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「選挙 公報 広報 ポスター ビラ」に関する裁判例(70)平成15年 6月18日  大阪地裁堺支部  平12(ワ)377号 損害賠償請求事件 〔大阪いずみ市民生協(内部告発)事件〕

「選挙 公報 広報 ポスター ビラ」に関する裁判例(70)平成15年 6月18日  大阪地裁堺支部  平12(ワ)377号 損害賠償請求事件 〔大阪いずみ市民生協(内部告発)事件〕

裁判年月日  平成15年 6月18日  裁判所名  大阪地裁堺支部  裁判区分  判決
事件番号  平12(ワ)377号
事件名  損害賠償請求事件 〔大阪いずみ市民生協(内部告発)事件〕
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴  文献番号  2003WLJPCA06180001

要旨
◆市民生活協同組合職員が、同組合の幹部の不正を告発する文書を総代会の出席者に郵送したとして、懲戒解雇されたが、右懲戒解雇は違法であるとして、同幹部の共同不法行為による損害賠償責任が認められた事例

裁判経過
仮処分決定 平成11年 6月30日 大阪地裁堺支部 決定

出典
判タ 1136号265頁
労判 855号22頁

評釈
奥田香子・ジュリ臨増 1269号230頁(平15重判解)
大塚和成・銀行法務21 644号109頁
大塚和成・銀行法務21 629号64頁
河原林昌樹・季刊労働者の権利 253号29頁
小宮文人・法セ 600号121頁

参照条文
民法709条
民法715条

裁判年月日  平成15年 6月18日  裁判所名  大阪地裁堺支部  裁判区分  判決
事件番号  平12(ワ)377号
事件名  損害賠償請求事件 〔大阪いずみ市民生協(内部告発)事件〕
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴  文献番号  2003WLJPCA06180001

原告 U1
同 S
同 U2
上記三名訴訟代理人弁護士 河原林昌樹
同 上田誠吉
同 藤本齊
同 池内清一郎
同 財前昌和
同 谷英樹
同 斎藤浩
同 小川和恵
被告 A1
訴訟代理人弁護士 伊賀興一
同 田中史子
被告 A2
訴訟代理人弁護士 中西裕人

 

主文
1  被告らは、原告U1に対し、連帯して金一五〇万円及びこれに対する被告A2については平成一二年四月二〇日から、同A1については同月二七日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2  被告A2は、原告U1に対し、金三〇万円及びこれに対する平成一二年四月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
3  被告らは、原告Sに対し、連帯して金一四〇万円及びこれに対する被告A2については平成一二年四月二〇日から、同A1については同月二七日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
4  被告A2は、原告Sに対し、金三〇万円及びこれに対する平成一二年四月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
5  被告らは、原告U2に対し、連帯して金一二〇万円及びこれに対する被告A2については平成一二年四月二〇日から、同A1については同月二七日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
6  被告A2は、原告U2に対し、金三〇万円及びこれに対する平成一二年四月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
7  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
8  訴訟費用は、これを一〇分し、その四を被告A2の、その三を被告A1の、その余を原告らの各負担とする。
9  この判決は、第1項ないし第6項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1  請求
1  被告らは、原告U1に対し、連帯して金五〇〇万円及びこれに対する被告A2については平成一二年四月二〇日から、被告A1については同月二七日から、それぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2  被告らは、原告Sに対し、連帯して金五〇〇万円及びこれに対する被告A2については平成一二年四月二〇日から、被告A1については同月二七日から、それぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
3  被告らは、原告U2に対し、連帯して金三〇〇万円及びこれに対する被告A2については平成一二年四月二〇日から、被告A1については同月二七日から、それぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
4  仮執行宣言。
第2  事案の概要
1  本件は、大阪いずみ市民生活協同組合(以下「いずみ生協」というが、「“いずみ”」ないし「生協」という場合もある。)に職員として勤務する原告らが、いずみ生協の副理事長であった被告A1(以下「被告A1」という。)及び専務理事であった被告A2(以下「被告A2」という。)によりいずみ生協が私物化されているとの内容の内部告発を行ったところ、被告らにより、いずみ生協を懲戒解雇されたり、不当に長期間自宅待機処分をされるなどの報復等の行為をされ、さらに名誉を侵害されて、精神的損害を被ったと主張して、被告らに対して不法行為に基づき損害賠償を求めた事案である。
2  前提となる事実(当事者間に争いがない事実、証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)
(1)  当事者等
ア いずみ生協は、消費生活協同組合法に基づき設立された生活協同組合である。大阪府堺市に主たる事務所を置き、組合員数は、北は東大阪市から南は岬町までのエリア内の約四分の一の世帯数に当たる約二九万世帯である。
イ 被告A1は、いずみ生協において、昭和四九年一一月から平成二年五月までは専務理事、同月から平成九年六月二日に辞任するまでは副理事長の地位にあった者である。
ウ 被告A2は、いずみ生協において、昭和六一年五月から平成元年五月までは理事、同月から平成二年五月までは常勤監事、同月から平成六年五月までは常務理事、同月から平成九年九月までは専務理事、同月から平成一一年六月までは常務理事の地位あった者である。
エ 原告らは、いずれもいずみ生協の職員である。平成九年五月二七日当時、原告U1(以下「原告U1」という。)は役員室室長、原告S(以下「原告S」という。)は総務部次長、原告U2(以下「原告U2」という。)は共同購入運営部次長の地位にあった。
(2)  いわゆる内部告発等
ア いずみ生協の総代会は、毎年五月に開催されるいずみ生協の最高議決機関である。総代会においては、いずみ生協の組合員(以下単に「組合員」という。)の代表である総代が、議決を行う。総代は、組合員約五〇〇人に一人の割合で、組合員による選挙によって選出される(甲28)。
イ 原告らは、平成九年五月二〇日開催予定の総代会の直前である同月一五日、いずみ生協の総代(当時五五二名。甲63、乙7)の大半(約五三〇名。乙33の92)その他生協関係者らに対し、原告ら三名作成にかかる「いずみは何のため 誰のための組織? その組合員への背信行為の実態」と題する文書(以下「本件内部告発文書」という。甲1。)を匿名で送付し、同月一六日ないし同月一八日ころにかけて、原告U1作成にかかるはがきその他の文書(甲2の1、2、甲3の1ないし3、甲4、甲5の1、2、甲6ないし甲12。なお、送付された文書の宛名、表現方法は、送付先の地位等により異なる。)を前記名宛人らに対し、匿名で送付した。以上の各文書は、同月一六日ないし同月一八日ころ、順次、各名宛人に到達した(甲51、甲78、乙7)(以下本件内部告発文書を始めとする各文書の一連の送付行為を「本件内部告発」という。また、これらの一連の文書をまとめて「本件内部告発文書等」という。)。
ウ 本件内部告発文書(甲1)には、概ね次のような記載がある。
まず、前文として、被告A1がいずみ生協を私物化し、公私混同を行っており、そこに組合員への背信行為が渦巻いているが、それは組合員にも、いずみ生協の職員にも知らされていないこと、専務理事を中心とする少数の役員、幹部が、そうした被告A1の行為を許容し、事実の隠蔽を行っていること等が記載され、次いで、以下の記載がされている。
(ア) 生協私物化のシンボル「狭山御殿」
被告A1は、自分の土地を自分が代表権を持ついずみ生協に貸し付け、年間五二〇万円もの高額の地代を得ている。同地代は、同土地購入のためのローン代金と固定資産税の合計金額を上回り、結局被告A1は、いずみ生協からの地代によって同土地を取得していることになる。
被告A1は、同土地上にいずみ生協が建てた建物(狭山御殿)に家賃を支払うことなく事実上の私邸として住み続けている。
いずみ生協は、同建物に三億円もの費用をかけているという話である。近隣や組合員の間で噂になったときの言い訳のため、この建物は、表向きは「いずみ市民生協幹部研修寮」と名付けられているが、幹部の研修をしたことなど一度もないようである。
被告A1は、同建物に女性秘書を住まわせ、いずみ生協の費用で身の回りの世話をさせている。被告A1がいずみ生協の女性職員に対してセクハラ事件を起こしたという話もある。最近一〜二年間に退職した若い女子職員二名は、「狭山御殿」がらみで「セクハラ」を強要され、勇気を持ってはねつけたために退職に追い込まれた。一人の女子職員は訴訟まで起こしかけたが、顧問弁護士を使い、お金も使い、示談で済ませたという話が広くいずみ生協内部に伝わっている。
(イ) 組合員の財産で購入したゴルフ会員権とはハワイの別荘
いずみ生協は、ゴルフ会員権を六件取得し、取得費用は一億円を超えている。これらのゴルフ場は被告A1ひとりしか利用できず、それらのゴルフ場でのプレイ費用、飲食費用、ゴルフクラブやウエアの購入費用がすべていずみ生協の経費として処理されているといわれている。
また、被告A1の意思により、いずみ生協は、その子会社である株式会社コープ大阪サービスセンター(以下「コープ大阪サービスセンター」という。)に資金を貸付け、ハワイのマウイ島のコンドミニアム二棟(以下「コンドミニアム」という。)を一億数千万円で取得させた。実際に現地に行った者の話によれば、うち一棟は、全くの被告A1の個人用であり、もう一棟は、被告A1がハワイに招待するVIP専用とのことである。被告A1の専用車として高級車リンカーンも購入したそうである。別荘の維持にかかる年間四〇〇万円以上の管理費用は、コープ大阪サービスセンターが支払い、いずみ生協が年間宿泊買取代金との名目で補填している。
被告A1は、年に数回ハワイを訪れているが、航空運賃、遊び代、飲食代、おみやげ代などその費用のほとんどをいずみ生協が負担しているといわれている。
(ウ) 生協の日常運営のすみずみにはびこる私物化
本部ビル一階には、被告A1の発案で造られたレストランが設置されているが、被告A1は、その内装等に二億円かかったとよく自慢している。このレストランの奥にも被告A1専用の通称VIPルームがあり、来客を案内しては超高級オーディオでコレクションのクラシック音楽を聴かせている。このレストランを被告A1が使うとなると、突然貸し切り、閉店となり、来店した組合員は締め出しを食らうことになる。このレストランは、人件費すらまかなえない超赤字部門であり、組合員にもそれを公表したことがない。
いずみ生協本部四階フロアーは、被告A1がひとりで独占し、執務室の奥には被告A1専用のベッドルームやシャワー室にまでついている。
被告A1は、いずみ生協の経費で洋服、ゴルフ道具、ライター、時計などを購入しているという話である。自分が使うのはもちろん、女性を始めいろいろな人にそれらをプレゼントしているというのはよく知られた話である。
被告A1の秘書と呼ばれる職員は、女子二名、男子一名がいるが、うち一名の女性職員には、狭山御殿に泊まり込ませて、掃除、洗濯など身の回りの世話をさせ、男性職員に運転手兼鞄持ちをさせている。
(エ) 自慢の国際交流も私物化の産物
いずみ生協自慢の国際交流活動も本当のところは、被告A1の英雄になりたいという主観的願望を実現したものにすぎない。
また、前述のハワイとは別に、被告A1は、年に数回、国際交流と称して海外旅行に出かけているが、一回の渡航で使う約五〇〇万円から一〇〇〇万円の費用のほとんどは、生協の経費で賄っている。最近では、自分が海外でとった下手な写真を職員や取引先に半ば強制的に買わせている。しかし、高い費用をかけて引き伸ばした写真の売れ残りが山とあるといわれているが、これも全部いずみ生協の経費によるものである。
(オ) 「いずみ」再生の道
このままでは、いずみ生協は、遅かれ早かれ崩壊への道をたどらざるを得ないので、総代会、理事会、労働組合は、いずみ生協を正しい道に戻すために中心となって力と責任を発揮して欲しい。総代会、理事会、労働組合が今なすべきことは、①いずみ生協と組合員の財産の私物化の実態を全組合員、全職員に明らかにすること、②いずみ生協と組合員の財産を私物化している被告A1とそれを許容し、事実を隠蔽している被告A2と一部の役員を解任すること、③徹底した真相究明を行う理事会、監事会を選出すること、④労働組合が真相究明の先頭に立つこと、であり、これしかいずみ生協が再生し、生き延びる道はない。
エ また、平成九年五月二〇日の総代会で発言予定の総代や、総代会議長らに送付された甲3の3には、被告A1が個人的に利用した西宮の高級病院での入院費用をいずみ生協が負担している旨や、「こんな横領と言ってもいい暴挙を許していいのでしょうか!」との記載がある。
オ さらに、総代に送付された甲2の1、総代会で発言予定の総代に送付された甲3の1、総代会議長に送付された甲4には、被告A1及び同A2の、組合員に対する背任、生協資金の横領は明白であること、事実を裏付ける証拠はすべて揃っており、必要であれば公表すること等が記載され、甲2の1、甲3の1には、平成九年五月二〇日の総代会においては、理事として、婦人理事と、B1理事、B2理事、B3理事、原告U1及びB4のみを信任し、被告A1などその余の候補者に対しては不信任にすべきこと等も記載されており、他の生協関係者らに送付された甲12においては、すべて裏付けとなる資料なども入手しており真実に間違いない旨の記載がある。
(3)  事実経過等
ア いずみ生協は、平成九年五月一七日、緊急拡大幹部会を開催し、本件内部告発につき協議した(甲82、被告A1本人)。
イ いずみ生協では、平成九年五月一八日、被告A1や同A2も出席の上、平成八年度第一五回理事会が開催された(甲87)。
また、いずみ生協は、同日、理事会・監事会連名で、「総代の皆さんへ」と題する文書(甲13)を総代らに送付した。同文書には、本件内部告発文書の内容が、「事実をねつ造し、歪曲したものであり、総代会の混乱といずみ市民生協への攻撃を目的としたものです」、「虚偽の事実を並べたてるというきわめて卑劣な行為であり、強い憤りを感じるものです」等の記載がある。
ウ いずみ生協は、平成九年五月二〇日、総代会を開催した。同会において、被告A1及び同A2は、理事に再任され、その直後の理事会で、被告A1は副理事長に、被告A2は専務理事に、それぞれ再任された。
同会において、いずみ生協理事会は、本件内部告発に関する一連の経過と背景について調査を行い、その結果を組合員に知らせていくことを明らかにした(乙7)。
エ 原告U1らは、平成九年五月二一日、大阪地方検察庁(以下「大阪地検」という。)に被告A1を業務上横領の罪で刑事告発した(甲53、甲79、弁論の全趣旨)。
また、被告A2らは、平成九年五月二一日、原告U1に対し、本件内部告発への関与等について事情聴取し、同月二二日にも事情聴取しようとした(乙33の15の1)。
オ いずみ生協の常勤役員会は、平成九年五月二三日、原告ら三名の行為が就業規則に違反するかどうか等に関し、調査委員会を設置した(甲87、被告A2本人)。
被告A2らは、同日、原告Sに対し、就業規則違反の有無等につき、事情聴取等をした(乙33の16の1)。
カ 被告A2らは、平成九年五月二六日、原告U2に対し、本件内部告発に関与しているかどうかにつき事情聴取をした。
キ 被告A2らは、平成九年五月二六日、原告U1に対し、再度事情聴取を行った(乙33の15の2)。
ク いずみ生協の人事担当役員であったB5常勤理事(以下「B5常勤理事」という。)は、平成九年五月二七日、原告ら三名に対し、就業規則一六条二項四号に基づき出勤停止及び自宅待機を命じた(甲17の1ないし3)。
また、いずみ生協は、同日付で「組合員ニュース(号外)」(甲14)を発行したが、それには「差出人不明の怪文書に怒りの声」、「“いずみ”の業務執行・資産管理は正しくなされています」などの記載がある。
ケ 平成九年五月二八日、いずみ生協本部において、店舗活動交流会が行われた。
コ 平成九年五年三一日、被告A2も出席の上、平成九年度臨時理事会が開催され、改善委員会の設置が決定された(甲87)。
サ 被告A1は、平成九年六月二日、いずみ生協副理事長を辞任した。
シ いずみ生協は、平成九年六月二日付で、組合員に対し、「組合員のみなさんへ」と題するパンフレット(甲63、乙7)を発行した。それには、本件内部告発につき、「卑劣な行為」、「生協を内部から崩壊させようとするもの」等の記載がある。
ス 被告A2らは、平成九年六月九日、原告Sに対し、事情聴取等を行った(乙33の16の2)。
また、被告A2らは、同日、原告U1に対しても、事情聴取等を行った(乙33の15の3)。
いずみ生協は、平成九年六月九日に開催した臨時理事会において、B5常勤理事の付議により、原告U1及び同Sに対する懲戒解雇を決議した(甲87)。
セ 被告A2は、いずみ生協の専務理事として、平成九年六月一〇日、同日付で、原告U1及び同Sに対し、懲戒解雇する旨の意思表示をした(以下「本件懲戒解雇」という。)。
原告U1については、①たびたび同僚の女子職員のバッグの中を無断でかき回し、プライバシーを侵害する行為を繰り返すとともに、私物等を盗み出し、それを複写し、持ち出したこと、また、許可なく職員個人のバッグや机等の中から私的なメモや資料等を持ち出し、あるいは複写して持ち出したこと(以下「資料の複写、持ち出し行為」という。)、②さらに、いずみ生協内外に虚偽の風説を流布し、いずみ生協内の風紀秩序を乱すとともに、生協の名誉、信用を著しく傷つける行為を行ったこと(以下「虚偽の風説を流布する等の行為」という。)、③勤務時間中にみだりに職場を離れ、所在行方が不明なことがしばしばあったこと(以下「職場離脱行為」という。)、④その他、金銭上の不正を疑う行為等がたびたびあったこと(以下「金銭上の不正行為」という。)が就業規則四六条(2)、(3)、(6)、ないし(8)、(11)に該当するとして、同四七条(4)を適用して懲戒解雇するものとされた(甲106)。
原告Sについては、⑤いずみ生協の取引先業者から約八〇〇万円相当の自宅マンション改装費用等の不当な利益を受けるとともに、しばしばゴルフ等の不当な接待を要求し、享受したこと(以下「利益供与を受けた行為」という。)、⑥さらに、いずみ生協内外に虚偽の風説を流布し、いずみ生協内の風紀秩序を乱すとともに、生協の名誉、信用を著しく傷つける行為を行ったこと(以下「虚偽の風説を流布する等の行為」という。)が就業規則四六条(2)、(3)、(8)、(11)に該当するとして、同四七条(4)を適用して懲戒解雇するものとされた(甲18の1)。
また、いずみ生協は、同日、所属長らに対して、部下の職員が原告U1及び同Sと接触したり、連絡をしたりなど一切の関係を持たないように指示徹底すること、並びに、原告U1及び同Sから職員に連絡や接触があった際には速やかに所属長に報告するよう指示徹底することを、B5常勤理事名義の(甲15)文書で指示した。
ソ 一方、原告らは、同日、「私物化・横領の真相を究明し、“いずみ”を組合員の手に取り戻しましょう!」と題するチラシ(甲50、乙10)を作成、組合員らに配布した。
タ 原告U1及び同Sは、平成九年六月一一日、大阪地方裁判所堺支部に地位保全及び賃金仮払の仮処分申請を行った(同裁判所平成九年(ヨ)第一四〇号)。
また、同日、いずみ生協の理事会と労働組合との団体交渉が行われた。
チ 平成九年六月一四日、いずみ生協の改善委員会による第一次中間答申書(乙33の18)が提出され、全組合員に配布された(被告A2本人)。
ツ いずみ生協理事会は、平成九年六月二三日付で、「明るく信頼しあえる“いずみ”を取り戻し、正しい生協運動を前進させよう」と題する部内会議資料(甲60)を発行したが、その中には、本件内部告発に関し、「大半が事実のねつ造、歪曲である」、「その根拠とした資料の正しさすら確かめず、虚偽の事実で個人と組織の信用を著しく傷つけている」、「地位と金のために“いずみ”を乗っとることが目的である」などの記載がある。
テ 平成九年九月一六日、臨時総代会が開催された(乙33の60)。
ト 平成九年九月一七日から平成一〇年一月中旬にかけて、いずみ生協に対し、平成六年度から同八年度を対象として、堺税務署により、(甲43、乙33の90)税務調査(以下単に「税務調査」という。)が行われた。
ナ いずみ生協は、平成九年一〇月一〇日、B5常勤理事名義で、所属長らに対し、同月一二日に原告ら三名が職員対象に説明会を開催するが、臨時総代会で決定された組合員の意志に反する行動は、いずみ生協の組合員を裏切る行為になるから、十分注意すべきことを、職員に周知徹底等するように指示する文書を発した(甲15)。
ニ いずみ生協は、平成一〇年一月一五日及び同年二月二一日、原告U2に対し、それぞれレポートを作成、提出するよう指示した。
ヌ いずみ生協は、平成一〇年三月一一日及び同年四月一〇日、原告U2を本部に呼び出して事情聴取しようとした。
ネ いずみ生協は、平成一〇年五月一日、原告U2を本部に呼び出し、出勤停止及び自宅待機処分を解除するとともに、社会福祉法人るうてるホーム(以下「るうてるホーム」という。)に研修員として派遣する旨の内示を行った。
いずみ生協は、平成一〇年六月一日、原告U2に対する前記内示を取り消した。
ノ いずみ生協は、平成一〇年八月四日、原告U2に対し、同月一七日付で出勤停止および自宅待機を解除し、福祉分野担当役員である被告A2付けの役員スタッフへの異動を行う旨の内示を行った。
これを受けて、原告U2は、同月一七日からいずみ生協に出勤するようになった。
原告U2には、同日、出勤停止・自宅待機を解き、福祉分野担当役員付の役員スタッフを命じる旨の辞令が出された(以下「本件配転命令」という。甲39)。
いずみ生協は、それ以後、原告U2に対し、勤務場所である本部五階フロア以外の業務に無関係の場所に立入りすることを禁止した。
ハ 平成一一年六月三〇日、大阪地方裁判所堺支部は、原告U1及び同Sに対する懲戒解雇が本件内部告発に対する報復であり無効であるとして、両名の地位保全等を認める仮処分決定(甲64)を出した(以下「本件仮処分決定」という。)。
ヒ いずみ生協は、本件仮処分決定後、原告U1及び同Sに対する懲戒解雇を撤回し、平成一一年八月一八日から、両名を職場復帰させた。
3  争点
(1)  本案前の主張
(2)  本件内部告発の正当性
(3)  原告U1及び同Sに対する懲戒解雇の違法性等(被告らの責任を含む)
(4)  名誉毀損の成否等(被告らの責任を含む)
(5)  原告らに対する隔離、軟禁、尾行、監視の有無等(被告らの責任を含む)
(6)  原告らに対する出勤停止、自宅待機命令、原告U2に対する配転命令の違法性等(被告らの責任を含む)
(7)  原告らの損害
4  争点に対する当事者の主張
(1)  本案前の主張
(被告ら)
原告らといずみ生協は平成一三年六月五日、確認書を締結し、「本件内部告発にかかわる問題については、全て解決したもの」とする訴訟外の和解を行った。この和解に基づき、原告らは、いずみ生協に対する本訴は取り下げ、訴訟は終結した。この和解後において、なお、原告らが本訴を維持することは、信義則上、権利の濫用として許されない。
(原告ら)
争う。
(2)  本件内部告発の正当性
(原告ら)
原告らの本件内部告発は、被告A1がいずみ生協を私物化している事態を正し、いずみ生協の正当化・再建を図るべく、最高議決機関である総代会でこの問題を取り上げてもらうために行ったものであり、以下に述べるとおり、これまで組合員の目に触れていなかった被告A1の生協私物化・横領の事実を明らかにし、その改善の大きな契機となったものであって、いずみ生協の民主的発展、自浄作用を促進したものである。また、本件内部告発の内容は、具体的根拠に基づき、大筋において真実のものであった。それゆえ、大阪府、税務当局は、それぞれの立場から生協と被告A1らを糾弾した。大阪地方裁判所堺支部は、懲戒解雇無効の仮処分決定で原告U1、同Sを救済した。いずみ生協自身は、原告らの解雇を撤回し、組合員と原告らに謝罪し、被告らの退職金を全部または相当程度カットした。そして、いずみ生協は、各方面からの指摘を受けて、組織体制を、なお不十分ながら正常化した。
したがって、本件内部告発は、本来、いずみ生協や組合員から歓迎されるべき正当な行為である。以下詳述する。
ア 原告らの本件内部告発を契機としてなされた大阪府及び大阪国税局堺税務署などの検査結果などによって、生協の業務運営が被告A1の専断を許す体制となっており、財務会計処理上も被告A1のための経費支出が可能となっていたこと、そして現実にそのような経費支出がなされたことが明らかとなった。
(ア) 大阪府の検査結果によれば、業務運営上の問題として、理事会議事録の整備・保存については、「議事の経過や議案そのものの記載が全くないものが多く見られた」、「特に、今回の個別の事案について、適正な手続きを踏んで行なわれたかどうかについて議事録で確認したが、ほとんどが議事録そのものに議案(協議事項)として記録されていなかった」、諸規定の整備については、「日生協や類似団体の制定例から見て、未整備のものが少なからず見られた。特に、理事会規則をはじめ役員報酬規定など、生協運営に不可欠な重要な規定についても整備が不十分である」との指摘がなされている。
このような生協のあらゆるシステムは、創設以来実務のトップに居続けた被告A1によって作られたものである。諸規定を整備せず、重要な部分で議事録を作っていなかったのは、被告A1の専断を許すためであった。また、生協の実際の運営は、理事会、幹部会、常勤役員会という本来の意思決定・運営システムが無視され、被告A1と同A2の二人による独断専行が行われていた。しかも、被告A2は、同A1の忠実な手足として動いており、同人の完全な支配下にあった。
(イ) また、大阪府の検査結果は、財務会計処理上の問題として、「経理に関する規定が定められておらず、実務的には慣例によって経費支出が行なわれており、仮払金の精算手続などにおいて、不適正な会計処理が見られた」、「役員報酬及び幹部役員の年俸のそれぞれの決定方法等について、適正を欠くと思われる事項が見受けられた」との指摘をしている。役員の報酬等については、総代会において議決された予算の枠の中で、副理事長であった被告A1と、同A2ら専務理事が相談して各役員の報酬額が決定されていた。被告A1の年収は、二九〇〇万円以上であった。これらのことから、被告A1とその側近幹部であったA2らは、いずみ生協組合員には知られないよう隠密裏に、被告A1のため高額の報酬だけではなく、好き勝手に経費支出を行い、仮払金の精算を不適正に行っていた。
イ 本件内部告発により指摘されている被告A1の生協財産の私物化、同人に対する利益供与については、以下のとおりの事実が明白となっている。
(ア) いずみ生協が大阪府大阪狭山市に建設した狭山研修寮(以下単に「狭山研修寮」という。)については、まず、被告A1が狭山研修寮を「事実上の私邸」としていたことが指摘されているが、大阪国税局堺税務署による税務調査結果の前に、いずみ生協は被告A1から狭山研修寮の家賃と桜が丘ホスピテルの使用料として過去三年分合計金二八九六万円を受け入れている。そもそも狭山研修寮と桜が丘ホスピテルを被告A1が私的に使用していないのであれば被告A1が家賃・使用料を支払う必要がないのであるから、この事実は「狭山研修寮」が被告A1の私邸であったことを自ら認めたことの何よりの証左である。
また、いずみ生協は、被告A1のために手付金六〇〇万円を立て替えて支払い、ローンと固定資産税等を支払っても余りある非常識に高い土地代(当初は年間六六〇万円、平成六年度からは年間五一九万六〇〇〇円)を支払い、平成四年から平成八年の五年間だけでも一〇〇〇万円近い金が被告A1のもとに残るようにしていた。これは、いずみ生協が、土地を被告A1の所有とし、家賃も支払わずに同人を住まわせて、さらには過剰減価償却(法人税法限度額の一五一%)により被告A1に対する建物の譲渡価格を大幅に引き下げて地代とローンと固定資産税等との差額で買い取らせようとしていたものである。
(イ) ゴルフ会員権の取得及びゴルフを伴う渉外活動については、大阪府の検査結果も、平成八年度のゴルフを伴う経費の支出は、五八件で七五四万七〇〇〇円と異常に多いことを指摘し、さらにゴルフを伴う渉外活動について、「たとえ一時的であっても、私的な費用を組合経費から支出するような不適正な会計処理は行わないこと。」と指摘しており、被告A1の私的な費用をいずみ生協の経費から支出していたことが認められている。さらに、生協に対する税務調査の結果、平成六年度から平成八年度の海外出張旅費のうち経費として認められなかった六八四万円は、被告A1が私的に費消したことが明らかとなっている。
(ウ) ハワイのコンドミニアムについては、大阪府の検査結果は、その取得手続についての不適正さを指摘し、さらには「維持管理費が貴組合から仮払という形で一時的に全額立て替えられていた」、「施設の利用実績をみると、九六年度は二室で延べ一〇三日であり、うち特定役員が五四日利用し、随行関係者も含めると利用の大半を占めており、組合員の旅行利用や役職員等の研修・保養目的の利用はほとんど認められなかった。」と指摘し、被告A1の私的な使用とその経費の生協からの支出が明らかとなっている。
(エ) いずみ生協の資産の私物化及び被告A1に対する利益供与については、いずみ生協は、役員、幹部の給与を上乗せし、同人らからその上乗せ分を被告A1に還流させており、平成三年から平成八年までの間でその額は約二八〇〇万円にも上っている。また、生協は、税務当局の指摘に基づき、被告A1の海外出張費用のうち少なくとも三二九八万円を交際費に計上すべきものと修正申告し、海外出張費用のうち経費として認められなかった六八四万円は、税務当局において被告A1が出張先で私的に費消したことが明らかとされ、被告A1個人に対する源泉所得税徴収及び納付義務が生じた額は八五七万円の高額に上った。このことからも、被告A1の生協資産の私物化及び生協による同人に対する利益供与の事実が明確となっている。
(被告ら)
原告らの本件内部告発がひとつのきっかけとなり、いずみ生協における組織上、運営上の改善、改革が進められているから、その意味では原告らの匿名告発が、いずみ生協にとって、結果として、有用、有益な側面があったことは否定できない。
しかし、本件内部告発は、その表示内容、手段、意図、目的等を検討した場合、多くの点で全面的に正当化することはできないものである。
まず、本件内部告発は、いずみ生協の内部で、組合員に対する背任、生協資金の横領といった犯罪行為が組織的に行われており(これが、いずみ生協の「私物化」として、表現されている。)、かつ、それらに対する証拠も揃っているという事実を公然と摘示するものであった。しかるに、本件内部告発後に原告らがなした刑事告発について、当初は嫌疑不十分で不起訴となり、いったん検察審査会で不起訴不当の議決がなされた後も、検察庁において再捜査の結果、再び不起訴決定がなされたことからも明らかなように、背任、業務上横領などの犯罪行為があったとは言えなかった。すなわち、原告らが告発において指摘した「私物化」は、「背任、業務上横領というべき私物化」とはいえないものであったことが検察庁における捜査により逆に明らかにされたということができる。原告らの本件内部告発は、不起訴が確定した今日、その基幹部分である「私物化」の中身において、事実とは評価し難い、誤った評価に基づくものであることが明らかになったというべきである。
また、原告らが自らが行ったと自認する本件内部告発は、その手法において匿名であること、最重要機関会議である総代会に対し、その開催を目前に控えていた時期に切迫して、郵送で大量に配布されたものであること、原告らが業務中に他の職員の私物から無権限で持ち出した資料(仮処分決定においても別に解雇理由となりうる旨の認定がなされている。)をもとに一方的評価を与えた結果、「犯罪指摘」に至っていることなど、その内容、手段における相当性を欠くものである。
そして、上記のような手段を用いてなされたことや自分たちのグループが理事に選任されるよう準備していたことからすれば、原告らは、本件内部告発により組織混乱をもたらすことを意図したものと言わざるを得ず、また、本件内部告発において、組織運営上の不備、不正常さを指摘するに留まらずに、はっきりと「組織ぐるみでの犯罪行為の指摘」をなした上、同時に、理事候補を事実上推薦していることからすれば、原告らには、いずみ生協の運営を自らがなしうるようにする意図があったということができる。総代会での理事選出において原告らが主導権を握れなかった直後になされた原告らによる刑事告発は、そうした意図と原告らの執拗さとを示していたというべきである。
(3)  原告U1及び同Sに対する懲戒解雇の違法性
(原告ら)
ア 原告U1及び同Sに対する懲戒解雇の違法性
いずみ生協は、平成九年六月一〇日、原告U1及び同Sを懲戒解雇したが、本件解雇は、お座なりな調査に基づく解雇事由により、実質的には本件内部告発に対する報復としてなされたものであるから、いずみ生協による解雇権の濫用によるものであり違法である。
すなわち、原告U1及び同Sに対し、共通する解雇事由としていずみ生協により主張された「虚偽の風説の流布」については、本件内部告発の相当部分が真実と信じるにつき相当の理由があるものであり、「虚偽の風説の流布」にはそもそも該当しない。原告U1固有の解雇事由についても、仮に内部資料の複写・持ち出しをしていた事実があったとしても、これは本件内部告発の準備行為であってやむを得ない行為とみるべきであるし、職場離脱の事実があったとしても、一回だけでは非違行為に該当するものではなく、金銭上の不正についてはまったく裏付けを欠いている。原告S固有の解雇事由についても、自宅改装に伴う取引業者からの利益供与の事実は裏付けを欠いており、取引業者からの多数回のゴルフ接待があったとしてもそれをもって懲戒事由にはなし得ない。これらは、本件仮処分決定が指摘するところでもある。
本件内部告発が解雇事由になるかどうかについて、本件内部告発は、正当な行為であったから、これがいずみ生協の風紀、秩序維持の観点から見て重大な問題であったとは言えない。
イ 本件懲戒解雇が被告A2及び同A1の共同不法行為を構成すること
被告A1は、平成九年六月二日、副理事長を辞職するという記者会見を行った後、ロッチデール倶楽部に出向き、被告A2に対し、「おれは辞めて給料がなくなった。あいつらが給料をもらっているのはおかしい。あいつらは絶対許されへん、よろしいな」と原告らの解雇を示唆する発言をし、被告A2は「わかりました」と応じた。その後、同月九日、いずみ生協の臨時理事会において、原告U1及び同Sに対する懲戒解雇が決議されたが、それまでの間になされた原告らに対する事情聴取が本件内部告発の犯人探しを目的とするものであり、解雇事由については十分な聴取はなされず、その点の事実調査がお座なりなものに終始したこと等は、既に原告らの懲戒解雇の方針が被告A1及び同A2により決まっていたことを物語る。上記理事会決議は、手続上の形式を整えるものにすぎず、実質的には被告A1の意向に基づいて同A2が原告U1及び同Sに対する懲戒解雇を決定した。
このように、被告A2は、専務理事の地位にあることを奇貨として、被告A1の意向を受けて、告発内容について必要な事実調査をすることなく、裏付けを欠いた懲戒解雇事由を持ち出して本件内部告発に対する報復を主な目的として原告U1及び同Sを懲戒解雇処分にすることを事実上決定したものであって、自らの専務理事としての権限を濫用し、懲戒解雇という違法行為をさせたものであるから、原告U1及び同Sに対する不法行為責任は免れない。
被告A1も、平成九年六月二日に副理事長を辞任した後も、それまで同様いずみ生協を支配し、その役員、職員に大きな影響力を有しており、被告A2と共謀の上、同人を通じていずみ生協をして原告U1及び同Sを懲戒解雇したものであるから、原告U1及び同Sに対し、原告A2との共同不法行為責任を負う。
(被告ら)
原告U1が、生協に保管されていた総勘定元帳、計算書、年度毎の収支、役員報酬や幹部給与の一覧表、D5社長のメモ、日程表、その他生協の会計処理に関する多数の請求書や領収書、総代の住所氏名など各種資料を無断で複写して持ち出した行為、その際、原告U1は、同僚職員の鞄や机の中を無断で探し、その中から資料等を持ち出して複写したり、同僚職員が保管するフロッピーディスクから無断で情報を抜き取ったりしている行為は、いずみ生協の就業規則四六条(3)「素行不良にして生協内の風紀秩序を乱したとき」、同(7)「生協内の物品を持ち出し、または持ち出そうとしたとき」に該当する。さらに、原告U1は、平成九年五月一六日の午後、虚偽の理由を述べて職場を離脱したが、この行為は、いずみ生協の就業規則三六条(7)「勤務時間中はみだりに職場を離れないこと」に違反する。
原告Sについても、いずみ生協の開発部門の実質的な担当者としての職務に関して、平成二年から平成七年にかけて、岬カントリークラブ、砂川国際カントリークラブ、泉南カントリークラブなどにおいて、少なくとも四〇回程度のゴルフ接待を受けたが、この行為は、いずみ生協の就業規則三六条(6)の「職務に関し、不当な金員を借用または贈与を受け、または要求し、もしくは約束しないこと」という規定に「しばしば違反したとき」(四六条(2))に該当する。
