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政治と選挙Q&A「政党 公認 候補者 公募 ポスター」に関する裁判例(89)平成27年 1月16日 東京地裁 平22(行ウ)94号 懲戒処分取消等請求事件

「政党 公認 候補者 公募 ポスター」に関する裁判例(89)平成27年 1月16日 東京地裁 平22(行ウ)94号 懲戒処分取消等請求事件

裁判年月日  平成27年 1月16日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(行ウ)94号
事件名  懲戒処分取消等請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴  文献番号  2015WLJPCA01168009

要旨
◆都立学校の教職員又は元教職員である原告らが、所属校校長の職務命令に違反して、卒業式等の式典における国歌斉唱時に起立や在席をせず、あるいはピアノ伴奏をしなかったことを理由として教育委員会から受けた各懲戒処分が違憲・違法であるとして、被告都に対し、その取消しと国家賠償を求めた事案において、本件訴え提起時に退職していた原告らについても戒告処分の取消しを求める行政事件訴訟法9条1項所定の法律上の利益があるとした上で、国歌斉唱等に関する本件通達及び本件各職務命令は違憲・違法とはいえず、本件各処分に手続的違法があるともいえないが、減給処分以上の懲戒処分については、処分量定に関する裁量権の逸脱・濫用の違法があり、取消しを免れないとする一方、減給処分以上の本件各処分を行った時点において、本件教育委員会が本件各処分を選択したことについて職務上尽くすべき注意義務を怠ったものと評価することは相当ではなく、同教育委員会に国家賠償法上の過失があったとは認められないとして、原告らの請求を一部認容した事例

裁判経過
控訴審 平成27年12月 4日 東京高裁 判決 平27(行コ)77号 懲戒処分取消等請求控訴事件

出典
裁判所ウェブサイト
判例地方自治 405号57頁

評釈
田中謙・判例地方自治 417号44頁

参照条文
日本国憲法13条
日本国憲法19条
日本国憲法20条
日本国憲法23条
日本国憲法26条
日本国憲法94条
市民的及び政治的権利に関する国際規約18条
国家賠償法1条
地方公務員法3条
地方公務員法29条
地方公務員法32条
地方公務員法33条
地方自治法2条
地方自治法14条
教育基本法16条
行政事件訴訟法3条
行政事件訴訟法9条
行政事件訴訟法30条
学校教育法42条(平19法96改正前)

裁判年月日  平成27年 1月16日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(行ウ)94号
事件名  懲戒処分取消等請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴  文献番号  2015WLJPCA01168009

当事者等 別紙1「当事者等目録」記載のとおり

 

 

