【選挙から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「選挙 ビラ チラシ」に関する裁判例(43)昭和45年 4月 9日  青森地裁  昭43(ヨ)143号 仮処分申請事件 〔青森銀行懲戒解雇事件〕

「選挙 ビラ チラシ」に関する裁判例(43)昭和45年 4月 9日  青森地裁  昭43(ヨ)143号 仮処分申請事件 〔青森銀行懲戒解雇事件〕

裁判年月日  昭和45年 4月 9日  裁判所名  青森地裁  裁判区分  判決
事件番号  昭43(ヨ)143号
事件名  仮処分申請事件 〔青森銀行懲戒解雇事件〕
文献番号  1970WLJPCA04090005

要旨
◆いわゆる赴任拒否闘争は違法かどうかにつき判断した事例
◆赴任拒否闘争を企画、指導、実行したことを理由とする組合委員長に対する懲戒解雇が、解雇権の濫用として無効とされた事例

新判例体系
公法編 > 労働法 > 労働組合法〔昭和二四… > 第一章 総則 > 第一条 > ○労働組合の行為と正… > 正当な行為の意義及び… > (二)争議行為 > D 方法 > (5)その他の争議行… > (ロ)正当でないとし… > 赴任拒否・旧任地での強制的就労
◆赴任拒否闘争は、単に新任地に赴任しないという限度では、ストライキ的争議手段と解しうるが、さらに進んで使用者の就労拒否命令を排除し旧任地で強制的に就労する場合は、使用者の人事権を無視し、これを組合において行使しようとするものであるから、その闘争期間がきわめて短期間であるとかの特段の事情がないかぎり、違法となると解される。

 

出典
労民 21巻2号492頁
労経速 715号19頁

評釈
中嶋士元也・ジュリ 481号147頁

裁判年月日  昭和45年 4月 9日  裁判所名  青森地裁  裁判区分  判決
事件番号  昭43(ヨ)143号
事件名  仮処分申請事件 〔青森銀行懲戒解雇事件〕
文献番号  1970WLJPCA04090005

債権者 佐藤寿々雄 外一名
債務者 株式会社青森銀行

 

主  文

債権者佐藤が債務者に対し雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める。
債務者は債権者佐藤に対して昭和四三年九月以降毎月五日限り一か月金五二、六五二円の割合による金員および毎年六月一〇日、一二月一〇日限りそれぞれ金一五六、一六〇円の割合による金員を仮に支払え。
債権者佐藤のその余の申請を却下する。
債権者伊勢谷の本件申請を却下する。
申請費用中、債権者佐藤と債務者との間に生じた分は債務者の負担とし、その余は債権者伊勢谷の負担とする。

 

事  実

第一  当事者双方の求める裁判
債権者佐藤は、「債権者佐藤が債務者に対し雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める。債務者は債権者佐藤に対して昭和四三年九月以降毎月五日に金五三、九一二円、毎年六月一〇日、一二月一〇日に各金一七二、五一四円を仮に支払え。申請費用は債務者の負担とする。」との裁判を、
債権者伊勢谷は、「債権者伊勢谷が債務者に対し雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める。債務者は債権者伊勢谷に対して昭和四三年九月以降毎月五日に金五七、四三三円、毎年六月一〇日、一二月一〇日に各金一八三、七八五円を仮に支払え。申請費用は債務者の負担とする。」との裁判を、
債務者は、「債権者らの申請をいずれも却下する。申請費用は債権者らの負担とする。」との裁判を
それぞれ求めた。
第二  当事者双方の主張
債権者両名は、申請の理由として別紙第一の「申請の理由」書記載のとおり述べ、債務者は債権者両名の職歴、給与、組合歴について別紙第二書面記載のとおりの答弁をし、且つ別紙第三書面記載のとおり述べた。
第三  疎明資料〈省略〉

 

