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「選挙 立候補 ポスター」に関する裁判例(63)平成29年 9月25日  東京地裁  平27(行ウ)444号 観察処分期間更新処分取消請求事件

「選挙 立候補 ポスター」に関する裁判例(63)平成29年 9月25日  東京地裁  平27(行ウ)444号 観察処分期間更新処分取消請求事件

裁判年月日  平成29年 9月25日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(行ウ)444号
事件名  観察処分期間更新処分取消請求事件
文献番号  2017WLJPCA09258004

出典
裁判所ウェブサイト

評釈
田近肇・法セ増(新判例解説Watch) 23号15頁

裁判年月日  平成29年 9月25日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(行ウ)444号
事件名  観察処分期間更新処分取消請求事件
文献番号  2017WLJPCA09258004

埼玉県越谷市〈以下省略〉
原告 X教
同代表者運営委員会共同幹事 A1
同 A2
同訴訟代理人弁護士 別紙1代理人目録のとおり
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 国
同代表者法務大臣 B
処分行政庁 公安審査委員会
同代表者委員長 C
同指定代理人 別紙1代理人目録のとおり

 

 

主文

1  処分行政庁が,平成27年1月23日付けで,D1ことDを教祖・創始者とするa教の教義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体に対してした,別紙2決定目録記載の決定のうち,b教(主たる事務所の所在地:東京都世田谷区〈以下省略〉「cマンション」201号室,代表役員:E)を対象とした部分を取り消す。
2  原告のその余の請求を棄却する。
3  訴訟費用は,これを4分し,その3を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。

 

