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政治と選挙Q&A「屋外広告物法 ポスター貼り(掲示交渉)代行」に関する裁判例(10)平成25年 1月22日 名古屋地裁 平20(ワ)3887号 損害賠償請求事件

政治と選挙Q&A「屋外広告物法 ポスター貼り(掲示交渉)代行」に関する裁判例(10)平成25年 1月22日 名古屋地裁 平20(ワ)3887号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成25年 1月22日  裁判所名  名古屋地裁  裁判区分  判決
事件番号  平20(ワ)3887号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  確定  文献番号  2013WLJPCA01226001

要旨
◆本件建物の建築主である原告が、本件建物についての建築確認を行った建築主事が本件建物の構造計算についての適正な審査を怠り違法に建築確認を行ったため、修復工事費用等の損害を被ったとして、被告県に対し、国賠法1条1項に基づき、損害賠償を請求した事案において、建築主事は、建築関係規定に基づき建築確認申請に添付される図書及び同規定によって定められた事項を対象として、当該建築計画を建築基準関係規定に当てはめて、その要件充足の有無を審査、判断するものであり、その資料として提出される建築士作成の設計図書等については、建築士の技術的能力、職業倫理、責任感に対する信頼を前提として審査すれば足りるところ、本件建築主事に本件建築確認審査に当たり本件構造計算書の確認を怠った義務違反を認めることはできないとして、原告の請求を棄却した事例

出典
判時 2180号76頁

参照条文
国家賠償法1条1項
裁判官
澤野芳夫 (サワノヨシオ) 第39期 現所属 依願退官
平成29年2月14日 ~ 依願退官
平成26年4月1日 ~ 東京地方裁判所(部総括)
平成23年4月1日 ~ 名古屋地方裁判所(部総括)
平成19年4月1日 ~ 平成23年3月31日 東京地方裁判所
平成16年4月1日 ~ 平成19年3月31日 松山地方裁判所(部総括)、松山家庭裁判所(部総括)
平成13年4月1日 ~ 平成16年3月31日 東京地方裁判所
平成10年4月1日 ~ 平成13年3月31日 秋田地方裁判所大館支部(支部長)秋田家庭裁判所大館支部(支部長)
平成7年4月1日 ~ 平成10年3月31日 東京地方裁判所
平成4年4月1日 ~ 平成7年3月31日 福島家庭裁判所いわき支部、福島地方裁判所いわき支部
平成1年4月1日 ~ 平成4年3月31日 福岡地方裁判所、福岡家庭裁判所
~ 平成1年3月31日 千葉地方裁判所

山田哲也 (ヤマダテツヤ) 第55期 現所属 名古屋家庭裁判所
平成30年4月1日 ~ 名古屋家庭裁判所
平成27年4月1日 ~ 静岡地方裁判所沼津支部、静岡家庭裁判所沼津支部
平成23年4月1日 ~ 名古屋地方裁判所
平成20年4月1日 ~ 平成23年3月31日 千葉家庭裁判所八日市支部、千葉地方裁判所八日市支部
平成17年4月1日 ~ 平成20年3月31日 大津地方裁判所、大津家庭裁判所
平成14年10月16日 ~ 平成17年3月31日 東京地方裁判所

島尻大志 (シマジリタイシ) 第63期 現所属 新潟地方裁判所、新潟家庭裁判所
平成29年4月1日 ~ 新潟地方裁判所、新潟家庭裁判所
平成26年3月25日 ~ さいたま地方裁判所川越支部、さいたま家庭裁判所川越支部
平成23年1月16日 ~ 名古屋地方裁判所

訴訟代理人
原告側訴訟代理人
高谷進,鶴田進,高橋謙治,中田貴,荒木邦彦,中村仁志,藤井直孝

被告側訴訟代理人
後藤武夫,佐治良三,平田健人,金森将也,金森拓也

引用判例
昭和60年11月21日 最高裁第一小法廷 判決 昭53(オ)1240号 損害賠償請求事件 〔在宅投票制度訴訟・上告審〕

関連判例
平成24年12月 7日 静岡地裁 判決
平成24年 2月28日 東京高裁 判決 平23(ネ)3653号 損害賠償請求控訴事件
平成23年 3月30日 東京地裁 判決 平20(ワ)3811号 損害賠償請求事件
平成23年 1月26日 東京地裁 判決
平成22年10月29日 名古屋高裁 判決
平成21年 2月24日 名古屋地裁 判決

Westlaw作成目次

主文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一 請求
第二 事案の概要等
一 事案の概要
二 前提事実(証拠を掲記しないも…
(1) 当事者等
(2) 本件建物の完成までの経緯
(3) F建築士による耐震強度偽装事…
(4) 本件建物の改修工事等
三 本件建物に係る構造設計の手順…
(1) 本件建築確認申請当時の建築基…
(2) 一般的な構造計算の手順
(3) 本件建物の構造計算(以下「本…
四 本件建物の構造計算
五 争点
(1) 建築確認審査における建築主事…
(2) 本件建築主事の本件建築確認審…
(3) 損害額
(4) 建築主の建築主事に対する責任…
(5) 過失相殺又は寄与率による減額
六 争点についての当事者の主張
(1) 建築確認審査における建築主事…
(2) 本件建築主事の本件建築確認審…
(3) 損害額
(4) 建築主の建築主事に対する責任…
(5) 過失相殺又は寄与率による減額
第三 当裁判所の判断
一 争点(1)(建築確認審査にお…
(1) 建築主がどのような建築物を建…
(2) 被告は、建築主は、設計者・工…
(3) そうすると、建築確認制度にお…
二 争点(2)(本件建築主事の本…
(1) 建築主事の注意義務の具体的内容
(2) 本件建築主事の注意義務違反の…
(3) 小括
第四 結論

裁判年月日  平成25年 1月22日  裁判所名  名古屋地裁  裁判区分  判決
事件番号  平20(ワ)3887号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  確定  文献番号  2013WLJPCA01226001

原告 X株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 高谷進
同 鶴田進
同 高橋謙治
同 中田貴
同 荒木邦彦
同 中村仁志
同訴訟復代理人弁護士 藤井直孝
被告 愛知県
同代表者知事 B
同訴訟代理人弁護士 後藤武夫
同 佐治良三
同訴訟復代理人弁護士 平田健人
同指定代理人 小林眞弓〈他14名〉
被告補助参加人 株式会社 Z工務店
同代表者代表取締役 C
同訴訟代理人弁護士 金森将也
同訴訟復代理人弁護士 金森拓也

 

 

