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「公職選挙法 ポスター」に関する裁判例(22)平成22年 3月31日  東京地裁  平21(行ウ)259号  損害賠償(住民訴訟)請求事件

「公職選挙法 ポスター」に関する裁判例(22)平成22年 3月31日  東京地裁  平21(行ウ)259号  損害賠償(住民訴訟)請求事件

裁判年月日  平成22年 3月31日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(行ウ)259号
事件名  損害賠償(住民訴訟)請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2010WLJPCA03318002

要旨
◆東京都練馬区の住民である原告が、同区選挙管理委員会の委員長及びその他の委員らに対し月額報酬を支給するのは、非常勤職員には原則として勤務日数に応じて報酬を支給すべきことを定めた地方自治法の規定に反し違法であるなどと主張して、上記報酬支給の支出負担行為につき本来的な権限を有する練馬区長を被告として、報酬支給の差止めを求めた事案において、多種多様かつ広範で専門的な選挙管理委員会の職務内容等に照らせば、条例によって報酬を月額により支給することが裁量権の逸脱又は濫用とまで断じ得ないとして、請求を棄却した事例

出典
裁判所ウェブサイト

参照条文
地方自治法138条の2
地方自治法203条の2第2項
地方自治法242条の2第1項

裁判年月日  平成22年 3月31日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(行ウ)259号
事件名  損害賠償(住民訴訟)請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2010WLJPCA03318002

東京都練馬区〈以下省略〉
原告 X
東京都練馬区〈以下省略〉
被告 練馬区長志村豊志郎
被告指定代理人 河野通孝
同 山田幸男
同 木下元
同 吉本卓裕
同 藤田光威
同 中濱盡

 

 

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
被告は,平成22年4月以降,練馬区選挙管理委員会の委員長に対し30万8000円,同委員会の委員長以外の各委員に対し各24万6000円の月額報酬をいずれも支給してはならない。
第2  事案の概要
本件は,練馬区の住民である原告が,練馬区選挙管理委員会の委員長及びその他の委員に対して月額をもって定められた報酬が支給されていることは,委員会の委員を含む非常勤の職員には原則として勤務日数に応じて報酬を支給すべきことを定めた地方自治法(以下「法」という。)203条の2第2項の規定に反するもので違法であるなどと主張して,上記の報酬の支給に係る支出負担行為の本来的な権限を有する練馬区長を被告として,法242条の2第1項1号に基づき,平成22年4月以降の上記の報酬の支給の差止めを求めた事案である。
1  選挙管理委員会の委員の報酬等に係る法の定め
(1)  委員会及び委員の設置(138条の2,138条の4,180条の5)
ア(ア) 普通地方公共団体にその執行機関として普通地方公共団体の長のほか,法律の定めるところにより,委員会又は委員を置く。(138条の4第1項)
(イ) 普通地方公共団体の委員会は,法律の定めるところにより,法令又は普通地方公共団体の条例若しくは規則に違反しない限りにおいて,その権限に属する事務に関し,規則その他の規程を定めることができる。(同条2項)
イ 普通地方公共団体の執行機関は,当該普通地方公共団体の条例,予算その他の議会の議決に基づく事務及び法令,規則その他の規程に基づく当該普通地方公共団体の事務を,自らの判断と責任において,誠実に管理し及び執行する義務を負う。(138条の2)
ウ(ア) 執行機関として法律の定めるところにより普通地方公共団体に置かなければならない委員会及び委員は,次のとおりである。(180条の5第1項)
a 教育委員会
b 選挙管理委員会
c 人事委員会又は人事委員会を置かない普通地方公共団体にあっては公平委員会
d 監査委員
(イ) 普通地方公共団体の委員会の委員又は委員は,法律に特別の定めがあるものを除くほか,非常勤とする。(同条5項)
(2)  報酬及び費用弁償(203条の2)
ア 普通地方公共団体は,その委員会の委員,非常勤の監査委員その他の委員,自治紛争処理委員,審査会,審議会及び調査会等の委員その他の構成員,専門委員,投票管理者,開票管理者,選挙長,投票立会人,開票立会人及び選挙立会人その他普通地方公共団体の非常勤の職員(短時間勤務職員を除く。)に対し,報酬を支給しなければならない。(同条1項)
イ 上記アの職員に対する報酬は,その勤務日数に応じてこれを支給する。ただし,条例で特別の定めをした場合は,この限りでない。(同条2項。以下「本件規定」という。)
ウ 上記アの職員は,職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる。(同条3項)
エ 報酬及び費用弁償の額並びにその支給方法は,条例でこれを定めなければならない。(同条4項)
2  練馬区における選挙管理委員会の委員の報酬に係る条例等の定め
(1)  報酬額等についての定め
練馬区行政委員会委員の報酬および費用弁償に関する条例(昭和31年条例第12号。乙1。以下「本件条例」という。)は,次のとおり定める。
ア 報酬(2条,別表。以下「本件報酬額規定」という。)
選挙管理委員会の委員の報酬は,次のとおりとする。
委員長 月額 30万8000円
委員 月額 24万6000円
補充員 日額 7600円
イ 報酬の支給期日(4条)
報酬は,日額及び月額の報酬を受ける者に対し,それぞれ次に定める期日に支給する。ただし,委員が退職,失職又は死亡したときは,その期日前においてもこれを支給することができる。
(ア) 日額をもって定められた報酬は,月の初日からその月の末日までの間における会議への出席その他委員の職務に従事した日数により計算したその月分の総額を,翌月10日までに支給する。(同条(1)号)
(イ) 月額をもって定められた報酬は,毎月分を,その月の末日までに支給する。(同条(2)号)
(2)  練馬区における選挙管理委員会の委員への報酬の支払手続
ア 支払手続に関する定め
(ア) 支出負担行為の専決
練馬区予算事務規則(昭和59年規則第19号。乙5。以下「予算事務規則」という。)25条は,歳出予算を執行しようとするときは,配当又は令達された予算に基づき,別に定める支出負担行為手続により適正に行わなければならないとするところ,練馬区事案決定規程(昭和55年訓令第22号。乙4。以下「事案決定規程」という。)3条,4条及び別表26項は,支出負担行為に関し,行政委員会の委員,附属機関の委員及び非常勤職員の報酬及び費用弁償の支出については課長が決定すべきものと定める。また,事案決定規程7条の2は,事案決定規程4条の規定により課長の決定とされた事案について,当該事案の決定を行う者が欠けたときは,部長(ただし,経営課にあっては事業本部長)がその決定に当たるものとする旨定める。
他方,「区長の権限に属する事務の補助執行について(通達)」(平成17年練総総発第372号。練馬区長から練馬区選挙管理委員会事務局長あて。乙3。以下「通達」という。)は,配当された予算の執行に関して支出負担行為の事務を行うことを補助執行事務として,当該補助執行事務に係る事案の決定は,事案決定規程によるものとし,この場合,練馬区選挙管理委員会事務局長にあっては部長(事業本部を置かない組織の部長をいう。)の区分によるものとしている。
(イ) 支出命令の委任
予算事務規則26条は,予算の執行に伴う支出命令の事務は,課長等(課長,会計管理室長,選挙管理委員会事務局長,監査事務局長及び農業委員会事務局長をいう。)及び所長に委任すると定める。
(ウ) 資金前渡
a(a) 練馬区会計事務規則(昭和39年規則第3号。乙2。以下「会計事務規則」という。)87条1項は,職員(会計事務規則11条に規定する職員を除く。)に支給する給与,旅費及び児童手当の支払は資金前渡によると定め,同条2項は,同条1項の支払事務を取り扱わせるため,給与取扱者を置き,給与事務,旅費事務又は児童手当事務を取り扱う係の係長を区長が指定する旨を定める。
そして,同条11項は,議員,各種行政委員会の委員その他の特別職の職員で非常勤のものに対する報酬及び費用弁償等の支払については,同条1項ないし10項の規定に準じて処理することができると定める。
(b) 練馬区選挙管理委員会の支払事務を取り扱わせるため,練馬区長は,練馬区選挙管理委員会事務局(以下,単に「事務局」という。)において練馬区選挙管理委員会庶務係長(以下,単に「庶務係長」という。)を給与取扱者として指定している。(乙6)
b(a) 練馬区支出負担行為手続規程(昭和39年訓令甲第1号。乙19。以下「支出負担行為規程」という。)4条1項及び別表第1の1項は,報酬について,支出負担行為者が支出負担行為として整理する時期を支出決定のときと,支出負担行為の範囲を当該支給期間分又は支出しようとする額と,支出負担行為に必要な書類を給与台帳等とそれぞれ定める。
(b) 支出負担行為規程4条2項及び別表第2の1項は,支出負担行為規程4条1項及び別表第1に定めた経費に係る支出負担行為であっても,資金前渡に係る支出負担行為に該当するものについては,支出負担行為者が支出負担行為として整理する時期を資金の前渡をするときと,支出負担行為の範囲を資金の前渡を要する額と,支出負担行為に必要な書類を資金前渡内訳書とそれぞれ定める。
イ 支払手続の流れ
(ア) 練馬区選挙管理委員会には課長がいないため,事案決定規程3条,4条,別表26項及び7条の2並びに通達に基づき,練馬区選挙管理委員会事務局長(以下,単に「事務局長」という。)が,選挙管理委員会の委員の報酬等の支出負担行為を専決する。
具体的には,事務局長は,毎年4月,当該年度分の練馬区選挙管理委員会の委員長及び委員の報酬の支出に係る支出負担行為をする。(乙7,弁論の全趣旨)
(イ) 前記ア(ウ)aの定めに従い,練馬区においては,選挙管理委員会の委員らに対する報酬の支給について,資金前渡により処理することとされていることから,上記(ア)の支出負担行為を受けた事務局長は,給与取扱者である庶務係長からの資金前渡の請求を受けて(会計事務規則87条6項のいわゆる柱書き及び(1)号),予算事務規則26条及び会計事務規則51条1項に基づき,受任者として,毎月1日ころ,練馬区会計管理者に対して支出命令(資金前渡受者(給与取扱者)である庶務係長に対する支出を命じるもの)をする。(乙8,弁論の全趣旨)
(ウ) 練馬区会計管理者は,上記(イ)の支出命令を受けて,法232条の4の規定に基づき,毎月23日ころ,資金前渡受者(給与取扱者)である庶務係長に対し,当該月の選挙管理委員会の委員の報酬を支出する。
(エ) 上記支出を受けた庶務係長は,毎月28日,所得税相当額を差し引いた上で,指定金融機関(法235条2項)を通じて,選挙管理委員会の各委員の銀行口座に報酬を振り込んで支払う。
3  前提事実(争いのない事実,各項末尾に掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実並びに当裁判所に顕著な事実)
(1)  原告は,練馬区の住民である。
被告(練馬区長)は,練馬区選挙管理委員会の各委員に対する報酬の支給について,支出負担行為をする本来的な権限を有している。
(2)  練馬区選挙管理委員会の委員4名(以下,時期を問わず「本件各委員」という。)は,本件報酬額規定に基づき,月額をもって定められた報酬の支給を受けており,平成22年4月以降もその支給が継続される予定である(以下,本件報酬額規定に基づいて本件各委員が受ける報酬を「本件報酬」という。)。
平成21年12月19日,法182条1項の規定による選挙の結果,A,B,C及びDの4名が新たに本件各委員に就任した(なお,Aは,法187条1項の規定による選挙の結果,同日,練馬区選挙管理委員会の委員長に就任した。)。その任期は,平成25年12月18日までである。
上記の就任前の本件各委員は,E(委員長。以下「E前委員長」という。),A(以下「A前委員」という。),F(以下「F前委員」という。)及びG(以下「G前委員」という。)の4名であった。(以上,乙7,乙8,乙33,乙40)
(3)  本件各委員について,平成20年1月ないし12月における費用弁償が支給された勤務日は,E前委員長について38日,A前委員について37日,F前委員について46日,G前委員について37日であった。(甲1)
(4)  原告は,平成21年4月17日,練馬区長が本件各委員に月額をもって定められた報酬を支給しているのは違法であるなどとして,練馬区監査委員に対する住民監査請求をした。(甲1)
(5)  練馬区監査委員は,同年5月19日,原告の主張は本件報酬額規定が違法であるとするものにほかならないと解されるところ,条例で選挙管理委員会の委員の報酬額を月額で一定金額に定めることは法242条1項に定める財務会計上の行為のいずれにも該当しないとして,原告の住民監査請求については,同条に定める受理要件に欠けるため監査を実施しないとの決定をし,同日,原告にこれを通知した。(甲2)
(6)  原告は,同月27日,本件訴えを提起した。
4  争点及び争点に対する当事者の主張
(原告の主張)
(1)ア(ア) 本件規定の原則を適用すれば,本件各委員の報酬は,勤務日数に応じて支給されなければならないところ,練馬区は,本件規定のただし書により,本件各委員の報酬を月額で支給するものとしている。
本件規定のただし書は,本来,非常勤職員は日額支給が原則であるが,常勤の職員と同様に月額又は年額をもって支給することが合理的な場合や,勤務日数の実態を把握することが困難であり,月額又は年額による支給方法以外に支給方法がない場合等の特別な場合について,条例の特別な定めにより,月額又は年額による報酬の支給を可能にしたものにすぎない。