主文

1  東京都教育委員会が別紙2「懲戒処分等一覧表」の「処分日」欄記載の各日付で,原告X2,同X6,同X13,同X14,同X16,同X22,同X23,同X24,同X25,同X26,同X27,同X28,同X30,同X31,同X32,同X34,同X38,同X40,同X42,同X43,同X44,同X45,同X46,同X47,同X48及び同X50に対してした同一覧表の「処分内容」欄記載の各懲戒処分(ただし,原告X48に対する同一覧表の番号「48-1」欄記載の懲戒処分を除く。)をいずれも取り消す。
2  原告X2,同X6,同X13,同X14,同X16,同X22,同X23,同X24,同X25,同X26,同X27,同X28,同X30,同X31,同X32,同X34,同X38,同X40,同X42,同X43,同X44,同X45,同X46,同X47,同X48及び同X50のその余の請求並びにその余の原告らの請求をいずれも棄却する。
3  訴訟費用は,第1項の原告らに生じた費用と被告に生じた費用の2分の1との合計額を2分し,その1を第1項の原告らの,その余を被告の各負担とするほか,その余の原告らに生じた費用と被告に生じた費用の2分の1をその余の原告らの負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  東京都教育委員会が別紙2「懲戒処分等一覧表」の「処分日」欄記載の各日付で原告らに対してした同一覧表の「処分内容」欄記載の各懲戒処分をいずれも取り消す。
2  被告は,原告らに対し,それぞれ別紙2「懲戒処分等一覧表」の「請求金額」欄記載の各金額及びこれに対する平成22年4月16日(本訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,東京都立学校の教職員又は同教職員であった原告ら(すでに退職した者も含む。)が,平成19年3月から平成21年3月までの間に,所属校校長の職務命令に違反して,卒業式等の式典における国歌斉唱時に起立や在席をせず,あるいはピアノ伴奏をしなかったことを理由として,東京都教育委員会(以下「都教委」という。)から受けた地方公務員法(以下「地公法」という。)29条1項に基づく各懲戒処分の違憲・違法を主張して,これらの取消しを求めるとともに,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償(1個の懲戒処分ごとに慰謝料50万円及び弁護士費用5万円)及びこれに対する平成22年4月16日(本訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1  前提となる事実
以下の各事実は,いずれも後掲各証拠及び弁論の全趣旨により認められる。
(1)  原告ら
原告らは,いずれも被告に採用され,東京都立学校に勤務する教職員又は同教職員であった者であり,後述の各懲戒処分時における勤務校及び職名は,別紙3「経歴一覧表」記載のとおりである。
(2)  国旗及び国歌に関する法律及び学習指導要領
我が国の国旗を日章旗,国歌を君が代と定める国旗及び国歌に関する法律(平成11年法律第127号。以下「国旗国歌法」という。)が制定され,平成11年8月13日に施行された。また,高等学校学習指導要領(以下「学習指導要領」という。)では,第4章(「特別活動」)の第2(「内容」)のC(1)の「儀式的行事」において「学校生活に有意義な変化や折り目を付け,厳粛で清新な気分を味わい,新しい生活の展開への動機付けとなるような活動を行うこと。」と,第3(「指導計画の作成と内容の取扱い」)の3において「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」(以下「国旗国歌条項」という。)とする記述がされている。
(甲B7,乙18,91の3)
(3)  都教委の通達
ア 都教委は,平成9年及び平成10年当時,都立高等学校等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施率が全国の公立高等学校の中で1番目ないし2番目に低かったことから,都立高等学校長に対し,学習指導要領に基づいた国旗・国歌の指導を行うよう指導,助言することとして,平成10年11月に実施指針(乙3。以下「平成10年実施指針」という。)を添付した通知を発出したうえ,平成11年6月23日には卒業式・入学式対策本部を設置し,同年10月19日には平成10年実施指針に基づき卒業式等を実施することを命ずる通達(乙5。以下「平成11年通達」という。)を発出するなどしていた。
その結果,平成12年度卒業式からは,都立高等学校等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施率は100パーセントとなったものの,実際のところでは,国旗を掲揚した三脚を舞台袖の見えないところに置いたり,国歌斉唱時に教員が起立しないなどの実態があった。
都教委は,このような実態を踏まえ,平成14年11月には平成11年通達に基づいて一層の改善を図るよう依頼する通知を発するなどして指導を継続したが,平成14年度卒業式及び平成15年度卒業式における国旗掲揚の方法等についての調査結果は,平成10年実施指針で定められた方針どおりに国旗掲揚等を行った都立学校等は全体の半分にも満たないものであり,また,国歌斉唱時に起立をしない教員がいるなどの実態がなお存在していた。
イ 都教委は,平成15年6月25日に都立学校等卒業式・入学式対策本部を設置し,卒業式等の適正実施について検討し,その結果をとりまとめ,上記アのような実態を改善するという課題を解決するためには各学校で国旗掲揚及び国歌斉唱の実施についてより一層の改善,充実を図る必要があると判断して,これを受けた都教委のC教育長において,同年10月23日,都立高等学校長及び都立盲・ろう・養護学校長(以下,これらの学校を併せて「都立学校」といい,その校長を単に「校長」という。)に対し,校長に対する職務命令として,以下の内容の「入学式,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」(乙14の3。以下「本件通達」といい,本件通達の別紙「入学式,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針」を「本件実施指針」という。)を発出した。
「1 学習指導要領に基づき,入学式,卒業式等を適正に実施すること。
2  入学式,卒業式等の実施に当たっては,別紙『入学式,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針』のとおり行うものとすること。
3  国旗掲揚及び国歌斉唱の実施に当たり,教職員が本通達に基づく校長の職務命令に従わない場合は,服務上の責任を問われることを,教職員に周知すること。」
「別紙 入学式,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針
1  国旗の掲揚について
入学式,卒業式等における国旗の取扱いは,次のとおりとする。
(1)  国旗は,式典会場の舞台壇上正面に掲揚する。
(2)  国旗とともに都旗を併せて掲揚する。この場合,国旗にあっては舞台壇上正面に向かって左,都旗にあっては右に掲揚する。
(3)  屋外における国旗の掲揚については,掲揚塔,校門,玄関等,国旗の掲揚状況が児童・生徒,保護者その他来校者が十分認知できる場所に掲揚する。
(4)  国旗を掲揚する時間は,式典当日の児童・生徒の始業時刻から終業時刻とする。
2  国歌の斉唱について
入学式,卒業式等における国歌の取扱いは,次のとおりとする。
(1)  式次第には,「国歌斉唱」と記載する。
(2)  国歌斉唱に当たっては,式典の司会者が,「国歌斉唱」と発声し,起立を促す。
(3)  式典会場において,教職員は,会場の指定された席で国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する。
(4)  国歌斉唱は,ピアノ伴奏等により行う。
3  会場設営等について
入学式,卒業式等における会場設営等は,次のとおりとする。
(1)  卒業式を体育館で実施する場合には,舞台壇上に演台を置き,卒業証書を授与する。
(2)  卒業式をその他の会場で行う場合には,会場の正面に演台を置き,卒業証書を授与する。
(3)  入学式,卒業式等における式典会場は,児童・生徒が正面を向いて着席するように設営する。
(4)  入学式,卒業式等における教職員の服装は,厳粛かつ清新な雰囲気の中で行われる式典にふさわしいものとする。」
ウ 都教委は,平成15年10月23日,校長を対象者として,「教育課程の適正実施にかかわる説明会」を開催し,校長らに本件通達を交付した。
(乙1,2の1・2,乙3,5,8の1,乙11,12及び14の各1から3まで,乙32,36,37,42の1・2,乙62,70,72から79まで,85,86の1・3から6まで)
(4) 原告らによる国歌斉唱時の不起立等
原告らは,別紙4「懲戒事由一覧表」記載のとおり,それぞれ所属校校長(以下「本件各校長」という。)より職務命令(以下「本件各職務命令」という。)を受けていたにもかかわらず,これに反し,卒業式等の式典における国歌斉唱時に起立や在席をせず,あるいはピアノ伴奏をしなかった(以下,原告らのこれらの行為を併せて「本件不起立等」という。)。
(甲C1から50まで,甲D1の1,甲D2の1から3まで,甲D3から27までの各1,甲D28の1・2,甲D29から41までの各1,甲D42の1・2,甲D43から47までの各1,甲D48の1から3まで,甲D49及び50の各1)
(5)  懲戒処分等
都教委は,本件不起立等が,職務命令違反として地公法32条に違反するとともに,全体の奉仕者たるにふさわしくない行為であって,教育公務員としての職の信用を傷つけ,職全体の不名誉となるものであって,地公法33条に違反することから,地公法29条1項1号,2号及び3号の懲戒事由に該当するとして,原告らから事情を聴取する機会を設け,教職員懲戒分限審査委員会に対する諮問,同委員会による答申,都教委における決定という手続を経た上で,原告らに対し,別紙2「懲戒処分等一覧表」の「処分日」欄記載の各日付で,同一覧表の「原告氏名」欄記載の各原告に対する同一覧表の「処分内容」欄記載の各懲戒処分を行った(以下,これらの懲戒処分を併せて「本件各処分」という。)。
なお,原告X2,同X6,同X13,同X14,同X16,同X22,同X23,同X24,同X25,同X26,同X27,同X28,同X30,同X31,同X32,同X34,同X38,同X40,同X42,同X43,同X44,同X45,同X46,同X47,同X48及び同X50(以下「原告X2ら26名」という。)に対する減給10分の1・1月から6月まで並びに停職1月及び3月の各処分については,当該原告らが過去にも同様の非違行為によって戒告,減給処分を受けたことにかんがみ,このような先行する懲戒処分がある場合は処分量定を加重するとの考えに基づいてなされたものである。原告X2ら26名のうち原告X48を除く25名の過去の処分歴については,別紙5「処分歴一覧表」各記載のとおりである(なお,原告X48は,過去の処分歴はなく,本件各処分として別紙2「懲戒処分等一覧表」の番号「48-1」ないし「48-3」の各欄記載の処分を受けているが,そのうち番号「48-1」欄記載の処分が戒告処分であり,以降の減給処分は,この戒告処分を前提とする処分量定の加重が行われたものである。)。
(甲D1の1,甲D2の1から3まで,甲D3から27までの各1,甲D28の1・2,甲D29から41までの各1,甲D42の1・2,甲D43から47までの各1,甲D48の1から3まで,甲D49及び50の各1,乙86の2,乙C2の1から20まで,乙C6,13,14及び16の各1から11まで,乙C22の1から12まで,乙C23及び24の各1から11まで,乙C25の1から16まで,乙C26及び27の各1から11まで,乙C28の1から45まで,乙C30の1から17まで,乙C31の1から11まで,乙C32の1から18まで,乙C34の1から12まで,乙C38の1から17まで,乙C40の1から11まで,乙C42及び43の各1から18まで,乙C44の1から11まで,乙C45の1から17まで,乙C46及び47の各1から11まで,乙C48の1から17まで,乙C50の1から16まで)
(6)  不服申立て等
原告らは,本件各処分について,別紙2「懲戒処分等一覧表」の「審査請求日」欄記載の各日付に,東京都人事委員会に対する審査請求を行ったが,いずれの審査請求についても裁決のないまま3か月以上が経過したことから,原告らは,平成22年3月2日,本件訴えを提起した。
(7)  一部原告らの退職
原告X9,同X15,同X21,同X29,同X39及び同X41は,戒告処分を受けた後であって本訴を提起する前である平成19年3月31日,平成20年3月31日又は平成21年3月31日にそれぞれ退職した(以下,これらの退職者を併せて「提起時退職原告ら」という。)。
また,原告らによる平成22年3月2日の本訴提起後,本件口頭弁論の終結時までの間に,別紙3「経歴一覧表」記載のとおり,戒告処分を受けた原告らのうち,原告X8,同X17,同X18,同X19,同X20,同X33,同X35,同X37及び同X48(別紙2「懲戒処分等一覧表」の番号「48-1」欄)がそれぞれ退職した(以下,これらの退職者を併せて「終結時退職原告ら」という。)。
2  争点
(1)  本案前の争点
提起時退職原告らにおける戒告処分取消しの訴えの利益の有無
(2)  本案の争点
ア 本件通達及び本件各職務命令の憲法19条違反の有無
イ 本件通達及び本件各職務命令の憲法20条違反の有無
ウ 本件通達及び本件各職務命令の教師の専門職上の自由の侵害による憲法13条,23条,26条違反の有無
エ 本件通達及び本件各職務命令の国際条約違反の有無
オ 国家シンボルの強制そのものの違憲性の有無
カ 本件通達の憲法94条,地方自治法14条1項違反の有無
キ 学習指導要領の国旗国歌条項の法的拘束力の有無
ク 本件通達及び本件各職務命令の教育基本法16条1項違反の有無
ケ 本件通達及び本件各職務命令の平成19年6月27日法律第96号による改正前の学校教育法42条(同改正後の同法51条)違反の有無
コ 本件通達の地方自治法14条2項,2条16項,2条2項違反の有無
サ 本件不起立等の地公法32条,33条違反の有無
シ 本件各処分の手続的違法の有無
ス 本件各処分について処分をすること自体の裁量権の逸脱・濫用の有無
セ 本件各処分における処分量定に関する裁量権の逸脱・濫用の有無
ソ 原告らの国家賠償法1条1項に基づく慰謝料等請求権の有無
第3  争点に対する当事者の主張
1  本案前の争点(提起時退職原告らにおける戒告処分取消しの訴えの利益の有無)
(被告の主張)
提起時退職原告らの戒告処分の取消しの訴えは却下されるべきである。すなわち,本訴において問題とされる被告の提起時退職原告らに対する懲戒処分は,いずれも「戒告処分」であり,「戒告処分」とは「その責任を確認し,及びその将来を戒めるもの」(人事院規則12-10第4条参照)である以上,当該公務員が公務員として在職していることが前提となっているのであり,退職職員に対しては「戒告処分」は法的効力を有しないものとなっている。行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)9条1項は,原告適格について「処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(括弧内略)は,当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(括弧内略)に限り,提起することができる。」と規定しているのであり,提起時退職原告らにおいて,戒告処分の取消しを求める「法律上の利益」は存在しない以上,訴え却下の判決がなされるべきである。
(提起時退職原告らの主張)
戒告処分を受けた教職員は,その事実によって,昇給延伸,勤勉手当の20パーセント削減や,戒告処分が取り消されない限り退職後の再任用又は再雇用に当たって不利益な評価・選考を受ける可能性がある等の種々の不利益を被ることが法令上の仕組みとして予定されており,この仕組みは提起時退職原告らとその他の原告らとで区別なく適用される。
よって,提起時退職原告らにも,戒告処分を取り消し,戒告処分を受けたことに基づく種々の不利益を回復すべき法律上の利益があるというべきであって,被告の本案前の主張は理由がない。
2  本案の争点
(1)  本件通達及び本件各職務命令の憲法19条違反の有無
(原告らの主張)
ア(ア) 日本国憲法が,その19条において,信教の自由(憲法20条),表現の自由(憲法21条)と別個に,思想・良心の自由を定めた意義は,明治憲法下で国家権力が神権天皇制の思想でもって国民各人の思想・良心にまで抑圧的,統制的,更には教化的,洗脳的に侵入したことを二度と許さないということを確固として明示したことにある。このように,憲法19条の規定する「思想・良心」とは,国家(地方自治体を含む)及び行政機関が介入してはならない領域であると考えれば,「思想・良心」の範囲については「内心活動一般」であると広く解すべきである。
そして,原告らは,一箇の人格である個人として,また,子どもとの全人格的なかかわりである教育実践を通じて得てきた教師としてのアイデンティティにより,日の丸・君が代に対し,次のような考え方ないし思いを有している。すなわち,国旗・国歌は,国家的・国民的統合機能を有する存在であり,その機能の故に,性質上,常に何らかの思想・理念・政治と密接な関連を持つものであり,国旗・国歌のこのような機能・性質にかんがみれば,国旗・国歌という存在をどう受け止め,どう向き合うかは,ひとりひとりの個人が自己の思想・良心に照らして決めるべき事柄といえるところ,日の丸・君が代には,このような国旗・国歌の持つ一般的な性質に加え,戦前日本の皇民化教育及び侵略戦争遂行の中で重要な役割を果たしてきたという重い歴史があるのであり,このような重い歴史的事実の故に,国旗・国歌としての日の丸・君が代をどう評価するのかは,個人の歴史認識・評価,天皇制に対する評価,戦争責任についての評価,戦前・戦後政治の評価,政治意識などと密接に関連するものであり,これらと切り離して考えることはできないものとなっているとの考え方ないし思いである。
このような原告らの考え方ないし思いは,個人の世界観,人生観に裏打ちされた評価と密接に関連するものであり,また,教師としての信念に基づくものであって,個人の人格形成の核心を形成する歴史認識・評価,天皇制に対する評価,戦争責任についての評価,戦前・戦後政治の評価,政治意識などというべきものであるから,それは,単なる好き嫌いを超えた個人の人格の中枢を形成する人生観・世界観の核心である。そうすると,このような原告らの考え方ないし思いは,憲法19条で保障される「思想・良心」を広くとらえる立場によればもちろんのこと,仮に憲法19条で保障される「思想・良心」を狭くとらえる立場によったとしても,憲法19条が保障する「思想・良心」であることは明らかである。
(イ) そして,憲法19条は,公権力が特定の思想や価値観ないし事物の是非・善悪の判断を正しいものとし,国民に対してそれに従うことを強制することや,それに反する思想や価値観などを禁止することを禁じているのみならず,沈黙の自由,すなわち,各人に対し,いかなる思想・良心を有しているか又は有していないかを外部的に告白又は表現するように強制することを禁止している。その故に,公権力は,各人の意思とは無関係に思想・良心について調査したり,何らかの方法・手段によって,直接・間接に思想・良心を推知したりすることも許されない。
イ(ア) しかるに,本件通達及び本件各職務命令は,原告らに対し,起立・斉唱・ピアノ伴奏という日の丸・君が代に対する一定の態度を強制するものであるところ,日の丸に向かって起立し,君が代を斉唱するということは,前記のとおり,日の丸・君が代に対する思いや評価と密接に結びつく行為であることは明らかであって,それ故に,原告らは,原告ら個人の人格の中枢を形成する人生観・世界観の核心をなす上記の日の丸・君が代に対する考え方や思いの上に存在する①教師として国家権力による特定思想の強要に加担できないとする信念,②個人としての戦争や侵略に対する歴史認識,立憲主義ないし民主主義の観点からの見解,宗教上の理由等といったものによって,卒業式等の国歌斉唱時に「指定された席で起立し国歌を斉唱すること」,「ピアノを伴奏すること」を強制されることは自己の思想・良心に反すると考えたのであり,原告らにとって,本件通達及び本件各職務命令のもとでの卒業式における国歌斉唱という場面は,自己の思想・良心の領域が侵害されると感じる場面であり,上記ア(ア)のとおり憲法19条によって保護される「思想・良心」が侵害されるものである。そこで,原告らは,その自己の思想・良心を保護・防衛するため,起立・斉唱・ピアノ伴奏を命じる職務命令に従うことができず,また従わず,本件不起立等という選択をしたのである。
ここで,原告らのとった本件職務命令に対する拒否行為は,君が代斉唱の直前に着席してその斉唱時の数十秒の間その場で静かに着席しているだけであり,決して他人の人権を侵害するような態様のものではないし,儀式が物理的に妨害され,儀式運営に重大な支障をもたらすこともないから,本件不起立等は,その思想・良心を侵害する職務命令に対する拒否行為であり,憲法19条が保障する思想・良心の防衛的・受動的な外部的表出である。
(イ) また,掲揚された日の丸に向かって起立するか否か,君が代を斉唱するか否か,ピアノ伴奏をするか否かは,個人が天皇制や国家神道・軍国主義,ナショナリズム,国のあり方などをどう評価し,どう受け止めるかという,個人の政治的価値観・世界観・国家観などといった特定の思想・良心とのつながりが明らかに推知される性格のものである。よって,起立・斉唱・ピアノ伴奏が強制されたときに,上記ア(ア),イ(ア)の理由によりそれを拒否することによって,日の丸・君が代そのもの,あるいは学校現場におけるそれらの強制に対して否定的評価をしているという特定の思想・良心が推知される。本件通達及び本件各職務命令は,前述の意味で,特定の思想の表明を迫ることであり,上記ア(イ)に述べた憲法19条の保障する思想・良心の沈黙の自由を侵害するものである。そして,仮に我が国の国旗・国歌が日の丸・君が代でなかったとしても,国旗・国歌に対する起立・斉唱・ピアノ伴奏を命じる職務命令が,自らの所属する国家に対し,どのような思いを持ち,どのように向き合うかという個人の人格の根源をなす思想・良心の自由についての侵害となることには変わりない。
(ウ) これを要するに,原告らに対する本件各処分は,原告らが卒業式等の国歌斉唱時に,職務命令に従って起立・斉唱・ピアノ伴奏をしなかったことを理由としているところ,本件不起立等は,憲法上保障された原告らの「思想・良心」の外部的表出である以上,それを理由に懲戒処分という不利益処分を科すことは,原告らの一定の「思想・良心」に基づいて不利益処分を科していることに他ならない。
ウ 以上によれば,本件通達及び本件各職務命令は,原告らの思想・良心の自由(憲法19条)を侵害する違憲・無効なものであり,本件各職務命令違反を理由とする本件各処分も違憲・無効である。
(被告の主張)
ア 憲法19条が保障する思想・良心とは,世界観,人生観などの個人の内面的な精神活動を指すものであり,事物の是非,善悪の判断などは含まない。そして,憲法19条が思想・良心の自由を侵してはならないとする意味は,国民がいかなる世界観,人生観を持とうとも,それが内心の領域にとどまる限りは絶対的に自由であり,特定の思想を内心に抱くこと自体を禁止することができないということを意味するほか,国家権力が思想の露顕を強制することは許されず,人の内心を強制的に告白させることはできないという,思想についての沈黙の自由を保障するものである。
この点,原告らは,国歌斉唱時に起立しない,ピアノ伴奏をしないという信念が,その根底にある原告らの思想・良心や歴史観・教育観とは別に,憲法19条の思想・良心として保護される旨主張するが,それらは思想・良心の核心部分とは解されないから,憲法19条にいう思想・良心には該当しないというべきである。
イ また,本件のように,個人の思想・良心が内部にとどまらず,外部に行動となって現れたときは,そのような外部的行為の規制の問題は,憲法19条が保障する思想・良心の自由の問題ではない。外部的行為が人の内心領域の精神活動と密接な関連を有することは否定できないが,外部的行為を制約することが人の人格の核心を形成する世界観,人生観を持つこと自体を禁止することにはならないから,上記規制は,思想・良心の自由を制約するものではない。したがって,法律が一定の作為・不作為を命じるときにそれに服しないことは,内心にとどまらない外部的な行動となるのであり,思想・良心の自由固有の問題ではない。
本件各職務命令は,卒業式等において,児童・生徒に国旗・国歌に対する正しい認識を持たせ,これらを尊重する態度を育てるために,教職員に対し,起立斉唱等を命じるというものであり,敬礼などの特別な行為を求めているわけではない。そして,国歌斉唱時に,職務命令に従って起立・斉唱・ピアノ伴奏をすることは,原告らにとっては,原告らの主張する歴史観ないし世界観に基づく一つの選択ではあろうが,一般的,客観的には,卒業式等の式典における慣例上の儀礼的所作としての性質を有するものであり,かつ,そのような所作として外部からも認識されるものというべきであって,原告らの主張する歴史観ないし世界観と不可分に結び付くものということはできないから,国歌斉唱時に起立・斉唱・ピアノ伴奏をするよう命じること自体は,一定の外部的行為を命じるにとどまるものであって,原告らの内心における精神活動を否定したり,その思想・良心に反する精神的活動を強制したりするものではないし,いかなる思想を抱いているかを露顕することを強制するものでもない。特に,本件各職務命令は,公務員である教職員の原告らに対し,学校行事に際し,法令に基づく職務命令として,国歌斉唱時の起立・斉唱・ピアノ伴奏を命じたものであるから,これは教職員にとって通常想定され期待される行為を求めるものであって,特定の思想の表明を迫るものと評価することはできないものである。
ウ 原告らの本件不起立等について,仮に思想・良心の自由の保障が及ぶかどうかが問題になるとしても,本件不起立等は外部的行為である以上,公共の福祉による制約を受けるというべきであるところ,本件各職務命令は公共の福祉による制約として憲法19条に違反するものではない。
すなわち,原告らは,全体の奉仕者である地方公務員であり(憲法15条2項),公教育を行うという公共の利益のために勤務し,かつ,職務の遂行に当たっては,全力を挙げてこれに専念する義務がある。原告らの思想・良心の自由は,公共の福祉の見地から職務の公共性に由来する内在的制約を受け,原告らが本件各職務命令を受け,起立斉唱等を行う義務を負うことにより,これが制約されるとしても,原告らにおいて受忍すべきものであるところ,本件各職務命令は,国旗国歌条項に基づき,卒業式等における国旗・国歌の指導を適正に実施するために発せられたものであり,敬礼など特別の行為を求めるものではない。原告らは,本件各職務命令を受けたことにより,国旗・国歌についての指導の一環として国歌斉唱等をすべき義務を負う。仮に,これにより原告らの思想・良心の自由が制約される点があったとしても,それは自らの自由意思によって教育公務員となった原告らにとってやむを得ない制限である。そして,本件各処分は,本件各職務命令に違反したことを理由とするものであり,原告らがその内心に国歌斉唱等をしないとする思想,信条等を有していることを理由とするものではないから,本件各処分が原告らの思想・良心の自由を侵害することになるものではない。
なお,原告らの本件不起立等は,式典が滞りなく終了しているという結果から見れば,一見したところ,格別な妨害の事実がなかったようにも見えるが,それは,単に物理的な妨害行為がなかったというだけにすぎない。原告らは,本件不起立等によって教職員としてなすべき児童・生徒に対する国歌斉唱に関する指導を行わなかったのであるから,児童・生徒が学校教育法等の法規や学習指導要領に基づいた教育,指導を受けられなかったという意味で,児童・生徒の教育を受ける権利を侵害したものであるし,職務命令違反,更には信用失墜行為という服務事故を発生させたことにより,公務員の服務上の規律を害することとなったものである。
(2)  本件通達及び本件各職務命令の憲法20条違反の有無
(原告らの主張)
ア 原告らのうちには,キリスト教を信仰する原告X27及び同X49ら宗教信仰者が複数おり,これらの者については,本件不起立等の理由として各自のキリスト教の信仰の存在がある。
イ 憲法20条に定める信教の自由には,①信仰の自由,②宗教的行為の自由,③宗教的結社の自由が含まれるところ,信仰の自由は,憲法19条が保障する思想・良心の自由の宗教的側面であり,その保障の効果も,憲法19条と同様に絶対的に保障されるものである。そして,①の信仰の自由の保障は,個人の信仰の自由を保障するために不可欠な限りにおいて,内心における信仰の一定の外部的表出をもその保障の対象として含むものと解すべきである。例えば,江戸時代におけるキリシタンに対する踏み絵の如く,外部からの命令,要求,勧誘,奨励などの一定の働きかけによって,自己の信仰が侵害されようとしている場合に,その信仰を保護・防衛するために,外部からのそうした作用・働きかけに対し,防衛的・受動的に取る拒否的行為は,自己の信仰の保障に不可欠な,信仰の外部的表出として憲法20条の保障対象となる。
ウ 日の丸・君が代は,戦前及び戦中において,国家神道と強く結び付いた神的,宗教的存在としての天皇崇拝のシンボルであったのであり,皇国思想及び軍国主義思想の精神的支柱として用いられたことは,歴史的事実である。キリスト教を信仰する原告らにおいては,日の丸に向かって起立し,君が代を斉唱することを強制されることは,国旗という形あるもの,すなわち偶像にひれ伏し仕える行為を強制されることにほかならず,それは自らの信仰で禁じられている偶像崇拝を強制され,また,唯一の主であるイエス・キリスト以外の「君」を讃えることを強制されることとなる。これは,信仰上禁じられている行為を強制されるという点において,宗教上の行為の自由(自らの信仰に反する宗教上の行為を行わない自由)を侵害するものであり,また,「君」を讃えることを強制されることは,キリスト教の信仰の核心部分を否定されるという点において,信仰の自由(特定の宗教の信仰を否定されない自由)を侵害するものである。日本のキリスト教界は,戦前,軍部や政府の圧力の前に屈服し,神社参拝の要請を行うなど,戦時体制に貢献した歴史があり,その過ちに対する悔悟と再び過ちを繰り返すことは許されないという思いが特別に強く,天皇崇拝及び国家神道のシンボルというべき日の丸に向かって起立し,君が代を斉唱することを強制されることによる苦痛は非常に大きい。以上のとおり,キリスト教を信仰する原告らは,本件通達及び本件各職務命令により起立斉唱等を強制されることによって,キリスト教が禁じている偶像崇拝を強制され,又は天皇を讃えることを強制されることになるのであるから,本件通達及び本件各職務命令並びにその違反に対して行われた本件各処分は,これらの原告の信仰の自由のみならず,宗教的行為の自由をも侵害するものである。
エ これに対し,被告は,日の丸・君が代は,国旗国歌法によって国旗・国歌であることが定められたのであり,それ自体宗教的意味合いを持つものではないと主張する。また,キリスト教信者である原告らのように日の丸・君が代を天皇崇拝のシンボルであると解釈する者がいたとしても,日本国憲法の下では,天皇は日本国及び日本国民の統合の象徴と定められているのであるから,そのような解釈は一般的なものではないとする主張もあり得る。
しかしながら,前述のとおり,日の丸・君が代が国家神道と結び付いて天皇崇拝のシンボルとして,また,皇国思想や軍国主義思想の精神的支柱として利用されたことは歴史的事実であるし,日の丸・君が代に対する考え方は個人の判断に委ねられるべき世界観や歴史観であり,日の丸・君が代が意味するものは公権力によって決められるものでもなく,憲法上の人権保障の問題である以上,個人の有する日の丸・君が代に対する考え方は尊重されなければならない。すなわち,憲法20条の人権保障を議論する場面において,日の丸・君が代についてのキリスト教信者の解釈が,国民ないし社会において一般的なものであるかどうかは問題ではない。現に日の丸・君が代について,過去の歴史や自己の信仰に照らして「天皇崇拝のシンボル」としてしか解釈し得ない原告らがいる以上は,かかるキリスト教信者である原告らの信仰に基づく解釈は,たとえそれが時の政府や与党の解釈と異なるものであっても,むしろ異なるからこそ,憲法上,尊重されなければならないのであり,それが憲法上の人権保障ということの意味である。
(被告の主張)
ア 日の丸・君が代は,国旗国歌法によって,日本の国旗・国歌と定められたものであり,それ自体,宗教的な意味合いを持つものではない。なお,国旗・国歌は,国民統合の象徴の役割を持つものであり,国旗・国歌を取り巻く政治状況や文化的環境などから,過去に日の丸・君が代が皇国思想や軍国主義思想に利用されたことがあったとしても,また,これを理由として,日の丸・君が代に対して嫌悪の感情を抱く者がいたとしても,日の丸・君が代が,日本国憲法下の議会制民主主義の過程を経て国旗・国歌として定められたということは,日の丸・君が代に憲法が掲げる平和主義,国民主義の理念の象徴としての役割を期待しているということであり,現在においては,原告らが主張するような天皇崇拝等の意味合いは有していない。
イ 卒業式等の儀式的行事における起立斉唱は,出席する教職員にとって通常想定される卒業式等における儀式的所作であるから,宗教上の行為としての意味を持つものではない。本件各職務命令は,一定の外部的行為を命ずるというものであり,原告らの内心における精神的活動である信教の自由を否定し,信教の自由に反する精神的活動を強制するものでもないし,いかなる信仰を抱いているかを露顕させることを強制するものでもない。
ウ 原告らにおいても,個人として信教の自由は保障されている。しかしながら,原告らは,公務員として全体の奉仕者たる地位にあり,その職務内容が公教育を行うという公共性を有するものである以上,原告らが個人的な宗教上の理由から,国旗・国歌の指導という教育を行うことを拒否することは許されない。憲法20条の保障する信教の自由は,内心の信仰にとどまる限り,絶対不可侵のものといえるが,それが宗教的行為として積極的又は消極的な形で外部に表明され,法令に基づく規制や社会的規範と衝突する場合には,一定の制約を免れない。教職員は,職務命令として起立斉唱を命じられた場合,仮に,信教の自由の問題が生じるとしても,教職員において受忍すべき範囲内の制約であるというべきである。
(3)  本件通達及び本件各職務命令の教師の専門職上の自由の侵害による憲法13条,23条,26条違反の有無
(原告らの主張)
ア 子どもの成長,発達のためには,憲法13条が保障する幸福追求権を基礎として,教育を受ける権利(憲法26条)が保障されなければならず,子どもの学校教育は,教師と子どもの直接の人格的接触を通じて行われるものであり,教師と子どもの両当事者の人間としての尊厳を出発点に,教師の側の自らの存在をかけた教育上の専門的判断に依拠して行われるのであり,そのような専門的判断に依拠した教育が行われるには,教師の主体性及びその発露である創意工夫を確保すべく教育の場の自由を確保することが不可欠である。そのためには,教育の自主性,自立性(憲法23条)が保障されなければならないのであり,子どもに伝えられるべき真理・真実に政治権力が介入することは許されない。たとえ,それが真理・真実であろうとも,画一的に強制されるならば,それは教育的価値に反するものになるからである。
イ そして,国旗・国歌については多様な考え方があり,多様性を認め合う子どもたちを育てるためには,教師の専門的判断が必要であるほか,卒業式等の内容は,各学校単位で,そこで学ぶ子どもたちや地域の実情に見合った創意工夫のもとに決定する必要があり,特に,養護学校等においては,各学校の実情や創意工夫を踏まえて,卒業式等を壇上方式で行うのかフロア方式で行うのかを決めるべきであり,卒業式等の最中の子どもたちの体や心の動きに常に敏感に対応するために,教師の専門的判断が必要である。また,国旗・国歌を教える際にも,子どもたちの発達段階にふさわしい教育方法について,教師の専門的判断が必要である。このように,卒業式等の内容を決めるに当たっては,教師の専門的判断が必要である。
また,学習指導要領は,「各学校においては,(中略)生徒の人間として調和のとれた育成を目指し,地域や学校の実態,課程や学科の特色,生徒の心身の発達段階及び特性等を十分考慮して,適切な教育課程を編成するものとする。」としており,教育課程の編成権限は各学校が有するものとしている。そして,教育課程は,児童(生徒)の教育をつかさどる教諭(学校教育法51条,28条6項)が,教育条理によって認められる職員会議における集団的討議を経て,全校的に決定されるべきものである。
したがって,都教委及び本件各校長は,国旗国歌条項を根拠として,教育課程の一環である卒業式等の実施方法を一方的に決定,強制することはできない。
しかるに,都教委及び本件各校長は,学校現場の教師及び教師集団の意見を卒業式等の内容に反映させることを一切認めず,各学校の教師の関与も一切させずに,卒業式等の実施方法を一方的に決定し,これを強制する内容の本件通達を発出し,本件各校長をしてその内容を実行させる本件各職務命令を発令させ,その内容どおりの卒業式等の実施を強制した。
ウ 以上によれば,本件通達及び本件各職務命令は,子どもの学ぶ権利を充足するために不可欠なプロセスとして憲法及び教育基本法上保障されている教師集団の各学校単位での創意工夫とその実情に応じた創造的,弾力的な教育内容の決定の余地を完全に奪うものであり,教師の専門職上の自由を侵害するものとして,憲法13条,23条,26条に違反する違憲無効なものである。
(被告の主張)
ア 憲法26条,13条は,教師の個人的人権を保障しているものではなく,子どもが適切な教育を受ける権利を保障しているものである。また,憲法23条は,学校において子どもの教育の任に当たる教師が教育の自由を有し,公権力による支配,介入を受けないで自由に子どもの教育内容を決定することができることを保障したものではない。教師が職務として教育活動を行うのは権限としてであって,個人的権利として行うのではなく,普通教育の場において,教師に教育の内容及び方法について一定範囲の裁量権が認められるとしても,それは,子どもに適切な教育を受ける権利を保障していることの反射的効果であって,教師個人の人権として保障されているものではない。
