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政治と選挙Q&A「屋外広告物法 ポスター貼り(掲示交渉)代行」に関する裁判例(83)昭和43年 7月23日 松山地裁 昭43(行ク)2号 執行停止申立事件

政治と選挙Q&A「屋外広告物法 ポスター貼り(掲示交渉)代行」に関する裁判例(83)昭和43年 7月23日 松山地裁 昭43(行ク)2号 執行停止申立事件

裁判年月日  昭和43年 7月23日  裁判所名  松山地裁  裁判区分  決定
事件番号  昭43(行ク)2号
事件名  執行停止申立事件
文献番号  1968WLJPCA07230002

要旨
◆空港滑走路の造成を埋立の目的とする公有水面埋立法四二条に基づく埋立承認処分の執行停止申立につき、回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるときに当たるとした事例
◆前記の執行停止申立につき、本案について理由がないとみえるときに当たらないとした事例
◆前記の執行停止申立につき、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときに当たらないとした事例
◆前記の執行停止申立につき、憲法三一条は行政手続についても適用されると解するのが相当であり、右埋立承認処分が公有水面埋立法四条三号に当たる場合にも、その埋立施行区域に漁業権を有する者がいる場合には、その者に告知、聴問の機会を与えることが要請されるところ、その機会が与えられていないから右埋立承認処分は憲法三一条に違反する疑いがあり、また、右漁業権を有する漁業協同組合が公有水面埋立法四条一号の同意をするには水産業協同組合法五〇条による特別決議を必要とするところ、その特別決議を欠く同意は無効であるから、前記埋立承認処分が右四条一号に当たるとはいえないとして、結局、本案について理由がないとみえるときには当たらないとした事例

新判例体系
公法編 > 行政訴訟法 > 行政事件訴訟法〔昭和… > 第二章 抗告訴訟 > 第一節 取消訴訟 > 第二五条 > ○執行停止 > (三)執行停止の消極… > (1)一般
◆公共の福祉に重大な影響を及ぼすか否かは、当該処分の執行により申立人の受ける損害との関係において判断さるべきである。

 

出典
訟月 14巻10号1151頁
行集 19巻7号1295頁
判時 548号63頁

参照条文
公有水面埋立法42条
公有水面埋立法4条
行政事件訴訟法25条
告示等
水産業協同組合法50条
日本国憲法31条
裁判官
秋山正雄 (アキヤママサオ) 第1期 現所属

伊藤滋夫 (イトウシゲオ) 第8期 現所属 依願退官
平成7年3月10日 ~ 依願退官
平成4年3月17日 ~ 平成7年3月9日 東京高等裁判所
平成1年6月1日 ~ 平成4年3月16日 名古屋高等裁判所
~ 平成1年5月31日 和歌山地方裁判所(所長)、和歌山家庭裁判所(所長)

友添郁夫 (トモゾエイクオ) 第18期 現所属

Westlaw作成目次

主  文
理  由
(当事者の主張)
(当裁判所の判断)
第一 本件疏明資料によれば、被申立…
第二 本件疏明資料によれば、次の事…
第三 申立人の主張は、本案について…
一 被申立人は、本件処分が公有水…
二 また、被申立人は、本件処分が…
第四 本件処分の効力の執行停止が公…
第五 結論

裁判年月日  昭和43年 7月23日  裁判所名  松山地裁  裁判区分  決定
事件番号  昭43(行ク)2号
事件名  執行停止申立事件
文献番号  1968WLJPCA07230002

申立人 大可賀吉田浜漁業協同組合
被申立人 愛媛県知事
訴訟代理人 片山邦宏 外九名

 

主  文

被申立人が公有水面埋立法第四二条によつてなした別紙目録記載の埋立承認処分の効力は、当庁昭和四三年(行ウ)第九号行政処分取消請求事件の判決確定にいたるまで、これを停止する。
申立費用は被申立人の負担とする。

 

理  由

(当事者の主張)
申立人の申立の趣旨および理由は、別紙申立書および別紙申立の理由補充書記載のとおりであり、被申立人の意見は、別紙意見書記載のとおりである。
(当裁判所の判断)
第一、本件疏明資料によれば、被申立人が公有水面埋立法第四二条により別紙目録記載の埋立承認処分(以下本件処分という)をし、同月一四日愛媛県告示第四四四号をもつて、その旨公示をしたこと、および申立人が右埋立施行区域を含む水面につき被申立人から漁業法第一〇条による漁業権の免許を受け、その旨免許漁業原簿に登録されていることを一応認めることができる。
第二、本件疏明資料によれば、次の事実が一応認められ、これによれば、本件処分に基づく埋立工事が実施されるときは、申立人が回復困難な損害を蒙ることになり、これを避けるための緊急の必要性があると考えられる。
申立人は、松山市大可賀町、同市南吉田町、同市北吉田町の各地域の漁民七三名(うち、正組合員四九名、準組合員二四名)をもつて構成された水産業協同組合法に基づく漁業協同組合であつて、その組合員のうち大可賀地区居住者を中心とする二〇余名が現に漁業を営むことによつて生計をたてている。右組合員らは、本件処分に基づく埋立施行区域外にも漁業権に基づく操業可能区域を保有してはいるものの、同人らの操業の中心がいわし網漁業にあること、いわしが右工事予定区域付近に多く集ること、同人らの操業方法および保有船舶や網の規模、性質などから、現実には右区域付近が同人らの操業において非常に重要な意味をもつている。そして、右埋立工事が施行されると、当該埋立施行区域における操業が不能になるのは勿論であるが、右区域外においても右工事の影響によつて漁獲高が相当程度減少する。
このように右組合員らが主として右区域付近における漁業によつて生活をしていることを考えると、右工事の施行によつて、右組合員らとその家族は生計の資を失い多大の損害を受けることになるのであつて、これが行政事件訴訟法第二五条第二項にいう「回復の困難な損害」を受ける場合にあたることは明らかである。また、すでに右埋立工事は着工されているのであるから、右損害を避けるためには現段階においてこれを中止させることが必要であつて、これが同項にいう「緊急の必要があるとき」に該当することも疑のないところである。
第三、申立人の主張は、本案について理由がないとはいえない。
一、被申立人は、本件処分が公有水面埋立法第四条第三号の場合に該当するから適法であると主張する。しかし、以下の理由により、本件処分を同号をもつて適法視することには疑問がある。
(一) 被申立人主張のように本件処分によつて承認された埋立の目的が第二種空港である松山空港の滑走路造成のためであつて、右事業が公有水面埋立法第四条第三号にいう「法令ニ依リ土地ヲ収用又ハ使用スルコトヲ得ル事業」にあたることは疑いがなく、右埋立がその事業のために必要なものであることも、本件疏明資料によつて一応これを認めることができる。
(二) ところで同法は、同条同号に該当するときは地方長官は埋立を免許することができる旨をいうのみであつて、右免許にあたり、これによつて不利益を受ける利害関係人の権利を保障するための手続規定を全くもうけておらず、他の法令中にも右の手続を定めたものが見当らない(右免許に基づく工事の実施により利害関係人に生ずる損害の補償に関する規定は存在するが、いまここで問題にしているのが右免許処分の際の権利保障規定であるから、これは別問題である)。しかしながら当裁判所は、同条にいう免許処分(同法第四二条の承認処分も同様である)をするにあたつては、少くともその公有水面に関し権利を有する者に右免許に関し意見を述べる機会を与えることが、適正手続を保障した憲法第三一条の要求するところであると考える。
(三) 憲法第三一条は行政手続や財産的利益の剥奪に関しても適用があると解すべきかという点については、周知のように多くの議論があるけれども、当裁判所は右のいずれの場合についても同条の適用を肯定するのが相当であると考える。もとより行政手続と刑事手続の両者に同条の適用があるといつても、一般に刑罰の方が行政処分よりも、これを受ける者に対しより強度の苦痛を与えるものであること、行政事務の合目的的な迅速処理の必要性などを考えれば、同条の要求する適正手続の具体的内容は、右両手続において自ら異つてくることになるであろう。換言すれば、通常、行政処分を行なうにあたつて遵守を要求される適正手続は、刑罰を科する場合のそれよりも、より緩和されたものでたりるといつてよい。さらに、財産的利益の剥奪についての適正手続の保障も剥奪される利益の程度、行政処分の要緊急性などに応じ、その具体的内容に合理的差異が生ずることもまた当然であろう。したがつて緊急の必要に応じて一時的になされる、軽微な財産的利益の剥奪については場合により適正手続の保障が不要とされることもありえよう。
さて、適正手続の内容についても、多くの見解が見られるところであるが、当裁判所は、何人かに対し不利益処分をする場合にはその者に対し右処分に関し告知、聴問の機会を与えるということが、そのもつとも基本的要請であると考える(聴問の内容としてどの程度のものを要求するかは問題であるが、文書又は口頭で意見を陳述することができるということが、最少限必要な内容であることは疑いがない)。けだし、これによつて国民に自らの権利を守る機会を与え、行政当局の判断の適正を期待することが可能であるからである。それだからこそ、最高裁判所も、刑事制裁的色彩があり、かつ司法手続のなかで行われる第三者の所有物の没収処分についてではあるけれども、「その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であつて、憲法の容認しないところであるといわなければならない。」(最高裁判所昭和三七年一一月二八日判決、刑集一六巻一一号一五九三頁)と判示していると思われる。
(四) ひるがえつて本件についてこれをみるに、まず、本件処分が埋立施行区域に漁業権を有する申立人に財産上の不利益を及ぼす行政処分であることは明らかである。公有水面埋立法による免許(承認)処分は、これによつて直ちに公有水面廃止の効果が発生し当該水面における漁業権の消滅を来すものではないが、これに引続いて同法に基づき行なわれる埋立工事の実施に伴ない当該水面における漁業権は消滅すると解されるから、右免許(承認)処分は、後日漁業権の消滅という重大な結果を招来する重要な行政処分であることになる。そして、一般に漁業権自体が、その剥奪につき適正手続の保障を必要としない程度の内容しかもたない財産権とはいえないことはもちろんであるが、特に、本件において問題となつているのは、前示のように広範囲の水面についての漁業権であり、主としてこれによつて二〇余名の組合員らとその家族が生計をたてていることを考慮すれば、その剥奪につき適正手続の保障があるべきことは当然であるし、本件処分に先立ち右手続をふんでいたのでは行政処分の目的が達せられないというような緊急性があつたことをうかがうにたりる資料はない。
ところで、本件処分が被申立人主張のように、公有水面埋立法第四条第三号によつてなされたとすると、右処分は前示のように利害関係人の権利保障のための手続規定を全く欠く法規に基づく行政処分、すなわち、右処分により財産上の不利益を受ける漁業権者たる申立人に右処分に関し、告知、聴問の機会を与えるべき旨を定めた規定すらない状態においてなされた行政処分であるから、適正手続の保障との関係で問題がある。公有水面埋立法の規定がこの点でいかに不備なものであるかは、たとえば、土地収用法において利害関係人の権利保障のための周到な規定があること、公有水面埋立法第四条第三号による免許処分の場合に酷似する河川法第四〇条第一項第一号の許可処分をなすに際しても(同号の関係河川使用者には漁業権者が含まれる。河川法施行令第二一条参照)、あるいは公益上の必要により漁業権の変更、取消、停止をなしうることを規定した漁業法第三九条第一項による処分をなすに際しても、いずれも右処分前にあらかじめ利害関係人に告知をし、かつ意見陳述の機会を与えることが法律上要求されている(河川法第三八条、第三九条。漁業法第三九条、第三四条)ことなどを考えれば、容易に理解しうるところである。
もつとも、前示のとおり、行政手続においては、適正手続の保障は刑事手続におけるほど高度の内容のものである必要はないと解するので、この意味での保障手続を定めた法規が存在していない状態でなされた行政処分であつても、右処分により不利益を受ける者に対して現実に告知、聴問の機会を与えてさえいれば、それによつて憲法第三一条の要請はみたされるとも思われるけれども、本件においては、かかる告知、聴問の機会が申立人に対し与えられたことをうかがうにたりる資料はない。なるほど本件疏明資料によれば、申立人は、愛媛県、松山市、あるいは第三港湾建設局の係官らと松山空港滑走路造成工事に関し、申立人の有する漁業権についてのいわゆる補償交渉をする機会を与えられ、現実に数回にわたり右交渉を行つたことが一応認められる。しかしながら、本件疏明資料によれば、右交渉は、公有水面埋立法第四条第三号による免許(承認)処分を行なうにあたり、右処分に関して行なわれたものとはいいがたく、むしろ、本件埋立工事を円満に実施するため関係水面に漁業権を有する申立人の協力、同意を要請して行なわれた事実上の折衝にすぎないことがうかがわれるのであつて、本件処分に関し、適正手続の内容としての告知、聴問の機会を申立人に与えたものとは認めがたい。したがつて、本件処分は、憲法第三一条に違反する疑いがある。
二、また、被申立人は、本件処分が公有水面埋立法第四条第一号の場合にも該当するから適法であると主張する。しかし、本件疏明資料によるも、被申立人主張のように、申立人が本件埋立につき有効な同意をしていたことをうかがうことができない。
(一) なるほど、本件疏明資料によれば、昭和三三年一二月一六日に、共同漁業権者であつた高浜漁業協同組合、今出漁業協同組合とともに申立人が、松山市長との間に本件埋立工事の施行区域を含む水面における漁業権について補償契約を締結し、同契約において右水面の埋立に同意したことが一応認められないでもない。しかしながら、水産業協同組合法第五〇条によれば、同条第四号の「漁業権又はこれに関する物権の設定、得喪又は変更」については総組合員(準組合員を除く。)の半数以上が出席し、その議決権の三分の二以上の多数による議決(いわゆる特別決議)が必要とされているところ、右契約における同意は、右契約に基づいて将来なされるべき埋立工事の施行による漁業権の消滅を招来するものであり、一旦同意をした以上申立人において右工事の施行を阻止することは不可能なのであるから、同号に定めるところと、実質的には全く同一の効果をきたすものである。したがつて、右同意をするためには、同条の規定に従つた特別決議を必要とするものというべきである。前記契約における同意に関しかかる特別決議がなされたことをうかがうにたる資料はない。
(二) かかる特別決議なくしてなされた右同意は無効と解すべきである。けだし、水産業協同組合法第五〇条が同条第四号所定の各行為につき特別決議を要するとした所以は、右各行為が組合にとつてきわめて重要な事柄に関するものであつて、これらの事項の決定に関しては特に組合員の利益の保護に留意する必要があると考えたからにほかならず、右特別決議に反してなされた行為を有効と解することは右法条の趣旨を没却することになりかねない。また、これらの事項が重要な取引行為に関するものであり、かつ、それが法律で明定されている若干の場合にかぎられているのであるから、組合との取引の相手方に対し、かかる事項に関する特別決議の有無の調査を要求することは、必ずしも難きを強いることになるとは思われない。したがつて、特別決議なくしてなされた同法第五〇条第四号所定の各行為を無効と解しても、取引の安全を害するとは考えられない。そうだとすれば、被申立人主張のような申立人の同意が成立していたとしても、右同意は効力を生せず、結局、申立人は本件埋立に関し同意をしていないことに帰する。
第四、本件処分の効力の執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとは考えられない。
近時、松山においてのみならず全国的にも国民一般の航空交通に対する需要が増大し、航空交通に対する依存度が高まりつつあること、そして、滑走路の拡張が右のような航空交通の発展に鑑み、輸送量の増強、安全性の増大の観点から望ましいものであることは、当裁判所もこれを認めるにやぶさかではないし、本件処分の効力の執行停止により滑走路延長工事が遅延し、前示のような意味での公共の福祉に影響のあることも、またこれを否定することはできない。しかしながら、航空交通の重要度が大きくなりつつあるとはいえ、それはいまだ陸上および海上の交通にくらべれば国民生活においてしめるウエイトははるかに小さいものであるのみならず、本件執行停止があつても、現在の松山空港の機能がこれによつて影響を受けることが全くないことはもちろん、滑走路延長以外の面において航空保安施設の拡充、強化をはかるなどして同空港の機能の改善をはかることにまで支障が生ずるはずがないことも言うまでもない。なるほど滑走路延長工事の遅延により予算措置上ある程度の困難が生ずる可能性のあることは想像しうるところであるが、被申立人主張のごとく本件執行停止がなされると予算上の制約から松山空港の二、〇〇〇メートル滑走路の供用開始時期が著しく遅延するおそれがあるとの疏明は十分でない。さらに、右延長工事の遅延がある程度公共の福祉に影響を及ぼすものであることは前示のとおりであるけれども、本件疏明資料によつても、それが被申立人主張のように「愛媛県は勿論、西日本一帯の経済活動、旅客交通に重大な支障を及ぼすことになる」とは到底認められない。
一方、本件執行停止を認めないとすると、前示のように申立人の組合員二〇余名およびその家族の生活は回復困難な重大な損害を受ける危険がある。
行政事件訴訟法第二五条三項は、「執行停止は、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、することができない。」旨を規定しているが、この規定の趣旨は、執行停止をなすべきか否かは、単に申立人の処分によつて受ける損害のみならず、公共の福祉に及ぼす影響をも考慮してこれを決すべきことを明らかにしたものである。したがつて、この影響が重大かどうかは、絶対的基準によつて判断すべきではなく、処分の執行により申立人の受ける損害との関係において、その損害を看過してまでもなお公共の福祉に対する影響をより重大としてこれをまもるほどの必要があるかどうかという見地から、相対的に判断すべきものと解するを相当とする。
このような観点から本件における前示の諸事情を総合検討するときは、本件執行停止により公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとまでは言うことができない。
第五、結論
これを要するに、本件においては、申立人に本件処分に基づく埋立工事の施行により生ずる回復の困難な損害を避けるための緊急の必要性があることが一応認められ、かつ本案について理由がないとみえるような疏明も、本件処分の効力を停止することによつて公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとの疏明も、いずれも十分でない、ということである。
したがつて、本件処分の効力を本件執行停止事件の本案である当庁昭和四三年(行ウ)第九号行政処分取消請求事件の判決確定にいたるまで停止することを求める本件申立は理由があるから、これを正当として認容し、申立費用について民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり決定する。
(裁判官 秋山正雄 伊藤滋夫 友添郁夫)

