【選挙から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(55)平成17年 2月23日 名古屋地裁 平13(ワ)1718号 労働契約上の地位確認等請求事件 〔山田紡績事件〕

「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(55)平成17年 2月23日 名古屋地裁 平13(ワ)1718号 労働契約上の地位確認等請求事件 〔山田紡績事件〕

裁判年月日  平成17年 2月23日  裁判所名  名古屋地裁  裁判区分  判決
事件番号  平13(ワ)1718号
事件名  労働契約上の地位確認等請求事件 〔山田紡績事件〕
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴(後控訴棄却)、上告、上告受理申立  文献番号  2005WLJPCA02230002

要旨
◆再生手続開始を申立てた会社の従業員の解雇について、解雇権の濫用により無効であるとして、地位確認と未払賃金の支払請求が認容された事例

裁判経過
上告審 平成19年 3月 6日 最高裁第三小法廷 決定 平18(オ)736号・平18(受)884号
控訴審 平成18年 1月17日 名古屋高裁 判決 平17(ネ)306号 労働契約上の地位確認等請求控訴事件 〔山田紡績整理解雇事件〕

出典
裁判所ウェブサイト
判タ 1236号209頁
労判 892号42頁
労経速 1896号13頁(56巻10号)
新日本法規提供

評釈
蓮井俊治・判タ別冊 22号324頁(平19主判解)
古川景一・労働法律旬報 1653号24頁
川口美貴・季刊労働法 217号145頁
山本圭子・労働法学研究会報 56巻12号26頁
古川景一・季刊労働者の権利 259号74頁
村田毅之・労働法律旬報 1621号48頁

参照条文
民法1条3項
民法90条
労働基準法18条の2

裁判年月日  平成17年 2月23日  裁判所名  名古屋地裁  裁判区分  判決
事件番号  平13(ワ)1718号
事件名  労働契約上の地位確認等請求事件 〔山田紡績事件〕
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴(後控訴棄却)、上告、上告受理申立  文献番号  2005WLJPCA02230002

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

主  文

1  別紙「請求額一覧表(1)」及び別紙「請求額一覧表(2)」各記載の原告らが、被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2  被告は、別紙「請求額一覧表(1)」の「原告番号」「氏名」欄記載の各原告に対し、同「未払額(円)」欄記載の金員及び平成13年5月28日から本判決確定まで(ただし、本判決確定前に同「60歳誕生日」欄記載の日が到来する者については、その前月まで)毎月28日限り1か月当たり同「月額(円)」欄記載の割合による金員を支払え。
3  被告は、別紙「請求額一覧表(2)」記載の「原告番号」「氏名」欄記載の各原告に対し、同「未払額(円)」欄記載の金員及び平成13年5月28日から本判決確定まで毎月28日限り1か月当たり同「月額(円)」欄記載の割合による金員を支払え。
4  被告は、別紙「請求額一覧表(3)」の「原告番号」「氏名」欄記載の各原告に対し、同「請求額」欄記載の金員を支払え。
5  被告は、原告X2に対して136万3284円、原告X3に対して6万4072円、原告X4に対して41万3967円及び原告X5に対して20万8608円をそれぞれ支払え。
6  別紙「請求額一覧表(3)」記載の原告ら、原告X2、原告X3、原告X4及び原告X5のその余の請求を棄却する。
7  訴訟費用は被告の負担とする。
8  この判決は、第2項から第5項までに限り、仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1章  請求
1  原告らが、被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2  主文第2項から第4項までと同じ。
3  原告X4が被告に対して41万8815円の支払を求めるほかは、主文第5項と同じ。
第2章  事案の概要
第1  事案の概要
本件は、紡績業と不動産業を営んでいた被告が、再生手続開始を申し立てた後、その紡績業部門を廃業するとして、原告ら(原告X2については被訴訟承継人である亡X1。以下この趣旨で単に「原告ら」と呼称する場合もある。)を含む紡績業に従事する従業員のほぼ全員を解雇した(以下「本件解雇」という。)ことが解雇権の濫用であるとして、原告らが、被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と労働契約による賃金支払請求権に基づき未払賃金及び将来の賃金の支払を求める事案である。
原告らは、本件解雇は整理解雇に当たり、判例法理により形成された整理解雇4要件を充たす必要があるが、本件解雇はそれを充たしていないなどと主張する。これに対し、被告は、本件は再生手続開始の申立て後という状況下での解雇であって整理解雇事案ではないし、仮に整理解雇事案であったとしても、整理解雇の4要件は要件ではなく要素であると解すべきであり、紡績業部門の閉鎖の必要性が高かった本件では、第2要素、第3要素、第4要素を充たす必要はないなどと争っている(それぞれの主張の詳細は後記のとおりである。)。
第2  争いのない事実等(特に証拠を掲げたもの以外は、当事者間に争いがない。)
1  原告らは被告と労働契約を締結し、被告の紡績業務に従事してきた労働者である。
各原告の勤続年数は最長43年8か月、最短1年9か月であるが、20年以上の者が31人、10年以上20年未満の者が17人という構成である。
なお、別紙「請求額一覧表(1)」、別紙「請求額一覧表(2)」及び別紙「請求額一覧表(3)」各記載の原告番号53から60まで、62、63、65から84まで、88から100まで、103から107までの各原告、原告X3、原告X4及び原告X5に対して、「臨時・パート」という呼称が使用されていたが、契約期間の定めのない契約であった。
被告には、労働組合として、ゼンセン同盟Y紡績労働組合(以下「組合」という。)が存在する。
2  被告は、綿、スフ、麻、化学繊維及び合成繊維を主たる原料とする紡績業、不動産の売買・賃貸並びに駐車場の経営、スーパーストア又はスーパーマーケットの経営などを目的とする株式会社であり、愛知県半田市(以下「半田市」という。)に本店を置き、資本金は1億円である。
3  被告は、平成12年10月4日、名古屋地方裁判所に対し、再生手続開始を申し立てた。
4  名古屋地方裁判所は、平成12年11月15日、被告に関して再生手続開始決定をした。
5  被告は、平成12年11月21日付けの辞令書により、別紙「請求額一覧表記載(1)」、別紙「請求額一覧表(2)」及び別紙「請求額一覧表(3)」各記載の原告番号1から13まで、15から60まで、62、63、65から84までの各原告、亡X1、原告X3及び原告X4に対し、同年12月29日付けをもって解雇する旨の本件解雇の意思表示をした(なお、辞令が各原告に伝達された経緯と伝達時期については当事者間に争いがあるが、同日又はその後の数日以内の期間に解雇の意思表示が上記原告らに到達した事実については、争いがない。)。
6  被告は、平成13年1月9日、別紙「請求額一覧表(1)」、別紙「請求額一覧表(2)」及び別紙「請求額一覧表(3)」各記載の原告番号86から100まで、103から107までの各原告及び原告X5に対し、同年2月20日付けをもって解雇する旨の本件解雇の意思表示をした。
7  被告は本件解雇の理由として「事業部門閉鎖」を挙げ、これは、就業規則19条5号所定の解雇事由である「事業の縮小、設備の変更等により剰員を生じたとき」又は同条6号所定の解雇事由である「その他各号に準ずるやむを得ない事由があるとき」に当たる旨を主張する。
8  本件解雇直前の被告の事業活動の構成と従業員166人の内訳(役員10人を除く。)は次のとおりである。
(1) 繊維製品の製造・販売の事業
ア 製造(半田市)
紡績部門(綿花から糸を製造する部門) 64人
織布部門(糸から布を織る部門)
広巾部門(巾の広い布を織る部門) 28人
小巾部門(巾の狭い布を織る部門) 25人
製造共通(一般部門) 10人
(製造部門小計 127人)
イ 営業部門(半田市)
営業一課(紡績の受注・販売担当) 3人
営業二課(織布の受注・販売担当) 3人
営業三課(繊維製品製造の外注委託部門) 2人
(営業部門小計 8人)
ウ 東京営業所(東京都)
(自社製造品・外注製品の販売担当) 22人
(2) 大規模小売事業向けの建物・駐車場の賃貸部門(半田市) 4人
(3) 総務部門(半田市)
人事 2人
経理 3人
(総務小計 5人)
9  被告の上記事業活動について、被告が部所収支を算出する際には、〈1〉半田市所在の工場(以下「半田工場」という。)の紡績部門、広巾部門、小巾部門、外注部門、及び東京営業所の各部門のそれぞれの営業利益を算出して、「営業利益(1)」を算出し、〈2〉「営業利益(1)」から、人事部門・管理部門の一般管理費を控除して、「営業利益(2)」を算出し、〈3〉「営業利益(2)」に不動産部門の損益を加算して、最終的な全社的営業利益を算出しており、これらの各部所ごとに収支を算出することが可能であった。
10  被告は、平成12年1月から同年8月まで(本件解雇の約1年前から3か月前)の期間の部所別の経営状態を明らかにする目的で、次の資料(乙2)が作成されていた。
(1) 別紙「平成12年1月~8月度 部所別収支(累計)」
(2) 「平成12年度 経費配賦一覧表(累計)」
11  原告らは、前記10記載の資料について、工業簿記の方式にのっとって修正した(甲39添付資料4)。
12  前記10記載の部所別営業利益及び原告ら主張の前記11による修正後の部所別営業利益は次のとおりであり(甲39添付資料1、4)、被告の算出していた営業利益と原告らが算出する営業利益とを比較したとき、半田工場の各部門において約50万円程度の差異があるにすぎない。
(単位:円)

前記10の資料 前記11の資料
〈1〉 半田工場 紡績部門 △858,222 △861,036
〈2〉 同 広巾・小巾部門 △44,455,016 △43,947,337
〈3〉 同 外注部門/営業三課 12,018,711 11,509,516
(半田工場小計) (△33,294,527) (△33,298,857)
〈4〉 東京営業所 25,629,876 25,629,876
〈5〉 不動産部門 △193,272,824 △193,272,824
〈6〉 人事・経理部門 △25,570,580 △25,566,250
〈7〉 〈1〉~〈6〉総計(全社的営業利益) △226,508,055 △226,508,055

