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「選挙 立候補 ポスター」に関する裁判例(34)平成30年 4月25日  東京地裁  平28(ワ)31号・平28(ワ)37044号・平28(ワ)37820号 証書真否確認、立替金等返還債務不存在確認等請求事件、立替金返還請求反訴事件、立替金請求反訴事件

「選挙 立候補 ポスター」に関する裁判例(34)平成30年 4月25日  東京地裁  平28(ワ)31号・平28(ワ)37044号・平28(ワ)37820号 証書真否確認、立替金等返還債務不存在確認等請求事件、立替金返還請求反訴事件、立替金請求反訴事件

裁判年月日  平成30年 4月25日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)31号・平28(ワ)37044号・平28(ワ)37820号
事件名  証書真否確認、立替金等返還債務不存在確認等請求事件、立替金返還請求反訴事件、立替金請求反訴事件
文献番号  2018WLJPCA04258029

裁判年月日  平成30年 4月25日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)31号・平28(ワ)37044号・平28(ワ)37820号
事件名  証書真否確認、立替金等返還債務不存在確認等請求事件、立替金返還請求反訴事件、立替金請求反訴事件
文献番号  2018WLJPCA04258029

平成28年(ワ)第31号 証書真否確認,立替金等返還債務不存在確認等請求事件(第1事件)
平成28年(ワ)第37044号 立替金返還請求反訴事件(第2事件)
平成28年(ワ)第37820号 立替金請求反訴事件(第3事件)

千葉市〈以下省略〉
第1事件原告(第2事件及び第3事件被告) X管理組合(以下,単に「原告」という。)
同代表者理事長 A
同訴訟代理人弁護士 横井紀彦
東京都港区〈以下省略〉
第1事件被告(第2事件原告) 株式会社長谷工コーポレーション(以下「被告長谷工」という。)
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 菊地裕太郎
同 新保雄一
同訴訟復代理人弁護士 室井剣太
東京都千代田区〈以下省略〉
第1事件被告(第3事件原告) 前田建設工業株式会社(以下「被告前田建設」という。)
同代表者代表取締役 C
同訴訟代理人弁護士 鶴田信紀
同 桜井淳雄

 

 