イ 卒業式等の儀式的行事は,その意義を踏まえて,学校という教育組織の中で法令に基づく意思決定により,統一的に実施される必要があり,その内容及び方法を個々の教師が決定できるものではない。なお,教育課程の編成に係る権限は,学校教育法28条,40条,51条,76条に基づき「校務」をつかさどる権限を有する校長及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)23条5号に基づき,「学校の教育課程に関すること」を管理,執行する権限を有する学校設置団体の教育委員会にある。
そして,本件通達は,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施を適正にするために発出されたものである。なお,本件通達は,卒業式等の運営全般に関して発出されたものではなく,本件通達が記載していない内容については学校現場における創意工夫や裁量の余地は残されている。
ウ 学校現場の教師に教育の専門家として一定の裁量権が認められるとしても,全てが教師の裁量に委ねられるものではない。養護学校等の特殊性から教師の専門的判断が必要となる場面があるとしても,その場における教育内容の全てが教師の専門的な判断に委ねられるものでもない。教育の内容は,教育の機会均等と全国的な一定水準を確保するために学習指導要領に定められており,教師は,学習指導要領の内容に従って子どもたちに教育を行う責務がある。
エ 国歌斉唱時の起立斉唱等を命ずる職務命令を受けた教職員が不起立等の行為に及ぶということは,国旗・国歌の指導を行わないということであるから,それは教育的目的を阻害するものであり,ひいては,国旗・国歌の指導という教育を受ける子どもの権利を侵害するものである。
オ 以上によれば,本件通達及び本件各職務命令が,教師の専門職上の自由(憲法13条,23条,26条)を侵害する旨の原告らの主張には理由がない。
(4)  本件通達及び本件各職務命令の国際条約違反の有無
(原告らの主張)
憲法は国際協調主義の立場を取ったうえ,憲法98条2項により条約の誠実な遵守を要求していることにかんがみ,自動執行力のある条約は,国内に適用され,国内法令に優位する効力が与えられると解されるところ,本件通達及び本件各職務命令は,前記(1)及び(2)の原告らの主張のとおり,原告らの思想・良心の自由及び信教の自由を侵害するものであり,これらの侵害行為は,全ての者についての思想・良心及び信教の自由に係る権利を定める市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和57年条約第7号。以下「自由権規約」という。)18条に違反する。特に国際連合の自由権規約委員会は,平成8年4月,「公立学校に通学する条件として,良心的拒否にもかかわらず,国歌を歌い国旗に敬礼することを求めることは,不合理な要求であり,自由権規約18条及び24条に相容れないと思われる。」という所見(view)を示しており,国歌を歌い国旗に向かって敬礼する行為の強制が規約18条に抵触することを既に明らかにしていたところ,平成23年7月,自由権規約19条の有権的解釈を示す一般的意見(general comment)の改訂に当たり,一般的意見34において,「旗や象徴に敬意を払わないこと」に対し,法令等で不利益を課すことへの懸念を表明したのであり,本件通達及び本件各職務命令が国際的な判断基準に反するものであることは明らかである。
また,前記(3)及び後記(5)の原告らの主張のとおり,児童の権利に関する条約(平成8年条約第2号)に定める児童の意見表明権(12条),児童の表現の自由(13条1項),児童の思想・良心及び宗教の自由(14条1項),教育への権利(28条,29条)を侵害するもので,これらの条項に違反し無効である。なお,被告は,児童の権利に関する条約に定める児童の諸権利が子どもを享有主体としているのに対し,本件通達は本件各校長に対し,本件各職務命令は原告らに対し発出されている点で,そもそも同条約違反にはならないと主張するが,原告らが問題としているのは,国旗・国歌に対する起立斉唱等を教職員に強制する結果として,事実上侵害される子どもの人権であり,そのような実態なのであるから,被告の反論は反論たり得ていない。
さらに,昭和41年のILO・ユネスコの教員の地位に関する勧告には,教育は人権及び基本的自由に対する深い尊敬の念を植え付けるものとしているのであって,人権及び基本的自由の根幹ともいうべき内心の自由は,教育の全課程において,それが深い尊敬の念を持たれるべきものであることが生徒らに植え付けられなければならない。しかるに,本件の如く,学校の重要な行事である卒業式等で,生徒らが,教師が国旗・国歌に対する起立斉唱を強制されている姿を間近に見,教師自身も事実上起立斉唱を強制されているという事態は,およそこの勧告による要請内容と懸け離れた事態であり,そのうえ,原告らが後記(14)イ(イ)及び(ウ)において主張するように被告が教師等に生徒に内心の自由を説明することすら禁じているということは,勧告に正面から抵触するものである。
(被告の主張)
本件通達及び本件各職務命令が思想・良心の自由及び信教の自由を侵害するものではないことは,前記(1)及び(2)の被告の主張のとおりであり,自由権規約18条違反をいう原告らの主張には理由がない。
また,本件通達は本件各校長に対し,本件各職務命令は教師(教諭)に対し発出されたものであり,児童・生徒に対して発出されたものではないから,原告らの主張は,原告らの権利・利益を保護する趣旨で設けられていない法令(児童の権利に関する条約)を根拠に違法を主張している点において,「自己の法律上の利益に関係のない違法」を主張するといわざるを得ないもので,主張自体失当であるし(行訴法10条1項),実体的にみても,本件通達及び本件各職務命令は子どもに対する強制の要素を含むものでも,国歌斉唱時における子どもの不起立を理由に子どもに不利益な処分を行うものでもない点からしても,原告らの主張はそもそも主張自体失当といわなければならない。しかも,生徒に対する教育上の指導として行われる国旗・国歌の指導は,当該指導に従わない生徒に対して格別の不利益な措置を予定するものではなく,生徒の思想・良心及び宗教の自由を侵害することはないし,国旗・国歌の指導が一方的な理論や観念を生徒に教え込むものとはいえず,入学式・卒業式等における各校の裁量,工夫を本件通達が禁止するものではないから,原告らの国際条約違反の主張は理由がない。
さらに,原告らが主張するILO・ユネスコの教員の地位に関する勧告は,飽くまでも勧告であり,条約のような法的効力を有するものではないし,その内容も本件通達に相対立するものではない。
(5)  国家シンボルの強制そのものの違憲性の有無
(原告らの主張)
国旗・国歌には,国家という一元的権力の下にその所属する国民を精神的に結び付ける統合機能があり,かかる統合機能にかんがみれば,公権力が国民に対して国旗・国歌に対する忠誠・尊重等の特定の行為を義務付けるということは,国家に対する特定の態度や行為を強制するということになり,ひいてはその態度や行為の前提となる思想を強制する意味を持つ。
個人が自らの所属する国に対してどのような思いを持ち,どのような態度をとるかは,まさに自らの存在と不可分に関わる問題であり,個人の尊厳,根幹にかかわる非常に重要な問題であるから,個々の国民の判断にゆだねられるべき事項であり,個人の尊重(憲法13条)を謳う日本国憲法における基本的人権(憲法11条)の最たるものであるとともに,思想・信条の自由(憲法19条),表現の自由(憲法21条)としても保障されるものであって,国家がこれに介入することは許されない。したがって,公権力が,国家の象徴である国旗・国歌に対して特定の態度や行為を義務付けることは,憲法11条,13条,19条,21条の権利を侵害し,立憲主義(憲法前文,11条,97条)にも反して違憲となる。
この点,被告は,国旗掲揚・国歌奏楽の場面における起立・斉唱は国際的な慣習であり,一般的な社会常識であると主張するが,その主張には全く理由がない。式典を含む学校教育の場における国旗掲揚・国歌奏楽の際の起立・斉唱の義務付けは,中華人民共和国において見られるが,アメリカ合衆国,イギリス,フランス,ドイツ,イタリア,カナダ,ロシアのいずれの国にも見られない。かえって,カナダにおいては,地方学校委員会が学校の始業・終業の行事において国歌斉唱をすることにした場合でも,一定の場合には,国歌斉唱や出席を強制されない「良心条項」が教育法に規定されている。そして,我が国と人権保障に関して同様の価値体系を有するアメリカ合衆国の連邦最高裁判所の判決(West Virginia State Board of Education v.Barnette,319U.S.624(1943))は,国民の連邦憲法上の権利を保護するために,国旗・国歌関係の一定の行為の義務化ないし強制は禁止されるものとしている。被告の主張は,根拠のない誤った認識に立脚するものといえる。
したがって,公権力が国民に対し,国旗に正対して起立し,国歌を斉唱する,ピアノ伴奏をするという特定の行為を義務付けることは,国民に対し,国旗・国歌を尊重するとともに,それらが象徴する国家を尊重する旨の特定の態度を強制するということであるから,日本国憲法に反し許されない。前記の理は,義務付けの対象が公務員であるか否か,義務付けの根拠として法規が存在するか否かといった個別の事情によって左右されるものではない。
仮に,学習指導要領の国旗国歌条項が,教職員に対して式典における国旗の掲揚と国歌の斉唱の指導を義務付けているのであれば,国旗国歌条項は違憲であり,これに基づいてなされた本件通達やこれに基づく一連の指導,職務命令も違憲である。
(被告の主張)
入学式等における国旗・国歌の適正な指導の実施に係る本件通達及び本件各職務命令は,特定の思想を持つことを強制したり,これに反する思想を持つことを禁止したりするものではなく,特定の思想の有無について告白することを強要するものでもない。日の丸・君が代は日本国憲法下の議会制民主主義の過程を経て,法律上,国旗・国歌とされているところ,国際社会においても,その歴史的沿革がいかなるものであろうとも,各国の国旗・国歌は尊重されるべきであるとの共通の認識が存在しているのであって,国旗である日の丸,国歌である君が代を尊重する態度を育てるべく児童・生徒に指導することは普通教育において当然のことである。そして,それが一方的な一定の理論や観念を児童・生徒に教え込むことにはならないことは明らかであるから,原告らの主張は失当である。また,原告らは,原告らの主張と同様の見地に立っアメリカ合衆国連邦最高裁判所の判決が存在するとの指摘をしているが,同判決が違憲とした事案は,本件各職務命令によって原告らが求められた卒業式等において国旗に向かって起立し,国歌を斉唱するというものとは全く異なり,ウェストバージニア州教育委員会が,同州の公立学校の生徒に対し,学校の課程の中の儀式において,国旗への敬礼(右腕をしっかり伸ばし,掌を上に向けて挙げる行為)及び忠誠の誓約(「私は,アメリカ合衆国の国旗と,それを象徴する共和国,すなわち全ての人々に自由と正義をもたらす不可分一体の国家に対して忠誠を誓います。」という言葉の唱和)を義務付け,教員と生徒の全てが儀式に参加することを前提に,国旗敬礼等を拒否することに対しては不服従行為として退学処分,刑事処罰等の措置が科せられることを決議し,国旗敬礼を拒否した生徒が退学処分を受けたという事案であるから,彼我の憲法制定過程や法制度の差異を論ずるまでもなく,比較は意味をなさないことが明らかである。
仮に本件各職務命令により原告らに国歌斉唱時の起立・斉唱・ピアノ伴奏を求めることが,原告らの思想・良心の自由に関する間接的な制約となるとしても,国歌斉唱時の起立・斉唱・ピアノ伴奏を求めることは必要かつ合理的なものであって,それを介して生ずる間接的な制約も許容されることは既に前記(1)の被告の主張において述べたとおりである。
(6)  本件通達の憲法94条,地方自治法14条1項違反の有無
(原告らの主張)
ア 憲法94条は,「地方公共団体は,その財産を管理し,事務を処理し,及び行政を執行する権能を有し,法律の範囲内で条例を制定することができる。」と規定する。ここにいう条例には,狭義の条例のほか,長の制定する地方自治法上の規則(同法15条),特別の法律に基づき地方公共団体の委員会が制定する規則(同法138条の4第2項)等が含まれる。憲法94条を受けて,地方自治法14条1項は,「普通地方公共団体は,法令に反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し,条例を制定することができる。」と規定している。地方自治法2条2項の事務とは,「地域における事務その他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるもの」である。結局,条例は「法律の範囲内で」(憲法94条),国の「法令に違反しない限りにおいて」(地方自治法14条1項)認められる。そして,本件通達は,条例でなく,通達という形式で発出されたものであるが,仮に本件通達と同内容の条例を制定した場合にこれが違憲・違法になるのであれば,本件通達はなおさら違憲・無効となるはずのものである。
イ そこで,本件通達の内容が「法律の範囲内で」,国の「法令に違反しない限りにおいて」定められているかを検討するに,法律である国旗国歌法は,その立法経緯,目的,内容から見て,全国的に国旗を日章旗,国歌を君が代と定めることのみを目的とし,尊重義務を含め何らの義務も設けていないのであり,国民や教師・生徒に対してこれを強制しないとの趣旨に出た法律であることは明らかであるから,国旗国歌法が,それぞれの普通地方公共団体において,その地方の実情に応じて,別段の規制を施すことを容認する趣旨を有するとは到底考えられない。
また,学校教育法43条,20条,同法施行令57条の2,25条に基づく文部科学省告示として公示された学習指導要領に関して,その法的拘束力について仮に最高裁判所昭和43年(あ)第1614号同51年5月21日大法廷判決・刑集30巻5号615頁(以下「昭和51年大法廷判決」という。)に従い,これが教育における機会均等の確保と全国的な一定水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な基準にとどまる限度において法的拘束力を持つものとして取り扱うとしても,学習指導要領は,その国旗国歌条項において,前記前提となる事実(2)のとおり,「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」旨を規定するのみであり,本件通達が内包する実施指針が規定する「国旗は,式典会場の舞台壇上正面に掲揚」しなければならないとか,「式次第には,『国歌斉唱』と記載」しなければならない」とか,「国歌斉唱に当たっては,式典の司会者が『国歌斉唱』と発声し,起立を促す」,「教職員は,会場の指定された席で国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する」,「国歌斉唱は,ピアノ伴奏等により行なう」などという一律で画一的な方法や,処分をもってこれを強制すべき旨を規定するものではない。学習指導要領が「地域差,学校差を超えて全国的に共通なものとして教授されることが必要な最小限度の基準」として定められたものである以上,それぞれの普通地方公共団体において,その地方の実情に応じて,別段の規制を施すことを容認する趣旨とは考えられない。
したがって,本件通達は,内容面において地方公共団体の条例制定権を逸脱し,国旗国歌法との関係で「法律の範囲」を超え「法律に違反した」ものとなる。また,本件通達は,行政組織内部の規律にとどまり,法規の性質を持つものではないところ,これが学習指導要領の国旗国歌条項の解釈や運用方針を示達するために発せられたものであるとすれば,本件通達の前提となっている国旗国歌条項は,教師に強制しない範囲においてのみ大綱的基準としての法的拘束力を持つにすぎないと解すべきものであるから,本件通達はその解釈を誤った違法な通達となる。
ウ 以上によれば,本件通達は憲法94条に反して違憲であるとともに,地方自治法14条1項に反して違法である。
(被告の主張)
国旗国歌法は,国旗・国歌についての定義法であり,国旗掲揚,国歌斉唱を義務付けているものでない。しかしながら,昭和51年大法廷判決を始め,学習指導要領の全体について法規としての法的拘束力を認めているのが判例であるところ,前記前提となる事実(2)のとおり,学習指導要領は,儀式的行事について「学校生活に有意義な変化や折り目を付け,厳粛で清新な気分を味わい,新しい生活の展開への動機付けとなるような活動を行うこと。」と定め,また「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」と定めており,その内容に照らし,当該条項は大綱的基準としての法的拘束力を持つものである。すなわち,地教行法23条5号は,学校設置団体の教育委員会の権限として,その所管する学校の教育課程,学習指導,生徒指導などについての管理,執行権限を明記しており,必要な場合には,学校管理機関としての教育委員会が教育の内容及び方法についても学校に対し具体的な命令を発することができるものであるところ,本件通達(本件実施指針)の内容は,前述の学習指導要領の趣旨を達成するためという「許容された目的」のもとに,その目的に適した場所的環境や式の進行を定めるものであり,学習指導要領の趣旨に沿って入学式・卒業式等を実施する上で必要かつ合理的なものとして発せられているのであって,それは学校管理機関としての都教委がその権限を行使するものである。さらに,本件通達が発せられるに至ったのは,前記前提となる事実(3)のように,それまで都立学校において,国旗・国歌の指導に係る不適正というべき実態があり,これを踏まえて生徒に対する国旗・国歌の指導が適正に行われるよう,慣習,常識としての内容を含めて儀式的行事のあり方を明確に示す必要があったことから,都教委がその権限と責任において校長に対しその教育目標を達するために発出したものであり,適正な教育課程の実施について,その具体的なあり方を示したものである。
そして,学校の儀式的行事である卒業式等における国歌斉唱の際の起立斉唱行為は,一般的,客観的に見て式典における慣例上の儀礼的な所作としての性質を有するものであり,かつこのように外部から認識されるものであって,原告らの有する世界観を否定することと不可分に結びつくものとはいえず,指導する教員に係る何らかの権利の規制にかかわる問題でないことは明らかであるから,本件通達について,法律の規定と条例制定権の問題や,通達としての解釈の誤りをいう原告らの主張は,憲法94条への違反をいう点も含めて失当である。
(7)  学習指導要領の国旗国歌条項の法的拘束力の有無
(原告らの主張)
学習指導要領は,学校教育法を授権規定とし,同法施行規則を受任規定とする文部科学省告示であり,行政が定立した要領にすぎず,法的拘束力を有しないはずであるが,この点について,昭和51年大法廷判決は,学習指導要領の法的拘束力を全面的に否定してこそいないが,学習指導要領について,教育における機会均等の確保と全国的な一定水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な基準にとどまる限度においてのみ,遵守すべき基準として認められるとする一方,教師による創造的かつ弾力的な教育の余地や地方ごとの特殊性を反映した個別化の余地が十分に残されておらず,又は教師に対して一方的な一定の理論ないしは観念を教え込むことを強制するような点が含まれている場合には,必要かつ合理的な大綱的基準として是認できないとしている。このような昭和51年大法廷判決の論理に従うとしても,学習指導要領が上記のような強制の点を含むものであるときは,法律の授権の範囲を逸脱するものとして法的拘束力を持ち得ないことになる。しかるに,国旗国歌条項は,教育の内容や方法に直接にかかわるものであり,これを国旗・国歌を一律に強制するための根拠条項と解した場合,本来教育行政による干渉がより厳格に回避されるべき教育の内容や方法について,「教師による創造的かつ弾力的な教育の余地」や「地方ごとの特殊性を反映した個別化の余地」を残さないものとなるのであるから,その法的拘束力を認めることはできないことになる。また,国家の象徴である国旗・国歌に敬意を表明することや,国旗・国歌に肯定的な態度をとるべきことを強制することは,国家に対してすべからく肯定的な態度を示すべきであるとの一方的な理論ないし観念を生徒に教え込むことを強制するものともなる。したがって,国旗国歌条項は,必要かつ合理的と認められる大綱的な基準として是認できるものではないから,これを根拠として,本件通達及び本件各職務命令により各教員個人に対して国旗・国歌を強制することはできない。
加えて,国旗国歌条項の解釈に当たっては,国旗国歌法制定の趣旨等が参考にされるべきである。国旗国歌法に義務付け条項や尊重条項が入らなかったのは,国旗・国歌を日の丸・君が代とすることは確定するものの,国旗・国歌に対して国民がどのように考え,どのような行動をとるかは,基本的には個々人が自ら判断することであると政府・国会が考えたからにほかならない。政府は,国会において国旗国歌法の制定前後で教育現場の指導内容に何ら変更はないと答弁していたのであり,この答弁に現れている立法者意思を踏まえると,国旗・国歌についてより厳しい指導ないし責務を課すことは許されず,国旗国歌法は本件通達を正当化するものではない。また,国旗国歌法は,国民に対する一切の義務付けがないものとして国会で成立したのであるから,これよりも下位の法形式である学習指導要領の定めている国旗国歌条項によって国旗・国歌を国民,なかんずく教職員に義務付けることはできない。
(被告の主張)
ア 前記(6)の被告の主張において述べたとおり,昭和51年大法廷判決を始め,判例は,学習指導要領の全体について法規としての法的拘束力を認めている。学習指導要領が,教育の内容及び方法に関する国の介入であり,大綱的基準の範囲内にとどめられなければならないことは当然であるが,以下の点に照らせば,国旗国歌条項に法的拘束力があることは明らかである。
すなわち,国旗国歌条項は,日本人としての自覚を養い,国を愛する心を育てるとともに,生徒が将来,国際社会において尊敬され,信頼される日本人として成長していくためには,生徒に国旗・国歌に対する正しい認識を持たせ,それらを尊重する態度を育てることが重要であること,卒業式等は,学校生活に有意義な変化や折り目を付け,厳粛かつ清新な雰囲気の中で,新しい生活への展開への動機付けを行い,学校,社会,国家等の集団への所属感を深める上でよい機会となることから,このような卒業式等の意義を踏まえたうえで,卒業式等の式典において,国歌斉唱等を行うとの趣旨で設けられた規定である。このような趣旨で定められた国旗国歌条項は,教職員に対しても,儀式的行事における常識的,一般的な行為を求めるものにすぎず,一方的な理論ないし観念を生徒に教え込むことを強制するものではない。
また,国旗・国歌に関する定めは,その性質上,全国的にされることが望ましく,教育における機会均等の確保と全国的な一定の教育水準の維持という目的のために,国旗国歌条項を学習指導要領の一部として規定する必要性及び合理性がある。国旗国歌条項は,国旗・国歌について,具体的にどのような指導,教育をするかについてまでは定めておらず,国歌斉唱等の具体的方法等について指示するものではないから,その内容は,一義的なものではなく,大綱的基準にとどまっている。したがって,弾力的な教育の余地や地方ごとの特殊性を反映した個別化の余地が十分残されていないとはいえない。
イ 国旗国歌法は,日の丸・君が代を国旗・国歌と規定するものであり,国旗国歌法の制定によって教職員に新たな義務が課せられたわけではない。しかしながら,国旗・国歌の指導に際して職務命令を発することができないとか,当該職務命令違反に対して懲戒処分を行い得ないとする趣旨を含むものではなく,教職員は,関係法令や上司の職務上の命令に従って教育指導を行うべき職務上の責務を負い,各学校の教育課程の基準として,法規としての性質を有する学習指導要領の定めている国旗国歌条項に基づいて学習指導を実施するという職務上の責務を負っている。
(8)  本件通達及び本件各職務命令の教育基本法16条1項違反の有無
(原告らの主張)
ア 教育基本法16条は,教育の中立性を確保し,政治的社会的勢力,とりわけ教育行政により不当に教育活動が拘束されることのないようにすべく,教育は不当な支配に服することなく行われるべきことを規定しており,不当な支配であるかどうかについては,これを昭和51年大法廷判決に即して被告の教育行政についてみれば,①教師による創造的かつ弾力的な教育の余地や,地域や学校ごとの特殊性を反映して個別化の余地が十分に残されていること,②教育における機会均等の確保と全国ないし東京都全体における一定の水準維持という目的のため必要かつ合理的と認められる大綱的な基準にとどまるものであること,③教師に対し一方的な一定の理論ないし観念を生徒に教え込むことを強制するものではないことといった基準によって判断されるべきものである。そして,これらの要件を満たさない教育行政機関の通達,職務命令といった行為は,不当な支配として違法なものとなる。
イ しかるに,本件通達及び本件各職務命令は,卒業式等において国家シンボルに敬意を表する特定の具体的行為,すなわち起立斉唱等を教師に義務付けて,個人の尊厳よりも国家への統合を重視する愛国主義的又は全体主義的な教育を行うことを目的としており,それ自体許容され得るものではない。被告は,本件通達及び本件各職務命令の必要性及び合理性を,教育に関する地方自治の原則,学習指導要領の定めている国旗国歌条項の適正実施に求めているが,国旗・国歌は,国家のシンボルの問題であり,地方自治体の教育委員会が全国的一定水準としての国旗国歌条項よりも個別具体的な内容の指示を出す必要性は考えられないし,国旗国歌条項は,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施を求めるものであり,その実施方法まで指示するものではなく,東京都においては,平成13年以降,全ての都立学校の卒業式等において,国旗掲揚及び国歌斉唱が実施されていたことも考えれば,国旗国歌条項の適正実施は,本件通達を発出するための目的とはなり得ない。
仮に本件通達及び本件各職務命令の目的が国旗国歌条項の趣旨に沿ったものであるとして許容されるとしても,国旗国歌条項は,国旗掲揚及び国歌斉唱の具体的方法等を指示するものではなく,起立斉唱等の義務を教職員に負わせるものではないし,卒業式等は,単なる卒業証書授与式等ではなく,学習指導要領第4章「特別活動」において「学校行事」の中の「儀式的行事」として位置付けられる教育活動であり,学校ごとの創意工夫を生かすとともに,学校の実態や生徒の発達段階及び特性等を考慮したものでなければならないから,教育内容の第1次的裁量権は,子どもとの人格的接触を通じその発達段階や個性に応じて創造的教育活動を行う教師で構成される学校にあるところ,本件通達の具体的内容(本件実施指針)は,いずれも学校ないし校長の裁量権に属する事項についてのものであり,本件通達で指示する必要性及び合理性はない。
以上に照らせば,本件通達及び本件各職務命令は,許容される目的のために必要かつ合理的な介入であるとはいえない。
なお,公の儀式において起立斉唱により国家シンボルに敬意を表することが礼儀だと考えるのは,愛国の感情を重視する一方的な愛国主義的見解であり,本件通達及び本件各職務命令は,愛国の感情を重視する一方的な観念を子どもに教え込むことの強制に当たるものであり,許されない。この点,被告は,儀式的行事における国歌斉唱は起立して行うのが国際儀礼上の常識であって,我が国に限らず通例である旨主張するが,前記(5)において既に述べたように,そのような儀礼・常識は存在しない。
ウ 本件通達(本件実施指針)は,特別活動として一般教科以上に学校ごとの創意工夫が要請される卒業式等の実施について,学校ないし校長の裁量の余地を奪ったものであり,本件通達及びそれに基づく本件各職務命令は,創造的かつ弾力的な教育活動の余地や学校ごとの特殊性を反映した個別化の余地を十分に残したものとはなっておらず,大綱的基準の範囲にとどまらないものである。また,本件通達及びそれに基づく本件各職務命令は,教育内容が具体的なレベルまで事前に決定されており,これに反すると制裁を伴うという点で,強制の程度も最も強い。
そもそも,教育行政機関による教育の内容及び方法についての関与,介入について,昭和51年大法廷判決が,教育における機会均等の確保と全国的な一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な範囲にとどめられるべきものとした第一の理由は,子どもの教育は,教師と子どもとの間の直接の人格的接触を通じ,子どもの個性に応じて弾力的に行われなければならないから,教師の自由な創意と工夫の余地が求められるという本質的要請によるものであり,これは,国,地方を問わず,教育行政機関一般についてその介入を制限する根拠となっている。教育委員会による介入に関する「不当な支配」の審査基準が,国の場合よりも緩和される理由はない。
仮に,教育委員会が許容された目的の下,その目的達成のため必要,合理的なものであれば,教育の内容及び方法についても関与,介入できると解するとしても,本件通達及びそれに基づく本件各職務命令がこの場合に該当しないことは,前述の内容から明らかであるし,本件通達及びそれに基づく本件各職務命令は,創造的かつ弾力的な教育活動の余地や学校ごとの特殊性を反映した個別化の余地を奪い,教育活動に甚大な影響を与えるものである。
エ 以上によれば,本件通達は,教育基本法16条1項が禁止する「不当な支配」に当たり,無効である。
また,本件各校長は,本件通達を発出した都教委による強い指導を受け,その意に沿う内容で本件各職務命令を発したという本件の実態をみれば,本件通達どおりに卒業式等を実施するように職務命令を受けていたといえるのであり,本件各校長には本件各職務命令を発令しないという選択肢はなかったから,本件各職務命令も,本件通達と一体のものとして違法かつ無効である。仮に,本件各校長が各々の有する固有の権限により本件各職務命令を発出したものであっても,本件通達と同様に違憲・無効な内容のものであることに変わりはない。
(被告の主張)
ア 教育基本法16条1項は,教育が国民全体に対して直接に責任を負って行われるべきものであることを前提として,教育への「不当な支配」を禁止するが,この「不当な支配」とは,国民全体ではない一部の勢力(政党,官僚,政界,労働組合等)による介入をいうものである。そして,教育は国民全体に対して直接に責任を負って行われるべきものであるため,国民の意思と教育が直結し,国民の教育に対する意思が表明され,それが教育上に反映されるような組織として,それぞれの地方に固有の権限を有する教育委員会が設置されている。そして,各地方の実情に適応した教育を行わせるのが教育の目的及び本質に適合するとの観念(地方自治の原則)に基づき,公立学校の教育に関する権限は,地方公共団体の教育委員会に属するものとされている(地教行法23条,32条等)。
このような権限を付与されている教育委員会(都教委)は,子ども自身の利益の擁護のため,また,子どもの成長に対する地域社会,公共の利益と関心にこたえるため,必要かつ合理的と認められる範囲で,教育の内容及び方法に関して国に比してより具体的な基準を設定し,必要な場合には具体的な命令を発する権能を有し,その責務を負っている。したがって,教育委員会は,許容された目的の下,その目的達成のため必要かつ合理的なものであれば,教育の内容及び方法についても関与,介入できるのであり,本件通達及び都教委の一連の指導が教育基本法16条1項に違反するか否かはこの審査基準により判断されるべきである。
ところで,昭和51年大法廷判決は,国の教育行政機関が普通教育の内容及び方法について遵守すべき基準を設定する場合には,教育に関する地方自治の原則をも考慮しなければならないから,教育における機会均等の確保と全国的な一定の水準の確保という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的基準にとどめられるべきであるとした。これに対し,公立学校を設置する地方公共団体については,上記地方自治の原則のもとに,国が設定した大綱的基準の範囲で,より具体的かつ詳細な基準を設定することができ,またそれが要請されている。現に,昭和51年大法廷判決は,学校設置者たる地方公共団体の教育委員会は,学校を所管する行政機関として,その管理権に基づき,学校の教育課程の編成について基準を設定し,一般的な指示を与え,指導,助言を行うとともに,必要な場合には具体的な命令を発することもできると判示している。
地教行法23条5号は,学校の組織編制,教育課程,学習指導,生徒指導及び職業指導に関することを教育委員会の職務権限としており,教育委員会は,上記事項について管理し,執行することができると規定している。また,地教行法17条1項は,教育長は,教育委員会の指揮監督の下に,教育委員会の権限に属する全ての事務をつかさどると規定しており,教育長は,教育課程等に関わる事項に関して,校長に対し,通達等により個別具体的な職務の遂行について職務命令を発することができる。したがって,教育基本法16条1項が禁止する「不当な支配」と地教行法23条5号及び同法17条1項との理論的整合性の観点からすると,教育委員会がその権限の行使として発出する通達ないし職務命令について,これが大綱的基準にとどまるべきものと解することはできない。
イ 叙上のところを本件についてみるに,本件通達は,許容された目的の下になされた必要かつ合理的なものであり,教育基本法16条1項が禁止する「不当な支配」には該当しない。
すなわち,本件通達は,国旗・国歌に関しては,都立学校において学ぶ児童・生徒に国旗・国歌に対して正しい認識を持たせ,それらを尊重する態度を育てるという目的の下で,普通教育において指導すべき国旗・国歌に関する基礎的知識を指導するために,また,その他の事項に関しては,卒業式,入学式,周年行事等の学校行事(儀式的行事)を学習指導要領に則して適正に実施するために発せられたものであって,まさに学校管理機関としての都教委がその権限を行使する許容された目的の下に発せられたものである。なお,都教委は,地教行法23条5号により都立学校の教育課程等に関する権限(編制権限)を有しており,国旗国歌条項の具体化として,上記の学校行事における国旗・国歌の指導の内容及び方法を校長に指示できるのは当然のことである。
本件通達は,本件実施指針において,卒業式等の式典の実施方法を定めているが,その内容は,学習指導要領の内容に照らし,必要かつ合理的なものである。すなわち,卒業式等は,特別活動のうちの儀式的行事として実施されるものであるが,学習指導要領は,儀式的行事について,「学校生活に有意義な変化や折り目を付け,厳粛で清新な気分を味わい,新しい生活の発展への動機付けとなるような活動を行うこと。」と定め,その国旗国歌条項において,「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」と定めており,本件通達は,学習指導要領の上記規定に沿って卒業式等を実施する上で,必要かつ合理的なものである。本件実施指針のうち,「国歌斉唱に当たっては,式典の司会者が『国歌斉唱』と発声し,起立を促す。」,「式典会場においては,教職員は,会場の指定された席で国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する。」の2項目については,儀式的行事における国歌斉唱は起立して行うことが国際儀礼上の常識であって,我が国に限らず通例であり,教職員がそれに沿った行動をとるものとしても不合理なものではない。また,学校における教育活動のうち卒業式等の儀式的行事は,各クラス単位での授業とは異なり,学校全体として行うものであり,その意義からしても,その実施方法についても,全校的に統一性をもって整然と行われる必要がある教育活動である。上記各項目は,いずれも学習指導要領の内容,趣旨に沿ったものであり,都教委が,その判断に基づき,卒業式等の式典を厳粛かつ清新なものとし,併せて国旗・国歌の指導をするための方式を示したものとして,必要かつ合理的な範囲を超えたものとはいえない。また,都立学校の卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施状況は,実施率こそ100%となっていたが,校長が学習指導要領に沿って国旗・国歌の指導を含む適正な卒業式等の実施を教職員に指導ないし指示して実施しようとしてもそれができず,国歌斉唱時に職員が起立しない,三脚で国旗を掲揚して舞台の袖の見えないところに設置する,音楽科担当の教員がいるのに国歌のピアノ伴奏をしない,式次第に国歌斉唱と明記しない,国歌斉唱が終わってから教員が式場に入場するなど,卒業式等における国旗・国歌の適正な指導がなされていない状況が続いていた。都教委は,都立学校における国旗・国歌の指導に関してこのような不適切な実態があったことから,都立学校において国旗・国歌の指導が適正に行われるようにするため,本件通達を発出して儀式的行事の在り方を明確に示す必要があった。
ウ 本件通達は,卒業式等の儀式的行事に限ってその実施方法を示しているものにすぎず,年間を通じての国旗・国歌の指導について指示するものではなく,学校の日常的教育活動に大きく影響するものでもない。儀式的行事に限ってみても,本件通達は,本件実施指針の限度で指示するものであって,式典全体のうち国旗・国歌の指導及び会場設営に関してのみ指示するものであり,いつ国歌斉唱を行うかを始めとして,それ以外の式典の進行等は各学校の創意工夫に任されており,実際に各学校において様々な創意工夫がされている。その中で,卒業式等における起立斉唱は,国旗・国歌に関する国際的儀礼にも合致する常識的なものであり,その指導内容は,都立学校に学ぶ児童・生徒が多様であっても共通して学ぶべき事柄である。そもそも,国旗国歌法は,日の丸・君が代を国旗・国歌として定めており,国際社会においても,国旗・国歌は尊重されるべきとの共通の認識が存在しているところ,我が国だけでなく,他国の国旗・国歌も同様に尊重する態度を育てるべく児童・生徒に指導することは,普通教育において当然のことであるから,これが一方的な理論や観念を児童・生徒に教え込むものとはいえない。
エ 校長は,校務をつかさどり所属職員を監督する権限を有しており,教育課程の編成等全ての校務を決定し,これを各教職員に分掌させ,必要な指導を行い,職務命令を発することができる(地公法32条)。原告らの主張は,本件通達が教育基本法16条1項に違反するから,本件通達に基づく本件各職務命令も違法であるというが,本件各校長は,卒業式等を学習指導要領に則って適正に実施すべく,自らの権限と責任に基づき,本件各職務命令を発したのであるから,仮に本件通達や都教委の指導等が教育基本法16条1項に違反するものであったとしても,本件各職務命令は,手続的にも実体的にも違法となるものではない。なお,原告らは,本件通達により本件各校長が強制された状態で本件各職務命令を発出していると主張し,そのように認めた裁判例があるとするが,その判決は控訴審において取り消されており,その事実認定の中で,強制であることを認める判示はされていない。