事実及び理由

第1章  事案の概要等
第1  請求
処分行政庁が,原告に対し平成27年1月23日付けでした別紙2決定目録記載の決定を取り消す。
第2  事案の概要
本件は,原告が,処分行政庁(以下「公安審」ということがある。)が,無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(以下「団体規制法」という。)5条4項及び5項に基づき,「D1ことD(以下「D」という。)を教祖・創始者とするa教の教義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体」(以下「本団体」という。)に対してした,公安調査庁長官の観察に付する処分の期間更新等に係る決定の取消しを求める事案である。
1  関係法令の定め
本件に関係する団体規制法,無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律施行令(以下「施行令」という。),同法律施行規則(以下「施行規則」という。)及び同法律の規定に基づく規制措置の手続等に関する規則(以下「手続規則」という。)の定めは,別紙3「関係法令の定め」に記載のとおりである(なお,同別紙において定義した略語は,本文においても用いることとする。)。
2  前提事実(証拠等を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)
(1) 当事者等
ア 昭和59年2月頃,Dを教祖・創始者として,「a1会」が活動を開始し,昭和62年7月頃,「a教」にその名称を変更し,Dの説くa教の教義を広め,これを実現することを目的として活動が続けられ,平成元年8月25日,東京都知事から宗教法人法に基づく規則の認証を受けて,同月29日,宗教法人「a教」(代表役員「D」)の設立の登記がされた。
イ a教の構成員は,平成6年6月27日,長野県松本市内で,サリンを散布し,8名を殺害するとともに,143名にサリン中毒症の傷害を負わせる事件(以下「松本サリン事件」という。)を敢行した(乙B1の2,3の3,E5,11)。
a教の構成員は,平成7年3月20日,東京都内を走行中の地下鉄電車5本内でサリンを散布し,12名を殺害するとともに,3000名を超える者にサリン中毒症の傷害を負わせる事件(以下「地下鉄サリン事件」といい,松本サリン事件と併せて「両サリン事件」という。)を敢行した(乙E5,11)。
ウ a教は,平成7年12月19日,宗教法人法に基づく解散命令が確定し,その清算手続中の平成8年3月28日,破産宣告がされた。
公安調査庁長官は,同年7月11日,処分行政庁に対し,a教について破防法7条の解散指定処分の請求(以下「解散指定請求」という。)をしたが,処分行政庁は,平成9年1月31日,同請求を棄却する旨の決定をした。
エ 平成12年2月4日,原告が「宗教団体・d教」として正式に発足された旨及びA3(以下「A3」という。)がその代表者に就任した旨公表された。
原告は,平成15年2月6日には,その名称を「宗教団体d1教」に変更し,さらに,平成20年5月20日には,その名称を「X教」に変更した。
E(以下「E」という。)は,平成19年5月7日,「b教」の設立を発表した。
(2) 観察処分及びその期間更新決定の経緯
ア 公安調査庁長官は,平成11年12月27日,処分行政庁に対し,別紙2決定目録記載1(1)の被請求団体につき,団体規制法5条の観察処分の請求をし,処分行政庁は,平成12年1月28日,本団体を,3年間,公安調査庁長官の観察に付するとともに,団体規制法5条2項5号及び3項6号に規定する「公安審査委員会が特に必要と認める事項」として,下記(ア)及び(イ)の事項を公安調査庁長官に報告しなければならないとする旨の決定(以下,この決定を「本件観察処分」という。)をし,同月31日,本団体の代理人にその旨通知し,同年2月1日,官報に公示した(乙A9)。
(ア) 被請求団体の構成員に関する出家信徒及び在家信徒の別並びに出家信徒の位階
(イ) 被請求団体作成のインターネット上のホームページに係る接続業者名,契約名義人の氏名及び掲載の管理・運営責任者の氏名
イ 処分行政庁は,平成15年1月23日,本団体に対する観察処分の期間を,3年間,更新する旨決定(以下,この決定を「第1回更新決定」という。)し,原告の代理人にその旨通知し,同月29日,官報に公示した。なお,同決定においては,団体規制法5条5項において準用する同条3項6号に規定する「公安審査委員会が特に必要と認める事項」として,上記ア(ア)及び(イ)の事項を公安調査庁長官に報告しなければならないものとされた(乙A11)。
ウ 処分行政庁は,平成18年1月23日,本団体に対する観察処分の期間を,3年間,更新する旨決定(以下,この決定を「第2回更新決定」という。)し,原告の代理人にその旨通知し,同月30日,官報に公示した。同決定においては,団体規制法5条5項において準用する同条3項6号に規定する「公安審査委員会が特に必要と認める事項」として,上記ア(ア)及び(イ)に加え,次の事項を公安調査庁長官に報告しなければならないものとされた(乙A13)。
被請求団体(その支部,分会その他の下部組織を含む。以下,この項において同じ。)の営む収益事業(いかなる名義をもってするかを問わず,実質的に被請求団体が経営しているものをいう。)の種類及び概要,事業所の名称及びその所在地,当該事業の責任者及び従事する構成員の氏名並びに各事業に関する会計帳簿を備え置いている場所(その会計帳簿が電磁的記録で作成されている場合には,当該電磁的記録媒体の保管場所)
エ 処分行政庁は,平成21年1月23日,本団体に対する観察処分の期間を,3年間,更新する旨決定(以下,この決定を「第3回更新決定」という。)し,原告の代理人にその旨通知し,同月30日,官報に公示した。なお,同決定においては,団体規制法5条5項において準用する同条3項6号に規定する「公安審査委員会が特に必要と認める事項」として,第2回更新決定と同様の事項を公安調査庁長官に報告しなければならないものとされた(乙A15)。
同決定の決定書において,被請求団体の表示欄には「主たる事務所の所在地」として,① 埼玉県越谷市〈以下省略〉「eマンション」101号室,② 東京都世田谷区〈以下省略〉「cマンション」1階が表示され,「主幹者」としてA1,A4及びEの3名が表示されている(なお,本件観察処分,第1回更新決定及び第2回更新決定の各決定書においては,「主たる事務所の所在地」として1つの所在地のみが表示され,「主幹者」として1名の氏名のみが表示されている。乙A9,11,13,15)。
オ 処分行政庁は,平成24年1月23日,本団体に対する観察処分の期間を,3年間,更新する旨決定(以下,この決定を「第4回更新決定」という。)し,原告の代理人にその旨通知し,同月30日,官報に公示した。なお,同決定においては,団体規制法5条5項において準用する同条3項6号に規定する「公安審査委員会が特に必要と認める事項」として,第2回更新決定と同様の事項を公安調査庁長官に報告しなければならないものとされた(乙A17)。
同決定の決定書において,被請求団体の表示欄には「主たる事務所の所在地」として,① 埼玉県越谷市〈以下省略〉「eマンション」101号室,② 東京都世田谷区〈以下省略〉「cマンション」201号室が表示され,「主幹者」としてA5,A6及びEの3名が表示されている(乙A17)。
カ 処分行政庁は,平成27年1月23日,本団体に対する観察処分の期間を,3年間,更新する旨決定(別紙2決定目録記載の決定。以下,この決定を「本件更新決定」という。)し,原告の代理人にその旨通知し,同月30日,官報に公示した。なお,本件更新決定においては,団体規制法5条5項において準用する同条3項6号に規定する「公安審査委員会が特に必要と認める事項」として,第2回更新決定と同様の事項を公安調査庁長官に報告しなければならないものとされた。
同決定の決定書において,被請求団体の表示欄には「主たる事務所の所在地」として第4回更新決定と同様の表示がされ,「主幹者」としてA7,A8及びEの3名が表示されている(乙A5)。
キ 原告は,平成27年7月22日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。
第3  争点
1  団体規制法の合憲性
(1) 団体規制法が立法事実を欠くものとして違憲か。【争点1】
(2) 団体規制法が特定の団体のみを対象とした処分的法律であるとして,平等原則に違反し違憲か。団体規制法を合憲とするには,無差別大量殺人行為がされる現実的な危険性があり,同法の適用により侵害される基本的人権よりも保全される保護法益の方が優越することを要し,同法がこれらを満たさないものとして違憲か。【争点2】
(3) 団体規制法5条3項1号が対象団体の構成員の信仰を告白させられない自由を侵害し違憲か。団体規制法が憲法20条及び市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下「B規約」という。)18条に反するか。【争点3】
(4) 団体規制法が憲法13条及びB規約17条に反するか。【争点4】
(5) 行政機関である公安審が観察処分等を行うことが憲法31条に反するか。団体規制法が定める意見聴取手続が不十分であるとしてこれが憲法31条に反するか。団体規制法5条1項2号の「構成員」という文言が過度に広汎であり,同号が憲法31条に反するか。【争点5】
(6) 団体規制法7条2項又は14条2項所定の検査(以下「立入検査」という。)が,裁判官による司法審査を経ず,また,公安審の事前審査も経ないために,団体規制法が憲法35条に反するか。【争点6】
2  本件更新決定の適法性
(1) 本団体が団体規制法4条2項の「団体」に当たるか。原告を含む本件更新決定の対象団体が本件観察処分を受けた団体と同一か。【争点7】
(2) Dが,両サリン事件の首謀者であり,本件更新決定時も本団体の活動に影響力を有しているか(団体規制法5条1項1号該当性)。【争点8】
(3) A9(以下「A9」という。)が本団体の構成員であるか(団体規制法5条1項2号該当性)。Eが本団体の役員であるか(団体規制法5条1項3号該当性)。【争点9】
(4) 本団体が殺人を暗示的に勧める綱領を保持しているか(団体規制法5条1項4号該当性)。【争点10】
(5) 本団体に,無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があるか(団体規制法5条1項5号該当性)。【争点11】
(6) 本団体に,引き続き活動状況を継続して明らかにする必要があるか(団体規制法5条4項該当性。)【争点12】
第2章  当事者の主張
第1  争点1(団体規制法の立法事実の存否)について
【原告の主張】
1 団体規制法は,破防法2条,3条にそれぞれ対応する団体規制法2条,3条の規定からも,基本的人権を著しく制約する性格の法律であるところ,観察処分等については,① 役職員の氏名,住所,役職名のみならず構成員全員の氏名,住所の報告,② 団体の所有・管理する資産又は使用に供されているあらゆる資産の報告(その方法として土地についてはその具体的使用状況を含めて,建物については各部屋ごとに具体的な使用状況を含めかつ平面図を添付しての報告),③ 貸付金については貸付先,貸付残高,弁済期日,担保権の有無の報告,借入金についても同様の報告,④ 預貯金・有価証券の種類銘柄などあらゆる財産の報告,⑤ 本部,支部分会に至るまでの会議及び意思決定の内容の報告,⑥ 機関誌紙の名称,発行部数,編集人,発行人の氏名の報告,⑦ 公安調査官による土地建物への立入り,設備・帳簿書類その他必要な物件の検査,警察職員による同様の立入検査(検査妨害,検査忌避等の罰則や現行犯逮捕を可能とする旨の規定もされている。),⑧ これらの結果得た情報は,都道府県知事,市町村長の請求により提供され,一般市民も知る機会を得ることなどの規制があり,また,再発防止処分は,不動産の新規取得の禁止,既存施設の使用禁止,布教,寄付の受付の禁止処分及び幹部の活動全般の禁止など,観察処分等以上に更に厳しい規制がかけられており,破防法が規定する解散処分に匹敵する厳しい効果を持つ処分が規定されている。
2 団体規制法は,制定の過程において,地域住民の不安感が高まったため,これを解消することを目的として立法されたと説明されたが,漠然として実体を伴わない住民の不安解消のために,上記1のような人権制約立法ができるかは根本的な法律上の問題がある(現在においては,住民は,もはや不安を感じるどころか無関心であって,立法の必要性が失われている。)。立法の必要性があるというためには,同法制定時のa教が組織として無差別大量殺人行為に及ぶ危険性が,平成9年に破防法に基づく解散指定請求が棄却された時よりも,飛躍的に高まったことが不可欠であるはずだが,そのような状況ではないことは被告自らが認めている。
以上のとおり,団体規制法は立法事実を欠くものであり違憲である。
【被告の主張】
1 団体規制法制定当時は,現実に我が国において両サリン事件という無差別大量殺人行為が発生し,また,国際情勢をみても,多数の一般市民を犠牲にする無差別大量殺人行為による事件が多発していたものであり,その後も,全世界で同様の無差別大量殺人行為が繰り返されている状況にあるところ,これらの無差別大量殺人行為を団体が行う場合は,秘密裏に計画,準備されて実行に移されるため,犯行の事前把握が極めて困難であり,犯行の実現可能性が高い上,団体の持つ一定の目的達成のために反復して行われる可能性も高い。
したがって,過去にその役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体について,現在も無差別大量殺人行為に及ぶ危険な要素を保持している場合には,その活動状況を継続的に明らかにするための措置を講ずるなどして迅速かつ適切に対処しなければ,国民の生活の平穏を含む公共の安全を確保することはできない。
団体規制法は,無差別大量殺人行為を団体が敢行する場合の特性に鑑みて,国民の生命・身体に対する重大な危害を防止するという公共の安全を確保するために必要な規制措置を定めるものであるから,単なる住民の漠然とした不安感等を解消するための立法ではない。
2 処分行政庁は,a教に係る破防法に基づく解散指定請求に対し,破防法5条1項柱書に定める「継続又は反覆して将来さらに団体の活動として暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由」という極めて厳格な要件の充足は認め難いとしつつも,本団体の危険性は消失していないことを明確に指摘し,その動向を警察及び公安調査庁が引き続き注視していく必要性を指摘しているのであって,処分行政庁の破防法に基づく解散指定請求の棄却決定は原告の危険性の消失を意味するものでない。
第2  争点2(平等原則違反の有無)について
【原告の主張】
1 団体規制法は,その立法の経過,法律の内容・要件,a教に対する観察処分請求の内容からして,a教という特定の団体及びその関係者のみを対象にした処分的法律であり,一般的・抽象的法規範ではなく,憲法14条の平等原則に明白に違反する。
このような法律が,仮に合憲として許容されるとすれば,その根拠はいわゆる緊急避難の法理に求められ,① サリンを使用するなど防御不能の方法による無差別大量殺人行為を犯す現実的危険性の存在と,② 団体規制法の適用により侵害される基本的人権よりも保全される保護法益の方が優越しているという法益優越性が必要である。
2 まず,上記①については,〈ア〉 処分行政庁が,平成9年の破防法7条に基づくa教に対する解散指定請求に対し,請求後の状況の大きな変化により,「将来さらに暴力主義的破壊活動を行う危険性は遠のいた」として,請求を棄却したこと,〈イ〉 タントラ・ヴァジラヤーナ等の教義を殺人を肯定する教義と位置付けるのは誤りであるところ,a教は,誤解を避けるため,平成7年7月29日に上記教義の一部を排除するなどし,平成12年1月18日の声明においてもこの点を確認していることからすると,現実的危険性は存在しない。
次に,上記②については,団体規制法の立法目的で確保すべき「公共の安全」の内実は,「国民の生活の平穏」(団体規制法1条)であり,これはa教の関連施設周辺の住民が抱いている漠然とした不安感や理由のない恐怖感のみが保護法益にすぎず,思想,良心及び宗教の自由を保障し,厳格に例外事由を定めたB規約18条1項,3項に照らせば,上記の保護法益を保全することをもって,信教の自由の制約根拠とすることはできない。
3 以上のとおり,団体規制法は,a教を唯一の適用対象とする特別措置法であり,また,その平等原則違反を緊急避難の法理によって正当化することはできないから,憲法14条,B規約2条及び26条に違反する無効な法律である。
【被告の主張】
1 団体規制法5条1項の文言をみても,その適用対象について,a教ないし本団体のみに限定したものではなく,また,同法1条において「例えばサリンを使用する」と規定されているものの,これは単なる例示として使用されているにすぎず,同法5条1項各号の要件を充足する無差別大量殺人行為を行った団体について等しく適用される一般的・抽象的法規範であり,憲法14条に反するものではない。
また,立法の経過や法案審議の経過などからすると,両サリン事件が団体規制法制定の背景的事実の一つとなったことは明らかであるが,当時,国際的にみても爆弾等を使用した無差別大量殺人行為が発生しており,被害の甚大性・脅威性,犯行の密行性・実現可能性,犯行の反復可能性等という無差別大量殺人行為の持つ特性に対し,迅速かつ実効的な対応をする必要から,団体規制法が制定されたのであって,今後,これらの事件と同様の無差別大量殺人行為が発生すれば,それを惹起した団体が同法の適用の対象となる。
以上のとおり,団体規制法は憲法14条,B規約2条及び26条に違反しない。
2 原告の主張する緊急避難の法理なるものは,その内容,根拠,要件,効果について,いずれも明らかではなく,原告の主張は失当である。
無差別大量殺人行為は,犯行の事前把握が極めて困難であるという点に特徴があり,外部から,当該団体が再び無差別大量殺人行為に及ぶ現在の具体的危険を把握・確認できたときには,既に団体内部において,無差別大量殺人行為に容易に着手できる状態にあるものと考えられ,この段階にまで至らなければ観察処分に付することができないというのでは,無差別大量殺人行為の再発を未然に防止し,国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保を図るという団体規制法の目的を達することはできない。
また,過去に団体の活動として現実に無差別大量殺人行為を行った団体において,団体規制法5条1項各号に掲げる事項に該当するということは,現在も過去の無差別大量殺人行為に及んだものと共通の要素が継続されており,再びそのような行為に及ぶ危険性があると認めるに足る事実が存することにほかならず,このような危険性を払拭し得る特段の事由が認められない限り,そのような危険性が存するものといわざるを得ない。一方,このような団体に対し団体規制法の定める内容の観察処分を行っても,その観察処分は,当該団体に当該団体の活動に関する一定の事項の報告義務と立入検査を受忍することを求めるものにすぎず,公共の福祉の観点からは合理的かつ必要でやむを得ない範囲にとどまる。
したがって,団体規制法を合憲というために無差別大量殺人行為に結び付く現在の具体的危険が存する必要はない。
第3  争点3(信教の自由の侵害の有無等)について
【原告の主張】
1 信仰を告白しない自由の侵害
憲法20条1項前段及びB規約18条2項は,信仰を告白しない自由を絶対的自由として保障しているところ,団体規制法5条5項が準用する同条3項1号の「構成員の氏名及び住所」の報告は,信者個人の信仰を告白しない自由を間接的に侵害する。
また,憲法20条1項は,個人の信仰の自由の保障を全うするため,宗教団体あるいは他の団体に対して,組織としての沈黙の自由を絶対的自由として保障しているところ,上記の「構成員の氏名及び住所」の報告は,この沈黙の自由を侵害する。
したがって,団体規制法は,憲法20条1項前段及びB規約18条2項に反し,違憲・無効である。
2 宗教的行為及び宗教的結社の自由の侵害
(1) 憲法20条1項前段及びB規約18条の信教の自由の内容のうち,宗教的行為の自由及び宗教的結社の自由は,それぞれに外部的行為を伴うものであるから,国家権力による規制の対象とはなり得るものの,外部的行為は内心の自由と密接不可分の関係にあるから,これらを規制する法律は,厳格な違憲審査基準が適用されるべきである。
「国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保」(団体規制法1条)のために規制を正当化するためには,観察処分等がされなければ,当該団体により他人の生命・健康への侵害等がされる明白かつ現在の危険が具体的裏付けをもって示されることが必要である(明白かつ現在の危険の基準)。しかし,団体規制法の制定過程において,観察処分等によってどのような具体的効果がもたらされ,どのようにして「国民の生活の平穏を含む公共の安全」が確保されるか全く検証されておらず,立法目的と規制との間の抽象的な関連性の議論しかされなかった。団体規制法は,信教の自由を制約するのに必要な明白かつ現在の危険の基準を充足していないから,憲法20条に違反する。
(2) 基本的人権に対する規制の程度及び手段は,比例原則に従った必要最小限度に留めなければならない。
ア 観察処分等の結果,立入検査が実施されると,当該立入検査権の行使は担当の公安調査官の裁量的判断に委ねられていることもあり,当該団体に所属する個々の信者は,国家機関の監視下に置かれ,宗教的行為の自由は一方的に侵害されることになるし,団体規制法は,当該団体に属する構成員全員を観察処分等の対象とするものであるところ,事件と直接の関わりのない多くの構成員にまで規制を及ぼすのは行き過ぎである。
法案審議の過程において,いかなる手段を用いることによって制限を最小化できるか,また,同じ目的を達成するのに他にどのような代替手段があるのか(より制限的でない代替手段の原則)の検証を経て手段審査の基準が検討された形跡はない。
したがって,団体規制法は,必要最小限度の基準を超えて過度の制限を信教の自由に加えるものであるから,手段審査の基準の適用においても,憲法20条に違反する。
イ 次に,団体規制法5条3項1号は,観察処分等を受けた団体の役職員のみならず,構成員の氏名及び住所も報告するよう義務付けており,当該団体の構成員になった場合には,自己の信仰を公権力に対して告白させられることになり,団体加入希望者は,当該団体の構成員になることを躊躇せざるを得ない。また,観察処分等の実際上の効果は,国家機関による一方的な立入検査を繰り返すことにある。以上のような報告義務及び立入検査によって,信者は,事実上,信仰生活を継続することを断念せざるを得なくなり,宗教団体を瓦解させることにつながり,宗教的結社の自由を侵害する。
(3) 以上のとおり,団体規制法は,目的審査及び手段審査の双方の基準において,信教の自由の制約を正当化することができず,憲法20条及びB規約18条に違反する。
【被告の主張】
1 信仰を告白しない自由
観察処分等は,過去に団体の活動として無差別大量殺人行為を行い,かつ,現在もなおその危険な要素を保持し,社会的に非難を受けるべき危険な団体に対し,その人的要素という側面から見た無差別大量殺人に関する危険な要素の程度及び活動状況を継続して明らかにする必要性・公益性から,当該団体の活動への参加・従事という外部的行為を捉え,当該者の氏名及び住所の報告を行わしめるものである。
このように観察処分等による報告義務は,特定宗教の信徒を名宛人とするものではなく,飽くまで団体の活動として過去に無差別大量殺人行為を行った団体を対象とするものである上,報告を求める事項も構成員の氏名及び住所という信仰とは無関係の事項であり,当該団体又はその構成員の精神的・宗教的側面に容かいする意図によるものではないことからすると,このような報告を求めることが特定の信仰を有していることを告白させられない自由を侵害することにはならない。
2 宗教的行為及び宗教的結社の自由
憲法20条が保障する信教の自由は,外部的行為として現れる宗教的行為等の場合には,絶対無制限のものではなく,公共の福祉の観点から必要かつ合理的な制約を受けるところ,観察処分等は,立法目的において合理性がある上,規制内容も,当該団体の活動を直接制限するものではなく,当該団体の活動状況を継続して明らかにする必要があると認められるときに,当該団体に一定の作為義務(報告義務)ないし不作為義務(立入検査の受忍義務)を課すものにすぎず,その手続の適正も担保されているのであって,合理的かつ必要でやむを得ない法的措置であって,憲法20条に違反しない。
第4  争点4(プライバシー権侵害の有無)について
【原告の主張】
観察処分等の結果,立入検査が実施されると,当該立入検査権の行使は担当の公安調査官の裁量的判断に委ねられていることもあり,当該団体に所属する個々の信者は,国家機関の監視下に置かれる。
実際の立入検査においても,施設内の設備にとどまらず,個人所有の教材・写真に至るまで一点一点記録・接写し,個々の信者ごとの私物の検査は常態化しており,また,立入検査を受ける施設や道場は,出家信者が居住の場としてもいるのであって,プライバシーのみならず,個人の住居の平穏も立入検査によって脅かされる。
これに対し,立入検査の結果,信者のプライバシー,住居の平穏,通信の秘密が侵害されたとしても,団体規制法には,その侵害に対し効果的な救済を求め得る規定が整備されておらず,B規約17条2項やその一般的意見16の11に照らし,致命的欠陥がある。
以上のとおり,立入検査による信者のプライバシーに対する恣意的干渉,住居の平穏に対する侵害は著しく,団体規制法は,憲法13条及びB規約17条に違反する。
【被告の主張】
プライバシーや住居の平穏は,制限の必要性の程度と制限される基本的人権の内容,これに加えられる具体的制限とを較量した結果,当該制限が必要かつ合理的なものである場合には,その制限も許されるものであるところ,団体規制法は,団体の活動状況を明らかにするために特に必要があると認められるときに限り,立入検査を認めるものであって,信者の信仰生活の継続を断念したり,改宗したりすることを強要するものではないし,原告の施設に居住する出家信者らも,過去に団体の活動として無差別大量殺人行為を行い,かつ,現在もなお危険な要素を保持し,社会的に非難を受けるべき危険な団体であることを承知しながら,その活動に積極的に参加・従事するものであるから,立入検査の必要性及び公益性に鑑みれば,これに伴う程度の不利益は甘受すべきである。
また,当該立入検査権の行使が担当の公安調査官の裁量的判断に委ねられているとの非難の点についても,立入検査権の付与を含む観察処分制度の憲法適合性に関わる問題ではなく,あらかじめあらゆる場面を想定して行為規範を詳細に定めることは不可能を強いるものであるし,その目的に照らし必要かつ合理的な範囲内でしか立入検査権も行使されることがなく(団体規制法2条,3条,7条2項),公安調査官が職権を濫用することのないよう刑法の職権濫用罪の特則として加重した処罰規定を設けるなど(同法42条),法の担保もされているから,担当官による恣意的な干渉のおそれはない。
以上のとおり,団体規制法による信者のプライバシー及び住居の平穏に対する制限は必要かつ合理的な範囲内にとどまるから,憲法13条及びB規約17条には違反しない。
第5  争点5(適正手続違反の有無等)について
【原告の主張】
1 司法審査の必要性
憲法31条の定める法定手続の保障は,直接には刑事手続に関するものであるが,行政手続においても準用され得るところ,団体規制法は,観察処分等に基づく報告義務,立入検査,再発防止処分に基づく不作為義務によって,当該団体及び当該団体の役職員又は構成員とみなされた個人のプライバシー権(憲法13条),信教の自由(憲法20条),結社の自由,表現の自由(憲法21条)といった,基本的人権の中でも,特に中核的な人権が制限を受けることになり,その制限の程度は,極めて重大な制限であり,被る不利益の程度も極めて重大である。
したがって,団体規制法に定められた処分を行うか否かの判断については慎重な判断が要求され,観察処分等の要件充足性の判断及び処分を行う機関は,行政機関ではなく,司法機関である裁判所に委ねられなければならず,これを公安審に委ねる点は憲法31条に反する。
2 意見聴取手続の不十分性
団体規制法は,その不利益処分が,中核的な基本的人権に関係するものであることに鑑み,行政手続法第3章の規定を適用除外とし(団体規制法33条),独自の意見聴取手続を定めているが,これは,以下に述べるとおり,不十分であり,憲法31条に反する。
(1) 通知期間
公安審は,意見聴取を行うに当たり,意見聴取期日の7日前までに,団体規制法17条1項各号の事項を当該団体に通知すればよいとされている。
しかし,観察処分等又は再発防止処分に服する要件は,団体規制法5条1項各号の事項,同法8条1項各号の事項と多岐にわたる上,同法5条1項5号,同法8条1項8号の規定は明確でなく,これらの事項に関する処分請求書は,膨大な量の記述があり,これらを証するための証拠書類等も膨大な量に及び,かつ,判読不能な外国語で書かれた書面まで含まれていたところ,被請求団体が,このような処分請求書を精査し,適切に弁解,防御を行うには,以下に述べる証拠書類等の閲覧権が保障されたとしても,7日間という短期間では到底不可能である。
(2) 証拠書類等の閲覧権がないこと
団体規制法の意見聴取手続には,当該団体に処分請求書に添付された証拠書類等の閲覧権を定めた規定がないが,同法に基づく不利益処分により制限される権利利益の内容・性質に鑑みれば,被請求団体には証拠書類等について十分検討する機会が保障されるべきである。
とりわけ,第3回更新決定に係る手続以降,従前に比べて閲覧がより制限的になり,原告は,膨大な量の証拠書類等について,限られた時間・方法での閲覧しか許されなかった。
(3) 更新請求手続において口頭意見陳述権がないこと
観察処分の期間更新の手続(団体規制法26条)では,観察処分請求手続とは異なり口頭意見陳述権はなく,意見陳述は,陳述書及び証拠書類等を提出して行うものとされている。
しかし,通常,更に観察処分の期間を更新するに当たっては,「無差別大量殺人の実行に関連性を有する危険性」の有無について,より一層慎重な検討が必要とされるはずであるところ,更新請求時において,意見聴取手続を簡略化しているのは,団体規制法が,a教という特定の団体のみを対象として制定されたことと無関係ではない。
(4) 公安審による慎重な審査が予定されていないこと
団体規制法22条2項は,公安審において,同法17条2項の規定による公示があった日から30日以内に,処分の請求に係る事件につき決定をするように努めなければならないと定めており,同法における事前の告知,弁解,防御の機会が,被侵害利益の重大性に比して,極端に軽視されているのであって,このような努力義務を定める団体規制法は,憲法31条に反する。
(5) 再発防止処分と観察処分等の意見聴取手続が同じ手続であること
再発防止処分は,当該団体の団体としての活動及びこれに付随して,当該団体の役職員等の個人の活動を大幅に制限するものであり,信教の自由,結社の自由に重大な侵害を及ぼし,その罰則規定の法定刑の重さ(団体規制法38条)からも,観察処分等に比して,より重大な不利益処分である。
しかし,再発防止処分の際の意見聴取手続は,観察処分等の時と同じ手続しか定められておらず,事後の手続保障についても,取消しを促すことができるという確認的な規定(団体規制法10条2項)しか設けられていないから,憲法31条の法意に反する。
3 過度に広汎な規制
団体規制法5条1項2号の「構成員」とは「特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体への加入者」と解されており,当該団体に対して何ら影響力を有しない者まで含まれてしまい,上記の「構成員」という文言は,極めて広汎な範囲を対象としてしまうため,どの程度事件に関与した者が在籍すると団体規制法の処分を受けるのか予測することができず,処分を受け得る者に対して萎縮効果を生じさせる。したがって,同号は,過度に広汎であり憲法31条に反する。
【被告の主張】
1 憲法31条の法定手続の保障は,それが行政手続にも及ぶと解すべき場合であっても,一般に,行政手続は,その性質において刑事手続と差異があり,また,行政目的に応じて多種多様であるから,行政処分の相手方に事前の告知,弁解,防御の機会を与えるかどうかは,行政処分により制限を受ける権利利益の内容,性質,制限の程度,行政処分により達成しようとする公益の内容,程度,緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって,常にこのような機会を与えることを必要とするとは解されない。
2 団体規制法の立法の目的,規制措置の内容及び手続からみて,本件更新決定は手続の適正を何ら欠くものでなく,同法の定める手続は,対象団体の権利を手続的に保障するための措置として十分というべきであって,憲法31条の法意に反しない。
(1) 通知期間
団体規制法の定める規制措置の公共性・公益性及び緊急性の高さに加え,同通知とともに公示が行われる旨規定され(同法17条2項),その公示から30日以内で決定を出すことに努めなければならないと規定されているところ,7日という期間は,その決定までの期間の実に約4分の1を占めていることも併せて考慮すれば,同期間が決して不当に短期間とはいえない。
(2) 証拠書類等の閲覧及び口頭意見陳述
証拠書類等の閲覧や口頭での意見陳述を行わせる手続までもが憲法上要請されると解すべき根拠はない上,団体規制法は,処分の審査・決定に関する手続保障のための十分な措置を講じている(なお,処分行政庁は,団体規制法の定めはないものの,その裁量によって,本件更新決定等の際に証拠書類等の閲覧を実施するとともに口頭での意見陳述を聴取している。)。
(3) 公安審による慎重な審査
団体規制法が定める規制措置は,その目的の公共性・公益性が極めて高い上,これを講ずる緊急性も高いことから審査を30日以内に行うとの努力目標が置かれているのであって(同法22条2項),これによって公安審の審理が不十分にならざるを得ないとする根拠はない。実際にも審理に不都合な結果など全く生じていない上,当該団体に与えられている手続保障が有名無実のものになることもない。
3 過度に広汎な規制
団体規制法5条1項1号から4号までは,団体がその属性として危険な要素を保持していると認められる典型的なものを類型的に規定したものであり,同1号ないし3号の各規定は,それぞれの立場ごとに当該団体との関係の程度を定めており,同2号の「構成員」という文言は,過度に広汎でなく,予測可能性がないといえるものではない。
第6  争点6(令状主義違反の有無)について
【原告の主張】
団体規制法の定める立入検査は,当該団体が無差別大量殺人に及ぶ危険性を明らかにするという,刑事責任追及に極めて密接に関連した目的を有し,また,公安調査官のみならず刑事手続上の捜査機関となり得る都道府県警察官も,裁判所はおろか準司法機関である公安審の事前審査も経ずに,いつでも,広範囲にわたって,刑事訴訟法における「捜索」と同内容の処分を観察処分等を受けている団体に行うことができる(団体規制法12条3項,14条1項,2項)。団体規制法は,立入検査の検査妨害,検査忌避等について罰則規定を設けており(39条),観察処分等より重大な人権侵害をもたらす再発防止処分を課すこともできるものとしている(8条)のであって,立入検査の実効性を強固に確保することができる規定となっている以上,これを拒否等することは実際上不可能であるというべきであり,「捜索」と同様の強制処分というべきである。
したがって,団体規制法は,裁判所はおろか公安審の事前審査も経ることなく立入検査を行うことを認めており,憲法35条に違反する。
【被告の主張】
憲法35条1項の規定の保障が,刑事責任追及の手続における強制にも及ぶと解すべき場合であっても,当該手続が憲法35条の法意に反するか否かは,手続の一般的性質が刑事責任追及を目的とする手続であるか否か,実質上,刑事責任追及のための資料収集に直接結び付く作用を一般的に有しているか否か,強制の態様・程度が直接的か,間接的か,公益性が高度か否か,公益性と強制手段との均衡が失われていないかを総合較量して決せられる。
この観点から,団体規制法の立入検査をみると,① 立入検査は,刑事上の処罰を目的としておらず,一般的に刑事責任追及のための資料収集に直接結び付く作用は有しておらず(7条4項,14条7項),② 立入検査実施の際,当該団体等から抵抗があっても,直接強制ではなく,検査妨害・検査忌避等について刑罰を科すという間接強制による実効性確保しか認められていないし,③ 当該団体の活動を明らかにする必要性・公益性は極めて大きく,立入検査はこの目的を実現する上で必要不可欠であるところ,一般的に,行政庁の行う立入検査には,当該行政庁以外の機関による審査,承認などの手続を整備する措置は求められておらず,そのような措置をするかは立法政策に属する事柄であり,④ 公安調査官による立入検査については,公安審が当該団体を観察処分等に付する決定を行う際に,公安調査庁長官が警察庁長官の意見を聴取するなどした上で公安審に対してその処分を請求し(12条,13条,15条),これを受けて,準司法機関である公安審が公開による意見聴取を実施するなど(16条ないし21条)の極めて慎重な手続が踏まれ,⑤ 都道府県警察の職員による立入検査(14条2項)についても,上記④の手続が前提となっている上(14条1項),上記立入検査を行うに当たっては,警察庁長官の事前の承認が必要であって(14条2項),さらに,警察庁長官は上記承認に際しては事前に公安調査庁長官と協議しなければならない(14条3項)とされている。
以上によれば,立入検査が,あらかじめ裁判官の発する令状によることを要件とせず,また,個別の立入検査ごとに公安審の事前審査を経ていないとしても,何ら憲法35条の法意に反しない。
第7  争点7(原告を含む本件更新決定の対象団体と本件観察処分を受けた団体との同一性の有無等)について
【被告の主張】
1 本団体の「団体」該当性等
(1)ア 団体規制法は,多数人の間に特定の共同目的が存在し,当該共同目的を達成するために当該個々の多数人の意思を離れて独自の意思決定が行われ,当該意思決定を当該多数人が実現する行為を行うことになる関係が当該多数人の間に継続的に存在している場合に,そこに規制の対象とする必要のある「団体」性を見いだしたものと解される。
また,団体としての無差別大量殺人行為が行われるのは,「特定の共同目的」が,構成員の個人的意思・良心を変容させたり,上記個人的意思や良心を超えて団体として行動する際の指針として機能し行動を正当化させるからであると認められるところ,かかる観点からは,「特定の共同目的」を中心に据えて「団体」概念を解釈すべきである。
そうすると,団体規制法4条2項にいう「特定の共同目的」は,多数人の集団に,個々の構成員個人の意思とは離れて独自に形成され,又は存在する目的であって,構成員各人が当該集団としての行動をする際の指針となり得ると評価できるような目的をいうものと解される。
イ 他方,団体規制法4条2項は,「団体」の要件として,「多数人の継続的結合体」であることも要求しているが,この要件は,「特定の共同目的」との関連において把握されるべきものであり,その結びつきの強さの程度としては,各構成員がこの共同の目的を達成するためにこれに沿った行動をとり得る相互関係にあることが認められれば,同項にいう「結合体」に該当するものと解される。
すなわち,団体規制法の目的は,団体の活動として行われる無差別大量殺人行為の特性を踏まえ,過去に無差別大量殺人行為を行った団体について,現在も危険な要素を保持していると認められる場合に,迅速かつ適切に対処し,もって国民の生活の平穏を含む公共の安全に寄与するところにある(同法1条)。また,団体の活動として行われる無差別大量殺人行為は,「特定の共同目的」が存在するから行われるものであることや,同一の「特定の共同目的」の達成を目指しながら,その達成のための方法論等の違いによって離合集散が行われつつも,無差別大量殺人行為が累行されているという実情も存在する。かかる実情を踏まえるならば,無差別大量殺人行為に及ぶ前の段階において各構成員に具体的な意思連絡がなくても,各構成員において「特定の共同目的」に沿った行動をとり得る関係にある場合には,団体の活動としての無差別大量殺人行為を計画・準備・実行する段階においては,「特定の共同目的」を達成するために各構成員が結集して,団体の活動として無差別大量殺人行為の実行に至る危険性が常に存在するということができる。したがって,「結合体」について上記のように解するのが団体規制法の目的や趣旨に沿うものと解される。
ウ 本団体は,Dを教祖・創始者として結成され,Dの説く教義を広め,これを実現することを共同の目的とし,その目的を達成するための多数人の継続的結合体であるから,団体規制法の「団体」に該当する。
(2) 次に,両サリン事件は,団体規制法4条1項にいう「無差別大量殺人行為」に該当する上,Dの説く教義を根本とし,Dに対する絶対的帰依を要求する本団体にあって,その政治上の主義を推進するため,絶対者であるDがこれを実行することを団体意思として決定し,団体の施設を用い,団体の資金でサリンを製造し,かつ,Dの指示を受けた役員,構成員らにおいて,その団体意思を実現するために実行したものであり,本団体が両サリン事件を「その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として」行ったものである。
したがって,本団体は,団体規制法5条1項所定の「その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体」に該当する。
(3) Dは,宗教団体である本団体において,その教祖であり,平成元年8月の宗教法人a教の設立時から解散時まで,代表役員の地位にあった上,実際にも,本団体においては,本件更新決定時においても,表面的にはともかく,実質において,Dを尊師,グルと尊称し,主神であるシヴァ神の化身と位置づけるなど,これに対する絶対的な帰依を維持しており,Dが,本件更新決定時も,本団体における絶対者として,その活動に対する絶対的ともいえる影響力を保持していること,本団体が,本件更新決定時も,Dの意思を推し量りつつ,これに基づいて活動していると認められることからすれば,依然として,Dが本団体の代表者であると認められる。
なお,「主宰」という概念は,団体規制法における「団体」要件や観察処分の処分要件として規定されているわけではなく,単に本団体を他の団体から区別し,特定するための一要素として用いられているにすぎない。
2 原告を含む本件更新決定の対象団体と本件観察処分を受けた団体との同一性
(1) 団体規制法5条4項は,更新決定の対象として,「第1項の処分を受けた団体」,すなわち,同条1項の観察処分を受けた「団体」と規定しているのであるから,更新決定を受ける対象団体と当初の観察処分を受けた対象団体との間には,同一性が保持されている必要があることはいうまでもない。他方,更新決定は,観察処分から相当期間が経過した後に行われることもあらかじめ予定されているものであり,観察処分時から相当期間が経過すれば,対象団体の名称や構成員又は組織構成等に変動が生じ得ることもまた経験則上容易に想定されるところである。そして,団体規制法は,団体概念を「特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体」と定めた上で,同法5条4項において「第1項の処分を受けた団体」に更新決定を行うことを認めている。すなわち,団体規制法は,当初の観察処分からの期間の経過により,対象団体の名称や構成員又は組織構成等に変動が生じた場合にも,「特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体」としての同一性が認められるときには,対象団体の同一性を認めることを予定している。
そして,上記1で述べたとおり,団体規制法の規制対象である団体による無差別大量殺人行為が行われるのは,「特定の共同目的」が存在するからであって,「団体」概念については,「特定の共同目的」を中心に据えて解釈されなければならない。そのため,団体の同一性を判断するに当たっても,構成員個人の意思とは離れて当該団体としての行動をする際の指針となり得る特定の共同目的に同一性があるかどうかという点が最も重要であり,各構成員が当該共同目的を達成するために決定された団体の意思を各構成員が実現する行為を行うなどの共同の目的に沿った行動をするという点において,基本的な結合関係がなお保持されているか否かという点も検討される必要がある。
そうすると,団体規制法の規制対象である団体が分派又は分裂したかのように装っている場合はもちろん,分派又は分裂し外形的に別個に活動しているように見える状態に至った場合であっても,依然として,構成員の間に特定の共同目的が存在し,当該共同目的を達成するために個々の構成員を離れて決定された団体の意思を各構成員が実現する行為を行うことになるという結合関係が存在するのであれば,分派又は分裂前の団体を対象とした規制の効力は,分派又は分裂して細分化した各集団のいずれにも及ぶと解され,それら各集団は,団体規制法上は,依然として一つの「団体」とみるべきである。
(2) 本団体における特定の共同目的は,a教の教義を広め,これを実現することであり,a教とは,その教義に従う者が自らの意思を捨ててDの意思に従い,これを自らの意思として行動することを,全行動を支配する唯一絶対のものとするところに,その教義の核心がある。
そのため,本団体においては,構成員がa教の教義を広め,これを実現するという特定の共同目的を有しており,かかる共同目的を達成するために行動する場面においては,Dは教義を説き,明示的又は黙示的に意思や指示を示し,構成員は,Dが明示的な意思や指示を示した場合はこれに従い,これがない場合であっても,Dの過去の説法等や本団体の教義に顕現されたDの意思を推し量って行動していることが認められる。これは正に特定の共同目的(a教の教義を広め,これを実現すること)を達成するために個々の構成員の意思を離れて決定された団体の意思を各構成員が実現する行為を行うことになる関係にほかならず,団体の活動としての行為を行うものにほかならない。
そうすると,本団体が本件観察処分を受けた団体と共同目的を達成するための多数人の継続的結合体として同一性を有するかどうかを判断するに当たっては,団体の名称や構成員,組織構成の変更等の表面的・形式的事情にとらわれるのではなく,本団体の結合関係において同一性が保持されているかどうか,すなわち,構成員がDを絶対的な帰依の対象とし,Dが明示的な意思や指示を示した場合はこれに従い,これがない場合であっても,Dの過去の説法等や本団体の教義に顕現されたDの意思を推し量って行動することにより,a教の教義を広め,これを実現するという特定の共同目的を達成するために活動しているか否かを実質的に検討すべきものである。
(3)ア 第2回更新決定後,本団体にあっては,Eを中心とする一部構成員がd1教からの脱退とb教の設立を表明するなどしているものの,以下の事情に照らせば,このこと自体がDの意思に従い,Dの説く教義を広め,これを実現するためのものであって,その構成員は,D及び同人の説くa教の教義を絶対的帰依ないし信仰の対象とし,Dの明示的な意思や指示,あるいはDの過去の説法等の本団体の教義に顕現されたDの意思を推し量って行動することにより,a教の教義を広め,これを実現するという特定の共同目的を達成するために活動しているといえ,本件更新決定時においても,この評価に変わりはないというべきである。
(ア) Dの意思は,破防法の適用を回避するため,本団体を組織として存続させることにあり,そのためであれば,Dは,本団体の危険性の除去の仮装や組織分割をいとわなかった。
(イ) Eは,平成11年頃から平成14年頃までの間,対外的な説明と本団体構成員に対する説明を使い分けており,観察処分等を免れて組織存続を図るために「D1隠し」を全面的に推し進め,本団体の危険性除去の仮装を行っていた。Eらは,平成17年頃からb教設立に至るまでの間においても,組織存続のために本団体の危険性の除去の仮装及び組織分割が必要であるとするDの意思に基づいて活動していた。
(ウ) b教設立後における大黒天及び三仏の取扱いの変更並びに思想・哲学の教室への改変は,過去の過ちに対する真摯な反省に基づき,b教を含む本団体の在り方自体を変化させていくものとして実施されたものということはできない。むしろ,実際には,Dと同一視される大黒天や三仏を崇拝対象としながら,形式的な取扱いのみ変更し,Dの絶対者性の否定及び危険な教義の棄教をそれぞれ装うことにより,観察処分等の適用を免れ,組織存続を図るというDの意思の実現を目的としたものであると評価し得る。その余の内観や外部監査等の施策についても同様である。
イ 原告においては,構成員がDを絶対的な帰依の対象とし,Dが明示的な意思や指示を示した場合はこれに従い,これがない場合であっても,Dの過去の説法等や本団体の教義に顕現されたDの意思を推し量って行動することにより,a教の教義を広め,これを実現するという特定の共同目的を達成するために活動している。したがって,原告は,本件観察処分を受けた団体(本団体)に含まれており,その重要な一部をなす集団である。いわば,原告は,a教の教義を忠実に承継することによって,同教義を広め,実現するという特定の共同目的を達成しようとしているものと認められる。
他方,b教についていうと,形式的・表面的には,Dの絶対者性を否定したり,a教の教義を放棄したりという方策を打ち出している。しかしながら,Dが,なり振り構わぬ組織存続のために本団体の危険性の除去の仮装を意図し,その具体的方法として,Dの絶対者性の否定と危険な教義の棄教を挙げていたことからすれば,結局のところ,Eらは,Dの明示的な意思や指示,あるいはDの過去の説法等の本団体の教義に顕現されたDの意思を推し量って行動することにより,原告とは異なる方法論の下,a教の教義を広め,これを実現するという特定の共同目的を達成するために活動しているといえる。
以上を踏まえれば,原告及びb教については,a教の教義を広め,これを実現するという特定の共同目的を達成するために活動しているといえるから,従前の基本的な結合関係が維持されており,「特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体」に含まれる重要な一部をなす集団であると認められる。
【原告の主張】
1 団体規制法5条1項所定の「その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体」該当性
破防法4条1項2号へに掲げる暴力主義的破壊活動とは,政治上の主義若しくは施策を推進し,支持し,またはこれに反対する目的をもって刑法199条(殺人罪)に規定される行為をすることであり,団体規制法4条1項にいう無差別大量殺人行為は,政治目的を持ったものであることが要件である。
しかし,原告は,a教時代から一貫して飽くまでも宗教団体にすぎないのであって,政治上の主義を掲げて殺人行為等を実行したことは一度もなく,両サリン事件も政治的な目的で敢行されたものではない。
したがって,原告は,団体規制法5条1項所定の「その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体」に当たらない。
2 本団体の主宰者とされるDの地位が架空のものであること
本件観察処分から第2回更新決定までにおいて,処分の対象とすべき団体は本団体であるとされ,本団体を正確に区別特定するための要件として,Dが主宰者ないし代表者であることが確認されていた。しかし,処分行政庁は,第3回更新決定以降においては,団体規制法5条1項3号該当性の判断において,Dが代表者であるか否かについて,「Dについて論ずるまでもなく」として判断を回避し,本件更新決定においても,同項2号及び3号該当性の判断において,「Dについて論ずるまでもなく」としてDが代表者どころか「役員」や「構成員」であるかどうかすら認定を回避した。
被告は,本訴において,原告及びb教は,依然としてD及び同人の説くa教の教義の共通の基盤として,本団体の重要な一部を構成していると主張し,Dという人物だけでは団体を特定することはできないと考え,Dの説くa教の教義を根拠としてきた。
団体規制法上の「代表者たる役員」といい得るためには,同法で規定された「役員」の要件(団体の意思決定に関与し得る立場にあって,当該団体の事務に従事する者)を満たす必要があるところ,被告は,Dが団体の意思決定に関与し得る立場にあることについてごく簡略に主張するにすぎず,団体の事務に従事していることについては主張すらしておらず,Dが本団体の代表者であると認めることは到底できない。
処分行政庁が本団体を定義付ける際に,Dが主宰することを要件としている以上,Dが原告に影響力を及ぼし得る状態にあることが客観的な証拠によって示されなければならないが,そのような証拠がないのであるから,主宰者とされるDの地位は架空・虚構のものである。Dが原告を主宰しているといえなければ,団体としての同一性は失われる。