 

(別紙)
目録
一、埋立の承認を受けた者の住所氏名 第三港湾建設局
二、埋立の場所           松山市大字南吉田地先
三、埋立の面積           一九〇、一九〇・五平方メートル
四、埋立の目的           松山空港(第二種)滑走路造成
五、埋立工事しゆん工期限      昭和四五年三月三一日
六、埋立承認年月日         昭和四三年五月六日

(別紙)
申請書
申請の趣旨
被申請人が運輸省第三港湾建設局に対し、昭和四三年五月六日付でなした、公有水面埋立法第四二条による別紙目録記載の埋立承認処分の効力は昭和四三年(行ウ)第九号行政処分取消請求事件の判決確定にいたるまで、これを停止する。
申請の理由
第一、当事者
一、申請人は水産業協同組合法に準拠して設立された漁業協同組合であつて松山市大可賀町同市南吉田、同市北吉田の各地域の漁民七三名をもつて構成し、右七三名中、四五名が正組合員、二八名が準組合員である。
二、被申請人は港湾法第二条、第三三条による愛媛県松山港の港湾管理者の長であつて同法第五八条によつて公有水面埋立法による埋立の免許及び承認の権限を有する者である。
第二、行政処分の存在
被申請人は昭和四三年五月六日運輸省第三港湾建設局に対し、公有水面埋立法(以下たんに「法」と略称す)第四二条に基き、左記内容の埋立承認処分をなし、同年五月一四日愛媛県告示第四四一号をもつてその旨公示した。

一、埋立の場所 松山市大字南吉田地先
二、埋立の面積 一九〇、一〇九・五平方メートル
三、埋立の目的 松山空港(第二種)滑走路造成
四、埋立工事しゆん工期限 昭和四五年三月三一日
第三、埋立承認処分の取消処分
本件埋立承認処分(以下たんに「本件処分」という)は、しかし乍ら、以下の理由により違法であり、取消されなければならない。
一、被申請人が法第四二条第一項によつて、国の埋立を承認する場合にも同条第三項により法第四条第五条が準用され、公有水面に関し権利を有する漁業権者、入漁権者の同意を要する旨規定されている。
二、ところで申請人は、本件処分による前記埋立施行区域(松山市南吉田地先一九〇、一〇九・五平方メートル)に対し、左記のとおりの共同漁業権を有し、被申請人から漁業法第一〇条により免許をうけてその旨免許漁業原簿に登録されている。

1 漁業種類、漁業の名称及び漁業時期

漁業種類 漁業の名称 漁業時期
第一種共同漁業 ひじき漁業 一月一日より一二月三一日まで
てんぐさ〃 四月一日より八月三一日まで
もずく〃 一月一日より一二月三一日まで
あおさ〃 〃〃
さざえ〃 〃〃
あさり〃 〃〃
にし〃 〃〃
かき〃 〃〃
なまこ〃 六月一日より翌三月三一日まで
うに〃 一月一日より一二月三一日まで
えむし〃 〃〃
第二種共同漁業 いかなご袋待網〃 二月一日より七月三一日まで
ぼら張切網〃 一月一日より一二月三一日まで
雑魚磯建網〃 〃〃
第三種共同漁業 いわし地曳網〃 〃〃
いかなご地曳網〃 〃〃
いわし船曳網〃 〃〃

2 漁場の位置 松山市南吉田地先
3 漁場の区域
Aから山口県由利島南端見通し線とBから二神島頂見通し線との間において最大高潮時海岸線から一、五〇〇メートル以内の区域ただし、吉田浜船溜防波堤の北端とクツナ山を結んだ線以内の区域を除く。
基点A 松山市大字北吉田クツナ山
B 松山市大字南吉田と大字西垣生との最大高潮時海岸における境界
三、従つて、被申請人は共同漁業権者である申請人が右埋立に同意したのちでなければ本件処分をなすべきでないにもかかわらず申請人の同意のないままに本件処分をなしたものであるから法第四条第一号に違反しており、本件処分は違法である。
四、もつとも被申請人は申請人及び高浜漁業協同組合、今出漁業協同組合と松山市長との間で昭和三三年一二月一六日締結した漁業補償契約によつて、本件埋立についての同意があつたものと解しているかの如くであるが右契約は何ら被申請人主張の如き内容を有するものではなく、従つて申請人は、本件埋立に対し、同意を与えたものではない。
以下その理由を詳述する。
1 右漁業補償契約書によれば左のとおり約定されている。
契約書
松山市長を甲とし漁業者代表者、高浜漁協及び関係漁協である今出漁協、不可賀吉田浜漁協を乙として漁業に関する一切の権利の補償に関した左の契約を締結する。
第一条 乙は甲に対し大字北吉田字忽那山西鼻より由利島南端見通上七六四米(四二〇間)の点と、重信川右岸河口堤塘線上八〇〇米(四四〇間)の点を結ぶ線内の水域において甲及び港湾管理者並びにその誘致に関係する工場等の埋立て並びに諸施設とこれに関連する諸問題を包括して永久に承認する。
第二条 甲及び港湾管理者並にその誘致した各種工場等は前条に定める水域内にその事業の遂行上必要な埋立て及び港湾施設並びに水面使用を適宜計画遂行できるものとする。
ただし右埋立及び港湾施設並びに水面使用または船舶の航行碇泊に支障の生じない水域における乙の漁撈は差支えないものとする。
第三条 甲は乙に対し前二条の規定に伴なう漁業に関する一切の権利の永代補償料として金壱千八拾万円を本契約成立後、支払うものとする。
第四条 甲及び港湾管理者は第一条に定める水域内に共同漁業権の設置を認める。
ただし右共同漁業権区域内への入漁権の設定または共同漁業権以外の漁業権の設定にあたつては甲及び港湾管理者の了解を必要とする。
2 前項の共同漁業権及びそれ以外の漁業権及び入漁権は本契約の一切の権利補償の対象であることは勿論である。
第五条 本件漁区を譲渡し若くは貸付け等する場合においては乙は第三者に本契約の条項を承認することは勿論、予め甲及び港湾管理者と協議するものとする。
第六条 第一条に定める水域内の漁業に関し乙以外の者より甲及び港湾管理者に対し補償金その他の要求があつた場合は乙に於いて解決し甲及び港湾管理者に対し何等迷惑をかけないものとする。
右契約を証するため本書四通を作製し各自一通を保有するものとする。
昭和三十三年十二月十六日
甲 松山市長              黒田政一
乙 漁業権代表者高浜漁業協同組合    中矢明
関係漁協  今出漁業協同組合    中矢喜一郎
関係漁協  大可賀吉田漁業協同組合 中矢岩松
しかし乍ら、右契約は以下の理由により無効である。
2 即ち同契約書第一条によれば同条所定の水域(本件埋立区域も含まれる)について、松山市長及び港湾管理者並びにその誘致に関係する工場等の埋立て及びこれに関連する諸問題を包括して永久に承認する、とされている。
してみると右承認に係る同条所定の水域に対する申請人の共同漁業権は当然消滅するに至るが、そうだとすると右契約を締結するには水産業協同組合法(以下たんに「水協法」と略称す)第五〇条によつて総組合員の半数以上が出席し、その議決権の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
しかるに、右補償契約の締結に当つて、当時申請人組合においてそのような特別決議がなされたことはない。
松山市長のもとには、本件契約書の付属書類として、申請人組合の決議録及び代表者選定届なる書類が添付されている由であるが、そのような書類を申請人が作成した事実もないし、その決議録なるものも松山市吉田浜、今出海岸整地埋立に関する交渉委員八名を選任決定する旨の内容のものであつて何ら漁業権消滅に関する特別決議の議事録ではない。
してみると水協法第五〇条所定の特別決議を経ずしてなされた右漁業補償契約は無効である。
そもそも、右漁業補償契約は昭和三三年一二月当時、愛媛県が実施した工場誘致のための道路、護岸工事に伴う埋立のためのものであつてその埋立面積は一七四、三九〇坪であつた。(疎甲第一二号証、及び同第一九号証(図面)茶色表示部分)従つてその補償額も三〇〇万円とされたのである。
もちろん、右一七四、三九〇坪の埋立についても、前記2のとおり申請人の特別決議を経ずに承認されているのであるから、無効であることに変りはないが、右部分については現に埋立工事が完了されているので申請人はしいてその部分についてまで争うことをしないのにすぎない。
3 次に、右契約書第三条によれば、同第一条所定の水域の漁業に関する一切の権利の永代補償料として金一、〇八〇万円を支払うとある。(申請人に対しては右一、〇八〇万円のうち三〇〇万円が支払われている)
右にいう永代補償は公有水面埋立法第六条所定の損害の補償と解せられるが、およそ損失補償は、現実の(適法な)財産権侵害行為によつて生じる量定可能な現実の損失について正当な補償をなすことを目的とする。従つて、その補償額の算定時期は、学説判例上争いがあるとしても収用の時期ないし裁決の時期とされており、右はいづれも財産権侵害行為が現実に実行される時期であることに変りない。
しかるに右契約書第三条の永代補償なるものは同第一条の水域の埋立時期が全く特定せず、いついかなる区域について埋立工事が実施されるのか全く判然としていないのであつていわゆる現実の損失を算定する基準、時期が不特定であり、従つて、右三〇〇万円の申請人に対する補償額は、申請人の同契約書第一条所定の区域の漁業権に対する損失補償としては、不適法なものであつて法第六条にいう補償と解することはできないものといわなければならない。(従つてそれは、昭和三三年一二月当時の現実の損失、即ち前記一七四、三九〇坪の埋立に伴う損失補償としてのみ適法視されるものと解さなければならない)
換言すれば、申請人は右契約書によつて本件処分による埋立区域に対する埋立の同意は何人に対しても与えていないものであるといわねばならない。
4 さらに、右契約の当事者は、申請人その他の漁業権者と松山市長であつて、本件処分にかかわる埋立工事実施者である運輸省第三港湾建設局ではない。
従つて、かりに右契約が有効であるとしても第一条所定の承認は契約当事者である松山市長の行う埋立工事に対する承認、同意としてのみ有効であつて、その他の者の埋立工事に対して同意したものではない。
もつとも、右契約第一条によれば松山市長及び港湾管理者並びにその誘致に関係する工場等の埋立並びに諸施設とこれに関連する諸問題を包括して永久に承認する旨約定されているが、右約定を善解すれば松山市長は第三者のためにする契約を締結したことになるであろう。
しかし乍ら、その第三者も、前述のとおり全く特定しておらず一般的包括的であつて不特定な第三者のためにする契約は不適法であつて、契約そのものが成立しないといわなければならない。
百歩を譲つてそのような第三者のためにする契約が適法に成立しうるとしても、右契約第一条及び第二条から明らかな如く、松山市長及び港湾管理者が誘致する工場等の埋立及び港湾施設(港湾法第二条第五項参照)並びに水面使用に関する諸問題についての承認であつて、本件処分にかかる空港滑走路拡張工事に伴う埋立についての承認ではないといわなければならぬ。
従つて、申請人は本件処分にかかる前記滑走路拡張埋立工事についての承認は与えていない。
5 仮りに、以上の各主張が認められないとしても、申請人は右契約締結に当り以下のとおりその法律行為の要素について錯誤があつたので無効である。
即ち申請人は右契約は昭和三三年一二月当時に愛媛県が実施していた吉田浜、今出海岸一七四、九三〇坪(疎甲第一九号証(図面)茶色表示部分)の埋立工事に対する同意、承認及びそれに伴う漁業補償についての契約であるとして締結したものであつて、同契約書第一条所定の如き広範囲の漁業区域の埋立について包括的に承認したのではなかつた。従つてそれは目的物について重大な錯誤があつたものであるから無効である。
このことは当時の埋立工事主体である愛媛県も認めており(疎甲第一二号証)そのために、申請人は僅か三〇〇万円の補償額をもつて右承認を与えたものである。
従つて申請人の右契約書による承認は本件処分にかかわる埋立工事の承認としては無効である。
第四、取消を求める法律上の利益
申請人は以下の理由により本件処分の取消を求める法律上の利益を有する者である。
即ち、本件処分により、訴外運輸省第三港湾建設局は、申請人が共同漁業権を有する前記埋立区域に対し、松山空港滑走路拡張工事を施行しそのために右区域に対する申請人の共同漁業権は消滅するのやむなきに至る。
従つて本件処分によつて申請人は自己の法的利益(共同漁業権)を害されることになるので本件処分の取消を求めるにつき法律上の利益を有するものである。
第五、損害を避けるための緊急の必要性
以上により申請人は本件処分の取消しを求めるため、本日御庁に対し、本件処分の取消請求の訴訟を提起したが、以下に述べる如く、右処分の効力の停止を求めなくては、申請人は本件処分の続行により、回復の困難な損害を蒙ることとなり、それを避けるため緊急の必要性があるので本申請に及んだ。
一、本件処分によつて実施される埋立区域の面積は前述のとおり一九〇、一〇九・五平方メートルであるが運輸省第三港湾建設局は、右埋立区域の西方に約三〇万平方メートルにわたつて埋立のための土砂を採取する区域をも指定し、埋立区域とともに、右土砂採取区域についても申請人組合員の漁業立入を禁止する旨昭和四三年六月二二日通告してきた。
ところで右二区域は申請人の前記いわし地曳網漁業、及びいわし船曳網漁業の漁場になつておりかつ申請人組合員にとつていわし網漁業の漁獲高は総漁獲高の三分の二を占めておりその金額は年間二、〇〇〇万円をくだらない。
従つて右二区域における操業が禁止されるとなれば申請人組合員の漁業の大半は不能となり失業状態を生じ、申請人組合の存立そのものが危胎にひんするに至る。
二、さらに、本件埋立工事によつて海岸線沿いに東西に流れているこの区域の潮流が変わり、すべて沖合へ屈折するにいたる。そのため、いわし網漁業のみならず、その他の漁業にも著るしい影響をうけその漁獲高の約四割(年間約四〇〇万円)が減少するものと予測される。
また、埋立工事及び土砂採取工事によつて、海底に泥濘(通称「ヘドロ」)が多出し、いわし網にこのヘドロが入りこんで網を破損させ、漁獲および漁網具に甚大な損害を及ぼすにいたる。
三、以上の結果、申請人組合及び組合員の蒙る損害は年間約二、四〇〇万円以上にのぼるものと推定され、申請人の共同漁業権は事実上その効力を停止ないし消滅する。
右は、漁業をその存立の基盤とし、生業としている申請人組合及び組合員にとつて回復しがたい損害というべく、それを避けるための緊急の必要性がある。
目録
一、埋立の場所 松山市大字南吉田地先
二、埋立の面積 一九〇、一〇九・五平方メートル
三、埋立の目的 松山空港(第二種)滑走路造成
四、埋立工事しゆん工期限 昭和四五年三月三一日
以上

