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「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(82)平成 6年 5月 6日 奈良地裁 昭60(わ)20号 法人税法違反被告事件

「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(82)平成 6年 5月 6日 奈良地裁 昭60(わ)20号 法人税法違反被告事件

裁判年月日  平成 6年 5月 6日  裁判所名  奈良地裁  裁判区分  判決
事件番号  昭60(わ)20号
事件名  法人税法違反被告事件
裁判結果  有罪  上訴等  控訴  文献番号  1994WLJPCA05066001

要旨
〔判示事項〕
◆(1) 所得隠匿工作は、相被告人が被告人に無断で行っていたものであり、被告人は、所得隠匿工作にまったく関与していなかったし、そのような行為が行われていることも知らなかったとの主張を排斥した事例
◆(2) 個々の勘定科目や個別的な会計処理についての犯意はなかったとの被告人主張を排斥した事例
◆(3) 訴外人に支払った金員は乾燥台車等の取得価額であり、これは少額減価償却資産(法人税法施行令一三三条)に該当し、資産計上する必要がないもので、被告会社がこれを材料費として損金処理したのは相当であるとの被告人主張を排斥した事例
◆(4) 被告人らの自宅建築費用等と認定されたものの中には、被告会社の経費として認容されるべきものがあるとの被告人主張を排斥した事例
◆(5) 簿外で従業員に給料を支払っていたとの被告人主張を排斥した事例
◆(6) 被告会社が購入した商品券、ビール券は、広告宣伝費や福利厚生費又は支払手数料として使用したものであり、交際費にはあたらないとの被告人主張を排斥した事例
◆(7) 税理士に交付した金地金、床柱は、税務処理等の支払手数料であるとの被告人主張を排斥した事例
◆(8) 被告会社の公表交際費の中には、福利厚生費等として認容されるものがあるとの被告人主張を排斥した事例
◆(9) 被告会社の固定資産除却損の処理は相当であり、またそれ以外にも計上されるべき固定資産除却損が存するとの被告人主張を排斥した事例
〔判決要旨〕
◆(2) 真実の所得を秘匿し、所得金額をことさら過少に記載した法人税確定申告書を税務署長に提出する行為は、それ自体法人税法一五九条一項にいう「偽りその他不正の行為」に当たり(最高裁昭和四八年三月二〇日第三小法廷判決・刑集二七巻二号一三八頁、同昭和六三年九月二日第三小法廷判決・刑集四二巻七号九七五頁等参照)、虚偽過少申告による法人税ほ脱犯の故意としては、真実の所得に比して過少な所得額に基づいて過少な税額を算出し、その記載のある確定申告書を提出することの認識があれば十分であり、申告書の作成及びそれに至るまでの架空経費の計上、帳簿の改竄等の所得隠匿行為は、租税ほ脱のための内部的準備行為であって、これらについて逐一認識していることまでは必要ではないというべきである。したがって、被告人に個々の架空計上額や正確な所得について認識に欠けるところがあったとしても、同被告人において申告額が実際の所得額より過少であることの認識を有していたことは優に認められるから、本件各ほ脱額全体についてほ脱犯が成立するというべきである。
◆○ 再犯につき実刑判決が言い渡された事例

出典
税資 217号808頁

裁判年月日  平成 6年 5月 6日  裁判所名  奈良地裁  裁判区分  判決
事件番号  昭60(わ)20号
事件名  法人税法違反被告事件
裁判結果  有罪  上訴等  控訴  文献番号  1994WLJPCA05066001

本店所在地 奈良市南京終町四丁目二四七番地
草竹コンクリート工業株式会社
(右代表者代表取締役 草竹杉晃)
本籍 奈良市西木辻町一三二番地
住居 奈良市南京終町四丁目二四七番地
会社役員 草竹杉晃
昭和九年一一月一二日生
本籍 奈良市西木辻町一三二番地
住居 奈良市南京終町四丁目二四七番地
無職(元会社役員) 草竹晴美
昭和一二年一月一七日生

右三名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官栗坂満及び弁護人高階叙男各出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

 

 

主文

被告人会社草竹コンクリート工業株式会社を罰金一億円に処する。
被告人草竹杉晃及び同草竹晴美をそれぞれ懲役一年六月に処する。
被告人草竹杉晃に対し、未決勾留日数中六〇日をその刑に算入する。
被告人草竹晴美に対し、この裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人らの連帯負担とする。

 

 