理  由

第一  債権者佐藤について
一  債務者銀行においては昭和二二年労働組合が結成され、積極的に組合活動を推進して、上部団体である全国地方銀行従業員組合連合会(地銀連)、青森県内の中小企業労働組合の中でも指導的立場に立つようになつたこと、しかして、昭和四〇年五月に至り当時の組合執行部の運動方針に反対の組合員が多数右組合から脱退して新たに第二組合である青森銀行従業員組合(以下単に「従組」という。)を結成し、かくして、それ以降は従前の労働組合(以下単に「労組」という。)と従組の二組合が併存してきたこと、ところで、債権者佐藤は債務者銀行に昭和二四年九月一日入行し、分裂前の労組の副委員長や執行委員を歴任したうえ、昭和四一年八月以降は労組の委員長の地位にあつたが、労組において昭和四二年四月一日付の債務者銀行における定例人事異動に関連して、労組員である石川桂子および白取忠一郎の青森市内店への転勤を要求し、右要求貫徹のため、労組員の人事異動対象者のうち二六名につき赴任拒否をさせるなどの争議行為(以下「本件争議行為」という。)をなしたところ、債務者銀行は、右争議行為は違法、不当のものであつて、労組委員長としてこれを企画、指導、実行した債権者佐藤の行為は職員就業規則第九二条第一号所定の懲戒事由に該当するとして、同債権者を昭和四三年八月九日付(同月一三日到達)書面をもつて懲戒解雇する旨の意思表示をなしたことはいずれも当事者間に争いがない。
二  債権者佐藤は、本件争議行為は正当のものであるから、右解雇は理由がなく無効のものである旨主張するので、まず本件争議行為の経過について考察する。
(1)  組合分裂後の労組と債務者銀行の関係
成立に争いのない疎乙第九号証の二、三、証人柏原和夫の証言(第一回)、同証言により真正に成立したものと認められる同第九号証の一、四、証人岩谷信夫、同小野隆平の各証言、同各証言により真正に成立したものと認められる乙第一一号証、同第一二号証に弁論の全趣旨を併わせると、昭和四〇年五月四日当時の労組員約一、三〇〇名のうち八六名が、当時の労組執行部の運動方針が政治偏向、極左偏向であるとして労組から脱退し、新たに健全な労使関係の確立をはかるという趣旨のもとに従組を結成し、その委員長に岩谷信夫が選任されたこと、かくして、従組が結成されるや、労組を脱退し従組に加入する者が続出して同年五月末には従組員数は約九四〇名にも達し、まもなく組合員数の四分の三以上が従組に所属するに至つたこと、これに対し少数組合となつた労組は、組合の分裂は債務者銀行の支配介入によるものであるとして青森地方労働委員会に不当労働行為救済の申立をなし、かくして同委員会においては昭和四〇年(不)第二号事件として昭和四二年三月二五日までに二〇回に亘る審問を終了して、当事者双方に最終陳述書の提出を求めたところ、労組は右陳述書を提出することなく同年七月二九日右救済申立を取下げるに至つたこと、かようにして、組合分裂後債務者銀行と労組は対立してきたが、これに対し従組は健全な労使関係の確立をはかるという名のもとに債務者銀行に協調的な態度を維持してきたことがそれぞれ認められる。
(2)  石川桂子の青森市内店への転勤要求について。
証人石川桂子の証言、同証言により真正に成立したものと認められる同第四九号証、証人竹林孝の証言、同証言により真正に成立したものと認められる同第四号証、同第四一号証、証人柏原和夫の証言(第二回)、同証言により真正に成立したものと認められる疎乙第二六号証、証人角田米徳、同小島文男、同飛内十四雄の各証言、債権者佐藤本人尋問の結果(第一、二回)に弁論の全趣旨を併わせると、債務者銀行の十和田支店に勤務していた労組員石川(当時江渡)桂子は昭和四一年一一月青森市内に居住し電々公社青森電気通信部に勤務していた石川幸男と婚約し、昭和四二年五月に結婚する予定であつたので、結婚後は同人との同居生活を送るため青森市内とくに同人の自宅に近い同市内浦町支店への転勤を希望するに至つたこと、そこで、労組十和田分会もこれを支援し、同分会の要求として同年二月二三日十和田支店で行なわれた職場協議会において同支店長に右転勤の実現を取りはからつてくれるよう申し入れたこと、ところで、債務者銀行においては本来女子行員は親許から通勤できる範囲内の店に配属させるという方針で雇用している関係上、女子行員が転勤することは少ないのであるが、従来は女子行員から結婚などの個人的な事情により転勤希望がだされた場合これを認めてきた事例がかなり存在すること、しかしながら、この種の転勤の大部分は業務上の必要性に基づき債務者銀行人事部の立案によるものではなく、縁故関係など恩恵的な特殊のルートを通じて認められてきたものであるところから、かような例外的転勤を一般的に認めることは企業の合理的運営および適正公平な人事異動に支障を来たすので、昭和四一年四月から人事部内部においてこれを廃止することが論議されるようになつたこと、かくして同年一二月債務者銀行本店資金部に勤務していた猪狩真子(従組員)から結婚による仙台支店への転勤希望が出されたことを契機とし、昭和四二年一月人事部においてこれまで認めてきた結婚だけによる転勤は廃止し、人事異動については従業員の個人的事情を考慮はするが、その事情のみによる転勤は認めず、あくまで経営の必要性に基づいて行う旨の方針を決定したこと、かくして、人事部から右方針決定の連絡を受けた前記十和田支店長は前記石川桂子にその希望している転勤の実現が困難である旨の回答をしたこと、そこで、労組においては同年三月九日および同月一八日に行われた本部団交において転勤と従業員の生活条件をめぐる問題として石川桂子の転勤の件を取りあげて、これを要求したが、これに対し債務者銀行側は、当時の人事担当重役角田米徳および人事部次長柏原和夫らが、前記確定した人事方針の趣旨を説明し、今後は結婚など個人的事情のみによる例外的恩恵的転勤は認めない旨回答したこと、なおその頃石川と同様に結婚を理由として従組員渡辺洋子、山田笑保らも転勤希望を出したがいずれも右方針により認められなかつたことがそれぞれ認められる。
(3)  昭和四二年四月一日付人事異動に関する労組と債務者銀行の対立
成立に争いのない疎甲第二三号証、同第二五号証、同第二六号証、証人柏原和夫(第二回)、同葛西寛治の各証言、債権者佐藤本人尋問の結果(第二回)に弁論の全趣旨を併わせると、債務者銀行は昭和四二年四月一日付で総員一〇七名の人事異動を発令したが、このうち労組員は三五名含まれていたこと、しかして労組が要求した前記石川桂子の青森市内店への転勤は認められず、加えて労組員白取忠一郎は青森市内店への転勤を希望していたにもかかわらず、遠隔地の大間支店へ転勤を命ぜられたところから、労組においてはこれは不当人事であるとして直ちに同日中央委員会を開催して同盟罷業権を除く一切の争議指令権を有する中央闘争委員会(中央委員会構成員により構成される。)を設置し、債権者佐藤が右委員長となつて争議体制を確立したこと、そして同委員会は同月三日に(1)石川桂子を青森市内本支店へ転勤させること、(2)白取忠一郎に対する大間支店への異動辞令を撒回し、本人の希望する青森市内本支店へ転勤させること、(3)中央委員に対する異動辞令を撒回し、従来の慣行どおり労働組合に対して同意を求めること、(4)全従業員の結婚のために希望する転勤を認めること、以上四項目の要求を決定するとともに、右要求貫徹のため労組員の異動対象者の赴任を拒否する戦術を行使することを内定してこれを労組員に通知連絡したこと、かくして、同月六日の団体交渉において労組は債務者銀行に対し前記四項目を記載した書面(疎甲第二五号証)を提出してこれが実現を要求したが、その際労組からとくに主張し要望されたのは前記事由による石川桂子の転勤と白取忠一郎の転勤先変更の二件であつたこと、これに対して債務者銀行は、石川桂子の転勤については前記確立した人事方針により認められない旨および白取の大間支店への転勤命令は業務上の必要性に基づくものであり、且つ右転勤は同人の家庭生活に支障を来たすものではない旨後記(4)認定のとおりの回答をなし、さらに第三項目の要求に対しては労組の役員および支部長の人事異動についてはこれまでの慣行上事前に労組と協議をするが、そのわくを拡大して執行委員全員を事前協議の対象とはできない旨並びに第四項目の要求に対しては結婚などの個人的事情のみによる転勤は認めない旨それぞれ回答し、労組の要求事項をいずれも拒否したことがそれぞれ認められる。
(4)  白取忠一郎の家庭事情および転勤問題
証人笹木義政の証言、同証言により真正に成立したものと認められる疎乙第三八号証の一ないし三、同第三九号証、証人柏原和夫の証言(第二回)に弁論の全趣旨を併わせると、白取忠一郎は、昭和三〇年に妻弘子と結婚し、青森市原別八〇番地の自宅に同居生活を送り、妻との間に二女を儲けたが、昭和三四年頃から他の女性高田良子と同棲し、昭和三七年頃からは同女とともに青森市内のアパートで生活を送るようになり、自宅には全く寄りつかず妻子や実母の面倒を見ることもなく、経済的な仕送りもしなくなつたこと、そのため妻子の生活は妻弘子が電々公社青森電話局に勤務して得る給料によりまかなわれてきたこと、ところで、昭和四一年末に右弘子は白取の勤務していた小湊支店を訪ずれ同人の給料、借金などのことについて尋ねた際、右のような家庭事情を説明して、夫が前記高田良子と別れる契機になるかもしれないから青森市内から離れたところへ転勤させてもらえないかとの希望をもらし、さらにその後昭和四二年一月には人を介して当時の債務者銀行の笹木人事部長に対し正式に右希望を申し入れてきたこと、そこで白取の転勤先決定に際しては右のような家庭事情も参考にされたこと、それ故前記四月六日の団体交渉において労組から白取については妻が電々公社青森電話局に勤務し、一三才、一〇才の子供と老母をかかえているという家庭事情から、同居不可能の地への転勤命令は同人の家庭生活を破壊するという理由で大間支店への転勤命令を撒回し、青森市内店への転勤を要求された際、債務者銀行は前記のような同人の家庭事情の大筋を説明し、大間支店への転勤は同人の家庭生活に支障を来たすものではなく、かえつてその家庭関係を正常化させるのに役立つものである旨回答したことがそれぞれ認められる。
(5)  赴任拒否戦術について
成立に争いのない疎甲第五号証の二の二ないし一四、同第五号証の二の三の三ないし九、同第五号証の四の二ないし二三、同第五号証の五の二ないし一九、同第五号証の六の二ないし二〇、同第二三号証、同第四二号証の二ないし四、疎乙第一号証、同第二八号証ないし同第三〇号証、同第三一号証の一ないし一〇、証人葛西寛治の証言、同証言により真正に成立したものと認められる疎甲第四二号証の一、証人柏原和夫の証言(第二回)、同証言により真正に成立したものと認められる疎乙第二七号証、債権者佐藤本人尋問の結果(第二回)に弁論の全趣旨を併わせると、債務者銀行の職員就業規則第二九条には「転任を命ぜられた者は発令の翌日から一週間以内に赴任しなければならない」旨規定されているところ、労組は前記要求がいずれも債務者銀行から拒否されたことから、右要求貫徹のため労組員の異動該当者三五名のうち二六名(転勤の承諾者を含む)に対し同日以降赴任を拒否すべき旨の闘争指令を発し、その結果右二六名が新任店への赴任を拒否し旧任店で就労する闘争に入つたこと、ところで、労組においては昭和三二年当時の労組青年婦人部東青支部長であつた行員淡谷啓一の本店営業部から函館支店への転勤命令が労組の組織の弱体化を意図した不当な人事であるとして同人の赴任を約三か月拒否させたのを契機としてそれ以降争議戦術として赴任拒否戦術を採用してきたこと、しかして、これまで行使されてきた赴任拒否戦術は右淡谷啓一の件の如く、当該異動対象者のみに赴任を拒否せしめる型態と、他は昭和三六年から同三九年にかけての毎年四月の定期人事異動に関連し、いわゆる春闘として賃上げその他経済的要求を中心とした闘争の戦術として人事異動命令それ自体には争いはないのに労組員の異動対象者全員について赴任を拒否せしめた型態が存在したこと、もつとも債務者銀行は後者の闘争型態についてはあらかじめ赴任拒否戦術の行使を予期して一般行員については定期的な四月の発令日を春闘が終了した五月もしくは六月にずらすとかの措置を講じたので形式的には赴任を拒否した者は四月一日付で発令された役付行員に昇格した組合員に限定されていたこと、ところで、かような赴任拒否戦術の行使に対し、債務者銀行は昭和四〇年までは労組の役員および赴任拒否者に対し賃銀カツトや懲戒処分など何らの処分をもなさなかつたが、組合分裂後の昭和四一年四月の定例人事異動に際し労組が労組員中里祝彦、同藤田忠、同佐藤道夫、同吉田昭二、同小杉育三の五名の人事異動命令は労組の組織の弱体化を狙つた不当なものであるとして右五名に赴任を拒否せしめるや、従来のように穏便に譲歩することなく、労組および赴任拒否者に対し早期赴任するよう催告するとともに書面でもつて旧任店での就労を拒否し新任店に着任するまでの賃金を支払わない旨通告し、さらには赴任拒否は就業規則違反である旨警告する措置を講じ、そして前記小杉育三に対しては賃銀カツト処分をも行なつたことがそれぞれ認められる。
(6)  赴任拒否闘争に関連して発生した紛争
前記疎甲第四一号証、証人飛内十四雄の証言、同証言により真正に成立したものと認められる同第四四号証、証人小倉三生の証言、同証言により真正に成立したものと認められる同第五〇号証、証人本間伯治の証言、同証言により真正に成立したものと認められる同第四三号証、証人小林岑生の証言、同証言により真正に成立したものと認められる同第五一号証、証人小島文男の証言、同証言により真正に成立したものと認められる疎乙第三二号証、証人葛西孝の証言、同証言により真正に成立したものと認められる同第三三号証、証人長尾五十二郎の証言、同証言により真正に成立したものと認められる同第三四号証、証人葛西寛治、同柏原和夫(第二回)の各証言、債権者佐藤本人尋問の結果(第二回)に弁論の全趣旨を併わせると、前記のとおり労組は四月八日以降赴任拒否闘争に入つたが、さらに同月一一日不当人事反対闘争に関するストライキ権確立のための投票を行い、同月一四日賛成多数でストライキ権が確立され、これに基づき同月二〇日には三〇分間の時限ストが行われ、さらに債務者銀行が後記のとおり同月一一日に旧任店での就労拒否の命令を打出したところから、その就労をめぐつて次のとおり各支店で職場交渉や時限ストが行われたことがそれぞれ認められる。
(イ) 古川支店における状況
同支店の労組員本間怕治は、新町支店に転勤を命ぜられたが、労組の指令により赴任を拒否し、同月一三日まで従前担当していた貸付係の事務に従事していたが、同日一四日同支店長から、同日以降の同支店での就労は認めない、新町支店に赴任するよう命令されたところから、これに抗議するため労組の石崎執行委員および松谷分会長の両名が同支店長に職場協議会の開催を要求したが、同支店長がこれを拒絶したので、労組古川分会において同日午前一一時三〇分から一二時一五分までおよび午後一時四〇分から同四時までの間それぞれ同支店の労組員全員が職務を放棄してストライキを行い、かように紛争を重ねた結果、同月一五日には本間の従前座つていた席には後任者が座つて、従前の本間の職務を担当するようになり、同月一七日以降本間は一定の職務を与えられず、用務員席などに座つていた。
(ロ) 新町支店における状況
同支店の労組員武藤篤司は浪岡支店に転勤命令になつたが労組の指令により赴任を拒否したが、四月一四日同支店長から同支店での就労を拒否され、これまで担当していた為替計算課における職務を取りあげられたところから、同支店の労組員が同日午前九時三〇分から同一〇時三五分までの間職務を放棄してストライキを行い、同支店長に対し武藤に職務を与えるよう抗議し、そのため店内の混乱を恐れた同支店長はストライキ解除後武藤が勝手に仕事を始めたのに対し実力でこれを排除しなかつたが、同日午後四時から開かれた職場協議会において武藤の同支店での就労は今後拒否する旨言明して、それ以降同人に職務を与えなかつたので、同人は同月一七日以降は同支店に出勤しない日もあり、同支店に出勤しても空席に座つたり、外出したりしていた。
(ハ) 十和田支店における状況
同支店の労組員飛内十四雄は三沢支店に、同工藤龍雄は白石支店にそれぞれ転勤が命ぜられたが、いずれも労組の指令により赴任を拒否していたので、四月一四日同支店長から同支店での就労を拒否する旨命令され、同月一五日以降はそれまで担当していた職務を取りあげられたが、同月一八日前記飛内が同人の旧席である出納窓口に座つて出納事務に従事しようとしたところから、これをめぐつて同支店の役席行員と労組員とが口論し、そして同日午前九時三〇分から同支店労組員六名が飛内らの就労を要求して一〇分間の時限ストライキを行い、その後直ちに同支店長に対し職場協議会の開催を要求して、同日午後四時から右協議会は開かれたが、双方の主張は平行線をたどり、かくして同日かなりの混乱があつたが、翌一九日以降はさしたる紛争もなく飛内と工藤は空席に座つたり外出したりしていた。
(ニ) 本店営業部における状況
同部の労組員小倉三生は、栄町支店へ転勤を命ぜられたが、労組の指令により赴任を拒否し、再三に亘る同部長の就労拒否の命令にも従わなかつたので、四月二七日同部長は小倉の机を他室に片つけてしまつたところ、同月二八日午前九時一〇分頃から労組員約一〇名が同部長を取り囲んで約二〇分間小倉の机を片づけたことに対し抗議し、小倉の就労を要求して混乱が生じたが、同部長は右要求を拒否したので、小倉は、翌日以降同部に姿を見せなくなつた。
以上のとおり、上記各支店および本店営業部においては就労拒否をめぐつて時限ストライキの行使などにより混乱と紛争があつたことが認められるが、他方その他の支店においては格別の紛争、混乱をもたらすことなく、赴任拒否者がかなりの日数従前の席にてそれまでの事務を担当していたり、また席を移転せられた後も平常通り出勤していたことが窺える。
(7)  労組の宣伝活動
前記疎甲第四三号証、同疎乙第三二号証、成立に争いのない同第七号証の一ないし四、証人柏原和夫の証言(第二回)、債権者佐藤本人尋問の結果(第二回)に弁論の全趣旨を併わせると、労組は赴任拒否闘争に付随して、労組名義の数種のビラやチラシを多数作成し、これを青森県内において通行人などに配付するなどして宣伝活動を推進したこと、そのビラの一種(疎乙第七号証の一)には「青森銀行でも始まつた人員整理人事」との見出しが付せられ、不当人事異動の事例として、(イ)結婚のための転勤希望を認めないために退職せざるを得ない例、(ロ)婚約中の二人を離し汽車で三時間もかかるところへ転勤させた例、(ハ)病弱の母と二人の子を残して青森から大間へ転勤という例、(ニ)既婚婦人が往復二時間もの遠距離通勤をしなければならない例とそれぞれ記載されていること、また他のビラ(疎乙第七号証の二、三)には「青森銀行で首切り人事について賃銀不払いもでる。」との見出しが付せられ、債務者銀行は結婚や通勤などの家庭事情を全く考慮しない人事異動を行つている旨の文言およびこれに対する抗議の文書が記載されていることがそれぞれ認められる。
(8)  本件争議行為に対する債務者銀行側の態度
成立に争いのない疎乙第二号証の一ないし二六、同第三号証ないし同第六号証、証人柏原和夫の証言(第二回)に弁論の全趣旨を併わせると、債務者銀行は、四月一一日付で赴任拒否者に対し、「四月一四日までに新任地に着任すること、同日までに着任しない場合には同日以降の旧任店における就労を拒否し、同日以降新任店に着任するまでの賃銀を支払わない。」旨の催告書(疎乙第二号証の一ないし二六)を送付し、且つ右趣旨の指令を各支店長に発して旧任店での就労を拒否する措置を講じさせ、また同月一五日にも右と同旨の催告書(疎乙第三号証)を送付し、且つ労組に対し「本件赴任拒否闘争は正当な組合活動とは認められず、かかる不当な組合指令を出している組合執行部の責任を追求し、またこれに盲従している当該労組員に対し処分の権利を留保する。」旨の同日付警告書(疎乙第四号証)を発し、さらに同月二七日にも右と同旨の催告書(疎乙第五号証)および警告書(疎乙第六号証)を発したことが認められる。
(9)  本件争議行為の終結
前記疎甲第四一号証、証人葛西寛治の証言、債権者佐藤本人尋問の結果(第二回)に弁論の全趣旨を併わせると、労組は同年五月二日闘争資金の問題もあるところから中央闘争委員会でこれまでの情勢を分析し、結局赴任に応ずることを内容とする戦術変更方針を決定、同月六日の全組合員投票にもとづき、同月八日赴任拒否者二三名(当初の赴任拒否者二六名のうち三名については四月一七日労組において赴任拒否指令を解除した。)全員について同月一〇日以降赴任拒否指令を解除する旨の指令を発し、その結果同月一日赴任拒否闘争は終結するに至つたことが認められる。
三  次に右認定事実に基づき、本件争議行為が違法のものであるか否かにつき判断する。
本件争議行為が正当視され得るためにはその目的が不当のものではなく且つその手段方法が右目的達成に照らし相当なものであることを要するので、以下その目的と手段、方法の正当性につき検討する。なお債務者は、本件争議行為については労組規約上の争議行為開始の手続が履践されていないことを理由としてこれが違法のものである旨主張するが、労組の組合規約(疎甲第二六号証)第七二条には労働組合法第五条第二項第八号の規定に従がい「同盟罷業の開始および終結は組合員の直接無記名投票によつて組合員総数の過半数による決定を経なければならない」旨規定されているが、その余の争議行為については何ら規定されていないところ、前記(二の(3))認定のとおり労組においては同盟罷業を除く争議行為開始の決定権限は慣行上中央委員会に付託されていたのであるから、四月八日に発せられた赴任拒否指令を手続違反と解することはできないし、且つ同月一四日には労組員の投票により賛成多数でストライキ権が確立されたことは前記(二の(6))認定のとおりであるから、手続上の瑕疵を理由とする右債務者の主張は採用できない。
(一)  本件争議行為の目的について
前記(二の(2)ないし(4))認定事実によれば本件争議行為は石川桂子の青森市内店への転勤および白取忠一郎の大間支店への転勤命令の撒回をその実質的な目的としてなされたことが明らかである。
もつとも、債権者佐藤は、本件争議行為は債務者銀行が石川および白取の件から明らかなように、個人的事情を全く考慮しない人事方針を打ちだしてきたので、これを撤回させることをその主眼としたものである旨主張するが、前記(二の(2)ないし(4))認定の諸事情、ことに債務者銀行は労組との再三の団体交渉において人事異動は原則として業務上の必要性に基づいて行われるべきもので今後は結婚などの個人的事情のみを理由とする転勤は認めない旨言明していることに照らせば、労組においても債務者銀行の人事異動の方針が全く個人的事情を考慮しないものであると理解していたものとは認め難いのである。
そこで、債務者銀行の石川および白取に対する人事上の措置の是非について検討する。
(イ) 石川桂子の件
債務者銀行は、昭和四二年一月に結婚などの個人的事情のみによる転勤を認めない方針を確立し、これに従がい石川桂子の転勤を認めなかつたものであるが、前記(二の(2))認定の右方針樹立の趣旨、経緯に徴すれば、同銀行の右方針を打ち出したこと自体については非難すべき点がないこと、これが適用は石川桂子のみならず従組員である女子行員も受けていることに、石川桂子の転勤要求は青森市内に居住する男性と結婚するので同市内への転勤を希望するというもので、夫婦共稼ぎの一方を遠隔地に転勤させてその別居生活を余儀なくせしめ、すでに形成されている家庭生活に影響をもたらすものとは異質のものであることを併わせ考慮すると、業務上の必要性がないという理由に基づき債務者銀行が石川桂子を青森市内店へ転勤させなかつたことをとらえて不当な処置であるということはできない。
(ロ) 白取忠一郎の件
債権者佐藤は、白取については妻が電々公社青森電話局に勤務し、一三才および一〇才の子供と病身の老母をかかえているという事情があり、かような家族状況からして大間支店への転勤命令は家庭を破壊する不当のものである旨主張しているが、その家庭事情は前記(二の(4))認定のとおりであつて、同人は昭和三四年頃から他の女性と同棲し、自宅を飛び出し何ら妻子や実母に経済的な仕送りをするなどその生活の面倒は見ているわけではなく、そのため債務者銀行においては白取の家庭関係の正常化への配慮をも加味して同人を大間支店へ転勤させたのであるから、これが家庭を破壊する不当転勤であるとの主張は、事実関係を何ら調査することなくなされたもので失当であり、右転勤命令は正当のものである。
以上によれば、白取の転勤命令は正当のものであるからこれが撤回を求めて、争議行為の目的となすことは相当なものとはいいがたいし、また石川桂子の件についても、同女が結婚後夫と同居生活を送れるよう労組において同女の転勤を要求することはそれ自体としては何ら非難すべき筋合のものではないが、債務者銀行が右転勤を認めなかつた処置も前記のとおり不当なものでありえない。しかしながら、労組のとつた右争議行為の目的すなわち白取、石川の二件を契機として一般に個人的事情を考慮しない配置転換等の人事異動の是正なることは、終局的には労働条件の維持、改善をはかるに連なるとみるべきであるからその目的自体必ずしも不当な要求というべきではなく、争議の手段にして適正を得るならば、適法な争議行為となしうるものであるといわなければならない。
(二)  本件争議行為の手段、方法の相当性
前記(二の(5)ないし(9))認定のとおり、労組はその要求貫徹のため労組員の異動対象者二六名に赴任を拒否せしめ旧任店で就労せしめたものであるが、これは石川および白取に対する債務者銀行の人事上の処置が不当であるとして転勤それ自体については争つていない白取を除く二五名の異動対象者にその赴任を拒否せしめたという点において特徴がある。
しかして、かような赴任拒否闘争は単に新任店に赴任しないという限度では、消極的に使用者に対し労働力の提供を拒否する点でストライキ的争議手段と解しうるが、さらに進んで使用者の就労拒否命令を排除して旧任店で強制的に就労を続行することは、使用者の人事権を無視し、その人事権能の一部を労組において行使せんとするものであるから、たとえ争議行為が多かれ少なかれ使用者の労務指揮権を排除する性質を帯びているものであるとしても、かような争議行為は前記目的との関連を考慮しその闘争期間が極めて短期間であるとかの特段の事情が存在しないかぎりは違法性を帯びるものといわなければならない。
これを本件についてみるに、前記認定のとおり労組は再三に亘る債務者銀行の催告および警告を無視して四月八日から五月一〇日までの一か月間以上労組員の異動対象者二六名(但し、三名については四月一七日まで)に新任店での赴任を拒否せしめ、且つ旧任店での就労拒否の命令を無視して就労させ、その結果右就労をめぐつては新町、古川、十和田の各支店や本店営業部において前記(二の(6))認定のとおりストライキ権を行使したり、職場協議会の開催を要求する等債務者銀行の業務に相当期間混乱と紛争を生ぜしめたものであることは疑いを入れず、これに前記(三の(一))認定のとおりの本件争議行為の目的の相当性および前記(二の(7))認定の労組の宣伝活動すなわち通行人などに配付したビラやチラシの内容は、事実を誇大もしくは曲解して世上に喧伝したことが窺われるのであつて、これらの事情を併わせ考えると、本件争議行為はその目的に照らし争議の手段、方法が適正を欠き、違法、不当なものといわなければならない。
四  そこで、進んで右違法な争議行為を理由とする本件解雇処分の当否につき判断する。
まず右解雇処分がなされるに至つた経緯につき検討するに、前記疎甲第四一号証、疎乙第一号証、成立に争いのない同第七号証の五ないし七、同第八号証の一ないし五に弁論の全趣旨を併わせると、債務者銀行の就業規則第九二条には懲戒事由が規定され、さらに第九三条には「懲戒はその事由の大小、軽重により譴責、減給、出勤停止、懲戒解雇に分ける。ただし、減給解雇については、法令に定められた制限規定の範囲内に於て行う。」旨規定されているところ、債務者銀行は昭和四二年六月九日本件争議行為は正当な異動命令を拒否して人事権を侵害し、且つ職場放棄、集団職場交渉をして秩序を乱し、さらに不当な宣伝行為をして債務者銀行の名誉および信用を侵害したもので、これらはいずれも就業規則第九二条第一号所定の「就業規則、その他遵守すべき事項にそむいたとき」の懲戒事由に該当する行為であるから、これを企画、指導、実行した労組執行部の責任は重大であるとし、労組委員長である債権者佐藤を懲戒解雇に、副委員長松山栄三、同斎藤輝夫および書記長野沢元之を出勤停止一二日に、石崎淳三ほか六名の執行委員を出勤停止六日に並びに赴任拒否者二二名を減給の各処分に付する旨の提案を労組に対してなしてきたこと、これに対し労組は強硬に反対し処分についての両者の協議はまとまらず、結局債務者銀行は昭和四三年八月九日債権者佐藤は提案どおり懲戒解雇に、副委員長および書記長については提案の出勤停止一二日から同六日に、その他の執行委員は提案の出勤停止六日を同三日におよび赴任拒否者の提案の減給を譴責にそれぞれ減軽して処分したことが認められる。
そこで、右処分の経緯を考慮して本件解雇処分の当否につき審究するに、債権者佐藤は労組委員長として、また中央闘争委員長として本件争議行為を指導、指揮した最高の地位にあるのであるから、本件争議行為が違法のもので、正常な異動命令を拒否して人事権を侵害するなど就業規則所定の懲戒事由に該当する以上、最高の責任者として他の労組幹部や組合員よりも重い責任を負わなければならないものというべく、したがつて債権者佐藤の争議行為については就業規則の適用がない旨の主張および所謂幹部責任を否定する主張はいずれも採用できないものである。
しかしながら、翻えつて案ずるに、労組において本件赴任拒否闘争を決定したのは中央執行委員からなる中央闘争委員会の決議によるものであつて、債権者佐藤の独断的な企画、決定によるものではないことを考えるとき、副委員長以下が出勤停止六日であるのに対比し債権者佐藤の処分が提案処分より何ら減軽されることなく企業外への追放に帰する極刑ともいうべき懲戒解雇であることは著しく均衡を失する処分であるといわなければならない。
ところで使用者が懲戒事由の行為に及んだ従業員に対しいずれの懲戒処分を選択するかは使用者の裁量に委ねられている事項であるが、しかしながら右裁量は決して自由且つ無制約のものではなく、その事由の軽重は勿論、過去および現在の同種行為者に対する処分と対比し、その選択した処分が著しく不相当なものであるときは懲戒権の濫用として右処分は無効のものと解すべきであるところ、これを本件についてみるに、懲戒解雇は前記のとおり労働者に対しその生計の途を断ついわば極刑というべきものであるから、その行使は企業の存立に重大な影響をおよぼすか、職場内の秩序を著しく乱す等の場合にのみ許容されるべきものであるところ、本件争議行為により古川支店など三支店と本店営業部においてかなりの混乱、紛争が生じ、且つ労組の宣伝行為により債務者銀行の信用と名誉が害せられたとしても、他の各支店においてはそれほどの混乱、紛争が生じた形跡は窺えないから債務者銀行の存立をおびやかすほどの重大事態には至らず、これに前記のような副委員長以外に対する処分との対比、前記(二の(5))認定のとおり昭和三二年から昭和四一年までの間労組において本件と型態は異なるとはいえ恒常的に争議手段として赴任拒否戦術を行使してきたのに対し当時の労組幹部は何らの懲戒処分をも課せられなかつたことおよび債権者佐藤は昭和四一年八月に労組委員長に就任したもので独裁的に労組を指揮していたものとは認め難いことなどの諸事情を併わせ考慮するとき、債務者銀行が債権者佐藤を懲戒解雇処分に付したのは相当のものとはいいがたく、解雇権の濫用というべきであつて、右解雇処分は無効のものといわなければならない。
五  よつて保全の必要性につき検討するに債権者佐藤は本件解雇当時債務者から毎月五日に一か月金五三、九一二円の給料(本俸金四五、〇〇〇円、家族手当金三、八〇〇円、通勤手当金一、二六〇円、保険料手当金三、八五二円)並びに毎年六月一〇日、一二月一〇日に本俸と家族手当の合計金額の三・二か月分を賞与として受けていたことは当事者間に争いがないところ、成立に争いのない疎乙第四一号証、債権者佐藤本人尋問の結果(第二回)、同結果により真正に成立したものと認められる疎甲第四六号証によれば、債権者佐藤の妻は債務者銀行に勤務しているが、一か月の給料の手取額は住宅借入金の返済などのため、金三万七千余円にすぎず、右金額のみでは子供三人を含む家族全体の生活を維持することは容易でないことが認められるから、債権者佐藤は債務者に対しいまだその従業員の地位にあることを求めて債務者から前記給料の支払を求める必要性があるというべきである。
但し通勤手当はその性質および就業規則(疎乙第一号証)第六二条の二所定の支給方法に照らせば、実費弁償的なものと解されるので、これを控除するのを相当と認め、また賞与の点について、本俸と家族手当の合計額の三・二か月分であることは当事者間に争いがないので、その金額は左記の算式により金一五六、一六〇円であることが明らかである。
{45,000円(本俸)+3,800円(家族手当)}×3.2=156,160円
六  以上の理由によれば、債権者佐藤の申請は「債権者佐藤が債務者に対し雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める。債務者は債権者佐藤に対して昭和四三年九月以降毎月五日限り一か月金五二、六五二円の割合による金員および毎年六月一〇日、一二月一〇日限り、それぞれ金一五六、一六〇円の割合による金員を仮に支払え。」との限度において理由があるのでこれを認容し、その余は理由がないので却下する。
第二  債権者伊勢谷について
一  債権者伊勢谷は昭和二八年四月一日債務者銀行に入行し、以降その従業員の地位にあつたこと、並びに債務者銀行は、同債権者に対し昭和四三年八月九日付書面(同月一三日到達)でもつて、同債権者が昭和四二年六月三〇日樋口喜四郎に対し暴行、傷害を加え、これにより同年七月八日傷害および暴力行為等処罰に関する法律違反容疑で逮捕され、さらに同月一九日起訴されて、そのため債務者銀行は名誉と信用が著しく損われたとし、同債権者の行為は職員就業規則第九二条第一号および第六号に該当するとして懲戒解雇する旨の意思表示をなしたことはいずれも当事者間に争いがない。
二  しかして、債権者伊勢谷は、樋口喜四郎に対する傷害、暴力行為等処罰に関する法律違反容疑で逮捕、起訴されたことは事実であるが、同人に暴行、傷害を与えたことはないから、解雇理由として挙示されている事実は不存在である旨主張するので、以下その存否につき検討する。
成立に争いのない疎甲第三一号証、同三二号証、同第三三号証の三、同第五三号証、疎乙第七号証の五、六、同第八号証の三、同第四〇号証の一ないし四、上記疎甲第五三号証により真正に成立したものと認められる疎乙第三六号証、証人樋口喜四郎の証言、同証言により真正に成立したものと認められる疎乙第三七号証に弁論の全趣旨を併わせると、次の事実が一応認められる。
債務者銀行は、前記争議行為が違法不当であるとして債権者佐藤の解雇および債権者伊勢谷の出勤停止六日を含む労組員三三名に対する懲戒処分案を決め、昭和四二年六月九日労組に対し協議を申し入れたこと、これに対し労組は反対し右処分案が不当である旨のポスターを青森市内の街路柱などに掲示して同市民に訴えてきたこと、しかして、同市内安方一丁目(当時大町一丁目)に居住し、文房具などの販売を業とし同市内でも老舗を誇る株式会社樋口商店の社長をしている樋口喜四郎は、昭和四〇年頃から青森市内の街の美化を目的に毎早朝日課として街の清掃作業に従事していたが、昭和四二年六月二八日も右作業に出て同市内の大町通りの街路柱や電柱などに掲示されていた前記労組のポスターを約五〇枚取りはずしたこと、そのため債権者伊勢谷を含む労組員は同月二九日から青森銀行本店に隣接して所在する労組組合事務所に泊り込み、交代で監視、警戒にあたつていたこと、その結果同月三〇日午前五時過頃労組員二名は樋口喜四郎が大町通りの右事務所付近の街路柱に掲示されていた労組のポスター二枚を取りはずしかたづけようとしていたところを発見し同人を呼びとめて難詰したうえ前記事務所前路上にまで連行したこと、そして、連絡を受けた債権者伊勢谷を含む労組員約一〇名がその場にかけつけて、樋口を取り囲みその氏名、身分および撤去の事由を追求したが、これに対し同人は前記のとおりの氏名、身分を明らかにし、街の美化を損なうのでポスターを撤去した旨説明したこと、かように労組員多数が樋口を取り囲み難詰している際、債権者伊勢谷は樋口に接近してやにわに右ひじでもつて同人の口部を殴打して出血させるに至つたこと、そしてその後も労組員は同人が弁明するポスター撤去の理由を信用せず、同人が債務者銀行の依頼により撤去したものとの疑念を抱いて同人を前記組合事務所に連行したうえ、同事務所において椅子に座らせ、同人を取り囲んで難詰したこと、その際債権者伊勢谷が主として同人の面前に立つて、同人を追求、難詰し、謝罪文を書くことを強要し、且つその場にあつた約長さ三〇センチ位のセルロイド製定規で、向い合つて座つている同人の側に行つて二回にわたつて同人の首筋を殴打するに至つたこと、かくして同日午前一一時頃まで約六時間に亘り同人は内容が気に入らないと何枚も謝罪文を書かせられたり、難詰されていたがその間労組員からこづかれたり「龍飛に行く車に乗せて海に投げてやる。」とか「商売を出来なくしてやる。」などと脅迫されたこと、そして、同人は同日午前一一時頃連絡を受けてかけつけてきた知人の小島清三郎の口添えにより同日正午近くにようやく帰宅を許されたこと、そこで樋口は同日午後青森警察署に赴いて右事情を説明したあと、債権者伊勢谷の前記口部に対する暴行により何本かの歯がぐらぐらするので、嶋谷歯科医院で診断を求めたところ通院加療約二カ月を要する歯牙破折症との診断を受け、結局その後浅田歯科医院に約一〇回位通院して義歯三本を含む五本の歯を抜歯せざるをえなかつたこと、しかして、債権者伊勢谷は樋口に対する右暴行、傷害につき同年七月八日青森警察署に傷害および暴力行為等処罰に関する法律違反容疑で逮捕され、さらに同月一九日には起訴されたが、右逮捕、起訴が新聞やテレビなどで大々的に報道されたため、債務者銀行は取引先などから抗議や苦情を受けるに至つたので、新聞に事件の経過を報告し今後ともご愛顧を願いたい旨の広告を出すとともに取引先や株主にも同趣旨の書面を送付して釈明したこと。
以上の事実が一応認められ、債権者伊勢谷本人尋問の結果、(第二回)証人野沢元之の証言および疎甲第四八号証のうち右認定に反する部分は前掲各証拠に照らし採用できない。
三  そこで、進んで右認定事実に立脚しつつ、債権者伊勢谷に対する解雇処分の当否につき判断する。
債権者伊勢谷は、前記認定のとおり労組のポスターを撤去した樋口に対し、同人の弁明に耳をかさず、激情の赴くまま直ちに同人の口部を殴打して歯牙破折症の傷害を与え、さらに執拗に自ら主謀者として同人を約六時間も労組事務所に軟禁したうえ、再度セルロイド定期で同人の首筋を殴打するなどの暴力行為に及んだものであつて、かような同債権者の行為はたとえ樋口の側に無断でポスターを撤去したという点において責めらるべき点があるとしても、到底許容し難い行為であつてその社会的責任は重大なものといわなければならないし、加えて同債権者が逮捕起訴され、これが大々的に報道されたことによつて、たとえ右刑事事件の判決が未だ言渡の段階に達していないものであつても債務者銀行は多大の信用を失墜し、名誉を侵害されたことは明らかであり、これに同債権者は労組執行委員として前記の違法な争議行為の企画に参与し、これを推進せしめたことを併わせ考慮するとき、債務者銀行が同債権者を就業規則(疎乙第一号証)第九二条第一号および第六号所定の懲戒事由ありとして懲戒解雇処分に付したことは無理からぬところであつて、右処分をもつて不当のものということはできない。
四  してみると同債権者に対する懲戒解雇処分は有効なものというべきであるから、これが無効を前提とする同債権者の申請はその余の点につき判断するまでもなくいずれも失当であるからこれを却下する。
第三  以上、第一および第二の理由により、主文のとおり判決し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条および第九二条但書を各適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 間中彦次 辻忠雄 本田恭一)

