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政治と選挙Q&A「告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター 政党 公報 広報」に関する裁判例(50)平成23年 9月16日 東京高裁 平21(ネ)2622号 各損害賠償請求控訴事件

政治と選挙Q&A「告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター 政党 公報 広報」に関する裁判例(50)平成23年 9月16日 東京高裁 平21(ネ)2622号 各損害賠償請求控訴事件

裁判年月日  平成23年 9月16日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(ネ)2622号
事件名  各損害賠償請求控訴事件
裁判結果  控訴棄却  文献番号  2011WLJPCA09166001

要旨
◆都立養護学校の教員又は生徒の保護者等である一審原告らが、一審被告ら(東京都、都議、新聞社等)に対し、都議が同校の性教育の内容等について教員らを批判するなどした、都教育委員会が同校の教員らに対して不適切な性教育をしたとの理由で厳重注意をするなどした、新聞社の記者が同校の性教育を「過激な性教育」と評する記事を新聞に掲載するなどしたと主張して、国家賠償法上の違法行為又は不法行為を理由に、慰謝料の支払等を求めた事案の控訴審において、都議の行為は侮辱に当たり、都教育委員会には同校の教員を保護する義務の違反及び厳重注意につき裁量権の濫用があるが、新聞社の名誉毀損は認められないなどとして、都議ら3人と都に210万円の支払を命じた原判決を相当とした事例

裁判経過
第一審 平成21年 3月12日 東京地裁 判決 平17(ワ)9325号・平17(ワ)22422号 損害賠償等請求事件

評釈
西田幸介・法セ増(新判例解説Watch) 11号45頁
中川重徳・季刊教育法 178号104頁

参照条文
日本国憲法26条
民法709条
民法710条
民法723条
国家賠償法1条1項

裁判年月日  平成23年 9月16日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(ネ)2622号
事件名  各損害賠償請求控訴事件
裁判結果  控訴棄却  文献番号  2011WLJPCA09166001

当事者の表示 別紙1審原告目録,別紙1審原告ら訴訟代理人目録及び別紙1審被告目録記載のとおり

 

 

主文

1  本件各控訴をいずれも棄却する。
2  控訴費用は,各控訴人の負担とする。

 