理由

(罪となるべき事実)
被告人草竹コンクリート工業株式会社(以下「被告会社」という。)は、奈良市南京終町四丁目二四七番地に本店を置き、各種コンクリート製品の製造販売等を業とするもの、被告人草竹杉晃(以下「被告人杉晃」という。)は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統轄しているもの、被告人草竹晴美(以下「被告人晴美」という。)は、被告会社の取締役として同会社の経理事務に従事していたものであるが、被告人杉晃及び同晴美は、被告会社の業務に関し、その所得を秘匿して法人税を免れようと企て、共謀のうえ、
第一  昭和五六年八月一日から昭和五七年七月三一日までの事業年度(以下「昭和五七年七月期」という。)における所得金額は一〇億六九八五万六五三九円(別紙1修正損益計算書(一)参照)、これに対する法人税額は四億四三八六万一四〇〇円(別紙2税額計算書(一)参照)であるのに、公表経理上、売上の一部を除外するほか、架空の仕入れを計上し、これによって得た資金を割引債券等として留保するなどの行為により、その所得金額のうち五億七三九二万五四六六円を秘匿したうえ、昭和五七年九月三〇日、奈良市登大路町八一番地所在の所轄奈良税務署において、同署長に対し、所得金額が四億九五九三万一〇七三円、これに対する法人税額が二億〇二八一万七三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限である同日を徒過させ、もって、不正行為により被告会社の右事業年度の正規の法人税額四億四三八六万一四〇〇円との差額二億四一〇四万四一〇〇円を免れ、
第二  昭和五七年八月一日から昭和五八年七月三一日までの事業年度(以下「昭和五八年七月期」という。)における所得金額は九億三八四八万五二九〇円(別紙1修正損益計算書(二)参照)、これに対する法人税額は三億八九五三万五二〇〇円(別紙2税額計算書(二)参照)であるのに、前記と同様の手段により、その所得金額のうち一億八一八七万一〇三〇円を秘匿したうえ、昭和五八年九月二九日、前記奈良税務署において、同署長に対し、所得金額が七億五六六一万四二六〇円、これに対する法人税額が三億一三一五万〇五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限である同月三〇日を徒過させ、もって、不正行為により被告会社の右事業年度の正規の法人税額三億八九五三万五二〇〇円との差額七六三八万四七〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)(括弧内の検番号は、証拠等関係カード記載の検察官請求の証拠番号を、弁番号は同カード記載の弁護人請求の証拠番号をそれぞれ示す。)
判示事実全部について
一  被告人杉晃の
1 当公判廷における供述(第八六回、第八八回ないし第九〇回公判期日におけるもの)
2 第一回及び第二回公判調書中の各供述部分
3 検察官に対する供述調書一〇通(検三二一ないし三三〇)
4 大蔵事務官に対する質問てん末書九通(検三一二ないし三二〇)
一  被告人晴美の
1 当公判廷における供述(第七九回ないし第八六回、第九〇回公判期日におけるもの)
2 第一回及び第二回公判調書中の各供述部分
3 検察官に対する供述調書一一通(検三三九ないし三四九)
4 大蔵事務官に対する質問てん末書八通(検三三一ないし三三八)
一  第三回公判調書中の証人濱崎克雄、同西田由美及び同平尾明日子の各供述部分
一  第四回公判調書中の証人増田澄子及び同安井正生の各供述部分
一  第五回公判調書中の証人中田雅之及び同小林俊一の各供述部分
一  第六回公判調書中の証人荒井稔の供述部分
一  第七回公判調書中の証人中島経郎及び同松山寿一の各供述部分
一  第八回公判調書中の証人西野達治の供述部分
一  第八回ないし第一〇回、第一二回ないし第一四回、第五七回ないし第五九回公判調書中の証人新屋昇の各供述部分
一  第一五回及び第十六回公判調書中の証人守岡貞夫の各供述部分
一  第一七回公判調書中の証人西村雄司の供述部分
一  第一八回公判調書中の証人井上幸夫の供述部分
一  第二〇回及び第二一回公判調書中の証人上板正明の各供述部分
一  第二一回及び第二二回公判調書中の証人有本良三の各供述部分
一  第二二回公判調書中の証人篠原啓人の供述部分
一  第二三回及び第二四回公判調書中の証人内野正敏の各供述部分
一  第二六回公判調書中の証人小林正勝の供述部分
一  第二七回公判調書中の証人矢崎収の供述部分
一  第二八回、第四〇回及び第四一回公判調書中の証人西野寿雄の各供述部分
一  第二九回、第三〇回、第三二回、第三三回、第三六回及び第三七回公判調書中の証人清水勝利の各供述部分
一  第三八回公判調書中の証人辻広子の供述部分
一  第四二回公判調書中の証人麻田冨雄の供述部分
一  第四三ないし第四六回公判調書中の証人森井義則の各供述部分
一  第四七回公判調書中の証人入野清の供述部分
一  第五〇回公判調書中の証人加藤茂の供述部分
一  第五二回、第五四ないし第五六回公判調書中の証人田村郁雄の各供述部分
一  第五三回、第五六回公判調書中の証人古川彪の各供述部分
一  第六〇回ないし第六二回公判調書中の証人藤本昌輝の各供述部分
一  第六四回公判調書中の証人前川昭の供述部分
一  第六五回公判調書中の証人有本幸弘の供述部分
一  第六五回及び第六六回公判調書中の証人吉田善弘の各供述部分
一  第六六回公判調書中の証人竹内滋の供述部分
一  証人山本武の当公判廷における供述(第六八回及び第六九回公判期日におけるもの)
一  証人宮川和子の当公判廷における供述(第六九回公判期日におけるもの)
一  証人杉田勝弘の当公判廷における供述(第七〇回公判期日におけるもの)
一  証人西園知治の当公判廷における供述(第七一回ないし第七七回公判期日におけるもの)
一  証人人見明の当公判廷における供述(第七八回公判期日におけるもの)
一  証人出雲昭徳に対する受命裁判官の尋問調書
一  当裁判所の被告会社滋賀工場内のセラミック設備に関する検証調書
一  宮川和子の
1 検察官に対する供述調書二通(検二〇六、四五四)
2 大蔵事務官に対する質問てん末書(検二〇五)
一  吉田善弘の
1 検察官に対する供述調書二通(ただし、いずれも記録に編綴してある同抄本記載対応部分のみ。以下、このような場合、単に「抄本対応部分」と表示する。検四五二、四五三)
2 大蔵事務官に対する質問てん末書(検四五一)
一  山本武の検察官に対する昭和六〇年二月四日付(抄本対応部分〔検四五五〕、検五三七)、同月一〇日付(検四五六)、同月一二日付(検四五七)各供述調書
一  清水勝利の
1 検察官に対する昭和六〇年一月二四日付(検四九三)、同月二五日付(検二二七)、同年二月一日付(検四九四)同月七日付(検四九五)、同月八日付(検四九六)、同月九日付(二通、検四九七、四九八)、同月一〇日付(検四九九)及び同月一一日付(二通、検五〇〇、五〇一)各供述調書
2 大蔵事務官に対する昭和五九年七月二七日付(検二二二)、同年八月三日付(検二二三)、同月二一日付(検二二四)及び同年九月一日付(検二二五)各供述調書
一  河龍男(検一七二)、杉田勝弘(二通、検一七八、一七九)、藤井修(検一九二)、田村郁雄(検一九八)、宮川敏(検二〇八)、西園知治(検四〇二)、谷口萌(検四四六)、麻田冨雄(抄本対応部分〔検四四八〕、検四九〇)、篠原啓人(抄本対応部分、検四四九)、守岡貞夫(検四七〇)、荒井稔(検四七五)、松山寿一(検四七六)、井上幸夫(検四七七)、上板正明(検四七八)、出雲昭徳(検四八九)、入野清(二通、検四九一、四九二)の検察官に対する各供述調書
一  森井義則の大蔵事務官に対する昭和五九年四月一七日付(検四五八)、同年六月二七日付(検二一九)、同年八月三一日付(検四五九)及び同年九月二二日付(検二一八)各質問てん末書
一  東敏子(検一四九)、左野勝司(検一五二)、川井浩司(検一五三)、宮阪勇(検一五四)、塩野孝(検一五五)、上村憲司(検一五七)、出口義種(検一五八)、山口富久子(検一五九)、吉川喜博(検一六〇)、野田善亮(検一六一)、馬渕常美(検一六二)、古川彪(二通、検一八五、一八六)、田中義治(検一八七)、有本幸弘(検一八八)矢野暁知(検一八九)、久岡尚(検一九〇)、新屋昇(昭和五九年八月三〇日付〔検一九四〕)、森芳太郎(二通、検四四二、四四三)、人見明(二通、検四四四、四四五)、東尾淳(検四四七)及び小林正勝(抄本対応部分、検四五〇)の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一  商工組合中央金庫奈良支店次長藤井信五(検六五)、同業務課長戸和康秀(検六六)、株式会社東洋信託銀行難波支店代理大知寿夫(検七〇)、株式会社大和銀行難波支店営業第二課長難波修平(検七一)、株式会社三和銀行梅田支店次長中山稔(二通、検七二、七三)、株式会社近畿相互銀行奈良支店事務統括次長久湊弥南夫(検七四)、株式会社第三相互銀行奈良支店支店長代理森武久(検七五)、株式会社第一勧業銀行奈良支店長中村昌義(二通、検七六、七七)、株式会社三和銀行奈良支店次長岩河三四郎(五通、検七八ないし八二)、株式会社住友銀行奈良支店長高津光雄(検八三)、同支店副長渡辺久捷(二通、検八四、八五)、株式会社南都銀行本店営業部長中山悌一(検八六)、株式会社協和銀行奈良支店支店長代理寺本義一(検八八)、奈良信用金庫南支店長杉本尚夫(二通、検八九、九〇)、被告会社取締役森井義則(二通、検九一、四三七)、伊藤忠建材販売株式会社大阪支店経理担当伊与田忠男(検九四)株式会社松山専務取締役松山寿一(検九五)、株式会社近鉄百貨店奈良店庶務課長岩下欣二(二通、検九六、九七)、同外商係長杉田勝弘(検九八)、株式会社かじ善金物店代表取締役野田善亮(検一〇一)、商工組合中央信用金庫大阪支店工藤恒行(検四三〇)、同梅田支店次長梅谷四郎(検四三一)、同梅田支店債券課調査役榎本徳男検四三二)、同奈良支店次長霜凍元彦(検四三三)、同船場支店次長石山真(二通、検四三四、四三五)、南都銀行本店営業部預金課長小松茂(検四三六)、株式会社バーナー技術センター総務部経理課長森下忠志(検四三八)、田中貴金属販売株式会社大阪店マネージャー不破昌保(検四三九)、同渋谷順一(検四四〇)、矢野暁知(検四四一)、守岡貞夫(二通、検四六七、四六八)及び株式会社金幸代表取締役井上幸夫(検四六九)作成の各確認書
一  株式会社住友銀行高槻支店長安藤和夫(検一〇六)、同守口支店長木村貢(検一〇七)、株式会社大和銀行茨木支店(検一〇八)、株式会社南都銀行下市支店長吉村徳久(検一〇九)、同生駒支店長福岡駿次(検一一〇)、株式会社福井銀行金沢支店長矢尾益隆(検一一一)、株式会社南都銀行初瀬支店長福田守(検一一二)、大和信用金庫天理支店長大浦正友(検一一三)、株式会社泉州銀行難波支店長柳曽健二(検一一四)、株式会社太陽神戸銀行新橋支店長霜鳥寿夫(検一一五)、株式会社七十七銀行一番町支店長阿子島高幸(検一一六)、株式会社住友銀行本店営業部長森澤達也(二通、検一一七、一一八)、福知山信用金庫本町支店長森田保美(検一一九)、奈良信用金庫東支店長灰藤好明(検一二〇)、株式会社富士銀行生駒支店長山岸熙(検一二一)、株式会社関西相互銀行木津支店長西澤四郎(検一二二)、株式会社住友銀行銀座支店長駒敏一(検一二三)、株式会社南都銀行王寺南支店長寺田伊三男(検一二四)、株式会社百五銀行上野支店長鎌田秀哉(検一二五)、株式会社住友銀行庄内支店長森本肇(検一二六)、株式会社第一勧業銀行津支店長矢部又資(検一二七)、株式会社富士銀行天満橋支店長伊吹和明(検一二八)、株式会社南都銀行上市支店長岩城健(検一二九)、株式会社協和銀行尼崎支店長林紀彦(検一三〇)、株式会社南都銀行本店営業部預金課長小松茂(検一三一)、株式会社三和銀行奈良支店長大島直也(検一三二)、株式会社第一勧業銀行奈良支店長中村昌義(検一三三)、株式会社住友銀行奈良支店長高津光雄(検一三四)、株式会社協和銀行奈良支店長江口文康(検一三五)、株式会社バーナー技術センター代表取締役久岡尚(検四六一)及び有限会社加藤電機工業所代表取締役加藤明(検四六三)作成の各照会事項回答書
一  被告会社作成の法人・源泉徴収義務者の異動等届出書の謄本(検五)
一  西野寿雄作成のセラミックプラントフローシート(弁五)
一  検察事務官作成の報告書(検五〇三)
一  登記官作成の昭和六〇年一月一六日付法人登記簿謄本(検三〇五)及び同年二月一三日付閉鎖登記簿謄本二通(検三〇六、三〇七)
一  大蔵事務官作成の次の査察官調査書
1 昭和五七年三月一六日付各期末の簿外受取手形の残高調査書の謄本(検四二七)
2 昭和五七年三月二五日付割引債券等の期末残高及び償還益明細表(簿外分)調査書の謄本(検四二九)
3 昭和五九年六月三〇日付飛鳥建設(株)調査書(検二一)
4 昭和五九年七月二日付高津屋調査書(抄本対応部分、検四一二)
5 昭和五九年七月三日付(株)西川銘木店調査書(抄本対応部分、検四一三)
6 昭和五九年七月九日付(株)塩野商店調査書(検二九)
7 昭和五九年七月九日付近鉄百貨店調査書(検四一六)
8 昭和五九年七月九日付技術センター調査書(検四二二)
9 昭和五九年七月二六日付麻田建材(株)調査書(検四〇〇)
10 昭和五九年七月二六日付石切運送(株)調査書(検一三)
11 昭和五九年七月二七日付上板正明調査書(抄本対応部分、検四二〇)
12 昭和五九年八月一〇日付簿外割引債券調査書(検四六)
13 昭和五九年八月一〇日付公表債券の除外償還益調査書(検四七)
14 昭和五九年八月一〇日付割引債券(個人分)調査書(検四二五)
15 昭和五九年八月一四日付売上除外Ⅰ調査書(検六)
16 昭和五九年八月二〇日付河鈑金工作所調査書(検四〇六)
17 昭和五九年八月二〇日付吉川木材(株)調査書(抄本対応部分、検四〇七)
18 昭和五九年八月二〇日付雑収入除外調査書(検八)
19 昭和五九年八月二九日付賃金調査書(検四〇九)
20 昭和五九年八月三一日付金地金の明細調査書(検五〇)
21 昭和五九年九月一日付西園知治調査書(検三九九)
22 昭和五九年九月四日付簿外預金の受取利息調査書(検四〇一)
23 昭和五九年九月七日付個人消費材のP/L元帳調査書(検四〇三)
24 昭和五九年九月一〇日付交際費該当支出調査書(検四二三)
25 昭和五九年九月一四日付進行年分の割引債券及び償還益調査書(検四二六)
26 昭和五九年九月二一日付交際費損金不算入額調査書(検査四二四)
27 昭和五九年九月二一日付損金計上資本的支出調査書(検五〇四)
28 昭和五九年一一月九日付滋賀工場設備調査書の抄本(検四六六)
29 昭和六〇年二月七日付コンピュータの賃借及び利用状況調査書(検五七)
30 昭和六〇年二月八日付賃金Ⅱ調査書(検四一〇)
一  押収してある黒表紙のノート一綴(昭和六〇年押第二二号の9)、株式会社森井組作成名義の請求書及び領収書各一枚(同号の7)、奈良警察署関係書類二袋(同号の10)、始末書綴一綴(同号の18)、申告書控等二綴(同号の21)、回答書及び供述書綴一綴(同号の28)、西園知治作成のメモ一綴(同号の39)、元帳三綴(同号の42)、質問参考事項等(袋入り)一袋(同号の43)、問答書一綴(同号の44)及び部長会議議事録一綴(同号の47)
判示第一の事実について
一  被告会社作成の昭和五七年七月期の法人税確定申告書の謄本(検三)
一  大蔵事務官作成の次の査察官調査書
1 昭和五七年三月三一日付「五六/七期における型代の架空計上について」と題する調査書の謄本(検四二八)
2 昭和五九年七月三日付(株)市田朝芳庵調査書(検四一五)
3 昭和五九年七月二五日付福井水道工業(株)調査書(検四〇五)
4 昭和五九年七月二五日付(株)上村銘木調査書(検四一九)
5 昭和五九年七月二六日付(株)金幸調査書(検四二一)
6 昭和五九年八月一六日付売上除外調査書(検七)
7 昭和五九年八月二〇日付(株)かじ善金物店調査書(検三九八)
8 昭和五九年九月七日付型代調査書(検四三)
9 昭和五九年九月一一日付簿外支払割引料等調査書(検四四)
10 昭和五九年一〇月二二日付簿外支払の個人費用調査書(検五〇二)
11 昭和六〇年二月五日付「棚卸の二重計上額について」と題する調査書(検五六)
一  押収してある昭和五七年七月期の総勘定元帳三綴(昭和六〇年押第二二号の1)、銀行帳一綴(同号の3)、仕入帳三綴(同号の5)、請求書綴(56・8~57・1分、57・2~57・7分各六綴、同号の13、14)、領収証綴一二綴(同号の15)及び決算資料一綴(同号の22)
判示第二の事実について
一  谷口萌の検察官に対する供述調書(検四四六)
一  加藤茂の
1 検察官に対する昭和五九年三月一二日付供述調書の写し(弁三四)
2 司法警察員に対する昭和五九年三月二日付供述調書の写し(弁三六)
一  松山寿一(検九五)及び清水勝利(検四七四)作成の確認書
一  被告会社作成の昭和五八年七月期の法人税確定申告書の謄本(検四)
一  大蔵事務官作成の次の査察官調査書
1 昭和五九年六月三〇日付庭園設計料調査書(検二二)
2 昭和五九年六月三〇日付(株)松山調査書(検四一一)
3 昭和五九年七月三日付ヤマハ調査書(検四一四)
4 昭和五九年七月九日付伊藤忠建材調査書(検三八)
5 昭和五九年七月九日付固定資産除却損調査書(検五〇五)
6 昭和五九年七月一七日付(株)瓦宇工業所調査書(抄本対応部分、検四一八)
7 昭和五九年七月一九日付荒井(稔)左官工業調査書(抄本対応部分、検四〇四)
8 昭和五九年七月一九日付西村雄司調査書(抄本対応部分、検四一七)
9 昭和五九年八月二〇日付太陽電機工業調査書(検四〇八)
10 昭和五九年八月三一日付簿外交際費調査書(検四〇)
一  国税査察官作成の写真撮影てん末書(検一〇四)
一  セラミック設備の写真(昭和五八年九月七日撮影の写真を接写したもの)三葉(弁三)
一  セラミック機械装置撤去の状況を撮影した写真一一葉(弁三七)
一  押収してある昭和五八年七月期の総勘定元帳一綴(昭和六〇年押第二二号の2)、銀行帳一綴(同号の4)、仕入帳三綴(同号の6)、請求書綴(57・8~58・1分、58・2~58・7分各六綴、同号の11、12)、領収証綴一二綴(同号の16)、振替伝票一二綴(同号の17)、決算資料一綴(同号の23)、昭和五九年七月期の仕入帳三綴(同号の8)、図面一枚(同号の59)及び第二回契約書等写一綴(同号の60)
(争点に対する判断)
以下の説明では、次のとおり略称する。
1  被告人杉晃又は同晴美の当公判廷における供述、公判調書中の供述部分――被告人杉晃(又は同晴美)の公判供述
2  証人の当公判廷における供述又は公判調書中の供述部分――○○証言
3  検察官に対する供述調書――検察官調書
