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「選挙 公報 広報 ポスター ビラ」に関する裁判例(55)平成18年 1月20日  大阪地裁  平13(行ウ)47号・平13(行ウ)53号・平13(行ウ)54号・平13(行ウ)55号・平13(行ウ)56号・平13(行ウ)57号・平13(行ウ)58号・平13(行ウ)59号・平13(行ウ)60号・平13(行ウ)61号 障害基礎年金不支給決定取消等請求事件 〔学生無年金障害者訴訟〕

「選挙 公報 広報 ポスター ビラ」に関する裁判例(55)平成18年 1月20日  大阪地裁  平13(行ウ)47号・平13(行ウ)53号・平13(行ウ)54号・平13(行ウ)55号・平13(行ウ)56号・平13(行ウ)57号・平13(行ウ)58号・平13(行ウ)59号・平13(行ウ)60号・平13(行ウ)61号 障害基礎年金不支給決定取消等請求事件 〔学生無年金障害者訴訟〕

裁判年月日  平成18年 1月20日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  平13(行ウ)47号・平13(行ウ)53号・平13(行ウ)54号・平13(行ウ)55号・平13(行ウ)56号・平13(行ウ)57号・平13(行ウ)58号・平13(行ウ)59号・平13(行ウ)60号・平13(行ウ)61号
事件名  障害基礎年金不支給決定取消等請求事件 〔学生無年金障害者訴訟〕
裁判結果  請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2006WLJPCA01200008

要旨
◆学生等を国民年金の被保険者から除外する国民年金法の規定は、憲法一三条、一四条、二五条、三一条に違反しないとし、障害基礎年金を支給しない旨の処分の取消請求が棄却された事例

出典
判タ 1225号90頁
新日本法規提供

参照条文
国家賠償法1条
国民年金法7条1項1号イ(平1法86改正前)
国民年金法7条2項
国民年金法7条2項7号(昭36法167改正前)
国民年金法7条2項8号(昭39法110改正前)
国民年金法7条2項8号(昭60法34改正前)
日本国憲法14条1項
日本国憲法25条

裁判年月日  平成18年 1月20日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  平13(行ウ)47号・平13(行ウ)53号・平13(行ウ)54号・平13(行ウ)55号・平13(行ウ)56号・平13(行ウ)57号・平13(行ウ)58号・平13(行ウ)59号・平13(行ウ)60号・平13(行ウ)61号
事件名  障害基礎年金不支給決定取消等請求事件 〔学生無年金障害者訴訟〕
裁判結果  請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2006WLJPCA01200008

原告 甲野太郎
外9名
原告ら訴訟代理人弁護士 青木佳史 石口俊一 江野尻正明 河原林昌樹 阪田健夫
田中幹夫 南野雄二 浜田雄久 村瀬謙一 中西基
松山秀樹 谷村慎介 松岡英和 池原毅和 小笠原忠彦
菅沼友子 高野範城 岩井羊一 笹田参三 高森裕司
森弘典 足立定夫 板垣剛 今井誠 遠藤達雄
大沢理尋 金口忠司 川上耕 近藤明彦 辻澤広子
和田光弘 渡辺隆夫 大川秀史 佐藤太勝
原告ら訴訟復代理人弁護士 西村香苗
同 中西達也
同 山元健太郎
同 小瀧悦子
被告 社会保険庁長官村瀬清司
被告 国
同代表者法務大臣 杉浦正健
被告ら指定代理人 安西二郎
外9名
同(平成13年(行ウ)第47号,同54号,同55号,同57号,同58号,同61号事件のみ) 中井勝仁
外7名
同(平成13年(行ウ)第53号,同56号事件のみ) 壷井良一
外3名
同(平成13年(行ウ)第59号,同60号事件のみ) 徳永政克
外1名

 

主文
1  原告らの請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由
第1  請求
1  大阪府知事が原告甲野太郎に対し平成10年3月5日付けでした障害基礎年金を支給しない旨の決定を取り消す。
2  兵庫県知事が原告乙山花子に対し平成10年2月16日付けでした障害基礎年金を支給しない旨の決定を取り消す。
3  大阪府知事が原告丙川次郎に対し平成10年3月5日付けでした障害基礎年金を支給しない旨の決定を取り消す。
4  大阪府知事が原告丁木三郎に対し平成11年4月23日付けでした障害基礎年金を支給しない旨の決定を取り消す。
5  兵庫県知事が原告戊谷四郎に対し平成10年3月2日付けでした障害基礎年金を支給しない旨の決定を取り消す。
6  大阪府知事が原告己田五郎に対し平成10年2月4日付けでした障害基礎年金を支給しない旨の決定を取り消す。
7  大阪府知事が原告庚町六郎に対し平成10年10月20日付けでした障害基礎年金を支給しない旨の決定を取り消す。
8  奈良県知事が原告辛浜夏子に対し平成11年4月30日付けでした障害基礎年金を支給しない旨の決定を取り消す。
9  奈良県知事が原告壬村七郎に対し平成10年3月6日付けでした障害基礎年金を支給しない旨の決定を取り消す。