事実及び理由

(以下,別紙1審原告目録記載の各当事者を「1審原告」,別紙1審被告目録記載の各当事者を「1審被告」という。)
第1  控訴の趣旨
1  1審被告東京都
(1)  原判決中1審被告東京都敗訴部分を取り消す。
(2)  上記取消部分に係る1審原告X9,同X10,同X1,同X14,同X17,同X22,同X3,同X4,同X13,同X21,同X8及び同X28の請求をいずれも棄却する。
2  1審被告Y1,同Y2及び同Y3(1審被告都議ら)
(1)  原判決中1審被告都議ら敗訴部分を取り消す。
(2)  上記取消部分に係る1審原告X9及び同X10の請求をいずれも棄却する。
3  1審原告ら
原判決を次のとおり変更する。
(1)  1審被告東京都,同都議ら及び同株式会社産業経済新聞社(1審被告産経新聞社)は,各1審原告に対し,連帯して99万円及び別紙訴状送達の日の翌日一覧表記載の日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
(2)  1審被告東京都及び同東京都教育委員会(1審被告都教委)は,1審原告らに対し,原判決別紙教材目録記載の各教材等を引き渡せ。
(3)  1審被告産経新聞社は,産業経済新聞(産経新聞)に,原判決別紙謝罪目録記載の謝罪記事を,原判決別紙侵害記事と同等の条件で,3回掲載せよ。
第2  事案の概要
1  1審原告らは,平成15年当時,東京都立a養護学校(本件養護学校)の教員であり若しくはあった者又は生徒の保護者であり若しくはあった者であるところ,本件は,1審原告らが,
(1)  1審被告都議らが,東京都議会の一般質問において本件養護学校の性教育の内容が学習指導要領に違反して不適切であると指摘し,本件養護学校に赴いて保健室に保管されていた性教育用教材を視察し,教材や性教育の内容に関して本件養護学校の保健室にいた1審原告X9及び同X10を批判するなどしたこと,
(2)  1審被告都教委が,同都議らの上記一般質問に対して本件養護学校の性教育が不適切であることを認める答弁をし,同都議らの上記視察に同行して本件養護学校の性教育用教材を不適切なものとして同都教委に所管換えし,教員である1審原告X1,同X3,同X4,同X7,同X8,同X13,同X14,同X17,同X21,同X22,同X28,同X30及び同X31(以下「1審原告X1ら13名」という。)に対して厳重注意をし,平成16年4月に教員である1審原告ら(1審原告X26及び同X27以外の1審原告。1審原告教員ら)のうち本件養護学校に勤務していた者の多数に対し配置換えなどをしたこと,
(3)  1審被告産経新聞社の記者が,同都議らの上記視察に同行して取材し,その発行する産経新聞に本件養護学校の性教育を「過激な性教育」と評する記事を掲載して,1審原告らの名誉を毀損するなどしたこと
が不法行為に当たるとともに,これらの一連の行為は,1審原告らの本件養護学校における教育の自由を侵害する点でも不法行為に当たると主張して,1審被告都教委を除く1審被告らに対して,国家賠償法1条1項,民法709条,719条1項の共同不法行為による損害賠償請求権に基づき,それぞれ慰謝料99万円とこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで同法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を,同東京都及び同都教委に対して,教員として有する教材使用権等に基づき,教材等の返還を,同産経新聞社に対して,同法723条に基づく名誉回復措置として,謝罪広告の掲載を,それぞれ求めた事案である。
2  事実関係の概要は,次のとおりである。
(1)  本件養護学校は,小学部,中学部,高等部の3学部から成る知的障害のある子供を対象とした養護学校である。平成15年4月から平成17年3月までの本件養護学校の校長は,Bであった。
(2)ア  1審原告教員らは,平成15年7月当時又はそれ以前に本件養護学校に勤務していた教員であり,このうち1審原告X6は同年3月まで本件養護学校の校長であった者である。また,1審原告X26及び同X27(1審原告保護者ら)は,同年7月当時又はそれ以前に本件養護学校の生徒であった者の保護者である。
イ  1審被告都議らは,いずれも,平成15年7月当時,東京都議会議員の地位にあった者である。
(3)  本件養護学校においては,平成15年7月当時,小学部,中学部及び高等部の知的障害を持つ児童・生徒に対して,「こころとからだの学習」と総称される性教育(本件性教育)が行われ,その中で,① 性器を含む身体各部位の名称を歌詞に含む「からだうた」と題する歌に合わせて児童生徒に自分の体の各部位を手で触れさせてその名称やイメージを意識させる,② 子宮に見立てた「子宮体験袋」の中に入った生徒に産道に見立てた出口から外に向かってはって出させることで出産を追体験させる,③ 体育着の下に男性器の模型の付いたタイツをはいた教員が体育着のズボンの前を下ろして排尿方法を生徒に確認させるなどの指導が行われていた。
(4)ア  1審被告Y2は,平成15年7月2日,東京都議会同年第2回定例会において,性教育について質問(本件質問)を行い,「最近の性教育は,口に出す,文字に書くことがはばかられるほど,内容が先鋭化し,世間の常識とはかけ離れたものとなっています。」,「ある都立養護学校の教諭は,小学部の児童に「からだのうた」を歌わせています。」などとして,本件養護学校を含む都立学校,都内の公立小中学校における性教育を行き過ぎた性教育の実例として非難した上,1審被告都教委に対して,指導主事を活用して教員を直接指導するなどの毅然とした対処をするよう求めた。
イ  本件質問に対して,1審被告東京都のI知事は,同Y2が挙げた事例とこれを行っている教員について,「どれを見ても,あきれ果てるような事態」,「異常な信念をもって,異常な指導をする先生」などと評価する答弁をし,同都教委のC教育長は,「からだのうた」について,「御指摘の歌の内容は,とても人前で読むことがはばかられるもの」であり,「男女の性器の名称が,児童の障害の程度や発達段階への配慮を欠いて使用されている,極めて不適切な教材」であると述べ,「今後このような教材が使用されることがないよう,(中略)各学校及び区市町村教育委員会を強く指導して」いく旨の答弁(本件答弁)をした。
(5)ア  1審被告都議らは,平成15年7月4日,本件養護学校の性教育の実情を視察するためとして本件養護学校を訪れ,本件養護学校のB校長と面談した後,保健室に赴き,保健室に保管されていた性教育用の教材の視察(本件視察)をした。
イ  1審被告都教委は,その職員に本件視察と同時に本件養護学校に赴かせ,本件視察後の平成15年7月9日,B校長から,原判決別紙教材目録記載のものを含む性教育用教材,授業記録等(本件教材等)の提出を受けた。
(6)ア  1審被告都議らが作る「日本の家庭を守る地方議員の会」は,同都教委がB校長から提出を受けた性教育用教材を同都教委から借り受けた上,平成15年7月23日,都議会談話室において,「都立a養護学校で使用されていた不適切教材」と題した展示会(本件展示会)を開催し,性教育用教材である人形を下半身を露出させた状態で並べるなどして展示し,一般に公開した。
イ  1審被告都教委は,本件展示会の開催に先立ち,「日本の家庭を守る地方議員の会」に対し,本件展示会において展示,公開されることを前提として,本件教材等の一部を貸し出した。
(7)ア  1審被告都教委は,平成15年7月9日以降,指導主事を本件養護学校に派遣し,1審原告教員らを含む教員全員から本件性教育の実情について聴き取り調査(本件調査)をした。
イ  1審被告都教委は,平成15年7月14日,「都立盲・ろう・養護学校経営調査委員会」(経営調査委員会)を設置し,経営調査委員会は,同年8月28日,本件養護学校その他の都立の盲・ろう・養護学校の性教育,学級編制,服務規程違反について監査を行い,校長ら管理職から事情聴取をした結果として,「調査委員会報告書」を公表した。
ウ  本件養護学校においては,平成15年7月ないし8月以降,1審被告都教委の指導,助言を受けながら,性教育について,全体計画が見直され,同年9月以降の年間指導計画が変更された。
エ  1審原告X1ら13名は,平成15年9月11日以降,本件養護学校において学習指導要領(盲学校,聾学校及び養護学校の小学部・中学部学習指導要領及び高等部学習指導要領(平成11年文部省告示第60号。本件学習指導要領)を踏まえない不適切な性教育を行ったなどという理由で,1審被告都教委から厳重注意(本件厳重注意)を受けた。
オ  平成15年7月当時本件養護学校に勤務していた1審原告教員ら(1審原告X10,同X18,同X23,同X24を除く。)は,平成16年4月以降の人事異動により,本件養護学校から他の都立学校への異動の辞令を受けて転勤し(本件異動),又は退職した。
(8)  1審被告産経新聞社は,本件養護学校の性教育について,産経新聞に原判決別紙記事1~4のとおりの各記事(本件第1記事~本件第4記事)を掲載した。
3  教育の自由等の侵害行為の有無についての原審における当事者の主張の要旨
(1)  1審原告ら
ア 1審被告都教委,同都議ら及び同産経新聞社の行為は,本件性教育に対する「不当な支配」を行い,1審原告らの教育の自由を侵害したものとして,憲法13条,23条,26条及び平成18年法律第120号による廃止前の教育基本法(昭和22年法律第25号。旧教基法)10条に違反し,国家賠償法1条1項の違法行為又は民法709条の不法行為を構成する。
イ 憲法26条により子供の学習権,教育を受ける権利が保障され,この権利を保障するために,憲法13条,民法820条,国際人権規約B規約18条4項により親の教育の自由が,憲法23条,26条により教員の教育の自由が,それぞれ保障されている。
ウ 個人は,幸福追求権の一内容である自己決定権として,一定の個人的事柄について,公権力から干渉されることなく,自ら決定することができる権利を有する。この自己決定権の対象たる事柄の中で,「自己の生命,身体の処分(生き死に)にかかわる事柄」,「家族の形成・維持にかかわる事柄」,「リプロダクション(生殖)にかかわる事柄」が重要であり,性的な事柄は,これらの事柄に直結する。性的な事柄について適切な決定をするためには,学習によって,そのことの持つ生物学的・社会学的な意味を理解し,科学的で肯定的な情報を得る必要があるから,知的障害を持つ子供の性教育を受ける権利は,憲法上の極めて重要な権利である。
また,知的障害のある子供については,性被害に対する防御の必要性,性加害の予防の必要性,衛生教育の一環としての必要性,身体の発育と内心の発育とのギャップが引き起こす問題への対処及び恋愛,結婚,出産,子育ての知識習得の必要性があり,性教育を受ける必要が大きい。しかし,知的障害のある子供が性的な事柄について自己の学習意欲と人間関係の中で学んでいくことは困難で,その学習の機会が健常児よりも少ないことは明らかであるから,知的障害を持つ子供には,より多くの性的教育の機会が保障されなければならず,性的な事柄についての学習権,教育を受ける権利は知的障害を持つ子供にこそ,より厚く保障されるべきである。
エ 知的障害のある子供に対する性教育は学校で行う必要性が大きい。
オ 保護者には,親としての教育の自由があるが,その内容は,子供に最も適切な内容の教育を選択し(教育内容選択権),その教育を学校に要求する権利(教育要求権)から成る。また,教員と同様に,旧教基法10条1項によれば,学校を通じて子供に受けさせる適切な教育に対して,公権力からいわれのない否定的評価を受けないという利益も,親の教育の自由の1つを形成している。
知的障害のある子供については,親が子供に代わって教育の要求をしていく必要性が大きく,特に,性に関する事項については,日々の生活に直結するだけに,教育に対する要求が切実である。
カ 知的障害を持つ子供に対し,その子の発達段階に即してどんな教材を使い,どんな内容の教育活動をするのが最も適切か,その学習内容を決定することができるという意味で,教員には教育の自由があるというべきである。さらに,教員らは自らの教育内容について,公権力からいわれのない否定的評価を受けないという利益を有しており(旧教基法10条1項),この利益も教育の自由の1つを形成している。
教員には,公権力によって特定の意見のみを教授することを強制されないという意味において,また,子供の教育が教員と子供との間の直接の人格的接触を通じ,その個性に応じて行われる必要があるという本質的要請に基づき,教授の具体的内容及び方法につきある程度自由な裁量が認められなければならないという意味において,教育の自由が保障されており(憲法23条),それが制約されるのは,子供の教育を受ける権利によってしかあり得ない。
キ 本件性教育は,知的障害のある子供たちの学習権を保障するための教員(集団)としての教育の自由,親の教育の自由の行使により築き上げられてきた教育成果であるから,これを「不当な支配」(旧教基法10条1項)によって破壊することは,1審原告らの教育の自由に対する違法な侵害となる。
ク 1審被告都議らの行為の違法性
(ア) 政治家である都議会議員が議会において教育の内的事項に関する質問をすることは,教育に対する政治の関与に当たるから,質問権自体が制限され,質問の内容が教育行政施策の一般的指針を超えて個別的具体的な教育実践の当否に及ぶ場合には,教育実践の当事者に事実的影響を与えるものであるため,「不当な支配」として禁止される。本件質問は,本件性教育に対する否定的な見地から「からだうた」という本件養護学校での個別具体的な教育実践の当否に言及するものであり,教育に対する政治介入として「不当な支配」に当たる。
(イ) 政治家である都議会議員による学校視察は,教育行政施策の調査の一環として,当該学校の教育活動に支障を及ぼさない範囲で行われなければならず,その場合でも,視察が教育活動内容の調査など教育活動に対する介入にわたらないよう抑制されなければならない。本件視察は,本件性教育に対する否定的な見地から本件養護学校での教員の手作り教材を含む使用教材や教育実践内容の調査をすることを目的とするものであり,明らかに教育活動内容の調査に該当し,その態様においても,B校長及び本件養護学校の教員集団に圧力を加えた上,保健室に保管されていた性教育用教材を教材としての通常の使用方法を無視して殊更に性器を露出させるような不自然な形で陳列し,B校長に対してこれらが不適切な教材であると厳しく指摘し,その場にいた養護教諭らを威圧的な態度で非難,罵倒し,1審被告都教委の職員に対して,これらの教材全てを調査するよう求めたものであり,教育に対する政治介入として「不当な支配」に当たる。
また,同都議らは,事前に教材を見ていたにもかかわらず,あえて本件養護学校に赴き,同行させた同産経新聞社の記者に取材をさせ,本件性教育の実践を否定的に報道させる目的で,本件視察を行ったものであるから,本件視察は,「視察」に名を借りて行われた同都議らの政治的な主義主張に基づく政治活動にほかならない。
(ウ) 本件展示会は,本件養護学校から没収した教材を,人形の下半身を露出させるなど通常の授業では行わない形で示した上で,「不適切な教材」と決めつけて展示したものである。そして,1審被告都議らは,本件展示会を広く一般都民に公開し,同産経新聞社の報道等を通じて,本件性教育の実践が不適切であったことを印象付けようとした。特に性教育用教材は,その具体的な使用方法こそが重要であり,使用方法の説明なしに展示された場合には,教材としての適否について大きな誤解を招くおそれが高い。それにもかかわらず,同都議らは,本件教材等をその使用方法の説明抜きに展示した。同都議らは,本件展示会において教材を展示することで,本件養護学校でその教材を使用して行われていた具体的な本件性教育の実践を,自らの政治的見地から批判して政治的キャンペーンに利用したものであり,「不当な支配」に当たる。
ケ 1審被告東京都及び同都教委の行為の違法性
(ア) 学習指導要領に法的拘束力は認められず,それは教育に関する大綱的基準にとどまり指導的,助言的効力を持つにすぎない。
仮に,学習指導要領に法的拘束力を認めるとしても,本件性教育が学習指導要領に反するかどうかを判断するに当たっては,知的障害者を教育する養護学校における性教育の特殊性等が十分に考慮される必要がある。
教育行政機関である1審被告都教委が教育の内容及び方法に対する介入を行うことができるとしても,その介入は,大綱的事項にとどめられるべきであり,各学校の個別の教育内容の一部を強制的に変更させるような介入は,同都教委による「不当な支配」に当たるものとして許されない。
(イ) 教育行政機関には教育条件整備義務があり(旧教基法10条2項),1審被告東京都及び同都教委は,教育界の外部に対しては,教育に対する「不当な支配」から教育現場を保護する義務を負う。
(ウ) 1審被告都教委は,本件質問の事前通告に対し,「不当な支配」に当たるとして質問の取下げを要請するか,「不当な支配」の可能性を指摘して回答を留保すべきであったのに,これをせず,教育実践の内容も調査しないで,本件答弁をした。
また,同都教委は,本件視察の際,B校長に対して同都議らとの面談を指示し,同都議らに対して保健室に性教育用教材が保管されているとの情報を提供し,同都議らの指示の下に,性教育用教材の運び出しをするなど,教育内容に対する介入をした。
さらに,同都教委は,同都議らが本件展示会において同都教委から借り出した性教育用教材を本来の用法で使用される場合とはかけ離れた態様で展示することになるのを知りながら,同都議らに対して本件養護学校の性教育用教材を貸し出した。
したがって,同都教委は,学校教育に対する「不当な支配」からの保護義務を懈怠し,政治家による教育に対する「不当な支配」への協力・加担をしたものである。
コ 1審被告都教委主体の「不当な支配」
1審被告都教委は,① 本件教材等の没収,② 本件調査,③ 経営調査委員会の設置及びその調査結果の発表,④ 年間指導計画の変更,⑤ 本件厳重注意,⑥ 本件異動により,自らが「不当な支配」の主体として,教育行政権限及び人事行政権限を駆使して,本件性教育に介入し,その破壊を行った。
サ 1審被告産経新聞社の行為の違法性
1審被告産経新聞社の記者は,平成15年7月4日,違憲違法な本件視察に同行して,これを取材し,同都議らが,保健室において性教育用教材の人形の下半身をあらわにし,性器の存在を殊更明らかにした格好をとらせた場面を撮影し,本件養護学校で行われている本件性教育の内容について,実際に担当していた1審原告教員らからの聴き取り調査をしたりするなどして客観的情報を取得することなく,翌5日の産経新聞朝刊に「過激性教育」,「「あまりに非常識」口々に非難」という見出しで,事実を歪曲した本件第1記事を掲載し,さらに,本件養護学校での性教育実践の評価をおとしめる効果を企図した本件第2記事~本件第4記事を掲載し,1審被告都議ら及び同都教委による1審原告らの教育の自由の侵害及び教育に対する「不当な支配」に協力・加担した。
シ 1審原告らの権利侵害
(ア) 本件養護学校に在職している教員である1審原告らは,1審被告らの教材の没収によって,今後本件性教育をすることが一切できず,子供の発達段階に応じて最も適切な教材と内容を決定することができなくなった点,本件性教育について,1審被告らから「不適切な性教材」,「過激性教育」との批判を加えられ,いわれのない否定的評価を受けた点において,教員の教育の自由を侵害された。
(イ) 本件養護学校に元在職していた教員又は退職した教員である1審原告らは,本件性教育について,1審被告らから上記の批判を加えられ,他の教育現場で同様の教育活動を今後できなくなった点,教育活動についていわれのない否定的評価を受けた点において,教員の教育の自由を侵害された。
(ウ) 1審原告保護者らは,同様に親の教育の自由を侵害された。
(エ) 本件視察の際に保健室にいた1審原告X9及び同X10は,1審被告都議らから,本件性教育の内容を批判されて,侮辱を受けた。また,1審原告X1ら13名は,本件厳重注意を受けたことにより,後々の懲戒事由などに影響を受けたり,このような注意を受けたという事実による名誉毀損などの不利益を受けた。さらに,1審原告教員らのうち本件異動により配置転換を受けた教員は,意に反して異動させられ,教育意欲を減退させられるなどの不利益を受けた。
ス 1審被告らの責任
(ア) 1審被告都教委の職員(B校長はその履行補助者として)は,違法な行為によって1審原告らに損害を加えたのであるから,1審被告東京都は1審原告らに対して国家賠償法1条1項に基づいて損害賠償債務を負う。
(イ) 1審被告都議らは,それぞれが1審原告らの教育の自由を侵害する違憲違法な行為を行ったのであるから,1審原告らに対して民法709条に基づいて損害賠償債務を負う。
(ウ) 1審被告産経新聞社は,真実に反する説明とともに,教材を通常の使用の場合とは異なる態様で写真に撮影して紙面に掲載するなどして,1審原告らの権利を侵害したものであり,1審原告らに対して,民法709条に基づいて損害賠償債務を負う。
(エ) 上記1審被告らの損害賠償債務は,不真正連帯債務の関係に立つ。
(2)  1審被告都議ら
ア 本件質問には,特定の者に対する不必要なプライバシーの侵害や名誉毀損等は全くない。本件質問は,教育行政に関する一連の質問の中でされたものにすぎず,違法性を問題とする余地のない正当行為である。
仮に本件質問がプライバシーの侵害や名誉毀損に当たる場合があるとしても,質問をした議員個人には損害賠償責任はない。
イ 本件視察は,単なる視察であり,あえてこのような視察に法的根拠を求めるとすれば,地方自治法100条の議会の調査権や同法112条が地方議会議員に認める議案提出権から導かれる国政調査権類似の調査権を根拠に,個々の地方議会議員に調査権が認められていると解すべきである。そして,本件視察は,校長からこれを受け入れる旨の回答を得て実施されたものであり,本件養護学校の職員会議でも視察そのものに反対する声はなかった。したがって,本件視察には何らの違法性もない。
なお,本件視察の際の保健室での1審原告X9及び同X10とのやりとりについても,1審被告都議らは,1審原告X9及び同X10に対して何らの人事権も命令権も持っていないのであり,1審被告都議らの1審原告X9及び同X10に対する発言は,単なる議論の範囲を出るものではなく,脅迫や侮辱に当たるようなものではなかったから,不法行為が成立する余地はない。
ウ 本件展示会に展示された教材は,秘密性を有するものではなく,1審原告ら自身も性教育に関する季刊誌に内容を公開しているものである。1審被告都議らは,同東京都の教育行政に関する権限を有するものではなく,旧教基法10条の名宛人たる教育行政の主体ではないから,本件展示会によって1審原告らの教育の自由が侵害されることはあり得ない。
(3)  1審被告東京都及び同都教委
ア 普通教育においては,児童生徒に教授内容を批判する能力がなく,教員が児童生徒に対し強い影響力,支配力を有し,また,教員を選択する余地も大きくないことを考えれば,教員に完全な教授の自由を認めることは,到底許されず,国は,必要かつ相当と認められる範囲において,教育内容についてもこれを決定する権能を有するものである。
学習指導要領は,学校教育法の委任を受けた同法施行規則において告示の形で定められているのであるから(学校教育法33条,48条,52条,77条,同法施行規則25条,54条の2,57条の2,73条の10),法規たる性格を持ち,法的拘束力を有する。1審原告教員らに一定の範囲での教育の自由が認められるにしても,学習指導要領が規定する範囲内において認められるにすぎない。そして,本件学習指導要領には,性教育に関する具体的な規定が置かれていないが,このことは,養護学校の性教育につき,学習指導要領を離れて,養護学校の教諭らの自由な判断に委ねるとした趣旨でないことは,性教育が児童生徒の発達段階に応じて行われなければならないという上述の基本原則からして明らかであり,養護学校の性教育においても小学校,中学校及び高等学校の学習指導要領が当然にその基準となるものである。
公立学校を設置する地方公共団体の教育委員会は,地方自治の原則の下,国が設定した大綱的基準の範囲で,より具体的かつ詳細な基準を設定することができ,またそれが要請されているのであり,公立学校を設置する地方公共団体の教育委員会が教育の内容及び方法に関して基準を設定する場合に,大綱的基準の範囲にとどめなければならないものではない。地方教育行政の組織及び運営に関する法律(地教行法)23条5号は,学校の組織編制,教育課程,学習指導,生徒指導及び職業指導に関することを教育委員会の職務権限としている。学校設置者たる地方公共団体の教育委員会は,学校を所管する行政機関として,その管理権に基づき,学校の教育課程の編制や学習指導等に関して基準を設定し,一般的な指示を与え,指導,助言を行うとともに,必要性,合理性が認められる場合には,具体的な命令を発することもできるというべきである。
イ 1審被告Y2がした本件質問は,都民の代表として,実際に行われている性教育の実態を都民や他の議員に知らしめるという点で,都議会議員として当然の職責の遂行であり,これが「不当な支配」に当たるとはいえない。これは,他の不適切な性教育の事例とともに「ある都立養護学校」として本件養護学校の例を出しているのであって,「a養護学校」と特定したものでもない。都民の代表である都議会議員からの相当性を欠くとはいえない質問通告に対し,そのような質問には答えられないとの対応や,そのような質問を行わないよう要請するというような対応は,執行機関として考えられない。したがって,同都教委に1審原告らのいうような保護義務が仮にあるとしても,本件のような事案について1審被告都教委に1審原告らに対する保護義務違反があるとは到底いえない。
ウ 本件質問自体から,1審被告都議らが本件養護学校における教育実践に対して政治的介入をするものであると断定することはできない。C教育長は,本件質問に対し,その権限と責任において,本件性教育を適正化していく旨を答弁したものであるから,本件答弁は,何ら本件性教育に対する「不当な支配」に当たるものではない。
エ 1審被告都議らが本件養護学校の教育に対して批判的な意見を持っていたからといって,本件視察により教育に対する不当な圧力が加わることが明らかであったとはいえないし,本件視察は,「教員への恫喝,教材の物色,教材の使用の妨害,教材持ち去り」などの行為には当たらない。
オ 1審被告都教委は,同都議らからの申入れに応じて,本件展示会のための教材の貸出しをしたものであり,党派を問わず,都議会議員からの求めがあれば,広く情報提供するのは当然であるという観点に立って協力をしたのであって,何ら問題のない対応である。
カ(ア) 本件性教育の内容(① 小学部低学年の児童に「からだうた」を歌わせたこと,② 性交の仕方を指導したこと,③ コンドームの装着の仕方を示したこと,④ 小学校3年生の児童に「膣付き子宮体験袋」を教材として指導したこと,⑤ 「こんなときはノーといおう」というビデオを使用したことなど)は,学習指導要領を逸脱したものである。学校教育に責任を負う1審被告都教委としては,教育内容が学習指導要領に則ったものとなるために必要な指導,助言とともに,具体的な命令を発することもできるところ,1審原告らが違法行為と主張している1審被告都教委の一連の行為は,1審原告らによる性教育の実態を明らかにし,学習指導要領に則ったものに改めるためにされたものであるから,何ら「不当な支配」に当たらない。
(イ) 1審被告都教委は,地教行法23条5号に規定される学校の教育課程,学習指導に関する事項及び同条6号に規定される教科書その他教材の取扱いに関する事項につき管理し執行する職務権限を有しているところ,本件養護学校で使用されていた本件教材等が学習指導要領等に従って「内容が正確中正であるもの」,「学習の進度に即応しているもの」,「表現が正確適切であるもの」(東京都立学校の管理運営に関する規則(昭和35年教育委員会規則8号。管理運営規則)18条1条)かどうかを調査するために,B校長の了解を得て本件教材等の提出を受け,調査の結果,使用に問題のない一部の教材等は学校に返却し,学習指導要領に照らして,不必要,不適切な教材等については,B校長の決定に基づき一部を同都教委の教育庁指導部管理課へ所管換えを行ったものであるから,何ら違法はない。
(ウ) 本件調査は,地教行法23条5号に規定される学校の教育課程,学習指導に関する事項について管理し執行する権限を有する1審被告都教委が,本件養護学校において学習指導要領に反する教育が公然と行われ,都議会でも問題とされていて,事実関係を速やかに調査する必要があったために行ったものであるから,何ら問題はない。
(エ) 1審被告都教委は,本件養護学校を調査した結果,教育内容だけでなく学級編制や教員の服務にも不適正な実態があることが明らかになり,むしろ学校経営の在り方に問題があるとの認識を持つに至ったため,都立盲・ろう・養護学校全体を調査対象として経営調査委員会を設置したものであって,本件養護学校の特定の教育実践に権力的介入を行うためにしたものではない。
(オ) 1審被告都教委は,本件養護学校における年間指導計画が教育課程を踏まえない不適切なものであったため,地教行法23条,33条等に規定された教育委員会の職務権限とその責任に基づいて,学習指導要領に基づく適正な内容への変更について校長に指導,助言したものであり,何ら「不当な支配」に当るものではない。
(カ) そもそも「厳重注意」は懲戒処分ではない。
厳重注意を受けた1審原告らは,学校教育法82条(37条11項及び12項の準用規定),管理運営規則7条2項に違反し,学習指導要領を踏まえず,児童生徒の発達段階に応じない一律の不適切な性教育を行ったのであるから,この程度の措置を執ることは,1審被告都教委が有する人事に関する権限(地教行法23条3号)の合理的裁量の範囲内のものというべきであって,1審原告らの教育の自由の侵害であるとか,本件性教育に対する「不当な支配」に当たるとはいえない。
1審原告X1,同X14,同X17,同X22及び同X28(1審原告X1ら5名)については,「からだうた」は,「ペニス」,「ワギナ」という性器の外国語の名称が含まれているもので,特に身体の部位の名称を教えることについては発達段階に応じて適切かつ慎重に検討されるべきであるのに,小学部低学年段階から一律に使用されており,障害の程度や発達段階への配慮に欠けた,学習指導要領を逸脱する極めて不適切な教材というべきであることから,「小学部低学年の生徒に「からだうた」を歌わせたことが学習指導要領に違反する。」として,厳重注意を受けた。
1審原告X3,同X4,同X13(1審原告X3ら3名)については,小学校,中学校,高等学校いずれの学習指導要領にも「性交」を具体的に指導することは示されていないのに,性器付き人形を教材として使用すること自体,極めて不適切であるばかりか,教員が性器付き人形を裸にして手に持って,男性器を女性器に挿入させており,学習指導要領に違反して性交の仕方を指導したことから,「高等部の生徒に人形を使って性交の仕方を教えたことが学習指導要領に違反する。」として,厳重注意を受けた。
1審原告X8については,出産の場面を撮影したビデオを一律に小学部高学年の児童生徒に示すことは,発達段階を踏まえない指導であり,学習指導要領に違反することから,「小学部5,6年の生徒に出産の場面を撮影したビデオを見せたことが学習指導要領に違反する。」という理由で厳重注意を受けた。
1審原告X21については,膣に陰茎を挿入している様子を絵で示すなどしたことから,「小学部高学年で性交について取り扱ったことが学習指導要領に違反する。」との理由で厳重注意を受けた。
1審原告X7は,「性教育関係の季刊誌に校長の事前の承諾なしに実践事例を掲載した。」,「子供の写真掲載で本人,保護者の掲載に対する了解が極めて不明瞭であった。」という理由で厳重注意を受けた。
(キ) 本件異動は,東京都立盲・ろう・養護学校教員の定期異動実施要綱に基づくものであり,この要綱に従った結果,本件養護学校の異動対象者が多数に上ったにすぎず,1審原告らが主張するような不当な動機・目的によるものではない。そもそも異動について異動対象者本人の承諾を必要とするものではないが,本件異動に当っては,B校長は,対象職員と面接してその意向を確認しており,しかも大多数は本人の意向に沿ったものとなっている。
(3)  1審被告産経新聞社
ア 1審被告産経新聞社と他の1審被告らとの間には主観的にも客観的にも共同関係は存在しない。同産経新聞社が,本件性教育の「教育破壊の目的」を有していたという事実はなく,同都議らの違法行為の目的を知りつつこれを報道することにより助長,煽動したという事実もない。
同産経新聞社の記者が本件視察の事実を知ったのは同Y3からの連絡によるものではあるが,同産経新聞社は独自に取材を行うべきであるとの判断をしたものである。取材の際も,自ら直接に視察の様子を見聞し,独自の判断において記事を作成したものである。
イ 本件性教育は個々の教員が試行錯誤で実践してきたいわば発展段階のものであったことは1審原告らも認めるものであるところ,これらの教育内容が民主的な手続を経てその内容を検証され,不適切な内容があれば是正されるべきことは当然である。また教育内容が社会的に一定の評価を得るためには当然,報道による世論の批判に耐え得るものでなければならない。1審被告都議らによる本件視察以降の一連の措置は,まさにこのような民主的な是正過程であり,何ら不当な加害行為となるものではない。同産経新聞社は,B校長に許可を得た上で取材,報道を行っており,適正な手続を踏んだ極めて正当な取材,報道活動であることは明白であるから,何ら1審原告らに対する加害行為とはならない。
4  本件教材等の返還請求権の存否についての当事者の主張の要旨
(1)  1審原告ら
ア 1審被告都教委は,本件養護学校から本件教材等を没収したが,これは,適正手続に反し,1審原告らの権利を侵害するものであり,違法であるところ,不法行為は損害の公平な分担を図ることがその制度目的であって,本件教材等は,教員たちが創意工夫をして手作りで作ったものやそれらを用いた実践の積み重ねによって生まれたものであり,代替不可能なものであるから,1審原告らとしてはこれらのものが返還されることによって初めてその損失を補えるのであり,没収をした1審被告東京都及び同都教委は,それを返還することによって容易に賠償をすることができる。以上のことから,1審原告らは,1審被告東京都及び同都教委に対して,本件教材等の返還を損害賠償の方法として求めることができる。
イ 1審被告都教委が本件養護学校で使用されていた本件教材等を没収したことにより,子供の学習権に対応する教員及び親の教育の自由が侵害されたから,1審原告らは,教育の自由に基づいて,1審被告東京都及び同都教委に対して,その侵害の停止,すなわち,教材の返還を請求することができる。
ウ 1審原告教員らは,本件教材等を本件性教育のために使用する権限を有するから,この教材使用権に基づいて,1審被告東京都及び同都教委に対して,本件教材等の返還を請求することができる。
(2)  1審被告東京都及び同都教委
ア 本件教材等の所有権は1審被告東京都にあり,同都教委はその管理を委ねられている行政機関であるから,同都教委には本件教材等の返還請求の被告適格がないことが明らかである。したがって,1審原告らの1審被告都教委に対する本件教材等の返還請求に係る訴えは,却下を免れない。
イ 1審被告都教委は,地教行法23条5号及び6号で認められている職務権限に基づいて,本件養護学校で使用されていた教材等が学習指導要領等に従って「内容が正確中正であるもの」,「学習の進度に即応しているもの」,「表現が正確適切であるもの」かどうかを調査するために,B校長の了解を得て本件教材等の提出を受けたものである。その後,同都教委は,提出を受けた教材等のうち,調査の結果,学習指導要領等に照らし,使用に問題のない一部の教材等は本件養護学校に返却し,不必要であったり,不適切な教材等については,B校長の決定に基づき同都教委の教育長指導部管理課へ所管換えを受けたものである。したがって,同都教委は,その職務権限に基づき,校長の了解を得て教材の提出を受け,調査の結果,学習指導要領等に照らして不適切な教材等を校長の決定を得て所管換えを行ったものであるから,その行為に違法性はなく,同都教委や同東京都に不法行為が成立することはない。
5  名誉毀損に基づく損害賠償,謝罪広告請求権の存否についての当事者の主張の要旨
(1)  1審原告ら
ア(ア) 本件第1記事~本件第4記事(本件各記事)は,本件性教育の必要性及びそれが始められた経緯や取り組み状況などの事実関係に一切触れず,むしろ「過激性教育」,「アダルトショップのよう」,「不適切な教材」などの評価的表現を意図的に羅列することにより,それを読む者に,本件養護学校において「通常とかけ離れた性教育」が行われ,「保護者からの苦情を受け,「からだの歌」については学校内で議論されたこともあったが,推進派の声が強く,改善されなかった」(本件第1記事)などとして,1審原告教員らが「アダルトショップのよう」な破廉恥な性教育を行って暴走している,との印象を与えるものである。このようにあたかも1審原告教員らの教育活動に問題があるかのように読める事実の摘示をされ,そのような記事が産経新聞に掲載された結果,1審原告教員らの社会的評価が低下させられた。
(イ) 1審被告産経新聞社による報道により,本件養護学校に通う子供やその保護者らが冷やかしや好奇の目で見られるなどの影響が出たものであり,その社会的評価も低下させられた。
(ウ) 本件第1記事について,1審被告産経新聞社の記者は,校長と教員との間で性教育についての利害・意見の対立があることを認識していながら,B校長から取材したのみであり,対立当事者たる教員や第三者的立場の保護者からの取材をせず,しかも,その取材も,同都議らと同席した場でB校長が説明した内容を聞きかじっただけであり,摘示した事実を真実と信じたことに相当な理由が存しない。
本件第4記事については,同産経新聞社の記者は,B校長の取材すら行わずに作成したものである。
イ 1審原告らは,前項の社会的評価のみならず,本件各記事に事実と反する内容とそのような誤った事実に基づく侮蔑的評価を掲載されたことにより,名誉感情を著しく侵害された。
(2)  1審被告産経新聞社
ア(ア) 本件第1記事の摘示事実は,「性器の部分が強調された男女の人形などを教材とした性教育の授業が行われていたこと」を始めとする本件養護学校における性教育の実態,及び1審被告都議らが本件養護学校を視察した事実である。
(イ) 特定の学校の教育内容に対する評価と,そこに勤務する教員やそこに子を通わせている保護者の社会的評価とが別物であることは自明であり,前者について報じることにより後者の社会的評価に影響を及ぼすことは通常あり得ない。
仮に,本件第1記事により,本件養護学校に勤務する教員や同校に子供を通わせている保護者の社会的評価に何らかの影響があるとしても,一般読者が本件第1記事を普通の注意をもって読んだ場合に,同記事の記述のみをもって個々の教員や生徒を特定できるものではない
したがって,本件第1記事は1審原告らの社会的評価を低下させるものではない。
(ウ) 仮に,本件第1記事が1審原告らの名誉を毀損するとしても,本件第1記事が報じたものは,公共の関心事であるから,公共性があり,その目的には公益性があり,本件第1記事により摘示された事実のうち重要な部分は真実であるから,違法性が阻却される。
(エ) また,本件第1記事により摘示された事実のうち真実であることの証明がないものがあるとしても,1審被告産経新聞社が本件第1記事により摘示された事実を真実であると信じたことには相当の理由があるから,責任が阻却される。