主文

一  原告の請求を棄却する。
二  訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第一  請求
被告は、原告に対し、二億七四一七万二七〇九円及びこれに対する平成一七年一二月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二  事案の概要等
一  事案の概要
本件は、別紙一物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)の建築主である原告が、本件建物についての建築確認(以下、この建築確認を「本件建築確認」という。)を行った建築主事が属する被告に対し、同建築主事が本件建物の構造計算についての適正な審査を怠り違法に建築確認を行ったため、補修工事費用等の損害を被ったとして、国家賠償法一条一項に基づき、損害賠償を求める事案である。
二  前提事実(証拠を掲記しないものは当事者間に争いがない事実)
(1)  当事者等
原告は、ホテルの経営等を目的とする会社であり、本件建物の建築主であって、本件建物においてビジネスホテル「a」(「a1ホテル」と表記されている場合もある。以下「本件ホテル」という。)を経営している株式会社である(甲一、二)。
被告は、原告による本件建物の建築計画(以下「本件建築計画」という。)についての建築確認申請に対して、建築基準法(平成一四年法律第八五号による改正前のもの。以下、単に「法」という。)六条一項の規定による建築確認事務を行った建築主事であるD(以下「本件建築主事」という。甲六の一)が属する地方公共団体である。
(2)  本件建物の完成までの経緯
原告は、平成一五年三月一日、訴外株式会社総合経営研究所(以下「総研」という。)との間で、本件ホテルの設計・建築・運営に関する包括的なコンサルタント契約を締結するとともに(甲三)、総研の選定した設計業者である訴外b設計株式会社(以下「b設計」という。)との間で、本件建物に関し、設計・監理業務委託契約を締結し(甲四)、補助参加人との間で、本件建物の建築請負契約を締結した(甲五)。
b設計代表者であった訴外Eは、同年三月三日、本件建築計画につき、原告の代理人として、建築基準法施行細則(昭和四六年愛知県規則第五五号(本件建物について建築確認が行われた平成一五年三月二五日当時に適用されるもの)。以下「県規則」という。)二三条に基づき、愛知県知事宛ての建築確認申請書を大府市長に提出した(以下「本件建築確認申請」という。甲六の二)。なお、本件建築確認申請に当たって提出された申請書(以下「本件建築確認申請書」という。)に添付された本件建物の構造計算書(以下「本件構造計算書」という。)は、総研から委託を受けた訴外F一級建築士(以下「F建築士」という。)によって作成されていた。
本件建築主事は、本件建物について審査を行い、同年三月二五日、本件建物の建築計画が法六条一項の「建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。)」に適合していることを確認する旨の確認済証(以下「本件確認済証」という。甲六の一)を原告に交付した。
その後、原告は、本件建物の建築工事に着手し、本件建物は同年一〇月二七日に完成し、同年一一月七日、本件ホテルの営業を開始した。
(3)  F建築士による耐震強度偽装事件の発覚
国土交通省は、平成一七年一一月一七日、F建築士が関わった構造計算書に偽装があると公表した。
原告は、被告から連絡を受け、本件建築確認申請書の正本が既に手元になかった被告の求めに応じ、同月二四日、原告の保管していた本件建築確認申請書副本を被告に預けた。
原告は、本件構造計算書がF建築士により偽装されている可能性があったことから、同月二三日、本件ホテルの営業を停止した。
同年一二月三日頃、被告から原告に対し、本件構造計算書が偽装された疑いがあることが明らかになったという連絡が入り、その後、被告は、本件構造計算書に偽装があったことを対外的に公表した(甲九の一、二、三、甲一〇の一、二)。
(4)  本件建物の改修工事等
原告は、平成一八年三月頃に本件建物の耐震補強工事に着手し、同年六月一二日に同工事が完成し、同月一四日に本件ホテルの営業を再開した。
三  本件建物に係る構造設計の手順に関する法令の定め等
(1)  本件建築確認申請当時の建築基準関係法令の定め
建築確認審査とは、建築計画に係る建築物について建築基準関係規定適合性を審査するものであるが(法六条一項)、建築物の構造耐力、すなわち、「自重、積載荷重、積雪、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造」(法二〇条)に関しては、「建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合すること」(同条一号)を審査し、一定の建築物についてはさらに、「政令で定める基準に従つた構造計算によつて確かめられる安全性を有すること」(同条二号)を審査するものとされている。
建築基準法施行令(平成一四年政令三二九号による改正前のもの。以下「施行令」という。)は、上記「政令で定める技術的基準」(法二〇条一号)について第三章の第一節から第七節の二までで(施行令三六条一項)、上記「政令で定める基準に従つた構造計算」(法二〇条二号)について同章の第八節で(施行令八一条一項)それぞれ定めるとともに、構造設計の原則として、「建築物の構造設計に当たつては、その用途、規模及び構造の種別並びに土地の状況に応じて柱、はり、床、壁等を有効に配置して、建築物全体が、これに作用する自重、積載荷重、積雪、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して、一様に構造耐力上安全であるようにすべきものとする」(施行令三六条の二第一項)こと、「構造耐力上主要な部分は、建築物に作用する水平力に耐えるように、つりあいよく配置すべきものとする」(同条二項)こと、「建築物の構造耐力上主要な部分には、使用上の支障となる変形又は振動が生じないような剛性及び瞬間的破壊が生じないような靱性をもたすべきものとする」(同条三項)ことなどを示した上で、構造部材等(同法施行令第三章第二節)のほか、構造の種別に応じた具体的規定(同第三節から第七節の二まで)を置いている。
(2)  一般的な構造計算の手順
建築物の構造計算は、一般的に、①荷重・外力計算、②応力計算(荷重及び外力が加わることによって、建築物の構造耐力上主要な部分にどれくらいの力(応力)が生じるのかを計算すること)、③部材断面計算(応力計算で求めた応力度のうち、各部材の断面の種類ごとに最も不利な応力度が、全て許容応力度以下となるよう部材の断面形状や寸法を算定すること)などの構造計算を経て設計図書を作成するという流れによって行われる。建築基準関係規定は、建築物の構造や規模により構造計算の要否及び内容について異なる規制をしており、また、一定の要件の下、異なる構造計算の手法を定め、設計者が選択し得るものとしており、別紙二「構造計算のフロー」のとおり、確認事項の違いによって三つのルートが定められ、それぞれ「ルート一」、「ルート二」、「ルート三」と呼ばれている。
(3)  本件建物の構造計算(以下「本件構造計算」という。)に関する法令の定め
ア 本件建物の構造計算ルート
本件建物は、特定建築物(施行令八二条の二、建設省告示第一七九〇号)に当たり、高さが三一mを超える建築物であるから、ルート三が適用され(施行令八二条の四)、本件構造計算においてもルート三の計算方法により計算が行われている(甲一九)。ルート三は、一次設計と二次設計を検討するものである。
一次設計は、比較的発生頻度の高い中小の地震を前提に、建築物が荷重や外力により壊れないよう、建築物の各部材が有する強度が上記荷重及び外力を上回るように設計する方法であり、建築物に作用する荷重及び外力によって、建築物の構造耐力上主要な部分に生ずる力を計算し、同部分の断面に生ずる応力度を計算(応力度計算)する。次に、部材の強度にばらつきがあることを考慮し、各部材に生じる応力度の限界を安全性の観点から余裕を持たせるため、各部材の断面の種類ごとに、最も不利な応力度が、各部材により許容できる応力度の限界値(許容応力度)以下になるように、各部材の断面の大きさや鉄筋量等が決定される。なお、許容応力度には、建築物の長期間の使用に支障を来さないことを目標として固定荷重及び積載荷重により生ずる力を考慮した長期許容応力度と、固定荷重、積載荷重に地震や風圧力及び積雪荷重により生ずる力を加算して計算する短期許容応力度とがある。
二次設計は、まれに起きる大地震の場合に、部材が降伏しても建物全体としては倒壊しないように必要な強度と粘りを持たせるためのものであり、以下のとおり、層間変形角(施行令八二条の二)及び保有水平耐力(八二条の四)の検討を行うものである。
イ 層間変形角(建物の揺れの具合を検討する目安となる数値)の検討
構造骨組の変形を制限する方法として、地震力によって生ずる各階の水平方向の層間変位の当該各階の高さに対する割合(層間変形角)が二〇〇分の一以内になるように設計されているか確認する。
ウ 保有水平耐力の検討
保有水平耐力(Qu)とは、当該建物に対して水平方向に力(地震力)が生じたときに当該建物が最終的に崩壊に至るまで耐えられる能力であり、各部材の耐力を計算し、その耐力から建物の保有水平耐力を算出する。保有水平耐力計算は、保有水平耐力が必要保有水平耐力(Qun)を上回っている(Qu≧Qun)こと、すなわち、Qu/Qun≧一であることを確認するものである。必要保有水平耐力を計算するには、大地震時に建物が崩壊しないために、建物に必要な耐力を求めることとなるが、建物の耐力の大きさは、構造体のもつ振動を徐々に和らげる能力(減衰性)や建物の粘り強さ(靱性)があれば耐力は大きくなり、他方、剛性率(建築物を立面的に見たときの層ごとの変形の具合を検討する目安となる数値)や偏心率(建築物を平面的に見たときの変形の具合を検討する目安となる数値)によっては局部崩壊の危険が生ずるため、必要保有水平耐力は、地震力によって各階に生ずる水平力(Qud)に、建物の減衰性や靱性を考慮してQudを減らす係数(構造特性係数(Ds))と、剛性率と偏心率を考慮して、建築物の形状による剛性分布のバランスの悪さにつきQudを割り増すことで補う割増係数(形状係数(Fes))を乗じることにより算出される(建設省告示第一七九二号)。すなわち、必要保有水平耐力(Qun)は、Qun=Ds・Fes・Qudの計算式で求められることとなる。
四  本件建物の構造計算
本件建築確認申請に当たり本件建築確認申請書に添付された本件構造計算書(甲一九)によれば、本件建物の構造計算は、国土交通大臣の指定を受けた構造計算プログラム(以下「大臣認定プログラム」という。)「Super Build SS2」(以下「本件プログラム」という。)によって行われ、「一連計算処理をすべて正常に終了」、「ERROR数0」、「WARNING数1」と表示されている。
五  争点