13  平成12年8月の時点で、広巾・小巾部門と不動産部門が営業損失の大きな要因であることは、前記10、11のいずれの資料によっても明らかであった。
14  平成12年8月の時点において、不動産部門は、次の状況にあった。
(1) 不動産部門の営業損失の原因は、被告が大型小売店用に賃貸していた2か所(愛知県知多郡東浦町のb○○店及び半田市のc店)が、賃借人の営業停止と明渡しに伴い空きビル状態となっていたことに起因するものである。
(2) 当該物件について新たな賃借人を確保し、賃料を得ることができるようになれば、不動産部門の再建は可能である(ただし、どの程度の賃料によって賃貸するのが相当であるかについては、当事者間に争いがある。)。
15  平成12年8月の時点において、広巾・小巾部門は、次の状況にあった。
(1) 広巾・小巾部門の営業損失は、当該部門が価格競争力を失ったことに起因する。
(2) 広巾・小巾部門が価格競争力を回復できる見込みはない。
(3) 広巾・小巾部門が操業を続ければ続けるだけ、営業損失が拡大する。
16  原告らが本件解雇がなければ支給されるべき月給額は、少なくとも、亡X1は22万9600円、原告X3は16万5521円、原告X4は14万4191円、原告X5は13万9072円、その余の原告らは別紙「請求額一覧表(1)」、別紙「請求額一覧表(2)」及び別紙「請求額一覧表(3)」の各「月額(円)」欄記載のとおりである(甲62、原告X6本人)。
17  原告らの月給の締切日は毎月15日であり、支給日は毎月28日である(甲28の2)。
18  原告らは、平成13年4月27日、名古屋地方裁判所に対し、本件訴えを提起した(当裁判所に顕著)。
19  被告においては、60歳の誕生日の経過をもって定年となるところ、原告らの60歳の誕生日は、原告X3は平成13年○月○日、原告X4は平成13年○月○日、原告X5は平成13年○月○日、その余の原告ら(原告X2及び本件解雇時に既に60歳以上であった別紙「請求額一覧表(2)」記載の原告らを除く。)は、別紙「請求額一覧表(1)」、及び別紙「請求額一覧表(3)」の各「60歳誕生日」欄記載のとおりである(弁論の全趣旨)。
20  亡X1は、平成13年7月25日死亡し、原告X2がこれを承継した(弁論の全趣旨)。
第3  原告らの金銭請求
1  別紙「請求額一覧表(1)」記載の原告らについて
本件口頭弁論終結時である平成16年12月3日時点で60歳未満である原告らの請求である。
(1) 各解雇日から本件訴え提起の直前の締切日である平成13年4月15日までの賃金
ア 平成12年12月29日に解雇された原告番号81までの原告ら
平成12年12月30日から平成13年1月15日までの期間 0.54か月分
平成13年1月16日から同年2月15日までの期間 1か月分
平成13年2月16日から同年3月15日までの期間 1か月分
平成13年3月16日から平成13年4月15日までの期間 1か月分
以上3.54か月分の未払賃金の内金として別紙「請求額一覧表(1)」の「未払額(円)」欄記載の額
イ 平成13年2月20日に解雇された原告番号86以降の原告ら
平成13年2月21日から同年3月15日までの期間 0.82か月分
平成13年3月16日から同年4月15日までの期間 1か月分
以上1.82か月分の内金として別紙「請求額一覧表(1)」の「未払額(円)」欄記載の額
(2) 平成13年4月16日以降の賃金
月給の支払の始期 平成13年5月28日
月給の支払の終期 本判決確定の日(ただし、本判決確定前に60歳の誕生日が到来する者については、その前月の28日まで)
毎月の支払日 毎月28日
毎月の支払額 別紙「請求額一覧表(1)」の「月額(円)」欄記載の金員
2  別紙「請求額一覧表(2)」記載の原告ら
本件解雇時に既に60歳以上の者であり、再雇用されていた者である。
(1) 本件解雇時から平成13年4月15日までの賃金
上記1(1)と同じ(ただし、平成12年12月29日付けで解雇された原告らは原告番号84までであり、平成13年2月20日付けで解雇された原告らは原告番号88以降である。)。
(2) 平成13年4月16日以降の賃金
月給の支払の始期 平成13年5月28日
月給の支払の終期 本判決確定の日
毎月の支払日 毎月28日
毎月の支払額 別紙「請求額一覧表(2)」の「月額(円)」欄記載の金員
3  別紙「請求額一覧表(3)」記載の原告ら
本件解雇時には60歳未満であったが、本件口頭弁論終結時である平成16年12月3日には60歳を超えていた者である。
(1) 本件解雇時から平成13年4月15日までの賃金
上記1(1)と同じ(ただし、平成12年12月29日付けで解雇された原告らは原告番号82までであり、平成13年2月20日付けで解雇された原告らは原告番号89以降である。)。
(2) 平成13年4月16日以降の賃金請求
平成13年4月16日から別紙「請求額一覧表(3)」の「60歳誕生日」欄記載の年月日の前月の15日までの月数である同「月数」欄記載の数値に、毎月の支払額である同「月給(円)」欄記載の額を乗じた額となる。
4  60歳となる前に死亡した者
亡X1は、60歳となる前の平成13年7月25日に死亡した。
(1) 本件解雇から平成13年4月15日までの賃金
亡X1の月給22万9600円の3.54か月分の内金として67万4484円
(2) 平成13年4月16日以降の賃金
平成13年4月16日から同年7月15日までの3か月に亡X1の月給22万9600円を乗じた68万8800円となる。
5  本件解雇後本件訴え提起前に60歳となった原告ら
(1) 原告X3
原告X3は、平成12年12月29日に解雇され、平成13年○月○日に60歳となり、12日分の未払賃金を有し、その額は、同原告の月給16万5521円を31で除して12を乗じた6万4072円となる。
(2) 原告X4
原告X4は、平成12年12月29日に解雇され、平成13年○月○日に60歳となり、2.9か月分の未払賃金を有し、その額は、同原告の月給14万4191円に2.9を乗じた41万8815円となる。
(3) 原告X5
原告X5は、平成13年2月20日に解雇され、同年○月○日に60歳となり、1.5か月分の未払賃金を有し、その額は、同原告の月給13万9072円に1.5を乗じた20万8608円となる。
第3章  争点及び当事者の主張
第1  争点1(整理解雇4要件の法的性質)
1  本件解雇において整理解雇4要件は適用されるか。
(原告らの主張)
本件解雇において整理解雇4要件は適用される。
(1) 整理解雇とは、労働者に帰責事由のない経営上の理由によって、労働者の同意なしに、使用者の一方的意思表示によりされる労働契約終了を意味する。整理解雇は、事業の一部である部門閉鎖による一部解雇であれ、全事業の閉鎖に伴う全員解雇であれ、また、破産や民事再生等に伴うものであれ、労働者に経済上、生活上、人格上の様々な不利益を及ぼす。そのため、労働者の雇用保障と不利益回避を図るために、使用者は、労働契約上の信義則(民法1条2項)に基づき、解雇権行使に伴う配慮義務(雇用保障義務)を負う。
期間の定めのない契約についての経営上の理由による解雇の場合における配慮義務(雇用保障義務)の具体的内容は、次のとおりである。
ア 使用者は、経営上の正当事由が認められる場合を除き、雇用関係を維持し、一方的にその雇用関係を終了させないという「雇用維持義務」を負う。具体的には、次の(ア)から(ウ)までを充たす場合でなければ、雇用を維持すべき義務を負う。
(ア) 雇用の廃止・削減、職務内容変更への労働者の不適応、又は、使用者が労働条件変更権を有さない場合で当該労働条件変更の申込みに対して労働者の承諾がないことを原因として余剰人員が発生し、かつ、当該雇用の廃止・削減、職務内容の変更、又は、労働条件変更の必要性があること。
(イ) 当該労働者を解雇対象者とすることの合理性(解雇対象労働者の選定基準・適用の合理性)。
(ウ) 解雇回避義務が履行されて解雇という結果に妥当性があること。
イ 雇用維持義務を履行しても雇用関係が維持できない場合、使用者は、一方的労働契約終了に伴う不利益をできるだけ緩和すべき「不利益緩和義務」を負う。
ウ 使用者は、対象労働者に対して解雇決定前に個別に説明・協議をし、解雇を決定したときは、労働契約終了の通知時に契約終了理由を明示すべき義務を負う。使用者は、労働者集団に対して、各労働者に対する信義則上の義務を根拠として、説明協議の義務を負う(労働組合に対しては、集団的労使関係における信義則上のルールも根拠となって、説明協議の義務を負う。)。
エ 使用者は、事情変更がある場合に「再雇用義務」を負う。
(2) 判例法理でいう整理解雇4要件は、日本食塩製造事件最高裁判決(最高裁判所昭和50年4月25日第2小法廷判決民集29巻4号456頁)で示された解雇権濫用法理の適用要件、すなわち「客観的に合理的な理由」「社会通念上相当」を具体化したものであり、前記(1)アとウを内容とする。
(3) 本件解雇において、被告は、解雇権の行使要件として、前記(1)の配慮義務(雇用保障義務)の履行が要求される。
また、これと同時に、本件解雇の有効性判断枠組みとして、従前の判例法理である整理解雇4要件も適用される。
(4) 本件解雇は、我が国の労働裁判史上、整理解雇の有効性が争われて訴訟となったもののうち、原告数で見る限り2番目の規模の訴訟である。
過去の我が国において、様々な分野で事業閉鎖、整理解雇がされてきたが、そのほとんどにおいては、解雇無効を争う訴訟に至っていない。それは、企業がいわゆる整理解雇4要件に定式化される手法を尽くすのが通例であり、それらの措置を尽くすことが我が国の中規模以上の企業における労使の公序となっているからである。
被告は、この公序の一切を無視して本件解雇をしたのであり、この公序を破壊するものである。
(5) 本件解雇は、突然の解雇であり、被告で就労し賃金を得て生計を維持していた原告ら従業員にとっては大変な打撃であった。
しかも、原告ら従業員の中には、被告に勤めながら短大卒業資格を得ようと被告の寮に居住して学校法人半田学園に通っていた女性労働者も多数いた。しかし、これらの就学生である女性労働者らは、半田学園に在籍途中であったにもかかわらず、平成12年12月29日に寮から退去させられた。
(6) さらに、借り上げ社宅に居住していた従業員らは、被告から平成12年12月29日をもって直接家主と賃貸借契約を締結するようにと言われ、解雇と同時に大きな住居費の負担(家賃のみならず、被告が敷金礼金を引き上げたために、新たに敷金礼金も負担)を負うことになった。
(7) 解雇される従業員の打撃や負担がこれだけ大きいのであるから、事業の閉鎖とこれに伴う該当部門でも人員整理の必要性を慎重に検討し、事業の一部閉鎖と人員整理がやむを得ない場合に限ってこれをし、事業の一部閉鎖をするとしても、他部門への配置転換や希望退職募集その他の解雇を回避する努力をすべきであり、さらに、解雇をするとしても、労働者の被る不利益を緩和する措置を講ずるべきであったが、そのような努力や措置は一切されなかった。
(被告の主張)
本件解雇は、整理解雇4要件が適用される事案ではない。
(1) 従来蓄積された判例及び学説により、不当解雇の該当性の判断について、いわゆる「整理解雇4要件」が論証されてきたことは事実であり、それが原告らが主張するような内容であることは事実である。
(2) しかし、本件解雇は、いわゆる「整理解雇」ではない。本件解雇の結果数人の管理部門の人員だけが残されているが、実質的には本件解雇は全員解雇の事案である。したがって、整理解雇4要件のうち整理解雇対象者の選別に問題はなかったかを問う要件については、そもそも議論が成立しない。
(3) 本件解雇は、再生手続開始の申立てをした被告が、再生手続の中で、採算性のない事業を廃止することとしたことに伴う解雇であり、解雇が無効であったか否かの争いは、その前提として雇用を継続することが被告において可能であったか否かによるものである。
(4) 被告が原告らを雇用していた事業には採算性がなく、営業継続は不可能であった。よって、本件解雇は、やむを得ない事由に基づくものであり有効である。
2  (本件解雇において整理解雇4要件が適用されるとした場合において)整理解雇4要件と就業規則との関係
(原告らの主張)
使用者は、就業規則所定の解雇事由に当たる理由なしに解雇をすることはできず、また、就業規則所定の解雇事由に当たる事実があっても、解雇については前記の配慮義務(雇用保障義務)の履行を免れ得ず、さらに、経営上の理由による解雇については、整理解雇4要件の適用をも受ける。
なお、経営上の理由による解雇については、「就業規則の解雇条項の解釈基準として整理解雇4要件が存在し、整理解雇4要件を充たさない解雇は、就業規則の解雇事由に当たらない」ということも可能である。
(被告の主張)
本件解雇は、就業規則19条5号又は6号の規定に基づいてされたものであり、有効である。
3  (本件解雇において整理解雇4要件が適用されるとした場合において)整理解雇4要件と呼ばれるものは要件か要素か。
(原告らの主張)
要件である。
民法1条2項に基づく信義則上の配慮義務(雇用保障義務)の履行は、解雇権の行使要件であり、前記の具体的内容の一つ一つが独立した要件である。
従前の判例法理に基づく整理解雇4要件論に立つとしても、日本食塩製造事件最高裁判決によって確立した解雇権濫用法理は、「説明としては解雇権の濫用という形を採っているが、解雇には正当な事由が必要であるという説を裏返したようなものであり、実際の運用上は正当事由必要説と大差はないとみられる」と評価されている(越山安久「解説番号20事件」「最高裁判所判例解説民事篇昭和50年度」法曹會(1979年)175頁)。したがって、解雇権濫用法理が実質的に正当事由必要説と大差ないことに照らしても、これを具体化した4項目は、4要素ではなく4要件というべきである。民法1条3項を基礎としているという形式的な法律構成を根拠に4要素であると主張するのは誤りである。
(被告の主張)
整理解雇4要件は、解雇の不当性を判断するための要素にすぎない。
整理解雇4要件は、解雇の不当性を論じる際の判断基準として従来論証されてきたものである。いうまでもなく、議論の対象となるのは解雇の不当性であって、形式的な4要件の充足ではない。4要件は、一般的な判断基準としてはある程度の通有性を有しているものといえるが、事例によっては通有性を維持できない場合がある。
したがって、「4要件」といわれるものは、不当解雇判定の要素にすぎず、絶対的に充足を必要とする要件ではない。
4  (本件解雇において整理解雇4要件が適用されるとした場合において)整理解雇4要件に関する証明責任(事実の存否につき裁判官の心証形成がグレーの場合に当事者が負担する敗訴の危険)の分配
(原告らの主張)
4要件すべてについて使用者が負担する。
(1) 期間の定めのない労働契約について使用者は解雇権を有する(民法627条)が、この解雇権の行使は民法1条2項(信義則)によって規制され、信義則に基づく労働契約上の配慮義務(雇用保障義務)の履行は、解雇権の行使要件であるから、使用者が証明責任を負う。
(2) 従前の整理解雇4要件に基づく下級審裁判例の多くにおいて、4要件を充たしていることは被告側の抗弁事由とされてきた。それは、解雇権濫用法理においては、民法1条3項の原則が修正され、「客観的に合理的な理由」がない場合に解雇権行使が濫用とされ、「客観的に合理的な理由」の主張立証を使用者に行わせ、「客観的に合理的な理由」の存在について、裁判官の心証形成ができない場合には、使用者の敗訴としているからである。
したがって、日本食塩製造事件最高裁判決の解雇権濫用法理の下において、実質的な証明責任は使用者が負担してきたのである。このことは、労働基準法18条の2の規定の新設に伴う衆議院と参議院の各厚生労働委員会の附帯決議でも確認されている。
(3) 就業規則の解雇条項は、使用者が有する解雇権について、使用者自らがその行使要件を限定したものである。よって、解雇権行使に当たって就業規則の解雇条項所定の解雇事由を充たすことについての証明責任は、使用者が負担する。
(被告の主張)
解雇は、民法上の雇用契約の解除であるから、解除権の存在については会社側に立証責任がある。立証責任の対象である事実は、就業規則19条5号及び6号の解雇事由の存在である。
いわゆる4要件は、上記の要証事実を立証するための必要性の範囲で会社側において立証の必要性が生じる場合はあるが、原告らが指摘する個々の事実(「4要件」とされている事実)は、それ自体、厳格な意味での要件事実ではない。なお、労働協約には、事業所閉鎖の場合の特別の定めはない。
第2  争点2(本件解雇につき、営業・人事・経理部門の数人を除く全員についての、人員削減の必要性)-いわゆる第1要件
ただし、本件の場合、小巾・広巾部門の閉鎖とこれに伴う人員削減の必要性があったことについては当事者間に争いがないので、本件における争点は、小巾・広巾部門の閉鎖とこれに伴う人員削減にとどまらずに、紡績業部門の全面的閉鎖とこれに伴う紡績業部門のほぼ全人員の削減の必要性の有無であり、より具体的には、必要性のある人員削減の範囲がどれだけであったかという点である。
(被告の主張)
本件解雇においては、工場部門の全員について解雇の必要性があった。
1 解雇に至るまでの採算性
(1) 被告は、長い歴史を有する紡績会社であり、その営業の中心は「紡績業」であるが、再生手続開始申立てに至る過去12年間は、不動産部門を除いて営業利益において赤字であり採算性を喪失していた(乙1添付資料)。
(2) 被告は、経費の振り分けが困難であるため、従来広巾、小巾、紡績という区分による集計をしていないが、申立て前2年間についてあえてこれを行った結果(乙2)、紡績業についても売上高の低下、利益率の低下により営業利益は赤字であり採算性を喪失していた。
2 再生手続開始の申立て
(1) 被告は、平成12年10月4日名古屋地方裁判所に対して再生手続開始の申立てをした。直接の原因は、当月の手形決済資金に不足を生じたためである。
(2) 裁判所が監督委員に選任したA弁護士(以下「A監督委員」という。)の補助者としてB公認会計士(以下「B公認会計士」という。)が被告の財務状況について調査し、その結果が裁判所に報告されているが(乙6)、その中においても営業継続は不可能であると指摘されている。
3 事業閉鎖の必要性
(1) 被告は、工場部門が採算性を喪失した後も組合と協議の上での人員整理を含め事業を縮小しつつ、工場部門の赤字を不動産の賃貸業で補てんしてきたが、不動産賃貸業の要であるd株式会社(以下「d社」という。)が会社更生手続を申立て、c店から撤退し、以後特殊な形態の建物であるがゆえに新たな賃借先を見いだすことができなかったために資金繰りに窮して再生手続開始の申立てに及んだものである。
(2) 採算性の有無については、従前から再三にわたり検討が加えられてきたが、申立て後、結局紡績業を含めて事業継続は不可能と判断し、事業を閉鎖することとしたものである。
その時期についても、事業そのものに採算性回復の見込みがない以上、できる限り早期に事業を閉鎖することはやむを得ない判断である。
4 全員解雇の必要性
半田工場全部門の事業廃止はやむを得ない理由に基づくものであり、被告はこれに伴う取引先に対する影響を最小限にとどめ得る時期を選択して、部門別に就業規則にのっとって解雇をしたものである。
(原告らの認否・反論)
争う。小巾・広巾部門について人員削減の必要性はあったが、それ以外の紡績業部門については人員削減の必要性がなかった。
1 解雇に至るまでの採算性
(1) 認否
ア 前記1(1)の「被告が再生手続開始の申立てに至る過去12年間は、不動産部門を除いて営業利益において赤字であり採算性を喪失していた」との主張は否認する。採算性を喪失していたのは、不動産部門を除く全部ではなく、広巾・小巾部門にすぎない。
紡績部門の赤字は、別紙「平成12年1月~8月度 部門別収支(累計)」記載のとおり、再生手続開始の申立て直前の8か月間で86万円前後にすぎず、被告が主張するような「採算性を喪失」した状態ではなかった。
イ 前記1(2)の「経費振り分けが困難」との主張は否認する。経費振り分けは工業簿記の基本である。従来、広巾、小巾、紡績という区分での集計を行っていなかった事実、及び、申立て前2年間に区分して集計した事実は認める。前記1(2)の集計の結果、紡績部門が採算性を喪失していたとの主張は否認する。乙2の集計結果によっても紡績部門が採算性を有することは明らかである。
(2) 積極否認
本件のような場合においては、不採算部門を閉鎖して、事業継続できるか否かを検討するのが、初歩的常識である。しかるに、被告の経営陣の中には、不採算部門(広巾・小巾部門)の閉鎖による事業継続を求める意見があったにもかかわらず、被告の代表取締役会長であるH(以下「H会長」という。)はこの点についての具体的な検討を行わず、部門別の正確な収支計算をすることさえもせずに、全面的工場閉鎖の結論を下した。なお、乙2の資料は、一般的な会計処理にのっとって作成されていないため、これでは正確な実態の把握ができないが、これによってさえ、紡績部門が採算性を有していたことは確認できる。
2 再生手続開始の申立て
(1) 認否
ア 前記2(1)の再生手続開始の申立てがされた事実は認める。直接原因が手形決済資金に不足を生じたためであるとの事実は否認する。