3 「団体」としての構成員同士の結合が存在しないこと
(1) 団体規制法にいう「団体」とは,特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体(団体規制法4条2項)であり,「結合体」とは,多数人の組織体であって,その構成単位たる個人を離れて結合体としての独自の意思を決定し得るものをいう。結合体としての独自の意思決定をするためには,必然的に構成員間における意思の連絡が必要であるから,構成員間の意思の連絡が存在することは団体概念の要素として不可欠である。
被告が懸念する組織の離合集散の問題は,団体の概念を本来の日本語としての意味から離れて解釈して解決すべきものではなく,団体規制法上の規制を免れるために外形上分裂したことにして別個の団体を装っているのであれば,それはいまだに意思の連絡があるのだから支障はなく,実質的にも分裂し,分裂した団体間に意思の連絡が存在しないのであれば,それはもはや別個の団体である。団体規制法2条からしても,「団体」,「結合体」という言葉から導かれる本来の素直な意味を超えて,この用語を恣意的に拡大解釈することは許されない。
(2) 原告の存在意義が宗教団体として宗教活動をするところにあるのに対し,b教は,宗教団体ではなく,団体として特定の宗教を信仰しておらず,両者に特定の共同目的はない。b教の設立は,仮装のための組織分割ではないし,原告とb教の間には一切の意思連絡がなく,人的にも物的にも独立しており,基本的な結合関係など存在しない。意思連絡のない両者においては,そもそも共同の目的を有しているか確認し合うことができず,目的に沿った行動をするための相互関係が一切ない。
b教は,原告とは別個独立した団体である。
(3) 本件更新決定は,原告とb教を一つの団体としてされているが,かかる「本団体」なるものは存在せず,そのような架空の団体に対する決定は一律に違法となるべきであり,仮に原告が団体規制法の適用を受けるべき団体なのであれば,新たに別団体として観察処分の請求をすることは妨げられないのであって,それが被告にとって酷であることもない。
したがって,被処分団体を原告又はb教のいずれかとして本件更新決定の一部を適法とすることは許されない。
第8  争点8(団体規制法5条1項1号該当性)について
【被告の主張】
1 Dが無差別大量殺人行為の首謀者であること
首謀者とは,無差別大量殺人行為そのものの計画,遂行について,組織集団での最高の主導的役割を担う者を意味する。
しかるところ,本団体の教義では,Dに対する絶対的帰依を構成員に要求し,Dが終始,本団体を統轄・主導してきた。そして,Dは,松本サリン事件では,サリンを散布して裁判官や付近住民など不特定かつ多数の者を殺害することを決定した上,A10(以下「A10」という。)ほか本団体の構成員らに対し,その実行及び役割分担等を指示した。また,Dは,地下鉄サリン事件では,A10の提案を受けて,サリンを地下鉄電車内で散布して不特定かつ多数の乗客らを殺害することを決定し,A10に犯行計画の総指揮を指示するとともに,実行役等の人選を行う一方,本団体役員のA11にサリンの生成を指示した。A10に指揮された実行役の本団体構成員らは,Dの指示によるものであると認識しつつ,サリンを散布した。
したがって,Dは両サリン事件の首謀者に該当する。
2 首謀者であるDが本件更新決定時も本団体の活動に影響力を有していること
(1) 「影響力を有している」とは,団体規制法の立法趣旨からすると,特定の者の言動が,団体の活動の方向性を左右する力あるいは内容に変化を生じさせる力を有していることをいい,ここにいう特定の者の言動には,現時点の直接的な言動のみならず,現時点で本人によって否定されていない過去の言動も含まれる。
(2)ア 本団体の教義は,シヴァ神を主神とし,教祖・創始者であるDがシヴァ神の化身であるとして,これに対する絶対的な帰依を要求するものであり,本団体は,その教義に従う者により構成されており,絶対者であるDの存在はその存立の基盤と認められる。そして,本団体におけるDの影響力についてみると,両サリン事件を始めとする事件が常軌を逸するほど重大なものである上,その準備には多大な資金及び労力等,かなりの組織力と時間を要するにもかかわらず,これを秘密裏に行い得ており,Dの本団体に対する影響力は非常に大きく,かつ根深いものがあると認められる。そうすると,Dの本団体に対する影響力は容易に払拭されることはない。
イ 現に,Dが身柄拘束された後の平成11年3月頃から平成12年6月頃までの間,ロシア人信徒であるA12(以下「A12」という。)が,自動小銃,手りゅう弾,爆薬等を準備し,勾留中のDの奪還を目的として我が国の複数の場所で連続爆弾テロの実行を計画するという事件(以下「A12事件」という。)が発生した。ロシア連邦保安庁が,平成12年7月,A12を逮捕したため,上記計画は実現に至らなかったものの,A12の活動資金は,その当時,本団体の役員たる構成員であったA13から団体の事業資金として提供されたものであった。
このように,同事件は,D及びその教義に絶対的に帰依すること自体が,無差別大量殺人行為に直結し得るものであることを如実に示しており,また,Dの信徒に対する絶対的影響力が,Dが身柄拘束されているかどうかに関わりがないものであることも端的に示している。
ウ その上で,原告においては,本件更新決定時に至るまで,① Dを組織の頂点に位置付け,Dが拘置されている状況下でも,D及びDの説く教義への絶対的な帰依を培い,Dの意思を実現することをその根本的な目的としていること,② 構成員に対し,Dへの絶対的な帰依心を植え付けることを目的とし,マインドコントロールの手法を用いた修行・儀式を受けさせていること,③ 構成員の言動にもDに対する深い帰依やDの説く教義に従う意思を示すものが随所に認められること,④ 構成員らが,教義及び位階制度など本団体の運営の根本部分はDだけしか変えられないとの認識を有していること,⑤ Dの言動に基づき,その意思を推し量りながら活動方針や体制に関する重要事項を決定していることが認められる。
(3) 以上のとおり,原告において,Dを主神であるシヴァ神の化身とし,同人を教祖として,これに対する絶対的な帰依を維持しているのであって,同人が死刑確定者として拘置されている本件更新決定時においても,同人が,その活動に絶対的ともいえる影響力を有していると認められる。
そして,無差別大量殺人行為である両サリン事件を始めとする,本団体が敢行した幾多の重大犯罪が絶対者であるDの宗教的影響力の下に敢行されたものであることに鑑みると,同人が本件更新決定時も原告における絶対者として,原告の活動に絶対的ともいえる影響力を有しているということそれ自体から,原告を含む本団体が再び無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認められる。
3 小括
したがって,本団体は団体規制法5条1項1号に該当する。
【原告の主張】
1 無差別大量殺人行為の首謀者
両サリン事件は,政治上の主義を推進する目的で行われたものではなく,したがって,無差別大量殺人行為の「首謀者」も存在せず,それがDであると断定することもできない。
2 Dの影響力
(1)ア ① 団体規制法の合憲性を肯定するには合憲限定解釈が必要であり,観察処分等の適用に際しては,具体的現実的危険が必要であること,② 団体規制法5条1項1号における「影響力」は,特定の者の言動が,形式的に団体の活動の方向性を左右する力あるいは内容に変化を生じさせる力を有していれば,何でも当てはまるというわけではなく,自己の影響力を利用して当該団体の役職員及び構成員に対し,平和的な活動を行うべき旨を指導するなどの「平和的影響力」は含まれないことから,同号にいう「影響力」とは,この「平和的影響力」の対極にある再び無差別大量殺人行為の実行を命じ,団体の構成員らにその準備行為に着手させるに足りる影響力に限定して解釈すべきである。
イ 仮に「影響力」の意義を被告主張のとおりに解しても,更新決定時に「特定の者の言動が,団体の活動の方向性を左右する力あるいは内容に変化を生じさせる力を有している」といえるためには,特定の者が言動をすることができる状況にあることが当然の前提となる。
また,被告主張の「影響力」の解釈によったとしても,現時点において本人によって否定された過去の言動には影響力は生じないことになる。
(2)ア 仮に「首謀者」がDであるとしても,現在の原告の教義では不殺生を説いて,全ての構成員の行動規範ともいえる基本的な戒律として徹底し,また,被告が殺人を暗示的に勧める教義としている五仏の法則を採用しておらず,タントラ・ヴァジラヤーナやポワ等の一般に誤解されやすい宗教上の用語や概念等については,事件や犯罪の肯定に結び付くことがないことを明示した語義やその解釈を規定している。原告は,その他運営面においても,一人ないし少数の指導者の能力・判断に従属する上意下達式の組織形態を見直し,多面的な判断や相互のチェック機能が働くよう,徹底した合議による集団指導体制である合同会議を採用している。そして,実際に,第4回更新決定後に原告の構成員がDの影響を受け無差別大量殺人行為に及ぶ危険性を有する言動を行った事実は全く確認されていない。
以上のとおり,Dは,原告に対して無差別大量殺人行為に及ぶ影響力も団体の活動の方向性を左右する影響力も有していない。
イ 仮に「影響力」の意義を被告主張のとおりに解しても,Dは,本件更新決定時において,原告の活動を把握して,原告の活動に対する何らかの言動をすることが全くできない状態にあるから,被告の主張するように,Dの言動が,団体の活動の方向性を左右することも内容に変化を生じさせることもありえず,「影響力」は認められない。
また,Dは,破防法弁明手続において,違法行為及び破壊活動を厳禁する発言をしており,Dが説いたとされる教義は,この発言により,過去における言動であって現時点において本人によって否定されたものとなり,現在におけるDの団体に対する影響力は,本人により否定されて存在しないものとなっている。
3 小括
したがって,原告は団体規制法5条1項1号に該当しない。
第9  争点9(団体規制法5条1項2号及び3号該当性)について
【被告の主張】
1 団体規制法5条1項2号該当性
(1) 団体規制法5条1項2号の「構成員」とは,特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体への加入者を指し,「構成員」と認められるためには,明示的な加入行為の存在は必ずしも必要ではなく,当該団体から加入者として認知されていれば足りる。
そして,団体から加入者として認知されているか否かは,虚偽の報告等といった手段を介して容易に団体規制法の規制を回避する途を与え,同法1条の趣旨・目的を実現できなくなる事態を防止するため,当該団体がその者を構成員として報告しているかどうか,当該団体の構成員名簿等に記載されているかどうかといった形式的・表面的な事由によって判断すべきではなく,実質的な見地からその認知の有無を判断すべきである。
本件に即していえば,本団体がいわゆるa教であることを認識しながら,本団体の管理下の施設に出入りするなどして,本団体の構成員から指導を受けてa教の教義を学び,これを修行等で実践している者などは,構成員名簿等に登載されているか否かを問わず,本団体の加入者として認知された構成員というべきである。
(2) 団体規制法5条1項2号にいう「無差別大量殺人行為に関与した者」とは,無差別大量殺人行為を実行し,あるいは教唆し又は幇助した者をいうところ,A9は,両サリン事件のいずれか又は双方に関与しているから,これに該当する。
また,A9は,平成15年4月5日付けで本団体への再度の入会手続を行っており,本団体も,同年5月15日付けの公安調査庁長官宛ての第14回報告書以降,A9を在家の構成員として報告するなどしており,原告を含む本団体から一貫して本団体の構成員として扱われ,A9は本件更新決定時も本団体の構成員である。
2 団体規制法5条1項3号該当性
(1) 団体規制法5条1項3号の「役員」とは,「団体の意思決定に関与し得る者であって,当該団体の事務に従事するもの」と規定されており,「当該団体の事務に従事する」とは,広く当該団体のためにする行為全般のいずれかに携わることをいい,団体規制法4条2項にいう「団体」も同項において特段の限定がされていないことからすると,当該団体のためにする行為の態様は当該団体の性質に応じて多様なものがあり得ると解すべきである。
また,当該団体の「役員」が,何らかの事情により,現に当該団体の意思決定に関与せず,又は割り当てられた事務を行わないことがあっても,このことから当然にその者の「役員」性が消失することにはならず,殊に決定権限が強い者については,当該団体の基本的な方針を示し,具体的な個々の事務遂行については他の者に行わせるなどの場合には,その者を「役員」と解するのが相当である。
(2) Eは,両サリン事件当時,尊師に次ぐ位階である正大師の位階にあり,いわゆる省庁制の下では,当時数万人の構成員を擁するロシア支部を統括するロシア支部大臣として活動し,また,両サリン事件直後には,Dから全権を委任される形でa教緊急対策本部の本部長として活動していて,両サリン事件が行われた時に,本団体の意思決定に関与し得る立場にあり,本団体の「役員」であった。
また,Eは,本件更新決定時に,本団体の重要な一部を構成するb教の代表役員として活動しており,本団体の意思決定に関与し,かつ,事務に従事していたから,本件更新決定時点でも本団体の「役員」に該当する。
【原告の主張】
1 団体規制法5条1項2号該当性
(1) 団体規制法5条1項2号の「役職員又は構成員」に該当するには,団体への加入意思があり,構成員としての権利義務関係が存在し,団体との継続的結合関係が存在することが必要である。また,同項各号には,当該団体に無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実の存在が必要と解されているから,この要件も満たす必要がある。
そうすると,同項2号にいう「役職員又は構成員」とは,Dの指示若しくは影響力により,又はそれとは無関係に,無差別大量殺人行為の準備行為に着手し得る権限ないし影響力を伴った地位を有することと解すべきである。
(2) A9は,服役後,原告に在家会員として入会したが,在家会員は,教団運営に関わり得ない原告組織の末端の者であり,構成員としての権利義務関係は希薄である。
また,A9は事件関与者とはいえ,事件の目的や計画を認識することもなく言われるままに動いた者にすぎず,さらに,原告入会時には違法行為について十分に反省している。
そうすると,A9は,再びDの指示により,又はその指示とは無関係に無差別大量殺人の準備行為に着手し得る権限ないし影響力を伴った地位を有するという実質的要件は満たしておらず,「役職員又は構成員」に該当しない。
2 団体規制法5条1項3号該当性
(1) 団体規制法5条1項3号にいう「役員」も,再びDの指示により,又はその指示とは無関係に無差別大量殺人の準備行為に着手し得る権限ないし影響力を伴った地位を有することが必要であると解すべきである。
(2) 原告とb教は組織としての同一性を有さず,Eは,平成19年3月に原告を退会しており,原告の役員どころか構成員ですらなく,原告においてその運営・監督を受け持っていることはなく,同項3号の「役員」に該当しない。
第10  争点10(団体規制法5条1項4号該当性)について
【被告の主張】
1 本団体の教義が殺人を「暗示的に勧める綱領」に該当すること
(1) 団体規制法5条1項4号が観察処分等の要件とされている趣旨は,過去に無差別大量殺人行為を行った団体が,当該団体の構成員をして団体の活動として無差別大量殺人行為を行うよりどころとなり得る「綱領」を保持している場合には,その属性として危険な要素を保持していると認められることにある。
したがって,同号の「綱領」とは,文書化されているか否かを問わず,また,「綱領」という名称が付与されているか否かにかかわらず,実質的にその内容が,団体の立場・目的・計画・方針又は運動の順序・規範などを要約し,当該団体の各構成員にそれを伝達することができるものであれば足りる。
そうすると,宗教団体における教義についても,当該団体の方針等となるべき事項を明確に構成員に示し,かつ,構成員の行動の規範となっている場合には,その名称,形式のいかんにかかわらず,当該教義は当然に「綱領」に該当する。
(2)ア a教の教義の要旨は,「主神をシヴァ神として崇拝し,創始者であるDの説く教えを根本とし,全ての生き物を輪廻の苦しみから救済して,絶対自由・絶対幸福・絶対歓喜の世界(マハー・ニルヴァーナ,涅槃の境地)に導くことを最終の目的として,シヴァ神の化身であるDに対する絶対的な浄信と帰依を培った上,自己の解脱・悟りに到達する道である小乗(ヒナヤーナ)を修めるとともに,衆生の救済を主眼とする道である大乗(マハーヤーナ)及び衆生救済の最速の道である秘密金剛乗(タントラ・ヴァジラヤーナ)の各修行を実践する。」というものである。この教義は,本団体の最終目的である衆生救済及びこれを実現するための方針として,徹底した布教活動による教団の拡大とDが説く修行の実践による3万人の解脱(成就)者の輩出による世界シャンバラ化,これを実現するための具体的計画としての日本シャンバラ化計画をそれぞれ含み,これらがDの説法等を通じて本団体の構成員に対して深く浸透しており,本団体の方針としても明示されているから,団体規制法5条1項4号にいう「綱領」に該当する。
イ また,上記教義は,① 教祖であるDに絶対的に帰依すること,② Dの説法によって,日本シャンバラ化計画を実現するため最も早い道で解脱することが必要であり,タントラ・ヴァジラヤーナを実践すれば必ずや最終解脱することができること,③ このタントラ・ヴァジラヤーナの実践(修行)の特色は,悪業をもって善業に転換するという理論に基づき,たとえ自己は悪業を積むことになっても他者に対して善業となるならば,それを最高の実践課題として実践するという点にあり,その際の具体的規範として,アクショーブヤの法則(悪業を積んでいる魂は早く命を絶つべきであるとするもの)やアモーガシッディの法則(真理の実践を行う者にとっては結果が第一であり,結果のためには手段を選ばないとするもの)など,目的のためには手段を選ばず,Dの指示があれば殺人を行うことも正当化される内容を含む五仏の法則が重要とされていることなどの危険な教義であり,これは殺人を「暗示的に勧める」内容に該当するといえる。
(3) 以上からすると,Dの説く教義が団体規制法5条1項4号所定の「綱領」に該当し,そしてこの「綱領」が,殺人を勧める内容を含むものであると認められる。
2 本団体は本件更新決定時も「殺人を暗示的に勧める綱領」を保持していること
本団体の構成員は,いずれもDの説く教えを根本とし,Dに対する絶対的な帰依を培いつつ,最終目的たる衆生救済に向けた活動を行っており,本団体全体としては,依然として日本シャンバラ化計画を保持するとともに,タントラ・ヴァジラヤーナやその具体的規範であり,殺人を勧める内容を含む五仏の法則,その修行方法であるマハームドラーの修行等に関してDが説いた教えを教義として受け入れ,具体的な行動の規範としており,本団体が本件更新決定時に至るまで,「殺人を(中略)暗示的に勧める綱領」を保持している。
すなわち,原告においては,本件更新決定時に至るまで,① Dの説く衆生救済を活動の目的とし,その実現に向けた方針・計画である日本シャンバラ化計画等を保持し,その重要性を明示的に強調していること,② 衆生救済の実現に至る最速の道であるタントラ・ヴァジラヤーナを重視するとともに,両サリン事件を始めとする一連の重大事件も,衆生救済の実現をするためのタントラ・ヴァジラヤーナの実践として正しいものであったなどとする指導を行っており,一般の構成員にもそうした認識が浸透しているといった事実が認められ,Dが説いた殺人を勧める危険な教義が,本件更新決定時も「綱領」として保持されていることが裏づけられている。
以上のとおり,本団体は,本件更新決定時に至るまで,「殺人を(中略)暗示的に勧める綱領」を保持し続けているから,団体規制法5条1項4号に該当する。
【原告の主張】
1 教義が「綱領」に該当しないこと
(1) 「綱領」は,団体の立場・目的・計画・方針又は運動の順序・規範などを要約して列挙したものであり,構成員の行動規範として成り立つために,明瞭・簡潔に整理要約され,広く構成員に伝達されるために明文で定められた一定の形式が必要である。
(2) 原告の教義は,大小2000からなる膨大な説法群であり,その内容は明瞭・簡潔に整理要約されておらず,形式上も構成員に広く伝達されるための一定の形式を備えているわけでもなく,「綱領」に当たらない。
教義が「綱領」に当たるとすれば,原告において比較的その内容が要約され,構成員の行為規範となっているのは戒律であり,この戒律は,明確に不殺生を説いており,原告は,むしろ,殺人を禁ずる綱領を有しているといえる。
2 原告は殺人を「暗示的に勧める綱領」を保持したことがないこと
五仏の法則は,天界の教えとして,人間界における一般的な法則である十戒と対比する形で,教義体系上の理論として,仏教的世界観あるいは天界の神々の役割について説明したものにすぎず,現世における修行者すなわち原告の構成員の行為規範となるものではなく,現世における人間が,目的達成のために殺人を犯すことを肯定する内容でもない。
もっとも,五仏の法則について一連の刑事事件との関係が指摘されていることもあり,原告は,一般からの無用な誤解を招くことがないよう,関連する教材を回収・破棄する措置をとり,原告において五仏の法則が構成員に明示されてその行為規範となっていることはない。
3 以上のとおり,原告の教義は,殺人を暗示的に勧める内容ではなく,その形式上も「綱領」の定義に当てはまらず,原告は団体規制法5条1項4号に該当しない。
第11  争点11(団体規制法5条1項5号該当性)について
【被告の主張】
1 本団体については,第4回更新決定後も以下の事実が認められる。
(1) 両サリン事件の首謀者であるDが本団体の活動に絶対的ともいえる影響力を有し,構成員がDを絶対的帰依の対象としている。このことは,本団体の危険性を強く裏付けるものであり,この影響を平和的とする理由は見当たらない。
(2) 本団体は,両サリン事件当時,Dを頂点とした上命下服の位階制度を敷き,一般社会と隔絶した独自の閉鎖社会を構築していたことを基礎として,組織的かつ秘密裏に両サリン事件を計画準備し,敢行したものであるところ,本件更新決定時も,従前と同質の組織構造を継続して有しているほか,出家構成員を団体管理下の施設に集団居住させて,一般社会と隔絶した独自の閉鎖社会を維持している。
(3) 本団体の代表者であるDが両サリン事件についての自己の責任を否定し,何ら反省もしていない上,構成員らが本件更新決定時においても,両サリン事件等を正当化する言辞に及んでいる。
(4) 本団体は,政治上の主義を推進するための武装化の過程で,いわゆるサリン量産プラント建設事件や武器等製造法違反事件を敢行して服役した構成員を含め,両サリン事件が行われたときに構成員であった者を本件更新決定時においても多数,構成員として擁している。
(5) 本団体においては,従前と同様なマインドコントロールの手法を用いた儀式・修行が続けられている。
(6) 第4回更新決定後,本団体は,巧妙な手段による様々な勧誘活動を組織的に展開することにより構成員の総数を増加させるとともに,現金等の資産を大幅に増加させている。
(7) 本団体は,小中学生などの若年者に対し,Dの説法に関する子供向けの教材を使用して教学させたり,立位礼拝などの修行を行わせたりして,D及び同人の説くa教の教義に絶対的に従う意識を植え付ける指導を行っている。
2 以上の諸事情等に照らせば,本団体は,本件更新決定時においても,無差別大量殺人行為に関する危険な要素があり,したがって,無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があるから,団体規制法5条1項5号に該当する。
【原告の主張】
1(1) 観察処分等が対象団体に対して極めて大きな権利の制約となることを考えると,団体規制法5条1項5号の「危険性」とは,無差別大量殺人行為に及ぶ具体的現実的危険性を指すと解さなければならない。
(2) 原告に対しては,本件観察処分後,極めて多数回の立入検査がされたが,これにより,原告の施設等の中から無差別大量殺人行為の準備や計画等を示す物件等が確認されることは一切なく,同行為に及ぶ危険性の増大を未然に防止する必要がある場合や,その危険性の程度の把握が困難な場合に行うことができる再発防止処分の適用が請求されたこともない。
原告は,両サリン事件の被害者に対し,平成11年以降,一貫して,経済的補償を続けており,E派ないしb教を除いた原告単独の支払総額は10億円弱に上っており,サリン事件被害者に対する定期健康診断を毎年実施しているNPO法人リカバリー・サポート・センターへの支援も行い,総額は1950万円となっており,これらの活動は,原告が両サリン事件等について,道義的責任に基づいて真摯に誠意ある対応を行っていることを示すものである。
以上のとおり,原告の具体的な危険性は消滅している。
2 被告の主張に対する反論
(1) Dは,団体の具体的運営からは隔離された状態にあり,現実的に団体の活動に対して絶対的といえるほどの影響力を行使することはできず,仮に,信者がDの影響力を認め,Dに帰依している事実があっても,信心や信仰のみでは抽象的な危険性すらない。
(2) 位階制度が設けられているのは原告特有のものではなく宗教組織一般にみられるものであり,宗教的な活動のために自律的に社会と一定の距離を置くことを必要とするのは宗教活動としてむしろ自然なことである。
(3) Dが両サリン事件について主観的な面で自己の責任を認めているか否かは,それ自体,原告の団体としての危険性に何らの関係もなく,原告の構成員らが両サリン事件等を正当化する言辞をした事実はない。
(4) 仮に,両サリン事件当時の構成員であった者が現在も原告に所属しているとしても,それが危険性の根拠となることはない。
(5) マインドコントロールの手法がいかなるものか不明であって,Dの説法を収録したDVDの視聴等は,飽くまで個々人で修行を行い,その効率性を高める目的でされているにすぎず,通常の宗教における修行活動と性質的に異なるものではない。
(6) 人的及び物的な面で組織を拡大させることは,宗教団体として自らを維持・存続し,発展させていくことを目指す以上,当然の成り行きである。
(7) 小中学生に対して布教活動をすることは,他の宗教団体においても通常みられることであり,原告が小中学生の意思に反して教義を押し付けているなどの事情もなく,かかる活動が危険であるということはない。
3 小括
以上のとおり,原告は,団体規制法5条1項5号に該当しない。
第12  争点12(団体規制法5条4項所定の必要性の有無)について
【被告の主張】
1 必要性の要件の意義
過去に団体の活動として無差別大量殺人行為を行い,現在もその属性として危険な要素を保持している団体については,原則として,その活動状況を継続して明らかにする必要がある。
もっとも,一般論としては,対象団体が団体規制法5条1項各号のいずれかに該当しつつも,危険な要素を払拭するような特段の事情がみられ,その活動を継続して明らかにする必要がなくなっている場合には,当該団体を観察処分等に付す必要はないと考えられることから,同条4項は,このような趣旨を明らかにしたものである。
2 必要性の要件該当性
本団体は,団体規制法5条1項各号のいずれにも該当するものであるところ,危険な要素を払拭するような特段の事情は全く認められず,かえって,以下のとおり,これまで以上に,その活動状況を把握することが困難な実情にあり,引き続き活動状況を継続して明らかにする必要がある。
(1) すなわち,本団体は,第4回更新決定後も,一般社会と融和しない独自の閉鎖社会を構築している。また,本件観察処分に基づく公安調査官の立入検査の際にも,円滑な検査の遂行を妨げかねない非協力的な姿勢を組織ぐるみでとり,さらには,立入検査時における検査を不可能にするなど,公安調査官の検査に対し極めて不誠実な対応をとったことなどが認められる。そうすると,本団体については,その活動実態を積極的に明らかにしようとせず,その体質は依然として閉鎖的で透明性に欠けるというほかない。
(2) また,本団体については,団体規制法5条3項に基づく公安調査庁長官宛ての報告書において,構成員や団体の管理下にある施設あるいは資産の一部を殊更報告書に記載していないなど不正確な報告を繰り返したり,「当該団体の活動に関する意思決定の内容」(同項5号,施行令3条1号)として報告すべき団体の活動に関する不動産の購入や海外への構成員の派遣に関する事項等について報告をしていないなど,報告義務の懈怠も繰り返したりしている。このほか,対外的には,閉鎖的体質を改め,社会との融和を目指す旨主張したり,両サリン事件を反省する旨主張しているものの,実際には,幹部構成員らが,両サリン事件を正当化する発言をしたり,新たな構成員の勧誘活動において,両サリン事件は本団体によるものではなく,えん罪であるとして勧誘したりしていること,実際には本団体の活動拠点として用いる意図を有していながら,その意図を秘して活動拠点として用いるための不動産を取得していることなどからすると,本団体は,依然として欺まん的な組織体質を有すると認められる。
本団体には,上記のとおり,閉鎖的・欺まん的な組織体質が認められ,その活動状況を把握することが困難な実情にある。
(3) その上,本団体の閉鎖的・欺まん的な組織体質に起因して,依然として全国各地で地域住民が本団体に対する恐怖感,不安感を抱き,その結果,被告に対して本件観察処分の期間の更新を要請するなどしていること,また,これら地域住民の恐怖感,不安感を受け,地方公共団体において,団体規制法5条1項の観察処分を受けた団体に対する調査,命令等を行う権限等を定める条例を制定するなど独自の取組が行われている。
(4) 以上の諸事情に照らせば,本団体について,団体規制法5条4項にいう「引き続き当該団体の活動状況を継続して明らかにする必要」があると認められる。
【原告の主張】
1 必要性の要件の意義
観察処分等は,国民の基本的人権に重大な関係を有するものであり,必要な最小限度においてのみ適用すべきものであり(団体規制法2条),人権制限を最小化するためにその期間に制限が加えられており,観察処分等が長期化すれば対象団体やその構成員の負担は大きくなり,人権侵害の程度は重大になる一方,危険性や影響力は時間の経過とともに減少していくのであるから,観察処分の期間更新は,その人権侵害に見合うだけの必要性が必要である。
単に,公安調査庁に対する態度が閉鎖的であるとか欺まん的であるというだけで,人権侵害を伴う処分の長期化を認めることはできない。
2 団体規制法5条4項所定の必要性がないこと
(1) 原告に閉鎖性がないこと
ア 出家制度とは,もともと人里の喧騒から離れ,静かに自己の心を見つめることが仏教・ヨーガ等の修行においては必須条件であることに由来する制度であり,我が国や世界の他宗派にも広く存在し,何ら特異なものではなく,集団居住や食事に対する節制も瞑想修行を深めるのに資するものであり,原告が会員を管理統制しているというよりも,出家会員はすべて自らの意思で望んで自己を律する出家生活に人生を投じ,真剣に仏道修行に日々いそしんでいるにすぎない。
また,その一方で,a教が富士山麓に拠点を置いていた時代とは異なり,出家会員ですら,一般社会に働きに出たり,インターネットや携帯電話等の様々な情報環境に囲まれたりしており,社会との多様な接点が生じているし,原告には,完全に一般社会の中で生活している在家会員(出家会員の5倍近くいる。)が存在している。
イ 原告は,任意検査である立入検査に対して,円滑に検査が進行するよう協力している。公安調査庁や公安調査官は,団体規制法の調査権や報告義務の範囲を不当に拡大解釈し,違法・不当な人権侵害を伴う行動を繰り返しており,原告は,同法2条の趣旨にのっとり,原告や原告の構成員の人権侵害を最小化しようと対応しているにすぎない。
(2) 原告が組織の実態及び活動状況を偽っていないこと
報告義務についても,団体規制法の調査権や報告義務の範囲を不当に拡大解釈し濫用しようとする公安調査庁や公安調査官に対する不信感から,同法2条の趣旨にのっとり,原告や原告の構成員の人権侵害を最小化しようとする原告の防御の結果にほかならない。
(3) 以上のとおり,原告に団体規制法5条4項所定の必要性は認められない。
第3章  当裁判所の判断
第1  争点1(団体規制法の立法事実の存否)について
1  団体規制法立法に関する認定事実
前提事実に加え後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。
(1) 両サリン事件の発生等
a教の構成員は,平成6年6月及び平成7年3月,両サリン事件を敢行したところ(前提事実(1)イ),松本サリン事件は,武器としてのサリンの効果を確かめ,その使用に習熟するとともに,組織拡大の障害を排除するため,長野地方裁判所松本支部所属の裁判官や反対派住民等を含む近隣住民を殺害しようと企て,噴霧車を用いて長野県松本市内にサリンを散布し,8名を殺害するとともに,143名にサリン中毒症を負わせた事件である。
また,地下鉄サリン事件は,地下鉄霞ケ関駅を通勤で利用する警察関係職員を殺傷することによって警察組織に打撃を与えるとともに,首都中心部で大事件を起こし,大混乱を生じさせようと企て,平成7年3月20日,東京都内を走行中の地下鉄電車5本内でサリンを散布し,12名を殺害するとともに,3000名を超える者に重軽傷を負わせた事件である。
両サリン事件は,いずれもDが独裁者として統治する祭政一致の専制国家を樹立するという政治上の主義(以下「本件政治上の主義」という。)を実現するためにa教の活動として敢行されたものである。
(乙B2の1,B3の2,B6の1,E5,E11)
(2) 無差別大量殺人行為の特性
ア a教の構成員は,両サリン事件だけでなく,Dの本件政治上の主義の実現のため,あるいはこれに対する障害・妨害を排除するために,別表「刑事事件一覧表」のとおり,数多くの事件を起こしたところ,同別表記載2のF弁護士一家殺人事件のように特定人を対象とした凶悪事件だけでなく,地下鉄サリン事件後にも,不特定多数の者を殺害する無差別大量殺人行為につながりかねない,新宿駅青酸ガス殺人未遂事件や東京都庁爆発物取締罰則違反事件などもあった。
これらの犯行は,いずれも,a教の教義及びDの説法又はその指示・命令を実現するために,出家構成員を中心に秘密裏に綿密な計画が立案され,それに従って実行されたものである。
(乙B3の2,B6の1,B7の23,E2)
イ また,団体規制法施行前10年間に国外テロ組織により敢行された無差別大量殺人行為に類する事件をみても,「タミル・イーラム解放の虎」,「センデロ・ルミノソ」,「アイルランド共和軍」,「武装イスラム集団」,「ハマス」,「真のIRA」,「ダゲスタン解放軍」等,同一組織により繰り返される傾向が顕著であり,これによって多数の死傷者が生じている。
そして,その計画・準備は秘密裏に行われるため,事前に具体的な犯行日時・場所等が把握できた例はほとんどなく,こうした特性は,平成12年以降に発生したテロ事件,具体的には,「アルカイダ」による平成13年9月11日の米国同時多発テロ事件,アルカイダと密接な関係を持つ「ジェマー・イスラミア」による平成14年10月12日のインドネシア・バリ島でのディスコ等爆破事件,「ハマス」等により頻繁に繰り返されるテロ事件などからも明らかである。 (乙E1,E3)
(3) 団体規制法の制定
団体規制法案は,第146回国会に提出されたところ,当時のG法務大臣は,無差別大量殺人行為には,再発を防止することが困難であり,反復性が強いという特性があることから,過去に無差別大量殺人行為を行った団体について,現在も危険な要素を保持していると認められる場合に,実効性のある規制を行うことが必要であるとの趣旨説明を行った(乙E4)。
団体規制法は,平成11年12月7日に制定された。
2  検討
上記認定事実(2)によれば,団体が行う無差別大量殺人行為は,組織的かつ秘密裏に計画,準備されるため,捜査機関による犯行の事前把握が困難であり,犯行の実現可能性が高く,また,団体が一定の目的のためにこれを行う場合には,反復して行われる可能性も高いということができる。そして,無差別大量殺人行為が行われれば,不特定多数者の生命身体に対し極めて甚大な被害を及ぼすものであって,過去に無差別大量殺人行為を行った団体について,現在も危険な要素を保持していると認められる場合には,その危険の実現を迅速かつ適切に防止するため,団体の活動状況を明らかにし,無差別大量殺人行為の再発を防止するために必要な規制措置を定め,もって国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保を図ることが必要であると解される。上記認定事実(3)及び団体規制法1条によれば,同法は,上記の趣旨を立法理由として制定されたものであって,その立法理由は正当なものというべきである。
団体規制法は,原告が主張するような,単に住民の漠然とした不安感・恐怖感を解消することを目的とした法律であるとは解されないし,現在において立法の必要性が失われているということもできない。また,下記第2のとおり,団体規制法は,a教のみを適用対象としたものではなく,a教が無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の程度について指摘する原告の主張は当を得ない。
以上のとおり,団体規制法が立法理由を欠いた違憲な法律であるということはない。
第2  争点2(平等原則違反の有無)について
1  上記第1の1の認定事実によれば,団体規制法が両サリン事件を契機として立法されたものであり,同法1条の文言や制定附則2項が「この法律の施行の日から起算して5年ごとに,この法律の施行状況について検討を加え,その結果に基づいて廃止を含めて見直しを行うものとする。」と規定することなどにも照らせば,同法が,事実上,a教を対象とした臨時措置法的性格を有することは否定し難い。
しかし,団体規制法の文言をみても,a教のみを適用対象とするという規定はなく,同法1条は,無差別大量殺人行為の手段につき,「例えばサリンを使用するなどして」と規定しており,あくまでサリンの使用は例示にとどまるし,同法4条1項の無差別大量殺人行為の対象の限定も,同法施行日から起算して10年以前にその行為が終わったものだけが除外されているにすぎず,同法施行後に行われた無差別大量殺人行為は除外されていない。制定附則2項も,無差別大量殺人行為に関する種々の状況いかんにかかわらず,a教あるいはその後継団体が全く存在しなくなった場合には,直ちに団体規制法を廃止する趣旨のものとはいえない。
そうすると,団体規制法が処分的法律であって,一般的・抽象的法規範に該当しないということはできない。団体規制法が憲法14条,B規約2条及び26条に違反するということはできない。
2  原告は,仮に団体規制法が合憲として許容されるとすれば,その根拠はいわゆる緊急避難の法理に求められると主張するが,上記のとおり,同法が憲法に違反するとはいえず,前提を欠く。
上記第1の2で説示したとおり,団体が行う無差別大量殺人行為には密行性,高い実現可能性及び反復可能性という特質があり,無差別大量殺人行為を犯す高度の危険性が認められなければ,団体規制法を適用することができないというのでは,同法の目的を達することはできないし,憲法上,そのような限定解釈が要求されると解することもできない。
また,原告が指摘する法益優越性の要件についても,団体規制法により保護される法益が,a教の関連施設周辺の住民が抱いている漠然とした不安感や理由のない恐怖感のみであるということはなく,無差別大量殺人行為が不特定多数者の生命身体に対し極めて甚大な被害を及ぼすことに鑑みれば,過去に無差別大量殺人行為を行った団体について,現在も危険な要素を保持していると認められる場合に,必要な規制措置を設けることは必要かつ合理的なものである。
以上のとおり,原告の主張は採用できない。
第3  争点3(信教の自由の侵害の有無等)について
1  信仰を告白しない自由について
(1) 団体規制法5条3項1号は,観察処分等(同条1項の観察処分及び同条4項の期間更新決定)を受けた団体に対し,公安調査庁長官に当該団体の構成員の氏名及び住所を報告することを義務付けるところ,これは,団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行い,当該団体が現在も危険な要素を保持していると認められる場合に,人的要素という側面からその活動状況を明らかにし,当該団体が無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の程度を把握するための一要素とする趣旨であると解される。
団体規制法による規制及び規制のための調査は,同法1条の目的を達成するために必要最小限度においてのみ行うべきであって,いやしくも権限を逸脱して,思想,信教,集会,結社,表現及び学問の自由並びに勤労者の団結権,団体行動権その他憲法の保障する国民の自由を不当に制約するようなことがあってはならないとされること(同法3条1項)にも照らせば,当該団体が宗教団体であったとしても,その構成員の氏名及び住所の報告は,現在も無差別大量殺人行為の実行に関連する危険な要素を有する当該団体の活動状況を明らかにさせるためのものであって,当該団体やその構成員の内心の信仰の自由に容かいするものではないことからすれば,団体規制法5条3項1号自体が,宗教団体である当該団体の構成員の信仰の告白を強制するものとはいえないし,宗教団体の沈黙の自由を不当に侵害するものともいえない。
したがって,団体規制法5条3項1号及び同号を観察処分等を受けた宗教団体に適用することが憲法20条1項前段,B規約18条2項に違反するということはできない。
(2) なお,原告は,本件観察処分等に伴い,① 2名の公安調査官が,平成21年3月上旬に,香川県の原告の在家会員の女性の実家に来訪し,女性の入信の事実が両親に暴露されて,両親から棄教を迫られたこと,② 公安調査官が,平成12年3月下旬頃,原告の在家会員が勤務していた滋賀県内の人材派遣会社の事務所を訪問し,原告との関係を暴露した結果,当該会員が解雇されたことがあり,これらの公安調査官の行為が,原告会員らの信仰を告白しない自由を侵害したと主張するが,このことをもって,団体規制法の規定や本件更新決定の違憲・違法を論じることはできない(別途,公安調査官の行為に国家賠償法上の違法があるか否かの問題として捉えられるべきである。)。
2  宗教的行為及び宗教的結社の自由について
(1) 憲法20条の合憲性の判断基準
ア 憲法20条は,1項で信教の自由を何人に対してもこれを保障すること,2項で何人も宗教上の行為,祝典,儀式又は行事に参加することを強制されないことを規定しており,重要な基本的人権の一つとして信教の自由を保障しているが,これが内心における信仰の自由にとどまる限りは絶対的な保障を受け得るものの,それにとどまらない外部的行為すなわち宗教上の行為や宗教上の結社については,絶対無制限のものではなく,公共の福祉の観点から必要かつ合理的な制約を受けるものと解するのが相当である(最高裁昭和36年(あ)第485号同38年5月15日大法廷判決・刑集17巻4号302頁参照)。
そして,信教の自由を制約する法律の規定が公共の福祉による必要かつ合理的なものといえるかどうかは,当該法律について,① 規制目的の内容と規制の必要性,② 規制される自由の内容及び性質,③ 具体的な規制の態様及び程度,④ 規制手続の内容等を比較較量して決するべきである(最高裁平成8年(ク)第8号同年1月30日第一小法廷決定・民集50巻1号199頁参照)。
イ これに対し,原告は,規制目的の審査基準としては,制限の対象となっている行為と害悪発生との間の関連性の程度について危険の明白性と現在性とが具体的裏付けをもって示されることが必要であり(明白かつ現在の危険の基準),規制手段の審査基準としては,より制限的でない他の選び得る手段の有無の検証を経ることが必要である(必要最小限度の基準)と主張する。
上記アにいう比較較量に際しては,必要最小限度の基準についての観点から規制手段の相当性を検討すべきものではあるが,他方,明白かつ現在の危険の基準については,他の者の生命身体等の重大な法益を保護する観点から規制を要する場合もあるところ,前記第1でも検討したように無差別大量殺人行為が行われれば,不特定多数者の生命身体に対し極めて甚大な被害を及ぼすものであって,団体が行う無差別大量殺人行為には密行性とこれによる高い実現可能性及び反復可能性の特性があることに鑑みると,信教の自由が精神的自由に関する基本的人権の一つであることを考慮しても,過度に厳格な審査基準であるといわざるを得ず,採用することができない。
(2) 団体規制法の目的及び観察処分等の内容等
ア 団体規制法の規制目的
団体規制法は,当該団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体につき,現在も無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素を有している場合に,必要な処分を行って,迅速かつ適切に対処することを目的としたものであり(同法1条),その立法の必要性があること等は,前記第1で検討したとおりである。
そして,観察処分等の対象が宗教団体であったとしても,団体規制法は,過去に当該団体の役職員や構成員が無差別大量殺人行為を団体の行為として行った団体で,現在も無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素を有しているという専ら宗教団体の世俗的側面だけに着目して,無差別大量殺人行為に及ばぬよう専ら世俗的目的から観察処分等の規制を及ぼすものであり,当該団体や信者の信教の自由に介入する目的のものとはいえない。
イ 観察処分等の内容
団体規制法は,上記目的を達成するための規制手段として,当該団体の活動状況を継続的に明らかにさせるための観察処分等(5条等)と当該団体の無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の増大を防止する必要があると認めるに足りる事由があるとき,又は観察処分等中の団体について報告義務違反若しくは立入検査拒否等が行われ,無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の程度の把握が困難であると認められるときは,当該団体に対し,一時的に活動を停止させる再発防止処分(8条等)を設けている。
このうち,観察処分等は,3年を超えない期間を定めて公安調査庁長官の観察に付する処分であって,この観察処分等によって課される当該団体の義務は,① 当該団体の役職員の氏名,住所及び役職名並びに構成員の氏名及び住所,当該団体の活動の用に供されている土地・建物の所在・地積・規模・用途,当該団体の資産及び負債等の当該団体の活動に関する一定の事項の報告義務と② 当該団体の所有又は管理する土地・建物への立入り,設備,帳簿書類等の検査の受忍義務であり,当該団体の結成や活動そのものを制約するものではない。
以上のとおり,当該団体が宗教団体であったとしても,観察処分等による報告事項や立入検査対象物件は,当該団体や信者個人の宗教上の活動そのものを対象としているわけではなく,無差別大量殺人行為の実行に関する危険な要素を保有している当該団体の専ら世俗的側面における活動状況を解明するものとして行われるものである。
ウ 観察処分等の手続
公安調査庁長官は,観察処分等については,準司法機関(公安審査委員会設置法1条,3条ないし5条参照。委員長及び委員の任命は国会同意事項となっている。)である公安審に対して,当該処分の請求をすることとされており,その際には,請求に係る処分の内容,根拠となる法令の条項,請求の原因事実を記載した処分請求書(証拠書類等を添付しなければならないとされている。)を提出しなければならない(団体規制法15条,26条1項,2項)。
公安審は,観察処分請求があった場合,公開の意見聴取手続を実施しなければならず,当該団体の役職員や構成員及び代理人の口頭意見陳述権や証拠書類等の提出権が認められており,その上で,観察処分請求の当否を判断し,観察処分請求に対する決定をしなければならない(団体規制法16条,20条,22条。なお,期間更新請求があった場合は,同法26条3項により,意見聴取手続ではなく,陳述書及び証拠書類等を公安審に提出する意見陳述の機会が当該団体に付与される。)。
また,公安審は,観察処分等の必要がなくなったと認められるときは,これらの処分を取り消さなければならない(団体規制法6条)。
(3) 検討
以上を前提に,団体規制法の憲法20条違反の有無を検討する。
ア まず,観察処分等の対象が宗教団体であったとしても,上記でみたとおり,これは,専ら当該団体の世俗的側面を対象とし,かつ,専ら世俗的目的によるものであって,宗教団体や信者の精神的・宗教的側面に容かいする意図によるものではない。団体規制法が観察処分等によって保護しようとする利益は,国民の生命・身体の安全を始めとする国民生活の平穏を含む公共の安全であり,極めて重要な公益を保護することを目的とする。前記第1でも検討したように,現に我が国で両サリン事件のような一般市民に極めて重大かつ深刻な被害をもたらした無差別大量殺人行為が発生していることや国際的にも一般市民を犠牲とした無差別大量殺人行為が断続的に発生していることにも鑑みれば,観察処分等による規制は,その必要性が高いといえる。
イ 次に,観察処分等の規制措置は,現在も無差別大量殺人行為の実行に関連する危険な要素を保有している団体に対して,継続的に役職員や構成員の氏名・住所等の専ら世俗的側面に関する一定の事項を報告させ,当該団体の施設等への立入検査を受忍させるものであり,上記の危険な要素を保有する団体の活動状況を明らかにさせるには必要なものであり,かつ,規制の程度も合理的な範囲内にとどまるものである。
当該団体の構成員の氏名及び住所を報告することを義務付ける団体規制法5条3項1号が,宗教団体である当該団体の構成員の信仰の告白を強制するものではないことは上記1で検討したとおりである。また,観察処分等に基づく報告義務や立入検査が,信者の信仰生活に影響を与えることがあるとしても,それはあくまで間接的かつ事実上のものにとどまる。
ウ 観察処分等の手続は,調査機関・請求者側の公安調査庁とは別個の組織である準司法機関的性格を有する公安審の下で,対象団体の意見表明,証拠提出の機会等を付与するなど団体規制法第3章の手続規定に基づいて行われ,その手続の適正も担保されているということができる。
エ 以上からすれば,団体規制法の定める観察処分等は,無差別大量殺人行為から国民の生命・身体の安全を始めとする国民の生活の平穏を含む公共の安全を保護するという公共の福祉の観点から行われる制約であって,観察処分等が宗教団体を対象とするものであっても,当該団体の結成や活動そのものを制約するものではなく,当該団体や構成員の精神的・宗教的側面に容かいするような性質のものではなく,また,観察処分等を行うための手続の適正も担保されていることからすれば,必要かつやむを得ないものであって,合理的な制約であるということができるから,観察処分等を定めた同法が憲法20条及びB規約18条に違反するということはできない。
第4  争点4(プライバシー権侵害の有無)について
1  合憲性判断基準
憲法13条は,国民の私生活上の自由が,国家権力の行使に対しても保護されるべきことを規定しているものということができ,原告が指摘する個々の信者の私物についてもこれが写真撮影されたり記録されたりするとその利用方法次第では個人の私生活やプライバシーが侵害される危険性があるから,これらの私物について同意なく国家権力により写真撮影されたり記録されたりすることのない利益ないし自由や居住空間に同意なく国家権力に立ち入られることのない利益ないし自由も個人の私生活上の自由の一つとして,憲法13条により保護されるものと解される。しかし,上記のような利益ないし自由も無制限なものではなく,公共の福祉のために制限を受けることは,憲法13条の文言から明らかである。
そして,公共の福祉のため必要な制限として相当なものか否かは,立法目的に十分な合理性,必要性が認められるか否か,上記利益ないし自由に対する制約が一般的に許容される限度を超えない相当なものか否かを考慮して判断すべきものと解される(最高裁昭和40年(あ)第1187号同44年12月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁,最高裁平成2年(あ)第848号同7年12月15日第三小法廷判決・刑集49巻10号842頁,最高裁平成6年(あ)第687号同9年11月17日第一小法廷判決・刑集51巻10号855頁等参照)。
2  団体規制法の定める立入検査制度