なぜなら,地方自治行政の基本原則ともいうべき法2条14項は,「最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」と定め,地方財政法4条は,「地方公共団体の経費は,その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて,これを支出してはならない」と定めているからである。
(イ) しかるに,本件各委員の勤務状況について,1か月当たりの平均勤務日は3.08日ないし3.83日であり,月額報酬を支給すべき特別な事情は存しない。会議の時間を見ても,例えば平成16年度においては,最短の7分が1回,10分台が2回,20分台が9回等,短時間の会議が大半であった。
被告の提出した証拠(乙26ないし29,乙34ないし37)によれば,本件各委員の勤務状況について,①定例会は月2回であり,その他,都議選や国政選挙の際には臨時会が開かれていること,②定例会の最短審議時間は15分,臨時会の最短審議時間は1分であること,③その会議の内容のほとんどが報告事項であり,選挙時以外は「選挙人名簿の登録と抹消」の確認的議題であり,議事も年間0ないし5回であり,事前に調査検討する必要のないものばかりであることなどが明らかとなっている。これらの会議中心に出席しただけで,委員長に30万8000円,委員に24万6000円の月額報酬を支給することは,本件規定のただし書に反するものであり,社会通念を逸脱しているものといわざるを得ない。
なお,被告は,定例会のほかにも仕事があるというが,都内の自治体に選挙があると当該選挙管理委員会を訪れたり,期日前投票所を視察したり,その他選挙の際の広報活動や委員長が全国選挙管理委員会等々の会議に出席するといった程度のものにすぎない。
(ウ) 全国の他の自治体の選挙管理委員会の委員の報酬については,月額報酬を採用しているところもあれば,日額を採用しているところもあり,報酬の額や支給方法はばらばらであるが,神奈川県が月額から原則として日額に変える準備を進めるなど,全国的に月額を見直す動きが広がっている。
なお,国で国政選挙において設けられている中央選挙管理委員会の委員は,日額報酬である。
よって,本件規定のただし書による月額報酬の支給は,練馬区議会がその裁量権の範囲から逸脱し又はこれを濫用して制定した本件報酬額規定による違法かつ無効なものである。
イ(ア) 被告の挙げる選挙管理委員会の仕事は,選挙管理委員会の委員長及び委員が自ら行うものではなく,選挙管理委員会事務局の職員(以下「事務局職員」という。)が,公職選挙法に定められた事務作業として行うものであって,事務局が組織として対応するものであり,本件各委員の個人の問題ではない。委員長及び委員は,最終的な決裁を選挙管理委員会開催時に行っているにすぎない。
(イ) 本件各委員が事務局職員の任命権者であるといっても,事務局職員の採用は行っておらず,練馬区が採用した職員を事務局職員として採用しているにすぎない。
(ウ) 法人の取締役等への従事制限や議会の議員や長との兼職禁止等の身分的制約については,常識的なことである。
(エ) 区議会からの質問等に対しては,本件各委員が自ら答弁を作成しているものではなく,事務局職員が答弁要旨をとりまとめて,本件各委員にファックスで送られているようである。これは,本件各委員の職責につき,事務局との電話ないしファックスのやり取りで済んでしまう程度のものであることを示している。
(オ) 重要な会議であれば,会議の開催時間も前記のように短時間で終わることは少ないはずである。
(カ) 例えば,選挙に関する各種説明会への出席や選挙啓発に係る活動(例えば,うちわの配布)について,前者は,事務局が行うもので本件各委員が自ら行うものでなく,後者は,本件各委員自らが行わなくとも代わりの者でできるところである。
ウ 練馬区では,長い間,選挙管理委員会の委員は,自民,公明,民主の各議員経験者OBと決まっており,いわゆる天下り先のポストとなっている。都議会の中で選挙で選ばれるため,議員の多い会派の推薦,投票で決まるからである。
(2) 本件各委員の勤務は,月4日弱であるにもかかわらず,委員長に30万8000円,委員に24万6000円という月額報酬は,過大である。
仮に本件各委員に対する月額報酬の支給が,本件規定に反しないとしても,前記の法2条14項及び地方財政法4条1項に反し,無効である。
(3) よって,本件報酬の支給は違法であって差し止められるべきである。平成22年度分から,本件各委員への月額報酬を廃止し,日額報酬に改めることを求める。
(被告の主張)
(1) 本件報酬のように,地方公共団体の議会が制定した条例を根拠に支出がなされている場合において,当該職員に対する法242条の2第1項1号に定める差止め請求が認められるのは,当該条例の規定が著しく合理性を欠き,そのために予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合,すなわち,重大かつ明白な瑕疵があって無効というような場合に限られ,そうでない限り,当該職員は,当該条例を尊重し,その内容に応じた財務会計上の措置をとるべき義務があり,これを拒むことは許されないと解される(最高裁判所昭和61年(行ツ)第133号平成4年12月15日第三小法廷判決・民集46巻9号2753頁)。
予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵があるとの評価を受けるには,法令の根拠なしに当該報酬が支出されるとか,その報酬額が条例に定める上限額を超えて支出されるという程度に重大かつ明白な違法が存することが必要と解すべきところ,本件条例は,本件規定のただし書という法令の根拠に基づいたものであり,本件規定のただし書の文理解釈としても忠実なものであり,法204条の2の給与条例主義等の規定に反するといった点もない。さらに,月額30万8000円又は24万6000円という本件報酬の額も,同じく非常勤職員である練馬区議会議員の報酬額等を勘案して,本件条例によって定められた金額である。
よって,本件報酬額規定について,著しく合理性を欠き,そのために予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵はないというべきである。
(2) 上記(1)の点をおくとしても,次のとおり,本件報酬額規定は,本件規定の立法趣旨並びに本件各委員の職務内容,職責及び勤務内容等からしても相当かつ妥当というべきであって,また,本件報酬の額が過大であるということもないから,練馬区議会の立法裁量に裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用の違法は何らなく,本件報酬額規定は適法である。
ア 本件規定のただし書の立法趣旨について
(ア) 本件規定のただし書は,地方自治法の一部を改正する法律(昭和31年法律第147号)により付加された規定(当時は203条2項)である。
当時の国会質疑によれば,その制定趣旨の要旨は,多種多様な非常勤職員について,一律にその勤務日数により報酬を支給する旨,法律で定めるのは合理的ではなく,地方公共団体が特定の職員については実情によって特別の扱いをできるようにしたというものであり,ここでいう特定の職員として想定されていたのが,教育委員会,選挙管理委員会等の行政委員会の委員であった。当時の自治庁も,本件規定のただし書の趣旨について,同様の旨を述べている。
したがって,本件規定のただし書の適用は,原告が主張するように,その勤務日数が常勤職員と同様な場合等に限られるものではない。
(イ) 上記(ア)の点は,次のとおり,法203条の2全体の条文の構成,同条1項に掲げる各非常勤職員の具体的職務内容,職責,職務態様等の対比からも明らかである。
a 同条1項には,千差万別な法的根拠に基づきその職責,勤務実態,勤務内容,要勤務日数を全く異にする多種多様な非常勤職員が列挙されており,本件規定は,そのような多種多様な非常勤職員をひとまとめにした上でその報酬について定めるものである。
このような条文の構成からすれば,およそすべての非常勤職員の報酬について,原則として日額支給とされていると解すべきでないことは明らかである。1か条において多種多様な支給方法を定めるにはおのずと限界があり,そのような意味において,本件規定は,立法技術上,やむを得ず,原則と例外という形の定めを置いたにすぎないと解すべきである。
b 同条1項に列挙されたもののうち,①自治紛争処理委員(自治紛争について事件ごとに任命される。),②審査会,審議会及び調査会等の委員その他の構成員(一定の任期をもって任命ないし委嘱されるが,その勤務は,実際に審査請求等の事案が発生した場合に初めて審査会への出席,調査等がなされるというものであり,そのような事案が発生しない場合には,任期中一度も勤務をしないこともあり得る。),③投票管理者,開票管理者,選挙長及び投票立会人(勤務を要する期間は,選挙の告示の日から,遅くとも開票結果報告日の翌日までの期間に限られる。また,年によって,選挙が行われなかったり,逆に数回行われたりという差異がある。),④開票立会人及び選挙立会人(選挙の際,当該選挙における候補者からの届出に基づき置かれるものであり,その勤務は,開票実施日ないし選挙会の実施日に限られる。)などについては,日額支給がなじむものといえる。
これに対し,選挙管理委員会は,法181条1項の規定に基づき,当該地方公共団体の執行機関たる行政委員会として設置され,その構成員として,各地方公共団体に4名の委員が置かれ(同条2項),その任期は4年間とされている(法183条1項)。
そして,同委員会の職務内容は,後記イのとおり,選挙に関する事務全般という広範なものであり,さらに,同委員会を構成する各委員は,その会議の開催日に出席して意見を述べればそれで済むというものではなく,また,いわば,区選挙管理事務全般について常時統括する最終責任者であって,その職責も重大である上,その補助機関である事務局の運営責任者であり,常勤の地方公務員で構成する事務局職員の任命権者としての指揮監督に係る責任も負っている。
また,その勤務態様は,選挙管理委員会の会議への出席のほか,常に法規の研究,事務の改善及び部外との連絡や,明るい選挙推進,棄権防止その他区民の選挙意識の昂揚啓発について,諸政策を研究するものであり(練馬区選挙管理委員会規程(昭和39年訓令甲第1号。乙17。以下「委員会規程」という。)2条),また,後記の争訟や直接請求等がいつ発生しても速やかに対応できるよう,事実上,日々の行動が拘束されているばかりか,上記の事務局職員の任命権者としての指揮監督に係る責任との関係で,同職員からの問い合わせへの対応も適宜行っている。
以上のような選挙管理委員会の委員の職務内容,職責及び職務態様のほか,同委員が法180条の5第6項及び182条7項の兼職禁止等並びに公職選挙法136条及び136条の2の身分的制約を受けていることも併せ考えれば,選挙管理委員会の委員の報酬を形式的,表面的に把握される勤務日数のみにより算定するのは不合理であり,月額が妥当であるというべきである。
(ウ) また,憲法92条が保障する地方自治の本旨(住民自治及び団体自治)や,法2条11項の規定に照らせば,本件規定のただし書のように,法令に特段の解釈,適用上の制約ないし条件が規定されていない場合には,法の趣旨としては,地方公共団体が,地方自治の本旨に基づき,条例で特別の定めをするか否か,また,いかなる職の非常勤職員に対し,どのような支給方法とするのかなどを主体的に判断することを前提としていると考えるべきである。
イ 本件各委員の職務内容,職責及び勤務態様等について
本件各委員の職務内容,職責及び勤務態様等は,次のとおりであり,その報酬を月額報酬とすることは合理的であるというべきである(なお,練馬区選挙管理委員会は,特別区たる練馬区に置かれる選挙管理委員会であるため,法283条1項及び2項並びに公職選挙法266条1項前段により,次に掲げる市の選挙管理委員会に関する規定が適用される。)。
(ア) 選挙管理委員会は,普通地方公共団体に置かなければならず(法180条の5第1項,181条1項),執行機関として,普通地方公共団体の条例,予算その他の議会の議決に基づく事務と,法令,規則その他の規程に基づく事務を,自らの判断と責任において,誠実に管理し,執行する義務を負い(法138条の2),また,法律の定めるところにより,法令又は普通地方公共団体の条例若しくは規則に反しない限りにおいて,その権限に属する事務に関し,規則その他の規程を定めることができる(法138条の4第2項)。
(イ) 選挙管理委員会は,法律又はこれに基づく政令の定めるところにより,当該普通地方公共団体が処理する選挙に関する事務及びこれに関係のある事務を管理する(法186条)。そして,市町村選挙管理委員会は,市町村の議会及び市町村長の選挙を管理するほか(公職選挙法5条),第一号法定受託事務(法2条9項1号)として衆議院議員選挙及び参議院議員選挙に関し市町村が処理することとされている事務を(公職選挙法275条1項1号,法別表第1),第二号法定受託事務(法2条9項2号)として都道府県議会議員選挙及び都道府県知事選挙に関し市町村が処理することととされている事務を(公職選挙法275条2項1号,法別表第2),いずれも処理する。
このように,市町村選挙管理委員会は,公職選挙法の適用を受けるすべての選挙について管理ないし処理をするのであり,具体的には,大要,次のaないしoに挙げる事務を処理している。
a 選挙に関する啓発,周知等
市町村選挙管理委員会は,選挙が公明かつ適正に行われるように,常にあらゆる機会を通じて選挙人の政治常識の向上に努めるとともに,特に選挙に際しては投票の方法,選挙違反その他選挙に関し必要と認める事項を選挙人に周知させなければならない(公職選挙法6条1項)。
