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「政治ポスター貼り 公職選挙法 解釈」に関する裁判例(234)昭和36年 6月30日  東京高裁  昭34(ナ)15号 選挙無効確認訴訟請求事件

「政治ポスター貼り 公職選挙法 解釈」に関する裁判例(234)昭和36年 6月30日  東京高裁  昭34(ナ)15号 選挙無効確認訴訟請求事件

裁判年月日  昭和36年 6月30日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  昭34(ナ)15号
事件名  選挙無効確認訴訟請求事件
文献番号  1961WLJPCA06300009

要旨
◆公職選挙法二〇五条にいう「選挙の規定違反」の意義
◆選挙区域に大きな経済上の影響力をもつ会社が組織的計画的に違法な選挙運動をした旨の選挙無効の主張が認められなかつた事例
◆公職選挙法二〇五条にいう「選挙の規定に違反することがあるとき」とは、選挙の管理執行に当たる機関が直接に選挙管理執行手続に関する明文規定に違反する場合のみならず、選挙が当該機関の権限濫用あるいは当該機関の意図に反する事情等により著しく自由と公正を失し、選挙法の所期する正常な選挙が行なわれなかつたに等しいと目されるような場合をもさすものと解すべきである。

新判例体系
公法編 > 組織法 > 公職選挙法〔昭和二五… > 第一五章 争訟 > 第二〇五条 > ○選挙の無効の決定、… > (三)「選挙の規定に違反」の意義
◆公職選挙法第二〇五条にいう「選挙の規定に違反することがあるとき」とは、選挙の管理執行に当たる機関が直接に選挙管理執行手続に関する明文規定に違反する場合のみならず、選挙が当該機関の権限濫用あるいは当該機関の意図に反する事情等により著しく自由と公正を失し、選挙法の所期する正常な選挙が行なわれなかったに等しいと目されるような場合をもさすものと解すべきである。

公法編 > 組織法 > 公職選挙法〔昭和二五… > 第一五章 争訟 > 第二〇五条 > ○選挙の無効の決定、… > (五)選挙無効事由 > A 選挙管理機関以外… > (4)第三者
◆選挙区域に大きな経済上の影響力をもつ会社が組織的計画的に違法な選挙運動をしたものでなく、会社と無関係に自然発生的に違反運動が多発したにすぎないときは、当該選挙は無効とはいえない。

 

出典
行集 12巻6号1230頁
東高民時報 12巻6号142頁

参照条文
公職選挙法205条

裁判年月日  昭和36年 6月30日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  昭34(ナ)15号
事件名  選挙無効確認訴訟請求事件
文献番号  1961WLJPCA06300009

原告 鈴木桂吉 外一名
被告 茨城県選挙管理委員会

 

主  文

原告等の請求を棄却する。
訴訟費用は原告等の負担とする。

 

事  実

原告等訴訟代理人は、昭和三十四年四月三十日施行された日立市長選挙を全部無効とする。訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求め、その請求の原因として、原告等は日立市に居住し、昭和三十四年四月三十日行われた日立市長選挙において選挙権を有し、かつその行使をした者である、日立市長選挙においては、市長候補者として、高島秀吉及び福田重清の両名が立候補し、選挙の結果高島候補の得票数は四四、三九九票、福田候補の得票数は三〇、六九六票と公表され、右高島候補が当選人と決定された、しかしこれは日立市において圧倒的な経済的支配力を有する株式会社日立製作所が選挙全地区に亘り企業体の全組織を挙げて全面的に不法な選挙運動を展開し、弾圧を加えるとともに甚しい選挙干渉ないし選挙妨害を行つたことによる結果であり、これらの不法な選挙運動等の具体的内容は別紙原告準備書面(第三)及び同(第五)の(三)の(1)記載のとおりである、原告等は、右選挙においては、これらの不法な選挙運動等により選挙法の理念とする選挙の自由と公正とが没却されているから本件選挙は無効であると主張する、けだし、公職選挙法第二百五条にいう「選挙の規定に違反することがあるとき」とは単に選挙の管理執行に関する規定の違反があつた場合に止まらず実質的に選挙の自由公正が阻害された場合をも包含するものと解すべきであり、かつ右不法な選挙運動等により選挙の結果に影響を及ぼす虞があつたことも明らかであるからである、そこで原告等は日立市選挙管理委員会に対し法定の期間内に右選挙の効力に関し異議の申立をしたところ、同委員会は昭和三十四年六月十二日異議申立棄却の決定をなし同日これを原告等に送達した、原告等は右決定に対し全部不服であるので、被告茨城県選挙管理委員会に対し同年七月一日訴願を提起したところ、同委員会は審査の結果同年十一月四日訴願棄却の裁決をなし、右裁決書は同月中原告等に送達された、よつて原告等は右市長選挙を全部無効とする旨の判決を求めるため本訴に及ぶと陳述し、その主張を敷衍して別紙原告準備書面(第一)ないし(第六)のとおり陳述した。(証拠省略)
被告訴訟代理人は、請求棄却の判決を求め、答弁として、昭和三十四年四月三十日日立市長選挙が施行され、原告等が右選挙において選挙権を有していたこと、右選挙においては高島秀吉、福田重清の両名が立候補し、高島候補の得票数は原告等主張のとおりであつて同候補が当選人と決定されたこと(福田候補の得票数は三〇、六四六票が正確である。)、原告等が右選挙につき異議申立をなし、その後訴願棄却の裁決の送達に至るまでの経過が原告等主張のとおりであることいずれもこれを認めるが、右選挙に際し原告等主張のような不法な選挙運動が行われ、選挙干渉ないし選挙妨害により選挙の自由と公正が没却されたことは否認すると述べ、なお原告等の別紙各原告準備書面記載の主張に対し別紙被告準備書面(第一)及び(第二)記載のとおり陳述した。(証拠省略)

 

理  由

原告等が昭和三十四年四月三十日行われた日立市長選挙における選挙人であつたこと及び右選挙の効力につき原告等がその主張のような経過で異議申立、訴願の提起をしたがいずれも棄却されたことは当事者間に争がない。原告等は、右選挙においては訴外株式会社日立製作所(以下「日製」という。)の不法な選挙運動により選挙の自由と公正が没却されたから右選挙は無効であると主張する。公職選挙法第二百五条の規定によれば裁判所は、選挙の規定に違反することがあるときは、選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合に限りその選挙の無効を判決すべきものとされ、ここにいう「選挙の規定に違反することがあるときは」とは、一般に選挙の管理執行が違法である場合をいうものと解せられ、選挙の管理の任に当る機関が選挙管理執行の手続に関する明文の規定に違反した場合は明らかにここにいう「選挙の規定に違反することがあるとき」に該当するものというべきであるが、本件においては原告等は選挙無効の事由として選挙の管理執行の手続に関する具体的規定の違背があつたことを指摘してはいない。しかしながら、たとえ選挙の管理執行に当る機関において直接にかような明文の規定に違反しない場合でも、その管理執行に係る選挙そのものが、或は当該機関の権限濫用により、或は当該機関の意図に反する他の事情等により、著しく自由と公正を失し、選挙法の所期する正常な選挙が行われなかつたに等しいと目し得るような場合には、その選挙はなお選挙法規の定める管理執行の手続に実質上違背するものとして選挙の無効を来すものと解すべきである。よつて本件選挙がかような趣旨において自由と公正を没却すること甚しいものであつたか否かにつき審究する。
(一)  原告等は、日製社長倉田主税が福田候補に対し候補辞退を勧告することにより選挙に対する不当な干渉を行つたと主張する。証人福田重清、松原寛、本間博、内藤半三、大和田重美、勝間田俊太郎、中村藤吉の各証言を総合すれば、本件市長選挙における候補者としては、既に市長に連続三選された日製出身の高島秀吉と、高島候補の四選を阻止するため地元民から推された日本鉱業株式会社日立鉱山事務所長出身の福田重清とがあり、もし両者の対立競争が激化するときは勢い日製と日本鉱業株式会社(以下「日鉱」という。)の対立があるように見られる虞があり、それは日製、日鉱両社のともに好まないところであつたから、両社及び市民の一部はこの両候補者の候補辞退と双方に異議のない単一候補者による平穏な選挙を希望し、日製においてはたまたまその少し前地元民中の有力者数名が日製本社を訪ねて高島市長の四選に反対し訴外万田五郎を次期候補者に推したような事情もあつたので、日製も日鉱も万田五郎の出馬を希望し、その頃は万田五郎も日製社長の要望があるならば立候補する意思もあるとのことであつたので、昭和三十四年四月二十一日問題解決のため日製社長倉田主税日鉱社長三間安市が日立市に赴き、日製日立工場内で日製社員本間博、日鉱常務取締役松原寛等立会の上右両候補者に会い、選挙に伴う泥仕合等を避けるため両候補とも候補を辞退されるように希望を述べ、両名辞退後の候補者としては万田五郎を推薦したい旨を伝えたところ、高島候補はその場でこれを了承したけれども、福田候補は同人を推薦した地元民の意思を聴くため回答を留保し、その場はそれで散会したこと、右会見の席上で福田候補に対し候補辞退の勧告がなされたのは一再でなかつたけれども同人に対し格別礼を失するような態度を執る者はなかつたこと、その後福田候補は同人を支持する地元民に諮つたところ福田候補が辞退しその代りに日製と関係の深い万田五郎が候補に立つことにはすべて反対であつたため、結局福田候補は辞退勧告に応ぜず、又万田五郎も立候補をなすに至らず、両社長の斡旋勧告は効を泰しないで終つたことを認めることができる。右のように一、二の商事会社が市長選挙の候補者の進退につき重要な発言をするということは一般には例の少いことであり、本件の場合その地域社会の特殊の事情をも考慮するときは、右発言の影響するところは決して軽視することはできないけれども、前記認定事実から明らかなように、右両会社の動きは結局泰功せず、会社の意嚮により特定の候補者がその意に反して立候補を辞退し、又特定の者がその意思に反して立候補したというような事態には立ち到らなかつたのであるから、右会社の前記発言勧告により選挙の自由と公正の実が失われたものと見ることはできない。
(二)  原告等は高島候補を支持する者の行つた数々の公職選挙法に違反し又は違反しない選挙運動行為を指摘して、それらはその地域社会に支配的な影響力を持つ日製の指令に基いて行われたものであり、これがため選挙の自由と公正が著しく没却されたと主張する。原告等により挙げられた公職選挙法違反行為は同法の罰則に触れるものではあるが選挙の管理執行の手続に関する規定に違反した行為とはいうことができないそして公職選挙法の趣旨は、かような違反行為は罰則を以て臨むことによりこれを規制し一々選挙無効の事由とはしないものと解すべきであるが、さきにも説示したとおり、これらの行為といえどもそれが大規模、広汎に組織的に行われて選挙の自由と公正を甚しく没却し、結局当該選挙そのものの選挙の実を失わせ、法の所期する選挙がないに等しい程度に達したときは、なお選挙の規定の違反があるものとして当該選挙を無効としなければならないものと解する。よつて本件の場合、これらの違反行為の有無、それが日製により組織的に行われたものであるか否か及びそれらが累積して右のような選挙無効事由を成す程度に達したか否かの点を検討する。
(イ)  先ず戸別訪問の点を見るに、原告等は日製が会社として高島候補に投票を得させるため当時「人海戦術」といわれた程大規模にその職員を動員して戸別訪問を行わせたと主張するものであり、証人勝間田俊太郎、塩田陽平、石井慶次、根本初枝、藤田晴雄、大森ハル、鈴木福寿、佐藤方也、中村藤吉の各証言を総合すれば、本件選挙に際し日立市内においては、日製の従業員で高島候補を支持する者の中には、その親戚、知人その他の者を戸別に訪問して同候補のため投票を依頼して廻つた者が少くなかつたことが認められるけれども、証人石井慶次の証言によれば、戸別訪問は高島派のみならず福田派においても行つたことが認められ、しかも高島派によりなされたこれらの戸別訪問が原告等の主張するような広汎かつ大規模なものであつたこと及びそれが日製の会社としての積極的な指令に基くものであつたような事実は、証拠上これを認めることができない。
(ロ)  次に原告等主張の威迫行為について見るに、証人黒沢一太、鈴木豊次、大和田重実、塩田陽平、宇野修吉、石井慶次、児玉且代、藤田耕造、佐藤方也、鈴木福寿の各証言を総合すれば、本件選挙当時日立市内においては、日製側の候補者を支持しない者は日製より下請注文の差控え、取引の停止その他経済上の不利益を加えられるとか、高島派がこの選挙に敗退するときは日製は市内にデパートを設けて小商店の経営が成り立たないようにするだろうとかの風説が相当広く流れており、又高島候補の応援に熱心な運動員や労働組合員の中には、福田派又は中立派と目せられる者を高島派に協力させるため利害その他を説き又は威迫がましい言辞を用いた者もあり、選挙人の中にはこれらの風評に脅え又は威迫に屈して福田派に有利な行動を差控えるようになつた者もあり、現に訴外黒沢一太は同人が福田派支持と目されているから注意するようにと高島派の運動員らしい者より警告されたことがあり、旅館業を営む訴外鈴木豊次は福田派及び日製側市議候補のビラを貼つておいたところその娘婿で日製に勤務している者の上役である組長から日製に引続き勤務するなら福田派のビラは剥がすようにとの注意があつたのでこれに従つたこと、又訴外塩田陽平は日立市内のある理髪店主が高島派の者より、投票する者の名簿を提出せよとか、福田派に投票するなら日製の者には同店で理髪を受けさせないと脅されたことがある旨伝聞したことがあり、訴外石井慶次の店先に来て日製側を応援しなければペンペン草を生えさせてしまうと放言した者があり、市内河原子の酒商の配達人訴外児玉且代は、路上で日製従業員二、三人より福田候補のため運動をするなら日製の供給所を河原子地区に設けて店の仕事ができないようにしてやると警告されたことがある等の事実が認められ、これらのうち威迫行為に当るものは公職選挙法所定の罰条に触れるものである。但し高島派を支持しなかつたことそのことを理由として実際に日製より取引停止その他の制裁を受けた者があることを確認するに足りる証拠はない(この点に関する証人石井慶次、鈴木福寿の証言部分は採用しない。)。また右のような威迫行為が日製の意思に基きその指令によつてなされたものと認めることのできる証拠はない。なお日製が選挙期間中生産監督の名目の下に下請企業関係選挙人の選挙運動を会社として監視し、又は日製が高島候補に投票を得させる目的で下請企業者たる選挙人に用紙を配布し署名の上提出させたという原告等主張事実はこれを認めることのできる証拠がない。証人宇野修吉、塩田陽平、梅原三喜男、根本初枝、藤田晴雄、中村藤吉の各証言を総合すれば、日立市内においては高島秀吉後援会及びその支部と称する団体があり、昭和三十四年四月中日製の下請を業とする者の協同組合においてもその組合員を以て高島秀吉を後援する後援会支部を組織することとなり、会員名簿を作つて後援会本部に届けることとなつたことが認められるけれども、右後援会支部が日製の介入の下に結成を強要されたものであるという原告等主張事実を認めるに足りる証拠はない。その他選挙人内山佐平が最初福田候補を後援していたところ日製側よりこれを詰問されたため後にその態度を改めたという原告等主張事実も、証人宇野修吉、中村藤吉の証言によつてはこれを認めるに足りず、その他これを認めることのできる証拠はない。要するに本件選挙においては、若干の威迫行為が行われたことはこれを認めることができるけれども、それが日製の意思、指令に基き組織的に行われたものとは認められない。
(ハ)  原告等は日製が全地域に展開した選挙運動の一として多賀公民館における演説会において福田候補の選挙演説に対し日製従業員多数による悪質な妨害行為が行われたと主張する。昭和三十四年四月多賀公民館において選挙演説会が開催され多数の日製従業員が聴衆として集まり、福田候補の演説に際し弥次が飛んで相当喧騒であつたことは当事者間に争なく、成立に争のない甲第四号証、乙第一号証及び証人岡部盛樹、梅原三喜男、須藤淳次の各証言を総合すれば、右演説会の開催されたのは同月二十五日午後六時半からであり、日立市選挙管理委員会に対する届出によれば主催者は原告川村義一、内容は市長候補福田重清、市会議員候補綿引丈夫、同三代辰雄三名の個人演説会となつていて高島候補の名は出ていなかつたにかかわらず、開会前同原告の経営する茨北新聞社が配布したビラには「市長市議候補者合同演説会」と表示して候補者の氏名を表示せず、あたかも同派各候補者の立会演説会を開催するかのように解せられ易い表現をしてあり、かつ、開会後主催者側より高島候補は出席できない旨の挨拶があつたので同候補の演説をも期待していた聴衆は騒然となり、その不満は主催者のみならず福田候補にも向けられ、同候補の演説は弥次と騒音に妨げられて、最前列に度を占めた者にさえほとんどその内容を聴き取ることができないような状態に陥つたが、とに角同候補の演説は終り、その後主催者側の申入により公民館において消燈した結果聴衆は退散したことを認めることができる。右事実によつて見れば、この演説会が騒然として福田候補の演説がよく聴取されなかつた原因はむしろ主催者の配布したビラが演説会の内容を親切に表示していなかつた点に帰せられるのであつて、それが日製側の選挙妨害によるものと認めることはできない。その他証人石井慶次の証言によれば本件選挙期間中日製の従業員で訴外石井慶次方附近の街角に立つて監視していた者のあることが認められ、証人塩田陽平の証言によれば、投票の当日或る投票所では日製及び日鉱の関係者が十人位来て投票の状況を観察していたことが認められるけれども、その他原告等の主張するような、投票前夜に日製従業員多数が選挙人三代武雄方を包囲して示威を行つたとか、日製の課長級の者の指揮する数十名の者が尾行、監視等の示威行為をしたとか、日製の消防自動車を運行し警笛を吹鳴して福田候補の街頭演説を妨害したとか、或は投票当日投票所前に日製従業員多数を派遣して威力を示し投票を監視したとかいうような事実はこれを認めることのできる証拠がない。
(ニ)  原告等は日製が饗応、買収を行つたと主張する。証人佐藤方也の証言によれば、昭和三十四年四月中訴外佐藤方也外数名の同業者が日製関係の施設である杉の内クラブに集つた際業務上の用談が終つて後万田五郎より高島候補の立候補の経緯及び同人の立場についての説明があり、特に同人への投票の依頼はなかつたけれども暗に同候補を支持するように依頼する趣旨と解し得られたこと及びその席にはビールと料理も出たことが推認される。しかしながら日製がこれらの饗応をしたものと認めることのできる証拠はない。又証人茅根一男の証言によれば同年四月中旬頃訴外和地丙午方に日立市沢部落の住民数名が集まり飲食したことが認められるけれども、この会合が投票依頼のための饗応であつたことを認めることのできる証拠はない。右以外には原告等の主張する高野地区での金員供与、訴外次田定次、河野四郎に対する金員供与、並びに日製による多賀温泉、新山寮、料亭万平等における饗応の事実はこれを認めることのできる証拠がない。
(ホ)  原告等は日製が福田候補を誹謗する違法の文書を市内一般に頒布したと主張するけれども、成立に争のない甲第五号証の一、二、同第六号証はその記載から新聞紙又は雑誌の類と推認されるからその発行の自由を妨げられるものではなく、甲第七号証の一、二、同第八号証の一ないし三、同第九号証の一、二、同第十号証、同第十二号証はその記載自体から本件選挙に際し高島候補を支持する何者かによつて作成頒布された違法な文書であることが明らかであるけれども、他方福田候補を支持する者によつて作成頒布された同様の違法文書と認められる甲第十七、第十八号証、乙第三号証ないし第十二号証もあり、いずれもその作成頒布者が明らかでなく、前者を以て原告等主張のように日製の作成頒布に係るものと認めることのできる資料はないから、原告等の右主張は失当である。
(ヘ)  原告等は、本件選挙告示前における高島秀吉後援会支部の結成が事前運動に該当し、選挙告示後はこれらの支部が高島候補の選挙事務所に使用されているから、一候補一事務所の制限に違反すると主張するけれども、成立に争のない甲第三号証、証人宇野修吉、梅原三喜男、根本初枝、藤田晴雄、中村藤吉の各証言その他の証拠によつても右後援会結成の趣旨が本件選挙において高島候補を当選させるためのものであつたことは必ずしも明らかでないから、これを事前運動に該当するものとは断定し難く、これらの後援会支部事務所が選挙告示後は選挙事務所として使用されたことは、これを認めることのできる証拠がない。
(ト)  原告等は高島候補を応援する者が自動車、マイクを使用して気勢を張り又は同候補への投票依頼を連呼したと主張するけれども公職選挙法で禁止されている同法第百四十条所定の気勢を張る行為が行われたことを認めることのできる証拠はない。ただ証人藤田晴雄の証言によれば、本件選挙当日日製の従業員で訴外藤田晴雄方附近街路上において高島候補のため連呼行為をなし、住民に質問されてそれは上司の指示によるものである旨答えた者のあることが認められる。しかし果してその者の言のとおりそれが日製の指示によるものであつたか否かは、同証言によつても必しも明らかではない。
以上認定した各種の違法な選挙運動は、それが日製の意思ないし指令に基くものと必ずしも認め難いことはその都度指摘したところであるけれども、それらの行為が主として日製従業員により行われている点に鑑み、それらの行為者と日製との関係につき更に審究を重ねて見る。原告等は日製の企業体が職制を通じて動員計画を立て、組織的に広汎な選挙運動を展開したことを主張しその証拠の一として甲第一号証を提出しているけれども、証人米沢信雄の証言によれば、右甲第一号証(鑵〈セ〉計画と題する表)は日製国分工場労働組合執行委員長である訴外益子太一が日立市市会議員選挙に立候補したので、同工場原料部製鑵課の従業員で右労働組合に所属する者が組合として同候補を応援するため作成した運動計画書であることが認められ、同号証上部右肩部には同課の課長米沢信雄の印が押してあるけれども、右証人の証言によればそれは同人が同課の課長、しかも新任の課長としてその職についたばかりであつたので、当時の部下の盛り上つた動きに制約を加えることを欲せずその動きを放置し、右計画書に了承の印を押したものであつて、会社の意を受け又は会社を代表する趣旨で了承印を押したものではなく、同号証が会社として決定した意思、指令ないし方針等に基き会社の文書として作成されたものではないことが認められ、証人勝間田俊太郎、藤田耕造の証言によつても右認定を動かすに足りないから、これを以て原告等主張事実を支持するに足りない。ただ、証人鈴木豊次、塩田陽平、石井慶次、児玉且代、藤田耕造、藤田晴雄、山本繁の各証言を総合すれば、日製の従業員某は、選挙人某を日製の勤労課に呼んで高島候補に協力方を依頼したことが認められ、証人勝間田俊太郎、会沢福寿、塩田陽平、大森ハルの各証言を総合すれば、本件選挙当時、訴外勝間田俊太郎は、知人方に高島候補支持の依頼に来た運動員が、依頼先の人数を報告する必要がありそれはボーナスに関係するとその知人に話した旨を、右知人から伝聞しており、又訴外大森ハル方に高島候補への投票依頼に来た宇野某は、日製では従業員一人当り何人宛かの票を割当ててあると語り、かつ大森ハル方の選挙人全員の署名押印を求めたことが認められ、証人大和田重実、塩田陽平、根本初枝、米沢信雄、藤田耕造、藤田晴雄、鈴木福寿、中村藤吉の各証言によれば、既に認定した以外にも、本件選挙当時日製従業員中多数の者が高島候補のため選挙運動に従事し、特に高島候補が危いとの声を聞いて勤務時間中でも席を抜け出して応援に走る者があり、情勢に応じ従業員の労働組合執行委員長の統制下に随時組合員を運動のため派遣した組合もあり、日製又はその関係会社の部課中には高島候補の演説を聞かせるため出勤時間を遅らせた所もあり、日製の社宅街中には福田派の街頭演説隊が来たときには家に入つて戸を閉めその演説を聞かないようにとの回覧板の廻された所もあり、日製従業員で選挙運動に従事している者の中には知人に対しこうしていても給与は支給される旨語つていた者もあることが認められ、これらの事実は、あたかも日製従業員の当該行動が会社自身の意図に出ているもののような疑を生ぜしめるものである。しかしながら高島、福田両候補に対する辞退勧告に関するさきに認定した事実、甲第一号証の成立事情に関する前掲認定事実、成立に争のない甲第二号証、並びに証人内藤半三、会沢福寿、塩田陽平、米沢信雄、藤田耕造、中村藤吉の各証言を総合すれば、本件選挙においては多数の日製従業員が公然高島候補を支援して選挙運動を行つたため外部から見れば一見会社自体が高島候補のため従業員を動員して選挙運動をしているかのように見えても、実は日製自身の方針としては本件選挙に深入りすることを好まず、選挙人中に会社関係者が多いため選挙中会社の労務関係が影響を受けることはやむを得ないとしても、高島候補の当選に対し会社自体としては積極的な支援活動を行う意思なくこれを差控えており、それがため一部従業員の不満を買つた程であること、ただ本件市長選挙と並行して県会議員選挙及び市会議員選挙も行われ、日製従業員の労働組合は、これら県市会議員選挙においては、候補者を立て組合員を動員して組合としての積極的な選挙運動を展開し、併せて市長選挙については高島候補を支持し、そのため会社と協定して県市会議員立候補者一名につき従業員二名宛が業務を離れて一定時間専ら選挙運動に従事することができることに定め、その間は会社は賃金を差引くのでその差引かれる分だけ組合からこれを補填して運動員に収入上の損失を生じないようにする措置を講じたこと、従つてこれらの運動員は会社の勤務時間中でも収入の減少を顧慮する要なく公然市中に出て選挙運動に従事していたので、これを会社と組合とが一体となつて選挙運動に従事しているものと解する者もあつたこと、なおこれらの者の外にも個人的関係から会社を欠勤し又は有給休暇を得て高島候補のため選挙運動に従事した従業員もあつたこと等を認めることができ、事情が右のとおりである以上、本件選挙に際し行われた日製従業員による戸別訪問その他前掲各種の選挙運動、特にそれが会社の意図に出ているかのような観を呈する日製従業員の行動も、会社と全然無関係であるとはいえないにせよ、原告等が主張するように日製がその組織を動員して会社としてこれを行つたものと解することはできない。原告等が、組合において賃金補填をしたことのない証拠として援用する成立に争のない甲第三十八号証の三(労働組合の収支計算書)には、選挙運動に従事した組合員に対する賃金補償の額を特に独立の項目に計上してはなく、同号証中の一般補償費の項目中に右の賃金補填額を含むか否かは、その記載自体からは明らかでないけれども、少くとも同号証は賃金補填の約定に関する前示認定を積極的に覆すには足りない。証人塩田陽平、藤田耕造の証言中、本件選挙における高島派の選挙運動は日製の職制の指揮によるものであり会社が組合と一体になつて運動を展開した旨の供述部分は右事情から見て必ずしも原告等の主張を支持できる資料とはなし難く、証人鈴木福寿の証言中には、訴外鈴木福寿方に選挙運動に来た日製の従業員が「会社からは選挙違反をしても構わないと言われている」と語つた旨の供述部分があるけれども、仮にそのように語つた日製従業員があつたとしても、前掲事実に徴し、それは日製自身の意思によるものとは認め難いから、これを以て原告等の主張事実を支持するに足りず、証人宇野修吉の証言中には、日製は下請人日立工業株式会社に指示して同会社に下請業者を集めさせ、同会社社長より高島候補の支持を依頼させたとの供述部分があるけれども、このうちそれが日製の指示による旨の供述部分は採用できない。なお成立に争のない甲第三十七号証によれば、当時日製日立工場勤労第一課内に高島秀吉後援会支部事務所が置かれていたことが認めらるけれども、それは同号証の記載自体によつて明らかなように、当該支部が日立工場支部で日製日立工場従業員により組織されていることから来る自然の結果であつて、同支部の事務所が日製の工場内に置かれていたという事実から推して、すべての高島秀吉後援会が日製の機構の実質上の一部に組み込まれていて後援会の活動はすなわち日製自身の会社としての選挙運動であつたものとは認めることができない。
以上要するに日製がその企業体の職制を通じて動員計画を立て会社として選挙運動、選挙妨害等を組織的に行つた旨の原告等の主張は到底採用することができず、本件選挙に際し行われた行過ぎは選挙運動、選挙妨害その他選挙違反に当る行為は選挙戦の激化に伴い会社の意嚮とは関係なく発生したものというべきである。
原告等はなおその主張する不法な選挙運動等を日製によるのほか日製の労働組合が組織的に行つたものであることをも主張している(原告準備書面(第四)の一)。前記のように日製は自ら選挙運動の渦中に入る意思なく、各候補の選挙戦の外に立つていたのに反し、日製の労働組合は、同時施行の県会議員選挙には候補者を立て、高島候補をも支持して積極的に選挙運動を展開したものであるけれども、労働組合が自己の支持する候補者のため選挙運動をなすことは、それが合法的なものである限り、組合活動として許されるところであつて、これにより選挙の結果にいかに大きな影響を与えたとしても、選挙の効力にはなんら関係がない。ただ、もし一の地域社会において絶大な支配力を持つ労働組合があるとすれば、その組合がその組織を動員して広汎大規模に不法な選挙運動を行い選挙の自由と公正を著しく没却した場合には、選挙の効力を問題としなければならないけれども、本件の場合は、日製の労働組合がかような支配力あること及び右組合が違法な選挙運動を意図し指令したことを認めることのできる証拠がないので、右労働組合の活動も本件選挙の効力には影響がない。
(三)  原告等は、以上のほか、日立市選挙管理委員会の委員長がその在職中高島候補のため後援会結成に参加し戸別訪問をなす等により選挙運動をなしたこと及び警察当局が本件選挙に際し行われていた選挙違反行為を傍観し黙認したことを主張するけれども、これらの点に関し原告等の主張に添う証人塩田陽平、藤田晴雄、大森ハルの各証言はたやすく採用し難く、他に右事実を認めることのできる証拠はないから、右主張は理由がない。
(四)  原告等は本件選挙終了後に現われた種々の事実を挙げて、日製による組織的選挙運動、選挙妨害、弾圧等の甚しかつたことの例証としているけれども、本件選挙終了後に生じた事実で証拠上これを明らかにできるものの中には、それによつて遡つて本件選挙にこれを無効としなければならないような違法があつたことを推断するに足りるようなものは見当らない。
当裁判所は、選挙が無効となるのは必しも選挙の管理執行に当る機関が管理執行の手続に関する規定に違反した場合だけに限られず、その他の選挙違反行為等であつても、それが広汎かつ大規模に組織的に行われて選挙の自由と公正を甚しく没却したようなときは、なお選挙無効の事由となり得るものとの見解を採るものであることは既に明らかにしたとおりであり、日立市においては、同市の地域を事業の重要な場所とする日製が、社業の発展に伴い市内に幾つかの大工場を有し、多数の下請業者がこれに所属し、同市には日製、日鉱のほかには目立つような大事業もないので、住民の中にはその生活を直接間接に日製の事業に依存する者も多く、同会社はこの地域社会において大きな経済上の影響力を有することが弁論の全趣旨及び証拠調の結果によつて明らかであり、もし同会社が主体となつてこの地域において組織的、計画的に違法な選挙運動を行つたものと仮定すれば、その選挙の効力が問題となり得るけれども、当裁判所が証拠上認定できる限りの事実関係の下では、本件選挙に際し行われた各種違法な選挙運動は、日製により組織的、計画的に行われたものではなく、選挙戦の激烈なことに伴い、同会社の意嚮とは関係なく自然発生的に多発したものと認められ、これにより本件選挙を無効としなければならない程度に自由と公正が没却されたものとは認め難い。かえつて成立に争のない乙第十七号証の一によれば、右選挙における各候補の得票数は、高島候補は四四、三九九票、福田候補は三〇、六四六票であつたことが認められ、両者は互に相去ること甚しく遠からず、これはそれぞれの本来の支持層の勢力関係を数的に大体反映したものと推認でき、右数字が違法不当な選挙運動等に因る歪められた結果であつて本来の両者の支持層の数的割合はこれとは甚しく相違するものであるというような特段の事情は認められない。従つてこの得票数を比較した結果から見ても、本件においてはたとえ各候補のための選挙運動に若干の行過ぎがあつて既に認定したもののほかなお若干の隠れた選挙違反行為があつたものと仮定しても、これによつて選挙の自由と公正が甚しく没却され法の所期する選挙がないに等しい程度には至つたものではないものと認めることができる。原告等の引用に係る大審院昭和二十年三月一日の判決は、戦時中に行われた衆議院議員のいわゆる翼賛選挙に関するもので、政府の意図に基き全国的に組織的かつ全般的に行われた不法な選挙運動のため、問題となつた当該選挙区における非推薦候補者の全部が落選し、しかもその得票数の僅少なことは全国の他の選挙区に比し特に著しかつたという特殊な事案についての判断であるから、本件と比較するに適当な案件ではない。
以上説示するとおり、本件選挙には選挙の管理執行の手続に関する規定の違背を認めずかつ選挙を無効としなければならない程度に選挙の自由と公正を没却するようなことはなかつたものと認めるから、右選挙の無効を求める原告等の本件請求は理由がないものとして棄却すべきである。よつて訴訟費用の負担については民事訴訟法第八十九条を適用し、主文のとおり判決する。
(裁判官 川喜多正時 小沢文雄 賀集唱)

