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「選挙 公報 広報 ポスター ビラ」に関する裁判例(71)平成15年 3月28日  名古屋地裁  平7(ワ)3237号 出向無効確認請求事件 〔住友軽金属工業(スミケイ梱包出向)事件〕

「選挙 公報 広報 ポスター ビラ」に関する裁判例(71)平成15年 3月28日  名古屋地裁  平7(ワ)3237号 出向無効確認請求事件 〔住友軽金属工業(スミケイ梱包出向)事件〕

裁判年月日  平成15年 3月28日  裁判所名  名古屋地裁  裁判区分  判決
事件番号  平7(ワ)3237号
事件名  出向無効確認請求事件 〔住友軽金属工業(スミケイ梱包出向)事件〕
文献番号  2003WLJPCA03280004

要旨
◆住友軽金属工業株式会社の社員の関連会社への出向命令につき、出向を命ずる相当の必要性と合理性があり、権利濫用、不当労働行為に当たらないとして、同命令の無効確認請求が棄却された事例

出典
裁判所ウェブサイト
労判 851号53頁
新日本法規提供

参照条文
民法1条3項
労働基準法13条
労働基準法89条
労働組合法7条

裁判年月日  平成15年 3月28日  裁判所名  名古屋地裁  裁判区分  判決
事件番号  平7(ワ)3237号
事件名  出向無効確認請求事件 〔住友軽金属工業(スミケイ梱包出向)事件〕
文献番号  2003WLJPCA03280004

原告 X
同訴訟代理人弁護士 竹内平
同 岩井羊一
同 安藤巌
同 渥美玲子
同 荻原剛
同 竹内浩史
同 平松清志
同 西尾弘美
同 水野幹男
同 中谷雄二
被告 Y工業株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 加藤隆一郎

 

