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「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(41)平成20年10月31日 大阪地裁 平17(行ウ)3号 損害賠償請求、不当利得金返還請求事件(住民訴訟) 〔枚方市非常勤職員特別報酬住民訴訟〕

「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(41)平成20年10月31日 大阪地裁 平17(行ウ)3号 損害賠償請求、不当利得金返還請求事件(住民訴訟) 〔枚方市非常勤職員特別報酬住民訴訟〕

裁判年月日  平成20年10月31日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(行ウ)3号・平17(行ウ)29号・平17(行ウ)95号・平17(行ウ)157号
事件名  損害賠償請求、不当利得金返還請求事件(住民訴訟) 〔枚方市非常勤職員特別報酬住民訴訟〕
裁判結果  甲・乙・丙事件一部却下・一部認容・一部棄却、丁事件一部認容・一部棄却  上訴等  控訴  文献番号  2008WLJPCA10319004

要旨
◆地方自治法242条の2第1項4号に基づき当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを求める訴えにおいて、当該職員又は相手方がその氏名等でもって特定表示されていない場合であっても、これを氏名等以外の方法で客観的に特定することができるときは、当該訴えは請求の特定に欠けるところがない適法な訴えと解するのが相当であるとされた事例
◆地方自治法204条1項にいう常勤の職員とは、その勤務の態様に照らして当該勤務が当該職員及びその家族の生計を支えるいわゆる生活の糧を得るための主要な手段と評価し得るような職務に従事する職員をいい、1週間当たりの勤務時間数が常勤の職員の1週間当たりの勤務時間数の4分の3を超えるような態様の勤務に従事する職員は、同項にいう常勤の職員に該当するものと推定されるとされた事例
◆「非常勤職員」に対し「特別報酬」名目の給与を支給することを定めた地方公共団体の条例の規定が、当該特別報酬は地方自治法204条2項にいう期末手当又は退職手当に該当するが、同条例がその支給の対象として規定する非常勤職員は地方地自法204条1項にいう常勤の職員に該当するものをいうと合理的に解することができるから、その限りにおいて、同条2項の規定に違反するものということはできないとされた事例
◆地方自治法204条1項にいう常勤の職員に該当する「非常勤職員」に対する期末手当及び退職手当に該当する「特別報酬」について、算定の基礎となる額の上限及びこれに乗じるべき掛け率の上限あるいは支給額の上限のみを定めた地方公共団体の条例の規定が、およそ個々の非常勤職員に対する支給額を決定するに当たっての具体的な基準についての定めを欠くものというほかないとして、地方自治法204条3項、204条の2、地方公務員法25条1項等の規定する給与条例主義に違反するとされた事例
◆地方公共団体の長が、専決権限を付与された職員が給与条例主義に違反する条例の規定に基づいて公金の支出を専決処理するのを阻止することなく放置していたことについて、過失が認められた事例
◆地方公共団体の職員が、その専決権限に基づいて給与条例主義に違反する条例の規定に基づく公金の支出を専決処理したことについて、過失は認められないとされた事例

新判例体系
公法編 > 組織法 > 地方自治法〔昭和二二… > 第二編 普通地方公共… > 第八章 給与その他の… > 第二〇四条の二 > ○法律・条例に基づか… > (三)本条違反の事例
◆地方自治法第二〇四条第一項にいう常勤の職員に該当する非常勤職員に対する「特別報酬」についての枚方市職員給与条例(昭和二三年枚方市条例第一〇三号、平成一七年同市条例第一八号による改正前のもの)の規定は、個々の非常勤職員に対する支給額決定に関する具体的基準についての定めを欠き、給与条例主義に違反する。

公法編 > 労働法 > 地方公務員法〔昭和二… > 第三章 職員に適用さ… > 第四節 給与、勤務時… > 第二五条 > ○給与に関する条例
◆市の給与条例において、一般職非常勤職員の期末手当及び退職手当の実質を有する特別報酬について、算定の基礎となる月額報酬の上限額のみを規定し、具体的な金額の決定を任命権者に委ねたことは、具体的な基準についての定めを欠くものであって、給与条例主義に反し違法である。

 

裁判経過
控訴審 平成22年 9月17日 大阪高裁 判決 平20(行コ)181号 損害賠償請求及び不当利得金返還請求控訴事件

評釈
下井康史・ジュリ臨増 1398号48頁(平21重判解)
駒林良則・判評 617号2頁(判時2075号164頁)
小川正・労働法律旬報 1703号6頁(特集)
前田達男・労働法律旬報 1703号27頁(意見書)
城塚健之・季刊自治と分権 35号117頁

参照条文
地方自治法242条の2第1項4号
地方自治法203条1項(平20法69改正前)
地方自治法204条1項
地方公務員法25条3項5号
地方自治法204条2項
地方自治法204条3項
地方自治法204条の2
地方公務員法25条1項

裁判年月日  平成20年10月31日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(行ウ)3号・平17(行ウ)29号・平17(行ウ)95号・平17(行ウ)157号
事件名  損害賠償請求、不当利得金返還請求事件(住民訴訟) 〔枚方市非常勤職員特別報酬住民訴訟〕
裁判結果  甲・乙・丙事件一部却下・一部認容・一部棄却、丁事件一部認容・一部棄却  上訴等  控訴  文献番号  2008WLJPCA10319004

主文

1  甲事件
(1)  甲事件の訴えのうち,被告に対しP1及びP2各自にそれぞれ6027万0134円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める請求をすることを求める部分及びP3に別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号10ないし19の特別報酬の支給の決定に係る3412万7055円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める請求をすることを求める部分並びにP4及びP5各自にそれぞれ3412万7055円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める請求をすることを求める部分をいずれも却下する。
(2)  被告は,P6に対し,6027万0134円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号1ないし19に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額の金員の限度で上記各番号に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人と連帯して)を支払うよう請求せよ。
(3)  被告は,別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号1ないし19に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対し,上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額の金員をP6と連帯して各支払うよう請求せよ。
(4)  原告の被告に対するその余の請求をいずれも棄却する。
2  乙事件
(1)  乙事件の訴えのうち,被告に対しP1,P2及びP7各自にそれぞれ4770万5292円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める請求をすることを求める部分並びにP8,P9及びP10各自にそれぞれ8507万9496円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める請求をすることを求める部分をいずれも却下する。
(2)  被告は,P6に対し,1億3278万4788円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,別紙「支給額等一覧表(乙事件)」記載の番号1ないし357及び同361ないし373に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額の金員の限度で上記各番号に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人と連帯して)を支払うよう請求せよ。
(3)  被告は,別紙「支給額等一覧表(乙事件)」記載の番号1ないし357及び同361ないし373に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対し,上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額の金員をP6と連帯して各支払うよう請求せよ。
(4)  原告の被告に対するその余の請求をいずれも棄却する。
3  丙事件
(1)  丙事件の訴えのうち,被告に対しP5,P11及びP10各自にそれぞれ8456万7334円及びこれに対する平成16年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める請求をすることを求める部分をいずれも却下する。
(2)  被告は,P6に対し,8456万7334円及びこれに対する平成16年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。
(3)  原告の被告に対するその余の請求を棄却する。
4  丁事件
(1)  被告は,別紙「支給額等一覧表(丁事件)」記載の番号1ないし337及び同339ないし356に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対し,上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額の金員を各支払うよう請求せよ。
(2)  原告の被告に対するその余の請求をいずれも棄却する。
5  訴訟費用は全部被告の負担とする。

事実及び理由

第1  請求
1  甲事件
(1)  被告は,P6,P3,P1及びP2に対し,連帯して6027万0134円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,3412万7055円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度でP4,P5及びP12と連帯して,別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号1ないし19に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で上記各番号に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人と連帯して)を各支払うよう請求せよ。
(2)  被告は,P4,P5及びP12に対し,連帯して3412万7055円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,3412万7055円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度でP6,P3,P1及びP2と連帯して,別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号10ないし19に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で上記各番号に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人と連帯して)を各支払うよう請求せよ。
(3)  被告は,別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号1ないし9に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対し,上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員をP6,P3,P1及びP2と連帯して各支払うよう請求せよ。
(4)  被告は,別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号10ないし19に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対し,上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員をP6,P3,P1,P2,P4,P5及びP12と連帯して各支払うよう請求せよ。
2  乙事件
(1)  被告は,P6に対し,1億3278万4788円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,4770万5292円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度でP3,P1,P2及びP7と連帯して,8507万9496円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度でP12,P8,P9及びP10と連帯して,別紙「支給額等一覧表(乙事件)」記載の番号1ないし357及び同361ないし373に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で上記各番号に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人と連帯して)を支払うよう請求せよ。
(2)  被告は,P3,P1,P2及びP7に対し,4770万5292円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,4770万5292円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度でP6と連帯して,別紙「支給額等一覧表(乙事件)」記載の番号1ないし121,同361,同362及び同364ないし371に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で上記各番号に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人と連帯して)を各支払うよう請求せよ。
(3)  被告は,P12,P8,P9及びP10に対し,8507万9496円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,8507万9496円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度でP6と連帯して,別紙「支給額等一覧表(乙事件)」記載の番号122ないし357,同363,同372及び同373に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で上記各番号に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人と連帯して)を各支払うよう請求せよ。
(4)  被告は,別紙「支給額等一覧表(乙事件)」記載の番号1ないし121,同361,同362及び同364ないし371に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対し,上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員をP6,P3,P1,P2及びP7と連帯して各支払うよう請求せよ。
(5)  被告は,別紙「支給額等一覧表(乙事件)」記載の番号122ないし357,同363,同372及び同373に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対し,上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員をP6,P12,P8,P9及びP10と連帯して各支払うよう請求せよ。
3  丙事件
被告は,P6,P5,P13,P11及びP10に対し,8456万7334円及びこれに対する平成16年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を連帯して各支払うよう請求せよ。
4  丁事件
被告は,別紙「支給額等一覧表(丁事件)」記載の番号1ないし337及び同339ないし356に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対し,上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する平成17年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を各支払うよう請求せよ。
第2  事案の概要
(以下,法令及び枚方市の例規,枚方市の機関及び職名並びに自然人の呼称等については,特記しない限り別紙「法令等の呼称等について」による。また,用語については,特記しない限り別紙「用語について」による。)
1  事案の骨子
本件は,枚方市民である原告が,枚方市長らが平成15年12月10日から平成17年3月31日までの間に本件給与条例54条2項,56条に基づいてした特別報酬の支給の決定は,地自法203条,204条の2,地公法24条,25条等に違反する違法な公金の支出であったとして,被告に対し,地自法242条の2第1項4号に基づき,甲事件につき,
①  〈ア〉 平成16年3月31日を施行日とする本件15年度退職時等特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るもの2614万3079円の支給の決定につき,P6,P3,P1及びP2は不法行為による損害賠償義務に基づき同額及びこれに対する不法行為の日の後である平成16年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による各遅延損害金の支払義務をそれぞれ負い,別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号1ないし9に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人は悪意の不当利得返還義務に基づき上記各番号に対応する同表「15年度退職時等支給額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する利得の日の後である平成16年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による各利息の支払義務をそれぞれ負い,これらの義務はそれぞれが支払うべき額の限度で不真正連帯債務の関係にある,〈イ〉 平成16年3月31日を施行日とする本件15年度退職時等特別報酬の支給の決定のうち教育委員会所属の職員に係るもの3412万7055円につき,P6,P3,P1,P2,P4,P5及びP12は不法行為による損害賠償義務に基づき同額及びこれに対する不法行為の日の後である平成16年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による各遅延損害金の支払義務をそれぞれ負い,別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号10ないし19に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人は悪意の不当利得返還義務に基づき上記各番号に対応する同表「15年度退職時等支給額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する利得の日の後である平成16年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による各利息の支払義務をそれぞれ負い,これらの支払義務はそれぞれが支払うべき額の限度で不真正連帯債務の関係にある,仮に上記支給の決定につき,P3,P1及びP2が「当該職員」に該当しないとしても,P6,P4,P5及びP12は不法行為による損害賠償義務に基づき上記3412万7055円及びこれに対する不法行為の日の後である平成16年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による各遅延損害金の支払義務をそれぞれ負い,別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号10ないし19に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人は悪意の不当利得返還義務に基づき上記各番号に対応する同表「15年度退職時等支給額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する利得の日の後である平成16年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による各利息の支払義務をそれぞれ負い,これらの支払義務はそれぞれが支払うべき額の限度で不真正連帯債務の関係にあるとして,前記第1の1記載のとおりの請求をすること,
乙事件につき,
②  〈ア〉 平成15年12月10日を施行日とする本件15年度12月期特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るもの4770万5292円の支給の決定につき,P6,P3,P1,P2及びP7は不法行為による損害賠償義務に基づき同額及びこれに対する不法行為の日の後である平成15年12月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による各遅延損害金の支払義務をそれぞれ負い,別紙「支給額等一覧表(乙事件)」記載の番号2ないし41,同43ないし121,同361,同362及び同364ないし371に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人は悪意の不当利得返還義務に基づき上記各番号に対応する同表「15年度12月期支給額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する利得の日の後である平成15年12月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による各利息の支払義務をそれぞれ負い,同表記載の番号1及び同42に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人は上記各番号に対応する同表「支出の相手方」欄記載の者の上記各番号に対応する同表「15年度12月期支給額(円)」欄記載の各金額についての悪意の不当利得返還義務を相続により承継したことに基づき,上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する利得の日の後である平成15年12月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による各利息の支払義務をそれぞれ負い,これらの支払義務はそれぞれが支払うべき額の限度で不真正連帯債務の関係にある,〈イ〉 平成15年12月10日を施行日とする本件15年度12月期特別報酬の支給の決定のうち教育委員会所属の職員に係るもの8507万9496円につき,P6,P12,P8,P9及びP10は不法行為による損害賠償義務に基づき同額及びこれに対する不法行為の日の後である平成15年12月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による各遅延損害金の支払義務をそれぞれ負い,別紙「支給額等一覧表(乙事件)」記載の番号122ないし182,同184ないし317,同319ないし357,同363,同372及び同373に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人は悪意の不当利得返還義務に基づき上記各番号に対応する同表「15年度12月期支給額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する利得の日の後である平成15年12月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による各遅延損害金の支払義務をそれぞれ負い,同表記載の番号183及び同318に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人は上記各番号に対応する同表「支出の相手方」欄記載の者の上記各番号に対応する同表「15年度12月期支給額(円)」欄記載の金額についての悪意の不当利得返還義務を相続により承継したことに基づき,上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する利得の日の後である平成15年12月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による各利息の支払義務をそれぞれ負い,これらの支払義務はそれぞれが支払うべき額の限度で不真正連帯債務の関係にあるとして,前記第1の2記載のとおりの請求をすること,
丙事件につき,
③  平成16年6月30日を施行日とする本件16年度6月期特別報酬の支給の決定のうち教育委員会所属の職員に係るもの8456万7334円につき,P6,P5,P13,P11及びP10は不法行為による損害賠償義務に基づき同額及びこれに対する不法行為の日の後である平成16年7月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による各遅延損害金の支払義務をそれぞれ負い,これらの支払義務は不真正連帯債務の関係にあるとして,前記第1の3記載のとおりの請求をすること,
丁事件につき,
④  〈ア〉 平成16年6月30日を施行日とする本件16年度6月期特別報酬の支給の決定のうち市長部局所属の職員に係るものにつき,別紙「支給額等一覧表(丁事件)」記載の番号2ないし40,同42ないし114,同330ないし336,同339及び同342ないし349に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人は悪意の不当利得返還義務に基づき上記各番号に対応する同表「16年度6月期支給額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する利得の日の後である平成17年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による各利息の支払義務をそれぞれ負い,同表記載の番号1及び同41に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人は上記各番号に対応する同表「支出の相手方」欄記載の者の上記各番号に対応する同表「16年度6月期支給額(円)」欄記載の各金額についての悪意の不当利得返還義務を相続により承継したことに基づき,上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する利得の日の後である平成17年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による各利息の支払義務をそれぞれ負う,〈イ〉 平成16年12月10日を施行日とする本件16年度12月期特別報酬の支給の決定につき,同表記載の番号2ないし40,同42ないし58,同60ないし79,同81ないし294,同296ないし337,同339ないし356に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人は悪意の不当利得返還義務に基づき上記各番号に対応する同表「16年度12月期支給額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する利得の後の日である平成17年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による各利息の支払義務をそれぞれ負う,〈ウ〉 平成17年3月31日(ただし,P14についてのP15に対する支給の決定については平成16年8月20日)を施行日とする本件16年度退職時等特別報酬の支給の決定につき,同表記載の番号11,同12,同19,同24,同34,同42,同44,同81,同176,同184,同185,同204,同212,同213,同219,同230,同248,同275,同295,同297,同312及び同313に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人は悪意の不当利得返還義務に基づき上記各番号に対応する同表「16年度退職時等支給額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する利得の後の日である平成17年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の各利息の支払義務をそれぞれ負うとして,前記第1の4記載のとおりの請求をすることを
それぞれ求めた住民訴訟である。
なお,甲事件,乙事件及び丁事件において財務会計上の行為の相手方ないしその相続人として請求を求める相手方とされている者の一部が被告に補助参加している(以下,被告及び被告補助参加人らを「被告ら」と総称する。)。
2  前提事実等(法令等の定め及び争いがないか証拠等により容易に認定等できる事実。証拠等により認定した事実については末尾に当該証拠等を付記する(証拠の引用は甲事件の証拠番号(特記しない限り枝番を含む。)により,その余の事件の証拠番号による場合は「乙事件の甲1」等と記載する。)。)
(1)  普通地方公共団体の職員の給与その他の勤務条件についての法令の定め(地自法の規定は特記しない限り平成20年法律第69号による改正前の規定による。以下同じ。)
ア 地自法172条1項は,同法161条ないし171条に定める者(普通公共団体の長の補助機関たる副知事,副市町村長,会計管理者,出納員その他の会計職員等)を除くほか,普通地方公共団体に職員を置くと規定し,同法172条3項は,同条1項の職員の定数は,条例でこれを定めるが,ただし,臨時又は非常勤の職については,この限りでないと規定し,同条4項は,同条1項の職員に関する任用,職階制,給与,勤務時間その他の勤務条件,分限及び懲戒,服務,研修及び勤務成績の評定,福祉及び利益の保護その他身分取扱いに関しては,この法律に定めるものを除くほか,地公法の定めるところによると規定する。
イ 地自法の定め
地自法203条1項は,普通地方公共団体は,その議会の議員,委員会の委員,非常勤の監査委員その他の委員,自治紛争処理委員,審査会,審議会及び調査会等の委員その他の構成員,専門委員,投票管理者,開票管理者,選挙長,投票立会人,開票立会人及び選挙立会人その他普通地方公共団体の非常勤の職員(短時間勤務職員を除く。)に対し,報酬を支給しなければならないと規定し,同条2項は,前項の職員の中議会の議員以外の者に対する報酬は,その勤務日数に応じてこれを支給するが,ただし,条例で特別の定めをした場合は,この限りでないと規定し,同条3項は,同条1項の者は,職務を行うため要する費用の弁償を受けることができると規定し,同条4項は,普通地方公共団体は,条例で,その議会の議員に対し,期末手当を支給することができると規定し,同条5項は,報酬,費用弁償及び期末手当の額並びにその支給方法は,条例でこれを定めなければならないと規定する。
同法204条1項は,普通地方公共団体は,普通地方公共団体の長及びその補助機関たる常勤の職員,委員会の常勤の委員,常勤の監査委員,議会の事務局長又は書記長,書記その他の常勤の職員,委員会の事務局長若しくは書記長,委員の事務局長又は委員会若しくは委員の事務を補助する書記その他の常勤の職員その他普通地方公共団体の常勤の職員並びに短時間勤務職員に対し,給料及び旅費を支給しなければならないと規定し,同条2項は,普通地方公共団体は,条例で,同条1項の職員に対し,同条2項所定の期末手当,勤勉手当又は退職手当等を支給することができると規定し,同条3項は,給料,手当及び旅費の額並びにその支給方法は,条例でこれを定めなければならないと規定する。
同法204条の2は,普通地方公共団体は,いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずには,これを同法203条1項の職員及び同法204条1項の職員に支給することができないと規定する。
ウ 地公法の定め
地公法3条1項は,地方公務員の職は,一般職と特別職とに分けると規定し,同条2項は,一般職は,特別職に属する職以外の一切の職とすると規定し,同条3項は,特別職は,臨時又は非常勤の顧問,参与,調査員,嘱託員及びこれらの者に準ずる者の職(同条3号)等の同条各号に掲げる職とすると規定する。
同法4条1項は,同法の規定は,一般職に属するすべての地方公務員(以下,本項において「職員」という。)に適用すると規定し,同条2項は,同法の規定は,法律に特別の定めがある場合を除くほか,特別職に属する地方公務員には適用しないと規定する。
同法14条1項は,地方公共団体は,この法律に基づいて定められた給与,勤務時間その他の勤務条件が社会一般の情勢に適応するように,随時,適当な措置を講じなければならないと規定する(情勢適応の原則)。
同法15条は,職員の任用は,同法の定めるところにより,受験成績,勤務成績その他の能力の実証に基づいて行わなければならないと規定し,同法17条1項は,職員の職に欠員を生じた場合においては,任命権者は,採用,昇任,降任又は転任のいずれか一の方法により,職員を任命することができると規定し,同条4項は,人事委員会を置かない地方公共団体においては,職員の採用及び昇任は,競争試験又は選考によるものとすると規定する。
同法24条1項は,職員の給与は,その職務と責任に応ずるものでなければならないと規定し,同条3項は,職員の給与は,生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならないと規定し,同条5項は,職員の勤務時間その他職員の給与以外の勤務条件を定めるに当たっては,国及び他の地方公共団体の職員との間に権衡を失しないように適当な考慮が払われなければならないと規定し,同条6項は,職員の給与,勤務時間その他の勤務条件は,条例で定めると規定する。
同法25条1項は,職員の給与は,同法24条6項の規定による給与に関する条例に基づいて支給されなければならず,また,これに基づかずには,いかなる金銭又は有価物も職員に支給してはならないと規定し,同法25条3項は,給与に関する条例には,給料表(1号),非常勤職員の職及び生活に必要な施設の全部又は一部を公給する職員の職その他勤務条件の特別な職があるときは,これらについて行う給与の調整に関する事項(5号)等を規定するものとすると規定する。
(2)  非常勤の国家公務員についての給与及び勤務時間についての法令等の定め
ア 一般職職員給与法22条1項は,委員,顧問若しくは参与の職にある者又は人事院の指定するこれらに準ずる職にある者で,常勤を要しない職員(再任用短時間勤務職員を除く。)については,勤務1日につき,同項の規定する一定額を超えない範囲内において,各庁の長が人事院の承認を得て手当を支給することができると規定し,同条2項は,同条1項に定める職員以外の常勤を要しない職員については,各庁の長は,常勤の職員の給与との権衡を考慮し,予算の範囲内で,給与を支給すると規定し,同条3項は,同条1項及び2項の常勤を要しない職員には,他の法律に別段の定めがない限り,これらの項に定める給与を除くほか,他のいかなる給与も支給しないと規定する。
イ 勤務時間法23条は,常勤を要しない職員(再任用短時間勤務職員を除く。)の勤務時間及び休暇に関する事項については,同法5条から22条までの規定にかかわらず,その職務の性質等を考慮して人事院規則で定めると規定し,人規15―15第2条は,非常勤職員の勤務時間は,日々雇い入れられる非常勤職員については1日につき8時間を超えない範囲内において,その他の非常勤職員については常勤職員の1週間当たりの勤務時間の4分の3を超えない範囲内において,各省各庁の長(勤務時間法3条に規定する各省各庁の長をいう。)の任意に定めるところによると規定する。
(3)  枚方市の職員の給与についての本件給与条例の定め(平成15年12月1日時点の規定による。)
ア 本件給与条例1条は,同条例は,地公法24条6号の規定に基づき,枚方市の一般職の職員(以下「職員」という。)の給与等に関し必要な事項を定めるものとすると規定し,同条例5条1項は,職員の給料は,その職務内容,責任の軽重,勤務の強度,勤務時間,労働環境その他勤務に関する条件に応じたものでなければならないと規定する。
イ 本件給与条例54条1項は,職員のうち,別表第2及び同第3の適用を受ける職員以外の職員(以下,「非常勤職員」という。)には,給与を支給すると規定し,同条2項は,同条1項の給与は普通報酬及び特別報酬とすると規定し,同条3項は,同条2項に定めるもののほか,非常勤職員には常時勤務を要する職員に対して支給する給与は,支給しないと規定する。
同条例55条1項は,普通報酬の種類は,月額報酬及び超過勤務報酬とすると規定し,同条2項は,月額報酬の額は31万6800円を超えない範囲内で規則で定めると規定し,同条3項は,超過勤務報酬を支給する場合について規定する。
同条例56条1項は,特別報酬は,6月1日及び12月1日にそれぞれ在職する場合(1号),満60歳に達する日以後における最初の3月31日までに退職した場合(2号)及び満60歳に達する日以後における最初の3月31日において在職する場合(同項2号に該当する場合を除く。)(3号)に支給するが,ただし,1週間当たりの勤務時間が11時間に満たない者及び規則で定める者が2号及び3号に該当する場合においても,特別報酬は支給しないと規定する。そして,同条2項は,特別報酬の額は,下記の各号に定める額とすると規定する。