 

原告準備書面(第一)
原告等は次のとおり弁論を準備する。
一、地域社会的問題
日立市は現に人口約一五〇、〇〇〇、有権者数約八〇、〇〇〇人を有する、県下第一の都市である。俗に「日鉱と日製の町」といわれる近代鉱工業の典型的都市である。
明治二二年十二月、赤沢銅山が「日立鉱山」として久原房之助の経営に及んで、飛躍的発展をみるに至つたが、それまでは小寒村又は小宿駅のいづれかの農村地域であつたに過ぎない。
日立鉱山(日立鉱業所)は、日本鉱業株式会社の中枢基幹事業所にして、きわめて重要な存在である。株式会社日立製作所は明治四十二年、日立鉱山の工作課程、修理工場として発足したが、明治四四年分離し、さらに株式会社日立製作所として独立した。その後同会社は電機産業に転換すると共に、第一次大戦を契機として発展し、更に関東大震災に際しては、日本の電機産業の中心たる京浜地区の電機メーカーが潰滅的打撃を受けたのに対し、同会社は何等被害を蒙らなかつたので急速の発展を遂げ、戦後は東芝、三菱電機と共に三大メーカーとして電気機械産業界に君臨しているのである。又、同会社は日立市内に山手工場、海岸工場(日立工場という)国分工場、多賀工場(多賀工場という)、山崎工場の五工場を有し、日立絶縁物工場が最近日立電線株式会社に分離独立するに至つた。一方、同会社の進展に伴い、下請工場も徐々に育成され、その大部分は海岸工場及び多賀工場に所属するが、その下請工業の約八割その数にして約一百三十にのぼるものはいずれも日立市内に存在するものである。従て、この地域の下請工業の特色として、京浜地帯のように下請工場の市場が多少とも開放されているものに比して、きわめて閉鎖的であり、同会社に全面的に依存し、若し同会社に離反し又は取引を停止されるときは、他に市場を求めることは殆ど不可能にひとしく、経済的にはいうに及ばず社会的にも殆ど自立しえない。下請企業の有する親企業に対する依存性と市場の閉鎖性とは商業者にとつても殆ど同一の傾向と性格とを有するものである。こうして日立市は俗に「日鉱と日製の町」といわれるが、そこに内在する地域社会的問題は極めて深い。これを要約するならば、近代鉱工業の技術の進出と発達が、その地域社会にどのような影響を与えるかという点に帰する。本件選挙は以上にいう地域社会問題の一環として政治的次元に顕在化したものである。
日本人文、科学会は当日立市の有する地域社会問題につき、日本ユネスコ国内委員会の委託を受けて昭和二九年に近代技術の社会的影響に関する実態調査をなした。(日本人文、科学会、近代鉱工業と地域社会の展開、東京大学出版会)
二、政治的背景
日立市には、日立鉱山(日本鉱業株式会社)(以下日鉱という)と株式会社日立製作所(以下日製という)の二つの大企業が存在するが、この企業体の地方政治に対する態度は、必ずしも一致していない。日鉱は伝統的に地方政治に対して、モンロー主義の内在的傾向を有するに対して、日製は積極的に地方政治に関与し特にこの傾向は戦後に著しいものとなつた。その基本的態度は、あくまで企業体としての経済主義に基くものであり、この経済主義を企業の内のみならず、地方政治にまで貫徹しようとするものである。
かくして日製は企業体の発展と歩を同じくして、地方政治に関与し、「経営支配の構造がそつくりそのままで、地方政治の上をまかり通つたわけであり、それ自身は正に山上にそびえる絶対主義的王国でもあつた」(前掲書四〇一頁、地方政治への影響参照)のである。これはたんに地方経済を圧倒的比重を以て支配するにとどまらず、政治的領域に及ぶ支配であり、殆ど絶対的支配を意味するものに他ならない。これを一言にしていうならば、日立市は一つの植民都市として規定して差支えない。
このように、日立市はその生成以来市民的自由が欠如し、自由な市民精神や市民社会の精神的土壌は不毛にひとしいものがあつたのである。而して、反面一般市民の間には市民的自由を主張し種々の不満や失意を抱き、これらが潜在していたことも否めない。「ともあれ、この地域社会においては、いかなる政治的立場をとるにせよ、その限りにおいて、日製、日鉱の経営的支配体制に対抗しうるような政治的組織は、目下のところ皆無に近い状態であり、それだけに日蔭にくすぶつている種々の不満や失意が容易に政治的次元に顕在化しない反面の事実として無視できない」(前掲書、四〇三頁参照)ものがあり、この見解は以上にいう植民市的政治的ふん囲気を正しく表現したものであつた。この種々の不満や失意というのは、究極するところ、市民的自由を欠如したことに胚胎するものに他ならず、植民的支配に対する失意と不満とを示すものである。
しかし、政治的に潜在していたこの失意と不満とは、市民的自由の獲得、市民社会への形成へと積極的な政治的主張となり、ついで新しい有力な政治的組織乃至勢力となつて、やがて政治的次元に顕在化することとなつたのである。
これは日立市が隣接町村を合併したことが一つの契機でもあつた。たしかに、旧多賀町、旧久慈町というような商業、漁業、農業等を主な生業とする地区を包含することによつて、それまで同会社の直接的支配を全く受けなかつたか、或いは受けたとしてもこれまで比較的に地方自治の修練をつみ、政治的自由や地方自治を体験してきたこれら地区の居住者にとつては、日製の有つ地方政治への積極的干与と支配、さらに経済主義的態度にはとうてい我慢のならないものと映つたことは否めない。旧市内にくすぶつていた「失意」と「不満」とは新しい地域の包含により、有力な政治的組織乃至勢力を迎えて市民的自由の獲得、地方政治の大企業からの相対的独立性を指向して展開されるに至つた。
前記調査において「隣接町村をも包含することによつて、かつてのような単純な自治体業務から、より積極的な地方行政への脱皮を必然的に要請されることともなり、それだけに市政そのものが日製、日鉱よりの相対的独立性をいかにして獲得するか」また「少くとも今次合併地域内には従来のような単純といえる支配構造に、そのままでは整合できない異質的要素が包含されており、あまつさえ隔離された地域に偏在する日鉱がその経営体としての地域的利益のために益々一種のモンロー主義とでもいえるものを
強化する内在的傾向をもつているために、一層高度の政治的組織性が要請されるわけなのである。従来から次第に顕著となりつつある日製中心的傾向が果してそのような諸事情のもとに、かつてのような態度を持続しうるか否かも、頗る興味ある問題といわねばならない」(前掲書四〇三頁参照)と指摘されたいくつかの問題が日立市の地方政治上の重要な課題として登場し、政治的次元に顕在するに至つたのである。
これが今次市長選挙における政治的背景であつた。
ただ、今度の市長選挙を以て日鉱(福田候補)対日製(高島候補)の闘いであるというのは、きわめて皮相の見解であつて組し難い。日製のそれはともかくとして、福田候補がたまたま元日鉱所長であつたところから日鉱の名を冠されたに過ぎない。その故を以て日鉱と日製の闘いとみるのは誤りである。かりに日鉱の名を用いたところで、その背後には以上にいう日製中心の市政から市民の政治、その相対的独立性を指向する思想が滔々と存在し、主張しつづけていたのである。
なお日立市を中心とする地域社会の地方政治的状況は、ちようど一九世紀末のアメリカの政治的状況ときわめて酷似したものがある。一八九〇年を以て、アメリカは辺境が消滅し自由地は終末を告げた。そして大企業の進出と発展によつて著しい政治的影響を受けたが、後に歴史家が当時の政治の実情を評して、「コーボレーシヨン(会社)のために、会社の行う、会社の政治」と論じてデモクラシーの危険を指摘したと同じような、政治的状況にあることを疑わない。そして、革新主義(Progressivsm)の擡頭となり、十数年の努力の結果、選挙の腐敗防止のために腐敗行為法(corru ptpracticas Act)の成立をみるに至つたことは注目すべきであると信ずる。
(高木八尺、近代アメリカの政治史、九二頁参照、林田和博、選挙法一六五頁、法律学全集―有斐閣参照)

原告準備書面(第二)
原告等は次の通り弁論を準備する。
今次日立市長選挙は株式会社日立製作所が企業体としての職制を通じて全組織をあげ且選挙全地区に亘り選挙干渉乃至妨害と弾圧を加えたものであつて、選挙法の理念とする自由と公正とを没却したものである。
原告等のこの主張は異議の申立、訴願を通じて一貫した主張である。
一、日立諸工場の職制
日立市内には同会社の工場として、日立工場及び多賀工場、山崎工場(絶縁物工場)が存在し、さきに述べたように電線工場は最近日立電線株式会社として独立するに至つた。
今、これらの各工場の同会社全体の中心にあつて占める比重を明かにすると、従業員数、機械設備、工場建坪についてもいづれもその四割以上を占めるものである。
日立諸工場の職制は次の通りである。
但し、日立電線株式会社は電線工場時代のものを掲記する。
(前掲書一〇二頁参照)

管理部門 経理部
総務課
経理部
総務部
総務部
経理課
(工場長属)
経理課
庶務課

資材部門 資材部
購売課
倉庫課
資材課
(工務部)
調度課
(技術部)
購買係
倉庫係
共に庶務課

技術部門 技術部
技術課
調査課
運輸課
技術課
(工務部)
技術部
技術課
試作課
技術係
(庶務課)

検査部門 検査部
山手検査課
電機〃
静止機〃
国分〃
検査部
商品検査課
計器課
検査課
(工場長直属)
検査課
製品部門 電力設計部
電機〃
火力〃
海岸製造部
火力〃
山手〃
変圧器部
配電盤部
商品部
計器課
絶縁線部
製線課
(伸線部)
製造課
試作課

原料部門 鋳造部
原料部
原料部
鋳造課
合成樹脂課
窯業課
伸線部
伸銅課

日立工場 多賀工場 電線工場 絶縁物工場

二、両候補の経歴の概要
同会社は高島候補を推し、他の政治的諸勢力は主として福田候補を推したのであるが、今両候補の経歴の概要を説明しておく。これによつて、今次市長選挙が「日製対日鉱」の闘いと宣伝された一般の理由と、さらには、日製が近年地方政治に積極的に干与し(その理由は地方政治の分野にまで経済主義を貫徹しようとする基本的態度から生づるものである)「次第に日製中心的傾向」を帯びつつある傾向を看取することが出来ようと思う。
高島候補
大正九年 日立製作所入社 日立工場総務部副部長 多賀工場総務部長 日立電鉄株式会社社長を歴任
昭和二十年 日立市長に就任 同二十二年 日立市長に公選 同二十六年、同三十年いづれも無競争で当選
福田候補
明治四十四年 久原鉱業日立鉱山事務所入社 日立鉱山事務所副所長所長歴任
昭和十三年 日立市長に就任
昭和十八年 日本鉱業株式会社取締役 衆議院議員当選
昭和二十二年 日本鉱業株式会社取締役及び所長退任
昭和二十三年 富久栄商事株式会社社長
高島候補は日製出身にして既に日立市長として三期就任し、今次選挙は四期にあたるわけである。これに対して、福田候補は日立鉱山の所長を了えて初代日立市長に就任した。同候補が日鉱出身であるところから、「日製対日鉱」の闘いといわれたが、この見解は皮相の見解であるに過ぎないこと前述のとおりである。(元来日鉱は地域的にも隔絶し、又伝統的にモンロー主義的傾向を有し、ここに大企業というのは日製をいうに他ならない)
三、全組織的行動
それでは何故、日製が企業体の有する職制により全組織をあげて選挙運動をなすに至つたか。
さきに「政治的背景」において述べたように、今迄の植民地的支配に対する一般市民の失意と不満が新しい政治的組織乃至勢力(たとえば日本中小企業政治連盟日立支部)が結成され、いよいよ政治次元に顕在化するに至つたのである。
ここで「従来から次第に顕著となりつつある日製中心的傾向が果してそのような諸事情のもとにかつてのような態度を持続しうるか否かも頗る興味ある問題といわなければならない」(前掲書四〇二頁参照)と指摘されたその「興味ある問題」が、現実の政治的課題として、而も表面は地方政治上の一問題として登場したが、より鋭い観察をするならば、企業体としての基本的な経済主義に連る根本的問題として提起されたのである。
これが、今次市長選挙の基本的性格であつて、日製としては昭和二十年以降高島候補を無競争で三選せしめて以来始めて対立した候補と当選を争うこととなつたわけである。
昭和二十五年のストライキが、同会社にとつて「未曾有の危機的出来事」であつたとするならば、今次市長選挙はこのストライキに勝るとも劣らない危機的出来事といつても過言ではない。そして、それは所謂柵外に起つたものであることを特色とする。
これが、日製が企業体としての全組織をあげて選挙運動に突入するに至つた最大にして且根本的な理由である。
次に、同会社は、後に「選挙は労組がやつたことで会社とは直接関係はない」(朝日新聞昭和三十四年十二月四日附第七版茨城版内藤半三日立工場総務部長談参照)と労組がやつたことで会社には関係がないとして逃れ、又、被告は、昭和三十四年十一月四日附裁決書理由末尾に、「しかしながら本件選挙において、日製各労働組合が組合活動の一環として、全地域に亘つて投票依頼行為を行つたことは認められる」となして、この選挙運動が企業体の職制を通じたものではなく、日製各労働組合の運動であると摘示しているが共にとうてい採るに足りない。(被告委員会委員長橋本正男は日製法律顧問の地位にあり本件に関して法律的意見のみならず指示を与えていたことは後に証拠を以て立証する。)
要するに、日製及び被告は共に選挙運動の事実そのものは明示若しくは黙示のうちにみとめながら、後になつて責を労働組合に軽嫁しようと企図するものであるに過ぎない。
今次選挙における日製の運動が断じて労組によるものではなく、企業体としての職制を通じてなされたことは以下諸々の事実を以て具体的に主張する。
ただ労組は企業体の組織的行動の中核となつていたことは之を認めるのに吝かでない。このことは同会社労組出身の同市々会議員につき「市政については会社側とまつたく同一歩調をとつており会社側の市政掌握の具となつている」こと、又、「選挙に際しては組合は経営者との間に選挙対策協議会をつくり、地盤を部課別にわりふる。」こと、また組合では会社と対立する運動は行わずまた公約もしめさない」(前掲書四〇七頁、四一一頁参照)ことによつて日製は地方政治及び選挙に対しては会社側と労組とは表裏一体の関係に立つ。
これによつても今次市長選挙においては企業体の職制によりこれに労組(茨城県労働組合連盟日立地区協議会の各労組を含めて)が一体となつて、運動を展開したことは明かである。
四、全地域的行動
この選挙運動が日立市の選挙全地区に及ぶ行動であつたことは、前記訴願裁決書理由に、その主体が日製労働組合であれ、ともかく「選挙区全地域に亘つて選挙活動を展開したこと」、「全地域に亘つて投票依頼行為を行つたこと」を夫々みとめているので、特に主張を附加する必要はないものと思料する。