 

(別紙第一)
申請の理由
目  次
第一、当事者
一、債務者
二、債権者佐藤寿々雄
(一) 職歴
(二) 給与
(三) 組合歴
三、債権者伊勢谷越夫
(一) 職歴
(二) 給与
(三) 組合歴
第二、解雇
一、佐藤
二、伊勢谷
第三、解雇処分の意図するもの
第四、解雇の無効
A 解雇理由がない
〔一〕 佐藤
一、正当適法な組合活動
(一) 目的において正当な争議行為
1 問題の発端
2 闘争の目標
3 不当労働行為
(二) 手段において適法な争議行為
1 新任店への赴任拒否
2 旧任店での就労
3 職場放棄集団交渉
4 宣伝活動
二、解雇権の濫用
(一) 組合役員の地位
(二) 組合委員長の地位
(三) 処分の相当性
〔二〕 伊勢谷
一、解雇理由事実の不存在
二、解雇権の濫用
B 不当労働行為
一、労組の歴史
(一) 組合の結成
(二) 組合の分裂
二、従組の御用組合性
(一) 結成前後の事情
(二) 差別
(三) 一般的拘束力の適用
(四) 労組攻撃の共同
三、現実の差別状況
(一) 身分上の差別
(二) 給与の差別
(三) 転勤係替の差別
(四) 労働協約の差別
(五) 賃金カツトの差別
(六) 執行委員の勤務地の差別
(七) 嘱託採用の差別
(八) 福利厚生上の差別
1 共済会運営からの除外
2 厚生会運営からの除外
(九) 地銀協主催の銀行講座出席についての差別
四、結び
第五、仮処分の必要性