4  大蔵事務官に対する質問てん末書――質問てん末書
5  大蔵事務官作成の査察官調査書――調査書
なお、一部同意の証拠を引用する場合、「抄本対応部分」の記載は省略する。
一  被告人杉晃及び同晴美の犯意並びに被告人両名間の共謀について
被告人杉晃及び同晴美は、本件各ほ脱の犯意及び両名間の共謀について争うので、まず、この点について判断する。
1  関係各証拠によれば、次の事実が認められる。
(一)  被告会社の経営の実情、日常の経理処理状況等
(1) 被告会社は、被告人杉晃の実父の草竹信一が草竹コンクリート工業所の名称で経営していたコンクリート二次製品等の製造販売業を、昭和三六年一二月に法人組織とした会社である。被告人杉晃は、右個人営業時代からその手伝いをし、会社設立後は被告会社に引き続き勤務していたが、昭和五〇年一〇月に被告会社の代表取締役に就任し、それ以来、数々の新製品を開発してその特許、実用新案権等を取得したり、販売に努力するなどして、競争が激しい業界にあって被告会社の業績を飛躍的に伸ばし、近畿地方でも有数のコンクリート二次製品製造企業に成長させた。被告会社は、被告人杉晃ほかの親族が株式の相当数を保有する同族会社であり、同被告人は、その中にあって、同社の実権を握り、業務全般を掌握していた。特に、被告会社では、毎月、各部長と工場長が出席して定例部長会議が開催されていたが、同被告人は、予め総務部で作成した毎月の売上等の資料に基づき、自ら売上目標額や受注目標額等(後記のとおり、昭和五六年一〇月の部長会議からは各目標達成率)を発表し、製造部長にその月の生産量、使用材料の数量、在庫等を、営業部長に各担当者別の受注実績や合計受注実績等を、技術部長に新製品の開発状況等をそれぞれ報告させ、販売の促進や売掛金の回収率の向上等を指示していた。また、被告人杉晃は、資材の発注等についても日頃から細かく目を配り、後記のとおり、その支払いについても日頃から細かく目を配り、後記のとおり、その支払いについても、業者からの請求書を自ら点検、決裁し、その際、値引きを指示するなどして、経費の節減に努力していた。
一方、被告人晴美は、昭和三五年三月に被告人杉晃と婚姻し、家業である草竹コンクリート工業所の経理事務を手伝っていたが、被告会社設立の数年後に同社取締役となり、以来、経理全般を掌握し、自らあるいは総務部庶務課の事務員を指揮して、被告会社の支払い、請求書の発送、帳簿類の作成、整理等の事務に従事し、被告人杉晃や従業員らから「会計」と呼ばれていた。
(2) 被告会社においては、取引先から請求書が送付されてくると、まず、総務部庶務課で収受印(受付印)を押印したうえ、これを各担当部所に回して単価、数量、請求金額等のチェックをさせ、担当者印及び各部長の検印を受けたものを被告人杉晃に回付し、その決裁を受ける仕組みをとっていた。被告人杉晃は、取引先からの請求書を原則としてすべて点検し、値引きを指示すべき場合は、赤鉛筆で金額等を訂正したうえ、検印を押して被告人晴美に回しており、同被告人は、被告人杉晃の検印のある請求書に基づいて支払うようにしていた。ときに被告人晴美が被告人杉晃に代わって同被告人の検印を押すこともあったが、その場合も支払うべき金額が被告人杉晃の決裁で決まっている場合であった。
被告会社が請求書を取引先に送付する場合も、右と同様、被告人杉晃の決裁を受ける必要があり、この場合、請求書は庶務課で作成し、営業部等で単価、数量等を点検したのち被告人杉晃のもとに回され、同被告人が検印をしたものを取引先に送付することになっていた。
(二)  昭和五七年七月期及び昭和五八年七月期における所得隠匿工作の状況
被告会社は、前記のとおり急成長を遂げたが、被告人杉晃が難病に罹患したこともあって、同被告人及び被告人晴美は、好況時にできるだけ資産を蓄えておきたいとして法人税をほ脱することを企て、被告人杉晃の指示により、同晴美が売上除外等の不正経理処理を行って巨額の所得を秘匿し、これを裏金として留保したり、金地金や無記名債券等に変えて隠匿所持していたところ、昭和五六年一〇月二八日、大阪国税局による強制調査を受けるに至り(以下、この調査を「前回の査察」ともいう。)、その結果、被告会社及び被告人杉晃は、昭和五四年七月期から昭和五六年七月期の三事業年度において、売上除外等の方法により虚偽過少の申告を行い、合計八億一六二七万円余の法人税をほ脱したとして公判請求され、昭和五七年九月一〇日、被告会社は罰金一億四〇〇〇万円に、被告人杉晃は懲役三年、四年間執行猶予の刑に処せられた。
しかしながら、被告会社は、前回の査察が開始されて間もないころから、次のとおり、種々の所得隠匿工作を重ねた。
(1) 売上の一部除外
被告人晴美は、前回の査察調査中の昭和五六年一二月、売上から除外する手形、小切手を取り立てるため、大阪市内の銀行に簿外の被告会社名義の預金口座を開設し、その後、一か所ではすぐに発覚するおそれがあるとして、さらに大阪市内の三つの金融機関にも簿外の被告会社名義の預金口座を開設して、被告会社の売上から除外した手形等をこれらの口座で取立、入金するようになった。また、昭和五七年六月ころ、被告人杉晃らの知人の森井義則(当時は不動産会社五幸商事株式会社の代表取締役、その後、昭和五九年七月二五日に被告会社の取締役総務部長に就任)に依頼して、森井が取締役となっていた株式会社森井組名義の預金口座を開設してもらい、その口座を利用して売上から除外した手形、小切手合計約八〇〇〇万円分を取り立て、これを現金化するなどし、これらの方法により、昭和五七年七月期において、四億円を超える売上を除外した。さらに、被告人晴美は、昭和五八年七月期において、一部の売上について、入出金の振替伝票を故意に作成しないまま、これを被告会社の公表預金口座にいったん入金したうえ、現金として引き出す等の方法も併用するようになり、これらの方法により同期において九二〇〇万円を超える売上除外を行った。そして、被告人晴美は、売上除外を隠すため、入出金伝票を廃棄したり、自ら又は長女の草竹宏子、経理担当の吉田善弘総務部庶務課長や宮川和子ほかの同課事務員等に命じて、売上帳を改竄させるなどしていた。なお、被告人晴美は、これらの売上除外によって浮かせた金を簿外現金(裏金)として備蓄し、その金を被告人杉晃らの自宅建築費に充てたり、家具等の購入代金に充てたほか、多額の無記名債券や金地金を購入し、これらを自宅や銀行の貸金庫に隠匿していた。
(2) 個人経費の被告会社への付け込み
被告人杉晃らは、昭和五四年ころから奈良市南京終町一丁目に自宅の建築を始め、その代金の一部を売上除外によって得た裏金で支払うなどしていたが、前回の査察開始後である昭和五六年一一月以降も、自宅建築の請負工事代金や、建築資材、建具、家具等の購入代金、自宅庭園の設計費用、庭石購入代金等を業者から被告会社宛てに請求させ、これを被告会社振出の小切手等で支払い、昭和五七年七月期及び昭和五八年七月期において、外注工賃、賃金、修繕費、消耗器具費、運賃、支払手数料、雑費、交際費等の多数の勘定科目に分散して、被告会社の経費として仮装計上した。また、被告人杉晃らは、個人用の茶釜、香炉、ペルシャ絨毯(これが被告人らの個人用のものであることは後記二8のとおりである。)、娘の着物・帯等を購入し、その際、被告会社の経費で落とせるように品名を偽って請求書を提出するように業者に指示するなどしたうえ、被告会社の金で支払い、これらを広告宣伝費、販売促進費、交際費等の科目に分散して被告会社の経費として仮装計上した。
このように、被告人杉晃らは、個人で負担すべき費用を被告会社の経費に付け込み、前記簿外現金で支払った分も含め、その額は、昭和五七年七月期は約六八〇〇万円、昭和五八年七月期は約八四〇〇万円の多額にのぼった。
(3) 資産計上すべきものを経費として仮装計上
ア 後に詳述するように、被告会社では、滋賀県甲賀郡土山町所在の被告会社滋賀工場(以下、単に「滋賀工場」という。)内にセラミック設備を建造し、その費用は資本的支出として被告会社の資産として計上すべきであったのに、次のとおり、経費として仮装計上した。
〈1〉 株式会社バーナー技術センター(以下「バーナー技術センター」という。)にセラミック焼成用トンネルキルン及び白生地乾燥装置設備工事一式を発注し、その代金の一部五五〇〇万円を昭和五七年七月期に、七三〇〇万円を昭和五八年七月期にそれぞれ材料費として仮装計上した。
〈2〉 有限会社林正産業(以下「林正産業」という。)、株式会社有本鉄工(以下「有本鉄工」という。)及び有本工業株式会社(以下「有本工業」という。)に対し、原料タンク等の機械設備を発注し、その代金をコンクリート製品製造の際に使用する型枠の購入代金として請求させ、昭和五七年七月期に合計四五三二万五〇〇〇円、昭和五八年七月期に六五〇万円を型代として仮装計上した。
イ 被告会社は、昭和五八年七月期において、滋賀工場の建物新築に伴うアルミサッシ窓取付工事を施行したが、その工事代金は資本的支出として資産に計上すべきであったのに、そのうちの六五〇万円を外注工賃として、四五万円を修繕費として仮装計上した。
ウ 被告会社は、昭和五八年七月二七日ころ、株式会社近鉄百貨店(以下「近鉄百貨店」という。)から資産として東山魁夷の絵画一枚を代金二一五八万円で購入したが、その際、近鉄百貨店の担当者に指示して、複数の進物用の絵画を購入したかのような請求書を提出させたうえ、右購入代金の一部を販売促進費として仮装計上した。
(4) 固定資産除却損の過大計上
後記のとおり、被告会社は、滋賀工場に設置したセラミック設備の一部が粗悪であったことに便乗して、昭和五八年七月期において、固定資産の除却損としては計上できない機械設備合計一億一二七七万五七六一円分を除却損として仮装計上した。
(5) 接待交際費に該当する経費を他の経費として仮装計上
後記のとおり、被告会社は、自社の製品を購入してもらったり、地方公共団体が行う工事において自社製品の使用を指定してもらう等の便宜を図ってもらうため、地方公共団体の職員等に手渡す商品券を購入、使用したが、交際費課税を免れるため、右購入費用を昭和五八年七月期に製造原価及び一般管理費中の販売促進費として計上した。また、同じく、県会議員等の年末挨拶回りのために使用した金員分を昭和五八年七月期に販売促進費として計上した。
(三)  昭和五七年七月期及び昭和五八年七月期の各確定申告時の状況
(1) 被告会社は、毎年の確定申告の作業を顧問税理士である新屋昇税理士事務所に委託していた。毎年九月初めころ、被告会社から新屋税理士事務所に総勘定元帳、試算表等が届けられ、まず、同所事務員の田村郁雄がこれを元に金額の集計作業を行い、その際、不明な点があれば、資料を届けさせたり、前記吉田庶務課長や宮川和子に確認する等しながら精算表を作成し、その期に納めるべき税額の概算を算出した。そして、これを新屋税理士が検討したうえ、毎年九月二五日ころ、同税理士と田村が右精算表や前年度の確定申告書の控え等を持って被告会社に赴き、被告人杉晃及び同晴美に対し、新屋税理士が精算表に基づき前年度の収支状況等と対比しながら当期の収支状況、税額の見込額等を説明していた。その結果、被告人杉晃の了解が得られれば、新屋税理士事務所において、精算表を元に確定申告書を作成し、被告人晴美に被告会社の記名印と代表取締役印を押してもらったうえ、同税理士が確定申告書を奈良税務署に提出していた。
(2) 昭和五七年七月期及び昭和五八年七月期においても、右と同様の手順で確定申告がなされたが、昭和五七年七月期の確定申告の際、新屋税理士事務所で例年どおり精算表を作成してみると、前年度の所得金額が一〇億円余り(前回の査察に基づく修正申告によるもの)であったのに対し、昭和五七年七月期は五億円足らずと、所得金額が半減していることが判明した。このことを疑問に思った田村は、新屋税理士の指示により、被告人晴美に同期の所得が半減した理由を問い合わせたところ、同被告人は、特段の売上減はなかったのに、「国税局の調査があって、官公庁の取引を止められたり、取引先に製品の値引きをさせられたりして売上が落ち込んだ。」旨説明した。
そこで、新屋税理士事務所では、被告会社提出の資料に基づいて精算表を作成し、昭和五七年九月下旬ころ、被告人杉晃及び同晴美に対し、新屋税理士が「去年より悪いですね。」と言って前年度と対比しながら昭和五七年七月期の収支状況を説明したところ、同被告人らはその点について何ら問いただすこともなく、精算表の内容を承認したため、同税理士は、そのとおりの確定申告書を作成し、被告人晴美から被告会社の記名、押印を受けたうえ、同月三〇日、奈良税務署に昭和五七年七月期の確定申告書を提出した。
(3) 前記のとおり、被告会社は、昭和五七年七月期において、本来資産計上すべきであった滋賀工場のセラミック機械設備取得費用を材料費等の経費として仮装計上していたところ、被告人杉晃らは、当時の技術部技術課長内野正敏(以下「内野」あるいは「内野技術課長」という。)の退職やその後の紛争等を契機として右脱税が発覚するのを恐れ、新屋税理士とその善後策を協議した。同税理士は、修正申告が必要な場合であると判断し、その旨を被告人晴美に伝えたが、同被告人は、修正申告をしないで済む方法を希望したことから、相談のうえ、被告会社において、右仮装計上分を昭和五八年七月期に雑収入(相手方勘定科目は建設仮勘定)として受け入れる方法で処理することとなった。
ところが、後記二12のとおり、内野が発注したセラミック機械設備の性能等についての調査が進むに従い、一部の機械設備は使用不能であることが判明し、また、昭和五七年七月期に経費として仮装計上した取得費用を雑収入で受け入れた場合は同期の所得金額が増えてしまうことから、被告人杉晃らは、これらをすべて損金として計上、処理することを企て、新屋税理士に対し、雑収入として受け入れる滋賀工場のセラミック設備機械についてはすべて損金で落としてほしい旨要求した。
こうしたことから、新屋税理士らは、すべて使用不能であるという被告人杉晃らの説明に疑問を持ちながらも、これらの設備を昭和五八年七月期に固定資産除却損として計上することとしたが、全額を損金として処理することはできないと判断し、確定申告書作成の際、被告人杉晃らの希望する固定資産除却損の合計額は約一億八〇〇〇万円であったにもかかわらず、損金算入した資本的支出として五〇〇〇万円を嵩上げした精算表を作成したうえ、「経費にならないものが五〇〇〇万円くらいあるかも知れない。」と説明して承認を受け、その旨の確定申告を行った。
2  被告人杉晃の犯意等について
右認定の事実によれば、被告人杉晃に昭和五七年七月期及び昭和五八年七月期の法人税ほ脱の犯意及びこれについて被告人晴美との間に共謀があったことは明らかであるが、被告人杉晃は、売上除外、個人経費の会社経費への付け込み等の所得隠匿工作は、被告人晴美が、被告人杉晃に無断で売上の除外をしたり、あるいは従業員に指示して不正経理を行わせたものであり、被告人杉晃は、これらの所得隠匿工作にまったく関与していなかったし、そのような行為が行われていることも知らなかった、同被告人としては、正しい確定申告が行われたと信じていたのであって、それが虚偽過少のものであったことはまったく知らなかった旨弁解している。
しかしながら、前記認定の被告会社の経営の実情、日常の経理処理の状況、被告会社の確定申告の方法や本件各確定申告時における被告人杉晃らの言動等のほか、本件の所得隠匿工作が会社ぐるみの大規模なもので、その売上除外額や架空の経費計上額も莫大であることなどを考慮すると、被告会社において種々の所得隠匿工作が行われていたことや、本件各確定申告が虚偽過少のものであったことを被告人杉晃が知らなかったとする同被告人の公判供述や査察・捜査段階における供述はそれ自体まったく信用しがたいというべきである。特に、被告人杉晃は、査察の調査及び検察官による取調べのときから一貫して「自分が業者からの請求書をチェックするシステムをとっていたのは、支払いについてすべて社長自ら目を通しているということを示すためで、いわば社内牽制のためであった。したがって、社長のチェックといっても形式的なもので、個人の費用が被告会社に請求されていたことや、工事代金を型枠等の代金に偽って請求されていたことも気づかなかった。ときに、赤鉛筆で請求金額を訂正したこともあるが、それは請求金額の端数を削って値引きを指示したもので、そのときも請求品目や明細書を見ておらず、前記のような不正経理がなされていることは気がつかなかった。」旨供述するものであるが、関係証拠によれば、同被告人は、日頃から経費節減に注意を払っていたこと、自宅建築用の資材購入に際し、自ら赴いて品質等を吟味し、値引きや支払方法などの交渉も行っていたこと、その購入先や工事業者の中には被告会社との取引がまったくない者も含まれており、同被告人は、これらの業者からの被告会社宛ての請求書をそのまま決裁したり、値引きを指示していたこと(例えば、石切運送株式会社からの庭石購入分、塩野商店からの建築資材購入分、株式会社松山からの総桐箪笥購入分等)、しかも、これらの請求書には相当高額のものも含まれていたことが認められ、これらの事実に照らすと、被告人杉晃の前記供述は到底信用することができず、同被告人は、不正経理であることを十分知りながら支払いを指示していたことは明らかである。のみならず、関係各証拠によれば、被告人杉晃は、次のとおり、自ら種々の所得隠匿工作に積極的に関与していたことが窺われるのであって、同被告人において、真実の所得を秘匿し、所得金額をことさらに過少に記載した本件各確定申告書を提出することの犯意並びにこの点について被告人晴美との間に共謀があったというに妨げないというべきである(なお、各項末尾の括弧内に記載した証拠は、当該事実の認定に当たり、特に使用した証拠である。)。
(一)  自宅建築費用の被告会社経費への付け込み
(1) 株式会社金幸関係
被告会社は、株式会社金幸とは取引関係がなく、被告人杉晃らが、昭和五五年三月ころから、自宅建築用の材木を購入していたものであるが、被告人杉晃は、前回の査察前に檜の丸太を自宅用に購入した際、同社代表取締役の井上幸夫に対し、帳簿に載らない裏取引にしてくれるよう頼んでいた。そして、被告人杉晃らは、昭和五六年一〇月ころ、自宅用の敷居等を代金五八万円で購入したが、井上は、同被告人らが自宅建築費用の一部を被告会社の費用で賄っていることを察知していたことから、被告会社の経費で落とす話を持ちかけ、相談の結果、請求書の宛て先を被告会社にするとともに、そこに記載する納入品目も被告会社の経費として処理できる檜桟木とすることとした。こうして、井上は被告会社宛てに右のとおり記載した請求書を送付し、被告会社から支払いを受けた。
(井上幸夫証言〔第一八回公判期日〕、井上幸夫の検察官調書〔検四七七〕、同人作成の確認書〔検四六九〕、被告人杉晃の昭和六〇年二月一〇日付検察官調書〔検三二七〕)
(2) 高津屋関係
