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政治と選挙Q&A「国政政党 地域政党 政治塾 政経塾 個人(単独)ポスター掲示(貼り)交渉代行」に関する裁判例(40)平成20年 3月27日 最高裁第三小法廷 平18(あ)348号 受託収賄被告事件 〔KSD事件〕

政治と選挙Q&A「国政政党 地域政党 政治塾 政経塾 個人(単独)ポスター掲示(貼り)交渉代行」に関する裁判例(40)平成20年 3月27日 最高裁第三小法廷 平18(あ)348号 受託収賄被告事件 〔KSD事件〕

裁判年月日  平成20年 3月27日  裁判所名  最高裁第三小法廷  裁判区分  決定
事件番号  平18(あ)348号
事件名  受託収賄被告事件 〔KSD事件〕
裁判結果  上告棄却  文献番号  2008WLJPCA03279002

要旨
◆参議院議員が、ある施策の実現を目指す者から、本会議における代表質問においてその施策実現のため有利な取り計らいを求める質問をされたい旨の請託を受け、さらに、他の参議院議員を含む国会議員に対し国会審議の場において同旨の質疑等を行うよう勧誘説得されたい旨の請託を受けて金員を収受したことが、受託収賄罪に当たるとされた事例

新判例体系
刑事法編 > 刑法 > 刑法〔明治四〇年法律… > 第二編 罪 > 第二五章 汚職の罪 > 第一九七条 > ○単純収賄罪・受託収… > (四)行為 > A 「職務ニ関シ」 > (4)職務の事例 > (イ)該当する事例 > (ⅹ)議員等の場合 > (f)国会議員の場合
◆参議院議員が、ある施策の実現を目指す者から、参議院本会議において内閣総理大臣の演説に対して所属会派を代表して質疑するに当たり、その施策の実現のため有利な取り計らいを求める質問をされたい旨の請託を受け、さらに、他の参議院議員を含む国会議員に対し国会審議の場において同旨の質疑等を行うよう勧誘説得されたい旨の請託を受け、これらの報酬として金員を受領したことは、その職務に関し賄賂を収受したものであって、受託収賄罪に当たる。

 

裁判経過
控訴審 平成17年12月19日 東京高裁 判決 平15(う)1892号 受託収賄被告事件 〔KSD事件・控訴審〕
第一審 平成15年 5月20日 東京地裁 判決 平13(刑わ)710号 各受託収賄被告事件 〔KSD関連元労働大臣収賄事件判決〕

出典
刑集 62巻3号250頁
裁時 1457号6頁
裁判所ウェブサイト
判タ 1274号91頁
判時 2012号148頁

評釈
前田巌・最高裁判所判例解説 刑事篇(平成20年度) 175頁
前田巌・曹時 63巻12号136頁
前田巌・ジュリ 1366号154頁[時の判例]
大石和彦・ジュリ臨増 1376号7頁(平20重判解)
前田巌・ジュリ増刊(最高裁時の判例6) 302頁(平成18年~平成20年)
Westlaw Japan・新判例解説 729号(2008WLJCC118)
岡田順太・白鴎大学法科大学院紀要 4号125頁
内海朋子・刑事法ジャーナル 17号90頁

参照条文
刑法197条1項

裁判年月日  平成20年 3月27日  裁判所名  最高裁第三小法廷  裁判区分  決定
事件番号  平18(あ)348号
事件名  受託収賄被告事件 〔KSD事件〕
裁判結果  上告棄却  文献番号  2008WLJPCA03279002

主文
本件各上告を棄却する。

理由
被告人X1の弁護人弘中惇一郎ほかの上告趣意は,憲法違反,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認の主張であり,被告人X2の弁護人山田有宏ほかの上告趣意は,事実誤認,単なる法令違反の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお,被告人X1の弁護人らの所論にかんがみ,職権で検討するに,原判決及びその是認する第1審判決の認定によれば,本件の事実関係は,次のとおりである。
すなわち,被告人X1は,参議院議員在職中の平成8年1月ころ,いわゆる職人を育成するための大学(以下「職人大学」という。)の設置を目指す財団法人の会長理事で,中小企業の社会的・経済的な発展向上を目的とする政治団体の実質的主宰者であるAから,参議院本会議において内閣総理大臣の演説に対して所属会派を代表して質疑するに当たり,国策として職人大学の設置を支援するよう提案するなど職人大学設置のため有利な取り計らいを求める質問をされたい旨の請託を受け,さらに,同年6月上旬ころ,他の参議院議員を含む国会議員に対しその所属する委員会等における国会審議の場において国務大臣等に職人大学設置のため有利な取り計らいを求める質疑等の職人大学設置を支援する活動を行うよう勧誘説得されたい旨の請託を受けた。そして,被告人X1は,これら各請託を受けたことなどの報酬として供与されるものであることを知りながら,また,被告人X2は,被告人X1が上記勧誘説得の請託を受けたことなどの報酬として供与されるものであることを知りながら,被告人両名は,共謀の上,Aらから,同月から平成10年7月まで前後合計26回にわたり,被告人X1が実質的に賃借して事務所として使用しているビルの部屋の賃料相当額合計2288万円の振込送金又は交付を受けた。さらに,被告人X1は,平成8年10月2日ころ,同様の趣旨でAから現金5000万円の交付を受けた。
以上のような事実関係によれば,被告人X1は,その職務に関し,Aから各請託を受けて各賄賂を収受したものにほかならないのであって,これと同旨の原判断は相当である。
よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 藤田宙靖 裁判官 堀籠幸男 裁判官 那須弘平 裁判官 田原睦夫 裁判官 近藤崇晴)