(1) 団体規制法は,公安調査庁長官が,観察処分等を受けている団体の活動状況を明らかにするため,公安調査官に必要な調査をさせることができるとするほか(7条1項,29条),特に必要があると認められるときには,上記団体が所有又は管理する土地又は建物に立ち入り,設備,帳簿書類その他必要な物件を検査させることができるとする(7条2項,29条)。また,同法は,警察庁長官が,再発防止処分の請求に関して意見を述べるために必要があると認められるときには,都道府県警察に必要な調査を行うことを指示することができるとするほか(14条1項),当該指示を受けた都道府県警察の警視総監又は警察本部長が,特に必要があると認められるときには,あらかじめ警察庁長官の承認を得て,当該都道府県警察の職員に立入検査をさせることができるとする(14条2項)。
(2) 団体規制法は,同法による規制のための調査は,同法1条に規定する目的を達成するために必要な最小限度においてのみ行うべきであって,いやしくも権限を逸脱して,思想,信教,集会,結社,表現及び学問の自由等を不当に制限することがあってはならないとし(3条1項),立入検査の権限は,犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならないとする(7条4項,14条7項)。
(3) 団体規制法は,立入検査を拒み,妨げ,又は忌避した者は,1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処するとする(39条)。
3  検討
(1) これまで検討してきたように,団体による無差別大量殺人行為には,密行性,高度の実現可能性及び反復可能性があり,犯行の事前把握が困難であり,多数の生命・身体に危害が加えられるおそれが高いという特性があるのに対し,このような無差別大量殺人行為の危険から国民の生活の平穏を含む公共の安全を保護することは,極めて重要な公益であるということができる。
(2) 上記の重要な公益を達成するためには,観察処分等を受けた団体について,当該団体の無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素の程度等を含め当該団体の活動状況を常に把握しておく必要があり,そのため,団体規制法は,公安調査官による任意調査権の行使や団体の報告義務の履行のみでは不十分な場合もあることに鑑み,公安調査官による立入検査を認めたものと解される。また,都道府県警察職員による立入検査も,公共の安全及び秩序維持に責任を持つ警察庁長官(警察法1条)が,当該団体の無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素の程度等,当該団体の活動状況を的確に把握し,団体規制法12条2項,3項に基づき公安調査庁長官に対して適切な意見を述べられるようにするために認められたものであると解される。
したがって,団体規制法が定める立入検査は,同法の定める極めて重要な公益を達成するために合理的かつ必要不可欠なものであるということができる。
加えて,上記で述べた無差別大量殺人行為の特性からすると,迅速かつ適切な規制措置が必要であり,上記の危険な要素の有無に関し,検査対象物を迅速かつ適切に調査する必要もあり,緊急性の度合いも高いものと認められる。
(3) 団体規制法7条2項や14条2項に定める立入りが許されるのは,当該団体が所有し又は管理する建物であり,本来的に構成員の住居に立ち入ることは予定されていないから,個人の私生活上の自由を通常侵害することはない。また,検査の対象物も当該団体が所有し又は管理する設備,帳簿書類その他必要な物件であり,個人の人格,思想,信条,良心等の内面そのものを調査の対象とすることは予定されていない。そうすると,立入検査は,規制手段としての相当性を欠くものではないというべきである。
この点,立入りの対象となる当該団体の所有し又は管理する土地又は建物には,当該団体の構成員の私物である可能性がある物件も存在することがあろうが,立入検査時において,それが当該団体の所有又は管理する物であるか否かを直ちに判断することは容易ではないことも想定され,当該物件が構成員の私物であると申し立てているということのみをもって,検査の対象とすることができないとすれば,当該団体が容易に必要な検査を免れることにもなりかねない。当該物件が,当該団体の所有し又は管理する土地又は建物に存在するという以上,構成員の純然たる私生活上の利益にかかわるものとはいえないのであるから,同土地又は建物に,当該団体の構成員の私物である可能性がある物件も存在する可能性をもって,規制手段としての相当性を欠くということはできないというべきである。
(4) 以上によれば,団体規制法の立入検査制度は,公共の福祉のため合理的かつ必要なものであり,一般的に許容される限度を超えない相当なものであって,これが憲法13条及びB規約17条に違反するということはできない。
第5  争点5(適正手続違反の有無等)について
1  憲法31条の合憲性の判断基準
憲法31条の定める法定手続の保障は,直接には刑事手続に関するものであるが,行政手続については,それが刑事手続ではないとの理由のみで,その全てが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。
しかしながら,同条による保障が及ぶと解すべき場合であっても,一般に,行政手続は,刑事手続とその性質においておのずから差異があり,また,行政目的に応じて多種多様であるから,行政処分の相手方に事前の告知,弁解,防御の機会を与えるかどうかは,行政処分により制限を受ける権利利益の内容,性質,制限の程度,行政処分により達成しようとする公益の内容,程度,緊急性等を総合較量して決すべきものであって,常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である(最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁(以下「最高裁平成4年大法廷判決」という。)参照)。
団体規制法は,観察処分等の手続について行政手続法第3章を適用しないものとし(団体規制法33条),団体規制法第3章において規制措置の手続を定めるところ,行政処分の相手方に対し,いかなる内容・手続で事前の告知,弁解,防御の機会を与えるかについても,行政処分により制限を受ける権利利益の内容,性質,制限の程度,行政処分により達成しようとする公益の内容,程度,緊急性等を総合較量して決すべきものであって,憲法31条は,常に一定の内容・手続が定められていることを必要とするものではないと解するのが相当である。
2  団体規制法上の規制措置の手続の概要
(1) 観察処分等は,いずれも調査機関である公安調査庁長官が自ら行うのではなく,公安調査庁長官の請求を受け,独立して職権を行使する委員長及び委員6名をもって組織される準司法機関である公安審が行うものとされている(団体規制法12条1項,5条1項,4項,公安審査委員会設置法4条)。
(2) 公安審は,観察処分の請求があったときは,① 被請求団体から原則として公開の手続で意見聴取を行うこととされており(団体規制法16条),② そのために公安審は,あらかじめ,意見聴取を行う期日及び場所を定め,その期日の7日前までに,被請求団体に対し,〈ア〉 公安調査庁長官の請求に係る処分の内容及び根拠となる法令の条項,〈イ〉 請求の原因となる事実,〈ウ〉 意見聴取の期日及び場所を通知することとされている(同法17条)。③ また,観察処分請求に係る意見聴取の期日の冒頭において,公安調査庁の職員に請求に係る処分の内容及び根拠となる法令の条項並びに請求の原因となる事実を当該期日に出頭した者に対し説明させなければならないとされている(同法19条2項)。
他方,被請求団体の役職員,構成員及び代理人は,5人以内に限り意見聴取の期日に出頭して,意見を述べ,証拠書類等を提出することができ(団体規制法20条1項。なお,意見聴取の期日の出頭に代えて,陳述書及び証拠書類等を提出することもできる。),意見聴取を指揮する公安審の委員長又は委員の許可を得て公安調査庁の職員に対し質問をすることもできる(同法20条2項)。
なお,再発防止処分の請求に係る意見聴取の手続は観察処分の請求に係る意見聴取の手続と同様である(団体規制法12条1項前段,16条)。
(3) 公安審は,期間更新の請求があったときは,① 被請求団体に対し,意見陳述の機会(被請求団体は,陳述書及び証拠書類等を提出する方法により意見陳述を行うものとされている。)を付与するものとされており(団体規制法26条3項),② 陳述書の提出期限の7日前までに,被請求団体に対し,〈ア〉 更新が予定される処分の内容及び更新の根拠となる法令の条項,〈イ〉 更新の理由となる事実,〈ウ〉 陳述書の提出先及び提出期限を通知しなければならないとされている(同法26条4項)。
3  検討
(1) 観察処分等により制限される権利利益の内容・性質や制限の程度は,過去に団体の活動として,役職員又は構成員が,無差別大量殺人行為を行った団体で,現在も無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素を有する団体の活動状況等一定の事項について報告義務を課したり,団体や構成員らに立入検査受忍義務を課して,団体の土地・建物に立ち入らせ,設備,帳簿書類等必要な物件を検査したりすることにより,直接的には,構成員のプライバシー権等の私生活上の自由等を侵害し得るし,間接的には,構成員や団体の活動を萎縮させ得る効果もないではないから,宗教的活動の自由や宗教的結社の自由も侵害し得る。
他方,観察処分等により達成しようとする公益の内容・程度としては,前記第1でも検討したように,国民の生活の平穏を含む公共の安全であり,団体による無差別大量殺人行為には,密行性,高度の実現可能性,反復可能性があるという特性があり,多数の生命・身体に危害が加えられるおそれが高いから,その安全の確保は極めて強く要請されているということができる。
以上を総合較量すれば,観察処分等の要件充足性の判断及び処分を行う機関が,裁判所でなければならないということはできず,上記2記載の手続保障を定める団体規制法が憲法31条に違反しているということもできない。
(2)ア 団体規制法17条1項各号の事項を当該団体に伝えるのが意見聴取期日の7日前であるという点については,聴聞の通知の方式に関する規定であるが,行政手続法15条1項は,一定の事項を聴聞期日までに不利益処分の名宛人に通知するのは「相当な期間」をおいてしなければならないとしているところ,この期間の長さの相当性の程度も処分の内容・性質によって千差万別であると解されており,1,2週間程度であることが多いとされていることと対比しても,著しく短いとはいえず,手続保障に欠けるということはできない。
イ 次に,意見聴取手続において証拠閲覧権が規定されていない点や観察処分の期間更新決定の際には口頭意見陳述権が規定されていない点についても,証拠の閲覧権を認めなくても,請求の原因となる事実や更新の理由となる事実を事前に相手方に知らせることによって防御権を行使することは十分可能であり,手続保障に欠けることはないといえるし,観察処分の期間更新の際に口頭意見陳述権を認めなくても,期間更新決定は,先行する観察処分との継続性が前提となっている処分であるから,先行する観察処分における手続内容に基づき,陳述書や証拠書類等を提出することにより適切に防御権を行使することは十分可能というべきであるから,いずれについても手続保障に欠けるところはないといえる(なお,原告は,期間更新決定について,口頭意見陳述権がないのは,同法がa教という特定の団体のみを対象としていることと無関係ではないなどと主張しているが,前記第1で検討した立法経過においても原告主張のような事実は認められないから,原告の主張は理由がない。)。
ウ その他,より権利侵害の程度が強い再発防止処分についても観察処分と同じ意見聴取手続にすぎない点については,確かに,観察処分より制約される権利利益の内容,性質,制限の程度も再発防止処分の方がより高まっていることは否定できないものの,他面において,再発防止処分は観察処分よりその危険の要素が増大している場合に関する手続であるから,達成すべき公益の内容や程度,緊急性等も観察処分と比べてより高まっているということができるところであり,そうした中で,観察処分と同等の意見聴取の手続を認めたものというべきであり,手続保障に欠けるということはない。
(3) 団体規制法5条1項2号が過度に広汎な規制かどうかについて検討すると,前記第1のとおり,過去に無差別大量殺人行為を行った団体について,現在も危険な要素を保持していると認められる場合には,その危険の実現を迅速かつ適切に防止するため,団体の活動状況を明らかにし,無差別大量殺人行為の再発を防止するために必要な規制措置を定め,もって国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保を図ることが必要であると解される。「当該無差別大量殺人行為に関与した者の全部又は一部が当該団体の役職員又は構成員である」(団体規制法5条1項2号)場合には,当該団体が現在も危険な要素を保持していると認められるというべきである。「構成員」とは,当該団体への加入者と解され,「関与した」とは,無差別大量殺人行為を実行した者,あるいはこれを教唆又は幇助した者と解され,同号が過度に広汎な規制を行うものとはいえず,その要件も不明確なものであるとはいえない。
したがって,団体規制法5条1項2号が憲法31条に違反しているとはいえない。
第6  争点6(令状主義違反の有無)について
1  合憲性判断基準
憲法35条の規定は,本来,主として刑事手続における強制につき,それが司法権による事前の抑制の下に置かれるべきことを保障した趣旨のものであるが,当該手続が刑事責任追及を目的とするものではないとの理由のみで,その手続における一切の強制が当然に上記規定による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。しかしながら,行政手続は,刑事手続とその性質においておのずから差異があり,また,行政目的に応じて多種多様であるから,行政手続における強制の一種である立入検査に全て事前の司法審査を要すると解するのは相当ではなく,当該立入検査が,公共の福祉の維持という行政目的を達成するために欠くべからざるものであるかどうか,刑事責任追及のための資料収集に直接結び付くものであるかどうか,また,強制の程度,態様が直接的なものであるかどうかなどを総合判断して,事前の司法審査の要否を決めるべきである(最高裁昭和44年(あ)第734号同47年11月22日大法廷判決・刑集26巻9号554頁,最高裁平成4年大法廷判決参照)。
2  検討
(1) 上記第4で検討したとおり,団体規制法の定める立入検査は,国民の生活の平穏を含む公共の安全を保護するという極めて重要な公益を達成するために必要不可欠なものということができる。
(2) 立入検査は,団体規制法が定める行政目的を達成するために認められたものであって,刑事責任の追及を目的とするものではなく,同法も,立入検査の権限は,犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならないと規定していることからすると(同法7条4項,14条7項),当該団体や構成員の刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結び付く作用を一般的に有しているとは解されない。
また,団体規制法は,立入検査の実施に際し,当該団体の構成員らが立入り又は検査を拒み,妨げ又は忌避した場合にこれらの妨害や抵抗を直接排除する直接強制を公安調査官や都道府県警察職員に認めておらず,このような立入検査拒否等の行為に対して同法39条の刑罰を課することによって,間接的心理的に立入検査の受忍を強制するにとどまるものであり,この強制の程度が実質的に立入検査受忍義務者に対する直接的物理的な強制と同視すべき程度にまで達しているとも解されない。
(3) 立入検査は,観察処分等を受けている団体に対して行われるものであるところ,観察処分等は,準司法機関である公安審が,意見聴取手続を踏まえて,3年を超えない期間を定めて行うものであり,慎重な審査が予定されている。また,公安調査庁長官は,立入検査に先立って,対象となる土地又は建物の所在及び予定日を公安審に通報し,立入検査終了後にその結果を通報するものとされている(施行規則2条)。
(4) 以上によれば,立入検査について,裁判官の令状や公安審による許可が必要とされていないことが,憲法35条に違反するとか,その法意に反するということはできない。
第7  認定事実
前提事実に加え後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。
1  a教の沿革・組織・活動実態等
(1) a教の沿革及び組織規模等
ア a教は,Dを教祖・創始者として活動を開始して,徐々に組織を拡大させ,昭和62年頃には,出家制度を導入した。出家信徒(サマナ)とは,自己の全財産を「布施」と称してa教に寄進し,現世との関わりを一切断った上で,Dに絶対的に帰依して修行するとともに「ワーク」と称してa教のための無償労働に従事し,同施設内で起居する者である。他方,在家信徒とは,各自の居宅からa教の支部・道場などに通い,出家信徒の指導の下に,その教義を学び修行する者である。
a教は,平成元年8月29日,宗教法人「a教」の設立の登記をし,平成6年6月頃までに,国内に合計24か所の支部・道場及び附属医院を設け,構成員数を出家信徒約1000人,在家信徒約1万人に増大させるなどして,その勢力を拡大した。
(前提事実(1)ア,乙E5,E10)
イ a教は,構成員に対し,修行の進度,精神の発達度に応じて心の成熟・霊性の高さの度合いを示すとする「ステージ」という独特の位階(最終解脱者でDの位階である尊師を頂点とし,正大師(大乗のヨーガを成就したと認定された者),正悟師(マハームドラーを成就したと認定された者),師(クンダリニー・ヨーガを成就したと認定された者)などの称号があり,平成6年7月以降改正されている。)を与え,この位階制度により,Dを頂点として位階の高い者が位階の低い者を支配・管理する上命下服の組織構造を有していた。a教は,このような組織構造の下,出家信徒を教団管理下の施設に集団居住させ,「お供物」と称する食事をとらせたりするなどして(出家制度),構成員を支配・管理し,一般社会と隔絶した独自の閉鎖社会を構築していった。
なお,地下鉄サリン事件当時,尊師に次ぐ正大師の位階にあった者は,E,Dの妻であるH(改名し,本件更新決定時にはH1。以下「H」という。乙B7の27),Dの三女であるI(以下「I」又は「三女」という。),A14及びA10の5名のみであった。(乙B3の77・78,B5の5,B7の1・2,E26,E137,E187,E189)
(2) a教の教義(乙B2の1,B6の1,E5,E10)
a教の教義要旨は,創始者であるDの説く教えを根本として,シヴァ神の化身であるDに対する絶対的な帰依を培った上,自己の解脱・悟りに到達する道である小乗(ヒナヤーナ)を修めるとともに,衆生の救済を主眼とする道である大乗(マハーヤーナ)及び衆生救済の最速の道である秘密金剛乗(タントラ・ヴァジラヤーナ)の各修行を実践するというものである。
Dは,上記の教えの中でも,タントラ・ヴァジラヤーナを最上位に位置付け,これを実践する上での重要な具体的規範として五仏の法則があり(この中には,悪業を積んでいる魂は早く命を絶つべきであるとするアクショーブヤの法則や真理の実践を行う者にとっては結果が第一であり,結果のためには手段を選ばないとするアモーガシッディの法則がある。乙E205),「例えばグルがそれを殺せという時は,例えば相手はもう死ぬ時期にきている。そして,弟子に殺させることによって,その相手をポアさせる。一番いい時期に殺させるわけだね。」(昭和62年1月4日の説法。乙B6の12,E6,E206),「わたしたちは,(中略)すべての魂を救済したいと考える。(中略)しかし,時がない場合,それをセレクトし,必要のない魂を殺してしまうこともやむなしと考える智慧ある者,あるいは徳のある魂がいたとしてもそれはおかしくはない。」(平成5年4月18日の説法。乙E7)などと,真理のため,また,教祖であるDの指示ならば殺人も許されることを説き,死者の魂は「ポア」ないし「ポワ」されて高次の精神世界へ転生するなどと説いた。(乙B6の24)
このDが説くタントラ・ヴァジラヤーナの特色は,たとえ自己は悪業を積むことになっても他に対して善業となるならば,それを最高の実践課題として実践する点にあり,グルであるDへの絶対的な帰依が必要であるとし,その実践として,苦しみの限界に自己を置き,そこにおいて一切乱れない心を形成する修行であるマハームドラーの修行を行い,心をグルと合一させることが重要であるとされている。(乙B6の21・22・25ないし31・49・53)
そして,両サリン事件に関与したa教の構成員らが,マハームドラーの修行の名の下に犯行を指示され,Dの説く衆生救済のため,タントラ・ヴァジラヤーナ及びその具体的規範である五仏の法則に則って犯行を実践したとおおむね供述していること(乙B6の13・23・32ないし35,E82,E112,E156,E209ないし211,E213,E214)からも,これらのa教の教義は,両サリン事件の実行に際して構成員らの行動規範となっていた。
(3) a教の政治上の主義とその発現(乙B2の1,B6の1,B7の3,E5,E10)
ア a教は,その最終目的である衆生救済を実現するためには,世界をa教の教義に基づいた社会であるシャンバラ(理想郷)と化す必要があり,その第一段階として日本のシャンバラ化を実現するという日本シャンバラ化計画を打ち出し,布施集めや勢力拡大を図った。同計画は,① 東京,大阪,名古屋,福岡,札幌,仙台,金沢の7つの主要都市にa教の支部を開設し,② これら7つの主要都市に総本部道場を建設し,a教の教義の布教・実践の拠点とし,③ 真理に基づいた生活をすることができるa教の村「△△」を建設するというものであった。(乙B6の6)
しかし,Dは,平成元年頃には,「わたしが政治に立とうとしたのも,宗教だけでは済度するスピードが遅いと。だから政治的な力を使って,何とか早くシャンバラ化計画を進めたい」(平成元年9月12日のDの説法。乙B6の10),「純粋な宗教活動のみでは,様々な社会問題は解決されないということ。それゆえ,根本的に政治と宗教は切り離せない。(中略)徳によって政を行い,地上に真理を広める転輪聖王(注:インド神話において世界を統一支配する帝王の理想像,世界の政治的支配者を指す。)としての役割を果たしていきたい。」(平成元年12月25日,a教出版発行「f」No.27・147頁)などと説き,政治の力を使って上記のDの説くところの衆生救済を実現し,Dを独裁者とする祭政一致の専制国家を樹立するという政治上の主義(本件政治上の主義)を有するに至った(乙E208)。
イ Dは,平成元年8月頃,「g党」という名称の政治団体を結成し,Dを始めとするa教構成員合計25名が,平成2年2月18日施行の衆議院議員総選挙に立候補したが,いずれも落選したことや全国各地でa教の進出に反対する住民運動が起こったこともあり,社会に対する反発を強めるようになり,同年頃には,現行民主主義制度内で政治的支配力を強め日本シャンバラ化計画を実現することは不可能であり,本件政治上の主義の実現のためには,武力によって我が国の現行国家体制を破壊し,a教の活動に反対する勢力は真理の実践を妨げる悪業を積む者であるからこれを抹殺するしかないとの認識を有するに至り,「a教は,やはり,最終的には軍事力を有することになるんだろう。(中略)a教の教団は,つまり単なる宗教団体ではなく,世界統治の機構に変化する時期がくると予言されている。」(平成5年1月31日のDの説法。乙E6),「1997年に日本の王になる,2003年までには世界の大部分はa教の勢力になると。また真理に仇なす者はできるだけ早く殺さなければならない。」(平成6年2月下旬頃のDの言動。A15の公判廷での供述。乙E113)などと説き,本件政治上の主義を実現するための手段として,ボツリヌス菌や炭疽菌などの生物兵器の開発(平成2年3月頃から),サリンの生成(平成6年2月中旬),サリン量産用プラントの建設(平成6年12月頃),ロシア製自動小銃の模倣品の製造(平成6年6月下旬頃から)などの武装化を進めた。
なお,a教は,本件政治上の主義の実現に向けて,Dの指示で,内部組織の呼称を国家組織を模倣したものに変更したり(省庁制度の導入),Dを主権者とし祭政一致の国家の憲法草案「太陽寂静国基本律第一次草案」などをA16に命じて立案させるなどしていった。
(乙B5の6,E116,E190)
ウ a教の構成員は,本件政治上の主義を推進する上での障害を除去すること等を目的として,Dを首謀者として,両サリン事件を敢行し,不特定多数の者を死傷させたほか,別表「刑事事件一覧表」のとおり,数多くの事件を起こした。(乙B3の2,E196,前記第1の1(1))
2  本件観察処分から第4回更新決定までの概況
(1) 本件観察処分までの概況(平成11年頃まで)
ア a教は,平成7年12月19日,宗教法人法に基づく解散命令が確定し,その清算手続中の平成8年3月28日,破産宣告がされた。
また,公安調査庁長官は,同年7月11日,処分行政庁に対し,a教について破防法7条の解散指定請求をしたが,処分行政庁は,平成9年1月31日,同請求を棄却する旨の決定をした。(前提事実(1)ウ)
イ 上記アの間,a教は,破防法7条に基づく解散指定処分による団体の存亡に危機感を持ち,正悟師以上のステージの者による合議制の意思決定機関である長老部を設けるなどの組織改編をする一方,正悟師ら幹部構成員は,地下鉄サリン事件と修行は別であるとか,Dへの帰依を深めるよう説法するなどし,解散指定請求が棄却されると,パソコンショップ等による事業収益を拡大させ,破産手続により処分した支部・道場の再建・新設や組織機構の改革,脱会した構成員の復帰や新規の構成員獲得活動を推進していった。
このこともあり,a教は,平成8年11月時点で約1000名(出家信徒約500名,在家信徒約500名)まで減少していた構成員数が,平成11年12月の団体規制法制定時頃には,約1500名(出家信徒約500名,在家信徒約1000名)に増加していた。
これらの出家信徒は,ほぼ全員,在家信徒は半数以上が,両サリン事件以前から信徒であった者である。
(乙B2の1・13,B5の67,乙E5,E10)
ウ a教は,地下鉄サリン事件以前に,Dの説法を登載した教学用教本である「u教本」を発刊していたほか,破防法7条に基づく解散指定処分に備えて,団体の結束を維持し,Dの説く教えを集大成することを意図して,平成7年11月頃から平成8年1月頃にかけて,Dの説法集等を取りまとめた「g」と題する書籍全4巻を刊行し,平成9年4月以降,構成員に閲読を義務付けていた。
これらの書籍には,上記1(2)及び(3)で認定したa教の教義やa教の政治上の主義に関するDの説法が登載されている。
(乙B3の1,B28,E45)
(2) 上記(1)の間のD及びEの言動
ア Dの言動
(ア) Dは,平成7年11月頃,自己の刑事事件の弁護人のJを介して,破防法7条に基づく解散指定処分を受けた後の新団体の名称として,「d教」(ユダヤ文字でアルファを意味する。)とすることを指示した(乙B3の86,E141)。
(イ) Dは,平成8年5月15日に行われた第3回弁明期日において,「a教には,先ほど述べましたとおり,タントラ・ヴァジラヤーナとして6ヨーガ,あるいはカーラ・チャクラタントラを含めて瞑想法がございます。今,私どもは起訴勾留の身でございますけれども,私の説いた内容が一般の信徒に対して誤解を招くとするならば,それはやはり封印しなければならないと考えております。」,「実はヴァジラヤーナコースの教学テキストそのものを私は知らなかったわけですけれども,それが今一番問題になっているみたいですので,まずそれについては完全な封印をしたいと思います。」と述べた(甲8,乙E287)。
Dは,同月28日に行われた破防法の第4回弁明期日において,「破防法適用についての動きがあるということを聞いておりまして,その破防法に対しまして,私自身の生命,つまりこの肉体というものを滅ぼす,つまり死してでも破防法の適用をやめていただきたいということ」,「もともとまず破防法の適用要件が私の指示,命令でいろいろな破壊活動が起きたという前提のもとになされておりますので,まず教団の代表及び教祖としての,非常に後ろ髪を引かれますが,立場をのきたいと考えております。」,「私がa教の代表,あるいはa教としての教祖としての立場をのくことにより,本来は私が死ぬのが一番いいのでしょう。(中略)2回ほど,この破防法の適用が取りざたされてから自殺を試みました。その自殺は何かというと,服を使って10分ぐらい首を締め上げたわけですが,2回ともやはり私の腕の力が弱くて死ぬことができませんでした。したがって,ぜひとも破防法の適用はやめていただきたいと思います。」と述べた(甲9,乙E288)。
(ウ) その一方で,東京拘置所に留置中のDは,接見した弁護士に対して,「Eの考え方や対処の仕方は政治的すぎるし,現世的すぎる」,「自主解散はEが提案してきたから,Eの判断が正しいと思い了承した。(中略)しかしEも中に入っており今は自主解散については良いとは言えない。」(平成7年10月14日。乙F7「h・001」1頁),「Eの方針はいかん。もっと強い態度で教団の運営管理にあたるべきである。上九から引き上げるようなことは絶対にいけない ソフト路線などは一切してはいけない(中略)教団からEの色を消すように 出来るだけ3人で登場(A17,A18,A19)」(平成7年10月16日。乙F7「h・001」2頁,「ヴァジラヤーナ教学システムは,わたしの数百ある説法から作っている。元々,五百いくつの説法がある。今は,日本人の常識から見て危険なものは,すべて外した方がいい。公安調査官のようなシビアな目で厳重に見た方がいい。本質的な部分であっても外していい。根本の道から枝が出ているので,何本かの枝が切り落とされても,全く問題ない。公調や審査委員会がそこまで理解して判断するとは思えないので,先生方も教義を深く学ばない状態で判断された方がいい。」と述べた(平成8年2月8日。乙F7「h・003」3頁)。
また,Dは,同様に,「わたしの指示で動くか動かないかが決まるということだろうが,そのためにわたしは2歳と3歳の子供を教祖にした。教祖が2歳と3歳の子供だから純粋な信仰団体でしかないということになる。」(平成8年7月12日。乙F7「h・003」12頁,「i・42」1頁),「破防法が適用されたら,教団からもう一度D1を教祖にかつぐ動きを起こすように動いてほしい ※降りたが適用されたら自分が出なければ教団が壊滅させられる」(平成8年6月5日。乙F7「i・33」1頁)などと述べた。
さらに,Dは,同様に,「破防法に対しては,二つのグループに分かれ,第1のグループは6人が一組になって,(中略)この6人が一つのファミリーとなり,教団の拡大活動は一切しない。(中略)第2のグループは,法的に徹底的に破防法と戦い抜く。ただし,第1のグループは第2のグループの敗北が予想されるので,敗北した場合に吸収ができるように準備しておく。」(平成8年1月9日。乙F7「j」2頁,「i・03」1頁,「i・04」1頁),「私が物理的に教団を離れることは本意です。(中略)また,ノストラダムスに99年真理の弟子達が集まるとありますから,破防法の適用はこの年までなのではないでしょうか。したがって,3年しのげるような体制作りをしっかりと行うべきです。教団をd教とa教のアーと二つに分けるかどうかについては,正大師や妻達と十分に話し合ってください。」(平成8年6月14日。乙F7「i・37」1頁),「例えば,弟子が何をしたら破防法違反になるのか 仏教→他の宗派にもある 教団の分解→名称や教えを別にしても脱法行為となるか?」(同月19日。乙F7「i・39」1頁),「小さな寺を作るよう言っていたのに,どうして作らなかったのか。」(同年7月4日。乙F7「i・39」2頁)と述べた。
イ Eの言動
(ア) Eは,平成7年10月7日,国土利用計画法違反に係る偽証の被疑事実により逮捕され,平成9年3月24日,東京地方裁判所から偽証及び有印私文書偽造・同行使の罪で懲役3年の有罪判決を受け,平成11年12月29日まで服役した(乙B1の13,2の16,3の93,5の15,E283)。
Eが上記勾留中又は服役中に作成したノートには,「D1尊師を尊重しつつ,しかし,(中略)絶対化,唯一化しないで,真理の総合的研究を目指すことも時と共に必要になってくるだろう。」,「解散指定が入るか否か,もし入るなら入るこそ今は,調査して,ええかげんな理由で解散請求をする可能性がある。破防法を改正しても,一時不再審にひっかかるから,別の法律を作ったようだ。とするならば,第一に,Vヤーナ(注:タントラ・ヴァジラヤーナのこと)的教義に関する全情報をシャットアウトすべし(文書及びサマナの口)組織を守るためには,Vヤーナ関係の書籍は廃すしかない。」との記載がある(乙B3の94,E284)。
また,同ノートには,「教団の分裂は受け入れなくてはならない。2つのカルマ,2つの流れのあることはそこには争いがある。私は憎しみを持たず自分の足下を固めるべし」,「双方で教材作成しておく。万一の際,独立・展開するための土台となる」,「意志,信仰の強い人達を選んでグループにする 4人一組くらいがOKかもしれない その人たちは独自の教団をたてる」との記載がある(乙B3の94,E284)。
(イ) Eは,平成11年12月29日に広島刑務所を出所して,a教代表代行のA3に対し,自らの罪を深く反省し,責任をとって教団内での正大師の称号及びその地位を象徴する緑のクルタ(修行着)を返上したいと申し出,受理された(乙B1の16,B2の15,E14)。
(3) 本件観察処分から第1回更新決定までの概況(平成12年頃から平成14年頃まで)
ア 処分行政庁は,平成12年1月28日,本団体に対する本件観察処分をした(前提事実(2)ア。東京地方裁判所は,平成13年6月13日,原告の本件観察処分の取消請求を棄却する旨の判決を言い渡し,同判決は確定した。)。
平成12年2月4日,原告(宗教団体・d教)が正式に発足された旨及びA3がその代表者に就任した旨公表された(前提事実(1)エ)。
Eは,平成11年12月29日に広島刑務所を出所し,a教の運営に携わっていたところ,平成14年1月30日,A3に代わって,原告の代表者に就任した(乙B2の16,B3の93・97,B5の17,E13,E17)。
イ 原告は,本件観察処分やその取消訴訟の敗訴判決を受けて,以下の教団改革を発表した。
(ア) 原告は,平成12年1月18日,① Dの両サリン事件等の刑事責任については,係争中であるため断定し得ないものの,教団執行部の見解として,関与したのではないかと思われるという認識を有しており,② 新団体では教祖を置かず,Dは開祖であり,観想の対象・霊的存在であって,信者に指示する存在ではないと位置付け,③ 危険とされる教義を破棄し,Dが作ったa教のインドヨーガ,原始仏教,大乗仏教の教えに限定した教典を作成し,信者に周知徹底させ,④ 従来の信者から改めて入会申込書と無差別大量殺人行為を行わないこと等の誓約書の提出を求め,また,反省の意を示さない重大事件の関与者との連絡を禁止し,⑤ 長老部を廃止し,上層部への権力集中を緩和すること等からなる「事件に関する総合的見解表明及び抜本的教団改革の概要」と称する教団改革案(以下「平成12年改革案」という。)を発表した(乙B1の16,B2の15,B3の95,E14)。
(イ) 原告は,平成13年8月24日,① 一般出家信者によるDの公判傍聴を平成14年度以降自粛すること(最後に傍聴を希望する者については,平成13年9月6日以降の公判につき,原則1回に限って認める。),② 全出家信者に配布されていた「g」全4巻を全て回収し,原告で編纂した教義集を信者に配布すること,③ 各自治体・地域住民に対する主要施設の公開を今後も定期的に行い,公安調査庁に提出している活動報告書を基に自治体・地域住民に情報提供をし,市民と共存できる環境作りをしていくこと等の内容を盛り込んだ「宗教団体・d教 2001年度教団改革の指針」を発表した(乙B3の96,E16)。
(ウ) 原告は,平成14年2月17日,a教が関係した一連の事件・犯罪を正当化するいかなる教義も信仰せず,Dを絶対者等とせず,構成員を指揮する教祖・代表・構成員としないとした上で,① Dの写真等を施設や構成員個人所有の祭壇等に備え付けず,Dにまつわる文書・説法・写真・ビデオ映像・マントラ・歌・楽曲等の教材は,これによって事件が引き起こされたものとは思われないものの,事件に関連した可能性がある内容を含むものは一切使用しないこととし,Dの公式呼称を「旧団体代表」とし,「尊師」,「グル」等の呼称を禁止すること,② 構成員の犯罪行為を禁止し,過去に犯罪を犯し有罪判決を受けた者は,十分反省し,二度とそのような事態を招かない誓約をしなければならないこと,③ 被害者・遺族への謝罪と賠償を行っていくこと,④ 説法会や教材等において,Dを絶対者等としたり,事件・犯罪を肯定するかのような誤解を受けるおそれのある表現をしないこと,⑤ タントラ・ヴァジラヤーナやポワ等については,これ自体によって事件が起こされたとは思われないものの,これらの用語等の公式解釈を示すこととし,公式解釈を無視して過去の教材を使用することを禁止すること,⑥ 「g」については,必要な改訂を加え,改訂前のものについて使用を禁止すること,⑦ PSI(パーフェクト・サーヴェーション・イニシエーション。a教の修行用の機具であり,Dの脳波データを発生させるとする基盤部分と頭部に装着する電極付きのヘッドギア部分で構成される。これを装着するとDの脳波が注入されてDと同じ瞑想状態に至るとされている。以下同じ。)については,Dの脳波によるマインドコントロール装置であるとの誤解を受けており,そのような誤解を受けにくいものに改善していくこと,⑧ 地域住民に対する情報提供,対話の促進を図り,社会融和に務めること等を内容とした「宗教団体・d教活動規定」(以下「d教活動規定」という。)を制定し,同日から施行した(乙B1の17,B5の31,E18)。
(4) 上記(3)の間のEの言動及びA12事件等
ア Eの言動
Eは,平成12年改革案やd教活動規定を制定するなどして,外形上,Dの影響力を払拭したかのように装いながら,以下のとおり,D及びa教の教義に対する絶対的な帰依を要求する指導を原告構成員に対して行い,真実はDに対する絶対的帰依を維持しつつ,Dの説く教義を広め,Dの意思を実現することを目的とする活動(以下「D1隠し」という。)を展開していった(乙E13)。
(ア) Eは,平成14年1月26日の説法において,「今日は私が正式に正大師に復帰し,代表就任することになった宗教的な意味合いを話す。今後なすべきことは,グルの救済計画の手伝いである。具体的には,長期的なものと短期的なものがある。一つ目は,長期的なものである。これは未来際においても皆さんがグルと一緒に転生し,救済活動の手伝いをしつづけるためのものである。二つ目は,短期的なもので,皆さんの徳をできるだけ増大させ,グルの手伝いをするということである。(中略)来世では,皆さんを再びグルの救済活動に導くのが自分の役割である。D1尊師の予言では,私は来世D1尊師の弟子としてまた生まれ変わる。(中略)今生まれ変わっている者の中では,私とD1尊師の縁がもっとも濃い。(中略)今後の教団を誰が主導するかもD1尊師は話していた。それに基づいて,今教団は動いている。(中略)グルが物理的にコンタクトできない状態で,将来どうなるか分からないが,皆さんがしっかりと宗教団体・d教にいる,グルと極めて縁の濃い者,来世が確定している者に帰依し,称賛し,教えを学び,奉仕し,供養するならば,再び皆さんはグルと真理勝者方の教えに巡り合うことができるだろう。」と述べ,引き続く質疑応答において,礼拝の対象を問われた際,「礼拝の対象及び観想の対象は,D1尊師でいいと思いますね。」と説明したほか,Dとの関係について,「皆さんと真理勝者の縁であるD1尊師,これを排除して教団が進むことはないだろう」と説明した(乙B1の18・19,B3の98・99,5の18,乙E22,E199)。
(イ) Eは,平成14年1月27日の説法において,「私は,1月21日に代表,そして正大師に復帰することが決まり,代表職に関しては,1月30日から任期が始まる。その理由は,グルの救済活動のお手伝いをしっかりとやるための体制を作ること,皆さんを来世も再びグルの元に導く準備を行うということである。(中略)私は来世また,D1尊師の弟子に生まれ変わることになっている。(中略)皆さんが今生だけではなく,来世も再び真理勝者に巡り会い,救済のお手伝いをしながら真理の実践をしていくとするならば,私の話をよく聞いて実現するようにしてほしい。(中略)教団活動のすべてはグルの救済のお手伝いということである。(中略)尊師の予言解釈と守護によって,私は99年末に教団に戻ってくることになった。それはグルとシヴァ大神の守護によって,21世紀に教団をリードするために用意されていると考えている。95年の時点では,今後,私が教団を主導する時代が来るということも言っていた。」と述べた(乙B1の18,B3の98,B5の18,E22)。
(ウ) Eは,平成15年1月26日の説法において,「外からね,入ってくる人達のために,また,自分たちがね,グルの名色にこだわらずに修行していく,というもののために,道場の施設においてD1尊師という名色,これを無くしてしまうということだね。そしてその代わりに,その代わりに,君たちはその心というものを,自分の心に宿してほしい。そしてその教えをね,D1尊師という名色,これをなしで多くの人に広め,そして多くの人がその教え,エッセンスを理解して,した段階でね,その教えの源になったものは何か,ということを明かす,という形,これをどう考えるかということになる。」と述べた(乙F8)。
イ 原告構成員の言動
公安調査官が,平成14年9月10日に東京都世田谷区〈以下省略〉に所在する原告のh1施設の立入検査をしたところ,原告の構成員2名が「g」を使用していた。また,「事件についてよく考えると,その裏にグルの大いなるマハームドラーと大いなる慈愛が隠されていることに気づきます。」,「そしてグルに感謝しなければなりません。なぜなら,一人世間の矢面に立ち罪の償いをさせられ,ほふられた子羊の運命を引き受けられているのだから。」などと暗に地下鉄サリン事件を正当化し,Dへの帰依を示す内容の記述がある日記のデータが原告の構成員の私物パソコンから発見された。(乙E21)
ウ A12事件
ロシア人のa教信者であるA12は,ロシアを含む多くの国でa教の活動が禁止されたことに不満を抱き,日本国内でテロ行為を行うことでDを強制的に解放させる必要があると考え,平成11年3月頃から平成12年6月頃にかけて,自動小銃や手榴弾等の武器・弾薬,自家製爆発装置を調達・製造するなどし,2度にわたって,日本に入国して,これらの武器・弾薬,自家製爆発装置を隠匿・設置予定場所の下見をし,テロ行為を行うとの脅迫を日本政府にすることで,Dの開放等を要求することを計画していたが,平成13年7月1日,ロシア連邦保安庁に逮捕されたため,計画は実行されなかった(A12事件)。
ロシア沿海地方裁判所は,平成14年1月23日,ロシア連邦刑法222条(武器,弾薬,爆発物及び爆発装置の違法な入手,譲渡,売却,保管,輸送又は所持),同法223条(武器の違法製作)等の罪により,① A12を最低労働賃金の100倍の罰金刑,財産の没収を伴う8年の自由剥奪,② A20を財産の没収を伴う6年6か月の自由剥奪,③ A21を財産の没収を伴う4年6か月の自由剥奪,④ A22を3年の自由剥奪,2年6か月の観察期間を伴う執行猶予,⑤ A23の刑事責任を免除し,精神病院での一般的強制治療を命ずる判決を言い渡した。
なお,A12は,a教の出家構成員のA13に対し,平成11年8月中旬頃にロシアでのa教を発展させるとの名目で,同年11月にa教の宗教文献の出版活動を発展させるとの名目で,金銭的支援を要請し,それぞれ,上記A13から,前者については,同年10月4日に3万米ドル,後者については,同年11月24日に900万円を借り受けた。
(乙B2の7,B7の28・29,E119,E120,E194)
(5) 第1回更新決定から第2回更新決定までの概況(平成15年頃から平成17年頃まで)
ア 処分行政庁は,平成15年1月23日,第1回更新決定をした(前提事実(2)イ。東京地方裁判所は,平成16年10月29日,原告の第1回更新決定の取消請求を棄却する旨の判決を言い渡し,同判決は確定した。)。
なお,原告は,平成15年2月7日,同月6日付けで,ヘブライ語の「X」の本来の正確な発音は「d1」であることを理由として,その名称を「宗教団体d1教」に変更した(乙B3の86,B5の20,E143)。
東京地方裁判所は,平成16年2月27日,Dに対する殺人等被告事件(両サリン事件を含む。)について,死刑に処する旨の判決を言い渡した(乙B3の2,E196)。
イ Dの妻であり正大師の位階にあるHが,平成14年10月に刑務所を出所すると,従来の活動形態を維持し,Dを前面に出して活動することがDに対する真の帰依であるとして「D1隠し」に反対する姿勢を示して,Dの三女Iと共に,原告の組織運営に介入するようになり,Eの「D1隠し」による組織運営も新規構成員の獲得や財務運営面で功を奏しなかったことから,Eの活動方針に反対する者が増加していった。
このため,Eは形式的には原告の代表者の地位にとどまったものの,平成15年6月頃から,修行入りと称して原告の運営に実質的に関与しなくなり,同年7月頃にIと話した際には,Iは,Eは修行が足りないので教団運営は任せられない,自分がやると述べた。その後,HやIは,Eに対して「D1隠し」が誤りであったと謝罪することを求め,Eは,同月28日頃,原告幹部70名程度の前で,謝罪の意を表明し,以降,Iを中心としたD家の組織運営に対する関与が強まっていった。
原告は,平成15年10月頃に,正悟師の位階にあるA3,K,A24,A25及びA26の5名による集団指導体制(正悟師・正大師会合ないし正悟師・正大師会議)に移行し,Dへの絶対的帰依を明示的に強調する指導を復活させ,Dの説法などを集約した「g」の改訂版を発行するなどして,Dへの絶対的帰依を強調し始めた。
しかし,上記集団指導体制によっても,原告の財務内容改善等がみられなかったことや,第1回更新決定により観察処分が継続されたこと等から,一部構成員の間でEの組織運営復帰の希望も出ていた。
Eは,平成16年11月頃から再び原告の運営に関与するようになり,原告内にも,Eの考えに賛同する者を中心とした一派である「E派」(あるいはEの団体内での名称(E1)の頭文字から「E1派」とも呼ばれる。)とEの方針に反対する「反E派」(あるいはDの三女の団体内での名称(I1)の頭文字から「I派」とも呼ばれる。以下「I派」という。)が存在し,他方,E派として活動するまでには至らないものの,これに理解を示す「中間派」と呼ばれる構成員も存在していた。
(乙B2の17・18,3の100・104,5の21・22・32ないし34・43・48・50・79,E13,E24,E25,E31,E33ないEし36,E202)
ウ 原告は,平成16年1月17日から同年12月4日までの間に,Dの説法全186話を掲載した「g(改訂版)3」分冊1ないし11を順次発行し,これらを出家構成員に閲読させているが,「g(改訂版)3」は「g」Ⅱ巻に掲載された昭和61年から平成元年までの間のDの説法合計167話中151話が収録されており,よりDの当時の発言内容を忠実に再現する一方で,「ポワ」を「ポワ(意識の移し替え)」などと加筆を加えているものの,「次はグルがマハームドラーをかけるとき,最も厳しいマハームドラーをかけるからであると。そうすると,最も厳しいマハームドラーをかけられると,当然,そのかけられた方は早く成就すると。」(「g(改訂版)3」分冊2・7頁),「いろんな持戒があるとして,その持戒を無視して,グルがこれをやりなさいと言った場合,それをなすことが最も功徳となる。」(「g(改訂版)3」分冊3・30頁),「a教のためではないぞ,D1の意思は何か考えろ。それから,シヴァ神の意思は何かを考えろ。a教の意思と言ったときに,自分のエゴが入ってることがあるからね。そうなったならば,最もスピーディーに解脱するだろう。」(「g(改訂版)3」分冊5・2頁)などと,Dへの絶対的帰依を求めたり,マハームドラーの修行の実践を強調する説法が記載されている。
(乙B3の101,E27,E125,E126)
また,原告は,平成17年5月及び6月に,その機関誌においても,「この教団にグルという存在を抜きにしてそれらの教えがもたらされることは,教団の歴史においてただの一度もなかったのである。(中略)わたしたちは,グルが説かれた煩悩破壊という最高の世界に至るための教えを,歪めてしまうことなく,時代を超えて継承していかねばならない。それがグルの願いなのである。」(平成17年5月発行の機関誌「k・Vol.52」),「真理をこの世に残すに当たってまず大切になってくるのは,グルが説かれた教えの厳密性・純粋性を保持するということである。つまり,真理の教えにしろ経典(仏典)の翻訳にしろ,グルを介して提供されたもののみを拠り所とする―わかりやすく言えば,グルの言葉から外れないようにする―ということなのだ。」(同年6月発行の機関誌「k・Vol.53」。なお,この記述は,平成20年1月発行の原告の機関誌「l」Vol.13でも参照するよう指導されている。乙B3の74・75,E45,E135,E136)などと,Dへの絶対的帰依の重要性と教義の変更が不可能であることを説いている。
(6) 上記(5)の間のEの言動
ア Eは,Eらが立ち上げたブログ「◎◎」において,平成17年2月22日,「グルを前面に出したらこれ以上の衆生の済度は難しいという現実が否定できない(中略)私の根本的な考え方を確認しておきたいのですが,それは,『今のグルの意思』を重視するということです。今のグルの意思とは,当然,今の衆生の現実に合わせて,もっとも多くの衆生を済度できるように,教団を運営すべきだ,ということに他なりません。」という記事を掲載した(乙B3の107)。
イ Eは,原告の内部向けインターネット掲示板において,平成17年5月26日,「95年に事件が発生し,a教が救済団体としては,将来がなくなった時点で,尊師は,a教に加えて,尊師とシヴァ大神ではなく,形を変えて大黒天等を崇拝する第2の団体を弟子をリーダーにして作ることについて,逮捕前から私に話され,その点については,逮捕後も,私とその点でやりとりがなされていました。(中略)私のd1教代表としての今後のスタンスは,既存の尊師信仰のパートは堅持し,一方で,グルがお考えになったように,別のパート,別のフォームを作るべきである,というものです。(中略)大黒天・マハーカーラ,観音菩薩といった宗教的な概念,すなわち,尊師と縁があるが,D1尊師という名前と姿自体ではない崇拝対象を検討することは,グルの意思に反しないと考えています。」との記事を投稿した(乙B1の8,B3の108,E44,E49)。
ウ Eは,Eらが立ち上げたブログ「◇◇」において,平成17年6月22日,「私たちが今なすべきことは,今の時点でなすべき,グルへの帰依とは何かを考え,それを実践することである。(中略)教団がつぶれても良いという考え方は,グルの意思に明確に反している。グルは,96年の破防法の時に,教団を潰さないように,教祖・代表を降りることを含め,大変な努力をされた。」という記事を掲載した(乙B1の7)。
エ Eは,ブログ「◇◇」において,平成17年6月28日,「多様なグルの教え・指示を知ってほしい」との表題の下,「事件発生後の状況に応じて,新たな事業,宗教組織を立ち上げることを肯定,指示されたメッセージ」との見出しの中で,「別の宗教的組織を作るようにという示唆があったこと(1)」という項目において,「『小さな寺を作るよう言っていたのに,どうして作らなかったのか。』※上記と類似するものかどうかわからないが,『教団をd教とa教のアーと二つに分けるかどうかについては,正大師や妻達と十分に話し合ってください。』というメッセージもある。」,「別の宗教組織を作るようにという指示(2)」という項目において,「逮捕される前からの指示として,① (事件の結果,破綻するだろう)a教とは別の宗教団体を作る。② 例えば,シヴァ大神を大黒天と呼び変えるような,衣替えした団体にする。(中略)というのがあった。なお,この件は主に私(E1)が任されていた。」,「ヴァジラヤーナの教義を排除することを認められた,指示されたメッセージ」との見出しの中で,「本質的な部分であっても外していい。根本の道から枝が出ているので,何本かの枝が切り落とされても,全く問題ない。」などと,Dの獄中メッセージ等を引用した(乙E289)。
(7) 第2回更新決定からb教の分派に至るまでの概況(平成18年頃から平成19年前半頃まで)
ア 第2回更新決定及びDに対する刑事事件等(乙B4の2,E118)
処分行政庁は,平成18年1月23日,第2回更新決定をした(前提事実(2)ウ。原告は第2回更新決定に対しては取消訴訟を提起しなかった。)。
また,Dに対する殺人等被告事件について,同年3月27日,東京高等裁判所において,同裁判所が定めた期間内に控訴趣意書が提出されなかったことを理由として,控訴棄却決定がされ,同年5月29日,これに対する異議申立棄却決定がされた(乙D7)。