原告準備書面(第三)
原告等は「具体的事実」について次の通り主張する。
一、選挙干渉
株式会社日立製作所倉田社長は、昭和三四年四月二十一日夜より翌二十二日午前二時に至る数時間に亘り福田候補に対し、市長候補辞退を勧告し本件選挙に対し干渉をなしたものである。即ち、
(1) 本件選挙の告示は同年四月十八日その数日後である同月二十一日右倉田社長は同会社本間取締役室長を帯同、日鉱三間社長と共に日立市をたずね、福田候補に対して「高島、福田両候補が円満立候補を辞退し、代りに万田五朗を立ててはどうか。高島候補は辞退を承諾した。貴君が辞退されれば決定することだ」という趣旨の立候補辞退勧告をなした。この勧告は同月二十一日夜より数時間に亘り福田候補に対し行われたが、福田候補派の容れるところとならず、不調に終つた。福田候補派がこの勧告を容れなかつた理由は、日製にしろ日鉱にしろ企業体が何故に候補者を上げたり降ろしたり出来るのか、市政に企業体が干渉し、これを自由にすることは不当な干渉であるというにあつたのである。
右万田五朗は、日製出身にして、現に同会社の子会社である日立土地株式会社々長の地位にある。又この会談に際し、日製は両候補辞退の声明書を予め用意して会談に臨んだものであり、積極的に終始指導権を有していたことを証明するものであろう。
この会談は不成功に終つたが、日製の爾後の選挙運動に対して質量両面において大きな変革を齎らしたものであり、日製が企業体としてこの選挙に介入するに至つた契機をなすものであつた。この点においてきわめて重要なる意義を有するものであつた。
(2) 右倉田社長は同月二十二日帰京するに際し、日立各工場各幹部に対して「骨は会社が拾うから違反をかまわず全面的に運動せよ」と指令を発したという。
その結果、日製は翌二十三日より同月三十日の選挙期日の前夜に至るまで、企業体として職制を通じた全面的な選挙運動を展開した。
そして前記指令がかりに明示のものでないとしても翌二十三日以降の全面的な選挙運動の展開は、黙示又は間接にせよかような趣旨の指示がなされたことを事実を以て示すものである。以下選挙運動の個々の事実について指摘する。
二、戸別訪問
日製は昭和三四年四月二十三日以降、同年同月三十日(選挙期日)の前夜に至る間、日立市内各工場毎職制を通じて部課別に同会社従業員を選挙運動のため動員し、選挙区内の親戚、知人、友人その他の縁故者を戸別に訪問せしめて、高島候補えの投票を依頼せしめた。
(1) この同会社従業員によるこの選挙運動は日立地区の各工場のみならず、水戸工場(勝田)によつても計画実施され、同工場の従業員をして日立地区に入り前同様の選挙運動―戸別訪問をなさしめた。
(2) 日立市内に動員されたこれら従業員の行動は戸別訪問のほか、後記の選挙妨害等の活動をなしたが、今その数をのべると同月二十三日以降同月二六日迄は毎日約二乃至三千名、同月二六日以降同月二十九日迄は毎日約五千名、全期間を通じて延約二万五千名と推定される。
これら運動員の模様を当時の市内の景観から具体的に表現するならば、日立市内は日製従業員の海と化したというも過言ではない当時、この動員を評して日製の「人海戦術」といわれたものである。これがため日立市内の交通量は平常のそれと三乃至五倍、市内バスは私服又は工員服をきた同会社従業員によつて満員という状況であつた。又、市内の各商店には波状的に連続してこれら運動員の訪問を受け、結局絶えず二、三名の者が入り替り立ち替り常駐している始末であつた。
(3) この戸別訪問は次のような要領により行われた。これらの運動員は会社側より「ノルマ」が指示され、高島候補えの投票を依頼したものの氏名を報告することを要した。
平常の場合において、従業員が外出するときは、守衛に対して外出証の半片を交付し、帰社のとき残余の半片を交付しこれに帰社の時刻を記入してもらうのを常としたが、これら運動員が外出するときは〈選〉の印を捺した外出証を交付し且外出に際して外出証全部(半片を二回に交付せずに)を守衛に交付する等特別の処置が講ぜられていたのである。
(4) この戸別訪問は選挙全地区に亘り行われたものである。
(5) この行為は公選法第一三八条第一項に違反する不法な選挙運動である。
三、利害関係による威迫行為
日製従業員による選挙運動は前第二項の戸別訪問のほか、一般商店の選挙人又は日製下請企業の選挙人に対して取引上又は下請関係の利害関係を利用して威迫行為がなされた。
即ち、
(1) 一般商店において日製供給所に商品を納入するものが相当数あり又右供給所に商取引がなくとも前述のように、経済的に圧倒的比率を以て同会社従業員の購買に依存していることから直接、間接の利害関係を有する。
(2) これら一般商店街(特に日立市銀座地区)の選挙人に対して、さきにのべたとおり、入り替り立ち替りこれら運動員が訪問し、高島候補えの投票を依頼し、次いで確認し、更には威迫行為をなしたものである。その具体的事例を示すと
(イ)、これら運動員のなかには、高島、福田両候補別に商店街の選挙人黒沢一太外を色別けした図面様のものを所持して、「この色は福田派だ若し高島派に転向しなければ、デパートを作つてお前の店をつぶしてしまうぞ」と、取引上の利害関係を利用して、心理的畏怖を与え、
(ロ)、又選挙人鈴木豊次(旅館業者、日立市河原子町)が、室内に福田候補のビラを貼つていたところ、これら運動員の或る者が同家をたづねこのビラを見るや、「福田派のビラを貼つておくようでは下宿人を引き上げてしまうぞ」と脅迫した。下宿人とは同旅館に下宿している日製従業員をいう。
(ハ)、又、選挙人鴨志田勇(日立市大沼町)は、これら従業員から「日製に協力しなければ不買同盟でやつつける」と脅かされて、人名簿(高島候補への投票のため )に捺印を強要された。
(ニ)、選挙人、橋本操(日立市川尻)は、割烹旅館を営むものであるが、これら運動員に再三おどかされ「お前の割烹旅館へ客はやらなくするぞ」と、威迫され
(ホ)、選挙人、日渡和一郎他四名はそれぞれ日製供給所との取引を有するものであるが、以上の運動員はその取引上の利害関係を利用して、「会社の方針と違う」とか、「取引を停止するぞ」と威迫された。
(ヘ)、なお、本件選挙に関して高島派を支持しないため、現実に取引を停止されたものがあつた。即ち、前記日渡は、酒類醸造業を営むものであるが、高島候補を支持しないことから同年五月十日、日製小林供給課長より三回に亘り電話呼出を受け同年五月十三日多賀工場厚生課職員の訪問を受け、「会社の方針と違うではないか。商品は買えない」と申渡された。同人の妻(日渡まさ)は、この職員に対し「選挙と商品とは違うではないか」と反問したところ、「そういうことをいうならば、お前のところから酒は買わない」と取引停止の宣言を受けたのである。そしてその為日立工場の方は約十日間、多賀工場は約一ケ月に亘り取引が停止された。(併し、この取引再開については地元代議士等の数次にわたる斡旋によるものである。)
(3) 商店街の選挙人に対すると同種の威迫行為は下請企業関係の選挙人に対してもなされた。特に下請企業に対しては下請という直接的利害関係を利用してなされたが、その具体的な例は次の通りである。
(イ)、日製は選挙期間中、表向きは生産の監督という名目で、実際は下請企業関係選挙人の選挙運動の監視が行われた。
(ロ)、日製は選挙直前及び期間中各工場のなかの部課内の外註係を通じ下請企業に対して特定の用紙を夫々交付し、高島候補え投票するものの氏名を記入又は署名せしめて、右人名簿の提出を強要した。(署名行為の禁止違反)
而して、この外註係は下請企業に対する直接の権限を有するものである。
(ハ)、日製は下請企業関係選挙人に対して、下請関係という取引上の直接利害関係を利用して、日立工場資材部が介入して、高島後援会日製下請工業協同組合支部を結成せしめた。
即ち、
日製、日立工場資材部は、右組合に昭和三四年四月十四日、製缶部会総会の名の下に、同組合加入業者全部を招集し、議題は「労務対策」となつていたが、実際は高島後援会支部の組織と選挙対策がなされた。
この総会を主催したのは日製購買課田口主任、高島候補、高島後援会事務長という市川某市会議員候補者中村藤吉が出席し、夫々挨拶の後、左の通り決定された。
第一 後援会本部(告示後は選対本部)との連絡は資材部で行うこと。
第二 後援会名簿を十六日迄に組合に届出ること。
後援会はその人の人格を敬慕し、その社会的活動を後援することを趣旨とするものであるが、前記支部の結成は明かに市長選挙告示(四月十八日)の数日前になされ、この選挙に際し当選を得しめるためになされ、同時に選挙対策がなされたものであつて、明かに事前運動にあたり違法である。(ジユリスト、一九五九年三月一日号、事前運動の限界、三六頁参照)
而して、この支部結成の経緯と議決事項により日製資材部(下請企業に対し直接の権限を有する)が主催者として招集し、且爾後、後援会本部と支部との連絡をする必要は毫も存しない。よろしく、後援会本部と支部とは直接連絡すべきものであろうここに日製が職制を利用して後援会組織に介入し、且下請関係という直接的利害関係を利用して下請企業関係選挙人としてこれに対して有無をいわざず加入せしめたものであつて、利害関係を利用する威迫となして差支えない。(威迫とは、選挙人等に不安の念を懐かしむべき行為をなすことであつて、現に不安の念を懐かしめたことを必要としない―大判大正一三年四月一五日集三巻三三八頁)
(ニ)、選挙人、内山佐平(下請工業内山鉄工所を経営し日立商工会議所前会頭)は福田後援会副会長として同候補の選挙運動を先頭に立つて推進していたところ、日製側より反日製の態度を詰問され、その自宅に高島後援会の看板を掲示させられ、これがため同人は仮病を使つて自宅に引籠り、とうとう福田派後援会並に商工会議所に顔出しができずに終始した。
蓋し、同人が当時日立商工会議所会頭、福田派後援会副会長の地位にありながら、日製の弾圧によりこのような態度をとつたことは、他の下請工業関係並に一般商工業関係選挙人に対する直接、間接の影響は甚だ大きなものがあつた。福田派運動員が、同人に対して連絡をとろうとしても、日製運動員が監視し、とうてい実現困難な状況にあつたのである。
(ホ)、同年同月十八日(告示の日)、高島候補は中村藤吉(日製市会議員候補者)と田口主任(資材部)の案内により、下請工業の各工場を訪問し、同人等は係長以上を招集して「高島候補に是非一票を投じて貰いたい」旨のべて、投票を依頼した。
(ヘ)、右中村藤吉は、前記告示の一週間後、下請企業各工場をたづねその工場の全従業員を招集させ、高島候補えの投票を依頼した特に日立工業株式会社に対しては、同会社の全従業員をその機械工場に集合せしめて前同様の行為をなした。又、同月二十三日、同会社創立記念祝賀式を日立商工会議所で開催し、同会社社長富田正二が挨拶中、突如右中村藤吉がこの会場に現われ、富田社長の挨拶を中止せしめて、その席上にいる選挙人に対して高島候補えの投票を依頼した。
(ト)、日製従業員、金井好延は選挙人鴨志田義雄(下請工業、ボール箱製造を営む)に対し、選挙期間中「下請の仕事をさせなくさせるぞ」と威迫した。
(4) 以上の利害関係を利用する威迫行為は、公選法第二二五条に該当する。
四、選挙妨害
(1) 日製従業員は多数集合して福田候補に威力を加え、選挙を妨害した。
即ち、
(イ)、昭和三四年四月 日茨北新聞社は次の通り演説会を開催した。
場所 多賀公民館
時間 同日午後六時より八時の間 市会議員候補者
同日午後八時より九時の間 市長候補者
高島候補はこの演説会に対して出席を拒否してきており、市長候補者としては福田候補のみ演説することとなつた。
(ロ)、この公民館は定員約八百名のところ、日製運動員約壱千名は同日午後四時半同会場に集団的に参集して待機していた。(相当数は場外に溢れて居り、これら運動員と輸送したトラツク数十台があつた。)
(ハ)、福田候補は同日午後七時過ぎ、河原子小学校において演説していたところ右公民館から「千名以上が待機しているからすぐ来てもらいたい」旨の電話があつた。それで同候補は河原子小学校における演説を中止して同会場に駆付けた。
(ニ)、多賀公民館に参集した聴衆は殆ど日製従業員で、地元選挙人は河原子小学校の会場の方に吸収され、全く数名を算えるに過ぎない状況であつた。日製従業員は同候補が演説しようとすると「もぐら、もぐら」「山猿」「くそ爺」「落第坊主」等の野次怒号を浴せ、さては夕食用として用意したサンドウイツチ(約六〇〇個)の空箱を同候補に向つて投げ、石川次夫(衆議院議員、日製課長)がワイシヤツ腕まくりの姿で演壇の真下に席を占め、同人の後方に秘書格の某が後方を向いて合図し、従業員はそれに呼応して、怒号、罵声を浴びせさてはこれら従業員が総立ちして、同候補の演説は事実上不能に立ちいたつた。そして同候補派の運動員、大内正が護衛し場外に待避し漸く身の安全を保つた。
同派運動員は早速選挙事務所に「多賀公民館が不穏だからすぐ来るよう」連絡し、福田候補は再び河原子小学校の演説会場に急行しようとしたが、多賀公民館では会場騒然となり、消燈し日製従業員が数十名宛集団し「河原子小学校え殴込みをやろう」と謀議していることを察知したので、同候補はこれ以上の妨害を避けようとして、同小学校における演説も中止せざるをえなかつた。
(ホ)、以上の通り多賀公民館における演説妨害は明かに集団的組織的な多数集合して威力を用いてなされたものであつて、予め計画的になされたものである。
(2) 日製従業員約三十名は、昭和三四年四月二九日夜、選挙人三代武雄(日立市久慈浜)の自宅を取り囲み、示威行為をなし、これがため同人は運動のため外出することが出来なかつた。
なお、同日夜、日立市久慈浜は日製従業員の出動によつて、ちようどお祭りのような景観を呈していたのであるが、その要所々々に日製課長級のものが指揮する数十名のものが絶えず待機していた。例えば、久慈浜鉄工組合事務所には、長野部長の指揮する三十名が待機し、その他の運動員は交互に前記のように示威行為をなし、一方、福田派運動員又は一般選挙人を尾行し、監視して威力を示して運動を妨害した。
(3) 日製従業員による選挙運動は、選挙全地区に及び戸別訪問がなされたことは前述の通りであるが、これら運動員は又日製社宅街(たとえば兎平社宅)の要所に立つて反対派の運動を妨害し、他方社宅街選挙人の行動を監視、特に夜間は夜警、又かがり火をたいて示威していた。
(4) 日製は、福田候補の街頭演説に対して同会社の消防自動車を運行し、警笛を吹鳴して同人の演説を妨害し、これを不能ならしめた。
(5) 選挙期日、即ち同月三十日、日製は各投票所前とか、その附近に十五乃至二十名の従業員を派し威力を示して選挙人の投票を監視していた。(たとえば水木投票所の前には十五乃至二十名の者がいた。)
又、各投票所には各工場の渉外係主任(非組合員)が「毎日」とか「読売」とか新聞社名の腕章をつけて各選挙人投票の状況を監視していた。
五、饗応、買収等
日製は前項説述のとおり、日製供給所との取引等、又は下請関係等の利害関係を利用して高島候補えの投票をなさしめると共に、以上にいう直接的利害関係のない地域又は選挙人等に対して饗応又は買収をなした。
即ち、
(一) 饗応
(1) 昭和三四年四月十日午後七時より同十二時に至る間、日立市内多賀温泉において高島候補の当選を得しめる目的を以て、高島候補浅野春三(日製)、山本喜四男(日製、市会議員候補者)等が主催し、同市内大久保町、多賀町、河原子町の有力な選挙人、大高富重他約三十名を招き、ビール、酒、料理等を提供した。
(2) 昭和三四年四月十三日、前同様の趣旨を以て同市内新山寮(日製寮)で日製国分工場が主催し、高島候補が出席し、同市油縄子町等の有力な選挙人海野浩一郎他十三名に対して酒、ビール及び料理等を提供した。
(3)、同年同月十六日夜、選挙人和地丙午宅において高島候補及び前記浅野春三は和地丙午、森忠三他三十名に対し、前同様の趣旨を以て酒、ビール及び料理等を提供した。
(4)、同年四月十八日夕方、日製多賀及び国分工場供給課が主催し、同市内料亭万平において日製供給所取引業者赤津五郎他約三十名に対して前同様の趣旨を以て、酒、ビール及び料理等を提供した。
(5)、同年同月二十七日、日立市内杉の内クラブ(日立電線株式会社が経営する)において、日立土地株式会社専務取締役玉村秀雄は、選挙人佐藤方也(洋品店を経営)外三十名に対し、前同様の趣旨を以て酒、ビール及び料理等を提供した。
この饗応は五名位宛数次に亘りなされたものである。
又、日立土地株式会社はさきに述べたとおり、日製の子会社にして選挙運動に関しては日製と一体をなしていた。
以上、(1)乃至(5)の饗応は、いづれも高島候補を当選させる目的を以て、日製が主催し(例えば国分工場には多賀工場、或いはその供給課等)高島候補自ら出席するか、出席しないときは、日製側より出席しているものである。又、各地区の有力な選挙人に対してなされたものである。
(二) 買取
(1)、日製はその従業員をして、本件選挙期間中、日立市内南高野地区の選挙人等に対して各金壱千円を供与した。
右地区は日製の支配力(利害関係からも)の及ばないところで、一般に農家が多い、戸数は約五十戸程度である。選挙人の数は後に明かにする。
(2)、又、次田定次(同市河原子町居住)に対し、鍼きゆう関係選挙人の票取まとめを依頼し、金四千円を供与した。
(3)、又河野四郎(同市河原子町居住、傷い軍人)に対し、傷い軍人会会員選挙人の票取まとめを依頼し金員を供与した。この饗応乃至買収は以上の通り比較的に日製の支配力(直接利害関係による)の及ばない地区を対象としてなされたもので、きわめて悪質且反社会性を有するものであるが、当時前記(一)の(1)及び(3)の饗応につき一市民より告発され、わづかに受動的に捜査されたにとどまる。
又、これら饗応を取調べた日立警察署大山部長、市毛警部補は、これらの被疑者に対して「会費を出し合つて飲んだのだろうね」と誘導し、その旨の供述調書の作成がなされたという。
六、文書図書の頒布
(1)、日製日立工場は、「日立」(工場機関紙にして同工場勤労課が編輯、編集兼発行人新美雅臣)昭和三四年四月十五日附第一八六号(追加)において高島候補の「選挙スローガン」「推せん」記事、「高島さんは立派な人」という紹介記事等を掲載し、これを一〇、二〇〇部印刷し、同会社従業員、社内各工場及び官公署並に市内一般に頒布した。
(2)、又、同会社多賀工場は「多賀」(多賀工場機関紙にして毎月一、一五日二回発行する)昭和三四年四月十五日附第一四四号(追加)において、高島候補の略歴、スローガン、及び推せん記事を掲載し、これを約五千部印刷して従業員その他市内一般に頒布した。
右(1)、(2)の機関紙は共に第三種郵便物の認可はなく、又前記各号は選挙特集号である。
(3)、日製、山崎工場は選挙期間中左記内容を記載したビラ各一〇、〇〇〇枚を印刷し、これを同会社従業員により、市内一般に頒布した。