主文

1  原告の,原告と被告らとの間で締結された平成24年12月28日付け「基本設計業務委託契約書」と題する契約書に係る契約及び平成26年5月29日付け「覚書」と題する合意書に係る合意の無効確認に係る訴えをいずれも却下する。
2  原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3  原告は,被告長谷工に対し,4229万9000円を支払え。
4  原告は,被告前田建設に対し,2321万1000円を支払え。
5  訴訟費用は第1事件ないし第3事件を通じて原告の負担とする。
6  この判決は,第3項及び第4項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  第1事件
(1)  原告と被告らとの間で,原告につき理事長名義にて,被告長谷工につき執行役員名義にて,被告前田建設につき代表取締役名義にて,それぞれ記名押印がされた,平成27年6月20日付け「基本設計業務委託契約書に関する合意書」と題する合意書(甲3。以下「新設計契約合意書」という。)が,真正に成立したものでないことを確認する。
(2)  原告と被告らとの間で,原告につき理事長名義にて,被告長谷工につき代表取締役名義にて,被告前田建設につき代表取締役名義にて,それぞれ記名押印がされた,平成27年6月20日付け「a団地建替え事業(仮称)に伴う建設企業事業協力の協定書に関する合意書」と題する合意書(甲4。以下「新協定合意書」という。)が,真正に成立したものでないことを確認する。
(3)  原告と被告長谷工との間で,原告につき理事長名義にて,被告長谷工につき代表取締役名義にて,それぞれ記名押印がされた,平成27年6月20日付け「a団地建替え事業(仮称)に伴う建設企業事業協力に関する協定書2」と題する協定書(甲5。以下「新協定書」といい,新設計契約合意書及び新協定合意書と併せて「平成27年3書面」という。)が,真正に成立したものでないことを確認する。
(4)  原告と被告らとの間で締結された平成24年12月28日付け「基本設計業務委託契約書」と題する契約書(甲12。以下「原設計契約書」という。)に係る契約(以下「原設計契約」という。)及び平成26年5月29日付け「覚書」と題する合意書(甲13。以下「原覚書」という。)にかかる合意が,被告らの債務不履行を原因とする解除により無効であることを確認する。
2  第1事件の請求の趣旨に対する被告長谷工の本案前の答弁
原告の被告長谷工に対する訴えを却下する。
3  第2事件
主文第3項同旨
4  第3事件
主文第4項同旨
第2  事案の概要等
1  事案の概要
(1)  第1事件
第1事件は,a団地(以下「本件団地」という。)の管理組合である原告が,①本件団地の建替事業(以下「本件事業」という。)に関して作成された平成27年3書面について,その作成当時,既に理事長を退任し,代表権を有していなかった前理事長のD(以下「D」という。)が理事長名義を冒用して作成したものであると主張して,被告らとの間で,平成27年3書面はそれぞれ真正に成立していないことの確認を求めるとともに,②原設計契約及び原覚書に係る合意について,被告らの成果品の内容に関する説明義務違反若しくは成果品の提出義務違反又は原告からの平成27年3書面の撤回申出に被告らが応じなかったことが約定の解除事由に該当することから原設計契約を解除し,同解除により原覚書も無効になったと主張して,被告らとの間で原設計契約及び原覚書に係る合意がそれぞれ無効であることの確認を求める事案である。
なお,原告は,平成24年6月20日付け「a団地建替え事業(仮称)に伴う建設企業事業協力に関する協定書」(甲10。以下「原協定書」といい,原協定書に係る協定を「原協定」といい,原協定,原設計契約及び原覚書に係る合意を総称して「原契約」という。)に基づく立替金等返還債務の不存在並びに原設計契約書及び原覚書に基づく業務報酬支払債務の不存在の確認をそれぞれ求めていたが,取り下げた。
(2)  第2事件
第2事件は,被告長谷工が,原告に対し,主位的に,新協定合意書及び新協定書が有効に成立していると主張し,これらに基づき,これらにおいて原契約に基づく業務の遂行として,本件事業に関し被告長谷工が立て替えたことが確認された立替金4229万9000円の支払を求め,予備的に,これらが有効に成立していないとしても,原協定書に基づく立替業務により,被告長谷工が同額を立て替えたと主張し,原協定書に基づき同額の支払を求める事案である。
(3)  第3事件
第3事件は,被告前田建設が,原告に対し,新協定合意書が有効に成立していると主張し,新協定合意書に基づき,新協定合意書において本件事業に関し被告前田建設が立て替えたことが確認された立替金の一部である2321万1000円の支払を求める事案である。
2  前提事実(争いのない事実,当裁判所に顕著な事実又は括弧内挙示の各証拠若しくは弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)  当事者(争いのない事実)
ア 原告は,本件団地を管理する管理組合であり,A(以下「A」という。)が現代表者理事長,Dが前代表者理事長である。
イ 被告長谷工は,建築物並びに建設工事の企画,設計,監理等コンサルティング業務及び請負等を目的とする株式会社であり,原協定書に基づき,本件事業の事業協力者としての立場にあった者である。
ウ 被告前田建設は,土木建築工事その他建設工事全般の請負,企画,測量,設計,施工,監理及びコンサルティング等を目的とする株式会社であり,原協定書に基づき,本件事業の事業協力者としての立場にあった者である。
(2)  本件事業に関する平成24年の合意等
ア 原告は,平成24年6月20日,協同組合都市設計連合(以下「都市設計連合」という。)との間で,原告が本件事業に関するコンサルタント業務等を都市設計連合に委託することなどを内容とする「a団地再生に係るコンサルタント業務委託契約」(以下「本件コンサルタント契約」という。)を締結した(甲9)。
また,原告は,同日,三井不動産レジデンシャル株式会社,野村不動産株式会社及び株式会社新日鉄都市開発(以下,3社を総称して「本件デベロッパー」という。)との間で,平成22年7月1日付け「事業協力に関する基本協定書」に係る基本協定(以下「元基本協定」という。)に関し,本件事業の推進について,①13か月後に建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)に基づく建替え決議(以下「本建替え決議」という。)をすることを目標とすること,②原告は本件事業の実施に向けて,区分所有者及び関係権利者の合意形成を進めるとともに,③元基本協定に基づいて作成された計画案に基づいて基本設計を実施し,被告らとともに本建替え決議用の計画案を検討すること,本件デベロッパーは,都市設計連合とともに③に協力するほか,本件事業の事業推進業務のパートナーとして都市設計連合とともに本件事業の事業推進業務に協力することなどを内容とした「事業協力に関する基本協定書Ⅱ」(以下「元基本協定Ⅱ」という。)を締結し,元基本協定を改訂した(甲11)。
イ 原告と被告らは,平成24年6月20日,以下の内容を含む原協定書を締結した(甲10,争いのない事実)。
(ア) 原協定書は,原告が推進する本件事業に関して,被告らが事業協力者として行う業務の範囲及び方法等について権利義務を明確に規定し,信義則に基づいて相互に協力して原協定書締結から13か月後を目標に本建替え決議を成立させることを目的とする(1条)。
(イ) 被告らは以下の業務を行うものとする。また,被告らは,都市設計連合及び本件デベロッパーと綿密に協議する。(2条柱書き)
① 基本設計等業務
被告らにおいて,基本設計等業務(基本設計業務,設計等に必要な行政協議等,その他これらに付帯する業務)を遂行するに当たり,着手前に当該業務に要する費用を算出の上,原告の承諾を得る。
② 事務局業務
被告らは,本件事業推進のため原告の事務局に本件事業の進行に応じ必要な範囲で事務局員を派遣する。
③ 本件事業の推進に要する費用の立替
下記(ウ)及び(エ)のとおり。
④ その他本件事業の推進に必要となる業務
(ウ) 原告は,上記(ア)に定める目的を達成する上で必要な業務を行う際に必要な費用を負担し(4条1項),同費用及び「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」に基づくマンション建替組合(以下「本建替組合」という。)設立までに要する費用(以下「事業推進費用」という。)につき3億円を限度として被告らに立替えを依頼することができ,その場合,被告らは原則としてこの依頼を承諾するものとする(同条2項,5条1項)。
(エ)a 被告らの立替金には基本設計等業務費用を含み,原告が被告らに上記(ウ)の事業推進費用の立替えを依頼する場合は,被告らが求める事項を明記した依頼書を被告らに提出するものとする(5条1項,2項)。
b 立替えを実施する期間は,原協定書締結日から本建替組合設立時までとする(同条5項)。
(オ)a 原告は,被告らに対し,上記(エ)の定めにより被告らが立て替えた金員(以下「本件立替金」という。)を,本建替組合設立後,原告が金融機関の融資実行や本件デベロッパーから保留地処分金及び保留床処分金の入金による資金調達ができた場合は,遅滞なく,被告らが指定する銀行口座へ振り込む方法で返還する(6条1項)。
b 本建替え決議不成立の場合や下記(キ)に定める内容にて,原協定書を合意解除する場合は,被告らは原告に対して立替金の返還を求めない(同条2項本文)。
c 上記a及びbにかかわらず,原告が原協定書解除後に,本件立替金によって作成された基本設計等業務の成果品を使用して被告ら以外の第三者と本件事業を推進し本建替組合を設立した場合は,原告は直ちに被告らに対して本件立替金のうち使用した成果品相当額を返還するものとする。ただし,本項の有効期限は,原協定書解除から3年間とし(同条3項),被告らの責めにより原協定書を解除した場合はこの限りでない(同条4項)。
(カ) 本建替え決議不成立の場合や下記(キ)aに定める内容にて原協定書を合意解除後に,原告が再度事業推進を図る場合には,原告は被告らに対して参画を打診するものとする(8条3項)。
(キ)a 天変地異,社会経済情勢の大きな変化,その他やむを得ない事由により本件事業の速やかな推進が困難であると原告及び被告ら双方又は一方が判断したときは,原告及び被告らの合意の上,原協定書を解除することができる(9条1項)。
b 原告及び被告らは,相手方が原協定書の各条項に違背した場合には,相当な期間を定めて書面により催告を行ったうえで,原協定書を解除することができる。その際,原告及び被告らは,相手方に対して損害賠償を請求することができる。(同条2項)
ウ 前記ア及びイにより,原告は,平成24年6月20日以後,都市設計連合,本件デベロッパー及び被告らからなる事業体とともに本件事業の実現に向けて協議と検討を重ねていた(争いのない事実)。
エ 原告と被告らは,平成24年12月28日,以下の内容を含む原設計契約を締結した(甲12,74,争いのない事実)。
(ア) 原設計契約は,原設計契約書添付の四会連合協定建築設計・監理等業務委託契約約款に基づく内容であって(頭書き),設計業務及び調査・企画業務については,受託者は委託者に対し,業務委託書記載の設計業務又は調査・企画業務の成果物に関し,説明を行い,これを提出する旨が定められている(同約款4条)。
(イ) 基本設計業務(構造設計,設備設計を含む。)の実施期間は,平成24年8月15日から平成25年7月31日とする(4条)。
(ウ) 被告らの業務報酬の合計額は1億5540万円,被告らの配分は50対50で,その支払時期は,基本設計業務終了の翌月末の平成25年8月31日である(6条)。
(エ) 本建替え決議の可決は平成25年9月末を目標とし,可決時期が大幅に遅れた場合については,業務報酬の額について協議する(10条2号)。
(3)  本件事業の建替条件の悪化と覚書の締結
ア 原告は,平成26年3月頃,工事費の大幅な高騰の影響を受け,当初計画よりも本件事業における区分所有者に対する還元率(現区分所有者が建替え後に無償で取得できる専有面積を現専有面積と比較した割合)が減少し,負担金額が増加するという条件の悪化を受け,本建替え決議を延期することとした(甲29の1,30)。
イ 原告と被告らは,平成26年5月29日,原設計契約4条において定めた基本設計業務の実施期間の終期を平成27年5月31日に変更し,原設計契約6条の業務報酬の支払時期を基本設計業務終了の翌月末の同年6月30日に変更することを内容とする原覚書を締結した(甲13,争いのない事実)。
(4)  本件事業の関係者の脱退意思の表明
都市設計連合は,平成26年10月26日,原告の建替委員会において,原告に対し,本件コンサルティング契約を継続する意思はない旨の意思を表明し,被告前田建設も本件事業への継続参画は難しいと考えていることを表明した。また,本件デベロッパーとも協議が進展しない状況になった。
被告前田建設は,平成27年2月28日,原告の臨時建替委員会において,原告に対し,機関決定を経た上で,本件事業からの撤退を希望している旨を伝えた。他方,被告長谷工は,本件事業の継続を希望していた。(甲18,丙13,15,争いのない事実)
(5)  通常総会の開催
原告は,平成27年6月14日,第39回通常総会(以下「平成27年総会」という。)を開催した。
平成27年総会に先立って配布されていた平成27年総会の議案書には,「建替えによる団地再生について」との項目で,都市設計連合及び被告前田建設から本件事業に関する事業協力者を撤退するとの申出があったこと,建替委員会での協議の結果,撤退はやむを得ないとの結論になったこと,協定書の合意書,成果品を含めた金額等もあり,この件は別途協議するものとし撤退についての合意書を交わすものとすること,本件デベロッパー及び被告長谷工とは協議を重ねて本件事業をスピード感をもって推進することなどの記載のある「平成27年度業務運営方針の審議及び決定」と題する第4号議案(以下,「第4号議案」といい,第4号議案のうち,「建替えによる団地再生について」との項目部分について「本件議案」という。)が掲載されていた。(甲14)
(6)  平成27年3書面の作成
ア 平成27年3書面の作成
原告及び被告らは,平成27年6月20日付けで,以下の内容を含む平成27年3書面を作成した(争いのない事実。ただし,うち新協定書は,原告と被告長谷工との間で作成されたものである。また,平成27年3書面の原告の作成部分につき,真正に成立したものか否か争いがある。)
イ 新設計契約合意書の内容(甲3,争いのない事実)
(ア) 原告及び被告らは,平成27年3月31日をもって,原設計契約及び原覚書に係る合意を終了することに合意する。
原告及び被告らは,契約終了時までの被告らによる設計業務の出来高に相当する業務報酬の額が8000万円であることを確認する。(1条)
(イ) 被告らは,原告に対し,新設計契約合意書の締結日に設計業務の出来高の成果品を引き渡すものとし,原告は,被告らに対し,成果品と引換に当該成果品を受領したことを証する受領書を発行するものとする(2条)。
(ウ) 原告及び被告らは,原設計契約による業務報酬の取扱いについては,新協定合意書に従うものとする(3条)。
(エ) 原告及び被告らは,新設計契約合意書に定める事項を除き,原設計契約書及び原覚書に関して債権債務がないことを相互に確認する(4条)。
ウ 新協定合意書の内容(甲4,争いのない事実)
(ア) 原告と被告らは,平成27年3月31日をもって,原協定を終了することに合意する(1条)。
(イ) 原告と被告らは,前記(2)イ(エ)に基づき被告らが実施した本件立替金の合計額は,8459万8000円であり,うち被告長谷工分が4229万9000円,被告前田建設分が4229万9000円であることを確認する(2条)。
(ウ) 原告と被告らは,原協定書第2条1号に定める基本設計業務に係る業務報酬(以下「本件業務報酬」という。)の額は,8000万円であり,うち被告長谷工分が4000万円,被告前田建設分が4000万円であることを確認する(3条)。
(エ) 原告と被告長谷工及び原告と被告前田建設は,上記(イ)及び(ウ)の立替金及び本件業務報酬の取扱いについて,各々協議して定める(4条)。
(オ) 原告と被告らは,上記(エ)の協議に係るもののほか,債権債務がないことを相互に確認する(5条)。
エ 新協定書の内容(甲5,争いのない事実)
(ア) 原告及び被告らにおいて,原協定に基づいて被告長谷工が立て替えた金額は,8229万9000円であることを確認する。
その内訳は,前記ウ(イ)の立替金4229万9000円及び同(ウ)の業務報酬額4000万円とする。(4条)
(イ)a 前記(2)イ(オ)bにかかわらず,上記(ア)の立替金は,本建替組合設立後,原告が金融機関の融資実行や本件デベロッパーから保留地処分金及び保留床処分金の入金による資金調達ができた場合は,遅滞なく,被告長谷工が指定する銀行口座へ振り込む方法で返還する(5条1項)。
b 本建替え決議不成立の場合や下記(オ)に定める内容にて新協定書を合意解除する場合は,被告長谷工は原告に対して本件立替金の返還を求めない(同条2項本文)。
c 上記a及びbにかかわらず,原告が新協定書の解除後に本件立替金によって作成された基本設計等業務の成果品を使用して被告長谷工以外の第三者と本件事業を推進し本建替組合を設立した場合は,原告は直ちに被告長谷工に対して本件立替金のうち使用した成果品相当額を返還するものとする。ただし,本項の有効期限は,新協定書の解除から3年間とする。(同条3項)
(ウ) 原告及び被告長谷工は,本建替組合を設立したときは,本建替組合が原協定書に基づく原告の被告長谷工に対する一切の権利義務を承継することを確認する(6条)。
(エ)a 本建替え決議不成立の場合や下記(オ)aに定める内容にて新協定書を合意解除後に,原告が再度事業推進を図る場合には,原告は被告長谷工に対して参画を打診するものとする(7条3項)。
b 上記aの原告の参画打診の結果,被告長谷工が参画しない場合には,上記(ウ)に定める一切の権利義務を当然承継せず,原告及び被告長谷工との間には債権債務が存在しなくなることを確認する(同条4項)。
(オ)a 天変地異,社会経済情勢の大きな変化,その他やむを得ない事由により本件事業の速やかな推進が困難であると原告及び被告長谷工の双方又は一方が判断したときは,原告と被告長谷工の合意の上,新協定書を解除することができる(8条1項)。
b 原告及び被告長谷工は,相手方が新協定書の各条項に違背した場合には,相当な期間を定めて書面により催告を行ったうえで,新協定書を解除することができる。その際,原告及び被告長谷工は,相手方に対して損害賠償を請求することができる。(同条2項)
(7)  原告の規約等
ア 原告の規約・細則集(以下「本件規約」という。)の定め(甲35の1・2,73の1,丙38)
(ア) 役員
a 理事および監事は本件団地に現に居住する組合員,または同居する配偶者もしくは成年に達した親族のうちから,各棟より選出された者および理事会から推薦を受けた者を,区分所有法第65条の集会の決議により選任する(38条2項)。
b 役員候補の選出は,「役員候補選出細則」および「選挙管理委員会運営細則」で定める(同条5項)。
(イ) 役員の任期および補欠役員の選任