(オ) 本件第1記事のうち,「常識では考えられない」,「まるでアダルトショップのよう」との記述は,本件視察の現場における関係者の発言を引用したものであり,そのような感想があったという事実自体を伝えるものであって,発言内容について何ら具体的な事実を摘示するものではない。
その点を措くとしても,本件第1記事における上記のような論評・意見表明は,正当な論評としての域を逸脱したものではなく,違法とはいえない。
イ(ア) 本件第2記事は,本件養護学校の性教育で使用されていた教材が都議会談話室において教育関係者に対し公開された事実を,識者の見解や来場者の感想とともに報じたものである。
(イ) 本件第2記事は,1審原告らの社会的評価を低下させるものではない。
(ウ) 本件第2記事は,公共の利害に関する事実に係り,その目的が公益を図ることにあり,摘示事実は真実である。
(エ) 仮に,本件第2記事により摘示された事実のうち真実であることの証明がないものがあるとしても,1審被告産経新聞社は,本件第2記事作成に当たり十分な取材活動を行ったものであるから,同記事により摘示された事実が真実であると信じたことに相当の理由がある。
(オ) 本件第2記事のうち,「異常さ感じる」との記述は,本件展示会関係者の発言を引用したものであり,そのような感想があったという事実を伝えるものであって,何ら具体的事実を摘示するものではない。
その点を措くとしても,上記記述は本件展示会の来場者が公開された教材を見て述べた論評又は意見表明であるところ,これらの論評・意見表明は,正当な論評としての域を逸脱したものではない。
ウ(ア) 本件第3記事は,本件養護学校を含む都内の22校につき,教員や都教委幹部に対する処分が行われた事実を報じるものである。同記事中には「過激な性教育などの問題で」都教委が1審原告X6など116人の処分人事を発表した旨の記載があるのみであり,「同1審原告の処分事由が本件養護学校における不適切な性教育である」と断定するものではなく,一般読者もそのような印象を持つものではない。
(イ) 本件第3記事中では,本件養護学校の学校名及び1審原告X6の氏名が記載されているものの,それ以外の個々の教諭や生徒名を特定できるような情報は一切記載されておらず,また,同1審原告に関する部分は,1審被告都教委によるプレスリリースでも発表された客観的な処分の事実を報じたものであり,このような処分の事実を事後的に報道することにより,改めて同1審原告の社会的評価が低下することはない。
したがって,本件第3記事は1審原告らの社会的評価を低下させるものではない。
(ウ) 本件第3記事は,公共の利害に関する事実に係り,その目的が公益を図ることにあり,摘示事実は真実である。
(エ) 仮に,本件第3記事により摘示された事実のうち真実であることの証明がないものがあるとしても,1審被告産経新聞社は十分な取材に基づき本件第3記事を作成しており,摘示された事実を真実であると信じたことにつき相当の理由がある。
エ(ア) 本件第4記事により摘示された事実は,本件養護学校において児童生徒が暮らす寮や一部の保護者から性教育を巡る疑問や批判,苦情が寄せられたり,生徒の中に記事中の記載例のような事例が見られるなど,行き過ぎた性教育により弊害が生じているという事実である。
(イ) 本件第4記事は1審原告らの社会的評価を低下させるものではない。
(ウ) 本件第4記事は,公共の利害に関する事実に係り,その目的が公益を図ることにあり,摘示事実は真実である。
(エ) 仮に,本件第4記事により摘示された事実のうち真実であることの証明がないものがあるとしても,1審被告産経新聞社は,本件第4記事作成に当たって十分な取材をしているから,同記事により摘示された事実が真実であると信じたことに相当の理由がある。
オ 不法行為の被侵害利益としての名誉には,名誉感情は含まないと解すべきである。仮に,名誉感情が不法行為の保護法益となるとしても,その成否を判断するに当たっては,記事の対象の立場に置かれた一般人が当該記事により自己の人格ないしは人格的評価を侵害されたと感じるか否か,これが肯定される場合には,当該記事が,社会通念上許される範囲を超える侮辱行為といえるか否かを基準とすべきである。
本件各記事は,そもそも1審原告らを対象とするものではないところ,仮に自らの勤務先,又は自ら若しくは自らの子供が通学する学校について批判的な記事が掲載されたとしても,そのことにより自らの人格ないしは人格的評価を侵害されたと感じるとも,ましてや社会通念上許される範囲を超える侮辱行為ともいえないことは明白である。
6  1審原告らの損害の有無,程度についての当事者の主張の要旨
(1)  1審原告ら
ア 1審原告教員らは,本件一連の不法行為によって,それまでの実績を乱暴に否定され,教員としての人格・信念,名誉,名誉感情を著しく傷つけられた上に,教育専門家として子供たちの「こころとからだについて学習する権利」,「自分を肯定して成長してゆく権利」に応えていくという何ものにも代え難い生き甲斐と喜びを否定され奪われることにより,教育者としての人格・良心を著しく傷つけられ,大きな精神的苦痛を被った。
また,教育方法・教育方針について検討の機会を持ったり,議論を尽くすという手続を踏まずに,突然,教育実践を停止させたやり方によって,現場の教員たちは怒りと同時に「何をどのように教育すればいいのか」について不安を持ち,教育に対する自信を失った。今後どのような教育をすればいいのかについて,教育者として保障されるはずの教育の自由を十分に享受できない抑圧的な状態,いわば教育の自由に対する萎縮的効果が生じさせられたものということができる。
イ 1審原告保護者らも,同様に,怒りとともに,保護者として,自らの子供たちが本件性教育という優れた教育による学習の機会を一方的に奪われ,大好きな先生や大好きな授業が1審被告らから一方的に否定され奪われたことで,自分たち自身が間違っていたかのような否定的感情を強いられた。また,保護者として,自分の子供のこれからの将来の社会生活にとって必要であると考えて協働して実践してきた性教育をやめさせられ,子供の将来に対する計り知れない不安を与えられた。
ウ 1審原告教員ら及び1審原告保護者らは,産経新聞の本件各記事を読んだ第三者から,「おかしな学校に」勤務し又は子を通わせているとして,揶揄・嘲笑されるなど,甚大な精神的苦痛を強いられた。
エ 慰謝料額は,各1審原告について,少なく見積もっても99万円を下るものではない。
オ 1審被告産経新聞社の名誉毀損行為によって毀損された1審原告らの社会的評価及び名誉感情を回復するためには,慰謝料の支払のみでは十分でなく,民法723条に基づいて,1審被告産経新聞社に,原判決別紙謝罪目録のとおりの謝罪記事を,原判決別紙侵害記事と同等の条件で,3回掲載させることが必要である。
(2)  1審被告ら
1審原告らの主張は争う。
7  原審は,1審原告らの請求は,1審原告X9及び同X10において,それぞれ,国家賠償法1条1項又は民法709条に基づき,1審被告都議ら及び同東京都に対して,慰謝料5万円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を求める限度で,1審原告X1,同X14,同X17,同X22,同X3,同X4,同X13,同X21,同X8及び同X28において,それぞれ,国家賠償法1条1項に基づき,1審被告東京都に対して,慰謝料20万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で,それぞれ理由があるとして,これを認容し,1審原告X9及び同X10の1審被告都議ら及び同東京都に対するその余の請求及び同産経新聞社に対する請求,1審原告X1,同X14,同X17,同X22,同X3,同X4,同X13,同X21,同X8及び同X28の1審被告東京都に対するその余の請求及び同都議ら及び同産経新聞社に対する請求並びにその余の1審原告らの1審被告都教委を除く1審被告らに対する請求は,理由がないとして,これをいずれも棄却し,1審原告らの1審被告都教委に対する訴えは,不適法であるとして,これを却下した。その理由の要旨は,次のとおりである。
(1)  教育の自由等の侵害に基づく損害賠償請求権
ア 教育の自由等
憲法上,親は,子供に対する自然的関係により家庭教育等において子女に対する教育の自由を有し,教師は,高等学校以下の普通教育の場においても,授業等の具体的内容及び方法においてある程度の裁量が認められるという意味において,一定の範囲における教授の自由が認められ,私学教育の自由も一定の範囲において認められるが,それ以外の領域においては,一般に社会公共的な問題について国民全体の意思を組織的に決定,実現すべき立場にある国は,国政の一部として広く適切な教育政策を樹立,実施すべく,また,し得る者として,あるいは子供自身の利益の擁護のため,あるいは子供の成長に対する社会公共の利益と関心に応えるため,必要かつ相当と認められる範囲において,教育内容についてもこれを決定する権能を有するというべきであり,また,教育行政機関が法令に基づき教育の内容及び方法に関して許容される目的のために必要かつ合理的と認められる規制を施すことは,必ずしも旧教基法10条の禁止するところではないというべきである(最高裁判所昭和51年5月21日大法廷判決・刑集30巻5号615頁(以下「最高裁学テ判決」という。)等参照)。
そして,普通教育の場においては,教育内容が正確かつ中立・公正で,地域,学校のいかんにかかわらず全国的に一定の水準であることが要請されるのであり,このような児童,生徒に対する教育の内容が,その心身の発達段階に応じたものでなければならないことも明らかであり,このことは,小学校,中学校又は高等学校に準ずる教育を施すことを目的とする盲学校・聾学校・養護学校での特別支援教育(学校教育法72条)にも当てはまるものというべきである。
本件学習指導要領は,これらの要請を実現するために,文部大臣(当時)が,平成11年法律第87号による改正前の学校教育法73条,106条1項,同法施行規則73条の10の委任に基づいて,告示として,盲・聾・養護学校の教育の内容及び方法についての基準を定めたものであり,法規としての性質を有するというべきである。
イ 1審被告都議らの行為の違法性
(ア) 本件質問
地方公共団体の議員は,その所属する地方公共団体の行政(一般事務)全般にわたり,執行機関に対し事務の執行の状況及び将来の方針等について所信を質し,あるいは報告,説明を求め,又は質問をする権限を有し,議会での自由な討論を通じて,多様な民意を反映したより良い施策が形成されることが期待されているものというべきであって,このことは,質問の対象となる事務が当該地方公共団体の設置管理する特定の学校における教育実践の内容や方法に関するものであっても異なるものではなく,そのような質問をすること自体が教育が自主的に行われることを歪めるような「不当な支配」に当たるとして許されないと解するのは,本件養護学校の在り方に対する批判自体を許さないというのに等しいことになって,相当でないというべきである。
また,本件質問は,1審原告らの氏名はもちろん,本件養護学校の名称にも言及していないから,1審原告らの名誉その他の権利,利益を侵害したものということはできない。
(イ) 本件視察
a 地方自治法上,各議員が自己の判断で行う調査活動や視察を行うことは規定されていないから,そのような調査活動や視察は,議員の地位に基づく権限の行使として行われるものということはできないが,議員が議会において政策について質問,討論をするための情報収集をする目的で行政の現場を視察することには合理性と必要性があって,このことは,視察の対象となるのが教育現場である学校であっても例外ではない。
本件視察は,B校長の許可を得て行われたものであるから,手続的に問題があったとはいえない。
本件視察が当初から本件養護学校の教員を威圧する目的でされたことを認めるに足りる証拠はないし,仮に,同都議らが本件視察の際本件養護学校において不適切な性教育がされていることの証拠を収集し,そのことを公にする目的を有していたとしても,それによって直ちに本件視察が「不当な支配」に当たる違法なものとして許されないとはいえない。
そうすると,本件視察は,それが視察の範囲にとどまっている限りは,違法の問題は生じない。
b しかし,1審被告都議らは,本件視察の際,本件性教育が学習指導要領に違反する不適切なものと決めつけて高圧的な態度で一方的に批判,非難し,1審原告X9及び同X10の教員としての資質や人格を否定的に評価する言辞を申し向けたものである。しかも,このような批判や非難は,1審原告X9及び同X10が自由に反論をすることが困難な状況の下で行われたものであり,1審被告都議らは1審原告X9及び同X10がそのような状況の下にあることを認識し,又は容易に認識し得たはずであると考えられる。
そうすると,1審被告都議らの上記行為は,もはや単なる視察の場における対等な当事者間の意見交換であるということはできず,本件性教育を実践している1審原告X9及び同X10の名誉感情を違法に侵害するものであって,侮辱に当たるというべきである。
そして,この侮辱は,本件養護学校における性教育の内容ないしその教材が不適切なものであるとの認識を共通にしていた1審被告都議らが共同で行った本件視察の最中に同都議らの共通の認識を表明するために共同の意思に基づいてされたものというべきであるから,同都議らの共同不法行為に当たるというべきである。
(ウ) 本件展示会
1審被告都議らが,性教育に性器付き人形を使用することが不適切であるとして本件性教育を批判し,これに反対するキャンペーンを行うために本件展示会を開き,本件性教育において性器付きの人形が教材として使用されていたことを明らかにするために,人形の下半身を露出させるなど通常の授業では行わない形でこれを展示したからといって,そのこと自体は,同都議らの個人的な主義,信条に基づく意見表明にすぎず,同都議らが1審原告らとの関係でそのような意見表明をする自由の制約を受けなければならない理由はなく,それによって本件養護学校における性教育が自主的に行われることを歪めることになるともいえないから,これを「不当な支配」に当たるということはできない。
ウ 1審被告都教委の行為の違法性
(ア) 1審被告都議らの違法行為への協力・加担
a 本件質問への対応
本件質問は「不当な支配」に当たらないところ,これに対して,1審被告東京都の知事や同都教委の教育長が一定の見解を述べて答弁したからといって,それによって,本件性教育の内容や方針が影響を受けることはなく,それが自主的に行われることを歪めるものともいえないから,そのような答弁が本件性教育に対する「不当な支配」に当たるとはいえない。
b 本件視察への対応
教育行政の内容には,教育条件整備義務が含まれるところ(旧教基法10条2項),地方公共団体は,その義務の内容として,旧教基法の目的・趣旨に従い,教育の公正,中立性,自主性を確保するために,当該地方公共団体が設置管理する学校の教員を同条1項にいう「不当な支配」から保護するよう配慮すべき義務を負っているものと解するのが相当である。
1審被告都議らが本件視察の際に保健室において1審原告X9及び同X10を批判し,非難した行為は,侮辱に当たると同時に,「不当な支配」にも当たるというべきである。そして,1審被告都教委の職員らは,本件視察に至るまでの経緯から,同都議らが本件養護学校における性教育に対して批判的な見解を有していることを認識していたというべきであり,同都議らが同都教委に対して問題があると指摘した性教育に関する季刊誌の記事や本件視察の際の校長室での説明から,保健室で勤務する養護教諭である1審原告X9や同X10が本件養護学校の校内分掌組織として本件性教育に取り組んできた性教育検討委員会の中心的なメンバーとして本件性教育を実践していることを認識し,又は容易に認識し得たのであるから,保健室での視察の際には,養護教諭らを立ち会わせないようにするか,又は,養護教諭らが立ち会う場合でも,1審被告都議らが保健室を視察するに際して1審原告X9及び同X10に対して本件性教育の内容や方針の当否について直接非難したり,詰問したりしてこれに介入・干渉する事態に立ち至らないように配慮する義務があったというべきである。
ところが,本件視察と同時に本件養護学校に赴いた1審被告都教委の職員及びB校長は,保健室に1審原告X9及び同X10がいるままの状態で1審被告都議らによる保健室の視察を開始させ,途中,同都議らが直接1審原告X9及び同X10に対して本件性教育の内容を批判する立場から批判や非難を始めたのに,これを制止したり,同X9及び同X10を保健室から退室させたりすることなく,1審被告都議らが1審原告X9及び同X10に対してその授業内容を批判したり,非難したりするのに任せたものであるから,1審被告都教委の職員は,教育に対する「不当な支配」から教員を保護するよう配慮すべき職務上の義務に違反したものというべきであり,このような同都教委の職員の不作為は,国家賠償法上,違法というべきである。
同都教委は,本件養護学校での性教育が学習指導要領に違反するものであり,そのような教育をする自由は認められないと主張するが,仮に本件性教育に学習指導要領に違反する点があるとしても,その是正は,同都教委等の教育行政機関を通じて行われるべきものであり,特定の党派に属する同都議らが直接本件養護学校の教員と相対してその教育の内容や方針を非難する方法によって行われるべきものではないから,上記の判断は左右されないというべきである。
c 本件展示会への教材の貸出し
本件展示会が本件性教育に対する「不当な支配」であり1審原告らの教育の自由を侵害するものということはできないから,1審被告都教委が本件展示会で展示されることを認識しながら同都議らに対して本件教材等を貸し出したとしても,これを本件性教育に対する「不当な支配」に当たり1審原告らの教育の自由を侵害するものということはできない。
(イ) 1審被告都教委主体の「不当な支配」について
a 教材の「没収」について
1審被告都教委は,地教行法23条6号に規定される教科書その他の教材の取扱いに関する事項につき管理し執行する職務権限を有するものであり,管理運営規則18条1項は,学校は教材を使用する場合,同規則14条により編成する教育課程に準拠し,かつ,次の各号の要件を備えるものを選定するものとするとし,その要件として,① 内容が正確中正であること,② 学習の進度に即応していること,③ 表現が正確適切であることを掲げている。
1審被告都教委は,本件養護学校の個々の教材・教具が学習指導要領や管理運営規則に適合しているかどうかを調査する権限を有するというべきところ,上記①~③の点につき調査する必要があると考え,B校長の了解を得て教材等の提出を受けた上,その調査を行い,その結果,不必要,不適切であると判断されたものについては,B校長の申し出により,本件養護学校から同都教委の教育庁指導部に所管換えがされたのである。
このように,同都教委による本件教材等の調査及び所管換えには,合理性と必要性があるというべきであり,手続的にも違法があるとはいえず,これを本件性教育に対する「不当な支配」ということはできない。
b 本件調査
教育委員会は,地教行法23条5号に基づき,各学校の授業内容などについて調査する権限を有するというべきところ,1審被告都教委は,同都議らの本件質問等において,本件養護学校において学習指導要領を踏まえない不適切な性教育が行われているとの指摘がされたことから,上記権限に基づいて,本件性教育の実情を調査する目的で本件調査を行ったもので,本件調査には,必要性と合理性があり,このような調査を本件性教育に対する「不当な支配」ということはできない。
c 経営調査委員会の設置及びその調査結果の発表
教育委員会は,地教行法23条5号及び6号に規定される権限を有するところ,1審被告都教委は,本件調査の結果,学校の経営の在り方に問題があるとの認識を持つに至ったことから,都立盲・ろう・養護学校の適正な学校運営の確立を図ることを目的として,それらの学校の教育内容,学級編制,教職員の服務,その他必要な事項について調査を行い必要な改善策を検討するための組織として,経営調査委員会を設置し,調査の結果を公表したというのであり,そのような調査と結果の公表には合理性と必要性があるというべきであるから,これを本件性教育に対する「不当な支配」に当たるということはできない。
d 年間指導計画の変更
教育委員会は,学校を所管する行政機関として,その管理権に基づき,学校の教育課程の編成や学習指導等に関して基準を設定し,一般的な指示を与え,指導,助言を行うことができるとともに,必要性,合理性が認められる場合には,具体的な命令を発することもできるというべきである(最高裁学テ判決)。
そして,教育内容及びその方法に関して国(文部科学大臣)が基準を設定する場合においては,教員による創意工夫の尊重や教育に関する地方自治の原則との関係から,大綱的基準にとどめられるべきであるとしても,教育委員会は,国が設定した大綱的基準の範囲で,より具体的かつ詳細な基準を設定することができるというべきである。
年間指導計画は,教育課程を最終的に決定する権限を有する校長がその権限に基づいて作成するものであり,その作成に当たって教育委員会が校長に対して指導,助言を与えることは地教行法に規定された上記権限の行使にほかならない。
B校長は,1審被告都教委の指導,助言も受けながら,その判断で,本件養護学校における平成15年9月以降の本件養護学校における性教育の全体計画及び年間指導計画を変更したのであるから,そのような同都教委による指導,助言が本件性教育に対する「不当な支配」に当たるということはできない。
e 本件厳重注意について
本件厳重注意は,人事上の処分ではなく,それ自体としては直接的な法律効果を生じさせるものではないが,一種の制裁的行為であって,これを受けた者の職場における信用評価を低下させ,名誉感情を害するものとして,その法的利益を侵害する性質の行為であると解される。
本件学習指導要領は,「知的障害者を教育する養護学校」の小学部及び中学部の各教科については,それぞれ,小学校学習指導要領及び中学校学習指導要領に示すものに準ずる旨の規定を置いておらず,「各教科(小学部においては各教科の各段階)に示す内容を基に,児童又は生徒の知的発達の遅滞の状態や経験等に応じて,具体的に指導内容を設定するものとする。」として,発達段階ごとに目標と内容が示され,障害の状態等に応じて,達成目標を立てて指導することとしているが,これは,「具体的な指導内容」を設定するに当たっては,本件学習指導要領に示された各教科の内容を基に,児童生徒の知的発達の遅滞の状態や経験等に応じて設定する必要があるからであり,その限度で小学校,中学校,高等学校の学習指導要領が参照されることまで否定されるものではないと考えられる。
① 1審原告X1ら5名
1審原告X1ら5名は,「ペニス」,「ワギナ」という性器の外国語の名称が含まれている「からだうた」を,小学部の低学年の児童に歌わせたことが学習指導要領を踏まえない不適切な性教育に当たるとして,本件厳重注意を受けたものである。
しかし,本件学習指導要領には,知的障害養護学校の小学部低学年で性器の名称を教えることを積極的に禁止する旨の記載はない。また,学習指導要領は,法的拘束力を有するとしても,大綱的基準にとどまることに加え,学習指導要領には,「性教育」という科目がないのであるから,学習指導要領に記載がない事項は直ちにこれを性教育の内容としても教えることが許されないということにはならない。小学校学習指導要領や検定教科書の記載には,第4学年で初経及び精通の仕組みとそれに関連して性器の仕組みを指導することを記載したものとも解されるものがあるが,これらがそれ以前に男女の性器の名称を教えること自体を禁止した趣旨であるかは,必ずしも明らかでない。
また,平成15年当時の1審被告都教委作成に係る「性教育の手引」の盲・ろう・養護学校編では,知的障害養護学校について,「人の体」という指導項目を立て,「体の主な名称と働き」という指導内容として,頭や手足等と並んで「外性器の名称」と「働き」を教えるとしており,頭や手足等の名称と働きを指導するのと同じ時期に外性器についてもその名称と働きを指導するという趣旨にも解されるところである。
さらに,平成15年当時の「性教育の手引」の小学校編には,「男性器をペニス,女性器をワギナとして取り扱うことがあるが,低学年の段階では・・・男の子のあるいは女の子のオチンチンという名称で説明すればよい。」,「中学年の段階から「ペニス」,「ちつ」という用語が使われます」などとしており,小学校第3,第4学年の保健の検定教科書にも「ペニス」,「ワギナ」と表記しているものが少なくない。
以上の点を考慮すると,学習指導要領において知的障害養護学校の小学部低学年で性器の名称を教えることが禁止されていることが明確であったとは必ずしもいえないし,また,それを教える際に「ペニス」,「ワギナ」という外国語を使用することが,「正しく美しい国語」を用いることとする学習指導要領や「表現が正確適切である」こととする管理運営規則18条1項に違反するとか,それらに代えて幼児語(「オチンチン」)を使用すべきことが明らかであったということもできない
仮に,本件養護学校の小学部低学年の児童・生徒に「ペニス」,「ワギナ」という性器の外国語の名称を歌詞に含む「からだうた」を歌わせることが学習指導要領や管理運営規則に違反するとしても,そのことは,本件視察当時,本件養護学校の教員らにとって明らかであったとはいえず,かえって,上記認定のような当時の「性教育の手引」の記載には,上記のような学習指導要領等の違反の問題は生じないとの誤解を生じさせる面があったというべきである。
② 1審原告X3ら3名
1審原告X3ら3名は,性器付き人形を使用するなどして,性交の仕方を教えたとの理由で,本件厳重注意を受けたものである。
確かに,「性交」という用語は,本件学習指導要領にも,平成10年に告示された小学校,中学校,高等学校の各学習指導要領にも使用されていないことが認められる。
しかし,学習指導要領の基準性や,学習指導要領には「性教育」という教科がなくその全体的な授業内容が記載されていないことのほか,当時の中学校学習指導要領の解説の保健体育編には,エイズ及び感染症の予防に関連して,「感染を予防するには性的接触をしないこと,コンドームを使うことなどが有効であることにも触れるようにする。」とあり,これは,性交の意味,仕組みを教えることを前提にするものと解することも可能である。そして,平成14年3月に公表された「新たな性教育プログラムの開発」では「従来の性交行動という文言を,性行動という文言に変えてその内容を示し」たとされ,1審被告都教委自体,「性行動」の中に「性交行動」が含まれると理解をしていたことがうかがわれることなども考慮すると,学習指導要領に「性交」という用語が使われなくなったからといって,そのことから直ちに性教育において性交について指導することが学習指導要領により禁止されることになったと解することは困難である。また,当時の「性教育の手引」では,基礎編において中学校3年生から高校生にかけて「性交行動」が教育課題になることを掲げ,小学校編において「性交は人間関係として避けて通ることができない性教育の重要なテーマの1つです。」と指摘し,盲・ろう・養護学校編においては,精神障害養護学校における「性教育に関する指導事項・指導内容例」として「性交と妊娠」,「妊娠と出産」を挙げ,「男女の責任,避妊の方法,性感染症とその予防,妊娠中絶,受精の仕組み」などを掲げているのであって,このような「性教育の手引」の記載を見た教員が,学習指導要領は「性交」を扱うことを禁止する趣旨ではないと理解したとしても,無理がないというべきである。仮に,性交について指導することが学習指導要領に反するとしても,そのことが学習指導要領の記載自体から明確であったとはいえず,かえって,当時の「性教育の手引」の記載からすると,性交の意義(仕組み)を指導することも想定されていたと考えることも可能である。
そして,文部科学省が発刊した「学校における性教育の進め方,考え方」には,知的障害者の養護学校の性教育の特性として,個に応じた多様な教材を準備すること,絵図や模型,視聴覚教材など,できるだけ具体的な教材を用いることが大切であるとされ,しかも,当時の現状では,障害に配慮した教材は少ないため,市販されている教材を児童生徒等の実態に合わせて加工したり,新たに独自に教材を開発することも必要であると指摘されているなど,具体的な教材を使うことが推奨されていたところである。そうすると,仮に,1審原告教員らが人形を使用して性交の仕組みを説明したことが学習指導要領違反であるとしても,そのことが学習指導要領や「学校における性教育の進め方,考え方」から明らかであったとはいえないし,かえって,上記認定のような当時の「性教育の手引」の記載には,妊娠の仕組みや避妊の方法を教える前提として性交の仕組みを教えることは学習指導要領に違反しないとの誤解を生じさせる面があったというべきである。
③ 1審原告X8
1審原告X8は,出産ビデオ「うまれるよ」を小学部高学年に見せたことが学習指導要領に違反するとして,本件厳重注意を受けたものである。
しかし,学習指導要領の基準性や,学習指導要領には「性教育」という教科がなくその全体的な授業内容が記載されていないことのほか,当時の「性教育の手引」の小学校編には,第4学年の学級活動の実践実例として,「生命誕生」が取り上げられ,「赤ちゃんは,子宮から膣が通り道となって生まれてくること」を説明するとされていることも考慮すると,上記学習指導要領及びその解説の記載からは,理科の授業内容としては,出産の場面を扱うことはしないとされていると解することはできても,性教育の内容として,小学部高学年で出産の場面を扱うことが学習指導要領において禁止されていると解することは必ずしもできない。
④ 1審原告X21
1審原告X21は,小学部の児童・生徒に「からだうた」を歌わせたことのほか,「小学部高学年の性教育の授業で性交を取り扱った」ことを理由として厳重注意を受けたものである。そして,1審原告X21は,小学部高学年の授業において,膣に陰茎を挿入している様子を絵で示し,「赤ちゃんがほしいと思ったら,卵子ができるころにセックス,性交をすると赤ちゃんがめでたくできる。」等と説明し,「男の人の性器を女の人の性器に入れてセックスをします」と解説しているビデオを視聴させたことが認められる。
しかし,学習指導要領の基準性や,学習指導要領には「性教育」という教科がなくその全体的な授業内容が記載されていないことのほか,当時の「性教育の手引」の小学校編には,第5学年の理科の実践実例として,「人間の生殖のしくみ」として男女の外性器及び内性器の構造と精子と卵子が結合する様子が図示されていることも考慮すると,受精の仕組みを指導したことが学習指導要領に違反することが明らかであったとはいえない。
⑤ 1審原告X7
1審原告X7が,本件厳重注意の対象とされた実践事例の季刊誌への掲載に当たっては,同じ季刊誌の別号に本件養護学校の実践事例を投稿した同僚教諭から教頭に報告してあると聞いており,自らも掲載原稿を管理職宛の書類提出用の箱に入れておいたと主張するが,当時本件養護学校の校長であった同X6は,平成15年7月7日の1審被告都教委による聴き取りに対して,1審原告X7による上記季刊誌への投稿については事前の相談もなく,掲載した実践事例の内容も承知していなかったと述べていることが認められるから,同X7の上記主張は採用することができない。
以上によれば,1審原告X1ら5名,1審原告X3ら3名,同X8及び同X21に対する本件厳重注意の対象とされた授業が行われた当時においては,少なくとも,それらの授業が学校指導要領や管理運営規則に反するものであり,本件養護学校の児童生徒の発達段階を踏まえないものであることが明らかであったとはいえないばかりでなく,むしろ,「性教育の手引」の記載には,それらが学習指導要領に反するものではないとの誤解を生じさせる部分もあったというべきである。本件厳重注意は,本件性教育という授業内容そのものが不適切であることを理由とするものであるところ,性教育は,教授法に関する研究の歴史も浅く,創意工夫を重ねながら実践実例が蓄積されて教授法が発展していくという面があるのであり,教育内容の適否を短期間のうちに判定するのは,容易なことではないと考えられる。しかも,いったん,性教育の実践がその内容が不適切であるとして否定され,これを担当した教員に対して制裁的取扱いがされてしまえば,そのような取扱いを受けた教員その他の教員を萎縮させ,創意工夫による実践実例の開発を躊躇させ,性教育の円滑な遂行が阻害されることにもなりかねないのであるから,1審被告都教委は,厳重注意という制裁的取扱いをするのであれば,あらかじめ,「性教育の手引」を改訂したり,教員らに対する集合研修や個別の助言,指導を行い,また,問題となっている教育実践が児童・生徒の発達段階を踏まえたものかどうかを十分調査した上で,教員らがこれを客観的に判断し得る基準を示すなどして,当該教員らにおいてその教育実践が学習指導要領に違反するものであることや発達段階を踏まえたものでないことを事前に認識し得る機会を与えた上で行うべきであったというべきである。ところが,同都教委は,事後的に不適切な性教育の内容や教材・教具を具体的に示すことはしたものの,それより前にあっては,学習指導要領違反となる実践実例や発達段階を踏まえない実践実例を例示したりその判断基準を具体的に示したりする等の指導,助言等をしないまま,上記1審原告らに対して本件厳重注意をするに至ったものである。しかも,1審被告都教委は,その過程において,本件厳重注意の対象とされた教育実践が児童・生徒の発達段階を踏まえないものといえるのかどうかについて,平成12年当時のa養護学園の職員に対するアンケート結果を参照したことがうかがわれるほかは,本件養護学校に現に在校し,又はかつて在校した児童・生徒やその保護者から事情聴取をした形跡はなく,教育学等の専門家の知見をどの程度導入して検討されたかも明らかでないのである。
このような事情の下で行われた本件厳重注意は,前記のような機会を与えず,本件性教育が学習指導要領に違反するか,児童・生徒の発達段階を踏まえたものかどうかを十分確認せずにされたものとして,社会通念上著しく妥当性を欠き,裁量権を濫用したものとして,違法というべきである。
f 本件異動
本件異動は,平成15年7月10日付けの「東京都立盲・ろう・養護学校教員の定期異動実施要綱」等の人事異動要綱に基づいて行われたものであることが認められ,本件養護学校における性教育を破壊するために,1審原告教員らについて差別的取扱いをして早期,大量の配置転換をしたとの1審原告ら主張事実を認めるに足りる証拠はない。
そして,仮に,本件異動の結果として,1審原告教員らが本件養護学校で行ってきた本件性教育を継続することが困難ないし不可能になったとしても,そのことを意図して本件異動がされた事実が認められない以上,本件異動が「不当な支配」に当たるということはできない。
エ 1審被告産経新聞社の行為の違法性
1審被告都議ら及び同都教委の違法行為が同産経新聞社との共謀に基づいて行われたことや,同産経新聞社の本件性教育に関する一連の報道が他の1審被告らとの共謀に基づいて行われたことを認めるに足りる証拠はない。
また,同産経新聞社が本件性教育について批判的な立場から報道をしたとしても,それによって,本件養護学校での性教育が直ちに影響を受けることにはならないから,それが本件養護学校において性教育が自主的に行われることを歪めるような「不当な支配」に当たるということはできない。
(2)  教材の返還請求権の存否
ア 1審被告都教委に対する訴え
1審被告都教委は,権利義務の帰属主体ではなく,民事訴訟の当事者能力を有しないというべきであるから,同都教委に対する訴えは,不適法として却下を免れない。
イ 1審被告東京都に対する請求
本件各教材の所有権,管理権は,1審被告東京都に帰属するものであり,同東京都は,B校長の決定に基づいて,本件教材等の所管換えを受けたのであるから,1審原告らは,1審被告東京都に対して本件教材等の引渡しを請求する権利を有しないというべきである。
(3)  名誉毀損に基づく損害賠償,謝罪広告請求権の存否
ア 本件第1記事は,本件養護学校における性教育の内容又は方針を批判しているにとどまり,それを超えて本件養護学校に勤務しあるいは子を通わせている個々の教員や保護者の社会的評価を低下させるものではない。
本件第1記事には,「前校長」が本件性教育を推進してきたとの記載があることから,1審原告X6の名誉を毀損すると見る余地があるとしても,本件第1記事の内容は,公共の利害にかかわる事項であり,目的の公共性もあり,その意見ないし論評の基礎となる事実は真実であって,これに批判的な見解を表明することが意見ないし論評の域を逸脱したものということはできない
イ 本件第2記事は,教員や保護者について述べた記述は一切なく,一般読者がこれを読んでも1審原告らを特定することが不可能である。また,本件第2記事は,本件養護学校における教員の全てが学習指導要領違反の不適切な性教育を行っていたという趣旨に読むこともできない。
ウ 本件第3記事中では,本件養護学校の学校名及び1審原告X6の氏名が記載されているものの,それ以外の個々の教員や保護者を特定できるような情報は記載されておらず,一般読者が本件第3記事を読んでも1審原告らを特定することは不可能である。同X6に関する部分は,都立高校の校長が人事処分を受けたという公共の利害に関する事実を報じるものであり,その報道の目的には公益性があり,かつ,同X6がそのような処分を受けたこと自体は,真実であるから,違法性が阻却されるというべきである。
エ 本件第4記事中では,個々の教員や保護者を特定できるような情報は一切記載されておらず,一般読者が本件第4記事を読んでも1審原告らを特定することが不可能である。
(4)  1審原告らの損害の有無,程度
ア 本件養護学校において1審原告らが従前と同様の性教育を行えなくなったとしても,それは,年間指導計画の変更等によるのであり,それが1審被告らの「不当な支配」によるものでないから,1審原告らの上記損害の主張は失当である。
イ 1審原告X9及び同X10が本件視察の際の1審被告都議らによる侮辱及びその際の同都教委による保護義務の違反によって被った精神的苦痛による損害を慰謝するのに必要な慰謝料の額は,1審原告X9及び同X10について各5万円と認めるのが相当である。
ウ 1審原告X1ら5名,1審原告X3ら3名,同X21及び同X8が違法な本件厳重注意によって精神的損害によって被った精神的苦痛による損害を慰謝するのに必要な慰謝料の額は,上記各1審原告について各20万円と認めるのが相当である。
8  前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり改め,当審における1審原告らの主張を後記9のとおり,当審における1審被告東京都及び同都教委の主張を後記10のとおり,当審における同都議らの主張を後記11のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の第2の2及び第3に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)  原判決5頁15~16行目の「平成15年7月当時から現在まで東京都議会議員の地位にある」を「平成15年7月当時,東京都議会議員の地位にあった」と改める。
(2)  同8頁5行目の「D」を「X17」と改める。
(3)  同21頁25行目の次に行を改めて「なお,1審原告X30に対する厳重注意の理由は,調整休を不正に取得したこと及び運動会の反省会で飲酒している同僚がいたのに看過したことである。」を加える。
(4)  同31頁3行目の「対応をした。」を「対応や,」と改める。
9  当審における1審原告らの主張
(1)  教育介入行為についての違憲違法性の判断基準と原審の総論的判断の誤り
1審被告らの行為の違憲違法性の判断基準を整理すれば,① 介入の目的(仮定的目的),② 目的のために必要性が認められるか,③ 介入方法の合理性,④ 介入により生じる影響の存在の4要件により判断されるべきである。