10  大阪府知事が原告癸畑春子に対し平成11年9月8日付けでした障害基礎年金を支給しない旨の決定を取り消す。
11  被告国は,原告ら各自に対し,それぞれ2000万円を支払え。
第2  事案の概要
1  本件は,原告らが,いずれも20歳以上の大学生又は看護専門学校生であった当時疾病にかかり又は負傷したとして,大阪府知事,兵庫県知事又は奈良県知事に対し,国民年金法に基づく障害基礎年金の支給裁定を請求したところ,同知事らが,原告らはいずれも平成元年法律第86号による改正前の国民年金法が定めていた学生等を被保険者から除外する規定(国民年金法(昭和36年法律第167号による改正前のもの)7条2項7号,国民年金法(昭和39年法律第110号による改正前のもの)7条2項8号,国民年金法(昭和60年法律第34号による改正前のもの)7条2項8号,国民年金法(平成元年法律第86号による改正前のもの)7条1項1号イの各規定。以下「学生等適用除外規定」という。)に該当するため当該傷病に係る初診日において国民年金の被保険者ではなかったとして,それぞれ障害基礎年金を支給しない旨の処分(以下「本件各処分」という。)をしたため,原告らが,学生等適用除外規定は憲法25条,14条,13条及び31条に違反し無効であるなどと主張して,地方分権の推進を図るための関係法令の整備に関する法律(平成11年法律第87号)による機関委任事務の廃止に伴い被告適格を有することとなった被告社会保険庁長官に対し,本件各処分の取消しを求めるとともに,被告国は,昭和34年の国民年金法の制定時から平成元年法律第86号による国民年金法の改正時まで,明らかに違憲な学生等適用除外規定を制定,存置した上,その後も今日に至るまで原告らいわゆる学生無年金障害者に対する立法による救済措置を怠ったことは,国家賠償法上も違法であり,このような立法行為ないし法案提出行為を行い又はこれを怠った国会及び内閣には重大な過失が存し,また,被告国(内閣)は,学生等に対し,国民年金への任意加入制度の存在及び任意加入しなかった場合の不利益について広報,周知徹底等する義務を怠り,原告らが国民年金制度に任意加入する機会を違法に奪ったなどと主張して,被告国に対し,慰謝料として各自につき2000万円の支払を求めた事案である。
2  前提事実等
(1)  国民年金制度の目的等
国民年金法(昭和34年法律第141号)の定める国民年金制度は,憲法25条2項に規定する理念に基づき,老齢,障害又は死亡によって国民生活の安定が損なわれることを国民の共同連帯によって防止し,もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とするものであり(同法1条),国民年金は,この目的を達成するため,国民の老齢,障害又は死亡に関して必要な給付を行うものとされる(同法2条)。
(2)  制度創設当時の国民年金制度
ア 国民年金制度は,昭和34年4月16日に公布された国民年金法(昭和34年法律第141号。以下,制定当時の国民年金法を「昭和34年法」という。)により創設された。
創設当時の国民年金制度は,いわゆる拠出制を基本とし,経過的及び補完的にいわゆる無拠出制を認める建前がとられた。
拠出制年金については,日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の日本国民とするものとされたが,厚生年金保険法,船員保険法その他の被用者年金各法(昭和34年法5条1項各号に掲げる法律及び条例)の被保険者等,公的年金各法に基づく年金たる給付(同法5条2項各号に掲げる給付)の受給権者等,これらの者の配偶者及び学生等(定時制課程及び夜間部の学生等,通信教育を受ける者を除く。)は被保険者から除外され(同法7条1項,2項),同条3項において「前項各号に掲げる者に対する将来にわたるこの法律の適用関係については,国民年金制度と被用者年金各法による年金制度及びその他の公的年金制度との関連を考慮して,すみやかに検討が加えられたうえ,別に法律をもって処理されるべきものとする。」旨規定された。そして,年金給付の種類として,老齢年金,障害年金並びに母子年金,遺児年金及び寡婦年金を支給するものとされた(同法15条)。このうち,障害年金については,① 保険料納付済期間が15年以上であること,② 保険料納付済期間が5年以上あり,かつ,当該期間が保険料免除期間を除いた被保険者期間の3分の2以上を占めること,③ 初診日前に引き続き3年間被保険者期間があり,かつ,そのすべてが保険料納付済期間又は1年6か月を超えない保険料免除期間で満たされていること,④ 老齢年金の受給資格期間を満たしていること,のいずれかに該当する者が,傷病が治った日(廃疾認定日)において,同法別表に定める程度の障害の状態,すなわち,日常生活の用を弁ずることが不能な程度の身体障害(1級)の状態又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度の身体障害(2級)の状態にあるときに支給するものとされた(同法30条)が,障害の範囲からは内科的疾患に基づく身体障害及び精神障害が除かれた(同法別表)。
