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「政務活動費 ポスター」に関する裁判例(61)平成29年 2月 1日 仙台地裁  平26(行ウ)31号 海外視察費返還履行請求事件

「政務活動費 ポスター」に関する裁判例(61)平成29年 2月 1日 仙台地裁  平26(行ウ)31号 海外視察費返還履行請求事件

裁判年月日  平成29年 2月 1日  裁判所名  仙台地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(行ウ)31号
事件名  海外視察費返還履行請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2017WLJPCA02016004

事案の概要
◇本件県の住民により構成される権利能力なき社団である原告が、当時本件県の県議会議員であった補助参加人らによって平成26年3月25日から同月31日にかけて実施されたニュージーランドの訪問調査(本件海外視察)に係る被告県知事の公金の支出について、本件海外視察に係る派遣決定及びこれに伴う公金支出等は違法であり、違法な公金の支出ないし財産管理を怠る事実があったとして、地方自治法242条の2第1項4号本文に基づき、海外視察費相当額について補助参加人らに対して不当利得返還請求として公金支出相当額の返金の請求をするよう求めた事案(住民訴訟)

裁判経過
上告審 平成30年 4月13日 最高裁第二小法廷 決定 平30(行ヒ)6号
控訴審 平成29年10月26日 仙台高裁 判決 平29(行コ)6号 海外視察費返還履行請求控訴事件

裁判年月日  平成29年 2月 1日  裁判所名  仙台地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(行ウ)31号
事件名  海外視察費返還履行請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2017WLJPCA02016004

当事者の表示 別紙当事者目録のとおり

 

 

主文

1  被告は,補助参加人Z1に対し,7万3487円を宮城県に支払うよう請求せよ。
2  被告は,補助参加人Z2に対し,7万3487円を宮城県に支払うよう請求せよ。
3  被告は,補助参加人Z3に対し,7万3487円を宮城県に支払うよう請求せよ。
4  被告は,補助参加人Z4に対し,7万3487円を宮城県に支払うよう請求せよ。
5  原告のその余の請求をいずれも棄却する。
6  訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は,これを10分し,その9を原告の負担とし,その余を被告及び補助参加人らの負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  被告は,Z1に対し,90万円及びこれに対する平成26年3月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を宮城県に支払うよう請求せよ。
2  被告は,Z2に対し,90万円及びこれに対する平成26年3月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を宮城県に支払うよう請求せよ。
3  被告は,Z3に対し,90万円及びこれに対する平成26年3月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を宮城県に支払うよう請求せよ。
4  被告は,Z4に対し,90万円及びこれに対する平成26年3月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を宮城県に支払うよう請求せよ。
第2  事案の概要
本件は,宮城県(以下「県」という。)の住民により構成される権利能力なき社団である原告が,当時宮城県議会議員(以下「県議」という。)であった補助参加人らによって平成26年3月25日から同月31日にかけて実施されたニュージーランドの訪問調査(以下「本件海外視察」という。)に係る被告の公金の支出について,本件海外視察に係る派遣決定及びこれに伴う公金支出等は違法であり,違法な公金の支出ないし財産管理を怠る事実があったとして,地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号本文に基づき,被告に対し,海外視察費相当額について,補助参加人らに対し,不当利得返還請求として公金支出相当額の返金の請求をするよう求める住民訴訟である。
1  関係法令の定め
法2条14項は,地方公共団体は,その事務を処理するに当たっては,住民の福祉の増進に努めるとともに,最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならないと定めており,法100条13項は,議会は,議案の審査又は当該普通地方公共団体の事務に関する調査のためその他議会において必要があると認めるときは,会議規則の定めるところにより,議員を派遣することができると定めている。
これを受けて,宮城県議会会議規則では,130条1項において,法100条13項の規定により議員を派遣しようとするときは,議会の議決でこれを決定することとし,ただし緊急を要する場合は,議長において議員の派遣を決定することができる旨定めている。また,同規則130条2項は,1項の規定により議員の派遣を決定するに当たっては,派遣の目的,場所,期間その他必要な事項を明らかにしなければならないとしている。
宮城県議会議員の海外視察に関する取扱要領では,海外視察後は,速やかに「海外視察報告書」を議長に提出すると定められている(4条)。
2  前提事実(認定根拠を示すほかは,当事者間に争いがないか,又は,明らかに争いがない。なお,平成26年の事実については,年の表記を省略する。)
(1)  当事者
ア 原告は,県の住民で組織され,国及び地方公共団体等の不正,不当な行為を監視し,その是正を求める活動等を行うことを目的とする権利能力なき社団である。
イ 被告は宮城県知事であり,法242条の2第1項4号の執行機関である。
ウ 補助参加人Z1(以下「補助参加人Z1」という。),補助参加人Z2(以下「補助参加人Z2」という。),補助参加人Z3(以下「補助参加人Z3」という。)及び補助参加人Z4(以下「補助参加人Z4」という。)は,いずれも当時県議(所属会派:自由民主党・県民会議)として本件海外視察を行ったものである。なお,B県議(以下「B県議」という。)は,企画当時は本件海外視察に参加する予定であったが,後述するとおり参加を取り止めた。
(2)  本件海外視察派遣決定の経緯
補助参加人らは,本件海外視察を企画して,ニュージーランド国訪問調査団企画書(甲1。以下「本件企画書」という。)を作成し,補助参加人Z1が代表となって,2月7日付けで海外行政視察申出書(以下「本件申出書」という。)を県議会議長に提出した(甲2)。2月18日,県議会において,次の内容で本件海外視察について承認の議決がされた(甲3。以下「本件派遣決定」という。)。
ア 目的
ニュージーランドにおける大震災対策・エネルギー対策・環境保護対策・観光資源・スポーツ振興・農業問題・街づくり・産業振興等に関する調査
イ 場所
ニュージーランド
ウ 期間
平成26年3月25日から平成26年3月31日まで(7日間)
エ 議員
補助参加人ら及びB県議
(3)  公金の支出の経緯
宮城県は,3月6日,補助参加人ら及びB県議に対し,本件海外視察の費用としてそれぞれ90万円を支給した(甲4。以下「本件公金支出」という。)。
なお,B県議に支給された90万円については,B県議が本件海外視察への参加を取り止めたことにより,その後返納された。
(4)  本件海外視察の実施
補助参加人らは,3月25日から同月31日までの7日間,次のアないしオの行程で本件海外視察を実施した。
ア 3月25日に仙台から出発し,同月26日(以下「1日目」という。)にクライストチャーチ到着後,オールドAMIスタジアム及びカーボンカテドラルを訪問し,市内トラムに乗車した。
イ 同月27日(以下「2日目」という。)は,マウントクック国立公園,及びテカポ湖畔にあるマウントジョン天文台を訪問した。
ウ 同月28日(以下「3日目」という。)は,ワイラケイ地熱発電所を訪問した。
エ 同月29日(以下「4日目」という。)は,キウイ360,コンビータ養蜂場,タウランガ酪農場及びイーデンパークを訪問した。
オ 同月30日(以下「5日目」という。)は,ワイヘケ島においてストーニーリッジワインヤード及びハウワインヤードを訪問し,同月31日に帰国した。
(5)  本件海外視察に関する報告書の提出
補助参加人らは,6月25日,6月24日付けの海外行政視察報告書(甲6。以下「本件報告書」という。)を県議会議長宛に提出した。
(6)  監査請求
原告は,8月20日,宮城県監査委員(以下「監査委員」という。)に対し,法242条1項により,本件公金支出について住民監査請求(以下「本件監査請求」という。)をした。監査委員は,補助参加人らの監査請求に対する意見を文書により調査した(以下「本件聴取」という。)上で,10月16日,本件監査請求を棄却した(甲11)。
原告は,11月10日,本訴を提起した(顕著な事実)。
3  争点
(1)  本件海外視察に係る派遣決定及び公金支出等の違法性(争点1)
(2)  補助参加人らの悪意の受益者性(争点2)
4  争点に関する当事者の主張
(1)  争点1(本件海外視察に係る派遣決定及び公金支出等の違法性)について
(原告の主張)
ア 違法性判断の枠組み
普通地方公共団体の議会は,当該普通地方公共団体の議決機関として,その機能を適切に果たすために合理的な必要性があるときは,その裁量により議員を国内や海外に派遣することができると解されるが,議員派遣の合理的な必要性が認められない場合にまで派遣を行うことが許されないのは当然のことであって,派遣目的が議会の機能を適切に果たすために必要のないものである場合や,行き先や日程等が派遣目的に照らして明らかに不合理である場合に派遣するなど,上記裁量権の行使に逸脱又は濫用があるときは,議会による議員派遣の決定は違法になるというべきである。本件においても,その違法性の判断に当たっては,海外視察の趣旨等に照らし,議会における裁量権の行使に逸脱又は濫用があるかを個別具体的に検討すべきである。
また,海外視察に係る不当利得返還請求訴訟においては,海外視察に同行していない原告と具体的事実及び証拠との距離からして,原告において,本件海外視察の具体的内容・本件公金支出の具体的使途等が県政に関する調査研究に資するものとはいえず,ひいては議会の審議能力を強化し,議員の調査研究活動の基盤の充実を図ることに資するものとはいえないことを推認させる一般的,外形的な事実を主張立証した場合には,被告及び補助参加人がこれに適切な反証を行わないときは,違法性が推定されるというべきである(仙台高裁平成20年(行コ)第13号同年11月11日判決(以下「平成20年判決」という。)参照)。
本件海外視察の視察先には,「地球の歩き方」及び旅行パンフレットに観光名所として紹介されているところが数多く含まれており,移動ルートは旅行パンフレットに記載されている観光ルートに酷似している。よって,本件海外視察は観光目的であって,県政に関する調査研究に資するものとはいえず,ひいては議会の審議能力を強化し,議員の調査研究活動の基盤の充実を図ることに資するものとはいえないことを推認させる一般的,外形的事実を有していることは明らかである。
イ 本件海外視察の目的,事前準備・検討等
(ア) 本件海外視察の目的設定ないし事前準備・検討が十分になされていることは,本件派遣決定及び本件公金支出が正当化されるための大前提であり,これらが不十分であれば,派遣決定及び公金支出は違法となる。海外視察に関する手引き(乙1。以下「本件手引き」という。)にも,調査目的,調査事項,調査先候補の選定に先立つ事前調査・検討の必要性について記載されている。
本件申出書(甲2)には,既に視察地・調査目的・具体的な調査事項や視察先が記載されているが,同申出書提出時点で何らかの研修等を実施した形跡はない。また,本件報告書(甲6)には,事前研修を行った旨記載され,事前研修資料が添付されているが,具体的に研修・検討がなされたことを裏付ける資料はなく,具体的な視察目的・視察内容・視察先等の選定にあたり,事前研修・検討等がなされた形跡は何ら存在しない。さらに,補助参加人らは本件海外視察の行程を旅行会社に組んでもらっており,何ら主体的な事前検討・研修等がなされていないことが明らかである。