第一、当事者
一、債務者
債務者(以下銀行という)は肩書地に本店をおき、預金の受入金銭の貸付手形割引、為替取引等を業とする株式会社である。
二、債権者佐藤寿々雄(以下佐藤という)
(一) 職歴
昭和二四年九月一日入行。新町支店預金課配属。解雇時は浦町支店出納係勤務。
(二) 給与
1 毎月五日支給
本俸四五、〇〇〇円、家族手当三、八〇〇円、通勤手当一、二六〇円、保険料手当三、八五二円、(厚生年金一、六五〇円、健康保険一、六五六円、失業保険五四六円)
2 毎年六月一〇日、一二月一〇日支給、賞与本俸と家族手当の合計額の三・二ケ月
(三) 青森銀行労働組合(以下労組という)歴
昭和二九年度   青年婦人部幹事
〃三〇〃     青年婦人部長
〃三一~三三年度 執行委員
昭和三四~三七〃 東青支部長
〃三八年度    副委員長
〃三九~四〇年度 執行委員
〃四一~四三〃  委員長
三、債権者伊勢谷越夫(以下伊勢谷という)
(一) 職歴
昭和二八年四月一日入行、本店営業部預金課配属、解雇時は本店営業部庶務課勤務
(二) 給与
1 毎月二日支給
本俸四六、六〇〇円、家族手当五、五〇〇円、通勤手当一、二六〇円、保険料手当四、〇七三円、(厚生年金一、六五〇円、健康保険一、八四〇円、失業保険五八三円)
2 毎年六月一〇日、一二月一〇日支給、賞与本俸と家族手当の合計額の三・二ケ月
(三) 労組歴
昭和二九年度   青婦東青支部書記長
〃三〇~三一年度 執行委員
〃三二年度    副委員長
〃三三〃     第一分会長
〃三四〃     地銀連書記長
〃三五〃     地銀連副委員長
〃三六〃     地銀連書記長
〃三七~四〇年度 副委員長
〃四一年度    執行委員
〃四二〃     副委員長
〃四三〃     執行委員
第二、解雇
一、佐藤
銀行から佐藤に対し昭和四三年八月九日付同月一三日到達の書面で「昭和四二年四月以降労組委員長として正当な業務命令である人事異動を拒否させる違法な配転拒否闘争を企画指導実行し銀行に損害を蒙らせた。右行為は職員就業規則第九二条第一号に該当する」という理由で懲戒解雇する旨の通知があつた。
二、伊勢谷
銀行から伊勢谷に対し昭和四三年八月九日付同月一三日到達の書面で「昭和四二年六月三〇日他の組合員と共謀して樋口喜四郎に傷害暴行脅迫を加えたことにより同年七月八日傷害および暴力行為等処罰に関する法律違反容疑で逮捕同月一九日青森地方裁判所に起訴されたが、このことにより銀行は名誉と信用を著しく損なわれた。右行為は職員就業規則第九二条第一号および第六号に該当する」という理由で懲戒解雇する旨の通知があつた。
なお解雇理由によると労組執行委員として関与した前記配転拒否闘争に対する責任も解雇処分の情状として斟酌したとする。
第三、解雇処分の意図するもの
一、今回の解雇はそれぞれ違法闘争の指導実行刑事々件による起訴を理由としている。しかしそのいずれも理由のないことは後に述べるとおりである。
銀行の処分の真の意図は右理由に藉口して労組幹部を解雇することにより労組に対し経済的ク理的圧迫を加えその組織の壊滅を狙つたものである。
そしてこの狙いは今日独占資本の要請によつてすすめられている金融合理化の動きにまさしく対応するものである。
債権者等および労組は今回の処分をこのように考える。
二、すなわちポンドシヨツク、ドル危機という嵐の中で我が国独占資本は国際競争の中での地位強化をねらつて大型合併、業務提携系列化整理等の形をとりながら急速に産業再編成をおしすすめており同時に金融機関に対しても資金コストを引き下げて低利大量の資金供給のための大がかりな金融再編成~金融機関の合理化がすすめられている。
三、地銀におけるその具体的なあらわれとして本年七月のデーター通信網の完成がありこれにより個別金融機関をこえた合理化がおしすすめられさらにコンピユーター・システムの導入が各地銀で急速にすすめられ、その共同利用が研究されている状況にある。
そしてこれらコンピユターシステムの導入等は必然的に労働密度の強化機械導入に伴う配置転換、人員整理、徹底的な時間管理、休暇制限となつてあらわれる。
しかしそういう体制をおしすすめていく過程で大巾賃上げを要求し、休暇制限労働強化等に反対する「闘う労働組合」の存在は大きな障害とならざるを得ない。
四、このように現在銀行のおかれている立場からすれば経営との対決の姿勢を堅持する「闘う労働組合」である労組はなんとしてでも除去したい存在なのである。
そこに今回の処分の真の原因があると考える。
第四、解雇の無効
A 本件解雇の意思表示はその理由がなく無効である。
〔一〕 佐藤
一、四二年春の配転拒否闘争(以下本件闘争という)は正当適法な組合活動であつて、これを理由とする解雇は無効である。
(一) その目的において正当な争議行為である
1 問題の発端
(1) 昭和四二年二月十和田支店に勤務していた石川(旧姓江渡)桂子(以下石川という)は前年一二月に電々公社青森電気通信部に勤務する石川幸男と婚約、結婚のため青森市内への転勤希望を所属長に出した。
この希望がいれられなければ別居の形で結婚生活に入らざるをえず、そのための二重生活により蒙る精神的経済的影響は著しいものがあることは明らなかことであつた。
(2) 青森銀行においては従来から結婚等重大な個人的事情は配転のさい最大限に考慮されてきた。
労組との旧労働協約第一五条にも「銀行は組合員の異動身分の変更に関しては本人の生活条件、健康、技能、勤務状況等を考慮し厳正公平に行なう」と「生活条件」を考慮することが明記されている(現在銀行が労組に対し提案中の協約案第二二条第一項にも同趣旨の規定がある)けだし当然のことである。
そしてそのような個人的な事情のある場合業務上の必要のため、たとい現在の時点では希望を入れられなくても近い将来においては希望通りにするということが普通に行なわれてきた。
石川の場合も四二年二月所属長は「当然のことなので今まで通りの扱いになると思う。人事部に上申しておきます」と労組十和田分会に返答しているのである。
(3) ところが銀行は石川の配転希望の出されたあとの四二年三月九日の労組との団交の席で「人事異動はあくまでも業務上の必要から行うものであり個人的な生活問題は考えない。今まで結婚やあるいは父の転勤などを考慮してきたがここでピリオドを打つて今後は一切考慮しない」と回答し、石川の配転要求を拒否するとともに、配転については労働者側の事情は一切考慮しないという方針を打ち出して来た。
そして四月一日の異動発令には石川の配転は含まれずまたこの段階で当時小湊支店に勤務していた白取忠一郎に対する大間支店への配転命令も出された。
白取については妻が電々公社青森電話局に勤務し一三才一〇才の子供と病身の老母をかかえているという事情があつた。その家族状況からして同居不可能の地への転勤命令は家庭を破壊し生活関係に重大な影響を及ぼすものであつた。
2 闘争の目標
(1) 労組の本件闘争の目標は結局銀行による石川の配転要求拒否、白取の不当配転というケースを通して打ち出された銀行の前記方針を撤回させることにむけられたものである。
労組としては従前の慣行をすら否定して配転にさいし個人的な生活条件を一切考慮の対象としないとすることは個々の労働者の生活関係に重大な影響を及ぼすおそれがあるものであり、労働者に対する不当不法な圧迫と判断したのである。
(2) この点銀行は解雇理由の中で「人事異動は経営者の人事権に属する事項であり人事権の発動として業務上の都合により一方的に行ないうるものであるから争議行為の目的とすることは不相当である」といわば経営の専権事項という考え方をしている。
しかしどこで労働者を働かせるということは単なる人事権~労務指揮権の行使ではなく就労場所という契約の要素を変更する法律行為であることは一般に承認されているところである。
そして就労場所がどこかということは労働者の生活条件に重大な影響を及ぼすおそれのある問題である。
したがつてたとい一般的には使用者が労働契約の趣旨、目的に反しない限り労働者が給付すべき労働の態様を決定する権限を有しているのだとしてもその権限は単に「業務上の都合」のみにあり「一方的に」行使しうるものではない。労働者の生活関係への影響をも考慮して行使すべき性質のものである。
労働者の側から言うならば自己の生活関係に重大な影響を及ぼす就労場所の変更については、これを是正させるよう要求することが当然にできるのである。
したがつて就労場所の問題についてそれが労働者の労働条件に関る面を全く無視して単に人事権の面でのみとらえようとする銀行の考え方は誤りである。
(3) ところが銀行は「人事異動は一方的に行ないうる、今後個人的事情は一切考慮しない」という誤つた考え方のもとに労組の要求を拒否して石川の配転要求を拒否し白取の不当な配転を強行したのである。
その結果は石川については夫婦別居という変則的な生活を招来することになりしかも「今後個人的事情を一切考慮しない」という考え方のもとでは退職しない限り正常な結婚生活を営むことはできず結果的には退職を強要するということにもなりかねないのである。
他方銀行側としてこの配転をどうしても拒まなければならないだけの業務上の必要性はなかつたのである。
白取についても老母、子供との別居を余儀なくされることになりしかも白取に対しこれだけの生活上の不利益を与えてなおかつ守らなければならない業務上の必要性は同様なかつたのである。
(4) このように銀行側の「異動にさいしては今後一切個人的事情を考慮しない」という考え方そのものが不当違法であるのはもちろん石川、白取についての銀行側の措置そのものが著しく妥当を欠くもので違法なものと考えざるを得ないのである。
3 不当労働行為
又銀行の前記の人事に関する新方針のねらいはそれによつて労組員を不当に差別しようとしたものである。
(1) すなわち四二年三月、四月という時期に銀行が「以後個人的な事情は全く考慮しない」として石川、白取についての要求を拒否するにいたつたのは結局両名が当時労組員だつたからにほかならない。この二件も従来であればとくに問題となる事例ではなかつた。
現に四一年一一月八戸支店に勤務していた長内俊三(青森銀行従業員組合=以下従組という=所属)を沖館支店に配転させたがその理由は長内が本店総務課に勤務する角田マサ(従組員銀行労務担当常務角田米徳の娘)と結婚するためであつた。
ところがそれから四ケ月後に同じような理由で石川が配転希望を出すや銀行は前記のような方針を打ち出してこれを拒否したのである。
特にこの時期にこういう方針を打ち出さなければならない特別の理由もないのにあえて打ち出したのは石川が労組員であつたため労組に対するしめつけ策としての効果をねらつたものとしか考えられないのである。
このことは従組に対しては前記方針の打ち出されたあとの四二年一〇月久保豊について病気治療という事情で、浅虫支店から津軽支店への配転を、四三年四月には佐々木隆を結婚同居という事情で古川支店から弘前支店への配転を認めていることからも明らかである。
この点からも銀行の本件行為は労組に対する差別として不当違法なものである。
(2) その上銀行の個人的事情は全く考慮しないという方針は配転が人事権の発動として一方的に行ないうるもので組合側の容かいしうるものではないという考え方とあいまつて業務上の理由という名目のもとに一方的恣意的な配転を可能にするのである。
そしてその結果は、労組員に対する不利益配転を強行しそれを正当化する道具を準備するものであり労組々織を壊滅させるための強力、効果的な武器になりうるものである。結局前記方針を打ち出した銀行のねらいはこのようにその運用により労組の弱体化壊滅を意図したものと考えざるを得ない。
(二) 本件争議は手段において適法なものであつた。
1 新任店への赴任拒否
(1) 労組は組合規約に定める手続により争議権を確立し、銀行側に対し争議通告をして本件闘争に入つたが、労組のとつた争議戦術は労組員の異動該当者全員について新任店への赴任を拒否し新任店での労務提供を拒否させるということであつた。
(2) すなわち違法不当の問題のない白取を除く他の配転命令は有効であり発令により当然新任店配属となるのであるから要求実現のため赴任拒否によりそこでの労務提供を拒否する行為は純然たる争議行為であり適法なものである。
銀行は解雇理由の中でこの手段は「争議行為の本質とされる消極的な労務提供の拒否という範囲をこえて使用者の労務指揮権に対する積極的な侵害を含むもの」だから違法だと言うが、労組は前述のように配転命令そのものを否定しているのではなく労務提供を拒否するために新任店に行かないということなのであつて銀行の主張は誤つている。
(3) このような争議戦術はこれまで労組により伝統的にとられてきたものであつて目新しいものではない。
2 旧任店での就労
新任店への赴任拒否戦術がとられる場合赴任拒否者は必ず旧任店で就労して組合の団結をはかることがこれまで慣行として行なわれ銀行側もこの場合の旧任店での就労については黙認してきたのである。
そこで今度の闘争においてもこれまでと同じように異動対象者は慣行にしたがつて旧任店での就労を行なつたのであり、それ自体違法不当の問題の起るはずのものではない。
3 職場放棄集団交渉
又銀行は解雇理由のなかで旧任店での就労をめぐつて労組側が職場放棄や集団交渉を行ない業務を妨害したとして数例をあげるが、これもかりにかかる事実ありとしても適法正当な争議の中で争議行為の一環として行なわれたものであり何等違法の問題の起るものではない。
4 労組の宣伝活動
その他銀行は争議中の労組のなした宣伝活動についても著しく銀行の名誉と信用とを毀損したとするが、これも本件闘争の目的からすれば何ら正当な宣伝活動の範囲をこえるものではなく労組執行部が責任をとわれる筋合のものではない。
二、仮りに右主張が理由がないとしても本件懲戒解雇の処分は権利の濫用であつて無効である。
(一) 組合役員の地位
解雇理由によると銀行は本件争議行為を違法とし「これを企画、指導、実行した労組執行部の責任は厳重に追及されねばならない」とする。
しかし違法な争議行為に対して労組役員は幹部なるがゆえに一般組合員とは違つた特別の責任を負わねばならないという理由はない。
何故ならたとえ組合幹部といえどもその権限はあくまで組合規約、組合員の投票などに拘束されその意思ないし行動は組合機関としての行動だからである。
(二) 組合委員長の地位
かりに銀行の言うごとく執行部の責任は特に重いとして「執行部の中でも組合を代表し組合の業務を統轄する佐藤委員長の責任は特に重大であり情状酌量の余地がない」(解雇理由書)と言うがごとく労組委員長であるがゆえに責任が特に重いとするのは組合の組織についての無理解を示すものである。
もともと組合組織において業務の執行にあたるのは「執行委員会」であり委員長は執行委員会議長としてその構成員となるにすぎない。業務の執行については委員長は他の執行委員に優越する権限を有しないのである。
したがつて委員長の職務に関する「統轄」という文言自体何ら特別の権限を示す意味を有するものではない。
これは組合がその強い民主的性格から強力な権限を有する独任機関を排除して規約上も実際上も言葉の正しい意味における集団指導体制をとつているからである。
この点業務執行権を一手ににぎる株式会社における代表取締役の地位とは本質的に異なるのである。
したがつて違法行為を企画指導したというのであればその責任は執行委員会の構成メンバーである全執行委員が同等に負うべきものであり特に委員長が委員長であるがゆえに他の執行委員に比して重い処分を受けなければならないと理由は全くないのである。
(三) 処分の相当性
かりに委員長がその職責上他の執行委員に比してより大きい責任を負うべきであるとしても本件の懲戒解雇は不当に重すぎ相当性を欠くものである。
就業規則第九三条によれば「懲戒はその事由の大小軽重により譴責、減給、出勤停止、懲戒解雇に分ける」とする。
懲戒処分のうちどれを採択するかは懲戒事由およびその情状と対比し客観的に相当性をもつたものでなければならない。特に懲戒解雇の場合は単なる解雇以上に退職金剥奪等労働者に与える不利益は大きいのであり、かつまた一般の解雇自由の原則の適用を受ける場合ではないのであるからその妥当性は当該労働者をそれ以下の軽い処分に付する余地のない場合に限られる。
そこで本件についてみるに本件闘争は前述したように転勤問題に関する銀行の恣意的な考え方に反撥し労働者の生活条件を守ろうとしてなされたものであること、過去においても同種闘争はしばしば行なわれたのであり今回もそれを踏襲したにすぎないこと、過去において同種闘争により処分された例は皆無であること、今回の他の労組役員の処分がいずれも三日ないし六日の出勤停止でありそれらの処分に比し非常識とも云えるほどに甚だしく均衡を失していること等からすれば本件の懲戒解雇の処分は不当に重すぎるものでありもはや相当性の範囲を逸脱したものと言わざるを得ない。
〔二〕 伊勢谷
一、解雇事実の不存在
(一) 伊勢谷に対する解雇理由は
1 樋口喜四郎に対する傷害、暴行、脅迫
2 右行為による伊勢谷の逮捕、起訴が銀行の名誉と信用を著しく毀損したというものである。
しかし右1の事実はなくまた2により銀行の名誉と信用が毀損されたとしても伊勢谷を責めることはできない。
よつて本件解雇は理由がなく無効である。
(二) 1の事実は存在しない。
労組員某は、昭和四二年六月三〇日早朝労組が同月二八日青森市大町通りの街頭に掲示したつり看板を労組書記局前通りでもぎとつている労務者風の男を発見した。右労組員は前二九日にも約一〇〇枚の労組のつり看板が何びとかにもぎとられていたので右労務者風の男をつかまえ、もぎとつた理由等を質問しようとしたが右労務者風の男は名前も明らかにせず、またもぎとつた理由等も明らかにしようとしなかつた。そこでその問答を聞きつけて労組書記局よりきた数名の労組員は労組書記局内でもぎとつた理由等を聞きただすべく右労務者風の男を書記局に連れてきた。
右労務者風の男が樋口喜四郎であつた。しかし労組員がその男が樋口喜四郎であることを知つたのは数時間後である。
樋口喜四郎は書記局内でも労組のつり看板をはぎとつた理由を明らかにせず、ただ抽象的に労働組合並びに労働運動に対する非難をくりかえすのみであつた。
樋口喜四郎は同日一一時頃労組書記局を去つた。
樋口喜四郎は同日午後二時頃青森警察署におもむき労組書記局内で伊勢谷等に傷害、暴行、脅迫をうけたと供述した。
しかし伊勢谷は樋口喜四郎に対し傷害は勿論暴行脅迫をなしたことはない。
樋口喜四郎は労組のつり看板をもぎとつた自分の非を棚にあげありもしない伊勢谷等の傷害、暴行、脅迫を警察に申告したのである。しかも警察、検察はいかなる意図からか樋口喜四郎のつり看板もぎとりを不問にし伊勢谷等を逮捕、起訴したのである。
(三) 伊勢谷は昭和四二年七月八日樋口喜四郎に対する傷害等の容疑で青森警察署に逮捕され同年同月一九日青森地方検察庁より青森地方裁判所に傷害並びに暴力行為等処罰に関する法律違反で起訴された。右は目下審理中である。
従業員の逮捕、起訴が銀行の名誉並びに信用を毀損すると一般的にはいゝ得よう。しかし前述のように伊勢谷に対する起訴事実は存在せず伊勢谷は無罪である。かような不当な逮捕起訴による銀行の名誉並びに信用の毀損の責は樋口喜四郎、検察、警察が負うべきであり伊勢谷には責任がない。
銀行は伊勢谷を責めるのみで真相を究明しようとしない。
ここにも銀行の本件解雇の意図がうかがわれる。
かように本件解雇は存在しない事実を前提とする解雇であり無効である。
二、解雇権の濫用
真実は伊勢谷に対する刑事公判で明らかになるであろう。
しかし右刑事々件は現在青森地方裁判所で審理中である。
銀行はいかなる方法証拠で伊勢谷に対する解雇理由の存在を判断したのであろうか。裁判所の判断も待たず起訴事実と同一の事実を前提とした本件解雇は十数年間勤務した伊勢谷に対するものとしてはあまりにも不当なものであり解雇権の濫用である。
B 本件解雇の意思表示は不当労働行為であり無効である。
一、労組の歴史
(一) 組合の結成
労組は昭和二十二年一月十九日に結成されその年の十一月に上部団体である全国銀行従業員組合連合会に加入した。
そして賃上げ闘争、レツド・パージ反対闘争を経、昭和二十六年メーデー参加、同二十七年労働協約締結、同二十八年経営民主化闘争、同三十五年地銀連統一賃上げ闘争、同三十七年からは春闘に参加するにいたつた。
このような運動の発展の中で労組は次第に成長し、全国の地方銀行労組、県内の中小企業労組の中で指導的な立場に立つようになつた。
(二) 労組の分裂
1 しかしこのような労組の成長にしたがい次第に日経連銀行部会、地銀経営者、県経営者協会などで労組の弱体化、壊滅の問題が公然化するようになつてきた。
そして組合内部にも銀行に呼応する分派行動者が次第に組織化されるようになり、昭和三十九年末は八戸地区に研友会、青森地区に経済研究会が生まれ、その統一組織として労研会ができ労組中央委員等の経験のある岩谷信男(分裂後の従組の初代委員長)が会長となつた。
他方、銀行は人事異動を通じ着々と組合活動家の分散をはかつた。
2 昭和四十年三月に銀行は岩谷信男を特に本部に異動させ、分裂策に専念させるようになり、こゝに銀行の組合分裂方策が具体化、かつ表面化するにいたつた。
そして四十年四月二十五日から二十七日まで三日間にわたる異例の母店長会議を開催、分裂方針の徹底をはかつた。
3 同年四月三十日の春闘統一行動に際し、労組は全店の一斉ランチ、十五分時限スト、三店での午前九時三十分までの時限ストの戦術をとつたが全店にわたつて職制が率先して組合指令を破る行動に出てきた。
そして五月四日午後八時過ぎ、青森銀行従業員組合が成立(初代委員長岩谷信男)ここに組合が分裂した。
二、従組の御用組合性
(一) 結成前後の事情
1 前述のような従組成立にいたるまでの経過からも銀行と従組との結びつきは明らかである。
2 銀行によると成立の翌日である五月五日午後四時人事部長あて組合結成通告がなされたとのことであるが、同日は祝日であつたにもかゝわらず、翌六日には銀行は専務常務等を先頭に非組合員を大量に動員、朝六時から本店入口にピケを張るというものものしい態勢をしき、午前七時から従組との団体交渉が行なわれるという手まわしのよさであつた。時期の点、手まわしのよさからみても事前に十二分に銀行の準備ができていたことを物語るものである。
3 また四十年十月二十日、銀行は全支店長を集めて法律専門家を講師として、労務管理の講習を行なつたが、その内容の一部にはいかに巧妙に第二組合の結成援助をし、又組合の切りくずしを行うかということが含まれている。時期、内容および講師の点から見ても銀行の分裂工作のやり方を示すものであり、かつ従組の助長を銀行側自ら積極的にはかろうとしていることを示すものである。
(二) 差別
従組の御用組合性は銀行が労組に比して、いかに従組を優遇しているか、又密着しているかをみても明らかである。即ち
(1) 労働協約上、経営協議会の協議事項中、従組の場合、経営方針・営業政策・人事の基本方針・業務改善・能率向上に関する事項等を協議事項としているのに対し、労組の場合、これらの事項ははずされていること(現在銀行の労組に対して提案している協約案による。なお現在無協約)とくに労組との旧協約にもなかつた「営業政策」「業務改善・能率向上に関する事項」まで従組との協議事項としていることは従組の正体を暴露するものというべきである。
(2) 労組には就業時間中の組合活動に対し賃金カツトをしているのに対し、従組には全くしていないこと。
(3) 従組執行委員を全員本店、本部に配転させていること。
労組執行委員には、そのような配慮をしていない。
(4) 全職員の福利厚生を目的とする共済会、厚生会の運営から労組をしめだしていること。
(5) 昇格について従組員を有利に取り扱つていること。
(6) 給与上従組員を有利に取り扱つていること。
(7) 転勤について、いわゆる重要店に労組員を配転させないようにしていること。
(8) 嘱託の採用について従組員は問題なく採用しているのに労組員の場合理由をこじつけて拒否していること。
(9) 各種スポーツ行事を従組と銀行が共催していること。
(10) 四十三年秋の従組の運動会に対し銀行が多額の資金援助をしていること。
(三) 一般的拘束力の適用
銀行は労使間の一切の問題について労組法第十七条の規定により従組との協議・協定の結果を労組にも及ぼすという態度を示しているが、その適用の実態は賃金、臨時給与、諸手当など銀行経理の支出を伴うものについては、従組との協議が成立しても労組に対しては適用を除外し、反面賃金カツト、社宅料、住宅資金貸付金利、利息等労働者の負担にかかわるものについては一方的に実施をするというやり方をしている。
結局従組を道具として自己に都合よく利用し、労組に臨んでいるのである。
これも従組の御用性を示すものである。
(四) 労組攻撃の共同
四十二年七月銀行と従組は相前後して同じく「県民の皆様へ」と題して労組攻撃の広告を従組は東奥日報(七月八日付)へ、銀行はデーリー東北(七月十二日付)へ大きくのせた。まさしく両者協議のうえでしたものにほかならない。特に従組のそれは感情を露わにした労組攻撃であり、御用組合ぶりを示すものである。
三、現実の差別状況
(一) 身分上の差別
銀行は労組員の昇格を極端なまでにおさえており、その結果、現在労組員一九一名中監督職はわずか四名にすぎない。この点について同年令、同時入行者別に比較すると労組員に対する差別は歴然としている。
(二) 給与の差別
同年令、同時入行者別に比較すると従組員と労組員との差は顕著であり労組員は不当な冷遇を受けている。この本俸の差はそのまゝ賞与にも影響し、そのため従組員と労組員との所得上の格差はさらに大きくなつている。
(三) 転勤係替の差別
1 組合分裂以降、銀行は労組員を本店、本部、東京支店、仙台支店、札幌支店などのいわゆる重要店に一切発令せず従組員をもつてこれにあてゝいる。
2 店舗内における係についても重要係とされる貸付係に占める労組員の率は全体の率に比しはるかに低くなつている。他方陽のあたらない係とされる出納係に占める労組員の率は全体の率に比して極めて高い。
(四) 労働協約の差別
現在銀行側が労組に対して提案している労働協約案によると、従組のそれに比して次のように現に事実上行なわれている差別等を含めてこれを明文化しようとしている。
1 従組はユニオン・シヨツプ制をとつているのに労組についてはユニオン・シヨツプ制を廃止している。
2 従業員の採用について従組には採用の方針、基準および人数をあらかじめ通知しその選考の場に出席させる(第二三条)のに労組の場合、採用方針、基準人数を単に通知するのみ(第二二条)でそれも実際は事後に形式的になされているにすぎない。
3 経営協議会の協議事項について従組の場合協議事項(第三一条)となつている。
ア、組合員に重大な影響を与える経営方針および営業政策に関する事項
イ、人事の基本方針に関する事項
ウ、経理上重要な事項
エ、業務の改善と能率の向上に関する事項
オ、従業員の採用に関する事項
が、労組の場合は協議事項(第三〇条)となつていない。注目すべきは右ア、の営業政策に関する事項およびエ、の事項でこれらは労組旧協約にも入つていなかつたもので、従組の正体を示すものである。
4 団体交渉事項について従組の場合、経営協議会において協議が成立しなかつた事項(第四六条)となつているのに対し、労組の場合は右事項のうち労働条件に関する事項に限定されている(第四四条)。
(五) 賃金カツトの差別
銀行は昭和四十年五月組合活動に従事し就労しないときは、賃金をカツトすると労組に通告し、以降今日にいたるまで組合の各種委員会出席、他組合大会出席、オルグ裁判傍聴等組合活動に対し賃金カツトを行なつてきた。しかるに従組の組合活動に対してはこれまで一回も賃金カツトを行なつていない。
(六) 組合執行委員の勤務地の差別
執行委員に選任された場合銀行は従組については専従者を除き全員本店、本部に配転させ専従復帰者についても全員同様本店、本部に配転させている。
これに対し労組の場合については本部、本店への配転は一人もなくすべて青森市内店への配転となつており労組に対するいわれのない差別を露骨にしている。
又組合が執行委員に選任してから銀行が異動発令をするまでの期間を両組合について比較すると
労組  従組
四〇年度 二ケ月 一五日
四一年度 一六日 一〇日
四二年度 三〇日  二日
四三年度 五八日 二二日
となり労組の場合の発令は故意にか著しく遅らせている。
(七) 嘱託採用の差別
銀行は昭和四十一年から停年五五才の用員の老後保障ということで停年後三年間嘱託として勤務できるという制度を設けた。
嘱託採用の基準は「本人が希望し、健康かつ勤務状態の普通のもの」ということで特別問題のないかぎり誰でも採用されるというものであつた。
ところが四十三年三月労組員としてはじめて嘱託を希望した木村清次郎(県庁支店)について銀行は具体的に理由を示さず単に勤務成績不良という理由で採用を拒否した。しかし同人については「勤務成績不良」ときめつけられる事実はないのであり労組所属であるがゆえの不当差別にほかならない。何故ならこれまで従組所属の希望者は病気の者一人を除いて全員(六名)採用されているのであり、右の病気のものについても回復次第採用することになつているのである。
(八) 福利厚生上の差別
1 共済会運営からの除外
青森銀行共済会は青森銀行の常勤役員、職員をもつて組織し会員の扶助、福利厚生をはかることを目的としているもので銀行側委員五名と労組側委員五名によつて運営されてきた。
ところが組合が分裂して従組が結成されるや銀行側は労組側委員を二名に減らすことを主張、ついで従組とはかつて一名にへらすことを主張してきた。労組側はこれに対して全会員による選挙にもとずく役員選任を主張したが四十一年八月銀行および従組側は一方的に組合側委員全員を従組から選任労組を共済会運営からしめ出してしまつた。
2 厚生会運営からの除外
銀行は四十年五月の組合分裂と同時に、それまで銀行と組合が共同しての各種事業実施を通して従業員の福利厚生をはかることを目的としていた「厚生部規程」を一方的に廃止し四十一年七月十二日従組とのみの協議にもとずいて同種目的を有する青森銀行厚生会を設立した。
右厚生会はその規約によると全職員を対象とするものであるにもかかわらずその運営から労組を完全に排除し四十一年度四十二年度の厚生会本部事業計画にもとずく野球大会、卓球大会行事からも労組を排除している。又組合の各種スポーツ行事についても銀行の方針は「従組とは共催するが労組とは共催しないことである」ということを銀行幹部が明言しており実際従組とは四十一年、四十二年、四十三年度にわたつて各種行事を共催しており労組に対しいわれのない不当な差別を行なつてきている。なお四十三年の従組結成三周年記念運動会に対して銀行は八〇万円の資金援助をしておりこれは明らかに経費援助である。
(九) 地銀協主催の銀行講座出席についての差別
地銀協主催の「銀行講座」は昭和二十六年以降、年二回ないし四回開催され銀行は中堅行員を派遣するという方針で毎回二名ないし三名を派遣してきた。組合分裂後もこれまで二五名が出席しているがこの中には労組員が一人も含まれていない。
四、結び
以上述べた点から明らかなように結局銀行の本件解雇処分は、債権者等が労組の組合員であること、また正当な組合活動をしたことを理由とするものにほかならず、かつその真の意図は労組の壊滅をねらうところにある支配介入であるから労組法第七条第一号同三号該当の不当労働行為であつてその解雇の意思表示は無効である。
第五、仮処分の必要性
以上の理由により本件解雇の意思表示は無効で債権者等は依然として銀行の従業員たる地位を保有しているものであるのに銀行はこれを争うので債権者等は本訴を提起すべく準備中である。
しかし佐藤は妻(青森銀行勤務)との共稼ぎにより夫婦と子供三人の生活を維持し他になんらの資産もないから本件解雇によりたちまち生活に窮しており、また伊勢谷は銀行から支払を受ける賃金を唯一の生活の糧として、妻と二人の子供を扶養し、他になんらの資産もないのに本件解雇により、たちまち生活に窮しており両人とも本件仮処分命令によつてかりに賃金の支払を受けるのでなければ本訴の勝訴判決をまつていてはつぐなうことのできない損害を蒙ることは明らかである。
したがつて債権者等に対し従業員たる地位を保全する本件仮処分の必要性があることは明らかである。
以上の理由で本件仮処分申請に及ぶ。