上記控訴棄却決定及び異議申立棄却決定において,Dは,訴訟能力に欠けるところはないと判断された。
なお,Dは,平成11年9月22日の東京地方裁判所で開かれたA27及びA28に係る殺人等被告事件(地下鉄サリン事件)の公判期日に弁護人申請の証人として出廷した際,「地下鉄サリン事件は誰が指示したというふうに考えているのですか。」との弁護人の尋問に対して,「A29君が持ち込んだ,A29君自身の話ですよ」などと証言をし(乙B7の4,E215),その後もA11の殺人等被告事件の公判期日(乙E217。平成13年2月2日の両サリン事件の公判期日)やA30の殺人等被告事件の公判期日(乙B7の7,E218。平成14年2月25日の両サリン事件及びF弁護士一家殺害事件の公判期日)に弁護人申請の証人として出廷したが,裁判所の人定質問にすら答えず,自らの殺人等被告事件における公判等においても,両サリン事件について,控訴審も含めて自己の責任を認めず,反省の弁を述べたことはない(乙B3の2,E216,E219,E220)。
イ b教設立に至る経緯
(ア) Eらの言動
Eは,第2回更新決定がされたこと等を受けて,平成18年4月頃以降,原告に対する観察処分等が新規構成員の獲得や現役構成員の減少,収益事業への圧迫,全般的活動の不活発化につながっているとして,教団の存続のためには,確実に観察処分等を免れることが必要であり,「もう一つの考え方は,この教団の中で二つのグループを作るということに拘らずに,この社会の中において二つのグループがあればいいじゃないかということです。すなわち,これは役割分担をし,組織分割を行い,ある人たちは,要するに特定の限られた人たちの信仰のためにそれを維持し,もう一つのグループは要するに幅広く救済のためにダイナミックにフォームを変えて行うんだと。こういう役割分担をすればいいのではないかという考え方です。(中略)この考え方というのは,実は教団には古くからあるもので,そのファウンデーション理論というものとして存在しています。このファウンデーション理論というものは,要するに何かを存続させるためにどうしたら良いか,その場合,単一のシステムではなくて,多様なシステムを用意という考え方です。」(平成18年4月15日のEの説法)などと説いて,原告とは別団体の設立が必要であると考えるようになった(乙E39)。
後にb教の役員に就任するA31も,平成18年4月22日,「正大師の考えでは,もう別団体になれば,観察処分,もう掛けようがないですよ。」と述べ(乙B3の134,E38,E86),平成19年1月18日,「だからその『アーとd1教を作りなさい,分かれなさい』とおっしゃってたんです。アーとd1教に。で,d1教というのは新教団,新教団って,今の理念を全く隠した新しい団体,一掃した新しい。その名前は,大黒教だろうが,マハーカーラ教だろうが,大黒天教だろうが何でもいいっていう,そういうものを作りなさいって。で,アーの部分は,a教のものをそのまま継続する。その代わり,これは密教でやるしかないんです。だからみーんな在家に戻って,在家に戻った形でひっそりと誰にも迷惑をかけずにやる方法なんですよ。それだったら法則に反しないですよ。で,正大師は,単にこっちの道を採ってるわけなんですよ。大黒教とか大黒天とかいう,こっちのd1教の道を。で,その話をずっと聞いて,ああ,まさに尊師の教えの実践を確実に,きちんとくみ取られて,ずれなくきちんと受け取られてなさってるんだなあって。」と述べた(乙B1の9,B3の112,E290)。
(イ) b教の設立(乙E13)
こうしたEの活動に対し,原告の集団指導体制を構成する5名の正悟師のうち,A3,A24,A25及びA26の4名は,Eの考えに理解を示すなどし,A3は,平成18年9月16日,Eに別団体を組織してほしくないが,組織した場合は,原告とは持ち株会社のような連合体として役割分担をしながら活動していきたいという考えを表明するなどしていた。
しかし,E派とI派の対立は決定的なものとなり,平成18年には,東京都世田谷区〈以下省略〉所在の複数の施設は,それぞれが別の建物を管理使用するようになった(乙B5の32)。
また,A3ら正悟師による集団指導体制も,師の位階にある中堅幹部構成員らが,A3らがE派に歩み寄ったこと等に反発するなどして,機能しなくなったことから,原告は,平成18年7月,師クラスの中堅の構成員約30名からなる「合同会議」を設置し,原告の意思決定を行うようになった(乙B5の41,E109)。
Eは,平成19年3月8日,Eを中心とする出家信徒62名,在家信徒3名が同月7日付けで,原告代表に就任していたA24に対し,原告から脱退する旨を通知し,同年5月7日には,b教を設立した旨発表した(乙B3の110・111,B5の23,E41,E42)。
(ウ) 原告の動向(乙B3の1,5の32,E13,E45)
他方,原告は,平成19年3月25日,「新春メッセージ 未来へ」と題する行事を開催し,「今後の指針として私たちというのは原則に帰るということを掲げたいと考えています。(中略)出家の動機は主に三つに分かれていますけどね。一つ目としては,尊師に強くひかれて出家したと。二つ目としては,成就がしたくて出家したと。三つ目としては,救済活動のお手伝いがしたくて出家したと。(中略)それに基づいて宗教理念としては三つ掲げました。一つ目として,グルの存在を感じることのできる教団にしようじゃないかと。(中略)グルの御意思を考えた場合,やはり私たち一人一人が解脱,悟りを得ること,これが根本にきます。」などという幹部構成員の説法を各施設にインターネット配信した(乙B3の83,B6の36)。
原告では,中堅幹部構成員らが,E派に歩み寄ったとして,Kを除く4人の正悟師を排除する動きを強めたことから,平成19年7月にA26とA25が脱会し(なお,A25は,教本の編集等を巡ってHと対立していた。乙B5の35・36),A24及びA3が役員を辞任し(乙B5の42・43),これら中堅幹部構成員らを中心に,大音量でDの説法の映像を長時間連続視聴させる「特別ビデオ教学セミナー」などを実施するなど,Dへの帰依を徹底していった。
ウ 原告の活動状況
原告は,平成17年7月30日から平成19年4月11日までの間に,「g(改訂版)4」の分冊1ないし7を順次発行し,これらを構成員に閲読させているが,「g(改訂版)4」は「g」Ⅱ巻に掲載された平成2年から平成3年までの間のDの説法合計118話中100話が収録されている(乙E126)。
また,原告は,平成12年10月から発行してきた「k」と称する機関誌の名称を,平成19年1月から,「l」に変更して,機関誌として,インターネット配信したり,Dの説法の映像を収録したDVD「l」を原告の施設に配布して在家構成員に視聴させたりしており,「今回,この教学システムを行うことによって,もう一度信徒の皆さんが,グルの熱い思いというか,グルの神聖なデータを深い意識で吸収していただけたらいいな,と思いますね。(中略)そしてもう一つは,この教学システムを進めていくことが,やがては救済につながるんだという,そういう意識を持っておいていただきたいということです。つまり,真理のデータを内側に根付かせ,グルからのエンパワーメントを受けるのは,自分のためでもあるし,また,自分を通して救済されていく人のためでもある,ということですね。」(平成20年1月発行の機関誌「l・Vol.13」掲載)などとDへの絶対的帰依の重要性を構成員に説いている。(乙E45,E122,E123)
(8) b教分派から本件更新決定までの概況(平成19年後半頃以降)
ア 名称変更等
原告は,b教の設立表明や,A3ら正悟師の脱会や役員辞任を受けて,平成19年12月14日,合同会議内に6人の運営準備委員で構成される運営準備委員会を発足させて組織再編作業を開始し,平成12年の原告発足当初の基本方針に基づき,① Dについては,純粋に霊的な意味で瞑想修行等における「観想の対象」ないし「霊的存在」,あるいは,組織沿革上の歴史的な意味で教団創始者としての「開祖(宗祖・教祖【founder】)」とも認識されている一方,現実の教団運営を統括する者としての教祖【leader】・代表者,あるいは団体の意思決定に関与する役職員には位置付けていないこと,② 事件と無関係な教義ないし修行法・イニシエーション等については,a教から引き継いだものを原告でも採用する一方,裁判等で事件との関係が指摘されている一部の教義(タントラ・ヴァジラヤーナの中の五仏の法則)については削除しており,一般に誤解を受けやすい用語等については,事件や犯罪の肯定に結び付けられる余地のないよう公式注釈書(乙D12。原告は,平成14年3月27日に「g」公式解釈書を作成し,〈ア〉 五仏の法則を破棄し,〈イ〉 タントラ・ヴァジラヤーナについて,日本の刑法に反する行為を正当化するものではなく,〈ウ〉 ポワについて,殺生ではなく,意識を低い世界から高い世界へ移し変えることと解説している。)を作成・配布するなどして構成員に周知していること,③ 一人ないし少数の指導者の能力・判断に従属する上意下達式の組織形態を見直し,多面的な判断や相互のチェック機能が働くよう,集団指導体制である合同会議を採用していること等を内容とする「『合同会議』による運営とその基本方針」を発表した(乙B5の41,E109)。
その後,原告は,平成20年5月12日,合同会議において,b教の「集団脱会に伴う内部的混乱の正常化や社会的環境の変化への対応」と「自己の解脱と悟りと,すべての魂を絶対自由・絶対幸福・絶対歓喜の境地に導くといった,本来の宗教団体としての役割を果たせるような教団にすること」を目的として,従来の綱領・規約・活動規定を以下のとおり改正するなどして,団体の名称を「宗教団体d1教」から「X教」(日本語の発音は「d」)に改め,共同幹事としてA1,A4が就任したと発表した(乙B6の67,E107,E144,E258)。
(ア) 「宗教理念」の制定
原告は,新しい綱領として,① 私たちの団体の第一の目的は,解脱・悟りを追究し,仏教・ヨーガの教典で説かれている霊的・精神的な境地を体験し,それを体現することである,② 私たちの団体では,第一の目的を土台として,〈ア〉 「解脱・悟り」の道筋を提供する,〈イ〉 「この世の幸福」を提供する,〈ウ〉 「病苦からの解放」を提供する活動を行うという内容の「宗教理念」を定めた。
(イ) 「運営規則」の制定
原告は,新しい規約として,① 本団体の目的は,「X教」宗教理念に掲げるものとすること,② 本団体の構成員は,出家構成員と在家構成員からなり,「X教」宗教理念に掲げられた趣旨に賛同し,その実践を行い,「X教」コンプライアンス規程を遵守し,所定の会費を所定の期日までに納付しなければならないこと,③ 本団体の運営機関を合同会議とすること,④ 合同会議内に運営委員会を設け,合同会議の進行・調整に当たり,原則として,共同幹事2名,副幹事2名,委員2名で構成すること等を内容とする「運営規則」を定めた。
(ウ) 「コンプライアンス規程」の制定
原告は,新しい活動規定として,① 国の法令や教団内の規程を遵守し,健全な宗教活動を行う(法令の遵守義務),② a教関連事件の一部の裁判で判決が確定したという事実を踏まえて,その道義上の責任に基づき,a教破産管財人による管財業務終結後も,関係機関と協議の上,事件被害者の方々に対して誠意ある対応を行う(事件被害者の方々に対する誠意),③ 未解決のa教関連事件の解決に向けて,a教関係特別手配被疑者に対する出頭呼びかけをはじめとする必要な捜査協力を行う(事件解決への協力),④ 事件・犯罪を否定する姿勢を明確に示し,地域社会で平穏に生活していくためのルールを遵守し,地域との協調に努める(地域社会との協調),⑤ 団体規制法に対して適法に対応し,将来にわたって教団に危険性が存在しないことを明らかにして観察処分の取り消しに努める(団体規制法への対応)こと等を内容とする「コンプライアンス規程」を定めた。
なお,上記コンプライアンス規程には,d教活動規定におけるDの写真等を施設や構成員個人所有の祭壇等に備え付けないという項目(上記(3)イ(ウ)参照)はない(乙B3の16)。
イ 「改訂版 u教本」等
(ア) 原告は,平成14年10月に危険と誤解されるなどとして,回収を発表していたDの説法を収録した教学用教本である「u教本」とDの説法を録音したカセットテープについて,平成19年11月から平成20年2月にかけて,以下の内容の「改訂版 u教本」に改訂し,Dの説法を録音したCDとともに復刊して,セミナーにおいて参加した在家構成員に教学させるようになった(乙B3の28,B28,E127)。
① a教の救済活動とは何かといったら,まずは真解脱者,アラハットを三万人出すことだ。(中略)そして,三万人が世界に散ったならば,そのサットヴァのエネルギーによって,ね,例えば核兵器を持つことが無意味であるとか,例えば他の,ね,宗教理論の中に矛盾があるだとかいうことがどんどんどんどん暴露されてこよう。そしてつぶされよう。そして真理は一つになるはずだ。(「第1課3級A」(昭和62年7月26日のDの説法))
② 実際に理想郷,理想的な社会をつくってみようじゃないか。(中略)a教の自力によってね,雛型をつくろうじゃないかと。(中略)この日本に,その社会の雛型をつくろうじゃないかと考えて,着実に進んできているのが,今のa教のシャンバラ化計画なんだね。(「第3課5級C」(平成元年3月25日のDの説法))
③ タントラで成就する場合,金剛乗で成就する場合のポイントというものは何かというと,絶対的なグルに対する帰依であるということは挙げられる。(「第7課5級B」(昭和63年9月27日のDの説法))
(イ) 原告は,平成20年12月から平成23年12月にかけて,上記(ア)の「改訂版 特別教学システム教本」に未登載のDの説法からなる「新・特別教学システム教本」及びCD(第1課から第7課)を発行した。「新・特別教学システム教本」に収載されているDの説法には,Dへの絶対的帰依及びDの説く衆生救済の重要性についてのものや,タントラ・ヴァジラヤーナ,マハームドラーについてのものが含まれている。(乙B3の29)
ウ この頃のEの言動
Eは,「この考え方というのは,昔a教でいうヴァジラヤーナの考え方なんじゃないかという考え方が出てくるわけですね。要するに,良い目的のためには他を殺しても良いと。その考え方と今の考え方がどういうところで違うかというと,まず第一に,仏教においてはヴァジラヤーナの考え方(中略)は実際あるわけですね。実際あるけれども,それはどこか誰か一人の成就者のための法律,法則じゃなくて,そういった警察をやる人,裁判官をやる人,又は個々人が正当防衛を迫られたとき。そういった形で,全ての人にとって,このヴァジラヤーナの考え方はどうしても必要なわけです。(中略)一方,a教の問題は何かというと,その,要するに,自分は特別な権限,自分は成就者であって,ヴァジラヤーナができるという考え方ですね。これが非常に大きな問題になる。」などと説いた(平成21年8月13日の説法。乙B1の34,B6の68)。
Eは,「善と悪というのは完全には区別されていない。悪の中に善があって,善の中に悪があるんだっていうこと。これをもう少し広げて考えると,どんな悪いことをしている人もそれを純粋に100%悪い動機ではやっていないんですよね。どんな悪いことをする人でも,何か良い動機を持ってやっています。これは余り思い出したくはないことですが,サリン事件において,サリンをまいたその弟子たちも心の中に『これで他人を苦しめてやるぞ』という悪い動機でやっていたかというと,そういうことは全然ないんですね。何か自分の精神的な成長ね,何か自分なりの間違った世界観かもしれないけど,救済の世界観でやるわけ。」と説いた(平成21年10月23日の説法。乙B1の35,B6の69)。
エ 第3回更新決定
処分行政庁は,平成21年1月23日,第3回更新決定をした(前提事実(2)エ)。
東京地方裁判所は,平成23年12月8日,第3回更新決定のうち,「被請求団体(その支部,分会その他の下部組織を含む。以下,この項において同じ。)の営む収益事業(いかなる名義をもってするかを問わず,実質的に被請求団体が経営しているものをいう。)の種類及び概要,事業所の名称及びその所在地,当該事業の責任者及び従事する構成員の氏名並びに各事業に関する会計帳簿を備え置いている場所(その会計帳簿が電磁的記録で作成されている場合には,当該電磁的記録の保存媒体の保管場所)」の報告義務を課する部分を取り消し,その余の原告の第3回更新決定の取消請求を棄却する旨の判決を言い渡した(乙B3の114,F24)。
東京高等裁判所は,平成25年1月16日,上記判決中被告敗訴部分を取り消し,原告の請求を棄却する旨の判決を言い渡した。
オ 第4回更新決定
処分行政庁は,平成24年1月23日,第4回更新決定をした(前提事実(2)オ。原告及びb教は,第4回更新決定に対しては取消訴訟を提起しなかった。)。
カ 本件更新決定
処分行政庁は,平成27年1月23日,本件更新決定をした(前提事実(2)カ)。
3  本件更新決定の際の原告の組織等
(1) 原告の組織規模等
ア 原告は,平成26年11月13日付けで,公安調査庁長官に対し,同年10月末時点における原告の国内構成員について1236名(出家構成員213名,在家構成員1021名)と報告し,「入会していないが,その活動に参加することがある者」として2名を報告した。このうち,出家構成員のほぼ全員,在家構成員の約3割が地下鉄サリン事件以前からa教に加入していた者である。また,地下鉄サリン事件以降に検挙され,その後刑務所を出所したり,釈放されたりした者で,平成26年7月31日時点で,89名が原告,13名がb教の構成員として報告されており,原告の上記構成員89名のうち5名は,サリン量産プラント建設事件や自動小銃の密造に関する武器等製造法違反事件等に関与して有罪判決を受け,服役を終えた者である(乙B7の31・32,F28)。
なお,原告は,平成24年7月,原告会員は,b教の活動に参加してはならない旨の活動要綱を定めた(乙D52)。
イ A9は,松本サリン事件に関与し,殺人幇助,殺人未遂幇助等の罪で懲役4年6月の有罪判決を受け,平成13年2月17日に刑務所を出所した(乙B4の1・2,B7の32)。
A9は,平成15年4月5日付けで,原告への入会手続を行い,原告も,上記アの報告において,A9を在家構成員として報告した(乙B4の5・7,E149,E150,E166)。A9は,平成25年1月から平成26年8月までの間,原告が管理する大阪市生野区内の施設に継続的に出入りした(乙B4の6)。
ウ Dの三女Iは,平成24年1月23日から平成26年7月31日までの間に,70回以上,Dとの面会を申し込み,二女A32,長男A17及び二男A18も複数回にわたってDとの面会を申し込んだが,Dは,平成20年6月10日に,二女及び二男と面会したのを最後に,面会をしていない(乙B4の1・4,D142)。
エ 原告は,平成26年9月末時点で,埼玉県越谷市〈以下省略〉所在のeマンション101号室に主たる事務所を置き,北海道,茨城県,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,愛知県,滋賀県,石川県,京都府,大阪府,徳島県,福岡県に合計24の施設を保有し,ロシアにも数施設を保有している(乙B2の9ないし11・31,B8の92)。
(2) 原告の運営態勢
ア 原告は,遅くとも平成23年10月以降,月に1回,合同会議を開催し,組織運営に関する意思決定を行っている。合同会議には,懸案事項ごとに方策を検討するために複数のプロジェクトチームが設置されている。また,原告は,総務部,経理部,広報部,法務部及び救済メディア本部等の中央部署を9施設に配置している(乙B2の1・14・19・32)。
合同会議内に設けられた運営委員会の共同幹事(平成26年8月時点)は,A8及びA7であった(乙B2の11)。
イ 原告は,Dが創設・発展させた位階制度の根本部分を維持しており,尊師,正大師,正悟師,師長,師長補,師,上流士,準師,師補,サマナ長,サマナ,サマナ見習いなどの位階制度を有している(乙B3の1・77・80・82,E26,E137,E138,E187)。
この位階制度については,平成17年4月に発行された原告の機関誌において,「グルに帰依しなくなった段階で一気にステージが落ちてしまうということが現実問題として起こるわけなのである。もし,神通が自分だけの力で身に付いているのだとしたら,そんなことはあり得ないだろう。つまり,ステージも神通力もグルから与えられているものなのだ。」(平成17年4月発行「k・Vol.51」)などと説明されている(なお,平成14年3月頃に,3名につき師の成就認定がされたが,第1回更新決定後に師以上に昇格した構成員はいない。乙B3の1,B5の80,E45,139,140)。
また,平成23年1月に発行された原告の機関誌には,「成就(解脱・悟り)の判定はグルにしかできない」という記載がある(「l・49号」。乙B3の81)。
ウ(ア) 原告の200名余りの出家構成員は,全国各地の原告管理下の施設で集団居住しており,原告は,上記(1)エの24施設以外にも,出家構成員の居住用として約10か所のアパート等を確保している(乙B8の1・5)。
原告は,新たな出家の認定を停止していたが,平成24年3月,平成25年5月及び平成26年7月,合同会議においてそれぞれ1名ずつ在家構成員の出家を承認した(乙B3の1・85,B6の61,B8の6)。
(イ) 原告は,その機関誌に「素晴らしき『出家』―人生のすべてをグルに委ねて」と題する特集記事を掲載したり(平成22年11月及び12月発行。乙B8の10・11),「情報を遮断し,いらぬデータを取り入れない,戒律の遵守によって不必要な経験―つまり,未来において自分自身を苦しめるようなカルマの形成―をできるだけしない,といったことが大切になってくる。」という記載のある記事を掲載したり(平成24年9月発行。乙B8の17)して,外部からの情報遮断や家族・親族との縁を断つことの重要性を指導し(乙B6の47,8の12・14・15・18・19),また,原告が独自に製造した食品・水(Dが唱えるマントラのデータが流れている電気コードを巻いた枠内に一定時間保管するなどの「修法」と称する儀式を施している。)を出家した構成員に配給するなど(乙B3の61・62,8の7ないし9),a教が導入していた出家制度を維持している。(乙B3の1,B8の1)
エ そして,原告は,合同会議で決定された内容等を会議に参加した構成員を通じて,各部署または各支部に所属する構成員に伝達しているほか,中央部署や各施設をインターネット回線を通じて,これらの事項や幹部構成員の説法,集中セミナー等の開催状況を構成員に周知させ,また,月刊の機関誌「l」等を在家構成員に配布したり,「d教デイリーメール」と題する電子メールを配信したりして,Dの説法や集中セミナーの開催状況等を周知している(乙B2の1・22・23・25ないし27・30,E5,E101,E102,E104)。
4  本件更新決定の際の原告の活動状況
(1) Dの説法を収録した教材の使用等
ア 公安調査官は,第3回更新決定後である平成23年8月1日,原告の教本やDVD教材等の作成を担う部署であるメディア班が入るh2施設に対する立入検査を実施したところ,これらの教材に係るDVCAM約550本,DVDRAM約180本を発見した。その際,立会人である構成員は,「ここに置かれているDVCAM及びDVDには尊師の説法が収録されています。これらは,教材が災害などで使用できなくなった場合に備えて,保存用として保管しているものと聞いています。」と説明した。
また,公安調査官は,第4回更新決定後である平成26年7月2日,同施設に対する立入検査を実施したところ,上記立入検査時と同様の形態で保管されているDVCAM約550本及びDVDRAM約180本を発見した。(乙B3の76)
平成26年1月5日,原告のh3施設に対する立入検査が実施された際には,「改訂版 特別教学システム」の第1ないし10課,「新・特別教学システム」の第1ないし7課のCDがそれぞれ数十枚ずつ保管されていた(乙B3の31)。平成25年8月29日,原告のh4施設に対する立入検査が実施された際には,「改訂版 特別教学システム教本」の構成員ごとの進度報告表が壁に貼られていた(乙B28)。
イ 原告の「m」と題するDVDは,「タントラ・ヴァジラヤーナの7つのプロセス」の修行法等で構成され,マントラ及び詞章として,シヴァ大神への帰依を唱えさせるとともに,「グルに帰依します。」などと唱えさせ,「あなた方の前には,シヴァ大神と何ら変わることのない,全く同じである,グルの報身,法身,変化身が,上から縦に並んで座っています。」などと説明し,Dをシヴァ大神の化身と捉え,同人への絶対的な帰依を扶植する内容が含まれ,原告の構成員が視聴している(乙B3の1・59)。
ウ 第4回更新決定後である平成26年3月19日,原告のh5施設に対する公安調査官による立入検査時に発見された幹部構成員A7が使用するパソコン内に,「新人勉強会」と題するパワーポイントデータが保存されていた。同データには,「教学記憶修習」として,「三宝が説く真理の法則を思考に反映されるまで記憶修習すること。」,「具体的には“特別教学システム”,“書籍”,教学用DVDといったものを何度も何度も観,聴き,読むこと。」,「この段階は,自分の考え方を入れずに,ひたすら繰り返し法則を学ぶ段階です。」,「データの入れ替えという意味において,教えを何度も何度も聞く必要がある。」,「帰依を培うためには―教学記憶修習をしっかり行う。日頃から礼拝し,帰依マントラを唱える。自分を投げ出して真理の実践を行う。常にグルの意思を考え,実践する。苦しい時こそグルを意識・思念・観想する。」,「日ごろから立位礼拝や帰依マントラを行うことによって,潜在意識に帰依の種子が植え付けられる。→いずれはハードな実践にも耐え得るだけの帰依の心を培うことができるようになる。」等の記載がある(乙B3の6)。
また,平成26年1月ないし7月に実施された原告管理に係るh6施設,h7施設及びh4施設に対する公安調査官による立入検査の結果,立位礼拝と称する修行をする際,「グルとシヴァ大神とすべての真理勝者方に帰依し奉ります」と述べる旨記載された掲示物が壁面に貼付されていた(乙B3の25)。
エ 原告発行の機関誌である「l」65号(平成24年5月発行)には,原告の幹部構成員であるA33の成就を目指しているサマナ(出家信徒の意)や信徒へのアドバイスが掲載されており,「サマナの場合はグルのみですね。グルのご意思の実践が,ワークだったらワーク,修行だったら修行で,本当にできているかどうかですよね。」,「グルのご意思とは何かと絶えず考えて,例えば自主的に導きに行くなどして,救済活動を本当にしゃかりきになってやっていく形にしないと,なかなか徳を積めないと思うんですよね。」と述べた旨の記載がある(乙B3の11)。
また,同機関誌71号(平成24年11月発行)においては,同年9月に原告が開催したセミナー参加者の発言が掲載されており,同人が「クンバカ(注:修行法の1つで,息を止めるというもの)中,グルを思念して内側に意識を入れたときお尻が軽くなり,その後,歓喜状態でしばらくボーッとなり,口の中も急に甘くなりました。」と述べた旨の記載がある(乙B3の67)。
(2) Dに対する個人崇拝をうかがわせる事情(乙B3の1)
ア 平成24年2月21日から平成26年9月25日までの間に実施された原告管理に係る施設に対する公安調査官による立入検査の結果,延べ87施設中,67施設の祭壇にDの肖像写真が掲示されていた(乙B3の17・18)。
イ 平成26年1月,原告の勉強会において,幹部構成員が,「尊師は,今,拘置所の中でご自身で修行されておられますが,私たち信徒は常に尊師を思念・観想することで絆を強めなければなりません。聖地巡礼(注:Dが拘置されている東京拘置所を訪問することを意味する。)は,そこ,そのものがエネルギーに満たされている場所であり,聖地に行くことで信徒の皆さん自身も浄化されます。尊師が存命し修行を積んで居られる場所であり,尊師からの高いエネルギーが受けられる場所です。信徒の皆さんは機会を作り,出来る限り多く聖地巡礼をしてください」などと発言した(乙B3の39)。
平成24年4月から平成26年1月までの間,6回にわたり,原告の集中セミナーの際,原告の複数の構成員が,Dが拘置されている東京拘置所に赴き,同施設の外周を周回したり,同施設に向かって合掌して礼拝したりするなどした(乙B3の40)。
ウ 平成24年から平成26年の毎年,Dの誕生日である○月○日に合わせ,原告の各施設において,生誕祭などと称する催しが開かれ,※※三唱,立位礼拝,Dの説法の映像の視聴,Dの延命を祈願する瞑想,Dの好物とされる食物の喫食,Dを称揚する歌の合唱等が行われた(乙B3の35)。
エ 原告は,平成24年11月,「ある情報によると,実は今年の1月に死刑執行の準備に入ったと。(中略)だけど,それが逮捕者が出て,裁判が長引くことによってね,それが,その話が消えたという話を聞いたわけなんですけどね。(中略)それはやはり,去年の暮れくらいから私たち皆が,やはり,グルが涅槃されないためにね,しっかり思念していたから,そういう現象が起こったのかと思うんですけれども。(中略)じゃあ,グルが涅槃されないためにね,私たちは,実際,何を実践できるのかということをね,実際,説法にちゃんと載っていますから,それを見ていきたいと思います。(中略)まず,グルに対して涅槃されないように祈願するということですね。」という内容の説法を,各施設に対しインターネット中継により発信した(乙B3の38)。
(3) 原告における修行及び儀式等(乙B3の1)
ア PSI(パーフェクト・サーヴェーション・イニシエーション)は,原告が製作・使用する修行用の器具であり,Dの脳波データを発生させるとする基盤部分と頭部に装着する電極付きヘッドギア部分で構成されるものである。PSIを装着すれば,Dの脳波が注入され,着用者はDと同じ瞑想状態に至るとして,平成5年12月以降,構成員にその着用が奨励され,平成13年8月には,より小型化・高性能化したなどとする新型PSIが製作された(乙B3の43)。
原告においては,第4回更新決定後も,PSIがその施設に保管され,構成員に使用されており,原告は,定期的に,構成員に対し,PSIの装着時間について報告を求めている(乙B3の17・45,B9)。なお,平成24年9月に原告が実施した「2012年秋の集中セミナー」において,PSIを装着して立位礼拝を繰り返したりマントラを唱える修行する構成員がいた(乙B3の32,B29)。
イ 原告は,平成24年4月27日から平成26年8月17日までの間に合計15回(8回は出家構成員を,7回は在家構成員を対象としたもの)にわたって集中セミナーを実施した(乙B3の20・32,B29)。
上記集中セミナーにおいては,構成員は,① 「修行するぞ,修行するぞ,修行するぞ」,「徹底的に帰依するぞ」などと繰り返し唱和する欲如意足(乙B3の22),② 楽しく修行するために,「わたしは,煩悩から離貪するぞ」,「それはまず,グルを」,「うれしいなあ,楽しいなあ」などと唱和する喜覚支・軽安覚支(乙B3の21),③ 「※※ グルとシヴァ大神とすべての真理勝者方に帰依し奉ります」などの詞章を大声で唱えながら,長時間起立と地面への伏せの姿勢を繰り返し行う立位礼拝(乙B3の24・25),④ Dの説法等が収録された教本又はCD等を使用して,当該説法を繰り返し修習・暗記することなどを行う教学(乙B3の6・28・29・31),⑤ 写実的に描いたアニメーション画像のDを「シヴァ神となんら変わることのない,グルの報身・法身・変化身」などとして,Dに対する絶対的な帰依等を説くDVDを視聴しながら修行を行うグルヨーガ・マイトレーヤ・イニシエーション(乙B3の59)などの各プログラムを行った(乙B3の32・69,B29)。
ウ 原告は,施設内でDが唱えるマントラの声を常時流し,構成員に聞かせている(乙B3の17・18,B9)。
また,Dが唱えるマントラを電気信号に変換したデータが流れているとされる電気コードを巻いた枠内に食品等を一定時間保管する儀式を修法と称し,この方法によるパンや麺類,ジュースなどをお供物と称して全国の原告管理下の施設に配給して摂取させるほか,修法を施した上で,Dが奇跡的な聖水と位置づけた甘露水と称する飲料水も摂取させている(乙B3の61ないし64,B8の7・8)。そして,これら甘露水を製造するための修法の設備については,原告の管理下にある延べ87施設のうち83施設に存在する(乙B3の17)。
(4) 殺人を行うことも正当化される教義に関連する事実
ア 原告の幹部構成員は,第4回更新決定後においても,「皆さんはね,この世にシャンバラを現象化させるために一生懸命,救済を頑張らないといけません。」(平成24年10月のKの説法。乙B6の40),「尊師は,救済活動について次のように説法しています。『a教の救済活動とは何かと言うと,まずは真の解脱者,アラハットを3万人作りだすことだ。そして,その3万人が世界に散ったならば,そのサットヴァのエネルギーによって,例えば,核兵器を持つことが無意味であるということや,他の宗教理論の中には矛盾があるということがどんどん暴露されてくるだろう。そして,他の宗教理論が徐々に潰されてゆき,やがて真理は一つになるはずだ。(中略)それが,私の壮大なる計画だね』皆さんが修行して霊的進化を遂げること,そして,心の成熟を遂げることは,尊師の壮大なる計画であるシャンバラ化を早めることになります。」(平成26年1月の説法。乙B6の42)などと説法した。
イ 原告の幹部構成員は,第4回更新決定後も,原告の構成員に対し,「尊師との一対一の関係に気付いてほしいね。(中略)一対一っていうのはね,その間に誰も入らないってことなんだよね。」,「この一対一というのは,密教の関係です。(中略)クンダリニー・ヨーガでは,百対零。帰依の成就です。(中略)グルとの合一,尊師の変化身になって救済活動をするには,やはり一対一の関係を強めていかなきゃなりせんし,成就していってもらわないとならないわけですね。」(平成24年5月の説法。乙B3の7),「私たち弟子がやるべき実践は,グルが求めておられる帰依の実践なんだと思うんですね。それを尊師は,『つまり自分を投げ出すことだよ』というふうに説いています。だから,もしできる人はね,『自分をグルに投げ出すぞ』とね,『自分を全て投げ出して帰依するぞ』と思ってね,成就していただきたいと思う」(平成25年2月の説法。乙B3の10)などと説法した。
ウ 原告の幹部構成員は,「マハームドラーっていうのは,言うまでもなく,グルが私たちの心の内側に根付いている汚れをこの世界に投影し,そこで苦しみを経験させ,それを乗り越えさせるという高度な技法のことであると。(中略)要は,これは,最大のポイントは,誰でもかれでも挑戦するわけではないと。その人が,グルに対する帰依がしっかりとできている人に限ります。」(平成24年6月の説法。乙B6の55),「A34さん(注:目黒区公証役場事務長拉致事件等に関与し,平成23年12月に出頭したA34)の裁判を含めて,現在,教団に降りかかっている状況は,尊師が弟子達を成長させるためにマハームドラーを課している最中です。尊師は我々弟子達を最終解脱させようと考えています。」(平成26年2月の説法。乙B6の56)などと説法した。(乙B6の1)
原告発行の機関誌である「l」には,「マハームドラーの修行とは,『わたしは○○である』とか,『わたしはこうしたい』だとか,『わたしはこのように考える』だとか,『わたしはこれは嫌だ』とかいう心の働きを完全にストップさせた上で,最終地点に到達しているグルに自分の身・口・意を完全に調御してもらうことなのである。」(平成24年3月発行。B6の57),「マハームドラーの修行は,しばしば,グルによってわたしたちに突き付けられることになる。その場合は,グルが,わたしたちの内奥に存在している煩悩のデータをこの現象界に投影し,それが苦しみであることをわたしたちに証智させ,それを帰依の力によって乗り越えさせようとするのである。」(平成24年9月発行。乙B6の59)などという記載のある記事が掲載された。
エ 第4回更新決定以降,原告の一般構成員においても,両サリン事件を始めとする一連の重大事件は,衆生救済を実現するためのタントラ・ヴァジラヤーナの実践として正しいものであったという認識を有している者がある(乙B6の1)。
(ア) 原告の構成員は,平成24年9月,公安調査官に対し,「a教が起こしたサリン事件は,一般の人間界や一般の方から見たら(中略)ただの殺人行為にしか見えないと思うので,尊師を始め,実行した者は,人間界で責任を負うべきだと私は思う。ただ,真理勝者に近い尊師があのような事件を起こしたら,どのような結果になるかわからないはずがない。」,「私は(中略)相手を『救う』ために,相手のカルマを背負ってまで,自分を犠牲にして,相手のことを考えている『ポア』は,自己と他人を区別する『殺人』ではないこと(中略)などの理由から,私は,尊師が(中略)皆を『救う』ために,あのような事件を起こされたのではないかと思っている。」と述べた(乙B6の62)。
(イ) 原告の構成員は,同年11月,公安調査官に対し,「このヴァジラヤーナこそが最も深遠な教えであり,これを実践してこそ修行者冥利に尽きるというものです。」,「ヴァジラヤーナには修行としての殺人も含まれますが,それには,グルの命令が大前提になってきます。一連の事件を振り返れば,グルもステージの高い弟子にしか殺人の命令をしていませんので,そういう意味では,選ばれた弟子にしかできない非常に高度な修行ともいえます。」と述べた(乙B6の64)。
(ウ) 原告の構成員は,平成25年8月,公安調査官に対し,「単なる殺人を行えば犯罪者になりますが,尊師の場合は,弟子の解脱のために殺人を指示していますので,これは立派なヴァジラヤーナの実践です。」と述べた(乙B6の65)。
(エ) 原告の構成員は,平成26年9月,公安調査官に対し,「同じ殺人という行為であっても,徳が無くて悪業の塊のような人が悪人を殺すケースと,徳があって人々を救済しているような,尊敬に値する人が悪人を殺すケースとではその結果が違います。」,「悪人は,将来積むはずであった悪業を積むことなく次の転生を迎えられるわけです。」と述べた(乙B6の66)。
(オ) 原告の出家構成員は,平成24年6月,公安調査官に対し,「私は,このような神秘体験をいくつか経験しているため,尊師の力と救済の意思は本物だと確信している。尊師の指示に逆らうなど考えたこともないため,事件当時でも現在でも,仮に,尊師から高弟方と同じように『サリンを撒け』と指示されたら,サリンを撒くだろう。」と述べた(乙B7の39)。
原告の構成員は,平成25年8月,公安調査官に対し,「仮に今,私がK1正悟師(注:Kのこと)に『サリンを撒け』と指示されても即座に断るが,尊師から直接『サリンを撒け』と指示されたら,従うかもしれない。(中略)サマナにとって尊師からの指示は絶対であり,それに従わないということは,サマナの本質である,尊師に絶対の帰依を否定することになり,自分自身を否定するようなものだからである。」と述べた(乙B7の40)。
オ 「n」等
(ア) A35(以下「A35」という。)は,F弁護士一家殺人事件や両サリン事件等に関与し,殺人,殺人未遂等の罪で死刑判決を受け(平成22年1月19日上告棄却),死刑確定者として東京拘置所に収容されている。A35は,上記刑事事件の公判中も,一貫してDに対する帰依を述べ,各犯行を宗教的な確信によるものであるとして正当化する供述をした。(乙B4の15ないし18)
(イ) 原告には,第4回更新決定後も,A35と頻繁に面会する構成員がおり(乙B4の32),A35と面会した原告構成員は,多数の原告構成員に対して,A35のメッセージとして「n」と題するメールマガジンを配信した(乙B4の1・20)。
平成24年11月28日付け「n・VOL.32」には,A35のメッセージとして,「或る親愛なる法友から『今年の年末年始,都合により帰省もセミナーに参加することもできず,一人で過ごすことになりました。それは生まれて初めての体験で,とても寂しくなってしまい,グルに(尊師,寂しいよ)と心の中でつぶやいたら,しばらくして尊師から(私がいるじゃないか)という返事が心の中に入ってくると同時に至福感に包まれました。』とありました。ありがとうございます。良かったですね。寂しさを紛らわそうとして不善を為すのではなく,何かあればグルに意識を向けようとするのは素晴らしいです。グルはいつも私達を見守って下さっていますからね。(中略)或る親愛なる法友から『カルマの清算で切羽詰まって,昨夜グルにすがり,一身上のことをお伺いして,「私にも分かるように,示唆ご返事をください!」とお願いした直後に,このメールが届きました。グルと正大師(注:A35のこと)の癒しと励ましのヴァイブレーションに涙がでました。(中略)』とありました。ありがとうございます。」との記載(乙B4の33)がある。
平成25年1月27日付け「n・VOL.34」には,A35のメッセージとして,「偉大なるグルであられる尊師は逆縁を喜びとすると言われています。救い難いものを救うことの醍醐味を現わしてますね。」との記載(乙B4の21)がある。
同年3月27日付け「n・VOL.36」には,A35のメッセージとして,「グルの58歳の誕生日を祝福します。グルが健康で長生きされますように私の功徳を供養します。どうぞ衆生の為に苦悩の世界にとどまられますよう祈願します。」との記載(乙B4の22)がある。
同年4月26日付け「n・VOL.37」には,A35のメッセージとして,「私たちはグルの弟子として,『グルの弟子であったらどのように振る舞うか?』と絶えず考えることで,来世もグルの弟子として転生することができるでしょう。(中略)或る親愛なる法友から『正大師(注:A35のこと)が心を強くする勉強をなさっていることは,私たちも,これからのカルマの解放をのりこえるための心の強さを養う励みになります。小菅におられても,いつも私たちの先頭に立って励ましてくださって,本当にありがとうございます。正大師のバックにグルを感じられてなりません。』とありました。(中略)修行者であり,グルの弟子であることは本当に素晴らしいです。」との記載(乙B4の23)がある。
5  b教の組織等
(1) 設立
ア 平成19年5月7日,b教の設立が発表され,Eが代表に就任し,Eを始めとする出家した構成員13名が役員に就任した(なお,Eは,現在に至るまで代表役員である。)。設立時,「専従会員」(b教が指定する施設に居住し,b教の指示に従いb教の活動に従事する者)が57名,「非専従会員」(一般の社会生活を営みながら,b教の施設に通うなどしてb教のサービスを受ける者)が106名であった。このうち,非専従会員の1名を除く者はかつて原告において活動していた者であった。(乙B2の20,B3の215,B5の25,E203,E204,E291)
イ b教は,平成19年3月8日,ホームページに以下の記載のある記事を掲載した(乙B3の110)。
「4.D1氏の位置づけ
a教・d1教元代表のD1氏には,何らの位置づけも与えません。新団体は,一連のa教事件に関して,D1氏の真摯な反省を最後まで求めていきます。」
「8.祭壇
d1教でのシヴァ大神・ヴィシュヌ大神像等は廃止して,『釈迦三尊像』を採用します(現在・過去・未来の三世の仏陀を現す)。
これは,釈迦を(絶対の)崇拝対象にするためではなく,弟子に対して『私を拝まず,自分自身と法(仏法)を帰依の拠り所とせよ』と説き,自らを含めた特定の人間を神とすることを否定した釈迦牟尼の思想を重視するためであって,すなわち,a教・d1教におけるD1氏への個人崇拝の過ちを深く反省して脱却を決意するための象徴です。」
「13.公安調査庁・観察処分への協力
(中略)D1氏の影響力を払拭する新団体は,理論上・法律上は,観察処分の対象になるとは考えられませんが,① 新団体の理念であるa教事件の贖罪のためには,住民不安の除去を最優先すべきであること,② 新団体として完全に変わりきるためには,客観的な第三者の視点・評価を尊重すべきであると考え,当面は,観察処分に(任意に)協力することを公安調査庁幹部に約束しました。」
ウ 「基本理念」の制定
b教は,平成19年5月,① 人の心身の浄化を通じて,人々と社会への奉仕に努める,② 自己を絶対視せず,未完の求道者の心構えを持つ,③ 特定の人物を盲信せず,全ての人々に神性を認める,④ 善悪二元論の妄想を超えた,叡智・思想に基づく実践を行なう,⑤ 他の宗教・思想を強制せず,特定の宗教・思想を強制しない,⑥ 全ての存在から学ぶ,⑦ 全ての調和のための奉仕をするという内容の「基本理念」(同月8日改正後のもの)を定めた。その付帯文には「私たちは,地下鉄サリン事件・松本サリン事件・F弁護士事件をはじめとする,80年代末から95年にかけて発生した一連のa教事件が,当時のa教教祖・D1ことDの指示のもと行われた組織的犯罪であったことを,裁判所の判決や私たち自身の経験に基づいて,明確に認めるものである。」,「私たちは,本来の志に立ち返り,事件を引き起こした過去の私たちの宗教的な過ちを次のように反省し,二度とそのような問題を起こさないことを決意し,新しい道を歩んでいくことに努める。」などという記載があり,上記の宗教的な過ち一つとして「一人の人間である当時の教祖を『神=キリスト』と見て,絶対化し,絶対善として,弟子たる自分は,それに絶対的に服従すべきものと考えた。」ことが挙げられている。(乙B5の24,E108)
エ 「会則」の制定
b教は,平成19年5月,① 「基本理念」に基づき,過去のa教事件の反省に立ち,その教訓を生かしつつ,宗教・思想・哲学・科学及び芸術等を幅広く研究・実践及び公開することによって,人々の心身の浄化,癒し,人間と自然との調和に尽くし,もって宗教による悲劇が発生しない精神的に豊かな社会づくりに奉仕することを目的とし(3条),② b教の基本理念の趣旨に賛同する者であって,本会則を承認し,所定の手続を経て加入した専従会員及び非専従会員で構成され(6条),③ 専従会員から成る総会を年1回以上開催し,基本理念及び本会則の変更,役員の選任及び解任等を決議し(18条,19条,23条),④ 総会において会員の中から選出される役員(代表役員1名,副代表役員1名以上,役員5名以上)から成る役員会が必要に応じて招集され,運営事項を決議する(25ないし27条,29条,32条)こと等を内容とする「会則」を定めた(乙B2の20,B5の24,D79,E108)。
(2) 組織規模等
ア b教は,平成26年11月15日付けで,公安調査庁長官に対し,同年10月末時点におけるb教の国内構成員について143名(専従会員17名,同居する非専従会員6名,非専従会員91名,団体に入会していないが,団体の活動に参加することがあり,かつ,公安調査庁への任意報告に同意した者29名)と報告した。このうち,専従会員の全員,他の会員の6割以上が地下鉄サリン事件以前からa教に加入していた者であり,構成員の8割以上が,以前,原告において活動していた者であった(乙B1の44,B2の6,F28)。
また,b教設立後,原告からb教に移籍した者は少なくとも26名あった(乙B25)。
イ b教は,平成26年9月末時点で,東京都世田谷区〈以下省略〉所在のcマンション201に主たる事務所を置き,宮城県,千葉県,神奈川県,東京都,長野県,愛知県,大阪市,福岡県に合計8の施設を保有している(乙B2の12・31,B6の83,B8の92)。
(3) 運営態勢
ア b教は,年1回程度,総会を開催するほか,不定期に役員会を開催し組織運営に関する意思決定を行っている(乙B2の21,E108)。
また,b教は,代表秘書室,経理部,法務部,広報部,財施部,全国会員教化部及びウェブ編集部等の中央部署を5施設に配置している(乙B2の33)。
イ b教の専従会員は,全国7か所のb教管理下の施設に居住している(乙B8の1・5)。
ウ b教は,役員会で決定された内容等を会議に参加した構成員を通じて,各部署又は各施設に所属する構成員に伝達しているほか,中央部署や各施設をインターネット回線を通じて接続し,これらの事項や幹部構成員の説法,集中セミナー等の開催状況を構成員に周知させ,また,平成19年7月以降,聖地巡礼修行(原告における聖地巡礼とは異なり日本国内の一般に聖地とされる場所を訪問するもの),集中セミナーの状況等を収録した「o」と題するDVDを,同年10月からはこれとEの説法を収録したDVDも併せた2枚組の「p」を製作し(ただし,「o」については平成22年3月の25号を最後にして,以降製作されておらず,平成23年5月以降は,聖地巡礼の内容を収録したDVDが製作されることがある。),毎月1回,在家の構成員である非専従会員に配布している。(乙B2の1・24・28・29,E103,E105)
(4) b教の活動状況等
ア 「a教の教訓」サイト
b教は,平成19年8月頃から,a教時代及びd1教時代を振り返る総括会合を複数回行い,平成20年7月までに,「a教(1983~1999年)の活動経緯の総括」と題する文書及び「d1教時代(2000年~2007年)の総括」と題する文書を作成し公表した。
b教は,「a教の教訓―a教時代の反省・総括の概要」と題するウェブサイトを開設し,上記各文書を含む内容を掲載しているところ,これには,① 「D1の変遷の経緯の総括」として「D1は,自己中心的で誇大妄想的な性格であったところ,時を経るにつれて被害妄想的になり,社会と教団に著しい害悪を及ぼし,教団を破滅に導いていった」とし,② 「事件の要因に関する総括と今後の方針」として,「弟子である信者らが,D1と教団を誤って神格化し,個人崇拝した原因について探り,信者や信者を取り巻く状況にあった問題や,D1独自の,犯罪を正当化する密教的な教義の解釈の過ちについても総括」し,「それらの総括・反省に基づき,今後,元a教信者で構成されるb教が,二度と同じ過ちを繰り返さないために,どうすべきかについて,また今後果たしていくべき社会への償いについて」記し,③ 「心理学の『影の投影の理論』に基づくa教と日本社会」として,「深層心理学者であるユングの『影と投影の理論』をもとに,a教およびD1そしてa教事件を考察」し,④ 「心理学的な視点に基づく,D1・弟子・現代社会の人格分析」として,「D1については,『空想虚言症』『誇大自己症候群』という人格障害者であったと総括し,それに追随した信者らにも同様の傾向があったと総括」し,⑤ 「D1・d教を盲信する原因・落とし穴―盲信から脱却するために」として,「私達の20年間に及ぶ経験を活かして,なぜ,D1・d教を盲信するかの原因や,その落とし穴と,その盲信からいかに脱却していけるかを解説」するなどという記事がある。(乙D72,D73)
イ 教本の差し替え等
(ア) 上記(1)イのとおり,b教は,シヴァ大神・ヴィシュヌ大神像等は廃止して,釈迦三尊像を採用するとしており,三仏(弥勒菩薩,観音菩薩及び釈迦牟尼)の仏画を施設内に掲示していた(乙F17)。
(イ) b教は,平成20年4月,構成員に配布していた「マハーカーラのマントラ」及び「マハーカーラの瞑想」と題する教本の差し替えとして,教材「カーラチャクラ・タントラの真言」を発行・配布する一方,同年5月,構成員に対し,上記「マハーカーラのマントラ」及び「マハーカーラの瞑想」の廃棄を指示した(乙B1の21,3の118・123・164,F11)。
Eは,上記のとおり教本を差し替えた点について,「あれ自体はマハーカーラのマントラとして伝授したのは,仏教研究上,明らかにカーラチャクラの真言なので,それ自体はそれで良いのですね。それが正しいというか。ただ,付随した動機として,これは本質的に本当にカーラチャクラのマントラでマハーカーラのマントラではないのに,マハーカーラのマントラを残しておけば,それが仏教教義の過ちであるだけではなくて,マハーカーラ,イコール,シヴァとして,社会にも批判されなければいけないので,二重の問題があるから差し替える動機が強かった。」などと述べた(平成21年7月18日の説法。乙F12)。
(ウ) Eは,b教が運営する会員サイトに,平成21年7月14日,「代表緊急メッセージ―来る上高地・乗鞍巡礼の重要性」と題して,「今年2009年の7月において,仏教の歴史・教義の研究が進み,仏教が説く大黒天・マハーカーラとは,シヴァ神の化身ではなく,シヴァ神に由来しつつも,シヴァを降伏(ごうぶく)した仏教の護法神であり,さらには,大日如来の化身であると解釈できる(解釈するのが主流・正統である)ことがわかりました。シヴァ神に由来しつつ,シヴァを乗り越えた仏教の神といえば,これは,まさに,a教を出自としつつも,それを乗り越えて,仏教の一元論を中心に展開する,現在のb教と見事にイメージがだぶります。」と記載した(乙F13)。
平成23年8月に実施された公安調査官による調査において,b教の8施設に大黒天(マハーカーラ)の写真等が祭壇に掲げられていることが確認された(乙B3の119)。
(エ) 公安調査官は,平成24年2月3日,平成26年2月13日及び同年8月1日,千葉県鎌ケ谷市所在のb教の施設に対する立入検査を実施したところ,車庫に設置されたキャビネット等にDの説法を収録した書籍等を発見した(乙B3の161)。
ウ 哲学教室への変革
(ア) Eは,平成24年10月,b教のホームページに,「b教とは何か―宗教ではなく,新しい智恵の学びの場」と題して,「b教は,宗教的な学習は行っていますが,特定の超越者・絶対者を信じる団体ではありません。すなわち,『宗教』ではなく,これまでの宗教というもののさまざまな問題を越えた,21世紀のための『新しい精神的な智恵の学びの場』です。」などとする記事を掲載した(乙D128,F18)。