主  文

1  原告の請求を棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
被告が平成6年10月1日付けで原告に対してなした別紙記載の出向命令は無効であることを確認する。
第2  事案の概要
本件は、被告が原告に対してなした関連会社への出向命令につき、原告が、当該出向命令には原告の承諾がないこと、出向を命ずる必要性も合理性もなく、出向を命ずる動機や経緯に照らすと、当該出向命令は被告の権利濫用であること、当該出向命令が公序良俗に反するものであること、当該出向命令は不当労働行為に当たること等を主張して、同命令が無効であることの確認を求める事案である。
1  争いのない事実等(特に証拠を掲げたもの以外は、当事者間に争いがない。)
(1)  当事者
ア 原告
(ア) 被告への入社及び勤務歴等
原告は、昭和36年4月1日、被告に工員として入社し、以後、別表1記載のように勤務した。
(イ) 原告は、被告入社後、Y労働組合(以下「本件組合」ともいう。なお、昭和54年以前は、本件組合は事務職組合と作業職組合に分かれており、原告が加入したのは作業職組合であった。)に加入し、昭和46年及び昭和47年に本件組合青年部副部長に就任したほか、昭和49年以降、昭和51年を除き、2年に1回の本件組合役員選挙に立候補してきている(甲14、15、17ないし28)。
イ 被告
被告は、アルミニウム・銅・亜鉛・チタニウム・ニッケル等及びその合金の鋳塊・板・管・棒・条・鍛圧品・鋳物等の製造及び販売などを目的とする株式会社である。
(2)  出向に関する就業規則、労働協約上の規定
ア 被告における就業規則
被告の社員就業規則(平成4年10月1日付けのもの)第5条は、「〈1〉業務上必要があるときは異動(出向を含む。)を命ずることがある。〈2〉出向者の取扱いについては、別に定める。」と規定していた(乙6)。
イ 被告と本件組合との間の労働協約等
被告と本件組合との間の労働協約(平成4年10月1日付けのもの)第25条は、「〈1〉会社は、必要により、組合員に異動(出向を含む。以下同じ。)を命ずる事がある。〈2〉会社は組合員の異動については、事前に組合に通知する。〈3〉多数の組合員の異動については、その方針及び基準につき組合と協議する。〈4〉出向者の労働条件については、別に協定する。」と規定しており、同条第4項に関して、出向協定を締結していた(乙3)。
ウ 上記イの労働協約等の出向に関する規定は、基本的には昭和54年10月1日に締結された労働協約及び出向協定の内容を踏襲したものであり、被告と本件組合間で締結された労働協約等の出向に関する規定は、昭和54年10月1日以降、ほぼ同内容のまま維持されてきている(乙2、3、4、弁論の全趣旨。以下、昭和54年10月1日に締結された労働協約を「本件労働協約」と、出向協定を「本件出向協定」と、本件労働協約と本件出向協定を合わせて「本件労働協約等」という。なお、本件出向命令発令当時に効力を有していた労働協約及び出向協定も同様の内容を有するものであると認められるから、以下、特に明示することなく、上記と同様の表記を用いる。)。
(3)  被告の原告に対する出向命令の発令
被告は、原告に対し、平成6年10月1日、別紙記載の出向を命じた(以下「本件出向命令」といい、この出向命令に係る出向を「本件出向」という。)。
本件出向は、原告が被告に在籍したまま、a梱包株式会社(以下「a梱包」という。なお、同社は、平成8年4月1日、a1株式会社と商号変更しているが〔甲167〕、以下、商号変更前後を通じて「a梱包」という。)において同社の業務に従事する、いわゆる在籍出向である。
なお、本件出向命令には、出向期間が示されていない。
(4)  本件出向命令に対する原告の対応
原告は、本件出向命令の発令を受け、これに異議をとどめながら、出向先であるa梱包において同社の業務に従事し、現在に至っている。
2  争点
(1)  本件出向命令に対する原告の承諾等、本件出向命令を根拠付ける事情の存否
(2)  本件出向命令は、被告の業務命令権の濫用あるいは公序良俗違反として無効か。
ア 本件出向命令は、出向の理由となる合理的事情を欠いているか。また、欠いている場合、被告の業務命令権の濫用となる旨の原告主張の当否
イ 本件出向命令は、経済的合理性とかかわりのない目的でなされたものとして被告の業務命令権の濫用となる旨の原告主張の当否
ウ 本件出向命令は、被告の脅迫的言動の下で行われたものであり、公序良俗に反して無効である旨の原告主張の当否
エ 本件出向命令は、原告の労働組合活動を妨害する目的でなされたものとして被告の業務命令権の濫用となる旨の原告主張の当否
オ 本件出向命令は、原告に対する差別の一環としてなされたものとして被告の業務命令権の濫用となる旨の原告主張の当否
カ 本件出向命令は、労働者に責任のない経営上の失敗を労働者に押し付けるものとして被告の業務命令権の濫用となる旨の原告主張の当否
キ 本件出向命令は、見せしめのため、出向強行策実施のためになされたものとして合理性を欠き、被告の業務命令権の濫用となる旨の原告主張の当否
ク 本件出向命令は、原告が昼夜交替勤務に従事しないことを理由としてなされたものとして、業務命令権の濫用となる旨の原告主張の当否
ケ 本件出向命令は、原告に不利益を課すものとして、業務命令権の濫用となる旨の原告主張の当否
コ 前記アないしケを総合的に判断した場合、本件出向命令は被告の業務命令権の濫用となる旨の原告主張の当否
(3)  本件出向命令は、不当労働行為に該当し無効か。
3  争点に関する当事者の主張
(1)  争点(1)(本件出向命令に対する原告の承諾等、本件出向命令を根拠付ける事情の存否)について
(被告の主張)
原告は本件出向につき、承諾しているものである。また、そもそも、本件出向には原告の承諾を要しない。
ア 出向命令に対する承諾の要否について
(ア) 我が国の慣行である終身雇用制においては、労働契約は事実上相当長期間にわたり継続する性質があり、労働契約の締結後に事情が変更することによって、その内容が合理的な限度で変更されることは当然認められるべきである。
被告においては、当初従業員を社外において勤務させる必要性は大きくなく、出向を要する場合はその都度個別的に対応していたが、オイルショックを端緒とする業界の構造的不況により、従業員の雇用確保の手段として出向を活用せざるを得ない状況となり、出向の事例の増加をみるに至ったので、本件組合との交渉の結果、昭和54年10月1日、本件労働協約等を締結し、出向者の取扱い条件を明記して、就業規則にもこれにのっとった規定を置き、以来多数の出向事例がこれに従い実施されているのであって、本件労働協約等の内容は、原告と被告との間の労働契約にも取り込まれているというべきである。
(イ) 出向命令に対して労働者が承諾をした場合に、当該出向命令が有効であることはいうまでもないが、一般に、人事異動については、本人の納得を得て実行することが理想的であり、殊に出向の場合は、通常の転勤等に比較しても、労働者の身分変動が大きいため、使用者において、極力労働者の承諾を得た上で実行に移そうと努める実態があることは事実である。
しかしながら、これは、出向を命ずるためには、常に法律上労働者の承諾を要することを意味するものではない。法律上は、飽くまでも出向命令に応じて出向先に対しても労務に服するなどの義務を負うことが、労働契約の内容として含まれるか否かという観点から検討されれば足りるというべきである。
イ 本件出向命令に対する原告の概括的承諾について
(ア) 平成5年9月末ころ、A57機械の交替勤務化に伴う原告の配置について、被告のa梱包出向の要請に対し原告はこれに難色を示していたのであるが、その主たる理由は、出向により本件組合役員選挙立候補の機会を失うという点にあった。そこで、被告においてなお説得したところ、原告もa梱包において就労する必要があることに理解を示した。被告側も、原告に立候補の機会を与えるため出向要請を撤回し、応援としてa梱包に就労させることとしたが、応援は飽くまでも臨時的措置であり、近い将来において正式に出向とする旨も告知した。
(イ) 以上の経過によりa梱包における就労を承諾した原告は、その際、同時に将来の出向命令発令に対しても概括的に承諾しているというべきである。
(ウ) そして、前記の概括的承諾は、原告が、その希望する常昼勤務職場に配置されることが従前の職場では不可能となり、就労場所をa梱包に求めざるを得ないことを理解しつつ、当面予定していた本件組合役員選挙立候補の障害となることを難点として示したことにより、選挙落着後は前記難点が解消され、出向に承諾することの表明と評価されるものである。この承諾は、事前・概括的ではあるが、近い将来におけるa梱包への出向という個別具体的出向を対象とするものであり、抽象的包括的事前承諾とは異なるものである。
(エ) また、前記のとおり、平成5年9月末ころの内示拒否の理由であった本件組合役員選挙立候補を被告の配慮によって果たした以上、次の機会に同一内容の出向命令を拒否する理由はないはずであり、信義則上も、原告はこれを承諾したと解するべきである。
ウ 本件労働協約等について
(ア) 本件労働協約は、昭和54年に成立し、内容に実質的変更なく現在に至っている。
原告の入社当時においては、出向そのものの事例がなかったため、出向に関する協約が存在しなかったのは事実であるが、その後、事例の増加に伴い、該当者の労働条件の維持・向上を目的とする本件組合の要求に応じ、団体交渉を行い、本件組合の機関決定を経て本件労働協約が成立したものである。
(イ) そして、本件労働協約の成立により、基本的には本件組合の所属組合員は、出向命令に対し包括的に承諾したというべきである。
もっとも、具体的事例において、出向により本人の生活環境が著しく変化する等、無視できない不利益があるときは、個別的・具体的承諾を要する場合があり得ることは必ずしも否定しない。
しかし、本件出向においては、出向先であるa梱包の制度が適用されるのは、a勤務及び休日・休暇・休業、b服務、c通勤費・旅費、d給食、e安全及び保健衛生の5点であるところ、同社において、aについては、年間労働時間は、被告と同一基準であり、bについては、出向先の指揮命令に従うことは出向の性質上当然であるが、就労場所は被告構内であり、cについては、通勤費・旅費については被告と同一の制度であり、dについては、出向前と同一給食施設を利用することができ、本人の負担も同額であり、eについては、出向先の安全・保健衛生管理に従うのは当然であるが、診療所の利用は出向前と同様である。そして、本件出向協定により、給与は従来どおり保障され、就労場所が被告構内であるために通勤場所・手段も変更がない。
その他、本件出向命令によって、原告に特段の不利益がないことは、後記(2)(被告の主張)キで述べるとおりである。
このように、原告は、本件出向命令により、経済的不利益その他就労条件において実質的不利益を被ることはなく、その他の不利益を被ることもないから、本件は、個別的・具体的承諾を要する事例であるとはいえない。
したがって、個別的・具体的承諾の有無について議論するまでもなく、本件出向命令は有効である。
(ウ) なお、原告は、被告が、本件出向命令発令に際し、本件労働協約を誠実に実施していないと主張するが、本件労働協約25条2項の趣旨は、異動の効力が発生する以前に本件組合の発言の機会を保障しようとするものであり、内示以前の通知を義務付けたものではないから、原告の前記指摘は当たらない。
(原告の主張)
ア 出向命令における労働者の承諾の必要性について
(ア) 民法625条は、労務請求権、労務給付義務の一身専属性に着目をして置かれた規定である。労務を提供するという債務は、人の労務が対象であるため、提供を受ける側の人的具体的属性によって提供内容も異なる。また、雇用は、時間的にも、物理的にも、人的にも労働者を拘束し、その対象が人格をもった「人」である点から、決定的に「物」に対する拘束とは異なり、近代市民法の大原則である私人間の平等性が貫かれ、契約は双方の合意によって画されなければならない。雇用において一身専属性が強調されるゆえんである。
(イ) 出向は、労働条件の重大な変更を伴うだけでなく、雇用契約における重要な内容である業務に関する指揮命令権を出向先に移すものである。
雇用契約において労働者の承諾のない出向を認めれば、それは労働者の承諾のない労働力の譲渡を認めることと同視できるのであり、これでは、労働者は「物」より軽んぜられることになる(民法612条は、賃借権の譲渡、賃借物の転貸についてでさえ、貸主の承諾を要求している。)。人として尊重される現代法治国家において、そのような解釈は当然認められない。
(ウ) 出向が労働者に与える影響について
出向は、労働者に、次のように多様な影響を与える。
第1に、労務内容の変更をもたらす。
第2に、労働条件の変更をもたらす。この場合、形式的には労働条件が出向前と同じであっても、労務内容の量あるいは質の変更によって実質的に労働条件が変更、切下げとなる場合がある。
第3に、出向は当該労働者の処遇の変更をもたらす。
例えば、島流し的な出向がある。出向元会社において「不必要」となったとして実施される場合には、出向元会社からの追い出しである。行きっぱなしの出向であれば、将来的に出向先の会社に固定され、当該労働者の行く末は出向先の会社に左右される。出向は、こうした結果になることを内在している。この場合、出向先において当該労働者は肩身の狭い思いを強いられることになる。
逆に、場合によっては、出向先において昇進(的)ポストが付与されることもある。あるいは、出向後、出向元の会社に戻り、出向前より昇進する場合もあり得る。
第4に、労働者に対する指揮命令権の所在が実質的に変更される。
第5に、出向は前記のような現在的な変更だけでなく、多面的で内在的、将来的な変更が行われる。
したがって、出向命令には、それを総合的に受け入れる当該労働者の承諾を要するというべきである。
(エ) 以上によれば、出向については当該労働者の承諾を要し、少なくとも、承諾と同視できるもの・状況、例えば個別的な黙示の承諾などがなければならない。
この意味で、労使協約・協定や就業規則は本人の承諾と同視できず、またこれに代えることもできず、合理的事情を示唆するものでもないというべきである。
なお、被告は、原告に対して、本件出向命令の発令に先立って、かつ、発令以後においても繰り返し執拗に本件出向命令に対する承諾書を出すよう求め、原告が異議をとどめてa梱包に就労する旨の文書を提出すると、その書換えを迫るなどしており、こうした被告の態度は、被告自身が出向命令は労働者本人の承諾がなければ効力がないことを了知していたことを示している。
イ 原告の承諾の不存在
(ア) 被告は、本件出向命令について原告は承諾していると主張するが、これは事実に反し、原告はいかなる時点においても承諾していない。
(イ) 原告が被告に入社したのは昭和36年4月であるが、この時点では原告と被告との間にいかなる意味でも出向についての合意・承諾は存していない。
また、この時点では、本件組合と被告との間にいかなる意味でも出向についての合意は存在していない。
むしろ、原告は、他の選択を排して被告を選んで入社したものである。
(ウ) その後、平成5年9月に被告は原告に対して出向の打診をしたが、原告はこれを承諾していない。
また、平成6年10月に被告は原告に対して本件出向命令を発令したが、原告はこれを承諾していない。
ウ 労働協約及び出向協定について
(ア) 労働協約及び出向協定
被告と本件組合間には、労働協約及び労働協約付属協定があり、出向については、昭和54年10月1日に締結された本件労働協約及び本件出向協定が、以後同じ内容で締結されて現在に至っている。本件出向協定は本件労働協約第25条第4項にかかわる協定であり、出向に関して、本件労働協約と本件出向協定は一体のものである。
(イ) 締結の経過
本件労働協約等は、本件組合の議案書からすると、被告の提案から約1か月の間に締結されたものである。
(ウ) 労働協約の改定内容等
改定前の労働協約第25条は、「〈1〉会社は、組合員の異動については、事前に組合に通知する。〈2〉多数の組合員の異動については、その方針及び基準につき組合と協議する。」と定めていたところ、本件労働協約において、同条は、「〈1〉会社は、必要により、組合員に対して異動(出向を含む。以下同じ)を命ずることができる。〈2〉会社は、組合員の異動については、事前に組合に通知する。〈3〉多数の組合員の異動については、その方針及び基準について組合と協議する。〈4〉出向者の労働条件については、別に協定する。」と改定された。
そして、上記〈4〉に関し、本件出向協定が新設された。これによれば、原則として、a勤務、休日、休暇、休業、b服務、c旅費、d福利厚生施設の利用、e給食、fその他の福利厚生制度、g安全及び保健衛生、h出向先における異動・役付任命、i永年勤続表彰については、原則として出向先の会社の規定によるとされた。
逆に、j給与、k退職金、l職分職級の運営、m賞与及び昇給、n通勤費、o慶弔金、p健康保険・厚生年金保険・雇用保険、q災害補償、r懲戒については、原則として出向元の会社(被告)の規定によることとされた。
(エ) 前記のとおり、本件労働協約は、出向の必要性の存在を明文をもって前提にしており、これが労働協約の文言である以上、出向の必要性は、被告の主観的な、一方的な必要性でなく、客観的なものでなければならない。
また、被告は従業員に対して出向を命ずることができるにすぎず、直ちに、当該従業員の承諾なき履行を義務化している文言ではない。
さらに、本件労働協約は本件組合への通知、多数の組合員の異動の場合における本件組合との協議について定めているが、これらの通知及び協議の規定は、本件労働協約への改定前から存在するものである。
そして、本件出向協定は、当該労働者が出向先において実際に従事する日常業務内容及び出向先に日常的にいることによる便宜的な労働条件は出向先の会社の規定によるとされているが、これは当該労働者が従事する業務は出向先によって決定的に異なることを示しているのであり、当然ながら指揮権は出向先の会社にあるということになる。このことは、労働者側にとっていえば提供する労務内容に重大な変化を生ずることを意味する。
他方で、出向元の被告の規定によるものとされる労働条件もあるが、これらの労働条件は通常、子会社などがその大半を占める出向先の会社より、出向元である被告の方がよく、出向先の会社の規定によるとすると一方的に切り下げられる結果となり、これを回避するためのものであると判断される。この点に関して、あるいはこの点に限り、本件出向協定が締結されたことは、明文で協約として明瞭となった点も含めて労働者にとって意味のあることである。
しかし、本件出向協定によって、出向が出向労働者にとって一般的に利益であるということを意味するものではない。利益・不利益は多面的に判断されるものであり、そうした点も含めて、当該出向についての諾否は総合的に当該労働者の判断にゆだねられるべきである。
すなわち、労働組合は、本来、労働条件の維持改善を図ることを主たる目的として労働者が組織した団体である以上、労働組合は出向に関して、出向の意思のある労働者の労働条件を改善する能力があるにとどまり、それを超えて出向の意思のない労働者にまで出向を強制する能力を持たないのである。
したがって、前記のような本件労働協約等の存在をもってしても、出向について当該労働者の承諾を要しないとする事情にはなり得ない。
(オ) 本件労働協約等についての各当事者の受け止めについて
本件労働協約は、被告において、他社で働く従業員が多数になったこと及び他社で働く従業員の労働条件を明確にする必要性が生じたという事情に加え、将来的な経営上の見通しも考慮した上、被告の提案として、従前の労働協約が改定されたものである。
したがって、本件労働協約締結時(改定時)において、被告としては、「事業の縮小・廃止に伴う出向」については、現実的必要性やそれを求める事情があるとは認識していなかったものである。
そして、被告の酒田市への進出時期よりも本件労働協約への改定が先行していること、被告が本件組合に提案するまでに、相当以前から独自に検討していたであろうことも考え合わせると、本件労働協約の改定時において、雇用調整という考えはなかったものといえる。
また、被告が、本件労働協約が出向について当該労働者に代わって包括的承諾を被告に与えた意味を持つものであるという認識を持っていたとする根拠もない。
以上のような被告の認識に対して、本件組合側は、本件労働協約締結に当たって、業界の景気動向を気にしており、他社で働く従業員の身分についての不安が出向に関する協約・協定締結の動機であった。
本件組合の原告ら組合員に対する説明においても、専ら出向後の労働条件に関して、出向者に対する説明に重きが置かれていた。
そもそも、労使協定は使用者と労働者との合意を核としている以上、その効力を判断する上で一方当事者である労働組合の受け止めは重要である。そして、被告及び本件組合が、前記のような動機で本件労働協約を締結した以上、協約・協定はその限りの目的を持ったものと解されるべきである。
また、本件労働協約改定が、被告の提案から1か月足らずの短期間になされたことからすると、出向の際の当該労働者の承諾を省略してよいかどうかという重大な事柄を決定したとは考えられず、本件出向協定は出向した場合の労働者の待遇について、出向先の就業規則などによるか、出向元(被告)の就業規則などによるかという事柄について取り決めたにすぎないものというべきである。
したがって、本件労働協約等は、当該労働者の出向についての意思の確認やその濫用を防ぐ手だてに代わるものを定めたものではない。
(カ) 労働協約が包括的承諾の根拠となるとの見解について
労働協約の締結の主体は労働組合であり、個々の労働者ではない。この意味では、労働協約が出向に対する個々の労働者の包括的承諾の根拠となるものではない。本件労働協約は、被告が労働者に出向を命ずることがあることを本件組合として認めるという意味を持つにすぎないものである。
このことは、本件労働協約の具体的文言からも明らかである。
すなわち、本件労働協約は、被告が出向を命ずることがあるという規定と共に、多人数にわたる場合にはその方針と基準を本件組合に事前に説明することを求めている。これは多くの組合員が出向することはそれ自体多くの労働者の労働条件に与える影響が大きいために事前に開示・協議することを定めたものである。
また、出向後に当該労働者が出向先と交渉・協議するとなると事実上出向先の労働条件が押し付けられる結果となる可能性があることから、出向の場合の労働条件について事前に原則的な規定を置いたものである。
前記の開示・協議規定は、少数の組合員の異動については特に協議の規定を置いていないことからすると、多数の組合員の異動の場合には手続を慎重ならしめるための規定というべきであって、当該労働者の承諾の存在を排斥したり、承諾に代わるものということはできないのである。
また、実質的にも、本件労働協約等は、出向先、出向期間、出向先での就労内容等が全く特定されていないものである。
したがって、仮に、事前の労働協約などによって出向させることができるという見解でも、本件においては、その都度の個別的・具体的承諾なく出向させることはできないというべきである。
加えて、本件出向協定は、昭和54年に定められており、原告入社後に決められたものであること、本件出向命令によって出向先とされたa梱包は、昭和53年に設立されたものであり、これも原告の被告入社以後であることも合わせて考えれば、本件労働協約等の成立をもって原告の承諾があったと考えられる余地は全くないものである。
(キ) 本件労働協約への改定前後の被告における出向等の実態について
本件労働協約への改定前においては、本件組合は事務職組合と作業職組合とに分かれており、事務職組合員は出向すると組合籍を離れることとなっていた。
また、作業職組合員については出向という呼称の異動形態はなく、長期出張、応援、派遣という形式で異動しており、組合籍を離れる形態のものはなかった。
そして、事務職組合員の場合の出向や、作業職組合員の場合の派遣等の際には、個々の労働者の承諾を得て実施されていた。
したがって、本件労働協約への改定をもって個々の労働者の承諾を要しないとすることは、労働条件を不利に変更するものであり、労働協約の効力を法定した趣旨に反するものである。
さらに、本件労働協約への改定後の実態についてみても、甲5号証の記載内容等から明らかなとおり、被告は、出向につき当該労働者の個々の承諾を要するものとして取り扱っているのである。
これらの実態からしても、出向につき労働者の個々の承諾を要することは当然であり、本件労働協約をもってその承諾に代わるとすることはできない。
(ク) 本件出向命令にかかわる本件労働協約の実施について
原告は本件組合の組合員であるが、本件出向命令において、事前の組合通知は全く不十分なものであった。
すなわち、被告は、原告に対して、平成6年9月14日にa梱包への出向を打診した。その後、原告は、同月16日、本件出向命令に応じられないため、本件組合に対して相談に出向いたが、そのとき、原告に対応した本件組合執行委員は、本件出向予定日とされている同年10月1日の2週間前であるにもかかわらず、本件出向命令について全く了知していなかった。
本件出向命令について本件組合から原告に対して話があったのは、出向予定日の約1週間前の同年9月21日及び同月22日である。本件出向命令の内示は同月22日になされた。本件労働協約第25条第2項の規定の趣旨は、出向が労働者の労働条件や労働組合運動などに深くかかわるため、本件組合が当該労働者の状況を事前に十分把握し、労働者の立場から意見を言うことができ、また、当該労働者が本件組合と相談して自らの意見を述べることができることを保障したものである。
以上の点からすれば、本件出向命令に関する前記の経過は本件労働協約の趣旨に反している。
また、本件出向命令に関連して、原告は、前記同年9月16日以外に同月21日、22日にも本件出向命令をやめてもらうよう本件組合執行委員長などと話をしているが、こうした原告の意見・事情を踏まえて、被告が本件組合と実質的協議をした形跡もない。
このように、被告は、本件労働協約の規定そのものも誠実に実行していないのであり、本件労働協約を出向命令の根拠とすることはできない。
(ケ) 包括的承諾の範囲について
仮に、被告の主張するとおり、本件労働協約への改定をもって労働者の包括的承諾がなされたと考え得るとしても、当該包括的承諾の範囲を検討する必要がある。
この点、本件労働協約への改定当時においては、出向期間は長くて半年くらいで、行きっぱなしの出向は予定されていなかった。
これに対して、本件出向命令は、期間が明示されていないだけではなく、被告において出向離籍制度が導入された結果、単に出向に終わらないものとなっている。
このように、本件出向は、その期間、性質ともに本件労働協約への改定時に予定されていた出向とは異なるものであり、このような出向は包括的承諾の対象とはなっていないというべきである。
エ 被告主張の概括的承諾について
被告は、原告が、将来の出向発令に対する概括的承諾をしたと主張するが、仮に、被告主張の事実を前提にしても、被告のいう概括的承諾の存在を認めることはできない。
本来、原告の承諾があったという以上、少なくとも被告の出向の申出に対して、原告がそれを了解して、承諾の意思を表示していなければならない。
ところが、被告が原告の承諾と主張する、平成5年9月末ころの被告からa梱包への出向を打診された際の原告の回答は、「これに難色を示した」というものであり、出向に応ずる意思を表明したものではない。その後の被告の説得に対する原告の「回答」も、被告の主張どおりとしても、「a梱包において就労する必要があることに理解を示した」というだけであり、就労場所をa梱包に移すことを理解した、と主張するにすぎないのである。つまり、ここでは出向という労働契約の相手方の変更に対する合意は全くないことを被告自身が自認しているのである。被告は、これに続いて、「応援としてa梱包に就労させることとした」と述べているが、正にこれが原告の回答内容を表している。原告が返答したのは、応援に行くことだけであり、労働契約の相手方という、契約条件の重要な変更を伴う出向に合意したものではないのである。
被告が仮に被告主張どおり応援が臨時的措置であると原告に告げたとしても、これに対して原告が了承する旨の意思表示をしていない以上、原告の承諾があったということはできない。
オ 以上のとおり、当該労働者の承諾のない出向命令は無効であるところ、包括的にせよ、概括的にせよ、原告が本件出向命令を承諾した事実はなく、本件労働協約への改定をもって承諾に代えることもできず、また、承諾を不要とすることもできない。
よって、本件出向命令は無効である。
(2)  争点(2)(本件出向命令は、被告の業務命令権の濫用あるいは公序良俗違反として無効か。)について
(原告の主張)
ア 被告の社内基準に反し、合理性のない本件出向命令
(ア) 出向は、労働者の労働条件や業務内容、業務に関する指揮命令に深くかかわる事柄であり、合理的なものでなくてはならず、会社に出向基準があればそれに沿ったものでなければならない。そこで、会社の出向基準に合致しない出向命令は、不合理な出向命令として会社の恣意を強く推定するものであり、無効というべきである。
a 証人Bは、その陳述書(乙20)において、出向の個別的理由につき、大別すれば、〈1〉関連会社等への人的支援のための出向、〈2〉事業拡大のための新会社設立に伴う出向、〈3〉事業の縮小・廃止に伴う出向、〈4〉事業の関連会社への移管に伴う出向の四つに分かれるとしている。そこで、以下、前記〈1〉から〈4〉に本件出向が該当するか否か検討する。
(a) 前記〈1〉を理由とする出向の趣旨は、関連会社からの要請に基づいて、専門的知識、専門的技能を持った従業員を被告から関連会社に出向させるというものであるが、本件において原告は管理職ではなく、また、原告が本件出向命令後担当した業務は、出向命令前に行っていたフィルター洗浄作業であり、専門的知識・技能を要するものではないから、本件出向命令の理由が前記〈1〉ではないことは明らかである。
(b) 次に、前記フィルター洗浄作業は、本件出向以前から存する業務であり、事業拡大の内容ではなく、また、原告の出向先であるa梱包は昭和53年に設立されたものであって、被告の業務移管のための新会社として設立されたわけではないから、本件出向命令は、前記〈2〉を理由とするものではない。
(c) 前記〈3〉を理由とする出向は、出向元である被告の事業の縮小・廃止に伴いその事業部門の従業員を出向させる場合であるが、原告が出向した時点で就労した業務(応援として就労していたフィルター洗浄作業)は廃止・縮小されているわけではないから、本件出向命令は前記〈3〉を理由とするものではない。
