【選挙から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(24)平成27年 2月19日 東京地裁 平25(ワ)19575号 遺言無効確認請求事件、不当利得返還請求事件

「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(24)平成27年 2月19日 東京地裁 平25(ワ)19575号 遺言無効確認請求事件、不当利得返還請求事件

裁判年月日  平成27年 2月19日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平25(ワ)19575号・平25(ワ)23418号
事件名  遺言無効確認請求事件、不当利得返還請求事件
裁判結果  A事件請求棄却、B事件一部認容  文献番号  2015WLJPCA02198001

要旨
◆亡Bの共同相続人の一人である原告が、同じく共同相続人である亡Y1及び被告Y2並びに遺言執行者である被告Y3との間で、亡Bの公正証書遺言の無効確認を求めたところ、亡Y1が訴訟継続中に死亡したことから被告Y2が承継した(A事件)のに対して、本件遺言によれば亡B所有の土地について所有権あるいは持分権を取得することになる被告Y2が、原告は亡Bの死亡後、本件土地の賃料を利得しているとして、原告に対し、不当利得の返還を求めた(B事件)事案において、本件遺言書作成当時の亡Bの遺言能力を肯定するなどして、A事件に係る請求を棄却する一方、B事件に係る請求を一部認容した事例

参照条文
民法703条
民法963条
民法969条

裁判年月日  平成27年 2月19日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平25(ワ)19575号・平25(ワ)23418号
事件名  遺言無効確認請求事件、不当利得返還請求事件
裁判結果  A事件請求棄却、B事件一部認容  文献番号  2015WLJPCA02198001

平成25年(ワ)第19575号 遺言無効確認請求事件(A事件)
平成25年(ワ)第23418号 不当利得返還請求事件(B事件)

東京都調布市〈以下省略〉
A事件原告・B事件被告 X(以下「原告」という。)
同訴訟代理人弁護士 伊藤圭一
同 臼井一廣
同 鈴木康浩
東京都狛江市〈以下省略〉
亡Y1訴訟承継人兼本人
A事件被告・B事件原告 Y2(以下「被告Y2」という。)
同訴訟代理人弁護士 中井陽子
同 山田隆史
東京都千代田区〈以下省略〉
A事件被告 Y3(以下「被告Y3」という。)
同訴訟代理人弁護士 高橋理恵子

 

 