被告人X1の弁護人弘中惇一郎ほかの上告趣意
○ 上告趣意書
被告人X1に対する頭書被告事件について、上告の趣意は以下の通りである。
なお、以下、被告人X1については「X1被告」と、被告人X2については「X2被告」と、Aについては「A」と、またBについては「B」と言うこととする。
第1点 勧誘説得請託は本件で起訴されておらず、この点について受託収賄を認定した原判決は憲法31条に違反するものであり、破棄されなければならない(刑事訴訟法405条1号)
1 問題の所在
検察官は、起訴状において、本件公訴事実を、
「平成8年1月上旬ころ、東京都千代田区〈以下省略〉参議院議員会館731号室において、前記Aから、同月25日に開かれる参議院本会議において、被告人X1が内閣総理大臣の演説に対して質疑するに当たり、国策として前記大学の設置を支援するよう提案するなど同大学設置のため有利な取り計らいを求める質問をされたい旨の請託を受け、その請託を受けたことなどの報酬として・・・」
と主張した。
他方、平成14年1月11日付け釈明書の第5及び第9、同年1月31日付け釈明書の第2(3)によると、起訴状記載の「質問をされたい旨の請託を受け、その請託を受けたことなどの報酬として」の「など」には、「他の参議院議員を含む国会議員に対しその所属する委員会等において国務大臣等に職人大学設置のため有利な取り計らいを求める質疑等をするよう勧誘説得されたい旨の請託」が含まれる旨主張した。
しかし、この「など」に、「他の参議院議員を含む国会議員に対しその所属する委員会等において国務大臣等に職人大学設置のため有利な取り計らいを求める質疑等をするよう勧誘説得されたい旨の請託」を含めるという主張は、審判の対象を明らかにし、被告人の防御を全うさせるという訴因の機能に照らし失当である。
2 勧誘説得請託は検察官の訴因に含まれない
訴因が何であるかは、起訴状の記載によって定まる。起訴状の記載が曖昧である場合や、両様に理解できる場合などに冒頭陳述や釈明を参照することは許されるが、起訴状に文字として記載されていない「他の議員に勧誘誘説得されたい旨の請託」が、本件起訴状の訴因に含まれると理解することは不可能である。検察官がこのような記載をもって、受託収賄罪の請託としての記載として十分だと主張することは許されない。
仮に代表質問の他に他議員への働きかけをも請託の対象に含め、請託の対象を複数化するのであれば、起訴状の記載としては、少なくとも、
「平成8年1月上旬ころ、東京都千代田区〈以下省略〉参議院議員会館731号室において、前記Aから、同月25日に開かれる参議院本会議において、被告人X1が内閣総理大臣の演説に対して質疑するに当たり、国策として前記大学の設置を支援するよう提案するなど同大学設置のため有利な取り計らいを求める質問をされたい旨の請託などを受け、それらの請託を受けたことなどの報酬として・・・」
となるべきである。
しかし、起訴状の記載では、「その請託を受けたことなどの報酬として」となっている。この記載からは、請託の対象はあくまでも代表質問だけである一方、報酬の趣旨については上記の請託を受けたこと以外の趣旨が入っていることを示すために「報酬として」の前に「など」が入っていると理解するのが合理的である。
つまり、検察官は、起訴の段階では、他議員への働きかけの請託については、これを訴因に含めず、請託の対象は代表質問だけとしていたのである。
検察官が起訴の段階で請託の対象に他議員への働きかけを含めていなかったことは、
① 検察官が釈明した「他議員への働きかけが平成8年6月上旬ころである」との主張について(平成14年1月31日付け釈明書)、冒頭陳述では、「その後の平成8年4月ころ、Aは、職人大学の設置を早急・・・」(11頁)となっており、「平成8年6月上旬ころに請託をした」などという主張はどこにも出てこないこと
② 甲第26号証の立証趣旨では、「職人大学の件を代表質問で取り上げてもらいたい旨依頼した状況」となっているのに対し、甲第27号証の立証趣旨では、他議員への働きかけを依頼したなどといった立証趣旨が一言も書かれていないこと
から明らかである。
以上のとおり、「他の参議院議員を含む国会議員に対しその所属する委員会等において国務大臣等に職人大学設置のため有利な取り計らいを求める質疑等をするよう勧誘説得されたい旨の請託」が、訴因に含まれていないことは明白である。
3 検察官の論告
一審の論告で、検察官は、「X1が同月25日の参議院本会議における代表質問を行うに当たり、職人大学設置のため有利な取り計らいを求める質問をされたい旨の請託などを受け」(1頁7行目から9行目)と述べている。
注目すべきは、論告における「など」の位置が、起訴状とは変わっているということである。
すなわち、起訴状では、「請託を受け、その請託を受けたことなどの対価として」となっていたのに対し、論告では、「請託などを受け、その報酬として」と変わっている。これは、弁護人が一審弁論の第1編第3章第1で指摘したとおり、論告段階に至って、検察官が起訴状における「など」の位置がおかしいことに気づいたため、このように記載を改めたのである。
検察官は、釈明において、代表質問に関する請託の他に他の議員への働きかけの請託も主張した。しかし、請託が複数あるとするのであれば、上記のとおり、少なくとも「・・・旨の請託などをうけ、それらの請託を受けたことの報酬として」とされなければならない。検察官は、論告段階になって、この点を認識したため、請託が複数あることを示そうとして、「請託などを受け」と変更したのである。
つまり、検察官は、訴因変更もせずに他の議員への説得勧誘請託の主張を維持するとして、論告段階に至って、「など」の位置を「請託」の直後に移動させて請託を複数化し、訴因の内容を変更しようとしたのである。
これは、検察官は、起訴の段階では他の議員への働きかけ請託は予定していなかったが、代表質問請託の立証に不安を抱いたため、他の議員への働きかけ請託も付け加えたことを物語っている。
このような論告の記載からもわかるように、勧誘説得請託は、起訴当時から含まれていたものではなく、後から追加された主張なのである。
4 一審判決及び原判決について
以上のとおり、起訴状及び論告の記載を見れば、勧誘説得請託は、起訴当時から含まれていたものではなく、後から追加された主張であることは明白である。これは、裁判所に対し、訴因で定められた訴追対象事実と異なる内容の事実を犯罪行為の内容として認定するよう求めるものである。そして、代表質問請託と勧誘説得請託は請託の内容において全く異なるものであり、また、それぞれの請託は単独でも受託収賄罪における請託を構成しうる重要な犯罪事実であるから、このような請託を追加する場合には訴因変更が必要である(香城敏麿「訴因制度の構造(中)」判例時報1238号3頁、10頁)。
この点について、一審判決及び原判決は、検察官の冒頭陳述及び釈明書に上記「勧誘説得請託されたい旨の請託」の記載があること、弁護人においてその勧誘説得請託を念頭に置きながらAを尋問したことから、この点に関する防御を尽くしているといえるので、勧誘説得請託について訴因変更は不要であると判示する。
しかし、ある請託が起訴状に記載されていないとき、その後の審理の中で訴因変更手続がとられないまま、当該請託について言及され、弁護人が当該請託が訴因として追加される可能性を認識していれば、それで足りるというものではない。ある犯罪事実が当初の訴因の中に含まれていたときですら、争点化のために必要な措置を採らなければ不意打ちとして違法となりうる場合があることは、最高裁昭和58年12月13日第三小法廷判決(刑集37巻10号1581頁)が示すところである。しかし、本件においては、そもそも起訴状の中に勧誘説得請託が記載されていないのであるから、争点化によって救済される場合ではないのである。
実際にも、冒頭陳述の中で勧誘説得請託に言及されていたとしても、その段階では訴因が変更されたわけではなく、この説得が訴因として追加されるかどうかは可能性のレベルにとどまる。弁護人としては、現実に追加された後に初めて、新訴因に対する反証活動を行う義務を負うのであり、それ以前にはそのような義務は負わない。訴因変更がなされれば弁護人はこれに対して全面的な反証を行うこととなるのであり、それ以前の段階は検察官、弁護人双方が攻撃防御を尽くしたことにはならない。
厳格な手続が要求される刑事訴訟において、一審・原審のような緩やかな手続が許されるはずがない。審判の対象と検察官の主張の明確化は、訴因変更という厳格な手続の中で行われるべきことは、刑事訴訟の基本中の基本であり、第一審判決及び原判決の上記のような考え方は著しく不当である。
また、原判決は、「代表質問請託と勧誘説得請託は、いずれも1個の収賄における請託として主張されているものであるから、その一部を明示しなくとも受託収賄罪の訴因の特定に欠けるところはなく」(55頁)と判示するが、請託の内容は、賄賂性の要件ないし認識と密接に関連する重要な事実であるから、それが明示されなくとも訴因の特定に欠けるところがないとの原判決の判示は失当である。また、訴因として掲げられていない事実を犯罪事実として認定することの違法性は訴因の特定とは別の問題であり、原判決の上記判示は意味がない。
さらに、原判決は、「公訴事実の『など』は、その前後の記載内容からすると、代表質問請託以外の請託の存在を示すものであると解釈することも十分可能であるとの判断を示しており、その判断が不当であるとはいえない」(56頁)とも判示するが、仮に代表質問請託以外の請託の存在を示すものであると解釈することも可能であったとしても、それがどのような請託なのかまでは全く不明である。「他にも請託がありうる」という抽象的な認識から、「他の参議院議員を含む国会議員に対しその所属する委員会等において国務大臣等に職人大学設置のため有利な取り計らいを求める質疑等をするよう勧誘説得されたい旨の〔勧誘説得〕請託」があったという個別的、具体的な認識が生じることはありえない。したがって、この点からも、勧誘説得請託が審判の対象となっていないことは明らかである。
5 結論
以上のとおり、本件では、勧誘説得請託が訴因に含まれていないにもかかわらず、それを「請託」として認定したものである。これは、「検察官が審判を求めていない犯罪事実を裁判所が職権で認定することであり、起訴によらずに犯罪事実を認定するに等しい違法な措置である」(香城敏麿「訴因制度の構造(中)」判例時報1238号3頁、14頁)。
このような事態は、法律の定める手続によらないで刑罰を科するものであるから、第一審判決を是認した原判決は憲法31条に違反する。
第2点 本件で受託収賄を認めた原判決は、最高裁判決と相反する判断をしたものであり、破棄されなければならない(刑事訴訟法405条2号)
1 国会議員と収賄罪
(1) 国会議員は、刑法にいう「公務員」であるから(刑法7条1項)、その職務に関し、賄賂を収受等したときは収賄罪が成立する(刑法197条1項。その他の収賄罪は、この単純収賄罪に要件と刑罰を加重したものであり、基本的な構造は同じである)。
ところで、一般の公務員は、給与は国等から支給されるだけであり、それ以外に国民から金銭等を受けるということはない。これに対し、国会議員は、国から歳費等を受ける以外に、議員の政治理念に賛同する個人・法人からの浄財(政治献金)を受けることが制度的に予定されている(政治資金規正法参照)。したがって、国会議員については、一般の公務員のように、国民から金銭等を受け取ること自体が、職務執行の公正とそれに対する社会の信頼を揺るがすということはない。
他方、国会議員は、国権の最高機関である国会を構成し、その一員として、日本におけるあらゆる問題を検討し、審議する権能が与えられている。したがって、収賄罪における「職務行為」及び「職務密接関連行為」の考えを形式的にあてはめるならば、国会議員は、すべての事象が「その職務に関〔する〕」とされる可能性がある。後述の大阪タクシー汚職事件の最高裁決定についての調査官解説でも、「国政のほぼ無制限の範囲にわたる事項に関して包括的な審議権を与えられている国会議員のような公務員に対しては、一般的、抽象的なレベルでは、あらゆる形態の政治献金、政治資金の提供が、ほとんどの場合職務権限と関連性をもつことになる可能性を否定しえないであろう」(『最高裁判所判例解説 刑事編 昭和63年度』207頁、222頁〔池田眞一〕)とされている。
このようにすべての政治献金が職務権限と関連すると判断されるのであれば、「その職務に関し」という要件は事実上無に帰することとなる。これは、この要件が本来予定されている、収賄罪の無限定な拡散を防止するための機能を果たしえないことを意味するものであり、刑法の解釈として妥当でない。
さらに、政治献金と賄賂の区別が曖昧であるならば、国会議員は、収賄罪に問われる恐れによって萎縮し、適正な政治資金の受領も回避せざるを得なくなるのであり、国会議員の政治活動に対して不当な制約を生じさせる虞が強い。
したがって、刑法の適切な解釈によって、国会議員に収賄罪が成立する範囲を明確に画定することが必要となる。
(2) この点は、これまでの判例においても意識されてきたところであり、大阪タクシー汚職事件最高裁決定以前の判例の態度については、「国会議員の場合、その職務の内容からみて、一般的職務権限の理論を機械的に適用すれば、すべての事項が、その職務権限に属する事項となる可能性があり、賄賂罪の成立範囲があまりにも拡大しすぎ、正当な政治活動を制約するおそれがあるという配慮があったように推測される」と評されている(『大コンメンタール刑法 第二版』第10巻50頁〔古田佑紀=渡辺咲子=五十嵐さおり〕)。その上で、同書は、「賄賂罪の成立範囲が拡大しすぎるおそれがあるという問題については、提供された利益に関して、その目的、手段、提供の態様等に照らし、賄賂と認めるに足りる不法性があるかどうか、あるいは、政治活動の範囲内として社会通念上許された範囲にあるかという観点から考慮を加えることが、これらの政治的公務員については妥当であるように思われる」としている(同書同頁)。
また、「政治資金規正法において、国会議員、都道府県議会議員等の職にある者に対する政治資金の提供が当然の前提として考えられているのは・・・政治的公務員については準職務行為に当たるような行為であっても、当然に政治活動の分野に属するものとして考えられる分野があることを示す」としたうえで、国会議員について、「議案を提出するための事前調査や議会における調査権行使のための事前調査」、あるいは「自己の主張する政策の広報活動」などについては、「本来の政治活動の分野として議員のような政治的公務員の行うことが予定されている分野と考えるべきもののように思われるのであって、そうであるとすれば、このような活動のための資金の授受は、それ自体としては職務の不可買収性との関係でみる限り、一種の正当行為と考えられる余地があるのではないだろうか」、という指摘が検察官(当時)からも指摘されているところである(古田佑紀「政治献金と賄賂」警察学論集41巻4号48頁、55~56頁)。これは、上記の調査官解説においても、「示唆に富む」(『最高裁判所判例解説 刑事編 昭和63年度』222頁)とされているとおり、基本的に正当な指摘である。
2 最高裁決定が定立した基準
(1) 最高裁は、大阪タクシー汚職事件決定(最高裁昭和58年(あ)第770号同63年4月11日第三小法廷決定・刑集42巻4号419頁)において、「衆議院議員に対し、同院大蔵委員会で審査中の法律案につき、関係業者の利益のため廃案、修正になるよう、同院における審議、表決に当たって自らその旨の意思を表明すること及び同委員会委員を含む他の議員に対してその旨説得勧誘することを請託して金員を供与したときは、当該議員が同委員会委員でなくても、贈賄罪が成立する」と判示した。
この決定の中で、最高裁は、同事件の被告人の行為が、「単に被告人らの利益にかなう政治活動を一般的に期待するにとどまらず」、関係業者の利益のため、委員会で審査中の特定の法案を廃案、修正になるよう働き掛け、金員を供与したものであると認定して、贈賄罪の成立を認めた。すなわち、最高裁は、「自らの利益にかなう政治活動を一般的に期待する」場合と、「自らの利益のため、具体的な法案の廃案、修正を求める」場合を分け、この対比において後者で贈賄罪が成立すると判断することによって、逆に前者では贈賄罪が成立しないことを示したのである。
(2) この「自らの利益にかなう政治活動を一般的に期待する」という表現は、上記最高裁決定の原審である大阪高裁がその判決の中で用いたものである。
そこでは、「政治献金がなんらかのかたちでの利益の見返りを期待してなされるという現状にかんがみると、献金者の利益を目的とする場合でも、献金者の利益にかなう政治活動を一般的に期待してなされたと認められる限り、その資金の贈与は、政治家が公務員として有する職務権限の行使に関する行為と対価関係に立たないものとして、賄賂性は否定されることになると思われる。しかし・・・職務権限の行使に関して具体的な利益を期待する趣旨のものと認められる場合においては、上記の政治献金の本来の性格、贈収賄罪の立法趣旨ないし保護法益に照らし、その資金賄賂性は肯定されることになると解すべきである」(大阪高裁昭和58年2月10日判決・刑裁月報15巻1~2号1頁、65頁)とされた。すなわち、大阪高裁判決では、「献金者の利益にかなう政治活動を一般的に期待してなされ〔るもの〕」と、「具体的な利益を期待する趣旨のもの」とを対比する形で、贈収賄罪の成否が、より明瞭に述べられている。
上記の最高裁決定は、この大阪高裁判決を受けたものであり、大阪高裁判決と同一の表現が用いられていることから、最高裁は、この大阪高裁の考え方を基本的に是認していることが明らかである。
(3) したがって、最高裁は、国会議員に収賄罪が成立するか否かを判定するにあたり、「当該献金が、献金者の利益にかなう政治活動を一般的に期待してなされたものか、あるいは、具体的な利益を期待してなされたものか」をメルクマールにしていると解される。
(4) なお、最高裁の判例では、「正当な職務行為の依頼であっても、受託収賄罪は成立する」とされている(最高裁昭和27年7月22日第三小法廷判決・刑集6巻7号927頁)ため、上記の基準とこの判決との関係が問題となりうる。
しかし、この昭和27年判決の事案は、税務署職員であった被告人が財産税の査定について税額修正の請託を受け、修正申告どおりの決定をしたところ、この処分に対する謝礼であることを知りながら金員を収受したというものである。このような一般の公務員は、国民から金銭を受け取ることが許されておらず、これを授受すること自体が職務の廉潔性を汚すことは明らかである。したがって、このような一般の公務員の場合には、依頼された職務が正当であるかどうかは収賄罪の成否に影響を及ぼさないというべきである。
これに対し、国会議員の場合には、国民から政治資金の提供を受けることが制度的に保障されている。国会議員が正当な職務行為に対して政治資金を受けることが収賄罪とされるのであれば、国会議員は職務を遂行できなくなる危険性が大きい。
もともと上記の昭和27年最高裁判決に関しては、判示自体は正当としながら、「もっとも、事実上、不正な行為ないし妥当を欠く行為についての請託が大部分であろう」(『大コンメンタール刑法 第二版』第10巻141頁〔河上和雄=小川新二〕)と説明されていたのであり、この点は、国会議員に収賄罪が認められた過去の事例(以下の3(2)参照)について、そのまま当てはまるところである。
したがって、少なくとも国会議員の収賄罪の成否については、上記のメルクマールが事実上の基準として適用されると解すべきである。
3 上記基準の妥当性
(1) 最高裁が採用したこの基準は、刑法の解釈として妥当なものであり、このことは実際の政治過程に照らしても、また、国会議員の収賄が問題となった過去の事例に照らしても、十分に首肯することができる。
まず、実際の政治過程においては、献金者の期待が、当該本人ないし所属団体の私的な利益追求である場合には、献金者はそのような依頼をしたことを公にすることはできない。たとえば、「ある道路の新設予定箇所に関する情報を内報して欲しい」という依頼(後記の最高裁平成12年3月22日第二小法廷決定・刑集54巻3号119頁の事例参照)の場合である。このような場合には、献金者は、依頼した事実を公表することはできないし、依頼内容を公的な政治ルートに持ち出して解決することもできない。献金者は内密に頼み込み、議員もまたこれを秘密に受け入れて、金を受け取る。ここでは賄賂性も対価性も明らかに認められる。
これに対し、献金者が、議員が献金者の利益にかなう政治活動を行うことを一般的に期待しているだけであり、具体的な利益を求めているのではない場合には、献金者は、依頼の内容を隠すことはない。議員に陳情し、献金者の主張が認められるべきである所以を説明し、当該議員がこれを受け入れて献金者の主張を広く同僚議員や内閣に働き掛け、必要であれば所要の法律を制定するなどして、所期の目的を実現していくことを求めるのであり、そのために献金を行うのである。ここでは、献金者は、公的な政治ルートで問題を解決することが可能なのであり、そのために議員を支援するのである。このような場合の献金は正に政治献金であり、賄賂と呼ぶことはできない。
贈収賄が違法であり、これが刑事罰の対象になることは常識に属する。贈賄側に具体的な利益を生じさせる事項については、切羽詰って、あるいは事態の打開を図るため、刑罰が予測されても、密かに賄賂を提供して当該事項の実現を図るという選択をする人がいることは想定できる。しかし、政治的に解決可能であり、献金者側に具体的な利益を生じさせない場合に賄賂の危険を冒すということは考えられない。そのような場合には、一般的な政治資金を提供し、正規の政治ルートにおいて問題を解決すればよいのであって、賄賂という違法な手段に訴える必要はないからである。
このように、献金者の目指すものが、具体的利益か、一般的期待かによって、賄賂かそうでないものかを分けるという最高裁の基準が、政治過程の実際に照らしても正しいものであることは明らかである。