仮に、上記の事実のみでは懲戒解雇事由としていまだ十分ではないとしても、上記事実があったことを考えれば、解雇が無効であるからと言って、直ちに解雇行為が不法行為となるものではない。
なお、いずみ生協は、平成九年六月一〇日、管理職に対して、部下の職員が原告U1、同Sと接触したり連絡したりしないよう指示徹底すること、原告U1、同Sから職員に連絡や接触があった際には速やかに上司に報告するよう指示徹底することを文書で発令しているが、資料の無断持ち出しや匿名文書の発布などの事実から、生協の運営を守るための必要な措置であるから、特段の問題はない。
(4)  名誉毀損の成否等
(原告ら)
ア 被告らは、本件内部告発に関連して、原告らに対する事実無根の誹謗中傷を以下(ア)ないし(カ)のとおり継続的に行ない、原告らの名誉を著しく毀損した。被告らによるこれらの言動は、具体的な事実を摘示して、原告らの内部告発がねつ造、歪曲であり、外部の勢力と結びついていずみ生協を乗っ取ろうとしていると大々的に宣伝を行っているものである。これらの言動によって、原告らは事実無根の内部告発を行ったうえ、国家権力その他の外部の勢力と結びついて、周到な準備によりいずみ生協の乗っ取りを画策しているものとの強い印象を内外に与えたのであるから、名誉毀損に該当することは明らかである。
(ア) 生協理事会・監事会連合の平成九年五月一八日付「総代の皆さんへ」と題する文書において、原告らの内部告発文書の内容は「事実をねつ造し、歪曲したものであり、総代会の混乱といずみ市民生協への攻撃を目的としたものです。」、「虚偽の事実を並べたてるというきわめて卑劣な行為であり、強い憤りを感じるものです。」と記載して、総代を中心とする組合員らに配布した(以下「名誉毀損行為1」という。)。
(イ) いずみ生協が発行した平成九年五月二七日付「組合員ニュース(号外)」において、原告らの内部告発を怪文書であると誹謗し、「“いずみ”の業務執行・資産管理は正しく行われています」と記載し、組合員らに公表した(以下「名誉毀損行為2」という。)。
(ウ) 平成九年五月二八日、いずみ生協本部で行われた店舗活動交流会の席上において、被告A2は、いずみ生協の職員らに対して、原告らの内部告発文書の内容が「事実をねつ造し、歪曲したものであり、総代会の混乱といずみ市民生協への攻撃を目的としたものです」、「虚偽の事実を並べたてるというきわめて卑劣な行為であり、強い憤りを感じるものです」、「内部の不満分子に外部の生協が結びついたもの。他の生協の闇の仕掛け人が動いている」と述べた。また、この席上、B6常務理事(当時。以下「B6常務理事」という。)は、「読売新聞社から告発者へお金が流れているとも考えられる。告発は組織に対する攻撃である。組織的な破壊工作が加えられている」と述べた(以下「名誉毀損行為3」という。)。
(エ) いずみ生協が発行した平成九年六月二日付「組合員のみなさんへ」と題するパンフレットにおいて、原告らの内部告発は「卑劣な行為」であり、「生協を内部から崩壊させようとするもの」であると記載して、組合内外に配布した(以下「名誉毀損行為4」という。)。
(オ) 平成九年六月一一日に開催されたいずみ生協理事会と労働組合との団体交渉において、被告A2は、原告らの内部告発が「国家権力が日本の生協陣営の平和運動や生活防衛の運動を弱めるために行ったもの。日本の生協の中で積極的な役割を果たしているいずみをなきものにしようと画策された陰謀であり、『三人組』はその手先である」、「この陰謀には三つのグループが互いに連携を取り、周到な準備を行って進めているものであり、その第一弾として行われた攻撃である」、第一のグループは「会社の乗っ取りや、あるいは会社潰しを生業としているような集団で九六年の秋頃から、いずみの中への浸透を開始しました。三人組は彼らにとりこまれ、その先兵としての役割を担いました」と述べた(以下「名誉毀損行為5」という。)。
(カ) いずみ生協が発行した平成九年六月二三日付内部会議資料「明るく信頼し合える“いずみ”を取り戻し、正しい生協運動を前進させよう」に、原告らの本件内部告発の「大半が事実のねつ造、歪曲である」、「その根拠とした資料の正しさすら確かめず、虚偽の事実で個人と組織の信用を著しく傷つけている」、「地位と金のために、“いずみ”を乗っとることが目的である」と記載して、役職員に配布した(以下「名誉毀損行為6」という。)。
イ これらの誹謗中傷は、原告らの内部告発がねつ造、歪曲であり、外部の勢力と結びついていずみ生協を乗っ取ろうとしているなどという虚偽の事実を述べて、このような「卑劣な行為」とは断固たたかわなければならないと煽り、それによって自らの不正を隠蔽し、支配を維持しようとしたものであり、被告A1と同A2によって、内部告発の内部が真実であることを十分認識しながら、企画立案された方針に基づくものである。
すなわち、被告A1は、内部告発後、平成九年六月二日に副理事長を辞任するまでの間、常勤役員トップとして、しかも、独断専行によって、いずみ生協を運営していた。被告A2は、この間、常勤役員ナンバー二として、被告A1辞任後は、常勤役員トップとして、いずみ生協の運営に関与している。被告らは、本件内部告発後の早い段階から本件内部告発を行ったのが原告らであると判断しており、まず、原告らに対して事実上の監禁を行い、原告らを組合員や他の職員と接触させないような措置をとり、それにより、原告らの内部告発が組合員や他の職員に影響を与えることができないようにしようとした。これについては、平成九年五月一七日の被告A1による原告U1への非難(これも他の従業員の面前で公然と非難を行うことによって、原告U1を孤立させようとしたものである。)に示されるように、被告A1によっても直接行われている。
そして、その上で、被告らは、いずみ生協内外に内部告発の内容は虚偽であって、原告らの目的はいずみ生協の組織破壊であるとの虚偽の宣伝を行い、それによって、被告A1によるいずみ生協の支配体制への結集が崩れるのを防止しようとした。本件内部告発からいまだ数日しか経過しておらず、本件内部告発の真偽を判断しうるような調査が行われたとは到底いえない平成九年五月一八日の理事会において、本件内部告発の内容が真実であることを知悉している被告A2が、本件内部告発文書の内容が事実をねつ造、歪曲したものであるとの虚偽の報告を行ったのは、意図的に虚偽の宣伝を行い、それによって真実を隠蔽し、自らの支配を維持しようとの意図に出たものにほかならない。そして、上記方針の実践は、平成九年五月一八日の他の常勤役員の解任後に本格的に行われるようになった。これ以後は、被告両名が本件内部告発に対する対応を独占的に行ったのであり、そのような状況のもとで、被告A2が上記のような方針に基づく誹謗中傷を繰り返したということは、上記方針は被告A1とともに立案されたか、少なくともその了承のもとに行われたものであることが明らかである。
ウ そして、被告A1は、平成九年六月二日に副理事長を辞任してからも、それまで同様、いずみ生協に対して支配、影響力を有しており、被告A2と共謀の上、いずみ生協をして、原告らに対する名誉毀損等の行為を行わせた。
以上のとおり、一連の誹謗中傷は、被告A1による私物化の事実を隠蔽し、本件内部告発がいずみ生協の組織に対する破壊工作であるとの虚偽の宣伝によって、被告らによる生協の支配体制を維持しようとしているのであり、かつ、その実践は被告両名の独占的権限のもとで行われているのであることからして、両名の一致した意思に基づいて行われたものにほかならない。
そして、名誉毀損行為1ないし6につき、原告らに対し、後記の損害を与えたものであるから、原告A1及び同A2には、共同不法行為が成立する。
エ 被告A2は、店舗活動交流会と団体交渉での発言(名誉毀損行為3及び5)については、参加者の限定された場での発言であり、名誉毀損には該当しないと主張する。しかしながら、いずれも複数の者が参加していたのであり、多数の要件を満たしている。また、いずれも出席者の資格が限定されているものではなく、店舗活動交流会についてはいずみ生協の組合員であれば出席でき、団体交渉も労働組合の組合員であれば出席可能であるから、不特定である。その上、いずれも内容が秘密であることが求められているものではなく、いずみ生協の職員および組合員に対して説明を行ったとすれば、それが外部に伝播することは必然であり、この点からしても、公然と誹謗中傷を行ったものというほかない。
なお、被告A2は、固有名詞に触れることを避けたと主張する。しかし、少なくとも平成九年五月一六日時点以降のいずみ生協の言動は、いずれも原告ら全員又はその一部に向けられたものであり、社会的にもそう受け取られていた。同年六月一一日に行われたいずみ生協理事会と労働組合との団体交渉において、被告A2は、「三人組」との表現で原告らを名指しして非難している。平成九年五月二八日及び同年六月一一日の被告A2の発言の時点では、既に原告らは自宅待機を命じられているのであって、被告A2の発言が原告三名を指すものであることは明らかであった。
(被告ら)
ア 組織攻撃の言動に対する反論言動は、その攻撃の言動に対比して、その方法、内容において社会的に許容される限度を越えない限り違法性を欠くものである。原告らの言動は、三〇万人近くに上る組合員を擁する組織運営を維持する立場においては、組織混乱と破壊につながりかねない質と量をもつものであった。それから組織防衛のために行った対応手段は社会的にも相当な手段、方法であり、内容においても、匿名行為者を特定し、犯罪指摘は断固虚偽告発であることを明らかにしつつ、組織運営上の問題として指摘されたものは調査、検討を拒むものではなかったのであるから、正当な対処であったというべきである。
そして、以下の諸点を考慮すれば、原告の主張する各事実は、いずれも名誉毀損として不法行為を構成するものではない。
イ(ア) まず、いずみ生協が発行した文書については、いずれの文書にも原告らの氏名の記載はない。わずかに、平成九年六月二三日付の「明るく信頼し合える“いずみ”を取り戻し、正しい生協運動を前進させよう」と題する、部内会議資料においては、[S]、[U]、[U]とイニシャルが記載されているにとどまり、その他の文書においては、いずれにも、原告らの氏名はもちろんのこと、原告らを特定できるような情報も記載されていない。
次に、原告らが、その作成文書を報道機関を利用して不特定多数の者に流布したのと異なり、原告らが挙げる生協の四つの文書は、限定された範囲の特定の者に対してのみ配布された文書である。すなわち、平成九年五月一八日に生協が理事会・監事会連名で送付した「総代のみなさんへ」と題する文書は総代に、同月二七日付で発行した「組合員ニュース(号外)」と同年六月二日付の「組合員のみなさんへ」と題するパンフレットは組合員に、同月二三日付の「明るく信頼し合える“いずみ”を取り戻し、正しい生協運動を前進させよう」と題する部内会議資料に至っては、さらに範囲の限定された内部資料である。したがって、これら文書を通じた言論は、不特定多数の者に対するものではない。
以上、原告が挙げる前記四つの文書は、その内容を論ずるまでもなく原告らの名誉を毀損するものではない。
(イ) また、これら文書は、その内容においても、原告らの名誉を毀損するものではない。
まず、本件内部告発文書が虚偽と歪曲に満ちたものである。たとえば、「狭山の研修寮」は一度も幹部の研修に使われたことはないという記述は事実に反するし、ロッチデール倶楽部の来賓接遇の部屋(原告らは、この部屋をVIPルームと名づけている)は同倶楽部でコンサートをする場合の控え室などに便用されたり、被告A1以外の役員が来賓を接遇するのにも使用されていたのに、被告A1の専用になっていたと記載されているし、本部の四階は理事長室・来賓接遇のための和室のほかに会議室があり、この会議室はほぼ毎日のように幹部会の職員が会合や打合せで使用していたのに、四階フロアを被告A1が独占使用していたと記載されている。その他、本件「内部告発」文書には、一見して明白な虚偽と歪曲が含まれていたもので、いずみ生協としては、この点を指摘しておく必要があった。
被告A1は、いずみ生協を私物化する意図等持ったことはない。
次に、原告らはいずみ生協が本件内部告発における指摘について何ら調査をすることもなく、不正隠しと原告らの誹謗をしたと非難するが、事実は異なる。原告らが匿名の本件内部告発文書を大量に送付した三日後の平成九年五月一八日にいずみ生協が理事会・監事会連名で送付した「総代のみなさんへ」と題する文書では、「理事会と監事会は、早急に一連の経過と背景について調査を進め、その結果をみなさんにお知らせしてまいります。」と記載されている。ところで、同年六月二日付の「組合員のみなさんへ」と題するパンフレットにおいて、「理事会は、早急に一連の経過と背景について調査を進め、その結果をみなさんにお知らせしていくことを総代会でお約束しました。」、「本冊子は、現段階での厳正な調査をもとにまとめたもの」であるとしていることから、前記「総代のみなさんへ」と題する文書における記載が単に「内部告発」文書の作成・発送者の探求だけでなく、いずみ生協の運営・管理の問題点についての調査・報告をも含んでいることは明らかである。そして、同年五月二〇日の総代会からわずか一〇日後の同月三一日の理事会で、「狭山研修寮」、「コンドミニアム」、「ゴルフ会員権」、「経費執行」について運用面・管理面での弱点があったとして、これら弱点を洗い直し、改善を進めるために、理事長を委員長として「改善委員会」を設置し、同年六月二日付の「組合員のみなさんへ」と題するパンフレットにおいて、前記のとおり同年五月三一日の理事会の決定内容を報告している。さらに、同年六月二三日付の「明るく信頼し合える“いずみ”を取り戻し、正しい生協運動を前進させよう」と題する部内会議資料でも「理事会の立場」として、組合員の意志に基づいた改善と改革を進めることを挙げ、その具体的な方策として、現時点での組合員の充分な議論を経て、“いずみ”としての合意を再形成すること、その際、従来の決定と異なる組合員の合意が形成されるのであれば、現時点での合意に沿った見直しをすること、理事会の運営上の不備や不充分点も早急に改革・改善すること、これら不備・不充分点の大半は従来の役員・幹部の責任に負うところが大きいとして、職員の積極的な意見や職場での議論を経てこれら改革・改善を進めること、これらを進めるために、班会・班長会・地域委員会・総代会といういずみ生協の民主的運営の根幹をなす諸会議での討議を重視し、自由闊達な議論のできる運営を貫くこと、会議の不充分点を補うために全組合員に呼びかけて「意見カード」を求めることなどを挙げ、徹底した民主的な討議にかけることを論じている。そして、同年五月三一日に設置された「改善委員会」は、設置から二週間後の同年六月一四日には理事会に対して第一次中間報告をなし、同年八月二五日には組合員・職員・他生協に宛てて、決定方法・事務処理において過ちがあったとする「理事会の反省と責任」という文書を発した。さらに、同年九月一六日には、臨時総代会を開き、①理事会運営改善、②会計処理の適正化・財務会計の情報開示、③海外出張・渉外活動の経費支出、④ゴルフ会員権・ゴルフを伴う渉外活動、⑤狭山研修寮、⑥コンドミニアム、⑦役職員の健康管理・指定医療機関の取扱、⑧情報開示・外部監察導入、⑨監事監査規約の制定、⑩過年度預かり金の処理、⑪未稼働資産の活用・ホテル会員権の取扱、⑫理事会・幹事会の反省と責任という議題で、全面的な報告・討議をした。この経過から、いずみ生協が、当初から本件内部告発について、その運営・管理面での問題点の調査に真摯に取り組んでいたことは明らかである。
かように、いずみ生協は、運営・管理についての改善に真摯に取り組んだものである一方、本件内部告発文書には、前述したように、明らかに虚偽や歪曲が含まれている。いずみ生協としては、このような虚偽と歪曲が含まれた文書が総代会の直前という時期に、匿名で大規模に頒布されたこと、平成九年五月二〇日の総代会の翌日には、読売新聞によっていずみ生協に対する取材もないままにこの文書のみに基づいた報道が大々的になされたことなどから、総代会はもとより、その後のいずみ生協の運営に無用の混乱が生じないようにすることも焦眉の急となっていた。同月二七日付で発行した「組合員ニュース(号外)」に「四名の総代から『理事会は、理不尽で卑劣な中傷に屈しないでください』という発言が相次ぎました。」とあるように、このことは、総代会においても、少なからぬ総代から求められていたことでもあった。原告らが挙げる前記四つの文書は、このような必要から出されたもので、その内容において、原告の名誉を毀損するものではない。
ウ 原告らは、平成九年五月二八日に生協本部で行なわれた店舗活動交流会、同年六月一一日の理事会と労働組合との間での団体交渉の席での被告A2の発言を問題とする。
被告A2のこれら発言については、被告A2自身、そこで用いた用語等の詳細まで記憶しているわけではないが、原告らの主張は、これを相当に誇張・歪曲していると言わざるを得ない。
原告らは、被告A2が、あたかも本件内部告発を巨大な陰謀一色に描こうとしたかのように言うが、これは事実に反する。被告A2の発言は、概要、①日本生協連の一部役員が本件内部告発の動きを事前に知っていて、これに協力していると考えられること、②生協の取引先の一部で、会社の乗っ取り事件に関与したと思われる人物が相当以前から原告らに協力していたと思われること、③生協のある取引先の役員でマスコミにもコネのある人物からも原告らは相当以前から協力を得ていたと思われることなどを伝えたものである。ここでまず指摘しておかなければならないことは、本件内部告発の手段の異常性から、総代や組合員、さらには労働組合員のなかに相当の不安が広がっており、生協の運営に対する破壊工作であるとする声も強く、誰がどのような意図のもとにかかる行為に及んだのか追及することを求める要求が強く、本件発言はそのような求めに応じて、その段階で判明していることに基づいてなした説明であるということである。そして、被告A2の発言は、これら得られた情報と、それに基づく考えを紹介したものに過ぎない。
総代会直前という時期に匿名の怪文書を頒布するという行為に出た原告らが、これを批判されたからといって、それを誹謗中傷と論難することはできない。まして、被告A2の発言は、いずみ生協の特定の参加者による内部の会合でのものであり、しかもできるだけ個人名・団体名を挙げることを避けながらのもので、「誹謗中傷」との非難は当たらない。
エ(ア) また、仮にいずみ生協の行為が原告らに対する不法行為に該当するとしても、被告らがこれについて個人として責任を負うべきものではない。
まず、組織が意思決定をして何らかの法律行為・事実行為に及ぶのは、機関の意思決定を通じてのことであるから、不法行為意思のもと、機関の意思決定を誤らせるような虚偽の情報を提供した場合や自由な討議を抑圧、妨害をした場合など、特段の事情のない限りは、仮に法人の行為が不法行為とされる場合であっても、役員個人に責任を問うことはできないはずである。すなわち、組織決定に対する個人の関与責任については、それが個人としての不法行為を構成するというには、職務遂行性、組織に対する悪意、重過失という要件が必要といわねばならない。仮に、組織関与を離れた個人が組織を離脱した後においても一定の人的影響力が残存するとしても、それが法人格の否認や、実質的には機関としての関与がなしえたという事実がなく、単に影響力が残存していたとしても、その影響力を個人から積極的に排除するべき義務があるとはいい得ない。
(イ) この点、被告らには、共同して、被告A1による公私混同、いずみ生協の私物化の事実を隠蔽し、本件内部告発を行なった原告らを報復・弾圧する意図を持って、いずみ生協の私物化の事実を隠蔽し、本件内部告発を行なった原告らを報復・弾圧する意図を持って、いずみ生協の組織全体を使って原告らに違法な加害行為を行なうことを企図した事実などはない。
(ウ) そして、被告A1は、本件内部告発において自身が攻撃の対象とされていることを知るや、ただちに生協においてその運営にかかる調査、改善の努力を開始するに当たって、自身は生協の運営から身を引くことを考え、平成九年五月二〇日の総代会においてこそ、匿名文書が出ただけで身を引くことの軽率さを戒める声に従って、副理事長への再任を受諾したものの、自身への攻撃が刑事告訴へと発展する過程で、同年六月二日に副理事長を辞任し、以後は、むしろ意識的に生協の運営から離れている。したがって、原告らのいう「一連の加害行為」については、被告A1は、名実ともに何らの関与もしていない。
原告らは、被告A1は絶対的な権力を有し、副理事長退任後も大きな影響力を有しており、この影響力を行使していずみ生協をして原告らに対する「加害行為」をなさしめたと主張するが、それはいずみ生協における民主的諸手続に対する無知から来る妄想に過ぎない。いずみ生協においては、一個人がその恣意で支配することのできるような態勢でも実情でもない。
被告A1においては、従来のいずみ生協内における存在感は本件内部告発以降完全に絶たれたのであり、組織的には形式的にも、実質的にも、関与は全くしていないし、なしようもない関係であった。原告らの副理事長辞任後における影響力の行使などの主張は、推測による主張でしかない。
被告A1は、いずみ生協の関係の会議にも参加せず、他の役員と面談・連絡等とることもほとんどなく、原告らのいう「加害行為」について、被告A1においてこれを指示ないし示唆した事実はまったくない。
原告らは、ロッチデールにおける被告A1の発言を、さも意味ありげにとりあげるが、これとて何らかの具体的指示や示唆を含んだものではなく、憤懣やるかたのない被告A1の心情の吐露に過ぎず、このような発言をしていること自体が、却って被告A1が生協の運営から離れており、距離をおいていたことから来る心情であることを物語っているばかりである。
他の生協役員とて、被告A1の意思を忖度して行動することなどあり得ないのはもちろんであるが、もし仮にそのようなことがあったとしても、それについてまで被告A1に責任を問うことのできるものではない。
(エ) 被告A2についても、平成一一年五月に常務理事を退任するまで、いずみ生協の運営に参画してこそいるが、理事会において原告らに対する処分処遇を討議するにあたって、慎重論を唱えることこそあれ、これを先導するようなことはなく、まして他の役員の自由な討議を妨げるような事実は一切ない。例えば、本件懲戒解雇についても、顧問弁護士の意見も聞きながら討議し、反対意見を言う者もなかったような状況であり、被告A2が自らの企図を実現するために理事会を利用したというようなものではない。
(オ) このように、被告ら両名において、職務権限を越えた影響力を行使したことはなく、かえって、犯罪指摘などに対する感情的反応を押さえつつ、組織防衛の観点からの対応を重視する立場を取ったというほかないのであるから、組織の機関の権限を超えて個人としての行為に違法性を認める余地はない。
そして、この点は、名誉毀損行為以外の他の不法行為として主張されているものについても同様である。
(5)  原告らに対する隔離、軟禁、尾行、監視の有無
(原告ら)
原告らは、以下にみるとおり、被告A2の命令により隔離・軟禁状態に置かれ、同人の指示の下で生協職員らによる監視・尾行を受けるという取扱いを受けたが、これらは業務上の必要性を欠き、原告らの行動を不当に制限するものであって、原告らに対する業務命令として許される範囲を逸脱した不法行為というほかない。
ア 原告らに対する隔離、軟禁、尾行、監視の内容
(ア) 原告U1について
原告U1は、内部告発文書を総代に送付した後の平成九年五月一六日午前八時一五分にいずみ生協本部に出勤すると、被告A2より待機を命じられ、翌一七日午前二時まで具体的指示のないまま会議室で軟禁され、それまでの勤務場所だった役員室から引き離された。
同月一七日は、午前一〇時から行われた幹部会で被告らは二時間にわたって本部内部告発の犯人探しを行い、原告U1は犯人として追及された。その後、原告U1は、被告A2より指示があるまで退勤しないようにという業務命令を受け、正午から一八日午前〇時まで本部四階会議室に隔離・軟禁された。
同月一八日、原告U1は、午前九時に出勤直後から翌一九日午前〇時まで本部四階会議室に隔離・軟禁された。被告A2は、食事のための外出をも業務命令として禁止し、労働基準法で認められた休憩時間をとることも許さず、会議室からトイレに行くときには監視をつけるなど、原告U1の行動を不当に制約し、軟禁というほかない状況に置いた。
同月一九日、原告U1は、午前八時二〇分に出勤直後から翌二〇日午前〇時まで、本部四階会議室で隔離・軟禁状態に置かれた。正午に原告U1が昼食に出ようとすると、被告A2は、業務命令を盾にして外出を禁じようとしたが、原告U1がこの不当な指示を振り切って昼食に出ると、被告A2の命を受けたB7人事部長及びB8商品部主任が原告U1を尾行し、監視下に置こうとした。
同月二〇日、原告U1は、午前八時二〇分出勤後、午前八時四〇分まで約二〇分間、B9理事会事務局長より事情聴取を受けた後、午前一一時三〇分まで本部四階会議室で隔離・軟禁された。この日は、被告A2の業務命令により昼食のための外出も許されず、弁当で済ますことを余儀なくされた。
同月二一日正午、原告U1が昼食の外出を申し出たところ、被告A2は業務命令を盾に外出を禁止した。原告U1が就業規則違反であると抗議し、外出すると、被告A2は「こちらにも考えがある」と捨てぜりふを吐き、B6常務とB8商品部主任を原告U1の監視役につかせた。B6及びB8は、原告U1の抗議を無視して、両脇を固め、原告U1が乗ろうとしたタクシーに乗り込んでくるなどして、行動を妨害した。
同月二二日、原告U1は、午前八時三〇分出勤直後から、午後二時三〇分から三五分までの被告A2にによる告発文に関する事情聴取の時間を除いて、午後五時三〇分の退勤まで役員室で隔離・軟禁された。
同月二三日、原告U1は、午前八時二〇分に出勤すると、本部四階会議室に隔離・軟禁されたが、午前八時四〇分には四階の鍵の返却を求められ、それ以後午前五時三〇分の退勤まで六階会議室で隔離・軟禁された。
同月二六日、原告U1は、午前八時五〇分に出勤し、本部全体朝礼に出勤しようとしたが、被告A2の意向を受けたC1常勤理事から退出を求められ、午後五時まで六階会議室で隔離・軟禁された。
同月二七日、原告U1は、午前八時二〇分に本部に出勤したが、午前九時五分には、被告A2から自宅待機を命じられ、午前九時一〇分には本部からの退出を求められて退勤した。
(イ) 原告Sについて
平成九年五月二〇日、原告Sは、堺市民会館で行われていた総代会に事務局員として出席していたが、同日午後になり、被告A2ら生協幹部に会場から連れ出され、本部七階で軟禁された。同日午後五時、原告Sが退勤しようとすると、本部一階ロビーでC2課長らいずみ生協の職員五、六人が待機しており、本部を出た原告Sを尾行し、原告Sの自宅まで監視していた。
同月二二日、原告Sは、休暇をとったが、資料等の確認のために本部に出向いた。その後、本部を出た途端に尾行が開始され、人事部のC3次長及びC4課長による尾行が執拗に行われた。
同月二三日、原告Sは、出勤した途端に、本部七階で隔離・軟禁され、午後からは被告A2らいずみ生協幹部による尋問を受けた。
なお、同月二七日、原告Sは、出勤した途端に被告A2から自宅待機及び本部からの退出を命じられ、直ちに退勤した。
(ウ) 原告U2について
原告U2は、平成九年五月二五日か同月二六日の朝、上司であったC5課長から、トイレに行くときも一言断って行くように指示され、以後行動を監視された。
イ 被告A2は、平成九年五月一八日の臨時理事会において被告A1及び同A2以外の常勤理事が解職されることとなったため、その後の原告らへの対応をすべて唯一生協を代表する専務理事として取り仕切っていた。
すなわち、原告U1及び同Sを隔離・軟禁状態に置いたのは被告A2であり、同人らを尾行・監視させたのも被告A2にほかならない。被告A2は、本件内部告発が原告U1、同Sらによってなされたものであると考えていたため、同人らを通常の業務から排除し、一般職員からも隔離し、軟禁状態に置いたのである。具体的業務を指示することなく、特定の部屋からの外出を禁止するだけの命令は、原告U1らの行動を制約し、同人らと他の職員との接触を断たせることのみを目的としたものであり、業務上の必要性を欠いた、原告U1らの行動の自由を不当に制約するものであって、労働契約上許容される業務命令の範囲を逸脱したものである。本件内部告発の内容について調査をすることもなく、一方的にその疑惑を否定して「犯人捜し」に躍起になっていた当時の事情からして、原告U1及び同Sを隔離・軟禁し、尾行・監視した処置が告発内容の調査に役立ったともみられない。
また、原告らを生協職員に尾行させ、監視させた行為は、原告らが誰と接触するかを確認し、内部告発の共犯者を見つけ出そうとすることのみを目的としたものであり、業務上の必要性を欠いたものである上、勤務時間外の原告らのプライバシーを不当に侵害するものであって、労働契約上許容される行為を逸脱したものである。
被告A2は、原告らについて、隔離・軟禁することを自ら命じ、尾行・監視を部下に命じて行わせているが、本来であれば、告発内容を調査し、その真偽を確認することが専務理事である被告A2にも求められていた職責であったのに、必要な調査をせず、本件内部告発を虚偽であると決めつけ、被告A1との共謀の下で、保身のための「犯人捜し」の一環としてこれらの行為を行ったものであって、これらの行為は、いずみ生協の目的を大きく逸脱した違法行為である。したがって、被告A2は、これらの違法行為によって原告らが被った後記損害について不法行為責任を負う。
ウ 被告A1は、原告らが隔離・軟禁され、尾行・監視された当時はまだ副理事長の地位を辞しておらず、名実ともに最高実力者としての地位にいた。被告A2は、それまでと同様被告A1の意向を無視して動くことはできず、内部告発の「犯人捜し」も被告A1の意向で行っていたことからすれば、これらの行為についても被告A1との共謀の下で行ったことは明らかであり、結局、被告A1と同A2は、共同不法行為責任を負う。
(被告ら)
いずみ生協は、原告U1について、平成九年五月一六日、役員室勤務からはずし、同日以降会議室で一日中待機するよう命じ、同月二七日、原告ら三名に対して自宅待機命令を出した。また、いずみ生協は、この間、原告らからの事情聴取を試みている。
これは、前述したように、虚偽と歪曲が含まれた本件内部告発文書が総代会の直前という時期に、匿名で大規模に頒布された状況から、平成九年五月二〇日の総代会はもとより、その後のいずみ生協の運営に無用の混乱が生じないようにすることも焦眉の急となっていたこと、とりわけ本件内部告発文書に利用されている資料、送付に利用された総代の名簿など、原告らがいずみ生協保管の資料を恣に利用していることが明らかとなっていたので、これ以上の資料持ち出しなどを防ぎ、さらなる生協運営の混乱を防ぐために必要な措置としてなされたものである。
それ以上に、「軟禁」、「尾行」、「監視」などの行為にわたる事実はない。
(6)  原告らに対する出勤停止、自宅待機命令、原告U2に対する配転命令の違法性等
(原告ら)
ア 本件出勤停止・自宅待機命令は、原告らの本件内部告発に対する報復目的でなされたものであり、その目的、手続に何らの正当性もない。また、とりわけ原告U2に対するものは、一年三か月もの長期間仕事を奪い、職場等から隔離したものである。いずれも、「業務指揮権の発動」の形式はとられているが、その実質は懲戒処分であって違法無効なものである。
イ 被告A1、同A2らは、本件内部告発が原告らの行為であることを知っていた。そこで、原告U1に対しては、平成九年五月一七日から指示があるまで動くなと業務命令を出し、同二一日には事情聴取をし、原告Sに対しては、同月二〇日から本部七階で待機するよう命令し、同月二三日には事情聴取している。原告U2は、同月二〇日の総代会の会場で被告A1から睨まれ、その直後、保育の責任者の任務を解かれ、部屋にいるよう命令され、同月二六日の朝には被告A2の指示を受けたC5課長からトイレに行くときも断って行くよう指示され、同日には事情聴取を受けた。そして、同月二七日には、原告ら三名に対し、出勤停止・自宅待機命令が出された。
これらのことから明らかなように、被告A1及びその意向を受けた被告A2は、同A1の生協資産の私物化や、自らがそれに加担して業務運営を行ってきたことが明らかになることを恐れ、本件内部告発に及んだ原告ら三名を他の職員から隔離し、その影響力を排除するために出勤停止・自宅待機命令を出したものであるから、上記命令は、不法な目的でなされたものであって、違法である。
ウ そして、被告A2は、出勤停止・自宅待機を命ずるに当たって、原告らにその理由をまったく明らかにしなかったが、このように、命令の理由を明らかにしないままの発令は、手続き的にも違法である。
エ とりわけ、原告U2の自宅待機期間は、平成九年五月二七日から平成一〇年八月一七日までの一年三か月もの長期間に及んでいる。いずみ生協の就業規則によると、懲戒処分としての出勤停止でさえ七日間を限度とするとされていることと比較すると、原告U2に対する出勤停止・自宅待機は、余りにも長期にわたるものである。被告らは、原告U1及び同Sを懲戒解雇したのと同様に、原告U2に対しても、出勤停止・自宅待機の間に懲戒事由を探し出して、懲戒処分をなすことを画策したものの、懲戒事由が見つからず、自宅待機期間が長期に及んだものであり、長期にわたったことについて何ら合理的な理由はない。なお、本件自宅待機処分を解除したのは、内外の批判に耐えきれずに解除したに過ぎない。
オ 以上のとおり、被告A1及び同A2は、共謀の上、原告らに対する違法な出勤停止及び自宅待機命令を発し、それにより原告らに対して後記の損害を与えたものであるから、被告らには共同不法行為が成立する。
特に原告U2に対する自宅待機処分が長期化した点につき見るに、被告A2は、いずみ生協の専務理事の要職にあったにもかかわらず、原告U2に対する自宅待機が長期に及んだことについても何ら適切な指示をせず放置し、また、るうてるホームを部下のC6に指示して探させ、原告U2に対して同所に派遣する旨の内示を行い、さらに、同所からは平成一〇年五月一八日には派遣の受入を辞退する旨の通知を受けていたにもかかわらず、これを秘して、同年六月一日に原告U2が前記内示を拒否したことを理由に同内示を取り消して、自宅待機を長期化させるなどしたものであるから、この点についても不法行為が成立するということができる。そして、被告A1も、平成九年六月二日に副理事長を辞任した後も、被告A2を通じて生協の業務運営に影響力を及ぼしていたのであり、同人との共謀が認められるから、この点についても被告A2との共同不法行為が成立するというべきである。
カ また、原告U2は、平成一〇年八月一七日から原告U1及び同Sが職場復帰をした平成一一年八月一一日ころまでの間、以前とはまったく異なる部署である「福祉担当役員付けスタッフ」への配転を命じられたが、この業務命令は、本件内部告発に対する報復であるとともに、原告U2を隔離し、他の職員と接触するのを防止する目的でなされたものであり、また、その内容も以下に述べるとおり不合理なものであることから、違法である。
(ア) 業務命令の目的の不法性
本命令は、原告U2を自宅待機命令前の職種(共同購入運営部次長)に戻すと、生協の他の職員との接触、交流により、生協のこれまでの運営実態すなわち被告A1による生協資産の私物化と利益供与が明らかになることを恐れ、原告U2を他の職員と交流させないためになされたものである。いずみ生協は、原告U2の出勤後、原告U2を作業所等に派遣し、生協本部に出勤させないようにして第一段階の「隔離」を行った。原告U2は、職場復帰後、週一回生協本部に出勤しているが、被告A2は、原告U2に対し、次のような異常な指示を出して、第二段階の「隔離」を行った。
a 役員のスタッフ室のある本部五階フロアー以外には立ち入らないこと
b 他の職員や組合員とは連絡を取り合わないこと
c 総代会決定や理事会を批判する言動をしないこと
これらのことからして、原告U2に対する業務命令は、他の職員との交流を阻止しようとの目的でなされたことは明らかであり、このような不法な目的でなされた業務命令は違法である。
(イ) 業務命令の内容の非合理性
本件業務命令は、原告U2のこれまでの職種とは大きく変わるものであり、福祉・ボランティア担当には配転する業務上の必要性・人選の合理性がない。もともと、生協において福祉部門を担当する部署としては組織企画室がある。それとは別に特別な部屋を設け、そこに原告U2を配置する必要がなく、また、役員付きという新しい役職を作る必要もない。
しかし、現実の扱いとしては、新しい部屋を作り、原告U2をわざわざ役員付きそれも被告A2付きとしているところに本件配転命令の本質が現れている。原告U2は、週一回生協本部に出勤しているが、出勤しても仕事は与えられずただ読書をしているだけであった。
原告U2が職場復帰することとなった平成一〇年八月一七日の時点では、まだ研修先が決定していなかった。その後、被告A2がある人を介して紹介を受け、同月末ころ研修先を決定したが、そこはこれまでいずみ生協との関わりのないところであり、また「高齢者福祉」の研修先ではなく、いずみ生協において検討されていない「障害者福祉」施設であった。
原告U2は、同月一七日、日本福祉ビジネス学院への通学を命じられ、同月二〇日から平成一一年八月一六日まで通学した。しかし、上記講義内容は、介護福祉士の受験を主な目的としたものであって受験資格のない原告U2には不適切なものであるばかりか、その内容はいずみ生協が九六年度から実施しているホームヘルパー養成講座(三級課程・二級課程)とかなりの部分共通しており、高額(約三六万円)を支払って通学する必要のなかったものである。なお、日本福祉ビジネス専門学院の講義は、午後一時から三時までではあるが、原告U2は、上記学院に通学する日は、「直行、直帰、生協本部に出勤する必要なし」という極めて異例な命令が出されていた。
キ 配転命令に対する被告A1、同A2の関与について
(ア) 被告A1の関与
被告A1は、副理事長「辞任」後も被告A2を通じていずみ生協の業務運営に関与していたものであり、原告U2に対する本件業務命令についても被告A2と共謀関係にあった。
(イ) 被告A2の関与