(イ) 補助参加人らは,東日本大震災からの復興に資する情報を得ることが今回の視察の最大の動機ないし目的であったと主張するが,視察先は補助参加人Z4が参加者を募った時点でニュージーランドに決定しており,視察国選定に際し何ら議論をしておらず,海外の復興例を調べたこともないのであるから,同目的は名目的なものである。
また,TPP問題農業関係調査も本件海外視察の重要な目的とされているが,日本とニュージーランドでは農業の規模や構造が大きく異なるのであって,TPP問題に関する利害状況も正反対であるから,視察をしても何ら成果を上げることができないことは行く前から分かっていたことであり,同目的も後付けの名目的な目的にすぎない。
(ウ) B県議は本件海外視察決定後,本件海外視察への参加を取り止めているが,その理由は県道の供用開始式典における祝辞を述べるためであり,このような些末な理由での参加取止めを容認する姿勢からしても,補助参加人らが本件海外視察を単なる海外旅行としか認識していないことが明らかである。
ウ 視察目的と視察内容の関連性,視察の必要性等
(ア) 1日目の視察先について
a オールドAMIスタジアム
補助参加人らが視察目的としている表敬訪問は,そもそも県行政に関連する政務調査とは何ら関連性を有しないし,本件企画書,本件報告書,本件聴取でも挙げられていないので,後付けの目的である。また,震災復興についての意見交換に当たって,補助参加人らは具体的な調査事項を練っておらず,同所を視察する必要性は認められない。スポーツ振興調査という目的についても関連性がなく,だからこそ,クライストチャーチに到着したときに,震災で破損したオールドAMIスタジアムに代わって新しく建設されたAMIスタジアムを視察対象から外してイーデンパークを視察するという視察先の変更が軽々に行われた。
補助参加人らは,クライストチャーチ前市長やオールブラックスの元選手から震災時の状況等を聴き取り,スポーツと住民との関わり合いの重要性等を感じ取った等と主張しているが,ラグビー場がどのように整備されているかを調査しておらず,スポーツ振興調査に力を入れていたという補助参加人Z1も質問をせず,新しいAMIスタジアムの調査も行っていないのであるから,実質的な調査は行われていないというべきである。
b カーボンカテドラル
補助参加人らが主張する哀悼の意を示すというカーボンカテドラルの視察目的は,本件企画書及び本件報告書に記載されておらず,後付けのものにすぎないし,そもそも公費支出による視察の目的設定として不適切である。
また,宮城県内における復興記念施設の整備,震災遺構の保存等の問題について検討する一助とするなら,どのような議論を経て復興記念施設建設に至ったかを聞き,犠牲者の出た建造物についての現状を視察すべきであったが,そのような実質的な調査を行っていない。ニュージーランドにはそもそも震災遺構の保存という政策自体存在しておらず,このことは事前に調査を行えば容易に判明したことである。
補助参加人らは,司祭であるC氏の説教を聞き,心のよりどころとなるその地域に沿った施策建設物等の復興も重要であるという既に明らかなことを確認しただけで,視察の必要性はないし,実質的な調査も行われていない。
c 市内トラム
市内トラムが観光資源として利用されていることはインターネット等で調べれば容易にわかることであるし,県内で路面電車の建設は検討されていないから視察の必要はない。補助参加人らは,仙台港の臨港地区の新交通システムの構築が検討課題であったと主張しているが,本件企画書,本件報告書及び本件聴取でも言及しておらず,後付けの目的である。
また,補助参加人らは単にトラムに乗って景観を楽しんだだけで,実質的な調査は行われていない。
(イ) 2日目の視察先について
a マウントクック国立公園
県内には世界遺産がないので,マウントクック国立公園は,環境保護対策と観光資源のあり方調査という目的との関連性を有しない。補助参加人らは,マウントクック国立公園について事前に世界遺産であるということしか調査しておらず,本件報告書においてもマウントクック国立公園についての報告は観光ガイドのような外形的事実の記載にとどまっていることから,一般人の観光と何ら異ならない。
また,補助参加人らは,県内の自然観光資源を観光地として十分に生かすことができていないという課題があったため,マウントクック国立公園やテカポ湖畔を視察する必要があったと主張するが,補助参加人らは本件海外視察前に県内の自然環境に関する調査・検討を行っておらず,上記課題は存在しない。さらに,補助参加人らは,みやぎ環境税の使途について問題意識を有して海外視察に臨んだとも主張しているが,本件企画書に記載がなく,本件聴取及び本件報告書においても言及されていないので,後付けの目的にすぎない。
b テカポ湖畔
テカポ湖畔の視察に係る「テカポ湖のその観光資源の保護と現状と今後の課題」という調査項目は抽象的で内容がない。補助参加人らは,県内の天体観測場所について証言したものの,ホームページの受け売りにすぎず,場所を白地図に記入することもできないのであるから,県内の天体観測場所の環境整備を実現するつもりがなく,テカポ湖の星空を視察する必要性はない。また,テカポ湖と県では気象条件や光害の状況が全く異なっており,テカポ湖よりも参考になり得る国内の場所について検討すらしていない。さらに,本件報告書の記載内容は,視察をしなくても,インターネットや文献等で得られる情報ばかりであるから,補助参加人らはただ有名な星空を見ただけで,実質的な調査をしていない。
(ウ) 3日目の視察先(ワイラケイ地熱発電所)について
日本に占める地熱発電の割合は国内電力需要量のわずか0.3パーセントにとどまっており,県の再生可能エネルギー政策においても重要な政策ではないので,そもそもの視察目的自体が不合理,不必要である。
また,補助参加人らは,本件海外視察に先立って,県の地熱発電に関する政策課題等について十分な調査や検討を行っておらず,D氏に約1時間半から2時間話を聞いただけで地熱発電施設の見学すら行っていない。さらに,本件報告書の記載も,ワイラケイ地熱発電所の調査については一般的,抽象的なものにとどまっていることから,補助参加人らはマオリ族のハンギディナーの鑑賞を目的として視察を行ったのであって,実質的な調査はなされていない。
(エ) 4日目の視察先について
a キウイ360,コンビータ養蜂場及びタウランガ酪農場
前記のとおり,県とニュージーランドでは,TPP問題に関する利害状況は正反対であるから,キウイ360,コンビータ養蜂場及びタウランガ酪農場(以下,併せて「TPP関係視察先」という。)に係るTPP問題調査という目的は名目的なものにすぎない。また,六次産業化という目的は,本件企画書,本件報告書及び視察先での質問でも言及されておらず,本件海外視察の目的ではなかった。そして,補助参加人らは,TPP関係視察先の選定を自発的に行っておらず,旅行会社から与えられたルートを見て回ったにすぎないので,視察の必要性は存在しなかった。
補助参加人らは,事前にTPP関係視察先について調査を全くしておらず,タウランガ酪農場の視察について一番興味があったという補助参加人Z2は,酪農場について質問事項を事前に考えたと証言しているが,信用できない。
さらに,TPP関係視察先について,予定されていた視察時間が各1時間であったこと,移動のための時間がかかること,視察の際の通訳が逐語通訳であったことに照らせば,質疑応答の時間はほぼなかったといえ,十分な視察ができていないことは明らかである。
b イーデンパーク
補助参加人らは,イーデンパークでスーパーラグビーを観戦しており,視察目的が観戦にあったことは明らかである。
補助参加人らは,イーデンパークでの渋滞対策を参考にするために視察先としたと主張するが,イーデンパークが視察先となったのは,クライストチャーチに着いたときで,当初はイーデンパークを視察対象とはしていなかったのであるから,渋滞対策の参考にする目的というのは後付けのものである。
補助参加人らは,イーデンパークの周辺において一般車両進入禁止区域を設けていることが分かったことが視察の成果であると主張しているが,どのような制度に基づいて運用されているかなどの調査はしておらず,スタジアムの周辺をただ眺めただけであるから,実質的な調査は行われていない。
(オ) 5日目の視察先(ワイヘケ島)について
補助参加人Z4及び同Z3は,昼食後にワインヤードを視察する予定があるにもかかわらず,昼食中にワインを飲んでおり,ワイヘケ島の視察が観光目的であったことを端的に裏付けるものである。
補助参加人らがワイヘケ島の視察の目的としている自然を活かした町おこしに繋ぐ具体的な構築をする必要性は,内容が極めて抽象的で,視察の必要性を肯定することはできない。また,ワイン工場が再建途上にある山元町に対する情報提供という目的については,山元町から情報提供の依頼はなく,一営利企業にすぎない山元いちご農園株式会社に対して情報提供をすることは視察の必要性を裏付ける理由にならない。
ワイヘケ島ではブドウのワインしか製造していないので,仮に山元いちご農園株式会社のために視察を行うとしても,目的との関連性が認められない。
また,ストーニーリッジワインヤードでは,到着するなりワインを飲みながらの昼食を開始しており,とても視察をできる状況ではなく,さらにハウワインヤードには,わずか5分程度しか滞在しておらず,そこでもワインの試飲をしているのであるから,ほとんど視察をしていない。
エ 本件海外視察の視察結果は県政に活かされていない
(ア) 1日目の視察先について
各視察先での視察結果について,報告書の記載は不十分であり,今後具体的にどのような施策にどのように活かしていくのかが不明である。オールドAMIスタジアムの視察について,補助参加人Z2は,平成26年9月定例会において言及しているものの,知事との議論の材料には全くなっていないし,市内トラムの視察結果については,復興計画に役立てるのか,仙台港の臨港地区の新交通システムの構築に役立てるのかという点で,主張が変遷している。
(イ) 2日目の視察先について
マウントクック国立公園について,本件報告書には,観光ガイドのような外形的事実しか記載されておらず,これらの事実は現地に行かなくとも判明する。そして,記載されている事実は県政と何ら関連性がなく,補助参加人ら主張の視察成果及び県政への活用が抽象的であることからすると,視察結果は県政に資するものではない。
テカポ湖畔について,本件報告書の内容は一般的な情報が記載されているにすぎないし,議会での質問内容は具体的政策提言ではなく自らの経験をひけらかすだけのものであるから,視察の成果は何ら県政に反映されていない。
(ウ) 3日目の視察先について
ワイラケイ地熱発電所の視察について,本件報告書には一般的な情報の記載しかなく,施策との関連においていかなる有益な情報が得られたかの記載はないし,本件企画書記載の調査項目であるワイラケイ地熱発電所の問題点や経費についての記載がない。平成26年9月の宮城県定例議会で補助参加人Z2がワイラケイ地熱発電所に言及しているが,具体的な視察先における成果,知見を何ら質問に反映せず,一般論を述べただけであり,何ら県政に活用可能な具体的成果を得られていない。
(エ) 4日目の視察先について
キウイ360,コンビータ養蜂場については,本件報告書をみても,何ら具体的な視察成果の記載がない。また,タウランガ酪農場については,ニュージーランドの酪農が大規模かつ低コストで行われていることが本件報告書に記載されているが,これは視察しなくても分かることであり,調査項目であるはずのTPP対策の問題点に関する記載はない。したがって,本件海外視察の意味は全くなく,県政に役立つ見込みはない。
補助参加人らが主張するとおり,イーデンパークについては,補助参加人Z4及び同Z2が,予算特別委員会や本会議で言及しているものの,ニュージーランドに行ったことが言及されているだけで,本件海外視察結果をどう県政に反映させるのかという具体的な施策の議論に全く結びついていないので,視察の成果が県政に反映されたとはいえない。
(オ) 5日目の視察先について
本件報告書には,ワイヘケ島について,訪問するまでもなく入手できる客観的な情報しか記載されておらず,極めて抽象的な記載がごく少量なされているにすぎない。しかも,補助参加人らは,海外視察の結果を山元町に伝えていない。よって,宮城県の町おこし施策に関し,これに資する具体的な情報等がもたらされたとは到底評価できず,有益な政策提言等も皆無であるから,視察結果は県政に活かされていない。
(被告の主張)
ア 違法性判断の枠組みについて