イ 前記2(2)のB公認会計士が摘示の指摘をした事実は認めるが、不採算部門(広巾・小巾)とそれ以外を分離して、採算性を検討する方法を採っていないから、不採算部門を閉鎖し、それ以外を残した場合でも営業継続が不可能であるとの判断を示しているものではない。また、被告は、A監督委員やB公認会計士に紡績業の存続について相談していないし、A監督委員やB公認会計士も部所別収支を分析したこともないし、紡績業の営業継続が不可能であるか否かを判断する必要もなく、現にしていない。
(2) 積極否認
ア 被告の主張するがごとき再生手続開始の申立原因(再生債務者の窮境)があったかどうか自体に疑義がある。その理由は次のとおりである。
(ア) 被告は平成12年9月中旬ころから急いで返済を各社にしていた経緯がある。また、再生手続開始の申立て前に1500万円程度を各社に前倒しで支払っている。同年10月10日の支払手形の金額が1600万円とするなら、支払期日前に支払ったこの1500万円程度を弁済資金に充てれば決済に窮することはなかった。
(イ) 被告はその後続けてやってくる手形を決済することが不可能だったというが、再生手続開始の申立書添付の資金繰り表を見ても資金繰りの見込みはついており翌月の繰越金も出ることになっている。申立書からはどの手形の支払がどれくらいの額不足していたのか、どのくらい収支予測が狂ったのか全く不明である。資金繰り計画で同年10月以降の決済金額は当然分かっていたはずであり、短期融資を受ける努力をするなど資金繰りはついたはずである。債務者の抽象的な説明だけでは本当に資金繰りに困っていたのか、それが継続して続くものだったのか疑問である。
(ウ) 再生手続開始申立時点と再生計画認可時点での債権者数と負債額を比較すると著しいかい離がある。申立時の負債総額は158億余円とされていたのに、再生債権は11億余円にすぎず、関連会社の分を除く再生債権は5億余円にすぎない。
イ 債務の実質的な額からみても、従来の営業を全般的に換価することにより取引関係の負債の全額を早期に弁済する必要があったのか疑問である。
ウ 被告の再生手続開始の申立ては、「労働者を解雇したり労働組合を排除するために再生手続を利用するなど事業体を生かすためではない申立て」に当たり、民事再生法25条の申立棄却事由に当たる。
エ 被告は民事再生手続中に無断で営業や機械の譲渡をした。これは、被告が工場閉鎖を一方的に強行することのみに関心があり、整理解雇について法を遵守しようという意思がなかったことを示している。
オ 被告の再生手続開始の申立ては、紡績事業の継続ということを全く前提としておらず、紡績業をストップして事業資産を解体清算するために再生手続開始の申立てをしたものとみられるから、事業の再生を図るという民事再生法の基本的目的に反する違法なものである。
被告の再生手続開始の申立ては、従業員を全員解雇した上、紡績業を廃止して不動産業に転換するために民事再生手続を濫用したものである。
一般の再生債権者に100%配当が実施されるため、一般の再生債権者が再生計画に反対しないことを利用して、民事再生手続に基づく工場閉鎖と解雇が強行されたのである。
3 事業閉鎖の必要性
(1) 認否
ア 前記3(1)「工場部門が採算性を喪失した」との主張は否認する。「組合と協議の上で、人員整理を含め事業縮小」がされた事実は認める。「d社が会社更生手続を申し立て撤退」した事実は認める。前記3(1)の新たな賃借先を見いだせなかった理由についての主張は否認する。相場より高い賃料を希望し続けたため、条件が折り合わなかったのが真相である。
イ 部門別の採算についての検討は皆無に等しいから、前記3(2)の「採算性の有無について再三検討をした」ことにはならない。客観的な判断材料による裏付けを伴わないH会長の主観的な独断により、工場部門の全部を閉鎖することが決定された。
前記3(2)の被告において「事業継続は不可能と判断し、事業を閉鎖した」事実は認める。その判断の時期に関して、「申立て後に事業閉鎖を決定した」旨の主張は否認する。被告は、申立て前から事業閉鎖を決定していた。
(2) 積極否認
被告は、全面工場閉鎖・全員解雇を決める前に、事前に、自らの手で、不採算部門閉鎖による事業継続の可能性を探求する経理資料を整備し、その可能性を真しに検討すべきだった。しかし、被告は、その検討をせずに、全部閉鎖・全員解雇を決定したのであり、そのこと自体が誤りである。
4 全員解雇の必要性
(1) 認否
前記4の「全部門の事業廃止はやむを得ない理由に基づくものである」との主張は否認する。
そもそも、「やむを得ない理由」の存在を証するとして提出された経理資料は、乙1と2しか存在せず、乙2によってさえ部門閉鎖の必要性がなかったことが裏付けられる。
被告のいう「やむを得ない理由」とは、客観的な経理資料の裏付けのない、H会長個人の主観的判断以外の何物でもない。
(2) 積極否認
工場の全部門を閉鎖し全員解雇する必要性はなかった。
広巾・小巾部門のみを閉鎖し、紡績部門は存続させるという方法で被告を再建することは可能であった。
被告はるる反論するが、再生手続開始の申立て直前の8か月間に半田工場で紡績部門は86万円前後の赤字を出していたにすぎないのであって、被告は、それを超えて工場の全部門を閉鎖し全員解雇する必要性について十分に立証していない。
ア 原告らは次の経緯で、再建可能との専門家の鑑定意見を得た。〈1〉乙2や被告が任意に提出した財務資料に基づいて、ゼンセン同盟愛知県支部と組合が平成12年9月1日以降の「Y紡績再建計画案」を作成し(甲33)、〈2〉社団法人日本経営士会の会員として経営コンサルタント業(小林経営研究所)を営むCに、その「Y紡績再建計画案」(甲33)に対する鑑定意見を求め(甲38)、〈3〉Cの具体的かつ詳細な財務分析を経て、同人から「再建可能である。」との鑑定意見(甲39)を得た。その要点は、次のとおりである。
(ア) 組合及びゼンセン同盟愛知県支部は「Y紡績再建計画案」(甲33)を作成した。その骨子は次のとおりであった。
a 広巾・小巾部門は不採算部門であるから閉鎖し、紡績部門と東京営業所は存続させる。これに伴う人員削減は、解雇ではなく希望退職による。希望退職を実現させるために正社員の退職金を100%上積みし、パートタイマーには退職金100万円を支払うことにする。この条件であれば、組合も協力し、同部門の全従業員が希望退職に応じた。
b 役員の削減
c 広巾・小巾部門の閉鎖に伴い、他の部門の合理化を行う。具体的には、〈1〉人事部門と経理部門は統合して総務として2人に(もとは人事部門2人、経理部門3人)、〈2〉営業部門は3人に(もとは8人)、〈3〉一般部門では10人から7人を削減し1人を紡績部門に異動させ、産業医と電気主任の2人だけ(いずれも非常勤)にし、〈4〉存続する紡績部門においても64人から管理職2人を削減し(ただし他部門から3人を編入するので65人体制となる。)、〈5〉不動産部門では4人から2人を削減(残る2人は紡績部門に異動)する。前記aの退職条件での希望退職募集であれば、これらの人員削減も達成できることが見込まれる。
d 残った役員の報酬、従業員の賃金を減額する。組合も被告再建のために協力する。
e 賃貸借料など冗費の節減。
f 遊休施設となっている不動産の有効活用。
(イ) 経営コンサルタントCの鑑定意見によれば、「Y紡績再建計画案」は補正と改善をすれば実現可能である。鑑定意見の結論は以下のとおりである。
a 鑑定依頼事項1(再建計画の骨子)について
広巾・小巾部門を閉鎖し、紡績部門、外注部門、東京営業所を存続させることによって、再建を図ることは十二分に可能である。ただし、次のbの再建計画の改善が必要である。不動産収入を再建計画の中に織り込まなくても再建は可能である。
b 鑑定依頼事項2(組合作成再建計画案の補正改善等)について
組合作成の再建計画案について補正と改善をすれば、別紙「計画損益計算書総括表」(甲39添付資料7)のとおりとなり、被告の再建は可能である。
c 鑑定依頼事項3(資金繰り)
平成12年10月と同年11月の立ち上がりの資金繰りにやや不安があったが、裏書譲渡手形を用いることにより問題は解決し、別紙「資金計画表」(甲39添付資料13)記載のとおり、再建は十分可能である。
希望退職に応じる者の退職金の支払については、平成12年9月に通常退職金を全額一括して支払い、加算部分(正社員100%、パート100万円)を平成13年1月から4月に4回分割払いが可能である。
(ウ) Cが考える希望退職に応じる者に対する退職金支払計画の内容について、組合は異存がない。
イ 我が国の繊維産業の現状と被告の技術力・商品力などの観点から見ても、被告は、紡績部門を残す方法で再建可能であった。その要点は次のとおりである。
(ア) 紡績業の将来性について
a 我が国の繊維産業は、依然として幅広い産業を支える基幹産業としての重要な役割を負っている。従業員数は繊維産業だけで約68万人、雇用面では製造業全体の約7%を占め、これに繊維卸と小売を併せると国内の関連雇用者数は約190万人にも上る。事業所数は国内に約8万か所(製造業全体の約13.6%)であり、全国に約160の産地が存在しており、地場産業として地域経済の発展を支える重要な産業である。
b また、我が国の繊維産業において培われてきた高いレベルの技術力は、衣料や生活資材分野において高機能製品を生産するだけでなく、環境や医療福祉、情報、建築土木分野などの幅広い産業分野において多様な用途が可能であり、基礎素材として我が国の幅広い産業を支える基幹産業となっている。
c 近年、中国を中心とするアジア諸国から、二次製品を中心に安価な繊維製品の輸入が急増しているが、それは定番の低級汎用商品であり、これに対して、我が国の繊維産業の強みは、幅広い業種、製品分野で高度な技術力を有し、様々な機能を繊維に付加する後加工技術では高い競争力を有している。衣料・非衣料分野における高付加価値製品・ニッチ(隙間)製品の生産や、QR(クイック・レスポンス)と多能工を活用した「少量多品種生産」により生き残りを図っている。
d さらに、名古屋地方裁判所管内で紡績業を営む都築紡績においても、紡績業の継続を前提として会社更生手続が開始されているし、日本銀行名古屋支店のレポート(甲59の2)によっても我が国の紡績業の存続は見込まれている。
(イ) 被告の将来性
a 被告も、我が国の繊維産業の中の一つとして生き残ってきたし、今後も、赤字部門である織布部門を廃止して紡績部門を残すなら、十分に利益を上げながら生き残ることが可能であった。被告は、多品種少量生産方式によりQRと消費者立地を生かした特殊品の製造を可能とする技術力を有し、普通の紡績工場では不可能な、同一工場内で同時に何種類もの特殊品を作る多品種同時生産技術を誇っていた。
b 例えば、多様な国の原綿使用と製品の差別化を行い、取り扱う原綿の原産国の多さと品質の良さは他のメーカーを寄せ付けない特徴があった。ことに、自然の色が付いている「カラードコットン」を使った綿素材は被告が先駆的に手がけ、世界の中でもカラードコットンを使った綿糸を製造していたのは当初、被告だけであった。
c また、綿布の風合いや肌触りを良くするために欠かせない極細糸(細番手)の製造も手がけ、細番手の糸はハンカチや高級下着などに使われていた。抗菌作用のある特殊品、抗菌加工布「マーサクリーン」の原材料となる混紡糸を開発製造し、売上げは好調であった。また、選綿による高い品質を保持し、高い評価を得ていた。
(被告の認否・再反論)
1 前記「1 解雇に至るまでの採算性」について
原告らは、紡績部門の赤字は再生手続開始の申立て直前の8か月で86万円前後にすぎないと主張するが、これは棚卸較差勘定を考慮していない。すなわち、被告においては、原価を通常の相場価格に合わせるために現実の仕入価格と市場価格である棒値との差額を棚卸較差勘定として計上していた。
被告の紡績部門の営業利益は、85万円程度の赤字とされているが、これは会計手法上の数値であり、実際はこの期間について別紙「平成12年1月~8月度 部所別収支(累計)」記載のとおり9517万円の棚卸較差勘定が計上されており、同額の支払原価がかかっているから、この勘定を設けなければ営業利益は9602万円の赤字を示しており、現実的には採算点を大きく下回っていた。
2 前記「2 再生手続開始の申立て」について
前記2(2)ア(ア)については、1500万円の買掛金の支払を認める。取引のある主な下請業者には零細なところが多く、その倒産の危機を極力避けるために支払った。
前記2(2)ア(イ)については、短期融資を受けられる可能性はなかった。
前記2(2)ア(ウ)については、債権者数の減少は報告書で説明したとおりであり、「水増し」の意図はない。
前記2(2)イについては、再生手続開始の申立時の総債務額は別除権者も含めてのものであり、再生計画の対象となる債権総額は「支払の対象となる再生債権額」であるから、結果的に20分の1になったことは不自然ではない。
前記2(2)ウについては、否認する。
前記2(2)エについて、営業や機械の譲渡についての手続に違背が生じた事実は認める。最終的にA監督委員の同意を経て適法に処理されている。
前記2(2)オについては、否認する。
3 前記「4 全員解雇の必要性」の(2)アについて
(1) 再建可能性に関する被告の反論
ア 別紙「資金計画表」について
(ア) 定期預金に関して金融機関による相殺が現実にされているのであるから、別紙「修正・資金計画表」(乙5添付資料2)の2枚目に記載のとおり、平成12年9月初めの現金預金合計9447万8000円をもって、手持流動性のある資金とみるべきである。
(イ) 在庫に関して、在庫年齢の高い商品が翌日に売れることは考えられない。原価外処理の評価損を計上しなければ、正しい損益計算はできない。
(ウ) 鑑定意見書(甲39)は、売掛金未収金について取立不能額を控除し、材料商品仕入れについて現金仕入れとし、買入債務や銀行借入金、支払利息の支払を考慮していないので、8か月間に資金繰りが余剰するのは当然であり、資金繰りから見て、再建可能という判断にはならない。
イ 別紙「計画損益計算書総括表」について
(ア) 適正な期間損益計算をするために減価償却費を計上すべきである。
(イ) 仕入先に2%の値引きを要請するなど不可能であり、見切り率の改善も、返品リスクがあり現実的でない。
(2) 再建計画に関する被告の反論
ア 「採算性」に係る議論の指針について
検証されるべきは、原告らが行った「検証結果」が原告らの主張するように継続可能性を十分に示し、かつ雇用の確保が可能である程度に被告の財政を運用し得た、という事実を明らかにするに足りるものであるか否かである。
イ 再生手続開始の申立時の被告の財務状況について
平成11年12月の8800万円、平成12年4月の4320万円、同年9月の3億5000万円のH会長又は関連会社からされた貸付けがなければ、被告の資金繰りは「到底成り立ち得ない」状態であった(乙5添付資料6「資金繰り表」の「その他」の欄参照)。
ウ 原告らが行った検証の相当性について
原告らの提示した方式は全く不完全であり、一般再生債権及び金融機関への返済の計画が示されていないから、何ら被告の採算性を示すものとはなっていない。
(ア) 原告らの試算では、平成13年4月末で現金2億円余、手持手形3億円余の金員が残る。
(イ) 平成13年4月末で、(ア)の手持資金によって、一般債権(経営者関連の6億を除く。)約5億5000万円を全部支払えば、存続不可能である。
(ウ) 弁済原資は被告自らが捻出できる資金により議論されるべきであり、原告らにおいて一般債権者及び金融機関への返済についての計画性を示すのでなければ、採算性と存続性について論証したものといえない。
エ 原告らの行った試算の問題点について
原告らの試算は現実とかい離している。かい離の事実を明らかにするため、原告らの行った方式にのっとって検算を加えた。その結果が、別紙「計画損益計算書総括表」(甲39添付資料7)に対応する別紙「修正・計画損益計算書」(乙5添付資料1)であり、別紙「資金計画表」(甲39添付資料13)に対応する別紙「修正・資金計画表」(乙5添付資料2)である。
(ア) 鑑定意見書(甲39)の問題点は次のとおりである。
a 在庫の売上げは争わない。原告ら算定の数値のままとした。ただし、この数値は一応評価減後のものとされているが、不確定なものである。
b 在庫以外の売上額は争わない。ただし、原告らの行った売上予測は鑑定意見書(甲39)の14頁に記されているが、被告の予測は別紙「売上高予測(紡績部門)」、「売上高予測(外注部門)」、「売上高予測(東京営業所)」(乙5添付資料7から9まで)のとおりである。その手法は、平成12年8月の実績値を基に、平成11年の前月対比割合を乗じて予測するという方法である。
c 原告らの数値に減価償却費を算入する修正を加えた。
d cの修正により、売上原価が増加し、売上総利益率が修正される。
e 2%の仕入値引きは不可能であるから、修正した。
f 在庫の評価は争わない。原価以外で棚卸評価損が計上されるべきであるが、指摘にとどめる。
g 退職金について争わない。ただし、割増退職金について、「特別損失」ではなく、「営業外費用」に計上する。
h 社内振替の修正もしない。ただし、被告が従来行ってきた手法によれば乙5添付資料11記載のとおりとなることを指摘する。
i 上記c、eの修正によって、売上総利益率は3.5%、営業利益は-0.7%となる。
(イ) 平成12年8月末時点で担保設定されていない現金・当座預金・普通預金・定期預金の合計額が1億7969万9000円であることは認める。ただし、別紙「資金計画表」(甲39添付資料13)を次のとおり修正し、別紙「修正・資金計画表」(乙5添付資料2)とする。
a 手続開始時の利用可能資金は、金融機関から預金を相殺されることになるから、預金額全部を利用可能資金とすることはできない。
b 仕入値引きは期待できないから、値引きは算定しない。
c 上記修正によって、平成13年4月末日で繰り越される現預金は5870万円に修正される。
オ 原告らの試算に対する検討結果について
原告らの試算は、一般再生債権及び金融機関への返済の計画が示されていないから、被告の紡績事業の採算性、存続可能性を主張するのであれば、再生計画と金融機関への返済予定を示すべきである。
これと同様の主張として、「継続可能」というのであれば8か月間ではなく、どのような再生計画によれば紡績業を維持して、かつすべて別除権者の手中にある被告の資産を別除権の行使を回避しつつ営業が可能であるかを明らかにすべきである。ただし、この点は原告ら側に立証責任があると主張するものではない。
4 前記「4 全員解雇の必要性」の(2)イについて
(1) 紡績業の将来性について
愛知県内の紡績業は、最盛期といわれる昭和47年には52社が稼動していたが、現時点では近藤紡績と同社系列の豊橋紡績だけであり実質的には1社である。この傾向は、全国的なものであり労働集約型の紡績業は、原告らが指摘する技術力の優位性があっても、もはや国内産業としては存続が不可能な業態となっている。
なお、原告らは卸売業と小売業とを併せて論じているが、これを含めて繊維業として、もって紡績業の将来性を論じる論法は誤りである。
(2) 被告の将来性について
原告らが指摘する事実は、被告が平成12年まで生き残ってきた要因の一つである。しかし、多品種少量生産とQRにおいて外国に比して優位性があっても労賃の著しい相違を克服するには限界がある。愛知県内の他の紡績業者が廃業したのも同様の理由である。
なお、原告らが指摘する「カラードコットン」は確かに被告が先駆的に行ったものであるが、これが思うように販売できず、材料が大量の在庫として残り、経営圧迫の一因ともなっていた。
(原告らの認否・再反論)
1 前記1の被告の反論に対する原告らの再反論
(1) 被告の棚卸較差勘定に関する主張は、時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである。
ア 被告の棚卸較差勘定に関する主張立証は、被告の従前の主張や第23回弁論準備手続調書に添付された争点整理結果のいずれにもないものであり、被告代表者本人に対する再主尋問で初めてされたものであり、時機に極めて後れている。また、その再主尋問は、天候による代理人の不出頭という偶然の理由で延期された期日でされたものであり、偶然生じた機会に行われたものにすぎない。
イ 被告は、前記主張立証の提出が遅れた理由について説明しない。
ウ 「棚卸較差勘定」は、乙2に記載があり、かつ、被告の営業損益計算のための重要な項目の一つであって、弁論準備終結の前にこれを提出することができなかった合理的理由はない。
また、棚卸較差勘定に関する主張は、紡績部門が再生手続開始の申立ての時点で86万円前後の営業損失しか発生していなかったことは争いがないとするこれまでの争点整理の結果を覆す重大なもので、かつ、営業損益の計算方法に関する初歩的かつ基礎的な事実を巡る主張であり、これを争点整理の段階で提出しなかったことには重大な過失がある。
エ 本件では、23回に及ぶ弁論準備手続が重ねられて争点が整理され、その結果を踏まえて集中的な人証調べがされ、双方の主張立証が一応尽きていることを確認した上で、最終弁論が開かれたものであり、この経緯に照らすと、被告の前記主張は訴訟の完結を遅延させるためのものであるといわざるを得ない。