被告A2は、原告U2の職場復帰後、直属の役員(常務)として、原告U2に対し、他のフロアーへの立ち入り禁止、他の職員や組合員との連絡禁止、総代会決定や理事会の批判の禁止という異常な指示をし、研修先の決定や、日本福祉専門ビジネス学院への通学の際の直行、直帰を直接指示し、原告U2に対する隔離・監視体制を作り、これを実行した張本人である。
(ウ) 被告A1及び同A2の不法行為責任
上記被告A1及び同A2の行為は、共同不法行為を構成し、原告U2が被った後記損害に対し損害賠償責任を負う(民法七一九条)。
(被告ら)
ア 原告ら三名に対する自宅待機命令及び原告U2に対する配転命令の発令は認めるが、その余は争う。
イ 特に原告U2に対する自宅待機命令に関し、原告らは、これが長期に及んだとして非難する。しかし、これは、虚偽と歪曲が含まれた本件内部告発文書が総代会の直前という時期に、匿名で大規模に頒布された状況から、平成九年五月二〇日の総代会はもとより、その後のいずみ生協の運営に無用の混乱が生じないようにすることも焦眉の急となっていたこと、とりわけ本件内部告発文書に利用されている資料、送付に利用された総代の名簿など、原告らがいずみ生協保管の資料を恣に利用していることが明らかとなっていたので、これ以上の資料持ち出しなどを防ぎ、さらなる生協運営の混乱を防ぐために必要な措置として会議室での待機を命じた経過のなかで、引き続く調査における必要からなされたものである。自宅待機をさせておく方が、出勤させたうえで会議室での待機を命ずるよりも、原告U2の苦痛は軽減されるはずである。この間、事情聴取も試みられているし、レポート作成の業務に服させたり、平成一〇年五月一日、いずみ生協は原告U2に出勤停止・自宅待機命令を解き、「るうてるホームに研修員として派遣する」と内示するなど、いたずらに待機させていたというわけでもない。原告U2は、事情聴取に応じず、上記の内示をも拒否し、結局、同年六月一日、いずみ生協は、内示を取り消し、再度の自宅待機命令にいたったのであり、自宅待機が長期に及んだのは、原告U2のこの対応にも起因するのであって、原告U2に対する加害行為としていずみ生協を非難するのはあたらない。
ウ また、いずみ生協は、原告U2に対し、平成一〇年八月四日、同月一七日付で出勤停止・自宅待機命令を解除し、福祉分野担当役員(被告A2)付けの役員スタッフに移動する旨の内示をし、同原告は同月一七日から出勤するようになったが、それ以降も勤務場所である本部五階以外の場所への立入を禁止したことを非難する。しかし、前述のような経過のもとでは、特段問題視するべきものでもない。
なお、原告U2の自宅待機が長期化したことや、原告U2の配転には、被告A1は、関与していない。
(7)  原告らの損害
(原告ら)
原告らは、生協運動を自らの生きがい、働きがいとして職業に選び、以来一環して生協運動に関わってきた。そして、原告らは、いずみ生協の正常化を願ってやむにやまれぬ気持ちで被告A1によるいずみ生協私物化と公私混同を内部告発した。ところが、本件内部告発を受けて自ら自浄能力を発揮すべきであったいずみ生協は、被告A1による私物化を隠蔽するため、原告らに対し違法な出勤停止、自宅待機命令を発し、さらには原告U1と同Sに対して本件懲戒解雇を行った。それにより、原告U1と同Sは、本件仮処分決定後の平成一一年八月一八日に職場復帰するまでの二年二か月もの間、一家の大黒柱でありながら、仕事を奪われ、収入の道を断たれ、非常な生活上の苦難を受けながら違法な解雇を撤回させるため、裁判に従事しなければならなかった。また、原告U2も、自宅待機命令が解除されるまでの一年三か月もの間、仕事も与えられず、職場の同僚との接触をも断たれた。自宅待機命令解除後も、いずみ生協から他の職員との接触を禁じられ、その後も精神的苦痛を受け続けた。これらによる原告らの社会的信用の毀損も著しい。
以上により、原告らが受けた精神的打撃や苦痛は、筆舌に尽くし難い。
また、原告らは、いずみ生協が行った一連の行為によって、さらには、被告らが他の職員に行った原告らに関する誹謗中傷によって、名誉を侵害されている。
被告らの違法行為によって原告U1及び同Sが被った精神的損害を敢えて金銭に換算すれば、五〇〇万円を下ることはない。
被告らの違法行為によって原告U2が被った精神的損害を敢えて金銭に換算すれば、三〇〇万円を下ることはない。
(被告ら)
いずれも争う。
第3  争点に対する当裁判所の判断
1  認定事実
前記前提となる事実、証拠(甲1、甲2の1、2、甲3の1ないし3、甲4、甲5の1、2、甲6ないし甲16、甲17の1ないし3、甲18の1、甲19、甲20、甲28、甲36、甲37、甲39ないし甲44、甲46、甲50、甲51、甲53、甲58ないし甲64、甲67、甲68、甲70、甲71、項78、甲79、甲81、甲82、甲84、甲87、甲94、甲106、甲108、甲109、乙1ないし乙3、乙7、乙9、乙10、乙12の2、乙31、乙33の15の1ないし3、乙33の16の1、2、乙33の18、34、35、51、55、60、64、83、91、92、94、211、乙35の1、2、丙1、丙4、文書提出命令による提出文書、原告U1本人、原告S本人、原告U2本人、被告A1本人、被告A2本人)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(1)  当事者等
ア いずみ生協は、消費生活協同組合法に基づき設立された生活協同組合であり、組合員の出資を得て、物資の共同購入や生活及び文化の向上を図る等の目的を有する。大阪府堺市に主たる事務所を置き、組合員数は、北は東大阪市から南は岬町までの対象区域内の約四分の一の世帯数に当たる約二九万世帯(平成七、八年当時)、平成七年度の供給高は、約六〇七億二〇〇〇万円である(乙12の2、乙33の55)。
いずみ生協は、大野芝、新金岡等大阪府堺市内及びその近辺において共同購入を行っていた七つのグループが統合して昭和四九年六月ころに行われた設立準備会、同年九月ころの発起人会を経て、同年一一月五日の創立総会により発足し、昭和五〇年六月一二日、法人化したものである。同年七月には第一回通常総代会が開催されている(甲94、弁論の全趣旨)。
イ 被告A1は、いずみ生協において、昭和四九年一一月の創立時から平成二年五月までは専務理事、同月から平成九年六月二日に辞任するまでは代表権のある副理事長の地位にあった者である。被告A1は、いずみ生協の発起人の一人で、発起人会においては事務局長に就任するなどいずみ生協の発足に深く関与していた。いずみ生協の第一回通常総代会において、理事長に大阪府立大学教授のC7(以下「C7理事長」という。)が選出されたがC7理事長は非常勤であり、被告A1は、発足以来辞任に至るまでの間、一貫して常勤理事の筆頭として、いずみ生協の事業、経営、組織、運動の総責任者の地位にあった(甲94、被告A1本人、弁論の全趣旨)。
また、昭和五五年一〇月のわかやま市民生活協同組合の設立時には、専務理事に就任し、その後同生協の副理事長となった。昭和五九年一〇月のとくしま市民生活協同組合の設立時には、副理事長に就任している。さらに、平成元年六月には、日本生活協同組合連合会(以下「日生協」という。)の理事に就任した(被告A1本人)。
ウ 被告A2は、近畿大学生活協同組合の専務理事であったが、被告A1らの誘いにより、昭和六一年五月、いずみ生協の非常勤理事に就任し、その後、平成元年五月には常勤監事(なお、このころの近畿大学生活協同組合の専務理事は退任した。)、平成二年五月には常務理事、平成六年五月には代表権を持つ専務理事となり、事実上、被告A1に次ぐ地位についた。その後、平成九年九月一六日の臨時総代会において、常務理事に降格され、平成一一年五月には常務理事も退任し、職員として福祉推進室勤務となった。そして、平成一二年八月、いずみ生協を退職した(甲94、丙4、被告A2本人、同A1本人、弁論の全趣旨)。
エ 原告U1は、昭和五八年三月にいずみ生協の職員となり、同年五月には共同購入(配送)担当、同年九月には共同購入主任、昭和五九年四月には三国ヶ丘支所長(課長昇格)となり、その後、組織共同購入部次長(次長昇格)、堺地区本部長、堺地区本部長兼泉州地区本部長を経て、昭和六三年七月ころには、役員室次長、平成元年七月には店舗運営部長、平成二年四月ころには店舗運営部長兼店舗開発室長(部長昇格)、平成三年四月には店舗開発室長、平成四年四月ころにはコープ綾南店長、平成六年八月には関連事業統括部長、平成七年七月ころからは役員室長となった。役員室次長及び役員室長時代は、原告U1は被告A1にほぼ常に同行するなど被告A1の側近の一人であった(甲78、乙33の94、原告U1本人、被告A1本人)。
オ 原告Sは、昭和五六年一月六日、いずみ生協の職員となり、同年四月には企画開発部主任、昭和五七年四月には総務部、昭和五八年四月にはシステム開発室係長、昭和五九年四月以降は総合企画室開発担当、昭和六〇年四月には同チーフ、昭和六二年九月には開発部課長、昭和六三年六月には業態開発室次長、平成二年七月には開発室長、平成三年五月には開発部長、平成七年七月にコープ久米田店店長、平成八年四月には総務部次長となり、ほぼ一貫して土地の取得や店舗等の建物の建設、賃借等の開発業務に携わってきた。とりわけ昭和六〇年ころから平成七年六月ころまでの間は、実務担当者として、そうした開発業務において、他の業者との交渉等を含め、中心的な役割を果たしていた。また、平成二年七月に開発室長になってから、平成七年六月ころまでの間は、幹部会のメンバーでもあった(甲81、乙33の94、原告S本人)。
カ 原告U2は、学生時代から大学生協の活動に参加し、昭和四七年、原告U2自身が設立に関与した甲南大学生協に入り、専務理事として活動していた。昭和五五年ころ、当時いずみ生協の専務理事であった被告A1と知り合い、交流をするようになったが、平成二年に被告A1からいずみ生協に来るよう誘われたため、それを快諾し、同年三月一五日、いずみ生協の職員となった。
原告U2は、平成二年四月中旬ころからの一年間は、被告A1と行動を共にすることの多い役員室室長の地位に就いた。役員室室長は、実質的に被告A1の秘書としての業務を行うものであった。平成三年四月から平成六年九月までは、原告U2は、業態開発室室長の地位にあった。業態開発室は、レストラン事業、旅行事業、共済事業等の新規事業を統括する部署であった。なお、原告U2は、業態開発室室長であった間は、幹部会のメンバーでもあって、被告A1との交流が深かった(甲108、原告U2本人)。
(2)  本件内部告発
原告らは、平成九年五月二〇日開催予定のいずみ生協総代会の直前である同月一五日、総代(当時五五二名)の大半(約五三〇名)や、総代会議長、C7理事長、理事、監事、職員ら、C8弁護士(以下「C8弁護士」という。)、C9公認会計士(以下「C9公認会計士」という。)、他生協の役員等生協関係者らに対し、原告ら三名作成にかかる「いずみは何のため 誰のための組織?その組合員への背信行為の実態」と題する本件内部告発文書(甲1)を匿名で送付した。また、原告らは、同月一六日から同月一八日ころにかけて、原告U1作成にかかるはがきその他の文書(甲2の1、2、甲3の1ないし3、甲4、甲5の1、2、甲6ないし甲12)を前記各名宛人らに対し、その立場に応じた内容で、匿名で送付した。以上の文書は、同月一六日ないし同月一八日ころ、各名宛人に到達した。
一方、原告らは、知己のいずみ生協職員らに対し、本件内部告発に同調するよう働きかけるなどした。
(3)  本件内部告発後の経過等
ア 被告A2は、本件内部告発文書が総代等に到達した平成九年五月一六日、原告U1に対し、同日以降、本来の勤務場所である役員室ではなく、会議室で待機するように命じた(甲16、被告A2本人)。
イ いずみ生協は、平成九年五月一七日、緊急拡大幹部会を開催した。同幹部会には、常勤役員及び幹部職員の全員や、C8弁護士、C9公認会計士らも出席していた。同幹部会においては、一体誰が本件内部告発文書を送付したのかという点が議題の中心であり、被告A1及び同A2は、約二時間にわたり、幹部のひとりずつに対して本件内部告発への関与の有無を問い質した。同幹部会の席上、出席していた原告U1は、会議の内容をテープレコーダーに録音しようとしたが、被告A1及び同A2らに止めさせられた(甲16、甲82、被告A1本人)。
ウ(ア) いずみ生協においては、平成九年五月一八日、被告A1や同A2も出席の上、平成八年度第一五回理事会が開催されたが、同理事会においては、C8弁護士及びC9公認会計士が、本件内部告発文書等は事実をねつ造し、歪曲したものであることを報告し、同理事会はこれを確認するとともに、いずみ生協の業務執行及び資産管理が法律及び定款に基づき適正に行われていることを理事会として再確認した。そして、以下の事項につき、協議、決定した(甲87)。
① 理事会は監事会と協力し、早急に本件内部告発文書等が郵送された一連の事態の経過と背景について調査をすすめ、その結果を総代及び関係者に報告する。
② 理事会は、常勤役職員の内部からの組織破壊行為を生んだ責任により、B1、B2、B3、D1、D2の五名の常勤理事の任務を解くこと。
③ 本件内部告発文書等を郵送したグループから理事に推薦されたB1、B2、B3の三名の常勤理事は、立候補しない旨を自ら表明し、理事会としてもそのことを確認した。
④ 第一三期役員選挙立候補者の推薦のうち、常勤役員の推薦についてはC7理事長、D3副理事長、被告A2の三名に一任する。
なお、上記②は被告A2の提案によるものであるが(被告A2本人)、当時、常勤理事は七名であったから、上記②の記載の五名の退任により、常勤理事として残ったのは被告A1及び同A2のみとなった(被告A1本人)。
(イ) いずみ生協は、平成九年五月一八日、総代らに対し、「総代のみなさんへ」と題する理事会・監事会連名の文書(甲13)を送付した。同文書においては、本件内部告発文書に関し、「文書の内容は、事実をねつ造し、歪曲したものであり、総代会の混乱といずみ市民生協への攻撃を目的としたものです」、「いずみ市民生協の業務執行ならびに資産管理は、法律及び定款に基づき適正に行われています」、「この文書は、氏名も明らかにせず、虚偽の事実を並べたてるというきわめて卑劣な行為であり、強い憤りを感じるものです」などの記載がなされているほか、理事会および監事会が早急に本件内部告発の経過と背景について調査をすすめ、その結果を報告すること、これまで築き上げた組合員、役職員の信頼関係をさらに強めて全総代の力で総代会を成功させるべきことなどが記載されている(名誉毀損行為1)。
(ウ) さらに、被告A2は、同日、日生協のD4専務に、本件内部告発文書等が同人らにも届いているかどうかを電話で問い合わせた際、本件内部告発文書等の内容は、事実のねつ造、歪曲、事実無根のことなどで占められており、目的は組織を混乱させて、執行部を取ることなので、冷静な対応を願いたいなどと述べた(乙33の51)。
エ(ア) いずみ生協においては、平成九年五月二〇日、総代会の開催前に、被告A1や同A2も出席の上、平成八年度第一六回理事会が開催され、被告A2の付議により、被告A1や同A2、また、平成九年五月一八日に常勤理事の任務を解かれた者の中からはD2、及びその他計二五名を第一三期の理事に理事会として推薦する旨等を全員一致で議決した。
なお、平成九年五月一八日の理事会で常勤理事の任務を解かれた五名のうち、B1、B2、B3及びD1は、同日ころまでは理事に推薦される予定であったが、推薦されないことになった(被告A1本人、同A2本人)。また、上記の理事の推薦は、理事会決定どおり、C7理事長、D3副理事長及び被告A2が相談して決めたものであるが、その際、被告A2は、被告A1からも意見を聞いた(被告A2本人)。
(イ) 同日、上記理事会後、いずみ生協は、被告A1及び同A2も出席の上、第二三回通常総代会を開催した。同会は、総代のほとんどが出席して開かれた。
同会においては、平成八年度活動報告、平成八年度決算及び剰余金処分案、平成九年度活動方針及び事業計画、平成九年度借入金最高限度額という各議案はほぼ満場一致で可決され、役員改選についても被告A1及び同A2を含む理事会推薦の理事、監事候補全員が信任された。また、総代から本件内部告発についての調査、報告の要請はあったが、告発内容に関する説明や審議等は行われなかった(甲14、乙7、被告A2本人)。
(ウ) そして、同日、総代会の開催後には、被告A1及び同A2も出席して平成九年度第一回理事会が開催され、被告A2からの付議により、第一三期役員の任務分担につき、被告A1が副理事長に、被告A2が専務理事に全員一致で選出された(甲87)。
(エ) 原告U2は、総代会の会場付近で、同会に出席する総代が連れてきた子供の保育を監督する立場にあったが、被告A2の指示に基づき、B5常勤理事は、原告U2に対し、人と接触することのない部屋に入っているよう業務命令を発し、原告U2は、それに従った(原告U2本人、被告A2本人)。
(オ) いずみ生協は、原告Sに対し、同日午後から、いずみ生協本部七階において待機するよう命じた。
オ(ア) 原告U1らは、平成九年五月二一日、大阪地検特捜部に原告A1らを業務上横領等の罪で刑事告発した(甲53、甲79、弁論の全趣旨)。告発の対象は、渉外費名目で月四〇万円を被告A1が着服していること、各役員の給与を一定程度上乗せして給付し、それをプールして、被告A1に還流させていること等であった(乙7)。
(イ) また、同日、被告A2、B5常勤理事、常勤理事C1(以下「C1常勤理事」という。)及びB6常務理事は、いずみ生協本部四階の会議室において、原告U1に対し、本件内部告発及び内部資料の流出に原告U1が関与していないか、誰が本件内部告発に関与しているか知っているか、本件内部告発につきどのように考えるか、被告A1につきどのように評価するか、本件内部告発を行った者に対してはどのような制裁を加えるのが相当か等につき事情聴取した。
これに対し、原告U1は、本件内部告発への関与は否定し、被告A1については類い希なリーダーシップを有する優れたリーダーである趣旨を述べ、本件内部告発者は懲戒解雇に値するなどと回答した(乙33の15の1)。
カ 被告A2、B5常勤理事、B6常務理事は、平成九年五月二二日、いずみ生協本部四階会議室において、原告U1に対し、前日の聴取結果を書面にしたもの(乙33の15の1)を示し、間違いなければ署名をするよう指示したが、原告U1は、全件を取り消す旨述べた。そこで、被告A2らが、再度事情聴取をやり直す旨述べると、原告U1はすべてについて答える必要はない旨述べて、それを拒否した(乙33の15の1)。
キ(ア) いずみ生協の常勤役員会は、平成九年五月二三日、原告ら三名の行為が就業規則に違反するかどうか等に関し、調査委員会を設置した(甲87、被告A2本人)。
(イ) 同日、被告A2、B5常勤理事及びC1常勤理事は、いずみ生協本部四階会議室において、原告Sに対し、調査委員会としての事情聴取と弁明の場であることを明らかにした上で、本件内部告発を及び内部文書の流出に原告Sが関与していないか、本件内部告発を行った者に対しては相当な懲戒処分に相当すると考えるか、取引先等から金品の借用や贈与、ゴルフ、飲食の接待を受けたことがあるか、就業規則の服務心得を遵守しているか等につき事情聴取したが、原告Sは、いずれに対しても回答することを拒んだ。また、被告A2らは、出退勤時刻を守ること、嘘を付かないこと、取引先から金品授受をしないことを業務命令として命じた(乙33の16の1)。
ク(ア) 平成九年五月二六日の朝、原告U2の上司であった課長のC5(以下「C5課長」という。)は、原告U2に対し、今日からは便所に行くときも勝手に行かず、C5課長に断ってから行くように述べた。原告U2が、それは被告A2の指示によるものかと問うと、C5課長はそれを肯定した(原告U2本人)。
(イ) 被告A2及びB5常勤理事は、同日、いずみ生協本部応接室において、原告U2に対し、本件内部告発に関与しているかどうかなどにつき、事情聴取をした。
原告U2は、ほとんどの質問に対し、回答しなかった。
(ウ) 被告A2及びB5常勤理事は、同日、いずみ生協本部の応接室において、原告U1に対し、主としてハワイのコンドミニアムに関して事情聴取を行ったが、原告U1は、答を拒否するか、知らない旨答えた(乙33の15の2)。
ケ(ア) いずみ生協の人事担当役員であったB5常勤理事は、平成九年五月二七日、原告ら三名に対し、就業規則一六条二項四号に基づき、同日以降無期限の出勤停止及び自宅待機を命じた(甲17の1ないし3、乙1、乙2)。
いずみ生協の就業規則一六条には、次の規定がある(乙3)。
二項 次の各号の一つに該当する職員に対しては、出勤を停止し、または退勤を命ずることがある。
(1)  風紀秩序を乱し、または衛生上有害と認められる者。
(2)  火気、凶器その他業務に必要でない危険物を携帯する者。
(3)  業務を乱し、またはそのおそれのある者。
(4)  その他生協が必要ありと認めた者。
(イ) 上記命令を受けた際、原告U2は、B5常勤理事に対し、自宅待機命令等の理由及びその期限につき尋ねたが、B5常勤理事はそれには回答しなかった(原告U2本人)。また、原告U2に対して、自宅待機の間、何をすべきかといった何らの指示もなされなかった(原告U2本人)。
なお、同日から二週間程度のうちに、B5常勤理事、B6理事、人事教育部長C3(以下「C3人事教育部長」という。)は、それぞれ原告U2の自宅に電話をかけ、自宅にいるべきこと、自宅を出たら就業規則違反で処分することになること等を述べた(甲108、原告U2本人)。
(ウ) いずみ生協は、平成九年五月二七日付で「組合員ニュース(号外)」(甲14)を組合員に宛てて発行した(名誉毀損行為2)。同文書においては、「差出人不明の怪文書に怒りの声」との見出しの下において、総代会直前の五月一六日に差出人名のない、いずみ生協を誹謗中傷する文書が全総代、理事、監事に送付されたこと、その目的は総代会の混乱を意図するものであること、総代会における議案討議の中で四名の総代から「理事会は理不尽で卑劣な中傷に屈しないでください」という発言があったことなどが記載されている。また、「“いずみ”の業務執行・資産管理は正しくなされています」との見出しの下において、狭山研修寮、コンドミニアム、ゴルフ等による接遇に関して不正がない趣旨の記載とともに、朝刊にいずみ生協職員二名による役員の告発が報道され、記者会見では、これらの職員が現在、出勤停止・自宅待機を命じられていることが明らかにされたこと、告発は正当な根拠に基づかない場合は誣告罪にも該当する重大行為であること、理事会として徹底した調査を進めるが、これまでのところ業務上横領等に該当する行為は存在しないことなどが記載されている。
コ 平成九年五月二八日、いずみ生協本部で行われ、組合員らが参加した店舗活動交流会において、被告A2は、日生協の一部の役員、いずみ生協の取引先の役員で、以前会社の乗っ取り事件に関与したと思われる人物及び同じくいずみ生協の取引先の役員でマスコミに伝手のある者が本件内部告発に関与した、すなわち、彼ら三人は、このような外部の人間と協力しながら計画していたという趣旨の発言をした(名誉毀損行為3。甲62、被告A2本人)。
サ 平成九年五月三〇日、いずみ生協は、C7理事長名義で、狭山研修寮、ハワイのコンドミニアム、ゴルフ会員権、本件内部告発等に関していずみ生協としての見解等に説明を加えた報告書を、大阪府知事宛に提出した(乙7、丙1)。
シ 平成九年五月三一日、被告A2も出席の上(被告A1は欠席している)、平成九年度臨時理事会が開催され、同理事会は、新聞報道で取り上げられている一連の事柄について、いずみ生協の業務執行、資産管理には何らの違法性もないことを確認した。
そして、被告A2が主導して、本件内部告発に関して、大阪府への報告の件、記者会見実施の件、改善委員会設置の件につき協議がなされ、C7理事長を委員長とし、被告A2を含む常勤理事、非常勤理事、顧問、専門家によって構成される改善委員会の設置を決議した(甲87)。なお、改善委員会の事実上の責任者は、被告A2であった(被告A2本人)。
改善委員会が検討すべき主な改善点としては、①狭山研修寮の運用管理・施設管理、②ハワイのコンドミニアムの有効利用や職員への周知徹底等、③ゴルフ会員権の取得の妥当性の見直しや有効活用、ゴルフを伴う渉外活動の必要性の吟味等、④渉外費のより厳正な管理が挙げられ、その他、組合員の意見や大阪府の指導検査の結果も踏まえて改善を図っていくものとされた(甲63、乙七)。
また、被告A1の辞任の申出につき、理事会として確認がなされた(甲87)。
ス(ア) 被告A1は、平成九年六月二日、いずみ生協副理事長を辞任した。
(イ) いずみ生協は、平成九年六月二日付で、組合員に対し、「組合員のみなさんへ」と題する冊子(甲63、乙7)を発行し、配布した(名誉毀損行為4)。
同冊子には、概ね、①本件内部告発を発端とした連日にわたる新聞報道に関しての組合員に対する呼びかけ、②改善委員会設置の決定と改善すべき点などの紹介、③本件内部告発に関し、「事態の本質」と題したいずみ生協の見解表明等、④いずみ生協が、平成九年五月三〇日に大阪府知事宛に提出した報告書の内容、⑤「指定医療機関」の件、⑥「事実に反する差出人名のない文書」、「事実をゆがめた告発」とそれぞれ題し、本件内部告発及び被告A1に対する刑事告発に関し、いずみ生協が事実とは異なるとする部分を具体的に述べた内容等が記載されている。
具体的な記載内容については、まず、表紙上部に「今こそ、協同の原点を 卑劣な行為に負けず新生“いずみ”を築きましょう」との記載がある。
上記①の記載部分においては、連日の新聞報道により組合員には心配をかけているが、同報道の中には誤った内容や、一方的な報道もあること、現段階での厳正な調査をもとにまとめた同冊子により、理事会は、真相を明らかにするとともに、組合員が二三年間のいずみ生協の歴史に確信を持ち、仲間を信じ、卑劣な行為に負けず“いずみ”の前進のために力を尽くしてもらえるよう訴える旨の記載がある。
上記②の記載部分においては、平成九年五月三一日の理事会で、改善委員会の設置を決定したことと、いずみ生協の業務執行、資産管理に違法性はないと確認したこと、及び上記理事会で決定した主な改善すべき点が記載されている。
上記③の記載部分においては、「五月一六日、“いずみ”を誹謗中傷する差出人の名のない文書が、総代、理事・監事、顧問に送付されました」、「このように差出人名のない文書を作成した者たちの狙いは、生協を内部から崩壊させようとするものです。きわめて周到に準備された組織的なものです」、「しかし、五月二〇日の総代会の結果は、彼らの目的を打ち砕くものでした」、「総代会を混乱させようとした動きに対して、総代の賢明な判断で成功をかちとることができました」、「このように総代会は、組合員・役職員の努力で成功しましたが、現在でも“いずみ”を破壊しようとする者達の動きは止まっていません」、「彼らは“いずみ”を内部から崩壊させるだけでなく、今まで築き上げた社会的信頼を失墜させるために、差出人名のない文書を、行政、マスコミ、友誼団体を始め、日本生協連の理事・幹事・地域諸団体や他生協の労働組合にまで送りつけました」、「理事会と監事会はすでに必要な調査をすすめ、事態の経過や事件の真相を究明しつつあります」、「今後も様々な形で彼らの動きが予想されます。今こそみんなの力を合わせて組合員・役職員が一体となって、“いずみ”を守り、前進させていきましょう」等の記載がなされている。
上記④の記載部分においては、狭山研修寮、コンドミニアム、ゴルフ会員権、被告A1に対する刑事告発のそれぞれに関し、いずみ生協としての釈明の内容や、今後改善すべき点などが記載されている。そのうち、刑事告発に関しては、平成九年五月二八日付各紙朝刊に、いずみ生協職員二名が被告A1を業務上横領容疑で告発した旨の報道がなされたこと、これらの職員は、いずみ生協から理由なしに出勤停止を命じられたとする報道が一部なされたが、いずみ生協は、同月二七日、就業規則一六条二項四号に基づき三名の職員に対し出勤停止を命じたこと、一部報道で指摘されている点は、不正にも横領にも該当するものではないこと、いずみ生協の業務執行、組合員資産管理は、法律・定款に基づいて適正に行われていることを再度表明し、引き続き調査を進めることなどが記載されている。
上記⑤の記載部分においては、桜ヶ丘ホスピテルに関するこれまでの経緯や改善点が記載されている。
上記⑥の記載部分においては、本件内部告発文書等が、「告発文の形を取りつつ、その内容は事実をねつ造・歪曲した、悪意に満ちたものです」などとして、本件内部告発文書等において、狭山研修寮につき、生協の経費で被告A1の私邸を建てさせているとする点、研修などに利用したことがないとする点、コンドミニアムにつき、ハワイに被告A1の別荘があるとする点、ゴルフを伴う渉外につき、ゴルフ場でのプレイ費用や飲食費用などがすべて経費として処理されているとする点、指定医療機関との契約につき、高額な高級病院に入院した費用もいずみ生協が支払っているとする点、が事実に反する主な内容であるとしている。また、「五月二七日、出勤停止を命じられている職員二名が、副理事長に対して『業務上横領容疑』による告発を行いました」として、上記二名の職員が、被告A1を刑事告発したことが明らかにされている。
(ウ) また、平成九年六月二日以降、いずみ生協は、本件内部告発文書等に記載のある事項やいずみ生協の対応等について、各所で組合員説明会や班長会を開催したり、組合員に約二〇万枚の「意見カード」を配布し、これを回収することによって、組合員の意見の集約を行った(乙33の18)。
セ いずみ生協に対しては、平成九年六月五日及び同六日の両日にわたり、大阪府消費生活協同組合指導検査実施要綱に基づき、大阪府の指導検査がなされた。同月二五日にいずみ生協理事長宛に提出された同検査結果(以下「大阪府の検査結果1」という。甲41)においては、いずみ生協の業務運営及び会計処理等について不適正な事項が認められたので、改善に努めるべきこと等が記載されている。また、早期の臨時総代会の開催の必要性が指摘されている。
ソ いずみ生協は、平成九年六月八日、全国の生活協同組合に対し、本件内部告発に関して、理事会名義で「お詫び」と題する文書を送付した。同文書においては、一連の報道により全国の生活協同組合の信頼を傷つけたことを詫びる旨、いずみ生協は、一連の報道により取り上げられている事項は、理事会や総代会で決定したものであり、その運用管理や資産管理においても法や定款・規約に違反したものはないと説明してきたが努力及ばなかった旨、本件内部告発を行った職員を既に特定し、その一部の者については処分も行ったが、同人らの動きは外部のグループとも結びついて今も執拗に続けられている旨等が記載されている(文書提出命令による平成九年度六月九日の臨時理事会の議案書)。
タ(ア) 被告A2、B5常勤理事及びB6理事は、平成九年六月九日、いずみ生協本部五階第一会議室において、原告Sに対し、同人の処遇についての結論を出すに当たって弁明する機会である旨明らかにした上、本件内部告発への関与の有無、いずみ生協からの資料の持ち出しの有無、取引先に自宅マンションの改装費用を負担させたりゴルフ等の接待をたびたび要求し享受するなど個人的に多額の利益を受けたことの有無、自宅待機中、報告することなく外出して組合員に対し説明会を開催し、虚偽の風説を流布したことの有無、原告Sが懲戒に値するとの判断に対する意見等を聴取した。これに対し、原告Sは、被告A1が犯罪行為を行いいずみ生協の資産を私物化していることは明確であること、にもかかわらず理事会の本件内部告発に対する対応は背任行為であること、そのような姿勢で臨む者たちには、質問する資格はないこと、事の真相を明らかにして、公正な形で委員会等が開かれるのであれば、そこで弁明したいことなどを述べた上、質問に対しては回答を拒絶した。そして、最後に弁明の機会を与えられると、原告Sは、職員や組合員に配布されている資料が一切自分のところに送付されない理由や、被告Sが自宅の改装費を着服した等につき、他の組合員に対しても話しをしたのか等につき質問したが、被告A2らはこれに回答しなかった。被告A2らは、原告Sに対し、この後、同人の処遇を決定するので、翌日の午前八時三〇分にいずみ生協本部に出頭すべきことなどを通知した(乙33の16の2)。
(イ) また、同日、被告A2らは、同所において、原告U1に対しても、同人の処遇についての結論を出すに当たって弁明する機会である旨明らかにした上、本件内部告発への関与の有無、いずみ生協の資料や職員の私的なメモ等の持ち出しの有無、勤務時間中にみだりに席を離れたことの有無、ハワイ渡航費の着服や被告A1から職員への結婚祝い金搾取の有無、自宅待機中に報告なく外出して組合員に対し説明会を開催するなどして虚偽の風説を流布したことの有無、原告U1が懲戒に値するとの判断に対する意見等を聴取した。これに対し、原告U1は、金員の着服等の点については否定したが、その他には回答すること自体を拒絶した。そして、最後に弁明の機会を与えられると、原告U1は、被告A1のいずみ生協資産の私物化、横領は明白な事実であること、そのことを組合員に対して隠蔽したり直接不正に関わったメンバーが役員にいる中、本件内部告発等に対する調査や処分がなされることが不正常な事態であること、事実をすべて明らかにし、それを組合員に公表した上で選出された新たな理事会において弁明の場が設けられるまでは弁明をする必要がないと考えていることなどを述べた。被告A2らは、原告U1に対し、この後、同人の処遇を決定するので、原告Sと同様に翌日午前八時三〇分にいずみ生協本部に出頭すべきことなどを通知した(乙33の15の3)。
(ウ) さらに、いずみ生協は、平成九年六月九日に開催した臨時理事会(被告A2出席)において、B5常勤理事の付議により、原告U1及び同Sに対する懲戒解雇を決議した(甲87)。同決議において、反対者はなかった(被告A2本人)。本来、職員の懲戒解雇は、理事会の決議事項ではないが、本件内部告発が大きな社会問題化しており、今後もそれが発展する可能性があったため、非常勤の理事の意見も聴取して慎重に判断するとの理由で付議されたものであった(甲87、被告A2本人)。
チ(ア) 被告A2は、いずみ生協の専務理事として、平成九年六月一〇日、同日付で、原告U1及び同Sに対し、それぞれ懲戒解雇通知書を渡して懲戒解雇する旨の意思表示をした(本件懲戒解雇)。その理由とされたのは、懲戒解雇通知書によると、前提となる事実のとおりである。
いずみ生協の就業規則四六条、四七条の関係規定の内容は、次のとおりである。
四六条 職員が次の各号の一つに該当するときは、次条の規定により制裁を行う。
(2) 本規則にしばしば違反するとき。
(3)  素行不良にして生協の風紀秩序を乱したとき。
(6)  正当な事由なくしばしば無断欠勤、業務に不熱心なとき。
(7)  許可なく生協の物品を持ち出し、または持ち出そうとしたとき。
(8)  生協の名誉、信用を傷つけたとき。
(11)  前各号に準ずる程度の不都合な行為をしたとき。
四七条 制裁は、その情状により次の区分により行う。
(1)  訓戒 始末書をとり将来を戒める。
(2)  減給 一回の事案に対する額が平均賃金の一日分の半額、総額が一か月分の賃金総額の一〇分の一の範囲で行う。
(3)  出勤停止 七日以内出勤を停止し、その期間中の賃金は支給しない。
(4)  懲戒解雇 予告期間を設けることなく即時解顧する。
なお、同就業規則には、他に次の規定がある。
三五条 職員は、この規則に定めるもののほか業務上の所属長の指示、命令に従い、自己の業務に専念し、互いに協力して職場の秩序を維持し、全組合員に対する最大の奉仕者となるため、その業務を遂行しなければならない。
三六条 職員は、常に次の事項を守り、服務に精励しなければならない。
(6)  職務に関し、不当な金品を借用または贈与の利益を受け、または要求し、もしくは約束をしないこと。
(7)  勤務時間中はみだりに職場を離れないこと。
(イ) また、同日、いずみ生協は、所属長に対して、原告U1及び同Sに対する懲戒処分の内容を速やかに全職員に周知するとともに、発令文書(甲109)を掲示すること、部下の職員が原告U1及び同Sと接触したり、連絡をしたりなど一切の関係を持たないように指示徹底すること、並びに、原告U1及び同Sから職員に連絡や接触があった際には速やかに所属長に報告するよう指示徹底することを、B5常勤理事名義の文書で指示した(甲15)。
(ウ) 一方、原告らは、同日、「私物化・横領の真相を究明し、“いずみ”を組合員の手にとりもどしましょう!」と題するチラシ(甲51、乙10)を作成、組合員らに配布した。
ツ(ア) 原告U1及び同Sは、平成九年六月一一日、大阪地方裁判所堺支部に地位保全及び賃金仮払の仮処分申請を行った(同裁判所平成九年(ヨ)第一四〇号)。
(イ) 被告A2は、同日、正規職員労働組合との団体交渉において、本件内部告発は、国家権力が日本の生協陣営の平和運動や生活防衛の運動を弱めるために行ったものであり、日本の生協の中で積極的な役割を果たしているいずみ生協を亡き者にしようとして画策された陰謀であること、この陰謀には、会社の乗っ取りや、会社つぶしを生業としているような集団、いずみ生協の取引先を含む、主に報道関係に近い団体、日生協の一部の役員で、全国的な規模の右寄りの集団という三つの集団とが互いに連携をとって、周到な準備を行って上記陰謀を進めており、三人組は、その手先であり、本件内部告発は、その第一弾であることなどを述べた(甲61、被告A2本人)(名誉毀損行為5)。
テ 平成九年六月一四日、いずみ生協の改善委員会による第一次中間答申書(乙33の18)が提出され、全組合員に配布された(被告A2本人)。
同答申の内容は概ね以下のとおりである(乙33の18)。
まず、狭山研修寮については、土地、建物の権利関係の整理、借地権設定をした場合としない場合の地代のあり方など、それぞれの場合の得失につき調査し、そのことも考慮において改善案を検討する必要がある旨が指摘されるとともに、施設の有効活用の点からは、より幅広く活用できるよう現行規定を充実させること、使用資格や使用目的の見直し、担当者の配置による運用管理と記録、建物の維持管理の実務など改善を検討すべき事項が多々あるとされた。
ハワイのコンドミニアムについては、一定年限を区切って積極的な活用に努め、その成果を見て、その後の活用のあり方や保有することの是非について必要な判断を行うことも改善案のひとつとして検討の対象とするものとされ、また、施設保有の是非の判断は、資産の得失の問題もあるので、十分に専門家に相談の上、検討すべきであるとされた。
