金木敏光及び吉瀬みち子を任命したこと(右三名が二号委員に選任されたことは、当事者間に争いがない。)が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。そして、二号委員の職務は本件審査会の構成員として権利変換計画の決定又は変更についての同意の議決に参加すること(法八四条一項)のほか、法及び施行規程で定められた権限のみを行使するもので、法及び右規程の各規定を通覧しても、同会における審議の過程で委員個人の利益を追求することを可能とするような権限行使の余地はなく、また、本件全証拠によるも、現に選任された右各二号委員がその職務の遂行にあたつて自己の利益を追求したとかこれをしえたとかの事実を認めるに足る証拠はないので、原告らの右主張は理由がないものというべきである。
三  次に、原告らは原告ら各人について固有の手続的違法があると主張する。
1  (原告森田について)
(一)  原告森田は、本件処分において同原告に割り当てられた店舗の位置が、対策会役員である斉藤グループに対する店舗配置の決定後に決定され、かつ、同原告の希望を無視して他の位置を強制した違法があると主張する。
前掲甲第九号証及び乙第三号証、成立に争いのない乙第一八号証の一、第四九号証、証人本間永治の証言(第一回)により成立の認められる乙第一四号証、第二五号証の二及び原告森田正吉本人尋問の結果により成立の認められる乙第四八号証、証人本間永治の証言(第一回)並びに原告森田正吉本人尋問の結果によると、次の事実が認められる。すなわち、東京都においては権利変換計画基準(四八都本再再第四三号昭和四九年四月一日)を定め、それによると、権利変換計画の基準時点である事業計画の公告のあつた日における宅地及び建築物に関する権利を対象として権利変換計画を作成することとされており、この配置設計においては右事業計画公告の日における宅地又は建築物の利用状況、位置、環境及び評価基準日における宅地の価額等を総合的に勘案して、原則として従前の用途と事業計画で定められた施設建築物の主要用途が対応するように定めることとされているところ、原告森田は、本件事業計画の公告のあつた日である昭和五二年九月七日現在別紙(九)「従前の資産」欄記載のとおりの土地建物を所有し、甘味喫茶を経営していたが、同年七月一一日の説明会に出席し、被告から個別にNCRの希望調査に応じて貰いたい旨の要望を受けたにもかかわらず、二〇〇パーセント以上の権利変換率が実現しないうちは、店舗配置設計の調査には応じないとして、右調査に応じなかつたものである(同原告の従前資産の状況及び一一日の説明会において被告から個別にNCRとの希望調査に応ずるようにとの要望がなされたにもかかわらず同原告がNCRの調査に応じなかつたことは、当事者間に争いがない。)。このため、NCRは、同年八月四日に被告に提出した店舗配置設計においては、同原告が従前どおり甘味喫茶を経営するものと推定して、その店舗を「物販サービスゾーン」(再開発ビル一階平面図(別紙図面一)中ナンバー一からナンバー一六までの区画が「物販サービスゾーン」とされ、ナンバー一七からナンバー二四までの区画が「飲食サービスゾーン」とされている。)のナンバー九の区画(三七・六五平方メートル)に配置した(NCRの店舗配置設計において同原告の店舗の位置がナンバー九の区画に配置されたことは、当事者間に争いがない。)。被告は右店舗配置設計に基づき、同月一四日同原告と個別相談を行つたが、その際、同原告は、本間係長に対し、フアーストフードの営業を行うとして、面積は一〇ないし一五坪程度を、区画はナンバー一八を希望した(八月一四日の個別相談の際同原告が右のとおりの希望をしたことは、当事者間に争いがない。)。そこで、本間係長は、ナンバー一八の区画は他にこれを希望する関係権利者がおり調整がつかなければ施行者が決めることになる旨を説明したところ、同原告は、右希望を撤回し、同日電話でナンバー一の区画(四一・六一平方メートル)を希望する旨を述べ、同年一〇月六日提出の再開発ビル入居希望申出書においてもナンバー一の区画を希望した。被告は、これに基づき他の希望者と調整のうえ、同原告の店舗の位置をナンバー一の区画とする権利変換計画を作成し、昭和五三年三月二二日本件審査会において、右権利変換計画が議決された。以上の事実が認められ、同原告本人尋問の結果中右認定に反する部分は措信できず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。
右認定事実によれば、本件処分において原告森田に割り当てられた店舗の位置が役員グループに対する店舗配置の決定後に決定されたというような事実はなかつたものというべきであり、また、当初の同原告の希望と異なる区画が割り当てられた点についても、それは被告担当官の強制などによるものではなく同原告自らが考慮のうえ希望を変更したことによるものであることが明らかであるから、右店舗の割当て手続において何らかの違法があつたものということはできない。
(二)  原告森田は、住宅の位置について、被告の担当官が昭和五二年一〇月六日同原告と話し合つたうえで位置を決定すると約束したにもかかわらず、一方的に位置を決定したと主張するが、同原告本人尋問の結果中、昭和五二年一〇月六日の希望申出に関する説明会に出席した権利者らに対し、本間係長が住宅部分の権利変換については権利者と話し合つて決定すると約したとの同原告の主張に沿う部分は、証人本間永治の証言(第一回)に照らして措信することができず、他に同原告の右主張事実を認めるに足る証拠はない。
よつて、同原告の主張は理由がないことに帰する。
2  (原告井上について)
(一)  原告井上は、本件処分に至る手続において、一一日の説明会について事前に電話での通知があつたのみで、それ以降に開かれた説明会等については事前の通知がなく、そのため同原告の希望が調査されずに、処分がなされた点に違法があると主張する。
前掲乙第二五号証の二、成立に争いのない甲第一三号証、第一四号証の一、二、乙第一八号証の二、第三八号証、第四一号証、証人本間永治の証言(第一回)により成立の認められる乙第三九、第四〇号証及び第四二号証の一、二並びに証人本間永治(第一、二回)及び井上美枝の各証言によると、次の事実が認められる。すなわち、原告井上は、別表(一〇)「従前の資産」欄記載の土地、建物を所有して右建物の一部を数名の借家人に賃貸し、昭和四三年一一月ころまでは右建物の一部で食料品店を経営していたが、病気になつた妻の看護のためにそのころ右営業を止めたものであるが(同原告が遅くとも昭和四七年一一月以降店舗を経営していなかつたことは、当事者間に争いがない。)、同原告は、昭和四七年ころに行われた被告のアンケート調査においては、営業としてアパート貸間業を行つており、権利変換後においても貸間業を行うつもりであるとして、住宅三DK五戸のみを希望し、また、昭和五一年七月に行われた個別相談の際には、同原告を代理して同原告の長男でかつ同原告の借家人でもあつた井上武寅とその妻美枝夫妻がこれに出席し、同原告としては住宅を希望する旨を述べ、更に、昭和五二年一月二〇日に行われた個別相談の際には、右井上武寅が出席し、同人は、同原告の希望としてでなく、自らの希望として、自らに対する優先分譲で店舗を取得したい旨を述べた。一一日の説明会の時点においても同原告は、店舗取得の希望がある旨を述べていなかつたため、右説明会出席の対象者には含まれていなかつたが、被告の担当官は念のため、同年七月六日同原告に対し権利変換による店舗取得の意思があれば調整に参加するよう促すため電話連絡をしたところ、同原告は不在で、右井上美枝が応対し、息子夫婦としては店舗を取得したいが、同原告は住宅のみを希望していて、同原告の権利によつて店舗を取得させることが困難であるため、店舗は井上武寅が優先分譲により取得するつもりである旨を返答した。そこで、担当官は、井上美枝に対し、優先分譲のみの希望であれば参加は不要であるが、同原告が権利変換で店舗を取得する意思があれば同月一一日までにその旨を連絡するように伝えたが、同原告からは同日までになんの連絡もなかつた。