【選挙から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(37)平成21年 3月27日 宮崎地裁 平18(わ)526号 競売入札妨害、事前収賄、第三者供賄被告事件

「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(37)平成21年 3月27日 宮崎地裁 平18(わ)526号 競売入札妨害、事前収賄、第三者供賄被告事件

裁判年月日  平成21年 3月27日  裁判所名  宮崎地裁  裁判区分  判決
事件番号  平18(わ)526号
事件名  競売入札妨害、事前収賄、第三者供賄被告事件
裁判結果  有罪  文献番号  2009WLJPCA03279006

要旨
◆県知事であった被告人が、知事就任前に、政治的指南役と共謀し、設計会社社長から賄賂である現金2000万円を収受した事前収賄、知事就任後、設計会社社長に依頼し、賄賂である顧問料名目の現金を毎月政治的指南役へ振込入金させた第三者供賄、及び設計会社社長や県の部下職員らと共謀して、県発注業務の指名競争入札に際し談合をした競売入札妨害3件の事案において、各公訴事実を否認する被告人の弁解をいずれも排斥した上で、本件各犯行は、県民の期待や信頼を大きく裏切ったものであって、被告人の責任は大変大きく、与えた社会的影響も大変大きいとする一方、知事を辞職するなどの社会的制裁を受けていることや年齢等の酌むべき事情も考慮して、被告人に懲役3年6月の実刑を言い渡した事例

出典
裁判所ウェブサイト

参照条文
刑法60条
刑法96条の3第2項
刑法197条2項(平15法138改正前)
刑法197条の2

裁判年月日  平成21年 3月27日  裁判所名  宮崎地裁  裁判区分  判決
事件番号  平18(わ)526号
事件名  競売入札妨害、事前収賄、第三者供賄被告事件
裁判結果  有罪  文献番号  2009WLJPCA03279006

主文

被告人を懲役3年6月に処する。
未決勾留日数中140日をその刑に算入する。
被告人から金2000万円を追徴する。

理由

(罪となるべき事実)
被告人は,平成15年7月27日施行の宮崎県知事選挙に当選して,同年8月5日から同県知事に就任し,平成18年12月4日までの間,同県を統括して同県職員を指揮・監督し,同県が発注する業務に関し,指名競争入札における指名業者の選定,契約の締結等の職務に従事していたものであるが,
第1  A1と共謀の上,平成15年7月30日,宮崎市a町b番地所在の被告人方において,測量設計業等を営むB1設計株式会社(以下「B1設計」という。)の代表取締役A2から,宮崎県発注に係る測量設計業務等を同社が受注できるよう有利便宜な取り計らいを受けたい旨の請託を受け,その報酬として供与されるものであることを知りながら,同人から現金2000万円の供与を受け,同年8月5日,同県知事に就任し,もって,被告人の将来担当すべき前記職務に関し,請託を受けて賄賂を収受し,
第2  平成15年10月4日,宮崎市c町de番地f所在の宮崎県知事公舎において,前記A2から,同県発注に係る測量設計業務等をB1設計が受注できるよう有利便宜な取り計らいを受けたい旨,また,同県発注に係る公共工事等を上記A2が被告人に対して口利きした土木建設業者等が受注できるよう有利便宜な取り計らいを受けたい旨の請託を受け,その報酬として,上記A2をして,平成15年10月31日から平成17年5月24日までの間,20回にわたり,同市gh丁目i番地j所在の株式会社B2銀行B3支店の前記A1名義の普通預金口座に現金合計1026万円を振込入金させ,よって,同人に同額の利益を得させ,もって,自己の前記職務に関し,請託を受けて第三者に賄賂を供与させ,
第3  宮崎県が平成17年10月7日に施行した「平成17年度県橋維持第01-01号橋梁維持事業」の指名競争入札に際し,あらかじめ指名業者間で落札予定業者等を協定することにより,B1設計に上記委託業務を有利な価格で落札させようと企て,前記A2,同県出納長であったA3,同県土木部次長であったA4,B1設計宮崎支店長であったC1及び別紙1記載の指名業者の担当者らと共謀の上,公正な価格を害する目的をもって,平成17年6月下旬ころから同年10月6日までの間,宮崎市kl丁目m番n号所在の宮崎県庁1号館9階の土木部次長室において,上記A4が,順次,上記C1及び別紙1記載のC3に対し,B1設計が落札予定業者として適当である旨申し向けるなどし,同日及び同月7日,同市op丁目q番r号所在のB8会議室及び上記県庁1号館7階第四会議室に設置された入札会場において,上記C1及び別紙1記載のC4,同C5,同C6及び同C7が,B1設計を上記委託業務の落札予定業者とし,B1設計の入札価格よりも高い金額で入札する旨の協定をし,もって談合し,
第4  宮崎県宮崎土木事務所が平成17年11月16日に施行した「平成17年度災害委託第1-AC号災害復旧事業」の指名競争入札に際し,あらかじめ指名業者間で落札予定業者等を協定することにより,B1設計に上記委託業務を有利な価格で落札させようと企て,前記A2,同A1,同県出納長であったA3,同県土木部次長であったA4,同県宮崎土木事務所所長であったA5,同土木事務所次長であったC8,B1設計宮崎支店長であったC1及び別紙2記載の指名業者の担当者らと共謀の上,公正な価格を害する目的をもって,平成17年9月下旬ころから同年11月14日までの間,前記土木部次長室及び宮崎市ks丁目t番u号所在の宮崎県庁4号館5階の同土木事務所において,上記A4,A5及びC8が,順次,上記C1,別紙2記載のC10及び同C12らに対し,B1設計が落札予定業者として適当である旨申し向けるなどし,同日,同市vw丁目x番y号所在のビジネスホテルB13・1階会議室において,上記C1及び別紙2記載のC9,同C11,同C13,同C14及び同C15が,B1設計を上記委託業務の落札予定業者とし,B1設計の入札価格よりも高い金額で入札する旨の協定をし,もって談合し,
第5  宮崎県高岡土木事務所が平成18年7月20日に施行した「平成17年度河川激特第2-L号麓川橋梁詳細設計業務」の指名競争入札に際し,あらかじめ指名業者間で落札予定業者等を協定することにより,B1設計に上記委託業務を有利な価格で落札させようと企て,前記A2,B1設計宮崎支店顧問であったC1,同県環境森林部長であったA6,同県土木部次長であったA5及び別紙3記載の指名業者の担当者らと共謀の上,公正な価格を害する目的をもって,平成18年7月6日ころから同月10日ころまでの間,前記土木部次長室において,上記A5が,順次,上記C1及び別紙3記載のC17に対し,B1設計が落札予定業者として適当である旨申し向けるなどし,同月11日及び同月18日,同市kz丁目α番β号所在のホテルB17会議室において,別紙3記載のC16,同C9,同C11,同C18,同C20及び同C21が,B1設計を上記委託業務の落札予定業者とし,B1設計の入札価格よりも高い金額で入札する旨の協定をし,もって談合し
たものである。
(証拠の標目)
省略
(補足説明)
【前提となる事実】
1  被告人の経歴
被告人は,昭和39年4月,宮崎県庁に採用され,平成10年3月,宮崎県商工労働部長を最後に退職し,平成11年7月施行の同県知事選挙に立候補したものの落選した。
その後,被告人は,平成15年7月施行の同県知事選挙に立候補して当選し,同年8月5日から同県知事の職にあったが,平成18年12月4日,辞職した。
2  被告人の職務権限
被告人は,宮崎県知事として,同県を統括して職員を指揮監督し,同県発注の事業に関する指名競争入札の入札参加者資格の決定,入札参加者の指名,請負契約の締結等の職務権限を有し,これらの事務を管理し執行していた。
3  B1設計の概要
B1設計は,A2が昭和55年7月に設立した土木,建設設計及び測量等を業務とする東京に本社を置く設計コンサルタント会社である。A2は,事業拡大のため,宮崎県の企業誘致に応じ,平成2年10月,宮崎県児湯郡に同社宮崎支店を開設し,同支店では,平成11年から宮崎県発注の測量・設計業務の受注を開始した。
4  被告人とA1の関係
昭和54年に元宮崎県知事が収賄で逮捕されたが,被告人は同知事の秘書,A1は同知事の選挙の裏方として二人は知り合い,A1が国会議員の秘書をしていたとき,被告人がその事務所に出入りしていたことから交際するようになった。被告人は,平成11年7月施行の知事選挙に立候補したときから,A1から選挙戦略に関する助言を受けるなどの支援を受けていた。被告人は,同選挙に落選した後も,4年後の当選を期して政治活動を続けていたが,その間もA1との関係は継続していた。
【事前収賄事件(判示第1)の争点と判断】
第1  争点
A2が見返りを求めて提供する現金2000万円について,被告人に,A2の意思に応じて受け取る意思があったか否か。
1  検察官の主張
被告人は,平成15年7月施行の宮崎県知事選挙の終盤を迎えて,選挙活動の終了に伴う諸費用の清算等のためのいわゆる終戦処理費用として2000万円の調達をA1に依頼し,それを受けたA1がA2に話を持ち掛けて供与させたもので,被告人に,事前収賄に係る2000万円の現金を収受する意思があった。
2  弁護人の主張
被告人がA1に,終戦処理のために2000万円の調達を依頼したことはない。また,被告人は,当選祝いに訪れたA2から提供された現金入り封筒の受取を拒否した上,A2が置き去った現金入り封筒を,A2に対し,事後,直接又はA1を介して全額返還している。以上の事実に照らし,被告人には2000万円を収受する意思はなかった。
第2  争点の前提となる事実についての当事者の主張及びそれに対する判断
1  知事選前のA2からの現金供与
(1) 検察官の主張
被告人は,平成14年以降,平成15年7月の知事選挙に至るまでの間,A2から,少なくとも5回にわたり,合計1700万円の資金提供を受けており,受領時においては,いずれも選挙活動費用に使う意思で受け取っていたもので,被告人は,知事選前,A2との間で資金的な依存関係にあった。
(2) 弁護人の主張
平成15年知事選前におけるA2の被告人への金銭提供額は700万円である。被告人は,A2から受領した現金は,当初から返還する意思で使わずに預かっていただけであり,知事選前後を通じて全額返還したもので,A2との間で資金的な依存関係はなかった。
(3) 判断
ア 当裁判所が認定した事実
関係各証拠によれば,知事選前におけるA2から被告人への現金供与の状況は,下記のとおりであったと認定できる。
(ア) 被告人は,平成11年7月施行の知事選挙に落選後,次の平成15年の知事選挙立候補のため,A1の協力を得ながら,県の誘致企業等を回って支援を呼び掛けていた。
(イ) B1設計は,県の誘致企業でありながら,県内に本社を置かない県外企業とみなされ,測量設計業界の談合母体である「宮崎県B18」から入会を拒否されて談合から排除され,また,緊縮財政の影響で県発注の公共事業は減少傾向にあったなどの事情から県発注の測量設計業務の指名競争入札において,指名業者に入れても,本命業者として落札・受注することは極めて困難な状況にあった。そのため,B1設計の宮崎支店は赤字経営が続いていた。
(ウ) 平成13年,A1は,A2を紹介されて知り合い,同年末か平成14年初めころ,A1が被告人と共に,B1設計東京本社を訪れてA2を引き合わせた。被告人は,A2に選挙の支援を依頼し,A2は,B1設計が県の誘致企業でありながら,県発注測量設計業務の受注が全然伸びない状況を訴えた。
(エ) 被告人は,A1に,事務所経費や人件費等のための資金調達を依頼し,これを受けて,A1が資金の提供をA2に要請した。その際,A1は,A2に対し,「選挙にはいろいろ金が掛かる。被告人が知事になればB1設計の仕事は今より増える。」などと言った。A2は,B1設計の現状を打破するために,被告人が知事になった後の受注増を期待して,被告人に資金提供して支援をしようと考えた。
(オ) 平成14年秋ころ,被告人は,上記要請を受けたA2から,200万円の提供を受けた。その際,A2は,「我が社のような誘致企業も仕事が取れるように考えてください。」と言い,被告人は,「私が当選したら,A2さんの会社についてはぴしゃっと対応していきます。」と言った。また,同様に,被告人は,A2から,同年末に200万円,平成15年初めころに300万円,5月下旬に500万円,7月上旬に500万円の提供を受けた。その際,A1は,「この間言われたものをお持ちしました。」と言い,A2は,「当選されたら我が社をよろしくお願いします。」,「会社も苦労してねん出したお金です。よろしくお願いします。」,「我が社も被告人に社運を懸けています。」などと言い,これに対し被告人は,「分かっています。ありがとうございます。無理を掛けて申し訳ないです。」,「無理掛けていますね。お世話になっています。」などと言って現金を受領した。上記5回の現金供与の際には,いずれもA1が立ち会っていた。
イ A1及びA2の各証言の信用性の検討
以上の事実は,A1及びA2の各証言に基づいて認定したものであるので,その部分に関係する同人らの証言の信用性を検討する。
(ア) A1証言の要旨
a 被告人から,「いよいよ本格的な動きになってきましたので,選挙事務所の経費とか人件費とかもろもろのことが予想以上に掛かりますので何とか作ってください。」と選挙資金の調達を要請され,その要請を受けてA2にお願いしていた。A2から被告人への資金提供は,合計五,六回,総額にして2000万円を超えていたと思う。A2は,平成15年5月と7月には各500万円を被告人に提供した。
b 金銭授受のときに,A2が,「当選されたときはくれぐれも我が社のことをよろしくお願いします。」と言い,これに対して被告人が,「もちろん分かっています。いつもありがとうございます。自分が当選しましたら,やはりぴしゃっと面倒見ていきますから。」などと言っていた。
(イ) A2証言の要旨
a 平成14年秋ころと同年終わりころに各200万円,平成15年に入って間もなくのころに300万円,同年5月下旬ころと同年7月上旬ころに各500万円の合計1700万円を,前後5回にわたり被告人に供与した。
b 現金授受の際には,A1が被告人に,「この間言われたものをお持ちしました。」などと言っていた。私も,本当に会社が苦しかったので,苦しい中ねん出したお金ですということは声を大きくして被告人に話した。被告人は,「無理をさせて申し訳ありませんね。」というようなことを言った。
c 1回目の500万円のときも,2回目の500万円のときも,これを断れば,今まで提供した金が無駄になるという思いが強くあった。次から次に短期間の中でいろいろな費用を言われたので,何か蟻地獄にはまってしまったような感じだった。
(ウ) A1及びA2の各証言の信用性
a 両名の証言は,いずれも具体的かつ詳細である上,その内容に特段不自然,不合理な点はなく,反対尋問に対しても特に揺らぐところがない。A1が,被告人から要請がある都度A2に出資を求めた状況を語る部分や,被告人の当選に懸けて資金提供を続けざるを得なかった心情を語るA2の証言部分には,迫真性も認められる。また,両証言は,現金を授受する際,被告人がA2に謝辞を述べていたことなど重要な部分で合致している上,資金提供の回数やその金額についても,概ね符合しており,相互に補強し合っている。加えて,A2の平成15年5月下旬ころと7月上旬ころに各500万円を提供した旨の証言は,A1証言とも合致している上,B1設計東京本社管理部経理部長であったA10の「平成15年5月23日と6月27日に,A2から,『被告人に選挙資金として現金を出したい。旧札で500万円を用意してくれ。』と言われて準備をした。」との証言にも裏付けられている。