補助参加人らは,県議会の議決に基づいて本件海外視察を行っており,県議会は本件派遣決定をするに当たって極めて広汎な裁量権を有しているので,原則として本件公金支出に法律上の原因が存在することは明白であって,本件海外視察が法律上の原因がないと評価されるのは,県議会における議決が違法と評価される場合に限られるというべきである。そして,不当利得返還請求における「法律上の原因の不存在」は請求者に主張立証責任があるから,原告が県議会の議決の違法性を基礎づける具体的事実について主張立証責任を負う。
原告が指摘する平成20年判決においては,政務調査費の具体的使途については,具体的支出を行った会派ないし議員側で特定しないことには原告側で明らかにすることが客観的に見て困難であるという事情があったのに対し,本件では事前に視察目的や日程,場所が明らかとなっており,事後にもその報告により海外視察費の具体的使途が特定されている。よって,本件とは事案を異にしており,引用することはできない。
イ 本件海外視察に係る派遣決定及び公金支出等の違法性について参加人の主張を援用する。
(参加人の主張)
ア 本件海外視察の目的,事前準備・検討等
(ア) 本件海外視察における調査目的は,震災復興調査,スポーツ振興調査,自然環境保護調査,エネルギー問題調査,TPP問題調査,町おこし調査,観光資源調査であり,これらはいずれも県政の重要な施策であるから,本件海外視察が県政に資するものであることは明らかである。
原告は,インドネシアの視察がより適切であったと主張するが,補助参加人Z4は,ニュージーランドが東日本大震災と同時期に大地震により被災していたこと等からその復興状況を調査したいと考えていたところ,平成25年4月18日,ニュージーランド航空が県議会を訪問した際に情報提供を受けて,県のモデルとなる点が多数あるため,補助参加人ら全員で協議してニュージーランドを視察することに決定した。県は,創造的復興を進めており,ラグビーワールドカップの招致,TPP発効による宮城県内への影響,自然環境を活かした観光客の誘致,原子力に代わる自然エネルギーによる発電,六次産業化を課題としていたのであるから,インドネシアが最適な視察先といえるかについては疑問があり,本件海外視察は県政に資するものであったから,ニュージーランドが調査目的に照らして合理的な視察先であったことは明らかである。
(イ) B県議が,本件海外視察について,途中帰国ないし不参加の意向を示したことを受けて,補助参加人Z4及びZ1は,最後まで参加するよう翻意を促している。また,B県議が出席した式典は,B県議の選挙区の道路供用開始式典であり,その道路はB県議が旧豊里町長を務めていた時に計画した道路であったから,当該式典に出席することは十分合理的である。
(ウ) 補助参加人らは,構成議員による意見交換会を3回,ニュージーランド航空関係者からの意見聴取を1回,県内被災自治体からの意見聴取を2回,執行部からの事業説明を1回行っている。補助参加人らは,各自が持つ情報を事前に共有し,調査時における質問者,質問内容を検討しており,限られた時間の中で調査を効率的に行うことができるように必要十分な事前研修を行っていたものと評価することができる。
イ 視察目的と視察内容の関連性,視察の必要性等
(ア) 1日目の視察先について
a オールドAMIスタジアムでの会談
東日本大震災とほぼ同時期に被災した都市であるクライストチャーチ前市長と復興状況に関する情報を交換すること,東日本大震災に対する支援に感謝の意を伝えることは,県議として果たすべき当然の責務であり,調査及びこれに付随する行為として合理的である。また,本件海外視察当時,ラグビーワールドカップの誘致は仙台市及び宮城県にとって一つの大きな目標となっており,オールブラックスの元選手から実際のラグビーワールドカップの様子を聞くことは調査目的に照らして合理的である。オールドAMIスタジアムで会談したのは,クライストチャーチ前市長から被災したオールドAMIスタジアムを見てほしいといわれたためであるが,同スタジアム視察の目的は,クライストチャーチ前市長及びオールブラックスの元選手との会談であるから,場所は重要ではない。
補助参加人らは,クライストチャーチ前市長から,震災当時の状況やその復興状況について話を聞き,オールブラックスの元選手から,ニュージーランドでラグビーワールドカップが行われたときのことや,オールドAMIスタジアムが被災して新AMIスタジアムが建設されるに至った経緯,スタジアムの持つ国民に対する力を聞いて,スポーツ振興調査を行った。
b カーボンカテドラル
カーボンカテドラルの視察項目は,「カーボンカテドラルの制作過程とその震災後の効果」であり,具体的には,カーボンカテドラルが復興や観光にいかなる効果をもたらしているかということである。本件海外視察当時,県内では,震災遺構の保存が議論されていたところ,カーボンカテドラルがどのような効果をもたらしているかについて調査することはこれに資するものであるから,カーボンカテドラルの視察は合理的である。
補助参加人らは,首席司祭であるC氏から,クライストチャーチ大聖堂が市民にとって持つ意味,大聖堂が市民のよりどころとなっていること及びカーボンカテドラルの構造について,説明を受けた。
c 市内トラム
県において臨港地区の新交通システムの構築が課題とされている中,路面電車は環境面及び観光面において優れていることから,市内トラムに体験乗車したのであり,十分合理性を有する。
補助参加人らは,市内トラムに乗車し,観光・環境面のみならず,安全面や騒音対策という面からも大きな効果が期待できるということを知ることができた。また,乗車は次の視察先への移動手段も兼ねていた。市内トラムは,他の視察先と比べると優先順位が高いとはいえず,十分な時間を割くことができなかったとしてもやむを得ない。
(イ) 2日目の視察先(マウントクック国立公園,テカポ湖畔)について
a 視察目的
県内には多くの自然観光資源があるが,それを十分に生かすことができておらず,多くの天体観測場所の環境整備も進んでいないため,みやぎ環境税の有効な使途を探ることも目的として,世界遺産に登録されているマウントクック国立公園や,素晴らしい星空を一大観光地とすることに成功しているテカポ湖畔を視察したのであり,県の環境政策に資するものであることは明らかである。
b 視察内容
補助参加人らは,マウントクックでは,国立公園管理事務所管理課長であるE氏から説明を受け,実際のマウントクックの自然環境保護の方法を目の当たりにし,観光面にも生きる形での税金の用い方について示唆を受けた。
また,テカポ湖畔では,「アース&スカイ」社の役員であり,テカポ湖畔の星空について自然世界遺産の認定を得るべく活動しているF氏の案内により視察を行い,行政と住民が一体となって「光害」を排除しようとする仕組みづくりについて説明を受け,星空保護のための徹底した取組みの必要性を痛感した。
(ウ) 3日目の視察先(ワイラケイ地熱発電所)について
東日本大震災での原発事故を受け,自然エネルギーによる発電が注目されるようになったところ,宮城県では地熱発電が成功する可能性があると言われ,実際に鬼首に地熱発電所が建設されていることから,県における地熱発電の発展のため,ワイラケイ地熱発電所を視察することは有用であり,視察先として合理的である。
補助参加人らは,政府リサーチ機関であるGNSサイエンスにおける地熱学の責任者であり,過去には東北大学に在籍し宮城県で研究をしていた経験を有するD氏から説明を聞いて,温泉地の多い宮城県では地熱発電は十分成功する可能性があるとの話を聴取した。補助参加人らは,ニュージーランドの地熱発電及び余熱の利用等について十分な説明を受けた。
(エ) 4日目の視察先について
a TPP関係視察先の視察目的等
日本がTPPに参加するに当たり,県内の農業における対策の参考とするため,TPP関係視察先を視察した。また,県では創造的復興のひとつとして農業の六次産業化事業を推進しているので,六次産業化により成功を収めている農場等を視察することとした。さらに,山元町名産のイチゴの受粉には蜜蜂が必要であるところ,その入手が困難な状況となっているが,ニュージーランドが蜜蜂の生産に最適な環境ではないのに養蜂場の経営に成功し,交流人口を生み出していることから,蜂蜜加工等の六次産業化の状況を視察しようと考えていた。
ニュージーランドは,TPPが発効すれば農業分野で他国に対して優位な立場となることから,県内においてTPP発効によってむしろ利益を上げていくためにはどのような手法をとるべきかについて参考とするため,TPP関係視察先を視察することは非常に有益で,六次産業化のモデルとしても合理的である。
b TPP関係視察先の視察内容
補助参加人らは,キウイ360では最高責任者のG氏に,コンビータ養蜂場ではコンビータNZリミテッドの課長であるH氏に,それぞれ案内してもらい,説明を受けた。タウランガ酪農場では,経営者夫妻から飼育方法の工夫や経営体制について話を聞いた。これにより,補助参加人らは六次産業化により交流人口を生み出すための工夫を学ぶとともに,酪農については大規模化・低コスト化を進める必要性を感じた。
c イーデンパークの視察
本件海外視察当時,県は2019年ラグビーワールドカップの誘致を検討しており,また2020年東京オリンピックのサッカー競技が県内で行われる予定となっていたことから,ひとめぼれスタジアム宮城(利府町)やユアテックスタジアム(仙台市泉区)で国際的ビッグイベントを開催するに当たって,渋滞や駐車場不足等の対策の参考にするため,ラグビーワールドカップを開催したイーデンパークを視察先としたのであり,視察は何ら不合理ではない。
実際に試合が開催されている時間帯にイーデンパーク周辺を視察して,渋滞等への対策について視察し,スタジアム内では観客の動線や言葉の通じない観客に対する案内,避難経路やトイレの設備などについて視察を行った。その結果,スタジアム周辺を大規模に進入禁止とし,周辺住民の自宅の土地の一部を駐車スペースとして開放していることが分かったので,目的との関係で視察内容が不合理とはいえない。
イーデンパークの視察は当初から予定されていたものの,説明をしてもらう担当者がおらず,補助参加人らだけで視察に赴くことになったため,特段支出が不要であるから記載をしていなかったものであり,現に,旅行見積書(丙2)や領収書(甲4)には,イーデンパーク視察にかかる移動代等の費用については何ら記載されていない。
(オ) 5日目の視察先(ワイヘケ島)について
a 視察目的
県では,六次産業化事業の一環として,補助参加人Z1の地元である山元町においてワインを中心とした街づくりを行うことが検討されていた。イチゴを使ったワインの製造を検討していた地元農家が,補助参加人Z1に対し,本件海外視察の際にニュージーランドの成功例を見てきてほしいと依頼したため,ワイヘケ島を視察することになった。ワイヘケ島は,ワインを中心とした街づくりに成功している場所であるから,視察することは何ら不合理でなく,視察の必要性は非常に高い。
b 視察内容
ストーニーリッジワインヤードではI氏から,ハウワインヤードではJ氏から説明を受けて島内の視察を行い,六次産業化を生かした街づくりの手法を学んだので,視察内容は目的に沿ったものである。
補助参加人らはそもそもワインを飲む目的でワイナリーを視察したのではなく,試飲程度にさっと飲んだだけであるから,視察に何ら影響は出ていないし,ワインにとても力を入れているワイナリーを視察するに当たって試飲すら全くしないことは礼を失するものといわざるを得ない。よって,ワインを飲んだことは視察目的に照らして不合理とはいえない。
ウ 視察の成果について
(ア) 1日目の視察先について
補助参加人Z2は,平成26年9月の定例会一般質問,及び平成27年2月の定例会予特総括質問において,オールドAMIスタジアム視察を踏まえて質疑をしている。
カーボンカテドラルについて,ニュージーランドでは被災した建物を震災遺構として残すつもりがないため,震災遺構の保存の議論につながるような成果を得ることはできなかったが,視察の結果,県政に活用できるような成果を得られなかったこともまた視察の成果というべきである。
市内トラムについて,同様のものを県内に導入することには多数問題があるが,将来,新交通システムを構築するに際して大いに参考としたい。将来的な課題克服のための検討材料とするために調査・視察を行うこともあり得るので,具体的な提案・提言がなされていないからといって,視察をしていなかったということにはならない。
(イ) 2日目の視察先について
マウントクック国立公園の視察により,徴収しているみやぎ環境税の使途について,登山コースの保全等,観光面にも生きる形で税金を用いることも検討すべきであると考えた。平成27年9月16日の県議会一般質問において,補助参加人Z2は,マウントクック国立公園,テカポ湖畔視察で得た成果をもとに質問を行った。これを受け,県知事は,より一層自然環境の保全,環境保全対策の情報発信,天体観測も含めた環境教育の充実に取り組むことを約束しており,自然環境保護をより一層加速させることにつながったといえる。