(1)  建築確認審査における建築主事の建築主に対する注意義務の有無等
(2)  本件建築主事の本件建築確認審査に際しての注意義務違反の有無
(3)  損害額
(4)  建築主の建築主事に対する責任追及と信義則との関係
(5)  過失相殺又は寄与率による減額
六  争点についての当事者の主張
(1)  建築確認審査における建築主事の建築主に対する注意義務の有無等
(原告の主張)
国家賠償制度は、行政訴訟制度の不備を補完し、権利を救済する最終的な手段であること(権利救済のための補完機能)に加え、被害者の被害をてん補する機能(被害者救済機能)、国・公共団体の活動の非違を追及する機能(制裁的機能、適法性統制機能)を有しており、これらの機能を十分考慮し、建築主の権利が保護されるか否かを判断するべきである。
建築基準法は、一条で「国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。」と規定し、国民の利益を保護することを第一次的目的としているから、建築主を含む国民個々の財産についても保護の対象とされている。そして、建築確認制度は、一定の建築物について設計又は管理をすることができる者を一級建築士に限定して建築物の質の向上を図る建築士法と相まって、建築関係規定に違反する建築物の出現を未然に防止するための制度であり、建築関係規定に違反する建築物が出現した場合に利益を害されることの多い当該建築物の所有者、すなわち建築主の利益を保護する趣旨を含むものである。
そして、法は、建築確認を行う建築主事について、一級建築士試験に合格した者のうち、一定の実務経験を有し、建築基準適合判定資格者検定に合格した者に限定しており(法四条)、建築主事に対して高度な専門的知識を有していることを求めているから、建築主事が、提出された建築確認の申請書類に偽造・違法があったにも関わらず、これに気付かずに建築確認をし、確認済証を交付してしまった場合には、建築主との関係で国家賠償法上違法となるというべきである。
(被告及び補助参加人の主張)
公務員の公権力の行使が国家賠償法一条一項にいう違法と評価されるためには、当該公務員が国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して、当該国民に損害を与えたと認められることが必要であるが(最高裁判所昭和五三年(オ)第一二四〇号同六〇年一一月二一日第一小法廷判決・民集三九巻七号一五一二頁)、建築基準法上、建築主の財産権は建築確認制度による法的保護の対象に含まれないから、建築主事が建築主個人に対して直接何らかの義務を負うことはなく、国家賠償法上、建築主事の建築確認行為が違法と評価される余地はない。
建築基準法の目的は、建築物の規制を通じて国民全体の利益を保護すること、すなわち、公共の福祉の増進にあり、国民個人の利益の保護を直接目的としたものではないことから、国民個人、ひいては建築主個人に対して、建築主事が職務上の法的義務を負担することはない。
仮に、建築基準法の目的が、国民個人の利益を保護することにあるとしても、保護されるべき個人は、公権力が当該建築物の出現を阻止するという後見的役割を果たさなければ、その生命、健康及び財産が十分に保護されないようになる者、換言すれば、公益を侵害するおそれがあるような有害建築物の出現を阻止する手段を有しない者に限られ、建築主の個別的利益に属する財産権は、建築確認制度による保護の対象に含まれないというべきである。
建築主は、建築確認(法六条一項)、中間検査(法七条の三第二項)及び完了検査(法七条一項)の各申請を行う義務を負い、建築物の安全性を確保する第一義的な義務を課されている。他方、建築士は、こうした建築主の依頼により設計及び工事監理などを行う者であるが、建築に関する国家資格を与えられた者として、法律に従って業務を誠実に行い、建築物の質の向上に努めなければならない責務を負うと同時に、法令又は条例の定めに適合するように設計すべき責務も負うこととされている(建築士法一条、一八条など)。そうすると、国が建築士制度を定め、国家資格として建築士免許を付与するのは、建築物の安全性が、第一義的に建築主及び建築士において確保されることを当然の前提としており、建築主は、設計者・工事監理者の選任に当たって、建築基準関係規定に適合した設計などを行うことができる十分な資質と能力を備えた建築士を選任する責任を負うというべきである。
建築主である原告は、かかる責任を負い、かつ、本件建築確認申請をしないことにより倒壊のおそれがある危険な建築物の出現を自力で防止できたにもかかわらず、自ら危険と称する本件建物の建築確認申請をしたのであるから、原告の財産上の利益は建築基準法による保護の対象に含まれないことが明らかである。
(2)  本件建築主事の本件建築確認審査に際しての注意義務違反の有無
(原告の主張)
ア 建築主事の審査義務の具体的内容
(ア) 建築基準関係規定適合性の判断基準
建築主事が、建築基準関係規定適合性の判断を行うに当たっては、建築基準法並びにこれに基づく命令及び条例の規定に明示された技術的基準等のほか、国や都道府県などによる技術的助言書や解説書、日本建築学会その他の団体による技術的基準書等も判断基準となる。具体的には、「構造計算チェックリスト 愛知県高層建築物設計指針 同解説」(甲四九、二一。以下「設計指針」という。)、「二〇〇一年版 建築物の構造関係技術基準解説書」(甲二二、二六。以下「解説書」という。)、「建築物の構造規定―建築基準法施行令第三章の解説と運用―一九九七年版」(甲二五。以下「建築物の構造規定」という。)、「愛知県建築基準法関係例規集」(甲二七。以下「例規集」という。)、「建築構造審査要領」(甲五〇。以下「審査要領」という。)、「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説許容応力度設計法」(乙二一、三一。以下「構造計算規準」という。)等である(以下「基準書」という。)。さらに、建築専門家であれば通常有すべき専門的判断・常識も判断基準となる。
(イ) 建築主事の審査義務の範囲
被告は、甲一九のうち一三九頁から二四四頁まで(以下「電算出力部分」という。)は、県規則二条二項により建築確認申請書に添付を要しないものとされており、添付を要しないものとされていた部分については建築主事に確認審査義務はなかった旨主張する。
しかし、電算出力部分のうち、「入力データList」と印字された部分(甲一九のうち一三九頁から一五九頁まで)については、添付を要するものとされていたものである。すなわち、大臣認定プログラムの使用により、入力されたデータを前提とした計算結果については正確性が担保されるものの、データの入力は手作業により行われるものであり、大臣認定プログラムにより計算を行う具体的データの入力部分(以下「入力データ部分」という。)の正確性を確認する必要がある。県規則二条二項により添付を要しないものとされるのは、プログラムによる計算出力部分に限られ、入力データ部分は添付を要するというべきである。そうすると、本件においては、「入力データList」と印字された部分(甲一九のうち一三九頁から一五九頁まで)は入力データ部分に当たるから、甲一九のうち一三九頁から一五九頁までは建築確認申請書に添付を要するもので、かつ、本件建築主事には同部分を確認審査する義務がある。
また、仮に、「入力データList」と印字された部分(甲一九のうち一三九頁から一五九頁まで)は建築確認申請書に添付を要しないとされる図書であったとしても、実際に添付された以上、審査義務の範囲に含まれ、要所について疑問点を発見し、必要に応じて検算しなければならない。
イ 本件建築主事に注意義務違反があること
(ア) 本件耐震壁を一枚とモデル化(建築物の形状を線状に置き換えること)したことについて
本件建物においては、二階から一一階までのいずれの階もX方向(建物の長辺方向を「X方向」又は「桁行方向」という。これに対して、建物の短辺方向を「Y方向」又は「梁間方向」という。)に耐震壁が存在するが、本件耐震壁はいずれも、開口部として廊下があるため、上下方向で全く壁がない部分が存在している(甲二〇のうち、A―10、S―6、7、8)ところ、本件構造計算に際して、耐震壁を上記開口部の存在にもかかわらず一枚の壁としてモデル化している。
構造計算方法におけるルート三では、昭和五六年五月一日住指発第九六号(甲七二。以下、通達九六号という。)の別記1〔2〕(1)3)記載の運用が適用される。通達九六号によれば、耐力壁の開口がある場合には、開口周比が〇・四以下であり、かつ、必要な開口補強がされている場合に限り、施行令七八条の二で定められている耐力壁とみなすことができる(すなわち、構造計算上、耐力壁として計算に算入できる。)。ここで、必要とされる開口補強の内容については、建築基準関係規定に規定はなく、基準書が判断基準となり、建築主事は、基準書に沿った開口補強がされているか、審査する義務を負う。
本件建物の耐力壁に開口があることは、二階伏図(甲二〇のうちS―6)の中央に「EW20」と表示された一枚の耐力壁が中央で分断されていることや、壁、床リスト(甲二〇のうちS―17)の中に「開口部補強筋(縦筋、横筋、斜筋)」欄があることから容易にわかる。そして、必要とされる開口補強の内容については、構造計算規準(乙二一)に規定があるところ、このような開口補強がされているかを確認できる資料は本件構造計算書に添付されていない。そうすると、建築主事は、設計した建築士に対して、必要な開口補強がなされているか否かに関連して、使用した構造計算プログラムの内容、一枚の有開口耐力壁としてモデル化されていることによるつなぎ梁の脆弱性の指摘あるいは脆弱性に関する追加の検討、説明の要求を行うべきものであって、これを怠って本件建築確認をした本件建築主事には過失がある。
(イ) 一階部分のピロティ型式について
ピロティ型式の建物については、ピロティ(一階)に地震エネルギーが集中しやすい。そのため、ピロティ階を鉄筋コンクリート造とするためには、柱や梁の強度剛性を上げるなど、特別な配慮が必要である。本件建物の軒の高さは三〇・九五mであるところ(甲二〇のうちA―16)、設計指針(甲二一)によれば、高層建築物において鉄筋コンクリート造とすることができる要件を加重しており、本件建物のように軒の高さが二五mを超え三一m以下の建築物の場合、標準せん断力係数を一・二五倍とする必要があった。また、設計指針によれば、軒の高さ三一m以上の建物は、ピロティなど壁の全くない階は鉄筋コンクリート造とすることはできず、鉄筋鉄骨コンクリート造としなければならないところ、本件建物の軒の高さは、鉄筋コンクリート造とすることのできる高さの限界をわずか五cmしか下回っていないのであるから、鉄筋コンクリート造のピロティ階については、より慎重に確認審査する必要がある。また、ピロティ型式の建築物においては、剛性率は〇・六未満となるのが通常であり、ピロティ型式の建築物であるにもかかわらず剛性率が〇・六以上となっている場合には、建築主事は疑念を持つべきである。