1号 同条1項1号に該当する場合 次に定める額の合計
イ 6月1日又は12月1日(これらの日を「基準日」という。以下イにおいて同じ。)現在において当該非常勤職員が受けるべき月額報酬の額に規則で定める基準日ごとの支給率(1の年度における基準日ごとの支給率の合計は,100分の300を超えないものとする。)を乗じて得た額に,基準日以前6月以内の期間におけるその者に係る規則で定める在職期間(任用期間の更新により引き続くこととなる期間を含む。ロ及び2号において同じ。)の区分に応じて規則で定める割合を乗じて得た額
ロ 6月1日又は12月1日(これらの日を「基準日」という。以下ロにおいて同じ。)現在において当該非常勤職員が受けるべき月額報酬の額に規則で定める基準日ごとの支給率(1の年度における基準日ごとの支給率の合計は,100分の140を超えないものとする。)を乗じて得た額に,基準日以前6月以内の期間におけるその者に係る規則で定める在職期間の区分に応じて規則で定める割合を乗じて得た額
2号 同項2号又は3号に該当する場合 退職の日(同項3号に該当する場合にあっては,満60歳に達する日以後における最初の3月31日)において当該非常勤職員が受けるべき月額報酬の額に26.015に乗じて得た額を超えない範囲内において,規則で定めるところにより算定した額
同条例58条は,同条例12章に規定するもののほか,非常勤職員に対する普通報酬及び特別報酬(同条例56条1項1号に該当する場合に支給する者に限る。)の支給方法については,常時勤務を要する職員に対して支給する給与(同条例58条2項及び3項の規定に基づき支給するものを除く。)の例によると規定し,同条2項は,同条例12章に規定するもののほか,非常勤職員に係る特別報酬(同条例56条1項2号及び3号に該当する場合に支給するものに限る。)の支給方法,支給制限及び返納等については,常時勤務を要する職員に対して支給する退職手当の例によると規定する。
(4)  本件非常勤職員給与規則の定め(文言は平成15年12月1日時点の規定による。なお,以下イ及びウ記載の別表第1ないし第6は別紙「本件非常勤職員給与規則の別表」記載のとおり。)
ア 本件非常勤職員給与規則2条は,本件給与条例55条2項の月額報酬の額は,非常勤職員の職種に応じ,別表第1に定める額とすると規定する。
イ 本件非常勤職員給与規則7条1項は,本件給与条例56条2項1号イの規則で定める基準日ごとの支給率は,別表第2の左欄に掲げる基準日の区分に応じ,同表の右欄に定める率とすると規定し,本件非常勤職員給与規則7条2項は,本件給与条例56条2項1号ロの規則で定める基準日ごとの支給率は,別表第3の左欄に掲げる基準日の区分に応じ,同表の右欄に定める率とすると規定する。また,本件非常勤職員給与規則8条1項は,本件給与条例56条2項1号イの規則で定める在職期間の区分及び規則で定める割合は,別表第4に定めるとおりとすると規定し,本件非常勤職員給与規則8条2項は,本件給与条例56条2項1号ロの規則で定める在職期間の区分及び規則で定める割合は,別表第5に定めるとおりとすると規定する。
ウ 本件非常勤職員給与規則9条は,本件給与条例56条1項ただし書の規則で定める者は,別表第1その1の表に規定する特別就業者及び再就業者とすると規定し,本件非常勤職員給与規則10条1項は,本件給与条例56条2項2号の規定による特別報酬の額は,退職の日(同条1項3号に該当する場合にあっては,満60歳に達する日以後における最初の3月31日)において非常勤職員が受けるべき月額報酬の額に,その者に係る勤続期間を別表第6の左欄に掲げる勤続期間に区分して,同表の右欄に定める割合を乗じて得た額の合計額とすると規定する。
(5)  職員の勤務時間についての定め
勤務時間条例2条1項は,職員の勤務時間は,休憩時間を除き,4週間を超えない期間につき1週間当たり38時間45分を下らず40時間を超えない範囲内において規則で定めると規定し,勤務時間条例施行規則3条1項は,勤務時間条例2条1項の規定による職員の勤務時間は,4週間を超えない期間につき1週間当たり38時間45分とすると規定する。
勤務時間条例18条は,非常勤職員(再任用短時間勤務職員及び任期付短時間勤務職員(任期付職員採用法にいう任期付短時間勤務職員をいう。以下同じ。)及び臨時的任用職員の勤務時間,休暇等については,その職務の性質等を考慮して,市長の定める基準に従い,任命権者が定めると規定する。
(6)  当事者等
ア 原告は,枚方市の住民であり,被告は枚方市長である。
イ 平成13年ころから平成17年ころ当時,枚方市には人事委員会は置かれていなかった。【弁論の全趣旨】
ウ P6は,平成7年4月から平成19年9月まで枚方市長であった。
本件当該職員の平成15年度及び平成16年度の役職は,別紙「本件当該職員役職表」のとおりであった。なお,本件当該職員はいずれも地自法243条の2第1項後段の職員に該当しない。【弁論の全趣旨】
エ 甲事件の非常勤職員は,いずれも平成14月4月1日から平成15年3月31日までの間に,本件給与条例56条1項2号(各自の満60歳に達する日以後における最初の3月31までに退職した場合)又は同項3号(各自の満60歳に達する日以後における最初の3月31日において在職する場合(同項2号に該当する場合を除く))に該当するに至った職員であり,各人の所属は対応する別紙「支給額一覧表(甲事件)」記載の各「所属区分」欄記載のとおりであり,各人の職種は対応する同表記載の各「職種」欄記載のとおりであった。
乙事件の非常勤職員は,いずれも平成15年12月1日当時在職しており,各人の所属は対応する別紙「支給額一覧表(乙事件)」記載の各「所属区分」欄記載のとおりであり,各人の職種は対応する同表記載の各「職種」欄記載のとおりであった。
丙事件の非常勤職員は,平成16年6月1日当時,いずれも教育委員会所属の職員として在職しており,各人の職種は,学校園宿日直代行員,肢体不自由児介助員,留守家庭児童会室指導員,図書館分室勤務者,図書館勤務者,特別就業者又は再就業者のいずれかであった。
丁事件の非常勤職員1ないし114,同330ないし336,同339,同342ないし349は,いずれも平成16年6月1日在職しており,同事件の非常勤職員2ないし40,同42ないし58,同60ないし79,同81ないし294,同296ないし337,同339ないし356はいずれも同年12月1日当時在職しており,同事件の非常勤職員11,同12,同19,同24,同34,同42,同44,同81,同176,同184,同185,同204,同212,同213,同219,同230,同248,同275,同295,同297,同312及び同313は,いずれも同年4月1日から平成17年3月31日までの間に,本件給与条例56条1項2号(各自の満60歳に達する日以後における最初の3月31日までに退職した場合)又は同項3号(各自の満60歳に達する日以後における最初の3月31日において在職する場合(同項2号に該当する場合を除く))に該当するに至った職員であって,上記の間の各人の所属は,対応する別紙「支給額等一覧表(丁事件)」記載の各「所属区分」欄記載のとおりであり,各人の職種は対応する同表記載の各「職種」欄記載のとおりであった。(なお,甲事件,乙事件,丙事件及び丁事件の各非常勤職員を「本件非常勤職員」ということがある(別紙「用語について」参照)。)。
オ P16(乙事件の非常勤職員1,丁事件の非常勤職員1)は,平成▲年▲月▲日,死亡し,P17(配偶者。相続分2分の1)並びにP18,P19及びP20(いずれも嫡出子。相続分各6分の1)がP16を相続した。
P21(乙事件の非常勤職員42,丁事件の非常勤職員41)は,平成▲年▲月▲日,死亡し,P22(配偶者。相続分2分の1)並びにP23,P24及びP25(いずれも嫡出子。相続分各6分の1)がP21を相続した。
P14(乙事件の非常勤職員318,丁事件の非常勤職員295)は,平成▲年▲月▲日,死亡し,P15(配偶者。相続分3分の2)並びにP26及びP27(いずれも親。相続分各6分の1)がP14を相続した。さらに,P26は,平成▲年▲月▲日,死亡し,P27(配偶者。相続分2分の1)及びP28(子。相続分2分の1)がP26を相続した(その結果,P14の相続財産は,P15にその3分の2が,P27にその4分の1が,P28にその12分の1が帰属することとなった。)。
P29(乙事件の非常勤職員183)は,平成▲年▲月▲日,死亡し,P30(配偶者。相続分2分の1)及びP31(子。相続分2分の1)がP29を相続した。【甲39ないし43,乙事件の甲26ないし33,弁論の全趣旨】
(7)  甲事件の提起に至る経緯及び訴訟の経緯等
ア 公金の支出等
P6市長は,平成16年3月31日を施行日として,別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号1ないし9に対応する同表「支出の相手方」欄記載の各人に対してP3総務部長の専決により,同表記載の番号10ないし19に対応する同表「支出の相手方」欄記載の各人に対してP12教育委員会管理部長の専決により,上記各番号に対応する同表「15年度退職時等支給額(円)」欄記載の各金額の各特別報酬(本件15年度退職時等特別報酬)の各支給の決定をし,同日,これらに従った公金の支出がされた。
P1人事室長及びP2職員課長は,本件15年度退職時等特別報酬に関する各回議書にそれぞれ押印し,P4教育長,P5教育次長及びP3総務部長は,本件15年度退職時等特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものに関する各回議書(ただし一部のみ)にそれぞれ押印した。【甲8】
イ 監査請求等
原告は,監査委員に対し,平成16年10月26日,要旨,市長は,平成15年度,22名の非常勤職員に対して本件給与条例54条2項,56条1項2号及び3号並びに同条2項2号を法的根拠とする「特別報酬」と名付けた「退職手当」合計6852万4169円を違法又は不当に支給して(本件15年度退職時等特別報酬はいずれもこれに含まれる。),枚方市に同額の損害を与えたとして,市長に対し,枚方市へ返還を求める措置をとることを請求する旨の住民監査請求をした。
監査委員は,原告に対し,平成16年12月24日付けで,上記監査請求について,「監査請求に理由がない」とする意見と「監査請求に理由がある」とする意見が併存し,合議に至らなかった旨を通知し,原告は,遅くとも同月中に上記通知を受領した。【甲1,2】
ウ 訴えの提起及び訴訟の経緯等
(ア) 原告は,平成17年1月17日,当裁判所に対し,請求の原因として,要旨,平成15年度に一般職の非常勤職員22名に対し「特別報酬」(本件給与条例54条2項及び56条1項2号,3号)と称する「退職手当」を支給するため総額6852万4169円が支出され,枚方市に損害が与えられ,下記の各請求を求める相手方はこれを賠償すべき責任がある旨を記載し,請求の趣旨として,「被告枚方市長P6は,P6とP3,P1,P2と違法な特別報酬を受け取った22名に対し,金6852万4169円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済まで年5分の割合による金員を枚方市に対して支払うよう請求せよ。」との判決を求める旨を記載した訴状を提出して,甲事件に係る訴えを提起した(なお,上記請求の趣旨は,記載の金額の金員を請求の相手方で分割して支払うよう請求することを求めているかのような記載となっているが,訴状全体の記載,甲事件に係る期日における原告の陳述等からすれば,各請求を求める相手方が負う支払義務の範囲でそれぞれその全額を支払うよう請求することを求めている趣旨と解される。)。
(イ) 原告は,平成17年2月3日,当裁判所に対し,甲事件について,前記(ア)の22名の氏名及びこれらの者に係る特別報酬の支給日を記載した同日付けの「訴状の補正」と題する書面を提出した。
(ウ) 原告は,甲事件第1回口頭弁論期日(平成17年3月11日)において,前記(ア)の22名に対して支払を求める請求は,本件15年度退職時等特別報酬の支給に係る相手方に対する不当利得返還の請求である旨陳述した。
(エ) 被告は,平成17年5月6日,当裁判所に対し,前記(ア)の22名各自に係る前記(ア)の特別報酬の各支給額を記載するとともに,上記22名のうち市長部局に所属する11名中10名の非常勤職員に対する特別報酬の支給については総務部長のP3が専決権限を有し,教育委員会に所属する11名の非常勤職員に対する特別報酬の支給については教育委員会管理部長のP12が専決権限を有しており,P1及びP2は,上記22名全員につき,P3は上記22名のうち市長部局に所属する1名及び教育委員会に所属する11名につき,いずれも当該職員に該当しない旨主張した同日付けの準備書面を提出した。
(オ) 原告は,平成17年5月9日,当裁判所に対し,甲事件について,「『教育委員会に所属していた非常勤職員11名にかかる分については,平成15年度「教育委員会管理部長」の「P12」が,特別報酬の支給決定を専決した』と被告がいうので,かかる部分に関する「4号請求」の「当該職員」に「P12」を加える。さらに,平成15年度枚方市教育長「P4」と教育次長「P5」をかかる部分に関する「4号請求」の「当該職員」に加える。」旨の記載のある同日付けの原告第4準備書面を提出した。
平成17年10月31日の甲事件第2回弁論準備手続期日において,上記原告第4準備書面が陳述されるとともに,原告により上記準備書面等の内容を反映した請求の趣旨の整理がされた。
(カ) 甲事件に係る請求の趣旨は,前記(イ)ないし(オ)のほか,訴えの一部の取下げ等の結果,前記第1の1記載のとおりとなり,甲事件第5回口頭弁論期日(平成20年1月18日)においてその旨が確認された。
(8)  乙事件の提起に至る経緯及び訴訟の経緯等
ア 公金の支出等
P6市長は,平成15年12月10日を施行日として,別紙「支給額等一覧表(乙事件)」記載の番号1ないし121,同361,同362及び同364ないし371に対応する同表「支出の相手方」欄記載の各人に対してP3総務部長の専決により,同表記載の番号122ないし357,同363,同372及び同373に対応する同表「支出の相手方」欄記載の各人に対してP12教育委員会管理部長の専決により,上記各番号に対応する同表「15年度12月期支給額(円)」欄記載の各金額の各特別報酬(本件15年度12月期特別報酬)の各支給の決定をし,同日,これらに従った公金の支出がされた。
P1人事室長,P2職員課長及びP7職員課グループ統括リーダーは,本件15年度12月期特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るものに関する各回議書にそれぞれ押印し,P8教育委員会管理部次長,P9教育委員会総務課長及びP10教育委員会総務課グループ統括リーダーは,本件15年度12月期特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものに関する各回議書にそれぞれ押印した。【乙事件の甲9】
イ 監査請求等
原告は,平成16年12月1日,監査委員に対し,要旨,平成15年12月10日,市長及び水道事業管理者は,一般職の非常勤職員計376名に対して本件給与条例56条1項1号に定められている「12月1日に在職する場合」の「特別報酬」いわゆる「ボーナス」総額1億3565万8346円(本件16年度12月期特別報酬はいずれもこれに含まれる。)を違法又は不当に支給し,枚方市に同額の損害を与えたとして,市長と水道事業管理者に対し,同額の返還を求める措置をとることを請求する旨の住民監査請求をした。
監査委員は,原告に対し,平成17年1月28日付けで,上記監査請求について,「監査請求に理由がない」とする意見と「監査請求に理由がある」とする意見が併存し,合議に至らなかった旨を通知し,原告は,遅くとも同年2月3日までに上記通知を受領した。【乙事件の甲1,2】
ウ 訴えの提起及び訴訟の経緯等
(ア) 原告は,平成17年2月24日,当裁判所に対し,請求の原因として,要旨,平成15年12月10日に一般職の非常勤職員376名に対し「特別報酬」(本件給与条例54条2項及び56条1項1号)を支給するため総額1億3563万8346円が支出され,枚方市に損害を与えられ,下記の請求を求める相手方391名はこれを分割して賠償すべき責任がある旨を記載し,請求の趣旨として「被告枚方市長は,P6,P3,P1,P2,P7,P4,P5,P12,P8,P9,P10,P32,P33,P34,P35と違法な報酬を受け取った376名に対し,金1億3565万8346円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済まで年5分の割合による金員を枚方市に対して支払うよう請求せよ。」との判決を求める旨を記載した訴状を提出して,乙事件に係る訴えを提起した(なお,上記請求の原因及び請求の趣旨は,記載の金額の金員を請求の相手方で分割して支払うよう請求することを求めているかのような記載となっているが,訴状全体の記載の趣旨,訴状添付の住民監査請求書(乙事件の甲2)の記載,乙事件に係る期日における原告の陳述等からすれば,各請求を求める相手方が負う支払義務の範囲でそれぞれその全額を支払うよう請求することを求めている趣旨と解される。)。
(イ) 原告は,平成17年3月15日,当裁判所に対し,前記(ア)の376名の氏名及びこれらの者に対する請求は本件15年度12月期特別報酬の支給の決定に係る相手方に対する不当利得の返還の請求である旨を記載した原告第1準備書面を提出した。
(ウ) 被告は,平成17年5月18日,当裁判所に対し,乙事件について,前記(ア)の376名各自に係る前記(ア)の特別報酬の支給額を記載した準備書面を提出した。
(エ) 原告は,平成19年2月6日,当裁判所に対し,乙事件について,P16に対して請求を求める請求につき,別紙「支給額等一覧表(乙事件)」記載の番号1に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対して請求を求める請求に,P21に対して請求を求める請求につき,同表記載の番号42に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対して請求を求める請求に,それぞれ変更する旨の同日付けの「「請求の趣旨」変更申立書」を提出した(なお,上記変更後の請求は,変更後の請求を求める相手方に対して,従前の者に請求を求めていた額のうち新たな相手方が各相続した額である上記各相手方に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額の請求を求める趣旨のものであることは明らかである。)。
(オ) 原告は,平成19年8月30日,当裁判所に対し,乙事件について,P14に対して請求を求める請求につき,別紙「支給額等一覧表(乙事件)」記載の番号318に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対して請求を求める請求に変更する旨の同日付けの「「請求の趣旨」変更申立書」を提出した(なお,上記変更後の請求は,変更後の請求を求める相手方に対して,従前の者に請求を求めていた額のうち新たな相手方が各相続した額である上記各相手方に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額の請求を求める趣旨のものであることは明らかである。)。
(カ) 乙事件に係る請求の趣旨は,前記(イ)ないし(オ)のほか,訴えの一部の取下げ等の結果,前記第1の2記載のとおりとなり,乙事件の弁論が併合された甲事件第5回口頭弁論期日(平成20年1月18日)においてその旨が確認された。
(9)  丙事件の提起に至る経緯及び訴訟の経緯等
ア 公金の支出等
P6市長は,平成16年6月30日を施行日として,P13教育委員会管理部長の専決により,教育委員会に所属する非常勤職員(本件給与条例)224名に係る合計8456万7334円の各特別報酬(本件16年度6月期特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るもの)の各支給の決定をし,同日,これらに従った公金の支出がされた。
当時の教育長はP5であった。また,P11教育委員会管理部次長及びP10教育委員会総務課長は,本件16年度6月期特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものに関する各回議書にそれぞれ押印した。【丙事件の甲3】
イ 監査請求等
原告は,平成17年3月17日,監査委員に対し,要旨,平成16年6月30日,市長は,教育委員会所属の一般職非常勤職員に対し,本件給与条例56条1項1号の規定に基づき,特別報酬(夏期一時金)の名目で総額合計8456万7334円(本件16年度6月期特別報酬の支給の決定のうち教育委員会所属の職員に係るものはいずれもこれに含まれる。)を,違法若しくは不当に支給し,枚方市に同額の損害を与えたとして,市長に対し,同額の返還を求める措置をとることを請求する旨の住民監査請求をした。
監査委員は,原告に対し,平成17年5月16日付けで,上記監査請求について,「監査請求に理由がない」とする意見と「監査請求に理由がある」とする意見が併存し,合議に至らなかった旨を通知した。【丙事件の甲1,2】
ウ 訴えの提起及び訴訟の経緯等
原告は,当裁判所に対し,平成17年6月14日,請求の原因として,要旨,平成16年6月30日に教育委員会所属の非常勤職員に対し「特別報酬」(本件給与条例56条1項1号)と称する「夏期一時金」を支給するため総額8456万7334円が支出され,市に損害が与えられ,下記の各請求を求める相手方は連帯してこれを賠償すべき責任がある旨を記載し,請求の趣旨として「被告枚方市長は,P6,P5,P13,P11,P10に対し,金8456万7334円及びこれに対する平成16年7月1日から支払済まで年5分の割合による金員を枚方市に対して連帯して支払うよう請求せよ。」との判決を求める旨を記載した訴状を提出して,丙事件に係る訴えを提起した。
(10)  丁事件の提起に至る経緯及び訴訟の経緯等
ア 公金の支出等
枚方市長は,平成16年6月30日を施行日として,別紙「支給額等一覧表(丁事件)」記載の番号1ないし114,同330ないし336,同339及び同342ないし349に対応する同表「支出の相手方」欄記載の各人に対して総務部長の専決により,上記各番号に対応する同表「16年度6月期支給額(円)」欄記載の各金額の各特別報酬(本件16年度6月期特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るもの)の各支給の決定をし,同日,これらに従った公金の支出がされた。
枚方市長は,平成16年12月10日を施行日として,別紙「支給額等一覧表(丁事件)」記載の番号2ないし40,同42ないし58,同60ないし79,同81ないし114,同330ないし336,同339及び同342ないし349に対応する同表「支出の相手方」欄記載の各人に対して総務部長の専決により,同115ないし294,同296ないし329,同337,同340,同341及び同350ないし356に対応する同表「支出の相手方」欄記載の各人に対して教育委員会管理部長の専決により,上記各番号に対応する同表「16年度6月期支給額(円)」欄記載の各金額の各特別報酬(本件16年度12月期特別報酬)の各支給の決定をし,同日,これらに従った公金の支出がされた。
枚方市長は,平成17年3月31日(ただし,P14についてのP15に対する支給の決定については平成16年8月20日)を施行日として,別紙「支給額等一覧表(丁事件)」記載の番号11,同12,同19,同24,同34,同42,同44及び同81に対応する同表「支出の相手方」欄記載の各人に対して総務部長の専決により,同表記載の番号176,同184,同185,同204,同212,同213,同219,同230,同248,同275,同295,同297,同312及び同313に対応する同表「支出の相手方」欄記載の各人に対して教育委員会管理部長の専決により,上記各番号に対応する同表「16年度退職時等支給額(円)」欄記載の各金額の各特別報酬(本件16年度退職時等特別報酬)の各支給の決定をし,同日,これらに従った公金の支出がされた。
イ 監査請求等
原告は,平成17年6月29日,監査委員に対し,要旨,平成16年度,市長及び水道事業管理者は,平成16年6月30日支給分(教育委員会所属の「一般職非常勤職員」を除く約131名に合計約4716万円),平成16年12月10日支給分(約355名の「一般職非常勤職員」に合計約1億4120万2058円)及び平成17年3月31日支給分(21名の「一般職非常勤職員」に合計約6552万円)の合計約2億5000万円(推定金額)の「特別報酬」(本件16年度6月期特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るもの,本件16年度12月期特別報酬及び本件16年度退職時等特別報酬はいずれもこれに含まれる。)を違法に支給し,同額の損害を市に与えたとして,市長及び水道事業管理者に対し,同額の返還を求める措置をとることを請求する旨の住民監査請求をした。
監査委員は,原告に対し,平成17年8月26日付けで,上記監査請求について,理由がないので棄却する旨の監査結果を通知し,原告は,遅くとも同年9月2日までに上記通知を受領した。【丁事件の甲1】
ウ 訴えの提起及び訴訟の経緯等
(ア) 原告は,当裁判所に対し,平成17年9月22日,請求の原因として,要旨,平成16年度に非常勤職員で「一般職」と呼ばれた「訴状別紙記載」の359名の者は,総額2億7669万2405円の特別報酬(平成16年支給分。内訳は,平成16年6月期における特別報酬は131人に対して総額4861万円9928円,同年12月期における特別報酬は351人に対して総額1億4767万0407円(平成17年3月18日追給分2万0010円を含む。),退職等による特別報酬は22人に対して総額8040万2070円。)を受け取り,枚方市等に損失を及ぼした悪意の受益者であるから,利息を付して各人が受け取った違法「特別報酬」(諸手当)すなわち不当利得金を返還すべき責任がある旨を記載し,請求の趣旨として「被告枚方市長P6,被告枚方市水道事業管理者P36,被告枚方市病院事業管理者P32は,違法な特別報酬を受け取った359名(訴状別紙に記載の者)に対し,それぞれの者が受け取った額の金員と平成17年4月1日から支払済まで年5分の割合による金員を枚方市に対して支払うよう請求せよ。」との判決を求める旨を記載し,上記359名の氏名を記載した別紙を添付した訴状を提出して,丁事件に係る訴えを提起した(なお,上記の「平成16年6月期における特別報酬は131人に対して総額4861万円9928円」に教育委員会所属の職員に係るものが含まれないことは,平成16年度6月期特別報酬のこれらの職員に係るものを除いた総額が131名についての上記額であったこと及び同訴状添付の丁事件の甲1(前記イの監査請求の結果の通知)の記載からすれば明らかである。)。
(イ) 被告は,平成17年12月12日,当裁判所に対し,丁事件について,前記(ア)の訴状別紙に氏名を記載した者に対する平成16年度6月期の特別報酬の支給額(ただし,上記のうち教育委員会所属の職員については除く。),同年12月期の特別報酬の支給額及び同年度の退職等による特別報酬の支給額(支給していない者についてはその旨)並びに被告が上記訴状別紙に氏名を記載した以外の職員のうちに上記各特別報酬を支給した者がおり,それらの者について支給された支給額を合わせて平成16年度6月期の特別報酬として総額4861万円9928円,同年度12月期の特別報酬として総額1億4767万0407円,平成16年度の退職時等特別報酬として総額8040万2070円を支給した旨を記載した同日付けの準備書面を提出した。
(ウ) 原告は,平成18年1月17日,当裁判所にし,丁事件について,請求の趣旨を前記(ア)記載のものから「被告枚方市長,被告枚方市水道事業管理者は,違法な特別報酬を受け取った職員(のべ504名)に対し,それぞれの者が受け取った額の金員と平成17年4月1日から支払済まで年5分の割合による金員を枚方市に対して支払うよう請求せよ。」に変更する,のべ504名の内訳は① 平成16年度6月期(支給日6月30日)の特別報酬(総額4861万円9928円)が支給された131名の職員,② 同年12月期(支給日12月10日,平成17年3月18日追給分2万0010円を含む)における特別報酬(総額1億4767万0407円)が支給された351名の職員,③ 退職等(支給日平成16年8月20日,平成17年3月31日)における特別報酬(総額8040万2070円)が支給された22名の職員である,被告は上記「のべ504名」の氏名,所属,各人の受け取った特別報酬の額,その支給日を明らかにされたい旨の同日付けの「「請求の趣旨」変更申立書」を提出した。
(エ) 被告は,平成18年2月10日,当裁判所に対し,丁事件について,前記(ウ)ののべ504名の氏名並びに各自に係る特別報酬の支給額及びその支給日を記載した書面を提出した。
(オ) 原告は,平成18年9月6日,当裁判所に対し,丁事件について,P14に対して請求を求める請求につき,P15に対して請求を求める請求に,P16に対して請求を求める請求につき,別紙「支給額等一覧表(丁事件)」記載の番号1に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対して請求を求める請求に,P21に対して請求を求める請求につき,同表記載の番号41に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対して請求を求める請求に変更する旨の同日付けの「「請求の趣旨」変更申立書」を提出した(なお,上記変更後の請求は,P15に対してはP14に請求を求めていた額を,その余の者らに対しては,従前の者に請求を求めていた額のうち新たな相手方が各相続した額である上記各相手方に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額の請求を求める趣旨のものであることは明らかである。)。
(カ) 丁事件に係る請求の趣旨は,前記(イ)ないし(オ)のほか,訴えの一部取下げ等の結果,前記第1の4記載のとおりとなり,丁事件の弁論が併合された甲事件第5回口頭弁論期日(平成20年1月18日)においてその旨が確認された。
3  主たる争点
(1)  当該職員該当性(本案前の争点①)
甲事件の請求(1)について,P1及びP2は本件15年度退職時等特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るものの各支給の決定につき当該職員にそれぞれ該当するか。また,甲事件の請求(1)及び同(2)について,P3,P1,P2,P4及びP5は本件15年度退職時等特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものの各支給の決定につき当該職員にそれぞれ該当するか。
乙事件の請求(2)について,P1,P2及びP7は,本件15年度12月期特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るものの各支給の決定につき当該職員にそれぞれ該当するか。また,乙事件の請求(3)について,P8,P9及びP10は本件支出15年12月定期特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものの各支給の決定につき当該職員にそれぞれ該当するか。
丙事件について,P5,P11及びP10は,本件16年度6月期特別報酬のうち教育委員会所属のものの各支給の決定について当該職員にそれぞれ該当するか。
(2)  出訴期間(当該職員関係)(本案前の争点②)
甲事件の請求(2)に係る訴えは出訴期間(地自法242条の2第2項1号)を遵守しているか。
(3)  請求の特定及び出訴期間(相手方関係)(本案前の争点③)
甲事件の請求(3)及び同(4),乙事件の請求(4)及び同(5),丁事件の請求は特定されているか。また,これらの請求は出訴期間(地自法242条の2第2項1号)を遵守しているか。
(4)  訴え提起手数料(本案前の争点④)
甲事件,乙事件及び丁事件について,それぞれ納付すべき訴え提起手数料の納付があり民訴費用法3条1項に適合するか。
(5)  公金の支出の違法性(本案の争点①)
本件特別報酬の各支給の決定は,地自法及び地公法の規定に反し,違法であって,本件特別報酬の各支給の決定に具体的に関与することは不法行為法上違法であるか。また,本件特別報酬の各支給の決定に基づき支出された本件特別報酬の各受領は法律上の原因を欠くか。
(6)  損害並びに損失及び利得(本案の争点②)
本件特別報酬の各支給の決定に基づく支出について,枚方市に生じた損害は幾らか(損害が生じたかどうかも含む。)。また,枚方市に生じた損失及び本件特別報酬を受領した支出の相手方の利得は幾らか(損失あるいは利得が生じたかどうかも含む。)。
(7)  故意過失及び悪意(本案の争点③)
本件特別報酬の支給が違法であることについて,本件当該職員に故意又は過失があったか。また,本件特別報酬の各受領が法律上の原因を欠くことについて各受領者(その相続人を含む。)は悪意か。
(8)  不当利得返還請求と権利濫用法理ないし信義則(本案の争点④)
枚方市が本件非常勤職員に対して不当利得返還請求をすることは権利の濫用に当たり又は信義則に反して許されないか。
4  当事者等の主張
(1)  当該職員該当性(本案前の争点①)について
(原告の主張)
地自法242条の2第1項4号にいう当該職員とは,当該訴訟においてその適否が問題とされている財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するとされている者及びその者から権限の委任を受けるなどして上記権限を有するに至った者を広く意味し,その反面およそ上記のような権限を有する地位ないし職にあると認められない者はこれに該当しないと解するのが妥当であるという最高裁昭和55年(行ツ)第157号同62年4月10日第二小法廷判決・民集41巻3号239頁の趣旨からすると,当該職員には,当該訴訟においてその適否が問題とされている財務会計上の行為をする本来的権限を有する職員やこれを専決する権限を有する職員のみならず,これに具体的に関与した職員すべてが含まれると解される。
そして,教育長は教育委員会所属の職員に対する給付の支給のための違法な財務会計上の行為を自ら中止すべき義務を負い,また,教育委員会事務局所属の職員が行う違法な財務会計行為を阻止すべき指揮監督上の義務を負う立場にあるから当該職員に当たるというべきところ,P4は本件15年度退職時等特別報酬の各支給の決定の当時,教育長であり,P5は本件16年度6月期特別報酬の各支給の決定の当時,教育長であった。
また,問題となる財務会計上の行為に関する「回議書」にハンコを押す権限を有する職員は,決定関与する者または合議を受ける者等としてハンコを押すに当たり起案内容について意思を決定する権限を与えられているところ(事務決裁規程2条1項5号,6号参照),合議を受けた者は,起案の内容に異議があるときは,所管の課長等と協議しなければならず(事務決裁規程12条4項),また,決定関与をする者は,「回議書」にハンコを押すことを拒絶したり,廃案にする権限を有しており(回付の途中で「重要な変更」や「廃案」があった場合について定めがある(文書取扱規程18条)。),起案内容たる財務会計上の行為が適正に行われているかについて諸般の事情を考慮し慎重にハンコを押さなければならないから,いずれも当該財務会計上の行為に具体的に関与した職員といえる。しかるところ,本件15年度退職時等特別報酬の各支給の決定の当時人事室長であったP1及びその当時職員課長であったP2は,上記特別報酬のうち市長部局及び教育委員会所属の職員に係るものに関する各回議書にそれぞれ押印し,その当時総務部長であったP3,教育長であったP4及び教育次長であったP5は,上記特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものに関する各回議書にそれぞれ押印した。本件15年度12月期特別報酬の各支給の決定の当時人事室長であったP1,その当時職員課長であったP2及びその当時職員課グループ統括リーダーであったP7は,上記特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るものに関する各回議書にそれぞれ押印し,その当時教育委員会管理部次長であったP8,その当時教育委員会総務課長であったP9及びその当時教育委員会総務課グループ統括リーダーであったP10は,上記特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものに関する各回議書にそれぞれ押印した。本件16年度6月期特別報酬の各支給の決定の当時,教育委員会管理部次長であったP11及びその当時教育委員会総務課長であったP10は,上記特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものに関する各回議書にそれぞれ押印した。
よって,甲事件の請求(1)について,P1及びP2は本件15年度退職時等特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るものの各支給の決定につき当該職員にそれぞれ該当し,甲事件の請求(1)及び同(2)について,P3,P1,P2,P4及びP5は本件15年度退職時等特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものの各支給の決定につき当該職員にそれぞれ該当する。乙事件の請求(2)について,P1,P2及びP7は,本件15年度12月期特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るものの各支給の決定につき当該職員にそれぞれ該当し,乙事件の請求(3)について,P8,P9及びP10は本件15年12月定期特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものの各支給の決定につき当該職員にそれぞれ該当する。丙事件について,P5,P11及びP10は,本件16年度6月期特別報酬のうち教育委員会所属のものの各支給の決定について当該職員にそれぞれ該当する。
(被告らの主張)
地自法242条の2第1項4号にいう「当該職員」とは,当該訴訟においてその適否が問題とされている財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するとされている者及びその者から権限の委任を受けるなどして上記権限を有するに至った者をいうところ(最高裁昭和55年(行ツ)第157号同62年4月10日第二小法廷判決・民集41巻3号239頁),枚方市においては,職員の特別報酬の支給の決定を行う権限を法令上本来的に有するとされている者は市長である。また,枚方市においては,事務決裁規程を定めて,市長の上記権限について,市長部局所属の職員に係る特別報酬の支給の決定は総務部長が,教育委員会所属の職員に係る特別報酬の支給の決定は教育委員会管理部長がそれぞれ専決する権限を有するものとしているから,総務部長は市長部局の者に係る特別報酬の支給の決定につき,教育委員会管理部長は教育委員会所属の者に係る特別報酬の支給の決定につき,法令上本来的に権限を有するとされている者から権限の委任を受けるなどして上記権限を有するに至った者としてそれぞれ当該職員に該当する。しかし,その余の職にある者には,そのような権限は与えられていないから,職員に係る特別報酬の支給の決定につき当該職員に該当しない。
よって,甲事件の請求(1)について,P1及びP2は本件15年度退職時等特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るものの各支給の決定につき当該職員にいずれも該当せず,甲事件の請求(1)及び同(2)について,P3,P1,P2,P4及びP5は本件15年度退職時等特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものの各支給の決定につき当該職員にいずれも該当しないから,上記各請求のうち上記各人に対して請求を求める請求は,いずれも地自法242条の2第1項4号に基づく請求のできる場合に当たらない。乙事件の請求(2)について,P1,P2及びP7は,本件15年度12月期特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るものの各支給の決定につき当該職員にいずれも該当しないから,上記各請求のうち上記各人に対して請求を求める請求は,いずれも地自法242条の2第1項4号に基づく請求のできる場合に当たらず,乙事件の請求(3)について,P8,P9及びP10は本件支出15年12月定期特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものの各支給の決定につき当該職員にいずれも該当しないから,上記各請求のうち上記各人に対して請求を求める請求は,いずれも地自法242条の2第1項4号に基づく請求のできる場合に当たらない。丙事件について,P5,P11及びP10は,本件16年度6月期特別報酬のうち教育委員会所属のものの各支給の決定について当該職員にいずれも該当しないから,上記各請求のうち上記各人に対して請求を求める請求は,いずれも地自法242条の2第1項4号に基づく請求のできる場合に当たらない。
(2)  出訴期間(当該職員関係)(本案前の争点②)について
(原告の主張)
甲事件の請求(2)に係る訴えは出訴期間(地自法242条の2第2項1号)を遵守している。下記被告の主張は争う。
(被告らの主張)
地自法242条の2第1項4号の「当該職員」の追加は訴えの変更に当たり,訴えの変更時に変更後の新訴を提起したことになるから,地自法242条の2第2項1号の出訴期間の遵守は訴えの変更時を基準として判断されなければならないところ,甲事件の請求(2)は,平成17年5月9日に裁判所に提出された原告第4準備書面により追加されたものであるから,同号の出訴期間を経過して提起されたものであることは明らかである。よって,甲事件の請求(2)に係る訴えは出訴期間(地自法242条の2第2項1号)を遵守しておらず,不適法であり,却下を免れない。
(3)  請求の特定及び出訴期間(相手方関係)(本案前の争点③)について
(原告の主張)
原告が甲事件の請求(3)及び同(4)において請求を求める相手方は,訴え提起の時点で,訴状の「違法な特別報酬を受け取った22名」との記載によりその余の記載とあいまって,乙事件の請求(4)及び同(5)において請求を求める相手方は,訴え提起の時点で,訴状の「違法な特別報酬を受け取った376名」との記載によりその余の記載とあいまって,丁事件の請求において請求を求める相手方は,訴え提起の時点で,訴状別紙の氏名の記載によりその余の記載とあいまってそれぞれ特定されている。
仮に一般論としては特定が不十分としても,原告が甲事件及び乙事件において訴え提起時に相手方を氏名により特定し,また甲事件,乙事件及び丁事件において請求を求める額を特定できなかったのは,情報公開請求等をしても公開されない事項であり原告には知り得ない事項であったためであって,やむを得なかったのであり,特段の事情がある。このことは,これらの事項が,乙事件の提起に先立ち,原告が乙事件において請求を求める相手方の氏名及びその支給額の開示を求めたところ,枚方市は「裁判長から補正の指示があれば開示する」として開示しなかったことや枚方市の法制室において提訴前の段階では開示できないという趣旨の説明を受けたことからも明らかである。
よって,甲事件の請求(3)及び同(4),乙事件の請求(4)及び同(5),丁事件の請求は特定されており,また,出訴期間(地自法242条の2第2項1号)を遵守している。
(被告らの主張)
地自法242条の2第1項4号の請求は,地方公共団体が有する個別具体的な実体法上の請求権を前提とし,これによって訴訟物が画されている。そうすると訴訟物が特定されるためには,この実体法上の請求権が特定されている必要があり,そのためには,当該職員あるいは相手方が特定されている必要がある。さらに,同一当事者間に複数の請求権が存在することがあり,また,地自法は242条の2第1項4号の請求に対する認容判決において当該職員あるいは相手方の責任が支払うべき額も含めて確定されていることを前提として,これらの者に対する賠償命令等が引き続いて行われることを予定しているから(同法243条の2第11項等参照),請求主体が有する請求金額が特定される必要がある。そして,住民訴訟には出訴期間が設けられていること(同法242条の2第2項),その係属中は当該地方公共団体の住民は別訴をもって同一の請求をすることができないこと(同条4項),被告は当該職員又は相手方に対して訴訟告知をしなければならず,訴訟告知は当該訴訟に係る損害賠償又は不当利得返還の請求権の時効の中断の効果があるものとされていること(同条7,8項),請求金額不特定の訴えの提起を認めれば金額不特定の認容判決が可能となるが,このような判決がされれば,引き続き予定されている上記賠償命令等に支障を来すことに照らせば,当該職員あるいは相手方及び請求金額の特定は訴え提起の段階からされていることを要するというべきである。
そして,相手方は本来住所及び氏名により特定されるべきであるところ,甲事件の請求(3)及び同(4),乙事件の請求(4)及び同(5),丁事件の請求は,いずれも,その訴えの提起時において,各相手方が特定されていない上,各相手方が受け取った特別報酬の額も特定されていないから,相手方及び請求金額が不明で訴訟物が特定されておらず,したがって,請求の特定を欠き不適法である。のみならず,これらの請求の各相手方の住所は,口頭弁論終結時に至っても,いずれも特定されていないから,これらの請求は口頭弁論終結時においてもいずれも特定を欠く。
仮に氏名による特定のみで請求が特定されるとしても,訴え提起時と異なる相手方を新たに対象とすることは訴えの変更であって,新たに対象とした時点が出訴期間(地自法242条の2第2項1号)の計算の基準となることからすれば,上記各請求の出訴期間の計算は請求の特定がされた時点を基準とするべきところ,甲事件の請求(3)及び同(4)の相手方の氏名が特定されたのは平成17年2月3日付けの訴状の補正によってであり,各自の受給金額が特定されたのは同年5月6日付け被告準備書面によってであり,乙事件の請求(4)及び(5)の相手方の氏名が特定されたのは同年3月15日付け原告第1準備書面によってであり,各自の受給金額が特定されたのは同年5月18日付け被告準備書面によってであり,丁事件の請求の相手方の受給金額が特定されたのは同年12月12日付け被告準備書面によってであって,いずれも出訴期間をはるかに経過した後であり,提訴後に特定がされたことにより瑕疵が治癒されたとはいえない。
よって,甲事件の請求(3)及び同(4),乙事件の請求(4)及び同(5),丁事件の請求は特定されておらず,また,出訴期間(地自法242条の2第2項1号)を遵守していないから,いずれも不適法である。
(4)  訴え提起手数料(本案前の争点④)について
(原告の主張)
甲事件,乙事件及び丁事件は,多数回にわたる同種の支出を一律に問題とし,しかもその違法事由が全く共通するものである場合に当たり,訴額の計算においては,各事件ごとに1個の請求と見るのが相当であるから,各事件の訴額はそれぞれ160万円であり,原告は各事件について納付すべき訴え提起手数料相当額の印紙を各訴状に貼用した。よって,甲事件,乙事件及び丁事件について納付された訴え提起手数料は納付されるべき手数料額に足りているから,甲事件,乙事件及び丁事件については,それぞれ納付すべき訴え提起手数料の納付があり,いずれも民訴費用法3条1項に適合する。
仮に足りないのであれば,原告は,甲事件については請求(1)のうちP6を請求を求める相手方とする請求に,乙事件については請求(1)に,丁事件についてはP37を請求を求める相手方とする部分に納付済みの訴え提起手数料に充当するから(なお,丙事件についてはP6に対して請求を求める部分に充当する。),少なくとも上記各請求については,それぞれ納付すべき手数料の納付があり民訴費用法3条1項に反しない。
(被告らの主張)
最高裁昭和51年(行ツ)第120号同53年3月30日第一小法廷判決・民集32巻2号485頁は,平成14年改正前の地自法242条の2第1項4号の請求の訴額について,一つの訴訟物について「地方公共団体が直接受ける利益すなわち請求に係る賠償額」にかかわらず算定不能として扱うというものであるところ,改正後の同号の請求の訴訟物は当該職員あるいは相手方及び請求の内容(損害賠償あるいは不当利得の返還)ごとに異なる。甲事件,乙事件及び丁事件の各請求は,しかも,当該職員に対する損害賠償請求と財務会計行為の相手方等に対する不当利得返還請求を含み,特別報酬の支給の決定(特別報酬の種類,時期,額は各支給の決定ごとに異なる。)の適法性や支給の決定の相手方がこれに基づく支出(狭義)により得た利得の法律上の原因の有無は各当該職員ないし相手方ごとに個別に判断されるべきである。したがって,上記各訴えの訴訟物は請求を求める当該職員ないし相手方ごとに独立,別個であるから,甲事件,乙事件及び丁事件における訴訟物の個数は,それぞれ請求を求める当該職員及び相手方の人数に相当する数である。しかるに,甲事件,乙事件及び丁事件は,うち1個分の訴訟物の訴えによる利益(訴額)に相応する訴え提起手数料相当額の印紙の貼用しかされていない上,各事件ともどの訴訟物についての訴え提起手数料を納付する趣旨での貼用なのか明らかでない。
よって,甲事件,乙事件及び丁事件について,各事件の請求すべてについて納付すべき訴え提起手数料の納付がなく民訴費用法3条1項に適合しないから,各事件に係る訴えはすべて不適法である。
(5)  公金の支出の違法性(本案の争点①)について
(原告の主張)
ア 本件非常勤職員に対して特別報酬を支給することは地自法203条,204条の2に反する
(ア) 地自法203条は「その他普通地方公共団体の非常勤の職員」,同法204条は「その他普通地方公共団体の常勤の職員」について明確に区別してそれぞれに対して支給する給付について定め,同法204条の2において,普通地方公共団体は,いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずには,これを同法203条1項の職員及び同法204条1項の職員に支給することはできないと規定している。
したがって,地自法203条の非常勤の職員に対して,同法204条2項所定の諸手当を支給することはできず,実質的に同法204条2項所定の諸手当に当たる給付を支給することも給付の名称にかかわらず地自法203条,204条の2に反する。
(イ) 本件非常勤職員は,地自法203条の非常勤の職員に当たる
公務(行政事務)は法律に基づいて安定的,継続的そして一定水準で確実に遂行されなければならず,そのためには,公務を担う公務員組織について人員面において単に一定の人員が確保されるだけでは足りず,能力面においても組織全体から見た職員の総合的能力が安定的かつ継続的に一定水準に維持されていることが必要不可欠である。そして,規模が大きく毎年多数の実績と経験を積んだ退職者が生じるのが常態である公務員組織において,このような総合的能力を維持するためには,退職者に代わり得る人材を組織内部で絶えず生み出していく組織形態が必要であり,現行の地方公務員制度は,まさにそのための制度である。すなわち,現行の地方公務員制度は,恒常的公務員関係(継続的,安定的に恒常的業務を維持,推進していくための恒常的組織)を継続的,安定的に維持,存続させるため,任用に当たり厳格な能力実証を求めるとともに一定の年齢制限を設けて職員全体が一定の能力とほぼ同一の勤務年数を有するように配慮し,それらの職員を,終身雇用的任用制度の下,長期的かつ計画的に育成し,毎年の退職者により欠ける部分を翌年の退職者により確実に補填していくことによって適切・有能な人材を安定的に補填して組織全体としての公務遂行能力を常時一定水準に保つことを可能にしている。そして,地自法204条の常勤の職員とは,このような恒常的組織を担い現行地方公務員制度の中核となる職員をいうのに対し,地自法203条の非常勤の職員とは,上記のような同法204条の常勤の職員による人的体勢を補完するものとして,臨機に特殊専門的知見等を必要とする場合に必要に応じて設けられ,任用に当たり厳格な能力実証が要求されていない反面,任期付の任用で,勤務が継続する場合でも任期の更新により,終身にわたる継続的勤務関係のみならず長期間にわたる任用も予定されていないという臨時的かつ短期的な任用形態の下に任用された職員をいう。
しかるところ,本件非常勤職員は,① 恒常的業務ではない業務のため,あるいは恒常的業務であっても常勤の職員の負担軽減等のため必要に応じて特定の業務のみに就くためにのみ任用されて当該業務のみに従事し,恒常的組織の一員すなわち地自法204条の常勤の職員として任用され,様々な部署で様々な業務を担う市の一般職常勤職員とは根本的に職務内容も職務に対する姿勢,責任が異なっていること,② 「非常勤嘱託」等として募集され,正規の採用試験によらないで(さらにいえば,コネ,口利きによるものだったとうかがわれる。)1年の任期付きで任用され,又は1年単位の任期の更新により市で勤務している者であって,終身雇用(終身にわたる継続的な勤務関係)を前提として任用されていないこと(辞令等の定年なる表現は最大延長時を示すにすぎないし,本件非常勤職員は「任期付き短時間勤務職員」となるに当たり新たに試験を受けて雇用され直されている。)からすれば,臨機に特殊専門的知見等を必要とする場合に必要に応じて設けられ,任用に当たり厳格な能力実証が要求されていない反面,任期付の任用で,勤務が継続する場合でも任期の更新により,終身にわたる継続的勤務関係のみならず長期間にわたる任用も予定されていないという臨時的かつ短期的な任用形態の下に任用された職員であるから,地自法203条の非常勤の職員に当たる。
なお,地自法203条及び204条は,地公法にいう一般職と特別職の区別をしていないから,本件非常勤職員がいずれであっても,上記結論は左右されないし,そもそも,本件非常勤職員の職種の名称,任期付任用であること及び後記(オ)③のとおり実質的に兼業が可能であったことからすれば,地公法3条3項3号の職にある者であって特別職の職員に当たる(大阪府においては本件非常勤職員と同様の職員は同号の特別職の職員とされているし,枚方市自身,学校給食調理員を特別職の非常勤職員として募集するなどしている(甲51)。)。
(ウ) 特別報酬は地自法203条にいう報酬に当たらず,実質的に地自法204条2項にいう手当に当たる
地自法203条の非常勤の職員は上記(イ)のような職員であることから,同条にいう報酬は,生活給(支給対象の職員及びその家族の生計を維持するための費用に当てられることを予定して支給ないし受領される給付をいう。以下同じ。)としての意味はなく純然たる勤務に対する反対給付としての性格のみを有するものである。このことは,昭和31年の地自法の改正による203条2項の新設の趣旨が,同条の非常勤の職員に対する報酬は,非常勤の国家公務員の勤務の対価と同様,勤務量,具体的には勤務日数に応じて支給すべき性格のものである趣旨を明確にし,これをもって非常勤の職員に対する報酬の支給の原則とし,ただし,非常勤の職員のうちにも,勤務の実態からして常勤の職員と同様に月額ないし年額をもって支給することが合理的であるような場合や勤務日数の把握が困難であって月額等による以外に支給方法がないものなど特殊な場合も予想されるので,条例で特別の定めをすることによりその例外を設けることができるようにすることにあったことからしても明らかである。
