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「政治活動 選挙運動」に関する裁判例(5)平成30年 2月21日 東京地裁 平28(行ウ)6号 労働委員会救済命令取消請求事件

「政治活動 選挙運動」に関する裁判例(5)平成30年 2月21日 東京地裁 平28(行ウ)6号 労働委員会救済命令取消請求事件

裁判年月日  平成30年 2月21日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(行ウ)6号
事件名  労働委員会救済命令取消請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2018WLJPCA02216005

要旨
◆チェック・オフ制度の廃止が支配介入に該当すると判断された例

裁判経過
控訴審 平成30年 8月30日 東京高裁 判決 平30(行コ)111号 労働委員会救済命令取消請求控訴事件

評釈
山本圭子・中央労働時報 1238号19頁
在間秀和・労働法律旬報 1924号52頁

参照条文
労働組合法7条3項
労働基準法24条1項

裁判年月日  平成30年 2月21日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(行ウ)6号
事件名  労働委員会救済命令取消請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2018WLJPCA02216005

大阪市〈以下省略〉
原告 大阪市
同代表者大阪市長 A
(代表権:補助参加人Z4労働組合以外の関係)
同代表者大阪市水道局長 B
(代表権:補助参加人Z4労働組合の関係)
同訴訟代理人弁護士 Q1
同 Q2
同 Q3
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 国
同代表者法務大臣 C
処分行政庁 中央労働委員会
同代表者会長 D
同指定代理人 W1
同 W2
同 W3
同 W4
同 W5
大阪市〈以下省略〉
被告補助参加人 Z1労働組合
同代表者執行委員長 E
大阪市〈以下省略〉
被告補助参加人 Z2労働組合
同代表者執行委員長 F
大阪市〈以下省略〉
被告補助参加人 Z3労働組合
同代表者執行委員長 G
大阪市〈以下省略〉
被告補助参加人 Z4労働組合
同代表者執行委員長 H
上記4名訴訟代理人弁護士 Q4
同 Q5
同 Q6
同 Q7
同 Q8
同 Q9
同 Q10
同 Q11
同 Q12

 

 