しかるに、一一日の説明会には井上美枝が出席し、飲食店(ラーメン屋)を経営したい旨の希望を述べたが(一一日の説明会に井上美枝が出席し、飲食店(ラーメン屋)を経営したい旨を述べたことは、当事者間に争いがない。)、担当官は、従前の経緯から同女は同原告ではなく井上武寅を代理して希望を述べているものと判断した。同年八月一四、一五日に亘つて行われた同原告に対する個別相談には同原告のほか、井上武寅夫妻も出席し、その際には同原告らは、店舗を権利変換により取得する希望の存在を否定しなかつたものの、結局、同月一五日には権利変換の希望として住宅四LDK一戸と二DK二戸のみを希望し、店舗は希望しない旨を記載した再開発ビルの入居に伴う位置、面積の希望申出書に自署した(同年八月一四、一五日、被告が同原告に対する個別相談を行つたこと、右相談には同原告の他武寅夫妻も出席したこと、同原告が右希望申出書に自署したことは、いずれも当事者間に争いがない。)。ところが、同原告は、同年九月二四日の個別相談においては一転して二〇平方メートル程度の店舗を希望する旨を申し出て、同年一〇月五日提出の位置の希望申出書においても、住宅四LDK、二LKのほか二〇平方メートル程度の店舗で業種飲食店(ラーメンその他)を営むことを希望したが、位置については特段の希望を述べなかつた。そこで、被告の担当官二名は同年暮ころ同原告宅に赴き再度店舗の位置についての希望を申し出るように要請したが、同原告は、本件手続の進め方に対する不満を述べるのみで、位置の希望は述べなかつたので、被告は、同原告の希望業種、希望面積を考慮して飲食サービスゾーンのナンバー一九の一の区画(二〇・三五平方メートル)に配置することとして権利変換計画案を作成した。ところが、同原告は本件権利変換計画案の縦覧開始の直前である昭和五三年四月三日に口頭で、ナンバー一九の一の区画では困るとしてナンバー一八の区画(四七・七五平方メートル)を希望してきたが(同原告が昭和五三年四月三日に口頭でナンバー一八の区画を希望したことは、当事者間に争いがない。)、被告は同原告にナンバー一八の区画を割り当てる合理的理由はないものと判断し、ナンバー一九の一の区画に権利変換することとして、その計画について本件審査会の議決を経た。以上の事実が認められ、証人井上美枝の証言中右認定に反する部分は措信できず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。
右認定事実によれば、原告井上は、本件事業計画の公告のあつた日である昭和五二年九月七日の時点では店舗を経営していなかつたのであつて、権利変換計画においては右時点における宅地、建物の利用状況と事業計画で定められた主要用途が対応するように定めることを原則とされていることは前認定のとおりであるから、同原告は、もともと、権利変換により店舗を取得し得る地位にあつたものではないというべきである。また、同原告は当初権利変換により住宅のみを取得する希望であつたのであるから、一一日の説明会は同原告には利害関係がなかつたのであるが、被告は念のためあらかじめ連絡をして店舗取得の希望申出の機会を与えたものというべきであり、一一日の説明会における井上美枝の飲食店を経営したい旨の希望申出についても、被告の担当官がこれを同原告の息子夫婦の優先分譲の希望申出であつて同原告の権利変換の申出ではないと判断したことは、右認定の従前の経緯に照らせば、もつともなものというべきである。更に、その後の経緯をみても、被告は、同原告が店舗を取得したいと希望を変更したので、これに応じ、位置の希望調査に応じるよう促したが、同原告は右調査に応じないで昭和五三年四月三日に至るまで何ら希望を表明しなかつたのである。そうすると、以上のような事実を彼此勘案すれば、被告において同原告に対し本件処分をする過程で偏頗、不公平な取扱いをしたことがあつたと認めることは到底できず、同原告の主張は理由がないものといわなければならない。
(二)  同原告は、本件処分による店舗配置は役員グループに対して店舗の配置を決定した後に決定され、かつ、同原告が昭和五三年四月三日にナンバー一八の区画を希望したにもかかわらず、他の位置を強制した点に不公平、不公正の違法があると主張するが、店舗の配置決定についてその主張する役員グループの者に対する店舗を優先的に配置した事実のないことは、右二2に判示したとおりである。また、同原告の希望する区画の店舗が与えられなかつた点については、前掲甲第一三、第一四号証の一、二、乙第一八号証の二、第二五号証の二、第三八ないし第四一号証、及び第四二号証の一、二並びに証人本間永治(第一回)及び同井上美枝の各証言によると、被告は原告井上に対し、本件手続の当初から店舗の権利変換の希望申出の機会を与えていたにもかかわらず、同原告は店舗を希望せず、NCRの店舗配置設計図(昭和五二年八月四日被告に提出されたもの)作成後である同年九月二四日に至つてはじめて、店舗取得の希望申出をしたものであり、同年一〇月五日提出の位置の希望申出書においては、店舗の業種として飲食店(ラーメンその他)、面積として二〇平方メートルを希望したが、位置の希望申出はしなかつたため、被告は、同原告に店舗の位置の希望を提出するよう求めたが、同原告がこれに応じなかつたので、被告は、同原告の希望業種、希望面積を考慮して飲食サービスゾーンのナンバー一九の一の区画(二〇・三五平方メートル)に配置することとして権利変換計画案を作成したところ、同原告は本件権利変換計画案の縦覧開始の直前である昭和五三年四月三日に至り口頭で右区画に隣接するナンバー一八の区画(四七・七五平方メートル)を希望してきたが(同原告が昭和五三年四月三日に口頭でナンバー一八の区画を希望したことは、当事者間に争いがない。)、被告は同原告にナンバー一八の区画を配置する合理的な理由はないものと判断し、ナンバー一九の一の区画を権利変換したことが認められ、証人井上美枝の証言中右認定に反する部分は措信できず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。
右認定事実によれば、被告が同原告に配置したナンバー一九の一の区画は同原告がした希望申出における希望業種、面積に沿うものであつたのであり、同原告は本件権利変換計画案の縦覧開始の直前になつてはじめて位置の希望を申し出たこと、その申し出てきたナンバー一八の区画は従前の同原告の希望面積を倍以上も上まわるものであつて、右ナンバー一九の一の区画と隣接するもので位置自体にはさ程の相違はないことなどからすれば、同原告の希望をいれる合理的理由は乏しいものであるということができる。そうすると、同原告の希望がいれられずナンバー一九の一の区画が配置されたことについて不公正、不公平の違法があるものということはできない。
(三)  同原告は、本件処分のうち住宅の配置決定について、被告が昭和五三年二月二七日八七・七二平方メートルの四LDKを割り当てる旨を約したにもかかわらず、八〇・九二平方メートルの四LDKを割り当てた点に不公平、不公正の違法があると主張する。
前掲乙第一八号証の二、第四一号証、成立に争いのない甲第一七号証の一、二及び弁論の全趣旨により成立の認められる乙第四三号証並びに証人本間永治(第一回)及び同井上美枝の各証言によると、原告井上は、昭和五二年九月二四日の個別相談においては住宅について四LDK一戸と二LK一戸を希望し、一方、被告は、実施計画作成時点では四LDKを八戸設ける計画をたてたところ、その後入居希望者が増加したので、設計の変更が可能な最上階に三戸の四LDKを設けることにしたが、パイプスペース等の制約から、当初からの四LDKの面積八七・七二平方メートルは確保できず、最上階のものの面積は八〇・九二平方メートルと若干狭くなつたこと(右各事実は、当事者間に争いがない。)、被告は昭和五三年三月五日四LDKの入居希望者を対象として懇談会を開催し、関係権利者らの希望をきく機会を設けたが、同原告はこれに出席しなかつたため、被告は種々考慮のうえ、同原告に対し四LDKのうち面積八〇・九二平方メートルのもの一戸と二LK一戸を割り当てることとしたこと、本間係長作成にかかる昭和五三年二月二七日付メモ(甲第一七号証の二)には「店舗約二〇平方メートル、住宅四LDK十二LK、清算金として約一、五〇〇千円いただくことになります。」との記載があるが、住宅の面積については記載のないこと、右メモは右係長が清算金について説明のために同原告宅を訪れた際、同原告が不在であつたため、原告森田に託したものであることが認められ、証人井上美枝の証言中右認定に反する部分は措信できず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。