そして,本件非常勤職員については,本件給与条例及び本件非常勤職員給与規則が,同条例の非常勤職員に対しては,その勤務に対する反対給付である普通報酬を月額をもって支給することが合理的であるものとして,きめ細かな月額報酬額を設定しており,同条例に基づき,その勤務に対する反対給付として相当な額を上回る額の普通報酬が支給されていた。
そうすると,これと別途支給される定期特別報酬は実質的には地自法204条2項にいう期末手当に当たり,退職時等特別報酬は実質的には地自法204条2項にいう退職手当に当たるものといえる。このことは,職員給与条例に特別報酬の支給についての規定を挿入した本件13年改正に当たっての市長と市職員の労働組合委員長との間の覚書の記載(甲2),上記改正についての市議会での質疑応答,監査結果を通知する書面に現れた監査委員の認識等からも明らかである。
(エ) 小括
以上よりすれば,本件非常勤職員に対して特別報酬を支給することは,地自法203条,204条の2の規定に反する。
(オ) 本件非常勤職員が市の一般職常勤職員に準じた者であることにより本件非常勤職員に係る特別報酬の支給が適法となるものではない
被告らは,本件非常勤職員は,その勤務実態が市の一般職常勤職員の勤務実態に準じていることから,その勤務に対する給付は生活給の実態を有しているのであって地自法204条の常勤の職員に準じた者といえるから,地自法204条が適用(ないし準用,類推適用)される旨主張するが,同条の常勤の職員でない者を同条の職員として扱うことは,定数主義を規定した地自法172条3項に反し,違法である。
また,そもそも,前記(イ)①(市の一般職常勤職員との職務内容,職務に対する姿勢,責任の差違)及び②(臨時的かつ短期的な任用形態の下の任用)に加え,③ 募集要項に他の仕事を兼ねることは原則として認められないとの趣旨の記載がある例もあるがこの点についての宣誓書の証拠提出はなく,市の兼業の許可基準である「非常勤嘱託職員についての営利企業等従事許可基準」(甲19)によれば,同基準に定める許可申請書を提出しさえすれば容易に兼業が認められ,申請書を提出しなかった場合の罰則等の明記もないのであって,兼業が厳格には禁止されておらずむしろ実質的には認められていたといえ,その精力は分散されていたこと,④ 地方公務員等共済組合への加入につき,常勤職員との差違の調整により本来の組合員の要件である「常時勤務に服する地方公務員」に準じて取り扱われるための要件(地方公務員等共済組合法2条1項1号,地方公務員等共済組合法施行令(昭和37年政令第352号)2条5号)を満たさないため大阪府市町村職員共済組合の加入対象とされておらず,また,大阪府市町村の常勤職員が加入する大阪府市町村職員互助会(同会定款(甲59)4条,7条3号)の会員に加入していないこと等からすれば,本件非常勤職員の勤務実態は,恒常的組織の一員たる市の一般職常勤職員とは異なっているのであって,勤務実態から市の一般職常勤職員に準じた者ということもできない。
(カ) 本件非常勤職員がその勤務実態により地自法204条の常勤の職員に当たるということはできない
被告らは,本件非常勤職員の勤務実態をもとに地自法204条の常勤の職員の意義について解釈をするべきと主張するが,地自法は,同法204条の常勤の職員と同法203条の非常勤の職員との間には,前記(イ)から明らかなとおり大きくかつ根本的な差違があることから,同法204条の常勤の職員に対しては,生活給的性格の給付をもすることとして勤務に対する反対給付である給料のほか同法204条2項所定の諸手当を受けることができるものとする一方,同法203条の非常勤の職員に対しては,前記(ウ)のとおり純然たる勤務の反対給付である報酬及び費用弁償のみを支給することとして,両者を明確に区分して規定した上で,同法204条の2により,これら以外の給付を支給することは許されないとしているのであるから,同法203条及び同法204条の職員の意義について解釈の余地はない。
また,普通地方公共団体とその職員の間の任用関係は公法上のものであることから,その職員が地自法203条の非常勤の職員と同法204条の常勤の職員のいずれに当たるかはいずれとして任用されたかによって決定され,勤務の継続等の就労実態や当事者の期待,認識によって,その性質が変わる余地はなく,地自法203の非常勤の職員として任用されたものにつき任期の更新が繰り返されたとしても,同法204条の常勤の職員に変わることも,これに準じるものとなることもないのであって,この点でも,被告らの上記解釈は採用できない。なお,枚方市の業務はすべて高い公共性を有し,また,そのほとんどが恒常的業務であるから,従事する業務によってその職員が同法203条の非常勤の職員となるか,同法204条の常勤の職員となるかが決まるものではないし,手当の実質を有する給付の支給を受けた事実によって同法203条の非常勤の職員が同法204条の常勤の職員に変わることもない。
また,被告らは,本件非常勤職員が地自法204条の常勤の職員である市の一般職常勤職員と同等の勤務の提供をしているとして,常勤職員と非常勤職員の権衡を考慮した調整をするべきである旨主張してこれを前提に地自法204条の常勤の職員の意義について解釈をする。しかし,地自法は,同法204条の常勤の職員と同法203条の非常勤の職員との間には,前記(イ)のとおり大きくかつ根本的な差違があることから,両者の勤務の対価について異なって規定しているのであって,勤務の対価について地自法203条の非常勤の職員と同法204条の常勤の職員の権衡を考慮すべきとはいえない。また,実際にも,本件給与条例の非常勤職員である職員以外の枚方市の職員,例えば特別職の非常勤職員とされる者は,就労実態にかかわらず期末手当や退職手当は支給されないこと,本件非常勤職員は,正規の採用試験によらずに市に勤務することができ,「任期が更新されることに対する期待権」があるという利点を有していること,地自法204条の常勤の職員である市の一般職常勤職員として採用されるための採用試験は公平・公正に実施されており,本件非常勤職員も,上記試験を受けて市の一般職常勤職員になることができたこと等からしても,被告ら主張のような調整を行うべきということはできない。加えて,仮に,被告ら主張の調整をする必要があるとしても,その調整は,地自法203条1項の報酬の増減によって各職員の職務ごとにすべきであって,被告ら主張の調整の必要性と地自法204条の2第2項の諸手当に当たる給付の支給の可否の問題とは別問題である。また,そもそも,本件非常勤職員の勤務実態は前記(オ)のとおりであるから,本件非常勤職員が被告ら主張のように市の一般職常勤職員と同等の勤務の提供をしているとはいえない。なお,市の職務である以上,職務の公共性が高いのは当然であるから,公共性の高さはこれらの者を常勤の職員の正規職員との同等性を基礎付けるものではないし,健康保険,厚生年金保険,雇用保険,労災保険への加入も,多くの「非常勤・嘱託職員」とされている者がこれらの社会保険に加入していることからすれば,上記の被告らの主張の前提となるような勤務実態を基礎付けるものではない。
なお,被告らは,地自法203条の非常勤の職員は,自治体からの収入によって生計を立てることは想定されていない職員をいう旨主張するが,同法203条の文言からは被告ら主張の趣旨は見受けられず,同条の非常勤の職員に当たるかどうかは兼業の可否により左右されるものではないし,そもそも前記(オ)③のとおり兼業は実質的には認められていた。また,本件非常勤職員の週勤務時間が市の一般職常勤職員の4分の3を超えていることをもって本件非常勤職員が地自法204条の常勤の職員に当たるとする被告らの主張も誤りである。
(キ) 本件非常勤職員を地自法204条の常勤の職員として扱うような裁量は市議会にはない
被告らは,特別報酬の条例上の支給根拠である本件給与条例54条2項,56条は市議会の裁量の範囲内である旨主張する。
しかし,条例制定権は法律の範囲内で認められる(憲法94条)ものであるから,実質的には地自法204条2項の期末手当や退職手当に当たる給付をするために,本来同条の非常勤の職員に当たらない者を同条の非常勤の職員とするような裁量は議会にはない。
イ 本件給与条例56条は,給与条例主義に反する
いわゆる給与条例主義を定めた地自法203条5項,204条3項及び地公法25条3項の趣旨は,地方公共団体の職員に対する給与の支給について,必要となる住民自治の原則に基づく住民の同意に代えて住民の代表者から成る議会が条例に定める必要があるということ,職員に対し給与条例を保障するためには地方自治体の最高規範たる条例によって定める必要があるということにある。そして,これらの規定は,常勤の職員についてである場合と非常勤の職員についてである場合とを問わず,一定部分を普通地方公共団体の長又はその制定する規則にゆだねる場合においても,少なくとも当該種類の給与の支給要件該当性及び支給額を決定するための具体的な基準が当該条例自体から読み取れる程度に条例においてこれらを具体的に規定することを要するものと解すべきであり,条例において単に給与の支給根拠のみを定め,具体的な額,支給要件等の基本的事項をすべて規則等にゆだねることは給与条例主義の趣旨に反し,許されないものというべきである(昭和54年8月31日自治給第31号通知参照)。
そして,本件給与条例は,54条1項において同条例別表第2及び別表第3の適用を受ける職員,すなわち常時勤務を要する職員以外の職員を職種,勤務時間,勤務日数等を問わずに包括的に「非常勤職員」と定義した上で,56条1項において,同項の規定の仕方に照らし実質的な期末手当及び退職手当であるといえる特別報酬を支給するものとしており,地自法203条の非常勤の職員に対する給付を支給することを根拠付ける条例といえるから(そのような給付の支給が違法か適法かはさておく。),地自法203条5項に規定する給与条例主義との適合性が問題となる。そして,地自法204条の2が法定されていない手当等の支給を禁じていることからすれば,実質的な期末手当・退職手当というべき特別報酬につき住民の代表者から成る議会が定めた条例により定められているというためには,その支給要件該当性及び支給額を決定するための基準が殊更に具体的かつ殊更に厳格に定められなければならない。
しかるところ,本件給与条例は,上記のとおり54条1項において常時勤務を要する職員以外の職員を包括的に非常勤職員というものと定義づけ,そのような非常勤職員の特別報酬の支給要件該当性について「1週間当たりの勤務時間が11時間を超えた場合」とのみ規定し,その余を規則に白紙委任しており(同条例56条1項柱書ただし書),特別報酬の支給要件該当性を決定するための具体的基準を本件条例自体から読み取ることはできない。また,支給額についても,月額報酬に一定の支給率(以下,特別の給付の支給額の算定に当たり各月に通常支給を受ける給付の額に乗じることとされる数を一般に「支給率」という。)を乗じて得た額とされているところ,月額報酬の額については,同条例55条2項が一定の上限額を超えない範囲で規則で定めると規定するにとどまり,個々の非常勤職員に対する報酬額を決定するための具体的基準が何ら規定されておらず,支給率についても,支給率の合計又は支給率の上限割合を規定するにとどまり,その余は規則に白紙委任して条例上には具体的な支給率は規定されていない。これらからすれば,本件給与条例は,特別報酬の支給要件該当性及び支給額を決定するための基準を具体的かつ厳格には定めていないということができ,特別報酬についてその支給要件該当性及び支給額を決定するための具体的な基準が条例自体から読み取れず,特別報酬についての本件給与条例の規定は地自法203条5項に適合しない。
仮に,本件給与条例が地自法204条の常勤の職員に対する同条2項の手当としての特別報酬の支給を規定したものということができ,同条3項との適合性が問題となるとしても,以上によれば,特別報酬についての本件給与条例の規定は同項にも適合しない。
なお,地自法204条の2の趣旨は,違法な手当等の支給を禁止して地方公務員のお手盛りの積み重ねにより必要な事業に予算が回らなくなることを防止して地方公共団体の健全な発展を守り,国民の福利を充実させることにあるから,被告ら主張のように本件給与条例54条ないし56条につき規定の文言を限定して解釈して,本件非常勤職員に適用される限度では適法であると解することはできず,本件給与条例54条ないし56条の規定は地自法204条2項の授権を欠き,この点でも法律に基づかないものである。
よって,本件特別報酬の支給は,地自法203条5項又は同法204条3項に反し,特別報酬について法律に基づく,すなわち住民の代表者から成る議会が定めた条例が存在しないといえるから,この点からも地自法204条の2に反する。
ウ 市長は,本件給与条例54条2項及び56条の執行義務を負わない
被告らは,特別報酬の条例上の支給根拠である本件給与条例54条2項,56条が地自法203条,204条,204条の2及び地公法24条6項に反し,法律の範囲を超えるものとして違法であっても,市長はその執行義務を負う旨主張する。
しかし,前記アのとおり,本件非常勤職員に対して特別報酬を支給することが違法であり,また,前記イのとおり,本件条例条例54条2項及び56条が地自法203条5項又は204条3項及び並びに204条の2に反するところ,以上は,関係する行政実例(昭和31年9月28日自丁行発第82号回答,同年10月9日自丁行発第90号回答及び平成8年3月13日自治給発第16号回答),大阪府の東大阪市に対する助言(甲21),本件13年改正により特別報酬の支給についての規定(54条2項及び56条)が職員給与条例に挿入され,本件17年改正により削除されたという職員給与条例の改正経緯,自治労連の資料(甲58)等から明らかであるのであって,本件給与条例54条2項,56条の規定に基づいて特別報酬を支給することの違法は重大かつ明白であったものといえる。したがって,市長は,本件給与条例54条2項,56条の規定を執行して本件非常勤職員に対して本件特別報酬の各支給の決定をする義務を負わないから,条例に規定があることにより本件特別報酬の各支給が違法でなくなるものではない。
エ まとめ
よって,本件特別報酬の各支給の決定は,地自法203条,204条,204条の2,172条3項,地公法24条に反し,本件特別報酬の各支給の決定に具体的に関与することは不法行為法上違法である。また,本件特別報酬の各支給の決定に基づき支出された本件特別報酬の各受領は法律上の原因を欠く。
(被告らの主張)
ア 本件非常勤職員は地公法3条2項にいう一般職の職員であるから,同法24条に基づき給与を支給することができる
地公法3条2項にいう一般職の職員には,同法4条1項の規定により同法が適用され,同法24条に基づき給与を支給することができるところ,本件非常勤職員を含む本件給与条例の非常勤職員である職員は,いずれも一般職の職員である。
すなわち,一般職は特別職に属する職以外の職であり,特別職とは,恒久的でない職又は常時勤務することを必要としない職であり,かつ,職業的公務員の職でない点において一般職に属する職と異なる(昭和35年7月28日自治丁発第9号回答)と解されており,その区分の判断は,① 指揮命令関係の有無,② 専務職であるか否か,③ 終身職であるか否か,④ 成績主義の適用の有無,⑤ 政治職であるか否かを判断要素としてされるとされている。そうすると,本件給与条例の非常勤職員は,上司の指揮命令に従い職務を遂行するものであること(①),週勤務時間数は勤務時間条例2条1項及び同条例施行規則3条1項の適用を受ける職員(正規職員)の週勤務時間数である38.75時間の4分の3を超えており,任用に当たっては兼職禁止が条件である点の指摘をされていること(②),任期の定めはあるが更新がされ,実質的に定年制が実施されていること(③),原則として競争試験により,その他の場合も選考により採用され,任期の更新に当たっても勤務成績が考慮されていること(④)からすれば,特別職には当たらず,一般職に属する職員であると認められる。
したがって,本件非常勤職員には,地公法24条に基づき同条6項の規定により制定された条例により給与を支給することができる。
イ 本件非常勤職員に対して特別報酬を支給することは地自法203条,204条の2に反しない
(ア) 本件非常勤職員は地自法204条の常勤の職員に準じる者として同法204条2項が適用(準用ないし類推適用)される
国家公務員においては,「非常勤」は「常勤職員の1週間当たりの勤務時間の4分の3をこえない範囲内」の者をいうとされており(人規15-15),地公法24条5項に照らせば,地方公務員においても「非常勤」と「常勤」を区別する基準としてこれによることが妥当であるところ,本件給与条例の非常勤職員である職員の週勤務時間数は市の一般職常勤職員の週勤務時間数である38.75時間の4分の3を超えている。加えて,本件給与条例の非常勤職員の勤務形態は別紙「非常勤職員の勤務状況」記載のとおりであって,その職務内容も市の一般職常勤職員に準じたものである。以上のような本件給与条例の非常勤職員である職員の勤務実態からすれば,これらの職員は地自法204条の常勤の職員に準じる者である。
そして,地自法203条が,同法204条と異なり,同条の非常勤の職員に対して議員を除き手当の支給を認めていないのは,これらの職員に対する給付が生活給としての実態を有していないからであるところ,本件給与条例の非常勤職員である職員は,上記のとおり,地自法204条の常勤の職員に準じる者であって,これらの者に対する報酬は同条の常勤の職員と同じく生活給としての実態を有しているから,地自法203条,204条の法意に照らしても,これらの者には地自法204条が適用される常勤職員に準じた取扱いがされるべきである。そして,地公法25条3項5号は,これらの者のような地自法204条の非常勤の職員に該当しないが,これに準じる勤務実態にある職員が存在することを前提に,一般職の非常勤職員の給与について必要な調整を条例で行い得ることを定めたものと解される。
そうすると,本件給与条例の非常勤職員である職員は,地自法204条の「常勤の職員」に準じる者であるから,同法203条の適用は受けず,地自法204条が適用(又は準用若しくは類推適用)され,本件給与条例の非常勤職員である職員に対して同条2項の手当の実質を有する給付を支給しても同法203条,204条2に反せず,何ら違法ではない。
また,本件給与条例の非常勤職員である職員は地自法204条の常勤の職員に準じる職員として同条2項の適用(又は準用若しくは類推適用)を受けるにとどまり,その職は地自法172条3項ただし書にいう「非常勤の職」であって同項本文の定数を定めるべき職員には含まれないから,本件給与条例の非常勤職員である職員に係る特別報酬の支給が同項の潜脱に当たるということはない。
なお,仮に本件給与条例の非常勤職員である職員に地自法203条が適用されるとしても,特別報酬は,同条にいう報酬に当たる。そして,平成15年を例にとれば,本件給与条例の非常勤職員である職員に対して支給された普通報酬の額及び普通報酬に特別報酬(退職時等特別報酬を除く)と費用弁償を加えた合計額は,1人当たりの平均で,同じ勤務時間勤務したと仮定して算出した市の一般職常勤職員に対して支給された給料及び諸手当(退職手当を除く)の合計額のそれぞれ40.2パーセント及び53.5パーセントであり,退職時等特別報酬額は,1人当たりの平均で,市の一般職常勤職員に対して支給された退職手当額の13.6パーセントであるから,その報酬としての支給の妥当性・合理性は明らかである。
(イ) 本件非常勤職員の週勤務時間は,市の一般職常勤職員の週勤務時間の4分の3を超えているから,地自法204条の常勤の職員に当たる
地自法203条の摘示する例からすると,本来の同条の非常勤の職員は,他に専門職などの生計の手段があり,自治体からの収入によって生計を立てることは想定されていない職,すなわち,勤務時間的には随時の提供であり生活時間のほとんどを自治体に提供するわけではなく,勤務内容的にも自己の責任において自治体に勤務を提供し,自治体からの指揮命令を受けない職であり,同条の非常勤の職員には純粋に勤務量(具体的には勤務日数)に対する反対給付のみが支給され,同法204条2項所定の手当のような生活給の意味を持つような給付は支給されない。対して,地自法204条の常勤の職員は,生活時間のほとんどにわたって労働力を提供していることから,一定の勤務時間あるいは勤務日数に対する反対給付だけでは不十分であるため支給される給付である同条2項所定の手当が支給される。そうすると,地自法204条2項所定のような手当を支給するのが相当である勤務実態にあるものが同条の常勤の職員であると解される。すなわち,地自法204条の常勤の職員とは自治体から指揮命令を受けて上司の指示で勤務に従事し,そのような勤務により収入を得て生計を維持する職員,換言すれば勤務のため一日の生活時間の大半を自治体に提供するため,一定の勤務に対する反対給付だけでは労働力提供に対する対価として不十分であるような勤務実態にある職員をいう。
そして勤務時間が常勤職員の勤務時間の4分の3を超えるような勤務実態があれば,他の生活の手段と両立しないというを妨げないところ,地自法においては,昭和26年法律第203号による改正により「常勤」及び「非常勤」の語が初めて用いられ,昭和27年の法律第306号による改正により現行のとおり同法203条1項は「(前中略)その他普通地方公共団体の非常勤の職員」ついて,同法204条1項は「(前略)その他普通地方公共団体の常勤の職員」について規定するものと整理されたところ,当時,「常勤」と「非常勤」の区別についての基準は,国家公務員についての,非常勤職員は日々雇い入れられる1日の勤務時間8時間以内の者及びその他の者で1週間当たりの勤務時間が常勤職員(正規職員)の4分の3を超えない範囲内のものとする人規15-4(当時。現行の人規15-15に相当。)のみであった上,地公法24条3項及び同条5項において既に現行法のとおり給与及び勤務時間について国家公務員との均衡が要請されていたことからすると,地自法204条の常勤の職員は,週勤務時間が正規職員のそれの4分の3を超える職員を意味するものと解される(昭和59年12月3日自治公一発第42号回答もそのような見解に立っているし,雇用保険や健康保険及び厚生年金についても,正規職員の勤務時間の4分の3を超えるかどうかが基準とされている。)
そうすると,枚方市においては,正規職員の週勤務時間数は38.75時間であるから(勤務時間条例2条1項,同条例施行規則3条1項),週勤務時間数がその4分の3である29時間を超えるものは地自法204条の常勤の職員に当たるというべきところ,本件非常勤職員の週勤務時間数はいずれもこれを超えている。実質的にも,その勤務時間は以上のとおりである上,枚方市の組織に組み込まれて市の恒常的業務に担当課から指揮命令を受けて従事し,兼業は原則として禁じられ,枚方市からの給与により生計を維持しており,一定の勤務に対する反対給付だけでは労働力提供に対する対価として不十分であるような勤務実態にあるといえる。
したがって,本件非常勤職員は,地自法204条の常勤の職員に当たるから,同条2項の手当に実質的に当たる給付を支給しても地自法203条,204条の2に反せず,本件非常勤職員に対して特別報酬を支給することは違法ではない。
(ウ) 本件非常勤職員は枚方市の恒常的な業務に専ら従事する者であるから地自法204条の常勤の職員に当たる
地方公共団体は職員の処遇については,社会一般の情勢に適応するように,随時,適当な措置を講じなければならないところ(地公法14条1項),国際的には,経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約7条,ILOパート労働条約5条等により同一(価値)労働同一賃金原則が繰り返し確認されて国際労働基準として確立し,憲法14条の法の下の平等の内実を成すものと理解されるに至っていること,国内の立法の方向性も,平成19年にいわゆるパートタイム労働法の改正により正社員と同視すべきパート労働者については差別的取扱が禁止される等,平等待遇・均衡待遇を要求するものであることからすれば,地方公共団体が正規職員に準じる非正規職員に対して一時金(年の一定時期に支給される特別の給付をいう。以下同じ)及び退職金(退職(勤務の終了一般をいい,任期の更新をしないことによるものを含む。以下同じ。)を契機とする特別の給付をいう。以下同じ)を一切支給しないのは社会一般の情勢に反する。また,一般職の地方公務員の給与については地公法24条3項により,生計費並びに国及び地方公共団体の職員並びに民間企業の従事者の給与その他の事情を考慮して定めなければならないとされており(生計費原則),非正規職員であっても,一般職であって,他の職を兼ねておらず,その賃金が生計の手段となっているような正規職員に準じるものには,当然に生計費原則が適用され,年収ベースで生計を維持するにふさわしい勤務の対価が支給されるべきである。国においても,委員,顧問若しくは参与の職にある者又は人事院の指定するこれらに準ずる職にある者以外の常勤を要しない職員については,各庁の長は,常勤の職員の給与との権衡を考慮し,予算の範囲内で,給与を支給するとされ(一般職職員給与法22条2項),非常勤職員にも手当を含む給与が支給されている(昭和28年12月10日給実甲発第83号通知,同年6月30日法制局1発第160号回答参照)。加えて,一時金及び退職金は,賃金の後払い的性格を持つとともに,提供される労働の質と効率を高める効果があるものであって,上記のような者にこれらを支給することは市の公共サービスの質を高め,市民の利益にもなることであって,行政遂行上も合理的である。
そして,地自法204条の常勤の職員については定義規定はないのであるから,その意義については,以上を踏まえ,就労実態に即して法の目的に従った実質的な解釈をするべきである。
ところで,地自法203条の非常勤の職員は,同法制定以前の府県制,市制等による地方制度の下の他に本業を有し生活給の意味を持たない勤務に相当する報酬の支給及び費用弁償を受けるにとどまる名誉職にその沿革を有し(同項が非常勤の職員として例示する職をみてもいずれも名誉職である。),同法204条の非常勤の職員は,専業であり勤務に対する反対給付に加え労働関係の対償として本人及び家族の生活支持の要素を有する給料及び旅費(退職後あるいは死亡に際しては退隠料等)の支給を受ける有給吏員(専務職)にその沿革を有する。そうすると,職業として公務に従事し,その対償である給与によって生計を立てる専務職に当たる職員は,地自法204条の「常勤の職員」に当たると解すべきである(なお,地公法上の一般職と特別職の区分及び非常勤及び常勤の区分は204条にいう常勤の職員の解釈とは関係がない。このことは,地公法25条3項は,非常勤職員の職について給与の調整に関する事項を条例に規定すべき事項として挙げているところ,「調整」との文言は,諸手当の額の加減を意味し,諸手当を支給できることを前提としていると解されることからも明らかである。)。
そして,職業として公務に従事し,その対償である給与によって生計を立てる専務職に当たる職員とは,① 恒常的な業務,すなわち,臨時的・完結的業務ではなく,年間を通じて実施され,これに当たる職を恒常的に置く必要がある業務に従事する者であり(昭和26年8月15日自治行発第216号回答,昭和26年2月6日自治乙発第37号回答参照),かつ,② ①の業務に専ら従事するものと解すべきである。そして,②の判断に当たっては,〈ア〉 国家公務員の場合の常勤と非常勤の区別基準(人規15-15)である「常勤職員の1週間当たりの勤務時間の4分の3を超える時間勤務する者であるか(そのような者であれば日常的に勤務する者,すなわち休日その他勤務を要しない日を除き,一定の勤務計画の下に,毎日所定の勤務時間中,常時その職務に従事しなければならない者であるということができる(なお,勤務時間は事実に即して判断されるべきである。)。),〈イ〉 他に本業がないか(公務員としての給与によって生計を維持しているか。なお,判断に当たっては,一般職の公務員であれば地公法38条の規定による営利企業等の従事制限を受けること(もっとも,同条の規定に基づく許可を受けた兼業は専務職性を否定するものではない)及び公務員としての勤務による拘束時間(恒常的な時間外労働等によるものを含む)に留意すべきである。)及び〈ウ〉 継続的に勤務することが予定されているか(形式上は任期付きの任用であっても現に勤務が継続し,又は更新が予定されているような場合は継続が予定されているといえる。また,継続的勤務が予定されていることが加入要件である各種社会保険への加入や任用に当たり地公法17条による「能力の実証」を経ていること,専門性を高めるための研修及び配置転換は継続的な勤務が予定されていることも継続的な勤務の予定を基礎付ける事情となる。)の3点を判断要素とすべきである。
しかるところ,本件給与条例の非常勤職員が従事する業務はいずれも長年行われてきたもので,常態としての勤務を要する日常的業務であって,市の恒常的な業務である(①)。また,その勤務時間は常勤職員の1週間当たりの勤務時間の4分の3を超えており(②〈ア〉),一般職であって営利企業の従事制限を受け,就労日数及び就労時間(勤務による拘束時間)から事実上兼職が極めて困難であって,他に本業がないということができ(②〈イ〉),任期付きの任用ではあるが,更新停止年齢が定められて任期の更新が予定され,各種社会保険にも加入しており,その他任用方法,研修,配置転換の状況からも継続的に勤務することが予定されていたといえる(②〈ウ〉)から,専ら市の業務に従事するものといえる。(なお,枚方市では,本件給与条例の非常勤職員に相当する非正規職員である市の非常勤職員には,1960年代から一時金が,1980年代からは退職金を支給されており,これらの職員が一時金,退職金を生計維持に不可欠なものとして予定していたことからも,本件給与条例の非常勤職員は,生活給の支給を要し,地自法204条の常勤の職員であるというべきであるといえる。)
そうすると,本件非常勤職員が地自法204条の常勤の職員に当たることは明らかであるから,同条2項の手当に実質的に当たる給付を支給しても地自法203条,204条の2に反せず,本件非常勤職員に対して特別報酬を支給することは違法ではない。
(エ) 本件非常勤職員を地自法204条の常勤の職員として扱うことは市議会の裁量の範囲内である
仮に本件非常勤職員が本来的には,地自法204条の常勤の職員に当たらなくとも,市議会は,枚方市には本件非常勤職員のような勤務実態の職員が多数存在しそれら職員が市の行政を担っているという社会的事実をもとに,これら職員の勤務時間は他の生活の手段と両立しない程度の時間を要し,その収入を生活の糧としている職員であるとの認識の下,これら職員に対する給付としては普通報酬のみでは不十分であるとして,これらの職員を地自法204条の常勤職員と位置付けて特別報酬を支給する旨の条例改正(本件13年改正)をする旨の議決をしたのであって,現実にも,上記条例改正の当時,本件非常勤職員を含む本件給与条例の非常勤職員である職員の勤務実態は,1週間当たりの勤務時間が29時間を超えるなど本件非常勤職員と同様であった。そうすると,地自法上常勤の職員と非常勤の職員との区別は一義的に法定されていないことからすれば,市議会の上記議決は明らかに法律の範囲内を超えるものとはいえず,市議会の裁量の範囲内であって有効である(最高裁昭和49年(行ツ)第70号同昭和50年10月2日第一小法廷判決・裁判集民事116号163頁参照)。
(オ) 以上によれば,本件非常勤職員に対して特別報酬を支給することは地自法203条,204条の2に反しない。
ウ 本件給与条例は給与条例主義に反しない
前記イのとおり,本件非常勤職員には地自法204条の常勤の職員に準じる者として,あるいは同条の常勤の職員に当たる者として同条が適用(ないし準用,類推適用)され,本件特別報酬は同条2項,3項の手当の性質を有するものである。そして,本件特別報酬の支給の決定は,地公法24条6項,及びこれに包含される地自法204条3項に基づき制定された本件給与条例に基づき行われたものである。
ところで,いわゆる給与条例主義を定めた地自法203条5項,204条3項及び地公法25条3項の趣旨は,給与の額及びその支給方法の決定を普通地方公共団体の住民の直接選挙により構成される議事機関である議会が制定する条例にゆだねることにより,給与に対する民主的統制を図り民主主義的な基礎を与えるとともに,普通地方公共団体の職員に対する給与の適正かつ公平な支給を図ることにある(なお,これらの規定の趣旨がさらに,職員に対する法定の種類の給与を権利として保障する趣旨を含むとしても,そのことから給与の具体的な額までも条例に規定して保障すべきことを導くことはできない。)。そして,給与条例主義については,憲法に基づく直接の要請があるわけではないところ,憲法の直接の要請に基づく租税法律主義や罪刑法定主義においてさえ具体的な課税要件のすべてあるいは構成要件のすべてを法定事項としていないことからすれば(最高裁昭和55年(あ)第1491号同59年3月16日第三小法廷決定,最高裁平成12年(行ツ)第62号,同第66号平成18年3月1日大法廷判決・民集60巻2号587頁,最高裁昭和44年(あ)第1501号同49年11月6日大法廷判決・刑集28巻9号393頁参照。),基本的事項の委任や白紙委任は許されないとしても,条例によって一定の基準の下に具体的・細目的事項を下位の法令に委任することは,任命権者の恣意的な決定を排するものであって,かつ,給与条例主義の趣旨を没却するものでない限り,当然に許容されるものと解すべきである。更にいえば,条例に規定すべき事項を定める地公法25条3項も基本的事項を挙げるにとどまり,支給要件及び支給額の具体的内容まで定めることは要請していないこと,給与の維持改善のための職員団体の結成及びそのための交渉権を認めた同法52条1項及び同法55条1項と給与条例主義とを矛盾なく解釈するためには,給与についての議会の決定がこれに基づく交渉の余地があるものであることを要することからすれば,給与条例主義は,むしろ,平素から組織内の事情に通暁し,部下職員の指揮監督の衝に当たる任命権者が条例から委任を受け給与決定の具体的な基準を規則で定め,その規則の運用を行うことを当然のこととしているものといえる(実際にも枚方市を含む全国の都道府県,市長村における普通地方公共団体の常勤の職員についての給与の支給はそのように行われている。)。特に,普通地方公共団体の非常勤の職員については,その採用の形態,職務内容,勤務態様は多種多様で,性質上一律的な規律になじまないと考えられるだけでなく,普通地方公共団体の非常勤の職員の制度は,一般職に属する常勤の職員を中核とする人的体制を補完するものとしてその時々の行政需要に柔軟に対処するための制度として位置付けられている側面が存在する点において普通地方公共団体の常勤の職員とは大きな差違があり,これらの多種多様な非常勤職員の報酬について,すべてを条例で定めるとすれば,条例改正の必要が頻繁となり,かえって些末な改正の審議のため議会の議事日程に支障をも生じることとなり,逆に弊害をもたらすこともあり得ないではないのである。国家公務員においても,非常勤の職員の給与については,その提供する勤務にふさわしい処遇,殊に常勤の職員の処遇との均衡という面での配慮等が要請されるが,これらの非常勤の職員の雇用及び勤務の実態は区々であり,実際問題としてあらかじめ法律等により具体的な基準までを詳細に定め難い事情にあるので,法の規定としては「一般職職員給与法22条2項で常勤の職員の給与との権衡を考慮し」という基本的基準を示すのみにとどめ具体的な給与の決定は各庁の長の裁量にゆだねることとして,これについての民主的統制としては同項の規定形式で十分であると解されているところ,常勤職員と非常勤職員の制度上・性質上の差違は地方公務員においても国家公務員においても変わるものではなく両者において異なる立法政策をとる実質的理由はないのみならず,国により地公法24条3項に基づく地方公共団体の職員の給与と国家公務員の給与の均衡の原則にのっとった指導がされ,多くの地方自治体において一般職職員給与法をモデルとして同法に準じた職員の給与についての運用がされている実態にある。以上の給与条例主義の趣旨及び国家公務員との対比からすれば,地自法等の定める給与条例主義の解釈適用に当たっては,常勤職員と非常勤職員の制度上,性質上の差違を考慮せざるを得ず,このことは地自法等が当然に予定するところであるといえ,普通地方公共団体の非常勤職員に対する給与については,条例においてその額及び支給方法についての基本的基準のみ定め,その具体的な決定を当該普通地方公共団体の長又は規則に委任することも何ら給与条例主義に反するものではなく,その基本的基準を定めるに当たっては,一般職職員給与法22条2項と同程度の規定形式で十分であるというべきである。
そして,本件給与条例は,5条1項において,職員の給料は,その職務内容,責任の軽重,勤務の強度,勤務時間,労働環境その他勤務に関する条件に応じたものでなければならないと規定し,54条2項において同条例の非常勤職員に対し,普通報酬及び特別報酬を支給することを規定し,55条2項において月額報酬について○○円を超えない範囲で規則で定めるとしていた。そして,これらを前提に,同条例は,定期特別報酬については,56条1項1号で支給要件を規定し,同条2項1号で支給額を6月1日又は12月1日現在において当該非常勤職員が受けるべき月額報酬の額に規則で定める基準日ごとの支給率を乗じて得た額に,基準日以前6月内の期間におけるその者に係る規則で定める在職期間の区分に応じて規則で定める割合を乗じて得た額と規定するとともに,その支給率の合計の上限を規定し,また,退職時等特別報酬については,同条1項2号及び3号で支給要件を規定し,同条2項2号で支給額を退職の日等において当該非常勤職員が受けるべき月額報酬の額に26.15を乗じて得た額を超えない範囲内において,規則で定めるところにより算定した額と規定し,これらの支給方法についても58条で常時勤務を要する職員の例によるものと規定していた。そして,本件非常勤職員給与規則が支給額の計算に用いられる月額報酬の具体的な額や支給率の数値等を規定していた。そうすると,特別報酬について,本件給与条例は,支給すべき報酬の種類を規定した上でそれぞれの支給要件該当性並びに支給額の算定方法及びその限度という基本的事項を具体的に規定しており,民主的統制の観点からも,職員に対する給与の適正かつ公平な支給を図るという観点からも,本件給与条例は,給与条例主義の要請を当然に満たしているものと解される。確かに,支給額の計算に用いられる月額報酬の具体的な額や支給率の数値の設定等が規則に委任されているが,その委任の仕方は具体的かつ限定的であって支給の上限も規定されている上,本件給与条例5条1項によって羈束されているのであって,任命権者の恣意的な決定を入れる余地は全くなく,給与条例主義の趣旨を没却するものではない。また,旧給与条例を本件給与条例のとおりに改正する本件13年改正及び本件非常勤職員給与規則の制定については,市議会総務常任委員会所属の議員と枚方市の事務担当局者との協議会において,特別報酬の支給要件及び支給金額の算定方法が具体的に示された上で条例に規定する事項と規則において規定する事項の区分に関して具体的な協議が行われており(丁18),その結果を踏まえて上記改正及び規則の制定が行われたのであるから,条例が規則に委任する範囲や程度についても議会の議員による実質的コントロールが及んでいるものと評価され,この点からも給与条例主義の趣旨は貫徹されているといえる。加えて,本件非常勤職員給与規則は,地自法15条の規則であって,同法に基づき制定,公布され,枚方市の例規集にも登載されて議会の議員や住民にすべて公開され,その自由な批判にさらされているのであって,この点からも十分に民主的統制が及んでいる。
なお,地自法204条2項は,勤務実態から同条の常勤の職員に準じ,又はこれに当たる職員について同項所定の手当を支給することを規定することを条例に委任しているところ,本件給与条例54条ないし56条の規定は,文言上は,勤務時間が常勤職員の4分の3を超えず,上記のような職員に当たらない職員についても地自法204条2項所定の手当に当たる特別報酬を支給することとしているようにもみえる。しかし,上記規定の適用を受ける非常勤職員に,特別報酬の支給について地自法204条2項による授権のある職員が含まれていることは明らかであり,上記規定は,そのような職員に適用される限りでは違法とはいえず,上記規定を職員給与条例中に設ける同条例の改正の当時,枚方市には,非常勤の職員としては上記のような職員しか存在しなかったのであって,上記規定の適用対象となる職員として想定されていたのは上記のような職員であったといえる。そして,自治立法である条例の解釈は,法律と同様,上位規範に反するとみえる部分があっても,直ちにすべてが上記規範に反して違法と解すべきではなく,限定解釈等により可能な限り上位規範に適合するように解釈すべきであるところ,上記規定を上記のような職員に限って適用されるものと限定解釈しても,ある職員が地自法204条の常勤の職員に当たるかどうかの基準は一義的で明確であり,本件給与条例54条ないし56条の規定について同条2項の授権のある部分とない部分とを分けることは容易であるから,上記各規定は上記のような職員に限って適用されるものと限定解釈すべきである。
以上より,本件給与条例は地公法24条6項及び地自法204条3項の規定に適合し,同法204条の2にいう法律に基づく条例に当たる(仮に本件非常勤職員には地自法203条が適用されるとしても,上記イ(ア)のとおり本件特別報酬は地自法203条2項,5項にいう報酬に当たり,その支給根拠となる本件給与条例の規定は以上によれば同条5項に適合している。)。したがって,本件特別報酬の各支給の決定は,地自法204条の2の規定にも反しない。
エ 市長は本件給与条例の執行義務を負う
仮に本件給与条例が地自法及び地公法の規定に反し,法律の範囲を超えるものとして違法であっても,普通地方公共団体の長は独自に条例を無効と判断して条例を無視した行為をすることは原則として許されず,当該条例の違法が重大かつ明白でない限りその執行の義務を負うところ,本件給与条例の非常勤職員である職員の勤務実態からして特別報酬の条例上の支給根拠である本件給与条例54条2項,56条はその違法が重大かつ明白とはいえない。したがって,市長は本件給与条例のこれらの規定を執行し,これに基づいて特別報酬を支給する義務を負うから,市長が本件非常勤職員に対して特別報酬の支給の決定をしたことは違法ではない。
オ まとめ
よって,本件特別報酬の各支給の決定は,地自法203条,204条,204条の2,172条3項,地公法24条に反しないのであって,本件特別報酬の各支給の決定に具体的に関与することは不法行為法上違法であるとはいえない。また,本件特別報酬の各支給の決定に基づき支出された本件特別報酬の各受領は法律上の原因を欠くものともいえない。
(6)  損害並びに損失及び利得(本案の争点②)について
(原告の主張)
本件特別報酬の支出は,以上に検討したとおり違法であるから,本件特別報酬の支給の決定に基づく支出により,枚方市には本件特別報酬相当額の損害が生じた。また,これにより枚方市には同額の損失が生じ,本件特別報酬を受領した支出の相手方には受領額相当額の利得が生じた。
被告らは,提供した勤務の対価を金銭的に評価してこれを損益相殺するべきである旨主張するが,地自法204条の2の規定によれば,現実に勤務しその職務を行ったとしても,その対価を反対給付として支給するためには,法律又はこれに基づく条例に基づかなければならないのであり,提供した勤務の対価を金銭的に評価してこれと損益相殺等することは,同条の規定の趣旨を没却するものとして許されない。
仮に損益相殺等できるとしても,本件給与条例の非常勤職員は,① 本件支出(平成16年度6月期特別報酬)に係る者のうち教育委員会所属のもの224名が平成16年4月から9月の間に支給を受けた普通報酬を年額に換算した平均額は約258万9000円であったところ,このころの普通地方公共団体の非正規職員の年収が180万円程度とされていたこと,② 本件給与条例の非常勤職員が兼業として民間企業で働いた際の時給ないし月給や市が外注している業務に従事する者の時給の額に照らせば,これらの非常勤職員(本件給与条例)の労務提供の相当な対価は時給710円から800円であることからすれば,これらの非常勤職員(本件給与条例)には相当以上の額が「普通報酬」として支給されているから,これらの者に市が支給している給付の額が正規職員に支給される給料等と比較して低額であったとしても,本件特別報酬の支出により枚方市には本件特別報酬相当額全額の損害が生じ,また同額の損失を被り,本件非常勤職員は同額を利得したものといえる。
(被告らの主張)
ア 枚方市は,本件非常勤職員から現実に勤務の提供を受けて,その対価として本件特別報酬を支給したところ,本件特別報酬は,下記イのとおり枚方市が受領した勤務に対する相当ないし正当な対価であるから,枚方市には本件特別報酬の支出により損害ないし損失は生じていない。最高裁平成5年(行ツ)第15号同6年12月20日第三小法廷判決・民集48巻8号1676頁も地自法242条の2条第1項4号(ただし平成14年改正前の規定によるもの)に基づく住民訴訟において住民が代位行使する損害賠償請求権について,損益相殺が行われるべきとしており,同旨の行政実例(昭和28年6月30日法制局1発第160号回答)もある。
イ 以下の(ア)ないし(ウ)によれば本件特別報酬は,枚方市が受領した勤務に対する相当ないし正当な対価である
(ア) 労働者が提供する勤務の対価は,本来労使の団体交渉によって決定されるべきであるが,地方公共団体の職員の給与については,上記職員の勤務提供への対価である給与の支払の原資が租税など住民からの拠出によるものであることから,その支出額を議会のコントロールの下で行うとされているところ(給与条例主義),本件特別報酬はいずれも,前記(5)(被告らの主張)イ及びウによれば議会が本件給与条例の非常勤職員から受領する勤務を評価・承認した対価であって,仮に本件給与条例56条が地自法又は地公法に違反するとしても,勤務提供の対価として相当ないし正当であるとの議会の評価・承認までは違法とされるものではない。そして,本件非常勤職員は,地公法24条にいう職員であるから,枚方市は,本件非常勤職員らに対し,その職務と責任に応じ(同条1項),かつ,生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事する者の給与その他の事情を考慮して定めた給与(同条3項)を支給しなければならず,同一(価値)労働同一賃金原則(均等待遇原則)からすれば,正規職員の給与に当該職員の就労時間の比を乗じた額の給与の支払が求められるし,仮に法的に上記原則に基づく待遇を要求することまではできないとしても,少なくとも均衡のとれた待遇が求められるというべきであって,正規職員と均衡的な給与額の範囲内である限り,本件非常勤職員に対する給付は勤務に対する相当ないし正当な対価であるというべきである。しかるところ,上記の議会の評価・承認は,市議会が本件非常勤職員の勤務に対する対価として普通報酬及び特別報酬が正規職員と均衡的な給与額の範囲内であるとの判断をしたことを意味するものであり,極めて不合理な額であるなど法の精神に反するといえるような場合であれば格別,上記の議会の評価・承認はそのような場合に当たらないから,本件給与条例の規定に基づき支給された本件特別報酬は,職員が現実に提供した勤務に対する相当ないし正当な対価であるといえる(なお,議会が普通報酬及び特別報酬を合わせた額が本件非常勤職員の勤務に対する相当ないし正当な対価であると評価・承認した以上,これをどの時期にどのように支給するかは重要ではない。)。
(イ) また,本件特別報酬の支出は,いずれも,本件非常勤職員が,枚方市が提示した普通報酬及び特別報酬の額について同意して求められた勤務を提供し,その対価として提示を受けた額を受領したものであるから,本件非常勤職員と枚方市との間の同意に対価の支給と評価できる。そうすると,本件非常勤職員が提供した勤務の金銭評価は,明らかにその間に均衡を欠くと認められる特別の場合を除けば,現実に受領していた普通報酬額及び特別報酬額が妥当といえ,その勤務とその勤務に対する普通報酬及び特別報酬額との間には,正当な均衡があり,両者を合わせた額が勤務に対する相当ないし正当な対価であるものと解するのが相当である。そして,上記普通報酬及び特別報酬の額が,勤務の金銭評価として明らかに勤務との間に均衡を欠くと認めることはできないから,本件特別報酬は,職員が現実に提供した勤務に対する相当ないし正当な対価であるといえる。
(ウ) さらに,本件非常勤職員は,本来正規職員によって担われるべき職務を正規職員と同等の責任をもって行い,その勤務時間は通常の職員の4分の3以上であるなど,正規職員に準じる勤務実態を有しているのに,その勤務に対して支給される対価は,正規職員の2分の1あるいはそれ以下であり(平成15年を例にとれば,前記(5)(被告らの主張)イ(ア)に記載のとおり),普通報酬及び費用弁償に本件特別報酬を加えても,本件非常勤職員の勤務の提供に対する対価の範囲を超えない。したがって本件特別報酬は,職員が現実に提供した勤務に対する相当ないし正当な対価であるといえる。
なお,原告は補助参加人らの提供した勤務に対する金銭評価は同人らに支給される普通報酬で充分と主張し,市の外注している業務に従事した者に対する時給が800円であること等を根拠に挙げるが,上記業務はいわゆる現業業務(これに従事する者は単純労務職員となる(単純な労務に雇用される一般職に属する地方公務員の範囲を定める政令(昭和26年政令第25号)である調理業務への対価である上,市から上記業務を請け負った者に対する労務提供の金銭評価であって,非現業業務を市に直接提供している補助参加人らの勤務の金銭評価の参考とすることはできない。
(7)  故意過失及び悪意(本案の争点③)について
(原告の主張)
本件特別報酬の支出は,地自法203条,204条の2,172条3項等の法令の規定に反するものであるところ,これらの規定を本件当該職員並びに本件非常勤職員ないしその親族である請求を求める相手方らは知り得た。また,地自法203条の非常勤の職員に対して同法204条2項所定の手当に実質的には当たる給付をすることができないとする行政実例(昭和31年9月28日自丁行発第82号回答,同年10月9日自丁行発第90号回答及び平成8年3月13日自治給発第16号回答)や大阪府の「非常勤職員報酬及び費用弁償に関する条例」において「地方自治法203条の規定に基づき」と明記されていることも同様に知り得た。
加えて,旧給与条例に特別報酬の支給根拠規定である本件給与条例54条2項,56条等を挿入する改正に先立ち,市長が一般職の報償金の支給については違法性があるのではないか等の厳しい指摘もあるとした上で市職員の労働組合に対して一般職の非常勤職員の報酬等の見直し協議を申し入れた際の申入書(条件の見直し案。甲3)では,地公法上の一般職非常勤職員を地自法の非常勤職員と位置付けた上,一時金及び退職金は支給しないこととされていたところ,上記交渉には,枚方市の職員の組織する2つの労働組合から約170名及び約240名が参加する等したこと,上記改正の行われた平成13年市議会第4回定例会における議論(甲7。議員から単純労務職員に当たらない非常勤の職員に対する手当の支給は違法である旨の平成17年8月24日付け東大阪市に対する府の助言(甲21)と同趣旨の発言等があった。),平成17年第1回市議会定例会で上記各規定等の特別報酬の支給根拠規定を本件給与条例から削除して現行給与条例のとおりの規定とする改正が行われたこと,α地区に全戸配布された市議会議員の活動報告(甲56)には,「退職金・ボーナスについてはその支出自体が地自法上,法定外の違法支出の疑いが極めて強く条例化しても違法状態から逃れるものではない」,違法支出の疑いがある旨の「3月の指摘以来,非常勤職員の方から公式・非公式に抗議・お問い合わせがたくさんある」旨記載されていること,以上からすれば,本件当該職員は,本件特別報酬の支給の決定が違法であることを知り又は知り得,本件非常勤職員又はその配偶者は,これが違法であることを知っていたというべきである。
よって,本件特別報酬の支給が違法であることについて,本件当該職員には故意又は過失があり,本件特別報酬の各受領が法律上の原因を欠くことについて各受領者(その相続人を含む。)は悪意であった。
(被告らの主張)
市においては定期特別報酬と同種のものは遅くとも昭和27年ころから,退職時等特別報酬と同種のものは昭和56年3月から支給されていたが,これらの支給は条例で規定する必要があることから(地自法204条の2,地公法25条1項),平成13年12月の職員給与条例の改正により特別報酬の支給根拠規定が設けられたが,なお,市議会において地自法上の疑義を指摘する発言もあったことから,平成17年4月1日,特別報酬に関する規定を廃止し,一般職の非常勤職員の制度を廃止して全面的に任期付短時間勤務職員制度へ移行したものであるところ,これらの経緯からすれば,本件各特別報酬の支給の決定を専決した者(P3,P12及びP13(なお,これら及びP6以外の本件当該職員は当該職員に当たらない。))は,仮に支給の決定が違法であったとしても条例の規定に基づいて行ったにすぎず,支給の決定が違法であることについて故意も過失もない。また上記支給の決定を法令上本来的な権限を有する者として指揮監督の義務を有していたP6も故意過失によりその義務に違反したことはない。以上は,市議会で一部の議員から特別報酬の支給の適法性について疑義を指摘する発言があったことによって変わるものではない。
また,本件非常勤職員も本件特別報酬の支出が違法であるとの認識はなかった。
加えて,P6市長は,平成13年12月に長年行われてきた特別報酬と同種のものの支給を条例化し,特別報酬の支給の適法性についての疑義を指摘する一部の市議会議員の発言もあって,さらに特別報酬を含む報酬制度の見直しを検討し,平成17年3月には任期付短時間勤務職員制度への移行により指摘された疑義を解消したものであるところ,普通地方公共団体において長年慣行的に行われていた制度を疑義を指摘されたことを受けて直ちに廃止すれば行政の混乱を招きかねないから,違法性が一般に明らかである場合を除き,改善に当たり,その長には,円滑な行政の遂行という観点からある程度の猶予期間が与えられるべきであり,いつどのような方策を講じるかについて一定の裁量権があるのであって,上記のような経緯による解消は,この裁量権の範囲内に属するから,この点からもP6には損害賠償責任はない。
(8)  不当利得返還請求と権利濫用法理ないし信義則(本案の争点④)について
(被告らの主張)