(2) 被告の棚卸較差勘定に関する主張への反論
ア 被告の前記主張によれば、被告は、紡績部門で9602万円の営業損失を発生させていたが、経理操作をして営業損失が86万円程度にすぎないという粉飾決算をしていたことになる。しかし、被告が粉飾決算をしていた証拠はない。
イ 平成12年10月4日締めの決算については、B公認会計士の報告書(乙6)において、粉飾等は指摘されておらず、8月末棚卸高についても適正なものと評価されており、棚卸較差勘定9517万余円によって市場価格とかい離している期首棚卸高を補正しなければ、正確な損益計算をすることはできなかった。
2 前記3(1)「再建可能性に関する被告の反論」に対する原告らの再反論
(1) 被告の主張の根拠となっている乙5の「指摘事項」の大半は、論拠や証拠が摘示されておらず、その作成者の経歴や実績も不明である。
ア(ア) 前記3(1)ア(ア)は、否認する。
第1に、大半の定期預金の相殺がされた時期は、再生手続開始の申立て後相当に時間が経過した後である。そればかりか、紡績事業を含む全面的工場閉鎖の方針をH会長が発表し、これを金融機関が知った時期になって、相殺がされているのであるから、このような信用不安がなければ金融機関は相殺していない。
第2に、倒産時に企業の再建を図ろうとする場合には、初期段階における手持流動性を確保するため、担保性預金以外は速やかに「疎開」させ、金融機関による相殺を防ぐのが常識である。被告は、金融機関による相殺がされるまで、担保設定されていない預金を悠長に放置し、銀行の相殺に任せていたのであるから、相殺を考慮することは無意味である。
(イ) 前記3(1)ア(イ)は否認する。
鑑定意見書(甲39)は、棚卸資産の評価について、被告の帳簿、及び、被告が名古屋地方裁判所に提出した平成12年11月15日付け「財産評定」(甲54)記載の「評価率」を用いて行われたのであるから、それを論難するのは自己どう着である。
(ウ) 上記3(1)ア(ウ)は、否認する。
前記3(1)ア(ウ)で被告が主張する3点は、企業再生を目指している通常の民事再生事件、会社更生事件においては、極めて一般的な手法であり、これを論難すること自体が失当である。
会社更生手続や民事再生手続において、企業を再建できるか否かを検討しつつ再建計画案を立案する際には、まず、営業損益(=「売上高」-「売上原価」-「販売費及び一般管理費」)を検討することが必要不可欠である。
この計算は、事業活動を継続することによって弁済原資を捻出できるか否かを検討する目的でされるものであるから、負債の元本・利息の弁済と減価償却を除外して営業利益(弁済原資)を算出した上で、債権者集会に諮る再生計画や更生計画の中核である分割弁済の計画を立案するのである。
イ(ア) 前記3(1)イ(ア)は、否認する。
民事再生申立事件、会社更生申立事件において、申立時から再生計画や更生計画立案までの期間の損益計算をする際に、減価償却費を計上している前例はほとんどない。その理由は、民事再生事件、会社更生事件において、申立時から再生計画や更生計画立案までの期間中に、損益計算書を作成する目的は、弁済原資を捻出できるだけの営業利益が得られるか否かを見極めるためだからである。この計算の際には、元利弁済や減価償却費は除外し、再生計画案や更生計画案において、債権者への債務弁済の原資として現実にいくら計上できるかを見極めるのである。
鑑定意見書(甲39)では、平成13年5月以降、毎月5000万円程度の弁済原資を確保できることが示されており、この月間5000万円程度の弁済原資を、債権者への分割弁済や設備投資その他にどのように振り分けるかについては、再生計画立案の段階で債権者らと協議を重ねながら、考えられるべきことである。
(イ) 前記3(1)イ(イ)は、否認する。
自主再建方式により民事再生手続、会社更生手続を軌道に乗せるためには、企業が営業利益を産み出すことが必要不可欠で、そのためには、経費削減が必要不可欠である。
このため、自主再建方式による民事再生計画や会社更生計画においては、経費削減を必ず掲げているのであり、これを「不要」とか「無理」とするような計画案は存在しない。
鑑定意見書(甲39)は、まず、被告のデータに基づき合理化をせずに従前の経営を踏襲した場合の変動費に即して、平成12年9月から平成13年4月までの8か月の変動費を算定した上で、これを基礎に、部門別の経費削減策を提示している。
さらに、会社更生手続や民事再生手続の場合、仕入先への支払方法が手形であったものは現金仕入れに移行するのが通例であり、この場合には、仕入先の手形割引コストの軽減や資金繰り負担の軽減に対応する値引きをお願いするのが常識である。
(2) 前記3(2)「再建計画に対する被告の反論」に対する原告らの再反論
ア 前記3(2)アは、否認又は争う。
(ア) 被告の主張は、証明責任の分配について明白な誤りを犯している。被告は、就業規則所定の解雇事由によって自ら解雇権を制限しているのであり、就業規則19条所定の解雇事由に当たることの証明責任は、被告が負担する。この事由に当たるか否かについては、整理解雇4要件を尽くしているか否かによって判断される。
(イ) 被告は、本件解雇の前に、広巾・小巾部門の閉鎖による紡績事業の継続の可能性を検討していない。
イ 前記3(2)イは、否認する。
平成12年9月の3億5000万円は再生手続開始の申立てに伴うものであり、検討の対象外である。
紡績部門での賃加工の拡大による資金繰りの改善によって、再生手続開始申立ての直前の8か月の間に被告の金融機関からの借入金総額を3億円以上も圧縮できたのであるから、十分に資金繰りはできた。
ウ 前記3(2)ウは、否認する。
(ア) 前記3(2)ウ(ア)は、認める。
(イ) 前記3(2)ウ(イ)は、無意味な主張である。紡績部門の操業を継続するのであるから、一般債権を一気に弁済する必要などない。
(ウ) 前記3(2)ウ(ウ)は、弁済原資は被告が捻出できる資金であるべきことは認め、その余は否認する。本件においては、紡績部門、外注部門、東京営業所の事業活動で毎月5000万円を超える弁済原資が捻出できることが証明されているのであり、それによって、採算性と存続性については十二分に証明されている。債権者への弁済方法は、債権者らとの具体的協議を重ねてその同意を得ながら決定されるべき事項にすぎない。
エ 前記3(2)エは、否認ないし争う。
被告主張の少なくない部分は、「具体的かつ客観的な証拠の裏付けのない弁論」というほかない性質のものである。そのことは、乙5と対比してみれば一目瞭然である。
被告の論理は、企業再建計画を立案する際の売上予測の立て方に即して詳細に検討されて作られた鑑定意見書(甲39)の売上予測に関して、真っ正面から批判をすることができないために、「平成12年8月の売上げを基礎に予測した」とのでたらめな思いつきの数値をぶつけて、「水掛け論」に持ち込もうとするものといわざるを得ない。
(ア)a 前記3(2)エ(ア)aについては、在庫売上げの数値は、被告自身が民事再生手続で用いた貸借対照表、財産評定に基づき算出した上、その一部を計上したものであり、被告の主張は失当である。
b 前記3(2)エ(ア)bについては、この手法の問題点は、起点となる数値にその後が大きく左右されるという点である。各月の売上高はいろいろな事情で変動し、その変動の幅も大きいから、ある1か月の実績値を起点にしてその後の数値全部を予測するのは、妥当でない。そのため、仮に被告の手法によるとしても、平成12年8月実績だけを起点とした乙5添付資料7ないし9の予測値だけで、Cの売上高計画値(甲39資料7ないし11)の妥当性を検討するのは、正確ではない。現に、被告主張の平成12年8月実績を起点とせず、同年9月の実績を起点として、被告主張と同じ方法で売上予測をして、これとCの売上計画値(甲39添付資料7から11まで)と比較すれば、同人の予測値は、紡績部門と外注部門について控え目な数値であり、東京営業所についても達成可能な数値であることが明らかである。
c 前記3(2)エ(ア)cについては、本件訴訟では、費用の適正配分という趣旨の減価償却を考慮する必要はなく、再建可能性判断のための試算に当たっては、被告が主張するような減価償却費の計上は不要である。
d 前記3(2)エ(ア)dについては、前記cのとおりであるから、修正は不要である。
e 前記3(2)エ(ア)eについては、繊維産業界では、手形サイトや売掛期間が長いなどの取引慣行があるので、現金決済にすることは仕入先にとっても手形割引料負担軽減や資金繰りの容易化などの大きなメリットがあるのであり、交渉により仕入れを数%程度値引きしてもらうことは十分可能である。また、民事再生、会社更生の手続開始後は、現金取引であることをテコにして、仕入れの値引きの実現を図るのが通例であり、場合によっては、仕入先の変更さえも検討するのが常識である。
f 前記3(2)エ(ア)fについては、減価償却費と同様、棚卸評価損計上により現実の支払が発生するわけではないので、抽象的な費用計上をして、その分の内部留保をさせるのは、倒産からの再建を図ろうとする時期には、無意味である。
g 前記3(2)エ(ア)gについては、被告の主張するような項目への計上は誤りである。
h 前記3(2)エ(ア)hについては、被告が引用する乙5の記載は、「計画損益計算書」とは何か、どのようにして作成するのか、その中の「社内振替」とはいかなる意味を持つのかについて全く理解さえできていない、初歩的な誤りに満ちたものである。
i 前記3(2)エ(ア)iについては、前記のとおり、被告が指摘した「問題点」なるものは的はずれであり、被告が主張する修正は不要である。そのような修正を前提とした売上総利益率、営業利益率を基に被告の再建可能性を判断するのは妥当でない。
(イ)a 前記3(2)エ(イ)aについては、民事再生法の適用を受けて本気で企業の再建を図ろうとする場合には、初期段階における資金の手持流動性を確保するため、担保性預金以外は速やかに「疎開」させ、金融機関による相殺を防ぐのが常識である。結果的に被告の預金が金融機関債権と相殺されたのは、被告が紡績事業を継続させる意図を最初から放棄し、紡績業継続のための資金繰りについて金融機関団と交渉することもせず、担保設定されていない預金を漫然と放置して、金融機関の相殺に任せていたからである。そもそも、金融機関は、債務者が再生手続開始を申し立てただけで、直ちに預金相殺をするわけではない。金融機関に対して再建計画案をきちんと説明し、金融機関債権の弁済計画、預金を運転資金にする必要性、人的保証である連帯保証人の資産状態等を説明し、金融機関の理解と協力を得ることによって、預金を運転資金として利用することが可能な場合もある。現に、被告が再生手続開始を申し立てたのは平成12年10月4日であるが、乙5添付資料4を見ても分かるように、金融機関は再生手続開始の申立ての直後に預金相殺に走っているわけではない。被告が再生手続開始の申立てをした後、金融機関は、被告の動きを見た上で、預金相殺するか否かを検討し、平成12年11月、同年12月及び平成13年3月に預金相殺している。
したがって、仮に担保性預金以外の預金を直ちに「疎開」させなかったとしても、この間に被告が金融機関と話し合う時間は十分にあるのであり、再建計画、弁済計画、運転資金等について被告が金融機関と話し合えば、預金を運転資金に回すことは可能だったのである。
b 前記3(2)エ(イ)bについては、仕入値引きが交渉により可能であることは、前記のとおりである。
オ 別紙「計画損益計算書」(甲39添付資料8)によれば、前半の4か月の間に、まず、紡績部門、外注部門、東京営業所による経営を軌道に乗せて、利益を出せる体制を構築しながら、平成12年9月に通常退職金1億6014万2000円を一括して払い、さらに、後半の4か月の間に、特別退職金合計2億0914万2000円を次の4回分割で完済できることが明らかである(別紙「計画損益計算書」の一番下から2段目の「特別退職金」と下から6段目の「退職金」欄参照)。
すなわち、平成13年1月から同年4月までに毎月5000万円ずつ支払って(4月のみ5900万円強)、通常退職金と特別退職金の支払を完了させることが可能であり、支払完了後はその分の資金負担が消えることから、平成13年5月以降には、毎月5000万円程度の弁済原資を確保できることが確実である。
本件では、平成12年11月に再生手続開始決定がされており、それから8か月後の平成13年4月ころまでには再生計画案を債権者に示す必要がある。その際には、平成13年4月までの8か月間に、広巾・小巾部門の閉鎖に伴う希望退職応募者への特別退職金を完済しつつ、同時に残存部門の収益力強化を図り、弁済原資として平成13年5月以降毎月5000万円程度を確保できることに関して、各債権者に8か月間の実績を示すことによって納得と了解を得るのである。そして、鑑定意見書(甲39)の考え方では、この実績を前提に債務弁済計画を具体的に立案し、その承認を債権者に求めることとしているのである。
(被告の認否・再々反論)
1 前記1の原告らの再反論に対する被告の再々反論
(1) 前記1(1)については、被告の棚卸較差勘定に関する主張は、既に提出された乙2についての説明を加えたものにすぎず、時機に後れた攻撃防御方法ではない。
(2) 前記1(2)については、被告は、棚卸較差勘定を粉飾のために用いたと主張するものではない。
短期間での「採算性」を論じる場合には、長期の会計手法として組み入れられる棚卸較差勘定を取捨しなければ、実際の営業継続の実態を示すものではないと主張するものである。
2 前記2の原告らの再反論に対する被告の再々反論
(1)ア 前記2(1)については、作成者の経歴や業績と事実の正誤とは関係ない。
イ 前記2(1)ア(イ)については、被告に残された在庫品は、それまでに売却できなかった商品である。もし原告らが指摘するように8か月間で2億5000万円の売上げができるのなら、資金繰りに行き詰まることはない。
そして、仮に売却できるとしても販売額は更に低減せざるを得ないであろう。
ウ 前記2(1)ア(ウ)については、論難していない。そのような諸条件で行えば余剰が生じるのは当然であるという事実を指摘したにすぎず、この期間この手法によっては再建可能という判断にはならないと指摘したにすぎない。
(2)ア 前記2(2)イについては、「検討の対象外」の意味が不明である。被告での賃加工率は全生産量の3割に満たないものであるが、これが拡大した事実はない。原告らが指摘する在庫減少は在庫品の中の不良在庫(カラードコットン)の評価減をしたためである。
イ 前記2(2)エ(ア)eについては、仕入値引きを不可能と断定することはできないとしても、それを当然のものとして予定することはできない。
ウ 前記2(2)エ(イ)aについては、預金は実質的な担保とされている。現に被告は従来から預金の一部であれ利用可能となるように金融機関に申し入れてきたが、聞き入れられることはなかった。
(原告らの再々々反論)
1 棚卸較差勘定は、平成11年度末の期末棚卸高が、平成11年度末の市場価格と差があるため、それを適正なものとするために設けられたものであり、平成12年1月から同年8月までの収支とは無関係である。
2 原告らは、部所別の営業損益を算出するためには棚卸較差勘定が必要不可欠であり、被告がこれを計上したことは是認できると判断したものである。
3 原告らは、平成12年9月から平成13年4月までの収支見込みを算定する際に、在庫品の棚卸高について、従前の原価計算でされていた数値を引き継がずに、厳密に洗い直した数値を用いており(甲39の15頁、添付の付表2)、棚卸較差勘定の数字は捨象している。
第3  争点3(解雇回避努力義務の履践ないし人員削減の手段として解雇を選択する必要性)-いわゆる第2要件
〈1〉広巾・小巾部門の閉鎖に伴う人員削減に関して、解雇以外の措置を講じることが可能であったか、また、この措置が解雇のされる以前に尽くされたか、〈2〉(仮に紡績業部門の閉鎖とこれに伴う人員削減が必要であるとした場合において)人員削減の手段として、他部門への配置転換、希望退職募集その他の解雇以外の措置を講じることが可能であったか、また、この措置が解雇のされる以前に尽くされたか。
(被告の主張)
本件においては、紡績業部門の全面的な閉鎖をせざるを得なかったのであるから、解雇は不可避であり、整理解雇4要件の第2要件とされるものは適用されない。
したがって、被告は、整理解雇4要件の第2要件の内容に関する主張をしたり、整理解雇4要件の第2要件の内容に関する原告らの主張についての反論をする必要もなく、整理解雇4要件の第2要件を充たす具体的事実を挙げる必要もない。
(原告らの認否・反論)
1 「紡績業部門の全面的な閉鎖をせざるを得なかった」、「解雇は不可避」との主張は否認する。本件において、被告は、整理解雇4要件の第2要件の適用を免れることはできない。
2 なお、仮に紡績業部門の全面的な閉鎖の必要性が肯定されるケースにおいても、使用者は希望退職募集、配置転換等の解雇回避努力義務を負うのであり、これらの解雇回避努力義務を一切負わないとの被告の主張は主張それ自体が失当である。
3 本件において、被告は前記のとおり整理解雇4要件の第2要件を充たしたとの主張立証を放棄しているのであるから、直ちに原告ら勝訴の判決を言い渡すべきである。
4 また、被告は、工場閉鎖の意図を秘匿し、紡績業の再建を図るがごとく装って再生手続開始の申立てをし、その後、紡績業を続けると表明しておきながら、再生手続開始決定がされるやいなや、A監督委員もB公認会計士も工場閉鎖を肯定する意見を出していないのにかかる意見が出されたと強弁し、それを口実にしてA監督委員と一切相談することもなく、工場全閉鎖と解雇を一方的に強行した。すなわち、被告は、解雇回避努力義務の履践を潜脱する目的で、民事再生手続を利用したものである。
5 整理解雇4要件の第2要件に関する原告らの主張は以下のとおりである。
(1) 広巾・小巾部門の閉鎖と他部門の合理化に伴う人員削減に関して
正社員の退職金を100%上積みし、パートタイマーには退職金100万円を支払うことを内容とする希望退職募集により、人員削減を行うことが可能であった。
しかし、被告はそれを実施せず、検討すらしなかった。
(2) 仮に紡績業部門の閉鎖とこれに伴う人員削減が必要だとした場合の人員削減に関して
直ちにほぼ全員を解雇するのではなく、事業として残す不動産管理部門で、できる限り雇用を確保すべきであったのに、被告はそれをしなかった。
直ちにほぼ全員を解雇するのではなく、できる限り労働者側の犠牲を少なくする措置(希望退職募集、再雇用の保障、他企業への再就職斡旋等)を実施すべきであったのに、被告はそれをしなかった。
特に、希望退職募集は、解雇回避努力義務の一つとして重視されているが(あさひ保育園事件最高裁判所昭和58年10月27日第1小法廷判決)、被告はこれをしていないし、希望退職募集が客観的に不可能であったことの立証もしていない。また、被告は、配置転換の可能性について一切検討しておらず、これを実施していないし、配置転換が客観的に不可能であったことの立証もしていない。
(被告の再反論)
1 本件解雇は、事業所閉鎖に伴うものであり、事業の閉鎖には前記のとおりやむを得ない理由があったものであるから、本件解雇に当たり、解雇以外の方策あるいは配置転換等を検討した事実はない。
整理解雇4要件の第2要件は、その適用がないか、あるいは本件においては判断基準とはならない。ただし、被告は不動産収益をもって半田工場を継続する努力を永年にわたりしており、より広範囲な意味においては解雇回避のための努力を続けてきている。
2 不動産部門は契約管理のための事務部門であり、紡績業等の大量の人員を吸収することはもとより不可能である。
組合に事業閉鎖の通知を行って以来、組合との交渉の焦点は退職金の上乗せにあった。
第4  争点4(被解雇者選定基準とその運用の合理性)-いわゆる第3要件
(被告の主張)
本件解雇は、事業所閉鎖に伴うものであり、事業の閉鎖には前記のとおりやむを得ない理由があったものであるから、本件解雇に当たり、被解雇者を選定した事実はない。
整理解雇4要件の第3要件は、その適用がないか、あるいは本件解雇においては判断基準とはならない。
(原告らの反論)
本件において、広巾・小巾以外の部門について事業閉鎖の必要性がなく人員削減の必要性もなく(整理解雇4要件の第1要件の不充足)、広巾・小巾部門は希望退職募集により人員削減をすることが可能であったにももかかわらずこれをせず(前同第2要件の不充足)、その結果として、半田工場の現業部門の全員を被解雇者に選定するという誤った基準の策定に至った(前同第3要件の不充足)であるから、第3要件を巡る論点は、すべて、第1要件と第2要件を巡る論点に包含される。
第5  争点5(本件解雇手続の妥当性の有無)-いわゆる第4要件
〈1〉労働組合・労働者への事前説明、労働組合との事前協議をすべき義務の有無及びその履践の有無、〈2〉民事再生手続を利用し、整理解雇4要件の適用を回避しようとした事実の有無。
(原告らの主張)
1 「事業所閉鎖」、「閉鎖のやむを得ない理由」、「解雇不可避」は、整理解雇4要件の第4要件の適用を免れる理由となり得ない。