(ウ) 3日目の視察先について
補助参加人Z2は,平成26年9月30日の県議会一般質問において,ワイラケイ地熱発電所の視察をもとに,今後の地熱発電の活用を希望する内容の質疑を行っている。また,補助参加人Z1は,県のエネルギー政策について,同年11月の県議会一般質問において質疑を行っている。さらに,補助参加人Z3は,本件海外視察から帰国後,東北電力との間で,地熱発電の実現可能性について検討しており,将来的に県において地熱発電が成功する可能性があることが分かったことは視察の成果ということができる。
(エ) 4日目の視察先について
TPP関係視察先の視察結果について,現時点では具体的な県の施策に反映されていないが,農業の大規模化,そして六次産業化事業を推進する中で参考にする。
イーデンパークについては,補助参加人Z4が,平成26年9月11日の予算特別委員会において質疑を行っている。また,補助参加人Z2は,同月30日の本会議一般質問及び平成27年3月6日の本会議予特総括質問において質疑を行っている。今後,ひとめぼれスタジアム宮城やユアテックスタジアムで大規模なイベントが開催される際に参考とする。
(オ) 5日目の視察先について
補助参加人Z1は,山元町のイチゴ農家に対して,本件海外視察に基づくアドバイスを行い,平成28年2月27日,イチゴワインのワイナリーを有する六次化センターが着工した。
(2)  争点2(補助参加人らの悪意の受益者性)について
(原告の主張)
本件派遣決定は,違法と評価されるところ,派遣議員が,派遣目的が不必要なものであり,視察先や日程等が派遣目的に照らして明らかに不合理であることを認識している場合は,当該議員は法律上の原因がないことについて悪意であるというべきである。本件海外視察は,単なる海外旅行であったことは明らかであるから,補助参加人らは,本件派遣決定が違法であることを基礎づける事実について認識を有していたというべきである。
よって,補助参加人らは,利得発生日である平成26年3月6日から,遅延利息を付してこれを返還すべき義務を負う。
仮に,悪意の受益者といえない場合でも,遅くとも訴状送達日の翌日から遅滞に陥るというべきである。
(被告及び補助参加人の主張)
原告の主張は争う。
第3  当裁判所の判断
1  事実認定
前記第2の2の前提事実に証拠(甲1~4,6,8,9,11,24,27,乙1,丙6の6,9,18,証人Z4,証人Z1,証人Z2,証人Z3)及び弁論の全趣旨を併せれば,次の事実を認めることができる。
(1)  視察国をニュージーランドに決定した経緯
平成25年4月18日,ニュージーランド航空が県議会を訪問してニュージーランドに関する情報提供をし,これを受けて,補助参加人Z4は,ニュージーランドの成功例と県政の課題がうまく合致していると考えた。また,東日本大震災から2年が経過したことから,東日本大震災の17日前に大地震が発生したニュージーランドの復興状況を調査したいと感じていた。さらに,2019年ラグビーワールドカップが日本で開催されることになり,仙台市が開催地として立候補していたため,2度のラグビーワールドカップ開催経験を持つニュージーランドを視察したいと考えていた(丙18の2頁,証人Z4・1~3頁)。
補助参加人Z4は,ニュージーランドへの視察を目的として補助参加人Z1を勧誘した。補助参加人らは,ニュージーランドの視察を行うことを目的として集まったため,視察国について他の候補地を検討することはしていない(証人Z1・26~27頁)。補助参加人Z4は,これまで海外の震災からの復興例を調べたことはない(証人Z4・12頁)。
(2)  本件海外視察決定に至る経緯
ア 補助参加人らは,それぞれ提案した調査項目について協議し(証人Z1・14~15頁),補助参加人Z1を団長として本件企画書を作成した(甲1)。
本件企画書においては,調査目的について,「東北大震災に対するわが宮城県の対応及び大震災により発覚した,近代のエネルギー問題に関して,その対策並びに施策を推進するにあたり,同じような環境におかれた,ニュージーランド国の対策が近時マスコミ報道にもとりあげられ世界的に脚光をあびていることに鑑み,それらの政策を掘り下げて調査するため,今回の調査を企画した。また,ニュージーランド国は農業政策や環境保護政策でも先進的な役割をはたしており,宮城県がTPP問題に対する具体的な施策を考える際に参考になるものと確信しその視察を行うものである。環境保護に関しても,自然豊かな宮城県の観光資源をいかにこれから生かしていくかと考えた場合,その参考になるものがあるものと掘り下げて調査を行うものである。そのほか,ニュージーランド国はスポーツ振興においても,特にラグビーの種目においては他国の追随を許さないものをもっており,わが宮城県も富県政策の中においてスポーツ振興策を掲げる中でその参考になればと思い,視察するものである。」と記載されている。
また,調査先として,AMIスタジアム,オールドAMIスタジアム,カーボンカテドラル,市内トラム,マウントクック国立公園,テカポ湖,ワイラケイ地熱発電所,キウイ360,コンビータ養蜂場,酪農施設及びワインファクトリーが記載されており,調査先別の主な調査項目は,AMIスタジアムについて「スポーツ振興のためのその有益性について調査」,オールドAMIスタジアムについて「震災対策についてその過程を調査」,カーボンカテドラルについて「制作過程とその震災後の効果」,市内トラムについて「乗車を通して,その施設の現状と問題点」,マウントクック国立公園について「世界の観光地の環境保護対策についての現状」,テカポ湖について「観光資源の保護と現状と今後の課題」,ワイラケイ地熱発電所について「現状と問題点調査並びに経費の調査」,キウイ360について「現状とその維持活動の問題点」,コンビータ養蜂場について「蜂蜜工場の現状とTPP対策の問題点」と記載され,さらに調査先の具体的な記載はないが,「酪農施設の維持活動調査」と「ワインファクトリーの活動状況調査とその問題点」という調査項目が記載されている。
イ 補助参加人らは,平成26年2月7日付けで,本件申出書を作成し,県議会議長に提出した(甲2)。調査目的及び具体的な調査事項は,以下のとおり記載されている。なお,「Kiwi360」はキウイ360,「COMVITHONEY蜂蜜工場」はコンビータ養蜂場,「ワイケレ市のワインファクトリー」はワイヘケ島のワイナリーを指している。
(ア) 調査目的
大震災対策の効果的対策の調査
エネルギー問題の有効的対策調査
環境保護対策と観光資源のあり方調査
スポーツ振興のあり方調査
農業問題TPP対策調査
街づくり及び産業と観光資源調査
(イ) 具体的な調査事項
大震災後のクライストチャーチ市の振興施策について
観光資源に対する環境保護対策について
クライストチャーチ市のスポーツ振興施策について
ワイラケイ地熱発電所のエネルギー調査について
Kiwi360社の現状調査:TPP対策
COMVITHONEY蜂蜜工場調査:TPP対策
ワイケレ市のワインファクトリー調査:産業と観光資源調査
ウ 平成26年2月18日,県議会において,本件海外視察について次の内容で承認の議決がされた(甲3)。
(ア) 目的
ニュージーランドにおける大震災対策・エネルギー対策・環境保護対策・観光資源・スポーツ振興・農業問題・街づくり・産業振興等に関する調査
(イ) 場所
ニュージーランド
(ウ) 期間
平成26年3月25日から平成26年3月31日まで(7日間)
(エ) 議員
補助参加人ら及びB県議
(3)  B県議の不参加
B県議は,本件海外視察に参加する予定だったが,本件派遣決定後,登米市豊里での県道供用開始式典に参加することとし,補助参加人Z4及び同Z1は,B県議に翻意を促したが,B県議は本件海外視察に参加しないことを決めた(甲8)。B県議は,平成26年3月29日,上記式典に参加した(甲9)。
(4)  事前研修,調査等
ア 事前研修は,構成議員による意見交換会が3回,ニュージーランド航空関係者からの意見聴取が1回,県内被災自治体からの意見聴取が2回,執行部からの事業説明が1回行われた(甲6)。
このうち,補助参加人らが視察国としてニュージーランドを選定する前に行われたと認められるのは,補助参加人Z4によるニュージーランド航空関係者からの意見聴取のみであり(証人Z1・15頁),構成議員による意見交換会2回及び執行部からの事業説明は,補助参加人らがニュージーランド国内における具体的な視察先を選定した後に行われた(証人Z1・16頁)。
本件報告書には,事前研修資料として,ニュージーランドの概略,日本との関係,宮城県との関係,東日本大震災に係る支援の内容が記載された書面や,ニュージーランド航空から提供を受けたニュージーランドを紹介する書面が添付されている(甲6)。また,農林水産省がまとめているニュージーランドの農林水産概況の,主要農産物の生産状況の項目において,ニュージーランドにおける2008年の牛乳の生産量が1562万トン,キウイフルーツは37万トンであるのに対し,日本では2009年の牛乳の生産量が791万トン,キウイフルーツは3万トンである旨記載されている(甲6の43頁)。
なお,宮城県における平成26年のキウイフルーツの出荷量は35トンであり(甲24),県内の養蜂飼育戸数は平成25年65戸,平成26年93戸,平成27年97戸である(甲27)。
イ 補助参加人Z4及び同Z2は,県内の天体観測場所である仙台市天文台,牡鹿御番所公園,内沼サンクチュアリセンター付近,くりこま高原いわかがみ平,栗原市深山牧場,蔵王高原刈田駐車場について,環境整備が進んでいないと考えていた。補助参加人Z4は,仙台市天文台,内沼サンクチュアリセンター付近,くりこま高原いわかがみ平を夜に視察したことがあり,補助参加人Z2は,内沼サンクチュアリセンター付近,くりこま高原いわかがみ平を夜に視察したことがある(証人Z4・25~26頁,証人Z2・3~7頁)。なお,仙台市天文台は,平成19年に西公園から青葉区錦ヶ丘に移転した(弁論の全趣旨)。
(5)  視察内容
ア 1日目
(ア) オールドAMIスタジアム
補助参加人らは,クライストチャーチ市に到着し,午前11時頃から午後0時頃までオールドAMIスタジアムにおいてクライストチャーチ前市長及びオールブラックスの元選手と会談した。会談場所として,クライストチャーチ前市長から,オールドAMIスタジアムを指定された。前市長からは,被災した建造物の取扱い等震災時の対応について,元選手からは地震時の状況,ワールドカップ開催時の状況等について説明を受けた。補助参加人らは,視察に当たって,事前にアポイントメントを取っていた。補助参加人Z1は,ラグビー場の調査に関心があったが,特に質問をしなかった(甲6,丙18,証人Z4・2~3頁,証人Z1・18~19頁,弁論の全趣旨)。
なお,本件企画書や本件申出書に視察先として記載していたAMIスタジアムは視察しなかった(証人Z1・20頁)。
(イ) カーボンカテドラル
補助参加人らは,午後0時頃から0時30分頃までの間,地震で半壊したクライストチャーチ大聖堂に代わる仮設の大聖堂であるカーボンカテドラルにおいて,事前にアポイントメントを取った司祭のC氏から同聖堂が被災者の心のよりどころとして機能していることなどを聞いたが,クライストチャーチ市ではそもそも被災した建造物を遺構として保存するという考えはなかった(甲6,丙18,証人Z4・4~5頁,弁論の全趣旨)。
(ウ) 市内トラム
補助参加人らは,午後0時30分頃から45分頃までの間,市内トラムに乗車した。市内トラムの関係者に話を聞く等の調査はしてしない(丙18の7頁,証人Z1・25頁,弁論の全趣旨)。
(エ) 市内被災地区調査
補助参加人らは,午後,クライストチャーチ市内の被災地区を見学した(弁論の全趣旨)。
イ 2日目
(ア) マウントクック国立公園
補助参加人らは,午後1時頃マウントクック国立公園に到着し,午後3時頃までの間に,事前にアポイントメントを取ったマウントクック管理事務所管理課長E氏から入山料が登山コース保全に使われること,外国種の動植物が持ち込まれないよう徹底して管理を行っていること等の説明を受けた。なお,補助参加人らは,マウントクック国立公園について,世界遺産であるという程度の事前調査しか行わなかった(甲6,丙18の9頁,証人Z4・29頁,弁論の全趣旨)。
(イ) テカポ湖畔
補助参加人らは,19時頃から21時頃までの間,テカポ湖畔のレストランで事前にアポイントメントを取った「アース&スカイ」社役員であるF氏から,世界的に星空を保護する運動が行われていること及び光害を徹底して排除する仕組み等について説明を聞き,その後マウントジョン天文台へ移動して星空を視察した(甲6,丙18の9~10頁,弁論の全趣旨)。