枚方市は平成13年12月,本件非常勤職員に普通報酬と特別報酬を支給する旨の給与条例改正を行い,本件非常勤職員を含む住民に対して公布し(なお,本件非常勤職員のうちには定期特別報酬に相当する一時金及び退職時等特別報酬に相当する退職金の支給を明示した募集要項などを前提に任用された者もいる。),本件非常勤職員に対して特別報酬の支給を約束して労務の提供を受けた。一方,本件非常勤職員は,本給条例56条の新設に何ら関与しておらず,同条が違法無効との認識もなく,同条項の成立,存在を前提に条例を信頼し,特別報酬を受領して生活費の一部とすることを予定して枚方市から要求された労務を同市に提供し,本件給与条例56条2項定める特別報酬を予定のとおり受領して生活費として家計に繰り入れて費消したにすぎず,このような本件非常勤職員らの行為は当然のものである。そうすると,本件非常勤職員らは法律上保護されるべきであって,市が上記約束を反故にして本件非常勤職員らに本件特別報酬の受給が法律上の原因を欠くとして不当利得返還請求を行うのは,責任の転嫁であって権利の濫用あるいは信義則に反するものとして許されない。
(原告の主張)
争う。
第3  当裁判所の判断
1  当該職員該当性(本案前の争点①)について
(1)  本件訴えのうち,本件当該職員に損害賠償の請求をすることを求める各請求は,いずれも地自法242条の2第1項4号本文前段の当該職員に損害賠償の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関に対して求める請求である。
(2)  ところで,地自法242条の2第1項4号本文に基づく「当該職員」に係る請求は,同号本文前段所定の当該職員に該当する者に対して当該普通地方公共団体が有する損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の行使を当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して求める住民訴訟であって,自己の法律上の利益にかかわらない当該普通地方公共団体の住民という資格で特に法律の規定によって出訴することが認められている民衆訴訟(行訴法5条参照)の一種であることにかんがみると,当該請求において損害賠償等の請求の相手方とされている者が同号本文前段所定の当該職員たる地位ないし職にある者に該当しないと解されるとすれば,そのような請求は,法律の規定により特に出訴が認められた住民訴訟の類型に該当しない請求として,不適法といわざるを得ないこととなる(行訴法42条参照)。そして,当該職員とは,住民訴訟制度が地自法242条1項所定の違法な財務会計上の行為又は怠る事実を予防又は是正しもって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とするものと解されることからすると,当該請求においてその適否が問題とされている財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するものとされている者及びこれらの者から権限の委任を受けるなどして上記権限を有するに至った者を広く意味し,その反面およそ上記のような権限を有する地位ないし職にあると認められない者はこれに該当しないと解するのが相当である(最高裁昭和55年(行ツ)第157号同62年4月10日第二小法廷判決・民集41巻3号239頁)。そして,地自法242条の2第1項4号本文前段の当該職員に損害賠償等の請求をすることを求める請求は,住民が,当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に対し,普通地方公共団体が当該職員に対して有する実体法上の損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を行使することを求める形式によるものであり,上記各請求権は民法又は地自法243条の2第1項に基づくものであることにかんがみると,当該普通地方公共団体の内部において,訓令等の事務処理上の明確な定めにより,当該財務会計上の行為につき法令上権限を有する者からあらかじめ専決することを任され,上記権限行使についての意思決定を行うとされている者がいる場合においては,その者及び法令上権限を有する者はともに当該財務会計上の行為につき当該職員に当たるものと解される(最高裁平成2年(行ツ)第137号同3年12月20日第二小法廷判決・民集45巻9号1455頁,最高裁平成2年(行ツ)第138号同3年12月20日第二小法廷判決・民集45巻9号1503頁参照。)。しかし,当該普通地方公共団体の当該財務会計上の行為に係る権限行使について最終的な意思決定を行うものとされていない者は,上記権限行使についての意思決定を行うとされている者による最終的な意思決定(決裁)手続に何らかの形で関与するものとされているような場合であっても,当該財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するものとされている者が当該財務会計上の行為について負う責任と同様の責任を負うべき根拠を欠くものというほかないから,およそ上記のような権限を有する地位ないし職にあるとは認められないというべきである。
(3)  前記前提となる事実等に加え,甲8,10,88,乙1,2,20,乙事件の甲9,乙事件の乙1,2,丙事件の甲3,丙事件の乙1及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。
ア 平成15年度及び平成16年度の枚方市における特別報酬の支給の決定についての権限の所在
枚方市においては,市長の権限に属する事務の円滑かつ適正な執行を確保するとともに責任の明確化を図るため,事務の決裁に関し必要な事項を定めるものとして市長の訓令の形式で事務決裁規程が設けられ(事務決裁規程1条),市長の権限に属する事務について,市長の補助職員が専決することができる事項が定められていた(同規程4条ないし6条。なお,専決とは,常時,市長に代わって決裁することをいい(同規程2条2項),決裁とは,市長の権限に属する事務について,最終的にその意思を決定することをいい(同規程2条1項),専決者とは,専決することができる者をいう(同規程2条3項)。以下同じ。)。もっとも,同規程4条ないし6条にかかわらず,議会の付議案件及びその資料については市長の,① 異例なもの,② 疑義のあるもの,③ 紛争があり,又は将来その原因となると認められるもの,④ 先例となるもの,⑤ 特に上司から指定されたもの,については上司の決裁を受けなければならず(同規程7条),また,専決者は,専決した場合において,必要と認めるとき,又は所属上司から報告を求められたときは,その専決した事項を所属上司に報告しなければならない(同規程9条)とされていた。
そして,支出負担行為としての特別報酬の支出の決定は,市長部局に所属する職員に係るものは総務部長が専決することができる事項とされ,教育委員会に所属する職員に係るものについては教育委員会管理部長が専決することができる事項とされていた(同規程5条1項,別表第2)。
なお,教育長の権限に属する事務についても,教育委員会の規程の形式で教育委員会事務局事務決裁規程が設けられ,教育委員会の権限に属するものを除くほか,教育委員会所属の職員(臨時的職員を除く。)の任免,分限,懲戒その他の人事を行うことは教育長の決裁を要する事項とされていた(同規程3条19号)。
イ 平成15年度及び平成16年度の枚方市における特別報酬の支給の決定についての決裁に係る事務手続
枚方市においては,市長部局の職員に係る特別報酬の支給の決定は,これに係る起案文書(事務の処理についての原案を記載した文書をいう。以下同じ。)につき職員課グループ統括リーダーが審査及び決定関与(助役(当時。現在の副市長に相当)並びに決裁を受けるべき事項に係る事務を所管し,又は担当する部長,室長,課長及びグループ統括リーダーが,決裁に至るまでの手続過程においてその意思を決定することをいう(事務決裁規程2条5項)。以下同じ。)を行い,職員課長及び人事室長の決定関与を経て総務部長が決裁することにより行われ,退職時等特別報酬の支給の決定については,更に財政課長に対する合議(決裁を受けるべき事項に係る事務に関連する事務を所管し,又は担当する職にある者が,その事務との関連上においてその意思決定に関与することをいう(事務決裁規程2条6項)。以下同じ。)が行われていた(事務決裁規程10条,12条1項,6項,文書取扱規程17条,別表第2)。
教育委員会に属する職員に係る特別報酬の支給の決定は,これに係る起案文書につき教育委員会総務課グループ統括リーダーが審査及び決定関与を行い,教育委員会総務課長及び教育委員会管理部次長の決定関与を経て教育委員会管理部長が決裁することにより行われ,退職時等特別報酬の支給の決定については,更に人事室長及び職員課長に対して合議が行われていた。なお,退職時特別報酬の支給の決定については,当該職員の退職(任用期間の更新の停止)に係る決裁手続と併せて行われており,退職に係る決裁手続について,さらに教育次長の決定関与及び教育長の決裁並びに総務部長及び人事室長に対する合議も行われていた(事務決裁規程10条,12条1項,2項,別表第3第28項,教育委員会事務決裁規程10条1項,別表第3第13項,文書取扱規程17条,別表第2)。
以上の過程において,審査をするグループ統括リーダー並びに決定関与,合議及び決裁を行う権限を有する者がこれらを行った場合はそれぞれ文書の所定欄に押印するが(文書取扱規程17条4項),合議を受けた者が起案の内容に異議のあるときは,所管の課長,室長若しくは部長(以下「所管の課長等」という。)と協議をしなければならず,協議が整わないときは,異議の要旨を明記した付せんを付けて回付を進め,合議を受けた者及び所管の課長等の共通の上司の指示するところに従うものとされている(事務決裁規程12条4項,5項,文書取扱規程17条5項)。また,起案文書の回付の途中でその内容に重要な変更があったとき及び廃案となったときは,既に決定関与及び合議を終了した者に開示し,その承諾を得なければならない(文書取扱規程18条)。
ウ 甲事件について
本件15年度退職時等特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るものに関し,P1人事室長及びP2職員課長は「非常勤嘱託の退職に伴う特別報酬の支給について」の回議書(甲8)につき決定関与を行いそれぞれ押印した。また,本件15年度退職時等特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものに関し,P4教育長は「一般職非常勤職員の退職について」の回議書(甲8)及び「一般職非常勤職員の更新停止年齢到達による退職について」の回議書(甲8)の各職員の任期の更新の停止に係る部分につき決裁を行い押印し,P5教育次長は上記各部分についてにつき決定関与を行い押印し,P3総務部長は上記各部分につき合議を行い押印し,P1人事室長及びP2職員課長は両回議書及び「一般職の非常勤職員に対する特別報酬の支給について(平成15年度60歳到達特別報酬)」の回議書(甲8)につき合議を行いそれぞれ押印した。
エ 乙事件について
本件15年度12月期特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るものに関し,P1人事室長,P2職員課長及びP7職員課グループ統括リーダーは「非常勤職員に係る平成15年12月特別報酬の支給について」の回議書(乙事件の甲9)につき決定関与を行いそれぞれ押印した。また,本件15年度12月期特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものに関し,P8教育委員会管理部次長,P9教育委員会管理部総務課長及びP10教育委員会管理部総務課グループ統括リーダーは「一般職非常勤職員に対する特別報酬(平成15年12月期一時金相当)の支給について」の回議書(乙事件の甲9)につき決定関与を行いそれぞれ押印した。
オ 丙事件について
本件16年度6月期特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものに関し,P11教育委員会管理部次長及びP10教育委員会総務課長は「一般職非常勤職員に対する特別報酬(平成16年6月期一時金相当)の支給について」の回議書(丙事件の甲3)につき決定関与を行いそれぞれ押印した。
(4)  検討
ア 枚方市において,支出負担行為としての報酬の支給の決定について法令上の権限を有する者は市長である(地自法149条2号,180条の8,地教行法24条5号)ところ,前記(3)によれば,訓令の形式である事務決裁規程により,市長部局所属の職員に係る特別報酬の支給の決定については総務部長が,教育委員会所属の職員に係る特別報酬の支給の決定については教育委員会管理部長が,専決する権限,すなわち,常時,市長に代わって,最終的にその意思を決定する権限を有することとされていたことが認められる。
したがって,特別報酬の支給の決定については,法令上の権限を有する市長に加え,市長部局所属の職員に係るものについては総務部長が,教育委員会所属の職員に係るものについては教育委員会管理部長が当該財務会計上の行為につき法令上権限を有する者からあらかじめ専決することを任され,上記権限行使についての最終的意思決定を行うとされている者として当該職員に当たるということができる。
他方,総務部長又は教育委員会管理部長の決裁に至る前の段階において,特別報酬の支給の決定についての起案文書の回付を受け,審査,決定関与又は合議をする者は,前記(3)によれば,特別報酬の支給の決定についての枚方市の意思決定手続にそれぞれの立場から関与するにとどまり,内部的にも当該普通地方公共団体の当該財務会計上の行為についての最終的な意思決定を行う権限を有するものとされていないのであるから,およそ特別報酬の支給についての決定(支出負担行為)を行う権限を有する地位ないし職にあると認められず,したがって,当該職員に当たるということはできない。そうすると,前記(3)によれば,市長部局所属の職員に係る特別報酬の支給の決定につき,人事室長,職員課長及び職員課グループ統括リーダーは,決裁に至る前の段階において起案文書の審査ないしは決定関与を行うにとどまるから,いずれも当該職員に当たらないものと認められる。また,教育委員会所属の職員に係る特別報酬の支給の決定につき,教育委員会管理部次長,教育委員会総務課長,教育委員会総務課グループ統括リーダー,人事室長及び職員課長も,決裁に至る前の段階において起案文書の審査,決定関与ないしは合議を行うにとどまるから,いずれも当該職員に当たらないものと認められる。
なお,原告は,教育長は,教育委員会所属の職員に対する給付の支給のための違法な財務会計上の行為を自ら中止すべき義務を負い,また,教育委員会事務局所属の職員が行う違法な財務会計行為を阻止すべき指揮監督上の義務を負う立場にあるから,当該職員に当たる旨主張する。確かに,教育長は,教育委員会の指揮監督の下に,教育委員会の権限に属するすべての事務をつかさどるほか,教育委員会事務局の事務を統括し,所属の職員を指揮監督する権限を有するが(地教行法17条1項,20条1項),これは教育委員会の権限に属する事項についてのものであるところ,教育委員会管理部長の特別報酬の支給の決定につき専決する権限は,市長の権限に属する事項について市長の訓令により付与されたものであって(地自法180条の2参照),上記権限の行使の関係で教育委員会管理部長を指揮監督するのは,教育委員会ないし教育長ではなく,市長であるというべきである。そうすると,教育長が教育委員会所属の職員に係る特別報酬の支給の決定について何らかの権限を有し,これについて何らかの職務上の義務を負うものと認めることはできないから,上記原告の主張は採用することができない。
イ 以上によれば,本件15年度退職時等特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るものの各支給の決定についてはその当時市長であったP6及びその当時総務部長であったP3が,上記特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものの各支給の決定についてはP6及び当時教育委員会管理部長であったP12がそれぞれ当該職員に該当する。本件15年度12月期特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るものの各支給の決定についてはその当時市長であったP6及びその当時総務部長であったP3が,上記特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものの各支給の決定についてはP6及びその当時教育委員会管理部長であったP12がそれぞれ当該職員に該当する。本件16年度6月期特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものの各支給の決定についてはその当時市長であったP6及びその当時教育委員会管理部長であったP13がそれぞれ当該職員に該当する。
しかし,甲事件の請求(1)(前記第1の1(1)の請求をいう。以下同様の呼称による。)について,本件15年度退職時等特別報酬の各支給の決定の当時人事室長であったP1及びその当時職員課長であったP2は,上記特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るものの各支給の決定につきいずれも当該職員に該当しないから,上記請求に係る訴えのうち上記各人に対して損害賠償の請求をすることを求める部分は不適法であり,甲事件の請求(1)及び同(2)について,その当時総務部長であったP3,P1,P2,その当時教育長であったP4及びその当時教育次長であったP5は,上記特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものの各支給の決定につきいずれも当該職員に該当しないから,上記各請求に係る訴えのうち上記各人に対して損害賠償の請求をすることを求める部分は不適法である。乙事件の請求(2)(前記第1の2(2)の請求をいう。以下同様の呼称による。)について,本件15年度12月期特別報酬の各支給の決定の当時人事室長であったP1,その当時職員課長であったP2及びその当時職員課グループ統括リーダーであったP7は,上記特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るものの各支給の決定につきいずれも当該職員に該当しないから,上記請求に係る訴えのうち上各人に対して損害賠償の請求をすることを求める部分は不適法であり,乙事件の請求(3)について,その当時教育委員会管理部次長であったP8,その当時教育委員会総務課長であったP9及びその当時教育委員会総務課グループ統括リーダーであったP10は,上記特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものの各支給の決定につきいずれも当該職員に該当しないから,上記請求に係る訴えのうち上記各人に対して損害賠償の請求をすることを求める部分は不適法である。丙事件の請求について,本件16年度6月期特別報酬の各支給の決定の当時教育長であったP5,その当時教育委員会管理部次長であったP11及びその当時教育委員会総務課長であったP10は,上記特別報酬(教育委員会所属の職員に係るもの)の各支給の決定につきいずれも当該職員に該当しないから,上記請求に係る訴えのうち上記各人に対して損害賠償の請求をすることを求める部分は不適法である。
2  出訴期間(当該職員関係)(本案前の争点②)について
(1)  甲事件の請求(2)中,P12,P4及びP5に損害賠償の請求をすることを求める請求に係る訴えのうち,P4及びP5に対して損害賠償の請求をすることを求める部分については,前記1のとおり不適法であるから,以下,上記訴えのうちP12に対して損害賠償の請求をすることを求める部分は出訴期間を遵守しているか検討する。
(2)  前記前提事実等によれば,甲事件の訴えの提起時においては,甲事件の請求はP12に対して損害賠償の請求をすることを含まないものであったといわざるを得ず,平成17年10月31日の甲事件第2回弁論準備手続期日における原告による同年5月9日付け原告第4準備書面の内容を反映した請求の趣旨の整理をもって上記請求をP12に対して損害賠償の請求をすることをも含む趣旨の請求に変更する旨の訴えの変更がされたものと認められる。しかるところ,上記訴えの変更は監査委員の監査の結果の通知があった日から30日を経過した後にされたものであることが明らかである。
しかしながら,前記前提事実等によれば,原告は,支出負担行為としての22名の非常勤職員に対する本件給与条例54条2項,56条1項2号及び3号並びに同条2項2号に基づく退職時等の特別報酬の支出の決定(公金の支出)を違法又は不当な財務会計上の行為とする住民監査請求をした上,監査の結果の通知を受けて,上記と同一の財務会計上の行為(公金の支出)を対象とする住民訴訟として甲事件の訴えをその出訴期間内に提起したものであること,甲事件の訴状においては,上記財務会計上の行為(公金の支出)に係る地自法242条の2第1項4号に基づく請求として,P6(市長),P3(総務部長),P1(人事室長)及びP2(職員課長)がいずれも同号本文前段にいう当該職員に該当するとして同人らに対する損害賠償の請求をすることを求めるとともに,上記22名の非常勤職員を当該行為(公金の支出)に係る相手方に該当するとして同人らに対する不当利得返還の請求をすることを求めていたところ,上記22名の非常勤職員には市長部局に所属する職員のほか教育委員会に所属する職員11名が含まれていたこと,被告は,平成17年5月6日付け準備書面において,上記22名の非常勤職員のうち教育委員会に所属する11名の非常勤職員に対する特別報酬の支給については教育委員会管理部長のP12が専決権限を有しており,P3,P1及びP2は教育委員会に所属する11名の非常勤職員に対する特別報酬の支給につきいずれも当該職員に該当しない旨主張し,これを受けて,原告は,上記22名の非常勤職員のうち教育委員会に所属する11名の非常勤職員に対する上記特別報酬の支出の決定(公金の支出)につきP12を当該職員に加える旨の主張を記載した準備書面(同月9日付け原告第4準備書面)を提出するとともに,同年10月31日の甲事件第2回弁論準備手続期日において甲事件の請求をP12に対して損害賠償の請求をすることをも含む趣旨の請求に変更する旨の訴えの変更をしたこと,以上のとおり認められる。上記認定の経過に加えて,財務会計上の行為を行う権限の所在及びその委任関係等に関する法令,条例,規則,訓令等の定めや普通地方公共団体内部の行政組織が複雑であるため,当該職員に対する訴えを提起しようとする住民において,その適否が問題とされている財務会計上の行為につき,だれが上記のような権限を有する地位ないし職にある者として当該職員に該当するのか,また,だれが現実に専決するなどの財務会計上の行為をしたのかの判定が必ずしも容易でない場合も多いことをも併せ考えると,上記訴え変更後の請求中P12に対して損害賠償の請求をすることを求める部分については,当初の訴えの提起の時に提起されたものと同視し,出訴期間の遵守において欠けるところがないと解すべき特段の事情があるというべきである。
(3)  以上によれば,甲事件の請求(2)に係る訴えのうちP12に対する損害賠償の請求をすることを求める部分は出訴期間(地自法242条の2第2項1号)の遵守に欠けるところがない。
3  請求の特定及び出訴期間(相手方関係)(本案前の争点③)について
(1)  甲事件の請求(3)及び同(4),乙事件の請求(4)及び同(5),丁事件の請求はいずれも地自法242条の2第1項4号本文の当該行為に係る相手方に対して不当利得の返還の請求をすることを求める請求である。
地自法242条の2第1項4号本文の請求は,普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して,特定の財務会計上の行為又は怠る事実について実体法上の損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を特定の当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る特定の相手方に対して行使することを求める請求であり,これにつきその者に対する損害賠償又は不当利得の返還の請求をすることを命ずる判決がされて確定した場合には,当該普通地方公共団体の長は,その日から60日以内の日を期限として,当該請求に係る損害賠償金又は不当利得返還金の支払を請求しなければならず(同法242条の3第1項),60日以内にこれが支払われないときは,当該普通地方公共団体は,当該損害賠償又は不当利得返還の請求を目的とする訴訟を提起しなければならないものとされ(同条2項),また,同法242条の2第1項4号の規定による訴訟の提起を受けた被告である執行機関又は職員は,同号の当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に対して遅滞なく訴訟の告知をしなければならず(同条7項),同法242条の2第1項4号本文の規定による訴訟の裁判が上記訴訟告知を受けた者に対してもその効力を有するときは,当該訴訟の裁判は,当該普通地方公共団体と上記訴訟告知を受けた者との間においてもその効力を有する(同法242条の3第4項)。
以上の規定等からすれば,地自法242条の2第1項4号に基づく請求においては,損害賠償又は不当利得返還を求める客体としての当該職員又は相手方を具体的に特定するとともにこれらの者各自に対する損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を具体的に特定することを要するものと解される。そして,当該職員又は相手方の特定は,通常は,その氏名及び住所を表示することにより行うものとされ,また,上記損害賠償請求権及び不当利得返還請求権については,その請求金額を具体的な数額でもって特定表示することを要するものと考えられる。
もっとも,地自法242条の2第1項4号所定の住民訴訟が自己の法律上の利益にかかわらない当該地方公共団体の住民という資格で特に法によって出訴することが認められている民衆訴訟の一種であることからすれば,住民において特定の財務会計上の行為に係る当該職員ないし当該行為又は怠る事実に係る相手方の氏名等を容易に知ることができない場合も少なくないと考えられ,他方で,上記住民訴訟の被告となるべき普通地方公共団体の執行機関又は職員において上記当該職員又は相手方の氏名等を容易に知ることができるのが通常であると考えられる。しかるところ,普通地方公共団体の住民においていわゆる情報公開条例に基づく情報公開請求を行うことなども含めて相当の注意力をもって調査を尽くしても上記当該職員又は相手方をその氏名等により特定することができない場合にまで常に上記当該職員又は相手方をその氏名等でもって特定表示することを要するものと解すると,上記当該職員又は相手方に対する損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを求める訴訟を提起するみちが封じられる場面も生じ得ることとなって妥当とはいい難い。
以上を勘案すれば,地自法242条の2第1項4号に基づき当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に対して損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを当該普通地方公共団体の執行機関又は職員に求める訴えにおいて,当該職員又は相手方がその氏名等でもって特定表示されていない場合であっても,これを氏名等以外の方法で客観的に特定することができるときは,当該訴えは請求の特定に欠けるところがない適法な訴えと解するのが相当である。
以上を前提に上記各請求に係る訴えの適法性について以下検討する。
(2)ア  甲事件について
甲事件の訴状においては,地自法242条の2第1項4号に基づく当該行為に係る相手方に対して損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを求める請求における当該相手方に対する請求について,その相手方が平成15年度に本件給与条例54条2項,56条1項2号又は3号に基づく特別報酬の支給を受けた枚方市の一般職非常勤職員(その意義については後述する。)22名であること及びこれらの職員22名に対する上記特別報酬の支給額の合計が6852万4169円であることがそれぞれ記載されているのであって,前記前提事実等及び弁論の全趣旨によれば,平成15年度に上記特別報酬の支給を受けた枚方市の一般職非常勤職員は他にいない事実が認められること,及び上記支給額の合計につき当事者間に争いがないことをも併せ考えると,上記訴状の記載に基づいて上記損害賠償又は不当利得返還の請求の相手方22名を客観的に特定することができたのみならず,上記訴状の記載からは,上記相手方22名に対する請求は各自が受領した特別報酬の額に相当する金員の支払を求める趣旨のものであると合理的に解することができ,かつ,そのそれぞれに対する請求額をも客観的に特定することができたものというべきである。
なお,上記相手方22名に対する実体法上の請求権について,上記訴状には上記各特別報酬の支出が違法であることについて上記22名の者には故意あるいは過失が認められ,これによる損害を賠償すべき責任がある旨の記載があるが,ある特定の公金の支出が違法であることに基づき当該公金の支出に係る当該職員及び相手方に対しそれぞれ当該支出額相当額の支払を求めることを内容とする地自法242条の2第1項4号に基づく請求においては,その実体法上の請求権を当該職員に対する請求については損害賠償請求,当該公金を受領した相手方に対する請求については不当利得返還請求として提起されるのが通常であること,原告が上記22名に対し請求することを求めているのがそれぞれ支給を受けた額の金員及び上記支給に係る会計年度終了の翌日から年5分の割合による金員であることからすれば,同訴状には,少なくとも被告に対しこれらの者に対する悪意の不当利得者に対する不当利得返還請求権の行使を求める趣旨の請求が含まれていることは明らかである(現に原告は,甲事件に係る第1回口頭弁論において,上記22名の者に対して支払を求める請求は不当利得返還の請求である旨の陳述をしている。)。
以上からすれば,甲事件の請求(3)及び同(4)については,その訴え提起の時点において,請求の特定に欠けるところはなかったというべきである。
イ  乙事件について
乙事件の訴状においては,地自法242条の2第1項4号に基づく当該行為に係る相手方に対して損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを求める請求における当該相手方に対する請求について,その相手方が平成15年12月10日に本件給与条例54条2項,56条1項1号に基づく特別報酬の支給を受けた枚方市の一般職非常勤職員376名であること及びこれらの職員376名に対する上記特別報酬の支給額の合計が1億3565万8346円であることがそれぞれ記載されているのであって,前記前提事実等及び弁論の全趣旨によれば,平成15年度に上記特別報酬の支給を受けた枚方市の一般職非常勤職員は他にいない事実が認められること,及び上記支給額の合計につき当事者間に争いがないことをも併せ考えると,上記訴状の記載に基づいて上記損害賠償又は不当利得返還の請求の相手方376名を客観的に特定することができたのみならず,上記訴状の記載からは,上記相手方376名に対する請求は各自が受領した特別報酬の額に相当する金員の支払を求める趣旨のものであると合理的に解することができ,かつ,そのそれぞれに対する請求額をも客観的に特定することができたものというべきである。
なお,上記相手方376名に対する実体法上の請求権について,上記訴状には上記各特別報酬の支出が違法であることについて上記376名の者には故意あるいは過失が認められ,これによる損害を賠償すべき責任がある旨の記載があるが,前記のとおり,ある特定の公金の支出が違法であることに基づき当該公金の支出に係る当該職員及び相手方に対しそれぞれ当該支出額相当額の支払を求めることを内容とする地自法242条の2第1項4号に基づく請求においては,その実体法上の請求権を当該職員に対する請求については損害賠償請求,当該公金を受領した相手方に対する請求については不当利得返還請求として提起されるのが通常であること,原告が上記376名の者に対し請求することを求めているのがそれぞれ支給を受けた額の金員及び上記支給を受けた日の翌日から年5分の割合による金員であることからすれば,同訴状には,少なくとも被告に対しこれらの者に対する悪意の不当利得者に対する不当利得返還請求権の行使を求める趣旨の請求が含まれていることは明らかである(現に原告は,同年3月15日付けの原告第1準備書面においてその趣旨を明確にする訴状の補正をしている。)。
以上からすれば,乙事件の請求(4)及び同(5)については,その訴え提起の時点において,請求の特定に欠けるところはなかったというべきである。
ウ  丁事件について
丁事件の訴状においては,地自法242条の2第1項4号に基づく当該行為に係る相手方に対して損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを求める請求における当該相手方に対する請求について,その相手方が平成16年6月30日に特別報酬の支給を受けた枚方市の一般職非常勤職員131名及び同年12月10日に特別報酬の支給を受けた同市の一般職非常勤職員351名並びに同年8月20日及び平成17年3月31日に特別報酬の支給を受けた22名であること,そのうち上記職員131名に対する平成16年6月30日の特別報酬の支給額の合計が4861万9928円,上記職員351名に対する同年12月10日の特別報酬の支給額の合計が1億4767万0407円,上記職員22名に対する平成16年8月20日及び平成17年3月31日の特別報酬の支給額の合計が8040万2070円であることがそれぞれ記載されており,上記各特別報酬のうち,平成16年6月30日支給に係るもの及び同年12月10日支給に係るものはいずれも本件給与条例54条2項,56条1項1号に基づいて支給されたものであり,平成16年8月20日支給及び平成17年3月31日支給に係るものはいずれも本件給与条例54条2項,56条1項2号又は3号に基づいて支給されたものであることが,訴状の記載から容易に読み取れる。これらに加えて,前記前提事実等及び弁論の全趣旨によれば,平成16年度に上記各特別報酬の支給を受けた枚方市の一般職非常勤職員は他にいない事実が認められること,並びに上記各特別報酬の支給日,支給対象者の人数及び支給額の合計につき当事者間に争いがないことをも併せ考えると,上記訴状の記載に基づいて上記損害賠償又は不当利得返還の請求の相手方(平成16年6月30日支給の特別報酬に係る131名,同年12月10日支給の特別報酬に係る351名並びに平成16年8月20日及び平成17年3月31日支給の特別報酬に係る22名)を客観的に特定することができたというべきである。また,上記訴状には,これらの相手方に対する請求は悪意の受益者に対する不当利得返還の請求として各自が受領した特別報酬の額に相当する金員及びこれに対する上記各特別報酬の支給に係る会計年度の終了の翌日から年5分の割合による金員の支払を求める趣旨のものであることが明記されていたのであって,そのそれぞれに対する請求額をも客観的に特定することができたものというべきである。そうであるとすれば,丁事件の請求については,その訴え提起の時点において,請求の特定に欠けるところはなかったというべきである。
もっとも,上記訴状には,原告が被告に対し不当利得返還請求を求める相手方は,平成16年度に非常勤職員で一般職と呼ばれた訴状別紙記載の359名である旨記載された上,359名の氏名が具体的に記載された別紙が添付されていたところ,前記前提事実等によれば,上記氏名が具体的に記載された359名には上記各特別報酬のいずれの支給をも受けていない者が含まれるとともに,上記各特別報酬の支給を受けたが上記別紙にその氏名が記載されていない職員が存在した事実が認められる。しかしながら,原告は,平成16年度において現実に本件給与条例54条2項,56条1項に基づく特別報酬の支給を受けた一般職非常勤職員(平成16年6月30日に特別報酬の支給を受けた131名及び同年12月10日に特別報酬の支給を受けた351名並びに同年8月20日及び平成17年3月31日に特別報酬の支給を受けた22名)を相手方として丁事件に係る訴えを提起したものであることは,訴状の記載の趣旨及び前記説示の丁事件の審理経過に照らして明らかであって,上記別紙の記載は,訴えの提起時において原告が把握している限りの情報に基づいて上記相手方の氏名による特定を試みたものにすぎないというべきであるから,上記別紙の記載に上記認定のそごが存したとしても,請求の特定に関する上記判断を左右するものではない。
エ  以上によれば,甲事件の請求(3)及び同(4),乙事件の請求(4)及び同(5),丁事件の請求はいずれも各事件に係る訴え提起時において特定に欠けるところはなかったというべきであるから,本案前の争点③に関する被告らの主張は,いずれも,その余の点について判断するまでもなく,採用することができない。
4  訴え提起手数料(本案前の争点④)について
(1)  地自法242条の2の定める住民訴訟は,普通地方公共団体の執行機関又は職員による同法242条1項所定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実が究極的には当該地方公共団体の構成員である住民全体の利益を害するものであるところから,これを防止するため,地方自治の本旨に基づく住民参政の一環として,住民に対しその予防又は是正を裁判所に請求する権能を与え,もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的としたものであって,執行機関又は職員の上記財務会計上の行為又は怠る事実の適否ないしその是正の要否について地方公共団体の判断と住民の判断とが相反し対立する場合に,住民が自らの手により違法の防止又は是正を図ることができる点に,制度の本来の意義がある。すなわち,住民の有する上記の請求をする権能は,地方公共団体の構成員である住民全体の利益を保障するために法律によって特別に認められた参政権の一種であり,その訴訟の原告は,自己の個人的利益のためや地方公共団体そのものの利益のためにではなく,専ら原告を含む住民全体の利益のために,いわば公益の代表者として地方財務行政の適正化を主張するものであるということができる。そして,同法242条の2第1項4号の住民訴訟も,住民が,地方公共団体の執行機関又は職員に対し,当該地方公共団体の有する損害賠償請求権又は不当利得返還請求権の行使を命ずる判決を求め,判決がされた場合には,当該地方公共団体はこれを行使しなければならないとすることにより,最終的には財務会計上の違法な行為又は怠る事実に係る職員等に対し損害の補填をさせることが訴訟の中心的目的となっているのであり,このような同号本文の住民訴訟の目的及び性格にかんがみれば,その訴訟の訴額算定の基礎となる「訴えで主張する利益」(民訴法8条1項)については,これを実質的に理解し,地方公共団体の損害が回復されることによってその訴えの原告を含む住民全体の受けるべき利益がこれに当たるとみるべきであり,このような利益の性質上,その訴訟の目的の価額は,民訴費用法4条2項により160万円とすることが相当である(最高裁昭和51年(行ツ)第120号同53年3月30日第一小法廷判決・民集32巻2号485頁参照)。また,このような地自法242条の2第1項4号の住民訴訟の目的及び性格にかんがみれば,異なる複数の財務会計上の行為を対象として同号に基づく請求がされている場合であっても,各財務会計上の行為が密接に関連しており,社会的事実として一体のものととらえることができ,それらについて主張される違法の事由が共通するようなときは,当該訴訟の訴額の算定の基礎となる「訴えで主張する利益」は同一である解するのが相当である。
(2)ア  甲事件について
甲事件において対象とされている財務会計上の行為は,本件給与条例54条1項にいう非常勤職員であって本件給与条例56条1項2号又は3号に該当する枚方市の職員19名に対し,同条2項2号に基づいて同一の日を施行日としてされた支出負担行為としての退職時等特別報酬の各支給の決定(公金の支出)を対象とするものであって,これらは密接に関連し社会的事実として一体のものととらえることができ,また,これらについて原告が主張する違法の事由は,上記各特別報酬はいずれも地自法204条2項にいう退職手当の実質を有し,そのような給付を上記19名の職員に対して支給することは,地自法203条,204条の2に違反し違法であるというものである。そうすると,甲事件に係る訴えで主張する利益は同一であると認められる。
したがって,甲事件の訴訟の目的の価額は160万円であり,納付すべき訴え提起手数料は1万3000円であるところ(民訴費用法3条,4条1項,2項,別表第1第1項,民訴法8条1項,9条1項),甲事件訴状によれば,原告は同額に相当する印紙を訴状に貼用して同額の訴え提起手数料を納付したものと認められる。
イ  乙事件について
乙事件において対象とされている財務会計上の行為は,本件給与条例54条1項にいう非常勤職員であって本件給与条例56条1項1号に該当する枚方市の職員370名に対し,同条2項に基づいて同一の日を施行日としてされた支出負担行為としての特別報酬の各支給の決定(公金の支出)を対象とするものであって,これらは密接に関連し社会的事実として一体のものととらえることができ,また,これらについて原告が主張する違法の事由は,上記各特別報酬はいずれも地自法204条2項にいう期末手当(ボーナス)の実質を有するから,そのような給付を上記370名の職員に対して支給することは,地自法203条,204条の2に違反し違法であるというものである。そうすると,乙事件に係る請求の訴えで主張する利益は同一であると認められる。
したがって,乙事件の訴訟物の価額は160万円であり,納付すべき訴え提起手数料は1万3000円であるところ(民訴費用法3条,4条1項,2項,別表第1第1項,民訴法8条1項,9条1項),乙事件訴状によれば,原告は同額に相当する印紙を訴状に貼用して同額の訴え提起手数料を納付したものと認められる。
ウ  丁事件について
丁事件において対象とされている財務会計上の行為は,本件給与条例5条1項にいう非常勤職員であって平成16年6月1日に本件給与条例56条1項1号に該当した枚方市の市長部局の職員130名に対し,同条2項に基づいて同一の日を施行日としてされた支出負担行為としての特別報酬の各支給の決定(公金の支出),同年12月1日に本件給与条56条1項1号に該当した枚方市の職員350名に対し,同条2項に基づいて同一の日を施行日としてされた支出負担行為としての特別報酬の各支給の決定(公金の支出)及び同年度に本件給与条例56条1項2号又は3号に該当した枚方市の職員22名に対し,同条2項に基づいて同一の日を施行日としてされた支出負担行為としての退職時等特別報酬の各支給の決定(公金の支出)である。これらは,施行日及び支給根拠規定が異なるものの,いずれも後記6(2)のとおりの経緯で本件13年改正により職員給与条例に挿入された本件給与条例54条1項にいう非常勤職員に対する同条2項及び同条例56条の規定に基づく特別報酬の制度による同一会計年度における特別報酬の支給の決定(公金の支出)であって,密接に関連し社会的事実として一体のものということができる。また,これらについて原告が主張する違法の事由も,上記各特別報酬は地自法204条2項にいう期末手当又は退職手当の実質を有するから,そのような給付をこれらの職員に対して支給することは地自法203条,204条の2に違反し違法であるというものであって,共通のものといえるから,丁事件に係る請求の訴えで主張する利益は同一であると認められる。
したがって,丁事件の訴訟物の価額は160万円であり,納付すべき訴え提起手数料は1万3000円であるところ(民訴費用法3条,4条1項,2項,別表第1第1項,民訴法8条1項,9条1項),丁事件の訴状によれば,原告は同額に相当する印紙を訴状に貼用して同額の訴え提起手数料を納付したものと認められる。
エ  よって,甲事件,乙事件及び丁事件については,それぞれ納付すべき訴え提起手数料の納付があり,上記各事件はいずれも民訴費用法3条1項に適合している。
5  小括(不適法な請求及び適法な請求)
以上より,甲事件の請求の請求(1)中,P1及びP2に対して損害賠償の請求をすることを求める部分並びにP3に対して損害賠償の請求をすることを求める部分のうち任命権者が教育委員会である職員に係る特別報酬の支給の決定に係る部分,同(2)のうちP4及びP5に対して損害賠償の請求をすることを求める部分に係る訴えはいずれも不適法である。乙事件の請求(2)のうちP1,P2及びP7に対して損害賠償の請求をすることを求める部分,同(3)のうちP8,P9及びP10に対して損害賠償の請求をすることを求める部分に係る訴えもいずれも不適法である。丙事件の請求のうちP5,P11及びP10に対して損害賠償の請求をすることを求める部分に係る訴えもいずれも不適法である。
他方,その余の請求,すなわち,以下の各請求(以下,下記(1)アの請求を「甲事件の請求ア」,下記(3)の請求を「丙事件の請求」といい,他の請求についても同様とする。)は適法であるので,以下これらの請求について理由があるかどうか検討する。
(1)  甲事件
ア 被告は,P6に対し,6027万0134円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,2614万3079円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度でP3と連帯して,3412万7055円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度でP12と連帯して,別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号1ないし19に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で上記各番号に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人と連帯して)を支払うよう請求せよ。
イ 被告は,P3に対し,2614万3079円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,2614万3079円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度でP6と連帯して,別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号1ないし9に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で上記各番号に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人と連帯して)を支払うよう請求せよ。
ウ 被告は,P12に対し,3412万7055円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,3412万7055円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度でP6と連帯して,別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号10ないし19に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で上記各番号に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人と連帯して)を支払うよう請求せよ。
エ 被告は,別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号1ないし9に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対し,上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員をP6及びP3と連帯して各支払うよう請求せよ。
オ 被告は,別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号10ないし19に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対し,上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員をP6及びP12と連帯して各支払うよう請求せよ。
(2)  乙事件
ア 被告は,P6に対し,1億3278万4788円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,4770万5292円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度でP3と連帯して,8507万9496円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度でP12と連帯して,別紙「支給額等一覧表(乙事件)」記載の番号1ないし357及び同361ないし373に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で上記各番号に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人と連帯して)を支払うよう請求せよ。
イ 被告は,P3に対し,4770万5292円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,4770万5292円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度でP6と連帯して,別紙「支給額等一覧表(乙事件)」記載の番号1ないし121,同361,同362及び同364ないし371に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で上記各番号に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人と連帯して)を支払うよう請求せよ。
ウ 被告は,P12に対し,8507万9496円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,8507万9496円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度でP6と連帯して,別紙「支給額等一覧表(乙事件)」記載の番号122ないし357,同363,同372及び同373に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で上記各番号に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人と連帯して)を支払うよう請求せよ。
エ 被告は,別紙「支給額等一覧表(乙事件)」記載の番号1ないし121,同361,同362及び同364ないし371に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対し,上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員をP6及びP3と連帯して各支払うよう請求せよ。
オ 被告は,別紙「支給額等一覧表(乙事件)」記載の番号122ないし357,同363,同372及び同373に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対し,上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員をP6及びP12と連帯して各支払うよう請求せよ。
(3)  丙事件
被告は,P6及びP13に対し,8456万7334円及びこれに対する平成16年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を連帯して各支払うよう請求せよ。
(4)  丁事件
被告は,別紙「支給額等一覧表(丁事件)」記載の番号1ないし337及び同339ないし356に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対し,上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額及びこれに対する平成17年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を各支払うよう請求せよ。
6  事実等(適宜法令の定め等を含む。)
前記前提事実等及び前記1(3)に加え,甲2ないし7,9,13ないし23,48,50,52,54ないし60,62ないし76,79ないし85,87ないし92,乙1ないし17,19,丙1ないし41,丁1ないし13,18,乙事件の甲2,3,丙事件の甲2,丁事件の甲1,証人P38,証人P39,証人P40,証人P41,証人P42,証人P43,証人P44,証人P45,証人P46,証人P47,証人P48,証人P49,証人P50,証人P51及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実等が認められる。
(1)  関係法令等の定め及び沿革等
ア 地方公務員の任用方法及び任用形態等についての地公法の定め
地公法は,任命権者は,採用,昇任,降任又は転任のいずれか一の方法により,職員を任命することができ(17条1項),人事委員会を置かない地方公共団体においては,職員の採用及び昇任は,競争試験又は選考によるものとするとし(17条4項),職員の競争試験又は選考は,任命権者が行うが(18条1項,17条5項),競争試験は,任命権者が定める受験の資格を有するすべての国民に対して平等の条件で公開されなければならず,職務遂行の能力を有するかどうかを正確に判定することをもってその目的とし,筆記試験により,若しくは口頭試問及び身体検査並びに人物性行,教育程度,経歴,適性,知能,技能,一般的知識,専門的知識及び適応性の判定の方法により,又はこれらの方法をあわせ用いることにより行うものとするとしている(19条1項前段,17条5項,20条)。
また,地公法は,臨時的任用又は非常勤職員の任用の場合を除き,職員の採用は,すべて条件附のものとし,その職員がその職において6月(任命権者は1年に至るまで延長することができる。)を勤務し,その間その職務を良好な成績で遂行したときに正式採用になるものとするものとし(22条1項,17条5項),人事委員会を置かない地方公共団体においては,任命権者は,緊急の場合又は臨時の職に関する場合においては,6月をこえない期間で臨時的任用を行うことができ,この場合において,任命権者は,その任用を6月をこえない期間で更新することができるが,再度更新することはできないものとし(22条5項),臨時的任用は,正式任用に際して,いかなる優先権をも与えるものではないものとする(22条6項)。
イ 非常勤である国家公務員の処遇についての法令の定め
(ア) 特別職,一般職の区分