右認定事実によれば、原告井上がその主張の根拠とする右メモには、原告の主張するような面積も記載されておらず、また、四LDKの希望者への割当てに関する懇談会の開催前に作成されていることからすれば、右メモは被告の担当官によつて清算金額の説明のために作成されたものであり、これによつて、四LDKのうち八七・七二平方メートルを原告井上に割り当てる旨被告が約したものであるとは到底認めることができない。よつて、同原告の右主張も理由がない。
3  (原告村田について)
原告村田は、同原告に対する本件処分が、他の関係権利者とは別異の取扱いのもとにされ、かつ、同原告の希望を無視して他の店舗を割り当てた点において不公正、不公平の違法があると主張する。
前掲乙第二五号証の二、成立に争いのない甲第二六号証の一、二、乙第一八号証の三、第二八、第二九号証、第四四ないし第四六号証、証人本間永治(第一回)の証言により原本の存在及び成立の認められる乙第二五号証の一及び第四七号証、証人本間永治の証言(第一、二回)並びに原告村田本人尋問の結果によると、次の事実が認められる。すなわち、同原告は、本件処分前、別表(二)の「従前の資産欄」記載のとおりの土地、建物を所有し、DPE、カメラ器具販売業を行つていた者であるが、本件事業において地区外に転出するか、再開発ビルに入居するか当初から迷つており、昭和五一年七月七日の被告との個別相談においても、まだその意思を決しかねていた。しかし、その後、昭和五一年一二月二二日の個別相談の際には、本件ビル内に権利変換を受けた場合、右ビル内に暗室を作ることが難かしいと被告の係官から示唆されたこともあつて、再開発ビルへの入居の可能性をなお留保しつつも、おおむね地区外へ転出し、従前資産を先行買収してもらうことを希望するようになつた。そこで、被告の担当官は、右希望に応じて、土地価額、物件移転補償金額及び移転資金の貸付限度額等の提示を行つた(右各事実は、昭和五一年一二月二二日の個別相談の際、被告の係官が右ビル内に暗室を作ることが難かしいと示唆した点を除き、当事者間に争いがない。)。被告の担当官の提示した金額は、土地売買代金額一七九二万八五四〇円、物件移転補償金額一〇六一万二三六四円の合計二八五四万〇九〇四円であつたところ、同原告は、昭和五二年七月一二日東京都市街地再開発事務所宛てに先行買収の補償額の増額等を要請する一方で、同月二九日被告に対し土地の買収請求を行い、同年八月二〇日先行買収契約が締結された(同原告が七月二九日に買収請求を行い、同年八月二〇日に同原告と被告との間に先行買収契約が成立したことは、当事者間に争いがない。)。同原告は、一一日の説明会について事前に文書による通知を受け、同月四日にも同原告の出席した懇談会において、被告がNCRに店舗配置設計を委託した趣旨及び店舗の希望調査を行う旨の説明を受けていたにもかかわらず、一一日の説明会に欠席し、その後にNCRが行つた個別調査にも応じなかつた(同原告が一一日の説明会に欠席し個別相談にも応じなかつたことは、当事者間に争いがない。)。ところが、この間、東京都建設局長名義で同原告の買収価額の増額等の請求には応じられない旨の回答がなされたことなどから、同原告は本件事業計画決定の公告日の直前の同年九月五日、被告に対し、先行買収契約を解除し、再開発ビルへ入居したい旨の意思表示を口頭でするに至り、右事業計画の公告の日から起算して三〇日の期間内に権利変換や金銭の給付等を希望する旨の申出もしなかつたため、再開発ビルに権利変換を受ける取り扱いをされた(右各事実のうち右回答があつたことを除き当事者間に争いがない。)。一方、同年八月四日に被告に提出されたNCRの店舗配置設計においては、同原告の希望をきくことができなかつたものの同原告が当時再開発ビルへの入居の可能性を留保していたことから、同原告は従前どおりDPEとカメラの販売を行うものとして、その店舗を物販サービスゾーンのナンバー一〇の区画(四〇・九六平方メートル)に配置されたが、同年九月二七日の被告との個別相談において、同原告は、シヨツピング・モール(買物客のための歩道で、休息もできるような場所)のあるゾーン内では営業時間の制約等があるので困るとして、物販サービスゾーンへの配置に難色を示した。そして、同年一〇月六日の再開発ビルの入居に伴う各種希望申出書ではナンバー一七の区画(一六・一三平方メートル)を希望すると共に上申書を添付し、被告に対して、店舗配置設計に関する通知がなかつたので店舗配置設計を白紙に戻すか又は右希望を認めるよう申し入れた(右各事実は、当事者間に争いがない。)。その後、同原告は、店舗配置設計に関し、〈1〉暗室を設けるために薬品のタンクや大型の乾燥器が設置できること、〈2〉営業だけでなくDPEの作業をするため、時間や曜日によつて開閉日等の制約を受けないこと、〈3〉顧客の認知という点からも道路に面した店舗がよく、シヨツピング・モールのあるゾーン内ではないという条件を満たす区画を割り当てるよう申し入れた。そこで、被告は、DPE、カメラ店は物販サービスゾーンに配置すべき業種であるので、補助七四号線に面する約一〇〇平方メートルの区画を変更し、地階(補助七四号線は東方に向かつて下つているため実際は一階に相当し、歩道に面する。)に店舗用区画を設け、これを物販サービスゾーンとし、そのうちのナンバー三一の二の区画(一八・二八平方メートル)を同原告に割り当てることとした。右区画は暗室や薬品タンクが設置でき、かつ、単独に排気設備を設置することが可能で、営業時間上の制約もなく、道路に面するものであつた。その後、被告が昭和五二年四月六日から同月一九日までの間権利変換計画案を関係権利者の縦覧に供したところ、同原告から店舗の位置はナンバー一六の区画に隣接する広場側通路部分を店舗とし、これを割り当てるか、又はナンバー一七の区画とすることなどを希望する旨の意見書が提出されたので、被告はあらためて希望を聴取したところ、同原告は、被告が右店舗の他に割り当てた住宅二戸のうち一戸を削つても店舗二戸を割り当ててもらいたい旨を要求したので、被告はこれを容れて店舗についてはナンバー一六の区画(二三・七四平方メートル)及びナンバー三一の二の区画(一八・二八平方メートル)とし、住宅は一戸を割り当てた(右各事実は、当事者間に争いがない。)。以上の事実が認められ、同原告本人尋問の結果中右認定に反する部分は措信できず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。
右認定事実によれば、被告が同原告に対し他と別異の手続により不利益に取り扱つたようなことを認めることはできず、また、被告は、同原告の希望に可能な限り沿つた条件の区画を割り当てており、右割当てについて不公平、不公正な点があるということはできない。よつて、同原告の右主張は理由がないというべきである。
4  (原告木村両名及び同理工社について)
原告木村両名及び同理工社は、同原告らに対する本件処分は他の関係権利者とは別異の手続でされ、かつ、原告木村友治は、昭和五二年九月七日被告の担当官にナンバー二四の区画の店舗を希望したところ、既に割当てが決まつていると拒否され、同年一〇月六日再度ナンバー二四の区画を希望したが、同原告の希望を無視して他の位置を割り当てられた点において、不公平、不公正の違法があると主張する。