無拠出制年金については,老齢福祉年金,障害福祉年金及び母子福祉年金を支給するものとされたが,これらの福祉年金については所得による支給制限等種々の支給制限が課せられた(同法第3章第5節)。これらの福祉年金のうち障害福祉年金は,① 拠出制の障害年金の支給要件を満たすために必要な保険料を納付しなかった被保険者等であって,保険料免除期間等所定の要件を満たした者が,同法別表に定める1級に該当する程度の障害の状態(日常生活の用を弁ずることが不能な程度の障害の状態)にあるとき(同法56条。補完的障害福祉年金),② 20歳に達する前に疾病にかかり又は負傷した者(初診日において20歳未満であった者)が20歳に達した日以後において①に掲げる程度の障害の状態にあるとき(同法57条。補完的障害福祉年金),③ 昭和34年11月1日前に疾病にかかり若しくは負傷した者が同日若しくは同日以後において①に掲げる程度の障害の状態にあるとき,又は同日以後昭和36年4月1日前に疾病にかかり若しくは負傷した者が同程度の障害の状態にあるとき,又は昭和36年4月1日において50歳を超える者が同日以後疾病にかかり若しくは負傷し同程度の障害の状態にあるとき(同法81条。経過的障害福祉年金),に支給するものとされた。
なお,障害年金の額は,2級障害については,初診日の属する月の前月までの被保険者期間に係る初診日の前日における保険料納付済期間に応じた所定の額(当該保険料納付済期間が26年未満の場合は2万4000円等)とされ,1級障害についてはこれに6000円を加算した額とするものとされ(同法33条),障害福祉年金の額は1万8000円とされた(同法58条)。
そして,国庫は,毎年度,国民年金事業に要する費用に充てるため,当該年度において納付された保険料の総額の2分の1に相当する額を負担するほか,福祉年金の給付に要する費用を負担するものとされ(同法85条1項,2項),他方,被保険者は保険料を納付しなければならず,世帯主はその世帯に属する被保険者の保険料を,配偶者の一方は被保険者たる他方の保険料をそれぞれ連帯して納付する義務を負うものとされたが(同法88条),障害年金の受給権者や低所得者等について保険料の免除制度が設けられた(同法89条,90条)。
なお,拠出制年金の被保険者から除外された上記配偶者及び学生等についても,都道府県知事の承認を受けて被保険者となることができるものとされた(任意加入制度)が,これらの者については保険料の免除に関する規定(同法89条,90条)は適用しないものとされた(同法附則6条)。
国民年金法は,拠出制の年金制度のうち被保険者の資格等に関する部分については昭和35年10月1日から,保険料に関する部分については昭和36年4月1日から,その余の部分については昭和34年11月1日からそれぞれ施行された。
イ 制定当時の国民年金法(昭和34年法)における国民年金の被保険者の資格,障害年金の支給要件,障害福祉年金の支給要件及び任意加入制度に関する規定は,次のとおりであった。
(ア) 被保険者
国民年金法7条
「1項 日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の日本国民は,国民年金の被保険者とする。
2項 次の各号のいずれかに該当する者は,前項の規定にかかわらず,国民年金の被保険者としない。
1号 被用者年金各法の被保険者又は組合員(恩給法に定める公務員及び他の法律により恩給法に定める公務員とみなされる者,地方公務員の退職年金に関する条例の適用を受ける地方公務員,厚生年金保険法附則第28条に規定する共済組合の組合員,執行吏並びに国会議員を含む。)
2号ないし5号 略
6号 前5号に掲げる者の配偶者
7号 次に掲げる学校に在学する生徒又は学生。ただし,学校教育法(昭和22年法律第26号)第44条に規定する高等学校の定時制課程による授業を受け,同法第45条(同法第70条,第70条の10及び第76条において準用する場合を含む。)に規定する通信教育を受け,同法第54条に規定する夜間の学部に在学し,又は同法第70条の4に規定する夜間の課程による授業を受ける生徒又は学生を除く。
イ 学校教育法第41条に規定する高等学校(盲学校,聾学校又は養護学校の高等部を含む。)及びこれに相当する国立の学校で厚生大臣の指定するもの
ロ 学校教育法第52条に規定する大学(同法第62条に規定する大学院を含む。)及びこれに相当する国立の学校で厚生大臣の指定するもの
ハ 学校教育法第70条の2に規定する専科大学及びこれに相当する国立の学校で厚生大臣の指定するもの
3項 略」
(イ) 障害年金の支給要件
国民年金法30条
「障害年金は,疾病にかかり,又は負傷し,かつ,次の各号の要件に該当する者が,その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)がなおった日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至った日を含むものとし,以下「廃疾認定日」という。)において,その傷病により別表に定める程度の廃疾の状態にあるときに,その者に支給する。
1号 当該傷病についてはじめて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において被保険者であった者については,初診日の前日において次のいずれかに該当したこと。