b 弁護人は,A2がB19株式会社社長のC22に対し,「知事選挙では,被告人に500万円の資金援助をした。」と話していることを指摘して,A2証言の信用性を弾劾するが,その500万円という金額は,そもそも被告人が供述するA2からの資金提供額とも異なっている上,A2が,どのような話題の場面で,どのような意図をもってC22に上記のように話したのか判然としないことなどに照らせば,A2の前記証言の信用性に影響を及ぼすものとは認められない。
また,弁護人は,A2が証言する2回の500万円の資金提供は,保険をかける意味で,対立候補であるC23に提供されたものと考えられるので,被告人に500万円を2回渡したとするA2及びA1の各証言は信用できない旨主張するが,平成15年5月ころには,知事選への出馬を断念したC24が被告人を支援する意向を示したため,被告人に勝ち目が出たころであり,この選挙情勢を受けてA1から被告人が間違いなく勝てる旨聞かされていた上,A2は,現状のままの体制では受注増が望めず,被告人の当選に懸けて資金提供を続けていたものであることに照らせば,被告人が優勢となった選挙直前の時期に,あえて保険の意味で対立候補に1000万円もの資金提供を行うとは考え難く,上記弁護人の主張は採用できない。
(エ) 以上に照らせば,前記のA1とA2の各証言は信用できるものである。
ウ 弁護人の主張に対する検討
(ア) 知事選前のA2からの現金供与に関して,被告人は弁護人の主張に沿って,A2から提供を受けた金額につき,平成15年5月下旬及び7月上旬に各500万円を提供されたことはなく,A2から提供を受けたのは合計700万円である旨供述するが,前記のA2とA1の各証言に反するもので信用できない。
(イ) また,被告人は,「A2から受領した現金は,当初から返還する意思で使わずに自宅で預かっていた。平成13年ころ,A1が200万円を届けてきたときに受領を断ったら,今までの指導料を3000万円返してくれなどと言われたことがあり,金については,A1の言うとおりにしておかないといけないという思いが非常に強かった。A2から預かった現金は,A1から要求される度にA1に返して,全額返還した。実際に現金がA2に戻っているかは,A2に確認していない。」などとも供述する。
しかし,使うつもりもないのに,多額の現金を実際に何度も受領した上,A2に直接返還する機会は幾らでもあったのに,漫然と長期間自宅で保管していたなどというのは,不自然というほかないし,A1の行動としても,被告人の選挙資金のスポンサーとしてA2を引き合わせておきながら,提供を受けた資金を被告人から回収するなどというのは趣旨が一貫せず,不合理である。また,A2から提供を受けた現金を全額返還したという点についても,A2からの資金提供であるのに,A1から要求されるままA1に返還した後,A2にその旨を確認していないということも不自然である。さらに,被告人がA1に返還したにもかかわらず,A1がこれをA2に返すことなく着服していたなどということも,被告人がA2に確認すればすぐに判明する事柄であることなどに照らせば,不合理で想定し難い。
以上によれば,前記弁護人の主張は採用できない。
エ 小括
以上によれば,弁護人が主張するところを踏まえても,平成14年以降,平成15年7月の知事選挙に至るまでの間,被告人は,A2から,少なくとも5回にわたり,合計1700万円の資金提供を受けたこと及び被告人は,上記資金を自らの選挙活動費用に使う意思で受領したことが認められ,これらに照らせば,被告人は,知事選前,A2との間で,一定の資金的依存関係にあったことが認められる。
2  被告人の選挙活動資金の状況
(1) 検察官の主張
被告人は,元来,経済的基盤がぜい弱であり,平成15年7月の知事選前において,多額に必要となる選挙活動資金に恒常的に窮していた。
(2) 弁護人の主張
被告人が,選挙活動資金に窮していたという事実はなく,B20銀行B21支店からの1000万円の借入れは,選挙費用についての予備費的な借入れで,実際使ったのは500万円だけであり,500万円は手元に残ったものであるから,選挙の後始末のための費用が不足する状況にはなかった。
(3) 判断
ア 当裁判所が認定した事実
関係各証拠によれば,平成15年7月の知事選前の被告人の選挙活動資金等に関する状況については,下記のとおりであったと認定できる。
(ア) 平成15年2月ころ,選挙に向けての後援会活動に関し,後援会内で資金繰りの話がよく持ち上がる状況だった。被告人の兄弟や支援者の間で,後援会の運営資金が不足していることで後援会や選挙運動がうまく機能していないことから,被告人が借金をしたり,被告人が所有する土地,建物を売却して資金をねん出しなければならない旨話合いがもたれたこともあった。また,A11の提案で一口500円の個人寄附を集めることを決めた。
(イ) 後援会の資金調達や支払等については,被告人が一人で行い,事務所の諸経費といった小口現金は,無くなる都度,出納係が被告人から用意してもらっていた。そのため,兄のC25は,被告人に正式な経理担当者を置くよう進言したが,被告人は応じなかった。
(ウ) 被告人は,A1に,「いろいろお金が要ります。後援会組織も拡充していかなければいけないので金が掛かりますからよろしくお願いします。」,「お金が幾らあっても足りません。」などと言って,資金提供を要請した。A1は,B1設計以外のスポンサーを五,六社被告人に紹介し,被告人個人への寄附という形で,各社から合計二,三千万円の資金提供を受けた。
(エ) 平成15年8月11日受付の選挙運動費用収支報告書には記載されていない業者の被告人への出資金が存在した。また,選挙が終わった後,各地の後援会支部等から諸費用等の支払請求が後援会本部にきたときには,後援会本部はその支払への対応が求められる立場にあった。
(オ) 被告人は,平成15年7月15日,選挙終盤を迎えて,諸費用の支払のため,B20銀行B21支店から1000万円を,返済期日平成16年1月30日,年利率1.875パーセントで借り入れた。被告人は,平成16年1月29日,同銀行に元利金を一括返済した。
イ 以上の事実は,A1証言,A11証言並びにC25及びC26の各供述調書に基づくものであるところ,各証言部分及び供述は,いずれも具体的であり,不合理な点や相互に矛盾する点もなく,いずれも信用できるものである。
ウ 弁護人の主張に対する検討
弁護人は,被告人が選挙の費用に不足する状況ではなかったし,B20銀行B21支店からの1000万円の借入れは,選挙費用についての予備費的な借入れであり,実際に後援会に使用したのは500万円だけで,残りの500万円は手元に残った旨主張する。
しかし,前記認定の事実によれば,選挙運動費用収支報告書に記載がないからといって,それが直ちに,記載された金銭以外の収支金が全く無かったとまでいうことはできない。
また,自己資金や寄附金等で選挙活動資金が賄えたというのであれば,そもそも,選挙期間中に,金利の負担を負ってまで被告人自身が1000万円もの多額の借入れをする必要性は全くなく,また,500万円を使用せず手元に残ったのであれば,金利を負担することのないよう返済期限を待たずに内入弁済するのが通常と考えられる。
したがって,上記弁護人の主張は採用できない。
エ 小括
前記認定の事実に加えて,既に判断したとおり,被告人は,A1に度々資金提供を要求し,A2から,選挙直前の時期である平成15年5月下旬及び7月上旬の各500万円を含め,合計1700万円の資金提供を受けていることなどを併せ考えれば,弁護人が主張するところを踏まえても,平成15年7月の知事選挙において,被告人は選挙活動資金に窮していたことが認められる。
3  被告人による2000万円返還の経緯
(1) 検察官の主張
被告人は,A2から事前収賄に係る2000万円を収受した後,平成15年8月下旬ころから平成17年年末にかけて,A2に対して,3回にわたり合計2000万円を返還したが,いずれも,知事就任後の事情変更によるものである。すなわち,知事当選後,今後長期にわたり県政を維持させるべく,当選前には支援のなかった地元の業者を優遇する路線に軌道修正し,それまでのA2に対する金銭的な依存関係を徐々に変えて距離を置こうとするため,まず,余剰資金から1000万円を返還したが,その後,A2から資金の返還要求が強くなされたことにより,やむを得ず平成17年中に2回にわたって1000万円を返還したものである。
(2) 弁護人の主張
被告人は,平成15年8月11日,知事公舎において,A2から渡された2000万円をそのままA2に返還しようとしたが,A2が全額の受取を拒否して一部しか受け取らなかったため,その場での返還額が1000万円になったものである。また,残りの1000万円は,その一,二日後にA1と会い,A2に返還してほしい旨を依頼してA1に託した。
(3) 判断
ア 当裁判所が認定した事実
関係各証拠によれば,被告人がA2に,合計2000万円を返還した経緯は,下記のとおりであったと認定できる。
(ア) 平成15年7月30日から一,二か月経ったころ,知事公舎で,被告人がA2に,1000万円が入った茶封筒を差し出して,「これを持って帰ってください。」と言った。A2が,「差し上げたものですから。」と押し戻すと,被告人は,持って行ってもらわないと困るというような顔をした。A2は,被告人に提供した現金の一部をここで返還されても,県発注の測量設計業務の受注に便宜を受けられることに変わりはないとの思いや,被告人の気分を害してもまずいという思いから,「分かりました。」と言って,茶封筒をそのまま受け取った。
(イ) 平成17年8月ころ,B1設計の受注が増えないことやフィリピンの事業の失敗で資金繰りに困ったことなどから,A2は,A1に対し,対立候補への寝返りを示唆し,これまで被告人に提供した資金の返還を要求した。A1は,「早まった行動を取ったらいけませんよ。仕事についても長期的に見てください。」などと言ってA2をなだめた。
(ウ) A1は,A2の返還要求を被告人に伝え,「早急に2000万円についてはお返ししましょう。」と言ったところ,被告人は,「一つについては直接A2さんに返しているんですよね。」と言った。A1は,被告人が既に1000万円を返したことは初耳だったので,自分の知らないところでいろいろ動きがあるのかなと思ったが,「残りの1000万円を返還しないといけない。」と言うと,被告人が,「一遍にはできない。」と言うので,A1は,「分割でもいいじゃないですか。」と答えた。
(エ) 被告人は,平成17年秋ころ,A1に500万円を持参し,A1は,それをB1設計東京本社に持参してA2に返還し,年末ころ,被告人がA1に,「これだけしかできなかったんですよね。」と言って300万円を持参したので,A1が200万円を足して500万円にし,それを東京に持参してA2に返還した。
イ A1及びA2の各証言の信用性の検討
以上の事実は,主にA1及びA2の各証言に基づいて認定したものであるので,同人らの証言の信用性を検討する。
(ア) A1証言の信用性
a A1証言の要旨
平成17年8月ころ,A2から金を返還してくれないかという話があった。私は,A2に,『早まった行動を取ったらいけませんよ。仕事についても長期的に見てください。』となだめた。A2は,C23陣営と交友を深めていたことなどから,被告人にとってマイナス面の動きを始めるのではないかという危惧を持った。私は,被告人に,一連のA2の話をして,『早急に2000万円についてはお返ししましょう。』と言った。これに対して,被告人は,『実は,一つについては直接A2に返しているんですよね。』と言った。私は,それは初耳だったので,『あれ,私の知らないところでいろいろ動きがあるのかな。』と思ったけれども,『じゃ残りの1000万円を返還しなければいけないですわね。』と言った。被告人が,『一遍にはできないですものね。』と言うので,私は,『分割でもいいじゃないですか。』と言った。平成17年の秋ころ,被告人から茶封筒に入った500万円を受け取り,これを東京本社のA2に返しに行った。年末に,被告人から,『これだけしかできなかったんですよね。』と言って,茶封筒に入った300万円を出されたので,後の二つについては私に出しておいてくれということかなと思って了解し,私が200万円を足した500万円を東京本社のA2に返しに行った。その際,A2に対し,『これで最後ですね。』と念を押したところ,A2は何も言わなかった。
b 信用性
前記A1証言は,被告人との会話内容等を極めて具体的かつ詳細に述べるものである上,特段,不自然,不合理な点はない。また,被告人から,平成15年中に1000万円をA2に返還していた旨聞かされたときの心情についての証言には,迫真性も認められる。加えて,その証言内容は,平成17年にA1に対して金銭の返還要求をしたことや,2回にわたったものか,1回で一括返還されたかの違いはあるものの,1000万円の返還を受けたことを述べるA2証言とも合致する。
以上によれば,前記A1証言は信用できる。
(イ) A2証言の信用性
a A2証言の要旨
被告人がA3よりかちょっと小ぶりの茶封筒を持ってきて,『これを持って帰ってください。』と言った。私がそのとき茶封筒を持った感じでは,約1000万円くらいの現金が入っていると思った。私は,『差し上げたものですから。』というふうに押し戻したが,被告人が持って行ってもらわないと困るというような顔をした。私は,その封筒をそのまま持ち帰った。被告人が,『こんなものをもらっては困る。』というようなことを言ったことはないし,私が茶封筒を開けて,その一部だけを取り出して持ち帰ったということもない。
b 信用性
前記A2証言は具体的かつ詳細である上,その述べる経緯に特段不自然な点はない。また,被告人が差し出した現金の一部だけを取り出して持ち帰ったことはない旨の証言は一貫しており,反対尋問においても揺らぐところはない。
以上によれば,前記A2証言は信用できる。
なお,A2は,平成15年中の1000万円の返還時期につき,検察官に対する供述調書で,「私が最後に現金を差し上げた平成15年7月30日から一,二か月経ったころのことと記憶しております。」と述べていたところ,公判廷で,平成15年9月19日ころである旨供述を変えたものであるが,この点のA2証言は,第三者供賄事件の「第2 争点に対する判断」の3,(5),アで判示するとおり,自己の独自の主張を説明するために日時を後になって設定したものであって,信用することはできない。
ウ 弁護人の主張に対する検討
(ア) 2000万円の返還経緯について,被告人は弁護人の主張に沿って,「知事公舎で,A2,A8,A7と酒食をともにした際,A2がトイレに立ったのを見て,書斎の机から大型封筒を取り出して,A2に,『これは,この前持ってみえたんだけど返すと言いましたがね。こんなものもらえませんよ。持って帰ってください。』と言って,大型封筒を手渡そうとした。A2は,最初拒んで全然手を付けようとしなかったが,私が,『とにかくこんなことしてもらったら困る。』と言うと,『じゃ。』と言って,自ら大型封筒を開けて,中から1つの小型の封筒を取り上げた。それを片手に持って残りはふたの開いたまま,『これはいいです。』と私の方にまた向けられたので,もう空になったのかなと思って受け取ったら重かったので,『これも持って帰ってください。困ります。』と言ったが,A2は,『それは,もういいです。どうぞ。』と空いている片手で制止して,会食をしていた部屋に戻ってしまったので,また預からざるを得ない状況になってしまった。私としては,絶対にもらってはいけない不正な金だと思っていた。残りの1000万円については,その翌日か翌々日,A1にA2への返還を依頼し,A1がこれを承諾したので,A1に託した。」などと供述する。
しかし,A2から当選直後に提供され,受取を拒んだが自宅に置いて行ったため,やむを得ずに手元に置いていたものの,絶対にもらってはいけない不正な金であると認識していたのであるから,その日は2000万円全額をA2に返す絶好の機会であるはずで,何としても全額を持ち帰らせるのが自然と思われるのに,漫然と残りの1000万円を再び預かったというのは,不自然かつ不合理である。