a 役員の任期は2年とし,選任された通常総会の翌日から翌々年の通常総会の日までとする(39条1項)。
b 任期満了または辞任によって退任する役員は,後任の役員が就任するまでの間,引き続きその職務を行う(同条3項)。
(ウ) 理事長
a 理事長は,管理組合を代表し,その業務を統括するほか,次の各号に掲げる業務を,遂行する(41条1項柱書き)。
一 規約,使用細則等または団地総会もしくは理事会の決議により,理事長の職務として定められた事項(同項1号)
b 理事長は,区分所有法に定める管理者とする(同条2項)。
(エ) 団地総会の会議及び議事
一括建替え決議は,組合員総数の5分の4以上及び議決権総数の5分の4以上で行う(50条7項本文)。
(オ) 団地総会の議決事項
次の各号に掲げる事項については,団地総会の決議を経なければならない(51条柱書き)。
二 収支予算および事業計画(同条2号)
七 建物の建替えに係る計画又は設計等の経費のための団地修繕積立金又は各棟修繕積立金の取り崩し(同条7号)
十四 その他団地管理組合の業務に関する重要事項(同条14号)
(カ) 理事会の議決事項
理事会は,この規約に別に定めるもののほか,次の各号に掲げる事項を決議する。
四 その他の団地総会提出議案(57条4号)
七 団地総会から付託された事項(同条7号)
イ 原告の役員候補選出細則(甲35の4)
(ア) 役員候補の選出
理事会は,役員経験者および各分野の専門的知識を有する組合員を対象に本人の承諾のもとに役員候補として推薦できるものとする(3条3項)。
(イ) 選出方法
棟選出の役員候補は次の方法により選出するものとする。ただし,各棟内において別段の定めがあるときは,この限りではない。
一 棟選出区単位に立候補者および推薦候補者を公募する。候補者を推薦するときは,本人の承諾を得るものとする。(5条1号)
(8)  原告の解除の意思表示
原告は,平成28年1月28日,被告らに対し,第1事件訴状において,原協定及び原設計契約を解除する旨の意思表示をした(当裁判所に顕著な事実)。
(9)  原告の被告らからの協議の申入れに対する拒絶
原告は,平成28年10月4日の本件第4回弁論準備手続期日において,原設計契約の成果品の利用を前提とする和解を拒絶し,また,平成29年10月25日の本件第4回口頭弁論期日において,被告らによる基本業務報酬及び事業推進費用立替金の取扱いに関する協議の申入れには応じられない旨陳述した(当裁判所に顕著な事実)。
3  争点
(1)  原告の第1事件の各請求の訴えの利益の存否(争点1・第1事件請求(1)ないし(4)訴訟要件)
(2)ア  平成27年3書面の作成時である平成27年6月20日時点でDに原告の代表権限があったか否か(争点2-1・第1事件請求(1)ないし(3)抗弁・第2事件主位的請求原因及び第3事件主位的請求原因)
イ  平成27年6月20日時点でDに原告の代表権限が消滅していたとしても,そのことにつき被告らが善意無過失であるといえるか否か(争点2-2・第1事件請求(1)ないし(3)抗弁第2事件予備的請求原因及び第3事件予備的請求原因)
(3)ア  平成27年3書面締結時までに原告からDに対してこれらの締結に必要な授権がされていたか否か(争点3-1・第1事件請求(1)ないし(3)抗弁・第2事件主位的請求原因及び第3事件主位的請求原因)
イ  Dに対する授権がなかったとしても,そのことにつき被告らが善意又は無過失であったといえるか否か(争点3-2・第1事件請求(1)ないし(3)抗弁・第2事件予備的請求原因及び第3事件予備的請求原因)
(4)  被告らに原設計契約に基づく債務の不履行があったか否か及び本件が被告らの「責めに帰すべき事由により同契約を維持することが相当でないとき」といえるか否か(争点4・第1事件請求(4)再抗弁)
(5)  原協定書に基づき被告長谷工の立て替えた金額(争点5・第2事件予備的請求原因)
(6)  立替金債務の弁済期の到来の有無(条件成就の有無を含む)(争点6・第2事件及び第3事件抗弁並びに再抗弁)
(7)ア  被告長谷工に原協定書に基づく債務の不履行があったか否か(争点7-1・第2事件予備的請求原因に対する抗弁)
イ  被告長谷工の債務不履行による解除の場合,原協定書に基づく立替金債務が不存在となるという合意があったか否か(争点7-2・第2事件予備的請求原因に対する抗弁)
(8)  本件が「本建替え決議が不成立の場合」(原協定書6条2項)に当たるとして原告の被告長谷工に対する立替金返還債務が免除されるか否か(争点8・第2事件予備的請求原因に対する抗弁)
(9)  原協定が合意解除されたことを理由に原告の被告前田建設に対する立替金返還債務が免除されるか否か(争点9・第3事件抗弁)
4  争点に関する当事者の主張
(1)  争点1(原告の第1事件の各請求の訴えの利益の存否)について
ア 原告
(ア) 平成27年3書面の証書真否確認請求について
平成27年3書面の証書真否確認請求は,本件立替金等の返還債務及び本件業務報酬の支払債務の存否を確定する上で,重要な前提問題に関する確認を求める内容であるから,即時確定の利益が認められるべきである。
また,平成27年3書面は,原告が負うこととなる上記の各債務の数額が定められているから,原告と被告らとの間の法律関係を直接規律するものであるし,他方で,原協定書において被告長谷工が負うとされていた義務の中には新協定書において除外されているものがあるから,被告長谷工の義務の消長という点,新協定書で将来の被告長谷工との協議義務や被告長谷工への見積り依頼義務等の新たな義務を原告に課している点において,原告と被告長谷工の法律関係を直接基礎付ける処分証書としての性質が認められる。
さらに,被告らからそれぞれ第2事件及び第3事件を提起されているものの,既判力をもって確定されるのは,立替金返還債務の有無のみであるところ,Dによる平成27年3書面の作成が無権代理行為によるものか否かなど,被告らやDとの間の法律関係の重要な前提問題として判断が必須であり,即時確定の利益が認められるし,原告の適正な運営を図ったり,不祥事の再発防止の観点からもDの無権代理によるものか否かについては然るべき法的判断が示されるべきである。
したがって,平成27年3書面の証書真否確認請求については確認の利益が認められる。
(イ) 原設計契約及び原覚書に係る合意の無効確認請求について
これらの無効確認請求は,いずれも原告の被告らに対する業務報酬支払債務の有無及び業務報酬支払債務を生じる原因となり得る合意書等に係る合意の無効確認という,現在の法律関係の存否に関する確認であり,これらを確認することで,業務報酬の請求を受け得るという原告の法律上の地位に関する危険ないし不安を除去できるから確認の利益が認められる。
イ 被告長谷工
(ア) 平成27年3書面の証書真否確認請求について
そもそも被告長谷工としては,今後も本件事業への関与の希望を残しているものの,仮に原告が本件事業の計画を全面的に見直した結果被告長谷工にその協力を求めないとの結論に至れば原告の決定を尊重して協議に応じる用意があるため,平成27年3書面は,いずれも原告にとって何らの足かせとなるものではない。
また,原告が確認の利益の主張根拠とする新協定書の条項は,本建替組合設立後に被告長谷工への発注を法的に義務付けるものではなく,紳士条項にすぎない。
さらに,あくまで,新協定合意書においては,本件立替金及び本件業務報酬について,協議して定めると規定されており,直ちに被告長谷工がこれらを請求し得る法的権利が定められているわけではなく,将来の債務原因行為によって初めて具体化するにすぎない。
したがって,原告の主張する危険や地位の不安定さはいずれも抽象的なものにすぎず,即時確定の利益を欠くから,確認の利益はない。
(イ) 原設計契約及び原覚書に係る合意の無効確認請求について
同様に,原告の被告長谷工に対する本件業務報酬の支払債務の内容は,将来の債務原因行為によって初めて具体化するにすぎず,確認の利益はない。
(2)  争点2-1(平成27年3書面の作成時である平成27年6月20日時点でDに原告の代表権限があったか否か)について
ア 被告長谷工
(ア) 本件規約39条3項は,任期満了によって退任する役員は,後任の役員が就任するまでの間,引き続きその職務を行うと規定しているところ,同項の文理及び同項が原告の包括的・不可制限的な代表権を有する理事長(本件規約41条,区分所有法26条3項)が不在となる期間を生むという不都合を回避するための規定であることからすれば,ここでいう「役員」に理事長が含まれることは明らかであるから,理事としての地位の消長にかかわらず,前任の理事長は,後任の理事長が就任するまでの間,引き続き理事長の職務を行う。
Dは,原告の管理事務所から,新たな理事(長)が就任するまで引き続き前任の理事(長)がその職務を行うことの説明及び平成27年6月21日の理事会への出席を促す旨の記載のある手紙を受け取り,新たな理事長が選任されるまでは代表権限があるものと考えて,被告らにその旨説明していたし,Aも上記手紙と同様の内容を電話でDに伝え,原告の事務長であるE(以下「E事務長」という。)も,同月20日,Dに対し,平成27年3書面に押印するという理由を聞いたうえで原告の代表印を貸し出していることからすれば,同日時点でDが代表権を有していたことについて,誰しも疑問をもっていなかったといえる。
また,同月14日から同月21日までの間に何者かがDの代表権限を積極的に否定するような言動を行った事実は何ら主張立証されていない。
したがって,Dは,同月20日時点で理事の地位を有していたか否かにかかわらず,本件規約39条3項のとおり,後任が理事長に就任するまでの間は,理事長として代表権限を有していたといえる。
(イ) 仮に,本件規約39条3項の解釈上,前任の理事長が理事としての資格を有していることが前提として必要であるとしても,Dは平成27年6月20日時点で理事としての資格を有していたといえる。
平成27年総会では,新たに8名の理事が選任されたが,議事録上,この8名が理事の就任承諾の意思表示をしたことは明記されておらず,同月21日までの間,理事としての職務を行ったことも窺えないから,上記8名による理事就任承諾の意思表示は同日の理事長の選任手続まで観念できない。なお,理事に就任するための承諾は,原告との間の準委任契約を成立させる意思表示であるから,①選挙管理委員会に対して役員候補として推薦されることを承諾する意思表示と②原告に対して理事に就任することを承諾する意思表示は区別されるべきである。また,原告が提出した承諾書は,承諾者が自らの年齢を誤って記載しているなど,少なくとも作成日について信用性が認められない。
したがって,新理事が就任したのは早くとも同日であるから,Dは同月20日の時点で未だ理事としての地位を有していた。
(ウ) 以上のとおり,Dは,平成27年6月20日の時点でも理事長としての地位を有しており,原告の代表権を有していた。
イ 被告前田建設
前記ア(イ)と同様。
なお,原告は権利能力なき社団であり,登記制度を利用することができず,業務執行者を公示する手段がない。したがって,権利能力なき社団と取引関係に入る者が真の代表者が誰かを確認できるようにするために,権利能力なき社団の役員の就任の承諾の意思表示は,就任承諾書等の書面によって明確にされる必要があるし,そのような書面がないのであれば,団地総会及び理事会の議事録に就任を承諾する意思表示がされたことが明確に記録されるか,又は選任された理事が理事会に出席するなどして現に理事としての職務を行ったという外形を要するというべきである。
そして,平成27年総会の議事録には新たに選任された理事が就任を承諾する意思表示をした旨の記述は一切存在せず,平成27年6月21日以前に理事としての職務を行った外形は存在しない。
ウ 原告
本件規約39条1項では,旧役員の任期は2年であり,通常総会の日までと定められ,同3項では,任期満了によって退任する役員は後任の役員が就任するまでの間,引き続きその職務を行うと定められているところ,平成27年総会において,Dは理事を退任し,他方で平成27年・28年度の新役員選任の議案が賛成多数により可決され,役員候補者全員が信任されたが,これに先立ち,候補者全員が役員に就任する旨の承諾をしていたから,新役員選任決議の成立時点において,委任又は準委任契約が成立し,新役員選任の効果が生じたといえる。
そして,この時点で,原告の理事の人数に欠員が生じていなかったのであるから,Dは,平成27年3書面が作成された平成27年6月20日の時点では,理事としての資格・権限を有さず,理事長としての権限も有していなかった。
なお,同日時点で理事長が選任されていなくても,理事長は理事から選任され,理事の資格を離れて理事長としての役職について,本件規約39条3項が適用されることはないから,Dが理事長としての権限を有していたとはいえない。
(3)  争点2-2(平成27年6月20日時点でDに原告の代表権限が消滅していたとしても,そのことにつき被告らが善意無過失であるといえるか否か)について
ア 被告長谷工
被告長谷工としては,理事長が不在の期間の原告の代表権限の所在について明確に把握していたものではないが,被告長谷工は,平成27年6月19日にD,F(以下「F」という。)及び被告前田建設の担当者と打合せを行った際,理事長の職を既に退任していたDの代表権限に疑問を持ったことから,D及びFに代表権限について確認したところ,両名は権限があるから問題ない旨回答したため,特段敢えて両名が虚偽説明を行う動機も見出せず,疑問を呈する契機もなかったためこれを信じた。
被告長谷工はこの後,実際に本件規約39条3項を確認した。
このとき,被告長谷工は,同月21日に新理事会が開催されることは聞いていたものの,平成27年3書面の案文自体は同年5月中には内容が固まっており,残るは原告内での手続の履践を待つだけであったから,新理事長の選任を待つ必要性も感じなかった。むしろ,被告長谷工としては,平成27年3書面の内容が原契約と実質的に異なるものではなく,特段急ぐ必要もなかったことから,一旦は後ろ向きの態度を示したものの,同年2月より脱退の意向を表明していた被告前田建設から協力を依頼されたために社内手続を急いで行って協力したにすぎない。
以上のとおり,被告長谷工は,虚偽の説明をする動機のないD及びFの説明を聞き,その裏付けを取っていたのであり,本件規約の解釈について誰に確認すべきか一義的に明白であったわけではない状況のもと,前任の代表者であるDの説明を信じたとしても不自然ではない。
したがって,被告長谷工は,Dの代表権限の欠缺につき,善意・無過失であった。
イ 被告前田建設
Dが平成27年6月14日の退任により原告の代表権を失っていたとしても,以下の事情からすれば被告前田建設はそのことにつき,善意無過失であった。
(ア) Dは,平成27年6月20日,原告の理事長として記名した上,原告の代表印を押した。
(イ) 被告前田建設は,本件規約の冊子の交付を受けて,理事長が任期満了により退任しても,後任の新理事長が就任するまでの間は,本件規約に基づき,退任した理事長が代表権を有すると認識していた。
(ウ) D及びFは,平成27年6月19日,被告前田建設の担当者に対し,新理事長が就任するまでの間はDが代表権を有する旨の説明をした。
(エ) 被告前田建設は,過去に任期満了によって退任した理事長が対外的な職務に従事した例がないこと,理事長が任期満了によって退任した後は,緊急理事会を招集して新理事長を選任し又は理事会の決議で応急的な意思決定を行うことが可能であることを聞いたことがなかった。
ウ 原告
(ア) 被告らは,平成27年3書面作成前に,Dが任期満了により退任し,新たな理事長が選出されるであろうことを認識していた。
被告らは,新たな理事長の選任までDが原告の代表権を有するとの説明を受けたと主張するが,建替委員会委員長代理であるFの権限や役職の任期について確認しておらず,Fの権限等に疑念を差し挟まなかったことは不自然・不合理である。
(イ) 本件では,以下の事実からすれば,Dが平成27年3書面の締結時点で代表権限を有していないことを被告らが認識し又はそのことにつき過失が認められる。
a マンション管理組合である原告の理事長の権限に,規約,使用細則等,総会決議,理事会決議に基づかなければ権限を行使できないという制約が伴っていることは通常想定されるから,被告らにおいてもDの権限の根拠について具体的に確認をすべきだった。
b 原協定書などの当初の原告と被告らとの合意書面は,選考方針や協定の内容に関して総会決議を経てから締結されているところ,被告らは,これらの決議のあった総会前の説明会や総会に出席していたからこれらの経緯を認識していた。
c 原告,被告前田建設,原告の副理事長及び建替委員会の委員等とで行われた平成27年2月28日の協議の際に,被告らに対し,総会決議を経るべきことが説明されていた。
d 重要な局面における協議は,原告の事務所の会議室で行うことが通例であったが,被告らの担当者は,平成27年3書面の作成に先立ち,建替委員会のFの勤務先である株式会社フジクラ(以下「フジクラ」という。)の会議室において打合せを複数回行っており,原告の建替委員会や理事会に報告をしない謀議を重ねていた。
e 平成27年総会では,第4号議案を含む廃案となった議案は,新理事会で審議検討することが決定事項として承認されており,Dも当然にこのことを認識していた。
f 平成27年3書面の作成日付である平成27年6月20日は,同月14日の通常総会が終了し,旧役員の退任及び新役員の選任後で,新理事による新年度の理事会が開催される同月21日までの間の時期であるところ,このような時期にその平成27年3書面の作成を急ぐべき必要性は何ら存在しなかった。平成27年3書面への記名押印が終了して完成したとされるのが同月29日であるところ,仮に同月20日に平成27年3書面の作成に関する合意をしていたとしても,被告らが新たな理事長が同月21日に選出されることを事前に認識しており,新年度の理事長ないし理事会への確認や報告をすべきであった。しかし,被告らは,このような確認や報告を行っていない。
g 平成27年3書面の作成作業は,そのいずれも原告の管理事務所とは関係のないところで行われていた。
h 被告前田建設の脱退に関する協議の経過においては,理事会と建替委員会の委員が同席するなど,理事や建替委員会の委員も高い関心を有しており,平成27年3書面の作成作業の場に誰も同席しないのは不自然であるが,実際にその作業に立ち会った原告の関係者は,D及びFのみであり,当時の副理事長であったAや他の理事,他の専門委員会の委員は立ち会っていない。
i 平成27年3書面作成の直前である平成27年6月19日に,フジクラにおいて行った被告らとD及びFとの面談に関して,Dは,事前にも事後にもAなど大部分の理事に何ら報告していない。
また,同じくフジクラで行われた会議については記録が残っているものの,同日の面談に関しては,記録が残っていない。
さらに,Dは,平成27年3書面作成後,同月21日の新理事会の場に出席し,平成27年3書面の作成について報告する機会があったにもかかわらず,原告の管理事務所やAに何も報告を行っていない。
j 被告らは,Dが理事を退任し,新年度の理事会で新たな理事長が選出されることを認識していたところ,平成27年6月26日にAから被告長谷工への電話での問合せを受けるまで,新年度の理事長や理事会には何も報告していない。
また,被告らは,新設計契約合意書に記載のある成果品の授受を同月20日はおろか,同月29日にも行っていない。