イ 初診日の属する月の前月までの被保険者期間に係る保険料納付済期間が15年以上であるか,又はその保険料納付済期間が5年以上であり,かつ,その被保険者期間のうち保険料免除期間を除いたものの3分の2以上を占めること。
ロ 初診日の属する月前における直近の基準月(1月,4月,7月及び10月をいう。以下同じ。)の前月まで引き続き3年間被保険者であり,かつ,その期間のすべてが保険料納付済期間又は1年6箇月をこえない保険料免除期間で満たされていること。
ハ 初診日の属する月の前月までの被保険者期間につき,第26条各号のいずれかに該当していること。
2号 初診日において被保険者でなかった者については,初診日において65歳未満であり,かつ,初診日の前日において第26条各号のいずれかに該当したこと。」
(ウ) 障害福祉年金の支給要件
国民年金法57条
「1項 疾病にかかり,又は負傷し,その初診日において20歳未満であった者が,廃疾認定日後に20歳に達したときは20歳に達した日において,廃疾認定日が20歳に達した日後であるときはその廃疾認定日において,別表に定める1級に該当する程度の廃疾の状態にあるときは,前条第1項の規定の適用については,その者は,同項各号の要件に該当するものとみなす。
2項 前項に規定する者であって,廃疾認定日後に20歳に達したものについては,前条第1項ただし書中「廃疾認定日」とあるのは,「20歳に達した日」と読み替えるものとする。」
(エ) 任意加入制度
国民年金法附則6条
「1項 明治44年4月1日以後に生まれた者(昭和36年4月1日において50歳をこえない者)であって,第7条第2項に該当するものは,同項の規定にかかわらず,都道府県知事の承認を受けて,被保険者となることができる。ただし,同項第1号から第3号までのいずれかに該当する者及び同条第1項に該当しない者は,この限りでない。
2項 前項の規定による承認を受けた者は,その承認を受けた日に被保険者の資格を取得するものとする。
3項 略
4項 第1項の規定による被保険者は,いつでも,都道府県知事に申し出て,被保険者の資格を喪失することができる。
5項 第1項の規定による被保険者は,第9条各号又は次の各号のいずれかに該当するに至った日の翌日(第9条第4号又は次の第1号若しくは第2号に該当するに至ったときは,その日)に被保険者の資格を喪失する。
1号 第7条第2項第1号から第3号までのいずれかに該当するに至ったとき。
2号 第7条第2項第4号から第7号までのいずれにも該当しなくなったとき。
3号 前項の申出が受理されたとき。
4号 保険料を滞納し,第96条第1項の規定による指定の期限までに,その保険料を納付しないとき。
6項 第1項の規定による被保険者については,第89条及び第90条の規定を適用しない。」
(3)  昭和60年改正までの国民年金法の改正経過の概要(乙第11号証)
ア 昭和36年11月1日,通算年金通則法(昭和36年法律第181号)及び通算年金制度を創設するための関係法律の一部を改正する法律(昭和36年法律第182号)が制定され,これにより,各公的年金制度において当該制度の老齢年金又は退職年金を受けるに必要な資格期間を満たしていない場合においても,各制度に加入した期間を通算すれば一定の期間に達する者に対して,通算老齢年金又は通算退職年金を支給する通算年金制度が創設された。
イ 昭和36年法律第167号による国民年金法の改正(同年4月1日にさかのぼって適用)により,障害年金等の受給資格期間が短縮されて,事故発生月前における直近の基準月の前月まで引き続き1年間被保険者であり,かつ,その期間のすべてが保険料納付済期間で満たされているときは,障害年金を支給することができるものとされ,また,障害年金及び障害福祉年金について障害の併合認定制度が創設されたほか,福祉年金に関する所得制限が緩和されるなどした。
なお,この改正により,国民年金の被保険者の資格に関する同改正前の国民年金法7条2項7号ハ中「専科大学」が「高等専門学校」に改められた上,同項7号が同項8号とされた。
ウ 昭和37年法律第92号による国民年金法の改正により,国庫は,毎年度,前年度において免除された保険料の総額の2分の1に相当する額を負担するものとされ,また,障害年金等の支給要件について,事故発生月前における直近の基準月の前月まで引き続き3年間被保険者であり,かつ,そのすべての期間が保険料免除期間又は保険料免除期間と保険料納付済期間との合算期間で満たされているときにも障害年金等を支給することができるものとされて,補完的障害福祉年金の相当部分が拠出制の障害年金に吸収された。さらに,障害年金等の額についても,老齢年金と同じく保険料納付済期間及び保険料免除期間に応じて算出されるものとされるとともに,障害年金については2万4000円の最低保障をするものとされた。そのほか,福祉年金に関する所得制限も緩和されるなどした。
エ 昭和38年法律第150号による国民年金法の改正により,障害福祉年金の額が引き上げられるとともに,福祉年金に関する所得制限等が緩和された。
オ 昭和39年法律第87号による国民年金法の改正により,障害年金及び障害福祉年金の支給対象となる障害の範囲が結核性疾患,結核以外の呼吸器の機能障害並びに精神病質,神経症及び精神薄弱を除いたその他の精神障害にも拡大されるとともに,障害の認定日が初診日から起算して3年を経過した日(その期間内にその傷病が治った場合はその治った日)に改められた(昭和39年8月1日施行)。