(2) 次に、これまで国会議員が収賄罪に問われた事例を見ても、この基準の正しさが裏づけられる。最近の事例において、献金者が、誰に、どのような依頼をしたか、その結果及びこれに対する判決をまとめると、別紙「国会議員の受託収賄事件」のとおりであり、これらの事例では、いずれも贈収賄が成立するとされている(この表では、大阪タクシー汚職事件及び本件前約20年以内の事件を取り上げた)。ここでは、特に、依頼者が国会議員にどのような事項を依頼をしたかを見ると、以下のとおりである(複数の判決が下された場合は、最終審を挙げている)。
・ 衆議院議員に対し、石油ガス税法案を廃案、または献金者に有利に修正するよう、衆議院における審議、表決に当たって自らその旨の意思を表明すること及び同院大蔵委員会委員を含む他の議員に対してその旨説得勧誘すること(最高裁昭和63年4月11日第三小法廷決定・刑集42巻4号419頁)
・ 参議院議員に対し、砂利船の「一代限り」の制限を撤廃するよう行政指導を行うことなどを内容とする質問を内閣にすること(大阪地裁平成4年2月25日判決・判例時報1427号3頁)
・ 衆議院議員に対し、就職協定が存続、遵守されないとリクルートの事業に大きな障害となるので、衆議院文教委員会で、国の行政機関に対し、人事課長会議での申合せの遵守の徹底方を求めるとの質問をすること(東京地裁平成6年12月21日判決・判例タイムズ880号70頁)
・ 衆議院議員に対し、撚糸工連の設備共同廃棄事業について、衆議院商工委員会で、通産大臣等に撚糸工連に有利な質問をすること(東京高裁平成8年12月11日判決・判例時報1594号3頁)
・ 官房長官(衆議院議員)に対し、就職協定が存続、遵守されないとリクルートの事業に支障を来すので、国の行政機関において就職協定の趣旨に沿った適切な対応をするよう尽力すること(最高裁平成11年10月20日第一小法定決定・刑集53巻7号641頁)
・ 北海道開発庁長官(衆議院議員)に対し、北海道内の自動車道の新設予定地に関する情報を内報すること、建設事業に特定の会社が参加できるよう札幌市等に働き掛けること、北海道東北開発公庫の融資で有利な取り計らいが受けられるよう同公庫に働き掛けること(最高裁平成12年3月22日第二小法廷決定・刑集54巻3号119頁)
・ 防衛庁政務次官(衆議院議員)に対し、防衛庁の救難飛行艇の試作製造分担の決定に際し、富士重工業に有利な取り計らいをすること(東京高裁平成12年9月28日判決・判例タイムズ1044号300頁)
・ 衆議院議員に対し、公正取引委員会が独占禁止法違反の疑いをもって調査中の審査案件について、同委員会の委員長に、これを告発しないよう働き掛けること(最高裁平成15年1月14日第二小法廷決定・判例タイムズ1113号132頁)
・ 参議院議員に対し、参議院労働委員会で、外国人研修生の国内滞在期間を2年から3年に延長するよう求める質問をすること(東京高裁平成16年1月29日判決・公刊物未登載)
・ 建設大臣(衆議院議員)に対し、建設省職員の早期退職の勧奨に際し、特定の建設会社を再就職先として斡旋すること、指名競争入札で同社の等級をより上位にするよう取り計らうこと(最高裁平成16年9月7日第三小法廷決定・公刊物未登載)
このように、過去、国会議員に収賄罪が認められた事例は、いずれも献金者において具体的な利益を得ることを目的としていたものばかりであり、その多くは、依頼された内容を実行すること自体が違法となるものであった。また、このような具体的利益の実現が目標とされていた場合は、これに対する資金提供も依頼と同時ないしその直後になされているのが通例である。
これと対照的に、国会議員に対する献金が、献金者の利益にかなう政治活動を一般的に期待してなされたものである場合には、これが賄賂であるとして贈収賄に問われた事例はないのであり、これまでの検察実務も、上に述べた最高裁の基準に従っていたことが推察される。
(3) 以上のように、「当該献金が、献金者の利益にかなう政治活動を一般的に期待してなされたものか、あるいは、具体的な利益を期待してなされたものか」によって収賄罪の成否を判定するという最高裁の基準は極めて適切なものである。
なお、この基準にいう利益が「具体的」であるか否かの判定にあたっては、上に掲げた判例に照らすと、以下のような要素を参酌すべきである。
・ 依頼の内容が、本来は許されない違法ないし不当なものかどうか。
・ 依頼の内容が、献金者に金銭的な利益をもたらす、あるいはその金銭的な被害を減少させるものかどうか。
・ 依頼の実現は献金者にとって急務であったか、「いつまで」という特定の時間的制約は存在したか。
・ 依頼を受けた国会議員は、それを受けて、いつ、どのような行為をしたか。
・ 依頼と献金は同時に行われたか、時間的に隔たっていたか。
4 本件で収賄罪が成立しないこと
以上の理を本件に適用すれば、被告人らについて収賄罪が成立しないことは明らかである。
(1) 請託事項と贈賄者の関係
まず、もっとも特徴的なこととして、本件において贈賄者とされるAが依頼した事項は、資金提供者側の利益を図る内容ではない。これは、過去において国会議員に対する贈収賄が問題とされ有罪とされた全ての事件と全く異なる点である。
すなわち、贈賄者とされるAは、X1被告に対して職人大学の設立を図るため代表質問でこの問題を取り上げるよう請託し、あるいは他の国会議員に勧誘説得するよう請託したとされる(なお、勧誘説得請託については第1点で論じた問題がある)。しかし、この職人大学の設立は、A個人にとっても、同人が理事長をしていた財団法人a事業団及び財団法人b事業団にとっても、さらには同人が組合長をしていたc協同組合にとっても、何の利益も生まない事柄である。「具体的利益」はもとより、抽象的にも間接的にも、どのような形での利益も生まないのである。当然のことながら、d連盟にも利益をもたらさない。このことは、第3点、第1、3(8)に記載した「e大学」の内容、運営、スタッフなどからも明らかである。さらに、Aは、職人大学(e大学)について理事等として関与することも予定されていなかったのであるから、名誉や名声を得ようとして職人大学を推進したということもない(もっとも、結果として社会的評価が高まることを認識して金員を提供すること自体を賄賂と評価すべきものではない。そのような解釈は、公共のために資金を提供すること自体を否定するものである)。
この点は、同じくAが依頼した「外国人研修生の国内滞在期間を2年から3年に延長する」という内容が、同人が理事長を務めていた財団法人b事業団に大きな利益をもたらすことと好対照を成している。
また、職人大学設立というその内容は、日本の伝統を支え、さらに国際競争力の源となってきた職人について、後継者の育成確保のため、職人の技能を養成し、資格を与える制度を作るというものであり、特定の人やグループから反対が出されるようなものではない。当然のことながら、政治の世界でこれを実現していくためには、声を大きく上げ、賛同者を増やし、政策課題の中に取り込んでいくことが必要となるが、Aも、このために、様々な場所で職人大学の構想を語り、設立の必要性を説いた。これに対し、上に見た多数の国会議員収賄事例では、贈賄者が、請託した国会議員以外の人たちに広く同一事項を説き、その正当性を訴えたなどという事例はない。
そして、最終的には、この職人大学の構想は、政府の施策となり、「e大学」(埼玉県行田市)として結実した。このように、Aが請託したという職人大学は、正規の政治過程で実現可能な提案であったのであり、X1被告自身が請託を受けたとされる以前からこの問題について意欲的であったという点も相俟って、公式の政治過程を通して実際にも実現したのである。そこには、賄賂などという秘密の金を用い、裏のルートでなければ解決できない問題は存在せず、贈収賄という罪を犯さなければならない事情は皆無であった。当然のことながら、何千万円という金を払ってもペイするという利益もなかったし、それだけの費用を投じても回避しなければならない損害も予測されていなかった。
このように、本件で請託事項とされる職人大学の構想は、政治的にも法的にも正当なものであり、誰に対しても堂々と提言できる内容であって、現に与党を通じて政府の施策となって実現したものである。さらには、請託者は、この構想が実現することによって、何らの利益も得ないのであるから、その実現に向けて賄賂を供与しようという動機がそもそも存在しない。公式の政治過程の中で実現可能であり、しかも自らには一銭の利得も生じない政策を実現させるために、刑事罰の対象となる賄賂を提供するなどということはありえない。そのような贈収賄を想定すること自体が著しく不自然かつ不合理というべきである。
(2) 請託を受けたとされるX1被告がとった行動
X1被告は、請託を受け、参議院の代表質問の中でこの問題を取り上げたとされる。この点は、一見すると、院の委員会での質問と類似しているように思われるが、両者は、厳格に区別して考える必要がある。
まず、「国会における議案の審議については、国会法を中心とする法制上も、実際の国会運営においても、委員会中心主義がとられて〔いる〕」(『最高裁判所判例解説 刑事編 昭和63年度』207頁、211頁〔池田眞一〕)のであり、委員会は、法案を実質的に審議する場である。したがって、委員会における質疑は、非常に細かい論点にも及ぶし、関係者の利害関係に及ぶこともある。実際にも、これに藉口して、特定の関係者の利益を図る質問がなされたことがあるのは、上記の事例で見たとおりである。さらに、委員会での質問の内容は、基本的に質問者たる議員に委ねられているのであり、そこに議員の裁量ないし恣意が入り込む余地がある。
これに対し、本会議での代表質問は、政府の基本的政策・方針を問うものと位置づけられているのであり、個別の利害関係に及ぶことは認められていない。特に、与党の代表質問は、党の政見や方針に触れつつ、関係大臣の所信を明らかにさせるという役割を担っているのであり、個々の具体的な論点について議論をするためのものではない。
代表質問を行うのが、g党を代表する地位にある者(参議院では、議員会長、幹事長、政審会長、稀に、国対委員長)に限られているのも、与党の代表質問のこのような特質のためである。
さらに、代表質問を作成するにあたって、参議院g党では、党の政策スタッフが関与し、最終的には党の執行部会(約30人)を経て承認されるものであるから、質問者の個人的な関心や利害で内容を決めることはできない。X1被告のように院の重鎮と呼ばれる立場になれば、自らの発意で、ある問題を取り上げるよう提案することはできるであろうが、それも党全体という公的な観点から見て質問に価するものでなければ、党の執行部会の了承を得ることはできない。
すなわち、院の本会議での代表質問で取り上げられる問題は、政府の基本政策・方針に係るものであり、与党としてその意義が十分に認められるものに限られる。このように、代表質問は国権の最高機関である国会を構成する2つの院において行われる各種の行為の中で、最も公的な色彩が強いものであり、その中に質問者個人の恣意が入る余地は皆無といってよい。「それでも、委員会での質問に見られるように、質問者が特定の者の利益を図るために質問をする可能性はあるのではないか」という疑問に対しては、「本件でのX1被告の代表質問は、請託者とされるAの利益を図るものではなかったのであり、この点が収賄の先例事例とは全く異なっている」と指摘すれば十分であろう。
以上のように、本件において請託を受けて行ったとされるX1被告の行為は、参議院本会議での代表質問であるが、これは院内で行われるものの中で最も公的度合が強いものであり、その質問の中に特定の者の利益を図る質問を入れるということはありえないし、事実においてもX1被告の質問はそのようなものではなかった。
なお、この点とは別に、与党の代表質問は、党を代表して行うという性格が強い。このときには、「議員としての活動と政党の一員としての活動の区別が困難となってくる。このような場合、どこからが議員としての職務権限に属する事項であり、どこまでが政党の活動に属する事項かを認定することが実際上むずかしい。現在の一般的職務権限の理論及び職務密接関連行為の考え方からすれば、このような場合には、職務性を肯定することが論理的帰結であろう。しかし、政治的公務員について、形式的にこのような判断をすることは、その本質からみて、問題がある」(『大コンメンタール刑法 第二版』第10巻52頁〔古田佑紀=渡辺咲子=五十嵐さおり〕)と指摘されていることも触れておく。
(3) 請託と献金の時間的間隔
本件では、最も重大な5000万円の賄賂は、平成8年1月10日の請託から、約9ヶ月後の同年10月2日にX1被告に提供されたとされる(家賃負担は、勧誘説得請託との関係が強いので、これとの関係で論じる)。
しかも、その間、請託をしたというAは金銭提供について何ら関心を示さず、直前の同年9月にX1被告らとドイツに視察に行ったときも、金銭について何の話もしていない(詳細は、後記第3点、第1、2(4)、3(7)参照)。
そして、同年9月27日に衆議院が解散されると、突如、これに藉口して、衆議院議員選挙の候補者を応援するための資金という名目で5000万円を提供したとされる。
しかし、請託から賄賂の提供まで9ヶ月という期間は他の収賄事件では例を見ない。密室での依頼と承諾と同時に賄賂が授受されるというのが通常のパターンなのであり、そのことは不相当な行為を行う対価である賄賂というものの性質に照らしてみれば容易に納得される。渡す側にすれば、依頼と同時に金を渡して相手方を不相当行為にコミットさせたいし、受ける側にすれば、依頼と同時に貰って確実に利益を実現しておきたいのである。
しかるに本件では、請託時に金銭の話がされていないのはもちろん、その後も全く話されていない。そればかりか、金について相手方にそれとなく打診するということもないし、贈賄側で内部的に検討したということもない(Aに対する判決〔東京地裁平成14年3月26日判決・判例タイムズ1120号290頁〕でも、「本件贈賄については、いずれの贈賄も判示請託の後に企図したもので、当初から賄賂供与を手段として請託したものではなかった」と認定されている)。
そのような状態で9ヶ月が推移したところ、衆議院が解散になったので、選挙応援の名目で5000万円を提供したというのであるが、衆議院の解散は予め想定できる事柄ではない。少なくとも請託があったとされるその年の1月には絶対にわからなかった。請託時に賄賂の話をしなくとも賄賂罪は成立しうるとしても、それでは贈賄側であるAは、いつ、いくらを渡すかについて、どのように考えていたことになるのか。「いつかやってくる衆議院解散のときに渡そう」と思っていたというのだろうか。そうであったとしたら、それまでの間に、解散の見通しなどについて、少なくとも内部的には話合ったりするはずである。それもないのであれば、「解散になったので、これを口実にして賄賂を提供しよう」という話があったと考えるより、「解散になったので、この機会に政治資金を提供しよう」という話があったと考える方が遥かに自然である。すなわち、Aの供述を前提としても、5000万円は政治資金であって、賄賂ではないと認定される。
なお、X1被告と同日にAから2000万円を受け取ったとして収賄罪に問われたC参議院議員に対する東京地裁の判決(平成14年9月6日・公刊物未登載)では、「Bは、Aが〔C〕被告人に2000万円を交付した同じ時期に、参議院議員であるX1議員に5000万円を、選挙を控えた衆議院議員については、1人に1000万円を、二、三人に500万円を、数人に200万円を配った旨供述している上、Aからこれらの資金繰りを指示されたf社の経理担当のD常務理事(以下「D理事」という。)は、検察官に対し、「平成8年9月30日にAから〔C〕被告人に渡す2000万円をf社の資金から準備するよう指示を受け、翌10月1日ころ〔C〕被告人に渡す2000万円を含めて1億円をf社の資金から準備するよう指示された。」旨供述しており、この経緯からすればAが〔C〕被告人に交付した2000万円には他の議員に配った金とは異なる意味合いがあったと理解できる」と判示されている。このように、Aが10月1日に用意させた1億円のうち、Cに渡された2000万円とX1被告を含むそれ以外の議員に渡されたそれ以外の部分では、金銭の性格が異なることが認定されている(C議員に対する収賄被告事件は、上記のとおり判示した東京地裁判決が平成16年1月29日の東京高裁判決で維持され確定している)。このように、X1被告に対する5000万円を賄賂と認定することは、C議員に対する収賄被告事件の確定判決の認定とも矛盾するものであり、このような不統一は最高裁によって是正されなければならない。
ところで、Aは、C議員に対し、平成7年11月上旬と翌平成8年3月下旬に、外国人研修生の国内滞在期間を延長することを求める旨を委員会で質問するよう請託し、これに応じて同議員は平成7年11月上旬及び平成8年4月上旬に、この趣旨の質問を行い、これに対する賄賂として平成8年10月2日に2000万円が提供されたとされる(外国人研修生の国内滞在期間の延長が、Aが理事長を務める財団法人b事業団に大きな利益をもたらすことは上述したとおりである)。したがって、C議員の場合には、請託から賄賂授受までは最大11ヶ月の間があるので、X1被告の場合にも請託から賄賂収受まで9ヶ月あっても不合理ではないかを検討する。
この点、C議員の場合には、平成8年9月には、法務省が外国人研修生の期間延長をほぼ了解したため、その実施が見込まれるようになったという客観的状況の好転があった(現実にも翌平成9年4月に期間延長は実施されている)。しかも、同月下旬には、C議員本人からAに対して、「理事長、大変、申し訳ありませんが、ご支援をお願いしたいのですが」、「2000万円ほどお願いしたいのですが」との発言があり、C議員が主観的にも賄賂を要求したとされる。
これに対して、X1被告の場合には、職人大学の設立が可能になったと見るだけの客観的状況の好転は存在していない。職人大学の設立は、平成8年10月総選挙におけるg党の公約となったが、これをもって実現が確実になったと見るのは早計に過ぎる。文部省が財団法人e大学設立準備財団を認可したのは平成11年2月であり、実際にe大学が開校したのは平成13年4月である。g党の公約に入ったことは、Aにとってg党ないしX1被告を選挙でより一層強く応援する契機にはなったが、職人大学の設立が内定したと安心できる状況にはなっていなかったのである。また、Aの供述(平成13年3月16日付検察官調書)においても、Bは、代表質問と議員連盟を理由として5000万円を提供することを提言しているのであり、職人大学の設立がg党の公約に入ったことを理由とはしていない。
さらに、X1被告が5000万円の要求をしたことがないことはAも一貫して認めるところである。
このように、C議員の事例では、請託から約11ヶ月が経過した頃になって、請託した事項の実現が可能となり、かつ、収賄者本人からの要求があったというのであるから、この時期に賄賂が提供されたとしても不自然とは考えられない。しかし、X1被告の場合には、そのような状況は皆無であり、請託から9ヶ月も経った後に、突如として賄賂が提供されるという事態が不自然であることは明らかである。
(4) 問題解決の緊急性
大阪タクシー汚職事件のように、法案が提出されているのであれば、これを廃案にし、あるいは修正するにあたっては、国会の会期中という時間的制約がある。就職協定を守らせるというのであれば、協定で定められた日まで行政機関にこれを遵守させなければならない。道路新設予定箇所を内報してもらうのであれば、道路計画が公表された後では遅い。
このように、上記の収賄事例では、贈賄者側は問題を解決するために時間的制約を負っている。
これに対し、本件では、代表質問請託があったとされる平成8年1月の段階では、この問題について政府がどのような姿勢かも決まっていなかったのであり、Aにとっては、これから徐々に機運を高めていこうという段階であった。この点は、同年6月に職人大学の議員連盟が出来たときも殆ど変わりがない。議員同士の意見交換を行い、設立へ向けて党内外の意見を集約していこうという段階であって、まだこの時点では与党としての政策にも入っていないし、後に第三セクター方式で運営される「e大学」の構想すら出来ていない。さらに言えば、「職人大学」(e大学)は、第三セクター方式で運営されることになったのであるから、そもそも関連法案を作成する必要はないし、これが委員会で審議されることもない。
このようなときに、法案審議を基本とする委員会等において、「国務大臣等に職人大学設置のため有利な取り計らいを求める質問等をする」という事態が到底想定し難いし、そのために勧誘説得するということもありえない。議員間で議論することは当然あるであろうが、これは正に議員の政治的活動そのものであり、これについて献金(家賃相当額の負担)を受けたとしても、それ自体は「一種の正当行為」と考えるべきことは前述のとおりである。
仮にそうでなくとも、大阪タクシー汚職事件における勧誘説得請託は、法案が提出され、これについての委員会質問が予定されている時期になされたものであった。しかるに、本件では、上記のとおり、この勧誘説得請託がなされたというのは、職人大学の構想すら確定しておらず、与党の政策にも入っていなかった時期である。このような時期における議員間の意見交換が収賄罪における勧誘説得請託に問擬すべきものでないことは、大阪タクシー汚職事件の最高裁決定から明らかである。
さらに、平成8年10月の段階で賄賂を提供するような急速な事態の進展等があったわけでないことは、上に述べたとおりである。
本件のように、職人大学問題をいつまでに解決しなければならないという時期的制約がないとき、Aにとって、賄賂を提供しようと考える強い理由はないし、まして刑法に触れることがわかっていても賄賂を提供しようと考えるべき根拠は全くない。Aにとっては、平成8年の6月であれ、10月であれ、賄賂を提供する理由は皆無だったのであり、したがって、贈賄も収賄も存在しないのである。
(5) 小括
以上のように、AがX1被告に請託したとされる職人大学構想は、贈賄者にとって具体的な利益を生むものではなく、違法ないし不当なものでもなく、逆に国によってその正当性が認められて最終的には実現したものである。