主文

1  原告の請求を棄却する。
2  原告は,被告Y2に対し,281万0608円及びうち249万1240円に対する平成25年9月12日から,うち31万9368円に対する平成25年10月18日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  被告Y2のその余の請求を棄却する。
4  訴訟費用は,原告及び被告Y2に生じた費用の10分の9と被告Y3に生じた費用を原告の負担とし,その余は被告Y2の負担とする。
5  この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
(A事件)
東京法務局所属公証人A作成に係る平成24年第320号遺言公正証書による亡Bの遺言は無効であることを確認する。
(B事件)
原告は,被告Y2に対し,324万8764円及びうち274万6240円に対する平成25年9月12日から,うち50万2524円に対する平成25年10月18日から各支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
A事件は,亡B(以下「亡B」という。)の共同相続人の一人である原告が,同じく共同相続人であるY1及び被告Y2並びに遺言執行者である被告Y3との間で,亡B名義の公正証書遺言が無効であることの確認を求めた事案である。なお,Y1は,本訴訟係属中に死亡したため,被告Y2がこれを承継した。
B事件は,亡Bの上記遺言によれば亡B所有の土地について所有権あるいは持分権を取得することになる被告Y2が,原告は亡Bの死亡後,被告Y2に無断でそれらの土地に関する賃貸借契約から発生する賃料を利得しているとして,原告に対し,不当利得に基づき,324万8764円及びうち274万6240円については訴状送達の日(平成25年9月11日)の翌日から,うち50万2524円については訴えの変更申立書送達の日(平成25年10月17日)の翌日から,それぞれ民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。
1  前提事実(当事者間に争いがないか,括弧内掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
(1)  当事者等
ア 亡B(大正13年○月○日生)と亡Y1(大正13年○月○日生。以下「Y1」という。)は夫婦であり,原告(昭和30年○月○日生)と被告Y2(昭和35年○月○日生)は同夫婦の子である。
イ 亡Bは平成24年12月22日に死亡した。その相続人は,Y1,原告及び被告Y2である。
なお,Y1は,平成25年9月1日に死亡した。
ウ 被告Y3は,後述の本件遺言書により遺言執行者として指定された弁護士である。
(2)  亡Bの疾患
亡Bは,平成24年11月15日から同年12月19日まで胃がん治療のため三鷹中央病院(以下「本件病院」という。)に入院し,同日から死亡時までは聖ヶ丘病院に入院していた(甲2)。
なお,後記の本件遺言書は,公証人が本件病院まで出向いて作成されたものである。
(3)  亡Bの公正証書遺言
亡B名義で,東京法務局所属公証人A(以下「A公証人」という。)作成に係る平成24年12月3日付け遺言公正証書(以下「本件遺言書」という。)による遺言(以下「本件遺言」という。)が存在する(甲1,乙ロ11)。
本件遺言の内容は,概ね次のとおりである。
ア 別紙物件目録記載1ないし3の土地(以下,同目録記載2の土地を「自宅敷地」という。)を,Y1に5分の4,原告に5分の1の割合で相続させる。
イ 別紙物件目録記載4ないし9の建物(以下,同目録記載4の建物を「自宅建物」という。)をY1に相続させる。
ウ 一切の預貯金を解約・払い戻し,そこから遺言執行者の報酬を差し引いた金員の全額につき,被告Y2を受託者,Y1を受益者として,Y1の死亡まで信託し,信託を受けた日の翌月から毎月月額35万円をY1に給付する(以下「本件信託」という。)。信託の目的は,Y1の生活の安定を図るため,その生活・療養に必要な資金の給付を行うことである。
なお,Y1の死亡により信託が終了するときは,残余財産は,原告及び被告Y2に均等の割合で帰属させる。
エ 別紙物件目録記載10の土地(以下「柴崎の土地」という。)を,原告に10分の9,被告Y2に10分の1の割合で,次の負担付きで相続させる。
(ア) 原告及び被告Y2は,柴崎の土地を取得後,これを売却し,原告はその売却代金を,各相続人の相続税総額,柴崎の土地の売却費用総額,Y1の相続登記手続費用,亡Bの葬儀費用及び入院費用並びに各種未払費用の支払に充てること。
(イ) 原告は,亡B等が授与された賞状及び勲記等を適切な場所に末永く飾ること。
オ 別紙物件目録記載11ないし15の土地(以下,同目録記載14の土地を「本件土地」という。)及び同目録記載16ないし19の建物(以下,番号順に「本件第1建物」ないし「本件第4建物」といい,これらの建物と柴崎の土地及び本件土地を併せて「本件賃貸物件」という。)を被告Y2に相続させる。
(4)  本件賃貸物件の賃借状況
本件賃貸物件は,それぞれ賃貸に供されているところ,各賃貸借契約の概要は,次のとおりであり,原告は,亡Bの死亡後,これらの賃貸借契約に係る賃料を受け取り保管している(金額については争いがある。)。
ア 本件土地に関する賃貸借契約
賃借人 C
契約期間 期間の定めなし
賃料 年額23万1240円
支払時期 当年分の当年末日払
イ 本件第1建物に関する賃貸借契約
賃借人 D
契約期間 平成24年9月15日から平成26年9月14日まで
賃料 月額8万5000円
支払時期 翌月分の当月28日払
ウ 本件第2建物に関する賃貸借契約
賃借人 E
契約期間 平成24年2月25日から平成26年2月24日まで
賃料 月額8万円
支払時期 翌月分の当月28日払
エ 本件第3建物に関する賃貸借契約
賃借人 F
契約期間 平成24年7月14日から平成26年7月13日まで
賃料 月額8万円
支払時期 翌月分の当月28日払
オ 本件第4建物に関する賃貸借契約
賃借人 G
契約期間 平成23年8月25日から平成25年8月24日まで
賃料 月額9万円