(別紙)
申請の理由補充書
第一  漁業権侵害による門樋部落居住民の生活破壊について=事実的主張
一 門樋部落の生活環境
(一) 申請人所属組合員のうち本件埋立工事の施行によりその生存に潰滅的打撃をうけるのは当然のことながら漁業専業者である門樋部落の住民である。
門樋部落は松山港の南岩壁に接続する工場地帯の一角、西海岸にあり遊水路を兼ねた小川の河口北岸沿いに東西に長く、約一九戸の住宅が帯状に建ち並ぶ漁村であつて、北と東は丸善石油に接し大小一〇数基の石油タンク及び建造物にて囲われ、特に北側の至近距離にある四基のタンクは通称五万トンタンクといわれ、原油五万トンを蓄蔵する巨大なものであつて、それが人家を上から威圧しているかの如き感を呈していると共に、南は遊水路を隔てて、昭和工業株式会社の工場に対し、工場地帯の一角に取り残された一寒村である。
(二) ところで門樋部落は昔からか様な状況ではなかつた。
現に居住している人達の祖先達はあたりに広大な水田や畑地や空地があり北及び西側を海に接し、然も南脇に生簀として最適な遊水路が存する、此の地域に歓喜して永住し附近では最も豊かな高収入を上げる漁村を形成したわけである。
その頃の海岸の状況はあたり一面砂浜が続き現在のように棧橋の残がいや突堤も防波堤もなく、さながら絵にかいた遠浅の一大砂浜海岸で地びき網であろうと船びき網であろうとその沿岸において誰に気兼ねをすることもなく漁撈に精を出すことが出来たわけであつて、全くの平穏無事な生活を送りつつ非常に素朴な門樋部落漁民意識を醸成して来たのであつた。
(三) ところで右の様相は昭和一六年大東亜戦争が日本軍国主義者によつてはじめられることによつて一変した。
松山海軍航空隊の近くであつた大可賀に軍需工場として丸善石油が建設されることによつてである。
憲兵の威力で有無を云わさず工場用用地として農地約七〇万平方米と遊水路一〇万平方米を非常に廉価で強制買収を余儀なくせしめられ、漁場海面も又軍の圧力のもとに現在松山港になつている北側海域は僅か一一、〇〇〇円で買収されたのである。
これに伴つて昭和三〇年以後計画実行された中央都市圏構想による工場用地埋立の大可賀埋立地、松山港計画による大突堤建設、右突堤の先端部分に現在尚もその延長建設計画があり前記五万トンタンク建設地埋立てなど次々と広大な砂浜がなくなり、現在は地びき網は勿論その海域でのいわし船びき網も出来なくなつているわけであつて、之等はすべて戦争中憲兵の圧力で漁民から奪つたものの上にのつかつてなされた、然も地域独占資本のみの利益をはからんとしてなされる矛盾にみちた地域開発政策にあることは明らかである。
二 住民の公害反対闘争の経過
(一) 前記の如く非常に素朴で平穏無事な生活を送つて来た漁民達も次々と漁場が破壊され、生活が苦しくなると共に、それに加えて昭和二七年頃丸善石油松山製油所の再開に伴ない公害発生の声が部落居住者の間からあがつて来たために昭和三九年六月の新潟地震を契機として石油タンクの危険性を認識しそれ以後対市、丸善石油等に止むに止まれぬ気持から抗議行動を開始し出したのであつた。それは部落居住者の家屋に接して流れている遊水路で一本釣の餌を生かしたり、漁類をそこで放魚してシケ等魚の市価が上昇した際に販売すると云つた風に所謂生簀として使用していたのであつたが、そこに前記丸善石油の廃液が流出して一切の漁介類が死滅し使用不能となつたり甚だしい悪臭を放ち、船だまり場で遊んでいた子供達の腕や足に前記丸善石油よりの廃液が付着し湿疹が出来たり、更にはガソリンタンクよりのガス流出のため民家に火気厳禁をふれ歩くという事件が頻発したためであつた。
(二) そこで部落居住民達は四日市に見学に行つたり消防法規を調べるなど学習活動を進める一方、その頃公然と情報収集を行なうため、一見相談役の様な形でしばしば部落を訪れていた管轄松山西警察署の警察官を素直に信用して何事も相談の上で対丸善石油や対市交渉を行つていたのであつたが、その警察官の示唆の下に行つた、丸善石油正門前におけるビラ貼付行為及び立看板設置行為をとらえて、屋外広告物取締条例違反事件としてその居住者の中の活動家福岡勝己氏を不法にも刑事弾圧すると共に、市当局は露骨にも立退交渉を坪二万円という僅少な餌を与えることによつて進める一方、県に対しては松山大工場地帯沿岸と松山港附近の水域を「特殊港湾区域」として漁業権免許をしないでくれという無茶な働きかけをしたり、部落居住者の中の丸善石油従業員に対しては圧力をかけて転住せしめたり、後述する如く吉田浜地区の漁業組合員には空港拡張地区内にある農地の買収価格を良くするので門樋と手を切れと云う様に分裂策動を熱心に進めることによつて門樋部落居住民を県、市、漁協幹部、独占資本、警察が一体となつて弧立させ生活基盤を奪いにかかつているのである。
(三) そこで弧立化させられた門樋組合員達は労働組合その他民主団体に事情を訴え前記刑事弾圧をはねかえす闘いを組織すると共に、危険な石油タンクが消防法に違反していることを裁判所で明らかにして貰う為に行政裁判を提起しそれが御庁に昭和四三年(行ウ)第二号として係属していることは顕著の事実である。
右の刑事弾圧事件は前記の如き労働組合をはじめとする民主勢力の支援の中で検事の求刑が罰金二、〇〇〇円の事件であつたが、数一〇万円の裁判費用を支弁しながら一審は無罪になつたが検事控訴のため高松高裁に行き本年五月当然のことながら無罪判決が確定し福岡さんの無罪は晴らされたのであるが此処で強調し度い事は右の一、二審の判決共門樋部落居住者の公害反対闘争の正当性を力説していることである。
即ち高松高裁判決はその一三丁の裏から一四丁の表にかけて次の如く判示しているのである。
「…………門樋部落居住者がこれまでに蒙つた公害の実状と何時悲惨な事態に遭遇するかも知れないという不安が右住民の日常生活に重大な影響を及ぼし、その不安より免かれ平穏安全な生活を望むため、丸善石油松山製油所へ交渉したが、その交渉が住民側にとつて誠意の認められなかつた経過と、公害の状況とを、右製油化学工場の設置、拡大についての受益団体と認められる松山市及び愛媛県の各当局者あるいは、住民に対し、解決策につき同情と支援を得たかつた右部落住民の心情についてはそのことが右住民の日常生活に直接関係のある重要な事柄であるだけに決して軽視すべきことの許されないものといわざるを得ない。」と、
(四) 以上のような広範な民主勢力に支えられた正当な公害反対闘争に県や市はほとほと困り抜き、門樋住民をへこます何かよい手段、方法はないかと考えた結果出て来たのが空港拡張工事と称して一番重要な漁場を消滅させその生活基盤を失しめる最も卑劣な手段としての本件承認処分であつたわけである。
即ち空港拡張が健全な空港行政を図る上で直ぐに必要なものであるかどうかが充分検討されているかどうか、拡張工事が必要であるとして拡張個所を若干北方に移動させることによつて漁民の生活に及ぶ犠牲の程度を最少限にくい止める方法はないのか、実際に漁民の生活実態を調査して事を円満に解決する方法がいくらでもあるのにその方法を履践していないのは何故か、現に漁民の代表者は運輸省を再三訪れ事情調査方を求め最後には共産党の国会議員須藤五郎氏立会の下で第三港湾建設局次長関氏同席の交渉をなし事情調査をなすことの約束をとりつけそれ迄は強制的に埋立工事はやらない旨言明を受けて喜んで帰つたのであるがその後は何の音沙汰もなく突如として強制埋立に及んだのである。
以上の如き背景並びに後述する漁民の生活実態、県、市、第三港建に対して漁民のなした承認処分に至る迄の経過からみて、本件承認処分及びその結果必然的に随伴する一連の事実行為は問答無用で門樋住民を門樋から追い出さんとする国、県、市、丸善石油共謀の策謀と云われても仕方ないものなのである。
三 門樋漁民の生活=いわし機船船びき網漁業の重要性
(一) 被申請人提出の疏乙第一号証によつても「・・・いわし機船船びき網漁業を主とし他の漁業を従として、これら各種の漁業を季節に応じ繰業し生活を営んでいる・・・」としていわし船びき網漁業の重要性を認めている様である。
然しながらその前提の上に立つて一、いわしは回遊漁であるから埋立地域だけが唯一の漁場ではない。二、他の広大な漁場と工事施工区域の面積比が5%弱にしか過ぎない。三、年間を通じ操業実態がない。四、地先海面とは伊共第一五四号の区域及びその外側の広大な海域を含むので外で操業すればよい等と主張するものの如くである。
(二) 然し之は次に述べる如く操業実情を無視した無責任な放言と解するの外ない。
即ち、沿岸漁業の別名が地先漁業と云うように日帰りで操業出来る程度の範囲のものであり、所謂地先海面とは各地域によつて具体的に距離が定まつているが、該海面では海岸線から一五〇〇米沖合までの海域を指定しているのであつて前記四、の主張は明らかに誤つている。
又いわしが回遊漁であることは否定しないが、本件埋立区域が重要でないと云うのはいわし網のひき方の事情を知らないものの云うことである。
問題の機船船びき網は二艘びきのものであつて本来二艘の船で沖合から浜に向けていわしの逃げないようにひくものであつたが前記の如く砂浜が埋立等により皆無となつたため従つて地びき網漁業も出来ない様になつたのと同時に船びき網の方法も浜に向けてひけないので仕方なしに潮流を利用してその流れに添つていわしが逃げない様にひくのである。
更に右網は水深15米以内でないと使用できない小さいものであつてそれ以上深い所でも操業可能にし様と思えば網の大きなのを備えると共に船の力を強くしなければならないし、そうするとそれは大臣の許可漁業の範疇に属し無理である。然も仮りにその点の許可が下りたとしても巨額の資金を要すると共に、網をひくために人員を沢山雇わなくてはならずそのために必要な労働力はこの地域にはないのであつて、到底実現の可能性はないのである。
前述した如く松山港方面の北海域では水深が三〇米位あるのに加えて防波堤等があるため操業出来ず反対側の南側海域は埋立によるヘドロが出ているため網がひけず更に本件埋立工事予定地より少し沖合に行くとぐつと水深は深くなつて駄目であり、結局は本件埋立工事予定地を中心とする僅かな海面しか現在網のひく場所が残されていないのである。
かかる事情は再三にわたつて漁民は訴え続けているのに実情を調査もしないで、本件訴訟になつても前記の無責任な放言しかしないところにも、承認処分の不純性と悪質性があるのである。
(三) 被申請人は疏乙第一七号証において申請人の水揚高を疏明せんとしているが、之は全くでたら目であることは一六号証においていわし網が主であると云つているにも拘らずその他の漁業の水揚高が主たるいわし網による水揚高の三倍以上を計上するという矛盾となつて露呈されているのである。
門樋住民の年収は前記一七号証記載とほぼ同じであつて一軒七・八〇万円から一〇〇万円位であるが、そのうちいわし網による収入は五・六〇万円から七・八〇万円に達しているのである。
このことは昭和四二年度の松山市三津一丁目中辰商店に販売したいりこ代金収入だけでも五七五万円余りに達することからも明らかであろう。
故に右一七号証のいわし網水揚高の記載は、その収入の比重が少いとの結論先取の謬見と云わざるをえないのであつてこの点からも本件承認処分の杜撰性と実情無視の存在は明らかである。
四 空港拡張問題に対する抗議交渉の経過=疏乙第四号証批判
(一) 本件の空港拡張問題は昭和三三年当時全然計画されていなかつたことは疏乙第一号証によつてその当時の埋立で初めて一、三二〇米の空港となつたことからみても首肯できる事実であり、県、市はおろか一般市民誰もが予想していなかつたもので昭和四一年夏頃からぼつぼつ話題にのぼる様になつたものである。ところが県、市は同年十一月の事故によつてその真の事故原因の追及を放置し空港が広くないといかんと云うムードをこの時とばかりかきたてたのである。実はこの事故は松山空港になれない操縦士を無理に乗せた結果滑走路の真中辺りに機体を着地せしめたのが主たる要因であり、決して空港の広さに関連するものではないのである。
(二) 交渉のきつかけは疏乙第四号証記載の如く昭和四二年九月八日になつて初めてつけられたのであるが、昭和四二年度予算で既に決定されていたのに何故漁民にそのことが四・五ケ月も経つた後の九月に突如として知らされたのか不可解であり、早期に工事に着手しなければならないと云うのに何と悠長なことをしたものだと思われるがその時は所謂昭和三三年の永代補償の存否に争いがあり話が決まらないので一応その問題は棚上げにして、その上で補償問題を含めて、新たなる公有水面埋立法第四条第一号の同意を求められたのであつて決して協力見舞金要求と云つたおだやかな話ではなかつたのである。
この点右乙四号証の記載は随所に手前勝手な評価が入り込んでいるのである。
要するに門樋住民は自分達が全然知らない間にねつ造されて然も真実なされているのであれば本来漁協側に残されてなければならないはずの書類が市当局にあつて漁民は全然見たこともない、その様な昭和三三年の契約書の問題性を一貫して追及し、正当な漁業権補償を要求し続けたのであつたのであり、被申請人側の当初は補償請求最近になつて三三年の契約問題に移行したとの主張は全くの虚構と云うの外ない。
(三) その様な中にあつて公有水面埋立承認処分の要件である同意が尋常な方法でとれないとみた県、第三港建側は吉田浜地区と大可賀地区を分裂させ、門樋住民を弧立化せんとの策謀を開始し到々一、〇〇〇万円で之を成功せしめたのであるがそれも門樋住民には秘密裡になされ新聞報道で初めて知り驚ろくと共にその報道もそれに加えて大可賀には補償しないと云うことが書かれてあつたのである。
即ち吉田浜地区の人達は主として農業に依存し漁業はたこつぼが若干あるのみで所謂いわし網に至つては昭和四一年度の操業期間は三〇日足らず昭和四二年は三日間しか操業していないのであつて、その収入たるや補償対象になる様な代物ではないのである。
この様に分裂策動をしてもなお且つ同意がえられずと見た県側は自分が同意を要するとして始めた交渉を打切り昭和三三年の契約で同意をしているのだとの前提の下に本件承認処分を行ない、その問題性を訴訟で追及されると、今度はもともと権利者の同意がなくても埋立承認処分が出来るのだとうそぶいているのである。
実に門樋住民は数々の不法不当な圧迫によつて、漁場の範囲をせばめられ、又陸にあつては火災の危険にさらされ、又今まさに漁場を失わんとして必死になつて行政機関の違法な暴力に対抗しているのである。
第二  本件埋立承認処分の違法である理由
一、公有水面埋立法に違反し、また同条の適用を誤つた違法がある。すでに申請書記載申請の理由第三、埋立承認処分の取消事由(処分とあるは誤記につき訂正する)の三項において主張したとおり申請人は本件埋立に漁業権者として同意を与えたことはない。
被申請人がその同意に当ると主張している昭和三三年一二月一六日付契約については次の各理由からその成立及び効力が否定せられると認められるべきものである。
その点を補充して以下に陳述する。
二、右永代補償契約なるものはそもそも成立していない。