前掲乙第四六号証、成立に争いのない乙第一八号証の四、五、証人本間永治の証言(第一回)及び原告木村友治本人尋問の結果によると、次の事実が認められる。すなわち、原告木村友治及び同木村邦子は、本件処分前は別紙(一二)の「従前の資産」欄記載の土地を各持分二分の一ずつで共有し、原告木村友治は同欄記載の建物を所有し、右建物(床面積八八・五四平方メートル)のうち店舗部分(九・〇九平方メートル)には、同原告が代表取締役となつている原告理工社のために借家権が設定されていた(右各事実は、当事者間に争いがない。)。原告理工社は、右建物内において製図器機販売業を営んでいて、営業面積は、もと四二平方メートルあつたが、昭和五〇年八月ころ他に店舗を設けて、本件建物内の営業面積を九・〇九平方メートルと縮少し、営業所兼倉庫のように利用していた。原告木村両名及び同理工社は本件事業の当初から被告の担当官の助言指導もあつて、権利変換により取得することとなる再開発ビルの床を共有する旨の、原告理工社は、権利変換に当たつては建物所有者たる原告木村友治の専用する床と借家権が設定される床とを分離しない旨のそれぞれ申出をしており、被告は、右申出に基づき原告木村らを一体のものとして扱うこととした(原告木村らがそれぞれ右のとおりの申出をし、被告は右申出に基づき同原告らを一体のものとして扱うこととしたことは、当事者間に争いがない。)。同原告らは、昭和五〇年一一月一一日の被告との個別相談において、店舗は五〇坪、最低でも三〇坪のものを、住宅は五LDK若しくは六LDKのものを希望したが、その後、昭和五一年七月六日の被告との個別相談において、店舗の営業が七時から二一時までの間可能で、店舗の立地条件を客の流れに合うよう配慮することなどを求め、昭和五二年一月二一日の被告との個別相談においては、店舗の面積について三〇坪、最低でも二〇坪を希望した(右各事実は、当事者間に争いがない。)。同原告らは一一日の説明会には参加したが、NCRとの個別相談には連絡を受けていたにもかかわらず欠席したため、NCRはその店舗配置設計に当たり同原告らの希望をきくことができなかつたので、同原告らが従前の設計、製図器具販売営業を継続するとの前提にたつて、その店舗を物販サービスゾーンのナンバー三の区画の一部(八・〇〇平方メートル)に配置した。同原告らは、昭和五二年八月一二日の被告との個別相談において、店舗の面積について二〇坪を、配置場所についてシヨツピング・モール以外を希望し、住宅は四LDKを希望した。これに対し、被告は、権利床は従前の資産の範囲内で取得するものであり同原告らの希望は従前資産の範囲を超えるのでこれを満たすことはできない旨を説明したが、同原告らは同年九月四日の個別相談の際にもなお右希望を維持し、店舗の位置についてはナンバー二四の区画(六六・〇〇平方メートル)を希望した(右各事実は、当事者間に争いがない。)。そこで、被告の担当官はナンバー二四の区画には他に希望者がいる旨伝えるとともに、再度同原告らの希望は、従前の資産に比し過大でそのとおりの権利変換をすることはできない旨を説明したが、同原告らは同年一〇月三日の再開発ビルの入居に伴う各種希望申出書においても、依然同じ希望を維持していた。そこで、被告は同年一一月一五日の個別相談において同原告らに対し、その希望どおりに権利変換をすることは不可能であることなどを説明したが、なお同原告らは従前どおりの希望を維持するため、被告は同原告らの希望について検討の結果、店舗としてナンバー三一の一(二〇・五二平方メートル)、住宅として四LDK一戸を割り当てた(右各事実は、当事者間に争いがない。)。以上の事実が認められ、原告木村友治本人尋問の結果中右認定に反する部分は措信できず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。
右認定事実によれば、原告木村らに対して本件処分をする手続過程において、被告が同原告らを特に他の関係権利者とは異なつて取り扱つたということはできないし、原告木村友治が被告の担当官にナンバー二四の区画の店舗は既に割当てが決まつていると拒否されたとの主張事実も認めることができない。また、同原告らの希望した店舗と異なつた店舗が割り当てられた点に不公正、不公平の違法があるとの主張については、権利変換手続における配置設計は各権利者間の希望等を調整して公平に行うものであり、被告がその設けた基準によれば、同原告らの希望する内容は同原告らの従前資産の価値に比すれば過大であると判断し、その使用用途等を考慮のうえ右希望を容れず他の位置を割り当てたことはやむをえない措置というべく、そのことに何ら不公正、不公平の違法があるものではないというべきである。よつて、同原告らの主張はいずれも理由がないというべきである。
四  原告らは、本件各処分はその内容においても法七四条二項に違反する違法があると主張する。
しかしながら、原告らが法七四条二項に違反する事由として主張している内容は、原告らが、本件各処分の手続に違法があるとして主張したとおりの手続でなされ、関係権利者の利害の衡平を考慮しないことはもちろん、かえつて、役員グループのみを優遇し、そのため原告らをことさら不利益に取り扱つたというものであるところ、本件各処分に至る手続に原告らが主張するような違法事由の認められないことは、右二、三に判示したとおりであつて、被告が本件各処分をするについて関係権利者間の利害の衡平を考慮しなかつたということができないから、原告らの主張は理由がないというべきである。
五  次に、原告らは、原告らの従前の総資産額と権利変換後の総資産額との間には著しい差額が生じているから、本件各処分は法七七条二項に違反すると主張する。
1  この点について、被告は、権利変換計画における従前資産の評価について不服のある者は、施行者に意見書を提出し、これが採択されない場合には、収用委員会にその価額の裁決を申請し、この裁決に不服があれば出訴するなど別異の争訟手続が規定されており、更に、収用委員会の裁決と右訴えに対する裁判とは権利変換計画において定められた施設建築敷地の共有持分又は施設建築物の一部等には影響を及ぼさないと規定されていることからも、従前資産の評価の誤りを本件各処分の違法事由とすることはできず、法七七条二項にいう「その価額と従前の価額」とは、権利変換計画書に定められる権利変換処分によつて与えられる資産の価額(概算額)と従前の価額とをいうものと解すべきであると主張する。
確かに、法は、権利変換計画において定められた従前の資産の価額の評価については、これに不服のある者に施行者へ意見書を提出させ、これを採択しない旨の通知を受けた者につき、収用委員会にその価額の裁決を申請させ、その裁決に不服がある場合には、施行者を被告として訴えを提起させ、最終的にはその訴訟において価額を確定させることとする手続を採用しているから、右計画において定められた従前の価額の評価の方法や結果については、右の手続においてのみ争うこととされているとも考えられないではない。
しかしながら、法は、右手続における収用委員会の裁決及び訴えに対する裁判は、権利変換計画において与えられることと定められた施設建築敷地の共有持分又は施設建築物の一部等には影響を及ぼさないものとすると定めている(八五条四項)から、右の不服申立制度によつて従前の価額が計画におけるよりも減少したとしても、それは、結局のところ清算金の額についてのみ、これを増加させ又は減少させるという効果を生じさせるにとどまるものである。また、法八五条三項は、右の従前の価額に関する収用委員会の裁決及びこれに対する訴えについて、土地収用法の損失補償に関する裁決の手続及びその裁決に不服がある場合の訴えについての規定を準用し、この従前の価額に関する裁決及び訴えが、土地収用法上の損失補償の裁決及び訴えに類似する性質を有するものであることを明らかにしている。そうすると、法八五条の規定は、結局、土地収用法上の損失補償にも類する清算金の関係についてのみ規定したものであつて、法七七条二項の定める、従前の価額と権利変換計画に基づいて与えられる施設建築物の一部等の価額との間に著しい差額が生じてはならないとする原則(以下「価額の均衡の原則」という。)には直接の関係がないものというべきである。けだし、法七七条二項の定める価額の均衡の原則は、土地区画整理法上の換地処分における照応の原則にも類するものであつて、清算金の交付・徴収の問題に比べ、市街地再開発事業の遂行においてより根本的で重要なものであることは明らかであるから、清算金に関して規定する法八五条各項の規定が、より根本的で重要な価額の均衡の原則になんらかの影響を及ぼすと解することは不合理であるのみならず、法八五条二項は、従前の価額に関する裁決の申請は事業の進行を停止しないと定め、また、同条三項は、損失補償に関する訴えは事業の進行を停止しない旨を定める土地収用法一三四条の規定を準用して、従前の価額に関する裁決及び訴えは専ら清算金にのみ関するものであつて、都市再開発事業の他の関係にはなんらの影響を及ぼさないことを明らかにしている(もし他の関係に影響を及ぼすものとすれば、裁決の申請等は事業の進行を停止するものとしなければならないことは明らかである。)と解されるからである。