(別紙第二)
一、債権者佐藤寿々雄について
(一) 職歴について
債権者佐藤が解雇当時浦町支店出納係勤務であつたことは否認し、その余は認める。
債権者佐藤は昭和三〇年三月一〇日から浦町支店勤務となつたものであるが、その後四回にわたり組合専従のため休職し、その最後の専従休職を解かれぬまま解雇されたものである。
(二) 給与について
いずれも認める。ただし、通勤手当は現実に通勤、勤務することを条件として支給されるものである。
(三) 労組歴について
債権者佐藤が青年婦人部幹事、同部長であつたことは不知、その余の組合歴は認める。
二、債権者伊勢谷越夫について
(一) 職歴について
債権者伊勢谷が解雇当時本店営業部庶務課勤務であつたことは否認し、その余は認める。
債権者伊勢谷は昭和三七年七月から本店営業部庶務課勤務となつたものであるが、その後二回にわたり組合専従のため休職し、昭和四二年八月二二日以降は、本件解雇理由となつた傷害および暴力行為等処罰に関する法律違反を犯し、警察に逮捕、起訴される等の従業員として勤務させるのに甚だ不適当な行為があつた故をもつて休職(ただし有給)を命ぜられ、その休職を解かれぬまま解雇されたものである。
(二) 給与について
いずれも認める。ただし、通勤手当は現実に通勤、勤務することを条件として支給されるものである。
(三) 労組歴について
債権者伊勢谷が青年婦人部東青支部書記長であつたことは不知、その余は認める。

(別紙第三)
目  次
第一、債権者らの不当労働行為の主張に対する反論
一、労組の歴史について
(一) 組合の結成について
(二) 組合の分裂について
二、従組の御用組合性について
(一) 結成前後の事情について
(二) 差別について
(三) 一般的拘束力の適用について
(四) 労組攻撃の共同について
三、現実の差別状況について
(一) 身分上の差別について
(二) 給与の差別について
(三) 転勤、係替の差別について
(四) 労働協約の差別について
(五) 賃金カツトの差別について
(六) 組合執行委員の勤務地の差別について
(七) 嘱託採用の差別について
(八) 福利厚生上の差別について
(九) 地銀協主催の銀行講座出席についての差別について
四、結びについて
第二、債権者佐藤および同伊勢谷に対する懲戒解雇理由について
一、債権者佐藤に対する懲戒解雇理由について
(一) 正当な異動命令の拒否と人事権に対する侵犯
(二) 職場放棄、集団職場交渉等の秩序紊乱行為
(三) 債務者銀行の名誉、信用を傷つける不当な宣伝行為
二、債権者伊勢谷に対する懲戒解雇理由について