本件建物がピロティ型式であることは、軸組図(甲二〇のうちS―10、S―10A)を見れば容易に把握できることであり、標準せん断力係数を一・二五倍として計算しているかなど、ピロティ型式の建築物に関する特別な配慮がなされているか審査する必要があったが、本件構造計算書においては、標準せん断力係数は一・二五倍して計算されておらず(甲一九の七七頁下段)、その他ピロティ型式の建築物に関する特別の配慮はされていない。また、剛性率は〇・六四五であり、ピロティ型式であるにもかかわらず〇・六を上回っている。本件建築主事がこのことを看過して建築確認を行ったことには過失がある。
(ウ) 崩壊メカニズム及びDs値の検証について
Ds値は、必要保有水平耐力を求めるにあたり、Qudを低減する係数であるから、Ds値が小さくなるほど必要保有水平耐力も少なくて済む。Ds値を導くためには、各部材に関する崩壊メカニズムを求める必要がある。そして、本件建物の構造計算は、大臣認定プログラムである本件プログラムを用いて行われているところ、崩壊メカニズムを求めるための細部の計算内容については審査の対象から外すことができたとしても、崩壊メカニズムを求めるための入力データ及び出力データについては、建築主事は審査を行わなければならない。また、保有水平耐力の計算結果においては、耐力壁の一部はせん断破壊する(「WD」と表示される。)とみるのが通常であるところ、せん断破壊するおそれがない(「WD」が表示されない。)とされている場合には、耐力壁の断面計算の検討結果を念入りに審査すべきである。
本件においては、崩壊メカニズムを求めるための入力データの最大ステップ数が、X、Y方向いずれも二〇〇となっており(甲一九の一五八頁)、出力データの最大ステップ数がX方向で三〇〇、Y方向で一二五となっていて、ステップ数が一致していないのであるから、データの不備に気づくべきであった。また、本件構造計算書の保有水平耐力結果においては、WDの表示がなく、せん断破壊はないとされているのであるから、耐力壁の断面計算の検討結果を念入りに審査すべきであった。これらを怠った本件建築主事には過失がある。
(エ) 耐震壁の枠柱の主筋について
施行令七七条五号によれば、耐震壁の枠柱には、その断面積の〇・八%以上の主筋を入れなければならず、建築主事は、これを審査すべき義務がある。
本件においては、柱枠に九本の主筋を入れる必要があったのに、八本しか入っておらず、これを看過した本件建築主事には過失がある。
(オ) 跳ね出し部分の構造について
法二〇条、施行令三六条及び三六条の二は、建築物の構造設計に当たって安全性を求めており、建築主事は、跳ね出し部分の安全性についても審査する義務がある。
本件建物の二階部分には跳ね出し部分があり(甲二〇のうちA―16)、二階以上の梁で跳ね出し部分を支えているが、梁の元端部をしっかりと固定させなければ、地震時の揺れにより、元端部が容易に回転し、梁としての機能を失って床を崩落させる危険性が高いことは容易に判断できるが、本件構造計算書においては、この点についての安全性に対する配慮は何らされていない。これを看過した本件建築主事には過失がある。
(カ) 大臣認定の構造計算プログラムについて
本件大臣認定プログラムを適正に使用し、エラー数が0の場合、全ての頁の上部(ヘッダー)に、本件大臣認定プログラムの大臣認定番号が印刷される。このことは、建築主事は当然知っているべき事項であり、エラー数が0にもかかわらずヘッダーに大臣認定番号が印字されていないのであれば、設計者に対し、本件構造計算書の作成過程を問い質したり、本件構造計算書の内容を詳細に検討したりするべき義務がある。
本件構造計算書においては、エラー数が0であったにもかかわらず、どの頁のヘッダーにも大臣認定番号は印字されておらず、これを看過した本件建築主事には過失がある。
(被告の主張)
ア 建築主事の審査義務の具体的内容
(ア) 建築基準関係規定適合性の判定基準
建築確認の法的性格は、裁量の余地のない羈束行為であり、審査を行うべき部分は、法令が明確に審査すべきと定めている内容に限られる。そして、建築主事の確認審査の対象となる事項を定める法令の範囲は、建築基準関係規定として法六条一項が定める「建築基準法令の規定」及び「その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるもの」をいう。建築主事には、構造専門家としての知見や構造設計の実務経験を資格上要求されず、建築一般についての基本的知識を前提として、建築士が工学的判断を踏まえて行った設計結果を建築基準関係規定に当てはめることにより、迅速で明確な適合性判定をすることが求められている。
原告が指摘する各種図書は、各種団体が、必ずしも見解の一致しない分野において自らが相当と考える内容を記載したものであって、記載内容と異なる考え方も存在することを前提としており、設計者が自由な裁量により取捨選択できる技術的基準の選択肢を示した資料にすぎないのであって、建築基準関係規定適合性の判定基準とはなりえない。
原告は、「建築専門家であれば通常有すべき専門的判断・常識」も判断基準になると主張するが、建築士ごとにその知識の程度は様々で、「通常有すべき」という表現も曖昧であるから、建築基準関係規定適合性の判定基準とすることはできない。
(イ) 建築主事の審査義務の範囲
本件においては、電算出力部分は、県規則二条二項により、建築確認申請書への添付を要しないものとされており、建築確認申請書への添付を要しないものとされた図書については、建築主事に確認審査義務はないというべきである。すなわち、県規則二条二項によれば、本件建築確認当時、建築士が作成した設計図書のうち、「当該構造計算プログラムを用いて行つた構造計算の部分」は建築確認申請書へ添付することは要しないものとされており、同規定が建築確認申請書への添付を要しないとした趣旨は、大臣認定プログラムを用いた計算への信頼と、大臣認定プログラムを扱う建築士への信頼から、大臣認定プログラムを用いて行う具体的データの入力や計算の作業が適正か否かは審査の対象としないこととしたものであって、入力データ部分も「構造計算の部分」の一部を構成するものとして、添付することを要しなかったものである。
本件においては、甲一九のうち一三九頁から二四四頁までが「構造計算の部分」に当たり、本件建築主事は、電算出力部分については審査する法令上の義務を負わない。
イ 本件建築主事に注意義務違反がないこと
(ア) 本件耐震壁を一枚とモデル化したことについて
原告は、通達九六がルート三に適用されると主張するが、争う。
耐力壁を用いた建築物をどのようにモデル化するかは、建築基準関係規定は何らの定めも置いておらず、審査対象でないことは明らかであり、建築主事が建築確認審査義務を負うものではない。
耐震壁に開口部がある場合、それを耐震要素としてどのように扱うかについては、平成一八年改正法施行前においては、建築基準関係規定に基準が定められておらず、設計者の判断に委ねられていた事項であった。建築主事は、建築一般についての基本的知識を有し建築基準関係規定に関して高度な知識を有する専門職ではあるが、構造設計の実務経験は問わないため構造設計の専門家ではないし、自ら工学的判断や知見を用いてモデル化し、それに基づき構造計算を行うといった高度な能力を有しているわけではなく、耐震壁を一枚の壁としてモデル化したことが不合理であることが明らかであるとはいえない。
(イ) 一階部分のピロティ型式について
ピロティ型式に関する定義や判断基準について、建築基準関係規定は何らの定めを置いていないから、ピロティ型式の建築物について特別の配慮がされているかは建築確認審査の対象ではなく、建築主事が確認審査義務を負うものではない。原告は、各種民間図書を引用してピロティ型式の建築物については特別な配慮が必要であり、建築主事はその確認審査義務を負う旨主張するが、原告が引用する各種民間図書は、各種団体が、必ずしも見解の一致しない分野において自らが相当と考える内容を記載したものであって、記載内容と異なる考え方も存在することを前提としており、設計者が自由な裁量により取捨選択できる技術的基準の選択肢を示した資料にすぎないのであって、建築基準関係規定適合性の判定基準とはなりえない。また、原告は、ピロティ型式の建築物については剛性率が〇・六を下回るのが通常である旨主張するが、全く根拠のない主張である。
仮に、原告の主張するとおり、ピロティ型式の建築物については特別の配慮がされているか審査する義務が建築主事にあったとしても、本件建物は、一階のY方向には耐震壁が三枚計画されており(甲二〇のうちS―5にはEW15と表示されている耐震壁が三枚存在する)、本件建物がピロティ型式となっていることは一見して明らかなものではない。さらに、本件建物は、ピロティ型式の建築物についての特別の配慮がされている。すなわち、設計指針が鉄筋コンクリート造とすることができるために要求する条件を全て満たしているし、①保有水平耐力の計算(ルート三)により建物の大地震時の状態を把握する設計がされていること、②剛性率が〇・六四五であり、〇・六以上であったこと、③軸力に関する制限値をFC部材以下としていることから、構造規定に沿った設計がされている。
(ウ) 崩壊メカニズム及びDs値の検証について
崩壊メカニズムに関する定義や基準については、建築基準関係規定には何らの定めも置かれていないため、建築主事の確認審査対象ではなく、建築主事に審査義務はない。大臣認定プログラムを用いて構造計算を行う場合の入力データは、構造計算書の電算出力部分の一部であり、同部分は、平成一五年三月当時の県規則二条二項の規定により、提出を要しないとされていたもので、建築確認における審査の対象ではなく、建築主事に確認すべき義務はない。大臣認定プログラムを用いて行われた計算については、入力ステップ数と出力ステップ数が異なっていた場合には、何らかのメッセージが表出されるはずであるから、建築主事は、メッセージが表出されていないことを確認すれば足りる。
また、原告は、保有水平耐力の計算結果においては、耐力壁の一部はせん断破壊する(「WD」)と表示されるのが通常であると主張するが、原告の当該主張は全く根拠のないものである上、このような計算結果が表示される部分は、平成一五年三月当時の県規則二条二項の規定により、提出を要しないとされていたもので、建築確認における審査の対象ではなく、建築主事に確認審査すべき義務はない。仮にこの点について建築主事に審査義務があるとしても、本件構造計算書の電算出力部分には、構造計算を行った結果再検討を要する事情がある場合を表すメッセージを確認すれば足りる。
本件においては、入力ステップ数と出力ステップ数が異なっていたことを示唆するメッセージや、構造計算を行った結果再検討を要する事情がある場合を表すメッセージは何ら表出されていない。
(エ) 耐震壁の枠柱の主筋について
大臣認定プログラムを用いて構造計算を行う場合、柱の鉄筋量の計算は大臣認定プログラムの中で行われるところ、大臣認定プログラムを用いて行われた計算内容については、電算出力部分として建築確認申請書に添付を要しないこととされており、建築主事の審査の対象ではなく、建築主事はエラーメッセージが表出されていないこと、すなわち計算結果を確認すれば足りる。