カ 昭和39年法律第110号学校教育法の一部を改正する法律により短期大学に関する規定が整備されたことに伴い,同法附則7項により国民年金法7条2項の規定が改正されて,短期大学(夜間の学科を除く。)に在学する学生が国民年金の被保険者から除外された。
キ 昭和40年法律第93号による国民年金法の改正により,障害福祉年金の額が引き上げられるとともに,障害年金の支給対象となる障害の範囲が精神薄弱にも拡大され(同年8月1日施行),また,福祉年金に関する所得制限が緩和されるなどした。
ク 昭和41年法律第92号による国民年金法の改正により,障害年金について,最低保障額及び1級障害の加算額が引き上げられ,支給対象となる障害の範囲が拡大されてすべての種類の障害がこれに含まれるものとされ,また,支給要件が,被保険者期間が引き続いてなくても,直近の基準月の前月までの被保険者期間が合算して3年以上あり,その期間のうち最近の3年間が保険料納付済期間若しくは保険料免除期間で満たされているか,又は直近の基準月の前月までの被保険者期間が合算して1年以上あり,かつ,その期間のうち最近の1年間が保険料納付済期間で満たされていれば足りるものとされ(同改正後の国民年金法30条),さらに,事後重症の制度が創設されて,廃疾認定日においては障害の程度が別表に定める障害の程度に該当していなくてもその日後においてその傷病が悪化し障害の状態が別表に定める障害の程度に該当するに至ったときは,請求のあった日の属する月の翌月から障害年金を支給するものとされ,初診日が20歳前などである傷病による障害の状態(前発障害)と初診日が被保険者となった後である傷病による障害の状態(後発障害)とを併合認定して支給する場合においても,後発障害の廃疾認定日後において前発障害若しくは後発障害のいずれか一方の障害又は両方の障害が悪化したことにより別表に定める程度の障害の状態に該当するに至ったときは,請求のあった日の属する月の翌月から障害年金を支給するものとされた(同改正後の国民年金法30条の2)。また,障害福祉年金についても,年金額が引き上げられ,支給対象となる障害の範囲が拡大されてすべての種類の障害がこれに含まれるものとされ,その支給要件が緩和され,障害年金と同様の事後重症の制度が設けられるなどした(同改正後の国民年金法56条,56条の2)(年金の額の改定を除いて同年12月1日施行)。
ケ 昭和42年法律第96号による国民年金法の改正により,障害福祉年金の額が引き上げられるとともに福祉年金に関する所得制限等が緩和され,昭和43年法律第69号による国民年金法の改正により,障害福祉年金の額が引き上げられるとともに福祉年金に関する所得制限が緩和されるなどした。
コ 昭和44年法律第86号による国民年金法の改正により,障害年金の最低保障額が引き上げられるとともに,1級障害の障害年金の額が2級障害の障害年金の額の125パーセント相当額に引き上げられ,所得比例制(いわゆる付加保険料制)が導入され,保険料免除に係る国庫負担が給付時負担とするものとされ,障害福祉年金の額が引き上げられるとともに福祉年金に関する所得制限が緩和されるなどした。
サ 昭和45年法律第114号による国民年金法の改正により,障害福祉年金の額が引き上げられるとともに福祉年金に関する所得制限が緩和されるなどし,昭和46年法律第13号による国民年金法の改正により,障害福祉年金の額が引き上げられるとともに福祉年金に関する所得制限が緩和されるなどし,昭和47年法律第97号による国民年金法の改正により,障害福祉年金の額が引き上げられるとともに福祉年金に関する所得制限が緩和され,障害年金についても最低保障額が引き上げられるなどした。
シ 昭和48年法律第92号による国民年金法の改正により,2級障害の障害年金の最低保障額が引き上げられ,年金額の自動改定措置(いわゆるスライド制)が導入され,障害福祉年金の額が引き上げられるとともに,障害福祉年金の支給範囲が拡大されて,別表に定める2級に該当する程度の障害の状態にある者に対しても障害福祉年金を支給する(昭和49年3月1日施行)ものとされた。
ス 昭和49年法律第63号による国民年金法の改正により,障害福祉年金の額が引き上げられるとともに福祉年金に関する所得制限が緩和されるなどし,昭和50年法律第38号による国民年金法の改正により,障害福祉年金の額が引き上げられ,2級障害の障害年金の最低保障額が引き上げられるとともに福祉年金に関する所得制限が緩和されるなどした。
セ 昭和51年法律第63号による国民年金法の改正により,2級障害の障害年金の最低保障額が引き上げられ,障害年金の廃疾認定日が初診日以後3年を経過した日から1年6月を経過した日に改められ(昭和51年10月1日施行),保険料に対する国庫負担を拠出時負担から給付時負担に改めた上給付費の3分の1に相当する額とするものとされ,障害福祉年金の額が引き上げられるとともに福祉年金に関する所得制限が緩和されるなどした。