(イ)
(一) 福田は翼賛議員だ。
翼賛市長でよいか。
(一) 前々回の代議士選でたつた一〇万円の金を着服したので投獄されている選挙違反の守銭奴を市長に出来るか。
(一) 市長の給料はいらない、自動車は乗らないと云う。売名宣伝屋を市長に出来るか。
(一) 政見を発表せず、インチキな過去の取引のイササツなどくどくど訴えている、旧派策謀政治屋に市長を渡せるか。
(一) 高島の退職金は三千万だと宣伝している。
市条例は
月給×在職年数
であり、普通のつとめ人と同じである。
嘘つきの親玉を市長に出来るか。
(ロ) 「四選反対も人による」
福田一派は、盛んに四選反対を唱えているが、それなら新顔なら誰でもよいか。
うつかりうたい文句に引つかかると危い。
こんどの選挙でも、和歌山、神奈川では四選知事が実現しているが、これは人物評価によるものだ。
県知事において既に然りとすれば、我々の身近かな日立市長を決めるのに、このうたい文句に惑わされたら、笑いものになるばかりか、日立市将来の発展に侮を残す。
われわれは、誠実公正で日立市を愛する政策の立派な高島氏をとるか、大言壮語ばかりで政策のない福田氏か。
『玉と瓦を間違わないよう注意すべきだ』
この(イ)(ロ)二種の文書は一旦市会議員候補者藤田浩蔵選挙事務所に保管されたのであるが、この事実を某市民が日立警察署に通報したところ「保管してあるものは押えられない」とか「手が足りなくて張り込みは出来ない」というすげない回答がなされ遂に頒布されてしまつたものである。
又、右文書頒布の翌日、この二種の文書に「東京から呼んだという暴力団のお手なみを見たいね」、「福田は当選するわけはないではないか。敗け戦は早く手を引くのが身のためだ、このびらは日製の選対で印刷、ばらまいた。ざま見ろ!」と記載したもの各壱通が、株式会社日立製作所日立工場高島秀吉差出人名義で、福田候補選挙事務所に送達された。
(4)、日製日立工場後援会支部名義を以て「高島さんを推薦する」という題名下に「来る四月三十日の日立市長の選挙に是非とも日製に最も関係の深い、われわれの代表高島秀吉氏に投票しませう」その他高島候補の推せん記事を掲記した文書を市内一般に頒布した。(その部数等は後に明かにする)
(5)、日製は左記項目により福田候補を論難ひぼうした文書を印刷し、これを市内一般に頒布した。(その部数等は後に明かにする)
(イ) 私情をすり替える「四選阻止」スローガン
(ロ) 「市長になつたら自動車に乗らない」
(ハ) 「日製は税金をまけられているか?」
(ニ) 「実のない福田演説」
(ホ) 「無給の市長を市民は望まない」
(ヘ) 「日鉱中心主義では日立市の発展を望めない」
(ト) 「日鉱中心の考え方の福田氏」
(6)、日製多賀労組教宣部は速報No.49昭和三四年四月二七日、「市民をいつわる福田派演説会謀略の真相」という趣旨の文書を印刷しこれを市内一般に頒布した。(その部数は後に明かにする。)
以上の文書は(6)を除いてすべて日製各工場が主体となつて印刷し且頒布されたものであつて、従業員は勿論、一般選挙人に対して頒布された。而してその発行部数及び頒布先からみても全組織的な且全地区に及ぶものであることが明かであろうと信ずる。
而して、これは公選法第一四六条に違反する不法な選挙運動であることは疑いない。
七、其他制限違反
(1)、日製は各工場を単位として選挙告示直前高島後援会支部を結成したが、これが事前運動の脱法行為として違法なることは前段説述の通りである。これら後援会は告示後選挙対策事務所(本部又は支部の名称を附す)にそのまま移行し、各工場毎に設置されて選挙運動に関する事務を取扱い又は選挙運動の本拠として使用されたものである。
以上の名称が選挙対策本(支)部であれ、実質的に選挙運動に関する事務を取扱つたものであつて、選挙事務所であることは疑いない。公選法第一三一条は選挙事務所につき一候補について一箇所と定めているが、この制限に違反した違法なものである。
(2)、日製より立候補した市会議員候補者(中村藤吉、小林初雄、益子太一、藤田浩蔵、山本喜四郎、梅原薫司、山川次男、武士一弥、渡辺四郎、綿引恒之介及び井上清一等)をして、併せて高島候補のため選挙運動を行わせ、これら候補者等は自動車及びマイクを使用して、気勢を張り又は高島候備えの投票依頼を連呼したものである。
この行為は気勢を張り又は連呼行為として公選法第一四〇条、同条の二により禁止される。
八、左の行為は著しく選挙の公正を害するものである。
(1)、日立市選挙管理委員長、立花寿は選挙管理委員として、公選法第一三六条により在職中、選挙運動をなしえないのに拘らず、次の通り高島候補のため選挙運動をなしたものである。即ち、
(イ)、同人は選挙期間中、日立市堀米町内の選挙人等を戸別訪問して高島候補えの投票を依頼した。
(ロ)、昭和三四年四月二八日、自宅に同町内選挙人を集め茶菓を提供して、高島候補えの投票を依頼した。
(2)、日立市警察署は前述の各種選挙犯罪は制限違反行為に対してただ傍観拱手するのみで、選挙期間中特に選挙期日前夜は全く無警察状態に陥らしめ、本件選挙に関し、文書違反四件、供応二件を検挙したにとどまる。而して、供応二件は一市民の告発に基くものであつて、この告発に基いて受動的に検挙したに過ぎない。そしてこの被疑者に対して「会費を出し合つて飲んだのだろう」と誘導して調書を作成したことは前述のとおりである。そして警察の無気力振りは無法、且違法な選挙運動を漫然と放任し、これがため質量共に著しい違反行為を続出せしめ無警察状態に陥らしめたこれは選挙法の理念とする自由と公正とを全く没却せしめた消極的一条件を構成したのである。この無警察状態に心ある選挙人は痛憤慨嘆した。
そして又一方日立警察当局の左の行為は著しく公正を害するものとして糾弾されなければならない。
(イ)、日立警察署職員が、市内を巡察するに際し、いづれも日製工員の服と帽子とを着用し日製の「バツジ」をつけていたものである。(偽装も程度による。いかに捜査の便宜という立場からみたところで、警察当局のこの態度は非難に値する。)
(ロ)、日立警察署勤務の一警察官は在職中選挙運動が出来ないのに、選挙人大森隆次を訪れ、高島候補えの投票を依頼した。
大森隆次は同警官に対して「現職警察官がこういうことをやつていいのか」と詰問したところ「俺達はいつまで警察をやつているわけではない。日製に尽しておかなくてはならない。そのために廻つて歩いているのだ」と答えた。
(3)、饗応前記五、の(一)(1)につき原告鈴木は日立警察署に告発したところ、被告発人のある者が同人宅に参り「日立警察署は鈴木からの告発がなければやらない」と言つていたと申向け、右告発の取消を強要した。
捜査官たる者告発という捜査の端緒を被疑者(被告発人)に語り告げ又は告発状を見せるべきものではない。
以上若干の事例にみるまでもなく、警察当局の一半の責任は追及されなければならないが、警察当局のこの態度と行為との一般選挙人に与える影響は極めて大きい。そして甚しく公正を害するものであると断定して差支えない。被告は訴願裁決書において「個々の法規を以て罰すべき」旨述べているがこれは事の真相を逸したものであつて到底採るに足りない。

原告準備書面(第四)
一、原告等は本件選挙の無効につき次の通り主張する。
(一)、さきに述べた通り、日製(労組をも含めて)は選挙全地区に亘り不法な選挙運動、選挙妨害、弾圧を組織的に行い、これが為選挙人の自由意志に基く投票が全般的に著しく抑圧され選挙法の理念とする自由と公正とが全く没却されたものである。
而してこれは、公選法第二〇五条「選挙の規定に違反するとき」に当るものである。
斯様な場合公選法の目的と、精神とを甚だしく蹂躪する事は選挙の管理執行の手続違反の場合の比ではない。
禁止又は制限違反行為は個々の取締規定乃至罰則を適用すべきものとしても、かような質量共に圧倒的な不法運動、乃至妨害、弾圧等の組織的、全地区に及ぶ違法な選挙運前は、個々の罰則適用を遥かに越えた領域の問題、即ち実質的に選挙の自由と公正との問題である。そして、警察当局が前記違反行為や不法運動を拱手傍観し、殆どなすところなかつた事は、その僅かな検挙数(饗応二件、文書違反四件)によつても明かであろう。
警察という公権力すら日製の権力には及ばず、むしろこれが支配下にあり、協力的態度を持して居たのである。果して、そうとすれば、一般選挙人は何を以てこの不法な選挙運動を阻止し得ようか。
(二)、この場合明かに、選挙の結果につき異動を及ぼす虞充分である。
本件選挙告示前後、両候補の予想は全く五分五分で、とうてい何人も予断を許さないものが有つた。昭和三四年四月二三日以降日製の全面的介入によつて、前述のような結果とはなつたが、この介入なかりせばこの結果に異動を及ぼすこと明かである。
(三)、原告等は左の判例を引用する。
大審院昭和十七年(選)第六号昭和二十年三月一日言渡衆議院議員選挙の効力に関する異議訴訟事件判決
(四)、蓋し公選法第一条はこの法律の目的を定めて次のようにいう。
「第一条 この法律は日本国憲法の精神に則り、衆議院議員、参議院議員並に地方公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し、その選挙が選挙人の自由に表明せる意志によつて公明且つ適正に行われる事を確保し、以て民主政治の健全な発達を期する事を目的とする」
前記不法な選挙運動は、右法条にいう「公明且適正を確保する為の公選法の諸規定を全く無視し去つたものにして、とうてい選挙人の自由に表明せる意志によつて公明且つ適正に行われたものとは言えない。そして、公選法の目的を、ひいては憲法の精神を無視したもので有る。
仍て、本件選挙を無効とする所以で有る。
二、原告等は更に次の通り附加主張する。
(一)、この選挙後、日立市内に於ては、この市長選挙は未だに「禁句」とされている。というのは、これに対し蔭で批判しながら、その声を表明する事すら出来ない現状にある。特に下請関係、日製供給所取引関係者は然りである。そしてこの傾向は、被告の訴願裁決にあたつての調査に於いても然りであつた。
例えば、長山義一(永山電機工業所所長―日製下請)は、右調査に於て供述を求められたが、真実を語らず、後に、ある会合の席上、「弾圧を受けたんだが、何十名かの使用人が、路頭に迷うので圧力を受けても受けないと答えた」と述べていた。
他は推して知るべしで有ろう。そして、証拠調においては特にこの点に御留意を希うものである。
(二)、そして選挙の自由と公正とがない以上、選挙は無意味で有るとして、自ら投票権を放棄又は棄権した事態が生じた。(所謂投票権返上運動という)
即ち、昭和三四年六月二日執行の参議院議員選挙に際し、同市選挙管理委員会より一般選挙人に対し投票所入場券が交付されたが、選挙人鈴木恒子他約  名のものは、持参又は郵送して右入場券を同市選管に返還した。又これらの内市選管より再び右入場券を返送してきたが今その氏名を明かにすると、原告鈴木福寿、藤田三郎、茅根久夫、大窪高司、鈴木恒子、石田一郎、影山友造、富岡甲一郎、大内正、日立警察署長山巡査等で有る。(他に鈴木たみ子、鈴木はる、鈴木いな等である。)
而して前記入場券の返還という事実は、政治意識なくしてその結果棄権するものとは、甚だしい差異がある事は深い注意を要する。即ち、この場合は、高度に政治意識を有しながらこれを自由に表明し得ない事態から生じる参政への断念である。民主主義の危機、これより大なるものはない。又、この事実を以て日製の選挙干渉乃至妨害、弾圧、その他不法な選挙運動が如何に選挙の自由と公正を阻害し、その結果、市民の真面目な参政への意欲を抑圧したか、一面の例証たり得るであろうと信ずる。
(三)、本件選挙後、日立市の「日立市選挙粛正連盟」なる結社は、右選挙を「全国まれに見る腐敗堕落、最悪質の選挙」に蹂躪され、「自由を奪われたかつてない醜悪選挙」と断じ「暗黒化した市内を浄化、自由選挙即ち基本的人権の確立に協力して欲しい。そして、正常選挙の芽を伸ばさねばなるまい」又「……でない限り純真な学童、その他への影響は蓋し甚大であり、来るべき世代の為め、重ねて選挙の粛正に協力を乞う」と一般市民に呼びかけた。
(四)、又前同様の結社「愛市同志会」は、「石野久男先生に訴う」(石野久男は、衆議院議員社会党)と題する文書を一般市民に頒布し、その中に於て「日立地区労組が、市民に依る市民の為めの市政を行う事を拒んでいる日製と結んで、卑劣極まる集団有給選挙休暇を従業員に与え、戸別訪問、其の他の選挙違反を行わしめて、下請工場は勿論、会社出入の商人に至る迄弾圧動員して、戸別訪問に依る投票獲得にノルマを与えている事実」を、又「日本はおろか、世界にも類例のない労資協力に依る大巾な選挙違反を犯しての大暴状、大弾圧の現状」と、日製の選挙運動を指摘し石野氏に革正を訴えた。
(五)、日立市主婦連協議会(会長皆川きよ)は、昭和三四年五月十八日総会を市公会堂に於て開催、各団体の代表者約五十名が参集し、席上次の事実が指摘された。
(1) 日製日鉱両会社が繰り出した三千人以上の運動員によつて、市民は選挙の自由を奪われた。戸別訪問利害誘導―制裁などは公然と行われ、市民は選挙前に投票者の氏名を明らかにする事を強要された。
(2) それにもかかわらず、市長選をはじめどの選挙に就いても、地元大会社関係の検挙が一つも見られないので、「町は強いもの勝だ」という不安の声で埋つている等。
尚、右総会の席上、(1)「選挙権返上運動」の阻止と「棄権防止運動」の展開、(2)主婦が、真先に立つて夫や息子にも正しい選挙が行われるよう呼びかけようとの申合せがなされた。
(六)、日鉱の介入した不法選挙運動も多少は有つた。併し、これは日製の選挙運動に誘発されたものにして、且組織的なものではない。そして質量共に到底日製のなしたそれの比ではない。この事実は、後に明らかにするが、この事は、本件選挙の無効の理由を加重するものでこそあれ、決してこれを減じ又は弱くするものではない。(例えば、文書違反等、後に証拠として提出する)

原告準備書面(第五)
一、原告等は次の通り弁論を準備する。
(一)、今次、市長選挙を目して、二大企業の選挙介入、或は「日製」「日鉱」の対決ということが言われている。
例えば、甲第三五号証の一(朝日新聞)表題「日製、日鉱対立たたる」、甲第三六号証「日立市長選挙高裁事件に関してのアンケート」佐藤七五三夫―「(3)当然大企業の権力(二大企業)が積極的に介入したのは事実である。」など。
しかしながら、二大企業の介入とか、日製、日鉱の対決ということは形の上からみた皮相の見解であつて、この市長選挙の社会的背景を究明したものではない。(原告等昭和三五年一月二十日附第二準備書面)―二、両候補の経歴の概要、及び原告等昭和三五年二月十日附第四準備書面二の(六)参照)
即ち、
(1) 日製、日鉱の対決ということは、たまたま高島候補が日製出身者、福田候補が日鉱出身者であるところから、この両候補の対決を象徴的に両企業の対決というようにみたに過ぎない。
(2) 何故なら、この選挙が両大企業の対決というならばいつ対決するに至つたのか、その時期と理由とが明かにされることを要する。
昭和三四年四月二一日、日立工場内応接室において日製、日鉱両社長、及び日製本間室長、日鉱松原常務が福田候補に対して立候補辞退を勧告、引続いて同夜「中村」において、本間室長、及び松原常務が同様に、福田派有力運動員に対して同候補の辞退を求めた経緯は少くともその時期においては、両企業は福田候補の立候補を辞退せしめるという共通の目的と行動によつて結ばれていたことは明かである。そして、高島候補に対しては日製からいつでも辞退せしめうる自信と見透しがあつたればこそ、福田候補に対して集中的に辞退を勧告するに至つたことも亦、説明を要しないであろう。
ここで、福田候補の立候補及びその辞退が日鉱という企業にとつても任意自在にならなかつたことは同日夜「中村」において福田派有力運動員を集め辞退を勧告したことによつて極めて明白であるといわねばならない。要するに福田候補の立候補及びその辞退ということは日鉱という企業には勿論のこと、同候補自身の単独の意思によるものではなかつた。否、むしろ日鉱は既にあらわれたところに明かなように逆に福田候補の辞退を勧告する立場にあつた。
立候補の経緯からいうも日鉱の意思によらず、中途却つて日鉱は同候補に立候補辞退を求めたのであつて、こういう立場にあつた日鉱が、どうして福田候補を先頭に立てて日製と対決しなければならない理由があろうか。何等ない。さきに述べたように、昭和三四年四月二十一日においてはそれどころか、日製と日鉱という両企業が福田候補を辞退せしめるという共通の目的の下に共通の行動、即ち、辞退勧告を行つていたのである。そういう共通の目的の下に動いた両企業が、さきに福田候補の辞退勧告が成功し、同候補が辞退したとするならば、ここで共通の目的を達成し、それを失つたことになるのであるから新な事態(しかしここでは何等新しい事態は発見していない)が生じたことを他の理由によつて対決するという事態が生じたかも知れない。しかし福田候補特にその有力運動員によつて立候補辞退を拒否され、共通の目的が成功しなかつた今、どうして両企業が激突し対決する理由と必要とがどこにあろうか。そのような理由と必要とは必然的には何等なかつた。
このことは福田候補が所謂市民側多数の支持により、その辞退も亦、同候補の一存によつては出来なかつたこと、そして日鉱はむしろ、却て辞退を勧告した立場にあつたことを考えるならば、極めて明瞭なことであろうと思う。
(二)、原告等、昭和三五年二月  日附、第四準備書面、第二項の(六)に日鉱の運動の実情について述べた通り日鉱が選挙運動に参加したとすれば、それは日製の大量の選挙運動に誘発されたものであり、且、組織的なものではない。
又、時期的に言えば日製は福田候補に対する立候補辞退勧告が不成功に終つた後、即ち、昭和三四年四月二十三日、翌二十四日頃より全面的、且、組織的な運動に入つたが、日鉱はこれに誘発されて、同月二十六日、二十七日頃よりなしたに過ぎない。
(1) 今、この模様を詳述すると次の通りである。
日鉱の従業員は四、五〇〇名、その内九五%は労働組合に所属し現場掛長以上が非組合員であるに過ぎない。そして非組合員は全体の五%、数にして約二二五名前後である。而して日鉱労組は茨城県労働組合連盟日立地区協議会(日立地区協という)に所属し、昭和三四年二月頃には既に日立地区協は高島候補の推薦を決議していた。(被告昭和三五年三月二九日附第一準備書面「原告等第三準備書面に対する陳述」第五項参照)
従て、日鉱労組員約四千弐百七拾五名は前記の日立地区協の高島候補の推せん決議に拘束され、直接に福田候補の選挙運動に参加することは許されない事情にあつた。
若し、この推せん決議に拘束されないものがあるとすれば、それは非組合員約二二五名であるに過ぎない。
こういうわけで、日鉱が福田派の運動を組織的にするということは出来なかつたし、わずかに福田候補が日鉱に三八年在職したので、その縁故者がみるにみかねて動いたに過ぎないのである。
尚、又この市長選挙の直前(昭和三四年四月二三日執行)に行われた県会議員選挙において、日鉱の永井誠候補(社会党)が日立地区協の推薦で立候補し、日鉱労組だけの票では少いので、日製労組の応援と支持を受けることとなつた。それ故その交換条件として市長選挙には日鉱労組は高島候補を支持するという申合せがあり、日鉱労組はこの申合せに拘束されていたのである。
上述の通り、日鉱が企業体として福田候補の選挙運動をするということは実情として出来ず、わずかに非組合員或は福田候補の個人的縁故者が参加したに過ぎない。決して日製のそれの如く、量的には比較にならないのは勿論、あくまで、日製の運動に誘発され、みるにみかねて参加したという受身の運動であり、又、日鉱労組が日立地区協の決議及び申合せの拘束下にあり、わずかに非組合員の一部及び個人的縁故者の運動であることをみれば断じて組織的なものでないことが自ら明かであろう。
(2)、してみれば、日製、日鉱の対決という表現は皮相の見方に基くものであり、センセーシヨナル報道的価値は充分みとめるとしても法律的な判断の基礎たるべき社会的事実として実体と核心をついたものではない。又、大企業の介入とする見方もこれに介入した両企業の間には組織的であるか否か、又質量両面に亘つて大きな差異が存在するのであり、この差異を明確にせず、いずれが主動的地位にあり、いずれが受動的にあつたか、それにそのような運動を展開しなければならなかつた、必要性の存在と理由とを無視して一がいに両大企業の介入と表現することは甚だ妥当を欠く。
(3)、日製が昭和三三年の衆議院選挙に石川次男(日製課長)を県会議員、市会議員は勿論、市長をも労組と企業体とが一体となつて選出していることは経済上の合理主義を地方政治えの貫徹は勿論、最近においては国政にも反映せしめようとする態度のあらわれであり、この事実より具体的事実(例えば久慈商港の築港、市内に宣伝された固定資産税問題)を指摘するまでもなく、企業体としての政治えの介入の必要性の存在を明確に示すものである。
(4)、昭和三五年十月一日、水戸地裁、日立支部における証人山本繁の訊問に際し、双方代理人の訊問を終えたのち、裁判所が同証人に対し、「訊問事項や、その関連事項ではないが、職権で証人に尋ねるが、この激烈な選挙はどうしておこつたのか―(間をおいて)―例えば両企業の対立なのか、或は両候補の感情的対立が原因なのか、それとも他になにかわけがあるのか」との問に対し、同証人は暫く静かに考えたのち「それは日製が市政をろう断しようとしてやつたものだと思う」と明確に答えた。同証人のこの供述は予め訊問事項を示されたものではなく、双方代理人の訊問を終えたのち、不意に裁判所が職権を以て証拠調をされたものである、それだけに今次選挙の真相をついた貴重な証言であつたと言えよう。
正にそのものズバリの供述にしてその真相を単的に表現したものであつた。
(三)、日立市選挙管理委員会並に立花委員長の行動は公選法に違反し甚だしく選挙の自由と公正を欠くのは勿論、その後も反社会的行為が多く、到底自由と公正とを期待しえない。
(1)、日立市選管は今次市長選挙の執行において、立花選管委員長が高島後援会結成に自ら直接参加(この後援会結成が時期的にも違法なことは既に述べた通りである。)し、公選法の規定に違反して選挙運動をなした。公選法において、選挙管理委員の選挙運動を禁止しているのは、選挙の管理執行をする委員が自ら選挙運動をするそのこと自体が選挙の公正を欠くことに基く。
(2)、右立花選管委員長は証人根本初枝(昭和三五年十月一日水戸地裁日立支部における証人訊問)に対し、訊問の数日前、或る人(縁者にして根本初枝の借地の賃貸人並に所有者)をつかわして、同証人に対し使用中の借地を返してくれ、又、名誉毀損で訴えると申向け、同証人はその結果、昭和三四年四月  日における高島後援会に前後約四時間出席し且、その席上立花委員長が出席しているのを実見しているのに同証人は僅少の時間しか出席せず、又その間、同委員長が出席していなかつた旨の供述をなした。同証人は未亡人で女手で酒商を営んでおり同町会の有力者にして、且、選挙委員長の身内の者から土地を返してくれと言われたので、こわくなつて、昭和三五年十月一日水戸地裁日立支部におけるような供述をなした。
なお、証人訊問期日には同人に対し、某老女が附添い、待機中、終始側を離れなかつた事実がある。
これらの事実から立花市選管委員長が直接選挙運動にあたつたことを示すものであり、それが故にこの事実を隠蔽するため他の者をして土地返還及び名誉毀損による告訴などと無法なことを申向けておどかしてその結果、同人を畏怖せしめ偽証をなさしめたのである。
この行為は当然に刑事上の責任を免れないものであるが、こういう行為を敢えてする者を委員長とする市選挙管理委員会が、公正に管理執行をしたなどとはとうてい考えられないしそれなればこそ、この無法選挙を見逃して管理執行に何等手落ちはないなどと平然として何等恥ないものであろう。
(3)、左の市選管の行為は反社会的性を有するものにして、選挙の自由、公正を確保する主宰者としての自覚と反省とを欠くものである。
市選挙管理委員会は昭和三五年十一月四日午後五時より十時半頃迄(衆議院選挙告示直後)日立市内料亭梅川に、日刊新聞記者(読売、毎日、東京、いばらき、NHK)の各記者を招待し、酒食を供し、芸者をはべらせ、且、みやげを持たせて帰した。
このような招待は数回に亘り行われ、又、地元週刊紙(同舟会というクラブを結成している)の記者に対してもなされて居るものである。この席上に市選管側より立花委員長、船橋選管書記長、田所係長(庶務課)が出席して、今次市長選挙及び今回の衆議院選挙の話しをした上、この選挙が平穏に終えれば表彰されるので協力を願いたいと各新聞記者の協力を求めた。
なお「いばらき」新聞記者はこの招待に対して拒否したところ、立花委員長は直接二回も連絡をして出席を求めた。選挙の自由と公正な執行を任務とする選挙管理委員会が何故に新聞記者、而も朝日と産経を除く記者を招待し、酒食を供する必要があるのか、又、衆議院選挙公示直後に開くのか、甚だしく反社会的な行為といわねばならないし、市民の疑惑を招くに充分な行為である。
自由、公正な選挙の主宰者としての自覚と反省を欠くものである。
(四)、日製の企業体の職制による選挙その介入は次のような経過を以て行われたものである。
(1)、昭和三三年の衆議院議員選挙において、日製課長石川次男が立候補し、ここで日製は企業体の職制を通じて会社を挙げて選挙運動をなした。その要領は今次市長選挙のそれと同様であつて、従業員を選挙区内に出張、公用、外出、組合行事等の名目で外出せしめて選挙区内、有権者を戸別訪問せしめて投票を依頼し、或いは利害関係を利用して威迫し、又は利益誘導をした。
こういう選挙運動はここに先例が開かれたものである。
(2)、この要領により、更に質量両面において徹底した選挙運動は今次市長選挙である。
その具体的なものはすでに述べたところであるので省く。
(3)、昭和三五年十一月二十日施行の衆議院選挙は今回同様石川次男が立候補したが、之亦同様の選挙運動が行なわれたこと、甲第   号証「朝日新聞(読者の広場)――日立市大久保町日製多賀工場組長佐藤政吉)」によつても明かである。
(1)、当初日製労組の運動で会社は直接応援をしなかつた。
(2)、中途の情勢判断から、石川候補が苦戦し、落選の虞れがあるや、会社に談じ込んで、多賀、国分、日立電線等の各工場が総力を挙げて運動をなした。
(イ)、右各工場内に選挙対策本部が設置され、部長、課長等から職制を通じて石川応援の命令が発せられた。
(ロ)、各職場では、選挙区内に郷里のある者は出張、公用、外出、組合行事の名目で戸別訪問、その他の投票依頼をなした。
(ハ)、これら運動員に対しては交通費を支払いした。
以上の運動の要領はすべて今次市長選挙と同じであり。
当初は、この事件の繋属中のため多分に自重の気配もみえたが遂に石川苦戦との判断から遂に会社の職制による全面的な運動えと切り換えられた。
この経過は今次、市長選挙において、当初は中立をひようぼうしていたが、後に立候補辞退を勧告して、干渉し、これが不成功になるや、とうとう会社の総力をあげての運動えと展開したこととその軌を一にするものがある。
而して、その運動は前回のそれよりも巧妙を加えたものであつたことも事実であつた。