上記判断基準は,以下のとおり,最高裁学テ判決においても明らかにされている。
ア 最高裁学テ判決は,いわゆる教育決定権に関する公権力・教師・親等の間における憲法から見た権限分配を定め,公権力による教育介入も一定限度で認めた上で,教員の教育の自由も一定の限界付けをした上で,認めている。
最高裁学テ判決は,文部大臣の実施した全国一斉学力調査の適法性につき,これが地教行法の根拠に基づいて文部大臣の権限としてできるものではないが,教育委員会が文部大臣の要求に応じて実施したものであることから,手続上違法ではないとして,形式的違法性がないと判示した上で,実質的違法性につき,行政調査といえども,無制限に許されるものではなく,許される目的のために必要とされる範囲において,その方法につき法的な制約が存する場合には,その制約の下で行わなければならず,
(ア) 教育は専ら子供の利益のために行われるものであるとの規範及び子供が自由かつ独立の人格として成長することを妨げるような介入をした場合には,違憲・違法となり,
(イ) 教育介入行為につき,① 不法な目的がある場合,② 許容される目的から見た必要性がない場合,③ 上記必要性からして介入方法が合理性を有しない場合,④ 介入目的や必要性に照らして,教育についての影響力が大きすぎる場合に,「不当な支配」として違法となる
と判示したものと解される。
1審被告都教委は,教員の教育の自由,換言すれば教育行政機関の教育の内容・方法に関する介入の限度は,教員による創造的・自主的な教育の余地いかんではなく,教育行政機関の介入が許容される目的のために必要かつ合理的なものであるか否かによって決せられるものであると主張するが,教員による創造的・自主的な教育の余地と何ら関係がなく教育行政機関の介入が必要かつ合理的であれば許されるものとすれば,誤りである。
イ 最高裁学テ判決は,「不当な支配」の主体は特に問わないこととしており,1審被告都教委もその主体になり得る。
原審は,公立学校を設置する地方公共団体の教育委員会は,国が設定した大綱的基準の範囲で,より具体的かつ詳細な基準を設定することができ,またそれが要請されており,公立学校を設置する地方公共団体の教育委員会が教育の内容及び方法に関して基準を設定する場合,大綱的基準の範囲にとどめられなければならないものではないというべきである。」と判示する。
確かに,教育委員会には,教育に関する地方自治の原則という理由によって行う教育内容についての基準の設定につき,大綱的基準にとどめられる理由はない。
しかし,実質的違法性がある教育介入としての基準設定は許されないし,たとえ,助言,指導であっても違法となる余地がある。また,教育委員会は,教育に関する権力的介入を排除する制度として設けられたという沿革は,教育委員会の介入権限を国よりも拡張する理由にならない。教育委員会自体も自治体の機構としてその党派的利害に従って意思決定を行うこともある。また,教育委員会の委員については,公選制を廃止して,地方公共団体の首長が,議会の同意を得て任命し,委員により構成される教育委員会が教育長を任命することとしているから,教育委員会は,地方公共団体の首長や議会の意思を教育現場に強硬に反映させる機関として機能している。さらに,教育委員会は,教員に対し,人事権を有しており,教育委員会の介入は,教員にとって強い脅威になる。
教育委員会の委員や教育長は,単に有識者や教育経験者・行政官僚が任命されるというだけで,事務局を含めて,教育についてどれほどの専門的知見が蓄積され,保有されているかは疑問である。特に,性教育や子供の発達に関する見解は,あまりに粗雑かつ不当であり,専門機関であるとはいえず,これに関する教育介入についての裁量の幅は,広くないものと解すべきである。
ウ 校長,教頭ら管理職も,教育の自由を侵害し得るものである。
教育の自由は教員個人に認められるものであって,校長を代表とする学校がその享有主体ではなく,校長に様々な権限があるとしても,必要性も合理性もなく,不当な影響を及ぼす形で権限を行使することは許されない。したがって,校長ら管理職が同意をしていることなどが,1審被告都教委の教員に対する各教育介入を適法化する理由にはならないし,校長らの行為も「不当な支配」に当たる。
(2)  原審の各論的判断の誤り
原審は,1審被告らの行為の一部を違法と認め,損害賠償請求を一部認容したものであり,その理由づけにおいても,評価し得るところがあるが,1審被告都教委に対する訴えを却下し,その余の請求を棄却したことには,重大な誤りがある。これは,被侵害利益が,単なる名誉感情などにとどまるものではなく,1審原告らの教育の自由であることを看過し,かつ,1審被告らの行為が共同の意思の下に行われた一連一体のものであって,全体として教育に対する「不当な支配」に当たり,教育の自由が侵害されたことを見抜けなかったことによる。
ア 1審被告都議らの行為についての判断の誤り
1審被告都議らの行為は,他の1審被告らとの共同行為と見て評価する必要があり,また,同都議らの行為だけを見ても,一連の行為を一体と見て評価すべきであり,「不当な支配」に当たることは明白であるが,1つ1つを見ても違法である。
(ア) 本件質問
原審は,1審被告都議らの都議会における質問行為を違法でないと判断したが,これは,教育現場についても,他の行政と同様に多数決民主主義が妥当することを前提とするものであって,誤りである。そもそも教育については,多数決原理を基本とする議会という場の議論になじむものではない。同都議らの一連の行動は,その政治的な主義・主張に基づいてされたものであり,議会という多数決原理で意思決定がされる場において特定の学校における特定の教育実践内容につき議論がされること自体,「党派的な政治的観念や利害によって支配されるべきでない教育にそのような政治的影響が深く入り込む危険がある」(最高裁学テ判決)行為である。日常子供たちの学習に接していない議員による議会における質問や討論は,自主的な教育活動を歪め,妨げるものであり,「不当な支配」に当たる。原審の判断は,性教育の適否を短期間のうちに判定することが容易ではなく,教員らを萎縮させることなどを理由に,厳重注意の違法性を肯定した判断と矛盾するものである。
確かに,都議会における質問は,議員活動の一環であり,1審被告都議らの質問の目的が,原審の判示するような「議会での自由な討論を通じて,多様な民意を反映したより良い施策が形成されること」にあったと仮定した場合は,必ずしも違法とは評価し得ない。しかし,1審被告都議らの真の目的は,自らの政治的主義・主張に基づく教育内容の是正にあったのであり,質問の必要性も合理性もなく,教育現場に対し萎縮効果を及ぼしたから,「不当な支配」に当たることが明らかである。
原審は,1審被告都議らの質問予告により,既に「からだうた」は使えなくなってしまったほどに大きな影響力を有していたことを,過小評価している。
(イ) 本件視察
原審は,1審被告都議らの視察行為につき,「視察」にとどまる限り違法とはいえないと判断したが,上記のとおり,そもそも特定の学校の特定の教育実践を議会で取り上げること自体が許されないのであるから,誤りである。
確かに「視察」が原審の判示するような「議会で政策について質問,討論するための情報収集をする目的」のものであったと仮定した場合,そのような目的自体は必ずしも違法とはいえないであろう。しかし,本件視察には正当な目的がなく,視察の必要性も合理性もない上,教育現場に対し萎縮効果を及ぼしたものである。教育実践に批判的な見解を持つ議員が視察することは,視察に名を借りた教育への介入行為であり,本件性教育を積極的に破壊しようとするものであって,「不当な支配」に当たる。
また,原審が,1審被告都議らの侮辱的発言が「不当な支配」に当たることを認めながら,教育の自由に対する侵害であることに言及せず,1審原告X9及び同X10に対する侵害に限定して,教員集団の教育実践に対する侵害を認めなかったことは,誤りである。
(ウ) 本件展示会
原審は,本件展示会は,「個人的な主義・信条に基づく意見表明」であることを理由に,「不当な支配」に当たらないと判断しているが,1審被告都議らは公人であるし,本件展示会は,議会という公の場で行われ,その態様は都民に誤解を与える侮辱的なものであり,その目的は自らの功績を示すという不当なものであって,その必要性も合理性もなく,教育現場に対し萎縮効果を及ぼしたから,「不当な支配」に当たることは明白である。
イ 1審被告都教委の行為についての判断の誤り
1審被告都教委の行為は,他の1審被告らとの共同行為と見て評価する必要があり,また,同都教委の行為だけを見ても,同都議らの質問を契機に,その意に沿うことを目的として,それまで評価してきた本件性教育を否定・破壊するために,極めて短期間のうちに,強硬な手段を用いて,意図どおり破壊したものであって,一連の行為を一体として見るべきであり,「不当な支配」に当たることは明白である。原審は,本件厳重注意が「教員を萎縮させ,創意工夫による実践実例の開発を躊躇させ,性教育の円滑な遂行が阻害される」と判示しているところ,1審被告都教委のその他の行為も,制裁的取扱いでないけれども,1審原告らを萎縮させ,創意工夫を躊躇させ,性教育の円滑な遂行が阻害されることに変わりがないから,いずれも「不当な支配」に当たり,一連一体の違法な行為と評価すべきである。そして,同1審被告の行為は,1つ1つを見ても,違法である。
(ア) 本件答弁
原審は,1審被告都教委の同都議らの質問に対する対応が「不当な支配」に当たらないとした。一般論としては,都議会の審議は都政全般にわたるべきものであるから,都立学校の性教育に関する質問に答弁することは,正当な目的たり得るが,本件性教育は明らかに学習指導要領に違反し不適切なものであるとはいえないのであるから,その是正をする必要性も合理性もなかった。原審の判断は,同都議らの質問が「不当な支配」に当たることを看過するものである。1審被告都教委は,このような「不当な支配」に対し,教員を保護するよう配慮する義務を負っている(旧教基法10条2項)から,教育的観点に立って,独自に調査検討を行い,質問による「不当な支配」を阻止する義務がある。ところが,1審被告都教委は,教育専門機関としての独自の調査・検討を行わず,1審原告らの説明すら聴かずに,教育長が,都議会において,「不適切な教材」,「強く指導」するなどと答えたことは,1審被告都議らの「不当な支配」に加担するだけでなく,自ら主体となって介入を行うことを宣言したものであり,1審原告らを萎縮させる行為であって,「不当な支配」に当たる。
(イ) 本件視察への協力
1審被告都教委にとって,本件視察を漫然と許せば,同都議らによる「不当な支配」が起こり得ることは,容易に予見することができたから,同都教委は,同都議らに注意を喚起したり,本件養護学校に指示して保健室での視察には教員が立ち会わないようにするか,立ち会うとしても,同都議らが教員を詰問するなどして本件性教育に介入・干渉することに至らないように配慮する義務があった。ところが,同都教委は,同都議らの言動を許し何もせず,上記義務に違反し,むしろ,同都議らの「不当な支配」に積極的に加担した。
(ウ) 本件展示会への教材の貸出し
1審被告都教委が本件展示会に本件教材等を貸し出したことも,同様に,同都議らの「不当な支配」に加担するものである。
(エ) 本件教材等の没収
原審は,1審被告都教委による本件教材等の没収は,地教行法23条6号,管理運営規則18条1項に基づく調査のための行為であり,「不当な支配」に当たらないというが,極めて形式的な理由である。仮に調査が目的であっても,いきなり269点もの教材を学校現場から持ち去る必要はなく,本件養護学校に置いたまま調査することも可能であった。教材の持ち去りは,教材を用いた授業を不可能にする極めて強度の教育介入手段である。したがって,現に学校で使用されている教材を提出させて調査する場合には,教育の自主性を侵害する危険につき考慮すべきであり,政治家による批判を受けてする調査の場合には,慎重な手続を執らねばならない。しかも,同都教委は,議会において「不適切な教材」と断定した後に没収したのであるから,その目的は調査のためではなく,教材の使用禁止を徹底し,授業をやめさせることにあったことは,明らかであり,「不当な支配」に当たる。
また,原審は,同都教委が校長の了解を得て教材等の提出を受け,校長の申し出により教材を所管換えしたとして,校長の権限を認めた上で,同都教委の行為を適法と判断しているが,教育の自由は教員が有し,校長を代表とする学校が有するのではなく,校長は教員の教育の自由を侵害する主体にもなり得るのであるから,校長が了解したことは,教材没収を適法化する理由にはなり得ない。
(オ) 本件調査並びに経営調査委員会の設置及びその調査結果の発表
原審は,本件調査並びに経営調査委員会の設置及びその調査結果の発表は地教行法23条5号,6号に基づくもので「不当な支配」に当たらないというが,本件教材等の没収と同様に本件性教育を不適切と決めつけた上でされたものであり,「不当な支配」に当たる。
(カ) 年間指導計画の変更
原審は,年間指導計画の変更について,1審被告都教委は国と違って教育内容・方法の基準設定の際に大綱的基準より具体的かつ詳細な基準設定が要請されているという理解の下に,「不当な支配」に当たらないという。しかし,1審被告都教委も,国の大綱的基準を地方的に具体化することはできるが,学校における教育の自由・自主性を閉ざす指導をすることはできず,やはり大綱的基準しか定められないと解すべきである。最高裁学テ判決も,旧教基法10条1項が法令に基づく教育行政機関の行為にも適用があることを明言しており,地教行法48条2項2号の教育委員会の権限規定は,教育委員会の行為が「不当な支配」になることを否定する根拠にはなり得ない。年間指導計画の変更には,必要性も合理性もなく,形式的には,校長の指示を受けた副校長が中心となって見直しが行われたことになっているが,実質的には1審被告都教委の強力な指導の下で,その意向のままに行われたものであり,教育現場の外から教員らの意に反して教員の有する教育課程編成権を侵害し教育内容の変更を強制したものである。これこそ,本件における最大の「不当な支配」に当たる。
原審は,校長の判断で年間指導計画を変更したとして,校長の権限を認めた上で,1審被告都教委の行為を違法でないと判断しているが,本件教材の没収について述べたのと同様,理由がない。
(キ) 本件異動
原審は,本件異動は定期異動実施要綱に基づくもので,「不当な支配」に当たらないというが,異動を希望していない者を含め,本件養護学校の在籍教員の約3分の1が異動させられ,3年間のうちにはほぼ全員が入れ替わったというものであり,極めて異例であって,通常の異動以上の考慮が働いたことは間違いない。本件異動には,同要綱に定める目的があったものではなく,本件性教育を行えなくするためという不当な目的でされたものであり,その必要性も合理性もなく,教員らを萎縮させる効果を有するものであるから,「不当な支配」に当たる。
ウ 1審被告産経新聞社の行為についての判断の誤り
(ア) 原審は,1審被告産経新聞社の行為につき,同都議らや同都教委との共謀を否定し,本件養護学校での性教育が直ちに影響を受けることがないから,「不当な支配」に当たらないというが,同産経新聞社の行為は,① 政治家である同都議らの介入と連携してされたものであり,② 教育制度の一般的な議論ではなく,特定校の具体的な授業の実践を執拗に批判したものであり,③ 批判の対象となる教員に対する取材や授業の実践の取材をしておらず,④ 唯一の取材対象であったB校長からも,真意が伝わっていないと指摘されているように,内容が歪曲されており,⑤ 本件養護学校の教育実践に多大な影響を与えたものであって,「不当な支配」に当たる。
(イ) 本件各記事による名誉毀損の成否
原審は,本件第1記事,本件第3記事及び本件第4記事につき,1審原告らが特定されるものではないとして,名誉毀損の成立を否定した。
しかし,形式的には,記事に1審原告らの氏名が記載されていなかったとしても,その者の属するグループについての報道により,個々の1審原告に具体的侵害結果(社会的評価の低下)を与えることはあり得る。そして,上記記事の掲載当時本件養護学校に勤務していた教員は,社会的評価の低下があり,1審原告X23は,本件養護学校の夏祭りにつき,地域住民から「こんな学校だとは思わなかった。今年はボランティアとしての手伝いはできない。」と言われ,同X20は,これを見た者から,「悪いことをしたのだろう」という非難を受けている。上記記事の掲載当時他校に異動していた教員にも,社会的評価の低下が見られる。1審原告X3は,異動先の学校で,本件第1記事を掲載した産経新聞が回覧され,「子供がかわいそう」と言われたり,その後,校長から「a養護の習慣は捨てろ」と叱責されたり,退職勧告をされたりした。保護者は,障害を抱える子の親は,ただでさえ世間の目に過敏になっているのに,「過激」で「アダルトショップのよう」な教育を受けていると書き立てられることで,更に社会的評価を低下させられた。
また,原審は,本件第1記事については,1審原告X6につき,特定性があるとし,名誉毀損と見る余地があるとしても,公共の利害に関し,目的に公共性があり,意見・論評の基礎となる事実の真実性を認めて,意見ないし論評の域を逸脱したものとはいえないから,違法性が阻却されると判示したが,誤りである。
これを意見ないし論評とみるとしても,その基礎となる事実は虚偽ないし不正確であるから,公正な論評とはいえず,違法性は阻却されない。本件第1記事は,① 本件性教育は,平成9年ごろから始められ,今年3月に異動した前校長と一部教員らが中心となって推進してきた,② 保護者からの苦情を受け,「からだの歌」については学校内で論議されたこともあったが,③ 推進派の声が強く,改善されなかった旨記載しているが,本件性教育は校務分掌に位置付けられた「性教育検討委員会」が中心となって,全校体制で組織的に進められたものであるし,本件性教育は,保護者の意見もアンケートの形で取り入れながら,全教員が忌憚のない意見を出し合って共通理解を図って進めてきた教育活動であり,校内での議論はあったが,推進派,反対派が存在したわけではない。保護者からの苦情というのは,B校長の本件視察の際の説明資料に,学校運営連絡協議会の席で,親の会の代表から,作業所で性器名を言ってしまう利用者がいてどうしたらよいか困っているという声を聞くという発言が出ていた旨記載されているところ,知的障害のある子供が性器名を口に出すのは本件性教育を行う前から一般的に見られた現象である。苦情があったのは事実であるが,過去の話であり,保護者から,「からだうた」に対する苦情が出ていたというのは事実に反する。また,本件第1記事は,本件養護学校では,「「からだの歌」も歌わせていた」と,これを歌うように生徒に押し付けたかのような記載があるが,実際には,教員が「からだうた」を歌いながら子供たちに身体の部位やそのつながりを学習させたものである。本件第1記事は,下半身を露出した状態で床に並べた人形の写真を掲載しているが,現実には,この人形は洋服を着ているものであり,殊更に下半身を露出させて展示,使用されるものではない。
1審被告産経新聞社のE記者は,上記記事を作成するに当たり,取材対象としたのはB校長のみであり,教員や保護者から取材していない。また,B校長からの取材というのは,本件視察の際に,B校長の説明を聞きかじったにすぎない。したがって,意見・論評の基礎となる事実を真実と信じたことにつき,相当性がない。
本件第2記事~本件第4記事についての原審の判断も誤りである。
エ 教材返還請求についての判断の誤り
(ア) 1審原告らは,教材返還請求につき,① 不法行為の制度趣旨に基づく原状回復請求,② 教材使用権に基づく返還請求,③ 差止め請求としての教材返還請求を主張したが,原審は,②についてのみ判断して請求を棄却したものであり,①及び③については,判断を脱漏した。
(イ) また,②についての判断も,教材の所有権・管理権が1審被告東京都にあり,財産管理規則に基づき学校長から所管換えを受けたという極めて形式的な理由のみにより,判断しているが,教材の管理権は教員に属するというべきであるし,1審被告都教委は,各方面からの批判が高まったために,副校長に教材の廃棄か所管換えかの二者択一を迫ったのであり,所管換えは学校現場の任意の意思ではない。
(3)  当審における追加主張
ア 学校経営アドバイザーの送り込み
(ア) 平成15年7月4日,本件視察の当日,1審被告Y3は,かねてからの知り合いであったKに電話をかけ,本件養護学校で過激な性教育が行われており,校長を助けるため力を貸すよう求め,Kは快諾した。同Y3は,同都教委に対し,Kを本件養護学校に送り込む方策を打診し,形式的には校長が推薦したことになっているが,実質的に,Kを推薦した。
(イ) 1審被告都教委は,平成15年7月,東京都立学校経営アドバイザー設置要綱を新設し,同月29日に施行し,同日,Kが推薦されたことから,同人を東京都立学校経営アドバイザー(以下「学校経営アドバイザーという。)に任命し,本件養護学校勤務を命じ,Kは,同年8月1日から勤務を始めた。
(ウ) 学校経営アドバイザー設置要綱によれば,これは学校経営全般に関して喫緊の課題が生じた場合に,校長に対して専門的かつ具体的な支援を行うために設けられた制度であるが,本件養護学校において行われていた本件性教育が明らかに学習指導要領に違反し不適切であるとはいえないし,仮に何らかの是正の必要性を想定したとしても,Kは,1審被告都議らによって,自分たちの望む教育内容への変更を確かなものにするために,思想を同じくする者として送り込まれたのであり,単なるアドバイザーの範囲を超えて行動することを認められていたものであるから,その選任は,目的が許容されないものであり,重大な違法行為である。
本件養護学校の子供たちの学習権が脅かされ,その改善のために,校長にアドバイザーが必要とされる場合には,適格性のある外部の人材を登用する必要があるかもしれないが,本件性教育については,同都教委が指導・助言をすれば十分であるから,これを選任する必要がない。
また,仮に必要性が想定されるとしても,学校教育法は,校長その他の管理職及び教員を置くものとしており,同法に規定する役職以外の役職を設けて外部から人材を登用することについては,極めて慎重ないし消極的である。学校経営アドバイザーが,校長その他の管理職との関係でどのような位置に立ってどのような役割を担うのか,極めてあいまいであり,学校内での暴走を招きかねない制度となっており,本来の目的を超えた不合理なものとして,違法の疑いが濃い。
学校経営アドバイザー制度は,1審被告Y3が同都教委に働きかけたことにより新設されたものであるところ,同都教委が人選に十分な検討をすることは不可能であり,同Y3の推薦に対し,裁量権限を放棄して,これに応じたことにほかならない。Kは,性については,男女の倫理をきちんと教えるべきだという抽象的な道徳論を振りかざしているだけで,性教育について系統的に研究したり実践したりした経験は皆無であり,性器の違いや役割,大切さが小学校低学年の重要な学習課題とされていることすら理解していない。また,Kは,労働組合(日教組),一部の政党,日の丸・君が代の強制に疑問を呈する教員や市民,性教育に熱心に取り組む人々を強く敵視する偏った考え方を持っている。
(エ) Kは,校長への助言など学校経営アドバイザー設置要綱に定める職務権限を超えて,平成15年9月24日の職員会議で,前校長に協力して行動をともにした教員は同罪である,前校長に協力しなくても,注意を促さなかったことについては全教員に責任がある,性教育の指導において問題ありとされた教員が厳重注意を受けたが,それ以外にも過激な性教育を行った教員がいるはずであるから,正直に申し出るべきである,服務に対し厳重注意を受けた教員も同様と考える,前校長に協力した教員は出処進退を考えるべきであるなどと記載した資料を配布してその旨発言をし,教員らに対する恫喝的な行為や威圧を行った。
(オ) 以上のような1審被告都議ら及び同都教委の行為は,「不当な支配」に当たる。
イ 大量異動の違法性
1審被告都教委は,平成15年度末から平成18年度末にかけて,教員異動要綱を根拠に,本件養護学校全体で約90名であった教員のほとんどを異動させた。
これにつき,Kは,著書において,「都教委はどうしたのかというと問題教員を異動させるより仕方がないと考えた。都内の各養護学校にできるだけ分散して送り込んだ。本校では30名近くが異動することになった。」と記載しており,1審被告都教委の「不当な支配」は明らかである。
ウ 1審原告X7に対する厳重注意の違法
1審原告X7は,① 季刊誌「○○」(平成14年4月発行)に,校長の事前の承諾なしに性教育の実践事例を掲載したこと,② 児童の写真掲載で,本人,保護者への掲載の了解が極めて不明瞭であったことを理由に,厳重注意を受けたものであり,性教育の内容が問題とされたものではなかった。
しかし,性教育の季刊誌に実践事例を載せることは,教育の発展に必要であり,個人情報保護の観点から問題がある場合を除き,実践事例の掲載につき校長の事前承諾は必要ないし,性教育の内容が問題となっていないから,厳重注意の必要性がない。また,1審原告X7は,この点について事情聴取を受けたり調べられたりしたことはなく,実践事例の掲載については教頭に事前に報告しており,児童の写真についても,保護者の承諾を取っている。実践事例の掲載について校長の許可が必要であるとしても,教頭への報告はされているから,その手続の過誤は軽微であり,厳重注意という制裁的な取扱いをするのは過重である。したがって,この厳重注意には合理性もない。
10  当審における1審被告東京都及び同都教委の主張
(1)  教育の自由
ア 最高裁学テ判決は,普通教育の場においても,一定の範囲における教授の自由が保障されるべきことを肯定できないではないと判示し,続けて,憲法23条により,教師は,教育の自由を有し,公権力による支配,介入を受けないで自由に子供の教育内容を決定することができるとする見解も,採用することができないとする。しかし,最高裁学テ判決は,普通教育においては,児童・生徒に教授内容を批判する能力がなく,教師が児童・生徒に対し強い影響力,支配力を有し,また教師を選択する余地も大きくないことを考えれば教師に完全な教授の自由を認めることはできないとしており,普通教育の教員に教育の自由を保障していることを積極的に肯定したものと解することはできない。
かえって,最高裁学テ判決は,公権力による介入として,誤った知識や一方的な観念を子供に植え付けるような内容の教育を施すことを強制することは許されないとするが,その根拠として憲法23条を挙げていない。
もっとも,最高裁学テ判決は,公権力による教育の内容,方法についての介入につき一定の制約があるとしており,この制約を教員の教育の自由というのであれば,極めて限定的なものであるとはいえ,これを認めているといえる。しかし,教員個人の人権を保障したものなのかが,別途問題となる。
普通教育の場において,教員の教育の自由が一定の範囲で認められるとしても,その根拠を憲法26条に求めるとすれば,それは教員個人の人権としてではない。同条は,子供の適切な教育を受ける権利を保障しているものであり,これにより公権力の介入が制約され,その反面,教員の裁量権が認められても,それはあくまで子供の人権保障の反射的効果であって,教員個人の人権として保障されるというものではない。
普通教育の場における教員の教育の自由の根拠を憲法23条に求めるとしても,最高裁学テ判決が,これが保障されていると判示したとは解せないし,学説上も,同条は,普通教育の教員に教育(教授)の自由を保障したものではないとするのが多数説である。
したがって,仮に,教育の自由が侵害されても,その違憲を主張できるのは子供である。
イ また,最高裁学テ判決は,親は,子供に対する自然的関係により,子供の将来に対して最も深い関心を持ち,かつ,配慮をすべき立場にある者として,子供の教育に対する一定の支配権,すなわち子女の教育の自由を有すると認められるが,このような親の教育の自由は,主として家庭教育等学校外における教育や学校選択の自由にあらわれるものと考えられると判示し,また,最高裁平成21年12月10日第一小法廷判決・民集63巻10号2463頁は,学校教育における教育内容等の決定は,当該学校の教育理念,生徒の実情,物的設備・施設の設置状況,教師・職員の配置状況,財政事情等の各学校固有の事情のほか,学校教育に関する諸法令や学習指導要領との適合性,社会情勢等,諸般の事情に照らし,全体としての教育的効果や特定の教育内容等の実施の可能性,相当性,必要性等を総合考慮して行われるものであって,上記決定は,学校教育に関する諸法令や学習指導要領の下において,教育専門家であり当該学校の事情にも精通する学校設置者や教師の裁量に委ねられるべきものと考えられると判示している。
本件のように公立学校における学習指導要領に違反する性教育が問題となったケースでは,学校設置者たる1審被告東京都における学校管理機関としての同都教委の判断において教育が実施されるべきものである。
(2)  侮辱からの保護義務
ア 原審は,本件視察の際,1審被告都議らに同行した同都教委の職員らには,同都議らによる「不当な支配」から本件養護学校の個々の教員を保護する義務があるところ,これに違反したとして,同東京都に損害賠償責任があると判示したが,不当である。
イ 原審は,1審被告都議らの発言につき,1審原告X9及び同X10が本件視察後に作成したメモ(甲28)の記載を基に認定をする。
しかし,このメモが本件視察直後に同X9及び同X10が記憶していた1審被告都議らの発言を書き取ったものであるとしても,1審原告X9は,原審における本人尋問において,本件視察後,精神的に動揺していたものであり(原審における1審原告X9),しかも,1審原告らに有利な視点から書かれたものであるから,正確性に疑問がある。
実際は,保健室で,B校長と1審被告都議らが話をしているときに1審原告X9が口を挟んだことに対し,1審被告都議らが意見を言うというやり取りがあったにすぎない。仮に,同都議らが1審原告X9に対し,批判的な発言をしたとすれば,それは,1審原告X9の不愉快そうな態度に起因するものである。
原審が,1審被告都議らが,1審原告X9及び同X10を批判,非難したことを前提として,これが政治的な主義,信条に基づき本件養護学校の性教育に介入・干渉したもので,「不当な支配」に当たるとしたのは,事実認定を誤り,法令の適用解釈を誤ったものである。
ウ 原審は,保護義務の法的根拠として,教育行政には教育条件整備義務が含まれるところ(旧教基法10条2項),地方公共団体は,その義務の内容として,教員を「不当な支配」から保護するよう配慮すべき義務があると判示するが,誤りである。
同項は,同法の目的・趣旨を達成するための政策遂行上の努力義務を定めるものであり,具体的な法的義務を定めるものではない。
また,そのような義務があったとしても,1審被告都教委の職員が,上記のような偶発的な出来事を予期した上で,これに即座に対処して,同都議らの行為を制止し,1審原告X9及び同X10を保健室から退室させるなどの行動を取ることはできない。このような不作為が違法であるとして法的責任を負うというのは,1審被告都教委の職員の責任として過大であるといわざるを得ない。
(3)  厳重注意
ア 原審は,厳重注意が,職場における信用評価を低下させ,名誉感情を害するものであるとして,これを受けた者の法的利益を侵害するものであると判示するが,誤りである。
本件厳重注意は,誤った指導などをしている教員に対し,これを指摘して改善に向けて指導するための注意であり,法律的な効果を有するものではなく,制裁的行為でもない。書面をもって行われるものでなく,口頭の注意であるし,人事管理台帳などの記録に記載されるものでもない。人事考課を通じて今後の期末手当や昇給に直接影響を与えるものでもない。
イ 原審は,1審原告X28に対する厳重注意が,小学校低学年の児童に「からだうた」を歌わせたことが学習指導要領に違反するとしてされたと認定するが,誤りである。
同X28の厳重注意の理由は,勤務時間中の飲酒に係る事実であり,人事部長注意である。
ウ 原審は,1審原告X1ら5名につき,小学部低学年の児童に「ペニス」,「ワギナ」という性器の外来語の名称を歌詞に含む「からだうた」を歌わせることが本件学習指導要領や管理運営規則に違反するとしても,本件視察当時,そのことが本件養護学校の教員らにとって明らかだったとはいえず,かえって,当時の「性教育の手引」に記載には,本件学習指導要領の違反の問題は生じないとの誤解を生じさせる面があったと判示するが,誤りである。
本件学習指導要領のうち,知的障害者を教育する養護学校の小学部及び中学部の各教科においては,小学校学習指導要領及び中学校学習指導要領に示すものに準ずる旨の規定はない。これは,児童又は生徒の知的発達の遅滞の状態や経験等に応じて,具体的に指導内容を設定するものとするとしているからである。
小学校学習指導要領では,第4学年の体育・保健領域における学習内容として,「初経,精通などが起こったりすること。」などを指導するものとされ,第4学年の検定教科書において初めて,初経及び精通の意義を指導するために,男性及び女性の外性器及び内性器の図と各部位の名称が記載される。学習指導要領において,当該学年の学習内容として示されたものを,それより前の学年で指導することはできない。まして,知的障害者を教育する養護学校においては,より強い理由で教科内容にしてはならない。
また,本件視察当時の「性教育の手引」の小学校編には,知的障害者を教育する養護学校において,顔や手足等と並んで外性器の名称と働きを教えるとしているところ,外性器の名称と働きを教える時期については何ら明記されていないのであるから,本件学習指導要領の記載によるほかない。
さらに,本件視察当時の「性教育の手引」の小学校編には,男性器をペニス,女性器をワギナとして取り扱うことがあるが,低学年の段階では,男の子のあるいは女の子のオチンチンという名称で説明すればよいとの記載があるが,これは,障害のない小学生を対象としたものであり,発達段階の及ばない知的障害者を対象としたものではなく,小学部の低学年段階で一律に,外国語であるペニスやワギナの性器名を含んだ歌を聞かせたり歌わせたりするのは,外国語の部分のみを印象深く覚える可能性があり,日常会話の中では首や腕などの他の部位の名称と同様には使用しないのがマナーやエチケットなのに,これを理解していない児童の段階で使用することは,不適切な教育である。
本件養護学校の小学部低学年の児童に対し,一律に「からだうた」を歌わせることが,小学校第4学年で性器の仕組みを教えるとする学習指導要領に反し,不適切な性教育に当たることは,学習指導要領を見れば明らかである。
エ 原審は,1審原告X3ら3名につき,人形を使用して性交の仕組みを説明したことが学習指導要領違反であるとしても,そのことが,学習指導要領や「学校における性教育の進め方,考え方」から明らかであったとはいえないし,かえって,当時の「性教育の手引」の記載には,妊娠の仕組みや避妊の方法を教える前提として性交の仕組みを教えることは学習指導要領に違反しないとの誤解を生じさせる面があったというべきであると判示するが,誤りである。
性交という用語は,本件学習指導要領にも,平成10年に告示された小学校,中学校,高等学校の各学習指導要領にも使用されていないし,盲・聾・養護学校の学習指導要領の解説では,妊娠・出産については,高等部の保健体育や家庭科で触れることが示されており,小学校学習指導要領の理科第5学年の内容に「人は,母体内で成長して生まれること」を指導することになっているが,いずれの段階の学習指導要領にも,「妊娠の経過」や「出産の具体的な様子」を扱うことなどは示されておらず,中学校の学習指導要領には「妊娠の経過については,取り扱わないものとする。」と明記されている。しかるに,1審原告X3ら3名は,性交の意義(仕組み)ではなく,指導すべきではない性交の仕方を,知的障害のある児童・生徒に一律に指導したものであり,知的障害のある児童・生徒の中には,性交の意義(仕組み)が理解できず,外形的に性交の仕方のみを記憶に定着させる者がいることは,当然認識していたはずである。
オ 原審は,1審原告X8につき,学習指導要領には性教育という教科がなく,本件視察当時の「性教育の手引」の小学校編には,第4学年の学級活動の実践実例として「生命誕生」が取り上げられ,「赤ちゃんは,子宮から膣が通り道となって生まれてくること」を説明するとされていることも考慮すると,小学校高学年で出産の場面を扱うことが学習指導要領において禁止されていると解することは必ずしもできないなどと判示するが,誤りである。
本件学習指導要領の解説では,妊娠・出産については,高等部の保健体育や家庭科で触れることが示されているが,それ以上の記載はなく,高等学校学習指導要領においては,「妊娠出産の詳細に深入りしないこと」と明記されている。高等学校で深入りしないとされている内容を知的障害者を教育する養護学校の児童に対し取り扱ってはならないと理解するのが妥当である。
カ 1審原告X21は,小学部の児童に「からだうた」を歌わせたほか,小学部高学年の性教育の授業で性交を取り扱ったことを理由として,厳重注意をしたものであるが,同X21の行為が,本件学習指導要領に違反するものであることは前記のとおりである。
キ 原審は,本件厳重注意は,「あらかじめ,「性教育の手引」を改訂したり,教員らに対する集合研修や個別の助言,指導を行い,また,問題となっている教育実践が児童・生徒の発達段階を踏まえたものかどうかを十分調査した上で,教員らがこれを客観的に判断し得る基準を示すなどして,当該教員らにおいてその教育実践が学習指導要領に違反するものであることや発達段階を踏まえたものでないことを事前に認識し得る機会」を与えず,本件性教育が学習指導要領に違反するか,児童・生徒の発達段階を踏まえたものかどうかを十分確認せずにされたものとして,社会通念上著しく妥当性を欠き,裁量権を濫用したものとして,違法というべきであると判断している。
しかし,公務員は法令に基づき適正に公務を遂行すべきであるから,不適正な教育が行われていたことが発覚した時点で,これに指導上の措置を与えることが許されないと解すること自体,極めて不当である。また,本件厳重注意は,行うべき調査を行い,段階を経て慎重に行ったもので,指導部長から,1人1人に対して,どの点が不適切であったかを具体的に説明して諭すように行われたものであるから,違法ではない。
11  当審における1審被告都議らの主張
(1)  1審被告都議らの言動
ア 原審は,1審被告都議らが,本件視察の際,本件養護学校の保健室において,1審原告X9及び同X10の名誉感情を害する行為があったと認定するが,誤りである。
イ まず,原審は,1審原告X9及び同X10は「事前に1審被告都議らから質問を受ける可能性があることを知らされていなかった」と認定したが,明らかな事実誤認である。
ウ 本件視察の際,本件養護学校側から提出された教材を見た後,保健室内の他の教材も見せてもらいたいと思うのが普通であると思われるところ,本件視察に訪れた各人が保健室内を見るようになり,その際,1審被告Y3は,書類ケースが並んでいる所に行き,中身を見ようとすると,1審原告X9又は同X10のどちらかが,「これはすべて私物ですから見ないで下さい。」と,ぴしゃりと言った。この対応を見た1審被告Y1は,「教育委員会以下これだけの人間が視察に来ているんですよ。中にあるものが本当に私物かどうか,見ればすぐに分かります。私物であればすぐに返しますよ。例えば,国税の調査があったときにも私物だから見るなと言うんですか。おかしくないですか。それに何で私物をこんなところに置いておくのですか。」と丁寧にたしなめたにすぎない。
同Y3は,同都教委の指導主事に対し,よく調べないといけないねと言ったが,同Y3も同Y1も,その場で実際に書類を取り上げたりしたことはない。