ウ 3日目
補助参加人らは,午後2時50分頃,ワイラケイ地熱発電所に到着し,D氏から,GNSサイエンス提供の資料(丙9)に基づいて,地熱発電の仕組みや発電で余った熱を野菜の温室栽培,養殖,温水プール,製紙工場,暖房等に利用する方法等について説明を受け,上記資料にメモを書き込んだ。補助参加人らは県内における地熱発電について,企業が地熱発電に取り組むような政策がないか及び自然エネルギーが原子力発電の代替エネルギーになり得ないかが課題であると考えてワイラケイ地熱発電所を視察したが,地熱発電施設内部については見学していない。補助参加人Z3は,本件海外視察後,東北電力と地熱発電について意見を交わし,地熱は枯渇する可能性があること,掘削から発電までに10年掛かること等の問題があることを聞いた(甲6,丙9,18の11頁,証人Z4・33頁,証人Z2・9~11頁,証人Z3・9~10,14,16~17頁,弁論の全趣旨)。
エ 4日目
(ア) キウイ360
補助参加人らは,午前10時頃から11時頃までキウイ農場を訪問し,午後0時頃から午後1時頃までレストランで昼食をとり,農場及びレストランで事前にアポイントメントを取った最高責任者のG氏から案内を受けた(丙18の13頁,弁論の全趣旨)。
(イ) コンビータ養蜂場
補助参加人らは,午前11時頃から午後0時頃までの間,コンビータ養蜂場において,事前にアポイントメントを取ったコンビータNZリミテッドの課長であるH氏に案内を受けた(丙18の13頁,弁論の全趣旨)。
(ウ) タウランガ酪農場
補助参加人らは,午後1時頃から2時頃までの間,事前にアポイントメントを取ったタウランガ酪農場の経営者夫妻から,年間を通してエサ代がほとんどかからないこと,牧草場を30区画に区切って,1日1区画を牛に食べさせ,次の日は別の区画を食べさせるというシステムを導入していること,ミルクの脂肪率を高める工夫をしていること,生産と販売で分業体制が敷かれていること等の説明を受けた。補助参加人Z2は,事前に乳製品の日本への輸出についての考え方,乳製品にこだわる理由,安い経費で酪農経営ができる理由に関する質問を準備し,経営者夫妻に質問した(甲6,丙18の13~14頁,証人Z2・15頁,弁論の全趣旨)。
(エ) イーデンパーク
補助参加人らは,午後7時30分頃からイーデンパークでスーパーラグビーの試合を観戦した。イーデンパークに向かう際に,スタジアムの周辺が一般車両の進入を禁止している状況を確認し,通訳兼運転手から説明を受けた(証人Z1・21~22頁,弁論の全趣旨)。
オ 5日目
補助参加人らは,午前11時45分頃,ワイヘケ島に到着し,バスに乗って,午後0時20分頃ストーニーリッジワインヤードに到着した。事前にアポイントメントを取ったI氏から説明を受け,同農園に設置されていたレストランで昼食を取った。補助参加人Z4及び同Z3は,昼食時にワインをボトルで注文し,ワインを飲んだ(丙18の16頁,証人Z2・17~18頁,弁論の全趣旨)。
午後2時45分頃,ハウワインヤードに到着し,J氏から説明を受けた。補助参加人Z2は,疲労のため,ハウワインヤードに行かず,ストーニーリッジワインヤードで待機していた(丙の18の16~17頁,証人Z2・17頁,弁論の全趣旨)。
補助参加人らは,午後4時頃,フェリーに乗船した(弁論の全趣旨)。
(6)  本件報告書の作成
補助参加人らは,本件海外視察後,本件手引きに従って平成26年6月24日付けで本件報告書を作成し,県議会議長に提出した(甲6)。本件報告書は,視察結果の少なくとも主要な部分に関して,補助参加人らで分担して原案を作成し,互いに内容を確認し,加筆する等して作成された(証人Z4・23頁)。
本件報告書においては,一日も早い再生と世界に発信できるモデル的復興,そして,「創造的復興」を成し遂げるためには,様々な分野での施策を充実させていかなければならないので,ニュージーランドの視察を行った旨記載されており,調査目的として記載された震災復興調査,スポーツ振興調査,自然環境保護調査,エネルギー問題調査,TPP問題(農業関係)調査,町おこし調査,観光資源調査の各項目について次のアないしカのとおり本件海外視察結果が報告されている(甲6)。
ア 震災復興調査
平成23年2月22日のカンタベリー地震による被害の説明,クライストチャーチ前市長から説明を受けたことのほか,現地では市の中心部の建物の大半が被災したままの状態で人はまばらであること,下水道の復旧がなされていないために水たまりができているとみられること,市内トラムは少数の観光客が利用する程度であること等が記載され,復興の遅れがみられ,「自然災害からの復旧・復興は官民一体となっての都市基盤の復旧と産業の再生の迅速化,そして市民の生活再建と心のケア大切さを改めて感じた。わが県の場合,津波被災などで現地再建がままならない地域もあるとはいえ,県民一人ひとりが力を合わせる中においても,行政のリーダーシップの重要性を感じた。」と記載されている。なお,カーボンカテドラルについては,「日本人建築家のK氏により設計・建造された紙の仮設大聖堂や日本の国際緊急救助隊の活動も紹介されている震災復興記念展示館が市内中心部にあり,観光施設になっている。」という3行のみが記載されている。
イ スポーツ振興調査
オールドAMIスタジアムについては,同スタジアムが保険会社との折衝がつかず震災当時のまま解体されていないこと,グラウンドは隆起・陥没していること,AMIスタジアムは郊外にあるためあまり渋滞は起きないこと,市の象徴的存在であり,速やかに新スタジアムが建設されたことが記載されている。
イーデンパークについては,国際試合が行われること,試合のある時は周辺道路の渋滞が起きるので,周辺住民からの要望で一般車両通行禁止地区が設定されることが記載され,「試合や大会開催時における,周辺地区や来場者に対する配慮や規制等は我が県施設よりは一歩先んじている」,「使用競技場の充実も重要だが,周辺や来場者への配慮など改善の必要性を感じた」と記載されている。
ウ 自然環境保護調査
マウントクック国立公園については,入場料を取っていないこと,年間30万人の来園者のうち70%が外国人であること,入山料の額とそれが全て登山コースの保全に使われること,動植物の外国種を持ち込まない方針等について記載されている。
テカポ湖畔とマウントジョン天文台については,暗い環境維持のための活動,音楽とのコラボレーションや,チリ・ハワイ・スペイン・オーストリアとの連携で「暗い星空公園」の実現に奔走していること等について記載し,「自然の尊厳を感じ圧倒された」,「産学官一体となって,これ(県内の「美しい海や壮大な山々など素晴らしい自然」を指す。)を守り,育み次世代に引き継ぐことも我々の大きな役割であると感じた」と記載されている。
エ エネルギー問題調査
D氏から説明を受けたこととして,ニュージーランド政府が2005年以降は地熱に力を入れるようになったこと,地熱発電をすることによっての災害等を理解し,コストなどの障害を克服することで有効に活用できること,日本でも十分活用ができるはずであることなどが記載され,「知恵をだし研究を重ね,制度や規制などエネルギー問題については様々なハードルはあると思うが,国に働きかけて自然エネルギーを有効活用すべきである」と記載されている。
オ TPP問題(農業関係)調査
キウイ360については,施設の説明と,TPP問題について影響がないと考えている旨が5行記載されている。
コンビータ養蜂場については,養蜂場の説明が3行記載されている。
タウランガ酪農場については,酪農場の説明と,放牧場は30区画に区割りし,1日1区画を乳牛に食べさせたら翌日は隣の区画を食べさせるというシステムを導入していること,牧草の他に自家製トウモロロシ原料を刻んで発酵させ,細かい粒状にして与えることでミルクの脂肪率を高めていること,経営状況は安定していて,乳業メーカーは,ミルク脂肪率が高ければ高い価格で買ってくれるので,低コストで高品質のミルクを生産すれば世界に対抗でき,TPP問題については関心がない旨記載され,「わが県はもちろんのこと,日本の全ての農業についても大規模化,低コスト農業への生産体制確立が急務であると感じた」と記載されている。
カ 町おこし調査
ストーニーリッジワインヤードとハウワインヤードについて,その説明と,農園を開園するまでは,この島ではブドウが育たないなどと言われ,苦労が多くあったと聞いたこと等が11行記載され,「我が県も観光資源は多くあるが,新たな発想と創意工夫,地域間連携など既存の枠にとらわれることなく行動することも,必要であると感じた」,「山元町のワイン工場が被災し,現在再建のために奮闘しておられるので,今回の視察を地元産業の復興のために活かしたい」と記載されている。
(7)  議会での発言
補助参加人Z2は,平成27年9月16日の平成27年9月定例会(第353回)において,「宮城県にも天体観測スポット,六カ所ございました。仙台市の天文台,牡鹿御番所公園,内沼サンクチュアリセンター付近,栗原高原いわかがみ平,栗原市の深山牧場,蔵王高原刈田駐車場,そのほかにも鳴子温泉鬼首の吹上キャンプ場などがあります。天体観測のための環境整備を進め,世界に宮城の自然環境保全対策が発信できるのではと考えます。」と発言した(丙6の6の6頁)。
(8)  本件聴取
原告は,平成26年8月20日付けで本件海外視察につき,監査請求を行った。監査委員は,本件海外視察に参加した補助参加人らに対し,原告らの請求に対する意見を文書により調査し,その回答書の内容は「住民監査請求に係る監査結果について(通知)」に,できる限り回答書の原文に即して記載されている。本件聴取結果において,ワイン農場の視察目的に関して六次産業化への言及はあるが,みやぎ環境税に関する記載はない(甲11)。
(9)  本件手引きの内容
本件手引きにおいて,海外視察について,海外調査は,議員派遣として実施されるものであり,議案の審査又は県の事務に関する調査,その他議会において必要があると認められた場合に,調査目的,場所,期間などを明らかにした上で,議会の議決を経て決定される旨記載されている。(乙1の2頁)。
海外視察の旅費については,内国交通費,航空賃,航空賃以外の現地交通費,定額による外国旅行雑費,宿泊料,食卓料,死亡手当の積算により算出され,90万円の範囲内で支給される。ニュージーランドについての定額による外国旅行雑費は,議員の場合5600円である。宿泊料は,県議会議員の議員報酬等に関する条例に定める定額を支給することになっており,ニュージーランドについて,議員の場合は,1万7200円である。ガイド料及び昼食費は,旅費の対象外である(乙1の6~9頁,33頁)。
なお,本件視察においては,現地交通費が必要ないことを理由に,外国旅行雑費が2分の1減額されており,1日当たり1人につき2800円である(甲4)。
(10)  旅行代金の支払
補助参加人らは,平成26年4月2日,本件海外視察の旅行代金として,それぞれ109万1500円を,株式会社トラベルe旅.COM(以下「本件旅行会社」という。)に対して支払った。内訳は,航空運賃(国際線)63万5000円,航空運賃(ニュージーランド国内)2万2840円,成田空港施設使用料金2540円,燃油追加代金4万2000円,航空保険料金500円,空港税6320円,現地交通費用(3月26日~28日)南島部分バス料金9万円,現地交通費用(3月28日~31日)北島部分バス料金8万円,ワイヘケ島へのフェリー代3000円,宿泊費用3月26日(クライストチャーチ)分1万7000円,3月27日(テカポ湖)分1万7000円,3月28日(ロトルア)分1万7000円,3月29日~31日(オークランド)分3万4000円(1万7000円×2泊),7日間昼食・夕食代3万5000円(1日7000円×5泊),3月27日,28日,30日,31日の現地ガイド料合計30万円(1日当たり7万5000円)のうち1人分6万円,国内移動費用2万9800円である(甲4の5,9,13,17頁。なお,内訳を合計すると109万2000円になる。)。
なお,昼食・夕食代の内訳は,昼食3000円,夕食4000円である(甲4の22頁)。
2  検討
(1)  争点1(本件海外視察に係る派遣決定及び公金支出等の違法性)について
ア 違法性判断の枠組みについて
(ア) 法100条13項に定める地方公共団体の議会による議員派遣は,議会制度を充実させ,地方分権を推進する一環として平成14年法律第4号による地方自治法改正により設けられたものである。