(d) 前記〈4〉は、証人Bによれば、被告の行っていた事業を関連会社に移管し、それに伴って、当該事業の中心となるメンバーが出向するものであるが、前記〈4〉を理由とする出向であれば、事業の移管と同時に出向がなされなければならないところ、原告の出向先での業務は、本件出向命令以前よりbエンジニアリング株式会社に事業移管されていたものである。
また、前記〈4〉では「事業」とされているが、原告が従事している業務であるフィルター洗浄作業は、事業といえるほどの規模・独立性が存するものではない。
さらに、フィルター洗浄作業は一人作業であり、「中心メンバー」という概念も存在しない。
したがって、本件出向は、前記〈4〉を理由とするものではない。
b 前記〈1〉ないし〈4〉の基準について、証人Bは、「私的なまとめ方」あるいは「分類」にすぎない旨の証言をしているが、証人Bの地位や、被告の規模等に照らせば、これは被告の出向基準であるというべきであり、また、この基準は、例示ではなく、その趣旨から限定的記載と考えるべきである。
また、前記〈1〉ないし〈4〉が被告の出向の実情を記載した例示的な分類にすぎないとしても、これらの基準は、なお合理性の限界、権利濫用の該当性を根拠付けるものであると考えられる。
c 以上から、本件出向命令は、被告の出向についての基準に合致せず、このような業務命令は合理性を欠き、業務命令権の濫用であって、無効である。
(イ) 被告は、平成5年9月当時、原告が従事していたA57機械の作業量が増大し、昼夜交替勤務制を採る必要が生じたが、原告が昼夜交替勤務を拒否したため、a梱包に応援させる措置を採ったと主張し、また、原告が応援として従事していたスペーサーリング研磨作業もその後昼夜交替勤務制を採る必要が生じたため、原告にフィルター洗浄作業を応援するよう命じた旨主張する。
a まず、A57機械の昼夜交替勤務制を採る必要性についてみるに、平成4年1月から平成5年9月までの各月におけるA57機械のスプール処理本数の推移は、平成4年2月、同年4月、平成5年5月を除き、別表4記載のとおりである(平成4年2月のスプール処理本数は1928本、同年4月は1748本、平成5年5月は983本〔被告従業員Cが処理した本数を含む。〕である。)。
これによれば、平成5年4月以降の処理本数は平均して約994本であり、それ以前(平成4年1月から平成5年3月まで)の平均1455本と比して明らかに減少している。
また、A57機械は、二人職場であったところ、原告と共にA57機械を担当していたD(以下「D」という。)は、平成5年4月、他の職場へ異動し、それ以降は原告が一人でA57機械を担当して対応してきた。
これらのことからすれば、A57機械について昼夜交替勤務制を採らなければならない状況になかったことは明らかである。
b 次に、スペーサーリング研磨作業について昼夜交替勤務制を採る必要性についてみるに、そもそも、スペーサーリング研磨作業は、被告特品工場内で使用し傷ついたスペーサーを再び使用するために旋盤で傷を削り取り、平面にする作業であり、特品工場で使用されたスペーサーを集めて行う作業である。したがって、一定の期間内に生じた使用済みのスペーサーを集めた上で常昼勤務体制で作業すればよく、業務量が増加しても常昼勤務体制を補強すればよい問題である。
c このように、A57機械についても、スペーサーリング研磨作業についても、昼夜交替勤務制を採る必要性は認められず、この必要性があることを前提に昼夜交替勤務を拒否する原告に対してなされた本件出向命令は、合理性を欠き、被告の業務命令権の濫用であって、無効である。
d なお、昼夜交替勤務をしないことを理由として出向を命ずること自体が被告の権利濫用となること、被告には被告社内に常昼勤務職場を確保する責任があることは後記クのとおりである。
イ 企業(経済的)合理性のない出向
(ア) 被告における出向制度の経済的合理性について
証人Bは、出向制度によってコスト(人件費)の低下が認められるかのように証言している。
しかし、原告が担当しているフィルター洗浄作業は一人職場であり、本件出向前後を通じて業務内容、業務量は同一である。そして、原告に支払われている賃金も同額である。
本件出向においては、被告は原告に出向前と同額の賃金を支払う一方で、a梱包から戻入される部分があり、その差額は被告の負担となる。そして、前記差額分とa梱包に支払われる委託料との合計額が原告の出向前の賃金と同額であれば、被告に経済的なメリットはないこととなる。むしろ、人事管理上複雑になり、管理コストが増加すると考えられる。
(イ) 以上のとおり、本件出向命令には経済的合理性は存せず、経済的合理性とかかわりのない目的でなされたものというべきである。そして、このような出向命令は、その基礎となる業務命令権の濫用であって、無効である。
ウ 強要された出向
(ア) 本件出向命令は、被告の脅迫的言動の下に行われたものである。
すなわち、平成6年9月16日午前9時20分ころ、当時の原告の上司(精整工場副長)であったE(以下「E」という。)は、原告が就労中であった圧延工場進捗ライン活材班の大オイル処理場に、被告名古屋人事室副課長であったF(以下「F」という。)と一緒に来て、本件出向命令に納得していないという原告に対し、「住友銀行の名古屋支店長が殺された。お前に恨みを持つYのだれかが刺し殺すぞ。」などと言いながら、原告の腹部を指先で押し込む言動をとり、本件出向命令に応ずるように強要した。
(イ) 前記のEの言動は、原告の上司(管理職)としての立場にあって、現に原告の承諾を強く求めていた者が、原告の就労中に、人事室長も同行していた場において、本件出向命令という業務命令の実行を目的としてなされたものであり、これをEの個人的言動にすぎないということはできない。また、その内容や当時の社会的背景に照らせば、これを単なる冗談にすぎないとすることもできないものである。
(ウ) このように、Eの前記言動は、被告の本件出向命令の実行に当たり、被告が脅迫的言動をもってこれを原告に強要しようとしたものである。そして、このような経緯を前提にする本件出向命令は、公序良俗に反し無効というべきである。
エ 原告の労働組合活動等を妨害する目的でなされた出向命令
(ア) 原告の労働組合活動について
a 原告は、昭和45年ころに労働組合の活動を始めた。そして、本件組合の青年部副部長を2期2年間務め、その間青年部のニュース、青年部機関誌「いずみ」の編集を担当した。
その後、原告は本件組合の役員になって活動しないと要求がなかなか実現できないと考えるようになり、昭和49年から、役員選挙に立候補するようになった。
原告は、役員選挙において、大幅賃金の値上げや長時間労働をやめ余暇を楽しみ、過労死をなくし、働きやすい環境、安全な職場をつくる等の要求の実現や、労働組合の階級的民主的強化と会社との癒着をなくすことなどを訴えた。
それまでの支部役員の選挙の実態は、それぞれの職場において会社の職制が立候補し信任投票で対立候補による選挙は実際に行われないというものであったが、原告は労働者の立場から会社に対してものが言えるようにとの思いを同じくする従業員と共に立候補したものである。
原告は広く組合員に前記のような訴えをし、「公約」として文書を選挙管理委員会に提出した。原告は、さらに、春闘の職場集会でも要求の実現を訴え、定期大会に傍聴として出席し、意見書を提出するなどした。
また、原告は、労働組合の役員選挙がもっと労働組合の組合員の関心に応えるべきものであると考え、そのために、立会演説会の開催、選挙公報の発行、候補者のたすきがけの職場での訴え、開票時の立会いなどの実現を他の立候補者と共に申し入れるなど、選挙そのものをより民主的にしようとした。これらは選挙の都度行ってきた。
この結果、平成6年の選挙から選挙公報が出されるようになったが、開票の立会いはまだ認められていない。
b 原告は、昭和49年以降、昭和51年を除いて、平成6年まで、本件組合役員選挙に毎回立候補したが、その得票数は別表2の「得票数」欄記載のとおりである。
この得票数の特徴をみると、原告が立候補した第1回目である昭和49年の選挙では、原告の職場である製板支部において総投票数中の34%に及ぶ得票率で、当選に至らなかった立候補者中最高であった。
c その後、昭和52年に、被告内部において、反共組織であるしろがね会が結成され、職場における労働条件の改善や安全衛生確立など革新的行動に対する規制が強まった。
そして、原告は昭和60年から平成元年まで、後記アルミの檻に隔離差別され、得票数は当初の4分の1以下となったが、アルミの檻による差別が解消されると一時の3倍近くに広がった。
これらのことは、被告の労務方針が選挙の結果に大きく影響していることを示している。その後、アルミの檻事件の解決後は原告に投票する人が増え、平成6年の役員選挙においては16%ほどと無視できない支持を得るようになった。
(イ) 労働者有志としての活動
a 原告は、有志と共に「恒常的長時間労働をやめさせ過労死を防ぎ健康と家族を守る会」を結成し、被告に対する未払賃金の要求交渉、労働条件改善の行政指導を労働基準監督署に求める交渉、労働条件等に関する電話での相談活動、広報活動などを行った。
b また、原告は日本共産党Y支部が発行する職場新聞「Yの仲間」を編集、作成、投稿、配布してきた。
この職場新聞は政党としての政策や主張を掲載するとともに、被告における労働条件や安全衛生の向上を目指して意見を掲載し、会社の門前で手渡したり郵送等で配布をしてきた。
(ウ) 本件出向命令と労働組合員としての権利の停止等
本件出向命令により、原告の前記活動は、次のような影響を受けることとなった。
すなわち、出向した本件組合の組合員は、特別組合員となり、通常の組合員とは区別され、組合の役員の選挙権も被選挙権もなく、出向労働者による出向先の会社での団体交渉はできず、出向元での団体交渉もできないとされており、原告の組合活動はこのような重大な制限を受けることになった。
また、本件出向は、労働組合員としての権利の重大な制限・停止だけでなく、原告の前記労働者有志としての活動についても影響を与えている。すなわち、労働条件の改善は、そこで実際に働いているからこそより説得力もあり、情報も正確に伝わるものであるところ、出向者としての意見は、いわば外部者の意見として受け止められるのが実情であり、そうした「距離」は原告の労働者有志としての活動に影響を与えるものである。
(エ) 原告の組合活動等を妨害する被告の意図
被告が、応援でなく、本件組合役員の選挙権・被選挙権を失う出向を原告に命じたのは、原告の労働組合活動の前進を恐れたからであり、本件出向命令は、原告の組合活動等を妨害する意図でなされたものであることは、以下の事情から明らかである。
a 本件出向命令は、その時期からすると、原告の本件組合役員選挙における得票数が増大するのに対して発令されたものである。
b 本件組合は、被告のアルミの檻事件を支持し、原告の本件組合除名まで検討している。いわば原告に対する単なる批判だけでなく具体的な措置にまで言及し、全面的に被告を支持し一体として歩調を合わせる状況であり、被告としても、こうした被告支持の本件組合の状況(執行部の状況)を維持・確保する要請・期待が強かったといえる。
c また、被告は、原告が従前から組合内少数派として、組合活動に熱心に取り組んできたことや、日本共産党Y支部の党員として「Yの仲間」という機関紙を発行、配布し、被告における労働者の要求の実現及び権利擁護のために活動してきたことを熟知していた。
d 被告は、前記のような原告の活動を嫌悪し、組合役員選挙への立候補ができなくなるからとして出向を拒否した原告に対して、それを知りながら、応援という体制で対応できるにもかかわらず、十分な理由もないのに、出向を強行したのである。
e なお、被告は、原告の得票数をもって役員当選に至る得票を得ていないことを強調し、それは「客観的に」被告が原告の組合活動を妨害する意思を有していないことを示す事情であるとするようであるが、選挙の結果はその時々の状況によるものであり、前回の選挙結果に直ちに左右されるものではない。
そもそも、選挙権、被選挙権は労働組合員の基本的な権利であり、当選するか否かによってその有無を判断されるべき性質のものではないのである。
(オ) 原告の組合活動等の停止への被告のかかわりについて
被告は、出向によって労働組合員としての地位などの変化があったとしても、それは本件組合内部の問題であり、たとえ組合員としての権利に変動があっても、出向の効力の判断に影響はないと主張する。
しかし、被告は本件組合の組合員について、出向によってその地位が変化することを十分知っている。仮に、組合員としての地位の変更に被告が直接かかわらなくても、そうした事情を知って出向を命ずるのであれば、そうした事情を利用して行われたと評価されるべきである。
また、本件組合の組織形態にかかわる問題であっても、被告と本件組合は相談して決定しているのであり、出向した組合員の地位についても協議して進められているのが実態である。
すなわち、本件組合としては、出向した組合員を通常の組合員として取り扱うことも十分に可能である。事実、本件労働協約への改定前は、作業職組合員が「応援」となった場合、通常の組合員と同様に取り扱われてきた。また、別会社であるc工業株式会社(以下「c社」という。)、d株式会社についても、本件組合の酒田支部、東三河支部を構成するなどして、本件組合は統合・拡張の方向に進んでいた。
それが、本件労働協約への改定に際し、出向者を特別組合員として、前記のような組合活動制限がなされるようになったのであり、このような組合内部の事柄についても、被告と本件組合の協議がなされていたのである。
さらに、被告においては、労働組合の幹部役員として専従となると、専従直前の査定結果が以後継続されることとなっており、組合幹部役員については被告の意向で専従後の役職が決まる実態となっている。
これらの事実からすれば、出向により前記のような活動制限を受けることについて被告は関与しているものというべきであり、本件組合内部の問題にすぎないという被告の主張は失当である。
以上のとおり、被告は、本件出向により原告の労働組合活動や労働条件改善の取組などをはじめとする諸活動が制限・規制されることを了知の上、その目的をもってこれを行ったことは明らかである。そして、このような目的でなされた出向命令は業務命令権の濫用であって無効というべきである。
オ 原告に対する差別の一環としての出向命令
(ア) 被告は、原告に対して、原告の前記組合活動等を理由に、原告の本件組合内における青年部での積極的活動、役員への立候補を機に、以後執拗に一貫して各種差別を行った。それは後記アルミの檻事件をはじめとする仕事差別、査定差別、資格差別、役付差別、賃金差別、退職金差別など様々な差別に及ぶもので、本件出向自体もまた差別の一環として強行されたものである。
(イ) 仕事差別(アルミの檻事件)について
被告は、原告に対し、昭和60年4月1日から「段取り班」への配属を命じ、次のような仕事差別・通称アルミの檻による隔離を強行した。その内容は、以下のとおりである。
a 仕事について
(a) 作業内容
被告は、原告に対してパレットの修理、鉄スプール作業を命じた。パレット修理とは、製品として出荷されたパレットが返却されてきた際に、釘の緩みがあるものを締め直すとか、雨で濡れたパレットを干す、汚れたものや壊れたものを直すなどの作業であり、鉄スプール作業とは、スプール(鉄製のパイプ)のさびを落としたり、ペンキを塗る作業である。
(b) 作業場所
原告のために、工場の外のひさしの部分に、新しく、特別に作られた12畳程度のテント張りされた箇所で、仕事のしにくい箇所であった。
この場所は、精整工場の労働者が出勤、退社の際に通る通路に面しており、他の労働者に対する見せしめに都合のいい場所で、外から見えやすい透過性の構造となっていた。
(c) 所属
「段取り班」という新しい特別の班が作られ、配属・隔離された。これは総作業長の下に置かれた原告一人だけの職場で、異常な職場であった。
b 前記作業に付随した差別について
被告は、原告に前記作業を命じ、併せて工場内への立入りを禁止し、外の出歩きも禁止し、近くのトイレの使用の禁止、他の従業員との会話の禁止を命じた。また、出欠を示す原告の面着板を他の従業員から切り離して前記作業場所に掲示した。
c アルミの檻事件の動機について
アルミの檻事件は、被告の次のような動機によって起こされた事件であった。
(a) 職場萎縮・見せしめによる労務管理
アルミの檻事件による仕事隔離は、その作業場所、作業に付随する禁止事項、配置からして、他の従業員からの隔離を物理的にも精神的にも生じさせるもので、原告の被告における孤立を図るものであった。
被告は、原告以外の他の従業員に対し、原告と同じようにアルミの檻に隔離するという趣旨のことを言って、アルミの檻事件を最大限労働者に対する労務管理に利用した。
例えば、労災でけがをしたSに対して工場長がアルミの檻に入れると言っている。
また、アルミの檻事件が発生して以後、原告と話をしているだけで、「Xと口をきかないほうがいい、身のためだ」と上司であるG作業長やH作業長(以下「H」という。)から忠告を受けた労働者が大勢いる。
(b) 労働条件改善のための原告の取組に対する報復・規制
原告は、昭和46年に本件組合の青年部役員として積極的に活動を始め、梱包作業所へのクーラーの設置要求、労働基準監督署への時間外労働の手当の支給申立てなど労働条件の改善に力を尽くしていた。
昭和50年ころ、前記のような取組をしていた原告に対して、元上司であったI(以下「I」という。)は、「勤務課のJさんに日比野の「いろは」で頼まれた。君が共産党の活動をやっているので会社はやりにくくて仕方がない、出世したければ活動をやめろ、やめなければ配転する。」など不利益な扱いをすることを告げた上で事実上の転向を誘った。しかし、原告はこの誘いを断り応じなかった。
また、原告と同時期に大学卒で入社し、原告が個人的にも親しくしていたK(以下「K」という。)は、原告に対し、「共産党の活動をしているので一緒に食事ができない。」と言ってきた。Kは、その後、厚生課長、勤労課長、労務部長、e運輸の社長を歴任し、また、アルミの檻事件当時に原告を監視したという事実があり、このことからすれば、Kの前記発言は、単に、個人的な発言ではなく、被告の原告に対する嫌悪風潮を表したもので、被告の反共労務政策がいかに従業員間に冷たい溝を作り上げているか、その恐ろしさを端的に示しているものである。
このように、被告は、原告の労働条件改善等への取組を嫌悪し、これに対する報復・規制の目的で、アルミの檻による隔離をしたものである。
(c) 3直2交替への移行時期
被告が原告をアルミの檻に隔離したのは、被告が就労体制を3直2交替に変更する直前であり、原告に対する仕事差別はこれに対して意見を言わせないようにとのねらいや苦情を言わせない環境作りを図ろうとしたものであった。
このように、原告に対する公然たる仕事差別は、見せしめ的対応で、被告の労務対策の重要な変更の時期になされている。
d 弁護士会の勧告と被告の対応
原告は、昭和60年10月5日に前記アルミの檻事件による仕事差別・隔離について、これを解消するため、名古屋弁護士会に人権救済の申立てを行い、同弁護士会は、昭和63年9月30日に被告に対し、隔離的処遇を直ちに解除し、申立人である原告の人権を速やかに回復するよう勧告をしたが、これに対して被告は、勧告を正しく受け止めないまま今日に至っている。
このような被告の姿勢からすると、被告には原告に対する差別体質があり、現在もそれは是正されることなく継続し、本件出向命令の発令に及んだものというべきである。
e 本件出向命令との関係
本件出向命令は、アルミの檻事件と同様、仕事差別であり、被告は、アルミの檻事件では原告を社内において他の従業員からの原告の孤立・隔離を図ろうとしたものを、今回の出向では原告を社内から追い出して原告の孤立・隔離を図るもので、いわば第2のアルミの檻事件であるというべきである。
(ウ) 査定差別について
a 査定制度について
(a) 労働協約による査定制度と査定制度の変遷等について
被告は、定期査定により労働者の能力評価をして、能力区分をしている。それは、当初は職分制度と呼ばれる制度であったが、その後、平成5年4月からは資格制度と呼ばれる制度が実施されるようになった。
各制度の内容については、毎年10月に労使によって合意されたが、この間、評価のランク数(7段階か5段階か)とか、その表示方法(アルファベット表示か数字表示か)とか、職務分析により6つの職群に分けた査定に反映させる職群制度の採否などの変更があった。
(b) 査定制度(基本資格点・個人資格点)と役付、資格、賃金等について
査定制度が役付、資格、賃金等に与える影響についてみると、毎年、「基本資格点」(基本職分点)と呼ばれるものが決められ、この毎年の「基本資格点」(基本職分点)の累計がその労働者の「個人資格点」である。この「基本資格点」が増大し、一定の点数ごとに一定の資格等級(職分職級)が決められる。
そして、役付はそれに相応する資格等級者から選ばれる制度になっている。
また、賃金には、基準内賃金として基本給部分と職能給部分と各種手当があるが、賃金の基本的本体的部分である基本給部分と職能給の部分については、査定結果(それを前提とする資格等級も含む。)が影響する仕組みになっている。さらに、退職金は査定の影響を受けた賃金・基礎基本給によって決まることになっている。
(c) 査定の概要について
被告における査定制度の概要は次のようになっている。
〈1〉 査定時期  毎年4月1日
〈2〉 査定期間  前年の1月1日から12月末日まで
〈3〉 欠勤日数  欠勤期間に応じて基本職分点を減少させる。
〈4〉 最終査定者 工場長
(d) 「能力評価」について
能力評価は、平成4年までは職分制度によってなされ、平成5年から資格制度によってなされた。その具体的方法は次のとおりである。
すなわち、平成4年までは、「技能度」として〈1〉熟練の程度、〈2〉仕事の実績、〈3〉仕事の応用力の各細目があり、「勤怠」として〈4〉勤務状況の細目があり、さらに「人的特性」として〈5〉積極性、〈6〉協同性の各細目があり、これら〈1〉ないし〈6〉の各細目について、評価の高い順にa、b、cの三段階評価をされることになっていた。
以上の各細目の評価を点数に換算して合計し、その結果総合的な能力評価AないしCの7段階(プラス評価等があるため、7段階となる。)による評価がなされることとなっている。
なお、各細目がbランク(標準)であった場合、その評価点の合計は120点であり、少なくとも6細目中5細目以上がcランク評価でなければ90点以上となり、総合でCランクとなることはない。
そして、平成5年からは、「知識・能力」として〈1〉知識・技能、〈2〉分析・企画力、〈3〉行動・折衝力、〈4〉想像・表現力、〈5〉指導力の各細目が、「取組姿勢」として〈6〉積極性・自主性、〈7〉責任感、〈8〉協調性、〈9〉勤務状況の各細目が、「業務実績」として〈10〉課題達成度、〈11〉質・精度、〈12〉量・スピードの各細目が設けられ、これらの各細目が、評価の高い順に5、4、3(標準)、2、1の五段階で評価されることとなった。
そして、その合計により、総合的な能力区分が同じく五段階で決定されるが、各細目の評定が3の評定であれば、能力区分も3であって、2にはならない。
b 原告の査定結果とその違法・不当性
原告の入社以来の毎年の査定結果につき、原告及び被告の各主張は、別表3記載のとおりである。
この査定結果によれば、原告は、昭和47年度までは1度もC+ランク以下の評価を受けたことはなかったのに、昭和48年度からは一貫してC+ランク以下の評価であり、Bランク以上の評価を受けていない。そして、昭和48年度の評価とは、昭和47年の評価が行われているものであるが、これは原告が本件組合青年部の役員となり活動を始めた時期と一致している。
しかも、入社以来、昭和47年まではBランク以上であったのが、昭和48年から現在まで一貫して20余年にわたってCランクである。このような時期、評価の一貫性は、被告の差別的意図を表しているものである。
なお、原告は、別表1のとおり各配属先に配属され、同表記載の業務にそれぞれ従事してきたが、そのいずれにおいても、その都度熱心に業務を遂行してきた。また、原告が他の従業員と比べ、能力や能率が劣っていたことはなく、特に、原告がCランクの評価を受け始めた昭和48年度以降に従事した業務についてみても、例えば、別表1記載の〈5〉の期間に従事したSH80機械は、作業が非常に難しかったが、原告は、同機械に従事した他の者と比べ、比較的よく作業をこなしていた。また、同表〈6〉ないし〈8〉記載の段取り班作業及びA57機械担当作業においても、熱心に作業に従事し、同様の作業に従事した他の者と比較して、作業の質・量とも高い作業をしていた。さらに、a梱包に応援に行くようになった後も、作業効率を向上させるなど、原告の作業状況は、標準以下の評価がなされるようなものではなかった。
加えて、昭和48年から平成10年までの25年間のうち約20年間は、原告は一人職場に配属されているのであるから、この期間中、「協同性」や「協調性」は問題となりようがない。
前記のとおり、平成4年までの職分制度の下では、6細目中少なくとも5細目以上がcランクでなければ、総合でCランクとなることはないのに、原告が一貫してCランクあるいはC+の評価を受けているのは、前記の原告の作業状況にかんがみると不当な評価であるというほかなく、これは、被告が原告を差別していたことを示すものである。
なお、証人Eは、現に原告の査定に上司としてかかわってきたが、原告の評価が低位であることの理由について、具体的、合理的な説明ができず、その根拠を単に相対評価である点に求めたり、担当職務に対する評価という本来能力評価の要素ではない要素を持ち出したり、取るに足らない原告の担当職務における事故を取り上げたりしており、これらの証人Eの証言にかんがみても、原告に対する査定評価が恣意的であったことが分かる。
c 査定結果の公平性について
まず、査定結果の開示について、被告においては、本人が聞かないと開示されず、また、本人が聞いても、各評価細目ごとの評価は開示されないこととなっており、これでは、具体的な説明や疑問の解決につながらず、苦情の処理と、結局、被告の一方的な評価結果を押し付けるだけということになり、およそ公正性・公平性は担保されない。
また、被告には、苦情処理を扱う制度があり、これまでに平成元年及び平成5年に原告はこれを利用して査定結果に対する苦情を申し立てているが、いずれも何ら説得的な説明も処理もなされず、不当な評価は是正されなかった。
結局、被告においては、査定結果の公平性を担保する制度が全く機能しておらず、逆に放置されてきたものである。
(エ) 役付差別・資格差別について
a 被告における役職は、精整工場では主任(工長)、統括主任(作業長)、副長、工場長、部長があり、このほかに、課長、副課長、室長、副部長などがある。
原告は、養成工10期生であるが、原告の前後の養成工出身者は、そのほとんどが前記役職経験者であるのに、原告は、入社後40年以上に及ぶのに、いまだ何の役職にも就いていないばかりか、今後も何の役職にも就く可能性はない。
また、被告には、一般昇進より少ない個人資格点により資格等級が昇格昇級する選抜(選定)昇進制度というものがあるが、養成工出身者には、ほぼこの制度が適用されているのが実情であるところ、原告は、同制度の適用を受けていない。これは、例外的であるということができる。
結局、原告と同時期に入社した者らが、ほとんど例外なく選抜(選定)昇進制度の適用を受け、役職にも就いているのに、原告は、将来的にも役職に就く可能性がないという実態は、端的に原告に対する役付差別があったことを示しているというべきである。
b 被告においては、役職には、一定の資格等級者が当てられることになっており、前記のとおり歴然たる役付差別があるということは、資格についても歴然たる差別が行われていることを示すものである。
現実にも、原告と養成工で同期であった者のうち、原告を含む二人を除いて、全員が上級職以上(管理職を含む。)の資格を有しており、このような状況からすれば、原告の入社前後の養成工出身者もほとんどすべてが上級職の資格を既に取得していることは明らかである。しかし、原告の場合には、定年までに、上級職の資格を取得するまでの個人資格点を得ることは到底あり得ない状況である。
このように、被告の原告に対する資格差別も歴然たるものである。
(オ) 賃金差別について
a 被告における賃金体系についてみると、基準内賃金は基本給、職能給、家族手当、所別手当、交替勤務手当、多能化手当、臨時作業手当、連続作業手当があり、そのほかに一時金、賞与がある。
そして、これらの賃金、一時金、賞与は、各種手当等、一部の例外を除いて、査定結果及びそれに基づく資格等級、役付が算定要素となっており、網羅的に査定結果が大きく影響するシステムとなっている。
したがって、被告の原告に対する前記の査定差別、資格差別、役付差別は、原告の受け取る賃金等にも大きく影響を与え、明白な賃金差別をもたらしている。
b 具体的には、平成7年の原告の年収は573万5701円であるが、原告と同期の者で、7段階評価でAランク(上位から2位、5段階では1位)の者の同年の年収を試算すると、666万3293円となる。また、原告と同期の者で、7段階評価でB+ランク(上位から3位、5段階では2位)の者の同年の年収を試算すると、624万1373円であり、原告と同期の者で、7段階評価でBランク(上位から4位、5段階では3位)の者の同年の年収を試算すると612万2877円となる。
さらに、原告と同期の者で、7段階評価でCランク(上位から5位、5段階では4位)の者の同年の年収を試算すると、588万7124円である。
これによれば、原告の同年の年収は、前記のいずれよりも低いことになり、原告がほとんど残業をせず、交替勤務にも従事していないことを考えると、実際の年収差は更に大きくなる。
c このような賃金の差は、原告に対する賃金差別が著しいことを示すとともに、原告に対する査定が極めて不当・違法なものであり、それが繰り返されたことを示している。
(カ) 差別としての本件出向命令
a 本件出向命令は、前記のとおり、原告の承諾がなく、被告の基準にも合致せず、企業(経済)的合理性がないにもかかわらず強行されたものであり、これらの事情自体、被告の差別的意図が表れているということができる。加えて、前記のとおり、脅迫的言動の下に本件出向を強要しようとしたことは、その差別的意図の強固さを示すものである。
さらに、本件出向命令は、これにとどまらず、以下述べるとおり、本件出向命令自体が差別そのものとして行われている。
b 一人職場・隔離職場の特異性
原告の出向先の業務は、一人職場であり、仕事場も他の職場から離れている。そして、業務指揮系統についても、原告の上司には主任はおらず、統括主任が直結し、その点からも他の従業員から隔離されているが、これは出向先であるa梱包においても特異なことであり、このような特異な職場が原告の出向先として選ばれていること自体が差別である。