同Y2は,1審原告X9又は同X10のうち1審被告Y3に対応した者でない者に対し,「からだのうたという歌がありますね。あえて性器の名称をあからさまに歌わせる必要があるんですか。おかしいと思いませんか。」と聞いたところ,当該1審原告が「おかしいとは思いません。」ときっぱりと述べた。これに対し,1審被告Y2が,「どうして性器の名称を言わなければならないのか。」と聞いたところ,当該1審原告は,「人間の大切な臓器だからです。」と答えた。1審被告Y2が,「じゃあ,耳の日があるよね。目の日もあるし,歯の衛生週間というのもある。耳介とか,眼瞼とか,歯だったら第1大臼歯といわなければならないの。」と聞いたところ,当該1審原告からの回答はなかった。1審被告Y2は,「おかしいじゃないか。性器だけ正式名称というのはおかしいよ。」,「あなた,どんな会合でも,人前でも歌えるんですか。」と述べた。
このような発言さえ封じられるとするなら,1審被告都議らは,1審原告X9及び同X10の非協力的な態度を甘受すべきであるということになり,逆に不当である。
エ そもそも侮辱とは,人に対する軽蔑の表示,人の名誉感情を害するに足りる事項を,公然と表示することである。1審被告Y1の発言は,私物であるという高飛車な言い方に対し,そんな言い方はないであろうと対応したにすぎない。同Y2の発言は,東京都議会での一般質問の場で質問したのと全く同じ趣旨の質問をしたにすぎない。同Y3は,1審原告X9及び同X10と全く会話しておらず,侮辱行為を行う可能性すらない。
オ 原審は,1審被告都議らの侮辱行為における共同の意思を,何ら分析しないまま,単純に認定しているが,不当である。
1審被告都議らは,本件養護学校に視察に行ったのであり,教員らと論争をしようと思って行ったわけではなく,保健室内での会話も,打合せをして行ったのでもない。保健室内では,それぞればらばらに行動しており,その間には,何らの共同の意思もない。まして,侮辱行為などということを行うつもりもなく,実際に,そのようなことは行っていない。
カ 原審は,1審被告都議らは,本件養護学校に通う児童・生徒らの保護者とは異なり,本件養護学校の教育の内容や方針について個別的,具体的な利害関係を有するわけではないとし,同都議らの発言は,保護者がしたのであれば問題がなかったことを暗に認めている。発言者の地位によって,侮辱に当たるか否かの判断が分かれる結果となるが,あり得ないことである。
キ 原審は,1審被告都議らの発言が,1審原告X9及び同X10が自由に反論をすることが困難な状況の下で行われたと認定しているが,同X9は1審被告Y2に「性器と呼べばいいんですか」と逆質問をしたように,事実誤認である。また,原審は,1審原告X9及び同X10は,1審被告都議らに対する反論を封じられていたと認定するが,そのような事実はなかったし,仮に,このような業務命令が出されていたとしても,これは侮辱の成立とは関係ないし,そのようなことは同都議らには知らされていなかった。また,反論の機会が保障されていたのであれば侮辱に当たらないということ自体,考えられないことである。
(2)  「不当な支配」
ア 原審は,1審被告都議らの言動につき,同都議らの損害賠償責任の有無を判断する際には一切問題にしなかった教育に対する「不当な支配」について,同東京都の責任を認める段になって,初めて同都議らの「不当な支配」を取り上げたものであり,論理が通らないし,同都議らの本件視察の際の言動は,「不当な支配」には当たらない。
イ 旧教基法10条1項の定める「不当な支配」とは,国及び地方公共団体という,教育について公の権力を行使する権限を有する者が対象となっているものである。
しかるに,1審被告都議らは,東京都議会の一員であって,行政を担当するものではない。同都議らに,1審原告X9及び同X10に対する指揮命令権がないことは,全く自明な事実である。
ウ 仮に,教育上の不祥事があったことに端を発した視察が行われた際に,対応した教員が全てを包み隠さず報告し,視察の際に現場で再発防止策が話し合われた場合には,これについて「不当な支配」の有無を論じる余地はないのに,逆に,対応した教員が保身のためのでたらめな報告に終始し,再発防止策など必要がないと居直った場合には,正論をもってたしなめる行為も,全て「不当な支配」の名の下に,一切の言論が封殺されてしまう結果になる。
エ 本件のように,同じ発言であっても,保護者からの発言であれば侮辱には当たらないが,都議会議員の発言であれば侮辱に当たり,「不当な支配」に当たるというのは,理解不能な二重基準である。本件性教育については,保護者の一部から批判が加えられており,そのような見地から行われる視察,質問等が,対応した非協力的な教員の態度によっては,一転して侮辱と認定され,ひいては「不当な支配」に当たるとされては,議員の調査活動を不当に制限するものとなる。
第3  当裁判所の判断
1  当裁判所も,1審原告X9及び同X10の1審被告都議ら及び同東京都に対する請求は,原審が認容した限度で理由があり,その余は理由がなく,同1審原告らの1審被告産経新聞社に対する請求は理由がなく,1審原告X1,同X14,同X17,同X22,同X3,同X4,同X13,同X21,同X8及び同X28の1審被告東京都対する請求は,原審が認容した限度で理由があり,その余は理由がなく,同1審原告らの1審被告都議ら及び同産経新聞社に対する請求は理由がなく,その余の1審原告らの1審被告都教委を除く1審被告らに対する請求は理由がなく,1審原告らの1審被告都教委に対する訴えは不適法であると判断する。その理由は,次のとおり改め,後記2及び3のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の第3に記載のとおりであるから,これを引用する。
(1)  原判決63頁14行目の「a養護園」を「a福祉園」と改める。
(2)  同66頁14行目の次に,行を改めて,次のとおり加え,同16行目の「139」の次に「,217」を加える。
「さらに,本件養護学校は,1審被告都教委の「心身障害児理解推進研修事業」において,「1人1人の障害の実態に応じた実践的な指導の実際」という研修会主題で,平成13年度及び平成14年度に予算の配布を受け,特に同年度は,「多摩地域における適正就学促進のための研修拠点として調整の上,配付する。」とされた。」
(3)  同71頁10行目の「本件視察当日」から同14行目末尾までを「本件視察当日,B校長に対し取材の申し入れをしたところ,同校長がこれを許可したので,午後1時頃,1人で本件養護学校に赴いた。」と改め,同72頁13行目の「乙D2」の次に「,11」を加える。
(4)  同73頁10行目の「,事前に」から同11行目の「同原告らは」までを削り,同23行目の「第1第臼歯」を「第1大臼歯」と改める。
(5)  同74頁2行目の「同原告ら」を「1審原告X9」と改める。
(6)  同9行目の次に行を改めて「1審被告Y3は,指導主事に対し,「よく調べないといけないね。」と述べた。」を加える。
(7)  同10行目の「及び原告X10」を削る。
(8)  同22行目の「乙C2」の次に「,3」を加え,同23行目の「L」を「Y2」と改め,同行目の「被告Y1」の次に「,当審における1審被告Y3」を加える。
(9)  同76頁5行目の「甲3の①,②,3の①」を「甲3の1の①,②」と改める。
(10)  同81頁10行目の「記録上うかがわれない。」を「記録上うかがわれず,調整休の不正取得及び校内での他の教員の飲酒の看過等の別の理由があったものと認められる。」と改め,同18行目の「③」の次に「,⑳」を加える。る。
(11)  同83頁23行目の次に,行を改めて,次のように加える。
「本件学習指導要領の小学部・中学部に関する部分の第1章には,また,「知的障害者を教育する養護学校においては,各教科(小学部においては各教科の各段階)に示す内容を基に,児童又は生徒の知的発達の遅滞の状態や経験等に応じて,具体的に指導内容を設定するものとする。」とされている。」
(12)  同84頁4行目の次に,行を改めて,次のように加える。
「また,第2章では,小学部のうち「盲学校,聾学校及び肢体不自由者又は病弱者を教育する養護学校」については,「各教科の目標,各学年の目標及び内容並びに指導計画の作成と各学年にわたる内容の取扱いについては,小学校学習指導要領第2章に示すものに準ずるものとする。」とされており,中学部及び高等部についても同様の記載があるが,「知的障害者を教育する養護学校」については,いずれの部についても,そのような記載はない。」
(13)  同101頁24行目の「非難し」の次に「,1審被告Y2において」を,同25行目の「などと」の次に「発言し,同Y1において,国税の調査を引き合いに出して,本件性教育を行う者を脱税を行う者に見立て,同Y3において,同Y1の発言を受けて,指導主事に更なる調査を進言するなど」を加える。
(14)  同102頁23行目の「侮辱に当たる」の次に「とともに,後述のとおり,同1審原告らに対する「不当な支配」にも当たる」を加える。
(15)  同103頁12~13行目の「被告都議らの共通の認識を表明するために共同の意思に基づいてされた」を「,その場で意思を通じたか否かはともかく,少なくとも客観的に関連し共同して侮辱を行った」と改める。
(16)  同113頁22行目の「乙の2」を「乙B3の2」と改める。
(17)  同122頁4行目の「乙17」を「乙B17」と改める。
(18)  同130頁1行目の「原告X9及び原告X9」を「1審原告X9及び同X10」と改め,同行目の「侮辱」の次に「(「不当な支配」にも当たる。)」を加える。
2  当裁判所の総論的判断
当裁判所の総論的判断は,引用に係る原判決が判示しているとおりであるが,当審における当事者の主張に鑑み,重複をいとわず,理由を追加する。
(1)  教育に関する権能の帰属
ア 我が国の法制上,子供の教育の内容を決定する権能が誰に帰属するとされているかについては,① 法律は当然に公教育における教育の内容及び方法について包括的にこれを定めることができ,また,教育行政機関も,法律の授権に基づく限り,広くこれらの事項について決定権限を有するという見解と,② 子供の教育の内容及び方法については,国は原則として介入権能を持たず,教育は,その実施に当たる教員が,その教育専門家としての立場から,その内容及び方法を決定,遂行すべきものであるという見解は,いずれも,極端かつ一方的であり,全面的に採用することはできず,以下のように考えるべきである。
イ 子供の教育は,教育を施す者の支配的権能ではなく,何よりもまず,子供の学習をする権利に対応し,その充足を図り得る立場にある者の責務に属するものととらえられる。
一般に社会公共的な問題について国民全体の意思を組織的に決定,実現すべき立場にある「国」は,国政の一部として広く適切な教育政策を樹立,実施すべく,また,し得る者として,必要かつ相当と認められる範囲において,教育内容についてもこれを決定する権能を有する。
「国の教育行政機関」が法律の授権に基づいて義務教育に属する普通教育の内容及び方法について遵守すべき基準を設定する場合には,教員の創意工夫の尊重等のほか,教育に関する地方自治の原則をも考慮し,教育における機会均等の確保と全国的な一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的なそれにとどめられるべきである。
学習指導要領についていえば,文部大臣(文部科学大臣)は,普通教育に属する学校における教育の内容及び方法につき,教育の機会均等の確保等の目的のために必要かつ合理的な基準を設定することができる。本件当時(昭和36年)の中学校学習指導要領の内容を通覧するのに,おおむね,中学校において地域差,学校差を超えて全国的に共通なものとして教授されることが必要な最小限度の基準と考えても必ずしも不合理とはいえない事項が,その根幹を成していると認められ,教員による創造的かつ弾力的な教育の余地や,地方ごとの特殊性を反映した個別化の余地が十分に残されており,全体としてはなお全国的な大綱的基準としての性格を持つものと認められ,必要かつ合理的な基準の設定として是認することができる。
学校等の教育に関する施設の設置,管理及びその他教育に関する事務は,普通地方公共団体の事務とされ(平成11年法律第87号による改正前の地方自治法2条3項5号),公立学校における教育に関する権限は,当該地方公共団体の教育委員会に属するとされる(地教行法23条等)等,教育に関する地方自治の原則が採用されており,同原則からすれば,教育委員会の有する教育に関する固有の権限に対する国の行政機関である文部大臣(文部科学大臣)の介入,監督の権能に一定の制約が存する。
「教育委員会」は,公立学校を所管する行政機関として,その管理権に基づき,学校の教育課程の編成について基準を設定し,一般的な指示を与え,指導,助言を行うとともに,特に必要な場合には具体的な命令を発することもできる。
「教員」は,教授の自由を有し,公権力による支配,介入を受けないで自由に子供の教育内容を決定することができるとする見解も,採用することができない。普通教育においては,児童生徒に教授内容を批判する能力がなく,教員が児童生徒に対して強い影響力,支配力を有することを考え,また,普通教育においては,子供の側に学校や教員を選択する余地が乏しく,教育の機会均等を図る上からも全国的に一定の水準を確保すべき強い要請があること等に思いをいたすときは,普通教育における教員に完全な教授の自由を認めることは,到底許されない。教員の教授の自由は,限られた一定の範囲においてこれを肯定するのが相当であるけれども,それ以外の領域においては,国が上記の権能を有するものと解さざるを得ない。しかし,子供の教育が,教員と子供との間の直接の人格的接触を通じ,子供の個性に応じて弾力的に行われなければならず,そこに教員の自由な創意と工夫の余地が要請される。
「親」は,子供に対する自然的関係により,子供の将来に対して最も深い関心を持ち,かつ,配慮すべき立場にある者として,子供の教育に対する一定の支配権,すなわち子女の教育の自由を有すると認められるが,このような親の教育の自由は,主として家庭教育等学校外における教育や学校選択の自由に表れるものと考えられる。
以上は,最高裁学テ判決の判示するところであり(同判決で「教師」とされているところは,「教員」と置き換えた。),当裁判所も同様に考えるものである。
ウ これを要するに,学校における子供の教育に関しては,国及びその教育行政機関である文部科学大臣,地方公共団体の教育委員会,教員が,以上のようなそれぞれの立場において権能ないし権限を分有しているというべきである。
国は,教育関係の法律,政令,省令等を制定するほか,全国的に共通なものとして必要かつ合理的な最小限度の大綱的基準を設定することができ,そのような大綱的基準として,学校教育法,同法施行規則に基づく文部大臣(文部科学大臣)の告示をもって学習指導要領が定められており,地方公共団体及び教員は,これらに従わなければならない。
教育委員会は,国の定めた法令及び大綱的基準(学習指導要領)の枠の中において,地教行法33条1項前段により,教育課程,教材の取扱い等の基本的事項について,教育委員会規則を定めることができるほか,所管の公立学校及びその教員に対し,大綱的基準にとどまらず,より細目にわたる基準を設定し,一般的な指示を与え,指導,助言を行うとともに,特に必要な場合には具体的な命令を発することができるが,教員の創意工夫の余地を奪うような細目にまでわたる指示命令等を行うことまでは許されない。
そして,各公立学校の教員は,これらの枠の中において,それぞれの創意工夫により具体的な教育を実践することができるとともに,国の設定する大綱的基準,教育委員会の設定するより細目的な基準等に定めがない事項については,教育の内容及び方法を決定することができるというべきである。
なお,1審原告らは,教育委員会が,首長の任命した委員により構成されるもので,党派的利害に従って意思決定をすることがあること,専門的知識を有するとはいえないことから,その権限は国の教育行政機関より広いとはいえないと主張する。しかし,首長の任命に係ることが直ちに党派的利害に従う意思決定をすることを意味するものではなく,仮にそのような意思決定をしたときには,それが個別的に「不当な支配」に当たるかどうかが問題となるのであり,また,専門性については,教育委員会の委員は「教育,学術及び文化に関し識見を有するもの」として任命することとされている(地教行法4条1項)から,その権限を制限的に解すべき理由にならない。
また,1審原告らは,教育委員会のほか,校長,教頭等の管理職も,教員の教育の自由を侵害し得ると主張する。確かに,その余地がないとはいえないものの,校長は「校務をつかさどり,所属職員を監督する」,教頭は「校長を助け,校務を整理」するという権限を有する(学校教育法37条4項,7項,49条,62条,82条)から,その権限の範囲内で,当該学校において行われる具体的教育実践につき,各教員に指導,指示等をすることは,不当とはいえない。とりわけ,個々の教員の独自の教育実践の内容,方法にまで深く介入することはともかく,全校的に統一して行う教育の内容や方法に関して,校長や教頭がその権限を行使して年間指導計画の取りまとめ等を行うことは,正当な権限の行使というべきであり,原則として,これを違法ということはできないものというのが相当である。
(2)  旧教基法10条1項の「不当な支配」
旧教基法10条1項は,「不当な支配」の主体を限定していないから,上記のような国や地方公共団体の教育行政機関の行為も,法律の規定が特定的に命じていることを執行する場合を除き,「不当な支配」とならないように配慮しなければならない拘束を受けているのであり,その意味において,同項は法令に基づく教育行政機関の行為にも適用がある。しかし,同項が排斥しているのは,教育が国民の信託にこたえて自主的に行われることを歪めるような「不当な支配」であって,そのような支配と認められないものまで排斥されているわけではない。したがって,教育に対する行政権力の不当,不要の介入は排除されるべきであるとしても,許容される目的のために必要かつ合理的と認められる介入は,たとえ教育の内容及び方法に関するものであっても,必ずしも同条の禁止するところではない。
以上も,最高裁学テ判決の説くところである。
(3)  学習指導要領の性質及び効力
学習指導要領は,学校教育法及び同法施行規則に基づき文部大臣(文部科学大臣)の告示をもって定められたものであって,法規としての性質を有すると解すべきであり,教育委員会も教員も,これに従う義務があると解される。しかし,それには次のような注釈が必要である。
まず,学習指導要領は,教育の内容及び方法につき地域差,学校差を超えて全国的に共通なものとして教授されることが必要な最小限度の基準としての大綱を定めるものである(最高裁学テ判決参照)から,その大綱的基準の枠の中において具体的にどのような教育を行うかという細目までは,定められておらず,また,最小限度の基準である以上,定められた内容及び方法を超える教育をすることは,明確に禁じられていない限り,許容されるということができる(このことは,学習指導要領自体に繰り返し記載されているほか,本件学習指導要領の解説(乙B3の3)に「学習指導要領の基準性」として明記されている。当審における証人Mは,学習指導要領の基準性は,算数,国語等には当てはまるが,性教育には当てはまらないと証言するが,そのように解すべき根拠は見いだせない。なお,上記解説は,「養護学校の教育の目的や目標の基本は,法令や小学部・中学部学習指導要領,高等部学習指導要領に定められているが,地域や児童生徒の実態等は一様ではなく,各学校が取り組むべき具体的な教育課題は,学校ごとに様々である。また,学校を取り巻く状況も,社会の急激な変化やそれに伴う児童生徒の生活や意識,地域社会の実態,保護者の期待など様々な局面において変化している。各学校においては,これらを十分に踏まえ,それぞれの学校としての教育理念や基本的姿勢を明確にすることが大切である。」としている。)。
次に,学習指導要領に記述されている内容は,膨大であり,記述の仕方にも様々なものがあるところ,その一言一句が拘束力すなわち法規としての効力を有するということは困難である。法規としての効力を有するというためには,その性質上当然に,基準として遵守を命じる内容が客観的に確定され得るものであることが要請されるといわなければならない。したがって,学習指導要領の記述のうち,理念や方向性のみが示されていると見られる部分,抽象的ないし多義的で様々な異なる解釈や多様な実践がいずれも成り立ち得るような部分,指導の例を挙げるにとどまる部分等は,法規たり得ないか,具体的にどのような内容又は方法の教育とするかについて,その大枠を逸脱しない限り,教育を実践する者の広い裁量に委ねられており,少なくとも,学習指導要領に違反したと断ずるためには,そのような広い裁量の範囲をも逸脱していることが認められなければならないということができる。
(4)  学習指導要領と性教育
ア 子供の教育の結果に利害と関心を持つ関係者が,それぞれその教育の内容及び方法につき深甚な関心を抱き,それぞれの立場からその決定,実施に対する支配権ないしは発言権を主張するのは,極めて自然な成り行きということができ,何が子供の利益であり,また,そのために何が必要であるかについては,意見の対立が当然に生じ得るものであって,そのために教育内容の決定につき矛盾,対立する主張の衝突が起こるのを免れることができない(最高裁学テ判決参照)。
性教育,とりわけ知的障害を有する児童・生徒に対するそれは,本件における当事者の主張や提出された膨大な証拠に鑑みても,このように意見が分かれるものの典型例であると考えられ,どのような内容,方法の教育をどの時期にし,あるいはしないのが適切であり,児童・生徒の能力や発達段階にふさわしいかについては,様々な異なる意見が存在し,あるものが正しく他のものが誤りであると断定することが極めて難しい問題であると考えられる。それゆえにこそ,学習指導要領の定める基準が明確を欠く場合には,対立する考え方に基づく様々な教育実践の在り方がいずれも学習指導要領に反するとはいえないということが起こり得るということができる。
イ ところが,学習指導要領は,「性教育」という項目自体を欠いており,昭和45年の改訂前は,中学校の保健体育の内容として,「性教育を考慮して指導する」などという記載があったものの,同改訂後は「性教育」という文言もなくなり(乙B7の1),性に関係する事項についてどのような教育を行うかについては,様々な箇所に分散して少しずつ記述されているという状況にある。その後は,文部省ないし文部科学省は,性教育を学習指導要領に盛り込むのではなく,以下のように,別に資料等を作成して,学校における性教育の在り方を示して参考に供する方法を採ってきた。
ウ 昭和61年3月の「生徒指導における性に関する指導―中学校・高等学校編―」(甲118)は,「性教育」という言葉を用いず,「性に関する指導」という言い方を用い,「まえがき」において,「学校における性に関する指導の重要性が強調されています。学校においては,生徒の発達段階に応じ,学習指導要領に基づいて,保健体育,道徳,特別活動などを中心に学校の教育活動全体を通じて,性に関する指導が行われています。しかし,現在・・・地域や学校の実態に応じて,生徒指導における性に関する指導を体系的かつ組織的に展開することが求められています。」と,本文中において,「学校は,教科を中心にその全教育活動を通じて性に関する指導や援助を行っている。しかし,・・・家庭や社会の現状を踏まえて,学校における性に関する指導を一層充実させる必要がある。」,「性に関する指導・・・の改善充実を図るためには,その目標や内容を明らかにするとともに,各教科,道徳,特別活動及び教育課程外の活動における性に関する指導を有機的に関連付け,その全体構想の下に実践することが必要である。」,「学習指導要領に示された教科や道徳の内容において性に関して取り扱われている事項を基礎として,それぞれの学校又は学年における性に関する指導の内容を構成し,さらに必要がある場合には,生徒の負担過重とならないこと及び当該教科等の関連を十分考慮して,当該教科等における性に関する事項を発展的に取り扱うことも考えられる。」などと記載していた。
エ 平成11年3月の「学校における性教育の考え方,進め方」(甲93)は,「性教育」という言葉を用いて,「まえがき」において,「学校における性教育の重要性が強調されています。学校における性教育は,児童生徒等の発達段階に応じ,学習指導要領に基づいて,体育科,保健体育科,道徳,特別活動などを中心に学校の教育活動全体を通じて行われています。しかし,現在・・・学校,家庭,地域が実態に応じて,性教育を組織的かつ体系的に展開することが求められています。」と,本文中において,「学校は,教科を中心に全教育活動を通じて,性教育を行っている。しかし,・・・家庭や社会の現状を踏まえ,学校は様々な学問分野を基盤として幅広い観点から,性教育を一層充実させる必要がある。」,「学校における性教育の内容は,その目標を実現するために必要な事項を・・・選択し,学習内容として構成する必要がある。この場合,各教科や道徳,特別活動等においては,それぞれのねらいを実現するために必要とする内容や教材の中に,性に関する事項も取り上げられているため,性教育の内容の選択や構成に当たっては,学習指導要領に示されている各教科,道徳,特別活動の性に関する内容についても照合する必要がある。」,「性教育の効果を高めるためには,各学校は性教育の目標を達成するために必要な内容を選択する必要がある。このため,学習指導要領に示されている各教科,道徳及び特別活動における性に係る内容との関連を図った上で各学校の教育課程に位置付け,計画的,組織的に進められるようにすることが必要である。」,「学校における性教育は,常に児童生徒等の実態等を的確に把握し,社会の変化などにも十分対応しつつ,特定の教科や領域としてではなく,学校教育活動全体を通じて効果的に進められるようにすることが大切である。」,「各教科,道徳,特別活動の内容には体の発育・発達や性に関する事柄が含まれているが,それらは,必ずしも性教育の目標を実現するために選択されたものとはいえない。そのため,学校における性教育を計画的,体系的に実施するためには,各学校の性教育の目標を実現するために必要な内容を選択し,それらの指導学年や時期なども検討した上で,各教科,道徳,特別活動等の内容と関連付け,学校の教育課程に位置付けることが必要となる。」,「各学校における性教育の内容には,学習指導要領に示される各教科,道徳における内容と密接に関連するもの,児童生徒等の発育・発達の状況や地域の実態などに応じて指導する必要のあるものがある。」などと記載している。
オ 上記の2つの資料を比較すると,後者の方が,性教育を行うには,学習指導要領の各教科等に分散して示されている内容だけでは不十分であり,その内容を照合し,関連を図りつつも,別途体系化し,実情を踏まえた性教育を構築し実践することが必要であるという考え方が強くなっていると理解される。ちなみに,平成元年3月刊行の1審被告都教委作成に係る「性教育の手引(第4集)総合編」には,明確に「指導要領では,性教育は教育課程に独自に位置付けられていない。・・・したがって,教科・道徳の授業においての性教育では十分ではない。」と記載されている(甲127の4)。平成7年3月~平成9年3月刊行の1審被告都教委作成に係る「性教育の手引」の「基礎編」においても,「学校が性教育を行うには,それを教育課程に位置付けることが必要です。・・・教育課程の基準は学習指導要領によると定められています。ところが学習指導要領には,教科,道徳,特別活動の内容として,性に関する事項は示されてはいますが「性教育」ということについての記述はありません。」,「性教育の内容の教育課程への位置付けは,学習指導要領に教科・道徳の内容として示された性に関する内容を性教育の目標やねらいに照らして発展的に取り扱うように計画したり,学校が選択・組織した性教育の内容を学級活動やホーム・ルームの内容として扱うこと・・・も考えられます。」と記載されている(乙B7の1~4)。
また,「学校における性教育の考え方,進め方」は,「昭和40年代の後半から「性教育」という言葉が一般に用いられるようになったが,セクシュアリティという概念が浸透せず,人によってその解釈が異なり,男女の身体的,生理的な事項やそれに関係する教育や性の問題行動の防止を目的とした狭い概念で性教育をとらえている者が少なくなかった。このため,文部省は,「生徒指導における性に関する指導―中学校・高等学校編―」を作成し・・・た。」と記載している。この記載からすると,学習指導要領から「性教育」という文言が削除されたのは,「性教育」という言葉が一般に狭い意味で用いられ始めた時期に当たるから,誤った理解がされることを避ける趣旨があったと推測されるところである。そして,その後は,性に関する体系的な教育の必要性が高まってきていることを認識しつつも,文部省(文部科学省)は,これを学習指導要領において独立の教育課程として位置付け充実強化させていく方法は採らず(これを採るためには,省令である学校教育法施行規則73条の8を改正する必要がある。),指導書等の資料を提供して不足を補う方法が採られたものと理解することができる。
そして,学習指導要領と性教育の関係については,次のような指摘がある。
「学習指導要領・・・には,性教育について正面からはふれられていない。もちろん,小・中・高等学校における各教科や道徳の指導の内容として,人間の性に関する内容が取りあげられてはいるが,これらの内容は,それぞれの教科や道徳のねらいを達成するために選択されたものであり,とくに性教育を意図したわけではない。・・・このため,学習指導要領等に示された性に関する内容は,内容相互の関連性や系統性に乏しく,また,これらの内容を,性教育という立場から指導することは,かえって教科などの目標を歪めることにもなりかねない。したがって,各学校・・・が性教育を行うためには,まず学校教育の目的や児童・生徒の実態,家庭や社会の要求などにもとづいてその目標を明確にし,学習指導要領に示された各教科・道徳の性に関する内容を考慮に入れて,性教育としての指導内容を選択,組織して,教育課程に位置づけなければならない。」(財団法人日本性教育協会編「改訂性教育指導要項解説書」(甲121))
上記解説書は,昭和59年7月発行のものであるが,学習指導要領と性教育の関係については,平成15年7月当時まで基本的な変更があったとはみられないのであり,また,同解説書には,文部省初等中学教育局視学官の「各学校が十分参考にされ,活用されることを期待したい。」との序が付されている。上記のような認識は,「学校における性教育の考え方,進め方」の上記記述を更に強調したものであると認められる。
カ このように,社会的には各教科の教育にとどまらない体系化された性教育が求められるようになってきているが,学習指導要領は,性に関する教育を「性教育」としては取り上げていないものと解される。さらには,上記の指導書等の資料を見ても,どのような内容や方法の性教育を行うかということについては,甚だ概括的,抽象的な記述しかなく,国の教育行政機関としては,実践において具体化されることを予定していると解することができる。
以上のようなことにも鑑みると,学習指導要領における性に関する定めは,部分的ないし断片的かつ非体系的であり,学習指導要領が「性教育」に関してどこまでのことを定めているのかいないのかということの理解に関しても,様々なニュアンスの違いがあり,そのこと自体が多義的であるということができる。いずれも学習指導要領に準拠すると考えられたはずの1審被告都教委作成に係る「性教育の手引」の内容が,本件視察の前後において大きく変更され(改訂というよりは,新規に作成されたという方がよいほどの大きな変更である。),変更前の手引の内容(例えば,「ペニス」という言葉の使用,性交,コンドームの装着等についての指導が記載されていた。)は,学習指導要領や管理運営規則に違反していたと当の1審被告都教委によって考えられている(そのことは,改訂後の手引の内容から明らかであるし,原審における証人Hは,「ペニス」という言葉の使用が管理運営規則に違反していたと証言した。)ことが,図らずも学習指導要領の多様な解釈が可能であることを示している。
キ 本件性教育が法規として従わなければならない学習指導要領は,本件学習指導要領である。
本件学習指導要領は,「盲学校,聾学校及び肢体不自由者又は病弱者を教育する養護学校」の各教科の内容等については,小学校,中学校又は高等学校学習指導要領に準ずるものとしているが,「知的障害者を教育する養護学校」については,その旨を定めていない。したがって,本件学習指導要領の定めるところが基準となるのであり,小学校,中学校又は高等学校学習指導要領は,参考とする程度にとどまるものである。また,本件学習指導要領が各教科に示す内容についても,示されていない内容を加えて指導することができるとされている(学習指導要領の基準性を強調したものと解される。)ほか,これを基に,「児童又は生徒の知的発達の遅滞の状態や経験等に応じて,具体的に指導内容を設定する」ものとされているから,各学校の児童・生徒の状態や経験に応じた教育現場の創意工夫に委ねる度合いが大きいと解することができる。
(5)  本件性教育と学習指導要領
ア 以上のようなことを念頭に置きながら,本件性教育が本件学習指導要領に適合するか違反するかについて,検討すると,引用に係る原判決の判示したとおりであるが,何点かについて付加的に検討する。
イ 小学校低学年に性器の名称を「ペニス」,「ワギナ」と教えることにつき,本件学習指導要領には特段の記載がないところ,平成15年7月当時の「性教育の手引」小学校編(乙B7の2)の第1学年の項目では,幼児語である「オチンチンという名称で説明すればよい」と記載されていたが,一方で男の子と女の子の性器の形の違い等を教えることになっているから,名称も違うものとして教えることが否定されているとは解されない(むしろ,上記記載に続けて,「発言の中から,ペニスという言葉が出た場合には,それが男の子のオチンチンを指す言葉であることを説明すればよい。」と,肯定的な記載がされている。)。また,外来語を用いることが適切でないということについては,本件学習指導要領は,児童・生徒の言語活動の適正化を定めており,その解説(乙B3の3)は,「正しく美しい国語」を用いるよう指導するとしているが,外来語を排斥しているとは解されない。上記「性教育の手引」自体が,第1学年の項目で,「男性器をペニス,女性器をワギナとして取り扱うことがある」と述べ,第5学年の項目で,「中学年の段階からは「ペニス」「ちつ」という用語が使われます」としていたから,当時の1審被告都教委が少なくとも「ペニス」という外来語が学習指導要領に違反しないと考えていたことが明らかであるし,小学校第3,第4学年の保健の検定教科書に「ペニス」,「ワギナ」と表記しているものが少なくないことからは,検定をした文部科学大臣がこれを学習指導要領に反しないと判断したということになる。したがって,用語が不適切であるということにも,根拠が乏しい。
ウ 平成15年7月当時の「性教育の手引」中学校編(乙B7の3)には,第2学年において「性交・受精について考える。」,「動物の中の人間の場合のみ,性交と呼ぶ。」などとして,「ちつ」に「ペニス」が挿入されて精子がペニスから出て子宮を経て卵に受精する図が描かれているところ,1審被告都教委は,「性交の意義(仕組み)」を教えるのはよいが「性交の仕方」を教えるのは学習指導要領に違反するという。しかし,性交は男性器を女性器の中に挿入して射精することを意味すると解されるのであり,そのことを教えることが,性交の意義(仕組み)を教えることにとどまるのか,性交の仕方を教えることになるのかを区別することは,極めて困難であるし,それを視覚的に取り扱う場合には,なおさら難しいというほかはない。
エ また,平成15年7月当時の「性教育の手引」高等学校編(乙B7の4)には,避妊の方法としてコンドームの使用を挙げた上,「セックスするときは,コンドームをつけるようにするよ。」などという生徒の会話例が記載され,エイズの予防に関して,「性交をする場合はコンドームを正しく着用,処理することが必要であることを理解させる。」と記載されているところ,1審被告都教委は,コンドームの使用について教えるのはよいが,コンドームの装着方法を指導することは学習指導要領に違反すると主張する。しかし,知的障害を有する生徒に「避妊の方法」を教えるに際し,具体的にどのような指導をすれば「コンドームの使用」についての正しい理解を得させることができるのかにつき説明はない。また,コンドームの装着方法を示さずに「コンドームを正しく着用し,処理する」ことを指導することも,困難というほかはない。
オ 本件の中心的な争点の1つとして,「発達段階に応じた性教育」ということを挙げることができる。この表現は,当事者の主張だけでなく,学習指導要領や性教育の手引等にも多用されているが,その具体的内容を示した記述は,いずれにも見いだせず,極めて多義的であるというほかはない。
知的障害を有する児童・生徒に対して,健常な児童・生徒に対する教育との比較において,性に関する知識をいつどのように教えるかということに関して,1審被告らは,おおむね,より遅い時期に,より限定された情報を,より抽象的に教えるのが,「発達段階に応じた」の意味であると考えているようである。「まして,知的障害者を教育する養護学校においては,より強い理由で教科内容にしてはならない。」などという主張に,それが表れている。
しかし,知的障害を有する児童・生徒は,肉体的には健常な児童・生徒と変わらないのに,理解力,判断力,想像力,表現力,適応力等が十分備わっていないがゆえに,また,性の被害者あるいは加害者になりやすいことから,むしろ,より早期に,より平易に,より具体的(視覚的)に,より明瞭に,より端的に,より誇張して,繰り返し教えるということなどが「発達段階に応じた」教育であるという考え方も,十分に成り立ち得るものと考えられ,これが明確に誤りであるというべき根拠は,学習指導要領等の中には見いだせないし,その他の証拠によっても,そのように断定することはできない。
なお,平成14年3月刊行の1審被告都教委作成に係る「新たな性教育プログラムの開発」(甲95)は,性教育に関する今日的な課題として,性行動が早期化・低年齢化していることや児童・生徒の意識の変化,性に関する様々な課題に適切に対処できていない状況等を指摘し,学校における性教育が不十分であり,これを一層充実させていく必要がある旨を述べている。このような基本認識に立つときは,健常な児童・生徒に対する性教育も,従来に比べてより早期に,より具体的に指導することなどが要請されていると考えることも可能である。
カ 引用に係る原判決の認定するとおり,本件性教育は,本件養護学校において,平成9年7月に起きた生徒同士の性的交渉を始めとする性に関する問題行動が多発したことから,知的障害を持つ児童・生徒にふさわしい性教育として,校内性教育連絡会(後に性教育検討委員会)を設けて,全校的な取り組みを行い,校長を含む教員全体で,a福祉園や保護者とも意見交換をしつつ,試行錯誤しながら創意工夫し実践されてきたものである。
このように,個々の教員が個人の考えに基づいて独自に行うのではなく,学校全体として,校長を含む教員全員が共通の理解の下に,生徒の実情を踏まえて,保護者等とも連携をしながら,指導内容を検討して,組織的,計画的に性教育に取り組むことは,「学校における性教育の考え方,進め方」,「性教育の手引」等が奨励するところであり,これに適合した望ましい取り組み方であったということができる。