このような内容を、違法であることが明らかな賄賂を提供してまでして実現しようとすることはありえないし、収賄したとされるX1被告もこの点は全く同様である。
さらに、それ以外の要素に着目しても、本件ではAが具体的な利益を目指して献金したと考えるべき要素は全く存在しない。
5 贈賄者とされるAの供述の評価
(1) 原判決の評価
本件で贈収賄を認める証拠は、Aの捜査段階の供述(検察官調書)しか存在しない。Aは、一審では、基本的には贈賄を認めたものの、かなりの部分で検察官調書とは相当異なった内容の証言を行った。これに対し、原審では、贈収賄に関する自らの検察官調書をほぼ全面的に否定した。
しかし、原審は、原審でのA供述の信用性を否定し、それ以上に格別の理由づけを示さないまま、捜査段階での供述を信用できるとした。その根底にあるのは、Aにとって恩義のあるX1被告を罪に陥れる虚偽の供述をすることは考えにくいという判断であろう。
(2) 贈賄者供述に頼る危険性
贈収賄事件は、物証に乏しい事件であるから、当事者の供述の信用性をどのように評価するかに係る部分が大きいことは否めない。
しかし、このことは、贈賄側と収賄側とされる者の供述が食い違ったときは、贈賄側の供述を信用すべきという原則を導くものではない。贈収賄事件で物証が少ないということは、収賄していない被告人にとってすら、贈賄したとされる証人の証言の信用性を覆すことがむずかしいことを意味する。安易に贈賄側の供述の信用性を肯定するのではなく、その供述を、関係者の置かれた状況と客観的証拠に照らして検討することが必要となる。
(3) 本件における特殊事情
本件においては、贈賄側の供述の信用性を判断する上で、他の事件に見られない特徴が少なくとも3つある。
第1に、Aは、大正10年○月生まれで、平成12年11月に業務上横領罪で逮捕された当時は79歳であった。それ以降、同年同月に背任罪で2度目の逮捕、平成13年2月にC議員に対する贈賄罪で3度目の逮捕、同年3月にX1被告に対する贈賄罪で4度目の逮捕と、異例の複数逮捕、長期勾留を強いられた。しかも、その中で業務上横領、背任のように有罪を認めざるを得ない事件もあったのであるから、老齢のAとしては、検察官の言うことをそのまま認めた調書を作成し、早期の保釈と執行猶予判決を求めるという選択をしたはずである(Aは、平成13年3月21日に最後の起訴をされた後、同月27日、逮捕以来140日間の身柄拘束を経て保釈された。また、Aに対する判決は、Aに執行猶予をつけた理由の1つとして、Aが本件犯行をいずれも認めて深く反省していることを挙げている。)。
第2に、繰り返し述べているとおり、本件において贈賄者が請託した内容は贈賄側に利益をもたらすものでなく、後に国が関与して実現したことに見られるとおり、極めて正当なものであった。そのような事項を依頼した相手がその実現のために動いてくれたのであれば、これに対する純粋な感謝の気持は誰でも持つであろう。そのとき、「10月2日に渡した5000万円の中には、職人大学設立へ向けて動いてくれたことに対する感謝の念も入っているはずだ。感謝の念はなかったというのあれば、それを証明しなくてはいけない。それができないのであれば、この5000万円は法律的には賄賂になる」という形式論理的な決め付けがなされれば、金銭を提供したAの側は法律的に素人であるから、これを否定することはできない。その結果、5000万円が賄賂であることを認める調書が作成されてしまうことになる。
家賃相当額の提供を進言したとされるBが、これについて、代表質問への謝礼の趣旨は10分の1程度に過ぎなかった旨述べているのも、「代表質問への謝礼の意味が皆無かと言われれば、それは否定できない」「しかし、その割合は極めて低い」という葛藤を経てのものと見られるのであり、これと同様のことがAの心中で生じたはずである。
いずれにせよ、検察官に抵抗できなかったAは、5000万円の趣旨についても、検察官の決め付けに従うしかなかったのである。
第3に、検察官は、AをX1被告に対する5000万円の提供という贈賄で起訴していない。その理由は、当該贈賄について3年の公訴時効が経過していたためだとされている。
しかし、検察官の主張では、平成8年6月以降の家賃相当額の負担は、代表質問に関する請託を受けて代表質問してくれたことに対する謝礼である(議員連盟を作ったことに対する謝礼の意味もあろうが、主として代表質問に対する謝礼という性格のものである)。これは、同年10月の5000万円の提供が代表質問に対する謝礼であるのと全く同一である。すなわち、この両者は同一の賄賂の一部に過ぎない。このように、家賃負担と5000万円は同一の賄賂なのであるから、最終の家賃相当額の支払いがなされた平成10年7月が犯罪(贈賄)全体の終了である。贈賄罪の公訴時効は3年であるから、Aの贈賄全体の公訴時効は平成13年7月に満了する。
ところで、X1被告とAの起訴は平成13年3月21日であるから、5000万円についての公訴時効は完成していない。それにもかかわらず、Aはこれについて起訴されなかった。したがって、Aについての5000万円の贈賄は、検察官によって意図的に落とされたと考えられる。X1被告については、5000万円の授受(平成10年10月)より前の同年6月から家賃負担が開始されており、両者は共に同年1月の代表質問に対する謝礼なのであるから、家賃負担と5000万円を分離することはできないはずであるのに、検察官は敢えてこの不自然な処理をした。家賃負担について起訴しながら、より犯情の重い5000万円について起訴しないということは、本来であればありえないところである。
上述したように、Aは、高齢ということもあり、他に有罪確実な業務上横領で起訴されていたこともあって、早期の保釈、執行猶予を勝ち取ることが最大目標であった。そのためには、検察官の意向に逆らうことはできなかった。
原審において検察官がAに対する質問で認めているとおり、Aは、平成12年の12月の暮れになって5000万円を渡した件を認めた(A・原審第4回・35頁)。そして、翌年2月にはX1被告に対する逮捕許諾請求が行われそうになるという状況にあったが、現職の国会議員であり、参議院のg党議員会長という要職にあったX1被告を逮捕するというのであれば、贈賄側の5000万円の供述は単なる捜査報告書ではなく、平成13年2月までの段階で、供述調書としてまとめられていると見るのが当然である。そのようにして固定された5000万円の贈賄を認める自白調書の存在は、Aにとって、捜査中と公判を通じて、「いつでも起訴できるぞ」「いつでも追起訴できるぞ」という脅しがなされているのと同じである。Aは、一審で証人として4回出廷しているが、その際、公判の立会検事が合計して20回ほど会っている(A・原審第4回・27頁)。検事からは、「厳しい言葉はなかった」にせよ、「こういうふうにして、このとおり、今までこうやってきているから、ひとつよろしく」とか、「あんまり違った言葉じゃ具合が悪いからひとつ頼むよ」(A・原審第4回・56頁)と言われたのであり、執行猶予を求めるAにとって、検察官からこれほどの回数の呼び出しを受け、あまり違った言葉ではまずいと言われれば、これを、捜査段階の供述を変更してはならないという圧力と受け取ったことは明らかである。Aに対しては、より犯情の軽い家賃負担に対する起訴(並びに業務上横領及び背任)だけでも、検察官は4年を求刑し、これに対する判決は懲役3年、執行猶予5年というギリギリのものであった。Aには、より犯情の重い5000万円で追起訴されれば執行猶予はありえなくなるという恐怖感が常にあった。
したがって、Aは、X1被告の事件の一審段階では、自らが起訴されていない5000万円についても、これを認めるしかなかった。恩義を感じているX1に対してであっても、自らの身を守るためには、5000万円を賄賂として提供したと証言するしかなかったのである(なお、この点は、Aと同じく家賃相当額の負担だけで起訴され有罪とされたBの場合も全く同様である。同人も、自らが勧めたとされる5000万円が起訴されれば、総計2288万円の家賃相当額の負担だけでの起訴よりも遥かに重い刑が予想されたため、この5000万円が起訴されないことによる圧力から逃れることはできなかったのである)。
Aにとっては、その後、自らに対する執行猶予付き判決が確定したとしても、判決確定(平成14年4月10日)の翌日(同月11日X1被告事件第16回公判)ないし2週間後(同月24日同事件第17回公判)に、それまでの脅しを受けていた状態から解放され、直ちに真実を述べる気持になるなどということはありえない。肉体的にも心理的にもそれは不可能である。
その後、Aは、心身のリハビリに努め、その結果、自らに対する懲役3年、執行猶予5年の確定判決に対し、関根栄郷弁護士らに再審を依頼することとなった。そして、X1被告との関係では、上記判決の確定から2年以上が経過し、心情も安定した原審の段階(平成16年8月30日及び同年10月13日)になって、ようやく真実を述べることができるようになったのである。Aの原審証言は、「5000万円の提供はあったが、これは政治資金であり、賄賂ではない」という趣旨のものであったが、本件のような重大事件で、一審証言を検察官に不利益な方向でこのように劇的に変更した場合には、偽証罪で逮捕、起訴されることもありうることはよく知られている(少なくとも、Aが相談した弁護士はそのようなアドバイスをしたはずである)。長期間の勾留と裁判に耐え、ようやく執行猶予付判決を得たAが、偽証罪の恐怖を感じながらも上記の証言を行った理由は、それが真実であるためという以外には考えられない。
(4) 小括
上に見たように、本件におけるAの捜査段階の供述は、その信用性に疑問があり、これだけに依拠して有罪とすることは許されない。
6 結論
以上に詳述したとおり、本件は、大阪タクシー汚職事件の最高裁決定で示された基準に従えば、贈収賄罪は成立しない。
原判決は、この最高裁決定に相反する判断を示したものであるから破棄されなければならない。
第3点 原判決には、以下の通り、判決に影響を及ぼす重大な事実誤認があり、破棄しないと正義に反することが明らかである(刑事訴訟法411条3号)
1 原判決の認定した事実と代表質問請託認定の不合理さ
(1) 一審ならびに原判決は以下のような事実を認定している。
①X1被告は、平成7年1月中旬頃から、職人大学構想を支援する姿勢を明らかにし(一審判決11頁。以下一審・・頁という)、職人大学構想は自身の政治理念に適うものとして、積極的に取り組んでいた(一審63頁)。
②AとBとは、X1被告に対して、一貫して感謝の念を抱いていたが、平成8年2月頃から、さらに感謝の念を強め、全面的にX1被告を支援していた(一審11頁)。
③Bは、d連の事務総長であり、f社の政治家担当の役目にあった(一審9頁)。
④X1被告が参議院で代表質問することを知ったのはBであり、そこで代表質問で職人大学の問題を取り上げてもらうことを考えつき、これをAに進言したのはBであった(一審35頁)。
⑤平成8年1月10日に、Aは、X1被告に代表質問で職人大学問題を取り上げてくれるよう依頼するために、Bとともに、参議院g党幹事長室に、X1被告を訪ねた(原判決30頁)。年始の挨拶をすることも目的であった(一審30頁)。
⑥AがX1被告と面談している間、BはX1被告の執務室の隣の控え室で待たされたままであった(原判決31頁)。
⑦AとX1被告とが会っていた時間はきわめて短かった(一審53頁)。
⑧Aは、X1被告に対して、代表質問の際に職人大学の問題を取り上げてくれるよう依頼し、X1被告は直ちにこれを承諾した(原判決22、29頁)。
⑨1月22日にf社及び関連企業の幹部合同会議が開かれたが、結局、Aは、その席で、職人大学の問題をX1被告に代表質問で取り上げてくれるよう頼んだ、と報告したとは認められない(一審44頁、原判決35頁)
⑩1月25日に、Bは、テレビ中継により、X1被告が代表質問で職人大学問題を取り上げてくれている状況を見て、大いに喜び、X2被告に連絡して議事速報も入手して、Aにも渡した(原判決23頁)。
⑪平成8年6月に、100名以上の議員が参加して、職人大学の設立を推進する議員連盟(議連)が結成され、X1被告がその代表(会長)になった(原判決24頁)。
⑫この時点になって、Bにおいて、X1被告の事務所の月々の家賃相当額を負担していくことを発案して、Aに提言し、Aも了承した(原判決7頁)。
⑬以後、Bは、X2被告と折衝して家賃相当額負担の話を詰め、結局、X1被告が議連の会長である期間だけ家賃相当額をf社が負担するとの話をとりまとめた(原判決7頁、一審88頁)。この家賃相当額負担について、Aは、議連のサロンという趣旨であれば「大義名分が立つ」という言い方をして了承した(一審97頁)。なお、当時、X2被告は、代表質問請託の事実自体を知らなかった(一審138頁)。
⑭7月29日の時点で、X1被告は、Aに対して、「家賃の件で負担を掛けて悪いね」として、感謝ないし恐縮の気持ちを伝えた(原判決8頁)。
⑮9月には、この職人大学問題推進の一環として、X1被告、A、Bは、労働省局長や他の国会議員らとともに、一緒にドイツへマイスター制度の視察のために旅行した(原判決25頁)。
⑯ドイツ旅行から帰った直後に、Bは、Aに対して、衆議院議員選挙の陣中見舞い資金という名目での、X1被告への5000万円の提供を提案し、Aは、その提案を了承した(原判決13頁)。
⑰Aは、直ちに、f社の職員に指示をして、総額1億円を用意させ、そのうち5000万円を自らX1被告に届けた(原判決13頁)。
⑱Aは、5000万円をX1被告に渡す際に、Bは待たせて2人だけの席にしたが、その席で、Aは、Bを通じて話をしたものであると述べ、X1被告は「ああ、すまないね」といったやりとりが行われた(原判決14頁)。
(2) 原判決が以上の通り認定したということから、以下のようなことが指摘できる。
(一) Bは、結果的に、1月10日の日に、Aが請託をしたのかどうかを知らなかったし、そもそも訪問目的が職人大学のことを代表質問で取り上げてほしいと請託することにあることも知らなかった。原判決は、Bが請託の場から排除されたと認定しているのであるが、他方で、Bがその請託のことを事前に知らされていたとか、事後に知らされたという事実は一切認定していない。また、証拠上も、Bがこの請託について、事後に、Aから知らされたということを示すものは一切ない。
したがって、Bとしては、Aが問題の代表質問請託をいずれかの機会にしたかもしれないという想像をしたことがあったとしても、想像の域を出ることはなく、もとより、請託時の具体的なやりとりなどについてはまったく知ることがなかった。
(二) 1月10日にAとX1被告とが面談した際に、いずれの側からも請託に伴う報酬の話はなかった。
1月10日以後も、Aにおいて、積極的に、請託に伴う報酬のことを心配したり、検討したりしたことは一切なかった。報酬とされている家賃負担についても、選挙時の陣中見舞い名目の5000万円についても、Aとしては、Bの発案を、いわば受け身の形で、了承したに過ぎない。
他方、X1被告においても、Aあるいはf社に対して、請託の報酬を要求したり、打診したりする発言は一切なかった。
7月29日のX1被告の言動も、家賃負担を掛けて悪いねという恐縮の姿勢を示したのみであり、これを代表質問請託の報酬の全部または一部として了解した旨の発言は一切なかった。
5000万円の授受の時にも、Aの方から「約束のお金が遅くなって申し訳ない」とか、「家賃負担分と合わせてこれで報酬とさせてください」などといった類の発言は一切なく、X1被告側からも、「やっと持ってきたか」とか「これで十分だ」などといった類の発言は一切なかった。
(三) X1被告の事務所の家賃負担をするということは、請託についての具体的な知識のないBが、議連結成の頃に言い出したことであった。Bは、代表質問請託が実際に行われたのか否か、仮に行われたとしてどのような話として行われたのかも知らなかったので、この家賃相当額負担が、請託した職務の実行に対する報酬として適当なものかどうかの判断はできなかったし、そのようなことを検討もしなかった。そして、Aからその点の説明や指示もなく、Bとしてその点をAに質問したり、確かめることもなかった。
また、交渉相手のX2被告は、代表質問請託の事実自体をまったく知らなかった。したがって、その折衝の過程で、家賃相当額負担が代表質問の報酬であるとの話は一切なかったし、BとX2被告の間で、請託の報酬として相当かどうかの検討がされたこともなかった。
(四) Bにおいて、解散総選挙となった時点で、Aに対して、陣中見舞いとして必要な金額をもとに5000万円という金額を提案したことはあったが、その際に代表質問請託や勧誘説得請託の報酬としてはどの程度が妥当かを検討したことはなかった。
また、支払い中の家賃相当額負担に上積みして5000万円を払うべきなどといった論議もなかった。さらに、直前のドイツ旅行中にも、X1被告・A間あるいはB・A間で、請託の報酬として、家賃相当額負担だけで足りるかどうかとか、家賃に加えて近くまとまったお金の支払いを考えているとかといった類の話は一切なかった。
(3) 原判決認定事実はあまりに不合理であり、その不合理さは、次項に述べるとおり、代表質問請託がなかったと考えれば、すべて解消する。
(一) 1月10日の請託の場からBを排除したこと
仮に、原審が認定したように、Aとして、Bの進言に基づいて代表質問請託を決意したのだとすれば、Aは、いかなる理由で、進言した本人であり、f社の政治家担当としてX1被告ともきわめて親しい関係にあったBを、請託の場から排除したのであろうか。Aから、原判決認定のような内容での請託がなされたとした場合、このレベルの話をするのに、敢えてBを排除する理由が考えられないのである(なお、進言と言えるようなものがなかったことについては(7)において後述する。)。
ところで、Eは、きわめて中立的な信頼性の高い証人であるが、同人は、この日にBがAとともにX1被告に会ったことを明確に証言しており、しかも、当時のEの手帳にまでそのことが明記されている。Eの立場と手帳という物証に裏付けられた証言の重要性は明らかであり、これを排斥した原判決は明らかに採証法則に反する過ちを犯したものというべきである。
(二) 時間が余りに短いこと
前述の通り、一審判決も、この1月10日の面談時間をごく短いものであったと認定しているが、A証言によると、具体的には1~2分程度であったというものであり(一審第4回A52頁)、これに反する証拠はない。
このような短い時間で、Aが、e大学を代表質問で取り上げてほしいなどという突然の新規な請託をして、それについてのX1被告の了承を取り付けることができたとは到底考えられない。
仮に、Aが、「代表質問で職人大学の問題を取り上げてもらえないか」ということを言ったとするならば、X1被告としては、「どういうことだ」とか、「なぜ代表質問なのだ」として、A発言の趣旨を確認したはずである。その後、両者間で合意に達するまでに一定のやりとりが必要なはずであり、そのような短時間にできる話ではない。
(三) Bに請託の事実を説明しなかったこと
それでも、敢えてBを面談の場から排除して請託したとして、Aにおいて、請託の事実及びやりとりについて、事後にもまったくBに伝えなかったということは、およそ考えられないことである。
Bは、f社の政治家担当として、その後も頻繁にX1被告に接触することが予定されている立場にある。仮に、X1被告が代表質問請託を引き受ければ、職人大学に関する細かな事実関係の確認や作成した質問の案がAの意に適うものであるかどうかの確認などのために、Bとやりとりすることが想定される。
以上からして、Aにおいて、仮にBの進言に基づいて代表質問請託をしたというのであれば、Bの勧めに従って請託をしたという事実並びにその際のやりとりについて、何らBに伝えなかったという理由は考えられないところである。
(四) なぜ、Aは請託の報酬のことを気にしなかったのか
原判決の認定では、半年後の事務所家賃相当額と9ヶ月後の5000万円提供とが請託の報酬であるということである。しかし、そのいずれも、その時期になって、突然、Bが考えついてAに提言したというものである。Aはこれらの、家賃負担と5000万円提供について、B提案を、いわば受け身の形で承諾したことはあったとしても、それ以外に、A自身で、請託の対価の支払いをX1被告に約束したり、検討したりしたことがないのみならず、およそ、そのことを気にした形跡も一切ないのである。
本件請託は、AがわざわざBを排除して1人で行ったとされ、また、そのやりとりについて、Bにさえ打ち明けなかったとされている事案である。X1被告が、約束どおりに1月25日の代表質問で職人大学問題を取り上げてくれたのに、請託の当事者であり、請託時のやりとりを唯一知っているはずのAが、対価の支払いをおよそ気にしなかったというのはあまりに不合理である。
(五) なぜ、Bは家賃相当額が請託の報酬として適切と判断できたか
Bとしては、Aが請託時の状況を一切説明してくれなかったのであるから、それがいかなるものであったかを認識できたはずがない。仮に、Aが予定どおりに職人大学問題を代表質問で取り上げてくれるように依頼したとしても、X1被告が承諾したのか断ったのかはわからない。また、例えば、Aが打診してみたところ、X1被告の方では、頼むまでもなく、すでに代表質問に入れることを予定していたとか、逆に、難色を示したので、Aにおいて、かなりの高額の報酬を示して頼み込んだかもしれない。
このような場合に、Bの方から、一方的に家賃相当額を負担することで、請託の報酬に替えるなどという提案ができるはずがない。
しかも、家賃相当額を支払うことにしたことが、専らBの思いつきであった上に、その後の具体的詰めはX2被告とB間で行われたのである。
しかし、X2被告は、およそ代表質問請託の事実自体も認識していないのであるから、その詰めの作業において、それが請託における対価として適当かどうかの判断を加える余地は皆無であったことになる。
そのような方法で対価が取り決められることについて、請託当事者のAもX1被告も、任せきりにしていたというのである。