c 業務の特異性
原告の担当している業務は、原告が特に習熟していたり、一定期間過去に担当していたものではなく、また原告のそれまでの経験が特に期待されたものではない。また、従業員一人が配置されなければならないような業務ではなく、事実、原告は板製造部圧延工場進捗ライン括材班等への応援に労働時間の約3分の1という極めて多くの時間を当てている。これでは、圧延工場進捗ライン括材班に所属して、応援にいっても、あるいはフィルター洗浄作業自体を移管せず、原告をその業務に就かせても格別不自然ではない状況である。
また、原告の担当業務は、もとは圧延工場の業務であり、この業務が出向先のa梱包に移管された経緯も、極めて特異的であり、原告を出向させんがために、すなわち出向自体が自己目的として行われるために同社に移管されたという経緯が見られる。
d ポストなし出向
本件出向は出向先での役職に就くものではない。ところが、原告と同期の養成工出身者は、すべてが出向しているわけではなく、また、出向している者は出向先において役職に就いている(又は役職就任と同水準の処遇がなされている。)。
これは原告の出向先であるa梱包の取扱いにおいても端的に表れている。すなわち、a梱包の中堅管理職は、ほとんどが出向者で占められている(また、それより上位の管理者は、Eなど、出向者ではないが被告から転籍した者である。)。
もちろん、出向者すべてが役職に就いているわけではないが、役職者は原告とほぼ同じ世代であり、原告より入社が後の者も役職者となっているなど、年齢、経歴からすれば養成工出身の出向者をはじめとして出向社員は出向先において全員役職に就いている。
原告のポストなし出向がいかに異常であるかは以上の事実からも明らかである。
(キ) 被告の差別の目的と体質
a 差別の目的
被告の原告に対する差別は、アルミの檻事件についての名古屋弁護士会の勧告書に記載があるように、本件組合の青年婦人部長を2期務め、その後も本件組合執行委員に立候補する一方、被告の労働基準法違反の是正について労働基準監督署に働きかけるなどの活動を行ってきたがゆえに行われたのであり、これを現在なお反省していない被告が、原告の前記のような活動を嫌悪して、それを排除しようとする目的を一貫して今日まで連綿と持ち続けていることが認められる。
b 被告の差別の体質・風潮
(a) 被告の原告に対する差別は、前記のとおり様々であるが、被告においては、前記差別が拡大、増長徹底する風潮、体制、組織ができている。そして、これらによって一種の体質ともいうべき状況ができ、差別として本件出向が強行されたものである。
(b) また、原告の上司らは、原告の諸活動をやめさせようとして、原告に対して以下のような様々な画策・発言・勧誘をしたが、このような原告の活動に対する嫌悪は被告が作った一種の風潮となり、一種の職場環境を形成しているといえる。
具体的には、前記(イ)c(b)記載の昭和50年及び昭和51年ころのI及びKの発言に加え、昭和60年ころ、Hは、原告に対して、アルミの檻事件の際、業務に関し、「建物を真っ赤に塗れ。」などと原告のものの考えを揶揄する発言をしたり、「嫌なら辞めろ。」と職場からの追出しを迫った。これも被告の原告追出し策に沿った発言である。
(c) 加えて、本件で証人となったLに対しても、Hが、Lは共産党員だと職場で言い触らすような状況であった。また、上司からLと一緒にスキーに行くなと言われた者もおり、これは、被告が共産党を他の従業員から切り離し特異な扱いをしていたことを示すものである。
(d) さらに、Eは、平成6年9月16日に、原告に対して、出向を強要する際に、「組合の選挙は世代交代すればよい。いつまでもおれがおれがとやっておるな。」と原告に活動を控えるよう言ったが、これは、当時48歳とまだ若い原告に対し、その活動を引退し職場を離れて、事実上やめることを迫ったものである。
c 業務上の監視体制と偽計
被告は、原告の作業状況について、監視体制をとり、また、原告の作業効率を低く評価するための偽計を図った。
すなわち、原告がA57機械担当業務をしていた時、同機械を原告と共に担当していたDは特別に工場長から原告の業務上のトラブル(チョンボ)はすべて報告するように指示され、特別な原告監視体制がとられていた。また、原告が段取り班に差別的に配属されていたとき、原告が休んだ日に他の職場から従業員がやってきて、短時間に原告が通常行う作業量より多くの作業をした旨の虚偽の記録が作業日誌に記載された。
d 原告の広報活動の妨害等
原告は、前記のとおり、有志と共に労働条件改善のために広報に取り組んだ。ところがこの広報の取組に対して以下のとおり、様々な妨害が行われた。
(a) まず、被告は、原告らの広報活動に対し、その内容についてクレームをつけて、原告に対して長時間詰問を繰り返し、原告らの広報の自由を束縛しようとした。
すなわち、M(以下「M」という。)ら4人が、昭和57年10月1日、原告の就労時間中である午後7時から午後9時まで、原告を呼び出して、「Yの仲間」第60号の記事に労働基準法第2条、第4条違反と記載があるが、どのような根拠によるのか、「ねこばば」というのは誹謗・中傷であり許されない、原告は当日配布していたのであるから説明を求める、などと詰問した。
しかし、第1に、「Yの仲間」第60号は、a梱包の女性従業員の50歳から55歳への定年制の延長を男性従業員と区別して数年かけて行うという方針と、a梱包の従業員が50歳以降55歳よりも前に退職する場合には減額された自己都合扱いの退職金の支給しかしないこと、賃金自体も50歳以後大幅にダウンすることについての労働者の意見や要求とこれらに関する日本共産党の県議会議員の県議会における質問について記載されたものであり、前記のような取扱いが性による差別として労働基準法に反することを指摘すること自体に問題はない。
第2に、前記記事は県議会での質問の紹介、労働者の南労働基準監督署への指導要請、さらに労働者の声の紹介の報道にすぎない。
第3に、「ねこばば」の主体はa梱包のことを指しており、被告を誹謗中傷するものではない。なお、ここでいう「ねこばば」とは、被告から従業員がa梱包に転籍するに際して、被告が転籍社員にすぐに退職金を支払わず、その分退職金積立額をa梱包に譲り渡したにもかかわらず、当該従業員がa梱包を50歳で退職すると、自己都合退職として従前の定年退職による退職金額より低い金額しか支払われず、その差額をa梱包が取得することになることを指して、そのことを問題とするものであり、いわば、a梱包が、自らの努力は全くないままに従業員の退職を奇貨として、前記差額を取得しようとすることを表現したもので、その趣旨は首肯できるものである。
また、この「ねこばば」部分は職場の声の紹介部分であり、これが日本共産党の意見ではないことは明らかである。
このように、「Yの仲間」第60号の記載内容は、2時間にもわたり業務命令の一環のような形で取り囲んで詰問を行うようなことではないにもかかわらず、被告がこれを強行したことは、被告が共産党について特別な対応をして、その行動について規制を図ろうとしていたことをはっきりと示すものである。
(b) ビラ配布行動の妨害
原告らが「Yの仲間」などの配布・広報活動を被告名古屋製造所前で行うと、被告従業員がポリバケツを同製造所構内の守衛詰所付近に幾つも用意させた(このような準備そのものも被告の「協力」なしにはなし得ない。)。このようにポリバケツを置くことは、配布したビラをすぐゴミとして捨てるようにとの被告の意思を従業員に伝えるだけでなく、そうしたすぐに捨てるようなビラを受け取らないようにとの無言の強要を図ろうとするものであった。
また、被告内には、反共組織であるしろがね会及び作業長、統括主任で構成される組織である芳泉会が存在するが(しろがね会の役員は、同時に本件組合の役員となり、かつ、芳泉会の会員となっている者が多く、会社の職制となっている。こうした組織的関連があり、組織的一体性が極めて強い特異な組織である。)、原告らがビラを配布し始める芳泉会の申入れによって保安課の職員が芳泉会のメンバーに連絡をし、しろがね会や芳泉会のメンバー数十人が、入口付近一帯にずらりと長く並んで、ビラの受取りについて心理的圧迫感を感じさせ、事実上ビラ配布を妨害をした。
この妨害は、被告の制服・ゼッケンを胸に着けた共通のスタイルで並んで行われたが、ビラ配布活動の時刻は午前中からの勤務の従業員の出勤時間に合わせているため、夜勤者はまだ就労時間であるにもかかわらず、夜勤者の職制(芳泉会のメンバー)が配布妨害活動に及んでおり、明らかに被告と一体となって前記ビラ配布を妨害していることが分かる。
また、そもそも、前記配布が行われることについて保安員から連絡がなされること自体、特異な被告との一体性を示しているということができる。
前記のようなビラ配布妨害活動においては、受け取ったビラを破って紙吹雪にしたり、配布している原告にまとわりついて円滑な配布を妨害したり、配布している手を叩くに及んだこともあった。
(c) 立看板の撤去
昭和57年5月11日に、日本共産党が被告名古屋製造所前の歩道に「経営の過ちを労働者犠牲で切り抜けることは許せない」と後記の被告の酒田進出計画の経営責任を問い、労働条件の低下に反対する立看板を立てたところ、この看板が同日昼までに撤去され、被告の保安課員が焼却炉担当者に指示・依頼し、堂々と焼却された。他にも一般の商業上の立て看板類が道路上に多数あったがそれらは撤去されず、被告の保安課員によって、前記看板のみ撤去された事実は、特別に共産党作成の看板、あるいは被告の経営責任を問う看板のみ排除されたことを意味しており、被告の反共主義あるいはそれに基づく行為の誘発・容認状況を露骨に示している。
(ク) 以上のとおり、被告は、原告の本件組合内における青年部での積極的活動、役員への立候補を機に、原告の労働組合活動、労働条件の改善活動等を理由として、原告に対して、各種差別を、執拗に一貫して行った。そして、本件出向命令自体も、また差別の一環として強行されたものである。このような出向命令は業務命令権の濫用であって無効というべきである。
カ 労働者への犠牲の押し付けとしての出向命令
(ア) 被告は、昭和47年1月、山形県酒田市に、アルミニウム精錬から圧延加工に至る一貫工場の建設を計画した(以下「酒田進出計画」という。)。
(イ) この酒田進出計画は、その当初より疑問視されているものであった。すなわち、昭和46年2月には、アルミ精錬業界に減産気運が高まり、日本軽金属、住友化学などで減産や操業の繰延べの検討が開始されていた。そして、同年3月になると、アルミ地金の在庫が増大し、減産措置を採らねば地金が余剰状態となり、大幅な供給過剰が予想された。また、同年9月には、グループ会社である住友化学は、被告の精錬分野への進出に反対の意向を示していた。それにもかかわらず、前記のとおり、昭和47年1月に、被告は酒田進出計画を発表したのである。
そして、昭和48年2月21日、住友系企業の出資(被告の出資比率は40パーセント)により、酒田市にc社が設立された。
c社設立後の昭和51年には、社内報における「業界のニュース」で、アルミ精錬各社が過剰在庫に悩み、50パーセント程度の減産に取り組んでいる状況であり、業界から通産省に、精錬分野の進出を進めていたc社及び古川アルミに指導をするよう求めているにもかかわず、c社は、「早期に一貫体制を確立することはアルミ産業の重要課題」として、従前の方針を貫く構えであると報じられていた。
このように、酒田進出計画は、明らかに当時の業界の流れに逆行するものであった。
(ウ) 昭和52年、c社は操業を開始したが、その後減産の一途をたどり、操業開始からわずか5年後の昭和57年には、解散・精算手続に入ることとなった。
(エ) そして、c社の解散により、被告にはc社設立の際の設備投資のための金融費用など負担のみが残り、このことが、被告の経営状態にも大きな影響を与えた。
このように、被告の経営不振の原因は、業界の長期的不況にあるのではなく、c社への無謀な投資と撤収によって引き起こされた債務の急増にあるというべきである。そして、このずさんな経営政策の失敗のつけが、従業員にまわされることとなり、人員削減、労働強化につながっているのである。
(オ) 本件出向命令は、前記のような背景の下に、労働者に全く責任のない被告の経営上の失敗を労働者に押し付け、後記の離籍制度と結びつけて早期退職を迫るという、不合理な理由による出向命令である。このような出向命令は、被告の業務命令権の濫用であって、違法無効というべきである。
キ 出向強行策実施のための出向命令
(ア) 本件出向命令は、見せしめのための、出向強行策実施のための出向命令であるという点で、合理性がない出向命令である。
すなわち、原告は、前記のとおり、様々な形で差別され、かつ、被告はこれについて全く無反省の態度をとってきた。
その一方で、原告は、職場新聞などで被告の問題点を指摘する活動を続けていたものである。
そのような中で、被告は、出向については、58歳になれば公平に転籍させようと考えており、原告を出向させることができなければ、職場の中で、「拒否をすれば出向をしなくてよい」とされるのを恐れ、原告の出向を強行しようとしたのである。
具体的には、原告の同僚であるN(以下「N」という。Nは、原告と同様「Yの仲間」を発行し、本件組合役員選挙に立候補するなどの活動をしていた。)は、原告の出向に関して、M(当時被告名古屋人事室長)に呼び出され、その際、Mは、Nに対し、原告を現状(応援)のままにしておくことはできないこと、被告としては、原告が昼夜交替勤務をするのであれば工場内で職場を見つけるが、そうでない限り、原告をこれ以上特別扱いできないこと、そうしないと被告の方針が通らなくなることを告げ、出向を強行する姿勢を伝えた。
なお、このMとNの面談は、Nに時間外手当を支給して(すなわち業務として)行われたものであり、その意味でも、異常なものということができる。
(イ) 結局、本件出向命令の目的は、被告の従業員の労働条件、端的にいえば、取り分け大リストラをはじめとする雇用政策の重大な変更を強行しようとすることにあり、本件出向命令は、いわばその地ならしとして、強行されたものである。このような出向命令は、被告の業務命令権の濫用に当たり、違法無効というべきである。
ク 昼夜交替勤務をしないことを理由としてなされた出向命令
(ア) 原告は、平成5年9月23日に、出向についての打診を受けた際、「Xは交替勤務をやらない」ということを理由の一つとして告げられている。前記のとおり、このときは原告は出向を断り、応援として取り扱うこととされたが、さらに平成6年9月14日、Eが本件出向命令の内示をした際、Eは「夜勤をやれば精整工場で仕事を探す。」と言った。
そして、本件訴訟においても、被告は、本件出向命令の理由として、原告は夜勤を忌避し、常昼勤務を希望していたが、同系の一般労働者を配置できる常昼勤務の部署は限られているのに、常昼勤務希望者や夜勤不適格者は高齢層を中心に相当数あるため、これらの者の職場を確保するには、出向を実施せざるを得ない旨主張している。
(イ) 被告の勤務体制は、3直3交替、4直3交替、3直2交替と変遷してきたが、3直2交替制は、昼勤と夜勤の隙間をそれぞれの早出・残業で埋め合わせることとなるため、通勤時間も合わせて考慮すると、1日の拘束時間は12時間から15時間になるという異常な勤務体制である。
現に、3直2交替制となった昭和60年から平成9年までの約12年の間に、55名もの在職死亡者が出ており、また、平成11年1月から平成13年1月までの2年間に死亡災害、休業災害、その他の災害を合わせて40件もの労働災害が発生しており、被告における労災事故の多発について、国会で取り上げられたり、厚生労働省が直接被告の社長を指導したりするなど、社会問題ともなっている。
昼夜交替勤務が人間の健康に様々な影響を与える有害なものであることについては、医学的な知見も存するところであるが、原告が断ってきた昼夜交替勤務は、前記の労災事故多発の事実からも明らかなとおり、通常の昼夜交替勤務とは比較にならない、苛酷な昼夜交替勤務である。
(ウ) 原告は、昭和39年から昭和60年までの間、昼夜交替勤務に従事していたが、同年4月1日、前記アルミの檻事件によって一人職場に隔離された際、残業も夜勤もなしとされ、以後、夜勤をすることはなくなった。これは、原告に対して、大幅な減収苦を強いるためになされたことであり、アルミの檻事件後のA57機械担当業務においても、被告は引き続き昼夜交替勤務を命じなかった。
その後、原告は、夜間労働の有害性を学び、夜勤を拒否するようになったが、健康で人間らしく生きるために夜勤を拒否するということは労働者の選択として正当であって、夜勤拒否を理由に、強制的に出向を押し付けるのは、権利の濫用というべきである。
また、そもそも原告に減収苦を強いるために夜勤を取り上げておきながら、夜勤をやらないことを理由に出向させるという点でも、被告の権利濫用は明らかである。
(エ) なお、被告に常昼勤務希望者あるいは夜勤不適格者が相当数存在するのが現実であれば、被告としては、常昼勤務の部署を維持・増加させる措置を講じ、これらの者の職場を確保するよう努めるのが責務であるにもかかわらず、被告は、被告における常昼勤務職場をa梱包に業務移管するなどして、格別の理由なく常昼勤務職場を減少させてきた。このように、自ら常昼勤務職場を減少させながら、常昼勤務職場が限られているからとして出向を強制するのは、禁反言の原則に反するというべきである。
(オ) さらに、被告の主張にもかかわらず、原告を含む第一精整ラインに、実際には常昼勤務職場が4箇所もあった。また、被告は、60歳以上のOBの採用をしているが、このOBの職場は常昼勤務職場である。これは、被告に常昼勤務職場があることを示している。
このように、OBを常昼勤務職場に配置しながら、一方で原告には夜勤をしなければ職場がないとして出向させるのは、全く合理的な理由がない。
(カ) 加えて、仮に常昼勤務の部署が限られており、常昼勤務希望者あるいは夜勤不適格者が相当数存在する事態であったとしても、常昼勤務希望者、夜勤不適格者の中から原告を選んで出向させる合理的な理由や基準は全くなく、原告も一切説明を受けていない。少なくとも、常昼勤務で就労している原告からその職場を取り上げ、排斥しなければならない理由は全くない。
(キ) 以上のとおり、原告が夜勤をしないことを理由とした本件出向命令は、被告の業務命令権の濫用であって、無効というべきである。
ケ 原告に不利益を課す出向命令
(ア) 本件出向命令は、次のとおり、原告に著しい不利益を与えるものである。
a まず、出向前と比べて、出向後の原告の拘束時間は30分延長されることとなった。
また、かつては、出向は、いずれ出向元の会社(被告)に戻ることを前提としていたが、本件出向命令には、出向期間の定めがなく、むしろ戻ってこないことを前提とするものである。これは、整理のための出向というべきである。
そして、被告においては、平成5年度から、出向している本件組合員は、満58歳をもって、被告を退職する手続をとり、出向先に籍を移すという出向離籍制度ができた。その後、出向離籍制度は、45歳以上の出向者が離籍制度の対象者となるように拡大され、さらに、50歳以下ならば全員出向離籍制度の対象とされるまでになった。
この出向離籍制度は、出向と不可分一体のものとして取り扱われ、この結果、60歳定年制を実質的に切り下げるものであり、定年延長の社会の動向に反し、公序に反するというべきである。このような出向と離籍制度の一体性を前提とすれば、出向した者が受ける不利益は極めて重大なものであり、本件出向命令は、原告にこのような重大な不利益をもたらすものである。
b さらに、原告は、本件出向命令により、本件組合の選挙権、被選挙権を失うこととなった。
出向が労働者に与える不利益は、単に賃金等の労働条件にとどまらず、出向によって生じる生活条件の変化等も含めて判断されるべきものであり、その際には、労働者の個人的事情、例えば家族構成、家族の状況、年齢、住居地なども考慮される。原告にとって、この選挙に関する活動は重大な関心事であったのであり、このような労働組合活動についても、考慮の外に置かれるべきものではない。特に、被告が原告の前記選挙権、被選挙権の剥奪を一つの目的として本件出向命令を発令したことを合わせ考えれば、原告の受ける前記不利益は重大なものというべきである。
(イ) 以上のとおり、本件出向命令は、原告に対し、労働条件の切下げだけでなく、実質的な定年年齢の引下げ、労働組合活動の制限という重大な不利益を与えるものであり、被告の業務命令権の濫用として違法無効というべきである。
(ウ) なお、出向命令に対する労働者の承諾の要否について、仮に、出向について包括的承諾が認められるとする立場に立っても、少なくとも、本件のような不利益な出向については、包括的承諾が認められるべきではない。したがって、本件出向命令は、個別的・具体的承諾もなく、包括的承諾も認められず、この点でも、無効というべきである。
コ 前記アないしケの総合的判断
前記アないしケは、それ自体、本件出向命令が権利の濫用、公序良俗違反又は差別であるとして違法・無効であることを根拠付けるものであるが、本件については、アないしケを一連の流れに沿って行われたものだととらえれば、全体として本件出向命令は権利濫用として許されないものである。すなわち、本件出向は、原告の承諾を得ずにしたものであって、労働協約などにもその根拠がない違法・無効な出向であるが、そのような労働協約の解釈論とは別に、権利濫用、公序良俗違反であって、無効というべきである。
(被告の主張)
ア 本件出向命令の必要性・合理性について
(ア) 原告は、平成元年6月1日以降、A57機械担当として鉄スプール整備作業に従事していたが、平成5年9月、処理量の増加に伴い、同作業を常昼勤務制から昼夜交替勤務制に変更する必要を生じた。
当時、精整工場においては、常昼勤務者として、原告のほか、監督者10名、資材に11名、PKG、W25、SH65・66に各1名の配置があった。このうち監督者(総括主任、統括主任)は別として、資材は梱包材の調達・管理・配布、パレット再利用等を担当するものであるが、実質上高齢者用の配置であり、後に平成8年1月、a梱包に移管された職場である。また、PKG、W25に従事するのは、生産量の変動・欠員の状況により、昼夜交替勤務に従事する多能化された交替要員である。さらに、SH65・66もまた、A57機械同様、昼夜交替勤務制に変更する必要があった。
前記のような状況のため、原告を前記常昼勤務職場に配置することはできなかった。
原告は、昼夜交替勤務を忌避し、常昼勤務を希望していたが、被告においては、高齢層を中心に、常昼勤務希望者あるいは夜勤不適格者は相当数あるため、これらの者を就労せしめるためには、被告としては、a梱包その他の関連会社が請け負っている補完的軽作業職場への配置、すなわち出向を実施せざるを得ない状況であった。そこで、被告は、原告の職場確保のための対策として、a梱包の担当業務のうち、スペーサーリング研磨作業に要員需要があったので、原告に対し、同社に出向し前記作業に従事するよう要請した。
しかし、原告は、昼夜交替勤務は拒否するものの、出向にも難色を示したため、平成5年9月末まで協議した結果、臨時の措置として、出向命令を発令しないまま、原告は同年10月1日から応援としてa梱包の前記スペーサーリング研磨作業に従事することとなった。
すなわち、原告は、出向した場合、本件組合役員選挙に立候補できなくなることを理由に、被告からの出向要請を拒否した。そこで、被告としては、やむを得ず、原告に本件組合役員立候補の機会を与えるため、出向命令の発令を見合わせ、応援として原告をa梱包に派遣し、原告もこれに異議なく応じ、同社の業務に従事していたものである。
その後、原告は平成6年7月に本件組合役員選挙に立候補したが、結局落選し、役員には就任しないことが明らかになった。
(イ) 原告がa梱包に応援として派遣された後、平成6年7月以降に、前記スペーサーリング研磨作業も昼夜交替勤務化されたため、同じくa梱包の業務であるフィルター洗浄作業に応援業務を変更したが、もともと応援という形態が臨時的変則的なものであり、永続し得る状態ではなかったため、a梱包の業務を継続的に担当するならば、同社に移籍しないまでも正式に出向とせざるを得ないものである。
そして、同年9月においても、被告精整工場における常昼勤務可能な業務の状況は、基本的に前記(ア)のとおりであって、同工場以外の名古屋製造所内の他の生産技能系職場を通じてみても、原告を受け入れるのに適当な部門はなく、原告に対してa梱包への出向を命ずるほかなかったものである。
このように、本件出向命令は、原告の就労場所を確保するために被告が提供し得る唯一最善の手段である。すなわち、原告がこれを拒否するとすれば、原告は被告にとって完全に冗員化することとなるのである。
(ウ) 以上のとおり、本件出向命令には、必要性・合理性が認められる。
イ Eの原告に対する脅迫的言動について
原告は、Eが本件出向命令を強要するために、原告に対して脅迫的言動をとったと主張するが、そのような言動は存在しない。
ウ 原告の本件組合役員選挙権・被選挙権と本件出向命令の関係について
本件組合の規約において、出向者は特別組合員とされ、組合役員の選挙権・被選挙権を有しないものとされているが、これは、おそらく出向先が遠隔地の場合もあり得ることを配慮した規定であると推察される。しかし、役員の選挙権・被選挙権の範囲をいかに定めるかは全く本件組合の自治にゆだねられた問題であり、被告の関知するところではない。
なお、被告は、執行委員以上の役職にある者の任期中の異動を制限する旨を本件組合と協定しているのであって、組合役員の地位は人事上もこれを尊重している。しかし、これを超えて、組合役員に立候補する意思がある限り絶対に出向せしめる余地がないとすれば、公平妥当な人事異動も組合が恣意的に阻止できることになるが、この結果は不合理で容認し難いものである。
エ 本件出向命令が原告に対する差別であるとの原告の主張について
(ア) 段取り班への配転が仕事差別である旨の原告主張について
a 原告は、昭和60年に被告が段取り班への配置を命じたことについて、アルミの檻事件と称して、被告の原告に対する差別であると主張するとともに、被告の差別的意図、不当労働行為意思の根拠として取り上げている。
b 段取り班は、昭和60年4月1日に設置されたが、その業務の内容は、〈1〉鉄スプールのさび取り等、使用に適する状態に整備する作業、〈2〉回収パレットの緩みの補強、汚れ落とし等、再使用に適する状態に補修する作業、〈3〉前記〈1〉〈2〉の材料の搬入及び仕上品の搬出作業である。
c 前記〈1〉の作業については、以前は鉄スプールを使用する各職場において、工場建屋内空所又は工場内通路の一時使用により、必要の都度、各職場の作業員が実施することとしていたが、この方法では、作業場所が特定されないため、安全面からは場所の特定が望ましく、また、さび取り作業により発生する鉄さび片が工場内に散逸することになり、製品への混入による品質異常の発生につながることという問題があり、建屋外に作業場を新設することが検討されていた。
同時に、前記〈1〉の作業は、それまで非定常作業として、昼勤・夜勤の間の時間帯を活用し、必要に応じて機械を停止しての臨時作業として行っていたが、勤務態勢の変更により前記昼勤・夜勤の間の時間が消滅することとなり、この面からもそれまでの方式では対応が十分とれないと判断された。
段取り班の設置の主目的は、このような事情から、鉄スプール整備作業の独立を図ることにあったのである。
また、前記〈2〉の作業については、従来、各ユーザーより返却されたパレットをa梱包に委託して、再使用の可否をチェックし、使用可能なものの補修を行っていた。しかし、同社の作業員が、パレットの工場における使用方法等を熟知していないため、品質・納期面において、必ずしも被告の工場の意向が十分に反映されず、パレット不良に起因する品質異常のクレームを生ずるケースがあり、段取り班設置を機に、同班の副次的業務として担当させることとしたものである。
前記〈1〉〈2〉の作業は、精整工場の業務に付帯する不可欠・重要な段取工程であり、この作業に専従する職場を設けることは、必要かつ合理的なものであった。
d そして、作業場の設置場所については、既存施設の制約内で、パレット置場に近く、かつ、工場の出入口に近い場所を選択したものであり、作業環境は、工場の他の職場に比較し劣悪な点はない。
また、段取り班の人員配置が1名のみであることは、見込み作業量と配置人員数を勘案した結果にすぎず、被告において、独立した作業場で一人で作業を行うことも、格別異例のことではない。
e 以上のとおり、段取り班の設置が必要かつ合理的なものであり、その実施方法においても何ら原告の権利を侵害すると目すべきものがないことは原告を除く大方の従業員の理解するところであり、段取り班の作業場を檻呼ばわりする原告の主張に対し、同僚は極めて批判的である。
f 原告を段取り班に配置した主な理由は、〈1〉原告がそれまで配置されていたSH80機械に若手新入社員を配置する予定があり、だれかを転出させる必要があったこと、〈2〉原告は、SH80機械において、初歩の持ち場であるパイラー作業ですら、失敗も多く、年齢からしても、今後主要な持ち場に就ける可能性が乏しかったこと、〈3〉原告は若干肥満型であり、SH80機械のスピードについていくことは今後肉体的に厳しくなるのではないかと判断されたこと、〈4〉当時の原告の社歴は作業長に昇進する者もいるレベルであり、監督者への昇進の可能性が薄い原告が参加していることは、SH80機械担当のチーム編成上、好材料とはいえないことの4点にあり、これらの事情を中心とし、原告がスプールやパレットに関して一応の知識を有しており、自己のペースで仕事ができる段取り班に配置するのが適当であるとして、総合的に決定したものである。
(イ) 査定、役付・資格、賃金の差別に関する原告の主張について
被告は、全社員を対象に年1回いわゆる人事考課を行い、その結果の累積が役付、昇格、賃金等に反映することとなっている。人事考課は、極力客観性・公平性を維持するため、複数人による評価を行っており、また、原告主張の能力評価要綱により、評価項目と評価基準を明示して行っている。
原告が出向前に所属していた精整工場では、統括主任が主任の意見を聴いて一次評定を実施し、工場長が一次評定を参考に副長の意見を聴いて二次評定を実施している。
原告が被告に入社した昭和36年から平成6年までの間に、最終評定者である工場長だけをとっても10名が就任・交替しており、一次評定者の交替は更に頻繁である。これら多数の評定者評価が一貫した傾向を示すとすれば、その評価には客観性があるものと判断するのがむしろ合理的である。
また、被告においては、人事考課の結果決定した各人の基礎基本給及び新しい資格等級は本人に通知され、希望者に対しては、考課の最終結果である本人の能力区分をも示している。このことからも、評価は恣意的にはなし得ない。