宮城県議会会議規則第130条は,これを受けて,1項で「法100条第13項の規定により議員を派遣しようとするときは,議会の議決でこれを決定する。ただし,緊急を要する場合は,議長において議員の派遣を決定することができる。」とし,2項で「前項の規定により議員の派遣を決定するに当たっては,派遣の目的,場所,期間その他必要な事項を明らかにしなければならない。」と定めている。また,本件手引きの「Ⅰ 海外視察の概要」の「1 海外視察(調査)について」においては,「海外調査は,議員派遣として実施されるものであり,議案の審査又は県の事務に関する調査,その他議会において必要があると認められた場合に,調査目的,場所,期間などを明らかにした上で,議会の議決を経て決定されます。」と記載されている。
このように,県議の海外調査は,通常は宮城県議会の議決により,緊急を要する場合は議長において(ただし,その場合は事前に議会運営委員会に諮り承認を得る運用となっている(平成14年4月議会運営委員会決定事項,乙1の34頁)。),派遣の目的,場所,期間その他必要な事項について内容を審査し,議案の審査又は県の事務に関する調査,その他議会において必要があると認められる場合に,これを決定するものとされている。
(イ) もとより,普通地方公共団体の議会は,当該普通地方公共団体の議決機関として,その機能を適切に果たすために合理的な必要性があるときは,その裁量により議員を国内や海外に派遣することができると解される。
しかしながら,このような議会の権能も絶対無制約なものではなく,合理的な必要性がないにもかかわらず所属議員を海外に派遣したり,研修や視察の名の下に遊行を主目的とするようないわゆる観光旅行を実施する等した場合には,裁量権行使の逸脱又は濫用として,派遣に要した費用の支出が違法となる場合があるというべきである。そして,裁量権行使の逸脱又は濫用の有無を判断するに当たっては,視察目的の合理性,視察先と視察目的との関連性,視察の必要性,視察内容,視察行程や費用の相当性などの事情を総合的に考慮する必要がある。
イ 視察目的
(ア) 前記認定のとおり,本件海外視察の目的は,本件企画書及び本件報告書に記載され,本件派遣決定時に県議会で認められたとおり,震災復興調査,スポーツ振興調査,自然環境保護調査,エネルギー問題調査,TPP問題(農業関係)調査,町おこし調査,観光資源調査であったと認められるところ,県は震災からの創造的復興を目指していたこと,本件派遣決定当時ラグビーワールドカップの誘致を目指していたこと,東日本大震災における福島県での原子力発電所の事故を契機にエネルギー問題について議論が行われていたこと等に照らせば,上記目的は県における議員の海外派遣の目的として合理的であるというべきである。
この点につき,補助参加人らは,みやぎ環境税の使途に関する調査は自然環境保護調査に,六次産業化に関する調査は町おこし調査に含まれており,これらも本件海外視察の目的としていたと主張する。
しかし,みやぎ環境税の使途に関する調査という目的は,本件企画書,本件報告書及び本件聴取の結果にも記載がなく,本件海外視察前から本件海外視察の目的としていたと認めるべき証拠がない。補助参加人らは,自然環境保護調査の一部として認識していたため記載がないと主張するが,本件報告書には入山料の額及びその全てが登山コース保全に使われること等みやぎ環境税の使途の議論に資する可能性のある情報が記載されているのであるから,みやぎ環境税の使途を調査する目的があったのであれば,みやぎ環境税について一言も言及がないというのは不自然であって,補助参加人らの主張は採用できない。
また,補助参加人らは,六次産業化とは,農林漁業者が食品加工や流通販売まで行うことをいい,山元町がイチゴを生産するにとどまらずワイン等に加工し,販売することはまさに六次産業化であるから,視察前から六次産業化について検討していたと主張するが,視察の目的は視察に参加する議員らによって明確に把握されている必要があり,視察の内容及び結果は同目的に沿ったものになるべきところ,本件海外視察において補助参加人らが六次産業化に関する調査という目的を明確に把握していた証拠はなく,視察に際しても六次産業化に係る質問をしたとは認められない上,六次産業化に関する調査という目的は,本件企画書及び本件報告書に記載がなく,本件聴取において初めて言及されたものであることに照らせば,視察前から六次産業化に関する調査を本件海外視察の目的としていたものと認めることはできない。
(イ) 原告は,ニュージーランドを視察先とすることは補助参加人Z4が参加者を募った時点で決定しており,海外の復興例を調べることもなく,参加議員による協議もせずに決めたのであるから,震災復興調査という目的は名目的なものであると主張する。
前記認定のとおり,確かに,補助参加人Z4はニュージーランドへの視察を目的として補助参加人Z1を勧誘しており,補助参加人らで視察国の決定について協議したことも認められず,ニュージーランドに行くことが前提となっていたことは否めない。しかし,ニュージーランドは東日本大震災と同時期に大地震の被害に遭っており,その被害や復興の状況が異なるとしても,被災地を視察することで,県の目指す創造的復興に関する施策の参考となる情報を取得し得る。
また,原告は,TPP問題農業関係調査という目的についても,日本とニュージーランドはTPP問題に関する利害状況が正反対であるから,視察をしても何ら成果を上げることができないことは行く前から分かっていたので,後付けの目的にすぎないと主張する。しかし,日本とニュージーランドでTPP問題に関する利害状況が異なるとしても,視察先の選択や視察内容によっては,県の農業基盤を強化するために参考となる情報が得られる可能性がある。
したがって,視察国がニュージーランドと決まっていたこと自体をもって,震災復興調査が名目的な目的であるとはいえず,またTPP問題農業関係調査が後付けの目的であるということもできない。
よって,原告の主張は採用できない。
ウ 事前準備
また,原告は,本件手引きにおいて,海外視察の企画・立案に当たっては,調査目的,調査事項,調査先候補の選定に先立つ事前の調査,情報の収集が必要であると記載されているにもかかわらず,補助参加人らは何ら事前研修を行わずに本件申出書を作成しており,視察先についても旅行会社が選定していることから,主体的な事前準備・検討がなされておらず,本件派遣決定及び本件公金支出は違法であると主張する。
確かに,事前研修の具体的な内容については不明確な部分があり,視察先決定の経緯も明確とはいい難いが,前記認定のとおり,本件企画書を作成するに当たって,補助参加人らは,それぞれ提案した調査項目について協議していることから,補助参加人らが主体的な事前準備・検討を何ら行っていないとまではいえず,直ちに本件派遣決定及び公金支出が違法であるとはいえない。
よって,原告の主張は採用できない。
エ B県議の不参加
さらに,原告は,本件海外視察に参加する予定だったB県議が,県道の供用開始式典において祝辞を述べるという些末な理由で参加を取り止めて,これを容認する姿勢からしても,補助参加人らが単なる海外旅行としか認識していないことが明らかであると主張するが,B県議が参加を取り止めたとしても,そのことから直ちに補助参加人らが本件海外視察を単なる海外旅行としか認識していなかったと認めることはできない。
よって,原告の主張は採用できない。
オ 視察先と視察目的との関連性,視察の必要性,視察内容の相当性等
(ア) 1日目の視察先について
a オールドAMIスタジアムについて
前記認定のとおり,オールドAMIスタジアムの視察目的は,震災対策についてその過程を調査すること及びスポーツ振興調査であり,クライストチャーチ前市長及びオールブラックスの元選手から話を聞くため事前にアポイントメントを取ったところ,会談場所としてオールドAMIスタジアムを指定されたのであるから,視察先と視察目的との関連性は認められる。また,クライストチャーチ市は東日本大震災の17日前に大地震が発生し,本件海外視察当時は3年が経過しており,県同様復興過程にあったと考えられること及び当時仙台市が2019年に日本で開催されるラグビーワールドカップの開催地として立候補しており,2度のラグビーワールドカップ開催経験を持つニュージーランドで,ワールドカップが開催されたスタジアムを視察することが参考になり得ると認められることに照らせば,オールドAMIスタジアムについては,視察の必要性が認められる。
また,前記認定の通り,補助参加人らは,オールドAMIスタジアムにおいて,クライストチャーチ前市長及びオールブラックスの元選手と会談し,被災した建造物の取扱い等の震災時の対応及びワールドカップ開催時の状況等について説明を受けたのであるから,視察内容は上記視察目的に照らして相当であると認められる。
これに対し,原告は,ラグビー場がどのように整備されているかを調査しておらず,スポーツ振興調査に力を入れていたという補助参加人Z1も質問をしていないから,実質的な調査は行われていないと主張するが,前記のとおり,補助参加人らはクライストチャーチ前市長及びオールブラックスの元選手と会談しているのであり,オールブラックスの元選手からワールドカップの様子を聞くことはワールドカップ誘致のための調査という目的に沿うものであるから,補助参加人Z1が直接質問をしていないとしても,実質的な調査が行われていないとはいえない。
b カーボンカテドラルについて
前記認定のとおり,カーボンカテドラルにおいては,その制作過程と震災後の効果が調査項目とされており,補助参加人らは震災遺構の保存に関する議論に資する情報を得ることを目的としていたところ,ニュージーランドにはそもそも震災遺構の保存という政策自体存在しなかったものの,これは事前に国内で調査をしても判明したとはいえず,視察目的と視察先との関連性及び視察の必要性は認められる。
また,本件報告書には,カーボンカテドラルについて,日本人建築家が設計・建造したこと及び観光施設になっていることしか記載されておらず,本件報告書からは視察内容が明らかとはいえないが,前記認定の通り,補助参加人らは,カーボンカテドラルにおいて司祭であるC氏から同聖堂が被災者の心のよりどころとして機能していることなどを聴取しているので,視察内容の相当性も認められる。
これに対し,原告は,県内における震災遺構保存の問題について検討する一助とするなら,どのような議論を経て復興記念施設建設に至ったかを聞き取った上,犠牲者の出た建造物についての現状を視察すべきであったが,補助参加人らはこれをしておらず,実質的な調査をしていないと主張するが,前記のとおり,補助参加人らはC氏から説明を受け,震災後に建設されたカーボンカテドラルの機能等の説明を受けている。よって,原告が主張する調査を行わなかったとしても実質的な調査をしていないとはいえず,原告の主張は採用できない。
c 市内トラムについて
前記認定のとおり,補助参加人らが体験乗車をした市内トラムについては,環境保護対策の調査を目的とし,施設の現状と問題点を調査項目としており,同項目について調査をするためには,市内トラムに体験乗車をするだけでは不十分であるものの,視察目的と視察先との関連性がないとはいえず,視察の必要性を否定することはできない。また,市内トラムの乗車時間は短時間であり,次の行程である市内視察に向かう交通手段でもあり,乗車のための費用は本件公金支出に含まれていないことに照らせば,視察内容,行程及び費用の相当性は一応認められる。
これに対し,原告は,県内で路面電車の建設が検討されていないので,視察の必要性はないと主張するが,前述のとおり視察目的と視察先との関連性がないとはいえず,県内で市内トラムと同様の路面電車の建設が検討されていないとしても,視察の必要性がないとはいえないので,原告の主張は採用できない。
d 市内視察について
前記認定のとおり,補助参加人らは,クライストチャーチ市の震災対策を視察するため,クライストチャーチ市内の被災地区を視察しており,視察目的と視察先との関連性は認められ,クライストチャーチ市の地震の17日後に東日本大震災が発生しており,クライストチャーチ市も県同様に復興過程にあることからすれば,市内視察について視察の必要性及び視察内容の相当性は認められる。
(イ) 2日目の視察先について
a マウントクック国立公園について
前記認定のとおり,補助参加人らは,環境保護調査を目的とし,観光地の環境保護対策の現状を調査項目として世界遺産に登録されているマウントクック国立公園を視察しており,視察目的と視察先との関連性は認められる。また,県内には世界遺産は存在しないものの,松島や三陸海岸など自然観光資源を観光地としている場所が多数存在しており,観光地の環境保護対策の現状を調査する必要性は認められる。