主文

1  原告の請求を棄却する。
2  訴訟費用は,補助参加によって生じた費用を含め,原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
中央労働委員会が中労委平成26年(不再)第15号及び同第16号併合事件について平成27年11月18日付けでした命令をいずれも取り消す。
第2  事案の概要
本件は,原告が被告補助参加人Z1労働組合(以下「補助参加人Z1労」という。),被告補助参加人Z2労働組合(以下「補助参加人Z2労」という。),被告補助参加人Z3労働組合(以下「補助参加人Z3労」という。)及び被告補助参加人Z4労働組合(以下「補助参加人Z4労」といい,この4組合を併せて「補助参加人ら」という。)に対し,組合費を職員給与から天引きするチェック・オフ制度を廃止する旨を通告したこと(以下,この通告を「本件通告」という。)が支配介入の不当労働行為に該当するとして補助参加人らが行った救済申立てに関し,中央労働委員会(以下「中労委」という。)が,本件通告が支配介入の不当労働行為に該当すると判断して労働委員会認定型の文書手交を命じる再審査命令をしたため,これを不服とする原告が,再審査命令の取消しを求めた事案である。
1  前提事実(当事者間に争いがないか,後掲各証拠等により容易に認定できる事実。証拠の掲記のない事実は,当事者間に争いがない。)
(1)  当事者等
ア 原告は,地方自治法に基づく普通地方公共団体であり,地方自治法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律に基づく行政委員会として,大阪市教育委員会(以下「市教委」という。)を,地方公営企業法及び大阪市水道事業及び工業用水道事業の設置等に関する条例の規定に基づき,水道事業及び工業用水道事業を行うための公営企業として大阪市水道局(以下「水道局」という。)を設置している。
イ 補助参加人らは,いずれも,地方公営企業等の労働関係に関する法律が適用又は準用される職員を組織する労働組合である。また,補助参加人らは,a労働組合連合会(以下「a労連」という。)の構成団体である。
ウ I市長(以下「I市長」という。)は,平成23年11月27日に実施された原告の市長選挙において当選し,同年12月19日に原告の市長に就任した者である。J市長(以下「J市長」という。)は,I市長の一代前の原告の市長である。
(2)  本件通告の経緯等
ア 補助参加人Z1労との関係
(ア) 原告と補助参加人Z1労は,昭和32年8月16日,労働基準法24条に基づき,共済組合掛金等のほか,補助参加人Z1労の組合費を職員の給与から控除できること,協定の有効期間を締結の日から3年とし,有効期間の終了前に原告又は補助参加人Z1労が相手方に協定の改定について意思表示をしないときは,毎回有効期間を1年延長すること等を内容とする協定を締結した。その後,同協定は,給与から控除される費目に修正を加える形で合意改定されたり,自動更新されるなどして,これに基づき,補助参加人Z1労の組合員に対するチェック・オフ(組合費の給与天引き)が継続されてきた。(乙Aa1の1,乙Aa1の8,弁論の全趣旨)
(イ) 原告は,平成24年2月29日,補助参加人Z1労に対し,平成19年4月1日付け「給与の一部控除に関する協定書」から組合費の項目を削除し,組合費の控除を行うのが平成25年3月31日までであるとする覚書を別途締結する旨の通告(本件通告)を行った。(乙Aa1の2ないし4)
イ 補助参加人Z2労との関係
(ア) 市教委と補助参加人Z2労は,昭和55年4月1日,補助参加人Z2労の組合員に関し,その給与から組合費を控除することができること,協定の有効期間を締結日から1年とするが,有効期間の満了前に原告又は補助参加人Z2労が相手方に解約の意思表示をしないときは有効期間が毎回1年延長されること等を内容とする協定を締結し,併せてその細部事項を合意した。その後,同協定は,平成23年まで自動更新され,これに基づき,補助参加人Z2労の組合員に対するチェック・オフが継続されてきた。(乙Aa2の1,乙Aa2の2,弁論の全趣旨)
(イ) 市教委は,平成24年3月6日,補助参加人Z2労に対し,昭和55年4月1日付け「協定書」を継続せず組合費控除を廃止すること,補助参加人Z2労の準備期間として1年間の猶予期間を設け,平成25年3月31日までの控除とする覚書を締結した上,組合費以外の各種控除金の控除に係る協定書を新たに締結する旨の通告(本件通告)を行った。(乙Aa2の3ないし5,弁論の全趣旨)
ウ 補助参加人Z3労との関係
(ア) 市教委と補助参加人Z3労は,昭和55年4月1日,補助参加人Z3労の組合員に関し,その給与から組合費を控除することができること,協定の有効期間を締結日から1年とすること,有効期間の満了前に原告又は補助参加人Z3労が相手方に解約の意思表示をしないときは有効期間が毎回1年延長されること等を内容とする協定を締結し,併せてその細部事項を合意した。その後,同協定は,平成23年まで自動更新され,これに基づき,補助参加人Z3労の組合員に対するチェック・オフが継続されてきた。(乙Aa3の1,乙Aa3の2,弁論の全趣旨)
(イ) 市教委は,平成24年3月9日,補助参加人Z3労に対し,昭和55年4月1日付け「協定書」を継続せず組合費控除を廃止すること,補助参加人Z3労の準備期間として1年間の猶予期間を設け,平成25年3月31日までの控除とする覚書を締結した上,組合費以外の各種控除金の控除に係る協定書を新たに締結する旨の通告(本件通告)を行った。(乙Aa3の3ないし5,弁論の全趣旨)
エ 補助参加人Z4労との関係
(ア) 水道局と補助参加人Z4労は,昭和40年7月31日,労働基準法24条に基づき,公舎等の賃貸料等のほか,補助参加人Z4労の組合費を職員の給与から控除できること,協定の有効期間を締結の日から1年とし,期間満了の日から1か月以内に原告又は補助参加人Z4労が相手方に協定の変更の申入れをしないときは,協定が自動更新されること等を内容とする協定を締結した。その後,同協定は,平成23年まで自動更新され,これに基づき,補助参加人Z4労の組合員に対するチェック・オフが継続されてきた。(乙Ab1,弁論の全趣旨)
(イ) 水道局は,平成24年2月29日,補助参加人Z4労に対し,昭和40年7月31日付け「賃金の一部控除に関する協定」から組合費の項目を削除するなどの改定を行い,組合費の控除については協議の上有効期限を平成25年3月31日までとする覚書を別途締結する旨の通告(本件通告)を行った。(乙Ab2ないし5,弁論の全趣旨)
(3)  大阪市労使関係に関する条例の制定等
大阪市議会は,平成24年7月27日の本会議において,大阪市労使関係に関する条例(平成24年大阪市条例第79号。以下「労使関係条例」という。)を可決し,同条例は,同年8月1日から施行された。同条例は,労働組合等と原告当局との交渉の対象となる事項の範囲等を定めることにより,適正かつ健全な労使関係の確保を図り,市政に対する市民の信頼を確保することをその目的とし(1条),労働組合等との交渉対象事項と交渉対象とすることができない管理運営事項などについて定めるほか(3条,4条),その12条において,「労働組合等の組合活動に関する便宜の供与は,行わないものとする。」と定めている。(甲4)
(4)  職員団体との間におけるチェック・オフの廃止及びそれに関する訴訟の経緯
ア 原告の職員団体(地方公務員法52条以下に規定する団体。同法55条2項により団体協約締結権を有しない。)に属する職員については,従前から職員の給与に関する条例(昭和31年大阪市条例第29号)によりチェック・オフが行われていたところ,大阪市議会は,J市長市政下の平成20年3月28日の本会議において,職員の給与に関する条例の一部を改正する条例(平成20年大阪市条例第63号)を可決し,J市長は,同年4月1日,同条例の施行日を平成21年4月1日として公布した(以下,同条例を「本件チェック・オフ廃止条例」という。)。これにより,職員団体の構成員に対して行われてきたチェック・オフが廃止された(甲5,14,弁論の全趣旨)。
イ 原告の職員団体であるb労働組合(以下「b労」という。)及びその組合員らは,平成20年9月,原告に対し,本件チェック・オフ廃止条例により憲法28条で保障された団結権を侵害されたなどとして,同条例の制定処分ないし公布処分の取消ないし同条例の無効確認を求めるとともに,国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を請求する訴訟を提起した(大阪地方裁判所平成20年(行ウ)第176号チェック・オフ廃止条例処分取消等請求事件。以下「本件チェック・オフ廃止条例訴訟」という。)。
同裁判所は,平成23年8月24日,上記訴えのうち,本件チェック・オフ廃止条例制定処分及び公布処分の取消しを求める訴え及び同条例の無効確認を求める訴えを却下し,上記損害賠償請求をいずれも棄却する旨の判決を言い渡した。b労及びその組合員らは,同判決に対し控訴したが,大阪高等裁判所は,平成24年4月26日,控訴棄却の判決を言い渡した。b労及びその組合員らは,これに対し上告するも,最高裁判所は,平成25年2月5日,上告棄却,上告不受理決定をし,第一審判決が確定した。(甲8ないし10)
(5)  不当労働行為救済申立て及びその結論
ア 補助参加人Z1労,同Z2労及び同Z3労は平成24年4月16日に,同Z4労は同年8月28日に,それぞれ大阪府労働委員会に対し,原告を被申立人とし,原告が行った本件通告が不当労働行為であるとして,組合費の控除に関して協定書の一部改定及び覚書を締結する旨の通告の撤回,従前に締結していた協定書等の有効なものとしての取扱い及び謝罪文の掲示を求める申立て(大阪府労委平成24年(不)第24号及び同第65号事件)を行った。大阪府労働委員会は,平成26年2月20日,原告が補助参加人らに対して行った本件通告が労働組合法7条3号の不当労働行為に当たるとして,別紙1及び2記載の内容を命じる旨の決定を行った。(甲1の1・2,甲2)
イ 原告は,平成26年3月6日,中労委に対し,補助参加人らを再審査被申立人として,大阪府労働委員会が行った上記アの初審命令の取消し及び救済申立ての棄却を求める旨の再審査申立て(中労委平成26年(不再)第15号及び同第16号事件)を行った。
中労委は,平成27年11月18日付けで,上記申立てについて,本件通告が不当労働行為に該当すると判断した上で,原告に対して別紙3の対応を求める命令(以下「本件命令」という。)を行った。
2  争点及びこれに関する当事者の主張
(1)  本件通告が,補助参加人らに対する支配介入(労働組合法7条3号)に該当するか。
(被告,補助参加人らの主張)
ア 便宜供与廃止に係る判断枠組み
便宜供与を開始するか否かについては,使用者の広範な裁量に委ねられているが,いったん便宜供与を開始した場合には,引き続き便宜供与されることを前提に労働組合の活動,運営が行われ,労使関係が形成されることとなるから,その廃止は,労働組合の活動,運営や労使関係に大小の影響を与える可能性がある。したがって,使用者が便宜供与を廃止するには,廃止する合理的な理由及び手続的配慮が必要である。
イ チェック・オフ廃止に関する合理的理由と手続的配慮の必要性
チェック・オフは,労働組合において,労力と時間とを省いて確実かつ安定的に組合費を徴収することによりその財政的基盤を強固にするとともに,組合費滞納による除名や組合員資格の喪失を防止するという役割をも果たし,組合組織の維持に重要な役割を果たしている。民営事業所における労働組合においても広くチェック・オフが行われている実情がある。
労働組合は,チェック・オフが廃止された場合,組合費を徴収するために,個々の組合員に対して直接支払を求めるか,個々の組合員口座から組合費の引き落とし等の手続を依頼することになるが,これらの方法はいずれも相当な手間と費用がかかるものであって,組合費の徴収に支障を生じることとなる。また,実際に組合費の徴収に支障が生ずれば,労働組合の財政的基盤に大きな影響を与える結果,その存立そのものが危うくなることとなる。
特に本件では,原告と補助参加人らとの間において,いずれも有効期間を3年又は1年とする労働協約が自動更新されることにより,チェック・オフが30年から50年余り継続されてきたもので,補助参加人らは,このような財政的基盤に支えられて労働組合の活動,運営を行ってきたという事情がある。
以上のようなチェック・オフの重要性及び原告と補助参加人らとの間の事情を踏まえると,本件通告は,労働組合の活動,運営に対し,大きな影響を及ぼすものであるから,本件通告の段階でチェック・オフを廃止する合理的理由が必要であり,かつ,本件通告の前後を通じて手続的配慮が必要となる。
ウ 本件においてチェック・オフ廃止の合理的理由が認められないこと
(ア) 原告の主張する合理的理由
原告は,チェック・オフ廃止について,労使関係の適正化を図る必要があるとともに,既に本件チェック・オフ廃止条例によってチェック・オフが廃止された職員団体との平仄を合わせる必要があることから合理的理由がある旨主張する。
(イ) 労使関係の適正化を図る必要性について
当時原告が抱えていた問題の背景に,多方面から指摘された原告と諸団体との間の癒着があったことは否定できない。しかし,労働組合との間にも癒着があったとする根拠は,大半が単なる印象や推測に基づく「市民の声」(原告が広聴の一環で受け付けた市民等からの意見をいう。)や,市議会における議員の質疑内容,ヤミ便宜供与,勤務時間内組合活動,人事介入等の諸問題の存在をうかがわせる調査結果にとどまっている。それらには,真偽不明のものから補助参加人らと直接関係のないものまで多数含まれているうえ,「市民の声」として寄せられた内容の具体的根拠の有無を吟味,調査した事実が認められないのであるから,チェック・オフ廃止という補助参加人らの活動,運営に多大な影響を与える可能性のある施策を実行するに当たり不可欠の前提となる癒着問題が補助参加人らとの間にも具体的に存在したと認める根拠としては,なお薄弱といわざるを得ない。本件通告の時点で労使間の癒着を示す具体的な事実として指摘されていたのは,交通局に関するもののほかには補助参加人Z1労の組合員が組合活動に関して処分された事例が3件あるのみで,組合員数約6400人という規模の補助参加人Z1労のごく一部の事例である。補助参加人Z1労以外の補助参加人らの組合員が処分された事例はない。
しかも,原告は,労使間の癒着問題を解消する手段として,チェック・オフの廃止が有効かつ合理的であるとする具体的根拠を一切示そうとしない。
このように,本件において,労使関係の適正化を図る必要性があることをもって,チェック・オフを廃止する合理的理由となるものではない。
(ウ) 職員団体との平仄を合わせる必要性について
単純労務職員(以下「単労職員」という。)及び地方公営企業の職員(以下「企業職員」という。)について,労働関係に関し,一般の地方公務員とは異なる特例規定が設けられているのは,共に公務員ではあるものの,単労職員及び企業職員については,職種と勤務内容が民間企業と実質的に変わらないため,公務員であるが故の不可欠な規制を除いて,できる限り民間企業の労働者と同じ取扱いをすべきとの趣旨に基づくものであるから,原告は,単労職員,企業職員らによって構成される労働組合に対しては,民間の使用者と同じ立場で対応しなければならない。したがって,一般の地方公務員によって構成される職員団体と,単労職員,企業職員によって構成される労働組合との間に,その適用法令及び立法趣旨に由来する取扱いの差異が生じるのは必然である。
チェック・オフについてみても,地方公務員法が適用される一般の地方公務員により構成された職員団体に対しては,原告の立法機関たる市議会が条例の制定によってのみその開始や廃止を決定することができるのに対し,労働組合法が適用される単労職員,企業職員に対しては,原告の行政機関たる市長,当局が自らの意思と判断に基づき個々の労働組合との間で交渉及び協定締結をすることによってその開始や廃止を決定することができる性質のものであるから,その取扱いに差異があって当然である。したがって,チェック・オフに関し,条例により廃止された職員団体と,補助参加人らとの間で平仄を合わせる必要性は存しない。