(イ) また,被告人及び弁護人は,返還時期について,当初8月中旬ころと主張していたところ,後に,これを8月11日と特定するに至っているが,2000万円という大金であり,しかも賄賂性のある不正な現金の返還時期がいつであるかは,被告人にとって重要な事実であって,その記憶があいまいで変遷があるというのは不自然であり,被告人には,収受の意思を否定するために,返還時期を早めたいとの思惑があって供述を変遷させたとも考えられるところである。
(ウ) また,残りの1000万円をA1に託したとの点については,A1がこの事実を明確に否定している上,弁護人が主張するように,A1が,被告人からA2への返還を依頼された1000万円を着服したなどということは,被告人がA2に,返還の有無を確認すればすぐに発覚してしまう事柄であって,被告人を知事にするため長年支援を続けてきたA1が,被告人が知事に就任した直後の時期に,被告人との信頼関係を破壊する行為に及ぶとは考え難い。
(エ) 以上によれば,前記被告人の供述を信用することはできず,前記弁護人の主張は採用できない。
エ 小括
以上によれば,弁護人が主張するところを踏まえても,被告人は,A2に対し,平成15年7月30日から一,二か月経ったころに1000万円を,平成17年秋から年末にかけて,2回にわたり合計1000万円を返還したこと,平成15年中の返還については,被告人が,当初から1000万円のみが入った封筒をA2に渡す形で返還していること,平成17年中に返還した1000万円については,A2からの強い返還要求に応じる形で返還したことが認められる。
第3  争点(2000万円の収受の意思)に対する判断
1  当裁判所が認定した事実
関係各証拠によれば,被告人が,2000万円の資金調達を依頼した経緯や,同現金を受け取った状況は,下記のとおりであったと認定できる。
(1) 平成15年7月20日ころ,被告人は,A1に,「選挙後の終戦処理にいろいろ要りますので,2000万ほど用立てて頂けないでしょうか。」,「選挙が終われば,今までお願いしていた各地区からいろんな請求が上がってきますので,どうしてもお金が要りますのでよろしくお願いします。」などと言って,2000万円の資金調達を依頼した。
(2) その依頼を受けたA1は,金額が高額で,県内業者に依頼するのは無理だと考え,これまで何度も出資してもらって信頼関係も構築されていると思ったA2に出資を依頼することにした。そして,A2に,「選挙の後始末で費用が掛かるんです。」,「被告人のために2000万円都合してもらえませんか。」などと言って,2000万円の提供を求めた。A2は,それまで1700万円を選挙資金として提供していたので,2000万円という金額に驚いたが,今までの分が無駄になっては困るとも思い,被告人の当落が判明するまで返答を留保した。
(3) 同月27日の知事選挙の開票日の夜,A1と共に被告人が知事に当選したことを見届けたA2は,被告人へ2000万円を提供することを承諾した。
A1は,翌28日,被告人に電話を入れ,同月30日午後6時ころにA2と一緒に被告人方を訪問したい旨告げた。
(4) A2は,同月30日の午前中,経理部長のA10に命じて2000万円を銀行から下ろして準備させて宮崎に持参し,A1と共に被告人方へ行った。
A2は,A1から目配せで合図を受けたので,現金2000万円の入った茶封筒を取り出し,被告人に,「A1さんから言われたものをお持ちしました。お使いください。」,「我が社も被告人に懸けてきましたので,今後もひとつよろしくお願いします。」,「新しい体制になりましたんで,うちも一生懸命頑張ります。新しい流れの中で我が社も仕事が取れるようにしてください。よろしくお願いします。」などと言った。被告人は,「度々御無理を言って申し訳ありません。ありがとうございます。有効に使わせていただきます。」,「自分も知事になったことですし,自分の体制ができあがればそういう配慮は十二分にしていきます。県の関係部署にも営業をずっと続けてください。進出した県外企業なので,地元の企業とも仲良くやってください。今後ともご支援よろしくお願いします。」などと言って,拒むことなく茶封筒を受け取った。
2  A1及びA2の各証言の信用性の検討
以上の事実は,A1及びA2の各証言に基づいて認定したものであるので,同人らの証言の信用性を検討する。
(1) A1及びA2の各証言の要旨
ア A1証言の要旨
(ア) 平成15年7月20日ころの早朝,被告人方へ選挙情勢の最終的な分析の話をしに行った帰り際,被告人から,「選挙も終盤になりまして,選挙後の終戦処理についていろいろ要りますので,2000万円ほど用立てて頂けないでしょうか。」,「選挙が終われば,今までお願いしていた各地区からいろんな請求が上がってきますので,どうしてもお金が要りますので,よろしくお願いします。」と言われて,資金調達の依頼を受けた。私も,今までに数多くの選挙にタッチしてきたので,被告人からそのように頼まれて,特段予想外という感じはなかった。若干,来るものが来たかなというような受け止め方をした。
(イ) 私は,金額が高額で,県内業者に依頼するのは無理だと考え,これまで何度も出資してもらって信頼関係も構築されていると思ったA2に出資を依頼することにした。そして,B22の事務所にやってきたA2に,「選挙の後始末で費用が掛かるんです。」,「被告人のために2000万円都合してもらえませんか。」と言って提供を求めた。
(ウ) 7月30日,被告人方において,雑談が終わった後,私がA2に目配せをして,2000万円を差し上げるサインを送った。すると,A2は,かばんから2000万円の入った茶封筒を取り出し,「おめでとうございます。A1さんから言われたものをお持ちしました。お使いください。」と言って,被告人に茶封筒を差し出した。被告人は「度々御無理を言って申し訳ありません。ありがとうございます。有効に使わせていただきます。」と言って茶封筒を受け取った。A2が,「仕事を取れるようによろしくお願いします。」と頼むと,被告人は,「自分も知事になったことですし,自分の体制ができあがればそういう配慮は十二分にしていきます。県の関係部署にも営業をずっと続けてください。進出した県外企業なので,地元の企業とも仲良くやってください。今後とも御支援よろしくお願いします。」などと答えていた。
(エ) 被告人自身が要請したお金なので,気持ち良く受け取った。被告人とA2との間で,金を受け取る受け取らないの押し問答になったことは全くない。
イ A2証言の要旨
(ア) 私は,A1から2000万円という高額の出資の依頼を受けて驚き,それまで1700万円も選挙資金として提供した分が無駄になっては困るとも思い,被告人の当落が判明するまでは返答を保留することにした。
(イ) 私は,投票日である7月27日の夜,ホテルでA1と共にテレビの開票速報を見ていたところ,被告人の当選確実が伝えられた。その後,被告人からA1の携帯に電話があり,A1に代わって電話に出た私は,被告人に祝いの言葉を述べた。電話の後,A1が,「この間の話の2000万円お願いできますか。」と言ったので,私は,「分かりました。お出しします。」と答えた。
(ウ) 私は,A1から,7月30日の午後6時ころ,a町の被告人方で2000万円を渡すことを聞き,7月30日の午前中に,経理部長のA10に命じて2000万円を銀行から下ろして準備させて宮崎に持参し,A1と共に被告人方へ向かった。
(エ) 7月30日午後6時過ぎころ,被告人方において,A1がちょっと目配せをしたので,「A1さんから言われたものをお持ちしました。」と言って,かばんから茶封筒を取り出した。被告人に茶封筒が手渡される際,私が,「新しい体制になりましたんで,うちも一生懸命頑張ります。新しい流れの中で我が社も仕事が取れるようにしてください。」と言ったのに対し,被告人は,「分かっています。」,「大分お世話になりました。」,「協力いろいろとありがとうございました。」などと答えた。
(オ) 被告人との間で,茶封筒を受け取る受け取らないの押し問答は全くなかった。
(2) A1及びA2の各証言の信用性
ア 前記A1及びA2の各証言は,いずれも具体的かつ詳細である上,被告人が謝辞を述べながら拒むことなく2000万円を受領したことや,被告人との間で押し問答になったことは全くなかったことなど,重要な部分で合致しており,相互に補強し合っている。また,その核心部分において,反対尋問に対しても何ら揺らぐところがない。
イ A1が述べる,被告人から資金調達の依頼を受けた際の心情や,A2に出資を依頼しようと決める心理過程等には,迫真性も認められる。
そして,被告人がA1に,選挙終盤に選挙活動費の清算等のいわゆる終戦処理のために資金調達を依頼し,その依頼を受けたA1がA2に出資を求めた旨述べるA1の証言は,平成15年7月の知事選挙において,被告人が選挙活動資金に窮していたことや,A2との間で資金的依存関係にあったこととも符合する。
また,A1は,本件証人尋問当時,事前収賄に係るA1自身の刑事裁判において,収賄側ではなく,贈賄側として2000万円を仲介した旨主張していたところ,被告人から資金提供を依頼されてA2にこれを頼んだ旨の証言は,上記主張との関係で不利益に働きかねないものであるのに,あえてそのように証言していることに照らせば,A1は,自らの記憶のままを証言しているものと考えるのが自然である。
ウ A2については,A1から2000万円の提供を要求されてから出資を決意するまでの心理過程は迫真性が認められるし,A2は,公訴時効により2000万円の贈賄については起訴されておらず,この点に関して殊更に虚偽の証言をする理由はない。
エ A1証言の信用性に関する弁護人の主張について
(ア) 弁護人は,①被告人がA1に2000万円を依頼したとする時期につき,A1は,証言の中で,投票日の三,四日前と述べていたのを投票日の1週間前ころかもしれないなどと,理由なく証言を変遷させていると主張する。
しかし,この点は,A1証言の核心部分の信用性に影響を及ぼすような供述の変遷とは認められない。
②A1が,当選直後に,A2から2000万円提供の承諾を受けながら,被告人にそのことを一切伝えておらず,被告人もA1に,金策の首尾を問い合わせていないというのは不自然であると主張する。
しかし,A1が,「被告人からの資金調達依頼に対して,自分は『分かりました。』と了解した訳であるし,これまでA2から被告人へ度々資金提供をしていたことからすれば,自分とA2が共に被告人宅へ伺うと電話で言えば,被告人も,当然,2000万円を持って行く用件であることが分かると思った。」と述べるところは,十分理解できるものであって,不自然ではない。
③被告人は,平成15年7月15日にB20銀行B21支店から借入れした1000万円のうち,500万円を選挙用に使用したにすぎないのであるから,被告人が選挙の後始末に2000万円を必要としていたことはないと主張するが,選挙活動の清算等の必要性から,金融機関からの借入れとは別に,被告人がA1に資金調達を依頼したとしても,不自然,不合理とはいえない。
④A1は,被告人から依頼を受けていないのに,A2には終戦処理費用として2000万円を被告人から頼まれたとうそをついて,A2に提供させ,将来,これを被告人から取り上げる意図があったものであると主張する。
しかし,突然,面前に2000万円を差し出された被告人が受取を拒んだら,A1のもくろみはすぐに消えてしまうし,A2が被告人にいきなり,「A1さんから言われたものをお持ちしました。」などと言えば,被告人は,A1がA2に何を言ったのか,2000万円の趣旨が何なのか疑問に思い,A1に質すことになると思われ,そうすると,A1の欺罔行為が容易にばれることは想像に難くなく,A1が,被告人が当選した直後のこの時期に,被告人との信頼関係を無にするような行動に出るとは考え難い。
(イ) また,弁護人は,被告人への2000万円の提供状況について,寿司が出る前だったのか後だったのか,A2が被告人に直接手渡したのかA1を介して手渡したのかといった点で,A1証言とA2証言には齟齬がみられる上,捜査段階の供述からも変遷しており,両証言は,信用できない旨主張する。
しかし,両者の証言は,被告人が拒むことなく2000万円を受領したとの核心部分において揺らぐことなく一致しており,弁護人の指摘する齟齬や変遷は,その核心部分の信用性を左右するものではなく,実況見分調書が作成されていないことも信用性に影響は及ぼさない。
オ 以上によれば,前記A1及びA2の各証言は信用できる。
3  請託の存在と内容
(1) 知事選前のA2から被告人への現金供与の状況については前記(第2,1,(3),ア)で,また,被告人が2000万円の資金調達を依頼した経緯や現金を受け取った状況については前記(第3,1)で認定したとおりである。
(2) それによれば,A2は,県発注業務を受注できない現状を打破しようと考えて被告人に対し,平成15年選挙戦前に少なくとも1700万円を提供し,被告人が知事に当選した直後に,更に2000万円もの資金提供をしたものであるところ,単に「指名に入れてもらう」だけでは,売上げの上昇にも被告人への投下資金の回収にもならないことから,「落札・受注」について,B1設計に有利便宜な取り計らいをするよう依頼したものとみるのが自然である。
また,投票前の合計1700万円の授受の際及び当選直後の本件2000万円の授受の際など,A2は,「仕事が取れるようにしてほしい」旨を繰り返し被告人に依頼している。
さらに,A2は,取調べ検察官に,「私は,これまでにも被告人へ現金を差し上げてきましたが,その際にB1設計の宮崎県発注の測量設計業務等の受注額が増えるように便宜を図ってくださいとお願いしてきましたし,当選のお祝いの席でもありましたので,改めてくどくどと同じお願いを繰り返すのもどうかと思っておりました。その一方で,私としても,これまでに差し上げた1700万円に加え,更に2000万円も差し上げるわけですので,被告人から宮崎県発注の測量設計業務等の受注額を確実に増やしてもらえるよう改めて言質を取っておきたいという気持ちもありました。そのような思いの中で,被告人が,前任のC27知事時代の慣習を変えていくと言ってくれましたので,私は,それに合わせるように,『一生懸命頑張っていきますので,新しい流れの中で,我が社も仕事が取れるようにしてください。よろしくお願いします。』などと言って,業界内で疎外されてきたB1設計が,これまで以上に宮崎県発注の測量設計業務等を受注できるように便宜を図ってもらいたいとお願いしました。」などと詳細かつ具体的に供述している。
(3) 以上に照らせば,本件2000万円を提供した際,A2が被告人に対し,その見返りとして,県発注に係る測量設計業務等をB1設計が受注できるよう有利便宜な取り計らいを受けたいという内容の請託をしたものと認められる。そして,A2からの請託を受けた際の被告人の返答内容を考えれば,被告人は,その請託の趣旨を十分認識した上で,これを受諾したものと認められる。
(4) なお,弁護人は,この請託につき,A2の「指名のお願いをしたもので,受注割り振りまでは考えていなかった。」などとの証言に依拠して,指名を増加してもらうことを依頼したにすぎない旨主張するが,採用できない。
4  弁護人の主張に対する検討
(1) 2000万円の授受の状況
弁護人は,2000万円の授受の状況につき,当選祝いに訪れたA2から提供された現金入り封筒の受取を拒否したが,A2が無理矢理封筒を置いて帰った旨主張し,被告人も,「A2が,帰り際に,『当選祝いです。』と言って,かばんから茶封筒を出してテーブルの下から押しやった。私は,『現金ですか,こんなの要りませんよ。迷惑です。持って帰ってください。』と言って押し返した。迷惑な話で,受け取る気持ちは全くなかった。二人が帰るということで立ったので,私も立って,A2に,『これは困る。持って帰ってください。』と部屋の出口まで持って行ったが,『いやいやいいです,お祝いですから。』と言って拒否し,A1も,『被告人,当選祝いじゃがな,そんげ言わんで受け取っちょきない。』と言い,二人は,逃げるように私の家を出た。」などと供述する。