第一、本件仮処分申請書「申請の理由」第四のB(不当労働行為)に対し、次のとおり答弁する。
一、労組の歴史について
(一) 組合の結成について
労組結成以降の組合運動の歴史は認めるが、その余は争う。
ただし、債権者らは労組が結成されたのは昭和二二年二月一九日であると主張するが、労組の前身すなわち青森銀行職員組合が結成されたのは昭和二二年一月一九日である。また労働協約が締結されたのは昭和二七年ではなく、昭和二二年一一月二二日に最初の労働協約が締結され、その後昭和二七年九月九日に全面的に改訂された労働協約が締結されたものである。
労組が全国の地方銀行労組の全部ではなく、その一部をもつて組織されている全国地方銀行従業員組合連合会(地銀連)の中で指導的立場に立つようになつたことは事実である。
すなわち、労組はここ数年間地銀連に専従者を送り、また統一闘争などにおいてはこれをリードしてきた。地銀連の運動方針の基調は労組と全く同一であり、「階級的基盤にたち、体制変革を指向する組合運動の必要」を力説し、傘下各単組の実情を全く無視した画一的、急進的な闘争を指導してきたことは、一般にも知られているところである。このため加盟各単組から次第に批判の声が上り、昭和三五、六年頃以降加盟各単組の分裂または脱退が相次いで起り、一時、加盟単組三八組合、組合員総数約四万、二〇〇名であつたものが労組分裂当時には二四組合、約一万八、二〇〇名となり、今日においては更にこれが減少し、一一組合、約二、三〇〇名という状態で、昔日の俤は全く失われるに至つた。労組の分裂も、このような地銀連組織の自壊作用の中で起るべくして起つたものであり、債務者とは何の関係もない。
(二) 組合の分裂について
第一項はすべて否認する。
組合の分裂は、労組より債務者銀行の支配介入によるものであるとして青森県地方労働委員会に救済の申立がなされ、同委員会昭和四〇年(不)第二号事件として審査が行なわれたが、その過程で分裂は労組執行部の誤つた組合指導に起因するものであることが明らかにされており、経営者陣営が如何にも分裂を策したかのように主張していることは全く不当ないいがかりである。
労組内部に債権者の主張する「研友会」および「経済問題研究会」(経済研究会ではない)の組織が存したことは事実であるが、これは組合活動とは全く関係のない会員相互の研鑽と親睦を目的とする行員の自主的組織であり、もとより債務者とは何の関係もない。また、債権者が分派行動者と呼称する労組執行部に対する批判勢力が存したことは事実であるが、労組執行部が誤つた組合指導を改めず、一般組合員の正当な批判を圧殺し、非民主的な組合運営を続けてきたので、その中で批判勢力は組織全体に拡大していつたのである。したがつて、労組が分裂したのも、債権者が主張するような一部の分派行動者の策謀によるものではない。この点については、労組の分裂について報じている東奥日報(昭和四〇年五月七日付)の記事によつても、「青銀労組はかなり以前から表面は統一されていたように見えながら実質的には分裂した形になつていた。それがことしの春闘の中で表面に出、第二組合の結成はいわば時間の問題と見られていた」ことが明らかにされている。
第二項中、岩谷信男が昭和四〇年三月に本部に異動したことは認めるが、その余はすべて否認する。
岩谷信男はもと五所川原支店に勤務していたものであるが、債務者は昭和四〇年三月に行なわれた定例の人事異動で同人を業務部預金推進課長代理として本部に転勤させた。これは債権者らの主張するような組合対策のためではもとよりなく、業務上の必要に基づくものである。すなわち、同人は昭和三〇年四月に入行した中堅行員であり、銀行業務全般に精通しており、五所川原支店においては、通常異動の対象とされている二年ないし三年の在任期間をオーバーしてすでに五年も勤務しており、その間得意先係として優秀な手腕を発揮したので、業務部預金推進課の代理の一人であつた鳥谷部喜代美が古川支店長代理として転出することになつたのに伴い、その後任として適任であると考えて転勤させたものである。債権者らは債務者が岩谷をして分裂策に専念させたと主張しているが、全く事実無根の不当ないいがかりであり、同人は赴任後労組分裂に至るまでの間は一日の年次有給休暇をとつたほかは勤務を欠いたことはなく、業務に専念していたものである。
債権者らは、債務者が昭和四〇年四月二五日から二七日までの三日間にわたる異例の母店長会議を開催して分裂方針の徹底をはかつたと主張するが、これもまた全く事実無根の不当ないいがかりである。債務者は昭和四〇年四月二七日に恒例の母店長会議を極く短時間(午前一一時から午後一時まで)開催したことはあるが、これは同日労組の春闘要求に対する回答を出すに当つて、事前に回答内容を諒知させるためのものであつた。
債務者が労組の分裂に対して全く関与していなかつたことは、前述の不当労働行為事件の審査によつて明らかであり、労組も到底勝訴の見込みがないとみて、審理の終つた最終段階になつて遂に申立を取下げるに至つたものである。
第三項中、職制組合員が率先して組合指令を破る行動に出たことは否認し、その余は認める。
昭和四〇年春闘において組合のスト指令を組織的に返上するという行動が現われたのは事実であるが、このような行動はすでに昭和三九年年末臨給闘争においても現われていたものであり、これは労組執行部の銀行の公共的使命を無視した闘争一辺倒の組合指導に対する良識ある組合員の批判的行動としてなされたものである。昭和四〇年の春闘においては、スト権確立の段階において四割以上の反対があつたにもかかわらず、労組執行部はその指導の誤りを認めず、一般組合員の意向を全く無視して更に一層過激な闘争を企て、有無をいわせずこれを強行したので、前述のような組織的なスト指令返上の行動となつて現われ、遂に組合の分裂を招来するに至つたものである。この辺の事情も、前述の不当労働行為事件の審問において、青森県地方労働委員会が職権をもつて取調べを行なつた青森銀行従業員組合(従組)結成時の幹部の証言によつて明らかにされている。
なお、昭和四三年一〇月一日現在の労組員、従業員の数はそれぞれ一八三名、一、一五一名となつており、全組合員中に占める労組員の割合は一三%程度にすぎない。
二、従組の御用組合性について
(一) 結成前後の事情について
第一項は否認する。
債務者と従組とは何の関係もないことは、前述したところによつても明らかであり、このような主張は全く根拠のない中傷誹謗にすぎない。
第二項中、従組結成の翌日である昭和四〇年五月五日午後四時頃人事部長宛に組合結成の通告がなされたことは認めるが、その余は否認する。
従組の結成は昭和四〇年五月四日に行なわれたが、翌五日には組合員総数の三分の一に相当する四〇〇名余を擁するに至つたので、同日午後四時頃従組執行委員長に就任した岩谷信男から宮本照明人事部長に対し電話で従組結成通告を行なうとともに、早急に団交を持つて欲しいとの申入れがなされた。宮本人事部長は、右のような突然の申入れに接し、一存では即答し得ない問題であつたので、当日は休日でもあつた関係で、在青の常勤役員に連絡をとり、どのように対処するかについて協議した結果、とりあえず翌六日開店後に従組との面会に応じてはとの結論に達したが、従組からの強い要請もあり、開店後では不測の事態の発生も予想されたので、結局開店前の午前七時に面会に応ずることにし、後程この旨は宮本人事部長より岩谷執行委員長に対し連絡された。一方、債務者は組合の分裂によつて今後どのような摩擦と混乱の事態が発生するか全く予想できなかつたが、債務者としては何としてでも業務を確保する必要があつたので、同日緊急に青森市内の非組合員を招集した上、不測の事態の発生に備えて、非組合員は当分の間平時より早めに出勤し、最低限の営業を確保することに努力するよう、指示するとともに、併せて両組合との摩擦を回避するため、あくまで中立の立場を堅持し、従来どおりいやしくも組合問題について誤解を受けるような言動は一切行なわないよう注意を与えたのである。
このようにして、債権者らのいう五月六日朝は、非組合員は本店を初めとして市内各店で開店前に出勤して非常事態の発生に備えた。そして、本店においては前述のとおり午前七時から従組代表者との面会に応じ、従組結成について正式な通告と説明を受けるに至つたものである。もとより、これは債権者らの主張するような団体交渉ではない。
かような次第であるから、債権者らが時期の点、手まわしのよさからみても事前に十二分に債務者の準備ができていたと主張することは全く当らず、不当ないいがかり以外のなにものでもないというべきである。
第三項中、債務者が昭和四〇年一〇月二〇日全支店長を集めて法律専門家を講師として研修を行なつたことは認めるが、その余は否認する。
債権者らは、右研修の中には、如何に巧妙に第二組合の結成援助をしまた組合の切りくずしを行なうかという内容が含まれていたと主張しているが、そのような事実は全くない。銀行業務の本体は人の力なのであるから、業績の向上も正しい労務管理にまつところが大きい。ところで、労務管理を行なう場合に労働法に無知であることは許されない。支店長が労働法の知識に乏しいために、必要以上に組合というものをおそれたり、また禁止されたことを平気で犯すようなことがあれば、支店従業員のモラール(職場士気)にも影響してくるし、ひいては業務遂行上非常なマイナスにもなる。従来、債務者銀行ではこの大切な労務管理の研修が支店長に対して十分にほどこされておらず、組合が分裂して職場の管理が特にむづかしくなつている時期でもあつたので、支店長が労務管理を行なうに当つて、労働法に対する正しい知識を持ち、職場において良き労使慣行を樹立し、ひいては労働生産性の向上に資することを目的として、前述のような支店長研修を行なつたものであり、債権者らの主張するような不当な内容のものはどこにも含まれていない。債権者らの主張は、全く根拠のない不当な臆測ないしいいがかり以外のなにものでもない。
(二) 差別について
債権者らが第一項から第一〇項までに主張している事項は、後述する三の(一)から(八)までの事項と全く同一であるから、後述するところに譲る。
(三) 一般的拘束力の適用について
すべて否認する。
債務者は、従組が従業員の四分の三以上を占めている現状から、労使間の問題は従組を中心に解決を図ることを考慮せざるを得ず、また労働条件について両組合間に差別を設けることも許されないから、従組と協定された事項については、労働組合法第一七条の適用により原則的に労組にも及ぼすという態度をとつてきた。もつとも、賃金、臨時給与、諸手当など労働条件の基本的なものであつて、労組より要求が出され、交渉継続中のものについては、労組の立場も十分尊重し、可能な限り交渉を続け、労組より妥結の意思表示をまつて実施する方針で臨んできた。これによつて労組との妥結が従組より遅れることがあつたとしても、同じ時点に遡つて協定を適用しているので、両組合間に差別を生じたことは未だかつてない。債権者らはこの点について、賃金、臨時給与、諸手当など銀行経理の支出を伴うものについては従組との協議が成立しても労組に対しては適用を除外し云々と主張しているが、事実を誣いるのもはなはだしいというべきである。
一方、債権者らは社宅料、賃金カツト、住宅貸付金利、利息等労働者の負担にかかわるものについては、従組との協議が成立したことによつて債務者が一方的に実施していると主張しているが、これらは労働組合法第一七条の適用によつてなされたものではない。すなわち、社宅料の改正はいずれかの組合から要求があつたから行なつたというものではなく、社宅料は法定賃借料以下となつた場合には税法上現物給与があつたものとして取扱われ、課税の対象とされるので、これより低くなつた社宅料を公正妥当なものに改めたものにすぎない。また、賃金カツトはストライキや争議期間中の組合活動に対して行なつているもので、協定のあるなしにかかわらずこれを行ない得るのは当然であり、何ら不当とされるいわれはない。さらに、住宅貸付金利等は従組より要求が提出され、協議の上従来の制度が改正されることになつたものであるが、この新貸付制度の適用を受けようとする者は、当然に新条件を承認した者でなければならない。したがつて、債務者は新条件を承認するのでなければ、旧制度のままの条件によらざるを得ないと説明し、新条件を承認しない労組員に対しては旧制度をそのまま適用しているにすぎないものであつて、債権者らの主張こそ全く一方的な自分勝手な主張であり、理解に苦しむところといわざるを得ない。
債権者らが以上の事実を捉えて従組の御用組合性を示すものであると主張していることは、全く牽強付会である。
(四) 労組攻撃の共同について
従組が昭和四二年七月八日付東奥日報に「県民の皆様へ」と題する広告を、債務者が同月一二日付デーリー東北に「県民の皆さまへ」(「県民の皆様へ」ではない)と題する広告をそれぞれ掲載したことは認めるが、その余は否認する。
労働組合も銀行も共に社会的存在である。世間から誤解され、不当な評価を受けるに至つては、その活動に重大な支障を生ずるのは当然である。労組が労組員に関する転勤問題に端を発し、その不当な要求を実現するための一手段として、事情を知らない世間一般大衆に対し、債務者銀行の人事方針を殊更に歪曲、誹謗するような不当な宣伝を行ない、かつこれに関連して債権者伊勢谷が一市民に対し刑事事件に問われるようなトラブルを起すに至つたことは、当時ジヤーナリズムによつて世間周知の事実となつたため、これにより債務者は少なからず被害を受けた。そこで、債務者としては世間の誤解を解く必要からも、右広告をもつて紛争の原因となつた事情と経過を説明し、県民の理解を求めて、県民の銀行としての変らぬ愛顧を得ようとしたものである。従組が右広告を掲載したことは、債務者の全く関知するところではないが、債務者銀行に二つの労働組合があることは一般に必ずしも知られているわけではないので、労組および労組員によつて行なわれた前述のような行動が、従組および従組員のそれとして誤解され、多大な迷惑を蒙つたことは容易に想像され、したがつて従組はこのような県民の誤解を解くため、これらの行動とは一切関係のないことを明らかにするとともに、右行動に対する世間の正しい判断を求めようとしたものであることは、右広告の内容に徴しても明らかである。結局、右広告は債務者銀行および従組がそれぞれの必要に基づいて行なつたものであり、債権者らが両者が協議の上労組攻撃を行なつたものであると主張していることは、自ら指導し、もしくは実行した右の行動によつて債務者銀行および従組に対し与えた迷惑に対し何らの反省もしていないものであり、いいがかりもはなはだしいものである。
三、現実の差別状況について
(一) 身分上の差別について
労組員中監督職にある者が四名であることは認めるが、その余は否認する。
昇格は、部店長より毎年一二月末現在で提出される人事考課、具体的には勤務実績考課、勤務能力考課、役席者としての適否、総評点等を総合的に判断して公正に決定されているもので、債権者らの主張するように労組員なるが故に昇格を差別している事実は全くない。債権者らは、同年令、同時入行者別に比較した場合労組員に対する差別は歴然としていると主張するが、昇進、昇格は前述のような考課によつて決定されるのであるから、これと直接関係のない年令や入行時を比較して格差を云々することは無意味というほかはない。
(二) 給与の差別について
すべて否認する。
債務者は昇給の決定に当たつては、部店長より毎年一二月末現在で提出される人事考課、具体的には勤務実績考課、勤務能力考課、総評点等を総合的に判断して、労組員、従組員の区別なく全従業員を対象として公正に決定しているのであるから、それによつて従業員間に本俸の格差が生じたとしても、何ら不当な差別ではない。債権者らは同年令、同時入行者別に本俸を比較すると従組員と労組員との差は顕著であり、労組員は不当な冷遇を受けていると主張しているが、単純に同年令、同時入行者の本俸を比較し格差を云々することは、人事考課制度を無視するものであり、全く当らないというべきである。
(三) 転勤、係替の差別について
第一項はすべて否認する。
債権者らが本店本部、東京支店、仙台支店、札幌支店などをいわゆる重要店であるとする趣旨が明らかでないが、債権者らが主張するようにこれらの店に労組員を一切配転しなかつたということは全く事実に反する。すなわち、昭和四〇年七月五日付異動で油川支店勤務の労組員津島滋が本店業務部へ、昭和四一年四月一日付異動で古川支店勤務の労組員相馬新一および大畑支店勤務の労組員時田康の両名が本店資金部へ、新町支店勤務の労組員新岡リツが本店営業部へ、昭和四二年四月一日付異動で浪岡支店勤務の労組員北山正人が本店審査部へ、本店審査部勤務の労組員五十嵐宏が本店営業部へ、昭和四二年一〇月二一日付異動で新町支店勤務の労組員松橋桂子が本店営業部へ、昭和四三年一〇月二一日付異動で行史編纂室勤務の労組員長村房枝が本店審査部へとそれぞれ配転になつているのである。もとより、配転は公正に行なわれているのであつて、労組員なるが故に差別されているということはない。ちなみに、右店への配転を希望している者は労組員の中では一名を除いては全く存しない。
第二項はすべて否認する。
債権者らが貸付係が重要な係であるとか、また出納係が陽のあたらない係であるとか主張している趣旨は明らかではないが、各係はそれぞれに重要であり、如何にも差異があるかのように主張していることは偏見もはなはだしい。そして、同一店内における各係への配置ないし係替は、各人の勤務実績、勤務能力、業務経験等を勘案して公正に行なわれているのであるから、単純に労組員、従組員の数を比較して差別を云々することは全く当らないというべきである。
(四) 労働協約の差別について
債権者らが主張するような労働協約案(甲第二二号証参照)を債務者が昭和四一年二月三日に労組に対し提案したことはあるが、同年九月六日に従前の労働協約が失効して以降昭和四三年四月一二日に至るまでの間、右提案をめぐつて何らの交渉も持たれず、同日労組から右提案の取扱いについて質問があつたので、債務者より同月二三日付書面をもつて右提案にかかる労働協約案は自然消滅した旨の通告を行なつている。
右労働協約案につき、債権者らは従組との差別を明文化しようとするものであると主張しているが、歪曲もはなはだしいので、以下に反論する。
1 従組とはユニオン・シヨツプ制をとつているのに、労組とはこれを廃止しようとしたことは事実であるが、これは労組が従業員の過半数にみたない少数組合であるため、労働組合法第七条第一号但書により合法的にユニオン・シヨツプ条項を締結することができないことによるものであつて、何ら不当な差別ではない。
2 先ず、従業員の採用について、従組には採用の方針、基準および人数をあらかじめ通知するとなつているのに、労組には単にこれを通知すると改めようとしたことは事実であるが、実際に従組に対しても人数の点を除いては事前に通知するということは行なわれていないので、この実情に合わせようとしたものにすぎない。次に、従組には従業員の採用に当つて、その選考の場に出席させるとなつているのに、労組に対してはこれを廃止しようとしたのは、もともとかかる人事権の問題にまで労働組合を立入らせることは必ずしも適当ではないと考えられたが、従来の労働協約を尊重し、従組については多数組合であるので、かかる経営参加的機能を果させることを認めることにしたものであつて、何ら他意はない。
3 債権者らの指摘する事項が従組との間では協議事項となつているのに、労組に提示した労働協約案では説明事項となつていることは事実である。もつとも、説明事項といつても債務者において一方的に説明を行なうものではなく、労組から説明を要求し、かつこれに対し意見を述べることができるのであり、しかも債務者においてその意見を尊重することを要請されているのである。従組の場合、これらの事項が労働条件に関する事項と同様に協議事項として列挙されているが、決して労働条件と同じ趣旨で協議事項とされているものではなく、実質的には労組に提案したものと同じ趣旨であることは、従組との労働協約審議の際に説明し、従組もその旨了承しているものである。したがつて、労組に提案した際には、右の趣旨を明らかにするため、本来の協議事項と説明事項とを整理したにすぎないものであつて、何ら他意はないのである。
債権者らは、組合員に重大な影響を与える営業政策に関する事項および業務の改善と能率向上に関する事項は、労組の旧協約にも入つていなかつたもので、従組の正体を示すものであると主張しているが、これらの点について労働組合の関与を認め、労働者側の理解と協力を得ることは、今日の経営においては最も大切なこととされているのであり、またこれによつて生産性の向上をはからなければ、労働者の生活と福祉の向上もあり得ないのであるから、債権者らの右のような主張は全く当らない。もし、これを不当とするならば、それこそ逆に債権者らの指導する労組の正体を示すものといつてよい。
4 債権者らは、団体交渉事項について、従組の場合、経営協議会において協議が成立しなかつた事項となつているのに対し、労組の場合は右事項のうち労働条件に関する事項となつていることは不当であると主張しているが、実質的には両者は何の差異もないのである。なぜならば、本来団体交渉事項は労働条件に関する事項に限られるのであり、労組に対して説明事項として提案した経営権に属する事項は、たとえ経営協議会において意見の一致をみなかつたからといつて、争議権を背景とした団体交渉の対象事項とさるべきものではないから、従組との労働協約で、団体交渉事項が経営協議会において協議が成立しなかつた事項となつていても、結局右事項のうち労働条件に関する事項のみが団体交渉に移行すると解すべきだからである。したがつて、労組に提案した労働協約案ではこの点を明らかにしたものにすぎないものであつて、何ら他意はないのである。
(五) 賃金カツトの差別について
認める。ただし、労組と従組とを如何にも差別しているかのように主張していることは全く事実に反する。
労働者がストライキや労働時間中の組合活動に従事した場合、それによつて労働を提供しない限度で賃金が失われることはノーワーク・ノーペイの原則上当然のことであり、もしこれに対し賃金をカツトしなかつたならば、かえつて労働組合法第七条第三号の経費援助の不当労働行為になるとされるのが、今日の労働常識である。債務者銀行では、従来から右のような考えに基づいて、すくなくともストライキや争議期間中の組合活動に対しては、当然賃金カツトすべきであるとする方針の上に立つていたが、争議妥結の際の条件として、いわば恩恵的に賃金カツトしない措置(ただし前例としない)をとつてきた。しかし、昭和四〇年五月四日組合が分裂して以降、労組は引続き依然として争議状態にあり、その所属組合員は頻繁にストライキや就業時間中の組合活動を行なつているのに対し、従組は平和状態にあり、その所属組合員は就業時間中の組合活動も少ないにもかかわらず、これを同様に取扱うことは全く不合理であるので、債務者は昭和四〇年五月一〇日付通告書をもつて労組に対し争議期間中は賃金カツトを行なう旨を明らかにするとともに、以後争議期間中に限つて賃金カツトを実施してきたものである。この点は従組に対しても全く同一の方針をもつて臨んでいるのであるが、今日まで従組は争議状態に入つたことがないので、実際上賃金カツトが行なわれたことがないというにすぎない。したがつて、これを目して両組合を如何にも差別しているかのように主張することは全く当らない。
(六) 組合執行委員の勤務地の差別について
前段中、労組に対するいわれのない差別を露骨にしているとの点は否認し、その余は認める。
債務者銀行は、従来から執行委員に選出された組合員については、その組合活動に便宜をはかる意味から、全く恩恵的措置として青森市内店への配転を行なつてきた。その場合、本店や本部に配転するという慣例はないのであり、市内店のいずれに配転するかは、あくまで本人の勤務実績、勤務能力、業務経験等を考慮し、業務上の必要に基づいて決定されるものである。債権者らは、労組の場合本店、本部へ配転になつた者は一名もいないと主張しているが、労組の執行委員は従来殆どすべて市内店から選出されているのであつて、そのままで執行委員として活動しても支障はないし、また執行委員になつたからといつて、本店や本部に配転されなければならない理由はどこにもない。本店や本部に配転するかその他の市内店に配転するかは、あくまで本人の勤務実績、勤務能力、業務経験その他業務上の必要に基づいて決定されるものである。ちなみに、労組執行委員一一名のうち本店、本部から選出された者は、各年度について四名ないし六名(平均五名)存する。
後段中、労組の場合の発令は故意にか著しく遅らせているとの点は否認し、その余は概略認める。
執行委員の異動といつても、これに関連する異動を行なわなければならず、債務者銀行の都合もあるから、若干遅れるということはあつても、労組の場合について特に遅らせたという事実はない。
(七) 嘱託採用の差別について
債務者が昭和四一年から停年五五才の傭員について停年後三カ年を限度とする嘱託採用の制度を設けたこと、昭和四三年三月木村清次郎(県庁支店用員)が労組員としてはじめて嘱託を希望したが不採用となつたこと、従組所属の嘱託希望者は病気の者一名を除いて全員採用されたことはいずれも認めるが、その余は否認する。
傭員の嘱託採用の制度は従組からの要求に基づいて、昭和四一年四月一日から制定されるに至つたものであるが、嘱託採用の基準は「本人に引続き勤務する意思があり、勤務成績良好にして且つ銀行が必要と認めた場合」ということであつて、債権者らが主張するように「本人が希望し、健康かつ勤務状態の普通のもの」ということで、特別問題がないかぎり誰でも採用されるというものではない。
昭和四二年一一月二五日に行なわれた労組との団体交渉において、労組員木村清次郎(県庁支店用員)を嘱託として採用することとの要求書が提出されたので、債務者は同人が右の嘱託採用基準に合致しているか否かを慎重に検討したところ、同人の過去三年間の人事考課に基づく勤務成績考課は普通以下すなわちマイナスの考課であつて、採用基準に該当しないのみならず、同人の所属する県庁支店では業務上用員の配置が絶対に必要であるという状況ではなかつたので、結局嘱託として採用しないことに決定されたものである。
債権者らは、木村清次郎の嘱託不採用を労組員なるが故の不当差別であると主張しているが、右に述べたとおり、所定の基準に該当しないのであるから、これを不当差別というのは全く不当ないいがかりである。従組員でも現に病気のため右基準に該当せず不採用になつている者も存するのである。
(八) 福利厚生上の差別について
1 共済会運営からの除外について
青森銀行共済会が債務者銀行の常勤役員、職員をもつて組織され、会員の相互扶助福利厚生をはかることを目的とし、銀行側役員五名と労働組合側役員五名によつて運営されてきたことは認めるが、その余は否認する。
右の労働組合側役員は、労働組合が一つの場合を前提として定められていたものであるが、昭和四〇年五月四日労組が分裂し従組が誕生したのに伴い、共済会制度の趣旨からして、労働組合側役員を労組にのみ独占させておくのは不都合であるとして、同月二〇日従組からも役員を送りたいので検討されたいとの申入れがなされた。債務者としても右の申入れは尤もであると考え、今後は両組合からその組合員数に応じて役員を選定することに決定し、同年七月一二日従組に対しては常任委員二名、監査委員一名、労組に対しては常任委員二名の選定を依頼したところ、若干の時期の遅れはあつたが、従組、労組ともそれぞれ役員の届出があり、就任した。次いで、昭和四一年度の役員選任に当り、当時従組と労組の組合員数は四対一の割合になつていたので、同年四月六日従組に対しては常任委員三名、監査委員一名、労組に対しては常任委員一名の選定を依頼したところ、従組からは届出がなされたが、労組からは遂に届出がなされなかつたので、やむなく同年八月一九日に開催された共済会役員会に諮つた結果、右の労組から選定さるべき役員を従組から補充することになつたものである。
債権者らは、労組側は役員の選任に当つては、両組合の組合員数に按分比例して役員を選出するのではなく、全会員による選挙に基づく役員選任をすべきであると主張したというが、そのようにしなければならない規約上の根拠はない。前述のとおり労働組合側役員は二つの組合が存する現状の下においては、その組合員数に按分比例して選出するのが最も妥当な方法である。債権者らは債務者および従組側が労働組合側役員を一方的に従組から選任し、労組を共済会運営からしめ出したと主張しているが、労組に対し再三にわたつて役員選定を依頼しているにもかかわらず、これに応じないでおいて、一方的に労組をしめ出したというのは事実を誣いるのもはなはだしいというべきである。
2 厚生会運営からの除外
昭和四一年七月一二日従業員の福利厚生を目的とする厚生部規程が廃止され、同種目的を有する青森銀行厚生会が設立されたこと、昭和四三年の従組主催の運動会に対し債務者が八〇万円の資金援助をしたことはいずれも認めるが、その余は否認する。
従来、職員の福利厚生をはかり、明朗溌刺たる職場を建設することを目的とする厚生部が設けられていたが、これに対する債務者からの補助金は相当多額なものであつたにもかかわらず、その恩恵を受ける者は殆ど青森市内職員のうちの一部分の者に偏つており、余りにもこれを優遇しているとの批判があり、その改善が強く望まれていた。従組結成後、同組合より厚生部の現状やあり方についての考え方をただされたので、債務者はこれが改正の必要がある旨の意思表示をし、それ以降数回にわたつて改正の交渉がもたれてきた。そして、昭和四一年七月六日に労組側委員も出席して厚生部委員会が開催され、厚生部の廃止が付議、可決されることになつたものである。
厚生部に代る新組織の設立については、その性質からして厚生部委員会の審議事項ではなく、経営協議会で討議すべきであるとの考え方により、債務者は同日新組織に対する銀行案を労組に送付した。これに基づいて、その後七月八日労組と経営協議会を開催したが、労組は債務者の主旨、内容の説明などは一切聞こうとせず、一方的攻撃的発言に終始し、補助金の均霑化の必要を認めながらも、何ら建設的な意見を出さなかつた。一方、従組との協議は同月一二日に成立したので、債務者は同日をもつて厚生部の廃止と厚生会の発足にふみ切つたものである。
以上に述べたところによつて明らかなとおり、厚生会の発足は従業員の厚生活動に対する債務者の補助金の均霑化と厚生活動のレベル・アツプをはかつたものであり、従組と労組を差別するためのものではもとよりない。ちなみに、労組所属の職員も現に増額された厚生会資金の恩恵を受けている。ただ、厚生会が会員の厚生をはかり明るい職場をつくることを目的とし、債務者銀行に勤務するすべての役職員をもつて構成されるものであるにもかかわらず、従組員と労組員との間には組合分裂以来の感情的なしこりが依然として残つており、そのような状態の中で厚生活動を行なうことは実際上無理であるので、やむを得ず諸行事が別々に行なわれている実状である。ただし、右諸行事については労組も従組も平等に厚生会から資金的配分を受けている。
債権者らは、これに関連し組合の各種スポーツ行事について債務者は従組とは共催するが労組とは共催しないと明言していると主張しているが、従組の各種スポーツ行事について債務者と共催したなどということはない。債権者らは債務者が労組に対し如何にも不当な差別を行なつているかのように主張するが、被害妄想もはなはだしいというべきである。
なお、昭和四三年秋に行なわれた従組主催の運動会に八〇万円の資金援助をした事実はあるが、これは労働組合法第七条第三号但書にいう厚生資金に対する寄付であるから、経費援助には該当しない。もとより、労組の場合にも必要と認められれば、このような資金的援助を行なうこともあり得る。
(九) 地銀協主催の銀行講座出席についての差別について
全国地方銀行協会(地銀協)主催の銀行講座が昭和二六年以降年二回ないし四回開催され、債務者銀行がこれに中堅行員を派遣してきたことは認めるが、その余は否認する。
銀行講座は地銀協が銀行員としての視野を広め、人格を高め、教養を豊かにすることを狙いとして、主に大学教授を講師とし、銀行の経営問題、金融経済の基礎理論と現状分析等を内容として行なつているもので、昭和二六年開講以来現在で第五三回を迎えている。債務者銀行では現在右講座を受講した者は一〇八名に達し、そのうち組合分裂以後受講した者は二九名となつているが、この中に労組員がたまたま一名も含まれていなかつたことは事実である。債務者は右講座は役席者研修の一環として考えているので、これに出席する者の選考基準を原則として次のように定めている。すなわち、
1 営業店長代理、本部課長代理、およびこれに準ずる職にあるもの
2 将来より以上の管理者としての活躍を期待できるもの
3 人事考課が平均以上のもの
4 見做年令四〇才以上のものを除く
となつており、受講者はこのすべての基準をみたす者でなければならない。営業店長代理および本部課長代理が一六五名で、このうち既受講者二五名を除いた一四〇名が受講対象者とされているのであるが、この中から前述の選考基準全部をみたした者を毎年八名宛派遺したとしても、到底さばき切れるものではない。労組員の受講対象者は現在全部で四名であり、このうち既受講者一名を除いた三名については受講のチヤンスはないわけではないが、右のような状態からすれば、今日まで労組員がたまたま一名も右選考基準に該当せず、右講座に派遣されることがなかつたとしても、何ら異とするに足りない。もとより、債務者は労組員を単に労組員なるが故に差別しようという意図は毛頭有しないものである。
四、結びについて
すべて否認する。
債権者らは、以上の事実を援用して、本件各解雇が労働組合法第七条第一号、第三号該当の不当労働行為であると主張しているが、以上の事実はいずれも真実でないか趣旨を歪曲ないし曲解して捉えているものであるから、何ら債務者の不当労働行為意思を裏付けるものではない。仮りに、百歩譲つて、これらの事実の中に債務者の不当労働行為意思を何程か推測させるものがあつたとしても、本件各解雇は後述するような具体的な理由に基づいてなされたものであるから、不当労働行為の成立する余地は全くない。
第二、債権者佐藤および同伊勢谷に対する懲戒解雇理由を次のとおり陳述する。
一、債権者佐藤に対する懲戒解雇理由について
債権者佐藤は昭和四一年八月二六日以降労組委員長に就任し、組合の最高責任者として、「組合を代表し、組合の業務を統轄する」職責を有したものであるが、債務者銀行が行なつた昭和四二年四月一日付定例人事異動に関連し、次に述べるごとき不当、違法な行為を企画、決定した上、これを指導、実行した。
(一) 正当な異動命令の拒否と人事権に対する侵犯
1 労組は昭和四二年四月一日付で行なわれる一般行員の定例人事異動を前にして、同年三月九日の団交において、債権者佐藤委員長名の要求書をもつて、「従業員を異動させるにあたつては、本人の意見や生活環境を充分に考慮し、本人ならびに組合の意見を無視した一方的異動を行なわないこと」をはじめとして、「十和田支店職員江渡桂子を青森市内店へ転勤させること」などを含む一〇項目の要求を提出し、これに対する債務者銀行の返答を求めた。