疏乙第二号証の一の補償契約書なるものは偽造であつて、申請人組合は右内容のごとき契約を締結したことはない。
1 右契約書第一条によれば松山市大字北吉田字忽那山西鼻より由利島南端見通線上七六四米の点と、重信川右岸河口の堤塘線上八〇〇米の点を結ぶ線内の水域(以下「約定水域」という)について申請人が松山市長及び港湾管理者並びにその誘致に関係する工場等の埋立並びに諸施設とこれに関連する諸問題を包括して永久に承認する旨約定されている。
しかし申請人組合は当時松山市長からそのような広大な水域を埋立てるという申入れは全く受けておらず、ただ愛媛県が誘致する工場の護岸、道路工事に伴う一七四、三九〇坪の埋立について承認を求められたにすぎない。
而して、その埋立補償として金三〇〇万円を申請人組合は受取つたものである。
2 当時、申請人組合の組合長は中矢岩松が就任していたが、同人は昭和三三年四月頃、松山市の係員から、前記護岸、道路工事のための公有水面埋立について、ぜひ協力してほしい旨の申入れを受け、そのことを申請人組合の組合長にはかつたところ、ほとんどの者が反対であつた。しかし松山市から再三要請があり、関係漁協の高浜、今出の各漁協もおおむね了解してくれているのに、申請人組合だけが非協力的態度をとつているのはまことにいかんである旨、松山市から有形、無形の圧力が加えられてきたので、中矢岩松はやむなく独断的に、前記埋立工事(一七四、三九〇坪)に対し三〇〇万円の補償を以て承認を与えるにいたつた。
3 しかしその際中矢岩松組合長は松山市長との間に埋立承認に関する契約書を作成したことはなく、従つて疏甲第五号証(補償契約書)は何者かの手によつて無断で作成された偽造のものであつて、申請人組合は全く関知していない。
当時申請人組合には組合印が二個存在しており、その内の一個を何者かが冒用して疏甲第五号証の契約書を偽造したものと推認される。
松山市長が保管している補償契約書には、申請人組合の決議録が付属書類として添付されかつ中矢岩松が埋立補償に関する交渉の代表に選定された旨の代表者選定届なる書類が作成添付されている由であるが申請人組合においてそのような決議および代表者選定手続をとつた事実もない。(これらの書面が真正なものでないことはその代表者選定届疏乙第六号証の各人の署名部分のうち大西時雄の名が書き損じられているままになつて捺印されていることからも充分うかがわれる。真に本人の作成によるものなら、このようなことは考えられないものである)
右決議録及び代表者選定届と同文、同内容の書類が右埋立工事の関係当事者である高浜漁協、今出漁協によつても作成され、甲第五号証の契約書に添付されていることが最近判明したが、これらの一連の事実は、本件補償契約書及び付属書類が松山市側の者によつて勝手に作成されているのではないかと疑わしめるのである。
即ち、松山市長は、前記埋立工事による三〇〇万円の補償金を申請人組合長中矢岩松に交付した際、中矢岩松の無知に乗じて、疏乙第二の一とか同第五、六各号証の書類を作成したものである。従つて、申請人組合は、疏乙第二号証の一の如き内容の契約は松山市長との間に締結した事実は全くないのである。
三、右補償契約の無効事由について
(一) 水産業協同組合法第五〇条違反
1 公有水面の埋立を同意することは直ちに漁業権を消滅させるものでないことはもちろんのことであるが、申請人の埋立同意によつて埋立免許(ないしは承認)を得た相手方が、埋立を実行することによつて漁業権は漸次減縮し、或は全く消滅するに至るものと解するのが相当である。(大審昭和一五年二月七日判決、民集一九巻一一九頁)
従つて埋立に同意することは、ひつきようするところ、漁業権の減縮、消滅をもたらすものであつて、埋立同意即漁業権消滅といえないとしても、それは、水協法第五〇条が特別決議を必要としている漁業権の設定、得喪、変更と、その実質的内容においては全く同等のものといつてよく、埋立同意については同条の特別決議を要すると解すべきである。
もし、漁業権者である漁業協同組合が、公有水面の埋立を同意するに当つて特別決議を必要とせず、漁協の代表者が任意にこれに同意をなしうるとするならば、その同意の結果、埋立免許を得た相手方が現実に埋立工事を実行し、その結果漁業権が減縮ないし消滅するつど組合員の特別決議を求めればよいということになる。然しそれでは、水協法第五〇条の法意は全く空文に帰することにならざるをえない。なぜならばすでに漁協の同意を得て埋立免許を取得した相手方が埋立工事に着手した以上、組合員としては、それによつて生じる漁業権の消滅ないし減縮について特別決議を以て賛否を問う実質的意味は全くなくなつてしまうからである。即ち組合がかりに漁業権の消滅について否決をしても、すでに埋立免許者は、埋立工事を実行しうる立場にあるわけであるから、漁業組合員の漁業権保護はついにはかりえないことになるからである。
従つて、申請人組合の特別決議を経ずしてなされた本件契約第一条の埋立承認は無効である。
(二) 永代補償の効力について
1 本件契約書第三条によれば、同第一条所定の水域の漁業に関する一切の権利の永代補償料として、金一、〇八〇万円を支払うとある。(申請人に対しては右一、〇八〇万円のうち三〇〇万円が支払われている)
被申請人は右三〇〇万円は、第一条所定水域全体の埋立に伴う補償であると主張されるが、疏甲第一二号証(補償事例)によつて明らかな如く、本件契約書作成当時は前記一七四、三九〇坪の埋立工事に対する補償として三〇〇万円が申請人に支払われたものであつて「約定水域」全体の埋立工事などは、当時全く計画もなかつたものである。従つてかりに被申請人主張のとおり「約定水域」全体の埋立に対する補償でありとするならば、その埋立てられるべき時期は契約当事者間にすらも特定しておらず、又漸次埋立てられていくとしてもその度毎の埋立範囲も亦、契約当時特定していないのであるから、埋立によつて蒙る申請人の現実の損失は到底算定することは不可能であるといわねばならない。
2 それは一種の青田買いを認めることに類似するが、漁業権という物権化された権利を、補償契約の一方当事者の全く一方的かつ任意、自由な選択によつて、消滅させるが如きことは、漁業権者を極めて不安定かつ不利益な立場におかしめることになるのであつて、民法第九〇条の趣旨に反するものというべく、そのような補償契約は公序良俗に反して無効である。けだし、本件補償契約に基き、松山市長は別段「約定水域」全体について、埋立免許を得ているものでもなく、従つて、申請人に対して、「約定水域」全体の埋立工事の期限を猶予したという事実も何ら発生していないのであるから、まさに右約定水域のうち、前記一七四、三九〇坪を除いた水面については未来永劫にわたつて青田買いをなしたものといつて過言ではないのである。
(三) 第三者のためにする契約の効力について
1 本件補償契約が一種の第三者のためにする契約であるとしても、その第三者の範囲が全く特定していないことについては、すでに申請理由で述べたとおりである。被申請人は、第三者は契約当時に特定していなくても特定しうるものであればよいとして、本件第三者の範囲はおのずと特定しうる旨主張しているが、かりにその主張のとおり特定しうるものであるとしても、本件水域に、埋立及び港湾施設並びに水面使用を計画遂行できるものの範囲はまことに多数、多岐にわたるのであつて、それはむしろ、「多数のためにする契約」というべきであり、そのような場合には、単にその多数者に事実上の利益を与えるだけであつて、直接に権利を取得させる趣旨ではないと解すべきである。(我妻栄「民法講議、債権各論」上巻一二一頁参照)
2 従つて、第三港湾建設局は、申請人に対して、本件埋立工事についての同意を求める直接の権利は有しておらず、申請人がこれを拒否する以上、第三港湾建設局は改めて、申請人に対して本件埋立に対する同意を求めなくてはならないものと解すべきである。
ところで、いうまでもなく、申請人は今回の埋立工事については終始一貫して反対し、埋立の同意を与えていないのであるから、被申請人の第三港湾建設局に対する本件埋立承認処分は違法である。
四、被申請人の主張する埋立の同意についてのその他の問題
(一) 公有水面埋立法は公有水面を国民経済発展の見地から免許により特定のものにその埋立権を付与し土地利用に資そうとするものであるが、その適用に関してはこれと関連する他の法律例えば土地収用法、漁業法、港湾法等との矛盾なき調整が図られねばならぬことはいう迄もない。同法第四条、第五条等の規定は一般的に公有水面に関し権利を有する者の同意を埋立免許の条件としているのであるが、なおこれらの同意の存する場合とか該埋立が第四条第二号、第三号の要件に当り、この規定を適用する場合とかであつたとしてもなお手続的に他の諸法律の規定により要求せられる手続が存する場合には、その手続を履行しなければ免許付与そのものが違法となることはいうまでもない。いうなれば同法は公有水面埋立についての一般法であつて、さらに他に特別の規定あるときはその要件が加重せられるものである。
このことは同法が大正一一年に公布施行せられてより今日迄殆んど実質的改正が加えられず、しかも他方では新憲法の下において国民の権利保障と各産業の民主化の見地から旧憲法下の諸法が全面的に改正せられ、あるいは新らしい法律が数多く生まれていることにおいて当然のことでもあるのである。
(二) ところで本件で問題となる漁業法との関係についてみれば、まず第一には公有水面埋立法第四条第一号の同意は実質的には漁業権の放棄と異ならないのであるから、前述したように協同組合にあつてはその法に基く特別決議が必要であるし、また第二にはその同意には何よりも明確性と特定性が要求せられるという点である。この点で本件において被申請人側が主張しているような一〇年も前の、しかもその当時には埋立計画そのものも存在していないような架空の免許権者のための埋立の同意などというものは漁業法の諸規定の趣旨にも、また公有水面埋立法の法意にも全く反しているものである。何故ならば漁業権そのものが存続期間の法定せられている公物使用の特許であり、財産権といえどもその移転が制限せられ貸付も禁止されている(同法第二六条、三〇条)ものであり、その漁業権付与には条件さえもつけることができるとせられている(第三四条)ような内容の権利であることからして、そのような特定期間の免許権者たるにとどまる漁業権者においてその期間をこえての漁業権の部分的放棄すなわち埋立免許についての同意の権能などそもそも存在していないのである。少くともそのような特約の効力は当事者間においてもその同意をした当時に存在していた漁業権の存続期間にかぎり有効なのであつて、そのような漁業権に附随してなされた特約の効力はその漁業権の消滅とともに効力を失うものである。
それ以降において仮に本件の如く同一水域についての類似の内容の漁業権免許が同一漁業者に付与せられたとしてもそれに右特約の効力の継承が認められるものでもない。そのような特約をしたものは存続期間後の「永代」の部分については無意味な契約をしたものと扱われざるをえない。これが漁業権の性格からする私法契約の効力の限界であるといわねばならない。なおこのことは旧法においては第一六条第二項において漁業権の更新を認めていたが、この場合でも「苟モ法律ガ存続期間ヲ限定スル限リハ更新ニ依リテ生ズル権利ハ更新ナル文字ノ当然ノ用法ニ従ヒ新規ノ権利ヲ発生スルモノト為サザル可カラズ。従テ更新前ノ漁業権ノ上ニ存シタル担保物権ハ更新後ノ漁業権ニ及バズ」(日本漁業法論、佐藤百喜著四六頁)と解釈され、また現行法第二五条第三項により漁業権移転により抵当権が消滅するとされているなど、いずれも漁業権の特質による特別の制限があることなどと軌を一にするものであると考える。
(三) つぎに公有水面埋立法の法意からしてもその埋立免許は埋立の目的、範囲、時期を限定して申請のあるものにつき付与せられるのであつて例えば現在なお効力の存する公有水面埋立及使用免許取扱法第一二条には「公有水面ノ埋立ハ公益上必要アルモノ並特別ノ理由アルモノノ外五ケ年以内ニ成功シ難キ広キ場所ヲ一手ニ免許スルコトヲ得ズ」とある。(現行法規総覧四六の二収)
すなわちこの趣旨は免許付与の適否判断の時期からさらに長期間を経過すればその判断が変更されねばならぬ事態も予想せられるというところに根本の理由があるのであろうがこれを利害関係ある国民の権利保障の見地からみてもその同意とか補償の額についても個別的、具体的、限定的になす方がより適切となるということもこのような制限を与している一つの大きな理由である。
従つて本件のような将来永久に、しかもその範囲もきわめて広大な水面につき如何なる埋立にも同意するというがごとき特約は仮に存在していたとしてもそれは公有水面埋立法の求めている趣旨に全く反するものであり、そのような特約をそのまま本件埋立工事の同意と扱つた本件承認処分は明白な誤まりを犯しているものであつて違法である。
五、本件承認処分は漁業法第二二条一項に違反する。
(一) 漁業法第二二条第一項は漁業権を分割し又は変更しようとするときは都道府県知事に申請してその免許を受けなければならないと規定する。この趣旨は前述したように漁業権が免許により付与せられる権利であることから本来自由なるべきその処分に行政官庁の関与を認め、漁政の目的を達しようとしたものであるとされている。
そして本件のごとき公有水面の埋立はその部分にかぎり漁場を土地と化して漁業権の行使を全く不能とするものであるのでそれが右規定にいう漁業権の変更にあたることは争のないところである。
(註)
漁業権の変更とは其の同一性を害せざる程度に於て、其の内容たる漁場、漁業時期、漁獲物の種類、又は漁業の種類一又は二以上に付て変更を与えることを謂う。漁場に付ては其の区域の増減又は部分的変更に限る。―日本漁業法註解並判例、星四郎著一一四頁―
(二) そこで問題は右漁業権変更の手続が埋立のいかなる段階でなされていなければならないのか、公有水面埋立承認(あるいは免許)の事前になされるべきか、事後で足りるのかの点であるが、右漁業法の法意及びその規定の文言上も「変更しようとするとき」とあることから考えてもその免許が少くとも事前に、そしてその変更が確定的に予期せられる埋立についての漁業権者の同意のときになされていなければならないことは明らかであると考える。公有水面の埋立免許が第四条第一号によるときはその同意のときに、第二または第三号によるときはその免許(本件では承認)のときに存しなければならないのである。
なる程漁業権変更の免許も埋立の免許もそれを与えるのは同一の県知事の名である。したがつて埋立の免許があれば漁業変更の承認の意思表示も含まれていると解される余地がない訳ではない。しかしながらこれは全くの誤まりであつて、埋立免許は主として国土開発、免許権者の企業伸長の必要から判断されるのであり、漁業権変更の免許はそれに加えて大局的な漁業保護の見地が主となつて判断されるのであり、その主管部局も異なり従つて、たまたま名義は同一であつてもそれは全く別個の行政処分なのである。それを一個のものに兼併させることは不可能であり、違法である。