ソ 昭和52年法律第48号による国民年金法の改正により,障害福祉年金の額及び2級障害の障害年金の最低保障額がそれぞれ引き上げられるなどし,昭和53年法律第46号による国民年金法の改正により,障害福祉年金の額及び2級障害の障害年金の最低保障額がそれぞれ引き上げられるなどし,昭和54年法律第36号による国民年金法の改正により,2級障害の障害年金の最低保障額及び障害福祉年金の額がそれぞれ引き上げられるなどし,昭和55年法律第82号による国民年金法の改正により,2級障害の障害年金の最低保障額及び障害福祉年金の額がそれぞれ引き上げられるなどし,昭和56年法律第50号による国民年金法の改正により,2級障害の障害年金の最低保障額及び障害福祉年金の額がそれぞれ引き上げられるなどした。
タ 難民の地位に関する条約及び難民の地位に関する議定書への加入に伴い,昭和56年法律第86号による国民年金法の改正により,被保険者の資格に関する要件のうち国籍要件が撤廃され,同改正後の国民年金法7条1項は,「日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者は,国民年金の被保険者とする。」と改められた。また,福祉年金についてもその支給及び失権の要件のうち国籍要件が撤廃された。
チ 障害に関する用語の整理に関する法律(昭和57年法律第66号)の施行により,国民年金法中「廃疾」等の用語が「障害」等に改められた。
ツ 昭和57年法律第79号による国民年金法の改正により,2級障害の障害年金の最低保障額及び障害福祉年金の額がそれぞれ引き上げられるなどし,昭和59年法律第84号による国民年金法の改正により,障害年金の最低保障額及び障害福祉年金の額がそれぞれ引き上げられるなどした。
(4)  昭和60年法律第34号による国民年金法の改正
ア 昭和60年5月1日,国民年金法等の一部を改正する法律(昭和60年法律第34号。以下「昭和60年改正法」という。)が公布されて国民年金制度が大幅に改定された。
昭和60年改正法による改正(以下「昭和60年改正」という。)後の国民年金制度においては,国民共通の基礎年金制度が導入され,その適用対象が厚生年金保険法その他の被用者年金各法(同法5条1項各号に掲げる法律)の被保険者等及びその被扶養配偶者にも拡大され,国民年金は基礎年金を支給する制度,厚生年金保険は原則として基礎年金に上乗せする報酬比例の年金を支給する制度とされ,基礎年金を通じていわゆる1人1年金の原則が確立された。
昭和60年改正後の国民年金法によれば,被保険者は,① 日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者であって②又は③以外のもの(第1号被保険者),② 厚生年金保険法その他の被用者年金各法の被保険者等(第2号被保険者),③ ②の被扶養配偶者であって20歳以上60歳未満のもの(第3号被保険者),の3種類とされたが,学生等及び老齢又は退職を支給事由とする給付の受給権者は①の被保険者から除外された(同法7条)。
基礎年金は,老齢基礎年金,障害基礎年金及び遺族基礎年金の3種とされた(同法15条)。
障害基礎年金については,被保険者であった間に初診日のある傷病に関し,障害認定日において政令(昭和61年政令第53号による改正後の国民年金法施行令4条の7,別表)で定める程度(昭和60年改正前の国民年金法別表に定める1級及び2級に相当する程度)の障害の状態にある者について,被保険者期間中に3分の1以上の滞納がなければ支給するものとされるとともに(昭和60年改正後の国民年金法30条),初診日において20歳未満であり,国民年金制度の被保険者でなかった者についても,20歳に達したとき(障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日)から障害基礎年金を支給するものとされ(同法30条の4),また,同法の施行日前に障害福祉年金を受給していた者についても同様に障害基礎年金を支給するものとされた(昭和60年改正法附則25条)。ただし,上記昭和60年改正後の国民年金法30条の4に基づく障害基礎年金については,所得額が政令で定める額を超えるときはその支給を停止する旨の所得制限が設けられた(同法36条の3)。なお,昭和60年改正法の施行日前に初診日のある障害又は発症病日のある障害についても障害認定日を施行日以後に迎えるものについては障害基礎年金を支給するものとして経過措置がとられたが(同法附則23条),同法の施行日前に障害認定日があるものについては,原則としてなお同法による改正前の国民年金法の規定によるものとされ,従前の障害年金を支給するものとされた(昭和60年改正法附則32条)。そして,2級障害の障害基礎年金の額は60万円とされ,1級障害の障害基礎年金の額はその100分の125に相当する額とするものとされた(昭和60年改正後の国民年金法33条)。
基礎年金の給付に要する費用は,国民年金の保険料,厚生年金保険等の拠出金及び国庫負担で賄うものとされ,厚生年金保険等の被保険者及びその被扶養配偶者は直接国民年金の保険料を負担しないものとされ,拠出金の額は厚生年金保険等の被保険者数と被扶養配偶者数の合計数の国民年金の被保険者総数に占める割合に応じて定めるものとされ(同法94条の3),国庫負担については,原則として基礎年金の給付に要する費用の3分の1に相当する額を負担するが,老齢基礎年金の給付に要する費用のうち保険料免除期間に係る給付費についてはその全額が国庫負担とされ,20歳に達する前に疾病にかかり又は負傷して障害の状態となったことに基づく障害基礎年金の給付費については100分の40を負担する(残りの100分の60に相当する費用については原則どおり3分の1の国庫負担が行われる。)ものとされた(同法85条)。