また,市町村選挙管理委員会は,選挙に関する啓発として,総務大臣や中央選挙管理会から,「選挙に関する常時啓発事業」の委託を受けることにもよって(公職選挙法施行令133条,公職選挙法施行規則34条,選挙に関する常時啓発事業委託要綱(昭和38年自治省告示第131号)),選挙に関する啓発活動を常時行うこととされる。講演会,研修会などがこれに含まれ,その他,選挙の際には,選挙時啓発として,投票の呼び掛け等を行うこととされているが,選挙は,民主政治の基盤をなすものであり,選挙が公正に行われなければその健全な発達を期することができないものであるから,投開票のみならず,あらゆる点で,公職選挙法の目的(同法1条)の達成のための制度として,国民の政治常識の向上を図る手段として,各選挙管理機関には,選挙に関する啓発活動が義務づけられている。
特に,最近の投票率の低下傾向からすれば,このような啓発活動の重要性は以前よりも増加し,その分,市町村選挙管理委員会の役割,責任も重大となっている。
b 投票区の設置(公職選挙法17条2項及び3項)
市町村選挙管理委員会は,必要があると認めるときは,当該市町村の区域を分けて数投票区を設けることができ,この数投票区の設置,告示は,原則として,選挙の都度なされるべきとされている。
なお,練馬区においては,選挙人の投票の便宜のため,平成21年9月2日現在,57万5667人の有権者に対し,71投票区を設置している。
c 選挙人名簿の調製,保管及び登録
市町村選挙管理委員会は,選挙人名簿の調製及び保管の任に当たるものとされ,毎年3月,6月,9月,12月の各月(登録月)及び選挙を行う場合に,選挙人名簿の登録を行う(公職選挙法19条2項)。
選挙人名簿は,各選挙を通じて一の名簿とされ(同条1項),数投票区を設けた場合は,投票区ごとに編製しなければならない(同法20条2項)。したがって,市町村選挙管理委員会は,選挙人名簿に登録されている者が当該市町村の区域内の他の投票区の区域内に住所を移したことを知ったときは,その者に係る登録の移し替えをしなければならない(公職選挙法施行令17条)。
さらに,市町村選挙管理委員会は,選挙人名簿に登録される資格を有する者を調査し,その者を選挙人名簿に登録するための整理をしておかなければならず(公職選挙法21条4項),原則として,登録月の1日現在により,選挙人名簿に登録される資格を有する者を当該登録月の2日に選挙人名簿に登録しなければならない(同法22条1項。定時登録)ほか,選挙を行う場合においても,当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会ないし中央選挙管理会が定めるところにより,選挙人名簿に登録される資格を有する者を選挙人名簿に登録しなければならない(同条2項。選挙時登録)。そして,定時登録又は選挙時登録後に,選挙人名簿に脱漏があったことを知った場合には,直ちに補正登録をしなければならず(同法26条),必要に応じて,選挙人名簿の表示や修正,訂正(同法27条),登録の抹消(同法28条),再調製(同法30条1項)を行わなければならず,常時,選挙人名簿の調製,保管,登録に当たり,選挙人名簿を適正な状態にしておかなければならない。
また,市町村選挙管理委員会は,一定の場合に申出に応じて選挙人名簿の抄本を閲覧させなければならず(同法28条の2,28条の3),投票の際には,市町村選挙管理委員会は,投票所を開く時刻までに,選挙人名簿を各投票区の投票管理者に送付しなければならない(公職選挙法施行令28条1項)。
d 在外選挙人名簿の調製,保管及び登録
市町村選挙管理委員会は,選挙人名簿のほか,在外選挙人名簿の調製及び保管を行い(公職選挙法30条の2第1項),申請に基づき登録を行う(同条3項,同法30条の5第1項,30条の6第1項)。
そして,在外選挙人名簿も,各選挙を通じて一の名簿とされ(同法30条の2第2項),数投票区を設けた場合は,在外選挙人名簿を編製する一以上の投票区を指定しなければならず(同法30条の3第2項),在外選挙人名簿に関しても,必要に応じて,在外選挙人名簿の表示や修正,訂正(同法30条の10),登録の抹消(同法30条の11),再調製(同法30条の15,30条1項)を行わなければならず,常時,在外選挙人名簿の調製,保管及び登録に当たり,同名簿を適正な状態にしておかなければならない。
また,市町村選挙管理委員会は,一定の場合に在外選挙人名簿の抄本を閲覧させなければならず(同法30条の12,28条の2,28条の3),在外選挙人名簿に登録された者の氏名等につき縦覧に供さなければならない(同法30条の7第1項)。
e 投票に関する事務
(a) 投票管理者の選任等
市町村選挙管理委員会は,各選挙ごとに,当該選挙の選挙権を有する者の中から投票管理者を選任しなければならない(公職選挙法37条1項及び2項)。投票管理者は,投票に関する事務を担任する(同条5項)のであるから,投票区ごとにそれぞれ置かれるものとされる。投票管理者には,厳正公正な人物であること,選挙事務能力があることが求められるため,選任に当たっては,そのような点を考慮してなされる必要があるとされる。
また,市町村選挙管理委員会は,投票管理者に事故がある場合等における職務代理者を選任しておかなければならず(公職選挙法施行令24条1項),市町村選挙管理委員会の委員長は,投票管理者及び上記の職務代理者がともに事故がある場合等の投票管理者の職務を管掌すべき者を選任しなければならない(同条2項)。
(b) 投票立会人の選任
市町村選挙管理委員会は,各選挙ごとに,各投票区における選挙人名簿に登録された者の中から,2人以上5人以下の投票立会人を選任しなければならない(公職選挙法38条1項)。
(c) 投票所の設置等
市町村選挙管理委員会は,投票所を設置し(公職選挙法39条),告示をしなければならない(同法41条)。そして,投票所内について,他人が選挙人の投票の記載を見たりするなど不正の手段が用いられないような設備を施さなければならない(公職選挙法施行令32条)。
また,市町村選挙管理委員会は,選挙期日の公示ないし告示の日以後速やかに,選挙人に対し,投票所入場券を交付するよう努めなければならない(同施行令31条1項)。
(d) 投票用紙の様式の決定
市町村選挙管理委員会は,市町村の議会の議員及び長の選挙について,投票用紙の様式を決定しなければならない(公職選挙法45条2項)。
(e) 期日前投票
市町村選挙管理委員会は,期日前投票についても,その投票管理者及びその職務代理者等,更には投票立会人を選任しなければならない(公職選挙法48条の2第2項,37条2項,38条,公職選挙法施行令49条の7,25条,27条)。
また,市町村選挙管理委員会は,期日前投票所を設置し(公職選挙法48条の2第3項,39条),告示しなければならない(同法48条の2第3項,41条)。
(f) 不在者投票
市町村選挙管理委員会の委員長は,当該市町村に所在ないし居住する選挙人に係る不在者投票管理者となり,不在者投票の管理をする(公職選挙法49条1項,公職選挙法施行令55条1項)。
また,市町村選挙管理委員会の委員長は,入院中,老人ホーム入所中等の者に係る不在者投票に係る投票用紙等の交付(公職選挙法施行令50条ないし54条)及びこれらの不在者投票の受理,投票管理者に対する送致(同施行令60条1項),郵便による不在者投票の管理(公職選挙法49条2項)等をしなければならない。
f 開票に関する事務
(a) 開票所の設置等
市町村選挙管理委員会は,開票所を設置し(公職選挙法63条),開票の場所及び時刻を告示しなければならない(同法64条)。
(b) 開票管理者等の選任
市町村選挙管理委員会は,各選挙ごとに,当該選挙の選挙権を有する者の中から開票管理者を選任しなければならない(公職選挙法61条1項及び2項)。また,市町村選挙管理委員会は,開票管理者の職務代理者等を選任しなければならず(公職選挙法施行令67条1項及び2項),これら開票管理者等の住所及び氏名を告示しなければならない(同施行令68条)。
(c) 開票立会人の届出受理等
市町村選挙管理委員会は,公職の候補者等から開票立会人の届出があった場合は,これを受理しなければならない(公職選挙法62条1項)。また,開票立会人の届出があった者が10人を超えるときは,市町村選挙管理委員会は,くじで定めた者10人を開票立会人としなければならない(同条2項)。そして,これらの場合は,開票管理者に対し,開票立会人の氏名等を通知しなければならない(公職選挙法施行令70条の2第1項)。
g 選挙会に関する事務
(a) 選挙長の選任等
市町村選挙管理委員会は,市町村の議会及び市町村長の選挙の際,選挙長を選任しなければならない(公職選挙法75条1項及び3項)。
また,市町村選挙管理委員会は,選挙長に事故がある場合等における職務代理者を選任しておかなければならず(公職選挙法施行令80条1項),市町村選挙管理委員会の委員長は,選挙長及び上記の職務代理者がともに事故がある場合等の選挙長の職務を管掌すべき者を選任しなければならない(同条2項)。
(b) 選挙会の開催場所の指定
市町村選挙管理委員会は,市町村の議会及び市町村長の選挙の際,選挙会の開催場所を指定しなくてはならない(公職選挙法77条1項)。
(c) 選挙録等の受領及び保存
市町村選挙管理委員会は,選挙長から,選挙録,投票の点検終了後の結果報告に関する書類を受領し,選挙会に関する書類は,市町村の議会の議員又は長の任期間,保存しなくてはならない(公職選挙法83条2項,公職選挙法施行令85条,86条1項)。
h 当選人に関する事務
市町村選挙管理委員会は,市町村の議会の議員又は長の選挙において,当選人が定まったときは,選挙長から当選人の住所,氏名,得票数等についての報告を受け(公職選挙法101条の3第1項),直ちに当選人に当選の旨を告知し,当選人の住所及び氏名を告示しなければならない(同条2項)。
i 選挙運動に関する事務
(a) 選挙事務所
市町村選挙管理委員会は,市町村の議会の議員又は長の選挙における選挙事務所が設置された場合及びその他の選挙において当該市町村の区域内に選挙事務所が設置された場合,その旨の届け出を受ける(公職選挙法130条2項)。
そして,上記の場合,市町村選挙管理委員会は,選挙事務所の設置に関し,設置者に関する制限(公職選挙法130条1項),表示に関する制限(同法131条3項),選挙当日の選挙事務所の制限(同法132条)又は選挙事務所の定数制限(同法131条1項)違反があったときは,選挙事務所の閉鎖を命じなければならない(同法134条)。
(b) 文書図画
市町村選挙管理委員会は,市町村の議会の議員又は長の選挙の候補者が選挙運動のために使用するビラについて,頒布のために必要な証紙を交付する(公職選挙法142条7項)。
また,市町村選挙管理委員会は,市町村の議会の議員又は長の選挙の候補者等が政治活動のために使用する事務所に係る立札及び看板の類の表示を行う(同法143条17項)。
さらに,市町村選挙管理委員会は,市町村の議会の議員又は長の選挙の候補者が選挙運動のために使用するポスターに検印し,又は証紙を交付する(同法144条2項)。
(c) 表示板等
市町村選挙管理委員会は,市町村の議会の議員又は長の選挙の候補者が選挙運動のために使用する自動車ないし拡声器等の表示板,当該自動車に乗車する者の着ける腕章,街頭演説用の標旗及び腕章を交付する(公職選挙法141条5項,141条の2第2項,164条の5第2項,164条の7第2項)。
(d) 個人演説会等
市町村選挙管理委員会は,学校,公民館,公会堂以外で個人演説会等を開催できる施設を指定する(公職選挙法161条1項)。
(e) 選挙公報
市町村選挙管理委員会は,市町村の議会の議員又は長の選挙において,公職選挙法167条から171条までの規定に準じて,条例で定めるところにより,選挙公報を発行することができる(同法172条の2)。
(f) 投票記載所の氏名等の掲示
市町村選挙管理委員会は,各選挙につき,選挙の当日,投票所内の投票記載場所等に,候補者の指名及び党派別,参議院議員選挙の際には,これらに加えて比例代表選出に係る届出政党名及びその略称並びに名簿搭載者の氏名等,衆議院議員選挙の際には,更にこれらに加えて比例代表選出に係る届出政党内における候補者の順位及び国民審査に係る最高裁判所裁判官の氏名等を掲示しなければならない(公職選挙法175条1項)。
(g) ポスター掲示場の設置
市町村選挙管理委員会は,衆議院議員選挙,参議院議員選挙及び都道府県知事選挙において,選挙運動用のポスター掲示場を設置しなければならず(公職選挙法144条の2第1項),都道府県議会議員選挙並びに市町村議会議員選挙及び市町村長選挙においては,それぞれ都道府県の条例ないし市町村の条例の定めるところにより,選挙運動用のポスター掲示場を設置することができる(同法144条の2第8項,144条の4)。
j 争訟
市町村選挙管理委員会は,市町村の議会の議員ないし長の選挙において,その選挙の効力や当選の効力について不服がある選挙人ないし候補者から異議の申出があった場合に受理をしなければならず(公職選挙法202条1項,206条1項),これら異議の申出に対し,決定をしなければならない(同法213条1項)。
また,市町村選挙管理委員会は,選挙人名簿の登録に不服がある選挙人から異議の申出があった場合に受理をしなければならず(公職選挙法24条1項),この異議の申出に対し,決定をしなければならない(同条2項)。
k 最高裁判所裁判官国民審査の投開票に関する事務
最高裁判所裁判官国民審査は,衆議院議員総選挙の期日に行われ(最高裁判所裁判官国民審査法2条),その投開票の事務が,市町村選挙管理委員会の任命する投票管理者,開票管理者,投票立会人,開票立会人の担任に属することから(同法12条,19条),市町村選挙管理委員会は,最高裁判所裁判官国民審査の投開票に関する事務を執行している。
また,市町村選挙管理委員会は,最高裁判所裁判官国民審査の投票を,有効無効を区別し,開票録とともに,10年間保存しなければならない(同法24条)。