またあるいは漁業権分割の免許は埋立免許につづく現実の埋立工事着工迄に得ればよいのでそれ以前の埋立権限の付与である埋立免許の段階で得る必要はないとの反論が予想せられる。しかしそれも全くの誤まりである。
何故ならば漁業権分割の免許はいう迄もなく漁政当局の行政目的達成の見地からなされるのに一旦埋立の免許があればその後は当該水面の漁業権者と埋立権者との補償交渉がなされるだけでその着工までの間行政当局の介入する余地は全く残されていないのである。
漁業権変更の手続がなされているか否かの監査の機会も、またその埋立そのものが漁政の観点から適当であるか否かの判断も加えられる機会もなく、埋立についての当事者間の交渉、工事が継続せられ、漁政当局は事後的にこれを追認して免許を与えざるをえないこととなる。
これでは漁業法第二二条の趣旨に全く反することとなること明らかである。また一面においては埋立免許を与えた後において右のような当事者間の交渉の進行する中で、漁業権変更の免許の判断が可能であろうか。抽象的には先に県知事の与えた埋立免許に反し後になつて漁業権変更免許を却下することも可能ではあろうが、そのような同一官庁が相矛盾する行政行為をなして埋立権者、水面権利者等に多大の損害を与え行政を混乱に導くような解釈が適正なものか否かということである。
(三) よつて漁業法の目的とするところにも反せず公有水面埋立法の目的をも達する手続としては同法第四条による免許あるいはこれの準用せられる第四二条の承認の場合にはその水面が漁業権の対象とされているとき、その漁業権分割免許の存在ということが欠くべからざる絶対の要件となつていると解されるのである。したがつてその手続の履行せられていない本件承認処分は漁業法に関する行政当局の無知から重大な違法を敢てしているものであつて取消を免れないものであることを確信する。
なお右のような解釈、運用は申請人らの主張にかかわることではなく現に他の行政当局においては当然のこととして行われているものであつてその一例として非常に古いが次のような行政当局の例規さえ存在しているので参考迄に引用しておく。
漁政例規
漁業法第十条ニ関スルノ疑義ノ件
照会(明治四四年一〇月二六日付徳島県)漁業法第十条第一項ハ「漁業権ハ行政官庁ノ許可ヲ受ケタルニ非サレハ之ヲ分割シ其他変更スルコトヲ得ス」ト規定シ他ニ何等例外ノ規定ナキヲ以テ之ヲ反面ヨリ解釈スルトキハ漁業権ハ行政官庁ノ許可ニヨル場合ノ外分割セラルルコトナシト解セラルニ至ル、随テ土地収用法ニ依リ起業者カ漁業権ノ一部(漁場ノ一部)ヲ収用セントスルハ所謂漁業権分割収用トナルヘキヲ以テ漁業権ノ一部ハ収用シ得ヘキモノニアラスト解セラレ候処右ハ当事者双方大ナル不利益ナルヘク即チ起業者ハ必要ナキニ全部ノ収用ヲ余儀ナクセラル、ノミナラス漁業権者モ亦理由ナク(起業者ノ必要ナラサル部分)其漁業権全部ヲ収用セラル、ニ至リ其ニ不合理ト認メラレ居候処右ハ他ニ相当調和ノ途無之法ノ規定上止ムヲ得サル義ニ候哉御意見承知致度。
回答(同年一一月八日付水産局長)本年十月二十六日附内農第六一四四号ヲ以テ漁業権収用ニ関スル件御照会相成候処漁業権ノ一部収用ハ御見解ノ如ク現行法ノ認メサル所ニシテ如何トモ致難候ニ付其必要アル場合ハ漁業権者ヲ説諭シ漁業権分割ノ許可ヲ受ケシメ之ヲ収用スルカ又ハ漁業権者ヲシテ便宜漁業権ノ変更ヲ出願セシムルノ方法ヲ採ルノ外途ナキ義ト思料致候条右ニ御了知相成度。
(前掲星四郎著第五九頁所掲)
六、前記以外の違法事由
=不純動機(他事考慮)の介在、裁量濫用
(一)、公有水面埋立法(以下単に法と云う)第四条の趣旨を考慮してみると、漁業権その他の権利と埋立権との正当な権利行使の衝突を未然に防ぎ、以て社会生活上の円満な状態を保全するにあるものと考えられる。
従つて、知事は法に基づいて免許あるいは承認を与える都度埋立工事の社会的有益性の厳密なる判断をなすと共に、その有益性を承認すればする程その重要性にかんがみ、その埋立工事の円滑なる遂行を促進するため、それと対立する権利者側の協力方を補償交渉をも含めて求め、且つ少なくとも協力のメドを具体的に把んだ上で初めて免許、ないし承認を与えるべきことが法自体の趣旨から当然要請されているものと解されるのである。このことは、現憲法が国民の権利については「立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」(一三条)と規定している点から推しても、当然首肯されるべきものである。
(二)、凡そ行政機関が、行政行為に関して付与された裁量権を行使する基準を定立する場合、その内容について、行政についての行政機関の知識や経験を一応承認するとしても政治的、経済的な不当な圧力や官僚主義的な独善と懈怠によつて、行政法令が、重視しようとする行政目的との関係からみて、これと関連のない要素が入り込んだり、逆に、当然に考慮しなければならない関連ある事項が排除されたり、更には憲法上当然みとめられる比例原則や平等原則に違反して裁量基準が定立されたり、あるいは右の裁量基準そのものには法的に瑕疵はないが、その適用に際してその要件事実に誤認があり、もしくは比例原則、平等原則に違反する場合などには違法な裁量濫用があると解することは行政学上の定説である。而してかかる場合、しばしば裁判所が「社会通念上著しく不当」として当該行政行為を取消し、以て行政処分の法適合性を保障せんとする司法権の使命を果して来たことは全く正当な措置と云わざるをえない。
(三)、以上の様な理論を背景にして本件埋立処分を検討するに数々の違法が存在するのである。
1、先づ仮りに一〇年前の埋立についての一般的な同意が存在しても具体的特定の工事についての同意はその都度求めるべきであつて、その同意が本件には欠けている。
2、法第四条一乃至三号列挙の事由は免許又は承認の許容事例であつて、その一に該当する場合であつても免許又は承認処分を必らずしなければならないわけではない。
知事はよろしく埋立工事の適正な進行をはかると云う趣旨を第一義に考えて承認を与えないこと、あるいは一時延期する事も可能なのである。
公有水面埋立免許ないし承認は、権利者の同意がある場合に限つてなされるのが例であり、同意のない場合免許、承認処分がなされた例は未だかつてないのである。
それにも拘らず、被申請人が本件承認処分をなしたのは、第一の(二)ないし(四)項で詳細に述べた如く、門樋の人達を特に不当に差別し、孤立させ、分裂させ正当な公害反対の斗いをやめさせる意図を推認させるに充分であり、又これを覆えすに足る門樋住民の生活実態調査、補償交渉の真実性を担保させるに足りる承認処分をなすにあたり、その前提としての住民の民主的意思を反映させる公正な手続履践はなされていないのであり、右は行政処分の中立性、公正性から本来考慮に入れてはならない余分な不純動機や他事考慮が介在し、そのこと自体で違法と云わざるをえないし、右は別の観点から云えば裁量権の濫用として違法と云うの外はない。
3、又被申請人は本件承認処分は法第四条三号の「其の埋立が法令に依り土地を収用又は使用することを得る事業のため必要なるとき」に該当する旨主張し、この場合には権利者の同意がなくても承認処分は適法であると云う。
然しながら、かかる解釈は旧明治憲法下ではいざ知らず、人権尊重を第一義とする現憲法下では通用しない解釈である。
即ち、土地収用法は公用収用の一般法として、一面収用対象者の権利保護のため各種の手続規制をなしているのであるが、公有水面埋立の場合のみ、その様な権利保障乃至手続保障規定の履践が全然無くてもよいと云うのはまさに憲法一三条・二九条・三一条違反と云わざるをえない。これを回避するためには、右同条三号の規定を、その様な事業のため必要であつても問答無用に免許承認処分が適法になされると云うことではなく、それと共に権利者が同意をした場合と同視しうる状態にある場合に限つてはじめてその処分が適法となるものと之を制限的に解釈しなければならないのである。
之を違つた側面から云えば権利者が同意をしないのであるが、それが各種の実態調査並びに補償交渉の経過からみて、反対のための反対であり、誰がみてもその不同意が納得出来ないと客観的に云える場合に初めて、同条三号の適用の余地があるものと云わざるを得ないのである。
本件の場合門樋住民は、単に反対のための反対を云つているのではなく、本件埋立工事区域に狭いながら限定はされているものの先祖より継承したたつた一つの漁場を三〇〇万円程度の涙金で奪わんとする人権無視の行政に反対しているのであつて、ここにも本件承認処分の問答無用の暴力的違法性があるのである。
第三、被申請人の主張する行訴法第二五条第三項前段の事由の不存在
一、被申請人側では本件埋立工事は現在一、二〇〇米の松山空港滑走路を昭和四二年から五ケ年計画で二、〇〇〇米に拡張整備する事業の一環としてなされているもので、若し執行停止の決定ある場合にはその工事が遅延し、公共の福祉に重大な影響を生ずると主張している。
そこでこの点について反論すると、まず考慮せられるべきは、公共の福祉という概念は憲法に保障する基本的人権の保障と相矛盾するような、すなわち個に対する全体或は特殊にたいする一般といつたような単純に多数者の利益といつた意味に解釈することは現憲法体系の下においては許されないということである。
本件ではその埋立により多数地域住民の生活が根底から破壊されるというこの現実もまた公共の福祉の観点から充分に考慮せられるべきである。
行政当局のなす事業であるから公共の福祉にそうものであるというような権力的独断的解釈は、きびしく排斥されなければならない。ましてや昨年度の繰越予算が使えなくなるなど行政当局内部の事情が公共の福祉として強調せられるなぞはナンセンスでさえある。そのような事情と、申請人組合員家族の生存権と、いずれが重いとされるのであろうか。このいずれが公共の福祉といえるのであろうか。判例においても、
「憲法にいう公共の福祉とはまさにこの人権相互間の矛盾衡突の実質的に公平な調整すなわち人権相互間の統合的な調和の原理そのものでなければならない」 =昭和三七年八月二七日佐賀地裁勤評事件判決= とされているのである。
また行政法の解釈としても、
「その影響が重大かどうかは絶対的基準によるべきではなく、処分の執行により申請人の受ける損害との関係において、その損害を看過してまでもなお公共の福祉に対する影響をより重大としてこれをまもるほどの必要があるかどうかという見地から相対的に判断すべきものと解する」とされている。
本件において申請人組合は正当な補償なくしてその目的の根本たる漁業権を侵害されようとしている。そして、大可賀地域組合員の生活が危難にさらされようとしている。これに対し、被申請人側では誤つた法解釈のもとに交渉をいたずらに遅延させ、その挙句に予算年度中に予算が使い切れないなどの勝手な主張を述べて執行停止の不当性をなじつている。
若し、真に空港拡張が必須の事業ならば、申請人組合らにも正当な補償をなすべく、昨年中において早々の交渉がもたれるべきであり、またその交渉過程においても同一組合内の吉田浜地区組合員のみに詐欺的な廃業を理由とする一千万円の補償などの手段を用い、他方この漁場を最大の生活源として、損害の重大な大可賀地域住民には、組合全体として三百万円といつたような挑発的な交渉態度をとらなかつた筈である。
したがつて本件執行停止により仮に一時的な工事の遅延が生じたとしてもそれは行政当局自らの責任において招いた結果であり、それにひきかえ申請人組合としては、この執行停止のなされないかぎり、その権利を保全する余地は全く見出し難いものである。この両者の損害とその責任を較量すれば、それは公共の福祉に重大な影響を与え、執行停止は不能なりなどとの結論には達しうべきものではないこと明らかである。
基本的人権ことにそれが生存に直結している本件のごとき財産権につき、それを正当な補償もなく剥奪してしまうことは、公共の福祉の名の下においてもなしうることではなく、それは憲法に違反する措置である。
二、また空港拡張の必要性そのものについても必ずしもそれは被申請人の主張するような内容のものではない。
まず根本的に現在のわが国の航空行政というものは国民全体の利益のためにではなく一部の独占資本の利益に奉仕するために運用せられているという問題がある。
なる程航空機を利用する旅客の数は増加しているであろう。
また大型機の離着陸を可能にすればコスト減にはなるであろう。しかしながらそれを利用するのは国民全体の何パーセントの人たちであろうか。昭和四一年における輸送人員の統計をみても国内航空において四、六六六、〇二八人であつて、それは鉄道バス乗用車、旅客船など全輸送機関別比較表によると、実に全輸送量の〇・〇一五パーセントにしか当らない。一万回に一・五回の割合でしか利用されていないということになるのである。
しかもこのような微少な輸送量の上にもなお安全性の見地から二千メートルの滑走路が必要なのかという点を検討してみても松山空港において現在主に使用されているYS11型機とかフレンドシツプ機については一、二〇〇メートルでその離着陸に何の支障もないのである。
昭和四一年における松山空港沖事故は滑走路の長さよりも操縦の誤りに起因するものとされている。
そして昭和四一年当時における民間航空の使用していた飛行場のうち九割が一、五〇〇メートル以下の滑走路、二、〇〇〇メートル以上のものは二ケ所しかなかつた。
そしてこの原因の主たるものはわが国航空行政が極端に軍事目的中心に運用されてきたことを物語るものである。
何故ならば航空自衛隊では一、五〇〇メートル以内の飛行場は皆無であり、二、〇〇〇メートル以上の飛行場が六割を占めていたことと右の民間航空の場合を対比することで明瞭なのである。
民間航空が完全な整備がなされないまま放置されたということは再軍備政策を国民の犠牲の上に強行してきた歴代保守権力の政府の責任なのであつて、それを今になつて一挙に地域住民の権利を侵害してまで着工しようとすることは権力の側からの充分の配慮のなされた上なら別として、弾圧的に実施しうる筋合いのものではないのである。
大型機発着の可能な飛行場の整備などということは現実には民間航空会社の営業政策と県民全体とは関係のない一部地方政界や財界の人たちの満足感を充たす以外地域住民の福祉とはおよそ関係のないものである。
従つてこれらの諸事情と本件埋立工事により蒙る申請人組合員らの致命的な損害を考慮するときは五年間を予定する工事の若干の遅延などは未だ行訴法第二五条第二項前段の公共の福祉に重大な影響を及ぼすという事由には当らないというべきである。
第四  結論
本事件の結論は明白な違法を敢てしている行政権力の横暴とこれに生死を賭して抵抗している僅か十数名の漁民の権利とそのいずれを守るかという二者択一の決断にかかつている。
そこに人権の府としての裁判所の使命と存在価値が大きく問われているのである。
公正な法の適用と判断を期待する次第である。 以上