しかし,被告人,A1,A2の3人しかいない被告人方の居室において,わざわざテーブルの下から現金を渡そうとするなどということは不自然であるし,被告人に,真に受領の意思がないのであれば,どのようにでも,A2に突き返す方法があったと考えられる上,A1及びA2の合致した証言内容にも照らせば,上記被告人の供述を信用することはできず,上記弁護人の主張は採用できない。
(2) 収受意思について
弁護人は,被告人に2000万円を収受する意思がなかったことを裏付ける事実として,①県知事に当選した直後の被告人が,大金が入っていると思われる大型封筒を提供されて,ちゅうちょすることなくすんなりと受け取るというのは経験則に反する,②被告人は,いきなり大金を出されて,突然の成り行きにうまく対応できず,いったん預かるという中途半端な態度を取るなどしてしまったものである,③2000万円受領後間もなく,被告人は,A2に直接1000万円を返還しているが,被告人がA1に,資金調達を要求しながら,希望どおり2000万円を受領した後,一部でも返すというのは理屈が通らず,被告人の収受意思の不存在を裏付けている旨主張する。
しかし,①及び②については,既に判断したとおり,被告人がA1に,2000万円の資金調達を依頼したと認定できるのであって,その主張の前提を欠く。③については,被告人がA2に2000万円を返還した経緯は,既に判示したとおりであるところ,平成15年に,1000万円のみをA2に返還した後,平成17年になってから,A2の強い要求に応じる形で残り1000万円を返還したという返還の経緯は,被告人に2000万円を収受する意思がなかった旨の弁護人の主張と明らかに整合しない。
被告人が,平成15年中にA2に直接1000万円だけ返還したのは,被告人が,収受の意思を持って2000万円を受領した後,余剰金が生じたり,A2との関係について何らかの事後の事情が生じたりしたことから返還したとも考えられるのであり,2000万円について被告人が収受の意思を有していたとの判断に影響を及ぼすものではない。
(3) そのほか,弁護人が縷々主張する点を検討しても,いずれも採用できない。
5  結論
よって,弁護人が主張するところを踏まえても,検察官が主張するとおり,選挙終盤を迎えて,選挙活動費の清算等のいわゆる終戦処理費用のため,被告人がA1に2000万円の調達を依頼し,これを受けてA1がA2に資金調達を求めたこと,上記依頼により,A2が被告人に2000万円を提供し,その際,被告人に対し,その見返りとして,県発注の測量設計業務等をB1設計が受注できるよう有利便宜な取り計らいを受けたい旨の請託をし,被告人がその請託を受諾して,謝辞を述べるなどしながら,これを拒むことなく受領したことが認められ,被告人に,事前収賄に係る2000万円の現金を収受する意思があったことが優に認められる。
【第三者供賄事件(判示第2)の争点と判断】
第1  争点
①被告人が,A2に対し,A1への現金供与を依頼したか否か。
②その際の請託の有無とその内容
1  争点①について
(1) 検察官の主張
被告人は,知事選後,A1を後援会の統括事務局長に就任させたものの,後援会幹部らによる反発からA1を辞任させることを余儀なくされ,A1に対して金銭的清算として5000万円を提供したが,これのみではA1の意趣返しを防ぐことができず,被告人において,A1への継続的な利益の供与が必要であった。そこで,被告人は,平成15年10月4日に知事公舎において,A2に対し,A1を口止めする目的で,A1に対する顧問料あるいは給与名目による継続的な現金の供与を依頼した。
(2) 弁護人の主張
被告人は,A1の事務局長辞任問題については,A7らに善後処理を一任したので,A7らとA1がどのような交渉をしたのか知らない。被告人は,5000万円の決定過程に関与しておらず,A8やA7らがいる場でA1に5000万円を供与することになったと知らされたものである。被告人がA2に,A1への給与名目等の現金供与を頼んだことはないし,A2がA1に,合計1026万円もの現金を支払ったことも知らない。A2は,自らの経営判断によってA1を雇用したものである。
2  争点②について
(1) 検察官の主張
被告人から前記依頼を受けたA2は,その見返りとして,県発注に係る測量設計業務等をB1設計が受注できるよう有利便宜な取り計らいを受けたい旨及び,県発注に係る公共工事の入札に際し,A2が被告人に対して口利きをするゼネコンが受注できるよう有利便宜な取り計らいをしてもらいたい旨の請託をし,被告人はこれを受諾した。
(2) 弁護人の主張
検察官が主張する10月4日の知事公舎におけるA2からの請託はなく,被告人が受諾したこともない。
第2  争点に対する判断
1  当裁判所が認定した事実
関係各証拠によれば,被告人がA2に対し,A1への現金供与を依頼した経緯及びその状況等は,下記のとおりであったと認定できる(なお,月日については,特に記載がない限り,平成15年である。)。
(1) A1は,平成15年の知事選挙の際,自己資金から選挙活動費用として現金を必要な都度被告人に提供し,同金額は千数百万円に上っていた。また,A1が知人から借りた現金のうち合計約3000万円を被告人に提供した。
(2) 平成15年の知事選挙の投票前から,被告人は,A1に対し,「今のA11事務局長は選挙が終われば辞めていただくようになっていますので,その後がまとして是非来てください。」と言っていた。
(3) 知事選後,被告人は,A1に後援会の統括事務局長への就任を要請した。
A1は,知事の後援会事務局長といえば,スーパーゼネコンの幹部や地域の有力者があいさつに来るし,県発注公共工事の指名受注の働き掛けの窓口であり,業者から知事への賄賂の金を集める窓口でもあって,利益の一部が懐に入ると考え承諾した。
一方,A2は,ゼネコンの仕切り役をしたいとの希望を持っていたことから,8月ころ,株式会社B23九州支店のC28や株式会社B24九州支店のC29らゼネコン関係者と接触し,公共工事でのゼネコンの仕切り役の知識を得ていた。
(4) 8月下旬,A1が被告人後援会事務所に行って,統括事務局長としての仕事をしようとしたところ,後援会の幹部らから反発を受けた。被告人は,後援会幹部から,A1を後援会から排除するよう強く求められた。
(5) 9月上旬,被告人は,A1に対し,A1がこれまで被告人のために工面して提供した資金の整理を行う旨話し,また,「裏でちゃんとつながっとればいいじゃないですか。」,「本来ならば事務局長として処遇していくつもりでしたので,そのことについては辞めた後もいろいろ考えさせていただきます。」と述べて後援会から去るように説得し,A1もこれを了承した。
(6) 9月上旬ころ,被告人は,A1に統括事務局長を辞任させるに際し,A1との間で,これまでA1が被告人に提供してきた資金を清算する約束をしたことから,B25社長のA8被告人後援会会長に電話をして,A1に統括事務局長を辞めさせるためにどうしても5000万円要るので貸してほしい旨述べて資金ねん出を依頼した。9月11日には,A7県議会議員もA8宅を訪れて,A1に渡す5000万円の調達を依頼した。また,被告人は,A7やA8とも協議して,A7を介するなどしてA2に,A1へ提供する5000万円については,A8が銀行から借り入れた後,知事である被告人の名前を出すことを避けるため,それをA2に貸したことにすることや,A2がA1に5000万円を届けることを依頼した。
(7) 9月19日ころ,知事公舎で,被告人,A7,A8とA2が会合し,5000万円をA2がA8から借りることとし,その返済原資には,A2がゼネコンに対して県発注の公共工事の口利きをし,その口利き料を充てることにした。
9月25日,A2は,B1設計総務部長のC30に指示して,A&Nの事務所を開設した。
(8) 9月30日,A2がA1に5000万円を持参すると,A1は3000万円だけを受け取った。A2は2000万円を持ち帰ったが,そのことを被告人やA7に話さなかった。
(9) 10月4日の知事公舎での出来事
ア 10月4日,知事公舎で,A2は,被告人とA7に5000万円の借用書の正副2通に署名させた。借用書によれば,4年間の利息総額は434万3204円であり,元利総額を4回に分割し,平成16年9月30日から平成19年9月30日まで毎年9月30日に,それぞれ1300万円ないし1400万円余りを返済するというものであった。
イ その後,同会合では,A1が被告人の対立候補であったC23に被告人に不利な情報をリークするなどの意趣返しに及ぶ可能性等が話し合われ,被告人が,「5000万円だけではA1のことがちょっと心配だな。」,「C23の方と親しくなってもらっては困るな。」などと言い,A7が,「A1は知事のことを知り抜いているからな。」などと言ったところ,被告人がA2に,「重ね重ね申し訳ないけれども,あなたのところでA1さんの面倒を見てくれないですか。」と言った。
ウ これを聞いて,A2は,「A1は,技術面でも営業面でも会社の役に立ちそうにない。本来は被告人が5000万円のほかに口止め料を払ってA1の面倒を見なければならないにもかかわらず,B1設計がA1を雇う形にするなどして被告人に代わってA1の面倒を見ることを頼んできた。」,「また更に私と会社に頼んでくるのか。虫のいい,ずうずうしいお願いだ。」などと思った。
エ A2が被告人に,「そうであれば,我が社をこれまで以上に指名に入れていただけますか。仕事が取れるようにお願いします。」などと言うと,被告人は,「分かりました。そういうことはA1に任せてあるので,今後はA1の方にしてください。」と言って了承したので,A2は,A1に金を払うことを決めた。
オ 被告人が,「B1では幾らぐらい給料をもらっている人間がいるのか。」と尋ね,1か月80万円払うことを提案したのに対し,A2が難色を示すと,被告人が,「80万円で頼みますよ。」と再度頼んできたので,A2は承諾した。
カ A2は,宮崎県が発注し,10月9日に実施された「平成15年度床上浸水対策特別緊急事業」の条件付一般競争入札に先立ち,談合幹事役であるB23九州支店のC28から,同入札の本命業者としては,株式会社B26が妥当であり,その旨被告人に口利きをしてほしいと依頼されていたことから,A2は,被告人に,「5000万円の返済の件もありますので,今回,実際案件が動きますのでお願いします。」と言って,ゼネコン関係者から問い合わせがあったらA&Nの電話番号を言うようになどと,ゼネコンへの口利きの具体的な対応方法を説明して,その対応を依頼した。被告人は,その電話番号をメモして,「分かっていますよ。」と了承した。
(10) 10月6日か7日ころ,C28は,A2から教示された電話番号に電話を掛けて被告人と話し,被告人の天の声を確認できたことから,それを株式会社B26の担当者らに伝えた。同事業は,同社が落札した。その後,A2は,株式会社B26の担当者から,工事代金の約1パーセントに相当する口利き料240万円をC30を通じて受け取った。
(11) A2は,宮崎県が発注し,10月15日に実施された「上岩戸大橋上部工橋梁工事」の条件付一般競争入札に先立ち,株式会社B24九州支店のC29及び談合幹事役であるB27株式会社九州支店のC31から,同入札の本命業者としては株式会社B28が妥当である旨被告人に口利きをしてほしいと依頼され,被告人との間で,株式会社B28を本命業者とする旨の話をした。
C31は,入札の数日前,被告人に電話を掛け,「福岡のC31と申します。今回,県から上岩戸大橋の工事が出ているんですが,何か参考になる御意見はありますか。」と話したところ,被告人は,「A&NのC30さんが詳しいので,そちらに電話してください。」などと告げ,A&Nの電話番号を教示した。C31は,同電話番号に電話を掛け,C30から,株式会社B28が本命業者である旨の被告人の天の声を代弁されたことから,それを同社の担当者に伝えた。同事業は,同社が落札した。その後,A2は,株式会社B28の担当者から,口利き料1000万円をC30を通じて受け取った。
(12) 10月中旬,A2は,A1を訪ね,「うちで雇うことになりました。給料は80万円です。今月から支払います。」などと言った。
(13) その後,A2は,B1設計東京本社で,管理部経理部長のA10に,「被告人知事が,A1という男に支払わなければならない金がある。被告人の代わりにうちで面倒を見る。ほかの社員に知られたくないお金だ。毎月A1に80万円を支払うが,どういう名目で振り込んだらいいか。」などと相談したところ,A10が,B1設計が業務委託契約をA1と締結したという体裁にして,業務委託名目で振り込むことを提案したので,A2は,承諾して10月分から振り込むようにA10に指示した。A10は,平成15年10月31日から平成17年5月24日まで,20回にわたりA1の口座に合計1026万円を振り込んだ。その間の平成15年末か16年初めころ,A2がA10に,「A1が自分で確定申告するのは面倒だろうから,社員に対する給料という名目で振り込んだらどうか。」と提案したので,平成16年1月分から「給料」とした。
(14) 12月末,被告人は,地元業者から資金を得た上,A8に5000万円と利息金を返還した。
(15) A2は,B1設計の県発注事業の受注が思うように増えないことなどから,被告人やA1の了解等なく一方的に,A1への送金を平成16年12月分から9万円に減額し,平成17年5月分を最後に振込みをやめた。
2  上記の各証言及び供述調書の信用性の検討
(1) A1について
ア A1の証言は,被告人からの依頼を受けて後援会事務局長に就任したものの,辞任することを余儀なくされた経緯等に関し,具体的かつ詳細に述べている上,その内容は,A11,A12,A7,A8らの証言とも概ね符合している。また,知事選挙の際の被告人に対する資金提供の内容についても,詳細かつ具体的に証言しており,その金額を偽る理由や動機も特に認められない。
イ また,A1が検察官調書において,統括事務局長の地位について述べるところは,A1が国会議員の秘書を務めたり,県政に係る政治活動に携わってきたものであり,その経歴からすると国会議員や県知事の後援会の実体を知っていたと認められ,その経験や知識に基づいて供述したものと考えられる。
ウ 弁護人は,A1は,知人から5000万円を借り,そのうち約3000万円を数回に分けて被告人に融通した旨を証言しているが,5000万円もの大金を借用書もなく,担保も取らず貸し付けるなどということはあり得ないと主張するが,被告人自身が,平成15年の知事選前に,A1から,今までの指導料として3000万円を返してくれと言われたことがある旨供述していることや,事務局長辞任についての話し合いの際にも,A1から3000万円を要求されたと供述していること,選挙の裏資金の貸し借りであることからすれば,借用書や担保を取っていないことが必ずしも不自然とはいえないことに照らせば,A1が知人から借り入れた分の3000万円を,被告人へ融通したことがあったとみても不自然ではない。
また,A1は,自己資金からも約2000万円を被告人に提供した旨を証言しているが,A1が事実,知人からの3000万円と自己資金からの2000万円の合計5000万円を回収しなければならないなら,A2が5000万円を持参した際に,そのうち2000万円をA2に与えることはあり得ないと主張するが,A2がA1に5000万円を持参したころは,事務局長を辞任に追い込まれるなど,A1と被告人との関係がぎくしゃくした状況にあったことや,A1が,「後で考えてみると,5000万円は縁切りという気持ちも含めたお金なのかなと思った。」などと証言していることに照らせば,A1が,5000万円が提供されたとき,それを全額受領した場合のその後の自己の立場に不安を感じて,とっさに,知人からの借入れ分で特に返還を要する3000万円のみを受け取り,A2に2000万円を渡すことによって,A2に対する何らかの影響力を残そうとしたものともみることができるのであって,必ずしも不合理なものではない。