(イ) b教は,平成25年12月,「基本理念」を改正したところ,その内容は,① 思想・哲学の学習・実践を通じて,社会への奉仕に努める,② 宗教ではなく,「宗教哲学」を探求していく,③ 自己を絶対視せず,「未完の求道者」の心構えを持つ,④ 感謝・尊重・愛の実践で,全ての存在に神性を見いだす,⑤ 過去の反省に基づき,特定の存在を絶対視しない,⑥ 善悪二元論の妄想を超えた,叡智・思想に基づく実践を行なう,⑦ 諸宗教の神仏は,人に内在する神性を引き出す存在として尊重する,⑧ 「輪の思想」で,全ての調和のための奉仕をするというものである(乙B2の21,B6の88,D78)。
b教は,上記基本理念の改正により,自らを「思想哲学の学習教室」,「哲学教室」と正式に位置付けたと説明している(乙F18)。
(ウ) b教は,平成26年3月,「思想哲学の学習教室への改革にともなう団体活動の場に関する規定」及び「教室内装に関する申し合わせ事項」を定めたところ,その内容は,① 「道場」の呼称を廃止し,「教室」と呼ぶこと,② 恒常的な祭壇を廃止(仮設祭壇のみ),③ 三仏を廃止(正面の壁は釈迦のみとする),④ 室内のインテリアに非宗教的なものを多用すること,⑤ 上記にともない大黒天仏像も事実上廃止するなどというものである(乙B3の139,D131,D132,F18)。なお,同年5月31日から同年6月1日に行われた聖地巡りの際のEの宿泊部屋には三仏の画が掲げられていた(乙B3の140)。
Eは,平成26年3月の公安調査官による調査において,「大黒天を信仰していると思われるのは,一般の人とか,貴庁だけじゃなくて,何かを信仰していると思われるのは本意ではない。いずれにしても大黒天に限らず崇拝の対象にしていると思われるのは嫌。宗教ではなくて教室だから。」,「今回の内装の変更において,(注:大黒天像を)残さない方が望ましいと思っています。」などと述べた(乙B3の121)。
(エ) b教は,平成26年9月,「思想哲学の学習教室への改革を推進するための活動規定」及び「教室活動の改革に関する申し合わせ事項」を定めたところ,その内容は,① 祭壇の完全な廃止(仮設祭壇も廃止),② 供養等の儀礼の廃止,③ 大黒天関係の法具の破棄,④ 三仏の完全な廃止などというものである(乙B1の24,3の141,F18)。
b教は,同年8月までに,各施設の大黒天像を回収し,焼却処分した(乙B3の121,122,B22,D134,D135,D192)。
エ 外部監査委員会
(ア) b教は,平成23年12月,「b教外部監査規約」を定めたところ,これによればb教外部監査委員会は,地下鉄サリン事件を始めとするa教による一連の事件の再発防止の観点からb教が適正な団体運営を行っているかを監査し,必要に応じて,勧告・公表・告発等を行い,b教が社会と融和することによって,a教問題の解決に資することを目的とし,人格・識見に優れたb教外部の者(ただし,b教会員であった経歴を持つ者を除く。)から,b教が選任する3名以上の委員によって構成され,b教が所有し又は管理する土地又は建物に立ち入り,設備,帳簿書類その他必要な物件を検査すること,b教会員に必要な質問をすること,b教から定期的に報告書を徴収し,検査すること,b教から教義資料及び定期刊行物を,刊行後速やかに徴収し,検査することができ,監査の結果,必要な場合は勧告・公表・告発等を行うものとされている(乙B8の58・72)。
同委員会委員長には,L(松本サリン事件の被害者),同委員には,M(青山学院大学法学部教授・内観学者),N(宗教法人出羽三山神社責任役員理事),O(地下鉄サリン事件被害者親族)及びPが就任した(なお,同委員会の委員は,その後,L,M及びNの3名になった。乙B8の72・74・88,D107,D117,D165ないし167,F20)。
(イ) M教授は,平成21年から,b教の構成員らに対して内観の指導を行っているところ,同教授によれば,内観とは,母親など身近な人に関して,これまでにしてもらったこと,してあげたこと,迷惑を掛けたことの3点を想起してもらうことにより,先入観を排した事実を思い起こす手法である。b教は,b教管理下の各施設において,同教授指導のもと内観セミナーを開催している。(乙B8の74ないし77,D109,D112,D115,D116,F19)
M教授は,平成26年12月,公安調査官に対し,内観の実施を経て,b教の人たちが,Dやa教信仰から脱却していることは間違いないと思う旨述べた(乙B36)。
(ウ) b教外部監査委員会は,平成26年11月,b教には団体規制法5条の観察処分の適用要件に該当する事実は何ら認められなかったとする外部監査結果報告書を作成した(乙D71)。
オ 原告との関係
(ア) b教は,平成22年9月,原告からの退会に関する相談窓口を設置し(乙D158),平成24年2月,「d教(X教)問題対策室」を設置するとともに,「X教問題の告発と対策」と題するブログを開設した(乙D159)。b教の構成員は,原告からの退会を検討している者の相談を受けるなどしている(乙D160,D161)。
(イ) a教犯罪被害者支援機構は,平成23年7月,原告に対して,同機構に著作権が帰属するDの著作物を使用しないように通告した。b教は,平成24年頃から,同機構に対し,その証拠収集について協力し,上記ア(エ)の千葉県鎌ケ谷市所在の施設に保管されているDの説法を収録した書籍等を提供したり,原告の元構成員から提出してもらった原告からの教材の購入に関するアンケートを提供したりしている(乙D71,D92,D99,D100,D159,D164,D224)。
(5) Eの言動
Eは,平成24年5月の説法において,「a教,D1という人物,これは一連の教義及び事件に関しては,私は今完全にそれを否定してですね,それを乗り越えようとして,『b教』というのをやっています。あれは納得がいかないと。そして,私はそれを2003年ぐらいから反旗を翻して,教団が分裂。で,2007年にはD1の教材は一切捨てて,私の自立っていうもの,これが生じたわけです。(中略)『b教』として自立,独立してから,賠償も含めて毎日いろんな苦労をする中で,ああ,そうだなと,D1にも食べさせてもらったことに関しては,事件その他の教義に関しては徹底して超越しなければならないが,少なくとも食べさせてもらったことに関しては感謝せねばならんのかな,そういうふうに思うようになりました。」などと説いた(乙B1の27,B3の142)。
Eは,平成25年3月の説法において,「単純に物の豊かさによって幸福になると感じられない人が一部にいるということは,御理解いただけるとは思います。(中略)そういう人たちは,a教とか(中略)にはいっていったんじゃないか,そういうふうに思います。(中略)物の豊かさが絶対ではなくて,心の豊かさ,精神性を高めることがこれからの幸福にとって重要なんじゃないか。特に,自分はそうだっていうこと,それ自体はですね,私は,a教に限りませんが,間違いだとは思っていません。ただ,その心の幸福をa教は,まあ,解脱・悟りといったような形で追求して,で,その過程の中で自分たちで得た結果,これに教祖をはじめとして,弟子たちが,ある意味じゃあ過信を持って,自分たちがこの世を正す,そして真の幸福を広める神の化身,集団だと,そういうふうに慢心に陥って,で,それと対抗する既存社会というものは悪であると断じてですね,そういったものに対する対処は武力をもっても,暴力をもってもやるべきではあるという感じになってしまった点,それは間違いであったのかなと,そういうふうに思います。そういった意味では,まあ,a教というものであってもですね,その暴力主義的な,その武力革命の思想はさておき,その中に何か良いことがあったんだろうというのは,御理解いただける方もいらっしゃるとは思う」などと説いた(乙B1の28,B3の144)。
Eは,平成25年4月の講演において,「瞑想しただけでは,なかなか悟れない,体得できないということで出てきたのが,D1による試練なんですね。これを『マハームドラー』と言います。D1は弟子をいじめるわけですね。(中略)グルと弟子のプライベートな関係で,グルが弟子をいじめて,それに対して弟子は自己愛にとらわれない瞑想をして,その平常心を保つという訓練は意義があったかなというふうには思っています。」などと述べた(乙B1の41,B3の162,B6の73)。
Eは,平成25年4月の講話において,「単純にそのマハームドラーっていうのは効果があったということで肯定すると,ものすごく大変な問題になるだろうし,ものすごく強い恐怖心をですね,一般社会に振りまいてしまう,それが1995年以来あったということですね。で,そのマハームドラーの考え方を,この現在の社会の中で合理的に活かすことができるか,これは非常に難しい問題だということになります。」,「神仏が与える我々の修行と考えるということになるんじゃないかなと思うんです。つまり,まあ,全ての人がマハームドラーのグルだと考えるわけです。で,それは当然ですね,その人たちがやっていることが違法行為であったならば,皆さんはそれを甘んじて受けて,マハームドラーのグルとするということは,してはなりません。」などと述べた(乙B3の163,B6の74)。
Eは,平成25年5月の講話において,「a教自体が,近代日本の中から生まれたもので,a教的なものが近代日本には,その前にもたくさんあった。だから,a教の後にもまた,a教的なものが現れてくる。(中略)a教的なものっていうのは,昔から繰り返しあって。それを生み出す日本の体質があって,a教後20年くらい経った今,第2,第3,第4くらいですかね,a教的なもの,これが現れつつあって。」などと述べた(乙B1の37,B6の71,B7の11)。
Eは,平成25年6月の講話において,「a教という,日本が生んだ,その団体が,過去の日本の戦争の性質を含んだ,すなわち,日本社会が生んだものではないかという,日本とa教のつながり。そして,アラブの自爆テロですね,イスラムの自爆テロが,自決,自爆,特攻隊の文化を持った,日本が感染させたものではないか。そして,日本の隣国の北朝鮮がやっていることが,正に大日本帝国と似ているのではないかという,いろんなものにつながり,これを認める思想,これが輪の思想ないし輪の智慧だと私は思っています。」などと述べた(乙B1の38,B6の72)。
Eは,平成26年6月の講演において,「私たちの考えとしては,現代社会の中において,心の豊かさや幸福・解放,悟りというのは,やはり非常に重要なことではないかと。a教の間違いというのは,それを求めたことではなく,それを実現させるための手段が間違い,途中から道を外したことではないかと考えておりまして,まあ,ああいった問題の再発の防止のためには,適切な形でa教が当初求めていた,そのa教信者が当初求めていた心の豊かさや解放を得る道を作り出すことではないかというような視点から,こういう形になっております。」などと述べた(乙B3の154)。
6  その他
(1) iクラブ
A36ら約30名の者は,平成8年7月頃から,「iクラブ」と称するグループを形成し,東京都練馬区●●に所在する施設を拠点として活動していた。
公安調査官は,平成16年2月,上記●●の施設に対する立入検査を実施したところ,祭壇が設置され,Dの著作やDの説法を収録したビデオテープが保管されており,これを修行用の教材として,Dの教義に基づく修行法を実践するなどしていることが確認された。
その後,A36ら8名は,同グループ内のメンバーに修行と称して竹刀で殴打する暴行を加えて死亡させたとして傷害致死罪等の被疑事実で逮捕されるなどしたが,近年でも,A36の自宅にiクラブ構成員のA37が出入りしている。(乙B2の1・5)
(2) j団体
j団体は,A38を代表者とし,平成8年に組織された刑事弁護対策本部を前身とする組織で,a教に関する刑事事件において逮捕・勾留された信者たちを社会的な弾圧から守り公正な裁判を受けさせることを主な目的として,志を同じくする信者らが集まって支援活動を展開するための集団である(乙B2の34,E174)。
j団体に所属する5名は,うち4名が両サリン事件前にa教に入会した者,うち1名が原告発足以前にa教に入会した者であり,公安調査官は,平成25年7月,その5名が居住する東京都練馬区〈以下省略〉所在の施設に対して立入検査を実施したところ,Dの説法を収録した教本やDVD,Dの肖像写真が保管され,修行計画表が掲示されていた(乙B2の2・3)。
j団体は,受刑者や刑事被告人であるa教の信者の裁判支援や原告の構成員との接見調整をした(乙B2の34,E174,E176ないしE179,E181ないしE184)。
近年においても,j団体の預金口座には,原告関係者からの継続的な振込入金があり(乙B2の4),上記受刑者に対する差し入れや原告の構成員との接見調整を行っている(乙B4の32・35ないし37,B5の81,B18)。
7  上記事実認定の補足説明
原告は,被告が提出した証拠には,公安調査庁職員作成の調査書や供述調書等と題して,(特に原告の構成員とされる)第三者から聴取した内容をまとめた書類があるところ,これらは,伝聞証拠,再伝聞証拠,再々伝聞証拠などであり,一般的に信用性が低く,しかも,その多くが,氏名不詳者からの聴取内容をまとめた報告書であり,被聴取者本人の署名押印を欠き,被聴取者の氏名自体が黒塗りなどで不詳となっており,そのような聴取自体が実際に行われているかすら疑わしいなどとして,証拠価値がない旨主張する。
しかし,氏名の秘匿は,本件更新決定の際の本団体により,協力者に生命・身体・財産等への危害が加えられることを事前に防止するためのものであり,原告指摘の調査書等を見ても,部分的に個人を識別し得る情報に限って,事後的に塗りつぶしを施したものと認められ,その体裁自体から,聴取が実際に行われていないなどとうかがわれるものではない。
その他,原告が指摘する点を踏まえてみても,上記事実認定が左右されることはない。
第8  争点7(原告を含む本件更新決定の対象団体と本件観察処分を受けた団体の同一性の有無等)について
1  団体規制法4条2項にいう「団体」の意義
団体規制法にいう「団体」とは,同法4条2項において「特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体又はその連合体」と規定されているところ,同法が観察処分等の対象としているのは,その役職員又は構成員が団体の活動として過去に無差別大量殺人行為を行った団体であり,現在も無差別大量殺人行為の実行に関連する危険な要素を有している団体であること(同法1条,5条1項,4項)も考慮すれば,「特定の共同目的」としては,多数人の集団に,個々の構成員個人の意思とは離れて独自に形成され,又は存在する目的であって,構成員各人が当該集団としての行動をする際の指針となり得ると評価できる程度の特定の共同の目的があれば足りると解される。
また,「結合体」としての多数人の集団の結び付きの強さの程度としては,各構成員がこの共同の目的を達成するためにこれに沿った行動をとり得る関係にあることを要するところ,特定の共同目的が,個々の構成員個人の意思とは離れて独自に形成され,又は存在し,各構成員がこのような共同の目的に沿った行動を行うには,当該集団において,構成単位である個人を離れて組織体としての独自の意思を決定し得ることがその前提となるものであるから,「結合体」というには,そのような組織体としての独自の意思を決定し得るものであることを要するものと解される。
したがって,「継続的結合体」とは,多数人の組織体であって,その構成単位である個人を離れて,組織体としての独自の意思を決定し得るもので,相当の期間にわたって存続すべきものをいうと解される。
2  本団体が「その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体」(団体規制法5条1項柱書)に該当するか否かについて
(1) a教の教義は,衆生救済を最終目的としそれを最速で達成するためには,たとえ自己は悪業を積むことになっても他者に対して善業となるならば,それを最高の実践課題として実践するという点に特色があるタントラ・ヴァジラヤーナ(具体的規範として,悪業を積んでいる魂は早く命を絶つべきであるとか,結果のためには手段を選ばないとする五仏の法則がある。)を最上位の教えとして位置付け,その実践として,苦しみの限界に自己を置き,そこにおいて一切乱れない心を形成する修行であるマハームドラーの修行を行い,シヴァ神の化身であるDに対する絶対的帰依を培い,Dと心を合一させることにあるということができる(認定事実1(2))。
また,a教の教義は,両サリン事件の犯行動機が本件政治上の主義を実現することにあると認められ(認定事実1(3)),両サリン事件に関与した者の多くがマハームドラーの修行の一環としてこれらの犯行を実行したと供述していること(認定事実1(2))等も考慮すれば,その最終目的である衆生救済の実現のため,日本・世界をa教のシャンバラ(理想郷)とする必要があり,そのための具体的かつ世俗的側面を有する手段として,Dを王ないし独裁者とする祭政一致の専制国家体制を構築するという本件政治上の主義と密接不可分に結び付いていたと認められる。
そして,本件政治上の主義を実現するためという両サリン事件の犯行動機やその犯行態様,これらの犯行に至る過程の中で,a教が拠点拡大や構成員の獲得を進め,武装化を推進し,国家行政組織を模倣した省庁制度の導入や憲法草案等の立案作業等をしていったこと等(認定事実1(3)イ,ウ)からすれば,a教は,本件政治上の主義とも密接不可分なa教の教義を広め,これを実現することを共同の目的としていたということができ,その構成員も,この共同の目的を達成するために,a教という組織体としての独自の意思決定に従う構成員として,互いに結合していたということができる。
そうすると,団体規制法4条1項にいう「無差別大量殺人行為」に該当する両サリン事件は,a教の役職員又は構成員が,a教の活動として実行したものであり,a教は,団体規制法5条1項所定の「その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体」に該当する。
(2) 本件観察処分を受けた団体(本団体)は,「D1ことDを教祖・創始者とするa教の教義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体」とされているところ,上記(1)に説示したところによれば,本団体が,本件観察処分当時において,「その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体」に該当することも明らかであり,また,原告が正式に発足された旨公表されたのは,本件観察処分がされた直後である平成12年2月4日であるところ(前提事実(1)エ),認定事実2(1),(2)アによれば,原告は,その発足当時において,本団体の少なくとも一部であったと認めるのが相当である。
3  本件更新決定時において,原告が少なくとも本団体の一部に含まれるかについて
(1) 本件更新決定時の原告
次に,本件更新決定時における原告と本団体の同一性についてみると,原告は,外形上は,① Dについては,現実の教団運営を統括する教祖・代表者ではなく,純粋に霊的な意味での瞑想修行等における「観想の対象」ないし「霊的存在」と位置付け,② 両サリン事件等との関係が指摘されている五仏の法則については,削除して廃棄し,誤解を招く用語等については事件や犯罪の肯定に結び付けられる余地のないように公式解釈書を作成・配布し,事件と無関係な教義・修行法を採用すること等を方針として発表している(認定事実2(8)ア)。
しかし,本件更新決定時においても,原告では,Dの説法を収録した教材が編集し直されるなどして使用され(認定事実2(8)イ,4(1)),Dへの絶対的帰依を求める指導がされ(認定事実4(1),(3)),Dに対する個人崇拝をうかがわせる事情が散見され(認定事実4(2)),a教の頃と変わらぬ修行や儀式が行われ,一般の構成員もこれを実践している(認定事実4(3))というのであって,原告は,本件観察処分後の期間の経過やその名称変更を経ても,a教の教義を広め,これを実現することを目的とし,D及びa教の教義に従う者によって構成される団体であると認めるのが相当である。
したがって,原告は,本件更新決定時においても,本団体の少なくとも一部を構成するものというべきである。
(2) 代表者及び主宰者について
本件観察処分及び本件更新決定を含むその後の各更新決定の決定書においては,Dが本団体の主宰者ないし代表者であるとされているところ,Dは,長期にわたり東京拘置所に収容されており,認定事実2(2)アのとおり,平成8年頃には,接見した弁護士を介して,本団体の構成員に対するメッセージを発するなどしたこともあったが,以来,本件更新決定時に至るまで,同様のメッセージを発したと認めるに足りる証拠はなく,また,認定事実3(1)ウのとおり,Dの三女Iは,平成24年1月23日から平成26年7月31日までの間に,70回以上,Dとの面会を申し込み,二女A32,長男A17及び二男A18も複数回にわたってDとの面会を申し込んだことが認められるが,Dは,平成20年6月10日に二女及び二男と面会したのを最後に,面会をしていないのであって,本件更新決定時において,Dが原告の代表者及び主宰者であるとはいえないともいい得る。
しかし,そもそも,手続規則は,観察処分及び期間更新決定の決定書には,被請求団体の名称を記載しなければならないが,これが明らかではないときは,その団体を特定するに足りる事項を記載しなければならないとしており(手続規則18条2項3号,3項,2条2項),本件観察処分及びその後の期間更新決定の決定書において,被請求団体として本団体が記載されたのは,その対象団体を特定するためであると解される。そうすると,仮に,決定書における対象団体を特定するための要素の一部に欠けるところがあったとしても,他の要素によって対象団体を特定するのに足りるのであれば,決定書の記載に不備があるということはできないというべきである。
本件更新決定時において,Dが原告の代表者及び主宰者であるとは認め難いとしても,そもそも団体はその同一性を維持しながらもその組織や構成員が変動することが予定されているものであって,この事情のみをもって本件更新決定の対象団体の特定を欠くということはできず,原告が本件更新決定時において,本団体の少なくとも一部であると認められることは上記(1)のとおりである。
そして,本件更新決定の決定書において,被請求団体の表示欄には,対象団体が本団体,「主たる事務所の所在地」が① 埼玉県越谷市〈以下省略〉「eマンション」101号室,② 東京都世田谷区〈以下省略〉「cマンション」201号室,「主幹者」がA7,A8及びEと記載されているところ(前提事実(2)カ),これらの記載によれば,仮にDが原告の代表者及び主宰者であるとは認め難いとしても,本件更新決定の対象団体の特定に欠けるところはなく,本件更新決定の対象団体に原告が含まれることも明らかである。原告は,Dが原告を主宰しているといえなければ,団体としての同一性は失われると主張するが,上記説示に照らし,採用できない。
4  b教との関係について
(1) 観察処分を受けた団体が複数の集団に分派又は分裂した場合における団体の同一性の判断基準
ア 証拠(乙F6)及び弁論の全趣旨によれば,無差別大量殺人行為を行う組織が,組織の離合集散を行うことがあることが認められ,無差別大量殺人行為を行い観察処分を受けた団体が,複数の集団に分派又は分裂することも想定される。しかしながら,団体規制法には,観察処分後に対象団体が複数の集団に分派又は分裂し,新たに形成された集団が別の「団体」を構成した場合に,いずれの団体に対しても期間更新をすることができる旨を明示した規定はなく,団体規制法5条4項にいう「第1項の処分を受けた団体」と同法5条1項にいう観察処分の対象となった「当該団体」の同一性の判断基準についても明確な定めはないのであって,このような場合に,双方の集団に対し別個に又は「連合体」若しくは「支部,分会その他の下部組織」として当初の観察処分の更新決定を行い得るかは,解釈上の問題である。
もっとも,被告は,原告とb教が団体規制法4条2項にいう「継続的結合体」に当たると主張し,原告とb教が「連合体」に当たる又はb教が原告の「支部,分会その他の下部組織」に当たると主張するものではなく,原告とb教とが別個の団体に当たるとしてもそれぞれに期間更新をすることができると主張するものでもない。
そこで,以下では,観察処分を受けた団体が後に複数の集団に分派又は分裂した場合において,当該各集団が団体規制法における同一の団体に該当するか否かという観点から原告とb教の関係を検討する。
イ 上記の被告の主張を前提とすると,上記の団体の同一性は,結局のところ,上記1のとおりの団体規制法4条2項の「団体」の意義に照らして判断するほかなく,同「団体」は,特定の共同目的を有することが必要であるから,団体の同一性の判断基準としても,まず,各集団において,① 構成員個人の意思とは離れて当該団体としての行動をする際の指針となり得る特定の共同の目的に同一性があるかどうかが検討されることになる。
次に,人的関係・組織構成については,同項が「継続的結合体」と規定する以上,観察処分を受けた団体が複数の集団に分派又は分裂した場合についていえば,各集団が,その構成単位である個人を離れて,あるいは,それぞれの集団を離れて,一つの組織体としての独自の意思を決定し得るもので,相当の期間にわたって存続すべきものであることを要し,分派又は分裂した各集団について,② 各集団が,それぞれの集団を離れて,一つの組織体としての独自の意思を決定し得るものであり,各集団の構成員が,その意思決定に従い共同の目的に沿った行動をする関係があるかどうかが検討される必要がある。
ウ この点について被告は,団体の同一性を判断するに当たっては,構成員個人の意思とは離れて当該団体としての行動をする際の指針となり得る特定の共同目的に同一性があるかどうかという点が最も重要であり,各構成員が当該共同目的を達成するために決定された団体の意思を各構成員が実現する行為を行うなどの共同の目的に沿った行動をするという点において,基本的な結合関係がなお保持されているか否かという点も検討される必要があると主張する。
① 特定の共同目的に同一性があるかどうか,② 各構成員が当該共同目的を達成するために決定された団体の意思を各構成員が実現する行為を行うなどの共同の目的に沿った行動をするという関係があるかどうかが検討されるべきことは上記イで説示したとおりであるが,構成員が共同の目的に沿った行動をするには,一つの団体としての意思決定がされることが前提となるはずであり,被告の主張も,この点を否定する趣旨であるとは解されない。本件についていえば,a教の教義を広め,これを実現するという共同の目的が存在しても,これが共同の行動として具現されるには,組織体としての独自の意思決定が必要であるというべきであって,かかる要素を無視することはできない。
なお,無差別大量殺人行為を行う団体が,閉鎖的・密行的な性格を有する場合には,外部からは団体内部の意思決定過程を知ることが困難であるということが考えられるが,これをうかがわせる間接事実から推認することが可能である上,この場合の団体の同一性の判断は,既に観察処分を受けている団体について問題になるものであり,公安調査庁長官は,観察処分により,当該団体の意思決定過程をうかがわせる資料を入手することが可能である。加えて,そもそも,立証の難易により団体の同一性の判断基準が左右されるべきものではない。
エ そして,無差別大量殺人行為を行った団体の活動状況を明らかにし又は当該行為の再発を防止するために必要な規制を行うという団体規制法の目的に照らして検討すると,観察処分を受けた団体の共同目的が,構成員個人が行う当該団体としての行動を一義的に特定する程度に具体的で明確であり,当該団体が無差別大量殺人行為に及ぶ危険性が高いといい得るような場合には,組織体としての独自の意思を決定し得るかどうかという点においても,当該共同目的の存在を相当程度重視することが相当とも考えられる。他方,観察処分を受けた団体の共同目的が,構成員個人が行う当該団体としての行動の原理や指針として具体性や明確性に乏しいような場合には,構成員個人が行う当該団体としての共同の行動として具現されるには,組織体としての独自の意思を決定し得る仕組みが存在し相応に機能することが前提となるというべきであり,当該共同目的の存否のみを主たる考慮要素として団体の同一性を肯定することはできないというべきである。
したがって,団体の同一性を判断するに当たっては,観察処分を受けた団体の共同目的の内容,明確性の程度,構成員への受容のされ方等を勘案して,各集団が,それぞれの集団を離れて,一つの組織体としての独自の意思を決定し得るものであり,各集団の構成員が,その意思決定に従い共同の目的に沿った行動をする関係があるかどうかが検討される必要がある。
以下,以上の判断の枠組みに従って,原告とb教の関係について検討する。
(2) b教の設立経緯
ア b教の設立に至る経緯は,認定事実2(7)イにおいて認定したとおりであるところ,b教の代表者であるEは,平成14年から平成15年頃には原告の代表者として活動し,外形上,Dの影響力を払拭したかのように装いながら,真実はDに対する絶対的帰依を維持しつつ,Dの説く教義を広め,Dの意思を実現することを目的とする活動(「D1隠し」)を展開していた上(認定事実2(4)ア),b教の設立に先立っても,観察処分を免れるためにファウンデーション理論に基づいて原告とは別の団体の設立が必要であることを説いていた(認定事実2(7)イ(ア))。
イ しかし,b教が設立されるに至った背景には,H(Dの妻)が平成14年10月に刑務所を出所し,I(Dの三女)と共に原告の組織運営に介入するようになり,一方Eが平成15年6月頃から原告の運営に実質的に関与しなくなって,E派(E1派)と反E派(I派)が対立するに至るという経緯が存在した(認定事実2(5)イ)。b教の設立に際して,b教に参画する者とそれ以外の者との間で,観察処分を免れるために原告を意図的に分派又は分裂させることを合意したなどと認めるに足りる証拠はなく,むしろ,当時,原告の集団指導体制を構成していたA3,A24,A25及びA26は,Eの考えに理解を示したものの,中堅幹部構成員らに反発され,その後,脱会や役員の辞任を余儀なくされており(認定事実2(7)イ(イ),(ウ)),認定事実2(7)イ(ア)においてEが説いた,二つのグループが役割分担をし,一つのグループは特定の限られた人たちの信仰のためにあり,もう一つのグループは幅広く救済のためにダイナミックにフォームを変えていくという考えが,原告に残る者の間で広く共有されていたというわけではない。
ウ b教の設立に先立つEの言動についてみると,Eは,平成17年頃には,原告とは別の団体を設立する考えを表明し,それがDの意思にも沿うように説明しているのであるが(認定事実2(6),(7)イ(ア)),引き合いに出されたDの発言は,Dの逮捕前のものや,破防法に基づく解散指定請求(平成8年7月)に際してのものであり(認定事実2(2)ア),Dが原告とb教の分派を念頭に置いて発言したものではないことは明らかである。
エ 以上のとおりであって,b教の設立は,別団体を組織して,別団体との間で役割分担しながら活動することを求めていたDの意思に従ってされたものであるとまでは認めることはできない。
(3) 本件更新決定時の原告とb教の関係
ア 上記2のとおり,a教ないし本件観察処分を受けた本団体は,a教の教義を広め,これを実現することを共同の目的としていたと認められるところ,a教の教義自体が,団体において無差別大量殺人行為に及ぶ危険性を内包するものとしても,個々の構成員が行う団体としての行動を一義的に特定する程度に具体的で明確であるとは認め難い。むしろ,b教が設立される前の原告内においても,どのような団体運営がDに対する真の帰依であるのかについてE派とI派の対立があったのであり,Dに対する絶対的帰依というa教の教義の本質的部分さえ,多義的であり,個々の構成員によって異なる解釈が存在するものであるから,これが構成員の団体としての行動として具現されるには,組織体として独自の意思を決定し得ることが前提とならざるを得ない。
本件政治上の主義についても,両サリン事件当時には,これがa教の教義と密接不可分に結び付いていたとしても,Dが死刑確定者として長期にわたり収容されている本件更新決定時において,なおa教の教義と密接不可分に結び付いているとはいい難いし,仮に同時点において本件政治上の主義が存続しているとしても,Dを王ないし独裁者とする祭政一致の専制国家体制を構築するために構成員がどのような行動をとるのかは不明確といわざるを得ない。
そうすると,仮に,b教が,a教の教義を広め,これを実現する目的を有するものと認められたとしても,そのことから直ちに本件更新決定時における原告とb教が一つの組織体ないし団体と認められるということはできず,原告とb教の間において,一つの組織体としての独自の意思を決定し得る仕組みが存在するのかどうか,また,その仕組みが現実に機能しているのかどうかを吟味することを要するというべきである。
イ 上記のような見地から,原告とb教の関係について検討すると,b教の設立に当たって制定された「基本理念」では,Dに対する絶対的帰依が否定されており(認定事実5(1)ウ),a教においてDがシヴァ神の化身であるとされたことを踏まえ,シヴァ神を崇拝しないものとした(認定事実5(1)イ)上,b教は,平成24年頃からは哲学教室への変革を標榜するようになった(認定事実5(4)ウ)。
これに対して,原告は,b教の分派後,むしろ,Dへの帰依を深めるようになっており(認定事実2(7)イ(ウ),ウ,(8)イ,4),少なくとも表面的には,原告とb教の性格は相当に異なるものとなっている。
この点について,原告とb教が相互に連絡をとって役割を分担し合っているというべき事情はないし,b教の設立経緯に加えて,認定事実5(4)オのとおり,b教が,原告からの退会を検討する者の相談を受けるなどしたり,原告に関する著作権問題についてa教犯罪被害者支援機構に協力したりしていることからすると,むしろ,原告とb教は対立関係にあると評価することができる。
そして,b教の設立が表明された平成19年5月から本件更新決定がされるまでの間に7年以上経過しているところ,その間に原告からb教に移籍した者があったものの(認定事実5(2)ア),原告とb教との間で,幹部構成員の人事交流があったとか,同一の施設を共同利用したことがあるとか,同一の事業や行事を共同開催したことがあるなどということを認める証拠はないし,原告の幹部構成員とb教の幹部構成員の間で何らかの連絡や指示があったと認めるに足りる証拠もない。
以上によれば,本件更新決定時の原告とb教において,不定式なものも含めて一つの組織体としての独自の意思を決定し得る仕組みが存在していたとは認められず,b教の設立後,一つの組織体としての独自の意思を決定した事実も認めることもできない。
ウ ところで,Dが,原告とb教の双方を統括し,原告及びb教がその意思決定に従う関係にあるとすれば,両者の団体の同一性を肯定する余地がある。しかし,上記3(1)で説示したところによれば,原告は,本件更新決定時においても,Dの意思を尊重し,Dの意思を慮って団体運営をしているということもできようが,そのことから直ちに,原告及びb教の双方又は一方の団体としての意思決定をDがしているとはいえないし,上記3(2)のとおり,近年,Dが原告に関する何らかの指示をしたと認めるに足りる証拠はなく,本件更新決定時において,Dが原告の代表者及び主宰者であるとはいえないともいい得るところであって,少なくとも近年,Dが,原告及びb教の意思決定に関与したとは認められない。そうすると,原告及びb教が,Dがした意思決定に従うという意味において一つの組織体であるということも困難である。
この点について,被告は,Dが明示的な意思や指示を示さない場合でも,構成員は,過去のDの説法等や本団体の教義に顕現されたDの意思を推し量って行動していることを指摘するが,このような事情をもってDが団体としての意思決定をしているということは困難である。また,上記のDの意思も上記アで検討したa教の教義と同様,多義的であって解釈の余地があるものであるから,上記イのとおり,原告とb教が一つの組織体として独自の意思を決定し得る仕組みが存在するとは認められない以上,被告が主張するように評価するためには,原告及びb教においてDの意思に沿わない意思決定がされた場合には,Dがこれに対して異議を述べたり指示をしたりすることが前提とならざるを得ない。そうでなければ,原告及びb教としては,自らした意思決定やそれに基づく行動がDの意思に沿うものか否かすら確認することができないというべきである。しかるところ,上記のとおり,少なくとも,近年,Dが東京拘置所外の者と意思疎通を図ったと認めるに足りる証拠がない以上,原告及びb教がDの意思を確認する術はなく,やはり,Dが団体としての意思決定をしているということはできない。
(4) 原告とb教が組織体としての独自の意思決定に従い共同の行動をとり得るかどうかについて
上記(2)及び(3)で検討したとおり,b教の設立経緯や本件更新決定時における原告とb教の関係に照らせば,原告とb教が一つの組織体として意思決定をすることができるというべき事情は見当たらず,原告とb教が一方の意思決定に他方が従うという関係にあるとも認められない。また,Dとの関係について検討しても,上記(3)ウで説示したとおり,Dが原告及びb教の団体としての意思決定をしているということはできない。
以上のとおりであって,原告とb教が一つの組織体としての独自の意思決定に従い共同の行動をとり得る関係にあると認めることはできない。
なお,被告は,b教が,a教の教義を広め,これを実現するために,「D1隠し」の一環として設立され,活動している団体であると主張するが,原告とb教が一つの団体と認められるかどうかの判断に当たっては,上記で説示した観点から,両者が一つの組織体としての独自の意思を決定し得るものであると評価できるかどうかが考慮されるべきであり,b教の活動内容にa教のそれと類似する点があったり,構成員がDに帰依したりしているなどの事情があったとしても,原告とb教が一つの団体であると評価することはできないというべきである。
(5) 本件更新決定の適法性との関係
ア 上記に説示したとおりであり,本団体は,本件観察処分当時においても本件更新決定時においても「団体」に該当し,本件更新決定の対象団体の特定に欠けるところはなく,原告は,本件更新決定時においても,本団体の少なくとも一部を構成する。もっとも,b教と原告が一つの団体であると認めることはできない。
イ ところで,本件更新決定の決定書においては,被請求団体の表示欄には,対象団体が本団体,「主たる事務所の所在地」が① 埼玉県越谷市〈以下省略〉「eマンション」101号室,② 東京都世田谷区〈以下省略〉「cマンション」201号室,「主幹者」がA7,A8及びEと記載されており(前提事実(2)カ),上記②はb教の主たる事務所所在地であり,Eはb教の代表者であるから,本件更新決定は,b教も名宛人としていたとみるべきものというのが相当である。
そして,上記のとおり,b教と原告が一つの団体であると認めることができない以上,本件更新決定のうちb教を対象団体とした部分は,違法であるといわざるを得ない。
これに対して,本件更新決定のうち原告を対象団体とした部分については,原告が本団体の少なくとも一部であると認められる以上,上記の点を理由として,この部分が違法であるということはできない。
原告は,原告とb教を一つの団体とする「本団体」なるものは存在せず,そのような架空の団体に対する決定は一律に違法となる旨主張するが,原告が本団体の少なくとも一部であると認められる以上は,本件更新決定のうち原告を対象団体とした部分が違法であるというべき理由はなく,原告の主張は採用することができない。
ウ 次に,原告が本件更新決定のうちb教を対象団体とする部分を取り消す利益があるかどうかについて検討する。
本件更新決定により,本団体の少なくとも一部である原告には,b教に関する事項を含めて,公安調査庁長官に対する報告義務(団体規制法5条5項,3項)が課せられている(なお,実際には,原告は原告に関する事項のみ報告し,b教はb教に関する事項を報告しているが,団体規制法は,当該団体に報告義務を課しているから,これは運用上のことにすぎないものと解される。)。団体規制法8条1項後段は,期間更新決定を受けている団体について,同法5条3項の規定による報告がされず,若しくは虚偽の報告がされた場合,又は,同法7条2項の規定による立入検査が拒まれ,妨げられ,若しくは,忌避された場合であって,当該団体の無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の程度を把握することが困難であると認められるときには,同法8条2項各号の再発防止処分をすることができると定めるところ,b教について,同法8条1項後段に定める事由があれば,原告も含めて再発防止処分がされる可能性もある。
これらの点を勘案すれば,原告には,本件更新決定のうちb教を対象団体としてされた部分の取消しを求める法律上の利益があるというべきである。
第9  争点8(団体規制法5条1項1号該当性)について
1  団体規制法5条1項1号の無差別大量殺人行為の「首謀者」及び「影響力」の意義について
団体規制法5条1項は,過去に,その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行い,現在も,団体の属性として無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険性を有する団体については,「その活動状況を継続して明らかにする必要がある」と認められるとして,観察処分に付することとし,その危険性を示す事情として,同法5条1項各号の事由を列挙したものと解される。
したがって,団体規制法5条1項1号の事由についても,当該無差別大量殺人行為の「首謀者」とは,当該無差別大量殺人行為の計画遂行に関し主導的役割を担った者をいうと解され,また,首謀者が当該団体の活動に「影響力を有している」とは,首謀者の言動が,当該団体の活動の基本的方向性を左右する力を有し,これによって団体活動が実際に左右されている場合だけでなく,基本方針を具体化する手段・方法の選択という場面において,その内容を左右する力を有し,これによって団体の活動が実際に左右されている場合も含むものと解される。
そして,上記首謀者の言動については,現時点における直接的な言動のみに限られることはなく,過去における言動であって,現時点において首謀者本人において否定されていないものも含まれるものと解される。
2  Dの「首謀者」該当性について
前記第8の2で検討したとおり,a教ないし本件観察処分を受けた団体が政治上の主義を有していたことが認められ,また,両サリン事件が上記政治上の主義若しくは施策の推進等をすることを目的として実行されたものであって,Dがその計画立案・遂行に関して主導的役割を担った者であることは明らかであるから(認定事実1(3)),Dは,団体規制法5条1項1号にいう「首謀者」に該当する。
3  Dの原告の活動に対する「影響力」の有無について
(1) 本件においては,以下の事情が認められる。
ア 両サリン事件の実行
Dは,衆生救済を実現するために,日本シャンバラ化計画を進め,そのためにはDを王ないし独裁者とする祭政一致の専制国家体制を構築するという本件政治上の主義を推進する際の障害を除去すること等を目的として,両サリン事件を実行することを計画し,多数の構成員らによりサリン量産プラントの建設やサリン散布等が実行されるなどし,a教の構成員らは,これもDの教えの実践であると認識していたというのであるから,Dは,両サリン事件当時,絶対的な影響力を構成員らに対して有していたといえる(認定事実1)。
イ 原告の活動実態
本件更新決定時においても,原告では,Dの説法を収録した教材が編集し直すなどされて使用され(認定事実2(8)イ,4(1)),Dへの絶対的帰依を求める指導がされ(認定事実4(1),(3)),Dに対する個人崇拝をうかがわせる事情が散見され(認定事実4(2)),a教の頃と変わらぬ修行や儀式が行われ,一般の構成員もこれを実践している(認定事実4(3))というのであって,Dの原告の教化活動及び構成員に対する影響力は根深いものがある(なお,原告は,b教と分派した後はこのDへの帰依の傾向をより強めている。)。
ウ 両サリン事件等に対する原告ら構成員の発言・認識内容
原告の構成員の中には,両サリン事件を始めとする一連の重大事件は,衆生救済を実現するためのタントラ・ヴァジラヤーナの実践として正しいものであったという認識を有する者があり(認定事実4(4)エ),両サリン事件等に関与し,これを正当化する供述をしていたA35と頻繁に面会する構成員がおり,Dへの帰依を内容とするA35のメッセージがメールマガジンとして多数の原告構成員に配信されている(認定事実4(4)オ)。
エ A12事件の発生
ロシア人のa教信者であるA12らが,武器・弾薬,自家製爆発装置を調達・製造して,これを日本に持ち込んで,日本政府にテロ行為を行うとの脅迫をしてDの解放を要求する計画を立てたA12事件(平成13年7月1日発覚)は,当時,日本国内で両サリン事件等により刑事裁判中であり,東京拘置所に収容されていたDを奪還することを目的としたものであって,A12らのDへの深い帰依心が発現したものということができるし,また,A12らがロシア国内等でのa教の活動が禁止されていることに不満を覚えてのものであったともいうのであるから,a教の教えを広め衆生を救済するとの教義に基づくものであったということができる(認定事実2(4)ウ)。
(2) 以上を総合すれば,原告においてはDを絶対的な帰依の対象とし,一般構成員の言動もDへの帰依を示すものが認められるなど,Dはなお絶大な影響力を保持していることが認められ,原告の教化活動もDへの帰依を深める点に力点が置かれているということができ,本件更新決定時においても,原告の構成員は,D又はその意を体した者がa教の教義を基に原告の活動の基本方針や原告の具体的活動について指示を出した場合に,容易にこれに従う関係にあったと認められるから,Dは,なお原告の活動の基本的方向性を左右するだけの影響力を保持していたと認められる。
したがって,原告は,団体規制法5条1項1号の要件を満たしているというべきである。
(3) 原告の主張について
ア 原告は,団体規制法5条1項1号の「影響力」とは,「平和的影響力」の対極にある再び無差別大量殺人行為の実行を命じ,団体の構成員らにその準備行為に着手させるに足りる影響力に限定して解釈すべきであると主張する。
しかし,上記(1)で指摘した各事情によれば,Dの影響力が平和的であるなどということはできず,なお無差別大量殺人行為を行うことについての影響力があるということができ,原告の上記主張は採用することができない。
イ 原告は,① 現在の原告の教義では,五仏の法則は採用しておらず,タントラ・ヴァジラヤーナやポワなどの誤解されやすい宗教上の用語や概念等については,事件や犯罪の肯定に結び付くことがないことを明示した語義やその解釈を規定している,② 上意下達式の意思決定システムを改め多面的な判断や相互チェックが働くよう合同会議を採用しているから,Dは原告に対する影響力を有していないと主張する。
しかし,これまで見たように,上記①の点については,原告において,表面上,上記のような教義解釈や教義廃棄を行った形跡はあるものの,なお,両サリン事件を正当化する発言をする者がいたり,これらの危険な教義を含む教材が使用されるなどしており(認定事実2(8)イ,4(4)エ),上記②の点についても,原告の活動実態を踏まえれば,合同会議においてDの影響力を受けた判断がされる可能性は十分に認められるというべきであり,原告の上記主張はいずれも採用することができない。
ウ 原告は,Dは原告の活動を把握して原告の活動に対する何らかの言動をすることが全くできない状態にある旨主張する。
しかし,Dの両サリン事件等に係る刑事事件の控訴棄却決定においては,訴訟能力に欠けるところはないと判断されており(認定事実2(7)ア),Dの刑事事件の第1審公判での供述状況や弁護人との面会状況,東京拘置所での生活状況を詳細に認定し,多数の医学的見解を検討した東京高等裁判所の控訴棄却決定等(乙D7)においては,Dには拘禁反応の症状がみられ,精神活動の低下を来していると思われるものの,弁護人と意思疎通する能力があることが肯定されており,原告に対して何らかの影響力を全く行使しえない状態(心神喪失等)にまで陥っているとはうかがわれず,また,そもそも首謀者の言動は過去におけるものも含まれるのであって,原告の上記主張は採用することができない。
エ 原告は,Dは破防法弁明手続において違法行為及び破壊活動を厳禁する発言をしており,Dが説いたとされる教義は,この発言により,過去における言動であって現時点において本人によって否定されたものとなり,現在におけるDの団体に対する影響力は,本人により否定されて存在しないものとなっている旨主張する。
しかし,破防法の弁明手続におけるDの言動は,その内容からして,破防法の適用を回避するための方便にすぎないというべきものであり,原告の上記主張は採用することができない。
第10  争点11(団体規制法5条1項5号該当性)について
1  団体規制法5条1項5号該当性について
ア 団体規制法5条1項5号にいう「無差別大量殺人行為に及ぶ危険性」とは,過去に,その役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体について,現時点においてその団体の属性として無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素を有していることをいうものと解され,それを超えて,その危険な要素が集積されるなどした結果,当該団体が無差別大量殺人行為を実行することそのものについての蓋然性を直接的に問題とするものではない(なお,同法8条を対比して参照。)。
イ 上記の観点から検討すると,認定事実及び前記第9で検討した事情によれば,原告の団体としての基本的性格ないし素地として,無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険性が存在することはいまだに変わらず,根深いものが認められ,DないしDの意を体した者により,無差別大量殺人行為の実行に関連した指示が行われた場合,容易にこれに従う関係が認められる。
また,前記第9で検討した事情によれば,Dの原告構成員に対する影響力は絶大なものがあり,A12事件をみても,その影響力は無差別大量殺人行為につながるテロ行為を誘発し得るほどの危険性を有するものといえる。
そうすると,前記第9で検討した事情のみによっても,原告に無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素は優に認められ,原告は団体規制法5条1項5号の要件も満たしていると認められる。
ウ なお,原告には,地下鉄サリン事件以降に刑事事件で検挙され,刑務所を出所したり,釈放された者89名が復帰し,このうち,5名については,サリン量産プラント建設事件や自動小銃の密造に関する武器等製造法違反事件等に関与して有罪判決を受け,服役を終えた者である(認定事実3(1)ア)。これらの事情も,原告を含む本団体の基本的性格ないし素地として,無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素の存在を基礎付ける一つの事情として考慮することができる。
2  原告の主張について
原告は,本件観察処分後の多数回の立入検査においても,無差別大量殺人行為の準備や計画等を示す物件等が確認されたことはないと主張するが,単に無差別大量殺人行為を将来実行する蓋然性を示す証拠は発見されなかっただけにとどまり,原告の無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素を減弱せしめるものとはいえない。
原告は,両サリン事件の被害者に一貫して経済的補償を行うなどしていると主張するが,破産者a教の債務を引き受けた原告として,また団体の活動としてその役職員・構成員が両サリン事件を起こしたことに関し,被害者救済のための当然の社会的・法的責任を履行しているものにすぎない。
原告の主張はいずれも採用することができない。
第11  争点12(団体規制法5条4項所定の必要性の有無)について
以上これまで検討した事情からすれば,原告は団体規制法5条1項1号及び5号に該当し,本件更新決定時においても,団体として無差別大量殺人行為の実行に関連性を有する危険な要素を保持していると認められるところ,原告の主張及び証拠によっても,これを減殺するような特段の事情は認められない。したがって,同法5条4項所定の必要性が認められるというべきである。
第4章  結論
以上のとおりであって,本件更新決定は,b教を対象団体としてされた部分は違法であるが,その余の部分は,その余の争点について判断するまでもなく適法である。したがって,原告の請求は,本件更新決定のうちb教を対象団体とする部分の取消しを求める部分は理由があるからこの部分を認容し,その余の請求は,理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部
(裁判長裁判官 林俊之 裁判官 梶浦義嗣 裁判官 高橋心平)