l 裁判員候補者予定者名簿の調製
市町村選挙管理委員会は,地方裁判所から,裁判員候補者の員数に係る通知を受け(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律20条1項),選挙人名簿登録者の中から当該員数の裁判員候補者予定者をくじで選定し(同法21条1項),裁判員候補者予定者名簿を調製し(同条2項及び3項),地方裁判所に送付しなければならない(同法22条)。
m 検察審査員候補者名簿の調製
市町村選挙管理委員会は,検察審査会事務局長から,検察審査員候補者の員数に係る通知を受け(検察審査会法9条1項),選挙人名簿登録者の中から当該員数の検察審査員候補者予定者をくじで選定し(同法10条1項),検察審査員候補者予定者名簿を調製し(同条2項及び3項),管轄検察審査会事務局に送付しなければならない(同法11条)。
n 農業委員会委員選挙の管理
農業委員会を置く市町村の市町村選挙管理委員会は,農業委員会の選挙による委員(農業委員会に関する法律4条2項参照),の選挙に関する事務を管理し(同法9条),農業委員会委員選挙人名簿の調製等をしなければならない(同法10条1項,2項及び7項)。
練馬区には,農業委員会が置かれており,練馬区選挙管理委員会も上記事務を処理している。
o 直接請求
市町村選挙管理委員会は,次の事務を処理する。
(a) 直接請求に要する署名数の告示(法74条5項,75条5項,76条4項,80条4項,81条2項,86条4項)
(b) 直接請求に係る署名の証明及び署名簿の縦覧(法74条の2第1項ないし3項,75条5項,76条4項,80条4項,81条2項,86条4項)
(c) 議会の解散請求,議員や長の解職請求の受理(法76条1項,80条1項,81条1項)
(d) 直接請求に係る署名の効力に関する訴訟等(法74条の2第4項ないし6項,75条5項,76条4項,80条4項,81条2項,86条4項)
(ウ) 以上のとおり,練馬区選挙管理委員会の職務内容は,多種多様で広範なものであり,また,同委員会を構成する各委員は,その会議の開催日に出席して意見を述べればそれで済むものではなく,いわば,区選挙管理事務全般について常時統括する最終責任者であって,その職責も重大であることは前記のとおりである上,練馬区選挙管理委員会の事務権能は,当然ながら,選挙にかかわるものが大半を占めるところ,選挙が,近代立憲国家たるわが国において,民主制形成のために国民が有する固有の権利たる参政権の中でも最も重要な権利である選挙権を行使できるごく限られた場であることからして,その自由,公正が確保され,効果的な代表が実現されなければならないから,候補者や選挙人にとって,選挙に際して,不平等,不公正なことがあってはならない。一方で,選挙は,一定の期日に処理されるものであり,かつ,やり直しのきかないものであることからすれば,あらかじめ,あらゆる局面を想定し,周密な計画の下に,いかなる事態に遭遇しても,迅速かつ適正に対処しなくてはならないものである。
そうすると,およそ選挙事務に携わるすべての者は,上記のような選挙の特質にかんがみて,それが適正に執行されるように事務を遂行する義務を負うが,とりわけ,法138条の2に基づき,法令,条例により,その所管となっている事務すなわち選挙に関する事務を,自らの判断と責任において誠実に管理し,及び執行する義務を負っている選挙管理委員会の委員の責務が非常に重大であることは明らかである。
そして,その職務態様も,前記のとおり,その報酬を形式的,表面的に把握される勤務日数のみにより算定されるのは不合理なものであって,合議制の機関としての選挙管理委員会を構成する本件各委員には,上記のような責任を全うするだけの知識,経験等が求められるのであり,そのような知識,経験等を有する本件各委員により構成される選挙管理委員会が,その指揮監督下にある職員に対し,常時,非常時にかかわらず,迅速かつ適切に指揮命令を発することで,選挙の自由,公正が実現するのである。だからこそ,法も,選挙管理委員に「人格が高潔で,政治及び選挙に関し公正な識見を有するもの」であることを求め,選挙により就任することを求めている(法182条)。
このような公正な識見を維持し,常に選挙に関し,責任ある職務執行を実現することのできる立場に相応しくあるためには,選挙管理委員会の委員が,十分にその職責を全うするがため,平素から自己啓発や自己研さんを行うことによってその識見を維持し,更に向上させることが期待されているのであって,そのような識見を前提に,その担っている重責を加味して,選挙管理委員会の委員に対して支給する報酬を日額支給ではなく月額支給とすることについては,通常の委員会会議や行事等の出席のように,目に見える勤務日数がさほどないことを考慮しても,なお不合理な点はないというべきである。
そして,前記のとおり,選挙管理委員に,一定の法人の取締役等への従事制限(法180条の5第6項)や議会の議員や長との兼職禁止(法182条7項)等の身分的制約が課されているのも,選挙の公正維持のほかに,他の職等との兼業,兼職を廃することで,選挙管理委員会の委員としての職務に専念することが十分に可能となり,前記のような自己啓発や自己研さん,更にはそれによって得られる識見をもとにその重責を果たすことが期待されているからである。
ウ 本件報酬の額が妥当であることについて
本件報酬の額は,練馬区特別職報酬等および議会政務調査費審議会条例(昭和39年条例第34号)に基づく練馬区特別職報酬等および議会政務調査費審議会において,社会経済情勢等について広範な角度から慎重に審議され,示された練馬区議会議員の報酬額に,2分の1を乗じて得た額を選挙管理委員会の委員長の報酬額として,同委員長の報酬額に更に10分の8を乗じて得た額を選挙管理委員会の委員の報酬額として,それぞれ相当であると定めたものであり,前記の本件各委員の職務権限,職責及び職務態様等,更には他の行政委員会の委員の報酬額と比べても,妥当かつ相当な金額というべきであって,何ら過大なものではない。
(3)ア(ア) 原告は,選挙管理委員会の仕事は,実質的には事務局職員が行っていると主張するが,何ら根拠のないものである。
前記のとおり,本件各委員の職務内容及び職責は重大であり,実際の勤務態様についても,全体で行われる選挙管理委員会の会議等の回数だけをみても,社会通念上,決して少ないとはいえないものである(乙20)上,それ以外の日も,本件各委員においては,当然ながら,住民の転居等により時々刻々と状況が変化する選挙人名簿の登録及び抹消など,国民の基本的な権利に係る案件が審議される同委員会の会議に向けた準備(選挙違反はないかとの観点からの住民の移動の傾向や各選挙区の状況等の把握)や,会議後の検証及び反省が各自で行われているのは容易に推認されるところであり,現に,本件各委員と事務局との間では,選挙管理委員会の会議の日程調整,区議会における質疑に関する説明,本件各委員からの資料要求や違反ポスターの情報提供などで,電話等による情報連絡もなされている(乙20)。その意味で,選挙管理委員会の委員の勤務態様は,諮問機関ないし附属機関(法138条の4第3項参照)の委員のそれとは明らかに異なるものである。
(イ) 前記の職務は,いずれも,本件各委員個々人が率先して自ら遂行している職務ないし本件各委員の個々の意思判断の集積である練馬区選挙管理委員会の議決等によって初めてその効果を生ずるもの等であって,本件各委員の職務そのものである。
これらの職務に係る事務作業量の多寡の点のみから,これら職務は事務局職員が組織ないし事務作業として対応しているとする原告の主張は,的を得ていない。
イ(ア) また,原告は,本件各委員は,あくまでも最終的な決裁を選挙管理委員会開催時に行っているにすぎないなどと主張するが,これは,選挙管理委員会の本質について何ら理解していない指摘である。
本件各委員の身分は,非常勤の特別職たる地方公務員であるが(地方公務員法3条3項1号),その職務及び勤務態様については,練馬区に法令上必置の執行機関である練馬区選挙管理委員会の最終かつ最高責任者として,有権者57万5667人,投票区71という全国的にみても多数の有権者を抱える練馬区において,同委員会が行う諸事務の執行が一日,一時たりとも中断ないし遅滞することのないよう,その在任期間中,日々,継続的かつ持続的にその責任を全うするとともに,事務局長を通じて事務局職員の指揮監督をしているものである(委員会規程17条)。
仮に,選挙管理委員会の会議の際に,決裁等が併せてなされていたとしても,それは,日々行われている上記のような包括的な指揮監督のいわば仕上げとして,事務局長に状況を確認した上で行っているのであって,単にすべて準備が整った書類にハンコを押すというようなものではない。定例的な事案は事務局長の判断にゆだねられているものの(練馬区選挙管理委員会事務局処務規程(昭和39年訓令甲第2号。乙21。以下「事務局処務規程」という。)4条),区議会からの質問等がひとたび出された場合には,事務局長等の対応について,本件各委員は,詳細な報告を求め,答弁の具体的な方針等についての指示を行っている(乙20)。
(イ) 更にふえんしていえば,本件各委員のように必置の執行機関の最高責任者としての地位にある者は,区長などの地方公共団体の首長や民間の管理・監督者(労働基準法41条2号参照)と同様に,そもそも勤務時間,休憩時間,休日等のみによって,その勤務実績が評価され,その報酬の支給方法等が決定されるべき職ではない。これは,本件規定の趣旨にも合致するものである。
(ウ) その他,原告は,定例会が月2回の開催であることや,その内容が報告事項中心であることなどを指摘する。
確かに定例会は月2回程度の開催ではあるが,その時間はおおむね1時間程度開催されている(乙34ないし37)。また,臨時会の開催時間は,1分から2時間7分まで(乙37),議案等の内容により様々であるから,その最短開催時間のみを採り上げて議論することに意味はない。
他方,議案数の倍以上の報告事項が存在するが,聞き置くことが主である報告事項と異なり,議案の場合は,これに賛成するか否か,本件各委員個人の評価・判断が問われるのであるから,かかる議案が報告事項の半数程度存在するということは,むしろ,定例会等の会議の内容が議案中心であることを裏付けるものである。
その他,選挙人名簿の登録と抹消等の議題が事前の調査検討の必要がないなどとの原告の指摘は,何ら根拠のない憶測であり失当である。
なお,練馬区と同様の事情(首都であること,大都市であること,有権者数が多いこと,同じ財政調整制度があること等)を抱える他の22の特別区の選挙管理委員会に係る報酬が,すべて月額であり,その額も,おおむね委員長につき25万4200円ないし31万2000円,その他の委員につき20万3400円ないし25万円となっていること(乙41ないし62)からすれば,本件各委員の報酬額は,何ら過大でも不相当でもなく,社会通念上も相当であるというべきである。
(エ) 他の自治体の選挙管理委員会の委員の報酬の支給方法が様々であるのは,全国の地方公共団体が,まさに本件規定のただし書の趣旨及び目的から,地方自治の本旨に基づき,また,地域の実情に応じて,同ただし書にいう特別の定めをするか否か,また,いかなる職の非常勤職員に対しどのような支給方法にするのかなどを主体的に判断した結果,そのようになったものというべきである。
ウ 原告は,国の中央選挙管理会の委員の報酬について指摘するが,そもそも中央選挙管理会は,総務省の単なる附属機関であり,その職務も,国政選挙の一部である衆議院比例代表選出選挙,参議院比例代表選出議員の選挙に関する事務及び最高裁判所裁判官の国民審査に関する事務を管理する程度(公職選挙法5条,最高裁判所裁判官国民審査法9条)であり,また,中央選挙管理会の会議も1年間で10回程度しか開催されていないと考えられること(乙24)等からすれば,その報酬が日額報酬とされているのも当然といえ,この中央選挙管理会の委員と本件各委員の職務内容,職責,勤務態様等を比較すれば,本件各委員の報酬が月額となっていることは相当かつ妥当なものである。
エ 事務局職員は,いずれも練馬区選挙管理委員会が独自に採用した者ではないが,練馬区長が法180条の3の規定を根拠に,練馬区選挙管理委員会と協議の上,同委員会の事務に従事すべき旨の職務命令を発し(乙30の1,乙31の1),これを受けた同委員会により任命の発令を受けた者であり(乙30の2,乙31の2),しかも,このうち事務局長及び庶務係長の2名については,併せて法191条1項の規定による書記長ないし書記にもそれぞれ任命されている(乙30の2,乙31の2)。
上記のような事務従事の場合,事務従事先の行政委員会による発令行為はその効力発生要件ではないが,練馬区では,法所定の協議(練馬区長が任用した区職員のうち,誰を選挙管理委員会の事務に従事させるかなどの事前の協議)がなされたこと,職務上の指揮監督権が当該行政委員会にあることを明確にすること等の理由から,練馬区長による事務従事の職務命令の発令に加え,行政委員会による任命の発令も別途行っているところであり,事務従事の一般的効果としても,当該事務従事の職務命令を受けた職員は,専ら当該執行機関(事務従事先の行政委員会)の職務上の指揮監督に服するものと解されている。
したがって,練馬区選挙管理委員会が独自の任用(採用)をしているか否かにかかわらず,同委員会は,事務局職員の職務上の指揮監督権(事務局長及び庶務係長については法191条3項に基づく指揮監督権も加わる。)を有する。
オ 本件各委員は,いずれも法182条1項の規定による選挙により選任されているのであって,本件各委員があらかじめ自民,公明,民主の各議員経験者OBと決まっているといった事実はない。
(4) 本件条例は,旧条例たる「東京都練馬区選挙管理委員報酬及び費用弁償条例」(昭和22年練馬区条例第10号),「東京都練馬区監査委員給与条例」(昭和22年練馬区条例第13号)及び「東京都練馬区教育委員会の報酬及び費用弁償に関する条例」(昭和28年練馬区条例第78号)の全部を廃止し,これらを一つの条例として規定整備をする目的で,練馬区議会において,昭和31年10月26日に可決され成立したものである。