(六) なぜ、報酬を割賦払いにしたのか
さらに、このようにして家賃相当額を支払うことについて、Aは、「議連のサロンということであれば大義名分が立つ」として、議連のサロンというようなことでもなければ支出すること自体に理由が乏しいとの意向を明示していたのである。
そもそも、4ヶ月後の解散総選挙時の1億円支出の経緯に明らかなように、Aは、必要があれば、1億円程度の金額の支出を直ちに実行できるだけの財力と権力とを持ち合わせていたのである。仮に、Aにおいて、請託をしたとの意識があり、X1被告に対して相応の報酬を支払う必要があると考えていたのであれば、それを実行するのに、大義名分を気にしつつ、月々88万円程度の割賦払いにする理由などあるはずがない。
しかも、事務所の家賃相当額、それも、X1被告が議連の会長である間だけという経済的利益は、金額が不確定であり、既に実行済みの頼み事との対価関係に立つとは考えにくい。その上、目的の職人大学設立がスムーズに行き、短期間のうちに実現すれば、家賃相当額の合計額はそれだけ低くなる。逆に、難渋して、結局実現できなかった場合には、何の成果もないのに多額の金員を支払うことになる。
すなわち、このような資金提供は、議連の活動のバックアップとしては合理的であるかもしれないが、過去の代表質問請託への見返りとしてはきわめて不合理な関係になる。
(七) なぜ、当事者は妥当な報酬額を念頭に置かなかったことになるのか
そもそも、受託収賄での賄賂というのは、請託した職務執行に対する報酬であり、対価である。明確な取り決めがなかったとしても、支払う側は、どれだけ支払えば満足してくれるかを気にするし、受け取る側も、一定の期待額があり、それを下回れば不満に思うはずである。1円でも1億円でもいい、支払時期もいつでもいい、などというのは単なる善意の寄付の話であり、賄賂ではあり得ない。
ところで、本件では、平成8年6月から、X1被告が議連の会長である間という形の終期を決めて、月額88万円の支払いを開始し、その4ヶ月後に、突然5000万円を支払い、そのいずれもが、請託の報酬であるとされているのである。
一体、A、Bの側では、適当な対価をどのように考えていたことになるのか。仮に、トータルで5000万円と考えていたのなら、この家賃負担は賄賂の趣旨ではなかったことになる。逆に、報酬について、何らかの理由で分割の方がいいと考えていたのなら、なぜ、突然4ヶ月後に、5000万円を支払ったのかの説明がつかない。仮に、Aにおいて、家賃分だけでは足りるはずがなく、遠からずまとまった金を支払うという意思を持っていたのであれば、たとえば、ドイツ旅行などの機会に、その意思を伝え、遅くなって申し訳ないとの表明をするはずである。しかし、そのようなことは一切なかった。しかも、実際に支払いを行った家賃相当額及び5000万円のいずれについても、請託の有無及び内容をおよそ知らないBが、考えついて決めたというのである。およそ合理的な話ではない。
(八) 職人大学の設立ということが、賄賂の対象になるテーマか
原判決も認めているとおり、X1被告は、代表質問より1年も前から、職人大学構想に熱意を持ち、自身の政治姿勢、政治理念に合致する必要な政策として熱心に取り組んでいたということである。職人大学というのは、わが国にそれまでなかった新しい形の教育機関を発足させるということであり、歴史的な大事業である。他人から頼まれて、その取り扱い方を決めるようなテーマではあり得ない。また、このようなテーマに取り組んでいる政治家としては、それを実現して、国家、国民に対する貢献を果たすことができ、功績を後世に残すということで十分満足感を得ることができるのであり、このような問題で金銭という形の報酬を期待するとは考えられないことである。
また、職人大学構想が、およそf社にもAにも金銭的な利益をもたらすようなものではないことは明白であり、Aとしても、このような政策の推進について、賄賂で実現しようなど考えるはずのないことである。
以上について若干補充するに、原審で証拠として取り調べられたe大学のパンフレット及び事業概要で明らかなとおり、e大学は高度な技能と技術の融合した実践的な技能工芸に関する教育及び研究を行い、加えて豊かな社会性・創造性・倫理性を身につけた技能技術者を育成することを目的とし、あわせてもの作りに対する社会的評価の向上と世界の発展に貢献することを使命とするものであり(事業概要、4頁)、実習、実験、長期インターンシップのカリキュラムを特徴とし(パンフレット8頁)、産業界で使われている最新の実験装置や設備を備え(パンフレット11頁)、名工や技術熟練者などを非常勤講師として直接実技を学び(パンフレット15~16頁)、多数の企業と連携する(パンフレット末尾)などの特徴を有している。しかも、総長が著名な哲学者のF、学長がもと横浜大学学長の建築家G、学校法人の会長がトヨタ自動車名誉会長のHであり、理事に埼玉県副知事や行田市市長、日立製作所会長などが並んでいる(事業概要1頁)。
このような目的の内容、運営のされ方、スタッフの陣容等からしても、職人大学がAやf社等の利益に結びつくことなど考える余地もないことである。
(4) 請託がなかったとすれば、以上のすべての疑問が氷解する。
(一) 本件では、1月10日の請託はなく、X1被告は、自身の発意で、職人大学の問題を代表質問の中に盛り込んだのである。1月25日の代表質問における職人大学についての質疑応答をテレビ中継で見たBが大いに喜んだのは、請託をしたこととは関係のないことである。内容として喜ぶべきものであったから純粋に喜んだに過ぎない。議事速報やビデオでこのことを知ったAが喜び感謝したのも同様である。
(二) 1月10日の幹事長室での面談時には、AとBとが相伴っていたのであり、そこで行われたのは新年の挨拶が主であった。すでに、メモが届けられてあった期間延長問題について、X1被告が、「官房長官にメモを届けておいたよ」程度の言葉はあったようであるが、Aから、職人大学の問題を参議院代表質問に入れて欲しいなどという話はなかった。だからこそ、時間も1~2分程度のごく短いものであったのである。
もとより、この場合、なぜBを排除したのかという問題も生じないのである。
(三) Bが、6月になって家賃負担のことを思いついたのは、B自身がX1被告に対する支援を深める機会と判断したからである。政治家秘書の経験があり、f社の政治家担当の職にあったBとしては、機を見て政治家に必要な資金的支援を行うべく行動することは当然であった。この6月は、議連が結成され、100名以上の有力政治家が結集できたのであるから、このような機に、議連のサロンというような名目で、X1被告に対する経済的支援を強めようとしたものである。
代表質問請託があったのかどうかも認識していないBとして、代表質問請託のお礼などということが念頭にあったはずがない。したがって、代表質問請託についての認識すらないX2被告が家賃負担の事務折衝の相手であっても、何の障害もなかったのである。
Aとしても、議連活動への期待の表明として、その中心的立場にあるX1被告への支援強化に賛同したものである。
もともと、職人大学問題は、その理念や目的からして、特に反対勢力があるような問題ではない。せいぜい、予算の問題があるに過ぎない。従って、与党の中で、理解者や支援者が増えていえば、自ずと政策実現の可能性が高まるテーマであった。
議連を結成して、その勉強会を積み重ねていくことは、実現への最短距離ともいうべき関係にあった。実際にも、職人大学の問題は、議連結成から4ヶ月後の、同年10月の衆議院議員選挙の際にはg党の公約として掲げられる程度にg党内の理解が得られるに至ったのである。そして、その後、3年半の活動を経て、平成13年4月に、ようやく開校にこぎ着けたのである。
要するに、問題は、多数ある議連の中で、いかにして、この議連に有力議員を含む多数の議員をメンバーに加え、さらに、その活動を活発にし、継続していくかにあった。そのような意味で、f社としては、議連の中心であるX1被告を積極的に支援する意味があったのである。
(四) 10月の5000万円も、同様に、衆議院議員選挙が行われることとなり、g党の実力者としてX1被告が多数の候補者の支援に行くことを知ったBが、X1被告に資金的支援を行うべきチャンスとして考えついたことである。もともと、解散総選挙などということがなければ思いつくはずもなかった話であるから、ドイツ旅行中に何の話もなかったのも、当然のことである。
原判決の認定では、Bは、X1被告に対して、職人大学の件を代表質問で取り上げてもらったことや、議連もできたことについて、改めて礼を述べるとともに、引き続き議連の議員をまとめて大学設立に尽力を願いたい旨述べ、それに対して、X1被告はBに対して、「そうか悪いな。議連もできたことだし、これから皆をまとめていかないとな」と言い、Aに対しては、「ああ、すまないね」と言ったということである(原判決51~52頁)。
しかしながら、仮に、このような発言があったとしても、そもそも、Bは、代表質問請託の有無についてすら具体的な認識はなかったのであるから、この言葉の意味は、通常の挨拶としての実際に国会代表質問で職人大学問題を取り上げてくれたことへの感謝の気持ちの表明でしかなく、発言の趣旨は、議連を中心としての活動への期待表明と解するべきである。
これに対するX1被告の対応も、もっぱら、議連の中心として活動していく決意をもって答えているのである。このようなやりとりを、10ヶ月も前の代表質問請託の報酬の趣旨であることの確認としてのやりとりと見なすことは、あまりに不合理である。
また、原判決も、5000万円提供の経過として、Bが、X2被告から10月20日施行の衆議院議員選挙に際してX1被告に候補者から応援要請が多数きている旨聞かされて、そのための資金が必要であろうと考え、Aに対して、X1被告に5000万円の資金提供をしてはどうかと勧めてAに了解を得た、と認定している(原判決13頁)。このような経緯で決まった5000万円提供であるから、AとBとの間でも、代表質問請託の報酬であるとか、勧誘説得請託の報酬であるなどというやりとりがなかったことが明らかであり、まして、X1被告に対してそのようなことを伝えたはずがないのである。
以上の通り、家賃負担も5000万円も、いずれも代表質問請託の報酬などという位置づけがされていなかったのであるから、前述の(7)のような当事者が「妥当な報酬額」をどのように考えていたのかという問題も生じないのである。
(五) 職人大学などというテーマがなぜ賄賂の対象になったのかという疑問も氷解する。
もともと、X1被告としては、かねてから政治理念としていた職人大学の問題を、その政治理念に基づいて代表質問で取り上げたに過ぎない。Aから請託されて取り上げたものではない。
代表質問という晴れ舞台で職人大学問題が取り上げられたことについて、AやBが大いに喜んだことはその通りであろうが、それは、まさにそのような形で取り上げられたことについて、素直に喜んだのであり、自分たちの要求を受け入れてくれたから喜んだのではない。仮に、自分たちの要求を受け入れさせたと考えたのであれば、こんな無理なことをさせてX1被告に迷惑がかかったのではないかと心配したり、こうなればかなりの報酬を払わなければならないと思いを巡らせたりするのが自然な感情であるが、Aらについてはそのようなことは一切なかった。
(六) 原判決も認めているとおり、代表質問請託があったとする直接証拠は、Aの捜査段階及び一審証言しかない。
捜査段階ならびに一審でのA供述の信用性がきわめて低いことは、既に前述(第2点の5項)したところであるが、以下の点を付言する。
一審段階でも、Aの検面調書の内容が全体に説明調過ぎて不自然であること、さらにAが高齢であることや質問にそのまま答えない性癖があることなどが問題となり、一審判決は、捜査段階のA供述については、公判供述と合致する限り、すなわち、大筋で一貫している限りにおいては、信用性が認められるとしたのである。
また、一審判決は、Aの公判供述についても、供述態度などから、そのすべてを無条件に信用することはできないが、客観的事実ないし他の証言で裏付けられている部分は信用できるとして、ともかく、代表質問請託は認められるとしたのである。
要するに、Aの捜査段階の供述あるいは公判証言は、その信用性の程度に大きな問題があり、大筋で一貫しているか、あるいは他の客観的な証拠と一致している限りで、採用できるものと評価されていたのである。
ところが、Aは、原審で、それまでの証言・供述の多くを否定し、特に、この代表質問請託については、真っ向から否定する証言をしたのである。
弁護人としては、Aにおいて、原審段階であえて偽証をする理由がない上に、前述したとおり、代表質問請託などなかったと考える方が遙かに合理的なものであるから、この原審証言の方が真実であると確信するものである。
少なくとも、代表質問請託については、「大筋で一貫」との前提が崩壊したことは明白であり、また、この代表質問請託については、A供述を裏付ける他の客観的証拠と言えるものは存在しないのであるから、一審の考えに従っても、A証言だけで、代償質問請託を認定することはできないはずである。
原判決は、原審でのA証言が信用できないことを強調している。しかし、だからといって、そのことから、一審までのA証言・供述の信用性が裏付けられることになるはずがない。仮に、原審でのA証言が信用できないとするならば、Aという人間は、原審で改めて出廷し、宣誓しても、なお平気で嘘をつく人間であるということを意味するはずである。そのような人物については、一審段階までの供述・証言についても信用できるはずがない、となるはずである。特に、A証言・供述以外に直接証拠がない部分、すなわち代表質問請託については、これを否定すべきだったはずである。
(七) なお、原判決は、BがAに対して、代表質問請託を進言したことがあったこと、BがIに対して「X1に国会で職人大学のことで質問してくれるように頼んだ」と言明していたこと(及びそのことを裏付けるJ、K供述の存在)、さらに、BとAとが、代表質問で職人大学問題を取り上げてもらったことを知って大いに喜んだこと等が、Aの請託の存在についての有力な間接事実になるかのようにしている(原判決22~23頁、32頁)。
まず、「代表質問請託進言」について述べる。Bの発言は、せいぜい、Aに対して、X1被告が参議院の代表質問を行う予定であることを伝えた上で、その際に、その代表質問でe大学のことを取り上げてもらえるといいですね、といったレベルのものと解される。到底、「進言」と評価できるようなものであったとは解されない。
そもそも、「進言」とは、1つの方針を目指して、是非ともそれを採用させようとする真剣かつ積極的な申し入れのことを意味する。
しかし、Bは、この発言後に、X1被告にいつ、どのような形で申し入れるべきかを提案したこともなく、代表質問に取り入れてもらえるように文案を検討したり資料をとりまとめたりしたこともなく、それどころか、質問当日までに、改めてAに申し入れたこともなく、国会に傍聴に来ることもなく、およそ請託の実行について気にしていた形跡すらないのである。
このような真剣味も積極さも伴わないような発言を「進言」などと評価することはできない。
Bの発言が、「進言」と言えるような重みのあるものではなかったからこそ、Aも、その発言を聞き流したのであり、それに基づいて行動をしようなどと言う気にならなかったものである。
以上の通りであるから、Bが「進言」したことを前提として、Aが請託したと認定することは妥当ではない。
また、BのIへの吹聴の問題については、そもそもBは、請託がなされたのか否かも知らなかったことが重要である。すなわち、BがIに吹聴したとしても、それはせいぜい想像に基づくものでしかない。請託の事実を知らない人間が想像に基づいて他人に吹聴したところで、それをもって請託の事実の存在を裏付けられるはずがないのである。
さらに、BもAも、職人大学の問題を1つの重要なテーマとして関心を抱いていたのであるから、この問題が参議院の代表質問という晴れの舞台で取り上げられたことを知って喜んだのはごく自然なことであり、請託の有無とは関係のないことである。
以上の通り、原判決が、Aの請託を裏付ける間接事実として取り上げた問題は、到底、そのようなものとして評価できるはずのないことばかりである。
(5) 小括
原判決も認めるとおり、代表質問請託を直接裏付ける証拠はA供述のみであるところ、前述のとおりの、A供述の不自然さ、変遷、加えてのAの年齢、性癖などからして、A供述のみでこれを認定することは適当ではない。
加えて、1月10日の面談がきわめて短時間であったこと、1月10日に面談の場にいたBが一貫してそのような請託を否定していること、Aが請託に対する見返りを考えた形跡すらないこと等から、すべての証拠すべての事実を総合すれば、請託を認定することなどできるはずがない。
以上からして、代表質問請託を認め、これを前提に被告人を有罪とした原判決は明らかに誤りであり、破棄を免れない。
2 勧誘説得請託
(1) 勧誘説得請託についても、これを裏付ける証拠はA供述のみである。そして、これについても、Aは、原審で明確に否定する証言をしたのである。
仮に、原判決のように、原審でのA証言を虚偽とした場合にも、前述した場合と同様、およそA供述は信用できないか、少なくとも、一審判決が指摘したとおり、他に客観的な裏付けのある場合に限って、その信用性を認めるべきである。そして、勧誘説得請託についても、およそ客観的な裏付け証拠などないのである。
(2) そもそも、問題の時期に、AとX1被告とが会ったのは、Aのスケジュール帳(弁53)からして、6月5日、6月10日、6月11日の3回しかない。そして、そのいずれの機会にもBが同席していたことは明らかであるが、Bは、一貫してこの勧誘説得請託の存在を否定している。
(3) さらに、原判決が認定した勧誘説得請託の内容とは、「議連ができましたら、国会審議の場で積極的に訴えてくれるよう発破を掛けてください」というきわめて抽象的なものであり、特定の委員会とか特定の質問などに触れたものはない。
なお、当時は、職人大学の問題について法案等が上程されていたわけでもなく(上述したとおり、職人大学の設立には新規立法は不要である)、国会議員を勧誘説得するような具体的な問題など何も存在しなかったのである。
このような状況下での、前記のようなレベルの発言は、「議連の活動に大いに期待しています」との激励の趣旨と考えるのが合理的である。
(4) そもそも、議連とは、きわめて緩やかな任意団体であり、メンバーが勉強の結果自分の信念として質問するに至ることがあるとしても、議連の指示に従って質問をするとか、議連の要請に基づいて質問するなどということはあり得ないことである。このことは、L供述に明らかであり、一審判決も、一般論としては認めているところである(82~83頁)。
X1被告はもとより、Aにおいても、議連のこのような性格は当然知っていたものであり、したがって、議連メンバーを対象にして国会質問を勧誘説得する、などということを発想するはずがないのである。
(5) 小括
勧誘説得請託は、唯一のA証言を前提にしても、あまりに具体性に乏しく、その存在が認めがたいのであるが、さらに、A証言の変遷あるいは信用性、具体的な面談時についてのBの否定的証言等を総合すれば、このような請託を認めたことは著しく採証法則に反するものであり、重大な事実誤認というべきである。
加えて、公知の事実とも言うべき議連ということの性格からして、そのメンバーに対する質問の要請や指示などあり得るはずのないことであり、このことをAやX1被告が知らなかったはずもない。
以上からして、軽々に、勧誘説得請託を認めた原判決が判決に影響を及ぼすべき重大な事実誤認の誤りを犯したことは明らかである。
3 賄賂性認識の欠如
以下述べるとおり、X1被告においても、A・Bにおいても、家賃負担や5000万円提供を請託の報酬と位置づけたことはなかった。
(1) 第1で述べたとおり、平成8年1月10日の面談の場で、Aが何らかの謝礼を約束したり提供した事実がないし、それを示唆した事実も認められない。原判決もそのようなことは認定していないし、それに沿う証拠も皆無である。
他方、X1被告においても、謝礼を要求したことがないだけでなく、そのことを期待したという事実もない。もとより、それを裏付けるような証拠は皆無である。
ところで、一審判決は、X1被告が中小企業の問題について、Aらが希望する政策の実現に協力していたとか、X1被告にとってAがきわめて重要な支援者であったとか、AがX1被告に感謝し全面的に支援していたなどと認定し(一審判決9~13頁)た上で、「X1からすると、代表質問請託は、それまで多額の資金援助を受けているAからの請託であり、この請託に応じた場合には、Aからその見返りとしての資金提供も期待できるものである」としている(一審65頁)。
しかし、「多額の資金援助をしてくれる」ような支援者の存在ということは、政治の世界では珍しいことではない。X1被告に限らず、医師会の支援を受ける政治家、労働組合の支援を受ける政治家、宗教団体の支援を受ける政治家、その他歯科医師会、軍人恩給連盟、税理士会等々の支援を受ける政治家など、同じような関係にある政治家は多数いる。これは、政治家が国民の様々の層の利益を代表する立場にあるからであり、特に、参議院比例代表制で選出される場合には、上記のような大きな団体の支援を受け、その一環として、継続的に多額の資金援助を受ける立場にあることが一般である。そのような支援は、その団体と当該政治家とが共通の政治的理念、共通の政治的課題を有していることに基づくものであり、この場合に、その団体の望む政策を遂行することとの引き替えに金銭を受け取っているなどと決めつけることは甚だ軽率、不適切な考え方である。
すでに詳述したとおり、一般公務員の場合と異なり、政治家の場合には、職務行為と政治資金提供とを安易に短絡させて、賄賂などと決めつけることが許されるはずがないのである(第2点の1項ないし3項)。
すなわち、収賄罪として断じるには、特定の資金提供と具体的な職務行為の遂行とが、合理的な疑いのない程度に、関連づけられる必要がある。