被告においては、選抜昇進制度の適用を受けず、一般昇進基準の適用を受けて昇進する者の資格等級の上限は上級職三級であり、管理・監督者として上位資格等級に選抜される者を別にすれば、原告の昇格が特別に遅いわけではない。原告と同期の養成工出身者の多くが管理・監督者として責任ある立場に就いているのは事実であるが、これは能力の問題にすぎないものである。
オ 労働者への犠牲の押し付けであるとの主張について
原告は、本件出向命令は酒田進出計画の失敗を労働者に押し付けるものであると主張する。
しかし、これは、被告の経営に対する無責任な批判にすぎないものである。被告としては、現在の一般的経済不況及び業界の構造的困難に対処するため、極力人件費を含む経費の節減を図らざるを得ない状況にあることは事実である。
かかる状況において、原告の雇用を確保するため必然の本件出向命令の効力を否定する原告の態度こそ、労働法上の信義則に反するというべきである。
そもそも、企業の業績は、一義的な要因により決せられるものではなく、経営者の手腕のほか、従業員の勤怠や社会経済的環境など外的要因にも左右される。しかし、業績を決定した要因が何であれ、企業はその業績によってなし得る以上の待遇を従業員に与えることはできない。極論すれば、経営者の過誤のみが原因で企業が破産した場合であっても、従業員は全員解雇を免れないのである。企業の業績に対する経営者の責任の有無と、企業と従業員との間の労働契約の内容いかんとは直接の法的関連性はないものであり、原告の主張は、本件出向命令の有効性を判断する上では全く無意味である。
カ 昼夜交替勤務制について
(ア) 原告は、被告が、a梱包への業務移管を取りやめることにより、原告を被告の業務に従事させることが可能であると主張する。しかし、ある業務が常昼勤務で足りるか、昼夜交替勤務を要するかは主として業務量の変動等、客観的要素により左右され、従業員の希望等の主観的要素にはかかわりなく決定せざるを得ない。また、下請会社に対する業務移管も、当事者双方の事情を踏まえた合意に基づいて行われるもので、一方が恣意的に移管したり取りやめたりすべきものではない。原告の前記主張は、被告に不可能を強いるものである。
本件にかかわる原告の担当業務の変動は、すべて担当業務の昼夜交替勤務化に際して原告の常昼勤務希望を満足させるために実施されたものである。
(イ) また、原告は、夜間労働の有害性を主張して、被告の業務命令権の濫用であると主張する。
確かに、人間本来の性質からいえば、すべての人間が昼間労働し、夜間休息する生活を送ることが理想ではある。しかし、それは現代の複雑化した社会においては正に理想にすぎないものである。
被告においても、他社との競争の中で、最小のコストで所要の生産を上げるため、昼夜を通じて操業する必要があるのであり、被告ができるだけ夜勤者の負担の軽減に努めるべきであることは別として、差し当たり近い将来に夜勤を廃止する可能性がないことは明白である。そして、昼夜交替勤務制が、法の規制の範囲内で実施される限りにおいて、それが法的に問題とされるいわれはない。
仮に、原告の夜勤の有害性についての主張が、夜勤拒否に正当な理由があるという趣旨のものであるとするならば、本件出向命令は、そもそも原告を夜勤に服させないためのものであるから、本件出向命令の無効を主張する理由とはなり得ない。
なお、原告は、夜勤の有害性に関連して、被告において労災事故が多発しているとの事実を主張する。しかし、被告において、労災事故発生の事態改善の努力をする必要があること自体に異論はないが、労災事故発生の事実と、本件出向命令の有効性との間にいかなる関係があるかは理解し難い。
キ 本件出向命令の不利益性について
(ア) そもそも、本件出向命令は、被告名古屋製造所と同一構内にある関連会社への出向命令であり、原告にとって、本件出向協定により給与は従来どおり保障され、同一構内であるために通勤手段にも変化はなく、利用できる福利厚生施設にも変化がないものである。さらに、夜勤を回避したいという原告の希望も実現している。
このように、原告は本件出向命令により、経済的不利益その他就労条件において実質的不利益を被ることはない。
(イ) これに対し、原告は、a梱包の方が拘束時間が30分長いから、本件出向命令は原告に不利益を課するものであると主張する。
被告とa梱包の拘束時間に30分(休憩時間の差であり、実労働時間には差がない。)の差があることは原告主張のとおりであるが、そもそも、出向元と出向先の労働条件は同一ではないのが原則であり、被告の場合、労働者に著しい不利益が及ぶのを防止するため、本件組合との間で本件出向協定を締結している。その主眼は、実労働時間に差があった場合の補償であり、休憩時間の差については特に触れていない。換言すれば、本件組合も、休憩時間については出向に関して問題とすべき労働条件の差とは考えていないのである。
そして、休憩時間は、労働者にとって、長短いずれが利益であるかは一概に決することはできず、本件のように休憩時間30分の差による拘束時間30分の増加が、本件出向命令を違法無効ならしめるような不利益であると評価することはできない。
(ウ) 次に、原告は、本件出向命令は、出向離籍制度と一体となって、実質的に定年年齢を引き下げるものであると主張する。本件労働協約上、定年に関し、原告主張のような出向離籍制度の規定があることは認めるが、一つの制度について労働条件としての利益・不利益を論ずる場合、これを他の諸条件と切り離して論ずるのは正当ではない。制度が採用されるに至った背景や、代償ないし代替的措置との対比をも考慮して不利益性を判断すべきである。
被告は、業界の長期不況と業績の悪化に直面し、会社の存立を図るためには全社的な損益改善のための取組を必要とした。そのためには、人件費も抑制の対象とせざるを得ず、管理職給与のカットや福利厚生費、出張旅費・日当の削減などが実施された。しかしなお、総人員数の抑制を図る必要があったため、新規採用人数の大幅削減を実施したほか、出向の実施により雇用確保の要請にこたえつつ余剰人員の発生阻止を図ったが、更に出向離籍制度の実施が必要であったので、平成5年11月に、本件組合にこれを申し入れた。
そして、本件組合との交渉の結果、離籍者の退職金については満60歳定年退職時と同額とし、さらに離籍先との年収差の半額を特別加算することとなった。また、在籍中の給与につき、定年延長以後実施されていた満55歳以降の給与水準ダウンも、平成7年10月以降廃止する措置が採られた。そして、離籍制度の運用に当たっては、雇用確保を重視する観点から、離籍先での60歳までの雇用保障を得て、本人の承諾をもって実施している。
このように、出向離籍に伴う条件や代替措置を考慮すれば、単に60歳以前に被告を退職となる点のみをとらえて、これを一概に労働者に不利益な制度と断ずることはできない。
また、仮に出向離籍制度の存在が労働者にある程度の不利益を及ぼすとしても、同制度の設定は、被告と本件組合との慎重な協議の結果、労働協約が締結されたことによるものであるから、その規範的効力により、個々の労働者の意思いかんにかかわらず効力を認められるべきである。
さらに、原告が出向離籍制度の効力を否認しているのだとしても、同制度が原告に適用された場合にその無効を主張すれば足りるのであり、現在、被告が原告に対して同制度を適用していないにもかかわらず、同制度の存在を理由として、在籍出向命令である本件出向命令の無効を主張するのは失当である。
(エ) さらに、原告は、本件出向命令により、労働組合役員の選挙権、被選挙権を失うという不利益を被ったと主張する。
一般に出向を含め人事異動に際し、一律にすべての個人的事情を尊重しなければならないというものではない。労働者の健康状態のごときは最も優先考慮すべき事情であり、家庭の維持も重要な要素だと考えられるが、それすら犠牲にして単身赴任せざるを得ない例もある。原告が主張する組合役員選挙権・被選挙権の維持と、前記の健康状態、家庭の維持等を同位で論ずることはできないというべきである。
そもそも、前記ウ記載のとおり、出向した組合員が、組合役員の選挙権・被選挙権を失うとされているのは、本件組合内部自治の問題であり、これに対して被告は、執行委員以上の役職にある者の任期中の異動を制限するなどの配慮をしている。
被告は、平成5年10月の段階では、原告の役員立候補のため、予定していた出向命令の発令を延期したのであって、むしろ原告の個人的事情を十分考慮したということができる。
ク 以上のとおり、本件出向命令には、十分な必要性と合理性があり、かつ、被告の業務命令権の濫用と認めるべき事情は全くない。
(3)  争点(3)(本件出向命令は、不当労働行為に該当し無効か。)について
(原告の主張)
本件出向命令は、前記(2)(原告の主張)エのとおり、原告の労働組合活動を嫌悪し、合理的理由のない本件出向命令を原告に対して発令し、その組合活動を規制する目的でなされたものである。そして、同箇所に述べた事情のほか、前記(2)(原告の主張)オ記載のアルミの檻事件をはじめとする原告に対する様々な差別処遇にかんがみれば、被告の不当労働行為意思の存在は明らかである。
よって、本件出向命令は、不当労働行為に該当し、無効である。
(被告の主張)
本件出向命令は、前記(2)(被告の主張)で述べたとおり、十分な必要性、合理性をもって発令されたものであり、原告の労働組合活動を規制する目的でなされたものではない。
したがって、そもそも被告には不当労働行為意思が存在しないから、本件出向命令は不当労働行為には該当しない。
また、原告の場合、本件出向命令発令の約1年前である平成5年10月1日に、本件出向命令と同じ内容の出向命令を予定し、内示が行われている。その際には、本件組合役員選挙立候補予定を理由とする本人の強い拒否姿勢を考慮して、出向命令の発令を取りやめ、短期的業務応援者に適用してきた応援の取扱いに変更した。その後原告は役員選挙に立候補して落選し、本件出向命令の発令に至ったのである。このような経過を経て発せられた本件出向命令が、不当労働行為を構成する余地はない。
第3  当裁判所の判断
1  前提となる事実
前記争いのない事実等及び後掲各証拠並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(1)  原告の労働組合活動等
ア 原告は、前記争いのない事実等記載のとおり、被告に入社後、本件組合に加入し、昭和45年ころから労働組合の活動を始めた。そして、昭和46年及び昭和47年に本件組合青年部副部長に就任したほか、昭和49年以降、昭和51年を除き、2年に1回の本件組合役員選挙に立候補したが、いずれも当選しなかったところ、原告が役員選挙に立候補した際の各得票数は、別表2「得票数」欄記載のとおりであり、各選挙における当選者の最低得票数との差は同表「得票差」欄記載のとおりである(甲14、15、17ないし28)。
イ 原告は、昭和47年の春闘において、本件組合の要求を満額獲得するために、青年部員の胸にリボンを着ける運動をすることを決めたり(この運動は最終的には中止となった〔甲16〕。)、青年部の代表を代議員として支部委員会に出席させるよう本件組合に求めるなどした(原告本人)。
また、原告は、本件組合役員に立候補する際、〈1〉大幅賃上げで残業なしで暮らせる賃金を要求・実現する、〈2〉健康で文化的な生活ができるように長時間労働をやめさせ余暇を楽しみ過労死をなくし、家族と楽しむことができるようにする、〈3〉安全な職場環境をつくる、〈4〉消費税廃止や小選挙区制反対などのための活動を強める、〈5〉本件組合の階級的民主的強化を図る、〈6〉労働者に対する差別をなくすなどといった事項を公約として選挙管理委員会に提出し(甲29、31)、また、同選挙管理委員会に対し、〈1〉役員選挙の際の立会演説会の開催、〈2〉選挙公報の発行、〈3〉候補者のあいさつ回り、〈4〉開票時の立会いなどの実施を求める要請書をNらと共に提出するなどした(甲30、35、36)。
さらに、原告は、Nらと共に、本件組合の執行委員長に対し、労使交渉等に関して、意見書や要請書を提出するなどした(甲33、34)。
ウ 原告は、前記のとおり、労働組合に関する活動に熱心に取り組んでいたが、そのほかにも、昭和48年ころから、日本共産党Y支部の一員として、同支部が発行する「Yの仲間」という職場新聞を編集・投稿・配布したり、平成2年9月に「恒常的長時間労働をやめさせ過労死を防ぎ健康と家庭を守る会」という会を結成して、労働基準監督署や本件組合に対して労働条件の改善を求めるなどの運動をした(甲50、103、原告本人)。
(2)  被告・本件組合間の出向に関する労働協約及び付属協定の内容等
ア 被告と本件組合は、昭和53年10月1日、労働協約を締結したが(以下「改訂前労働協約」という。)、当該労働協約第25条は、「〈1〉会社は、組合員の異動については、事前に組合に通知する。〈2〉多数の組合員の異動については、その方針及び基準につき組合と協議する。」と定めていた(乙1)。
イ その後、被告と本件組合は、昭和54年10月1日に、本件労働協約等を締結したが、その内容は、改訂前労働協約について、一部を改めるというものであり、出向に関連して、以下のような改定がなされた(乙2)。
(ア) 改訂前労働協約の第25条が、「〈1〉会社は必要により、組合員に異動(出向を含む。以下同じ。)を命ずる事がある。〈2〉会社は、組合員の異動については、事前に組合に通知する(改訂前労働協約第25条〈1〉と同じ)。〈3〉多数の組合員の異動については、その方針及び基準につき組合と協議する(同〈2〉と同じ)。〈4〉出向者の労働条件については、別に協定する。」と改められた。
(イ) そして、上記〈4〉に基づき、出向者の労働条件につき、本件出向協定が締結された(乙2)。
同協定においては、勤務及び休日・休暇・休業(同協定第1条)、服務(同第2条)、旅費(ただし出向時及び帰任時を除く。同第7条)、社宅の運営基準及び社宅使用料(同第8条第1項)、給食(同第10条)、安全及び保健衛生(同第13条)、出向先における異動及び役付任命(同第16条第1項)については、出向先の定めるところによるとされ、給与(同第3条)、退職金(同第4条)、職分職級の運営(同第5条)、賞与及び昇給(同第6条)、出向時及び帰任時の旅費(同第7条ただし書)、社宅の運営等を除くその他の福利厚生施設の利用(同第8条第2項)、通勤費(同第9条)、慶弔金(同第11条)、主な福利厚生制度(同第12条)については、被告における取扱いを適用するものとされた。
また、被告は、出向者に対して、出向期間中の労働条件に関し説明を行うこととされた(同第19条)。
ウ 労働協約改定の経緯及び本件労働協約等についての本件組合の評価
(ア) 昭和54年9月10日、被告は、本件組合との交渉の席上で、本件組合に対し、出向協定の提示をした。
これは、本件組合が、関連会社への組合員の派遣等が急速に増える中で、アルミ業界の当時の状況からみて、すべての組合員を同じ職場にとどめておくことは極めて困難であるとの認識の下、派遣、出向する組合員の労働条件がほかの組合員と同一でないことを問題視し、被告に出向協定の申入れをしたのに対して応答したものである(甲47)。
(イ) 本件組合の本部執行委員会は、本件労働協約等の締結に当たり、当時、派遣社員が225名に及んでいることを指摘し、本来、他社派遣等の制度が存続すること自体否定すべきだとしながらも、アルミ産業の構造的不況の中で、当時の段階では他社派遣等の制度がほぼ定着・安定したものと考えており、被告の前記出向協定の提示は、当時の作業職労働組合員の派遣制度、事務職組合員の無協定下での出向制度について一連の問題整理を行う一方で、出向者の労働条件の確保とその協定化を行うものとして、まず評価できるものとしている(乙8)。
エ 被告と本件組合は、平成4年10月1日、労働協約及び付属協定を締結したが、出向に関する前記イ記載の各規定については、実質的には変更されることなく、ほぼ同内容で締結された(乙3)。
また、被告と本件組合は、平成7年10月1日、労働協約及び付属協定を締結したが、この際にも、出向に関する前記イ記載の各規定については、ほぼ同内容のまま締結された(乙4)。なお、この労働協約に付帯して交換された覚書によれば、被告は、本件組合の執行委員以上の役員については、その任期中原則として異動を命じないこととされているところ(同号証)、このような運用も、従前からなされていたものと推認される(弁論の全趣旨)。
(3)  被告の就業規則における出向に関連する規定
昭和49年8月1日より実施された被告の就業規則第5条は、「業務上必要があるときは、異動を命ずることがある。」と定めていたが(乙5)、その後、平成4年10月1日より実施された被告の就業規則第5条は、「〈1〉業務上必要があるときは異動(出向を含む。)を命ずることがある。〈2〉出向者の取扱いについては、別に定める。」として、「異動」に出向を含むこと及び出向者の取扱いは別途定める旨を明確に定めている(乙6)。この規定は、その後の平成7年10月1日より実施された被告の就業規則においても、変更されていない(乙7)。
(4)  被告における出向制度等の運用状況等
ア 出向制度等の変遷(証人B、証人O)
(ア) 本件労働協約等が締結される以前、被告においては、従業員が社外で勤務する形態として、出向、派遣、応援の三つの制度があり、また、労働組合は、事務職組合(ホワイトカラー層の組合)と作業職組合(ブルーカラー層の組合)とに分かれていた。
この当時における出向とは、管理職及び事務職組合員に対して命じられていたもので、期間を定めずに、社外で勤務する形態であった。出向を命じられた事務職組合員は、組合籍を離脱することとなっていた。
また、派遣とは、作業職組合の組合員に命じられていたもので、内容は上記出向と同様であった。ただし、派遣を命じられた作業職組合員は、組合籍を離脱するものとはされていなかった。
そして、応援とは、基本的には期間を定め(ほぼ1か月未満であり、中には半年程度のものもあったが、これは長期出張と呼ばれることもあった。)、応援する業務を決めて、担当業務とは異なる業務に従事しあるいは社外で勤務するという形態であり、組合籍に変化はなかった。
(イ) 本件労働協約等締結前において、作業職組合の組合員が派遣の対象となった際には、本件組合が、当該組合員を事前に説得し、了解を得た上で業務命令が発令されていた。
(ウ) 本件労働協約等が締結された後は、事務職組合と作業職組合が統合され、出向と派遣は、いずれも「出向」という名称で呼ばれるようになり、本件労働協約等に基づいて運用されてきた。なお、応援の制度は、本件労働協約等締結後も存在しており、随時被告会社内の他職場ないし社外への応援が命じられている。
イ 出向人員数の変遷
(ア) 本件労働協約等の締結直前である昭和54年9月末当時、被告従業員は2603名(実働数は2537名で、うち生産・技能系の労働者が1757名)おり、別に他社へ出向している者、派遣されている者の数が合計327名(うち223名が生産・技能系の労働者)であった(乙13の1)。
そして、生産・技能系の労働者の出向先は、e運輸(85名)、a梱包(68名)、fプラント(34名)などが主たるもので、これらはいずれも被告の関連会社である(乙13の2)。
(イ) 昭和54年10月末当時においては、被告従業員数は2576名(実働数は2514名で、うち生産・技能系の労働者は1738名)となっており、そのほかに出向者、派遣者の数が合計334名(うち231名が生産・技能系の労働者)であった(乙14の1)。
生産・技能系の労働者の出向先は、前記(ア)とほぼ同様であるが、a梱包への出向者が10名以上増え(79名)、e運輸と並んで出向者数最多となった(乙14の2)。
(ウ) 本件出向命令発令直後の平成6年10月末当時、被告の従業員は3410名(うち生産・技能系の労働者2307名)おり、ほかに出向者が716名(うち生産・技能系の労働者は347名)であった(乙12の1)。
生産・技能系の労働者の出向先としては、gテクノス(62名)、a梱包(49名)、hアルミ箔(41名)、iメモリーディスク(33名)、e運輸(30名)などが主たるものであった(乙12の2)。
(5)  出向者の本件組合における地位・権利関係等(甲67、証人O、原告本人)
本件労働協約等を締結する以前は、前記のとおり、本件組合は事務職組合と作業職組合に分かれており、事務職組合の組合員が出向を命じられたときは、当該組合員は組合籍を離脱することとされていた。
その後、事務職組合と作業職組合が統合され、本件組合となったが、本件組合は、本件労働協約等の締結と同時に、出向者を特別組合員とする特別組合員制度を設置する組合規定を新設した。
そして、特別組合員には、組合役員の選挙権・被選挙権がないこととされたが、この趣旨は、遠方に出向している者が、組合の執行委員となって活動するのは実際上無理があると考えられたからである(証人O)。
(6)  本件出向命令発令までの経過(甲50、70、原告本人)
ア 平成5年9月、当時の原告の上司であったP精整工場長(以下「P工場長」という。)は、原告に対して、a梱包への出向を打診した。その際の話の内容は、〈1〉原告は夜勤をしない、〈2〉原告が当時配置されていたA57機械が、精整工場から圧延工場の管轄になり、そこでは3直2交替制の昼夜交替勤務職場となる、〈3〉a梱包に常昼勤務職場があった、というものであった。
原告は、上記の打診に対して、〈1〉原告が昼夜交替勤務をしなくなったのはアルミの檻事件の際に昼夜交替勤務から外されたのがきっかけである、〈2〉自分が圧延工場に配置となって引き続きA57機械を担当してもよい、〈3〉精整工場には精整資材という常昼勤務職場があるので、そこに配置してほしい、〈4〉本件組合の役員選挙の選挙権・被選挙権がなくなってしまう、〈5〉a梱包で働くという労働契約を締結する気持ちはないなどとして、拒絶した。
そして、原告は、「会社には会社の都合もあると思いますので、a梱包へは応援でよければ就労します。」と申し出た。
そこで、被告は、原告をa梱包へ応援させることとし、原告は、平成5年10月1日から、a梱包において、応援として、後記(7)エのとおり、スペーサーリング研磨作業に従事した。
イ その後、後記(7)エのとおり、スペーサーリング研磨作業は昼夜交替勤務により従事することとされたたため、原告は、平成6年7月から、a梱包内の常昼勤務の作業であるフィルター洗浄作業に応援として従事することとなった。
ウ 平成6年9月14日、被告名古屋人事室副課長であったFと精整工場副長であったEが、原告を呼び出し、Eは、原告に対し、「工場長が出張中なので…」と前置きした上で、同年10月1日よりa梱包に出向するよう告げたが、これに対し、原告は、本件組合役員選挙の被選挙権がなくなるので、納得できない、家族や周りの人と相談したい、また、原告が当時従事していたa梱包の業務であるフィルター洗浄作業は圧延工場の仕事であり、梱包とは関係がないので、圧延工場の配置にしてほしい、などと訴えた。
Eは、「夜勤をやれば精整工場で仕事を探す。」と言い、二日後の同年9月16日までに返答するように原告に告げた。
エ 同年9月16日午前9時20分ころ、EとFは、圧延工場進捗ライン・活材班の大オイル処理場で作業中の原告のもとへ来て、出向に応ずるよう求めた。
原告は、「出向命令を再考してほしい。まだ相談したい人もいる。Q(本件組合)委員長にも相談した。」と答えたが、Eは、「イエスかノーかを言えばいい。出向拒否か。業務命令だ。拒否すれば給料は払えない。14日の内容はメモも取ってあるしテープもとってある。最初から出向せよと言っている。労働組合の活動がやれればいいなら、静岡、広島、東京、サンフランシスコもある。そこへ転勤するか。組合の選挙は世代交代すればいい、いつまでも俺が俺がとやっておるな。」などと言い、原告に出向命令に応ずるよう求めた。
その後、Eは、原告に対し、「住友銀行の名古屋支店長がやられたようにお前に恨みを持つYのだれかが刺し殺すぞ。」と言いながら、原告の腹部を指で突いた(甲3、5、50、70、原告本人)。
同日午後3時ころ、原告がフィルター洗浄作業に従事しているところへFが来たので、原告は、Fに対し、「Eさんの刺し殺す発言はひどい。身柄を保護してもらうため警察や労基署へ行く。謝ってほしい。」と言った。これに対し、Fは、「謝らせるから、しゃべらないでくれ。」、「自分なら黙ってはいない、相討ちにする。」と答えた。
同日の作業終了後、原告は本件組合に出向き、R執行委員(以下「R」という。)にEの前記発言内容を伝えた。それに対し、Rは「冗談じゃないか。」と答えたが、原告は、「冗談にしてはひどすぎる。脅迫だ。」と言った(甲70)。
オ 同月22日午後3時30分ころ、P工場長は、原告に対して、「出向を内示する。」旨告げた(甲70)。
また、同日午後5時ころ、被告名古屋人事室長のMは、原告の同僚であったNを呼び出し、原告の出向についての話をした。
その内容の概略は、〈1〉平成5年9月の出向打診の際、本件組合の役員選挙立候補を理由に応援とし、1年間待ったが、工場の内外からの不満があり、これ以上現状のままとするわけにはいかないこと、〈2〉被告としては、原告が昼夜交代勤務に応ずれば工場内で職場を見つけるが、そうでなければ、原告のみを特別扱いにすることはできない、という被告の方針をNに伝えるものであり、これに対してNは、〈1〉いずれにしても原告の自己決定権にかかわる問題である、〈2〉被告の労務政策の当否については見解の相違がある、などと答えた上で、前記エ記載のEの発言について、Mの見解を問いただすなどした(甲48)。
カ 被告は、原告に対し、本件出向命令の内示をした後、「出向に関する取扱いについて」と題する書面(甲5の下欄に書き込みのないもの)を手渡し、下欄の氏名欄に署名するよう求めた。
この書面には、点線で区切られた上欄に、出向先として「a梱包株式会社」、出向期日として「平成6年10月1日」、諸取扱いとして、「労働協約付属協定「出向協定」(〈写〉別添)の定めるところによる。ただし、第3条(給与)〈2〉項に定める時間調整を次の通りとする。当社労働時間と同一につき、調整時間は0とする。」、「本出向に関する諸取扱いを上記の通り行なうこととする。」、「Y工業株式会社名古屋製造所」との文字がそれぞれ印刷されており(ただし、出向期日の数字部分は手書きである。)、点線で区切られた下欄には、「上記内容によりa梱包株式会社に出向勤務することを承諾します。」との文字が印刷された上、年月日欄、氏名欄が設けられている(甲5)。
キ 原告は、本件出向命令の内示後である平成6年9月21日、Fにあてて、「出向の理由につき納得しかねるので同意できません。又、今回出向の話の際「住友銀行の名古屋支店長が殺された、お前に恨みを持つYの誰かが刺し殺すゾ」と言いながら私の腹部を指先で押し込んだE副長の言動は脅迫であり、こうしたもとでの話は全く異常である。撤回して再考される事を求めます。」と記載した書面を提出した(甲3)。
また、同月26日には、P工場長にあてて、「今回の出向「内示」につき出向の理由及び話の進め方について納得しかねるので同意できません。法律的な問題もあると思います。出向の「内示」は再考をお願い致します。」などと記載した書面を提出した(甲4)。
これに関し、同日午前9時ころ、Fは、原告に対し、上記甲4の書面を見て、「E発言はたまたま住友銀行でああいう事件があった後だから冗談だよ。この文面からは出向拒否だね。」と言った(甲70)。
さらに、原告は、被告から手渡された前記「出向に関する取扱いについて」と題する書面の下欄に印刷された文字のうち、「上記内容」との部分を「別紙の理由(意見書)」と、「承諾します。」との部分を「異議を留めて就労します。」とそれぞれ訂正した上、〈1〉本件出向命令は不当労働行為に該当すること、〈2〉出向の理由が不明で、出向期間も明示されていないなど不当な出向命令であること、〈3〉アルミの檻事件と同様の人権侵害を引き起こすものであること、〈4〉出向命令が、職制の脅迫的言動の下で出された異常なものであること、〈5〉原告は被告で定年を迎えるつもりであること等の趣旨の記載をした意見書を添付して、同月28日、被告に提出した(甲5)。
ク その後も、被告は、原告に対し、前記「出向に関する取扱いについて」と題する書面に単に署名押印のみをしたものを提出するよう数度にわたって求めたが、原告はこの被告の要請には応じなかった。
ケ 被告は、原告に対し、平成6年10月1日、本件出向命令を発令した(甲1)。
コ 原告は、本件出向命令に対して異議をとどめながら、a梱包においてフィルター洗浄作業に従事し、今日に至っている。
(7)  本件出向命令前後の原告の業務内容等
ア 原告は、平成元年6月1日から平成5年9月30日まで、常昼勤務でA57機械を担当していたが、同機械は、アルミニウム板を巻き取る鉄芯(鉄スプール)について、使用後に残ったアルミニウム板の断片を排除し、再び使用可能にするための機械であり、原告とDの二人が、同機械に配置されていた。その後、平成5年4月1日からは、Dは他の職場に配置換えとなり、以後、平成5年9月末まで、原告は一人でA57機械を担当した(甲50、原告本人)。
なお、Dは、平成5年4月から同年10月の定年退職時まで、PKG4という職場で常昼勤務をした(証人E)。
原告がA57機械を担当していた当時は、常昼勤務職場であったが、夜勤の従業員が、スプールを必要としてA57機械で臨時に作業を行うということもあり、そのような状況を解消するために、他の機械の稼動と合わせてA57機械も稼動させてほしいとの要請が工場内からあった(甲97の一部、証人B)。
なお、平成4年1月から平成5年9月までの各月にA57機械によって処理されたスプールの本数は、作業記録(甲97)によれば別表4のとおりである(ただし、同表記載の平成5年5月の「本数」欄の本数については、被告従業員Cが処理した合計32本については除いてある。)。
イ 前記アの工場内からの要請を受けて、A57機械が、スプールの需要に的確にこたえるためには、他の機械と同様、A57機械を昼夜交替勤務制により稼動させることが必要と考えられ、被告は、平成5年10月1日から、A57機械について、昼夜交替勤務制を採用することとした。また、同時に、同機械の管轄も、精整工場から圧延工場へ移されることとなった(証人B)。
ウ 被告は、同年6月ころ、原告に対して、A57機械が昼夜交替勤務化すること及び圧延工場の管轄となることを告げた上、精整工場内のSH66機械で昼夜交替勤務に従事するよう打診したが、原告は、夜勤は身体に悪いことを理由として、昼夜交替勤務に従事することを拒んだ(証人E、原告本人)。
エ そこで、被告は、a梱包におけるスペーサーリング研磨作業(当時は常昼勤務職場であった。)に原告を従事させることとし、原告に対して、同年10月1日からa梱包へ出向するよう、打診したが、原告が出向を拒んだため、応援という形態で同作業に従事させることとなった。