このように,本件において,職員団体との平仄を合わせる必要性があることをもって,チェック・オフを廃止する合理的理由となるものではない。
(エ) まとめ
以上のとおり,本件通告及びチェック・オフ廃止について,合理的理由があったとは認められない。
エ 手続的配慮が不十分であること
(ア) 原告が行うべき手続的配慮
補助参加人らの組合員に対するチェック・オフは,原告と補助参加人らとの間で個別に締結した協定に基づいて行われていたものであるから,チェック・オフを廃止することを所与の前提とするのではなく,労働基本権が保障されている趣旨及び従前からの労使慣行に則り,補助参加人らに対し,その廃止の必要性,合理性について十分に説明するとともに,円滑な移行に要する期間についても各労働組合の個別事情に配慮しながら十分協議すべきであった。そして,原告にこのような配慮を求めることが原告にとって過度の負担になるものとも思われない。
(イ) 本件通告に当たり,原告がチェック・オフ廃止の影響に対する手続的配慮について具体的な検討を行っていなかったこと
補助参加人らの組合費は,職員団体と同様に,各組合員の基本給等の額に一定割合を乗じて算定される定率方式によるものであることから,チェック・オフが廃止された場合,補助参加人らは,組合費を徴収するために,各組合員らの給与情報を入手しなければならず,また,口座引き落としによる徴収方法を選択した場合には,各組合員らから口座引き落としに必要な書類の提出等の手続をする必要があった。原告は,職員団体及び補助参加人らの組合費のチェック・オフを長年実施してきていたことから,補助参加人らがいずれも定率方式を採用していることを知悉しており,また,職員団体に対してはチェック・オフ廃止後3年間職員の給与情報を提供していたのであるから,補助参加人らに対しても,チェック・オフ廃止に伴い,各組合員の給与情報を提供する必要があることを十分認識していた。また,原告においては,補助参加人らに対するチェック・オフ廃止により,補助参加人らによる組合費の徴収手続に大きな影響を与えることを容易に推測することができたし,現に認識していた。しかし,原告は,補助参加人らから申出がなかったなどとして,給与情報の提供を行わず,また,給与情報を提供しない代わりに猶予期間を長くするなどの検討も行わなかった。
また,原告は,1年間という猶予期間を設定するに当たり,補助参加人らの個別事情について何らの配慮もしていない。すなわち,補助参加人Z1労は約6400人が加入し,組合支部として7支部があり,その職場は多数に分かれるなど,多数の職場に組合員が分散している。また,補助参加人Z2労は,市立小中学校等における管理作業に従事する約750人の現業職員で構成されており,456か所の職場に組合員が分散している。補助参加人Z3労は,市立小学校及び特別支援学校における給食調理に従事する約750人の現業職員で構成されており,263か所の職場に組合員が分散している。さらに,補助参加人Z4労は,水道局の業務に従事する約1600人の現業職員で構成され,本庁舎水道局,3か所の浄水場,4工事センター8分室,営業所グループと分散している上,24時間交代制の職場もある。このように,補助参加人らにおいて,組合員らが多数の職場に分散し,かつ,勤務時間が相違している者もいるため,補助参加人らが組合員に対しチェック・オフ廃止の経緯及び新たな組合費徴収方法の周知,協力要請や労働組合側の体制作りなど,代替策の実施に向けた準備にかなりの期間と労力を要することが見込まれていた。しかし,原告は,職員団体と補助参加人らとの個別事情の相違を踏まえず,チェック・オフ廃止までの猶予期間を1年(補助参加人Z4労は約8か月)と設定した。
このように,原告は,補助参加人らにつき,チェック・オフを廃止した際にどのような影響があるか,また,それに対してどのような配慮が必要であるかといった点につき具体的な検討を何ら行わず,形式的かつ一方的に準備期間を約8か月ないし1年間と設定した。したがって,1年間の猶予期間を設けたことが,直ちに本件通告に当たっての手続的配慮として十分なものと評価できるわけではない。
(ウ) 本件通告の時期について十分な配慮がされていないこと
本件通告は,原告と補助参加人らとの間の給与の控除に関する協定の自動更新をしないことを前提とするものであるところ,同協定においては,控除項目として組合費のみならず共済掛金等の他の費目が含まれていたことから,新協定を締結することなく協定が失効すると,これらの控除項目まで控除されなくなる結果となり,このような点において,補助参加人の組合員に多大な影響を及ぼすものであった。
かかる状況にあるにもかかわらず,原告は,補助参加人Z4労を除く補助参加人らに対し,当時の協定の有効期間満了のわずか約1か月前という極めて切迫した時期,補助参加人Z4労についてもその約5か月前という切迫した時期に本件通告を行った。しかも,原告は,本件通告に当たり,その予告,事前説明及び事務折衝もしなかったものである。
さらに,本件通告が組合員に対する多大な影響を及ぼしかねないものであるから,補助参加人らとしては,十分な検討をした上で団体交渉を含む対応をする必要があったところ,補助参加人Z1労,同Z2労及び同Z3労においては本件通告から上記協定の有効期間満了までわずか1か月しかなく,新協定を締結するか否かの検討,対応をするのに十分な期間を与えられなかった。また,補助参加人Z4労についても十分な期間が与えられたとはいえない。
(エ) 本件通告後,チェック・オフ廃止の必要性,合理性につき補助参加人らに十分説明せず,配慮も欠いていること
原告は,本件通告後,補助参加人Z4労との間では当時の協定の有効期間満了までの約5か月の間に4回団体交渉を行ったものの,補助参加人Z1労,同Z2労及び同Z3労との間では当時の協定の有効期間満了までの約1か月の間に2回ずつしか団体交渉を行わなかった。また,原告は,団体交渉において,チェック・オフ廃止の理由として,平成23年8月に本件チェック・オフ廃止条例訴訟の一審判決においてチェック・オフ廃止における原告の主張が認められたこと,職員団体でチェック・オフが既に廃止されており,市民に対して同じ原告職員の労働組合で,片方が廃止されているのに片方が継続されていることの説明が困難であること,職員団体に対するチェック・オフ廃止の場合と同様に,労使関係の相互依存体質の解消を図り,市民目線から見た適正な労使関係を構築していきたいこと,労働組合の弱体化を意図しているものではないことなどを述べたものの,補助参加人らからチェック・オフによる労使関係上の支障や問題の有無等の回答を求められても,上記見解と同趣旨の内容を繰り返すのみで,明確な回答をしないという形式的な対応に終始した。また,原告は,補助参加人Z4労に対しても,今の状況では,水道局も歩調を合わせないと市民の理解を得ることができない旨の抽象的な意見を述べるにとどまった。
また,原告は,本件通告後の団体交渉において,補助参加人らに対し,一貫して平成25年3月31日にチェック・オフを廃止し,平成25年度以降はチェック・オフを継続するつもりがない旨述べ,従前の協定の期間満了までに新協定が締結されなかった場合には,互助会の掛金等,共済組合の保険料等の各種控除費目について,各職員が納付書に基づき金融機関等にて納付することとなり,多大な影響がある旨説明して,新協定の締結に応じることを事実上強制し,補助参加人らからの合理的な対案の提案にも,これを受け入れようとしなかった。
このような原告の強硬な態度により,補助参加人らは,チェック・オフ廃止について当初から交渉の余地が一切なく,原告との協議,交渉により打開策を探ることすら極めて困難な状況に置かれた。
(オ) まとめ
以上のとおり,原告は,本件通告により補助参加人らに大きな影響を与えることを容易に推測でき,かつ,その影響を現に認識していたのに,事前にその影響に対する手続的配慮を十分に検討せず,予告や事前折衝等もなく,当時の協定の失効の約1か月から5か月前に突如チェック・オフ廃止となる本件通告を行い,補助参加人らに十分な検討,対応の期間を与えず,さらに本件通告からチェック・オフ廃止までの猶予期間もわずか1年ないし8か月と短期間であって,本件通告の前後を通じて手続的配慮が不十分であったといえる。
オ 原告に補助参加人らを弱体化させる意図があったこと
(ア) 支配介入の成立には不当労働行為意思が不要であること
最高裁判決は,労働組合法7条3号で禁止される支配介入においてはそもそも不当労働行為意思は不要と理解できる判断を示している。このような理解に基づけば,支配介入の成否は,使用者が従来から行われていたチェック・オフを特段の事情がないのに拒否し,労働組合の運営に対し影響を及ぼした事実があるか否かという客観的事実の有無の判断となる。そしてこれが存在することは,上記アないしエ記載のとおりである。
(イ) 不当労働行為意思が必要であるとしても,原告に不当労働行為意思が存在したこと
原告が,本件チェック・オフ廃止条例訴訟を通じて,補助参加人らのチェック・オフの見直しをするかどうかを検討課題として意識していたことはうかがえるものの,それ以上に,補助参加人らのチェック・オフ廃止について具体的検討をしていた事実はない。このように,I市長就任前において,原告において補助参加人らのチェック・オフ廃止が既定路線であったとはいえない。
仮に,補助参加人らのチェック・オフ廃止がJ市政当時からの既定路線であったとしても,平成23年12月19日のI市長就任以降,I市長が労使関係の適正化にとどまらず,労働組合そのものを適正化するとの意向を繰り返し表明したこと,原告が平成24年2月10日,労使関係に関する職員アンケート調査を実施する旨職員宛てに発出し,同月20日に補助参加人らの組合事務所についての建物使用不許可処分を行ったこと(これらについては,別件訴訟においていずれも違法性が認められている。)などからすれば,原告は,本件通告により補助参加人らを弱体化させる意図を有していたといえる。
カ 結論
以上のとおり,本件通告は,労働組合法7条3号の支配介入に該当する。
(原告の主張)
ア 便宜供与に対する労働組合法の態度について
便宜供与は,労働組合の自主性を阻害する,組合員の労働組合に対する関心を薄くさせる,労使間の緊張関係を弛緩させるといった副作用を原理的に有するものである。労働組合法は,このような労使の依存関係を望ましいものとは捉えておらず,便宜供与に対して否定的ないし消極的態度をとっている。そうすると,使用者は,便宜供与の提供を義務付けられないことはもとより,いったん開始された便宜供与についても,所定の手続に則り任意に打ち切ることができるのが原則というべきである。
また,集団的労使関係秩序の侵害行為すべてが支配介入として不当労働行為となるものではなく,そうした侵害行為に内包される労働組合に対する使用者の嫌悪,妨害の意思こそが問題になる。そのため,支配介入が成立するのは,当該事案における個別具体的な事情を総合的に考慮した結果,それが支配介入の意思に裏打ちされた権利濫用と認められる場合に限られる。
以上のような便宜供与や支配介入に対する理解によれば,本来任意である便宜供与の廃止について支配介入が成立するのは,廃止する便宜供与の内容・性質,それが組合活動に与える影響,廃止の理由,廃止に至った経緯,廃止に当たっての手続的配慮,その他使用者側の態度等の個別具体的事情に照らし,当該便宜供与の廃止が,組合活動に支障をもたらし,もって労働組合を弱体化しようとの意図の下に行われたものと推認され,権利濫用と評価される場合に限られる。
イ チェック・オフの内容,性質
前記のとおり,労働組合法が便宜供与に対し消極的・否定的態度をとっていることに加え,チェック・オフが経費援助の程度が強い便宜供与とされることや,賃金全額払の例外という特質を有することから,他の便宜供与に比べ,労働関係法の原則的立場との緊張関係が高い。
他方,労働組合にとっては,チェック・オフにより,本来自ら負担すべき組合費の徴収コストの負担を免れるにすぎず,その解消が組合運営そのものや組合員の生活に重大,深刻な不利益を与えるものではなく,また,賃金全額払の原則に戻るという点で組合員にとってはむしろ利益になるという側面もある。
これらを踏まえると,チェック・オフの継続性を法的に保護する必要性は高くないといえる。
ウ チェック・オフ廃止が組合活動に与える影響
チェック・オフ廃止が組合活動に与える影響は,直接徴収への移行に伴う手間(組合員への説明,口座振替等の手続)及び徴収に要する手間(組合費算出,徴収,督促)を労働組合が負担することに尽きる。これらは,従前のチェック・オフ継続期間の長短により差が生じるものではない。
直接徴収への移行に伴う対応(組合員への説明,口座振替等の手続)は移行初年度だけの問題である。また,このような手間は,職員の任用時にチェック・オフの同意を得るため毎年使用者側が行っている手続と変わるところはなく,負担の程度が大きいとはいえない。
また,口座振替等の手続を行い,直接徴収に移行することができれば,その後の徴収に要する手間(組合費算出,徴収,督促)は少なくなるし,要するコストも手数料程度である。また,給与口座からの天引きと口座振替等とで徴収の確実性に差はなく,組合員がいつでもチェック・オフの同意を撤回できることや,実際に組合費未納による除名予定者が加入者数の2%程度に留まることからすると,チェック・オフの廃止により補助参加人らに大きな財政的打撃が生じるとはいえない。
近年の組合員減少についても,チェック・オフ廃止と労働組合脱退との間に因果関係があるとは認められない。
このように,チェック・オフ廃止によって補助参加人らの運営,存続に重大な影響が生じている,あるいは,今後生じる蓋然性があるとはいえない。
エ 補助参加人らに対するチェック・オフ廃止に相当な理由があること
(ア) 原告がチェック・オフを廃止した理由は,次のとおりであるところ,既にみた便宜供与や支配介入についての基本的考え方,チェック・オフの内容,性質や廃止による影響の程度に照らすと,本来任意になし得るチェック・オフ廃止に当たって,高度の合理性や廃止と効用の直接的,具体的因果関係が必要となるものではなく,相応の合理性ないし相当な理由が存すれば足りるというべきである。
a 平成16年以降,職員厚遇問題等の解決のため,不適切な労使関係の見直し等の取組みを進め,不適切な労使関係を生み出した要因の一つである便宜供与を見直し,新たに健全,正常な労使関係を構築する必要があったこと
b 本件チェック・オフ廃止条例制定後も労使癒着の構造は払拭されるに至っておらず,労使関係適正化の要請は現に存在していること。
c 既にチェック・オフが廃止されている職員団体に対する取扱いと平仄を合わせる必要があること
(イ) チェック・オフ廃止理由a,bについて
原告では,平成16年11月以降,カラ残業やヤミ専従,職員厚遇問題等が発覚していたところ,その原因が使用者と職員団体の癒着や馴れ合いにあるとの批判を受けたことから,市政に対する大阪市民の信頼を得るために,かかる労使癒着,相互依存の象徴である職員団体に対する便宜供与を見直し,正常な労使関係を新たに構築する必要があった。このような理由から,J市長の下での施策として,本件チェック・オフ廃止条例が制定された。本件チェック・オフ廃止条例制定後も,とりわけa労連ないしその傘下労働組合と原告との間で不適切な労使関係が払拭されず,その中には補助参加人らについても問題とされる事例が存在しており,市民や議会から批判的意見が相次ぐ状況であったことから,原告は,労働組合についてもチェック・オフを廃止する必要があった。
以上からすれば,チェック・オフ廃止に当たって,各当局,各労働組合の間において具体的な問題があることまでを要するものではなく,前記チェック・オフ廃止理由a,bには相応の合理性があるといえる。
なお,水道局と補助参加人Z4労との間において平成21年に労働協約が締結されているが,これは,本件とは別個の不当労働行為事件を巡る労働委員会での相当期間の審理を経て,当時の諸般の事情を総合考慮し,水道局として当該協約を締結し,補助参加人Z4労と和解するという判断をしたものである。本件では,チェック・オフ廃止が原告全体で取り組むべき事柄であることに鑑み,市長部局の対応と平仄を合わせてチェック・オフ廃止に向けた対応をとったものであり,水道局との間で上記協約を締結したことは,補助参加人らに対するチェック・オフ廃止の当否に影響を及ぼすものではない。