本件構造計算は大臣認定プログラムを用いて行われており、エラーメッセージは表出されておらず、建築主事に過失はない。また、建築確認申請において提出すべきとされている資料によれば、本件ホテルの構造計算については、許容応力度計算及び保有水平耐力計算が行われ、その結果、構造耐力上安全であることが確かめられていることが確認できるのであるから、建築主事が、施行令七七条但書の適用があり、主筋の断面積の和をコンクリートの断面積の〇・八%以上とする規定を適用せずともよいと判断したとしても違法はない。
(オ) 跳ね出し部分の構造について
跳ね出し部分に関しては、建築基準関係規定に定めはなく、設計者の工学的判断に委ねられている内容であり、建築主事には審査の義務はない。
原告は、跳ね出し部分が存在すること、跳ね出し部分の外側の梁の元端部をしっかりと固定させないと梁としての機能を失い、床を崩壊させる危険性が高いと容易に判断できる旨主張するが、三~六階伏図(甲二〇のうち、S―7)を見ると、跳ね出し部分は一見して複雑に入り組んでいるため、容易に判断できるものではなく、建築主事の見落としであるとすることはできない。
(カ) 大臣認定の構造計算プログラムについて
大臣認定番号が印字される書類は、確認申請書の電算出力部分であり、平成一五年三月当時の県規則二条二項の規定に基づき、提出を要しないとされていないものであるから、建築確認における審査の対象ではなく、建築主事には確認すべき義務はない。
本件建築確認当時、大臣認定プログラムは一〇〇種類以上あり、プログラムごとに計算の設定条件も異なっていたのであるから、建築主事が大臣認定プログラムの仕様の特徴を細かく把握することは困難である。ヘッダーの大臣認定番号の印字について注意を喚起する文書等が多数存在するようになったのは訴外F建築士による耐震偽装事件発覚後のことであり、建築主事が当然に知っていたと結論付けることはできない。
(3)  損害額
(原告の主張)
原告は、違法な本件建築確認により、以下の損害を被った。
ア 改修工事関連費用 一億四二六八万二〇〇〇円
イ 休業損害 一億〇五四九万〇七九〇円
ウ 弁護士費用 二六〇〇万円
エ 合計 二億七四一七万二七九〇円
オ 上記合計額二億七四一七万二七九〇円に対する平成一七年一二月三日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金
(被告の主張)
いずれも不知ないし争う。
(4)  建築主の建築主事に対する責任追及と信義則との関係
(被告の主張)
本件構造設計は、b設計との契約関係に基づいてF建築士が行ったものであるが、原告は、b設計に本件建物の設計・監理を委託したのであるから、F建築士による耐震強度の偽装行為は、原告と一体関係にある者の行為として、法的には原告の行為と同様に評価されるべきである。そうすると、原告自らが、公益の実現を目的とする行政権の行使を妨げ、又は少なくともその負担を増加させるおそれがある行為をしたものと評価できるのであり、こうした原告の個人的利益が保護されないことは信義則(クリーン・ハンズの原則)上明らかである。
(原告の主張)
本件においては、原告はb設計を選任したにすぎず、原告がF建築士を使用したのではないから、F建築士の行為が原告の行為と同様に評価される理由はない。また、建築士法は、一般に建築主には建築に関する専門知識がないことを前提に、一定の建築物の設計又は管理をすることができる者を一級建築士に限っており、このような法の建前からすれば、建築主に対しては、選任した建築士が十分な資質や能力を有していることまでの判断は求められておらず、有資格者である建築士に依頼を行うことで責任は果たしているというべきである。
(5)  過失相殺又は寄与率による減額
(被告の主張)
本件建築確認における本件構造計算に原告の主張する瑕疵が生じたのは、F建築士による偽装やまやかしが原因である。
F建築士は、b設計の履行補助者に当たり、F建築士の故意による耐震強度偽装行為は、b設計の違法行為そのものと位置づけられるべきものである。また、b設計は、F建築士の耐震強度偽装行為を見逃しており、F建築士の選任、監督に過失があることは明らかである。
補助参加人は、施工者として公共の福祉の増進の妨げとなる危険な建物を出現させないという重大な責任を負っているにもかかわらず、これを怠っている。
過失相殺における被害者側の「過失」とは、加害者として不法行為責任を負う際の過失の域に達する必要はなく、被害者の受けた実損害額から社会における公平の観念に基づいて減縮したものを賠償額とすることが妥当視されるような被害者側の不注意であれば足りると解されるところ、F建築士、b設計及び補助参加人は、いずれも「被害者側」に当たり、これらの者の過失は、過失相殺の対象として考慮されるべきである。また、b設計及び補助参加人は、原告の履行代行者として本件建物の設計、管理、施工を行ったのであるから、これらの者の故意又は過失は原告の故意又は過失と同視されるべきものである。さらに、原告は、「この申請書及び添付図書に記載の事項は、事実に相違ありません。」と記載し、記名押印した本件建築確認申請書を提出しているし、b設計及び補助参加人の選任及び監督についての注意義務を怠っている。
本件におけるF建築士、b設計、補助参加人および原告の過失は、上記のとおり重大なものであるから、九割以上の過失相殺がされるべきである。
また、上記のようにF建築士、b設計、補助参加人及び原告の過失が重大であるのに対し、被告の過失はあったとしてもごく僅かで、本件結果(損害)に対する寄与度もごく僅かであるから、寄与率減額の法理により、被告の賠償額は、全損害額の一割を超えない範囲に限られる。
(原告の主張)
被告は、F建築士、b設計及び補助参加人の過失を被害者側の過失として過失相殺すべきであるなどと主張する。しかしながら、被害者側の過失とは、原告と「身分上、社会生活上一体をなす関係にあった」者の過失をいうところ、b設計は、本件建物に関し、原告と設計監理業務委託契約を締結したにすぎず、b設計は建築専門家である一級建築事務所として、原告とは独立して本件建物の設計・監理業務を遂行する立場であり、F建築士は、b設計から構造設計業務を受けた一級建築士であるが、原告はそのことを全く知らなかったものであり、補助参加人と原告は、総研の指示に従って本件建物の建築工事請負契約を締結したにすぎないから、原告と「身分上、社会生活上一体をなす関係にあった」とはいえず、その過失を被害者側の過失として過失相殺することはできない。
法は、建築物の建築・設計につき専門的知識を有しない建築主が、建築物を設計し、建築物の安全性を確保することを予定しておらず、また、建築主は建築士の良し悪しを判断することもできないのが通常であることから、建築主が負っている責務は、有資格者である建築主に建築物の設計を依頼することまでである。原告は、本件ホテルの建築・設計に当たり、一級建築事務所であるb設計との間で設計・監理業務委託契約を締結しており、建築主としての責務を十分果たしている。被告は、原告が「申請書及び添付図書に記載の事項は、事実に相違ありません。」と記載した上でこれに記名捺印していることをもって原告の過失と主張するが、上記のとおり法は建築主が建築物の安全性を確保することを予定しているとまではいえないことからすれば、建築確認申請書に「事実に相違ない」旨記載され、建築主の記名捺印があったとしても、原告が本件ホテルの構造設計上問題がないことまで担保するものではなく、当該建築確認申請書が所定の国家資格を有する建築士によって作成された事実に相違ないことを意味しているにとどまるものであって、原告の過失とはいえない。
また、被告は、寄与率による減額を主張するが、上記のとおり、F建築士、b設計及び補助参加人の故意又は過失を原告側の故意又は過失ととらえることは相当ではなく、F建築士、b設計及び補助参加人に過失があったとしても、被告との共同不法行為なのであるから、原告との関係で、結果発生に対する寄与の程度又は割合をもって責任を負うべき範囲を限定することは認められない。
第三  当裁判所の判断
一  争点(1)(建築確認審査における建築主事の建築主に対する注意義務の有無等)について
(1)  建築主がどのような建築物を建築するかは、原則として自由であるが、建築物の構造が脆弱であると、その建築物は、地震等の際に倒壊するなどして、その建築物内にいる者、その近隣に居住する者、通行人などの利益を侵害する危険性を帯びることとなる。そこで、法(建築基準法)は、構造耐力に関する技術基準等を定めた規定に違反する建築物が出現することを未然に防止し、もって、建物利用者等の生命、身体又は財産を危険にさらすことがないよう安全性を確保させる趣旨で、建築物の構造耐力が所定の基準に適合することを求め(法二〇条)、建築主事又は指定確認検査機関(以下、単に「建築主事」という。)が行う確認審査を受け、確認済証の交付を受けなければ、当該建築物の工事に着手することができないものと定めている(法六条、六条の二)。また、法や建築基準関係規定に違反した場合には、建築確認の有無を問わず、その除却等の必要な措置が命ぜられることがあり、これに従わなければ行政代執行をされることもある(法九条)。
上記趣旨に照らせば、建築確認の制度は、建築主や建築業者の建築物に対する所有権の保護を目的として制定されたものではなく、また建築確認が建築主等に対し当該建築物の安全性を保証するものでないことも明らかである。
しかし、法が、脆弱な建築物が建築されて、これが地震等の際に倒壊するなどして、関係者に被害が発生することを防ぐ趣旨で制定され、また、法一条は「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。」と規定していて、保護の対象者を限定する趣旨とはうかがわれず、さらに、建築主にとっては、確認審査を受け、確認済証の交付を受けなければ、当該建築物の工事に着手することができないという負担を負うことに照らすと、建築主の当該建築物に関する財産的利益が保護の対象から全く除外されているものと解することは困難である。
(2)  被告は、建築主は、設計者・工事管理者の選任に当たって、建築基準関係規定に適合した設計などを行うことができる十分な資質と能力を備えた建築士を選任する責任を負っているのであるから、建築基準法の保護法益に建築主の財産権は含まれないなどと主張する。
しかしながら、法は、一級建築士試験に合格した者のうち、さらに一定の要件を具備した建築主事をして、公的な立場で建築確認審査をさせることとし(法四条、五条)、そのことを通じて建築基準に適合した建築物が建築されることとしているのであるから、それにより得られる利益、とりわけ基準違反の建築物が建築された後の事後的損害の回復を求める場合において違法理由として用いることのできる利益は、周辺住民だけでなく建築主にも及び、建築主の財産権も、少なくとも国家賠償請求訴訟との関係では建築基準法の保護法益に含まれるというべきである。
よって、上記の被告の主張は採用することができない。