支払時期 翌月分の当月28日払
カ 柴崎の土地に関する賃貸借契約
柴崎の土地は月極駐車場として利用されており,34台分の駐車スペースが設けられ,各スペース毎に賃貸借契約が締結されているが,その管理は,和光企画不動産(以下「和光企画」という。)が行っている(甲8ないし21)。
2  争点及びこれに関する当事者の主張
(1)  本件遺言書作成当時の亡Bの遺言能力の有無
(原告の主張)
本件遺言書作成当時,亡Bは遺言を有効にできる意思能力はなく,本件遺言は無効である。理由は以下のとおりである。
ア 認知症
亡Bは,本件遺言書作成当時88歳と高齢であり,認知症の症状があった。
亡Bは,当時胃がんで入院中だったが,その看護記録にも,「現状への理解力の低下あり」(平成24年11月19日午前7時34分),「理解力低く今後も危険行動リスクあり」(同日午前11時44分),「『ここがどこかもわからない,昨日いたところからここまで引っ張ってこられた』と意味不明な発言聞かれる」(同月22日午前2時33分),「認知症ありリスク高いためプラン継続する」(同月26日午前10時23分),「『秋の投票に行くんだからこれ外してくれよ。できそこないばかりだから俺がいかなきゃどうしようもないんだから』と,起き上がりタッチガードを外そうと引っ張っている」(同年12月13日午後2時59分)などの記載がある。なお,「秋の投票に行く」という発言は,まだ自分が選挙管理委員をしていると認識していることによるものと思われる。
これらの記載から,亡Bが認知症であったことは明らかである。
イ 本件遺言の内容の複雑さ
本件遺言は,全ての預貯金を信託財産として受益者をY1とする本件信託を設定しているところ,信託制度は,我が国では未だ一般的な制度とは言い難く,上記アのような状態の亡Bが,信託制度を理解していたとは考えられない。
また,本件遺言は,複数の不動産について,それぞれ相続する相続人を指示しており,さらに共有持分も細かく指定しているが,この点についても,上記アのような状態の亡Bが作成した遺言にしては,内容が複雑すぎて不自然である。
ウ 預貯金の欠落
本件遺言においては,預貯金として,4つの金融機関が挙げられいるが,亡Bは,これらの他にゆうちょ銀行と昭和信用金庫に預貯金口座を有していた。
ゆうちょ銀行には,預入限度額(1000万円)いっぱいの定額貯金があり,昭和信用金庫にも1000万円を超える定額預金がある上,普通預金口座からは,亡Bの訪問医療費とY1の訪問歯科治療代が支払われている。
仮に,本件遺言書作成時に亡Bに意思能力があったのであれば,預貯金の記載に漏れがあることに気付くはずである。特に,「預金」ではなく「預貯金」と記載されているのであるから,記憶喚起されて気付きやすかったはずである。
エ 土地売却による相続税・葬儀費用などの支払
本件遺言は,柴崎の土地を原告に10分の9,被告Y2に10分の1の共有持分割合で相続させた上で,同土地を遺言執行者に売却させ,このうち,原告が受領した売却代金から相続税や葬儀費用などを支払うものとしている。
しかし,柴崎の土地は,戦前,亡Bの父がH家から借りて,亡Bの弟たちとともに農業を営んできた土地であり,戦後の農地改革によって亡Bの父の所有となったものである。いわば,柴崎の土地は亡Bと弟たち「B一族」の土地という性格を有している土地であって,いかに亡Bが一族の惣領的な存在であったとしても,弟たちに無断で売却できるものではなかった。
しかも,本件遺言書作成当時,預貯金の残高は3億円以上あり,柴崎の土地を売却しなくても,相続税や葬儀費用はもちろん,Y1の介護費用,医療費にも困ることはなかった。
亡Bの近隣には,亡Bと同様に広大な土地を所有する者が多くいるが,そこには相続税を所有土地を売却して納付することや所有土地を物納することを大いなる恥と考える文化がある。亡Bは,元市議会議員として地元の名士的存在であり,自身を被相続人とする相続について発生する相続税を所有土地を売却して納付することを,いっそう恥と考えていた。
また,亡Bは,自己の所有地について,父がH家から分けていただいたものであり,それを自身と父と弟たちというB家で守り続けてきたという意識が非常に強かった。実際,平成24年10月に亡Bは約47m2の土地(駐車場として使用)を売却しているが,このときもH家の方に相談と報告に行っている。このような意識を持っている亡Bが,弟やH家の方に何の相談も報告もなしに,自己の所有地を売却するという内容を含む遺言を作成するというのは不自然である。
相続税の原資となる預貯金が3億円もあるにもかかわらず,その預貯金にはわざわざ信託を設定し,所有土地を売却して相続税の原資にするという本件遺言の内容は,こうした亡Bの生前の意思とはかけ離れたものであり,本件遺言書が亡Bが十分な判断能力を有している状態で作成されたとは考えられない。
(被告Y2の主張)
ア 認知症について
本件遺言書作成当時,亡Bには認知症の症状はなく,胃がん治療のため入院した本件病院の主治医・I医師(以下「I医師」という。),看護師ら医療従事者から,被告Y2ら亡Bの家族に対して,同人が認知症であるとの説明も一切なかった。また,本件病院において,亡Bの胃がんに関する告知等が行われる際,I医師は,「ご本人は,お年に比べて遙かにしっかりしてらっしゃるので,ご本人に説明します。」と述べ,被告Y2及び原告などの家族の同席はあったものの,亡Bに対して胃がんに関する告知,治療内容等の説明を行った。
なお,原告が引用する看護記録の記載は,せん妄と呼ばれ,入院中の患者,特に高齢者に意識の混濁等が一時的に認められる状態であるが,状態は可逆的であるため,退院するころにはなくなっているのがほとんどである。亡Bも,胃がんにより本件病院に入院したことにより,一時的にせん妄の状態が現れたにすぎず,これをもって恒常的な能力の低下と評価できるわけがない。
イ 本件遺言の内容の複雑さについて
本件信託は,亡B名義の大部分を被告Y2に相続させ,そこから月額35万円をY1の生活・療養のために給付するというものであり,内容そのものは何ら難しいものではない。
