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「選挙妨害 ポスター」に関する裁判例(33)平成 8年 3月29日 東京地裁 平5(特わ)546号 所得税法違反被告事件

「選挙妨害 ポスター」に関する裁判例(33)平成 8年 3月29日 東京地裁 平5(特わ)546号 所得税法違反被告事件

裁判年月日  平成 8年 3月29日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平5(特わ)546号・平5(特わ)682号
事件名  所得税法違反被告事件
裁判結果  有罪  文献番号  1996WLJPCA03296007

要旨
〔判示事項〕
◆(1) 政治献金等の収入に係る課税関係
◆(2) 相続税等における「贈与」の概念と民法における「贈与」の概念
◆(3) 一般的に政治献金は相続税法一条の二にいう「贈与」には該当しない
◆(4) 相続税法二一条の三第一項六号は政治献金が税法上の贈与であることを前提とした規定であるとの被告人主張を排斥した事例
◆(5) 被告人が秘書と務める国会議員の政治献金収入は、個人からのものであっても、贈与税ではなく所得税の課税対象になると解するのが相当であるとした事例
◆(6) 被告人に対する裏献金も、課税上は、被告人が秘書を務める国会議員に対する政治献金と同様に取り扱うべきであり、被告人の裏献金収入は、個人からのものであっても、贈与税ではなく所得税の課税対象になると解するのが相当であるとした事例
◆(7) 政治献金収入等が雑所得又は一時所得のどちらかに該当するかの判断に当たっての継続性及び対価性の要件の解釈
◆(8) 被告人が秘書を務める国会議員の本件政治献金収入は雑所得として所得税の課税対象になるとした事例
◆(9) 国会議員の秘書である被告人の本件裏献金収入も雑所得として所得税の課税対象になるとした事例
◆(10) 被告人及び被告人が秘書を務める国会議員は政治献金収入から政治活動のための費用を控除した残額が雑所得として課税対象になるとの認識はなく、また、被告人は被告人の裏献金収入が課税対象になることを認識していなかったとの被告人主張を排斥した事例
◆(11) 議員事務所で保管の現金及び債券は議員個人ではなく政治団体に帰属するとの被告人主張を排斥した事例
◆(12) 割引債の取得金額(払込額)等をもってそれを購入した年分の政治献金に係る雑所得の金額であるとの検察官主張を認めた事例
◆(13) 被告人は自己が秘書を務める国会議員の所得を秘匿するための債券購入については共謀はなく、虚偽過少申告の実行行為もしていないとの被告人主張を排斥した事例
◆(14) 租税ほ脱の手段として割引債券の購入がなされた場合には、その納税義務者が当該割引債券を保有していること、すなわち、その購入原資に相当する収入を得ていることを税務当局が捕捉することが困難になるから、それは所得秘匿工作あたるというべきであるとした事例
◆(15) 被告人及び被告人が秘書を務める国会議員は各年のほ脱所得金額が検察官主張の金額になることを認識していなかったとの被告人主張に対し、各年のほ脱税所得金額が億単位の巨額に達することは認識していたものと認められるし、各年の実際所得金額を正確に認識していなくても、ほ脱班の成立を妨げないと解されるとして当該主張を排斥した事例
◆(16) 検察官の財産増減法によるほ脱所得金額の立証は誤りであり、被告人作成のメモに基づいて算定された金額にとどまるとの被告人主張を一部認めた事例
◆(17) 刑事裁判におけるほ脱所得金額については、被告人の漠然とした印象ともいうべき供述等による社撰大雑肥把な立証は許されないとの被告人主張を排斥した事例
〔判決要旨〕
◆(1) 所得税法は、各人の担税力に応じた課税を行う見地から、所得をその源泉ないし性質によって一〇種類に分類し、その種類ごとに課税標準の計算方法を定めるとともに、特定の所得を課税対象から除いている。被告人が秘書を務める国会議員の政治献金収入や被告人の裏献金収入が、所得税法所定の利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得のいずれにも該当しないことは明白である。問題は、これら政治献金等の収入の中に、贈与税との関係で所得税の課税対象にならないものがあるか否か、これらの収入が所得税の課税対象になるとすれば、それは一時所得と雑所得のいずれに該当するのかという点にある。
◆ すなわち、相続税法一条の二は、贈与(死因贈与を除く)により財産を取得した個人は贈与税を納める義務を負うと規定し、他方、所得税法九条一項一五号(昭和六三年法律第一〇九号による改正前は同項二〇号)は、個人からの贈与により取得する所得には所得税を課さないと規定している(なお、相続税法二一条の三第一項一号は、法人からの贈与により所得した財産の価額は贈与税の課税価格に算入しないと規定している)。また、所得税法三五条一項は、「雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう」と規定し、同法三四条一項は、一時所得とは、前記の利子所得から譲渡所得までの八種類の所得以外の所得うち、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう」と規定している。以上によれば、個人が、〈1〉個人からの贈与により財産を取得した場は贈与税を課せられるから、所得税は非課税となり、〈2〉法人からの贈与により財産を取得した場は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得であること、及び、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないこと、の二つの要件を共に充たすときは一時所得として、いずれかの要件を欠くとき、すなわち、一時的ではなく継続的な所得であるか、又は、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有する所得であれば、それは雑所得として所得税が課されることになる。
◆(2) 贈与税は、個人が生前に親族等に財産を贈与して相続税を回避することによる税負担の不公平を防止するため、相続税が課税されない部分を補完するという必要から、相続税と密接に関連するものとして相続税法に規定されている。贈与税の納税義務者が原則として個人であり、個人からの贈与だけを課税対象としているのは、個人の死亡によって個人が取得する財産に課税する相続税の補完税たる贈与税の性格によるものである。このような贈与税の性格に照らすと、およそ相続関係が生ずるとは考えられない多数の者から継続的に供与される現金に係る収入を贈与税の課税対象とすることは、極めて不自然というべきである。また、贈与税の課税対象となる収入は、通常は収入金額がそのまま担税力の増加をもたらすものであって、必要経費の観念を入れる余地はないものとして、贈与税の課税価格の算定に当たって必要経費の控除は認められていないのである。してみると、民法上の贈与の法的性格を有する収入があっても、類型的にこれに対応する必要経費的な支出が想定されるものを贈与税の課税対象とすることは、納税者にとって非常に酷な課税となり得るのであって、不合理な解釈というべきである。そもそも、私人間の関係を規律する民法における贈与は、同法に規定する贈与の効力に見合った概念構成をされているのに対し、担税力に応じた公平な税負担を旨とする租税法における贈与は、その収入の経済的実質を重視し、担税力に応じた課税の実現を期して概念構成されるべきであるから、両者の概念につき別異に解すべき部分も当然にあり得るというべきである(ちなみに、租税法令自体が前記のとおり個人からの贈与と法人からの贈与を区別した規定を設けているし、最高裁昭和63・9・17判決・裁判集民事一五四号四四三項も所得税法六〇条一項一号の「贈与」には、贈与者に経済的利益を生じさせる負担付贈与を含まないとの解釈を示している)そして、このように各法規の趣旨・目的の相違を考慮して、両者の贈与概念を限定的かつ慎重に別異に解することが、法律間の解釈の整合性に混乱を生じさせるとは考えられない。したがって、前記の租税法令が贈与という民法上の用語を使用しているからといって、そのことから直ちに、その贈与を民法上の贈与と全く同義に解釈しなければならないということにはならない。
◆(3) 一般に、政治家に対する政治献金は、政治家の地位及びその職務である政治活動を前提とし、献金者から政治活動に対する付託(それが抽象的、一般的なものである場合もあるし、相当具体的なものである場合もある)を伴って継続的に供与される性質のものであり、その中から政治活動のための費用(政治活動のために使用する事務所関係の費用、政党の政治活動費用を賄うため経常的に負担する党費、政治活動に関する交際費等)を支出することが予定れさているのであるから、献金に係る金額全額が政治家の担税力を増大ささるとはいえない。故に、このような政治献金に係る政治家の収入を必要経費の控除を全く認める余地のない贈与税の課税対象とすることは、一般的に納税者である政治家に極めて酷な課税をもたらすことになって、相当ではない。また、およそ政治家との間に相続関係を生ずる可能性があるとはいえない多数の者から継続的になされるような政治献金を相続税の補完税たる贈与税の課税対象とするはことは甚しく不自然というべきである。したがって、右のような政治献金は、相続税法一条の二にいう「贈与」には該当しないと解するのが相当である。
◆(4) 相続税二一条の三第一項六号(昭和六三年法律第一〇九号による改正前は同項五号)及び所得税法九条一項一七号(右改正前は同項二二号)は、公職選挙のための資金の公共性にかんがみ、選挙運動に関して供与される現金等で、公職選挙法一八九条による報告がなされたものは、特定の時期に施行される公職選挙のために費消するものとして供与される一時的なもので、特定の政治活動のために継続的に供与されるものではないと一律にみなすこととし、これが税法上の贈与に該当することを前提にした上で、個人からのものについては贈与税を、法人からのものについては所得税をそれぞれ非課税とする旨の規定を置いたのであって、右の要件を充たさない政治献金が税法上の贈与に該当することを当然の前提としているものではないと解される。もっとも、右の要件を充たさない政治献金であっても、特定の政治家の地位及び職務との関連性が全くなく、継続的に供与されるものでなければ、税法上の贈与に当たるというべきであるが、このように純粋な利他目的からなされる政治献金は、抽象的には観念できても、現実にはまずあり得ないといってよいと思われる。
◆(7) 被告人が秘書を務める国会議員の政治献金収入及び被告人の裏献金収入は、個人からのものであるか否かにかかわらず、所得税の課税対象になると解される。これらは、継続性及び対価性の要件の有無によって雑所得になるか一時所得になるかが決せられることになる。
◆ 雑所得が一時所得かの判断に当たっての継続性の要件については年に一回であっても毎年というように現に継続的に供与されているものはもちろん、たとえなんらかの事情により一回限りに終わったものであっても、その当時はさらに継続されることが予定されていたものは継続性の要件を充足すると解するのが相当である。また、対価性の要件については、対価性が雑所得の要件(一時所得の消極的要件)とされているのは、対価性を有する所得はたとえ一時的なものであっても偶発的に発生した所得ではなく、類型的にその担税力は対価性のない偶発的な所得のそれによりは大きいと見做し得るからである。そして、所得はその発生態様や性質によって担税力が質的に異なるという前提に立って所得を区分するに当たり、一時所得を一時的、偶発的なものに限定しようとした所得税法の趣旨にかんがみれば、供与が具体的な役務行為に対応する場合だけでなく、一般的に人の地位及び職務に関連してなされる場合も、偶発的とはいえないものについては、対価性の要件を充たすと解するのが相当である。
◆(17) 弁護人は弁論の随所において、刑事裁判におけるほ脱所得金額については、被告人の漠然とした印象ともいうべき供述等よる社撰、大雑把な立証は許されない旨指摘するが、財産増減法にる場合はもちろん、損益計算法による場合であっても、個々の勘定科目に係る金額につき、関係者の供述により、少なくともこの額を下回らないとか、多くてもこの額を上回ることはないという認定をすることは、ありふれた事であり、被告人のうに同人作成のメモ以外の入金額は丼勘定をするしたないというような向き合いのものついて、メモ等に確定金額で記された金額だけを基に実際所得額を算出するとういうことは、不当に有利な扱いをすることになり、不合理極まりないのである。「疑わしきは被告人の利益に」という鉄則を踏まえて、以上説明したような理由により雑所得(ほ脱所得)の金額を認定することが、社撰とか大雑把であるというこはできず、当然許されてしかるべきものと思料される。

出典
税資 217号1258頁

裁判年月日  平成 8年 3月29日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平5(特わ)546号・平5(特わ)682号
事件名  所得税法違反被告事件
裁判結果  有罪  文献番号  1996WLJPCA03296007

本籍 山梨県東山梨郡春日居町小松五番地
住居 横浜市港北区日吉本町六丁目四九番二四号
無職 生原正久
昭和一九年二月一日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官酒井邦彦、弁護人梶谷剛(主任)、同雨宮英明、同岡正晶、同和智洋子各出席の上審理し、次のとおり判決する。

 

 

主文

被告人を懲役二年四月及び罰金七〇〇〇万円に処する。
未決勾留日数中九〇日を右懲役刑に算入する。
右罰金を完納することができないときは、金四〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から四年間右懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。

 

 