上記の練馬区議会での審議・議論においては,選挙管理委員会の委員長につき月額2万4000円,同委員につき月額1万3000円,同補充員につき日額300円とする条例案につき,異議なく可決されており(乙38),当時の議案審議の際,その資料とされていたと推認される旧自治庁の「特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例(準則)」も,特別職の非常勤職員の報酬について,月額支給とすることを当然の前提としていたことからしても(乙15),当時の立法者意思として,練馬区議会が,選挙管理委員会の委員長及び委員の報酬は,法の趣旨等から月額とすることが妥当,相当であると判断していたことは明らかである。
なお,旧条例たる「東京都練馬区選挙管理委員報酬及び費用弁償条例」も,その制定時,選挙管理委員会の委員長の報酬を月額1000円,同委員の報酬を月額700円,同補充員の報酬を日額20円と定め(乙39),じ後,上記の各報酬月額及び日額につき,数度の改正がなされてきたところである。
(5) 仮に,本件において,本件各委員の報酬を日額支給とすべきとされた場合,本件条例の改正が必要不可欠であり,しかも,適正な改正報酬額を何円とするかなど,練馬区議会等における十分な議論も必要であって,財務会計行為を適法な手段に従ってやり直す時間的な余裕がない。それゆえ,万が一,本件報酬の支出の差止めが認められるような事態となれば,本件各委員に対して,練馬区選挙管理委員会の職務の遂行の停止を命ずること,又は無報酬でかかる職務の遂行を命ずることと同様といわざるを得ず,練馬区の選挙管理行政の著しい遅滞や,労働基準法の明白な違反状態(同法24条)を惹起することは確実であり,公共の福祉を著しく阻害するおそれがある。
したがって,本件報酬の支給の差止めは,法242条の2第6項の要件に該当するものであって許されない。
第3  当裁判所の判断
1  選挙管理委員会について
(1)  選挙管理委員会に係る基本的事項についての法,地方自治法施行令(以下「令」という。)及び地方自治法施行規程(以下「施行規程」という。)の定め
前記のほか,法,令及び施行規程は,選挙管理委員会に係る基本的事項について,次のように定めている。
ア 設置及び組織(法181条)
普通地方公共団体に選挙管理委員会を置く。(同条1項)
選挙管理委員会は,4人の選挙管理委員をもってこれを組織する。(同条2項)
イ 委員及び補充員の選挙(法182条)
(ア) 選挙管理委員は,選挙権を有する者で,人格が高潔で,政治及び選挙に関し公正な識見を有するもののうちから,普通地方公共団体の議会においてこれを選挙する。(同条1項)
(イ) 議会は,上記(ア)の選挙を行う場合においては,同時に,上記(ア)の者のうちから委員と同数の補充員を選挙しなければならない。補充員がすべてなくなったときも,また,同様とする。(同条2項)
(ウ) 委員中に欠員があるときは,選挙管理委員会の委員長は,補充員の中からこれを補欠する。その順序は,選挙の時が異なるときは選挙の前後により,選挙の時が同時であるときは得票数により,得票数が同じであるときはくじにより,これを定める。(同条3項)
(エ) 法律の定めるところにより行われる選挙,投票又は国民審査に関する罪を犯し刑に処せられた者は,委員又は補充員となることができない。(同条4項)
(オ) 委員又は補充員は,それぞれその中の2人が同時に同一の政党その他の政治団体に属する者となることとなってはならない。(同条5項)
(カ) 上記(ア)又は(イ)の選挙において,同一の政党その他の政治団体に属する者が前記(オ)の制限を超えて選挙された場合及び上記(ウ)により委員の補欠を行えば同一の政党その他の政治団体に属する委員の数が(オ)の制限を超える場合等に関し必要な事項は,政令でこれを定める。(同条6項)
(キ) 委員は,地方公共団体の議会の議員及び長と兼ねることができない。(同条7項)
(ク) 委員又は補充員の選挙を行うべき事由が生じたときは,選挙管理委員会の委員長は,直ちにその旨を当該普通地方公共団体の議会及び長に通知しなければならない。(同条8項)
ウ 任期(法183条)
選挙管理委員の任期は,4年とする。ただし,後任者が就任する時まで在任する。(同条1項)
補欠委員の任期は,前任者の残任期間とする。(同条2項)
補充員の任期は,委員の任期による。(同条3項)
委員及び補充員は,その選挙に関し法118条5項の規定による裁決又は判決が確定するまでは,その職を失わない。(同条4項)
エ 失職(法184条)
選挙管理委員は,選挙権を有しなくなったとき,法180条の5第6項の規定に該当するとき又は法182条第4項に規定する者に該当するときは,その職を失う。その選挙権の有無又は法180条の5第6項の規定に該当するかどうかは,選挙管理委員が公職選挙法11条若しくは同法252条又は政治資金規正法28条の規定に該当するため選挙権を有しない場合を除くほか,選挙管理委員会がこれを決定する。(同条1項)
法143条2項から4項までの規定は,上記の場合にこれを準用する。(同条2項)
オ 罷免(法184条の2)
普通地方公共団体の議会は,選挙管理委員が心身の故障のため職務の遂行に堪えないと認めるとき,又は選挙管理委員に職務上の義務違反その他選挙管理委員たるに適しない非行があると認めるときは,議決によりこれを罷免することができる。この場合においては,議会の常任委員会又は特別委員会において公聴会を開かなければならない。(同条1項)
委員は,上記による場合を除くほか,その意に反して罷免されることがない。(同条2項)
カ 退職(法185条)
選挙管理委員会の委員長が退職しようとするときは,当該選挙管理委員会の承認を得なければならない。(同条1項)
委員が退職しようとするときは,委員長の承認を得なければならない。(同条2項)
キ 守秘義務(法185条の2)
選挙管理委員は,職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も,同様とする。
ク 事務(法186条)
選挙管理委員会は,法律又はこれに基づく政令の定めるところにより,当該普通地方公共団体が処理する選挙に関する事務及びこれに関係のある事務を管理する。
ケ 委員長(法187条)
(ア) 選挙管理委員会は,委員の中から委員長を選挙しなければならない。(同条1項)
委員長は,委員会に関する事務を処理し,委員会を代表する。(同条2項)
委員長に事故があるとき,又は委員長が欠けたときは,委員長の指定する委員がその職務を代理する。(同条3項)
(イ) 選挙管理委員会が成立しないとき,委員会を招集する暇がないと認めるとき,又は法189条2項の規定による除斥のため同条3項の規定により臨時に補充員を委員に充ててもなお会議を開くことができないときは,委員長は,委員会の議決すべき事件を処分することができる。上記による処分については,委員長は,次の会議においてこれを委員会に報告し,その承認を求めなければならない。(令137条1項及び2項)
コ 招集(法188条)
選挙管理委員会は,委員長がこれを招集する。委員から委員会の招集の請求があるときは,委員長は,これを招集しなければならない。
サ 会議(法189条)
(ア) 選挙管理委員会は,3人以上の委員が出席しなければ,会議を開くことができない。(同条1項)
(イ) 委員長及び委員は,自己若しくは父母,祖父母,配偶者,子,孫若しくは兄弟姉妹の一身上に関する事件又は自己若しくはこれらの者の従事する業務に直接の利害関係のある事件については,その議事に参与することができない。ただし,委員会の同意を得たときは,会議に出席し,発言することができる。(同条2項)
(ウ) 上記(イ)により委員の数が減少して上記(ア)の数に達しないときは,委員長は,補充員でその事件に関係のないものをもって法182条3項の順序により,臨時にこれに充てなければならない。委員の事故により委員の数が(ア)の数に達しないときも,また,同様とする。(同条3項)
シ 表決(法190条)
選挙管理委員会の議事は,出席委員の過半数をもってこれを決する。可否同数のときは,委員長の決するところによる。
ス 書記長,書記その他の職員(法191条)
都道府県及び市の選挙管理委員会に書記長,書記その他の職員を置き,町村の選挙管理委員会に書記その他の職員を置く。(同条1項)
書記長,書記その他の常勤の職員の定数は,条例でこれを定める。ただし,臨時の職については,この限りでない。(同条2項)
書記長は委員長の命を受け,書記その他の職員又は法180条の3の規定による職員は上司の指揮を受け,それぞれ委員会に関する事務に従事する。(同条3項)
セ 抗告訴訟の取扱い(法192条)
選挙管理委員会の処分又は裁決に係る普通地方公共団体を被告とする訴訟については,選挙管理委員会が当該普通地方公共団体を代表する。
ソ 兼職の禁止等
(ア) 選挙管理委員は,衆議院議員又は参議院議員と兼ねることができない。(法141条1項,193条)
(イ) 選挙管理委員は,検察官,警察官若しくは収税官吏又は普通地方公共団体における公安委員会の委員と兼ねることができない。(法166条1項,193条)
(ウ) 普通地方公共団体の委員会の委員又は委員は,当該普通地方公共団体に対しその職務に関し請負をする者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人(当該普通地方公共団体が資本金,基本金その他これらに準ずるものの2分の1以上を出資している法人を除く。)の無限責任社員,取締役,執行役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者,支配人及び清算人たることができない。(法180条の5第6項,令133条)
法律に特別の定めがあるものを除くほか,普通地方公共団体の委員会の委員又は委員が上記に該当するときは,その職を失う。上記に該当するかどうかは,その選任権者がこれを決定しなければならない。(法180条の5第7項)
法143条2項から4項までの規定は,上記の場合にこれを準用する。(同条8項)。
(エ) 選挙管理委員会の委員長は,その権限に属する事務の一部をその補助機関である職員に委任し,又はこれに臨時に代理させることができる。(法153条1項,193条)
選挙管理委員会の委員長は,その補助機関である職員を指揮監督する。(法154条,193条)
(オ) 法及び令に規定するものを除く外,選挙管理委員会に関し必要な事項は,委員会がこれを定める。(法194条)
タ 特別区への準用
法又は政令で特別の定めをするものを除くほか,前記アないしソに関する規定は,特別区に適用される。(法283条1項)
チ 職務執行の停止
市町村及び特別区の選挙管理委員の職にある者が刑事事件に関して起訴されたときは,市町村長及び特別区の区長は,その者の職務の執行を停止することができる。上記による職務執行の停止期間中においては,報酬の3分の2を減額するものとする。(施行規程20条,14条1項及び2項)
(2)  委員会規程及び事務局処務規程の定め
ア 執務の原則(委員会規程2条)
委員会は,法令で定めてある各種の選挙事務を管理執行するほか,常に法規の研究,事務の改善及び部外との連絡等,円滑な事務の運営を図り,かつ,明るい選挙推進,棄権防止その他区民の選挙意識の昂揚啓発について,諸施策を研究し,これを執行するものとする。
イ 定例会及び臨時会(委員会規程8条)
(ア) 委員会の会議は,定例会及び臨時会とする。(同条1項)
(イ) 定例会は毎月10日及び25日に開催する。ただし,特別の事情のあるときは委員長の定める日に開催するものとし,その日時を委員に対してあらかじめ通知するものとする。(同条2項)
(ウ) 臨時会は,委員長が必要と認めたとき又は委員の請求があったとき開催するものとする。(同条3項)
(エ) 臨時会を開催する場合においては,委員長は,会議に付する事項並びに会議開催の日時及び場所を委員に対してあらかじめ通知するものとする。(同条4項)
ウ 委員長の職務権限
(ア) 事務担任(委員会規程12条)
委員長は,おおむね次に掲げる事務を担任する。
a 会議を主宰すること。
b 委員会に議案を提出し,並びに議決を執行すること。
c その他委員会の庶務に関すること。
(イ) 専決処分(委員会規程13条)
委員会の権限に属する事項で,恒例的なもの及び軽易なものは,委員会の決めるところにより,委員長において専決処分することができる。
エ 事務局
(ア) 委員会の権限に属する事務を処理するため事務局を設置する。(委員会規程14条)
(イ) 事務局の組織は,庶務係,選挙係及び情報啓発係とする。(委員会規程15条。なお,各係の事務分掌は,事務局処務規程3条に定めるところによる。)
(ウ) 事務局に,事務局長,係長及びその他の職員を置く。係には次席を置くことができる。事務局長は書記長をもって充て,係長は書記の中から委員会が任命する。(委員会規程16条)
(エ)a 局長は,委員長の命を受け事務局の事務をつかさどり,職員を指揮監督する。(委員会規程17条1項)
局長が決定すべき事案は,次のとおりとする。(事務局処務規程4条)
(a) 職員の配属及び事務分担に関すること。
(b) 職員の出張,旅行,欠勤又は休暇に関すること。
(c) 定例的な報告,答申,進達及び副甲に関すること。
(d) 定例的な告示,公表,申請,照会,回答,諮問及び通知に関すること。
(e) 諸証明に関すること。
(f) 文書の受理に関すること。
(g) 上記(a)ないし(f)のほか,定例的又は軽易な事項に関すること。
b 係長は,上司の命を受け,係の事務を処理する。(委員会規程17条2項)
c 次席は,上司の命を受け,係の事務のうち特定の事務を処理する。(同条3項)
d 書記その他の職員は,上司の命を受け事務に従事する。(同条4項)