したがって,弁護人指摘の事実は,A1証言の信用性を揺るがせるものではない。
エ 以上によれば,A1の証言及び供述調書は信用できる。
(2) A2について
ア A2の証言は,具体的かつ詳細であり,特にA1への現金供与を依頼された際の自らの心情を述べる部分には,体験した者のみが語る迫真性も認められる上,その内容に不自然,不合理な点は見当たらない。また,被告人とA7が,A1の今後の処遇を協議した後,A2に対して,A1への現金供与を依頼した旨の証言は,A1の事務局長辞任の経緯や,A1の辞任に際して被告人とA1との間で話し合われた内容とも符合する。
イ A2が検察官調書において,請託の状況や振込金の趣旨について述べるところは,内容が具体的であり,事実関係の流れも自然である。また下記で検討するA7の検察官調書とも,被告人がA2にA1の面倒を見てくれるよう頼んだことや,これを受けてA2が被告人に,仕事が欲しい旨やゼネコンの口利きへの対応を頼み,被告人がこれを了承したことなど重要な部分で合致している。さらに,被告人からA1への現金供与を依頼されたという点は,B1設計東京本社管理部経理部長のA10が「A2から,被告人に代わってA1にお金を振り込むように被告人に頼まれて,うちで面倒を見ることになった旨の話を聞き,どのような形で振り込んだらいいか相談された。」と証言するところにも裏付けられている。
ウ 以上によれば,A2の証言及び供述調書は信用できる。
(3) A7について
A7は,検察官調書において,請託の状況について前記認定した趣旨の供述をしていたところ,公判廷で,これを翻し,「10月4日は,5000万円を渡してその後の報告のときだから,被告人がA2に,A1のことをよろしく頼むと更に言う可能性は薄い。」,「この日,自分は酒に酔った状態であり,A2が被告人に,70万円払いますと唐突に言ったことは覚えているが,それに対して被告人がどういう話をしたのか,どういう態度だったのか全然記憶がない。A2がゼネコンの件の対応を被告人に頼んで,電話番号を教えたという場面も記憶にない。」などと証言する。
しかし,A7は,5000万円問題の解決に当たって,中心的な役割を担っており,A1に対する今後の処遇や5000万円の返済原資といった重要な問題について,強い関心を有していたと考えられるところ,これらに関する協議についての記憶がないというのは大変不自然である。A7は,被告人の選挙対策本部長を務めるなど,被告人と親密な関係にあったことから,公判廷で,被告人に不利となる事実を殊更あいまいに証言したものと推認せざるを得ず,上記証言は信用できない。
一方,A7の検察官調書の内容は,不自然な点はない上,A2の証言とも合致して相互にその信用性を補完し合っていることからすれば,その信用性に関して弁護人が縷々主張する点を踏まえても,信用できるものである。
(4) A8について
A8は,検察官調書において,5000万円の返済協議の状況について前記認定した趣旨の供述をしていたところ,公判廷でこれを翻し,5000万円の返済協議の状況については詳しく覚えていない,口利き料という言葉は聞いたことはない,被告人の権限でゼネコンに工事を受注させ,受注したゼネコンからのリベートでA2が5000万円を返済していくという事実はなかった旨述べた。
しかし,A8は,当時,被告人後援会宮崎県連合会の会長であり,自ら被告人のために5000万円を用立てた者であるところ,その5000万円の返済原資の話合いに直接関与したことや,そのねん出方法が知事自らがゼネコンの口利きに関与するという表に出せない重大な事柄であることからすると,公判廷ではありのままの証言をためらったものと認められ,その信用性は乏しい。
一方,検察官調書の内容は,話合いの流れとして自然であり具体的であって,弁護人が主張する点を踏まえても,信用できるものである。
3  弁護人の主張に対する検討
(1) 弁護人は,A1の事務局長辞任問題について,被告人は,A7らに善後処理を一任していた旨主張し,被告人もそれに沿って,「平成15年8月11日ころ,A1から,突然,後援会事務局を手伝おうという話が出た。私は,『事務局長にはA11さんがいらっしゃいますから結構です。』などと断ったが,A1が,『じゃ,統括事務局長でどうだろうか。』と引かず,窮余の一策と思って,『それじゃ顧問でどうですか。』と提案したが,A1は了承せず,その場は,『後援会に了解を取らなければならない。』と言って別れた。その後,A1が勝手に事務所に乗り込んで後援会の事務局長の名刺を作らせ,それを持ってあいさつ回りをしているなどと聞いてびっくりした。私がA1と会って,『後援会も駄目だと言っている。』と言うと,A1から,『3000万円ぐらいをもらわないと困る。』と言われた。その後,A7から,A1問題は自分たちに任せるように言われたので,A7らに善後処理を一任した。このとき,A7に対して,A1から3000万円を要求されたことについては説明していない。」などと供述する。
しかし,被告人の了承もないまま,A1が勝手に後援会に乗り込んだ上,事務局長の名刺を事務局員に作らせ,それを持ってあいさつ回りを始めるなどということは,A1においても,当然に被告人や後援会とトラブルになることが予想できるものであって,余りに不自然で考え難い。また,被告人自身も,A1から3000万円を要求された旨供述するように,A1を辞任させるに当たっては,それまでの相当期間にわたってA1が被告人を知事に当選させるべく政治活動や選挙運動において協力してきた事情を踏まえて,被告人とA1との間の金銭問題をも解決することが不可欠であったのに,これらの事情を説明することもなくA7らに善後処理を一任したというのも不自然で不合理である。これらに加えて,A11やA12といった後援会関係者の供述内容も併せ考えれば,上記被告人の供述を信用することはできず,上記弁護人の主張は採用できない。
(2) 弁護人は,被告人は5000万円の決定過程には関与しておらず,A7らから事後報告を受けたものであり,ゼネコンの口利きをして5000万円の返済に充てるとの計画にも関与していない旨主張し,被告人も,「A7らに,A1問題を一任したが,その際,A1に払う金額の交渉や金額の決定は頼んでいない。その後,9月11日ころに,A7から電話があって,『A8会長にお願いしてきたから,よろしくと一言言っておいてくれ。』と言われたので,A8に電話をして,『よろしくお願いします。』と言った。A7やA8との電話の中で,金額の話が出たことはなかった。9月中旬くらいに,知事公舎で,A8から,『5000万円で解決した。私とA2さんとがこういう関係になりましたので,あなたも承知しておいてください。』と,書類を見せながら言われてびっくりした。A2がゼネコンへの口利きをして5000万円を返済するなどという協議に,私が加わったことはない。その後,A2から求められた5000万円の金銭借用書には,何の抵抗もなく署名した。」などと供述する。
しかし,A7やA2が,被告人とA1のそれまでの政治的,経済的な交際問題の解決について,被告人を除いてA1と協議して5000万円で一切を解決するなどということは,不自然である。かえって,被告人がA2から求められるままに,5000万円もの大金の借用書に何の抵抗もなく署名したのは,被告人が,5000万円という金額の決定過程にかかわっていたことを窺わせるものである。さらに,A8,A7,A2ら関係者の合致した供述内容にも照らすと,上記被告人の供述を信用することはできず,上記弁護人の主張は採用できない。
(3) また,弁護人は,A1の辞任問題は,A1に5000万円を支払うことですべて清算されて解決しているのであるから,被告人が,A1の意趣返しを恐れることはあり得ず,5000万円のほかに更にA1へ現金を提供する必要はなかったので,A2に現金の提供を依頼することはあり得ないとも主張する。
しかし,A1への5000万円の提供は,選挙戦以前のA1と被告人の金銭関係を清算するものであり,他方,被告人がA1に,「本来ならば事務局長として処遇していくつもりでしたので,そのことについては辞めた後もいろいろ考えさせていただきます。」と話したところの,事務局長のポストに就いたならば得られたであろう,いわゆる「うま味」の点と,事務局長をわずか1週間程度で無理矢理辞職させられたA1の屈辱感をなだめるという点が清算されずに残っているのであり,5000万円でA1問題がすべて解決したとの弁護人の主張は採用できない。この点,弁護人は,A1が被告人の反対にもかかわらず,一方的に事務局長になろうと押し掛けたところ,反発を食って辞めざるを得なかったのであるから自業自得であり,被告人が何ら配慮する必要のない事柄であるとの立場と思われるが,その前提自体が採用できないことは既に指摘したとおりである。
(4) 請託の内容について
ア 前記第2,1,(9)で認定した事実に基づいて,第三者供賄に係る請託の内容について検討する。
(ア) B1設計の落札・受注について
A2は,被告人からA1への現金供与の依頼を受けた際,「我が社をこれまで以上に指名に入れていただけますか。仕事が取れるようにお願いします。」などと被告人に依頼している。A2は,「指名」という言葉を用いているものの,①既に判断しているとおり,A2は,受注増が期待できない現状を打破するため,知事選前から,被告人に多額の資金を提供してきたのであるから,指名に入れてもらうだけではその目的を達することはできず,「落札・受注」について,B1設計に有利便宜な取り計らいをするよう依頼したものとみるのが自然であること,②事前収賄に係る2000万円の授受の際にも,A2は,県発注の業務を受注できるようにしてほしい旨被告人に請託していること,③A2が,取調べ検察官に対し,「新たにA1さんの面倒を見ることになるのであれば,これまで以上に県発注の測量設計業務等をB1設計が受注できるように便宜を図ってくれるように念押しをしておく必要があると思った。」などと詳細かつ具体的に供述をしていたことなどを併せ考えれば,上記A2の依頼の趣旨は,現金供与の見返りとして,B1設計が確実に「落札・受注」できるようにしてほしいというものにほかならない。また,A2から請託を受けた際の被告人の返答内容も併せ考えれば,被告人も,その請託の趣旨を十分認識した上で,これを受諾したものと認められる。
(イ) ゼネコンへの口利きについて
A2は,B1設計の「落札・受注」の請託を被告人が受諾した後,被告人にゼネコンの口利き方法を教示してその対応を求めているところ,これは,A1への現金供与の見返りとして,落札業者から口利き料を得るために,A2が被告人に,ゼネコン業者間の談合において,A&Nを介して落札業者に「天の声」を知らせる役を担うように依頼したものであり,ゼネコンへの口利きの便宜を被告人に求めた請託にほかならない。そして,その際の被告人の言動に照らして,被告人もその趣旨を十分理解した上で,これを受諾したものと認められる。
イ 弁護人は,A2が5000万円の返済義務を負っているのなら,金利負担を軽減するため,A1から渡された2000万円をA8に返還するはずであると主張するが,A2は,2000万円はA1からもらったものと理解した旨証言している上,5000万円の返済については,A2の自己資金ではなく,金利も含めてゼネコンの口利きから充てると協議されていたことや,A2は,被告人とA7を保証人にする意図で,5000万円の借用書に二人の署名を取っていたことに照らせば,A2が金利負担を深刻に考える状況にはなく,また,A1からもらった2000万円を,A8への返済に充てるという発想がA2になかったとしても不自然ではない。
また,被告人が5000万円をA8に返済しているが,そのようなことをせず,A2に元利を返済させるはずであると主張するが,被告人自身が,A8に対し,5000万円を返済したことをA2に言わないように口止めをした旨供述していることや,その5000万円が地元業者によって調達されたものであることに照らせば,平成15年の年末の時期には,被告人がA2との間に距離をおこうとした状況が窺えるので,A2に元利を返済させていないことは不自然ではない。
さらに,A1排除とは無関係のA2が,5000万円もの支払義務を負うというのは経験則に反すると主張するが,A2が,ゼネコンの口利きをする大義名分を得ることをもくろんで,5000万円の返済債務を負うことについて了承したと推認できるのであって,経験則に反するとはいえない。
弁護人は,被告人はA2からだまされて,その仕組みを知らされずに,掛かってきた電話にはA2の言うとおりに応じて,あたかも「天の声」を出したような外形を作出してしまったものであり,被告人は情を知らずに利用されていただけである旨主張し,被告人も,「ゼネコンの口利きの仕組みは一切知らなかった。A2から,『明日の朝7時に,C31さんから電話があるので,東京のC30に電話するように言ってください。』と言われて,電話番号を教えられた。電話が掛かってきたときに,それをおうむ返しで言っただけである。」などと供述する。
しかし,現職の知事が,意味も分からず,一業者からの指示を受けて言われるがままに電話番号の取り次ぎを行うなどということは到底考えられない上,B27のC31との電話での会話内容や,前記認定した5000万円問題の事実経過等を併せ考えれば,被告人の供述は到底信用できず,弁護人の主張は採用できない。
弁護人は,被告人がゼネコンの口利きの仕組みを知らなかった根拠として,A2は,被告人に,どの工事でどの業者から幾らもらったかという重要な事実を報告していないことも指摘するが,被告人らが意図したところは,ゼネコンからの口利き料を返済原資として,A2がA8に5000万円を約定どおり返済するということであり,被告人が個別の工事内容や金額まで熟知する必要性まではなかったものと認められる。
ウ 以上のとおりであり,請託の存在を否定する被告人の供述や弁護人の主張は採用できない。
(5) 賄賂性の認識について
ア 1026万円の原資について
(ア) A2は,公判廷で,1026万円の原資は被告人から,「これでA1さんの面倒を見てください。」と言って渡された1000万円である旨証言するが,被告人から渡された1000万円が原資であるなら,A1への支払額につき,被告人が言うままの金額を月々A1に交付すればよく,被告人から当初毎月80万円という額の提示を受けたA2が,高いと言って難色を示したというのは不自然であるし,被告人から,「重ね重ね度々申し訳ないけれども,あなたのところでA1の面倒を見てくれないですか。」と頼まれたときに,A2が,「虫のいい,ずうずうしいお願いだ。どこまで私やB1設計を利用するんだ。」という気持ちになったというのは不合理である。
(イ) また,A1への振込において,実態のない「業務委託」や「給料」の形を作ることは,B1設計の経理処理上必要なものであったからこそ行ったものであり,それは,A2又はB1設計から金が出ていることを示すものである。
(ウ) 加えて,A2は,捜査段階の当初は,前記のような供述をしていなかったことや,本件証人尋問の当時,被告人の対向犯として贈賄罪で起訴されていた自己の公判において,賄賂性の認識を否認するなどして無罪を主張していたもので,A2には,1026万円の原資に関して虚偽の供述をする動機も認められる。
(エ) 以上からすれば,被告人からA1の面倒を見るように言われて1000万円を渡されたとのA2の証言は信用することができない。
イ A2の自主的な経営判断との主張について
(ア) 弁護人は,顧問契約はA2の自主的な経営判断である旨主張し,A2もこれに沿った証言をするのであるが,そもそもA1の経歴に照らし,橋梁の測量設計業に関する経験や知識を有するとは認め難く,また,実際に営業活動をした経歴も皆無であることや,A1とB1設計の間に正式な顧問契約や辞令交付,社員名簿の登載がなく,平成16年12月分から振込額を減額し,平成17年5月分を最後に振込を停止したのは,A2が被告人やA1と協議したり了承を得ることなく一方的にしたものであることなどに照らせば,A1がB1設計の顧問であったという実態は認められない。