また,本件遺言書には遺産の記載があるところ,亡Bの遺産が概ね網羅されており,預貯金口座についても若干の漏れがあるようであるが,具体的な金融機関名・支店名まで記載があることから見ても,亡Bの遺言能力に問題がないことは明らかである。
ウ 預貯金の欠落について
そもそも,亡B名義の預貯金口座は,Y1が開設,管理していたが,同人が認知症となり,その管理が難しくなったことから,Y1に代わり,亡Bが管理を始めたのである。したがって,自己名義の預貯金口座であっても,遺言作成にあたり記載に漏れがあることは不自然ではない。
また,本件遺言書第7条には,「遺言者は,第1ないし第4条,第6条及び第9条第2項に記載した財産以外の,遺言者が所有し又は有するその他一切の財産を,妻Y1に相続させる。」とあるから,本件遺言書に記載した財産以外の財産が存在することを予定していたと考えられ,原告の指摘は遺言能力の有無に影響を与える事情ではない。
エ 土地売却による相続税・葬儀費用などの支払について
亡Bは,一時騒がれてたハイパーインフレが生じたとしてもY1が困らないように,相続税や葬儀費用の支払に預金を充てず,それをY1のために残し,土地の売却資金で充てようとしていたのであり,本件遺言の内容に何ら不自然な点はない。
なお,亡Bが,平成24年10月に自己の所有地を売却した際,H家に相談・報告に行った事実はない。
オ 本件遺言書作成に至る経緯
亡B及びY1は,原告の住所地所在の一戸建て(自宅建物)において,原告家族と同居していた。自宅建物はいわゆる二世帯住宅であったが,亡B及びY1と原告家族との間で日常の行き来や交流はほとんどなかった。被告Y2は,結婚して夫の両親と同居し,実家に訪れることもままならない状況であったものの,亡BとY1を不憫に思い,出来る限り2人の下を訪れ,日常生活をサポートしていた。
しかし,Y1が認知症を発症し,同人を介護していた亡Bも高齢であったことに加えて,胃がんの発症により食欲がなく,体力的に厳しい状態となったことから,平成24年1月,Y1をいったん高齢者住宅「ほのか深大寺」に入所させ,同年4月には介護付有料老人ホーム「○○」に転所させた。こうした介護関連施設への入所等については,亡Bが全て判断,決定した。特に,○○は,被告Y2の夫が経営する会社が手がける介護施設であり,被告Y2の自宅から数分の距離にあることから,亡Bが転所を強く希望した。
亡Bにとっては,自分が亡くなった後のY1のことが懸案であったが,亡Bらと原告一家とは没交渉であり,また,Y1は,原告の妻・Jにいじめられていたこともあり大変嫌っており,原告にはY1を任せることができないと判断した。そのため,被告Y2に遺産を一定程度相続させ,本件信託を設定し,被告Y2がY1の生活・療養に必要な資金の給付を行えるようにしたのである。
こうした経緯を踏まえれば,亡Bが本件遺言を残したことは至極自然なことであり,そのこと自体が亡Bの遺言能力に問題がなかったことを示している。
(被告Y3の主張)
原告の主張は,いずれも否認ないし不知。
(2)  不当利得の成否及び額
(被告Y2の主張)
被告Y2は,本件遺言により,本件賃貸物件を相続し(柴崎の土地については10分の1),それとともに,各不動産に係る賃貸借契約における賃貸人たる地位も承継したことから,当然にこれらの契約に基づく賃料請求権を有し,それを受領することができる。
ところが,原告は,本件賃貸物件から生じる賃料について,被告Y2に何ら断りなく,受領している。その受領額は,次のとおりである。
ア 本件土地
23万1240円(平成24年分)
イ 本件第1建物
76万5000円(平成25年1月から同年9月分)
ウ 本件第2建物
56万円(平成25年1月から同年7月分)
エ 本件第3建物
56万円(平成25年1月から同年7月分)
オ 本件第4建物
63万円(平成25年1月から同年7月分)
カ 柴崎の土地
50万2524円(1か月の賃料50万2524円で,平成25年1月分から同年10月分までの合計502万5240円のうち,被告Y2の持分割合
10分の1)
(原告の主張)
原告は,本件賃貸物件に係る賃料を,相続人を代表して預かっているにすぎず,受領したわけではない。このため,原告は,マインズ農業協同組合野ヶ谷支店に新たに預金口座を開設し,自己の預金とは混在しないように管理している。
なお,原告が預かっている賃料は,次のとおりである。
ア 本件土地
23万1240円(平成24年分)
イ 本件第1建物
68万円(平成25年2月から同年9月分)
なお,平成25年1月分は,亡B名義の口座に入金されている。
ウ 本件第2建物
56万円(平成25年1月から同年7月分)
エ 本件第3建物
48万円(平成25年1月及び同年3月分から同年7月分)
なお,平成25年2月分については未納となっている。
オ 本件第4建物
54万円(平成25年2月から同年7月分)
なお,平成25年1月分は,亡B名義の口座に入金されている。
カ 柴崎の土地
別紙「本件駐車場の賃貸借の状況」のとおり。
総額316万5680円(平成25年1月から同年10月分)
第3  当裁判所の判断
1  争点(1)(亡Bの遺言能力の有無)について
(1)  認定事実
前記前提事実,文中掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 亡Bの生活歴及び生活状況(入院前)
(ア) 亡Bは,大正13年○月○日に東京都調布市深大寺町(現深大寺東町)で出生し,昭和15年から日本国有鉄道に勤務していたが,昭和38年6月から調布市議会議員となり,昭和46年3月に国鉄を退職するまで,国鉄職員の業務と市議会議員の職を兼務していた。なお,平成3年6月には市議会議員からも引退した(その後,調布市選挙管理委員に就任した。)。
また,亡Bは,市議会議員在職中,a小学校PTA会長,調布交通安全協会役員,調布交通少年団団長,調布健全育成推進上ノ原地区委員会会長,上ノ原地区子ども会会長,上ノ原まちづくりの会会長など多くの役職を歴任し,平成元年4月に藍綬褒章を,平成11年11月には勲四等瑞宝章を受けた(甲32,乙ロ14)。
(イ) 亡Bは,昭和27年11月にY1と婚姻し,昭和30年○月に長男X(原告),昭和33年○月に長女K(昭和34年1月に死亡),昭和35年○月に二女Y2(被告Y2)が生まれた。