また,交通局でも,チェック・オフ廃止は原告全体で取り組むべき課題であるとの認識のもと,平成23年2月29日にチェック・オフ廃止の申入れを行った。もっとも交通局では民営化へ向けた議論が進められており,民営化が実現すれば,チェック・オフ廃止の理由がそのまま当てはまるとは限らないこと等の事情を総合的に勘案し,現状ではチェック・オフ廃止を保留しているにすぎない。したがって,交通局においてチェック・オフを行っていることは,チェック・オフ廃止理由a,bの合理性に影響を及ぼすものではない。
(ウ) チェック・オフ廃止理由cについて
平等取扱いの観点からは,合理的理由がない限り,労働団体ごとの取扱いにつき平仄を合わせることが要請される。職員団体と労働組合との間には,チェック・オフの取扱いについて,導入や廃止における手続,要件に差違があるに過ぎず,単一の地方公共団体である原告において,導入・廃止の判断に当たり,職員団体と労働組合との間で差違を設けるべき理由はない。
上記(イ)のとおり,本件チェック・オフ廃止条例制定当時から,労働組合を含めてチェック・オフ廃止の必要性が指摘されていたものの,原告としては,労働組合に関しては,協定期間や本件チェック・オフ廃止条例訴訟との関係を踏まえ対応を留保していた。しかるところ,本件チェック・オフ廃止条例後もなお労使問題は払拭されず市民からの批判は続いており,職員団体についてチェック・オフを再導入しようという民意や議会の動きもなかった。加えて,本件チェック・オフ廃止条例訴訟第一審判決により,職員団体についてのチェック・オフ廃止の有効性が認められたことにより,職員団体と労働組合とを別異取扱いとする理由は減少した。それにもかかわらず,チェック・オフ実施の有無という不均衡を放置すれば,職員団体と労働組合とで中立的立場を保持すべき原告として,廃止している職員団体との関係で不当労働行為との誹りを受けかねず,他方,労働組合との関係では,本件チェック・オフ廃止条例の趣旨を蔑ろにするものとして市民からの批判も受けかねない。
市民の負託を受け市政を運営する原告として,本件チェック・オフ廃止条例訴訟第一審判決を契機として,労働組合についてだけチェック・オフを継続することは適当でないと判断し,職員団体との間の平仄を合わせるべく本件通告に至ったことは,合理的かつ当然の対応である。
したがってチェック・オフ廃止理由cにも相応の合理性が認められる。
オ チェック・オフ廃止に当たっての配慮
(ア) 適式な手続の履践
補助参加人らのチェック・オフは,いずれも満了前又は満了1か月前の通知により終了できる有効期間1年の協定に基づき実施されている。原告は,この協定を更新しない旨の通知を適式に行っており,その有効期間途中で廃止したものでも,期間の定めなく慣行的に継続されてきたものを廃止したものでもない。
原告が補助参加人らに対し,本件通告を行うことを決定した上で通知,説明するのは当然のことである。それよりも前の検討段階の不確実な状況において補助参加人らに予告や説明を行うことは,補助参加人ら側の混乱を招くおそれもあり,かえって不相当である。
(イ) 団体交渉の状況
原告は,補助参加人らとの協議の可能性を踏まえ,補助参加人らとの間の協定の定めより前倒しで本件通告を行い,合意を得るべく複数回にわたり団体交渉を行った。原告は,団体交渉において,前記の廃止の理由を説明し,理解を求めるなど誠実に対応してきた。しかし,いずれの団体交渉も,チェック・オフを廃止する理由がないとして,不当労働行為であるとの主張を行う補助参加人らによって本件協定終了時に打ち切られた。
(ウ) 1年間の猶予期間の付与
また,原告は,本件通告に当たり,当初から1年間の準備期間を与える旨を表明している。チェック・オフ廃止によって生じる直接徴収に要する負担とそれに対する対応がさほど複雑でないこと,1年間の準備期間を与えた職員団体が組合活動に支障を来すことなく移行手続を進め,円滑に組合運営を行っていること,補助参加人らがいずれもチェック・オフ廃止の経験を有する職員団体が属するa労連傘下に属すること,補助参加人らに職員団体とは異なる事情はないこと,本件チェック・オフ廃止条例制定当時から4年が経過しており,徴収手続等の合理化・効率化も進んでいること,職員団体の組合員数に比べ,補助参加人Z1労は約1/2,補助参加人Z4労は1/5未満,補助参加人Z2労及び同Z3労はいずれも1/10未満の組合員数であることからすると,本件通告から1年というのは,猶予期間として十分である。
このことに加え,原告は,本件チェック・オフ廃止条例訴訟判決において,職員団体が自ら組合費を徴収する準備期間として1年間が合理的な期間であると判示されたこと,1年以上の猶予期間を付与しながら,これが不十分であるとして不当労働行為性が認められた事案も聞き及ばないことも踏まえ,本件通告から1年以上の猶予期間を与えることとした。
(エ) 給与情報の提供について
原告は,チェック・オフ廃止後,補助参加人らに対し給与情報を提供していない。
しかし,上記(ウ)のとおり職員団体と比較して実施時期や規模等において有利にある補助参加人らにも1年という十分な猶予期間を与えていること,職員団体は,給与情報の提供を受けない期間においても対応ができていたこと,本件チェック・オフ廃止条例制定時から4年が経過しているところ,前記のとおり補助参加人らは職員団体も属するa労連傘下の労働組合であること等を踏まえれば,相当な猶予期間に加えて給与情報までも提供すべき必要性が高いとはいえない。また,本件チェック・オフ廃止条例訴訟の判決においても,給与情報提供の手当てがないことをもって本件チェック・オフ廃止条例に違法はないとされ,情報提供の打切りについても弱体化意思の徴表とは認定されなかった。以上の事情に加え,原告に対し補助参加人らから給与情報提供の要望がなかったこと,給与情報提供も便宜供与の一種であるが,本件申入れ当時,労使関係適正化の一つとして便宜供与廃止の方向性にあったこと,個人情報保護の観点から,原告が自由に職員の給与情報を提供できるものではないことなどを踏まえ,原告は,補助参加人らに対し,給与情報提供の提案を行わなかったものであって,このことは,何ら相当性を欠くとはいえない。
以上のとおり,本件通告に当たり,1年の猶予期間に加えて,原告から給与情報の提供を提案しなかったからといって,配慮不足であるということはできない。
カ 本件通告に至る経緯
原告は,J市政当時も労働組合に対するチェック・オフの廃止を含め労使問題全般について懸案事項として捉えていた。しかし,原告は,本件チェック・オフ廃止条例制定後,補助参加人Z1労との旧協定の有効期間が平成22年3月末までであったことや,本件チェック・オフ廃止条例訴訟が提起されたことを踏まえ,労使関係の混乱拡大を避けるため,本件チェック・オフ廃止条例制定後,直ちに労働組合に対するチェック・オフを廃止することをしなかった。もっとも,原告は,本件チェック・オフ廃止条例により職員団体に対するチェック・オフが廃止されて以降,同条例の提案趣旨を踏まえ,労働組合に対するチェック・オフ廃止を懸案事項として継続して検討しており,本件チェック・オフ廃止条例訴訟第一審判決後は,引継ぎを受けた管理課において検討を進めていた。
そして,この間,大阪市長選挙があり,市長就任以前から原告の労使問題に懸念を示し,その改善を目標の一つとして掲げていたI市長が当選し,従前から行われてきた労使関係適正化をさらに進めるための取組みの一つとして,労働組合にかかるチェック・オフ廃止を具体的に進めることになったものである。
原告は,チェック・オフの廃止が不当労働行為となる可能性も斟酌し,平成24年に入ってから本件通告まで1か月以上にわたり,職員団体の状況の確認や本件チェック・オフ廃止条例訴訟判決を含む判決例の参照,弁護士への相談を含め,チェック・オフ廃止の具体的な進め方について検討した上で,原告の当局にかかる労働組合全てに対して本件通告を行った。
このように,原告において,本件通告に当たり組合弱体化を図る意思はなかった。
キ 補助参加人ら労働組合に対する原告の態度について
(ア) 原告は,本件チェック・オフ廃止条例制定後も,補助参加人らを含む様々な労働団体との間において,多岐にわたるテーマにつき相当な回数の交渉を誠実に行っており,このような事情は,組合弱体化や組合嫌悪の意思とは相容れないものである。
(イ) また,I市長は,労使癒着問題が根強く存続している原告の状況に懸念を抱き,その払拭を目標の一つに掲げて市長に当選したのであるから,就任後の便宜供与廃止や第三者調査チームによる調査といった労使問題改善へ向けた施策を講じることは当然であり,民主政治にあって,その姿勢に非難されるところはない。
I市長の発言は,労働組合ではなく原告の職制の規律を正すという意識に立つものであり,他方守られるべき権利利益は守る,不当労働行為にならないよう配慮すべきなどの発言もあえて行っている。I市長の発言は,全体としてみれば,これまで指摘,検討されてきた労使関係の問題点を再確認し,原告と職員団体や労働組合との関係を市民感覚に合うように是正,改善していくべきことを表明したものであって,労働組合に対する弱体化意思の徴表とみることはできない。
ク まとめ
上記イないしキの事情からすると,本件通告が,補助参加人らの組合活動に支障をもたらし,もって労働組合を弱体化しようとの意図の下に行われた支配介入に当たるとはいえない。
(2)  本件命令が,労使関係条例12条との関係で労働委員会規則33条1項6号に違反するか。
(原告の主張)
本件命令は,補助参加人らに対するチェック・オフを廃止する本件通告を不当労働行為と認定し,これを前提として,「今後,このような行為を繰り返さないようにいたします」との文言が記載された文書の手交を命じる。しかるに,前提事実のとおり,労使関係条例12条は,原告が労働組合に対する一切の便宜供与を行うことを禁止するものであるから,原告は,同条に基づき,今後も存在する便宜供与についてはその廃止等の申入れを行う必要がある。このように,原告としては,労使関係条例12条に反し,実施不能となる可能性のある内容の文書を手交することはできない。
以上のとおり,本件命令は,原告にとって履行不可能な内容を含むものであるから,請求する救済内容につき法令上又は事実上実現することが不可能であることが明らかな申立てにつき却下事由と定める労働委員会規則33条1項6号に該当し,違法である。
(被告,補助参加人らの主張)
ア 本件通告が不当労働行為との評価を受けているにもかかわらず,労使関係条例12条を文字どおり全ての便宜供与を一律に排除するものと解釈し,本件通告に関していかなる救済をすることもできないという結論が肯定されるとすると,憲法28条,労働組合法7条に違反する行為が認められ,本来その救済がなされるべきであるにもかかわらず,その救済が条例によって阻止される結果となる。このような結論が認められるとすれば,不当労働行為救済制度は画餅に帰すことになる。
労使関係条例の存在を前提として憲法,労働組合法7条に従う解釈適用を考えると,少なくとも労使関係条例12条は,労働組合法の禁止に抵触しない範囲で,また,社会通念に沿った合理性の要請から外れない限りで,かつ,労働組合との誠実な交渉を経たうえで,一定の便宜供与をしないことができる旨を定めたものと解釈すべきである。
したがって,本件において労使関係条例12条を根拠にして不当労働行為に対する救済を否定することはできない。
イ 仮にアの点を措くとしても,本件命令は,原告に誓約文の手交を命じるものであり,チェック・オフの再開までをも命じるものではない。しかも誓約文の内容は,本件通告が不当労働行為と認定されたことを踏まえ,不当労働行為と認められるような行為を繰り返さないというものであるから,本件命令の履行は,今後不当労働行為となるような行為を行わない旨の誓約である。このような誓約は,労使関係条例12条によって禁止されるものではない。
ウ 以上のとおり,本件命令は,法令上又は事実上実現することが不可能な救済を内容とするものではなく,労働委員会規則33条1項6号に違反するものではない。
第3  争点に対する判断
1  認定事実
前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)  I市長就任前の状況
ア 原告においては,平成16年以降,職員の超過勤務手当の不適切処理の問題,条例に定めのない互助組合連合会給付金の問題(いわゆるヤミ年金,ヤミ退職金の問題),いわゆるヤミ専従問題,職員厚遇問題等が明らかになった。原告は,これらの問題を,市政に対する市民の信頼を裏切る事態として深刻に捉え,抜本的な市政改革に取り組むようになった。このような流れの一環として,平成17年4月1日,大阪市福利厚生制度等改革委員会が,「福利厚生問題の本質と今後の市政改革の方向性について」と題する報告書をまとめて原告の問題点を指摘した。また,平成17年8月26日,互助連合会給付金等調査委員会がまとめた,職員互助組合連合会の給付金事業についての報告書(2)においては,ヤミ退職金問題の原因の一つとして,市当局側と職員団体ないし労働組合側との不適切な労使関係が存在した旨の報告がされている。(乙Ba32ないし34)
イ 大阪市議会のK議員は,平成20年3月,原告における上記問題の原因が使用者と職員団体の癒着やなれ合いにあるとの批判を受けており,労使癒着,相互依存の象徴である職員団体に対する便宜供与を見直すことは市民の求めるところであり,原告の職員団体,職員組合が使用者との相互依存から脱却し,労使癒着を解消し,自立的かつ健全な活動をする組織になることを期待するとの意見に基づき,本件チェック・オフ廃止条例案(職員の給与に関する条例第27条4号中「法第52条の規定による職員団体がその構成員たる職員から徴収する団体本来の運営に要する経常的な職員団体費並びに」を削除するという内容)を提出した。これを受けて,大阪市議会は,平成20年3月28日の本会議において,上記条例案と同内容にて職員の給与に関する条例の一部を改正する条例(平成20年大阪市条例第63号。本件チェック・オフ廃止条例)を可決し,J市長は,同年4月1日,同条例の施行日を平成21年4月1日として公布した。(甲5,6,14)
ウ a労連は,平成20年3月28日,J市長に対し,本件チェック・オフ廃止条例について再議に付することを申し入れた。これに対し,J市長は,平成20年4月1日,会見において,「職員団体のチェックオフを見直す条例案についてでございますけれど,これが3月28日の本会議で可決されました。私に対しましては,a労働組合連合会,a労連より地方自治法第176条に基づく市長の再議権を行使することを求める要請が出されております。結論といたしまして,今回の改正条例案に対しまして,再議権の行使は行わないことにしました。この課題につきましては,違法性があるかないかということにつきましては,様々な意見がございます。未だ確定的な結論に至っていないというのが法的な解釈状況であり,不当労働行為だとか,いやそうではないとか,本当に議論が両方からぶつかっているという状況です。この課題でございますけれども,労使間におきましては大変重要な問題でございます。しかし,その市民生活と直結しない労使間に限られた問題でございまして,再議権の行使によりまして,市民生活に関わる他の重要な課題の推進に混乱をきたすような状況を招くことは,私が望むことではありません。したがって,今回の改正条例の提案趣旨を真摯に受けとめるとともに,議会から与えられました来年4月1日の施行日までの1年間において,人事委員会の意見にもありますように,円滑な実施が図られるよう,労使間で十分に協議を行っていきたいと考えております」と述べ,また,記者からの質問に対し,「a労連の方には,まだ返事はしておりません。この記者会見が一番最初の意思表示になります。それから,他の重要課題の推進に混乱をきたすような状況を招くというのは,もう皆さんご想像の通り,やっとの思いで20年度予算を通していただきました。相変わらず,少数与党であることは変わりありませんが,ただし,今回の予算を見ていただいたらお分かりのように,市民サービスでありますとか,市民の方を向いて立てていく予算ということで言えば,本当に,多数の野党の皆さんにも承認をいただきながら進めてきたという部分がございます。そういった部分での,実際に新しいことに取り組んでいく,実現に移すという段階で,混乱を招きたくないということから言えば,今,ご指摘ありましたように,議会対策ととられてもいいかと思います。それと同時に,やはり,組合問題がどこまで市民の皆さんにお分かりいただけるのか。ここで例えば,私が再議というふうに申しまして,かなりの摩擦が生じて,市政運営に混乱を来すということが見えているにもかかわらず,そっちを選ぶとなると,大きな責任を持っている私としては,そっちは選びづらいということで,政治判断として今回,再議については行わないことにしたということでございます。それから,労働組合でございますが,a労連の中の他の組合ということになりますが,これは労働協約を結んだ上でのチェック・オフという形でございますので,それについては,労使の話し合いをするということになるものだと思います。」,「チェック・オフに関して,a労連から再議を求める要望が出ておりますので,チェック・オフという制度そのものについて,労働組合の方は,現時点でどういう考えを持っているのかと,そういった話し合いは当然するでしょうということです。」と答え,本件チェック・オフ廃止条例については再議に付さない旨,及び労働組合については労使の話し合いを行うことになるとの見通しを説明した。(甲14,乙Bc101)