この関連づけのメルクマールとしては、前述(15~16頁)したとおり、①依頼内容の違法性もしくは不当性②依頼内容が献金者に金銭的な利益をもたらすものか否か③依頼の内容の急務性④依頼を受けた政治家の行動⑤依頼と献金との時間的近接性等があるが、さらに、以下の2点もメルクマールと考えるべきである。
1つは、資金提供の名目とされたことについて合理的な理由が存在するか否かである。それ自体に合理的な理由のつく資金提供について、あえて、それを無視して他の頼み事と結びつけることは適当ではない。
もう1つは、当事者の意思表示である。受託収賄の賄賂の授受については、贈賄側収賄側双方において、それが請託の見返りの趣旨であることの意思の一致が必要である。
従って、時間も経過し、他の名目が持ち出されているものについて、あえて古い頼み事の報酬と認定するには、当事者双方が間違いなく、そのように意識していることの認定が必要である。
(2) 以上のメルクマールを当てはめると以下のようになる。
①のe大学の設置が、例えばg党の公約にされたことに示されるように、きわめて正当な政策であり、その設置を求めることについて、およそ違法性・不当性がないことはこれまで述べたとおりである。
②についても、e大学の設置が、贈賄者とされたAあるいはf社に何の金銭的利益ももたらすものでないことは、前述の通りである。
③についても、e大学の設置という問題が期限の制約があり、特別に急がなくてはならないなどという事情のなかったことは明らかである。
④依頼を受けた政治家であるX1被告のとった行動とは、参議院代表質問の中でe大学の設置についての総理大臣の見解を問うたということであり、それ自体として何の問題もない行為である。
⑤さらに、代表質問請託が行われたというのは平成8年1月であり、5000万円献金は10ヶ月後、家賃の負担開始でも6ヶ月後のことで、近接性はない。
以上からして、前述のメルクマールを当てはめて検討すれば、本件の職務行為と政治献金とを結びつけることなどできるはずのないことが明瞭になる。
(3) さらに、本件では以下の点を指摘したい。
(一) 本件の場合には、家賃負担については、代表質問請託について、それについての具体的知識の全くないBが発案したことであり、その折衝の相手が、代表質問請託のことをまったく知らないX2被告であったことが明らかである。
従って、この取り決めの過程で、この家賃負担が代表質問請託の報酬の意味を持つとのやりとりがあったことはあり得ないし、報酬として適切か否かの検討が行われたこともない。
もっとも、客観的に見て、代表質問請託の謝礼でない限り説明のつかないような金銭支出であれば、事情を知らないX2被告を利用しての賄賂の授受と見る余地があるかもしれない。
しかし、この家賃提供が発案され折衝されたのは、職人大学設置の推進の議連が大々的に発足した時期である。そして、前述したように、この議連の発足は、職人大学設立に向けてきわめて大きな意味を有したのであるから、議連活動をバックアップするために議連の中心にあるX1被告に対して資金的援助をする、というのはきわめて筋の通った話である。従って、「他に説明のつかないような金銭提供」などでないことは明らかである。しかも、議連の会長である期間だけという総額のきわめて不特定な資金提供を、既に実行済みの代表質問の報酬として結びつけるのは無理があり、文字通りに議連の活動のバックアップと考えるのが常識的な見方である。
(二) 一審判決は、この家賃提供について、政治資金規正法の規制から免れていたとか、途中から手渡しになったことなどを問題としている。
しかし、政治資金規正法上の手続きの履践を怠ることと賄賂の収受との間にはあまりに大きな懸隔がある。賄賂の収受であれば、政治資金規正法上の手続きを履践しないにとどまらず、およそその授受の痕跡をできるだけ残さないようにするはずである。すなわち、仮に将来賄賂が問題になった場合に、警察や検察庁が真っ先に調べるのは、収賄側の政治資金届出書などではなく、贈賄側の帳簿や通帳だからである。それらに金銭の支払いがすべて明記されていれば、直ちに金銭授受は明らかになることは誰でもわかることである。政治資金規制上の手続きを履践しなかったことは誉められることではないが、だからといって、このことを賄賂の根拠とするのは論理の飛躍がありすぎる。
手渡しへの変更についても、同様である。f社側の帳簿や通帳への記載は、従前通りに続けられていたのであり、このような行動からしても、手渡しへの変更が贈収賄の発覚を恐れたものなどと言えるはずがないのである。
(三) 次に、5000万円についても、これを発案したのは、代表質問請託についての具体的な知識がないBであった。また、Bは、勧誘説得請託についても事情を知らなかった。このような立場のBが、たまたま衆議院議員選挙が行われることならびにX1被告がその多数の候補者の応援に行く状況にあることを知って、陣中見舞いに必要な資金として5000万円という金額を言い出したものである。
この資金提供がf社サイドで決められるに際して、1月の代表質問請託のお礼として適切か否かが検討されたこともなく、また、毎月の家賃負担に加えて提供する必要が論じられたこともない。そのようなことは原判決も認定していないし、それに適う証拠も全くない。
確かに、A、Bの供述中には、この5000万円提供時に、代表質問についての感謝の言葉もあったかのようにされているが、仮に、それが事実であったとしても、それだけの理由で、この金銭を10ヶ月も前の代表質問謝礼とするのはあまりに不合理である。10ヶ月という時間の長さだけでもが問題であるが、加えて、この5000万円提供の名目とされた選挙応援資金ということについて、これを不合理とする理由が見いだせないのである。
すなわち、この時期の衆議院議員選挙においては、g党が公約として職人大学設置を掲げてくれていたのであるから、f社としてはg党の候補者とりわけ議連の有力メンバーについては是非選挙戦に勝ってほしいという立場、したがって議連の会長のX1被告が応援に行くのであればこれを全面的にバックアップしたいという立場にあったものである。
すなわち、X1被告に対する選挙の陣中見舞いとしての5000万円拠出は、その名目通りの支払の合理的理由があったのであり、これをあえて10ヶ月も前のできごとの見返りとしての謝礼と見なす理由がないのである。
X1被告に会ったときに、「今年はいろいろお世話になりました」との儀礼的挨拶として、代表質問のことが出たかもしれないが、このような挨拶に、それ以上の意味、すなわち5000万円は請託の見返りであるとの意思確認とすることはあまりに常識に反するものである。
(4) 小括
以上の通りであるから、X1被告とAないしf社との継続的な支援関係を前提にしても、指摘された職務行為と政治献金とを安易に結びつけることは到底無理である。
さらに、このような場合にメルクマールとすべき種々の観点から検討すれば、本件で、代表質問と政治献金とを結びつけるべき理由が全くないことが明白になる。
このような検討を怠り、安易に、請託に基づく収賄を認定した原判決は、条理に反し、正義に反する重大な事実誤認の誤りをしたものとして、破棄を免れない。
第4点 審理不尽、事実誤認(刑事訴訟法411条3号)
原判決には、裁判長が釈明権の行使を怠り、その結果、以下のような重要な問題についての立証及び反証が尽くされなかった。また、この場合には、疑わしきは被告人の利益にの原則からして、被告人に不利益な事実認定をすべきではないのに、原判決は、合理的な理由もなく、被告人に不利益な事実認定をしたものであり、しかも、この点が判決の結論に影響を及ぼす重大なものであり、これを放置することは正義に反することが明らかであるから、この点においても原判決は破棄を免れない。
1 5000万円の返戻
(1) 原判決は、Aが、X1被告から会いたいとの連絡を受けて、平成8年12月5日午後1時頃、議員会館のX1被告の部屋に行ったところ、X1被告から「5000万円を返しておく」と言われ、Aは、その場でX1被告から差し出された5000万円の現金入りの紙袋を受け取ってf社に戻り、と認定している(原判決15頁)。
そして、これに沿う証拠としては、Aの平成13年3月16日付検面調書(甲32の3~4頁)およびAの一審の第5回公判中の証言(尋問調書53~59頁)があるが、この検面調書ではX1被告から現金入りの紙袋を渡された時間を午後1時の5分か10分前頃となっている(証言では特にこの時間を訂正してはいない)。
さらに、証拠物として大和銀行参議院支店のX1口座からの出金を証明する出金伝票が存在する。
(2) ところで、上記出金伝票には出金の時刻が明示されていないため出金時刻が不明である。当時のX1被告の立場からすると、5000万円程度の出金は他の用途のものも多く考えられたのであり、現にX1被告は一貫して暮れの餅代のための出金であったことを述べてきた。したがって、この出金時刻はきわめて重要であり、これがAの来訪時刻と矛盾するものであれば、当該5000万円をAに渡したと認定することは不可能になる関係にある。
しかるに、原審でも一審でも、この銀行の出金時刻並びに出金からX1事務所に届けるのに必要な時間を明らかにする証拠は一切取り調べられておらず、裁判長がその点について釈明を求めたこともない。
今回、弁護人が弁護士会照会により調査したところによれば、この出金時刻は「12月5日の午後1時28分」であり、したがって、出金後、大急ぎでこれをX1事務所に届けたとしても、1時30分以前ということはあり得ない。この場合、A検面調書供述の午後1時の5分か10分前ということがあり得ないのはもとより、原判決の認定した「午後1時頃」にAに現金を渡すこともあり得ないことが明白である。
(3) なお、午後1時30分頃に渡す場合であっても、銀行からおろしたばかりの現金を、金額の確認も十分せず、銀行の帯封のついたままの状態で渡すことになり、このようなやり方は、賄賂で収受した金をこっそり返す場合の常識的な方法と著しく異なっている。本件の場合に、そのような非常識な方法で、あわただしくAに返金しなければならなかった理由はまったく考えられないところであり、あまりに不自然、不合理と言わざるを得ない。
2 陳情場所の取り違えの意味の決定的重要性
(1) 一審判決は、平成8年1月10日の代表質問請託の場所を参議院議員会館のX1被告の事務所と認定していたところ、原審における弁護人のE手帳の提出とE証言によって、原判決は、請託場所を、国会内の参議院のg党幹事長室であると変更して認定したが、「平成8年1月10日にAがX1を訪問して請託を行った場所は、原判決の説示する『議員会館』ではなく、『参議院g党幹事長室』であることが明らかであるから、原判決の認定は是認できないが、この点は未だ判決に影響を及ぼすものとはいえない」(原判決29頁)としているように、請託の有無認定に関してこの場所取り違いの持つ意味の決定的な重要性を全く看過している。
議員会館のX1被告の事務所は、国会議員の政治活動における、いわばプライベートルームであり、廊下から入った秘書室と、その奥に仕切られ、ドアを開けて入る国会議員執務室兼応接室とに分かれており、同室では、議員が会談中、秘密が保たれる構造になっている。
これに対し、国会内の参議院g党幹事長室は、g党のいわばパブリックスペースであり、幹事長が使用するソファーの置かれた場所と、控え兼会議用のテーブル席との間にはついたてが置かれている程度であって、話し声がすべて隣に聞かれる間取りになっている。また、会談中であっても、国会議員等の同室への出入りは、g党幹事長室の性格上、自由になっている。
しかも、同室内に席を有している事務局員は、X1被告の個人秘書ではなく、参議院の職員である。以上からして、幹事長室内は、到底、秘密の請託をこっそりと話し合える場所ではない。
このとおり、原審が請託場所と認定した国会内の参議院g党幹事長室の性格、間取り、人の出入り、在室参議院職員の存在からして、代表質問請託が同室でなされたとしたことは、常識的に考えてもありえないことであり、この一点からだけでも著しく経験則に反する。
(2) さらに、請託をしたと原審が認定した平成8年1月10日は、政治上どのような日であったかについての考察を原審裁判官は全く欠いている。
この日は、h党のM内閣からg党のN内閣に代わった組閣前日である。
すなわち、これ以前、g党は、野党に転落して権力の座から落ち、反g党連立政権ができて野党の悲哀を味わっていたのを、ようやく反g党連立の中からh党を切り離してh党政権を作り、下支え裏方に回っていたのが、M内閣が崩壊し、これによって待ちに待ったg党の自前のN内閣ができ、その組閣前日である。
この時にあたり、参議院g党としては、一時野党や裏方に回っていたことなどもあり、大臣入閣待ちの参議院議員が多数控えており、参議院枠を確保し、入閣候補者を推薦し、参議院g党の意向をN内閣に要求していかなければならない政治上の重大局面にあった。X1被告は、参議院幹事長として、上記の調整を行う立場にあった上、g党五役の一人としてM内閣からN内閣に引き継ぐためにh党との折衝も行うなど、極めて重要な役割を積極的に果たしていたその真っ最中であり、幹事長室はその作戦室兼指揮所であった。
このような状況であるから、組閣前日の国会内の参議院g党幹事長室には、入閣を期待する自薦、他薦の参議院議員や、意見具申者、さらには20名以上のテレビ・新聞などの幹事長番(X1番)の記者が多数出入りしていた。この部屋は、政治家として大臣の地位を獲得せんがための権力獲得競争の修羅場であり、そこにいた全員の目が血走り殺気立っていたのである。
このような中に、Aが、突然、職人大学という新しい問題(しかも、すでに述べたとおり、緊急性は全くない案件である)を陳情しようとしても、到底受け入れてもらえる雰囲気にはない。かえって場違いな話題、陳情として、X1被告の反感を買い、激怒され、逆効果にしかならないのは、容易に理解されるところである。ましてや、Aの政治担当であり、元議員秘書の経験を有するBが同行して案内しているのであるから、この日、この場所の雰囲気は容易に察知することができた。それにもかかわらず、わざわざこの時期に、新たな陳情をするため、全員が浮き足だった幹事長室に出向くことなど、常識的にも、人間の心理からしても、全くありえないところである。
この組閣前日という1月10日の日のもつ特別な意味、重要性から考えても、この日に国会内の参議院g党幹事長室に来て、Aが、e大学を代表質問で取り上げてほしいなどというレベルの問題での陳情をX1被告にするということは、常識的に考えてもありえず、経験則に反することは明らかである。
Aの検面調書や、一審の証言に、この特別な日の上記幹事長室の雰囲気が全く表れていないことは、請託を認めた同人の請託の調書や証言の信用性がないことを如実に物語っている。
(3) しかるに原判決は、この幹事長室という場所、および平成8年1月10日という日の意味をまったく理解せず、また、必要な釈明もしないまま、漫然と、このような場所、このような時期の請託を認定したものであり、これが審理不尽、事実誤認に当たることは明白である。
結論
以上の通り、いかなる観点からしても、原判決が維持できないことは明白である。速やかに原判決を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻すよう求める次第である。
以上
国会議員の受託収賄事件
(PDFにて収録)
○ 平成18年11月29日付け上告趣意補充書
上記事件において、弁護人は、平成18年9月14日付けで上告趣意書を提出したが、今回、上告趣意第4点(審理不尽、事実誤認)1(5000万円の返戻)に関する新たな証拠を発見したので、これに基づき以下のとおり上告趣意を補充する。
1 新たな資料の標目
弁護人が、控訴審判決後に入手した新資料は以下のものである(本補充書に、これらの資料写を添付する)。
資料1 株式会社りそな銀行参議院支店に対する弁護士会照会書及びこれに対する同支店からの回答書
資料2 捜査関係事項照会書
資料3の1 捜査関係事項照会書について(回答)
資料3の2 配車表(抜粋)
資料3の3 運転日誌写し
2 新たな資料の内容
上記の資料は、いずれも、被告人の平成8年12月5日の行動を明らかにするものである。
資料1は、弁護士会会長がりそな銀行(旧大和銀行)参議院支店に照会し、これに対して同支店が回答したものである。この照会は弁護士法23条の2によって認められた公的な制度であり、照会者も回答者も本件捜査には何ら利害関係を有しないものであって、この資料の信用性に疑問を差し挟む余地はない。
資料2は、被告人に対する受託収賄事件を捜査していた東京地方検察庁の検察官が、参議院事務局管理部に対し、被告人が使用していた車両の配車表及び運転日誌等の交付を求めたものである。
資料3の1は、資料2に対し、参議院事務局管理部長が上記の照会に対して回答したものである(資料上部には(案)と記載されているが、「参管発第58号」と、外部へ正式に発する際の番号まで記載され、契印も押捺されているので、これが正式の文書と思われる)。
資料3の2は、上記資料3の1で交付された「配車表(抜粋)」のうち、平成8年12月5日を含む頁である。この「配車表(抜粋)」は、この当時、被告人(参議院g党幹事長)の運転手を務めていた参議院管理部自動車課に所属するO運転手(以下「O運転手」という)の参議院との出入時刻等を示すものであり、参議院管理部が、その保管する配車表のうち、被告人に関する部分を抜粋したものである。なお、資料3の2において、「本館」とあるは「参議院(本館)」を、「麹町議員宿舎」とあるは、麹町に所在する「参議院議員宿舎」(当時の被告人の宿舎)を、それぞれ示している。
資料3の3は、上記資料3の1で交付された「運転日誌」のうち、平成8年12月5日を含む頁である。これは、被告人の担当として同人の送迎等を行っていたO運転手が、日々、作成していた日報的な記録であり、高い信用性を有するものである(刑事訴訟法323条2号参照)。なお、資料3の3において、「役所」とあるは「参議院管理部車両課」を、「麹町」とあるは、麹町に所在する「参議院議員宿舎」を、「会館」とあるは「参議院議員会館」を、「本院」とあるは「参議院」を、それぞれ示している。
これらの資料2及び資料3の1ないし3は、その作成の経緯、作成者、形式等から見て、適式に作成されたものであることは明らかであり、その内容には高度の信用性が認められる。
3 資料により判明する事実
上記の資料3の2及び3によって、被告人が、ある特定の日に、何時にどこへ行き、そこからどこへ回り、何時にどこに戻ったかを知ることができる。
そして、これに資料1を加えて、平成8年12月5日の被告人の行動を見ると、以下のとおりである。
07:50 O運転手 参議院管理部車両課を出発し、麹町の参議院議員宿舎に向かう(資料3の2及び資料3の3「役所」)
被告人 麹町議員宿舎でO車に乗車(資料3の3「麹町」)
被告人 O車で麹町議員宿舎から紀尾井町へ(資料3の3「紀尾井町」)
被告人 O車で紀尾井町から参議院議員会館へ(資料3の3「会館」)
被告人 O車で参議院議員会館から参議院へ、O車から降車(資料3の3「本院」)
09:30 O運転手 参議院管理部車両課に戻る(資料3の2及び資料3の3「役所」)
11:30 O運転手 参議院管理部車両課を出発し、参議院本館玄関へ向かう(資料3の2及び資料3の3「役所」)
被告人 参議院でO車に乗車(資料3の3「本院」)
被告人 O車で参議院から平河町へ(資料3の3「平河町」)
被告人 O車で平河町から参議院議員会館へ(資料3の3「会館」)
13:28 大和銀行(当時)参議院支店が5000万円を出金(資料1)
被告人 O車で参議院議員会館から参議院へ、O車から降車(資料3の3「本院」)
13:35 O運転手 参議院管理部車両課に戻る(資料3の2及び資料3の3「役所」)
16:20 O運転手 参議院管理部車両課を出発し、参議院本館玄関へ向かう(資料3の2及び資料3の3「役所」)
被告人 参議院でO車に乗車(資料3「本院」)
被告人 O車で参議院から参議院議員会館へ(資料3の3「会館」)
被告人 O車で参議院議員会館から紀尾井町へ(資料3の3「紀尾井町」)
被告人 O車で紀尾井町から銀座へ(資料3の3「銀座」)
被告人 O車で銀座から九段へ(資料3の3「九段」)
被告人 O車で九段から麹町参議院議員宿舎へ、O車から降車(資料3の3「麹町」)
22:00 O運転手 参議院管理部車両課に戻る(資料3の2及び資料3の3「役所」)
4 A供述との関係
ところで、平成8年12月5日は、被告人が、贈賄側のAに対して現金5000万円を返戻したとされる日である。
この返戻に関するA及び被告人の行動を、Aの供述を基に再現し、上に示した客観的証拠に裏付けられた被告人の行動の中に置いてみると以下のとおりとなる(比較の便宜のため、A供述は赤字で示し、返戻に関係のない時間帯は省略した)。
11:30 O運転手 参議院管理部車両課を出発し、参議院本館へ向かう(資料3の2及び資料3の3「役所」)
被告人 参議院でO車に乗車(資料3の3「本院」)
被告人 O車で参議院から平河町へ(資料3の3「平河町」)
13:00少し前 A 参議院議員会館のX1事務所へ(甲32・3頁)
13:00頃 被告人 参議院議員会館のX1事務所へ(甲32添付A手帳)
被告人 O車で平河町から参議院議員会館へ(資料3の3「会館」)
13:28 大和銀行(当時)参議院支店が5000万円を出金(資料1)
A 被告人から現金5000万円を受領(甲32・3頁)
被告人 O車で参議院議員会館から参議院へ、O車から降車(資料3の3「本院」)
13:35 O運転手 参議院管理部車両課に戻る(資料3の2及び資料3の3「役所」)
5 A供述による5000万円返戻が不可能であること
(1) Aは、この日、午後1時に参議院議員会館のX1事務所で被告人と会う約束をしていたが、被告人を待たせるわけにはいかないので約束の時刻より少し前の午後0時50分か55分頃にX1事務所に着いていたと述べ(甲32・3頁)、その裏付けとして当時の手帳の12月5日の欄に、「1:00~(参)X1先生訪問(議院会館)」
と記載されていることを挙げている。