ゴルフ会員権については、大幅に削減すること、ゴルフを伴う渉外活動については、その必要性と範囲を定め、節度をもって極力少なくするよう努めるべきとされた。
また、桜ヶ丘ホスピテル等指定医療機関の利用の凍結や定額渉外費の凍結や、理事会規則、監事規則、常勤役員会規程、会計処理規程(渉外費規定を含む。)、役員報酬規程など、内部運営の規則・規程、基準を早急に再整備すること、組合の資産の取得などの重要な意思決定に当たっては、事前の組合員の意見の反映と決定後の情報の開示及び広報のあり方について早急に検討することなどが答申された。
なお、その後、定額渉外費は廃止された(甲78)。
ト 平成九年六月一七日のいずみ生協の臨時理事会(被告A2出席)において、当面の業務執行体制が確認されたが、それによれば、C7理事長を頂点とするが、その下で被告A2が、人事・教育、経理・管理等すべての業務を統括する位置づけとされている(文書提出命令による平成九年度六月一七日の臨時理事会への報告書)。
ナ 被告A2は、平成九年六月二一日、原告U2に対し、同日付で、共同購入運営部の任を解き、人事部付を命じる旨の辞令を作成した(甲19)。
ニ いずみ生協理事会は、平成九年六月二三日、「明るく信頼しあえる“いずみ”を取り戻し、正しい生協運動を前進させよう」と題する部内会議資料(甲60)を役職員に配布した(名誉毀損行為六)。同資料においては、本件内部告発が善意の告発であるための三つの条件として、①告発の内容が真実であること、②告発の手段・方法においてその責任の所在などが明らかであり社会的道義に反していないこと、③目的が公益的なものであることが挙げられ、それに対し、本件内部告発は、「大半が事実のねつ造、歪曲である」、「刑事告発に当たって、その根拠とした資料の正しさすら確かめず、虚偽の事実で個人と組織の信用を著しく傷つけている」、「地位と金のために“いずみ”を乗っとることが目的である」などと記載している。そして、「『乗っ取り』を企てている者の姿」との項において、三名の個人の関与が明示され、その三名のうちの二名は、便宜強要や現金着服の疑いなど就業規則違反により懲戒解雇されたこと、同三名の頭文字及び行状等として、以下のような記載がある。
[S]:狭山研修寮土地登記、取引先への便宜強要、土地取引における疑惑(デマ誹謗の流布、反理事会組織作り)
[U]:現金着服の疑い、同僚の鞄から私物の窃盗、破廉恥行為、テープによる盗聴
[U]:外部へのデマ誹謗の流布、職員へのデマ誹謗の流布、反理事会組織作り
また、同項において、本件内部告発においては多種の文書が用いられ、大阪府など行政や、マスコミ、日生協関係者等外部にも宛てられていたこと、文書の印刷や郵送における業務用機器の使用や資金の点、印刷、宣伝関係、取引先関係、日生協やマスコミ等外部への働きかけと連携がなされていることなどから、本件内部告発が組織的なものであることが示唆されているのみならず、その他の項においては、上記三名等を指すものとして何度も「『乗っ取り』グループ」という名称が用いられており、総じて、前記三名を中心とした組織が、いずみ生協の乗っ取りを企てていることを強調した記載がなされている。
ヌ 原告らは、平成九年六月ころ、「“いずみ”は組合員みんなの生協です」と題する文書(以下「原告らのパンフレット」という。甲46)を組合員らに配布した。
ネ いずみ生協は、平成九年七月八日、組合員に対し、大阪府の指導検査結果に対するいずみ生協の説明や、今後の改善策等につき記載した「『大阪府指導検査の実施結果について(通知)』をうけて」と題する文書(乙12の2、乙33の34)を配布した。
ノ いずみ生協は、今後の改善・改革のため、総代懇談会を、平成九年七月二一日から同年八月二三日までと、同月二五日から同年九月一三日までの間、各所で開催した(甲87、乙12の2、乙33の51、文書提出命令による提出文書)。
ハ 平成九年七月二二日に開催された平成九年度第三回理事会において、同年九月一六日に臨時総代会を開催することが決議された(甲87)。
ヒ いずみ生協の調査プロジェクトは、平成九年七月二七日、原告らのパンフレット(甲46)に記載された事項の真実性等につき検討した内容の「調査報告書」(乙33の35)を、常勤役員会に提出した。
フ 日生協は、平成九年六月七日、同年七月二〇日、同年八月二日の三回のいずみ生協理事会と日生協小委員会との懇談会を経て、同年八月六日、いずみ生協理事会として、被告A1への利益供与、被告A1の公私混同及びいずみ生協の施設や経費の私物化があったことを認め、組合員と社会にそのことを謝罪し、被告A1に対していずみ生協への損害の填補を求めるべきこと、C7理事長と被告A2の進退を含む責任やいずみ生協理事会としての責任を明らかにすべきこと等を勧告すること(以下「日生協の勧告」という。)を、全国理事会で決定した。
同全国理事会には、いずみ生協のC7理事長及び被告A2も参加しており、いずみ生協として、①本件内部告発後の一連の事態を招いた原因は、常勤役員の業務執行(とりわけ渉外活動)にかかわる部分での非民主的運営にあること、②常勤役員の対応に不十分な点があり、全国の生活協同組合に事実を正確に伝えることができず、マスコミへの対応にも不備があったこと、③今回の「告発」を引き起こした三人の者を生んだ責任は常勤役員会にあり、業務管理、人事管理上の弱さがそれを生んでしまったこと、につき詫びるなどした(乙33の51)。
へ(ア) 平成九年八月六日、日生協は、いずみ生協のC7理事長宛に、上記フの理事会決定に沿う日生協の勧告の内容等を記載した書面(甲42)を交付した。
(イ) これに対し、被告A2は、同月七日、職員に向けて、「日本生協連からの『勧告』文を受けて」と題する書面(乙33の51)を配布した。
それによれば、日生協との三度にわたる話し合いにおける主な認識の違いとしては、①「私物化があった」と断定する日生協の見解には賛同できないこと、②「私物化」を認め「A1副理事長を解任せよ」「(被告A1に)損害賠償を求めるべき」という日生協の見解には賛同できないこと、③「理事長と専務理事は辞任すべきだと思う」という日生協の意向をそのまま受け入れることはできないこと、の三点である旨記載されている。
ホ 平成九年八月一八日、四二名の全国生協の理事らから、同月中に全国いくつかの生協理事会から、日生協の勧告をいずみ生協が受け入れるべき旨の要請書等が提出された(甲53、乙33の83)。
マ 平成九年八月二一日、いずみ生協の組合員ら四一名は、被告A1他八名の役員ないしはその経験者を、被告A1が個人的に使用する金員を捻出するため、各役員が昇給したとする書類をいずみ生協会計課に提出し、平成二年四月から平成九年三月までの間、毎月の昇給分二七三五万円をだまし取ったとする詐欺の罪で、大阪地検特捜部に告訴した(甲53)。
ミ いずみ生協理事会は、平成九年八月二五日付で、日生協に対し、日生協の勧告中、理事会としての責任の取り方につき、総代懇談会で討議の後、修正を加えて同年九月一六日の臨時総代会に議案として提案するので、同勧告に対する正式回答は遅れる旨の通知をした(甲53)。
ム 平成九年九月一六日、臨時総代会が開催された(乙33の60)。
同臨時総代会においては、①理事会運営改善の件、②会計処理の適正化並びに財務会計のディスクロージャー(情報開示)の件、③海外出張並びに渉外活動にかかわる経費支出の件、④ゴルフ会員権並びにゴルフを伴う渉外活動の件、⑤狭山研修寮の件、⑥コンドミニアムの件、⑦役職員の健康管理と指定医療機関の取扱の件、⑧組合員へのディスクロージャー(情報開示)の推進並びに外部監査導入の件、⑨監事監査規約の制定の件、⑩過年度預かり金の取扱の件、⑪未稼働資産の活用並びにホテル会員権の取扱の件、⑫理事会・監事会の反省と責任の件の全一二の議案が審議された(甲87、乙33の60)。
そして、上記④につきゴルフ会員権は原則として処分していくこと、⑤につき組合員利用を可能とし、地代は路線価に従った地代への改定を図ること、⑫につきそれまで専務理事であった被告A2を常務理事に降格し、報酬の四〇パーセントをカットすること、被告A1については辞任をもって処分とすること等の決定がなされた(甲68、甲87、乙33の60、丙4、弁論の全趣旨(甲64))。
メ 平成九年九月一七日から平成一〇年一月中旬にかけて、いずみ生協に対し、平成六年度から同八年度を対象として、堺税務署により(甲43、乙33の64、乙33の90)税務調査(以下単に「税務調査」という。)が行われた。
モ いずみ生協は、平成九年一〇月一〇日、B5常勤理事名義で、所属長らに対し、同月一二日に原告ら三名が職員対象に説明会を開催するが、臨時総代会で決定された組合員の意志に反する行動は、いずみ生協の組合員を裏切る行為になるから、十分注意すべきことを、職員に周知等するように指示する文書を発した(甲15)。
ヤ いずみ生協は、平成一〇年一月二三日、税務調査の結果を受けて、法人税関係につき約九二〇八万円、源泉所得税関係につき約九五五万円を、それぞれ修正申告した。これにより、法人税約二三五六万円等を追加納付することになった。そして、いずみ生協は、同月二六日、これらの内容につき記載した書面(乙33の64)を作製して組合員に知らしめた。
ユ なお、被告A1は、上記税務調査のころ、いずみ生協に対し、約二八九六万円を支払った(なお、うち、後記の桜ヶ丘ホスピテル利用経費相当分約二〇〇七万円に関しては、常勤役員の一部も出捐している。甲70)。その内訳は、各平成六年度ないし同八年度の、桜ヶ丘ホスピテルの利用に関する経費相当分として約二〇〇七万円、狭山研修寮の個人使用部分の家賃相当分として約六九四万円、狭山研修寮の水道光熱費相当分として約一九五万円であった(甲58、乙33の64、91)。
ヨ 原告ら三名は、平成一〇年二月二六日、いずみ生協を被申立人として、大阪弁護士会人権擁護委員会に対し、いずみ生協が本件内部告発をしたのに対して、報復的に、原告らに対する軟禁、尾行、監視や、原告U2に対する自宅待機の強要、原告U1及び同Sに対する懲戒解雇などの人権侵害行為を行っていることに対し、こうしたことを行わず、本件内部告発以前の職場に復帰させるべきこと等を求める人権救済の申立てをした(甲40)。
ラ(ア) 平成一〇年三月二日、いずみ生協の総代選挙が行われた(甲28)。
(イ) 同月二六日及び同月二七日の両日にわたり、前記と同様に、いずみ生協に対し、大阪府の指導検査が実施されたが、同年五月一五日にいずみ生協理事長宛に提出された同検査結果(以下「大阪府の検査結果2」という。甲43)においては、業務運営及び会計処理等についてなお改善を図る必要がある事項が認められたので、改善に努めるべきこと等が記載されている。
リ 平成一〇年五月二二日に開催されたいずみ生協の第二四回通常総代会において、C7理事長は退任した(甲68、乙33の67)。
ル 平成一〇年六月一八日、同月一九日に開催された日生協の第四八回通常総会において、日生協の勧告に対して、いずみ生協理事会が真摯に対応していないとして、日生協としては、いずみ生協に同勧告に応えるようさらに求め続けるといった日生協理事会の見解が明らかにされた(甲44)。
レ B5常勤理事は、平成一〇年八月四日、文書(甲36)をもって、原告U2に対し、同月一七日付で出勤停止及び自宅待機を解除し、福祉分野担当役員である被告A2(原告U2本人)付けの役員スタッフへの異動を行う旨の内示を行った。その際、原告U2は、就業規則を遵守することなどを約束する内容の誓約書の提出を求められた(甲37)。
ロ 原告U2は、平成一〇年八月一七日、いずみ生協に出勤した。
出勤すると、原告U2は、被告A2から、概ね上記誓約書に記載の事項と同内容の事項につき遵守を命じられるとともに、他の部署やフロアーには用事があるときでも立ち入りは禁止であることなどの特別の注意を受けた(甲108、原告U2本人)。また、原告U2は、出勤停止・自宅待機を解き、福祉分野担当役員付の役員スタッフを命じる旨の同日付の辞令を受け取った(甲39)。
被告A2は、原告U2に対し、本部には週一日程度出勤すべき旨、週のうち二日程度は障害者福祉施設に派遣され研修する旨、週のうち一日ないし三日程度は日本福祉ビジネス専門学院に通学すべき旨を指示した(甲67、甲108、乙31、原告U2本人)。
ワ 平成一〇年一〇月八日、いずみ生協の当時専務理事であったC1理事は、原告U1に対して、平成六年九月から平成七年九月までの海外出張三件の旅費精算に関し、三七件四五三万二〇二六円の多額に上る出張旅費の水増し精算についても懲戒解雇の事由として加える旨の通知をした(乙33の211)。
ヲ 平成一一年六月三〇日、大阪地方裁判所堺支部は、原告U1及び同Sに対する懲戒解雇が本件内部告発に対する報復を主たる目的とするものであり権利の濫用であって無効であるとして、両名への賃金仮払を認める本件仮処分決定を出した。
ン いずみ生協は、本件仮処分決定後、平成一一年七月、原告U1及び同Sに対する懲戒解雇を撤回し、同年八月一八日から、両名を職場復帰させた。
また、いずみ生協は、原告U1及び同Sに対し、未払賃金全額を支払った(弁論の全趣旨(いずみ生協の平成一二年一〇月二〇日付準備書面参照))。
平成一三年ころ以降、原告U2は、いずみ生協の福祉事業部、原告Sは、同じくカタログセンター、原告U1は、同じく供給企画部にそれぞれ勤務している。
あ 平成一一年一〇月八日、いずみ生協は、日生協からの勧告に対応するものとして、本件内部告発以前のいずみ生協の体質、運営や、本件内部告発に対する対応等への反省、それらに対する改善等に関し、日生協に対して、「当生協問題についての統括とご報告」と題する文書(甲68)を提出した。
同文書においては、被告A1に過度の権限と責任が集中しすぎたという問題があり、被告A1の専決や専断的な行動を起こしやすくし、常勤役員が被告A1個人に依存する体質が、主体的で率直な議論を展開し問題を提起する姿勢を弱めた結果、重要案件について、執行責任を負託されている常勤役員会での責任ある民主的な集団討議を欠落させ、組合員や理事会への情報開示も不十分な中で物事が執行されるという問題が生み出されたが、一連の問題を発生させた主要な問題点と責任は、被告A1と常勤役員会にあり、とりわけ被告A1の機関運営上の「私物化」と不可分であり、この運営のあり方を真摯に反省し教訓としていくとされている。
そして、桜ヶ丘ホスピテルの利用を、当初はともかくその後、被告A1がほとんど独占するようになったこと、狭山研修寮についても一年のうちのかなりの期間、被告A1が宿泊利用していたこと、被告A1の給与を役員室職員に管理させるという職員の私的使用もあったことにつき、「これらは常勤トップによる公私混同・私物化であり、先ず常勤トップ自身が襟を正し、自律自制すべき事柄でありました」との記載や、被告A1が「創設来のリーダーとして当生協に欠くことのできないトップであるとの理事会認識が、常勤トップへ多大な便宜を与えることとなり、結果として個人に利益を与えることとなりました」との記載がある。
被告A1の申し出を受けて、桜ヶ丘ホスピテルの室料と狭山研修寮の使用量相当額計二八九六万円の返却を、いずみ生協と組合員への損害補填として受け入れたものとされている。
また、本件内部告発直後の理事会の対応につき、①いずみ生協が「生協の業務執行ならびに資産管理は、法律及び定款に基づき適正に行われています」との説明は、問題の事実と経過についての調査が不十分な時点での対応とは言え、誤った説明であったこと、②切迫した事態への対応に未熟であったため、問題を過大にとらえることとなり、当事者としての責任に基づく社会的説明において不十分な点があったこと、③いち早く改善委員会を設置したが、問題とされた事柄に関し、早急な是正措置と再発防止措置への対応を優先せざるを得ず、事実調査と問題点の率直な分析が遅れたこと、という対応の誤りがあったと記載されている。
さらに、協同と連帯上の問題点として、いずみ生協の内外で、生協運動や連帯の方針やすすめ方を巡る議論の過程において、被告A1や常勤役員の一部に、異なった意見を持つ他者への行き過ぎた言動があり、横暴と受け止められる問題点もあった旨記載されている。
い 大阪地検特捜部は、平成一二年一二月二八日ころ、被告A1らの背任、詐欺等の容疑につき、改めて嫌疑不十分により不起訴処分とした(乙35の1、2)。
う 弁護士二名、公認会計士二名及びいずみ生協の理事長E3(以下「E3理事長」という。)、同副理事長E4の計六名により構成されるいずみ生協の役員退職慰労金検討委員会は、平成一一年一一月に理事会から、平成九年度以降の退任役員一九名への役員退職慰労金支給の是非及び減額等の対処とその論拠についての検討の諮問を受け、同委員会は、八回の委員会開催を経て、平成一二年三月三一日、役員退職慰労金の支給等に関する答申を出した(甲70)。
え 平成一三年六月五日、いずみ生協のE3理事長と原告ら三名は、①下記 、 の文書をいずみ生協の機関紙に掲載し、全組合員・職員に配布すること、②日生協加盟の生活協同組合並びにいずみ生協の組合員および職員に、下記 、 の文書の周知をはかること、③いずみ生協理事会が、原告ら三名に対し、本件内部告発に関し、今後不利益な取扱はしないこと、④以上をもって、本件内部告発にかかわる問題については、すべて解決したものであることを確認し、原告らは、上記①、②が履行されたことを確認した上で、大阪地方裁判所堺支部におけるいずみ生協に対する民事訴訟、大阪弁護士会への人権救済の申立てを取り下げること、を内容とする確認書(甲84)を取り交わした。
平成一一年一一月六日に理事長、専務理事が、原告U1、同Sの懲戒解雇につき謝罪したことに加えて、原告U2の長期自宅待機の処置にも不適切な点があったことに謝罪する旨、本件内部告発がいずみ生協を乗っ取ることが目的であることや本件内部告発には背後があると思わせたことにつき謝罪する旨、本件内部告発が運営の見直しや改善・改革の一つの契機になったことを確認する旨を記載した、いずみ生協理事会名義の文書。
原告ら三名から組合員・職員に宛てた、本件内部告発に至った経緯、その後の経緯や今後もいずみ生協の改善・改革を進めるべき旨等を記載した文書。
上記確認書に基づき、平成一三年八月八日、原告らは、いずみ生協に対する大阪地方裁判所堺支部平成一〇年(ワ)第一二〇八号、平成一二年(ワ)第三七七号各損害賠償請求事件の訴えを取り下げ、いずみ生協は、これに同意した。
お いずみ生協は、平成九年九月の臨時総代会の決定に基づき、六箇所のゴルフ会員権をすべて売却処分したが、それによる売却損の一部は、七名の旧役員により補填された(甲70)。
か ハワイのコンドミニアム二戸は、いずみ生協の第二五回通常総代会の決定に沿って売却処分がなされ、コープ大阪サービスセンターの簿価程度の価格がほぼ保全された(甲70)。
(4) 大阪府の検査結果1、2の概要について
ア 大阪府の検査結果1
平成九年六月五日及び同月六日の両日にわたり、いずみ生協に対してなされた、大阪府の指導検査につき、同月二五日にいずみ生協理事長宛に提出された検査結果(甲41)によれば、以下のような問題点の指摘がなされるとともに、これらの改善に努めるべき旨の指導がなされた。
(ア) 組合の業務運営上の問題について
a 理事会議事録の整備・保存について
理事会議事録に、議事の経過や議案そのものの記載が全くないものが多く見られ、特に、今回の個別の事案について、ほとんどが議事録そのものに議案(協議事項)として記載されていなかった。また、作成した議事録には、議長予備議事録署名人二名が署名または記名押印することが定款により定められているが、一部の年次のものを除き、それが欠落していた。
b 諸規定の整備について
いずみ生協が制定している諸規定においては、日生協や類似団体の制定例から見て未整備のものが少なからず見られ、特に、理事会規則をはじめ役員報酬規程など、生協運営に不可欠な重要な規定についても整備が不十分である。
c 会計規則等の整備について
会計規則をはじめ経理に関する規定が定められておらず、実務的には慣例によって経費支出が行われており、仮払金の精算手続などにおいて、不適正な会計処理が見られた。
d 財務会計のディスクロージャーについて
退職給与引当金、固定資産の減価償却、貸倒引当金等の処理については、複数の会計処理方法のうちどの方法を採用するかは、組合員にとって重要な情報であり、生協会計基準においても、「会計方針」として決算書類に記載することが求められているが、現在のところ実行されていない。
e その他改善すべき事項について
未払税金の計上額が要納付額に比して大幅に過大になっている。
減価償却費につき、税法に基づかず、一〇年以上前から継続して法人税法の限度額の一五〇パーセントが計上されている。
ゴルフ会員権につき、生協会計基準に沿って「会員権等」とすべきところ、「差入保証金」として経理処理されている。
(イ) 個別事項について
a ゴルフ会員権の取得について
ゴルフ会員権については、生協関係者や取引事業者との渉外用及び一部の会員権は、職員及び組合員の福利厚生を目的として、昭和六三年二月以降、六箇所の会員権を取得している(資産計上価格一億三四四〇万円)が、その取得にかかる意思決定手続き及び財産の管理情況等に、以下のような不適正な事項が見られた。
(a) 取得には、事前に理事会の議決を経る必要があるにもかかわらず、議事録には、議案及び議事経過ともに記載されていないため、事実の確認ができない。しかも、一件については、口頭で承認を得たとする理事会の開催日より以前に取得されていた。
(b) 職員及び組合員の福利厚生を目的として取得された一部のものは、まったく周知されておらず、利用もなかった。
(c) 平成八年度の利用実績を見ても、大阪府内のゴルフ場一箇所を除き、他所はほとんど利用されていない。
b ゴルフを伴なう渉外活動について
平成八年における、渉外活動の一環として行われた取引先や関係団体等に対する国内外でのゴルフを伴う経費支出は、五八件で七五四万七〇〇〇円(国内五二件 七二一万二〇〇〇円、海外六件 三三万五〇〇〇円)であった。
個人的なゴルフプレーにかかる経費につき、自己負担というものの、一時的に仮払金により支出されるなど、不適切な会計処理が行われていた。
c 海外出張における経費の支出について
平成八年度における生協関連の国際会議や海外の生協との交流会等に関する海外出張は合計八回であった(約三二〇〇万円)が、①海外出張に際し、出張者に対して、旅行費用及び現地での活動費として仮払した現金の精算が、帰国直後ではなく年度末に他の仮払金と一括してなされているため、精算状況が不明確であること、②海外出張における規定等が整備されていないこともあって、食費、現地での交通費、贈答経費等の支出可能な範囲が不明確であること、③コープ大阪サービスセンター所有のハワイのコンドミニアムの管理業務のため、いずみ生協の特定役員および職員がハワイへ出張し、いずみ生協がその旅費及びその他の関連経費を負担しているものが見られたこと、という不適正な事項が見受けられた。
d 役員の報酬及び幹部役員の年俸について
いずみ生協においては、役員報酬規程が制定されていないので、役員報酬は理事会で決定することが一般的であるが、いずみ生協では総代会において議決された予算の枠の中で、副理事長と専務理事が相談して、各役員の報酬額が決定されており、適正さを欠く。また、幹部職員の給与については、幹部職員年俸規定に基づき、常勤役員会の議を経て、専務理事が決定しているが、同規定の最高額を超えて決定しているものがある。
e 理事会事務局(役員室)の渉外費について
理事会事務局(役員室)の渉外費については、副理事長の業務の性格上対外的活動時に現金支出を要するものがあるとの理由で毎月四〇万円ずつの定額で渉外費が支出されている。しかし、理事会事務局の渉外費の管理につき、懇親会経費、資料購入代等の領収書の徴収が可能と考えられるものでも領収書が保管されていないものがあったほか、年間支出総額の一割近くがホテルやゴルフ場でのチップであり、その出納についても、理事会事務局に任せきりで、経理担当のチェックや定期的な精算は行われていなかった。
f 狭山研修寮について
国内外の来賓の接遇及び役員、幹部職員の研修等のための施設として平成三年三月に設置された狭山研修寮の取得にかかる意思決定手続及び利用実態等につき、①狭山研修寮の工事請負契約締結は昭和六二年九月、理事会への提案は同年一二月であり、事後承諾となっていること、②前記理事会での承認は、「社宅及び幹部研修寮一億円」の投資計画としてなされ、その後、平成元年二月の理事会では「社宅2.5億円」として付議されているところ、この間の経緯や大幅に経費がかさむ理由等につき議事録に記載がないこと、③狭山研修寮は、平成三年三月に竣工したにもかかわらず、平成九年六月一一日登記されるまで未登記であったこと、④狭山研修寮が、総代会資料の施設一覧にもこれまで掲載されていなかったこと、⑤特定役員といずみ生協との取引であるにもかかわらず、取引明細表が整備されておらず、また、当初の土地賃借料の積算が不明確であったこと、⑥平成八年度の利用実績は、約一五〇日であり、そのほとんどが特定役員の利用となっていたこと、といった不適正な事項が見受けられた。
g コンドミニアムについて
ハワイのコンドミニアム二室は、いずみ生協が95.7パーセント出資する子会社のコープ大阪サービスセンターが平成五年三月に取得したもので、いずみ生協は、役職員等の業務出張研修や休暇保養目的のため、同社と、年間延べ一七〇日を限度とした施設利用契約を締結しているが、同施設の取得に関する手続や取得以後の利用実態等につき、①平成五年三月四日、いずみ生協からコープ大阪サービスセンターへ五八〇〇万円貸付金の振込がなされ、同月一〇日にコープ大阪サービスセンターがコンドミニアムを取得、同月二九日に貸付にかかる覚書をいずみ生協とコープ大阪サービスセンターで締結、同年五月一一日にいずみ生協第一四回理事会において、出資及び貸付について議決がなされたもので、理事会の議決が事後承認となっていること、②コンドミニアムの維持管理経費につき、いずみ生協からの仮払という形で一時的にその全額が立て替えられていたこと、③施設の利用実績は、平成八年度には二室で延べ一〇三日であり、うち特定役員が五四日利用し、随行関係者も含めると利用の大半を占めており、組合員の旅行利用や役職員等の研修、保養目的の利用はほとんど認められなかったこと、といった不適正な事項が見受けられた。
h 指定医療機関について
いずみ生協と、指定医療機関「桜ヶ丘ホスピテル」との病室年間賃借契約は、常勤役員及び幹部職員の健康管理を目的として、年間を通じて何時でも入院できる病室を確保するために、年間五〇〇万円で個室の賃借契約を結んだものであるが、その利用実態等につき、①特定役員が利用し、他の役員、幹部職員の利用がほとんどなかったこと、②いずみ生協が負担した入院中の経費の中には、いずみ生協において支出する合理的な理由に乏しいものが含まれていたこと、といった不適正な事項が見受けられた。
(ウ) そして、総括的に、特定の役員に対する利益供与を思わせる点が多々あり、設置された諸施設も生協法にいう組合員の生活文化の向上に供するものと判断するに十分な事由は見当たらなかった旨、総代会で選出された四人の監事が、今回の一連の問題について意見を述べた記載が議事録にはなく、牽制機能が働いていない旨の指摘がなされている。
イ 大阪府の検査結果2
また、平成一〇年三月二六日及び同月二七日の両日にわたり、いずみ生協に対してなされた、大阪府の指導検査につき、同年五月一五日にいずみ生協理事長宛に提出された、同検査結果(甲43)によれば、以下のような問題点の指摘がなされるとともに、これらの改善に努めるべき旨の指導がなされている。
(ア) 未稼働資産等について
a 社宅について
役員の社宅として平成三年三月一日に一億二七〇〇万円でいずみ生協が取得した河内長野市内の土地及び建物は、取得に当たって理事会の議決を経ていない。また、取得当初から平成九年五月まで、当該役員が月額八万円の賃料で入居していたが、同役員のために特別に取得した経緯があるため、現在は空き家となっており、入居の目処が立たない状況である。
b 保養施設について
いずみ生協が、役職員及び組合員の福利厚生を図ることを目的として、昭和六三年以降に取得した三箇所の保養施設(長野県二箇所、岡山県一箇所)につき、長野県の施設一箇所は、取得に当たって理事会の議決を経ていない。また、利用対象者への周知が不十分なため、積極的な活用が図られていない施設がある。
c 未稼働の土地について
保養施設用地、店舗又は事務所用地、物流用地等として、昭和五四年以降に計五件の土地を取得している(取得総額約三七憶六〇〇〇万円)が、必要性の検討が不十分であり、計画に具体性を欠くなどの事情により、取得後まったく利用されていない。また、うち二件については、理事会の議決を経ていない。
d 東京事務所について
東京での会合、交流に際し、事務連絡所として利用するため、平成四年から民間ビルの一フロアを賃借し(賃料月額一四二万八〇〇〇円)、「東京事務所」を設置しているが、維持管理(賃借料、管理料等)に年間約一八〇〇万円もの経費がかかっているにもかかわらず、利用状況について明確な説明がなかった。
e 税務調査に基づく修正申告について
この点については、後記(5)記載の事項について概括的な指摘がなされている。
そして、結果的に法人税法上の役員の「債務の免除による利益その他経済的な利益」等として自らが処理せざるを得ない状況を生み出したことについては、重大な問題として受け止める必要がある旨、今回の税務調査に基づく一連の修正申告の内容から、社会通念上、結果的に利益供与があったと思わせる状況やこれに伴う組合員の不信を招く結果になったことは府としては極めて遺憾である旨の指摘がなされている。
(5) 税務調査結果の概要について
平成九年九月一七日から、平成一〇年一月中旬にかけて、堺税務署によりなされたいずみ生協に対する税務調査の結果、平成六年度ないし同八年度において、いずみ生協は、平成一〇年一月二三日、法人税関係で、約九二〇八万円、個人の源泉所得税関係として約九五五万円をそれぞれ課税対象追加額とする修正申告を行った。その結果、法人の追徴税額として、加算税、延滞税を含む、約四一一九万円を納付するとともに、源泉所得税として約三六三万円を、対象となった個人から徴収の上、納付することとなった。
その内容には、以下のものが含まれている。なお、金額は、注記なき限り、いずれも平成六年度ないし同八年度の合計額であり、消費税抜きの概算額である。
ア 福利厚生費等として処理されるなどしたもののうち、被告A1から支払を受けることにしたもの
(ア) 桜ヶ丘ホスピテルの使用料につき、過去の使用実績から被告A1の利用がほとんどであるとして堺税務署に福利厚生費としての処理を否認されたもの 約二〇〇七万円
(イ) 狭山研修寮につき、被告A1が自宅代わりに使っていた部分の家賃相当分 約六九五万円
(ウ) 狭山研修寮につき、被告A1が個人的に使用した水道光熱費につき、堺税務署に否認されたもの 約一九五万円
イ 調査研究費等として計上されていたが、役員賞与(いわゆる認定賞与)とされたもの
(ア) ハワイへの旅費中、調査研究費として計上されていたものの、ゴルフ等の私的観光部分 約三九八万円
(イ) 上記私的観光に当たる日に使用したコンドミニアム宿泊代 約一一一万円
(ウ) 平成七年度、同八年度におけるヨーロッパ旅費中、私的観光部分 約三四八万円
ただし、これらは、源泉所得税関係につき、海外出張旅費等のうち経費として認められなかった金額であり、法人税関係においては、いずみ生協は、このうちの約六八四万円を修正申告している。
ウ 調査研究費、福利厚生費から税法上の交際費として修正を行ったもの
海外出張のうち一三件にかかる経費のうち、調査研究費及び福利厚生費として処理されていたものにつき、旅行宿泊に用いたハワイのコンドミニアムの利用料、ハワイ旅費、ヨーロッパ旅費等、業務内容等から、税法上の交際費とされたもの 約三二九八万円
うちコンドミニアム利用分は、約一〇二〇万円、ハワイ旅費の調査研究費として計上されていた分は、約一八二九万円である。
(以上につき甲43、甲58、甲59、乙33の64、乙33の91)
(6)  役員退職慰労金の支給等に関する答申の概要について
平成一二年三月三一日、いずみ生協の役員退職慰労金検討委員会の役員退職慰労金の支給等に関する答申(甲70)においては、以下のとおり、問題点の指摘及び被告A1、同A2ら退任役員の責任の評価がなされている(なお、評価レベルは、重大、大、中、小、軽少の五段階である。)。
ア 狭山研修寮
(ア) 生協の財産と理事個人の財産とが混在する取引のあり方においては、明白で慎重な手続きと審議が求められるが、理事会議案及び議事録が形骸化しており、証明にたる十分な記録となっておらず、組合員への公開もされていないなど、社会問題化した結果として、いずみ生協の社会的信用を大きく損ねている。
当時専務理事であった被告A1の責任は重大である。
当時常勤監事であった被告A2については、監事としてチェックする立場にあるにもかかわらず、平成元年八月三一日付覚書(甲46、甲59)においていずみ生協が建物新築工事の不履行時に、売主(住友林業)が土地の買戻しができる旨の連帯保証人として署名・捺印している件につき、土地所有者の債務に連帯保証をするための理事会議決等が欠落していると見られるので、小の責任がある。
(イ) 利用状況につき、平成五年以降専ら被告A1の使用となり、大阪府の指導検査によれば、平成八年度の使用約一五〇日のうち、公務と証明できるのが八七日であったと指摘されている。
「狭山研修寮使用規定」にそぐわない使用について、被告A1の常勤トップとしての責任は重大である。
実態をどこまで承知していたかの問題はあるが、被告A2を含む当時の常勤役員にも不適切な利用を容認したことによる小の責任がある。
(ウ) 平成九年九月一六日の臨時総代会における制裁により、一定の責任をとったとされていること、税務調査において、被告A1から平成六年から平成八年までの使用料、水道光熱費として八九〇万円がいずみ生協に損害填補されていることを勘案しても、上記の責任は免れない。
イ 桜ヶ丘ホスピテル
役員・幹部の健康管理と健診という目的に沿った広報がなされておらず、被告A1の使用に片寄った時点で、目的どおりの利用促進を図るか、契約制度の見直しが必要であったと判断できる。その結果、いずみ生協の信頼を損ねるような社会問題化したことに対して以下のとおりの責任がある。
被告A1については、専ら自らの使用が突出した状態を改めず、施設の利用実態の改善を指揮し、あるいはそれがなし得ないと判断したときは、契約の見直しを提案することを怠っており、大の責任がある。
同様に、被告A2を含む歴代の専務理事らには軽少の責任がある。
税務調査において、被告A1及び常勤役員が二〇〇六万円の損害補填をしていることを勘案しても上記の責任は免れない。
ウ ゴルフ会員権
渉外で必要であったともいえるが、いずみ生協がゴルフを伴う渉外活動をすることについては組合員の意見の分かれるところであり、その気持ちを大切にし、組合員にも公表すべき事柄であった。当時、一般的には会員権がなければ、ゴルフプレーができない状況であったが、六箇所は多すぎであり、事実活用されていないゴルフ場も認められる。
常勤トップの被告A1の責任は重大である。
当時の専務理事以下常勤役員(被告A2を含む。)の責任は中である。
エ ハワイのコンドミニアム
総代会報告を経ているものの、コープ大阪サービスセンターの海外旅行事業の強化として、ハワイにコンドミニアムを取得することが適切な政策判断であったのか、その後の組合員利用がほとんどないことから見て、組合員の要望に沿っていたのかという問題点が残る。また、取得前に十分な旅行事業の成立の目途をもった計画性のある取得であったのかという問題点と責任がある。さらに、取得手続において、コープ大阪サービスセンターへの貸付が事後承認であるという問題点と責任がある。施設利用についても、四年間にわたり、当初計画どおりには実現されておらず、被告A1と遂行関係者の利用が大半になっているという問題点と責任がある。また、社会問題化し、信用失墜の大きな問題となった責任も否めない。
常勤トップである被告A1については、取得時の目的と計画、手続、施設活用について責任が重大である。
被告A2を含む当時の常勤理事全員についても、取得時の目的と計画、及び、施設活用実態についての責任は大である。
オ 定額渉外費
定額渉外費は、生協において一般的な制度ではなく、他に仮払金制度も十分に活用されていることからみて、必要な制度とは見られない。個別記帳管理はされているが、贈答品やチップ等領収書のない支出が多く、管理者の点検も毎月なされていなかった。定額交渉費の制度設置当初は、何らかの設置の理由があったとしても、十数年間見直しもされず運用され、社会問題化した責任はある。
定額渉外費は、資料購入代、慶弔、贈答などの支出であり、理事会事務局が管理していたものであるが、常勤トップである被告A1の渉外活動にかかわる贈答品やチップ等領収書のない支出が大半であり、当人の責任は重大である。
理事会事務局は、被告A2を含む歴代専務理事の直轄部署であり、管理責任は否めず、同人らには大の責任がある。
カ その他
未稼働資産としての遊休土地五箇所のうち、二箇所については、取得手続に慎重さが欠ける等の問題点の指摘がなされ、常勤トップである被告A1の責任は重大であるとされ、被告A2を含む当時の常勤理事の責任は中であるとされている。
また、東京事務所については、利用頻度は高くなくあえて事務所が必要であったかの問題が残り、費用対効果において問題があり、責任があるとされ、被告A1の責任は重大であり、当時の専務理事以下常勤役員(被告A2を含む。)の責任は大であるとされる。
キ 他方、前記遊休土地の残りのうち二箇所、いずみ生協が昭和五七年から平成三年までの間に行った四箇所のホテルの会員権等の取得、四五点、一九九七万円相当の絵画・美術品の購入、役員プール金等については不問に付するとされ、交際費も、他生協との比較では少なくない金額ではあるが、費用対効果の計測は困難であり、責任があるとは判断することはできなかったとされた。
ク そして、被告A1の退職慰労金については、モラルと社会的道義から見て、常勤トップとして襟を正し、自律自制する立場にありながら、それに反する事柄が多く見られ、その意味では、一連の不祥事について最大の責任が問われてしかるべきであり、支給額をゼロとするとされた。
ケ 被告A2については、上記事項につき各責任が認められ、さらに、一連の問題の初期対応や問題を長期化させた責任は重大であるとして、総支給額の八〇パーセントを減額し、二〇パーセントの支給が妥当であるとされた。
2  本案前の主張(争点(1))について