さらに,被告らは,同月26日にAから電話連絡を受け,平成27年3書面が無権限で作成されて困っている旨の申出を受けたところ,同日時点では未だ押印が完了しておらず,書面の作成を中止・中断することが対応として現実的に可能であったにもかかわらず,押印がまだ完了していないという事実を伏せて,既に新契約を締結した旨述べて,押印作業を進めた。
k 被告らは,本件訴訟で,正規の原告の議事録ではなく,偽造の書面も含めて多くの書証を証拠提出しているところ,これらは原告の組合員でなければ入手できないものであり,被告らが原告の組合員と接触することが容易な立場にあったといえ,平成27年総会で第4号議案が審議未了となり廃案となった経緯や平成27年6月21日に新年度の理事会が開催され,新理事会で改めて第4号議案について審議検討することとなっていたことを知らなかったとは考えられない。
l 平成27年3書面中にある成果品の引渡しも未了であり,形だけでも合意書を締結したという既成事実を作ろうとする意図が窺える。
(ウ) 原告管理事務所からの連絡文書についても,あくまでその趣旨は,Dに新年度の第1回理事会への出席を依頼し,新理事長が選出されるまでの司会を依頼するものにすぎないし,原告において,任期満了により退任した理事長が退任後もなお対外的な職務執行に当たった例はなく,しかも平成27年総会で新理事会で審議検討することとなった第4号議案について,独断で書面の作成を横行することは不合理極まりなく,また,同文書が引用する区分所有法49条7項が原告には適用されないことからすれば,これを受け取ったDが代表権の存在を信じたとは考え難く,D及びFからDに代表権があるとの説明を受けて,被告らが代表権の存在を信じたということはできない。
(4)  争点3-1(平成27年3書面締結時までに原告からDに対してこれらの締結に必要な授権がされていたか否か)について
ア 被告長谷工
(ア) 平成24年臨時総会では,ゼネコン事業協力者の選定・追加の方法や協定書Ⅱの明細については理事会に一任するという内容の決議が成立している。
また,平成27年3書面では,原契約に基づく立替金等の金額が確認されているものの,単なる確認条項にすぎず,立替金等の弁済等を含む取扱いについては各々協議して定めることとなっており,原告が被告らに対して直ちに新たな金銭債務を負担する内容とはなっておらず,原告に原契約以上に過大な負担を課すものではなく,被告前田建設が脱退する以外,原契約と実質的に異なるものではなかった。
そして,被告前田建設が事業協力者から脱退することは,事業協力者の選定行為に当たり,その他の内容が原契約を実質的に変更するものではないことからすれば,いつ,どのような内容の協定書を取り交わすのかという事項として,平成27年3書面の締結も平成24年臨時総会で理事会に一任されていたということができる。
平成27年3書面の締結に当たって,団地総会の決議までは不要であるとされていたことは,原告の顧問弁護士として原告代理人が助言していた内容からも窺える。
(イ) 本件議案については,平成27年5月10日開催の理事会において,第4号議案の一部として,平成27年3書面を締結することが読み上げられて,これを添付資料として付した総会議案書についてそのまま掲載することが確認され,その後その内容が維持された総会議案書が原告の組合員に配布されているところ,理事がこれらに反対の意思表示をしたことが窺えない以上,本件議案の内容について理事会で承認決議がされたということができる。
(ウ) その他Aが,立替金等を支払うという趣旨の発言をしていたFに対し,理事会の場で正式に異議を述べることはしていないこと,平成27年6月26日に被告長谷工の担当者に電話した際も明示的に平成27年3書面の調印手続を止めるよう要請しなかったことなどからすれば,理事会としては本件議案について承諾し,また,平成27年3書面の締結に当たって必要な原告内部の手続の履践については問題視されていなかったといえる。
(エ) 以上のとおり,平成27年3書面の作成について,原告内で必要な手続は問題なく履践されていたということができる。
イ 被告前田建設
前記アと同様。
平成27年3月30日の建替委員会において,平成27年3書面の具体的な案文が示されているところ,原告と被告らは,同年4月頃までに,平成27年3書面の具体的な案文を複数回修正して最終的に案文の内容を了承した。同年5月10日の理事会議事録には,第4号議案を「そのまま掲載」すると記載され,現に組合員に配布された議案書にもそのまま掲載された。これらから明らかなとおり,同年3月30日の建替委員会の開催日から同年5月10日までの間に建替委員会において具体的な案文が承認されたことは明らかであり,それが理事長に報告されている以上,その報告された建替委員会の議事録は,理事会の議事録の内容を構成し,それに基づいて理事会の承認を経たことが明らかである。
また,通常総会の議案書では「承認事項」,「報告事項」及び「上申事項」が明確に使い分けられているから,被告前田建設との契約解除は,総会決議の「承認事項」に該当しないことは明らかで,「報告事項」又は「上申事項」として,単に総会に報告又は上申すれば足り,理事会の承認で足りる。
ウ 原告
(ア) 平成27年3書面の締結を内容として含む平成27年総会の第4号議案は,平成27年度の事業計画に関する議案であり,建替えによる団地再生という団地全体の最大の関心事に関する議案であって,立替金等の支払を要することからすれば,本件規約51条2号,同7号及び同14号により原告の総会決議事項であったといえる。
しかし,これに関して平成27年総会を含め,平成27年3書面に先立って決議がされたことはないし,予め総会決議によって平成27年3書面の締結に関して,理事会又は理事長への授権もされていない。
(イ) このことは,被告前田建設が平成27年3月末までの撤退を希望していたにもかかわらず,平成27年総会まで平成27年3書面の締結を待っていたことからも明らかである。
(ウ) 平成24年4月22日に開催された平成24年度第1回臨時総会(以下「平成24年臨時総会」という。)において理事会に一任するとされたのは,本件デベロッパーに追加するゼネコン(建設業者)の選定・追加の方法及び元基本協定Ⅱの明細であり,それ以上の内容は理事会に一任されておらず,将来における協定の解除や変更まで想定されておらず,これらについて一任されていなかったことは明らかである。
(エ) 平成27年3書面の締結については,理事会決議もされていない。理事会は,本件議案について,団地総会の決議を経ずに理事会の決議のみに基づいて何らかの行為を行うことを決定していたのではなく,本件規約57条4号の「その他の団地総会提出議案」の内容が審議の対象だったのであり,団地総会に提出する議案としてその内容を審議していたにすぎない。
そもそも理事会においては,平成27年3書面が示されたことはなかったから,理事会がその内容について承認することはあり得ないし,平成27年6月6日の臨時理事会の記載も,理事会としての意思決定を表すものではなく,建替委員会からの報告・上申内容を確認したにとどまるものである。
(5)  争点3-2(Dに対する授権がなかったとしても,そのことにつき被告らが善意又は無過失であったといえるか否か)について
ア 被告長谷工
(ア) そもそも平成27年3書面の内容は,被告前田建設が本件事業から脱退するという点以外が原契約と実質的に同一だったのであり,少なくとも被告長谷工と原告との関係では,従前の契約関係を確認する目的にすぎず,原告内部で総会の承認決議まで必要であるとは到底考えられなかった。
(イ) また,被告らは,建替委員会の委員長代理であったFから顧問弁護士の見解として,平成27年3書面の締結に当たって理事会の承認決議があれば足りるとの見解の提供を受けていた一方でそのような考えを打ち消すような見解が原告から示されたことはなかった。
(ウ) さらに,平成27年3書面の案文については,原告からは顧問弁護士や建替委員だけでなく,理事会への出席権限のある監事からの修正意見やコメントが付されていたから,被告長谷工としては,原告内部でしっかりと議論がされていると考えた。
(エ) 加えて平成27年6月19日の打合せに臨んだ際,被告長谷工は,理事会の承認決議を経たのか否か直接Dに確認したわけではないが,念のため行った代表権限の確認に対して,問題ない旨回答されたから,理事会の承認決議も含めて原告内部で必要な手続が履践されていると信じても何ら不自然ではない。
(オ) 以上のとおり,被告長谷工が,平成27年3書面の締結に当たり原告内部で必要な手続が履践されていると信じたことについて善意・無過失であるといえる。
イ 被告前田建設
Dが原告の必要な内部手続を経ずに,平成27年3書面を締結していたとしても,以下の事情からすれば,被告前田建設はそのことにつき善意無過失であった。
(ア) 被告前田建設は,平成27年3月26日,Fから顧問弁護士の見解として,平成27年3書面の締結に当たって理事会の承認決議があれば足りるとの見解の提供を受けた。
(イ) 被告前田建設は,Fから,被告前田建設の撤退について平成27年総会に報告すると聞いており,理事会決議が通っているものと認識していた。
(ウ) 被告前田建設の担当者は,平成24年6月10日の通常総会に出席していたところ,その時点で被告前田建設と原告は原協定書を締結しておらず,また原協定書の内容が当該総会に諮られていたわけでもなく,その内容は今後調整するという議論がされていたところ,実際に,同月20日,改めて総会決議を経ることなく,理事会の承認のみで原協定書が締結された。また,原設計契約書及び覚書も案文を総会に諮った上での決議はされていない。
(エ) 被告らの従業員,D及びFは,平成27年6月19日,第4号議案を理事会が承認した上で平成27年総会に提出していることを前提に合意書の締結交渉をした。
(オ) 被告らは,通常総会の議決を経る必要があることをF又はDから指摘されたことはない。
ウ 原告
(ア) 原告の理事長は,区分所有法上の管理者であるが,包括的な代理権を有するものではなく,総会決議・理事会決議に基づいてのみ行為のできる性質上制限された代理権を有するにすぎない(同法26条1項参照)。
(イ) 本件では,前記(3)ウ(イ)aないしlで述べた各事実からすれば,Dが平成27年3書面の締結権限を有していないことを十分に認識していたというべきであり,少なくとも権限の不存在を知らなかったことにつき過失が認められるから民法110条の「正当な理由」は認められない。
(ウ) 被告らが主張する原告の顧問弁護士の見解をFから示されていたとの点は,代理人弁護士でもない弁護士の見解であり,被告らにおいて確認すべき内容は,総会決議や理事会決議,規約等による授権の有無であるから,「正当な理由」の評価根拠事実には当たらない。
また,平成27年3書面に原告の理事長印が押印されているとの点については,理事長印は日常の連絡物等にも使われて,持ち出しは比較的容易であったし,Dが平成27年3書面に押印するために事務長のE事務長から借り受ける際に具体的な使途は告げていなかったから,この点を「正当な理由」の有無において過大視すべきでない。
(6)  争点4(被告らに原設計契約に基づく債務の不履行があったか否か及び本件が被告らの「責めに帰すべき事由により同契約を維持することが相当でないとき」といえるか否か)について
ア 原告
(ア) 成果品の内容に関する説明義務,提出義務違反
被告らは,原設計契約書添付の約款第4条に基づき,成果品に関する説明義務,提出義務を負っているところ,成果品に関して十分な説明を行っておらず,成果品の提出も行っていないし,平成27年3書面作成時点では,原協定書第2条1号a・bの基本設計業務,設計等に必要な行政協議等の成果品の内容に関する説明や成果品の交付を行っていない。
原設計契約書に基づく成果品は,同号cに記載の付帯調査業務ではなく,同号a・bの基本設計業務,設計等に必要な行政協議等の成果品であり,被告長谷工が提出する資料に含まれるものではないから,成果品に関する資料が本件訴訟において提出されていない。
したがって,被告らは,原設計契約に基づく成果品の内容に関する説明義務及び提出義務を履行していない。
(イ) 平成27年3書面の白紙撤回に応じなかったこと
被告らは,原告から平成27年3書面について,権限のないDが理事長印を冒用して作成したものであるとして無条件での撤回を求められているところ,既に平成27年総会が平成27年6月14日に開催され,新理事による理事会が同月21日に開催されるという事実関係を認識しながらも,これを拒絶している。
このように白紙撤回に応じないことは原告との基本的な信頼関係を反故にする行動であり,「相手方の責めに帰すべき事由により,原設計契約を維持することが相当でないと認められるとき」(原設計契約9条の3)に当たる。
(ウ) 原告による原設計契約の解除
原告は,平成28年1月28日,被告らに対し,第1事件訴状をもって,上記(ア)の被告らの成果品の内容に関する説明義務違反及び提出義務違反又は上記(イ)の約定の解除事由に該当することを理由に原設計契約を解除し,同解除により原覚書も無効となった。
イ 被告長谷工
(ア) 被告らは,概ね1か月に1回程度の頻度で開催される原告の理事会において,業務を遂行する上で報告すべき事項があるときは,その都度,専門委員会を通じて委託業務の遂行の結果を報告してきたし,原契約に基づく成果品の概要を説明していたり,成果品の検収が完了しているものもある。
そして,被告長谷工は,原告から要求があればいつでも成果品を開示する準備をしていたが,これまで原告から成果品に関する説明を求められたことは一度もない。
また,原告は,平成26年9月20日,当時の再生推進委員会の事務所において,被告らが作成した成果品を確認し,同年11月12日には被告長谷工にて保管中の成果品を再度確認しており,平成27年7月には被告前田建設が原告に対して基本設計業務の成果品を送付したにもかかわらず,原告は受領拒否し,返送した。
したがって,被告らは,これまで成果品の内容を確認する機会を与えたり成果品を受領できる状態にしていたにもかかわらず,原告自ら一方的に受領を拒絶して受領遅滞していたのであるから,被告らが債務不履行の責めを負うことはない。
(イ) そもそも平成27年3書面は真正に成立している以上,被告長谷工はこれを無条件で撤回する法的義務を負うものではないから,被告長谷工の責に帰すべき事由により,原設計契約を維持することが相当でないと認められるときに該当するとはいえない。
ウ 被告前田建設
争う。
(7)  争点5(原協定書に基づき被告長谷工の立て替えた金額)について
ア 被告長谷工
被告らは,原告の事務局に従業員を派遣し,本件事業の会計事務を担当させてきたところ,立替金等を支出する際には必ず事前に立替払金の支出予定先からの請求書を添付した原告理事長名義の立替払依頼書を起案し,これを確認した原告の理事長から理事長印の押印をもらって立替払依頼書の交付を受けて,立替払を実施してきた。
また,事務局員は,専門委員会である再生委員会及び建替委員会にも出席して事後的に領収書等の証票書類とともに月次収支実績表の内容を説明した上で,同実績表の承認欄に建替委員会の担当者の押印をもらっていた。そして,同実績表は,理事会においても会計担当事務局から理事に対して説明が行われており,D含め理事全員がその内容を確認していた。
このようにして被告らは,別紙のとおり,必要に応じて立替金を支出した。
そして,被告らは,原告の理事会に対し,平成26年11月5日付けで,立替金の合計額8459万8000円が明記された報告書を提出しているところ,出席者からは何の異論もなかった。
以上のとおり,被告長谷工は必要な決裁を経ており,原告も事前及び事後に確認しているのであるから,立替金等の金額を争う原告の主張は採用できない。
イ 原告
争う。
被告長谷工が主張する立替金は,事務費1402万2000円をはじめとしてその積算根拠が不明であり,その根拠として提出された請求書等の内容に矛盾があったり,具体的な出費が確定される前の「預り金」として計上されるべきものがあったりするため,立替金であるとして原告において当然に負担すべきものとはいえない。
また,コンサルタント費用については,被告らの提出する合計4473万円の立替払の詳細が不明であり,都市設計連合による当該請求額の積算根拠も不明である。しかも都市設計連合の報告義務が成果品・資料の不交付により履行されておらず,成果品の交付がされていないところ,被告長谷工が,原告に対して成果品の交付がされる前に,同時履行の抗弁権を無視して立替払を行って,原告にその返還を求めるものであるといえるから,信義誠実の原則に反して許されないというべきであるし,基本設計等業務の成果品に当たる支出金(付帯業務調査費)についても,成果品の交付がなく,調査結果等についても建替計画の見直しなどによりそのまま利用できない可能性があり,上記と同様に同時履行の抗弁権を根拠付けるのみならず,成果品の交付がないということは敷地測量業務等の業務が未だ完了していないことを意味するものであるから,原告が立替金の支払をする理由はない。
(8)  争点6(立替金債務の弁済期の到来の有無(条件成就の有無を含む))について
ア 被告長谷工
(ア) 新協定書第5条1項は,条件が成就したときに立替金返還請求権が発生するという停止条件特有の定め方がされているわけではなく,また,同条2項では,立替金返還請求権が既に発生していることを前提に,「本建替え決議不成立の場合」及び「原協定書を合意解除する場合」に請求権を放棄することが定められていることからすれば,不確定期限を定めたことは明らかである。
また,同条3項は,原告が立替金等の返還を免れるべく意図的に一旦建替え決議の成立を妨げたうえで,成果品を利用しつつ別のゼネコンに鞍替えして新たに本件事業を推進することを防ぐ目的で設けたものであり,被告らが本件事業に事業協力者として関与している限りにおいて,立替金等の回収を担保しようとしていたのであり,このような規定の存在からしても,当事者間において,原告が将来,建替組合を設立して弁済原資が確保できるまでの期間に限って立替金等の返還を猶予していたにすぎない。
これらのことは原協定書においても同様である。
(イ) 原告は,事業協力者の選考段階で,本件事業が中断した場合の立替金等の弁済の免除の可否を選考基準として重視していたものの,被告長谷工は,やむを得ない事情があれば免除もあり得るということを述べていたにすぎず,いかなる理由で中断したときも免除するものではないことは一貫して説明していた。そして,本件のように前理事長と現理事長の対立という原告内部の権力抗争を理由とする本件事業の中断が,上記のやむを得ない事情に該当しないことは明らかである。
(ウ) したがって,原告において本建替え決議が成立するか,あるいは,客観的に本建替え決議が成立する見込みがないことが明らかになるまで,その弁済又は返還を猶予しているという意味において,新協定書第5条1項及び原協定書第6条1項は不確定期限を定めたものである。
(エ) そして,被告長谷工は,本件訴訟において,原告に対し,改めて被告らが作成した基本設計業務の成果品のうち,本件事業を継続する上で今後も必要となる敷地測量図,地盤調査報告書等の成果品を引き渡す用意があることを伝えた上で和解協議を申し入れたものの,原告は一方的にこれを拒絶した。これは,原告においてDら旧執行部の行った平成27年3書面を論難することに固執して,本件事業の検討に必要な成果品の引渡しを一方的に拒絶したものといえ,このような非経済的な態度を踏まえると,もはや原告において本件事業を継続して建替え決議の成立を目指すことを断念したと言わざるを得ず,本件事業を前に進める状況にはない。