理由

(罪となるべき事実)
被告人は、山梨県東山梨郡春日居町小松五番地を住所地と定め、衆議院議員金丸信(分離前の相被告人。以下、「金丸」又は「金丸議員」と略称することがある)の公設秘書をしていたものであるが、
第一  山梨県中巨摩郡白根町上今諏訪一六一四番地を住所地と定める右金丸信と共謀の上、同人の所得税を免れようと企て、雑所得となるべき同人の収入を除外して割引金融債券を購入するなどの方法により、その所得を秘匿した上
一  金丸信の昭和六二年分の実際総所得金額が二億二三四一万〇五八九円(別紙1の所得金額総括表参照)であったにもかかわらず、昭和六三年三月一四日、山梨県甲府市丸の内一丁目一一番六号所在の所轄甲府税務署において、同税務署長に対し、同人の昭和六二年分の総所得金額が二九七九万六五八九円で、これに対する所得税額が四三四万九一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(平成五年押第九〇五号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同人の同年分の正規の所得税額一億一九四〇万九九〇〇円と右申告税額との差額一億一五〇六万〇八〇〇円(別紙2の1のほ脱税額計算書参照)を免れ
二  金丸信の平成元年分の実際総所得金額が六億七六五五万六七七八円(別紙1の所得金額総括表参照)であったにもかかわらず、平成二年三月一五日、前記甲府税務署において、同税務署長に対し、同人の平成元年分の総所得金額が二六五五万六七七八円で、これに対する所得税額が二五〇万八七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同人の同年分の正規の所得税額三億二七二九万八七〇〇円と右申告税額との差額三億二四七九万円(別紙2の2のほ脱税額計算書参照)を免れ
第二  自己の所得税を免れようと企て、雑所得となるべき収入を除外して割引金融債券を購入するなどの方法により、その所得を秘匿した上
一  昭和六二年分の実際総所得金額が九一二一万〇七五七円(別紙3の所得金額総括表参照)であったにもかかわらず、昭和六三年三月一四日、山梨県山梨市上神内川七三八番地所在の所轄山梨税務署において、同税務署長に対し、昭和六二年分の総所得金額が一一七一万〇七五七円で、これに対する所得税額が九六万五八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(同押号の8)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額四五三一万一八〇〇円と右申告税額との差額四四三四万六〇〇〇円(別紙4の1のほ脱税額計算書参照)を免れ
二  昭和六三年分の実際総所得金額が七一六八万八一七七円(別紙3の所得金額総括表参照)であったにもかかわらず、平成元年三月一五日、前記山梨税務署において、同税務署長に対し、昭和六三年分の総所得金額が一一六九万三一七七円で、これに対する所得税額が五二万九六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(同押号の11)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額三一五五万二六〇〇円と右申告税額との差額三一〇二万三〇〇〇円(別紙4の2のほ脱税額計算書参照)を免れ
三  平成元年分の実際総所得金額が一億六一八六万六五四七円(別紙3の所得金額総括表参照)であったにもかかわらず、平成二年三月一五日、前記山梨税務署において、同税務署長に対し、平成元年分の総所得金額が一一八六万六五四七円で、これに対する所得税額が六八万九五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(同押号の12)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額七四七〇万四九〇〇円と右申告税額との差額七四〇一万五四〇〇円(別紙4の3のほ脱税額計算書参照)を免れ
四  平成二年分の実際総所得金額が一億六二六一万四五六六円(別紙3の所得金額総括表参照)であったにもかかわらず、平成三年三月一五日、前記山梨税務署において、同税務署長に対し、平成二年分の総所得金額が一二六一万四五六六円で、これに対する所得税額が四八万六〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(同押号の13)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額七四四九万二四〇〇円と右申告税額との差額七四〇〇万六四〇〇円(別紙4の4のほ脱税額計算書参照)を免れ
五  平成三年分の実際総所得金額が一億一三一六万四八一三円(別紙3の所得金額総括表参照)であったにもかかわらず、平成四年三月一六日、前記山梨税務署において、同税務署長に対し、平成三年分の総所得金額が一三一六万四八一三円で、これに対する所得税額が七五万九八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(同押号の14)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額四九八五万八七〇〇円と右申告税額との差額四九〇九万八九〇〇円(別紙4の5のほ脱税額計算書参照)を免れ
たものである。
(証拠の標目)
※ 括弧内の甲、乙、弁の各番号は、証拠等関係カード記載の検察官請求分(甲《書》、乙)及び弁護人請求分の各証拠番号を、金丸公判調書とあるのは分離後の金丸信に対する所得税法違反被告事件の公判調書をそれぞれ示す。
判示事実全部について
一  被告人の当公判廷における供述
一  第一回、第一四回ないし第一七回、第一九回、第二一回、第二二回、第二四回、第二六回ないし第三〇回公判調書中の被告人の各供述部分
一  被告人の検察官に対する供述調書八通(乙二六ないし二八、三六、三七、三九、四三、四五)
一  第二三回、第二五回金丸公判調書中の証人大竹清の各供述部分(同意書面=甲二一四、二一五)
一  第二五回、第三一回金丸公判調書中の証人永木史郎の各供述部分(同意書面=甲二一九、二二〇)
一  証人大竹清及び崎井重信に対する当裁判所の各尋問調書(金丸関係で実施したもの・同意書面=甲二一六ないし二一八)
一  大竹清(二通=甲八、九)、崎井重信(三通=甲一〇ないし一二)、永木史郎(甲一三)、金丸信吾(二通=甲三一、三三)、芹沢浩(甲三八)、伊藤宗孝(甲三九)、隅元透(謄本、甲一九一)及び清田一郎(謄本、甲一九二)の検察官に対する各供述調書
一  検察事務官作成の捜査報告書三通(甲五九、二〇〇、二二一)、実況見分調書(甲六〇)及び捜索差押調書抄本二通(甲二〇三、二〇七)
一  押収してある「ベネズエラ日本館(仮称)建設について」と題する書面等一袋(平成五年押第九〇五号の58=甲二〇四)、客方勘定元帳写等一袋(同押号の59=甲二〇五)、表題に「パレ・サロン」と記載のあるノート一冊(同押号の60=甲二〇六)、「金丸信・悦子」と題するファイル一冊(同押号の61=甲二〇八)、ルーズリーフ用紙に記載されたメモ三枚(「生原メモ最重要」と書かれた封筒添付、同押号の63=弁一三)及び昭和五五年七月一九日付け山梨日日新聞の記事写し二枚(同押号の62=弁六一)
判示第一の各事実について
一  被告人の検察官に対する供述調書四通(乙三二、三四、四〇、四四)
一  金丸信の検察官に対する供述調書一七通(乙一ないし六、八、九、一一ないし一九)
一  第一一回及び第一二回公判調書中の証人窪田道也の各供述部分
一  岡景俊(甲二〇)、中原昭宏(甲二六)、金丸信吾(五通=甲三二、三四ないし三七)、芹沢浩(甲三八)、伊藤宗孝(甲三九)、山内和彦(甲一九三)及び川北秀一(甲一九五)の検察官に対する各供述調書
一  検察事務官作成の現金調査書(甲一、不同意部分を除く)、有価証券調査書(甲二、不同意部分を除く)、金丸悦子勘定調査書(甲三、不同意部分を除く)、金丸信勘定調査書(甲四、不同意部分を除く)、捜査報告書五通(甲六三、六四、二二五、二四八、二四九)、実況見分調書二通(甲六一、六二)、写真撮影報告書(甲六五)、領置調書二通(甲六七、一二八《抄本》)及び捜索差押調書抄本三通(甲一二二、一二五、一三〇)
一  大蔵事務官作成の領置てん末書(甲四七)及び査察官報告書(甲七〇)
一  押収してあるパンフレット一袋(同押号の7=甲六九)、元麻布と題するファイル一綴(同押号の27=甲一二四)、平成三年分所得税確定申告書写等一袋(同押号の28=甲一二六)及び「金丸信・悦子」と題するファイル一冊(同押号の29=甲一二九)
判示第一及び第二の二、三の各事実について
一  大竹清の検察官に対する供述調書(甲七)
判示第一の一及び第二の一の各事実について
一  被告人の検察官に対する供述調書四通(乙二九、三〇、三五、四一)
一  大竹清の検察官に対する供述調書(甲六)
判示第一の一の事実について
一  金丸信の検察官に対する供述調書(乙七)
一  押収してある昭和六二年分所得税確定申告書一袋(同押号の1=甲四八)
判示第一の二及び第二の二ないし五の各事実について
一  被告人の検察官に対する供述調書(乙三八)
判示第一の二の事実について
一  被告人の検察官に対する供述調書二通(乙三一、四二)
一  金丸信の検察官に対する供述調書(乙一〇)
一  山本千嘉代の検察官に対する供述調書(甲一四)
一  押収してある平成元年分所得税確定申告書一袋(同押号の3=甲五二)及び平成元年分の所得の内訳書一袋(同押号の4=甲五三)
判示第二の各事実について
一  被告人の検察官に対する供述調書二通(乙三三、五〇)
一  生原喜代子(五通=甲七六ないし七八、一八九、一九〇)、生原忠昭(甲七九)、藤沢悟(甲八〇)、矢萩裕文(甲八一)及び田中茂樹(甲八二)の検察官に対する各供述調書
一  検察事務官作成の現金調査書(甲七一)、定期預金調査書(甲七二)、有価証券調査書(甲七三)、会員権調査書(甲七四)、生原正久勘定調査書(甲七五)及び捜査報告書(甲二〇二)
一  大蔵事務官作成の領置てん末書(甲八四)及び検査てん末書写し(弁四九)
一  ゴルフダイヤリー写し四通(弁四三ないし四六)、競馬メモ写し(弁四七)及び電話投票手帳写し(弁四八)
判示第二の一の事実について
一  被告人の検察官に対する供述調書三通(乙四六、四七、五六)
一  押収してある昭和六二年分所得税確定申告書一袋(同押号の8=甲八五)及び昭和六二年分収支内訳書一袋(同押号の9=甲八六)
判示第二の二ないし五の各事実について
一  被告人の検察官に対する供述調書二通(乙四八、四九)
判示第二の二の事実について
一  押収してある昭和六三年分所得税確定申告書一袋(同押号の11=甲八八)
判示第二の三の事実について
一  押収してある平成元年分所得税確定申告書一袋(同押号の12=甲八九)
判示第二の四の事実について
一  押収してある平成二年分所得税確定申告書一袋(同押号の13=甲九〇)
判示第二の五の事実について
一  被告人の検察官に対する供述調書(乙五一)
一  押収してある平成三年分所得税確定申告書一袋(同押号の14=甲九一)
(法令の適用)
※ 以下の「刑法」は、平成七年法律第九一号による改正前のものである。
被告人の判示第一の各所為は、いずれも刑法六〇条、六五条一項、所得税法二三八条一項(罰金刑の寡額は、刑法六条、一〇条により平成三年法律第三一号による改正前の罰金等臨時措置法二条一項による)に、判示第二の各所為は、いずれも所得税法二三八条一項(判示第一の一ないし四の各所為の罰金刑の寡額については、前と同じ)にそれぞれ該当するところ、判示第一の各罪については、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、判示第二の各罪については、いずれも所定刑中懲役刑と罰金刑とを併科すると共に情状により所得税法二三八条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については、同法四八条二項により判示第二の各罪の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で、被告人を懲役二年四月及び罰金七〇〇〇万円に処し、同法二一条を適用して未決勾留日数中九〇日を右懲役刑に算入し、同法一八条により、右罰金を完納することができないときは金四〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から四年間右懲役刑の執行を猶予し、訴訟費用(証人窪田道也に支給した旅費・日当)については、刑事訴訟法一八一条一項本文により全部被告人に負担させることとする。
(争点に対する判断)
第一  総説
一  基礎的事実関係
以下は、当事者間にほぼ争いがなく、関係証拠上明らかな基礎的事実関係である。
1 金丸議員の経歴等
金丸信は、終戦後、山梨県内で酒造会社を経営するなどしていたが、昭和三三年施行の衆議院議員総選挙に同県全県区から立候補して初当選し、その後、平成二年二月施行の総選挙まで連続一二回当選して衆議院議員の職にあったが、右総選挙前の同年一月に東京佐川急便株式会社の渡邉廣康社長から五億円の献金を受け取ったことが後に問題となり(以下「五億円献金問題」という)、平成四年九月二八日政治資金規正法違反の罪により罰金二〇万円の略式命令を受け、同年一〇月二一日衆議院議員を辞職した。
金丸議員は、以下のとおり、衆議院議員の職にあった間、内閣、自由民主党(以下「自民党」という)、衆議院等の要職を歴任した(金丸が務めた役職のうち、主要なものを摘示した。年次等はいずれも就任時を示す。なお、本件に関連する政治日程等を時系列的に併記し、これに※を付した)。
昭38 郵政政務次官
昭41 運輸政務次官
昭47 第二次田中内閣の建設大臣
昭49 三木内閣の国土庁長官
昭52 福田内閣の防衛庁長官
昭58・12 ※衆議院議員総選挙
自民党総務会長
昭59・10 自民党幹事長
昭61・7 ※衆議院議員総選挙及び参議院議員通常選挙《衆参同時選挙》
第三次中曾根内閣の副総理国務大臣
昭62・1 ※山梨県知事選挙
〃 ・7 ※経世会《竹下派》発足
〃 ・11 ※竹下内閣発足
昭63・9 衆議院税制問題等に関する調査特別委員会委員長
平元・7 ※参議院議員通常選挙
平2・2 ※衆議院議員総選挙
平3・2 ※山梨県知事選挙
〃 ・12 ※妻の金丸悦子(以下「悦子夫人」という)死亡
平4・1 自民党副総裁
〃 ・7 ※参議院議員通常選挙
〃 ・8 ※五億円献金問題で自民党副総裁を辞任
2 被告人の経歴等
被告人は、青山学院大学卒業後間もない昭和四四年六月に金丸議員の公設第二秘書となり、昭和四七年一二月には公設第一秘書となり、平成四年一〇月に金丸が衆議院議員を辞職するまでの約二三年間にわたり、金丸議員の公設秘書を務め(金丸が建設大臣、防衛庁長官、副総理として入閣した際は、大臣秘書官を務めた)、昭和五七年に衆議院第二議員会館から東京都千代田区永田町二丁目九番八号のパレロワイヤル永田町六〇五号室に移転した金丸議員の東京事務所(以下「東京事務所」という)の総括責任者の立場にあった。この間、被告人は、自民党秘書会の副会長、七日会(田中派)及び経世会の各秘書会会長を務めた。
なお、金丸議員は、山梨県甲府市内にも事務所(以下「甲府事務所」という)を持ち、次男である金丸信吾(以下「信吾」という)が総括責任者の立場にあったが、甲府事務所は、支援者の組織作りや日常の後援会活動など行う選挙対策用の事務所であって、金丸議員の政治活動の拠点は東京事務所であった。
3 金丸議員の政治献金収入等
金丸議員は、昭和五八年ころから自民党及び内閣の要職を歴任し、政界においていわゆる実力者としての地位を固め、昭和六二年から平成元年にかけては、いわゆるバブル景気の影響も加わって、毎年盆暮の時期を中心に大手の建設業者(いわゆるゼネコン)や地元である山梨県の各種業者をはじめとする法人、個人等から年間一〇億円を超える巨額の政治献金を受領していた。なお、金丸議員は、東京事務所だけでなく、東京都港区元麻布二丁目八番一号の自宅(以下「元麻布の自宅」という)等でも政治献金を受領することがあったが、大半は政治活動の拠点である東京事務所において受領していた。
4 被告人の裏献金収入等
被告人は、金丸議員の公設秘書になったころから、金丸に政治献金をしていた建設業者をはじめとする法人、個人等から毎年盆暮の時期を中心に現金の供与を受けるようになり、昭和五〇年ころにはその金額が年間一〇〇〇万円程度に達し、その後、金丸議員が実力者としての地位を固めていくにしたがって、この金額は増えていった(以下、このような被告人に対する献金を「裏献金」といい、この裏献金に係る被告人の収入を、以下「裏収入」または「裏献金収入」という)。
二  検察官の主張の概要
1 公訴事実
公訴事実(訴因変更後のもの。以下同様)は、金丸との共同正犯分の関係(昭和六二年分及び平成元年分)並びに被告人の単独犯分中の昭和六二年分及び昭和六三年分に関しては、判示第一の一及び二並びに同第二の一及び二の各事実と同旨であるが、被告人の単独犯分のその余の年分の公訴事実においては、実際総所得金額、正規の所得税額、ほ脱税額は次のとおりとされている(これ以外は判示第二の三ないし五の各事実と同旨)。
〔平成元年分〕 実際総所得金額 二億一六四八万一五五五円
正規の所得税額 一億〇二〇一万二四〇〇円
ほ脱税額 一億〇一三二万二九〇〇円
〔平成二年分〕 実際総所得金額 一億七一一三万四五六六円
正規の所得税額 七八七五万二四〇〇円
ほ脱税額 七八二六万六四〇〇円
〔平成三年分〕 実際総所得金額 一億二〇二六万四八一三円
正規の所得税額 五三四〇万八七〇〇円
ほ脱税額 五二六四万八九〇〇円
なお、当然のことではあるが、公訴事実における実際総所得金額も判示事実におけるそれも、少なくともこの金額を下回ることはないとの意味で示されているものである。
2 検察官主張の財産増減法等
検察官は公訴事実に係る実際総所得金額の立証方法として、基本的には財産増減法を採用しているとはいえるが、その主張は、一般的に用いられている財産増減法とはかなり様相を異にするものである。すなわち、検察官の右主張は、金丸及び被告人の割引金融債券等の特定の資産の増加に着目し、その取得金額等をもって雑所得となるべき政治献金収入や裏献金収入を算定するというものであるが、現金勘定が極めて限定的なものであるため、検察官は金丸や被告人の政治献金・裏献金の入金・費消状況、現金の保有状況等についても種々の主張・立証(詳細な被告人質問が中心)を余儀なくされており、右の特定の資産の増加等の事実は、結局のところ、各年分の政治献金収入・裏献金収入のおおよその金額を把握するための指標(インデックス)の一つ(ただし、重要な一つ)となっているにすぎないといっても過言ではない(詳細は後記第五の二、第六の一で述べる)。
なお、このような検察官の主張・立証に対して、被告人・弁護人も逐一反論すると共に、種々の主張・立証を展開しており、金丸及び被告人の起訴対象年分の雑収入金額が少なくともどの位の金額はあったといえるのかが多面的に争われている。
3 検察官によるほ脱所得金額の算出過程
ここで、以下の説明の便宜上、検察官が主張する金丸及び被告人の起訴対象年分のほ脱所得(いずれも雑所得に係るもの)の実際金額の算出過程を記しておく。
まず、金丸分及び被告人分について、結論的には、それぞれ別紙5及び6の各雑所得関係修正貸借対照表記載のとおりであるところ、その内訳は、次のとおりである。なお、割引金融債券(割引債)のうち、株式会社日本債券信用銀行(日債銀)発券のものはワリシン、株式会社日本興業銀行(興銀)発券のものはワリコーと称されているので、以下この呼称により表記する(ただし、後者は第五の二に登場する)。
起訴年分、ほ脱所得金額、ほ脱所得金額の算出根拠となった資産の取得金額等の順に摘示する。なお、各資産の購入の事実は、その代金額等を含めていずれも争いがなく関係証拠上明らかである(争いは、購入原資の点にある)。
(一) 金丸との共同正犯分
〈1〉 昭和六二年分=一億九三六一万四〇〇〇円
昭62・10・30及び11・2
日債銀で購入した額面合計二億円のワリシンの払込額一億九三六一万四〇〇〇円
〈2〉 平成元年分=六億五〇〇〇万円
平元・9・11
日債銀で額面合計六億五〇〇〇万円のワリシンを購入するに当たり、その資金として準備した六億五〇〇〇万円(ただし、払込額は六億二四一三万円であり、その余の二五八七万円は、その後に金丸が私的用途に費消した)。
(二) 被告人の単独犯分
〈1〉 昭和六二年分=七九五〇万円
a 昭62・9・22
日債銀で購入した額面五〇〇〇万円のワリシンの払込額四五五〇万円
b 昭63・1・7
富士観光株式会社から購入した富士レイクサイドカントリー倶楽部の会員権代金四〇〇万円
c 昭63・1・12
山梨中央銀行竜王支店に設定した借名の定期預金二〇〇〇万円
d 〃・3・30
日興證券株式会社(以下「日興證券」という)で借名で購入した投資信託(トゥモローセレクト)の代金一〇〇〇万円
〈2〉 昭和六三年分=五九九九万五〇〇〇円
a 昭63・6・23
日興證券で一部借名で購入した投資信託(リバランスCB)の代金六〇〇万円
b 〃・9・16
山一證券株式会社で購入した株式会社新川及び株式会社サッポロライオンの株式代金合計九八三万円
c 〃・9・19
日債銀で購入した額面五〇〇〇万円のワリシンの払込額四四一六万五〇〇〇円
〈3〉 平成元年分=二億〇四六一万五〇〇八円
a 平元・7・19
丸宏証券株式会社(以下「丸宏証券」という)で仮名で購入した国債の代金五〇〇〇万円のうち二三三〇万六三二六円
b 〃・9・8
日債銀で購入した額面合計一億円のワリシンの払込額八八三五万円
c 〃・10・25
丸宏証券で一部借名で購入した日本電信電話株式会社(以下「NTT」という)の株式代金四二九四万八二四三円のうち二六九五万三〇四三円
d 〃・12・28
春日居観光株式会社から購入した春日居ゴルフ倶楽部の会員権代金一八〇〇万円
e 平2・3・28
丸宏証券で借名で購入したNTTの株式代金二二〇〇万五六三九円のうち一八〇〇万五六三九円
f 〃・9・18
日債銀で購入した額面合計二億円のワリシンの払込額一億七三五二万円のうち三〇〇〇万円
〈4〉 平成二年分=一億五八五二万円
a 平2・9・18
日債銀で購入した額面合計二億円のワリシンの払込額一億七三五二万円のうち一億四三五二万円
b 〃・12・27
日興證券で購入した投資信託(エース株式ユニット)の代金一五〇〇万円
〈5〉 平成三年分=一億〇七一〇万円
a 平3・9・24及び9・27
日債銀で購入した額面合計一億円のワリシンの払込額七二一〇万円
b 平4・3・16
株式会社富士緑化を通じて購入したグランフィルズカントリークラブの会員権代金三五〇〇万円
三  弁護人の主張の概要
ここでは、弁護人の主張を項目別に列挙して、本件の争点の概要を明らかにしておくこととする。
1 金丸との共同正犯分の関係
〈1〉 金丸議員が被告人に購入手続をさせたワリシンの購入原資は、金丸個人ではなく金丸の政治団体に帰属する政治献金である。
〈2〉 金丸議員の政治献金収入のうちには、所得税法上の一時所得、相続税法上の贈与税の対象となるものが含まれている可能性が極めて高いから、検察官主張の金丸のほ脱所得が雑所得であるとの証明がなされていない。
〈3〉 検察官の財産増減法による立証では、本件起訴に係る各年の期首及び期末の各現金額が示されておらず、右各年の期末の現金額が期首のそれを上回ることが明らかにされていないから、右各年の金丸のほ脱所得金額が検察官主張のとおりであるとの証明がなされていない。
〈4〉 金丸議員及び被告人は、〈1〉のワリシン購入原資の政治献金が金丸個人に帰属することを認識していなかった。
〈5〉 金丸議員及び被告人は、政治献金収入が雑所得として課税対象になることを認識していなかった。
〈6〉 金丸議員及び被告人は、本件起訴に係る各年のほ脱所得金額が検察官主張の金額になることを認識していなかった。
〈7〉 被告人は、金丸議員から命じられ、秘書業務の一環としてワリシンの購入手続を行ったにすぎず、金丸との間で、金丸の所得を秘匿するためにワリシンを購入することを共謀していない。
〈8〉 被告人は、金丸議員の所得税確定申告書の作成に当たり、秘書業務の一環として機械的、補助的作業を行ったにすぎず、右確定申告書の提出には一切関与していないから、虚偽過少申告の実行行為をしていない。
2 被告人の単独犯分の関係
〈1〉 検察官の財産増減法による立証では、過年度からの繰越金が考慮されていないから、本件起訴に係る各年の被告人のほ脱所得額が検察官主張のとおりであるとの証明がなされていない。本件においては、被告人が毎年盆暮の時期に法人や個人から中元、歳暮として供与を受けた現金のうち、昭和五五年暮から平成四年夏までの分について、供与者及び供与金額を表形式で整理した被告人作成のメモ(弁一三。以下「生原メモ」という)が存するところ、被告人のほ脱所得として証拠上認定できるのは、生原メモに基づいて算定される金額にとどまる。
〈2〉 生原メモに基づく被告人の裏収入のうちには、所得税法上の一時所得、相続税法上の贈与税の対象となるものがかなり含まれているから、検察官主張の被告人のほ脱所得が雑所得であるとの証明がなされていない。
〈3〉 被告人は、裏収入について納税義務の認識を欠いていた(もっとも、法の不知であって、ほ脱の故意を阻却するものではない)から、被告人が裏収入でワリシン等の資産を購入したのも、自己の所得税を免れる目的からではない。
四  判断の順序
以下、まず、本件における重要証拠である被告人及び金丸の各検察官調書の信用性について全体的に考察し、次いで、金丸及び被告人の各所得の性質、被告人及び金丸の納税義務に関する認識等を検討し、これらを踏まえて、判示第一の金丸との共同正犯分の事実、判示第二の被告人の単独犯分の事実の各争点に対する判断を示していくこととする。
第二  被告人及び金丸の各検察官調書の信用性
本件においては、被告人の検察官調書二八通(乙二五ないし五一、五六)及び金丸の検察官調書一九通(乙一ないし一九)が同意書面として証拠となっており、被告人及び金丸の各検察官調書は、本件各公訴事実及び冒頭陳述における検察官の主張をほぼ全面的に認めた内容となっているところ(ただし、金丸の検察官調書には、被告人の単独犯分についての供述記載はない)、本件における検察官の立証は、被告人及び金丸の各検察官調書に依拠するところが大きく、これらの信用性が各争点の関係で弁護人から問題とされていることにかんがみ、以下ではこの点について概括的に検討しておくこととする(信用性についての個別的な検討は、それぞれの該当箇所で行う)。
一  本件捜査の経過
関係証拠(身柄関係書類を含む)によれば、以下の事実が認められる。
1 被告人の関係
被告人は、平成五年三月六日に所得税法違反の被疑事実(金丸との共同正犯分を含む)で逮捕され、同月八日勾留され(逮捕・勾留による留置場所はいずれも東京拘置所)、同月一三日、金丸及び被告人の昭和六二年分の各所得税ほ脱の事実で起訴され(公訴時効の関係で同年分だけを起訴)、平成五年三月二七日、金丸の平成元年分、被告人の昭和六三年分ないし平成三年分の各所得税ほ脱の事実で追起訴された(右の起訴及び追起訴はいずれも金丸と一括でなされている。また、金丸の昭和六二年分、被告人の昭和六二年分ないし平成三年分の各所得税ほ脱の事実については、平成五年七月二二日の分離前の第一回公判期日において、それぞれの実際総所得額、正規の所得税額及びほ脱税額を変更する旨の訴因変更手続がなされている)。なお、被告人は、第一回公判直後の同月二三日、保釈許可により釈放された。
2 金丸の関係
金丸は、平成五年三月六日に所得税法違反の被疑事実で逮捕され、同月八日勾留され(逮捕・勾留による留置場所はいずれも東京拘置所)、同月一三日、昭和六二年分の所得税ほ脱の事実で起訴され(公訴時効の関係で同年分だけを起訴)、平成五年三月二七日、昭和六三年分及び平成元年分の所得税ほ脱の事実で追起訴された(右の起訴及び追起訴が被告人と一括でなされていること、分離前の第一回公判期日において訴因変更手続がなされていることは、前記のとおりである)。なお、金丸は追起訴後の平成五年三月二九日保釈許可により釈放された。