 

別紙1
代理人目録
(原告訴訟代理人弁護士)
渡邉良平 氏家宏海 小泉恒平 酒田芳人
山本衛 石田純 徳永裕文 丸山冬子
(被告指定代理人)
W1 W2 W3 W4
W5 W6 W7 W8
W9 W10
以上
別紙2
決定目録
1 被請求団体等の表示
(1) 被請求団体
D1ことDを教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め,これを実現することを目的とし,同人が主宰し,同人及び同教義に従う者によって構成される団体
(2) 主たる事務所の所在地
ア 埼玉県越谷市〈以下省略〉「eマンション」101号室
イ 東京都世田谷区〈以下省略〉「cマンション」201号室
(3) 代表者
氏名 D1ことD
昭和30年○月○日生(当59年)
職業 団体主宰者
居所 東京都葛飾区〈以下省略〉 東京拘置所
(4) 主幹者
ア氏名 A7
昭和33年○月○日生(当56年)
職業 団体役員
住所 大阪市〈以下省略〉
イ氏名 A8
昭和33年○月○日生(当57年)
職業 団体役員
住所 札幌市〈以下省略〉
ウ氏名 E
昭和37年○月○日生(当52年)
職業 団体役員
住所 東京都世田谷区〈以下省略〉
「cマンション」201号室
2 主文
(1) 平成15年1月23日付け,平成18年1月23日付け,平成21年1月23日付け及び平成24年1月23日付けで期間更新決定を受けた,平成12年1月28日付け当委員会決定に係る被請求団体を,3年間,公安調査庁長官の観察に付する処分の期間を更新する。
(2) 被請求団体は,団体規制法5条5項において準用する同条3項6号に規定する「公安審査委員会が特に必要と認める事項」として,次の事項を公安調査庁長官に報告しなければならない。
ア 被請求団体の構成員に関する出家信徒及び在家信徒の別並びに出家信徒の位階
イ 被請求団体作成のインターネット上のホームページに係る接続業者名,契約名義人の氏名及び掲載の管理・運営責任者の氏名
ウ 被請求団体(その支部,分会その他の下部組織を含む。以下,この項において同じ。)の営む収益事業(いかなる名義をもってするかを問わず,実質的に被請求団体が経営しているものをいう。)の種類及び概要,事業所の名称及びその所在地,当該事業の責任者及び従事する構成員の氏名並びに各事業に関する会計帳簿を備え置いている場所(その会計帳簿が電磁的記録で作成されている場合には,当該電磁的記録の保存媒体の保管場所)
以上
別紙3
関係法令の定め
第1 団体規制法
1 1条(目的)
この法律は,団体の活動として役職員(代表者,主幹者その他いかなる名称であるかを問わず当該団体の事務に従事する者をいう。以下同じ。)又は構成員が,例えばサリンを使用するなどして,無差別大量殺人行為を行った団体につき,その活動状況を明らかにし又は当該行為の再発を防止するために必要な規制措置を定め,もって国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保に寄与することを目的とする。
2 2条(この法律の解釈適用)
この法律は,国民の基本的人権に重大な関係を有するものであるから,公共の安全の確保のために必要な最小限度においてのみ適用すべきであって,いやしくもこれを拡張して解釈するようなことがあってはならない。
3 3条(規制の基準)
(1) 1項
この法律による規制及び規制のための調査は,1条に規定する目的を達成するために必要な最小限度においてのみ行うべきであって,いやしくも権限を逸脱して,思想,信教,集会,結社,表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し,及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を,不当に制限するようなことがあってはならない。
(2) 2項
この法律による規制及び規制のための調査については,いやしくもこれを濫用し,労働組合その他の団体の正当な活動を制限し,又はこれに介入するようなことがあってはならない。
4 4条(定義)
(1) 1項
この法律において「無差別大量殺人行為」とは,破壊活動防止法(以下「破防法」という。)4条1項2号へに掲げる暴力主義的破壊活動(注・政治上の主義若しくは施策を推進し,支持し,又はこれに反対する目的をもって,刑法199条(殺人)に規定する行為をすることが,これに当たる。)であって,不特定かつ多数の者を殺害し,又はその実行に着手してこれを遂げないもの(この法律の施行の日から起算して10年以前にその行為が終わったものを除く。)をいう。
(2) 2項
この法律において「団体」とは,特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体又はその連合体をいう。ただし,ある団体の支部,分会その他の下部組織も,この要件に該当する場合には,これに対して,この法律による規制を行うことができるものとする。
5 5条(観察処分)
(1) 1項
公安審査委員会は,その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体が,次の各号の掲げる事項のいずれかに該当し,その活動状況を継続して明らかにする必要があると認められる場合には,当該団体に対し,3年を超えない期間を定めて,公安調査庁長官の観察に付する処分を行うことができる。
1号 当該無差別大量殺人行為の首謀者が当該団体の活動に影響力を有していること。
2号 当該無差別大量殺人行為に関与した者の全部又は一部が当該団体の役職員又は構成員であること。
3号 当該無差別大量殺人行為が行われた時に当該団体の役員(団体の意思決定に関与し得る者であって,当該団体の事務に従事するものをいう。以下同じ。)であった者の全部又は一部が当該団体の役員であること。
4号 当該団体が殺人を明示的に又は暗示的に勧める綱領を保持していること。
5号 前各号に掲げるもののほか,当該団体に無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があること。
(2) 2項
前項の処分を受けた団体は,政令で定めるところにより,当該処分が効力を生じた日から起算して30日以内に,以下に掲げる各号の事項を公安調査庁長官に報告しなければならない。
1号 当該処分が効力を生じた日における当該団体の役職員の氏名,住所及び役職名並びに構成員の氏名及び住所
2号 当該処分が効力を生じた日における当該団体の活動の用に供されている土地の所在,地積及び用途
3号 当該処分が効力を生じた日における当該団体の活動の用に供されている建物の所在,規模及び用途
4号 当該処分が効力を生じた日における当該団体の資産及び負債のうち政令で定めるもの
5号 その他前項の処分に際し公安審査委員会が特に必要と認める事項
(3) 3項
1項の処分を受けた団体は,政令で定めるところにより,当該処分が効力を生じた日からその効力を失う日の前日までの期間を3月ごとに区分した各期間(最後に3月未満の区分した期間が生じた場合には,その期間とする。以下この項において同じ。)ごとに,当該各期間の経過後15日以内に,次に掲げる事項を,公安調査庁長官に報告しなければならない。
1号 当該各期間の末日における当該団体の役職員の氏名,住所及び役職名並びに構成員の氏名及び住所
2号 当該各期間の末日における当該団体の活動の用に供されている土地の所在,地積及び用途
3号 当該各期間の末日における当該団体の活動の用に供されている建物の所在,規模及び用途
4号 当該各期間の末日における当該団体の資産及び負債のうち政令で定めるもの
5号 当該各期間中における当該団体の活動に関する事項のうち政令で定めるもの
6号 その他1項の処分に際し公安審査委員会が特に必要と認める事項
(4) 4項
公安審査委員会は,1項の処分を受けた団体が同項各号に掲げる事項のいずれかに該当する場合であって,引き続き当該団体の活動状況を継続して明らかにする必要があると認められるときは,その期間を更新することができる。
(5) 5項
3項の規定は,前項の規定により期間が更新された場合について準用する。この場合において,3項中「当該処分が効力を生じた日から」とあるのは「期間が更新された日から」と読み替えるものとする。
(6) 6項 〔略〕
6 7条(観察処分の実施)
(1) 1項
公安調査庁長官は,5条1項又は4項の処分(以下「観察処分等」という。)を受けている団体の活動状況を明らかにするため,公安調査官に必要な調査をさせることができる。
(2) 2項
公安調査庁長官は,観察処分等を受けている団体の活動状況を明らかにするために特に必要があると認められるときは,公安調査官に,観察処分等を受けている団体が所有し又は管理する土地又は建物に立ち入らせ,設備,帳簿書類その他必要な物件を検査させることができる。
(3) 3項 〔略〕
(4) 4項
2項の規定による立入検査の権限は,犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
7 8条(再発防止処分)
(1) 1項
公安審査委員会は,その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体が,5条1項各号のいずれかに該当する場合であって,次の各号のいずれかに該当するときは,当該団体に対し,6月を超えない期間を定めて,次項各号に掲げる処分の全部又は一部(以下「再発防止処分」という。)を行うことができる。観察処分等を受けている団体について,同条2項若しくは3項の規定による報告がされず,若しくは虚偽の報告がされた場合,又は前条2項の規定による立入検査が拒まれ,妨げられ,若しくは忌避された場合であって,当該団体の無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の程度を把握することが困難であると認められるときも,同様とする。
1号 当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,人を殺害し若しくは殺害しようとしているとき,人の身体を傷害し若しくは傷害しようとしているとき又は人に暴行を加え若しくは加えようとしているとき。
2号 当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,人を略取し若しくは略取しようとしているとき又は人を誘拐し若しくは誘拐しようとしているとき。
3号 当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,人を監禁し又は監禁しようとしているとき。
4号 当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,爆発物,毒性物質若しくはこれらの原材料若しくは銃砲若しくはその部品を保有し若しくは保有しようとしているとき又はこれらの製造に用いられる設備を保有し若しくは保有しようとしているとき。
5号 当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,当該団体に加入することを強要し若しくは強要しようとしているとき又は当該団体からの脱退を妨害し若しくは妨害しようとしているとき。
6号 当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,殺人を明示的に又は暗示的に勧める綱領に従って役職員又は構成員に対する指導を行い又は行おうとしているとき。
7号 当該団体の役職員又は構成員が,団体の活動として,構成員の総数又は土地,建物,設備その他資産を急激に増加させ又は増加させようとしているとき。
8号 前各号に掲げるもののほか,当該団体の無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の増大を防止する必要があるとき。
(2) 2項
前項の規定により行うことができる処分は,次に掲げるものとする。
1号 いかなる名義をもってするかを問わず,土地又は建物を新たに取得し又は借り受けることを,地域を特定して,又は特定しないで禁止すること。
2号 当該団体が所有し又は管理する特定の土地又は建物(専ら居住の用に供しているものを除く。)の全部又は一部の使用を禁止すること。
3号 当該無差別大量殺人行為に関与した者又は当該無差別大量殺人行為が行われた時に当該団体の役員であった者(〔括弧内略〕)に,当該団体の活動の用に供されている土地又は建物において,当該団体の活動の全部又は一部に参加させ又は従事させることを禁止すること。
4号 当該団体に加入することを強要し,若しくは勧誘し,又は当該団体からの脱退を妨害することを禁止すること。
5号 金品その他の財産上の利益の贈与を受けることを禁止し,又は制限すること。
8 12条(処分の請求)
(1) 1項
5条1項及び8条の処分は,公安調査庁長官の請求があった場合にのみ行う。5条4項の処分についても,同様とする。
(2) 2項
公安調査庁長官は,前項の処分を請求しようとするときは,あらかじめ,警察庁長官の意見を聴くものとする。
(3) 3項
警察庁長官は,必要があると認められるときは,公安調査庁長官に対し,5条1項若しくは4項又は8条の処分を請求することが必要である旨の意見を述べることができる。
9 14条(立入検査等)
(1) 1項
警察庁長官は,12条2項又は3項の規定に基づき8条の処分の請求に関して意見を述べるために必要があると認められるときは,観察処分等を受けている団体について,相当と認める都道府県警察に必要な調査を行うことを指示することができる。
(2) 2項
前項の指示を受けた都道府県警察の警視総監又は道府県警察本部長(以下「警察本部長」という。)は,同項の調査を行うために特に必要があると認められるときは,あらかじめ警察庁長官の承認を得て,当該都道府県警察の職員に,観察処分等を受けている団体が所有し又は管理する土地又は建物に立ち入らせ,設備,帳簿書類その他必要な物件を検査させることができる。
(3) 3項
警察庁長官は,前項の承認をしようとするときは,あらかじめ,公安調査庁長官に協議しなければならない。
(4) 4ないし6項 〔略〕
(5) 7項
2項の規定による立入検査の権限は,犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
10 15条(処分の請求の方式)
(1) 1項
12条1項前段の処分の請求は,次に掲げる事項その他公安審査委員会規則で定める事項を記載した請求書(以下「処分請求書」という。)を公安審査委員会に提出して行わなければならない。
1号 請求に係る処分の内容及び根拠となる法令の条項
2号 請求の原因となる事実
(2) 2項
処分請求書には,請求の原因となる事実を証すべき証拠書類又は証拠物(以下「証拠書類等」という。)を添付しなければならない。
11 16条(意見聴取)
公安審査委員会は,12条1項前段の処分の請求があったときは,公開による意見聴取を行わなければならない。ただし,個人の秘密の保護のためやむを得ないと認めるときは,これを公開しないことができる。
12 17条(意見聴取の通知の方式)
(1) 1項
公安審査委員会は,前条の意見聴取を行うに当たっては,あらかじめ,意見聴取を行う期日及び場所を定め,その期日の7日前までに,当該団体に対し,次に掲げる事項を通知しなければならない。
1号 公安調査庁長官の請求に係る処分の内容及び根拠となる法令の条項
2号 請求の原因となる事実
3号 意見聴取の期日及び場所
(2) 2及び3項 〔略〕
13 19条(意見聴取の指揮)
(1) 1項
意見聴取は,公安審査委員会が指名する公安審査委員会の委員長又は委員(以下「指名委員等」という。)が指揮する。
(2) 2項
指名委員等は,意見聴取の期日の冒頭において,公安調査庁の職員に,請求に係る処分の内容及び根拠となる法令の条項並びに請求の原因となる事実を意見聴取の期日に出頭した者に対し説明させなければならない。
(3) 3項 〔略〕
14 20条(意見の陳述及び証拠書類等の提出等)
(1) 1項
当該団体の役職員,構成員及び代理人は,5人以内に限り意見聴取の期日に出頭して,当該処分を行うことについて意見を述べ,証拠書類等を提出することができる。
(2) 2項
当該団体の役職員,構成員及び代理人は,指名委員等の許可を得て公安調査庁の職員に対し質問を発することができる。
(3) 3項
当該団体の役職員,構成員及び代理人は,意見聴取の期日への出頭に代えて,公安審査委員会に対し,意見聴取の期日までに陳述書及び証拠書類等を提出することができる。
15 22条(公安審査委員会の決定)
(1) 1項
公安審査委員会は,公安調査庁長官が提出した処分請求書及び証拠書類等並びに当該団体の意見及び当該団体が提出した証拠書類等につき審査を遂げた上,次の区分に従い決定をしなければならない。
1号 処分の請求が不適法であるときは,これを却下する決定
2号 処分の請求が理由がないときは,これを棄却する決定
3号 処分の請求が理由があるときは,その処分を行う決定
(2) 2項
公安審査委員会は,17条2項の規定による公示があった日から30日以内に,処分の請求に係る事件につき決定をするように努めなければならない。
16 26条(観察処分の期間の更新の手続)
(1) 1項
公安調査庁長官は,12条1項後段の処分の請求をするときは,更新の理由となる事実その他公安審査委員会規則で定める事項を記載した請求書(以下この条において「更新請求書」という。)を公安審査委員会に提出して行わなければならない。
(2) 2項
更新請求書には,更新の理由となる事実を証すべき証拠書類等を添付しなければならない。
(3) 3項
公安審査委員会は,1項の請求があったときは,当該団体に対し,意見陳述の機会を付与しなければならない。この場合において,意見陳述は,陳述書及び証拠書類等を提出して行うものとする。
(4) 4項
公安審査委員会は,前項の陳述書の提出期限の7日前までに,当該団体に対し,次に掲げる事項を通知しなければならない。
1号 更新が予定される処分の内容及び更新の根拠となる法令の条項
2号 更新の理由となる事実
3号 陳述書の提出先及び提出期限
(5) 5及び6項 〔略〕
17 29条(公安調査官の調査権)
公安調査官は,この法律による規制に関し,3条に規定する基準の範囲内において,必要な調査(7条1項の規定による調査を含む。次条において同じ。)をすることができる。
18 33条(行政手続法の適用除外。平成26年法律第70号による改正前のもの)
公安審査委員会がこの法律の規定に基づいてする処分については,行政手続法第3章の規定は,適用しない。
19 39条(立入検査拒否等の罪)
7条2項又は14条2項の規定による立入り又は検査を拒み,妨げ,又は忌避した者は,1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
20 制定附則2項
この法律の施行の日から起算して5年ごとに,この法律の施行状況について検討を加え,その結果に基づいて廃止を含めて見直しを行うものとする。
第2 施行令,施行規則及び手続規則
1 施行令3条(団体の活動に関する事項の範囲)
団体規制法5条3項5号に規定する当該団体の活動に関する事項のうち政令で定めるものは,次に掲げる事項とする。
1号 当該団体(支部,分会その他の下部組織を含む。以下この号において同じ。)がした当該団体の活動に関する意思決定の内容
2号 当該団体の機関誌紙の名称及び発行部数並びに編集人及び発行人の氏名
2 施行規則2条(立入検査の実施)
(1) 1項
公安調査庁長官は,団体規制法7条2項の規定により公安調査官に立入検査をさせようとするときは,あらかじめ,立入検査をさせようとする土地又は建物の所在及びその予定日を公安審査委員会に通報するものとする。
(2) 2項
公安調査庁長官は,警察庁長官との間で,団体規制法14条3項の規定による協議が調ったときは,速やかに,警察本部長が都道府県警察の職員に立入検査をさせようとする土地又は建物の所在及びその予定日を公安審査委員会に通報するものとする。
(3) 3項
公安調査庁長官は,団体規制法7条2項の規定による立入検査をさせたとき,又は団体規制法14条第6項の規定による通報を受けたときは,速やかに,公安審査委員会に対し,当該立入検査の結果又は当該通報の内容を通報するものとする。
3 手続規則2条(処分請求書等の記載事項)
(1) 1項
処分請求書又は更新請求書には,団体規制法15条1項又は同法26条1項に規定する事項のほか,次に掲げる事項を記載しなければならない。
1号 被請求団体の名称
2号 被請求団体の主たる事務所の所在地
3号 被請求団体の代表者又は主幹者の氏名,年齢,職業及び住所又は居所
(2) 2項
前項1号に掲げる事項が明らかでないときは,その団体を特定するに足りる事項を記載しなければならない。
(3) 3項
1項2号又は3号に掲げる事項が明らかでないときは,その旨を記載しなければならない。
(4) 4項
公安調査庁長官は,処分請求書又は更新請求書に,団体規制法5条1項若しくは4項又は同法8条の処分に関する意見を記載することができる。
4 手続規則18条(決定書)
(1) 1項
決定書は,委員長及び決定に関与した委員が作成する。
(2) 2項
決定書には,次に掲げる事項を記載し,委員長及び決定に関与した委員が署名押印しなければならない。
1号 主文
2号 理由
3号 被請求団体の名称,主たる事務所の所在地並びに代表者又は主幹者の氏名,年齢,職業及び住所又は居所
4号 委員会の表示
5号 年月日
(3) 3項
2条2項及び3項の規定は,前項3号の事項について準用する。
(4) 4及び5項 〔略〕
以上