(別紙)
意見書
申請の趣旨に対する意見
本件執行停止申請を却下する。
申請費用は申請人の負担とする。
理  由
第一、本案について理由がない。
被申請人のなした本件埋立承認処分(以下「本件処分」という)には、以下に述べるように、原告が主張する違法な点はなく、本件処分の取消を求める原告の本案請求は理由がないので、本件執行停止申請は許されない。
一、申請人は、公有水面埋立法四条によれば、埋立に関する工事の施行区域内における公有水面に関して権利を有する者があるときは、その埋立を承認するには当該権利者が埋立に同意していることを要件とするところ、本件では権利者である申請人は埋立に同意していないので、本件処分は違法であると主張している。
二、しかし、公有水面埋立法第四条によれば、埋立に関する工事の施行区域内における公有水面に関して権利を有する者がある場合、同条一号乃至三号に規定する要件のいずれか一つに該当するときは埋立を承認することができるのであつて、申請人が主張するように「権利を有する者が埋立に同意したとき」(同条一号)に限つて承認が許されるものではない。そして、本件では、権利者である申請人が埋立に同意していることは後に詳述するとおりであるが、そればかりでなく、同条三号の「其の埋立が法令に依り土地を収用又は使用することを得る事業のため必要なるとき」にも該当するのである。
すなわち、申請人も認めているように、本件埋立の目的は第二種空港である松山空港の滑走路造成にある。この松山空港は、航空法五六条二項で準用する四〇条の規定に基づき、昭和三三年四月一一日運輸省告示一六八号によつて設置された公共の用に供する飛行場である(疎乙第一号証)から、土地収用法三条一二号により土地を収用し、又は使用することができる公共の利益となる事業である。したがつて、松山空港の滑走路造成を目的とする本件埋立は、公有水面埋立法四条三号に規定する場合に該当するのである。
それ故、申請人が本件埋立に同意しているか否かを論ずるまでもなく、被申請人が本件処分をなしたことは適法である。
三、次に、申請人は、以下に詳述するように、本件埋立に同意しているので、この点からも申請人の主張は失当である。
本件の埋立に関する工事の施行区域を含む松山市大字北吉田字忽那轡山西鼻より由利島南端見通線上七六四米の点と重信川右岸河口海面の堤塘線上八〇〇米の点を結ぶ線内の水域(末尾添付図面参照、以下「補償済水域」という)については、昭和三三年一二月一六日に、共同漁業権者である高浜漁業協同組合・今出漁業協同組合・申請人大可賀吉田浜漁業協同組合と、松山市長との間に左記のような要旨の漁業補償契約が締結されていた(疎乙第二号証の一、二)。
1、申立人ら三漁業協同組合は、松山市及び愛媛県並びにその誘致した各種工場や飛行場等が、補償水域内にその事業の遂行上必要な埋立及び港湾施設の設置、整備並びに水面使用を適宜計画遂行することを認める。
2、申請人ら三漁業協同組合は、右埋立及び港湾施設の設置、整備並びに水面使用または船舶の航行、碇泊に支障を生じない水域で漁撈をすることができる。
3、松山市長は申請人ら三漁業協同組合に漁業に関する一切の権利を永代補償料として一、〇八〇万円を支払う。
ところが、松山空港について、管理者である運輸大臣は補償済水域の一部を埋立てて滑走路を拡張する計画を樹て、その工事を地方機関である第三港湾建設局に担当させることにした。それで、もともと松山空港は地元の愛媛県の誘致した第二種空港であり(疎乙第三号証)、右漁業補償契約上の受益の第三者であるので、第三港湾建設局は昭和四二年九月八日に申請人らに対し埋立計画を示して右契約上の利益を享受する意思を表示するとともに、埋立工事への協力方を要請した(疎乙第四号証)。したがつて、これにより申請人は第三港湾建設局が行なう本件の埋立について同意しているものといえる。
四、なお、申請人は前記漁業補償契約が無効であるとか被申請人に対して効力を有しないとして、種々主張しているので、その失当である理由を述べる。
(1) 右契約は補償済水域について申請人が有する共同漁業権を消滅させるものであるから水産業協同組合法五〇条により申請人組合の総会における特別決議を要するところ、その決議がなされていないので無効であると主張している。しかし、右契約は補償済水域における埋立や港湾施設の設置、整備や水面の使用を申請人が認容することを約するにとどまり、それ以上に共同漁業権自体を消滅させるものではない。したがつて、右契約の締結にあたつては特別決議は不必要であり、申請人の右主張はあたらない。
(2) 右契約による永代補償料一、〇八〇万円は何時、いかなる区域の埋立に対する損失補償であるか不明であるから、申請人は本件処分に基づく埋立については同意していないと主張しているようである。けれども、申請人の右主張は簡略に過ぎて理解が困難であるので、釈明をまつて答弁する。
(3) 右契約は当事者である松山市長と申請人ら三漁業協同組合との間においてのみ効力を有し、本件埋立工事の実施者である第三港湾建設局との間には効力を有しないと主張している。けれども、右契約には第三者のためにする契約の面もあり第三港湾建設局は前記のように受益の第三者の地位にあるので、当然契約上の利益を享受しうるものである。
(4) 右契約が第三者のためにする契約であるとしても、第三者が不特定であるので第三者のためにする契約としては不適法であると主張している。けれども、第三者は、契約当時に具体的に特定していることを要せず、特定しうるものであれば足りると解されているところである。そして、契約締結の際作成された契約書の第二条によれば「甲(松山市長を指す)及び港湾管理者(愛媛県を指す)並びにその誘致した各種工場等」と規定されているところである(疎乙第二号証)。また、右契約は、将来の松山港の拡張整備、臨海工業地帯の造成、空港整備等を予想し、これ等の計画が具体化した場合その計画遂行に支障なからしめるため、かつ又積極的に松山市将来の繁栄発展を図ることに当事者の意思が合致して締結されたものである。それで契約書の右文言と契約当事者の右のような意思を綜合すれば、第三者の範囲はおのずと特定されており、不特定であるという非難はあたらない。
(5) 前記契約の締結の際作成された契約書の第二条の記載によると「甲(松山市長を指す)及び港湾管理者(愛媛県を指す)並びにその誘致した各種工場等は前条に定める水域内にその事業の遂行上必要な埋立及び港湾施設並びに水面使用の適宜計画遂行できるものとする」とあつて(疎乙第二号証)飛行場という文言は見当らない。それで、松山空港はこの契約上の受益の第三者に該当しないと主張している。けれども、契約当事者の意思は、「工場等」のなかに飛行場をも含ましめたものであり、飛行場が右契約上の受益の第三者に該当するものであることは疑をいれない。このことは、前記のような契約締結に至る当事者の意思や、右契約の締結について協議した申請人漁業協同組合の昭和三三年四月二日の総会の議事録(疎乙第五号証)に、「第一号議案松山市吉田浜及び今出海岸整地埋立に関する件、吉田浜及今出海岸地帯の工場誘致並びに飛行場整備その他松山市の計画に因る海岸埋立護岸施設に伴なう漁業権者としての同意問題について議長より詳細説明し…………」とあるところからみても十分裏付けられるところである。
(6) 最後に、前記漁業補償契約については、目的物についての重大な錯誤があつたので、無効であると主張している。けれども、契約の対象水域については契約書の第一条で「大字北吉田忽那轡山西鼻より由利島南端見通線上七六四米(四二〇間)の点と重信川右岸河口海面堤塘線上八〇〇米(四四〇間)の点を結ぶ線内の水域(別紙図面)において…………」と明確に表示されていること、また図面をも添付されていること、更に申請人ら三漁業協同組合とも、数名の交渉委員を選出して交渉に当つたうえで、右契約を締結したものであること(疎乙第六号証)を考え併せると、申請人が主張するような目的物について錯誤があつたとは到底考えられない。仮りに申請人に錯誤があつたとしても、右のような事情のもとでは申請人に重大な過失があつたといえるからその無効を主張することは許されない。
第二、本件執行停止申請が認容されると、公共の福祉に重大な影響があること。もし本件執行停止申請が認容されると、本件処分に基づいて、現在、第三港湾建設局が着手している松山空港滑走路の拡張工事が行なえないことになる。その結果生ずるところを以下に詳述し、それが公共の福祉に重大な影響をおよぼすものであり、本件執行停止申請が許されないものである理由を明らかにする。
一、航空界の一般的状勢
世界の民間航空は第二次大戦後急速に発展し、特に国際旅客輸送については、戦前における船舶に代つて世界各地を結ぶ最も有力な輸送機関としての地位を確保するに至つている。わが国の民間航空は昭和二六年末に再開されて以来、当初は国際線、国内線とも使用機がダグラスDC3型、ダグラスDC4型、ダグラス4B型等のレシブロ機であり、路線、運航回数、輸送力とも微々たるものであつたが、昭和四〇年代においては、航空機の技術革新により、大型化、高速化の開発が進み、四〇年代の後半においては、国際線には座席数三五〇前後のボーイング747型機、速度が在来機の約三倍のコンコード及びUB・SST等の超音速機(マツハ二乃至三)が、また国内幹線には座席数二〇〇乃至三〇〇のエアーバスが、主要ローカル路線には逐次中型ジエツト機がそれぞれ導入され、その他のローカル路線については中型ターボロツプ機が就航する見通しである。このような航空機の大型化、高速化は、航空輸送の快適性、大量輸送を飛躍的に促進し、運航コストの低廉化を可能ならしめ、航行機利用は大衆化し、国民生活の向上、国民経済の発展に大いに寄与しているものである。
このような航空界のすう勢と昭和四一年度にわが国で相次いで発生した航空機事故は、わが国航空交通の安全について根本的に再検討を加えずにはおかなかつた。すなわち、運輸大臣は「航空保安体制を整備するための早急にとるべき具体的方策如何」について航空審議会に諮問したところ、昭和四一年一〇月一七日に答申がなされたが(疎乙第七号証)、これには空港の整備、なかんずく地方空港の滑走路延長、着陸帯の拡巾等基本施設及び航空保安施設の整備拡充を必要とし、国内主要地方空港についてはボーイング727級の精測進入を可能とするために、滑走路延長を二、〇〇〇米、着陸帯巾を三〇〇米、エプロン七バース以上に整備することを内容としている。
この航空審議会の答申及び昭和四一年度の航空機事故に対処して、運輸省は航空の安全対策を綜合的、かつ強力に進めるため、特に空港については滑走路の延長、保安施設の整備等を図り、航空機運航の安全を確保し、将来の航空機の大型化、高速化のすう勢に対処するため、昭和四二年度を初年度とする総事業費一、一五〇億円(新東京国際空港に係るものを除く)の空港整備五ケ年計画を策定し、計画的実施を推進することにした。この空港整備五ケ年計画は国際空港はもとより、今後国民経済の高度成長、急速な地域開発にともなう大都市及び地方主要都市相互間の交通はさらに活発化し、昭和四六年には国内乗降旅客数は昭和四一年度の約二、三倍の二、二〇〇万人と著しく増大するものと推定されるので、東京、大阪等の大都市及び各地の主要都市と直結する主要地方空港は、輸送コストの低廉化、輸送の迅速化を図るため、中型ジエツト機を導入出来るよう、航空審議会の答申の線に副い、滑走路は二、〇〇〇米に、ILRレーダー等航空援助施設等の保安施設を重点的に整備し、航空機運航の安全性、定時性、全日性の確保を図ることとなつている。
なお、この空港整備五ケ年計画については、昭和四二年三月二二日に閣議了解がなされている。
二、松山空港の状況とその整備五ケ年計画
松山空港は昭和三五年一〇月一〇日第二種空港(F級滑走路長一、二〇〇米)として供用を開始し、現在に至つているものである。
西日本経済圏を縦横に結ぶ定期航路が全日本空輸株式会社により、松山―大阪七便、(F27、YS11)、松山―高松―東京一便(YS11)、東亜航空株式会社により松山―広島三便(CONV240、HERON)松山―大分一便(HERON)松山―北九州一便(YS11)がそれぞれ就航し、愛媛県交通の重要な部門を受け持ち、その利用状況は左記の通りである。