被告人杉晃らは、昭和五六年七月ころ、建具製造販売業者の高津屋(経営者中田雅之)に自宅の建具を代金二三五〇万円で発注したが、被告人杉晃は代金の交渉を自ら行ったうえ、着手金を支払う際、中田に対し、帳簿には着手金の一部しか載せないでほしいと依頼した。そして、同被告人は、昭和五六年一一月末ころ、中田から内入金の支払いを請求された際にも、「会社の経理として内入金の名目では通らないから、請求書を送ってほしい。そのときは明細を適当につけ、請求金額にも端数をつけてほしい。」とか、領収書の宛て先を被告会社にしてほしいなどと依頼し、自ら右内入金を被告会社の小切手で支払った。こうしたことから、中田は、その後も端数をつけた被告会社宛ての請求書を送付し、被告会社振出の小切手や他社振出、被告会社裏書の約束手形等で残金の支払いを受けた。
(中田雅之証言〔第五回公判期日〕、高津屋調査書〔検四一二〕、小松茂作成の確認書〔検一三一〕、被告人杉晃の昭和六〇年二月一〇日付検察官調書〔検三二七〕)
(3) 株式会社西川銘木店関係
被告人杉晃らは、昭和五六年ころから株式会社西川銘木店(以下「西川銘木店」という。)から自宅建築用の高級資材を購入していたが(なお、被告会社と同店との間に取引関係はなかった。)、昭和五七年一月ころ、自宅用の天井板(代金六五〇万円)を発注し、これは昭和五七年四月に納入された。そして、右発注に際して、被告人杉晃自身が代金額の交渉を行い、その際、同被告人は、同店従業員の安井正生に対し、「西川銘木店と取引をしたことがお互いにわからないようにしてほしい。請求書には銘木店ということを出さず、明細の記載もしないで欲しい。また、金額を分けて請求して欲しい。」などと依頼した。そこで、安井は、架空の「株式会社西川」名義で、品名を記載しない金額二九五万円(同年三月二五日付)と三五五万円(同年四月二四日付)の二通の請求書を作成、送付し、それぞれ被告会社から支払いを受けた。
(安井正生証言〔第四回公判期日〕、(株)西川銘木店調査書〔検四一三〕)
(4) 太陽電機工業関係
被告人杉晃らは、昭和五六年三月ころ、太陽電機工業(経営者守岡貞夫)に対し、自宅の電気工事を発注したが、その際、同被告人は、工事代金を一一〇〇万円まで値切ったうえ、工事の条件を細かく指示した被告会社作成の注文書を守岡に交付した。そして、守岡は、出来高に応じて宛て先を「草竹邸」とした請求書を送付したが、同年暮れころに工事の打合せをした際、被告人杉晃は、守岡に対し、「これから自宅の工事分の請求書や領収書の宛て名は会社にしてくれ。」と依頼し、これを受けて守岡は、昭和五七年七月二五日以降、自宅工事代金の請求書を被告会社宛てにし、被告会社から支払いを受けた。
(守岡貞夫証言〔第一五回、第一六回公判期日〕、守岡貞夫の検察官調書〔検四七〇〕、同人作成の確認書二通〔検四六七、四六八〕)。
(5) 株式会社瓦宇工業所関係
被告人杉晃らは、昭和五四年秋ころ、自宅の瓦葺き工事を株式会社瓦宇工業所(以下「瓦宇工業所」という。)に発注し、昭和五五年暮れころから工事が着手されたが、被告人杉晃が屋根の葺き方にクレームをつけたため、工事が中止され、代金の一部の支払いも停止された。その後、昭和五八年六月二一日ころ、被告会社二階事務所において、被告人杉晃と瓦宇工業所取締役小林俊一との間で残代金の精算の話合いが行われたが、その際、被告人杉晃は、小林に対し、工事に不満があるとして値引きを要求し、その代金を減額させたのち、被告会社振出の小切手で支払った。
(小林俊一証言〔第五回公判期日〕、小松茂作成の照会事項回答書〔検一三一〕、(株)瓦宇工業所調査書〔検四一八〕、被告人杉晃の昭和六〇年二月一〇日付検察官調書〔検三二七〕)
(6) 西村雄司関係
西村雄司は、昭和五七年六月ころ、被告人杉晃らから、自宅の格子天井にはめ込む板に干支を二組(合計二四枚)彫刻することを代金八八万円で依頼され、手付金として三〇万円を受け取ったのち、昭和五七年一二月末か昭和五八年一月末ころ、完成品を被告会社事務所まで届け、被告人杉晃及び同晴美に見せて確認を受けたうえ、これを引き渡した。そして、西村は、残代金五八万円を被告人杉晃から現金で受領したが、その際、同被告人から依頼されて、被告会社宛ての昭和五七年一二月三一日付請求書と昭和五八年一月三一日付領収書を作成、交付した。
(西村雄司証言〔第一七回公判期日〕、被告人杉晃の昭和六〇年二月一〇日付検察官調書〔検三二七〕)
(7) 荒井左官工業所関係
被告人杉晃らは、自宅の左官工事を荒井左官工業所(経営者荒井稔)(以下「荒井左官」という。)に請け負わせ、その工事代金は被告人杉晃が交渉して決めていたところ、昭和五八年五月二五日ころ、被告会社二階事務所において、被告人晴美が被告人杉晃の面前で被告会社振出の小切手と支払期日が三か月くらい先の株式会社大林組振出、被告会社裏書の約束手形で工事代金を支払おうとした。荒井は、その場で「職人の手間賃を支払うのに手形では困る。」と文句を言ったところ、被告人杉晃は、「今度から気をつけるから。」と答えたため、荒井は仕方なく約束手形等を持ち帰り、後日、これらを取り立てに回して支払いを受けた。
(荒井稔証言〔第六回公判期日〕、荒井稔の検察官調書〔検四七五〕、森澤達也作成の照会事項回答書〔検一一七〕、荒井(稔)左官工業調査書〔検四〇四〕、被告人杉晃の昭和六〇年二月一〇日付検察官調書〔検三二七〕)
(8) 上板正明関係
被告人杉晃らは、昭和五四年ころから自宅建築用の高級材を被告会社とは取引関係のなかった銘木商の上板正明から購入していたが、同被告人は、当初から、上板に対し、裏金で支払うので帳簿に載せない裏取引にしてほしい旨依頼したことから、同人は自分の帳簿に架空名で販売先を記帳していた。
その後、被告人杉晃らは、昭和五六年夏から同年一〇月ころに上板から杉の原木を買うこととしたが、同年一一月中旬ころ、被告会社本社事務所において、上板と被告人杉晃及び同晴美との間で代金等の打合せをし、代金を二四〇〇万円とすることに決まった。その際、前回の査察で裏取引にしていたことがばれていたことから、上板が被告人杉晃らにこれからの請求書の記載方法等を尋ねたところ、被告人晴美は、被告人杉晃の面前で、被告会社が購入したように品名を「松パレット」に書き換えたうえ、被告会社に請求するように指示した。そこで、上板は、右依頼に応ずることとしたが、二四〇〇万円分の松パレットを一度に納入するのもおかしいことから、被告人晴美とも相談のうえ、適当に三回に分けて被告会社宛てに請求書を送付し、被告会社から支払いを受けた。上板は、その後も自宅建築用の材木を被告人杉晃らに販売し、請求書の名目をどうするか被告人晴美に確認したうえ、従来どおり、品目を松パレットと記載した請求書を送付して被告会社から支払いを受けていたが、その中には被告人杉晃自身がそのように指示した取引もあった。
(上板正明証言〔第二〇回、第二一回公判期日〕、上板正明の検察官調書〔検四七八〕、上板正明調査書〔検四二〇〕、被告人杉晃の昭和六〇年二月一〇日付検察官調書〔検三二七〕)
(9) 日本楽器製造株式会社関係(ペルシャ絨毯購入)
被告人杉晃らは、日本楽器製造株式会社(以下「日本楽器製造」という。)から自宅用のシステム・キッチン(簿外現金で支払い)、香炉(被告会社の経費に付け込み)等を購入していたが、昭和五八年七月ころ、自宅用のペルシャ絨毯三枚を代金一一〇〇万円で購入し(被告人らは被告会社用に購入したものであると主張するが、これが自宅用のものであったことは後記二11(一)のとおりである。)、その際、被告人杉晃らは日本楽器製造の担当者の中島経郎に依頼して、「草竹」の名前が出ない契約書を作成させた。その後の昭和五八年七月二二日ころ、被告人杉晃は、被告会社本社三階の社長室において、右の内金四五〇万円を被告会社振出の小切手で支払ったが、その際、中島は、被告人杉晃の指示により宛て先を被告会社とする領収書を作成した。このとき、被告人杉晃と同晴美は、何で落とそうか、中元か何かにしようかなどと相談していたが、昭和五八年七月期の確定申告において、右絨毯代金を被告会社の販売促進費に仮装計上した。
(中島経郎証言〔第七回公判期日〕、領収証綴〔昭和五八年七月分、昭和六〇年押第二二号の16〕、高津光雄作成の照会事項回答書〔検一三四〕)
(二)  滋賀工場セラミック機械設備の費用を経費として仮装計上
(1) 有本工業関係
後記のとおり、被告会社は、有本工業に滋賀工場のセラミック設備の泥漿前処理装置一式工事を請け負わせることになり、昭和五六年一〇月六日、被告会社本社会議室において、被告人杉晃は、内野技術課長立ち会いのもと、有本工業代表取締役の有本良三との間で、総工費二五〇〇万円、契約締結時に内金六五〇万円を支払い、残代金は三回に分割して支払う旨の契約を締結した。内野は、被告人杉晃から右代金を型枠製造代金と偽って支払うよう指示され、有本良三に対し、予め、右契約当日に白紙の請求書を持参するように依頼していたが、右契約締結の際、請求書に記載する品目を変えてほしいと依頼して、六五二万円に相当するコンクリート型枠の個数、単価を記載したメモを渡した。そこで、有本良三は、被告人杉晃の面前で、メモのとおり請求書に記載し、その請求書を同被告人に渡して同被告人から六五〇万円の約束手形を受け取り、被告会社宛ての領収書を作成、交付した。なお、被告人杉晃は、同年九月一六日付で右請求書の金額を二万円値引きし、六五〇万円とする旨の決裁をした。
その後、有本工業は、被告会社から昭和五七年五月、同年六月及び同年九月に残代金の支払いを受けたが、内野は、被告人杉晃の指示に基づき、その都度有本良三に連絡して白紙の請求書を送付させたり、品名を型枠と記載した請求書を送付させるなどした。こうして、被告会社は型枠代金を支払った外形を作出し、昭和五七年七月期に一八五〇万円、昭和五八年七月期に六五〇万円をそれぞれ型代として計上した。
(有本良三証言〔第二一回、第二二回公判期日〕、内野正敏証言〔第二三回、第二四回公判期日〕、滋賀工場設備調査書〔検四六六〕、被告人杉晃の昭和六〇年二月一一日付検察官調書〔検三二八〕)
(2) 林正産業関係
後記のとおり、林正産業は、被告会社からの注文により、スプレードライヤー用煙突、原料タンク及び鉄筋曲機を製造、納入して請求書を送付したところ、内野は、被告人杉晃の指示により、昭和五七年一月ころ、林正産業の経営者の小林正勝に対し、請求書の品目をブロック型枠等に書き換えるように依頼した。そのため、小林は、同年四月ころ、スプレードライヤー用煙突一本分(代金五七〇万円)及び原料タンク二基分(代金合計一〇五〇万円)について型枠等と記載した請求書を被告会社に改めて送付し、同年六月ころ、鉄筋曲機一台分(代金二五〇万円)については、鉄筋曲機本体一基一一五万円、鉄筋曲機金型一五組、単価九万円、合計一三五万円と記載した請求書を送付した。そして、被告会社は、昭和五七年七月期において、右原料タンク二基の代金を型代に、鉄筋曲機の代金のうち一三五万円(一一五万円は機械工具として計上)を型代に仮装計上した。
(前記内野証言、滋賀工場設備調査書、小林正勝証言〔第二六回公判期日〕)
(3) 有本鉄工関係
後記のとおり、有本鉄工も、昭和五七年五月に被告会社から発注されたセラミック機械設備を製造、納入して、同年六月に請求書を送付したところ、内野は、被告人杉晃の指示により、有本鉄工代表取締役の有本幸弘に対し、ブローカーの加藤茂を介して請求書の内容を型枠代と記載して再発行してほしい旨依頼し、これを受けて有本幸弘は、その趣旨に従った請求書を作成して加藤に交付した。そして、被告会社は型枠代金として支払い、昭和五七年七月期において右代金を型代として仮装計上した。
(前記内野証言、滋賀工場設備調査書、有本幸弘の質問てん末書〔検一八八〕、加藤茂証言〔第五〇回公判期日〕)
(三)  固定資産除却損の過大計上
後記のとおり、被告人杉晃は、滋賀工場のセラミック機械装置の一部が粗悪であったことに便乗して、固定資産の除却損としては計上できない機械設備分があることを認識しながら、新屋税理士に指示して、昭和五八年七月期に合計一億一二七七万五七六一円分を除却損として仮装計上させた。
(四)  被告人杉晃の指示によるコンピュータ使用の中止等
(1) 被告会社は、昭和五四年九月ころから五年間のリース契約により経理事務にコンピュータを導入し、被告会社用に開発されたソフトを使用して売掛・買掛業務、販売管理、人事給与業務等を行っていたところ、前回の査察の際、九州工場において、被告会社の売上高が記載された資料が発見され、売上除外が発覚したことから、被告人杉晃の指示により、昭和五七年一月からコンピュータによる前記の業務管理は廃止されるに至った(なお、九州工場長の出雲昭徳は、被告会社の秘密を漏らしたとして始末書提出、工場長手当て削減の処分を受け、吉田善弘庶務課長も同様の理由で始末書提出、給与減額の処分を受けた。)。
(証人出雲昭徳に対する受命裁判官の尋問調書、同人の検察官調書〔検四八九〕、吉田善弘の昭和六〇年二月四日付検察官調書〔検四五二〕、山本武の同月一〇日付検察官調書〔検四五六〕、被告人杉晃の同月九日付検察官調書〔検三二六〕)
(2) 被告会社においては、従前、部長会議で毎月の売上高等の報告がなされ、被告人杉晃が受注目標額等を指示していたが、前回の査察を契機として、同被告人は、「社外の者に見られてはいけない。」と言って、昭和五六年一〇月の部長会議から、売上高等は具体的な数字を出さず、受注目標額の何パーセント達成という形の報告をするように改めた。
(山本武の昭和六〇年二月四日付検察官調書〔検四五五〕、部長会議議事録一綴〔昭和六〇年押第二二号の47〕)
3  被告人晴美の犯意等について
(一)  被告人晴美は、本件の査察調査及び検察官の取調べに際しては、概ね犯行を認め、第一回公判期日においても、本件ほ脱の犯意を認めたうえ、所得額等も概ね間違いないと述べていたところ、その後、個々の勘定科目ごとの犯意や個別的な会計的処理について犯意を争い、〈1〉前回の査察調査により帳簿類を押収されていたため、昭和五七年七月期において、結果的に売上の一部除外、債券償還益の一部申告洩れとなったのであり、これについてはほ脱の犯意はない、〈2〉自宅の建築作業に従事していた森芳太郎、人見明及び谷口萌の労務関係は清水勝利が管理していたので、その賃金等が被告会社の経費として計上されていたことは知らなかったし、西園知治に支払った分も、清水から自宅分と会社分を明確に区別していると聞き、後に精算するつもりで暫定的に支払ったもので、被告会社の経費に付け込む意思はなかった、〈3〉自宅建築用資材等の購入費についても、一部を除き、被告会社の経費に付け込む意図はなく、清水勝利が十分なチェックをしなかったため、一部の個人宛ての請求書が被告会社宛てのものとして処理されてしまったものである、〈4〉接待交際費についても、被告人晴美や吉田善弘らが接待交際費に該当する支出であることを知りながら、接待交際費課税を免れるため、ことさら他の経費として計上したのではなく、各人の判断でとりあえず妥当と考える勘定科目に従って処理したものである、誤っていれば、新屋税理士が是正すべきものであった、〈5〉資産計上すべきものを経費として計上したのは、そのように信じて処理したものであり、新屋税理士事務所事務員が誤って計上処理したものである、〈6〉固定資産除却損の処理は相当であり、この点について被告人晴美に犯意はないなどと種々弁解するに至っている。
(二)  しかしながら、前記認定の被告会社における被告人晴美の地位や携わっていた業務内容、特に、同被告人は、被告会社の経理事務に引き続き二〇年近く従事してきたこと、同被告人は、種々の所得隠匿工作に深く関わっていたこと等に照らすと、同被告人がほ脱に係る各勘定科目の基礎となった取引や、経理処理の状況について相当具体的な認識を有していたと十分推認でき、これに反する同被告人の公判供述は査察調査及び検察官の取調べの際の供述と対比してまったく信用できないというべきである。のみならず、真実の所得を秘匿し、所得金額をことさら過少に記載した法人税確定申告書を税務署長に提出する行為は、それ自体法人税法一五九条一項にいう「偽りその他不正の行為」に当たり(最高裁昭和四八年三月二〇日第三小法廷判決・刑集二七巻二号一三八頁、同昭和六三年九月二日第三小法廷判決・刑集四二巻七号九七五頁等参照)、虚偽過少申告による法人税ほ脱犯の故意としては、真実の所得に比して過少な所得額に基づいて過少な税額を算出し、その記載のある確定申告書を提出することの認識があれば十分であり、申告書の作成及びそれに至るまでの架空経費の計上、帳簿の改竄等の所得隠匿行為は、租税ほ脱のための内部的準備行為であって、これらについて逐一認識していることまでは必要ではないというべきである。したがって、被告人晴美に個々の架空計上額や正確な所得について認識に欠けるところがあったとしても、同被告人において申告額が実際の所得額より過少であることの認識を有していたことは優に認められるから、本件各ほ脱額全体についてほ脱犯が成立するというべきである。
二 経費等に関する主張について
1  材料仕入高について
(一)  弁護人は、バーナー技術センターに支払った昭和五七年七月期の五五〇〇万円は、トンネルキルン台車付属品及び乾燥台車等の取得価額であり、これは少額減価償却資産(法人税法施行令一三三条)に該当し、資産計上する必要がないもので、被告会社がこれを材料費として損金処理したのは相当であると主張する。
(二)  しかしながら、関係各証拠によれば、被告会社は、昭和五六年一二月二三日バーナー技術センターにセラミック焼成用トンネルキルン及び白生地乾燥装置設備工事一式を代金一億五八〇〇万円で発注し、内金六五〇〇万円を昭和五七年七月期に支払ったが、そのうちの一〇〇〇万円は工事中間金の名目で支払い(これは建設仮勘定に計上した。)、残額五五〇〇万円を(1)本体用レンガ三万枚、金額一五〇〇万円、(2)台車用キャスター八〇〇〇キログラム、代金一二〇〇万円、焼成用棚板支柱一万〇五〇〇組、代金二八〇〇万円の名目で小口なものに分けて仮装計上したこと、昭和五八年七月期に七三〇〇万円を支払ったが、これについても材料費として仮装計上したことが認められ、右事実に照らすと、そもそも昭和五七年七月期に計上した五五〇〇万円は、トンネルキルン台車付属品及び乾燥台車等の各部品の代金として支払われたものではないというべきであり、この点をとらえても、弁護人の主張は失当というべきである。