(3)  そうすると、建築確認制度においては、建築主の財産的利益を保護することも目的としており、建築主事は、建築主に対して職務上の法的義務を負担しているものであって、これに違背した場合には、国家賠償法上違法となるというべきである。
二  争点(2)(本件建築主事の本件建築確認審査に際しての注意義務違反の有無)について
(1)  建築主事の注意義務の具体的内容
ア 建築基準関係規定適合性の判断基準等
(ア) 建築基準法について
本件建築確認申請当時、建築主事は、法六条一項の申請書を受理した場合において、同項一号から三号までに係るものにあってはその受理した日から二一日以内に、申請に係る建築物の計画が建築基準関係規定に適合するかどうかを審査し、審査の結果、建築基準関係規定に適合することを確認したときは、当該申請者に確認済証を交付しなければならないものと定められていた(法六条四項)。
また、建築主事が審査の基準とする法令は、法、施行令、建築基準法四条一項の人口二五万以上の市を指定する政令、施行規則、建築基準法に基づく指定資格検定機関等に関する省令、これらの政令・省令の委任を受けた告示、愛知県建築基準条例、県規則などのほか、施行令九条一号から一五号までに規定されている消防法、屋外広告物法、港湾法、高圧ガス保安法、ガス事業法、駐車場法、水道法、下水道法、宅地造成等規制法、流通業務市街地の整備に関する法律、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律、都市計画法、特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法、自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律、浄化槽法などであり、多岐に及んでいた。
さらに、建築確認申請に添付する図書及び当該図書に明示される事項は、施行規則一条の三第一項に定められているほか、県規則によって、愛知県独自に建築確認申請に添付すべき図書が規定されていた。
そうすると、建築確認審査は、そもそも、当該建築計画を建築基準関係規定に当てはめて、その要件充足の有無を判断するという裁量性の乏しいものであるところ、審査事項が上記のとおり多岐にわたり、かつ、審査の期間も制約されていることからすると、法は、建築主事に対し、全ての申請書類を、民間図書等で示される工学的知見をもって厳密に逐一審査することまでは求めてはいないものというべきである。建築主事の審査は、建築基準関係規定に基づき建築確認申請に添付された図書及び同規定によって定められた事項が対象となるのであって、審査の対象とならない留意事項や推奨事項等は、設計者の判断に委ねられているものというべきである。
(イ) 建築士法について
建築士法は、建築士の免許及びその取消し、懲戒、業務等について定める(同法四条、九条、一〇条、一八条等)とともに、建築士にしか設計と工事監理が行えない建築物を定めている(同法三条ないし三条の三)。また、法は、建築物のうち構造が複雑であったり、大規模であったりするものについては、建築士の資格を有する者が設計し、工事監理者とならなければならず(法五条の四)、建築確認申請に際しても、建築士の作成した設計図書を申請書に添付させるものとし、その要件を欠く建築確認申請は受理することができないものと定めている(法六条三項)。
そうすると、建築確認制度は、建築専門家である建築士の技術的能力、職業倫理、責任感に対する信頼を前提として構築されているものということができる。
(ウ) 以上によれば、建築主事は、建築基準関係規定に基づき建築確認申請に添付される図書及び同規定によって定められた事項を対象として、当該建築計画を建築基準関係規定に当てはめて、その要件充足の有無を審査、判断するものであり、その資料として提出される建築士作成の設計図書等については、建築士の技術的能力、職業倫理、責任感に対する信頼を前提として審査すれば足りるということができる。
イ 大臣認定プログラムが使用された構造計算と審査
施行規則及び県規則によれば、申請に係る建築物が鉄筋コンクリート造の建築物で高さが二〇mを超えるもので、施行規則一条の三第一項の規定により国土交通大臣の指定を受けた構造計算プログラムその他これに類するものとして知事が指定した構造計算プログラムを用いて構造計算を行ったものであって、その工事計画が建築士の作成した設計図書によるものである場合においては、省令一条の三第一項の表二の(1)項及び(2)項並びに三の(1)項の構造計算の計算書のうち、当該構造計算プログラムを用いて行った構造計算の部分(以下「構造計算部分」という。)を建築確認申請書へ添付することは要しないものとされていた。同規定の趣旨は、大臣認定プログラムを用いて行う構造計算の正確性については当時の国土交通大臣の指定によって明らかになっていること、建築専門家である建築士が大臣認定プログラムを使用していることから、当該大臣認定プログラムを用いて行う具体的なデータの入力や計算の作業が適正か否かは建築主事の審査の対象外としたものと解される。すなわち、入力データ部分は、①柱梁の形状、鉄筋の本数等の使用材料に関するデータと、②保有水平耐力計算などをするための計算条件に関するデータに大別できるところ、①のうち確認審査に必要なデータは、添付を要することとされている構造計算概要書及び構造計算書(手計算部分)において確認ができ、②については、モデル化に沿った計算がされるように入力を行うものであるところ、モデル化については、後述のように設計者の工学的判断に任されており、確認審査の対象ではなく、入力データ部分そのものは固有の意味を有しないことから、それぞれ確認申請書への添付を要しないこととし、建築主事の確認審査の対象外としたものである。
そうすると、入力データ部分も含めた電算出力部分が「構造計算の部分」に当たり、本件建築確認申請書への添付を要しないものであったから、本件建築主事には、電算出力部分について確認審査する義務はないというべきである。
原告は、建築確認申請書への添付を要しない図書であったとしても、実際に建築確認申請書へ添付された以上、審査義務の範囲に含まれ、要所について疑問点を発見し、必要に応じて検算しなければならない旨主張する。しかしながら、上記の法令の趣旨からすると、建築確認申請書への添付を要しないこととされた構造計算部分が添付されているか否かによって建築主事の審査対象が異なることになるというのは合理的ではなく、添付を要しない構造計算部分が添付されていた場合であっても、同部分は建築主事の審査対象ではないというべきであり、原告の主張は採用できない。
(2)  本件建築主事の注意義務違反の有無
ア 本件耐震壁のモデル化について
(ア) 後掲証拠によれば、以下の事実が認められる。
本件建物の構造設計上の特徴として、二階から一一階までのいずれの階もX方向に耐震壁が存在するが、本件耐震壁はいずれも開口部として廊下があるため、上下方向で全く壁がない部分が存在している(甲二〇のうち、A―10、S―6、7、8、乙三五、証人G)。
本件構造設計においては、本件耐震壁を上記開口部の存在にもかかわらず一枚の壁としてモデル化している(争いのない事実)。
本件耐震壁を二枚の壁としてモデル化した場合のQu/Qunの値(いわゆる耐震強度。以下「耐震強度」ということがある。)は、X方向で〇・五八、Y方向で〇・七四(二階壁)又は〇・二八(二階梁)であり、いずれも一・〇未満であった(甲九の三、一〇の一、二)。
本件構造計算書(甲一九)においては、Qu/Qunの値はいずれの階においても一・〇以上となっている(甲一九)。
(イ) 本件耐力壁のモデル化に関する建築基準関係規定の存在の有無
原告は、構造計算方法におけるルート三において、通達九六号(甲七二)の別記1〔2〕(1)3)記載の運用が適用されることを前提に、施行令七八条の二で定める耐力壁とみなすことができるのは、開口周比が〇・四以下であり、かつ、必要な開口補強がなされている場合に限られると主張する。ルート三に通達九六号の別記1〔2〕(1)3)が適用されることについては、通達九六号第二の四項(2)項において、建設省告示第一七九一号(甲七四)の運用については、別記2を参照としており、同別記2においては、Aw(耐力壁の断面積)及びAc(柱の水平断面積)のとり方は、建設省告示第一七九〇号(甲七三)第四号ロの運用に準ずるとし、通達九六号の別記1〔2〕(1)3)が、建設省告示第一七九〇号四号ロの取扱いとして、Awの取り方の項において必要な開口補強を求めていることをその根拠として主張している。
しかしながら、建設省告示第一七九一号は、施行令「八二条の三第三号の規定に基づき、構造計算の基準を次のように定める。」としているとおり、施行令八二条の三による剛性率、偏心率等の計算を行う場合、すなわちルート二による構造計算を行う場合についての告示であることが明らかであって、施行令八二条の三の規定による計算が行われないルート三に適用されるものではない。原告の主張はその前提を欠くものであって、採用できない。
そして、本件建築確認当時、ルート三において構造計算を行う場合の耐震壁のモデル化について定めた建築基準関係規定は他に存在しなかった。
(ウ) 本件耐震壁のモデル化に関する本件建築主事の注意義務違反の有無
前記(1)ア(ウ)で説示したとおり、建築主事は、建築基準関係規定に基づき建築確認申請に添付される図書及び同規定によって定められた事項を対象として、当該建築計画を建築基準関係規定に当てはめて、その要件充足の有無を審査、判断するものであり、その資料として提出される建築士作成の設計図書等については、建築士の技術的能力、職業倫理、責任感に対する信頼を前提として審査すれば足りるところ、耐震壁のモデル化は、設計者が工学的な知見を持って行う極めて専門性の高い作業の結果であり、本件建築確認当時においては、上記のとおりルート三において構造計算を行う場合の耐震壁のモデル化について定めた建築基準関係規定は存在せず、設計者の工学的判断に委ねられており、建築主事の審査の対象ではなかったというべきである。したがって、建築主事としては、設計者の行ったモデル化を前提に、耐震強度が一・〇以上であることを確認すれば足りる。
本件においては、前記(ア)で認定したとおり、Qu/Qunの値はいずれの階においても一・〇以上であったのであるから、本件建築主事の確認審査に違法はない。
イ 一階部分のピロティ型式について
(ア) 後掲証拠によれば、以下の事実が認められる。
構造規定(甲二五の三八九頁)には、ピロティ階とは、当該階において、耐力壁、そで壁、腰壁、たれ壁、方立て壁等の量が、上階と比較して急激に少なくなっている階をいう旨の記載がある。
本件建物の軒の高さは三〇・九五mである(甲二〇のうちA―16)。また、本件建物は、一階のY方向には耐力壁は三枚しかなく(甲二〇のうちS―5)、上記構造規定でいうところのピロティ型式に当たる(甲五七、五八、証人G)。
しかし、本件建築確認当時、建築基準関係規定においては、ピロティ型式の建築物に関する定義や満たすべき技術的基準等は何ら定められてなかった。