なお,被保険者から除外される上記学生等の範囲については,高等学校の生徒,大学の学生その他の生徒又は学生であって政令で定めるものとされ(同法7条1項1号イ),これを受けて制定された国民年金法施行令等の一部を改正する等の政令(昭和61年政令第53号)により,昭和60年改正前の国民年金法7条2項8号と同様の対象に加えて新たに専修学校等の生徒が被保険者から除外されるものとされた。そして,これら被保険者から除外するものとされた上記学生等についても,都道府県知事に申し出て被保険者となることができるものとされたが,保険料の免除に関する規定(昭和60年改正後の国民年金法89条,90条)は適用しないものとされた(同法附則5条)。さらに,昭和60年改正法附則4条1項において,「国民年金制度における学生の取扱いについては,学生の保険料負担能力等を考慮して,今後検討が加えられ,必要な措置が講ぜられるものとする。」旨規定された。
昭和60年改正法による改正規定は,一部を除いて昭和61年4月1日に施行された。
イ 昭和60年改正後の国民年金法の被保険者,障害基礎年金及び任意加入制度に関する定めは,次のとおりであった。
(ア) 被保険者の資格
国民年金法7条
「1項 次の各号のいずれかに該当する者は,国民年金の被保険者とする。
1号 日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者であって次号及び第3号のいずれにも該当しないもの(次のいずれかに該当する者を除く。以下「第1号被保険者」という。)
イ 学校教育法(昭和22年法律第26号)第41条に規定する高等学校の生徒,同法第52条に規定する大学の学生その他の生徒又は学生であって政令で定めるもの
ロ 被用者年金各法に基づく老齢又は退職を支給事由とする年金たる給付その他の老齢又は退職を支給事由とする給付であって政令で定めるものを受けることができる者
2号 被用者年金各法の被保険者又は組合員(以下「第2号被保険者」という。)
3号 第2号被保険者の配偶者であって主として第2号被保険者の収入により生計を維持するもの(第2号被保険者である者を除く。以下「被扶養配偶者」という。)のうち20歳以上60歳未満のもの(以下「第3号被保険者」という。)
2項 略」
昭和61年政令第53号による改正後の国民年金法施行令4条
「法第7条第1項第1号イに規定する生徒又は学生であって政令で定めるものは,次に掲げる学校又は教育施設に在学する生徒又は学生とする。ただし,学校教育法(昭和22年法律第26号)第4条に規定する高等学校の定時制の課程若しくは通信制の課程,同法第54条に規定する大学の夜間の学部,同法第69条の2第6項に規定する短期大学の夜間の学科若しくは同法第82条の2に規定する専修学校の学科(厚生省令で定める学科に限る。)に在学し,又は同法第54条の2(同法第76条において準用する場合を含む。)に規定する通信による教育を受ける生徒又は学生を除く。
1号 学校教育法第41条に規定する高等学校(盲学校,聾学校又は養護学校の高等部を含む。)及びこれに相当する国立の学校で厚生大臣の指定するもの
2号 学校教育法第52条に規定する大学(同法第62条に規定する大学院を含む。)及び同法第69条の2第2項に規定する短期大学並びにこれらに相当する国立の学校で厚生大臣の指定するもの
3号 学校教育法第70条の2に規定する高等専門学校及びこれに相当する国立の学校で厚生大臣の指定するもの
4号 学校教育法第82条の2に規定する専修学校
5号 学校教育法第83条第1項に規定する各種学校その他の教育施設であって前号に掲げる専修学校に準ずるものとして厚生省令で定めるもの」
昭和61年厚生省令第17号による改正後の国民年金法施行規則
「1条 国民年金法施行令(昭和34年政令第184号。以下「令」という。)第4条に規定する厚生省令で定める学科は,専修学校設置基準(昭和51年文部省令第2号)第4条に規定する夜間の学科等とする。
1条の2 令第4条第5号に規定する教育施設であって厚生省令で定めるものは,次のとおりとする。ただし,夜間において授業を行う課程及び通信による教育を行う課程を除く。
1号ないし3号 略
4号 保健婦助産婦看護婦法(昭和23年法律第203号)第19条第1号に規定する学校及び同条第2号に規定する保健婦養成所,同法第20条第1号に規定する学校及び同条第2号に規定する助産婦養成所,同法第21条第1号に規定する学校及び同条第2号に規定する看護婦養成所並びに同法第22条第1号に規定する学校及び同条第2号に規定する准看護婦養成所
5号ないし13号 略」
(イ) 障害基礎年金の支給要件
国民年金法30条