(ウ) 亡Bは,昭和37年ころ,自宅敷地上に自宅建物を建築し,以来,同建物に家族とともに居住していた。
被告Y2は,昭和60年にL(以下「L」という。)と婚姻し,以来,狛江市内のLの実家に居住しており,原告は,昭和63年にJ(以下「J」といい,原告とJを「原告夫婦」という。)と婚姻し,自宅建物で亡B及びY1と同居していた。
亡Bは,原告夫婦が自宅建物で同居するようになったことに伴い,自宅建物を増改築して二世帯住宅とし,1階を自己とY1の住居,2階を原告夫婦の住居とした(原告本人)。
(エ) 亡Bの資産形成
亡Bは,自宅敷地を含む別紙物件目録1ないし3の土地のほか,柴崎の土地及び調布市深大寺東町七丁目の土地5筆(同目録11ないし15)を相続等によって取得しており,そのうち同目録11の土地上には,4棟の平家建ての家を建て,それらを貸家としていた。
なお,柴崎の土地は,亡Bが相続によって取得した時点では農地であったが,その後,亡Bが月極駐車場として賃貸に供し,平成20年ころから,その管理を和光企画に委託していた。
また,亡Bは,平成24年10月ころ,調布市深大寺東町七丁目の土地を売却し,数億円の売却代金を取得していた(乙ロ18,原告本人)。
(オ) 平成21年か平成22年ころ,Y1が認知症を発症した。Y1の介護は当初は亡Bがしていたが,同人自身も,遅くとも平成23年9月以降,調布市の介護認定審査会から要介護認定(要介護1)を受けており,次第にY1を介護することが困難となったことから,亡Bは,Y1を介護施設に入所させることとした。
ちょうど,被告Y2の夫・Lの経営する会社(b株式会社)が介護施設の運営も行っており,平成24年3月には,被告Y2の居宅近くに,同社が,介護付有料老人ホーム「○○」を開設する予定が立っていた。亡Bは,そのことを被告Y2から聞き,○○の開設後,速やかに同所にY1を入所させることを前提に,平成24年1月,Y1をいったん高齢者住宅「ほかの深大寺」に入所させた。そして,○○の開設後,同年4月にY1を○○に転所させた(甲3,乙ロ14,原告本人,被告Y2)。
(カ) 亡Bの介護認定審査会資料(甲3)中,平成24年2月24日付けの認定調査票には,亡B本人及び原告の妻Jから聞き取った内容として,「用事があれば室内電話機にて息子家族に依頼している。」「今年から妻が引っ越してからは,介護負担が減ったため,精神的には落ち着かれてはいる,と嫁から聞きとる。」「先月,物置を設置すると言い出し,200万円ほどかけて業者と契約しようとしていた。息子家族が異変に気づき,解約。金銭面のことで自分勝手に話を進めてしまい,決めたことは固執するようになってきている。訪問業者の出入りや契約などには,息子家族が注意を払い本人に言い聞かせているが,本人はあまり理解していない,と聞きとる。」「娘が訪問(1回/月ほど)するが,農業組合のこと,病気のことなどを一方的に話しだし,会話にならなくなってきたという話を聞きとる。調査中も,問いかけとは関係なく,妻の容態のこと,病気のことなど,話を進められていた。」などの記載がある。また,認定資料となった主治医意見書には,「傷病に関する意見」として「認知症 発症年月日:平成23年10月4日頃」との記載があり,「このところ認知症・下肢の筋力低下等進行しており,急なADLの低下を来す可能性あり。」との指摘がされているが,認知症の中核症状としての「日常の意思決定を行うための認知能力」は「自立」とされ,「自分の意思の伝達能力」は「伝えられる」とされており,特記事項として,「妻が施設入所し介護負担は減ると共に,本人の状態もやや改善傾向にあります。」との記載がある。
なお,亡Bは,平成5年から気管支喘息・慢性閉塞性肺疾患・高血圧症の診断を受けて杏林大学医学部付属病院に通院していたが,平成23年9月ころから,歩行能力の低下・物忘れが顕著となり,同年10月4日から,同病院とつながりのあるたんぽぽクリニックの医師による訪問診療を受けていた(甲3,原告本人)。
(キ) 亡Bは,平成24年に入ったころから,自己及びY1のその後の生活と,将来的に原告に自宅の土地建物を継いでもらうことを考え,自宅建物の建替えを計画し,原告にも相談の上,同年4月ころから,傾斜地部分を整地し,擁壁を設置するなどの具体的な準備工事を計画した。なお,こうした工事は,亡Bが業者と打合せをして契約をし,代金の支払も亡B自身が行っていた(原告本人)。
また,亡Bは,同年4月26日ころ,○○の建設に関わっていた不動産コンサルタントのM(以下「M」という。)に対し,自己が死亡した場合の相続税について相談し,これを受けたMが,知り合いの税理士・N(以下「N税理士」という。)に対し,亡Bから聴取した保有資産をもとに相続税の試算を依頼した。N税理士は,平成24年5月27日付けで「相続税負担額の試算」(乙ロ18。以下「本件試算書」という。)を作成してMに交付し,Mは,同日,亡Bの自宅を訪れ,亡B,原告夫婦及び被告Y2夫婦に対してその内容を説明した(乙ロ21,証人M)。
なお,本件試算書では,現行税制における相続税額と,相続税制の改正があった場合の相続税額を試算するとともに,税負担を軽減する方策として,亡Bの5人の孫(原告夫婦と被告Y2夫婦の子ら)に対して,預貯金のうち7500万円を生前贈与することなどが提案されている。
(ク) 亡Bは,平成24年7月ころから,自宅建物の建替えについてもMに相談するようになり,建替えに関する希望として,先代や自らの業績・功績を子孫に伝えたいとして,賞状や勲章の展示スペースを作りたいと話していた。
また,亡Bは,Mから,駐車場として使用されている柴崎の土地にコンビニエンスストアを建てることを提案された際,同土地は(亡Bの死亡による)相続税の納税に充てることにしているとして,即座に提案を却下したということがあった。なお,当時,亡Bは,深大寺東町七丁目の土地の売却代金により,数億円に上る預貯金を有していたが,こうした預貯金については,仮に将来インフレが発生しても自宅の建替え費用やY1の介護費・生活費に支障が生じないように確保しておく考えを持っていた(証人M)。