また,A2が被告人へ多額の資金提供を行っていたことや,5000万円問題におけるA2の深いかかわり具合等に照らせば,A2は,A1に被告人とのパイプ役を頼むなどという迂遠な方法を取らずとも,直接自らの意向を被告人に伝えることができる関係にあったと考えられる。
これらを併せ考えれば,A1に対する顧問料の支払は単なる名目にすぎないものであったことは明らかである。
(イ) 弁護人は,A1への顧問料支払が,被告人からの依頼でされたのであれば,A2は,便宜供与を受けられない不満からA1への支払を減額,停止する際に,その旨を被告人に伝えるはずであるとも主張するが,A1への支払が被告人の依頼に基づくものであるがゆえに,A2は,便宜供与と直接対価関係にあるA1への現金支払を一方的に減額,停止して,受注が伸びない自らの不満を被告人にアピールし,便宜供与を促したものと推認できる。
(ウ) 以上のほかに,①A1の意趣返しを防ぐために,被告人が,A1への更なる現金供与が必要であると考えていたことをA2も認識していたこと,②被告人から,A1への現金供与を依頼されたのを受けて,A2が被告人に,B1設計の受注への便宜とゼネコン口利きへの便宜を依頼していること,③既に述べたとおり,A2は自らの公判審理において賄賂性の認識を否認して無罪を主張していたことなどを併せ考えれば,自らの経営判断でA1に現金を提供したとの証言は信用することができない。
ウ 以上によれば,弁護人が縷々主張する点を踏まえても,A1への1026万円の現金供与については,被告人から依頼されたA2が,提供の見返りとして,B1設計の受注とA2のゼネコン口利きに便宜を図ることを請託し,被告人がそれを受諾したことに基づいて,A2が出資して提供したものであるので,A2が賄賂性の認識を有していたことは優に認められる。なお,弁護人が指摘する,A2が,A1に対する振込金について税務処理をしていた点については,A10が,「税務当局から指摘を受けたときに説明できる形式的なものを工面する必要があった。」と証言するとおり,B1設計からの振込入金を税務処理の外観上,妥当なものにするためのものと認めることができ,A2の賄賂性の認識の判断に影響を及ぼすものではない。
一方,被告人についても,被告人自身がA2にA1への現金供与を依頼し,A2からその見返りとして,B1設計の受注とA2のゼネコン口利きに便宜を図ることを求められたのに応じたことから,A2がA1への現金供与を承諾したものであるので,A2からA1への支払が賄賂であることを認識していたことは明らかである。
(6) A1の知情性について
ア 弁護人は,A1を慰留するため,被告人がA2に,A1への顧問料の支払を頼んだのであれば,A1が,その顧問料を実質的に支払っているのは被告人であることを認識していること必要があるが,A1にその旨の告知は何らされておらず,検察官が主張する第三者供賄の構成には,問題がある旨主張する。
イ この点,A1は,検察官調書では,「A2から,毎月80万円という高額の金をもらう理由はなく,被告人が言っていた後援会事務局長の給料等の待遇に代わる金であり,顧問料は事実を隠すための見せかけにすぎないと分かっていた。」と供述していた。ところが,公判廷では,「振り込まれたお金は,自分の総合的なアドバイザーとしての対価であり,あくまで顧問料だった。被告人から頼まれてA2が支払っている金との認識はなかった。」などと供述を翻した。
ウ しかし,統括事務局長を辞任するに際して,A1が被告人から,「本来ならば事務局長として処遇していくつもりでしたので,そのことについては辞めた後もいろいろ考えさせていただきます。」と告げられていたところ,程なくして,A2から,「うちで雇うことになりました。給料は80万円です。今月から支払います。」との申し出があったとの事実経過や,A1自身が,公判廷で,「月80万円というのは,顧問としては金額が大きいと思った。A2から雇う旨の話をされた際,仕事内容の具体的な説明はなかった。」などと述べていることからすれば,A1は,A2からの顧問料の支払が名目上のものであることを十分理解していたと推認できる。したがって,検察官調書で述べるところは信用できるが,これに反する前記の公判での証言部分は信用できない。
エ したがって,弁護人が主張するところを踏まえても,A1は,A2からの振込金について,被告人が払うべきものをA2が代わって払っている旨の認識を有していたものと認められる。
(7) そのほか,弁護人が縷々主張する点を検討しても,前記第2,1の認定を覆すものではない。
4  結論
よって,弁護人が主張するところを踏まえても,検察官が主張するとおり,①被告人は,A2に対し,A1に対する継続的な現金の供与を依頼したこと,②被告人から上記依頼を受けたA2は,その見返りとして,県発注に係る測量設計業務等をB1設計が受注できるよう有利便宜な取り計らいを受けたい旨及び,県発注に係る公共工事の入札に際し,A2が被告人に対して口利きをするゼネコンが受注できるよう有利便宜な取り計らいをしてもらいたい旨の請託をし,被告人がこれを受諾したことが認められる。
【競売入札妨害事件(判示第3ないし第5)の争点と判断】
第1  争点
被告人が,出納長A3及び環境森林部長A6らに対し,B1設計に県発注の公共工事を受注させるように指示したか否か。
1  検察官の主張
被告人が,A3やA6に対し,B1設計に県発注の測量設計業務等を受注させるように指示し,その結果,県の意向を知った指名業者間で談合が行われ,平成17年度に施行された橋梁維持事業(判示第3),災害復旧事業(判示第4)及び平成18年度に施行された麓川橋梁詳細設計業務(判示第5)をB1設計が落札・受注したものである。
2  弁護人の主張
被告人は,県の意向を示してB1設計に測量設計業務を落札・受注させるつもりは全くなかったし,A3やA6らに対し,その旨の指示をしたことも一切ない。A3やA6らが出世したいために,被告人の意に反して,自ら進んで行ったものである。
第2  争点に対する判断
1  当裁判所が認定した事実
関係各証拠によれば,被告人が部下職員に対して受注指示をした状況,判示第3ないし第5の業務をB1設計が落札・受注した状況等は,下記のとおりであったと認定できる。
(1) 平成15年
ア 8月28日,被告人は,知事になって初めての刷新人事を行い,A13を土木部長に,C32を土木部次長に任命し,9月上旬ころ,A13に対し,「B1設計をよろしく頼む。」と告げた。A13は,あいさつに訪れたA2と面会した後,C32に対し,A2の名刺を見せながら,「知事からよろしくと言われた業者よね。頼んどくわ。」などと言った。C32は,道路建設課課長補佐のC33に対し,B1設計を指名に入れるよう指示した。
イ 11月20日,被告人は,A3を出納長に任命した。年末,被告人は,知事公舎にA3を呼んでA2と引き合わせ,さらに,平成16年1月,A3をB1設計東京本社に訪問させるなどした。
(2) 平成16年
ア 4月,被告人は,人事異動で,A14を土木部次長に任命した。平成16年の年度初め,A2は,A1に被告人との会食の設定を依頼し,その席で被告人に対し,「県発注の測量設計業務の受注額を5000万円から1億円は欲しい。」と言い,被告人は,「分かりました。」と答えた。
イ 6月ころから,被告人は,A3に,「A2が仕事が欲しいと言っている。」,「なんとかできんな。」などとB1設計の指名受注に便宜を図るよう指示するようになった。
ウ 6月上旬,被告人,A2,A7,A14の4人での会席の場で,被告人がA14に,「A2社長は,いい人で刎頸の友だ。会社もいい会社なのでよろしく頼む。」などと言い,A2も,「誘致企業であるけれどもなかなか受注ができない。力添えをお願いしたい。」と言った。
エ 9月か10月ころ,A3は,被告人から,「A2が下田大橋の設計を取りたがっているから指名に入れてやってくれ。」と指示された。A3は,A14と協議した後,被告人に,B1設計を「下田大橋橋梁詳細設計業務」の指名に入れることは難しい旨報告したが,被告人から,B14を外して,B1設計を指名に入れればいい旨指示されたので,その旨をA14に伝えた。A14は,当初の案ではB1設計は指名業者に入っていなかったが,次長協議の結果,B14を落としてヤマト設計を指名業者に入れた。
オ 下田大橋の業務については,A2が県の意向をちらつかせたために指名業者がそれを嫌い,談合協議で落札業者の決定ができずにもめた。A2は,A1を介し,又は直接電話などで被告人に受注できるように訴えた。11月19日の入札日の直前,A3は,被告人から,「A2が取れるようにしてやってくれ。」などと,下田大橋の業務をB1設計が落札できるようにしてほしい旨の要請を受けたが,現場が混乱している上,知事とA2の関係も疑われていると考えたA3は動かなかった。その結果,下田大橋の業務は業者間のたたき合いとなり,B1設計は落札できなかった。その後,被告人は,知事室にA3を呼び,「A2が,出納長と土木部が邪魔をしたから仕事が取れんかったと怒っている。」,「指名したからとか言ったって結果がすべてよ。」と厳しい口調で責めた。
カ 年の暮れころ,A2がA1に,被告人との2度目の会食の設定を依頼し,その席で被告人に,「なかなか指名も受注も増えない。もっと仕事が取れるようよろしくお願いします。」と頼むと,被告人は,「出納長には言ってるんだがな。」,「分かりました。」などと言った。
キ A2は,受注量の増えない情勢に不満を抱き,A1に対する振込額を,12月分から一方的に毎月9万円に減額した。
(3) 平成17年
ア 4月,被告人は,人事異動で,A4を土木部次長に任命した。A4は,A14前次長から,事務引継ぎのとき,「B1設計については,いろいろと上から無理な注文があって大変苦労した。今後もあるかもしれないので気を付けた方がいいよ。」などと言われた。
イ A2は,受注量が増えない不満から,A1への振込送金を5月分を最後に停止した。
ウ 6月ころ,A2は,被告人に対し,測量設計業者名と各業者の平成16年度における県発注業務の受注実績等の一覧表を渡し,「平成16年度の実績が中間くらいの業者で8000万円くらいです。当社もそのくらいの実績が欲しいです。」と言った。
被告人は,A3出納長に,受注実績等の一覧表を示しながら,「A2が今年度8000万円仕事が欲しいと言ってきたのよ。何とかしてくんない。」,「大手の業者の分を回せば8000万円ぐらい取らせられるがな。」などと言い,同年度中に実施される入札では,B1設計に合計8000万円程度の測量設計業務等を落札・受注させるよう指示した。A3は,A4にその旨を話し,B1設計が受注可能な測量設計に関する事業量の調査を行わせたところ,A4から,5000万円程度である旨の報告を受け,これを被告人に報告した。被告人は,「とにかく仕事をやってくんない。」とA3に言い,A3もその旨をA4に伝えた。
エ 6月23日,A4は,当時宮崎土木事務所所長のA5に,「出納長から話があって,B1設計に5000万円くらい受注させてくれと言われた。ほかの土木事務所にも言っているが,あんたのところでも橋梁の案件があったらB1設計を指名に入れるよう頼んどくわ。のさんこっちゃけど。」などと言った。A5は,B1設計に受注させるためには県の意向を示すことも含むものと理解し,土木事務所次長のC8に,「A4次長から,橋梁の件があったらB1設計を指名に入れておいてくれと言われたから頼むわ。次長も上から言われているようだ。」などと指示した。
オ 6月27日ころ,A4は,C1B1設計宮崎支店長に対し,「平成17年度県橋維持第01-01号橋梁維持事業」(判示第3,以下「本件橋梁維持事業」という。)について,「指名に入れておくから,しっかり見積もりをして受注できるように頑張ってくださいよ。」と言い,具体的な発注予定額も伝えた。
カ 7月6日ころ,A4は,C34道路保全課課長補佐に対し,本件橋梁維持事業の指名業者につき,B1設計を入れるよう指示した。
キ 7月初旬ころ,被告人は,A3に,「A2が7月中に仕事を1本くれ,早くくれんと暴れると言っている。B1設計の受注状況がどうなっているのか調べてくれ。」とB1設計の受注状況についての報告を求めた。7月末ころ,A3は,A4からB1設計の受注状況の第1回報告を受け,「二つ取ってます。」などと聞いた。A3はその旨を被告人に報告した。
ク 夏ころ,A2がA1に,「このまま仕事をもらえなければ困る。早く仕事をもらえないか。このままいけばC23さんと相談する。」と言って,対立候補者であるC23陣営への寝返りを示唆し,また,被告人にこれまで提供した資金の返還を求めるなど,被告人にプレッシャーをかけてきたことから,A1は,被告人に,「A2に不穏な動きがあるので,A2の会社についてはぴしゃっと対応していただきたい。」と忠告した。
ケ 夏ころ,被告人がA3に,「実はね,A1に退職金5000万渡すのにA8会長がB2銀行から借りて払うことにしたが,A2がA8会長から借りることにして,A1に渡した。知事のサインの入った借用書を,仕事が取れない腹いせにB29と警察とC23元出納長にばらまいたらしい。自分は借用書は知らない,サインもしていない。」などと言った。
コ 9月27日ころ,A4は,C1支店長に,本件橋梁維持事業につき,「それはおたくで取ってもらわないといけないから頑張ってください。」などと言い,また,台風14号による災害の話をする中で,「県北で大きな災害が出ているので設計委託もかなり出る。頑張って仕事を取ってください。あなたのところは上からも改めて言われている。8000万に向けて努力してください。」と言った。
サ 9月中旬ころから10月上旬ころ,A4は,A5に対し,「B1設計の件だけど,災害で橋梁があったらB1設計を指名に入れておいて。」と指示した。A5は,A4の指示を指名に入れた上で,県の意向を示してB1設計に受注させる旨の指示であると理解し,C8に対し,「災害で橋梁が出たらB1設計を指名に入れておいてくれ。」と指示した。
シ 10月6日,A4は,本件橋梁維持事業につき,B1設計に天の声が出ているとうわさされていることで,確認のために訪ねてきたB4九州支社の技術部長C3(県土木部OB)に対し,B1設計に受注させるとの県の意向を示した。
指名業者は,県の意向に逆らえば,指名競争入札制度の下で,次の業務から指名に入れてもらえなくなるため,県の意向に逆らうことはできず,本件橋梁維持事業でヤマト設計に受注させるとの県の意向を示された指名業者たちは,B1設計を本命業者とする談合をした。
ス 10月7日,本件橋梁維持事業の入札が施行され,他の指名業者がB1設計よりも高い金額で入札した結果,B1設計が1400万円で落札した。
セ 11月1日,宮崎土木事務所次長のC8は,「平成17年度災害委託第1-AC号災害復旧事業」(判示第4,以下「本件災害復旧事業」という。)につき,C1支店長にB1設計が受注できるか打診したがC1が断った。C8はその旨を所長のA5に報告し,A5からA4へ,A4からA3へ,A3から被告人へと伝わった。被告人が,「宮崎土木事務所が仕事を用意したが,B1がそれを取らなかった。」とA1に伝えると,A1は,「仕事を取れるようにという陳情をしながら,実際仕事を取らないということはどういうことか。」とA2に電話で言った。これを聞いたA2は,同月7日ころ,C1支店長を叱責し,A5の事務所に出向いて謝罪をさせるとともに,A2自ら11日にA5の事務所に出向いて直接謝罪をした後,宮崎支店のC9に対し,この業務はB1設計が受注する旨業者へ根回しをするよう指示した。B1設計が受注する意向であることを聞いたA5は,C8に対し,B1設計を指名に入れるよう指示した。
ソ 11月14日,A5は,本件災害復旧事業につき,宮崎土木事務所に事情を聞きに来たB9の代表取締役C10とB10の代表取締役C12の二人に対し,B1設計に受注させるとの県の意向を示した。その結果,B13に集まった指名業者にC10とC12が,B1設計が受注することが県の意向であることを報告したため,B1設計を本命業者とする談合が成立した。