2  認定事実
各項末尾に掲記の証拠のほか,弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。
(1)  本件規定の制定に係る事情について(乙10ないし16)
本件規定の前身である平成20年法律第69号による改正前の地方自治法(以下「改正前法」という。)203条2項は,昭和31年法律第147号(同年6月12日制定。同年9月1日施行)による改正により新たに追加された規定である。
上記改正による規定の追加の審議経過は,概要,次のとおりである。
ア 第24回国会衆議院地方行政委員会会議(昭和31年5月15日)
(ア) 地方自治法の一部を改正する法律案(以下「本件法律案」という。)に対する修正案として,改正前法203条1項の次に加えられる改正規定に,「但し,条例で特別の定をした場合は,この限りでない。」とのただし書を加える旨の修正案(以下「本件修正案」という。)が提出され,説明がされた。
本件修正案の提出者である鈴木直人委員による上記修正案の説明の概要は,次のとおりである。すなわち,改正前法203条1項に定める非常勤の職員に対する報酬の支給につき,従前,日給であるとか勤務日数に応じて支給するというような区別はなかったところ,政府案によると,すべてが勤務日数に応じてこれを支給するというように改められた。だが,非常勤の職員のうちにも,例えば教育委員会の委員,選挙管理委員会の委員,人事委員会の委員,公安委員会の委員,地方労働委員会の委員,農業委員会の委員というような,主として執行機関に属している委員会の委員がいる。これらの委員は,主として特別職に属する者であるため,特に地方公共団体において条例をもって勤務日数に応じて支給する方法と別の方法をもってこれらの報酬を支給する方法を定めた場合においては,条例によるものとすることが適当と考える。
(イ) 本件修正案について,次のような質疑応答がされた。
a 北山愛郎委員から,日当制は一応原則として認めるが,従来のような月割り又は年額で報酬を決めるというような制度も条例で決めた場合にはそれでやるという趣旨であるとすると,条項を提案した政府の考え方に多少食い違いができてくるのではないか,すなわち,非常勤職員の制度の改正により財政経費が相当額節減されることが期待されているようであるが,従来の方式でもよいということになれば,経費の増減に食い違いを生じてくるのではないかという旨の質問がされた。
これに対し,鈴木直人委員は,実際に各府県市町村の委員の報酬を調べたが,日勤制にしても,あるいは月幾らというように報酬を定めても,総額に差異は起こらないだろうと考えている,現実の場合においては,日勤制にしたから今までの月報酬をずっと下げるというようなことは極めて少ないため,日勤にしてもそれほど経費の節約にはならないのではないかという見通しを持っているなどと答弁した。
また,鈴木俊一政府委員(自治庁次長)は,政府としても,上記の修正については,条例で特別の定めをした場合に初めてものが動いてくるわけであり,それも,定め方の内容によっては,全然動かないということもあろうかと思われる,勤務日数単位の報酬を月単位の報酬にしても,その額のいかんによっては全然経費の上では動かないということもあり得るなどと答弁した。
b 中井德次郎委員から,公安委員会,選挙管理委員会,人事委員会などから,委員会の日当制ということは困るという陳情を方々から受けたが,非常勤の職員全部について条例で自由に定められるとすると範囲が広くなりすぎるのではないか,いわゆる行政委員会などについては条例をもって日当制は困るとする修正が行われると考えていたが,その審議経過等を知りたい旨の質問がされた。
これに対し,鈴木俊一政府委員は,行政委員会の委員だけにこれを限定するという方法も検討したが,改正案の180条の5に列記された多くの行政委員会全部にこれを適用するということを法制的に明記するのも乱にすぎると考えたこと,そうかといって,公安委員会,選挙管理委員会及び人事委員会だけに限るということも実情に沿わないということも考えられたこと,元来こういうことは自治体自身が決定すべきものであり,条例で特別の定めをした場合,いわゆる自主性を尊重して,地方公共団体の自主的判断に任せることが,終局的に一番よかろうということで,結論が出たことなどを答弁した。
c 門司亮委員から,例えば選挙管理委員会だけをみても,400以上ある全国の各市で日給制を採っているのは4市のみであり,府県はもとより,他の市は全部日給制を採っていないから,結局ただし書が物を言って,従来と何ら変わりのないものができ上がると思われる,そうであれば,そもそも改正前法203条3項で「報酬及び費用弁償の額並びにその支給方法は,条例でこれを定めなければならない」と書いてあるので足りるのではないかという旨の質問がされた。
これに対し,太田正孝国務大臣は,国家公務員の給与関係と地方公務員の給与関係はなるべく同じようにしたいところ,国家公務員の非常勤に対する定めは日当制であるから,これにならうべき一方,各種の自治体においてそうしない方がいいという考えの場合に対し,ただし書が加えられたと思う旨を答弁した。
これを受けて,門司亮委員は,さらに,非常勤の委員会だからといって,各々その職責とその事務内容というものによって,当然差があってしかるべきと思われること,仕事の内容と事務量によって常識的に定めるべきで,何でも一律に行おうとするところに無理が出てくること,本件修正案のようなただし書を入れるなら改正前法の方がまだ明確であることなどを述べた上,地方の自治体で選挙をする場合,殊に選挙管理委員会等は,ほとんど出ていなければならず,地方の自治体で実際に選挙の啓蒙等を諮っていく際には,非常に大きな努力をしており,また,努力してもらわなければならないのであって,その事務内容を考えることなく国家公務員と同じだというなら,大臣は地方自治の実情を知らないと思うことなどを述べた。
イ 第24回国会衆議院本会議(昭和31年5月16日)
(ア) 本件法律案が議題とされた。
その際,大矢省三地方行政委員会委員長より,本件法律案については,昭和31年3月15日に地方行政委員会に付託されたところ,同年4月27日に関係地方6団体の代表者等を参考人として招致しその意見を聴取したこと,人事委員会及び選挙管理委員会の全国連合会を代表する参考人が,これら委員会の委員の報酬をいわゆる日当制にすることは,その職務の性格及び勤務の実情に照らして適当でないから修正されたいという強い要望を述べたことなどが説明された上で,本件修正案についての説明がされた。
そして,上記委員会における採決の結果,本件修正案は満場一致可決され,修正部分を除く原案は賛成多数をもって可決されたため,本件法律案は修正議決すべきものと決したとの報告がされた。
(イ) 会議の結果,本件法律案は,賛成多数で上記の委員長報告のとおり決した。
ウ 第24回国会参議院地方行政委員会会議(昭和31年5月21日及び29日)
(ア)a 昭和31年5月21日の委員会の会議で,鈴木直人衆議院議員より,本件法律案及び衆議院において行われた修正の要旨について説明がされた。
その際,本件修正案について,非常勤職員に対する報酬を日割計算とするという原則は堅持するが,勤務の実情等特別の事情がある場合においては,特に条例をもって規定することにより勤務日数によらないで月額又は年額によって報酬を支給することとできるものとしたといった説明がされた。
b 本件修正案について,森下政一委員から,本件修正案におけるその勤務の実情等特別の事情がある場合というのはどういう場合を予想しているのかにつき質問がされた。
これに対し,鈴木直人衆議院議員は,それぞれの地方公共団体が自主的な判断を下して,条例を作った場合においては,その条例は法律の違反とはならないというような例外を設けたこと,その具体的な面としては,非常勤の職員の中に,選挙管理委員会の委員,人事委員会の委員,公安委員会の委員あるいは教育委員会の委員などの特殊的な執行機関たる委員会の委員があるが,それらの委員会の現状を見ると,選挙管理委員会においては,性格も相当違うし,勤務状態も,委員長その他ほとんど毎日出て事務をしているというところもあること,各地方団体の実情に即して,地方団体自身が月給制でやった方がよいとか,あるいは日当的な手当をやるにしても,その日その日に支給せず,月に合計して計算して日給制にするというようなことをやっているところもあり,それぞれ地方公共団体の自主的なやり方に任せていくことが現実に即した地方団体の運営であろうと考えたことなどを答弁した。
(イ) 同月29日の委員会の会議では,本件修正案につき,加瀨完委員から,行政委員会は地方行政に対して有益な働きをしており,それを議会の議員などと非常な段階を付けることは,地方における民主主義の発展に大きな阻害になると思われること,なぜ原案を削除できなかったのか,削除できないなら,特殊な財政団体に限って,特例によって日割計算でもいいというような形として,原則として行政委員会が十二分に働けるような措置を講じなかったのかなどという質問がされた。
これに対し,鈴木直人衆議院議員は,議員及び執行機関たる行政委員会の委員を除くという言葉で表す方法も考えられたが,選挙管理委員会,人事委員会,教育委員会あるいは公安委員会などの相当活動している委員会以外の執行機関たる行政委員会についてまでも日給制を除くというように法律で決めてしまうと,現状,日給制の行政委員会関係の委員がかなりあることからして問題があること,他方,選挙管理委員会や人事委員会等の二,三の委員会名だけを列挙することも他の委員会との関係上できないこと,結論的にはやはり条例によってそれぞれの府県市町村が従来の慣習等に基づいてやることが時宜に適したことであること,本件修正案のようなただし書を規定すれば現在実施されている条例がそのまま生きていくという解釈の下に,特別な措置をしなくとも現状が進んでいく結果になると考えられ,条例によって特別の規定をした場合にはこの限りでないという規定が現実に即した摩擦の少ない方法であろうと考えられ,かつ,自治体の自主性を尊重するものであることなどから,結論に至った旨を答弁した。
エ 第24回国会参議院本会議(昭和31年6月3日)
衆議院において修正議決された本件法律案が議題とされ,伊能芳雄地方行政委員会委員より,地方行政委員会における審査の経過及び結果の報告がされた。
会議の結果,上記の法律案は,賛成多数で可決された。
オ 非常勤職員の報酬の基準についてのいわゆる行政解釈
(ア) 本件規定の下で非常勤の職員の報酬を日額とするか月額とするかの基準について,昭和31年7月31日付け「法律解釈の疑義について」(自丁公発第109号。横浜市総務局長あて自治庁公務員課長回答)においては,「報酬を日額をもって定めるか月額をもって定めるかは,その者の職務内容及び勤務態様等を考慮して具体的実情に応じ自主的に判断すべきものである。」とされた。
(イ) 昭和31年8月18日付け「地方自治法の一部を改正する法律及び地方自治法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理に関する法律の施行に関する件(通知)」と題する自治庁次長通知(自乙行発第24号。各都道府県知事あて)では,「第四 給与その他の給付に関する事項」中で,本件規定において,地方公共団体の非常勤の職員で議会の議員以外の者に対する報酬は,その勤務日数に応じてこれを支給することを原則とし,特に条例をもって例外を規定することは差し支えないものとされたことにつき,「本改正は,非常勤職員に対する報酬が,勤務に対する反対給付たる性格を有することにかんがみ,当該報酬の額は具体的な勤務量すなわち勤務日数に応じて支給されるべき旨の原則を明にしたものであること。ただし,非常勤職員の勤務の態様は多岐にわたっているので,特別の事情のあるものについては,右原則の例外を定めることができるものであること。したがって,本改正を機会に非常勤職員等の従来の給与上の取扱について再検討を行うようにされたいこと。」などと述べられていた。
(2)  本件報酬額規定及び本件報酬の額に係る事情について
ア 本件報酬額規定の制定に至る経緯等(乙38,乙39)
本件条例は,選挙管理委員,監査委員,教育委員等についてそれぞれ制定されていた条例を一つにまとめる形で,昭和31年10月26日に成立した。
同日の練馬区議会においては,選挙管理委員会の委員長につき月額2万4000円,同委員につき月額1万3000円,同補充員につき日額300円の報酬を定めた条例案が,異議なく可決された。
なお,旧条例である「東京都練馬区選挙管理委員報酬及び費用弁償条例」(昭和22年練馬区条例第10号)においても,その制定時より,選挙管理委員会の委員長及び委員の報酬につき,月額をもって定めていた(なお,制定当時,委員長の報酬は月額1000円,委員長以外の委員の報酬は月額700円であった。)。
イ 練馬区特別職報酬等および議会政務調査費審議会条例(乙18)
(ア) 練馬区においては,練馬区特別職報酬および議会政務調査費審議会条例(昭和39年条例第34号。乙18。以下「審議会条例」という。)1条に基づき,区議会議員の議員報酬の額並びに区長及び副区長の給料の額(以下「報酬等の額」という。)等について,審議するため,区長の附属機関として,練馬区特別職報酬等および議会政務調査費審議会(以下「審議会」という。)が置かれている。
(イ) 審議会は,区内の公共的団体等の代表者その他区民のうちから区長が委嘱する委員10人以内をもって組織される。委員の任期は,2年とされ,再任を妨げない(ただし,補欠委員の任期は,前任者の残任期間とする。)とされる。(審議会条例3条,4条)
(ウ) 区長は,報酬等の額及び額の定め方の適否について,原則として,毎年審議会の意見を聞くものとされる。(審議会条例2条1項)
ウ 平成19年2月2日付け審議会の答申(乙9)