労組員江渡桂子の結婚を理由とする十和田支店から青森市内店への転勤要求については、すでに同年二月二三日十和田支店で行なわれた職場交渉において、労組十和田分会から十和田支店長に対し、同人が青森市在住の人と結婚するので、同年四月一日付で行なわれる定例の人事異動において、浦町支店に転勤させるようにとの要望が出されており、これに基づいて労組として改めてとり上げてきたものである。債務者銀行はかかる結婚等の個人的事情による転勤も過去においてはかなり配慮してきた事実はあるが、これは全く恩恵的措置であり、今日のような企業合理化が強く要請されている時代においては、一般に余り例をみない取扱いであるのみならず、債務者銀行にとつてかなりの負担となり、ひいては適正な人事異動を妨げる結果ともなつているので、債務者銀行内部においては、昭和四一年の人事異動の際にこれを廃止することが論議されたが、その後昭和四二年一月になつて今後はそれだけで転勤させるというような特別な配慮はしないということを決定した。そこで、右三月九日の団交において、債務者銀行は、人事異動はあくまで業務上の必要に基づいて行なわれるものであるから、今まで結婚等の個人的事情だけで転勤を行なつてきた事例があるけれども、この時点でピリオドを打つことにし、今後はそれだけで転勤させるような特別な配慮はしない考えである旨を明らかにし、右江渡の結婚による転勤要求には応じられない旨の返答を行なつた。
これは債務者銀行が業務上の必要に基づいて人事異動を行なうに当つて、従業員の個人的事情を考慮しないという趣旨ではもとよりなく、業務上の必要もないのに従業員の個人的事情だけでいちいち転勤を配慮することはしないというにすぎない。したがつて、債務者銀行と労組との間でかつて締結され、当時失効していた労働協約第一五条に「銀行は組合員の異動、身分の変更に関しては本人の生活条件、健康、技能、勤務状況等を考慮し厳正公平に行なう」とある趣旨を今後も尊重していくという点においては全く変りないのである。
四月一日付人事異動に関する交渉は、その後三月一八日の団交においても行なわれたが、債務者銀行の人事異動に対する右の考え方は充分説明している。また、右に述べたとおり労組との労働協約は失効しているので、債務者銀行は組合役員等の異動について同意等の手続を履践することを義務づけられるいわれは全くなかつたが、従組と締結している労働協約の条項の趣旨を尊重して、組合役員および支部長の異動については事前に労組と協議を行なう方針で臨み、三月一八日、二二日、二三日、二五日の団交で協議を重ね、その協議の成立したもののみを発令することにしたものである。
かくして、債務者銀行は四月一日付をもつて、定例人事異動における従来の慣例に従い、各部店の人員の調整、人材の養成と人心の刷新その他業務上の心要に基づき、本人の生活条件、健康、技能、勤務状況等をも考慮した上、同一部店に長期間配属されていた者を中心に、総員一〇七名(うち労組員三五名)の一般行員の異動を厳正公平に決定し、これを発令した。
職員就業規則第二九条第二項によれば、異動を命ぜられた者は発令の翌日から一週間以内に赴任しなければならないことになつているが、労組は右異動の中で前記江渡桂子の結婚のための転勤希望がかなえられていないことを不満として、四月六日の団交において、同日付要求書をもつて「江渡桂子(十和田支店職員)を青森市内本支店(旧市内)へ転勤させること」との要求を提出するとともに、新たに、右異動の中で発令になつた労組員白取忠一郎の転勤を不当とし、「白取忠一郎(小湊支店職員)にたいする大間支店への異動辞令を撤回し、本人の希望する青森市内本支店(旧市内)へ転勤をさせること」との要求を提出し、これらの要求がいれられなければ、労組員に対する異動は組合として拒否させる旨の意向を示した。しかし、右の要求は後述するとおり全く不当なものであり、これにより正当な異動まで拒否させることは許されないので、債務者銀行はこのことを指摘して警告したにもかかわらず、その後労組員の異動対象者の大部分は所定の赴任期間が経過しても赴任しないので、債務者銀行は四月一一日に行なわれた団交において、この点について労組に事情を確認したところ、北山正人、西村政恒、会律祐一、千葉幸雄、三上隆、沢田和夫、柿崎祐作、小山隆晟、皇山和正の九名については赴任させるが、それ以外の者は組合の争議権に基づく指令として赴任を拒否させる旨の意思表示がなされた。
しかし、労組が組合の指令によつて赴任を拒否させていると称しながら、一部の者が任意に赴任していることは理解に苦しむところであり、たとえ争議行為として行なわれたとしても、労組の不当な要求を実現するための手段として、正当な異動対象者まで赴任を拒否させることは許されないので、債務者銀行はこのことを重ねて労組に警告するとともに、同日赴任拒否者二六名に対し、四月一四日までには新任地に着任するよう催告し、併せてこれに応じない場合には、それ以降旧任店での就労を拒否し、賃金を支払わない旨の文書を送付した。
これに対し、その後右期限までに中林好克が新任地に赴任し、川村公男から赴任に応ずるとの意思表示があり、また藤沢壮吉から三週間入院加療の診断書が提出され、同人は赴任拒否の有無にかかわらず赴任できない状態にあつたが、右三名を除いた二三名は依然として赴任を拒否し、部店長の赴任指示を排除して、旧任店で強硬就労し、後述するとおり新町支店、古川支店などにおいては、これをめぐつて労組員が職場放棄、集団職場交渉などの不法な挙に出るに至つた。そこで債務者銀行は四月一五日労組に対し、このような業務命令無視の行動は正当な組合活動でない旨を警告するとともに、各異動拒否者に対し、職員就業規則によつて処分の対象になることを明らかにして反省を求め、至急着任するよう再度催告する旨の文書を送付した。
右警告によつて、その後四月一七日に森貞雄が赴任したが、残る二二名は依然として赴任しないので、四月二七日労組および各異動拒否者に対し重ねて同様の警告文書を送付し、反省を求めた。にもかかわらず、結局右二二名は五月九日までは全員赴任に応ぜず、以後逐次赴任するに至つた。すなわち、奈良和子は五月九日、五十嵐宏、小倉三生、本間伯治、佐々木和男、坂本進一、八田昌三、藤井洋一、飛内十四雄および工藤竜雄は五月一〇日、渡辺健一、工藤治および越前信一は五月一一日、三橋明、武藤篤司および白取忠一郎は五月一三日、北田成治、藤田健治および野坂伸一は五月一五日、村井啓佑は五月一六日、浪岡隆一および成田隆三は五月一八日に至つてようやく赴任したものである。
2 労組の指示による右一連の異動拒否の行動によつて実現しようとした具体的な要求ないし目的は、江渡桂子の結婚を理由とする十和田支店から青森市内店(旧市内)への転勤および白取忠一郎の小湊支店から大間支店への転勤を撤回し、本人の希望する青森市内店(旧市内)へ転勤させることの二つである。しかし、右要求が債務者銀行に対し単に配慮を促すにすぎないものならばともかく、これを権利として債務者銀行に要求し、これが実現を争議手段に訴えて強要せんとすることは明らかに不当である。
先ず、江渡桂子の結婚を理由とする転勤要求についてみると、従業員がたまたま遠隔地に居住する相手と結婚しようとする場合、生活上の都合などで結婚後も同居生活をしながら引続き勤務したいとの願いから、その相手の居住する遠隔地の店への転勤を希望することは人情としては無理からぬことであるが、労働契約上このような要求をする権利はどこからも出て来ないということである。
職員就業規則第二九条第一項には「職員は業務上の都合で転任を命ぜられることがある」と規定されており、従業員はこれに基づいて入行の際提出する誓約書で「貴行の都合により、何時任地若しくは担任職務の異動を命ぜられても異議ありません」と誓約しているので、債務者銀行が一方的に従業員の転勤その他の異動を命じうることについては全く異論の余地がない。すなわち、人事異動の権限は債務者銀行が保有しており、企業運営上の必要により一方的にこれを行使しうるものである。
このように、使用者が人事異動の権限を有するのは、労働者が労働契約によつて一定の範囲で自己の労働力の処分権を使用者にゆだねた結果によるものであるが、その反面労働者は自己の労働力を勝手に処分する権限を有しない。すなわち、労働者がどこでどのような労務に服するかということは、企業の運営に当る使用者の権限において決定するところで、その際、権利濫用にわたるような恣意的な決定がなされた場合には労働者において異議を唱えることができるが、それ以外は労働者から希望や意見を述べ、使用者の配慮を促すことはできても、それ以上にどこでどのような労務に服するかということまで労働者において決定し、使用者に指図する余地は全くない。これは企業および労働契約の本質から導き出される当然の帰結である。
右の江渡桂子の転勤要求は、労働力の処分権を有する使用者に労働力の提供の場所すなわち勤務場所について希望や意見を述べて配慮を促すという程度を越えて、労働者の一方的都合でその希望する勤務場所に勤務させることを強要するものであるから、明らかに越権行為であり、使用者の保有する人事権に対する重大なる侵犯といわざるをえない。
債権者らは、債務者銀行においては従来、従業員に結婚等の個人的事情による転勤希望がある場合には、業務上の必要のため、たとえ現在の時点では希望がいれられなくても、近い将来においては希望どおりにするということが普通に行なわれていたと主張しているが、債務者銀行が従来結婚等の個人的事情による転勤希望をできるだけかなえるような配慮をしてきたことはあるけれども、これはあくまで債務者銀行の恩恵的措置であるから、希望がかなえられなかつた場合も少なからず存するのである。しかし、かかる転勤希望がかなえられなかつたからといつて、債務者銀行の恩恵的措置である以上、従業員において当然に忍受しなければならないものである。もし、債務者銀行において業務上の必要も認めれらないにもかかわらず、かかる従業員の個人的事情による転勤希望をいちいちかなえてやらなければならないとすれば、適正な人事異動は妨げられ、遂には企業の運営がたちゆかなくなるといつても過言ではないのである。今日のような企業合理化が強く要請されている時代においては、債務者銀行のかかる恩恵的措置もも早や全く限界に来ているのである。殊に、女子行員が遠隔地の男性と結婚する場合に、債務者銀行としては何らの業務上の必要も認められないにもかかわらず、いちいちその遠隔地の店への転勤希望をかなえてやらなければならないということは、もともと女子行員は地元から採用し、親許から通勤できる範囲内でしか転勤させえないことになつており、たとえ業務上の必要があつても、男子行員のように遠隔地の店への転勤を命ずることができない実情にあることと対比すれば、債務者銀行にとつては全く一方的負担を強いられる措置といわなければならないのである。本件の江渡桂子も地元から採用されて十和田支店に勤務していたところ、たまたま電々公社十和田電気通信部に勤務していた相手の男性たる石川幸男を知るに至つたのであるが、同人が同公社青森電気通信部に転勤になつたことから、同人と結婚するために青森市内店への転勤の措置を一方的に要求するに至つたものである。しかし、女子行員を一名転勤させるためには、これに関連して通常数名の行員を異動させなければならないし、その負担も決して馬鹿にならない。今日の企業の実情からして、女子行員をこのような負担を甘受してまで転勤させなければならない理由は全く存しない。これが債務者銀行において結婚等の個人的事情だけで転勤を行なうことは出来ないとするに至つた理由である。もとより、このような恩恵的配慮を一般的に認めないことにしたからといつて、不当とされるいわれは全くないというべきである。
本件は、昨今しばしば争われているように、業務上さしたる理由もないにもかかわらず、敢えて従業員を遠隔地の店に転勤させ、旧勤務地で形成されている生活関係に重大な影響を与えるようなケース、たとえば共稼ぎ夫婦の別居を強いる場合とは根本的に事情が異なることを忘れてはならない。このような場合には、いかに人事権が使用者にあるとはいえ、その行使の仕方が濫用にわたれば、当然に人事権の濫用の問題を惹き起すことになるが、本件についてはこのような問題を生ずる余地は全くないのである。もつとも、このような恩恵的配慮であつても、一方の組合に所属する組合員にはこれを認め、他方の組合員にはこれを認めないという方針をとれば、不当労働行為の問題を惹き起す余地がある。債権者らは、債務者銀行がこのような方針を打ち出し、労組員江渡桂子の結婚による転勤希望を認めなかつたのは、労組に対する弾圧を意図したものであると主張しているが、この点は従組員に対しても全く同様に取扱つているのであるから、不当ないいがかり以外のなにものでもないというべきである。
いずれにしても、債務者銀行が江渡桂子の結婚のための転勤希望を認めなかつたことを不当とするいわれは全くないのであつて、これを認めないことを不当とし、これを認めるよう強要することこそ、人事権に対する重大なる侵犯といわなければならないのである。
次に、白取忠一郎の転勤撤回要求と青森市内店(旧市内)への転勤要求についてみると、従来の事例に徴しても、同人の個人的事情を考慮してかかる措置をとらなければならない理由は全く存しないということである。
白取の転勤理由は、昭和四二年四月一日付人事異動において、大間支店に、貸付業務を含む主要業務の出来る行員一名を増員する必要を生じていたところ、白取は昭和二四年に入行し、支店業務については十分な知識、経験を有するとともに、小湊支店での勤務も約三年にもなるので、適任とされたものであり、また転勤の障害となる個人的事情も全くなかつたものである。債権者らは、白取の妻が電々公社青森電話局に勤務し、また一三才、一〇才の子供と老母をかかえているという家庭事情から、同居不可能な大間支店への転勤は、家庭を破壊し、生活関係に重大な影響を及ぼすと主張しているが、全く事実無根である。すなわち、白取は以前その実家において妻子および母親と同居していたけれども、昭和三四年頃から他の女と同棲するようになり、昭和三八年頃からは実家をとび出してしまつて全くよりつかないといつた状態であり、妻子および母親の面倒をみるということも全くなかつたのである。ちなみに、白取の母親は繩の販売等を営んでいるが、隣に住む白取の実妹せつや義姉鹿内みさらがこれを手伝つており、また親許には白取の妻子ばかりでなく、青森県庁勤務の白取の実弟信一(昭和七年四月一二日生)が同居しているので、白取が大間支店に転勤しても、同人の家族の生活関係には全く支障はないのである。むしろ、このような家庭事情のため、白取の妻は、白取が遠隔地の店に転勤にでもなれば、女と別れ、夫婦子供がまた一緒に暮らすことができるのではないかとの願いから、人事部に対して転勤を要望してきたほどであるにもかかわらず、結局白取は妻子を捨てたまま、女をつれて赴任し、今日に至つている実情である。労組もこのような事情は十分承知していたので、昭和四二年四月下旬以降は団交においても白取の問題は殆どとり上げなくなり、事実上引つ込めた形となつていたものである。
いかなる理由にもせよ、債務者銀行がこのような不当な要求をききいれ、白取に対する正当な転勤命令を撤回し、同人の希望する青森市内店(旧市内)への転勤を認めたとすれば、公正な人事異動は全く行なわれえなくなるのであり、かかることを強要することは前記江渡の転勤要求の場合と同様に明らかに越権行為であり、使用者の保有する人事権に対する重大なる侵犯といわざるをえない。
3 労組はかかる不当な要求ないし目的を実現する手段として、前述のとおり白取の転勤を含む他の二十数名に及ぶ正当な異動(白取以外の異動が正当有効であることについては債権者らも争つていない)を一カ月余にわたつて拒否させたものであるが、このような行為はその手段面から捉えてみても、正当な組合活動ないし争議行為として保護を受ける余地は全くない。
債務者銀行は、右異動拒否について労組との団交において組合の指令で拒否させる旨の意思表示は受けたが、債権者らの主張するように労組が組合規約に定める手続により争議権を確立したことは知らないし、もとよりこれに基づく争議通告もこれを解除する通告も受けていない。このような事実に徴すると、労組は正式に争議権確立の手続をとつていないのではないかと思料される。仮りに、労組が争議権を確立したとしても、昭和四二年四月一一日の団交において労組が争議権に基づく指令として赴任を拒否させる旨の意思表示をした以降のことであり、それまでの数日間の異動拒否は争議権に基づかない組合指令によるものであることは明らかである。いうまでもなく、正当な異動命令を拒否させることは、たとえ組合の指令によるものであつても不当であり、かかる行為は正当な組合活動としての保護を受けられないことは、判例、学説上全く争いのないところである。
しからば、債権者らの主張するように正当な異動命令の拒否が争議行為として行なわれた場合には正当であろうか。一般に争議行為は業務命令拒否の実質を有するものであるから、争議行為として行なえば、どのような業務命令拒否も正当化されるように誤解される傾向があるが、これは正しくない。判例や命令もこの点については次第にはつきりした態度を示すようになつている。たとえば、東光電気事件に関する東京地労委昭和三〇年四月三〇日命令は、「申立人組合の前記転勤命令拒否の指令は本件の場合においては被申立人会社の業務命令自体に対する反抗であつて、いわゆる争議権の発動として論ずべき筋合のものではない」としている。また、ラジオ中国事件に関する広島地労委昭和四一年一一月一日命令は、配転命令対象者に対する指名ストにつき、「その実態は『指名スト』に名を借りた業務命令拒否そのものにすぎず、同盟罷業のもつとも効率的な戦術としてとられる一般の指名ストとはその本質を異にするものといわなければならない。」したがつて、組合が主張するように、ただストライキという名にいう労務指揮権に対する積極的侵害を含むものであるから、違法な争議行為であることは明らかである。すなわち、労組は江渡および白取の転勤に関する要求を債務者銀行がとり上げなかつたことを不満として、債務者銀行の人事権の行使としてなされた昭和四二年四月一日付異動命令に対し真向うから挑戦し、各異動対象者に指令してこれを無視せしめ、債務者銀行の再三にわたる赴任指示を排除して強硬就労を貫行し、これをめぐつて後述するとおり新町支店、古川支店、十和田支店、本店営業部などにおいては労組員が無断で職場放棄をし、部店長席をとり囲んで集団職場交渉を強要するなど、著しく職場秩序を乱す行動に訴えたものであるから、債務者銀行の労務指揮権に対する積極的侵害を企図した違法な争議行為といわなければならない。
このような行為が争議行為の名において許容されるとすれば、企業秩序は根幹から否定されることになるから、債務者銀行としては到底放置しえなかつたものである。
債権者らは、赴任拒否戦術は過去の闘争において伝統的にとられてきた戦術であり、また赴任拒否戦術がとられる場合、赴任拒否者は必ず旧任店で就労して組合の団結をはかることがこれまでの慣行として行なわれ、債務者銀行もこれを黙認してきたと主張しているが、そのような事実はない。なるほど、賃上げ闘争などの際に、労組が異動拒否戦術をとることはしばしば行なわれてきた。そのような場合でも、債務者銀行としては、定期異動の時期になれば一応異動を発令することはあるが、これを強行することはいたずらに事態を紛糾させることになるので、妥結時まで実施を保留してきたものであり、したがつて本件の場合のように債務者銀行の赴任指示を排除して旧任店での就労を強行するということは、当該異動を不当として争つている場合以外はかつてなかつた。もとより、このような場合には、債務者銀行としてこれが就労を黙認してきたということは全くない。
4 以上に明らかにしたとおり、労組が二十数名に及ぶ正当異動発令者に対し、一カ月余にわたつて赴任を拒否させ、旧任店での就労を強要した行為は、その目的、手段の両面からみて、明らかに不当であり、到底正当な組合活動ないし争議行為として保護を受ける余地はない。そして、この長期間にわたる多数の赴任拒否によつて、該当者の新任店では各店とも業務遂行上多大の支障が発生した。すなわち、該当者未着任のため事務処理に重大な支障を来たし、同店より他店への転出者の赴任を延期せざるを得なかつたこと、予定していた得意先係の発令が出来なかつたこと、得意先係を本来の業務につかせることが出来ず、内部事務を担当させざるを得なかつたこと、定例の店内係替が実施出来なかつたこと、昭和四二年四月下旬から五月上旬にかけての月末、連休にさいしては特に内部事務に著しい支障を来たし、他の従業員に負担をかけたことなど、外部勧誘活動は勿論のこと、内部業務遂行上にも大きく制約され、計りがたい損害を受けたものである。
(二) 職場放棄、集団職場交渉等の秩序紊乱行為
1 前述のとおり、異動の業務命令違反該当者に対しては、それぞれ四月一一日付文書で同月一四日までに新任店に着任するよう催告するとともに、同日以降旧任店での就労を拒否することを通告した。しかるに、労組は異動対象者の新任店への着任を拒否させたばかりでなく、債務者銀行の再三にわたる赴任指示を排除して、旧任店での就労を強行し、これをめぐつて労組員が無断で職場放棄をし、部店長席をとり囲んで集団職場交渉を強要するなど、著しく職場秩序を乱す行為に出た。
その主な事例を挙げれば、次のとおりである。
(イ) 転勤命令該当者武藤篤司のいた新町支店では上記措置をめぐつて、労組副委員長斎藤輝夫、執行委員横内郁夫を含む労組員一二名が四月一四日午前九時三〇分より正当な理由もなく、全く抜打的にストライキに入ることを通告し、勝手に職場を放棄して支店長席をとり囲み、職場交渉を強要し、支店長の業務を妨害するなどの不法行為を行ない、著しく職場秩序を乱した。
(ロ) 転勤命令該当者本間伯治のいた古川支店においては、上記措置をめぐつて四月一四日労組執行委員石崎淳三を含む労組員が支店長をとり囲んで職場交渉を強要し、支店長が営業時間中の職場交渉は出来ないと回答すると、全く抜打的に再度にわたつて不法な時限ストを行ない(午後〇時一五分から午後〇時三〇分までと午後一時四〇分から午後四時まで)、著しく職場秩序を乱した。
(ハ) 転勤命令該当者飛内十四雄のいた十和田支店においては、上記措置をめぐつて四月一八日午前九時以降飛内十四雄、工藤龍雄は就労を強要し、また他の労組員四名は勝手に職場を放棄し、支店次長の再三にわたる制止および飛内、工藤以外の四名に対する就業命令に従わず、大声を発して抗議を行ない、全く抜打的に不法な時限ストを実施して職場交渉を強要し、次長らの業務を妨害して、著しく職場秩序を乱した。
(ニ) 本店営業部においては、四月二八日赴任拒否者小倉三生の事務机の撤去にからんで、午前九時一〇分以降本店営業部所属の労組員が無断で職場を放棄し、営業部長席をとり囲んで職場交渉を強要し、これに他店勤務の労組執行委員石崎淳三、桜田貢が加わり、業務を妨害するなどの不法行為を行ない、職場秩序を乱した。
2 右に述べた職場放棄、集団職場交渉等の秩序紊乱行為は、労組が異動対象者に対する単なる赴任拒否の範囲をこえ、債務者銀行の再三にわたる赴任指示を無視して、旧任店での就労を強行せしめたことに関連してなされたものであり、決して偶発的なものでないことは、債権者らも「かりにかかる事実ありとしても適法正当な争議の中で争議行為の一環として行なわれたものであり云々」と主張していることに徴しても争いの余地はない。
右の行為が労組の要求を実現するための闘争の一環として行なわれたからといつて、前述のとおり右闘争自体がその目的において正当性を有しないのであるから、これを一種の争議戦術とみても、正当性を有するものではないのはいうまでもないが、更に具体的には右の行為は各部店における異動発令者に対する赴任指示を排除し、旧任店での就労を強要するために行なわれたものであることからみても、到底正当な行為ということはできない。このような行為を争議行為の名において容認しなければならないとすれば、企業秩序は根幹から否定されるといつても過言ではない。
(三) 債務者銀行の名誉、信用を傷つける不当な宣伝行為
1 前述したとおり、昭和四二年四月一日付人事異動に関し労組が問題にしたのは、具体的には江渡桂子の結婚を理由とする転勤要求と白取忠一郎の家庭事情を理由とする転勤撤回要求の二つであるが、これがいずれも理由のない不当な要求であるにもかかわらず、労組はこの不当な要求を実現するための手段として、右人事異動に関し殊更に事実無根のことや事実を歪曲、誇張した記載をなし、債務者銀行がいかにも従業員の人権を無視した不当な人事異動を行なつているかのように印象づける労組名義の数種のビラを多数作成し、これを同年四月から五月にかけて青森県下各地で通行人あるいは戸別に配布し、更には宣伝カーなどにより同様の内容の宣伝を行ない、事情を知らない世間一般大衆に債務者銀行に対する認識を誤らせ、県民の銀行としての債務者の名誉と信用を著しく毀損した。
(イ) 一つのビラには、冒頭に「青森銀行でも始まつた人員整理人事」、「高年層・既婚婦人がまず狙われる」との不当極まる見出しをつけ、「婚約中の二人を離し汽車で三時間もかかるところへ転勤させた例」、「病弱の母と二人の子を残して青森から大間へ転勤という例」といつた虚構(前者)ないし真相を偽つた(後者)記載をなし、「人間としての権利をふみにじられることに私達は反対します」とか「退職せざるを得ないように仕向ける冷酷な人事異動に私たちは反対です」と訴えて、債務者銀行が冷酷な人権無視の人事異動を行なつているかのごとく中傷誹謗している。
(ロ) 他の一つのビラには(緑色と黄色の二種類があるが、引用箇所の文面は同じ)、冒頭に「青森銀行で首切り人事についで賃金不払いもでる」、「青銀で人員整理の人事異動」とのこれも全く不当極まる見出しをつけ、「私たちが働いている青森銀行は基本的人権をふみにじつて、結婚のことや通勤のこと、家庭の事情を全く考えないばかりか、むしろ、そういうものはやめてゆけといわんばかりの人事異動を発表しました」と記載し、事実を全く歪曲、誇張して債務者銀行が冷酷な人権無視の人事異動を行なつているかのごとく中傷誹謗している。
2 右のような宣伝行為は、いかに世間の同情と支持を得ようとするものであるとはいえ、余りにも真実とかけはなれた内容を含み、かつ債務者銀行を誹謗、攻撃するものであるから、到底正当な組合活動として保護されるものではない。事情を知らない世間一般大衆を対象として行なわれる宣伝は、節度と慎重さが要請されるのは当然であるが、特に債務者銀行は信用を重んずる金融機関であるから、なおさらのことであり、かかる不当な宣伝行為は従業員としての忠実義務に悖ることは論をまたないところである。
以上の諸行為は職員就業規則第四条(職員は金融機関の公共的使命を自覚し、誠実に職責を全うすることに努めなければならない)、同第五条後段(……又は当行の信用を毀損する言行があつてはならない)、同第二九条(職員は業務上の都合で転任を命ぜられることがある。転任を命ぜられた者は、発令の翌日から一週間以内に赴任しなければならない)を初め、労働契約上従業員として遵守すべき服務規律に違反することは明らかであるから、職員就業規則第九二条第一号(就業規則、その他遵守すべき事項にそむいたとき)に該当する。債権者佐藤は右諸行為を労組の最高責任として企画、決定し、かつ指導、実行したものであり、その責任は特に重大であるか、債務者銀行の再三にわたる警告や制止を無視して反覆、強行したもので、それによる実害も少なからざるものがあり、労組に対するこれが処分提案に対しても、頭から撤回を要求するのみで、誠意をもつて審議に応ぜず、一年数カ月にわたつて審議を遷延し、一片の反省の色すら示さなかつたものであるから、情状酌量の余地は全くなく、債務者銀行としてこれを放置するならば企業秩序は到底維持できないので、やむをえず昭和四三年八月九日付文書(同月一三日到達)をもつて懲戒解雇に付したものである。
二、債権者伊勢谷に対する懲戒解雇理由について
1 債務者銀行の取引先である株式会社樋口商店の代表取締役であり、青森市内において知名の人である樋口喜四郎は、昭和四一年春より引続き街の美化運動の一環として、また自己の健康保持のため、自ら率先して毎早朝青森市大町通りの自宅付近の街の清掃を行なつていた。
たまたま昭和四二年六月二八日清掃中に、労組外二団体名義の「青森銀行経営者は夫婦を同居させること、親子を同じ屋根の下に住ませること、委員長に対する不当解雇、大量処分を撤回すること、右要求する」旨のポスター(つり看板)が無許可で付近の電柱や街路樹にいつぱいつるしてあるのを発見し、街の美化をそこねるものであるとしてにがにがしく思い、また債務者銀行内部の問題は内部で処理したらよいではないかとの考えから、目にとまつたポスターを取り外し、付近の家と家との間にとりまとめてかたづけて置いた。次いで、同月三〇日午前五時頃清掃中、前同様のポスターを発見したので、債務者銀行本店前付近でこれを取り外していたところ、これを待ち伏せしていた労組員に呼びとめられ、債権者伊勢谷を中心とする一〇名前後の労組員に本店西口通用門付近に連行されてとりまかれ、「何故ポスターをとつたのか」などと激しい追及を受けた。その際、債権者伊勢谷は樋口の口部を腕で強打し、同人に対し通院加療約二カ月を要する歯牙破折症の傷害を負わせたものである。
その後、債権者伊勢谷は右一〇名前後の労組員と共謀して無理矢理に労組書記局(組合事務所)内に連行し、樋口が上記のような社会的地位を有する人であることを知りながら、同日午前五時半頃から午前一一時半過ぎ頃まで長時間にわたつて軟禁し、同人の周囲をとりかこんで、「何故ポスターをとつたのか」、「銀行から頼まれたのだろう」、「詫び状をかけ」などと迫り、すぐそばの床の上を野球用バツトでドンドンと突き鳴らし、「商売を出来なくさせてやる」、「龍飛に行く車にのせて海に投げてやる」、「消してしまうぞ」、「盗人」などと口々に何回にもわたつて脅迫し、その上債権者伊勢谷はセルロイド製定規で樋口の頬や首筋を二回にもわたつて殴打するなどの暴行を加えたものである。
債権者伊勢谷は上記一連の行為に対し指導的地位にあつたものであり、傷害および暴力行為等処罰に関する法律違反の容疑により労組員佐々木四郎とともに昭和四二年七月八日逮捕され、その後同月一九日青森地方裁判所に起訴され、現在裁判中であるが、本事件は直ちに新聞、テレビなどにより報道されるところとなり、暴力を排除せんとする世論の中で世間の人々の強い指弾を受け、債務者銀行の名誉と信用を著しく毀損するに至つたものである。
2 債権者伊勢谷らが右のような行為に出るに至つた動機は、樋口が労組のつるしたポスターを撤去したことにあるが、債権者伊勢谷らは樋口が労組の宣伝活動を妨害する何者か(それが債務者銀行ではないかとの疑いをかけていた事情が十分窺われる)の指図によつてそのような行為に出たものと考え、まさにその犯人をつかまえたとして、激しく追及し、傷害を加え、更に労組書記局に連行して長時間にわたつて軟禁し、暴行、脅迫などのリンチを加え、同人の自由意思を抑圧して、労組の期待する謝罪文を書くことを強要したものである。樋口は清掃中のこととて労働者風のみなりをしていたので、債権者伊勢谷らに怪しまれたが、同人は労組書記局に連行される前にも、また書記局に連行された後にも、自分の氏名を名乗り、決して怪しい者でないことを何度も訴えたが、全く聞きいれられなかつた。また、同人はポスター撤去に対する追及に対しても、前述のとおり右ポスターをにがにがしく思つていたので街の美化運動の一環として撤去したものであつて、何ら他意はなく、かつあくまで個人的意思に基づくものであるから、債務者銀行とは何の関係もないことを再三弁明するとともに、ポスターを無断で撤去したことについては申訳ないとして陳謝したにもかかわらず、債権者伊勢谷らは長時間にわたつて右のような暴力行為その他の犯罪行為に及んだものであり、極めて悪質であるといわなければならない。
労働組合法第一条第二項但書が「いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない」と闡明しているように、このような行為は断じて許さるべきものではない。債権者ら労組幹部は、自分らにとつて気に食わぬことがあれば、前述の江渡、白取の転勤に関する問題にもみられるように、直ちにこれを不当とし、人間としての権利をふみにじつたなどと声を大にして抗議しているのに、自分らが他人の人権をふみにじることについては全く意に介せず、これによつて逮捕、起訴されると、今度は官憲とグルになつてデツチ上げたものであるなどと宣伝しているが、如何なる理由があろうとも、このような無法なことは許されてはならないと考える。
3 債権者伊勢谷の右行為は企業外でなされたものではあるが、右のような悪質な犯罪行為に出る者は従業員としても完全に不適格であり、これを放置すれば他の従業員にも悪影響を与え、また企業の名誉、信用維持上も重大な不利益をもたらすものといわなければならない。企業は社会的存在であり、その活動を続けていく上において、従業員に法令ならびに企業内の諸規則の遵守を要請し、その企業相応の人格、品性を具有することを期待するものであつて、これに反する従業員の行為は労働契約における労使の信頼関係を破壊し、ひいては社会的存在としての企業に不利益をもたらすものであるから、当然懲戒の対象となるというべきである。したがつて、たとえば山陽電気軌道事件に関する広島高裁昭和四〇年九月一三日判決も「被控訴人等の前記刑事事件は選挙犯罪として悪質なものであつて、控訴会社の従業員としての適格性に疑いをもたらしめる程度のものであり、……右の刑事事件について控訴会社の従業員のなしたこととして各新聞に報道され、世間の注目をひいたことが証明される。してみると控訴会社がこれを放置すれば他の従業員に悪影響を及ぼして職場規律を乱すおそれがないとはいえないから解雇処分をもつて臨んだのも無理からぬことと思われる」と判示しているのである。
債権者伊勢谷の右暴力行為その他の犯罪行為は債務者銀行の取引先でもあり、社会的にも相当な地位を有する人に対して行なわれたものであり、これが債務者銀行の従業員のなしたこととして新聞、テレビなどに報道されたので、世間一般の注目をひくこととなり、暴力を排除せんとする世論の中で強い指弾を受け、特に債務者銀行は信用を重んずる金融機関として、また青森県民の愛顧を受けてきた金融機関として、著しくその名誉、信用を傷つけられたものである。そのため、債務者銀行は各種新聞に「県民の皆さまへ」と題する広告を掲載し、事情を説明して世間に謝罪し、県民の銀行として変らぬ愛顧を要請するという措置をとらざるを得なかつたものである。また、債権者伊勢谷ら労組員の右行為は従組に対しても重大な迷惑を及ぼしたことは、従組が「市民に暴力を振るうような社会正義にもとる一切の行動とは無関係であることを県民の皆様にご理解いただきたい」旨の新聞広告をわざわざ掲載したことによつても明らかであり、これを放置した場合一般従業員に与える悪影響もはかりしれないものがあつたものである。
そこで、債務者銀行は本事件は刑事事件として裁判中ではあるが、企業秩序維持上到底このままに放置し得ないので、被害者樋口より事情を聴取し、前述の事実を確認した上、職員就業規則第九二条第一号(就業規則、その他遵守すべき事項にそむいたとき)および第六号(刑罰法規に触れたとき)を適用し、債権者伊勢谷を昭和四三年八月九日付文書(同月一三日到達)をもつて懲戒解雇に付したものである。なお、債権者伊勢谷は債権者佐藤の懲戒解雇理由となつている諸行為に執行委員として関与し、他の執行委員と同様に出勤停止三日の処分に付せらるべき事情にあつたものであり、これら諸般の事情を考慮すると情状酌量の余地は全くなかつたものである。
以上