また、法人税法施行令一三三条(昭和六三年一二月三〇日号外政令第三六二号による改正前のもの)は「内国法人がその事業の用に供した減価償却資産で、その使用可能期間が一年未満であるもの又はその取得価額が一〇万円未満であるものがある場合において、その内国法人が当該資産の当該取得価額に相当する金額につきその事業の用に供した日の属する事業年度において損金経理したときは、その損金経理をした金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。」旨定め、一定の場合には少額資産を損金経理することを認めているが、法人税基本通達七-一-一一(平元直法二-七による改正前のもの)によれば、「取得価額が一〇万円未満であるかどうかは、通常一単位として取引されるその単位、例えば機械及び装置については一台又は一基ごとに、工具及び備品については一個、一組又は一揃いごとに判定」することとされている。そして、本件セラミック焼成用トンネルキルン及び白生地乾燥装置は、後記のとおり、プレス成型したセラミック原料土を乾燥台車に乗せて予備乾燥したうえ、焼成台車に乗せて窯内を進行させ、連続的に焼き上げる工程を分担する一体の機械設備として製造、設置されたものであるから、それは全体で一個の機械装置としてとらえるのが相当であり、これを構成する資材(主張の本体用レンガは、築炉用の耐火煉瓦である。)や個々の部品を取り上げて少額減価償却資産とすることができないことは、前記法人税基本通達の解釈上明らかである。
したがって、この点に関する弁護人の主張は採用することができない。
2  賃金について
(一)  森芳太郎及び人見明の各賃金
弁護人は、被告人杉晃らの自宅の建築作業に従事していた森芳太郎及び人見明は、自宅新築現場に隣接した被告会社の作業場において、パレット、りん木、福利厚生用物品の製作、社宅建築材料の加工等の被告会社の業務に従事していたものであり、その分は被告会社の経費として認容されるべきであると主張するが、次のとおりいずれも採用できない。
(1) 森芳太郎分
森芳太郎(検四四二、四四三)及び人見明(検四四四、四四五)の各質問てん末書によれば、森芳太郎は、被告会社の従業員であったが、昭和五六年一二月初めころから被告人杉晃らの自宅の建築作業に従事するようになったこと、その間、被告会社の仕事として第四工場の植樹作業に従事したこともあるが、それは二、三日から多く見積もっても一週間程度の作業であったことが認められ(なお、森は、自宅敷地内にあったプレハブの現場事務所が不要になり、これを奈良工場に移設したり、同敷地内の不要な樹木を第四工場に移植したことも認められるが、これらは専ら自宅建築のための作業というべきである。)、こうしたことから森が被告会社の仕事に従事した日数を七日として六万〇七一八円が被告会社の経費として認容されたものであり(賃金Ⅱ調査書〔検四一〇〕)、右認容額以上に被告会社の経費として認められる賃金は存在しないというべきである。
(2) 人見明分
証人人見明は、当公判廷(第七八回公判期日)において、「清水部長の指示により、社宅の修繕をしたり、奈良工場の社宅建築に際して建築材料を運搬する等の被告会社の営繕関係の仕事に従事したことがある。また、自宅横の作業場で、パレットやりん木を作ったことがある。一か月のうち、一週間から一五日くらいパレット等の製造作業に従事し、営繕工事には一か月のうち、一五、六日くらい従事した。」旨供述する。
しかしながら、同人は、昭和五九年八月二九日及び昭和六〇年二月一日に大蔵事務官から質問を受けた際、「自分は、被告会社の第四工場の植樹の作業に従事したくらいで、その作業日数は多く見積もっても一週間程度であった。そのほかに、自宅工事現場のプレハブの解体、移設、敷地内の不要な樹木の移植の作業をしたが、それ以外に被告会社の仕事をしたことはない。」旨述べていたものであり(同人の質問てん末書〔検四四四、四四五〕)、このことに照らし、また、右証言は、その内容自体曖昧なうえ、同人は被告会社に引き続き雇用され、昭和五八年九月以降は被告会社の仕事にも従事しており、そのことと混同して証言している可能性もあること、前記森芳太郎の供述とも矛盾することなどを考慮すると、信用することができないというべきである。
したがって、被告会社の仕事に従事した分として七日間、六万三六三〇円を被告会社の経費として認容した(賃金Ⅱ調査書〔検四一〇〕)のは相当であり、右認容額以上に被告会社の経費として計上されるべき人見明の賃金分が存すると認めることはできない。
(二)  昭和五六年八月一日ないし同年一〇月二八日まで簿外給料分
(1) 弁護人は、被告会社は、昭和五六年八月一日から同年一〇月二八日までの間、従業員に対して合計六五万円の簿外給料を支払っていたが、この分は昭和五七年七月期の確定申告時において未計上であり、同期の経費として認容されるべきであると主張する。
(2) 昭和五七年四月九日付査察官調査書「各期末現在の簿外現金有高検討表」(弁七)添付の簿外現金計算書(昭和五七年七月期)には、被告会社が昭和五六年八月九日以降同年一〇月二八日までの間に沢木ほか九名に対して簿外現金から簿外給料合計八五万円を支払った旨の記載がある。
しかしながら、右調査書、藤本昌輝証言(第六〇回公判期日)及び簿外支払の個人費用調査書(検五〇二)によれば、〈1〉前回の査察着手日である昭和五六年一〇月二八日当時、被告人晴美らは、被告会社の現金(公表分、簿外分)及び個人の現金を区別せず自宅等に保管していたことから、昭和五四年ないし昭和五六年の各期末現在の簿外現金有高を確定する必要があったところ、入出金及び各期末現在の有高を記録した物証は存在しなかったこと、〈2〉そこで、まず、公表現金出納帳及び現金の保管状況等の調査結果から、査察着手日現在の被告会社の簿外現金は二億〇四六一万一二七〇円と認定し、次いで、査察着手日から遡って入出金状況等を調査し、昭和五六年七月末日現在の簿外現金を一億四五〇〇万円と推計し、さらに、昭和五五年七月期の簿外現金有高を八五〇〇万円と、昭和五四年七月期の簿外現金有高を三〇〇〇万円と推計したこと、〈3〉この調査の過程で、被告人晴美が沢木ほかの者に簿外現金で簿外給料を支払った旨を述べたことから、そのことを前提に前記の入出金状況が検討されたことが認められる。
右のとおり、前記入出金状況等の調査は、昭和五六年七月期以前の各期末の簿外現金の推計のために行われたものに過ぎず、その基礎となった証拠書類を検討しないで、前記査察官調査書の記載のみを根拠として昭和五七年七月期に簿外給料が支払われたことを直ちに認めることはできないというべきである(前記藤本証言)。そして、被告人晴美は、「交際費以外の簿外人件費や簿外販売促進費等、簿外で支払った経費はない。私は、比較的少額な個人の支出も会社の経費に付け込んでいたし、相手先を言えないものは使途不明金として公表に計上していた。このことからも見ても、五七年七月期及び五八年七月期において、これ以外に簿外の経費があるはずがない。」旨説明し(昭和五九年八月二一日付質問てん末書〔検三三六〕)、また、昭和五七年七月期の簿外現金の使途について、自宅建築費用の一部を支払ったほか、個人の家具、調度品等の購入に使用したと述べるのみで、簿外現金から前記の給料を支払ったことは一切述べておらず、査察調査による昭和五六年、同五七年、同五八年の各七月末日現在の簿外現金残高を確認していること(昭和五九年九月二二日付質問てん末書〔検三三七〕)、さらに、本件において、昭和五七年七月期に簿外で給料を支払ったことを認めるに足りる資料は何ら存しないことを考慮すると、前記調査書の記載のみをもってして、被告会社が昭和五七年七月期に簿外給料を支払ったものと認めることはできないというべきである。
3  外注工賃(西園知治関係)について
(一)  弁護人は、西園知治は、被告人杉晃らの自宅建築の請負工事のみならず、被告会社の仕事にも相当期間従事し、その分は被告会社の経費として認容されるべきであると主張し、証人西園知治は、当公判廷において、次のとおり被告会社の仕事に従事した旨供述している(第七七回公判期日)。
(1) 奈良工場関係
ア 社宅一三棟の設計、管理、監督(三か月程度)
イ サイロの型枠の作成(作業日数は多くない。)
ウ 古い社宅の修理(一週間程度)
(2) 本社関係
ア 新社屋の会議室等のレイアウト作成(四、五日から一週間程度)
イ 材料の手配(図面作りも含め、一〇日前後、あるいは一四、五日から長くて二〇日間程度)
ウ 某所の天井張り(一週間から一〇日間程度)
エ 雨漏りの修繕等(何日かはしている。)
(3) 滋賀工場関係
試験室等の図面作成、材料手配等(現場には四、五回行った程度、一〇から一五日間くらい)
(4) 自宅横の作業所における作業
りん木の作成、記念品の材料の木挽き等(一週間程度)
(二)  ところで、西園知治調査書(検三九九)及び同人の検察官調書(検四〇二)によれば、西園は、被告人杉晃らの自宅の建築と被告会社の仕事を一緒に行うようになった昭和五六年一二月ころから、自宅の仕事と被告会社の仕事を区別するため、毎日控えていたメモを作成していたとして、査察調査の際にこれを提出、説明し、検察官に対しても同様の説明をしたこと、こうしたことから、被告会社の経費(修繕費)として、昭和五七年七月期に五六万七〇〇〇円、昭和五八年七月期に四五〇万六七五〇円が認容され、その余の西園に対する支払分はすべて否認されたことが認められる。
しかしながら、西園証言(第七七回公判期日)によれば、右メモ(昭和六〇年押第二二号の39)は、西園が大阪国税局に出頭する二、三日前に、清水勝利が下書きを持ってきて、これを古い紙に書き写させたものであり、その後、西園は、森井義則か清水から、査察調査等のときは、このメモの記載どおり働いていたと説明してくれと指示され、そのとおり供述したこと、右メモの記載内容はでたらめであり、実際に被告会社の仕事に従事した日数等は、右メモの記載より少なかったことが認められる。そして、前記西園証言によっても、被告会社の仕事に従事した時期及び日数は必ずしも明確にならず(なお、弁護人は、奈良工場関係の仕事に従事した時期が不明であるとして、二年間にわたり毎月三日間ずつ従事したとして計算するが、その当否は疑問である。)、さらに、被告人杉晃は、森井義則を同行して大蔵事務官から質問調査を受けた際、森井に大阪国税局査察部の調査内容と総勘定元帳とを照合、検討させたうえ、「簿外で支払っていた西園知治の工場の修繕費等(昭和五七年七月期五六万七〇〇〇円、昭和五八年七月期四五〇万六七五〇円)については正しく会社の経費として認めて貰っている。」旨供述し、森井ともども、被告会社の修繕費、外注工賃等に仮装して西園に支払った金額を認めていたことを考慮すると(同被告人の昭和五九年九月一八日付質問てん末書〔検三一九〕、右認容額以上に被告会社の経費として計上されるべき外注工賃ないしは修繕費が存在すると認めることはできない。
したがって、この点に関する弁護人の主張は採用しない。
4  工場消耗品費について
(一)  吉川木材株式会社関係
(1) 吉川木材(株)調査書(検四〇七)及び吉川喜博の質問てん末書(検一六〇)等によれば、被告人杉晃らは、自宅建築用に吉川木材株式会社(以下「吉川木材」という。)から購入した材木の費用のうち、昭和五七年七月期に一五五万七九九〇円、昭和五八年七月期に三〇万二〇〇〇円を被告会社の各期の工場消耗品費として仮装計上したことが認められる。
これに対し、弁護人は、自宅購入分とされたものの中には被告会社の営繕用の木材分も含まれており、工場消耗品費として、昭和五七年七月期は五万五八八〇円、昭和五八年七月期は三万四八四〇円がそれぞれ認容されるべきであると主張する。
(2) しかしながら、前記吉川喜博の質問てん末書によれば、同人(吉川木材の代表取締役)は、被告人杉晃らに指示されて、自宅用に納入する分は「研究所」と表示して納品、請求する一方、被告会社に販売した分は「本社」とか「奈良工場」等と納品書に記入し、請求書も自宅用とは別に作成して被告会社に送付していたことが認められる。
この点に関し、西園証言中には、木材の品質形状等から被告会社の社宅の修繕用に使用した分がある旨の供述部分(第七三回、第七七回公判期日)も存するが、その内容自体曖昧であり、前記吉川喜博の質問てん末書中の関係記載部分と対比して信用できない。
したがって、弁護人の右主張は採用できない。
(二)  上板正明関係
(1) 前記のとおり、被告人杉晃らは、昭和五六年夏から同年一〇月ころ、自宅の建築資材として杉の原木を代金二四〇〇万円で購入し、昭和五七年七月期において、その代金の一部一五二四万五〇〇〇円を工場消耗品費として、八二五万円を消耗器具費としてそれぞれ仮装計上したことが認められる。
弁護人は、右原木の一部は自宅建築に使用したが、残りはスライスして被告会社の社屋用のベニヤ板を製造したり、パレット、りん木等の製造に使用したもので、少なくとも右一五二四万五〇〇〇円の三割五分に相当する五三三万五七五〇円は工場消耗品費として認容されるべきであると主張する。
(2) そこで検討するに、上板正明証言(第二〇回、第二一回公判期日)、西園証言(第七七回公判期日)によれば、右原木の一部がスライスされてベニヤ板に張られたり、その一部を利用して花台、額縁等が製作されたことが認められる。
しかしながら、前記上板証言、西園証言によれば、被告人杉晃らは自宅の天井に張る杉の柾目板二尺一寸角、厚さ二分三厘のもの八坪分を探していたが、その希望に合致する品質、量の市販製品を入手できなかったことから、原木を購入し、製材してその中心付近の一番良質な部分を自宅の天井板に使用したこと、その残りの部分を玄関、食堂の壁板等に使用し、さらにその余りを利用してベニヤ板を製造したり、花台、額縁等の材料として使用したことが認められる。そして、被告人杉晃自身、査察調査に際し「私は会社が使う資材等を上板から購入したことはない。」(同被告人の昭和五九年九月四日付質問てん末書〔検三一七〕)とか、「上板正明等に支払った自宅の建築材の代金を被告会社の工場消耗品費や消耗器具費として計上していた。」(同月一八日付〔第二回〕質問てん末書〔検三一七〕)と供述し、前記購入代金は個人の経費に属することを認めていたのであって、以上によれば、右原木は被告人杉晃らが個人として購入したものであり、自分で使用した余りを被告会社に提供したとしても、個人の所有に帰した後の処分行為として、その提供時において被告人杉晃と被告会社の関係として処理されるのはともかくとして、購入時において前記購入代金の一部を被告会社の経費として計上することはできないというべきである。
(三)  島上商店関係
(1) 弁護人は、被告人杉晃らが自宅新築用に島上商店から購入してあった一般材を昭和五六年八月ころから昭和五七年七月末ころまでの間に被告会社の社宅の新築や滋賀工場の内装工事に使用したので、その分に相当する四七八万二〇〇〇円を被告会社の昭和五七年七月期及び昭和五八年七月期の消耗品費もしくは修繕費として認容すべきであると主張する。
(2) なるほど、被告人杉晃の昭和五七年二月一七日付質問てん末書写し(弁七七)及び西園証言(第七三回、第七七回公判期日)によれば、同被告人らは、昭和五四年一〇月ころから昭和五六年一〇月ころまでの間に、島上商店から自宅新築用の資材を購入したこと、その後、右資材の一部を被告会社の社宅建築等に使用したことが窺えるが、右個人的に購入した資材をその後被告会社の社宅建築等に使用したとしても、前記上板正明から購入した資材(杉の原木)の場合と同様、過去において個人的に支払った費用を改めて被告会社の経費として計上することができるはずはなく、この点に関する弁護人の主張も失当である。
5  修繕費について
(一)  荒井左官関係
(1) 荒井稔証言(第六回公判期日)及び荒井(稔)左官工業調査書(検四〇四)によれば、荒井左官は、昭和五七年ころ、被告人杉晃らの自宅の左官工事を総額約二〇〇〇万円で請け負い、同工事の出来高に応じて代金の支払いを受けていたところ、被告人杉晃らは、その工事代金のうち、一八五万円(昭和五七年七月三一日支払分)を昭和五七年七月期に、二六八万三〇〇〇円(昭和五七年一二月二五日支払分金九八万三〇〇〇円、昭和五八年五月二五日支払分金一七〇万円)を昭和五八年七月期に、それぞれ被告会社の修繕費として仮装計上したことが認められる。
(2) 弁護人は、右の昭和五七年一二月二五日支払分九八万三〇〇〇円は、被告会社の工事に関するものであるから、昭和五八年七月期の被告会社の経費として認容されるべきであると主張する。
しかしながら、前記荒井証言、昭和五七年八月から昭和五八年一月までの請求書綴(昭和六〇年押第二二号の11)中の荒井稔作成の昭和五七年一一月二五日付請求書、昭和五八年七月期の領収証綴(同号の16)中の同人作成の昭和五七年一二月二五日付領収書によれば、荒井は、昭和五六年に被告会社の社宅の壁の塗り替え工事を行い、同年一一月二五日に代金二二五万円を受領したことがあるが、それ以外に被告会社の仕事をしたことはなかったこと、自宅の左官工事は右社宅の左官工事の後に始め、その工事代金の一部として、昭和五七年一一月二五日付で九八万三一〇〇円を被告会社に請求し、同年一二月二五日に九八万三〇〇〇円の支払いを受けたことが明らかである。
弁護人は、その主張に副う西園証言を援用するが、同人も、昭和五七年一一月二五日付の請求書には交通費の記載があるから、被告会社の工事に関するものであるというに過ぎず、前記認定を左右するに足りるものではない。したがってこの点に関する弁護人の主張は採用できない。
(二)  吉川木材関係
(1) 前記吉川木材(株)調査書及び吉川喜博の質問てん末書によれば、被告人杉晃らは、自宅建築用に購入した材木の費用のうち、昭和五七年七月期に二三万九七二〇円、昭和五八年七月期に五一万五四二〇円を被告会社の各期の修繕費として仮装計上したことが認められる。
これに対し、弁護人は、前記4(一)(1)と同様の理由により、昭和五七年七月期においては一八万三六八〇円、昭和五八年七月期においては三二万七五五〇円が被告会社の修繕費として認容されるべきであると主張する。
(2) しかしながら、この点に関しても、前記4(一)(2)で認定、説示した理由により、弁護人の主張は採用することができないというべきである。
(三)  河鈑金工作所関係
(1) 昭和五七年九月三〇日付領収書分
ア 河龍男の検察官調書(検一七二)及び被告人晴美の昭和五九年一〇月一九日付質問てん末書(検三三八)によれば、昭和五八年七月期に被告会社が河鈑金工作所(以下「河鈑金」という。)に修繕費として三八五万一〇〇〇円を支払ったとして仮装計上したところ、そのうち、昭和五七年九月三〇日支払分の一一三万五〇〇〇円は、河龍男が清水勝利に頼まれ、現実には工事をしていなかった分について、領収書を作成、交付し、被告人晴美がそれを利用して河鈑金に対して現金で修繕費を支払ったように仮装し、その分を簿外の現金として運用したことが認められる。
イ 弁護人は、これは、清水勝利が被告会社の従業員の慰労のため飲食させる費用を捻出するため、右のような架空の支払いを装い、その分を現実に飲食に費消したものであるから、右一一三万五〇〇〇円は被告会社の福利厚生費として認容されるべきものであると主張し、証人清水勝利も、当公判廷において、これに副う供述をしている(第二六回、第三三回公判期日)。