(ケ) Mは,同年10月23日ころ,設計士のO(以下「O設計士」という。)を同行して,亡Bと面談した。その席で,亡Bは,自宅建物は昭和37年に建築し,約20年前に改築していること,土地は全体で約350坪あり,将来の世代での売却も考えて,100坪の自宅敷地部分,50坪の車庫部分,200坪の宅地部分とに分割することを考えていること,建替え時に仮住まいをしないですむように現在の自宅建物とは別の位置に居宅を新築すること,そのために現在擁壁の設置と整地を進めていること,隣家のPは親戚であるが境界は明確にしておきたいことなどを伝えた。
さらに,MとO設計士は,同年11月4日,自宅建物を訪問し,亡B,原告夫婦及び被告Y2を交えて,建替えに関する打合せを行い,同月8日には,亡Bと打ち合わせを兼ねた食事をした。その食事の際,亡Bの食が進まないことを気にかけたMに対し,亡Bが,最近はほとんど食事ができないと話したことから,Mは病院に行くことを勧めていた(乙ロ20,21,証人M)。
(コ) 亡Bは,平成24年11月12日ころ,かかりつけの五島医院から紹介されたつつじヶ丘クリニックを受診し,胃部等の検査を受けたところ,胃に腫瘍ができているとの指摘を受け,手術をしてもらった方が良いと勧められ,本件病院を紹介された。なお,つつじヶ丘クリニックには,亡Bが一人で行き,医師からの説明も,全て一人で受けたものである(乙ロ15,16,原告本人)。
このため,亡Bは,同日中にMに電話をかけ,医師からがんの告知を受けたことを伝え,急いで遺言書を作りたいと相談した。なお,亡Bは,自宅建物の建替えの話と並行して,Mに対して,平成24年8月ころ,遺言書を作成したいと相談していた(ケアマネージャーにも同様の話しをしていた。)が,当時は亡Bも元気であったことから,具体的な内容を検討するには至っていなかった(乙ロ21,証人M,原告本人)。
そして,Mは,同月14日に亡Bのもとを訪れ,遺言書の作成について打合せを行った。その際,亡Bは,Mに対し,「深大寺東の土地(別紙物件目録11ないし15の土地)をY2にあげるつもりだ。」と述べていた(乙ロ21)。
(サ) そして,亡Bは,平成24年11月15日から,胃がん治療のため本件病院に入院した。なお,亡Bは,Y1が入所している○○に支払う費用として,毎月,柴崎の土地に係る駐車場賃料収入から20万円をY1名義のマインズ農業協同組合野ヶ谷支店の預金口座に入金していたが(農協職員が自宅建物に来訪して,亡B自身が手続をしていた。),自身が入院することになったため,この入金手続を原告に依頼した。また,亡Bは,入院の数日前,農協職員を自宅に呼んで預金払戻しの手続を行い,払い戻した金員で工事業者への支払をするなどしていた(甲32,原告本人)。
イ 亡Bの疾患と入院中の病院関係者とのやりとり等
(ア) 本件病院のリハビリテーション科が作成した「Problem List」の中の「Impaiament」(「Impairment」の誤記と思われる。)のチェック項目には,「胃癌」「筋力低下」「易疲労性」「認知症」にチェックが付されている(甲2)。
(イ) また,本件病院の診療記録には,次のような記載がある。
① 11月19日午前7時34分
「『ここじゃなくて,三鷹中央病院にいかなくちゃなんだよ』など,現状への理解力の低下あり。説明すると,『ああそうだった。なんでこんなにわけわからないんだろう?』と不思議がっている。」
② 11月22日午前2時33分
「ナースコールあり,『ここがどこかもわからない,昨日いたところからここまで引っ張ってこられた』と意味不明な発言聞かれる。」
③ 同日午前10時
「家族含め,本人告知済み」
④ 同日午前11時30分
「リハビリについてや誰かに連れて行かれたと。何度も,話す。」
「ムンテラ後,退院許可でるも,自宅介護無理とのことでMSW介入となる。」(なお,「MSW」は「Medical Social Worker」〔医療ソーシャルワーカー〕のことを指すと思われる。)
⑤ 11月26日午前10時23分
「認知症ありリスク高いためプラン継続する」
⑥ 12月8日午後8時41分
「いきなり部屋から大声あり。『いったいどこ行けばいいんだよ,いつまで待たせるんだよ。夕飯も食べてないんだ,全くどうなってるんだ。』と怒っている。」
⑦ 12月9日午前2時41分
「履物はかず,ナースステーションまで来る。分からなくなったと。自室へ戻ると4点柵中。転倒ないと。どうしてここにいるか分からないと。」
⑧ 同日午前11時02分
「夜間せん妄あり。本人の記憶なく,日中はしっかりされている。入院長期化もしており,デメンツの出現の危険大きい。」
⑨ 12月11日午前11時25分
「一人で起き上がり,歩こうとされたり辻妻の合わない言動が見られている。夜間せん妄ありタッチガードを使用ている。点滴の自己抜去もあり,必要時ミトンを使用する。プラン続行する。」
(ウ) 亡Bが本件病院に入院中の平成24年11月22日,原告夫婦と被告Y2の同席の下,担当のI医師から亡Bに対して,病状や治療方針の説明(いわゆるインフォームドコンセントの手続)が行われた。その際,I医師と亡Bとの間では,本件病院受診前数年間の検査結果や,つつじヶ丘クリニックの医師とのやりとりに関する問答がなされ,同医師は,亡Bについて,しっかりしている,年齢の割に元気,との発言をしており,亡Bに対して,説明を自ら聞くかどうか確認するなどしていた。また,亡Bは,I医師の説明を最後まで聞いた上で,今後の受診の仕方を尋ねるなどした(乙ロ15,16)。なお,原告及び被告Y2は,亡Bの入院期間中,本件病院の関係者から,亡Bが認知症であると告げられたことはなかった。
また,亡Bは,同日夜,原告に対し,Y1名義と自己名義の農協の貯金について残高証明の取得とキャッシュカードの作成を指示し,同じころ,孫らに対する生前贈与(本件試算書によって提案されたもの)をするための口座開設も指示した(乙ロ22,23,原告本人)。
(エ) 平成24年12月18日付けで本件病院リハビリテーション科の理学療法士が作成した施設間連絡表(甲2)には,「11月17日より理学療法開始致しました。介入当初は吐き気の訴えが強く,また不穏状態で指示理解が難しく,ベッド上にて訓練実施いたしました。不穏状態は徐々に落ち着き,基本動作自立・歩行はキャスターウォーカー歩行見守りにて可能となりました。12月8日頃より再度不穏状態となり,見当識に問題が生じ始めました。12月12日に食道ステント留置施行された後も譫妄が出現し,落ち着かず,コミュニケーションが難しくなりました。」との記載がある。