その内容においても,本件性教育が,1審被告都教委の「心身障害児理解推進研修事業」として東京都知的障害養護学校校長会及び同教頭会が主宰する専門研修において,他校の校長を含む教員らに紹介されたにもかかわらず,特段の問題点の指摘もなかった(むしろ,終了後の校長会において,参考になったなどという感想が出された(甲111の1)。)という事実も,これが本件学習指導要領に違反しないと考えている教育関係者が多数いたことを示している。
知的障害を有する児童・生徒に対する性教育として,何が優れているのかは,教育に関する専門的知識経験を踏まえた議論によって決すべきことであり,この裁判においては,学習指導要領に違反する違法なものであるかどうかという限度で判断すべきものであるが,以上によれば,本件性教育が本件学習指導要領に違反すると断ずることはできないものというほかはない。
(6)  本件学習指導要領の下における性教育の在り方
本件学習指導要領の定めが,以上に見てきたとおり多義的であるということに鑑みると,本件性教育は,本件学習指導要領に違反しない1つの在り方であるというべきであるが,それが唯一の在り方でないこともまた,いうまでもない。性教育の内容及び方法については,今日なお様々な考え方の違いや対立があり,本件において1審被告都教委が主張しているような性教育の在り方も,本件学習指導要領に違反しないものとして成り立ち得るものであることが明らかである。教育が子供の学習をする権利の充足を図るために行われるべきものであることを考慮しても,どのような内容,方法による学校教育が子供の学習をする権利にかなうかを決定するのは,教員や親の固有の権利ではなく,国,教育委員会及び教員がそれぞれの責務と権能に応じて検討すべきことであるから,1審原告らの考える在るべき性教育と1審被告都教委の考える在るべき性教育は,法令や学習指導要領に違反していない限り,いずれも直ちに違法,不当なものということはできない。
そして,学習指導要領の枠の中でどのような学校教育を行うかについては,教育委員会は,「不当な支配」に当たらない限り,また,教育現場の創意工夫の余地を奪うような細目にまで踏み込まない限り,大綱的基準にとどまらず,より細目にわたる基準を設定し,一般的な指示を与え,指導,助言を行うとともに,特に必要な場合には具体的な命令を発することができると解される。したがって,教育委員会が性教育の在るべき内容及び方法について調査検討し,その見解に基づいて基準を示し,公立学校の指導などをすることは,それが必要かつ合理的なものとして「不当な支配」に当たらないものである限り,許されるというべきである。そして,そのことによって,各学校ないし各教員が,自らの思うとおりには性教育を行うことができなくなったとしても,そのことをもって直ちに「不当な支配」に当たるということはできないものといわなければならない。
また,教育委員会は,毎年,その権限に属する事務の管理執行の状況について点検及び評価を行い,その結果に関する報告書を作成し,これを当該地方公共団体の議会に提出することとされており(地教行法27条1項),議会は,教育委員会の報告を請求して,当該事務の管理等を検査することができるものとされている(地方自治法98条1項)。このように,教育委員会の権限に属する事務の管理執行についても,議会のチェックが及ぶものとされており,教育委員会の権限事項である学校その他の教育機関の管理,学校の教育課程,学習指導,生徒指導,教科書その他教材の取扱い等に関することの管理執行について,議会において議論がされることは,法律の予定するところである。したがって,議会の議員が,公立学校における具体的な教育の内容,方法,教材の使用等について,教育委員会に質問し,教育委員会がこれに答えることが,直ちに「不当な支配」に当たるということはできないことが明らかである。その場合,議員が,自己の特定の教育の在り方に関する考え方に基づいて,公立学校における具体的な教育の内容及び方法につき,否定的な見解を述べたとしても,それをもって直ちに「不当な支配」に当たるということもできない。
3  当審における当事者の各論的主張に対する判断
(1)  当審における1審原告らの主張に対する判断
ア 1審原告らは,1審被告らの行為が共同の意思に基づいて行われた一連一体のものであり,全体として「不当な支配」に当たるのに,原審はこれを見抜けなかったと主張する。
しかし,1審被告東京都ないし同都教委,同都議ら及び同産経新聞社の間に共同の意思があったことを認めるに足りる証拠はない。1審被告らの各行為は,いずれも本件性教育が学校教育として許される範囲を逸脱したものであるという共通した認識に基づいて行われたものということができるが,本件性教育について同時期に同様の認識を抱いたからといって,直ちに共同の意思があるということになるものではない。
1審被告都議らは,本件性教育の問題性を明らかにして,これを指摘するとともに,その改善を同東京都ないし同都教委に求め,同都教委は,同都議らの指摘を端緒にして,本件性教育の問題性に気付いて,同都教委の判断に基づいて必要な措置を執り,同産経新聞社は,同都議らから連絡を受け,本件性教育に報道価値を認めて,取材及び報道を行ったものである。これらは,それぞれがその主体的判断に基づき独立して行動していると解されるのであり,そこに共同の意思があると認めることまではできない。
イ 1審原告らは,1審被告都議らの各行為及び同都教委の各行為は,一連一体のものと見て評価すべきであると主張する。
確かに,上記各行為は,それぞれ一連のものというべきであるが,各行為が違法と評価し得ないものである場合には,これを一連一体と見ても,原則として,全体として違法となるということはできないし,一部に違法な行為が含まれている場合にも,それが当該行為特有の違法であるならば,一連の行為全体を違法と評価することができるものではない。
引用に係る原判決の判示するように,1審被告都議らの各行為は,そのうち本件視察における1審原告X9及び同X10に対する侮辱行為(「不当な支配」にも当たる。)のみが違法であり,しかも,その行為は,本件視察中に1審被告都議らがB校長に教材の使用方法等を尋ねたが同校長が答えられなかったために,急きょ1審原告X9及び同X10にその使用方法等を聞くことになった際のやり取りの中で起きた出来事であり,前後の他の行為にその違法が及ぶ関係にあるとはいえない。
また,1審被告都教委の各行為は,そのうち① 同都議らの上記「不当な支配」から1審原告X9及び同X10を保護するよう配慮しなかったこと,並びに② 本件性教育が本件学習指導要領に違反することを理由にされた本件厳重注意のみが違法であり,①については,上記と同様の理由で,前後の他の行為にその違法が及ぶ関係にあるとはいえない。②については,本件性教育が学習指導要領に違反することが明らかであったとはいえないのに,あらかじめ指導,助言等を通じて,本件性教育が学習指導要領に違反することなどを認識し得る機会を与えず,十分な確認もしないままに,直ちに制裁的取扱いをした点において違法であるというのであり,制裁的措置である厳重注意に特有の理由というべきであるから,やはり,前後の他の行為にその違法が及ぶ関係にあるとはいえない。1審原告らは,原審が,本件厳重注意が「教員を萎縮させ,創意工夫による実践実例の開発を躊躇させ,性教育の円滑な遂行が阻害される」と判示したことをとらえて,1審被告都教委のその他の行為も,制裁的取扱いでないけれども,1審原告らを萎縮させ,創意工夫を躊躇させ,性教育の円滑な遂行が阻害されることに変わりがないから,いずれも「不当な支配」に当たり,一連一体の違法な行為と評価すべきであると主張する。しかし,制裁的取扱いでないその他の行為は,いずれも1審被告都教委の権限の範囲内の行為であるから,それにより1審原告らの考える内容の性教育を行うことが制約を受ける面があるとしても,これを甘受すべきものであり,理由の上でも手続的にも問題のある制裁的措置である本件厳重注意と同様に評価することはできないというべきである。
ウ 1審原告らは,1審被告都議らの各行為は,1つ1つを見ても違法であると主張する。
(ア) しかし,本件質問については,そもそも議会において教育実践の内容について質問すること自体が違法であるという1審原告らの主張は,到底採り得ないし(なお,1審原告らは,質問は目的によっては違法でないとも主張している。),性教育の在り方についての議員の見解は,最高裁学テ判決が懸念を示した「党派的な政治的観念や利害」とは異なるものであって,議員が自己の見解に基づいて議会で教育委員会に具体的教育実践につき質問することは,議会や議員の前記の権能,権限に照らし,制約されなければならない理由はない。そして,議員の質問が教育委員会の対応を事実上義務付けるものとはいえない(教育委員会の対応は,教育委員会自体の判断によるとみるべきものである。)から,質問行為が「不当な支配」に当たるものではない。
(イ) 本件視察については,教育実践を議会で取り上げること自体が違法であることを理由に違法であるという1審原告らの主張は,やはり理由がないし(なお,1審原告らは,視察は目的によっては違法でないとも主張している。),議員が教育実践の実情を視察することは,当該教育実践が自己の見解に沿わないものとの考えの下に,そのことを議会において指摘して教育行政機関の見解をただし,必要な措置を求めるための準備行為であったとしても,議会や議員の上記のような権限等に照らし,また,これが教育委員会の対応を事実上義務付けるものとはいえないことに照らしても,「不当な支配」に当たるということはできない。なお,1審被告都議らの1審原告X9及び同X10に対する侮辱行為は,同1審原告らに対する「不当な支配」にも当たるが,発言の経緯,内容に照らし,これを伝え聞いた他の教員にも不快感を与えたとしても,教員集団に向けられた「不当な支配」と評価し得るものではない。
(ウ) 本件展示会については,1審被告都議らが自らの見解に照らし問題があると考える点を強調する形で行ったものであるから,1審原告らにとっては不本意なものであったと思われるが,1審被告都議らがそのような意見表明をすることを制約することはできないのであり,そのことは,1審被告都議らが公人であり,場所が都議会議事堂内であったとしても,同様であり,これを「不当な支配」ということはできない。
エ 1審原告らは,1審被告都教委の行為は,1つ1つを見ても違法であると主張する。
(ア) しかし,本件答弁については,1審被告都議らの質問が違法であることを前提とする主張は,上記のとおり失当である。そして,教育委員会が,議員の質問に答えて,公立学校における教育実践について見解を述べること自体は,その権限事項の範囲内のことであるから,違法ということはできない。また,C教育長が「からだのうた」を極めて不適切な教材であるなどと述べたことは,これが適切か不適切かについては様々な意見があり得るところと考えられるから,直ちに不当ということはできず,この答弁自体が直ちに本件性教育に影響を及ぼすものでもない。このような断定的評価を下す前に,十分な調査を行うべきであったという点については,確かに本件養護学校における本件性教育についてどこまで事実関係を把握した上で本件答弁がされたのかには,疑問があるところであるが,既に前年から,都議会において,行き過ぎた性教育の例として小学校1年生の段階から性器の名称を教えることが指摘され,1審被告都教委としてはその是正に取り組んでいたのであるから,「からだうた」の歌詞に性器の名称が含まれていることのみから上記のような答弁をしたとしても,調査検討を経なかったことに違法があるとはいえない。したがって,本件答弁が「不当な支配」に当たるということはできない。
(イ) 本件視察への協力については,本件視察自体に違法がないことは,上記のとおりであるから,1審被告都議らの侮辱行為を阻止すべき義務があった点を除き,1審原告らの主張には理由がない。本件展示会への教材の貸出しについても,同様に理由がない。
(ウ) 本件教材等の没収については,1審被告都教委が,自己の権限に基づいて,教材が不適切なものかどうかについて調査検討するための行為であるから,違法とはいえない。1審原告らは,議会において「不適切な教材」と断定した後に行った行為であるから,調査などではなく,使用を禁止することを目的とした没収であると主張するが,本件答弁において不適切と断定されたのは,「からだうた」だけであり,他の教材について調査検討すべきであったことを否定する理由にはならない。1審原告らは,本件教材を持ち去る必要はなかったというが,点数から考えても,本件養護学校に赴いて調査検討することが困難であることは明らかであり,この点に違法があるとはいえない。その他,これが「不当な支配」といえないことは,引用に係る原判決の判示するとおりである。
また,1審原告らは,本件教材等の没収につき,原審は校長が提出を了解し所管換えを申し出たことを適法性を認める理由としているが,誤りであると主張する。しかし,原審は,校長の了解や申し出があったことを,本件教材等の調査及び所管換えの適法性の積極的根拠としたものではなく,その手続に違法があったとはいえないという理由としたにとどまり,その限りにおいては,校長に権限があったことは明らかであるから,原審の上記判断に違法はない。
(エ) 本件調査並びに経営調査委員会の設置及びその調査結果の発表が「不当な支配」に当たらないことは,引用に係る原判決の判示するとおりである。
(オ) 年間指導計画の変更について,1審原告らは,これこそ本件における最大の「不当な支配」であると主張するが,教育委員会が大綱的基準しか定められないことを前提とする点は,前記のとおり,前提に誤りがある。国の教育行政機関の権能は,大綱的基準を設定するにとどまるものの,教育委員会は,教育に関する地方自治を担う機関として設置されているのであり,その権限の行使において大綱的基準の設定しか認められないという理由はない。教育委員会の権限が教育に関する地方自治の原則に基づくことを理由に,性教育のように地方ごとに異なる基準が妥当するものではないものについては,教育委員会も大綱的基準しか定められないという主張にも理由がない。教育に関する地方自治の原則については,地方ごとの特殊性を反映する必要がある事項についてはもちろん,これがない事項についても,国は大綱的基準を設定し得るにとどまり,地方教育行政機関たる教育委員会が,より細目的な基準を設定し,指導,助言等を行うという権限分配がされていると解すべきである。そして,教育委員会の教育実践への介入行為も「不当な支配」に当たり得るが,許容される目的のために必要かつ合理的な介入は,たとえ教育の内容及び方法に関するものであっても,「不当な支配」には当たらないというべきである。
本件養護学校における性教育に関する年間指導計画の変更については,1審被告都教委の指導,助言を受けながら,B校長の指示を受けた副校長が中心となり,見直しが行われたものであり,その見直しは,従来の性教育検討委員会に教頭及び教務主幹各1名が加わった性教育改善検討委員会で原案を作成したと認められる(甲87,88,111の2,111の9,111の50,112の1~21,113の1~29,乙B27,原審における証人B)。したがって,実際上,同都教委の指導,助言の影響力が強かったとしても,その見解が,本件性教育が本件学習指導要領に違反しているとした点は妥当ではなかったものの,在るべき性教育の内容及び方法に関する誤ったものであったというべき理由はないから,同都教委の助言,指導が「不当な支配」に当たるということはできない。
また,1審原告らは,年間指導計画の変更につき,原審は校長がこれを行ったことを適法性を認める理由としているが,誤りであると主張する。しかし,原審は,B校長が年間指導計画を変更したことを,その適法性の積極的根拠としたものではなく,同校長に1審被告都教委が与えた指導,助言が「不当な支配」に当たらない理由として,同校長に権限があることを判示したものであり,その限りにおいては,同校長に権限があったというべきであるから,原審の上記判断に違法はない。
(カ) 本件異動については,1審原告らは,本件性教育を行えなくするという不当な目的でされた「不当な支配」であると主張する。確かに,定期異動実施要綱(甲101)は,本件調査の翌日に策定されたものであって,1審被告都教委が本件性教育を始めとする都立学校における不適切な性教育を認知したことと無関係とは考え難いが,適材適所の配置,多様な経験による資質向上等を目的として,教員を定期的に異動させること,具体的な基準として,現任校に引き続き3年以上勤務する者を異動対象とし,これが6年以上に達する者は異動するものとするなどという内容は,合理的であり,人事権の行使として違法ということはできない。その結果,1年目に約3分の1が異動し,約3年でほぼ全員が異動することになるのは,必然的な結果であり,これが本件性教育を行えなくするための措置であったと認めるに足りる証拠はない。したがって,本件異動により,本件性教育を継続することが事実上困難になったという面があるとしても,これを「不当な支配」ということはできない。
オ(ア) 1審原告らは,1審被告産経新聞社の行為は,① 同都議らの介入と連携したものであり,② 特定校の具体的授業を執拗に批判したものであり,③ 教員や授業の実践の取材をしておらず,④ 内容が歪曲されており,⑤ 本件養護学校の教育実践に多大な影響を与えたから,「不当な支配」に当たると主張する。
しかし,① 1審被告都議らからの連絡によって取材を始めたことは事実であるが,前記のとおり,同都議らと連携したと認めることはできず,② 特定校の具体的授業を取り上げて連続的に記事にすること自体は,報道の自由として許容されるものであるし,③ 取材が不十分であるとはいえず,④ 内容が歪曲されているとは認められず,⑤ 正当な報道により教育実践が事実上の影響を受けることがあるとしても,これを教育実践を歪める不当なものということはできないから,1審原告らの上記主張は採用することができない。
(イ) また,1審原告らは,原審は,本件第1記事,本件第3記事及び本件第4記事につき,1審原告らが特定されるものではないとして名誉毀損を否定したが,誤りであると主張する。
しかし,1審原告X6以外の1審原告らを特定できるような情報は,本件各記事には記載されておらず,本件養護学校の教員全員が不適切な性教育に携わっていたという趣旨に読むこともできないから,上記主張には理由がない。確かに,ある集団の社会的信用が害されることにより,当該集団に関係する個人に対する社会的評価も低下するということは起き得るが,記事が批判しているのが専ら当該集団の行為であって,当該集団に関係する個人まで批判するものでなく,かつ,当該批判が当該集団に属する者全員にかかわるものと読むこともできない場合には,当該個人に対する名誉毀損が成立するということはできないものというべきである。
(ウ) 1審原告X6は,本件第1記事は,論評の基礎となる事実を誤っていると主張する。
ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,上記意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには,人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り,上記行為は違法性を欠くものというべきである(最高裁平成9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁)。
B校長作成の視察資料には,本件性教育の指導計画は「性教育検討委員会」で作成されていたものであるとし,そのメンバー及び中心的な役割を果たした教員として特定の教員の名前が挙げられており(乙D2),一部の教員が中心となって推進したとの摘示事実が誤りであるとはいえない。また,「からだうた」が歌われるようになった後,学校運営連絡協議会の席で,親の会代表から,作業所で性器名を言ってしまう利用者がいてどうしてよいか困っているとの声を聞くという発言があったのであるから(乙D2),保護者から苦情があったとの摘示事実が誤りであるとはいえない。これに対し,「からだうた」を使い始める際に本件養護学校で議論があったことは1審原告らが自認するところであるが,保護者からの苦情を受けた後に「からだうた」の適否が本件養護学校で議論されたこと及び議論の結果これを続けることとしたことを認めるに足りる証拠はない。しかし,名誉毀損の違法性阻却における真実性の証明の対象は,摘示事実全てではなく,その重要な部分であるところ,上記の記事は,保護者からの苦情があった後も「からだうた」が使われたことを摘示したものとみるべきであり,それ自体は真実であり,議論の点は,重要な部分であるとはいえない。推進派の声が強く改善されなかったとの点については,「改善」というのは意見ないし論評とみるべきものであり,「からだうた」が使われ続けたことを摘示したものと解されるところ,これ自体は真実であるし,推進派という文言が使われていることについては,これによって,本件養護学校に推進派と反対派の対立があったことを摘示したものということはできない。したがって,前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったものというべきである。
また,1審原告らは,本件第1記事が,本件養護学校では「からだうた」を歌わせていたとし,教員が歌うよう押し付けたかのように記載しているが,誤りであると主張する。
しかし,歌わせたというのは,押し付けたとの趣旨とは解されない。
さらに,1審原告らは,本件第1記事は,下半身を露出した状態の人形の写真を掲載しているが,授業では,殊更に下半身を露出して展示,使用するものではないから,誤りであると主張する。
しかし,本件第1記事の写真は,性器付きであることを示したもので,実際の使い方を示したものではないから,内容虚偽の写真を掲載したということはできない。
そうすると,上記伝達事実は真実であるというべきである。そして,公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあったことは引用に係る原判決の判示するとおりであり,1審原告らの人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものとまではいえないから,不法行為は成立しないものというべきである。
カ 教材の返還請求
(ア) 1審原告らは,本件教材等につき,不法行為の制度趣旨としての原状回復請求権に基づく返還請求及び1審原告らに対する継続的な人格権侵害に対する妨害排除方法としての差止請求権に基づく返還請求を主張したのに,原審は,これに対し言及しておらず,判断の脱漏があると主張する。
しかし,原審は,本件教材等の所管換えが適法なものであると判示し,不法行為や継続的な人格権侵害を認めなかったのであるから,判断に脱漏があるとはいえない。
(イ) 1審原告らは,当審においても,1審被告都教委に対し本件教材等の返還を求めているが,同都教委に教材返還請求訴訟の当事者能力がないことは,引用に係る原判決に記載のとおりである。
キ 1審原告らは,1審被告Y3の提案により同都教委が学校経営アドバイザー制度を設け,本件養護学校の学校経営アドバイザーに就任したKが,本件性教育にかかわった教員に対し恫喝を行ったなどと主張する。
学校経営アドバイザー制度は,本件視察後,同Y3の提案により同都教委が設けた制度であり,本件養護学校の学校経営アドバイザーとしてKを同都教委に推薦したのは,形式上はB校長であるが,実質的には同Y3であり,Kは,平成15年9月24日開催の本件養護学校の職員会議で,X6校長に協力した教員は出処進退を考えるべきであるなどと記載した資料を配布して発言をしたことが認められる(甲43の1及び2,44,45,149,原審における証人B,当審における1審被告Y3)。学校経営アドバイザー制度は,校長に対し専門的かつ具体的な支援を行うことなどを目的とするものであるから(甲44),この制度創設自体が「不当な支配」に当たるとはいえないが,学校経営アドバイザーが,教員に対し,直接,退職勧告とも受け取れるような発言をするというのは,制度趣旨に反するものというべきである。しかし,Kの発言が,特定の教員に対し,退職を強要したとまで評価できるものではないから,この発言等をもって,直ちにKが「不当な支配」を行ったとはいえず,同都教委及び同Y3が,学校経営アドバイザー制度を用いて「不当な支配」を行ったとまではいえない。
ク 1審原告らは,Kの著書に,1審被告都教委は,問題教員を分散させることとし,本件養護学校の教員約30名を異動させた旨記載していることをもって,同都教委が大量異動による「不当な支配」を行った証拠であるとする。
しかし,Kは同都教委の中枢部に在籍していたものではなく,Kの著書における記述は,個人的な感想の域を出ないものであるから,これをもって,直ちに同都教委の「不当な支配」を根拠付けるものということはできない。
ケ 1審原告X7は,季刊誌に校長の許可を得ずに性教育の実践事例を掲載したこと及び児童の写真掲載で,本人や保護者の了解が不明瞭であったとの理由で厳重注意を受けたが,このことについて事情聴取を受けたことはなく,教頭への報告はしているし,そもそも校長の許可は必要がなく,写真掲載については保護者の承諾を取っていると主張する。
校長の許可の要否については,原審以来,同X7も1審被告東京都及び同都教委も,校長の許可が必要であることを前提に,その存否を争っていたところ,1審原告X7は,平成22年4月30日付けの控訴審準備書面4(88頁)において,「特に季刊誌への記事の掲載については,管理職の許可を得ずに行ったことを処分理由にすることがそもそも許されないことと解さなければならない。」と主張し,さらに,当審第9回口頭弁論期日において陳述した平成23年2月22日付けの最終準備書面(416頁)において,季刊誌に掲載されることが個人情報保護の観点から問題がある場合を除き,事前に校長の承諾を得ることは必要ではないと主張するに至ったが,以上の経過に照らし,校長の許可は必要であったと認めるのが相当である(弁論の全趣旨)。そして,事前に校長の許可を得ていなかったことは引用に係る原判決の判示するとおりである。当審において提出された1審原告X6の陳述書(甲238)は,これを覆すものとはいえない。また,同X7に対する厳重注意の理由となった事実について事情聴取が行われたとは認められないが,そのことのみを理由に同1審原告に対する厳重注意が違法と評価されるものではない。
(2)  当審における1審被告東京都及び同都教委の各論的主張に対する判断
ア 侮辱からの保護義務について
(ア) 1審被告東京都及び同都教委は,本件視察の際,同都議らが,1審原告X9及び同X10を侮辱したとの原審の認定は,誤りであり,同1審原告らは精神的に動揺していたから,メモ(甲28)の正確性に疑問があると主張する。
しかし,本件視察直後に,1審原告X25は,同X9及びX10から事情を聞いて,メモ(甲28)を作成したところ(甲111の37),同じ事実を1審原告X9及び同X10が体験しているものであり,精神的に動揺しているとは考えられない同X25が,同X9及び同X10から,本件視察の当日に聴き取りをして作成したものであるから,その内容の信用性は高いものというべきである。
(イ) 1審被告東京都及び同都教委は,原審は,旧教基法10条2項により,教員を「不当な支配」から保護する義務を負うよう配慮する義務があると判示するが,同項は,同法の政策遂行上の努力義務を定めるものであり,具体的な法的義務を定めるものではないと主張する。
しかし,同東京都は,教員に対し,同東京都が公務遂行のために設置すべき教育施設若しくは器具等の設置管理又は教員が同東京都若しくは上司の指示の下に遂行する公務の管理に当たって,教員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべきはもとより,同法の目的・趣旨に従い,教育の公正,中立性,自主性を確保するために,教育に携わる教員を「不当な支配」から保護するよう配慮すべき義務を負っているものと解すべきである(東京高裁昭和50年12月23日判決・判例時報808号57頁参照)。原審は,これと同趣旨の判示をしたものと解され,これが誤りであるとはいえない。
また,1審被告東京都及び同都教委は,同都議らの言動は偶発的な出来事で,予測できなかったと主張する。
しかし,これが予測できたことは,引用に係る原判決に記載のとおりである。
イ 厳重注意について
(ア) 1審被告東京都及び同都教委は,厳重注意は法的制裁ではないと主張する。
しかし,これが一種の制裁的行為であって,これを受けた者の職場における信用評価を低下させ,名誉感情を害するものとして,その法的利益を侵害する性質の行為であると解されることは,引用に係る原判決が判示するとおりである。なお,1審被告都教委自身が,本件厳重注意を含む処分等を行ったことのお知らせ文書(甲6の1,2)において,厳重注意を懲戒処分とともに「処分」又は「処分等」として,これが制裁的行為であると位置付けていることが明らかである。
(イ) 1審被告東京都及び同都教委は,1審原告X28に対する厳重注意は,飲酒にかかわる事実によるものであると主張する。
しかし,同X28は,訴状において,「今回の受けた処分」として「厳重注意2回」と主張し,平成19年1月に1審被告都教委訴訟代理人に副本を送付し同年12月の原審第7回口頭弁論期日に提出した陳述書(甲111の14)において,「私は,「からだうた」の学習に関わったとの理由で口頭で厳重注意を受けました。」と述べ,同年3月27日付け準備書面でも,その趣旨を主張したが,1審被告東京都及び同都教委は,これに何らの反論も反証もしなかったものであり,原審の認定に誤りはない。同東京都は,控訴理由書において上記のとおり主張するに至ったが,その後も立証をしない。もっとも,1審原告X28は,控訴審準備書面1において,「たしかに,X28が厳重注意を受けたのは,勤務時間中の飲酒にかかわる理由であるが,飲酒という事実はないから,厳重注意はやはり不当である。」と主張し,陳述書(甲196の28)において,飲酒に関し事情聴取を受けたことについて述べている。しかし,これらは,原審における主張や陳述書の記載を否定したものとまでは見られないから,同1審原告が2回受けたという厳重注意のうち少なくとも1回は,原審認定の理由によるものであったと認めるのが相当である。
そして,同X28が小学校低学年の児童に「からだうた」を歌わせたことが,厳重注意の根拠事実にならないことは,後記(ウ)に記載のとおりである。
(ウ) 1審被告東京都及び同都教委は,1審原告X1ら5名が「からだうた」を歌わせたことにつき,① 小学校学習指導要領では第4学年で性器の名称を教えることになっており,当該学年の学習内容は当該学年で教えなければならない,② 「性教育の手引」には,顔や手足等と並んで外性器の名称と働きを教えるとしているところ,その時期は明記されていないから本件学習指導要領によるほかない,③ 「性教育の手引」には,男性器をペニス,女性器をワギナとして取り扱うことがあるが,低学年の段階では,男の子あるいは女の子のオチンチンという名称で説明すればよいとの記載があるところ,これは障害のない小学生を対象としたものであり,知的障害のある児童に外国語を教えるのは相当でないから,厳重注意の根拠事実がある旨主張する。
しかし,前記のとおり,本件学習指導要領は小学校学習指導要領に準ずるものとするとはしていないし,これを参考にするとしても,当該学年で教えなければならないとされる学習内容を当該学年で教えないことが許されないのは当然であるが,他の学年でこれを教えることが誤りであると断定できるものではない。また,「性教育の手引」が低学年の段階では,男の子あるいは女の子のオチンチンという名称で説明しなければならないと記述しているものと解することはできないし,外国語の名称を使用することが不適切であることを認めるに足りる証拠もない。
(エ) 1審被告東京都及び同都教委は,1審原告X3ら3名が,性交の意義(仕組み)ではなく,性交の仕方を指導した旨主張する。
しかし,前記のとおり,学習指導要領に性交の記載がないからといって,性交を教えることを禁止していると断定できるものではない。また,性交の意義は教えてよいが,性交の仕方を教えてはいけないという前提に立つとしても,知的障害を持つ児童・生徒は,抽象的な事柄を理解することが困難であるという特徴があることから,性交の意義を説明するにしても,言葉や簡単なイラストなどを用いたのでは理解が得られない場合が多いと考えられ,人形等を用いて分かりやすく説明したものと解されるのであり,これが性交の意義の指導の域を超えるというべき理由は,見いだせない。
(オ) 1審被告東京都及び同都教委は,高等学校学習指導要領で「妊娠出産の詳細に深入りしないこと」と明記されているから,1審原告X8が,出産ビデオを小学校高学年の児童に見せたことは学習指導要領に違反すると主張する。
しかし,本件学習指導要領は高等学校指導要領に準ずるものとするとはしていないし,これを参考にするとしても,同X8の行為が深入りしたと直ちにいえるものではないから,学習指導要領に違反するとは判断できない。また,「性教育の手引」の実践例には,「赤ちゃんは,子宮から膣が通り道となって生まれてくること」を説明するとあったのであるから,抽象的な事柄を理解することが困難な知的障害を持つ児童・生徒に対し具体的,視覚的に指導したことに違法があるとはいえない。
(カ) 1審被告東京都及び同都教委は,1審原告X21が,小学部の児童に「からだうた」を歌わせたほか,小学部高学年の授業で性交を扱ったから,厳重注意には根拠事実があると主張する。
しかし,このような根拠事実がないことは,前判示のとおりである。
(キ) 1審被告東京都及び同都教委は,原審が本件厳重注意が裁量権を濫用したものと判断したことにつき,不適正な教育が行われていたことが発覚した以上,指導上の措置を与えることが許されないと解するのは不当であるなどと主張する。
しかし,同都教委が本件性教育が不適正であると判断した理由は,それが本件学習指導要領に違反しているということにあったところ,そのことに明確な根拠がないことは既に判示したとおりである。同都教委が本件学習指導要領をそのように解釈していたとしても,前記のとおり,本件学習指導要領は多義的な解釈が可能であって,1審原告らが本件性教育は本件学習指導要領に違反しないと考えていたことにも根拠があったというべきである上,ほかならぬ1審被告都教委自身が平成15年7月時点で学校現場に提示していた「性教育の手引」の内容が本件厳重注意をした時点における同都教委の解釈と異なるものであったなどというのであるから,同都教委が,同時点における自己の新たな解釈が正しいとの前提の下に,いきなり制裁的措置に当たる厳重注意を行ったことは,裁量権を濫用したものというほかはない。
(3)  当審における1審被告都議らの主張に対する判断
ア 1審被告都議らの言動について
(ア) 1審被告都議らは,原審が,1審原告X9及び同X10が事前に1審被告都議らから質問を受ける可能性があることを知らされていなかったと認定したが事実誤認であると主張する。
確かに,1審原告X9は,教頭から,「校長が対応します。何か聞かれて分からないことがあった時は答えてもらうかもしれません。」と言われていた(甲111の7,原審における1審原告X9)から,前記1(4)のとおり,原判決を改めた。しかし,このことが,侮辱の成否に影響するものではない。
(イ) 1審被告都議らは,本件視察の際の発言内容を争い,同Y1は,国税の調査の際に私物であるとの理由で見せないというのかとの趣旨の発言をしたにすぎないなどとし,同Y2は,宴会で歌えるかと述べたのではなく,どんな会合でも,人前でも歌えるのかと述べたにすぎないなどと主張する。
しかし,上記のとおり,メモ(甲28)の信用性が高いことからすると,同Y2が「宴会で歌えるのか」と,同Y1が「俺たちは国税と同じだ」と述べたとする原審の認定は相当である。なお,同Y1が,同都議らの視察を国税の調査になぞらえる発言をした後,同Y3が,指導主事に対し,「よく調べないといけないね。」と発言しているが,これは,本件性教育を行った教員を脱税の疑いがある者と同視した同Y1の言葉を受けて,更に調査をしなければならないと述べたものと理解され,これによって,同Y3も,1審原告X9及び同X10を脱税の疑いがある者と同視する言動をしたものというべきであるから,侮辱したことになるというのが相当である。
1審被告都議らは,同人らの言動が1審原告X9の態度に誘発されたものである旨主張するが,このような事情は,侮辱の有無の判断を左右するものではない。
そして,同都議らの言動につき,客観的共同が認められ,共同不法行為が成立することは,前記1(15)により訂正の上引用した原判決に記載のとおりである。
(ウ) 1審被告都議らは,原審は,1審原告X9及び同X10が教頭から反論を封じられていたと認定するが,この点は上記メモに記載がないから,このような事実はなかったし,仮にあったとしても,侮辱の成否に関係なく,また,1審被告都議らにはこれが知らされていなかったなどと主張する。
しかし,上記メモに記載のない事実が不存在であるということはできない。1審原告X9作成の陳述書(甲111の7)によれば,1審被告Y2が1審原告X9に対し「どうして小学1年生から性器名を教える必要があるのか。」と尋ねた際,同人が,隣に立っている教頭に答えてよいかと小声で聞くと,話すなとの指示があったことが認められるところ,小声とはいえ,教頭と会話しているのであるから,保健室内にいた1審被告都議らはこれに気付いたはずである(このやり取りは,1審原告X10も気付いたものと考えられる。)。したがって,原審の認定に誤りはない。
1審被告都議らは,反論が封じられたことは侮辱の成否と関係がないと主張する。確かに,成否とは関係ないが,精神的な被害の程度には影響があるものと考えられるから,これを認定することが不当であるとはいえない。
イ 「不当な支配」について
(ア) 1審被告都議らは,原審は,同都議らの損害賠償の有無の判断の際には「不当な支配」を問題にしなかったのに,同東京都の責任を認める段になって,初めて「不当な支配」を取り上げたが,論理的に誤りであると主張する。
確かに,1審被告都議らの1審原告X9及び同X10に対する侮辱行為は,同時に同1審原告らに対する「不当な支配」にも当たるから,当裁判所は,原判決を引用するに当たり,前記1(14)及び(18)のとおり,これを加えた。しかし,このことは,不法行為の成否や同1審原告らの損害の額に影響を及ぼすものではない。
(イ) 1審被告都議らは,同都議らには,1審原告X9及び同X10に対する指揮命令権がないから,「不当な支配」はあり得ないと主張する。
しかし,「不当な支配」の主体は,教育について公の権力を行使する権限を有する者に限られるものではないことは,前記のとおりである。
(ウ) 1審被告都議らは,原審のような判断がされると,教育上の不祥事があったことに端を発した視察の際に,再発防止策が必要ないなどと居直った教員に対し正論を持ってたしなめることもできなくなると主張する。
しかし,上記主張は,同都議らと1審原告X9及び同X10との間に交わされた会話が,同都議らの主張するようなものであったことを前提として初めていえることであり,侮辱行為が許される理由にはなり得ない。
(エ) 1審被告都議らは,同じ発言を保護者がした場合は侮辱に当たらないが,同都議らがすれば侮辱に当たり,「不当な支配」に当たるというのは,不当であると主張する。
しかし,原審は,同じ発言を保護者がした場合は侮辱に当たらないが,同都議らがすれば侮辱に当たると判示したものではないし,批判,非難が対象者の名誉感情を受忍限度を超えて違法に侵害するかどうかの判断に当たり,対象者と発言者の関係を考慮することは,何ら不当ではない。
4  以上によれば,原審の判断は相当であり,本件各控訴は理由がないから,これをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 大橋寛明 裁判官 佐久間政和 裁判官 見米正)