「選挙 ビラ チラシ」に関する裁判例一覧

(1)平成23年 1月18日  東京地裁  平22(行ウ)287号 政務調査費交付額確定処分取消請求事件
(2)平成22年 6月 8日  東京地裁  平21(行ウ)144号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(3)平成21年 2月17日  東京地裁  平20(行ウ)307号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(4)平成21年 1月28日  東京地裁  平17(ワ)9248号 損害賠償等請求事件
(5)平成20年11月28日  東京地裁  平19(行ウ)435号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(6)平成20年 9月19日  東京地裁  平17(特わ)5633号 国家公務員法被告事件
(7)平成20年 7月25日  東京地裁  平19(行ウ)654号 政務調査費返還命令取消請求事件
(8)平成20年 4月11日  最高裁第二小法廷  平17(あ)2652号 住居侵入被告事件 〔立川反戦ビラ事件・上告審〕
(9)平成20年 3月25日  東京地裁  平19(行ウ)14号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(10)平成19年 6月14日  宇都宮地裁  平15(ワ)407号 損害賠償請求事件
(11)平成18年12月 7日  東京高裁  平17(ネ)4922号 損害賠償等請求控訴事件 〔スズキ事件・控訴審〕
(12)平成18年 4月14日  名古屋地裁  平16(ワ)695号・平16(ワ)1458号・平16(ワ)2632号・平16(ワ)4887号・平17(ワ)2956号 自衛隊のイラク派兵差止等請求事件
(13)平成17年 9月 5日  静岡地裁浜松支部  平12(ワ)274号・平13(ワ)384号 損害賠償請求事件、損害賠償等請求事件 〔スズキ事件・第一審〕
(14)平成17年 5月19日  東京地裁  平12(行ウ)319号・平12(行ウ)327号・平12(行ウ)315号・平12(行ウ)313号・平12(行ウ)317号・平12(行ウ)323号・平12(行ウ)321号・平12(行ウ)325号・平12(行ウ)329号・平12(行ウ)311号 固定資産税賦課徴収懈怠違法確認請求、損害賠償(住民訴訟)請求事件
(15)平成16年11月29日  東京高裁  平15(ネ)1464号 損害賠償等請求控訴事件 〔創価学会写真ビラ事件・控訴審〕
(16)平成16年10月 1日  東京地裁  平14(行ウ)53号・平14(行ウ)218号 退去強制令書発付処分取消等請求、退去強制令書発付処分無効確認等請求事件
(17)平成16年 4月15日  名古屋地裁  平14(行ウ)49号 難民不認定処分取消等請求事件
(18)平成15年 4月24日  神戸地裁  平11(わ)433号 公職選挙法違反被告事件
(19)平成15年 2月26日  さいたま地裁  平12(ワ)2782号 損害賠償請求事件 〔桶川女子大生刺殺事件国賠訴訟・第一審〕
(20)平成14年12月20日  東京地裁  平10(ワ)3147号 損害賠償請求事件
(21)平成14年 1月25日  福岡高裁宮崎支部  平13(行ケ)4号 当選無効及び立候補禁止請求事件
(22)平成13年12月26日  東京高裁  平13(ネ)1786号 謝罪広告等請求控訴事件
(23)平成12年10月25日  東京高裁  平12(ネ)1759号 損害賠償請求控訴事件
(24)平成12年 8月 7日  名古屋地裁  平10(ワ)2510号 損害賠償請求事件
(25)平成12年 6月26日  東京地裁  平8(ワ)15300号・平9(ワ)16055号 損害賠償等請求事件
(26)平成12年 2月24日  東京地裁八王子支部  平8(ワ)815号・平6(ワ)2029号 損害賠償請求事件
(27)平成11年 4月15日  東京地裁  平6(行ウ)277号 懲戒戒告処分裁決取消請求事件 〔人事院(全日本国立医療労組)事件〕
(28)平成 6年 3月31日  長野地裁  昭51(ワ)216号 損害賠償等請求事件 〔長野東電訴訟〕
(29)平成 5年12月22日  甲府地裁  昭51(ワ)289号 損害賠償請求事件 〔山梨東電訴訟〕
(30)平成 4年 7月16日  東京地裁  昭60(ワ)10866号・昭60(ワ)10864号・昭60(ワ)10867号・昭60(ワ)10865号・平2(ワ)10447号・昭60(ワ)10868号 立替金請求併合事件 〔全逓信労働組合事件〕
(31)平成 2年 6月29日  水戸地裁  昭63(ワ)264号 市立コミュニティセンターの使用許可を取消されたことによる損害賠償請求事件
(32)昭和63年 4月28日  宮崎地裁  昭47(行ウ)3号 行政処分取消請求事件 〔宮崎県立大宮第二高校事件〕
(33)昭和57年 4月30日  東京地裁  昭56(行ク)118号 緊急命令申立事件 〔学習研究社緊急命令事件〕
(34)昭和56年 9月28日  大阪地裁  昭48(ワ)6008号 謝罪文交付等請求事件 〔全電通大阪東支部事件〕
(35)昭和55年 9月26日  長崎地裁  昭50(ワ)412号 未払給与請求事件 〔福江市未払給与請求事件〕
(36)昭和54年 7月30日  大阪高裁  昭53(行コ)24号 助成金交付申請却下処分無効確認等請求控訴事件
(37)昭和53年 5月12日  新潟地裁  昭48(ワ)375号・昭45(ワ)583号 懲戒処分無効確認等、損害賠償金請求事件 〔新潟放送出勤停止事件〕
(38)昭和52年 7月13日  東京地裁  昭49(ワ)6408号 反論文掲載請求訴訟 〔サンケイ新聞意見広告に対する反論文掲載請求事件・第一審〕
(39)昭和50年 4月30日  大阪高裁  昭45(ネ)860号 損害賠償ならびに謝罪文交付請求控訴事件
(40)昭和47年 3月29日  東京地裁  昭47(行ク)8号 緊急命令申立事件 〔五所川原市緊急命令申立事件〕
(41)昭和46年 4月14日  広島高裁  昭46(行ス)2号 行政処分執行停止決定に対する即時抗告申立事件 〔天皇来広糾弾広島県民集会事件〕
(42)昭和46年 4月12日  広島地裁  昭46(行ク)5号 行政処分執行停止申立事件
(43)昭和45年 4月 9日  青森地裁  昭43(ヨ)143号 仮処分申請事件 〔青森銀行懲戒解雇事件〕
(44)昭和37年 4月18日  東京高裁  昭35(ナ)15号 選挙無効確認請求事件
(45)昭和36年 6月 6日  東京高裁  昭35(う)2624号 公職選挙法違反被告事件
(46)昭和35年 6月18日  東京高裁  昭34(ナ)12号 選挙無効請求事件
(47)昭和29年 8月 3日  名古屋高裁  昭29(う)487号 公職選挙法違反事件
(48)昭和27年 3月19日  仙台高裁  昭26(ナ)7号 当選無効請求事件
(49)平成30年 7月20日  福岡地裁久留米支部  平28(ワ)69号 損害賠償請求事件


■選挙の種類一覧
選挙①【衆議院議員総選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙②【参議院議員通常選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙③【一般選挙(地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙④【特別選挙(国政選挙|地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)


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⑤掲示(貼付)交渉後における、掲示許可承諾者に対してのフォローおよびクレーム対応→→→完全無料
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