よって,遅くとも原告が明確に協議を拒絶した平成28年10月4日をもって,原告において客観的に本建替え決議が成立する見込みがないことが明らかになり,不確定期限が到来したといえる。
イ 被告前田建設
(ア) 原告と被告らは,原協定書6条1項において,本件立替金の精算時期について合意していたが,その後新協定合意書を締結し,原協定書を平成27年3月31日で終了すること,本件立替金の取扱いについて
「各々協議して定める」こと及び8459万8000円の本件立替金債権と8000万円の本件業務報酬債権以外の債権債務が原告と被告らとの間にないことを合意したのであるから,新協定合意書によって,原協定書の規定は効力を失った。
したがって,協議を原告が拒絶した場合には,本件立替金債権の履行期限が到来するというべきである。
そして,被告前田建設は,平成28年2月29日,原告に対して協議を申し入れたが,原告が協議に応じない態度を継続して示しているから,本件立替金の弁済期は既に徒過したといえる。
(イ) 立替金は,原告が被告らに依頼して,これを被告らが承諾して都市設計連合等宛てに立て替えて支払ったものであるから,そもそも被告らは,原告に対して,成果品を完成させる債務も引き渡す債務も負っておらず,仮に成果品を被告らが保管しているとしても,その成果品の引渡債務と立替金の返還債務とは対価関係に立たず(最判平成2年2月20日集民159巻151頁参照),立替金の支払を拒むことはできない。
また,新設計契約合意書及び新協定合意書では基本設計業務の成果品の引渡しが規定されているのみで,立替金に関する成果品の引渡しについての規定は存在しないから,これらに基づいても原告は立替金の支払を拒むことはできない。
ウ 原告
(ア) 成果品の引渡しがなく履行期が到来していないこと
建替組合が設立されるまでの流れは,大まかには,建替計画の策定,区分所有法による建替え決議の成立,建替組合の設立となるが,区分所有法上,一括建替え決議のためには新たに建築する建物の設計の概要を定める必要があり,敷地測量,騒音調査,地盤調査などの成果品を利用する必要がある。したがって,時間的な前後関係からして,建替組合設立前の場面に成果品が必要なのであるから,立替金の支払よりも成果品の交付が先に行われるべき先履行の関係にある。
また,都市設計連合との契約において,その代金支払義務と成果品引渡義務が同時履行の関係に立つところ,都市設計連合から原告に対する成果品引渡義務が履行されていないから,被告らに対する立替金支払債務についても,原告への成果品の引渡しがされない限り履行期が到来しないというべきである。
(イ) 立替金の請求には原告と被告らとの協議の成立が必要であること
新設計契約合意書及び新協定合意書においては,立替金の取扱いについて,別途協議する旨が定められているところ,本件においては訴訟提起前の協議は調わず,また,本件訴訟の弁論準備手続期日における和解協議も調わなかった。
したがって,被告らは,原告の間で協議が成立していない以上,原告に本件立替金の返還請求をすることができない。
(ウ) 新協定書第5条1項の定め
新協定書第5条1項は,原協定書6条2項にかかわらず,本件立替金は,本建替組合設立後,原告が金融機関の融資実行や本件デベロッパーから保留地処分金及び保留床処分金の入金による資金調達ができた場合は,遅滞なく,被告長谷工が指定する銀行口座へ振り込む方法で返還する旨定めているが,これは,不確定期限を定めた趣旨のものではなく,停止条件を定めたものであるところ,未だ,本建替組合の成立がなく,金融機関からの融資の実行,本件デベロッパーからの保留地処分金,保留床処分金の入金による資金調達も実現していないから,停止条件は成就していない。
仮に不確定期限と解されるとしても,その到来時期は,本建替組合設立と資金調達ができたという不確定な事象であり,これよりも前の時期まで遡って期限が到来するというのは無理があるし,同条3項では,新協定書が解除された場合においても,弁済を要する場合があるのは本建替組合設立後であることが明確に定められている。
また,支払主体についても同項で想定されているのは,将来設立される本建替組合といえるところ,建替えに反対した区分所有者は本建替組合には参加しないし,原協定書締結時点で本件事業の事業協力体の構成員であった本件デベロッパーが建替組合の組合員になっていたことが見込まれることから,本建替組合は原告とは一致せず,立替金の支払主体が大きく異なるのであるから,本建替組合設立前に立替金の精算を行うことは不合理である。
さらに,立替金の返済は,本件建替組合への金融機関からの融資金や本件デベロッパーからの保留地処分金・保留床処分金,その他国土交通省の建替支援制度による補助金等が原資として想定されており,原告の管理費や修繕積立金は将来の支払の原資としては想定されていなかった。
したがって,本件立替金の弁済期は未だ到来していない。
(9)  争点7-1(被告長谷工に原協定書に基づく債務の不履行があったか否か)について
ア 原告
(ア) 都市設計連合及び本件デベロッパーと綿密に協議を行うべき義務の不履行
原協定書第2条において,本件事業を推進するにあたり,被告らには,都市設計連合及び本件デベロッパーと綿密に協議をすべき義務が定められている。
被告らの業務は,都市設計連合及び本件デベロッパーとの協働によらなければ実現できないところ,都市設計連合が離脱し,本件デベロッパーともそれ以上の協議ができない状態になった点で同義務が履行不能に陥っていたといえる。また,平成27年2月に工事費が増加したのは,被告らの見積りの増加によるところ,工事費の削減の工夫やその他の条件の見直しもあり得たのにそれらの検討や協議をしなかった点も同義務の債務不履行である。
(イ) 事務局業務の不履行
原協定書第2条2号には,被告らが事務局業務を行うべきことが定められているが,被告らは,工事費の増大に伴う事業収支の悪化に起因して,平成26年10月31日をもって事務局を閉鎖し,以後は事務局業務を行わない旨を通告してきたのであるから,事務局業務の放棄であり,債務不履行に当たる。
また,都市設計連合離脱後には,再生推進委員会事務局業務支援業務も原告の業務の支援及び協力業務を行い得ない体制となっており,この点も債務不履行に当たる。
(ウ) 費用立替業務の不履行
原協定書第2条3号には,被告らが費用立替業務を行う旨定められているが,被告長谷工は今後一切立替を行わない旨表明し,被告前田建設も事後一切の業務を行わない旨表明しているため,被告らは,費用立替業務を放棄しているといえ,債務不履行に当たる。
イ 被告長谷工
(ア) 都市設計連合及び本件デベロッパーと綿密に協議を行うべき義務の不履行について
被告らは,そもそも都市設計連合と原告との本件コンサルタント契約に関与できる立場にはないし,コンサルタントが本件事業から撤退するという異常事態を受けて,原告において方針が定まらないために,本件デベロッパーと本件事業を進める議論をしようとしてもできない状況にあったにすぎない。
本件事業は,原告,都市設計連合,本件デベロッパー及び被告らゼネコンの四者の協力が必要であるが,原告の意向を無視して事業を推進することはできないし,受託者の中にも役割分担があるところ,コンサルタントは,本件事業において事業主体である原告に次いで中心的な立場におり,ゼネコンとデベロッパーの媒介を果たすべき重要な地位にあるから,コンサルタント業者なくして本件事業を実現するのは事実上困難である。
そして,本件事業では,工事費の高騰を原因に本件団地の住民の反発を招いたものの,工事費の上昇は被告らの責めに帰すべき事由には当たらず,原告内部でも方針が決まっていなかったのであるから,原告の主張は前提を欠く。
したがって,被告らが本件デベロッパーとの間で本件事業を推進させるための協議を行うことができなかったとしても,原告及び都市設計連合との事情によるものであり,被告長谷工に帰責事由はない。
(イ) 事務局業務の不履行について
原告では,平成26年6月,当時の理事らのほとんどが退任して,旧理事に反対してきた理事らで構成されるDを理事長とする体制が樹立したが,旧体制で組成されていた再生委員会が事実上解散したことから,新しく組成された建替委員会にうまく引継ぎがされず,原告内部において建替えに向けた実質的な議論ができず,一向に進展しない事態となった。
そこで,被告らは,原告に対し,原告の方針を問うとともに,無駄な事業費の節約のため,一旦事務局事務所の賃貸借契約の解約を希望する旨,解約後も引き続き事務局業務は継続する旨の意向を伝えたところ,Dは事務所の解約や立替業務の一時休止を了承した。
その後,被告前田建設が撤退の意向を表明したことからそれ以後は,本件事業を進める方向ではなく,契約の見直しに関する議論が進められた結果,原告から事務局業務に関する具体的な指示が出されなくなったにすぎない。
したがって,事務局事務所の閉鎖は,予め原告の承諾を得たものであるし,被告らが事務局業務を遂行できなかった原因も,委託者である原告において方針が定まらず,被告らが行うべき事務局業務が観念できなかったからにすぎず,被告長谷工に帰責事由はない。
(ウ) 費用立替業務の不履行について
上記(イ)と同様,そもそも立替業務事務の休止は,予め原告の承諾を得たものであるし,委託者である原告において方針が定まらず,被告らに立替払依頼をしなかったにすぎなかったのであるから,被告長谷工に帰責事由はない。
(10)  争点7-2(被告長谷工の債務不履行による解除の場合,原協定書に基づく立替金債務が不存在となるという合意があったか否か)について
ア 原告
①原協定書6条4項によって,同条3項は債務不履行解除の場合には適用されないと定められていることとの整合性,②同条2項の文言上も「第9条」としており,合意解除について定めた「9条1項」に限定していないこと,③原協定書6条2項ただし書きは,原告のもとに立替金が残存している場面を想定しているところ,このような場合には被告らが合意をしなければ済むのであるから,合意解除の場合にのみ適用される場面は想定し難く,合意によらない解除の場合が包摂されているからこそただし書きが存在するといえること,④原協定書が被告らの債務不履行により解除される場合は,被告らの責めに帰すべき事由により建替え決議を成立させることが不可能となる場合であり,「本建替え決議不成立の場合」(同項本文)と債務不履行解除を区別する必要はないこと等からすれば,同項は,原協定書が債務不履行解除された場合にも適用があるというべきである。
イ 被告長谷工
原協定書6条2項は,その文言上,適用範囲を合意解除に限定しており,債務不履行解除が除外されていることが明らかである。原協定書9条2項は,被告らの債務不履行のみならず,原告の債務不履行に基づく解除も定めているから,そのような場合にまで立替金の返還を求めることができないという解釈はとり得ない。
原協定書6条2項所定の「第9条に定める内容にて原協定書を合意解除する場合」とは,天変地異や社会経済情勢の大幅な変動等の双方の責めに帰すことのできない事由により本件事業が進捗しないような事態に陥ったときに双方の協議で解除の諸条件を合意できた場合を想定していたものである。
したがって,文理上及び結論の妥当性からして,債務不履行解除の場合に原協定書に基づく立替金債務が不存在となるという合意があったとはいえない。
(11)  争点8(本件が「本建替え決議が不成立の場合」(原協定書6条2項)に当たるとして原告の被告長谷工に対する立替金返還債務が免除されるか否か)について
ア 原告
原協定書1条において,平成25年7月を目標として本建替え決議を成立させることが定められていたところ,この目標は,被告らの他に本件デベロッパーや都市設計連合との間でもその契約等で定められており,単なる努力目標ではなかった。
そして,原協定書6条2項の本建替え決議「不成立」とは,必ずしも建替えに関する総会が開催されて議案が上程され,否決された場合のみを指し示す表現ではなく,同月という目標期限から社会通念上許容され得る一定の期限内に本建替え決議の成立に至らなかった場合も含まれるというべきである。
本件事業では,当初,還元率100パーセントを目標とすることが謳われていたものの,平成25年11月には,平均還元率が38パーセントにまで落ち込むなど,本件事業に対する本件団地の住民の不信感が噴出し,また,建替えに関する総会の開催も,当初の目標である同年7月から,平成26年5月に延期された上,同年2月には再度の延期が必要となった。このような中で実施された本件事業の推進に関するアンケートでは,全1040戸中880戸からの回答があり,うち現状で決議実施(今の還元率の是認)を選択した住民はわずか129戸であり,検討継続(還元率の回復検討)を選択した326戸,一時棚上げ(建築コストが下がるまで待つ)を選択した105戸と併せても,全戸数の53.85パーセントにとどまり,本建替え決議の決議要件である組合員総数の5分の4以上及び議決権総数の5分の4以上(本件規約50条7項)の賛同を全く得ることができない状況にあり,建替え計画がその詳細に入るまでもなく反対多数により否決されたに等しいといえる。
また,平成26年10月26日には,都市設計連合から契約継続の意思がない旨の表明を受け,本件デベロッパーとの協議も事実上棚上げにされ,本件事業の事業協力体は,既に崩壊し,本件事業を推進するためには,コンサルタント事業者の選定など体制を抜本的に構築し直すことが不可欠な状態となっている。
したがって,本件事業の状況は「建替え決議不成立」に該当する。
イ 被告長谷工
「建替え決議不成立の場合」とは,文字どおり,建替え議案が団地総会に提案され,これが否決された場合を意味しており,区分所有法70条所定の建替え決議総会すら開催されていない以上,この場合に当たらないことは明らかである。
本件事業が事実上頓挫したという状況もこれに当たるとするのは,文言解釈の域を超えているし,本件事業が頓挫した原因が原告にある以上,原告が立替金等の返還債務を免れる結果は妥当性を欠くからこのような観点からも原告主張の解釈は採用できない。
また,被告長谷工は,事業協力者の選考過程において,立替金等の返還の猶予の可否について,天変地異や社会経済情勢の大幅な変動等の双方の責めに帰すことのできない事由により本件事業が進捗しないような事態を想定して返還の猶予をし得ると説明しており,原告から特に異論がなかったという経緯からすれば,「本建替え決議不成立の場合」のみで立替金等の免除の法的効果が生じるということはできず,建替え決議が不成立となった上で原協定書を「合意解除」しなければ,立替金等の返還債務が免除されることはない。
したがって,本件は,「本建替え決議不成立の場合」にも当たらないし,合意解除もしていない以上,立替金の返還債務が免除されることはない。
(12)  争点9(原協定が合意解除されたことを理由に原告の被告前田建設に対する立替金返還債務が免除されるか否か)について
ア 原告
新設計契約合意書及び新協定合意書が有効であるとしても,これらによる解除は原協定9条1項の規定を受けた合意解除であり,これらで定めた本件立替金の取扱いに関して,原告と被告前田建設との間で別途協議が成立していない以上,原則に立ち返って,原協定書6条2項が適用されるべきである。
したがって,被告前田建設は,原告に本件立替金の返還を求めることはできない。
イ 被告前田建設
合意解除は,当事者の意思の合致により効力が生じるところ,原協定書9条1項の規定にかかわらず,原協定を解除することが可能であるから,新設計契約合意書及び新協定合意書による解除が同項を受けたものと位置づける必要性も理論的根拠も全く存在しない。
したがって,原協定を合意解除した場合に,原則に立ち返って,原協定書6条2項が適用されるべきことにはならない。
また,原告と被告らは,新協定合意書によって,本件立替金の額を合意により確定させ,その取扱いを協議して定めることを合意しただけでなく,原告と被告らとの間には,8459万8000円の本件立替金債権及び8000万円の本件業務報酬債権以外の債権債務が存在しないことを確認するという清算条項まで設けているのであるから,これを合理的に解釈すれば,原告と被告前田建設との間に,本件立替金に関する債務を発生させない合意があったとはいえないことは明らかである。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
括弧内挙示の各証拠又は弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)  本件事業の開始
本件事業は,平成19年6月,原告の通常総会において,団地再生を専門的に検討するための専門委員会として「団地再生検討委員会」の設置が議決されたことを契機に開始し,平成21年5月の,臨時総会において,建替えを具体的に検討することが決議された。当初,還元率を100パーセントとすることが目標とされていたが,平成23年12月,本件デベロッパーと作成した実現可能性のある案としての基本計画案においては,平均還元率が80パーセントであるとされていた。(甲29の1,45)
(2)  契約交渉の経緯
ア 原告は,平成24年3月頃,①基本設計を行うことができ,②コンサルタント費を立て替えることができ,③事務局の派遣が可能で,かつ,基本設計業務の費用及びコンサルタントの経費の立替分について,計画が頓挫した場合に弁済を求めないということが可能なゼネコンを希望していたところ,被告らが,建替え決議が不成立の場合には,基本設計業務の費用及びコンサルタントの経費の立替分について,返還不要であるという方針を示したことから,被告ら2社をゼネコンの候補としていた(甲47,49,乙18ないし21)。
イ 原告は,平成24年4月22日の臨時総会において,本件事業について,事業協力者にこれまでの都市設計連合及び本件デベロッパーのほかゼネコン(建設業者)を追加し,改めて事業協力協定を締結すること,ゼネコンの選定・追加の方法や協定の明細については理事会に一任すること,本建替え決議に向け,基本設計や事業計画の策定をする第2段階に進め,本建替え決議の案を作成するために「基本設計」を行うことが承認され,ゼネコン事業協力者導入についての方針案が決定されて,同年6月の通常総会を経て,被告らがゼネコンとして決定した(甲27,28,40,48,49,乙22の1・2,原告代表者)。
(3)  原告は,平成25年5月,本件事業に関して「基本設計検討案」を発表し,その中で平均還元率は71パーセント(補助金有りの場合は77パーセント)とされていた(甲29の1)。
(4)  Dの理事選任
Dは,平成25年6月9日,団地総会により,理事に選任された(甲16)。
(5)  建替えの賛否
ア 本件事業では,東日本大震災後の復興需要に加えて,平成32年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けた建設資材や人件費の高騰等を理由とする建築工事費の上昇の影響を受けていたところ,本件団地の住民間では平成25年頃,本件事業について疑問を呈する声が一定数あがるなど,住民間で意見対立が生じ,本件事業の進め方に問題がなかったのか問う声が上がり,それに伴い,原告の本件事業について検討する専門委員会においても同様の意見対立が生じていた(甲69,丙1の1ないし丙3の17,弁論の全趣旨)。