 

別紙
1審原告目録
東京都八王子市〈以下省略〉
被控訴人兼控訴人 X1
東京都八王子市〈以下省略〉
控訴人 X2
東京都八王子市〈以下省略〉
被控訴人兼控訴人 X3
東京都八王子市〈以下省略〉
被控訴人兼控訴人 X4
東京都八王子市〈以下省略〉
控訴人 X5
東京都八王子市〈以下省略〉
控訴人 X6
東京都八王子市〈以下省略〉
控訴人 X7
東京都八王子市〈以下省略〉
被控訴人兼控訴人 X8
東京都八王子市〈以下省略〉
被控訴人兼控訴人 X9
東京都八王子市〈以下省略〉
被控訴人兼控訴人 X10
東京都調布市〈以下省略〉
控訴人 X11
東京都町田市〈以下省略〉
控訴人 X12
東京都日野市〈以下省略〉
被控訴人兼控訴人 X13
東京都日野市〈以下省略〉
被控訴人兼控訴人 X14
東京都八王子市〈以下省略〉
控訴人 X15
東京都日野市〈以下省略〉
控訴人 X16
東京都町田市〈以下省略〉
被控訴人兼控訴人 X17
東京都日野市〈以下省略〉
控訴人 X18
東京都小平市〈以下省略〉
控訴人 X19
川崎市〈以下省略〉
控訴人 X20
東京都府中市〈以下省略〉
被控訴人兼控訴人 X21
東京都八王子市〈以下省略〉
被控訴人兼控訴人 X22
東京都東大和市〈以下省略〉
控訴人 X23
東京都町田市〈以下省略〉
控訴人 X24
東京都狛江市〈以下省略〉
控訴人 X25
東京都日野市〈以下省略〉
控訴人 X26
東京都八王子市〈以下省略〉
控訴人 X27
東京都町田市〈以下省略〉
被控訴人兼控訴人 X28
東京都府中市〈以下省略〉
控訴人 X29
東京都府中市〈以下省略〉
控訴人 X30
東京都大田区〈以下省略〉
控訴人 X31
別紙
1審原告ら訴訟代理人目録
1審原告ら訴訟代理人弁護士 児玉勇二
同 杉浦ひとみ
同 窪田之喜
同 木村真実
同 山下太郎
同 中川重徳
同 齋藤園生
同 西田美樹
同 田部知江子
同 山下敏雅
同 伊藤敬史
同 坂本雅弥
同 渡邊隆
同 小林善亮
同 稲見秀登
同 佐久間大輔
同 望月浩一郎
同 橋詰穣
同 宇佐見渉
同 杉野公彦
同 黒澤いつき
同 松川邦之
同 山崎新
別紙
1審被告目録
東京都新宿区〈以下省略〉
控訴人兼被控訴人 東京都
同代表者都知事 I
同指定代理人 石澤泰彦
同 丸屋邦明
同 木村朋晃
東京都新宿区〈以下省略〉
被控訴人 東京都教育委員会
同代表者委員長 J
同指定代理人 土田立夫
同 毛利友紀子
同 河野志穂
上記2名訴訟代理人弁護士 津村政男
東京都世田谷区〈以下省略〉
控訴人兼被控訴人 Y1
東京都板橋区〈以下省略〉
控訴人兼被控訴人 Y2
東京都日野市〈以下省略〉
控訴人兼被控訴人 Y3
上記3名訴訟代理人弁護士 齋藤則之
同 根岸清一
同 福田貴也
同 河野浩
同 中村美智子
東京都千代田区〈以下省略〉
被控訴人 株式会社産業経済新聞社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 熊谷信太郎
同 布村浩之
同 坂井真由美
同 堀越充子
同 宗野恵治
同 石島正道
別紙
訴状送達の日の翌日一覧表
1 1審原告X28,同X29,同X30及び同X31を除く1審原告らの訴状
(1) 1審被告東京都,同Y1,同Y3及び同産経新聞社につき,平成17年7月23日
(2) 1審被告Y2につき,平成17年7月24日
2 1審原告X28,同X29,同X30及び同X31の訴状
(1) 1審被告東京都につき,平成17年11月9日
(2) 1審被告産経新聞社につき,平成17年11月11日
(3) 1審被告都議らにつき,平成17年11月16日