(イ) 前記(1)ア(ウ)で説示したとおり、建築主事は、建築基準関係規定に基づき建築確認申請に添付される図書及び同規定によって定められた事項を対象として、当該建築計画を建築基準関係規定に当てはめて、その要件充足の有無を審査、判断するものであり、その資料として提出される建築士作成の設計図書等については、建築士の技術的能力、職業倫理、責任感に対する信頼を前提として審査すれば足りるところ、上記のとおり、本件建築確認当時、ピロティ型式の建築物に関する定義や満たすべき技術的基準等は何ら定められておらず、ピロティ型式の建築物の安全性に関する特別の配慮がされているか否かは建築主事の審査の対象ではなかったというべきである。
(ウ) 前記(ア)のとおり、本件建物は構造規定でいうところのピロティ型式の建築物であるが、ピロティ型式の建築物の安全性に関する特別の配慮がされているか否かは建築主事の審査の対象ではなかったのであり、前記ア(ア)で認定したとおり、本件建物のQu/Qunの値はいずれの階においても一・〇以上であったのであるから、本件建築主事の確認審査に違法はない。
ウ 崩壊メカニズム及びDs値の検証について
(ア) 前記前提事実及び後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
前記第二の三(3)ウのとおり、保有水平耐力は、Qun=Ds・Fes・Qudの計算式で求められるところ、Dsを求めるためには、建物が倒壊する直前における部材の壊れ方のパターン(崩壊メカニズム)を求める必要があるが、崩壊メカニズムを求める計算部分である本件構造計算書の入力データ部分(甲一九のうち一五八頁)の「最大ステップ数」欄には、X、Y方向いずれも最大ステップ数は二〇〇と表示されているのに対し、出力された部分(甲一九のうち一三七―二頁)には、最大ステップ数が、X方向においては三〇〇、Y方向においては一二五と表示されており、入力データ部分と出力された部分に食い違いが生じている。
また、保有水平耐力の計算結果(甲一九のうち一三七―二頁)においては、「WA」と表示されており、耐力壁の一部がせん断破壊することを表す「WD」の表示はない。
(イ) 前記(1)ア(ウ)で説示したとおり、建築主事は、建築基準関係規定に基づき建築確認申請に添付される図書及び同規定によって定められた事項を対象として、当該建築計画を建築基準関係規定に当てはめて、その要件充足の有無を審査、判断するものであり、その資料として提出される建築士作成の設計図書等については、建築士の技術的能力、職業倫理、責任感に対する信頼を前提として審査すれば足りるところ、前記二(1)イのとおり、電算出力部分は「構造計算の部分」に当たり、本件建築確認申請書への添付を要せず、本件建築主事の確認審査の対象ではなかったものである。
(ウ) 本件においては、上記(ア)のとおり、入力データ部分(甲一九のうち一五八頁)と出力された部分(甲一九のうち一三七―二頁)に食い違いが生じているが、このような食い違いが生じていることは、入力データ部分を見なければ明らかにならないところ、上記のとおり、電算出力部分は建築確認申請に当たり添付を要せず、建築主事の確認審査の対象ではなかったものであるから、本件建築主事がこのような食い違いを看過しても違法とはいえない。
また、原告は、保有水平耐力の計算結果においては、耐震壁の一部はせん断破壊する(「WD」)と表示されるのが通常であるところ、本件構造計算書中の保有水平耐力の計算結果においては、WDの表示がないのであるから、崩壊メカニズムが正しく計算されていない可能性があることは容易に想定できたはずである旨主張するが、保有水平耐力の計算結果において耐震壁の一部はせん断破壊すると表示されるのが通常であるという的確な証拠はなく、原告の主張は採用できない。
(エ) 原告は、平成一五年三月当時の県規則二条二項によっても、入力データ部分と出力データ部分については添付の省略は許されておらず、添付を要するもので、建築主事は審査を行わなければならず、入力データの最大ステップ数と出力データの最大ステップ数の食い違いを看過した本件建築主事には過失がある旨主張する。
しかしながら、仮に入力データ部分と出力データ部分については添付を要すると解するとしても、当時の建築基準法上、建築主事は、構造計算書の要所と、エラーメッセージの有無を確認すれば足り、入力データと出力データを逐一照合するまでの義務はないというべきである。本件構造計算書には、入力ステップ数と出力ステップ数が食い違っていることを示唆するメッセージや、構造計算を行った結果再検討を要する事情があることを表すメッセージは何ら表示されておらず(甲一九のうち二四四頁)、ステップ数に係る入力データと出力データを逐一照合しない限りその食い違いに気付くことは困難であるから、入力ステップ数と出力ステップ数の食い違いを看過したことをもって本件建築主事に過失があるとはいえない。
エ 耐震壁の枠柱の主筋について
(ア) 証拠(甲二〇のうち、S―14、S―19、甲六九)によれば、以下の事実が認められる。
本件建物の二階以上の階の枠柱の規格は、各辺が四五〇mmと六五〇mmの長方形であり、その断面積は二九二五cm2であるところ、同枠柱には規格が「D19」で断面積が二・八七cm2の主筋が八本使われており、その断面積の和は二二・九六cm2(二・八七cm2×八=二二・九六cm2)である。
(イ) 施行令七七条五号によれば、柱の主筋の断面積の和は、コンクリートの断面積の〇・八%以上とする必要がある旨定められている。
本件において同規定を満たすためには、主筋の断面積の和は、二九二五cm2×〇・八%=二三・四cm2以上でなければならないところ、前記のとおり、本件建物の二階以上の階の枠柱の主筋の断面積は、二二・九六cm2(枠柱の断面積の約〇・七八%)であって、主筋が不足しており、施行令七七条五号の規定を満たしていない。
このことは、本件建築確認申請書に添付された図書(甲二〇のうち、S―14、S―19)等を確認した上で、上記柱の断面積及び主筋の断面積の和を計算することにより発見することが可能であるが、本件構造計算書その他本件建築確認申請書(添付書類を含む。)に直接記載されているわけではない。
(ウ) 前記(1)ア(ウ)で説示したとおり、建築主事は、建築基準関係規定に基づき建築確認申請に添付される図書及び同規定によって定められた事項を対象として、当該建築計画を建築基準関係規定に当てはめて、その要件充足の有無を審査、判断するものであるが、前記のとおり、枠柱の断面積及び主筋の断面積の和は、いずれも本件構造計算書その他本件建築確認申請書(添付書類を含む。)に直接記載されているわけではないから、建築主事においていわゆる検算をしない限り、前記主筋の不足という問題点は明らかにならない。建築確認審査において、構造計算に関して何らかの計算がなされている箇所は、手計算部分に限っても多岐にわたる上、前記のとおり建築主事は二一日間という限られた時間の中で確認審査を行わなければならないのであるから、通常の建築確認審査の過程で、その全ての箇所を検算することは不可能ないし非現実的であり、建築主事において逐一検算を行うような網羅的な審査を行うべきことを建築主事の審査義務の内容と解することはできない。
したがって、前記主筋不足の問題点を看過したことをもって、本件建築主事に注意義務違反があったということはできない。
オ 跳ね出し部分の構造について
(ア) 証拠(甲一五の一、甲二〇のうち、A―16、S―6、7、8、甲五八、証人H)によれば、二階以上の梁は、跳ね出し部分を支えていることが認められる。
跳ね出し部分について定めた建築基準関係規定は存在しない。
(イ) 原告は、建築主事は、跳ね出し部分の安全性について審査する義務を負う旨主張する。
しかし、前記(1)ア(ウ)で説示したとおり、建築主事は、建築基準関係規定に基づき建築確認申請に添付される図書及び同規定によって定められた事項を対象として、当該建築計画を建築基準関係規定に当てはめて、その要件充足の有無を審査、判断するものであり、その資料として提出される建築士作成の設計図書等については、建築士の技術的能力、職業倫理、責任感に対する信頼を前提として審査すれば足りるところ、跳ね出し部分については、建築基準関係規定に定めは存在せず、設計者の工学的判断に委ねられており、建築主事の審査の対象になっていなかったというべきである。
(ウ) 本件においては、前記(ア)のとおり、跳ね出し部分があることは認められるものの、その安全性を確保するためにどのような設計を行うかについては設計者の工学的判断に委ねられており、建築主事の審査の対象ではなかったというべきである。したがって、本件建築主事の確認審査に違法はない。
カ 大臣認定の構造計算プログラムについて
(ア) 後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
大臣認定プログラムにおいては、同プログラムが適用範囲内で使用され、かつ、計算処理が正常終了した場合には、大臣認定番号及び性能評価番号が構造計算書の全頁のヘッダーに出力されることとなっていた。
本件電算出力部分は、大臣認定プログラムである本件プログラムを使用して作成されたものであり、本件電算出力部分の最終頁(甲一九の二四四頁)には、「一連計算処理をすべて正常に終了」、「ERROR数0」と表示されており、本件プログラムによる計算の結果、本件建物の構造耐力が法令の基準値を満たしていることが表示されていたものの、本件プログラムを使用して作成された本件電算出力部分のいずれのヘッダーにも大臣認定番号及び性能評価番号は表示されていなかった。
(イ) 前記(1)ア(ウ)で説示したとおり、建築主事は、建築基準関係規定に基づき建築確認申請に添付される図書及び同規定によって定められた事項を対象として、当該建築計画を建築基準関係規定に当てはめて、その要件充足の有無を審査、判断するものであり、その資料として提出される建築士作成の設計図書等については、建築士の技術的能力、職業倫理、責任感に対する信頼を前提として審査すれば足りるところ、前記(1)イのとおり、電算出力部分は「構造計算の部分」に当たり、本件建築確認申請書への添付を要せず、本件建築主事の確認審査の対象ではなかったものである。
(ウ) 原告は、エラー数が0の場合であるにもかかわらず大臣認定番号がヘッダーに印字されない場合には、建築主事は設計者に対して問い質すべきであるなどと主張するが、大臣認定番号がヘッダーに印字されるべき部分は本件電算出力部分であり、本件建築確認申請書への添付を要せず、本件建築主事の確認審査の対象ではなかったものである。
したがって、本件建築主事が、本件電算出力部分のヘッダーに本件プログラムが適用範囲内で使用され、かつ、計算処理が正常終了したことを示す大臣認定番号の印字がないことを看過したとしても、違法であるとはいえない。
(3)  小括
以上のとおり、本件建築主事には本件建築確認審査に当たり本件構造計算書の確認を怠った義務違反を認めることができない。
第四  結論
よって、原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 澤野芳夫 裁判官 山田哲也 島尻大志)