(9)  本件通達及び本件各職務命令の平成19年6月27日法律第96号による改正前の学校教育法42条(同改正後の同法51条)違反の有無
(原告らの主張)
平成19年6月27日法律第96号による改正前の学校教育法42条3号は,同法41条の定める高等学校の目的を実現するための教育の目標として同条3号に「社会について,広く深い理解と健全な批判力を養い,個性の確立に努めること」を定めている。
しかるに,都教委は,本件通達及びそれに続く一連の指導において,生徒に対して従前,入学式,卒業式等の式典において行われていた「内心の自由」に関する説明について「教職員が入学式等の直前に,子ども(生徒)に対して内心の自由を説明することは,起立・斉唱するかどうかは子ども(生徒)の自由であるかのような指導をしているかの如く受け取られる可能性があり,このことは学習指導要領に基づく指導としては不適切である」との見解を示している。これは,都教委が「入学式,卒業式等の式典においては,本件通達に定めた通りの方法で国旗を掲揚し,本件通達に定めた通りの方法で国旗に向かって起立して国歌を斉唱すること」だけが唯一正しいものとして,これに対する健全な批判を許さないとするものである。
日の丸・君が代については,国民の間にさまざまな意見があるところであり,教育現場においても日の丸・君が代に関する多様な考え方の存在を認めることが,同法42条3号にいう「社会について,広く深い理解と健全な批判力を養い,個性の確立に努めること」に資することは論を俟たない。入学式,卒業式等の式典において,本件通達に定めた通りの方法で国旗に向かって起立し,国歌を斉唱することが唯一正しいあり方であり,これに対する批判に対しては懲戒処分をもって臨むことを明らかにした本件通達及びそれに続く一連の都教委の指導は,一方的な観念を生徒に教え込むものにほかならず,このような都教委の指導の下では生徒は「社会に対する,広く深い理解と健全な批判力」を養うことができない。
したがって,都教委による本件通達及びこれに続く一連の指導,そしてその一環として発令された本件各職務命令は,同法42条3号に定められている高等学校教育の目標に反するものであって,違法というべきである。
(被告の主張)
本件通達及びそれに続く都教委の指導は,入学式・卒業式等の式典における国旗・国歌の指導に限られており,年間を通じての国旗・国歌の指導について指示等するものではなく,「健全な批判力」の養成に反するものではない。しかも,原告ら指摘の平成19年6月27日法律第96号による改正前の学校教育法42条1号は,高等学校の教員の目標として「中学校における教育の成果をさらに発展拡充させて,国家及び社会の有為な形成者として必要な資質を養うこと。」を挙げ,同条3号も「社会について広く深い理解を養」うことを挙げている。入学式・卒業式等の式典における国旗・国歌の指導は,日本人としての自覚を養い,国を愛する心を育てるとともに,児童・生徒が将来,国際社会において尊敬され,信頼される日本人として成長していくために,国旗・国歌に対する正しい認識を持たせ,それを尊重する態度を育てるためであり,これは児童・生徒が学ぶべき普遍的・基礎的な事項であって,まさに「国家及び社会の有為な形成者として必要な資質を養うこと」,「社会について広く深い理解を養」うことに沿うものである。したがって,本件通達及びそれに続く一連の都教委の指導は,同条の定める高等学校教育の目標に適合し,何らこれに反するものではない。
(10)  本件通達の地方自治法14条2項,2条16項,2条2項違反の有無
(原告らの主張)
ア 地方自治法14条2項は,「普通地方公共団体は,義務を課し,又は権利を制限するには,法令に特別の定めがある場合を除くほか,条例によらなければならない。」と規定している。ところが,本件通達は,法令に定めがない場合に,条例にもよらずに,原告らに義務を課し,原告らの権利を制限するものである。したがって,本件通達は,地方自治法14条2項に違反するものである。
イ 地方公共団体は,法令に違反してその事務を処理してはならないものとされている(地方自治法2条16項)。しかるに,本件通達は,国旗国歌法にも学習指導要領の国旗国歌条項にも違反し,憲法94条,地方自治法14条1項,2項にも違反するものであるから,被告が法令に違反してその事務を処理したものとして,同法2条16項に違反する。
ウ 普通地方公共団体は,地方自治法2条2項により,地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理するとされているところ,同条8項は「この法律において「自治事務」とは,地方公共団体が処理する事務のうち,法定受託事務以外のものをいう。」と規定し,同条9項は「この法律において「法定受託事務」とは,次に掲げる事務をいう。」として,同項1号,2号において,「法律又はこれに基づく政令により都道府県,市町村又は特別区が処理することとされる事務」のうち「法律又は政令に特に定めるもの」を挙げる。国旗・国歌に関しては,国旗国歌法はもちろん,他の法律にも政令にも,都道府県等が処理する事務としたものはなく,これに関する特別の定めもないから,「法定受託事務」でないことは明らかであるし,国旗・国歌に関する事項は,国家の象徴に関する国家的規模の問題であり,住民自治にも団体自治にも関わりがないから,「自治事務」ともいえない。すなわち,本件通達は,法定受託事務でも自治事務でもない事項に関し,普通地方公共団体の一機関たる教育委員会が事務処理をしたものであり,地方自治法2条2項に反して違法である。
(被告の主張)
ア 本件通達に記載する学校の儀式的行事である卒業式等における国歌斉唱の際の起立斉唱行為は,一般的,客観的に見て式典における慣例上の儀礼的な所作としての性質を有するものであり,かつこのように外部から認識されるものであって,原告らの有する世界観を否定することと不可分に結びつくものとはいえないことから,人の権利の規制にかかわる問題でないことは明らかであり,本件通達は,地方自治法14条2項に違反するものとはいえない。
イ 本件通達は,地教行法に根拠を有する管理権限に基づいて,学習指導要領に規定された国旗国歌条項を具体化したものであり,法令に違反してその事務を処理したものではないから,地方自治法2条16項に違反するものとはいえない。
ウ 学習指導要領に規定された国旗国歌条項を具体化する本件通達は,自治事務に該当するものであり,地方自治法2条2項違反をいう原告らの主張は失当である。
(11)  本件不起立等の地公法32条,33条違反の有無
(原告らの主張)
ア 地公法32条は,「職員は,その職務を遂行するに当たって,法令,条例,地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い,且つ,上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。」と規定しているところ,同条において遵守を求められる職務命令は,憲法を最上位とする法体系の趣旨に適合する命令であることが前提とされており,かかる法体系の趣旨を逸脱する職務命令を発することは,そのこと自体が地公法32条前段に違反するものというべきである。
そして,同条後段に規定する職務命令は,職務命令の発令権限に基づいて発せられた適法なものでなければならないところ,学校における卒業式・入学式及び周年行事も,学習指導要領上「特別活動」として位置付けられている全校的教育活動であるから,授業と同様教師の主体性(専門職上の自由)が強く保障されるべきである。そこで,卒業式・入学式及び周年行事に関し,校長が,教師に対する職務命令権限を有するかを検討しなければならないが,学校教育法37条,62条は,教師と校長の権限の区分けを明確に行っており,同法37条4項,62条にいう校長の教職員に対する「監督」権限には,「教師の教育活動の内容にかかわる職務命令を出す権限」は含まれていない。そうすると,各教師の独立した教育権の行使である教育活動の内容に対して,校長が「助言指導」の域を超えて職務命令を発することは,そもそも「職務上の上司」でない者がその職務権限とは無関係に行ったもので,権限逸脱行為として許されず,本件のように入学式,卒業式及び周年行事に際し,校長が各教師に対し国歌斉唱時に起立すること等を職務命令として命じることは,それ自体が違法である。また,本件訴訟の原告中には,学校栄養士という一般行政職に属する者が含まれているが,そもそもかかる学校栄養士は,本件で問題となっている「特別活動」に関し,校長から生徒への指導を内容とする職務命令を受ける対象には含まれないと考えられることから,その意味でも上記職務命令は違法なものといえる。
一方,本件通達は,校長を名宛人としている点で,原告らを名宛人とする本件各職務命令とは異なる法的根拠を有する別個の行為であるが,形式的には,本件各職務命令を発すべき必要性の判断は本件各校長が有しているとしても,本件通達及びその後に都教委が行った指導により,校長においては事実上自己の裁量を働かせる余地がなく,本件各職務命令の発出を余儀なくされていたと評価できる。したがって,本件各職務命令の発出は,本件通達やその後の都教委が各校長に対して行った指導と一体のものといえ,実質的には本件各職務命令の違憲・違法性を判断するについて本件通達の違憲・違法性が影響を及ぼすと考えられる。この点,既述のとおり,本件通達は,子どもの学習権,意見表明権,教師の専門職上の自由,学校自治を侵害し,教育基本法16条1項の「不当な支配」に該当することは明らかであるのみならず,学校教育法所定の高等学校教育の目的・目標を逸脱しているほか,教師個人の思想及び良心の自由(憲法19条),信教の自由(憲法20条)を不当に侵害するものであり,さらに,児童の権利に関する条約や自由権規約に違反している。したがって,これら違憲・違法な通達に従って出された本件各職務命令自体も,違憲・違法なものとなる。
なお,裁判例は「重大かつ明白な瑕疵」がある場合には当該職務命令を無効とする旨の判断基準を採用しているところ,本件通達は明白に違憲・違法と評価され,本件各職務命令は本件通達に従いその内容を忠実に実現するべきものとして発せられていることから,本件各職務命令自体が明白に違憲・違法なものということができ,本件各職務命令に「重大かつ明白な瑕疵」が認められる。したがって,原告らには,本件各職務命令に対する服従義務(服務義務)は認められず,原告らの本件不起立等は地公法32条に違反するものではないから,同条を理由とする懲戒処分は許されない。
イ 地公法33条は,「職員は,その職の信用を傷つけ,又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。」として,いわゆる信用失墜行為の禁止を規定しているところ,本件不起立等は違法性が重大かつ明白な職務命令に対する不服従であり,卒業式等の学校行事を積極的に妨害したわけではなく,式自体の進行には何らの支障・混乱も生じさせていない。また,仮に一部の人が原告らの本件不起立等につき自己の価値観と異なる旨の感想を抱いたとしても,それをもって社会一般の公務に対する信用を毀損したと評価することはできない。むしろ,国民の多くは,学校の卒業式・入学式等において起立・斉唱するよう制裁を科してまで強制することは行き過ぎであると考えている。
以上によれば,原告らの本件不起立等は,同条の定める信用失墜行為に該当せず,同条に違反するものではない。
(被告の主張)
ア 原告らは,本件各校長による本件各職務命令が地公法32条に違背し,違法であると主張する。しかしながら,学校教育法62条,82条,37条4項は,高等学校及び特別支援学校における校務はその校長がつかさどるものとしており,そこにいう「校務」とは,教諭のつかさどる教育を含む学校の果たすべき仕事全体すなわち学校教育の事業を遂行するため必要とする一切の事務を指すものである。そして上記校務には,学校教育法施行規則等を受けて制定された学習指導要領に基づく教育課程の計画及び実施についての責務と権限も当然に含まれるものである。卒業式等において生徒,教職員ともに起立のうえ国歌斉唱を行なうことはまさに上記学習指導要領の予定するところであり,教職員は「教育をつかさどる者」(同法37条10項,62条,82条)として児童・生徒に対し,国旗掲揚,国歌斉唱に関する指導を行う義務を負う。換言すれば,校長が校務の一環として入学式・卒業式等の具体的実施内容を決定し,その実施のための諸活動を各教職員に分掌させて,職務命令を発すれば,個々の教職員は当然に当該職務命令に従って職務を遂行しなければならない。また,行政職である学校栄養士についても,職務として学校の儀式的行事に参加する場合には,校長がそのつかさどる校務の一部として,事務職員に対しても職務命令を発することができる。この点を否定する原告らの主張は独自の見解というほかない。
なお,原告らは本件通達が違法であるから,これに基づく本件各校長の発した本件各職務命令も違法となると主張するが,本件通達が違法でないことは既述のとおりであるし,本件各職務命令は,本件各校長が自らの権限により本件通達の内容に沿った入学式・卒業式等の実施内容を決定し,これを各教職員に分掌させ,その実施に必要な職務命令を発したものであり,法律的に見ればそれは本件各校長が自らの判断と権限に基づき実施に関する職務命令を発したということに帰着する以上,本件通達の違法の有無にかかわらず,本件各職務命令に違法はない。また,そもそも職務命令は重大かつ明白な違法がない限り,例え何らかの瑕疵のある命令であっても職員を拘束し,これに違反すれば懲戒処分の対象となるものである。本件の場合,既に述べたとおり都教委は必要な場合には教育の内容及び方法についても命令することができ,本件通達の内容も法規たる学習指導要領に沿う合理的なものであり,また校長も既に述べたとおり教職員に対し教育の内容及び方法について命令する権限を有し,本件で問題とされている入学式・卒業式等の式典における国歌斉唱時に起立して国歌を斉唱すること,ピアノ伴奏をすることの職務命令はその内容において相当なものであるから,重大かつ明白な違法は認められない。よって,本件各職務命令は地公法32条に違反するものではない。
イ 原告らは,本件不起立等が「消極的なものにすぎず,式自体の進行に何らの支障,混乱も生じさせていない」等として,地公法33条の信用失墜行為に該当しないと主張するが,同条が,その職の信用を傷つけ,職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならないと規定する趣旨は,公務員が全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき地位にあり,そこから公務員に高度の行為規範を求め,それを法規範として定めたことにある。そのことからすれば,職の信用を傷つけ,職全体の不名誉となる行為については,その行為自体を社会通念に照らして判断すれば足り,具体的に信用が失墜した結果が生じることは要件ではない。しかも,本件において原告らがなした非違行為は,校長の教育課程にかかわる職務命令に違反するものであり,当該違反行為が入学式,卒業式及び周年行事という重要な学校行事において生徒,保護者,来賓の面前で行われ,生徒や父兄に動揺を与えたものであり,生徒等に動揺を与えること自体,同条への該当性を裏付ける重要な事象というべきであり,本件原告らの行為が教育公務員の職に対する信用を傷つける行為というのを妨げないから,同条違反に該当することは明らかである。
以上によれば,本件不起立等が同条違反に該当することは明らかである。
(12)  本件各処分の手続的違法の有無
(原告らの主張)
行政庁がその所属公務員に対して懲戒処分を行うに当たり,当該手続自体の適正・公正が確保されなければならないことは,憲法31条の趣旨に照らして当然のことである。この点,地公法27条1項は,「すべて職員の分限及び懲戒については,公正でなければならない。」と規定しているが,その中には手続的公正も含まれると解すべきである。確かに行政手続法3条1項9号は,「公務員に対してその職務又は身分に関してされる処分」について,同法第2章から第4章までの規定の適用を除外しているが,その理由は地方自治体においては,各地の実情に応じて条例や地公法等の関連法規により手続的公正を担保することを期待できるからであり,地方公務員に対する懲戒処分についても,行政手続の公正が確保されるべきことは当然である。特に本件では,教育という本来公権力による強制に馴染まない場での教職員及び生徒・保護者の内心の自由と密接に関連する問題についての懲戒処分であることからすれば,通常の行政手続と比べ,一層手続的な公正・適正と透明性が確保されることが要求される。
これを本件についてみるに,原告らの多くは,事情聴取に当たって適正手続の保障と自己の権利擁護のため弁護士の立会いを求めたり,内容の正確さを期すためにメモや録音を申し出たが,いずれも拒否され,中には,呼出しの日時場所に出頭して事情聴取を申し出ているにもかかわらず「事情聴取を拒否したものとみなす」と一方的に宣告された例すら少なくないなど,本件各処分の前提としての告知・聴聞の機会が与えられなかったり,与えられても不十分であった。また,本件各処分に至る手続過程で,個別の事情が検討されず,拙速かつ画一的判断がなされるなど杜撰な手続がなされたほか,原告らの中には,職務命令書を受領していない状態のまま懲戒処分を受けた者もおり,被告によるこのような手続軽視の姿勢を看過すべきではない。
以上によれば,本件各処分は,手続面からも適正・公正を欠いており,手続上の違法が認められる。
(被告の主張)
本件各処分における手続上の違法に関する原告らの主張は,いずれも理由がない。
ア 事情聴取(告知・聴聞)等の場面において,弁護士の同席を認める法規上の根拠は何ら存せず,原告らに当然に弁護士の同席(立会い)を求める権利があるわけではない。この点,原告らは,本件各処分の手続として,憲法31条の趣旨に照らして要求されるべき手続保障として弁護士の同席等が保障されるべきであるとの主張をする。しかしながら,そもそも公務員の懲戒処分については,組織内部の秩序維持のために行われる内部的な処分であることから,直接には刑事手続に関する規定である憲法31条は適用されず,同条による保障が及ぶものではないと解すべきである。懲戒処分においてどのような手続を採るかは立法政策の問題であり,法令上,事前の告知・聴聞の手続が定められていないからといって,そのことが違憲になるというものではない。現にそのような考え方のもと,公務員の懲戒処分については行政手続法の聴聞ないし弁明の機会の付与に関する規定は適用除外とされており,また,国家公務員法及び地公法等において特に告知・聴聞の規定は定められていない。したがって,現行法制度の下では公務員の懲戒処分の手続は任命権者の裁量に委ねられていると解される。そして,地公法29条4項では「懲戒手続及び効果は,法律に特別の規定がある場合を除く外,条例で定めなければならない。」と規定され,東京都では「職員の懲戒に関する条例」(昭和26年9月20日条例第84号)と「職員の分限,懲戒に関する条例の施行について」(昭和26年10月15日総人発秘第164号)が定められているところ,そこでは事情聴取の方法について何ら定めがなく,その方法については任命権者の裁量に任せられているものというべきである。そして,都教委においては,事情聴取に当たり,弁護士の立会いやメモ・録音をとることを認めておらず,事情聴取を担当した都教委側の職員が,弁護士の立会い等を求める原告らの要求を認めなかったことについて,違法とされるところはない。確かに,一部の原告らが弁護士の立会い等を求めて事情聴取に応じないため,実際に事情聴取ができなかったケースがあるが,都教委は事情聴取に応じるよう説得し,原告らに事情聴取の場を提供しているのであるから,これらのケースについては,都教委が「事情聴取を拒否したものとみなす」と一方的に宣告などしたのではなく,当該原告らが事情聴取を拒否したものと言わざるを得ないものであり,これによって本件各処分に取り消されるべき手続上の違法があるとされるようなものではない。
なお,都教委は,事情聴取の場において,被聴取者による聴取書のコピーやメモの持ち帰り,録音等を認めていないが,これは,事情聴取において,正確性が担保されない断片的な個人のメモや編集改変が可能なテープ録音等は聴取記録の正確を期すために適切でなく,聴取記録を一元化する必要があるためであり,また,服務事故の関与者等の第三者の個人情報が含まれる場合に,これを保護する必要もあるためである。このため,都教委は,事情聴取の最後に当該被聴取者本人に聴取記録の内容を十分確認させ,被聴取者の指摘箇所は訂正し,被聴取者が最終確認した上で署名押印をさせることにより,聴取書の正確性を担保している。聴取書については,聴取を行った日以後に開示請求があれば,請求者に開示し,写しを交付している。
これらのことからも,都教委の事情聴取の手続には何らの瑕疵はなく,これによって懲戒処分としての本件各処分に取り消されるべき手続上の違法などもない。
以上のとおり,懲戒処分としての本件各処分を行うに当たっては,都教委自らが非違行為を行った本人から直接に,事実関係を確認し,弁明を聞くために事情聴取を行うという手続をとっており,告知と弁明の機会は与えているのであって,必ずしも法律上定められていない同手続を行っていることからしても,懲戒処分としての本件各処分を行う手続は公正に行われたというべきである。原告らの中には,事情聴取において都教委が認めていない弁護士の立会い等に固執し,結果として事情聴取ができなかった者もあったが,事情聴取を行った者の聴取書は,本件各校長からの事故報告書及び本件各校長その他の関係者からの聴取書とともに事実確認及び量定案検討の資料となり,これを踏まえて個々の処分がなされている。
イ 原告らは,本件各処分の発令までの手続が杜撰で拙速であるというが,非違行為からその処分までの期間が短いからといって当該処分が違法になるというものではない。本件通達発出後の職務命令違反者に対する処分量定の検討としては,平成15年11月から同年12月にかけて実施された周年行事の案件において,服務事故から2か月程度の期間,充分に慎重に行われ,処分量定の考え方が整理される中で,非違行為の性質,態様を重視することとし,平成16年2月に処分を発令したものであり,ここでの検討結果を受けてその後の卒業式等における非違行為の処分が短時日で行い得るようになったもので,何ら不合理で杜撰な手続が取られているものではない。実際にも,非違行為については,懲戒処分の事由たる事実について現認の報告や本人及び関係者の事情聴取などにより適正に事実の確認をした上で,先行事案を参考に,処分量定について懲戒分限審査委員会の答申を受け,教育委員会の議を経て処分を行ったものであり,手続に要する十分な時間を取っている。また,懲戒処分を課すことが本件通達発出の当初からの目的であった事実はないが,職務命令違反や信用失墜行為などの非違行為があれば懲戒処分を課すべきことは当然である。
(13)  本件各処分について処分をすること自体の裁量権の逸脱・濫用の有無
(原告らの主張)
本件各処分は,以下の事情に照らして考えれば,処分を行うことそれ自体に裁量権の逸脱・濫用が認められる。
ア 原告らの本件不起立等は,形式的・外形的には本件各職務命令に違反しているかのように見え,そのような違反行為に対して本件各処分が行われたものであるが,そもそも地公法上の懲戒処分の権限は公務員秩序の維持に必要な限りで認められるものであり,法が懲戒権を付与した制度の目的を逸脱した懲戒処分は許されないところ,本件各処分は,憲法が想定する教育部門における公務員秩序の維持とは無縁の,国家主義的価値観に基づく国旗・国歌への敬意の表明,国旗・国歌の尊重を個人の思想・良心の自由に優先し,後記(14)イ(イ)及び(ウ)で原告らが主張するように式参加者に対する「内心の自由についての説明」すら禁止するという特異な教育観の強制を目的としてなされたものである。
イ 職務命令の体裁をとる本件各職務命令への違反行為としての本件不起立等を子細に,そして実質的に観察するならば,原告らは,違法な行為に及んだものでも,破廉恥な行為を行ったものでも,教員としての職務を懈怠したものでもなく,真摯に自らの生き方を探り,教員としての良心に忠実になろうとして,本件通達や本件各職務命令と義務の衝突を自覚し,これを受け容れがたいとしたものであるし,本件不起立等は,その性質・態様において,自らの思想・良心の自由を防衛する以上の積極的行為を伴わない消極的なものにすぎず,式典の進行を妨害する積極的な行動に出たり,国歌斉唱を妨げる態様の行為は皆無であって,具体的に卒業式等の進行に支障が生じたり,式典が混乱したなどという影響は現実に皆無である。これに対し,制裁措置としての懲戒処分の不利益の程度は極めて重く,原告らの思想・良心の自由及び信教の自由の核心部分を直接に否定するほか,1回の戒告処分によって,勤勉手当がカットされるのみならず,昇給幅が2分の1となり,また停職処分を受けた職員は,昇給幅が4分の1となり,実質的に6か月の昇給延伸をもたらすものであるところ,この措置の影響は生涯付いて回り,履歴として刻印され,転勤及び昇進にも影響するだけでなく,退職金及び年金にも影響し,1回の戒告処分が定年後の再雇用や再採用の拒否事由ともされる。さらに,これらの懲戒処分が例年繰り返され,処分が累積され加重され,服務事故再発防止研修受講が強制される。以上によれば,本件各処分は,非違行為の重大性と,処分がもつ制裁としての不利益性の程度との権衡を著しく失するものとして,比例原則違反に該当する。
ウ 都教委の判断は,一方で,①生徒や教職員の精神・信仰の自由を尊重し,②教育に対する不当な支配を抑制することによって生徒の教育を受ける権利を擁護するという本来最も重視すべきことがらを不当かつ安易に軽視し,他方で,①知事や一部の都議などの意向という本来考慮に入れるべきでない事項を考慮に入れ,②卒業式等の進行が妨害される抽象的可能性という,本来過大評価すべきでないことがらを過大評価した結果として,精神の自由や教育の自由という憲法的要請と,卒業式等における教育上の必要性とをいかにして調和させるべきかの手段,方法の探究において,当然尽くすべき考慮を尽くさなかったのであるから,この点の判断につき,その裁量判断の方法ないし過程に過誤がある。
エ エホバの証人剣道実技拒否事件判決(最高裁判所平成7年(行ツ)第74号同8年3月8日第二小法廷判決・民集50巻3号469頁)における裁量権逸脱・濫用の審査基準に当てはめてみても,本件各処分については,①原告ら教職員が,各々の良心の要請及び個々の教職員としての世界観,教育観,信条等の真摯な理由から起立・斉唱・伴奏命令に従えなかったこと,②原告らの「職務命令違反」とされた行為が,卒業式等における国歌斉唱時に国旗に向かって起立をせず,あるいはピアノ伴奏をしなかったという消極的なものにすぎず,積極的に卒業式等の進行を妨害する行動に出たり,国歌斉唱を妨げたりしたものではなく,卒業式等の進行に支障が生じた事実は存在しないこと,③本件各処分は,戒告以上の懲戒処分であり,経済的不利益を伴うとともに,履歴にも残り,教職員としてその後仕事をしていくにあたって,多大の不利益を伴うものであるほか,国旗・国歌について職務命令に違反したとして戒告処分を一度でも受けると,本来誰でも希望すれば認められるはずの定年後の再雇用職員としての採用も拒否される実情にあり,原告らに与える不利益の程度が重すぎること,④都教委としては,卒業式等における「日の丸・君が代」への全教員の起立・斉唱・ピアノ伴奏の実施が教育上不可欠というわけでもないのに,代替措置について何ら検討することもなく,性急に本件各校長に職務命令の発出を求め,原告ら教職員がその世界観,教育観,信条等からしてどうしても従うことができず,不起立等の消極的対応をしたのに対し,一律に懲戒処分に付していることからして,本件各処分は,社会観念上著しく妥当を欠き,裁量権の範囲を超える違法なものというべきである。
(被告の主張)
本件不起立等は,①公教育を担う教育公務員が,卒業式等の場において,公教育の根幹である学習指導要領に基づき教育課程を適正に実施するために発せられた重要な職務命令に違反する重大な非違行為であること,②卒業式等の来賓,保護者はもとより,適正に国旗・国歌の指導を受けることとされている児童・生徒を目の前にしてあえて起こされた非違行為であり,教育上好ましくないものであること,③本件通達の発出以前から,校長が繰り返し指導し,本件通達の発出後も校長において指導したにもかかわらず,発生した職務命令違反行為であること,④学校も組織である以上,その教師の職にある原告らは,上司である校長の命令に従うことは当然であるにもかかわらず,組織人として職務上の義務違反を行ったものであることに照らして,公務の適正な遂行を妨げるものであり,都民に対する重大な背信的行為であって,職場内においても,職場内の秩序維持の観点から見過ごすことができないものであり,公務員の服務の根幹に関わる重大な非違行為というべきである。したがって,本件各処分が社会観念上著しく妥当を欠くものでないことは明らかである。
(14)  本件各処分における処分量定に関する裁量権の逸脱・濫用の有無
(被告の主張)
最高裁判所平成23年(行ツ)第263号・同年(行ヒ)第294号同24年1月16日第一小法廷判決は,「不起立行為等に対する懲戒において戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについては,本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要となるものといえる。」と判示した上,減給処分については,過去の処分歴等に鑑み,「学校の規則や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との視点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合」であることが必要であり,上記「相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合」には,減給処分も許される旨を判示した。また,最高裁判所平成23年(行ツ)第242号・同年(行ヒ)第265号同24年1月16日第一小法廷判決は,停職処分についても,前述の「相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合」には許される旨を判示した。
本件各処分中,減給処分以上の処分がなされている原告X2ら26名について,減給処分以上の本件各処分に関し,過去の処分歴に係る非違行為の内容,頻度等の「相当性を基礎付ける具体的な事情」等は,以下のとおりである。
ア 減給処分以上の処分が量定された原告X2ら26名は,いずれも前記前提となる事実(5)(別紙5「処分歴一覧表」)のとおり,本件各処分より前に,不起立等の職務命令違反行為があり,しかも,当該職務命令をめぐって式典までの間の校長等管理職との確執や職務命令書の受取拒否等の事情がみられ,処分手続において校長の事実確認や都教委の事情聴取を拒否するなどの非協力的態度があり,当該不起立等の職務命令違反により戒告以上の懲戒処分を受けている上,当該懲戒処分後の再発防止研修でも,報告書に独自の見解や研修への批判を記載したり,その旨の発言を行って進行を妨害したりするなど,反省の態度がみられなかった。
イ 原告X25は,平成17年度卒業式直前の授業等で生徒に対し不起立等の行為に引き付けた内心の自由についての説明を行うなどし,在校の4年生14名中の11名が起立をしない事態となったことから,平成18年6月12日に「指導部長厳重注意」を受けている。原告X32及び同X43のいずれも,平成16年度卒業式直前の授業等で生徒に対し不起立等の行為に引き付けた内心の自由についての説明を行い,そのことにより,「指導部長厳重注意」を受けている。
ウ 原告X2は,東京都立a高等学校において,平成17年3月12日に行われた平成16年度卒業式に来賓として出席した際,来賓挨拶において「色々な強制のもとであっても,自分で判断し,行動できる力を磨いていってください。」といった旨を述べ,そのため,一部生徒にざわめきが生じ,さらに一部参列者から苦情めいた声が寄せられるという事態が生じ,平成17年7月20日,当時勤務していた東京都立羽村高等学校の校長から,上記来賓挨拶は,TPOの視点からすると来賓としてふさわしい発言ではない旨の指導を受けている。
エ 原告X27は,平成16年4月7日の入学式数日後の学年集会において,生徒の前でどうしても歌えない理由が心の中にあるので国歌斉唱の時着席した旨表明し,その際,生徒の一人から「先生,国歌を歌わないんだね,私も歌わない」と言われており,また,平成19年3月9日の卒業式の前後に,生徒から「先生また座るの。」,「やばいんじゃない。」,「座った。」などと声をかけられているなど,同原告の非違行為は,単なる不起立にとどまらず,生徒に対して明らかな影響を与えた。
オ 原告X45は,平成17年7月21日の再発防止研修当日,教職員研修センター職員から,ゼッケン等の着用は認められないので,外すようにとの話があったにもかかわらず,強制反対,日の丸・君が代という内容が書かれたTシャツを着用して入室し,他の職員の注意力を妨げたのみならず,研修の進行を妨害し,この件で戒告処分を受けた。
カ 原告X28は,平成12年度の卒業式において「日の丸・君が代強制反対」と書いたゼッケンを着用して出席し,平成13年度の入学式において「日の丸 君が代 やめてください」と書かれたブラウスを着用して出席し,同年度の卒業式において両胸の部分にそれぞれ「19条 9条」という記載がなされ,鳩やハート等の図柄が描かれたブラウスを着用して出席したうえ,図柄入りブラウスの上に上着を着用するよう口頭で職務命令を受けたにもかかわらず,これに反して鳩やハート等の図柄が描かれていたブラウスの上に上着を着用することなく入学式に臨んだことがあった。そして,同原告は,平成14年度の入学式において,日の丸掲揚・君が代奏楽に対する抗議として,縦約10センチメートル,横約15センチメートルの長方形の黒枠の中央部に塗りつぶした赤い丸を描いた絵柄に向かって左上から右下方向に黒色の斜線を入れた模様が右胸部分に,直径約20センチメートルのハートの絵柄に鎖を重ねた模様が背中側部分にそれぞれ描かれた白無地のブラウスを着用して出席しようとし,所属校の校長から上着の着用を命ずる職務命令を受けたにもかかわらず,これに従わずに入学式に臨席し,事情聴取のための校長室への出頭を命ずる職務命令にも従わなかったことから,これら平成14年度の一連の職務命令違反により,平成14年11月6日付けで戒告処分を受けているほか,平成15年度卒業式における国歌斉唱時の不起立により,平成16年4月6日付けで減給10分の1・1月,平成16年度卒業式における国歌斉唱時の不起立により,平成17年3月31日付けで減給10分の1・6月の各処分を受けた。また,原告X28は,本件停職1月の処分の期間中,「校門出勤闘争」と称して東京都立b養護学校の校門前で,支援者らとともに「君が代強制反対」等と記載した表示を掲げるとともに,職員や保護者らにチラシを配布するなど,生徒や保護者をも巻き込む抗議活動まで行っている。
(原告らの主張)
ア 本件各処分は,被告において,過去に非違行為を行い,懲戒処分を受けたにもかかわらず同様の非違行為を行った場合には,繰り返された非違行為についての量定を加重するという従来からの処分量定の考え方(以下「機械的累積加重処分の方針」という。)に基づき行われたものにすぎない。そして,そのような機械的累積加重処分の方針は,被告が引用する最高裁判所平成23年(行ツ)第263号・同年(行ヒ)第294号同24年1月16日第一小法廷判決,最高裁判所平成23年(行ツ)第242号・同年(行ヒ)第265号同24年1月16日第一小法廷判決(以下,これらの判決を「平成24年最高裁判決」という。)の説示内容に照らしても不合理なものであるといえる。
また,そもそもにおいて,原告X2ら26名に対する減給処分以上の懲戒処分に関し,被告は「処分説明書」を交付しているが,同書面には,処分の理由として当該処分の対象となった本件不起立等についてのみ記載をしている。懲戒処分を受ける職員の防御権の保障の観点等にかんがみて,本件の処分取消訴訟の審理対象となる処分の事由は同書面に記載されている処分の事由,すなわち本件不起立等の行為に限定され,新たに他の行為や事情を付け加えることは許されないものである。
イ 減給処分以上の懲戒処分を受けた原告X2ら26名の原告については,以下のとおり,学校の規則や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との視点からみて当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情は認められない。
(ア) 原告X28及び同X45を除く原告らについては,過去の処分歴がいずれも式典における国歌斉唱時の不起立や不伴奏であり,その態様は,式典を妨害するような特別の要素もなく,学校の規律や秩序を害するようなものではない。戒告処分後の再発防止研修における態度,職務命令をめぐる管理職との確執,不起立行為等に対する処分において校長の事実確認や都教委の事情聴取を拒否するなどの非協力的態度については,原告らの思想・信条に基づく率直な批判的記載を非難される理由はないし,これらの記載が学校の秩序や規律を害するものとはいえず,自らの疑問や意見に従い,発言や質問を行うことが研修の規律を乱す不適切なものであるともいえず,講師等の説明を遮る等,研修を妨げるべき言動を行った事実はない。それに,別件訴訟における被告の主張によれば,再発防止研修は,地公法の解説を中心とする講義を行ったに過ぎず,受講する教員らの内面に踏み込んで反省を迫らないという方針でなされたものとのことであり,本件訴訟における被告の主張は従前の主張と矛盾している。
職務命令書の受領拒否についても,国歌斉唱時に起立することはできないという,いずれも職務命令に従うことができない旨の意思の表現であり,その意味で,不起立行為等に至る付随的事情の一つにすぎず,当該事実を理由に処分を受けた原告はいない。職務命令書の受け取りをめぐる校長,副校長らと原告らとのやり取りによって,学校の運営に対し特別の支障が生じたということもなく,特に処分の加重を根拠づけるべき事情は存在しない。
職務命令違反の処分過程における非協力的態度については,原告らにおいて校長による事実確認そのものを「拒否」したのではなく,事実確認を受けて,回答を拒否したにすぎない。しかも,副校長が不起立行為を現認した上で式典終了後に校長が確認をした際の出来事であり,学校の規律や秩序を害する程度は著しく低い。また,弁護士の立会いを求めたのは,原告らにおいて事実確認自体を拒否したものではなく,校長や都教委において事実確認を放棄したものとみるべきである。