原告準備書面(第六)
一、原告等は次の通り弁論を準備する。
(一) 原告等は両後の立証を容易にするため先づこれまでの主張を明確に要約する。
(1) 株式会社日立製作所が日立市において圧倒的な経済的支配力を有することは厳然たる事実にして原告等はこれまで縷々申述べてきたところである。加えて、同会社が、この経済的支配を経済的合理主義の故に政治の領域にまで貫徹しようとしたことがかような激烈な選挙に陥つた第一の原因である。
これに対して、これを不合理として反撥対立した勢力との激闘であつたわけである。同会社はこれに対して最初は立候補辞退を勧告して干渉しこれが成功しないと次いで弾圧買収するなど広範囲に亘る違法な選挙運動を展開したものであるこの運動の契機をなしたのは同会社のこの地域の選挙人に対する経済的支配力これに係る利害関係を基とする威迫及び誘導であつた。
(2) 他方、市選挙管理委員会及び警察当局は共に選挙の自由と公正を確保するため重要なる機関にして重要な責任を有するものであるが何等なすところなく漫然と放置したのは勿論のこと、否、却つてこれを助長する行動を敢えてし甚しく自由と公正とを没却せしめるに至つた。即ち、
(イ) 市選挙管理委員会は「選挙が公明且つ適正に行われるように、常にあらゆる機会を通じて選挙人の政治常識の向上に努めるとともに、特に選挙に際しては投票の方法、選挙違反その他、選挙に必要と認める事項を選挙人に周知させなければならない。」(公選法第六条)のにかような選挙違反を傍観し、何等の措置をなすことなくこれを放置した。のみならず、同委員会委員長立花等は昭和三四年四月日頃、日立市大和町を主とした高島候補後援会結成に自ら参加し、又、戸別訪問をなし選挙管理委員会委員長として自ら公選法の規定に反する行動をなしたものである。同委員会並に委員長のその後の行動は昭和三五年十二月二日附準備書面(三)記載のとおり、公選法第六条の規定の趣旨に著しく違反し、これだけでも本件選挙の無効の原因となりうると信ずる。(昭和二八年六月一日東京高裁の判決参照)
(ロ) 日立市警察当局は「選挙の取締に関する規定を公正に執行しなければならない、」この選挙違反を拱手傍観し何等取締をなさず放置し同市をして無警察状態に陥らしめたことは昭和三五年一月二九日附準備書面(第三)第八項記載のとおりである。
のみならず、現職警察官は自ら高島候補のため戸別訪問をし、又警察当局の職員は日製工員の服と帽子を着用し又、日製の「パツチ」を使用していた。
こうして、選挙違反取締を公正に執行せず選挙の自由公正確保の一翼を狙うべき警察当局が大企業の選挙運動なるが故に放置し、益々これを助長せしめた責任は蓋し重い。
(3) 凡そ、選挙が自由公正におこなわれるためには次の三点が厳格に守られることを要する。
(イ) 候補者、運動員及び選挙人が公選法所定の違反行為をなさないこと。
(ロ) 選挙管理委員会がその管理執行を規定に従つてなし、又公選法第六条にいう選挙に関する啓発、周知等の方法をなすに努めること。
(ハ) 取締当局が違反行為の一般的予防とその事実に対し厳正公平に取締ること。
これを本件選挙についてみるのに、前段主張の通り何一つとして充足されてはいない。この状態は単に「選挙の規定に違反した」というにとゞまらず、公選法の諸規定と精神とを全く没却し去つたものである。したがつて実質的に公選法第一条にいう「その選挙が選挙人の自由に表明さる意思によつて公明、且つ適正に行われること」はとうてい期待しえない。
原告等は単に株式会社日立製作所の全地域に及ぶ全面的な違法な選挙運動により自由と公正とが没却されたというにとゞまらず、併せて、市選管理委員会及市警察当局の前段主張の行為と相俟ち本件選挙の自由と公正とは全く没却されたものであつて、無効であると主張するものである。
以上の通り要約する。
選挙の規定に違反するとは、選挙の管理執行機関が選挙の管理執行手続に関する明文の規定に違反する場合のみならず、直接明文の規定はなくとも選挙法の基本理念である自由と公正の原則が著しく阻害されるときもまた選挙の規定に違反するものと解すべきである。(昭二三、六、二六最高裁、昭二七、一二、四最高裁判所参照)
(二) 「選挙の結果に異動を及ぼす虞れがある」という点については以上要約した主張に沿う証拠調を遂げられるならば異動を及ぼす虞れ――その可能性があることは自ら明かであろう。この点については後に詳述する。
今、一言するならば若し、被告主張のように異動はないのだ、その可能性すらないという事態であれば昭和三四年四月二一日の「立候補辞退勧告」という干渉もなかつたであらうし、又、その後のあの激烈な選挙運動そのものもなかつたであろう。
この一事を以てしても「異動を及ぼす虞ある」ことは全く疑いはない。
(三) 同会社の選挙運動は昭和三五年十一月二十日施行の衆議院選挙でも同様であり、地域社会をしてまことに憂慮すべき事態にして、このまゝ放置するならば公選法第一条のいう「民主政治の健全な発達を期する」という目的はとうてい達せられない。特にこの点に留意あるべきものである。

被告準備書面(第一)
原告等第一並びに第二準備書面に対する陳述
一、原告等が第一、第二準備書面において本件市長選挙の背景として主張する事実は、原告等の独自の主張であつて、到底真実とは認められない。
原告等の主張を要約すると(一)本件市長選挙の行われた日立市には「生成以来市民的自由が欠如し、自由な市民社会の精神的土壌は不毛に等しい。」「日立市は一つの(日本鉱業株式会社は地方政治に対し一種のモンロー主義なので別として、株式会社日立製作所の支配する)植民都市と規定して差支えなかつた。」(二)ところが日立市に合併された隣接町村は「比較的に地方自治の修練を積み政治的自由を体験してきた。」(三)そこで「旧市内にくすぶつていた(日立製作所に対する)失意と不満とが(合併された)有力な政治的勢力を迎えて、市民的自由の獲得、地方政治の大企業からの独立を指向して展開されるに至つた。」
本件市長選挙に際し発生したかかる事態は、「株式会社日立製作所にとつて未曾有の危機的出来事」であつて、同会社が昭和二十五年に経験した大ストライキにも比すべきものであつた。」(四)かような政治的背景の下に日立製作所が「全組織を挙げて」「全地域に亘つて」選挙運動を行つたものであつて、(五)「日立製作所各労働組合と会社とが表裏一体となつて行つたものである。」というに帰するようである。
二、原告等は右のように日立市を規定して「政治的自由なき植民都市で、そこには会社(日立製作所)のための、会社の行う、会社の政治しかない都市である。」とするが、かかる想定がはなはだしい誇張に満ちた独断であることは、主張自体からしても明らかであろう。
日立市において日立製作所と日本鉱業とが経済的、社会的に有する勢力については、別表をもつて示すとおりであつて、これによつてみても、右両会社が地方政治に対し、ある程度の影響力を有し得ることは常識的にも考えられるけれども、さればといつて、日立市民が日立製作所によつて、その日常生活の在り方を左右され、日立製作所の意志に反する行動をとることが至難であるとか原告等の援用に係る大審院判例の選挙が行われた昭和十七年当時の官憲に匹敵する支配力(例えば、陛下に弓を引くという一言が当時有していた効果)を有することは到底考えられないから、政治的自由なき植民都市という原告等の結論には飛躍がありすぎる。また、同様な大会社の存在は全国各地に見られるところであるが(日立市と異つて唯一社の大会社しか存在しない処さえ数多い。)これらの都市を捉えて、政治的自由なき植民都市と称するならばこれら数多くの地域においては、地方自治制度そのもの、選挙そのものを無意味といわなければならないであろうが、そのような議論が余りに極端であつて事の真相に合致しないことは自明であろう。
原告等は日本人文科学会(「近代鉱工業と地域社会の展開」)の調査の結果を援用するけれども、右調査自体、原告等の主張の如き結論を述べてはいないし、日立市が右に述べたような諸地域と異なつて、特に自由な市民精神の欠如した土地である旨の証拠は存在しない。したがつて、原告等の右規定は著るしく誇大な主張であつて、被告委員会の到底組し得ないところである。
三、次に「日立製作所が選挙に干渉した」旨の主張については被告委員会は、慎重に審査を遂げた結果、これを認めることが出来なかつた。当委員会の認定したところは、原告等の第三準備書面に対する陳述として記載するところに譲るけれども、結論としていえば、同会社が本件市長選挙を「昭和二十五年の大ストライキに匹敵する危機的出来事」と考えたり「会社のための会社の行う政治」を維持せんと志したり、その結果、会社が選挙干渉を命令し遂行したというような事実は全く見当らない。
四、なお、本件選挙に当つて、日立製作所各労働組合(各工場毎に単位組合が組織されている。)が、組合員を通じて選挙活動を行つた事実及び投票依頼行為を行つたらしい事実は認めることができる。しかし、原告等の主張するように、それが「会社と表裏一体となつて行われた。」ものであるという事実を認定することはできない。会社と労働組合との関係については、原告等の第三準備書面に関連して後に詳述する。
五、以上に述べたように、原告等が第一、第二準備書面において主張するところは、これを認むべき根拠のない独断であるといわねばならない。
六、日立製作所諸工場組織は別表のとおりである。両候補の経歴中、福田候補が日立市長に就任したのは昭和十四年であり衆議院議員に当選したのは昭和十七年が正確である。

原告等第三準備書面に対する陳述
第一、第一項選挙干渉について
一、昭和三十四年四月二十一日に日立製作所倉田社長、同本間社長室長、日本鉱業三間社長、同松原常務が、高島、福田両候補に対して辞退を勧めた事実はあるが、次に述べるように右の事実をもつて選挙干渉と認定することは出来ないから、原告等の主張は、真相とはなはだしく相違するものである。
二、右両社長等が両候補と会見することとなつた経緯並びに会見の状況は次のとおりである。
両会社の社長その他の首脳部等は、従来、日立市長選挙に関しては地元民有志等より相談を受けるようなこともあつたが会社側幹部等から進んでこれに関与することなく、中立を標傍して右時期に至つた。ところが本件市長選挙の期日が切迫するにつれて、高島、福田両派の感情的対立が激しくなり互に非難攻撃を加え合つたが、両候補者がそれぞれ日立製作所、日本鉱業の出身者である関係から地元日立製作所対日本鉱業の争いのごとく喧伝されるに至つた。実際問題としても両派の支持者中にはそれぞれその会社関係者も多いので、勢の赴くところ両会社関係者間にきまづい対立が生ずるおそれが生じてきた。
三、日本鉱業側幹部等はこのような事態を憂慮して、四月二十日頃同社松原常務から日立製作所本間社長室長に対して「福田候補に対しては自分の方から説得すれば、立候補を辞退すると思うから倉田社長から高島候補に対して辞退を勧め、代りに万田五郎を立候補させて事態を収拾したい。」旨申し入れた。
四、このような申し入れを受けた日立製作所側幹部等としては次の如き経緯があつたので、右申し入れに応じ日本鉱業側幹部等と共に両候補と会見することとなつた。すなわち、昭和三十三年の秋頃から来るべき本件市長選挙に関して、高島市長の退陣、新候補者の選定をめぐつて種々の動きがあつた。その一つとして昭和三十四年一月二十七日、大和田重実(当時の日立市議会議長)宇佐美松兵衛(当時の県会議員、日立市選挙区選出)大内竹之助(茨城相互銀行社長、日立市居住前代議士)内山佐平(当時の日立商工会議所会頭)外一名が日立製作所本社に倉田社長を訪ね、倉田社長に対し地元有志の意向として、高島市長を退陣させて欲しいという申し入れをしたことがある。
その際、後任の人選が話題に上つて、同社長から大内竹之助自身立候補しては如何とすすめたが、健康上の理由でその意志がないというので、ついで数名の名を地元側が挙げた際、万田五郎(日立土地株式会社社長、前代議士、元日立製作所社員)のような人なら望ましいと述べたので、同社長としては万田五郎でも結構であるという返事をしたことがあつた。ところが万田五郎は立候補を固辞し、それ以上話は進展しなかつたし、大内竹之助も遂に立候補を承諾しなかつた。
五、そのうち、かねて茨城県労働組合連盟日立地区協議会の推せん決議を受けていた高島候補が昭和三十四年二月、立候補の意志を表明し、福田候補も高島市長の四選阻止を図ると主張して立候補の意志を表明した。
その後も、かかる両者の対立抗争を憂える市議会議員等を中心とする調停工作が行われたが成功せず本件市長選挙の告示日を迎えるに至つたのである。
六、以上のような経緯があつたので日本鉱業側幹部等から前記のような申し入れを受けた日立製作所倉田社長等は、さきに前記大内竹之助等地元有志も望ましいと述べた万田五郎が立候補を承諾するならば、おそらく福田候補は立候補を辞退するのであろうと考え、高島候補を説得し得れば、決戦を避けられるものと判断して日本鉱業側幹部等の右申し入れに応ずることとなつた。そこで日立製作所倉田社長は万田五郎を招いて立候補を説得するとともに一方両社長揃つて翌二月二十一日、日立市に赴き、日立製作所日立工場に両候補を招き、最初は日立製作所倉田社長から高島候補に次いで日本鉱業三間社長から福田候補にそれぞれ右に述べたような社長等の考えを説明し、両候補の辞退を勧め、これに対して高島候補は承諾したが、福田候補は帰つて支持者等と協議のうち拒絶した。
なお、福田候補が工場内にいた時間は、同日午後四時頃から二時間足らずと認められる。
七、原告等が「日立製作所倉田社長が日本鉱業三間社長とともに数時間に亘つて福田候補に辞退を勧告して干渉した。」と主張する出来事の真相は、右に述べたとおりであつて原告等のいうような選挙干渉とは到底目し得ない。
八、原告等は「右勧告の失敗を契機として日立製作所が、全企業体を挙げて選挙に介入するに至つた。日立製作所倉田社長は、日立市所在の各工場幹部に対し「骨は会社が拾う言々」の指令を発した。」と主張するけれども、そのような事実は認められない。
以上述べたところからも窺われるように、選挙運動が激化した右時点において、なお、両社長が簡単に考えたことは、判断が甘きに失すると評せられるけれども、一面からいえば、両会社とも本件日立市長選挙に際して特定の候補を当選せしめたいという程の関心を有していなかつたことを物語るものであつて、原告等がその第一、第二準備書面に政治的背景として縷々主張するところが正鵠を失した見解であることは以上の経過から明らかであろう。
第二、第二項(戸別訪問)について
一、原告等は「日立製作所」が職制を通じて従業員を動員して戸別訪問をした旨主張するが、そのような事実は認められない。
二、日立製作所首脳部が選挙に関与しなかつた事実はさきに述べたとおりであるが、同様に日立市所在各工場の工場長、総務部長等各幹部も高島市長の四選には批判的であつた。ところが、前記茨城県労働組合連盟日立地区協議会は、昭和三十四年一月二十一日高島候補を推せんすることを決議し、二月初頭にはこれを公表するに至つた。
三、このような経緯で日立製作所側は、別に高島候補のために何等かの運動をするということもなく、選挙終了まで中立を標榜しつづけた。高島候補のために実際に選挙運動をしたのは日立製作所各工場労働組合を含む茨城県労働組合連盟日立地区協議会傘下の各労働組合、一般市民で組織された高島後援会の幹部達、下請業者の一部、その他高島候補と個人的に関係の深い人達が、それぞれの立場から運動したものであると認められる。
四、右のうち日立市所在の日立製作所各工場労働組合では従前の選挙の例に従つて市議会議員候補者毎に二名程度の従業員を選んで選挙運動期間中選挙運動に従事させたこと、その他にも若干の組合員が離席票を使用して運動に従事したこと、右運動のための離席を組合活動と認めて同会社の各工場の課長その他の職制が承認をしている事実は認められるが、その数は、たいした人数とは認められない。
五、(二の(1))日立製作所水戸工場が、従業員を動員した事実は認められない。
六、(二の(2))原告等は、動員された従業員の数を毎日二千乃至五千名と主張するが、労働組合が動員した従業員の数は、前記のように市議会議員候補者(十二名)一名につき二名程度の専従運動員、臨時の応援者若干名である。それらの者が同時に本件市長選挙の運動もしたと認められるが、結局たいした人数とは認められない。
原告等は「人海戦術」と称し、また、そのような形容詞を使用した新聞記事もあるけれども、被告委員会が調査した範囲では、真実に原告等の主張の如き大量の戸別訪問が公然と広範囲に行われたと認定するに足る証拠及び資料を発見し得なかつた。したがつてどの程度の戸別訪問が実際に行われたかは被告委員会にとつては不明である。
もちろん退勤時間後は、相当多数の日立製作所従業員や同様の服装をした下請工場の従業員等が街に見受けられ、殊に退勤時間直後は道路上、店舗等が工員服であふれる程であるがそのような現象は別に選挙とは無関係に通常認められるところである。
なお、変則勤務者、代休者が相当数ある外、外部との連絡のため外出する従業員があるので、日中でも相当数の従業員が市中に見かけられるが、これも通常の現象である。
原告等のいうような戸別訪問をする従業員によつて交通量が通常の状態に比して、三乃至五倍に増加したなどということは日立製作所各工場の当時の完成高を調査した結果に照しても誇張であると考える。
七、(二の(3))原告等が外出証について主張するところは事実と相違する。会社が選挙運動のために外出証を発行した事実は認められないし、「ノルマ」を与えたという事実も存在しない。
前記のように労働組合の計画に従つて選挙運動に従事する従業員が出門する際に使用された証票は、離席票と称するもので、その離席の時間数に応じて会社は賃金をカツトし、その分は労働組合が本人に補償している。原告等の主張の如き特例は認められない。かくの如き賃金カツトの事実から見ても労働組合の選挙運動は組合が主体となつて行われたものであつて、会社側の指導の下に表裏一体となつて行われたものとは認定できない。
第三、第三項(利害関係による威迫行為)について
一、日立製作所従業員が入れ替り立ち替り一般商店を訪問し、高島候補に対する投票を依頼し、威迫したと言う事実は認められない。
二、(三の(2)の(イ))被告県委員会の調査によると、かくの如き事実は認められない。
三、(三の(2)の(ロ))鈴木豊次の妻もしくは娘に対して下宿人の誰かが福田候補のビラを取り除くよう勧めたらしい事実は認められるが、脅迫した事実は認められない。
四、(三の(2)の(ハ))かかる事実は認められない。
五、(三の(2)の(ニ))かかる事実は認められない。
六、(三の(2)の(ホ)(ヘ))「日渡和一郎他四名」に対し、取引停止を以て威迫したとの主張中「他四名」は不明なので答弁することが出来ないが、日渡和一郎については、日立製作所日立工場小林供給課長が、日渡和一郎を威迫したとか、取引を停止したとかいう事実は認められない。日立製作所多賀工場厚生課主任の安久井幸三郎が日渡宅を訪ねた際、同人の妻子(日渡和一郎は不在)との間で「日渡が選挙に専念し、不在勝のため取引上連絡に支障を来たしている」と安久井が述べたことがきつかけとなつて口論に近いやりとりがあつた事実は認められる。また日立製作所多賀工場厚生課において、しばらくの間日渡和一郎からの納入が大巾に減少している事実は認められるが、完全には取引が停止された事実はないし、なお代議士等の数次の斡旋によつて取引が再開されたという事実も認められない。
七、日立製作所が傘下の下請企業に対し、威迫を加えたという事実は認めることが出来ない。
八、(三の(3)の(イ))日立製作所が生産の監督という名目で下請企業関係の選挙運動を監視したという具体的な事実は認められない。
九、(三の(3)の(ロ))日立製作所が各工場の外註係を通じて下請企業に対し人名簿の提出を強要した事実は認められない。
十、(三の(3)の(ハ))日立製作所が日立工場資材部をして高島後援会日立製作所下請工業協同組合支部を結成させたという事実は認められない。
右後援会は、右組合有志で結成したものであるが、いわゆる高島後援会との間に連絡があつた事実はなく、従つて名簿を日立製作所を通じて届出たという事実も認められない。
十一、(三の(3)の(ニ))内山佐平が選挙に関して日立製作所から詰問されたというような事実は認められない。同人は両候補の対立を憂慮して、その回避を図つた経緯から両候補のどちらにも応援しなかつた。また、福田後援会の副会長となることを承諾したこともなく、日立商工会議所会頭をはじめ一切の仕事を辞めたのは、心臓病のためで今日なお静養中である。高島後援会支部の看板を掲げたのは息子であるが、別に強制された訳でないと自から述べている。
十二、(三の(3)の(ホ)(ヘ))高島候補が下請工場を訪問した事実及び中村藤吉が日立工業株式会社、日立商工会議所で挨拶した事実はあるが、何ら強制的な言動があつたとは認められない。
十三、(三の(3)の(ト))金井好延が威迫した事実は認められない。
第四第四項(選挙妨害)について
一、(四の(1))原告等は立会演説会と主張するけれども真実でない。
右は、福田候補の個人演説会で高島候補は最初から無関係であるのに、原告川村義一が経営する茨北新聞がことさら立会演説会である旨の虚偽のビラを配布したのである。
公民館に多数の日立製作所従業員が集つたこと、福田候補の演説中相当喧騒であつたことは認められるが、演説は支障なく終了した。
右演説会場に計画的に従業員が輸送された等その余の原告等の主張事実は認められない。
二、(四の(2))かかる事実は認められない。
三、(四の(3))日立製作所の社宅に連日高島候補を攻撃する怪文書が投込まれたり、労働組合の支持する市議会議員候補者のポスターがはがされたり、荒されたりするので、組合員等が見張りに立つた事実は認められるが、それをもつて選挙妨害とはいえないであろう。
四、(四の(4))かかる事実は認められない。
五、(四の(5))かかる事実は認められない。
第五、第五項(饗応買収等)について
一、(五の(一)の(1))原告等の主張の会合は、大高富重等が主催し約二十名が出席した会合で、浅野春三(日立製作所国分工場総務部長)等は招待されて出席したに過ぎず日立製作所または、高島候補が饗応した事実は認められない。
二、(五の(一)の(2))この会合は、海野等旧多賀町議会議員等の結成する多賀クラブ(超党派)の集会であり、これに高島候補が招待されて出席した事実が認められるが、右会合の費用は多賀クラブ会員の積立金で賄われて高島候補または日立製作所が支出していないことが認められる。
三、(五の(一)の(3))かかる事実は認められない。
四、(五の(一)の(4))かかる事実は認められない。
以上(1)乃至(4)については、日立警察署の捜査の結果、いずれも犯罪事実を認めることが出来なかつた。
五、(五の(一)の(5))玉村秀雄が饗応した事実は認められない。
六、(五の(二)の(1)乃至(3))かかる事実は認められない。
七、原告等は日立警察署の捜査について非難するが、そのような不正事実は認められない。
第六、第六項(文書図書の頒布)について
一、(六の(1)及び(2))原告等の主張の機関紙が印刷されたことは事実であるが、市内一般に頒布された事実は認められないそのことは部数と従業員数との関係からも明らかである。
二、(六の(3))原告等の主張の如き文書が撒布された事実は認められるがその数は不明である。
日立製作所山崎工場(日立製作所日立絶縁物工場と称するが正式である。)が印刷した事実は認められないし、同工場の従業員が頒布したとか、藤田浩蔵の選挙事務所に保管されたという事実も認められない。福田候補あてに郵送されたという事実は不明である。
添え書きの内容からみると高島派の何者かが発送したという事実はむしろ疑わしいと考える。
三、(六の(4)及び(5))原告等の主張のような怪文書及び反対に高島候補を非謗する怪文書が多数市内に撒布された事実は認められるが、それがそれぞれ何人の手によつて作成されたかはどちらについても不明である。
四、(六の(6))日立製作所多賀工場労働組合が原告等の主張の如き文書を組合員に配つた事実は認められるが、一般人に頒布した事実はない。
第七、第七項(その他制限違反)について
一、(七の(1))かかる事実は認められない。
二、(七の(2))市議会議員候補者中街頭演説の際、時に自己の運動にあわせて高島、福田両候補のため応援演説をしたもののある事実は認められる。
第八、第八項(著しく選挙の公正を害する)について
一、(八の(1)の(イ)(ロ))かかる事実は認められない。
二、(八の(2)及び(3))原告等の主張の如き不正が日立警察署にあつたという事実は認められない。
原告等第四準備書面に対する陳述第二項について
一、((一))かかる事実は認められない。
二、((二))原告等の主張のうち、実際に入場券を郵送又は持参して返還したものは、鈴木桂吉(原告)、鈴木恒子(原告の妻)鈴木福寿、鈴木はる(福寿の母)、鈴木きみ子(同妹)姫野恵子(姫野忠夫の娘)のいずれも本件の関係者であり、一般的に原告等の主張の如き返上運動などが行われた事実はない。
三、((三))原告等の主張の結社の存否は不明である。
四、((四))原告等の主張の結社の存否は不明である。
五、((五))かかる事実は認められない。
六、((六))怪文書についてみても両候補を非難する文書または非難に反駁する文書が交々市内に撒布され、この状況は決して原告等のいうように一方的なものとは認められない。
原告等は一方を組織的、一方を非組織的となしその程度については、一方は全面的で選挙の自由と公正を没却するものと称しながら、他方については「多少は有つた」等と称するが原告等のかかる主張は、はなはだしく福田派に偏つた見解であつて、公平に検討した場合到底容認し得ないところである。
七、結論
以上に述べたように被告委員会は多数の証人について審査したけれども、本件選挙に関し、原告等の主張のような違法行為が全地域に亘り全面的かつ組織的に行なわれ、選挙の自由と公正とが全く没却され本件市長選挙を無効とすべきであるとの事実は遂に認定し得なかつた。なお、本件市長選挙の高島候補(茨城県労働組合連盟日立地区協議会推せん)の得票数を本件市長選挙の七日前に行なわれた保守対革新の争いとも称せられた県知事選挙の岩上候補(日本社会党及び茨城県労働組合連盟推せん)の得票数と対比して観察してみるに、高島候補が特に高率の得票数を得ていないことからも右の認定は誤りないものと考える。よつて別紙のごとく原告等の訴願を棄却した次第である。
(参考のため別紙裁決書を添付する。)