しかしながら、清水証言によっても、そもそもこのようにして飲食費用を捻出しなければならなかった合理的な理由は明らかにならないばかりか、右のとおり捻出した金員を現実に従業員の飲食に費消したとする清水証言中の該当供述部分は、前記被告人晴美の質問てん末書ほかの関係証拠に照らし信用することができないのであって、弁護人の主張は採用することができない。
(2) 昭和五八年七月二五日付領収書分
弁護人は、昭和五八年七月期の河鈑金支払分のうち、昭和五八年七月二五日に支払った一〇三万六〇〇〇円については、河鈑金が被告会社の仕事をした分であると主張し、これに副う清水証言(第三六回公判期日)を援用する。
しかしながら、河龍男は、前記領収書分は草竹邸の鈑金工事に対する支払分であると明言し、かつ、被告会社の社宅や工場の鈑金工事をしたことはあるが、それは昭和五八年夏から暮れ以降のことである旨明確に述べていること(前記河龍男の検察官調書)、清水勝利も、検察官に対しては「河に『社長の家の鈑金工事について、工場の仕事をしたようにして会社に請求してくれ。』と言った。」旨供述していること(同人の昭和六〇年二月一〇日付検察官調書〔検四九九〕等に照らすと、前記清水証言は信用できないというべきである。
したがって、この点に関する弁護人の主張も採用できない。
(四)  西園知治関係
この点に関する弁護人の主張及びそれに対する当裁判所の判断は、前記3と同じである。
6  製造原価・販売促進費(近鉄百貨店からの商品券等購入分)について
(一)  交際費該当支出査察官調査書(検四二三)、昭和五七年七月期の総勘定元帳(昭和六〇年押第二二号の1)によれば、被告会社は、昭和五七年七月期に商品券一七〇〇万円分及びビール券七〇万九四六〇円分を近鉄百貨店から購入し、この費用を製造原価・販売促進費として計上したことが認められるところ、弁護人は、右商品券及びビール券は、被告会社において広告宣伝費や福利厚生費又は支払手数料として使用したものであると主張し、被告人晴美も、当公判廷において、「被告会社では、開発した新製品を設計事務所とか業者に売り込みに行くとき、そのパンフレットとともに、粗品として商品券やビール券を持っていった。また、取引先に挨拶に行ったときに渡したり、大学や設計事務所の先生あるいはセラミックの関係で世話になった人に渡した。その他、一生懸命働いてくれた従業員に対して賞与的に渡したり、結婚祝い、出産祝い等に使用したこともある。」などと供述している(第八二回公判期日)。
(二)  ところで、税法上、交際費とは「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」(租税特別措置法六二条三項)とされるが、右のような支出であっても、不特定多数の者に対する宣伝効果を意図する一定の支出は広告宣伝費として、交際費に含まれないことになるところ、右にいう「不特定多数の者」とは一般消費者を想定しているものと解され、そもそも資材の製造業者である被告会社にとっての取引業者、設計事務所等は、右にいう一般消費者ということはできないばかりか、商品券やビール券は、租税特別措置法施行令三八条の二にいう「カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品」ということもできないのであって、これらの者に対する売り込みや挨拶回りに際して商品券やビール券を配布したとしても、それを広告宣伝費とすることはできないというべきである。そして、被告人晴美は、捜査段階において、「地方公共団体の工事で被告会社の製品の使用を指定してもらえるよう、県や市町村の担当者に便宜を図ってもらうため、手土産として渡す商品券を購入した。」と供述しているのであって(同被告人の昭和六〇年二月四日付検察官調書〔検三四三〕)、これに反する被告人晴美の公判供述は信用することができず、そうであれば、右目的で配布した商品券等の費用は明らかに交際費というべきで、これを広告宣伝費として計上できないことは当然である。
さらに、商品券を賞与として渡したとか、結婚祝い等に使用した旨の被告人晴美の公判供述も、公判段階になってはじめてなされたものであるばかりか、その交付先、金額等はまったく不明であって、信用することができない。したがって、右購入費用が福利厚生費、支払手数料として計上されるべきであるとの主張も採用できないというべきである。
7  消耗器具費(上板正明関係)について
弁護人は、上板から購入した杉の原木代金二四〇〇万円のうち、二八八万七五〇〇円は、昭和五七年七月期の被告会社の経費として認容されるべきであると主張する。
しかしながら、前記4(二)で認定説示したのと同様の理由により、この点に関する弁護人の主張も採用できない。
8  広告宣伝費(西村雄司関係)について
(一)  西村雄司証言(第一七回公判期日)及び西村雄司調査書(検四一七)によれば、被告人杉晃らは、西村雄司に対し、天井板の干支の彫刻を二組発注し、その代金八八万円を被告会社の広告宣伝費として計上したことが認められる。
この点に関し、弁護人は、右天井板の彫刻二組のうち、一組は被告会社用のものであり、代金八八万円の半額に相当する金四四万円は被告会社の経費として認容されるべきであると主張する。
(二)  しかしながら、前記西村証言及び西園証言(第七七回公判期日)によっても、被告人らが自宅用一組、被告会社用一組と区別して注文したことはまったく窺われないばかりか、被告人杉晃及び同晴美は、いずれも査察調査及び検察官の取調べに対し、自宅の天井板の彫刻を西村雄司に頼み、その代金を被告会社の経費に計上していたことを認めていたのみならず(被告人杉晃の昭和五九年九月一八日付〔第二回〕質問てん末書〔検三一九〕、被告人晴美の昭和六〇年二月一〇日付検察官調書〔検三四六〕)、一組は被告会社であったとする主張は公判段階になってはじめてなされたものであること、右二組分の彫刻代金を区分することなく、しかも敢えて広告宣伝費として計上していたこと等を考慮すると、前記被告人両名の各公判供述はまったく信用できない。
したがって、弁護人の主張は採用できない。
9  支払手数料について
(一)  新屋税理士に交付した金地金分
(1) 新屋昇証言(第五八回公判期日)及び被告人晴美の公判供述(第八一回)によれば、被告人杉晃らは、前回の査察開始後一年くらいの間に、新屋税理士に対し、金地金一キログラムを交付したことが認められる。
この点に関し、弁護人は、右金地金は、前回の査察に伴う税務処理や、修正申告書の提出等の事務の手数料として被告会社が新屋税理士に交付したものであり、したがって、これに相当する二八一万一四五八円は被告会社の支払手数料として認容されるべきであると主張し、新屋税理士(第五八回公判期日)及び被告人晴美(第八一回公判期日)もこれに副う供述をしている。
(2) しかしながら、被告人杉晃らが購入、所持していた金地金のほとんどは特定され、ただ、九本、六キログラム分について所在が判明しなかったところ、同被告人らは、簿外現金で購入した金地金の所在不明分は昭和五八年六月ないし七月に中元の挨拶回りに使用したと説明するものの、交付先に迷惑がかかるからとして交付先を明らかにするのを拒否しており(被告人杉晃の昭和五九年九月一八日付〔第二回〕質問てん末書〔検三一九〕被告人晴美の昭和五九年八月二一日付質問てん末書〔検三三六〕、簿外交際費調査書〔検四〇〕、金地金の明細調査書〔検五〇〕)、これらの点を考慮すると、新屋税理士に交付した金地金が右不明分に含まれる被告会社所有のものであるかも明らかでないというべきであるが、さらに、後記10(一)(4)のとおり、被告会社は、新屋税理士に対し、昭和五七年七月期において、毎月一五万円の顧問料を支払い、これを雑費に計上していたほか、昭和五七年一二月二一日には二〇〇万円を支払っていたことや(なお、被告人晴美らは、後記10(一)(4)のとおり、新屋税理士に対して前回の査察調査に伴う税務処理等の支払手数料として使途不明金一〇〇〇万円の一部を使用したと供述しており、これが真実であれば、新屋税理士に相当高額な支払手数料が支払われたことになる。)、手数料の支払いとしては通常ではない金地金を交付したことなどを考慮すると、これを支払手数料と認めることは到底できないというべきである。なお、新屋税理士は、「自己の税務申告に際し、被告会社からの受取手数料として処理した。」旨供述するが(第五八回公判期日)、新屋税理士の税務申告をもって、右認定を左右することはできない。
(二)  新屋税理士に交付した床柱
(1) 新屋昇証言(第五九回公判期日)及び西園知治証言(第七四回公判期日)によれば、被告人杉晃らは、昭和五七年初めころ、当時自宅兼事務所を新築中であった新屋税理士に床柱一本を交付したことが認められるところ、弁護人は、これは前記の金地金と同一の趣旨で被告会社が交付したものであり、右床柱に相当する金額一三七万二〇〇〇円は被告会社の支払手数料として認容されるべきであると主張する。
(2) しかしながら、前記西園証言及び被告人杉晃の昭和五七年二月一七日付質問てん末書写し(弁七七)によれば、右床柱は同被告人らが自宅建築用に個人的に購入した北山杉の天然しぼり丸太であったこと、同被告人及び被告人晴美は、その当時、新屋税理士に対し「国税で新屋先生にたいへん世話になったので、御礼をしたいから。」と言って、右床柱を授与したほか、西園に同税理士の自宅兼事務所の設計変更等を行わせたことが認められる。そして、前記のとおり、被告会社は新屋税理士に毎月の顧問料等を支払っていることや、手数料とは直ちに考えがたい床柱を授与していることを併せ考慮すると、右床柱は被告人杉晃らが同税理士に個人的に贈与したものと認められ、これを支払手数料として被告会社の経費とすることはできないというべきである。
10  接待交際費について
(一)  昭和五七年七月期
(1) 商品券及びビール券購入費用
弁護人の主張及びこれに対する当裁判所の判断は、前記6と同じである。
(2) 福利厚生費該当分
ア 弁護人は、昭和五七年七月期に交際費として計上した分のうち、次のものは交際費に該当せず、被告会社の経費として認容されるべきであると主張し、被告人晴美も、当公判廷において、「これらはいずれも被告会社の従業員に対する結婚祝い等のために要したもので、福利厚生費に計上すべきものであった。当時はこのようなことがわからなかったため、従業員の慶弔に関する出費は交際費に計上していた。」旨供述している(第八二回公判期日)。
〈1〉 昭和五七年二月一〇日 近鉄結婚祝 一三万二〇〇〇円
〈2〉 同年 三月一六日 加茂工場結婚祝 三万円
〈3〉 同年 四月二一日 出雲昭徳 三三二〇円
〈4〉 同年 四月二一日 金子秀紀 三四四〇円
〈5〉 同年 五月二七日 谷口松太郎結婚祝 五万円
〈6〉 同年 四月二一日 宝美堂 五万五〇〇〇円
(以上合計 二七万三七六〇円)
イ しかしながら、昭和五七年七月期の総勘定元帳(昭和六〇年押第二二号の1)の該当記載部分によれば、まず、右〈3〉及び〈4〉は酒代として支払われたもので、そもそも福利厚生費に該当する出費といえるか疑問である。そして、これらの出費(なお、宝美堂に対する支払いは昭和五七年六月八日と認められる。)に関する被告人晴美の公判供述は曖昧で信用しがたいというべきであるうえ、前記総勘定元帳によれば、被告会社は、交際接待費の科目のほかに、福利厚生費の科目を設け、そこに出産祝い、見舞品、香典等に要した費用を逐一記載していると認められ(例えば、前記出費に近接した分でも福利厚生費として「昭和五七年二月一〇日べんてん堂出産祝品五二八〇円」、「同月二三日西橋浩出産祝五〇〇〇円」、「同年四月三〇日阪急結婚祝品七万五八五〇円」等の各記載がなされている。)、被告会社において福利厚生費と交際接待費とを明確に区別して処理していることは明らかであり、前記各費用が交際費以外の経費として計上すべきものであったと認めることはできない。
したがって、前記被告人晴美の公判供述は信用することができず、また、「従業員のために使用した金額はすべて福利厚生費であるから、出雲昭徳に支払った酒代も福利厚生費に該当する。」旨の新屋昇証言(第五七回公判期日)も、採用するに足りない。
(3) 公表交際費の額
ア 弁護人は、被告会社の総勘定元帳の交際費勘定の合計金額は八二七万三八四七円であるところ、交際費損金不算入額調査書(検四二四)では公表交際費は一五二七万三八四七円となっており、その差額七〇〇万円は根拠なく加算されたもので、この分は減算されるべきであると主張する。
イ しかしながら、昭和五七年七月期の法人税確定申告書謄本(検三)、申告書控等二綴(昭和六〇年押第二二号の21)中の昭和五七年七月三一日付精算表及び昭和五七年五月二四日受付の修正申告書、元帳綴一冊(弁六一)、被告人晴美の昭和五九年九月二二日付質問てん末書(検三三七)、田村郁雄証言(第五二回、第五四回公判期日)によれば、新屋税理士事務所において、昭和五七年七月期の決算に当たり、昭和五六年七月期の修正申告を前提に決算内容のチェックをしていった際、計算が合わなかったため、昭和五七年六月一日に諸口使途不明金として七〇〇万円支出されたとして交際費に計上し、帳尻を合わせて決算書を作成したこと、昭和五七年七月期の確定申告の公表交際費の額も右七〇〇万円を加えた一五二七万三八四七円としたことが認められ、これに、被告会社には使途を公表できない交際費が少なくなかったことを考慮すると、新屋税理士は、右七〇〇万円を交際費以外の他の経費として計上できない使途不明金と判断して右のような処理をしたことが推認できるのであって、右加算を不相当とすることはできないというべきである。
(二)  昭和五八年七月期
(1) 商品券一〇〇〇万円、年末挨拶回り四三〇万円
ア 交際費該当支出調査書(検四二三)、昭和五八年七月期の総勘定元帳(昭和六〇年押第二二号の2)によれば、被告会社は、近鉄百貨店から昭和五八年七月期に商品券一〇〇〇万円分を購入し、この費用を販売費・販売促進費として計上したこと及び年末挨拶回り分四三〇万円を同様の科目で計上したことが認められるところ、弁護人は、これらの費用のうち、少なくとも半額は支払手数料ないしは広告宣伝費として認容されるべきであると主張し、被告人晴美も、当公判廷において、「新製品の開発に協力してもらった大学教授や設計事務所の先生、セラミック設備の件で指導を受けた窯元に商品券や現金を持っていった。また、新製品の売り込みのため、業者や設計事務所にパンフレットとともに商品券を持っていった。」旨供述している(第八二回公判期日)。
イ しかしながら、右商品券に要した費用が広告宣伝費に該当しないことは前記6(二)で述べたとおりであり、また、前記総勘定元帳によれば、右四三〇万円は昭和五七年一二月二七日付で「年末挨拶回り」として計上されており、その時期や金額等を考慮すると、前記のように各所に支払手数料として支払った旨の被告人晴美の公判供述は信用しがたいこと、被告人杉晃は、査察調査において、「県会議員や市会議員の選挙に際し、当選祝いとして現金を持参したり、年始回りに現金を持っていった。昭和五八年七月期に販売促進費として計上した四三〇万円もこのような金で、交際費とすべき性格の支出である。」旨供述していること(昭和五九年九月一八日付質問てん末書〔検三一九〕)に照らすと、弁護人の主張は採用できないというべきである。
(2) 金地金一九六〇万〇五〇〇円分
ア 簿外交際費調査書(検四〇)、金地金の明細調査書(検五〇)、被告人晴美の昭和五九年七月二日付(検三三三)及び同年八月二一日付(検三三六)各質問てん末書によれば、被告人晴美らは、売上除外によって得た簿外現金で購入した金地金のうち六キログラム(一九六〇万〇五〇〇円相当)を簿外の交際費として使用したことが認められるところ、弁護人は、右は全額支払手数料として認容されるべきであると主張し、被告人晴美も、当公判廷において、「新製品の開発に当たり、大学の先生に実験等の協力をしてもらった場合や、設計事務所の先生に耐圧の計算や図面作成等で協力してもらった場合に、手数料として金地金を渡した。また、ある現場で大手建設業者に被告会社製品を使用してもらったとき、売上の歩戻しないしリベートとして金地金を渡したことがある。」旨供述している(第八一回公判期日)。
イ しかしながら、査察調査に際し、被告人晴美は、「本件の金地金のうち、五〇〇グラムのもの六本は、製品の開発を受けている大学教授、日頃世話になっている市会議員等に中元の挨拶回りに行った際に自分が渡し、また、被告人杉晃に言われて一キログラムのもの三本を同被告人に渡したが、建築会社や設計事務所の手土産に使ったと思う。」旨供述し(昭和五九年八月二一日付質問てん末書〔検三三六〕)、被告人杉晃も「大学教授、設計事務所、議員にコンサルタント料として、御中元に持っていった。」旨供述し(昭和五九年九月一八日付質問てん末書〔検三一九〕)、被告人両名とも先方に迷惑がかかるとして交付先等の具体的な供述を拒んでいることに照らすと、被告人晴美の公判供述は信用することはできず、また、被告人杉晃らの査察調査時に述べた目的からすれば、これを支払手数料ということはできないのは当然である。
(3) 交際費損金不算入額
ア 弁護人は、被告会社の総勘定元帳の交際費勘定の合計金額は二九九六万三四七九円であるところ、交際費損金不算入額調査書(検四二四)では一二〇〇万円が加算、計上されており、その差額一二〇〇万円は根拠がないと主張する。
イ しかしながら、昭和五八年七月期の法人税確定申告書謄本(検四)、昭和五八年七月期の総勘定元帳(昭和六〇年押第二二号の2)、申告書控等二綴(昭和六〇年押第二二号の21)中の昭和五七年八月一日・昭和五八年九月三〇日付精算表によれば、被告会社は、昭和五八年七月期の交際接待費として二九九六万三四七九円を計上し、右金額を決算書に計上したこと、しかし、新屋税理士事務所では、確定申告書の別表一五「交際費等の損金算入に関する明細書」中の支出交際費等の額及び損金不算入額に右金額を計上しながら、別表四「所得の計算に関する明細書(簡易様式)」には交際費損金不算入額として右金額に一二〇〇万円を加算した四一九六万三四七九円を計上したことが認められ、右によれば、前記一二〇〇万円は、新屋税理士が交際費に該当する支出と判断して計上したものと推認でき、これを根拠のない加算であるとすることはできないというべきである。
(4) 支払手数料、雑費等該当分
ア 昭和五七年九月三〇日計上分「使途不明金一〇〇〇万円」
〈1〉 弁護人は、被告会社が昭和五七年九月三〇日に交際費勘定に計上した使途不明金一〇〇〇万円は、税理士や弁護士に対する支払手数料として支払った分で、交際費から除外されるべきであると主張し、被告人晴美も、当公判廷において「前回の査察調査が終わり、被告会社等に対する刑事事件の判決も出たので、被告会社が世話をかけた新屋税理士、藤井税理士及び河辺弁護士に対する御礼として渡した。」旨供述している(第八二回公判期日)。