(イ) 原告X25,同X32及び同X43について,卒業式直前の授業等で生徒に内心の自由についての説明を行うなどし,このことで「指導部長厳重注意」を受けたことが,被告において「相当性を基礎付ける具体的な事情」として主張されているが,これらの内心の自由に関する説明は,本件通達発出以前には各都立学校において校長自らが必ず行っていたものであり,しかも生徒に対し積極的に不起立を指導したものでもないから,何ら「相当性を基礎付ける具体的な事情」に該当しない。
(ウ) 原告X2については,来賓としての挨拶が不適切として「校長指導」を受けたことが,被告において「相当性を基礎付ける具体的な事情」として主張されているが,前記発言は,憲法上生徒らに保障された権利を踏まえた卒業生へのはなむけの言葉として適切な内容であり,式典へ影響も全くないから,「特別の事情」に当たるものではない。
(エ) 原告X27に係る「生徒に対する影響」については,そもそも「生徒に対する明らかな影響を与えている不起立」と「単なる不起立」をどのような基準で区別できるのか不明確であり,区別は困難であるから,このような事情が「特別の事情」に当たるとはいえない。学年集会における原告X27の発言についても,入学式後のオリエンテーションの一環として行われた学年集会において,同僚の助言に従い,着席の理由についての誤解を避け,これから信頼関係を作っていくために一言ふれたものにすぎず,生徒や保護者からの苦情等も一切なく,「相当性を基礎付ける具体的な事情」には該当しない。また,原告X27の担任クラスでは,国歌斉唱の際に着席した生徒はおらず,被告指摘の生徒らの発言は,生徒たちがそれぞれ自分の考えに従って行動し,かつ自分とは違う担任の考えや行動を尊重し気遣ったものにすぎない。
(オ) 原告X45における再発防止研修時の強制反対,日の丸・君が代という内容が書かれたTシャツの着用については,研修中何ら問題とされておらず,他の職員の注意力や研修の進行を妨害した事実もない。被告指摘の戒告処分については,職務専念義務違反を理由とするものであって,研修の進行の妨害を理由とするものではない。したがって,前記事情が「相当性を基礎付ける具体的な事情」に当たるものとはいえない。
(カ) 原告X28は,平成12年度の卒業式には,灰色の布の上に薄めの色で「日の丸・君が代強制反対」と書いたゼッケンを着用して出席したが,当該ゼッケンは,20センチ四方程度の大きさであり,そこに記載した文字の大きさも3センチ四方程度であったので,式の進行中,ごく近くに座っていた数人の教員以外からは何が記載されているか見えるようなものではなかった。原告X28は,開式の直前に上記ゼッケンを着用し,式の進行中は教職員席の最前列に座っていたが,式の終了後,向かい側にいた保護者席の方たちからは当該ゼッケンに何が書いてあったか全く見えなかったと言われている。
また,原告X28が平成13年度の入学式で着用したブラウスには,「日の丸 君が代 やめてください」とは書かれていたが,原告X28は,式の進行中,生徒や保護者などの卒業式の出席者から見える位置にはおらず,式の終了後,当該ブラウスの件で式典出席者から何か苦情めいたことを言われたこともなかった。
さらに,平成13年度の卒業式で原告X28が着用したブラウスには,両胸の部分にそれぞれ文字で小さく「19条 9条」という記載がされていたほかは,鳩やハート等の図柄が描かれていたのみであり,一見して特定のメッセージを表示するものと理解されるような図柄が手書きされていたわけではなく,式典の終了後,当該ブラウスの件で式典出席者から何か非難めいたことを言われたということもなかった。
平成14年度の卒業式で原告X28が着用したブラウスには,文字の記載は一切なく,鳩やハート等の図柄が描かれていたのみであり,一見して特定のメッセージを表示するものと理解されるような図柄が手書きされていたわけではなく,入学式の反省会でも,前記ブラウスが問題となることはなかった。
なお,原告X28は,上記の平成14年度卒業式における行為についての事情聴取への応諾を求める職務命令に違反したことを理由として,懲戒処分を受けているが,この懲戒処分に対しては,訴訟において懲戒権限を逸脱し濫用するものとの判断が下され,確定している(東京地裁平成18年3月22日判決,東京高裁平成18年12月26日判決)。
以上の経緯があった上で,原告X28については,都教委の機械的累積加重処分の方針に従い,1月の停職処分がされたところ,過去の懲戒処分の対象は,最初の戒告処分がブラウス着用に関わる問題であったが,他はいずれも不起立行為であって積極的に式典の進行を妨害する内容の非違行為は含まれておらず,過去3年度の3回の卒業式等に係るものにとどまり,平成18年度の卒業式における不起立行為の前後における態度において特に処分の加重を根拠づけるべき事情もうかがわれない。したがって,このような事情にかんがみると,原告X28については,学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から,なお停職処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情があったとは認め難い。
また,前記停職1月の懲戒処分中の校門出勤闘争については,午前8時ころから午前9時半ころまでの間,通用門近くの道路上に立ち,支援者らと一緒に,歩いて登校する同僚職員や保護者に対してチラシを配布したものであり,勤務時間外に,学校の敷地外で,平穏にチラシを配っただけで,職員や保護者の登校を妨害等したこともなく,上記活動について校長から指導や文書訓告等も一切受けていない。また,このように行動により,学校の規律や秩序を害したとまではいえない。したがって,これをもって原告X28に対する停職処分の相当性を基礎付ける具体的な事情とみることはできない。
ウ 被告においては,平成18年以前は,戒告・減給処分を受けた者については,昇給を三月延伸するとされていたところ,平成18年度の関連規則の改訂(以下「本件規則改訂」という。)により,昇給は毎年1回4月のみとされ,その際,通常に勤務していれば四号給昇給のところ,戒告・減給処分を受けた場合には二号給減となったために二号給しか昇給せず,昇給幅が半分になる結果として,昇給の六月延伸と同様になる。すなわち,平成19年以降に戒告処分を受けた原告らは,平成18年以前に減給処分を受けた場合よりも昇給において大きな不利益を受けている。
また,平成18年4月以前は,戒告処分を受けた者については勤勉手当10パーセント減額,減給処分を受けた者については勤勉手当15パーセント減額とされていたが,平成18年度規則改訂により,戒告処分を受けた者については勤勉手当20パーセント減額,減給処分を受けた者については勤勉手当35パーセント減額とされ,平成18年以前に減給処分を受けた場合よりも勤勉手当について大きな不利益を受けている。
エ 以上によれば,戒告処分を受けた原告らであっても,平成24年最高裁判決が裁量権の範囲を超えるものとして違法と評価した減給処分以上の経済的不利益を受けていることから,当該原告らに対する各戒告処分についても,処分量定の関係で裁量権の逸脱・濫用が認められるべきである。
(15)  原告らの国家賠償法1条1項に基づく慰謝料等請求権の有無
(原告らの主張)
ア 公権力の行使にあたる被告の公務員は,その職務を行うについて,違憲・違法な本件通達に基づく本件各職務命令及び同命令違反を理由とする本件各処分を行うことにより,故意によって違法に原告らに損害を加えたものであるので,被告は,国家賠償法1条1項により,これを賠償する責に任ずる。
イ 原告らは,懲戒処分そのものによる不利益や損害に加えて,一方的に職務命令への服従を迫られ,かつ反省を要求する内容の服務事故再発防止研修の受講を義務付けられるという直接的な精神的苦痛を受けたほか,被処分者が在籍した学校では,管理職が都教委の主催する研修を受けさせられたうえ,校内職員全員が卒業式等において全員起立した国歌斉唱を徹底するための校内研修を受けさせられたことにより,原告らが自己の信念に従った行為を行えば,その故に他の関係のない教職員にまで連座制ともいうべき実質的な連帯責任としての負担を負わせられる事態を目の当たりにさせられ,他の教職員に対する自責の念による精神的苦痛も被った。
また,原告らは,本件各処分に伴い,勤勉手当や定期昇給において不利益を受け,退職手当の金額についても影響を受けるなど,その経済的損失は生涯にわたって継続するほか,業績評価,校内分掌,人事異動においても不利益取扱いを受け,永年勤続表彰や長期勤続休暇における不利益や再雇用拒否を受け,その他,教師としての自尊心や誇りを真っ向から否定されたものである。
ウ これらの事情による精神的苦痛に対する慰謝料額は,原告ら各自について処分1件当たり50万円を下らない。また,原告らは,本件各処分によって被った精神的苦痛に対する損害賠償を求めるため,弁護士に依頼して本件訴訟を提起せざるを得ず,相当因果関係のある弁護士費用は,前記損害額の1割に相当する処分1件当たり5万円を下らない。
(被告の主張)
争う。
本件各処分が適法であることはこれまでに述べたとおりである。仮に本件各処分のうち減給処分以上の処分が処分量定につき裁量権の逸脱・濫用があるとして取り消されるべきものとしても,そのことから直ちに被告の損害賠償責任が肯定されるわけではない。都教委が原告X2ら26名による本件不起立等について非違行為と判断したうえ,減給処分以上の処分に付することを裁量権の範囲内の措置として適法と判断したことは,やむを得ないことであって,職務上尽くすべき注意義務の違反も,過失も存在しない。
また,本件各処分が取り消されれば,経済的不利益は全て回復されるのであり,それに伴って減給処分それ自体による精神的苦痛も回復される。原告X28においては,本件各処分として停職処分を受けたことによる精神的苦痛を主張するかもしれないが,公務員には就労請求権は認められていないのであって,本件各処分が取り消されることによって精神的苦痛も回復されることは,他の減給処分を受けた原告らと変わりない。結局,原告らについては,慰謝すべき損害は存在しない。
第4  当裁判所の判断
1  本案前の争点(提起時退職原告らにおける戒告処分取消しの訴えの利益の有無)について
提起時退職原告らは,平成19年3月31日,平成20年3月31日又は平成21年3月31日にそれぞれ退職しているところ(前記前提となる事実(7),別紙3「経歴一覧表」),一般職に属する地方公務員に対する戒告処分は,当該公務員が地公法29条1項各号に該当する場合において,その責任を確認し,将来を戒めるという内容の処分であり(人事院規則12-10第4条及び甲D51参照),公務員たる地位にある者に対して行われ,戒告を受けることにより完結するものであるから,戒告処分を受けた公務員がその地位を有しなくなった場合には,その効力自体はその時点で失われるものと解される。
しかしながら,被告においては,戒告処分を受けた場合,必然的に昇給期間が延伸され,それが退職時までの昇給時期に影響する(甲C1,甲D1の2,原告X1)。また,被告は,定年退職者等について,従前の勤務実績等に基づく選考により,1年を超えない範囲内で任期を定め,常時勤務を要する職又は短時間勤務の職に採用することができると定める地公法28条の4,28条の5に基づき,再任用及び再雇用の制度を採用し,東京都公立学校再雇用職員設置要綱(昭和60年3月23日付け59教人職第554号〔乙43〕の第5項1(1))において,「正規職員を退職又は再任用職員を任期満了する前の勤務成績が良好であること。」を再雇用の要件の一つとしているところ,再雇用職員の採用選考に合格した後,戒告処分を受けたことを理由に合格が取り消された者が複数存在している(甲C9,15,39,乙42の1・2,44,弁論の全趣旨)。
以上によれば,被告においては,戒告処分を受けた者が,戒告処分を前提として,給与上及び人事上の不利益を受ける制度上の仕組みが存在し,戒告処分が取り消されれば,昇給予定時期に昇給することが期待できた地位や再雇用されることを期待し得る地位を回復することになるものと解すべきところ,これらの地位は,一定の法的保護に値するものというべきであって,退職により当然に失われるものとはいえない。したがって,提起時退職原告らについても,戒告処分の取消しを求める行訴法9条1項所定の法律上の利益があるというべきであるから,戒告処分の取消しの訴えにつき,訴え却下判決を求める旨の被告の本案前の申立ては理由がない。
なお,前記の理は,終結時退職原告らの戒告処分取消しの訴えについても同様に当てはまるものであり,行訴法9条1項所定の法律上の利益が認められるものと解される。
2  本案の争点について
(1)  本件通達及び本件各職務命令の憲法19条違反の有無
原告らは,国旗・国歌とされている日の丸・君が代が戦前日本の皇民化教育及び侵略戦争遂行の中で重要な役割を果たしてきたという原告らの歴史観・世界観の上に立って,起立・斉唱・ピアノ伴奏を行うか否かという日の丸・君が代に対する一定の態度を示すことが,個人が天皇制や国家神道,ナショナリズム,国の在り方などをどのように評価し,どう受け止めているのかという個人の政治的価値観・世界観・国家観などといった特定の思想・良心との繋がりが明らかに推知される性格のものであるから,国歌の起立斉唱やピアノ伴奏の強制が,原告らの思想・良心の自由を侵害する旨主張する。このような原告らの主張に係る日の丸・君が代,あるいは起立斉唱・ピアノ伴奏に関する考え方は,日の丸や君が代が戦前の皇民化教育や侵略戦争遂行等の関係で,一定の役割を果たしたとする原告ら自身の歴史観・世界観から生ずる社会生活上ないし教育上の信念等であるということができる。
しかしながら,国旗掲揚・国歌演奏の際に国旗に正対して起立するなどの所作は,証拠(乙34)及び弁論の全趣旨に照らし,単に日本における慣習であるばかりでなく,国際的な儀礼・慣習というべきであり,一般的な社会常識的行為の範疇にある所作であるとみるべきところ,このような所作を取り入れる卒業式等における起立斉唱やピアノ伴奏は,一般的,客観的に見て,儀式的行事における儀礼的所作として外部から認識されるものであって,特定の思想又はこれに反する思想の表明として外部から認識されるものと評価することは困難であり,本件通達及び本件各職務命令は,当該教師に特定の思想を持つことを強制したり,これに反する思想を持つことを禁止したりするものではなく,特定の思想の有無について告白することを強要するものであるともいえない。そして,本件通達及び本件各職務命令が原告らに対して求めるこれらの行為は,儀式的行事における学校職員という社会的な立場にある者としての行動であり,我が国において「日の丸」や「君が代」が戦前の皇民化教育や侵略戦争等との関係で一定の役割を果たしたとする当該教師の有する歴史観ないし世界観を否定することと不可分に結びつくものではなく,本件通達及び本件各職務命令は,その歴史観ないし世界観それ自体を否定するものとはいえない。
もっとも,これらの行為は,国旗及び国歌に対する敬意の表明の要素を含む行為であり,上記の歴史観ないし世界観を有する者がこれを求められることはその歴史観ないし世界観に由来する行動と異なる外部的行為を求められることとなり,その限りで思想・良心の自由についての間接的な制約となる面があり,原告らについても,本件起立行為等は原告らの思想及び良心の自由についての間接的制約となる面があることが明らかであるといえる。そして,このような間接的な制約が許容されるか否かについては,当該制約について,制約を許容することができる程度の必要性及び合理性が認められるかという観点から判断するのが相当であるところ,これを本件通達及び本件各職務命令についてみれば,本件通達及び本件各職務命令は,高等学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿い(後述のとおり,都教委においては,地教行法23条5号に基づく権限により,本件各校長においては,平成19年法律第96号による改正前の学校教育法28条3項,51条,76条,同改正後の同法37条4項,62条,82条に基づく校務処理等の権限により,平成19年法律第96号による改正前の学校教育法43条(同改正後の同法52条),平成19年文部科学省令第40号による改正前の同法施行規則57条の2(同改正後の同法施行規則82条)に基づく学習指導要領の定めている国旗国歌条項の適正な実施を図るものと認められる。),かつ,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえた上で,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに当該式典の円滑な進行を図るものであり,以上の諸事情を踏まえ,本件通達及び本件各職務命令の目的及び内容並びに制約の態様等を総合的に衡量すれば,上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるものというべきである。これらの諸点にかんがみると,本件通達及び本件各職務命令は,原告らの思想・良心の自由を侵害するものとして憲法19条に違反するとはいえないと解するのが相当である(最高裁判所平成16年(行ツ)第328号同19年2月27日第三小法廷判決・民集61巻1号291頁,最高裁判所平成22年(オ)第951号同23年6月6日第一小法廷判決・民集65巻4号1855頁,最高裁判所平成22年(行ツ)第54号同23年5月30日第二小法廷判決・民集65巻4号1780頁,最高裁判所平成22年(行ツ)第314号同23年6月14日第三小法廷判決・民集65巻4号2148頁,最高裁判所平成22年(行ツ)第372号同23年6月21日第三小法廷判決・裁判集民事237号53頁参照)。
よって,本件各職務命令の違反を理由とする本件各処分が憲法19条に違反するものとは認められない。
(2)  本件通達及び本件各職務命令の憲法20条違反の有無
原告らは,起立斉唱やピアノ伴奏の強制が,原告らに含まれるキリスト教信者の信仰の自由や宗教的行為の自由を侵害する旨主張する。そして,原告X3,同X20,同X27,同X49(以下,この4名を「キリスト教信者である原告ら」という。)は,自ら主張ないし供述するとおりキリスト教信者であると認められるのであり(甲C3,20,27,49の1,乙C53,原告X27,弁論の全趣旨),本件通達及び自らに対する本件各職務命令,本件各処分についてキリスト教信者の信仰の自由や宗教的行為の自由に対する侵害を主張することができる地位にあることが明らかであり,以下,上記主張についての考究を進める。なお,この主張は,キリスト教信者である原告ら以外の原告らにおいては,キリスト教信者である原告らに対する本件通達(及び本件各職務命令,本件各処分)がキリスト教信者である原告らの信教の自由を侵害する違憲なものであることをもって,本件通達に依拠し発せられた自らに対する本件各職務命令及びこれに基づく本件各処分の違憲を主張するものと考えられるが,このように第三者の憲法上の権利を主張する適格を有するとするためには,キリスト教信者である原告ら以外の原告らにおいて,キリスト教信者である原告らの信教の自由という第三者の憲法上の権利についての権利主張が許されるかが問題となる。そうすると,第三者の憲法上の権利の性質,当事者と第三者との関係,第三者が独立の手続において自らの当該憲法上の権利を擁護する機会を有するかどうか,当事者に対し第三者の憲法上の権利主張の適格を認めないときには第三者の権利の実効性が失われるかどうか等を考慮し,当事者に右適格を与えるのが相当と認められることが必要である(最高裁判所昭和30年(あ)第2961号同37年11月28日大法廷判決・刑集16巻11号1539頁参照)ところ,キリスト教信者である原告ら以外の原告らについてそのような関係を見出すことはできない(なお,これは,自らについての信教の自由の侵害があるという主張でも,キリスト教信者である原告ら以外の原告らにおいて,自らに対する本件各処分がキリスト教信者である原告らの信教の自由を侵害する違憲なものであるという主張でもないから,自らに対する本件各処分の根拠法令の違憲・違法や根拠法令に違背する瑕疵が専ら第三者の利益を保護する法規についてのものであるかどうかという行訴法10条1項の問題ではない。)。
キリスト教信者である原告らは,いずれも自己のキリスト教の信仰と起立・斉唱行為とは相容れないと認識していることを供述・陳述するなどしており(甲C3,20,27,49の1,乙C27の8,乙C53,原告X27),中には本件職務命令は自らの信仰に対する踏み絵のように感じられることを供述している者もいるところ,キリスト教信者である原告らの信仰に由来するそのような考え方ないし心情は了解可能なものであり,卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱が,国旗・国歌に対する敬意の表明の要素を含む行為であることも否定できないものではあるが,そもそもにおいて,卒業式等における起立斉唱やピアノ伴奏は,前記(1)において説示したとおり,儀式的行事における学校職員という社会的な立場にある者としての行動にすぎず,一般的,客観的に見て,儀式的行事における儀礼的所作に当たる行為ということができるのであって,それを超えて,宗教的意味合いを持つ行為であるとまでいうことはできないから,本件通達及び本件各職務命令をもって,キリスト教信者の信仰を否定したり,その信仰の有無について告白を強要したりするものであるということはできないといわざるを得ない。
また,キリスト教信者である原告らは,本件通達及び本件各職務命令によって,その信仰に由来する行動(敬意の表明の拒否)と異なる外部的行動を求められることとなり,その限りにおいて,その信教の自由についての間接的な制約となる面があることは否定し難いものの,このような信教の自由に関する間接的制約の許容性についても前記(1)において説示したところが妥当するものというべきであり,本件通達及び本件各職務命令の目的及び内容並びに上記の制限を介して生ずる制約の態様等を総合的に衡量すれば,上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められる。
以上によれば,本件通達及び本件各職務命令が憲法20条に違反するものということはできず,本件各職務命令の違反を理由とする本件各処分が同条に違反するものとは認められない。
(3)  本件通達及び本件各職務命令の教師の専門職上の自由の侵害による憲法13条,23条,26条違反の有無
ア 原告らは,本件通達及び本件各職務命令が,教育課程の一環である卒業式等の内容を,教師の関与なく一方的に決定し,これを強制するとともに,各学校単位での創意工夫とその実情に応じた創造的・弾力的な教育内容の決定の余地を完全に奪うものであり,教師の専門職上の自由を侵害するものとして,憲法13条,23条及び26条に違反する旨主張する。
イ しかしながら,憲法13条,23条及び26条は,第一義的に子どもが適切な教育を受ける権利を保障しているものであって,教師の個人的人権を保障しているものではないが,教師が学校における教育活動を行うのは,子どもが適切な教育を受ける権利を実現するために必要な存在である教師としての地位に基づく権限に依拠するものであって,教師である個人の個人的な権利の実現としてのものではないことに照らすと,憲法13条,23条及び26条の効果として,子どもが適切な教育を受ける権利を実現するために教師に教育の内容及び方法についての一定範囲の裁量権が認められると解するのが相当である。しかし,その裁量権ないし自由とは,子どもが享受する適切な教育を受ける権利に由来するものであって,教師個人の人権として所与のものとして保障されているものではないと解する以上,教師は,教育活動を担う専門職として限られた一定の範囲で教授の自由があるとはいえ,それは子どもが適切な教育を受ける権利を実現するために必要な範囲内での自由であって,これを超えて,その教育活動の内容・方法の全てが教師の裁量に委ねられているのであって,その全てを教師が自由に決めることができるものなどということはできない。教師は,学校行事を実施するに際しては,憲法に適合する関係法令等を遵守すべき立場にあるものである。
一方,地方公共団体の教育委員会は,その管理権(地教行法23条5号)に基づき,公立学校の教育課程,学習指導,生徒指導等に関して基準を設定し,一般的な指示を与え,指導,助言を行うとともに,特に必要な場合には具体的な命令を発出することもできると解するのが相当であるところ,都教委の発した本件通達は,憲法及び国旗国歌法等への違反・不適合もなく,後記(7)のとおり法的拘束力の認められる学習指導要領の定めている国旗国歌条項に基づく卒業式等における国旗・国歌の指導をより一層改善,充実することを実現するという目的から発出されたものであって,その内容も,当該目的のために必要かつ合理的なものであるということができる。また,校長は,校務をつかさどり,所属職員を監督する権限を有する者であり(平成19年法律第96号による改正前の学校教育法28条3項,51条,76条,同改正後の同法37条4項,62条,82条),校務の一つである卒業式等の特別活動における国旗掲揚及び国歌斉唱の方法についても,当該権限の一環として,具体的な内容を伴う職務命令を発令する権限を有していると解され,そのような職務命令を発令するに当たり,教職員の意見,判断を徴求することが必要条件となるものではない。
以上を本件に照らしてみると,高等学校における教育従事者である原告らについては,憲法26条1項が生徒に対して保障する教育を受ける権利の実現の過程で,その教育を実施・実現する責務を負う教師についても,教育が人格的接触を通じての人の潜在的資質を引き出す創造的作用であるとの本質に由来するものとして,一定の限度ではあるが,憲法13条,23条及び26条により保障される教育の自由を有するものであり,憲法23条が学問の自由を保障していることの趣旨も参酌すべきものと考えられるものの,原告らの有する教育の自由とは,あくまでも憲法以下の現行法令の体系下における教育を実施するについて認められる権利であるといわなければならないのであり,原告らは,教師としての地位に基づいて学習指導要領の定めている国旗国歌条項に沿った教育指導を行うべき立場にあるといえる。このことに,本件通達が,前記のとおり学習指導要領の定めている国旗国歌条項に基づく卒業式等における国旗・国歌の指導をより一層改善,充実することを目的として発出されたものであると認められることを併せ考察すると,本件通達及び本件各職務命令によって原告らの教師の専門職上の自由を侵害されたということはできず,原告らは,本件各校長が本件通達を受けて発令した本件各職務命令に従うべき義務を負っているものというべきであるから,原告らの上記主張は理由がない。
ウ なお,教師は,教育活動を担う専門職として,学校行事を実施するに際しては,関係法令等を遵守し,学習指導要領の定める国旗国歌条項に沿った教育指導を行うべき立場にあるが,その範囲内においては,限られた一定の範囲であるとはいえ,教授の自由があるところ,本件通達は,卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱やピアノ伴奏を命じるだけでなく,国旗の掲揚位置や掲揚方法,国歌斉唱の方法,式次第の記載方法,会場設営等について相当程度具体的な内容を定めた実施指針(本件実施指針)を示し,これに沿った卒業式等の実施を命じているものであって,この限りにおいては教職員の裁量的行為が制限されているものである。
しかしながら,学習指導要領は,儀式的行事について,「学校生活に有意義な変化や折り目を付け,厳粛で清新な気分を味わい,新しい生活の展開への動機付けとなるような活動を行うこと。」と規定しているところ,卒業式等は厳粛さが要求される儀式的行為であるから,その中では一定の形式に沿った実施が必要な部分があり,この観点からみて,本件実施指針が定める式典の形式が不相当なものとはいえない。特に,教育上の重要な節目となる卒業式等は,各教師が個別に担当する一般の教科と異なり,全校的な規模で執り行われる儀式的行事であって,その進行については,個々の教師がそれぞれの創意工夫に基づいて自由に児童・生徒を指導すればよいというものではなく,全校的に決定されたところに従って統一のとれた行動が教師に要請されるといわなければならない。児童・生徒に対する指導教育の効果を高めるという観点からも,教育上の行事にふさわしい秩序を確保して式典の円滑な進行を図ることが重要であり,そのためにも学校単位での統一的な意思決定とこれに準拠した活動が必要となる場面であるから,教職員は,自らが考える卒業式等の在り方いかんにかかわらず,儀式的行事として決定された内容の卒業式等の実施に協力し,学習指導要領及びその定めている国旗国歌条項に沿った教育指導を行うべき義務を負っているというべきである。そうである以上,本件通達(本件実施指針)において定められた内容の卒業式等が,原告らそれぞれが相当と考える卒業式等の実施方法と一致しないとしても,そのことが,原告らの教員としての専門職上の自由を侵害するということはできない。してみると,本件実施指針が定める式典の形式と原告ら教職員が考えているそれとが異なるものであるとしても,そのことから直ちに教職員の教育実践上の裁量を侵害するものということはできない。もっとも,本件実施指針に定められていないことについては,教職員や児童・生徒の自主的工夫の余地は何ら制限されておらず,弾力的な実施が可能であるということができる。
エ 以上によれば,本件通達及び本件各職務命令は,原告らの教師の専門職上の自由を侵害し,憲法13条,23条及び26条に違反するものということはできない。
(4)  本件通達及び本件各職務命令の国際条約違反の有無
原告らは,本件通達及び本件各職務命令が,思想・良心の自由及び信教の自由を保障する自由権規約18条に違反する旨,本件通達が,児童の意見表明権,表現の自由,思想・良心及び宗教の自由,教育への権利を保障する児童の権利に関する条約12条,13条1項,14条1項,28条,29条に違反する旨主張する。
自由権規約18条は,法規範として我が国内における直接適用が可能なものであるところ,同条の規定文言は,憲法19条及び20条の規定文言に比してより詳細かつ具体的なものとなっているが,両者の規定が設けられている趣旨及び人権として有する原理は相通じており,自由権規約18条の規定が定める人権の保障内容は,その実質において憲法19条及び20条に規定する人権の保障内容と変わるところがないと考えられるところ,本件通達及び本件各職務命令が,憲法19条及び20条に違反するものということができないことは,前記(1)及び(2)における説示のとおりであるから,本件通達及び本件各職務命令が,自由権規約18条に違反するものであるということはできない。この点,原告らは自由権規約18条の解釈についての自由権規約委員会の一般的意見及び所見を指摘し,その内容に則した解釈を行うべきことも主張しているところ,勧告としての効力しか持たない一般的意見,及び個人通報の事案ごとに示され法的拘束力を持たないとされる所見が直ちに我が国の法令としての法的拘束力を持つものとはいえない。なお,これらの一般的意見及び所見については,自由権規約の解釈指針として斟酌することは望ましいと考えられるものであるが,原告らの指摘する一般的意見34は,表現の自由に係る自由権規約19条に関するもので,その該当箇所は,国旗やシンボルに敬意を払わない表現について法令等による不利益を課すことに対する懸念を示すものであり(the Committee expresses concern regarding laws on such matters as, lese majesty,desacato,disrespect for authority, disrespect for flags and symbols, defamation of the head of state and the protection of the honour of public officials, and laws should not provide for more severe penalties solely on the basis of the identity of the person that may have been impugned.),また,指摘に係る所見は,公立学校に通学する条件として,起立・斉唱ではなく敬礼・斉唱を求めるなどするものであって,いずれも本件と前提とする状況ないし事案を同じくするものと考えられず,特に,一般的意見34の「disrespect for flags and symbols」については,脚注が付されておらず,「laws」との関係付けがされていることを考慮すると,これをもって端的に本件事案のような事案を視野に入れたものと判断すべき根拠もないから,これらの一般的意見及び所見をもって,本件を規律する際に考慮すべき解釈の指針として直ちに採用することはできないものと解する。
また,児童の権利に関する条約は,児童の享有する権利について定めたものであり,原告らの指摘する各条項の定める権利享有主体も児童であると解されるから,原告らが,前記のとおり児童の権利に関する条約違反を主張することは,自己の法律上の利益に関係のない違法を理由とするものであるといわざるを得ないところ(行訴法10条1項),この点を措くとしても,本件通達は,本件実施指針に定められていないことについて,教職員や児童・生徒の自主的工夫の余地を十分に残すものであり,本件通達(本件実施指針)に基づく国旗・国歌の指導が,原告らの主張する生徒の権利を侵害するものともいえない。
さらに,原告らが指摘するILO・ユネスコの勧告は,条約のような法的拘束力を持つものでなく,その趣旨を前記(1)ないし(3)に論じた法体系の中で考慮すれば足りるものと解する。
以上によれば,本件通達及び本件各職務命令が,自由権規約及び児童の権利に関する条約に違反するということはできない。
(5)  国家シンボルの強制そのものの違憲性の有無
原告らは,本件各職務命令が,国民に対し,国旗・国歌が象徴する国家を尊重する旨の特定の態度を強制するということであるから違憲である旨主張する。
しかしながら,学校の式典における国歌斉唱時に国旗に向かって起立することやピアノ伴奏を命じる本件各職務命令は,前記(1)において説示したとおり,一般的,客観的に見て,儀式的行事における儀礼的所作に当たる行為を命じるものにすぎず,特定の思想を持つことを強制したり,これに反する思想を持つことを禁止したりするものではなく,特定の思想の有無について告白することを強要するものということもできない。この点,確かに,起立斉唱行為についていえば,教員が日常担当する教科等や日常従事する事務の内容それ自体には含まれず,一般的,客観的に見ても,国旗・国歌に対する儀式的行事における儀礼的所作に伴う敬意の表明の要素を含む行為であるということができるが,儀礼的行事における儀礼的所作に当たる行為を命ずるという限度を超えて,国旗・国歌が象徴する国家を尊重する態度を強制するものと解することはできない。
したがって,原告の前記主張は採用することができない。
(6)  本件通達の憲法94条,地方自治法14条1項違反の有無
原告らは,本件通達が国旗国歌法及び学習指導要領の国旗国歌条項の範囲を超え,法令に違反し,しかも条例ですらない通達によって,原告ら教員に義務を課し権利を制限したものであるから,憲法94条,地方自治法14条1項に違反し,違憲・違法である旨主張する。
しかしながら,本件通達が,卒業式等における国歌斉唱時の起立斉唱等を原告ら教職員に対して直接義務付けるものとはいえず,この点において,原告らの前記主張は失当である。また,本件通達は,国旗国歌法に基づくものではなく,大綱的基準として法的拘束力を持ち,特別活動のうちの儀式的行事について「学校生活に有意義な変化や折り目を付け,厳粛で清新な気分を味わい,新しい生活の展開への動機付けとなるような活動を行うこと。」と定め,「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」と定める学習指導要領を受けて,地方公共団体の教育委員会に認められた地教行法23条5号の権限に基づき,入学式や卒業式,あるいは周年行事などの学校生活の重要な節目において,学校生活に有意義な変化や折り目を付けるために儀式的行事を行い,これによって,児童・生徒が厳粛で清新な気分を味わい,それまでの学校生活を振り返るとともに新しい生活への出発の決意と希望の意識を高められるようにし,併せて国旗・国歌について学ぶことができるようにするという学習指導要領の定めている国旗国歌条項の趣旨を実現するため,これに適した場所的環境や式の進行を定めるものであり,学習指導要領の趣旨に沿って入学式・卒業式等を実施する上で必要かつ合理的なものとして,学校管理機関としての都教委がその権限を行使する「許容された目的」のもとに発せられているといえる。
以上に照らせば,本件通達は,国旗国歌法及び学習指導要領の国旗国歌条項の範囲を超え,法令に違反するものではなく,また,条例ではない通達によって原告ら教職員に義務を課し,権利を制限するものでもないから,本件通達の憲法94条,地方自治法14条1項違反をいう原告らの主張は失当である。
(7)  学習指導要領の国旗国歌条項の法的拘束力の有無
ア 学習指導要領は,平成19年法律第96号による改正前の学校教育法43条(同改正後の同法52条),平成19年文部科学省令第40号による改正前の同法施行規則57条の2(同改正後の同法施行規則82条)に基づいて文部科学大臣が定めて公示したものであり,それが教育における機会均等の確保と全国的な一定水準の維持という目的のために必要かつ合理的な大綱的基準として是認することができるものは,法規としての性質を有し,遵守すべき基準として法的拘束力が認められるものと解される(昭和51年大法廷判決参照)。
イ この点について国旗国歌条項をみるに,その制定趣旨については,国際化の進展に伴い,日本人としての自覚を養い,国を愛する心を育てるとともに,児童・生徒が,将来,国際社会において尊敬され,信頼される日本人として成長していくためには,国旗・国歌に対して一層正しい認識を持たせ,それらを尊重する態度を育てることは重要なことであり,卒業式等は,学校生活に有意義な変化や折り目を付け,厳粛かつ清新な雰囲気の中で,新しい生活の展開への動機付けを行い,学校,社会,国家など集団への所属感を深める上でよい機会となるものであるという意義を踏まえて定められたものと認められ(乙61),全国一律の教育が施される必要のあるものを対象としたものであるということができ,国旗国歌法に反して,一方的な理論や観念を生徒に教え込むことを強制するものとはいえない。
また,その文言も,「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする。」というものであり,卒業式等以外の場面における国旗・国歌の教育指導の内容又は方法を具体的に定めるものではなく,卒業式等の場面に関しても,国旗掲揚及び国歌斉唱による教育指導を定めるのみであることからすると,大綱的な基準を定めたものということができる。以上によれば,国旗国歌条項は,普通教育の内容及び方法について遵守すべき大綱的基準を定めるものとして,法的拘束力を有するものというべきである。