国家公務員法(平成19年法律第108号による改正前のもの。以下同じ。)においても,国家公務員の職は,これを一般職と特別職とに分かち(2条1項),一般職は,特別職に属する職以外の国家公務員の一切の職を包含するものとし(同条2項),特別職は,同条3項各号に掲げる職員(内閣総理大臣(1号),国務大臣(2号),人事官及び検査官(3号),内閣総理大臣秘書官及び国務大臣秘書官並びに特別職たる機関の長の秘書官のうち人事院規則で指定するもの(8号),就任について選挙によることを必要とし,あるいは国会の両院又は一院の議決又は同意によることを必要とする職員(9号),宮内庁長官等並びに法律又は人事院規則で指定する宮内庁のその他の職員(10号),特命全権大使等(11号),日本学士院会員(12号),裁判官及びその他の裁判所職員(13号),国会職員(14号),防衛省の職員(16号)等の職とするものとし(同項),政府が一般職又は特別職以外に勤務者を置いてその勤務に対して給与を支払うことは原則としてできないものとし(同条6,7項),国家公務員法の規定は,一般職に属するすべての職に適用し(同条4項前段。なお,ある職が,国家公務員の職に属するかどうか及び本条に規定する一般職に属するか特別職に属するかを決定する権限を有するのは人事院と定められている(同条4項後段)。),特別職に属する職には,国家公務員法の改正法律により別段の定めがなされない限り適用しない(同条5項)ものとされている。
(イ) 非常勤の国家公務員の給与等
国家公務員法は,職員の給与は,その官職の職務と責任に応じて(62条1項),法律により定められる給与準則(これには俸給表が規定されなければならない(64条1項)。)に基づいてこれをなし,給与準則に基づかずには,いかなる金銭又は有価物も支給せられることはできない(63条1項)とし,これらを受けて一般職職員給与法が,一般職の職員の給与(公務について生じた実費の弁償は含まれない(同法3条3項)。)に関する事項を定めている。
一般職職員給与法は,いかなる給与も,法律又は人事院規則に基づかずに職員に対して支払い,又は支給してはならないとし(3条2項),22条(常勤を要しない職員)及び附則3項に規定する職員以外のすべての職員については,俸給表を適用するとする(6条1項及び同項に規定する各別表。なお,俸給とは正規の勤務時間による勤務に対する報酬であって,同法に規定する各種手当等を除いた全額とするとされている(5条)。)。以上に対して,常勤を要しない職員については,22条が,委員,顧問若しくは参与の職にある者又は人事院の指定するこれらに準ずる職にある者で,常勤を要しない職員(再任用短時間勤務職員を除く。)については,勤務1日につき,同項に定める額(平成15年12月1日における規定(平成17年法律第113号による改正前)では3万7900円(その額により難い特別の事情があるものとして人事院規則で定める場合にあっては10万円)。)を超えない範囲内において,各庁の長が人事院の承認を得て手当を支給することができ(1項),1項に規定する職員以外の常勤を要しない職員については,各庁の長は常勤の職員の給与との権衡を考慮し予算の範囲内で給与を支給する(2項)が,1項及び2項の常勤を要しない職員には,他の法律に別段の定めがない限り,これらの項に定める給与を除くほか,他のいかなる給与も支給しないものとしている(3項)。
ウ 国及び地方公共団体の非常勤の職員の処遇についての法令等の定めの変遷等(主として勤務に対する対価関係)
(ア) 戦前
国においては,国家公務員法施行(昭和23年7月1日)前においては,委員,顧問,参与等の職にある者に対しては,給与ではなく謝金としての委員手当等が支払われており,旧官吏制度の下においては,官吏以外の雇傭人は,機関の長との間の私契約に基づくものとされ,その給与は機関の長の裁量により適宜決定されるものとされていた(昭和23年5月,政府職員の新給與実施に関する法律(昭和23年法律第46号。以下「新給与実施法」という。)が公布,施行されたが,制定当時の新給与実施法には非常勤の職員についての定めは置かれなかった。)。
市町村及び府県においては,地自法施行(昭和22年5月3日)以前は,市制,町村制及び府県制の下,市町村及び府県に公法上の法律関係に基づき労務を提供する者として,専務職たる有給吏員及び名誉職員(市町村においては名誉職市町村長,市町村議会議員等,府県においては府県会議員,名誉職参事会員等)がおり(なお,ほかに私法上の雇用関係に基づく雇員,傭人等がいた。),府県の名誉職員は費用の弁償を受けることができ,有給吏員には給料及び旅費並びに退隠料等を支給することとされ,市町村の名誉職員は費用の弁償を受けることができ(一部については勤務に相当する報酬を給することができる。),有給吏員には給料及び旅費(退隠料等の支給もできる。)を支給することとされていた(なお,町村制及び府県制は地自法の施行に先立ち,昭和21年に改正されて「名誉」職員及び「有給」吏員の用語が廃され,従前の名誉職員に相当する者すべてについて報酬の支給ができることとなった。)。
(イ) 地自法の制定
昭和22年4月,地方自治法(昭和22年法律第67号)が制定された(同年5月3日施行)。当時の地自法は,「給与」の章(第8章)の下に,203条において,普通地方公共団体は,その議会の議員,選挙管理委員,議会の議員の中から選任された監査委員,専門委員,投票管理者,開票管理者,選挙長,投票立会人,開票立会人及び選挙立会人に対し,報酬を支給しなければならない(同条1項),前項の者は,職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる(同条2項),報酬及び費用弁償の額並びにその支給方法は,条例でこれを定めなければならない(同条3項)と規定し,また,204条において,普通地方公共団体は,法律(地方公務員法に相当する法律を指す。なお,昭和22年法律第169号により「別に普通地方公共団体の職員に関して規定する法律」に改められた。)の定めるところにより,普通地方公共団体の長及びその補助機関たる職員(専門委員を除く。),学識経験を有する者の中から選任された監査委員,議会の書記長及び書記,選挙管理委員会の書記並びに監査委員の事務を補助する書記に対し,給料及び旅費を支給しなければならない(同条1項。なお,昭和25年法律第143号により支給対象者に「議会の事務局長」が加えられた。),給料及び旅費の額並びにその支給方法は,条例でこれを定めなければならない(同条2項)と規定していた。
(ウ) 国家公務員法の制定
昭和22年10月,国家公務員法(昭和22年法律第120号)が制定され(昭和23年7月1日施行。),委員,顧問,参与等を含めて非常勤の職員も一般職の国家公務員であることが明確化されたことに伴い,昭和23年12月,新給与実施法が,同年法律第265号により改正され,改正後の28条において,委員,顧問若しくは参与の職にある者又は人事院の指定するこれらに準ずる職にある者で常勤を要しない職員については,勤務1日につき1000円を超えない範囲内において,各庁の長が新給与実施本部長(昭和24年法律第280号により「人事院」に改められた。)の承認を得てその給与を支給することができる旨及びこれらの職員には他のいかなる給与も支給しないものとされ,改正後の29条において,政府に対する不正手段による支拂請求の防止等に関する法律(昭和22年法律第171号)2条2項の規定による一般職種別賃金の適用を受ける職員については,新給与実施法の規定にかかわらず,政府に対する不正手段による支拂請求の防止等に関する法律の規定に基づいて給与を支給するものとされた。しかし,新給与実施法の上記改正を受けて制定された人規9-1(昭和24年1月1日適用)は,1項において,上記の改正後の新給与実施法28条の人事院の指定するこれらに準ずる職にある者で常勤を要しない職員として「講師又は医員で常勤を要しない職員」を指定したものの,2項において,新給与実施法28条に規定する者(1項において指定した者を含む。)及び29条に規定する者を除き,1時間又は1日を単位として勤務する者で,常勤を要しない職員の給与については,なお従前の例によることができるものと規定し,ほとんどの常勤を要しない職員については実態としては従前と同様に各庁の長の裁量により決定する給与を支給する制度が維持された。
(エ) 人規15-4(旧「非常勤職員の勤務時間及び休暇」)の制定
昭和24年5月,人規15-4が制定され(公布と同時に施行),非常勤職員の1週間の勤務時間は,常勤職員の1週間の勤務時間の4分の3をこえない範囲内において任命権者の任意に定めるところによる(1項)ものとされた。同項は,昭和25年2月,改正され(同月8日施行),非常勤職員の勤務時間は,日々雇い入れられる職員については1日に月8時間をこえない範囲内において,その他の職員については常勤職員の1週間の勤務時間の4分の3をこえない範囲内において,任命権者の任意に定めるところによるものとされた(非常勤職員の勤務時間に係る人事院規則はその後数次の改廃がされているが,勤務時間の範囲(上限)は現行の規定(人規15-15第2条)に至るまで改められていない。)。
(オ) 一般職職員給与法の制定
昭和25年4月,一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号。一般職職員給与法)が制定された(同年4月1日施行)。制定当時の一般職職員給与法は,22条において,委員,顧問,参与等に関する新給与実施法28条の規定を,23条において,一般職種別賃金の適用を受ける職員に関する新給与実施法29条の規定をそのまま引き継ぎ,これら以外の非常勤の職員の給与についての規定を設けていなかったが,これらの非常勤の職員の給与についても,統一的に一般職職員給与法に一元的に規定されるべきであるとの考慮から,同年12月,同年法律第299号により一般職職員給与法が改正され(昭和26年1月1日施行),同改正後の22条2項において,現行法と同様に,「前項に定める職員以外の常勤を要しない職員については,各庁の長は,常勤の職員の給與との権衡を考慮し,予算の範囲内で,給與を支給する。」ものとされ,一般職種別賃金の適用を受ける職員に関する同改正前の一般職職員給与法23条の規定は削除された。
一般職職員給与法22条が非常勤職員の給与について委員,顧問,参与等とこれら以外の非常勤の職員とに分けて規定した趣旨については,非常勤の職員には委員,顧問,参与等のように本来の職業を有しながらその傍ら公務に参画する形の職員と,臨時的又はパートタイム的にせよ実質的に国に雇用される形のその他の非常勤の職員との2種類があり,その性格の違いに応じて,給与上の取扱いも自ずから異なったものとして考えていくのが適当であるとの考慮に出たものであるとされ,同条1項の規定の趣旨については,非常勤の委員,顧問,参与等の場合は,いわばその学識,経験等を拝借するようなものであるというその職務及び勤務の特殊性に照らすと,それに対する報酬は,給与というよりは本質的にはむしろ謝金に近い性格のものと考えるのが適当であり,その勤務時間を基礎に評価するというよりは,委員会等への出席1回(すなわち勤務1日)につき幾らという形での手当で処遇していくことが最も適当であると考えられることに基づくものであるとされ,同条2項の規定の趣旨については,同条1項所定の職員以外の非常勤の職員の場合は,国と実質的な雇用関係にあるために,これらの職員の給与については,その提供する勤務にふさわしい処遇とすることが当然に要請され,殊に常勤の職員の処遇との均衡という面での配慮等が望まれるが,これらの非常勤の職員の雇用及び勤務の実態は区々であり,実際問題としてあらかじめ法律等により具体的な基準までを詳細に定め難い事情にあるので,法の規定としては,「常勤の職員の給与との権衡を考慮し」という基本的基準を示すのみにとどめ,具体的な給与の決定は各庁の長の裁量にゆだねることとしたものであるとされている。そして,行政上の取扱いとして,一般職職員給与法22条2項の適用を受ける非常勤の職員のうち,相当長期にわたって常勤職員とほぼ同様の勤務を行っている者の3月,6月及び12月における給与については,同項の規定に基づき,常勤職員に支給される期末手当及び勤勉手当との均衡を考慮して取り扱うものとされ(昭和28年12月10日給実甲発第83号通知),特に勤務期間が引き続き6か月以上に及ぶ職員についても,予算の範囲内でできる限り上記通知の趣旨によって取り扱われるよう配慮するものとされている(昭和30年5月17日34-144人事院局長通知)。
(カ) 地公法の制定とこれに伴う地自法の改正
他方,地方公務員については,昭和25年12月,地方公務員法(同年法律第261号。地公法)が制定された(昭和26年2月から昭和28年6月にかけて順次施行。)。制定当時の地公法も,地方公務員の職を一般職と特別職とに分け(3条1項),一般職は特別職に属する職以外の一切の職とするものとし(同条2項),この法律の規定は一般職に属するすべての地方公務員に適用し,法律に特別の定めがある場合を除くほか,特別職に属する地方公務員には適用しないものとしていた(4条)。そして,特別職に属する職としては,就任について公選又は地方公共団体の議会の選挙,議決若しくは同意によることを必要とする職(同法3条3項1号),法令又は條例,地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程により設けられた委員及び委員会(審議会その他これに準ずるものを含む。)の構成員の職で臨時又は非常勤のもの(同項2号),臨時又は非常勤の顧問,参与及びこれらの者に準ずる者の職(同項3号),地方公共団体の長,議会の議長その他地方公共団体の機関の長の秘書の職で条例で指定するもの(同項4号),非常勤の消防団員及び水防団員の職(同項5号)と規定していた。地公法は,その制定当時において,既に,24条6項において,職員(一般職に属するすべての地方公務員をいう(同法4条1項)。)の給与,勤務時間その他の勤務条件は,条例で定めるものとし,25条1項において,職員の給与は,24条6項の規定による給与に関する条例に基づいて支給されなければならず,また,これに基づかずには,いかなる金銭又は有価物も職員に支給してはならないものとし,さらに,25条2項において,給与に関する条例には,給料表(1号),非常勤職員の職及び生活に必要な施設の全部又は一部を公給する職員の職その他勤務条件の特別な職があるときは,これらについて行う給与の調整に関する事項(5号),その他給与の支給方法及び支給条件に関する事項(7号)等を規定するものとし,その後,25条2項が同条3項に繰り下げられたほかはこれらの規定は改正されていない。
同法25条2項5号(制定時)の規定の趣旨については,非常勤職員の職及び生活に必要な施設の全部又は一部を公給する職員の職その他勤務条件の特別な職があるときには,これらについては一般の給料表はそのまま適用することができないとか,給与の一部を減額するといった,給与の調整を行うことが予想されるので,その場合には,これらの事項を給与条例の中に規定するものとしたものであると説明されている。
そして,地公法の制定を受けて,昭和26年6月,地方公務員法の制定に伴う関係法律の整理に関する法律(同年法律第203号(公布と同時に施行))により,地自法172条4項の規定が改正されて,普通地方公共団体の職員に関する任用,職階制,給与,勤務時間その他の勤務条件,分限及び懲戒,服務,研修及び勤務成績の評定,福祉及び利益の保護その他身分取扱いに関しては,同法に定めるもののほか,地公法の定めるところによる旨の規定が置かれるとともに,地自法204条1項の規定が,「普通地方公共団体は,普通地方公共団体の長及びその補助機関たる職員(非常勤の者を除く。),学識経験を有する者の中から選任された監査委員,議会の事務局長,書記長,書記その他の職員,選挙管理委員会の書記その他の職員並びに監査委員の事務を補助する書記その他の職員に対し,給料及び旅費を支給しなければならない。」との規定に改正され,「非常勤」の文言が初めて用いられた。さらに,昭和27年8月,同年法律第306号(同年9月1日施行)による地自法の一部改正により,地自法第8章の章名が「給与その他の給付」に改められるとともに,203条1項の規定が「普通地方公共団体は,その議会の議員,委員会の委員,非常勤の監査委員その他の委員,自治紛争処理委員,審査会,審議会及び調査会等の委員その他の構成員,専門委員,投票管理者,開票管理者,選挙長,投票立会人,開票立会人及び選挙立会人その他普通地方公共団体の非常勤の職員に対して,報酬を支給しなければならない。」に,また,204条1項の規定が,「普通地方公共団体は,普通地方公共団体の長及びその補助機関たる常勤の職員,委員会の常勤の委員,常勤の監査委員,議会の事務局長又は書記長,書記その他の常勤の職員,委員会の事務局長又は委員会若しくは委員の事務を補助する書記その他の常勤の職員その他普通地方公共団体の常勤の職員に対し,給料及び旅費を支給しなければならない。」にそれぞれ改められた(なお,上記改正により,普通地方公共団体に置く吏員その他の職員(161条から171条に定める職員を除く)の定数について,条例でこれを定めるとしていた172条2項の規定に「但し,臨時又は非常勤の職については,この限りでない。」とのただし書が加えられ,事務局長等の議会の職員について,条例でこれを定めるとしていた138条6項(同項自体は,昭和26年法律第203号による地自法の改正により追加された。)の規定につき,「常勤の職員の定数は」として「常勤の」の文言が加えられるとともに,「但し,臨時の職については,この限りでない。」とのただし書が加えられた。)。
(キ) 地自法の昭和31年改正
その後,昭和31年6月,同年法律第147号(同年9月1日施行。)による地自法の改正(以下「昭和31年改正」という。)により,地自法203条に,第2項として「前項の職員の中議会の議員以外の者に対する報酬は,その勤務日数に応じてこれを支給する,但し,条例で特別の定をした場合は,この限りでない。」との規定が,第4項として「普通地方公共団体は,条例で,その議会の議員に対し,期末手当を支給することができる。」との規定がそれぞれ加えられるなどして,前記前提事実等記載の同条2項ないし5項のとおりに改められ,また,同法204条には,第2項として「普通地方公共団体は,条例で,前項の職員に対し,扶養手当,勤務地手当,特殊勤務手当,時間外勤務手当,宿日直手当,夜間勤務手当,休日勤務手当,管理職手当,期末手当,勤勉手当,寒冷地手当,石炭手当,薪炭手当又は退職手当を支給することができる。」との規定が追加され,同条3項について文言の整理がされて前記前提事実等記載のとおりに改められ(同条は,以後,平成20年法律第69号による改正まで,第2項の規定する各種手当を改廃する改正がされているほかは改正されていない。),同法204条の2として,「普通地方公共団体は,いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずには,これを第203条第1項の職員及び前条第1項の職員に支給することができない。」旨の規定が追加された。
以上の昭和31年改正の趣旨については,次のような説明がされている。すなわち,地公法の制定後,同法の適用を受ける一般職の職員に対する給与については,同法24条6項及び25条1項の規定により条例で定めるものとされたが,これらの規定は特別職の職員については適用されず,特別職の職員については昭和31年改正前の地自法203条の規定により報酬及び費用弁償は条例で定めることとされていたものの,条例に基づかない他の給与を支給することは違法とはいえないものとされていた。また,条例を制定して職員に給与を支給する場合は,いかなる種類の給与をどれだけどのような方法で支給しても,違法の問題は生じないものとされていたことから,地方公共団体ごとの給与体系は極めて区々となり,不明朗な給与の支給等が行われる例も決して少なくなかった。そこで,地方公共団体の職員に対する給与についても,国家公務員に対する給与の基本の体系と一致させる形で給与体系を整備し,給与の種類を法定し,ある程度の給与の統一性を保たせるとともに,国家公務員に準ずる給与を保障し,合わせて,給与はすべて法律又はこれに基づく条例にその根拠を置くことを要するものとして,その明朗化,公正化を図ったものである。そして,昭和31年改正による地自法203条の改正は,同法204条の2の新設とあいまって,普通地方公共団体の非常勤の職員に対する給与体系全体を整備したものであり,同法203条2項の規定は,国家公務員についても非常勤の職員に対する報酬はその勤務日数に応じて支給することとされているところ,常勤の職員に対する給料が勤務に対する反対給付であるのと同時に当該職員及びその家族の生計を支えるところの生活給たる意味を有するのとは異なり,非常勤の職員に対する報酬は,このような生活給的意味はなく純然たる勤務に対する反対給付としての性格のみを有するものであり,勤務の態様に応じて給与の態様も変わるべきものであるから,国家公務員の場合と同様に,非常勤の職員に対する報酬は,勤務量,具体的には勤務日数に応じて支給すべき性格のものである趣旨を明瞭にし,これをもって非常勤の職員に対する報酬の支給の原則としたものであり,ただし,非常勤の職員のうちにも,勤務の実態がほとんど常勤の職員と異ならず,常勤の職員と同様に月額ないし年額をもって支給することが合理的であるものや,勤務日数の実態を把握することが困難であり,月額等による以外に支給方法がないものなど,特殊な場合も予想されるので,条例で特別の定めをすることによりその例外を設けることができるようにしたものである。また,昭和31年改正による地自法204条の改正は,同法204条の2の新設とあいまって,普通地方公共団体の常勤の職員に対する給与体系を整備したものであり,同条2項の規定は,常勤の職員に対して支給することができる手当の種類を法定することによりその支給根拠を規定したものである。
(ク) 各種手当に係る条例の定めについての通知,行政実例等
各種手当に係る条例の定めについては,所管の自治省(当時)から,昭和35年には,期末手当及び勤勉手当の支給基準及び支給期日が条例に規定されず,市町村長又は任命権者に委任する等の措置を執ることは,地自法204条及び同法204条の2の規定の趣旨に反し,職員保護の立場からも適切を欠くのみならず,財政運営に与える影響も少なくないので,これらについては,必ず条例に規定すること(同年4月1日自丙公発第9号各都道府県知事あて行政局長通知「市町村職員の給与制度の合理化について」),昭和54年には,退職手当の支給については,地公法第24条6項等の規定に基づき,条例で明確に定めるべきものであり,基本的な事項の一部を長に対し包括的に委任するような規定を設けている地方団体にあっては,これを是正し,また,新陳代謝を促進する等の見地から特定措置を講ずる場合にも,特例条例を設けるなど,条例に明確な規定を設けて行うべきものであること(同年8月17日自治給発第28号各都道府県知事,各指定都市市長あて公務員部長通知「地方公務員の退職手当制度及びその運用の適正化について」),条例において単に給与の支給根拠のみを定め,具体的な額,支給要件等の基本的事項をすべて長又は規則に委任するようなことは給与条例主義に反するものであり,その内容は条例に明確に定めること(同年8月31日自治給発第31号都道府県知事,各指定都市市長あて公務員部長通知「違法な給与の支給等の是正について」)が通知され(なお,上記各通知は,いずれも,都道府県知事に対し管下の市町村に対する通知の趣旨の示達と適切な指導を願うとしている。),また,昭和40年の行政実例においても,「期末手当の額は予算の範囲内で市長が定める。」との規定は地自法204条3項に抵触すると解されるとされる(同年昭和40年6月7日地自給発第196号回答)等していたのであって,普通地方公共団体には(政令指定都市以外の市町村にあっては都道府県を通じて),自治省(当時)から,職員に対する給付について,地公法及び地自法の規定が整備されたころより,条例において明確な規定を設けるべきであり,支給根拠のみ条例において定め,あるいは基本的事項の一部を長に対し包括的に委任するような規定では足りないとの趣旨の行政解釈が示されていた。
(ケ) 短時間勤務職員制度の導入
平成11年,同年法律第107号(平成13年4月1日施行)により,地公法には,高齢者の知識,経験の活用等の観点から,定年退職者等(同法28条の2(定年による退職)第1項の規定により退職した者若しくは同法28条の3(定年による退職の特例)の規定により勤務した後退職した者又は定年退職日以前に退職した者のうち勤続期間等を考慮してこれらに準ずる者として条例で定めるものをいう。以下同じ。)の再任用制度が設けられ(上記改正後の28条の4),併せて,再任用職員に限り,常勤職員と同様の本格的な業務を行う短時間の勤務形態の職員(以下「再任用短時間勤務職員」という。)として,従前の勤務実績等に基づく選考により,1年を超えない範囲内で任期を定め,短時間勤務の職(当該職を占める職員の1週間当たりの通常の勤務時間が,常時勤務を要する職でその職務が当該短時間勤務の職と同種のものを占める職員の1週間当たりの通常の勤務時間に比し短い時間であるものをいう。以下同じ。)に採用することができることとされた(同法28条の5第1項)。なお再任用短時間職員の勤務の対価については,併せて地自法204条1項の規定が「普通地方公共団体の常勤の職員並びに再任用短時間職員に対し,給料及び旅費を支給しなければならない」との規定に改正され,同条によることとされた。
平成14年,専門的な知識経験又は優れた識見を有する者の採用の円滑化を図るため,地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律(平成14年法律第48号。任期付職員採用法。)が制定されたが,同法の平成16年法律第85号による改正により,任期付短時間勤務職員の制度が設けられた。この制度は,従前,住民の様々なニーズに対応するため常勤職員(正規職員)以外に活用されてきたいわゆる臨時・非常勤職員は補助的業務に従事するものとされており,就労ニーズの多様化,地域における行政ニーズの高度化・多様化等を背景として,住民のニーズに応じたサービスの充実を図るための一つの方策としてかねてより常勤職員と同様の本格的な業務を行う短時間勤務職員(地公法28条の5第1項にいう短時間勤務の職にある職員をいう。以下同じ。)の必要性が指摘されてきたが,その無限定な採用は,公務運営は任期の定めのない常勤職員を中心とする考え方からも問題なしとはしないほか,長期的な人事管理にも困難が予想されること,民間部門でも期間の定めのない短時間正社員制度のようなものは一般には見当たらないことなどを踏まえ,任期を付した上で短時間勤務職員を採用することができることとしたものである。上記改正後の任期付職員採用法においては,任命権者は,同法4条1項各号,5条2項,同条3項に規定する各場合において,条例で定めるところにより,短時間勤務職員を任期を定めて採用することができるとされたが,任期付短時間勤務職員の採用は従前の臨時・非常勤職員と異なり,条件附採用とされ(任期付職員採用法9条1項,地公法22条1項),その任期は,原則として3年を超えない範囲内で任命権者が定めるものとされ(6条2項。任期の更新は,原則として,採用した日から3年を超えない範囲内に限られる(7条2項)。)。また,その給与については,併せて地自法204条1項の「再任用短時間勤務職員」との文言が「短時間勤務職員」に改められて同条によることとされた。
(2)  枚方市の職員の状況並びにこれについての例規等の定め及びその変遷等
ア 市の常勤職員の勤務条件
(ア) 勤務時間等
枚方市においては,市の一般職常勤職員(その意義については後述する。)の勤務時間は,平成7年4月1日以降,原則として,休憩時間を除き,4週間を超えない期間につき1週間当たり38時間45分とされている(勤務時間条例2条1項,同条例施行規則3条1項)。
また,職員の週休日は原則として日曜日及び土曜日であり,再任用短時間勤務職員及び任期付短時間勤務職員については,任命権者は,これらの日に加えて,月曜日から金曜日までの5日間において,週休日を設けることができるものとされている(勤務時間条例3条1項)。そして,1週間の勤務時間は,原則として,任命権者が月曜日から金曜日までの5日間において,1日の勤務時間を午前9時から午後5時30分まで(その間に45分の休憩時間を置く。)として割り振ることされている(勤務時間条例3条2項,同条例施行規則4条)。
なお,市の一般職常勤職員の定年は原則として年齢60年とされている(職員の定年等に関する条例(昭和59年条例第27号)3条)。
(イ) 給与等
市の一般職常勤職員は,職員給与条例5条3項に規定する行政職給料表(別表第2)又は医療職給料表(1)ないし(3)(別表第3)のいずれかの適用を受けるところ,これらの給料表は複数の級(平成15年12月1日当時の規定では5ないし6)ごとに複数の号(平成15年12月1日当時の規定では22ないし34)に区分して給料月額を定めており,各職員の職務の級の格付は任命権者が行う。そして,市の一般職常勤職員は,職員給与条例に基づきそれぞれの職務の級につき定められた月額の給料及び職員給与条例の規定する諸手当を受け,また,任期付で再任用された職員(地公法28条の4ないし28条の6)及び任期付きで任用された職員(任期付職員採用条例)を除き,退職手当条例に規定する退職手当の支給を受ける(退職手当条例)。
上記の各手当のうち,期末手当については,原則として6月1日及び12月1日にそれぞれ在職するものに対し,原則として期末手当基礎額(原則として上記6月1日又は12月1日現在において職員が受けるべき給料及び扶養手当の月額並びにこれらに対する調整手当の月額の合計額)に,条例所定の在職期間に応じた条例所定の割合を乗じて得た額が支給され(職員給与条例34条の2),勤勉手当については,原則として6月1日及び12月1日にそれぞれ在職するものに対し,原則として,勤勉手当基礎額(期末手当基礎額と同じ)に,規則で定める基準に従って任命権者が定める割合を乗じて得た額(ただし,上記基礎額に条例所定の上限割合を乗じて得た額の総額を超えてはならない。)が支給される(同条例34条の5)。なお,期末手当及び勤勉手当規則は,勤勉手当基礎額に乗じる割合についての基準は,職員の勤務期間による割合(基準日以前の勤務期間が6月未満の場合,勤務期間に応じて減額される。以下「期間率」という。)に職員の勤務成績による割合(以下「成績率」という。)を乗じた割合としている(同規則10条,11条,1条,別表第2)。
退職手当(一般の退職手当)については,原則として退職日現在の給料月額に退職手当条例所定の割合を乗じて得た額(勤続期間,退職の事由(自己都合か,整理退職,非違によることなく勧奨を受けたことや定年前早期退職制度によるものか等)等により区分して規定されている。)(ただし,退職日現在の給料月額に60を乗じて得た額を超えるときは,その額)を基本額として職務に従事していなかった期間等についての調整を行った額が支給される(退職手当条例2条の3から7条の3)。ただし,地公法29条の規定による懲戒免職又はこれに準ずる処分を受けた者,同法28条4項の規定による失職(刑事処分を受けたことに関する欠格条項に該当するに至ったときの失職)又はこれに準ずる退職をした者,地公法37条2項の規定に該当し(同条1項の禁止する争議行為等をした者)退職させられた者又はこれに準ずる者には一般の退職手当は支給されない(退職手当条例8条1項)。
イ 平成13年度ころまでの市の一般職非常勤職員(公営企業の職員を含む。)の状況等
(ア) 昭和20年代から平成13年ころまでの状況
前記(1)のとおりの地自法及び地公法の制定及び改正により地方公務員制度についての法制の整備が行われていた昭和20年代から昭和30年代より,枚方市においては,一般職に属する常勤の職員に加えて一般職に属する非常勤職員を採用し,様々な職務に従事させていた。なお,これらの一般職の非常勤職員には,遅くとも,昭和27年ころ以降,勤務に対する通常の給付に加え,一時金の支給が行われていた。
そして,昭和40年代後半以降は,「非常勤嘱託」,「非常勤職員」,「非常勤嘱託員」ないし「一般職非常勤職員」等の「非常勤」との語を冠した名称で呼ばれる勤務形態ないし任用形態の一般職の職員の任用が積極的に行われるようになり,昭和55年ころには,約20職種について一般職に属する非常勤職員の任用が行われており,これら職員は,一般職非常勤職員と呼ばれる一つのまとまり(職員の類型(カテゴリー))を成し,一般職の常勤職員の期末手当及び勤勉手当と同時期に,同率の支給率による一時金の支給を受けるようになり,また,昭和56年3月より,在職期間が同じ一般職の常勤職員の5割に満たない支給率ながら退職金の支給を受けるようになった(以下,当該類型に属する職員を「市の一般職非常勤職員」という。)。
市の一般職非常勤職員は,募集要項等においては「非常勤嘱託」ないし「非常勤職員」等と呼称されており,おおむね競争試験(一般教養,面接,体力試験,当該職種に必要となる専門的知識に係る試験等)を経て,特段の事情のない限り,あらかじめ市長の要綱(非常勤嘱託の定年に関する要綱(昭和60年要綱第12号。乙5)等(何度か全面改正がされた。)。以下「非常勤嘱託等定年要綱」という。)により各職種ごとに定められた定年(その年に達する日以後における最初の3月31日に退職することとされる年齢をいう。以下同じ。)に至るまで任期の更新を予定して任用されていた(任用についての資格条件としては年齢,性別,自動車等の運転能力,経験等が設定されていることがあったほか,本庁宿日直代行員については身体障害者手帳の交付を受けていること,親子教室母子指導員については保育士又は幼稚園教諭資格の保有,短時間保育従事員については保育士資格の保有,准看護師については准看護師資格の保有,図書館分室勤務者及び図書館勤務者については司書補以上の資格の保有が設定されることがあった。なお,再就業者は定年前早期退職制度による早期退職者(定年前早期退職後の再雇用者を含む。)のうち一般職員(管理職でない者)を対象とする再就業制度により任用された者をいい,特別就業者は管理職を対象とする特別就業者制度により任用された者をいう。)。また,遅くとも平成10年ころには,市の一般職非常勤職員については地公法38条による営利企業等の従事の制限が及ぶものとされており,営利企業等の業務に従事をする場合には,申請をして許可を得るべきこととされ,「非常勤嘱託職員についての営利企業等従事許可基準」として,当該営利企業等の業務の内容が,非常勤嘱託職員の職務遂行上において,能率の低下その他の支障を来さないものであること,従事する営利企業等と,枚方市又は枚方市教育委員会とが,利害相反関係となるなど,職務の公正を妨げないものであること,従事する営利企業等が,職員及び職務の品位を損なうものでないこと,いかなる理由があっても,勤務時間内において,申請に係る営利企業等に従事するものでないこと,申請に係る営利企業等に従事することにより,欠勤を生ずることがないことと定められ,許可期間は2年以内とするが2年以内の期間で更新を妨げない,と定められており(甲19)(なお,常勤職員についての同様の許可基準は明示的には定められておらず,職員の兼業の許可に関する内閣府令(昭和41年総理府令第5号)等に準拠して行われていた。),引っ越し荷物の梱包,開梱やダイレクトメールの封入,ファイリング作業等への従事,市長の諮問に応じて調査審議して答申する審議会の委員への従事について許可された例があった(平成10年から平成14年にかけての教育委員会所属の職員についてのもの。甲18)。
なお,枚方市には,上記のような市の一般職非常勤職員のほかに,常勤職員(正規職員)でないものとして,臨時職員がおり,このうちには,市の一般職非常勤職員とは区別される恒常的臨時職員ないし恒常的日額者と呼称されている者(以下「市の恒常的臨時職員」という。)もいた(なお,市の恒常的臨時職員については,非常勤嘱託等定年要綱において定年が定められていた。)。また,消費生活コンサルタント等の特別職とされる非常勤職員もいた。
以上の市の一般職非常勤職員及び臨時職員に対する給与については,職員給与条例(旧給与条例)(地公法24条6項の規定に基づき,枚方市の一般職の職員の給与に関し必要な事項を定めるもの(1条)。)第10節「非常勤職員の給与」41条において,常時勤務を要しない職員の給与については,任命権者が常時勤務を要する職員の給与との均衡を考慮し,予算の範囲内で支給するものとすると規定され(同節は同条のみで構成されていた。),報酬及び費用弁償条例(地自法203条に基づき,非常勤の職員の報酬,費用弁償及び期末手当の額並びに支給方法に関し必要な事項を定めるもの(1条(ただし,平成13年条例37号による改正前の規定))5条及び別表第2で費用弁償について規定されていたほかは,市長の定める要綱に基づいて行われていた。
(イ) 平成13年ころの状況
平成13年ころには,市の一般職非常勤職員の職種は,別紙「各職種まとめ」記載の各職種に加え,清掃手数料徴収員及び社会教育施設管理人であり(これらの職種のほとんどは遅くとも平成10年ころには存在した。),後2者を除く職務内容は,同別紙の各職種に対応する職務内容欄記載のとおりであった(市の一般職非常勤職員が任用された当初の職種から他の職種に転用されることはなかったが,従前ある職種の市の一般職非常勤職員として任用されていた者が他の職種について新たに任用されることはあった。)。各職種の週勤務時間数は区々であり,市の常勤職員の週勤務時間数の4分の3を超えない職種(β駅サービスセンター従事員,γ,δ及びεの各サービスコーナー従事員,図書館分室勤務者,図書館勤務者等)も相当数あったが,その大部分は市の常勤職員の週勤務時間数の4分の3を超えていた(本庁舎宿日直代行員の所定勤務時間数は仮眠時間を含むものの市の一般職常勤職員の週勤務時間数を超えており,また,学校園宿日直代行員についても,その勤務実態に照らせば,恒常的に市の一般職常勤職員の週勤務時間数を上回る勤務に就くことが予定されていたといわざるを得ない人員配置がされていた様子がうかがわれる)。市の一般職非常勤職員は大阪府市町村職員共済組合の組合員の要件及び大阪府市町村職員互助会の会員の要件を満たさないものとされ,いずれもこれらに加入していなかった。もっとも,上記の週勤務時間数が短い職種の職員以外は,雇用保険,厚生年金保険及び大阪府市町村職員健康保険組合に加入していた。
市の一般職非常勤職員の給与は,月額による一定額の給付金(以下「月額給付金」という。なお,額の決定に当たっては経験加算報酬表が用いられていた。)(①)及び通勤費(②)が「報酬」として月ごとに支給されていたほか(以下「報酬(月額給付金等)」という。),所定の勤務時間外の勤務に対する給付としての時間外報償金(③),一時金報償金(月額給付金4.75月分)(④)及び退職報償金(⑤)が支給されていた。
また,臨時職員の給与は,日額によるもの(いわゆる日給制),勤務回数によるもの,勤務時間によるもの等多様な支給方法により行われていた(なお,臨時職員に対しても一時金が寸志として支給され,また,恒常的臨時職員に対しては退職金が退職報償金として支給されていた。)。
ウ 平成13年条例第37号による職員給与条例等の改正
(ア) 市議会予算特別委員会における指摘
平成13年3月,市議会の予算特別委員会において,市議会議員から,非常勤職員の給与について条例上の支給根拠を欠き,これを設ける必要があり,また退職金及び一時金は地自法上支給することができない法定外の給付である疑いが極めて強いとの指摘がされた。
上記指摘をした市議会議員のうちにはP52市議会議員がおり,同議員は市議会での活動等について「○○」(甲56,57)を作成して枚方市α地区のおおむね各世帯に配布していた。上記「○○」には,市の一般職非常勤職員に対し条例に基づかずに給与が支給されているのは違法支出である趣旨及び市の一般職非常勤職員に対する退職金・ボーナスの支給は法定外の違法支出の疑いが極めて強い趣旨等の記載や以上のような趣旨の指摘をしたことにつき批判を受けた旨の記載等がある。
(イ) 市長等と組合との交渉
P6市長は,これを受けて,市の一般職非常勤職員の給与について条例上の支給根拠を設ける議案を市議会に提出することとし,平成13年8月10付けで,枚方市の職員等で構成するP53組合及びP54労働組合連合会(以下,「市職員の組合」と総称する。)に対し,昨今は市民等から「一般職の非常勤職員」への報償金の支給については違法性があるのではないか等の厳しい指摘があるため種々検討を重ねた結果,「一般職の非常勤職員」の報酬等については,地自法及び地公法の趣旨を尊重し,現行法制度との整合性を図りながら,その支給方法と支給の水準について一定の見直しを行う必要があると考えるなどとして,「一般職の非常勤職員」の報酬等の見直し協議を申し入れ(甲3),上記見直しの具体案として,地公法上の区分による「一般職の非常勤職員」について地自法上の区分を根拠条文を明定せずに非常勤職員としていたところを同法203条の非常勤職員とし,「報酬」として月額給付金(従前の①)全額に相当する額(従前の経験加算報酬表にならい経験年数別報酬額を設定する。)に,従前の一時金報償金(月額給付金4.75月分)(従前の④)全額に相当する額,退職報償金(従前の⑤)のうち月額給付金0.5月分に相当する額及び従前の基準による時間外報償金(従前の③)の額に相当する額を加算して支給し,通勤費(従前の②)については従前の基準による額を費用弁償として支給し,その余の従前の報償金(一時金4.75月分及び退職金)は支給しないとすることを提案した。また,臨時職員についても,恒常的日額者(市の恒常的臨時職員)を含む臨時職員に対する一時金(寸志),恒常的日額者(市の恒常的臨時職員)に対する退職報償金を支給しないこととすることを提案した。
市長等は,市職員の組合と交渉(平成13年8月22日(組合員約170名及び約240名出席),同月24日(同約100名出席),同年10月15日(同約100名出席及び約210名出席)),同月22日(同約100名出席),同月29日(同約80名出席及び約150名出席)等)を行い,その結果,平成13年12月7日付けで覚書(甲2)を締結した。市長等と市職員の組合は,月額給付金(従前の①),通勤費(従前の②)及び時間外報償金(従前の③)については市長の上記提案のとおりで合意に至ったが,一時金報償金(従前の④)については,60歳になる年度までは従前のとおり正職員に準じて同率,61歳になる年度以降は2.5月分の支給率による額を特別報酬として支給し,退職金(従前の⑤)については特別報酬として,非常勤嘱託等定年要綱による定年が60歳での職種については,普通退職の支給率は従前どおりの上限(21.5月)により,定年による場合は普通退職の支給率の1.1倍の支給率による額を支給し(なお,高齢優遇退職(55歳から59歳まで)の割増制度を設ける。),上記要綱による定年が61歳以上の職種については,60歳に到達する年度末に上記定年60歳の者の定年退職の支給率による額の退職金を特別報酬として支給する(61歳になる年度以降は支給せず,平成13年末で60歳以上の者については従前の要綱に基づく額で清算する。)こととされ,一時金及び退職金は,支給の仕組み等は見直されることとなったものの,支給自体は継続されることとなった。なお,上の合意内容は,平成14年4月1日から実施されることとされ,また,臨時職員(市の恒常的臨時職員を含む。)については,市の一般職非常勤職員に準じた見直しを図るため別途協議するとされた。
(ウ) 議会における審議の経緯等
次いで,P6市長は,上記覚書に沿った市の一般職非常勤職員の給与の新たな仕組みを実施するため,職員給与条例及び報酬及び費用弁償条例の改正案(報酬及び費用弁償条例の改正については,同条例の対象から市の一般職非常勤職員を外し,文言を整理するもの。)及び市の一般職の非常勤職員に対する給与等に関する規則(本件非常勤職員給与規則)の案を作成し,市議会総務常任委員会の委員を務める市議会議員らとの協議会において,上記条例改正案及び本件非常勤職員給与規則案の要旨(丁18。その内容は,下記の本会議におけるP55総務部長による上記条例改正案の提案理由の説明とおおむね同旨)を示して協議を行った上で,上記条例改正案を平成13年第4回定例会において市議会に提出した。
市議会は,平成13年12月10日,本会議(P6市長も出席し,議員の質問に対して答弁するなどした。)において,上記改正案についてP55総務部長による提案理由の説明,質疑及び討論を経て採決を行い起立多数により原案どおり可決した(平成13年条例第37号(本件13年改正))。上記提案理由の説明としては,〈ア〉 上記改正案の概要は,市の一般職非常勤職員の報酬等について支給基準の明確化を図るため,条例・規則規定を整備し,報酬等として,普通報酬,特別報酬及び費用弁償を支給するものである,〈イ〉 上記改正案による改正後の同条例1条は,非常勤職員に対して給与及び費用弁償を支給する旨を規定することに伴い,給与を給与等に改めるものである,〈ウ〉 同条例54条は,一般職の非常勤職員に支給する給与の種類等を定めるもので,給与として,普通報酬と特別報酬に限って支給するものである,〈エ〉 同条例55条1項は,普通報酬として,月額報酬及び超過勤務報酬を支給するもの,同条2項は,月ごとに支給する月額報酬の額を定めるものであるが,職種が多岐にわたることから,職種ごとの報酬額については同項の上限額(留守家庭児童会室指導員及び肢体不自由児介助員に対する報酬上限額。)を超えない範囲内で規則に規定するとするもの,同条3項ないし5項は,非常勤職員が時間外又は休日勤務を行った場合に支給する超過勤務報酬に関するもの(同条3項が超過勤務報酬を支給する場合を定めるもの,同条4項が支給額の算定方法を定めるもの。)である,〈オ〉 同条例56条1項は,特別報酬として,一時金相当分の特別報酬(同項1号)と退職時等の特別報酬(同項2号(職員が退職した場合)及び同項3号(職員が60歳に達する年度末に在職する場合を))を支給するが,週勤務時間が11時間未満の者及び規則で定める者(特別就業者及び再就業者)については退職時等の特別報酬は支給しないとするものである,〈カ〉 同条2項は,特別報酬の支給率等について定めるもので,一時金相当分の特別報酬については同項1号イで常勤職員の期末手当に準じて3.6月分を,同項2号ロで常勤職員の勤勉手当に準じて1.15月分をそれぞれ定め,年4.75月分を常勤職員に準じた算定方法により支給するものとし(ただし,61歳に達する年度以降の支給率は,現在継続審査中の再任用職員制度との均衡を考慮し年2.5月分とする割り落としの規定を規則で定める。),退職時等の特別報酬については支給率の上限を26.015月分(普通退職の上限である21.5月に高齢退職時の割増率である1.21を乗じたもの)とするものである,〈キ〉 支給方法の詳細は規則で規定するが,その概要は,普通退職における支給率は現行の退職報償金と同じで在職30年で21.5月分,高齢退職については,55歳から59歳の年度末に退職する場合に退職年齢に応じて普通退職の12.2パーセント増しから21パーセント増しとするものである(なお,現行では一律2割増しになっている。),〈ク〉 同条例57条1項は,費用弁償の支給対象(非常勤職員で常勤職員の通勤手当の支給基準に該当するもの等)を定めるもの,同条4項は,非常勤職員の公務出張につき職員の旅費に関する条例に準じて支給する規定である,〈ケ〉 今後の非常勤職の在り方について,効率的,効果的な執行体制を築く観点から,その職の必要について,精査,検討を行い,その実効性を高めるためにも,当面,市の一般職非常勤職員の欠員補充は臨時職員で対応する予定である,などというものであった。
上記質疑においては,P56市議会議員から,上記改正案が一時金や退職金の支給を特別報酬という名の下で支給するものとしていることは地自法203条の規定を無視するものであるとしてその理由を問う質問がされ,P55総務部長は,地自法203条の非常勤職員は特別職を想定していると考えられ,枚方市は,常勤職員でするべき業務を財政負担軽減を図るといったことから非常勤職員を活用して行っており,これに対する報酬は生活給としての性格を持っているところ,このような職員が地自法203条の適用を受けるかどうかは明確にされていないため,地公法の適用を受ける一般職の非常勤職員として位置付けて,地公法24条6項に基づき定めた職員給与条例41条においてこれに対する報酬を定めてきたが,同規定があいまいでわかりにくいとの指摘を受けたので,支給根拠を明確にするため,職員給与条例の規定を整備した旨答弁した。また,P57市議会議員から,市の一般職非常勤職員の当時の報酬額が基本的にどういう基準で市長により決められているのかについて尋ねるとともに,できるだけ条例で決めることのできる部分は,条例の中で明確にしていくべきと思うが,報酬額(月額報酬)の上限だけを条例に織り込んでいるのはなぜかという質問がされ,P55総務部長は,上記改正案では詳細が規則で定めるものとしているのは,非常勤職員は,勤務条件が職種ごとに多岐にわたっており,勤務時間帯,勤務時間数がそれぞれの職種によって非常に異なっていることから,規定方法は相当複雑になり,また,常勤職員とは異なり,業務執行上のことから,勤務時間等の見直し等も適宜適切に行っていくことが必要であり,これらの状況を総合的に判断して,条例では支給要件及び上限額を規定し,規則において詳細を定めるという方法を採ったものである,非常勤職員は,これまで市の一般職非常勤職員の報酬については,おおむね,国家公務員の行政職の給料表等を参考にしながら,その時の職種,職務内容,勤務時間等を勘案して決めてきた,などと答弁した。また,P58市議会議員から,上記改正案は,報酬の額は議会が具体的に決定すべき事項であるのに,最高限度額を除き規則に委任している点をどう考えるのかという質問,地方公務員任用制度研究会発行の『自治体の臨時・非常勤職員の身分取扱』(これに数次の改訂を加えたものが甲79)を提示し,行政実例を引用するなどして,非常勤職員に期末・勤勉手当に類するようなもの,退職金に類するようなものは支払われないというのが(地自法203条の)報酬のもとの定義であるが,この点をどう考えるかという質問,同議員が調査したところでは,非常勤職員の報酬及び費用弁償に関する条例を制定して,その中で報酬の最高額のみ定めてあり,適用対象を非常勤職員に限るという条例は多数あるものの,期末手当や勤勉手当を報酬という名前で払うという条例は一つしかなかったが,他に例があるのかという質問等がされ,P55総務部長は,P56及びP57市議会議員に対する答弁と同旨の答弁をしたほか,非常勤職員の一時金や退職金について条例上の規定を設けている地方公共団体はないが,大阪府の普通地方公共団体のうち,一時金を支給している団体は25団体,退職金を支給している団体は11団体あるなどと答弁した。
(エ) 本件給与条例及び本件非常勤職員給与規則の概要
本件給与条例(なお,期末手当の支給回数の削減にならった特別報酬の支給回数の削減がされたほかは具体的な金額等を除きおおむね前記前提事実等(3)記載のとおりであり,規定内容の大枠は現行給与条例への改正まで改正されなかった。)においては,月額給付金(従前の①)に相当するものとして月額報酬が,時間外報償金(従前の③)に相当するものとして超過勤務報酬(あらかじめ定められた勤務時間以外の時間,勤務日以外の日,又は休日等に勤務することを命ぜられた場合に支給される)が,一時金報償金(従前の④)に相当するものとして定期特別報酬が,退職報償金(従前の⑤)に相当するものとして退職時等特別報酬が,通勤費(従前の②)に相当するものとして費用弁償(常勤職員につき通勤手当が支給される要件を満たす者等に支給されるもの及び公務のために旅行した場合に支給されるものがある)が支給されることとされた。なお,月額報酬については,本件給与条例55条1項において,上限額のみが規定されその範囲内において規則で定めるものとされた。また,定期特別報酬については,本件給与条例56条2項1号イ及びロにおいて,それぞれ基準日(3月1日,6月1日又は12月1日)現在において当該非常勤職員が受けるべき月額報酬の額に規則で定める基準日ごとの支給率を乗じて得た額に基準日以前6月以内の期間におけるその者に係る規則で定める在職期間の区分に応じて規則で定める割合を乗じて得た額の合計額と規定され,上記イの支給率につき期末手当における1の年度の支給率合計(3月に支給する場合における期末手当基礎額に乗じる率,6月に支給する場合における期末手当基礎額に乗じる率及び12月に支給する場合における期末手当基礎額に乗じる率の合計)を1の年度における基準日ごとの支給率の合計の上限とする旨規定され,上記ロの支給率につき年2回支給される勤勉手当における1の年度の支給率合計(再任用職員以外の職員に係る勤勉手当基礎額に乗じる率の合計)を1の年度における基準日ごとの支給率の合計の上限とする旨規定された。退職時等特別報酬については,本件給与条例56条2項2号において,退職の日において当該非常勤職員が受けるべき月額報酬の額に所定の比率(26.015)を乗じて得た額を超えない範囲内において規則で定めるところにより算定した額とするものとされたほか,退職手当の支給方法,支給制限及び返納等についての規定が準用され,一般の退職手当が支給されない事由による退職の場合には支給されないものとされた(同条例58条2項)。
そして,本件非常勤職員給与規則においては,別表第1で定額の職種に対する月額報酬表,定額部分及び能率給部分を併用する職種に対する月額報酬表及び上記2表に掲げる職種以外の職種に対する月額報酬表が定められ,定額の職種に対する月額報酬表においては,一定額が規定されるか又は所定の金額の範囲内で別に定める額と規定され,定額部分及び能率給部分を併用する職種に対する月額報酬表においては,所定の金額の範囲内で別に定める額及び能率給部分として別に定める額の合計額と規定され,上記2表に掲げる職種以外の職種に対する月額報酬表においては,各職種について14ないし41段階の号級に対応する報酬額が定額で規定され(最も低額の月額報酬額と最も高額の月額報酬額との差額は約20万円),これら別表における職種は本件非常勤職員給与規則制定当時市の一般職非常勤職員が従事していた職種がそのまま規定された。定期特別報酬について,別表第2及び別表第3で各基準日ごとの支給率が定められ,別表第2においては,期末手当における支給率と同率の支給率(各基準日の属する年度末において満61歳以上である者にあっては職員給与条例34条の2第3項の規定する再任用職員に対する期末手当の支給率と同率の支給率)が定められ,別表第3において職員給与条例34条の5第2項1号所定の勤勉手当における支給率と同率の支給率(各基準日の属する年度末において満61歳以上である者にあっては同項2号の規定する再任用任職員に対する期末手当の支給率と同率の支給率)が定められ,別表第4及び別表第5で在職期間の区分に応じた支給の割合が定められ,別表第4においては期末手当における割合と同一の割合が規定され,別表第5においては勤勉手当について期末手当及び勤勉手当規則に規定する期間率(各支給時期の基準日以前6か月間における勤務期間に応じた支給の割合)と同一の割合が規定され,退職時等特別報酬について別表第6で勤続期間に応じた支給割合が定められるとともに10条で更新停止年齢における退職やいわゆる早期退職の際等の割増率が規定された。
エ 本件13年改正後の市の一般職非常勤職員についての例規等及びその他の取決め等の変遷等
(ア) 本件13年改正施行に当たっての市長等と市職員の組合との間の交渉