エ J前市長は,平成20年12月22日,市議会財政総務委員会における答弁の中で,b労のc支部書記長が,同年3月28日,組合活動の一環として,職場の電話から市議あての電報計9万円分を打っていたことについて触れ,全職員に対し指導してきたにもかかわらず指導の趣旨が徹底されないで上記事態が発生したことに関し,誠に遺憾であり,今一度管理の徹底を図っていかなければならないと思う旨述べた。また,同市長は,同答弁の中で,労使関係についても触れ,以前のような関係に逆戻りさせてはならないという認識である旨強調した。(乙Bc150,151,159,160)
オ 原告内部では,本件チェック・オフ廃止条例が制定されたことを踏まえ,労働組合との協定にかかる組合費のチェック・オフについて話題とされることがあったが,平成23年8月24日に本件チェック・オフ廃止条例訴訟につき第一審判決が言い渡された後も,I市長が就任するまでは,労働組合のチェック・オフ廃止に向けた具体的な検討までは行われておらず,補助参加人らを含めた労働組合に対しても,原告からその廃止に関する打診は,全くされていなかった(甲15ないし17,19,23,証人L)。
(2)  I市長就任後本件通告までの状況
ア 交通局幹部は,平成23年12月26日,大阪市議会の交通水道委員会において,委員からヤミ専従等の問題が指摘されたのに対し,交通局の職員が組合活動を行うために業務時間中に職場を離脱した事例等の不適切な事例があったことを認め,組合活動についてはよりいっそう適正な活動,ルールに基づいてやるようより厳格化に務めるとともに,施設管理面で庁舎内での政治活動は認めないことをルール化して徹底していきたいと考えていること,不正に対しては厳正に対処していくこと等を述べた。
また,同委員会において,I市長は,同じ委員からの質問に答えて,「(冒頭略)一度,組合と今の市役所の体質についてはグレートリセットをして,一から考え直したいというふうに思っています。今まで認められてきた組合活動についても一回リセット。まずは厳格に,まずは認めない方向からどこまで法的に認められるのか,それは法的に認められるとしても,別にそこまで認める必要がないんであれば認めません。組合の事務所も,どうもこの地下にあるんですかね。その家賃については減免ということがあったらしいんですが,それも認めませんし,先ほどの幹部会議で僕は方針を示したんですが,組合の政治活動自体は――これは法的には,特に現業職の場合には政治活動は認められてますけれども,公の施設の中での政治活動というのは――これは公の施設はいろんな政党支持者の人からの納税で支えられている施設なわけですから,そんなところで政治活動なんてするのはあってはならないことである中で,次々といろんな問題が出てきますから,事務所には公のこの施設からまず出ていってもらうというところからスタートしたいと。ですから,地下の事務所とか,それから交通局にもいろいろ入ってるんですかね,事務所。だから,まずそこから出ていってもらって,まずはそこからスタートかなというふうに思っています。大阪市役所のこの組合問題というのは,(中略)組合が推すトップがトップになる以上,市民が考えるようなそういう毅然たるといいますか,厳正なる対処がやり切れなかったところがあると思いますので,これは徹底的にやっていきたいと思っています。ただ,職員が本来の組合活動として,勤務労働条件とかそういう労働環境を整えるために使用者側と交渉するとか,これはもう当たり前の権利ですから,それはもう当然認めてですね。それから,この庁舎以外のところでやる政治活動というのは,これはもう自由です。特に,僕に対してどう思おうが,どういう政治的な主張があろうが,これはもう全く自由ですけども,しかしこの庁舎内においてはこれは別ですしね。それから,庁舎の中に,どこか本棚の中に○○かなんかのIを批判するような本とか掲げてるらしいですが,こんなのもふつうの組織ではあり得ません。それは自宅においてもらうと。自宅で僕を批判するのは全然構わない。(中略)ビラとかそういうものが配られているということも,こんなのもあり得ませんしね,徹底してこれはこれから対処していきたいと思っていまして,一つは,通報制度をしっかりつくります。これは警察OBも含めながらの実務部隊もそろえた形での通報を受け付けて,調査をする部隊も設けたいと思いますが,通報の仕組みをしっかりつくっていきたいと思いますし,(中略)通常の適正な組合活動はしっかりやってもらうというところをきちんと区分けをしていきたいというふうに思っています。(以下略)」と答弁した。(乙Bc117)
イ I市長は,平成23年12月28日,原告の市議会での施政方針演説において,政治と行政の関係について述べたところ,その中で,「大阪の統治機構を変えることにエネルギーと執念を燃やすことは当然のことなのですが,それに加え,大阪市役所の組合問題にも執念を燃やして取り組んでいきたいと考えております。大阪市役所の組合の体質はやはりおかしいという風に率直に感じます。この庁舎内で,政治活動をすることは,これは当然許されません。(中略)組合が,この公の施設で,政治的な発言を一言でもするようなことがあれば,これは断じて許せません。選挙で選ばれた知事ですら,この市役所の中で政治発言が許されないということであれば,選挙による民主的統制を受けていない職員組合が政治活動ということを少しでも行うということは,これはあってはならないことです。そういうことを今まで許してきた大阪市役所の体質を徹底的に改めていきます。先日,公の施設内で政治活動が行われていたことに関し,市民に対しての謝罪を求めたところ,大阪市役所のこの組合は,謝罪文一枚で済まそうとしております。5階に市民の代表である僕がいるわけですから,地下から上がってきて5分でも謝罪しにくれば済むところを,紙一枚で済ますなんていう,このような感覚は市民感覚とはかけ離れております。(中略)この謝罪の件に関しては,直接のおわびをするようにということを強く組合に求めておりますが,まだその返事はいっこうにありません。(中略)大阪市役所のこの組合の体質というものが,今の全国の公務員の組合の体質の象徴だと思っております。ギリシャをみてください。公務員,公務員の組合というものをのさばらしておくと国が破綻してしまいます。ですから,大阪市役所の組合を徹底的に市民感覚にあうように是正,改善していくことによって,日本全国の公務員の組合を改めていく,そのことにしか日本の再生の路はないという風に思っております。」と述べた。(乙Aa13)
ウ I市長は,平成23年12月30日,原告の幹部職員に対し,同市長宛ての,a労連のシンクタンクが「大阪市政調査会」であり大阪都構想への積極的な批判活動をしてきた旨記載されたメールを転送し,その中で,「市の組合は,下記の通り完全な政治活動をやっています。大阪都構想に真っ向から反対。現行法上認められる組合の政治活動は否定しませんが,公金を投入することは一切止めます。(中略)総務局長が組合と覚書を交わしていますが,これは行政行為であり,政治的な民意が,行政行為に縛られるというのは本末転倒です。組合への家賃減免は直ちに止めます。庁舎内で政治活動をすることは認めませんので,組合の立ち退き手続きを直ちに始めたいと思います。年明けに大阪市としての機関決定をします。(中略)このような僕の感覚に,市役所も合わせてもらわなければなりません。(以下略)」と述べている(乙Ac101)。
エ I市長は,平成23年12月30日,原告の幹部職員に対し,職員から同市長宛てに送信されたメールを転送した。同転送に係るメールには,ある区役所では事前に人事案件を組合に協議しており,意志の弱い総務課長だと,最終的に組合案を受け入れてしまうことや,総務局が定めた「職員組合及び労働組合との交渉等に関するガイドライン」に管理運営事項であっても,労使で意見交換を行うという文言があるため,職員の配置等を事前に組合支部と「意見交換」と称して協議し,組合の介入を招くことなどが記載されていた。I市長は,同メールにおいて,「職員から下記メールが来ました。(中略)僕が組織側に何度も組合問題について尋ねましたが,もう組合問題はないとの回答でした。ところが下記のようなメールが来ております。まずガイドラインの改定をします。所属が組合と協議する際は,全てフルオープン。全て議事録に残すこと。(中略)組合と所属が接する場合には,そのスケジュールを事前(ここを何日前にするかも決めましょう)に公表し,メディアの取材の機会を保障します。(中略)公の施設内での便宜供与は禁止。賃料を取っている事務所(これも早期に撤去を求めます)を除いて,まず公の施設内での組合の便宜供与は全て完全に止めます。また,ガイドラインで管理事項について組合と接触することを厳禁とするルールを直ちに作って下さい。(中略)意見交換,協議等もってのほか。法的に認められている最低限の交渉しか認めません。以上のルールを破った,所属,職員には厳罰です。これから外部顧問を始め,少々大規模に体制を整えて,実態調査に入りたいと思います。もし組合と管理運営事項について協議していたという事実が判明した場合には,容赦なくしかるべき処分を断行します。ただし今の段階で,組合との不適切な関係を自ら告白した者には,先日の告白ルールに基づき,免職はしませんし,罪一等を減じることはしっかりとやります。しかし,告白なく,管理運営事項について組合と協議していた等,組合との不適切な関係の事実が判明した場合には,厳しく処分します。(以下略)」と記載したメールを送信した。(乙Ac102)
オ I市長は,平成23年12月30日,原告の幹部職員に対するメールにおいて,a労連所属の労働組合が政治活動を行っていることを指摘し,g党を支持する納税者の税をこの労働組合に投じることは,政治的な意味において有権者への裏切りとなるなどと述べ,かかる税金をもって家賃減免や公の施設の利用等の便宜供与を行う合理的な理由を提示できなければ,直ちに便宜供与を中止する旨述べた(乙Ac103)。
カ I市長は,平成23年12月31日,原告の幹部職員に対するメールにおいて,対組合関係適正化条例を制定する旨述べ,同条例の項目として,「市役所と組合との交渉ルール」「交渉対象の厳格化・意見交換等の厳禁」「スケジュールの事前公表・記録化・フルオープン・公表」「ルール違反に対する厳罰」「組合の公の施設内での政治活動厳禁」「組合に対する便宜供与の厳禁・勤務条件等の一般原則(法律上の義務以外は認めない等)」などを掲げた上で,条例案を詰めて,できれば2月議会で提案したい,などと述べた(乙Ac104)。
キ I市長は,平成24年1月4日,原告の職員に対する年頭挨拶において,「組合との関係について,市民の皆さんはまだまだ疑問を抱いております。(中略)管理運営事項についても意見交換という名のもとに組合と協議したり,中堅,若手の人事に組合が介入したりしているという情報もどんどん入ってきています。(中略)この点については対組合のスタンスを適正化する条例をつくりたいと思っています。市役所組織と政治活動もしっかりと改めていきたいと考えています。市役所が政治に踏み込んだと感じる部分について正さなければなりません。さきほど組合の委員長とも話をしましたが,組合事務所の使用料の減免はしないことを伝えました。もちろん法律で認められた組合活動は問題ありませんが,政治活動を行うということはリスクを伴うものであるということ,身分を失う覚悟をもってやらなければならないということを,しっかりと認識してもらわなければなりません。」と発言した。(乙Ac105)
ク 平成24年1月11日に行われた大阪市議会定例会において,I市長は,施政方針演説についての議員からの質問に対し,「公務員労働組合,何が問題かといいますと,自分の社長の人事権を持つということです。こんな労働組合,一般の社会にはありません。普通の企業の労働組合は,労使関係の交渉はしますけれども,社長の人事を握って社長を落としにかかるなんていうことはありません。公務員の労働組合,大阪市役所の労働組合はどうですか。トップである僕を徹底的に落としにかかったということでありますので,これは政治に足を踏み込んだら,それは政治的リスクを負うのは当たり前ですよ。絶対的な身分保障が与えられている公務員が自分のみずからのトップの人事に口を出して,そして負けたからといってまた身分保障が与えられる,こんなことはあり得ないということをこの大阪からしっかり全国に発信していく。通常の労働組合の労使活動は守っていきますけれども,社長人事に口を出すような,そういう労働組合は,これはもはや労働組合ではありません。立派な政治団体です。ですから,政治団体としてしっかり扱っていくというのは当然のことでありまして,これから実態調査を徹底的に行いまして,その適正化に努めていく。政治団体として僕は対処していきたいというふうに思っております。ですから,地下1階のあの組合事務所の問題に関しては,総務局長が覚書を交わしたということで,M議員から法的な問題指摘をいただきました。(中略)権限の範囲外の覚書ということでしたら,無効を前提に,政治団体である市役所の組合にしっかりした対応をもとめていきたいと思っております。カラ残業や,その他便宜供与。総務局に昨日ですが,全庁を挙げての実態調査の指示を出しまして,(中略)徹底調査をしてもらいます。(中略)今の市役所の組合が人事に介入してるんではないかという――人事に介入してるかどうか実態調査しますけれども,恐らくこれ介入していないと,みんな組織は言うでしょう。介入してるかどうかが問題ではありません。若手の職員や中堅職員が,組合が人事に介入しているというふうに思っているかどうか,そういう外形が非常に重要であります。(中略)こういう体制こそ改めないと市役所が本当にこれとんでもない状態になりますので,組合は適正化しなければいけない。」と答弁した(乙Ac106)。
ケ 原告の総務局は,I市長からの指示を受け,平成24年1月11日,各所属人事担当課長に対し,平成23年11月の大阪市長選挙において,交通局の組合役員が勤務時間内に認められない組合活動を行っていたという事案が発生したこと,管理運営事項である人事等について労働組合が介入しているとの通報があることから,各所属と労働組合支部との労使関係について,①有給職免における交渉状況(「職免」とは職務免除を意味する。),②無給職免における組合活動状況,③勤務時間外における意見交換等の状況,④人事案件に関する説明,意見交換の状況,⑤職員団体等への便宜供与の状況について,調査期間を平成23年1月から同年12月までとし,回答期限を平成24年1月20日とする調査を依頼した(甲23〔別紙1〕,証人L)。
コ 原告は,平成24年1月18日,b労に対し,大阪市長選挙において労使間ルールに違反してd労働組合の支部が勤務時間中に無許可で庁舎内において組合活動を行っていたとの事案が発覚したことを伝え,現在,I市長の指示の下,労使関係の適正化を図るため,労使関係の実態調査や労使間ルールの見直しの検討を進めており,新たな労使間ルールを条例として整備することを検討しているところ,それまでの間,現在許可している各組合支部への庁舎スペースの便宜供与について取り消した上,期限を定めて事務機器などの撤去を求める旨通告した(乙Aa16)。