前記1(3)えのとおり、原告らいずみ生協との間において、平成一三年六月五日、本件内部告発にかかわる問題についてはすべて解決したものとして、本件に関するいずみ生協に対する訴え(平成一〇年(ワ)第一二〇八号損害賠償請求事件及び平成一二年(ワ)第三七七号損害賠償請求事件)を取り下げる旨の確認書を締結して訴訟外の和解を行い、これに基づいて、原告らはいずみ生協に対する上記訴えをいずれも取り下げている。
ところで、本件は、原告らが、いずみ生協の役員であったとはいえいずみ生協とは別個の法的主体である被告A1及び同A2に対して、損害賠償を求めたものであるから、原告らがいずみ生協との間で訴訟外の和解をし、その関係でいずみ生協に対する訴えを取り下げたからといって、当事者を異にする以上、そのことにより、原告らの精神的苦痛が幾分かでも慰謝されたものと評価される余地があり得ることは格別、残りの当事者との関係で訴訟の追行ができなくなるとする理由はないというべきである。
よって、この点の被告らの主張は採用できない。
3  原告U1及び同Sに対する懲戒解雇の違法性等(争点(3))について(本件内部告発の正当性(争点(2))についての検討を含む。)
(1)  前記第2の2(3)セ、第3の1(3)チのとおり、いずみ生協は、平成九年六月一〇日、原告U1及び同Sに対し、本件懲戒解雇の意思表示をした。
その解雇事由を分類すると、原告U1固有の解雇事由として、①資料の複写、持ち出し行為、③職場離脱行為、④金銭上の不正行為、原告S固有の解雇事由として、⑤利益供与を受けた行為、及び原告両名に共通の解雇事由である②、⑥の虚偽の風説を流布する等の行為に分けられるから、その分類に従い、以下検討する。
(2)  原告U1固有の解雇事由の有無について
ア 資料の複写、持ち出し行為(①)について
(ア) 前記前提となる事実、証拠(甲3の2、3、甲46、甲57の7、甲59、甲78、乙32の2、9、10、乙33の30、31、41、62、63、65、85)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
a 原告らは、平成九年五月一五日、本件内部告発文書を総代の大半である約五三〇名に対し送付したから、原告らは、約五三〇名の総代の氏名及び住所を、同日までには何らかの方法により了知していた。
全総代の氏名及び住所を了知する直接の方法としては、全総代の住所と氏名を記載した総代立候補届出用紙による方法しかない。全総代の氏名が判明した場合に、その住所を知る方法として、いずみ生協内部のコンピュータを用いて、カタカナ入力されている組合員個人名から住所を検索することが考えられる。なお、機関紙「いずみ」には、総代の氏名及び支部名は掲載されるが、支部役員以外の総代の住所は出ていないから、これからすべての住所を正確に調査することは極めて困難である(甲78、乙32の9、10)。
前記総代立候補届出用紙は、いずみ生協本部三階の共同購入運営部にあるキャビネットの中に保管されていたが、同キャビネットは、夜間に限って施錠されていた(乙32の2)。
b 原告らは、総勘定元帳(甲3の2)、桜ヶ丘ホスピテル関係の出金伝票及び領収書(甲3の3、甲46)、桜ヶ丘ホスピテルの食事の計算書(甲46)、年度毎の収支(甲59)、役員報酬・幹部給与一覧表(甲46、甲59)、D5社長のメモ(甲57の7)、日程表(甲59)、その他いずみ生協の経理に関する多数の請求書及び領収書の写し等を入手、所持している。
c 総勘定元帳(甲3の2)は、通常は、いずみ生協本部七階の経理部にある施錠されていないキャビネットの中に保管されているが、平成八年度分については、平成九年二月ころから、箱詰めにして経理担当役員の横の机上に保管され、予算作成上必要な場合には、申請の上、同保管場所で閲覧する態勢となっていた(乙32の2)。
d 桜ヶ丘ホスピテル関係の出金伝票、領収書(甲3の3、甲46)及び桜ヶ丘ホスピテルの食事の計算書(甲46)は、いずれも、いずみ生協本部四階の役員室内に、クリアファイルに入れられて、D7主任(以下「D7主任」という。)の机の下に保管されていた(乙32の2)。
e 年度毎の収支(甲59)は、D7主任が、その担当する被告A1の秘書としての業務上の必要性からのメモとしてパーソナルコンピューターを用いて作成し、フロッピーディスクに保存するとともに、印刷結果をクリアファイルに入れて、上記フロッピーディスクとクリアファイルをいずれも役員室において、D7主任の私物の鞄の中に携帯して保管していた(乙32の2、乙33の31)。
f 役員報酬・幹部給与一覧表(甲46、甲59)は、役員室課長であったD6(以下「D6課長」という。)が作成し、フロッピーディスクに保存して、平成八年一〇月ころまではD6課長の机の引き出し(無施錠)の奥に、それ以降は無施錠のキャビネットの中に保管してあったものである。同表の作成など役員報酬・幹部給与等の管理業務は、D6課長が人事部の課長であった当時から、役員室に異動後も引き続き行っており、D2常勤理事の指示により行っていたもので、役員室の業務ではなかった。
また、D6課長は、同表を印刷する際は、表の上部から金種を記載した部分(以下「金種表」という。)までの部分、又は、金種表を除いた部分のみを印刷して用いるので、前記甲46等に掲載された形式で印刷されたものはなく、それを入手するためには、フロッピーディスクの中のデータを用いて新たに印刷しないと入手することができない。
(以上につき乙32の2、乙33の30、41、62、65、85)
g また、役員室には、D5社長のメモ(甲57の7)、日程表、その他いずみ生協の経理に関する多数の請求書及び領収書の写し等が保管されていた(甲78)。
(イ)a 前記各文書のうち、役員室に保管されていた、桜ヶ丘ホスピテル関係の出金伝票、領収書(甲3の3、甲46)、桜ヶ丘ホスピテルの食事の計算書(甲46)、D5社長のメモ(甲57の7)、日程表、その他いずみ生協の経理に関する請求書及び領収書の写し等については、原告U1が、いずみ生協内において役員室内におったものを複写し、持ち出したものである(甲78)。
b 総代立候補届出用紙を持ち出して組合員総代の氏名と住所を了知したとする点については、原告U1は、上記立候補届出用紙については知らず、機関紙「いずみ」に掲載された総代の氏名及び支部名をもとに、電話帳や原告らに協力する組合員らの調査により、二、三か月かかって大半の総代の氏名及び住所を了知した旨供述する(甲78)。
しかし、この方法により大半の総代の住所を正確に了知しうるかは極めて疑問である上、非常に時間を要して非現実的であることからすれば、原告U1の前記供述は、たやすく信用できない。
他方、総代立候補届出用紙を複写することが、全総代の氏名と住所を了知するにつき最も直裁でかつ時間も要しないと考えられること(なお、コンピュータにより住所を検索する方法も、相当程度の手間と時間を要するものと推測される。)、原告ら三名の他にも原告らに協力する職員が存在するとされていること(甲78、原告U1本人)、総代立候補届出用紙は、日中は施錠されていないキャビネットに保管されていたに過ぎないこと、前記のとおり、原告らは、多数の文書の写し等を所持しているところ、その多くは原告U1がいずみ生協内に保管されているものを複写したことが窺われること(甲78)等の事情を総合的に考慮すると、無断で、原告U1が自ら複写し、あるいは、少なくとも同人が他の者をして複写せしめ、総代立候補届出用紙の写しを持ち出したものと推認するのが相当である。
c 総勘定元帳については、本件仮処分事件の審理において、原告らは、七階に積まれていたのを謄写して持ち出した旨、いずみ生協の建物内の複写機を使って複写したことを明確に認めていたことが窺われる(甲64、甲78、甲79)ことも考慮すると、総勘定元帳は、無断で、原告U1が自ら複写して持ち出したものと認められる。
なお、その後、原告U1は、それを職員からもらった旨供述する(甲78、甲79)が、同供述は具体性や裏付けを欠くことからしても信用し難い。
d 年度毎の収支については、これがD7主任のメモに過ぎず、同人の鞄に保管されていたものであること、原告U1も、どこに保管されていたかはともかく、これを自ら複写して持ち出したことは認めていること(甲78、乙33の31)等からすれば、原告U1が役員室内においてD7主任の鞄の中を無断で漁り、複写するなりして持ち出したものと認めることができる。
e 役員報酬・幹部給与一覧表については、原告U1が役員室から印刷されたものを持ち出したという限度では認めている(甲78)こと、しかしながら、上記のとおり、甲46等に掲載された形式の表を入手するためにはそのデータの入ったフロッピーディスクを要すること及び乙33の30等からすれば、原告U1、D6課長が役員室内の机の引き出しないしはキャビネットにおいて管理、保管するフロッピーディスクを無断で使用して、役員報酬・幹部給与一覧表のデータを入手したものと認めることができる。
(ウ) そうすると、原告U1は、いずみ生協の建物内において、各種文書等を無断で自ら複写して、ないしは他の者に複写せしめるなどして持ち出したり、D6課長の保管する原告U1の業務とは無関係な資料を探したり、D7主任の私物の鞄の中まで無断で漁るなどの行為をしたことになる。
そして、これらの行為は、いずみ生協就業規則四六条(3)の「素行不良にして生協内の風紀秩序を乱したとき」、同(7)の「許可なく生協の物品を持ち出し、または持ち出そうとしたとき」ないし同(11)の「前各号に準ずる程度の不都合な行為をしたとき」に該当するということができる。
イ 職場離脱行為(③)について
(ア) 証拠(甲78、甲79、乙33の33、89)及び弁論の全趣旨によれば、原告U1は、平成九年五月一六日に、午前一〇時三〇分ころから、ほとんど自己の業務を行わず、同日午後からは、私用で外出し、職場を離脱していたことが認められる。
他方、そのほかに、原告U1が職場離脱行為を行ったと認めるに足りる証拠はない。
(イ) そうすると、上記平成九年五月一六日の職場離脱行為は、就業規則三六条(7)の「勤務時間中はみだりに職場を離れないこと」という服務心得に違反するものであるとはいえるが、一日職場を離脱したに過ぎないから、同四六条(2)の「本規則にしばしば違反するとき」、同(3)の「素行不良にして生協内の風紀秩序を乱したとき」、同(6)の「正当な事由なくしばしば無断欠勤し、業務に不熱心なとき」、同(11)の「前各号に準ずる程度の不都合な行為をしたとき」のいずれかに該当するとまでは認められない。
ウ 金銭上の不正行為(④)について
(ア) この点については、いずみ生協は、原告U1らの地位保全等仮処分事件において、解雇事由として、次のとおり主張していた(乙32の9)。
平成六年八月ないし平成九年六月ころまでの間、関連事業統括部長、役員室長の地位を利用して、業務とは関係のない交際費を請求、取得した。
取引先のコープ大阪サービスセンターの課長のD8(以下「D8課長」という。)から預かった旅行費用(三五万円余)を、平成七年一二月一一日ころまで、二か月以上いずみ生協に引き渡さなかった。
平成七年ころ、被告A1から職員への結婚祝い金の三万円を祝儀袋に入れて原告U1の引き出しに保管していたところ、現金だけが消失した。
平成六年一〇月一二日、鹿児島出張の精算の際、私物の購入経費を請求して取得した。
平成七年一一月八日及び同年一二月一一日、株式会社カタログハウスから個人的に購入した商品相当額を経費としていずみ生協に請求して取得した。
平成七年六月一五日、同月一六日に千葉県で行われた日生協第四五回通常総会への出張経費の精算につき、九名分の出張旅費六万円を一括請求して領得した。
平成八年一月二五日には株式会社ウッディとの打ち合わせをしていないのに、したように装って経費を請求し、三万三二七〇円を領得した。
平成六年九月から平成七年九月までの間に関連事業統括部長ないしは役員室長としていくつかの海外出張業務に従事した際、架空ないしは虚偽の領収書を用いるなどして経費を請求し、多額の金員を着服した。
(イ) ところで、使用者が労働者に対して行う懲戒は、労働者の団体内秩序違反行為を理由として、一種の秩序罰を課するものであるから、具体的な懲戒の適否は、その理由とされた非違行為との関係において判断されるべきであり、したがって、懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は、特段の事情のない限り、当該懲戒の理由とされたものでないことが明らかであるから、その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないものというべきである(最高裁平成八年九月二六日第一小法廷判決・判例時報一五八二号一三一頁参照)。
そこで、本件につき見るに、金銭上の不正行為に関して、懲戒解雇通知書(甲106)に記載されているのは、「その他金銭上の不正を疑う行為等がたびたびあった」というもののみであるところ、いずみ生協は、上記仮処分事件において、前記(ア) ないし の事実関係をすべて具体的に認識していたわけではない旨主張していたこと(乙32の9)、金銭上の不正行為に関し、いずみ生協側で、本件懲戒解雇の前日である平成九年六月九日に、原告U1の処遇についての結論を出すに当たり同人から弁明を聴取したのは、前記(ア) 及び の点のみであること(甲78、甲79、乙33の15の3)、からすれば、結局、いずみ生協側において認識し、懲戒の理由とされたのは、前記(ア) 及び にとどまると解するのが相当である。
もっとも、前記特段の事情がある場合には、前記 、 ないし も懲戒の理由たる非違行為に該当しうるというべきであるが、それら不正として挙げられる行為は、前記 及び とはまったく別の機会における異なる態様によるものであるに過ぎないから、本件において、前記特段の事情は認められないというべきである。
(ウ) そこで、まず、前記(ア) の存否につき見るに、証拠(甲78、乙33の14、80)によれば、平成七年一〇月二日ころ、原告U1は、いずみ生協の立替金に対する弁済金としてD8課長から三五万円余の金員を預かったことは認められる。しかしながら、原告U1がこれを何時いずみ生協に引き渡したかについては、D7主任は、同年一二月一一日ころであるとするが(乙33の13、80)、同供述は裏付けを欠くこと、原告U1はD8課長から受け取った直後にD7主任に金員を引き渡した旨述べていること(甲78)からして、上記D7主任の供述はたやすく信用できず、他に原告U1がかかる金員をそのころまでいずみ生協に引き渡さなかったと認めるに足りる証拠はない。
(エ) 次いで、前記(ア) の存否につき見るに、この点に関する証拠としてはD7主任の供述(供述(乙33の13)があるが、同供述は、祝金を渡す相手の名が明らかにされていなかったり、祝儀袋の中身が空であったという点、原告U1が手を付けたと決め付ける根拠に乏しいものであり、原告U1は、この件を全然知らない旨述べていること(甲78)に照らして、上記乙33の13記載の供述をもって原告U1の不正行為を認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
(オ) 結局、原告U1には、懲戒解雇事由とされた金銭上の不正行為(前記(ア) 及び )を認めることができない。
(3)  原告Sの固有の懲戒解雇事由(④)について
上記懲戒解雇事由は、(ア)自宅マンションの内装工事に関するもの、(イ)自宅マンションガス給湯器及びエアコンの取替工事代金に関するもの、(ウ)不当なゴルフ等接待を受けたこと、に区分されるので、以下検討する。
ア まず、前記(ア)の、原告Sのマンション内装工事に関する利益供与の存否につき、証拠(甲80、甲81、甲110の2、乙32の9、乙33の21、63)及び弁論の全趣旨によれば、原告Sが昭和六二年三月に中古マンションを購入したこと、その内装工事を泉洋建設株式会社(以下「泉洋建設」という。)に発注したこと、原告Sは、その工事代金として、泉洋建設の専務取締役であったD9(以下「D9専務」という。)に対して二〇〇万円程度を支払ったことが認められる。
これらの事実からすると、まず、原告Sが泉洋建設に対して、無償で内装工事を行わせたのではないことになるから、利益供与の有無は、実際の内装工事代金額と、D9専務が受け取った二〇〇万円程度との間に多額の差異があるかどうかによることになる(多少の差異がある程度では、そうしたことは一般の取引においてもしばしば見られると解されるから、直ちに利益供与があったと断ずることはできない。)。
この点、そもそも実際の内装工事にかかった金額は判然としない(乙33の63)。泉洋建設社長のD5(以下「D5社長」という。)は、六〇〇万円位ないし九〇〇万円くらいであった旨述べている(乙33の21、63)が、他方、見積書や請求書も発行していなかったという(乙33の21)のであって、その金額に関する供述はあいまいかつ根拠も薄弱と言うべきである。そうして、昭和六二年の泉洋建設の工事台帳(乙33の110の1ないし6)上、S邸とあるのをすべて原告Sの前記工事のものと見たとしても、合計二三三万円程度にしかならないこと(乙33の102)、しかもそのうち一応の裏付けが取れるのはオオヤ電機株式会社施工分の一〇〇万円程度にすぎないこと(乙33の111の1、2)などからすれば、実際の内装工事代金と原告Sが支払った金額との間に、多額の差異があるとは認められず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
よって、前記内装工事代金に関して原告Sが利益供与を受けたとは認められない。
イ 次に、前記(イ)の原告Sの自宅マンションのガス給湯器とエアコンの取替工事代金に関する点については、証拠(甲80、甲81、乙33の21、乙33の22の1ないし4、乙33の63)によれば、原告Sが、平成五年八月ころには給湯器の取替工事(約二二万円)を泉洋建設に行わせていること、原告Sはそれらの代金を泉洋建設に対して支払っていることが認められる。
そうすると、原告Sの支払った金員の出所が問題となる。
この点につき、いずみ生協は、原告Sと泉洋建設のD5社長とが共謀して、平成六年七月ころに株式会社谷口庄工務店(以下「谷口庄工務店」という。)がいずみ生協から請け負った狭山研修寮に関する工事(乙33の24の5)につき泉洋建設が下請した工事のうちの自動散水栓工事等代金一三九万三三六九円を同年一一月に谷口庄工務店に請求しているところ、この代金について、実際に泉洋建設がその下請先に支払った費用は五一万九七〇七円であるに過ぎず、その差額である八七万三六六二円のうち、五〇万円を泉洋建設が原告Sに渡し、原告Sがその中から四八万円を泉洋建設に前記ガス給湯器等の代金として支払った旨主張し(乙32の9)、D5社長は、それと類似の、狭山研修寮の工事代金一三九万三三六九円と九九万七三六九円の差は、原告Sの工事代金を上乗せしたものである旨、あるいは狭山研修寮の工事代金九九万七三六九円は、下請先へ支払った費用五一万九七〇七円に、原告Cからもらっていない給湯器及びエアコンの工事代金をプラスしたものである旨の供述をしている(乙33の63)。
しかしながら、原告Sはこれを否定していること(甲80、甲81)、原告Sとの共謀の点に関するD5社長の供述(乙33の21、63)は、整合性を欠き、しかも変遷していること、給湯器の工事の時期は、狭山研修寮の工事の時期より遙かに古い時期であり、エアコンの工事の時期は、狭山研修寮の工事代金請求の時期よりも後であるから、これら工事の時期にずれがあって、狭山研修寮の工事代金にこれらが上乗せされたとは考えにくいこと、したがって、前記のような共謀があるとするにはいささか不自然の感を免れないこと、その裏付けとして提出されている泉洋建設の工事台帳(乙33の23の1)においても、前記のような共謀があれば、泉洋建設の売上額としては、一三九万三三六九円の全額を記載すべきと考えられるのに、特段の根拠を欠く九九万七三六九円という金額のみが記載されており、乙33の102以下のいずみ生協による調査及び収集資料によっても上記金額の説明は得られないから、いずれが泉洋建設の工事代金なのかも不明と言わざるを得ないこと等からすれば、前記D5社長の供述はたやすく信用し難く、他にこの点の利益供与を認めるに足りる証拠はない。
ウ さらに、原告Sが不当なゴルフ等接待を受けたとする点については、前記認定の事実、証拠(甲80、甲81、乙33の21、63、109の1、2)及び弁論の全趣旨によれば、原告Sは、いずみ生協の職員になって以降、ほぼ一貫して土地の取得や店舗等の建物の建設、賃借等の開発業務に携わってきたこと、とりわけ昭和六〇年ころから平成七年六月ころまでの間は、実務担当者として、そうした開発業務において、他の業者との交渉等を含め、中心的な役割を果たしていたこと、泉洋建設は、昭和五七年ころからいずみ生協が発注する建物の新築、改築等の工事を受注するようになり、一時は、いずみ生協からの仕事が泉洋建設の業務の九割程度を占めたり、年間受注額が七億円に達するなど、いずみ生協から多数かつ多額の工事を受注してきたこと(乙33の63)、平成二年から平成七年にかけて、原告Sが四〇回程度は岬カントリークラブ等において泉洋建設のD5社長からゴルフの接待を受けてきたこと(甲80、甲81、乙33の21、63)、平成六年一〇月ころ、原告SがD5社長から一三万円程度の釣り道具を贈られ、これを受領したこと(甲81、乙33の109の1、2)が認められる。
そして、これらの事実からすれば、原告Sは、D5社長から、その職務に関して多数回のゴルフの接待を受け、また、高額の釣り道具を贈与されたものであると推認される。
そうすると、原告Sのこうした行為は、職員の服務心得につき定めたいずみ生協の就業規則(乙3)三六条(6)の「職務に関し、不当な金品を借用または贈与の利益を受け、または要求し、もしくは約束をしないこと」に違反し、その接待を受けた回数等に鑑みれば、同規則四六条(2)の「本規則にしばしば違反するとき」に該当すると言うことができる。
なお、上記ゴルフの接待及び釣り道具の贈与を受けた以外に、泉洋建設から旅行、飲食、金品の提供を受けたと認めるに足りる証拠はない。
(4)  原告U1及び同Sに共通の解雇事由(②、⑥)について
ア 本件のようないわゆる内部告発においては、これが虚偽事実により占められているなど、その内容が不当である場合には、内部告発の対象となった組織体等の名誉、信用等に大きな打撃を与える危険性がある一方、これが真実を含む場合には、そうした組織体等の運営方法等の改善の契機ともなりうるものであること、内部告発を行う者の人格権ないしは人格的利益や表現の自由等との調整の必要も存することなどからすれば、内部告発の内容の根幹的部分が真実ないしは内部告発者において真実と信じるについて相当な理由があるか、内部告発の目的が公益性を有するか、内部告発の内容自体の当該組織体等にとっての重要性、内部告発の手段・方法の相当性等を総合的に考慮して、当該内部告発が正当と認められた場合には、当該組織体等としては、内部告発者に対し、当該内部告発により、仮に名誉、信用等を毀損されたとしても、これを理由として懲戒解雇をすることは許されないものと解するのが相当である。
かかる見地にたって、まず、本件内部告発の正当性の有無につき、以下検討する。
イ 本件内部告発文書等に記載の事項の真実性等について
(ア) 狭山研修寮に関する記載について
a この点に関し、本件内部告発文書の摘示する事実は、前提となる事実(2)イ(ア)記載のとおりであり、その根幹は、要するに、①被告A1が、いずみ生協の施設である狭山研修寮に家賃も払わずに居住していること、②いずみ生協から高額の地代収入を得ることにより、本件土地と建物を無料で手に入れようとしていること、③被告A1のいずみ生協女子職員への不当取扱いという、被告A1によるいずみ生協のいわゆる私物化等の事実ということができる。
b 前記前提となる事実、証拠(甲41、甲45、甲46、甲56、甲58、甲59、甲63、甲68、甲78、甲80ないし甲82、甲112、乙7、乙12の2、乙33の35、64、83ないし85、91、原告U1本人)及び弁論の全趣旨によれば、狭山研修寮に関し、以下の事実が認められる。
(a) 狭山研修寮は、平成三年三月に、役員・幹部・職員の研修や、国内外の来客者の宿泊、接遇のためとの名目で設置された施設である。第一種低層住居専用地域に所在する大阪府大阪狭山市大野台〈番地略〉宅地合計地積500.39平方メートル(以下「本件土地」という。)、建坪398.36平方メートルの木造二階建(一階六室、二階三室、地下室(物置))の建物からなる(乙7、乙33の35)。
(b) 被告A1は、昭和六二年五月ころ、売主である住友林業株式会社(以下「住友林業」という。)との間で、本件土地につき売買の予約を行った上、同年九月一八日、本件土地を住友林業から六一五〇万円で購入した。上記売買の手付金六〇〇万円は、いずみ生協が立賛払した。また、同売買には、平成元年八月三一日覚書により、住友林業が地上に建物新築工事を請け負う条件が付され、このため上記請負契約が履行されなければ、建物完成時まで、住友林業が買い戻すことができるとの特約が付された。さらに、上記覚書について、いずみ生協が被告A1の連帯保証人となっており、同覚書にはいずみ生協の代表者として被告A2が署名捺印している(甲46)。
また、いずみ生協は、昭和六二年九月、狭山研修寮の新築工事請負契約を住友林業との間で結締した(甲41、甲46)。
(c) 上記契約後、いずみ生協の昭和六二年一二月一五日開催の同年度第八回理事会において、来賓接遇(その宿泊を含む。)、役員・幹部・職員研修の機能を有した建物を設置すること、その用地としては、被告A1所有の本件土地を賃借することが決定された。施設の目的として住居として使用するためではないとされた(乙7)。
また、上記理事会において、狭山研修寮の設置計画につき、「社宅及び幹部研修寮一億円」として承認がなされた(甲41)。
(d) いずみ生協の平成元年二月開催の理事会において、狭山研修寮の建設費用につき、「社宅2.5億円」として議決がなされた。しかし、同日の議事録には、それまでの経緯や、費用が前記の一億円から約2.5倍に増加していることの理由は何ら記載されていない(甲41)。
(e) 平成二年三月三一日、被告A1といずみ生協との間で、本件土地の賃貸借契約が結締されたが、賃料は、当初、月額五五万円とされた(甲63、乙7)。同額の地代一年分(六六〇万円)は、本件土地に関する買受代金調達のための借入金の利息支払分及び固定資産税を控除しても、なお剰余の出る金額であった(乙33の35)。なお、平成六年四月一日以降の賃料は、月額四三万三〇〇〇円とされたが、それでも、借入金の金利低下もあって、なお上記剰余の出る金額であった(甲46、甲63、乙7、乙33の35、85)。
(f) しかしながら、狭山研修寮は、実質的には被告A1及びその家族が少なくともその主要な一部に居住することを予定し、その居宅としての構造、間取り及び内装、備品を備えるように設計、建築された。そのため、狭山研修寮の新築工事に関する見積書には、「A1邸御新築工事」、「A1邸新築工事」などと記載がされていた。また、同工事の工事関係者等との打ち合わせの席には、被告A1の妻が出席し、意見を述べていた(甲45、甲80、乙33の83)。
(g) 狭山研修寮は、平成元年四月ないし八月に着工され、平成三年三月竣工した。なお、建物登記は、平成九年六月一一日に至るまで、なされなかった(甲41、甲46、乙33の84)。
(h) 本件内部告発に至るまで、狭山研修寮の管理人は理事会事務局の職員が兼務していた。また、使用届や利用記録は用いられていなかった(乙7)。
(i) 被告A1は、平成四年ころ以降、狭山研修寮に頻繁に寝泊まりして私邸のようにして利用するようになった。平成八年度の利用実績は約一五〇日であり、そのほとんどが被告A1の利用であった。もっとも、被告A1の利用に伴い、来賓の接遇は多少あったが、役職員の研修目的利用はゼロではないとはいえ、ほとんどなかった。いずみ生協では、役員室職員のうち少なくとも一人の女子職員に、被告A1のために狭山研修寮の掃除、被告A1の衣類の洗濯、アイロンかけ、シーツの取替などの家事及び家族の世話もさせていた。他の一人の女子職員も狭山研修寮の家事に従事していた(甲41、甲59、甲81、乙12の2、乙33の35、83)。
(j) 狭山研修寮には、被告A1の私物である多数のスーツ、普段着、下着などの衣類や靴などが和室や下駄箱などに多数保管されていた(甲46、乙32の9)。
(k) 被告A1は、いずみ生協が税務に関し修正申告を行った平成一〇年一月二三日よりも前の平成九年から平成一〇年にかけて、いずみ生協に対し、約二八九六万円を支払った(なお、うち桜ヶ丘ホスピテルの利用分(約二〇〇七万円)については、前記のとおり、一部の常勤役員の出捐分も含まれている。)が、それには、平成六年度ないし同八年度に被告A1が狭山研修寮を利用したことに関し、個人使用部分の家賃相当分として約六九五万円、狭山研修寮の水道光熱費相当分として約一九五万円の計約八九〇万円が含まれていた(甲58、乙33の64、91)。
なお、被告A1は、それまで狭山研修寮の家賃等利用料を支払っていなかった(甲78)。
(1) 本件内部告発後、いずみ生協総代会では、本件土地の地代は、これを下げて、路線価を基準とするものに改定する旨決定した。
(m) 元いずみ生協女子職員は、被告A1から性行為を強要されたとして訴えを起こそうとし、被告A1から弁護士を通じて慰謝料の支払を受けたとの話が役員、職員間に伝わっている。他の元いずみ生協女子職員は、被告A1から身体を触られたり、狭山研修寮に呼ばれたり、わいせつな言葉を申し向けられるなどのいわゆるセクハラ行為を受け、これがもとで退職したとの供述をしている。
c そして、前記1(4)ア認定のとおり、平成九年六月二五日にいずみ生協理事長宛に提出された大阪府の指導検査結果(甲41)においては、①狭山研修寮の工事請負契約が上記(b)、(c)のとおり事後承認となっていること、②上記(b)ないし(d)の間の経緯や大幅に経費がかさむ理由等につき議事録に記載がないこと、③狭山研修寮は、平成三年三月に竣工したにもかかわらず、平成九年六月一一日まで未登記であったこと、④狭山研修寮が、総代会資料の施設一覧にもこれまで掲載されていなかったこと、⑤特定役員といずみ生協との取引であるにもかかわらず、取引明細表が整備されておらず、また、当初の土地賃借料の積算が不明確であったこと、⑥平成八年度の利用実績は、約一五〇日であり、そのほとんどが特定役員の利用となっていたこと、といった不適正な事項が見受けられた、との指摘がなされた上、他の事項とも合わせて総括的に、特定の役員に対する利益供与を思わせる点が多々あり、設置された諸施設も生協法にいう組合員の生活文化の向上に供するものと判断するに十分な事由は見当たらなかった旨の指摘がなされている。
d そして、前記b、cの認定を総合すれば、前記a①については、狭山研修寮は、実質的には少なくともその主要な一部が被告A1の私邸として計画され、そのように設計、建築されたものであること、建築後、被告A1が私邸のようにして利用し、平成八年度の利用実績(約一五〇日)を見ても、そのほとんどが被告A1の利用であること、狭山研修寮に被告A1の私物が多数保管されていること、しかし本件内部告発以前には被告A1が家賃等の使用料を支払っておらず、本件内部告発後に平成六年度ないし同八年度の使用料として約八九〇万円を支払っていることなどからすれば、真実であるか、少なくとも原告らにおいて真実であると信じるについて相当な理由があるというべきである。
また、前記a②については、もともと被告A1が所有していた土地ではなく、被告A1が住友林業から本件土地を購入すると同時にいずみ生協が狭山研修寮の工事請負契約を住友林業と締結するといういささか不自然な経緯を経ていること、本件建物の登記がなされていなかったこと、本件土地の売買においていずみ生協が連帯保証人となっていること、被告A1がいずみ生協から受ける本件土地の地代は、本件土地に関する利息支払分及び固定資産税を控除してもなお剰余の出る金額であったことに加え、上記のような被告A1の利用実態に鑑みれば、やはり、真実であると信じるについて相当な理由があると言うべきである。
さらに、前記a③については、狭山研修寮における被告A1のための家事をいずみ生協役員室の女子職員に行わせていたこと、他の元女子職員について、被告A1のセクハラ行為があったとの具体的供述等があることからすると、これについても真実であると信じるにつき相当な理由があると言うべきである。
(イ) ゴルフ会員権及びゴルフを伴う渉外活動について
a 本件内部告発文書においては、ゴルフ会員権に関し、前提となる事実2イ(イ)のとおりの記載があるが、要するに、その根幹部分は、いずみ生協が、ゴルフ会員権を六件取得し、取得費用は一億円を超えていること、これらのゴルフ場は被告A1ひとりしか利用できず、それらのゴルフ場でのプレイ費用、飲食費用、ゴルフクラブやウエアの購入費用がすべていずみ生協の経費として処理されているといわれていることという事実記載である。
b 前記前提となる事実、証拠(甲41、甲78、乙7、乙12の2)及び弁論の全趣旨によれば、ゴルフ会員権及びゴルフを伴う渉外活動に関し、以下の事実が認められる。
(a) いずみ生協は、昭和六三年二月以降、平成六年一〇月二四日までの間に、以下の六箇所のゴルフ場の会員権を取得している(資産計上価格一億三四四〇万円)(甲41、甲63、乙7)。
① チェリーヒルズC.C(兵庫県)昭和六三年二月一七日取得
② 葛城C.C(静岡県) 昭和六三年八月六日取得
③ 中央道晴ヶ峰C.C(長野県) 平成元年一二月二二日取得
④ 大山平原C.C(鳥取県) 平成二年二月二日取得
⑤ 関西空港G.C(大阪府) 平成四年一〇月一五日取得
⑥ けど院C.C(鹿児島県) 平成六年一〇月二四日取得
(b) ゴルフ会員権の取得には、事前に理事会の議決を経る必要があるが、昭和六三年ないし平成二年に取得した上記(a)の①ないし④については、理事会の議事録には、ゴルフ会員権の取得につき議案及び議事経過ともに記載されていない(甲41、乙12の2)。
また、上記(a)の⑥けど院C.Cについては、口頭で承認を得たとする理事会の開催日(平成六年一〇月二五日)の前日に取得されていた(甲41、乙12の2)。
(c) 平成八年度の利用実績を見ると、大阪府内のゴルフ場一箇所を除き、他所はほとんど利用されていなかった(甲41)。
(d) 平成八年における、いずみ生協の役員とその同行者に関わる国内外でのゴルフを伴う経費支出は、五八件で七五四万七〇〇〇円(国内五二件 七二一万二〇〇〇円、海外六件 三三万五〇〇〇円)であった。
そして、これらのほとんどには被告A1が関与しており、被告A1のゴルフへの同行者には、概ね被告A1の親しいいずみ生協内外の友人が参加していることも多かった(甲46、甲59、甲63、乙33の35)。
(e) 平成七年から平成八年にかけて、いずみ生協においては、被告A1に関する支出として、贈答品として、ゴルフクラブ等一〇件(一八二万八四一〇円)、ゴルフウエア(二九万三〇四〇円)、漢方薬(四五万四九二〇円)が経費で支払われるなどしている(甲46、甲59、乙33の35)。なお、その贈り先は明らかでない。
(f) 被告A1等の個人的なゴルフプレーにかかる経費につき、いずみ生協から仮払金により支出されるなど、不適切な会計処理が行われていた(甲41、甲78)。
c そして、前記1(4)ア認定のとおり、大阪府の検査結果1によれば、上記会員権取得にかかるゴルフ場のうち、職員及び組合員の福利厚生を目的として取得された一部のものは、まったく周知されておらず、利用もなかったこと、平成八年度には、一箇所を除き、ほとんど利用されていなかったことなど不適正な事項が見られた旨の指摘、上記(f)の点につき、不適切な会計処理が行われていた旨の指摘があるほか、他の点と合わせて特定の役員(乙33の35等により被告A1と認める。)に対する利益供与を思わせる点が多々ある旨の指摘がなされ、税務調査においては、前記のとおり、ハワイへの旅費中、調査研究費等として計上されていたゴルフ等の私的観光部分約三九八万円につき、役員賞与とされた。
d 前記b認定によれば、まず、いずみ生協が所有するゴルフ会員権の数や内容、取得評価額については、真実であると認められる。
そして、前記b、c認定のとおり、それらのゴルフ場は被告A1ひとりしか利用できず、それらのゴルフ場でのプレイ費用、飲食費用、ゴルフクラブやウエアの購入費用がすべていずみ生協の経費として処理されているとする点についても、一部の会員権についてはまったく職員や組合員に対して周知されておらず、平成八年度において、一箇所のゴルフ場以外はほとんど利用されていなかったこと、また、同年中の国内外におけるゴルフによる渉外活動のほとんどには被告A1が関与していたこと、グルフクラブ等、贈答品としては多額の経費がいずみ生協により支出され、かつ、その贈り先は判然としないこと、ハワイにおけるゴルフ等の費用に関する上記税務調査結果及び個人的なゴルフプレーにかかる経費がいずみ生協から仮払金により支出されていたこと等からすれば、上記記載の根幹部分につき、原告らにおいて、真実であると信じるについて相当な理由があるというべきである。
(ウ) ハワイのコンドミニアムについて
a 本件内部告発文書においては、前記前提となる事実(2)イ(イ)認定のとおりの記載がなされているが、その摘示する事実の根幹は、①コープ大阪サービスセンターに取得させたコンドミニアム二戸のうち一戸が被告A1の個人用であること、②別荘の維持に要する管理費用をコープ大阪サービスセンターにいずみ生協が補填していること、③被告A1がハワイを訪れ豪遊する費用のほとんどをいずみ生協が負担していること、という、被告A1によるいずみ生協のいわゆる私物化の事実である。
b 前記前提となる事実、証拠(甲41、甲43、甲46、甲58、甲59、甲63、乙7、乙33の35、64、91)及び弁論の全趣旨によれば、ハワイのコンドミニアムに関し、以下の事実が認められる。
(a) ハワイのコンドミニアムは、コープ大阪サービスセンターがハワイ・マウイ島に所有する専有面積約一四一平方メートル及び同約一三八平方メートルを各有する二戸の宿泊施設である。二戸とも寝室二室及びLDKからなり、六人の宿泊が可能である。専有面積約一四一平方メートルを有する一戸は、LDKが大理石張りで仕上げられた高級仕様となっている(甲63、乙7)。