本件の場合には、「閉鎖のやむを得ない理由」はなく、「解雇不可避」とはいえないが、仮に「閉鎖のやむを得ない理由」があり「解雇不可避」の場合であっても、使用者は、事業閉鎖の理由、一部存続ができない理由、解雇の理由等を誠実に説明して労働者の納得を得る努力をし、かつ、配置転換の可能性の追求等の解雇回避義務の履践、不利益緩和措置義務の履践等について誠実に協議し、これらを実行すべき義務を免れることはできない。
使用者は、最終的に解雇を実施するとしても、その決断の過程において、労働者の被る苦痛や損害を最小限にとどめるための努力と工夫をすることが信義則上要求され、このため、使用者は、労働組合に対しては説明協議を行い、労働組合の質問事項や批判事項を誠実に検討し、具体的には、使用者の方針が正しいか否かを自ら十二分に再検討し、人員削減の必要性の有無を検証し、解雇回避努力を尽くしたか否かを検討し、人選基準とその運用が妥当か否かを検証し、さらに、不利益緩和のためにできることを尽くしたかを検証し、これらの事項について改めるべきところは改めることが必要不可欠である。
したがって、解雇手続の正当性は、整理解雇4要件において極めて重要な位置を占めているのである。
2 本件において、被告は整理解雇4要件の第4要件を充たしたとの主張立証を放棄しているのであるから、直ちに原告ら勝訴の判決を言い渡すべきである。
3 整理解雇4要件の第4要件に関する原告らの主張は以下のとおりであり、被告は、組合はおろか、裁判所、A監督委員にも一切相談することなくH会長の独断で本件解雇を強行したものであって、その過程は余りにずさんである。
(1) 労働組合・労働者との説明協議の不存在
ア 組合は、被告と定例的な労使交渉の場を持っていたが、その際に、被告から、再生手続開始の申立てをしなければならないような経営状況にあるという説明を受けておらず、その申立てがされることを全く知らされていなかった。
被告が、再生手続開始の申立てをした後も、組合に対して、申立てをした事実は通知されず、組合の代表者である原告X6(以下「X6組合長」という。)が再生手続開始の申立ての事実を知ったのは申立てから3日後の朝刊記事によってであった。
イ 被告は、再生手続開始の申立ての当初は、債権者及び組合に対して、事業存続の方針であると説明していた。
しかるに、被告は、申立てから1か月後に、本業である紡績業を廃業すると通告してきた。
その間、被告は組合に対し、何らの提案も協議もしていない。
ウ 現在、被告は、H会長の独断により、再生手続開始の申立て以前から紡績業を廃業する方針であったことが判明している。
エ このような解雇通告に至るまでの被告の行為は、次の二つの事実に照らしても、組合と労働者に対するだまし討ちに等しいものといわざるを得ない。
(ア) 被告は、平成12年11月17日の団体交渉において、初めて組合に対し、「本業はやめる」と述べたが、「いつ、操業をやめるのか。」という質問に対し、「今のところ分からない。」と回答した(甲7の2)。
しかし、その4日後の同月21日、組合は、被告から、突然、同年12月29日限りで操業を停止する旨を通告する文書を受け取った。
(イ) 被告は、平成12年11月21日、広巾・小巾部門に所属する従業員に対しては本件解雇に関する辞令書を交付したが、紡績部門に所属する従業員57人に対しては、職場の休憩所の机上に辞令書を置き、これらの者に対して辞令書を受け取るようにとの通知も行わず、これら原告らは従業員相互の連絡により、辞令書の存在を知った。
オ さらに、上記操業停止・解雇通知に至るまで、被告は、組合、従業員らに対して、「紡績業は厳しい」、「大きな財源がない」などという抽象的一般論を述べる以外には、何ら具体的な説明をせず、協議もしていない。
(2) 財務資料の不開示
被告は、再生手続開始の申立て以前から、各部門ごとの経営状況を見るために、各部門別の財務資料を作成していたが、これを組合に対して開示したことはなかった。この部門別財務資料は、被告の紡績業の再建案を立案したり、その再建可能性を判断するには必須の資料であるが、被告が紡績業全部の廃業の理由を組合に説明するのであれば、必ず必要になる資料のはずであった。
しかし、被告は、民事再生手続の申立て後もこれらの部門別財務資料を組合に開示せず、紡績業全部の廃業の理由も具体的に説明しないまま、本件解雇を強行した。
被告は、本件訴訟で、文書提出命令の申立てがされてからようやくこの部門別財務資料を任意に開示したが、組合にとってはもはや手遅れであった。組合は、この部門別財務資料によって紡績業の再建可能性を検討する機会も、それに基づいて被告と交渉する機会もないまま、本件解雇を強行された。
(3) 民事再生手続の濫用
民事再生手続の濫用に関する事実は、前記「第2 争点2(本件解雇につき、営業・人事・経理部門の数人を除く全員についての、人員削減の必要性)」の項の「(原告らの認否・反論)」の「2 再生手続開始の申立て」の「(2) 積極否認」の部分に記載したとおりである。
これらの事実に照らせば、本件における再生手続開始の申立ては、「労働者を解雇したり労働組合を排除するために再生手続を利用するなど事業体を生かすためではない申立て」であって、不当目的あるいは不誠実申立てと解釈される場合に当たり、民事再生法25条4項に当たる疑いが濃厚であって、このような手続的瑕疵は、整理解雇4要件の第4要件である解雇手続の履践を怠った違法を構成する。
(4) 裁判所、監督委員らに対する相談の欠如
H会長は、紡績業全部の廃業と従業員ほぼ全員の解雇について、裁判所、A監督委員、B公認会計士にも相談していない。
A監督委員の報告書(甲19添付資料3、乙11添付資料2)にも、B公認会計士の報告書(乙6)にも、紡績業全部の廃業と従業員ほぼ全員の解雇を肯定する表現は見当たらないにもかかわらず、被告は、これらを解雇の口実として利用し、H会長の独断で本件解雇を強行した。
(被告の認否・反論)
1 本件解雇は、事業所閉鎖に伴うものであり、事業の閉鎖には前記のとおりやむを得ない理由があったものであるから、解雇は不可避である。
整理解雇4要件の第4要件は、その適用がないか、あるいは本件においては判断基準とはならない。
なお、被告には「民事再生手続を利用して、整理解雇4要件の適用を回避しようとした」事実も意図もない。被告に与えられていた選択肢は民事再生手続の申立てを除いては破産申立て以外にはない。
2 被告が再生手続開始の申立書及び債権者説明会において「再建が可能である」と説明した事実は認める。なお、債権者説明会には組合代表者も出席している。
3 前記3(1)イ及びウの主張は争う。上記3(1)エ(ア)の事実の経緯については認める。ただし、「今のところ分からない。」と述べたとの点について、団体交渉時に操業停止の時期を確定的に明示しなかったことは認めるが、引用された表現自体は確認できない。前記3(1)エ(イ)は否認する。紡績部門の従業員に対しても、辞令書を交付した。前記3(1)オは、平成12年11月17日以前に操業停止に関する説明をしていないことは認め、その余は争う。
4 前記3(3)は否認する。民事再生手続は、事業の再建を第一義とする手続であるが、そのためには裁判所の関与の下で営業・資産の状況が調査され、再建が不可能であれば、清算型の計画案となることもあるし、破産に移行する場合もある。被告の再生手続において、B会計士の報告書では事業継続は不可能であるとの意見が提出されている。この意見を機に被告は廃業の方向性を明らかにしたものである。よって、民事再生法25条4項に当たる事実はない。
5 本件の場合には、次の特段の事情が存在するから、被告は、原告らが前記3(1)で主張するような労働組合・労働者との説明協議を尽くす必要はない。
(1) 再生手続開始の申立て
H会長が愛知県内の紡績業が次々と閉鎖されていく実情を踏まえ、かつ、d社の倒産、店舗の撤退という事態を迎えて、紡績業を含む生産部門の全体の閉鎖を視野に入れていたことは事実である。d社撤退後は、事業をいつまで維持できるかとの戦いであった。それでも被告はd社後の新規テナントの募集に全力を挙げ、場外馬券売り場の誘致という方法にまで尽力した。原告らは、高額の賃料を求めたため新規のテナントを長期にわたり確保できなかったというが、高額でなければ累積した負債の返済、事業の維持は不可能であった。これらすべての方策が尽きた時点で被告はやむなく再生手続開始の申立てに及んだものである。
また、会社の資金繰り等は高度な判断事項であり、再生手続開始の申立て等の際の債権者らとの混乱を防ぐために、申立てが秘密裏にされることは避け難い。現に、被告においても、破産申立てを避けるため、実質1週間程度の準備で再生手続開始を申し立てたのであり、被告に原告らが指摘するような計画性もなく、また、計画を立てる余裕もなかった。
また、被告が申立てをした時点では、民事再生手続はいまだ新制度であって、いわゆる清算目的も考え得ることが指摘されていた。
(2) 経営困難性に関する労使の共通認識
原告らは、再生手続開始の申立てが説明義務を尽くさないだまし討ちに等しい行為とするが、d社が経営を支えていた事実、その撤退により被告が窮状にあった事実、不動産を運営しての高収益の確保のため場外馬券売り場誘致のため労使ともに尽力した事実から、方策が尽きれば事業の閉鎖はやむを得ないことは、いわば共通理解として存在していた。
(3) 操業停止と解雇の容認
被告は、平成12年11月22日、組合に対し、解雇と操業停止の通知を文書でしているが、これに対し、組合は同月29日付けの文書で、「会社の提案については条件付きで受け入れます。」と回答し、以後は退職金等の上乗せの要求がされた。当初の組合の要求は上乗せ金額が8億円というものであった。これに対し被告側は退職金の20パーセント上乗せを提示していた。すなわちこの時点では組合側も操業停止についてはやむなしとの判断を有していたものと考えられる。
(原告らの認否・再反論)
1 上記5(1)は争う。民事再生その他の法的手続を講じることと労働組合・労働者との説明協議を尽くすこととは、別個の問題であり、使用者は、民事再生その他の法的手続を講じたからといって、労働組合・労働者との説明・協議義務を免れることはできない。被告が主張する清算目的の民事再生手続の利用については、民事再生手続の利用実態に関する一般論にすぎない。
2 前記5(2)は否認する。組合と労働者は、事業経営が良好ではないという程度の認識はもっていたとしても、「全面的な事業閉鎖もやむを得ない」という認識は全くもっていなかった。
3 前記5(3)指摘のとおりの回答をした事実は認めるが、操業停止もやむなしとの判断を組合がしていたとの主張については争う。その理由は次のとおりである。
(1) 組合側が操業停止もやむなしと判断した事実はない。
(2) 上記組合回答は、飽くまでも条件付きであり、無条件で被告の提案を受け入れたものではない。その後、結局、被告は組合の求めた条件を受け入れず、従業員ほぼ全員解雇についての労使合意は成立しなかったのであって、組合が「被告提案を受け入れ」たということにはならない。
(3) 被告は、経営情報の開示や組合との説明協議もせずに、再生手続開始の申立てをし、さらに、突如、操業停止・解雇の通告に及び、工場閉鎖の既成事実を作ろうとしたものである。
この通告を受けた組合の側は、当初の段階では、全面的操業停止の必要性の有無について判断材料のないまま、被告から十分な生活保障が得られるならばという条件付きで、被告の提案を受け入れて、労使の協議と合意による平和的な解決を図ろうとした。
しかし、被告は、組合側が提示した条件を拒絶した。また、組合は、事件の全体像を掌握し、全面的工場閉鎖と本件解雇の不当性を理解するに至ったのである。
したがって、組合の条件付き受入れの回答は、被告の側の説明協議義務違反に起因するものであり、かつ説明協議の放棄を認める内容のものではないから、この回答を理由に説明協議義務が不要であると主張するのは本末転倒である。
第6  争点6(本件解雇が無効であった場合の賃金請求に対する予備的主張)
1  定年(抗弁1)
(被告の主張)
仮に本件解雇が無効であったとしても、就業規則及び組合との協定に基づく60歳の定年を超える期間については、該当する原告らには賃金の請求権はない。
(原告らの反論)
本件解雇時に定年を超えていた者については、60歳定年制度の効力が生じた後に、被告が再雇用していた者であり、定年制の効力は及ばないから判決言渡時までの賃金請求権を失わない。
2  労務提供(抗弁2)
(被告の主張)
本件解雇後、他に就労した者は、被告に対し労働力を提供することは不可能であるから、賃金の請求権はない。
(原告らの認否・反論)
被告は、「他に就労した者」とその収入額を特定していないから、抗弁としては無意味な主張であり、認否不能である。
なお、仮に就労者とその収入額を特定したとしても、被告に対する労働力提供がされなかったのは、被告が労務受領を拒絶したことに起因するのであるから、原告らは他に就労しても被告に対する賃金請求権を失わない。
3  中間収入控除(抗弁3)
(被告の主張)
労働力の提供不能が被告の責めに帰すべき事由によるとしても、本件解雇後、他に就労して賃金を得ている者は、収受した賃金相当額を民法536条2項ただし書所定の「利益」として被告に償還すべき義務を負う。
(原告らの認否・反論)
(1) 被告は、「他に就労した者」とその収入額を特定していないから、主張自体が失当であり、認否不能である。なお、法律論として、中間収入に民法536条2項の適用があることは認める。
(2) 原告らの仮定再抗弁
仮に被告が他に就労した者を特定し、かつ、その賃金額を特定したとしても、中間収入のあった期間において、原告らは労働基準法26条に基づく休業手当請求権を有するから、解雇期間中の賃金のうち平均賃金の6割までの部分については民法536条2項による利益償還の対象とし得ず、被告は原告らに対し、次の額の支払義務を負う(米軍山田部隊事件最高裁判所昭和37年7月20日第2小法廷判決民集16巻8号1656頁)。
ア 当該期間中の中間収入が被告から支払われるべき賃金の平均賃金額の4割以内である場合には、平均賃金額から中間収入を控除した額。
イ 当該期間の中間収入が被告から支払われるべき賃金の平均額の4割を超えている場合には、平均賃金額の6割。
第7  争点7(臨時・パート従業員であった者の処遇)
(被告の主張)
1 臨時・パートであった従業員については、本人の明示的意思の下において採られた雇用形態であり、いわゆる正社員と同一の待遇(退職金の支給等)ではない。臨時社員就業規則10条は、臨時社員(パートを含む。)の解雇については、30日前の予告若しくは予告手当をもってするものと定めており、本件解雇はこれに準拠しており、有効な解雇である。
2 仮に臨時・パート従業員についても正社員と別異の取扱いは許されないとしても、争点6において述べたとおり、定年後の賃金請求権はなく、また、解雇後他に就労している者については、以後賃金請求権がないか、あるいはその就労により得た利益は民法536条2項ただし書により被告に償還されるべきである。
(原告らの反論)
1 臨時・パートという名称の社員であっても、解雇の有効性要件は、正社員の場合と同じであり、これが軽減されることはない。
2 定年制及び中間収入控除についても、正社員の場合と同じである。
第4章  当裁判所の判断
第1  前記争いのない事実等、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
1  被告は、H会長の父が大正2年に個人営業で始めたものであり(被告代表者本人)、昭和26年10月に法人化された(乙1)。
2  被告の紡績業部門は、半田工場に置かれ、最も狭義の紡績部門、織布部門、一般部門に分かれていた。原綿から糸を作るのが狭義の紡績部門である。糸から布を織るのが織布部門で、織布部門は、製造する布の巾の違いに応じて、広巾部門と小巾部門に分かれていた。一般部門は、紡績や織布そのものを行う部門ではなく、食堂等での庶務的業務や常勤ではない電気主任・産業医の業務である(甲60)。
さらに、被告の半田市所在の事業所(以下「半田事業所」という。)には、営業部門があり、営業一課から三課に分かれていた。そのうちの、営業一課は狭義の紡績部門に対応する受注・販売を担当し、営業二課は織布部門に対応する受注・販売を担当し、営業三課は、「外注部門」とも呼ばれ、繊維製品の製造を外部委託していた。
そして、被告の半田事業所には、被告所有の建物・駐車場を賃貸する不動産部門及び人事・経理を担当する総務部門が存在した。
被告は、半田事業所以外に、東京営業所を置き、東京での自社製造品や外注製品の販売を担当させていた。
3  被告を含む半田市周辺の紡績会社においては、九州等出身の若い女性が、会社の寮に住んで、学校法人半田学園という通信制の短期大学に通いながら働いており、被告においても、本件解雇時、17人がそのような形で働いていた(被告代表者本人)。
4  被告は、株式会社bに月額1200万円(甲35)で愛知県知多郡東浦町の不動産を賃貸し、b○○店が昭和58年12月にオープンした(争いがない。)。
5  H会長は、昭和62年4月に半田市長に当選し、その子であるDが、同年5月に被告の代表取締役社長に就任した(争いがない。)。
6  被告は、d社に半田市の不動産を賃貸し、c店という名称の商業施設が、平成2年9月、オープンした(争いがない。)。
7  H会長は、平成3年3月に半田市長選に落選したため、被告の代表取締役社長に復帰した(争いがない。)。
8  d社は、平成9年9月に倒産し、これを受けて、c店の全テナントは、平成10年1月に撤退し、c店は閉鎖された(争いがない。)。
9  被告は、平成10年9月ころ、組合に対して経営合理化案を提示した。その内容は、紡績部・広巾部・小巾部・その他の部門で人員削減するというものであり、組合はこれを了承し、その年から翌平成11年にかけて従業員の人員削減がされた(甲60、乙3)。
しかし、その後は、人員削減はなく、従業員全員に対して賞与も支給され、賞与の支給額も愛知県紡績労連に加盟する他社と同等の水準であった(甲60)。また、組合と被告は、平成12年4月以前に昇給の交渉をし、平成13年1月以降昇給することになった(甲62、原告X6本人)。
10  被告が、株式会社bに賃貸していたb○○店が、平成11年2月、閉鎖された(争いがない。)。
11  被告は、組合の協力を得ながらc店跡のテナント誘致活動をし、組合との定例の交渉の場で、誘致できるまで諦めないと説明していた。そして、被告は、平成11年7月、c店の施設再利用として公営ギャンブル(競馬・競輪・競艇)の場外発券場を誘致する計画を発表した(甲60、乙13)。
被告と組合は、再生手続開始の申立てまで、夏・冬の賞与の時期と春の昇給の時期に、定例的に交渉をしていたが、組合は、被告が再生手続開始の申立てをしなければならないような経営状況にあるという説明を受けたことはなかった。また、実際に民事再生手続を取るということについても、事前に被告から組合に対して、何の説明も相談もなかった。そのため、組合は、再生手続開始の申立てがされることを全く知らず、予測できなかった(甲60、原告X6本人)。
12  平成12年9月18日、半田市議会で公営ギャンブル(競馬・競輪・競艇)場外発券場誘致請願が不採択となり、c店の施設再利用計画がとん挫してしまった。この誘致計画の失敗を重要な契機として、被告は民事再生手続を利用するという方針へと大きく方向転換した(被告代表者本人)。
13  被告は、平成12年9月20日に月末の決済資金が不足することになったため、やむを得ず子会社であるe株式会社の土地を早期に売却することにし、月末までにミツカン酢株式会社に売却した(甲52)。
14  H会長は、そのわずか1週間後の平成12年9月25日、役員会において、再生手続開始を申し立て、同年12月末に紡績業を廃業し、債権者には100%配当するという方針を発表した。しかし、E専務取締役(以下「E専務」という。)ら複数の役員は、反対意見を表明した(甲51、52)。
15  被告の役員会において、平成12年9月30日、H会長の強い意向により、再生手続開始の申立てが決まった。H会長は紡績業廃業が民事再生計画の骨格であると考えていた(甲51、被告代表者本人)。しかし、紡績業の廃業の方針については、社内の役員ら一部の者に伝えられるにとどまり、公表されなかった(甲52、60)。被告内部では、同年9月30日から同年11月16日まで、以下のとおりの紡績業の廃止に向けた動きがあったが、これらの事実を組合が知ったのは、後記26のとおり同月17日以降である。
16  被告は、平成12年10月4日、名古屋地方裁判所に対し、再生手続開始を申し立てた。その申立書には、「申立人は平成12年10月10日が支払期日となっている支払手形(額面合計約金1600万円)の決済資金を調達することが困難であり、・・・仮に10日の決済ができたとしても、その後続けてやってくる手形を決済することは不可能な状況にあり、取引先も多く金額も多大である申立人が資金不足により不渡処分を出せば大きな混乱が生じることとなり、事業の継続に著しい支障をきたすこととなる。」、「紡績業については、従来賃料収入が大きかったことに依拠して合理化、効率化が遅れており、事業を再構築することによって再生させることが可能であると思われる。」、「今後の方策としては、紡績業については更に効率化を図るとともに・・・」という記載がある(乙1)。