(別表)株式会社日立製作所、日本鉱業株式会社、日立電線株式会社及び関係下請工場等従業員一覧表

区分 市内 市外 計
(1)日立工場 7,410人 1,842人 9,252人
(2)多賀工場 3,548 1,386 4,934
(3)国分工場 1,930 1,443 3,373
(4)日立絶縁物工場 470 180 650
(5)計
((1)+(2)+(3)+(4))
13,358 4,851 18,290
(6)日立工場関係下請工場 2,458 835 3,293
(7)多賀工場関係下請工場 1,799 3,647 5,446
(8)国分工場関係下請工場 1,900 440 2,340
(9)日立絶縁物工場関係下請工場 0 0 0
(10)計
((6)+(7)+(8)+(9))
6,157 4,922 11,079
(11)小計((5)+(10)) 19,515 9,773 29,288
(12)日立電線株式会社 3,200 720 3,920
(13)同下請工場 250 120 370
(14)計((12)+(13)) 3,450 840 4,290
(15)合計((11)+(14)) 22,965 10,613 33,578
(16)日本鉱業株式会社日立鉱業所 4,262 53 4,315
(17)同下請工場 0 0 0
(18)計((16)+(17)) 4,262 53 4,315
(19)総合計((15)+(18)) 27,227 10,666 37,893

(別表省略)
裁第四号
裁決書
茨城県日立市河原子町二、八一〇番地
訴願人選挙人醤油醸造業 鈴木桂吉
大正四年九月三十日生
茨城県日立市水木町二、二七三番地
訴願人選挙人新聞業 川村義一
大正十三年八月三十一日生
東京都中央区銀座西八丁目八番地
新田ビル四階五号室
右訴願人代理人弁護士 下山田行雄
同 高橋修
右訴願人等から提起された昭和三十四年四月三十日執行の本県日立市長選挙における選挙の効力に関する訴願について、当委員会は、審査の結果次のとおり裁決する。
主  文
この訴願は棄却する。
訴願の要旨及び理由
この訴願の要旨は、昭和三十四年四月三十日執行の本県日立市長選挙(以下「本件選挙」という。)の選挙の効力について訴願人等の異議申立に対し、同年六月十二日、日立市選挙管理委員会(以下「市委員会」という。)は、この異議申立を棄却する旨の決定をなし、同日決定書が訴願人等に送達されたが、この決定には不服であるからその決定を取消し、本件選挙を無効とする旨の裁決を求めるというのである。
その理由とするところは、
本件選挙について異議申立に対する市委員会の決定には「市委員会の管理執行の手続に全く関係ない第三者の選挙運動は、市委員会は事実上その事実を認定できるものではなく、その職務権限と全く関係ないものであり、司法権の行うものである。」としているが、これは異議申立の理由に対して何等の判断をせず、公職選挙法(以下「法」という。)第二百五条第一項に定める「選挙の規定に違反する」場合の解釈(「選挙の管理執行に関する規定に違反する」場合だけに止まらず、その余の規定違反からひいて一般選挙人の選挙の自由公正を阻害するに至るような場合をも包含する」(昭和十七年(選)第七号同十八年十月二十九日大審院判決)「選挙の管理執行に関する規定に違反する場合のほか、たとえば官憲その他による甚だしい弾圧、干渉、妨害または広範囲に亘る買収、誘わく等のため到底選挙法の理念とする自由、公正な投票を期待し難いような事由のある場合を指称するもの」(昭和三十年(ナ)第三号同年八月二十六日大阪高等裁判所判決))を誤まつたものであり、また選挙が自由、公正に行われたかどうかを判断していないから、かかる理由に基く決定は、当然取消されるべきものである。すなわち、株式会社日立製作所(以下「日製」という。)の地域社会に及ぼした政治的影響については、日本人文科学会の調査報告書の「近代鉱工業と地域社会の展開」に論説されているとおり、日立市は日製と日本鉱業株式会社(以下「日鉱」という。)の経営支配の構造がそのまま地方政治を絶対支配し、この地域社会においては、いかなる政治的立場をとるにせよ、日製、日鉱の経営的支配体制に反抗しうる政治的組織は皆無に近い状態であり、かかる政治的背景のもとに、本件選挙においては、日製が企業体としての全組織をあげて選挙区全地域に亘つて、全面的且つ組織的な不法な選挙運動、甚だしい選挙干渉、または選挙妨害を行い、選挙法の基本理念とする選挙の自由と公正とを全く没却した。これは前述した法第二百五条第一項に定める「選挙の規定に違反する」場合に該当し、しかも選挙の結果に異動を及ぼす虞れがあるから、本件選挙は無効である。
その事実としては、
一 日製が、企業体として全組織をあげて不法な選挙運動を展開したのは日製社長倉田主税が昭和三十四年四月二十三日、日立市常磐館において、福田候補に対して市長候補辞退を勧告したが同候補の容れるところとならなかつた結果、「骨は会社が拾うから、違反をかまわず全面的に運動せよ」と指令を発したことによるものであり、日製の組織、職制を通じ、全面的な選挙運動に入つたのである。
二 日製は高島候補を応援するため、本件選挙の期間中連日職員及び工員に有給休暇を与え、また職階制を利用して、幹部の指令をもつて従業員壱万五千人を動員した。運動員は、毎日平常通り出勤し、出勤簿に捺印をすると強制的に運動に参加させられ、あたかも作業に従事させておるごとく装つていた。その間の賃金はもちろん作業賃金として支払い、残業手当を計上し、日当及びバス賃に充当した。また、これら従業員は、個別あるいは集団的に市内の全地域に亘り、親戚、友人、知人、その他の縁故者あるいは、取引先を戸別訪問し、投票を依頼し又は威力を加えて投票を強制したり、デモ行為等を行つた。すなわち全面的且つ組織的に運動員を動員して、白昼堂々と市内において行つた不法行為は、民主国家の道義を無視したものであつて天人ともに許しがたき暴挙である。
三 日製の下請工場全部に対し、「若し高島候補に投票しないとか、運動しない場合は、その取引を停止する。」と再三申し渡し、生存権を奪うような威力を用いて、投票させようとした。また、主たる工場内に日製の従業員を派遣し選挙運動について監督及び監視した。
四 日製に出入している取引業者及び日立市の生成以来、日製に圧倒的比率において経済的に依存している商店に対して「若し高島候補に投票しないとか、運動しない場合は、その取引を停止する」と再三申し渡し、また日製の運動員は、集団的に市内の商店を襲い「高島候補に入れなければ不買同盟を結んで店をつぶしてやる。」「お前のところとの取引を停止する。」といつて生存権を奪うがごとき威力を用いて心理的に恐怖させ投票させようとしたのであつて、選挙人に与える心理的影響は甚だしく、これでは自由な投票は期待し得ない。
なお、その数は数えるにいとまない状態であつた。
五 日製及び日製労働組合は、福田候補の当選を得させないための妨害の目的をもつて、不法印刷物、ポスターあるいは日製から立候補した市議会議員候補者による言論等により福田候補の個人攻撃をなし、同候補の選挙を不利にした。
六 日製から立候補した市議会議員及びその圧力によつて引き込んだ候補者等の選挙運動用自動車とマイクを利用し、それ等の候補者をして自分の運動をさせずに、市長候補者高島秀吉の運動をさせた。それ等の候補者は、中村藤吉、小林初雄、益子太一、藤田浩蔵、山本喜四雄、梅原薫司、山川次男、武士一弥、渡辺四郎、綿引恒之介及び井上清一である。
七 本件選挙の候補者高島秀吉は、選挙運動中二台以上の自動車を使用し、市内をデモし、且つ運動をした。しかもこの場合、各自動車を引き離すことなく連ねて終始運動していた。
八 昭和三十四年四月二十四日茨北新聞社主催の多賀公民館における立会演説会に、日製社員約千名が会場に組織的にあらわれ、福田候補の演説に対して妨害をなし、これがため同候補の演説は不能となり、中止のやむなきに至つた。
九 選挙事務所は候補者一名につき一箇所のみしか設置できないにもかかわらず、本件選挙における高島候補の選挙事務所は届出場所以外に日製国分工場内、日製電線工場内、日製多賀工場内、日製日立工場内、日製山手工場内及び日製山崎工場内の六箇所に開設した。
というのである。
なお、主張として昭和十七年(選)第七号同十八年十月二十九日大審院判例及び昭和三十年(ナ)第三号同年八月二十六日大阪高等裁判所判例を引用し、前記事実の証拠等として、証人の申立(日立市河原子町朝日敏夫外六十九名)、陳述書(選挙の結果に異動を及ぼすおそれがある場合の見解)、上申書(昭和三十四年九月二十八日付調査に関し公正を欠く)及び次の書類を提出した。
〈省略〉
裁決の理由
この訴願は、法第二百二条第二項の規定により提起されたものであり、これを受理して審査するに、法第二百五条は選挙の効力に関し、訴願の提起があつた場合において、選挙の規定に違反することがあるときは、選挙の結果に異動をおよぼす虞れがある場合に限り、当該選挙管理委員会は、その選挙の全部又は一部の無効を裁決しなければならないと規定している。
「選挙の規定に違反する」とは、主として選挙の管理執行機関が選挙の管理執行の手続に関する明文の規定に違反する場合、又は直接明文の規定はなくとも、選挙が選挙法の基本理念である選挙の自由公正の原則に反する手続によつて行われた場合を指称するものであり、候補者、選挙運動員又は選挙人等が選挙法の個々の取締規定に違反した場合を含むものではないが、極めてまれな事例として官憲その他による甚だしい弾圧、干渉、妨害又は広範囲に亘る買収誘惑等不法な選挙運動又は選挙干渉もしくは選挙妨害が、一定の選挙区に亘り全面的且つ組織的に行われ、当該選挙区の選挙人に対し、その自由意思に基く投票が全面的に著しく抑圧され、選挙法の基本理念とする自由と公正とが全く没却せられたような場合もこれに含めるべきであると解するを相当とする。また、「選挙の結果に異動をおよぼす虞れがある場合」とは、その選挙の規定違反がなかつたならば選挙の結果につきあるいは異つた結果を生じたかも知れないと考える場合と解すべきであり、これらは数多判例の示すところである。したがつてこの点についての訴願人等の主張は認めることができる。
しかして訴願人等は、日製の地域社会におよぼした政治的影響として、日本人文科学会の調査報告書の「近代鉱工業と地域社会の展開」の論説を引用し、本件選挙の政治的背景について主張しているが、日立市の生成過程からみて日製の影響が何等かの形で直接又は間接に及んでいることは、学問的に種々究明論議されているけれども、これは当委員会の関知しないところである。
よつて日製が前述した「官憲その他」の「その他」に含まれるかどうかは、疑問の余地もあるけれども、本件選挙において、訴願人等の主張するように、日製が全組織をあげて選挙区全地域に亘り、全面的且つ組織的な不法な選挙運動、甚だしい選挙干渉又は選挙妨害を行ない、選挙法の基本理念とする自由と公正とが全く没却されたかどうか判断するため、訴願人等の申立による証人及びその他の一般選挙人等から供述を求め、これらを総合して事実的にまた法律的に慎重な検討を順次行うこととする。
なお、選挙管理機関である市委員会について、選挙の管理手続の違反の有無について調査したのであるが、その違反の事実は認められない。
第一  訴願理由第一点について
日製日立工場、又は日製多賀工場、日製国分工場及び日製絶縁物工場の各総務部長から供述を求め調査したのであるが、日製社長倉田主税が「骨は会社が拾うから、違反をかまわず全面的に運動せよ。」と指令を発した事実及び昭和三十四年四月二十三日日立市常磐館において、福田候補に対して市長候補辞退を勧告した事実は認められず、またかかる証拠もない。よつて訴願人等の主張は根拠がなく採用できない。
第二  訴願理由第二点について
前記第一に記載した各総務部長、日製各労働組合関係者、訴願人等からの申出による証人及びその他の関係人から供述を求め、特に日製従業員に対しては、万やむをえない場合を除いて自宅を訪問し、自由意思の表現を得べく配慮し、さらに各工場勤労課及び会計課から資料を徴し調査したのであるが、これらの者は、一致して選挙運動のために有給休暇を「与えた」又は「与えられた」事実はないと供述しており、日製幹部の指令をもつて職階制を利用し、従業員壱万五千人を動員した事実は認められない。これについては供述者の供述ばかりでなく、各工場の出勤及び給与等に関する資料からも認めることができる。
また、従業員は毎日平常通り出勤し、出勤簿に捺印すると強制的に運動させられた事実も認められない。さらにまた、その賃金は作業賃金として支払い、残業手当を計上し、日当及びバス賃に充当した事実も認められない。
しかしながら日製各労働組合が組合活動の一環として自己の所属の職場等から市議会議員候補者を推薦し、又は茨城県労働組合連盟日立地区協議会の決定にもとずき、本件選挙に高島候補を推薦し、組合員を通じて選挙区全地域に亘つて選挙活動を展開したことは認めることができる。しかしてこれら選挙活動に参加した組合員は、組合活動のため離席票又は個人の請求権に基く有給休暇を活用して、選挙活動に参加したものであり、各職場等から身近の同僚等を推薦した関係があつて、市議会議員候補者の選挙を重点として行ない、本件選挙はそれに便乗して行なつたと主張しているが、親戚、友人、知人、その他の縁故者等に投票を依頼したらしきことは認めることができる。しかしこれら組合員の言動は、単に「よろしく頼む」と言つた程度であり、選挙人の自由意志を抑圧する程強力なものでなかつたこと、組合活動のため離席票を提出し又は有給休暇をとつた者の数は大多数でなかつたこと及びデモ行為を行わなかつたこと等は前記供述者の供述からも、また離席票に基いて賃金カツト(日製においては組合活動のため離席した場合は所定の届出を要し、賃金は当然カツトされ、この場合は同額が労働組合から支給される。)された額及び出勤等に関する資料からも認められる。
したがつて前述のとおり、労働組合活動の一環として、全地域に亘つて投票依頼行為が行われたと推定できるが、選挙人に対しその自由意思に基く投票が全面的に著しく抑圧され、選挙法の基本理念とする自由と公正とが全く没却せられたとは認められず、かりに組合員の一部に戸別訪問等のうたがわしい違反事実があつたとしても、これは前述したとおり、選挙法の個々の取締規定によつて罰則の適用をされるべきものであつて、これをもつてただちに選挙無効と断定することはできない。よつて訴願人等の主張は採用できない。
第三  訴願理由第三点について
訴願人等からの申出による証人及び日製との下請業者からの供述を求め調査したのであるが、「圧力というものは感じなかつたし、投票依頼の行為もなかつた。」又は「下請工場は仕事上の関係で監督のため毎日日製の従業員が来たり、また下請工場の方から業務連絡のため日製に行つており、その際“よろしく頼む”程度の話があつたが、それ以上強迫するような言動はなかつた。」と供述しており、訴願人等が主張するように生存権を奪うような威力を用いて自由意志を抑圧し、選挙法の基本理念とする自由公正を害した事実は認められず、かかる証拠もない。
なお、訴願人等は証拠の申出において日立工業株式会社に選挙運動を強制した事実をあげているが、同会社が創立記念祝賀式を昭和三十四年四月二十三日、日立商工会議所で行つたこと、このとき市議会議員候補者中村藤吉があいさつしたこと及び日製のボイラー製造従業員が同会社の一部を借りて仕事をしていた(従業員十二名、班長熊谷某)事実は、訴願人等の主張するとおりであるが、右祝賀式で同会社社長のあいさつを中止させて中村藤吉があいさつしたこと、高島支持者人名簿の提出を強要したこと及びボイラー製造従業員を毎日業務上の外出により選挙運動させた事実は認めることはできない。よつて訴願人等の主張は採用できない。
第四  訴願理由第四点について
訴願人等からの申出による証人及び日製供給所関係者から供述を求め調査したところ、特定の取引業者については、訴願人等の主張するような「取引停止」までに至らなくても取引停止に近い状態があつたことは認めることができるが、当該取引業者にとつて、そのことによつて自由意志が阻害されなかつたことは前記特定の取引業者の供述から明白である。それ以外の訴願人等の主張の事実については、日製従業員から単に「よろしく頼む」といわれた程度で、日製が生存権を奪うがごとき威力を用いて心理的に恐怖させ、選挙人の自由な意思による投票を著しく阻害した事実は認められない。
第五  訴願理由第五点について
訴願人等が第五に係る証拠として提出した印刷物及びボスターの出所、頒布の状況は、次のとおりである。
(1) 甲第二号証の多賀労組教宣部速報は、約三千七百部印刷し、組合員全員に対するPRのため配布したものである。
(2) 甲第七号証の一、甲第七号証の二の日立工場新聞「日立」は、同工場勤労課が編集し一万二百部印刷し従業員、社内他工場及び官公署等に配付したものである。
(3) 甲第八号証のTHE、TAGAは、多賀工場の発行した機関紙で約五千部印刷し、従業員に配付したものである。
(4) 甲第十四号証(1)の高島秀吉後援会日製下請工業協同組合支部の「高島秀吉後援会入会のお願い」と記載した趣意書は、同組合傘下の工場主に配付したものである。
(5) 前記以外の印刷物(甲第一号証、甲第三号証の一、甲第三号証の二、甲第四号証)は不明である。
以上前記印刷物及びポスター等が市内に頒布されたことは窺われ、前記(1)から(5)までのうち、その記載の内容、頒布の方法等からいわゆる不法印刷物の疑のあるものもあるけれどもそれは選挙法の個々の取締規定によつて罰則の適用をされるべきものである。
また、訴願人等は、市議会議員候補者によつて福田候補の個人攻撃をなしたと主張しているが、市議会議員候補者の供述からは、かかる事実は認められず、かかる行為があつたとしても前述のとおり個々の規定違反であつて、選挙無効の原因とはならない。よつて訴願人等の主張は採用できない。
第六  訴願理由第六点について
訴願書に記載してある日製から立候補した市議会議員候補者から供述を求めたのであるが、供述者は、「自分の運動が精一杯であり、街頭演説等の際、一部地区においては“市長には高島候補を”という程度の話を自分の演説のついでに行つたことはあるが、あくまで自分の運動が主であり、選挙運動用自動車及びマイクを市長選挙に専用して使用せしめたことはない。」又は「日製からそのような圧力をかけられたことはない。」と一致して供述しておりかかる事実はないと認められ、訴願人等の主張は採用できない。
第七  訴願理由第七点について
訴願人等の主張の事実は、当委員会の調査からは確認できなかつたのであるが、かりにかかる行為があつたとしても、これは選挙法の個々の取締規定により罰則の適用をされるべきものであり、選挙無効の原因とはなり得ない。よつて訴願人等の主張は採用できない。
第八  訴願理由第八点について
訴願人等からの申出による証人及び多賀公民館職員の供述を求め調査したのであるが、昭和三十四年四月二十五日多賀公民館において福田候補の個人演説会(訴願書には同年四月二十四日茨北新聞社主催の多賀公民館における立会演説会と記載してあるが、日立市においては「市長選挙立会演説会条例」はなく、立会演説会は開催できないから同年四月二十五日多賀公民館における個人演説会の誤りと認める。)が行われたこと、演説会場には約七百人ないし千人程度の聴衆が集まつたことは事実である。なお、この個人演説会について、法第百六十三条の規定による公営施設使用の申込のあつたのは福田候補のみであり、高島候補は申込をしていないから、高島候補は演説できないのは当然である。また、福田候補の演説について、野次が相当あつたと認められるが、同候補の演説は最後まで行われ、演説が全く聴きとれなかつた状態ではなく、演説不能で中止したことはないと供述しており、なおまた、日製従業員が組織的に妨害した証拠もないから、訴願人等の主張は採用できない。
第九  訴願理由第九点について
前記第一に記載した日製の各総務部長及び日製各労働組合関係者等から供述を求めたのであるが、「日製工場内に選挙事務所を開設した事実はない。」と供述しており、また開設した証拠もない。かりにこの事実があつたとしても、これは選挙法の個々の取締規定により罰則の適用をされるべきものであり、選挙無効の原因とはなり得ない。したがつて訴願人等の主張は採用できない。
以上総合勘案するに、選挙は訴願人等がいうように、選挙人の自由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われなければならないことはもちろんである。そのため選挙法規は、選挙管理機関に対し、所定の手続を厳格に履行することを命じ、これに違反した場合は、その選挙を無効とする場合があることを定め、また選挙運動をなす者に対しては必要な制限を加え、その違反者については、別の機関によつて処罰されることとしているのである。
すなわち、選挙の公明適正は、選挙の管理執行にあたる機関が忠実にその職責を果すのみならず、候補者、選挙運動員による正当な運動及び選挙人の自覚と勇気によつて、初めて確保できるものであることは論をまたないところであり、法第二百五条に「選挙の規定に違反する」と規定するのも、畢竟以上に述べた選挙の本質にふれる違法な行為を指称しているものである。
しかしながら本件選挙において、日製各労働組合が組合活動の一環として、全地域に亘つて投票依頼行為を行つたこと、一部の日製関係者によつて、特定の取引業者に対し、本件選挙と関連して取引を停止するに近い遺憾な状態が起つたこと等は認められるが、訴願人等が主張するように、日製が全面的且つ組織的に不法な選挙運動、選挙干渉及び選挙妨害を行い選挙人の自由な意思による投票を著しく阻害し、選挙法の基本理念とする自由と公正とを全く没却したとは認められず、また認めるに足る証拠もない。したがつて日製及び日製各労働組合が、かりに前述した「官憲その他」の「その他」に含むという見解をとるとしても、訴願人等の主張は採用できない。
よつて法第二百五条の規定に違反し、選挙の結果に異動を及ぼす虞れがあると認められないから、選挙無効とすることができない。
したがつて訴願人等の異議申立を棄却した市委員会の決定は、その理由が不十分ではあるけれども結論としては正当であるということができる。故にこれを違法としてその取消を求める本訴願は、理由なきに帰し、棄却を免れないものである。
よつて、当委員会は、主文のとおり裁決する。
昭和三十四年十一月四日
茨城県選挙管理委員会
委員長 橋本正男