タ 11月16日,本件災害復旧事業の入札が施行され,他の指名業者がB1設計よりも高い金額で入札した結果,B1設計が690万円で落札した。
チ 11月ころ,A3は,被告人からB1設計の受注状況を尋ねられた。この際,被告人は,「A2が,このままいくとまた去年並みでお茶を濁すことになるんだろうと言っている。」などと話した。A3は,A4に,B1設計の受注状況の第2回目の報告を求め,A4から,「3000万円くらいは受注しました。」,「あと,高鍋に1本あります。日向にも一つあります。」などとの報告を受けた。A3は,同内容を被告人に伝えると,被告人は,「ああ,そうな。A2が心配しちょったもんだから。」と言った。
(4) 平成18年
ア 年の初めころ,被告人は,A2に,B1設計のことはA6を窓口とすることを連絡した。
イ 2月か3月ころ,A3は,被告人から,B1設計はどの程度受注できたのか尋ねられたことから,A4に対し,B1設計の受注状況についての第3回目の報告を求めた。A4が,「5000万円くらいにしかなっていません。」と報告し,A3がその旨を被告人に報告すると,被告人は,「8000万円はいかんかったっちゃな。」と言った。
ウ 4月,被告人は人事異動で,A4を土木部長に,A6を環境森林部長に,A5を土木部次長に,A9を農政水産部次長に,C35を高岡土木事務所所長にそれぞれ任命した。なお,B1設計の宮崎支店長はC1からC16に代わり,C1は同支店の顧問となった。
エ 4月10日ころ,被告人が環境森林部長のA6に,「B1設計がうるさく言ってきて困ってる。あんたは土木部の経験もあって土木の人も知っているだろうから,あんたからも土木の方には話をしとってよ。B1設計をあんたのところにやるからよろしく頼むな。」と言った。
オ 4月中に,土木部次長のA5は,A3から,「A4部長からも聞いていると思うけど,B1設計を頼んどくね。」と言われた。4月18日,A5は,就任あいさつに来たC35高岡土木事務所所長に,「橋梁設計の案件があったらB1設計を指名に入れてくれ。上からも言われちょるからひとつ頼むわ。」と指示した。
カ 4月下旬ころ,A3は,被告人から,「A2の窓口はA6に代えたからな。」と言われた。
キ 5月上旬ころ,A2は,A6と面会し,「8000万円分の設計業務を受注することができるようにしてほしい。」と言うと,A6は,「私も信頼できる人からあなたのことは言われているので,できるだけあなたに協力していきます。」と言った。
ク 5月8日,被告人は,農政水産部次長のA9に電話をして,「B1設計の社長が君にあいさつに行くかもしれないからそのときは丁寧親切に対応してくれ。」と言った。
ケ 5月19日,被告人は,A5に,知事室で,「出納長やA4さんからも聞いていると思うけど,B1のことを頼んどくね。今後,A6部長から指示があると思うから頼んどくよ。」と言い,B1設計に関する対応は,A6からの指示に従うように指示した。
コ 同日,A6とA5は,B1設計の受注に関して話し合い,A6が,「B1設計のことで知事は困っている。B1設計の話では,前は8000万円くらい取れていたけど,今は半分以下だというようなことを言っている。土木部で半分くらいでも何とかならんのか。」と言った。また,A6は,農政水産部のA9に対しても,「B1設計が知事のところに受注についてうるさく言ってきている。あんたのところでも指名に入れられるような仕事はないかな。」と言った。
サ 5月下旬,A6は,A2に,「高岡土木事務所,児湯農林振興局発注業務の指名に入る。営業に行ってくれ。土木部のA5次長や農政水産部のA9次長にも営業に行ってくれ。」と言い,これを受けて,A2は,C16支店長に対し,A6から指示された箇所に営業に行くよう指示した。
シ 6月ころ,A6が被告人に,「B1のことについては,土木部や農政の方には話をしておきましたから。」と報告したところ,被告人は,「ああ,そうな,頼んどくな。」と答えた。
ス 7月初め,A5は,「平成17年度河川激特第2-L号麓川橋梁詳細設計業務」(判示第5,以下「本件麓川橋梁詳細設計業務」という。)に関し,次長協議でB1設計を指名業者に入れる指名の入替えをし,C35高岡土木事務所所長に,「B1に6000万取らせないといかん。今回の1400万円のをB1に取らせる。」と言った。その後,A5は,B1設計のC1に,「近く高岡土木事務所から災害復旧関係の橋梁案件が出ます。金額は2橋で1400万円くらいです。」と発注情報を伝え,併せて指名業者も教えた。
セ 7月10日,土木部次長室に,県の意向を確認するために来た県B18のC17会長(B14社長)に対し,A5が,B1設計に本件麓川橋梁詳細設計業務を受注させる旨の県の意向を示した。C17が,「どれくらいを考えているのか。」とB1設計に年間総額幾らくらいの案件を受注させるつもりであるのか尋ねると,A5は,「5000万円から6000万円くらいを考えている。」と答えた。
ソ 7月11日,本件麓川橋梁詳細設計業務に関し,指名業者間で第1回の談合協議が行われ,続いて18日に第2回の談合協議が行われ,県の意向が示されていたことから,B1設計を本命業者とする談合が成立した。
タ 7月20日,本件麓川橋梁詳細設計業務の指名競争入札が施行され,他の指名業者がB1設計よりも高い金額で入札した結果,B1設計が1280万円で落札した。
2  各証言の信用性の検討
(1) 被告人の指示内容に関するA3証言の信用性について
ア A3証言の要旨
(ア) 平成16年6月ころから,A2の要請を被告人から指示されるようになった。その言い方は,「A2が仕事が欲しいと言っている。」とか,「大きな橋の設計はないか,何とかできんな。」というものであった。その指示の中には,とにかく何とか取らせてやってくれという受注をさせる旨の指示もあった。このような指示は,二月に一度くらいとか,場合によっては毎月とか,不定期的にあった。
(イ) 下田大橋橋梁詳細設計業務については,被告人から,「A2さんが下田大橋の設計を取りたがっているから指名に入れてやってくれ。」と指示された。A14と協議した後,被告人に,B1設計を指名に入れるのは難しいと報告すると,被告人から,B14を外してB1設計を指名に入れればいいと言われたので,そのままA14次長に伝えた。
(ウ) 下田大橋の入札日の直前,A2が被告人に泣きついたようで,被告人から,「A2が困っている。取れそうにないと言っている。取れるようにしてやってくれ。」との指示を受けた。これは,はっきり言えば「天の声」を示せということなので,そこまで言うんですかという感じを受けた。被告人も切羽詰まったような顔をしていたので,私は,状況を調べてみると答えた。
(エ) その後,A14次長に報告を求めると,指名業者間で調整がうまくいかず,A2がはじき出されているとのことであり,現場が混乱していることも分かったし,被告人とA2の関係も疑われているということもあったので,県の意向を示すことはやめようということで動かなかった。
(オ) B1設計が,下田大橋の件を落札できなかった後,被告人から,私をいかにも責める厳しい口調で,「A2が,出納長と土木部が邪魔をしたから仕事が取れんかったと怒っている。」と言われた。私は,そのように言われることが心外で,「A2がみんなから嫌われてはじき飛ばされたというのが本当ですよ。」と答えたが,被告人からは,「指名したからとか言ったって結果がすべてよ。」と,また非常に強い口調で責められた。
(カ) 平成17年6月初めころ,知事室で,被告人から,「A2がね,今年度8000万円仕事が欲しいと言ってきたのよ。何とかしてくんない。」と言われた。これを聞いて,とにかく,17年度に何としてでも8000万円を取らせてくれという指示だと思った。平成17年度の県発注の測量設計業務の指名競争入札に際して,B1設計に,指名のみならず,県の意向を示して受注も与えるようにとの指示と受け取らざるを得ない内容だった。被告人から,このように聞いて,年間目標額を示すなどという,かつて聞いたこともないような話で指示が出たのでびっくりした。被告人は,私に年間受注実績の一覧表を示して,「ほら,8000万円が平均だろう。」と話し,一覧表の一番上にランクされていたB14を指して,「B14は何億も取っている。こんな大手の業者の分を回せば8000万円ぐらい取らせられるがな。」と言った。
その後,A4土木部次長に知事からの話を伝え,B1設計が受注可能な測量設計に関する事業量の調査を行わせたところ,A4から,5000万円程度である旨の報告を受け,これを被告人に報告した。被告人は,「ううん,5000万しかないな。まあ,だけどとにかく仕事をやってくんない。」と言った。
(キ) 平成17年7月初旬ころ,知事室で,被告人から,「A2が早く仕事をくれと,7月中に1本くれと,早くくれんと暴れると言っている。B1設計の受注状況はどうなっているのか調べてくれ。」と言われた。被告人に,「もう動いているようですよ。」と報告すると,被告人は,「ああ,そうな。そんならいいわ。」と言った。
10月か11月ころ,知事室で,被告人からB1設計の受注状況を尋ねられた。被告人からは,「A2が,このままいくとまた去年並みでお茶を濁すことになるんだろうと言っている。」と言われた。私は,その言葉にちょっとかちんときて,被告人が,A2の言うことをいちいち私に伝えてくることに憤りを感じた。その後,B1設計の受注額を被告人に報告すると,被告人は,「ああ,そうな。A2さんが心配しちょったもんだから。」と言った。
(ク) 平成18年の2月か3月ころ,知事室で,B1設計の受注状況に関して,被告人から,「果たしてどのくらいいったんだろうか。」と聞かれた。被告人に「五千何百万とかいったそうですよ。」と報告した。私としては,ご苦労さんという言葉を掛けてもらえると期待していたが,被告人は,「五千何百万な。8000万はいかんかったっちゃな。」といった反応だったので,少し腹立たしく思った。
(ケ) その後,4月下旬ころ,被告人から,「A2の窓口はA6に代えたからな。」と言われた。
イ A3証言の信用性
(ア) A3の証言は,平成15年11月に被告人から出納長に任命された以降,平成18年までの経緯を供述したものであるが,平成16年になって被告人からB1設計受注の便宜指示を受けた際の被告人の言葉や様子,下田大橋でB1設計が落札できなかったときの被告人の態度,その際の自らの心情,平成17年における被告人のB1設計受注に対する積極的な姿勢とそれへの対応にA4ともども腐心する状況,平成18年になって被告人からA2の窓口をA6に代えられたことなど,その都度の出来事を具体的かつ迫真的に述べるものである上,その内容に不合理な点はない。また,その述べる事実経過は,A4,A14,A5,A2やA1ら関係者の供述とも符合する。
また,自らが官製談合に関与したことなど自己にとって不利益な内容をも証言しているし,反対尋問に対しても,被告人から指示を受けた内容等,その核心部分において揺らぐところはない。
(イ) 弁護人は,①A3は,被告人からB1設計への受注指示を受けた旨証言するが,A2は,公判廷で,「指名がなければ受注はないので,被告人にも指名を増やしてほしいとお願いしただけで,受注の割り振りまでお願いしていない。」などとA3と反する証言をしていると主張するが,既に判断したとおり,単に指名に入れてもらうだけでは,被告人に多額の資金提供をしてきたA2の目的を達することはできず,A2が被告人に,「落札・受注」を求めていたことは明らかであり,弁護人が指摘する部分のA2証言は信用できない。
②A3は,被告人から,その時々において,B1設計の落札・受注結果の報告を求められたと証言しているが,同社の受注実績は当のA2が熟知していることであるから,その実績に関してA2が被告人に報告を求め,これを受けて被告人がA3に報告を求めるはずがないと主張するが,被告人がB1設計の受注状況が気になったことから,A2とは別に,被告人自身の立場で報告を求めたとしても不合理ではないし,受注状況を聞くことは,一方で受注を促す意味も有することから,被告人の姿勢に照らしても不自然ではない。
③副知事就任の希望を持っていたA3は,被告人がB1設計に受注させる腹積もりであると憶測し,被告人に対する功績作りのため,被告人から指示もされていないのに,部下職員にB1設計への受注を指示したものであると主張する。しかしながら,A3はA2を嫌っており,特に下田大橋の件以来二人の折り合いが悪く,被告人が平成18年度になると,A2の窓口をA3からA6に代えたほどであり,A3が,そのような仲のA2のために知事である被告人の意に反してまで受注の便宜を図ったとは考え難い。また,A4が,「A3出納長は,A2が被告人のところに来て,こういう要求をしており,被告人がこう言っているなどと,事細かに背景の事情を説明した上で,私に指示を伝えており,B1設計への受注指示がA3出納長からの発想だとはとても思えない。」などと証言するところに代表される部下職員の供述内容に照らせば,被告人からの明白な指示もないのに,A3が独自の判断で,B1設計の受注調整に向けて種々手を尽くしてやったとは考え難い。
④A14が,「以前からA3に,大きな業務でB14を指名から外せるものがあれば外すように指示されていたので,下田大橋の指名業者選定の際に外した。」と,A3と異なる証言をしていると主張するが,A14は,「下田大橋のときにA3に相談すると,B14を外せとA3から指示された。」旨証言しており,A3とA14が矛盾する証言をしているとは認められない。また,A14は,下田大橋のときに落札指示が出なかった理由に関し,「A3から県の意向が出せないかと打診されたが,大問題になると考えその打診を断った。」と,A3と異なる証言をしているとも主張するが,A3は,「被告人がB1設計に取らせろと言っている旨をA14に伝えた。A14から現場の報告を受けた後,県の意向を示すことはやめようということで自分は動かなかった。」と証言し,A14は,「A3から下田大橋について県の意向を示せないかという話があったが,それは被告人の指示によるもののようだった。そのように言われたときと,A3に現場の調査を報告したときの前後関係は,はっきりしない。報告をした後,A3からは何も指示されなかった。」と証言しているところをみれば,必ずしも,両者が相互に矛盾した証言をしているものとは認められない。
(ウ) 以上によれば,弁護人の主張する点はいずれも採用できず,前記A3の証言は信用できる。
(2) A4証言の信用性について
A4は,当時土木部次長の立場にあり,A3出納長の下で,被告人の指示を受けたA3から相談を持ち掛けられ,B1設計の受注便宜に県土木部次長として関わるという苦々しい経験を述べており,その内容も具体的で迫真性が認められる。また,不自然な誇張や不合理な点は見受けられず,十分信用できるものである。
(3) 被告人の指示内容に関するA6証言の信用性について
ア A6証言の要旨
(ア) 平成18年4月10日前後,知事室で,被告人から,「君も知っているだろうけど,B1設計がうるさく言ってきて困ってるのよな。あんたは土木部の経験もあって土木の人も知っているだろうから,あんたからも土木の方には話をしとってよ。B1設計をあんたのところにやるからよろしく頼むな。」との話があった。私には土木部の経験があって土木部に人脈があることから,県の意向を示すなどしてヤマト設計に関する受注調整をするように指示をしてきたのだと感じた。
(イ) それを聞いて,単に業者からの陳情の窓口としてヤマト設計からの要求を聞くだけにとどめた対応をするようにという指示だとは思わなかったし,B1設計からコスト削減に関する意見を聞いて県の土木行政に取り入れるようにという意味だとも感じなかった。被告人から,その指示を受けて,嫌な仕事だなとゆううつな気持ちになった。