P6市長等は,本件13年改正の可決を受けて,市職員の組合と市の一般職非常勤職員の各職種の勤務時間等の勤務条件について交渉を行い,平成14年3月末までに確認書を取り交わすなどして同年4月1日を実施日とする勤務時間の変更の合意をした。その結果,本件非常勤職員給与規則別表第1所定の各職種に係る週勤務時間数はいずれも勤務時間条例2条1項及び勤務時間条例施行規則(3条1項)の適用を受ける職員(市の一般職常勤職員)の週勤務時間数の4分の3を超える時間となることとなった。なお,その後も,留守家庭児童会室が土曜日閉室とされた際などの勤務条件についての交渉が行われたが,週勤務時間数の設定が常勤職員の週勤務時間数の4分の3を下回ったことはなかった。
なお,職員の給与,勤務時間その他の勤務条件の運用基準の決定及び特別報酬の支給の決定は,市長部局所属の職員については総務部長が,教育委員会所属の職員については教育委員会管理部長がそれぞれ専決する権限を有していた。また,P59(乙事件の非常勤職員205,丁事件の非常勤職員186)は,上記交渉について,P54労働組合連合会の指導員支部委員長として関与した(丙20)。
(イ) 本件給与条例及び本件非常勤職員給与規則の改正経緯
平成13年条例第37号(本件13年改正)は,平成13年条例第49号により,期末手当の支給率の改正と併せて,定期特別報酬のうち,本件給与条例56条2項1号イの規定する部分(期末手当相当部分)の支給率の上限が期末手当の各基準日の支給率の合計と同率に改正される等した上で平成17年4月1日施行された。
その後,本件給与条例は,月額報酬については,平成14年条例第32号及び平成15年条例第29号により,本件給与条例55条2項の規定する支給額の上限額が改正された。定期特別報酬については,平成14年条例第32号の平成15年1月1日施行部分により,本件給与条例56条2項1号イの規定する部分(期末手当相当部分)の支給率の上限が,期末手当の支給率の改正と併せてその各基準日の期末手当の支給率を合計したものと同率に改正された。また,同条例の同年4月1日施行部分により,期末手当の支給回数の削減及び支給率の改正に併せて期末手当相当部分を支給額に算入する時期が期末手当の支給時期と同様になるように改正されるとともに,支給率の上限が改正後の期末手当の各基準日の支給率を合計したものと同率に改正され,本件給与条例56条2項1号ロの規定する部分(勤勉手当相当部分)の支給額の上限が,勤勉手当の支給額の上限の改正に併せて,勤勉手当の支給額の上限についての改正後の34条の5第2項1号所定の支給率(各基準日とも同率)を2倍にしたものと同率に改正された。退職時等特別報酬の支給率の上限については,改正はされなかった。
本件非常勤職員給与規則は,市の一般職非常勤職員の各職種の月額報酬については,平成14年規則第76号(同規則の施行日は月額報酬額を改正した平成14年条例第32号の施行日と同日),平成15年規則第57号(同規則の施行日は,月額報酬の上限額を改正した平成15年条例第29号の施行日と同日),平成16年規則第12号(同規則による改正により,P60病院が平成16年4月1日から地方公営企業法にいう地方公営企業となったことに伴い,別表第1記載の職種のうちから用務員及び准看護師が削除されるなどされた。),同年規則第42号,同年規則第68号により,定額の職種に対する月額報酬の額又はその決定基準等を定めた別表第1が改正された。また,定期特別報酬については,平成15年規則第7号により期末手当相当部分の支給率について定めた別表第2が期末手当についての各基準日の支給率と同率(これらの各基準日の属する年度末において満61歳以上である者にあっては再任用任職員に対する支給率と同率)に改正され,勤勉手当相当部分の支給率について定めた別表第3が勤勉手当の職員給与条例34条の5第2項1号所定のものと同率(各支給についての基準日の属する年度末において満61歳以上である者にあっては職員給与条例同項2号所定の再任用任職員についてのものと同率)に,期末手当相当部分の在職期間に応じた支給の割合を定めた別表第4が期末手当の勤続期間に応じた支給の割合と同じ割合に改正され,同年規則第57号により,別表第3が更に改正されたが,勤勉手当相当分の在職期間に応じた支給の割合を定めた別表第5は改正されなかった。退職時等特別報酬の勤続期間に応じた支給率について定めた別表第6も改正されなかった。
(ウ) 平成17年条例第18号による職員給与条例の改正の経緯
本件給与条例による特別報酬については,平成15年9月22日,P56市議会議員が一般質問として,実質的にボーナス,退職金の支給は違法であるとの趣旨の指摘をした上でこの点についての制度の見直しの進捗状況を質問し,P3総務部長及びP6市長が引き続き検討中であるとの趣旨の答弁をするなど,市議会議員のうちには,特別報酬の支給について疑義を表明するものがおり,また,平成16年10月26日には平成15年度の退職時等特別報酬の支給について住民監査請求がされるなどしており(甲事件の前提たる監査請求。なお,これについては本件非常勤職員の一部が所属するP61労連の弁護団名義で適法である旨の意見書(甲22)が監査委員に提出されている。),枚方市の執行機関及び市議会において検討が継続された。
そして,任期付職員採用法の平成16年法律85号による改正を受けたP6市長による条例案の提出を受け,市議会は,平成16年12月,上記改正後の同法に基づき,一般職の任期付職員の採用に関する条例(任期付職員採用条例。平成17年4月1日施行)を可決し,同条例4条により,任命権者は,① 短時間勤務職員を一定の期間内に終了することが見込まれる業務又は一定の期間内に限り業務量の増加が見込まれる業務のいずれかに従事させることが公務の能率的運営を確保するために必要である場合,② ①のほか,住民に対して職員により直接提供されるサービスについて,その提供時間を延長し,若しくは繁忙時における提供体制を充実し,又はその延長した提供時間若しくは充実した提供体制を維持する必要がある場合において,短時間勤務職員を当該サービスに係る業務に従事させることが公務の能率的運営を確保するために必要であるとき,③ ①又は②のほか,職員が同条例4条3項各号に定める部分休業等の承認等を受けて勤務しない時間について短時間勤務職員を当該職員の業務に従事させることが当該業務を処理するため適当であると認める場合には,短時間勤務職員を任期を定めて採用することができることとされた(任期付短時間勤務職員。なお,任期の更新はできるが採用から3年を超えない範囲に限られる(同条例6条2項)。)。なお,併せて,平成16年条例第36号により勤務時間条例が改正され,任期付短時間勤務職員の勤務時間は,休憩時間を除き,4週間を超えない期間につき1週間当たり32時間までの範囲内で,任命権者が定めるものとされ,勤務時間条例施行規則(平成17年規則第30号による改正後のもの)3条3項により31時間を超えない範囲内と規定された。また,上記条例により職員給与条例も改正され,任期付短時間勤務職員の給与については,給料月額は,原則として,任期付職員(任期付職員採用法4条1項,2項,任期付職員採用条例3条)についての職員給与条例41条の2第1項所定の給料表(4号級に区分して給料月額を定めたもの)に当該任期付短時間勤務職員の週勤務時間を市の一般職常勤職員の週勤務時間(勤務時間条例2条1項)で除して得た数を乗じた額とするとされ(職員給与条例41条の3第1項,第2項),職員給与条例別表第2及び第3所定の給料表の適用される職員(以下「市の一般職常勤職員」という。)に対する期末手当及び勤勉手当の支給についての規定が適用され,これと同様の計算方法による期末手当及び勤勉手当の支給がされることとされた。
次いで,平成17年条例第18号(非常勤職員の給与に関する規定を削除すること等を提案理由とするP6市長提出の改正案が可決されたもの)により,職員給与条例から普通報酬及び特別報酬の支給について定めた第12節「非常勤職員の給与」が削除された(本件17年改正。なお,特別報酬の支給について定めた部分は公布の日から,その余の部分は同年4月1日に施行)。
オ 本件13年改正後の市の一般職非常勤職員(公営企業の職員を除く)の状況等
(ア) 本件13年改正による変化等
平成13年4月1日以降,市の一般職非常勤職員は,新規の任用等の特段の手続を経ることなく,当然に本件給与条例にいう非常勤職員(本件給与条例別表第2及び別表第3の適用を受ける職員以外の職員)として扱われるようになった。ただし,任期の更新については,非常勤嘱託等定年要綱が廃止され,平成14年月1日より施行された非常勤職員の任期に関する要綱(平成14年要綱第22号。以下「非常勤職員任期要綱」という。)により定められた「更新停止年齢」(その年齢を超えては任期の更新を行わないこととされる年齢をいい(以下同じ),原則として60歳である。)に達する日以後における最初の3月31日を超えない範囲でされる扱いとなった。なお,本件給与条例にいう非常勤職員とされたのは市の一般職非常勤職員のみであった。
市の一般職非常勤職員の職についての辞令には,市長部局所属の者については,「非常勤嘱託に任ずる」,「○○課勤務を命ずる」と記載され,職種,雇用期間(発令日から1年),報酬の月額及び勤務形態が記載され,留守家庭児童会室指導員を除き,教育委員会所属の者については,「非常勤嘱託に任ずる」,「○○(学校名,図書館名等の施設名)勤務を命ずる」と記載され,職種,任期(発令日から1年)及び報酬月額が記載されており,各年4月1日付けで毎年度発令されていた。留守家庭児童会室指導員については,遅くとも平成元年ころからは,「非常勤嘱託に任ずる」,「○○留守家庭児童会室指導員を命ずる」と記載され,報酬月額及び雇用期間が記載されているが,退職の意思表示があった時,児童会室運営の基本的事項の変更が余儀なくされる時等に該当する場合を除き定年に達するまで自動更新するものとすると記載されており(丙15),初めて任用されるとき及び勤務先の児童会室が変更されるときを除き発令されていなかった。
なお,市の一般職非常勤職員には地公法38条による営利企業等の従事の制限が及ぶものとされていたことは従前のとおりであり,申請すれば従前のとおりの許可基準により許可又は不許可が決定されることとなっていた(少なくとも平成14年度に許可例が1例ある。)。
また,勤務時間が延長されたことに伴い,すべての職種の職員が雇用保険,厚生年金保険及び大阪府市町村職員健康保険組合に加入するようになった。もっとも,大阪府市町村職員共済組合の組合員の要件及び大阪府市町村職員互助会の会員の要件を満たすものとされてこれらに加入する市の一般職非常勤職員はいなかった。
(イ) 平成15年度及び平成16年度の各職種の状況等
平成15年度及び平成16年度の市の一般職非常勤職員の職種(地方公営企業の職員を除く。)は別紙「各職種まとめ」記載の番号1ないし20であり,その職務内容はそれぞれ対応する同別紙「職務内容」欄の各記載のとおりであり,平成13年度以前とおおむね同様であった。各職種について定められた週勤務時間数はそれぞれ対応する同別紙「週勤務時間数」欄の各記載のとおりであり,勤務形態及び勤務時間は,それぞれ対応する同別紙「勤務形態」欄の各記載のとおりであり(時間外勤務等が常態化している場合にはその点も含めて記載),各職種の行う業務についての人員配置の状況はそれぞれ対応する同別紙「人員配置」欄の各記載のとおりであり,各職種の異動(勤務先の変更)の状況はそれぞれ対応する同別紙「異動」欄の各記載のとおりであり,各職種の更新停止年齢はそれぞれ対応する同別紙「更新停止年齢」欄の各記載のとおりであった。
そして,各職種の月額報酬についての平成15年12月1日時点の本件非常勤職員給与規則による定めはそれぞれ対応する同別紙「月額報酬(15年12月1日時点)」欄の各記載のとおりであり,平成15年度に市の一般職非常勤職員の各職種(当該職種に就いている一般職非常勤職員があるものに限る。)に支給された月額報酬の状況は,別紙「平成15年度の各職種の平均月額報酬」のとおりであった。また,同年度に市の一般職非常勤職員について支給された普通報酬の額及び普通報酬に特別報酬(退職時等特別報酬を除く)と費用弁償を加えた合計額は,1人当たりの平均で,同じ勤務時間勤務したと仮定して算出した市の一般職常勤職員に対する給料及び諸手当(退職手当を除く)の支給合計額のそれぞれ40.2パーセント及び53.5パーセントであり,退職時等特別報酬額は,1人当たりの平均で,市の一般職常勤職員に対して支給された退職手当額の13.6パーセントであった(乙7の1ないし3)。
なお,各年度において市の一般職非常勤職員について営利事業等への従事の制限が及んでいたことは従前と同様であった。
(ウ) 平成17年4月1日以降の状況等
平成17年3月31において市の一般職非常勤職員であり,本件給与条例の非常勤職員として扱われていた職員は,平成17年4月1日以降も勤務を継続したものは,おおむね市の一般職非常勤職員を対象とする採用試験を経て任期付短時間勤務職員として任用され(ただし,本庁宿日直代行員については特別職の非常勤嘱託として任用された。),従前と同様の勤務に従事している。
カ 本件非常勤職員の勤務実態等
本件非常勤職員について本件特別報酬の支給がされた当時,本件非常勤職員の勤務実態は,それぞれの職種について対応する別紙「各職種のまとめ」の各記載のとおりであり,そのような勤務の提供につき,平成15年度及び平成16年度,本件特別報酬のほか,月額報酬等の本件給与条例に基づく報酬の支給を受けた(ただし,勤務を継続して支給要件を満たした者に限る。)。
なお,P59(乙事件の非常勤職員205,丁事件の非常勤職員186)はP54労働組合連合会の幹部であり,P62(乙事件の非常勤職員188,丁事件の非常勤職員169)はP63労働組合の幹部(平成15年度ころは非常勤職員支部書記長)であった。
キ 市の一般職非常勤職員の各職種に係る市の業務と民間委託等
枚方市では,住民票等の交付につき,証明書自動交付機を各所に設置している。また,平成18年度以降,一部の留守家庭児童会室の指導員につき,NPO法人からの派遣契約を締結している。
(3)  他の地方公共団体における関係する事項の状況等
ア 非常勤職員の給与等について
平成13年当時,非常勤職員の給与については,報酬及び費用弁償に関する条例等の名称で条例を設け,当該条例においてその上限額を定めた上でその余は任命権者や規則等にゆだねることによりこれを支給している地方公共団体が相当数有り,大阪府においても上記の例によっていた。
また,平成13年当時,大阪府の普通地方公共団体のうち,25の地方公共団体が非常勤職員に対して一時金を支給しており,11の地方公共団体が退職金ないしこれに相当する給付を支給していたが(平成16年当時では一時金については26,退職金については9の地方公共団体が支給),いずれも,条例上に規定を設けて支給しているものではなかった。また,全国的にも,条例上に非常勤職員に対する一時金ないし退職金に相当する給付をする旨の規定を設けている地方公共団体はないか,極めてまれであった。なお,大阪府は,平成17年8月24日付けで,東大阪市に対し,非常勤の職員に対して,報酬によらず給料及び手当を支給することとし,給料の額を条例ではなく規則で定めることとしても,当該非常勤の職員が単純な労務に雇用されるものである場合は違法とはいえない,東大阪市ではすべての一般職の非常勤職員について単純な労務に雇用される者とされているが,一般に,保育士,看護師などの資格を要する業務に従事する技術者等はこれに含まれないと考えられ,その場合は手当を支給することはできない,等の助言を行った(甲21)。
また,平成13年ころ以前から,職員に対する給与の支給が,地自法上支給することができることされていない給付であって違法である旨や給付の支給についての条例の規定内容が不十分であり給与条例主義に反し違法である旨が主張される住民訴訟の提起例は少なくなく,支給が違法であると判断される例も相当程度あった。
イ 業務の民間委託等
留守家庭児童会室と同様に保護者が日中不在である家庭の児童を対象に,あるいは全児童を対象に放課後の学習や遊びの場を提供する事業,図書館事業等については,平成15年法律第81号による地自法の改正により導入された指定管理者制度により指定管理者に管理を行わせている地方公共団体もある。また,前者については保護者の自主運営により行われている場合もある。
7  公金の支出の違法性(本案の争点①)について
(1)  地自法204条の常勤の職員の意義
前記6(1)ウのとおり,地自法は,普通地方公共団体の非常勤の職員(同法203条)と常勤の職員(同法204条)とに対する給与について異なる体系を規定し,非常勤の職員については,議会の議員を除いて,報酬及び費用弁償のみを支給するものとし,報酬についてはその勤務日数に応じて支給するのを原則とし,他方,常勤の職員については,給料及び旅費並びに同法204条2項所定の各種手当を支給するものとしている。その趣旨については,そもそも給与は勤務に対する反対給付としての性格を有するものであるが,常勤の職員については,その勤務の態様からして,その給与が当該職員及びその家族の生計を支えるいわゆる生活給としての意味を有するものということができるのに対し,非常勤の職員については,その勤務の態様からして,その給与が生活給的意味を有せず,純然たる勤務に対する反対給付としての性格のみを有するものということができるから,常勤の職員の給与については,我が国の生活習慣上盛夏と年末に生活費が一時的に増嵩することを考慮して支給される生活給としての性格を有する特別給たる期末手当及び精勤に対する報償として年に1回又はそれ以上支給される能率給としての性格を有する勤勉手当のいわゆるボーナスや退職後の生活保障的性格をも有する退職手当等の各種手当を支給すべきものとし,非常勤の職員の給与については,勤務に対する反対給付として,原則としてその勤務量,具体的には勤務日数に応じた対価及び費用弁償のみを支給すれば足りるとしたものであると解される。そして,地自法の定める常勤の職員と非常勤の職員に関する他の関係規定にもかんがみると,地自法204条1項にいう常勤の職員と同法203条1項にいう非常勤の職員の意義については,同法が上記のとおり異なる給与体系を定めた趣旨に即して解するのが相当というべきである。そうであるとすれば,地自法204条1項にいう常勤の職員とは,その勤務の態様に照らして当該勤務が当該職員及びその家族の生計を支えるいわゆる生活の糧を得るための主要な手段と評価し得るような職務に従事する職員をいい,そのような職員に該当するか否かについては,当該職員の任用形式のみならずその職務の内容及び性質等をも勘案し社会通念に従って決すべきものと解される。なお,原告は,普通地方公共団体とその職員の間の任用関係は公法上のものであることから,その職員が地自法203条の非常勤の職員と同法204条の常勤の職員のいずれに当たるかはいずれとして任用されたかによって決定される旨主張するが,前記(1)ウのとおり,地公法は一般職の職員の任用方法について任用形態に基づく差違を設けておらず,ただ同法にいう臨時的任用及び非常勤職員の任用の場合には任用が条件附のものとされず,臨時的任用の場合には任期の更新に制限が設けられているにとどまり,他方で,地自法は,法定の特定の職種を除いて常勤の職員及び非常勤の職員の任用についての定めを置いておらず(172条4項参照),法定の特定の職種(専門委員,監査委員,附属機関を組織する委員その他の構成員等。174条4項,196条4項,5項,202条の3第2項等)を除いて常勤の職員を充てるべき職種と非常勤の職員を充てるべき職種の区別の基準等についても何ら規定しておらず,専らその給与について前記のとおり常勤の職員と非常勤の職員とで明確に異なった給与体系を規定していることに加えて,地自法における常勤の職員と非常勤の職員の区分自体が地公法の制定を受けた地自法の給与に関する規定の整備の過程で設けられた経緯をも併せ考えると,地公法にいう一般職の職員が地自法にいう常勤の職員と非常勤の職員のいずれに該当するかについては,上記のとおり,同法が常勤の職員と非常勤の職員とで異なる給与体系を定めた趣旨に即して,その任用形式ないし辞令上の区分等のみならずその職務の内容及び性質等をも勘案し社会通念に従って決するのが相当というべきであって,原告の上記主張を採用することはできない。
ところで,国家公務員については,前記前提事実等のとおり,人規15-15第2条において,非常勤職員の勤務時間は,日々雇い入れられる非常勤職員については1日につき8時間を超えない範囲内において,その他の非常勤職員については常勤職員の1週間当たりの勤務時間の4分の3を超えない範囲内において,各省各庁の長の任意に定めるところによる旨規定している。この規定は,国家公務員における非常勤職員を定義したものではなく,非常勤職員の勤務時間について定めたものにすぎないが(現に,相当長期にわたって常勤職員とほぼ同様の勤務を行っており,常勤職員に支給される期末手当及び勤勉手当との均衡を考慮するべき非常勤職員が存在することを前提とする通知も行われている(昭和28年12月10日給実甲発第83号通知,昭和30年5月17日34-144通知等)。),非常勤職員の週勤務時間数を常勤職員のそれの4分の3を超えてはならないと規定した趣旨については,実質的に常勤職員と異ならないものについてこれを非常勤職員として非常勤職員に関する給与の規定を適用することは公平と統一を欠くことになるからであるとされ,「4分の3」とした理由については,いわゆる定員法の枠外を作らない意図の下に,常勤職員と非常勤職員との勤務時間の差を最小限度4分の1としておけば,その間の混同を生じないと考えたものとされている。このような人事院規則の規定の趣旨に加えて,常勤職員の週勤務時間数(勤務時間法5条1項において休憩時間を除き1週間当たり40時間と定められている。)の4分の3(勤務時間法の上記定めによれば30時間)を超えるような態様の勤務に従事する職員は,社会通念に照らしても,当該勤務が当該職員及びその家族の生計を支えるいわゆる生活の糧を得るための主要な手段となっているのが通常であると考えられることを併せ考えると,地方公務員についても,1週間当たりの勤務時間数が常勤の職員の1週間当たりの勤務時間の4分の3を超えるような態様の勤務に従事する職員は,地自法204条1項にいう常勤の職員に該当するものと推定されるというべきである。そして,1週間当たりの勤務時間が常勤の職員の4分の3を超えるか否かについては,当該職員の任用に当たって勤務条件として提示された勤務時間のみではなく,当該職務の内容及び性質並びに職員の配置状況等にかんがみ当該職員の職務が客観的にみて当該普通地方公共団体における常勤の職員の所定の勤務時間の4分の3を超える勤務を要するものであるか否かという観点から社会通念に照らして判断すべきである。なお,週勤務時間数が常勤職員の所定の週勤務時間数の4分の3を超えるような態様の勤務に従事する職員が別途地公法38条1項に基づく任命権者の許可を受けるなどしてその従事すべき地方公共団体の職務以外の事業又は事務に従事し報酬を得ている場合であっても,社会通念上そのような事業又は事務への従事(兼業)は当該職員にとって生計の維持及び生活の向上のための補充的なものにすぎないとみられるから,当該兼業の事実から直ちに当該職員の当該普通地方公共団体に対する勤務が当該職員の生計を維持する主要な手段としての性格を失うものではない。
(2)  地公法25条2項5号(制定時。現行法では同条3項5号)と地自法204条等の関係
前記のとおり,地公法25条2項5号(制定時)は,非常勤職員の職及び生活に必要な施設の全部又は一部を公給する職員の職その他勤務条件の特別な職については,一般の給料表はそのまま適用することができないとか,給与の一部を減給するといった給与の調整を行うことが予想されるので,その場合には,上記のような給与の調整に関する事項を給与に関する条例の中に規定するものとしたものであると解される。
しかるところ,前記6(1)ウのとおり,昭和25年12月に地公法が制定されて25条2項5号の規定が設けられた後,同法の制定を受けて,昭和26年法律第203号(地方公務員法の制定に伴う関係法律の整理に関する法律)により地自法172条4項の規定が改正されて,普通地方公共団体の職員に関する任用,職階制,給与,勤務時間その他の勤務条件,分限及び懲戒,服務,研修及び勤務成績の評定,福祉及び利益の保護その他身分取扱いに関しては,同法に定めるもののほか,地公法の定めるところによる旨の規定が置かれるとともに,上記昭和26年法律第203号及びその後の地自法を改正する法律により地自法の給与に関する規定が整備される過程で同法に常勤の職員と非常勤の職員の区分が規定され,昭和31年改正において常勤の職員の給与については同法204条,非常勤の職員の給与については同法203条の各規定により規律されるものとしてそれぞれの給与体系が最終的に整備され,現行地自法に引き継がれている経過が明らかである。このことに加えて,地自法がその制定当初からその職員について一般職と特別職の区分をしていないこと,昭和31年改正が,地方公共団体ごとの給与体系が極めて区々となり,不明朗な給与の支給等が行われる例も少なくなかった実情にかんがみ,給与の種類を法定し,ある程度の給与の統一性を保たせる形で地方公共団体の職員の給与体系の整備を図ったものであることを併せ考えると,地方公共団体の職員の給与については,地公法にいう一般職に属すると特別職に属するとを問わず,地自法にいう常勤の職員については地自法204条,同法にいう非常勤の職員については同法203条が適用され,地公法25条2項5号(制定時。現同条3項5号)にいう一般職の非常勤職員についても,地自法にいう非常勤の職員については,同法203条により報酬及び費用弁償しか支給することができないのであって,地公法25条2項5号(制定時)を根拠に地自法204条2項所定の各種手当を支給することは許されないと解すべきである。
(3)  給与条例主義
もっとも,普通地方公共団体は,その職員に対して法定の給付を支給する場合においても,地自法203条,204条及び204条の2の各規定並びに地公法24条6項,25条の各規定に適合した条例に基づかなければ当該支給は違法となる(いわゆる給与条例主義)。いわゆる給与条例主義の趣旨は,前記6(1)ウにおいて示した上記各規定の趣旨及び沿革等にかんがみると,普通地方公共団体の職員に対して法定の種類の給与を権利として保障するとともに,給与の額及びその支給方法の決定を普通地方公共団体の住民の直接選挙により構成される議事機関である議会が制定する条例にゆだねることにより,これに対する民主的統制を図ったものであると解される。そして,このようないわゆる給与条例主義を定めた法令の規定の趣旨に加えて,普通地方公共団体の職員に対する給与に関する上記各法令の規定の文言及びその沿革にもかんがみると,これら法令の規定は,普通地方公共団体の職員に対する給与について,常勤の職員の場合であると非常勤の職員の場合であるとを問わず,その支給要件及び支給額を条例において具体的に規定することを予定しており,事柄の性質上その決定を普通地方公共団体の長又はその制定する規則にゆだねることを一切許容しない趣旨のものとまでいうことはできないものの,これを規則等の定めにゆだねる場合においても,少なくとも当該種類の給与の支給要件該当性及び支給額を決定するための具体的な基準が当該条例自体から読み取れる程度に条例においてこれを具体的に規定することを要するものと解すべきであり,条例において単に給与の支給根拠のみを定め,具体的な額,支給要件等の基本的事項をすべて普通地方公共団体の長又は規則に委任するようなことは,長の恣意的な給与の支給を許すことにつながりかねず,職員に法定の給与を保障するという観点からも,給与の額及びその支給方法に対する民主的統制を図るという観点からも,給与条例主義の趣旨に反し,許されないものというべきである(前記昭和54年8月31日自治給発第31号通知参照)。
確かに,被告らも主張するように,前記6(1)イ及びウのとおり,国家公務員の一般職(同法にいう一般職は地公法にいう一般職とは異なるものであって,国家公務員法にいう一般職の職は地公法にいう一般職の職よりも相当広範囲に及んでいる。)に属する非常勤の職員に対する給与については,一般職職員給与法22条2項において,同条1項に規定する職にある者以外の非常勤職員については,これらの非常勤職員の雇用及び勤務の実態が区々であり,実際問題としてあらかじめ法律等により具体的な基準までを詳細に定め難い事情にあることにかんがみ,一般職職員給与法においては「常勤の職員の給与との権衡を考慮し」という基本的基準のみが規定され,各庁の長が「常勤の職員の給与との権衡を考慮し」て予算の範囲内で給与を支給するものとされている。そして,被告らも主張するとおり,普通地方公共団体の非常勤の職員は,議会の議員その他の法定の一定範囲の者を除くと,一般職職員給与法22条2項所定の常勤を要しない職員と同様に,その採用の形態,職務内容,勤務態様は多種多様なものが想定され,一般には,性質上一律的な規律には必ずしもなじまないと考えられることに加えて,普通地方公共団体の非常勤の職員に関する地公法及び地自法その他関係法令の規定からすれば(前記6(1)参照),普通地方公共団体の非常勤の職員の制度は,一般職に属する常勤の職員を中核とする人的体制を補完するものとして,その時々の行政需要に柔軟に対処するための制度として設けられている面がうかがわれないではない。また,地公法22条2項又は5項の臨時的任用職員についても,これを行うことができるのは,原則として,緊急の場合,すなわち,地公法17条所定の任用の手続をとるいとまがなく緊急に職員を任用する必要がある場合と,臨時の職に関する場合,すなわち,当該職自体の存続期間が暫定的なものである場合とに限定されているのであって,これらにかんがみても,被告らの主張するとおり,普通地方公共団体の臨時的任用職員の制度は,非常勤の職員の制度と並んで,一般職に属する常勤の職員を中核とする人的体制を補完するものとしてその時々の行政需要に柔軟に対処するための制度として位置付けられている面がうかがわれるところである(以上は,臨時又は非常勤の職については条例で定数を定めることを要しないものとする地自法172条3項等の規定の趣旨からも裏付けられるところである。)。このように,普通地方公共団体の非常勤職員と常勤職員とには大きな差異が存する。のみならず,これらの非常勤の職員及び臨時的任用職員が地方公共団体のいわゆる補助的業務に従事することが想定されているのに対し,一般職の常勤の職員が従事することが想定されている業務(本格的な業務)であっても,一定の期間内に終了することが見込まれるもの,一定の期間内に限り業務量の増加が見込まれるもの,当該業務に係るサービスの提供時間を延長し又は繁忙時における提供体制を充実する必要があるもの等について,地公法28条の5にいう短時間勤務の職に相当するような職を設けるなど,これらの行政需要に時宜に応じて柔軟に対処することができるための人的体制を設ける必要性がかねてから指摘されており,平成16年法律第85号による任期付職員採用法の改正による立法化をみたところであるが,それ以前においても,上記のような人的体制が上記の一般職に属する常勤の職員を中核とする人的体制を補完するものとして設けられていた地方公共団体も少なくないと考えられるところ,そのような人的体制(職)に充てられる職員についても,当該職員が地自法にいう常勤の職員であると非常勤の職員であるとを問わず,その採用の形態,職務内容,勤務態様は多種多様なものが想定され,一般には性質上一律的な規律になじみ難いと考えられる点において,上記の補助的業務に従事すべきものとされる非常勤職員及び臨時的任用職員と異なるところがないということができる。しかし,前記6(1)ウに説示した国家公務員及び地方公務員の給与に関する法令の規定の沿革をみると,国家公務員の一般職に属する非常勤の職員に対する給与については,昭和25年12月制定の同年法律第299号による改正後の一般職職員給与法22条2項において,これらの非常勤の職員に対する給与の支給について,法においては基本的基準を示すのみにとどめ,具体的な給与の決定は予算の範囲内で各庁の長の裁量にゆだねる仕組みが採用されたにもかかわらず,普通地方公共団体の非常勤の職員に対する給与について地自法及び地公法において上記改正後の一般職職員給与法の非常勤の職員に対する給与の規定に準じた規定は設けられず,昭和31年法律第147号による地自法の一部改正(昭和31年改正)において,地方公共団体の職員に対する給与について,国家公務員に対する給与の基本の体系と一致させる形で給与体系を整備する趣旨で関係条項の改正及び新設が行われたものの,地自法203条1項所定の普通地方公共団体の非常勤の職員の報酬,費用弁償及び期末手当についても同法204条1項所定の普通地方公共団体の常勤の職員の給料,手当及び旅費についても,その額及びその支給方法を条例で定めなければならないものとされた上(地自法203条5項,同法204条3項),いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずには上記非常勤の職員にも常勤の職員にも支給することができないものとされて(同法204条の2),これらがそのままの形で現行法(地自法にあっては平成20年法律第69号による改正前の規定。ただし,同改正後の地自法も同旨の規定を置いて給与条例主義を維持している。)に受け継がれている経過が明らかである。以上のような関係規定の沿革にかんがみると,昭和31年改正においては,普通地方公共団体の非常勤の職員の給与の支給について,国家公務員の一般職に属する非常勤の職員に対する給与について一般職職員給与法(ただし,昭和25年法律第299号による改正後のもの。)が採用した仕組みとは異なる立法政策が採られたものと理解せざるを得ない。このような国家公務員及び地方公務員の給与に関する関係規定の沿革等に加えて地自法及び地公法の給与に関する関係規定の文理に照らしても,普通地方公共団体の職員に対する給与その他の給付の支給についてのいわゆる給与条例主義を定めた関係規定(地自法203条5項,204条の2等)について,一般職職員給与法(ただし,昭和25年法律第299号による改正後のもの。)22条2項の規定の趣旨をしんしゃくして,同項所定の常勤を要しない職員と同様にその採用の形態,職務内容,勤務態様が多種多様で性質上一律的な規律になじまないと考えられる職員(地自法にいう常勤の職員であると非常勤の職員であるとを問わない。)の給与については,一般職職員給与法22条2項と同程度の規定の仕方により,条例において給与の額及び支給方法についての基本的基準のみを定め,その具体的な決定を当該普通地方公共団体の規則又は長若しくは任命権者にゆだねることも給与条例主義に違反しないというような解釈をすることは困難というべきである。
なお,被告らは,職員の団結権及びそのための交渉権を認めた地公法52条1項及び同法55条1項と給与条例主義とを矛盾なく解釈するためには,給与についての議会の決定が上記各規定に基づく交渉の余地があるものであることを要する旨主張するところ,確かに,地公法は,地方公共団体の一般職の職員につき,その勤務条件の維持改善を図ることを目的として職員団体を結成することができるものとし(同法52条),同法53条の登録を受けた職員団体から職員の給与等に関して適法な交渉の申入れがあった場合においては,当該交渉事項について適法に管理し又は決定することのできる地方公共団体の当局は,その申入れに応ずべき地位に立つものとされている(同法55条)が,職員団体と地方公共団体の当局との交渉は,団体協約を締結する権利を含まず(同条2項),職員団体は,法令,条例,地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に抵触しない限りにおいて,当該地方公共団体の当局と書面による協定を結ぶことができ,上記協定は,職員団体及び当該地方公共団体の当局の双方において,誠意と責任を持って履行しなければならないとされているにとどまる(同条9項,10項)ことなどからすれば,地公法の職員団体に関する上記各規定を根拠に同法及び地自法の定める給与条例主義は条例における給与の額及びその支給方法についての定めが職員団体の給与に関する交渉の申入れに応ずべき地位に立つ地方公共団体の当局において当該交渉に基づく決定の余地を残した幅のあるものであることを許容する趣旨のものであると直ちに解することはできないというべきであり,被告らの上記主張は採用することができない。
(4)  本件給与条例の規定
以上を前提に本件給与条例の規定について以下検討する。
ア 本件特別報酬の法的性格
前記のとおり,平成13年枚方市条例第37号による改正(本件13年改正)後の本件給与条例は,定期特別報酬につき,56条2項1号イ及びロにおいて,それぞれ基準日(3月1日,6月1日又は12月1日。後に6月1日及び12月1日に改正される。)現在において当該非常勤職員が受けるべき月額報酬の額に規則で定める基準日ごとの支給率を乗じて得た額に基準日以前6月以内の期間におけるその者に係る規則で定める在職期間の区分に応じて規則で定める割合を乗じて得た額の合計額を支給する旨規定するとともに,上記イの支給率につき期末手当における1の年度の支給率合計(3月に支給する場合における期末手当基礎額に乗じる率,6月に支給する場合における期末手当基礎額に乗じる率及び12月に支給する場合における期末手当基礎額に乗じる率の合計)を1の年度における基準日ごとの支給率の合計の上限とする旨規定し,上記ロの支給率につき年2回支給される勤勉手当における1の年度の支給率合計(再任用職員以外の職員に係る勤勉手当基礎額に乗じる率の合計)を1の年度における基準日ごとの支給率の合計の上限とする旨規定しているのであって,定期特別報酬に関する本件非常勤職員給与規則の規定内容及び前記認定の本件13年改正により市の一般職非常勤職員に対する特別報酬に関する規定が整備された経緯等をも併せ考えると,本件給与条例は,定期特別報酬を同条例別表第2及び別表第3の適用を受ける職員(市の一般職常勤職員)についての期末手当及び勤勉手当に相当するものとしてこれにならって規定していることが明らかである(もっとも,本件給与条例は,勤勉手当については,基準日以前6月以内の期間におけるその者の勤務成績に応じて支給するものとし,その額は,勤勉手当基礎額に規則で定める基準に従って任命権者が定める割合を乗じて得た額とする旨規定しているのに対し,定期特別報酬の勤勉手当相当部分については,単に月額報酬の額に規則で定める基準日ごとの支給率を乗じて得た額を支給するとのみ規定するにとどまり,本件非常勤職員給与規則においても一定の支給率が規定されているにすぎない。)。そうであるとすれば,定期特別報酬は,期末手当相当部分のみならず勤勉手当相当部分をも含めて,その全体が地自法204条2項にいう期末手当に該当するものというべきである。
また,本件13年改正後の本件給与条例は,退職時等特別報酬につき,56条2項2号において,退職等の日において当該非常勤職員が受けるべき月額報酬の額に所定の比率(26.015)を乗じて得た額を超えない範囲内において規則で定めるところにより算定した額を支給する旨規定するとともに,58条2項において,退職手当の支給方法,支給制限及び返納等についての規定を準用しており,退職時等特別報酬に関する本件非常勤職員給与規則の規定内容及び前記認定の本件13年改正により市の一般職非常勤職員に対する特別報酬に関する規定が整備された経緯等をも併せ考えると,本件給与条例は,退職時等特別報酬を同条例別表第2及び別表第3の適用を受ける職員(市の一般職常勤職員)についての退職手当に相当するものとしてこれにならって規定していることが明らかであるから,退職時等特別報酬は地自法204条2項にいう退職手当に該当するものというべきである(なお,60歳到達時特別報酬は,退職により支給されるものではないが,その額の算定方法は退職時特別報酬と同じであり,60歳という年齢が常勤職員の定年であり,かつ,市の一般職非常勤職員の原則的な更新停止年齢とされていることからすれば,退職時特別報酬と同じく地自法204条2項にいう退職手当に該当するものというべきである。)。
以上によれば,本件給与条例は,同条例にいう非常勤職員(市の一般職の職員で別表第2及び別表第3の適用を受ける職員以外の職員)について地自法204条2項にいう期末手当及び退職手当を支給する旨規定するものであるところ,前記のとおり,同法は,204条1項にいう常勤の職員に対してのみ同条2項所定の各種手当を支給することができるものとしており,203条1項にいう非常勤の職員に対しては条例をもってしても204条2項所定の各種手当を支給することはできないと解されるから,本件給与条例の特別報酬に関する規定が地自法の給与に関する規定に適合しているということができるためには,少なくとも,同条例の規定する特別報酬の支給の対象(相手方)が地自法204条1項にいう常勤の職員に該当しなければならないというべきである。
そこで,次に,本件条例にいう非常勤職員が地自法204条1項にいう常勤の職員に該当するか否かについて検討する。
イ 本件給与条例にいう「非常勤職員」(同条例54条1項)の意義
本件給与条例1項,54条1項によれば,本件給与条例において非常勤職員は,市の一般職の職員であって同条例別表第2(行政職給料表)及び別表第3(医療職給料表)の適用を受ける職員以外の職員と定義されており,その文言からすれば,同条例所定の給料表の適用を受ける職員以外の一般職の職員すべてを指すものと解されなくもない。
しかし,前記6(2)によれば,本件給与条例における特別報酬に関する規定は,本件13年改正当時枚方市において地公法にいう一般職の非常勤職員として採用され勤務していた者を前提に,これらの一般職の非常勤職員(市の一般職非常勤職員)が本来常勤の職員が従事すべき業務に従事していることからこれに対する給与(報酬)は生活給としての性格を有していることにかんがみ,従前旧給与条例41条の「常時勤務を要しない職員の給与については,任命権者が常時勤務を要する職員の給与との均衡を考慮し,予算の範囲内で支給するものとする」旨の規定のみに基づき一時金報奨金ないし退職報奨金を支給してきたのを改め,これらの一般職の非常勤職員に対し,一時金報奨金に代えて定期特別報酬を,退職報奨金に代えて退職時等特別報酬を支給することにするとともに,これらの支給についての条例上の明確な根拠を与える趣旨で規定されたものであり,本件13年改正を受けて制定された本件非常勤職員給与規則においては,別表第1(本件給与条例にいう非常勤職員に支給する普通報酬のうちの月額報酬の額を規定するもの(同条例55条2項))に同規則制定当時市の一般職非常勤職員が従事していた職種がそのまま規定されたものである。しかるところ,前記のとおり,平成13年改正直前のころには,市の一般職非常勤職員が従事していた各職種の週勤務時間数は区々であり,市の常勤職員の週勤務時間数の4分の3を超えない職種も相当数存在していたが,その大部分は市の常勤職員の週勤務時間数の4分の3を超えており,平成13年改正を受けて,市当局と市職員の組合との交渉等により,本件非常勤職員給与規則別表第1所定の各職種に係る週勤務時間数はいずれも勤務時間条例2条1項及び勤務時間条例施行規則(3条1項)の適用を受ける職員(市の一般職常勤職員)の週勤務時間数の4分の3を超えるように設定され,以後,平成17年3月31日をもって市の一般職非常勤職員の制度が廃止されて任期付短時間勤務職員の制度に移行するまでの間,上記の週勤務時間数の設定が市の一般職常勤職員の週勤務時間数の4分の3を下回ったことはなかった。そして,これらの市の一般職非常勤職員は,本件13年改正の前後を通じて,特段の事情がない限り,非常勤嘱託等定年要綱ないし非常勤職員任期要綱により定められた定年ないし更新停止年齢に達するまで更新が重ねられ,継続して任用されていたというのである。
以上認定説示した特別報酬に関する本件13年改正の趣旨,目的,改正に至る経緯,改正後の経過,とりわけ,本件13年改正当時の市の一般職非常勤職員の職務内容及び勤務実態が生活給の保障を必要とすると考えられるような状況にあったこと及び本件13年改正後市の一般職非常勤職員の週勤務時間数が国家公務員の非常勤職員の勤務時間についての人規15-15第2条の規定に抵触しないように市の一般職常勤職員の4分の3を超えるものと設定されたことなどに加えて,前記のとおり1週間当たりの勤務時間が常勤の職員の1週間当たりの勤務時間の4分の3を超えるような態様の勤務に従事する職員は地自法204条1項にいう常勤の職員に該当するもの推定されることをも併せ考えると,本件給与条例にいう非常勤職員は,市の一般職の職員であって,本件給与条例別表第2及び別表第3の給料表の適用を受けない職員のうち,地自法204条1項にいう常勤の職員に該当するものをいうと合理的に解することができる(本件給与条例56条1項ただし書は,1週間当たりの勤務時間が11時間に満たない者には退職時等特別報酬を支給しない旨規定しているが,本件13年改正当時市の一般職非常勤職員(その従事していた職種は前記のとおり本件非常勤職員給与規則別表第1所定の職種である。)のうちに1週間当たりの勤務時間が11時間に満たない者は全く存在していなかった上,以上のような本件13年改正の趣旨,目的,改正に至る経緯及び改正後の経過等を併せ考えると,上記ただし書の規定は,地自法204条1項にいう常勤の職員に該当しない者については退職時等特別報酬を支給しない旨を注意的に規定したにすぎないものと合理的に解される。)。
そうであるとすれば,本件条例の特別報酬に関する規定は,地自法204条1項にいう常勤の職員に該当する者に対して同条2項にいう期末手当及び退職手当を支給することを定めたものということができるから,その限りにおいては,同項の規定に違反するものということはできない。
なお,原告は,市の一般職非常勤職員の勤務実態は常勤職員に準じたものでも,これと同等の勤務を提供しているものともいえない旨主張するが,以上認定説示したところによれば,採用することができない(市の一般職非常勤職員の各職種の職務についていわゆる外注等の方法により処理することができ,あるいは,当該職務が市の一般職常勤職員において通常従事するものとされている業務で勤務時間外のものであるなど,当該職種が市の一般職常勤職員の業務負担を軽減するために置かれている職種であるからといって,そのことから直ちに当該職務に従事する職員がその勤務実態等のいかんにかかわらず地自法204条1項にいう常勤の職員該当性を欠くということはできない。また,特定の業務のみに就くことが予定されていることとその業務に従事する職員が常勤の職員に該当するかどうかとは必ずしも連動するものではない)。
ウ 本件給与条例の特別報酬についての規定
そこで,次に,本件給与条例の特別報酬に関する規定が(本件特別報酬の支給根拠とされたものをいう。以下同じ。)いわゆる給与条例主義を定めた地自法及び地公法の関係規定(地自法204条5項,同法204条の2,地公法25条1項等)に適合するか否かについて検討する。
給与の支給についての規定の中核を成すのは支給要件及び支給額についての定めであるところ,まず,特別報酬の支給要件について定めた本件給与条例56条1項の規定は,そのただし書において退職時等特別報酬を支給しない者の範囲を規則の定めにゆだねている点を除けば,その内容(同項各号の内容)は一義的に明確である(なお,同項ただし書のうち1週間当たりの勤務時間が11時間に満たない者には退職時等特別報酬を支給しない旨の規定が地自法204条1項にいう常勤の職員に該当しない者については退職時等特別報酬を支給しない旨を注意的に規定したものと合理的に解釈し得ることは前記のとおりである。)。
もっとも,特別報酬の額については,本件給与条例は,56条2項1号イで定期特別報酬の期末手当相当部分の,同号ロで定期特別報酬の勤勉手当相当部分の各額について,それぞれ基準日現在において当該非常勤職員が受けるべき月額報酬の額に規則で定める基準日ごとの支給率を乗じて得た額に,基準日以前6月以内の期間におけるその者に係る規則で定める在職期間の区分に応じて規則で定める割合を乗じて得た額とすると規定するとともに,1の年度における基準日ごとの支給率の合計の上限値を定め,同項2号で退職時等特別報酬の支給額について退職の日(60歳到達時特別報酬については満60歳に達する日以後における最初の3月31日)において当該非常勤職員が受けるべき月額報酬の額に一定の数(26.015)を乗じて得た額を超えない範囲内において,規則で定めるところにより算定した額とすると規定している。
以上のとおり,本件給与条例の特別報酬に関する規定における報酬額の定めは,定期特別報酬についても退職時等特別報酬についても,非常勤職員が受けるべき月額報酬を算定の基礎とした上,定期特別報酬についてはこれに乗じるべき基準日ごとの支給率及び在職期間の区分に応じた割合の具体的定めを規則にゆだね,退職時等特別報酬については当該月額報酬に一定の数を乗じた額をその上限額として規定するのみでその範囲内における具体的な額の算定方法の定めを規則にゆだねている。のみならず,上記のとおり特別報酬の額の算定の基礎とされた月額報酬につき,本件給与条例は,55条2項において,月額報酬の額は,一定額を超えない範囲内で規則で定めるとのみ規定して,その範囲内における具体的な月額報酬の額の決定を規則にゆだねており,少なくともその文言上は個々の非常勤職員に対する月額報酬の額を決定するための具体的基準が何ら規定されていない。
もっとも,本件給与条例は,市の一般職常勤職員の給料(月額)につき別表第2において行政職給料表を,別表第3において医療職給料表をそれぞれ規定しているところ,本件13年改正当時市の一般職非常勤職員が従事していた職種は同改正を受けて制定された本件非常勤職員給与規則別表第1に規定する職種と同じであり,前掲各証拠によればこれらの職種は一般職の職員が従事すべきものとして市の一般職非常勤職員以外に市の一般職常勤職員が充てられていたものも少なくない事実が認められる上,前記認定の本件13年改正の経緯によれば,本件給与条例55条2項所定の月額報酬の上限額は上記改正当時の肢体不自由児介助員及び留守家庭児童会室指導員の最高月額報酬額(月額給付金)にほぼ見合うものであったというのである。
しかしながら,本件給与条例にいう非常勤職員に該当する市の一般職非常勤職員が従事している職種は本件非常勤職員給与規則別表第1規定のとおり多種多様であって,その中に本件給与条例別表第2又は別表第3の給料表の適用を受ける市の一般職職員が従事しているものが少なからず含まれているとしても,具体的にどの職種が上記給料表のどの号級に相当し又は類似するのかを読み取るのは困難であるといわざるを得ないから,上記のとおり本件給与条例55条2項所定の月額報酬の上限額が肢体不自由児介助員及び留守家庭児童会室指導員の職種に係る最高月額報酬額にほぼ見合うものである点をしんしゃくしてもなお,本件給与条例の給料表(4条3項,別表第2,別表第3)その他の関係規定は同条例55条2項所定の上限額の範囲内で個々の非常勤職員に対する月額報酬の額を決定するに当たっての具体的な基準となり得ると解することはできない。
以上のとおり,本件給与条例の特別報酬に関する規定は,そもそも,その額の算定の基礎とされた月額報酬に関する規定が,その上限額のみを規定し,当該上限額の範囲内での具体的な金額の決定を任命権者にゆだねたものであり,本件給与条例の関係規定から個々の非常勤職員に対する月額報酬の額を決定するための具体的基準を読み取ることもできないから,いわゆる給与条例主義を定めた地自法204条3項,204条の2,地公法25条1項等の各規定に抵触し,違法といわざるを得ない上,当該月額報酬額に乗じるべき基準日ごとの支給率及び在職期間の区分に応じた割合の具体的定めを規則にゆだね(定期特別報酬),又は当該月額報酬に一定の数を乗じた額をその上限額として規定するのみでその範囲内における具体的な額の算定方法の定めを規則にゆだねている(退職時等特別報酬)のであるから,およそ個々の非常勤職員に対する特別報酬(定期特別報酬及び退職時等特別報酬)の額を決定するに当たっての具体的な基準についての定めを欠くものというほかなく,給与の額及びその支給方法の決定に対する民主的統制を図るという観点のみならず,同条例の適用を受ける非常勤職員(市の一般職非常勤職員)に対して法定の給与を保障するという観点からも,給与条例主義の趣旨を没却するものであって,上記各法令の規定に違反し,違法といわざるを得ない。
この点,被告らは,普通地方公共団体の非常勤の職員については,その採用の形態,職務内容,勤務態様は多種多様で,性質上一律的な規律になじまず,これら多種多様な非常勤職員の報酬について,すべてを条例で定めるとすれば,条例改正の必要が頻繁となり,かえって些末な改正の審議のため議会の議事日程に支障をも生じることとなって,逆に弊害をもたらすこともあり得ないではないなどと主張する。確かに,前記のとおり,一般職の常勤の職員が従事することが想定されている業務についても,その時々の行政需要に応じて柔軟に対処することができるよう,いわゆる短時間勤務の職を設けるなど一般職に属する常勤の職員を中核とする人的体制を補完する人的体制を設け,当該職に常勤の職員とは異なった任用形式及び勤務条件の職員を充てている地方公共団体も少なくないと考えられるところ,そのような職員についても,非常勤の職員や臨時的任用職員と同様に,その採用の形態,職務内容,勤務態様は多種多様なものが想定され,一般には性質上一律的な規律になじみ難いと考えられる。しかしながら,前記認定事実によれば,本件給与条例の非常勤職員の給与等に関する規定は,市の一般職非常勤職員をその適用の対象とするものであるところ,市の一般職非常勤職員が従事するものとされている職種は,多種多様なものがあるとはいえ,本件13年改正当時存在し本件非常勤職員給与規則の別表第1に規定された各職種は,いずれも遅くとも平成10年には存在し,本件13年改正の前後を通じて異動がなかったこと,本件給与条例の非常勤職員の給与等に関する規定を受けて非常勤職員の月額報酬の額,特別報酬に係る基準日ごとの支給率,在職期間の区分に応じた割合,退職時等特別報酬の算定方法につき具体的に定めた本件非常勤職員給与規則の関係規定は,期末手当及び勤勉手当の支給の仕組みや支給率の変更に伴う改正を除けば,市の一般職非常勤職員制度が廃止されることとなった本件給与条例の本件17年改正に至るまでわずか2,3回の改正がされたにすぎないこと,上記市の一般職非常勤職員制度の廃止に伴って市の非常勤職員のほとんどが任期付短時間勤務職員として採用されたところ,任期付短時間勤務職員の給与について定めた現行給与条例においては,月額報酬に相当する給料月額については,同条例において規定された任期付職員の給料表(4号級に区分して給料月額を定めたもの)を基礎に市の一般職常勤職員の週勤務時間数に対する当該職員の週勤務時間数の割合を乗じた額とするものとされた上,期末手当及び勤勉手当については市の一般職常勤職員に対する期末手当及び勤勉手当についての規定を適用するものとして,市の一般職常勤職員の給与と同程度の具体的かつ詳細な規定がされていること,市の一般職常勤職員については,職員給与条例において,別表第2及び別表第3として給料表が定められ,各給料表においては職員を複数の級(最大6種)及び号(最大34種)並びに再任用職員に区分した上,そのそれぞれにつき具体的な金額を規定しているほか,期末手当の基準日ごとの支給率及び在職期間に応じた割合についても具体的な数値を規定していること,以上のとおり認められる。これらによれば,市の一般職非常勤職員の月額報酬及び特別報酬についても,本件非常勤職員給与規則の関係規定と同様の規定を条例において設け,あるいは,現行給与条例の任期付短時間勤務職員に関する関係規定と同様の規定を条例において設けるなど,個々の市の一般職非常勤職員の月額報酬及び特別報酬の額を決定するための具体的な基準を規定することに特段の困難があったとは考え難い(市の一般職非常勤職員を配置すべき職種の設定及び当該職種への市の一般職非常勤職員の配置がその時々の枚方市の行政需要に応じて柔軟に行われるべき性質のものであることは一般的に肯認し得るとしても,上記認定のとおり,本件13年改正の前後を通じて市の一般職非常勤職員が従事するものとされている職種に異動はなかったというのであるから,少なくとも枚方市においては,これらの職種についてその時々の行政需要に応じて市の一般職非常勤職員を採用,配置することで柔軟に対応し得たはずであり,したがって,少なくともこれらの職種ごとの月額報酬額の具体的な決定基準等を条例において規定することに何の支障もなかったというべきである。)。