イ 原告は,平成26年2月に作成された検討案の修正版において,建築工事費の上昇を主たる原因として,平成25年5月に比べて本件事業の事業収支が約57億円悪化し,平均還元率が38パーセント(補助金有りの場合は44パーセント)であることを示した(甲29の1,30)。
ウ 原告は,平成26年4月頃,本件事業の工事費の高騰を原因とする還元率の悪化を主たる原因として,建替え決議を延期することになり,今後の本件事業の継続等に関しアンケートを実施した。同アンケートの同月21日時点の回答結果によれば,全議決権数1040のうち,回答のあった議決権数が880であり,議決権利者数は826であったところ,現状での還元率を是認し,建替え決議実施を支持する者が129議決権(15パーセント),検討の継続(還元率の回復検討)を支持する者が326議決権(37パーセント),一時棚上げ(建築コストが下がるまで待つ)を支持する者が105議決権(12パーセント),検討を断念(建替え決議を実施しない)を支持する者が242議決権(27パーセント)であった。(甲30,31,乙1,2)
エ 平成26年6月8日に行われた原告の通常総会においては,本件事業の方向性に関する議案及び怪文書を配布したとしてDの理事解任を求める議案が提出されたものの,いずれも審議未了のまま,総会は閉会となった。同月25日に行われた理事会においても本件事業の方向性は決まらず,Dが理事長に,Aが副理事長に選任された。(丙4,5)
(6)  被告らによる事務所の解約
被告らは,平成26年7月17日頃,原告に対し,今後の団地再生の方針が定まらない現状では新たに資金立替を実行することは困難である旨,事務局業務は継続するが,同月31日をもって事務所を一旦解約する方針である旨を連絡し,解約した。Dは,これに対し,理解を示した。(乙3,丙7,9)
(7)  建替委員会の発足
再生推進委員会は,平成26年7月5日,同年6月8日の通常総会でDが解任されず,むしろ新しい理事長になったことで,理事会メンバーへの信頼感を失ったこと,再生推進委員会は事業協力者と密約を結んでいるなどの事実無根の誹謗中傷を本件団地の住民から受け耐え難い嫌がらせを受けたことなどを理由にその全員が辞任したことから,その後,再生推進委員会に代わり,新しく団地再生の専門委員会として建替委員会が設立された(甲16,丙6,12)。
(8)  大規模修繕の議案の可決
原告は,平成26年9月7日に開催した臨時総会において,約10億円の見積りを最大の支出とする大規模修繕の議案を可決した(丙12,弁論の全趣旨)。
(9)  被告前田建設の脱退希望と協議
ア 原告と被告前田建設は,平成27年2月28日,臨時の建替委員会を開催して協議を行い,被告前田建設が本件事業から撤退を希望し,他方被告長谷工は継続を希望していることが伝えられた。このとき,今後の協議の原告の交渉窓口としてGとFが指定された。(甲18,丙15)
イ 原告と被告前田建設は,平成27年3月10日,被告前田建設の本件事業からの撤退に関し協議をした。その際,被告前田建設は,被告前田建設が実施した立替金合計額が4229万9000円であること,原協定書6条2項に基づき,同額の立替金の返還を求めないつもりであること,ただし,同立替金のうち,基本設計等業務の成果品に支出した3528万8000円については,原告が被告前田建設以外の者と原協定書6条3項に定める基本設計等業務の成果品を使用して建替組合を設立した場合にはこれを被告前田建設に支払うことを希望し,被告前田建設によって作成された新協定合意書の案文でも同様の旨が記載されていた。
また,被告前田建設は,同協議の際,原告に対し,原設計契約に基づく業務の出来高が8000万円程度あり,そのうち被告前田建設分の本件業務報酬が4000万円程度あること,このうちの一定額の支払を求めたいことを伝えた。
しかし,原告からは,原告の内部でこの支払を検討すると,業務報酬は成果が明確でない分組合員の納得を得難く,揉める蓋然性が高く,むしろ成果品として明確な敷地測量,地盤調査及び騒音調査に関する費用の立替分の支払についてであれば,原告の組合員に対する説明がしやすいという説明がされた。
被告前田建設は,原告からの上記説明を受け,被告前田建設としても,原告と本件業務報酬の支払に当たって揉めることよりも,原協定書を解約して本件事業から脱退することを優先したいという希望を有していることを説明した。
その後,被告前田建設によって作成された新設計契約合意書においては,上記原設計契約に基づく業務の出来高が8000万円程度あり,そのうち被告前田建設分の本件業務報酬が4000万円程度あることを確認する条項及び被告前田建設分の本件業務報酬4000万円の請求を求めない旨の条項が記載されていた。
また,その後に作成された新協定合意書においては,基本設計等業務の成果品に支出した3528万8000円にかかる支払に関する条項は削除された。(甲37,38,丙17,21の1・2,22の1・2)
ウ Fと被告前田建設は,平成27年3月17日,被告前田建設が本件事業から脱退することに関して協議を行ったが,このとき,Fは,立替金のうちの敷地測量や騒音等の調査費について,原告が支払う必要が生じることは当然であると認識しており,建替委員会でもその見解は一致していること,支払をする場合には総会決議を要すること,支払う場合には総会決議が必要か理事会決議で足りるかは弁護士と相談する必要があることを指摘した。そして,合意書において,立替金の支払については別途協議する旨の条項を置くアイデアが出された。(丙18)。
エ 原告は,平成27年3月18日,被告前田建設が本件事業から撤退することについて了承し,今後の被告長谷工との契約関係等について協議していく必要があることを被告らとともに確認した。その際,Fは,成果品の代金の少なくとも一部については,被告前田建設に支払う考えがある旨,その支払額等については別途協議することを述べた。被告長谷工は,同日から原告と被告前田建設との協議に参加するようになり,以後は,被告前田建設を被告らの連絡窓口として合意書の案について協議した。(丙19,弁論の全趣旨)
オ 本件の原告訴訟代理人である横井紀彦弁護士(以下「横井弁護士」という。)は,平成27年3月25日,被告前田建設からの合意書の案に関し,平成24年の臨時総会において理事会に一任をする旨の決議がされていれば,理事会決議により合意書の締結が可能であると考えられること,本件業務報酬の免除については,債務免除とみなされて贈与税が課税されるリスクがあること,新協定合意書にかかる立替金額の確認及び立替金の処理を別途協議する旨の条項については特段問題がないことについて,意見を述べた(甲39,丙20の2)。
カ 原告の建替委員会は,平成27年3月30日に行った議事において,被告前田建設の離脱に関する合意書について,その案文の問題や合意書の作成時期について,被告長谷工との絡みがあって問題を生ずることもあり得ることから同月31日の合意は不可能であること等を議論した(甲43)。
キ 以上のような協議及び横井弁護士の意見を踏まえ,平成27年3月から同年4月にかけて,上記協議に基づいて,被告前田建設によって新設計契約合意書及び新協定合意書の案文が改訂,作成された。
新協定合意書では,最終的に,被告らが実施した立替金の合計額が合計8459万8000円であり,被告らがそれぞれ4229万9000円を立て替えていることの確認,本件業務報酬が新設計契約合意書において確認したとおり合計8000万円であり,被告らの分がそれぞれ4000万円であることの確認,原告と被告らがそれぞれ,上記立替金及び本件業務報酬の取扱いについて各々協議して定めるものとすることなどが内容とされた。
新設計契約合意書では,最終的に,本件業務報酬が8000万円であることの確認,同報酬の取扱いは,新協定合意書に従うことなどが内容とされた。
新協定合意書案及び新設計契約合意書は,空欄とされた日付欄を除いて,それぞれ甲第3号証及び甲第4号証と同内容であった。(甲37,38,丙20の1・2,23の1ないし25の2,27,証人F,証人H)
ク 新協定合意書及び新設計契約合意書の大まかな内容は,平成27年4月上旬頃には確定したものの,原告の通常総会後まで待つように原告は希望した(甲43,63,76,丙25の1・2,証人F)。
ケ 原告と被告長谷工は,甲第5号証の合意書案について,原告代理人の意見も聞くなどしながらその文言の詳細を詰める作業を行った(乙10ないし17の2)。
(10)  理事会による承認
ア 原告の理事会は,平成27年5月10日,建替委員会より,「平成27年度業務運営方針の審議及び決定」に関する「建替えによる団地再生について」,コンサルタント都市設計連合及び事業協力者被告前田建設からD理事長,I建替委員長宛てに本件事業に関する事業協力者を撤退するとの申出があったこと,建替委員会での協議の結果,撤退はやむを得ないとの結論になったこと,協定書の合意書,成果品を含めた金額等もあり,この件は別途協議するものとし撤退についての合意書を交わすものとすること,その他の事業協力者等とは協議を重ねて本件事業をスピード感をもって推進することなどを含む第4号議案を原告の通常総会の議案とすること,被告らとは立替金に関する協定書があり,現在,立替金の枠3億円のうち約1億8000万円を被告らが立て替えていることの報告を受け,同年6月6日,第4号議案を団地総会議案書に載せることを決議した。
そして,平成27年6月14日開催予定の原告の平成27年総会の議案書に,第4号議案が掲載された。
同議案書において,「審議及び承認の件」と銘打たれた第3号議案や第5号議案及び第6号議案並びに「管理規約及び細則の一部改正の件」と銘打たれた第8号議案には,審議の上,承認を求める旨の記載があるものの,「審議及び決定」と銘打たれた第4号議案及び第7議案には,審議の上,承認を求める旨の記載はない。
また,第4号議案の次頁に掲載された「建替委員会総会上申・承認・報告事項」との文書には,①旧再生推進委員会との引継ぎの件(報告事項)として,建替委員会が旧再生推進委員会からの引継ぎ会議を要請したが何らの回答がないこと,旧再生推進委員会と当時の理事会が交わした事業協力者等との契約書の詳細を調査している中で,原告に不利な契約が交わされていることが明らかになってきていること,②都市設計連合との契約解除,第三者機関に建替えの推進を補助してもらう件及び専門業者等に業務委託する際に予想される予算については「(承認事項)」であること,③被告前田建設との契約解除(上申事項)として,被告前田建設が契約の解除を申し出ており,その要請を受け入れることとしたこと,被告長谷工は全面的に今後の建替え事業に協力する意思を有していたことから,被告長谷工との間で新たに事業協力協定書を取り交わす予定であることなどが記載されていた。「建替委員会総会上申・承認・報告事項」において,項目に「(承認事項)」と記載のある事項については,承認を求める旨が記載されている一方で,項目に「(報告事項)」又は「(上申事項)」と記載のある事項には,承認を求める旨の記載はなく,「建築に関する事業協力者「前田建設」との契約解除(上申事項)」との記載のある項目にも,承認を求める旨の記載はない。(甲14,64,乙29の2・3,丙37の1・2,弁論の全趣旨)
イ Fは,平成27年3月頃から,被告前田建設に対して,業務報酬ないし立替金の一部の支払の必要性がある旨の発言をするようになったが,これに対して,Aは,特段異議を述べることはしていない(原告代表者)。
(11)  平成27年総会
平成27年6月14日に開催された平成27年総会の議事録には,第4号議案については,5項の夏祭りのみ採決され,その余の1ないし4項,6項及び7項は審議未了により廃案となった旨,審議されなかった議案については廃案となり,4号議案については新理事会で審議検討することが承認された旨が記載されている。
Dは,同日,任期満了により,理事長及び理事を退任した。
また,平成27年総会では,平成27年,28年度の新任役員の選任について,役員候補者全員が信任された。(甲14ないし16)
(12)  原告のDに対する理事会への出席要請
原告の管理事務所は,平成27年6月19日付けで,Dに対し,「理事会への出席要請の件」と題する書面を送付し,区分所有法49条7項の規定を引用して,次の理事(長)が就任するまで職務を行うことになっていると説明し,同月21日開催の理事会への出席要請をした(乙37,丙37の3,証人D,証人E)。
(13)  平成27年3書面の作成経緯
被告前田建設は,平成27年3書面を作成し,平成27年6月20日,原告の交渉窓口であったFの自宅に届け,これを受領したF及びDは,原告の事務所を訪れ,契約書に判子を押すためであるとE事務長に説明して,理事長印を借り出して,平成27年3書面に原告の理事長印を用いて押印し,被告長谷工に送付した(丙27,証人D,証人F,証人H,証人J,証人K,弁論の全趣旨)。
(14)  平成27年3書面の作成後
ア 原告では,平成27年総会後に初めて開かれた平成27年6月21日の理事会において,同総会で信任された役員候補者が理事としての初めての業務を行い,Aが理事長に選任されたが,この理事会では,特に平成27年3書面が作成されたことについては言及されなかった(甲34,証人D)。
イ 被告長谷工は,平成27年7月1日,Aに対して,平成27年3書面を送付した(甲36)。
ウ 横井弁護士は,原告に対し,平成27年3書面について,被告前田建設との業務報酬面での検討が未了の部分が残ったまま合意書の作成がされていることから,理事退任後であることや理事会の承認決議がないことなどの手続的な問題点を指摘して,被告らに破棄を依頼するよう助言した。この助言の際に,横井弁護士は,従来の理解では,平成24年臨時総会において理事会に一任をする旨の決議があったため,理事会決議により対応できるとの理解であったと思われるが,団地総会との関係で承認決議を得るなど,臨時総会に諮るべき必要性の有無について検討する必要があるとも助言した。
また,横井弁護士は,平成27年3書面の内容について,従来検討していた合意書案と同一であるものの,新設計契約合意書における業務報酬の取扱いについて,税金との関係で債務免除益が発生しかねない問題があり,この点の取扱いに関する協議が未了のままになってしまっていること,そのため,被告前田建設分の出来高報酬の金額の確認は問題ないとしても,これを被告長谷工が引き継がないのであれば,条項を追加する必要があることを指摘した。(乙28の1・3)
エ 被告前田建設は,平成27年7月,原告に対し,基本設計業務の成果品を送付したが,原告はその受領を拒否して,これを同月14日,被告前田建設に返送した(丙26,弁論の全趣旨)。
オ 原告は,平成27年7月17日,被告らに対して,平成27年3書面(被告前田建設に対しては,新設計契約合意書及び新協定合意書)の破棄を申し入れた(甲6の1・2)。
カ 平成27年10月18日に開催された臨時総会において,平成27年3書面への対応について質疑がされる中で,Gは,被告らとの契約においては,本建替え決議が成立しなければ費用が発生しないと理解していたがそれが平成27年3書面で変わったのかとの趣旨の住民からの質問に対し,変わったのではなく,もともと費用は発生することとなっていたという趣旨の回答をし,次いで別の質問に対し,費用は発生するが,建替え決議が不成立の場合には立替金を払わなくてよいという条項があること,ただし,建替え決議を法的に行って不成立の場合に限られ,今ここで建替えをやめたということでは建替え決議不成立とはならないとの趣旨の回答をした(甲17)。
2  争点1(原告の第1事件の各請求の訴えの利益の存否)について
(1)  平成27年3書面の証書真否確認請求について
ア 証書真否確認の訴えにおいて確認の利益があるというためには,原告の権利又は法的地位の危険若しくは不安を除去するのに,文書の真否の確定が必要かつ適切な手段であることを要し,書面の真否が確定されても,これによって当事者の権利関係ないし法律的地位の不安定を除去することができず,これを解消するためには更に進んで当該権利又は法律関係自体の確認を求める必要があるときには,即時確定の利益が否定される。
イ 平成27年3書面においては,本件立替金及び本件業務報酬の額について,それぞれ8459万8000円及び8000万円であることが確定されているところ,これらの取扱いについて,今後協議して定めるとされていることを踏まえても,一旦はそれらの額が確定されており,後述するとおり,協議が整わないときや本建替組合の設立が期待できない場合には原告はこれらの請求を直ちに受け得るのであるから,平成27年3書面の存在によって,原告には権利又は法的地位の危険若しくは不安があるといえる。
確かに,本件では平成27年3書面の成立が否認されても,原告と被告ら間の本件業務報酬債権や本件立替金債権については,平成24年に合意されたことに争いのない原契約が残り,紛争の抜本的解決にはならないものの,原契約の解除の有効性はさておき,上記各請求権の根拠,同請求権の請求原因事実や抗弁等も変わる結果を招来するため,平成27年3書面の真否の確認により少なくとも平成27年3書面に係る合意に基づく原告と被告らの権利関係ないし法律的地位は,本件業務報酬債権や本件立替金債権の存否を確定する上で重要な前提であり,平成27年3書面の真否を確定することが必要かつ適切な手段であると認められる。そして,平成27年3書面の真否が確定されれば原告の権利関係ないし法律的地位の不安定を解消することができるといえる。
したがって,平成27年3書面に基づく権利関係ないし法律的地位の不安定を解消するために,更に進んで当該権利又は法律関係自体の確認を求める必要があるとはいえないから,即時確定の利益は認められる。
また,新協定書は,本件事業に継続して参画する予定である被告長谷工と原告とが本件事業の継続を前提に結んだものであるところ,原契約には存在しなかった原告と被告長谷工との間を規律する条項があるほか,原協定書において定められていた被告長谷工の立替業務や事務局業務は被告長谷工の業務内容として規定されていない。そうすると,新協定書と原協定書が同一の内容のものであるとはいえず,新協定書によって原告に権利関係ないし法律的地位の不安を生じさせているといえるから,新協定書は,この観点からも,即時確定の利益は認められる。
(2)  原設計契約及び原覚書に係る合意の無効確認請求について
原設計契約及び原覚書に係る合意の無効確認請求は業務報酬支払債務の原因となり得る合意の無効を確認しようとするものにすぎず,端的に同合意書に基づく業務報酬支払債務の不存在を確認の対象とすればよいのであるから,合意書の無効について,確認の利益は認められない。
したがって,前記第1・1(4)の原設計契約及び原覚書に係る合意の無効の確認を求める訴えは訴訟要件を欠くものであり,同訴えに関する争点4について判断するまでもなく,却下を免れない。
3  争点2-1(平成27年3書面の作成時である平成27年6月20日時点でDに原告の代表権限があったか否か)について
(1)  前記前提事実(7)ア(イ)bのとおり,本件規約39条3項では,任期満了又は辞任によって退任する役員は,後任の役員が就任するまでの間,引き続きその職務を行うところ,前記認定事実(11)のとおり,Dは,平成27年6月14日に理事及び理事長を退任し,他方,新理事の就任決議がされた。