いずみ生協は、後記(g)のとおり、コンドミニアム二戸の利用権を有するが、その目的は、役職員等の業務出張研修や休暇保養である(甲41、甲63)。
もっとも、本件内部告発以前には、職員手帳の保養施設の案内には、コンドミニアムのことは記載されておらず、一般組合員への案内はなされず、その利用に対応する準備もできていなかった(甲46、乙33の17の2、乙33の35)。
(b) 平成五年三月四日、後記(e)の理事会の議決に先立ち、いずみ生協からコープ大阪サービスセンターへ五八〇〇万円貸付金の振込がなされた(甲41、甲63)。
(c) 同年三月一〇日、コープ大阪サービスセンターは、本件コンドミニアムを、一億四四〇〇万円で取得した(甲41、甲63、乙7)。
(d) 同年三月二九日、いずみ生協とコープ大阪サービスセンターとの間で、上記貸付にかかる覚書が、締結された(甲41)。
(e) 同年五月一一日、第一四回理事会において、いずみ生協がコープ大阪サービスセンターに対して、九〇〇〇万円の出資及び八〇〇〇万円の貸付を行うこと、コンドミニアムの活用をはかることが議決された(甲63、乙7)。
(f) 同年五月二四日、いずみ生協の第一九回通常総代会において、ハワイでの研修や保養施設の活用も含む平成五年度の事業計画承認に係る議案が賛成多数で可決された(甲63、乙7)。
(g) いずみ生協は、平成六年一月三一日、コープ大阪サービスセンターとの間で、いずみ生協が年間延べ一七〇日を限度としてコンドミニアムを利用でき、その年間の利用料としては三四〇万円とする旨の施設利用契約を締結した(甲63、乙7)。
また、同日、いずみ生協は、コープ大阪サービスセンターに対し、四九三一万七二〇〇円を貸し付けた(甲63、乙7)。
(h) 平成六年一〇月、上記(e)に基づき、九〇〇〇万円の出資が行われた。これにより、コープ大阪サービスセンターに対するいずみ生協の出資比率は95.7パーセントとなった。また、コープ大阪サービスセンターの代表取締役会長には、被告A1が就任している(甲63、乙7)。
(i) 平成八年度のいずみ生協におけるコンドミニアムの利用実績は、二戸で延べ一〇三日であり、うち被告A1が五四日利用し、随行関係者も含めると利用の大半を占めており、組合員の旅行利用や役職員等の研修、保養目的の利用はほとんどなかった(甲41)。
c そして、前記1(5)認定のとおり、税務調査の結果、源泉所得税関係につき、平成六年度ないし同八年度までのハワイへの旅費中、ゴルフ等の私的観光部分約三九八万円は、調査研究費として計上されていたが、上記私的観光に当たる日に使用したコンドミニアム宿泊代約一一一万円とともに役員賞与とされ、また、同期間におけるハワイ出張の経費中、調査研究費として計上されていた一八〇〇万円程度が、業務内容等から、税法上の交際費とされた。
さらに、大阪府の検査結果1により、コープ大阪サービスセンター所有のハワイのコンドミニアムの管理業務のため、いずみ生協の特定役員(乙33の35等により被告A1と認める。)及び職員がハワイへ出張し、いずみ生協がその旅費及びその他の関連経費を負担しているものが見られたこと、コープ大阪サービスセンターが負担すべきコンドミニアムの維持管理費は、いずみ生協からの仮払という形で一時的にその全額が立て替えられていたこと、という不適正な事項が見受けられたとの指摘がなされた上、前記のとおり、他の事項とも合わせて総括的に、特定の役員に対する利益供与を思わせる点が多々あり、設置された諸施設も生協法にいう組合員の生活文化の向上に供するものと判断するに十分な事由は見当たらなかった旨の指摘がなされている。
d そして、前記b、cの認定によれば、まず、①については、コンドミニアムが職員手帳の保養施設の案内に記載されていないなど、職員及び組合員に対してもその存在の周知がはかられてはいなかったこと、実際に、平成八年度の利用実績は、被告A1とその随行者で大半を占めていること、なお、コープ大阪サービスセンターの管理業務のためにいずみ生協の経営者である被告A1が出張するというのは不自然であって、これは旅行及び施設利用のための口実と見られること、コンドミニアムのうち一戸は、高級仕様となっていること、いずみ生協からコープ大阪サービスセンターに対し、理事会の議決以前に多額の貸付がなされたりするなどの不適正な手続を経た後、コープ大阪サービスセンターの代表取締役に被告A1が就任していること等の事実からすると、①の点は、真実であるか、少なくとも原告らにおいて真実であると信じるについて相当な理由があるというべきである。
次に、②については、いずみ生協がコープ大阪サービスセンターとの間で、年間延べ一七〇日分の利用料として三四〇万円を支払っていること、コープ大阪サービスセンターが負担すべきコンドミニアムの維持管理経費は、いずみ生協からの仮払という形で一時的にその全額が立て替えられていたことからすれば、原告らにおいて真実であると信じるについて相当な理由があるというべきである。
さらに、③については、上記コンドミニアム利用の実態、及び調査研究費として計上されていた費用が役員賞与や交際費とされ、コンドミニアム宿泊代も役員賞与とされたという上記税務調査結果に鑑みれば、やはり、真実であるか、少なくとも原告らにおいて真実であると信じるについて相当な理由があるというべきである。
(エ) その他の私物化の事実や背任、横領との摘示について
a 本件内部告発文書等においては、前記前提となる事実2イ認定のとおり、他にも被告A1の私物化の例示として種々の事項が記載され、さらに、総括的に、背任、横領が存在する旨記載されている。その根幹は、①被告A1が、いずみ生協の経費を用いて、身の回りの品々を揃えたり、海外旅行に行ったり、桜ヶ丘ホスピテルに入院したりと、被告A1のいずみ生協に対する私物化の事実が存すること、②ゴルフや狭山研修寮等の関係も含め、こうした私物化の事実は、被告A1及び同A2につき、背任、横領に該当すること、というものであるから、以下検討する。
b 前記前提となる事実、証拠(甲41、甲46、甲47、甲59、甲78、甲79、甲83、乙7、乙33の35、被告A1本人、同A2本人)及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。
(a) いずみ生協は、後記理事会決議に先立つ昭和六一年四月一〇日、兵庫県西宮市所在(弁論の全趣旨)の香雪記念病院(現桜ヶ丘ホスピテル)の法人会員となり、同年五月一日、同病院と、いずみ生協が年間五〇〇万円を支払うことにより、年間の病室の確保及び一枚一二万円の人間ドック券年間五〇枚の交付を受ける旨の特別法人契約を締結した(甲41、乙7、乙33の35)。
(b) いずみ生協理事会は、昭和六一年五月一三日に開催された昭和六〇年度第一二回理事会において、「役員・幹部の健康管理のために検診の実施を。特に、専務理事(被告A1)については、いずみ生協の今日の発展を築くため創設期から努力し、大切な自らの健康を害した。今後、いずみ生協として早急に入院措置を取り健康を回復してもらうこと。そして、健康回復のためにいずみ生協が責任をもって対応すること」との決議をした(乙7、乙33の35)。
(c) いずみ生協においては、桜ヶ丘ホスピテルの経費については、治療にかかわる費用は個人負担、室料や執務にかかわる費用はいずみ生協の負担とされた(乙33の35)。
(d) いずみ生協における平成八年の桜ヶ丘ホスピテルの利用状況につき見ると、一年間で約七二日間の入院による利用があったが、そのうちの六六日間の入院は被告A1によるものであった。被告A1の同入院の経費については、被告A1が三三万二六一二円を、いずみ生協が一三八万一八四〇円を、それぞれ負担している(甲46、乙7、乙33の35)。
(e) 被告A1は、平成八年七月二六日から同年八月七日まで桜ヶ丘ホスピテルに入院した際、同年七月二八日ないし同三〇日の三日間、夕食時にステーキ定食ないしは牛フィレステーキ定食(いずれも五一五〇円)をルームサービスで注文した(甲46、乙33の35)。
(f) いずみ生協本部ビル一階にはいずみ生協経営のレストラン「ロッチデール倶楽部」が設置されている。同倶楽部は、被告A1の発案で作られたものであり、同被告は、自分が使うときには貸し切りとして店を閉鎖させることがあった。その奥にはゲストルームがあり、豪華な応接セットやオーディオシステム等があった(甲83)。
なお、上記本部ビル四階には理事長室、来賓を接遇する和室、会議室があり、うち会議室については、被告A1以外の幹部らがよく利用していた。
(g) いずみ生協は、平成七年一二月から平成八年一二月にかけて、被告A1の私物の眼鏡計三点等の代金(合計金額三二万二〇〇〇円)を、また、平成九年二月ころには、被告A1のオーダーメードのワイシャツ七点の代金(合計金額一三万五九六〇円)を、少なくともいったんは、経費として各販売業者に振込入金した(甲46、甲59、乙33の35、65)。
(h) いずみ生協は、被告A1のため、平成八年三月ころ、高級腕時計のオーバーホールやバンド交換(合計金額四万五〇〇〇円)を行い、平成九年三月頃には、ライターの修理を業者に依頼する(合計金額一万六四八〇円)などしている(甲47、甲59)。
c そして、前記1(4)、(5)認定のとおり、大阪府の検査結果1及び税務調査においては、以下のような指摘がなされている。
(a) 大阪府の検査結果1
まず、①海外出張に際し、出張者に対して、旅行費用及び現地での活動費として仮払した現金の精算が、帰国直後ではなく年度末に他の仮払金と一括してなされているため、精算状況が不明確であること、②海外出張における規定等が整備されていないこともあって、食費、現地での交通費、贈答経費等の支出可能な範囲が不明確であること、③コープ大阪サービスセンター所有のハワイのコンドミニアムの管理業務のため、いずみ生協の特定役員及び職員がハワイへ出張し、いずみ生協がその旅費及びその他の関連経費を負担しているものが見られたこと、という不適正な事項が見受けられた。
また、理事会事務局(役員室)の渉外費については、領収書の徴収が可能と考えられるものでも領収書が保管されていないものがあったほか、年間支出総額の一割近くがホテルやゴルフ場でのチップであり、その出納についても、理事会事務局に任せきりで、経理担当のチェックや定期的な精算は行われていなかった。
桜ヶ丘ホスピテルについては、①特定役員が利用し、他の役員、幹部職員の利用がほとんどなかったこと、②いずみ生協が負担した入院中の経費の中には、いずみ生協において支出する合理的な理由に乏しいものが含まれていたこと、といった不適正な事項が見受けられた。
そして、他の事項と合わせ、総括的に、特定の役員に対する利益供与を思わせる点が多々ある旨の指摘がなされている。
(b) 税務調査によれば、①桜ヶ丘ホスピテルの使用料につき、過去の使用実績から被告A1の利用がほとんどであるとして福利厚生費としての処理を否認され、被告A1及び一部の常勤役員から約二〇〇七万円の支払を受けることにしたほか、②ハワイへの旅費中、ゴルフ等の私的観光部分約三九八万円、上記私的観光に当たる日に使用したコンドミニアム宿泊代約一一一万円、平成七年度、同八年度におけるヨーロッパ旅費中、私的観光部分約三四八万円については、調査研究費等として計上されていたが、役員賞与(いわゆる認定賞与)とされ、③海外出張のうち一三件にかかる経費のうち、旅行宿泊に用いたハワイのコンドミニアムの利用料、ハワイ旅費、ヨーロッパ旅費等、調査研究費及び福利厚生費として処理されていた約三二九八万円については、業務内容等から、税法上の交際費とされた。
d 前記b、cを総合すると、前記①の点については、上記のとおり、被告A1の眼鏡等につき少なくとも一時的にはいずみ生協の経費で業者への支払がなされた事実があること、いずみ生協の所有物とは解し難い高級腕時計のオーバーホール等がいずみ生協の経費で賄われていること、桜ヶ丘ホスピテルの使用はそのほとんどが被告A1によるものであり、しかも被告A1の入院に要した経費の八割程度はいずみ生協が支出していること、平成八年度の桜ヶ丘ホスピテルの入院利用日数中、被告A1の入院利用日数がほとんどであり、その入院日数自体多く、誰が食べたのかは別にしてもルームサービスで三日連続でステーキを注文していることや後日被告A1らが使用料として多額の金員をいずみ生協に返還していることなどからすると、被告A1の入院利用がいずみ生協の業務上必要なものであったとは到底考え難いこと、大阪府の検査結果1により、海外出張の精算等や渉外費の管理等につき不適正さが指摘されていること、税務調査の結果からしても海外出張における支出費用が調査研究費ではなく交際費とされたり、さらに経費であることも否定され賞与と認定されたものも多額あることに照らし、業務上必要な費用であったことに重大な疑問があること等からすれば、前記①に記載の私物化の事実は、真実であるか、少なくとも原告らが真実と信じるについて相当な理由があったというべきである。
e 次いで、前記②は、前記①及び狭山研修寮、ゴルフ等の関係も含め、私物化が背任、横領という犯罪に該当するという事実を摘示するものである。
この点、①の私物化の事実のみならず、狭山研修寮、ゴルフ会員権、ゴルフを伴う渉外活動、ハワイのコンドミニアムのいずれについてもこれらに関する私物化の事実につき、真実であるか少なくとも原告らが真実と信じるについて相当な理由があったと解すべきことは前述のとおりである。そして、被告A1は、いずみ生協の専務理事又は副理事長であって、最高責任者であるのみならず、後記(6)ア認定のとおり、いずみ生協の経営につき最高実力者でもあったから、前述のいずみ生協と自己との契約、いずみ生協からの金員支出については、すべて自らの立場のみならず、いずみ生協としての行為についても、いずみ生協のために事務を処理する立場において、自らの判断と権限により行ったと解される。
その行為の内容を見るのに、狭山研修寮につき、自らの私邸としての利用を予定して設計、建築させてその費用をいずみ生協に負担させ、また、居住する場合家賃を支払うべきところ、無償で居住したこと、ゴルフ会員権やハワイのコンドミニアムの利用権について、自ら以外の利用がほとんど見込めないのにこれをいずみ生協に多額の代金を支払わせて取得させ、ほとんど自らが利用し、しかも、その利用状況からは業務上の必要性に疑問が大きいこと、ゴルフクラブ、ウエア等の経費としての支出についても贈答とされるが相手方が不明であり、その必要性に疑問があって、眼鏡、シャツ代、時計等の修理代支出とともに、私的な用途への支出と疑われても当然であること、海外出張費用に関し、税務上、調査研究費であることを否定されて交際費とされたものや、さらに経費であることを否定されて役員賞与と認定されたものも、支出の名目とは裏腹に、いずみ生協にとって必要のない私的な目的の支出であったものと疑われること、したがって、これらについては、自己若しくは第三者の利益を図って、いずみ生協の代表権を有する理事としての任務に背いた行為をして、いずみ生協に財産上の損害を与えたもの、すなわち背任行為に及んだものと受け取られても仕方がないものと考えられる。
また、上記各いずみ生協からの支出について、経費として仮払処理がなされ、それにもかかわらず、その精算が速やかになされず、年末に一括処理されていたとの指摘があり、また、経費として支出されたものにつき、税務上、その経費性を否定されたものがあることは前述のとおりであるが、そうすると、仮払を受けた金員につき経費としての目的外の支出をしたことが疑われ、定額渉外費について領収書のないものやチップ名目のものがあることにも同様の疑いがあることから、これらについて業務上横領を行ったものとの受け取り方もあり得る。
したがって、これらの点から、原告らが被告A1について、背任、横領があったものと信じるについて相当の理由があったと解するべきである。
なお、被告A2についても、後記(6)ア認定のとおり、同人が、いずみ生協において、被告A1に次ぐ高い地位にあり、被告A1に従い、いずみ生協内部の業務を取り仕切っていたこと、前記役員退職慰労金の支給等に関する答申の内容によれば、被告A1の専断的な行為を少なくとも黙認していたことが窺われること等からすれば、前記被告A1の私物化に寄与し、背任、横領を共謀ないし加功したことにつき、少なくとも原告らにおいて真実であると信じるについて相当な理由があるというべきである。
ウ 本件内部告発の目的、方法、手段の正当性について
(ア) 本件内部告発がその内容とするところは、これまでに認定したところからも明らかなように、いずみ生協の創設者の一人で、常勤の副理事長という、実質的に見ていずみ生協の運営における最高責任者にして最高実力者であった被告A1による、いずみ生協の資産の私物化、公私混同の事実があり、それを可能にしているのが被告A1及び同A2によるいずみ生協の支配であるから、上記支配をはねのけて不正を正し、いずみ生協を組合員の手に取り戻すべきであるとするものと認められる。
ところで、いずみ生協は、消費生活協同組合法に基づき設立された生活協同組合であり、組合員の出資を得て、物資の共同購入や生活及び文化の向上を図る等の目的を有するものである。しかも、いずみ生協は、大阪府中部及び南部の広い地域をその対象区域として、その区域内の約四分の一の世帯数に当たる約二九万世帯に組合員を擁し、供給高も六〇〇億円を超える(平成七年度。なお、全国の生協中九位に当たる。乙33の55)巨大な組織であって、その公共性は高い。
そして、前述のとおり、本件内部告発文書等に記載の事項の根幹部分においては、真実であるか、真実であると信じるにつき相当な理由があると認められ、かつ、実際に、本件内部告発後、いずみ生協において、被告A1の私物化は阻止され、その運営等において一定の改善がなされている。
さらに、原告らは、本件内部告発の目的につき、総代にいずみ生協おける被告A1らの不正の実態を知らしめて、これを止めさせ、いずみ生協の運営等の改善を図ることが目的であった旨述べているところである(原告U2本人、原告U1本人、原告S本人)。
これらからすれば、本件内部告発の目的は、専ら、公共性の高いいずみ生協における不正の打破や運営等の改善にあったものと推認される。
そうすると本件内部告発の目的は、極めて正当なものであったと言うべきである。
なお、本件内部告発が、外部勢力と手を組むなどしていずみ生協の乗っ取り目的であったなど、不純な目的に出たことを窺わせる証拠はない。
(イ) もっとも、被告らは、本件内部告発が、いずみ生協の内部で組合員に対する背任、生協資金の横領といった犯罪行為が組織的に行われているとして、これをいずみ生協の「私物化」として表現し、かつ、それらに対する証拠も揃っているという事実を公然と摘示する方法でなされていること、その手法において匿名であること、最重要機関会議である総代会開催を目前に控えていた時期に切迫して、郵送で大量に配布されたものであること、原告らが業務中に他の職員の私物から無権限で持ち出した資料をもとに一方的評価を与えた結果、「犯罪指摘」に至っていることなど、その内容、手段における相当性を欠くとし、さらに、本件内部告発において、理事候補を事実上推薦していることからすれば、本件内部告発によりいずみ生協の組織の混乱をもたらし、その運営を原告らがなし得るようにする意図があったものであると主張するので、これらにつき検討する。
a まず、本件内部告発文書等が匿名の文書である点については、確かに、告発者が誰であるかを明示しない場合、告発された側としては、その告発内容の真偽の確認が困難である場合があり得ることから、一方的に被告発者が名誉や信用等に回復不可能な損害を被る危険性があることは否定できない。
しかしながら、本件内部告発の内容が前記のようにいずみ生協の実質的な最高責任者かつ最高実力者の地位にある被告A1による公私混同や私物化を問題とするものであり、しかも、これに次ぐ地位にあって実務を取り仕切る被告A2をも対象とするものであって、このような告発の対象や内容に照らせば、もし、氏名を明らかにして告発を行えば、被告らによる弾圧や処分を受けることは容易に想像され(現に被告らは、匿名による本件内部告発行為に関しても、直ちに告発者を原告らであると特定し、組織防衛の名目で本件内部告発行為自体を理由として原告らに様々な処分を課したことは、前記認定のとおりである。)、後記(6)ア認定のとおり、本件内部告発前にも、被告らが批判を許さない態度を示していたことも考えると、このような場合には、匿名による告発もやむを得なかったと言うべきである。
b 次に、本件内部告発文書等が、総代会の直前になって総代等に対して郵送されたことで、五〇〇人以上の総代が一堂に会する場である総代会が混乱する危険があったことは否定し難い。
しかしながら、総代会はいずみ生協内部の機関であり、最高議決機関であるから、業務執行権を有する被告らに期待できない場合、総代会に問題提起をするのは、告発による自浄作用を期待する点からみても、むしろ当然であり、この点が相当性を欠くとは言えない。
理事候補の推薦を行った点も、原告U1を候補者に加えたことを含め、不正を正し運営の改善を目指す以上、当然であり、何ら非難すべき行為ではない。
そして、最高責任者の不正行為を正すためには、多少の混乱は避け難いのであり、そうであっても内部告発により不正が正されれば、いずみ生協にとって、内部告発がなされない場合よりも遙かに大きな利益をもたらすべきものであるから、多少の混乱を伴うべきことをもってその手段、方法を不相当とは言えない。なお、本件では、いずみ生協の運営上の混乱が二年余りも続いているが、これは、被告らにおいて頑なに被告A1の私物化等の非を認めようとしなかったことに帰するべきであり、そのような態度がなければそれほどの混乱を招くことはなかったと考えられる。
c 本件内部告発の内容は、その摘示した事実につき、私物化等根幹的部分で真実又は真実と信じるにつき相当な理由があることは前述したとおりである。もっとも、いずみ生協本部四階の利用方法等につき多少不正確な部分があり、また、表現に誇張が見られること、背任、横領について証拠が揃っていると言いながら、刑事告発については不起訴とされていることといった問題点がなくはない。しかし、犯罪の摘示については前述したとおりであり、その他、上記問題点を含みながらも、本件内部告発が重要な事実を含み、概ね真実と信じるべき根拠があって、その内容自体いずみ生協にとって看過すべからざる問題ばかりを取り上げているのであるから、その内容は、全体として不相当なものとは言えない。
d 原告らが業務中にいずみ生協内部の資料を、他の職員の私物からを含め無断で持ち出し、これをもとに本件内部告発が行われたという点については、前記認定のとおりであり、その相当性を欠く面があることは否定し難い。
もっとも、本件内部告発において用いられた一手段が不相当であったとしても、場合により個別の行為について何らかの処分に問われることは格別、本件内部告発全体が直ちに不相当なものになると解すべきではなく、本件内部告発の目的や、内容、とられた種々の手段等を総合的に判断してそれが正当かどうかを判断すべきと解される。
そして、いずみ生協が管理する多種の文書を無断で複写して持ち出した点は、本件のような内部告発を行うためにはこうした行為が不可欠ともいうべきである一方、持ち出した文書の財産的価値自体はさほど高いものではなく、しかも、原本を取得するものではないから、いずみ生協に直ちに被害を及ぼすものでもない。したがって、いずみ生協を害する目的で用いたり、不用意にその内容を漏洩したりしない限りは、いずみ生協に受忍できない損害を与えるとも言い難いから、そうしたものでない限りは、本件内部告発自体を不相当とまでは言えないものと解すべきである。
エ  以上の検討に照らし、本件内部告発の正当性の有無につき見るに、本件内部告発の内容は、前述したところから明らかなように、公共性の高いいずみ生協内部における事実上の上位二人の責任者かつ実力者における不正を明らかにするものであり、いずみ生協にとって重要なものであることは論をまたないこと、本件内部告発の内容の根幹的部分は真実ないしは少なくとも原告らにおいて真実と信じるにつき相当な理由があるというべきであること、本件内部告発の目的は高い公益目的に出たものであること、本件内部告発の方法も正当であり、内容は、全体として不相当とは言えないこと、手段においては、相当性を欠く点があるのは前述のとおりではあるものの、全体としてそれ程著しいものではないこと、現実に本件内部告発以後、いずみ生協において、告発内容に関連する事項等について一定程度の改善がなされており、いずみ生協にとっても極めて有益なものであったと解されることなどを総合的に考慮すると、本件内部告発は、正当なものであったと認めるべきである。
したがって、いずみ生協は、本件内部告発につき、虚偽の風説を流布したなどとして、これを理由に原告U1及び同Sを懲戒解雇することは許されないものというべきである。
(5) 原告U1及び同Sに対する懲戒解雇の効力及び違法性
ア  以上をまとめると、原告U1には、いずみ生協の建物内において、各種文書等を無断で自ら複写して、ないしは他の者に複写せしめるなどして持ち出したり、D6課長の保管する原告U1の業務とは無関係な資料を探したり、D7主任の私物の鞄の中まで無断で漁るなどの行為をした点で、いずみ生協就業規則四六条(3)、(7)ないし(11)に該当する懲戒事由が存する。また、原告Sには、取引先から、その職務に関して多数回のゴルフの接待を受け、また、高額の釣り道具を贈与された点で、就業規則三六条(6)、四六条(2)に該当する懲戒事由が存する。
これに対し、原告らは、本件解雇がお座なりな調査に基づく解雇事由により、実質的には本件内部告発に対する報復としてなされたものであるから、いずみ生協による解雇権の濫用によるものであって違法であると主張する。
イ  そこで検討するに、前記原告U1の解雇事由は、正当性が認められる本件内部告発に不可欠の手段であって、本件内部告発がいずみ生協にとっても極めて有益なものであったことからすれば、実質的に見て懲戒解雇にまで値するとは解し得ないと言わなければならない。
次に、原告Sの解雇事由のうちゴルフ接待を受けた件は、本件内部告発とは無関係であるが、回数の多寡はあれ、他の幹部職員や理事らもそうしたゴルフの接待は受けていたことが認められること(甲80、乙33の49の1ないし3)、原告Sのこうした行為により、いずみ生協に具体的な損害を与えたと認めるに足りる証拠はないこと、(D5社長は、原告Sに便宜を図ってもらったことはない旨、原告Sが部長になってから仕事らしい仕事をもらっていない旨供述する(乙33の36)。)、さらに、ゴルフの接待に関し、原告Sは本件懲戒解雇に至るまでの間、一度注意を受けたことはあったが、それ以上、何らの処分も受けて来なかったこと、ゴルフによる交際自体は仕事上の情報を得るために必要性もあったこと(甲80)からすれば、釣り道具贈与の点を併せ考えても、いきなり懲戒解雇にするというのはいささか重きに失する感がある。
さらに、前記1認定のとおり、本件懲戒解雇が本件内部告発の直後に設置された原告らの行為が就業規則に違反するかどうかについての調査委員会の調査結果を得て、本件内部告発からわずか二〇日後になされたものであり、本件内部告発により指摘された事項の真偽の検討や不適切な点の改善よりも、原告らをいずみ生協から排除するに急であったと評価できること、かつ、上記アの原告U1の解雇事由や上記(4)の原告U1、同S共通の解雇事由のように、本件内部告発の内容及びそれに関連する事項自体についても懲戒解雇事由とされて、本件内部告発を契機とし、かつ主要な理由として本件懲戒解雇がなされたことが強く窺われること、いずみ生協が解雇事由として挙示した点のうち、結局解雇事由となすべき可能性あるものとして一応認められるものとしても上記ア記載の点しかないのであって、十分かつ慎重な調査の結果の解雇とは解し難いこと、本件仮処分決定後、いずみ生協自体、理事会として、本件懲戒解雇につき原告らに謝罪していること(甲84)などからすれば、本件懲戒解雇は、本件内部告発に対する報復目的によるものと認められるというべきである。
そうすると、これらの諸事情を総合的に考慮するとき、原告U1及び同Sに対する本件懲戒解雇は、いずれも懲戒権の濫用であって許されず、無効であるとともに、不当に原告U1及びSの雇用契約上の権利及び職業生活上の利益を侵害するものであって、違法であったと言うべきである。
(6)  被告A1及び同A2が不法行為責任を負うかどうかについて
ア これまでに認定した事実、証拠(甲13、甲14、甲60、甲61、甲63、甲78、甲83、甲86、甲89、甲90、甲93、甲94、甲99、甲108、甲111ないし甲113、甲114の1、2、乙7、乙33の42の1、乙33の63、87、丙4、原告U2本人、同U1本人、同S本人、被告A1本人、同A2本人)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(ア) 被告A1は、いずみ生協の創設者の一人であり、創立以後、平成九年六月二日の辞任までの間、一貫して実質的に最高実力者の地位にあった。
もっとも、平成二年五月、副理事長就任後は、自ら経営を指揮指導し、重要な人事等を決定するものの、具体的実務は、被告A2らをして行わせていた。
(イ) 被告A2は、被告A1らの誘いにより、平成元年五月、いずみ生協の非常勤理事に就任し、その後、常勤監事、常務理事を経て、平成六年五月には代表権を持つ専務理事となり、事実上、被告A1に次ぐ地位についた。被告A2は、専務理事就任以降、被告A1の経営方針に従い、同被告と緊密に連絡を取り、相談しながら、いずみ生協の人事等の内部的な業務全般を取り仕切っていた。
(ウ) いずみ生協は、昭和五八年ころから、被告A1がその時々に行った講演の内容を文章化し、これに「原点」との題名をつけて、職員に対する部内報に掲載していた。昭和六三年ころ及び平成二年三月ころには、いずみ生協は、被告A1を発行人として、いずみ生協理事会事務局の編集による部内報の別冊等として、それまで部内報に掲載された「原点」の特集を組んで職員に配布した。このうち、昭和六三年ころ発行の部内報別冊(甲89)においては、いずみ生協の理念と政策の真髄を身につける上で、いずみ生協の原点を居ながらにして学ぶことができる被告A1の講演内容を集録した前記別冊に勝るものはないので、全職員の座右の書として繰り返して熟読するよう呼びかける趣旨の記載がある。
また、「原点」の記載内容が、職員の昇格試験において出題されることもあった(甲86、甲89、甲90、甲108)。
(エ) 平成二年五月に開催されたいずみ生協の第一六回通常総代会以後、それまで専務理事であった被告A1は、副理事長に昇格し(なお、それまで副理事長という職はなかった。)、後任の専務理事には平理事であったB2(以下「B2理事という。)が就いた(甲94)。
(オ) 平成三年五月に開催されたいずみ生協の第一七回通常総代会以後、B2理事は専務理事から常務理事に降格し、後任の専務理事には常務理事であったB1理事が就いた(甲94)。
(カ) 平成五年五月に開催されたいずみ生協の第一九回通常総代会以後、B1理事は専務理事から常務理事に降格した。なお、本件内部告発以前において、いずみ生協で、専務理事から降格したのは、B1理事と前記B2理事のみである(甲94)。
(キ) 平成六年六月から七月にかけて、全国一一生協一連合会の主催で、ロシアのサンクトペテルブルク交響楽団を招いて草の根コンサートが大阪を含む全国一四会場で行われた。そのうち、大阪におけるフェスティバルホールその他一箇所におけるコンサートでは、被告A1が舞台に上がり歌を歌ったり、客席に向かって指揮を執ったりするなどした。また、大阪でのコンサートの模様はCD化され、職員や取引先等に販売された(甲86、甲93、甲108、被告A2本人)。
(ク) 原告U1は、平成八年一〇月八日、拡大幹部会において、被告A1を批判する意見を述べた。すると、被告A2が、同会の場で、誰か役員室長(原告U1の地位)を担うものはいないか、と出席者に問いかけたが、その際、数名の者が挙手をした(甲78、乙33の42の1)。
(ケ) 原告U1は、平成八年一二月ころなどに、B1前専務理事ほか何人かの幹部職員に対して、いずみ生協における被告A1体制打倒の働きかけを行ったが、被告A1の権勢をおそれられて賛同を得られなかった(甲78、乙33の87、原告U1本人)。
(コ) いずみ生協においては、平成七年度は約一〇〇人、同八年度は約一三〇人と、多数の退職者があった(甲108)。
(サ) 平成九年一月ころ、被告A1は、D5社長を呼び出して、原告Sが被告A1の不正を暴くといった内部告発などを企てていることにつき聞いた。同年三月ころ、被告A1は、被告A2及びC8弁護士を呼び出して、その話を聞かせた(乙33の63、被告A2本人)。
同年一月ころ、被告A1は、原告Sを狭山研修寮に呼び出し、被告A2らとともに、原告Sが被告A1への反抗を企てていないか詰問した(甲112)。
(シ) 平成九年五月一六日以降、本件内部告発文書等が各所に到達したが、それ以前の原告らの動き及び原告らに関する情報から、被告A1及び同A2は、本件内部告発が原告らによるものと直ちに察知した。
同日、被告A2は、原告U1に対し、以降、それまでの執務場所であった役員室から離れ、会議室で執務するよう命じた。
(ス) 同月一七日、緊急拡大幹部会が開催されたが、その際、被告A1は、本件内部告発を非難し、幹部のひとりずつに対して本件内部告発への関与の有無を問い質した。また、原告U1が同会の様子を録音しようとしていたのを、被告A1及び同A2は、止めさせた。
(セ) 同月一八日に開催された平成八年度第一五回理事会(被告A1及び同A2出席)において、本件内部告発文書等は事実をねつ造し、歪曲したものであること、いずみ生協の業務執行及び資産管理が法律及び定款に基づき適正に行われていることが理事会として確認された。また、被告A2の提案により、被告A1及び同A2以外の常勤理事が任務を解かれた。
また、同日、いずみ生協は、理事会・幹事会連名で、本件内部告発を非難する内容の「総代の皆さんへ」と題する文書(甲13)を総代らに送付した。
(ソ) 同月二〇日、総代会前に開催された平成八年度第一六回理事会(被告A1及び同A2出席)において、被告A2の付議により、被告A1及び同A2を含む理事候補者の推薦が全員一致で議決された。上記理事の推薦は、C7理事長、D3副理事長及び被告A2が相談して決めたものであるが、その際、被告A2は、被告A1からも意見を聴取していた。
また、同日第二三回通常総代会(被告A1及び同A2出席)が開催されて、被告A1及び同A2が理事に選出された。
なお、総代会の会場において、原告U2は、総代のために子供らの保育を監督する任務を与えられていたが、被告A2の指示に基づき、B5常勤理事からその任を解かれ、人と接触することのない部屋の中で待機させられた。また、原告Sは、被告A2からの指示に基づき、原告Sの上司により、同日午後からいずみ生協本部七階で待機するよう命じられた。
総代会の同日、開催された平成九年度第一回理事会(被告A1及び同A2出席)において、被告A1及び同A2は、それぞれ副理事長、専務理事に選出された。
(タ) 同月二一日、原告U1らは、大阪地検に被告A1らを告発した。
また、同日、被告A2らは、原告U1に対し、本件内部告発の関与の有無等に関して事情聴取した。
(チ) 同月二二日、被告A2らは、原告U1に対し、前日の聴取結果の確認や再度の事情聴取を行おうとしたが、原告U1はそれを拒んだ。
(ツ) 同月二三日、原告ら三名の行為が就業規則に違反するかどうか等に関する調査委員会が設置された。
(テ) 同月二六日、原告U2は、被告A2の指示に基づき、上司であるC5課長から、便所に行く際も断っていくよう命じられた。
同日、B5常勤理事及び被告A2らは、原告U2に対し、本件内部告発への関与の有無等に関して事情聴取を行った。これに対し、原告U2は、被告A2らに誠意がないので応えられない旨述べて聴取を拒否した。
(ト) また、同日、被告A2らは、原告U1に対して、ハワイのコンドミニアム等に関し事情聴取を行った。
(ナ) 同月二七日、B5常勤理事は、原告ら三名に対し、出勤停止及び自宅待機を命じた。
同日、いずみ生協は、いずみ生協の業務執行等が適正になされている趣旨の「組合員ニュース(号外)」(甲14)を発行した。
(ニ) 同月二八日に行われた店舗活動交流会において、被告A2は、本件内部告発を非難する内容の発言をした。
(ヌ) 同月三一日に開催された平成九年度臨時理事会(被告A1欠席、被告A2出席)において、いずみ生協の業務執行等には何らの違法性もないことが確認されるとともに、被告A1の辞任の申出につき理事会として確認がなされた。
(ネ) いずみ生協は、同年六月二日、本件内部告発を非難する内容の「組合員のみなさんへ」と題する冊子(甲63、乙7)を発行した。
また、同日、被告A1はいずみ生協副理事長を辞任した。
被告A1は、同日、辞任の記者会見後、いずみ生協本部の一階にあるいずみ生協経営のロッチデール倶楽部に赴いた。そして、同所で、被告A2らに対し、「三か月経ったら戻ってくる」、「俺は辞めて給料がなくなった、原告らが給料をもらっているのはおかしい。あいつらは絶対許されへん。よろしいな」などと述べた(甲83、甲98、被告A1本人、同A2本人)。
(ノ) 本件内部告発後、同年六月初旬ころまでに、いずみ生協の理事らは、全員が専務理事である被告A2の下に結集する旨の誓約書を提出した(甲100)。
(ハ) 同月八日、いずみ生協は、全国の生活協同組合に対し、本件内部告発を行った職員を既に特定し、その一部の者については処分も行ったが、同人らの動きは外部のグループとも結びついて今も執拗に続けられている旨等が記載された理事会名義の「お詫び」と題する文書を送付した。
(ヒ) 同月九日、被告A2らは、原告S及び同U1に対し、懲戒解雇事由につき弁明を聴取した。
また、同日開催された臨時理事会(被告A2出席)で、反対者なく原告U1及び同Sの懲戒解雇が決議された。本来、職員の懲戒解雇は、理事会の決議事項ではないが、本件内部告発が大きな社会問題化しており、今後もそれが発展する可能性があったため、非常勤の理事の意見も聴取して慎重に判断するとの理由で付議されたものであった。
(フ) 同月一〇日、被告A2は、原告U1及び同Sに対し、懲戒解雇する旨の意思表示をした。
また、同日、いずみ生協は、B5常勤理事名義の文書で、所属長に対し、原告U1及び同Sに対する懲戒処分の内容を速やかに全職員に周知することや、部下の職員が原告U1らと接触を持たないようすべきこと等を指示した。