なお,被告らは,本件13年改正に際しては,特別報酬等の支給要件及び支給金額の算定方法が具体的に示された上で条例に規定する事項と規則において規定する事項の区分に関して具体的な協議が行われており,その結果を踏まえて条例改正及び規則の制定が行われたのであるから,条例が規則に委任する範囲や程度についても議会の議員による実質的コントロールが及んでいるものと評価することができ,この点からも給与条例主義の趣旨は貫徹されているといえる旨主張する。確かに,上記協議会において被告らが主張するような協議がされたこと及び市議会においても規則に委任する事項及び制定することを予定している規則の規定の概要についての説明がされた事実は認められるが,条例の制定等に当たり議会が当該規則等に定められることが予定されている当該委任事項に関する規定の内容をあらかじめ了知した上で当該事項を規則等の定めに委任することを自ら議決した場合であっても,当該委任を定めた条例そのものが給与条例主義の要請を充足するものでなければならないことはいうまでもないから,上記被告らの主張は採用することができない。また,被告らは,本件非常勤職員給与規則は,地自法15条の規則であって,議会の議員や住民にすべて公開され,その自由な批判にさらされており,十分に民主的統制が及んでいる旨主張するが,給与条例主義がその趣旨とする民主的統制は,普通地方公共団体の長等の執行機関がその権限に基づき規則の制定その他の方法によりその職員の給与を決定,支給することについてその住民の直接選挙により構成される議事機関である議会が条例によりその内容を統制することをいうものであって,被告らの主張する民主的統制とは次元が全く異なるのであるから,上記被告らの主張も採用することができない。
以上によれば,定期特別報酬及び退職時等特別報酬についての本件給与条例の規定は,いわゆる給与条例主義の要請を満たさず,地自法204条3項,同法204条の2,地公法24条6項,同法25条1項等の規定に違反し,違法といわなければならない。
エ 市長の条例執行義務について
被告らは,仮に本件給与条例が地自法203条,204条,204条の2及び地公法24条6項等に反し,法律の範囲を超えるものとして違法であっても,普通地方公共団体の長は独自に条例を無効と判断して条例を無視した行為をすることは原則として許されず,当該条例の違法が重大かつ明白でない限りその執行の義務を負うから,市長が本件給与条例に基づいて特別報酬の支給の決定をしたことは違法でないところ,本件給与条例にいう非常勤職員の勤務実態からして特別報酬の条例上の支給根拠である本件給与条例54条2項,56条はその違法が重大かつ明白とはいえないから,市長は本件給与条例のこれらの規定を執行する義務を負う旨主張する。
しかし,本件給与条例の特別報酬に関する規定がいわゆる給与条例主義を定めた法令の規定に違反し違法であれば,当該条例の規定は当然に無効となり,したがって,市長が当該条例の規定に基づいてした個々の非常勤職員(本件給与条例にいう非常勤職員)に対する特別報酬の支給決定は,条例の根拠を欠くこととなって,これについての市長の過失の有無のいかんにかかわらず,違法となるから,被告らの上記主張を採用することはできない。
(5)  小括
以上検討したところによれば,本件特別報酬の各支給の決定(支出負担行為)は,条例の根拠を欠き,違法である。
(6)  不法行為法上の違法
以上のとおり,本件特別報酬の各支給の決定は,条例の根拠を欠き,違法である。しかるところ,前記のとおり,枚方市においては,市長部局所属の職員に係る特別報酬支給の決定については総務部長が,教育委員会所属の職員に係る特別報酬の支給の決定については教育委員会管理部長がそれぞれこれを専決処理する権限を有することとされており,本件特別報酬の支給の決定は,これらの専決権者がその権限に基づいて行ったものである。そうであるとすれば,これらの専決権者がその権限に基づいて行った本件特別報酬の支給の決定は,違法であって,これについて故意又は過失が認められれば,不法行為に基づく損害賠償責任を負うというべきである。また,市長は,条例の根拠を欠く本件特別報酬の支給決定を阻止すべき指揮監督上の義務に違反してこれを阻止しなかったものというべきであるから,市長の当該行為(不作為)は違法であって,これについて故意又は過失が認められれば,不法行為に基づく損害賠償責任を負うというべきである。なお,普通地方公共団体の長は,地自法138条の2の規定により,普通地方公共団体の執行機関として,当該普通地方公共団体の条例,予算その他の議会の議決に基づく事務及び法令,規則その他の規程に基づく当該普通地方公共団体の事務を自らの判断と責任において誠実に管理し及び執行する義務を負うものであるが,同規定は当該普通地方公共団体の条例又は規則が法令に違反し違法である場合にまで当該条例又は規則に基づく事務を管理し及び執行する義務を負わせる趣旨のものではなく,地自法上,長は,当該普通地方公共団体を統轄し,これを代表する地位にあり(147条),長には条例の制定又は改廃についての議案(条例案)を提出し(149条1号),普通地方公共団体の議会における条例の制定又は改廃について異議があるときはこれを再議に付することができる(176条1項)などの権限が付与されていることなどにかんがみても,当該条例又は規則が法令に違反し違法であれば,長は,これに基づく事務の管理及びその執行を阻止すべき指揮監督上の義務を負うものと解すべきである。
よって,甲事件につき,P3が本件15年度退職時等特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るものの各支給の決定を専決したこと,P12が本件15年度退職時等特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものの各支給の決定を専決したこと,及びP6市長がその指揮監督上の地位に基づきP3及びP12の上記各支給の決定を阻止しなかったことはいずれも違法である。
乙事件につき,P3が本件15年度12月期特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るものの各支給の決定を専決したこと,P12が本件15年度12月期特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものの各支給の決定を専決したこと,及びP6がその指揮監督上の地位に基づきP3及びP12の上記各支給の決定を阻止しなかったこともいずれも違法である。
また,丙事件につき,P13が本件16年度6月期特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものの各支給の決定を専決したこと及びP6がその指揮監督上の地位に基づきP13の上記各支給の決定を阻止しなかったこともいずれも違法である。
(7)  法律上の原因
以上のとおり,本件特別報酬の各支給の決定(支出負担行為)は,条例の根拠を欠き,違法であるから,本件特別報酬の各支給の決定に基づく各支出(狭義)も違法であって,その各受領は法律上の原因を欠くというべきである。
よって,甲事件につき,別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号1ないし19に対応する同表「支出の相手方」欄記載の各人の,上記各番号に対応する同表「15年度退職時等支給額(円)」欄記載の各金額の金員の受領はいずれも法律上の原因を欠く。
乙事件につき,別紙「支給額等一覧表(乙事件)」記載の番号1ないし357及び同361ないし373に対応する同表「支出の相手方」欄記載の各人の,上記各番号に対応する同表「15年度12月期支給額(円)」欄記載の各金額の金員の受領はいずれも法律上の原因を欠く。
また,丁事件につき,別紙「支給額等一覧表(丁事件)」記載の番号1ないし114,同330ないし336,同339及び同342ないし349に対応する同表「支出の相手方」欄記載の各人の,上記各番号に対応する同表「16年度6月期支給額(円)」欄記載の各金額の金員の受領はいずれも法律上の原因を欠き,同表記載の番号2ないし40,同42ないし58,同60ないし79,同81ないし294,同296ないし337,同339ないし356に対応する同表「支出の相手方」欄記載の各人の,上記各番号に対応する同表「16年度12月期支給額(円)」欄記載の各金額の金員の受領はいずれも法律上の原因を欠き,同表記載の番号11,同12,同19,同24,同34,同42,同44,同81,同176,同184,同185,同204,同212,同213,同219,同230,同248,同275,同295,同297,同312及び同313に対応する同表「支出の相手方」欄記載の各人の,上記各番号に対応する同表「16年度退職時等支給額(円)」欄記載の各金額の金員の受領はいずれも法律上の原因を欠く。
8  損害並びに損失及び利得(本案の争点②)について
(1)  枚方市の損害
前記7のとおり,本件15年度退職時等特別報酬(甲事件),本件15年度12月期特別報酬(乙事件),本件16年度6月期特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るもの(丙事件)並びに本件16年度6月期特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るもの,本件16年度12月期特別報酬及び本件16年度退職時等特別報酬(丁事件)の各支給の決定は違法であるから,枚方市は,上記違法な本件特別報酬の支給の決定(専決権者による各専決及びこれらの各支給の決定を阻止しなかったP6の行為)により支給額相当額の損害を被ったというべきである。
被告らは,本件特別報酬は,枚方市が本件非常勤職員から受領した勤務に対する相当ないし正当な対価であるから,同市には本件特別報酬の支出により損害ないし損失は生じていない旨主張する。
しかしながら,前記のとおり,本件給与条例の定める特別報酬は,同条例にいう非常勤職員(市の一般職非常勤職員)に対して月額報酬及び超過勤務報酬から成る普通報酬とは別に市の一般職非常勤職員に対する期末手当又は退職手当に相当する一時金として支給されるものであって,その法的性格は定期特別報酬については地自法204条2項にいう期末手当に,退職時等特別報酬については同項にいう退職手当にそれぞれ該当するものである。他方,以上認定説示したところによれば,月額報酬は同条1項にいう給料に,超過勤務報酬は同条2項の時間外勤務手当等に該当することがいずれも明らかである。しかるところ,そもそも,期末手当は,我が国の生活習慣上盛夏と年末に生活費が一時的に増嵩することを考慮して支給される生活給としての性格を有するものであり,また,退職手当は,職員として長期間勤務を続けてきたことに対する報償(勤続報償)ないし功労及び同期間中の勤務に対する対価の一部分の累積としての性格を持つとともに,職員の退職後の生活保障の機能を有するものであって,純然たる勤務に対する反対給付としての性格のみを有するいわゆる本給とは異なるものということができる。そして,本件給与条例が同条例にいう非常勤職員(市の一般職非常勤職員)の給与について普通報酬として給料に相当する月額報酬及び時間外勤務手当等に相当する超過勤務報酬を支給するとともに特別報酬として期末手当に相当する定期特別報酬及び退職手当に相当する退職時等特別報酬を支給するものとする給与体系を規定している趣旨及びそのような給与体系が規定されるに至った前記認定の本件13年改正の経過にかんがみると,当該非常勤職員の勤務に対する対価は,月額報酬等として支給される普通報酬(本給)によって評価し尽くされているというべきであり,退職時等特別報酬も定期特別報酬も,職員の勤務に対する対価であるとみることはできない。
被告らは,本件非常勤職員は,本来正規職員(市の一般職常勤職員)によって担われるべき職務を正規職員と同等の責任をもって行い,その勤務時間は通常の職員の4分の3以上であるなど,正規職員に準じる勤務実態を有しているにもかかわらず,その勤務に対して支給される対価は正規職員の2分の1あるいはそれ以下であり,普通報酬及び費用弁償に本件特別報酬を加えてもその提供する勤務に対する対価の範囲を超えないから,本件非常勤職員の勤務に対する反対給付としては,普通報酬に特別報酬を加えた額が相当ないし正当であり,本件特別報酬の支給により市に損害は生じていないといった趣旨の主張をする。
確かに,前記認定のとおり,平成15年度に市の一般職非常勤職員について支給された普通報酬の額及び普通報酬に特別報酬(退職時等特別報酬を除く。)と費用弁償を加えた合計額は,1人当たりの平均で,同じ勤務時間勤務したと仮定して算出した市の一般職常勤職員に対する給料及び諸手当(退職手当を除く)の支給合計額のそれぞれ40.2パーセント及び53.5パーセントであり,退職時等特別報酬額は,1人当たりの平均で,市の一般職常勤職員に対して支給された退職手当額の13.6パーセントであったというのである。また,一般に退職手当が勤続報償及び退職後の生活保障に加えて給与の後払いとしての性格をも有していることは前記のとおりである。
しかしながら,以上説示したとおり,本件給与条例においては,同条例にいう非常勤職員(市の一般職非常勤職員)の給与について普通報酬として給料に相当する月額報酬及び時間外勤務手当等に相当する超過勤務報酬を支給するとともに特別報酬として期末手当に相当する定期特別報酬及び退職手当に相当する退職時等特別報酬を支給するものとする給与体系を規定していることは,同条例の関係規定の内容及び本件13年改正の経過から明らかであって,このような給与体系の下においては,当該非常勤職員の勤務に対する対価は,月額報酬等として支給される普通報酬(本給)によって評価し尽くされていると解さざるを得ないから,当該月額報酬が当該勤務の内容,態様等に照らしその対価としては著しく低額にすぎ勤務に対する反対給付と評価するに足りないものであることが明らかであるというような事情があるのであれば格別,そうでない限り,枚方市が当該非常勤職員の勤務によって月額報酬等(普通報酬)を超える利得を得ているということはできない。しかるところ,前記認定の市の一般職非常勤職員と市の一般職常勤職員との間の給与格差から直ちに本件非常勤職員の勤務に対して平成15年度及び平成16年度に支給された月額報酬が当該勤務の内容,態様等に照らしその対価として著しく低額にすぎ勤務に対する反対給付と評価するに足りないものであることが明らかであるということはできず,他にそのような事情を認めるに足りる的確な証拠はない。そうであるとすれば,本件非常勤職員を含む市の一般職非常勤職員に対する特別報酬の支給に市の一般職常勤職員と比べて低い水準に設定された月額報酬等(普通報酬)を補完する趣旨が含まれており,また,本件非常勤職員らがその旨の認識を有していたとしても,本件非常勤職員の勤務によって当然に枚方市に本件特別報酬の支給額相当の利得が生じていたということはできない。
以上のとおりであるから,被告らの主張はいずれも採用することができない。
よって,甲事件の請求アにつき,本件15年度退職時等特別報酬の各支給の決定を阻止しなかったP6の行為により枚方市に生じた損害は6027万0134円であり,甲事件の請求イにつき,P3の上記特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るものの各支給の決定の専決により枚方市に生じた損害は2614万3079円であり,甲事件の請求ウにつき,P12の上記特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものの各支給の決定の専決により枚方市に生じた損害は3412万7055円である。乙事件の請求アにつき,本件15年度12月期特別報酬の各支給の決定を阻止しなかったP6の行為により枚方市に生じた損害は1億3278万4788円であり,乙事件の請求イにつき,P3の上記特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るものの各支給の決定の専決により枚方市に生じた損害は4770万5292円であり,乙事件の請求ウにつき,P12の上記特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものの各支給の決定の専決により枚方市に生じた損害は8507万9496円である。丙事件の請求につき,本件16年度6月期特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものの各支給の決定を阻止しなかったP6の行為により枚方市に生じた損害及びP13の上記各支給の決定の専決により枚方市に生じた損害はいずれも8456万7334円である。
(2)  枚方市の損失及び本件非常勤職員の利得
前記7において認定説示したところよりすれば,枚方市は,本件15年度退職時等特別報酬(甲事件),本件15年度12月期特別報酬(乙事件)並びに本件16年度6月期特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るもの(丙事件),本件16年度12月期特別報酬及び本件16年度退職時等特別報酬(丁事件)の各支給の決定に基づく公金の支出により,支給額相当額の損失を被り,上記各特別報酬の支給を受けた相手方は,各受領額相当額の利得をしたものというべきである(なお,上記各特別報酬が本件非常勤職員の勤務に対する反対給付であるとみることができないことは,前記(1)において説示したとおりである。)。
よって,甲事件の請求エ及び同オにつき,本件15年度退職時等特別報酬の各支給の決定に基づく各支出とその各受領により,別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号1ないし19に対応する同表「15年度退職時等支給額(円)」欄記載の各金額の損失が枚方市に生じ,同額の利得が上記各番号に対応する同表「支出の相手方」欄記載の各人に生じた。乙事件の請求エ及び同オにつき,本件15年度12月期特別報酬の各支給の決定に基づく各支出とその各受領により,別紙「支給額等一覧表(乙事件)」記載の番号1ないし357及び同361ないし373に対応する同表「15年度12月期支給額(円)」欄記載の各金額の損失が枚方市に生じ,同額の利得が上記各番号に対応する同表「支出の相手方」欄記載の各人に生じた。丁事件の請求につき,本件16年度6月期特別報酬のうち市長部局所属の者に係るものの各支給の決定に基づく各支出とその各受領により,別紙「支給額等一覧表(丁事件)」記載の番号1ないし114,同330ないし336,同339及び同342ないし349に対応する同表「16年度6月期支給額(円)」欄記載の各金額の損失が枚方市に生じ,同額の利得が上記各番号に対応する同表「支出の相手方」欄記載の各人に生じた。また,同請求につき,本件16年度12月期特別報酬の各支給の決定に基づく各支出とその各受領により,同表記載の番号2ないし40,同42ないし58,同60ないし79,同81ないし294,同296ないし337,同339ないし356に対応する同表「16年度12月期支給額(円)」欄記載の各金額の損失が枚方市に生じ,同額の利得が上記各番号に対応する同表「支出の相手方」欄記載の各人に生じた。さらに,同請求につき,本件16年度退職時等特別報酬の各支給の決定に基づく各支給とその各受領により,同表記載の番号11,同12,同19,同24,同34,同42,同44,同81,同176,同184,同185,同204,同212,同213,同219,同230,同248,同275,同295,同297,同312及び同313に対応する同表「16年度退職時等支給額(円)」欄記載の各金額の損失が枚方市に生じ,同額の利得が上記各番号に対応する同表「支出の相手方」欄記載の各人に生じた。
9  故意過失及び悪意(本案の争点③)について
(1)  当該職員の故意又は過失
ア P6について
前記のとおり,本件特別報酬の各支給の決定(支出負担行為)は,条例の根拠を欠き,違法であるが,これらの支給の決定は,本件給与条例及びこれに基づき制定された本件非常勤職員給与規則に基づいて専決権限を有する者ら(総務部長又は教育委員会管理部長)により行われたものであり,これらの支給の根拠とされた本件給与条例の特別報酬に関する規定がいわゆる給与条例主義を定めた法令の関係規定に違反し無効とされる結果として,これらの支給の決定が違法とされるものである。しかるところ,以上認定説示したところによれば,特別報酬の額ないしその算定の基礎とされた月額報酬の額についての本件給与条例の関係規定の定めのように,非常勤の職員,臨時的任用職員はもとより,地自法にいう常勤の職員に該当するものであっても地公法28条の5にいう短時間勤務の職に相当するような職に充てる職員として通常の一般職の常勤の職員(いわゆる正規の職員)とは異なる任用形式,勤務条件の下に採用される職員等について,これらの職員が一般職に属する常勤の職員(いわゆる正規の職員)を中核とする人的体制を補完するものとして採用されるものであって,その採用の形態,職務内容,勤務態様は多種多様なものが想定されることから,一般には性質上一律的な規律になじみ難いと考えられることにかんがみ,条例において一律に給与の額の上限のみを定めるなど給与の額及び支給方法についての基本的基準のみを定め,その具体的な決定を当該普通地方公共団体の規則又は長若しくは任命権者にゆだねることも,いわゆる給与条例主義を定めた法令の関係規定の許容するところであるという解釈も考えられるところであり,そのような解釈にも一応の根拠があるということができる。のみならず,全国の普通地方公共団体の大多数において,「非常勤の職員」ないし「非常勤の嘱託員」の給与について,せいぜいその最高限度額(上限)を定めるのみで,その決定を広く任命権者の裁量にゆだねる趣旨の条例の規定を設けることにより,これを支給している事実は,当裁判所に顕著であり,また,平成13年当時,大阪府下において,25の地方公共団体が非常勤職員に対して一時金を,11の地方公共団体が退職金ないしこれに相当する給付を,いずれも条例上に規定を設けることなく支給していたことは,前記認定のとおりである。
しかしながら,地自法203条,204条,204条の2の各規定の文理からすれば,普通地方公共団体の職員に対する給与については,常勤の職員の場合であると非常勤の職員の場合であるとを問わず,その支給要件及び支給額を条例において具体的に規定すべきであり,条例において単に給与の支給根拠のみを定め,具体的な額,支給要件等の基本的事項をすべて普通地方公共団体の長又は規則に委任するようなことは,給与条例主義の趣旨に反し,許されないというのが,素直な解釈というべきであって,普通地方公共団体の常勤の職員と非常勤の職員とを区別し,非常勤の職員に対する給与については,条例において報酬等の額及び支給方法についての基本的基準のみを定め,その具体的な決定を当該普通地方公共団体の長又は規則に委任することも,地自法203条,204条の2の各規定の許容するところであるという解釈には,かなりの無理があるというべきである。のみならず,前記のとおり,昭和54年8月31日自治給発第31号各都道府県知事,各指定都市市長あて行政局公務員部長通知「違法な給与の支給等の是正について」は,常勤の職員と非常勤の職員とを区別することなく,「条例において単に給与の支給根拠のみを定め,具体的な額,支給要件等の基本的事項をすべて長又は規則に委任するようなことは給与条例主義の趣旨に反するものであり,その内容は条例に明確に定めること。」と記載している(なお,上記通知は,「なお,貴管下市町村にもこの旨示達されるとともに特に最近の事例に鑑み市町村において違法な給与の支給等が行われることのないよう適切なご指導をお願いする。」としている。)ところでもある。これらによれば,いわゆる給与条例主義を定めた法令の関係規定について上記のような柔軟な解釈をすることについて相応の根拠があるというためには,少なくとも,条例において個々の職員の給与の支給要件該当性及び支給額を決定するための具体的な基準を規定することが,当該普通地方公共団体をしてその時々の行政需要に応じて柔軟に対応することを困難にするような事情が存在し,かつ,条例においてそのような具体的な規定をすることが技術的にも著しく困難であることを要するものというべきである。しかるところ,前記のとおり,枚方市においては,遅くとも平成10年ころ以降,本件13年改正の前後を通じて,市の一般職非常勤職員が従事するものとされている職種に異動はなかったというのであり,少なくとも枚方市においては,これらの職種についてその時々の行政需要に応じて市の一般職非常勤職員を採用,配置することで柔軟に対応し得たというべきである。また,前記のとおり,本件給与条例の委任に基づき同条例にいう非常勤職員(市の一般職非常勤職員)の月額報酬及び特別報酬等について具体的に規定した本件非常勤職員給与規則は,市の一般職常勤職員の期末手当及び勤勉手当の支給の仕組みや支給率の変更に伴う改正を除けば,本件17年改正に至るまでわずか2,3回の改正がされたにすぎず,また,同条例の適用を受ける市の一般職非常勤職員が当該制度の廃止に伴って移行するものとされた任期付短時間勤務職員の給与については,現行給与条例において,給料月額及び各種手当につき市の一般職常勤職員と同程度の具体的かつ詳細な規定をしていることなどからすれば,枚方市において,本件非常勤職員給与規則の関係規定と同程度の規定を条例において設け,あるいは,現行給与条例の任期付短時間勤務職員に関する関係規定と同様の規定を条例において設けるなど,個々の市の一般職非常勤職員の月額報酬及び特別報酬の額を決定するための具体的な基準を規定することに特段の困難があったとは考え難く,少なくとも,同規則別表第1に規定された職種ごとの月額報酬額の具体的な決定基準等を条例において規定することに何の支障もなかったというべきである。そうであるとすれば,本件給与条例の特別報酬の規定に関する限り,上記のような柔軟な解釈によりいわゆる給与条例主義を定めた法令の関係規定に違反しないと解することについて相応の根拠があるということはできない。
のみならず,前記6(2)及び(3)において認定した事実によれば,枚方市においては,本件13年改正に先立って,市議会において市議会議員により旧職員給与条例の下における非常勤職員の給与の支給について条例上の支給根拠を欠くといった指摘がされ,当時枚方市長の職にあったP6は,これを受けて,市の一般職非常勤職員の給与について条例上の支給根拠を設ける議案を市議会に提出することを決め,市職員の組合との交渉(本件交渉)を経た上で,本件13年改正に係る職員給与条例の改正案を作成,提出し,市議会の審議に臨んだものであるところ,当該審議においては,市議会議員から,市の一般職非常勤職員の報酬額についてはできるだけ条例で決めることができる部分は条例の中で明確にしていくべきであり,報酬額(月額報酬額)の上限だけを条例に織り込んでいるのはなぜかといった,月額報酬の額に関する本件給与条例(案)の規定内容について給与条例主義からの疑義を指摘する質問が出されたというのであるから,P6市長については,本件13年改正において特別報酬を含む一般職非常勤職員の給与を職員給与条例に規定し,又は本件給与条例に基づき特別報酬を支給するに当たり,法令の定める給与条例主義への適合性について特段の注意を払うべき十分な契機が存したというべきである。そして,同市長において上記の観点からの検討を尽くせば,前記昭和54年8月31日自治給発第31号各都道府県知事,各指定都市市長あて行政局公務員部長通知等により,本件給与条例の特別報酬に関する規定が給与条例主義に違反するものであって,同条例に基づく特別報酬の支給が条例の根拠を欠く違法なものであることについて,容易に知り得たというべきである。また,地自法上,長は,当該普通地方公共団体を統轄し,これを代表する地位にあり,条例の制定又は改廃についての議案(条例案)を提出し(149条1号),普通地方公共団体の議会における条例の制定又は改廃について異議があるときはこれを再議に付することができるとされていることは,前記のとおりであって,P6市長はこれらの権限を行使するなどして違法な特別報酬の支給がされるような事態を容易に防止し得たものというべきである。しかるに,P6市長は,上記の態様で本件13年改正にかかわった上,専決権限を有する職員(総務部長及び教育委員会管理部長)がその権限に基づいて特別報酬の支給決定を行い,これを支出するのを阻止することなく放置していたというのであるから,P6は,上記の専決権者がその権限に基づいて,平成15年度及び平成16年度の各特別報酬(本件特別報酬)の支給の決定を行うことを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,過失により当該違法行為を阻止しなかったものといわざるとを得ない。なお,被告らは,普通地方公共団体において長年慣行的に行われてきた制度を疑義を指摘されたことを受けて直ちに廃止すれば行政の混乱を招きかねないから,違法性が一般に明らかである場合を除き,その長にはその改善に当たり円滑な行政の遂行という観点からある程度の猶予期間が与えられるべきであり,いつどのような方策を講じるかについて一定の裁量があるところ,P6市長は本件17年改正等により上記の疑義を解消したのであるから,P6には過失はないといった趣旨の主張をするが,上記認定の事実関係の下においては,P6市長は,本件13年改正の時点で給与条例主義に適合した職員給与条例の改正案を提出等することができたというべきであるから,被告らの上記主張は,その前提を欠くものというべきである。
よって,P6には,甲事件の請求アにつき本件15年度退職時等特別報酬の各支給の決定を阻止しなかったこと,乙事件の請求アにつき本件15年度12月期特別報酬の各支給の決定を阻止しなかったこと及び丙事件の請求につき本件16年度6月期特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものの各支給の決定を阻止しなかったことについて過失がある。
イ P3,P12及びP13について
前記認定事実によれば,P3は,平成15年度当時,総務部長の職にあり,P12は,平成15年度当時,教育委員会管理部長の職にあり,P13は,平成16年度当時,教育委員会管理部長の職にあったところ,枚方市においては,平成15年度及び平成16年度当時,市長の訓令である事務決裁規程により,市長部局の職員に係る特別報酬の支給の決定(支出負担行為)については総務部長が専決することができる事項とされ,教育委員会に所属する職員の特別報酬の支給の決定(支出負担行為)については教育委員会管理部長が専決することができる事項とされており,P3は,その専決権限に基づいて本件15年度退職時等特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るものの各支給の決定及び本件15年度12月期特別報酬のうち市長部局所属の職員に係るものの各支給の決定を行い,P12は,その専決権限に基づいて本件15年度退職時等特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものの各支給の決定及び本件15年度12月期特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものの各支給の決定を行い,P13は,その専決権限に基づいて本件16年度6月期特別報酬のうち教育委員会所属の職員に係るものの各支給の決定を行ったものと認められる。
事務決裁規程によれば,専決とは,常時市長に代わって決裁,すなわち,市長の権限に属する事務について最終的にその意思を決定することをいうものとされており,上記にいう専決は,対外的な法令上の権限を移譲することなく,その権限に属する特定の事項をその補助職員に内部的に処理させる内部委任的な補助執行の一態様であると解される。そして,事務決裁規程により市長の権限に属する事務についての専決権限を付与された総務部長及び教育委員会管理部長は,いずれも,枚方市の補助職員にすぎず,本来的な権限を有する市長はその上司に当たるから,地公法32条により,その職務を遂行するに当たって,法令,条例,規則及び規程に従うのみならず,上司である市長の職務上の命令に忠実に従わなければならず,上司の職務命令に重大明白な瑕疵がない限り,これに従う義務を負う立場にあるということができる。そうであるとすれば,総務部長及び教育委員会管理部長は,市長から専決処理を任された事項については,市長がその本来的な権限に基づいてその処理を阻止しない限り,同規程により例外的に上司の決裁を受けなければならないとされているものを除いて当該事項を専決処理すべき職務上の義務を負うものというべきである。
前記のとおり,総務部長及び教育委員会管理部長がその専決権限に基づいて行った本件特別報酬の支給の決定は,条例の根拠を欠き違法であるが,そのゆえんは,当該支給の根拠とされた本件給与条例の特別報酬に関する規定がいわゆる給与条例主義を定めた法令の関係規定に違反し無効とされることによるものであり,これらの支給の根拠とされた本件給与条例の特別報酬に関する規定がいわゆる給与条例主義を定めた法令の関係規定に違反し無効とされる結果として,これらの支給の決定が違法とされるものである。しかるところ,本件特別報酬の支給の決定(支出負担行為)につき本来的な権限を有する市長は,前記のとおり,条例の制定,改廃を提案することができ,また,市議会における条例の制定,改廃に関する議決について異議があるときは,これを再議に付すことができるものとされているのに対し,補助職員である総務部長及び教育委員会管理部長には上記のような権限はなく,かえって,上記のとおり,補助職員として上司である市長の職務上の命令に忠実に従わなければならず,市長から専決処理を任された事項については,市長がその本来的な権限に基づいてその処理を阻止しない限り,当該事項を専決処理すべき職務上の義務を負うものである。以上のような市長と補助職員である専決権者との地位及び権限の差異にかんがみると,法令に違反し無効な条例に基づく事務を補助職員が専決処理した場合であっても,本来的な権限者である市長がこれを阻止するなどしているにもかかわらずあえてこれを専決処理し,あるいは,当該事務の執行が違法であることが一見明白でこれを阻止しない市長の行為(不作為)に重大かつ明白な瑕疵があるといわざるを得ないような例外的な場合でない限り,当該事務を専決処理したことについて過失があるということはできないというべきである。前記のとおり,当時市長であったP6には,総務部長及び教育委員会管理部長がその専決権限に基づいて本件特別報酬の支給の決定をするのを阻止しなかったことについて過失があるというべきであるが,以上認定説示したところによれば,本件給与条例の特別報酬に関する規定が一見明白に違法無効であるとまでいうことはできず,また,本件13年改正に係る職員給与条例の改正案の市議会審議において給与条例主義からの疑義を指摘する質疑がされていた等の事実をしんしゃくしても本件給与条例に基づく特別報酬の支給を阻止しなかったP6市長の行為に重大かつ明白な瑕疵があるということもできないのであって,以上認定の事実関係の下においては,前記各特別報酬の支給の決定を専決処理したP3,P12及びP13に過失があるということはできない。
(2)  本件非常勤職員の悪意
本件において,原告が本件非常勤職員に対して行使することを被告に求めている請求権は悪意の不当利得者の不当利得返還請求権(民法704条)である。ところで民法704条の悪意の受益者とは法律上の原因のないことを知りながら利得した者をいうものであるが(最高裁昭和34年(オ)第478号同37年6月19日第三小法廷判決・裁判集民事61号251頁参照),法律上の原因の有無は法的な評価にかかわる問題であるから,単に法律上の原因のないことを基礎付ける事実を認識しているだけではその者が悪意の受益者に当たるということはできず,そのような事実の下では法律上の原因がないものと評価されることまで認識していることを要すると解される。
しかるに,本件特別報酬の支給が法律上の原因を欠くとされるゆえんは,その支給根拠を定めた本件給与条例及び本件非常勤職員給与規則の関係規定がいわゆる給与条例主義を定めた法令の規定(地自法204条3項,204条の2,地公法25条1項等)に違反し無効とされることにあるところ,本件特別報酬の支給を受けた職員においてその支給根拠とされた条例及び規則の関係規定を認識し得たとしても,以上説示したところからすれば,当該関係規定が法令の規定に違反し無効であるとの法的評価は必ずしも容易ではないというべきである。そうであるとすれば,本件非常勤職員らがいずれも一般職の地方公務員であって地公法32条によりその職務を遂行するに当たって法令,条例,地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従うべき義務を負っていることをしんしゃくしても,本件特別報酬の支給を受けた個々の職員について本件特別報酬が条例の根拠を欠き違法であることについての悪意を一般的に推定することはできないというべきである。
もっとも,前記認定事実によれば,本件13年改正前から,枚方市議会において市議会議員により特別報酬の前身である一時金等を含む市の一般職非常勤職員に対する給与の支給が条例上の支給根拠を欠く旨の指摘がされ,また,その旨記載した市議会議員の活動報告が一部地区に配布されるなどしていたほか,本件13年改正に係る職員給与条例の改正案の市議会審議においても月額報酬の額に関する本件給与条例(案)の規定内容について給与条例主義からの疑義を指摘する質問が出された経過が認められるところ,本件13年改正に係る職員給与条例の改正案は,市の一般職非常勤職員らを含む職員らにより組織された職員団体(市職員の組合)と市当局との交渉を重ねた上で作成,提出されたものであり,本件非常勤職員の中には上記の交渉に関与していた者もいた様子がうかがわれる。
しかしながら,職員が受領する給与の支給が違法であるとの指摘ないし批判が広く行われ,個々の職員においても容易にこれを認識し得たにもかかわらず,職員団体を通じるなどしてあえてその支給を要求し,これを受領したなどの事情があれば各別,上記のような事実関係の下においては,上記の交渉に関与した者をも含めて,本件特別報酬の支給を受けた個々の職員について本件特別報酬が条例の根拠を欠き違法であることについての悪意を推定することはできないというべきである。
よって,甲事件の請求エ及び同オにつき,別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号1ないし19に対応する同表「支出の相手方」欄記載の各人は,いずれも,上記各番号に対応する同表「15年度退職時等支給額(円)」欄記載の各金額の金員の各受領に法律上の原因がないことにつき悪意であったとも,口頭弁論終結時に至るまでに悪意になるに至ったものとも認めることはできない。乙事件の請求エ及び同オにつき,別紙「支給額等一覧表(乙事件)」記載の番号1ないし357及び同361ないし373に対応する同表「支出の相手方」欄記載の各人は,いずれも,上記各番号に対応する同表「15年度12月期支給額(円)」欄記載の各金額の金員の各受領に法律上の原因がないことにつき悪意であったとも,口頭弁論終結時に至るまでに悪意になるに至ったものとも認めることはできない(同表記載の番号1,同42,同183及び同318に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人についてもいずれも同様である。)。丁事件の請求につき,別紙「支給額等一覧表(丁事件)」記載の番号1ないし114,同330ないし336,同339ないし349に対応する同表「支出の相手方」欄記載の各人は,いずれも,上記各番号に対応する同表「16年度6月期支給額(円)」欄記載の各金額の金員の各受領に法律上の原因がないことにつき悪意であったとも,口頭弁論終結時に至るまでに悪意になるに至ったものとも認めることはできず(同表記載の番号1及び同41に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人についてもいずれも同様である。),同表記載の番号2ないし40,同42ないし58,同60ないし79,同81ないし294,同296ないし337,同339ないし356に対応する同表「支出の相手方」欄記載の各人は,いずれも,同表「16年度12月期支給額(円)」欄記載の各金額の金員の各受領に法律上の原因がないことにつき悪意であったとも,口頭弁論終結時に至るまでに悪意になるに至ったものとも認めることはできず,同表記載の番号11,同12,同19,同24,同34,同42,同44,同81,同176,同184,同185,同204,同212,同213,同219,同230,同248,同275,同295,同297,同312及び同313に対応する「支出の相手方」欄記載の各人は,いずれも,同表「16年度退職時等支給額(円)」欄記載の各金額の金員の受領に法律上の原因がないことにつき悪意であったとも,口頭弁論終結時に至るまでに悪意になるに至ったものとも認めることはできない。
10  不当利得返還請求と権利濫用法理ないし信義則(本案の争点④)について
被告らは,枚方市は,本件13年改正条例の公布等をして本件非常勤職員に対し特別報酬の支給を約束して労務の提供を受け,一方,本件非常勤職員は,本件13年改正に何ら関与しておらず,同条が違法無効との認識もなく,同条項の成立,存在を前提に条例を信頼し,特別報酬を受領して生活費の一部とすることを予定して枚方市から要求された労務を同市に提供し,本件給与条例56条2項定める特別報酬を予定のとおり受領して生活費として家計に繰り入れて費消したにすぎず,このような本件非常勤職員らの行為は当然のものであるから,補助参加人らは法律上保護されるべきであって,市が上記約束を反故にして補助参加人らに対して不当利得返還請求を行うのは,責任の転嫁であって権利の濫用あるいは信義則に反するものとして許されない旨主張するが,以上認定した事実関係の下においては,特別報酬相当額が不法原因給付に当たるというような事情もうかがわれないのであって,枚方市が補助参加人らに対し,各人に支給した特別報酬相当額の不当利得返還請求をすることが権利の濫用あるいは信義則に反するということはできない。よって,被告らの上記主張は採用することができない。
11  小括(適法な請求のうち理由がある請求とない請求)
(1)  甲事件
甲事件の請求アにつき,枚方市は,P6に対する6027万0134円の不法行為に基づく損害賠償請求権及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金支払請求権を有し,同事件の請求エ及び同オにつき,枚方市は,別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号1ないし19に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対する上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額の各不当利得返還請求権をそれぞれ有するので,原告の請求のうち,被告に対してこれらの不法行為に基づく損害賠償請求権及び遅延損害金支払請求権並びに不当利得返還請求権の各行使を求める請求はいずれも理由がある。
しかし,甲事件の請求イにつき,枚方市は,P3に対する不法行為に基づく損害賠償請求権及びこれに対する遅延損害金支払請求権を有さず,同事件の請求ウにつき,枚方市は,P12に対する不法行為に基づく損害賠償請求権及びこれに対する遅延損害金支払請求権を有さず,同事件の請求エ及び同オにつき,枚方市は,別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号1ないし19に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対する上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額に係る各利息支払請求権を有しないので,原告の請求のうち被告に対しこれらの不法行為に基づく損害賠償請求権及び遅延損害金支払請求権並びに利息支払請求権の各行使を求める請求はいずれも理由がない。
(2)  乙事件
乙事件の請求アにつき,枚方市は,P6に対する1億3278万4788円の不法行為に基づく損害賠償請求権及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金支払請求権を有し,同事件の請求エ及び同オにつき,枚方市は,別紙「支給額等一覧表(乙事件)」記載の番号1ないし357及び同361ないし373に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対し,上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額の各不当利得返還請求権をそれぞれ有するので,原告の請求のうち,被告に対してこれらの不法行為に基づく損害賠償請求権及び遅延損害金支払請求権並びに不当利得返還請求権の各行使を求める請求はいずれも理由がある。
しかし,乙事件の請求イにつき,枚方市は,P3に対する不法行為に基づく損害賠償請求権及びこれに対する遅延損害金支払請求権を有さず,同事件の請求ウにつき,枚方市は,P12に対する不法行為に基づく損害賠償請求権及びこれに対する遅延損害金支払請求権を有さず,同事件の請求エ及び同オにつき,枚方市は,別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号1ないし357及び361ないし373に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対する上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額に係る各利息支払請求権を有しないので,原告の請求のうち被告に対しこれらの不法行為に基づく損害賠償請求権及び遅延損害金支払請求権並びに利息支払請求権の各行使を求める請求はいずれも理由がない。
(3)  丙事件
丙事件の請求につき,枚方市は,P6に対する8456万7334円の不法行為に基づく損害賠償請求権及びこれに対する平成16年7月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金支払請求権を有するので,原告の請求のうち,被告に対して上記各請求権の行使を求める請求は理由があるが,枚方市は,P13に対する不法行為に基づく損害賠償請求権及びこれに対する遅延損害金支払請求権を有しないので,原告の請求のうち上記各請求権の各行使を求める請求は理由がない。
(4)  丁事件
丁事件の請求につき,枚方市は,別紙「支給額等一覧表(丁事件)」記載の番号1ないし337及び同339ないし356に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に対する上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額の各不当利得返還請求権をそれぞれ有するので,原告の請求のうち,被告に対しこれらの不当利得返還請求権の各行使を求める請求はいずれも理由がある。
しかし,同事件の請求につき,枚方市は,上記各金額に係る各利息支払請求権を有さないので,原告の請求のうち,被告に対しこれらの利息支払請求権の各行使を求める請求はいずれも理由がない。
第4  結論
以上より,本件訴えについての結論は,次のとおりとなる。
1  甲事件
(1)  甲事件の訴えのうち被告に対しP1及びP2各自にそれぞれ不法行為に基づく損害賠償請求として6027万0134円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求をすることを求める部分及びP3に不法行為に基づく損害賠償請求として別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号10ないし19の特別報酬の支給の決定に係る3412万7055円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求をすることを求める部分並びにP4及びP5各自にそれぞれ不法行為に基づく損害賠償請求として3412万7055円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求をすることを求める部分は,いずれも不適法であるから,これを却下すべきである。
(2)  被告に対しP6に不法行為に基づく損害賠償請求として6027万0134円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求をすること及び別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号1ないし19に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に不当利得返還請求として上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額の金員の各支払を求める請求をすることを求める原告の請求は,いずれも理由があるから,これを認容すべきである。
(3)  被告に対しP3に不法行為に基づく損害賠償請求として別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号1ないし9の特別報酬の支給の決定に係る2614万3079円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求をすること,P12に不法行為に基づく損害賠償請求として3412万7055円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求をすること並びに別紙「支給額等一覧表(甲事件)」記載の番号1ないし19に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額の金員に対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による利息の支払を求める請求をすることを求める原告の請求は,いずれも理由がないから,これを棄却すべきである。
2  乙事件
(1)  乙事件の訴えのうち被告に対しP1,P2及びP7各自にそれぞれ不法行為に基づく損害賠償請求として4770万5292円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求をすることを求める部分並びにP8,P9及びP10各自にそれぞれ不法行為に基づく損害賠償請求として8507万9496円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求をすることを求める部分は,いずれも不適法であるから,これを却下すべきである。
(2)  被告に対しP6に不法行為に基づく損害賠償請求として1億3278万4788円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求をすること及び別紙「支給額等一覧表(乙事件)」記載の番号1ないし357及び同361ないし373に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に不当利得返還請求として上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額の金員の各支払を求める請求をすることを求める原告の請求は,いずれも理由があるから,これを認容すべきである。
(3)  被告に対しP3に不法行為に基づく損害賠償請求として4770万5292円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求をすること,P12に不法行為に基づく損害賠償請求として8507万9496円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求をすること並びに別紙「支給額等一覧表(乙事件)」記載の番号1ないし357及び同361ないし373に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額の金員に対する平成15年12月11日から支払済みまで年5分の割合による利息の支払を求める請求をすることを求める原告の請求は,いずれも理由がないから,これを棄却すべきである。
3  丙事件
(1)  丙事件の訴えのうち被告に対しP5,P11及びP10各自に不法行為に基づく損害賠償請求としてそれぞれ8456万7334円及びこれに対する平成16年7月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求をすることを求める部分は,いずれも不適法であるから,これを却下すべきである。
(2)  被告に対しP6に不法行為に基づく損害賠償請求として8456万7334円及びこれに対する平成16年7月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求をすることを求める原告の請求は,理由があるから,これを認容すべきである。
(3)  被告に対しP13に不法行為に基づく損害賠償請求として8456万7334円及びこれに対する平成16年7月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求をすることを求める原告の請求は,理由がないから,これを棄却すべきである。
4  丁事件
(1)  被告に対し別紙「支給額等一覧表(丁事件)」記載の番号1ないし337及び同339ないし356に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に不当利得返還請求として上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額の金員の各支払を求める請求をすることを求める原告の請求は,いずれも理由があるから,これを認容すべきである。
(2)  被告に対し別紙「支給額等一覧表(丁事件)」記載の番号1ないし337及び同339ないし356に対応する同表「請求を求める相手方」欄記載の各人に上記各番号に対応する同表「請求を求める額(円)」欄記載の各金額の金員に対する平成17年4月1日から支払済みまで年5分の割合による利息の支払を求める原告の請求は,いずれも理由がないから,これを棄却すべきである。
よって,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 西川知一郎 裁判官 石川慧子)
裁判官岡田幸人は,転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 西川知一郎