被告準備書面(第二)
被告委員会は、これまでの証拠調の結果、原告等主張のごとき事実を認定し得ないこと、並びに本件選挙の真相は、被告委員会が訴願裁決書及び準備書面(第一)に記載したとおりであることが明らかにされたと信ずるが、以下逐次被告委員会の見解を申し述べる。
一 原告等の「日製倉田社長が、選挙干渉を指令した」旨の主張について
(1) 右の点については、証人松原寛、本間博、福田重清等の各供述によつて右主張の失当なことが、完全に立証されたと考える。
右供述によつて明白なように、日製・日鉱両会社首脳部は、共に従来の経緯に鑑みて、福田、高島両候補が相争う場合にはかならずや深刻な対立と泥試合が行われるであろうと憂慮し、日製側ではあらかじめ高島に不出馬を要請し、一応高島をして出馬を断念せしめたのが真実である。
(2) 一方、地元有力者達の中においても、証人中村藤吉、同福田重清の供述を綜合して認められるように、大内竹之助、富田正二、内山佐平等は、同様な見地から、しきりに両候補を断念せしめ代るべき候補者を発見して事態を調整せんとした事実が認められる。昭和三十四年一月二十七日に地元有力者等が日製倉田社長と面会した際、万田五郎を推薦したのもそのあらわれである。
さらに右供述によれば、右調整案は、万田五郎が固辞して実現せず、結局両候補の争いとなり、怪文書や、日製を誹謗する流言の横行という泥試合になつたので、両社首脳部は、その収拾について協議のうえ万田五郎の説得に成功し、四月二十一日の両候補に対する辞退勧告となつた経緯が明らかに認められる。
(3) 原告等は、右勧告を捉えて不法な選挙干渉であると主張するけれども、前述のごとき経緯、勧告の趣旨、応答の内容、態度(福田証人は何等礼を失するところはなかつたと供述している。)、時間等いずれの点からみても原告等の主張は失当であり、被告委員会が前述したように紛争解決のための善意の調停にすぎないことが明瞭であろう。
なお、原告等は、右勧告に際して、両社長が万田五郎を後任に推したことを非難するけれども、先に述べたように、両社長が万田五郎を推したのは、昭和三十四年一月二十七日に地元有力者(福田重清支持者を含む)が万田五郎の名を挙げたので、万田五郎ならば両派が納得するものと考えたにすぎないのであつて原告等の非難は失当である。右会見に同席した福田重清支持者等は、大内竹之助が日製倉田社長に対し、万田五郎を推した際には、その場では少しも反対しないで、翌日福田重清に会つて「社長は同意しないものと思つて、万田五郎の名を出したが、同意されてしまつたから、貴方が万田五郎に会つて、立候補を引受けないような立候補勧告をしてくれないか。」と述べた旨証人福田重清は供述している。このように表では賛成し、裏では万田五郎の立候補を阻止する工作(しかも、一見立候補勧告をするふりをして実際は阻止するというような手の込んだ工作)をするのでは、両社首脳部が、前記大内竹之助の発言をその際同席した全員の意向と誤解するのも当然である。(さればこそ、内藤総務部長も大和田重実等の真意を解しかねて、両社長の勧告失敗直後「大和田重実に恨みを言いに行く」ようなことになつた。―証人内藤半三の供述)してみれば非難すべきはむしろ地元有力者中の福田重清支持者等であると言わなければならない。
(4) 以上述べたように、原告等のこの点に関する主張は、事実無根である。日製が本件選挙を昭和二十五年の大ストライキに匹敵する大事件と考えたり、社長が「骨を拾うから違反をかまわずやれ」と全企業体を挙げて不法な選挙干渉を指令したと言うような事実は全く認められない。むしろ、日製、日鉱の両首脳共に、会社が高島、福田の対立に捲き込まれることをおそれて種々の努力をなした事実が認められるであろう。
原告等は、本件選挙は、日立市において絶対的な勢力を有する日製が、社長の指令下に、全企業体を挙げて全選挙区にわたり、組織的かつ全面的に不法な選挙干渉をしたものであるから、東条内閣の命令のもとに、官憲の弾圧下に行つたいわゆる翼賛選挙と等しく無効である旨主張しているが、以上のごとく日製に何等選挙干渉の意図がなく、日製による全選挙区にわたり、組織的かつ全面的に不法な選挙干渉があつたと認め得ないとなれば、本件選挙に際し偶々発生した個々の選挙違反はそれぞれ個々の罰則規定の対象となるにすぎず選挙の効力に無関係であるから、(原告等が引用する大審院昭和十七年(選)第六号、同二十年三月一日判例)(東京高裁昭和二十八年(ナ)第三号、同二十八年五月十五日判例)かかる違反行為の有無を論ずるまでもなく原告等の主張は失当であると考える。
(5) なお、右に述べたように両社長の勧告の趣旨、内容を歪曲して「日製倉田社長が深夜午前二時にわたるまで数時間にわたつて辞退を勧告して本件選挙に干渉した」とか「骨は会社が拾うから違反をかまわず全面的に運動せよ」と指令したとか(かかる指令をする筈のないことは、証人本間博、内藤半三、中村藤吉、梅原三喜男等の各供述や前掲の経緯から明らかである。)いう噂となつて市中に流布されたが、何故に、また何人の手によつてかかる悪質な流言が流布されたかは極めて注目すべきことであつて、後に、個々の問題につき詳述するが、本件において、証拠の価値を判断し事の真相を究明する上に十分なる警戒をなさねばならぬところであろう。
二 「日製が昭和三十四年四月二十三日以降同月三十日の前夜まで職制を通じて部課別に延二万五千人を動員して縁故者を戸別訪問せしめて投票を依頼した。」「日製が一般商店街または日製下請企業の選挙人に対し、威迫行為をなした。」旨の原告等の主張について
(1) 日製首脳部が両候補の泥試合をおそれこそすれ、本件選挙に関し、組織的かつ、全面的に不法な選挙干渉をしようという意思のなかつたことは、すでに述べたように明らかである。
また日製の現地所在各工場の幹部が社長等の意向に従つて中立を標榜していた事実も、証人内藤半三の供述及び高島の側近者である中村藤吉や後援会側の梅原三喜男の証言からも明らかである。
本件選挙において、高島のために運動した証人会沢福寿、中村藤吉、梅原三喜男の各供述によれば高島候補を支持したのは
(一) 日製各工場労側組合を主体とするいわゆる日立地区労働組合協議会加盟の各労働組合(本件選挙運動の中心が日製会社側の不同意をも押切つて立候補を決定させた労働組合―社会党関係者にあることは全証拠により明らかである。)
(二) いわゆる高島後援会を中心とする一般市民(長期にわたつて市長として在職したので一般の支持者の多いことは想像に難くない。(参考乙第二号証)
(三) 高島候補と個人的に関係のある日製従業員(それらの相互間に必ずしも緊密な組織連絡がなかつたことが認められる。―この間の事情は高島側近者や後援会側では、日立市所在日製各工場の幹部等が冷淡であると不満をさえ抱いていた事実からも推測されるであろう。)
等である。
(2) 原告等は「日製の供給所出入の商人や下請業者が運動したのは前記日製倉田社長の命令によつてなされた日製の圧力に届したからだ」と主張するけれども失当である。これらの人々を含む市民等はそれぞれの思想や縁故関係等から或いは両候補の一方を支持し、或いは調停に努め、更には、その行懸り上いずれをも支持しなかつたものと考えられる。一例を挙げるならば
(一) 内山佐平の長男が高島後援会支部の看板を掲げた事を原告等は圧迫であると主張するけれども被告委員会の調査したところによれば同人は、日製の下請工場を営んでいる関係で高島候補やその側近者と縁故が深いので、進んで同候補を支持したものである。
また、内山佐平が商工会議所会頭を辞めた理由は、被告委員会が同人並びに主治医についてなした調査によつても明らかに心臓病のためであり、被告委員会職員が調査のため同人方を訪れた際も療養中であつた。その際本件選挙に対する同人の見解を訊ねたのに対し「自分は、両候補とも縁故が深く泥試合をさせたくなかつたので万田五郎の立候補を最善と考え調停したかつたが、病気のため何も出来なかつた。息子は前記の如き関係から進んで高島候補の運動をした。」旨答え、選挙につき日製から同人が何等の交渉も受けなかつたことを明言している。
(二) 富田正二は、日製の有力なる下請業者であり、両候補の調整に努力したが不成功に終つたので中立を唱え、従つていずれの後援会にも加入していない。
(三) 本宮重吉も有力な下請業者であり、同人が圧迫された旨の噂が広く流布されたが、被告委員会が同人を調査したところによると、本宮重吉は中政連日立支部の幹部として福田重清支持の立場が明確であり、「昭和三十四年三月中に友人の浅野春三(高島の出納責任者、日製国分工場総務部長であるが同工場は本宮重吉と取引関係はない。)に呼ばれて両候補の調停の見込みを訊ねられたが、中政連としては絶対引退らない旨答えた。その際、浅野春三から何等圧迫がましいことはいわれなかつた」と供述している。
右のような状況であつて、いずれも取引を停止されたとか停止するといわれたとかいう事実は見受けられない。(下請業者で現実に取引を停止されたもののないことは、原告等の申立の証人宇野修吉も反対訊問に際し認めているとおりである。)
なお、本件選挙中に、日渡和一郎の妻子と、多賀工場厚生課主任安久井幸三郎との間に口論に近いやりとりのあつたことは認められるが、乙第十九号証各証記載のとおり安久井主任が訪問したという十三日の翌日たる四月十四日、十七日にも納品しているし、五月四日にも納品している。しかして多賀工場との取引が減少したことは事実であつても、原告等の主張するような取引を一ケ月も停止され、代議士等の数次にわたる斡旋で取引が再開されたというようなことは、単なる流言にすぎない。なお、日渡和一郎の別の納入先である日立工場供給課との取引には全然影響が認められない。
原告等は、さらに日立工場資材部が製缶部総会の名目のもとに、下請業者を招集して後援会の結成を強制したと主張するけれども、右は、下請企業の組合側が自ら組織したものであつて、これは証人中村藤吉の供述が真実であると思われる。(原告等の主張は、実在しない人の名を挙げたりして、主張自体不正確なことが認められる。)
(3) 以上に述べたことからも明らかなように、原告等が主張するような(また当時市民に流布された噂のような)日製が全選挙区にわたり、組織的かつ全面的に不法な選挙干渉をしたとは認められない。
日製の下請業者や出入業者等は、前述日渡和一郎のように自由民主党員でもあり、福田重清候補の側近擁立者である者は別として、取引上も一市民としても縁故の深い高島候補を自ら支持したにすぎないと認められる。
また、原告等が地元市民はすべて福田重清の支持者であるかのごとく主張し、市民対日製の闘争のごとく主張するけれども、根拠のない独断的な見解にすぎない。
(4) 次に、原告等は、日製側で動員された運動員の人数が延二万五千人であるとか、交通量が運動員によつて平日の二、三倍に増加したとか、主張し、他面では、福田派では戸別訪問をした事実はほとんどない旨主張し、原告等の申立にかかる証人は悉く右に沿う供述をし、また証人塩田陽平の執筆した朝日新聞の記事によれば、人海戦術などと形容している。しかしながら、右のごとき主張は、主張自体不可解である。(激烈なる選挙というからには双方共運動した―例えば乙第二号証の記事のように―ならば首肯できるけれども)また、これに沿つて証言した証人が、虚心坦懐に自己の見聞した事実をそのまま供述しているとは到底考えられないので、これ等の供述に果していか程の信をおいてよいか疑わざるを得ない。この点については、被告委員会は、日立警察署について調査したけれども、戸別訪問がどの程度になされたか結局不明であつた。しかしながら、少くとも選挙人の選挙の自由と公正とが著るしく害される程の一方的且大量の戸別訪問が公然と行なわれたと認めうる根拠のないことは明らかである。
また、いわゆる人海戦術なる記事については、他の証拠ともあわせて福田派が本件選挙について故意に放つた流言と考えられる。
なお、日製が運動員に賃金を支給したとの原告等の主張も、これを認める証拠が全くない。証拠によれば、日製各工場労働組合がある程度の組合員を市議会議員選挙を中心として動員したこと、これに対して組合から補償をした事実は認められるが、その数はたいして多数でなく、かつ日製ではその分の賃金をカツトしているものと認められる。
(5) 次に原告等は、「日製従業員が一般商人に対して『不買同盟を作る』とか、『供給所を作つて店をつぶしてやる』とかいつて脅迫した」旨主張するが、当時そのような噂があつたことは事実であり、証人黒沢一太、児玉且代も噂を聞いた旨を供述している。
しかしながら、本件選挙にあたつて利益の供与を申出するならともかく、逆に加害を告知して脅迫するがごとき行為はいたずらに当該有権者を敵側に走らす結果にするにすぎない。(人口十五万の日立市にあつては、山村と異なつて誰が何人に投票したかなどとは到底判らないのである。)したがつて、右主張は主張自体不自然である。
原告等申出にかかる証人石井慶次は、「自分の店に日製従業員が来て、ペンペン草を生やしてやるといつて長時間頑張つていた。」と供述しているが、すでに乙第十六号証の証拠説明書において述べたとおり、石井慶次は、福田候補の腹心であり、中政連日立支部の役員であつて、市民の間で著名な人物である。しかも当時増築中の「みどりデパート」の三階を福田後援会から引続き同候補の選挙事務所に提供し、その一階の一角で「グリーンハウス」と称する店を経営していたのである。したがつて、そのような所へ、いわば敵陣に乗り込んで選挙妨害罪を実行するとは、全く考え難い。
また、同証人は、富田呉服店(富田重春)に行つて脅迫した者があると供述しているが、富田重春は、乙第十五号証(森川文之助の被告委員会に対する陳述書)によつても明白なように、躍進会の幹部として同会の競落した土地利用のため一部を日製のシヨールームまたは供給所に提供して、日製とタイアツプしたいと考え日製への接近に努力していた人物であり、もちろん高島支持者であるから、同人を長時間にわたり訪問して脅迫するなどということはあり得ない。
また、石井慶次の供述によると選挙運動期間中は、日製運動員によつて毎日日曜日のような人出(平日の二、三倍)であつたというのであるが、仮りにそのような大規模な動員をしたとしたら、工場は生産を停止せざるを得なかつたであろう。これは余りにも誇張に過ぎて措信し難い。(乙第十八号証完成高回答書)
これらの諸点を綜合し、かつ原告等の主張によれば、脅迫された市民は極めて多数あるはずであるのに、そのような証人の見当らない事実(例えば黒沢一太は原告等の主張では脅迫されたはずであるが実際には脅迫されたという話を聞いただけなのが真相である。また児玉且代の供述も反対訊問及び被告委員会の調査によれば結局同人が脅迫された事実はないようである。)を考えあわせると石井慶次の供述は正直に体験した事実を述べたものではなく、福田派が選挙中になした宣伝を法廷においても繰り返えしている疑いが濃い。
なお、佐藤方也の供述と森川文之助の陳述書を対比すれば、森川文之助の陳述が真実であり、佐藤方也の供述が虚偽であることは確実である。
(一) 会合の計画された経緯
(二) その当時の富田重春等の計画及びその後計画が実現されず、土地を手放した事実
(三) 会合の席上でなされた会話の内容(佐藤方也も投票を依頼された事実のないことを認めている。)
(四) 会合の開始された時間(店を閉める前に突然呼び出されたことを佐藤方也は認めているが、このような夕食や晩酌をすでに済ませてしまつた時間はおよそ饗応の時間としては不自然であり、富田重春等が玉村秀雄に面会を求めていたからこそ、玉村秀雄の都合でこのような時間に面会した事が首肯される。)
(五) 明瞭な福田派を交えて双方の支持者が招集されている事実
(六) 佐藤方也は一回と述べているのに原告等は何故か数回にわたつて三十名に対しなされたと誇張されていること
以上、石井慶次および佐藤方也の供述からみても、原告等の主張の事実は、一連の反高島派の計画的な宣伝であつたと考えざるを得ない。
三 「多賀公民館における選挙演説の妨害」について
甲第四号証、乙第一号証、証人梅原三喜男の供述及び証人須藤淳次の供述(一部)を綜合すると、本件原告川村義一は、同日の演説会には、高島候補は無関係であるにかかわらず、あたかも両候補の立会演説会であるかの如きビラを配布した。(配布は四月二十四日または二十五日で、乙第一号証の届出は同月二十二日である。)しかも、梅原証人の供述によれば原告川村義一はその前日にも久慈公民館における福田候補の演説会に際して、甲第四号証と同様のビラを配布した事実が認められる。しかして同証人の供述によれば「主催者が高島候補が来ないと述べ、それに対し怒りの弥次がとび、聴衆の間でも弥次の応酬があつて会場は騒然とした。」というのである。被告委員会が調査したところによると、主催者たる原告川村義一が高島候補が逃げたように非難したのがきつかけで、前日の経験から同日も同様の事態の生ずることを予知して来場していた一部聴衆の反撃を買い、相当の弥次りあいになつたのが真相のようである。
原告川村義一が故意に虚偽のビラを配布した目的が「高島候補が立会演説会を逃げた。」という不利な印象を聴衆に与えんとしたものであるか、それともかような混乱を惹起せしめて高島候補、日製攻撃の材料とせんとしたことにあつたかは不明であるが、混乱の責任が原告川村義一にあることは明らかであり、選挙妨害であると主張するのは失当である。また原告等は電燈を消したことを現場の状態が不穏であつたことの証拠のように述べるけれども消燈したのは演説会終了後、高島秀吉支持者等が茨北新聞社のビラは虚偽であることを聴衆に説明しようとして壇上に上つたので、急遽、原告川村義一がこれを阻止しようとして公民館の係員に依頼し消燈させたものである。
四 「日製の違反文書の頒布」について
本件選挙について双方が相当多数の怪文書を頒布した事実は、各書証によつて明らかである。
原告等は、日製が組織的に大量に行つたものであり、福田派はそれに誘発されて多少なしたように主張するけれども全く事実に反する。
被告委員会の調査したところによると、本件選挙に関連して最初に現われた怪文書は、「昭和三十四年三月付日立市長高島秀吉氏に問う日立市政懇話会」なる文書(乙第三号証)が同年四月五日新聞に折込んで頒布されたことである。右折込は、たゞちに日立警察署並びに日立市選挙管理委員会の知るところとなり、新聞販売業者につき警告するとともに、捜査をしたが、業者は依頼者の氏名を知らないといい、犯人検挙に至らなかつた事実がある。
その後高島派も最初は右非難を反駁する形で怪文書を頒布し、互に相当多量の怪文書の応酬をしたようで、かように応酬を重ねたいずれの方が、より大量により組織的になしたかなどとは到底不明であるが、しいて責任を求めるならば、原告等の主張とは反対に、福田派がその口火を切つた責任を負わなければなるまい。したがつて、原告等の前記主張は失当も甚だしい。
五 「入場券返還運動等」について
原告等は、日製が全選挙区にわたり組織的かつ全面的に不法な選挙干渉を展開したので、入場券返還運動が起つたと主張するけれども、右の運動は原告鈴木桂吉とその家族及び原告の近所の者のほかは、本件選挙無効訴訟の応援者であつた故姫野忠夫の娘のみであつて、これに呼応した者は誰もいない。
前後の経緯からみて、かかる無意味なことをした理由はむしろ、当時進行中の異議申立、訴願の際の材料ではなかつたかと考えられる。いずれにせよ原告鈴木桂吉等が入場券を返還した事実は、別に本件選挙の実態と関係があるとは認め難い。
なお、甲第十五号証(証人塩田陽平の執筆した朝日新聞記事)によると、河原子のほか、「久慈、川尻等ではすでに選挙権返上運動の火の手が挙つている。」と記載されているが、日立市選挙管理委員会並びに被告委員会の調査の結果によつても、全くかかる事実はない。(さらに甲第十五号証記載の申合せの有無につき、被告委員会は、皆川きよ婦人会長について調査をしたが、当日総会が開催されたことは事実であるが、かかる申合せをした事実はなく、自分も副会長もそのような談話を発表したことはない旨答えている。)
さらに、原告等は、愛市同志会その他の動きがあつたことを主張するけれども、第一準備書面で述べたようにかかる団体そのものの存在が不明であるので、原告等の主張は到底認め難い。
六 被告委員会は、以上に述べたように原告等の各主張について検討したけれども、わずかに、日渡和一郎に関しては多少原告等の主張に類似した事実を得た(しかし、原告等の主張は、前記のように事実に比して非常に誇張していることに注意せねばならない。)ものの、その他の大部分は、右に述べたように事実無根であり、しかもかかる主張をなすにいたつた理由について調べてみると或るものは「内山佐平が商工会議所会頭等を辞任した原因について、日製の圧迫を受けたのだろう」という噂のように、或は単なる推測から出たとも考えられるものもあるけれども、中には決して自然発生的なものと考えられないものが極めて多い。
たとえば、前記「両社長の勧告」が「深夜に及ぶ辞退の強要干渉をした」「骨を拾うから違反をかまわず運動せよと指令した」等という歪曲された噂となつて市中に流布されたのなどは、右中村会談に立会つた人数や、噂の発生までの時間的関係等からみても自然発生的なものと認め難く、却つて次の事実を考え併せると、当時市中に流希されたこれらの噂は、乙第十七号証各証にみられるように、得票能力において到底敵し得ない高島派に対抗する少数派の戦術としての故意の流言ではないかとの疑いを抱かざるを得ないのである。
(一) 右立会つた人達は、前記万田五郎に対し擬装立候補を勧告した事実のあること。
(二) これらの人達が本件証拠調の際に明白なる偽証をしている事実(大和田重実の偽証(擬装立候補の勧告)については、前述したが、内藤総務部長が「選挙に負けると日立にいられなくなる」などと大和田重実に実際にいつたとは、前後の経緯からみて信じ難い。かような供述は、当時大和田重実等が日製倉田社長についてと同様に、日立工場幹部に対しても流言を放つていた疑を強めるものである。また、勝間田俊太郎については、福田派では怪文書を頒布した事実はないと偽証している―乙号証は、同人の証言直前に被告委員会から提出したので、同証人は被告委員会が怪文書を所持し提出するとは思わずに右のように供述したものと考えられる。したがつて同日午後から訊問された宇野修吉は、「福田派が怪文書を出したことは事実ですが、戸別訪問をしたことはありません」と文書違反の事実を認めざるを得なかつたが、それでも戸別訪問を否認している。このように公平正直に事実を述べず、法廷においてすら福田派を擁護し、日製・高島派に対する非難のみを事としている事実)
(三) これらの人達が、選挙運動の中心であつた以上、前記のように行われた高島候補誹謗の怪文書作戦(多額の経費を要したと思われる。)と無関係と考えられないこと。したがつて怪文書のみならず、口頭をもつて同様な作戦を採つたのでないかと疑う必要がある。
(四) 前記多賀公民館についての甲第四号証の頒布及び久慈公民館における同種行為
(五) 躍進会の玉村秀雄に対する接近工作を饗応と歪曲し(しかも回数人数を水増している。このことは証人佐藤方也の供述から明白である。)日製が供給所を作ると選挙人を脅迫しているとの噂(それはむしろ高島派にとつては不利にしかならない。)を選挙期間中流布したと認められること。
しかして、原告等の申出にかかる証人の陳述(書証を含めて)を聴いてみても、これらの人々は、不思議なことに一様に福田派による戸別訪問、怪文書戦術を否定して一方的に日製を攻撃するに止まるのみで、これらの証言を以ては、右のような疑いを一掃することができない。
要するに、本件選挙は証人の陳述を通じてみても、かなり激烈だつたようであるから、被告委員会は本件選挙の訴願に際しては、相当の違反行為があつたのでないかとの疑いを抱いて能う限りの調査をしたのであるが、被告委員会では、遂に裁決書認定以上の事実を認めることが出来なかつたのである。したがつて選挙の管理執行機関以外の第三者が選挙干渉した場合にも選挙無効の問題が生ずるか否かは問題があろうが、かりに積極的に解するとしても本件選挙において、原告等の主張するが如き日製が企業の全組織をあげて全選挙区にわたり、不法な選挙運動を展開し、弾圧、干渉乃至妨害を加えた事実は認められず、公職選挙法第二〇五条に規定する「選挙の規定に違反する」ことに該当しないとの結論に達したが、証拠調を経た今日においても右の結論を変更する必要はないと考える。
七 原告等の主張は、他の点からみても失当である。
すなわち、乙第十七号各証によつて認められるように、本件選挙と時を同じにして行われた日立市議会議員、茨城県知事及び県議会議員の選挙の際、社会党・労働組合の支持するいわゆる革新系候補及び推せん候補が日立市において得た投票数と、その他の候補者の得票数とを対比すると次のとおりである。
(一) 市長選挙          得票数   投票数に対する得票割合
高島候補        四四、三九九票     五八・三%
福田候補        三〇、六四六票     四〇・二%
(二) 市議会議員選挙
革新系及び推せん候補  四二、四七一票     五五・七%
その他の候補      三二、二八一票     四二・三%
(三) 県知事選挙
岩上候補(社会党及び県労働組合連盟推薦)
四六、五二四票     六五・四%
友末候補(自由民主党) 二三、四九一票     三二・〇%
(四) 県議会議員選挙
革新系候補       四四、六〇三票     六二・六%
その他の候補      二四、五一七票     三四・四%
これによつてみても、日立市は圧倒的に革新陣営の地盤であつて、労働組合の支持する候補者は、常に六割程度の得票をすることが判明する。
原告等の援用する大審院昭和十七年(選)第六号同二十年三月一日判例のいわゆる翼賛選挙の例をみると、非推薦の自由候補六名の総得票数が、推薦候補で最下位当選者の得票数に及ばないという極めて明瞭な組織的かつ全面的な不法な選挙干渉の結果がみられるのであつて、かくの如き場合なら何人といえども当該選挙の自由公正が害されたと認めるに躊躇しないであろう。これに引換え本件選挙については、何等かの全選挙区にわたり、組織的かつ全面的な不法な選挙干渉の結果、革新系の支持する候補者が本来以上の投票を得たというような徴候は全くみられないから、かかる見地からしても原告等の主張するが如き事実は、むしろ否定せざるを得ないと考える。
なお、本件選挙について高島、福田候補を支持した勢力関係が右のようであつて、夫々がその勢力に相当する順当な得票をしたと認められる。したがつて原告等の主張に類する違反行為がかりに多少あつたと仮定しても、それが選挙の結果に影響を及ぼしているとは認められないから、原告等の主張はこの点においても失当である。
以上に述べたとおり、公職選挙法第二〇五条に規定する「選挙の規定に違反することがあるときは、選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合」に、本件選挙が該当しないことは明瞭であつて、被告委員会が前記のように縷々申し述べた原告等主張の個々の違反事実の認定についての意見も、むしろ無用であつたというべきかも知れない。
したがつて、いずれの点からみても原告の本訴請求は失当であり本訴は棄却すべきものである。