種別   昭和三五年 昭和三六年 昭和三七年 昭和三八年 昭和三九年 昭和四〇年 昭和四一年 昭和四二年
千人
航空旅客数
二五 六三 九五 一三五 一七七 二四九 二二四 二七六
前年比 二、五二 一、五一 一、四二 一、三一 一、四一 〇、九〇 一、二三
トン
航空貨物
七〇 一二八 一四五 一八七 二七三 三〇九 三四七 四三〇
前年比 一、八三 一、一三 一、二九 一、四六 一、七九 一、一二 一、二四
トン
航空郵便
一七 三〇 三五 三九 五八 七〇 七五 九二
前年比 一、七七 一、一七 一、一一 一、四九 一、二一 一、〇七 一、二三

着陸回数
九二九 二、九六六 四、一四三 四、二三八 四、七三二 六、四七二 六、八五六 七、六二五
前年比 三、二〇 一、四〇 一、〇二 一、一二 一、三七 一、〇六 一、一一

又昭和四一年度わが国々内航空需要(幹線空港、東京、大阪、名古屋、千歳、板付空港を除く)に対する松山空港のシエアーは左表の通りである。

種別 航空旅客数 航空貨物 航空郵便
全国 二、二三七千人 六、二〇三トン 一、一〇〇トン
松山空港 二二四 三四七 七五
全国比 一〇% 五、六% 六、八%

更に他の地方空港に比較し松山空港の占める地位は、旅客数については、鹿児島空港三六四千人に次いで第二位、航空貨物については、広島空港九五三トン、札幌空港六六四トン、高松空港五三二トン、高知空港四六七トン、仙台空港四六〇トン函館空港三九七トン、鹿児島空港三四〇トンについで全国第八位、郵便貨物については広島空港二五一トン、鹿児島空港一一八トン、高松空港九一トン、仙台空港八一トンについで全国第五位であつて、当松山空港は地方空港としては上位にランクされ、その旅客については、今後毎年二〇%以上の増大が見込まれている。この空港旅客の安全、快適、迅速化を図るためには、現在就航しているF27、OV240、YS11機より大型且つ高速の航空機の就航できるように航空審議会答申の別添一、地方整備基準表分類一類の基準に適合するよう(疎乙第七号証)空港整備五ケ年計画により整備することとなつている。
整備五ケ年計画の内容を、昭和四一年度整備状況と対比して示すと、次の表のとおりである。これを一口にいうと、ボーイング七二七級の航空機の精測進入を可能とするため、滑走路を二、〇〇〇米とし、それに必要な航空保安施設を設置することを目標とするものである。そして、この整備計画は昭和四二年度より五ケ年の予定で実施され、昭和四七年四月一日より供用開始することが、告示されている(疎乙第八号証)。なお、その総事業費は四三億五千万円が予定されている。

施設内容 昭和四一年度迄整備情況 昭和四六年度迄整備改良計画(空港五ケ年計画)
基本施設
着陸帯 一、三二〇米×一二〇米 アスフアルト舗装 二、一二〇米×三〇〇米 アスフアルト舗装
滑走路 一、二〇〇米×三〇米 二、〇〇〇米×四三米
誘導路 一二五米×一八米 二、二三〇米×二三米
エプロン 一七、〇〇〇平方米
航空保安施設
N・D・B(無指向性中波無線標識) V・O・R(超短波全方向式無線標識)
V・H・F(地対空通信施設) D・M・E(距離測定装置)
テレタイプ(固定通信施設) I・L・S(計器着陸装置)
進入角指示灯、滑走路灯、末端灯、誘導路灯、飛行場灯台、航空障害灯 A・S・R(空港監視レーダー)
進入灯
滑走路灯、誘導路灯、エプロン灯、飛行場灯台、航空障害灯等の一部改良
空港用地 四七一、三〇〇平方米 九七九、九八〇平方米(今後購入用地約二九五、五〇〇平方米、海面埋立一九〇、五〇〇平方米)

三、滑走路延長工事について
松山空港において滑走路を八〇〇米延長する場合、(1)陸側に延長する方法、(2)海岸に延長する方法、(3)陸及び海の両側に延長する方法の三案が考えられる。
(1)の場合は、延長方向は畑地であるが、延長分八〇〇米をすべて此の方向とするときは、水路、道路の付替補償及び物件補償等に多額の経費を心要とすることと、山岳、丘陵等航空機運航上障害物の問題が発生し、更に空地が住宅に近づく事となり、航空機の騒音の影響が大きくなる等より、比較的問題点の少ない四五〇米区間にとどめておくことが良策と判断される。(2)の場合は、現在の滑走路も既に一部埋立地であり、海岸線の水深が比較的大きいので、延長部分八〇〇米すべてを海にとるよりも経済的見地から三〇〇米―四〇〇米にとどめることが良策と思考される。以上の見解より(3)案が最も良策と考えられ、海側三五〇米、山側四五〇米に夫々延長することとされた。
ところで、現在、空港両側に介在する農道を連絡するために滑走路を横断して農耕者が往来しているが、これは航空機の安全をおびやかすものであるので、松山空港整備五ケ年計画では、この道路を確保するために、地下道を設置することを計画している。この地下道は現在使用している滑走路の山側末端より三〇〇米の位置の予定であり、この施行は直ちに滑走路の機能停止となる。そこでこれを避けるために、先づ海側の用地造成及び海側の滑走路延長三五〇米を昭和四三―昭和四五年度に施行し、海側より一、二〇〇米の滑走路を確保し、其の間に陸側の用地買収、家屋移転、果樹、かんがい施設、排水施設、工業用水道、県道付替等の補償を進め、昭和四六年度に約三〇〇米の地下道及び陸側の滑走路延長四五〇米を実施し、二、〇〇〇米の滑走路を完成さすよう工程を策定した。
松山空港の二、〇〇〇米滑走路を計画決定の告示の予定通り、昭和四七年四月一日より供用を開始するには、地下道施行の関係上、海側の用地造成及び滑走路延長は、昭和四五年度に完了しなければならない。海側用地造成のための護岸は、波高三、〇米の冬期風浪に対して消波効果の大きい捨石を消波ブロツクで被覆する構造とし、飛沫を極力押え、航空機の運航の安全を図ることとしているが、この構造は消波ブロツクの据付が冬期までに施工されていないと手戻り災害を受け易いので、このようなことのない様に、昭和三六年六月に着工したものである。この時期を失すると、本年度施工予定数量の大部分は来春に持ち越され、二、〇〇〇米滑走路の供用開始時期もそれだけ遅延することとなる。
四、本件執行停止申請が認容された場合の損害
もし、本件執行停止申請が認容されると、海側滑走路の埋立工事は中止せざるを得なくなる。すると、前記のとおり工事の時期を失して、本年度施行予定工事の大部分は来春に持ち越され、二、〇〇〇米滑走路の供用開始時期もそれだけ遅延することになる。
のみならず、昭和四二年度の予算で松山空港整備のため認められた額のうち、約二億九千万円余が未使用のまま昭和四三年度へ繰越しが認められているが、この繰越し額は予算の性格上昭和四三年度中に使用してしまわないと不要額として国庫へ返還されることになつている。それで、本年度執行予定の工事の大部分が来春に持ち越されると、この繰越し額の使用も困難となり、結局国庫へ返還されることになる。一旦、不要額として国庫へ返還された額が、将来再び松山空港整備費として予算上確保されるか否かは、ときの国家の財政事情によつて決ることであり、財政事情の如何によつては予算措置が遅れることもありうる訳である。したがつて、予算上の制約からも、二、〇〇〇米滑走路の供用開始時期が数年遅延することにもなりかねない。
このように、二、〇〇〇米滑走路の供用開始が遅延することは、その間、増大する国民の航空交通への需要に対応して大型化、高速化する航空機を、松山空港は受け入れられないことを意味する。そうなると、松山空港が背後の臨海工業地帯や観光地を始め西日本経済圏の空の窓口としての重要な役割を果してきただけに、愛媛県は勿論、西日本一帯の経済活動、旅客交通に重大な支障を及ぼすことになる。
また、滑走路が長いことは、航空機の離着陸の際の安全性を高めるものであることは公知の事実である。昭和四一年一一月一三日松山空港沖で発生した全日空YS11機(操縦者及び乗客五〇人)の悲惨な事故を考えてみただけでも明らかなように、現在の規模における航空機においても、航空機の安全性を高めるうえから松山空港の滑走路が一日も早く延長されることが切望されているところである。したがつて、二、〇〇〇米滑走路の供用開始が遅延することは、それだけ航空機の安全性を高めることが遅延することになり、これは国家的損失である。
以上のような、本件執行停止申請が認容された場合に予想される損害が生ずることは、まさしく、公共の福祉に対する重大な影響を与えるものである。
第三、申請人には、以下に述べるように、回復の困難な損害を避けるための緊急の必要性がないので、本件執行停止申請は許されない。
一、申請人は、本件埋立によつて、埋立地一九〇、一〇九・五平方米及びその西方に約三〇万平方米に及ぶ埋立のための土砂を採取する区域について漁業ができなくなるので、申請人組合員の漁業の大半は不能となり失業状態を生じ、申請人組合の存立そのものが危胎に瀕する、と主張している。
二、本件の埋立面積及びその埋立のため土砂採取区域が主張のとおりであることは認めるが、(末尾添付図面参照)それらはいずれも昭和三三年の漁業補償契約による補償済水域内に属するものである。したがつて、申請人は、昭和三三年の漁業補償契約によつて、埋立区域及び土砂採取区域で行なわれる埋立工事による損害については、一、〇八〇万円の補償をうけて全て補償済みのものである。それ故、本件埋立による当該区域で漁業ができない損害については、もはや請求できないものであるから、たとえ、その損害がどのようなものであつても法的保護に値しない。
三、のみならず、右区域で漁業ができないことによつて申請人が蒙る損害は、決して申請人が主張する程大きいものではない。
申請人漁業協同組合は構成員七三名というが、そのうち約二〇名が大可賀町に、残る五〇数名が商吉田町(通称「吉田浜」と呼ばれる)に居住している。吉田浜に居住する五〇数名は半農半漁で生計を立てていて、漁業は主として夏期に行なつているに過ぎない。そして、吉田浜に居住する申請人組合員のうち川添清が、いわし機船船曳網漁業(許可漁業)を、また鵜籠正平外二六名が、いわし地曳網漁業(第三種共同漁業権)を各々営んでいたが、本件埋立に関連して、昭和四二年一二月に各々補償を得て漁業を廃止しており、吉田浜に居住する申請人組合員には、もはやいわし網漁業を営む者はいない(疎乙第四、九号証)。
このように申請人組合員のうち吉田浜に居住する五〇数名については、もともと漁業へ依存する度合がそれほど高くないこと、いわし網漁業をいとなむものがいないこと、埋立区域及び土砂採取区域以外にも申請人が共同漁業権一五三号を有している水域はかなり広いこと(末尾添付図面参照)を考え併せると、本件の埋立によつて蒙る損害はそれ程大きくはない。
一方、大可賀町に居住する申請人組合員約二〇名は、大体において夫婦とも組合員になつており、戸数においては約一〇戸である。そのうち、組合員中矢清国のみが、いわし機船船曳網漁業一統を営んでいるが、いわしが回遊魚である性質上、申請人が主張するように埋立区域や土砂採取区域だけが漁場では決してない。それ以外の共同漁業権の及ぶ区域は勿論のこと、その区域の外側の広大な海域においても行なわれるのである。現に、中矢清国は、愛媛県知事より、いわし機船船曳網漁業の漁業許可を得ているが、その操業区域は「松山市大可賀吉田浜漁業協同組合及び今出漁業協同組合地区地先海面」とされている(疎乙第九号証)。
ここに今出漁業協同組合地区とは、申請人組合の西側に隣接する地区であるのでその地区地先といえば、今出漁業協同組合が有する共同漁業権第一五四号の区域及びその外側の広大な海域をも含むことになる(末尾添付図面、疎甲第一九号証参照)したがつて、いわし機船船曳網漁業の外にいわし地曳網漁業をも考慮に入れても、本件の埋立によつて、いわし網漁業が潰滅的な打撃を受け主張のような損害を受けるとは到底考えられないところである。
いわし網漁業以外の漁業については、本件埋立工事に関係のない共同漁業権の及ぶ区域がかなり広い範囲で残つているので、そこで可能である。また、大可賀町に居住する組合員約一〇戸のうち、中矢清国、長谷川幸隆、中矢五郎、長谷川真喜雄、沖野義重、沖野鶴重、中矢国五郎、土居重好、長谷川礼治は、申請人組合の有する共同漁業権の区域の外側に広大な海域について漁業許可を得ている(疎乙第九、一〇号証)。したがつて、これ等の漁業によつて或る程度の漁獲をあげることは十分期待できるところである。
このような事情を綜合してみると、大可賀町に居住する組合員について、申請人が主張するように漁業の大半は不能となり失業状態を生ずるということは、到底あり得ないことである。
四、以上述べたように、申請人及びその組合員が本件埋立によつて蒙る損害は、それ程大きいものではなく、他方、もし本件執行停止が認容された場合に受ける損害は前記のように公共の福祉に対する重大な影響を及ぼすものであることを、比較衡量するならば、申請人及び申請人の組合員には、回復の困難な損害を避けるための緊急の必要性が存在するとは到底いいえないところである。