練馬区長は,平成19年1月26日付けで,審議会条例2条1項に基づき,審議会に対し,区議会議員の報酬の額並びに区長,助役及び収入役(以下「区長等」という。)の給料の額及び額の定め方の適否について諮問した。これを受けて,審議会は,平成19年2月2日,概要,次のとおり答申(以下「平成19年審議会答申」という。)した。
(ア) 審議会は,諮問を受けて,各委員が区民の代表としての自覚と責任をもって,公平かつ不偏の立場から,慎重に審議を行った。審議に当たっては,平成18年度の特別区における一般職の給与改定の状況,区の財政状況,区議会の活動状況,他の特別区における特別職の報酬等の額の動向,現在の社会経済情勢等を参考にし,更に区民感情等を配慮するなど,総合的に勘案して,慎重に審議を重ねた。
その結果,審議会は,全委員一致で次の結論を得た。
a 練馬区議会議員の報酬の額及び区長等の給料の額の定め方は,現行の定額をもって定める方式が妥当である。
b 練馬区議会議員の報酬の額及び区長等の給料の額は,平成19年4月1日をもって,①議員の報酬額につき,議長及び副議長については月額3000円,委員長,副委員長及び議員については月額2000円,②区長等の給料額につき,区長については月額4000円,助役及び収入役については月額3000円,それぞれ減額することが適当である。
(イ) 審議会は,特別職の職務と責任,職員の給与改定の状況,他の特別区との均衡,区の財政状況及び消費者物価の状況,特に一般職の職員給与の減額と各特別区における特別職の報酬改定の状況を踏まえ,特別職の報酬等の額を改定(減額)すべきであるとの結論に達した。
(ウ) 改定(減額)後の額については,人口及び財政規模からみた類似3区(大田区,世田谷区及び足立区)の区長の給料月額の平均額と平成18年度の特別区人事委員会勧告に基づく一般職の職員の給与減額率を比較して,区長の給料の月額を算出し,その上で,従来の各特別職間の比率に基づき,各職の額を算出した。
(エ) 特別職の報酬等の性格は,区長等についてみれば,その給料は生活給であり,また,議員についても半ば常勤化している状況を考えると生活給的要素が強まっているといえる。さらに,今回の答申は,減額を内容とするものであり,不利益不遡及の法原則から,遡及して適用すべきではない。したがって,改定の実施時期は,答申後の直近の年度開始日である平成19年4月1日とすることが望ましい。
エ 本件報酬の額の改定(乙9)
練馬区において,行政委員会の委員の報酬の額は,従来,議員等の報酬の額を基礎として算出されてきた。平成19年2月2日現在,選挙管理委員会の委員長については議員の報酬月額の2分の1,委員長以外の委員については議員の報酬月額の2分の1の更に5分の4(委員長の報酬の5分の4)として,それぞれその月額報酬を算出することとされていた。
そこで,平成19年審議会答申を尊重して議員の報酬の額を改定することとなったことから,平成19年4月1日をもって,選挙管理委員会の委員長の月額報酬は30万9000円から30万8000円に,委員長以外の委員の月額報酬は24万7000円から24万6000円に,それぞれ引き下げられた(本件報酬額規定)。
(3)  本件各委員の勤務の態様について(甲1,乙20,乙25ないし29,乙34ないし37)
ア 定例会及び臨時会の開催
(ア) 委員会規程8条2項に基づき,毎月2回の定例会が開催されるほか,同条3項に基づく臨時会が開催されている。
臨時会は,平成18年は4回,平成19年は16回,平成20年は6回,平成21年は12回開催された。
このうち,平成19年には東京都知事選挙,練馬区議会議員・区長選挙及び参議院議員選挙が執行され,平成21年には東京都議会議員選挙及び衆議院議員選挙が執行された。
(イ) 定例会及び臨時会においては,選挙人名簿及び在外選挙人名簿の登録及び抹消並びに抄本の閲覧等に係る議案,選挙管理委員会に関連する規程の制定及び改正に係る議案,検察審査会審査員及び裁判員の各候補者予定者に係る議案等が審議されるほか,選挙が執行される年においては,選挙の執行計画,ポスター掲示場の設置場所,投票管理者及び投票立会人,期日前投票並びに不在者投票等,選挙の実施に係る各種の議案が審議される。なお,選挙候補者氏名等の掲示の掲載順序や選挙公報の掲載順序,選挙立会人の選定,検察審査会審査員及び裁判員の各候補者予定者の選定等については,適宜,くじが実施される。
他方,定例会及び臨時会においては,報告事項として,例えば,①選挙人名簿登録者数及び投票率の動向に係る事項,投票区に係る事項,立候補受付実施状況,期日前投票状況及び選挙結果等に係る事項,違法文書図画の撤去命令書に係る事項など,選挙に関する一般的ないし具体的な事項のほか,②選挙啓発のための行事に係る事項,③公職選挙法その他選挙関連法令の制定及び改正並びに改正要望事項の提出に係る事項,④区議会における一般質問や質疑等の状況や議員からの資料要求に係る事項,⑤予算案及び決算,⑥その他人事に係る事項などが報告される。
なお,定例会及び臨時会における議案及び報告事項の総数は,平成18年は議案35,報告事項73,平成19年は議案71,報告事項107,平成20年は議案35,報告事項95,平成21年は議案68,報告事項148であった。
(ウ) その他,定例委員会に先立ち,そのための打合せが行われることもある。
イ 定例会及び臨時会以外の活動
(ア) 本件各委員が行う定例会及び臨時会以外の活動には,例えば,次のようなものがある(順不同。なお,括弧内に「委員長」と記載したものは,専ら委員長の活動である。)。
a 事務局職員への辞令交付(委員長)
b 練馬区明るい選挙推進協議会に係る会議への出席(なお,練馬区明るい選挙推進協議会は,明るい選挙推進委員と呼ばれる区民ボランティアで構成され,練馬区選挙管理委員会と協力しながら,選挙啓発事業を行うほか,練馬区選挙管理委員会からの依頼によりポスター掲示場の巡回点検や期日前投票所での投票立会人を務める。なお,練馬区選挙管理委員会の委員長は,練馬区明るい選挙推進協議会の顧問を務めている。)
c 特別区選挙管理委員会連合会の会議等への出席(なお,特別区選挙管理委員会連合会は,選挙管理の適正を期することを目的に組織された特別区の選挙管理委員会で構成される団体で,選挙法規の調査研究や情報交換等を行っている。)
d 全国市区選挙管理委員会連合会東京支部の会議等会への出席(委員長。なお,全国市区選挙管理委員会連合会は,選挙管理委員会の業務の円滑な運営等を目的として全国の区市町村の選挙管理委員会で組織される団体で,中央地方の連絡調製,選挙に関する調査研究,情報交換等を行っている。)
e 東京都・区市町村選挙管理委員会委員長会議への出席(委員長)
f 立候補予定者説明会,投票管理者説明会,選挙立会人説明会等への出席
g 取締機関(区内3警察署)との選挙に係る打合せ
h 立候補受付への立会い
i 期日前投票所の状況の視察
j 都議選の啓発物品(うちわ)の配布
k 選挙会への出席及び開票事務
l 当選者の事務所への当選証書の配達
m 区議会で提出された選挙に関する一般質問に対する答弁の内容についての打合せ
(イ) 以上のほか,会議の日程調整及び選挙や区議会に関する情報提供のため,事務局から本件各委員に電話等で連絡を取ることがあり,他方,本件各委員からも資料の要求や違反ポスターの通報が電話等で寄せられることもある。具体的には,例えば,区議会における一般質問の状況について,委員から事務局に問い合わせがされたり,対応について指示等がなされたりしたことがあった。
また,委員長において,本件各委員が検察審査会審査員ないし裁判員の候補者予定者からの匿名の相談に応じたり,インフルエンザへの対応に係る指示をしたり,あるいは,練馬区にある575か所のポスター掲示場(選挙時には明るい選挙推進委員の協力を得て巡回がされている。)で問題が生じた際,直ちにポスター掲示場の総点検を指示し,本件各委員が自ら巡回したこともあった。
3  争点に対する判断
(1)  本件規定は,地方公共団体の短時間勤務職員以外の非常勤の職員の報酬について,その本文において,原則としてその勤務日数に応じてこれを支給すると定める一方,そのただし書において,条例で特別の定めをした場合はこの限りではないと定めている。上記の本文の定めは,当該職員の非常勤という地位に照らし,これに対する報酬はいわゆる生活給としての要素を含まない性格のものであること等を反映するものであると解されるところ,上記のただし書の定めは,昭和31年にされたその前身である改正前法203条2項の規定の制定に係る事情からうかがわれるように,非常勤の職員には各種のものがあり,その従事する職務やこれを受けてのそれぞれの勤務の態様等は様々で,これらに対する報酬を一律にその勤務日数に応じて支給するものとすることには問題があり,特に,選挙管理委員会の委員については,かねて全国の地方公共団体のほとんどにおいて月額をもってその報酬が定められていたことを踏まえつつ,その職務の内容や勤務の態様等に照らし,上記のような取扱いをすることが具体的実情に沿わないこととなるおそれがあるとの懸念が示されたことを受けて,各地方公共団体においてその判断により特別の定めをすることを認める旨を明らかにしたものであると解される。
もっとも,本件規定のただし書の文言上は,非常勤の職員に対する報酬の支給につきその勤務日数に応じてする方法以外の方法によることができる基準等は示されていないが,非常勤の職員の報酬の上記のような基本的な性格や,法2条14項が,地方公共団体はその事務を処理するに当たっては最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならないと定め,地方財政法4条1項が,地方公共団体の経費はその目的を達成するための必要かつ最少の限度を超えてこれを支出してはならないと定めていること等を考慮すると,当該非常勤の職員の職務の内容及び勤務の態様並びに当該地方公共団体における財政に係る個別的な事情等に照らし,当該地方公共団体の議会の判断につき裁量権の範囲からの逸脱又はその濫用を認めるべき場合もあり得ると解され,その際には,例えば月額をもって支給するものと定められた報酬の額のいかんも検討すべき対象に含まれるものと解するのが相当である。
(2)  特別区の選挙管理委員会は,我が国における選挙の制度の重要性等を受けて,当該特別区に必置とされる執行機関であり,当該特別区が処理する選挙に関する事務及びこれに関係のある事務の管理及び執行をするものとされ,具体的には,本件において被告の主張するように,①選挙に関する啓発,周知等,②投票区の設置,③選挙人名簿及び在外選挙人名簿の調製,保管及び登録,④投票に関する事務(投票管理者及び投票立会人の選任等,投票所の設置等,期日前投票や不在者投票に係る事務等),⑤開票に関する事務(開票所の設置,開票管理者及び開票立会人の選任等),⑥選挙会に関する事務,⑦当選人に関する事務,⑧選挙運動に関する事務,⑨最高裁判所裁判官国民審査の投開票に関する事務,⑩裁判員候補者予定者名簿及び検察審査員候補者予定者名簿に関する事務,⑪農業委員会委員選挙の管理などを行うほか,⑫直接請求に係る事務を処理し,また,⑬選挙の効力や当選の効力に係る争訟については,準司法的機能を果たすものとされている。
このように,特別区の選挙管理委員会が管理及び執行をすべきものとされる事務は,相当程度に広範で専門性の高いものといえ,このことに対応して,既に認定したように,4年と定められたその任期における選挙管理委員会の委員の職務の内容も,選挙に関する啓発及び周知等並びに選挙人名簿及び在外選挙人名簿の調製,保管及び登録等に係るものを始めとして,各種の選挙の執行の時期以外にも継続的に遂行する必要があるものがあるほか,例えば直接請求や争訟に係るもののように,いったんそのような事情が生じればその際の個別の事由に応じ迅速かつ適正にその遂行に当たる必要があるものも含まれるのであって,関係諸機関等との適切な連携関係の構築に係る事項,選挙の一般的動向や選挙関連法規の制定ないし改正に係る事項,区議会における一般質問等への対応に係る事項といった関連するものをも併せると,その内容においてもその性質等においても多様なそれらの職務を受けて,そのときどきにおける勤務の態様等も異なっており,会議に出席して表決等をすることに尽きるものとはいい難く,専らこれに着目しその日数に応じてその報酬を支給するといった方法によることは,その職務の内容や勤務の態様等の具体的実情に必ずしも沿うものではないと解し得る事情がある。
そして,本件各委員に支給される本件報酬の額については,審議会によって練馬区の財政状況を含む諸事情を考慮した上で決定された議員の報酬の額を基礎に,委員長についてはその2分の1,委員長以外の委員については更にその5分の4を基準に定められたもので,その職務の内容,練馬区の規模,既に認定した勤務の態様のほか,近年における東京都内の他の特別区の選挙管理委員会の委員の報酬の額が,いずれも1か月当たり,委員長については25万円ないし31万円程度,その他の委員については20万円ないし25万円程度であること(乙41ないし62)に照らしても,著しく高額なものであるとはいい難い。
そうすると,本件報酬額規定を定めた練馬区議会の判断については,その裁量権の範囲から逸脱し又はこれを濫用したものとまでは断じ難いというべきである。
原告は,選挙管理委員会の事務は選挙管理委員会の委員長及びその他の委員が自ら行うものではなく,事務局職員が行うものである等と主張するが,法,令及び施行規程のほか,委員会規程及び事務局処務規程の関連する定めに照らせば,選挙管理委員会が管理及び執行をする事務は,選挙管理委員会の委員がその職務の遂行として処理するものであり,事務局長及び庶務係長を含む事務局職員は,選挙管理委員会の委員長及びその他の委員を補助する立場にある者として委員長の指揮監督の下にそのような内容及び性格の職務に従事しているものというべきである。また,原告は,選挙管理委員会の委員が議員経験者のいわゆる天下り先ポストとなっていると指摘するが,それは主として選挙管理委員会の委員が議会において選挙で選ばれるという法182条1項の運用に係る問題であるというべきであるから,仮に原告の主張するような事情があったとしても,そのことは本件報酬額規定が本件規定に反するものであるか否かとは次元を異にする問題であるというべきである。そして,本件報酬額規定が違法であるとして原告の主張するその他の事情は,既に述べたところに照らし,いずれも採用することができない。なお,原告は,中央選挙管理会の委員には日額報酬が支給されていることを指摘するが,中央選挙管理会の委員は国家公務員であってその前提を異にするから,上記の点は前記判断を左右するものではない。