「選挙 立候補」に関する裁判例一覧
(1)令和元年10月 8日  神戸地裁  平29(ワ)1051号 損害賠償請求事件
(2)令和元年 9月 6日  大阪地裁  令元(わ)2059号 公職選挙法違反被告事件
(3)令和元年 6月25日  東京地裁  平26(行ウ)615号 損害賠償等請求事件
(4)令和元年 5月24日  東京地裁  平28(ワ)17007号 選挙供託金制度違憲国家賠償請求事件
(5)平成31年 4月26日  大阪高裁  平30(行ケ)1号 裁決取消請求事件
(6)平成31年 4月25日  東京高裁  平30(ネ)4794号 総会決議無効確認等請求控訴事件
(7)平成31年 4月12日  大阪地裁  平29(ワ)7325号 賃金等請求事件
(8)平成31年 4月 9日  甲府地裁  平27(行ウ)6号 違法公金支出金返還等請求事件
(9)平成31年 3月20日  水戸地裁 平29(わ)655号
(10)平成31年 3月 7日  知財高裁  平30(行ケ)10141号 審決取消請求事件
(11)平成31年 3月 5日  東京高裁  平30(う)1422号 政治資金規正法違反被告事件
(12)平成31年 3月 5日  東京地裁  平29(ワ)18277号 謝罪広告等請求事件
(13)平成31年 1月17日  盛岡地裁  平30(行ウ)8号 旧庁舎解体等公金支出等差止請求事件
(14)平成31年 1月15日  名古屋地裁  平28(ワ)3178号・平28(ワ)3179号 損害賠償請求事件
(15)平成30年11月29日  東京地裁  平29(行ウ)149号・平29(行ウ)375号 不当労働行為再審査申立棄却命令取消事件
(16)平成30年11月22日  東京地裁  平30(ワ)16336号 損害賠償等請求事件
(17)平成30年11月22日  東京地裁  平28(ワ)31683号 損害賠償請求事件
(18)平成30年10月31日  東京地裁  平27(ワ)18282号 損害賠償請求事件
(19)平成30年10月24日  仙台高裁  平29(行コ)26号 政務調査費返還履行等請求控訴事件
(20)平成30年10月11日  東京高裁  平30(う)441号 政治資金規正法違反被告事件
(21)平成30年10月 5日  東京地裁  平27(ワ)36817号・平28(ワ)18096号 損害賠償請求事件、損害賠償等請求事件
(22)平成30年10月 4日  東京地裁  平27(ワ)2650号 代表権不存在確認等請求事件
(23)平成30年 9月28日  東京地裁  平26(ワ)10773号・平29(ワ)3602号 損害賠償請求事件(本訴)、損害賠償請求反訴事件(反訴)
(24)平成30年 9月28日  東京地裁  平28(ワ)23496号 損害賠償請求事件
(25)平成30年 9月27日  大阪高裁  平29(行コ)173号 高等学校等就学支援金支給校指定義務付等請求控訴事件
(26)平成30年 9月27日  東京地裁  平28(ワ)36676号 総会決議無効確認等請求事件
(27)平成30年 9月19日  東京高裁  平30(ネ)2451号 社員総会決議不存在確認等,代議員選挙無効確認等請求控訴事件
(28)平成30年 8月30日  東京高裁  平30(行コ)111号 労働委員会救済命令取消請求控訴事件
(29)平成30年 8月28日  東京地裁  平28(行ウ)281号 政務活動費返還請求事件
(30)平成30年 7月25日  東京高裁  平30(行ケ)8号 裁決取消請求事件
(31)平成30年 7月20日  福岡地裁久留米支部  平28(ワ)69号 損害賠償請求事件
(32)平成30年 6月27日  東京地裁  平27(特わ)2148号 各政治資金規正法違反被告事件
(33)平成30年 5月24日  東京高裁  平30(行ケ)4号 選挙無効及び当選無効請求事件
(34)平成30年 4月25日  東京地裁  平28(ワ)31号・平28(ワ)37044号・平28(ワ)37820号 証書真否確認、立替金等返還債務不存在確認等請求事件、立替金返還請求反訴事件、立替金請求反訴事件
(35)平成30年 4月20日  高松高裁  平29(行コ)21号 権利変換計画不認可処分取消等請求控訴事件
(36)平成30年 4月18日  東京高裁  平29(行コ)302号 埼玉県議会政務調査費返還請求控訴事件
(37)平成30年 3月30日  東京地裁  平27(ワ)37147号 損害賠償請求事件
(38)平成30年 3月26日  東京地裁  平28(ワ)31536号・平28(ワ)44146号 社員総会決議不存在確認等請求事件、代議員選挙無効確認等請求事件
(39)平成30年 3月19日  東京地裁  平28(ワ)1085号 損害賠償等請求事件
(40)平成30年 3月13日  東京高裁  平29(う)1154号 公職選挙法違反被告事件
(41)平成30年 3月 8日  東京地裁  平29(ワ)30031号 損害賠償及び慰謝料請求事件
(42)平成30年 2月21日  東京地裁  平28(行ウ)6号 労働委員会救済命令取消請求事件
(43)平成30年 2月13日  東京地裁  平29(行ウ)45号 非常勤職員報酬返還請求事件
(44)平成30年 2月 6日  東京高裁  平29(行ケ)35号
(45)平成30年 2月 6日  東京地裁  平27(ワ)35223号 仮払金精算請求事件
(46)平成30年 1月22日  東京地裁  平27(特わ)2148号 政治資金規正法違反被告事件
(47)平成30年 1月18日  東京高裁  平29(行ケ)27号・平29(行ケ)28号 裁決取消請求事件
(48)平成29年12月21日  東京地裁  平29(ワ)24097号 損害賠償等請求事件
(49)平成29年12月19日  最高裁第三小法廷  平29(行フ)3号 執行停止決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
(50)平成29年12月19日  千葉地裁  平28(行ウ)5号 農業委員会会長解任無効確認請求事件
(51)平成29年12月15日  福岡地裁  平26(わ)1284号・平27(わ)231号・平27(わ)918号 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
(52)平成29年12月 8日  札幌地裁  平24(行ウ)3号 政務調査費返還履行請求事件
(53)平成29年11月16日  東京地裁  平28(ワ)6761号 懲戒処分無効確認等請求事件
(54)平成29年11月 2日  東京地裁  平28(ワ)32978号 損害賠償請求事件
(55)平成29年11月 2日  仙台地裁  平26(行ウ)2号 政務調査費返還履行等請求事件
(56)平成29年10月11日  東京高裁  平28(ネ)5794号 理事長及び理事の地位確認等請求控訴事件
(57)平成29年10月11日  東京地裁  平28(ワ)38184号 損害賠償請求事件
(58)平成29年10月11日  神戸地裁  平28(行ウ)49号 退職手当金不支給処分取消請求事件
(59)平成29年10月 2日  東京地裁  平29(ワ)21232号 発信者情報開示請求事件
(60)平成29年 9月28日  東京地裁  平26(行ウ)229号 難民不認定処分取消請求事件
(61)平成29年 9月26日  東京地裁  平28(ワ)18742号 損害賠償請求事件
(62)平成29年 9月25日  東京地裁  平27(行ウ)331号・平28(行ウ)526号 観察処分期間更新決定取消請求事件、訴えの追加的変更申立て事件
(63)平成29年 9月25日  東京地裁  平27(行ウ)444号 観察処分期間更新処分取消請求事件
(64)平成29年 9月20日  徳島地裁  平28(行ウ)9号 権利変換計画不認可処分取消等請求事件
(65)平成29年 9月 8日  東京地裁  平28(行ウ)117号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(66)平成29年 9月 1日  青森地裁  平29(わ)55号・平29(わ)67号・平29(わ)71号 公職選挙法違反被告事件
(67)平成29年 8月25日  東京地裁  平27(行ウ)732号 難民不認定処分等取消請求事件
(68)平成29年 8月25日  青森地裁  平28(ワ)143号 損害賠償請求事件
(69)平成29年 7月25日  青森地裁  平29(わ)48号・平29(わ)56号・平29(わ)66号・平29(わ)70号 公職選挙法違反被告事件
(70)平成29年 7月24日  東京地裁  平28(特わ)807号 公職選挙法違反被告事件
(71)平成29年 7月12日  広島高裁松江支部  平28(行コ)4号 市庁舎建築に関する公金支出等差止請求控訴事件
(72)平成29年 6月27日  東京地裁  平28(ワ)26217号 損害賠償請求事件
(73)平成29年 5月22日  東京地裁  平28(特わ)807号 公職選挙法違反被告事件
(74)平成29年 5月18日  東京高裁  平28(う)1194号 公職選挙法違反被告事件
(75)平成29年 5月 9日  東京地裁  平28(ワ)36100号 決議無効確認請求事件
(76)平成29年 4月13日  東京地裁  平27(行ウ)480号 退去強制令書発付処分等取消請求事件
(77)平成29年 4月11日  東京地裁  平26(ワ)10342号 損害賠償請求事件
(78)平成29年 4月 7日  東京地裁  平26(ワ)27864号 土地建物所有権移転登記抹消登記手続等請求事件
(79)平成29年 3月29日  東京地裁  平28(ワ)4513号・平28(ワ)28465号 マンション管理組合法人総会決議無効確認請求事件、反訴請求事件
(80)平成29年 3月28日  東京地裁  平25(ワ)28292号 謝罪広告等請求事件
(81)平成29年 3月28日  仙台地裁  平28(ワ)254号 損害賠償請求事件
(82)平成29年 3月24日  東京地裁  平26(ワ)30381号 損害賠償請求事件
(83)平成29年 3月15日  東京地裁  平27(行ウ)403号 地位確認等請求事件
(84)平成29年 3月 8日  東京地裁  平26(行ウ)300号 地位確認等請求事件
(85)平成29年 2月 9日  静岡地裁  平28(ワ)409号 損害賠償請求事件
(86)平成29年 2月 2日  東京地裁  平26(ワ)25493号・平27(ワ)20403号 株式代金等請求事件(本訴)、損害賠償請求反訴事件(反訴)
(87)平成29年 2月 1日  仙台地裁  平26(行ウ)31号 海外視察費返還履行請求事件
(88)平成29年 1月31日  大阪高裁  平28(ネ)1109号 損害賠償等請求控訴事件
(89)平成29年 1月31日  高松高裁  平28(行コ)23号 資格決定処分取消請求控訴事件
(90)平成29年 1月31日  東京地裁  平27(行ウ)360号 難民の認定をしない処分等取消請求事件
(91)平成29年 1月31日  神戸地裁豊岡支部  平28(わ)63号
(92)平成29年 1月17日  静岡地裁  平28(わ)407号 公職選挙法違反被告事件
(93)平成28年11月28日  名古屋高裁  平27(う)131号 受託収賄、事前収賄、公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律違反被告事件
(94)平成28年11月21日  東京地裁立川支部  平27(ワ)2775号 理事長及び理事の地位確認等請求事件
(95)平成28年11月18日  東京地裁  平28(特わ)1764号 公職選挙法違反被告事件
(96)平成28年11月16日  大阪高裁  平27(ネ)3176号 損害賠償請求控訴事件
(97)平成28年11月15日  東京高裁  平28(行ケ)16号 選挙無効請求事件
(98)平成28年11月10日  東京高裁  平28(行ケ)17号 選挙無効請求事件
(99)平成28年11月 9日  東京地裁  平27(ワ)1724号 損害賠償等請求事件
(100)平成28年10月31日  東京地裁  平28(特わ)1764号 公職選挙法違反被告事件


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選挙②【参議院議員通常選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙③【一般選挙(地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
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