以上のとおり、法八五条の規定は、法七七条二項の定める価額の均衡の原則になんらの影響を与えるものではないから、問題の権利変換計画が右の価額の均衡の原則に適合しているかどうかを裁判所が審査する場合には、従前の価額について法八五条の裁決の申請及び訴えの提起がなく、したがつて清算金の関係ではその額が確定してしまつているときであつても、裁判所は、その従前の価額が実際において幾何であつたかを証拠によつて認定することができ、また認定しなければならないものというべきである。
2  そこで、本件各処分において原告ら主張のように従前資産の価額と権利変換後の資産の価額との間に著しい差額が生じているか否かについて検討する。
まず、本件事業の評価基準日である昭和五二年一〇月七日現在における原告らの従前資産の価額について、被告は別紙目録一ないし六の権利変換期日前の権利の状況のうちの「宅地、借地権又は建築物の価額」欄記載のとおり評価しているところ、原告らは、このうち原告らの土地の価額が以下述べるような原因により不当に低く評価される結果となつており、その額は少くとも別表(四)を下まわらないはずであるから、これに被告の評価額による原告らの「建築物の価額」を加算すると、各原告の従前の総資産額は別表(五)の「従前の総資産額」欄記載の金額を下まわることはないと主張する。
(一)  本件土地の評価手法について、原告らは、被告が路線価式評価法によつたのは誤りであつて標準地比準評価法によるべきであつたと主張する。
前掲乙第一六号証、証人橘博の証言により成立の認められる乙第五〇号証、証人本間永治の証言(第一回)により成立の認められる乙第一五号証、証人橘博の証言によると、次の事実が認められる。すなわち、市街地再開発事業の施行に伴う従前資産の評価は、評価基準日における評価額をもつてすることとされ、右基準日における価額の算定は、近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価額等を考慮して定める相当の価額とすること(同法一八〇条一項)とされているが、東京都においては、右価額の算定方法について、東京都建設局用地部昭和四五年三月作成の「土地評価事務要領」において、各画地の評価は原則として路線価式評価法により評価し、これにより難い地域については、標準地比準評価法によることとされているところ、右路線価式評価法とは、道路上に一定の条件が備わる区間を定め、これに接面する道路に標準的な整形画地を設け、その整形画地の一平方メートル当たりの価額(路線価額)を求めておき、この路線価額に個別的な評価対象地の補正要因を考慮して各対象地の価額を算出するものであり、この路線価式評価法は標準地比準評価法に比べ、評価担当者間における個人差が生じにくいという利点があるとされている。右両評価法の選択にあたつては、路線価式評価法は、市街地において用途地域としての性格が明確であり、路線がある程度整備され、複雑な形状の画地が少ないという条件を満たす地域に適用することとされており、他方、標準地比準評価法は、以上の条件を満たさない非市街地域で宅地見込地でない田、畑、山林、複雑な形状の画地の多い地域、いかなる市街化の方向をたどるか明確でない地域について適用するものとされているところ、本件事業の施行地域は、国鉄山手線高田馬場駅の東南約六〇〇メートルに位置し、補助七四号線に沿つた東西に長い路線型商業地域とその背後の普通住宅地域とから構成されており、用途地域としての性格が明確で、路線がある程度整備され、また、複雑な形状の画地が少ない地域であるので、被告は本件事業地域の評価は右要件に照らして路線価式評価法によることとしたものであり、東京都の施行する公共事業においては、大部分を路線価式評価法によつているものである。以上の事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。
右認定事実によれば、被告が本件事業地域内の土地の評価につき路線価式評価法によつたことには合理性があり、何ら違法の点はないものというべきである。原告らは、評価方法について紛争が生じた以上、標準地比準評価法によるべきであると主張するが、特定の、紛争を生じた土地についてのみ、別個の手法を採用することは、処分の公平性の見地からとりえないところというべきであり、原告らの右主張は、理由がない。
(二)  原告らは、被告の算定した路線価額、特にA路線の価額の評価が低きに過ぎ、しかも、しんしやくすべき個別的要因をしんしやくしていない違法があると主張する。
証人橘博の証言により成立の認められる乙第五一号証の一ないし五、乙第五二、第五三号証、同証人の証言によると、次の事実が認められる。すなわち、路線価式評価法による路線価額の算定方法は、宅地が接する街路の利用状況、宅地と公共施設、交通機関等との接近状況、周辺の環境条件など宅地自身のもつ利用状態を比較衡量のうえなされるが、このために右路線価額は、取引事例との比較価額、鑑定価額、地元精通者の意見、諸課税評価額、世評などを総合的に勘案して決定するものとされている。被告は、本件事業地域内の土地についての評価額を、昭和四七年八月一日をはじめとして数回にわたり発表したが(被告が本件事業地域内の土地について昭和四七年八月一日以来数回にわたり評価額を発表したことは、当事者間に争いがない。)、これは、先行買収に応じる関係権利者への予定価額の提示の趣旨ないし権利の変換を受ける関係権利者の将来設計の参考に供するためにされたものであつて、評価基準日における路線価額を定めたものではなかつたから、被告は、従前発表した試算とは別に、新たに、本件事業地域の路線価額を定めるについて、本件事業地内に一三か所の鑑定対象地を選び、これについて昭和五二年六月一三日北岡不動産鑑定事務所ほか三か所の鑑定事務所にそれぞれ同年八月一日現在の価額の鑑定評価を依頼し、右鑑定には、(1)更地としての正常価額であること、(2)個別的要因を考慮した価額であること、(3)事業の施行が予定されることにより当該土地の価額が低下したと認められるときは、当該事業の影響がなかつたものとしての価額であることという条件を付した。被告は、右条件に従つて出された右四件の鑑定の結果を検討して、右一三の鑑定対象地点のうちから七地点を選び、その各評価額に同年一〇月七日の基準日時点の時点修正を行つたほか、取引事例との比準価額、地元精通者の意見、諸課税評価額、世評等を総合的に勘案して評価額を算出し、右結果に基づいて別紙図面三のとおりAないしOの一五の路線価を設定した(右事実中、被告が北岡不動産鑑定事務所外三か所の事務所に鑑定を依頼したこと、別紙図面三のとおりAないしOの路線価を設定したことは、当事者間に争いがない。)。このうち、原告森田の所有する別表(一)1の土地のうち宅地部分、原告井上の所有する同表4の宅地、原告村田の所有する同表5の宅地は、いずれも諏訪通り商店街に設定されたA路線価により評価されたものであるところ、このA路線価は、先行買収により被告の所有となつた新宿区西大久保四丁目一七〇ノ一一一の宅地(別紙図面三表示鑑定地三の土地)を参考として算定されたものであつて、右土地に関する四件の鑑定の結果を時点修正した平均価額三六万七八〇〇円につき、これを、取引事例地として諏訪通り商店街とほぼ同様の条件をもつた新宿区高田馬場三丁目二二九宅地の事例地について、接近条件等の諸条件を考慮し、画地補正、時点修正、品等補正を行つて得た価額三六万八五〇〇円及び世評等による価額等とを比較したうえ、三六万七八〇〇円が相当であるとの結論に達し、これをA路線の価額と定めたものである(A路線価額が三六万七八〇〇円であることは、当事者間に争いがない。)