また,N総務局長は,平成24年1月20日,大阪市議会決算特別委員会において,平成18年以降,労働組合の事務室使用の適正化に向けた取組みとして事務室の一部明渡しや,使用料の減免率の引下げ等を行ってきたことを説明した上で,I市長の方針を受け,平成24年度以降は労働組合事務室の使用を許可せず,速やかに退去を求めていくこと,平成24年1月18日付けで,各局及び各労働組合に対し,現在許可している各組合支部への庁舎スペース便宜供与については取り消すよう通知したとの説明を行った(乙Ac107)。
サ 平成24年1月27日に行われた大阪市議会財政総務委員会において,交通局幹部は,原告の職員が平成23年7月22日の勤務時間中に組合活動を行った事実を認め,これについては厳正に対処するとの見解を表明した上で,同年12月にも組合役員が勤務時間内に組合活動を行っていたという事実が発覚したのみならず,委員の指摘によりまたも勤務時間内での組合活動の事実が発覚したことにつき,公務員に対する信頼を大きく損なったこととして謝罪するとともに,各職場における労働組合に対する便宜供与の許可を取り消した上,当局施設内における政治活動の禁止,勤務時間内の組合活動の禁止を徹底し,組合役員の勤怠調査なども行うなどし,その調査の結果,勤務時間内の組合活動に関わった職員については厳しく処分していく旨発言した。
また,I市長は,委員から,職員団体に対するチェック・オフは廃止されたが,市長部局とか交通局の現業職員に対するチェック・オフについて継続すべきか否か見解を聞かれ,労使協定の有効期間の終了以降は協定を結ばず,廃止する旨の意向を示した。同市長は,この点に関して,「若干,廃止する場合に手続を順を追っていかないと不当労働行為に当たる場合もあるということなんですが,そこは基本的にはもう余り慎重にやり過ぎてもあれですから,もともとチェック・オフということ自体が便宜供与で本来はだめなことなので,例外的に協定とかそういうことで認めているという,むしろチェック・オフのほうが例外なわけですから,それをもとに戻すということであればそんなに慎重になり過ぎることもなく,これはもうなしということでやっていきます。」と述べた。また,I市長は,労働組合に対する便宜供与を一切しない旨述べ,「営業所等そういうところで机を1つ置いたりとかロッカーを貸したとか,そういうことは一切なしというようなことの通知を出しまして,今度は交通局以外の全労働組合にそのように通知を出したんですね。だから,ちょっとまた見てください。もう一切リセットでいきますから,もう認めません。それから,地下の組合事務所も基本的には認めないと。やっぱりこれだけの問題が出ているのに便宜供与だとかどうのこうの言ってたらもう世間から笑われますからね。まずはリセットして,組合の適正な活動というのはちゃんと保障したいんだけれども,もうそういうことを言っているような場合じゃありませんので,もう全部まずはリセットすると,それが市民の感覚だと思っていますし,僕に与えられた使命だと思っております。」などと答弁している。(乙Ac108,乙Bc118,証人L)
シ I市長は,平成24年2月5日,ツイッターにて,「大阪市役所の職員組合の凄まじい選挙活動はどうなんだ?教職員組合のものすごい選挙運動はどうなんだ?職員OBまで巻き込んで,直接選挙運動をやっている。しかも組合の名の下に,事務所を構えるのに年間2000万円を超える税の支援を受けながら。府庁の組合も税の支援を受けている。」,「そして組合費を徴収して莫大な財源を背景に,また役所組織における人事権介入をちらつかせて若手・中堅職員を組織していく。選挙の時には自分たちの意に適う首長の誕生を目指し,意に適わない候補者は力づくで落としにかかる。勤務時間中も選挙運動はへっちゃら。」,「昨年の府知事選の時には,ある市役所の職場では,f党支援の候補者のチラシが全職員の机の上に配られていた。組合機関誌という位置付けらしい,そんなの選挙チラシに決まってるじゃないか!市長選の時は,大阪市役所が税金を使って明らかにJ市長を応援する広報を大展開。」,「職員組合,役所組織が,首長選挙に介入することなど普通になっているのが現状。そう言えば,選挙期間中,対立候補のJ現職市長が市役所前で演説した時に,市役所職員が数百名ずらっと演説を聞きに並んでいた。テレビ映像で残っている。これ,誰かが指示したんでしょう。」,「沖縄防衛局長は講話と題して話しただけ。大阪市役所の場合には,現職市長の選挙演説を,市役所前で数百名の職員に直接聞かせた。始業時間前だったらしいが,どちらが問題かは一目瞭然。当該行為だけを問題視するのではなく,全体から判断しなければならない。」,「公務員組合,教職員組合のえげつない政治活動をなんとかしなきゃならない。一有権者の政治活動は保障する。民間企業の組合の活動も自由。しかし強烈な力を持ち,自分たちの社長を決める選挙活動を自由にするのは違うと思う。」,「又役所が行政活動と称して,ガンガン実質選挙運動をやることもおかしい。役所の運営資金は公金だ。役所が嫌う候補者を支援する有権者の税金も入っている。公務員が一有権者として政治活動をするのは自由だが組合や役所組織をかたって政治活動をするのは禁じなければならない。」,「公務員組合,教職員組合が,職場環境の是正を訴えるために労使対等な立場に立つのは当然のこと。しかしそのような組合本来の活動を超えて,完全に政治集団化している。組合と名乗っているが,れっきとした政治団体だ。政治団体としての規制は必要である。」と書き込むとともに,「大阪市をバラバラにするのではない。年間逮捕者20人,覚せい剤など緩みまくりで余剰人員3割,労使癒着構造の大阪市役所の組織をバラバラにすると言ってるわけです。まじめな職員の皆さんは特別区で新たなスタートを切ってください」とのコメントをリツイートした。(丙1)
ス I市長は,平成24年2月6日,市幹部職員らに対し,「【全局長】【全区長】実態調査」との件名で,「報道で出ていますが,交通局リストは重大問題だと認識しています。」,「役所が選挙に関わると言うのは極めて慎重でなければならない。これは以前から僕が指摘していたことです。(中略)1 交通局のリストには幹部クラスも入っている。この幹部は知人紹介カードを組合に提出した記録になっており,それが事実なら完全な地公法違反。2 g党が入手している情報では,このリストについて選挙後,上司から廃棄命令が出ていた。これが事実なら完全な証拠隠滅罪です。3 このリストは,a労連が指揮命令している。となればa労連に属する組合でも同じことが行われていたと推察するのが当然。4 a労連は,このリスト作成について事実を否定している。これは内部調査で済まされる問題ではありませんし,内部調査では無理でしょう。(中略)きちんと費用をかけてしっかりと実態調査をし,徹底した処分を断行すべき問題だと思っています。(中略)交通局だけではないでしょう。(中略)選挙期間中,J前市長が市役所前で演説をした際,ずらっと市役所の職員が並んでいました。(中略)始業時間前だったとのことですが,一体誰からどのように知らせが出たのか。(中略)ニュース映像が残っていますし,あれだけの職員がずらっと並んだのですから,ヒアリングなど簡単なはず。この程度の内部調査ができないというわけではないでしょう。偶然集まるわけはありません。誰がどのようにして知らせを出し,集まったのか。詳細な事実経緯の報告を至急下さい。(以下略)」と記載されたメールを送信した。
また,I市長は,平成24年2月6日,市幹部職員らに対し,「組合が組合員に課すことのできる「不利益」とは何なんでしょうか?こんなの普通に考えれば,人事上の不利益です。それ以外に何かがあるのであれば,教えて下さい。僕は繰り返し,組合の人事介入はないかと確認してきましたが,市役所サイドはないと断言しました。しかし,組合が人事介入していると組合員に思わせていることは間違いありません。この脅しが効いているのです。早くチェック・オフも廃止すべき。4月1日人事についても,管理職クラスだけでなく,全職員について外部識者の力も借りて僕もしっかりとチェックして行きたいと思います。永年同じ職場にいる職員を人事異動で動かします。一定のルールを作って,4月1日から断行します。」と記載されたメールを送信した。
(乙Ac109)
セ 原告は,平成24年2月9日,原告の職員による違法ないし不適切と思われる政治活動,組合活動などについて,次々に問題が露呈してきていることから,O特別顧問のもとで徹底した調査,実態解明を行い,膿を出し切るためアンケートを実施すること,アンケート調査は市長の業務命令として全職員に真実を正確に回答することを求めるものであり正確な回答がされない場合には処分の対象になること,真実を記載したことによって職場内でのトラブルや人事上の不利益を受けることはなく,また,自らの違法行為について真実を報告した場合,懲戒処分の標準的な量定を軽減し,特に悪質な事案を除き免職とすることはないこととの説明の下,労働組合活動についての職員アンケートを行った。(乙Aa14の1ないし5)
ソ 原告は,平成24年2月20日,a労連及び補助参加人Z1労が行った大阪市行政財産使用許可申請について,組織改編に伴う新たな行政事務スペースが必要になること等を理由に,いずれも不許可とした。(乙Aa15の1・2)
タ I市長は,平成24年2月20日,記者会見において,「組合問題。これはちょっと今,調査か,O特別顧問のその調査について色々ご指摘も頂いておりますが,僕自身はそれぐらいやらないとですね,実態管理できないというふうに思っております。(中略)勤務時間中に堂々と政治活動やってたりとか,もうとんでもないことやってますんでね。それから,そういうことでもありますので,もうかなり厳格化していきます。こんなん当たり前っちゃ当たり前なんですけど,勤務時間中に行うことができる組合活動を勤務労働条件に関する交渉に限定。(中略)労働組合との関係については,(中略)管理運営事項。(中略)本当は組合が口出しちゃいけないことなのに,当局側は,色々意見交換とか情報提供とかそういうことを称して色々組合と折衝してたらしいですけど,もう全部ダメです。もう管理運営事項は当局がやります。組合事務所など庁舎使用にかかる便宜供与は廃止。もうダメです。もう色々政治活動やってたことは明らかなんですから,一回リセットです。それから組合費のチェック・オフ。これもダメです。これももう便宜供与の最たるものですから,組合費は組合が自ら集めて下さい。もう組合員の人は,チェック・オフされるもんですから,自動的に組合員が組合費をどんどんとられて,組合にお金が集まってくるんですけども,組合が組合でしっかりと組合員にですね,その組合に入ることの正当性をしっかり説明して,組合費を頂くと。g党ですら,こんなチェック・オフとかこんなもんないんですから。こんなのはもう自分達で,組合が自分達のその組合の正当性をしっかりとメンバーに説明してお金を集めると,当たり前のことをやってもらいます。」などと発言した(乙Ac110)。
(3)  本件通告後の事情
ア 原告のd労働組合等に対する申入れの状況
(ア) 大阪市交通局は,平成24年2月29日,d労働組合に対し,大阪市とd労働組合との間で平成元年10月1日に締結した賃金控除に関する協定(平成元年協定第6号)について,平成25年4月1日以降,控除項目から労働組合費を削除することを申し入れた。もっとも,d労働組合のチェック・オフは廃止されていない。(乙Ba45,証人P)
(イ) 大阪市病院局は,平成24年2月29日,e労働組合に対し,大阪市病院局長とe労働組合との間で平成21年4月1日に締結した労働関係の基本に関する協約及び平成22年5月31日に締結した賃金の一部控除に関する協定について,組合費の控除を控除費目から削除するとともに,有効期限を平成25年3月31日までとする組合費の控除に関する覚書を別途締結することを申し入れた。(乙Ba46,47)
(ウ) 大阪市病院局は,平成24年3月1日,補助参加人Z1労に対し,大阪市病院局長と補助参加人Z1労との間で平成21年4月1日に締結した労働協約について,組合費の控除を控除費目から削除するとともに,有効期限を平成25年3月31日までとする組合費の控除に関する別途合意を行うことを申し入れた。(乙Ba48)
イ 原告と補助参加人Z1労との交渉状況等
(ア) 補助参加人Z1労は,平成24年3月6日,原告に対し,チェック・オフの廃止は労働組合の組織弱体,団結権の侵害につながる大きな問題である旨,及び,I市長が便宜供与について労使協定を締結していても全てリセットし,協定書の更新を行わないと宣言しており,給与の一部控除に関する協定書の改定の背景には一連の労働組合への不当な圧力があると受け止めざるを得ない旨の意見を表明し,チェック・オフ廃止の合理的必要性及び正当理由を求めるとして,本件通告についての団体交渉の申し入れを行った。これに対し原告は,平成24年3月8日,団体交渉に応じる旨の書面回答を行った。(乙Aa1の5,乙Ba5,6)
(イ) 原告と補助参加人Z1労は,平成24年3月15日,給与の一部控除に関する協定書の改定に関する団体交渉を行った。補助参加人Z1労は,原告に対し,協定書の改定内容の説明,チェック・オフを廃止する理由,協定書の有効期間を1年に短縮する理由等の説明を求めた。原告は,過去の職員厚遇問題等を契機として,原告と職員団体との癒着や相互依存の象徴である便宜供与を見直し,市民の信頼に応えるとともに職員団体の自主的かつ健全な活動を促す必要があり,この観点から職員団体に対するチェック・オフが廃止されたこと,補助参加人Z1労については協定書の有効期限が平成22年3月末までであったことや,職員団体が本件チェック・オフ廃止条例訴訟を提起していたこと等から提案を見送っていたものの,同訴訟の一審判決が出されチェック・オフに関する原告の主張が認められたこと,職員団体に対するチェック・オフの廃止は既に行われており市民に対して片方のみ継続していることの説明が困難であることから,補助参加人Z1労についてもチェック・オフを廃止し,組合費以外の控除については有効期間を1年(自動更新あり)とすること,チェック・オフの廃止に当たっては補助参加人Z1労としても準備期間が必要であることから平成25年3月31日までの1年間については引き続きチェック・オフを継続する形での覚書を作成したいこと,新たな協定がなければ平成24年4月以降,組合費以外の控除項目(互助会掛金等)についても控除ができなくなること等を説明した。補助参加人Z1労は,チェック・オフ廃止に正当な理由がなければ団結権の侵害につながり,組織の弱体化を企図したものであると指摘せざるを得ないこと,原告の提案内容は補助参加人Z1労にとって組織運営に関わる重要な事項であり,事前説明,事務折衝等が行われないまま団体交渉が行われたこと等から,その場で判断できる状況にない旨述べるとともに今後の原告の誠意ある交渉姿勢が必要であるとの考えを示し,原告も改めて交渉を行いたい旨を述べた。(乙Aa1の6,9,乙Ba7)
(ウ) 原告と補助参加人Z1労は,平成24年3月28日,再度団体交渉を行った。原告は,前回の団体交渉時と同じ説明を行うとともに,最終的な結論としては,新たな協定書及び平成25年3月末までの1年間に限り組合費の控除を可能とする覚書の締結を求める旨,新たな協定の締結ができなければ組合費以外の控除項目の控除もできなくなり重大な影響が生じる結果となること,平成24年4月の定例給与支給に向けて給与からの一部控除をするとした場合,支給事務のスケジュールからして日程が迫っており,新たな協定書及び覚書の早期の締結をお願いしたい旨の説明をした。これに対し,補助参加人Z1労は,組合費のチェック・オフ廃止が労働組合にとって極めて重要な事項であるにもかかわらず,事務折衝も十分な事前説明もないまま1か月前に提案を行い,限られた時間で交渉を強いるといった結果ありきの交渉手法を用いたことについて非難をするとともに,チェック・オフに関する取扱いを協定書に記載する対案を提案した。しかし,原告は,組合費の控除を協定書ではなく覚書として合意する案を提案した。補助参加人Z1労は,チェック・オフの廃止について労働組合の組織弱体,団結権の侵害等につながるものであるとして,原告提案については合意できるものではないものの,他方で,協定書が平成24年3月末で失効すると組合費以外の控除項目の控除が不可能となり,大きな組織混乱及び組合員への負担が強いられ,無用な混乱を生じ,組合員に多大な影響を及ぼすこととなってしまうため,このような事態を回避するため,法的措置を含め重大な決意をもって組合費のチェック・オフを1年間継続することを前提として判断することとしたこと,組合費のチェック・オフを協定書とは別の覚書とすることは,原告が平成25年4月1日以降の組合費のチェック・オフの廃止をもくろむものであるところ,合理的理由なく覚書を更新せず,組合費のチェック・オフのみを一方的に廃止することは不当労働行為として許されないとの意見を表明した。(乙Aa1の10・12,乙Ba11)