別紙


「選挙 コンサルタント」に関する裁判例一覧
(1)令和元年 9月 6日 大阪地裁 令元(わ)2059号 公職選挙法違反被告事件
(2)平成31年 3月 7日 知財高裁 平30(行ケ)10141号 審決取消請求事件
(3)平成30年12月18日 高知地裁 平28(行ウ)8号 損害賠償請求及び公金支出差止請求事件
(4)平成30年 9月28日 東京地裁 平26(ワ)10773号 損害賠償請求事件(本訴)、損害賠償請求反訴事件(反訴)
(5)平成30年 6月 6日 東京高裁 平29(ネ)2854号 株主代表訴訟控訴事件
(6)平成30年 4月25日 東京地裁 平28(ワ)31号 証書真否確認、立替金等返還債務不存在確認等請求事件、立替金返還請求反訴事件、立替金請求反訴事件
(7)平成30年 3月30日 東京地裁 平27(ワ)37147号 損害賠償請求事件
(8)平成30年 3月28日 東京地裁 平27(行ウ)616号 閲覧謄写請求事件
(9)平成30年 3月26日 東京地裁立川支部 平28(ワ)2678号 損害賠償請求事件
(10)平成30年 2月 8日 仙台高裁 平29(行コ)5号 政務調査費返還履行等請求控訴事件、同附帯控訴事件
(11)平成29年 5月22日 東京地裁 平28(特わ)807号 公職選挙法違反被告事件
(12)平成29年 3月28日 東京地裁 平25(ワ)28292号 謝罪広告等請求事件
(13)平成29年 3月 8日 東京地裁 平26(行ウ)300号 地位確認等請求事件
(14)平成29年 2月 2日 東京地裁 平26(ワ)25493号 株式代金等請求事件(本訴)、損害賠償請求反訴事件(反訴)
(15)平成29年 1月31日 仙台地裁 平25(行ウ)11号 政務調査費返還履行等請求事件
(16)平成28年 9月16日 福岡高裁那覇支部 平28(行ケ)3号 地方自治法251条の7第1項の規定に基づく不作為の違法確認請求事件
(17)平成28年 9月 2日 福岡高裁 平28(う)180号 入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反、公契約関係競売入札妨害、加重収賄被告事件
(18)平成28年 4月22日 新潟地裁 平25(行ウ)7号 政務調査費返還履行請求事件
(19)平成28年 3月30日 東京地裁 平21(行ウ)288号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(20)平成28年 3月17日 東京地裁 平26(ワ)23904号 地位確認等請求事件
(21)平成28年 3月17日 福岡地裁 平26(わ)1215号 入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反,公契約関係競売入札妨害,加重収賄被告事件
(22)平成28年 3月17日 福岡地裁 平26(わ)968号 入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反、公契約関係競売入札妨害、加重収賄被告事件
(23)平成27年 4月22日 東京地裁 平25(行ウ)792号 土地区画整理組合設立認可取消等請求事件
(24)平成27年 2月19日 東京地裁 平25(ワ)19575号 遺言無効確認請求事件、不当利得返還請求事件
(25)平成26年10月27日 熊本地裁 平23(行ウ)9号 損害賠償履行請求事件
(26)平成26年10月20日 東京地裁 平25(ワ)8482号 損害賠償請求事件
(27)平成26年 2月28日 東京地裁 平25(ヨ)21134号 配転命令無効確認仮処分申立事件 〔東京測器研究所(仮処分)事件〕
(28)平成26年 2月26日 東京地裁 平24(ワ)10342号 謝罪広告掲載等請求事件
(29)平成25年 1月29日 和歌山地裁 平19(行ウ)7号 政務調査費違法支出金返還請求事件
(30)平成24年 5月28日 東京地裁 平24(ヨ)20045号 職務執行停止・代行者選任等仮処分命令申立事件
(31)平成23年 8月31日 東京地裁 平22(行ウ)24号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(32)平成22年 7月22日 東京地裁 平20(ワ)15879号 損害賠償請求事件
(33)平成21年10月14日 東京高裁 平20(う)2284号
(34)平成21年 7月28日 東京地裁 平18(ワ)22579号 請負代金請求事件
(35)平成21年 4月28日 大阪地裁 平19(わ)4648号 談合被告事件
(36)平成21年 4月28日 大阪地裁 平19(わ)3456号 談合、収賄被告事件
(37)平成21年 3月27日 宮崎地裁 平18(わ)526号 競売入札妨害、事前収賄、第三者供賄被告事件
(38)平成21年 3月 3日 東京地裁 平19(ワ)10972号 謝罪広告等請求事件
(39)平成21年 3月 3日 水戸地裁 平18(行ウ)7号 小型風力発電機設置事業に係わる損害賠償請求事件
(40)平成21年 3月 2日 東京地裁 平20(ワ)6444号 売上代金請求事件
(41)平成20年10月31日 大阪地裁 平17(行ウ)3号 損害賠償請求、不当利得金返還請求事件(住民訴訟) 〔枚方市非常勤職員特別報酬住民訴訟〕
(42)平成20年 9月29日 東京地裁 平18(ワ)7294号 損害賠償請求事件 〔つくば市 対 早稲田大学 風力発電機事件・第一審〕
(43)平成20年 9月 9日 東京地裁 平18(ワ)18306号 損害賠償等請求事件
(44)平成20年 8月 8日 東京地裁 平18(刑わ)3785号 収賄、競売入札妨害被告事件〔福島県談合汚職事件〕
(45)平成20年 5月27日 東京地裁 平18(ワ)24618号 損害賠償請求事件
(46)平成20年 3月27日 東京地裁 平18(ワ)18305号 損害賠償等請求事件
(47)平成20年 1月18日 東京地裁 平18(ワ)28649号 損害賠償請求事件
(48)平成19年11月 2日 東京地裁 平19(ワ)4118号 損害賠償請求事件
(49)平成19年 3月13日 静岡地裁沼津支部 平17(ワ)21号 損害賠償請求事件
(50)平成17年11月18日 和歌山地裁 平15(わ)29号 収賄、背任被告事件
(51)平成17年 8月29日 東京地裁 平16(ワ)667号 保険金請求事件
(52)平成17年 7月 6日 東京地裁 平17(ワ)229号 請負代金等請求事件
(53)平成17年 5月31日 東京高裁 平16(ネ)5007号 損害賠償等請求控訴事件
(54)平成17年 5月24日 岡山地裁 平8(行ウ)23号 損害賠償等請求事件
(55)平成17年 2月23日 名古屋地裁 平13(ワ)1718号 労働契約上の地位確認等請求事件 〔山田紡績事件〕
(56)平成17年 2月22日 福島地裁郡山支部 平14(ワ)115号 損害賠償請求事件
(57)平成16年 9月 9日 名古屋地裁 平15(行ウ)34号 損害賠償請求事件
(58)平成16年 8月10日 青森地裁 平15(ワ)32号 名誉毀損に基づく損害賠償請求事件
(59)平成16年 5月28日 東京地裁 平5(刑わ)2335号 贈賄被告事件 〔ゼネコン汚職事件〕
(60)平成15年11月26日 大阪地裁 平14(行ウ)186号 不当労働行為救済命令取消請求事件 〔大阪地労委(大阪ローリー運輸労組・双辰商会)事件・第一審〕
(61)平成15年 7月28日 東京地裁 平14(ワ)21486号 損害賠償請求事件
(62)平成15年 4月10日 大阪地裁 平12(行ウ)107号 埋立不許可処分取消請求事件
(63)平成15年 3月 4日 東京地裁 平元(刑わ)1047号 日本電信電話株式会社法違反、贈賄被告事件 〔リクルート事件(政界・労働省ルート)社長室次長関係判決〕
(64)平成15年 2月20日 広島高裁 平14(う)140号 背任被告事件
(65)平成15年 1月29日 広島地裁 平12(ワ)1268号 漁業補償金支払に対する株主代表訴訟事件 〔中国電力株主代表訴訟事件・第一審〕
(66)平成14年10月10日 福岡地裁小倉支部 平11(ワ)754号 損害賠償請求事件
(67)平成14年10月 3日 新潟地裁 平13(行ウ)1号 仮換地指定取消請求事件
(68)平成14年 5月13日 東京地裁 平13(ワ)2570号 謝罪広告等請求事件
(69)平成13年 7月18日 大阪地裁 平12(ワ)4692号 社員代表訴訟等、共同訴訟参加事件 〔日本生命政治献金社員代表訴訟事件〕
(70)平成12年 8月24日 東京地裁 平10(ワ)8449号 損害賠償等請求事件
(71)平成12年 3月14日 名古屋高裁 平10(う)249号 収賄、贈賄被告事件
(72)平成12年 2月18日 徳島地裁 平7(行ウ)13号 住民訴訟による原状回復等請求事件
(73)平成10年 4月20日 大阪地裁 平6(ワ)11996号 損害賠償請求事件 〔誠光社事件・第一審〕
(74)平成10年 3月31日 東京地裁 平7(ワ)22711号 謝罪広告請求事件
(75)平成10年 3月26日 名古屋地裁 平3(ワ)1419号 損害賠償請求事件 〔青春を返せ名古屋訴訟判決〕
(76)平成 9年10月24日 最高裁第一小法廷 平7(あ)1178号 法人税法違反被告事件
(77)平成 9年 3月21日 東京地裁 平5(刑わ)2020号 収賄、贈賄等被告事件 〔ゼネコン汚職事件(宮城県知事ルート)〕
(78)平成 8年 2月14日 東京高裁 平6(う)342号 法人税法違反被告事件
(79)平成 7年 9月20日 福岡地裁 平5(行ウ)17号 地方労働委員会命令取消請求事件 〔西福岡自動車学校救済命令取消等事件〕
(80)平成 7年 2月23日 最高裁第一小法廷 平5(行ツ)99号 法人税更正処分等取消請求上告事件
(81)平成 6年12月21日 東京地裁 平元(刑わ)1048号 日本電信電話林式会社法違反、贈賄被告事件 〔リクルート事件政界ルート判決〕
(82)平成 6年 5月 6日 奈良地裁 昭60(わ)20号 法人税法違反被告事件
(83)平成 5年 3月16日 札幌地裁 平元(わ)559号 受託収賄被告事件 〔北海道新長計汚職事件〕
(84)平成 2年 8月30日 福岡地裁 昭58(ワ)1458号 損害賠償請求事件
(85)平成 2年 4月25日 東京高裁 昭63(う)1249号 相続税法違反被告事件
(86)平成 2年 3月30日 広島地裁呉支部 昭59(ワ)160号 慰謝料請求事件
(87)平成元年 3月27日 東京地裁 昭62(特わ)1889号 強盗殺人、死体遺棄、通貨偽造、銃砲刀剣類所持等取締法違反、火薬類取締法違反、強盗殺人幇助、死体遺棄幇助被告事件 〔板橋宝石商殺し事件・第一審〕
(88)昭和63年11月 2日 松山地裁 昭59(行ウ)4号 織田が浜埋立工事費用支出差止請求訴訟第一審判決
(89)昭和62年 7月29日 東京高裁 昭59(う)263号 受託収賄、外国為替及び外国貿易管理法違反、贈賄、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律違反被告事件 〔ロッキード事件丸紅ルート・控訴審〕
(90)昭和62年 2月19日 東京高裁 昭61(ネ)833号 損害賠償等請求控訴事件 〔総選挙当落予想表事件〕
(91)昭和61年 6月23日 大阪地裁 昭55(ワ)5741号
(92)昭和61年 3月31日 大阪地裁 昭59(ヨ)5089号
(93)昭和60年 9月26日 東京地裁 昭53(行ウ)120号 権利変換処分取消請求事件
(94)昭和60年 3月26日 東京地裁 昭56(刑わ)288号 恐喝、同未遂被告事件 〔創価学会恐喝事件〕
(95)昭和60年 3月22日 東京地裁 昭56(特わ)387号 所得税法違反事件 〔誠備グループ脱税事件〕
(96)昭和59年12月19日 那覇地裁 昭58(ワ)409号 損害賠償請求事件
(97)昭和58年10月12日 東京地裁 昭51(特わ)1948号 受託収賄、外国為替及び外国貿易管理法違反、贈賄、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律違反事件 〔ロッキード事件(丸紅ルート)〕
(98)昭和56年 9月 3日 旭川地裁 昭53(ワ)359号 謝罪広告等請求事件
(99)昭和55年 7月24日 東京地裁 昭54(特わ)996号 外国為替及び外国貿易管理法違反、有印私文書偽造、有印私文書偽造行使、業務上横領、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律違反事件 〔日商岩井不正事件(海部関係)判決〕
(100)昭和52年 9月30日 名古屋地裁 昭48(わ)2147号 商法違反、横領被告事件 〔いわゆる中日スタジアム事件・第一審〕
(101)昭和50年10月 1日 那覇地裁 昭49(ワ)51号 損害賠償請求事件 〔沖縄大蔵興業工場建設協力拒否事件・第一審〕


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