 

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政治と選挙Q&A「屋外広告物法 ポスター貼り(掲示交渉)代行」に関する裁判例一覧
(1)平成29年12月20日 東京地裁 平27(ワ)16748号・平28(ワ)32555号・平28(ワ)36394号 建物明渡等請求事件、賃料減額確認請求事件(本訴)、賃料増額確認請求反訴事件(反訴)
(2)平成29年 5月11日 大阪地裁 平28(ワ)5249号 商標権侵害差止請求事件
(3)平成29年 3月16日 東京地裁 平26(特わ)914号・平26(特わ)1029号 薬事法違反被告事件
(4)平成28年11月17日 大阪地裁 平25(わ)3198号 公務執行妨害、傷害被告事件
(5)平成28年10月26日 東京地裁 平24(ワ)16956号 請負代金請求事件
(6)平成28年 3月25日 東京地裁 平25(ワ)32886号 未払賃料請求事件
(7)平成27年 3月31日 東京地裁 平24(ワ)22117号 損害賠償等請求事件
(8)平成26年 2月27日 東京地裁 平24(ワ)9450号 著作物頒布広告掲載契約に基づく著作物頒布広告掲載撤去損害賠償請求事件
(9)平成25年 9月12日 大阪高裁 平25(う)633号 詐欺被告事件
(10)平成25年 1月22日 名古屋地裁 平20(ワ)3887号 損害賠償請求事件
(11)平成24年12月 7日 静岡地裁 平19(ワ)1624号・平20(ワ)691号 損害賠償請求(第一事件)、保険金請求(第二事件)事件
(12)平成23年11月18日 東京地裁 平23(レ)307号・平23(レ)549号 損害賠償等請求控訴事件、同附帯控訴事件
(13)平成23年 9月30日 東京地裁 平20(ワ)31581号・平21(ワ)36858号 損害賠償請求事件(本訴)、同反訴請求事件(反訴)
(14)平成23年 2月23日 東京高裁 平21(ネ)2508号 損害賠償請求控訴事件
(15)平成23年 1月14日 大阪高裁 平22(う)460号 大阪市屋外広告物条例違反被告事件
(16)平成22年10月 5日 京都地裁 平19(ワ)824号 損害賠償請求事件
(17)平成22年 7月27日 東京地裁 平20(ワ)30423号・平21(ワ)3223号 損害賠償請求事件(本訴)、払戻金返還請求事件(反訴)
(18)平成22年 3月29日 東京地裁 平20(ワ)22960号 建物明渡請求事件
(19)平成22年 2月 8日 東京地裁 平21(ワ)8227号・平21(ワ)21846号 損害賠償請求事件
(20)平成22年 1月27日 東京地裁 平21(ワ)9971号・平21(ワ)9621号 土地建物所有権移転登記抹消登記請求事件、鉄塔明渡請求事件
(21)平成22年 1月27日 東京地裁 平21(ワ)13019号 屋外広告塔撤去請求事件
(22)平成21年12月24日 東京地裁 平20(行ウ)494号 計画通知確認処分取消等請求事件
(23)平成21年 7月22日 東京地裁 平19(ワ)24869号 損害賠償請求事件
(24)平成21年 1月20日 那覇地裁 平19(行ウ)16号・平20(行ウ)2号 建築確認処分差止請求事件(甲事件)、建築確認処分差止請求事件(乙事件)
(25)平成20年10月17日 東京地裁 平20(行ク)214号 執行停止申立事件
(26)平成20年 9月19日 東京地裁 平19(行ウ)274号・平19(行ウ)645号 退去強制令書発付処分取消請求事件
(27)平成20年 4月11日 最高裁第二小法廷 平17(あ)2652号 住居侵入被告事件 〔立川反戦ビラ事件・上告審〕
(28)平成19年 2月21日 東京地裁 平18(行ウ)206号 損害賠償請求事件(住民訴訟)
(29)平成17年12月21日 東京地裁 平15(ワ)14821号 看板設置請求事件
(30)平成17年 3月31日 東京地裁 平15(ワ)27464号・平15(ワ)21451号 商標使用差止等請求本訴、損害賠償請求反訴事件 〔tabitama.net事件〕
(31)平成17年 2月22日 岡山地裁 平14(ワ)1299号 損害賠償請求事件
(32)平成13年12月21日 秋田地裁 平10(ワ)324号・平12(ワ)53号・平12(ワ)416号 土地明渡等請求、損害賠償請求事件
(33)平成13年 2月23日 大阪地裁 平10(ワ)13935号 損害賠償請求事件
(34)平成11年 2月15日 仙台地裁 平9(行ウ)6号 法人税更正処分等取消請求事件
(35)平成 9年 7月22日 神戸地裁 平8(ワ)2214号 損害賠償請求事件
(36)平成 8年 6月21日 最高裁第二小法廷 平6(あ)110号 愛媛県屋外広告物条例違反、軽犯罪法違反
(37)平成 8年 4月12日 最高裁第二小法廷 平4(あ)1224号 京都府屋外広告物条例違反
(38)平成 8年 3月 8日 最高裁第二小法廷 平4(オ)78号 損害賠償請求事件
(39)平成 8年 3月 8日 最高裁第二小法廷 平4(オ)77号 損害賠償請求事件
(40)平成 7年12月11日 最高裁第一小法廷 平4(あ)526号 各滋賀県屋外広告物条例違反、軽犯罪法違反
(41)平成 7年 6月23日 最高裁第二小法廷 平元(オ)1260号 損害賠償、民訴法一九八条二項による返還及び損害賠償請求事件 〔クロロキン薬害訴訟・上告審〕
(42)平成 6年 2月21日 福岡高裁 平元(ネ)608号 接見交通妨害損害賠償請求事件
(43)平成 4年 6月30日 東京地裁 平3(ワ)17640号・平3(ワ)16526号 損害賠償請求事件
(44)平成 4年 6月15日 最高裁第二小法廷 平元(あ)710号 大阪府屋外広告物条例違反、軽犯罪法違反被告事件
(45)平成 4年 6月15日 最高裁第二小法廷 平元(あ)511号 大阪市屋外広告物条例違反、軽犯罪法違反
(46)平成 4年 2月 4日 神戸地裁 昭49(ワ)578号 損害賠償請求事件 〔全税関神戸訴訟・第一審〕
(47)平成 4年 2月 4日 神戸地裁 昭49(ワ)578号 損害賠償請求事件 〔全税関神戸訴訟・第一審〕
(48)昭和60年 7月22日 最高裁第一小法廷 昭59(あ)1498号 所得税法違反被告事件
(49)昭和59年 9月28日 奈良地裁 昭58(行ウ)4号 都市計画変更決定一部取消請求事件
(50)昭和59年 7月17日 福岡高裁 昭58(う)487号 大分県屋外広告物条例違反被告事件
(51)昭和58年10月27日 最高裁第一小法廷 昭57(あ)859号 猥褻図画販売、猥褻図画販売目的所持被告事件
(52)昭和58年 8月24日 福岡高裁 昭57(う)254号 軽犯罪法違反、佐賀県屋外広告物条例違反事件
(53)昭和58年 6月21日 大分簡裁 昭55(ろ)66号 大分県屋外広告物条例違反被告事件
(54)昭和57年 3月 5日 佐賀簡裁 昭55(ろ)24号 軽犯罪法違反、佐賀県屋外広告物条例違反事件
(55)昭和56年 8月 5日 東京高裁 昭55(う)189号 軽犯罪法違反被告事件
(56)昭和56年 7月31日 神戸簡裁 昭56(ろ)167号 軽犯罪法違反、兵庫県屋外広告物条例違反事件
(57)昭和55年 4月28日 広島高裁松江支部 昭54(う)11号 公職選挙法違反被告事件 〔戸別訪問禁止違憲事件・控訴審〕
(58)昭和54年12月25日 大森簡裁 昭48(う)207号・昭48(う)208号 軽犯罪法違反被告事件
(59)昭和53年 7月19日 横浜地裁 昭51(ワ)1147号 損害賠償事件
(60)昭和53年 5月30日 大阪高裁 昭52(ネ)1884号 敷金返還請求事件
(61)昭和51年 3月 9日 東京高裁 昭47(う)3294号 埼玉県屋外広告物条例違反等被告事件
(62)昭和51年 1月29日 大阪高裁 昭50(う)488号
(63)昭和50年 9月10日 最高裁大法廷 昭48(あ)910号 集団行進及び集団示威運動に関する徳島市条例違反、道路交通法違反被告事件 〔徳島市公安条例事件・上告審〕
(64)昭和50年 6月30日 東京高裁 昭47(う)3293号 埼玉県屋外広告物条例違反・軽犯罪法違反被告事件
(65)昭和50年 6月12日 最高裁第一小法廷 昭49(あ)2752号
(66)昭和50年 5月29日 最高裁第一小法廷 昭49(あ)1377号 大阪市屋外広告物条例違反被告事件
(67)昭和49年12月16日 大阪高裁 昭49(う)712号 神戸市屋外広告物条例違反等事件
(68)昭和49年 5月17日 大阪高裁 昭45(う)868号
(69)昭和49年 5月17日 大阪高裁 昭45(う)713号 大阪市屋外広告物条例違反被告事件
(70)昭和49年 4月30日 東京高裁 昭48(行コ)35号 行政処分取消請求控訴事件 〔国立歩道橋事件〕
(71)昭和48年12月20日 最高裁第一小法廷 昭47(あ)1564号
(72)昭和48年11月27日 大阪高裁 昭48(う)951号 大阪市屋外広告物条例違反被告事件
(73)昭和47年 7月11日 大阪高裁 昭43(う)1666号 大阪府屋外広告物法施行条例違反事件 〔いわゆる寝屋川ビラ貼り事件・控訴審〕
(74)昭和46年 9月29日 福岡高裁 昭45(う)600号 福岡県屋外広告物条例違反被告事件
(75)昭和45年11月10日 柳川簡裁 昭40(ろ)61号・昭40(ろ)62号 福岡県屋外広告物条例違反被告事件
(76)昭和45年 4月30日 最高裁第一小法廷 昭44(あ)893号 高知県屋外広告物取締条例違反・軽犯罪法違反被告事件
(77)昭和45年 4月 8日 東京地裁 昭40(行ウ)105号 法人事業税の更正決定取消請求事件
(78)昭和44年 9月 5日 金沢地裁 昭34(ワ)401号 損害賠償請求事件 〔北陸鉄道労組損害賠償請求事件〕
(79)昭和44年 8月 1日 大阪地裁 昭44(む)205号 裁判官忌避申立却下の裁判に対する準抗告事件
(80)昭和44年 3月28日 高松高裁 昭42(う)372号 外国人登録法違反・高知県屋外広告物取締条例違反・軽犯罪法違反被告事件
(81)昭和43年12月18日 最高裁大法廷 昭41(あ)536号 大阪市屋外広告物条例違反被告事件
(82)昭和43年10月 9日 枚方簡裁 昭41(ろ)42号 大阪府屋外広告物法施行条例違反被告事件
(83)昭和43年 7月23日 松山地裁 昭43(行ク)2号 執行停止申立事件
(84)昭和43年 4月30日 高松高裁 昭41(う)278号 愛媛県屋外広告物条例違反・軽犯罪法違反被告事件
(85)昭和43年 2月 5日 呉簡裁 昭41(ろ)100号 軽犯罪法違反被告事件
(86)昭和42年 9月29日 高知簡裁 昭41(ろ)66号 外国人登録法違反被告事件
(87)昭和42年 3月 1日 大阪地裁 昭42(む)57号・昭42(む)58号 勾留請求却下の裁判に対する準抗告事件
(88)昭和41年 2月12日 大阪高裁 昭40(う)1276号
(89)昭和41年 2月12日 大阪高裁 事件番号不詳 大阪市屋外広告物条例違反被告事件
(90)昭和40年10月21日 大阪地裁 昭40(む)407号 勾留取消の裁判に対する準抗告事件
(91)昭和40年10月11日 大阪地裁 昭40(む)404号 勾留取消の裁判に対する準抗告申立事件
(92)昭和39年12月28日 名古屋高裁 昭38(う)736号 建造物損壊、建造物侵入等事件 〔東海電通局事件・控訴審〕
(93)昭和39年 8月19日 名古屋高裁 昭39(う)166号 軽犯罪法違反被告事件
(94)昭和39年 6月16日 大阪高裁 昭38(う)1452号
(95)昭和29年 5月 8日 福岡高裁 昭29(う)480号・昭29(う)481号 外国人登録法違反等事件
(96)昭和29年 1月 5日 佐賀地裁 事件番号不詳 外国人登録法違反窃盗被告事件
(97)昭和28年 5月 4日 福岡高裁 昭28(う)503号 熊本県屋外広告物条例違反被告事件

■【政治と選挙の裁判例一覧】「政治資金規正法 選挙ポスター」に関する裁判例カテゴリー
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