「政治ポスター貼り 公職選挙法 解釈」に関する裁判例一覧
(211)昭和39年 1月29日 東京地裁 事件番号不詳 公職選挙法違反被告事件
(212)昭和39年 1月13日 名古屋高裁金沢支部 昭37(ナ)1号 当選の効力に関する訴願の裁決取消請求事件
(213)昭和38年12月 7日 花巻簡裁 昭37(ろ)32号 公職選挙法違反事件
(214)昭和38年10月10日 大阪高裁 昭37(ナ)2号 市議会議員選挙無効裁決取消請求事件
(215)昭和38年 7月27日 東京地裁 事件番号不詳 公職選挙法違反被告事件
(216)昭和38年 6月20日 大阪高裁 昭38(う)469号 公職選挙法違反被告事件
(217)昭和38年 5月27日 名古屋高裁 昭32(行ナ)2号 行政処分取消請求事件
(218)昭和38年 4月18日 和歌山簡裁 昭37(ろ)233号 公職選挙法違反事件
(219)昭和37年 8月16日 名古屋高裁金沢支部 昭36(う)169号 公職選挙法違反事件
(220)昭和37年 7月11日 仙台高裁 昭37(ナ)1号 町議会議員選挙当選無効訴願裁決取消請求事件
(221)昭和37年 6月18日 東京地裁八王子支部 事件番号不詳 公職選挙法違反被告事件
(222)昭和37年 5月31日 東京地裁 事件番号不詳 公職選挙法違反、出入国管理令違反被告事件
(223)昭和37年 4月18日 東京高裁 昭35(ナ)15号 選挙無効確認請求事件
(224)昭和37年 4月 6日 名古屋高裁 昭35(ナ)2号 議会議員選挙の効力に関する異議事件
(225)昭和37年 3月 5日 仙台高裁 昭36(ナ)2号 当選無効裁決取消請求事件
(226)昭和37年 1月22日 山形地裁 昭34(わ)229号 公職選挙法違反事件
(227)昭和37年 1月20日 東京高裁 昭36(ナ)1号 村長の当選無効請求事件
(228)昭和37年 1月16日 東京高裁 昭36(う)1094号 公職選挙法違反被告事件
(229)昭和36年12月20日 大阪高裁 昭36(う)1464号 公職選挙法違反事件
(230)昭和36年10月 5日 大阪高裁 昭36(う)277号 公職選挙法違反事件
(231)昭和36年 9月 2日 一関簡裁 昭36(ろ)3号 公職選挙法違反事件
(232)昭和36年 7月29日 広島高裁 昭36(ナ)1号 当選無効請求事件
(233)昭和36年 7月29日 広島高裁 事件番号不詳〔1〕 当選無効事件
(234)昭和36年 6月30日 東京高裁 昭34(ナ)15号 選挙無効確認訴訟請求事件
(235)昭和36年 5月17日 東京地裁 昭31(ワ)5192号 損害賠償請求事件
(236)昭和36年 5月10日 仙台高裁 昭35(ナ)4号 市議会議員選挙無効確認等請求事件
(237)昭和36年 4月 8日 福岡地裁 昭35(ヨ)363号 仮処分申請事件 〔福岡玉屋懲戒解雇事件〕
(238)昭和36年 3月20日 最高裁第二小法廷 昭35(あ)2226号 公職選挙法違反被告事件
(239)昭和36年 3月18日 東京高裁 昭35(ナ)14号 選挙無効請求事件
(240)昭和36年 3月14日 最高裁第三小法廷 昭35(あ)2366号 公職選挙法違反被告事件
(241)昭和36年 3月 3日 最高裁第二小法廷 昭35(あ)1511号 公職選挙法違反被告事件
(242)昭和36年 2月24日 最高裁第二小法廷 昭35(あ)1233号 公職選挙法違反被告事件
(243)昭和35年11月22日 仙台高裁 昭35(ナ)3号 町会議員選挙の効力に関する訴願裁決取消請求
(244)昭和35年 9月16日 東京高裁 昭34(ナ)11号 都議会議員選挙無効請求事件
(245)昭和35年 9月13日 大阪高裁 事件番号不詳 公職選挙法違反被告事件
(246)昭和35年 8月10日 広島高裁 昭35(う)199号
(247)昭和35年 8月 9日 大阪高裁 事件番号不詳 公職選挙法違反被告事件
(248)昭和35年 8月 2日 小笠原簡裁 昭34(ろ特)2号 公職選挙法違反事件
(249)昭和35年 7月26日 福岡高裁 昭34(ナ)7号 県議会議員選挙無効確認請求事件
(250)昭和35年 6月18日 東京高裁 昭34(ナ)12号 選挙無効請求事件
(251)昭和35年 6月10日 福岡高裁宮崎支部 事件番号不詳 公職選挙法違反被告事件
(252)昭和35年 6月 6日 盛岡簡裁 昭34(ろ)137号 公職選挙法違反事件
(253)昭和35年 5月23日 広島高裁松江支部 事件番号不詳 公職選挙法違反被告事件
(254)昭和35年 4月19日 福岡高裁 昭34(ナ)21号 市議会議員選挙無効確認請求事件
(255)昭和35年 4月 5日 名古屋高裁金沢支部 昭34(う)271号 公職選挙法違反事件
(256)昭和35年 3月24日 高松高裁 昭34(ナ)4号 裁決変更当選確認請求・裁決取消請求併合事件
(257)昭和35年 3月11日 大阪地裁 事件番号不詳 公職選挙法違反被告事件
(258)昭和35年 3月 3日 東京高裁 昭34(う)2142号 公職選挙法違反被告事件
(259)昭和35年 2月 1日 広島高裁 昭34(ナ)3号 当選の効力に関する訴願裁決取消等請求事件
(260)昭和35年 1月30日 出雲簡裁 事件番号不詳 公職選挙法違反被告事件
(261)昭和35年 1月22日 名古屋高裁金沢支部 昭34(ナ)2号 参議院議員選挙無効事件
(262)昭和34年12月23日 神戸地裁洲本支部 事件番号不詳 公職選挙法違反被告事件
(263)昭和34年12月22日 広島地裁 昭34(わ)303号 公職選挙法違反被告事件
(264)昭和34年10月27日 福岡高裁 昭34(う)461号 公職選挙法違反被告事件
(265)昭和34年 9月29日 東京高裁 昭34(ナ)1号 訴願裁決取消請求事件
(266)昭和34年 8月18日 宮崎地裁 事件番号不詳 公職選挙法違反被告事件
(267)昭和34年 7月11日 長崎地裁 昭31(わ)430号 公職選挙法違反、国家公務員法違反事件
(268)昭和34年 1月30日 東京高裁 昭29(ネ)1917号 行政処分取消請求控訴事件
(269)昭和33年 2月24日 福岡高裁宮崎支部 昭32(ナ)1号 当選無効裁決取消請求事件
(270)昭和33年 1月31日 福岡高裁 昭31(ナ)4号 裁決取消等請求事件
(271)昭和33年 1月31日 福岡高裁 事件番号不詳〔1〕 裁決取消等請求事件
(272)昭和32年12月26日 東京高裁 昭31(ナ)5号 選挙無効確認請求事件
(273)昭和32年12月26日 仙台高裁 昭32(ナ)3号 町議会議員の当選の効力に関する訴願裁決取消請求事件
(274)昭和32年 9月30日 仙台高裁 昭31(ナ)7号 市議会議員選挙無効確認事件
(275)昭和32年 9月20日 最高裁第二小法廷 昭31(オ)1024号 当選の効力に関する決定取消請求事件
(276)昭和32年 6月 3日 名古屋高裁金沢支部 昭31(ナ)1号 町議会議員の当選無効の裁決取消請求事件
(277)昭和32年 3月28日 東京高裁 昭31(ナ)12号 選挙無効請求事件
(278)昭和32年 1月28日 札幌高裁函館支部 昭30(ナ)2号 選挙無効確認請求事件
(279)昭和31年10月19日 東京高裁 昭30(ナ)13号 市長選挙無効確認等請求事件
(280)昭和31年10月 9日 最高裁第三小法廷 昭31(あ)777号 公職選挙法違反被告事件
(281)昭和31年 7月12日 仙台高裁秋田支部 昭29(ナ)4号 市長選挙の当選の効力に関する訴願裁決取消請求事件
(282)昭和31年 7月12日 仙台高裁秋田支部 昭29(ナ)2号 当選無効確認請求事件
(283)昭和31年 5月26日 仙台高裁 昭30(ナ)9号 市議会議員当選無効確認請求事件
(284)昭和31年 3月26日 東京高裁 昭30(ナ)27号 市議会議員選挙の当選の効力に関する裁決取消請求事件
(285)昭和31年 3月13日 仙台高裁秋田支部 昭30(う)135号 公職選挙法違反事件
(286)昭和31年 3月12日 松江地裁 事件番号不詳 公職選挙法違反被告事件
(287)昭和31年 3月 1日 仙台高裁 昭30(ナ)15号 村議会議員当選の効力に関する訴願裁決取消請求事件
(288)昭和31年 1月30日 東京高裁 昭30(ナ)15号 市長選挙の一部無効確認請求事件
(289)昭和31年 1月14日 東京高裁 昭30(ナ)26号 県議会議員の当選の効力に関する裁決取消請求事件
(290)昭和30年12月24日 東京高裁 昭30(ナ)18号 村議会議員選挙無効請求事件
(291)昭和30年 9月29日 大阪高裁 昭30(ナ)5号 当選無効請求訴訟事件
(292)昭和30年 5月31日 名古屋高裁 昭30(う)278号 公職選挙法違反被告事件
(293)昭和30年 4月27日 東京高裁 昭30(ナ)2号 衆議院議員選挙無効訴訟事件
(294)昭和30年 1月26日 福岡地裁 昭29(ナ)1号 市会議員選挙無効裁決取消請求事件
(295)昭和30年 1月11日 最高裁第三小法廷 昭29(あ)2090号 公印偽造・偽造公印不正使用・公職選挙法違反被告事件
(296)昭和29年11月17日 東京高裁 昭29(う)829号 公職選挙法違反被告事件
(297)昭和29年 8月 3日 名古屋高裁 昭29(う)487号 公職選挙法違反事件
(298)昭和29年 5月 6日 東京高裁 昭28(く)109号 再審請求棄却決定に対する即時抗告事件
(299)昭和29年 5月 4日 大阪高裁 昭28(う)2507号 公職選挙法違反事件
(300)昭和29年 4月 8日 福岡高裁 昭29(う)68号 公職選挙法違反事件
(301)昭和29年 2月 8日 東京高裁 昭28(ナ)8号 参議院全国選出議員選挙の一部無効に関する訴訟事件 〔佐野市参院選挙無効事件・控訴審〕
(302)昭和28年12月 1日 最高裁第三小法廷 昭28(オ)681号 市議会議員の選挙の効力に関する訴願裁決取消請求上告事件
(303)昭和28年11月28日 名古屋高裁 事件番号不詳 公職選挙法違反被告事件
(304)昭和28年11月14日 名古屋高裁金沢支部 昭28(う)303号 公職選挙法違反事件
(305)昭和28年11月10日 東京地裁 事件番号不詳 公印偽造偽造公印不正使用公職選挙法違反被告事件
(306)昭和28年10月30日 東京高裁 昭28(う)2394号 公職選挙法違反被告事件
(307)昭和28年 9月21日 仙台高裁 昭28(ナ)3号 町議会議員当選無効裁決取消請求事件
(308)昭和28年 6月 1日 札幌高裁函館支部 昭28(ナ)1号 市長及び市議会議員選挙無効確認請求事件
(309)昭和28年 5月 9日 大阪高裁 昭28(う)418号 公職選挙法違反事件
(310)昭和28年 4月10日 福岡高裁 昭27(ナ)15号 裁決取消請求事件
(311)昭和28年 3月 5日 大阪高裁 昭26(ナ)22号 市会議員当選無効確認請求事件
(312)昭和28年 1月20日 大阪高裁 昭27(ナ)2号 衆議院議員選挙当選無効請求事件
(313)昭和27年 5月24日 名古屋高裁金沢支部 昭26(ナ)8号 村議会議員選挙の当選の効力に関する訴願裁決取消請求事件
(314)昭和27年 5月16日 東京高裁 昭27(ナ)2号 市議会議員選挙無効請求事件
(315)昭和27年 5月 6日 大阪高裁 昭26(ナ)25号 選挙無効確認請求事件
(316)昭和27年 3月12日 広島高裁松江支部 昭26(う)244号 公職選挙法違反被告事件
(317)昭和27年 2月29日 広島高裁松江支部 昭26(ナ)1号 村長選挙の当選の効力に関する訴訟事件
(318)昭和27年 1月11日 仙台高裁 昭26(ナ)19号 当選無効裁決取消請求事件
(319)昭和26年12月28日 高松高裁 昭26(ナ)4号 市議会議員選挙無効請求事件
(320)昭和26年 7月19日 東京高裁 昭26(ナ)5号 選挙運動に関する支出金額の制限額超過による当選無効事件
(321)昭和26年 7月 6日 大阪高裁 昭26(う)763号 公職選挙法違反被告事件
(322)昭和26年 5月31日 広島高裁 昭25(う)1037号 公職選挙法違反事件
(323)昭和26年 5月 9日 広島高裁 昭25(ナ)2号 当選の効力に関する訴訟事件
(324)昭和25年12月25日 東京高裁 昭24(ナ)16号 村長解職投票無効事件
(325)昭和25年 1月27日 仙台高裁 昭22(ナ)2号 知事当選無効確認請求事件
(326)昭和24年11月15日 東京高裁 昭24(ナ)10号 衆議院議員選挙無効事件
(327)昭和23年11月20日 東京高裁 昭23(ナ)5号 東京都教育委員選挙無効確認事件


■選挙の種類一覧
選挙①【衆議院議員総選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙②【参議院議員通常選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙③【一般選挙(地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙④【特別選挙(国政選挙|地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)


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街頭外壁掲示許可交渉代行/全業種 期間限定!貴社(貴店)ポスター貼り サイズ/枚数/全国エリア対応可能!
【対応可能な業種リスト|名称一覧】地域密着型ポスターPR広告(街頭外壁掲示許可交渉代行)貼り「ガンガン注目される訴求型PRポスターを貼りたい!」街頭外壁掲示ポスター新規掲示プランです。

(8)貼る専門!ポスター新規掲示! ☆貼!勝つ!広報活動・事前街頭(単独/二連)選挙ポスター!
政治活動/選挙運動ポスター貼り 勝つ!選挙広報支援事前ポスター 1枚から貼る事前選挙ポスター!
「政治活動・選挙運動ポスターを貼りたい!」という選挙立候補(予定)者のための、選挙広報支援プロ集団「選挙.WIN!」の事前街頭ポスター新規掲示プランです。

(9)選挙立札看板設置/証票申請代行 絶対ここに設置したい!選挙立札看板(選挙事務所/後援会連絡所)
選挙事務所/後援会連絡所届出代行 公職選挙法の上限/立て札看板設置 1台から可能な選挙立札看板設置
最強の立札看板設置代行/広報(公報)支援/選挙立候補者後援会立札看板/選挙立候補者連絡所立札看板/政治活動用事務所に掲示する立て札・看板/証票申請代行/ガンガン独占設置!


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