前記再生手続開始の申立ては、組合や従業員に対して何の通告も説明もなく、X6組合長でさえ、申立ての事実を知ったのは申立てから3日も経った同年10月7日の中日新聞朝刊の記事によってであった(甲60、原告X6本人)。X6組合長は「民事再生」という言葉を聴くのはその時が初めてであり、何のことなのか分からなかった。他の組合員の反応も同様で、民事再生が倒産ということも分からず、皆きつねにつままれたような状態であった(原告X6本人)。組合は、平成12年10月13日、被告に対して団体交渉を申し入れた(甲6の1、2)。
名古屋地方裁判所は、平成12年10月6日、被告に対して監督委員による監督を命じ、A監督委員を選任した(甲61添付資料1)。
17  H会長は、平成12年10月9日、「民事再生法に基づく債権者に対する一切の当社の債務(労働債権を含む)は、平成12年9月末現在の当社の資産をもって全額返済する努力を致します。しかし、その資産をもってしても返済に充当できなかった残額は、H会長個人及び関連会社の資産をもって速やかに完済致します。」と記載した書面を作成した(甲22)。
18  債権者説明会が、平成12年10月18日、開かれた(甲4の2、甲5)。被告は、その場において、「紡績業については、更に合理化、効率化を検討し、事業を再構築することによって再生させることが可能であると思われる」、「今後の方策としては、紡績業については効率化を図ると供(ママ)に」と記載した「民事再生申立にかかる経緯」と題する書面等の資料を配付し(甲4の2)、H会長は、すべての債権者に対して、紡績業は存続させるという基本方針を表明した上で、債務は100%支払うと言って理解を求めた(甲60、原告X6本人)。このように、H会長は債権者に対し紡績業の再生を約束していたものであり、組合からもX6組合長を含む2人が債権者説明会を傍聴し、H会長の上記説明を直接聞いた(原告X6本人)。
しかし、H会長は、同年10月18日から同月30日までの間、営業担当従業員に対し、同年12月末に紡績業をやめることになるので先の方の受注を手控えるようにという指示をしていた(甲52、53)。
19  組合と被告との間の第1回団体交渉が、組合の申入れを受けて、平成12年10月20日、開かれた(甲6の3、原告X6本人)。出席者は、被告側がH会長、F常務取締役(以下「F常務」という。)、人事のGの3人、組合側が上部団体であるゼンセン同盟愛知県支部とゼンセン同盟愛知県紡績労連から3人及びX6組合長ら組合3役であった。
H会長は、その席で、「紡績業の存続は再生計画に盛り込んでおり、来年2月中旬を目途にしている再生計画の認可ではっきりすると思っている。」と説明し、紡績業は続けるという基本方針を改めて組合の前で表明した。しかし、その場においては、被告から平成12年9月30日現在の貸借対照表が渡されただけで、その他の会社経理や財務資料は一切なく、財務内容に関する説明はなかった。また、紡績業をどのような形で続けるのかという具体的な再建案の説明もなかった(甲6の3、60、原告X6本人)。
20  H会長は、平成12年10月30日に開かれた定例営業会議において、「紡績業は年内でやめる。」、「裁判所で再生の開始決定が出るまではこのことはここだけの話にしておいてほしい。取引先にも内緒にしておけよ。」という趣旨の発言をした(甲52、53)。
H会長の上記発言があったことを聞いたE専務は、翌31日、紡績業廃止についてH会長に対して抗議したが、H会長は、同年11月1日、E専務に対し、「自分の意向に沿わない人間は辞めてもらう。」という趣旨の通告をした(甲52)。
E専務は、同年11月2日、紡績業廃業方針に反対して辞任した(甲52)。
21  半田信用金庫は、平成12年11月1日、中京銀行は、同年11月8日、知多信用金庫は、同年11月9日、東海銀行は、同年12月6日、それぞれ被告との間で預金相殺をした(乙5添付資料4)。
22  B公認会計士は、平成12年11月9日付けで、A監督委員あての報告書(乙6)を作成した。
その報告書には、「本業の繊維業では構造的に赤字が続いていた。」、「売上総利益は平成7年度で8百万円とほぼゼロに近く、平成8年度、平成9年度とマイナスになっている。平成10年度は減価償却費が前年に比べ1億3千万円程少なく計上されている為実質上はマイナス、平成12年度も減価償却費は未計上の為約4億円を計上すれば同じくマイナスである。したがって、年間878百万円(10年平均)の販売費及び一般管理費を控除する前から赤字のため、全く営業を続けることは不可能な状態であった。」という記載がされている。
23  A監督委員は、平成12年11月10日付けで、「報告書(3)」と題する報告書を作成した(甲19添付資料3)。
その報告書には、業務及び財産状況等の調査結果について、再生債務者である被告に再生手続申立前において否認すべき行為等疑いのある行為は認められなかったこと、再生計画の認可の見込みについては、被告は、固定資産税評価額で約54億円相当の土地を所有するほか、その所有する建物(c店)の有効利用を図って、同建物を有利な条件で賃貸すべく努力していることなどから、被告が現在所有する土地及び建物の有効利用さえできれば、再生は可能であると認められるなどと記載されていたが、紡績業に関する言及はされていない。
24  被告と組合との第2回目の団体交渉は平成12年11月7日に予定されていたが、被告側から「11月15日に名古屋地裁から民事再生手続の開始決定が出されるから、それ以降でないと詳細な説明ができない。」との申入れがあり、同月17日に変更された(甲7の2)。
25  名古屋地方裁判所は、平成12年11月15日、被告に関して再生手続開始決定をした。
26  組合と被告との間の第2回団体交渉が、平成12年11月17日に開かれた。第2回団体交渉の被告側出席者はH会長、F常務ほか2人、組合側は組合執行部、及び上部団体であるゼンセン同盟愛知県支部から2人であった。
被告はこの団体交渉においてそれまでの態度を一変させ、紡績業を全部廃業する方針を明らかにした。すなわち、被告は、今後の操業について、「本業の操業は難しい。幅広(広巾部門の意味)を来年の2月目途と考えている。」、「本業はやめるということ。」と述べ、突然これまでの基本方針を覆したが、それは被告が重視していた再生手続開始決定がされてからわずか2日後のことであった。
X6組合長が「債権者集会やみんなの前で言ってきたことと違うではないか。」と問いただすと、被告側は「紡績業界のこのような状況の中、やっていくことが大変なものだということは皆さんにも十分理解していただけると思う。」と述べ、いつ操業をやめるのかという質問に対し、「今のところまだ分からないが、近いうちにやめる考えでいる。」などと答えた(甲7の2)。紡績業を廃止するとの被告の方針を組合が知ったのは、この時点が最初である(原告X6本人)。
27  ところが、被告は、第2回団体交渉のわずか4日後の平成12年11月21日、組合に対して紡績業全部の操業停止の時期について一方的に通告した。その通告によれば、紡績部門と広巾部門の操業停止は平成12年12月29日限り、小巾部門は平成13年2月20日限りであり、寮生は「同日をもって」退寮してもらうというものであった(甲13の1)。この通告文書には、どうして紡績業全部を直ちに廃業しなければならないのかという理由について、具体的なことは何も書かれていなかった。その通告文書に書かれていた理由らしきものといえば、「監督委員A弁護士の裁判所への報告書「平成12年(再)第11号報告書(3)」によっても操業を続けるよう指導する文言は一切ありませんでした。」というものであったが、前記のとおり、A監督委員の前記報告書(甲9添付資料3)には、紡績業に関する言及がなく、紡績業全部の廃業を肯定するような記述はどこにもなかった。
28  被告は、平成12年11月21日付けの辞令書により、同年12月29日付けをもって解雇する旨、紡績業部門の従業員の大半に対する本件解雇の予告をし、同辞令は、同日又はその後の数日以内の期間に各従業員に到達した(甲2の1、甲19添付資料4)。
29  組合は、平成12年11月28日、被告との労使協議をし(甲16)、同月29日、「操業停止に伴う解雇について(回答)」と題する文書を被告あてに提出した(甲13の2)。この文書に、「会社の提案について条件付きで受け入れることにいたします。」と記載してあり、その別紙には組合から退職金の上乗せ要求の記述もあった(甲14)。
30  組合と被告との間の第3回団体交渉が平成12年12月6日(甲8)、第4回団体交渉が同月14日(甲9)、それぞれ開かれ、退職金の上積み等に関する協議がされたが、結局、その後、被告は組合が提示した条件を受け入れなかったので、組合は、やむなく通告された解雇日付より前の平成12年12月20日、被告に対して、「全員解雇は不当解雇として、抗議行動を行う」という通告をし(甲15)、代理人弁護士から被告に対して、解雇は無効であり協議を申し入れる旨の内容証明郵便を送付した(甲3の1、2)。
31  組合と被告との間の第5回団体交渉が、平成12年12月26日、開かれ、被告は、初めて退職金規定者に対して20%の加算金を支払い、臨時・パート・勤続3年未満社員に対して1人当たり15万円を支払うという回答を書面でしたが、組合はこれを受け入れなかった(甲19添付資料4)。
32  被告の紡績工場は、平成12年12月29日、閉鎖され、被告は、同日、組合に対して組合事務所の明渡しを要求したが(甲17の1、3)、組合は明渡しを拒否した(甲17の2)。
また、被告は、同日、被告の寮に住んでいた者に対し、寮を明け渡させ、被告が借り上げていた社宅に住んでいた者に対し、同日、それぞれ敷金、礼金を自ら支払って直接契約に切り替えることを求めた(被告代表者本人)。
被告は、平成13年1月5日、組合に対し、組合事務所の明渡しと18時に電源を切る旨を通告をした(甲17の4)。これに対し、組合は組合事務所使用の権利を主張したが(甲17の5)、電源を切られた(争いがない。)。
組合と被告との間の第6回団体交渉が、同年1月9日、被告からの申入れを受けて開かれたが、被告は、従前と同じ退職金の上積みを提示するのみであったので、組合はこれを拒否した(甲10の1、3、甲19添付資料4)。
被告は、同日、前記解雇予告の対象となっていなかった紡績部門の従業員に対し、同年2月20日付けをもって解雇する旨の本件解雇の意思表示をした。
被告は、同年1月15日、組合に使用させないため、組合事務所横の休憩室を封鎖した。これに対し、組合は書面によって抗議した(甲17の6)。
33  名古屋地方裁判所は、平成13年2月19日、再生計画案提出期限について同年3月26日までの延期を認めた(甲20)。
組合と被告との間の第7回団体交渉が、同年3月1日開かれ、組合は、被告に対し、解雇無効と未払賃金の支払を要求したが、被告はこれを拒否した(争いがない。)。
被告からの申入れを受けて労使だけの話し合い(単組労使交渉)が、同年3月19日に開かれたが、被告は裁判で決着したいと表明した(争いがない。)。
被告は、組合員らの退職金を供託することとし、その供託通知書が、同年3月23日、組合員に届いた(争いがない。)。
34  被告は、平成13年3月26日、再生計画案を提出した(争いがない。)。
35  債権者説明会が平成13年4月6日に開かれた。A監督委員立会いの下、債権者らに対して再生計画案が説明された(争いがない。)。
36  被告は、平成13年4月19日、修正再生計画案(甲21)を提出して、再生計画案の弁済計画を一部修正した。
37  原告らは、平成13年4月27日、名古屋地方裁判所に対し、本件訴えを提起した(当裁判所に顕著)。
38  A監督委員は、平成13年6月22日、報告書を作成した(甲25)。
その報告書には、本件訴訟の結果、被告が従業員に対して給与等の支払義務を負った場合、H会長も重畳的にその支払債務を引き受ける旨約定しており、したがって、被告が本件訴訟に敗訴しても、H会長は相当の資産を有していることから、同従業員に対する支払は可能であり、再生計画の実行見込みは否定できないという記載がある。
39  債権者集会が、平成13年6月26日、開かれた(争いがない。)。被告は、再生計画補正書(甲24)を提出し、再生計画の債権の弁済計画について、被告が本件訴訟の結果解雇従業員に対し何らかの金銭負担を負うこととなったときは、H会長が重畳的に当該債務を引き受けて支払うという条項を追加した。しかし、組合は弁護士を通じて再生計画案は承認できない旨の意見陳述をした(甲26)。
40  名古屋地方裁判所は、平成13年6月29日、再生計画認可の決定をした(争いがない。)。その決定書(甲27)には、被告には、再生手続上、法律の規定及びその趣旨に違反する行為が散見されたが、再生計画を不認可とするものとまでは認め難い、解雇した従業員との訴訟につき被告が債務負担を行うべきこととなった場合にはH会長が重畳的に債務を引き受けるものとしていることなどに照らすと、再生計画が遂行される見込みがないものとは認められない旨の記載がある。
第2  前記第3章「第1 争点1(整理解雇4要件の法的性質)」について
1  本件解雇において整理解雇4要件は適用されるか。
(1) いわゆる整理解雇とは、労働者に帰責性のない経営上の理由によってされる解雇をいい、事業の一部である部門閉鎖による一部解雇だけでなく、全事業の閉鎖に伴う全員解雇も含まれるものと解すべきである。
前記認定事実によれば、本件解雇は、労働者に帰責性はなく、紡績業の廃業という経営上の理由によってされた解雇であり、しかも、被告が破産手続を申し立て、破産宣告がされた結果、管財人による解雇が行われた場合とも異なるものである。そうすると、本件解雇は、整理解雇に当たり、これまでの判例法理によって形成されてきたいわゆる整理解雇法理が適用されると解される。
(2) これに対し、被告は、実質的には全員解雇の事案であり、整理解雇事案ではないと主張する。
しかし、前記のとおり、本件では、被告の紡績業に従事する従業員を解雇したが、不動産管理部門の従業員は解雇しなかったのであるし、仮に全員解雇の事案であったにせよ、それが従業員の帰責性によるものではない以上、整理解雇の概念に含まれることは否定できないから、被告の前記主張を採用することはできない。
2  整理解雇4要件と就業規則との関係
前記のとおり、被告は、就業規則19条5号所定の解雇事由である「事業の縮小、設備の変更等により剰員を生じたとき」又は同条6号所定の解雇事由である「その他各号に準ずるやむを得ない事由があるとき」に当たる旨を主張しているが、前記のとおり、本件解雇が整理解雇法理の適用を免れない以上、本件解雇が有効となるには、被告がこの解雇事由に当たることを主張立証しただけでは足りず、さらに、整理解雇法理の適用を受けて、その法理を充たすことが必要であると解される。
3  整理解雇4要件と呼ばれるものは要件か要素か。
(1) 整理解雇も解雇の一種であることに変わりはなく、結局当該解雇が権利の濫用(民法1条3項)に当たるか否かが問題となるものであり、従前の判例法理によって形成されてきた、第1人員削減の必要性、第2解雇回避努力の履践、第3被解雇者選定基準の合理性、第4解雇手続の妥当性といういわゆる整理解雇4要件と呼ばれるものは、そのいずれかを欠けば直ちに解雇が無効となるという意味での要件であるとはいえないというべきである。ただし、これらの整理解雇4要件と呼ばれるものは、これまでの裁判例の蓄積によって形成された法理であって、当該解雇が権利濫用に当たるかの判断をするに当たっては重要な要素となるというべきである。
(2) 原告らは、整理解雇の4要件と呼ばれるものは要件であると主張する。
しかし、整理解雇には、広く様々な事案のものが含まれるのであって、整理解雇の4要件と呼ばれるものを要件としてとらえると余りに硬直的になりすぎるから、これを採用することはできない。
4  整理解雇4要件に関する証明責任の分配
解雇に客観的で合理的な理由があることは、解雇する側、すなわち使用者の側で主張しなければならないが、整理解雇も解雇の一種であることには変わりがないから、その合理性を基礎付ける事実については、使用者の側が証明責任を負うというべきであり、整理解雇の4要素に相当する事実についても、前記第1要素から第3要素までは、解雇の合理性を基礎付けるものとして、使用者の側が証明責任を負うというべきである。
第3  前記第3章「第2 争点2(本件解雇につき、営業・人事・経理部門の数人を除く全員についての、人員削減の必要性)」について
被告は、本件においては、広巾・小巾部門のみならず半田工場全部門の全員について解雇の必要性があったと主張する。
1  証拠(乙1)によれば、被告の平成12年8月31日時点での同年度の営業利益が1億8707万4235円の赤字であり、当期利益が3億6175万9503円の赤字であったことが認められるが、これは、新たな賃借人を確保しなければ再建可能とならない被告の不動産部門や、価格競争力を回復できる見込みがなく、操業を続ければ続けるだけ営業損失が拡大する広巾・小巾部門も含めた収支であって、直ちに広巾・小巾部門以外の紡績業部門を含む半田工場全部門の事業を廃止して、これに従事している従業員全員を解雇する必要性があったことの根拠とはなるものではない。
2  もっとも、証拠(乙6、被告代表者本人)によれば、被告の売上総利益は、平成元年に6億1000万円、平成2年に6億2600万円、平成3年に4億6100万円、平成4年に4億9400万円、平成5年に2億2200万円、平成6年に1億8900万円、平成7年に800万円、平成8年は4100万円の赤字、平成9年は7300万円の赤字と減少しており、平成10年は会計上は1億0700万円の黒字であるが、減価償却費が前年に比べ1億3000万円ほど少なく計上されているため実質はマイナスであり、会計処理上は、平成11年度は3億2900万円、平成12年度は3億3100万円の黒字であるが、平成12年度も減価償却費は未計上のため約4億円を計上すれば同じくマイナスであること、被告の販売費及び一般管理費は平均で年間8億7800万円を要すること、被告の売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた営業利益は、平成元年度は3億5900万円の赤字、平成2年度は1億8700万円の赤字、平成3年度は6億3500万円の赤字、平成4年度は3億6800万円の赤字、平成5年度は6億2000万円の赤字、平成6年度は6億8400万円の赤字、平成7年度は8億8500万円の赤字、平成8年度は9億5600万円の赤字、平成9年度は9億08000万円の赤字、平成10年度は会計処理上は7億1200万円の赤字、平成11年度は3億7900万円の赤字、平成12年度は会計処理上1億9200万円の赤字であるというように、平成元年以降は赤字が続いていたことが認められ、これらに照らせば、被告の紡績業全体の採算性は極めて悪いものであったことが認められる。
3(1)  しかし、証拠(甲39、乙2)によれば、被告が試算した被告の平成12年1月から同年8月までの、紡績部門での収支は、売上高は6億0232万6932円に社内振替分4937万6839円を加えた額であり、これらから製造原価5億4575万7486円を控除した売上総利益は1億0594万6285円となり、これから一般管理費を控除した営業利益は85万8222円の赤字にすぎず、Cが修正した計算によっても、86万1036円の赤字にすぎなかったことが認められる。
(2)  被告は、上記の紡績部門の平成12年度1月から8月までの約86万円程度の赤字について、別紙「平成12年度1月から8月度 部所別収支(累計)」のとおり、9517万円の棚卸較差勘定が計上されており、この勘定を設けなければ営業利益は9602万円の赤字であり、現実的には採算点を大きく下回っていたと主張し、被告代表者本人もこれに沿うような供述をする。
これに対し、原告らは、被告の「棚卸較差勘定」に関する主張が、時機に後れた攻撃防御方法であるから却下されるべきであると主張する。
しかし、被告の「棚卸較差勘定」に関する主張は、既に取調べ済みの証拠に基づいてされたものであり、これについて新たな証拠調べ等を必要とするものではないから、「これにより訴訟の完結を遅延させることとなる」(民事訴訟法157条1項)とまでは認めることができない。
したがって、原告らの前記主張を採用することはできない。
ところで、証拠(乙14)及び弁論の全趣旨によれば、被告においては棚卸高は製造原価により算出されるが、平成11年1月から同年12月までの平成11年度の年度末において、製造原価により算出された「原材料」、「仕掛品」、「製品」の棚卸高は12億8810万余円であり、これに「貯蔵品」1億0883万余円を加えた合計13億9693万余円が、損益計算の際の「期末棚卸高」であり、かつ平成12年度の期首棚卸高となるが、被告は、平成11年度の「原材料」、「仕掛品」、「製品」の棚卸高について、市場価格(棒値)でも算出を行い、原価計算による棚卸高から市場価格による棚卸高を差し引いたものが「棚卸較差勘定」であることが認められ、この「棚卸較差勘定」は飽くまでも平成11年度末に存在した棚卸関係物品の市場価格下落分を集計したものにすぎず、平成12年1月から8月までの損益とは直接関係がないことなどに照らすと、被告の前記主張を採用することはできない。