二  被告人の検察官調書の信用性一般
1 供述経過
被告人の検察官調書における供述経過は、以下のとおりである(作成日付《いずれも平成五年》、証拠等関係カードの証拠番号、主な供述事項の順に摘示する。なお、〔 〕内の「金」「被」は、金丸分・被告人分というワリシンの帰属による区別である)。
3・7 乙二五 被告人の身上経歴
〃 乙二六 昭和六〇年のワリシン〔金〕購入の経緯、昭和六一年から平成三年までのワリシン〔金・被〕の購入・乗換え状況、金丸の資金と政治団体の資金との区別、被告人のほ脱の故意、金丸との共謀
〃 乙二七 被告人が自白した経緯・心境
3・11 乙二八 金丸事務所における金丸・政治団体・被告人の各現金の保管状況、ワリシン〔金・被〕の購入原資、ワリシン〔金〕の購入状況、ワリシン〔被〕購入の動機
〃 乙二九 昭和六二年のワリシン〔金・被〕の購入・乗換え状況
〃 乙三〇 金丸との共謀、金丸・被告人の昭和六二年分の各所得税虚偽過少申告状況
3・12 乙四六 被告人の所得税確定申告書の作成提出状況、被告人の昭和六二年分の所得税虚偽過少申告状況
3・14 乙三一 平成元年のワリシン〔金〕の購入原資
〃 乙三二 平成四年にワリシン〔金〕、政治団体の資金を信吾へ引き継いだ状況
〃 乙三三 被告人の現金受供与状況・受供与現金の保管状況、ワリシン〔金・被〕の保管状況
3・18 乙三四 金丸事務所における金丸への献金の受領・保管状況
3・21 乙三五 年分課税の原則の認識
〃 乙三六 金丸への献金・被告人への現金供与の趣旨
3・22 乙三七 ワリシン〔金・被〕の購入原資とその帰属
3・24 乙三八 昭和六三年から平成三年までのワリシン〔金・被〕の購入・乗換え状況
〃 乙三九 金丸への献金・被告人への現金供与の趣旨
〃 乙四〇 金丸事務所における金丸への献金の保管状況
3・25 乙四一 昭和六一年のワリシン〔金・被〕の購入・乗換え状況
3・26 乙四二 金丸の平成元年分の所得税確定申告状況
〃 乙四三 被告人の心境
〃 乙四七 昭和六二年の裏収入による被告人の資産購入等の状況
〃 乙四八 被告人の昭和六三年分ないし平成三年分の各所得税虚偽過少申告状況、昭和六三年から平成三年までの裏収入による被告人の資産購入等の状況
〃 乙四九 昭和六二年から平成二年までの裏収入による被告人の資産購入等の状況
〃 乙五六 昭和六一年のワリシン〔被〕の購入状況、昭和六〇年及び昭和六一年の裏収入による被告人の資産購入等の状況、昭和六一年の裏収入の費消状況
4・23 乙四四 昭和六〇年から平成三年までの各年の金丸への献金額と翌年への繰越金額
4・24 乙四五 被告人のほ脱の故意、金丸・政治団体・被告人の各資金の保管・支出状況、金丸のワリシン購入の目的
5・20 乙五〇 被告人の各年の繰越金及びその支出状況
〃 乙五一 被告人が平成四年三月購入したゴルフ会員権の原資
2 信用性の評価
以上のとおり、被告人は、逮捕されて以来起訴後の平成五年五月二〇日まで、一貫して金丸及び自己の所得税法違反の事実を認めているところ、被告人は公判において、右のとおり全面的な自白をしたこと(特に金丸との共同正犯分)について、「幹となるワリシンという証拠をつかまれ、検察官から脱税あるいは共犯という指摘を受けて、債券を残したことが脱税なのだと思い込み、債券を購入した経緯・状況・その際のやり取りというものは枝葉にすぎないから、枝葉の部分で弁解しても仕方がないという認識で、全面降伏の形で検察官の取調べに応じていた」と供述する(第一四回等)。しかしながら、被告人は検察官調書(乙二七)において、「私は潔く刑に服する覚悟で脱税の事実を認めた。そのことについては何の後悔もないが、気掛かりなのは金丸先生のことだった。私が事実を話したことによって金丸先生まで逮捕されることになっては申し訳ないと思っていたところ、本日朝、検察官から金丸先生が逮捕されたことを聞き、心配していたことが現実になったという思いである。金丸先生から恨まれないかという危惧もあるが、事実は事実なので仕方がない」とその苦しい心情を吐露しているところ、金丸の公設秘書を約二三年間務めて信頼を得ていた被告人が、事実に反してまで金丸に不利な供述をするとは考えられないのであって、ワリシンを押収されたことだけで脱税であると観念し、あとは何の弁解もせずに全面降伏の形で検察官の取調べに応じたという被告人の弁解は、不自然というほかない。また、被告人の公判供述及び東京拘置所長作成の捜査関係事項照会回答書(甲二一〇)によれば、被告人は逮捕翌日の三月七日から五月二〇日までの間に三一回弁護人と接見している(一回の接見時間は概ね三〇分から二時間)ことが認められる。このように被告人は、捜査段階から弁護人を選任し、その助言を受けていたことを併せ考えると、被告人の自白の信用性一般に疑いを容れさせるような特段の事情は窺われないところである(もっとも、供述の対象となっている事項によっては、自白の証拠価値にも自ずから限界があるというべきであるから、その信用性を個別的に検討する必要があることは当然である)。
これに対し、被告人の公判供述は、後に具体的にみるように不自然な部分がかなり見られるものの、他方で、まわりくどい言い回しで饒舌を振るううちに、従前の弁解とは矛盾するような供述をし、自己に不利益な事実を認めていると受け取れる部分もあり、信用性に富む部分と信用しがたい部分とがある。したがって、その信用性は個別的に検討する必要がある。
三  金丸の検察官調書の信用性一般
1 供述経過
金丸の検察官調書における供述経過は、以下のとおりである(摘示の要領は右二と同様である)。
3・7 乙一 金丸の身上経歴
〃 乙二 所得税確定申告書の作成提出状況、昭和六〇年のワリシン購入の経緯、昭和六二年分及び平成元年分の各所得税ほ脱の犯意
〃 乙三 昭和六二年及び平成元年のワリシン購入の原資
3・9 乙四 金丸が自白した経緯・心境
〃 乙五 昭和六〇年のワリシン購入の経緯
3・10 乙六 被告人に行わせたワリシンの購入・乗換え状況、ワリシンの購入原資、政治献金の受領・保管状況
3・11 乙七 昭和六二年のワリシン購入の状況、昭和六一年暮ころから昭和六二年夏ころまでの政治献金の支出状況、右ワリシン購入の原資、同年分の所得税虚偽過少申告状況
3・12 乙八 政治献金の受領・保管状況、平成四年のワリシンの購入・乗換え状況
3・14 乙九 日債銀及び岡三で購入・乗換えをした割引債の保管状況
〃 乙一〇 被告人に行わせた昭和六一年から平成元年までのワリシンの購入・乗換え状況、悦子夫人に行わせた平成元年の割引債の購入原資
3・15 乙一一 昭和六〇年から平成三年までの各年の金丸への献金額、日債銀及び岡三で購入・乗換えをした割引債の保管状況
3・16 乙一二 政治献金の受領・保管状況、昭和六一年・昭和六二年・平成元年のワリシン購入の原資、金丸のほ脱の犯意
3・17 乙一三 日債銀及び岡三で購入・乗換えをした割引債の換金・保管状況
3・18 乙一四 金丸事務所及び元麻布の自宅で受領する献金の割合、献金の保管状況、平成四年の政治献金額
〃 乙一五 岡三から昭和六一年及び平成元年に割引債を購入した経緯及びその原資、平成四年の割引債の換金状況
3・19 乙一六 平成四年に割引債を換金した現金の秘匿状況、平成二年及び平成三年の政治献金の支出状況
3・21 乙一七 割引債購入の動機
3・22 乙一八 日債銀及び岡三で購入・乗換えをした割引債の平成四年以降の保管状況、割引債購入の動機
3・23 乙一九 平成元年の岡三での割引債購入の原資、平成元年のワリシン購入の原資、昭和六三年分及び平成元年分の各所得税虚偽過少申告状況、政治献金の趣旨
2 信用性の評価
以上のとおり、金丸は、逮捕後の捜査段階において、一貫して自己の所得税法違反の事実を認めているところ、検察官調書(乙四)では、自白するに至った経緯について、「三月六日午後零時半からキャピタル東急ホテルで検察官の取調べを受けた。その際、五億円献金問題について再度取り調べられたほか、『日債銀のワリシンを購入して保管していないか』と尋ねられたが、ワリシンは自分の隠し資産で所得の申告から除外していたことや、その購入資金となった現金を寄付してくれた相手方にも迷惑がかかると思い、『ワリシンを購入したことは一切ない』と否認した。しかし、検察官から『日債銀の関係者や秘書の被告人からも事情を聴いている』などと言われ、こうなった以上は本当のことは正直に認めるべきであると考えて事実を認めるに至った。ホテルまで付いてきていた弁護士が、弁護士の立場で色々心配してくれていたが、政治家金丸として嘘をつくことは嫌いであり、事実は事実としてはっきりすべきであると考えた」などと供述している。右の供述は、金丸が否認から自白に転じた状況を具体的に述べたものであって、信用性が高いと認められる。また、金丸の検察官調書を通覧すると、被告人の検察官調書に比較して一通当たりの分量が少ない上、供述内容を問答体によって録取したものが多いこと、取調べの時点における金丸の健康状態についても触れているものが多いことを指摘できるのであって、金丸の取調べは、金丸の健康状態に配慮して行われていたことが認められる。さらに、金丸は、三月六日に弁護人を選任していることを併せ考えると、金丸の自白の信用性一般に疑いを容れさせるような特段の事情は窺われないところである(もっとも、後記第五の三でみるように、金丸は随所で被告人を庇う姿勢を見せており、被告人の罪責に関係する部分については、その信用性を慎重に検討する必要がある)。
ところで、被告人及び弁護人は、分離後の第一回公判期日において、検察官が請求した金丸の検察官調書一九通の取調べに同意した上、金丸の証人尋問は請求しないという方針で本件審理に臨んできたものである(なお、被告人は公判において、「自らの関係で証拠になる金丸の供述は、検察官調書の供述記載と分離前の第一回公判における被告事件に対する陳述だけということになるが、現状ではそれもやむを得ない」と供述している《第五〇回》)。これには色々な配慮があったものと推察されるが、このような審理の経過に照らすと、金丸の検察官調書における自白については、その供述自体が不自然であるとか、他の関係証拠と矛盾するというような特段の事情が窺われない限り、被告人側としては、その信用性を肯認されてもやむなしとせざるを得まい。
第三  金丸及び被告人の各所得の性質
一  政治献金等に関係する租税法令
前記のとおり、金丸議員が毎年盆暮の時期を中心に建設業者をはじめとする法人、個人等から巨額の政治献金を受けていたこと、金丸議員の公設秘書であった被告人も同様に多額の裏献金を受けていたことは関係証拠上明らかであり、当事者間にも争いはない。そこで、このような政治献金や裏献金に係る収入の課税関係が問題となるので、まず、関係する租税法令を概観しておく。
所得税法は、各人の担税力に応じた課税を行う見地から、所得をその源泉ないし性質によって一〇種類に分類し、その種類ごとに課税標準の計算方法を定めるとともに、特定の所得を課税対象から除いている。金丸議員の政治献金収入や被告人の裏献金収入が、所得税法所定の利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得のいずれにも該当しないことは明白である。問題は、これら政治献金等の収入の中に、贈与税との関係で所得税の課税対象にならないものがあるか否か、これらの収入が所得税の課税対象になるとすれば、それは一時所得と雑所得のいずれに該当するのかという点にある。
すなわち、相続税法一条の二は、贈与(死因贈与を除く)により財産を取得した個人は贈与税を納める義務を負うと規定し、他方、所得税法九条一項一五号(昭和六三年法律第一〇九号による改正前は同項二〇号)は、個人からの贈与により取得する所得には所得税を課さないと規定している(なお、相続税法二一条の三第一項一号は、法人からの贈与により取得した財産の価額は贈与税の課税価格に算入しないと規定している)。また、所得税法三五条一項は、「雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう」と規定し、同法三四条一項は、一時所得とは、前記の利子所得から譲渡所得までの八種類の所得以外の所得のうち、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう」と規定している。以上によれば、個人が、〈1〉個人からの贈与により財産を取得した場合は贈与税を課せられるから、所得税は非課税となり、〈2〉法人からの贈与により財産を取得した場合は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得であること、及び、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないこと、の二つの要件を共に充たすときは一時所得として、いずれかの要件を欠くとき、すなわち、一時的ではなく継続的な所得であるか、又は、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有する所得であれば、それは雑所得として所得税が課されることになる(このように、雑所得は一時所得といわば表裏の関係にある。以下、雑所得の要件という角度からみて、前者を継続性の要件、後者を対価性の要件という)。
二  当事者の主張
1 検察官(論告一九頁、一一六頁等)
〈1〉 政治献金は、一般的に政治家が、その職務ないし業務である政治活動に関連し、個人、法人等から政治活動についての付託を受けて継続的に受領するものであるから、金丸議員の政治献金に係る所得は、雑所得として所得税の課税対象となる。
〈2〉 雑所得の対価性の要件(役務の対価)については、供与が具体的な役務行為に対応する場合に限られるものではなく、供与が一般的に人の地位、職務行為に対応、関連してなされる場合も含むと解すべきであるから、被告人への現金の供与が、金丸議員の公設秘書としての被告人の地位、職務行為に関してなされたものであるならば、その供与者が個人であるか法人であるか、その供与が継続的であるか一時のものであるかを問わず、全て雑所得として所得税の課税対象となる。
2 弁護人(弁論五七頁以下、九四頁以下)
〈1〉 個人からの贈与による所得を所得税ではなく贈与税の課税対象とする旨を規定した相続税法一条の二及び所得税法九条一項一五号にいう「贈与」は、民法からの借用概念であって、法的安定性の観点からも民法上の贈与と同一に解釈されるべきであるところ、贈与(民法五四九条)は無償による財産給付であり、そこにいう無償性とは法律的なものであって実質的経済的なものではないから、利己的動機に基づく財産給付であっても、法律的な対価関係に立つ反対給付がないものは贈与に該当する。
〈2〉 政治家への政治献金は、献金者に法律的な見返りや対価をもたらすものではなく、そこに法律的な対価関係は生じないから、その法的性格は民法上の贈与であり、税法上も贈与に該当する。金丸議員への政治献金もこの例外ではない。なお、現行の租税法令も政治献金が税法上の贈与であることを前提とした規定を置いている。すなわち、相続税法二一条の三第一項六号は、公職の候補者が選挙運動に関し贈与により取得した金銭等の財産的利益で、公職選挙法一八九条に定める報告がなされたものについては、贈与税は非課税とすると規定している。
〈3〉 被告人に対する中元・歳暮等の現金供与は、いわゆる「永田町の悪しき慣行」に基づき、種々の期待等が動機となってなされるもので、金丸議員の公設秘書としての被告人の地位、職務に関連したものも含まれているが、いずれも当該現金供与と法律的な対価関係に立つ被告人の役務が予定されているわけではないから、その法的性格は民法上の贈与であり、税法上も贈与に該当する。
〈4〉 したがって、金丸議員の政治献金収入及び被告人の裏収入のいずれについても、個人からのものは贈与税の課税対象となって、所得税は非課税であり、法人からのものは継続性及び対価性(ただし、この対価性があるというためには、少なくとも供与が過去の利益、恩義に応える趣旨でなされることが必要であり、検察官が主張するような職務関連性があれば足りるというものではない)の要件の有無によって一時所得又は雑所得として所得税の課税対象となる。
三  政治献金収入等と贈与税の関係
弁護人は、金丸議員の政治献金収入及び被告人の裏収入のいずれについても、個人からのものは贈与税の課税対象になると主張するので、この点について以下検討する。
1 「贈与」と「概念の相対性」
前記一の租税法令で用いられている「贈与」が、民法上の「贈与」の概念を前提とした講学上のいわゆる借用概念であること、このような税法における借用概念については、原則として元の法分野におけるのと同義に解するのが法的安定性の観点から望ましいこと、本件の政治献金や裏献金中には民法上の贈与の法的性格を有するものが多く含まれているであろうことは、弁護人が指摘するとおりである。しかし、異なる法分野において同一の用語が用いられている場合であっても、各法令の趣旨・目的が異なることが関係法令に照らして明らかであり、当該用語を別異に解するのを相当とする合理的な理由があり(同義に解すると不合理な結果を招来する)、別異に解しても、法律間の解釈の整合性に混乱を生じさせないときに、別異に解すること(いわゆる「概念の相対性」を認めること)は、広く行われているのであって、税法における借用概念についても、元の法分野と別異に解することが許されないとはいえない(ただし、租税法律主義の趣旨にもとることがないように留意する必要がある)。
そこで、前記の租税法令における「贈与」の概念について検討する。贈与税は、個人が生前に親族等に財産を贈与して相続税を回避することによる税負担の不公平を防止するため、相続税が課税されない部分を補完するという必要から、相続税と密接に関連するものとして相続税法に規定されている。贈与税の納税義務者が原則として個人であり、個人からの贈与だけを課税対象としているのは、個人の死亡によって個人が取得する財産に課税する相続税の補完税たる贈与税の性格によるものである。このような贈与税の性格に照らすと、およそ相続関係が生ずるとは考えられない多数の者から継続的に供与される現金に係る収入を贈与税の課税対象とすることは、極めて不自然というべきである。また、贈与税の課税対象となる収入は、通常は収入金額がそのまま担税力の増加をもたらすものであって、必要経費の観念を入れる余地はないものとして、贈与税の課税価格の算定に当たって必要経費の控除は認められていないのである。してみると、民法上の贈与の法的性格を有する収入であっても、類型的にこれに対応する必要経費的な支出が想定されるものを贈与税の課税対象とすることは、納税者にとって非常に酷な課税となり得るのであって、不合理な解釈というべきである。そもそも、私人間の関係を規律する民法における贈与は、同法に規定する贈与の効力に見合った概念構成をされているのに対し、担税力に応じた公平な税負担を旨とする租税法令における贈与は、その収入の経済的実質を重視し、担税力に応じた課税の実現を期して構成されるべきであるから、両者の概念につき別異に解すべき部分も当然にあり得るというべきである(ちなみに、租税法令自体が前記のとおり個人からの贈与と法人からの贈与を区別した規定を設けているし、最高裁昭和63・9・17判決・裁判集民事一五四号四四三頁も所得税法六〇条一項一号の「贈与」には、贈与者に経済的利益を生じさせる負担付贈与を含まないとの解釈を示している)。そして、このように各法規の趣旨・目的の相違を考慮して、両者の贈与概念を限定的かつ慎重に別異に解することが、法律間の解釈の整合性に混乱を生じさせるとは考えられない。したがって、前記の租税法令が贈与という民法上の用語を使用しているからといって、そのことから直ちに、その贈与を民法上の贈与と全く同義に解釈しなければならないということにはならない。
2 政治献金一般と贈与税
一般に、政治家に対する政治献金は、政治家の地位及びその職務である政治活動を前提とし、献金者から政治活動に対する付託(それが抽象的、一般的なものである場合もあるし、相当具体的なものである場合もある)を伴って継続的に供与される性質のものであり、その中から政治活動のための費用(政治活動のために使用する事務所関係の費用、政党の政治活動費用を賄うため経常的に負担する党費、政治活動に関する交際費等)を支出することが予定されているのであるから、献金に係る金額全額が政治家の担税力を増大させるとはいえない。故に、このような政治献金に係る政治家の収入を必要経費の控除を全く認める余地のない贈与税の課税対象とすることは、一般的に納税者である政治家に極めて酷な課税をもたらすことになって、相当ではない。また、およそ政治家との間に相続関係を生ずる可能性があるとはいえない多数の者から継続的になされるような政治献金を相続税の補完税たる贈与税の課税対象とすることは甚しく不自然というべきである。したがって、右のような政治献金は、相続税法一条の二にいう「贈与」には該当しないと解するのが相当である。
3 相続税法二一条の三第一項六号の意義
相続税法二一条の三第一項六号は政治献金が税法上の贈与であることを前提とした規定であるとの弁護人の主張について、検討する。
いうまでもなく公職選挙法は民主政治の基本となるものであるから、選挙運動に関して供与される現金等は極めて公共性の強いものであるところ、公職選挙法一八九条が出納責任者に選挙運動に関する収支の報告書の提出を義務付けているのは、選挙運動に関する収支を公開させ、選挙の公明化を図るものであると解される。そして、相続税法二一条の三第一項六号(昭和六三年法律第一〇九号による改正前は同項五号)及び所得税法九条一項一七号(右改正前は同項二二号)は、公職選挙のための資金の公共性にかんがみ、選挙運動に関して供与される現金等で、公職選挙法一八九条による報告がなされたものは、特定の時期に施行される公職選挙のために費消するものとして供与される一時的なもので、特定の政治家の政治活動のために継続的に供与されるものではないと一律にみなすこととし、これが税法上の贈与に該当することを前提にした上で、個人からのものについては贈与税を、法人からのものについては所得税をそれぞれ非課税とする旨の規定を置いたのであって、右の要件を充たさない政治献金が税法上の贈与に該当することを当然の前提としているものではないと解される。もっとも、右の要件を充たさない政治献金であっても、特定の政治家の地位及び職務との関連性が全くなく、継続的に供与されるものでなければ、税法上の贈与に当たるというべきであるが、このように純粋な利他目的からなされる政治献金は、抽象的には観念できても、現実にはまずあり得ないといってよいと思われる。
4 金丸議員に対する政治献金と贈与税
さて、本件の金丸議員に対する政治献金についてみるに、被告人の公判供述(第三三回)、被告人(乙三六、三九)及び金丸(乙一九)の各検察官調書等の関係証拠によれば、郵政・運輸の各政務次官のほか建設大臣を務めた金丸は、いわゆる建設族議員として政治活動を行うとともに、郵政・運輸関係の省庁にも影響力を有し、かねてから地元の山梨県をはじめとして全国的な公共事業予算の獲得に尽力して建設業界の利益保護を図るなどしていたところ、昭和五八年ころから自民党及び内閣の要職を歴任して、いわゆる政界の実力者としての地位を固め、建設行政等の各方面に強大な政治的影響力を有するに至ったこともあって、昭和六二年から平成元年にかけてのころには、金丸議員の政治的影響力に期待する大手の建設業者を含む多数の法人、個人等から、毎年盆暮の時期を中心に巨額の政治献金を受領するようになり、その中から政治活動のための費用も支出していたことが認められる。このように金丸議員への政治献金は、政界の実力者としての金丸の地位及びその職務としての政治活動を期待して(すなわち政治活動に対する付託を伴って)なされ、その趣旨からして継続的に供与される性質を有するものであり、その中からその期待(付託)に応じた政治活動のための費用を支出することが予定されていたものと認められる。なお、献金者らの殆どと金丸議員との間に相続関係が生ずる可能性がないことはいうまでもない。したがって、金丸議員の政治献金収入は、個人からのものであっても、贈与税ではなく所得税の課税対象になると解するのが相当である。
5 被告人に対する裏献金と贈与税
ところで、被告人は議員秘書であって、政治家ではなかったものであるから、被告人に対する裏献金につき、政治献金についてこれまで述べたところと同様に解してよいかを検討する必要がある。
被告人の公判供述(第一五回、第三三回)、被告人の検察官調書(乙二八、三三、三六)、芦沢浩(甲三八)及び伊藤宗孝(甲三九)の各検察官調書等の関係証拠によれば、衆議院議員金丸の公設第一秘書であった被告人は、金丸議員の政治活動の拠点である東京事務所の総括責任者として、資金面を管理し、他の秘書及び職員を統括する立場にあり、金丸議員の政治活動を補佐して多様な職務に従事していたものであって、中でも重要な職務である陳情、各種相談への対応の面では、金丸議員が来客と面会する日程の調整をほぼ一任され、金丸議員が面会する必要がある者かどうかの判断も事実上していたほか、金丸議員への陳情であっても、金丸議員へ話を通す前に被告人自身がその裁量で一応の処理に当たったり、あるいは被告人自身が金丸議員の公設秘書という立場で陳情を受けてこれを処理することも少なくはなかったこと(このような例について、被告人は検察官調書《乙三三》において、「資金繰りに窮する企業から、その所有不動産を政府関連団体に買い取ってもらいたいので、団体役員の方にその旨声を掛けていただきたいとの陳情があり、私から金丸先生に話を通す前に、私がその団体役員の方々に一応の話をつないで打診し、それで話がまとまる方向にいった場合は、私限りで領収書のいらない現金をいただくことがある」などと具体的に供述している)、このような立場にあった被告人は、金丸議員に政治献金をしていた建設業者をはじめとする法人、個人等から毎年盆暮の時期を中心に継続的に現金の供与を受けていたが、金丸議員が政界の実力者としての地位を固めていくにしたがって、金丸への取次ぎ又は被告人自身による関係者への口利きなどを期待して被告人に供与される現金の額も増えていったこと、その後、被告人が金丸議員の公設秘書を辞めた平成四年の暮の時期には右のような現金の供与はなされていないことが認められる。このように被告人への現金の供与は、政界の実力者である金丸の公設秘書という被告人の地位及びその職務を前提とした上、右のような議員秘書としての活動の付託を伴ってなされ、その趣旨からして継続的に供与される性質を有するものであることが認められる(この点について、被告人は、公判においても、「金丸先生の実力がつくとともに、盆暮の現金の供与を受けるという永田町の慣行が私にも回ってきたということだと思う」《第二七回》、「公共事業の推進役であった金丸先生の側にいたことから、建設関係の企業が自分のことを他の推進役の議員と同じようにとって、盆暮に現金をくれていたのであり、金丸先生あっての生原であると思う。私への現金の供与は、政治献金の一環の中でなされていたと思っている。自分も政治活動の中にいるから多額の現金の供与を受けられるのだと思っていた」《第三三回》などと供述し、被告人への現金の供与が金丸議員の公設秘書としての被告人の地位及び職務を離れてはあり得ないことを自認している)。
検察官は、被告人は政治家ではなく、政治活動のために費用を支出するものと認める余地はないと主張する(論告七八頁)。確かに、被告人は、国会議員等の政治家ではないが、前記のとおり、衆議院議員金丸の公設秘書として金丸議員の政治活動に深く関わっていたのであり(前記のような被告人の地位及び職務の実態に照らすと、被告人が自分への現金供与が政治献金としてなされていると認識していたことも、それなりに理由があるというべきである)、被告人自身において陳情を処理し、それに関して現金の供与を受けることも少なからずあったのであるから、供与を受けた現金の中からそのような秘書としての活動に関わるための費用を支出することが類型的には予定されていたというべきである(現実には、被告人が自己の収入からそのような費用と認め得る支出をしたとは認められないことは、後述するとおりであるが、そのような支出があったと認められれば、その分を裏献金収入から控除することは認めてよい)。なお、献金者らの殆どと被告人の間に相続関係が生ずる可能性がないことはいうまでもない。