(エ) 上記2回の団体交渉を経て,補助参加人Z1労は,平成24年4月1日,原告との間で,組合費を控除項目から削除し,有効期間を3年から1年に短縮した「給与の一部控除に関する協定書」を締結するとともに,同協定に基づき,平成25年3月31日を有効期限とする補助参加人Z1労の組合費を合意による給与からの控除対象とする旨の覚書を締結した(乙Aa1の6・7,乙Ba6,乙Ba9の1ないし3)。
ウ 原告と補助参加人Z2労との交渉状況等
(ア) 補助参加人Z2労は,平成24年3月14日,市教委に対し,上記イ(ア)と同様の意見を表明し,チェック・オフ廃止の合理的必要性及び正当理由を求めるとして,本件通告についての団体交渉の申し入れを行ったところ,市教委はこれに応じる旨回答した(乙Aa2の6,弁論の全趣旨)。
(イ) 市教委と補助参加人Z2労は,平成24年3月22日,給与から組合費を控除することに関する協定書の改定についての団体交渉を行った。市教委は,労使関係の相互依存体質の解消を図り,市民目線から見た適正な労使関係構築のため,労働組合に対する便宜供与の見直しの一つとして,協定を延長せず,今後給与からの組合費の控除を廃止すること,組合費以外の控除については現行どおりの控除を行うこととし,有効期間1年の,有効期間満了前に双方が改定の意思表示をしない場合は自動更新とする内容の協定としたいこと,組合費控除の廃止については,労働組合の準備の必要から覚書を別途締結し,平成25年3月31日までの1年間にかぎり引き続き控除を継続することとしたいとの説明を行った。また,チェック・オフ廃止の理由として,既に職員団体についてはチェック・オフが廃止されており,本件チェック・オフ廃止条例訴訟の一審判決において原告の主張が認められたことから,現在の協定の有効期限である本年度末日をもってチェック・オフを廃止する提案をしたものであること,団結権侵害や労働組合の組織弱体化を意図したものではないことなどの説明をした。補助参加人Z2労は,市教委の説明が合理的かつ正当な理由とは考えられないこと,検討不十分であり今後市教委の誠意ある交渉姿勢が必要との考えを示し,市教委も改めて交渉の場を設定したいとの見解を示した。(乙Aa2の9)
(ウ) 市教委と補助参加人Z2労は,平成24年3月27日,再度団体交渉を行った。市教委は,原告における労使関係が大きな関心を集めているところ,本件チェック・オフ廃止条例訴訟において原告の主張が認められたこともあり,労使関係における相互依存体質の解消を図り,市民目線から見た適正な労使関係を構築するため,労働組合に対する便宜供与の見直しの一つとしてチェック・オフを廃止する提案をしたこと,猶予期間として1年間を設けるが,それ以上の譲歩は,今後も組合費の控除を続けることになるため困難であるとの見解を示した。補助参加人Z2労は,市教委が提案内容での合意に固執し,一切の修正に応じない姿勢に終始しているとして団体交渉を終了させた。(乙Aa2の10)
(エ) 補助参加人Z2労は,平成24年3月30日,市教委に対し,給与の一部控除に関する協定書の改定について,組合費のチェック・オフを廃止するには労使間の合意によるか,そうでない場合には何らかの正当かつ合理的理由が必要であり,使用者が一方的に組合費のチェック・オフを廃止することは不当労働行為に該当すること,市教委が何ら具体的な問題点を指摘しないことから,組合費のチェック・オフ廃止は不当労働行為に該当すること,補助参加人Z2労は市教委が提案した協定書及び覚書に捺印をするが,これは平成25年4月1日以降の組合費のチェック・オフ廃止を承諾したものではないこと,市教委が組合費のチェック・オフ廃止に拘泥するのであれば支配介入として労働委員会に救済申立てを行うつもりであることなどの意見を表明した。(乙Aa2の11)
(オ) 上記2回の団体交渉を経て,補助参加人Z2労は,平成24年4月1日,原告との間で,組合費を控除項目から削除した「給与の一部控除に関する協定書」を締結するとともに,同協定に基づき,平成25年3月31日を有効期限とする補助参加人Z2労の組合費を合意による給与からの控除対象とする旨の覚書を締結した(乙Aa2の7・8)。
エ 原告とZ3労との交渉状況について
(ア) 補助参加人Z3労は,平成24年3月13日,市教委に対し,上記イ(ア)と同様の意見を表明し,チェック・オフ廃止の合理的必要性及び正当理由を求めるとして,本件通告についての団体交渉の申し入れを行い,市教委は,同月19日,これに応じる旨回答した(乙Aa3の6,弁論の全趣旨)。
(イ) 市教委と補助参加人Z3労は,平成24年3月22日,団体交渉を行った。市教委は,労使関係の相互依存体質の解消を図り,市民の目線から見ても適正な労使関係を構築するため,労働組合に対する便宜供与を見直すこと,今回の提案は,3月末で期限を迎える協定の延長をせず,組合費以外の控除は現行どおり行い,有効期間1年間で有効期間の満了前に双方が改定の意思表示をしない場合は自動更新とする内容での協定書を新たに作成すること,組合費控除の廃止に当たっては新たな協定書に基づく覚書を別途締結し,平成25年3月31日までの1年間に限り引き続き組合費の控除ができる形にしたいこと,チェック・オフ廃止はI市長からの命令等ではなく,また,団結権の侵害や労働組合の弱体化を意図したものではないこと,既に職員団体についてチェック・オフが廃止されているところ,これに関する本件チェック・オフ廃止条例訴訟について地裁では原告が勝訴したことを考えると,職員団体であれ労働組合であれ同じ原告の職員で構成された組合であると受け止められるのであり,職員団体のチェック・オフは廃止し,労働組合のチェック・オフは継続することについて説明が困難であることから便宜供与を見直すものであること,不当労働行為にならないかという点で懸念があることから,実施までに1年間の猶予期間を設けたこと等の説明を行った。補助参加人Z3労は,市教委の提案が組織運営に関わる極めて重大な事項であり,予備交渉以降誠意ある対応はなく,今回の団体交渉が初めての具体的交渉の場であり,かつ,説明内容は理解,納得できるものでもないことから,市教委の誠意ある交渉姿勢が必要であるとの考えを示し,市教委も改めて交渉の場を設定したいとの見解を示した。(乙Aa3の9)
(ウ) 市教委と補助参加人Z3労は,平成24年3月29日,再度団体交渉を行った。市教委は,本件チェック・オフ廃止条例訴訟において原告の主張が認められたこともあり,労使関係における相互依存体質の解消を図り,市民目線からみた適正な労使関係を構築する為,労働組合に対する便宜供与の見直しの一つとして協定書の有効期限が満了する本年度末日をもってチェック・オフを廃止することを提案したものであるため,提案した内容で合意したいとの考えを示した。また,市教委は,補助参加人Z3労から協定書を締結しない場合の影響について問われたのに対し,組合費だけでなく,協定書記載の給与からの控除全てがされない事態が生じ,労使ともに困る事態になるとの説明を行った。補助参加人Z3労は,組合費のチェック・オフに関する事項を覚書ではなく協定書に盛り込む対案を提案するとともに,市教委の提案に「協定を改定する場合,新協定締結前までは,本協定を有効とする」との表現内容を反映すべきとの意見を述べた。(乙Aa3の10)
(エ) 補助参加人Z3労は,平成24年3月30日,市教委に対し,チェック・オフを廃止するには労使間の合意によるか,そうでない場合には何らかの正当かつ合理的理由が必要であり,使用者が一方的に組合費のチェック・オフを廃止することは不当労働行為に該当すること,補助参加人Z3労が対案を示したにもかかわらず市教委が自らの提案に固執したこと,市教委が何ら具体的な問題点を指摘しないことから,組合費のチェック・オフ廃止は不当労働行為に該当すること,補助参加人Z2労は市教委が提案した協定書及び覚書に捺印をするが,これは平成25年4月1日以降の組合費のチェック・オフ廃止を承諾したものではないこと,市教委が組合費のチェック・オフ廃止に拘泥するのであれば支配介入として労働委員会に救済申立てを行うつもりであることなどの意見を表明した。(乙Aa3の11)
(オ) 上記2回の団体交渉を経て,補助参加人Z3労は,平成24年4月1日,原告との間で,組合費を控除項目から削除した「給与の一部控除に関する協定書」を締結するとともに,同協定に基づき,平成25年3月31日を有効期限とする補助参加人Z3労の組合費を合意による給与からの控除対象とする旨の覚書を締結した(乙Aa3の7・8)。
オ 原告と補助参加人Z4労との交渉状況について
(ア) 補助参加人Z4労は,平成24年3月8日,水道局に対し,協定書の改定に関する団体交渉を申し入れ,同月21日,団体交渉を行った。水道局は,チェック・オフが便宜供与であるところ,原告では,職員厚遇問題を契機として労使の癒着や相互依存の象徴と批判された便宜供与を見直し,市民の信頼に応え,職員団体の自主的かつ健全な活動を促すことを目的としてチェック・オフが廃止されたこと,本件チェック・オフ廃止条例に関する訴訟の一審判決が出され原告の主張が認められたことから,関係労働組合に対して一斉にチェック・オフ廃止の申入れを行ったこと,現行協定の有効期限である平成24年7月30日以降,組合費の控除を削除し,その他の控除を現状のままとすること,有効期間を平成25年3月31日とし,有効期間満了の日から1か月以内に双方が変更の申入れをしない場合は変更の日から1年間について自動更新とすること等を内容とする新協定を締結すること,チェック・オフの廃止については,労働組合の準備のため,平成25年3月31日までは協定の失効後も引き続きチェック・オフを継続する旨の覚書を別途締結すること等を提案するとともに,現行協定が失効した場合,組合費以外の控除項目(互助会掛金等)についても控除不可能となり,組合員に重大な影響が生じるとの説明をした。補助参加人Z4労が,チェック・オフ廃止についてI市長の命令があったかどうかを尋ねたところ,水道局は,平成24年2月22日にI市長がすべての労働組合について同じ方針でやりなさいとの指示がでており,それに基づいて総務局から水道局に対してチェック・オフ廃止をするとの判断をしたとの回答をした。また,補助参加人Z4労が,チェック・オフを廃止しなければならないほど何か問題がある対応をしたか否かについて尋ねたのに対し,水道局は,職員厚遇問題以降,補助参加人Z4労はルールに基づいて対応しているとした上で,チェック・オフについては市長の指示がある中での提案であり,市民目線で歩調を合わせることが市民からの信頼を勝ち取ることになるとの理解での提案である旨の説明をした。さらに,労使間で労使関係を修復するために協議を重ねて基本協約を締結したのが本件チェック・オフ廃止条例が可決された平成20年3月末よりも後の平成21年4月であるにもかかわらず,水道局はチェック・オフ廃止を検討していたのかとの補助参加人Z4労の質問に対し,水道局は,チェック・オフの廃止について検討はしていたが労働組合に対して正式に申入れをするには至っていなかった旨の説明をした。(乙Ab6,11,29,乙Bb15)
(イ) 水道局と補助参加人Z4労は,平成24年6月27日,協定書の改定に関する2回目の団体交渉を行った。水道局は,チェック・オフ廃止について前回の団体交渉と同様の説明を行うとともに,他の労働組合において時間内の政治活動が行われるなどの不適正な部分が見受けられたことから労使関係を厳格化する必要があり,便宜供与の見直しが必要であるとの説明を行った。補助参加人Z4労は,チェック・オフの重要性を主張し、チェック・オフ廃止は労働組合潰しではないか,職員団体と同様の取扱いをする必要性がどこにあるのかといった質問をしたが,水道局は同様の説明を繰り返すにとどまった。(乙Ab7,29,乙Bb16)
(ウ) 水道局と補助参加人Z4労は,平成24年7月23日,協定書の改定に関する3回目の団体交渉を行った。この際にも水道局は,協議冒頭に前回までと同様の説明を行い,新たな協定を締結できないことにより,組合費以外の控除についても控除不能となる場合には組合員に重大な影響が出るとの説明を行うとともに,現行の協定の期限である平成24年7月30日を目前に控え,同年8月の定期給与支給に向けた準備を考えるとギリギリの日程であるとの説明を行った。補助参加人Z4労は,水道局の交渉手法を非難したうえで,組合費の控除を残し,有効期間を平成25年3月31日までとし,期間満了後も新協定締結までは有効とする協定案を提案した。しかし水道局は,その場合,組合費の控除を削除する手続が別途必要になることから受け入れることが困難であると回答した。(乙Ab8,29,乙Bb19)
(エ) 水道局と補助参加人Z4労は,平成24年7月30日,協定書の改定に関する4回目の団体交渉を行った。補助参加人Z4労が改めてチェック・オフ廃止の理由の説明を求めたのに対し,水道局は,便宜供与を行わないという原告全体の方針に従って提案したものであること,労使関係条例が成立し,これにより方針がより明確化されたことから,水道局もその方針に従う必要があるとの説明を行った。補助参加人Z4労は,新たな協定書に合意しなければ他の控除金の給与からの控除ができなくなり,組合員に多大な影響を及ぼすことから協定書及び覚書には調印するが,組合費のチェック・オフ廃止に合意したものではないとの意見を述べるとともに,その旨が記載された「『賃金の一部控除に関する協定』の改定についてのZ4労の見解」と題する書面を水道局に手渡した。(乙Ab10,29,乙Bb20,21)
(オ) 上記4回の団体交渉を経て,補助参加人Z4労は,平成24年7月31日,原告との間で,組合費を控除項目から削除した「賃金の一部控除に関する協定」を締結するとともに,同協定に基づき,平成25年3月31日を有効期限とする補助参加人Z4労の組合費を合意による給与からの控除対象とする旨の覚書を締結した(乙Ab11,12,29,乙Bb22,23,乙Ac119)。
カ 補助参加人らは,本件通告を受け,上記のとおり協定改定に向けた団体交渉のための準備等を短期間で行う必要が生じたほか,チェック・オフ廃止に向けて,1年間の間に組合費徴収のための諸手続の整備,組合員に対する複数回の説明会の開催等を行うといった対応に追われた。(乙Ac112ないし115,118)
キ 原告依頼の第三者調査チームは,平成24年4月2日,「大阪市政における違法行為等に関する調査報告」をまとめた。その内容は,平成24年1月から同年3月までの間の調査の結果発覚した個別具体的な各種不祥事等を踏まえ,原告において労使癒着及び官民癒着構造を原因としてヤミ便宜供与,実質的ヤミ専従,違法,不適切な政治活動,勤務時間内組合活動,人事介入,問題のある随意契約,区役所と地域団体との不透明な関係等の問題や犯罪行為を含む職員不祥事が生じているとし,労使癒着構造から脱却し,健全な労使関係を構築すること,官民癒着構造を総点検し,不透明な資金の流れがないかどうかや原告の職員が公務とはいえない業務に従事していないかなどを再検討することなどを提言するものである。(乙Ba35)
ク I市長は,平成24年7月6日,大阪市議会臨時会に提出した労使関係条例の議案について,「大阪市労使関係に関する条例案ですが,本条例案は,労働組合などとの交渉の対象となる事項の範囲,交渉内容の公表などに関する事項を定めることにより,適正かつ健全な労使関係の確保を図り,もって市政に対する市民の信頼を確保することを目的に制定するものです。この条例では,管理運営事項について労働組合などと意見交換を禁止するとともに,本交渉については報道機関へすべて公開することとし,すべての交渉の議事録を公表するものです。また,労働組合などに対する便宜供与は行わないものとします。一切行いません」と説明した。また,I市長は,平成24年7月11日,大阪市議会臨時会において,労使関係条例の議案について,「本市の労使関係においては,御指摘のとおり,これまで第三者調査チームの報告や交通局の独自調査などによっても,不適正な事案が数多く明らかになっているところであります。本市としては,労使間の交渉のオープン化・記録化による徹底した透明性の確保や,管理運営事項の意見交換の禁止などの労使間の交渉ルール及び適正かつ健全な労使関係の確保に向けた具体的な措置などについて条例で規定し,厳格に取り組みを進めることによって市民の信頼回復を図っていきたいと考えております」と説明した。