4(1)  また、証拠(甲33、39)によれば、原告らが提出してその後に修正した「Y紡績再建計画案」及びそれに対するC作成の鑑定意見書において、広巾・小巾部門を除く被告の紡績業部門は、採算性を有するとされ、しかも、原告らは一定の賃金カットに応じる態度を示していることが認められる。
(2)  これに対し、被告は、原告らが提出してその後に修正した上記「Y紡績再建計画案」に対して次のとおりるる主張するが、いずれもたやすく採用することができない。
ア 被告は、原告らの再建計画案が、一般債権及び金融機関への返済計画が示されていないから不十分であると主張する。
しかし、一般債権及び金融機関への返済計画は当然債権者らとの具体的協議を経ながら決められるべきものであるし、原告らの再建計画案は一定の弁済原資が発生するとしているのであるから、返済計画が示されていないからといって直ちに不十分であるとはいえない。
イ 被告は、原告らの再建計画案に対し、預金は金融機関から相殺されるから利用可能資金とすることはできないとする。
しかし、前記のとおり、被告の取引金融機関は、被告の再生手続開始申立ての直後ではなく、被告が紡績業の廃業を決定した後に相殺をしているのであるから、金融機関と交渉の余地もなく預金は利用可能資金とすることができないとまでは認められない。
5  被告は、紡績業の将来性はないと主張する。また、証拠(乙12の1、被告代表者本人)によれば、愛知県内の紡績工場の大半が廃業していることが認められる。被告代表者も、「(我が国における紡績業が極めて困難な状況にあるということは、業界ではある意味皆さん共通の理解だったとお伺いしてよろしいですか。)ええ、もう全員がそれは痛感しておりました。しかし、ただ、残れば残り物に福があるかなというような気持ちがありましたから、私も残っておりましたけれども、中国の力はそういうもんじゃないということを痛感してから、中国の国有の工場を見に行ってましたから、国有の工場を見ておったときはまだまだ残れるかなあという気持ちもありましたけども、あれが民営になってからはもう問題にならんですね。」などとこれに沿う供述をする。原告X6も、「(皆さん自身も大変な業種なんだという意識はあったんではないの。)業種で言えば、当然そうだというのはもちろん分かっています。」と供述する。さらに、証拠(甲59の1、2、原告X6本人)によれば、被告の紡績業部門の主力製品は綿糸であるが、一般的には素材別で、綿、合成繊維、毛の順に、工程別では縫製、紡績、織布の順で必要な技術が高度化・複雑化するものであり、紡績産業の衰退、淘汰も素材別では綿や合成繊維、工程別では紡績で先行していたこと、紡績などのいわゆる川上分野は川下分野に比較して利益率が低いことが認められる。
しかし、証拠(甲56)によれば、愛知県内においてもなお稼働している工場は数社あることが認められるし、証拠(甲57の1、2)によれば、被告と同じく綿糸等を製造していた都築紡績株式会社が、会社更生手続において紡績業を継続する決定がされたことなどが認められ、これらに照らせば、紡績業の将来性が厳しいものであり、被告において、広巾・小巾部門のみならず紡績業全体の廃業を決定することに経営判断としての一定の合理性が認められるとしても、そこから直ちに紡績業部門の従業員を全員解雇する必要があったとまで認めることはできない。
6  以上のとおり、被告の紡績部門の平成12年1月から同年8月までの営業利益が86万円程度の赤字であったこと、原告らが提出しその後修正した「Y紡績再建計画案」の内容に照らせば、前記のとおり被告の紡績業部門全体が赤字続きであり、殊に広巾・小巾部門が廃業がやむを得ない状況にあったからといって、紡績業部門全体において相当程度の人員削減をする必要性があったことは認められるとしても、それを超えて、被告が平成12年12月末ないし平成13年2月の時点で、紡績業部門のほぼ全員について直ちにこれを解雇する必要性があったとまでたやすく認めることはできない。
7  また、仮に、被告の紡績業部門の全面的な閉鎖が不可避でありその従業員を全員解雇する必要性があったと認められたとしても、解雇が労働者にとって極めて不利益の大きい処分であることに照らせば、その必要性は財務資料等に基づいて慎重に検討されるべきであるが、証拠(被告代表者本人)によれば、H会長は、本件解雇をするに際し、他の取締役の反対を押し切り、再生裁判所やA監督委員に一切相談せず、自らの判断で行ったこと、被告の部門別に分かれた財務資料(乙2)は、原告らが平成13年10月5日付けでした文書提出命令の申立てを受けて作成しているなど本件解雇前に部門別の採算性等が検討されたことはないことなどが認められ、これらに照らせば、被告は、本件解雇をするに際し、紡績業部門全体の従業員全員を解雇する必要性について誠実に検討していないといえる。
第4  前記第3章「第3 争点3(解雇回避努力義務の履践ないし人員削減の手段として解雇を選択する必要性)」について
1  被告は、紡績業部門の全面的な閉鎖をせざるを得なかったのであるから、解雇は不可避であり、整理解雇4要件のいわゆる第2要件とされるものは適用されないと主張する。
しかし、前記のとおり、被告の紡績業部門の全面的な閉鎖が不可避でありその従業員を全員解雇する必要性があったとまでは認められないし、仮に紡績業部門の全面的な閉鎖が不可避であったとしても、解雇が労働者にとって極めて不利益が大きい処分であり、しかも本件解雇が100人を超える労働者を解雇するという規模の大きいものであることや、被告は破産手続を申し立てたものではなく、企業としての存続を図ったものであることなどに照らすと、被告は、希望退職募集、配置転換等の解雇回避努力義務を免れないというべきである。
したがって、被告の前記主張を採用することはできない。
2  被告は、前記のとおり、平成10年に人員整理をした以降、本件解雇に至るまで希望退職の募集はしていないし、不動産部門や関連会社への配置転換の可能性について検討すらしていないのであるから、被告は解雇回避努力義務を怠ったといわざるを得ない。
3  被告は、不動産部門は契約管理のための事務部門であり、紡績業等の大量の人員を吸収することはもとより不可能であると主張する。
しかし、そもそも被告はこの配置転換による解雇の回避について検討すらしていないのであって、不動産部門において紡績業部門の大量の人員をすべて吸収することはできないとしても、本件解雇の対象とされた原告らのうち不動産部門等への配置転換等により解雇を免れる可能性がある者が一人でも存する以上、その可能性について被解雇者全員の関係でこれを検討しなければならないものというべきである。
第5  前記第3章「第4 争点4(被解雇者選定基準とその運用の合理性)」について
被告は、本件解雇は事業所閉鎖に伴うものでありやむを得ないものであったから、整理解雇のいわゆる第3要件は本件解雇には適用されないと主張する。
しかし、前記のとおり、被告の紡績業部門の全面的な閉鎖が不可避であったとまでは認められないし、仮にこれが認められたとしても、前記のとおり、被告は、配置転換等といった解雇を回避する方策を採る努力をすべきであったから、それらの方策を尽くしたとしてもなお、一部の者については解雇せざるを得ない状況にあったのであれば、被告としては当然被解雇者を合理的な方法によって選定すべき義務を負うことになるというべきである。
しかし、被告はこれを怠ったものであるといわざるを得ない。
第6  前記第3章「第5 争点5(本件解雇手続の妥当性の有無)」について
1  被告は、本件解雇は事業所の閉鎖に伴うものであったのであり、事業の閉鎖はやむを得なかったから、整理解雇のいわゆる第4要件は本件解雇には適用されないと主張する。
しかし、前記のとおり、被告の紡績業部門の全面的な閉鎖が不可避であったとまでは認められないし、仮に、これが認められたとしても、解雇は労働者にとって極めて不利益の大きい処分であり、しかも、本件解雇が100人を超える労働者を解雇するという規模の大きいものであることや、被告は破産手続を申し立てたものではなく、企業としての存続を図ったものであることなどに照らすと、被告は、解雇の必要性等を原告ら従業員や組合に対して誠実に説明すべき義務を負っていたというべきである。
したがって、被告の前記主張を採用することはできない。
2  前記のとおり、原告ら従業員と組合は、H会長が半田市長選に立候補したときの選挙活動に協力したり、場外馬券売り場の誘致活動にも協力するなど、被告に協力的で被告との関係は良好であった。しかるに、被告は、原告ら従業員や組合とは全く事前に相談することなく、再生手続を申し立てたものであり、しかも、被告は、再生手続開始決定申立て時や第1回債権者集会においては、紡績業を継続すると明言していたにもかかわらず、再生裁判所による再生手続開始決定がされるや否や前言を翻して、紡績業を全面的に廃業し、紡績業部門の従業員のほぼ全員を解雇するに至ったものである。これはこれまで原告ら従業員や組合との間に築かれてきた信頼関係を裏切るものであるし、被告は、原告らや組合に対し、本件解雇に至るまで財務資料を開示していないこと、H会長自身は、当初から紡績業部門の従業員全員の解雇をするつもりであったことなどに照らすと、被告の行った解雇手続は著しく妥当性を欠いたものというべきである。
第7  以上のとおり、本件解雇は、解雇した従業員が100人を超える大規模なものであるにもかかわらず、H会長がその独断で行ったものであり、かつ、その判断は、民事再生法等に違反する不正がないかを監督するにすぎないA監督委員やその補助者であるB公認会計士の意見を強引に自己の見解の裏付けとして解釈し、いわばそれらを口実にしてされたものであって、いわゆる整理解雇法理の第1要素を完全には充足していないばかりか、第2要素、第3要素及び第4要素については全くこれを充たしておらず、しかも、その検討すら全く行っていないものである。したがって、本件解雇は、これまで裁判例等により形成されてきた整理解雇法理をないがしろにするものであって、極めて乱暴な解雇であるといわざるを得ず、解雇権の濫用に当たり無効というべきである。
第8  前記第3章「第6 争点6(本件解雇が無効であった場合の賃金請求に対する予備的主張)」について
1  定年(抗弁1)
前記争いのない事実等によれば、別紙「請求額一覧表(2)」記載の原告らは、本件解雇時に既に定年である60歳を超えていたが、これらについては、60歳定年制度の効力が生じた後に、被告が再雇用していたものと認めざるを得ず、定年制の効力は及ばないと解されるから、本件解雇後の賃金請求権を失わないと認められる。
2  労務提供(抗弁2)
被告は、本件解雇後、他に就労した者は、被告に対し、労働力を提供することは不可能であるから、賃金請求権はないと主張する。
しかし、被告は、原告らのうち「他に就労した者」を特定していないし、これを認めるに足りる証拠もないから、この主張を採用することはできない。
3  中間収入の控除(抗弁3)
被告は、労働力の提供不能が被告の責めに帰すべき事由によるとしても、本件解雇後、他に就労して賃金を得ている者は、収受した賃金相当額を民法536条2項ただし書所定の「利益」として被告に償還すべき義務を負うと主張する。
しかし、被告は、原告らのうち「他に就労した者」とその収入額を特定していないし、これを認めるに足りる証拠もないから、この主張を採用することはできない。
第9  前記第3章「第7 争点7(臨時・パート従業員であった者の処遇)」について
1  被告は、臨時・パートであった従業員については、正社員と同一の待遇でなく、臨時社員就業規則10条によれば、30日前の予告若しくは予告手当をもってするものと定めており、本件解雇はこれに準拠しているから有効であると主張する。
しかし、証拠(甲50、原告X6本人)によれば、被告には、男女それぞれ正社員、臨時・パート従業員がいたが、平成12年の時点で半田工場においては、女性の臨時・パート従業員が63人、男性の正社員が52人、女性の正社員が22人、男性の臨時・パート従業員その他が6人と、臨時・パート従業員が、従業員の半数以上を占めていたのであるし、臨時・パート従業員の勤務実態は、毎日ほぼ8時間勤務であり、半田学園に通学していた女性の正社員よりも勤務時間が長かったことが認められ、これに照らすと、臨時・パート従業員は、正社員とは別に、解雇予告手当を支払えば自由に解雇できると解することはできない。
したがって、被告の前記主張を採用することはできない。
2  定年制、労務提供及び中間収入の控除に関する主張についても、前記第8の1から3までと同じである。
第10  認容額等
1  労働契約上の権利を有する地位にあることの確認請求について
(1) 前記のとおり、本件解雇は無効であるところ、前記争いのない事実等のとおり、別紙「請求額一覧表(3)」記載の原告らについては、本件解雇時には60歳未満であったが、本件口頭弁論終結時には60歳を超えていたものであり、60歳の定年制により既に労働契約上の権利を有する地位を喪失したものと認められる。
(2) 原告X2については、前記争いのない事実等のとおり、被相続人である亡X1が平成13年7月25日に死亡しており、労働契約上の地位は一身専属的なもので相続の対象とならないから(民法896条ただし書)、原告X2が労働契約上の権利を承継することはない(最高裁判所平成元年9月22日第2小法廷判決参照)。
(3) 原告X3、原告X4及び原告X5については、前記争いのない事実等のとおり、本件解雇時には60歳未満であったが、本件訴え提起時には60歳を超えていたものであり、60歳の定年制により既に労働契約上の権利を有する地位を喪失したものと認められる。
(4) その余の原告らについては、本件解雇が無効であることにより、被告に対して労働契約上の権利を有する地位にあるものと認められる。
2  賃金請求について
(1) 別紙「請求額一覧表(1)」記載の原告らについて
前記争いのない事実等のとおり、上記原告らは、本件口頭弁論終結時である平成16年12月3日時点で60歳未満であったと認められる。
ア 本件訴え提起までの賃金
(ア) 平成12年12月29日に解雇された原告番号81までの原告ら
前記争いのない事実等によれば、この原告らが、平成12年12月30日から本件訴え提起の直前の締切日である平成13年4月15日までの3.54か月分の内金として、別紙「請求額一覧表(1)」の「未払額(円)」欄記載の賃金債権を有することが認められる。
(イ) 平成13年2月20日に解雇された原告番号86以降の原告ら
前記争いのない事実等によれば、この原告らが、平成13年2月21日から同年4月15日分までの1.82か月分の賃金の内金として、別紙「請求額一覧表(1)」の「未払額(円)」欄記載の賃金債権を有することが認められる。
イ 本件訴え提起後の賃金
前記争いのない事実等によれば、この原告らが、本件訴え提起後の賃金として、本件訴え提起後の最初の月の賃金の支払日である平成13年5月28日から本判決確定の日(ただし、本判決確定の日までに別紙「請求額一覧表(1)」の「60歳誕生日」欄の日が到来する者は、その前月の28日)まで、毎月28日を支払日とする別紙「請求額一覧表(1)」の「月額(円)」欄記載の賃金債権を有することが認められる。
(2) 別紙「請求額一覧表(2)」記載の原告らについて
前記のとおり、上記原告らは、本件解雇時に既に60歳以上の者であり、再雇用されていたと認められるものである。
ア 本件訴え提起までの賃金
(ア) 平成12年12月29日に解雇された原告番号84までの原告ら
前記争いのない事実等によれば、この原告らが、平成12年12月30日から本件訴え提起の直前の締切日である平成13年4月15日までの3.54か月分の内金として、別紙「請求額一覧表(2)」の「未払額(円)」欄記載の賃金債権を有することが認められる。
(イ) 平成13年2月20日に解雇された原告番号88以降の原告ら
前記争いのない事実等によれば、この原告らが、平成13年2月21日から同年4月15日分までの1.82か月分の賃金の内金として、別紙「請求額一覧表(2)」の「未払額(円)」欄記載の賃金債権を有することが認められる。
イ 本件訴え提起後の賃金
前記争いのない事実等によれば、この原告らが、本件訴え提起後の賃金として、本件訴え提起後の最初の月給の支払日である平成13年5月28日から本判決確定の日まで、毎月28日を支払日とする別紙「請求額一覧表(2)」の「月額(円)」欄記載の賃金債権を有することが認められる。
(3) 別紙「請求額一覧表(3)」記載の原告らについて
前記のとおり、上記原告らは、本件解雇時には60歳未満であったが、本件口頭弁論終結時である平成16年12月3日には60歳を超えていたものである。
ア 本件訴え提起までの賃金
(ア) 平成12年12月29日に解雇された原告番号82までの原告ら
前記争いのない事実等によれば、この原告らが、平成12年12月30日から本件訴え提起の直前の締切日である平成13年4月15日までの3.54か月分の内金として、別紙「請求額一覧表(3)」の「未払額(円)」欄記載の賃金債権を有することが認められる。
(イ) 平成13年2月20日に解雇された原告番号89以降の原告ら
前記争いのない事実等によれば、この原告らが、平成13年2月21日から同年4月15日分までの1.82か月分の賃金の内金として、別紙「請求額一覧表(3)」の「未払額(円)」欄記載の賃金債権を有することが認められる。
イ 本件訴え提起後の賃金
前記争いのない事実等によれば、この原告らが、本件訴え提起後の賃金として、本件訴え提起後に支払日が到来する平成13年4月16日から別紙「請求額一覧表(3)」の「60歳誕生日」欄記載の年月日の前月15日までの「月数」欄記載の月数に毎月の支払額である「月給(円)」欄記載の額を乗じた賃金債権を有することが認められる。
ウ 以上によれば、別紙「請求額一覧表(3)」記載の原告らは、前記ア及びイの合計額である別紙「請求額一覧表(3)」の「請求額」欄記載の賃金債権を有することが認められる。
(4) 60歳となる前に死亡した亡X1の承継人である原告X2について
前記争いのない事実等のとおり、亡X1は、60歳となる前の平成13年7月25日に死亡した。
ア 本件訴え提起までの賃金
前記争いのない事実等によれば、亡X1の月給は22万9600円であり、亡X1が、平成12年12月30日から本件訴え提起の直前の締切日である平成13年4月15日までの3.54か月分の内金として67万4484円の賃金債権を有していたことが認められる。
イ 本件訴え提起後死亡までの賃金
前記争いのない事実等によれば、亡X1が、少なくとも平成13年4月16日から平成13年7月15日までの3か月分の68万8800円の賃金債権を有していたことが認められる。
ウ 以上によれば、亡X1は、上記ア及びイの合計136万3284円の賃金債権を有していたものであり、これを原告X2が承継取得したことが認められる。
(5) 本件解雇後本件訴え提起前に60歳となった者について
ア 原告X3
前記争いのない事実等によれば、原告X3は、平成12年12月29日に解雇され、平成13年○月○日に60歳となったから、12日分の賃金債権を有しており、同原告の月給は16万5521円であったから、同原告は、少なくとも6万4072円の賃金債権を有することが認められる。
16万5521円÷31日×12日=6万4072.64・・・円
イ 原告X4
前記争いのない事実等によれば、原告X4は、平成12年12月29日に解雇され、平成13年○月○日に60歳となったから、同原告は、平成12年12月30日から平成13年1月15日までの17日分、同月16日から同年3月15日までの2月分、同月16日から同月25日までの10日分の賃金債権を有しており、同原告の月給は14万4191円であったから、同原告は、41万3967円の賃金債権を有することが認められる。
14万4191円÷31日×17日=7万9072.48・・・円≒7万9072円
14万4191円×2か月=28万8382円
14万4191円÷31日×10日=4万6513.22・・・円≒4万6513円
7万9072円+28万8382円+4万6513円=41万3967円
ウ 原告X5
前記争いのない事実等によれば、原告X5は、平成13年2月20日に解雇され、同年○月○日に60歳となったから、同年2月21日から同年3月15日までの23日分、同月16日から同年4月8日までの24日分の賃金債権を有し、同原告の月給は13万9072円であったから、同原告は、少なくとも20万8608円の賃金債権を有することが認められる。
13万9072円÷28日×23日=11万4237.71・・・≒11万4238円
13万9072円÷31日×24日=10万7668.64・・・≒10万7669円
11万4238円+10万7669円=22万1907円
第5章  結論
よって、原告らの請求は、別紙「請求額一覧表(3)」記載の原告ら、原告X2、原告X3、原告X4及び原告X5の労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める請求と原告X4の賃金請求のうち4848円の支払を求める部分の請求は理由がないが、その余はいずれも理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用は全部を被告の負担とするのを相当と認め、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 橋本昌純 裁判官 上村考由 裁判官 鈴木基之)