したがって、被告人に対する裏献金も、課税上は、金丸議員に対する政治献金と同様に取り扱うべきであり、被告人の裏献金収入は、個人からのものであっても、贈与税ではなく所得税の課税対象になると解するのが相当である。
四  政治献金収入等は雑所得か一時所得か
以上のとおり、金丸議員の政治献金収入及び被告人の裏献金収入は、個人からのものであるか否かにかかわらず、所得税の課税対象になると解される。そうすると、前記一のとおり、これらは、継続性及び対価性の要件の有無によって雑所得になるか一時所得になるかが決せられることになる。
1 継続性及び対価性の要件の解釈
継続性の要件について、弁護人は、政治献金・裏献金は、無償供与である以上、何時中断されても文句を言えないから、法律的には一時のものと解すべきであり、被告人の裏献金につき、現に突然中止されたり、一時中断しているものも数多く、少なくともこれらは一時所得である旨主張する(弁論六七頁)。しかし、年に一回であっても毎年というように現に継続的に供与されているものはもちろん、たとえなんらかの事情により一回限りに終わったものであっても、その献金当時はさらに継続されることが予定されていたものは継続性の要件を充足すると解するのが相当である。
対価性の要件について、弁護人は、少なくとも供与が過去の利益、恩義に応える趣旨でなされることが必要であり、供与が一般的に人の地位、職務行為に対応、関連してなされただけでは足りないと主張する。しかし、対価性が雑所得の要件(一時所得の消極的要件)とされているのは、対価性を有する所得はたとえ一時的なものであっても偶発的に発生した所得ではなく、類型的にその担税力は対価性のない偶発的な所得のそれよりは大きいと見做し得るからである。そして、所得はその発生態様や性質によって担税力が質的に異なるという前提に立って所得を区分するに当たり、一時所得を一時的、偶発的なものに限定しようとした所得税法の趣旨にかんがみれば、供与が具体的な役務行為に対応する場合だけでなく、一般的に人の地位及び職務に関連してなされる場合も、偶発的とはいえないものについては、対価性の要件を充たすと解するのが相当である。
2 金丸議員に対する政治献金の関係
政治家への政治献金は、前記のとおり、政治家の地位及びその職務である政治活動を前提とし、一般的、抽象的であれ政治活動に対する付託を伴って継続的に供与される性質のもので、その趣旨からして政治家という地位及び職務に関連した必然的な所得というべきものであり、その供与がなされることによって付託に係る政治活動を行う動機が形成される関係にあることも併せ考えると、継続性及び対価性の要件を充たし、雑所得として所得税の課税対象になると解される。
前記のとおり、金丸議員への政治献金は、政界の実力者としての金丸議員の地位及びその職務としての政治活動に期待し、少なくとも抽象的な付託を伴って継続的になされるものであって、金丸議員の地位及び職務に関連した必然的な所得というべきであるから、金丸議員の政治献金収入は、雑所得として所得税の課税対象になるというべきである。なお、その雑所得の金額を算定するに当たっては、政治活動のための費用(政治活動のために使用する事務所関係の費用、政党の政治活動費用を賄うため経常的に負担する党費、政治活動に関する交際費等)として支出されたと認められる金額を必要経費として、政治献金収入から控除すべきことになる(所得税法上、雑所得の金額は、その年中の雑所得に係る総収入金額から必要経費を控除して計算すべきものであり、この必要経費とは「総収入金額を得るために直接要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他その所得を生ずべき業務について生じた費用の額」と規定されている《同法三七条一項》。右のような政治活動のための費用は、政治家としての業務に関連する経費として控除を認めてよいと解される)。
3 被告人に対する裏献金の関係
被告人への裏献金も、前記のとおり、政界の実力者である金丸議員の公設秘書という被告人の地位及びその職務を前提として、金丸議員への取次ぎ又は被告人自身による関係者への口利きなどを期待し、継続的なされるものであって、被告人の地位及び職務に関連した必然的な所得というべきであるから、被告人の裏献金収入は、雑所得として所得税の課税対象になるというべきである。なお、その雑所得の金額を算定するに当たっては、秘書として活動に関わるための費用と認められる支出があれば、その額を必要経費として控除すべきことになる。
五  政治献金等に関する従前からの課税実務等との関係
押収してあるパンフレット一袋(甲六九)、大蔵事務官作成の査察官報告書(甲七〇)によれば、課税実務上も国会議員の政治献金に係る所得は、従前から原則として雑所得として取り扱われていることが認められる。すなわち、国税庁は、前年分の所得税の申告期間の直前である毎年二月上旬ころ、国会議員が所得税の確定申告をするに当たっての参考資料として、「○○年分の所得税の確定申告について」と題するパンフレットを、各地の所轄税務署を通じて国会議員に郵送しているところ、右パンフレットには、「個人、法人などから受けた政治献金、陣中見舞、当選祝、謝礼、その他政治活動のための資金」は雑所得の収入金額となる政治資金収入に当たり、政治資金収入から政治活動のために支出した費用を控除した差額が政治資金に係る雑所得の金額になることが明記されており、衆議院議員であった金丸に対しても、甲府税務署から判示第一の住所地へ右パンフレットが郵送されていたものである(なお、国会においても、政治献金についての課税関係の質問に対し、国税庁の責任者から、右パンフレットと同旨の答弁が繰り返しなされているところである)。
当裁判所は、このような従前からの課税実務における解釈を正当として是認するものであるところ、右のような従前の経緯からして、このような解釈は、金丸議員にとっても被告人にとっても十分予測できたはずであり、決して不意打ちにはならないのである。また、被告人のような議員秘書が政治献金に類する献金収入を得た場合についての従前の課税実務は明らかでないが、被告人にとって、その裏献金が課税上政治献金と同様に取り扱われるであろうことは十分に予測可能であったというべきである。
第四  納税義務に関する認識等
一  被告人の弁解と弁護人の主張
被告人は公判において、「政治家が受領した政治献金に課税されることを知ったのは、平成四年八月の五億円献金問題の際に政治献金について勉強したときである。それまでは永田町の誤った慣習から政治献金には課税されないと思っていた。また、議員と秘書では立場は違うが、同じ政治の世界で活動していることでもあるし、将来は政治家を志してそのための政治資金を蓄えているつもりであったので、自分の裏収入に課税されるということも全く考えなかった」などと弁解している(第二八回)。そして、弁護人は、〈1〉被告人及び金丸議員は本件当時、政治献金収入から政治活動のための費用を控除した残額が雑所得として課税対象になることを認識していなかった、〈2〉被告人は本件当時、被告人の裏収入が課税対象になることを認識していなかった、と主張する。もっとも、弁護人は、〈2〉については、法の不知であって、ほ脱の故意を阻却するものではないと付言している。
そこで、以下検討する。
二  関連する事実関係
弁護人の主張が、ほ脱犯の成否の関係でどのような意味を持つのかはさておき、以下検討するとおり、そもそも被告人及び金丸が政治献金収入はおよそ課税対象にならないと考えていたとは認められないから、所論はその前提を欠くことになる。
1 金丸議員の過去の修正申告等の経緯
被告人の公判供述(第四四回、第四七回、第四九回)、検察事務官作成の捜査報告書(甲二二一)、押収してある平成三年分所得税確定申告書写等一袋(甲一二六)等の関係証拠によれば、以下の事実が認められる。
〈1〉 金丸議員は、昭和五四年一一月二〇日、甲府税務署長に対し、昭和五一年分ないし昭和五三年分の自己の所得税の修正申告をしているところ、その内容は、(a) 昭和五一年分は所得が一五〇六万七五五三円(うち雑所得金額は一三二七万円余)、所得税額が七四六万八〇〇〇円、(b) 昭和五二年分は所得金額が九七一万五〇六八円(うち雑所得金額は九一三万円余)、所得税額が五〇五万〇六〇〇円、(c) 昭和五三年分は所得金額が八四〇万〇二〇〇円(うち雑所得金額は八二九万円余)、所得税額が四三九万五一〇〇円ぞれぞれ増加するというものであった。
〈2〉 前記修正申告は、税務調査をした東京国税局が、昭和五一年から昭和五三年にかけて増加した金丸議員の資産のうち、その増加原因の説明がつかないものについて、それに見合う所得が申告されていないものと認定し、金丸側に修正申告を指導したことによってなされたものであったが、その際の税務調査において、東京国税局は金丸に対し、「質問事項の要旨」と題する書面(甲一二六在中。以下「質問事項書」という)によって説明を求めた。これに対し、金丸側では金丸の所得税確定申告書の作成を担当していた赤池税理士が回答書(甲一二六在中の「質問事項1について」で始まる書面。以下「第一次回答書」という)を作成して回答した。なお、質問事項書には政治献金に関する質問が含まれており、金丸の政治団体の資金面を管理していた被告人は、この関係で東京国税局に呼び出されて金丸の政治献金について質問を受け、赤池税理士と打ち合わせるなどしてこれに対応した。
〈3〉 さらに、右税務調査の過程で東京国税局は金丸議員に対し、(a) 昭和五一年の株式会社開発温泉ホテル(以下「開発温泉ホテル」という)に対する貸付金三三〇〇万円の増加、(b) 同年の悦子夫人に対する三〇〇〇万円の貸付金、(c) 昭和五三年の株式ファンド一八〇〇万円の購入資金について、それらの原資の説明を求めた。これに対し、金丸側では赤池税理士が回答書(甲一二六在中の「1 従来開発温泉ホテルに対する貸付金」で始まる書面。以下「第二次回答書」という)を作成して回答したが、第二次回答書には、(a) 開発温泉ホテルに対する貸付金の増加は、昭和五一年一月同社の甲府信用金庫等からの借入金について代位弁済をしたことによるもので、このうち一三〇〇万円の資金出所については記憶が不明確である、(b) 悦子夫人への貸付金のうち二七三〇万円の資金出所は、昭和五一年一二月の衆議院議員選挙に絡む献金及び当選祝金等からの流用であると思う、(c) 株式ファンド購入資金のうち四〇〇万円の資金出所は、昭和五二年一一月の個人献金であり、その余のうち六八〇万円は原因が不明である旨記載されている。
〈4〉 昭和五八年一一月ころ、被告人は、新聞記者から前記修正申告の経緯について取材を受け、その際、これまでの取材に基づき、詳細な事実関係を指摘して確認を求める新聞記者から告げられたことを書き留めたが、そのメモ(甲一二六在中の「税金、個人、財産増加額」で始まる書面)には、「税金、個人、財産増加額」「五四、三二〇〇修正」「五一、五二、五三、五六〇〇」という記載のほか、「開発温泉、五二末、八三〇〇万貸付あり、三〇〇〇万増加、甲府信金→金丸立替え払い、・・一三〇〇万、1/3説明がつかない(政治資金流用?)」「三〇〇〇金丸貸付、政治資金流用の疑問」、「五三・七投資信託、一八〇〇万投資、資金源不明」といった右〈3〉の(a)ないし(c)に関連する記載が存する。そして、被告人は、質問事項書、第一次及び第二次回答書、修正申告書の控えなどを取り寄せて検討するとともに、金丸に新聞記者の取材内容を報告して相談した上、「ご指摘の件は、既に国税当局の調査が終了しており、修正申告を済ませてあり、いま新たな問題ではない」などというコメントを発表した。昭和五八年一一月八日付け朝日新聞朝刊には、「金丸代議士が多額の申告漏れ」「不透明な個人資産増」という見出しの下に、昭和五一年から昭和五三年までの三年間で金丸の資産(預金、株券、投資信託、貸付金等)が五六〇〇万円増加していること、東京国税局による資産解明の過程で特に問題になったのは、右〈3〉の(a)、(b)の貸付金であること、同国税局は約三一〇〇万円が課税漏れの出所不明の所得によって増えた資産と認定し、この資産増加は隠し金か政治資金からの流用としか考えられないとみたが、解明には至らなかったことなどを内容とする記事が掲載されるとともに、被告人が発表した右のコメントも掲載された。なお、被告人は、右のメモ及びコメント原稿を質問事項書、第一次及び第二次回答書、修正申告書の控えなどと同じ袋に入れ、東京事務所の被告人が執務する机に保管していた。
2 他の政治家の修正申告等の報道状況
検察事務官作成の捜査報告書(甲二〇〇)等の関係証拠によれば、金丸議員が前記修正申告をした前後の時期において、以下のような新聞報道がなされたことが認められる。
〈1〉 昭和五四年八月二四日付け朝日新聞朝刊には、「竹下代議士が申告もれ」「政治資金がらみの所得にメス」という見出しの下に、同代議士が昭和四八年ないし昭和五〇年の所得税について修正申告をしたことが判明したとした上、「申告もれの内容について東京国税局は『全額、政治資金がらみの所得』と判断しており、課税当局の聖域といわれる政治資金に課税できた極めて珍しいケースといえる」との記事が掲載され、「政治家個人が企業や団体などから受け取る政治資金に対する税務上の取扱いは極めて甘い。『政治活動に使った残りがあれば雑所得として申告を』という遠慮がちなきまり」との解説が付されている。
〈2〉 同日付け讀賣新聞朝刊には、「竹下氏五〇〇〇万申告漏れ」「政治資金など三年分」という見出しの下に、〈1〉同様の修正申告をしたことが判明したとした上、「この所得は、政治資金として入ったうち使い残したものといわれる」との記事が掲載されている。
〈3〉 同年九月一七日付け朝日新聞朝刊には、「福田前首相が所得申告もれ」という見出しの下に、同前首相が昭和四八年ないし昭和五〇年の所得税について修正申告をしたことが判明したとした上、「株券やゴルフ会員権の購入費用に、政治資金として受け取った金の一部が充てられていたものと国税当局はみている」との記事が掲載され、「福田、竹下両氏の場合は、政治資金がらみの収入を個人資産に回したものと認定されて課税されたケース」との解説が付されている。
〈4〉 同日付け讀賣新聞朝刊には、「福田前首相も所得申告漏れ」という見出しの下に、〈3〉同様の修正申告をしたことが明らかになったとした上、「国税当局は詳しいコメントを避けているが、申告漏れをしていたほとんどの部分は、政治資金がらみの『雑所得』と認定されたものだったという」との記事が掲載されている。
〈5〉 同年一二月七日付け朝日新聞夕刊には、「加藤六月代議士一五〇〇万円申告漏れ」という見出しの下に、同代議士の所得税に申告漏れがあることが判明したとした上、「加藤代議士の架空口座に五千万円が送金されていた事実を確認した。これは選挙資金の残りとみられ、その大半が割引債券にかえられたことも判明した。・・国税局は・・残りの約千五百万円が個人資産に回った課税対象所得と認定した」との記事が掲載されている。
〈6〉 昭和五五年一月二一日付け朝日新聞朝刊には、〈5〉の関連で加藤代議士が修正申告をしたことが判明したとした上、「東京国税局が……選挙資金の残金とみられる五千万円のうち、三千七百万円は政治活動に使われたが、残りの千三百万円は個人所得にまわったと認定した」との記事が掲載されている。
〈7〉 同年五月二日付け朝日新聞朝刊には、「松野氏、政治献金を私費に」「税務当局、聖域に初のメス」という見出しの下に、東京国税局が松野頼三代議士の申告漏れを摘発したとした上、「申告漏れ所得の中に計六百五十万円の政治資金が含まれ、その献金した団体や企業名まで一つひとつ明らかになった。・・松野氏に使途をただしたところ生活費など個人消費に流用したことが判明。・・『雑所得』として課税した」「所得税法でも政治活動に使った残りがあった時だけ『雑所得』として申告すればよいことになっている」との記事が掲載されている。
3 過去の修正申告・報道等と被告人らの認識
右1で認定した事実によれば、前記修正申告をした本人である金丸議員はもとより、それ以前に東京国税局に呼び出されて金丸議員の政治献金について質問を受けるなどした被告人も、税務調査の過程で東京国税局が金丸の政治献金収入にも注目していることを認識していたものと認められる。
また、被告人は公判において、「永田町では資金面は外に漏らすべきではないという防禦的な感覚があり、特に田中金脈事件以後は金脈筋を明らかにされることは、金銭的な政治スキャンダルになって政治活動を行う上で致命的なことになりかねないところがあった。金銭的なことが一番政治スキャンダルとして面白おかしく発展することが多い。スキャンダルの種になるようなことは避けなければならないというのが私どもの仕事の一つであった」などと供述した上で、政治家の所得税の修正申告に関する記事がスキャンダルになることを認めている(第二八回、第四七回)。そうすると、被告人は、政治家の秘書として、金銭に絡むスキャンダルには常日頃から注意しなければならないとの心構えを有していたことになるから、金丸の前記修正申告の前後の時期に大きく報道され、いずれも政治資金が課税対象となった旨の内容を含む右2の記事(少なくともその一部)に、多大の関心を寄せたものと推認される。これに対し、被告人は、「このような新聞記事に目を通していると思うが、それらは他の国会議員のことで金丸先生に振りかかってくるとは考えなかったので関心がなかったし、そもそも修正申告をしたことが新聞記事になること自体がおかしいと考えていたので、政治資金の残りに課税されるというように記事の内容を把握していなかった」と供述するが(第四七回)、右2の記事は金丸が前記修正申告をした前後に掲載されたものであることや被告人が職務上も金銭に絡むスキャンダルには注意していたことなどに照らすと、供述内容が不自然、不合理であって信用することはできない。被告人は、「このような新聞報道がなされた当時、衆議院第二議員会館にあった金丸先生の事務所では朝日新聞は講読していなかったし、加藤、松野両代議士関係の記事は本件起訴後に新聞記事を調査する中で見た」とも供述するが、同時に、「同じ議員会館にある他の議員の事務所から朝日新聞を借りてくることもあった。竹下、福田両代議士の記事については当時目を通したし、福田代議士の記事は総選挙公示の日に掲載されたので、選挙妨害にならないかと話した記憶がある」と具体的に供述している(第四九回)。そして、前記修正申告をして自らも渦中にあった金丸も、直接記事を読むか、周囲の者から聞くなどして、このような記事の内容を認識していたものと推認される。
さらに、右1〈4〉のとおり、被告人は、昭和五八年一一月ころ、金丸の前記修正申告について新聞記者から取材を受けているが、被告人が書き留めたメモ及び新聞記事の内容に照らすと、新聞記者の取材の要点は、金丸が個人資産に流用した政治資金に課税されて修正申告をすることになったのではないかということの確認であったところ、被告人は、前記修正申告当時の資料を取り寄せて検討するとともに、このような新聞記者の取材内容を金丸に報告して対応を相談しているのであり、被告人及び金丸は、これを記事にした朝日新聞の内容もその当時から承知していたものと推認される。
三  被告人らのほ脱の故意
右二でみた諸点に加え、被告人及び金丸は捜査段階において、金丸の政治献金収入が所得税の課税対象になることの認識を全く争っていなかったことも考慮すると、被告人及び金丸は本件当時、政治献金収入から政治活動のための費用を控除した残額が雑所得として課税所得になるという正確な認識を有していたかはともかくとしても、少なくとも政治家個人が受領した政治献金がおよそ税金とは無関係というわけではなく、それを有価証券等の資産として保有していた場合には所得税の課税対象になるという程度の認識は有していたと認められる。
被告人の公判供述によれば、被告人は、自己の裏献金収入を金丸議員の政治献金収入に準ずるものとして認識していたことが認められるところ、被告人は、前記二のとおり、本件当時、金丸の政治献金収入が所得税の課税対象になり得ると認識していたと認められること、捜査段階において自己の裏収入が所得税の課税対象になることの認識を全く争っていなかったことなどに照らすと、被告人は本件当時、自己の裏収入も所得税の課税対象になるであろうとの認識は有していたと認められる。
また、被告人の公判供述(第三三回)、被告人(乙三六、三九)及び金丸(乙一九)の各検察官調書等の関係証拠によれば、被告人及び金丸は、金丸に対して毎年盆暮の時期を中心になされてきた巨額の政治献金の趣旨を理解していたことが明らかであるから、政治献金に係る所得が雑所得に該当することを基礎付ける事実を認識していたと認められる。そして、このような事実を認識していれば、それ以上に政治献金に係る所得が雑所得として所得税の課税対象になることまでの認識がなかったとしても、そのことは、金丸との共同正犯分につき被告人らのほ脱の故意を認める妨げにはならないと解される。被告人が自己に対する裏献金の趣旨を理解していたことは公判供述からも明らかであるから、被告人の単独犯分についても同様のことがいえる。
以上のとおりであって、本件犯行を通じ、被告人には納税義務の認識に欠けるところはなく、ほ脱の故意を肯認することができる(金丸議員との共同正犯分については、金丸についても同様のことがいえる)。
第五  金丸議員との共同正犯分
一  政治献金収入の帰属
弁護人は、東京事務所は金丸議員の政治活動の拠点であり、同事務所で保管されていた現金及びワリシン(債券)は金丸個人ではなく、金丸の政治団体に帰属する旨主張する(弁論九一頁以下、一二七頁)。
そこで検討するに、金丸(乙三、六、七、八、一二)及び被告人(乙二六、二八、二九、三七、四五)の各検察官調書、被告人の公判供述(第三七回等)の関係証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1) 本件当時、自治大臣に届け出た金丸議員の東京における政治団体は、「新国土開発研究会」「日本政治を考える会」「富岳政経研究会」の三団体であり、それぞれに代表者、会計責任者、会計責任者の職務代行者が置かれ、被告人は「新国土開発研究会」の代表者であったが、右の三団体は寄付の受入れを行うためのもので、特に政治活動をしているわけではなく、被告人以外の役員は名義を借りているだけであって、実質的には被告人がその管理運営を取り仕切っていた。金丸は、右政治団体の管理運営を被告人に全面的に任せていた。
(2) 被告人は、建設業者等からの政治献金のうち、〈1〉政治資金規正法に基づく政治団体の収支報告に記載するもの(政治団体名義の銀行口座に振り込まれるか、政治団体の領収書を発行して現金で受領する)、〈2〉被告人が金丸から政治活動費、事務所経費等その使途を特定して託され、あるいは当初使途は特定されないで託されるが、後に使途を特定されるもの、〈3〉被告人が献金者から事務所で使うように言われて受領したものを管理しており、このような現金は、紙袋に入れて東京事務所内の被告人が執務する机の右袖下の鍵付きの引出し(以下「金庫代わりの引出し」という)で、被告人の個人資金(被告人に対する裏献金によるもの)とは区別して保管し、事務所経費、他団体への寄付、金丸の指示に従った用途(派閥の議員への配付等)に支出していた。
(3) 金丸議員は、その政治的影響力に期待する建設業者等から、金丸個人の領収書を発行し、あるいは領収書を発行しないで受領した政治献金(金丸が不在のため被告人が代わって受領し、後に金丸に渡したものを含む)を管理しており、このような現金は、金丸の執務室内に紙袋等に入った状態で置かれ、費消されなかった分は東京事務所の被告人以外の秘書や事務員が執務する部屋の一部を木製のアコーディオンカーテンで仕切ったところに置かれた金庫(以下「大金庫」という)に入れて保管するか、元麻布の自宅に持ち帰っていた。大金庫の鍵は金丸が保管しており、その開閉は金丸本人か、その指示を受けた被告人だけが行っていた。被告人が金丸の指示によってワリシンの購入を行うに当たっては、金丸から大金庫あるいは金丸の執務室にある現金を渡され、手続が終わると、ワリシンの債券を計算書や釣り銭とともに金丸に渡し、金丸は、債券を主として大金庫で保管していた。
以上のとおり、東京事務所内においても、金丸が管理する資金(更にはこれを原資として購入したワリシン)と被告人が管理を任されていた資金とは明確に区別されていたものであって、前者については、献金の趣旨、管理の態様からしても金丸個人に帰属するものと認められる。なお、被告人は公判において、政治資金の帰属については考えたことがないなどと供述するが(第三〇回)、関係証拠によれば、東京事務所において金丸の政治資金関係に実質的に関与していたのは被告人だけであり、被告人は、右のような同事務所内における資金管理の状況を十分認識していたと認められる。そもそも被告人の弁解自体、政治資金の帰属について考えたことがないというもので、これらが全て金丸の政治団体に帰属すると認識していたというものではない。また、被告人は、「政治団体のお金も金丸先生が直接お受け取りになる現金も、先生の政治資金であるという認識である」と供述していること(第三〇回、第三七回等)を併せ考えると、被告人は、金丸が管理する資金及びこれを原資として購入したワリシンが金丸議員の政治団体ではなく金丸個人に帰属することを認識していたと認められる。
二  金丸議員のほ脱所得金額
1 検察官の主張と争点
検察官は、前記第一の二3(一)のとおり、金丸が昭和六二年一〇月から一一月、平成元年九月に日債銀から購入した割引債(後記〈7〉のワリシンC1及び〈19〉のワリシンD)の取得金額(払込額)等をもって、それを購入した年分の政治献金に係る雑所得の金額であると主張する(論告四四頁等)。しかし、現金勘定においては、翌年の割引債の購入に充てられたとされる現金のみが挙げられ、それ以外金丸が保有する現金の金額・増減は明らかにされていない。検察官の主張に係る財産増減法は、このままでは、部分的で不完全なものといわなければならない。なぜならば、雑所得の金額(公的年金等の収入に係るものを除く)は、その年中の雑所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額であり(所得税法三五条二項二号)、金丸が右割引債を購入した各年において、右必要経費に該当する政治活動のための費用を全く支出していないということは関係証拠上も考えられないから、右割引債の購入原資がそれを購入した年分の政治献金収入であったとしても、そのことだけで直ちに右各年において右割引債の取得金額に相当する雑所得が存在するということはできないからである。
そこで、検察官は、金丸のほ脱所得は、割引債及び現金という形態で留保されているとして、金丸の割引債及び現金の保有状況を検討した上、昭和六二年末の保有現金残高が昭和六一年末のそれを、平成元年末の保有現金残高が昭和六三年末のそれをそれぞれ下回ることはないから、昭和六二年及び平成元年においては、少なくとも金丸が購入した右ワリシンの払込額等に見合う資産が増加しており、金丸にはその増加分のほ脱所得があったと主張し(論告四五頁以下)、公判の被告人質問において、東京事務所における金丸の現金保有状況等についても詳細に質問しているのである(第三八回、第三九回、第四一回、第四三回公判等)。検察官が翌年の割引債の購入に充てられたとする現金以外の金丸が保有する現金勘定を具体的に明らかにしていないのは、政治家の政治献金に関する収支の実態を詳細に捕捉することが極めて困難であるという証拠収集面での問題があって、トータルでの現金勘定を確定金額で表示することができないという技術的な理由によるものと認められるのである。なお、弁護人の主張の中には、検察官は、右割引債の購入原資がそれを購入した年分の政治献金収入であることから、その取得金額に相当する雑所得が存在すると主張しているようにも理解できるとして、これを批判する部分が存するが(弁論一〇〇頁、一〇七頁)、検察官がそのような主張をしているとみることはできない。