 

別紙一 物件目録〈省略〉
別紙二 構造計算のフロー〈省略〉

 

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政治と選挙Q&A「屋外広告物法 ポスター貼り(掲示交渉)代行」に関する裁判例一覧
(1)平成29年12月20日 東京地裁 平27(ワ)16748号・平28(ワ)32555号・平28(ワ)36394号 建物明渡等請求事件、賃料減額確認請求事件(本訴)、賃料増額確認請求反訴事件(反訴)
(2)平成29年 5月11日 大阪地裁 平28(ワ)5249号 商標権侵害差止請求事件
(3)平成29年 3月16日 東京地裁 平26(特わ)914号・平26(特わ)1029号 薬事法違反被告事件
(4)平成28年11月17日 大阪地裁 平25(わ)3198号 公務執行妨害、傷害被告事件
(5)平成28年10月26日 東京地裁 平24(ワ)16956号 請負代金請求事件
(6)平成28年 3月25日 東京地裁 平25(ワ)32886号 未払賃料請求事件
(7)平成27年 3月31日 東京地裁 平24(ワ)22117号 損害賠償等請求事件
(8)平成26年 2月27日 東京地裁 平24(ワ)9450号 著作物頒布広告掲載契約に基づく著作物頒布広告掲載撤去損害賠償請求事件
(9)平成25年 9月12日 大阪高裁 平25(う)633号 詐欺被告事件
(10)平成25年 1月22日 名古屋地裁 平20(ワ)3887号 損害賠償請求事件
(11)平成24年12月 7日 静岡地裁 平19(ワ)1624号・平20(ワ)691号 損害賠償請求(第一事件)、保険金請求(第二事件)事件
(12)平成23年11月18日 東京地裁 平23(レ)307号・平23(レ)549号 損害賠償等請求控訴事件、同附帯控訴事件
(13)平成23年 9月30日 東京地裁 平20(ワ)31581号・平21(ワ)36858号 損害賠償請求事件(本訴)、同反訴請求事件(反訴)
(14)平成23年 2月23日 東京高裁 平21(ネ)2508号 損害賠償請求控訴事件
(15)平成23年 1月14日 大阪高裁 平22(う)460号 大阪市屋外広告物条例違反被告事件
(16)平成22年10月 5日 京都地裁 平19(ワ)824号 損害賠償請求事件
(17)平成22年 7月27日 東京地裁 平20(ワ)30423号・平21(ワ)3223号 損害賠償請求事件(本訴)、払戻金返還請求事件(反訴)
(18)平成22年 3月29日 東京地裁 平20(ワ)22960号 建物明渡請求事件
(19)平成22年 2月 8日 東京地裁 平21(ワ)8227号・平21(ワ)21846号 損害賠償請求事件
(20)平成22年 1月27日 東京地裁 平21(ワ)9971号・平21(ワ)9621号 土地建物所有権移転登記抹消登記請求事件、鉄塔明渡請求事件
(21)平成22年 1月27日 東京地裁 平21(ワ)13019号 屋外広告塔撤去請求事件
(22)平成21年12月24日 東京地裁 平20(行ウ)494号 計画通知確認処分取消等請求事件
(23)平成21年 7月22日 東京地裁 平19(ワ)24869号 損害賠償請求事件
(24)平成21年 1月20日 那覇地裁 平19(行ウ)16号・平20(行ウ)2号 建築確認処分差止請求事件(甲事件)、建築確認処分差止請求事件(乙事件)
(25)平成20年10月17日 東京地裁 平20(行ク)214号 執行停止申立事件
(26)平成20年 9月19日 東京地裁 平19(行ウ)274号・平19(行ウ)645号 退去強制令書発付処分取消請求事件
(27)平成20年 4月11日 最高裁第二小法廷 平17(あ)2652号 住居侵入被告事件 〔立川反戦ビラ事件・上告審〕
(28)平成19年 2月21日 東京地裁 平18(行ウ)206号 損害賠償請求事件(住民訴訟)
(29)平成17年12月21日 東京地裁 平15(ワ)14821号 看板設置請求事件
(30)平成17年 3月31日 東京地裁 平15(ワ)27464号・平15(ワ)21451号 商標使用差止等請求本訴、損害賠償請求反訴事件 〔tabitama.net事件〕
(31)平成17年 2月22日 岡山地裁 平14(ワ)1299号 損害賠償請求事件
(32)平成13年12月21日 秋田地裁 平10(ワ)324号・平12(ワ)53号・平12(ワ)416号 土地明渡等請求、損害賠償請求事件
(33)平成13年 2月23日 大阪地裁 平10(ワ)13935号 損害賠償請求事件
(34)平成11年 2月15日 仙台地裁 平9(行ウ)6号 法人税更正処分等取消請求事件
(35)平成 9年 7月22日 神戸地裁 平8(ワ)2214号 損害賠償請求事件
(36)平成 8年 6月21日 最高裁第二小法廷 平6(あ)110号 愛媛県屋外広告物条例違反、軽犯罪法違反
(37)平成 8年 4月12日 最高裁第二小法廷 平4(あ)1224号 京都府屋外広告物条例違反
(38)平成 8年 3月 8日 最高裁第二小法廷 平4(オ)78号 損害賠償請求事件
(39)平成 8年 3月 8日 最高裁第二小法廷 平4(オ)77号 損害賠償請求事件
(40)平成 7年12月11日 最高裁第一小法廷 平4(あ)526号 各滋賀県屋外広告物条例違反、軽犯罪法違反
(41)平成 7年 6月23日 最高裁第二小法廷 平元(オ)1260号 損害賠償、民訴法一九八条二項による返還及び損害賠償請求事件 〔クロロキン薬害訴訟・上告審〕
(42)平成 6年 2月21日 福岡高裁 平元(ネ)608号 接見交通妨害損害賠償請求事件
(43)平成 4年 6月30日 東京地裁 平3(ワ)17640号・平3(ワ)16526号 損害賠償請求事件
(44)平成 4年 6月15日 最高裁第二小法廷 平元(あ)710号 大阪府屋外広告物条例違反、軽犯罪法違反被告事件
(45)平成 4年 6月15日 最高裁第二小法廷 平元(あ)511号 大阪市屋外広告物条例違反、軽犯罪法違反
(46)平成 4年 2月 4日 神戸地裁 昭49(ワ)578号 損害賠償請求事件 〔全税関神戸訴訟・第一審〕
(47)平成 4年 2月 4日 神戸地裁 昭49(ワ)578号 損害賠償請求事件 〔全税関神戸訴訟・第一審〕
(48)昭和60年 7月22日 最高裁第一小法廷 昭59(あ)1498号 所得税法違反被告事件
(49)昭和59年 9月28日 奈良地裁 昭58(行ウ)4号 都市計画変更決定一部取消請求事件
(50)昭和59年 7月17日 福岡高裁 昭58(う)487号 大分県屋外広告物条例違反被告事件
(51)昭和58年10月27日 最高裁第一小法廷 昭57(あ)859号 猥褻図画販売、猥褻図画販売目的所持被告事件
(52)昭和58年 8月24日 福岡高裁 昭57(う)254号 軽犯罪法違反、佐賀県屋外広告物条例違反事件
(53)昭和58年 6月21日 大分簡裁 昭55(ろ)66号 大分県屋外広告物条例違反被告事件
(54)昭和57年 3月 5日 佐賀簡裁 昭55(ろ)24号 軽犯罪法違反、佐賀県屋外広告物条例違反事件
(55)昭和56年 8月 5日 東京高裁 昭55(う)189号 軽犯罪法違反被告事件
(56)昭和56年 7月31日 神戸簡裁 昭56(ろ)167号 軽犯罪法違反、兵庫県屋外広告物条例違反事件
(57)昭和55年 4月28日 広島高裁松江支部 昭54(う)11号 公職選挙法違反被告事件 〔戸別訪問禁止違憲事件・控訴審〕
(58)昭和54年12月25日 大森簡裁 昭48(う)207号・昭48(う)208号 軽犯罪法違反被告事件
(59)昭和53年 7月19日 横浜地裁 昭51(ワ)1147号 損害賠償事件
(60)昭和53年 5月30日 大阪高裁 昭52(ネ)1884号 敷金返還請求事件
(61)昭和51年 3月 9日 東京高裁 昭47(う)3294号 埼玉県屋外広告物条例違反等被告事件
(62)昭和51年 1月29日 大阪高裁 昭50(う)488号
(63)昭和50年 9月10日 最高裁大法廷 昭48(あ)910号 集団行進及び集団示威運動に関する徳島市条例違反、道路交通法違反被告事件 〔徳島市公安条例事件・上告審〕
(64)昭和50年 6月30日 東京高裁 昭47(う)3293号 埼玉県屋外広告物条例違反・軽犯罪法違反被告事件
(65)昭和50年 6月12日 最高裁第一小法廷 昭49(あ)2752号
(66)昭和50年 5月29日 最高裁第一小法廷 昭49(あ)1377号 大阪市屋外広告物条例違反被告事件
(67)昭和49年12月16日 大阪高裁 昭49(う)712号 神戸市屋外広告物条例違反等事件
(68)昭和49年 5月17日 大阪高裁 昭45(う)868号
(69)昭和49年 5月17日 大阪高裁 昭45(う)713号 大阪市屋外広告物条例違反被告事件
(70)昭和49年 4月30日 東京高裁 昭48(行コ)35号 行政処分取消請求控訴事件 〔国立歩道橋事件〕
(71)昭和48年12月20日 最高裁第一小法廷 昭47(あ)1564号
(72)昭和48年11月27日 大阪高裁 昭48(う)951号 大阪市屋外広告物条例違反被告事件
(73)昭和47年 7月11日 大阪高裁 昭43(う)1666号 大阪府屋外広告物法施行条例違反事件 〔いわゆる寝屋川ビラ貼り事件・控訴審〕
(74)昭和46年 9月29日 福岡高裁 昭45(う)600号 福岡県屋外広告物条例違反被告事件
(75)昭和45年11月10日 柳川簡裁 昭40(ろ)61号・昭40(ろ)62号 福岡県屋外広告物条例違反被告事件
(76)昭和45年 4月30日 最高裁第一小法廷 昭44(あ)893号 高知県屋外広告物取締条例違反・軽犯罪法違反被告事件
(77)昭和45年 4月 8日 東京地裁 昭40(行ウ)105号 法人事業税の更正決定取消請求事件
(78)昭和44年 9月 5日 金沢地裁 昭34(ワ)401号 損害賠償請求事件 〔北陸鉄道労組損害賠償請求事件〕
(79)昭和44年 8月 1日 大阪地裁 昭44(む)205号 裁判官忌避申立却下の裁判に対する準抗告事件
(80)昭和44年 3月28日 高松高裁 昭42(う)372号 外国人登録法違反・高知県屋外広告物取締条例違反・軽犯罪法違反被告事件
(81)昭和43年12月18日 最高裁大法廷 昭41(あ)536号 大阪市屋外広告物条例違反被告事件
(82)昭和43年10月 9日 枚方簡裁 昭41(ろ)42号 大阪府屋外広告物法施行条例違反被告事件
(83)昭和43年 7月23日 松山地裁 昭43(行ク)2号 執行停止申立事件
(84)昭和43年 4月30日 高松高裁 昭41(う)278号 愛媛県屋外広告物条例違反・軽犯罪法違反被告事件
(85)昭和43年 2月 5日 呉簡裁 昭41(ろ)100号 軽犯罪法違反被告事件
(86)昭和42年 9月29日 高知簡裁 昭41(ろ)66号 外国人登録法違反被告事件
(87)昭和42年 3月 1日 大阪地裁 昭42(む)57号・昭42(む)58号 勾留請求却下の裁判に対する準抗告事件
(88)昭和41年 2月12日 大阪高裁 昭40(う)1276号
(89)昭和41年 2月12日 大阪高裁 事件番号不詳 大阪市屋外広告物条例違反被告事件
(90)昭和40年10月21日 大阪地裁 昭40(む)407号 勾留取消の裁判に対する準抗告事件
(91)昭和40年10月11日 大阪地裁 昭40(む)404号 勾留取消の裁判に対する準抗告申立事件
(92)昭和39年12月28日 名古屋高裁 昭38(う)736号 建造物損壊、建造物侵入等事件 〔東海電通局事件・控訴審〕
(93)昭和39年 8月19日 名古屋高裁 昭39(う)166号 軽犯罪法違反被告事件
(94)昭和39年 6月16日 大阪高裁 昭38(う)1452号
(95)昭和29年 5月 8日 福岡高裁 昭29(う)480号・昭29(う)481号 外国人登録法違反等事件
(96)昭和29年 1月 5日 佐賀地裁 事件番号不詳 外国人登録法違反窃盗被告事件
(97)昭和28年 5月 4日 福岡高裁 昭28(う)503号 熊本県屋外広告物条例違反被告事件

■【政治と選挙の裁判例一覧】「政治資金規正法 選挙ポスター」に関する裁判例カテゴリー
■【政治と選挙の裁判例一覧】「政治資金規正法 政治ポスター」に関する裁判例カテゴリー


(1)政治活動/選挙運動ポスター貼り ☆祝!勝つ!広報活動・事前街頭(単独/二連)選挙ポスター!
勝つ!選挙広報支援事前ポスター 政治選挙新規掲示ポスター貼付! 1枚から貼る事前選挙ポスター!
「政治活動・選挙運動ポスターを貼りたい!」という選挙立候補(予定)者のための、選挙広報支援プロ集団「選挙.WIN!」の事前街頭ポスター新規掲示プランです。

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地獄のポスター貼りやります! ドブ板選挙ポスタリストが貼る! ポスター掲示交渉実績を大公開!
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(5)選べるドブ板選挙広報支援一覧 選挙.WIN!豊富な選挙立候補(予定)者広報支援プラン一覧!
政治家/選挙立候補予定者広報支援 祝!当選!選挙広報支援プロ集団 世のため人のため「SENKYO.WIN」
アポイントメント獲得代行/後援会イベントセミナー集客代行/組織構築支援/党員募集獲得代行(所属党本部要請案件)/演説コンサルティング/候補者ブランディング/敵対陣営/ネガティブキャンペーン(対策/対応)

(6)握手代行/戸別訪問/ご挨拶回り 御用聞きによる戸別訪問型ご挨拶回り代行をいたします!
ポスター掲示交渉×戸別訪問ご挨拶 100%のリーチ率で攻める御用聞き 1軒でも行くご挨拶訪問交渉支援
ご指定の地域(ターゲットエリア)の個人宅(有権者)を1軒1軒ご訪問し、ビラ・チラシの配布およびアンケート解答用紙の配布収集等の戸別訪問型ポスター新規掲示依頼プランです。

(7)地域密着型ポスターPR広告貼り 地域密着型ポスターPR広告(街頭外壁掲示許可交渉代行)
街頭外壁掲示許可交渉代行/全業種 期間限定!貴社(貴店)ポスター貼り サイズ/枚数/全国エリア対応可能!
【対応可能な業種リスト|名称一覧】地域密着型ポスターPR広告(街頭外壁掲示許可交渉代行)貼り「ガンガン注目される訴求型PRポスターを貼りたい!」街頭外壁掲示ポスター新規掲示プランです。

(8)貼る専門!ポスター新規掲示! ☆貼!勝つ!広報活動・事前街頭(単独/二連)選挙ポスター!
政治活動/選挙運動ポスター貼り 勝つ!選挙広報支援事前ポスター 1枚から貼る事前選挙ポスター!
「政治活動・選挙運動ポスターを貼りたい!」という選挙立候補(予定)者のための、選挙広報支援プロ集団「選挙.WIN!」の事前街頭ポスター新規掲示プランです。

(9)選挙立札看板設置/証票申請代行 絶対ここに設置したい!選挙立札看板(選挙事務所/後援会連絡所)
選挙事務所/後援会連絡所届出代行 公職選挙法の上限/立て札看板設置 1台から可能な選挙立札看板設置
最強の立札看板設置代行/広報(公報)支援/選挙立候補者後援会立札看板/選挙立候補者連絡所立札看板/政治活動用事務所に掲示する立て札・看板/証票申請代行/ガンガン独占設置!


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