もっとも,同月21日に理事会が開催されるまでの間に,新理事に信任された者が理事への就任を承諾したことあるいは理事に就任したことを認めるに足る証拠はなく,平成27年3書面の押印がされた時点で,「後任の役員が就任」していたと認めることはできないから,Dは同時点でも引き続き理事長としての職務を行う権限を有していたということができる。
このことは,前記認定事実(12)及び(13)のとおり,原告の管理事務所がDに職務権限があることを前提に理事会への出席要請をしていること及び原告の事務局長であるE事務長が,Dから契約書の締結に必要だと聞かされながらも代表印を貸し出していることからも裏付けられる。
なお,証人E事務長は,Dから代表印の使途を何ら聞かされていなかったと証言するが,一方で,平成27年9月14日に行われた原告と被告らとの打合せにおいて,Dから契約書に判子を押すという理由とともにゴム印と理事長名の入った印鑑を貸すよう言われて貸したと述べており(丙27),上記証言と反する発言をしている部分が認められることに照らして同証言を信用することはできない。
(2)  原告は,新理事が平成27年総会に先立ち理事への就任を承諾していたと主張し,これにかかる承諾書又は立候補届(甲19ないし26)を提出する。しかし,前記前提事実(7)イのとおり,原告の役員候補選出細則3条3項及び5条1号では,役員候補を推薦する場合には本人の承諾を要するところ,承諾書はあくまで役員候補となることの承諾書にすぎず,立候補届もあくまで役員の候補となることの届け出にすぎないからこれをもって理事への就任の承諾であるとはいえないし,これらの承諾書等のうち複数の書証において年齢の記載が1ないし2歳多く誤って記載されているところ,当該書証の提出時期が平成28年4月8日であり,他方,当該書証の作成日付が平成27年4月頃であることに鑑みると,その後これらの年齢の記載が誤記である旨の上申書(甲50ないし52)が提出されていることを踏まえても,これらの証拠が本件訴訟中に日付を遡って作成された可能性も十分に考えられ,これらの書証の信用性には疑義があるから,にわかに信用することができないというべきである。
したがって,原告の上記主張は採用できない。
(3)  よって,平成27年3書面締結時点において,Dは理事長の職務を行う権限を有し,原告の代表権限を有していた。
4  争点3-1(平成27年3書面締結時までに原告からDに対してこれらの締結に必要な授権がされていたか否か)について
(1)  総会による一任
ア 前記認定事実(2)イのとおり,原告は,平成24年臨時総会において,ゼネコンの選定・追加の方法や協定の明細については理事会に一任することを承認していたところ,これによって,いかなるゼネコンを選定し,あるいは,追加するかの方法やゼネコンとの間でいかなる協定を締結するかといった専門的,技術的判断を理事会に委ねたものと解される。そして,そのような専門的,技術的判断は,団地総会の定めた方針に反しない限り,広範な裁量が与えられていると解されるから,一度契約したゼネコンの脱退に関してその契約関係の精算にかかる協定の判断についても理事会の合理的判断に委ねられていたと解される。
また,立替金額や業務報酬費用の出来高分について原告が将来的に支払義務を負うことは,原契約のときから想定されていたものであるといえるところ,平成27年3書面において,本件立替金額や本件業務報酬の額が確認されているものの,実際の支払方法等は別途協議することも合意されており,直ちに原告にこれらの支払を求めるものとはなっていないことからすれば,平成27年3書面の内容は,平成24年臨時総会において理事会に一任され,その後締結された原契約から逸脱するものであるとはいえず,これについて改めて団地総会による承認を要すると解することはできない。
さらに,前記前提事実(6)エのとおり,新協定書においては,原契約になかった原告の債務を基礎付ける条項が存在するものの,原告に過大な負担を課すものではないから,改めて団地総会による承認を要することとする合理性に乏しいものと言わざるを得ない。
したがって,平成27年3書面の締結についても,平成24年臨時総会により「団地総会から付託された事項」(本件規約57条7号)として,理事会の議決事項になっていたといえる。
イ このことは,前記認定事実(9)オのとおり,横井弁護士によって「平成24年の臨時総会において理事会に一任をする旨の決議がされていれば,理事会決議により合意書の締結が可能であると考えられる。」という平成24年臨時総会における決議内容についての見解が示されたのに対し,理事会及び建替委員会のメンバーからは,理事会に一任をする旨の決議は存在しなかったなどの指摘等があった事実は窺えないこと,前記認定事実(14)ウのとおり,平成27年3書面締結後の横井弁護士の「理事会決議により対応できるとの理解であった」,「理事退任後であることや理事会の承認決議がないことなどの手続的な問題点を指摘して,被告らに破棄を依頼する」などのアドバイスがあったこと,前記認定事実(10)アのとおり,本件議案の次頁に掲載された「建替委員会総会上申・承認・報告事項」との文書においても,項目に「(承認事項)」と記載のある事項については,承認を求める旨が記載されている一方で,項目に「(報告事項)」又は「(上申事項)」と記載のある事項には,承認を求める旨の記載はなく,総会の承認を求める事項とそうでない事項とが区別されていることが窺えるところ,本件議案のうち,都市設計連合との契約解除,第三者機関に建替えの推進を補助してもらう件及び専門業者等に業務委託する際に予想される予算については,団地総会の承認を要する事項だと解される反面,本件議案のうち被告前田建設との契約解除については,「上申事項」とされ,団地総会の承認が不要であり,報告に準じるものとして扱われていたと解されることからすれば,当時の理事会の認識も,本件議案のうち被告前田建設との契約解除が団地総会で承認を要するものであったという認識ではなかったといえる。
ウ 確かに,前記認定事実(9)アのとおり,被告前田建設としては平成27年2月の段階で脱退の希望を出していたところ,平成27年3書面の締結が平成27年総会直後であることから総会決議事項であったとも考え得るものの,本件議案が総会決議事項であるか否かについて,原告は顧問弁護士であった横井弁護士に確認しており,確定的な見解を持っていたわけではなく,実際にも総会への「上申事項」と扱われていたこと,被告らとの合意書の作成に当たって,贈与税の賦課を避けるために条項の文言の調整を要したこと,本件事業への関与の継続を望む被告長谷工との調整も必要であったことに照らせば,平成27年3書面の締結まで期間があったことが不合理であるとはいえない。
また,平成27年総会の議事録上,本件議案が廃案になったとの記載があるものの,そもそも報告事項又は上申事項については,団地総会において承認を求める対象ではないのであるから,本件議案が廃案になったとの記載についても,本件議案のうち団地総会で承認が必要とされる事項の限度で廃案になったと解するべきであり,上記議事録の記載から,本件議案のうち被告前田建設との契約解除について,総会決議事項であったということはできない。
エ さらに,前記前提事実(7)ア(オ)のとおり,本件規約51条2号では,収支予算及び事業計画に関する事項は団地総会の決議を経なければならないとされているものの,平成27年3書面では,原告が負う本件立替金債務及び本件業務報酬債務の取扱いについては,今後の協議に委ねることとされていたのであるから,直ちに予算を要するものではないし,同号の趣旨もあらゆる支出について逐一総会決議を要するとするものではなく,一定の支出が予定される予算及び事業計画について総会決議を要するとしたものであり,平成27年3書面において確認された本件立替金額及び本件業務報酬については,原契約に予定されていた支出を超えるものではなく,新たに予算等を組む必要のある合意であるとはいえないことからすれば,平成27年3書面の締結が,同号に当たるとして,総会決議事項であったということはできない。なお,事後的に協議が不成立になって直ちに支払を求められる可能性があることをもって,直ちに同号に当たるということもできない。
オ 以上のとおり,少なくとも本件議案のうち被告前田建設との契約解除は,総会決議事項ではなく,理事会決議で足りるものであったというべきである。
(2)  理事会による承認決議
ア 前記前提事実(7)ア(カ)のとおり,本件規約57条4号では,原告において,理事会は,団地総会の提出議案について決議をすることと定められているところ,前記認定事実(10)アのとおり,平成27年総会の議案には,被告前田建設から事業協力者を撤退するとの申出があり,撤退はやむを得ないとの判断をしたこと,協定書の合意書,成果品を含めた金額等もあり,別途協議するものとして撤退についての合意書を交わすものとすることを内容とする第4号議案が掲載されており,前記(1)のとおり,本件議案のうち被告前田建設との契約解除については,総会決議事項ではなく,「上申事項」とされていたことからすれば,理事会が本件議案を総会提出議案とすることは,建替委員会から上申されてきた本件議案のうち被告前田建設との契約解除について,理事会としてもこれを承認して,団地総会に上申することに外ならないから,総会提出議案とすることについて承認の決議があったという事実は,理事会が,少なくとも平成27年3書面の締結を内容とする本件議案のうち被告前田建設との契約解除の内容を承認したことを示すものといえる。
また,前記認定事実(9)のとおり,原告と被告らは,被告前田建設の脱退及び被告長谷工との新たな協定書に関して協議を重ね,平成27年3書面の案文も改訂を重ねて作成されていたこと,Aも平成27年3書面の案文の内容を前提に原告に一定の支払義務がある旨のFの発言に対して,理事会の場では異議を述べていないことからも,理事会が平成27年3書面の締結を内容とする本件議案のうち被告前田建設との契約解除について承諾していたといえる。
イ 原告は,理事会では案文が示されたことがないこと,理事会で承認されたことはないことを主張し,その証拠として理事らの陳述書(甲54)を提出し,原告代表者らも同旨の供述をする。しかし,同陳述書については理事全員の署名があるものではなく,原告内部での対立が窺える状況下でこれをにわかに信用することはできないし,原告代表者の供述についても自ら案文が示されないことがあることも認める趣旨の供述をしているから,にわかに信用することができない。
したがって,原告の上記主張は採用できない。
(3)  まとめ
したがって,原告において,平成27年3書面の締結に必要な内部の手続は履践されていたということができる。
以上のとおり,平成27年3書面は,いずれも有効に成立したというべきであるから,争点5及び7について判断するまでもなく,原告は,平成27年3書面に従った債務を負うというべきである。
これに対し,原告は,本件立替金債務の弁済期の未到来及び免除について主張するため,以下検討する。
5  争点6(立替金債務の弁済期の到来の有無(条件成就の有無を含む))について
(1)  新協定書第5条1項について
前記前提事実(6)エのとおり,新協定書第5条1項では,立替金は,本建替組合設立後,原告が資金調達をできた場合に,遅滞なく被告長谷工に返還する旨が,同条2項では,本建替え決議不成立の場合や9条に定める内容で新協定書を合意解除する場合は,被告長谷工が原告に対して立替金の返還を求めない旨が定められている。
新協定書第5条2項において,立替金の返還を求めない場合について規定されていること,立替金は本来的には,原告が払うべきものを被告らが代わりに支払っているものであり,相応の理由のない限り容易に免除されるような性質のものではないことからすれば,同条1項は,原告において建替え決議が成立するか,又は客観的に建替え決議が成立する見込みがなくなるまで,その支払期限を猶予したものであると解されるから,そのような不確定期限を定めたものであると解すべきである。
そして,前記前提事実(4)ア及び前記認定事実(5)に照らせば,本件事業はその中心的役割を担うべき都市設計連合が脱退し,本件デベロッパーとの協議も進展せず,かつ,原告内においても,本件事業について否定的な立場の区分所有者が増え,建替え決議の議決要件を満たす蓋然性が低くなっていることからすると,新協定書が規定する建替組合成立の見込みがなくなったといえる。
したがって,本件では,上記の不確定期限が到来したといえる。
(2)  成果品の引渡しと履行期限
原告は,建替組合が設立されるまでの時間的な前後関係からして,立替金の支払よりも成果品の交付が先に行われるべき関係にあること,原告と都市設計連合との間で代金支払義務と成果品引渡義務が同時履行の関係に立つところ,都市設計連合から成果品引渡義務が履行されていない以上,被告らに対する立替金支払債務についても,履行期が到来しないと主張する。
しかし,建替組合の設立に至るまでの流れを踏まえても,そもそも都市設計連合と被告らは別法人であり,立替金の返還義務と被告らによる原設計契約に関する成果品の納品とは同時履行の関係ないし成果品の納品が先履行の関係に立つものではないから,原告の上記主張は,採用できない。
(3)  協議の成立と履行期限
前記前提事実(6)ウのとおり,立替金の取扱いについては,原告と被告らで協議して定めることとなっているものの,これは,被告らが原告に対して立替金の返還請求権を有することを前提に,その支払額や方法等について協議して定めることとする条項にすぎないから,協議が成立しない限り被告らがこれを請求できないとする停止条件を定めたものではなく,協議の成立する見込みのないときには,その支払を求めることができる不確定期限を定めたものと解すべきである。
そして,前記前提事実(9)のとおり,原告は,被告らによる立替金の取扱いに関する協議の申入れに対し,第4回口頭弁論期日において,応じられない旨を述べたのであるから,上記不確定期限は到来したというべきである。
(4)  まとめ
よって,本件立替金請求権は,履行期限が到来したものである。
6  争点8(本件が「本建替え決議が不成立の場合」(原協定書6条2項)に当たるとして原告の被告長谷工に対する立替金返還債務が免除されるか否か)について
(1)  原告は,原協定書の定める「本建替え決議不成立の場合や9条に定める内容にて原協定書を合意解除する場合は,被告らは原告に対して立替金の返還を求めない」旨の条項に基づき,立替金の返還債務を負わない旨主張するが,新協定書に関して当該主張をするものではなく,被告長谷工の新協定書に基づく請求が認められる本件では,原告の当該主張は判断する必要がない。
また,被告前田建設は,新協定書の当事者ではないから,当該主張は被告前田建設との関係では判断する必要がない。
(2)ア  仮に,原告の主張が,原協定書の記載か新協定書の記載かにかかわらず,本件が,「本建替え決議が不成立の場合」に当たるため,被告長谷工に対する本件立替金債務が免除されるとの主張であると解される場合に,念のため判断をすると,前記認定事実(2)のとおり,原告は,ゼネコン選定の際に,計画が頓挫した場合にコンサルタントの経費の立替分について弁済を求めないことを一つの条件としていたことが窺えること,前記認定事実(9)のとおり,脱退に向けた協議の中で被告前田建設は,原協定書どおり立替金の支払を求めるつもりはないと述べており,原協定書ではそのような趣旨であったことが窺え,原協定書と同様の文言をとる新協定書の条項も同趣旨であることが窺えることからすると,建替え決議の上程もされていない本件においても,「本建替え決議が不成立の場合」に当たるといえるとも考えられる。
イ  しかし,前者の事情については,計画の頓挫の理由いかんを問わず免除することを想定して事前の交渉がされていたかは明確ではないところ,むしろ,やむを得ない事由により建替えができなかった場合を想定していたことが窺えること(乙20の3),後者の事情については,前記認定事実(9)イのとおり,被告前田建設は,本件事業からの脱退を優先事項としており,その中での円満な脱退のための交渉中での発言にすぎないことを踏まえれば,これをもって,本件のような場合においても「本建替え決議が不成立の場合」に当たることが想定されていたということはできない。
ウ  そして,前記前提事実(6)エのとおり,新協定書においては,建替え決議不成立の場合ややむを得ない事由により合意解除する場合に立替金の返還を求めないと定められ,建替え決議不成立とやむを得ない事由による合意解除とが並置されているところ,立替金の性質からして本来は,原告が負担するものを被告らが代わりに支払っているものであるから,社会通念に照らしてその支払義務を免除する合意をするに当たっては,それぞれ経済的合理性のあるそれ相応の根拠がある事由を想定していると解するのが相当である。例えば,立替金の返還を免除することが営業の必要性の観点から一応の根拠が認められる場合は想定されるものの,本件のように工事費の増大に伴う還元率の低下によって,原告内で対立が先鋭化して,建設的な協議を行うことができないまま,建替え決議上程もされていない場合においても,免除することが想定されていたとは言い難いし,建替え決議の上程もされていない本件にも適用があるとすると,建替え決議が延期されている状態との区別がつかないから,建替え決議が上程され否決された場合と上程されてすらいない場合とは明確に区別して合意されていたと認められる。
したがって,本件は,「本建替え決議が不成立の場合」に当たるとはいえない。
7  争点9(原協定が合意解除されたことを理由に原告の被告前田建設に対する立替金返還債務が免除されるか否か)について
原告は,新設計契約合意書及び新協定合意書が有効であるとしても,これらによる解除は原協定9条1項の規定を受けた合意解除であることから,原告と被告前田建設との間で別途協議が成立していない以上,原協定書6条2項により,被告前田建設は,本件立替金の返還を求めることはできないと主張する。
しかし,そもそも原協定書6条2項は,合意解除の場合において,被告前田建設が当然に本件立替金の返還を求めないことまでを合意したものであるとは解されず,原告と被告前田建設は,前記前提事実(6)イ及びウのとおり,新設計契約合意書及び新協定合意書によって,原協定を合意解除した上で,本件立替金の額を合意により確定させて,その取扱いを協議して定めることを合意し,その余の原告と被告前田建設との間に債権債務が存在しないことを確認していることからすれば,本件立替金を被告前田建設が原告に請求する余地を残していることが明らかであり,これに反する内容である原協定6条2項に係る本件立替金の返還を求めない旨の合意があったとはいえない。
したがって,原告と被告前田建設との協議の成立の有無にかかわらず,新設計契約合意書及び新協定合意書が成立した以上,原協定書6条2項が適用され被告前田建設が本件立替金の返還を求めることができなくなったとはいえず,原告の上記主張は採用できない。
第4  結論
以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,原告の原設計契約書及び原覚書に係る合意の無効確認の訴えは訴訟要件を欠き却下を免れず,その余の原告の請求はいずれも理由がなく,他方,被告らの請求はいずれも理由が認められるから,原告の原設計契約書及び原覚書に係る合意の無効確認請求を却下してその余の請求をいずれも棄却し,被告らの請求をいずれも認容することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第5部
(裁判長裁判官 吉村真幸 裁判官 五島真希 裁判官 野田翼)