このようにみてくると、金丸のほ脱所得金額を確定するに当たって、検察官が主張するような金丸の現金保有状況の事実が認められるか否かは、決定的な重要性を持つのであり、そのような事実が認められるのであれば、右の割引債の購入原資には全てそれを購入した年分の政治献金収入が充てられたのかどうか(検察官の主張する以上に前年分の繰越金が充てられているか否か)は問題にならなくなるのである。この金丸の現金勘定の問題点は公判で弁護人から繰り返し指摘されており、金丸の現金保有状況の点も、攻防の焦点となってきたものである。
そこで、以下、金丸の割引債及び現金の保有状況を認識した上で、本件起訴に係る各年の金丸のほ脱所得金額を検討する。
2 金丸議員の割引債の購入等の状況
関係証拠によれば、昭和六〇年から平成元年までの金丸議員の割引債の購入・乗換え(以下では、乗換えとともに買増しをするなどしている場合も、単に「乗換え」という)の状況は、以下のとおりであったと認められる。なお、〔 〕内は、購入後の乗換え状況を把握する便宜としてつけた略称であるが、ワリシンAないしDは日債銀ルート、ワリコーαは岡三ルート昭和六一年分、ワリコーβは岡三ルート平成元年分の割引債を示し(各ルートの名称は、検察官の冒頭陳述による)、日債銀ルートについて付した○・△は、前者が新規購入、後者が乗換えの取引であることを示す。
〈1〉昭60・9ころ ○日債銀で額面合計五億七六九〇万円のワリシン〔ワリシンA1〕を購入
〈2〉昭61・7・31 ○日債銀で額面合計五億二〇〇〇万円(払込額五億〇〇二四万円)のワリシン〔ワリシンB1〕を購入
〈3〉〃 ・9・22 △日債銀でワリシンA1を額面合計六億円のワリシン〔ワリシンA2〕に乗換え
〈4〉〃 ・10・17~11・21 岡三證券株式会社(以下「岡三證券」という)で九回にわたり、額面合計一〇億三八一五万円(払込額一〇億五〇二二円)のワリコー〔ワリコーα1・Ⅰ~Ⅳ〕を購入
〈5〉昭62・9・22 △日債銀でワリシンA2・B1を額面合計一一億五〇〇〇万円のワリシン〔ワリシンA3・B2〕に乗換え
〈6〉〃 ・10・27 岡三證券でワリコーα1・Ⅰ(額面合計九八五四万円)を同額面のワリコー〔ワリコーα2・Ⅰ〕に乗換え
〈7〉〃 ・10・30及び11・2 ○日債銀で額面合計二億円(払込額合計一億九三六一万四〇〇〇円)のワリシン〔ワリシンC1〕を購入
〈8〉〃 ・11・27 岡三證券でワリコーα1・Ⅱ(額面合計三億四二九七万円)を同額面のワリコー〔ワリコーα2・Ⅱ〕に乗換え
〈9〉〃 ・12・14 岡三證券でワリコーα1・Ⅲ(額面合計三億六四六九万円)を同額面のワリコー〔ワリコーα2・Ⅲ〕に乗換え
〈10〉昭63・1・26 岡三證券でワリコーα1・Ⅳ(額面合計二億三一九五万円)を同額面のワリコー〔ワリコーα2・Ⅳ〕に乗換え
〈11〉〃 ・9・19 △日債銀でワリシンA3・B2を同額面(一一億五〇〇〇万円)のワリシン〔ワリシンA4・B3〕に乗換え
〈12〉〃 ・11・30 岡三證券でワリコーα2・Ⅰを額面合計一億円のワリコー〔ワリコーα3・Ⅰ〕に乗換え
〈13〉〃 ・12・2~12・6 岡三證券でワリコーα2・Ⅱを額面合計三億四一五一万円のワリコー〔ワリコーα3・Ⅱ〕に乗換え
〈14〉平元・1・17 岡三證券でワリコーα2・Ⅲを同額面(三億六四六九万円)のワリコー〔ワリコーα3・Ⅲ〕に乗換え
〈15〉〃 ・1・24~1・27 岡三證券で額面合計一一億七五八八万円(悦子夫人分を含む。金丸分の払込額一〇億円)でワリコー等を購入〔ワリコーβ〕
〈16〉〃 ・1・27 岡三證券でワリコーα2・Ⅳを額面合計一億九三八〇万円のワリコー〔ワリコーα3・Ⅳ〕に乗換え
〈17〉〃 ・9・11 △日債銀でワリシンA4・B3を同額面(一一億五〇〇〇万円)のワリシン〔ワリシンA5・B4〕に乗換え
〈18〉 〃 △日債銀でワリシンC1を同額面(二億円)のワリシン〔ワリシンC2〕に乗換え
〈19〉 〃 ○日債銀で額面合計六億五〇〇〇万円(払込額六億二四一三万円)のワリシン〔ワリシンD〕を購入
〈20〉〃 ・12・6 岡三證券でワリコーα3・Ⅰを同額面(一億円)のワリコー〔ワリコーα4・Ⅰ〕に乗換え
〈21〉〃 ・12・27 岡三證券でワリコーα3・Ⅱを同額面のワリコー(三億四一五一万円)のワリコーに乗換え〔ワリコーα4・Ⅱ〕
(以下、これらの取引事実を引用するときは、「〈1〉の取引」などと表示する)
なお、金丸議員は、日債銀ルートの取引について、〈1〉の取引を福島交通株式会社会長の小針暦二(以下「小針会長」という)に依頼したが、それ以外の取引は被告人に行わせていた。そして、金丸の指示を受けた被告人は、日債銀本店債券営業部副部長であった大竹清との間で債券及び現金の授受を行っていたが、取引に際しては、被告人から連絡を受けた大竹が、札勘定をさせる銀行員を連れて東京事務所を訪れていた。
3 金丸議員の現金保有状況
金丸(乙三、六ないし八、一〇ないし一二、一四、一五、一九)及び被告人(乙二六、二八、二九、三一、三八、四〇、四四)の各検察官調書、被告人の公判供述(第二八回、第二九回、第三五回、第三八回、第三九回、第四一回、第四三回)等の関係証拠によれば、金丸は、本件当時、受領した政治献金のうち、政治活動等に関連して支出した以外のものを、現金又は割引債として東京事務所又は元麻布の自宅で保管していたのであるが、その現金の保有状況について、以下の事実が認められる。
(一) 金丸議員は、毎年の盆暮及び重要な選挙(衆参両院議員選挙、山梨県知事選)を控えた時期を中心に政治献金を受け取っており、その金額は金丸が政界の実力者としての地位を固めた昭和六〇年ころから平成元年にかけては、年間一〇億円以上に達していた。金丸は、政治献金の大部分を政治活動の拠点である東京事務所で受け取っていたが、一部は元麻布の自宅等で受け取ることもあった。東京事務所で受領した現金は、いったん金丸の執務室に紙袋等に入れたまま置くこともあったが、大金庫に収納することが多く、さらに元麻布の自宅に持ち帰ることもあった(もっとも、金丸の執務室には常に現金入りの紙袋等が置かれている状態であった)。元麻布の自宅で受領した現金は、東京事務所から持ち帰った現金と一緒に金丸の寝室等で保管していたが、これらを同事務所へ持ち込むことはなかった。それ以外の場所(派閥事務所があった砂防会館等)で受領した現金は、東京事務所あるいは元麻布の自宅へ持ち帰っていた。なお、政治活動等に関連して支出の用途がある場合は、その殆どを大金庫あるいは金丸の執務室で保管している現金で賄っていた。
(二) 昭和六一年は、七月に衆参同時選挙が施行されたところ、右選挙を控えた時期が盆の時期とほぼ重なったこともあって、このころ、金丸は、このような政治日程のない年に比べてかなり多額の政治献金を受け取った。金丸は、右選挙に向け、派閥所属の議員に配るなどして政治献金を億単位で使ったが、それでも右選挙を控えた時期に受領したものを上回る支出はなく、同月三一日に行われた〈2〉の取引の直前の時点で、大金庫の中には現金入りの紙袋等がかなり入った状態であり、金丸の執務室にも現金入りの紙袋やボストンバッグが置かれていた。そして、金丸は東京事務所にあった現金を原資として、〈2〉のとおり、ワリシンB1(払込額五億〇〇二四万円)を購入したが、この支出によって大金庫は大分整理された状態になり、金丸の執務室に置かれている現金も少なくなった。その後、同年一一月下旬から一二月下旬にかけて、金丸は、東京女子医大病院に入院して面会謝絶の状態であり、退院後約一か月も療養に専念したため、この間は殆ど政治活動をしておらず、同年暮の時期には派閥所属の議員等へのいわゆる餅代も余り配付しなかった。そして、昭和六二年一月に山梨県知事選挙が予定されていたことから、昭和六一年暮の時期に金丸に対して政治献金提供の申し出があったものについては、被告人において、その殆どを金丸が支援する右選挙候補者の資金管理に回すようにしたので、この時期に金丸が受け取った政治献金は例年よりもかなり少なかった。一方、金丸が元麻布の自宅で保管していた現金は、同年一〇月ころには一〇億円を越えていたが、〈4〉のとおり、悦子夫人を通じて購入したワリコーα1(払込額一〇億五〇二二円)の原資に充てたため、同年一一月下旬の時点ではかなり少なくなっていた。
(三) 昭和六二年は、七月に金丸が後ろ楯となっていた衆議院議員竹下登の派閥である経世会が発足し、同議員は同年一〇月自民党総裁に、同年一一月内閣総理大臣にそれぞれ就任し、このような政治日程との関連もあって、金丸は、盆の時期までに多額の政治献金を受領するとともに、同年夏ころまでに東京事務所にあった現金を億単位で使ったが、それでも同事務所には億単位の現金が保管されていた。そして、同年の盆以降にも政治献金を受け取ったため、金丸は、東京事務所で保管していた現金の一部で〈7〉のとおり、同年一〇月から一一月にかけてワリシンC1(払込額一億九三六一万四〇〇〇円)を購入した。金丸は、昭和六二年暮の時期にも多額の政治献金を受領するとともに、派閥所属の議員等へいわゆる餅代を配付した。
(四) 昭和六三年は、多額の政治資金が必要となる選挙等の政治日程もなく、新規に割引債を購入することもしなかったので、金丸は、その年の盆暮の時期を中心に東京事務所で受領した政治献金の大部分を元麻布の自宅に持ち帰り、右自宅で受領した政治献金と併せると右自宅には一〇億円を超える現金があった。金丸は、〈14〉のとおり、平成元年一月に右現金のうち一〇億円を払い込んでワリコーβを購入した。
(五) 平成元年は、七月に参議院議員通常選挙が予定されていたが、消費税問題等で自民党が相当苦戦することが予想されたことや、右選挙を控えた時期が盆の時期とほぼ重なったこともあって、金丸は、右選挙に向け、このような政治日程のない年に比べてかなり多額の政治献金を受け取った。金丸は、右選挙に向け、派閥所属の議員に配るなどして政治献金を億単位で使ったが、それでも右選挙を控えた時期に受領したものを上回る支出はなく、盆の時期以降に受領したものを併せて東京事務所で保管していた現金を使って、〈19〉のとおり、同年九月にワリシンD(払込額は六億二四一三万円であるが、購入に当たって六億五〇〇〇万円の現金を準備している。差額の二五八七万円は、その後に金丸が私的用途に費消した)を購入した。その際、金丸は被告人に対し、大金庫や金丸の執務室に保管している現金が雑然としているので、これらを整理するためにワリシンを買うかという話をした。また、同年暮の時期は、解散・総選挙が近いとの風評が流れていたこともあって(実際には平成二年二月に衆議院議員総選挙が行われている)、金丸は通常の暮の時期よりも多額の政治献金を受領し、餅代のほか右選挙に備えた支出もしているが、同年暮の時点でも大金庫の中はかなり窮屈であり、平成二年一月に東京佐川急便の渡邉社長から政治献金として受領した五億円を大金庫に収納することが殆どできない状態であった。
4 結論と補足説明
右2で認定した事実によれば、昭和六二年に購入したワリシンC1、平成元年に購入したワリシンDが右各年のうちに解約されたという事情はなく、このほか右各年においては、平成元年一月のワリコーβの購入以外は、ほぼ同額面による割引債の乗換えが行われているにすぎないことが認められる。
また、右3で認定した事実に加えて、被告人は公判において、時期を特定してのことではないが、「ワリシンを解約しなくても、日常の政治活動は十分に補うことができた」(第三五回)、「政治資金は毎年繰り越して増えていくという認識であった」(第三八回)、「暮の時期の政治献金を餅代の配付によって使い切ることはないと思う」(第四一回)と供述していることを併せ考えると、金丸が保有する各年末の保有現金残高を確定金額で明らかにすることはできないが、少なくとも昭和六二年末の保有現金残高が例年よりも暮の政治献金がかなり少なかった昭和六一年末のそれを、暮の時期に例年よりも多額の政治献金を受領した平成元年末の現金残高が、ワリコーβの購入原資に充てられた分を除いた昭和六三年末のそれをそれぞれ下回ることはないと認められる。なお、金丸の現金保有状況に関する以上の認定の関係で、弁護人は、3(四)の現金の自宅への持ち帰りの事実はないし、その余も、被告人らの漠然とした曖昧な印象に基づく推論であり、厳格な立証が尽くされているとはいえないなどと主張しているが、昭和六三年は収入は変わらないのに現金の支出が例年よりも少ないので東京事務所における現金の保管には問題があり、これを元麻布の自宅へ持ち帰ったとの金丸及び被告人の検察官調書における供述は十分信用することができるし、被告人や金丸の右現金保有状況に関する供述は、割引債購入等の事実や政治日程等の客観的事実を前提にし、自己の記憶に基づくものとして述べられた相当具体的な内容を含むものであって、これら供述を中心とした関係証拠を総合して、右のような認定をすることは、刑事裁判におけるほ脱犯の関係においても当然に許容されるべきものと思われる。
以上によると、金丸議員の昭和六二年分及び平成元年分については、各前年からの繰越金の額も各年末の保有現金残高も、確定金額で明らかにすることはできないが、いずれもトータルとして現金は増えていることはあっても決して減っていることはないと認められるので(ただし、ワリコーβの購入原資分の計算は前述したとおりである)、論理必然的に、前記ワリシン購入のための払込額等に相当する金額以上の政治資金の溜まり(雑所得)があったことは動かないといえることになる。したがって、金丸の本件起訴に係る各年におけるほ脱所得金額は、検察官主張の金額を下回ることはないものと認められる。
三  金丸議員との共犯関係
1 弁護人の主張
弁護人は、被告人は、秘書業務の一環として、金丸議員の指示によりワリシンの購入・乗換え手続を行ったり、金丸の所得税確定申告書作成の過程で機械的・補助的作業を行ったにすぎず、金丸との間で、その所得を秘匿するためにワリシンを購入する旨の共謀をしていないし、虚偽過少申告の実行行為もしていないとして、以下のとおり主張する(弁論一四七頁以下)。
金丸議員は、昭和六〇年以前から毎年多額の政治献金を受けており、これらを現金のまま保管していたが、同年ころには東京事務所の大金庫に現金が納まりきらず、金丸の執務室にも現金の入った紙袋等がかなり置かれている状況になっていた。また、昭和五九年一一月に一万円紙幣が聖徳太子の旧札から福沢諭吉の新札に切り替わり、将来議員等へ配付する際に旧札のままでは使いにくいこともあって、金丸は、昭和六〇年夏前ころ、これらの現金の保管及び新札への切替えの方法を考えるよう被告人に指示した。金丸は、このように現金の保管及び新札への交換の必要に迫られていたころ、小針会長からワリシンの購入を勧められたので、右懸案の解決に良い方法であると考え、これを購入することにしたが、そこに所得税ほ脱の目的はなく、被告人も、金丸の指示を受け、現金を勘定して小針会長に渡すなどの作業をしただけであり、金丸との間で、ワリシンは無記名債券だから財産隠しに好都合で、税務署にも分かりにくいなどと話し合ったことはなく、被告人にも金丸の所得税をほ脱する意図はなかった。被告人は、昭和六一年以降についても、金丸の指示を受け、ワリシンの購入・乗換え手続を行ったにすぎないのであって、金丸との間でその所得税ほ脱の共謀が成立する余地はない。
また、被告人は、金丸の所得税確定申告書の提出自体には一切関与していない。被告人は窪田道也税理士(以下「窪田税理士」という)が金丸の所得税確定申告書を作成する過程で、東京事務所に送付又は持参される源泉徴収票を取りまとめ、これを元麻布の自宅の悦子夫人あるいは甲府事務所の信吾宛に送付したり、同税理士の問い合わせに応じて株式配当額の調査連絡をしたほか、納付書、現金を渡されて金丸の所得税の納付手続をとっただけであって、いずれも秘書業務の一環としてなされた機械的・補助的な単純作業である。
そこで、以下検討する。
2 ワリシン購入等の目的及び金丸議員との意思疎通
(一) 昭和六〇年から平成元年までの金丸の割引債の購入・乗換えの状況は、前記(第五の二2)のとおりであるが、昭和六〇年に日債銀からワリシンを購入した経緯については、金丸は、検察官調書(乙五、六等)において、「東京事務所内で大金を保管していた昭和六〇年ころ、小針会長から『ワリシンに換えておいたら安全で便利である。購入して継続していけば資産を増やすのにも好都合である。無記名であり、誰のものか分かりにくいもので安心できる』などと、資産を隠して安全に増やす方法としてワリシンの購入を勧められた。そんな便利なものがあるのかと思い、小針会長に依頼してワリシンを購入した。小針会長に勧められてワリシンを購入する際、被告人にもそのことを話したかもしれないが、その点はよく覚えていない」と供述する。また、被告人は、検察官調書(乙二六等)において、「昭和六〇年に入ってから、金丸先生との間で、『東京事務所での現金の保管に問題がある上、殆ど旧札なので新札に替えなければいけないが、この際、日債銀からワリシンを買ったらどうだろう。無記名債券だから保管に便利な上、個人の財産隠しにも好都合で、税務署にも分かりにくく、その上、新札に切り換えるワンステップにもなる』という内容の話をした。そのとき、金丸先生の方から、小針会長もワリシンの購入を勧めていたという趣旨の話も出たと思う。そして、ワリシンの購入を小針会長にお願いすることになった」と供述する(なお、検察事務官作成の捜査報告書《甲二〇一》によれば、昭和五九年一一月一日に一万円札が聖徳太子の旧札から福沢諭吉の新札へ切り替えられたことが認められる)。
これに対し、被告人は公判において、「昭和六〇年夏ころは、東京事務所の大金庫に現金が納まりきらず、金丸先生の執務室にも現金の入った紙袋等がかなり置かれており、旧札が相当たまっている状況であった。このころ、金丸先生から、現金の保管に便利な方法と旧札を新札に替えるうまい方法(話題にならないよう新札に替える方法)がないか考えるように言われた。金丸先生と話す中で、銀行へ行って新札に替えたらと言って笑われたことがあったかもしれない。そのころから旧札の勘定を始めたが、自分一人でやっており、他の秘書には手伝わせていない。その後、金丸先生から、小針会長からワリシンのことを聞いて買うことにしたから、今度、小針会長に勘定した現金を渡しておくようにと言われた。ワリシンの購入は金丸先生が決めたことで、自分から勧めたことはない。小針会長に現金を渡す時点では、ワリシンは無記名債券で、償還するときは新札になることはわかっていたが、金丸先生との間で、ワリシンは個人の財産隠しに好都合で税務署にも分かりにくいという話をしたことはなく、自分にも金丸先生にもそのような認識はなかった」と供述する(第二八回、第三五回)。なお、金丸は、分離前の第一回公判期日において、被告人と脱税の共謀をしたことはないと陳述している。
(二) ところで、日債銀本店債券営業部副部長であった大竹清の供述(甲六、二一四)等の関係証拠によれば、ワリシンは無記名の有価証券であって、八種類の額面(一万円、五万円、一〇万円、五〇万円、一〇〇万円、五〇〇万円、一〇〇〇万円、五〇〇〇万円)があること、これを発券銀行で本券(現物債)渡しの方法により購入する場合は、住所、氏名を明らかにする必要がなく、その際、日債銀が控えを保存するほか顧客にも交付される債券購入計画書の社債券者欄にも氏名は表示されない(カタカナで社債券者様と表示される)こと、これに対し、保護預りの方法による場合は住所、氏名、印鑑の届出が必要であること、日債銀では顧客に乗換え率の高い保護預りの方法を勧めているが、実際には本券渡しの方法による購入が多いことが認められる。そして、大竹は、「ワリシンの最大の魅力は、無記名の有価証券であって、これを保有していることが他人には分からないことである。税務調査を受けた顧客から、自分が保有しているワリシンは税務署に見つからないなとの質問を受けた際には、氏名の表示がない債券購入計画書が残るだけなので大丈夫ですと答えている」と供述しているところ、この供述の信用性を疑うべき理由は見当たらない。そうすると、租税ほ脱の手段としてワリシンの購入がなされた場合には、その納税義務者が当該ワリシンを保有していること(すなわちその購入原資に相当する収入を得ていること)を税務当局が捕捉することが困難になるから、それは所得秘匿工作に当たるというべきである。
(三) 右(一)のとおり、被告人の検察官調書では、昭和六〇年のワリシン購入に当たり、金丸との間で、ワリシンは無記名債券だから財産隠しに好都合で、税務署にも分かりにくいなどと相談したとされているのに対し、金丸の検察官調書では、ワリシンの購入は小針会長の勧めで金丸が決めたことであるとされているだけで、被告人との間で右のような相談をしたことは述べられていない。この点について、弁護人は、捜査段階において、自己の罪責を全面的に認めていた金丸が、右のような供述しかしていないのは、金丸と被告人との間で、ワリシンは無記名だから財産隠しに好都合で、税務署にも分かりにくいなどというやりとりがなかったことを示すものであると主張する。しかしながら、金丸は、他の検察官調書において、被告人が金丸の所得税法違反の事実を知っていたことを認めながらも、「被告人にワリシンの購入・乗換え手続をさせたのは、あくまで被告人を私の手足として使ったものである」(乙八、一二)、「(所得税法違反の罪については)私が蒔いた種であって、あくまでも私に責任があるので、被告人についてはできる限り寛大にしてほしい」(乙七、一九)などと供述し、随所で被告人を庇う姿勢を見せ、被告人は金丸の道具的立場にあったにすぎないとしていることに照らすと、金丸が検察官調書において、当初のワリシン購入に当たって被告人と相談したことを供述していないからといって、そのような事実がなかったと断定することはできない。
そこでさらに検討するに、前記被告人の公判供述等の関係証拠によれば、昭和六〇年夏ころは、東京事務所の大金庫に現金が納まりきらず、金丸の執務室にも現金の入った紙袋等がかなり置かれるとともに、前年に新札への切替えがなされた一万円紙幣の旧札が相当たまっている状況にあり、金丸と被告人との間では、現金の保管と旧札から新札への切替えについての話合いがなされていたことが認められる。弁護人は、被告人の前記検察官調書における供述は、資金の保管や新札への切替えの話から、突如として財産隠しや税務署などの話になっており、迫真性に欠ける上に余りに唐突であって信用できないと主張する。しかしながら、被告人は公判において、金丸が多額の政治資金を持っていること自体が外部に知れると、金銭的な政治スキャンダルになって政治活動に非常な悪影響を及ぼすので、このようなことを知られないように政治家の秘書として常に留意していたと再三にわたって供述しているところ(この供述は、政治家の秘書という立場にある者の職務上の心構えとして十分納得できるものである。なお、当の政治家本人である金丸が金銭に絡むスキャンダルを生じないように注意していたことは、その長い議員経験に照らしても明らかである)、前記第四でみたとおり、金丸及び被告人は、昭和五四年の金丸の所得税修正申告とそれに先立つ税務調査、右修正申告に関する新聞記者の取材と新聞報道等といったいわば苦い経験を通して、政治献金に係る収入がおよそ税金とは無関係というわけではなく、所得税の課税対象となる場合があることを認識していたと認められる。そして、政治家に対する税務調査が政治スキャンダルに発展することは一般的に十分考えられるところであるから、常日頃から金銭に絡むスキャンダルを避けるように注意していた金丸と被告人が、外部に知られないように旧札を新札に切り替えるため、無記名債券であるワリシンを購入することについて話す中で税務署関係のことに話が及んだとしても、全く不自然ではない。のみならず、前記修正申告に絡む過去の苦い経験に照らすと、そのようなことにまで話が及ぶ方がむしろ自然な流れというべきである。また、弁護人は、被告人の前記検察官調書の供述によれば、金丸は被告人との相談によりワリシンの購入を決定したことになるが、被告人は、余計なことを詮索せず、金丸から指示があったことを忠実に実行することを本分と心得て行動していたのであるから、このような話合いがあったとは考えにくいし、そもそもワリシンの購入は現金を債券に替えるだけであるから、人に相談するほどのことでもないと主張する。しかしながら、関係証拠によれば、東京事務所で金丸の政治資金管理に実質的に関与していたのは被告人だけであると認められるところ、このような被告人の立場に加え、右のとおり、金丸と被告人との間では、従前から旧札から新札への切替え等について話合いがなされていたこと、被告人の公判供述(第二八回)によれば、その後の昭和六一年七月のワリシン購入の際は、金丸が、与野党を問わず金丸以外の政治家とも広範囲な付き合いがある小針会長にワリシン購入の事実をこれ以上知られるのは嫌だという意向を示したため、被告人が自ら購入手続をすると申し出たことが認められ、右ワリシン購入に当たって、金丸と被告人は事前に相談していることなどに照らすと、小針会長の勧めでワリシンを購入しようと考えた金丸が、従前、旧札から新札への切替え等について話していた被告人にその旨を相談したとしても何ら不自然ではない。したがって、昭和六〇年のワリシン購入に当たり、金丸との間で、ワリシンは無記名債券だから財産隠しに好都合で、税務署にも分かりにくいなどと相談をしたという被告人の前記検察官調書における供述は十分信用できる。
そして、被告人は、前記(第五の二2)のとおり、昭和六一年から平成元年の間、金丸からその都度現金等を渡されてワリシンの購入・乗換え手続(日債銀ルートの取引)を行っているところ(なお、その後も平成三年まで、金丸のために日債銀ルートの取引を行っている)、右のとおり、昭和六〇年のワリシン購入の時点で、金丸と被告人がワリシンは無記名債券だから財産隠しに好都合で、税務署にも分かりにくいなどと相談していることに照らすと、被告人が検察官調書(乙三〇)において、「そもそも無記名債券の購入は、表に出せない個人資金、つまり税務署に見つかってはならない金を目立たない無記名債券に変えようということから始まったので、金丸先生から『これでワリシンを買っておけ』と言われれば、それが正規に申告する表の収入とはしないための手段であるということは当然分かりました」と供述するところも十分信用できる。
(四) 大竹の供述(甲二一四)等の関係証拠によれば、日債銀ルートの取引を担当した大竹は、〈2〉の取引の際、被告人が最初から本券渡しを希望したので、保護預りを勧めなかったこと、その際、被告人から「なるべく担当を変えないでほしい。必要があればこちらから連絡するので、日債銀からは連絡しないでほしい」などと言われたこと、その直後の昭和六一年八月三〇日の取引(被告人個人分)の際、被告人からワリシンについて名前が出ないかと聞かれたので、債券購入計算書を示して氏名は表示されないと答えたこと、さらに、〈3〉の取引のころ、被告人からワリシンの購入額が大きくても目立たないかと聞かれたので、本店は支店よりも顧客数、取扱量が大分多いので目立たないということを婉曲的に答えたことが認められる。このような事実も、金丸の所得税ほ脱の意図を知りながら日債銀ルートの取引を行っていた旨の被告人の供述の信用性を裏付けるものということができる。
(五) 以上のような関係証拠を総合すると、被告人は、金丸にはワリシンの購入原資となった政治献金収入について所得税の申告をする意思がないこと、ワリシンを購入すれば、金丸が当該ワリシンを保有していること(すなわちその購入原資に相当する政治献金収入を得ていること)を税務当局が捕捉しにくくなり、税務調査があった場合にも当該ワリシンが金丸に帰属するとの認定が困難になることを十分認識しながら、昭和六一年から平成元年の間、日債銀ルートの取引を行っていたものと認められる。
ワリシン購入等の目的に関して付言するに、そもそも、金丸及び被告人は、前記のとおり、少なくとも本件当時において、政治献金収入がおよそ税金とは無関係というわけではなく、所得税の課税対象になる場合があることを認識していたが、金丸においては、ワリシンの購入原資に充てたものに限らず、政治献金に係る所得を申告する意思はなかったものであり、被告人も金丸のそのような意思を十分承知していたものと認められる。なお、金丸が政治献金に係る所得を秘匿し申告しなかった理由として、右申告をすることにより、多額の政治資金を受領し蓄積していることが外部に知れて政治スキャンダルになり、自己の政治活動に非常な悪影響を及ぼすことを懸念したということも考えられるが、そのような懸念があったとしても、所得秘匿目的を認める妨げにはならないし、金丸の検察官調書によると、金丸には税金を納めずできるだけ多くの蓄財をしたいという気持ちもあったと認められる。