スペーサーリング研磨作業は、主に3.5インチのアルミ円盤の磁気ディスクを平坦にするためのアルミ板(スペーサー)を削り、傷をなくすための作業であった。また、同作業は、原告が応援として従事する前は、a梱包のパートタイム従業員であった女性が担当していたものであった(甲50)。
その後、平成6年7月、前記スペーサーリング研磨作業について、昼夜交替勤務制が採用されることとなったが、原告は昼夜交替勤務に従事することを拒んだため、a梱包における他の常昼勤務職場であるフィルター洗浄作業に従事することとなった。
フィルター洗浄作業は、圧延機が使用しているフィルター(油を再使用するためのもので、チューブ状になっている。)に付着した珪藻土を洗い落とし、加熱・冷却・水洗・乾燥を経た後、検査・収納するという作業であった(甲50)。また、同作業は、原告が応援としてこれに従事するようになる前から他社に下請に出されていたものがa梱包に移管されたものであり、いわゆる一人職場であった(甲50、原告本人)。
オ 被告は、平成6年10月1日、原告に対して本件出向命令を発令し、a梱包は、同日、原告に対して、社員に任用し、作業部フィルター洗浄センター勤務を命ずる旨の辞令を発令した(甲2)。
これにより、原告は本件出向命令発令前に応援として従事していたフィルター洗浄作業に、本件出向命令発令後も引き続き従事することとなった。
フィルター洗浄作業は、前記のとおり、原告一人で担当する作業であり、直接の上司は板統括主任で、a梱包における他の職場と異なり、フィルター洗浄作業の主任は置かれていない職場であった(甲49)。
原告は、1か月当たり20日の出勤日のうち、15日程度はフィルター洗浄作業に従事し、残り5日は他の職場を応援するなどしている(甲50)。
(8)  被告及びa梱包における労働条件等の比較
ア 被告及びa梱包の両社における労働条件等の主要な差異についてみると、まず、勤務場所は被告名古屋製造所構内であるため、本件出向前後を通じて、原告の通勤手段や通勤時間は基本的に変更がないと認められる(原告本人、弁論の全趣旨)。
また、賃金については、本件出向協定により、出向前と同額が保証されており、出向前後を通じて原告の賃金に変更はないと認められる(証人B、原告本人)。
イ 本件出向命令発令当時、被告とa梱包において、実働時間数は同じであったが、a梱包の方が被告よりも休憩時間が30分長かったため、拘束時間も30分長いものとなっていた。なお、平成10年5月6日以降、被告における休憩時間が15分延長されたため、上記拘束時間の差は15分に縮まった(証人B、原告本人)。
ウ その他、原告の労働条件について、出向前後を通じて、着目すべき変更点は特に見られない。
(9)  出向離籍制度等
ア 被告は、平成5年11月25日、本件組合に対して、選択定年制度及び出向離籍制度に関する申入れをした。
選択定年制度とは、被告従業員が年齢満50歳以降、所定定年年齢(満60歳)到達前に、転身のため退職を希望する場合、退職金制度において、〈1〉満60歳まで勤続したものとみなした勤続年数を適用する、〈2〉同様に満55歳以上の者に対しては、1年分の収入を限度に満60歳までの残余収入の2分の1を更に加算するというものである。
出向離籍制度とは、他社に出向中の被告従業員のうち、〈1〉年齢満59歳以上の者、〈2〉年齢満55歳以上の者で、本人が離籍を申し出た者のいずれかで、被告及び出向先会社の双方が、離籍することが適当であると認めた者は、所定定年年齢(満60歳)到達前に被告を離籍することとし、退職金について、前記選択定年制度に準じて優遇措置を設ける制度である(乙9)。
イ 本件組合は、被告からの上記各制度の申入れについて、各制度の運用上、当事者の意思の尊重等、適正な運用を求めるとしながらも、その趣旨は理解できるとして、平成6年1月25日、申入れを受諾した(乙9)。
ウ その後、出向離籍制度における離籍年齢は、満58歳以上と引き下げられ、さらに、平成12年3月15日、被告は、本件組合に対し、出向離籍制度の対象者を「年齢満50歳以上の出向者が出向先会社への離籍を申し出て、当社並びに出向会社が認めた者とする。」旨の改定を申し入れた(甲124)。
エ 上記の出向離籍制度導入に伴い、それまで実施されていた、給与調整制度(定年延長に伴い、55歳以降60歳まで、基本給が一定割合減額される制度)が廃止された(証人B)。
オ 出向離籍制度の運用上、被告は、離籍する出向者の承諾を得た上で適用してきており、これまでに同制度が適用された労働者は、最終的には離籍を承諾している(証人B)。
2  争点について
(1)  争点(1)(本件出向命令に対する原告の承諾等、本件出向命令を根拠付ける事情の存否)について
ア(ア) 雇用契約は、一般に、特定の指揮監督権者の下での労働力の提供が予定されていると解されるから、使用者は、当然には、労働者を他の指揮監督権者の下で労働に従事させることはできないというべきである。
(イ) そして、民法625条1項が、使用者の権利を第三者に譲渡する場合は、労働者の承諾を要するものとし、債権譲渡の一般規定と異なる制限をしているのは、使用者の権利の譲渡が、労働者からみて、単に義務の履行先の変更にとどまるものではなく、指揮監督権、人事権、労働条件決定権等の主体の変更によって、給付すべき義務の内容が変化し、労働条件等において不利益を受けるおそれがあることから、労働者を保護する趣旨であると考えられる。
(ウ) 本件出向は、原告に対し、被告籍を維持しつつ、a梱包への出向を命ずる在籍出向であるところ、在籍出向は、出向元会社と労働者との雇用契約関係は維持されるものの、労務提供の相手方の変更、すなわち、使用者の権利の全部ないし一部を出向先へ譲渡するものであるから、使用者が労働者に在籍出向を命じるためには、原則として、当該労働者の承諾を要するものというべきである。
そして、ここにいう承諾は、労働者の不利益防止を図るためのものであるから、事前の無限定な包括的承諾のごときは上記趣旨に反するものというべきであるが、逆に、当該労働者の個別的・具体的な承諾がない場合においても、上記趣旨に反せず、承諾と同視し得る程度の実質を有する特段の根拠がある場合には、使用者は当該労働者に在籍出向を命じることができると解するのが相当である。
これに対し、原告は、被告が、本件出向命令発令前後、数度にわたって原告の承諾を求めていた実態からして、本件出向命令についても、原告の個別的・具体的承諾が必要であると主張する。
確かに、被告が、原告に対して、本件出向の承諾を求めて、数度にわたって「出向に関する取扱いについて」と題する書面に署名押印を求めた事実が認められ、また、原告の同僚であるNを呼び出した上、本件出向に関する被告の見解を伝えるなどした事実も認められる。しかし、使用者が労働者に出向を命ずる場合に、できる限り当該労働者の理解・納得を得た上で出向命令を発令しようとすることは自然であり、被告が原告に対して前記署名・押印を求めたという事実やNと本件出向命令についての話をしたことをもって、出向命令の発令には法律上、常に労働者の個別的・具体的承諾を要するということはできない。
また、本件労働協約等締結前においては、作業職組合の組合員が派遣の対象となった際には、作業職組合が、当該組合員を事前に説得し、了解を得た上で業務命令が発令されていた事実は認められるが、これは本件労働協約等締結前の運用である上、派遣を命ずる立場にはない作業職組合が、当該組合員を事実上説得していたにすぎないというべきであること、従前、作業職組合からの説得に応じなかった組合員はいなかったことなどにかんがみれば、上記の運用をもって、組合員の個別的・具体的承諾が、出向や派遣を命ずる際の有効要件であると解することはできない。
イ 以上を前提に、本件出向命令について、原告の承諾の有無について検討する。
(ア) この点、被告は、平成5年9月に原告に出向を打診した際に、原告はa梱包において就労する必要があることに理解を示し、また、応援は飽くまでも臨時的措置であり、近い将来において正式に出向とする旨も告知したことをもって、原告が本件出向命令について概括的承諾をしたものと主張する。
確かに、a梱包で就労する必要性に理解を示したことは、原告自身も陳述しているところであるが(甲50)、a梱包で就労する方法は出向によることに限られないのであり(現に、原告は応援なら応じる旨答えている。)、これが直ちにa梱包へ出向することについての理解を意味するものとはいえない。また、被告が原告に対して、近い将来において正式に出向とする旨告知したことやこの告知に対して原告が了解したことを認定するに足りる的確な証拠もない。
そうすると、被告が主張するような概括的承諾の存在を認めることはできない。
また、被告は、平成5年9月になされた出向打診に対して、原告がこれを拒んだ主たる理由が、本件組合の役員選挙に立候補するためであったとして、役員選挙に落選した以上、原告は本件出向命令に信義則上承諾したものであると主張するが、役員選挙に立候補するというのが原告が出向を拒否した主たる事由であるとしても、そのことをもって直ちに選挙落着後の出向命令に対して、原告が信義則上承諾したものと認めることはできない。
(イ) 結局、本件出向命令に対して、原告が個別的・具体的若しくは概括的に又は信義則上、承諾したとは認められない。
ウ そこで、進んで、本件出向命令に対する原告の包括的承諾ないし承諾と同旨できる程度の実質を有する特段の根拠の有無について検討する。
(ア) まず、被告・本件組合間の労働協約及び被告の就業規則についてみると、本件労働協約等締結以来、「会社は必要により、組合員に異動(出向を含む。以下同じ。)を命ずることがある。」、「業務上必要があるときは異動(出向を含む。)を命ずることがある。」と規定され、本件出向命令発令当時においても、その内容には基本的に変更がない。
また、前記認定の被告における出向制度の運用状況からすると、本件労働協約等締結以前から、事務職組合員の出向や作業職組合員の派遣などの制度が事実上定着していたものと認められ、本件労働協約等締結後においても、出向者の人数は相当数に上っている(前記1(4)イ認定の出向人員数の変遷によれば、生産・技術系の従業員の実働数のうち、本件労働協約等締結時においては12パーセント以上、本件出向命令発令時においては15パーセント以上の従業員が出向している。)。
そして、このような出向の運用状況に加え、特に本件労働協約等は、被告と本件組合との交渉の末締結されたものであり、その規範的効力からして、個々の組合員を拘束するものといえることなどからすると、本件労働協約等は、出向命令に対する承諾と同視し得る程度の実質を有する特段の根拠たり得るものと解するのが相当である。
(イ)a これに対し、原告は、労働組合は、出向に承諾する意思のある組合員の労働条件を改善する権限があるにとどまり、出向に承諾する意思のない組合員に出向を強制する内容の労働協約を締結する権限はないと主張する。
確かに、合理的な理由もなく、出向義務のない労働者にかかる義務を負担させるだけの協約であれば、協約が締結されたことから直ちにこれが出向に承諾しない組合員に対しても適用されるとするのは、労働協約の規範的効力の本来的機能と矛盾するものということができる。
しかし、前記1(2)ウ認定のとおり、本件労働協約等は、全組合員を被告において就労させることが困難な情勢下にあることを前提に、被告社外で就労する者の労働条件等を有利にすべく交渉した結果締結されたものであり、労組法16条の「労働者の待遇に関する基準」に該当するものというべきであって、本件組合の組合員全員に本件労働協約が適用されるべきものと解するのが相当であるから、原告の前記主張は採用できない。
b また、原告は、本件労働協約等締結の経緯等を主張して、本件労働協約等は、出向した場合の労働者の待遇等につき、よるべき基準を定めたものにすぎないと主張するが、本件労働協約自体にその趣旨をうかがわせる格別の規定はない上、上記のとおり、本件組合は、組合員全員を被告において就労させることが困難な情勢であるとの認識の下、本件労働協約等締結に至ったのであり、すなわち、全組合員の雇用を確保するためには、出向等により社外に就労場所を確保することもやむを得ないことを前提として本件労働協約等の締結に至ったものということができる。その意味では、本件労働協約等締結に至った背景には、雇用確保という要請が当然含まれているものである。このような本件労働協約等締結の背景からしても、単に出向者の労働条件の整備にとどまらず、その前段階たる出向の必要性をも理解した上で本件労働協約等が締結されたものというべきであり、原告主張のように本件労働協約等の内容を狭く解さなければならない理由はない。
そして、上記のように、雇用確保という要請が本件労働協約等の締結の背景にあったということからすれば、当然、本件労働協約等において、雇用確保を理由とする出向が想定されていたということができるのであり、本件労働協約等は、雇用確保を理由とする出向命令を法律上理由付ける特段の根拠ということができるのである。本件出向命令は、後記(2)ア(イ)のとおり、被告の経営状態悪化等を直接原因とするものではなく、原告の応援という体制を維持できないことを前提として、原告の昼夜交替勤務拒否に対応するためのものではあるが、雇用確保(就労場所の確保)という目的自体には合致するものであり、本件労働協約等が原告に対して持つ拘束力は、本件出向命令に関しても及んでいるというべきである。
c さらに、原告は、本件労働協約等は、出向先、出向期間、出向先での就労内容が全く特定されていないことをもって、本件出向命令については原告の個別的・具体的承諾が必要であると主張するが、そもそも、労働協約において、出向先、出向期間、出向先における就労内容等を具体的に規定することは困難が伴うものであり、ある程度抽象的な規定にならざるを得ない。
そして、労働協約上の文言が抽象的であることから労働者に不利益が生ずることがあるとしても、現に発せられた出向命令が労働者に過大な不利益を課すものとして、使用者の権利濫用と認められるか否かという観点から判断することにより、適正な解決を図ることができるから、労働協約の文言の抽象性ゆえに直ちに労働協約の拘束力自体を否定して、個別的・具体的な承諾を要すると解するのは相当でない。
d 加えて、原告は、本件労働協約等締結が原告の被告入社以後であること、出向先であるa梱包の設立が原告の入社以後であることを理由に、本件出向命令について原告の承諾はないと主張するが、本件労働協約等締結時において本件組合の組合員であった原告に対し、その効力が及ぶのは当然であり、本件労働協約締結の時期やa梱包設立の時期が原告の被告入社後であることは、本件労働協約等の原告に対する効力を何ら左右するものではない。
e また、原告は、本件組合から本件出向命令についての話があった時期などを根拠に、被告は本件労働協約等を誠実に実施していないとして、本件労働協約は本件出向命令の根拠とはならない旨主張する。
しかしながら、本件労働協約等は、被告が本件組合の組合員の異動につき、本件組合に対して通知すべき時期については何ら規定していないところ、原告は、原告の出向予定日の約10日前である平成6年9月21日には、本件組合から原告に対して話があったと主張しているのであり、これが遅きに失するということはできないし、本件組合への通知が出向予定日の約10日前であったことが、原告に具体的な不利益をもたらしたと認めるに足りる証拠もない。
(ウ) 以上のとおり、本件労働協約等は、承諾に代わる出向命令の根拠となり得るということができる。
エ 結局、被告は、本件労働協約等を根拠に、原告に対し、出向を命じ得るものであるから、原告の個別的・具体的承諾がないゆえに本件出向命令が無効ということはできない。
(2)  争点(2)(本件出向命令は、被告の業務命令権の濫用あるいは公序良俗違反として無効か。)について
ア 争点(2)ア(本件出向命令は、出向の理由となる合理的事情を欠いているか。また、欠いている場合、被告の業務命令権の濫用となる旨の原告主張の当否)について
(ア) 原告は、証人Bの陳述書(乙20)を根拠として、〈1〉関連会社への人的支援のための出向、〈2〉事業拡大のための新会社設立に伴う出向、〈3〉事業の縮小・廃止に伴う出向、〈4〉事業の関連会社等への移管に伴う出向の四つが、被告における出向基準であり、本件出向は上記のいずれにも当たらないから、合理性がなく、被告の権利濫用であると主張する。
しかし、乙20によれば、「当社の事例で言えば…大別されます。」と記載されており、これは、飽くまでも、被告における従前の出向事例を分類したものにすぎないというべきであるから、上記〈1〉ないし〈4〉に該当しない出向命令であっても、直ちに合理性がないものということはできない。
また、そもそも、本件労働協約等において、雇用確保を理由とする出向が想定されていたことは前記(1)ウ(イ)bのとおりであり、このことからしても、前記〈1〉ないし〈4〉が被告における出向の基準であると限定的に解することはできない。
したがって、本件出向命令に合理性がなく、被告の権利濫用である旨の原告の主張は理由がない。
(イ) 次に、原告は、A57機械やスペーサーリング研磨作業について昼夜交替勤務制を採る必要はなく、本件出向命令は必要性がないことから被告の権利濫用である旨主張する。
a 出向命令について、労働協約等、承諾と同視し得る程度の実質を有する特段の根拠がある場合であっても、使用者が、その必要性が全くないのに、労働者に出向を命ずることが許されるわけではないことは、前記民法625条の趣旨からして当然であり、本件労働協約も出向を命ずるに当たりその必要性の存在を明文で規定しているところである。
ただ、上記の必要性の程度については、当該出向命令を発令する以外に全く他の手段がなく、かつ、出向命令の発令を受ける労働者につき、余人をもっては容易に替え難いというような高度の必要性が常に要求されると解するのは相当でない。すなわち、出向を命ずる必要性があることは、労働協約等の出向命令の根拠に加え、当該出向命令によって労働者に不利益を被らせることを正当化する要素となるものであるから、当該労働者が被る不利益の程度によって、要求される必要性の程度も変動するものといわなければならない。
そうすると、当該出向命令により労働者が被る不利益の程度に照らし、同命令の発令が相応の必要性をもってなされたと認められる場合には、同命令の発令が使用者の権利濫用であるとはいえないというべきである。
b そこで、本件出向命令が原告の労働条件に及ぼす影響について、その不利益の程度を検討するに、以下のとおり、その不利益の程度は小さいというべきである。
(a) 本件においては、前記1(8)認定のとおり、原告は、本件出向命令発令前と比べ、拘束時間が30分長くなったと認められる(その後、この拘束時間の差は15分に短縮された。)。
この拘束時間の差は、被告とa梱包の休憩時間の差(a梱包の方が被告よりも休憩時間が長い。)から発生しているものであると認められるところ、休憩時間の長短によって拘束時間が左右される場合、労働者にとっていずれが利益なのかは一概に決することはできない事柄である。
もちろん、無駄な休憩時間が存在するために拘束時間が伸長するというのであれば、労働者にとって不利益ということもできるが、a梱包では立ち仕事が多いため、午前中にも休憩時間をとっていることから、被告における休憩時間よりも長くなっているというのであって(証人M)、その趣旨は十分理解できるものである。
そして、拘束時間の伸張は30分にすぎないことからすると、これを不利益であると評価できるとしても、その不利益の程度は極めて小さいといわざるを得ない。
(b) また、原告は、本件出向命令により、出向者となり、その結果、前記1(9)認定の出向離籍制度の対象者となったことをもって、不利益を被ったと主張する。
確かに、本件出向命令により、原告は出向者たる身分となり、その結果、将来、出向離籍制度の適用を受ける可能性がある。
しかしながら、これを労働条件の変更としてとらえることができるとしても、それは、出向離籍制度により離籍する可能性があるというにとどまり、現実に原告に具体的な不利益が生じているとは認め難い。また、現在のところ、出向離籍制度の適用により従業員が被告を離籍するに際しては、当該従業員の承諾を得るという運用がなされていることからしても、出向離籍制度の存在自体が、原告に対して不利益を生ぜしめているということはできない。仮に、原告が出向離籍制度の適用を受ける際に、原告の承諾を得ずに離籍を強制されたなどという事態が発生したならば、その段階で離籍の効力を争えば足りるというべきである。
したがって、出向離籍制度が存在することのみをもって、原告が労働条件上の不利益を被ったということはできない。
(c) 原告のその他の労働条件については、〈1〉賃金や福利厚生等については本件出向協定により出向前と同様の条件であり、〈2〉出向先であるa梱包は被告と同一構内にあるため、通勤手段も変化がないなど、特段不利益と認められるような変化はない。
なお、本件出向命令によって、原告に対する業務上の指揮命令権は被告からa梱包に移っているが、指揮命令権の移転等の労働環境の変化は、出向命令に通常生ずる現象であり、抽象的にはそれ自体を不利益としてとらえることが可能ではあるが、直ちに原告が具体的な不利益を被ったということはできない。
本件では、指揮命令権が被告からa梱包に移転したことにより、原告が具体的な不利益を被ったと認めるに足りる証拠はなく、また、原告は本件出向命令発令前からフィルター洗浄作業に応援として従事していたのであり、その他の労働環境にも特段変化はないと認められるから、原告が労働環境上の不利益を被ったということはできない。
(d) さらに、原告は、本件組合役員選挙の選挙権・被選挙権を喪失した点を原告の被った不利益として主張する。
i この点、労働条件に直接関係のない、社会生活上の不利益であっても、出向命令の発令によって労働者が被る不利益として考慮する必要がないわけではないが、個々の労働者は、様々な社会生活を営んでいるのであって、出向命令の発令によって生ずるあらゆる社会生活上の変化がすべて労働者の被る不利益として法的保護の対象となるということはできない上、不利益として評価できるものであってもその程度は一様ではない。そして、ある社会生活上の事象の変化が労働者の不利益として評価できるか否かは、第1次的には当該事象が客観的に有する社会的意義により決せられるものであり、当該事象に対する労働者の主観的な価値観や重要性は、これを補完する事情にすぎないというべきである。
ii 労働組合の役員に立候補するという行為は、最終的には、当選後に労働組合役員として被告における労働条件等の改善などを図ることにつながるもので、一定程度の社会的意義を有するものということができるから、労働組合役員の選挙権・被選挙権を喪失することが前記社会生活上の不利益に当たることは否定できない。
iii しかしながら、本件において、原告は本件出向命令発令までの間に合計10回本件組合役員に立候補して、いずれも落選しているところ、原告と当選者の最低得票数との差は前記認定のとおりであって、客観的に見て、原告の当選のがい然性が高いとは到底いえない。そうすると、原告の立候補が直ちに本件組合役員として労働条件等の改善を図ることにつながるものと評価するのは困難であり、原告が本件組合役員の選挙権・被選挙権を喪失するという不利益は、客観的には小さいものというべきである。
iv 原告は、前記1(1)認定のとおり、被告入社後、積極的に労働組合活動をしており、継続的に本件組合役員に立候補している。そして、本件出向を拒んでいる主要な理由も、労働条件の低下というよりはむしろ本件組合役員の選挙に立候補できなくなるという点にあると推認される。
このような原告の従前の活動状況等に照らせば、本件組合役員に立候補することの原告の主観的な重要性は高いといえるが、前記iiiのとおり、本件組合役員の選挙権・被選挙権を喪失する不利益の程度は客観的には小さいのであって、上記のような原告の主観を考慮しても、その不利益性の程度は小さいといわざるを得ない。
c 前記bのとおり、原告が本件出向命令によって被る労働条件上の不利益は、拘束時間が30分延長されるという程度にすぎず、また、社会生活上の不利益は、本件組合役員の選挙権・被選挙権を喪失するというもので、その不利益性は小さいといわざるを得ない。
そこで、以下、これらの不利益性の程度を前提に、本件出向命令発令の必要性について検討する。
(a) 被告は、本件出向命令を発令する1年前である平成5年9月に、原告に対してa梱包への出向を打診し、その際には原告が応援という形態でa梱包に就労することにより、出向命令の発令には至らなかった。そして、本件出向命令は、a梱包に応援中の原告に対して、同社に出向することを命じるものであり、このような本件出向命令発令に至る経緯に照らせば、本件出向命令の必要性の有無を検討するに当たっては、平成5年9月になされた出向打診の必要性をも含めて検討するのが妥当である。具体的には、被告は、A57機械の昼夜交替勤務化が発端となって原告をa梱包へ応援させることとなり、応援という形態が1年間継続した後、応援という形態から出向という形態に変更するために本件出向命令を発令したというのであるから、〈1〉A57機械の昼夜交替勤務化の必要性、〈2〉a梱包に応援させたことの必要性、〈3〉応援という形態から出向という形態に変更する必要性について検討する必要がある。
(b) まず、A57機械の昼夜交替勤務化の必要性について検討する。
i 前記1(7)ア認定のとおり、A57機械は、平成元年6月から平成5年3月までは原告及びDの二人が担当する常昼勤務職場であったが、同年4月から同年9月までは原告が一人で担当していたものであって、原告は、A57機械によるスプール処理本数からみて、同機械を昼夜交替勤務化する必要性はないと主張する。
ii しかし、ある業務について常昼勤務制を採るか、昼夜交替勤務制を採用するかは、その業務量のみではなく、それぞれの場合の経費の比較や、他の関連する業務との関係等、様々な事情を考慮して決せられるものというべきところ、証人Bは、A57機械の昼夜交替勤務化の理由として、スプールを用いる他の機械の稼動時間帯との関係について言及しており、その趣旨は理解することができる。そして、A57機械の前記作業内容からして、必要な本数のスプールを処理してためておけば、常昼勤務職場のまま維持できるとしても、それはいわば理想にすぎないものであり、A57機械が常昼勤務職場であったときに、現にスプールが足りなくなり、夜勤の労働者がA57機械を稼動させてスプールの処理をしていたという実態があったこと、夜勤の労働者から、A57機械を他の機械と同じように稼動させてほしいとの意見があったことからすれば、被告がA57機械を夜間も稼動させるという措置を採ったことについては、相応の必要性があったものと認めることができる。
(c) 次に、原告をa梱包に応援させたことの必要性について検討する。
i まず、被告は、原告に対して、A57機械が昼夜交替勤務化することを告げた上、SH66機械で昼夜交替勤務に従事するよう打診したが、原告は夜勤が身体に悪いことを理由にこれを断ったのであるから、被告としては、原告に対して、その就労に適切な常昼勤務職場を与えるという対応になるのは自然である。
そして、平成5年6月当時、被告名古屋製造所精整工場第1精整ラインには、常昼勤務者がいた職場として、A57機械のほかにSH59機械、SH65機械、SH66機械、PKG4の四つの職場があり、総員137名から事務所配属の5名を除いた132名が各機械に配置され、そのうち125名が3直2交替勤務に、4名が常昼勤務に就き、残り3名は実習として勤務していたことが認められる(甲99)。
そうすると、A57機械以外に上記四つの常昼勤務者のいる職場があったといっても、実習以外で現に常昼勤務に従事していた者は、原告とDを除くと2名しかいなかったことになるところ、当該2名が常昼勤務に従事している理由や実際の勤務状況、欠員の有無等について的確に認定し得る証拠はない。ただ、常昼勤務者数が極めて少ない状況であることに加え、原告自身が、常昼勤務職場としては後記資材班と中小コイル梱包の二つ以外には述べていないことも勘案すると、上記2名が配置されている職場に原告が配置されるということは考え難かったものということができる。
なお、PKG4については、前記認定のとおり、Dが平成5年4月から同年10月まで配置され、常昼勤務に従事した職場であり、同年10月以降、Dの代わりに原告を配置することが考えられないではない。しかし、Dが同年4月からPKG4に配置されたのは、これは夏期の繁忙時に臨時的になされた措置と認められるから(証人E)、Dの代わりに原告を配置するというのも考え難かったものということができる。
以上からすると、前記四つの職場が、原告が就労すべき適切な職場であるということはできない。
また、被告名古屋製造所精整工場内には、平成5年9月当時、前記のほか、資材班、中小コイル梱包の二つの常昼勤務職場があったと認められる(証人E、原告本人)。
これら二つの常昼勤務職場における配置人員数や欠員の状況等を的確に認定し得る証拠はないものの、資材班については、身体に障害等を有する者が配置されていた職場であり、比較的軽度の作業に従事していたと認められるところ、原告が当時身体に障害等を有していたなどという事情は認められない。(なお、この資材班の作業は、その後、a梱包に業務移管されていると認められる〔証人E〕。)。
また、中小コイル梱包の職場は、4組で稼動していたが、常昼勤務職場はそのうちの一組だけであり、その一組も、オペレーターは昼夜交替勤務に入るという措置が採られていたと認められる(証人E)。
そうすると、上記二つの職場は、いずれも原告が就労すべき適切な職場であるとはいい難い。
ii このように、平成5年9月当時、被告名古屋製造所内には原告が就労すべき適切な常昼勤務職場は存在しなかったといわざるを得ず、結局、原告の就労場所を被告社外に求める必要性があったということができる。
そして、a梱包のスペーサーリング研磨業務を原告の職場として選択したことは、前記のとおり、被告名古屋製造所構内での業務であり、通勤手段等も変わらないなど、原告が受ける影響が小さいことからすれば、これが不合理であるとはいえない。
iii この点、その作業内容等について、原告は、従前パートタイムの女性の従業員が従事していた仕事であるとして、原告を配置することが不合理であるかのような主張をするが、原告を被告社外の職場に配置することの主眼は、(障害を有する者を配置するというような人的な条件のない)常昼勤務職場を原告に与えることにあるのであるから、作業内容に関する原告の希望は劣後的な条件とならざるを得ない(原告自身、資材班など、特に作業内容にこだわらずに、「被告社内に就労すべき常昼勤務職場があった」旨主張している。)。