イ このA6の証言は,自らの心情を含め,詳細かつ具体的であり,また,その述べる事実経過は,概ねA5,A9らの各証言とも符合する上,被告人から土木部への調整についても指示を受けたことについては,当時土木部次長であったA5が,「被告人から,『今後,A6部長から指示があると思うから頼んどくよ。』と言われた。」との証言にも裏付けられている。加えて,自らが官製談合に関与したことなど自己にとって不利益な内容も真摯に証言しているもので,本件事実経過に照らしても,不自然,不合理な点は見当たらず,反対尋問に対しても,何ら揺らいでいない。
ウ 以上によれば,A6の証言は信用できる。
(4) A5やA9の各証言も,当時,それぞれの立場で,B1設計の受注便宜を指示されてその対応に腐心した状況を具体的に証言しており,相互に符合して補完し合っている。また,特に不自然や不合理な点も見受けられない。
したがって,その各証言も信用できる。
(5) 前記認定事実のうち,A1の証言部分についても,自ら関与し,経験した事柄についてありのままを述べているものと認められ,信用できるものである。
A2証言は,前記のとおり,「指名」を受けることが目的であったとする点は信用できないが,その目的以外の外形的な自己の行動状況に関する証言は他の証拠とも符合するものであり,信用することができる。
3  弁護人の主張に対する検討
(1) 収賄事件と談合事件の間に因果関係が認められないとの主張について
弁護人は,事前収賄及び第三者供賄の見返りとして,被告人が,部下職員にB1設計の受注への便宜を指示したのであれば,被告人が知事に就任した直後から,B1設計の指名・受注は大幅に増加するはずであるのに,そのような結果にはなっていないし,また,知事は,県庁では人事権を持つ絶対的な権力者であるから,真実,被告人が落札・受注を指示したとすればこれが実現しないはずはないのに,そのような結果にはなっておらず,これらは,被告人が部下職員に,B1設計への落札・受注指示をしていないことの証左である旨主張する。
この点,関係各証拠によれば,県発注の測量設計業務等の指名競争入札におけるB1設計の指名,受注結果は,平成13年度の指名件数は25件,受注件数は3件,受注額は2478万円,平成14年度の指名件数は21件,受注件数は4件,受注額は2415万円,平成15年度の指名件数は18件,受注件数は0件,平成16年度の指名件数は18件,受注件数は3件,受注額は約3160万円であったことが認められ,弁護人が指摘するとおり,被告人が知事に就任した直後から,B1設計の指名・受注が大幅に増加したということはできない。
しかし,元々B1設計は,県外企業とみなされて,業界の談合から排除されている状況にあった上,知事就任直後の県庁内は,一部前県政体制のままであったため,被告人が知事就任直後から,B1設計に対するあからさまな優遇措置を取れば,地元業者や県庁内から大きな反発を受けるなどして問題が表ざたになるおそれがあることは容易に想像できたところであるから,被告人やA2が,知事就任直後の時期から,B1設計の大幅な受注増を意図していたとは考え難く,県庁内を被告人の体制に変えていく中で,徐々に,B1設計の受注を増やしていくことを考えていたとみるのが自然である。この点,A2自身が,「2期,3期,被告人に知事を務めてもらい,B1設計もその期間に受注を増やして,被告人に提供した資金を回収できればいいと思っていた。」などと証言するところや,A1が,A2に対し,被告人体制ができるまでは無理はできない旨述べていたところとも符合する。
また,A14が,「被告人が,B1設計に受注させる意向を持っていたことは分かったが,県の意向を出すということは,指名業者間で反発が起こり,それが公の知るところになるなど大きな混乱が生じるし,私自身,そういった不正なことにかかわりたくないという思いから,県の意向を示すことはしなかった。」と証言し,A13が,「被告人から,B1設計に仕事を取らせてやってほしいと頼まれたが,受注させるところまではできないと思い,B1設計を指名に入れるようにという限度で指示を出した。」と証言し,A3が下田大橋の件で,「これ以上やるとやはり被告人とA2の関係も疑われているということもあったので,ここは被告人の指示に従うわけにはいかないと思い,県の意向を示すことはやめようということで動かなかった。」と証言するように,被告人の意向を認識しつつも,当時の部下職員が,「天の声」の重大性を認識し,独自の判断で慎重な行動を取っていたことも認められる。
以上のような事情に照らせば,知事就任直後の平成15年度及び平成16年度において,B1設計の受注件数が大幅に増加していないことをもって,被告人によるB1設計の受注指示があったとの認定が影響を受けるものではない。なお,平成16年度は,B1設計は,受注件数は3件ながら,受注額は平成13年度と平成14年度を上回っている。
(2) A2の脅しに屈する理由がないとの主張について
弁護人は,起訴されている3件の談合事件は,平成17年6月ころから始まったA2の被告人に対する脅し行為後のものであるが,当時,被告人は,A2からの選挙資金等を完済していたため,A2の脅しを気にも留めておらず,A2を懐柔すべく,部下職員にB1設計の受注への便宜を指示したことはない旨主張する。
しかし,既に判断したとおり,平成17年6月当時,被告人が,A2からの選挙資金等を完済していたなどという事実は認められず,前記弁護人の主張は,その前提を欠く。被告人は,A2からの事前収賄及び第三者供賄に係る請託を受諾していた上,平成17年夏ころから,A2が,対立候補への寝返りや被告人の署名が入った借用書をばらまくことを示唆したり,これまで提供を受けた資金の返還を求めたり,年間8000万円という具体的な金額を掲げた受注要請をしたりするなどのプレッシャーを被告人にかけてきていたことから,A2を懐柔する必要性に迫られていたのであって,被告人が,B1設計の受注への便宜を図る理由や動機を有していたことは明らかである。そして,平成17年7月以降,B1設計は9件受注し,受注額も5832万円と急激に伸びた。
(3) 部下職員が被告人の真意を誤解したとの主張について
ア 弁護人は,B1設計に関して,被告人が部下職員に指示したのは,入札制度の透明化・活性化を図るために,同社を指名に入れてやることだけであったのに,部下職員らは,人事上の厚遇を期待するなどして,自分なりの解釈で,被告人の指示をB1設計に受注させる旨の指示であると読み間違えて官製談合に及んだものである旨主張し,被告人も,「新規業者を参入させ談合ではなくたたき合いになることによって,落札価格が低下することを期待して,A3に,B1設計を指名に入れられるのであれば入れてやってほしいということは話したが,受注指示をしたことはない。」,「A6に,『A2は,土木の設計もできると言っているし,環境森林部の所管で仕事があるか調べてくれ。』と言っただけで,受注指示をしたことはない。土木部などへ話をしてくれなどと頼んだこともない。」などと,受注指示を否認する供述をしている。
しかし,被告人がA3に,平成16年6月ころから,「A2が仕事が欲しいと言っている。なんとかできんな。」と指示したり,平成16年度の下田大橋の業務の際,「A2が取れるようにしてやってくれ。」,「指名したからと言ったって結果がすべてよ。」などと言ったり,平成17年6月ころ,B1設計の受注実績等の一覧表を示しながら,「大手の業者の分を回せば8000万円ぐらい取らせられるがな。」と言ったなどというその言葉は,B1設計を指名に入れることにとどまる指示内容ではなく,B1設計の受注調整を求めるものであることは明らかである。
なお,被告人は,上記のような言葉をA3に言ったことを否定する供述をしているが,A3証言やこれを裏付ける各証言等に反するもので,信用できない。
被告人は,A6に土木部との調整を指示したことはない旨供述するが,A6証言やこれを裏付ける各証言等に反するものである上,A6が被告人の指示もないのに,自分の所管である環境森林部を超えて,土木部のA5や農政水産部のA9に対してまで,B1設計の受注へ向けての働き掛けを行うなどというのは不自然であって,上記被告人供述は信用できない。そして,被告人がA6に,所管以外の公共事業担当部署との調整を指示したという事実は,被告人が土木部にも精通しているA6に,B1設計の受注調整の窓口となることを求めたものとみるのが自然で合理的である。
イ また,弁護人は,被告人は,A6,A9,A5に,「B1設計をよろしく頼むな。」,「B1のことを頼んどくね。」,「社長があいさつに行くかもしれないから親切丁寧に対応してくれ。」などと言ったにすぎず,落札・受注させることを明言していない旨主張する。
しかし,A6が,「県庁のトップである知事が,一請負業者であるB1設計をよろしく頼むなというのであるから,普通の意味とは違うと思った。」と証言し,A9が,「知事が直接電話を掛けてきて,しかも個別の業者名を挙げて親切丁寧に対応するようにと言うことは非常に特別なことだった。」と証言し,A5が,「名指しでB1設計を頼むと言われたので,指名だけさせろというふうには受け止められない。」と証言しているように,県政のトップである被告人が,わざわざ公共事業の担当職員らに対し,直接,特定の請負業者名を挙げた上でその対応を依頼するなどということは不自然であり,その事実経過や状況等に照らして,被告人が,部下職員にB1設計の落札・受注を指示したものとみるのが自然で合理的である。
ウ また,平成17年度,被告人は,3回にわたって,A3に指示してB1設計の受注状況を報告させるなど,被告人が,B1設計の受注状況に強い関心を有していたことは明らかである。
エ これに加えて,前記のとおり,被告人には,B1設計の受注への便宜を図る強い動機があることを併せ考えれば,被告人の部下職員に対する指示内容が,B1設計を指名に入れられるのであれば指名に入れるという程度のものであったなどとは到底認められず,検察官主張のとおり,B1設計に県発注の測量設計業務等を受注させるための指示内容であったことは明らかである。
(4) そのほか,弁護人が縷々主張する点を検討しても,前記第2,1の認定を覆すものではない。
4  結論
よって,弁護人が主張するところを踏まえても,検察官が主張するとおり,被告人が,A3及びA6らに対し,B1設計に県発注の測量設計業務等を受注させるように指示し,その結果,平成17年度に施行された橋梁維持事業及び災害復旧事業並びに平成18年度に施行された麓川橋梁詳細設計業務といった判示各業務を,B1設計が談合により落札・受注したことが認められる。
(法令の適用)
罰条
第1につき刑法60条,平成15年法律第138号による改正前の刑法197条2項
第2につき包括して刑法197条の2
第3ないし第5につきいずれも刑法60条,96条の3第2項
刑種の選択
第3ないし第5につきそれぞれ懲役刑
併合罪加重
刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い第1の罪の刑に法定の加重)
未決勾留日数の算入
刑法21条
追徴
刑法197条の5後段
訴訟費用の不負担
刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
本件は,被告人が,政治的指南役であったA1と共謀し,知事就任前,B1設計のA2から,賄賂である現金2000万円を収受した事前収賄の事案(第1),知事就任後,A2に依頼し,賄賂である顧問料等名目の現金を毎月A1へ振込入金させて合計1026万円を供与させた第三者供賄の事案(第2)及び,A2や県の部下職員らと共謀して,県発注業務の指名競争入札に際し,入札の公正な価格を害する目的で,予め落札予定業者をB1設計とする旨の談合をした競売入札妨害3件の事案(第3ないし第5)である。
第1の事前収賄は,選挙戦のいわゆる終戦処理費用を清算する必要等から,被告人がA1に2000万円の資金調達を要求し,これを受けて,A1がA2に資金提供を依頼したところ,これに応じたA2が,その見返りとして,知事就任後に被告人がB1設計の落札・受注についての有利便宜な取り計らいをすることを求めたのに対し,被告人がこれを受諾したというものである。第2の第三者供賄は,被告人が,A1に後援会の事務局長を辞任させるに際して5000万円を提供したものの,5000万円だけではA1が意趣返しに及ぶのではないかと不安に感じ,A2にA1への月々の現金供与を依頼し,これに応じたA2が,その見返りとして,B1設計の落札・受注についての有利便宜な取り計らいと,ゼネコン口利きへの協力を求めたのに対し,被告人がいずれも受諾したというものである。
被告人は,選挙戦前から,知事に就任した後の被告人からの便宜供与を期待するA2から,多額の選挙資金の提供を継続的に受け,A1の事務局長辞任問題に際しても,A2に,A1へ提供する5000万円の債務を負担させた上,ゼネコンの口利きをさせることによって返済原資を賄うことを企図するなど,本件の背景には,被告人自ら積極的にA2と金銭的な癒着を深めてきたという事情がある。
第1及び第2では,いずれも,被告人から賄賂の提供を要求したものである上,供与を受けた賄賂の金額も合計約3000万円と多額であり,悪質というほかない。
前知事による長期県政の後,クリーンな政治や県政の改革を掲げ,県民から期待されて当選したにもかかわらず,特定業者との癒着を深めて旧態依然とした金権政治を県政に持ち込んで,県民の期待や信頼を大きく裏切ったものであって,その責任は大変大きい。
第3ないし第5の談合は,被告人がA2に対し,賄賂供与の見返りに県発注業務をB1設計に落札・受注させることを約束したことなどから,被告人による主導のもと,公共工事において指名業者らに県の意向が示されるなどした結果,本件3件の官製談合が成立したものである。
被告人がB1設計の受注調整を部下職員に指示するに至った経緯の一つとして,A2が被告人に,受注調整を求めて度々働きかけを行ったり,被告人の署名がある5000万円の借用書を公表するなどとプレッシャーをかけたりしたなどの事情もあったとはいえ,A2からの多額の選挙資金や賄賂の提供に対する見返りとして,A2からの請託を受諾したことにより,被告人自らが不正を招くような事態を作り出しているのであって,その経緯に酌量の余地はない。
また,本件3件の談合は,被告人が部下の県職員に対し,知事就任後,長期間にわたって,B1設計に県発注業務を落札・受注させるように,積極的かつ主導的に指示を繰り返す中で行われたもので,その犯情は悪質である。
談合により公共工事の公正な価格が大きく害された結果,県民の尊い血税が不当に支払われ,財政難の宮崎県に損害を与えたものである上,公共工事から談合を排することを信条として表明していた被告人に対する県民の信頼を裏切ったもので,県民に与えた失望感も大きい。
本件各犯行により,被告人は,県政を大きな混乱に陥れた上,公職の廉潔性や公務の公正に対する県民の信頼を失墜させたほか,知事が関与した汚職及び官製談合事件として広く報道されたことにより,宮崎県に対する信用や評価を著しく損なわせたもので,その与えた社会的影響は大変大きい。
しかるに,被告人は,各犯行を否認して不自然,不合理な弁解に終始しており,反省の態度は一切窺われない。各犯行の重さや自己の刑事責任から目を背け,他者に責任を転嫁するその態度は厳しく非難されなければならない。
以上によれば,被告人の刑事責任には大変重いものがある。
一方,本件が広く報道されたことにより,知事を辞職するなどの社会的制裁を受けていること,前科前歴がないこと,不安定狭心症の心臓疾患があることや被告人の年齢等の酌むべき事情も認められる。
そこで,諸般の事情を総合考慮すると,本件の事案と犯情に照らせば,本件が刑の執行を猶予するのを相当とする事案とは到底認め難く,酌むべき事情を十分に考慮しても,主文の実刑は免れないものと思料する。
(検察官矢野隆史,私選弁護人前畑健一(主任),同佐藤俊司,同萩元重喜各出席)
(求刑 懲役4年6月,金2000万円の追徴)
(裁判長裁判官 高原正良 裁判官 神谷厚毅 裁判官 井上理)

別紙

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