。右A路線の価額は、路線型商業地域におけるものとして算出されたものであるところ、A路線においては、その繁華性は路線の中央部分が秀れ、駅に近づくに従つて逓減するが、駅との近接性による利便の増大を考慮すれば、総合的に路線を通じてその価額に差がないこととなるためにA路線の中を更に細分することは、これをしなかつたものである。次に、C路線については、新宿区西大久保四丁目一七〇ノ一九九(別紙図面三表示鑑定地二の土地)、同丁目一七〇ノ六九(同図面表示鑑定地四の土地)、同丁目一七〇ノ九四(同図面表示鑑定地五の土地)を参考にして、住宅地である右路線と同様の条件をもつ宅地の取引事例などを検討して、その価額を二七万九八〇〇円と定めたものである(C路線価を二七万九八〇〇円と定めたことは、当事者間に争いがない。)。このほか、原告森田所有の別表(一)の3の土地、原告木村両名共有の同表6、7の宅地はそれぞれE路線価に基づいて算出されたが、これはA路線価とC路線価との諸条件の比較検討により定められたものであり、原告森田所有の別表(一)の1の土地のうち私道部分はF路線価に基づいて算出されたが、これはC路線価との諸条件の比較検討により定められたものである。また、同原告所有の同表の2の土地はG路線価に基づいて算出されたが、これはA路線価との諸条件の比較検討により定められたものである。そして、これらに基づき、各個別の土地の評価については、東京都の市街地再開発事業の施行に伴う評価及び損失補償基準実施細目に定められた奥行逓減、側道加算、私道減価の各増価要因、減価要因を個別に乗じて別表(一三)の各土地該当欄記載のとおり算出し、このうち私道部分については、市場性が乏しいことからも減価率を五〇パーセントとしたものであり、右各土地の評価額については、昭和五三年一月九日の本件地区市街地再開発審査会において付議され可決された。以上の事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。
右認定事実によれば、被告のなした各路線価額の設定及びこれに基づく各土地の評価は、いずれも適正な手続に則つており、その評価した額についても合理性を肯定しうるものということができる。
原告らは、その土地の存する諏訪通り商店街の標準地比準価額(路線価式評価法によるA路線価額に相当する価額)は、一平方メートル当たり少くとも四三万五六〇〇円を下らないと主張し、その根拠として降籏不動産鑑定事務所作成の不動産鑑定評価書(甲第一号証)を援用する。しかしながら、右評価書における評価の過程には以下のような疑問があり、これをもつて右被告の評価を左右するに足りるものとは到底いうことができない。すなわち、右評価書における総合評価の基準の一つである取引事例比較法による価額を算出するため抽出した取引事例一二例に対する時点修正、建付減価補正、街路条件、交通接近条件、環境条件、画地条件、行政的条件による補正は、時点修正のように客観的に補正数値の判明するものはともかく、その余の数値については、何故そのような値が採用されたのかを裏付けるに足る基礎資料が不明であつてその合理性が明らかでなく(特に交通接近条件による補正は、右評価書添付図面自体と対照してもその合理性を首肯しえない。)、また、右各補正数値間の相互のばらつきが土地により相当大きいのにその点についての説明がないが、補正の結果は、右一二例において一平方メートル当たり四三万五九五〇円から四三万五四二〇円の範囲内となる(得られた比準価額四三万五六〇〇円に対し、その誤差はプラス〇・〇八パーセントからマイナス〇・〇四パーセントの範囲内となる。)など、ほとんど誤差のないものとなつている点不自然な操作が加えられたとの疑いをいれる余地があるといわざるを得ない。次に、右評価書による総合評価の基準の一つである収益還元法による価額算定のため採用された事例は、鉄筋コンクリート造陸屋根五階共同住宅浴場であつて、本件対象地のような路線型をなす商業地域の土地の評価をするための収益事例としては必ずしも適切なものとは考えられないうえに、個別要因を標準化するための補正において何故八五分の一〇〇の数値を採用したのかが明らかでないため、補正の結果得られた四二万四〇〇〇円という数値についてもその合理性を直ちに首肯しえないものといわざるを得ない。更に、右評価書による総合評価の基準の一つである相続税路線価により推定する価額は一七万円を二・五七倍して四三万六九〇〇円と、固定資産評価額により推定する価額は一一万三二五八円を三・八五倍して四三万六〇〇〇円という価額を導き出しているが、右計算における二・五七倍、三・八五倍という係数が何故採用されたかについての根拠は全く不明であつて、右算出価額もまたその合理性を首肯しえないものといわざるを得ないのである。
以上のとおり、右評価書における比準価額の算出過程の合理性には疑問があり、これに基づいて得られた価額についても合理性が乏しいといわざるを得ないのである。
次に、原告らは、昭和四七年八月一日付発表の被告の土地評価額と昭和五二年一〇月七日時点で設定された本件路線価額とを比べると、A路線価額のこの間の上昇率がC路線価額のそれに比べ不当に低く押えられており、ひいては本件A路線価額も低く評価されていると主張する。しかし、被告が昭和四七年八月一日以来数回にわたり発表した土地評価額は、前認定のとおり、関係権利者の参考に供するための見込価額の提示以上の目的でなされたものではなく、もとより、本件事業の評価基準日における評価額を算定するためになされたものではないのであつて、その後に設定された路線価額は、従前発表した評価額とは全く別個に鑑定評価のうえ設定されたものであるから、昭和四七年八月一日付発表の評価額との間でそれぞれの上昇率を比較しても無意味であるといわざるを得ず、この点に関する原告らの主張は理由がない。
更に、原告は、A路線価額の適用される路線が長すぎ、各土地の個別性が無視されていると主張する。しかしながら、A路線価額の適用される路線が比較的長くなつたのは、前認定のとおり、右路線における商業地域の繁華性と駅への近接性との要件を総合勘案した結果、細分化の必要がないとしてこれをしなかつたものであつて、その判断には合理性があるものと認められるから、原告らのこの点に関する主張もまた理由がない。
なお、原告らの申請による東京都収用委員会の裁決(法八五条)における評価額は、被告の評価額を若干上回るものである(右事実は、当事者間に争いがない。)が、各裁決書(成立に争いのない乙第五四号証の一ないし四)によると、その価額の差はわずかであつて、評価上の通常の誤差の範囲内であるということができるから、これをもつて、被告のなした評価方法ないし評価額や合理性のない不当なものであることの証左ということはできない。
よつて、原告らが従前資産の評価の誤りについて主張するところは、いずれも理由がないというべきである。
3  原告森田を除くその余の原告らは、権利変換の処分によつて同原告らに割り当てられた店舗の一部は不当に高額な評価がされていると主張する。
しかしながら、前掲乙第一四号証、第一六号証、証人本間永治の証言(第一回)によると、施設建築物の一部等の価額の概算額は、東京都都市防災本部作成の「権利変換計画基準」(四八都本再再第四三号、昭和四九年四月一日)により算定されるものであるところ、右基準によれば、施設建築物の一部等の価額の概算額は、施設建築物の一部の価額と敷地価額に共有持分割合を乗じて得た額を加えた額とされ、かつ、右価額は施設建築物の整備に要する費用のうち、当該施設建築物の一部の整備に要する費用を償い、かつ、評価基準日における近傍同種の建築物の価額を参酌して定めた施設建築物の一部の価額の見込額を越えない範囲で定めることとされているところ、被告は右の基準に則り、原告らに割り当てられた区画を含む各区画の価額を算出したことが認められ、右原告らの割り当てられた店舗の評価額の算出について、特に他と異なつた考慮や操作が加えられたことなどを認めるべき証拠はない。