3 被告人の確定申告への関与
関係証拠によれば、被告人は、金丸議員の所得税確定申告に当たり、東京事務所に送付又は持参される源泉徴収票を取りまとめて甲府事務所の信吾等に送付したり、窪田税理士の問い合わせに応じて株式配当額の調査連絡をしたほか、納付書、現金を渡されて金丸の所得税の納付手続をとるなどの関与をしているが、同税理士にも金丸が政治献金収入を原資としてワリシンを購入していることは告げていないこと、同税理士は金丸個人に帰属した政治献金収入の存在は誰からも知らされておらず、その情を知らずに本件各確定申告書を作成・提出したものであることが認められる。
弁護人は、このような確定申告への被告人の関与は、秘書業務の一環としての機械的・補助的な単純作業と評価すべきであると主張する。しかし、関係証拠に照らして検討すると、金丸は、所得税確定申告に関する窪田税理士との連絡事務を被告人ら(信吾及び悦子夫人を含む)に任せていたところ、前記のような日債銀からのワリシン購入の事実は、金丸の次男で、甲府事務所の責任者である信吾でさえも、平成四年一〇月被告人から東京事務所の引継ぎを受けるまで、知らされていなかったのであり、本件各確定申告当時は、金丸自身及び被告人以外にこれを知っていた者はいなかった(ただし、日債銀の担当者は除く)と思われる。前記のとおり、被告人は金丸が個人として巨額の政治献金を受領し、これを貯蓄・保有していることを熟知し、しかもこのような政治献金収入が所得税の課税対象になることまで認識していたのである。金丸の側近にいる者で金丸の政治献金収入につき窪田税理士をして適正な確定申告書の作成に向かうような指示をなし得たのは、被告人唯一人であったのである。自らワリシン購入等の所得秘匿工作を実行した上、右にみたような地位・立場にあった被告人による前記のような金丸の確定申告への関与は、被告人の罪責を判断する上で重要な意味を有するというべきであり、これを単純作業として軽視することは相当でない(このことは、仮に、被告人がワリシン購入には関与したが、その後議員秘書を辞めるなどして確定申告には全く関与していなかったとすれば、その罪責の評価は大いに異なってくるであろうことに思いを致せば、自ずと明らかであろう)。
4 被告人の動機・利害関係
前記第三でみたとおり、被告人は、金丸に政治献金をしていた建設業者をはじめとする法人、個人等から多額の裏献金を受領していたものであるところ、この裏献金収入は、政界の実力者である金丸の公設秘書という立場にあったからこそ得られたものである。金丸が多額の政治資金を受領し蓄積していることが発覚してこれに課税されるような事態になると、被告人の裏献金についても同様の事態が生ずるであろうことは、見易い道理であるし、このようなことが政治スキャンダルに発展し、金丸が政治献金を受け続けることが難しくなると、被告人自身も裏献金収入を得にくくなることも必至というべきである。被告人が多額の裏献金を受け続け、税金を納めないでこれを好きなように蓄積・費消し続けていくためには、金丸にも政治献金収入を秘匿し続けてもらわなければならなかったのである。したがって、本件の各献金収入を秘匿することに関して、被告人は金丸と利害を共通にし、一蓮托生の関係にあったといっても過言ではないのである(もっとも、金丸は被告人が自己に帰属するものとして多額の裏献金を受領していた事実は知らなかったようである)。被告人が検察官調書(乙三〇)において、「私が金丸先生と意を通じて税金をごまかすお手伝いをしていたことは間違いないことで、そうすることは多額の役得が実入りとして入ってくる、金丸先生の第一の秘書である自分のためでもあり、そうすることによってこのような立場を継続し、金丸先生の信頼を維持できるものと考えていた」と供述するところは十分信用できる。したがって、被告人は、金丸に対する忠誠心からだけではなく、自らも利益を享受しようとの積極的な意思もあって、日債銀ルートのワリシンの購入・乗換え手続を行い、かつ、確定申告に関与していたものと認められる。弁護人は、被告人は秘書業務の一環として、金丸の指示によりワリシンの購入等に関与したにすぎず、自らの利益のためにこれらの行為に出たものではないと主張するが、採用できない。
5 結論
以上のとおり、被告人は、金丸が政治献金収入に係る所得を申告しないことを認識しながら、金丸の指示を受け、税務当局が金丸の所得を捕捉することを困難にするという機能を有するワリシンの購入・乗換え手続を右機能をも承知した上で行っていたのみならず、金丸の確定申告にもある程度関与したのであり、本件の金丸の所得税ほ脱のために極めて重要な行為を分担実行したものと評価することができる。加えて、被告人には、自らも多額の裏収入を得続けたいという動機もあったのである。そうすると、被告人は、金丸の指示によってワリシンの購入・乗換え手続を行っていたこと、金丸の所得税確定申告書の提出自体には関与していないことを考慮しても、本件の金丸の所得税ほ脱について共同正犯の責任を免れないというべきである。
なお、弁護人は、金丸及び被告人は、本件起訴に係る各年の金丸のほ脱所得金額が検察官主張の金額になることを認識していなかったと主張するが、金丸においてはもちろん、被告人もワリシン購入等への関与や東京事務所での見聞から、各年のほ脱所得金額が億単位の巨額に達することは認識していたものと認められるし、各年の実際所得金額を正確に認識していなくても、ほ脱犯の成立を妨げないと解される。
第六  被告人の単独犯分
一  被告人の裏献金収入金額
1 検察官の主張と争点
検察官は、基本的には、被告人のほ脱所得金額も財産増減法によって立証するとした上、裏献金収入につき、被告人は政治家ではなく、政治活動のための費用を認める余地はない(所得税法三五条二項二号の必要経費は発生しない)から、本件起訴に係る各年における被告人のほ脱所得金額に見合うだけの特定の資産が当該年に増加し、その資産増加の原資が当該年の雑所得となるべき裏収入によることを立証すれば足りるところ、本件起訴に係る各年に繰り越された現金のうち、後記資産の購入原資に充てられたもの以外は、当該年の四月末ころか遅くとも夏までには遊興費・交際費の支払等に充てられて、その全額が費消されているから、右資産の購入原資になった分を除く繰越金を当該年の所得と誤認する危険はないと主張する。なお、前記第一の二3(二)の〈1〉bないしd、〈3〉e、f、〈5〉bの資産については、その購入原資が前年の裏収入の繰越金であるとして、前年において「翌年の有価証券等の購入等に充てられた現金」という勘定科目を立て、右資産の購入原資となった現金額を計上するとともに、右資産を購入した当該年においては、その取得金額を有価証券等の勘定科目に計上し、これに対応して当該年の右現金勘定を減算する処理をしている(論告七八頁等)。
これに対し、弁護人は、生原メモに記載された毎年盆暮の時期の裏収入の金額は、検察官が主張する被告人のほ脱所得金額と大きく相違しており、このことは検察官の財産増減法によるほ脱所得金額の立証が誤りであることを示すものであるとして、次のように主張する(弁論三五頁以下)。
すなわち、「検察官は、ほ脱所得の内訳明細書(冒頭陳述に添付のもの)の現金勘定欄記載の繰越金(昭和六二年分、平成元年分、平成三年分)だけが翌年四月ころまでの資産購入に充てられ、その余の繰越金は翌年の四月末ないし夏ころまでに遊興・交際費等に費消されたとしているが、毎年多額の献金が繰り越されていたことや被告人の遊興・交際費等の支出状況からすると、右現金勘定欄に記載された以外の繰越金を四月ないし夏ころまでに遊興・交際費等に全額費消することは不可能であって、時期の前後を問わず、毎年の資産購入は前年からの繰越金及び当該年の裏収入を原資としてなされており、その両者の内訳を確定することはできない。検察官は、本件起訴に係る各年について、期首の現金勘定及びその具体的使途を明らかにしておらず、繰越金について杜撰な処理をしているため、検察官主張の被告人のほ脱所得金額が実績を上回らないという保証がない。そして、被告人には盆暮の時期以外にも裏収入(以下「スポット収入」という)があったが、その時期、金額等が証拠上確定できない以上、これを被告人の所得として認定することは許されないから、結局、被告人のほ脱所得金額として認定できるのは、生原メモに基づいて算定された金額にとどまる」というのである。
ところで、弁護人の指摘を待つまでもなく、検察官の主張に係る財産増減法は、そのままでは、部分的で不完全なものといわなければならず、被告人の各年の裏収入に係る現金の繰越金額やその費消状況を慎重に検討する必要がある。検察官もその主張に係る財産増減法のこのような不完全性を補うべく、損益計算法的な主張・立証も展開しているし、弁護人は生原メモ等に基づき損益計算法的な観点からの反論・反証をしているのである。このような訴訟経過にかんがみると、裁判所が、損益計算法的な観点をも加味して、被告人の各年分の裏献金に係る雑所得の金額を推認しても、それが検察官主張の金額の範囲内であれば、被告人側にとって不意打ちにならないことは明らかである。
2 被告人の検察官調書における供述の要旨
前記第一の一4のとおり、被告人は、金丸の公設秘書になったころから、毎年盆暮の時期を中心に、金丸に政治献金をしていた建設業者をはじめとする法人、個人等から現金の供与を受けるようになり、昭和五〇年ころにはその金額が年間一〇〇〇万円程度に達し、その後も、金丸が政界の実力者としての地位を固めていくにしたがって、供与を受ける現金の額は増えていったのであり、前記第一の二3(二)のとおり、被告人は、昭和六二年から平成四年にかけて有価証券等の資産を購入したものであるところ、被告人は、検察官調書において、本件起訴に係る各年の裏収入及びそれによる資産購入の状況等について供述しているが、その要旨は以下のとおりである(なお、〈1〉a等の表示は、前記第一の二3(二)の該当箇所を示すものである)。
(一) 平成五年三月一四日付け検察官調書(乙三三)
【裏収入の金額の推移】
私の裏収入の概要について、正確なことは資産形成の状況などに関する資料等に基づいて後日話すことにし、とりあえず私の記憶に基づいて話すことにする。
金丸先生は、防衛庁長官として三度目の入閣をした昭和五二年ころから、その政治的影響力が次第に認められるようになり、私も金丸先生の秘書としてその存在が認められるようになってきた。そして、私の裏収入の金額は、昭和五二年ころから年間一〇〇〇万円の大台に乗った。昭和五四年一月の山梨県知事選挙では、金丸先生が後押しした候補者が初めて当選し、金丸先生の実力が内外に認められたこともあって、同年の私の裏収入は飛躍的に伸び、年間三〇〇〇万円程度になった。その後も、私の裏収入は年間約一〇〇〇万円の割合で増えていき、昭和五七年には六〇〇〇万円位になった。そして、金丸先生が自民党の要職(総務会長、幹事長)を歴任した昭和五八年から昭和五九年にかけてその金額はさらに伸びていき、私の裏収入は一億円近くになった。
金丸先生が竹下新総裁の後見人として内外ともに実力を示し、いわゆるキングメーカーといわれるようになってきた昭和六二年ころから、私の裏収入の金額は一層増えていき、昭和六二年は一億二〇〇〇万円程度、昭和六三年は一億四〇〇〇万円程度であったと思う。平成元年から平成二年にかけてはいわゆるバブルの時代で、一人当たりから受け取る現金の額も増えたし、このころには「金丸に頼めば何とかなる」という神話まで出来て、東京事務所を訪れる陳情者の数も相当増えた。この平成元年と平成二年は、各一年間で一億五〇〇〇万円ないし二億円位の裏収入があった。あるいは二億円を超えていたかもしれない。ところが、平成三年二月の山梨県知事選挙では、金丸先生が後押しした候補者が落選し、金丸先生の神話にも翳りが見えてきて、私の裏収入も大分減ってしまい、平成三年は一億円を切っていたように思う。
【裏収入による現金の保管及び支出状況】
これらの裏収入の殆どは東京事務所で受け取り、とりあえず同事務所内の私の机の右袖下の金庫代わりの引出しに入れて保管していた。そして、このような現金がある程度たまった時点で、自宅(横浜市港北区日吉本町六丁目四九番二四号所在)へ持ち帰って一時保管し、まもなく横浜銀行日吉支店に妻喜代子の名義で借りていた貸金庫(以下「貸金庫」という)に入れていた。暮の時期の裏収入は、いったん金庫代わりの引出しに入れた後、必ずその年の年末までに自宅に持ち帰り、まもなく貸金庫に入れていた。もっとも、出金の予定があれば、右引出しから現金を出したり、自宅で一時保管中の現金を出したり、あるいは貸金庫の現金を出して支払っていた。盆前の裏収入分は七月の時点でいったん自宅へ持ち帰り、貸金庫に入れるなどした上、その年の盆の時期の裏収入は、八月末ないし九月まで右引出しの中に入れておき、そこから私の分のワリシンの購入代金等を支払っていた。最終的に貸金庫で保管していた現金は、その後に出金し、せいぜい数か月の間にいろいろなものを購入して資産形成したり、遊興費等に使ってしまっているので、前年の裏収入の分が翌年の夏ころまで、現金の状態のまま貸金庫に放置されていることはなかった。したがって、昭和六一年から平成三年にかけて購入したワリシンの購入原資は、その年の私の裏収入であるといえる。
(二) 平成五年三月二六日付け(乙四七ないし四九)及び同年五月二〇日付け(乙五一)各検察官調書
【各年の裏収入による資産購入等の状況】
昭和六二年は、盆の時期までに五〇〇〇万円以上の裏収入があったので、これを原資として、〈1〉aのとおりワリシンを購入した。その後、暮の時期を中心に年末までに五〇〇〇万円位の裏収入があり、そのうち翌年に持ち越した三四〇〇万円を原資として、〈1〉bないしdのとおり、有価証券を購入するなどした。昭和六二年の裏収入から競馬に一四〇〇万円位使い、ゴルフや飲食費等にも一〇〇〇万円近くを使うなどしている。
昭和六三年は、盆暮の時期を中心に一億円以上の裏収入があったので、これを原資として、〈2〉aないしcのとおり有価証券を購入した。昭和六三年の裏収入から外食費として毎月三〇ないし四〇万円、年に四〇回位ゴルフに行ってその関係で年間三〇〇万円位使うなどしている。
平成元年は、いわゆるバブル経済の影響で景気がよかったことから、盆暮の時期を中心に二億円を大きく超える裏収入があった。これを原資として、〈3〉aないしdのとおり有価証券を購入するなどした。残った五〇〇〇万円近くの現金を翌年に繰り越し、〈3〉eのとおり株式を購入したが、まだ三〇〇〇万円位残ったので、〈3〉fのとおりワリシン購入代金に充てた。平成元年の裏収入から競馬に一〇〇〇万円近く、ゴルフ関係の費用や食事代等にも一〇〇〇万円近くを使っている。
平成二年は、まだバブル経済の影響が残っていて、盆暮の時期を中心に二億円以上の裏収入があった。その年の夏の時点では、前年暮の裏収入の残りが約三〇〇〇万円あったので、平成二年の初めから盆のころまでに集まった裏収入に三〇〇〇万円を加えて、〈4〉aのとおりワリシンを購入し、さらに〈4〉bのとおり投資信託を購入した。平成二年の裏収入から競馬に一四〇〇万円近く、ゴルフや食事代等にも年間一〇〇〇万円位を使ったほか、毎年盆暮の時期に秘書仲間に渡している現金が一回当たり三〇〇万円位になっている。
平成三年は、バブル経済が破綻してきたため、裏収入の額も前年に比べると少なくなったが、それでも盆暮の時期を中心に一億円を超える裏収入があった。年初から盆ころまでに一億円以上の、暮までに五〇〇〇万円前後の現金が集まった。盆の時期までの裏収入を原資として、〈5〉aのとおりワリシンを購入し、さらに翌年に繰り越した現金で、〈5〉bのとおり会員権を購入した。平成三年の裏収入から競馬に一〇〇〇万円位、ゴルフや食事代等にも年間一〇〇〇万円近くを使ったほか、盆暮の時期に秘書仲間に渡した現金が合計三〇〇万円位になる。
(三) 平成五年五月二〇日付け検察官調書(乙五〇)
【各年の繰越金及びその支出状況】
昭和六〇年までは、私の裏収入のうちかなりの額は現金の状態で貸金庫で保管するなどしていたが、昭和六一年以降は裏収入がある程度まとまった金額になると、ワリシンを購入するなどして資産形成をするようになり、現金のまま寝かせておくということはしていない。昭和六一年以降、翌年に持ち越した現金の額は、その年々の年末ころの資産形成状況や遊興費の支払状況などによって異なり、必ずしも一定していたわけではないが、一番多くても平成元年の五〇〇〇万円前後であり、これらは資産購入等の用途に使って、大体その年の四月末ころまでには使い切っていたと思う(もっとも、平成二年だけは九月まで繰越金が残った)。したがって、年が明けて四月ころまでの間は、前年からの繰越金で資産を購入していたことになると思う。
以上のとおりであって、被告人の検察官調書における最終的な供述が全部そのまま信用できるとすれば、本件起訴に係る各年において、被告人は、検察官主張のほ脱所得金額を上回る裏収入を得ており、右各年の裏収入を原資として、前記第一の二3(二)のとおり、資産を購入したということになる。
3 生原メモの証拠価値
これに対し、弁護人は、被告人のほ脱所得金額として認定できるのは、生原メモに基づいて算定された金額にとどまると主張するので、ここで生原メモの信用性について検討しておく。
被告人は、公判において、生原メモの作成及び本件公判への提出経緯について、「毎年盆暮の時期に現金の供与を受ける都度、その供与者及び金額をメモしていたが、毎年の金額の移り変わりを比較して楽しむため、昭和五八年の盆あるいは暮のころから、生原メモの形式で整理するようになり、その際、メモを保存していた昭和五五年暮以降の分についても同様に整理し、その後は、毎年盆暮の時期に現金の供与を受ける都度、いったん他の用紙にメモしておいたものを、数日後に生原メモに書き写していた。東京佐川急便事件による強制捜査の風評が流れた平成四年八、九月ころ、かつての秘書仲間で親しい友人である谷口道明に自己の衆議院手帳とともに封をした茶封筒に入れて預け、保釈後の平成五年八月ころ同人から返還を受けていた。しかし、生原メモには現職の政治家を含む多数の現金供与者が実名で記載されているので、これらの関係者に迷惑を掛けることになると思い、その存在は弁護人にも明らかにしなかったが、保釈後、再三にわたる弁護人との打合せの中で、検察官主張のほ脱所得金額には問題があるから、被告人の各年の所得を裏付ける資料はないかと言われ、同年一二月に生原メモの存在を打ち明けたところ、弁護人からこれを提出するよう強く求められたので、封をした茶封筒に入れたままの状態で弁護人に預け、打合せの席でこれを開封して生原メモの内容を検討してもらい、公判に提出することにも応じた」などと供述し(第一四回等)、谷口道明も証人として、被告人から右のような茶封筒を預けられ、その後にこれを返還した経緯について、被告人の右公判供述に沿う供述をしている。そして、生原メモ(弁一三)に記載された裏収入の合計金額(衆議院から支給されたボーナス及び金丸から供与を受けた分を除く《以下同様》。なお、被告人が公判《第一四回》で自認するように、生原メモの合計金額欄の一部には計算違いがある)は、
〈1〉昭和六二年が七四三〇万円
〈2〉昭和六三年が八六九〇万円
〈3〉平成元年が一億〇四八〇万円
〈4〉平成二年が九〇四〇万円
〈5〉平成三年が九三〇〇万円
であって、昭和六三年についてはこれだけで検察官主張のほ脱所得金額を上回っていることが認められる(なお、生原メモには平成三年に入ってから平成二年暮の分として、富士緑化、熊取谷、北海道中央バスから現金が供与されたことも記載されているが、これらの合計四五〇万円は平成二年分あるいは平成三年分の合計金額には含めず、後記の平成三年分のスポット収入に含める)。
検察官は、被告人が供述するところの生原メモの作成理由、作成時期、作成経緯、これが裁判所に提出されるまでの経緯等には多くの疑問があり、生原メモは捜査公判を意識して後日作成されたものではないかとの疑いを払拭することはできないと主張する。しかしながら、生原メモは、毎年盆暮の時期における現金の供与者及び供与金額を整理し、ルーズリーフノートの表裏に鉛筆書きしたものであるが、これが公判において最初に示された時点(第一四回公判)での用紙の形状等からすると真新しいものではなく、その記載形式は備考欄を設けたり、供与者の変更があった場合に既存の本欄を途中から使用するなどある程度複雑な構成になっている上、合計金額に計算違いがあったり、右のとおり、昭和六三年の裏収入の合計金額は検察官主張のほ脱所得金額を上回っていることなどに照らすと、生原メモが本件の捜査公判を意識して後日作成されたものとみるのは相当でなく、被告人の右公判供述は概ね信用することができる。
以上によれば、生原メモに記載された金額は、被告人が現金(裏献金)の供与を受けた都度、他の用紙にメモしておいたものを書き写したものであって、被告人は、本件起訴に係る各年において、生原メモに記載された前記金額の裏収入を得ていたことが認められる。ただし、被告人の公判供述(第三三回、第四四回、第四六回)にもあるように、生原メモに記載されているのは、原則として、盆暮の時期(前者が六月下旬から八月中旬、後者が一一月下旬から一二月下旬)に受け取った現金で、中元、歳暮の趣旨が明確なものだけであり、右の趣旨であってもこれが明確でないものや右の期間以外のものは記載されていないし、後述のスポット収入も記載されていないから(餞別の一部が記載されているなど若干の例外はある)、被告人の裏収入は生原メモに記載されたものに限られるわけではない。
4 検察官の繰越金等に関する主張の問題点
検察官は、前記第一の二のとおり、本件起訴に係る各年のほ脱所得金額の算出根拠とした特定の資産(そのうちには翌年に購入したものが含まれている)の購入原資は、当該年の裏収入であると主張し、被告人の検察官調書における供述も右主張に沿うものになっている。それによれば、繰越金のうち資産の購入に充てられたのは、昭和六二年から昭和六三年への繰越金のうち三四〇〇万円、平成元年から平成二年への繰越金のうち四八〇〇万五六三九円、平成二年から平成三年への繰越金のうち三五〇〇万円であり、その余の繰越金は、繰り越された年の四月末ないし夏ころまでに遊興費等に全額費消されたというのである。
被告人の検察官調書における右のような供述は、現物の有形物としての同一性(物理的同一性)を前提として、各年に受け入れた裏献金や繰越金と各資産の購入原資との対応関係を説明しているようにも見受けられるが、そうだとすると、関係証拠によれば、被告人にはその時々で現金の出入りがかなりあった上、被告人は現金を受入れ時期毎に整然と区別して保管していたわけではないと認められるから、その供述どおりの対応関係を認めることは不合理というほかない。もっとも、被告人が検察官調書において、〈1〉bないしd(合計三四〇〇万円)、〈3〉e、f(合計四八〇〇万五六三九円)、〈5〉b(三五〇〇万円)の資産の購入原資が前年の裏収入であると供述したのは、前年の暮を中心とした時期にそれに見合うだけの裏献金を受領したという実感があり、各資産の購入原資には、その金額相当分も含まれている計算になるという趣旨であるとすれば、あながち不自然ではないし、財産増減法による立証において、右のような現金の物理的同一性の点は特段の意義を有しないといってよい。
しかしながら、被告人の前記検察官調書(乙三三)の供述によれば、被告人の裏収入の金額は、昭和五二年ころから年間一〇〇〇万円の大台に乗り、昭和五四年には年間三〇〇〇万円程度になり、その後も年間約一〇〇〇万円の割合で増えていき、昭和五七年には六〇〇〇万円位に、昭和五八年から昭和五九年にかけては年間一億円近くに、昭和六二年には一億二〇〇〇万円程度になったというのであり、それによると昭和五四年から昭和六一年までの被告人の裏収入の合計は五億円を優に超える金額になるが、これら裏収入の使途についての具体的な供述記載はない。他方、被告人は、裏収入の使途について、他の検察官調書(乙五六)及び公判(第一七回、第一九回等)において、昭和六〇年以前はせいぜい年間数百万円から一〇〇〇万円程度の資産を購入していただけであると供述しているところ、関係証拠を検討しても、被告人が昭和六〇年以前に本件起訴に係る各年のように多額の資産を購入していたことを窺わせる証拠はない(なお、被告人は昭和六一年には一億六九〇〇万円余相当の資産を購入している)。また、被告人の公判供述(第四五回)によれば、被告人が昭和五七年から昭和六一年にかけて、競馬、ゴルフ、飲食等の遊興・交際費に費消したのは各年五〇〇万円ないし二〇〇〇万円程度というのであるが、右の供述をそのまま信用できるかは問題であるとしても、被告人が右各年の遊興・交際費にこれを大きく上回る金額を費消していたと認めるに足りる証拠もない。そうすると、被告人の前記検察官調書の供述を前提にすると、昭和六一年末(昭和六二年期首)の時点では、被告人が公判で供述する一億三〇〇〇万円から一億四〇〇〇万円をも上回る繰越金が存在したことになってしまうのである。この点に関し、検察官は、被告人が本件による身柄拘束中に作成して東京国税局に提出した上申書(乙五五)の内容は信用できるから、そこに記載されているように昭和六二年期首の時点での繰越金は二五〇〇万円であると主張するが、右上申書は、昭和六一年分の所得税の修正申告に当たっての資料として作成提出されたものであって、弁護人らが作成して右上申書に添付した「上申書案提出の件」と題する書面の内容に照らしても、右上申書だけを根拠に昭和六二年期首の時点での繰越金を認定することはできないというべきである。また、前記検察官調書(乙四七等)の供述によれば、本件起訴に係る各年(特に昭和六三年)についても、翌年の資産購入に充てられたり、遊興・交際費として費消したもの以外にも、相当程度の資金が残ることになる(なお、被告人の公判供述によっても、以上の交際費等としての支出分の中に、必要経費といえそうなものが含まれているとの疑いは生じない)。
以上のとおり、本件起訴に係る各年の期首期末の繰越金の状況は解明されていないといわざるを得ない。そうすると、検察官が主張するように、被告人が毎年の四月ころまでに購入した資産の購入原資は前年からの繰越金であり、それ以降に購入した資産の購入原資は当該年の裏収入であると截然と区別はできないことになる。したがって、検察官の財産増減法による主位的な主張のような推論(これ自体部分的財産増減法ともいうべき特異なものである)によって、本件起訴に係る各年分の被告人の裏収入に係る雑所得の金額を確定することはできないというべきである。
5 被告人が自認する裏献金収入の金額
前記3のとおり、被告人は、本件起訴に係る各年において、少なくとも生原メモに記載された金額の裏献金を受領していたと認められるが、進んで、生原メモに記載されていない被告人に対する裏献金について検討する。
被告人の公判供述によれば、被告人は、金丸の公設秘書になったころから、小遣い、車代の名目で現金を受け取るようになり、そのほかにも選挙の陣中見舞い、餞別、謝礼、祝儀(金丸の役職就任祝い等)の名目でスポット的に裏献金を受領していたが、このようなスポット収入は生原メモには記載していないと認められるところ、被告人が公判において自認する本件起訴に係る各年のスポット収入の金額は、
〈1〉昭和六二年が一千数百万円
(ブラジル出張の餞別四三〇万円を含む)
〈2〉昭和六三年が一〇〇〇万円前後
〈3〉平成元年が一三〇〇万円前後
(参議院議員通常選挙の陣中見舞い約三〇〇万円を含む)
〈4〉平成二年が三五〇〇万円前後
(衆議院議員総選挙の陣中見舞い約七〇〇万円、中国・北朝鮮出張の餞別約八〇〇万円、盆暮以外の時期に受領した熊取谷等からの合計一〇〇〇万円を含む)
〈5〉平成三年が九五〇万円前後
(前記のとおり、富士緑化、熊取谷、北海道中央バスからの合計四五〇万円を含む)
である。
そこで、検察官主張の被告人のほ脱所得金額と被告人が公判で自認する裏収入(生原メモの記載分と被告人の公判供述によるスポット収入分)の合計金額とを対比すると、以下のとおりである。