そして,前述の点は,特別支援学校(平成19年3月31日以前における養護学校)の学習指導要領についても同様に解される。
ウ 以上によれば,学習指導要領の定めている国旗国歌条項は,普通教育の内容及び方法について遵守すべき大綱的基準として法的拘束力を有するものであり,その適正実施のための通達や職務命令の発出,発令根拠となるものということができる。
(8)  本件通達及び本件各職務命令の教育基本法16条1項違反の有無
ア 教育基本法16条1項は,教育が不当な支配によってゆがめられることなく,専ら教育本来の目的に従って行われるべきことを示したものであり,地方公共団体の教育行政機関の法令に基づく行為にも適用があると解される。また,同項は,教育行政の目標を教育の目的の遂行に必要な諸条件の整備確立に置き,そのための措置を講ずるに当たっては,教育の自主性尊重の見地から,これに対する不当な支配となることのないようにすべき旨の限定を付したものであり,教育に対する行政権力の不当,不要の介入は排除されるべきであるとしても,許容される目的のために必要かつ合理的と認められるものは,教育の内容及び方法に関するものであっても,必ずしも同項の禁止するところではないものと解するのが相当である(昭和51年大法廷判決参照)。
国の教育行政機関が法律の授権に基づいて義務教育に属する普通教育の内容及び方法について遵守すべき基準を設定する場合には,子どもの教育が,教師と子どもとの間の直接の人格的接触を通じ,子どもの個性に応じて弾力的に行われなければならず,そこに教師の自由な創意と工夫の余地が要請されることのほか,教育に関する地方自治の原則(地教行法23条,32条,43条)を考慮し,教育における機会均等の確保と全国的な一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的なそれにとどめられるべきものと解されるが,地方公共団体が設置する教育委員会が教育の内容及び方法について遵守すべき基準を設定する場合には,国の教育行政機関の設けた基準の範囲内でより具体的に国の実施指針の実現を図るという地方公共団体の教育委員会の機能を考慮すれば,その管理権(地教行法23条5号)に基づき,公立学校の教育課程,学習指導,生徒指導等に関して基準を設定し,一般的な指示を与え,指導,助言を行うとともに,特に必要な場合には具体的な命令を発出することもできると解するのが相当である(昭和51年大法廷判決参照)。
イ 前記前提となる事実(3)によれば,都教委は,平成9年及び平成10年当時,都立高等学校等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施率が全国の公立高等学校の中で1番目ないし2番目に低かったことから,都立高等学校長に対し,学習指導要領に基づいた国旗・国歌の指導を行うよう指導,助言することとし,同年11月に平成10年実施指針を添付した通知を発出し,平成11年6月に都立学校等卒業式・入学式対策本部を設置し,同年10月には平成10年実施指針に基づき卒業式等を実施することを命ずる平成11年通達を発出するなどしたこと,その結果として平成12年度卒業式から国旗掲揚及び国歌斉唱の実施率は100パーセントとなったものの,国旗を掲揚した三脚を舞台袖の見えないところに置いたり,国歌斉唱時に教員が起立しないなどの実態があったこと,都教委は,このような実態を踏まえ,平成14年11月には平成11年通達に基づいて一層の改善を図るよう依頼する通知を発出するなどして指導を継続したが,平成14年度卒業式及び平成15年度入学式における国旗掲揚の方法等についての調査結果は,平成10年実施指針で定められた方針どおりに国旗掲揚等を行った都立学校は全体の半分にも満たないものであり,また,国歌斉唱時に起立をしない教員がいるなどの実態がなおあったこと,都教委は,平成15年6月に対策本部を設置し,卒業式等の適正実施について検討した結果をとりまとめ,以上の課題を解決するためには各学校で国旗掲揚及び国歌斉唱の実施についてより一層の改善,充実を図る必要があるとして,同年10月23日,校長に対し,本件通達を発出したものであることが認められる。
本件通達の発出に至る前記経緯によれば,本件通達は,学習指導要領の定めている国旗国歌条項に基づく卒業式等における国旗・国歌の指導をより一層改善,充実することを目的として発出されたものと認められる。そして,国旗国歌条項に基づく国旗・国歌の指導とは,国旗・国歌の意義を理解させ,他国の国民と相互にそれらを尊重する態度を育てることであるから,上記目的は,国際社会における主権国家の構成員として成長することが期待される児童・生徒の教育目的として許容される範囲内のものということができる。また,本件通達の発出以前の卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施状況並びに実態に照らすと,本件通達を発出する必要性も認められ,また,校長を通じて平成10年実施指針の徹底を指導したにもかかわらず,これが徹底されていない実態が広く見られたことに照らせば,これを実現するために,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施方法等も定めた通達により具体的な命令を発することが特に必要であったという事情も認めることができる。さらに,国旗掲揚及び国歌斉唱によって国旗・国歌を尊重する態度を育てることが求められている卒業式等の学校行事において,児童・生徒に範を示すべき立場にある教職員らに対して儀式的行事における儀礼的所作として国歌斉唱時に起立を求めることについては,卒業式等における国旗・国歌に関する教育指導の方法として合理性を認め得るものであるから,本件通達の内容は合理的なものといえる。
ウ 以上によれば,本件通達の目的は許容されるものであって,その内容は,当該目的のために必要かつ合理的なものであるということができる。
エ ところで,原告らは,本件通達について,愛国主義的又は全体主義的な教育を行うことを目的とする旨主張するが,本件通達が,学習指導要領の定めている国旗国歌条項に基づき卒業式等における国旗・国歌の指導をより一層改善,充実すること以上に,愛国主義的又は全体主義的な教育を行うことを目的として発出されたものであると認めるべき証拠はなく,原告らの上記主張は採用することができない。
また,原告らは,本件通達について,全国的一定水準としての国旗国歌条項よりも個別具体的な指示を出す必要性はない旨主張するが,国旗・国歌の教育指導の実態は,地域等によって異なり得るものであり,当該実態に応じて,国旗・国歌の指導をより一層改善,充実しようとすることは,地方公共団体の教育委員会としての機能・責務を果たすものということができ,本件通達を発出する必要性が認められることは,前述のとおりであるから,原告らの上記主張は採用できない。
さらに,原告らは,本件通達及び本件各職務命令が,卒業式等の実施方法に関する学校の裁量を奪い,創造的かつ弾力的な教育活動の余地や学校ごとの特殊性を反映した個別化の余地を十分に残したものとなっていないほか,制裁を伴う方法によって教育内容を事前に決定するものであり,内容介入の深さと強制の程度にかんがみれば,教育基本法16条1項の「不当な支配」に該当する旨主張するが,本件通達(本件実施指針)が定めている内容は前記前提となる事実(2)イに掲記したとおりであり,これに定められていないことについては,教職員や児童・生徒の自主的工夫の余地があることや,前述のとおり,学習指導要領の定めている国旗国歌条項に沿った教育指導を行うべき立場にある教職員に対して起立斉唱等を求めることには必要性及び合理性が認められるものであり,地方公務員である教職員は,そのような起立斉唱等を命じる職務命令に従わなければならない(地公法32条)ことからすると,採用することができない。
オ したがって,本件通達及び本件各職務命令は,教育基本法16条1項の禁止する「不当な支配」に該当するものとはいえない。
(9)  本件通達及び本件各職務命令の平成19年6月27日法律第96号による改正前の学校教育法42条(同改正後の同法51条)違反の有無
原告らは,本件通達及び本件各職務命令が,高等学校の教育の目標を定める平成19年6月27日法律第95号による改正前の学校教育法42条3号(同改正後の同法51条3号)に違反する旨主張する。しかしながら,本件通達及び本件各職務命令は,卒業式等の式典における国旗・国歌の指導が,日本人としての自覚を養い,国を愛する心を育てるとともに,児童・生徒が将来,国際社会において尊敬され,信頼される日本人として成長していくために,国旗・国歌に対する正しい認識を持たせ,それを尊重する態度を育てることを目的とするものであり,これが児童・生徒の学ぶべき普遍的・基礎的な事項であることから,卒業式等の式典における国旗・国歌の指導に限り,一定の内容を規律するものであって,前記条項に規定された「社会について,広く深い理解と健全な批判力を養い,個性の確立に努めること。」(改正後の「個性の確立に努めるとともに,社会について,広く深い理解と健全な批判力を養い,社会の発展に寄与する態度を養うこと。」)との高等学校における教育目標に反するものとはいえない。これに反する原告らの主張は,採用することができない。
(10)  本件通達の地方自治法14条2項,2条16項,2条2項違反の有無
ア 地方自治法14条2項は,「普通地方公共団体は,義務を課し,又は権利を制限するには,法令に定めがある場合を除くほか,条例によらなければならない。」と規定しているところ,本件通達は,一般的,客観的に見て式典における慣例上の儀礼的な所作としての性質を有し,かつこのように外部から認識されるものとしての卒業式等における国歌斉唱の際の起立斉唱やピアノ伴奏について定めるものであり,原告らの有する世界観を否定することと不可分に結びつくものとはいえず,人の権利の規制にかかわる内容を有するものとはいえないから,同条項に違反するものとはいえない。
イ 地方自治法2条16項は,地方公共団体は,法令に違反してその事務を処理してはならない旨を定めているところ,本件通達が,地教行法23条5号所定の管理権限に基づいて,学習指導要領の国旗国歌条項を具体化したものであり,国旗国歌法,学習指導要領の国旗国歌条項,憲法94条,地方自治法14条1項,2項に違反するものでないことは前述のとおりであるから,本件通達が同法2条16項に違反するものとはいえない。
ウ 地方自治法2条2項は,普通地方公共団体は,地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理する旨規定しているところ,地教行法23条5号に照らして,学習指導要領における国旗国歌条項の指導が普通地方公共団体の事務に含まれることは明らかであり,本件通達の地方自治法2条2項違反をいう原告らの主張は採用することができない。
(11)  本件不起立等の地公法32条,33条違反の有無
ア 校長は,校務をつかさどり,所属職員を監督する権限を有する者であるところ(平成19年法律第96号による改正前の学校教育法28条3項,51条,76条,同改正後の同法37条4項,62条,82条),校長がつかさどる校務については,特段の限定はされておらず,当該学校自体及び当該学校の所属職員が処理している仕事の全てが含まれるものと解される。そうすると,校長は,前記内容の校務を遂行するための監督権限の発動として,所属職員に対し,職務命令を発令する権限を有しており,校務の一つである卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の方法についても,当該権限の一環として,具体的な内容を伴う職務命令を発令する権限を有しているものと解され,本件各校長は,同権限に基づいて,本件各職務命令を正当に発令したものと認められる。他方,本件各職務命令が憲法19条,20条に違反し,教育基本法16条1項が禁止する「不当な支配」に当たるなど,重大かつ明白な瑕疵のある無効なものであると解すべき理由はなく,他に本件各職務命令の効力を否定すべき理由は認められない。
以上によれば,本件各職務命令は有効なものであるというべきであるから,本件各職務命令に反する原告らの本件不起立等が,上司の職務上の命令違反に該当し,地公法32条違反を構成することは明らかである。これに反する原告らの主張は,独自の見解を述べるものであって,採用することができない。
イ 原告らは,地方公務員として職務命令に従う義務を負い,かつ,生徒の範となるべき都立学校の教職員であって,学習指導要領の定めている国旗国歌条項に沿った教育指導を行うべき立場にあるにもかかわらず,児童・生徒や保護者等の参列する卒業式等において,適法であると認められる本件各職務命令に違反して本件不起立等に及んだものである以上,本件不起立等が,教職員の職の信用を傷つけ,教職員全体の不名誉となる行為に該当するものとして,地公法33条違反を構成することは明らかである。この点,本件各職務命令に関する様々な見解が存在する旨の事情や,卒業式等の式典において,進行の混乱を招く等の事態が存在しなかった旨の事情を前提としても,適法な本件各職務命令に公然と違反したこと自体について,教職員の信用を傷つけ,教職員全体の不名誉となる行為であると解すべきことに変わりはなく,前述の理が前記の事情によって左右されるものとはいえない。
ウ 以上によれば,原告らの本件不起立等は,地公法32条,33条に違反するものであることが明らかである。
(12)  本件各処分の手続的違法の有無
原告らは,本件各処分の前提としての告知及び聴聞の機会が奪われたり,不十分であったりしたなどとして,本件各処分の手続的違法を主張する。
しかしながら,地方公務員の懲戒処分に際して聴聞又は弁明の機会の付与は法律上要求されておらず(行政手続法3条1項9号),地方公務員である原告らについて,本件各処分を受けるについて事前の聴聞又は弁明の機会がなかったとしても,そのこと自体から直ちに本件各処分の手続に重大な違法があるということはできないところ,前記前提となる事実(5)によれば,原告らは,本件各処分に先立ち,少なくとも都教委による事情聴取の機会を付与されていたものと認められる。原告らは,弁護士の立会いを拒否されたことから,具体的な事情説明には至らなかった者が含まれている旨主張するが,事情聴取に当たって,弁護士の立会いを求める権利が被聴取者に保障されているわけではなく,原告らが弁護士の立会いを許容されない限り事情聴取を受けることができないことについて客観的合理的な理由があったことをうかがわせる事情もないから,上記の点をもって,告知・聴聞の機会を奪われ,あるいはこれらの機会が不十分であったなどと認めるべき事情はなく,本件各処分の手続上の違法があるということはできない。
なお,原告らは,本件各処分が極めて短期間のうちに画一的になされたものである旨等を主張するが,本件各処分は,いずれも教職員懲戒分限審査委員会に対する諮問,同委員会による答申,都教委における決定という一連の手続を経て発令されていることが認められることに,本件不起立等を外形的に現れるところにおいてみればそれ自体単純かつ類型的な行為であることも併せ考えれば,原告指摘の点において,本件各処分の手続的違法性を疑わせる事情が存在するとはいえない。
以上によれば,本件各処分について,手続的違法がある旨の原告らの主張は採用することができない。
(13)  本件各処分について処分をすること自体の裁量権の逸脱・濫用の有無
ア 地方公務員に対する懲戒処分は,地方公務員としてふさわしくない非行がある場合に,その責任を確認し,地方公務員関係の秩序を維持するために科せられる制裁である。このような懲戒制度の趣旨に照らすと,地方公務員に地公法所定の懲戒事由がある場合に,懲戒処分を行うかどうか,懲戒処分を行うときにいかなる処分を選ぶかは,平素から事情に通暁し,職員の指揮監督にあたる懲戒権者の裁量に任されていると解される。そうすると,裁判所が懲戒処分の適否を審査するに当たっては,懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し,その結果と懲戒処分とを比較してその軽重を論ずべきものではなく,懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会通念上著しく妥当を欠き,裁量権の範囲を逸脱してこれを濫用したと認められる場合に限り,違法であると判断すべきである(最高裁判所昭和47年(行ツ)第52号同52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1101頁,最高裁判所昭和59年(行ツ)第46号平成2年1月18日第一小法廷判決・民集44巻1号1頁参照)。
イ 原告らは,本件不起立等に対して懲戒処分をもって臨むことは,裁量権の逸脱・濫用に当たるとし,その具体的な理由として,まず,本件各処分の前提となる本件通達及び本件各職務命令が国家主義的価値観に基づく国旗・国歌への敬意の表明,国旗・国歌の尊重を個人の思想・良心の自由に優先させるという特異な教育観の強制に出るものである旨主張する。しかしながら,本件通達及び本件各職務命令やこれらを前提とする本件各処分がそのような目的を持つものとは認められず,適法なものというべきことは既に前記(8)において説示したとおりである。そうすると,本件不起立等は,地方公務員として職務命令に従う義務を負うとともに,学習指導要領の定めている国旗国歌条項に沿った教育指導を行うべき立場にあり,生徒の範ともなるべき都立学校の教職員によって,児童・生徒や保護者等の参列する卒業式等において,適法であると認められる本件各職務命令に違反してなされたものであるといわなければならず,その影響として,生徒に対する適切な指導が妨げられていることにも徴すると,本件不起立等をもって軽微な非違行為であるということはできないから,原告らが本件不起立等を行った動機の真摯性の程度,本件不起立等により卒業式等の進行に影響がなかったことを踏まえてもなお,その非違性が軽いものと評価することはできない。
また,原告らが主張する昇給延伸や勤勉手当の削減等,定年退職後に嘱託を希望しても採用されないなどの経済的不利益を受け得ることについては,本件各処分自体が予定し,また,本件各処分自体によって直接に生じる経済的不利益ではなく,上記の昇給等や再雇用は,これらを定める給与制度や人事制度等において,懲戒処分を受けていないこと,勤務成績が良好であることなどを要件としていることによって生じるものであるから,これらの経済的不利益をもって,本件各処分自体の適法性ないし相当性を直接左右する事情に当たるものとはいえないというべきである。
さらに,原告らは,本件各処分における目的の不当性や代替手段の不検討等,諸々の事情を挙げて,本件各処分の裁量権の逸脱・濫用を主張するが,前述したところの本件通達の発出経緯,本件通達の内容,本件各職務命令の内容等に照らせば,本件各職務命令違反による本件各処分が,原告らの主張する特異な教育観の強制を目的とするとか,原告らの教育公務員としての地位を前提として,職務遂行義務を免除する旨の代替装置を講ずべきであったなどの事情を認めることはできず,原告らの主張は採用することができない。
以上によれば,都教委が原告らに対して行った本件各処分が,懲戒処分を行ったことにつき裁量権を逸脱又は濫用したものということはできない。そうすると,本件原告らのうち,後記(14)において検討する減給処分以上の懲戒処分を受けた原告X2ら26名を除いた原告ら24名及び原告X48についてされた各戒告処分は適法なものと認められる。
(14)  本件各処分における処分量定に関する裁量権の逸脱・濫用の有無
ア 公務員に対する懲戒処分については,懲戒権者は,諸般の事情を考慮して,懲戒処分をすべきかどうか,また,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきかを決定する裁量権を有しているところ,その判断は,それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したと認められる場合には,違法となるものと解される。そして,都立学校の式典の国歌斉唱時における不起立等に対する懲戒処分として,都教委において戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについては,事案の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要となる(戒告,減給,停職等の懲戒処分を行う上での懲戒事由は,いずれの処分についても地公法29条1項が規定する3つの非違行為となる事由で共通しており,該当事由にかかわる諸般の事情(以下「情状事実」という。)の軽重により懲戒処分の種類が量定される〔甲D51,53〕。)。すなわち,減給処分は,処分それ自体によって教職員の法的地位に一定の期間における本給の一部の不支給という直接の給与上の不利益が及び,将来の昇給等にも相応の影響が及ぶ上,本件通達を踏まえて毎年度2回以上の卒業式や入学式等の式典のたびに懲戒処分が累積して加重されると短期間で反復継続的に不利益が拡大していくこと等を勘案すると,上記のような事案の性質等を踏まえた慎重な考慮の下で不起立行為等に対する懲戒において戒告を超えて減給の処分を選択することが許容されるのは,過去の非違行為による懲戒処分等の処分歴や不起立行為等の前後における態度等(以下,併せて「過去の処分歴等」という。)にかんがみ,学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であることを要すると解すべきである。そして,不起立行為等に対する懲戒において減給処分を選択することについて,上記の相当性を基礎付ける具体的な事情が認められるためには,例えば過去の1回の卒業式等における不起立行為等による懲戒処分の処分歴がある場合に,これのみをもって直ちにその相当性を基礎付けるには足りず,上記の場合に比べて過去の処分歴に係る非違行為がその内容や頻度等において規律や秩序を害する程度の相応に大きいものであるなど,過去の処分歴等が減給処分による不利益の内容との権衡を勘案してもなお規律や秩序の保持等の必要性の高さを十分に基礎付けるものであることを要するというべきである(最高裁判所平成23年(行ツ)第263号・同年(行ヒ)第294号同24年1月16日第一小法廷判決・裁判集民事239号253頁参照)。また,同様の考慮から,不起立行為等に対する懲戒において停職処分を選択することについて,前記相当性を基礎付ける具体的な事情が認められるためには,例えば過去の一,二年度に数回の卒業式等における不起立行為による懲戒処分の処分歴がある場合に,これのみをもって直ちにその相当性を基礎付けるには足りず,前記の場合に比べて過去の処分歴に係る非違行為がその内容や頻度等において規律や秩序を害する程度の相応に大きいものであるなど,過去の処分歴等が停職処分による不利益の内容との権衡を勘案してもなお規律や秩序の保持等の必要性の高さを十分に基礎付けるものであることを要するというべきである(最高裁判所平成23年(行ツ)第242号・同年(行ヒ)第265号同24年1月16日第一小法廷判決・裁判集民事239号1頁参照)。
イ 被告は,上記アの基準に即するものとして,減給以上の懲戒処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的事情として,前記第3の2(14)のとおり主張するところ,原告らは,この点に関して,本件各処分に係る「処分説明書」(甲D1の1,甲D2の1から3まで,甲D3から27までの各1,甲D28の1・2,甲D29から41までの各1,甲D42の1・2,甲D43から47までの各1,甲D48の1から3まで,甲D49及び50の各1)には処分の理由として当該処分の対象となった本件不起立等についての記載しかなく,懲戒処分を受ける職員の防御権の保障の観点等にかんがみて,本件の処分取消訴訟の審理対象となる処分の事由は同書面に記載されている処分の事由に限定されるべきことを主張する。
しかしながら,懲戒処分は,前記のとおり裁量性のある処分であり,懲戒事由に当たる非違行為を認定した上で,これにかかわる懲戒事由に該当すると認められる行為の原因,動機,性質,態様,結果,影響等のほか,当該公務員の上記行為の前後における態度,懲戒処分等の処分歴,選択する処分の他の公務員及び社会に与える影響等の諸般の情状事実も加味考慮してされるものであるところ(最高裁判所昭和47年(行ツ)第52号同52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1101頁),この情状事実については,処分説明書に必ずしも記載しなければならないものではなく,訴訟の段階で処分説明書に記載のない情状事実を主張することも許される(最高裁判所昭和53年(行ツ)第1号同59年12月18日第三小法廷判決・労働判例443号16頁)。したがって,取消訴訟において,処分行政庁が処分説明書に記載されていない事実を追加主張した場合,一般的には,これにより懲戒事由の存在を認めることはできないが,これを情状事実として考慮することは可能というべきである。なお,懲戒処分は,秩序違反行為を理由として一種の秩序罰を科するものであるから,具体的な懲戒処分の適否は,その理由とされた非違行為との関係において判断されるべきものであり,したがって,懲戒処分当時に使用者が認識していなかった非違行為は,特段の事情のない限り,当該懲戒処分の理由とされたものではないことが明らかであり,そのような非違行為の存在をもって当該懲戒処分の有効性を根拠付けることはできない。しかしながら,処分権者が懲戒処分当時に当該非違行為の存在を認識していれば,それが被処分者に対し告知されることまでは必ずしも要しないというべきであり,原告らの主張は採用することができない。
ウ 以下,上記ア,イにおいて説示した判断基準に従って,被告が前記第3の2(14)において主張する減給以上の懲戒処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的事情について検討を加えることとする。
(ア) 本件原告らのうち,減給処分以上の処分を受けた原告X2ら26名について,被告は,減給処分以上の懲戒処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的事情として,戒告処分後の再発防止研修における態度,職務命令をめぐる管理職との確執,不起立行為等に対する処分において校長の事実確認や都教委の事情聴取を拒否するなどの非協力的態度等が存在していたことを主張し,その主張に沿う事実が認められる(乙C2の1から3まで・7から20まで,乙C6,13,14及び16の各1から11まで,乙C22の1から12まで,乙C23及び24の各1から11まで,乙C25の1から16まで,乙C26及び27の各1から11まで,乙C28の10から30まで・32から39まで・42から45まで,乙C30の1から17まで,乙C31の1から11まで,乙C32の1から18まで,乙C34の1から12まで,乙C38の1から17まで,乙C40の1から11まで,乙C42の1から18まで,乙C43の1から11まで・15から18まで,乙C44の1から11まで,乙C45の1から17まで,乙C46及び47の各1から11まで,乙C48の1から17まで,乙C50の1から16まで,弁論の全趣旨)。
しかしながら,被告が指摘する原告らの再発防止研修における態度等は,懲戒事由となった本件不起立等の行為と同じ原告らの本件各職務命令に対する否定的な考え方や思いを基盤とする一連の言動と捉えられるのであり,そのような態度の中核部分として懲戒事由とされた本件不起立等の態様も,式典を物理的,積極的に妨害するような特別の要素はなく,消極的な職務命令拒否の範囲にとどまるものにすぎないことや,被告の指摘するこれらの事情が,本件各処分の理由となった本件不起立等と相まって,少なくとも本件において,学校の規律や秩序を害する程度を相応に拡大ないし深刻化させるようなものとなることを認めるべき証拠も存在しないこと,さらに,戒告処分と減給処分以上の処分との違いによって原告らに及ぼす不利益の程度の差の大きさを併せ考慮すると,被告が主張するこれらの事情が存在することのみをもっては,本件原告らのうち,減給以上の処分を受けた原告X2ら26名について,減給以上の懲戒処分を選択することが相当であると認めるには足りないというべきである。
(イ) 被告は,原告X25,同X32及び同X43につき,上記(ア)に加えるべき減給以上の懲戒処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的事情として,これらの原告らが,卒業式直前の授業等で生徒に内心の自由についての説明を行うなどし,このことで「指導部長厳重注意」を受けたことを主張し,その主張に沿う事実が認められる(乙C25の5から9まで,乙C32の5,乙C43の12から15まで,乙C53,54,弁論の全趣旨)。しかしながら,これらの事情をもってしても,減給以上の懲戒処分を選択することが相当であると認めるには足りないというべきである。
また,被告は,原告X2につき,卒業式における来賓としての挨拶が不適切として「校長指導」を受けたことをもって,上記(ア)に加えるべき減給以上の懲戒処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的事情として主張し,その主張に沿う事実が認められる(乙C2の4から6まで,弁論の全趣旨)。しかしながら,その挨拶の発言は原告X2も当事者の地位にある起立斉唱に関する施策をめぐる対立の一端を持ち込むかのような印象を与えかねないものであり,その意味で卒業式という式典では不適切なものと見ることが不合理ではないが,それ以上には,前記同様,生徒に対して積極的に不起立を指導するなどしたものでもなく,学校の規律や秩序を特段に害するものとはいえない。
(ウ) 被告は,原告X27につき,同原告の不起立行為が生徒に対する明らかな影響を与えているとし,この事情をもって,減給以上の懲戒処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的事情であるとする。
しかしながら,被告において指摘する原告X27が平成16年度入学式の後に生徒に対してした言動は,生徒に対して積極的に不起立等を指導するなどするものではなく,他に生徒に対する積極的な不起立等の指導をしたと目される言動もなく,あるいは原告X27の言動による結果として式典の進行が妨害されるなどの事態が発生した旨の証拠は存在しない。また,被告は,同原告の学年集会における発言を取り上げ,前記相当性を基礎付ける具体的事情であるとするが,当該発言をもって,学校の規律や秩序を相当程度害するものと認めるべき証拠もない。
(エ) 被告は,原告X45につき,再発防止研修時の強制反対,日の丸・君が代という内容が書かれたTシャツ着用による戒告処分歴を挙げ,同処分歴をもって前記(ア)に加えるべき前記相当性を基礎付ける具体的事情であると主張し,その主張に沿う事実として,原告X45が,再発防止研修時に当該Tシャツを着用することによって,再発防止研修の受講を含めた処置について抗議の意を示していることが認められ(乙C45の1から6まで,弁論の全趣旨),再発防止研修の実効性が上がっていないことがうかがわれるが,それ以上に再発防止研修の進行自体が具体的に妨害された旨の事情までは認められず,当該Tシャツ着用とこれに対する戒告処分歴をもって,前記相当性を基礎付ける具体的な事情に当たるものとはいえない。
(オ) 被告は,原告X28につき,平成12年度の卒業式に「日の丸・君が代強制反対」と書いたゼッケンを着用して出席し,平成13年度の入学式に「日の丸 君が代 やめてください」と書かれたブラウスを着用して出席し,同年度の卒業式に両胸の部分にそれぞれ「19条 9条」と記載されたブラウスを着用して出席したという行動歴があること,その後,平成14年度入学式において,縦約10センチメートル,横約15センチメートルの長方形の黒枠の中央部に塗りつぶした赤い丸を描いた絵柄に向かって左上から右下方向に黒色の斜線を入れた模様が右胸部分に,直径約20センチメートルのハートの絵柄に鎖を重ねた模様が背中側部分にそれぞれ描かれた白無地のブラウスの上に上着を着用するよう口頭で職務命令を受けたが,これに反して鳩やハート等の図柄が描かれていたブラウスの上に上着を着用することなく入学式に臨み,平成14年11月6日付けで戒告処分を受けたこと,平成15年度卒業式における国歌斉唱時の不起立により,平成16年4月6日付けで減給10分の1・1月,平成16年度卒業式における国歌斉唱時の不起立により,平成17年3月31日付けで減給10分の1・6月の各処分を受けたこと,本件における停職1月の処分の期間中,「校門出勤闘争」と称して東京都立b養護学校の校門前で,支援者らとともに「君が代強制反対」等と記載した表示を掲げるとともに,職員や保護者らにチラシを配布するなどしたことをもって,前記(ア)に加えるべき前記相当性を基礎付ける具体的事情として主張し,その主張に沿う事実が認められる(乙C28の1から9まで・31・40・41)。
しかしながら,これらの経緯及び懲戒処分歴に照らしても,同原告に対し,不利益の大きい停職処分の選択を基礎付けるまでの学校の規律,秩序に対する妨害行為が存在したものとはいえず,これらの事情をもってしても,停職処分の選択を基礎付けるまでの具体的事情があるとはいえない。
(カ) 減給処分以上の処分を受けた原告X2ら26名は,学校の式典における国歌斉唱時の不起立等につき,都教委の機械的累積加重処分の方針によってかかる処分を受けているところ,上記原告らの減給処分以上の本件各処分のうち,以下の懲戒処分については,前記前提となる事実(5)(別紙5「処分歴一覧表」)記載のとおり,減給処分以上の処分を受けた原告らに対する本件各処分の後に確定判決によりその処分が取り消されていることからも明らかなように,当該各処分がされた際になすべき情状事実としての評価・判断を誤っていたものというべきである(なお,処分後に生じた事情により処分時に存在した法律関係ないし法律状態が遡及的に消滅した場合において,裁判所が変動後の事実状態に基づいて事実の変動前に行われた処分を取り消す判断を行うのは,抗告訴訟が行政処分に対する事後審査の制度であるという抗告訴訟の本質に反することから,ここでは,以下の各処分の取消しによって,機械的累積加重処分の方針の前提が遡及的に失われたことを問題としているものではなく,都教委において,本件各処分をするに当たって考慮された先行する懲戒処分の情状の軽重についての評価・判断を誤っていたというべきことを指摘するものである。)。
① 原告X28に対する平成16年4月6日付け減給10分の1・1月の処分
② 原告X28に対する平成17年3月31日付け減給10分の1・6月の処分
③ 原告X30に対する平成18年3月31日付け減給10分の1・1月の処分
④ 原告X32に対する平成18年3月31日付け減給10分の1・1月の処分
⑤ 原告X38に対する平成17年5月27日付け減給10分の1・1月の処分
⑥ 原告X43に対する平成17年3月31日付け減給10分の1・1月の処分
⑦ 原告X50に対する平成18年5月26日付け減給10分の1・1月の処分
(キ) これらの事情を総合考慮しても,本件原告らに対する本件各処分のうち,減給処分以上の処分を内容とする懲戒処分については,当該処分によって課される不利益との権衡にかんがみると,当該処分を選択することについての相当性を基礎付ける具体的事情は認めることができないのであって,処分量定に関する裁量権の逸脱・濫用の違法があるというべきであって,取消しを免れない。
エ ところで,原告らは,本件規則改訂により,戒告処分に伴う昇給及び勤勉手当に係る不利益の程度が,本件規則改訂前における減給処分に伴うこれらの不利益の程度よりも大きなものとなり,当該事情にかんがみれば,本件規則改訂後の本件各処分においては,戒告処分も含めて裁量権の逸脱・濫用が認められるべき旨主張する。
確かに,本件規則改訂前は,戒告・減給処分を受けた者については,昇給を三月延伸するとされていたところ,本件規則改訂後においては,昇給が毎年1回4月のみとされ,その際,通常に勤務していれば四号給昇給のところ,戒告・減給処分を受けた場合には二号給減となったために二号給しか昇給せず,昇給幅が半分になる結果として,昇給の六月延伸と同様の状態となったこと,また,本件規則改訂前は,戒告処分を受けた者については勤勉手当10パーセント減額,減給処分を受けた者については勤勉手当15パーセント減額とされていたが,本件規則改訂により,戒告処分を受けた者については勤勉手当20パーセント減額,減給処分を受けた者については勤勉手当35パーセント減額とされたこと,その結果,本件規則改訂後においては,戒告処分により,昇給及び勤勉手当について,本件規則改訂前に減給処分を受けた場合よりも大きな不利益を受けていることが認められる(甲C51,52,甲D58)。
しかしながら,これらの昇給及び勤勉手当の不利益は,戒告処分自体による不利益ではなく,昇給及び勤勉手当について定めた規則上の取扱いによるものであり,当該事情が,戒告処分の選択に係る都教委の裁量権の逸脱・濫用を基礎付けるものとはいえないことは,本件規則改訂前と同様であり,これに反する原告らの前記主張は採用することができない。
(15)  原告らの国家賠償法1条1項に基づく慰謝料等請求権の有無
原告らは,違法な本件各処分を受けたことにより精神的苦痛を被ったとして,これに対する国家賠償法1条1項に基づく慰謝料の支払を求めている。
しかしながら,本件各処分のうち,戒告処分については,前述のとおりこれを違法であると認めることはできない。また,減給処分以上の本件各処分については,前述のとおり,処分量定について裁量権の逸脱・濫用の違法があり,取り消されるべきものと認められるが,前記認定のとおり,本件通達及び本件各職務命令が違法とはいえないこと,都教委は,処分量定に関する機械的累積加重処分の方針に従って減給以上の各処分をしたものであるところ,処分量定の加重を定めた上記方針自体が不当なものとはいえないこと,前記(14)イ(カ)のとおり被告の機械的累積加重処分の方針の基礎となった過去の懲戒処分が実際に取り消され,それらについての処分量定に係る評価・判断に問題のあることを確実に認識したのは本件各処分のされた後であると考えられること等からすれば,減給処分以上の本件各処分を行った時点において,都教委がこれらの本件各処分を選択したことについて,職務上尽くすべき注意義務を怠ったものと評価することは相当ではなく,この点について都教委に国家賠償法上の過失があったとは認められない。
以上によれば,原告らの慰謝料請求に係る主張は理由がなく,弁護士費用相当の損害賠償請求に係る主張も理由がない。
第5  結論
よって,原告らの請求は主文第1項記載の限度で理由があるからその限度で認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 佐々木宗啓 裁判官 湯川克彦 裁判官 戸畑賢太)