〈2〉 しかしながら、この主張は、公判の終了段階になってはじめてなされたもので、そもそも被告会社が支払手数料として計上すべき費用をわざわざ使途不明の交際費として経理処理したとする主張自体信じがたいものであるが、さらに、前記昭和五八年七月期の総勘定元帳によれば、被告会社は、毎月、新屋税理士に一五万円、藤井税理士に五万円、河辺弁護士に三万円(昭和五七年一〇月から)の顧問料を支払い、これを雑費に計上していたこと、右以外に昭和五七年一二月二一日に新屋税理士に対して二〇〇万円を支払い、河辺弁護士に対し、弁護料として同年一〇月二〇日に四〇万円、同年一一月二〇日に三五万円支払ったほか、同年一二月二〇日にも二五万円を支払い(以上合計一〇〇万円)、これらをいずれも支払手数料として計上していたことが認められ、この点に関する被告人晴美の供述はまったく信用できないというべきである。むしろ、被告人杉晃は、査察調査に際しては、「大学教授に対するコンサルタント的費用、建設業者や官公庁等の主要人物に対する挨拶費用、議員に対する陳情費用、官公庁関係者に対する祝い金、餞別等のために現金が必要で、昭和五七年九月三〇日の使途不明金一〇〇〇万円は、右目的の金である。」旨明言しているのであって(昭和五九年八月一七日付質問てん末書〔検三一六〕)、弁護人の主張は採用できない。
イ 昭和五八年三月一日計上分「祝い金餞別その他五〇〇万円」
〈1〉 弁護人は、同じく被告会社が昭和五八年三月一日に「祝い金餞別その他」の名目で交際費勘定に計上した五〇〇万円のうち二〇〇万円は支払手数料若しくは雑費・交通費的なものであり、交際費から除外されるべきであると主張し、被告人晴美も、当公判廷において「昭和五八年一月に内野が辞めて、その後、いろいろな業者と問題が起こってきたので、社長が森井に内密に調査をしてほしいと依頼したときに確か二〇〇万円ほど支払ったと思う。」旨供述している(第八二回公判期日)。
〈2〉 しかしながら、この点に関する被告人晴美の供述は曖昧で、支払手数料あるいは旅費交通費その他の損金として計上しうる右費用を同被告人がわざわざ接待交際費の中に含めて計上したとすることについては疑問があるのみならず、前記被告人杉晃の査察調査時の供述にも反し、被告人晴美の公判供述はまったく信用できない。
11  販売及び一般管理費・販売促進費について
(一)  日本楽器製造関係(ペルシャ絨毯購入分)
弁護人は、日本楽器製造から購入したペルシャ絨毯は、被告会社用として購入したもので、その代金は被告会社の経費として認容されるべきであると主張し、被告人杉晃及び同晴美の各公判供述中にこれに副う供述部分が存する。
しかしながら、被告人晴美は、査察調査及び検察官による取調べ時において、自宅用に購入したものであることを認め(昭和五九年八月一七日付質問てん末書〔検三三五〕、昭和六〇年二月一〇日付検察官調書〔検三四六〕)、また、被告人杉晃も右絨毯購入費用は個人で支払うべきものであったことを認めていた(昭和五九年九月一八日付〔第二回〕質問てん末書〔検三一九〕)のみならず、前記認定のとおり、右絨毯購入に際し、被告人らは被告会社の名前が出ないように契約書を作成させたり、右代金をことさら被告会社の販売促進費として計上したことからも、被告会社用に購入したものではないことは明らかである。この点に関する前記被告人両名の各公判供述等は信用できず、弁護人の主張は採用できない。
(二)  商品券一〇〇〇万円、年末挨拶回り四三〇万円分
弁護人の主張及びこれに対する当裁判所の判断は、前記6、10(二)(1)のとおりである。
12  固定資産除却損
(一)  関係証拠によれば、被告会社は、別紙3記載のとおり、昭和五八年七月期において、滋賀工場のセラミック機械設備等の固定資産除却損として一億八三六〇万九〇九四円を計上したことが認められる。検察官は、そのうち一億一二七七万五七六一円を否認したが、弁護人は、被告会社の右除却損の処理は相当であり、また、右以外にも計上されるべき固定資産除却損が存する旨主張する。
(二)  関係証拠によれば、次の事実が認められる。
(1) セラミック設備設置の経緯、設備の概要
被告会社は、滋賀工場において、山土から砂利を採取し、これを用いてコンクリート・ブロック等を製造していたが、右砂利採取に際し大量の粘土質の廃土が生じ、その廃棄処理に相当の経費がかかっていたことから、被告人杉晃は、かねてから、右山砂利採取の際に大量に生ずる泥を利用して盲人誘導板等のセラミック製品を製造できないかと考え、その研究、準備にとりかかっていたところ、学歴を偽り、熱工学等の専門家で博士号も有するという触れ込みで昭和五五年三月に入社した内野が、セラミック原土の購入を希望する会社があるなどと言葉巧みに被告人杉晃にセラミック製造プラントの実現や、設備の拡大を勧めたことから、同被告人も当初予定した以上の規模の設備を設ける気になり、昭和五五年一一月に内野を製造部技術課長に任命し、以後、同人と相談しながら計画を進めていった。
被告会社が計画していたセラミック製造プラントは、次の一連の工程を行う機械設備からなっており、被告会社は、この計画に基づき、順次、これらの機械設備を発注し、設置してきた。なお、〈1〉の山砂利プラントは、山砂利を採取するため、一〇年以上前から設置されていたものであり、〈3〉のフィルタープレスも既設のものを利用する計画であった。
〈1〉 山砂利を水洗いして、砂、石、泥などに選別し、泥水を〈2〉の装置に送る(山砂利プラント)
〈2〉 泥水の泥を沈殿させ、上澄みの水を排出する(凝縮沈殿装置)
〈3〉 沈殿した泥を圧縮して、水分を除去する(フィルタープレス)
〈4〉 〈3〉の過程を経た泥を水と練り合わせて粒度や濃度を調節する(泥漿前処理装置)
〈5〉 〈4〉の過程を経た泥状の原土を攪拌して固形化を防ぎながら〈6〉の装置に送る(攪拌タンク)
〈6〉 泥水を噴霧状にして熱風で乾燥させる(スプレードライヤー)
〈7〉 乾燥させた粘土のうち最顆粒のものを保存する(原料タンク)
〈8〉 原料土を〈7〉から〈8〉の装置に空気輸送する(空気輸送機)
〈9〉 原料土をプレス成型する(プレス機)
〈10〉 プレス成型したものを予備乾燥したうえ、連続的に焼き上げる(セラミック焼成用トンネルキルン及び白生地乾燥装置、以下「トンネルキルン」という。)
〈11〉 その他
LPガス発生設備(〈10〉等の熱源のための設備)
(篠原啓人証言〔第二二回公判期日〕、内野正敏証言〔第二三回、第二四回公判期日〕、西野寿雄証言〔第二八回、第四〇回、第四一回公判期日〕、被告人杉晃の昭和六〇年二月一一日付検察官調書〔検三二八〕、同被告人の公判供述〔第八六回公判期日〕)
(2) 各設備の発注及び納入状況等
ア 有本工業関係
被告会社は、昭和五六年一〇月六日、有本工業に〈4〉の泥漿前処理装置一式を代金二五〇〇万円で発注し、これは昭和五七年四月から同年六月にかけて順次納入され、代金二五〇〇万円が支払われたが、前記のとおり、被告会社では右代金を型代として仮装計上していた。
また、被告会社は、同年四月二五日、泥漿前処理装置追加工事一式を代金三三〇〇万円で発注し、さらに、同年九月二八日にも、泥漿前処理装置追加工事一式を代金一七〇〇万円で発注したが、これらについては装置の据え付け、引渡はなされず、被告会社においても、公表帳簿上、右代金を計上しなかった。
イ 中部熱工業関係
被告会社は、昭和五六年一〇月六日、中部熱工業に〈6〉のスプレードライヤーを代金五三〇〇万円で発注し、これは同年一二月中旬ころに完成、設置され、内野の検収を受けた。代金は右契約締結時に内金一三〇〇万円を支払っていたが、右据付け完工に伴い、中部熱工業が同年一二月二五日ころ残代金の請求をしたところ、被告会社は、昭和五七年一月二五日に一三五〇万円、同年四月二四日に一三〇〇万円を支払った。
その後、中部熱工業は、後記のとおり、昭和五八年二月二五日ころ、被告会社からスプレードライヤーの修理を依頼され、同社社員が被告人杉晃らと改良工事の内容や代金等の打合せをしたうえ、同年六月一日ころ、代金一四五〇万円でスプレードライヤー改造工事の契約を締結し、同年七月末ころ、改造工事を完了させた。
ウ 林正産業関係
被告会社は、昭和五六年一一月一七日、林正産業に〈6〉のスプレードライヤー用煙突一本を代金五七〇万円で発注し、これは同年一二月ころ納入されたが、長さが足りないとして延長工事が行われ、昭和五七年二月ころ右代金が支払われた。
次に、被告会社は、昭和五六年一二月二二日、林正産業に〈7〉の原料タンク二基を代金一〇五〇万円で発注し、同社は、右原料タンクを昭和五七年三月五日ころ納入したところ、内野から容積が足りないという指摘を受けたため、六〇〇万円ほどかけて継ぎ足し改造工事を行い、さらに塗装のやり直しも行って、同年四月から同年六月にかけて代金一〇四七万五〇〇〇円の支払いを受けた。その後、後記内野の事件発覚後の昭和五八年一月二〇日ころ、林正産業は右改造工事分六〇〇万円の請求を被告会社にしたが、被告人杉晃は、改造工事の件は知らないし、内野から原料タンクの件は全部済んだと聞いているので支払えないと述べて、その支払いを拒絶した。
なお、林正産業は、昭和五七年二月一三日、被告会社からセラミック設備とは関係のない鉄筋曲機一台(代金二五〇万円)の注文を受け、本社工場に納入したが、中に入る金型がうまく合わないという苦情が出たことから改造工事を行い、同年七月ころ、二五〇万円全額の支払いを受けた。
エ バーナー技術センター関係
被告会社は、昭和五六年一二月二三日、バーナー技術センターに〈10〉のトンネルキルン一式を代金一億五八〇〇万円で発注し、同社は、被告人杉晃らと打合せをしながら製造を進め、昭和五七年六月に右装置を一応完成して引き渡した。被告会社は、同年五月から同年一二月まで毎月分割して合計四〇〇〇万円を支払ったが、昭和五八年一月以降支払いをしなくなった。そこで、バーナー技術センターの代表取締役久岡尚らは、残代金の支払いを被告会社に求めたところ、被告人杉晃は、同社の工事が完了していることは認めたものの、他社に発注している〈9〉までの装置が完成しておらず、契約に定められている連続運転テストができないとして残代金の支払いを拒否していたが、バーナー技術センター側からの再三の要求により、昭和五八年七月二五日に二五〇〇万円を支払い、同年九月以降も分割して支払うようになった。しかし、被告会社は、昭和五九年一月から再び支払いをストップし、被告人杉晃は、バーナー技術センターからの残代金四五〇〇万円の支払いの要求に対し、「前装置等が完成せず、連続運転テストができないのに三分の二も支払ってやった。残りはもう少し待て。」と返答していた。
オ 有本鉄工関係
被告会社は、昭和五七年五月二〇日、有本鉄工に〈7〉の原料タンク二基を代金一八一五万円で発注し、これらは同年六月下旬ころ完成し、内野の検収を受けたうえ引渡がなされた。有本鉄工は、右引渡後、前記のとおり加藤の依頼により型代等と内容を偽った請求書を作成して代金全額の請求をしたところ、同年七月二五日、内野から「社長が塗装が一部できていないので、全額支払えない。」と言われ、当日は内金一〇〇〇万円のみの支払いを受けた。そこで、有本鉄工では、その翌日に指示どおりペンキの塗り替えを行い、同月二八日に五〇〇万円の、同年八月二五日に残金三一〇万円(五万円値引き)の支払いを受けた。
一方、被告会社は、昭和五七年七月、有本鉄工所に〈5〉の攪拌タンク三基を代金一〇〇〇万円で発注し、これは同年八月一五日ころ完成、納品され、内野の検収を受けた。
なお、有本鉄工は、内野らに対し、右原料タンク二基の受注に際し一七五万円の、攪拌タンク三基の受注に際し四六〇万円のリベートを支払っていた。
カ チトセ工業株式会社関係
被告会社は、チトセ工業株式会社(以下「チトセ工業」という。)に対し、昭和五七年九月四日、既設二トン型スプレードライヤー改良工事一式を七五〇万円で発注し、三・五トン型スプレードライヤー一基を代金四一〇〇万円で、二トン型スプレードライヤー一基を代金三一五〇万円で発注し、さらに同月二二日、原土(粘土)乾燥機一基を代金三二〇〇万円で発注し、これらの機械ないし部品はいずれも同年末ころまでに納入された。被告会社では、既設二トン型スプレードライヤー改良工事代金については建設仮勘定に計上したが、後記のとおり、その余の機械設備費用については、支払いを拒否し、昭和五八年七月期に計上しなかった。
キ サンユー機械産業株式会社関係
内野は、サンユー機械産業株式会社(以下「サンユー機械産業」という。)に対し、昭和五七年九月二二日、リベートを得る目的で、被告会社の注文書を偽造して空気輸送コンベア三台を代金四八〇〇万円で、熱風発生炉二台を代金六六〇万円でそれぞれ発注し、その後、同様の方法により、同年一〇月二日、空気輸送コンベア一台を代金一六〇〇万円で発注した。
これらの機械設備については、結局、完成品は被告会社に納入されず、被告会社も代金の支払いを拒絶し、昭和五八年七月期に取得費用を計上しなかった。
ク その他
被告会社は、昭和五七年六月ころ、山本商事に対し、〈9〉のプレス機を代金八八〇〇万円で発注し、これは同年七月末ころ納入された。また、被告会社は、昭和五六年一二月五日、丸善エンジニアリング株式会社に〈11〉のLPガス供給発生設備を代金二七〇〇万円で発注した。
(前記内野証言、被告人杉晃の検察官調書〔検三二八〕、有本良三証言〔第二二回公判期日〕、小林正勝証言〔第二六回公判期日〕、西野寿雄証言〔第二八回〕、前川昭証言〔第六四回公判期日〕、有本幸弘証言〔第六五回公判期日〕、竹内滋証言〔第六六回公判期日〕、古川彪〔二通、一八五、一八六〕、田中義治〔一八七〕、有本幸弘〔一八八〕、久岡尚〔一九〇〕、小林正勝〔四五〇〕の各質問てん末書、技術センター調査書〔四二二〕、滋賀工場設備調査書〔四六六〕)
(2) セラミック機械設備を除却損として計上するに至った経緯
ア 被告会社では、前記のとおり、セラミック機械設備代金を材料費、型代に仮装計上していたところ、昭和五八年一月五日、内野が、突然、「秘密は守ります。」旨を書き添えた退職願いを残して出社しなくなり、さらに、同月一三日ころ、サンユー機械産業代表取締役の前川昭が来社して、内野から空気輸送コンベア等の注文を受けたが、内野に言われて四七〇〇万円の裏金を支払ったので、被告会社からはこれを含めて七〇六〇万円支払ってもらいたいなどと述べたことから、内野が被告会社の文書を偽造するなどして、業者からリベート名目で多額の金員を詐取していたことが判明し、被告人杉晃らは、新屋税理士、河辺弁護士等とも相談のうえ、同月一四日、奈良警察署に被害届を提出した。
そして、内野が前記のような退職願いを残したことや、内野の件の調査に当たった清水勝利と西野達治(子会社の草竹セラミック株式会社常務取締役)が同月二一日ころに内野と面談した際、同人が「被告会社はセラミック設備の代金を型枠を買ったようにして経費で落としている。」などと述べたことなどから、被告人杉晃及び同晴美らは、昭和五七年七月期にセラミック機械設備代金を材料費等に仮装計上していたことが発覚するのを恐れ、新屋税理士と税務対策を協議し、同期に経費として仮装計上してあるものの洗い出しを急ぎ、その把握した分について、全額を雑収入として受け入れる仮装処理をすることとした。
イ 被告人杉晃は、昭和五八年一月二五日ころ、清水を技術部長に、西野寿雄を技術課長に任命し、内野のあとを引き継いで滋賀工場のセラミック設備を担当させることとし、古川工場長とともに、各機械設備の性能等を確認させたところ、昭和五八年二月初めころのセラミック機械設備の設置状況等は概ね次のとおりであった。
〈1〉の山砂利プラント――既設のものが存在
〈2〉の凝縮沈殿槽――完成、設置
〈3〉のフィルタープレス――据え付け済み(ヒノデ工業製のもの)
〈4〉の泥漿前処理装置――機械は搬入されていたが、据え付け未了
〈5〉の攪拌タンク――一応四基が完成、設置
〈6〉のスプレードライヤー――未完成の状態で三基存在
〈7〉の原料タンク――一応設計図どおり五基完成、設置
〈8〉の空気輸送機――部品の一部が納入されていたが、組立も未了で未完成
〈9〉のプレス機――未納
〈10〉のトンネルキルン――一部未完成
〈11〉のLPガス発生設備――一応完成して滋賀県の許可も下りていたが、各機器との配管ができておらず、試運転未了
ウ そこで、西野寿雄らは、製造メーカーの担当者等を呼んで、各機械設備の性能等を点検、確認したところ、まず、スプレードライヤー三基のうち、中部熱工業製造分は、機械自体は作動したが、チトセ工業による改造工事のため原土が送れない等の問題が生じていたため、前記(2)イのとおり、中部熱工業に依頼して改造工事を行った。しかし、チトセ工業製造のスプレードライヤー二基は、肝心な部分が未完成の容器程度のものに過ぎず、使い物にならないと判断され、中部熱工業製造のスプレードライヤー改良工事の邪魔にもなることから、後記のとおり撤去されることになった。次に、有本工業製造にかかる泥漿前処理装置は旧式で性能が悪く、他の装置と連結不能であったため、使用をあきらめ、その後、これに代わり牧野鉄工所に同装置を製造させることとなった。原料タンク五基は、一応使用可能であったが、将来継続して使用する場合は強度に問題が生ずる恐れがあることから、昭和五八年一一月ころ、林正産業製造の二基について補強工事が行われた。しかし、有本鉄工製造の二基については、他の機器との関連で不要とされ、一基(九六五万円のもの)は廃棄し、昭和五八年六月ないし七月ころ、残り一基(八五〇万円のもの)を補強のうえセメントサイロに転用した。さらに、攪拌タンク四基は、仕様上の要求を満たしており、使用可能と判断されたが、他の機器との関係で二基は不要とされた。そして、有本鉄工製造の攪拌タンク三基のうち、一基を取り付け、一基は、昭和五八年夏ころ、牧野鉄工所製造の泥漿前処理装置に接続する水ガラスタンクに転用した。また、チトセ工業製造の原土乾燥機は本来の作動ができない不良品であるとされたが、本社工場にあった林正産業製造の鉄筋曲機一台は、正常に作動した。
西野課長らは、これらの機械設備の性能等について逐一被告人杉晃に報告し、その指示により、各メーカーと改良について打合せをしたり、改良工事を発注し、各製造メーカーに対する支払いについてもその指示を仰いでいた。
エ 被告会社は、サンユー機械産業に対し、同年一月二〇日付内容証明郵便により、同社に対する前記空気輸送コンベア等は内野が注文書を偽造して発注したもので、被告会社は何ら関与していない旨通知した。これに対し、同社は、同年二月二日、請負契約に基づき機械を製造して納入する旨通知したが、拒絶されたとして代金七〇六〇万円の支払い等を求める訴訟を奈良地方裁判所に提起したところ、被告会社は、両者間に請負契約が締結された事実を否認し、その支払義務を争った。また、被告会社は、有本工業に対し、同年二月二八日付の内容証明郵便により、債務不履行を理由に契約を解除する旨の意思表示を行った。これに対し、同社は、昭和五八年三月一八日、機械据え付けの現場の基礎工事を被告会社が行う約定であったのに、被告会社がこれを行わなかったため、機械の据え付け工事ができなかったとして、残代金五〇〇〇万円の支払いを求める訴えを大阪地方裁判所に提起したが、被告会社は、右約定を争うとともに、そもそも機械設備の製造が完了していないとして、その支払義務を否定した。さらに、被告会社は、チトセ工業に対し、工事続行、代金の精算等の交渉をしていたが、同年三月四日付の内容証明郵便により、前記スプレードライヤー等について仕様通りの工事続行を催告したのに、その工事が続行されないとして、債務不履行を理由に契約を解除する旨の意思表示を行った。これに対し、同社は、同年九月二八日、奈良地方裁判所に請負工事代金のうち六〇一五万円の支払いを求める訴えを提起した。