iv そして、原告は、「会社には会社の都合がある」として社外に就労する必要性について一応の理解を示した上で、自ら応援という形態ならばよいと申し出ており、被告はこれを踏まえて原告に応援を命じたのであるから、被告が原告に応援を命じたことについても、相応の必要性・合理性が認められる。
v その後、平成6年7月には原告が応援として従事する作業内容はスペーサーリング研磨作業からフィルター洗浄作業に変わっている。このフィルター洗浄作業は、前記1(7)エ認定のとおり、原告が応援としてこれに従事するようになる前から他社に下請に出されていた作業が、a梱包に移管されたものである。そして、この移管の時期を的確に認定する証拠はないものの、原告がフィルター洗浄作業に応援として従事するようになる時期と比較的近かったものと認められる(原告本人)。
この点、フィルター洗浄作業について他社への下請を取りやめた際、同作業をa梱包に移管せず、被告の作業として取り込めば、応援という形態によらずに原告を被告の常昼勤務職場に配置することができたとも考え得る。
しかし、ある業務を関連会社等に移管するか否かは、当該業務の内容や他業務との関係、業務移管することによるメリット・デメリットだけではなく、移管先の会社の経営状況、業務遂行能力等、様々な要素を総合考慮した上、被告が決定すべき事柄である。その上、フィルター洗浄作業は、前記のとおり原告がこれに従事する以前に、既に他社へ下請に出されていた作業、すなわち移管されていた作業(原告も、他社への下請を「移管」と表現している〔原告本人〕。)であるから、被告にとっては、もはや「被告の業務」ではなくなったものということができ、被告が他社への下請を取りやめる場合、被告自身の業務として取り込むのではなく、「移管先をどこにするか」という観点から対応を検討することは、むしろ自然であるということができる。
そうすると、フィルター洗浄作業をa梱包に移管したことによって、平成6年7月以降も原告の応援という形態が継続したことも不合理であるとはいえない。
(d) さらに、応援という形態から出向という形態に変更する必要性について検討する。
i 原告は、前記の作業内容の変更前後を通じて、1年間応援としてa梱包の業務に従事していたものであるが、応援という形態と、出向という形態との差異についてみると、まず、前記認定のとおり、本件労働協約等締結以前から、応援とは、短期間、自己の担当する業務以外の業務に従事するものであり、その期間は、ほぼ1か月未満(長くても半年程度)であったのであり、一方、出向は、期間の定めがなされず、社外の業務に従事するというものであったから、両者の大きな違いは、その期間の長短にあるということができる。
そして、出向の場合に、本件出向協定によって出向者の身分や労働条件等の取扱いが明確になっているのに対し、他社への応援の場合には、他社の業務に従事するにもかかわらず、労働条件等の取扱いについては応援前と全く異なることがない。その結果、例えば、安全・衛生面において、出向者であれば出向先の会社が当該出向者の安全・衛生面について責任を負うところ、応援者の場合には、応援先の会社の業務に従事しているにもかかわらず、その安全・衛生面についての責任は応援元が負うということになる。
このような出向と他社への応援の差異の根本には、他社への応援は飽くまでも臨時的に他社の業務に従事するものである(だからこそ、短期間に限定され、労働条件等の取扱いも特に整備されていないと考えられる。)という点にあるというべきである。
すなわち、被告において、出向と他社への応援とは、両者とも形式的には被告従業員をして他社の業務に従事させるものであるが、その本質を異にするものであると考えるのが相当である。このことは、本件労働協約等締結後においても、応援という形態により他社の業務に従事するという例が存在することからも裏付けられる。
ii 原告が1年間にわたって応援としてa梱包の業務に従事してきたことは、上記の応援という形態の従前の取扱い(臨時的に、短期間に限って他社の業務に従事するという形態)からすると特異な例であるということができる。
そして、平成5年9月の出向打診時において、原告が応援としてであればa梱包で作業に従事してもよい旨回答したのは、出向となると、平成6年の本件組合役員選挙に立候補できなくなるからであったと認められ、このことが原告の応援期間を長期間とした原因であるといえる。
そうすると、原告が平成6年の本件組合役員選挙に立候補し、落選した以上、原告が応援という形態にこだわった理由は一応解消したというべきであり(その後も引き続き立候補するという意思を原告が有していたであろうことは想像に難くないが、平成5年9月の出向打診時においては、平成6年の選挙に立候補したいということが拒否の主要な理由であったと認めるのが相当である。)、この時点において、被告が、原告の1年に及ぶ応援という特異な状態を是正すべく、正式に出向命令を発令する必要性があったと認められるというべきである。
d 以上からすれば、前記cの原告が被る不利益性の程度に照らして、本件出向命令の発令には、原告の雇用を確保するという相応の必要性があったというべきであり、本件出向命令には必要性がなく被告の権利濫用である旨の原告の主張は理由がない。
(ウ) なお、本件出向命令を発令する相応の必要性・合理性が認められる場合であっても、本件出向命令が被告の不当な意図・動機に基づいて発令されたものである場合には、これを被告の権利濫用として無効と解する余地があると解されるところ、原告は、被告の不当な目的として、労働組合活動の妨害目的、差別目的、あるいは見せしめ、出向強行策実施目的があると主張する。これら不当目的の有無については、後記エ、オ、キでそれぞれ検討することとする。
イ 争点(2)イ(本件出向命令は、経済的合理性とかかわりのない目的でなされたものとして被告の業務命令権の濫用となる旨の原告主張の当否)について
原告は、本件出向命令は、経済的合理性とかかわりのない目的でなされたものであり、業務命令権の濫用として無効であると主張する。
しかし、ある業務命令が、経済的利益を目的としないからといって、直ちに当該業務命令が不合理な目的でなされたものであり、業務命令権の濫用であると認めることはできない。
本件出向命令は、前記ア(イ)cのとおり、原告の雇用確保のために発令されたものと認められるが、このような目的による出向は、景気の低迷、高齢者層の増加等の状況下において、雇用関係を維持して、労働者の生活の安定を図るものとして、相応の合理性を有するというべきである。そして、企業内に就労に適する職場が存在しない場合、これを理由に雇用関係を解消することと比較すると、雇用確保のため企業外の就労場所を提供することは、おのずと当該企業の経済的合理性を後退させることになると考えられるのであって、上記雇用確保の要請と企業の経済的合理性とは、本質的に相反するものというべきである。
そうすると、雇用確保の目的でなされた本件出向命令に、経済的合理性がほとんどみられないからといって、そのことにより不合理な目的でなされたことが裏付けられるということはできない。本件出向命令が原告の雇用を確保するという要請を実現するものである以上、その合理性は十分に認められる。
したがって、原告の前記主張は理由がない。
ウ 争点(2)ウ(本件出向命令は、被告の脅迫的言動の下で行われたものであり、公序良俗に反して無効である旨の原告主張の当否)について
原告は、本件出向命令は、被告の脅迫的言動の下で行われたものであり、公序良俗に反して無効であると主張する。
(ア) この点、前記1(6)エ認定のとおり、平成6年9月16日、Eが、原告に対して、「住友銀行の名古屋支店長がやられたようにお前に恨みを持つYのだれかが刺し殺すぞ。」との発言をし、原告の腹部を指で突いた事実が認められる。
これに対し、証人Eは、そのような言動はなかった旨証言するが、同人が原告と話をした際の状況について、はっきりした記憶がないなどとあいまいな証言をしていること、原告が早期の段階で人事室等にEの言動を訴え出ており、その後も一貫して同様の事実を主張していること、MとNとの面談の際にも同様の話題が出ていることに照らせば、証人Eの証言はたやすく信用することができないというべきである。
(イ) そこで、前記言動があったことを前提に、本件出向命令の有効性を検討するに、原告とE、Fが当日話をしていた時間は、30分以上であると認められるところ(証人E、原告本人)、この間にあった会話が、前記1(6)エ記載のもののみであるとは考え難い。仮にある程度の時間、原告とF、Eが出向命令に対する承諾をめぐって押し問答を続けたとしても、当日の会話の中には、世間話的なものも相当程度含まれていたと認めるのが相当である(上記のとおり、証人Eが脅迫的言動を否定している点は信用し難いものの、Eがそれ以上に、会話内容を積極的に創作しているとまでは認め難く、「いろいろ世間話をした」との証言は、上記の時間的関係からしても、信用することができる。)。
そして、Eの前記発言がどのような経緯でなされたのかについて的確に認定するに足りる証拠はないものの、30分以上にわたる世間話を伴った会話の中での発言であり、その発言内容自体も、出向命令を拒否すれば原告に具体的な危害が及ぶというような現実味のある発言ということはできない(前記認定のとおり、本件組合のR執行委員は、Eの前記発言について「冗談じゃないか。」との反応を示している。)。
もちろん、上記発言が、原告に対して、出向命令に対する承諾を心理的に促す効果を全く持たないものとはいえないが、それは、原告の上司であるEが、上記のような不適切な発言をしてまでも、出向命令に対する承諾を求めるという姿勢をとっているという事実が持つ心理的圧迫にすぎないものというべきであり、真に原告に出向に応じなければ「殺される」などと感じさせるようなものとは認めることができない。
そして、脅迫的言動を用いてまで原告を説得しようとしたという点につき、Eが被告のその旨の意を受けて前記発言をしたと認めるに足りる的確な証拠はなく、また、Eは原告の上司ではあるものの、人事権を一定程度ゆだねられていたなどという事情もないのであって(前記認定のとおり、前記発言のあった2日前である平成6年9月14日に、EとFは原告を呼び出した上で同年10月1日からa梱包に出向するよう告げているが、これはP工場長が出張中のため、Eが対応したにすぎないと認められる上、原告に対する本件出向命令の内示自体は、同年9月22日に、P工場長がなしている。)、Eが本件出向命令の発令手続自体に直接関与したとは認められない。そうすると、Eの前記言動が明らかに不適切なものであることや、前記発言を原告が指摘し、本件出向命令拒否の理由として被告に伝えているにもかかわらず、被告が上記発言の有無について真摯に調査した形跡がないなどの上記発言をめぐる被告の対応について考慮したとしても、Eの前記言動によって、本件出向命令自体が公序良俗に反するとまでいうことはできない。
(ウ) 以上のとおり、Eの前記言動をもって本件出向命令が公序良俗に反する旨の原告の前記主張は理由がない。
エ 争点(2)エ(本件出向命令は、原告の労働組合活動を妨害する目的でなされたものとして被告の業務命令権の濫用となる旨の原告主張の当否)について
原告は、本件出向命令は、原告の労働組合活動を妨害する目的でなされたものであり、業務命令権の濫用として無効であると主張する。
(ア) まず、出向を命じられた本件組合の組合員は、特別組合員となり、本件組合役員の選挙権・被選挙権を喪失することは前記1(5)認定のとおりである。
そして、被告は、〈1〉原告が本件組合の役員に毎回立候補してきたこと、〈2〉原告に出向を命じた場合、原告は本件組合役員の被選挙権を喪失することを了知した上で、本件出向命令を発令したものと認められる(証人M)。
(イ) ところで、本件組合が、特別組合員制度を設置したのは、本件労働協約等を締結する以前は、事務職組合員に出向が命じられた場合、当該組合員は組合籍を離脱することとされていたことから、本件労働協約等締結を機に、出向者も原則として本件組合の組合員としての権利を享受できることとするためであったと認められる(証人O)。
そして、前記1(5)認定のとおり、出向者が組合執行委員となって活動することは事実上無理であるとの認識から、出向者については組合役員の選挙権・被選挙権を喪失することとされた。
これによって、従前は派遣を命じられても組合籍に変動がなかった作業職組合の組合員は、選挙権・被選挙権を喪失するという意味では、結果的に組合員としての権利が後退したということができる。
(ウ) 以上を前提に、特別組合員制度と本件出向命令の有効性について検討するに、そもそも、出向を命じられた労働者の組合員としての立場については、本件組合内部で決定されるべき事柄であるから、被告が特別組合員制度について了知していたとしても、そのことをもって直ちに労働組合活動を妨害する意図に基づくものであると認めることはできない。
この点、原告は、〈1〉c社やd株式会社の従業員が、支部組合員となることとの相違、〈2〉組合専従者の査定や役職等の取扱いを指摘して、本件組合が、被告と協議した上で特別組合員制度を設置しており、被告は特別組合員制度設置にかかわっているから、本件組合内部の問題にすぎないということはできないと主張するが、〈1〉については、主として異動の規模に着目した取扱いであると認められ(証人O)、〈2〉についても、本件組合の専従者の取扱いを理由に被告が特別組合員制度設置という組合内部事項に干渉したと認めるに足りる証拠はない。
ほかに、本件組合が特別組合員制度を設置した際、被告が本件組合と協議するなど、特別組合員制度設置に干渉したと認めるに足りる証拠はない。
(エ) そこで、進んで被告に原告の組合活動(具体的には役員立候補)を妨害する意図があったか否かを検討するに、まず、原告が従前、本件組合の役員選挙に立候補した際の得票数等は、別表2記載のとおりであり、いずれの選挙においても、当選者の最低得票数は、原告の得票数を大きく上回っており、少なくとも、原告が当選する可能性が高かったと客観的に認められる状況にはなかった。したがって、そのような状況からすれば、被告において、原告が本件組合の役員に当選して組合活動を行うことを妨害しようとする意図を持つような状況ではなかったといわざるを得ない。なお、平成6年の本件組合役員選挙において原告の得票数は前回に比べて17票増加しているが、当選者の最低得票数との差はいまだ349票もあるのであって、被告に原告の役員選挙立候補を妨害する意図を生ぜしめるような得票数の増加ということはできない。
また、被告が平成5年9月に原告に出向を打診した際、原告の役員選挙立候補に配慮して、応援という扱いでa梱包での就労を命じたことからすると、被告が、原告の役員立候補の希望に対し、一定の配慮をしていたことは明らかである。
以上によれば、本件出向命令の発令が原告の本件組合役員選挙立候補を妨害する意図を持って行われたものと認めることはできないというべきである。
(オ) 以上のとおり、本件出向命令は、原告の労働組合活動を妨害する目的でなされたものということはできないから、原告の前記主張は理由がない。
オ 争点(2)オ(本件出向命令は、原告に対する差別の一環としてなされたものとして被告の業務命令権の濫用となる旨の原告主張の当否)について
原告は、従前の経緯等を挙げながら、本件出向命令は、原告に対する差別の一環としてなされたものであり、業務命令権の濫用として無効であると主張する。
この点、本件出向命令が原告に対する差別として発令されたものであるか否かは、まず本件出向命令自体に差別的結果や差別的意図が認められるか否かにより判断されるべきものである。なぜなら、仮に従前に労働者に対し差別的処遇をしたとしても、そのことのみをもって、その後に当該労働者に対してなされた業務命令が直ちに差別的処遇であって違法であると断ずることはできないからである。
そして、本件出向命令により差別的結果(他者と比較した場合、客観的に何らかの差異があると認められる状態)が生じていなければ、そもそも本件出向命令が差別的処遇であるということはできない上、差別的意図の存在も通常認め難いものといえるから、まずは、本件出向命令について差別的結果が生じたか否かを検討すべきである。
(ア) まず、前記(1)ウ(ア)記載の被告における出向制度の運用状況からすると、出向命令自体は、被告において通常行われている業務命令であるということができ、出向命令を発令すること自体をもって従業員に対する差別的結果を生ぜしめていると評価することはできない。
(イ)a 原告は、本件出向命令の差別的結果として、〈1〉出向先の職場が一人職場であり、隔離されていること、〈2〉担当業務が従前の原告の経験、習熟等を前提にしたものではない上、従業員を一人配置しなければならないほどの業務ではないこと、〈3〉原告は出向先において役職に就いていないが、原告と同期の養成工出身者はほぼ全員役職に就いていることを挙げる。
b まず、〈1〉については、フィルター洗浄作業は、a梱包におけるほかの職場と離れた場所に作業場があり(証人B)、一人職場であることが特段不自然であるわけではない。特に、フィルター洗浄作業のように、従前から下請に出されていた業務をa梱包に移管する場合には、作業場所が他の職場と離れているという事態は生じやすくなるということができ、一人職場だからといって、これを特殊な職場であるということはできない。
また、原告の直接の上司が主任ではなく、統括主任であることは事実であるが、これをもって、原告に対する特別の監視体制がとられているとか、原告を孤立させていると評価することもできない。
したがって、上記のような事情をもって、原告に差別的結果が生じているということはできない。
c 次に、〈2〉については、前記ア(イ)cのとおり、本件出向命令は、そもそも原告の雇用確保を目的とするものであるから、その意味では、担当業務に対する人選の合理性という問題は生じ得ない。すなわち、原告をどのような業務に就かせるかが問題なのであって、だれを当該業務に就かせるかが問題となっている場面ではない。
もちろん、原告が従事する業務として、当該業務が適切か否かという問題は生ずるが、本件においては、「常昼勤務職場であること」が前提条件であるから、業務内容の適否はおのずと劣後的な条件とならざるを得ないことは前記のとおりである。
そうすると、被告が、ほかに原告を配置すべき適切な常昼勤務職場がありながら、あえて原告をa梱包のフィルター洗浄作業に従事させたなどという事情があれば格別、原告の担当業務の内容から直ちに本件出向命令が差別であると断ずることはできないというべきである。
そして、a梱包社内に、フィルター洗浄作業以外に原告が従事するのに適切な常昼勤務職場が存在することを認めるに足りる証拠はなく、むしろ、原告が本件出向命令発令前から応援としてフィルター洗浄作業に従事していたことを考慮すれば、本件出向命令発令後に原告が同作業に引き続き従事することは相応の合理性があるというべきである。
なお、前記1(7)オ認定のとおり、原告が1か月の出勤日数の4分の3程度、フィルター洗浄作業に従事していることからすれば、フィルター洗浄作業を行う従業員を一人配置することが不合理であるとはいえない。
以上のとおり、本件出向命令発令後の原告の担当業務の状況をもって、原告に差別的結果が生じたということはできない。
d また、〈3〉については、役職に就くか否かは、さかのぼって考えれば、そもそも原告に対する査定結果の累積が影響しているものと認められるが、それは、飽くまでも査定結果を踏まえたポストに就くということであって、それは本件出向命令によって生ずる差異ではないというべきである。
e 以上のとおり、本件出向命令によって、原告に差別的結果が生じているとはいえない。
(ウ) 前記のとおり、本件出向命令によって原告に差別的結果が生じているということはできないところ、差別的結果が生じないような出向命令が、差別的意図に基づくものであるとは通常認め難いというべきである。
この点、原告は、原告の承諾がなく、被告の出向に関する基準にも合致せず、企業(経済的)合理性がない上、脅迫的言動の下で本件出向命令の発令が強行されたという前記原告の主張記載の事情自体、差別的意図の表れであると主張するが、前記(1)及び(2)アないしウのとおり、これらの主張を理由に本件出向命令が無効であると認めることはできないのであり、無効事由に該当するような事情といえない以上、これらをもって被告の差別的意図の表れということもできない。
また、原告は、被告の差別目的として、被告が原告の労働組合活動や労働者有志としての活動、日本共産党の一員としての活動を嫌悪しており、原告を排除することが目的であったと主張する。
しかし、本件出向命令が原告の労働組合活動を妨害する目的で発令されたものと認められないことは前記エのとおりである。
また、前記のとおり、本件出向命令の発令及びその前段階たる応援は、原告の常昼勤務職場の確保を主たる目的としたものと認められるところ、労働者有志としての活動や、日本共産党の一員としての活動自体は、本件出向命令によって排除できるものではないから、本件出向命令が、原告の上記活動を嫌悪して原告を排除する目的で発令されたと認めることはできない。
なお、原告は、本件出向命令発令に至るまでの間、被告が原告に対し、仕事差別、査定差別、役付差別、賃金差別等をしてきていることのほか、原告の広報活動、ビラ配布活動の妨害等、被告には差別体質があることなどを挙げ、本件出向命令も被告の差別的意図に基づくものであると主張する。
原告が主張する上記のような従前の差別的処遇の有無は、本件出向命令の差別性・違法性を判断するに当たっては、単に本件出向命令が差別的意図に基づくものであることを推認させる一事情にすぎず、本件出向命令の差別性・違法性を直接根拠付けるものではないというべきところ、前記のとおり、本件出向命令によって原告に差別的結果が生じているとは認められない上、原告の労働組合活動や日本共産党の一員としての活動を妨害する目的で本件出向命令が発令されたと認めることもできないのであるから、原告主張のような従前の差別的処遇があったとしても、本件出向命令が被告の差別的意図に基づくものであると推認することはできない。
(エ) 以上のとおり、本件出向命令は、原告に対する差別としてなされたものとは認められないから、原告の前記主張は理由がない。
カ 争点(2)カ(本件出向命令は、労働者に責任のない経営上の失敗を労働者に押し付けるものとして被告の業務命令権の濫用となる旨の原告主張の当否)について
原告は、本件出向命令は、労働者に責任のない経営上の失敗を労働者に押し付けるものであり、業務命令権の濫用として無効であると主張する。
確かに、原告の主張するように、被告の酒田進出計画が失敗したことは、その後の被告従業員の労働条件等に少なからず影響を与えたものと認められる(甲47)。
しかし、そもそも、企業がどのような経営方針を採用するかは、その時々の経済動向、業界の状況、当該企業の経営状態等を総合的に考慮した上で、基本的には企業の裁量により決定されるべき事柄であり、また、その経営上の責任は、経営機関が委任者である株主に対して負うことがあるのは別として、労働契約上、従業員に対して当然に法的責任を負うこととなるものではない。
特に、本件出向命令自体により原告が被る不利益の程度は、前記ア(イ)bのとおり過大なものではないことからすれば、仮に、酒田進出計画失敗によって、被告の経営状況が悪化し、そのことが人員削減や出向政策の実施等につながったとしても、それはそもそも本件出向命令の有効性に影響を与える事情とはいえず、原告の前記主張は失当である。
キ 争点(2)キ(本件出向命令は、見せしめのため、出向強行策実施のためになされたものとして合理性を欠き、被告の業務命令権の濫用となる旨の原告主張の当否)
原告は、本件出向命令は、見せしめのため、出向強行策実施のためになされたものであり、合理性を欠くものであって、権利濫用として無効であると主張する。
しかし、本件出向命令発令の主たる理由は、原告の雇用確保にあることは前記のとおりである。仮に、見せしめや出向強行策実施という目的を有していたのであれば、出向命令の対象は原告のみではなく、原告と共に活動をしていたNその他の者であっても構わないと考えられるが、原告以外の者を対象に出向命令発令が検討された形跡はない。また、被告は、原告に対して、本件出向命令発令の1年前である平成5年に、出向の打診をし、最終的にはa梱包への応援を命じているが、このことは、平成5年の出向の打診は、飽くまでも原告の就労場所の確保に重点があったのであり、出向という形態に重きがあったものではないことを示している(もちろん、被告は、労務管理上、安全管理上の様々な理由から、出向という形態が望ましいと考えていたと推認される。)。ほかに、被告が、原告に対する見せしめ、あるいは出向強行策を実施する目的で、本件出向命令を発令したと認めるに足りる証拠はなく、原告の前記主張は理由がない。
ク 争点(2)ク(本件出向命令は、原告が昼夜交替勤務に従事しないことを理由としてなされたものとして、業務命令権の濫用となる旨の原告主張の当否)について
(ア) 原告は、本件出向命令は原告が昼夜交替勤務をしないことを理由としてなされたものであり、被告の権利濫用であると主張する。
しかし、厳密にいえば、本件出向命令は、原告が昼夜交替勤務をしないことを前提に、被告社内に原告が就労すべき常昼勤務職場がないことを理由とするものである。
(イ) ところで、原告は、前記主張と共に、昼夜交替勤務の有害性や被告における労働災害件数の増加等について主張・立証しようとしているが、本件出向命令によって原告が従事する業務は常昼勤務の業務であって、そもそも昼夜交替勤務の有害性が問題となる余地はない。昼夜交替勤務を拒否することの正当性と、適切な常昼勤務職場に配置するための出向命令の合理性とは無関係であるというべきである。
もちろん、昼夜交替勤務に従事しなければ出向を命じられる可能性が高いという意味では、出向する意思のない原告に対して、事実上、間接的に昼夜交替勤務を強制する要因となり得ることは肯認されるが、それは飽くまでも事実上の要因にすぎない。
また、原告からすれば、被告との労働契約関係が存続することを前提にすれば、昼夜交替勤務に従事するか、あるいは出向するかの二者択一を迫られる結果となるが、昼夜交替勤務に就労させること自体をもって違法ということはできない上、本件出向が原告に過大な不利益をもたらすものではないことも前記ア(イ)b判示のとおりであるから、この二者択一を原告に迫ることをもって被告の権利濫用であると認めることはできない。
(ウ) これに対し、原告は、〈1〉そもそも、昭和60年3月まで昼夜交替勤務に従事していた原告から、段取り班配置を機に夜勤を取り上げたのは被告であり、本件出向命令発令に際して、今度は夜勤をしないことを理由とするのは不当である、〈2〉被告には、被告社内に常昼勤務職場を確保する義務があると主張する。
しかしながら、本件出向命令発令時においては、原告は、夜勤を拒んでいたのであり、本件出向命令の有効性について判断する上で、昭和60年当時の段取り班の就労形態が問題となるということはできない。そして、ある職場において昼夜交替勤務制を採用するか否かは、基本的には当該職場の業務量等に基づいて被告が決定すべき事柄であると解されるところ、A57機械について昼夜交替勤務制を採用したのは、前記ア(イ)c判示のような合理的理由に基づくものである。そうすると、A57機械以外に原告の常昼勤務職場を確保するためになされた応援及びこれに続く本件出向命令の発令について、原告が夜勤を拒んでいることを理由としたことをもって不当ということはできず、原告の上記〈1〉の主張は理由がない。
また、確かに、労働者の中には、身体的理由その他により、昼夜交替勤務に従事することができない者が存在することからすれば、一定程度の常昼勤務職場が被告社内に確保されていることが望ましいということはできる。
しかしながら、前記ア(イ)c(c)vで判示したとおり、ある業務を関連会社等に移管するか否かは、様々な要素を総合考慮した上、被告が決定すべき事柄であり、労働契約上、被告が常昼勤務職場を確保する義務を労働者に対して負うものと解することはできない。そうすると、業務移管する旨の決定が労働者の意思に沿わないからといって、直ちにこれが不当と評価されるべきものではなく、被告が本件出向命令発令までに行ってきた業務移管が不当なものであったと認めるに足りる証拠はない。以上によれば、原告の上記〈2〉の主張も理由がない。
ケ 争点(2)ケ(本件出向命令は、原告に不利益を課すものとして、業務命令権の濫用となる旨の原告主張の当否)について
原告は、本件出向命令は、原告に不利益を課すものであり、権利濫用として無効であると主張する。
(ア) 前記ア(イ)のとおり、本件出向命令によって原告が被る労働条件上又は社会生活上の不利益(拘束時間の伸張、出向離籍制度の適用対象者となること及び本件組合役員の選挙権・被選挙権を喪失すること)の程度は小さいといわざるを得ず、また、本件出向命令には、これらの不利益の程度に照らして相応の必要性が認められることからすると、上記不利益を原告に被らせることのみをもって、本件出向命令が被告の権利濫用であるということはできない。
(イ) もちろん、被告が、あえて原告に前記のような不利益を被らせるという不当な意図・動機をもって本件出向命令を発令したなどという事情がある場合には、本件出向命令が被告の権利濫用となる余地はある。
しかし、被告が、あえて原告に対して前記労働条件上の不利益を被らせるという不当な意図・動機をもって本件出向命令を発令したと認めるに足りる証拠はなく、また、原告の本件組合役員立候補を妨害するという不当な意図・動機がないことは、前記エで判示したとおりであるから、結局、原告の前記主張は理由がない。
コ 争点(2)コ(前記アないしケを総合的に判断した場合、本件出向命令は被告の業務命令権の濫用となる旨の原告主張の当否)について
原告は、前記アないしケを総合的に判断した場合、本件出向命令は被告の権利濫用であって、無効であると主張する。
しかし、前記のとおり、原告の前記アないしケの主張はいずれも理由がないものであるから、これらを総合的に判断しても、本件出向命令が被告の権利濫用であると認めることはできない。
サ ほかに本件出向命令の発令が被告の権利濫用に該当し又は公序良俗に反すると認めるに足りる証拠はない。
(3)  争点(3)(本件出向命令は、不当労働行為に該当し無効か。)について
ア 原告は、本件出向命令は不当労働行為に該当し、無効であると主張する。
イ しかし、前記(2)エのとおり、本件出向命令は、原告の労働組合活動を妨害する意図で発令されたものとは認められない。
したがって、そもそも被告に不当労働行為意思があるとは認められないから、原告の前記主張は理由がない。
3  結論
以上の次第で、本件出向命令は有効であると認められるから、原告の請求は理由がない。
よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 橋本昌純 裁判官 夏目明徳 裁判官 大橋弘治)