他方、Aは、被告人がこの日、何時に議員会館の事務所に戻ってきたかについては明確に供述・証言していないが、午後1時の約束の時刻から大幅に遅れた等の供述はないので、概ねこの頃、被告人は議員会館の事務所に戻ってきたものと思われる。
(2) 被告人は、この日、正午から午後1時まで、砂防会館(千代田区〈以下省略〉所在。資料3の3の「平河町」は、砂防会館を指す)で開催された政策科学研究所(名誉会長P、最高顧問Q外、被告人は顧問)の総会に出席している。砂防会館から参議院議員会館までの間には、信号のある交差点が1つあり、移動時間は車で3分程度であるから、被告人は、午後1時の総会終了まで砂防会館にいたとすれば、議員会館に着き、7階のX1事務所に戻ったのは午後1時5分過ぎ頃と思われる。
(3) ところで、資料1から明らかなとおり、午後1時5分過ぎの段階では、5000万円は大和銀行(当時)参議院支店で出金されていない。これがなされるのは、午後1時28分に、被告人の預金口座から、払戻請求書に記載された金額である5000万円を引き落とすというオペレーションがなされ(資料1)、かつ、上記支店内の現金照合帳に5000万円の払出が記入された後である(この点について、銀行関係者の陳述書を提出予定である)。
そうすると、現金5000万円が参議院支店を出るのは、午後1時28分に引落しオペレーションがなされてから、現金照合帳への記入、現金高の確認を行ってからであるから、午後1時30分を過ぎていたことは明らかである。これが議員会館地下の参議院支店から同会館7階のX1事務所まで運ばれたのは、どれほど早く見ても午後1時32~33分となる。そして、現金を運んでいった行員を被告人の秘書が迎え、これを被告人に伝え、行員が被告人に挨拶をして現金5000万円を渡し、被告人がこれを受け取って確認するについても、1~2分は要する。
(4) そして、Aの供述によれば、この現金5000万円を被告人がAに渡したとするが、そのとき、被告人は、「事情があって、先日、理事長からいただいた5000万円を、一応お返ししておきます。また何か必要が出てきた際には、支援してください」と述べて、大きめの紙袋に入った現金5000万円をAの方に差し出し、Aは、「先生がそうおっしゃるのであれば、おっしゃるとおりにいたします。また、何かあったら言ってください。応援させてもらいますから」と言って、この紙袋を受け取ったというのである(甲32・3~5頁)。このようなやり取りを含めれば、Aが現金を受領したのは、どれほど早くとも午後1時40分前後ということになろう(なお、これは他に何の作業もしなかったと仮定した最短の場合である。たとえば現金5000万円を、大和銀行(当時)が詰めてきた銀行封筒から他の紙袋に詰め替える、あるいは銀行の帯封を外すといった作業を行うとすれば、それだけで優に数分の時間が必要となる)。
さらに、A供述においては、この現金返戻にあたって、Aが被告人と会った時点ではまだ現金が用意されていなかったとの供述はなく、むしろこの時点では5000万円が既に紙袋の中に入れられていたかのように理解されるものとなっている。さらに、この返却の際、被告人に急いでいる様子も全く窺われない。
(5) 被告人は、Aに現金5000万円を渡したとされる後、議員会館7階の事務所を出て、参議院へ行った。参議院議員会館から参議院までは、距離としては数百メートルであるが、途中に信号が1つあり、順調に移動したとしても2~3分程度はかかる。したがって、被告人が参議院に到着したのは、早くとも午後1時42分以降である。
そして、被告人の乗った車を運転していたO運転手は、参議院で被告人を降ろした後、参議院管理部車両課に戻ったが、その間の移動時間は、少なくとも3分と見られるから、O運転手が参議院管理部車両課に戻ったのは、どれほど早く見ても午後1時45分を過ぎることは明らかである。
(6) ところが、資料2で明らかなとおり、O運転手のこのときの帰着時刻は午後1時35分と記録されている。時刻が5分単位で記録されていることを考慮に入れたとしても、O運転手の帰着時刻は午後1時37分頃より遅いということはありえない。
(7) 以上に見たとおり、午後1時28分に現金出金のための引き落としオペレーションが大和銀行参議院支店で行われたという客観的事実と、午後1時35分にO運転手が参議院管理部車両課に戻ったという客観的事実の間に、
・ 現金が議員会館地下の銀行支店から同会館7階に運ばれ、
・ ここで銀行員から秘書を経由して被告人に現金が渡され、
・ この現金が被告人からAに渡された後、
・ 被告人が議員会館7階から降りてO車に乗って参議院に行き、
・ その後、O運転手が参議院車両課まで戻る
という一連の行動を行うことは、客観的に不可能である。上に見たとおり、O運転手の帰着は、すべてのことが最も短い時間で行われた場合であっても、午後1時45分頃になるのである。
このように、Aが供述する「平成8年12月5日に、参議院議員会館のX1事務所で、自分(A)は、X1議員から現金5000万円を返却してもらった」という事実は物理的に不可能であり、真実ではない。
6 A供述が虚偽であることの意味
もともと、検察官の主張において、このときに被告人がAに5000万円を返戻したことは、
① 5000万円を返戻したのは、それ以前に同額がAから被告人に渡されていたためであるとして、同年10月2日にAから被告人に対して5000万円が提供され、被告人がこれを受領したことを裏付ける
② 5000万円を返戻したのは、被告人がこの5000万円の収受について疚しいところがあると感じていたことを裏付ける
ものと位置づけられていた。
このように、この5000万円の返戻は、被告人の「賄賂の収受」及び「賄賂性の認識」という2つの点を立証するものとして、検察官立証の根幹部分を構成している。そして、この要となる5000万円の返戻という事実の根拠となっているのはA供述であるところ、この供述内容が客観的に不可能であることが証明されたのであるから、このことは検察官の本件全体の立証が崩れ去ったことを意味している。
7 審理不尽
上に述べたとおり、Aが平成8年12月5日に被告人から5000万円の返戻を受けたか否かは、本件受託収賄事件の根幹に係る事実である。しかるに、検察官は、この枢要な点について、贈賄側とされるAの供述を得た以外には、僅かに甲第110号証によって、上記の日に5000万円が大和銀行参議院支店から支出されている事実を確認しただけである。銀行から現金が出金されたのが当日の何時何分であるのか、この出金時刻は返戻を受けたとするAの供述と矛盾しないのかという基本的事項については全く捜査していない。
さらに、当時、参議院g党幹事長という要職にあった被告人は日常の移動に参議院の公用車を利用していたものであり、かつ、このような車の出入りの時刻、当日の経路などが運転手の日報によって記録されていた。検察官も、資料2及びこれに対応する資料3に見られるとおり、捜査の過程で、このような記録を入手したが、銀行のオペレーション時刻との関係を捜査しなかったため、被告人から5000万円を返戻されたとするA供述が、関係する客観的証拠と矛盾しないかについて、捜査を尽くさなかったものである。
本件において検察官は、Aが平成8年1月10日に請託を行ったとされる場所に関しても、参議院議員会館のX1事務所であると思い込んで捜査を行い、そのような起訴をしたが、当日、Aが被告人に面会した場所が参議院幹事長室であったことは、現在は明らかになっている(原判決も、この点は認める)。そして、この両者には、議員会館の事務所が閉鎖的であり、議員と秘書しか在室しないという議員個人の私的空間であるのに対し、参議院幹事長室は、開放的であり、議院事務局員が常に在室し、多数の議員等が出入りし、院の問題を討議する公的な空間であるという顕著な差異がある。
平成8年1月10日にAと被告人が会った場所に関する事実誤認が、単なる部屋の違いではなく、請託の可否に関係する重大な誤りであることは、既に上告趣意書で述べたとおりであるが、上に見たとおり、検察官は、「請託」と並ぶ本件の重要な場面である「賄賂の返戻」についても十分な捜査を遂げず、これによって事実を誤認したものである。
以上のとおり、原審までの審理においては、5000万円の返戻について、大和銀行のオペレーション記録や参議院自動車課所属運転手の日報等の客観的記録を審理せず、検察官の主張を鵜呑みにして5000万円の返戻の事実を認め、これが5000万円の賄賂を収受したことの重要な間接事実になるとした。
これが審理不尽であることは明らかであると共に、原審は、これによって重大な事実誤認を犯したものである。そして、この重大な事実誤認によって被告人は誤って有罪とされたものであるから、原判決を破棄しなければ著しく正義に反することは明白である。
したがって、原判決を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻すべきである。
[添付資料省略]
○ 平成19年2月15日付け上告趣意補充書
上記事件において、弁護人は、平成18年9月14日付けで上告趣意書を提出し、同年11月29日付けで、上告趣意第4点(審理不尽、事実誤認)1(5000万円の返戻)に関する上告趣意補充書を提出したが、この点について、さらに上告趣意を補充する。
1 上告趣意補充書によって明らかとなった事実
平成18年11月29日付け上告趣意補充書によって明らかとなったのは、平成8年12月5日、大和銀行参議院支店から、被告人名義の払戻請求書によって、同日午後1時28分より後に現金5000万円が引き出されたが、被告人は、この現金を、同日午後1時35分前に参議院に到着するまでに国会事務所で受け取ることは不可能であり、したがって、この日に被告人の国会事務所を訪れていたAがこの現金5000万円を被告人から受け取ることは不可能であったという事実である。
この点は、りそな銀行(大和銀行を承継)からの弁護士会宛回答書及び参議院事務局の配車表・運転日誌という客観的な証拠によって裏付けられたものであり、疑問を差し挟む余地がない。
2 この点に関するA・B供述の検討
ところで、Aは、この点について、平成13年3月16日付け検察官調書(甲32)において、「私は、X1議員から渡された5,000万円をf社に持ち帰り、理事長室に、d連事務総長Bと、f社の経理担当のD常務理事を呼び、D常務らに対し、
これ、X1先生が返してきた。
と言って、紙袋に入った5,000万円をDに渡したところ、Dは、
えっ、そんなことがあるんですか。
と言って驚いておりました」(6頁)と供述しているが、上記のとおり、Aがこの日に被告人から現金5000万円を受け取ることは不可能であるから、この供述は虚偽である。
同様に、Bも、この点について、平成13年3月18日付け検察官調書(甲43)において、「その日、私とD常務が、理事長室に入ると、A理事長は、私とD常務を前にして、
X1先生から5,000万円が戻されてきた
と言って、5,000万円が入っていると思われる紙袋をD常務に手渡しました」(2頁)と供述するが、これも、上記と同様の理由により虚偽である。
3 5500万円の入金の意味するもの
検察官は、この日に被告人から5000万円の返金があり、これを銀行に入金したとする控えをBに見せるなどしてBに5000万円の返金の事実を承認させた(1審B・第3回公判・118頁。また、原審B・第6回・8頁)。
しかし、実際には、このときに銀行に入金された金額は5500万円であって、被告人から戻されたという5000万円ではない。検察官は、この点を取り繕うため、D常務理事に、「A理事長から現金5,000万円を受け取ったのとほぼ同時期のことですが、d連のB総長が、f社ビル6階常務理事室に現金500万円を持ってきましたので、私は、これを受け取ると、理事長から受け取った現金5,000万円と同様、U経理部長に渡して、f社の口座に入金するように指示しました」(平成12年12月26日付け検察官調書〔甲48〕36~37頁)と供述させている。
しかし、この500万円については、B自身が、「私は持っていっておりません」(1審B・第3回公判・14頁)と、明確に否定している。
500万円は大金である。まして、現金500万円ということであれば、それを持っていた、あるいはこれを誰かに渡したということは鮮明な記憶として残るはずであり、忘れるはずはない。まして、Bは、上記のとおり、「忘れた」というのではなく、「持っていっておりません」と明確に否定している。
逆に、金を受け入れる側にとっても、500万円は軽々に扱える金額ではない。何らかの収入なのか、それ以前に出金した経費の残余なのか、どのようなものであるにせよ、費目を明確にして、受け入れなければならない。しかるに、この500万円については、「Bが持ってきましたので」というだけで、それ以上に説明もなされていないのであり、通常の経理処理として極めて不自然である。
このように見るならば、Bが500万円を持ってきたという事実自体が認められないものである。
以上のように、被告人からの5000万円が存在せず、Bからの500万円も存在しないのであるから、この5500万円は、5000万円と500万円の2つをたまたま一緒にしたというものではなく、もともと5500万円という1つのものであったと考える方が自然である。このように考えれば、この5500万円は、被告人からの5000万円とは全く別物であることが明らかである。
4 小括
原審も、5500万円という数字が5000万円と食い違っていることは認識していたはずである。しかし、原審までの証拠では、5000万円の返金がありえないということは認定できなかった。そうであれば、500万円について多少の疑問があろうとも、「X1先生から5000万円が返却されてきた」旨のA及びBの供述に依拠して5000万円の返却を認定したとしても不自然ではなかったかもしれない。
しかし、既に述べたとおり、5000万円がAに返却されたという事実が存在しないことが明らかになったのであるから、これまで信用性が認められてきたA及びBの供述が逆に虚偽のものとなった。すなわち、これまで被告人を黒にするための証拠であったものが、ネガとポジが反転して、被告人を白にするための証拠となるのである(被告人の供述については後述)。
このように、被告人からの5000万円の返金という検察官の主張を支えるものとしてのA・B・D供述は、5000万円の返金が不可能であったという事実を前にして、完全に信用性を失う。そして、5500万円と5000万円が食い違うという問題も、5000万円の返金が事実であることを前提とする場合と、5000万円の返金が不可能であるいう事実を前提とする場合では、その意味合いは全く異なることになる。
5000万円の返却が、本件受託収賄罪の成否を直接に左右する重大な問題であることは既に述べたとおりであり、上記の点をさらに審理するため、本件は原審に差し戻されるべきである。
5 被告人の供述
A・B・Dの供述が信用できないのと対照的に、被告人の供述は、一貫して、5000万円の返金という事実を否定するものであって、その信用性は高い。
具体的には、被告人は、
・ (5000万円を12月5日に返してもらったと証言しているが?)ございません(被告人・原審第8回・43頁)。
・ 私は、そのとき疑問に思うのは、5000万、私のところから受け取ってf社に持ち帰って経理に渡したと、そのときには5500万渡したというんですから、私はそこら辺りがちょっと不可思議なところだと思っております(前同・44頁)。
・ (この5000万円をその日のうちにA理事長に渡したんではないんですか?)そう言われていますけれども、私の記憶にはそういうことは全くございません(前同・61頁)。
と述べているのであり、その供述には些かのブレもない。
12月5日の5000万円の返却が客観的に不可能であるという資料が未発見である段階で、このように、「5000万円を返却したことはない」と断言する被告人の供述は、自らの記憶に忠実に、かつ、正確に述べたものであり、これが客観的に正しいことは前回の上告趣意補充書に添付した資料によって明らかである。
したがって、被告人の供述は客観的証拠に裏付けられた信用性の高いものであり、これがA・B・Dの供述より高い証拠価値を持つことは明らかである。
6 被告人の5000万円の使途
被告人は、平成8年当時、参議院g党幹事長であり、盆暮れには、「氷代」「餅代」などと称して関係議員に現金を配る立場にあった。
この授受については、慣習上、領収書等が残されないものであるが、その実態については、今回、資料として提出するV氏(元参議院議員、自治大臣・国家公安委員長、官房副長官)の上申書によってその一端を窺い知ることができる。
被告人が一貫して述べるとおり、平成8年12月5日に大和銀行参議院支店から下ろした5000万円は、この「餅代」であり(被告人・原審第8回・62頁等)、そのために関係議員に配られたものであって、Aから受領した賄賂の返金ではないことは明らかである。
7 結論
以上のとおり、平成8年12月5日にAが被告人から5000万円の返金を受けた事実はない。
検察官は、これを立証しようとして、「大和銀行参議院支店からの5000万円の出金」と、「f社の5500万円の入金」の双方を挙げたが、そのどちらも被告人からAに対する5000万円の返金を証するものでないことが明らかとなった。
f社に入金された5500万円は被告人からの返金ではなく、別物である。また、被告人が同日に下ろした5000万円は、政界の慣習として関係議員に配られる「餅代」であり、Aに対する返金ではない。
この点を誤認した原判決は、これを破棄しなければ著しく正義に反する事実誤認を犯したものであるから、原判決を破棄し、本件を原審に差し戻すべきである。
以上
○ 平成19年3月7日付け上告趣意補充書
上記事件において、弁護人は、平成18年9月14日付けで上告趣意書を提出したが、今般、上告趣意第2点(刑事訴訟法405条2号)に関連して上告趣意を補充する。
1 代表質問に関する初めての最高裁判断
本件で問われているのは、参議院議員であった被告人が、参議院本会議の場で行った代表質問に関する賄賂罪の成否である。これまで、最高裁では、国会議員の委員会における質疑について収賄罪の成立を認めた例はあるが、本会議における代表質問が収賄罪に問われた例はない。
したがって、本件は、この問題に関する最初の最高裁判断となるものであるが、その判断にあたっては、憲法が定める三権分立という大原則の下で司法府と立法府の関係に留意すべきであり、これについて慎重な考慮が必要である。
2 R・元参議院議長の「所見」
代表質問は、国会法等の法規に根拠を持つものではなく、第一回帝国議会以来の先例に基づくものである。したがって、その正確な理解のためには、参議院議長を務めたR氏の「所見」(平成19年2月9日に御庁に提出)を十分に参照する必要がある。
この「所見」で明らかにされたのは、代表質問は政府の基本的な政治姿勢と政治方針に係るものであり、個別の具体的施策や利害関係事項は取り上げないこと、さらに代表質問は政党を代表して行われるものであり、最終的には質問の内容は党の意思決定機関(被告人が所属していたg党においては、執行部会〔役員会〕)の了承を受けなければならないことである。
すなわち、代表質問は、政党の施策方針を個人である議員が代表して政府に質問する行為であるとされる。
このように、代表質問は、その本質は、政党の活動であるから、これについては、既に上告趣意書でも述べたとおり、「議員としての活動と政党の一員としての活動の区別が困難となってくる。このような場合、どこからが議員としての職務権限に属する事項であり、どこまでが政党の活動に属する事項かを認定することが実際上むずかしい。現在の一般的職務権限の理論及び職務密接関連行為の考え方からすれば、このような場合には、職務性を肯定することが論理的帰結であろう。しかし、政治的公務員について、形式的にこのような判断をすることは、その本質からみて、問題がある」(『大コンメンタール刑法 第二版』第10巻52頁〔古田佑紀=渡辺咲子=五十嵐さおり〕)、と、検察官からも指摘されてところである。
3 憲法51条違反
憲法51条は、「両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない」と規定する。
これは、国会が「国権の最高機関」であり、「国の唯一の立法機関」(憲法41条)であることから、これを構成する議員に国会内での自由な発言を保障したものである。
そして、上に見たとおり、代表質問は、国会議員の個人としての行為ではなく、むしろその所属する政党の活動であり、政党が自らの政治姿勢と政治方針に基づいて政府に対して質問するものである。
また、このような過程を経て策定される代表質問を誰に行わせるかの決定も立法府内における政党の高度に自治的な活動に属する事柄であることは明らかと言える。
このように、代表質問は議員が政党の一員として行うものであるから、これについては最高度の自由が保障されなければならず、代表質問について収賄罪が成立するということはありえないというべきである。院の本会議で行われる代表質問を収賄罪に問うことは、議員の政党員としての活動を規制するものであり、立法活動に対する司法府の過剰な介入である。したがって、本件の被告人の代表質問に関して受託収賄罪の成立を認め、その刑事責任を問うことは、憲法51条の趣旨に反し、許されないものである。
4 証人尋問の必要性
上記のとおり、代表質問に関して刑事責任を問うことは憲法上許されないが、少なくともこの問題が立法府と司法府の関係に十分に留意して判断されるべきものであることは明らかである。
しかし、現在まで取り調べられた証拠によっては、この問題について適切な判断を下すことは相当に困難である。このため、弁護人は、当審において、
R・元参議院議長
S・参議院法制局長
の証人尋問を実施されるよう求める(刑事訴訟法414条は、控訴の規定を上告の審判に準用しているから、当審においても証人尋問を行うことは可能であり、最高裁昭和34年8月10日大法廷判決・刑集13巻9号1419頁でも上告審における事実の取調べを認めている)。
以上
添付資料 T教授作成の鑑定意見書
[添付資料省略]
(被告人X2の弁護人山田有宏ほかの上告趣意は省略)