ウ 本件遺言書作成の経緯
(ア) Mは,亡Bが本件病院に入院した後,何度も同病院に通い,亡Bの財産の内容,処分の方針等について聞き取りを行い,それを知り合いの弁護士である被告Y3に伝え,遺言書の案文の作成を依頼した(証人M)。
(イ) 亡Bは,遺言書の作成に当たっても,Y1の生活の経済的安定と,先代からの業績・功績の承継を気にかけていた。そして,特にY1の生活面については,被告Y2に財産管理と生活のサポートを委ねること,その分,被告Y2には相応の財産を与えること,税金面では配偶者控除を利用するともに,相続税の原資には柴崎の土地の売却代金を充てることなどを決めており,Mにはそれを遺言書の形にまとめることを依頼していた。なお,亡Bは,信託制度の存在を知っており,Y1の介護に関して信託を利用することは亡Bからの提案であった(証人M)。
(ウ) 被告Y3は,平成24年11月26日ころ,A公証人に対し,その時点で作成していた亡Bの遺言書案をFAXで送付して公正証書遺言の作成を依頼し,その後,FAXや電話で,遺言書案や登記簿謄本等のやりとりを行った。
また,被告Y3は,A公証人に対し,亡Bが末期がんで本件病院に入院中であることを伝え,遺言公正証書作成の際には同病院に出張してほしいと依頼したが,亡Bの意識は清明で,受け答えはきちんとできる旨伝えていた(乙ハ1,証人A)。
(エ) 実際にA公証人が出張して公正証書遺言を作成する日については,当初から具体的に決められていたわけではなかったが,平成24年11月末日か同年12月1日ころ,被告Y3からA公証人に対し,亡Bの容態があまり良くないので早く作りたいとの連絡があり,同月3日にA公証人が本件病院に出張することが決まった(乙ハ1,証人A)。
エ 本件遺言書作成時の状況
(ア) A公証人は,平成18年2月から板橋公証役場に勤務し,年間100件ないし200件程度の遺言公正証書を作成しているところ,一般的にその作成は,次のような手順で行っている。
① 作成場所となる部屋から,遺言者や証人以外の者は全員退室させる。
② 遺言者の人物確認を行う(氏名,生年月日,住所,職業等)。
③ 遺言者から家族関係を聴取する(相続人の確認)。
④ 遺言者から財産の概要を聴取する。
⑤ 遺言者から遺言の内容を聴取する。
⑥ 聴取した遺言内容が,あらかじめ作成しておいた公正証書案のとおりであれば,その公正証書の読み聞かせをする。その際,各条項毎に,A公証人から簡単に内容を説明し,間違いがないことを確認しながら進める。
⑦ 読み聞かせ後,遺言者に最終確認し,間違いがなければ証人にも確認してもらい,遺言者,証人に署名捺印してもらい,最後にA公証人が署名捺印する。
また,A公証人は,作成した遺言公正証書の有効性が事後に争われる可能性があることを念頭に,その作成状況を3つの類型に分けて手控えメモを作成している。1つめは,特に問題がないと思われる事案で,その場合は手控えメモに「問題なし」とだけ記載する。2つめは,ある程度問題が発生する可能性がある事案で,その場合は手控えメモに,作成開始時間,具体的な質問方法,遺言者の答え方や態度等,読み聞かせ時の遺言者の状況,作成終了時間,医師からの聴取結果,その他参考事項を記載する。3つめは,かなり問題があると思われる事案(遺言能力がないと考えられる場合は遺言公正証書の作成を断る。)で,その場合は手控えメモに,作成時の写真や医師の診断書等を添付し,遺言公正証書作成の経緯状況に関する詳細な報告書を作成して,公正証書原本と一緒に編綴する(乙ハ1,証人A)。
(イ) 平成24年12月3日,A公証人が亡Bの病室を訪れると,同人は姿勢を正してベッドに座って待機していた。そして,A公証人が,横になることを勧めても,「大丈夫です。」と返事をして,本件遺言書作成中(1時間前後),横になることはなかった。
A公証人は,上記(ア)の手順どおりに本件遺言書を作成したが,本件遺言のうち,信託に係る部分については,制度趣旨等を説明した上で,改めて亡Bに対し,受託者,受益者,目的財産等の内容を確認した。また,遺産の配分が原告より被告Y2の方がやや多いことに関して,亡Bは「親の面倒をよく看てくれるから。」という趣旨の発言をしていた。その他,A公証人から見て,亡Bの判断能力に関して疑問を感じさせる事情はなかった。
そして,本件遺言書作成後,A公証人は,自己の手控えメモに,「問題なし」とだけ記載した(乙ハ1,証人A)。
(2)  判断
ア 上記(1)認定事実によれば,本件遺言書作成時,亡Bが事理弁識能力を欠いていたことを窺わせる様子は全くなかったことに加え,本件遺言書作成の約10日前に実施されたインフォームドコンセントにおける医師とのやりとりからも,その事理弁識能力に問題があることは窺われず,同日,原告に対して,Y1及び自己の貯金の残高証明や生前贈与のための孫名義の口座開設を依頼するなど,その時点で相当の財産管理能力や記憶力を保持していたこと,入院の前後を通じて示された遺言内容や自宅建替えに関する亡Bの考え方が一貫しており,それが本件遺言の内容と整合することなどが認められ,これらの事情を総合すると,本件遺言書作成当時,亡Bが意思能力(遺言能力)を欠いていたということは認められない。
イ なお,亡Bについては,上記(1)のア(カ)及びイ(ア)のとおり,医師ないし医療機関において,認知症との判断がされていたことが認められるが,それらの記録上,一般に認知症診断に用いられる長谷川式認知症スケールによる検査や画像診断が行われた形跡は認められず,上記記載は,単に認知症と思われる症状が出現していることを記載したにすぎないと考えられる。そして,これらの記載及びこれらに付随する記載からは,亡Bの物忘れ等がある程度進んでいたことは窺われるものの,事理弁識能力の欠如までは窺われず,上記(1)認定に係る事実経過を見ても,年相応の記憶力の減退を超えて,認知症の症状が顕著に現れていたとは認められない。