「選挙 コンサルタント」に関する裁判例一覧
(1)令和元年 9月 6日 大阪地裁 令元(わ)2059号 公職選挙法違反被告事件
(2)平成31年 3月 7日 知財高裁 平30(行ケ)10141号 審決取消請求事件
(3)平成30年12月18日 高知地裁 平28(行ウ)8号 損害賠償請求及び公金支出差止請求事件
(4)平成30年 9月28日 東京地裁 平26(ワ)10773号 損害賠償請求事件(本訴)、損害賠償請求反訴事件(反訴)
(5)平成30年 6月 6日 東京高裁 平29(ネ)2854号 株主代表訴訟控訴事件
(6)平成30年 4月25日 東京地裁 平28(ワ)31号 証書真否確認、立替金等返還債務不存在確認等請求事件、立替金返還請求反訴事件、立替金請求反訴事件
(7)平成30年 3月30日 東京地裁 平27(ワ)37147号 損害賠償請求事件
(8)平成30年 3月28日 東京地裁 平27(行ウ)616号 閲覧謄写請求事件
(9)平成30年 3月26日 東京地裁立川支部 平28(ワ)2678号 損害賠償請求事件
(10)平成30年 2月 8日 仙台高裁 平29(行コ)5号 政務調査費返還履行等請求控訴事件、同附帯控訴事件
(11)平成29年 5月22日 東京地裁 平28(特わ)807号 公職選挙法違反被告事件
(12)平成29年 3月28日 東京地裁 平25(ワ)28292号 謝罪広告等請求事件
(13)平成29年 3月 8日 東京地裁 平26(行ウ)300号 地位確認等請求事件
(14)平成29年 2月 2日 東京地裁 平26(ワ)25493号 株式代金等請求事件(本訴)、損害賠償請求反訴事件(反訴)
(15)平成29年 1月31日 仙台地裁 平25(行ウ)11号 政務調査費返還履行等請求事件
(16)平成28年 9月16日 福岡高裁那覇支部 平28(行ケ)3号 地方自治法251条の7第1項の規定に基づく不作為の違法確認請求事件
(17)平成28年 9月 2日 福岡高裁 平28(う)180号 入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反、公契約関係競売入札妨害、加重収賄被告事件
(18)平成28年 4月22日 新潟地裁 平25(行ウ)7号 政務調査費返還履行請求事件
(19)平成28年 3月30日 東京地裁 平21(行ウ)288号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(20)平成28年 3月17日 東京地裁 平26(ワ)23904号 地位確認等請求事件
(21)平成28年 3月17日 福岡地裁 平26(わ)1215号 入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反,公契約関係競売入札妨害,加重収賄被告事件
(22)平成28年 3月17日 福岡地裁 平26(わ)968号 入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反、公契約関係競売入札妨害、加重収賄被告事件
(23)平成27年 4月22日 東京地裁 平25(行ウ)792号 土地区画整理組合設立認可取消等請求事件
(24)平成27年 2月19日 東京地裁 平25(ワ)19575号 遺言無効確認請求事件、不当利得返還請求事件
(25)平成26年10月27日 熊本地裁 平23(行ウ)9号 損害賠償履行請求事件
(26)平成26年10月20日 東京地裁 平25(ワ)8482号 損害賠償請求事件
(27)平成26年 2月28日 東京地裁 平25(ヨ)21134号 配転命令無効確認仮処分申立事件 〔東京測器研究所(仮処分)事件〕
(28)平成26年 2月26日 東京地裁 平24(ワ)10342号 謝罪広告掲載等請求事件
(29)平成25年 1月29日 和歌山地裁 平19(行ウ)7号 政務調査費違法支出金返還請求事件
(30)平成24年 5月28日 東京地裁 平24(ヨ)20045号 職務執行停止・代行者選任等仮処分命令申立事件
(31)平成23年 8月31日 東京地裁 平22(行ウ)24号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(32)平成22年 7月22日 東京地裁 平20(ワ)15879号 損害賠償請求事件
(33)平成21年10月14日 東京高裁 平20(う)2284号
(34)平成21年 7月28日 東京地裁 平18(ワ)22579号 請負代金請求事件
(35)平成21年 4月28日 大阪地裁 平19(わ)4648号 談合被告事件
(36)平成21年 4月28日 大阪地裁 平19(わ)3456号 談合、収賄被告事件
(37)平成21年 3月27日 宮崎地裁 平18(わ)526号 競売入札妨害、事前収賄、第三者供賄被告事件
(38)平成21年 3月 3日 東京地裁 平19(ワ)10972号 謝罪広告等請求事件
(39)平成21年 3月 3日 水戸地裁 平18(行ウ)7号 小型風力発電機設置事業に係わる損害賠償請求事件
(40)平成21年 3月 2日 東京地裁 平20(ワ)6444号 売上代金請求事件
(41)平成20年10月31日 大阪地裁 平17(行ウ)3号 損害賠償請求、不当利得金返還請求事件(住民訴訟) 〔枚方市非常勤職員特別報酬住民訴訟〕
(42)平成20年 9月29日 東京地裁 平18(ワ)7294号 損害賠償請求事件 〔つくば市 対 早稲田大学 風力発電機事件・第一審〕
(43)平成20年 9月 9日 東京地裁 平18(ワ)18306号 損害賠償等請求事件
(44)平成20年 8月 8日 東京地裁 平18(刑わ)3785号 収賄、競売入札妨害被告事件〔福島県談合汚職事件〕
(45)平成20年 5月27日 東京地裁 平18(ワ)24618号 損害賠償請求事件
(46)平成20年 3月27日 東京地裁 平18(ワ)18305号 損害賠償等請求事件
(47)平成20年 1月18日 東京地裁 平18(ワ)28649号 損害賠償請求事件
(48)平成19年11月 2日 東京地裁 平19(ワ)4118号 損害賠償請求事件
(49)平成19年 3月13日 静岡地裁沼津支部 平17(ワ)21号 損害賠償請求事件
(50)平成17年11月18日 和歌山地裁 平15(わ)29号 収賄、背任被告事件
(51)平成17年 8月29日 東京地裁 平16(ワ)667号 保険金請求事件
(52)平成17年 7月 6日 東京地裁 平17(ワ)229号 請負代金等請求事件
(53)平成17年 5月31日 東京高裁 平16(ネ)5007号 損害賠償等請求控訴事件
(54)平成17年 5月24日 岡山地裁 平8(行ウ)23号 損害賠償等請求事件
(55)平成17年 2月23日 名古屋地裁 平13(ワ)1718号 労働契約上の地位確認等請求事件 〔山田紡績事件〕
(56)平成17年 2月22日 福島地裁郡山支部 平14(ワ)115号 損害賠償請求事件
(57)平成16年 9月 9日 名古屋地裁 平15(行ウ)34号 損害賠償請求事件
(58)平成16年 8月10日 青森地裁 平15(ワ)32号 名誉毀損に基づく損害賠償請求事件
(59)平成16年 5月28日 東京地裁 平5(刑わ)2335号 贈賄被告事件 〔ゼネコン汚職事件〕
(60)平成15年11月26日 大阪地裁 平14(行ウ)186号 不当労働行為救済命令取消請求事件 〔大阪地労委(大阪ローリー運輸労組・双辰商会)事件・第一審〕
(61)平成15年 7月28日 東京地裁 平14(ワ)21486号 損害賠償請求事件
(62)平成15年 4月10日 大阪地裁 平12(行ウ)107号 埋立不許可処分取消請求事件
(63)平成15年 3月 4日 東京地裁 平元(刑わ)1047号 日本電信電話株式会社法違反、贈賄被告事件 〔リクルート事件(政界・労働省ルート)社長室次長関係判決〕
(64)平成15年 2月20日 広島高裁 平14(う)140号 背任被告事件
(65)平成15年 1月29日 広島地裁 平12(ワ)1268号 漁業補償金支払に対する株主代表訴訟事件 〔中国電力株主代表訴訟事件・第一審〕
(66)平成14年10月10日 福岡地裁小倉支部 平11(ワ)754号 損害賠償請求事件
(67)平成14年10月 3日 新潟地裁 平13(行ウ)1号 仮換地指定取消請求事件
(68)平成14年 5月13日 東京地裁 平13(ワ)2570号 謝罪広告等請求事件
(69)平成13年 7月18日 大阪地裁 平12(ワ)4692号 社員代表訴訟等、共同訴訟参加事件 〔日本生命政治献金社員代表訴訟事件〕
(70)平成12年 8月24日 東京地裁 平10(ワ)8449号 損害賠償等請求事件
(71)平成12年 3月14日 名古屋高裁 平10(う)249号 収賄、贈賄被告事件
(72)平成12年 2月18日 徳島地裁 平7(行ウ)13号 住民訴訟による原状回復等請求事件
(73)平成10年 4月20日 大阪地裁 平6(ワ)11996号 損害賠償請求事件 〔誠光社事件・第一審〕
(74)平成10年 3月31日 東京地裁 平7(ワ)22711号 謝罪広告請求事件
(75)平成10年 3月26日 名古屋地裁 平3(ワ)1419号 損害賠償請求事件 〔青春を返せ名古屋訴訟判決〕
(76)平成 9年10月24日 最高裁第一小法廷 平7(あ)1178号 法人税法違反被告事件
(77)平成 9年 3月21日 東京地裁 平5(刑わ)2020号 収賄、贈賄等被告事件 〔ゼネコン汚職事件(宮城県知事ルート)〕
(78)平成 8年 2月14日 東京高裁 平6(う)342号 法人税法違反被告事件
(79)平成 7年 9月20日 福岡地裁 平5(行ウ)17号 地方労働委員会命令取消請求事件 〔西福岡自動車学校救済命令取消等事件〕
(80)平成 7年 2月23日 最高裁第一小法廷 平5(行ツ)99号 法人税更正処分等取消請求上告事件
(81)平成 6年12月21日 東京地裁 平元(刑わ)1048号 日本電信電話林式会社法違反、贈賄被告事件 〔リクルート事件政界ルート判決〕
(82)平成 6年 5月 6日 奈良地裁 昭60(わ)20号 法人税法違反被告事件
(83)平成 5年 3月16日 札幌地裁 平元(わ)559号 受託収賄被告事件 〔北海道新長計汚職事件〕
(84)平成 2年 8月30日 福岡地裁 昭58(ワ)1458号 損害賠償請求事件
(85)平成 2年 4月25日 東京高裁 昭63(う)1249号 相続税法違反被告事件
(86)平成 2年 3月30日 広島地裁呉支部 昭59(ワ)160号 慰謝料請求事件
(87)平成元年 3月27日 東京地裁 昭62(特わ)1889号 強盗殺人、死体遺棄、通貨偽造、銃砲刀剣類所持等取締法違反、火薬類取締法違反、強盗殺人幇助、死体遺棄幇助被告事件 〔板橋宝石商殺し事件・第一審〕
(88)昭和63年11月 2日 松山地裁 昭59(行ウ)4号 織田が浜埋立工事費用支出差止請求訴訟第一審判決
(89)昭和62年 7月29日 東京高裁 昭59(う)263号 受託収賄、外国為替及び外国貿易管理法違反、贈賄、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律違反被告事件 〔ロッキード事件丸紅ルート・控訴審〕
(90)昭和62年 2月19日 東京高裁 昭61(ネ)833号 損害賠償等請求控訴事件 〔総選挙当落予想表事件〕
(91)昭和61年 6月23日 大阪地裁 昭55(ワ)5741号
(92)昭和61年 3月31日 大阪地裁 昭59(ヨ)5089号
(93)昭和60年 9月26日 東京地裁 昭53(行ウ)120号 権利変換処分取消請求事件
(94)昭和60年 3月26日 東京地裁 昭56(刑わ)288号 恐喝、同未遂被告事件 〔創価学会恐喝事件〕
(95)昭和60年 3月22日 東京地裁 昭56(特わ)387号 所得税法違反事件 〔誠備グループ脱税事件〕
(96)昭和59年12月19日 那覇地裁 昭58(ワ)409号 損害賠償請求事件
(97)昭和58年10月12日 東京地裁 昭51(特わ)1948号 受託収賄、外国為替及び外国貿易管理法違反、贈賄、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律違反事件 〔ロッキード事件(丸紅ルート)〕
(98)昭和56年 9月 3日 旭川地裁 昭53(ワ)359号 謝罪広告等請求事件
(99)昭和55年 7月24日 東京地裁 昭54(特わ)996号 外国為替及び外国貿易管理法違反、有印私文書偽造、有印私文書偽造行使、業務上横領、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律違反事件 〔日商岩井不正事件(海部関係)判決〕
(100)昭和52年 9月30日 名古屋地裁 昭48(わ)2147号 商法違反、横領被告事件 〔いわゆる中日スタジアム事件・第一審〕
(101)昭和50年10月 1日 那覇地裁 昭49(ワ)51号 損害賠償請求事件 〔沖縄大蔵興業工場建設協力拒否事件・第一審〕


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④政治活動用事前街頭ポスターの新規掲示交渉→→→ポスター掲示(貼付)許可交渉は、完全成果報酬|完全成功報酬
⑤掲示(貼付)交渉後における、掲示許可承諾者に対してのフォローおよびクレーム対応→→→完全無料
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