また,前記認定のとおり,マウントクック国立公園について,本件海外視察前に調査したことは世界遺産であることのみであり,本件報告書には,マウントクック国立公園について,入場料・入山料,来園者数,外国種を持ち込まない方針を取っていること等の外形的な事実が簡潔に記載されるにとどまっており,視察内容について十分な記載があるとはいえないが,補助参加人らは,マウントクック管理事務所の管理課長であるE氏にアポイントメントを取って入山料が登山コース保全に使われることや外国種の動植物が持ち込まれないように徹底して管理を行っていることなどについて自然環境保護調査の目的に沿った話を聞いていることから,視察内容が相当でないとはいえない。
b テカポ湖畔について
前記認定のとおり,補助参加人は,環境保護調査を視察目的とし,観光資源の保護の現状と今後の課題を調査項目として,星空を保護する運動を行っているテカポ湖畔及びマウントジョン天文台を視察していることから,視察目的と視察先との関連性は認められる。
また,前記認定のとおり,補助参加人Z4及びZ2は,県内の天体観測場所も視察しており,県内の天体観測場所を整備するため,星空を保護する運動を行っているテカポ湖畔を視察する必要性は認められる。さらに,本件報告書のテカポ湖畔に係る記載は外形的事実がほとんどであり,視察内容の報告としては不十分な点があるものの,星空保護の運動を行っている「アース&スカイ」社の役員であるF氏に事前にアポイントメントを取り,光害を徹底して排除する仕組み等の説明を受け,実際に星空を観察していることから,視察内容は相当であるといえる。
原告は,天体観測場所の環境整備において光害の防止が重要ではないことや,観光地であるテカポ湖畔で観光ツアーと大差がない視察をしていること等から視察の必要性が認められないと主張するが,天体観測場所の環境整備において光害の防止が重要ではないとはいえず,前記のとおり,補助参加人らは,事前にアポイントメントを取ったF氏から,自然環境保護調査の目的に沿った話を聞いていることから,一般の観光ツアーと大差がないとはいえず,原告の主張は採用できない。
また,原告は,補助参加人Z2が,仙台市天文台の移転すら知らず,県内の天体観測場所についてホームページ(甲43)の受け売りの説明しかしていないことから,補助参加人らは県内の天体観測場所を整備するつもりがなく,視察の必要性はないと主張する。しかし,補助参加人Z2は,ホームページに記載されていない鳴子温泉鬼首吹上キャンプ場について,天体観測場所として整備すべきであると証言し(証人Z2・4~5頁),平成27年9月定例会(第353回)においても同キャンプ場について言及していること(丙6の6)に照らせば,補助参加人らは一定程度具体的に県内の天体観測場所整備を検討していると推認できることから,テカポ湖畔の視察は必要性が認められるので,原告の主張は採用できない。
(ウ) 3日目の視察先(ワイラケイ地熱発電所)について
前記認定のとおり,補助参加人らは,エネルギー問題調査を目的として,発電所の現状と問題点調査並びに経費の調査を調査項目としてワイラケイ地熱発電所を視察しており,視察目的と視察先との関連性は認められる。
また,県内には鬼首地熱発電所が存在すること及び東日本大震災での原発事故を受けて自然エネルギーによる発電が注目されていることから,地熱発電所の視察には視察の必要性が認められる。
本件報告書には,D氏の経歴等に関する説明以外には,ニュージーランドが2005年以降地熱に力を入れるようになったこと,発電の余熱を活用できることしか記載されておらず,視察内容の記載として不十分であることは否めないが,補助参加人らは,事前にアポイントメントを取って,地熱発電に関する資料に基づいてD氏から地熱発電の仕組みや余熱の活用法等について説明を受けており視察内容の相当性は認められる。
これに対し,原告は,日本に占める地熱発電の割合は国内電力需要量のわずか0.3パーセントにとどまっていること及び県の再生可能エネルギー政策においても重要な政策ではないことから,そもそもの視察目的自体が不合理で,不必要であると主張するが,県内には鬼首地熱発電所が存在し,将来同発電所を活用する可能性を検討するために地熱発電所の視察を行うことが不合理又は不必要であるとはいえない。
(エ) 4日目の視察先について
a TPP関係視察先について
前記認定のとおり,補助参加人らは,TPP問題調査を目的として,それぞれ,キウイ360の現状とその維持活動の問題点,コンビータ養蜂場の現状とTPP対策の問題点,酪農施設の維持活動を調査することとしていた。しかしながら県内の生産量がごくわずかである農産物の生産施設であり,かつ観光名所であるキウイ農園と養峰場,県内の主たる産業ではない酪農の施設を視察先に選定した理由が不明であるにもかかわらず,派遣決定がなされていることからすれば,本件派遣決定に当たって,県議会で視察先と視察目的との関連性について審査されていなかったことが推認される。
これに対して,補助参加人らは,ニュージーランドはTPP発効により他国に対して優位な立場となるから,県内においてTPP発効による影響から農家を保護するにとどまらず,むしろ利益を上げていくためにはどのような手法を取るべきかについての参考とするため,ニュージーランドの農場等を視察することは非常に有益であると主張し,補助参加人らがタウランガ酪農場ではこの点に関し経営者からの説明を受けていることも認められる。しかし,補助参加人らがかかる問題意識の下でTPP関係視察先の視察を行ったと認めるべき証拠はなく,むしろ,補助参加人Z4は,ニュージーランドはTPPに関しての意識があまり高くなかった,もうちょっと違う話が聞けると思っており,期待どおりの成果が得られなかったと証言していること(証人Z4・44~45頁),酪農についてもニュージーランドが乳製品の輸出国であり,大規模でコストが低く抑えられていることなどの調査はされていなかったことに照らせば,本件海外視察当時上記のような問題意識を有していたとは認められず,補助参加人の主張は採用できない。
b イーデンパーク
補助参加人らは,イーデンパークを訪問し,スーパーラグビーの試合を観戦しているところ,本件海外視察の企画当時からイーデンパークの視察を予定していたと主張するが,前記認定のとおり,本件企画書及び本件申出書にはイーデンパークの視察予定が記載されておらず,スポーツ振興調査をクライストチャーチ市で行うこととしていることから,オークランド所在のイーデンパークを視察する予定がなかったことは明らかである。よって,イーデンパークの視察については,議会における審査を経ていないものと認められ,イーデンパークの視察内容は,事前の調査等もないままイーデンパークに向かう途中で,周辺の一般車両進入禁止状況の確認とその説明を多少受ける程度で,後はスーパーラグビーの試合の観戦であったことからすれば,イーデンパークへの訪問は,スーパーラグビーの試合を観戦することが主目的であったと推認される。
したがって,イーデンパークを視察する必要性は認められない。
これに対し,補助参加人らは,イーデンパークの視察は予定されていたものの,説明をしてもらう担当者がおらず,特段支出が必要ないことから記載していなかったと主張するが,1日目の視察先である市内トラムは,体験乗車をしただけで説明をしてもらう担当者はおらず,市内トラム視察にかかる費用も旅行見積書等に記載がないにもかかわらず,本件企画書及び本件申出書に視察先として明記してあるのであるから,イーデンパークの視察について記載されない理由は明らかではなく,補助参加人らの主張は採用できない。
(オ) 5日目の視察先(ストーニーリッジワインヤードとハウワインヤード)について
前記認定のとおり,補助参加人らは,町おこし調査の目的で,ワインファクトリーの活動状況とその問題点を調査することとしてストーニーリッジワインヤード及びハウワインヤードを訪れているが,視察目的と視察先との関連性が直ちに明確とはいえない。
そこで,視察内容をみるに,補助参加人らは,事前にアポイントメントを取ったI氏及びJ氏から説明を受けたと主張しているが,本件報告書には,ワイヘケ島の外形的事実を除けば,海,農園,工場,食事,お酒を組み合わせて一大観光地になったこと,農園を開園するまでは苦労が多くあったことしか記載されておらず,説明内容の具体的な記載が全くない。このことに照らせば,補助参加人らは,単にワイヘケ島の島内を見て,ワイン農園を訪れ,ワインを飲んだにすぎないといわざるを得ず,視察目的と視察先との関連性,視察内容の相当性及び視察の必要性を欠いているにもかかわらず本件派遣決定がなされていることから,議会において,本件派遣決定に当たり,ワイヘケ島のワインファクトリーと町おこし調査の目的との関連性については審査されなかったといわざるを得ない。
カ 小括
以上によれば,本件海外視察のうち,4日目及び5日目の視察先については,本件派遣決定の際に視察目的と視察先の関連性について審査がなされていないか,議会の審査を経ずに県政と無関係な遊行を主目的とする行程を組み込んだものと認められることから,4日目と5日目の視察に係る本件派遣決定及びそれに伴う本件公金支出は,議会の裁量権行使の逸脱又は濫用に当たり,違法であるというべきである。
キ 補助参加人らが返還すべき額について
そこで,補助参加人らが返還すべき額について検討する。
前記のとおり,本件海外視察において実際に視察を行った5日間のうち2日間の行程が違法であるから,本件海外視察の全行程のうち違法な行程の割合は40パーセントを占めることになる。他方,本件海外視察には適法な行程も存在しており,本件公金支出全額を違法ということはできず,違法とされる4日目及び5日目の視察に係る費用を返還すべきであるところ,4日目及び5日目の視察費用が,本件旅行会社に支払った旅行代金のうち本件公金支出に係る90万円から支出されたのか,それ以外の部分から支出されたかを区別することができない。したがって,4日目と5日目の視察費用を,本件旅行会社に支払った旅行代金から,旅費支給の対象でないものを除いた費用全体に割り付け,本件公金支出に係る90万円のうち4日目と5日目の視察費用に相当する金額を返還するのが相当である。
前記認定のとおり,4日目及び5日目の視察に係る1人当たりの費用は,宿泊料3万4400円(1万7200円×2日分),定額による外国旅行雑費5600円(2800円×2日分),北島部分バス料金4万円(8万円の4分の2),ワイヘケ島の往復フェリー代3000円で,合計8万3000円である。
そして,本件旅行会社に支払った1人当たりの旅行代金109万1500円のうち,旅費支給の対象となる額は,対象とならない昼食代1万5000円(3000円×5日)及び現地ガイド料6万円を差し引いた,101万6500円である。
よって,101万6500円のうち8万3000円が違法であるから,本件公金支出に係る90万円のうち7万3487円は違法であるというべきであり,補助参加人らは,それぞれ,7万3487円を返還すべきである。
(2)  争点2(補助参加人らの悪意の受益者性)について
原告は,補助参加人らが悪意の受益者であると主張するが,原告による本件公金支出に係る監査請求が棄却されていることに照らせば,悪意の受益者であることを認めるに足りる証拠はなく,原告の主張は採用できない。よって,民法704条前段の法定利息の返還履行請求を求める原告の請求は理由がない。
なお,原告は,補助参加人らが悪意の受益者に当たらないとしても,訴状送達日の翌日から遅延損害金が発生すると主張する。しかし,善意の不当利得者の返還義務は期限の定めのない債務であるから,債務者は催告により遅滞に陥ると解されるところ,原告は補助参加人らが県に対して負う不当利得返還債務の債権者ではなく,被告への訴状送達は催告に当たらないから,補助参加人らは遅滞に陥っておらず,上記主張は採用できない。
第4  結論
以上の次第で,原告の請求は,主文の限度で理由があるから,その限度で認容し,その余の請求は理由がないからいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
仙台地方裁判所第2民事部
(裁判長裁判官 髙取真理子 裁判官 内田哲也 裁判官 宮崎裕季子)

 

別紙
当事者目録
仙台市〈以下省略〉
原告 仙台市民オンブズマン
同代表者 A
同訴訟代理人弁護士 千葉晃平
同 宮腰英洋
同 小野寺信一
同 甫守一樹
同 石上雄介
同 高橋輝雄
同 前田大輔
同 山田忠行
同 松澤陽明
同 吉岡和弘
同 齋藤拓生
同 坂野智憲
同 三浦じゅん
同 下大澤優
同 十河弘
同 渡部雄介
同 増田隆男
同 半澤力
同 鈴木覚
同 野呂圭
同 原田憲
同 宇部雄介
同 菊地修
同 吉田大輔
同 宇都彰浩
同 山田いずみ
同 畠山裕太
同 今泉裕光
同 篠塚功照
同 鶴見聡志
仙台市〈以下省略〉
被告 宮城県知事 Y
同訴訟代理人弁護士 松坂英明
同 村田知彦
同 郷野元之
同訴訟復代理人弁護士 安西文衞
同指定代理人 W1
同 W2