検察官主張額 被告人自認額
〈1〉昭和六二年 七九五〇万円 八五〇〇万円前後
〈2〉昭和六三年 五九九九万五〇〇〇円 九六〇〇万円前後
〈3〉平成元年 二億〇四六一万五〇〇八円 一億一五〇〇万円前後
〈4〉平成二年 一億五八五二万円 一億二五〇〇万円前後
〈5〉平成三年 一億〇七一〇万円 一億〇二〇〇万円前後
右によると、昭和六二年及び昭和六三年については、被告人は公判供述においても、検察官主張のほ脱所得金額を超える裏収入があり、平成三年については、検察官主張のほ脱所得金額にかなり近い裏収入があったことを自認していることになる。したがって、主として問題になるのは、両者の金額にかなりの隔たりがある平成元年及び平成二年の生原メモ記載以外の裏収入の金額ということになる。
6 平成元年ないし平成三年のスポット収入等の検討
(一)  被告人は公判において、「スポットの現金供与を断ると、それに代わって盆暮の時期に定期的に現金が供与されるようになるので、生原メモに記載した金額が増加していくのに反比例してスポット収入は減少していった」(第一六回)、「スポット収入は昭和六一年ないし昭和六二年位を境に減少していった」(第四四回)と供述するが、被告人が自認するスポット収入の金額の推移は右の供述に沿うものではない上、同時に被告人は、選挙の陣中見舞い、餞別をくれる者は盆暮の時期に現金を供与する者と相当重複していること、昭和六一年ないし昭和六二年ころから新たに定期的な現金の供与を始めた者のうち、被告人にスポットとしての現金の供与を断られたことがある者の数は少ないことを認めている。しかも、被告人は、「スポット収入の一回あたりの金額は決まっていないが、昭和六〇年以降はそれまで五万円、一〇万円だった車代が二〇万円ないし三〇万円になってくるし、バブルの時代であった昭和六二年から平成元年あたりは一〇〇万円単位の謝礼をもらったという感じなので、もらう方もバブルであったと思う」(第一六回)と供述していることに照らすと、スポット収入は、生原メモに記載された盆暮の時期の裏収入が増加するのに伴って増加していったものと推認できるのであって、これに反する被告人の前記供述は信用できない。そして、被告人の公判供述によっても、昭和六〇年の時点でスポット収入が二〇〇〇万円以上あった(第四五回)というのであり、生原メモに記載された同年の裏収入の合計金額は四九七五万円にすぎないことを併せ考えると、平成元年及び平成二年の生原メモに記載されていないスポット収入等(中元・歳暮の趣旨の裏献金であってもその趣旨が明確でないか、供与の時期がずれていたために生原メモに記載していないものを含む)は、被告人が公判において供述する金額をかなり上回っているものと推定すべきである(平成三年については別に考察する)。
また、被告人は公判において、「盆暮の時期にもっともらっていたのではないかと思っていたので、生原メモを公判に提出しても検察官主張のほ脱所得金額を裏付けるか、その数字に近いのではないかぐらいに考えていた。改めて生原メモを見て、自分が思っていた金額よりも少ないことが分かった」(第一四回)、「改めて生原メモを見て、実際はこんな少なかったのか、現実と記憶との間には随分開きがあると思った」(第一七回)と供述しているが、このことは、中元・歳暮の趣旨であってもその趣旨が明確でないか、供述の時期が右の期間以外であったために生原メモに記載していないものが相当程度存することを裏付けるとともに、平成元年及び平成二年を含む本件起訴に係る各年についての検察官主張の被告人のほ脱所得金額は、少なくとも、毎年多額の裏収入を得ていた被告人のいわば生活実感とそれほどかけ離れたものではないことを示すものである。
(二)  平成元年及び平成二年の生原メモ以外のスポット収入等の金額は、被告人が公判で供述するところをかなり上回っていると推定されることは、右(一)で述べたとおりであるところ、被告人は公判で、検察官調書(乙三三)において供述した各年の裏収入金額の推移について、「生原メモを見るまでは、それ位あったかなと思っていた。そのときの政治情勢、金丸先生の政治的立場にかんがみて裏収入が増えていくのではないかと思って、感覚を追いながら検察官に各年の裏収入の金額を供述した」と供述しているところ(第一七回)、右の検察官調書における供述は、「平成元年及び平成二年は一年間で一億五〇〇〇万円ないし二億円位の裏収入があった(あるいは二億円を超えていたかもしれない)。平成三年は一億円を切っていたと思う」というものである。もっとも、その後に作成された検察官調書(乙四八)では、「平成元年はいわゆるバブル経済の影響で景気がよかったことから、二億円を大きく超える裏収入があった。平成二年もまだバブル経済の影響が残っていて、一年間で二億円以上の裏収入があった。平成三年は、バブル経済が破綻してきたため、裏収入の額は前年に比べると少なくなったが、それでも一億円を超える裏収入があった」と、平成元年ないし平成三年の裏収入が前記検察官調書(乙三三)で供述した金額よりも多かった旨の供述をしている。そして、右供述は、資産購入の状況等に関する資料を示された上でのものと推認されるところ、被告人が検察官調書(乙四八、四九、五一)において、前記第二のとおり、検察官が本件起訴に係る各年のほ脱所得金額の算出根拠とした資産(ただし、裏収入が取得原資の一部にすぎないものや翌年に購入したものを含む)の購入原資が当該年の裏収入であると供述しているのは、被告人が右資産の購入原資に見合うだけの裏収入があったと認識していたからであるとも考えられるが、右4のとおり、平成元年以降にもかなりの繰越金があった可能性が相当程度残ることからすると、平成元年ないし平成三年の被告人の裏収入の金額を前記検察官調書(乙四八、四九、五一)に従って認定することは相当でない。
しかしながら、平成元年及び平成二年については、バブル経済の影響で被告人の裏収入もそれまでに比べてかなり増加したと推認できること、平成二年は生原メモの金額は平成元年より相当落ち込んでいるが、多額のスポット収入が入るような政治日程等があり、スポット収入は平成元年より多かったと推定されること、前記検察官調書(乙三三)の裏収入の金額は、被告人が資産購入の状況等に関する資料を示されない段階で、自己の生活実感に基づいてアバウトに供述したものであるが、その下限については控え目に見積もったものとして供述していると推認できることなどを併せ考えると、平成元年及び平成二年の裏収入は、少なくとも被告人が前記検察官調書(乙三三)で供述する下限の金額である一億五〇〇〇万円を下回ることはないものと推認することができる。
(三)  平成三年の裏収入については、特別の考慮が必要である。同年はバブル経済が破綻した時期である上、同年二月の山梨県知事選挙で金丸議員が後押しした候補者が落選し、いわゆる金丸神話にも翳りがみえてきた時期である。被告人が前記検察官調書(乙三三)において、当時の生活実感として「私の裏収入も大分減ってしまい、一億円を切っていたように思う」と供述しているのも、あながち不自然とはいえない。もっとも、生原メモ記載分は九三〇〇万円であり、前年よりも増加しており、被告人が公判で自認する裏収入の金額は一億〇二〇〇万円前後に達している。とはいえ、この年のスポット収入等については、前記のような経済情勢・政治情勢のほか、被告人自身の生活実感に照らして考えると、その実際額が被告人が公判で述べる金額を大きく上回っているであろうと推定することは困難と思われる。以上のような諸点のほか、被告人が公判で述べるスポット収入等の金額には相当の幅があり、かなりの誤差を見込むべきであるから、平成三年の裏収入は少なくとも一億円を下回ることはないものと認めるのが相当である。
二 裏献金収入の雑所得性の個別的検討
被告人の裏献金収入に係る所得の性質は前記第三でみたとおりであるが、被告人は公判において、生原メモに記載された供与者を七つのグループに分け、それぞれについて献金された趣旨を供述している。そして、本件起訴に係る各年の被告人の裏献金収入金額は右一のとおりであるが、そのうちには生原メモに記載された裏収入が含まれているので、被告人の公判供述(第二七回、第四六回等)に照らして、以下検討する(なお、グループの番号は、被告人の右公判供述による)。
〈1〉  東京事務所に出入りし、昭和六二年から平成三年までの間に被告人がその依頼を受けて調査や人の紹介等をしたことがある企業(第一グループ)からの中元・歳暮は、金丸の公設秘書という被告人の地位及びその職務に関連して供与されたことが明らかである。
〈2〉  東京事務所に出入りしているが、右期間には具体的な依頼事がなかった企業(第二グループ)からの中元・歳暮は、その大部分が金丸の支持者からのものであり、その余についても、過去に被告人が人の紹介を依頼したり、金丸への口利きをしたことがある者からのものであって、被告人の地位及びその職務に関連して供与されたものと認められる。
〈3〉  同族会社やいわゆるワンマン会社のうち、その経営者と被告人との個人的な交際が深かったもの(第三グループ)からの中元・歳暮は、その大部分が金丸の支持者からのものであり、その余についても、過去に金丸へ依頼事をしたり、金丸と接触を保つ必要があった者からのものであって、被告人の地位及びその職務に関連して供与されたものと認められる。
〈4〉  企業と無関係の個人的交際があった者(第四グループ)からの中元・歳暮は、金丸又は被告人に何らかの依頼事をしたことがあったり、過去に秘書仲間として被告人が世話をしたり、金丸への取次ぎを期待する者からのものであって、被告人の地位及びその職務に関連して供与されたものと認められる。
〈5〉  地方公共団体、その他の公的団体が予算の陳情等をするに際し、被告人が手伝ったことに関連して、その関係者(第五グループ)から受けた中元・歳暮は、被告人の地位及びその職務に関連して供与されたことが明らかである。
〈6〉  国又は地方の政治家(第六グループ)からの中元・歳暮は、いずれも被告人のいうところの永田町の悪しき慣行の中で被告人の地位及びその職務に関連して供与されたことが明らかである(なお、被告人は金丸から盆暮に現金の供与を受けているところ、検察官は、被告人は公設第一秘書として国家公務員たる身分を有し、国から賞与の支払を受けていたのであるから、金丸からの現金供与が賞与でないことは当然であり、これが雑所得に含まれることは明らかであると主張するが、金丸と被告人の関係に照らすと、そのように言い切ってよいか疑問が残るので、前記のとおり、被告人の裏収入の金額を検討するに当たり、金丸から供与を受けた分は除いている)。
〈7〉  企業の関連でも政治家でもない全くの個人(第七グループ)からの中元・歳暮は、被告人に何らかの依頼事をしたことがあるが、金丸の地元後援会の者からのものであって、被告人の地位及びその職務に関連して供与されたものと認められる。もっとも、これらの裏献金の中にも、個人が自己の所得から出金したのではなく、その経営する会社から出金され、いわゆる使途不明金等として経理処理されているものも少なからず含まれているであろうと推察される。
右のとおり、生原メモに記載された裏収入は、いずれも金丸の公設秘書という地位及び職務に関連した必然的な所得であると認められるから、前記第三で検討したところによれば、所得税法上の雑所得として課税対象となる。もとより、本件起訴に係る各年の裏収入は、生原メモに記載されたものに限られるのではないが、本件当時、金丸は政界の実力者としての地位を固めていたのであり、被告人も金丸の公設秘書として、東京事務所を訪れる陳情客等の窓口となっていたほか、派閥の秘書会の会長を努めるなど内外にその実力が認められていたのであるから(金丸の私設秘書であった芦沢浩は、捜査公判を通じ、「昭和六〇年に秘書になったころ、先輩の秘書から、被告人のことを国会議員だと思って接するように言われた」と供述する)、特段の個別的事情が窺えない限り、被告人が受け取っていた生原メモ記載以外の裏収入も、すべて被告人の地位及びその職務に関連したものであると推認するのが相当である。そして、本件起訴に係る各年の被告人の裏収入について、右特段の事情は窺えない。
なお、被告人が供述するような個々の献金についての献金者との関係等の細かい事情の如何によって、その各献金分を、贈与税の対象、所得税中の一時所得、雑所得の三者に振り分けて所得税の確定申告をするというようなことは、極めて煩わしい上、各献金者との関係が明るみに出る結果を招きかねないので、実際にこのような形での確定申告をする政治家や議員秘書がいるとは考えられない。弁護人主張の右のような解釈論は、脱税後の処理しか念頭に置いていないもののように見受けられ、裏献金収入等を誠実に申告しようとする場合の指針とはなり得ない極めて非現実的な議論と思われる。
三 結論と補足説明
以上検討したところによれば、本件起訴に係る各年において、被告人の裏献金収入金額は、昭和六二年及び昭和六三年は検察官主張のとおりの金額を、平成元年及び平成二年は各一億五〇〇〇万円を、平成三年は一億円を、それぞれ下回ることはないと認められる。そして、被告人は、裏収入で資産を購入していたほか、これらを競馬、ゴルフ、飲食等に費消していたものであって、雑所得金額の計算において必要経費として計上されるような支出があったと認められないから、被告人がほ脱した右各年分の雑所得の金額も右と同額ということになる。
なお、以上の当裁判所の認定した雑所得金額(ほ脱所得金額)は、結論的には、生原メモ・被告人の供述を中心とした損益計算法的考察によって導かれたことになるが、検察官の財産増減法的な立証により、割引債等の個人資産の購入という厳然たる事実のほか、毎年かなりの競馬等の遊興交際費などへの支出が裏献金収入からなされている事実も明らかにされている。この検察官の立証は、繰越金の関係で若干の不完全さが残るとはいえ、右の当裁判所の結論を相当程度裏付けているといえるのである(被告人の検察官調書は完全にそのとおり鵜呑みにできないというだけで、相当程度信用できるということができる)。そして、であるからこそ、当裁判所はこのような認定に踏み切ったわけであり、本件において、財産増減法的立証も極めて重要な意味を持っているのである。
また、弁護人は弁論の随所において、刑事裁判におけるほ脱所得金額については、被告人の漠然とした印象ともいうべき供述等による杜撰、大雑把な立証は許されない旨指摘するが、財産増減法による場合はもちろん、損益計算法による場合であっても、個々の勘定科目に係る金額につき、関係者の供述等により、少なくともこの額を下回らないとか、多くてもこの額を上回ることはないという認定をすることは、ありふれた事であり、被告人のように生原メモ以外の入金額は丼勘定をするしかないというような向き合いの者について、メモ等に確定金額で記された金額だけを基に実際所得額を算出するということは、不当に有利な扱いをすることになり、不合理極まりないのである。「疑わしきは被告人の利益に」という鉄則を踏まえて、以上説明したような理由により雑所得(ほ脱所得)の金額を認定することが、杜撰とか大雑把であるということはできず、当然許されてしかるべきものと思料される。
第七  まとめ
当裁判所は、以上に詳述してきた理由によって、被告人につき、判示のとおり金丸議員との共同正犯分(金丸分)及び被告人の単独犯分(被告人分)の各所得税虚偽過少申告ほ脱犯の成立を認めた次第である。本件の主要な争点及びこれに対する当裁判所の判断をまとめると次のとおりである。
検察官は、金丸議員及び被告人が割引債等を購入し、保有していたことに着目し、これらの原資は業者等からの金丸に対する政治献金や被告人に対する類似の裏献金であるとし、その取得金額等をもって雑所得となるべき政治献金収入や裏献金収入を算定すべきものと主張し、これに対し、弁護人は、〈1〉金丸のワリシンの購入原資は、金丸個人ではなく金丸の政治団体に帰属する政治献金である、〈2〉金丸の政治献金収入及び被告人の裏献金収入の中には、所得税法上の一時所得、相続税法上の贈与税の対象となるものが多く含まれている、〈3〉検察官の財産増減法による立証は、その現金勘定が部分的であって不十分であり、被告人の裏献金収入金額の認定は、被告人が毎年盆暮の時期に中元、歳暮として供与を受けた現金の額を整理した被告人作成のメモ(生原メモ)から算出される額の範囲内に止めるべきである、〈4〉金丸も被告人も、ワリシン購入原資となった政治献金が金丸個人に帰属すること、政治献金等の収入が雑所得として課税対象になること、各年のほ脱所得金額が検察官主張の金額になることなどを認識していなかった、〈5〉被告人は金丸と脱税のためワリシンを購入するという共謀はしておらず、確定申告書の作成に関しても、秘書業務の一環として機械的・補助的作業をしたにすぎない、などと多岐にわたる主張をし、本件各ほ脱犯の成否や成立範囲を争っている。
当裁判所は、右争点につき、〈1〉金丸のワリシン購入原資は金丸個人に帰属する、〈2〉政治家個人に帰属した政治献金収入は、原則として、献金者が法人であると個人であるとを問わず、贈与税の対象ではなく、当該年度に政治活動のために支出した額を控除した残額について、所得税法上の雑所得として課税されるべきものと解するのが相当であり、本件の金丸の政治献金収入もその例外とすべき理由はなく、被告人の裏献金収入も政治献金に準じて取り扱うのが相当である、〈3〉検察官の財産増減法による立証はそれ自体としてはいずれも不完全なものといわざるを得ないが、金丸分については、その不完全部分を補うに足りる程度には金丸の現金保有状況等を推認できるので、結論的には、検察官主張の所得額を認定できるし、被告人分については、検察官の財産増減法による立証により被告人の各年分の雑所得金額をかなりの程度まで推定できるといってよいが、繰越金の説明が付かないなどの欠陥があり、これのみでは検察官主張の脱税額を認定できず、生原メモ・被告人の供述を中心とする中心とする関係証拠に照らし、損益計算法的推論をも加えて、「疑わしきは被告人の利益に」の鉄則に従い、少なくとも判示の所得額を下回ることはないと推認したものである、〈4〉被告人については、金丸分、被告人分を通じ、脱税犯の成立に必要とされる事実の認識に欠けるところはないと認められる(金丸本人についても同様である)、〈5〉金丸分については、被告人は金丸と共謀の上、金丸の所得を秘匿する目的でワリシン購入等の手続をし、税理士と連絡を取るなど確定申告にもある程度関与しており、自らも納税することなく裏献金収入を引き続き得たいという動機もあって加担したと認められ、共同正犯の責任は免れない、と判断したものである。
若干付言すると、金丸分、生原分とも、割引債の購入は所得秘匿工作とは認められるが、これが国税当局に発見されてしまったことにより、ほ脱所得の金額・年分帰属を判定する重要な手掛かりを与えるという皮肉な結果を招いている。政治献金収入・裏献金収入を全て現金のまま蓄積・保管していたとすれば、所得の年分帰属の立証ははるかに困難であったと思われる。検察官の財産増減法立証は不完全であり、生原分については生原メモの提出がその所得金額認定に随分役立ったこと、金丸分についても、被告人の供述が所得金額の推認に役立っていることを指摘しておく。
(量刑の理由)
本件は、衆議院議員金丸信の公設第一秘書であった被告人が、金丸議員と共謀の上、金丸の所得税の申告に当たり、雑所得となる政治献金収入を除外して割引債を購入するなどの方法によりその所得を秘匿し、昭和六二年分及び平成元年分の金丸の所得税合計四億三九八五万円余を免れるとともに(金丸分のほ脱)、自己の所得税の申告に当たっても、雑所得となる裏献金収入を除外して割引債等を購入するなどの方法によりその所得を秘匿し、昭和六二年分ないし平成三年分の自己の所得税合計二億七二四八万円余を免れた(被告人分の脱税)という虚偽過少申告ほ脱犯の事案である。
まず、金丸分(共同正犯)の脱税についてみると、右のとおり、ほ脱税額は四億円を超える高額である上、ほ脱率も通算約九六パーセント(源泉徴収分を加えて計算)と極めて高率である。金丸は、内閣及び自民党の要職を歴任し、本件当時には政界の実力者として各方面に強大な政治的影響力を有するに至り、建設業者等から毎年、表面に出ない巨額の政治献金を受領していたものであるところ、被告人は、金丸が政治活動の拠点とする東京事務所の総括責任者であり、金丸の政治資金の管理等にも深く関与し、「金丸の金庫番」と呼ばれることもあったものである。このような立場にあった被告人が、金丸議員と共謀し、政治献金収入に係る所得を一切申告しないこととした上、受領した政治献金を現金以外の方法で保管するに当たって、無記名債券である割引債ならば税務当局による把握も困難であろうと考え、金丸のために政治献金収入を原資として割引債の購入・乗換えの手続を行っていたものである。被告人は、政治スキャンダルに発展して政治活動を行う上で致命的なことになりかねないので、金丸議員が巨額の政治献金収入を得ていることを明らかにすることはできなかった旨供述するが、このことは取りも直さず、その関係の課税を免れようというほ脱の犯意が強固であったことを示すものである。また、被告人は、金丸議員が受領した政治献金を割引債の形で蓄積していたのは、将来の政治資金に充てるためであると認識していた旨供述するが、仮にそうであったとしても、政治献金収入を一切申告しないで割引債に資産化して蓄積することが許される道理はないのであって、この点は格別酌量すべき事情とはいえない。そもそも、当の金丸本人は検察官調書において、個人的な蓄財の意図があったことを認めているのであって、割引債として蓄えられた資産が将来政治資金として使われることも考えられないわけではないが、本件の脱税が純粋に政治資金をより多く確保する目的のためであったとは認められないところである。そして、金丸議員の公設秘書という地位にあった被告人自身も、金丸に政治献金をしていた建設業者等から毎年多額の現金の供与(裏献金)を受けていたところ、金丸が巨額の政治献金収入を得ていることが明るみに出ると、自らも裏献金を得られなくなるというような利害関係もあって、金丸の脱税に積極的に加担したものであり、犯情は悪質である。全国民の代表者として国政に携わる国会議員の地位にあり、かつ、その言動が常に国民から注目される有力政治家でありながら、憲法にも明記された国民の納税義務に反して脱税に及んで蓄財をしていた金丸議員はもとより、公設秘書として金丸議員の政治活動を補佐する職務を遂行していた被告人も、厳しい非難を免れ得ない。
次に被告人分(単独犯)の脱税については、被告人自身が納税義務者であるところ、前記のとおり、ほ脱税額は二億七〇〇〇万円を超える高額である上、ほ脱率も通算約九六パーセント(計算方法は前同)と極めて高率である。被告人は、昭和六二年から平成三年までの五年間にわたり、裏収入に係る所得を一切申告しないで犯行に及び、この間、納税を免れることによって留保した資金で、割引債等を購入するなど自己の資産形成を図っているほか、競馬、賭ゴルフ、飲食等の遊興・交際費に世間一般の常識をはるかに超える金額を費消しているのであって、犯情は悪質である。被告人は、裏収入を資産化して保有していたのは、その大半を将来国政選挙に立候補するための資金とするつもりであったからである旨供述するが、仮にそうであったとしても、脱税によって蓄積した資金によって選挙運動を展開し、当選を得ようとすることは選挙民を欺くことであって許されるはずもなく、格別酌量に値するとはいえない。そもそも、関係証拠によって認められる被告人の裏収入の使途、資産の購入状況等に照らすと、被告人分の脱税の主たる動機は、個人的蓄財を図るなどの利欲的なものであることは明らかである。
さらに、本件のような高額脱税事犯については、租税負担の公平を損ない、誠実に申告納税している大多数の国民の納税意欲を著しく阻害するものであることから、一般予防の必要性も大きいことを併せ考えると、被告人の刑事責任は重いといわざるを得ない。
しかしながら、金丸の脱税については、被告人は納税義務者ではなく、金丸との共同正犯とは認められるものの、従属的立場で関与したものであること、金丸がその政治献金収入を一切申告しないという意思を固め現に申告しないでいる以上、被告人に自己の裏献金収入を正直に申告することを期待するのはかなり酷な面もあると思われ(秘書である被告人が税務当局に裏収入を明らかにすると、金丸議員にはもっと多額の献金があるだろうと推測され、スキャンダル騒ぎになるであろうと怖れるというのはそれなりに理解できなくはない)、被告人分の脱税にも、金丸議員の脱税の意思が大きな影響を及ぼしているといえることを考慮すると、被告人一人だけを強く責めるわけにはいかない。被告人は、前科前歴がなく、昭和四四年から平成四年までの約二三年間、衆議院議員金丸の公設秘書(一時期は大臣秘書官)を務め、多岐にわたる職務を遂行して金丸議員の政治活動を補佐し、国政に貢献してきたものであって、その功績は決して小さいものではない。被告人が本件脱税の犯行に及んだことは、右のとおり厳しく非難されなければならないが、金丸議員の政治的影響力に期待して、表にでないような形で政治献金をするとともに、その公設秘書であった被告人に対しても同様に多額の現金を供与してきた企業等の献金者側にも問題があることは否定できないところである(被告人は、当然のことのように裏の献金がなされるという永田町の悪しき土壌があった旨強調しているところ、本件当時その実態がどうであったのかは詳らかではないものの、被告人の供述を誇張であると決め付けることも困難である)。そして、被告人は、勾留中であった第一回公判前の平成五年七月一日、弁護人を通じ、昭和六一年分から平成三年分の自己の所得税について修正申告をした上(これによって追加申告した昭和六二年分から平成三年分の所得金額は、検察官主張のほ脱所得金額によっている)、それから約二か月の間に所得税の本税・延滞税・重加算税に地方税の本税・延滞金を加えた合計六億六八四二万円余を完納している(もっとも、被告人及び弁護人は、公判において被告人のほ脱所得金額を争っているところ、修正申告をした当時も、被告人は弁護人から検察官主張のほ脱所得金額には問題がある旨の指摘を受けていたものであるが、被告人は、これとは一応区別して、国税当局の指導に従って早期に納税することによって反省の態度を示すため、弁護人を通じて右のような修正申告に及んだものである)。また、被告人は、五億円献金問題が発覚してからマスコミの取材攻勢にさらされた上、本件によって金丸とともに逮捕され、金丸は起訴終了後直ちに保釈されたのに、被告人は第一回公判終了後まで四か月余りにわたって身柄を拘束されている。加えて、本件が政界の最高実力者といわれた金丸前自民党副総裁の巨額脱税事件として大々的に報道され、世間の注目を集めたことにより、被告人もこれまで築き上げてきた社会的信用を大きく失うなど、既にかなりの社会的制裁を受けている。被告人は、公判において種々の弁解をしているものの、自己の脱税についての刑事責任自体は一貫して認め、「政界の実力者の傘の下で甘えの構造に浸り、金銭感覚が麻痺していたことが本件に至った大きな要因であると思う。政治の中枢に携わった者として、もっと日々の生活に倫理観をもって臨むべきであったと反省している」などと述べて反省の態度を示している。そして、保釈後は、自らが裁判を受けている身であることにかんがみ、友人が経営する会社への招聘を固辞し、謹慎生活を送っている。被告人の妻と長女は、被告人が逮捕されたことによって大きな衝撃をうけるとともに、その後の一時期、嫌がらせや脅迫じみた電話に悩まされて体調を崩すなどしており、証人として出廷した妻は、今後も夫である被告人を支えていくと述べ、その更生に助力していく姿勢を示している。このように、被告人のために酌むべき事情もまた少なくないのである。
以上のほか一切の情状を総合考慮すると、被告人の刑事責任は重く、主文の懲役刑及び罰金刑は免れないところであるが、懲役刑については、今回に限りその執行を猶予するのが相当と判断した次第である。
よって、主文のとおり判決する。
(求刑 懲役二年六月及び罰金一億円)
(裁判長裁判官 安廣文夫 裁判官 平木正洋 裁判官中里智美は、転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 安廣文夫)