(一)  (原告井上について)
しかるところ、原告井上は、同原告に割り当てられた一階シヨツピング・モール内のナンバー一九の一の区画は、設備等の条件が悪いので、被告の評価額である七四五万円よりも二割以上低く評価すべきであると主張する。
前掲乙第二五号証の二、証人井上美枝の証言によれば、原告井上に割り当てられた店舗は、飲食サービスゾーン内にあり、ラーメンその他を提供することの可能な飲食店用区画で、床面積二〇・三五平方メートル、間口三メートルであるところ、右店舗内にはクーラー及びトイレが設置されていないことが認められるが、前掲証拠によれば、この点は他の右ゾーン内の店舗もおおむね同様であつて、全館冷房でなく、共同トイレツトが設置されていることが認められる。そうすると、同原告の店舗内にクーラー及びトイレが設置されていないとの事由は、その概算額を他と異なつて二割程度減じさせる程に不利益性を大としているとは到底認めることができず、他に右主張を認めるべき事由の主張立証はないから、右の主張はこれを採用することができない。
(二)  (原告村田について)
次に、原告村田は、同原告に割り当てられた一階シヨツピング・モール内のナンバー一六の区画及び地下一階のナンバー三一の二の区画とも条件が悪いので、それぞれ被告の評価額である九二一万二〇〇〇円、六一八万七〇〇〇円よりも三割以上低く評価すべきであると主張する。
(1) 前掲乙第二五号証の二及び原告村田本人尋問の結果によると、ナンバー一六の区画は、物販サービスゾーン内に所在する面積二三・七四平方メートルの店舗用のものであつて、専用のガス、水道又はトイレの設備がいずれもないが、この点は右ゾーンにおける他の区画も同様であつて、共用のトイレ等が設けられていることが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。そうすると、同原告の店舗について、専用のガス、水道及びトイレの設備のないとの事由は、その概算額を他と異なつて三割も減じさせる程に不利益性を大きくさせているとは到底認めることができず、他に右主張を認めるべき事由の主張立証はないから、右の主張は、これを採用することができない。
(2) 前掲乙第二五号証の一、第四七号証、証人本間永治の証言(第一、二回)及び原告村田本人尋問の結果によると、ナンバー三一の二の区画はもともと駐車場のスペースとして予定されていた場所であつて、同原告の店舗は当初シヨツピング・モール内のナンバー一〇の区画(四〇・九四平方メートル)に配置される予定であつたが、同原告が、シヨツピング・モール内の店舗では時間や曜日によつて店の開閉の制約を受けるためDPE作業に支障を生ずるのでモール外にして欲しいこと及び道路に面し面積一六・一三平方メートル程度の店舗にして欲しいことの希望を出したので、これを満たすべく、再開発ビルの設計変更を行つてナンバー三一の二の区画を設けこれに配置することと変更したものであること、右区画は床面積が一八・二八平方メートルで、補助七四号線の歩道に面していること、右歩道上には植込みが存し、右店舗付近には再開発ビルの駐車場入口が設けられていて、右駐車場の収容台数は一〇〇台未満であることが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。同原告は、右区画は植込みと駐車場の入口によつて買物客の動線が分断され店舗としての機能が果たせないものであると主張し、同原告本人尋問の結果は、これに沿うが、右店舗の位置関係によつて、ある程度買物客の動線が分断されることがあるとしても、被告が右のような位置に店舗を配置することとしたのは、右認定のとおり、同原告の希望をいれるため設計変更をした結果によるものであつて、証人本間永治の証言(第二回)と対比しても、客の動線が分断されるからといつて、店舗の価値が三割も減少されるほどその機能が損われるとまでは認めることができず、右本人尋問の結果はこれを措信することができない。また、他に同原告の右主張を認めるに足る証拠はない。更に、床面積が過少であるとの主張についても、同原告の希望面積はもともと一六・一三平方メートル程度のものであるから、右区画の面積一八・二八平方メートルをもつて過少であるということはできないし、右面積がDPE、写真店が営めない程過少であるとは認められないので、結局、右区画につき他と異なり三割も概算額を減じなければならない程の事情があるとは認められず、原告村田の主張はいずれも理由がないことに帰する。
(三)  (原告木村両名について)
原告木村両名は、同原告らに割り当てられた地下一階のナンバー三一の一の区画は条件が悪いので、被告の評価額である六九四万五〇〇〇円よりも三割以上低く評価すべきであると主張する。
前掲乙第二五号証の一、第四七号証、証人本間永治の証言(第一、二回)及び原告木村友治本人尋問の結果によると、ナンバー三一の一の区画はもともと駐車場のスペースとして予定されていた場所であるところ、被告は、営業時間が規制されず、道路に面したシヨツピング・モール外の店舗という同原告の条件を満たすべく、再開発ビルの設計変更を行つてナンバー三一の一の区画を設けたものであること、右区画は床面積が二〇・五二平方メートルで、補助七四号線に面するナンバー三一の二の区画に隣接しており、前面道路等の状況は(二)(2)記載のとおりであることが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。原告木村友治は、右区画は買物客の動線が分断された店舗としての機能が果たせないものであると主張し、同原告本人尋問の結果はこれに沿うが、右店舗の位置関係によつてある程度買物客の動線が分断されることがあるとしても、証人本間永治(第二回)の証言と対比してもこれによつて右店舗が店舗としての用を大巾に果たせなくなる程のものとは到底認められず右本人尋問の結果は、これを措信することができない。他に同原告の右主張を認めるに足る証拠はない。更に、床面積が過少であるとの主張についても、同原告の従前建物内の店舗面積が九・〇九平方メートルであることと比べれば、右区画の面積二〇・五二平方メートルをもつて過少ということはできないので、結局、右区画につき、他と異なり三割も概算額を減じなければならない程の事情があるとは認められないから、原告木村両名の主張は理由がないことに帰する。
4  以上によれば、原告らの従前の総資産額及び権利変換後の総資産額は、いずれも別表(五)の各原告ら欄の権利変換計画による従前の総資産額欄及び権利変換後の総資産額欄記載のとおりであつて、これにより原告らの従前の総資産額と権利変換後の総資産額とを比較すると、その比率は別表(六)の各原告ら欄の〈3〉欄記載のとおりの比率、即ち、原告森田は一一六、原告井上は九九、原告村田は一三八、原告木村両名は一四〇となるのであつて、右各比率からすれば、原告井上を含め、原告らの従前の総資産額と権利変換後の総資産額との間には著しい差額が生じているものとは認められないから、本件各処分が同法七七条二項に違反するとの主張はこれを採用することができないものというべきである。
六  原告らは、本件各処分は次のとおり関係権利者相互間に不均衡を生じさせているから、法七七条二項に違反すると主張する。
1  原告らは、従前の総資産額と権利変換後の総資産額との比率において原告らと対策会役員であつた金木敏光及び吉瀬みち子との間に明白な不均衡があると主張する。
原告らの従前の総資産額と権利変換後の総資産額との比率が、別表(六)の原告ら欄〈3〉欄記載のとおり原告森田につき一一六、原告井上につき九九、原告村田につき一三八、原告木村両名につき各一四〇となることは、前記五4のとおりであり、また、金木敏光及び吉瀬みち子の権利変換計画における従前の総資産額と権利変換後の総資産額(概算額)が、別表(七)の金木敏光、吉瀬みち子のそれぞれ各該当欄記載の金額であることは、当事者間に争いがないので、これにより各々の従前資産と変換後資産との価額の比率を算出すると、金木敏光は一六〇、吉瀬みち子は一二六となる。