 

別紙1
当事者等目録
東京都武蔵村山市〈以下省略〉
原告 X1
東京都武蔵野市〈以下省略〉
原告 X2
茨城県稲敷郡〈以下省略〉
原告 X3
東京都小金井市〈以下省略〉
原告 X4
東京都日野市〈以下省略〉
原告 X5
東京都小平市〈以下省略〉
原告 X6
東京都小平市〈以下省略〉
原告 X7
千葉県佐倉市〈以下省略〉
原告 X8
東京都西東京市〈以下省略〉
原告 X9
東京都杉並区〈以下省略〉
原告 X10
東京都昭島市〈以下省略〉
原告 X11
横浜市〈以下省略〉
原告 X12
東京都杉並区〈以下省略〉
原告 X13
東京都国分寺市〈以下省略〉
原告 X14
埼玉県三郷市〈以下省略〉
原告 X15
東京都練馬区〈以下省略〉
原告 X16
埼玉県加須市〈以下省略〉
原告 X17
東京都府中市〈以下省略〉
原告 X18
東京都板橋区〈以下省略〉
原告 X19
東京都多摩市〈以下省略〉
原告 X20
東京都足立区〈以下省略〉
原告 X21
東京都三鷹市〈以下省略〉
原告 X22
東京都杉並区〈以下省略〉
原告 X23
東京都北区〈以下省略〉
原告 X24
神戸市灘区〈以下省略〉
原告 X25
横浜市磯子区〈以下省略〉
原告 X26
東京都小金井市〈以下省略〉
原告 X27
東京都西東京市〈以下省略〉
原告 X28
東京都世田谷区〈以下省略〉
原告 X29
東京都調布市〈以下省略〉
原告 X30
東京都板橋区〈以下省略〉
原告 X31
横浜市〈以下省略〉
原告 X32
川崎市〈以下省略〉
原告 X33
東京都練馬区〈以下省略〉
原告 X34
埼玉県越谷市〈以下省略〉
原告 X35
茨城県牛久市〈以下省略〉
原告 X36
東京都練馬区〈以下省略〉
原告 X37
東京都立川市〈以下省略〉
原告 X38
東京都練馬区〈以下省略〉
原告 X39
東京都中野区〈以下省略〉
原告 X40
東京都品川区〈以下省略〉
原告 X41
川崎市〈以下省略〉
原告 X42
東京都江戸川区〈以下省略〉
原告 X43
さいたま市〈以下省略〉
原告 X44
東京都立川市〈以下省略〉
原告 X45
東京都多摩市〈以下省略〉
原告 X46
東京都台東区〈以下省略〉
原告 X47
東京都東大和市〈以下省略〉
原告 X48
相模原市〈以下省略〉
原告 X49
川崎市〈以下省略〉
原告 X50
原告ら訴訟代理人弁護士 山田由紀子
立松彰
山田安太郎
植竹和弘
渡辺寛之
家頭恵
富吉久
大西欣也
加藤寛之
松田和哲
白井劍
平松真二郎
金井知明
同訴訟復代理人弁護士 市川怜美
中間陽子
兒島英樹
宮西宏和
田中重仁
田口博章
林真由美
石井庸久
柿沼真利
東京都新宿区〈以下省略〉
被告 東京都
(処分取消しの訴えにつき)
同代表者兼処分行政庁 東京都教育委員会
上記委員会代表者委員長 A
同訴訟代理人弁護士 松崎勝
細田良一
津村政男
中町誠
同指定代理人 土田立夫
小関浩志
浅野理在子
中島啓泰
寺島翔太
(損害賠償の訴えにつき)
同代表者知事 B
同訴訟代理人弁護士 松崎勝
細田良一
津村政男
中町誠
以上