被告会社は、河辺弁護士を代理人として、これらの訴訟に応訴していたが、被告人杉晃らは、設置された機械の中で使い物にならないものがあると同弁護士に相談したところ、仮処分をされると製造プラント全体が動かせなくなるので、使い物にならない機械は外に放り出したほうがよいと言われたこともあり、日本重量株式会社に発注して、昭和五八年六月一五日ころから同月二二日ころにかけて、チトセ工業製造のスプレードライヤー二基、林正産業製造のスプレードライヤー用煙突一本、有本鉄工製造の原料タンク一基等を撤去した。
オ 前記のとおり、被告人杉晃らは、被告会社が経費として仮装計上したセラミック機械設備の代金を昭和五八年七月期に雑収入として受け入れる処理をすることとしていたが、このような処理をした場合、同期において多額の所得が生ずるため、これらの機械設備を使用不能として損金で落とすことを考え、昭和五八年八月二〇日ころ、清水が新屋税理士事務所に電話して「滋賀工場のセラミック設備が不良なので新屋税理士に見てほしい。」旨の連絡をし、その後、被告人杉晃は、被告会社において、同税理士及び田村に対し、滋賀工場のセラミック設備の図面を見せながら説明し、これらの機械は使いものにならないので、損金で落としてほしいと依頼した。
こうしたことから、新屋税理士、田村郁雄、藤井修税理士は実情を把握するため、同年九月七日ころ、滋賀工場に赴き、現場で被告人杉晃からセラミック設備の状況について説明を受けたが、その際、田村は、一連の設備として据えつけられている機械も使い物にならないという同被告人の説明に疑問を持ち、「これらは使えるのではないか。」と尋ねたところ、同被告人は、「使えないので、全部損金で落としてほしい。」と要求した。なお、当日の現況確認の結果、新屋税理士も藤井税理士も、一部についてはともかく、全部を除却処理することは困難であると判断していた。
その後、新屋税理士事務所では、例年どおり、昭和五八年九月一〇日ころから精算表等の作成作業に入り、滋賀工場のセラミック設備について固定資産除却損として計上、処理することとしたが、被告人晴美は、前記雑収入で受け入れた機械設備分を含め、他のセラミックの機械設備もすべて使用不能であり、全額損金として処理してほしい旨依頼した。
そこで、新屋税理士らは、昭和五八年七月期にこれらの設備を固定資産除却損として損金計上することとしたが、全部について損金として処理することができないと判断し、確定申告書作成の際、被告人杉晃らの希望する固定資産除却損の合計額は約一億八〇〇〇万円であったが、資本的支出として五〇〇〇万円を嵩上げすることとし、精算表の説明をした際、「経費にならないものが五〇〇〇万円くらいあるかも知れない。」と説明し、そのような確定申告書を作成した。
(前記内野証言、篠原証言、前川証言、西野達治証言〔第八回公判期日〕、新屋昇証言〔第八回、第九回、第一一回、第一二回公判期日〕、西野寿雄証言〔第二八回、第四〇回、第四一回公判期日〕、古川彪証言〔第五三回、第五六回公判期日〕、藤井修〔検一九二〕、田村郁雄〔検一九八〕、の各検察官調書、前記古川彪の質問てん末書、セラミック機械装置撤去の状況を撮影した写真一一葉〔弁三七〕、図面一枚〔昭和六〇年押第二二号の59〕)
(3) 昭和五九年一一月六日の査察調査(現況確認)時の状況等
ア 被告会社に対する査察開始後、同社の固定資産除却損の計上も虚偽過大である疑いが強まり、昭和五九年一一月六日、大阪国税局国税査察官四名が古川滋賀工場長、清水勝利、森井義則らを立会人として同工場のセラミック設備の現況を確認した。当時、滋賀工場内には、解体されて野ざらしになっていたもの(チトセ工業製造のスプレードライヤー、粘土乾燥機、林正産業製造のスプレードライヤー用煙突、有本工業製造の泥漿前処理装置)、生産ライン上に設置されているもの、工場建物外にあって他に転用されているものがあったが、古川工場長は、査察官に対し、「昭和五八年九月ころに社長や新屋税理士らが来て説明したときと現況は変わりない。」としたうえ、(a)チトセ工業製造のスプレードライヤーはまったくの不良品であるので室外に廃棄した、(b)原土乾燥機は昭和五八年一月当時から既に放置されていた、(c)林正産業製造のスプレードライヤー用煙突も同年六月に室外に廃棄した、(d)室内にあるチトセ工業製造の原料タンク一基及び有本鉄工製造の原料タンク一基は、不良品で型が大きくて室外に出せないので放置している、(e)チトセ工業製造の攪拌タンク及び有本鉄工製造の攪拌タンクは錆が出て使用できないなどと説明した。
イ そこで、査察官は、これらの現況や古川工場長の説明のほか、総勘定元帳、振替伝票等を基にして固定資産除却損として計上された機械設備を特定したうえ、その処理の相当性について検討し、建物外に除去、放置されていた林正産業製造のスプレードライヤー用煙突一本、チトセ工業製造のスプレードライヤー二基等は除却されているものと認め、建物内の有本工業製造の原料タンク一基(八五〇万円のもの)、同社製造の攪拌タンク一基(三三三万三三三三円相当)も使用不能であり、有本工業製造の泥漿前処理装置は、同装置が旧式で性能が悪く、他の装置と連結不能であり、生産ライン上には牧野鉄工所の装置が新設されていたことから、事実上使用可能性がないと認め、これらについては固定資産除却損の計上は相当と認容した。しかし、それ以外の機械設備分については否認することとし、清水勝利も、昭和五九年一一月六日付で、林正産業製造のスプレードライヤー用煙突一本、チトセ工業製造のスプレードライヤー二基、原土乾燥機一台、原料タンク一基、有本鉄工製造の原料タンク一基、攪拌タンク一基及び有本工業製造の泥漿前処理装置を除き、除却損の過大計上であったことを認める確認書を提出した。  (藤本昌輝証言〔第六〇回ないし第六二回公判期日〕、古川彪の質問てん末書、滋賀工場設備調査書、清水勝利作成の確認書〔検四七四〕、国税査察官作成の写真撮影てん末書〔検一〇四〕)
(4) セラミックプラントの進捗状況等
ア 被告会社は、昭和五九年三月ころ新たに砂利プラントの機械設備を設置したり、同年春ころ新田ゼラチンに空気輸送機を設置させたほか、前記のとおり、スプレードライヤー等の改良に努め、昭和五九年六月ないし八月ころ試運転にこぎつけ、その後、試行錯誤を重ねて、昭和五九年一二月ころからようやく試作品を作れるようになったが、寸法誤差、亀裂等の不良品も多かった。そこで、被告会社は、さらに改良を重ね、昭和六一年一二月ころには、契約で定められたトンネルキルンの焼成能力(一日三六〇〇枚以上)や歩留り率等には到底及ばないものの、一日に一五〇〇枚くらい製造できるようになった。
イ チトセ工業及びサンユー機械産業との間の民事訴訟は、昭和六二年七月一三日、大阪高等裁判所において、被告会社が和解金としてチトセ工業らに五九〇〇万円を支払う旨の和解が成立した。そして、同月二一日、被告会社とサンユー機械産業との間で、双方の負担すべき債務の清算として被告会社がサンユー機械産業に三〇〇〇万円支払う旨の和解解決書を取り交わし、また、同日、チトセ工業との間で、同趣旨の清算金として被告会社が二九〇〇万円支払う旨の和解協議書が取り交わされたが、チトセ工業との間において、中部熱工業が製造したスプレードライヤーの改造に要した費用一四五〇万円や、林正産業製造のスプレードライヤー用煙突の費用五七〇万円はチトセ工業の負担とされた。
(前記西野寿雄証言、古川彪証言、検察事務官作成の報告書〔検五〇三〕、和解調書正本写し〔弁四一〕、和解解決書写し二通〔弁四二、四四〕、和解協議書写し〔弁四三〕)
(三)  ところで、機械設備等の固定資産の除却は、現に解撤、破砕、廃棄等を行った場合に、その時点で処分見込価額を控除した未償却残高を除却損として計上するのが原則であるが、解撤等に多額の費用を要するためそのまま放置するような場合等には、例外的に現状有姿のまま帳簿上除却処理をすること(有姿除却)が認められている。ただ、有姿除却は、本来、使用価値がまったく失われた場合に行われるものであるから、それに伴う損失を計上するに際しては使用価値がないことが客観的に確認される必要があり、こうしたことから、法人税基本通達も、有姿除却が許される場合として「その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる」ことを要求し、その場合でも、計上しうる損金は、当該資産の帳簿価額からその処分見込価額を控除した金額としているのである(同通達七-七-二)。
これを本件についてみるに、前記認定の事実によれば、被告会社は、昭和五八年七月期において、セラミック製造プラントを廃止あるいは断念していたものではなく、その後も機械設備の改良等を重ね、製造プラントの実現に努めていたことは明らかであり、さらに、昭和五八年七月期末において、検察官が除却損の計上を認容した以外の機械設備は、正常に機能するものであったり、不良箇所があっても改良又は補強することによって使用可能となったり、あるいは、当初予定していたセラミック設備に供することができなくても、補強のうえ、セメントサイロ等に転用した結果、タンクとしての機能を発揮できたものであるから、これらの機械設備について、その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がなかったとは認められず、固定資産除却損として計上することはできないというべきである。
この点に関し、被告人杉晃は、当公判廷において、「被告会社が固定資産除却損として計上した機械設備は俎にも載らない状態のもので、使いものにならなかった。自分としては、すべてを廃棄して新しく出直したかった。」などと供述し(第八八回公判期日等)、新屋昇も「固定資産除却損として計上した機械設備はいずれも現実に使用されていなかったし、使用できないことを確認して除却損として計上した。」旨供述するが、前掲の各証拠に照らすと到底信用することができず、また、被告人杉晃自身、検察官の取調べに際しては「外に放り出さなかったものについては、手を加えるなどすれば使える可能性があると思っていた。」旨述べていたもので(検三二八)、被告人杉晃は、本来、固定資産除却損としては計上できない機械設備であることを知りながら、これらについても新屋税理士に固定資産除却損の計上をさせたことは明らかである。
(四)  次に、弁護人は、被告会社が公表帳簿に計上していない前記有本工業の泥漿前処理装置追加工事分、チトセ工業のスプレードライヤー二基分及びサンユー機械産業の空気輸送コンベア分等について、これは昭和五八年七月期に計上洩れであった分であり、同期において除却損として計上することが認められるべきであると主張する。
しかしながら、前記認定の事実によれば、これらの機械設備は、昭和五八年七月期末において、その据え付け、引渡が未了であったうえ、被告会社は、内野が注文書を偽造して発注したものであり、契約は無効であると主張したり、契約を解除して代金支払義務自体を否定していたのであり、こうしたことから、そもそも昭和五八年七月期末において債務が確定しておらず、計上すべき取得価額も不明な状態にあったといえること、また、このような場合、完成対応部分等を考慮して見込額を計上することなども考えられるが、被告会社はそのような措置を一切とっていなかったこと等に照らすと、これらの設備について、昭和五八年七月期において固定資産除却損として計上することはできないというべきである。
13  交際費等損金不算入額について
弁護人は、前記のとおり、交際費に含まれない経費が種々存するとして、これを前提として交際費等損金不算入額を争うが、交際費から除外されるべき経費に関する主張はいずれも認められないのであるから、これを前提とする弁護人の主張は採用できない。
14  棚卸高について
(一)  昭和五七年七月期の期末材料棚卸高
(1) 弁護人は、被告会社は実地棚卸高に基づいて確定申告をしていたものであり、検察官が昭和五七年七月期の期末材料棚卸高について、被告会社の申告額一六七八万三七三八円に七四八万一八七四円を加算したのは相当でないと主張する。
(2) しかしながら、この点は本件の訴因とはされておらず(被告会社の所得金額の算定に際しては公表期末材料棚卸高が用いられている。)、弁護人の主張は失当である(なお、第二一期決算資料〔各科目内訳明細書〕〔昭和六〇年押第二二号の22〕及び新屋昇の質問てん末書〔検一九四〕によれば、被告会社が昭和五七年七月期の期末材料棚卸高として計上した一六七八万三七三八円は被告会社本社工場分のみであり、九州工場分四一四万二三〇三円及び奈良工場分三三三万九五七一円〔以上合計七四八万一八七四円〕が計上漏れとなっていることが認められる。)。
(二)  昭和五八年七月期の期末商品棚卸高
(1) 弁護人は、同じく、被告会社は実地棚卸高に基づいて確定申告をしていたものであり、検察官が昭和五八年七月期の期末商品棚卸高について、被告会社の申告額に七〇八万〇四九二円を加算したのは相当でないと主張する。
(2) しかしながら、この点についても本件の訴因とはされておらず(被告会社の所得金額の算定に際しては公表期末商品棚卸高が用いられている。)、弁護人の主張は失当である。
(法令の適用)
被告会社の判示各所為はいずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項に、被告人杉晃及び同晴美の判示各所為はいずれも刑法六〇条、法人税法一五九条一項に該当するところ、被告会社については情状によりいずれも同法一五九条二項を適用し、被告人杉晃及び同晴美については各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上はそれぞれ刑法四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法四八条二項により各罪所定の罰金の合計額の範囲内で被告会社を罰金一億円に、被告人杉晃及び同晴美についてはいずれも同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で右被告人両名をそれぞれ懲役一年六月に処することとし、被告人杉晃に対し、同法二一条を適用して、未決勾留日数中六〇日を右刑に算入し、被告人晴美に対し、情状により同法二五条一項を適用して、この裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予し、訴訟費用は、刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条により被告人らに連帯して負担させることとする。
(量刑の理由)
一  本件は、被告人杉晃及び同晴美が共謀のうえ、被告会社の業務に関し、その二事業年度にわたり、合計三億円余の法人税を免れた事案である。
ほ脱額合計は右のとおり巨額であり、そのほ脱率も高率である。そして、被告人杉晃及び同晴美は、発覚を防ぐため大阪市内に簿外の預金口座を開設したり、経理担当の従業員に過少記帳を指示するなどして売上を一部除外したうえ、それにより備蓄した金で無記名債券や金地金を購入して自宅等に隠匿したり、自宅建築用に充て、あるいは個人用の物品を購入したのみならず、自宅の建築費用や家財道具購入費用等の個人で負担すべき費用を被告会社の経費に付け込んだり、被告会社の資産として計上すべき機械設備や備品を経費として仮装計上し、その手段として、業者に指示して、納品書や請求書に虚偽の品名を記入させたり、小口で請求させるなどの種々の所得隠匿工作を行ったもので、その手口は巧妙かつ悪質である。ことに、被告会社は、昭和五四年から昭和五六年の三事業年度において、本件と同様の売上除外等の方法により虚偽過少申告を行い、合計八億一六二七万円余の法人税を免れたとして摘発され、被告会社は罰金一億四〇〇〇万円に、被告人杉晃は懲役三年、四年間執行猶予の刑に処せられたのに、かえって、前回の査察の結果、多額の納税を余儀なくされたとして、「取られたものは取り返したい。」という利欲にかられ、また、自由に使える裏金を蓄え、不況時に備えたいと考え、査察が入ったのちはしばらく摘発されることはないとして、大胆にも、前回の査察開始後間もないうちから簿外の預金口座を開設して売上除外をしたり、自宅建築工事費用を被告会社の経費に付け込むなどの所得隠匿工作を始め、公判係属中も続けておりながら、その公判において、被告人杉晃は二度と脱税はしない旨約束し、被告人晴美は情状証人として出廷し、経理担当者として反省する旨述べていたことを考慮すると、その動機に酌量すべき事情はなく、納税意識も希薄というべきで、被告人両名の行為は強く非難されるべきである。のみならず、被告人杉晃らは、本件の税務調査が開始されるや、被告会社取締役の清水勝利や知人の森井義則と共謀のうえ、架空の請求書や領収書を作成する等して、被告会社が造成工事を発注して多額の代金を支払った外形を作出したり、想定問答書を作成して口裏を合わせる等の種々の証拠隠滅工作を行ったものであり、その犯情は極めて悪質である。
二  そこで、本件公訴提起後、被告会社は更正等により納付すべきものとされた税額のうち本税等を納税していること(ただし、種々の異議を述べて、その税額を争っている。)、本件後、被告会社の経理体制を改善し、その後の税務調査で問題を指摘されたことはないこと、被告人晴美は、被告会社の取締役を辞任しており、また、同被告人には前科前歴がまったくないこと等の被告人らのために斟酌すべき事情を考慮し、被告人らを主文記載の各刑に処するのが相当であると判断した。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 二本松利忠 裁判官 森脇淳一 裁判長裁判官菅納一郎は、転補のため署名押印できない。裁判官 二本松利忠)

 

別紙1 修正損益計算書(一)
〈省略〉
〈省略〉
修正損益計算書(二)
〈省略〉
〈省略〉

別紙2 税額計算書(一)
〈省略〉
(税額の計算)
〈省略〉
税額計算書(二)
〈省略〉
(税額の計算)
〈省略〉

別紙3 固定資産除却損
〈省略〉

 

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