第4  結論
以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 八木一洋 裁判官 中島朋宏 裁判官 吉田豊)


「公職選挙法 ポスター」に関する裁判例一覧
(1)平成31年 4月26日 大阪高裁 平30(行ケ)1号 裁決取消請求事件
(2)平成30年 7月25日 東京高裁 平30(行ケ)8号 裁決取消請求事件
(3)平成30年 4月11日 知財高裁 平29(行ケ)10161号 審決取消請求事件
(4)平成30年 1月22日 東京地裁 平27(特わ)2148号 政治資金規正法違反被告事件
(5)平成29年 8月29日 知財高裁 平28(行ケ)10271号 審決取消請求事件
(6)平成28年11月28日 名古屋高裁 平27(う)131号 受託収賄、事前収賄、公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律違反被告事件
(7)平成28年 8月23日 東京地裁 平27(行ウ)384号 難民不認定処分取消等請求事件
(8)平成28年 5月17日 広島高裁 平28(行ケ)1号 裁決取消請求事件
(9)平成28年 4月28日 青森地裁八戸支部 平28(わ)12号 各公職選挙法違反被告事件
(10)平成28年 1月28日 東京高裁 平27(行ケ)49号 裁決取消請求事件
(11)平成27年10月27日 岡山地裁 平24(行ウ)15号 不当利得返還請求事件
(12)平成26年10月28日 東京地裁 平24(行ウ)496号 三鷹市議会議員および市長選挙公営費返還請求事件
(13)平成26年10月24日 和歌山地裁 平23(行ウ)7号 政務調査費違法支出金返還請求事件
(14)平成26年 1月16日 名古屋地裁 平23(行ウ)68号 愛知県議会議員政務調査費住民訴訟事件
(15)平成25年10月16日 東京地裁 平23(行ウ)292号 報酬返還請求事件
(16)平成25年 2月28日 東京地裁 平22(ワ)47235号 業務委託料請求事件
(17)平成24年 4月13日 仙台高裁 平23(行コ)24号 仙台市行政委員報酬支出差止請求控訴事件
(18)平成24年 2月29日 東京地裁 平21(行ウ)585号 公金支出差止請求事件
(19)平成23年 5月18日 東京高裁 平22(行ケ)30号 裁決取消等請求事件
(20)平成23年 2月24日 京都地裁 平20(行ウ)49号 不当利得部分返還請求行為請求事件
(21)平成22年 9月30日 東京地裁 平21(行ウ)231号 報酬支出差止請求事件
(22)平成22年 3月31日 東京地裁 平21(行ウ)259号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(23)平成22年 2月 3日 東京高裁 平21(行ケ)30号 選挙無効請求事件
(24)平成21年 9月18日 東京地裁 平20(行ウ)149号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(25)平成21年 1月30日 東京地裁 平20(行ウ)393号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(26)平成21年 1月30日 東京地裁 平20(行ウ)360号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(27)平成21年 1月30日 東京地裁 平20(行ウ)357号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(28)平成21年 1月30日 東京地裁 平20(行ウ)354号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(29)平成21年 1月30日 東京地裁 平20(行ウ)352号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(30)平成20年11月11日 仙台高裁 平20(行コ)13号 政務調査費返還代位請求控訴事件
(31)平成19年 6月13日 最高裁大法廷 平18(行ツ)176号 選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(32)平成19年 6月13日 最高裁大法廷 平18(行ツ)175号 選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟〕
(33)平成19年 4月 3日 大阪地裁 平19(行ク)27号 執行停止申立て事件
(34)平成19年 3月28日 大阪地裁 平19(行ク)24号 仮の差止め申立て事件
(35)平成19年 2月23日 鹿児島地裁 平15(わ)217号 公職選挙法違反被告事件 〔鹿児島選挙違反事件〕
(36)平成19年 2月20日 大阪地裁 平19(行ク)7号 執行停止申立て事件
(37)平成18年11月 6日 高松高裁 平18(行ケ)2号 裁決取消請求事件
(38)平成17年 5月19日 東京地裁 平12(行ウ)319号 固定資産税賦課徴収懈怠違法確認請求、損害賠償(住民訴訟)請求事件
(39)平成17年 4月27日 仙台高裁 平17(行ケ)1号 当選無効及び立候補禁止請求事件
(40)平成15年12月 4日 福岡高裁 平15(行ケ)6号 佐賀市議会議員選挙無効裁決取消請求事件 〔党派名誤記市議会議員選挙無効裁決取消請求事件〕
(41)平成15年10月23日 大阪地裁 平14(行ウ)13号 損害賠償請求事件
(42)平成15年 9月11日 函館地裁 平15(わ)157号 公職選挙法違反被告事件
(43)平成15年 9月 5日 東京地裁 平15(特わ)3328号 各公職選挙法違反被告事件
(44)平成15年 8月28日 東京地裁 平15(特わ)3079号 公職選挙法違反被告事件
(45)平成15年 4月24日 神戸地裁 平11(わ)433号 公職選挙法違反被告事件
(46)平成15年 2月26日 さいたま地裁 平12(ワ)2782号 損害賠償請求事件 〔桶川女子大生刺殺事件国賠訴訟・第一審〕
(47)平成14年 9月30日 広島高裁松江支部 平14(う)24号 公職選挙法違反、詐欺被告事件
(48)平成13年11月30日 京都地裁 平11(行ウ)25号 公金支出違法確認請求事件
(49)平成13年 4月25日 東京高裁 平12(行ケ)272号 選挙無効請求事件
(50)平成12年 7月19日 福岡高裁 平11(行ケ)11号 裁決取消請求事件
(51)平成12年 2月17日 最高裁第二小法廷 平9(あ)324号 業務妨害被告事件
(52)平成11年11月10日 最高裁大法廷 平11(行ツ)8号 選挙無効請求事件 〔衆議院小選挙区比例代表並立制選挙制度違憲訴訟・上告審〕
(53)平成11年11月10日 最高裁大法廷 平11(行ツ)35号 選挙無効請求事件 〔衆議院小選挙区比例代表並立制選挙制度違憲訴訟・上告審〕
(54)平成11年 4月21日 名古屋高裁金沢支部 平11(行ケ)1号 当選無効及び立候補禁止請求事件
(55)平成10年10月 9日 東京高裁 平8(行ケ)281号 選挙無効請求事件 〔衆議院小選挙区比例代表並立制選挙制度違憲訴訟・第一審〕
(56)平成10年10月 9日 東京高裁 平8(行ケ)278号 選挙無効請求事件 〔衆議院小選挙区比例代表並立制選挙制度違憲訴訟・第一審〕
(57)平成10年 9月21日 東京高裁 平10(行ケ)121号 選挙無効請求事件
(58)平成 9年12月15日 東京高裁 平8(行ケ)274号 選挙無効請求事件
(59)平成 9年 8月26日 高松高裁 平9(行ケ)2号 立候補禁止請求事件
(60)平成 9年 3月28日 最高裁第二小法廷 平4(行ツ)128号 国税犯則取締法第二条に基づく差押許可状の取消請求等、損害賠償請求、行政事件訴訟法第一九条による請求の追加的併合事件
(61)平成 9年 3月18日 大阪高裁 平8(行コ)35号 供託金返還請求控訴事件
(62)平成 9年 3月13日 最高裁第一小法廷 平8(行ツ)193号 当選無効及び立候補禁止請求事件 〔青森県議会議員選挙候補者連座訴訟・上告審〕
(63)平成 8年 9月27日 大阪高裁 平8(行ケ)1号 立候補禁止請求事件
(64)平成 8年 8月 7日 神戸地裁 平7(行ウ)41号 選挙供託による供託金返還請求事件
(65)平成 8年 7月 8日 仙台高裁 平7(行ケ)3号 当選無効及び立候補禁止請求事件 〔青森県議会議員選挙候補者連座訴訟・第一審〕
(66)平成 7年12月11日 名古屋高裁金沢支部 平5(行ケ)1号 珠洲市長選無効訴訟判決
(67)平成 7年11月30日 名古屋高裁 平7(う)111号 政治資金規正法違反、所得税法違反被告事件
(68)平成 7年10月 9日 仙台高裁 平7(行ケ)2号 当選無効及び立候補禁止請求事件 〔山形県議会議員選挙候補者連座訴訟〕
(69)平成 5年10月12日 松山地裁 平2(わ)207号 公職選挙法違反被告事件
(70)平成 5年 5月13日 大阪地裁 平4(ワ)619号 損害賠償請求事件
(71)平成 5年 2月18日 最高裁第一小法廷 平4(行ツ)175号 市議会議員の当選の効力に関する裁決取消請求事件
(72)平成 4年 7月30日 名古屋高裁 平3(行ケ)6号 市議会議員の当選の効力に関する裁決取消請求事件
(73)平成 4年 6月26日 大阪高裁 平2(う)966号 公職選挙法違反被告事件
(74)平成 3年 9月25日 東京地裁 昭61(ワ)7031号 警察官違法同行損害賠償請求事件
(75)平成 3年 9月10日 福岡高裁那覇支部 平3(行ケ)1号 町議会議員の当選の効力に関する裁決取消請求事件
(76)平成 3年 4月24日 大阪地裁 昭61(わ)5546号 公職選挙法違反被告事件 〔大阪高槻選挙違反事件〕
(77)平成 3年 4月11日 大阪高裁 平2(行ケ)8号 選挙無効請求事件
(78)平成 3年 3月18日 大阪地裁 昭61(わ)5533号 公職選挙法違反被告事件 〔大阪高槻選挙違反事件〕
(79)平成 3年 3月 4日 大阪地裁 昭61(わ)3072号 公職選挙法違反被告事件 〔大阪高槻選挙違反事件〕
(80)平成 2年 5月30日 名古屋高裁金沢支部 平元(行ケ)1号 参議院石川県選挙区選出議員選挙当選無効請求事件判決
(81)平成元年 9月27日 福岡高裁宮崎支部 昭63(行ケ)1号 選挙の効力に関する審査申立に対する裁決取消請求事件
(82)昭和63年11月17日 大阪高裁 昭63(う)499号 公選法違反被告事件
(83)昭和63年11月 9日 東京高裁 昭62(行ケ)172号 裁決取消請求事件
(84)昭和62年11月26日 名古屋高裁 昭62(う)294号 公選法違反被告事件
(85)昭和60年12月25日 福岡高裁 昭58(う)793号 公職選挙法違反被告事件
(86)昭和60年 8月 7日 福岡高裁 昭59(行ケ)1号 裁決取消請求事件
(87)昭和60年 5月28日 仙台高裁 昭59(う)125号 公職選挙法違反被告事件
(88)昭和59年 9月17日 東京高裁 昭58(う)726号 公職選挙法違反被告事件
(89)昭和59年 7月17日 福岡高裁 昭58(う)487号 大分県屋外広告物条例違反被告事件
(90)昭和59年 7月12日 東京高裁 昭59(う)768号 公職選挙法違反被告事件
(91)昭和59年 5月28日 高松高裁 昭58(行ケ)4号 裁決取消請求事件
(92)昭和59年 3月28日 広島地裁 昭57(ワ)1588号 参議院全国区制改革による損害賠償請求事件
(93)昭和59年 1月20日 最高裁第二小法廷 昭57(あ)1400号 公職選挙法違反被告事件
(94)昭和59年 1月20日 大阪高裁 昭57(う)1010号 公職選挙法違反被告事件
(95)昭和57年10月 8日 最高裁第二小法廷 昭57(行ツ)43号 三重県久居市の長の選挙の効力に関する裁決取消等請求事件
(96)昭和57年 4月15日 東京高裁 昭54(行コ)104号 供託申請却下決定取消請求事件
(97)昭和57年 2月22日 松山地裁宇和島支部 昭55(わ)81号 公職選挙法違反被告事件
(98)昭和57年 2月18日 大阪高裁 昭55(う)332号 公職選挙法違反事件 〔糸山派選挙違反事件・控訴審〕
(99)昭和57年 2月16日 名古屋高裁 昭56(行ケ)1号 当選が無効とならないことの確認請求事件
(100)昭和57年 1月19日 最高裁第三小法廷 昭55(行ツ)162号 町議会議員一般選挙の当選の効力に関する裁決取消、当選決定処分有効確認請求事件


■選挙の種類一覧
選挙①【衆議院議員総選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙②【参議院議員通常選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙③【一般選挙(地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙④【特別選挙(国政選挙|地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)


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