〈以下省略〉

 

別紙

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政治と選挙の裁判例「政党 公認 候補者 公募 ポスター」に関する裁判例一覧
(1)平成28年 6月28日 東京地裁 平26(行ウ)603号 難民の認定をしない処分等取消請求事件
(2)平成28年 6月22日 仙台高裁 平27(行コ)2号・平27(行コ)9号 政務調査費返還履行等請求控訴、同附帯控訴事件
(3)平成28年 6月22日 山口地裁 平26(行ウ)7号 不当利得返還請求住民訴訟事件
(4)平成28年 6月 8日 大阪地裁 平25(行ウ)101号 違法支出金返還請求事件(住民訴訟)
(5)平成28年 5月31日 東京地裁 平26(行ウ)407号・平27(行ウ)22号 難民の認定をしない処分に係る決定取消等請求事件、訴えの追加的併合事件
(6)平成28年 5月31日 東京地裁 平26(行ウ)221号 難民の認定をしない処分取消請求事件
(7)平成28年 5月25日 東京地裁 平27(行ウ)458号 難民不認定処分取消請求事件
(8)平成28年 5月17日 山形地裁 平23(行ウ)2号 山形県議会議員政務調査費返還等請求事件
(9)平成28年 4月28日 大阪高裁 平27(行コ)156号 損害賠償等請求控訴事件
(10)平成28年 4月27日 岡山地裁 平25(行ウ)12号 不当利得返還請求事件
(11)平成28年 4月22日 新潟地裁 平25(行ウ)7号 政務調査費返還履行請求事件
(12)平成28年 4月19日 大阪地裁 平27(ワ)5302号 損害賠償等請求事件
(13)平成28年 4月15日 秋田地裁 平27(行ウ)2号 損害賠償等義務付け等請求事件
(14)平成28年 4月13日 福井地裁 平25(行ウ)2号 2011年度福井県議会政務調査費人件費等返還請求事件
(15)平成28年 3月25日 大阪高裁 平27(ネ)1608号・平27(ネ)2427号 損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件
(16)平成28年 3月22日 札幌高裁 平27(行コ)11号 政務調査費返還履行請求控訴事件
(17)平成28年 3月22日 東京地裁 平26(行ウ)582号 政務活動費返還請求事件
(18)平成28年 3月15日 大阪地裁 平27(ワ)3109号 損害賠償等請求事件
(19)平成28年 3月11日 東京地裁 平26(行ウ)133号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(20)平成28年 3月11日 東京地裁 平25(行ウ)677号 政務調査研究費返還請求事件
(21)昭和25年 9月 5日 秋田地裁 昭25(ヨ)71号 仮処分申請事件 〔日通秋田支店スト事件〕
(22)昭和25年 9月 1日 広島高裁岡山支部 事件番号不詳 昭和22年勅令第1号違反被告事件
(23)昭和25年 8月30日 福岡高裁 昭24(ナ)6号 教育委員会の委員の当選の効力に関する異議事件
(24)昭和25年 7月19日 福岡高裁 昭24(つ)1580号
(25)昭和25年 7月 3日 広島高裁松江支部 昭25(う)28号 暴力行為等処罰に関する法律違反被告事件
(26)昭和25年 6月27日 福岡高裁 事件番号不詳
(27)昭和25年 6月17日 札幌高裁 事件番号不詳 公務執行妨害暴力行為等処罰に関する法律違反被告事件
(28)昭和25年 6月15日 東京地裁 昭25(ヨ)3号 仮処分申請事件 〔池貝鉄工整理解雇事件〕
(29)昭和25年 6月15日 青森地裁 昭25(行)4号 指名推選無効確認等請求事件
(30)昭和25年 6月 6日 東京高裁 事件番号不詳
(31)昭和25年 5月24日 東京高裁 事件番号不詳 昭和22年勅令第1号違反被告事件
(32)昭和25年 5月18日 長崎地裁 昭25(ワ)40号 事業区域内立入禁止等請求事件 〔松島炭鉱懲戒解雇事件〕
(33)昭和25年 5月16日 名古屋高裁 昭23(ナ)2号・昭23(ナ)3号 議会解散賛否投票の効力に関する訴願裁決に対する訴訟併合事件
(34)昭和25年 5月13日 大阪高裁 事件番号不詳 収賄等被告事件
(35)昭和25年 4月27日 東京高裁 事件番号不詳 経済関係罰則の整備に関する法律違反、公職に関する就職禁止退官退職等に関する勅令違反、贈賄、収賄各被告事件
(36)昭和25年 4月 8日 福岡地裁 昭24(ヨ)36号・昭24(ヨ)37号・昭24(ヨ)44号・昭24(ヨ)85号 仮処分申請事件 〔西鉄スト事件〕
(37)昭和25年 2月 7日 福岡高裁 昭24(つ)1072号
(38)昭和24年11月29日 札幌高裁 事件番号不詳 雇傭契約解除無効確認俸給支払請求控訴事件〔十勝女子商業事件〕
(39)昭和24年11月17日 最高裁第一小法廷 昭24(れ)2339号 昭和二二年勅令第一号違反被告事件
(40)昭和24年11月15日 東京高裁 昭24(ナ)10号 衆議院議員選挙無効事件
(41)平成27年11月17日 東京地裁 平26(行ウ)356号 難民不認定処分取消請求事件
(42)平成27年11月12日 名古屋地裁 平26(行ウ)136号 難民不認定処分取消等請求事件
(43)平成27年10月29日 東京地裁 平23(行ウ)738号・平24(行ウ)174号・平24(行ウ)249号・平24(行ウ)250号・平24(行ウ)251号・平24(行ウ)252号・平24(行ウ)253号・平24(行ウ)254号・平24(行ウ)255号・平24(行ウ)256号・平24(行ウ)258号・平24(行ウ)260号・平24(行ウ)262号・平24(行ウ)263号・平24(行ウ)265号・平25(行ウ)94号・平25(行ウ)336号 原爆症認定申請却下処分取消請求事件
(44)平成27年10月27日 岡山地裁 平24(行ウ)15号 不当利得返還請求事件
(45)平成27年10月16日 東京地裁 平26(行ウ)131号 難民不認定処分取消請求事件
(46)平成27年10月15日 大阪地裁 平25(行ウ)40号 損害賠償等請求事件(住民訴訟)
(47)平成27年10月14日 東京地裁 平26(ワ)9411号 損害賠償等請求事件
(48)平成27年10月13日 大阪高裁 平27(行コ)2号 会場使用許可処分義務付等、会場使用許可処分の義務付け等請求控訴事件
(49)平成27年10月13日 東京地裁 平26(行ウ)89号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(50)平成27年10月 6日 東京地裁 平26(行ウ)269号 難民不認定処分取消等請求事件
(51)平成27年10月 5日 大阪地裁 平26(ワ)2019号 損害賠償請求事件
(52)平成27年 9月28日 名古屋地裁 平26(行ウ)148号 議場における発言取消命令取消請求事件
(53)平成27年 9月15日 東京地裁 平27(行ウ)227号・平27(行ウ)231号 帰化申請不許可処分無効確認等請求事件
(54)平成27年 9月11日 東京地裁 平25(行ウ)465号 難民の認定をしない処分取消請求事件
(55)平成27年 9月10日 知財高裁 平27(ネ)10009号 書籍出版差止等請求控訴事件
(56)平成27年 9月10日 東京地裁 平27(行ウ)232号 帰化申請不許可処分無効確認等請求事件
(57)平成27年 9月10日 東京地裁 平27(行ウ)228号 帰化申請不許可処分無効確認等請求事件
(58)平成27年 9月 2日 東京地裁 平27(行ウ)226号・平27(行ウ)230号・平27(行ウ)234号 帰化申請不許可処分無効確認等請求事件
(59)平成27年 9月 2日 東京地裁 平26(行ウ)139号 難民不認定処分取消請求事件
(60)平成27年 8月28日 東京地裁 平25(行ウ)237号・平25(行ウ)462号・平26(行ウ)285号 難民認定等請求事件、訴えの追加的併合申立事件
(61)平成27年 8月 5日 東京地裁 平23(ワ)36772号 損害賠償等請求事件
(62)平成27年 7月30日 東京地裁 平27(行ウ)225号・平27(行ウ)229号・平27(行ウ)233号 帰化申請不許可処分無効確認等請求事件
(63)平成27年 7月17日 東京地裁 平25(行ウ)699号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(64)平成27年 7月10日 東京地裁 平24(行ウ)873号 難民の認定をしない処分取消請求事件
(65)平成27年 7月 3日 東京地裁 平26(行ウ)13号 難民不認定処分取消請求事件
(66)平成27年 6月26日 大阪高裁 平26(行コ)163号 建物使用不許可処分取消等・建物明渡・使用不許可処分取消等請求控訴事件
(67)平成27年 6月24日 宇都宮地裁 平22(行ウ)8号 政務調査費返還履行請求事件
(68)平成27年 6月17日 大阪地裁 平26(行ウ)117号 公金支出金返還請求事件
(69)平成27年 6月12日 札幌高裁 平26(行コ)12号 政務調査費返還履行請求控訴事件
(70)平成27年 6月10日 知財高裁 平27(行コ)10001号 特許庁長官方式指令無効確認請求控訴事件
(71)平成27年 6月 1日 大阪地裁 平27(ヨ)290号 投稿動画削除等仮処分命令申立事件
(72)平成27年 5月28日 東京地裁 平23(ワ)21209号 株主代表訴訟事件
(73)平成27年 5月26日 札幌地裁 平21(行ウ)36号 政務調査費返還履行請求事件
(74)平成27年 4月28日 広島高裁岡山支部 平26(行ケ)1号 選挙無効請求事件
(75)平成27年 4月16日 東京地裁 平25(行ウ)803号 帰化申請不許可処分無効確認等請求事件
(76)平成27年 4月 8日 大阪地裁 平24(行ウ)129号 政務調査費返還請求事件
(77)平成27年 3月27日 徳島地裁 平25(ワ)282号 損害賠償請求事件
(78)平成27年 3月26日 大阪高裁 平26(行ケ)5号 選挙無効請求事件
(79)平成27年 3月25日 東京高裁 平26(行ケ)24号 選挙無効請求事件
(80)平成27年 3月25日 広島高裁松江支部 平26(行ケ)1号 選挙無効請求事件
(81)平成27年 3月25日 東京地裁 平25(行ウ)187号・平25(行ウ)194号 難民不認定処分取消等請求事件
(82)平成27年 3月24日 東京地裁 平26(ワ)9407号 損害賠償等請求事件
(83)平成27年 3月23日 大阪高裁 平26(行ケ)4号 選挙無効請求事件
(84)平成27年 3月20日 東京地裁 平26(行ウ)242号・平26(行ウ)447号 退去強制令書発付処分等取消請求事件、追加的併合事件
(85)平成27年 3月12日 東京地裁 平25(行ウ)596号・平25(行ウ)623号・平25(行ウ)624号・平26(行ウ)492号・平26(行ウ)505号・平26(行ウ)506号 帰化許可申請不許可処分取消請求事件、訴えの追加的併合事件
(86)平成27年 3月 6日 東京地裁 平26(行ウ)529号 特許庁長官方式指令無効確認請求事件
(87)平成27年 2月19日 横浜地裁 平25(ワ)680号 損害賠償請求事件
(88)平成27年 2月 6日 東京地裁 平26(行ウ)74号・平26(行ウ)76号 帰化許可処分の義務付け等請求事件
(89)平成27年 1月16日 東京地裁 平22(行ウ)94号 懲戒処分取消等請求事件
(90)平成27年 1月13日 長崎地裁 平24(ワ)530号 政務調査費返還請求事件
(91)平成26年12月11日 東京地裁 平25(行ウ)247号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(92)平成26年11月27日 奈良地裁 平25(行ウ)15号 奈良県議会派並びに同議会議員に係る不当利得返還請求事件
(93)平成26年11月27日 仙台地裁 平22(行ウ)13号 政務調査費返還履行等請求事件
(94)平成26年11月26日 最高裁大法廷 平26(行ツ)78号・平26(行ツ)79号 選挙無効請求事件
(95)平成26年11月26日 最高裁大法廷 平26(行ツ)155号・平26(行ツ)156号 選挙無効請求事件 〔参議院議員定数訴訟〕
(96)平成26年11月26日 大阪地裁 平24(行ウ)164号・平25(行ウ)156号 会場使用許可処分義務付等請求事件(第1事件)、会場使用許可処分の義務付け等請求事件(第2事件)
(97)平成26年10月31日 東京地裁 平25(行ウ)274号 難民不認定処分取消請求事件
(98)平成26年10月30日 東京地裁 平24(行ウ)347号・平24(行ウ)501号・平24(行ウ)502号 給与等請求事件
(99)平成26年10月24日 和歌山地裁 平23(行ウ)7号 政務調査費違法支出金返還請求事件
(100)平成26年10月 8日 東京地裁 平25(行ウ)589号 難民不認定処分取消請求事件


政治と選挙の裁判例(裁判例リスト)

■「選挙 コンサルタント」に関する裁判例一覧【1-101】
https://www.senkyo.win/hanrei-senkyo-consultant/

■「選挙 立候補」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-senkyo-rikkouho/

■「政治活動 選挙運動」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seijikatsudou-senkyoundou/

■「公職選挙法 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kousyokusenkyohou-poster/

■「選挙 ビラ チラシ」に関する裁判例一覧【1~49】
https://www.senkyo.win/hanrei-senkyo-bira-chirashi/

■「政務活動費 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seimu-katsudouhi-poster/

■「演説会 告知 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/senkyo-seiji-enzetsukai-kokuchi-poster/

■「公職選挙法 ポスター 掲示交渉」に関する裁判例一覧【101~210】
https://www.senkyo.win/kousyokusenkyohou-negotiate-put-up-poster/

■「政治ポスター貼り 公職選挙法 解釈」に関する裁判例一覧【211~327】
https://www.senkyo.win/political-poster-kousyokusenkyohou-explanation/

■「公職選挙法」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kousyokusenkyohou/

■「選挙 公報 広報 ポスター ビラ」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/senkyo-kouhou-poster-bira/

■「選挙妨害」に関する裁判例一覧【1~90】
https://www.senkyo.win/hanrei-senkyo-bougai-poster/

■「二連(三連)ポスター 政党 公認 候補者」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-2ren-3ren-poster-political-party-official-candidate/

■「個人(単独)ポスター 政党 公認 候補者」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kojin-tandoku-poster-political-party-official-candidate/

■「政党 公認 候補者 公募 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-political-party-official-candidate-koubo-poster/

■「告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター 政党 議員 政治家」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kokuji-kouji-kouei-kousetsu-keijiban-poster-political-party-politician/

■「告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター 政党 公報 広報」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kokuji-kouji-kouei-kousetsu-keijiban-poster-political-party-campaign-bulletin-gazette-public-relations/

■「国政政党 地域政党 二連(三連)ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kokusei-seitou-chiiki-seitou-2ren-3ren-poster/

■「国政政党 地域政党 個人(単独)ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kokusei-seitou-chiiki-seitou-kojin-tandoku-poster/

■「公認 候補者 公募 ポスター 国政政党 地域政党」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-official-candidate-koubo-poster-kokusei-seitou-chiiki-seitou/

■「政治団体 公認 候補者 告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-political-organization-official-candidate-kokuji-kouji-kouei-kousetsu-keijiban-poster/

■「政治団体 後援会 選挙事務所 候補者 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-political-organization-kouenkai-senkyo-jimusho-official-candidate-poster/

■「政党 衆議院議員 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-shuugiin-giin-poster/

■「政党 参議院議員 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-sangiin-giin-poster/

■「政党 地方議員 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-chihou-giin-poster/

■「政党 代議士 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-daigishi-giin-poster/

■「政党 ポスター貼り ボランティア」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-poster-hari-volunteer/

■「政党 党員 入党 入会 獲得 募集 代行」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-touin-nyuutou-nyuukai-kakutoku-boshuu-daikou/

■「政治団体 党員 入党 入会 獲得 募集 代行」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seiji-dantai-nyuutou-nyuukai-kakutoku-boshuu-daikou/

■「後援会 入会 募集 獲得 代行」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kouenkai-nyuukai-boshuu-kakutoku-daikou/


■選挙の種類一覧
選挙①【衆議院議員総選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙②【参議院議員通常選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙③【一般選挙(地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙④【特別選挙(国政選挙|地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)


【資料】政治活動用事前街頭ポスター新規掲示交渉実績一覧【PRドットウィン!】選挙,ポスター,貼り,代行,ポスター貼り,業者,選挙,ポスター,貼り,業者,ポスター,貼り,依頼,タウン,ポスター,ポスター,貼る,許可,ポスター,貼ってもらう,頼み方,ポスター,貼れる場所,ポスター,貼付,街,貼り,ポスター,政治活動ポスター,演説会,告知,選挙ポスター,イラスト,選挙ポスター,画像,明るい選挙ポスター,書き方,明るい選挙ポスター,東京,中学生,選挙ポスター,デザイン


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