 

(別紙)
人事部名古屋人事室勤務を命ずる
a梱包株式会社に出向を命ずる

別表1 原告の経歴

期間 配属先 担当機械・業務内容等
〈1〉昭和36年7月1日~ 製造部製板課
〈2〉昭和39年4月1日~ 製造部製板工場アルミライン第2仕上げ SH50・59機械担当
〈3〉昭和47年4月1日~ 製造部製板工場アルミライン熱処理 F60G炉担当
〈4〉昭和51年11月1日~ 板製造部冷延工場製品ライン 梱包担当
〈5〉昭和53年3月1日~ 板製造部冷延工場精整ライン SH80機械担当
〈6〉昭和60年4月1日~ 板製造部精整工場 段取り班
〈7〉昭和61年4月1日~ 板製造部精整工場第1精整ライン 段取り班
〈8〉平成元年6月1日~ 板製造部精整工場第1精整ライン A57機械担当
〈9〉平成5年10月1日~ 板製造部精整工場第1精整ライン a梱包株式会社に応援。同社において、平成5年10月1日からはスペーサーリング研磨作業、平成6年7月6日からはフィルター洗浄作業に従事
〈10〉平成6年10月1日~ a梱包株式会社に異議をとどめて出向し、フィルター洗浄作業に籍を置く。 フィルター洗浄作業、製品梱包作業の応援、板製造部圧延工場進捗ライン活材班への応援(SH23・A57機械担当、大コイル活材処理、返品材の開梱・活材)に従事

別表2 原告の労働組合活動と役員立候補時の得票数

組合活動の内容等 得票数 得票差
昭和46年 組合青年部副部長
昭和47年 同再選
昭和49年 労働組合役員選挙に立候補 176 230
昭和53年 同上 141 330
昭和55年 同上 91 276
昭和57年 同上 50 317
昭和59年 同上 55 311
昭和61年 同上 39 393
昭和63年 同上 37 439
平成2年 同上 47 442
平成4年 同上 89 489
平成6年 同上 106 455

別表3 原告の能力評価

年度 被告主張 原告主張
昭和40年度 B B
41年度 B+ B
42年度 B B
43年度 B B
44年度 B+ B+
45年度 B B+
46年度 B B+
47年度 B B+
48年度 C+ C+
49年度 C C+
50年度 C+ C+
51年度 C+ C+
52年度 C+ C+
53年度 C+ C+
54年度 C C
55年度 C C
56年度 C C
57年度 C C
58年度 C C
59年度 C C
60年度 C C
61年度 C C
62年度 C C
63年度 C C
平成 元年度 C C
2年度 C+ C+
3年度 C C
4年度 C+ C+
5年度 2 2
6年度 2 2
7年度 2 2
8年度 2 2
9年度 2 2

別表4 A57機械によるスプール処理本数

年度 本数
平成4年1月 1524本
2月 1918本
3月 1871本
4月 1750本
5月 1586本
6月 1262本
7月 1298本
8月 1188本
9月 1762本
10月 1788本
11月 1410本
12月 1274本
平成5年1月  884本
2月 1007本
3月 1300本
4月 1031本
5月  963本
6月 1037本
7月 1026本
8月  868本
9月 1016本


「選挙 公報 広報 ポスター ビラ」に関する裁判例一覧
(1)令和元年 5月24日  東京地裁  平28(ワ)17007号 選挙供託金制度違憲国家賠償請求事件
(2)平成30年 7月25日  東京高裁  平30(行ケ)8号 裁決取消請求事件
(3)平成30年 7月20日  福岡地裁久留米支部  平28(ワ)69号 損害賠償請求事件
(4)平成30年 7月18日  大阪地裁  平28(ワ)3174号 懲戒処分無効確認請求事件
(5)平成30年 4月11日  知財高裁  平29(行ケ)10161号 審決取消請求事件
(6)平成29年12月22日  東京地裁  平27(行ウ)706号・平28(行ウ)585号 各公文書非公開処分取消等請求事件
(7)平成29年10月11日  東京地裁  平28(ワ)38184号 損害賠償請求事件
(8)平成29年 8月29日  知財高裁  平28(行ケ)10271号 審決取消請求事件
(9)平成29年 7月12日  広島高裁松江支部  平28(行コ)4号 市庁舎建築に関する公金支出等差止請求控訴事件
(10)平成29年 4月21日  東京地裁  平26(ワ)29244号 損害賠償請求事件
(11)平成28年 9月16日  福岡高裁那覇支部  平28(行ケ)3号 地方自治法251条の7第1項の規定に基づく不作為の違法確認請求事件
(12)平成28年 8月29日  徳島地裁  平27(ワ)138号 損害賠償等請求事件
(13)平成28年 5月17日  広島高裁  平28(行ケ)1号 裁決取消請求事件
(14)平成27年12月22日  東京高裁  平26(ネ)5388号 損害賠償請求控訴事件
(15)平成27年 3月31日  東京地裁  平26(行ウ)299号 投票効力無効取消等請求事件
(16)平成26年 9月25日  東京地裁  平21(ワ)46404号・平22(ワ)16316号 損害賠償(株主代表訴訟)請求事件(第2事件)、損害賠償(株主代表訴訟)請求事件(第3事件)
(17)平成26年 9月11日  知財高裁  平26(行ケ)10092号 審決取消請求事件
(18)平成26年 5月16日  東京地裁  平24(行ウ)667号 損害賠償履行請求事件(住民訴訟)
(19)平成26年 3月11日  東京地裁  平25(ワ)11889号 損害賠償等請求事件
(20)平成26年 3月 4日  東京地裁  平25(行ウ)9号 公文書不開示処分取消等請求事件
(21)平成25年11月29日  東京地裁  平25(ワ)18098号 被選挙権侵害による損害賠償請求事件
(22)平成25年10月16日  東京地裁  平23(行ウ)292号 報酬返還請求事件
(23)平成25年 9月27日  大阪高裁  平25(行コ)45号 選挙権剥奪違法確認等請求控訴事件
(24)平成25年 8月 5日  東京地裁  平25(ワ)8154号 発信者情報開示請求事件
(25)平成25年 3月14日  東京地裁  平23(行ウ)63号 選挙権確認請求事件 〔成年被後見人選挙件確認訴訟・第一審〕
(26)平成24年12月 6日  東京地裁  平23(行ウ)241号 過料処分取消請求事件
(27)平成24年 8月10日  東京地裁  平24(ワ)17088号 損害賠償請求事件
(28)平成24年 7月19日  東京地裁  平24(行ウ)8号 個人情報非開示決定処分取消請求事件
(29)平成24年 7月10日  東京地裁  平23(ワ)8138号 損害賠償請求事件
(30)平成24年 7月10日  東京地裁  平23(ワ)30770号 損害賠償請求事件
(31)平成24年 2月29日  東京地裁  平21(行ウ)585号 公金支出差止請求事件
(32)平成23年 5月11日  神戸地裁  平21(行ウ)4号 政務調査費違法支出返還請求事件
(33)平成23年 4月26日  東京地裁  平22(行ウ)162号・平22(行ウ)448号・平22(行ウ)453号 在外日本人国民審査権確認等請求事件(甲事件)、在外日本人国民審査権確認等請求事件(乙事件)、在外日本人国民審査権確認等請求事件(丙事件)
(34)平成22年11月30日  京都地裁  平20(行ウ)28号・平20(行ウ)46号 債務不存在確認等請求本訴、政務調査費返還請求反訴事件
(35)平成22年11月29日  東京高裁  平22(行ケ)26号 裁決取消、選挙無効確認請求事件
(36)平成22年11月24日  岐阜地裁  平22(行ウ)2号 個人情報非開示決定処分取消及び個人情報開示処分義務付け請求事件
(37)平成22年11月24日  岐阜地裁  平22(行ウ)1号 行政文書非公開決定処分取消及び行政文書公開処分義務付け請求事件
(38)平成22年11月 9日  東京地裁  平21(行ウ)542号 政務調査費返還(住民訴訟)請求事件
(39)平成22年 9月14日  神戸地裁  平21(行ウ)20号 公文書非公開定取消請求事件 〔兵庫県体罰情報公開訴訟・第一審〕
(40)平成22年 5月26日  東京地裁  平21(ワ)27218号 損害賠償請求事件
(41)平成22年 3月31日  東京地裁  平21(行ウ)259号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(42)平成22年 2月 3日  東京高裁  平21(行ケ)30号 選挙無効請求事件
(43)平成20年11月28日  東京地裁  平20(行ウ)114号 政務調査費返還命令処分取消請求事件
(44)平成20年11月17日  知財高裁  平19(行ケ)10433号 審決取消請求事件
(45)平成20年11月11日  仙台高裁  平20(行コ)13号 政務調査費返還代位請求控訴事件
(46)平成20年 3月14日  和歌山地裁田辺支部  平18(ワ)167号 債務不存在確認等請求事件
(47)平成19年11月22日  仙台高裁  平19(行ケ)2号 裁決取消等請求事件
(48)平成19年 9月 7日  福岡高裁  平18(う)116号 公職選挙法違反被告事件
(49)平成19年 7月26日  東京地裁  平19(行ウ)55号 公文書非開示決定処分取消請求事件
(50)平成19年 3月13日  静岡地裁沼津支部  平17(ワ)21号 損害賠償請求事件
(51)平成18年12月13日  名古屋高裁  平18(行ケ)4号 選挙の効力に関する裁決取消請求事件
(52)平成18年11月 6日  高松高裁  平18(行ケ)2号 裁決取消請求事件
(53)平成18年 8月10日  大阪地裁  平18(行ウ)75号 行政文書不開示決定処分取消請求事件
(54)平成18年 6月20日  京都地裁  平16(行ウ)40号 地労委任命処分取消等請求事件
(55)平成18年 1月20日  大阪地裁  平13(行ウ)47号・平13(行ウ)53号・平13(行ウ)54号・平13(行ウ)55号・平13(行ウ)56号・平13(行ウ)57号・平13(行ウ)58号・平13(行ウ)59号・平13(行ウ)60号・平13(行ウ)61号 障害基礎年金不支給決定取消等請求事件 〔学生無年金障害者訴訟〕
(56)平成17年 9月14日  最高裁大法廷  平13(行ヒ)77号・平13(行ツ)83号・平13(行ツ)82号・平13(行ヒ)76号 在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件 〔在外選挙権最高裁大法廷判決〕
(57)平成17年 8月31日  東京地裁  平17(行ウ)78号 供託金返還等請求事件
(58)平成17年 7月 6日  大阪地裁  平15(ワ)13831号 損害賠償請求事件 〔中国残留孤児国賠訴訟〕
(59)平成17年 1月27日  名古屋地裁  平16(行ウ)26号 調整手当支給差止請求事件
(60)平成16年 3月29日  神戸地裁姫路支部  平10(ワ)686号 新日本製鐵思想差別損害賠償請求事件
(61)平成16年 1月16日  東京地裁  平14(ワ)15520号 損害賠償請求事件
(62)平成15年12月15日  大津地裁  平14(行ウ)8号 損害賠償請求事件
(63)平成15年12月 4日  福岡高裁  平15(行ケ)6号 佐賀市議会議員選挙無効裁決取消請求事件 〔党派名誤記市議会議員選挙無効裁決取消請求事件〕
(64)平成15年10月28日  東京高裁  平15(行ケ)1号 商標登録取消決定取消請求事件
(65)平成15年10月28日  東京高裁  平14(行ケ)615号 商標登録取消決定取消請求事件
(66)平成15年10月28日  東京高裁  平14(行ケ)614号 商標登録取消決定取消請求事件 〔刀剣と歴史事件〕
(67)平成15年10月16日  東京高裁  平15(行ケ)349号 審決取消請求事件 〔「フォルッアジャパン/がんばれ日本」不使用取消事件〕
(68)平成15年 9月30日  札幌地裁  平15(わ)701号 公職選挙法違反被告事件
(69)平成15年 7月 1日  東京高裁  平14(行ケ)3号 審決取消請求事件 〔ゲーム、パチンコなどのネットワーク伝送システム装置事件〕
(70)平成15年 6月18日  大阪地裁堺支部  平12(ワ)377号 損害賠償請求事件 〔大阪いずみ市民生協(内部告発)事件〕
(71)平成15年 3月28日  名古屋地裁  平7(ワ)3237号 出向無効確認請求事件 〔住友軽金属工業(スミケイ梱包出向)事件〕
(72)平成15年 3月26日  宇都宮地裁  平12(行ウ)8号 文書非開示決定処分取消請求事件
(73)平成15年 2月10日  大阪地裁  平12(ワ)6589号 損害賠償請求事件 〔不安神経症患者による選挙権訴訟・第一審〕
(74)平成15年 1月31日  名古屋地裁  平12(行ウ)59号 名古屋市公金違法支出金返還請求事件 〔市政調査研究費返還請求住民訴訟事件〕
(75)平成14年 8月27日  東京地裁  平9(ワ)16684号・平11(ワ)27579号 損害賠償等請求事件 〔旧日本軍の細菌兵器使用事件・第一審〕
(76)平成14年 7月30日  最高裁第一小法廷  平14(行ヒ)95号 選挙無効確認請求事件
(77)平成14年 5月10日  静岡地裁  平12(行ウ)13号 労働者委員任命処分取消等請求事件
(78)平成14年 4月26日  東京地裁  平14(ワ)1865号 慰謝料請求事件
(79)平成14年 4月22日  大津地裁  平12(行ウ)7号・平13(行ウ)1号 各損害賠償請求事件
(80)平成14年 3月26日  東京地裁  平12(行ウ)256号・平12(行ウ)261号・平12(行ウ)262号・平12(行ウ)263号・平12(行ウ)264号・平12(行ウ)265号・平12(行ウ)266号・平12(行ウ)267号・平12(行ウ)268号・平12(行ウ)269号・平12(行ウ)270号・平12(行ウ)271号・平12(行ウ)272号・平12(行ウ)273号・平12(行ウ)274号・平12(行ウ)275号・平12(行ウ)276号・平12(行ウ)277号・平12(行ウ)278号・平12(行ウ)279号・平12(行ウ)280号 東京都外形標準課税条例無効確認等請求事件
(81)平成13年12月19日  神戸地裁  平9(行ウ)46号 公金違法支出による損害賠償請求事件
(82)平成13年12月18日  最高裁第三小法廷  平13(行ツ)233号 選挙無効請求事件
(83)平成13年 4月25日  東京高裁  平12(行ケ)272号 選挙無効請求事件
(84)平成13年 3月15日  静岡地裁  平9(行ウ)6号 公費違法支出差止等請求事件
(85)平成12年10月 4日  東京地裁  平9(ワ)24号 損害賠償請求事件
(86)平成12年 9月 5日  福島地裁  平10(行ウ)9号 損害賠償代位請求事件
(87)平成12年 3月 8日  福井地裁  平7(行ウ)4号 仮換地指定処分取消請求事件
(88)平成11年 5月19日  青森地裁  平10(ワ)307号・平9(ワ)312号 定時総会決議無効確認請求、損害賠償請求事件
(89)平成11年 5月12日  名古屋地裁  平2(行ウ)7号 労働者委員任命取消等請求事件
(90)平成10年10月 9日  東京高裁  平8(行ケ)296号 選挙無効請求事件 〔衆議院小選挙区比例代表並立制選挙制度違憲訴訟・第一審〕
(91)平成10年 9月21日  東京高裁  平10(行ケ)121号 選挙無効請求事件
(92)平成10年 5月14日  津地裁  平5(ワ)82号 謝罪広告等請求事件
(93)平成10年 4月22日  名古屋地裁豊橋支部  平8(ワ)142号 損害賠償請求事件
(94)平成10年 3月26日  名古屋地裁  平3(ワ)1419号・平2(ワ)1496号・平3(ワ)3792号 損害賠償請求事件 〔青春を返せ名古屋訴訟判決〕
(95)平成10年 1月27日  横浜地裁  平7(行ウ)29号 分限免職処分取消等請求 〔神奈川県教委(県立外語短大)事件・第一審〕
(96)平成 9年 3月18日  大阪高裁  平8(行コ)35号 供託金返還請求控訴事件
(97)平成 8年11月22日  東京地裁  平4(行ウ)79号・平4(行ウ)75号・平4(行ウ)15号・平3(行ウ)253号 強制徴兵徴用者等に対する補償請求等事件
(98)平成 8年 8月 7日  神戸地裁  平7(行ウ)41号 選挙供託による供託金返還請求事件
(99)平成 8年 3月25日  東京地裁  平6(行ウ)348号 損害賠償請求事件
(100)平成 7年 2月22日  東京地裁  昭49(ワ)4723号 損害賠償請求事件 〔全税関東京損害賠償事件〕


■選挙の種類一覧
選挙①【衆議院議員総選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙②【参議院議員通常選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙③【一般選挙(地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙④【特別選挙(国政選挙|地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)


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