また,原告は,上記(1)イ(イ)に係る診療記録上の記載を指摘するが,それらの異常な言動は入院中継続していたものではなく,担当医師から原告や被告Y2に対してこうした言動の報告や説明がされたこともなかったのであるから,一時的に発生した譫妄状態と理解するのが相当である。したがって,本件遺言書作成時にそうした譫妄状態にない限り,意思能力の有無を左右する事情には当たらない。
ウ さらに,原告は,本件遺言の内容に関し,そこで用いられた信託制度が一般に認知されていないというが,亡Bの経歴からみて,これを知っていた可能性は十分あると考えられるし,本件遺言における信託は,被告Y2をして,遺産となる預貯金からY1の生活に必要な金銭給付をさせるというものにすぎないから,内容的に難しいということはない。
また,原告は,数億円の預貯金の一切を信託に付し,相続税には柴崎の土地の売却代金を充てるという本件遺言の内容が,不自然かつ不合理であるとも主張する。しかしながら,柴崎の土地は駐車場として利用していた土地であるから,経済的必要性に応じて換価することは十分考えられ,それ自体特段不合理なところはない。また,上記のように預貯金に手を付けないこととした理由について,Mは,亡Bは仮にインフレが発生しても,自宅建替え費用やY1の生活費に支障を来さないように配慮していた旨証言するところ,当時の社会経済状況でインフレまで想定するなどということは,コンサルタントのMの発想からは出てこないはずであり,かえってそれが亡B本人の言葉であったことが推認される。そして,亡Bが時として不合理とも思える事柄を進めることは,上記(1)ア(カ)(単なる物置の設置に200万円の契約をしようとしたこと)のように,従前から見受けられていたところであるし,そうした発想は,亡Bが達成しようとした目的との関係で,必ずしも不合理とか支離滅裂というものではない(200万円の物置設置は,現存する物置を除去してそこに新たに居宅を建築するための手段であり,単に金額にこだわらなかったというにすぎないし,柴崎の土地の売却は,Y1の生活費等として預貯金を確保することが亡Bの中で不動の優先事項であったことから,相続税の代替財源として考えついたものと推測される。)。したがって,上記のような遺言内容は,亡Bのこだわりや性格が表れたものと考えられ,もとより,意思能力に問題があったことを窺わせる事情には当たらない。
エ なお,通常,遺言無効確認訴訟においては,遺言内容に相当の偏りがあることがほとんどであり(遺言無効を主張する者に対する分配が少ない),そのことに相続人同士の猜疑心が加わって対立が強まるものであるが,本件遺言にはそのような偏りはほとんどなく(自宅の土地建物は原告,賃貸に供している不動産は被告Y2,預貯金は信託終了後に折半というもの),その意味でも,亡Bの意思能力に問題があったことや,被告Y2あるいはその意向を受けたMから亡Bに対する働きかけがあったことなどは全く窺われない。
(3)  A事件についての結論
以上のとおりであるから,本件遺言書作成当時,亡Bが意思能力を欠いていたとする原告の主張は採用できない。
2  争点(2)(不当利得の成否及び額)について
(1)  前記1に説示したとおり,本件遺言は有効であるから,被告Y2は,これにより,本件賃貸物件を相続し(柴崎の土地については10分の1),それとともに,各不動産に係る賃貸借契約における賃貸人たる地位も承継したというべきである。そして,原告がこれらの賃貸借契約に係る賃料を受け取り保管することについて,被告Y2との間で合意が成立したという事情もない。
したがって,原告が各賃貸借契約に基づく賃料を受け取り保管していることは,仮にそれを費消していなくても,法律上の原因なく他人の財産によって利益を受け,そのために他人に損失を及ぼしたことになるから,その受取額につき不当利得が成立する。
(2)  そして,証拠(甲4ないし17,22ないし24,30,乙ロ2ないし6)及び弁論の全趣旨によれば,被告Y2が請求する期間について,原告が受け取った賃料は,以下の金額であることが認められ,これらを超える利得があることは認められない。
ア 本件土地
23万1240円(平成24年分)
イ 本件第1建物
68万円(平成25年2月から同年9月分)
なお,平成25年1月分は,亡B名義の口座に入金されている。
ウ 本件第2建物
56万円(平成25年1月から同年7月分)
エ 本件第3建物
48万円(平成25年1月及び同年3月分から同年7月分。なお,平成25年2月分については未納)
オ 本件第4建物
54万円(平成25年2月から同年7月分)
なお,平成25年1月分は,亡B名義の口座に入金されている。
カ 柴崎の土地
平成25年1月分,2月分及び4月分ないし10月分の各合計額については,別紙「本件駐車場の賃貸借の状況」のとおり認められるが,3月分については,平成25年3月15日に入金された「駐車臨時」の2万8000円(甲4,30)が計上されていないため,同月分の合計額は,31万4000円に2万8000円を加えた34万2000円であると認められる。
したがって,柴崎の土地の駐車場賃料のうち,原告が受け取った平成25年1月分から同年10月分までの合計額は,319万3680円であり,被告Y2の取得分はその10分の1の31万9368円となる。
(3)  そうすると,上記アないしオの賃料に係る不当利得の合計は249万1240円であるから,この限度で被告Y2の請求(B事件訴状記載)に理由があり,また,上記カの賃料に係る不当利得は,31万9368円であるから,この限度で被告Y2の請求(B事件訴えの変更申立書記載)に理由がある。
3  結論
よって,原告の被告らに対する請求には理由がないからこれを棄却することとし,被告Y2の原告に対する請求は上記の限度で理由があるからその限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条,64条本文を,仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。
(裁判官 矢﨑豊)

 

〈以下省略〉

 

*******

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。