(ヘ) 同月一一日に行われたいずみ生協の理事会と労働組合との団体交渉において、被告A2は、本件内部告発を非難する内容の発言をした。
(ホ) 同月一七日に開催された臨時理事会において、C7理事長を頂点とするが、その下で被告A2が、人事・教育、経理・管理等すべての業務を統括する位置づけとする当面の業務執行体制が確認された。
(マ) 同月二一日、被告A2は、原告U2に対し、共同購入運営部の任を解き、人事部付を命じる旨の辞令を作成した。
(ミ) 同月二三日、いずみ生協は、本件内部告発を非難する内容の「明るく信頼しあえる“いずみ”を取り戻し、正しい生協運動を前進させよう」と題する部内会議資料(甲60)を発行した。
(ム) 同月三〇日、被告A1は、ロッチデール倶楽部に赴いた。被告A2ら常勤理事も集まっていた同所で、被告A1は、同店のマネージャーであったE1(以下「E1マネージャー」という。)に対して原告U1との関係を問い質したり、原告U1の悪口を述べるなどした(甲111、原告U1本人)。
(メ) 同年七月一二日ころ、被告A1は、ロッチデール倶楽部のE1マネージャーに対して電話をかけ、「お前とU1ができてる、U2ともできてるということは聞こえてるわ、あほ」、「君自体がそこのマネージャーでいつまでもおれると思うなよ」、「誰とつるんどんねん」、「俺は絶対に、いろいろ噂聞いとったけれど、(E1マネージャーを)守らなあかんと、いうてきたから、俺は専務にもいうたぞ」、「俺に向かってどういうことでしょうか、相手誰やと思とんねん」、「僕は、こいつはあかん思たらパーにするぞ、過去二人の専務がパーになってもたやろ」等と述べた(甲83、甲114の1、2)。
(モ) 同月一七日ころ、被告A1は、上記E1マネージャーに対して電話をかけ、同人に対し「一言ですよ。守るか、守らんかいうのは」、「だってきみ、U1と組んでますやんか」、「ほんなら、なんできみ、あんな資料出したり皆にしたの」、「ほな、今から行って専務に、ええか、専務に、私は潔癖ですと、ええな、私を守って下さいって頼め」、「専務おるか。呼べ」などと述べた。被告A2は、被告A1との電話をしてから、上記E1に対し、「三人(原告ら)に協力するようなことは、やめた方がよい」と言った(甲83、甲99、丙4、被告A2本人)。
(ヤ) 同年一一月には、E1マネージャーは、ロッチデール倶楽部のマネージャーから降格された(甲83、丙4、原告U1本人)。
イ  ところで、前述のとおり、本件懲戒解雇は無効であり、かつ、原告U1、同Sの権利、利益を侵害する違法なものであったと言うべきである。
そして、本件懲戒解雇の意思表示は、いずれも被告A2が行ったものであるところ、被告A2が平成九年六月九日の臨時理事会において本件解雇に賛成していると認められることに加え、本件内部告発以後における上記ア認定のとおりの被告A2の原告らに対する対応や、前記1認定の本件内部告発に対する批判的な言動、さらには被告A2自身、本件内部告発につき、悪質な組織破壊行為だと思った旨供述していること(被告A2本人)等からすれば、被告A2は、本件内部告発に対する報復の意思を強く持っており、それに基づいて本件懲戒解雇を行ったものと推認するのが相当であるから、被告A2には、この点につき原告両名に対する不法行為が成立するものと言うべきである。
ウ(ア)  次いで、被告A1に、本件懲戒解雇に関して、原告U1及び同Sに対する不法行為が成立するかどうかにつき判断する。
確かに、前記認定によれば、本件懲戒解雇がなされたときには、既に被告A1はいずみ生協の副理事長を退任していたのであり、本件懲戒解雇の意思表示を行ったのは被告A2であって被告A1ではないし、臨時理事会における本件懲戒解雇に賛成する決議がなされたのも上記退任後のことに過ぎない。しかし、このような場合でも、上記の被告A2による本件懲戒解雇の意思表示が、被告A1との共謀ないしその行為によるものである場合には、やはり、被告A1も不法行為の責めを負うべきと考えられる。
そこで、さらに、上記ア、及び1、2(4)イ認定等により検討する。
(イ) まず、被告A1のいずみ生協在任中における地位や影響力につき見るに、被告A1は、いずみ生協の創立以降、辞任までの間、一貫して実質的に最高実力者の地位にあった。そして、①いずみ生協においては、被告A1の講演内容を「原点」と題して職員に配布して熟読を勧めたり、その内容を職員の昇格試験に出題したりしていたこと、②いずみ生協の二〇周年記念やサンクトペテルブルク交響楽団の草の根コンサート関係のパンフレット等(甲91ないし甲94)においても被告A1が中心的に扱われていたこと、③被告A1が撮影した写真をいずみ生協として販売していたこと(甲113、被告A2本人)、④被告A1は、上記認定のとおり、二人の専務理事の降格について自らが決定しているが(被告A1本人)、そのうちの一人であるB2理事は、被告A1の恣意が降格の理由のひとつである旨述べていること(甲82)、⑤いずみ生協の創立以来本件内部告発に至るまで、理事や幹部において、被告A1の下に結集する態勢がとられてきたとの意識の強いことが窺われること(甲88)、⑥本件内部告発前から、被告A1に対する批判、反抗を許さない雰囲気があったとみられること、⑦本件内部告発後、直ちに被告A1と同A2以外の常勤理事は退任させられていること、⑧主として被告A1の不正を暴露する内容の本件内部告発に対し、いずみ生協が過剰なまでの拒否反応を示していたこと、⑨本件内部告発や大阪府の検査結果1、2等で指摘されたとおり、いずみ生協において被告A1の私物化・公私混同というべき専横が行われてきたこと、⑩また、理事会規則等の整備の不十分により、いずみ生協において、被告A1らの専断的な行為を許しうる態勢になっていたことが窺われること、⑪そして、これらに鑑みると、人事に関し、被告A1が権限を握っていた旨の原告ら(甲112、甲113、原告U1本人、原告U2本人)やB2理事(甲82)の供述も概ね信用できると考えられること等からすれば、まさに被告A1こそが人事を含むいずみ生協の組織・運営における中心人物であり、その影響力には多大なものがあったと解される。
(ウ) また、退任後についても、 退任前に前記のように多大な影響力を有していながら、退任と同時にそれがなくなるとは解し難いこと、 実際にも、退任後もいずみ生協本部一階にあるロッチデール倶楽部に何度も現れ、しかもその際には被告A2を始めとする役員らを集めて話をするなどしていること、 副理事長を退任した日に、被告A1は、ロッチデール倶楽部で、「三か月経ったら戻ってくる」等と述べていること、 本件内部告発後、被告A1の退任直後ころまでには、いずみ生協の理事らは、被告A2の下に結集する旨の誓約書を提出しており、したがって、被告A2のところに権力が集中されたことが窺われること、 退任後も被告A1は、被告A2と連絡を取り合っていた様子が窺われること(なお、甲111)、 上記のとおり、被告A1がE1マネージャーに対し、何時までもロッチデール倶楽部のマネージャーでいられると思うななどと電話で述べ、その後にも被告A2に電話を代わらせるなどしてE1マネージャーに圧力をかけたという出来事があってから半年も経たぬうちに、E1マネージャーはマネージャーから降格させられたことなどからすれば、被告A1において、退任後も、被告A2を通じてその影響力を行使することは可能であり、行使していたものと推認することができる。
(エ) そして、前記ア認定のとおり、 退任直後に被告A1は、被告A2らに対して、「俺は辞めて給料がなくなったのに、原告らが給料をもらっているのはおかしい。あいつらは絶対許されへん。よろしいな」と述べていること、 本件内部告発後、前記のとおり被告A1及び同A2以外の常勤理事は、被告A2の提案により退任させられ、その後の理事の推薦においても、被告A2が中心となり、被告A1の意見も聞いて人選をしたことが窺われること、 本件内部告発後、被告A2が率先して原告らに対し事情聴取を行うなど、被告A2は、原告らの処分に積極的に関与していること、 上記のとおり、退任後も被告A1と同A2が連絡を取り合っていたことが窺われること、 被告A1は本件内部告発やそれに基づく報道に非常に腹を立てていたことが窺われ(被告A1本人)、また、被告A2も、上記のとおり、本件内部告発を悪質な組織破壊行為だと思った旨供述していること、 本件懲戒解雇は原告U1及び同Sに対する報復目的と認められること、 本件内部告発の内容自体、被告A1の不正とそれを可能にする被告A1及び同A2のいずみ生協支配に関するものであること、そして、実際に相当程度の被告A1による私物化すなわち不正な事項が存したにもかかわらず、被告A2は頑強にこれを否定するような言動を続けていたこと、 そして、これらに加え、上記の被告A1の多大な影響力、被告A1らの誘いにより外部から来た被告A2の順調な出世状況、本件内部告発に対する被告A2の対応状況等、さらに甲82、甲112、原告U1本人、原告U2本人等を総合考慮すると、被告A2は、被告A1の意向に極めて忠実であり、かつ本件内部告発の対象とされた点でこれを押さえ込み報復する点で利害を共通にしていたところ、被告A1は、同人退任後においても、いずみ生協において最高実力者として残した被告A2に対し、自らの影響力を利用して、原告U1及び同Sに対する解雇を示唆してその意を受けさせ、よって、被告A2と共謀の上、被告A2をして本件内部告発に対する報復として、本件懲戒解雇を行わせたものと認められる。
(オ) 被告A1本人は、原告U1及び同Sの解雇等をさせたり、そのように働きかけたことはない旨供述するが、これは上述のところに照らして措信し難い。
丙4において、被告A2は、被告A1が刑事告発されて以降は、被告A2は被告A1と連絡を取り合ったり相談するようなことはなかった旨供述する。しかし、これはア認定のとおり、上記刑事告発後の平成九年六月や同年七月においても被告A2は被告A1とくり返し会ったり電話したりしていたことに照らして措信し難い。
エ よって、本件懲戒解雇につき、被告らそれぞれに原告U1及び同Sに対する不法行為が成立し、それらは共同不法行為となる。
4  名誉毀損の成否等(争点(4))について
原告らは、前記1認定の名誉毀損行為1ないし6により、原告らのいわゆる社会的名誉が毀損されたと主張するものであると理解されるが、かかる社会的名誉とは、人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価のことであるから、問題とされた表現行為において、その表現の対象が原告らであるということが特定できることが当然の前提となる。
そして、そうした特定は、当該表現行為時において、たとえ当該表現行為自体からはその対象が誰であるかを推知することが困難な場合であっても、その表現行為の受け手が有する知識、経験等に照らしたとき、当該表現の対象者が特定できるのであれば足りると解される。
(1)  名誉毀損行為1
そこで名誉毀損行為1(前記1(3)ウ(イ)認定)につき見るに、本件内部告発文書等も匿名で送付されたものであり、前記文書においては、それ自体に原告らの氏名等、原告らを対象とするものであることが推知できるような記載はないから、前記文書がいずみ生協から総代らに送付された時点において、総代らが原告らのことを記載したものと理解できたとは認め難く、他に総代らが前記文書により原告らのことを特定し得たと認めるに足りる証拠はない。
もっとも、当該表現行為のなされた時点においてはそうした特定が困難であっても、表現者において、後日その表現の対象者が誰であるかが当該表現行為の受け手に特定されることを明確に認識しながら(未必的な認識では足りないと解する。)、あえて当該表現行為を行ったというような特段の事情がある場合には、なお、名誉毀損の成立する余地はあると解されるが、本件ではそうした特段の事情は認め難いと言うべきである。
よって、その内容にかかわらず、名誉毀損行為1が、原告らの名誉を毀損するものとは認められない。
(2)  名誉毀損行為2
ア 名誉毀損行為2(前記1(3)ケ(ウ)認定)においても、その表現の対象者、すなわち本件内部告発を行った者が誰であるかは何ら明示されていない。もっとも、いずみ生協の職員二名が役員を告発したこと、同職員らは出勤停止等を命じられていることの記載があり、本件書面を全体的に見れば、その職員二名と本件内部告発との関わりが窺われる記載になっており、かつ、甲14によると、その職員二名(原告U1及び同Sと解される。)は記者会見を行っていると認められること(原告U2が記者会見に加わっていたのかどうかは証拠上定かではない。)、同日原告ら三名が出勤停止・自宅待機命令を受けていること、また、このころには既に本件内部告発が原告ら三名により行われていたことは理事や総代の間では周知となっていたことが窺われること(被告A2本人)からすると、本件書面の名宛人である組合員一般において、原告ら三名が本件内部告発を行ったことを前提とした記載がなされているものと推知し得たものと認めるのが相当である。
イ そこで、前記書面が原告U1及び同Sの名誉を毀損するものといえるかが次に問題となる。
原告らがその名誉を毀損する記載であると主張するのは、本件内部告発文書を怪文書であると誹謗する点及び「“いずみ”の業務執行・資産管理は正しくなされています」と記載する点であるが、前者については、「怪文書」というのは、本件内部告発文書等に対し、これが差出人不明であることを含めたいずみ生協としての評価であるに過ぎず、これをもって原告らの行為等につき事実を摘示したものとまで言えず、その名誉が毀損されるとまでは認め難い。後者は、本件内部告発が不正と指摘する点につき、不正はない旨否定する趣旨のものに過ぎないところ、不正を行っていない者であればもちろんのこと、仮に何らかの不正を行った者であっても、不正を指摘された場合に、それを否定することは往々にしてあることであり、しかもその否定は原告らの行為と結びついたものではないから、直ちに原告らの名誉を毀損するものと解すべきではない。
よって、名誉毀損行為2が、原告らの名誉を毀損するものとは認められない。
(3)  名誉毀損行為3
ア 名誉毀損行為3(前記1(3)コ認定)について、上記認定の他に、被告A2が、原告らの本件内部告発文書の内容が「事実をねつ造し、歪曲したもの、であり、総代会の混乱といずみ市民生協への攻撃を目的としたものです」、「虚偽の事実を並べたてるというきわめて卑劣な行為であり、強い憤りを感じるものです」との趣旨の発言をしたと認めるに足りる証拠はない。
イ 上記発言においても、原告ら三名の氏名等が特定されているわけではないが、前記のとおり、その当時は既に原告ら三名が本件内部告発を行ったことが周知となっていたものと認められるから、上記被告A2の発言は、原告ら三名の関与する事柄であることが、出席者であるいずみ生協の組合員や職員ら(甲62、被告A2、弁論の全趣旨)に対して推知され得たものと言える。
ウ そして、上記名誉毀損行為3の内容は、原告らが外部の者らと協力して本件内部告発をなし、これについて、いずみ生協の乗っ取りを意図し、いずみ生協に対する不当な攻撃を行ったものとの事実を摘示したものと理解されるものであり、かつ、被告A2もそのような理解がなされることを当然に認識していたものと解される。
そうすると、こうした発言は、前記認定のとおり、本件内部告発は正当なものであったのに、それを不当な攻撃の意図の下、不当な攻撃をしたとの事実を摘示するものであるから、本件内部告発において不正として指摘された事項の単なる否定を超え、本件内部告発の実行者である原告ら三名の名誉を毀損するものであるといえる。
なお、外部の者らとの協力や乗っ取り意図について、これに触れる被告A2本人の供述は、伝聞を述べ、しかも外部の協力者の特定もしない具体性を欠く内容にとどまっている上、これを裏付ける証拠もない。したがって、上記について、その真実であることや真実であると信じるについて相当の根拠を被告A2が有していたことを認めるべき証拠は存しない。
エ そうすると、上記発言を行った被告A2は、原告ら三名に対し、不法行為責任を負うというべきである。なお、参加者が一定程度特定されたいずみ生協内部の店舗活動交流会における発言であっても、相当数の参加者があったことが窺われること等からして、上記不法行為の成立の妨げにはならないというべきである。
もっとも、被告A1の不法行為責任については、被告A1は、上記発言を行った本人ではないのみならず、当時被告A1がいまだ副理事長の地位にあったことや、上記認定の被告A1と同A2との関係等によっても、上記のような、本件内部告発の動機、背景に及ぶ発言を行うにつき、被告A2と共謀を行ったとは認められず、他にこれを認めるに足りる証拠はないから、被告A1には、この点に関し、原告らに対する不法行為は成立しないというべきである。
オ また、原告らは、B6常勤理事の発言も問題とするが、同人の店舗活動交流会において何らかの発言をするよう被告A1ないしはA2と共謀がなされていたと認めるに足りる証拠はないから、その発言内容如何にかかわらず、その点につき、被告A1及び同A2に不法行為が成立する余地はないと言うべきである(被告A2がその場に同席しており、B6常勤理事の発言を黙認したとしてもそれのみでは足りないと解される。)。
(4)  名誉毀損行為4
ア 名誉毀損行為4(前記1(3)ス(イ)認定)においては、本件内部告発について、それを誰が行ったのかについて明示の記載はないが、前記(2)のとおり、上記冊子配布時において、原告ら三名がそれに関与していることは、同冊子配布の対象である組合員一般において推知しうるものであったというべきである。
イ そこで、前記冊子の記載が原告ら三名の名誉を毀損するかどうかにつき見るに、同冊子においては、表紙上部に「今こそ、協同の原点を 卑劣な行為に負けず新生“いずみ”を築きましょう」との記載、及び、前記冊子のうち①の記載部分においては、理事会は、組合員が卑劣な行為に負けず“いずみ”の前進のために力を尽くしてもらえるよう訴える旨の記載が存するところ、こうした「卑劣な行為」と表現されているのが本件内部告発という原告らの行為自体を指すことは、前記の記載から明らかであるところ、そうした表現は、本件内部告発の実行者である原告ら三名の名誉を毀損するものであるということができる。
ウ そして、上記冊子発行に至るまでの経緯、とりわけ、平成九年五月三一日の臨時理事会においては、被告A2の主導の下、大阪府への報告の件や、改善委員会の設置の件等について協議がなされ、同日設置が決定された改善委員会の事実上の責任者に被告A2が就いていることからすれば、上記冊子の記載内容及びその発行に被告A2が積極的に関与しているものと推認することができるから、被告A2は、上記記載に関し、原告ら三名に対する不法行為責任を免れないというべきである。
他方、被告A1は、上記臨時理事会には欠席しており、同会において被告A1の辞任の申出が確認されていること、上記冊子が発行された日に辞任していることからすれば、上記認定の被告A1のいずみ生協における影響力や、被告A2との関係を考慮しても、上記冊子の発行にそもそも関与していたかどうかも不明であるから(被告A1の何らかの影響が及んでいる可能性は否定し得ないが、同被告が前記冊子について、決裁したり、意見を述べたことを認めるに足る証拠を欠く本件においては、同被告が前記冊子について、原告らの名誉を毀損する表現方法を用いることについてまで了解していたとは言えないと言うべきである。)、この点に関しての不法行為責任は問い得ないものと解される。
(5)  名誉毀損行為5
ア 名誉毀損行為5(前記1(3)ツ(イ)認定)においては、やはり原告ら三名の氏名等が明示されているわけではないが、前記(2)で述べたところに加え、同月一〇日には原告U1及び同Sは本件内部告発に関する事実も懲戒解雇事由のひとつとして懲戒解雇されており、しかも、その内容が全職員に周知するよう指示がされていたことからすれば、上記被告A2の発言中「三人組」というのが原告ら三名を指すことは、そこに出席していた労働組合員には当然に推知できたものと認められる。
イ そこで上記被告A2の発言が原告らの名誉を毀損するかどうかにつき見るに、上記被告A2の発言内容は、原告らの行った本件内部告発が、邪な陰謀であるとの事実を摘示するものであるから、原告らの名誉を毀損するものであることは明らかである。
ウ そして、被告A2は、上記発言を行った本人であるから、上記発言につき、原告らに対して不法行為責任を負う。なお、参加者が一定程度特定されたいずみ生協内部の団体交渉における発言であっても、相当数の参加者があったことが窺われること等からして、上記不法行為の成立の妨げにはならないというべきである。
他方、被告A1については、上記発言を行った本人ではなく、被告A2がこのような発言を行うにつき、事前に名誉毀損行為5のような、原告らの名誉を毀損するような表現方法によることについて、被告A2と共謀をしたとの事実を証する証拠はないから、この点についての不法行為責任を認めることはできない。
(6)  名誉毀損行為6
ア 名誉毀損行為6(前記1(3)ニ認定)においても、原告ら三名の氏名等が明記されているわけではないが、その頭文字がアルファベットで記載されているのみならず、前記(2)、(5)で述べたところからすれば、原告ら三名のことについての記載であることを、配布されたいずみ生協の役職員においてたやすく推知し得たものと認められる。
イ そこで、上記資料が原告らの名誉を毀損するかどうかにつき見るに、上記記載のうち、本件内部告発が「地位と金のために“いずみ”を乗っとることが目的である」とか、外部との連携のある組織的な乗っ取りであり、原告らが乗っ取りグループである等の部分、本件内部告発の大半が事実のねつ造、歪曲であり、虚偽の事実で個人と組織の信用を著しく傷つけている等の部分が原告らの名誉を毀損することは、明らかというべきである。
ウ ところで、上記資料はいずみ生協の理事会の作成によるものであるが、これまでに認定したところによれば、本件内部告発後、とりわけ被告A1の退任後は、被告A2の下にいずみ生協の理事が結集する態勢がとられていたこと、上記資料に記載の内容は、それまでに被告A2が各所で発言等している内容と概ね同趣旨と解されること等からすれば、被告A2が、上記資料の内容及びその発行に積極的に関与していることは明らかというべきである。よって、被告A2は、この点につき、原告ら三名に対し、不法行為の責めを負うと言うべきである。
他方、被告A1は、上記資料配布当時既に退任しており、また、上記資料の内容、発行及び表現方法に関して被告A2や他の理事らと共謀したと認めるに足りる証拠はないから、被告A1には、この点につき原告らに対する不法行為の成立は認められない。
(7)  以上により、原告ら主張の名誉毀損行為1ないし6については、被告A2において、同3ないし6について、不法行為責任を負うものと言うべきである。
5  原告らに対する隔離、軟禁、尾行、監視の有無等(争点(5))について
(1)  原告U1について
ア 証拠(甲16、甲78、甲113、丙4、原告U1本人、被告A2本人)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(ア) 被告A2は、平成九年五月一六日午後七時ころ、原告U1に対し、同日以降、それまでの勤務場所であった役員室ではなく、終日会議室で待機するよう命じた。その際、原告U1は、具体的な執務内容についての指示はなされないまま、見張りを付けられ、翌一七日の午前二時まで同会議室内にとどまることを余儀なくされた。
(イ) 同月一七日には、午前中緊急拡大幹部会が開催されたが、午後〇時ころ、被告A2は、原告U1に対し、いずみ生協本部四階の会議室(以下「四階会議室」という。)において、以後待機するよう命じるとともに、指示があるまで退勤しないよう命じた。
そのため、原告U1は、翌一八日午前〇時ころまで同所にとどまることを余儀なくされたが、執務内容は特に指示されず、原告U1は無為に時間を送った。
(ウ) 同月一八日、原告U1は、被告A2の業務命令に基づき、午前九時ころから翌一九日午前〇時ころまで、四階会議室にて待機するよう命じられたが、特に執務すべき業務はなかった。この間、トイレへ行く時にもいずみ生協職員が監視のため同行した。
(エ) 同月一九日も、原告U1は、午前八時二〇分ころから翌二〇日午前〇時ころまで、四階会議室において待機させられたが、やはり特に執務すべき業務はなかった。この間、昼食を取るのに同室から出たことはあるが、これにはB7人事部長とB8商品部主任が監視のため同行した。
(オ) 同月二〇日、原告U1は午前八時二〇分ころから同四〇分ころまでの間、理事会事務局長のB9から事情聴取された後、午前八時四〇分ころから午後一一時三〇分ころまでの間、四階会議室に入れられ留め置かれた。昼食、夕食時も外出を許されなかった。
(カ) 同月二一日、原告U1は午前八時一〇分ころ出勤し、午後六時一五分ころ退勤した。この間、昼食に行く際、B6常勤理事及びB8商品部主任が途中まで監視のため同行した。なお、このころから、原告U1は、定時の勤務時間後の退勤を許されるようになったが、出勤中は無目的に新聞の切り抜きをするよう命じられた。
(キ) 同月二二日、午前八時三〇分ころ出勤した原告U1は、役員室で待機させられた。午後一時ころから午後二時ころまでの間は、昼食のため外出し、その後、午後五時三〇分ころに退勤した。
(ク) 同月二三日、原告U1は、午前八時二〇分ころに出勤後、四階会議室で待機させられたが、午前八時四〇分ころ、本部六階の会議室(以下「六階会議室」という。)に移され留め置かれた。その後、午後五時三〇分に退勤した。
(ケ) 同月二六日、原告U1は、午前八時五〇分ころ出勤後、二階での本部全体朝礼に出たが、C1常勤理事から出ていくよう言われ、そのころ以降、六階会議室で待機させられ、午後五時ころ退勤した。
(コ) 同月二七日、原告U1は、午前八時二〇分ころ出勤したが、午前九時五分ころ、四階会議室に呼び出され、出勤停止、自宅待機を命じられた。そして、すぐに退勤するように言われ、午前九時一〇分ころ、退勤した。
イ(ア) 上記アの認定によれば、原告U1は、平成九年五月一六日午後七時ころ、被告A2から、同日以降、それまでの勤務場所であった役員室ではなく、会議室で待機するよう命じられ、その後、同月二六日までの間、さしたる業務の指示もないまま、概ね会議室において待機させられていたものである。
ところで、使用者は、労務指揮権に基づき、被用者に対し、勤務する地域を異にするなど被用者が特段の不利益を受けるような場合は格別、一般に、その執務すべき場所を指定しうるものと解される。ただし、その権利の濫用にわたるような場合には、そうした執務場所の指定が違法とされる場合もあり得るものと言うべきである。
そこで、本件につき見るに、この点につき、被告らは、原告らがいずみ生協保管の資料をほしいままに利用していることが明らかとなっていたので、これ以上の資料持ち出しなどを防ぎ、さらなるいずみ生協運営の混乱を防ぐために必要な措置としてなしたものである旨主張し、被告A2は、原告U1が文書を郵送するような行為をしたらしいので、役員室内の資料を悪用しないように役員室から離れた場所で執務させた旨述べる。
そして、これまで認定したとおり、原告U1は、本件内部告発に際し、現に役員室内等から資料を複写するなどして持ち出していること、本件内部告発からすれば、被告A2においても役員室からの資料が用いられていることは容易に理解し得たものと解され、本件内部告発が前述のとおり正当なものであったとはいえ、本件内部告発後もいずみ生協における内部文書等が持ち出されるおそれのある状況を放置しなければならないとは解されないこと等からすれば、被告A2が、原告U1について、執務場所を役員室から会議室に変更させたこと自体につき違法とまでは断じ難いと言うべきである。
(イ) もっとも、被告A2は、原告U1に対し、平成九年五月一六日から同月二〇日までの間、早くても午後一一時三〇分ころまで、最も遅い日は午前二時ころまでの間、特に業務の指示を与えずに待機させており、この間、原告U1は、トイレや昼食に行くときに職員が同行するなど監視されていたところ、これも被告A2の意向によるものと認められる。
そして、いずみ生協の就業規則(乙3)上、原告U1のような管理職の就業時間は明らかではないが、八条によれば、一般職員は就業時間は一日当たり八時間であり、休憩時間一時間を合わせ、始業時刻から九時間後には残業がなければ退勤できる。そうして、同月二一日以降は、原告U1が午後五時ないしは午後六時一五分ころには退勤を許されていること、内部文書等の持ち出しを防止するためならば、原告U1を役員室に近づけないようにすれば足り、遅くまで待機させる必要はないと考えられ、その待機の模様や、同月二〇日までの間、連日深夜まで待機させていたことに照らし、このように待機を命ずる業務上の必要があったとは認め難いというべきである。むしろ、上記待機時間やトイレ、昼食時にも監視を付したこと、同月二〇日は総代会開催の日であり、同月一六日には既に原告U1が本件内部告発の実行者の一人と被告A2において特定していたことからすれば、深夜までの待機や監視の理由は、本件内部告発の影響拡大をおそれるところから、総代会までの間等に、原告U1にさらなる総代等への働きかけや、他の職員らとの連絡等をさせないためのものであったと推認され、それにより、原告U1の行動の自由等を奪ったものであるから、これらの行為は違法であって、少なくとも被告A2につき、原告U1に対する不法行為を構成するものというべきである。被告らは、本件内部告発を行った原告らの行動により、総代会やいずみ生協の運営に無用の混乱を生じさせないためのやむを得ない措置であった旨主張するが、本件内部告発が正当なものであること等からすると採用できない。
また、被告A1についても、同人の供述(被告A1本人)から、少なくとも同月一七日以降の待機等に関しては、関与しているものと認められる一方、同月一六日の深夜までの待機等に同被告が関与したとは認められないが、同月一六日以降の連日の深夜までの待機及び監視は、一連の出来事として一体のものと認められ、同月一七日以降も続くことによって、原告U1に著しい精神的苦痛を与えたものととらえるのが相当であるから、被告A1も同A2と同様、不法行為責任を免れないというべきである。
(ウ) なお、原告U1が隔離、軟禁、監視、尾行等として主張する点は、上記認定を超えて不法行為と認めることのできる事実はない。
(2)  原告Sについて
原告Sは、平成九年五月二〇日、同二二日、同二三日において、軟禁、尾行、監視等がなされた旨主張し、これに沿う証拠(甲16、甲112、原告S本人、同U2本人)があって、うち、いずみ生協職員らによる尾行の事実があったことは認められるところではあるが、これに被告A2、さらには被告A1が関与していることを認めるに足りる証拠はない。この他の軟禁等については、上記各証拠によっても、その内容が抽象的で裏付け証拠もないことから、これを認めることはできない。
よって、この点、被告らの原告Sに対する不法行為があったとは言えない。
(3)  原告U2は、平成九年五月二六日ころの朝に、C5課長からトイレに行くときも一言断ってから行くよう指示され、以後行動を監視されたと主張するところ、前記3(6)ア(テ)のとおり、C5課長がそうした指示を出したことは認められるものの、これをもって監視とは言い難く、他に不法行為の成立を認めるに足りる証拠はない。
6  原告らに対する出勤停止、自宅待機命令、原告U2に対する本件配転命令の違法性(争点(6))について
(1)  これまでに認定した事実、証拠(甲16、甲17の1ないし3、甲19ないし甲24、甲26ないし甲33、甲35ないし甲40、甲65ないし甲67、甲105、甲108、乙3、乙4、乙29ないし乙31、乙33の15の3、16の2、丙4、原告U2本人、被告A2本人)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
ア いずみ生協の人事担当役員であったB5常勤理事は、平成九年五月二七日、原告ら三名に対し、就業規則一六条二項四号に基づき、同日から無期限で出勤停止及び自宅待機を命じた。この命令は、常勤役員会の議を経たものであり、被告A2において指示したものであった(被告A2本人)。上記命令には、何ら理由は示されていなかった。
原告U2は、、B5常勤理事に対し、自宅待機命令等の理由及びその期限につき尋ねたが、B5常勤理事はそれには回答しなかった(甲108、原告U2本人)。また、原告U2に対して、後記レポート提出の指示があった時まで、自宅待機の間、何をすべきかといった何らの指示もなされなかった。
原告U2は、同日付で、B5常勤理事に対し、自宅待機命令等には何らの必要性も認められず、具体的な理由を示さない不当なものであり、事実上出勤停止という制裁に該当する旨の抗議文を内容証明郵便で送付した(甲20)。
なお、同日から二週間程度のうちに、B5常勤理事、B6理事、C3人事教育部長は、それぞれ原告U2の自宅に電話をかけ、自宅にいるべきこと、自宅を出たら就業規則違反で処分することになること等を述べた(甲108、原告U2本人)。
イ 被告A2らは、同年六月九日、いずみ生協本部において、原告U1及び同Sに対して、処分の決定に当たっての弁明の機会を与えた。そして、翌日午前八時三〇分にいずみ生協に出頭するよう通知した。
ウ 被告A2は、同月一〇日、原告U1及び同Sに対して懲戒解雇の意思表示をした。
エ 被告A2は、平成九年六月二一日、原告U2に対し、同日付で、共同購入運営部の任を解き、人事部付を命じる旨の辞令を作成した(甲19)。
オ C3人事教育部長は、平成一〇年一月一五日、自宅待機継続中の原告U2に対し、自宅待機における業務として、同月二六日から毎週一通ずつのレポートを提出することを命じる文書(甲21)を送付した。同文書には、「生協として、ダイオキシンをどのようにとらえ、すすめていくべきか」、「生協として、遺伝子組換作物をどのようにとらえ、すすめていくべきか」等のテーマ及び提出期限、レポート用紙二五枚以上三〇枚以下にまとめるべきこと、レポート作成は、必要に応じ週一回最寄りの図書館で図書を借りる以外は、自宅で行うべきことなどが記載されていた。
なお、これが、自宅待機命令以降、原告U2に対する初めての指示事項であった(原告U2本人)。
カ 原告U2は、平成一〇年一月二四日、C3人事教育部長に対し、自分のいずみ生協職員としての権利が奪われ、平成九年五月二七日以降、同職員として必要な情報、資料等が原告U2の下に届けられていないことから、同原告の職員としての権利等について見解を求める内容の文書(甲22)を送付した。しかし、C3人事教育部長は、これに対する回答をしなかった(甲23)。
キ また、原告U2は、平成一〇年二月二一日、B5常勤理事及びC3人事教育部長に対し、原告U2が自宅待機とされている理由やいつまで不当な自宅待機を続けるのかといったこと等につき回答を求める文書(甲23)を送付した。
ク 原告ら三名は、平成一〇年二月二六日、いずみ生協を被申立人として、大阪弁護士会人権擁護委員会に対し、いずみ生協が本件内部告発を発端として、原告らに対する軟禁、尾行、監視や、原告U2に対する自宅待機の強要、原告U1及び同Sに対する懲戒解雇などの人権侵害を行っていることに対して、こうしたことを行わず、本件内部告発以前の地位に復帰させるべきこと等を内容とする警告を発すべきこと等を求める人権救済の申立をした(甲40)。
ケ C3人事教育部長は、平成一〇年二月二七日、原告U2に対し「ICA大会で決議された『協同組合のアイデンティティに関する声明』の[定義]と[価値]について、見解をまとめてください」、「日生協の第二〇回総会(福島総会と言われているが)の結語について、見解をまとめてください」等のテーマで同年三月九日以降、引き続き毎週一通ずつレポートを提出することを命ずる文書(甲24)を送付した。なお、原則として自宅で作成すべきことなど、前記の平成一〇年一月一五日付文書と同様な注意事項が記載されていた。
コ 平成一〇年二月二八日、「“いずみ”を組合員の手に取り戻す職員の会」名義のチラシが、総代選挙の予定された一八選挙区のうち、一二の選挙区にわたり、新聞の折り込みチラシとして、一般に配布された。同チラシには、来る同年三月二日の総代選挙において、選挙公報をしっかりと読み、組合員の声を代表してくれる総代を選出して、被告A1のいずみ生協私物化と、いずみ生協による被告A1への利益供与の真相を明らかにしていくべき旨の訴えや、前記会の代表が原告U2であること等が記載されていた。
これに対し、いずみ生協の第二四期総代選挙管理委員会は、前記チラシの記載からは一部候補者を類推でき、同候補者への投票依頼を期待するものであるなどとして、原告U2の行為は、総代選挙に混乱を持ち込むもので、総代選挙の違反であるから、就業規則によりしかるべき処置を講じるよう、C7理事長に文書(甲29)で要請した。
(以上につき甲28、甲29)
サ 平成一〇年三月二日、いずみ生協の総代選挙が行われた。
シ いずみ生協は、平成一〇年三月一一日、及び同年四月一〇日、原告U2を本部に呼び出して前記総代選挙に関するチラシにつき(原告U2本人)、事情聴取しようとした。なお、同年四月一〇日には、原告U2は、代理人の弁護士を伴って本部に赴いた。
ス いずみ生協は、平成一〇年五月一日、原告U2を本部に呼び出した。
そこで、原告U2は、前記チラシにつき事情聴取を受けたが、引き続き、B5常勤理事から、出勤停止及び自宅待機処分を解除するとともに、るうてるホームに研修員として派遣する旨の内示を受けた。そして、B5常勤理事は、原告U2に対して、上記内示をする旨、詳細な説明は同月一一日に行い、その際、出勤停止等を解く日、研修員としての派遣の発令日、着任日、研修期間、その他労働条件等についての内容を説明する旨、及び、上記内示に関し意見がある場合には、同月一一日に文書で述べるべき旨を記載した文書(甲30)を交付した。原告U2がB5常勤理事に対してなぜ自分がるうてるホームに行かなくてはならないのかを問うと、B5常勤理事は、その説明としては、これから高齢者福祉事業に力を入れるので原告U2を派遣すると述べたのみであった。
なお、るうてるホームは、大阪府四條畷市において、老人ホームや、老人や障害者等の在宅支援施設であるサービスセンターなどを運営している社会福祉法人である。
原告U2の研修先としてるうてるホームが選ばれたのは、当時福祉担当の常務理事であった被告A2が福祉担当の職員に原告U2の派遣先として福祉関係の施設を探すよう命じ、同職員が同所を探し出したことによるものであった。