原告の幹部職員は,労使関係条例の議案の説明の際,原告において労使間の不適正な事案が明らかになり市民の信頼を大きく失墜させる事態を招いており,適性かつ健全な労使関係ではないとの認識を有していること,便宜供与とは労働組合等が組合活動を行う上で原告から便宜を供与することを意味するところ,原告においてはこれまでの間の労使間の不適切な事案を受けて便宜供与についてリセットするものであり,他都市の事案と直ちに比較できるものではないと考えているとの説明を行った。(乙Bc138,139,144)
ケ(ア) 原告は,平成24年9月13日,補助参加人Z1労との間で行われた新たな労働協定書の締結に関する交渉事務折衝の際,補助参加人Z1労として何か問題があったのかと問われたのに対し,補助参加人Z1労としての問題はないが,原告と労働組合全体として考えるべき問題と理解してもらいたいとの回答を行った。(乙Aa17の1)
(イ) 市教委は,平成24年10月17日及び同月23日に行われた現業・公企統一闘争小委員会交渉において,市教委と補助参加人Z2労との間での交渉の中身について何か不誠実なことがあったのかと問われたのに対し,補助参加人Z2労との間では不適正なことはなかったとの回答を行った。(乙Aa18の1・2)
コ 大阪府労働委員会は,平成25年3月25日,a労連などが,原告の行った原告職員に対する業務命令として正確な回答がされていない場合は処分対象となる旨明記した上で行われた組合活動への参加等を含むアンケート調査が不当労働行為に当たるとしてされた救済申立てに対し,同アンケート調査が支配介入に該当するとして原告に対してポストノーティスを命じる命令を行った。原告はこれを不服として中労委に対して再審査請求を行ったが,中労委は,平成26年6月4日,原告の再審査申立てを棄却する旨の命令を行った。(丙2,3)
大阪地方裁判所は,平成27年1月21日,原告の職員が上記アンケートによって精神的苦痛を被ったなどと主張して行った国家賠償法1条に基づく損害賠償請求事件において,アンケートの一部に原告の職員の権利等を侵害する内容のものがあるとの理由等により請求の一部を認める判決を言い渡した。(丙4)
サ 大阪府労働委員会は,平成26年2月20日,原告がa労連等に対して原告の庁舎内の組合事務所について退去を通告し,次年度の行政財産許可申請に対して不許可処分としたことが不当労働行為であるとしてされた救済申立てに対し,これらの行為が支配介入に当たるとして原告に対してポストノーティスを命じる命令を行った。原告は,これを不服として,中労委に対して再審査請求を行ったが,中労委は,原告の上記対応が原告の施設管理権限を濫用するものであって,団結権を侵害する支配介入行為に該当するとして原告に対してポストノーティスを命じる命令を行った。(丙6)
シ 大阪府労働委員会は,平成27年2月18日,a労連等から平成24年2月に申入れがあった原告の本庁舎地下1階スペースの一部の利用に関する団体交渉に原告が応じなかったことが正当な理由のない団交拒否として不当労働行為に当たるとして,ポストノーティスなどを命じる命令をした。(丙10)
2  争点(1)(本件通告が,補助参加人らに対する支配介入(労働組合法7条3号)に該当するか。)について
(1)  労働組合法7条3号が禁止する支配介入とは,使用者の組合結成ないし運営に対する干渉行為や諸々の労働組合を弱体化させる行為など労働組合が使用者との対等な交渉主体であるために必要な自主性,独立性,団結力,組織力を損なうおそれのある使用者の行為を広く含むと解されるところ,ある行為が支配介入に当たるか否かについては,当該行為の内容や態様,その目的,動機のみならず,行為者の地位や身分,当該行為がされた時期や状況,当該行為が労働組合の運営や活動に及ぼし得る不利益,影響等の諸要素を総合考慮し,労働組合の結成を阻止ないし妨害したり,労働組合を懐柔,弱体化したり,労働組合の運営・活動を妨害したり,労働組合の自主的決定に干渉したりする効果を持つものといえるかにより判断すべきである。
本件通告は,チェック・オフ廃止にかかる通告であるところ,チェック・オフは労働組合に対する便宜供与であって,これを行うか否かは原則として使用者の裁量に委ねられると解されることや,チェック・オフが一定期間継続されているとしても,そのことから直ちに使用者がこれを継続すべき義務を負うと解すべき法的根拠もないことからすると,被告や補助参加人らが主張するように,その廃止に当たり,(いわば借地借家法上の「正当事由」のような)実体法上の合理的理由までを必要とすると解するのは相当でない。もっとも,チェック・オフが労働組合にとって簡便かつ確実に組合費を取り立てることによりその財政を確固たるものとし,かつ,組合費の滞納による組合員の除名,脱退を防ぐものであって組織の維持強化に資するものであることからすると,チェック・オフが廃止されることにより,当該労働組合の財政面のみならず,組合費の滞納等による組合員の脱退等を招き組合員数の減少につながるなど,その団結権の側面においても少なからぬ不利益を与える可能性があるというべきであり,その不利益の程度は,当該労使間においてチェック・オフが長期間継続しているほど大きくなる面があることは否定できない。このような点からすれば,使用者が,労働組合を弱体化させることを意図してチェック・オフを廃止する場合や,そのような効果を与えることを認識しながら十分な手続的配慮を尽くすことなく廃止する場合には,支配介入に当たる場合があると解するのが相当である。
そして,実際に支配介入に当たるか否かの判断に当たっては,前記諸要素のうち,チェック・オフ廃止により労働組合が受ける不利益の程度と,同廃止を求める使用者側の目的,動機等を中心に勘案して行うことになるが,使用者側が明確に労働組合の弱体化等を意図するなど,その動機が明らかに不当と認められる場合については,それ自体でチェック・オフの廃止が許されないことになるというべきであるし,労働組合に与える不利益の大きさなどによっては,手続的な配慮の一環として,チェック・オフ廃止までの間に,合理的な猶予期間を置いて,その間に,労働組合に与える不利益を最小限に止めるべく必要な不利益緩和措置を採ることも検討されるべきであり,このような措置を採ったか否かによって,チェック・オフの廃止が支配介入に当たるかが左右されることもありうる。いずれにしても,使用者としては,このようなチェック・オフの廃止に当たり,団体交渉等の労使協議の中で十分に議論を尽くすべきであり,その中で,チェック・オフ廃止の必要性を可能な限り具体的に説明するとともに,労働組合に与える不利益の程度等に応じて,上記のような猶予期間の必要性及びその長短や,不利益緩和措置の必要性及びその内容についても十分に吟味すべきであり,そのような労使協議を十分に尽くさないままチェック・オフの廃止を行うことは,手続的配慮を欠いたものと評価され,支配介入に当たるとされることが多いというべきである。
(2)  以上の観点から,本件における支配介入該当性について検討する。
ア 前記認定事実のとおり,I市長が就任する前の平成16年頃から,原告においては,職員の超過勤務手当の不適切処理の問題,条例に定めのない互助組合連合会給付金の問題,いわゆるヤミ専従問題,職員厚遇問題等の職員の不祥事がたびたび問題とされ,市政に対する市民からの信頼が損なわれている状況にあり,その問題の原因として,不適切な労使関係が存在するとの具体的な指摘がされる状況にあった。さらに,原告の歴代市長の下で市政改革が行われてきたものの,上記各問題が解決されるには至らず,I市長就任後も,調査を重ねるごとに,上記各問題と同様の職員の不祥事が発覚する状況にあり,第三者調査チームによる調査結果によっても,未だ労使癒着構造が問題発生の原因の一つであるとの指摘がされる状況にあった。また,原告が抱えていた上記各問題を背景として,本件チェック・オフ廃止条例が大阪市議会によって制定されるに至り,I市長就任後には新たに労使関係条例が制定された。これらの点に加え,地方公務員が全体の奉仕者として公共の利益のために勤務することを求められているなど,憲法及び地方公務員法によってその地位の特殊性や職務の公共性が定められていることや,住民から付託された信頼を存立基盤とする地方公共団体において,住民からの信頼維持のための施策は必要不可欠であると解されることを併せ考えると,不適切な労使関係を払拭し住民から信頼を回復するための地方公共団体の施策として一切の便宜供与を廃止するとの判断を行うこと自体は,原告の政策判断として一応の合理性を有するものと評価することができる。したがって,原告が,チェック・オフ廃止の目的として不適切な労使関係の払拭等を掲げていること自体をもって,不当ということはできない。
イ 他方で,前提事実及び前記認定事実によれば,本件通告は,労使間での事前説明や調整,事務折衝又は情報提供等が一切ない状況で突然行われたものである上,その内容も,補助参加人ら労働組合側の個別事情を一切考慮することなく,四半世紀から半世紀にわたって継続的に行われていた組合費のチェック・オフを1年間の猶予期間のみで廃止ないしは廃止される可能性がある状態に置くことを求めるものであり,しかも,補助参加人Z1労,同Z2労及び同Z3労については本件通告から協定の有効期間満了までわずか1か月強という,提案内容を検討し必要な調査等を行った上で結論を出すには著しく不十分な期間しか存在しない状況であった。加えて,本件通告後に行われた団体交渉においても,原告は,補助参加人らいずれに対しても,労使関係の相互依存体質の解消,市民目線から見た適正な労使関係の構築といったチェック・オフ廃止の必要性を一般的・抽象的に説明するにとどまり,チェック・オフ廃止によって補助参加人らそれぞれに生じる個別事情の有無,個別事情に対する対応の必要性,対応可能性等の具体的な検討の提案を行わないばかりか,協定が締結されない場合には他の控除項目についても控除できなくなり組合員が重大な不利益を被る結果となるといった不利益を告げているのであって,事実上原告の要求に従うことを強制するものであり,労使協議を十分に尽くそうとする姿勢であったとはおよそ評価できないといわざるを得ない。前記認定事実のとおり,補助参加人Z2労,同Z3労及び同Z4労については,労使関係に格別の問題がなく,特に補助参加人Z4労については平成21年4月に労使関係を修復するために基本協約を締結したばかりであったことに加え,現在においてもd労働組合のチェック・オフが廃止されていないことからすると,原告において,補助参加人らとの関係でも各労働組合の事情に応じた柔軟な対応をとることも不可能ではなかったと推認される。
このように,チェック・オフの廃止について,原告が説明するとおり不適切な労使関係の払拭等の目的があり,それ自体が不当と評価されることはないにしても,前記認定のとおり,本件チェック・オフ廃止条例制定後I市長が就任するまでは労働組合に対するチェック・オフの廃止が具体的に検討されておらず,原告から補助参加人らに対し,その廃止について打診すらされていなかったことなどに照らすと,喫緊に補助参加人らに対するチェック・オフ廃止を断行しなければ,大阪市政に対する市民の信頼が損なわれるような状況にあったとは認めることができない。そうであれば,原告としては,協定改定の申入れに当たり,実質的な交渉が可能になる程度に猶予期間を与えるなど十分な手続的配慮を行うべきであったといえるし,かつ,前記説示に照らし,そのような配慮を行うことが可能であったと認められる。このことは,職員団体について既にチェック・オフが廃止されており平仄を合わせる必要があったとしても異なるものではなく,また,本件通告後に労使関係条例が制定されていることも,上記判断を左右するものではない。そして,前記認定事実のとおり,本件通告が行われたことによって,現に補助参加人らは具体的な対応を迫られ,これによって少なくない負担を強いられているのであるから,組合活動に一定の支障を生じたものと認められる。
これに対し,原告は,チェック・オフ廃止までの間に,1年間の猶予期間を置いており,必要な手続的配慮を行っている旨主張する。しかし,前記認定事実によれば,1年間の期間設定に当たって原告が補助参加人らの実情に関する具体的な調査を行った事実はなく,原告と補助参加人らとの団体交渉の結果によれば単に職員団体の組合費のチェック・オフが廃止される時期に平仄を合わせたというにすぎないのであるから,単に上記期間を設定したからといって,原告が必要な手続的配慮を行ったとは評価できない。
ウ さらに,前記認定事実によれば,I市長は,原告の市長に就任した後,公務員組合がほしいままに振る舞うことが国の破綻につながるといった趣旨の発言を行うなど,基本的にa労連下の労働組合に対し否定的な発言をしている上,a労連下の労働組合が政治活動や人事介入等を主導的に行っている旨の発言など,同労働組合らが政治活動等の問題行動を行っていたことを問題視しつつも,反面,民意の支持を得たI市長やg党とは異なる政治思想の労働組合に対する税金の使用が問題である旨発言したり,市長選挙において労働組合等がI市長を支援せず対立候補を支援したこと自体を問題視する旨の,あたかも対立候補を支援した労働組合を敵視するともとれる発言を行っている。また,原告は,後に大阪府労働委員会や中労委によって不当労働行為と認定されるような方法で労働組合活動への参加等を含むアンケート調査を行ったり,組合事務所の退去通告や行政財産許可申請を不許可とする処分を行ったり,本庁舎地下1階スペースの利用に関する団体交渉を拒否するなどしている。このように,I市長がこれまでの補助参加人らを含む労働組合の組合活動について否定的な見解を強く表明している状況下で,市議会においても,チェック・オフに関し便宜供与にすぎないとしてその廃止に慎重になる必要はないという趣旨を明言していることや,前記イで説示したとおり,原告当局が,労働組合に対するその他の対応と同様,補助参加人らの状況を何ら考慮することなく,補助参加人らにおいて検討する余地がほとんどない状況で,事実上原告の提案に応じることを強制するといった一方的な態度をもって本件通告を行っていることに照らすと,原告は,少なくとも,本件通告が補助参加人らを弱体化させる効果を有することを十分に認識した上で,これを行ったと認めるのが相当である。
エ 以上のとおり,原告は,少なくとも,本件通告が補助参加人らを弱体化させる効果を有することを十分に認識した上でこれを行っており,かつ,本件通告を行うに当たって必要な手続的配慮を行っておらず,これにより一定の支障が生じていることからすると,チェック・オフが有する性質や原告のチェック・オフ廃止の目的が不適切な労使関係の払拭にあり,そのために便宜供与を原則一律に廃止するという方針を採ることが政策として一応の合理性を有するものと評価できることを考慮しても,本件通告は補助参加人らの弱体化又はその活動に対する妨害といった効果を持つと評価できるから,補助参加人らに対する支配介入に該当すると認められる。
3  争点(2)(本件命令が,労使関係条例12条との関係で労働委員会規則33条1項6号に違反するか。)について
本件命令は,中労委において本件通告が不当労働行為に該当すると認定されたことを原告に表明させることによりこれを関係者に周知徹底させ,同種の不当労働行為の再発を抑制しようとする趣旨のものと解することができる。このような本件命令の趣旨に照らすと,原告において,労使関係条例12条に抵触しない形で本件命令の内容を履行することは,必ずしも不可能ではないというべきである。
したがって,本件命令は,原告において実現することが可能なものであるから,労働委員会規則33条1項6号に違反するものではない。
4  結論
以上によれば,原告の請求には理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第19部
(裁判長裁判官 西村康一郎 裁判官 藤倉徹也 裁判官 若松光晴)

 

〈以下省略〉

 

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