 

別紙1 所得金額総括表
昭和62年12月31日現在
〈省略〉
平成元年12月31日現在
〈省略〉

別紙 2の1
ほ脱税額計算書
〈省略〉
資産所得あん分税額計算書
〈省略〉
別紙 2の2
ほ脱税類計算書
〈省略〉

別紙3 所得金額総括表
昭和62年12月31日現在
〈省略〉
昭和63年12月31日現在
〈省略〉
平成元年12月31日現在
〈省略〉
平成2年12月31日現在
〈省略〉
平成3年12月31日現在
〈省略〉

別紙 4の1
ほ脱税額計算書
〈省略〉
〈省略〉
別紙 4の2
ほ脱税額計算書
〈省略〉
〈省略〉
別紙 4の3
ほ脱税額計算書
〈省略〉
〈省略〉
別紙 4の4
ほ脱税額計算書
〈省略〉
〈省略〉
別紙 4の5
ほ脱税額計算書
〈省略〉
〈省略〉

別紙5 雑所得関係修正貸借対照表(検察官の主張)
昭和62年12月31日現在
〈省略〉
平成元年12月31日現在
〈省略〉

別紙6 雑所得関係修正貸借対照表(検察官の主張)
昭和62年12月31日現在
〈省略〉
昭和63年12月31日現在
〈省略〉
平成元年12月31日現在
〈省略〉
平成2年12月31日現在
〈省略〉
平成3年12月31日現在
〈省略〉


「選挙妨害 ポスター」に関する裁判例一覧
(1)令和元年 5月24日 東京地裁 平28(ワ)17007号 選挙供託金制度違憲国家賠償請求事件
(2)平成30年 7月20日 福岡地裁久留米支部 平28(ワ)69号 損害賠償請求事件
(3)平成30年 2月23日 東京地裁 平27(行ウ)73号 難民の認定をしない処分取消請求事件
(4)平成28年 9月28日 東京地裁 平25(ワ)29185号 選挙無効等確認請求事件
(5)平成28年 1月13日 熊本地裁人吉支部 平26(ワ)51号 損害賠償請求事件
(6)平成27年11月18日 福岡地裁 平26(ワ)2716号 謝罪広告等請求事件
(7)平成25年12月25日 東京地裁 平24(ワ)25051号 労働組合員権利停止処分無効確認等請求事件
(8)平成25年11月29日 東京地裁 平25(ワ)18098号 被選挙権侵害による損害賠償請求事件
(9)平成24年 9月27日 東京高裁 平24(ネ)1676号 組合長選挙無効確認等請求控訴事件 〔全日本海員組合事件〕
(10)平成24年 1月16日 最高裁第三小法廷 平21(あ)1877号 殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反、公職選挙法違反、火薬類取締法違反被告事件
(11)平成23年 5月30日 東京高裁 平23(ネ)378号 損害賠償、損害賠償等反訴請求控訴事件
(12)平成23年 3月17日 名古屋高裁 平22(ネ)496号 損害賠償請求控訴事件
(13)平成22年12月15日 東京地裁 平21(ワ)16235号 損害賠償請求本訴事件、損害賠償等請求反訴事件
(14)平成22年10月29日 東京地裁 平19(ワ)31252号 損害賠償等請求事件
(15)平成22年 7月 1日 東京地裁 平20(ワ)31122号 損害賠償等請求事件
(16)平成22年 3月25日 岐阜地裁大垣支部 平20(ワ)253号 損害賠償請求事件
(17)平成20年10月 8日 東京地裁 平13(ワ)12188号 各損害賠償請求事件
(18)平成20年 5月26日 長崎地裁 平19(わ)131号 殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反、公職選挙法違反等被告事件
(19)平成20年 1月10日 東京地裁 平19(ワ)20886号 損害賠償等請求事件
(20)平成19年12月26日 東京地裁 平19(行ウ)171号 退去強制令書発付処分取消請求事件
(21)平成18年 6月29日 東京地裁 平16(特わ)973号 国家公務員法違反事件 〔国家公務員赤旗配付事件〕
(22)平成16年 3月29日 神戸地裁姫路支部 平10(ワ)686号 新日本製鐵思想差別損害賠償請求事件
(23)平成16年 2月27日 東京地裁 平7(合わ)141号 殺人、殺人未遂、死体損壊、逮捕監禁致死、武器等製造法違反、殺人予備被告事件 〔オウム真理教代表者に対する地下鉄サリン事件等判決〕
(24)平成15年 7月24日 東京地裁 平13(刑わ)2337号 有印私文書偽造、同行使被告事件
(25)平成14年 7月30日 最高裁第一小法廷 平14(行ヒ)95号 選挙無効確認請求事件
(26)平成13年 1月29日 東京地裁 平10(ワ)15657号 損害賠償等請求事件
(27)平成12年 2月23日 東京高裁 平11(ネ)5203号 謝罪広告等請求控訴同附帯控訴事件
(28)平成11年12月13日 大阪地裁 平11(ワ)8121号 損害賠償請求事件 〔大阪府知事セクハラ事件民事訴訟判決〕
(29)平成11年 9月21日 東京地裁 平10(ワ)1177号 謝罪広告等請求事件
(30)平成11年 5月19日 青森地裁 平10(ワ)307号 定時総会決議無効確認請求、損害賠償請求事件
(31)平成 9年 3月18日 大阪高裁 平8(行コ)35号 供託金返還請求控訴事件
(32)平成 8年 8月 7日 神戸地裁 平7(行ウ)41号 選挙供託による供託金返還請求事件
(33)平成 8年 3月29日 東京地裁 平5(特わ)546号 所得税法違反被告事件
(34)平成 6年12月 6日 東京地裁 平2(ワ)2211号 除名処分無効確認請求事件
(35)平成 5年 8月24日 前橋地裁 昭51(ワ)313号 損害賠償請求事件 〔東京電力(群馬)事件〕
(36)平成 5年 5月13日 大阪地裁 平4(ワ)619号 損害賠償請求事件
(37)平成 5年 4月14日 福岡高裁宮崎支部 平3(行ケ)2号 選挙の効力に関する審査申立に対する裁決取消請求事件 〔伊仙町町長選挙無効裁決取消請求訴訟〕
(38)平成 3年 5月28日 大阪地裁 昭61(ワ)7005号 市議会議員選挙投票済投票用紙差押事件
(39)平成 2年12月13日 福岡地裁小倉支部 昭61(ワ)838号 懲戒処分無効確認等請求事件 〔国鉄清算事業団(JR九州)事件〕
(40)平成 2年10月30日 大阪地裁 昭61(わ)1691号 公正証書原本不実記載、同行使、公職選挙法違反等被告事件
(41)平成 2年 3月28日 名古屋地裁 昭63(ワ)2433号 損害賠償請求事件
(42)昭和57年 6月 8日 東京地裁 昭52(ワ)3269号 除名処分無効確認等請求事件
(43)昭和56年 7月 9日 東京地裁八王子支部 昭49(特わ)242号 公職選挙法違反被告事件
(44)昭和55年10月30日 最高裁第一小法廷 昭53(オ)940号 慰謝料請求事件 〔スロットマシン賭博機事件〕
(45)昭和55年 2月14日 最高裁第一小法廷 昭54(行ツ)67号 選挙無効審査申立棄却裁決取消請求事件
(46)昭和54年11月30日 京都地裁 昭53(ワ)260号 謝罪文掲示等請求事件
(47)昭和54年 1月30日 高松高裁 昭49(う)198号 国家公務員法違反被告事件 〔高松簡易保険局選挙応援演説事件・控訴審〕
(48)昭和53年 3月30日 松山地裁西条支部 昭48(わ)107号 公職選挙法違反被告事件
(49)昭和52年 6月16日 福岡高裁 昭50(行ケ)4号 町議会議員選挙無効の裁決の取消請求事件
(50)昭和49年 6月28日 高松地裁 昭40(わ)250号 国家公務員法違反被告事件 〔高松簡易保険局員選挙応援演説事件・第一審〕
(51)昭和48年 3月29日 仙台地裁 昭42(わ)120号 公職選挙法違反被告事件
(52)昭和46年 8月27日 大阪高裁 昭46(行ケ)4号 選挙無効請求事件
(53)昭和45年12月21日 東京地裁 昭40(行ウ)121号 不当労働行為救済命令取消請求事件 〔大分銀行救済命令取消事件〕
(54)昭和44年 7月 3日 札幌高裁 昭43(う)326号 公職選挙法違反被告事件
(55)昭和43年 8月30日 福岡地裁 昭42(行ウ)18号 救済命令処分取消請求事件 〔九建日報社救済命令取消事件〕
(56)昭和42年 6月29日 東京高裁 昭39(う)1553号 名誉毀損・公職選挙法違反被告事件
(57)昭和42年 6月13日 福岡高裁 昭41(う)934号 恐喝等被告事件
(58)昭和42年 4月25日 東京地裁 昭40(特わ)579号 公職選挙法違反被告事件
(59)昭和42年 3月23日 東京地裁 昭40(特わ)636号 公職選挙法違反被告事件
(60)昭和41年10月24日 東京高裁 昭38(ナ)6号 裁決取消、選挙無効確認併合事件 〔東京都知事選ニセ証紙事件・第二審〕
(61)昭和41年 5月18日 大阪地裁 昭38(ワ)1629号 委嘱状不法発送謝罪請求事件
(62)昭和40年11月26日 東京高裁 昭39(う)642号 公職選挙法違反被告事件
(63)昭和40年 3月11日 東京高裁 昭39(う)1689号 公職選挙法違反被告事件
(64)昭和39年11月18日 東京高裁 昭39(う)1173号 公職選挙法違反被告事件
(65)昭和39年 6月29日 東京高裁 昭38(ネ)1546号 貸金請求控訴並に同附帯控訴事件
(66)昭和39年 5月29日 東京地裁 昭34(わ)2264号 公職選挙法違反被告事件
(67)昭和38年 5月27日 名古屋高裁 昭32(行ナ)2号 行政処分取消請求事件
(68)昭和37年12月21日 福岡地裁 昭33(わ)1043号 地方公務員法違反事件 〔福教組勤評反対闘争事件・第一審〕
(69)昭和37年 4月18日 東京高裁 昭35(ナ)15号 選挙無効確認請求事件
(70)昭和37年 3月15日 最高裁第一小法廷 昭36(オ)1295号 選挙無効確認請求
(71)昭和36年10月30日 東京高裁 昭32(ナ)1号 住民投票無効確認請求事件
(72)昭和36年 6月30日 東京高裁 昭34(ナ)15号 選挙無効確認訴訟請求事件
(73)昭和35年10月24日 名古屋高裁金沢支部 昭34(ナ)1号 町長選挙無効請求事件
(74)昭和35年 8月24日 札幌高裁 昭35(う)203号 名誉毀損、公職選挙法違反事件
(75)昭和35年 6月18日 東京高裁 昭34(ナ)12号 選挙無効請求事件
(76)昭和35年 5月24日 大津地裁 昭34(ワ)32号 解職行為取消請求、資格確認請求併合事件
(77)昭和33年 7月15日 東京高裁 昭32(う)562号 名誉毀損被告事件
(78)昭和32年12月26日 東京高裁 昭31(ナ)5号 選挙無効確認請求事件
(79)昭和32年 2月28日 東京高裁 昭30(ナ)28号 市議会議員選挙無効確認訴訟事件
(80)昭和31年12月27日 福岡地裁 昭30(ナ)5号 町長選挙無効確認事件
(81)昭和31年11月13日 大阪高裁 昭31(ナ)2号 選挙無効確認事件
(82)昭和31年 5月21日 東京地裁 昭28(ワ)7177号 損害賠償請求事件
(83)昭和31年 3月 5日 大阪高裁 昭30(う)1028号 傷害事件
(84)昭和30年 9月15日 東京高裁 昭30(ナ)5号 衆議院議員選挙無効確認請求事件
(85)昭和30年 4月27日 東京高裁 昭30(ナ)2号 衆議院議員選挙無効訴訟事件
(86)昭和29年11月29日 大阪高裁 昭29(う)1684号 公職選挙法違反事件
(87)昭和28年12月 4日 甲府地裁 事件番号不詳 住居侵入公務執行妨害強要暴行被告事件
(88)昭和25年12月25日 東京高裁 昭24(ナ)16号 村長解職投票無効事件
(89)昭和23年10月18日 名古屋高裁 事件番号不詳 食糧緊急措置令違反被告事件
(90)昭和 5年 9月23日 大審院 昭5(れ)1184号 衆議院議員選挙法違反被告事件


■選挙の種類一覧
選挙①【衆議院議員総選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙②【参議院議員通常選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙③【一般選挙(地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙④【特別選挙(国政選挙|地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)


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