同日、原告の代理人である弁護士らは、前記チラシに関する事情聴取の目的について釈明を求める文書をいずみ生協理事会宛に提出した。
(以上につき甲26、甲27、甲31、甲108、原告U2本人、被告A2本人)
セ いずみ生協は、平成一〇年五月七日、原告U2に対し、同月一日に出勤停止・自宅待機を解き、るうてるホームに研修員として派遣する旨の内示を出したことや、同日、同年二月二八日の総代選挙に関連してチラシを新聞折り込み配布したことにつき事情聴取、弁明の場を持ったが、進展が望めないとして事情聴取は打ち切ることとしたこと等が記載されたB5常勤理事作成名義の文書(甲32)を職員に配布した。
ソ 原告U2は、平成一〇年五月一一日、代理人の弁護士を伴い、いずみ生協本部に赴き、出勤停止・自宅待機命令の解除及びるうてるホームへの異動の内示に関する質問事項や意見が記載されたB5常勤理事宛の文書(甲35)を交付した。同文書には、これまでの出勤停止、自宅待機の理由や目的、これが約一年に及んだ理由、出勤停止等の目的とされていた調査の結果、原告U2に懲戒処分等をしないことに決したのかどうか、異動の内示に当たり原告U2の意向を聴取しない理由、るうてるホームといずみ生協との関係、原告U2を同所に派遣する理由や目的、原告U2を出勤停止・自宅待機前の職場に戻さない理由、同年二月二八日に新聞折り込みで配布されたチラシの件につき、原告U2に懲戒処分をしないことを決めたのかどうか、等の質問事項が記載され、意見として、すみやかに出勤停止等を解除するとともに必要な説明と謝罪、損害の回復がはかられるべきこと、るうてるホームへの異動は必要性、妥当性、必然性が認められず、本件内部告発への報復であり、撤回すべきこと等が記載されている(甲35)。
他方、いずみ生協からは、原告U2に対して、前記異動に関し説明する内容の、当時専務理事代行であったC1理事及びB5常勤理事名義の文書(甲33)が交付された。同文書には、同年六月一日付で、出勤停止、自宅待機を解除し、るうてるホームに研修生として派遣すること、派遣期間は同年六月一日から平成一一年五月三一日までの一年間であり、異動の発令は平成一〇年五月二五日に行うこと、研修の位置づけ及び目的は、第六次中期計画の実現と平成一〇年度事業方針の具体化及びそのための人材育成であること、主な研修内容は、施設及び在宅サービスの供給現場での実践を通じて、介護技術を中心とする援助技能を体得し、ホームヘルパー二級課程修了者と同程度の技能を習得すること及び在宅サービス供給ステーション事業を中心に、施設の運営・管理、事業運営・サービス提供の実務、地域社会との連携などの業務について研修すること、自宅通勤による研修であること等が記載されている(甲33)。
タ いずみ生協は、平成一〇年五月一八日ころ、るうてるホームから、研修生の受け入れはできかねる旨、文書(甲105)で連絡を受けた。
チ 原告U2は、代理人弁護士を通じて、同月二二日、同月一一日に、いずみ生協側が、一方的に異動に関する説明を行っただけで、質問にはまったく答えることがなかったことに抗議するとともに、同原告の質問に答え、合わせて前記異動の内示を撤回すべき旨の文書(甲34)をいずみ生協に内容証明郵便で送付した。
ツ いずみ生協は、平成一〇年六月一日、原告U2に対する前記内示を取り消した。その際、原告U2に対しては、内示を取り消す理由としては、原告U2が同内示を拒否したことであるとのみ告げられた(甲108、原告U2本人)。これにより、原告U2に対しては、さらに出勤停止、自宅待機処分が継続される旨指示された。
テ B5常勤理事は、平成一〇年八月四日、原告U2に対し、同月一七日付で出勤停止及び自宅待機を解除し、福祉分野担当役員である被告A2(原告U2本人)付けの役員スタッフへの異動を行う旨の内示を行い、B5常勤理事名義の文書(甲36)を交付した。同文書には、役員スタッフとしての職務は、福祉、ボランティア担当である旨の記載がある(甲36)。
同内示の場には、当時常務理事であった被告A2も同席していた(原告U2本人)。
B5常勤理事らは、原告U2に対し、就業規則を遵守し、上長及び業務上の所属長の指示、命令に従い、職場の秩序の維持に努めること、勤務中は定められた職場をみだりに離れないこと、勤務時間中は私用外来者と面会したり、私用で外部の者あるいは他の組合員・職員と連絡を取り合うようなことはしないこと、所属長の許可なく本部の他のフロアーや本部以外の生協施設に立ち入ることはしないこと、所属長の許可なくいずみ生協の施設、車両、器具、備品、その他の物品等を使用したり持ち出したりしないこと、いずみ生協の信用または名誉を損ない、あるいは不利益をもたらしたり、業務に関する機密事項を他に漏らさないこと等を約束する旨の誓約書(甲37、当時専務理事であったC1理事宛)の提出を求めた。
ト 原告U2は、代理人弁護士を通じて、平成一〇年八月一二日、いずみ生協に対し、今回の配転には業務上の必要性や人選の合理性に疑問があるので、後日その効力を争うことを留保した上で、同月一七日から出勤すること、平成九年五月二七日から一四か月もの長期間にわたり行われた自宅待機命令は違法であるからこの点の謝罪を求めること、また、自宅待機命令の効力を法的に争うことを留保すること、前記誓約書の内容に一部疑義があり、提出を求められる理由が明らかでないため、その点の説明を待ち、現時点では提出を留保すること等を記載した通知書(甲38)を内容証明郵便で送付した。
ナ 原告U2は、平成一〇年八月一七日、いずみ生協に出勤した。
出勤すると、原告U2は、被告A2以下六名の役員、幹部の同席する中、被告A2から、概ね上記誓約書に記載の事項と同内容の事項につき遵守を命じられるとともに、本来いずみ生協において喫煙は喫煙コーナーでのみ許容されているが、原告U2は自席で喫煙を許可すること、喫煙コーナーや談話室への立ち入りも禁止すること、他の部署やフロアーには用事があるときでも立ち入りは禁止であり、必要があれば申出により他の職員がコピー等の用事は行うことなどの具体的な注意がなされた(甲103、原告U2本人)。また、原告U2は、出勤停止・自宅待機を解き、福祉分野担当役員付の役員スタッフを命じる旨の同日付の辞令を受け取った(甲39)。
被告A2は、原告U2に対し、本部には週一回程度出勤すべき旨、週のうち二日程度は障害者福祉施設に派遣され研修する旨、週のうち一日ないし三日程度は日本福祉ビジネス専門学院に通学すべき旨を指示した(甲67、甲108、乙31、原告U2本人)。
もっとも、原告U2が派遣されるべき障害者福祉施設はいまだ具体的には決まっておらず、同月末ころになって、被告A2がボランティアリーダーからの紹介を得て、ようやく派遣先二箇所が決定された(甲108、丙4、原告U2本人)。
また、日本福祉ビジネス専門学院への通学は、介護福祉士コースとホームヘルパー養成講座三級課程の二講座を受講するためのもので、期間は平成一〇年八月一七日から平成一一年八月一六日までの一年間であり、受講料は、入学金等を含め、消費税込で三五万七〇〇〇円であった。このうち前者は国家資格である介護福祉士の試験を受験するための講座であったが、受験資格として三年間の実務経験を要し、よって、上記実務経験のない原告U2には受験資格がなかった。後者は、前者の講座に付設されているもので、これを受講することによりホームヘルパー三級の資格を自動的に取得することができた。もっとも、いずみ生協においても、平成八年からはホームヘルパー三級課程の講座を、平成九年以降は同二級課程の講座を年に数回実施しており、福祉に関わるいずみ生協の職員は、皆これらを受講していた。日本福祉ビジネス専門学院における講義は、午後一時から午後三時までの二時間であったが、被告A2は、原告U2に対し、受講の日は直行直帰をし、本部への出勤には及ばない旨指示した(甲66、甲67、甲108、原告U2本人)。
原告U2の勤務場所は、いずみ生協本部五階の役員スタッフ室とされたが、同室は、それまで応接室として用いられていた場所であった。同室には、原告U2の他、D1役員補佐とE2次長とが在室することになったが、D1役員補佐は三階の個配事業チーム、E2次長は五階の理事会事務局が本来の所属であった。原告U2は、平成一一年八月までのおそよ一年間、こうした勤務を続けたが、その間に原告U2がいずみ生協本部に出勤したのは四十数日にすぎなかった(弁論の全趣旨(原告U2一九九九年九月一四日付準備書面及びいずみ生協の平成一一年一〇月二九日付準備書面各添付の別紙参照))。原告U2がいずみ生協本部に出勤した際は、必ずD1役員補佐ないしはE2次長が同室していた。原告U2は、その間に二度のみ、いずみ生協本部の二階で行われたスーツフェアの会場に行ったことがあったが、その際は、前記両名のいずれかが付き添っていた。また、いずみ生協本部に出勤した際は、一五分程度で作成できる簡単な研修報告書の作成を課された以外は、業務を命じられることはなく、就業時間まで読書をしているといった状態であった。
(以上につき甲65、甲108、乙31、原告U2本人)
原告U2にかかる上記処遇は、原告U1及び同Sの職場復帰時まで続いた(原告U2本人)。
ニ いずみ生協は、本件仮処分決定後、原告U1及び同Sに対する懲戒解雇を撤回し、平成一一年八月一八日から、両名を職場復帰させた。
ヌ なお、自宅待機、出勤停止期間中も、原告U2に対しては、給与が全額支給されていた(原告U2本人、被告A2本人)。
(2)  原告U2について
ア 原告U2に対する出勤停止、自宅待機命令は、命令の際に示された根拠規定に加え、被告らが、本件内部告発文書等が総代会直前に匿名で大規模に頒布されたため、総代会はもとよりその後のいずみ生協の運営に無用の混乱が生じないようにする必要があったことから自宅待機命令等を発したと主張していること、給与が全額支給されていること、就業規則上、懲戒処分としてはこのような内容のものは規定されていないこと、待機期間中においてもレポート作成等の業務が命じられたことがあることなどからすれば、懲戒処分としてなされたものというよりは、就業規則一六条二項に基づく業務命令によるものと解される。
しかしながら、自宅待機命令等を発する相当な理由が認められないなど業務命令権の濫用と認められる場合には、当該自宅待機命令等は無効となり、かつ、違法となり得ると言うべきである。
イ そこで検討するに、①B5常勤理事は、原告U2に対する自宅待機命令等を発令する際、何らの理由を示さなかったこと、②自宅待機期間が平成九年五月二七日の発令から平成一〇年八月一七日の解除までの約一年三か月という長期間に及んでいること、③そのうち、平成一〇年一月一五日までの間は、何らの業務指示もなされなかったこと、④自宅待機期間中なされた業務指示や、自宅待機期間中ないしは自宅待機命令等解除後における施設への派遣等の点についても、その実態は、せいぜい研修に当たると言い得るのみであるが、前記認定及び乙30、乙31に照らしても、研修の必要性に疑問もあり、本部出勤中は業務を与えられなかったこと、施設派遣等決定のいきさつについても、その必然性及び計画性に乏しいこと、⑤本件自宅待機命令解除に際しても、本件内部告発の再発を防止するためであるかの如き誓約書の提出を求めるなどしていること、⑥原告U2への自宅待機命令等の発令と同日に原告U1及び同Sに対しても同様の命令を発し、同人らに対しては平成九年六月一〇日に懲戒解雇処分を行っているところ、同懲戒解雇処分は、前記認定のとおり、本件内部告発に対する報復目的と解されること、⑦被告らは、本件内部告発直後には、それが原告ら三名によるものであると特定していたこと、⑧被告A2は、原告U2に対する自宅待機命令等が本件内部告発等に対する懲戒としての性質もあった旨明確に供述していること(被告A2本人)等を総合的に考慮すれば、本件自宅待機命令等は、業務上の必要性に乏しいにもかかわらず、業務命令の形式を借りて、本件内部告発に対する報復目的でなされたものと認めるのが相当である。
この点、乙4には、上記出勤停止、自宅待機命令の理由、目的として、原告U2が、平成九年五月二六日の専務理事及び常勤理事からの事情聴取に対し、同理事らが信頼できないとして質問に対する回答をすべて拒否したところ、その態度から、①原告U2は、服務規律に従わない態度を鮮明にしたので、同人による職場秩序に反する混乱の持ち込みを避ける措置をとる必要がある、②原告U2は、重要な文書を作成し、管理・保管する責任ある立場であるから、同人による文書等の持ち出しの危険性を予防する措置をとる必要がある、③原告U2自らが服務規律を否定する態度を改め就業規則三五条を遵守する立場に立って職務を遂行するよう、冷静に考える時間と機会を与えるためとの記載がある。なお、就業規則三五条の規定は、前記認定のとおりである。
しかし、上記原告U2に対する聴取者である専務理事の被告A2らは、当時、本件内部告発に対し、これが十分根拠があるにもかかわらず、いち早く、指弾された被告A1を擁護し、上記告発が事実のねつ造であるなどの見解を示していたものであり、このため、上記事情聴取自体、上記告発に対する報復を意図し、そのために行うものと受け止められても仕方のないものであったことを考えると、原告U2が上記聴取について聴取者を信頼できないとして回答を拒否したのはやむを得ず、この態度をもって、上記①ないし③の理由を根拠づけるものとはできないものである。
したがって、乙4の記載に照らしても、上記自宅待機命令等が業務命令として相当の理由あるものと見ることはできない。
被告A2本人は、原告らに対する出勤停止・自宅待機命令の理由として、 常勤理事からの事情聴取に応じず業務命令に従わない態度を示したこと及び 引き続き、組合員らに誹謗中傷、事実歪曲の文書を配り、発言する行為を繰り返していたことを挙げる。
しかし、 については、上記原告U2に関し述べたのと同様、業務命令の正当な理由となるものではなく、 については、これまでの説示から、本件内部告発が全体として誹謗中傷、事実歪曲のものとは言えないのであるから、業務命令の根拠としうるものではない。
そして、本件配転命令についても、配転後、平成一一年八月中旬ころまでの間の業務内容等は、上記認定事実によれば、その目的及び実質は、原告U2をいずみ生協の職場から排除するためであり、現に排除しているものと言いうること、また、本件配転命令は、本件自宅待機命令等に引き続いてなされたものであること、そのもとにおける執務内容、原告U2の自宅待機期間が前記のとおり長期間に及んでいる以上、原告U2が自宅待機以前に所属していた共同購入運営部次長からの何らかの異動は必然と解されることなどからすれば、これを本件自宅待機命令等と別個のものと取り扱うべきではなく、一体のものとして考慮するのが相当であり、やはり、上記報復目的によるもの解される。
したがって、原告U2に対する自宅待機命令等及び本件配転命令は、業務命令権を濫用したものとして無効であるとともに、正当な本件内部告発への報復目的によりなされ、原告U2の職業生活上の利益を侵害し、同人に苦痛を与えるべきものであるから、違法であって、不法行為をも構成しうるものと解すべきである。
ウ この点に関し、原告らは、被告らによる不法行為が成立すると主張するので判断するに、まず、被告A2については、 自宅待機命令等の発令を実際に行ったわけではないものの、同命令への関与を自認していること(被告A2本人)、 前述のとおり、本件内部告発以後における原告らに対する被告A2の対応、本件内部告発に対する批判的な言動等本件内部告発を行った原告らを排除するような行動に出ていることなどからして本件内部告発に対する報復の意思を、被告A2自身強く有していたと推認されること、 被告A1退任後も、平成九年九月一六日までは専務理事として、いずみ生協の実質的なトップとしての地位にあり、その後も平成一一年五月まで常務理事であったこと、 被告A2は原告U2の研修先としてるうてるホームを探すのに関与したりしており、原告U2の自宅待機が長期化していることを十分に認識していたものであること、 本件配転命令後、原告U2は、福祉分野担当役員である被告A2付の役員スタッフになったものであり、被告A2が、障害者施設への派遣や専門学校への派遣等を指示していることなどからすれば、自宅待機命令等及び本件配転命令に付き、被告A2は積極的に関与しているものであって、その不法行為責任は免れないというべきである。
エ 次に、被告A1につき見るに、本件自宅待機命令等の発令時、被告A1はいまだ副理事長の地位にあり、実質的な最高実力者であったこと、少なくとも被告A1が副理事長であった当時、幹部職員の人事は被告A1の承認の上でなされていたと見られること(原告U2本人、原告U1本人)、上記認定の被告A1のいずみ生協における多大な影響力、本件内部告発においてはまさに被告A1の不正が問題となっていたのであり、かつ、被告A1は、本件内部告発に対して非常に腹を立てていたと解されること、被告らも自宅待機命令等への被告A1の関与は格別争っていないと解されることなどからすれば、被告A1は、自宅待機命令等の発令に際し関与したものと推認される。
よって、被告A1は、自宅待機命令等につき不法行為責任を免れないというべきであるが、これは、被告A2との共同不法行為が成立すること、前記のとおり、自宅待機命令等と本件配転命令とは一体として解すべきであることからすれば、結局、被告A1は、自宅待機命令等及び本件配転命令の全体に付き、共同不法行為責任を負うというべきである。
(3)  原告U1及び同Sについて
ア 原告U1及び同Sに対する自宅待機命令等についても、当時既に被告らにおいて原告両名が本件内部告発の実行者であることが特定されていたこと、本件自宅待機命令等に引き続いて本件懲戒解雇がなされており、その目的は本件内部告発に対する報復目的であること、前記のとおり被告A2は、原告U1及び同Sと同日になされた原告U2に対する自宅待機命令等につき懲戒としての性質もあることを認めており、原告U1及び同Sに対する自宅待機命令等も同様の性質のものと解されること等からすれば、やはり、原告両名に対する本件自宅待機命令等も、本件内部告発に対する報復目的でなされたものと解される。
よって、原告U1及び同Sに対する自宅待機命令等も無効であり、さらに上記目的によるものであって、正当な理由なく上記両名の職業生活上の利益を侵害し、両名に苦痛を与えるものであるから、違法であって、不法行為を構成しうるものというべきである。
イ そこで、被告A2が不法行為責任を負うかどうかにつき見るに、上記(2)ウ 、 、 で述べたところに加え、自宅待機命令等に引き続きなされた本件懲戒解雇は被告A2がその意思表示を行っていることなどの事実に鑑みれば、被告A2は原告両名の自宅待機命令等に関与していることは明らかであって、原告U1及び同Sに対しても不法行為責任を免れない。
ウ そして、被告A1についても、上記(2)エと同様の理由により、原告U1及び同Sに対し、自宅待機命令等につき、やはり、不法行為責任を免れないものというべきである。
エ 結局、原告両名に対する自宅待機命令等についても、被告A1及び同A2の共同不法行為が成立する。
7  原告らの損害(争点(7))について
以上をまとめると、原告U1及び同Sに対する自宅待機命令等及び本件懲戒解雇、原告U1に対する平成九年五月一六日から同月二〇日までの間、深夜まで待機させ、またそのころ監視させた行為、原告U2に対する自宅待機命令等及び本件配転命令については、被告A1及び同A2の共同不法行為が成立する。
また、原告ら三名に対する名誉毀損行為3ないし6については、被告A2の不法行為が成立する。
そこで、原告らの損害額につき見るに、まず、本件内部告発自体は正当なものであり、いずみ生協内部の不正の摘発と業務運営の改善を目指したにもかかわらず、原告らは、被告らの不法行為により、いずみ生協の破壊者であるかのごとく扱われていずみ生協からの排除を図られ、原告U1及び同Sに対しては自宅待機命令等とそれに続く本件懲戒解雇、原告U2に対しては、自宅待機命令等及びそれに引き続く本件配転命令により、いずれも二年以上の長期間にわたり不当な処分を受け続けた。証拠(甲80、甲108、甲112、甲113、原告ら各本人)及び弁論の全趣旨によると、原告U1及び同Sは、職業生活を奪われたのみならず、本件懲戒解雇中は収入を断たれるなど生活上の多大な苦難を被ったものであり、その受けた精神的苦痛は非常に大きかったものと認められる。原告U2は、収入は得ていたものの、正常な職業生活を奪われ、同僚との接触の機会も大幅に奪われ、そのような状態をいつ終わるか判らないまま長期間耐えることを余儀なくされるなど、やはり精神的に多大の苦痛を受けたものと認められる。
さらに、被告A2の関与した文書配布及び発言により、繰り返し、原告らはいずみ生協の乗っ取りを図る集団とか、本件内部告発が誹謗中傷、事実のねつ造で悪意に満ちたものである等と決めつけられ、その名誉権を著しく侵害された。
一方、いずみ生協との和解により、原告らに対してはいずみ生協から一定程度の名誉回復措置が取られていること、現在は原告らはいずれもいずみ生協の業務に復帰していることが窺われること、原告U1及び同Sは、いずみ生協による本件懲戒解雇の撤回後、未払賃金の支給を受けていること等の事情もある。
これらの諸事情を総合考慮すると、被告A1及び同A2の共同不法行為により原告U1の被った損害に対する慰謝料としては、職場内での待機等、自宅待機及び懲戒解雇によるものを合わせ一五〇万円が、同Sの被った損害に対する慰謝料としては、自宅待機及び懲戒解雇によるものを合わせ一四〇万円が、原告U2の被った損害に対する慰謝料としては、自宅待機と本件配転命令によるものを合わせ一二〇万円が、それぞれ相当である。
また、被告A2の名誉毀損の不法行為による損害としては、原告ら各人に付き、それぞれ三〇万円が相当である。
第4  結論
以上のとおり、原告U1の請求は、被告A1及び同A2に対し、連帯して一五〇万円及びこれに対するいずれも不法行為の日の後である被告A2については平成一二年四月二〇日から、同A1については同月二七日から、各支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金、並びに、被告A2に対し、三〇万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成一二年四月二〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の各支払を求める限度で理由があるから、これを認容し、その余は失当であるから、これを棄却する。
原告Sの請求は、被告A1及び同A2に対し、連帯して一四〇万円及びこれに対するいずれも不法行為の日の後である被告A2については平成一二年四月二〇日から、同A1については同月二七日から、各支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金、並びに、被告A2に対し、三〇万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成一二年四月二〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の各支払を求める限度で理由があるから、これを認容し、その余は失当であるから、これを棄却する。
原告U2の請求は、被告A1及び同A2に対し、連帯して一二〇万円及びこれに対するいずれも不法行為の日の後である被告A2については平成一二年四月二〇日から、同A1については同月二七日から、各支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金、並びに、被告A2に対し、三〇万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成一二年四月二〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の各支払を求める限度で理由があるから、これを認容し、その余は失当であるから、これを棄却する。
そして、訴訟費用の負担につき民訴法六一条、六四条本文、六五条本文を、仮執行の宣言につき同法二五九条一項を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官・高田泰治、裁判官・竹添明夫、裁判官・三井大有)


「選挙 公報 広報 ポスター ビラ」に関する裁判例一覧
(1)令和元年 5月24日  東京地裁  平28(ワ)17007号 選挙供託金制度違憲国家賠償請求事件
(2)平成30年 7月25日  東京高裁  平30(行ケ)8号 裁決取消請求事件
(3)平成30年 7月20日  福岡地裁久留米支部  平28(ワ)69号 損害賠償請求事件
(4)平成30年 7月18日  大阪地裁  平28(ワ)3174号 懲戒処分無効確認請求事件
(5)平成30年 4月11日  知財高裁  平29(行ケ)10161号 審決取消請求事件
(6)平成29年12月22日  東京地裁  平27(行ウ)706号・平28(行ウ)585号 各公文書非公開処分取消等請求事件
(7)平成29年10月11日  東京地裁  平28(ワ)38184号 損害賠償請求事件
(8)平成29年 8月29日  知財高裁  平28(行ケ)10271号 審決取消請求事件
(9)平成29年 7月12日  広島高裁松江支部  平28(行コ)4号 市庁舎建築に関する公金支出等差止請求控訴事件
(10)平成29年 4月21日  東京地裁  平26(ワ)29244号 損害賠償請求事件
(11)平成28年 9月16日  福岡高裁那覇支部  平28(行ケ)3号 地方自治法251条の7第1項の規定に基づく不作為の違法確認請求事件
(12)平成28年 8月29日  徳島地裁  平27(ワ)138号 損害賠償等請求事件
(13)平成28年 5月17日  広島高裁  平28(行ケ)1号 裁決取消請求事件
(14)平成27年12月22日  東京高裁  平26(ネ)5388号 損害賠償請求控訴事件
(15)平成27年 3月31日  東京地裁  平26(行ウ)299号 投票効力無効取消等請求事件
(16)平成26年 9月25日  東京地裁  平21(ワ)46404号・平22(ワ)16316号 損害賠償(株主代表訴訟)請求事件(第2事件)、損害賠償(株主代表訴訟)請求事件(第3事件)
(17)平成26年 9月11日  知財高裁  平26(行ケ)10092号 審決取消請求事件
(18)平成26年 5月16日  東京地裁  平24(行ウ)667号 損害賠償履行請求事件(住民訴訟)
(19)平成26年 3月11日  東京地裁  平25(ワ)11889号 損害賠償等請求事件
(20)平成26年 3月 4日  東京地裁  平25(行ウ)9号 公文書不開示処分取消等請求事件
(21)平成25年11月29日  東京地裁  平25(ワ)18098号 被選挙権侵害による損害賠償請求事件
(22)平成25年10月16日  東京地裁  平23(行ウ)292号 報酬返還請求事件
(23)平成25年 9月27日  大阪高裁  平25(行コ)45号 選挙権剥奪違法確認等請求控訴事件
(24)平成25年 8月 5日  東京地裁  平25(ワ)8154号 発信者情報開示請求事件
(25)平成25年 3月14日  東京地裁  平23(行ウ)63号 選挙権確認請求事件 〔成年被後見人選挙件確認訴訟・第一審〕
(26)平成24年12月 6日  東京地裁  平23(行ウ)241号 過料処分取消請求事件
(27)平成24年 8月10日  東京地裁  平24(ワ)17088号 損害賠償請求事件
(28)平成24年 7月19日  東京地裁  平24(行ウ)8号 個人情報非開示決定処分取消請求事件
(29)平成24年 7月10日  東京地裁  平23(ワ)8138号 損害賠償請求事件
(30)平成24年 7月10日  東京地裁  平23(ワ)30770号 損害賠償請求事件
(31)平成24年 2月29日  東京地裁  平21(行ウ)585号 公金支出差止請求事件
(32)平成23年 5月11日  神戸地裁  平21(行ウ)4号 政務調査費違法支出返還請求事件
(33)平成23年 4月26日  東京地裁  平22(行ウ)162号・平22(行ウ)448号・平22(行ウ)453号 在外日本人国民審査権確認等請求事件(甲事件)、在外日本人国民審査権確認等請求事件(乙事件)、在外日本人国民審査権確認等請求事件(丙事件)
(34)平成22年11月30日  京都地裁  平20(行ウ)28号・平20(行ウ)46号 債務不存在確認等請求本訴、政務調査費返還請求反訴事件
(35)平成22年11月29日  東京高裁  平22(行ケ)26号 裁決取消、選挙無効確認請求事件
(36)平成22年11月24日  岐阜地裁  平22(行ウ)2号 個人情報非開示決定処分取消及び個人情報開示処分義務付け請求事件
(37)平成22年11月24日  岐阜地裁  平22(行ウ)1号 行政文書非公開決定処分取消及び行政文書公開処分義務付け請求事件
(38)平成22年11月 9日  東京地裁  平21(行ウ)542号 政務調査費返還(住民訴訟)請求事件
(39)平成22年 9月14日  神戸地裁  平21(行ウ)20号 公文書非公開定取消請求事件 〔兵庫県体罰情報公開訴訟・第一審〕
(40)平成22年 5月26日  東京地裁  平21(ワ)27218号 損害賠償請求事件
(41)平成22年 3月31日  東京地裁  平21(行ウ)259号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(42)平成22年 2月 3日  東京高裁  平21(行ケ)30号 選挙無効請求事件
(43)平成20年11月28日  東京地裁  平20(行ウ)114号 政務調査費返還命令処分取消請求事件
(44)平成20年11月17日  知財高裁  平19(行ケ)10433号 審決取消請求事件
(45)平成20年11月11日  仙台高裁  平20(行コ)13号 政務調査費返還代位請求控訴事件
(46)平成20年 3月14日  和歌山地裁田辺支部  平18(ワ)167号 債務不存在確認等請求事件
(47)平成19年11月22日  仙台高裁  平19(行ケ)2号 裁決取消等請求事件
(48)平成19年 9月 7日  福岡高裁  平18(う)116号 公職選挙法違反被告事件
(49)平成19年 7月26日  東京地裁  平19(行ウ)55号 公文書非開示決定処分取消請求事件
(50)平成19年 3月13日  静岡地裁沼津支部  平17(ワ)21号 損害賠償請求事件
(51)平成18年12月13日  名古屋高裁  平18(行ケ)4号 選挙の効力に関する裁決取消請求事件
(52)平成18年11月 6日  高松高裁  平18(行ケ)2号 裁決取消請求事件
(53)平成18年 8月10日  大阪地裁  平18(行ウ)75号 行政文書不開示決定処分取消請求事件
(54)平成18年 6月20日  京都地裁  平16(行ウ)40号 地労委任命処分取消等請求事件
(55)平成18年 1月20日  大阪地裁  平13(行ウ)47号・平13(行ウ)53号・平13(行ウ)54号・平13(行ウ)55号・平13(行ウ)56号・平13(行ウ)57号・平13(行ウ)58号・平13(行ウ)59号・平13(行ウ)60号・平13(行ウ)61号 障害基礎年金不支給決定取消等請求事件 〔学生無年金障害者訴訟〕
(56)平成17年 9月14日  最高裁大法廷  平13(行ヒ)77号・平13(行ツ)83号・平13(行ツ)82号・平13(行ヒ)76号 在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件 〔在外選挙権最高裁大法廷判決〕
(57)平成17年 8月31日  東京地裁  平17(行ウ)78号 供託金返還等請求事件
(58)平成17年 7月 6日  大阪地裁  平15(ワ)13831号 損害賠償請求事件 〔中国残留孤児国賠訴訟〕
(59)平成17年 1月27日  名古屋地裁  平16(行ウ)26号 調整手当支給差止請求事件
(60)平成16年 3月29日  神戸地裁姫路支部  平10(ワ)686号 新日本製鐵思想差別損害賠償請求事件
(61)平成16年 1月16日  東京地裁  平14(ワ)15520号 損害賠償請求事件
(62)平成15年12月15日  大津地裁  平14(行ウ)8号 損害賠償請求事件
(63)平成15年12月 4日  福岡高裁  平15(行ケ)6号 佐賀市議会議員選挙無効裁決取消請求事件 〔党派名誤記市議会議員選挙無効裁決取消請求事件〕
(64)平成15年10月28日  東京高裁  平15(行ケ)1号 商標登録取消決定取消請求事件
(65)平成15年10月28日  東京高裁  平14(行ケ)615号 商標登録取消決定取消請求事件
(66)平成15年10月28日  東京高裁  平14(行ケ)614号 商標登録取消決定取消請求事件 〔刀剣と歴史事件〕
(67)平成15年10月16日  東京高裁  平15(行ケ)349号 審決取消請求事件 〔「フォルッアジャパン/がんばれ日本」不使用取消事件〕
(68)平成15年 9月30日  札幌地裁  平15(わ)701号 公職選挙法違反被告事件
(69)平成15年 7月 1日  東京高裁  平14(行ケ)3号 審決取消請求事件 〔ゲーム、パチンコなどのネットワーク伝送システム装置事件〕
(70)平成15年 6月18日  大阪地裁堺支部  平12(ワ)377号 損害賠償請求事件 〔大阪いずみ市民生協(内部告発)事件〕
(71)平成15年 3月28日  名古屋地裁  平7(ワ)3237号 出向無効確認請求事件 〔住友軽金属工業(スミケイ梱包出向)事件〕
(72)平成15年 3月26日  宇都宮地裁  平12(行ウ)8号 文書非開示決定処分取消請求事件
(73)平成15年 2月10日  大阪地裁  平12(ワ)6589号 損害賠償請求事件 〔不安神経症患者による選挙権訴訟・第一審〕
(74)平成15年 1月31日  名古屋地裁  平12(行ウ)59号 名古屋市公金違法支出金返還請求事件 〔市政調査研究費返還請求住民訴訟事件〕
(75)平成14年 8月27日  東京地裁  平9(ワ)16684号・平11(ワ)27579号 損害賠償等請求事件 〔旧日本軍の細菌兵器使用事件・第一審〕
(76)平成14年 7月30日  最高裁第一小法廷  平14(行ヒ)95号 選挙無効確認請求事件
(77)平成14年 5月10日  静岡地裁  平12(行ウ)13号 労働者委員任命処分取消等請求事件
(78)平成14年 4月26日  東京地裁  平14(ワ)1865号 慰謝料請求事件
(79)平成14年 4月22日  大津地裁  平12(行ウ)7号・平13(行ウ)1号 各損害賠償請求事件
(80)平成14年 3月26日  東京地裁  平12(行ウ)256号・平12(行ウ)261号・平12(行ウ)262号・平12(行ウ)263号・平12(行ウ)264号・平12(行ウ)265号・平12(行ウ)266号・平12(行ウ)267号・平12(行ウ)268号・平12(行ウ)269号・平12(行ウ)270号・平12(行ウ)271号・平12(行ウ)272号・平12(行ウ)273号・平12(行ウ)274号・平12(行ウ)275号・平12(行ウ)276号・平12(行ウ)277号・平12(行ウ)278号・平12(行ウ)279号・平12(行ウ)280号 東京都外形標準課税条例無効確認等請求事件
(81)平成13年12月19日  神戸地裁  平9(行ウ)46号 公金違法支出による損害賠償請求事件
(82)平成13年12月18日  最高裁第三小法廷  平13(行ツ)233号 選挙無効請求事件
(83)平成13年 4月25日  東京高裁  平12(行ケ)272号 選挙無効請求事件
(84)平成13年 3月15日  静岡地裁  平9(行ウ)6号 公費違法支出差止等請求事件
(85)平成12年10月 4日  東京地裁  平9(ワ)24号 損害賠償請求事件
(86)平成12年 9月 5日  福島地裁  平10(行ウ)9号 損害賠償代位請求事件
(87)平成12年 3月 8日  福井地裁  平7(行ウ)4号 仮換地指定処分取消請求事件
(88)平成11年 5月19日  青森地裁  平10(ワ)307号・平9(ワ)312号 定時総会決議無効確認請求、損害賠償請求事件
(89)平成11年 5月12日  名古屋地裁  平2(行ウ)7号 労働者委員任命取消等請求事件
(90)平成10年10月 9日  東京高裁  平8(行ケ)296号 選挙無効請求事件 〔衆議院小選挙区比例代表並立制選挙制度違憲訴訟・第一審〕
(91)平成10年 9月21日  東京高裁  平10(行ケ)121号 選挙無効請求事件
(92)平成10年 5月14日  津地裁  平5(ワ)82号 謝罪広告等請求事件
(93)平成10年 4月22日  名古屋地裁豊橋支部  平8(ワ)142号 損害賠償請求事件
(94)平成10年 3月26日  名古屋地裁  平3(ワ)1419号・平2(ワ)1496号・平3(ワ)3792号 損害賠償請求事件 〔青春を返せ名古屋訴訟判決〕
(95)平成10年 1月27日  横浜地裁  平7(行ウ)29号 分限免職処分取消等請求 〔神奈川県教委(県立外語短大)事件・第一審〕
(96)平成 9年 3月18日  大阪高裁  平8(行コ)35号 供託金返還請求控訴事件
(97)平成 8年11月22日  東京地裁  平4(行ウ)79号・平4(行ウ)75号・平4(行ウ)15号・平3(行ウ)253号 強制徴兵徴用者等に対する補償請求等事件
(98)平成 8年 8月 7日  神戸地裁  平7(行ウ)41号 選挙供託による供託金返還請求事件
(99)平成 8年 3月25日  東京地裁  平6(行ウ)348号 損害賠償請求事件
(100)平成 7年 2月22日  東京地裁  昭49(ワ)4723号 損害賠償請求事件 〔全税関東京損害賠償事件〕


■選挙の種類一覧
選挙①【衆議院議員総選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙②【参議院議員通常選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙③【一般選挙(地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙④【特別選挙(国政選挙|地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)


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