 

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政治と選挙の裁判例「告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター 政党 公報 広報」に関する裁判例一覧
(1)昭和26年 3月 7日 大阪高裁 昭25(う)2385号 選挙運動の文書図画等の特例に関する法律違反被告事件
(2)昭和26年 3月 3日 金沢地裁 昭25(行)2号 県議会議長辞職許可決議無効事件
(3)昭和26年 2月26日 仙台高裁 昭25(う)1081号 昭和二二年勅令第一号違反事件
(4)昭和26年 2月19日 新潟地裁 昭25(行)14号 休職処分取消請求事件
(5)昭和26年 2月 2日 最高裁第二小法廷 昭25(れ)1505号 公務執行妨害教唆各被告事件
(6)昭和25年12月28日 岐阜地裁 昭25(モ)12号 仮処分異議申立事件 〔電産特別指令確認事件〕
(7)昭和25年12月20日 最高裁大法廷 昭25(れ)1021号 昭和二二年勅令第一号違反被告事件
(8)昭和25年12月20日 高松高裁 昭25(う)794号
(9)昭和25年12月19日 東京地裁 昭25(ワ)2251号 解雇無効確認請求事件 〔東京都職員免職事件〕
(10)昭和25年12月16日 東京地裁八王子支部 昭25(モ)165号 仮処分異義申立事件 〔富士工業工場閉鎖事件〕
(11)昭和25年12月14日 大阪地裁 昭25(ヨ)43号 仮処分申請事件 〔新家工業組合除名事件〕
(12)昭和25年12月13日 東京高裁 昭25(行ナ)12号 商標登録願拒絶査定不服抗告審決取消請求事件
(13)昭和25年12月 8日 最高裁第二小法廷 昭25(あ)2863号 公職選挙法違反・昭和二二年勅令第一号違反被告事件
(14)昭和25年12月 6日 高松高裁 事件番号不詳
(15)昭和25年11月22日 最高裁大法廷 昭25(れ)280号 賭場開張図利被告事件
(16)昭和25年11月10日 岡山地裁 昭24(ワ)107号 組合員除名決議無効確認等請求事件 〔倉敷レーヨン組合除名事件〕
(17)昭和25年10月27日 福岡高裁 事件番号不詳 解職処分無効確認等請求控訴事件 〔熊本電気鉄道事件・控訴審〕
(18)昭和25年10月18日 京都地裁 昭25(行)10号 議会議員除名決議取消請求事件
(19)昭和25年10月 4日 広島高裁 昭25(う)649号 公職選挙法違反・昭和二二年勅令第一号違反被告事件
(20)昭和25年10月 3日 秋田地裁 昭25(行)19号 休職ならびに懲戒免職処分取消請求事件 〔秋田県教員懲戒免職事件〕
(21)平成24年 4月13日 東京地裁 平23(行ウ)73号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(22)平成24年 4月12日 東京地裁 平23(行ウ)48号 難民の認定をしない処分等無効確認請求事件
(23)平成24年 4月10日 東京地裁 平23(行ウ)128号 難民の認定をしない処分等取消請求事件
(24)平成24年 3月27日 和歌山地裁 平19(行ウ)8号 政務調査費返還代位請求事件
(25)平成24年 3月26日 仙台地裁 平19(ワ)1648号・平20(ワ)430号・平20(ワ)1915号・平21(ワ)355号・平21(ワ)896号・平21(ワ)1398号 監視活動停止等請求事件
(26)平成24年 3月23日 東京地裁 平22(行ウ)368号 難民不認定処分取消請求事件
(27)平成24年 3月16日 東京地裁 平21(行ウ)311号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(28)平成24年 2月29日 東京地裁 平21(行ウ)585号 公金支出差止請求事件
(29)平成24年 2月23日 大阪地裁 平21(行ウ)154号 退去強制令書発付処分無効確認等請求事件
(30)平成24年 2月22日 東京地裁 平22(行ウ)445号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(31)平成24年 2月14日 東京地裁 平22(行ウ)323号 難民の認定をしない処分取消請求事件
(32)平成24年 2月 3日 青森地裁 平20(行ウ)4号 政務調査費返還代位請求事件
(33)平成24年 1月31日 大阪高裁 平23(行コ)96号 政務調査費違法支出損害賠償命令控訴事件
(34)平成24年 1月31日 福岡高裁 平23(行コ)13号 大分県政務調査費返還等請求事件
(35)平成24年 1月27日 東京地裁 平22(ワ)5552号 地位確認等請求事件 〔学校法人尚美学園事件〕
(36)平成24年 1月18日 横浜地裁 平19(行ウ)105号 政務調査費返還履行等代位請求事件
(37)平成24年 1月17日 東京地裁 平21(行ウ)600号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(38)平成24年 1月13日 東京地裁 平23(ワ)4292号 損害賠償等請求事件
(39)平成24年 1月12日 東京地裁 平22(行ウ)251号・平22(行ウ)256号・平22(行ウ)257号・平22(行ウ)258号・平22(行ウ)259号 退去強制令書発付処分取消等請求事件
(40)平成23年12月21日 東京地裁 平21(行ウ)636号 退去強制令書発付処分取消等請求事件
(41)平成23年12月 9日 徳島地裁 平19(行ウ)17号 政務調査費違法支出不当利得返還命令請求事件
(42)平成23年12月 8日 東京地裁 平21(行ウ)341号 観察処分期間更新処分取消請求事件
(43)平成23年12月 6日 東京地裁 平22(行ウ)215号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(44)平成23年11月30日 東京地裁 平22(行ウ)37号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(45)平成23年11月25日 東京地裁 平21(ワ)3923号・平21(ワ)20801号 損害賠償等請求事件、損害賠償請求事件
(46)平成23年10月27日 東京地裁 平20(行ウ)497号・平20(行ウ)530号・平20(行ウ)531号・平20(行ウ)532号・平20(行ウ)533号・平20(行ウ)487号・平20(行ウ)557号・平20(行ウ)690号 難民の認定をしない処分取消等請求事件、在留特別許可をしない処分無効確認請求事件、退去強制令書発付処分取消等請求事件
(47)平成23年10月25日 東京地裁 平21(行ウ)373号 退去強制令書発付処分取消等請求事件
(48)平成23年 9月30日 仙台高裁 平22(行コ)20号 政務調査費返還請求控訴事件
(49)平成23年 9月29日 東京地裁 平22(行ウ)460号 退去強制令書発付処分無効確認請求事件
(50)平成23年 9月16日 東京高裁 平21(ネ)2622号 各損害賠償請求控訴事件
(51)平成23年 9月 2日 東京地裁 平22(行ウ)36号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(52)平成23年 7月25日 東京地裁 平19(行ウ)591号 懲戒処分取消等請求事件
(53)平成23年 7月22日 東京地裁 平22(行ウ)555号・平23(行ウ)61号・平23(行ウ)171号 難民の認定をしない処分取消請求事件、追加的併合申立事件
(54)平成23年 7月19日 東京地裁 平21(行ウ)582号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(55)平成23年 7月12日 東京地裁 平20(行ウ)682号・平21(行ウ)537号・平22(行ウ)48号 退去強制令書発付処分取消等請求事件(第1事件)、在留特別許可をしない処分無効確認請求事件(第2事件)、難民の認定をしない処分取消請求事件(第3事件)
(56)平成23年 7月 8日 東京地裁 平22(行ウ)197号・平22(行ウ)210号・平22(行ウ)211号・平22(行ウ)212号・平22(行ウ)213号 在留特別許可をしない処分取消等請求事件
(57)平成23年 7月 6日 東京地裁 平22(ワ)15626号 除名処分無効確認等請求事件
(58)平成23年 6月29日 東京地裁 平21(ワ)40345号・平22(ワ)36010号 損害賠償等請求事件、不当利得返還請求事件
(59)平成23年 5月26日 神戸地裁 平21(ワ)913号 国家賠償請求事件 〔レッドパージ訴訟〕
(60)平成23年 5月25日 東京地裁 平22(行ウ)156号 難民の認定をしない処分取消請求事件
(61)平成23年 5月20日 仙台高裁 平22(行コ)8号 政府調査費返還代位請求控訴事件
(62)平成23年 5月18日 東京高裁 平22(行ケ)30号 裁決取消等請求事件
(63)平成23年 5月17日 東京地裁 平21(行ウ)17号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(64)平成23年 5月11日 神戸地裁 平21(行ウ)4号 政務調査費違法支出返還請求事件
(65)平成23年 4月26日 東京地裁 平22(行ウ)162号・平22(行ウ)448号・平22(行ウ)453号 在外日本人国民審査権確認等請求事件(甲事件)、在外日本人国民審査権確認等請求事件(乙事件)、在外日本人国民審査権確認等請求事件(丙事件)
(66)平成23年 4月 6日 大阪地裁 平20(ワ)14355号 損害賠償請求事件 〔目的外支出政務調査費損害賠償請求事件〕
(67)平成23年 3月24日 東京地裁 平20(ワ)17676号 損害賠償等請求事件
(68)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)303号 衆議院議員選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(69)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)268号 選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(70)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)257号 選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(71)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)256号 選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(72)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)235号 選挙無効請求事件
(73)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)234号 選挙無効請求事件
(74)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)207号 選挙無効請求事件
(75)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)206号 選挙無効請求事件
(76)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)203号 選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(77)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)201号 選挙無効請求事件
(78)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)200号 選挙無効請求事件
(79)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)199号 選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(80)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)189号 選挙無効請求事件
(81)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)188号 選挙無効請求事件
(82)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)130号 選挙無効請求事件
(83)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)129号 選挙無効請求事件
(84)平成23年 3月17日 名古屋高裁 平22(ネ)496号 損害賠償請求控訴事件
(85)平成23年 3月10日 東京高裁 平21(行コ)181号 懲戒処分取消等請求控訴事件
(86)平成23年 3月 8日 釧路地裁 平20(行ウ)5号 不当利得金返還請求事件
(87)平成23年 3月 8日 釧路地裁 平20(行ウ)1号 損害賠償請求事件
(88)平成23年 3月 4日 東京地裁 平21(行ウ)1号・平21(行ウ)7号 退去強制令書発付処分取消等請求事件
(89)平成23年 2月24日 大分地裁 平19(行ウ)9号 大分県政務調査費返還等請求事件
(90)平成23年 2月18日 東京地裁 平21(行ウ)513号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(91)平成23年 1月31日 東京高裁 平22(行コ)91号 損害賠償請求住民訴訟控訴事件
(92)平成23年 1月28日 福岡高裁宮崎支部 平22(行ケ)1号 選挙無効請求事件 〔参院選定数訴訟(違憲状態)・福岡高裁宮崎支部〕
(93)平成23年 1月26日 広島高裁松江支部 平22(行ケ)1号 選挙無効請求事件 〔参院選定数訴訟(違憲状態)・広島高裁松江支部〕
(94)平成23年 1月21日 福岡地裁 平21(行ウ)28号 政務調査費返還請求事件
(95)平成23年 1月20日 東京地裁 平20(ワ)13385号 損害賠償等請求事件
(96)平成23年 1月19日 宇都宮地裁 平20(行ウ)13号 政務調査費不当利得返還請求事件
(97)平成23年 1月14日 東京地裁 平21(行ウ)279号 在留特別許可をしない処分取消請求事件
(98)平成22年12月16日 東京高裁 平22(行ケ)24号 選挙無効請求事件 〔参院選定数訴訟(違憲状態)・東京高裁〕
(99)平成22年12月16日 広島高裁岡山支部 平22(行ケ)1号 選挙無効請求事件 〔参院選定数訴訟(違憲状態)・広島高裁岡山支部〕
(100)平成22年12月 1日 東京地裁 平21(行ウ)374号 退去強制令書発付処分取消等請求事件


政治と選挙の裁判例(裁判例リスト)

■「選挙 コンサルタント」に関する裁判例一覧【1-101】
https://www.senkyo.win/hanrei-senkyo-consultant/

■「選挙 立候補」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-senkyo-rikkouho/

■「政治活動 選挙運動」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seijikatsudou-senkyoundou/

■「公職選挙法 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kousyokusenkyohou-poster/

■「選挙 ビラ チラシ」に関する裁判例一覧【1~49】
https://www.senkyo.win/hanrei-senkyo-bira-chirashi/

■「政務活動費 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
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■「演説会 告知 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/senkyo-seiji-enzetsukai-kokuchi-poster/

■「公職選挙法 ポスター 掲示交渉」に関する裁判例一覧【101~210】
https://www.senkyo.win/kousyokusenkyohou-negotiate-put-up-poster/

■「政治ポスター貼り 公職選挙法 解釈」に関する裁判例一覧【211~327】
https://www.senkyo.win/political-poster-kousyokusenkyohou-explanation/

■「公職選挙法」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kousyokusenkyohou/

■「選挙 公報 広報 ポスター ビラ」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/senkyo-kouhou-poster-bira/

■「選挙妨害」に関する裁判例一覧【1~90】
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■「二連(三連)ポスター 政党 公認 候補者」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-2ren-3ren-poster-political-party-official-candidate/

■「個人(単独)ポスター 政党 公認 候補者」に関する裁判例一覧【1~100】
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■「政党 公認 候補者 公募 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
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■「告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター 政党 議員 政治家」に関する裁判例一覧【1~100】
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■「告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター 政党 公報 広報」に関する裁判例一覧【1~100】
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■「国政政党 地域政党 二連(三連)ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
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■「国政政党 地域政党 個人(単独)ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
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■「公認 候補者 公募 ポスター 国政政党 地域政党」に関する裁判例一覧【1~100】
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■「政治団体 公認 候補者 告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-political-organization-official-candidate-kokuji-kouji-kouei-kousetsu-keijiban-poster/

■「政治団体 後援会 選挙事務所 候補者 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-political-organization-kouenkai-senkyo-jimusho-official-candidate-poster/

■「政党 衆議院議員 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
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■「政党 参議院議員 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
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■「政党 地方議員 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-chihou-giin-poster/

■「政党 代議士 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
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■「政党 ポスター貼り ボランティア」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-poster-hari-volunteer/

■「政党 党員 入党 入会 獲得 募集 代行」に関する裁判例一覧【1~100】
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■「政治団体 党員 入党 入会 獲得 募集 代行」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seiji-dantai-nyuutou-nyuukai-kakutoku-boshuu-daikou/

■「後援会 入会 募集 獲得 代行」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kouenkai-nyuukai-boshuu-kakutoku-daikou/


■選挙の種類一覧
選挙①【衆議院議員総選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙②【参議院議員通常選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙③【一般選挙(地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙④【特別選挙(国政選挙|地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)


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