右の事実によれば、各原告らと金木敏光及び吉瀬みち子との間においては、その従前資産と変換後資産との間の価額の変換比率において若干の差のあることは明らかである。しかしながら法七七条二項が権利変換計画において権利者相互間に不均衡が生じないよう定めるべきことを規定する趣旨は、従前資産の額と、変換後資産の額との比率が各権利者においてほぼ同一であるべきことを要求しているのではなく、その間にある程度の不一致が生じることは、多数の権利者が関係することとなる都市再開発事業の性質上やむを得ないものとしつつ、その不一致の程度が関係権利者間の公平の見地からして均衡を失するような程度にまで達してはならない旨を命じているものと解される。そうすると、右に認定した程度の不一致によつては、関係権利者間の均衡を失する状態に達しているとまでいうことはできないから、原告らの右主張は採用することができないものというべきである。
2  原告らは、本件各処分のうちの店舗の配置について、被告は、役員グループの者には面積の広い好位置のものを割り当てているのに比し、原告らには著しく劣る割当てをしているから、この点において原告らと役員グループの者との間に不均衡が生じていると主張する。
確かに、別表(七)の店舗床面積欄の記載(右欄記載の数値については、当事者間に争いがない。)によれば、原告らそれぞれに割り当てられた店舗の床面積よりも、原告らが役員グループの者として指摘する斉藤宏、金木敏子、吉瀬みち子及び大海精一のそれぞれに対し割り当てられた店舗の床面積の方が広いことが明らかである(なお、原告ら指摘の金木敏光に対しては、店舗は割り当てられていない。)が、店舗の配置設計については、権利変換基準時点における宅地又は建築物の位置、環境、利用状況及び評価基準日における宅地、建物の価額等を総合的に勘案して定めるものであつて、原告らや右斉藤宏ら原告ら主張の役員グループの者らの店舗の配置設計においても、その希望する業種、床面積、位置等の条件を考慮したうえそれぞれ配置されるものであるから、結果として配置された店舗の床面積の広狭のみをもつて直ちに権利者間の均衡を失しているものということはできない。そして、その余の点については、原告らは、位置、総面積、土地の価額等従前資産のどの項目をいずれと比較してどの店舗の位置や面積が不均衡であると主張するのかについて何ら具体的な主張をしていないのであつて、別表(七)に記載された数値の上からは、右役員グループの者らと原告らとの間において店舗の位置、面積に関し均衡を失するような点を見出すことはできないところである。
3  本件各処分のうちの住宅の割当てについて、原告井上は、同原告に対して床面積八七・七二平方メートルの四LDKが割り当てられるべきであるのに、床面積八〇・九二平方メートルのそれしか割り当てられていないが、役員グループの金木敏光、吉瀬みち子には八七・七二平方メートルの四LDKが割り当てられていて同人らとの間に不均衡が生じていると主張する。
被告は再開発ビルに当初床面積八七・七二平方メートルの四LDK八戸を設けることとしていたが、四LDKへの入居希望者数が予想を上まわつたので、これを三戸増加することとしたこと、増加分はパイプスペースの関係で八〇・九二平方メートルとなつたこと、原告井上には右四LDKのほか二LK(五二・六四平方メートル)が割り当てられたことは、前認定のとおりであるところ、前掲乙第三八号証、成立に争いのない甲第一五号証の一、二、乙第三四号証の一、二、第三五号証、第三六号証の一、二、第六八号証、第七〇号証、原告井上好晴及び井上武寅作成部分の成立につき争いがなく、弁論の全趣旨によりその余の部分の成立の認められる乙第三七号証並びに証人本間永治(第一、二回)及び同井上美枝の各証言によると、次の事実が認められる。すなわち、右両タイプの四LDKの割当てについて、被告は、入居希望者の懇談会を開き希望を聴取する機会を設けるなどしたが(原告井上は開催の通知を受けたにもかかわらず、これに欠席した。)、結局、最終的には関係権利者の家族数、従前の居住面積等を総合判断のうえいずれかを割り当てることとした。原告井上については、昭和五二年九月七日の権利変換の基準日においては、家族数は本人一名であつて(同原告の妻井上トヨは同年七月一四日に死亡した。)、井上武寅(家族五名)は、原告井上の借家人として当時賃料を支払つていて同原告の家族ではなく、同年一〇月五日被告に対し借家権消滅希望申出書を提出し、右建物中の借家面積三四・七九平方メートルについて補償を受けた。同原告所有の従前の建物の面積一三七・二一平方メートル中、借家人井上武寅外四名に賃貸している面積の合計八五・二七平方メートルを控除すると、同原告の居住面積は五一・九四平方メートルとなるが、他方、金木敏光は家族数四名であつて(同人の家族数が四名であることは、当事者間に争いがない。)、同人所有の建物の面積五四・八四平方メートル中、賃借人四名に対する賃貸面積二二・一九平方メートルを控除すると、居住面積は三二・六五平方メートルとなり、また、吉瀬みち子については、その家族数は四名であつて(同人の長男である吉瀬公男の家族三名は、住民票上、昭和五二年四月一四日世帯分離の届をしたものの、従前どおり家族として同居しており、本件事業の権利変換基準日時点の吉瀬みち子の家族数は四名となる。)、吉瀬みち子所有建物の面積一一〇・五五平方メートルのうち借家人一名に対する賃貸面積九・五〇平方メートルを控除すると、吉瀬みち子の居住面積は一〇一・〇五平方メートルとなる。以上の事実が認められ、証人井上美枝の証言中右認定に反する部分は措信できず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。
右認定事実によれば、原告井上と金木敏光、吉瀬みち子との間には家族数及び従前の居住面積において大きな差異があり、更に、原告井上には住宅としてこの他二LK一戸が割り当てられていることを勘案すれば、同原告に対して面積八〇・九二平方メートルの四LDKが割り当てられたことをもつて、右金木敏光、吉瀬みち子との間の不均衡を生ずるものとは到底いうことはできない。
4  なお、原告らは、被告が特定の者に対して権利床をことさら安く評価して有利に割り当てた違法があると主張する。このうち、被告がシロアム教会に対する権利変換の処分においてその権利床を一平方メートル当たり二四万五五〇〇円と評価したことは、当事者間に争いがないものの、本件全証拠によるも右価額が本来あるべき権利床の価額に比べて不当に安いと認めることはできず、また、昭和五六年にスーパーサンコーに対して権利床を分譲した際の単価が低いとの主張については、権利変換処分の後にした分譲の価額の高低は、何ら原告らに対する権利変換処分自体の違法事由となるものではないから、原告らの右主張は失当であるといわなければならない。
5  原告らは、斉藤宏につきそのクリーニング屋の営業について先行買収に応じて地域外に転出したにもかかわらず、その後地域内でクリーニング屋を経営しているかの如く形式を整えていたところ、被告は、同人に対し権利変換の処分で店舗を割り当てており、このため原告らとの間に不均衡が生じたと主張する。しかしながら、仮に斉藤宏が欺罔手段によつて権利変換の処分を受けたとすれば、それは斉藤宏に対する処分の違法事由にとどまるものであつて、他の者についての処分の違法事由となるものではないから、右主張はそれ自体失当というべきである。
七  よつて、原告らが被告に対し、本件各処分の取消しを求める本訴請求は、いずれも理由がないから失当としてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 宍戸達徳 中込秀樹 金子順一)

 

目録一~六、別表(一)~(一四)、別紙図面一~三〈省略〉

 

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