 

〈以下省略〉

「選挙 立候補」に関する裁判例一覧
(1)令和元年10月 8日  神戸地裁  平29(ワ)1051号 損害賠償請求事件
(2)令和元年 9月 6日  大阪地裁  令元(わ)2059号 公職選挙法違反被告事件
(3)令和元年 6月25日  東京地裁  平26(行ウ)615号 損害賠償等請求事件
(4)令和元年 5月24日  東京地裁  平28(ワ)17007号 選挙供託金制度違憲国家賠償請求事件
(5)平成31年 4月26日  大阪高裁  平30(行ケ)1号 裁決取消請求事件
(6)平成31年 4月25日  東京高裁  平30(ネ)4794号 総会決議無効確認等請求控訴事件
(7)平成31年 4月12日  大阪地裁  平29(ワ)7325号 賃金等請求事件
(8)平成31年 4月 9日  甲府地裁  平27(行ウ)6号 違法公金支出金返還等請求事件
(9)平成31年 3月20日  水戸地裁 平29(わ)655号
(10)平成31年 3月 7日  知財高裁  平30(行ケ)10141号 審決取消請求事件
(11)平成31年 3月 5日  東京高裁  平30(う)1422号 政治資金規正法違反被告事件
(12)平成31年 3月 5日  東京地裁  平29(ワ)18277号 謝罪広告等請求事件
(13)平成31年 1月17日  盛岡地裁  平30(行ウ)8号 旧庁舎解体等公金支出等差止請求事件
(14)平成31年 1月15日  名古屋地裁  平28(ワ)3178号・平28(ワ)3179号 損害賠償請求事件
(15)平成30年11月29日  東京地裁  平29(行ウ)149号・平29(行ウ)375号 不当労働行為再審査申立棄却命令取消事件
(16)平成30年11月22日  東京地裁  平30(ワ)16336号 損害賠償等請求事件
(17)平成30年11月22日  東京地裁  平28(ワ)31683号 損害賠償請求事件
(18)平成30年10月31日  東京地裁  平27(ワ)18282号 損害賠償請求事件
(19)平成30年10月24日  仙台高裁  平29(行コ)26号 政務調査費返還履行等請求控訴事件
(20)平成30年10月11日  東京高裁  平30(う)441号 政治資金規正法違反被告事件
(21)平成30年10月 5日  東京地裁  平27(ワ)36817号・平28(ワ)18096号 損害賠償請求事件、損害賠償等請求事件
(22)平成30年10月 4日  東京地裁  平27(ワ)2650号 代表権不存在確認等請求事件
(23)平成30年 9月28日  東京地裁  平26(ワ)10773号・平29(ワ)3602号 損害賠償請求事件(本訴)、損害賠償請求反訴事件(反訴)
(24)平成30年 9月28日  東京地裁  平28(ワ)23496号 損害賠償請求事件
(25)平成30年 9月27日  大阪高裁  平29(行コ)173号 高等学校等就学支援金支給校指定義務付等請求控訴事件
(26)平成30年 9月27日  東京地裁  平28(ワ)36676号 総会決議無効確認等請求事件
(27)平成30年 9月19日  東京高裁  平30(ネ)2451号 社員総会決議不存在確認等,代議員選挙無効確認等請求控訴事件
(28)平成30年 8月30日  東京高裁  平30(行コ)111号 労働委員会救済命令取消請求控訴事件
(29)平成30年 8月28日  東京地裁  平28(行ウ)281号 政務活動費返還請求事件
(30)平成30年 7月25日  東京高裁  平30(行ケ)8号 裁決取消請求事件
(31)平成30年 7月20日  福岡地裁久留米支部  平28(ワ)69号 損害賠償請求事件
(32)平成30年 6月27日  東京地裁  平27(特わ)2148号 各政治資金規正法違反被告事件
(33)平成30年 5月24日  東京高裁  平30(行ケ)4号 選挙無効及び当選無効請求事件
(34)平成30年 4月25日  東京地裁  平28(ワ)31号・平28(ワ)37044号・平28(ワ)37820号 証書真否確認、立替金等返還債務不存在確認等請求事件、立替金返還請求反訴事件、立替金請求反訴事件
(35)平成30年 4月20日  高松高裁  平29(行コ)21号 権利変換計画不認可処分取消等請求控訴事件
(36)平成30年 4月18日  東京高裁  平29(行コ)302号 埼玉県議会政務調査費返還請求控訴事件
(37)平成30年 3月30日  東京地裁  平27(ワ)37147号 損害賠償請求事件
(38)平成30年 3月26日  東京地裁  平28(ワ)31536号・平28(ワ)44146号 社員総会決議不存在確認等請求事件、代議員選挙無効確認等請求事件
(39)平成30年 3月19日  東京地裁  平28(ワ)1085号 損害賠償等請求事件
(40)平成30年 3月13日  東京高裁  平29(う)1154号 公職選挙法違反被告事件
(41)平成30年 3月 8日  東京地裁  平29(ワ)30031号 損害賠償及び慰謝料請求事件
(42)平成30年 2月21日  東京地裁  平28(行ウ)6号 労働委員会救済命令取消請求事件
(43)平成30年 2月13日  東京地裁  平29(行ウ)45号 非常勤職員報酬返還請求事件
(44)平成30年 2月 6日  東京高裁  平29(行ケ)35号
(45)平成30年 2月 6日  東京地裁  平27(ワ)35223号 仮払金精算請求事件
(46)平成30年 1月22日  東京地裁  平27(特わ)2148号 政治資金規正法違反被告事件
(47)平成30年 1月18日  東京高裁  平29(行ケ)27号・平29(行ケ)28号 裁決取消請求事件
(48)平成29年12月21日  東京地裁  平29(ワ)24097号 損害賠償等請求事件
(49)平成29年12月19日  最高裁第三小法廷  平29(行フ)3号 執行停止決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
(50)平成29年12月19日  千葉地裁  平28(行ウ)5号 農業委員会会長解任無効確認請求事件
(51)平成29年12月15日  福岡地裁  平26(わ)1284号・平27(わ)231号・平27(わ)918号 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
(52)平成29年12月 8日  札幌地裁  平24(行ウ)3号 政務調査費返還履行請求事件
(53)平成29年11月16日  東京地裁  平28(ワ)6761号 懲戒処分無効確認等請求事件
(54)平成29年11月 2日  東京地裁  平28(ワ)32978号 損害賠償請求事件
(55)平成29年11月 2日  仙台地裁  平26(行ウ)2号 政務調査費返還履行等請求事件
(56)平成29年10月11日  東京高裁  平28(ネ)5794号 理事長及び理事の地位確認等請求控訴事件
(57)平成29年10月11日  東京地裁  平28(ワ)38184号 損害賠償請求事件
(58)平成29年10月11日  神戸地裁  平28(行ウ)49号 退職手当金不支給処分取消請求事件
(59)平成29年10月 2日  東京地裁  平29(ワ)21232号 発信者情報開示請求事件
(60)平成29年 9月28日  東京地裁  平26(行ウ)229号 難民不認定処分取消請求事件
(61)平成29年 9月26日  東京地裁  平28(ワ)18742号 損害賠償請求事件
(62)平成29年 9月25日  東京地裁  平27(行ウ)331号・平28(行ウ)526号 観察処分期間更新決定取消請求事件、訴えの追加的変更申立て事件
(63)平成29年 9月25日  東京地裁  平27(行ウ)444号 観察処分期間更新処分取消請求事件
(64)平成29年 9月20日  徳島地裁  平28(行ウ)9号 権利変換計画不認可処分取消等請求事件
(65)平成29年 9月 8日  東京地裁  平28(行ウ)117号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(66)平成29年 9月 1日  青森地裁  平29(わ)55号・平29(わ)67号・平29(わ)71号 公職選挙法違反被告事件
(67)平成29年 8月25日  東京地裁  平27(行ウ)732号 難民不認定処分等取消請求事件
(68)平成29年 8月25日  青森地裁  平28(ワ)143号 損害賠償請求事件
(69)平成29年 7月25日  青森地裁  平29(わ)48号・平29(わ)56号・平29(わ)66号・平29(わ)70号 公職選挙法違反被告事件
(70)平成29年 7月24日  東京地裁  平28(特わ)807号 公職選挙法違反被告事件
(71)平成29年 7月12日  広島高裁松江支部  平28(行コ)4号 市庁舎建築に関する公金支出等差止請求控訴事件
(72)平成29年 6月27日  東京地裁  平28(ワ)26217号 損害賠償請求事件
(73)平成29年 5月22日  東京地裁  平28(特わ)807号 公職選挙法違反被告事件
(74)平成29年 5月18日  東京高裁  平28(う)1194号 公職選挙法違反被告事件
(75)平成29年 5月 9日  東京地裁  平28(ワ)36100号 決議無効確認請求事件
(76)平成29年 4月13日  東京地裁  平27(行ウ)480号 退去強制令書発付処分等取消請求事件
(77)平成29年 4月11日  東京地裁  平26(ワ)10342号 損害賠償請求事件
(78)平成29年 4月 7日  東京地裁  平26(ワ)27864号 土地建物所有権移転登記抹消登記手続等請求事件
(79)平成29年 3月29日  東京地裁  平28(ワ)4513号・平28(ワ)28465号 マンション管理組合法人総会決議無効確認請求事件、反訴請求事件
(80)平成29年 3月28日  東京地裁  平25(ワ)28292号 謝罪広告等請求事件
(81)平成29年 3月28日  仙台地裁  平28(ワ)254号 損害賠償請求事件
(82)平成29年 3月24日  東京地裁  平26(ワ)30381号 損害賠償請求事件
(83)平成29年 3月15日  東京地裁  平27(行ウ)403号 地位確認等請求事件
(84)平成29年 3月 8日  東京地裁  平26(行ウ)300号 地位確認等請求事件
(85)平成29年 2月 9日  静岡地裁  平28(ワ)409号 損害賠償請求事件
(86)平成29年 2月 2日  東京地裁  平26(ワ)25493号・平27(ワ)20403号 株式代金等請求事件(本訴)、損害賠償請求反訴事件(反訴)
(87)平成29年 2月 1日  仙台地裁  平26(行ウ)31号 海外視察費返還履行請求事件
(88)平成29年 1月31日  大阪高裁  平28(ネ)1109号 損害賠償等請求控訴事件
(89)平成29年 1月31日  高松高裁  平28(行コ)23号 資格決定処分取消請求控訴事件
(90)平成29年 1月31日  東京地裁  平27(行ウ)360号 難民の認定をしない処分等取消請求事件
(91)平成29年 1月31日  神戸地裁豊岡支部  平28(わ)63号
(92)平成29年 1月17日  静岡地裁  平28(わ)407号 公職選挙法違反被告事件
(93)平成28年11月28日  名古屋高裁  平27(う)131号 受託収賄、事前収賄、公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律違反被告事件
(94)平成28年11月21日  東京地裁立川支部  平27(ワ)2775号 理事長及び理事の地位確認等請求事件
(95)平成28年11月18日  東京地裁  平28(特わ)1764号 公職選挙法違反被告事件
(96)平成28年11月16日  大阪高裁  平27(ネ)3176号 損害賠償請求控訴事件
(97)平成28年11月15日  東京高裁  平28(行ケ)16号 選挙無効請求事件
(98)平成28年11月10日  東京高裁  平28(行ケ)17号 選挙無効請求事件
(99)平成28年11月 9日  東京地裁  平27(ワ)1724号 損害賠償等請求事件
(100)平成28年10月31日  東京地裁  平28(特わ)1764号 公職選挙法違反被告事件


■選挙の種類一覧
選挙①【衆議院議員総選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙②【参議院議員通常選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙③【一般選挙(地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙④【特別選挙(国政選挙|地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)


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①選挙立候補(予定)者専門のポスター掲示依頼(お願い)は、選挙ドットウィン!
②選挙立候補(予定)者専門のビラ・チラシ設置依頼(お願い)は、選挙ドットウィン!


(1)政治活動/選挙運動ポスター貼り ☆祝!勝つ!広報活動・事前街頭(単独/二連)選挙ポスター!
勝つ!選挙広報支援事前ポスター 政治選挙新規掲示ポスター貼付! 1枚から貼る事前選挙ポスター!
「政治活動・選挙運動ポスターを貼りたい!」という選挙立候補(予定)者のための、選挙広報支援プロ集団「選挙.WIN!」の事前街頭ポスター新規掲示プランです。

(2)圧倒的に政界No.1を誇る実績! 政治ポスター(演説会告知|政党|個人|二連三連)掲示交渉実績!
地獄のポスター貼りやります! ドブ板選挙ポスタリストが貼る! ポスター掲示交渉実績を大公開!
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(3)今すぐ無料でお見積りのご相談 ☆大至急スピード無料見積もり!選挙広報支援プランご提案
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(5)選べるドブ板選挙広報支援一覧 選挙.WIN!豊富な選挙立候補(予定)者広報支援プラン一覧!
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アポイントメント獲得代行/後援会イベントセミナー集客代行/組織構築支援/党員募集獲得代行(所属党本部要請案件)/演説コンサルティング/候補者ブランディング/敵対陣営/ネガティブキャンペーン(対策/対応)

(6)握手代行/戸別訪問/ご挨拶回り 御用聞きによる戸別訪問型ご挨拶回り代行をいたします!
ポスター掲示交渉×戸別訪問ご挨拶 100%のリーチ率で攻める御用聞き 1軒でも行くご挨拶訪問交渉支援
ご指定の地域(ターゲットエリア)の個人宅(有権者)を1軒1軒ご訪問し、ビラ・チラシの配布およびアンケート解答用紙の配布収集等の戸別訪問型ポスター新規掲示依頼プランです。

(7)地域密着型ポスターPR広告貼り 地域密着型ポスターPR広告(街頭外壁掲示許可交渉代行)
街頭外壁掲示許可交渉代行/全業種 期間限定!貴社(貴店)ポスター貼り サイズ/枚数/全国エリア対応可能!
【対応可能な業種リスト|名称一覧】地域密着型ポスターPR広告(街頭外壁掲示許可交渉代行)貼り「ガンガン注目される訴求型PRポスターを貼りたい!」街頭外壁掲示ポスター新規掲示プランです。

(8)貼る専門!ポスター新規掲示! ☆貼!勝つ!広報活動・事前街頭(単独/二連)選挙ポスター!
政治活動/選挙運動ポスター貼り 勝つ!選挙広報支援事前ポスター 1枚から貼る事前選挙ポスター!
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(9)選挙立札看板設置/証票申請代行 絶対ここに設置したい!選挙立札看板(選挙事務所/後援会連絡所)
選挙事務所/後援会連絡所届出代行 公職選挙法の上限/立て札看板設置 1台から可能な選挙立札看板設置
最強の立札看板設置代行/広報(公報)支援/選挙立候補者後援会立札看板/選挙立候補者連絡所立札看板/政治活動用事務所に掲示する立て札・看板/証票申請代行/ガンガン独占設置!


政治活動用事前街頭ポスター新規掲示交渉実績一覧
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【政治活動用(事前街頭外壁)ポスター掲示交渉代行】選挙候補(予定)者様専用フォーム
選挙ドットウィン!の政治活動用の事前街頭ポスター新規掲示交渉につきまして概算お見積りをさせていただいております。
掲示交渉難易度調査のため、候補(予定)者様の出馬される「政党」「選挙区」「政策」「弁士のお相手(2連ポスター)」「サイズ」「枚数」等の必要事項をご記入の上、お問い合わせください。 【お問い合わせフォームはコチラ!】
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①指定エリアの有権者(民家・飲食店・その他の施設など)に対して、新規ご挨拶回り→→→完全無料
②選挙立候補(予定)者の名刺およびビラの手渡し→→→完全無料
③留守宅への名刺およびビラなどの投函(想定ターゲットに完全100パーセントのリーチ率!)→→→完全無料
④政治活動用事前街頭ポスターの新規掲示交渉→→→ポスター掲示(貼付)許可交渉は、完全成果報酬|完全成功報酬
⑤掲示(貼付)交渉後における、掲示許可承諾者に対してのフォローおよびクレーム対応→→→完全無料
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【政治活動用】事前街頭ポスター新規掲示に関するお問い合わせ
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