 

別紙

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政治と選挙の裁判例「国政政党 地域政党 政治塾 政経塾 個人(単独)ポスター」に関する裁判例一覧
(1)平成21年 1月20日 東京地裁 平19(行ウ)649号・平19(行ウ)650号 難民の認定をしない処分取消等請求事件 〔ミャンマー人強制退去訴訟〕
(2)平成20年12月26日 静岡地裁 平17(行ウ)28号 政務調査費返還請求事件
(3)平成20年12月 1日 仙台地裁 平19(行ウ)17号 政務調査費返還履行等請求事件
(4)平成20年11月28日 東京地裁 平19(行ウ)435号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(5)平成20年11月27日 東京地裁 平19(行ウ)70号・平20(行ウ)17号・平20(行ウ)18号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(6)平成20年11月26日 東京地裁 平19(行ウ)512号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(7)平成20年11月19日 東京地裁 平19(ワ)15568号 損害賠償等請求事件
(8)平成20年11月13日 東京地裁 平19(行ウ)76号・平19(行ウ)436号 在留特別許可をしない処分無効確認請求事件、難民の認定をしない処分取消等請求事件
(9)平成20年11月12日 大阪高裁 平20(ネ)1189号・平20(ネ)1764号 債務不存在確認等請求控訴、会費請求反訴事件
(10)平成20年11月10日 松江地裁 平18(行ウ)8号 政務調査費返還請求事件
(11)平成20年10月31日 東京地裁 平18(行ウ)531号・平18(行ウ)549号・平19(行ウ)556号・平19(行ウ)578号 在留を特別に許可しない処分取消請求事件、難民の認定をしない処分取消等請求事件
(12)平成20年10月31日 東京地裁 平19(ワ)17519号 損害賠償請求事件
(13)平成20年10月28日 東京地裁 平20(ワ)16346号 損害賠償等請求事件
(14)平成20年10月 8日 東京地裁 平13(ワ)12188号・平14(ワ)21402号 各損害賠償請求事件
(15)平成20年 9月29日 東京高裁 平20(う)1187号 脅迫被告事件
(16)平成20年 9月26日 東京地裁 平19(行ウ)530号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(17)平成20年 9月26日 東京地裁 平19(行ウ)358号 難民の認定をしない処分取消請求事件
(18)平成20年 9月19日 東京地裁 平19(行ウ)520号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(19)平成20年 9月19日 東京地裁 平17(特わ)5633号 国家公務員法被告事件
(20)平成20年 9月 9日 東京地裁 平18(ワ)18306号 損害賠償等請求事件
(21)平成20年 9月 5日 東京地裁 平19(行ウ)485号・平19(行ウ)508号 難民の認定をしない処分取消等請求事件、在留特別許可をしない処分無効確認請求事件
(22)平成20年 9月 5日 東京地裁 平19(行ウ)462号 不当利得返還(住民訴訟)請求事件
(23)平成20年 8月22日 東京地裁 平18(行ウ)528号・平19(行ウ)359号 在留を特別に許可しない処分取消等請求事件、難民の認定をしない処分取消等請求事件
(24)平成20年 7月17日 東京高裁 平20(行コ)15号 公文書非開示処分取消等請求控訴事件
(25)平成20年 7月16日 東京地裁 平18(行ウ)693号・平19(行ウ)587号 難民の認定をしない処分取消等請求事件、退去強制令書発付処分取消等請求事件
(26)平成20年 7月 7日 札幌地裁 平18(行ウ)13号 懲戒処分取消請求事件
(27)平成20年 6月27日 東京地裁 平18(行ウ)595号・平19(行ウ)328号 在留を特別に許可しない処分取消等請求事件、難民の認定をしない処分取消等請求事件
(28)平成20年 6月26日 那覇地裁沖縄支部 平14(ワ)513号・平15(ワ)171号 普天間米軍基地爆音差止等請求事件 〔普天間基地騒音公害訴訟・第一審〕
(29)平成20年 5月30日 東京地裁 平19(行ウ)142号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(30)平成20年 5月22日 東京地裁 平18(行ウ)477号・平19(行ウ)50号・平19(行ウ)51号・平19(行ウ)52号・平19(行ウ)53号 退去強制令書発付処分取消等請求事件
(31)平成20年 5月16日 大阪地裁 平19(行ウ)159号 町議会議員辞職許可無効確認等請求事件
(32)平成20年 5月 8日 松江地裁 平20(む)40号 証拠開示を命ずる旨の裁定の請求事件
(33)平成20年 4月24日 名古屋地裁 平18(行ウ)46号 退去強制令書発付処分取消請求事件
(34)平成20年 4月22日 東京地裁 平18(ワ)21980号 地位確認等請求事件 〔財団法人市川房江記念会事件〕
(35)平成20年 4月16日 東京地裁 平18(行ウ)752号・平18(行ウ)754号・平19(行ウ)548号・平19(行ウ)565号 退去強制令書発付処分取消等請求事件、難民の認定をしない処分取消請求事件
(36)平成20年 4月16日 東京地裁 平17(ワ)7357号 出版物の発行差止等請求事件
(37)平成20年 4月11日 最高裁第二小法廷 平17(あ)2652号 住居侵入被告事件 〔立川反戦ビラ事件・上告審〕
(38)平成20年 4月11日 東京地裁 平18(行ウ)410号・平18(行ウ)542号 難民の認定をしない処分取消等請求事件、退去強制令書発付処分取消等請求事件
(39)平成20年 3月28日 東京地裁 平18(行ウ)596号・平18(行ウ)609号・平19(行ウ)115号・平19(行ウ)116号 在留を特別に許可しない処分取消等請求事件、難民の認定をしない処分取消等請求事件
(40)平成20年 3月27日 最高裁第三小法廷 平18(あ)348号 受託収賄被告事件 〔KSD事件〕
(41)平成20年 3月27日 東京地裁 平18(ワ)18305号 損害賠償等請求事件
(42)平成20年 3月26日 東京地裁 平19(行ウ)71号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(43)平成20年 3月25日 東京地裁 平19(行ウ)14号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(44)平成20年 3月24日 仙台地裁 平18(行ウ)4号 政務調査費返還代位請求事件
(45)平成20年 3月21日 東京地裁 平19(行ウ)196号 損害賠償(住民訴訟)請求事件 〔目黒区長新年会費公金支出損害賠償請求住民訴訟事件〕
(46)平成20年 3月17日 東京地裁 平17(行ウ)524号・平18(行ウ)224号 難民の認定をしない処分取消請求事件、退去強制令書発付処分取消等請求事件
(47)平成20年 3月14日 和歌山地裁田辺支部 平18(ワ)167号 債務不存在確認等請求事件
(48)平成20年 3月12日 名古屋地裁 平18(行ウ)38号 帰化申請不許可処分取消等請求事件
(49)平成20年 3月11日 仙台地裁 平13(行ウ)12号 行政文書非開示処分取消請求事件
(50)平成20年 2月29日 東京地裁 平18(行ウ)552号 退去強制令書発付処分取消等請求事件
(51)平成20年 2月28日 神戸地裁尼崎支部 平17(ワ)213号・平17(ワ)327号 解雇無効確認等請求事件、損害賠償等請求事件
(52)平成20年 2月27日 東京地裁 平14(行ウ)418号 難民の認定をしない処分取消請求事件
(53)平成20年 2月21日 東京地裁 平19(行ウ)43号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(54)平成20年 2月21日 東京地裁 平17(行ウ)493号・平18(行ウ)451号・平18(行ウ)452号・平18(行ウ)453号・平18(行ウ)706号 退去強制令書発付処分取消等請求事件、難民の認定をしない処分取消請求事件、訴えの追加的併合申立て事件
(55)平成20年 2月18日 東京地裁 平18(行ウ)433号・平18(行ウ)434号 退去強制令書発付処分取消等請求事件、難民の認定をしない処分取消請求事件
(56)平成20年 2月 8日 東京地裁 平18(行ウ)491号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(57)平成20年 2月 7日 東京地裁 平18(行ウ)547号・平18(行ウ)548号 難民の認定をしない処分取消請求事件、退去強制令書発付処分取消等請求事件
(58)平成20年 1月25日 東京地裁 平17(ワ)23269号 損害賠償請求事件 〔規制緩和政策タクシー訴訟〕
(59)平成20年 1月22日 東京地裁 平19(ワ)12276号 職務執行禁止請求事件
(60)平成20年 1月21日 東京地裁 平17(行ウ)405号・平18(行ウ)315号 退去強制令書発付処分取消等請求事件、難民の認定をしない処分取消請求事件
(61)平成20年 1月17日 東京地裁 平17(行ウ)492号・平18(行ウ)233号 退去強制令書発付処分取消等請求事件、難民の認定をしない処分取消請求事件
(62)平成20年 1月16日 東京地裁 平18(行ウ)409号・平18(行ウ)415号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(63)平成20年 1月10日 東京地裁 平19(ワ)20886号 損害賠償等請求事件
(64)平成19年12月21日 東京地裁 平17(行ウ)494号・平18(行ウ)330号 退去強制令書発付処分取消等請求事件、難民の認定をしない処分取消等請求事件
(65)平成19年12月20日 仙台高裁 平19(行コ)15号 政務調査費返還代位請求控訴事件
(66)平成19年12月20日 東京地裁 平19(行ウ)286号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(67)平成19年12月19日 仙台高裁 平19(行コ)14号 政務調査費返還等代位請求控訴事件
(68)平成19年12月18日 東京地裁 平18(ワ)22942号 謝罪広告等請求事件
(69)平成19年12月11日 東京高裁 平18(う)2754号 住居侵入被告事件 〔葛飾政党ビラ配布事件・控訴審〕
(70)平成19年12月10日 東京地裁 平18(ワ)28336号 慰謝料等請求事件
(71)平成19年11月26日 東京地裁 平18(行ウ)160号 不当労働行為救済命令一部取消請求事件
(72)平成19年11月26日 東京地裁 平17(行ウ)393号・平17(行ウ)394 退去強制令書発付処分取消等請求事件、難民の認定をしない処分取消請求事件
(73)平成19年11月22日 仙台高裁 平19(行ケ)2号 裁決取消等請求事件
(74)平成19年11月22日 大阪地裁 平17(わ)6219号 公職選挙法違反被告事件
(75)平成19年11月21日 大阪地裁 平17(行ウ)54号 難民不認定処分取消等請求事件
(76)平成19年11月14日 東京地裁 平14(行ウ)251号 退去強制令書発付処分取消等請求事件
(77)平成19年11月13日 仙台地裁 平15(行ウ)30号 政務調査費返還代位請求事件
(78)平成19年11月 6日 東京地裁 平18(行ウ)331号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(79)平成19年11月 2日 東京地裁 平17(行ウ)431号・平17(行ウ)511号 難民の認定をしない処分取消請求事件、不法残留認定処分取消請求事件
(80)平成19年10月31日 東京地裁 平17(行ウ)450号・平18(行ウ)192号 難民の認定をしない処分取消請求事件、退去強制令書発付処分取消等請求事件
(81)平成19年10月25日 東京地裁 平17(行ウ)490号・平18(行ウ)310号 退去強制令書発付処分取消等請求事件、難民の認定をしない処分取消等請求事件
(82)平成19年10月12日 長野地裁 平17(行ウ)16号 政務調査費返還請求権行使請求事件
(83)平成19年 9月27日 名古屋地裁 平18(ワ)3715号 弁護士報酬等請求事件
(84)平成19年 9月26日 東京地裁 平17(行ウ)408号・平18(行ウ)274号 退去強制令書発付処分取消等請求事件、難民の認定をしない処分取消等請求事件
(85)平成19年 9月21日 東京地裁 平16(行ウ)404号・平17(行ウ)141号 退去強制令書発付処分無効確認請求事件、難民の認定をしない処分取消請求事件
(86)平成19年 9月14日 東京地裁 平18(行ウ)289号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(87)平成19年 9月12日 東京地裁 平17(行ウ)34号 退去強制令書発付処分取消等請求事件
(88)平成19年 9月 7日 福岡高裁 平18(う)116号 公職選挙法違反被告事件
(89)平成19年 9月 6日 東京地裁 平17(行ウ)138号 損害賠償請求事件
(90)平成19年 8月31日 東京地裁 平15(行ウ)645号・平18(行ウ)189号 難民の認定をしない処分取消請求事件、退去強制令書発付処分取消等請求事件
(91)平成19年 8月30日 東京地裁 平16(行ウ)144号・平18(行ウ)170号・平18(行ウ)171号 退去強制令書発付処分等取消請求事件、難民の認定をしない処分取消等請求事件
(92)平成19年 8月30日 東京地裁 平17(ワ)21062号 地位確認等請求事件
(93)平成19年 8月30日 大阪地裁 平19(行ウ)83号 行政文書不開示決定処分取消等請求事件
(94)平成19年 8月29日 東京地裁 平14(行ウ)248号・平14(行ウ)306号 退去強制令書発付処分取消等請求事件、難民の認定をしない処分取消請求事件
(95)平成19年 8月22日 東京地裁 平14(行ウ)245号・平14(行ウ)307号 退去強制令書発付処分取消等消請求事件、難民の認定をしない処分取消請求事件
(96)平成19年 8月10日 東京地裁 平18(ワ)19755号 謝罪広告等請求事件
(97)平成19年 7月27日 東京地裁 平17(行ウ)102号・平17(行ウ)438号 退去強制令書発付処分取消等請求事件、難民の認定をしない処分取消請求事件
(98)平成19年 7月20日 東京地裁 平17(行ウ)365号・平18(行ウ)217号・平18(行ウ)327号 退去強制令書発付処分取消等請求事件、難民の認定をしない処分取消等請求事件、在留特別許可をしない処分取消等請求事件
(99)平成19年 7月19日 東京地裁 平16(行ウ)536号・平17(行ウ)539号 退去強制令書発付処分取消等請求事件、難民の認定をしない処分無効確認請求事件
(100)平成19年 7月17日 神戸地裁尼崎支部 平17(ワ)1227号 総会決議一部無効確認等請求事件


政治と選挙の裁判例(裁判例リスト)

■「選挙 コンサルタント」に関する裁判例一覧【1-101】
https://www.senkyo.win/hanrei-senkyo-consultant/

■「選挙 立候補」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-senkyo-rikkouho/

■「政治活動 選挙運動」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seijikatsudou-senkyoundou/

■「公職選挙法 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kousyokusenkyohou-poster/

■「選挙 ビラ チラシ」に関する裁判例一覧【1~49】
https://www.senkyo.win/hanrei-senkyo-bira-chirashi/

■「政務活動費 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seimu-katsudouhi-poster/

■「演説会 告知 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/senkyo-seiji-enzetsukai-kokuchi-poster/

■「公職選挙法 ポスター 掲示交渉」に関する裁判例一覧【101~210】
https://www.senkyo.win/kousyokusenkyohou-negotiate-put-up-poster/

■「政治ポスター貼り 公職選挙法 解釈」に関する裁判例一覧【211~327】
https://www.senkyo.win/political-poster-kousyokusenkyohou-explanation/

■「公職選挙法」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kousyokusenkyohou/

■「選挙 公報 広報 ポスター ビラ」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/senkyo-kouhou-poster-bira/

■「選挙妨害」に関する裁判例一覧【1~90】
https://www.senkyo.win/hanrei-senkyo-bougai-poster/

■「二連(三連)ポスター 政党 公認 候補者」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-2ren-3ren-poster-political-party-official-candidate/

■「個人(単独)ポスター 政党 公認 候補者」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kojin-tandoku-poster-political-party-official-candidate/

■「政党 公認 候補者 公募 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-political-party-official-candidate-koubo-poster/

■「告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター 政党 議員 政治家」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kokuji-kouji-kouei-kousetsu-keijiban-poster-political-party-politician/

■「告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター 政党 公報 広報」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kokuji-kouji-kouei-kousetsu-keijiban-poster-political-party-campaign-bulletin-gazette-public-relations/

■「国政政党 地域政党 二連(三連)ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kokusei-seitou-chiiki-seitou-2ren-3ren-poster/

■「国政政党 地域政党 個人(単独)ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kokusei-seitou-chiiki-seitou-kojin-tandoku-poster/

■「公認 候補者 公募 ポスター 国政政党 地域政党」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-official-candidate-koubo-poster-kokusei-seitou-chiiki-seitou/

■「政治団体 公認 候補者 告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-political-organization-official-candidate-kokuji-kouji-kouei-kousetsu-keijiban-poster/

■「政治団体 後援会 選挙事務所 候補者 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-political-organization-kouenkai-senkyo-jimusho-official-candidate-poster/

■「政党 衆議院議員 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-shuugiin-giin-poster/

■「政党 参議院議員 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-sangiin-giin-poster/

■「政党 地方議員 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-chihou-giin-poster/

■「政党 代議士 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-daigishi-giin-poster/

■「政党 ポスター貼り ボランティア」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-poster-hari-volunteer/

■「政党 党員 入党 入会 獲得 募集 代行」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-touin-nyuutou-nyuukai-kakutoku-boshuu-daikou/

■「政治団体 党員 入党 入会 獲得 募集 代行」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seiji-dantai-nyuutou-nyuukai-kakutoku-boshuu-daikou/

■「後援会 入会 募集 獲得 代行」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kouenkai-nyuukai-boshuu-kakutoku-daikou/


■選挙の種類一覧
選挙①【衆議院議員総選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙②【参議院議員通常選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙③【一般選挙(地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙④【特別選挙(国政選挙|地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)


【資料】政治活動用事前街頭ポスター新規掲示交渉実績一覧【PRドットウィン!】選挙,ポスター,貼り,代行,ポスター貼り,業者,選挙,ポスター,貼り,業者,ポスター,貼り,依頼,タウン,ポスター,ポスター,貼る,許可,ポスター,貼ってもらう,頼み方,ポスター,貼れる場所,ポスター,貼付,街,貼り,ポスター,政治活動ポスター,演説会,告知,選挙ポスター,イラスト,選挙ポスター,画像,明るい選挙ポスター,書き方,明るい選挙ポスター,東京,中学生,選挙ポスター,デザイン


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