同 W3
同 W4
宮城県亘理郡〈以下省略〉
補助参加人 Z1
宮城県大崎市〈以下省略〉
補助参加人 Z2
宮城県石巻市〈以下省略〉
補助参加人 Z3
仙台市〈以下省略〉
補助参加人 Z4
上記4名訴訟代理人弁護士 浦井義光
同 丸山孝
同 及森善弘
以上


「政務活動費 ポスター」に関する裁判例一覧
(1)令和元年 9月20日  和歌山地裁  平28(行ウ)6号・平28(行ウ)7号 公金(政務調査費)違法支出金返還請求事件
(2)令和元年 9月17日  富山地裁  平31(わ)52号 各詐欺被告事件
(3)令和元年 8月21日  東京高裁  平31(行コ)72号 各不当利得返還請求権等行使請求控訴事件
(4)令和元年 7月18日  宇都宮地裁  平25(行ウ)11号 政務調査費返還履行請求事件
(5)令和元年 6月27日  青森地裁  平26(行ウ)2号 政務調査費返還等履行請求事件
(6)令和元年 6月19日  大阪地裁  平29(行ウ)43号 大阪市政務活動費返還請求事件(住民訴訟)
(7)令和元年 5月29日  仙台地裁  平29(行ウ)2号 政務活動費返還履行等請求事件
(8)令和元年 5月16日  東京地裁  平28(行ウ)222号 共同訴訟参加申出事件
(9)平成31年 4月16日  山形地裁  平25(行ウ)3号 平成23年度山形県議会議員政務調査費返還住民訴訟事件
(10)平成31年 3月22日  東京地裁  平28(行ウ)322号 政務活動費返還請求事件
(11)平成31年 2月28日  名古屋地裁  平27(行ウ)130号 愛知県議会議員政務活動費住民訴訟事件
(12)平成31年 2月19日  奈良地裁  平29(行ウ)10号 奈良県議会議員に係わる不当利得返還請求事件
(13)平成31年 2月19日  奈良地裁  平28(行ウ)21号 奈良県議会議員に係わる不当利得返還請求事件
(14)平成31年 2月15日  静岡地裁  平29(行ウ)4号・平29(行ウ)7号 不当利得返還請求権等行使請求事件
(15)平成31年 2月15日  佐賀地裁  平29(行ウ)2号 損害賠償等請求事件
(16)平成31年 1月21日  金沢地裁  平28(行ウ)5号 政務活動費返還請求事件
(17)平成30年11月30日  東京地裁  平29(行ウ)193号 損害賠償請求(住民訴訟)事件
(18)平成30年11月29日  広島高裁岡山支部  平30(行コ)8号 不当利得返還請求控訴事件
(19)平成30年11月27日  広島高裁松江支部  平30(行コ)1号・平30(行コ)3号ないし8号 不当利得返還請求控訴、同附帯控訴事件
(20)平成30年11月16日  最高裁第二小法廷  平29(行ヒ)404号 神奈川県議会議員政務活動費不正受給確認請求事件
(21)平成30年11月15日  宇都宮地裁  平24(行ウ)15号 政務調査費返還履行請求事件
(22)平成30年10月29日  神戸地裁  平30(わ)137号 事件名  詐欺被告事件
(23)平成30年10月24日  仙台高裁  平29(行コ)26号 政務調査費返還履行等請求控訴事件
(24)平成30年 8月28日  東京地裁  平28(行ウ)281号 政務活動費返還請求事件
(25)平成30年 8月 9日  札幌高裁  平29(行コ)8号 政務調査費返還履行請求控訴事件
(26)平成30年 8月 2日  東京高裁  平27(行コ)256号 政務調査費返還履行請求控訴事件
(27)平成30年 6月28日  東京地裁  平30(行ウ)23号 情報公開請求却下処分取消請求事件
(28)平成30年 6月26日  仙台地裁  平29(行ウ)7号 非開示処分取消請求事件
(29)平成30年 5月24日  東京高裁 平29(行コ)229号 政務調査費返還履行請求控訴事件
(30)平成30年 5月24日  富山地裁  平30(わ)35号 詐欺被告事件
(31)平成30年 4月27日  大阪地裁  平27(行ウ)229号 政務活動費返還請求事件(住民訴訟)
(32)平成30年 4月24日  岡山地裁  平28(行ウ)12号 不当利得返還請求事件
(33)平成30年 4月18日  東京高裁  平29(行コ)302号 埼玉県議会政務調査費返還請求控訴事件
(34)平成30年 4月11日  神戸地裁  平29(行ウ)9号 政務調査費返還請求住民訴訟事件
(35)平成30年 3月16日  鳥取地裁  平26(行ウ)7号 不当利得請求事件
(36)平成30年 2月19日  神戸地裁  平29(わ)824号 被告人3名に対する各詐欺被告事件
(37)平成30年 2月 8日  仙台高裁  平29(行コ)5号・平29(行コ)13号 政務調査費返還履行等請求控訴事件、同附帯控訴事件
(38)平成30年 1月31日  岡山地裁  平26(行ウ)15号 不当利得返還請求事件
(39)平成29年11月29日  徳島地裁  平26(行ウ)14号 政務調査費返還請求事件
(40)平成29年12月 8日  札幌地裁  平24(行ウ)3号 政務調査費返還履行請求事件
(41)平成29年11月28日  岡山地裁  平27(行ウ)16号 不当利得返還請求事件
(42)平成29年11月 2日  仙台地裁  平26(行ウ)2号 政務調査費返還履行等請求事件
(43)平成29年10月 4日  最高裁第二小法廷  平29(行フ)2号 文書提出命令申立て却下決定に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件
(44)平成29年 8月30日  さいたま地裁  平27(行ウ)12号 埼玉県議会政務調査費返還事件
(45)平成29年 7月18日  奈良地裁   平29(わ)82号 虚偽有印公文書作成・同行使、詐欺、有印私文書偽造・同行使、政治資金規正法違反被告事件
(46)平成29年 7月10日  東京高裁  平28(行コ)325号 神奈川県議会議員政務活動費不正受給確認請求控訴事件
(47)平成29年 6月29日  宇都宮地裁  平23(行ウ)8号 政務調査費返還履行請求事件
(48)平成29年 6月29日  名古屋地裁  平29(ワ)485号 弁護士費用請求事件
(49)平成29年 5月26日  大阪高裁  平28(行コ)199号 不当利得返還等請求行為・同附帯請求控訴事件
(50)平成29年 5月12日  東京地裁  平28(ワ)24577号 損害賠償請求事件
(51)平成29年 4月27日  東京地裁  平25(行ウ)811号 住民訴訟事件
(52)平成29年 4月25日  神戸地裁  平26(行ウ)57号 政務調査費等返還請求事件
(53)平成29年 4月21日  仙台高裁  平28(行コ)12号・平28(行コ)20号 山形県議会議員政務調査費返還等請求控訴、同附帯控訴事件
(54)平成29年 4月12日  名古屋高裁金沢支部  平28(行コ)13号 政務調査費返還請求控訴事件
(55)平成29年 3月30日  広島高裁岡山支部  平28(行コ)2号 不当利得返還請求控訴事件
(56)平成29年 3月29日  広島高裁  平28(行コ)22号 不当利得返還請求住民訴訟控訴事件
(57)平成29年 3月24日  高松高裁  平28(行ス)2号
(58)平成29年 3月16日  札幌地裁  平24(行ウ)6号 政務調査費返還履行請求事件
(59)平成29年 3月14日  東京高裁  平28(行コ)413号 損害賠償請求住民訴訟控訴事件
(60)平成29年 3月 1日  名古屋高裁金沢支部  平28(行コ)11号 政務調査費返還請求控訴事件
(61)平成29年 2月 1日 仙台地裁  平26(行ウ)31号 海外視察費返還履行請求事件
(62)平成29年 1月31日  仙台地裁  平25(行ウ)11号 政務調査費返還履行等請求事件
(63)平成28年12月27日  東京地裁  平26(ワ)1916号 損害賠償請求事件
(64)平成28年12月27日  奈良地裁  平27(行ウ)15号 奈良県議会会派並びに同議会議員に係る不当利得返還請求事件
(65)平成28年12月21日  最高裁第二小法廷  平28(行ヒ)292号 政務調査費返還履行請求事件
(66)平成28年12月21日  最高裁第二小法廷  平28(行ツ)253号・平28(行ヒ)291号 政務調査費返還履行請求事件
(67)平成28年12月21日  最高裁第二小法廷 平27(行ヒ)389号
(68)平成28年12月15日  最高裁第一小法廷  平28(行ツ)164号・平28(行ヒ)173号
(69)平成28年12月15日  最高裁第一小法廷 平28(行ツ)163号・平28(行ヒ)172号
(70)平成28年11月29日  甲府地裁  平26(行ウ)4号 政務調査費返還請求事件
(71)平成28年11月10日  広島高裁岡山支部  平27(行コ)11号 不当利得返還請求控訴事件
(72)平成28年10月27日  金沢地裁  平27(行ウ)6号 政務調査費返還請求事件
(73)平成28年10月26日  さいたま地裁  平26(行ウ)62号 損害賠償請求住民訴訟事件
(74)平成28年10月12日  徳島地裁  平28(わ)196号 虚偽有印公文書作成・同行使,詐欺被告事件
(75)平成28年 9月29日  大阪地裁  平26(行ウ)81号・平26(行ウ)116号 平成24年度茨木市議会政務調査費返還請求事件、平成24年度(2月~3月分)茨木市議会政務調査費返還請求事件
(76)平成28年 9月29日  金沢地裁  平27(行ウ)2号 政務調査費返還請求事件
(77)平成28年 9月14日  高松地裁  平28(行ク)1号
(78)平成28年 8月 3日  横浜地裁  平27(行ウ)25号 神奈川県議会議員政務活動費不正受給確認請求事件
(79)平成28年 7月 6日  神戸地裁  平27(わ)825号 虚偽有印公文書作成、虚偽有印公文書行使、詐欺被告事件
(80)平成28年 6月28日  最高裁第三小法廷  平25(行ヒ)562号 不当利得返還等請求行為請求事件
(81)平成28年 6月22日  仙台高裁  平27(行コ)2号・平27(行コ)9号 政務調査費返還履行等請求控訴、同附帯控訴事件
(82)平成28年 6月22日  山口地裁  平26(行ウ)7号 不当利得返還請求住民訴訟事件
(83)平成28年 5月17日  山形地裁  平23(行ウ)2号 山形県議会議員政務調査費返還等請求事件
(84)平成28年 4月27日  岡山地裁  平25(行ウ)12号 不当利得返還請求事件
(85)平成28年 4月22日  新潟地裁  平25(行ウ)7号 政務調査費返還履行請求事件
(86)平成28年 4月13日  福井地裁  平25(行ウ)2号 2011年度福井県議会政務調査費人件費等返還請求事件
(87)平成28年 3月22日  札幌高裁  平27(行コ)11号 政務調査費返還履行請求控訴事件
(88)平成28年 3月22日  東京地裁  平26(行ウ)582号 政務活動費返還請求事件
(89)平成28年 3月11日  東京地裁  平25(行ウ)677号 政務調査研究費返還請求事件
(90)平成27年12月24日  名古屋高裁  平26(行コ)11号 愛知県議会議員政務調査費住民訴訟控訴事件
(91)平成27年12月21日  名古屋高裁金沢支部  平27(行ケ)4号 裁決取消、当選取消請求事件
(92)平成27年10月27日  岡山地裁  平24(行ウ)15号 不当利得返還請求事件
(93)平成27年 9月17日  東京高裁  平27(行コ)110号 政務調査費返還請求控訴事件
(94)平成27年 6月24日  宇都宮地裁  平22(行ウ)8号 政務調査費返還履行請求事件
(95)平成27年 6月12日  札幌高裁  平26(行コ)12号 政務調査費返還履行請求控訴事件
(96)平成27年 5月26日  札幌地裁  平21(行ウ)36号 政務調査費返還履行請求事件
(97)平成27年 4月 8日  大阪地裁  平24(行ウ)129号 政務調査費返還請求事件
(98)平成27年 2月26日  東京地裁  平26(行ウ)209号 政務調査費返還請求事件
(99)平成27年 1月13日  長崎地裁  平24(ワ)530号 政務調査費返還請求事件
(100)平成26年12月18日  奈良地裁  平25(行ウ)11号 政務調査費違法支出不当利得返還命令請求事件


■選挙の種類一覧
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選挙②【参議院議員通常選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
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