「1項 障害基礎年金は,疾病にかかり,又は負傷し,かつ,その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診察を受けた日(以下「初診日」という。)において次の各号のいずれかに該当した者が,当該初診日から起算して1年6月を経過した日(その期間内にその傷病が治った場合においては,その治った日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至った日を含む。)とし,以下「障害認定日」という。)において,その傷病により次項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときに,その者に支給する。ただし,当該傷病に係る初診日の前日において,当該初診日の属する月の前々月までに被保険者期間があり,かつ,当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の3分の2に満たないときは,この限りでない。
1号 被保険者であること
2号 被保険者であった者であって,日本国内に住所を有し,かつ,60歳以上65歳未満であること
2項 障害等級は,障害の程度に応じて重度のものから1級及び2級とし,各級の障害の状態は,政令で定める。」
国民年金法30条の4
「1項 疾病にかかり,又は負傷し,その初診日において20歳未満であった者が,障害認定日以後に20歳に達したときは20歳に達した日において,障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日において,障害等級に該当する程度の障害の状態にあるときは,その者に障害基礎年金を支給する。
2項 疾病にかかり,又は負傷し,その初診日において20歳未満であった者(同日において被保険者でなかった者に限る。)が,障害認定日以後に20歳に達したときは20歳に達した日後において,障害認定日が20歳に達した日後であるときはその障害認定日後において,その傷病により,65歳に達する日の前日までの間に,障害等級に該当する程度の障害の状態に該当するに至ったときは,その者は,その期間内に前項の障害基礎年金の支給を請求することができる。
3項 第30条の2第3項の規定は,前項の場合に準用する。」
(ウ) 任意加入制度
国民年金法附則5条
「1項 次の各号のいずれかに該当する者(第2号被保険者及び第3号被保険者を除く。)は,第7条第1項の規定にかかわらず,都道府県知事に申し出て,被保険者となることができる。
1号 日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者であって,第7条第1項第1号イ若しくはロに該当するもの又は附則第4条第1項に規定する政令で定める者であるもの
2号及び3号 略
2項 前項の規定による申出をした者は,その申出をした日に被保険者の資格を取得するものとする。
3項 略
4項 第1項の規定による被保険者は,いつでも,都道府県知事に申し出て,被保険者の資格を喪失することができる。
5項 第1項の規定による被保険者は,第9条第1号に該当するに至った日の翌日又は次の各号のいずれかに該当するに至った日に,被保険者の資格を喪失する。
1号 65歳に達したとき
2号 被用者年金各法の被保険者若しくは組合員又は農林漁業団体職員共済組合の任意継続組合員の資格を取得したとき
3号 前項の申出が受理されたとき
6項 第1項第1号に掲げる者である被保険者は,前項の規定によって被保険者の資格を喪失するほか,次の各号のいずれかに該当するに至った日の翌日(第1号に該当するに至った日に更に被保険者の資格を取得したとき,又は第2号若しくは第3号に該当するに至ったときは,その日)に,被保険者の資格を喪失する。
1号 日本国内に住所を有しなくなったとき。
2号 第7条第1項第1号イ及びロ並びに附則第4条第1項に規定する政令で定める者のいずれにも該当しなくなったとき。
3号 被扶養配偶者となったとき。
4号 保険料を滞納し,第96条第1項の規定による指定の期限までに,その保険料を納付しないとき。
7項ないし9項 略
10項 第1項の規定による被保険者については,第89条及び第90条の規定を適用しない。」
国民年金法附則6条
「第1号被保険者である者が第7条第1項第1号イ若しくはロ又は附則第4条第1項に規定する政令で定める者のいずれかに該当するに至った場合において,その者がこれに該当するに至らなかったならば納付すべき保険料を,その該当するに至った日の属する月以降の期間について,第93条第1項の規定により前納しているとき,又はその該当するに至った日の属する月後における最初の4月の末日までに納付したときは,その該当するに至った日において,前条第1項の申出をしたものとみなす。」
昭和60年改正法附則6条(国民年金の被保険者資格の取得及び喪失の経過措置)
「1項 略
2項 施行日の前日において国民年金の被保険者(旧国民年金法附則第6条第1項の規定による被保険者を除く。)であった者が,施行日において,新国民年金法第7条第1項第1号イに規定する政令で定める生徒又は学生であるときは,その者は,同日に,当該被保険者の資格を喪失する。
3項 新国民年金法附則第6条の規定は,前項の規定により国民年金の被保険者の資格を喪失した者について準用する。
4項 施行日の前日において旧国民年金法附則第6条第1項の規定による被保険者であった者は,施行日に,当該被保険者の資格を喪失する。この場合において,その者が,同日において,新国民年金法第7条第1項第1号又は第3号に該当するとき(同法附則第4条第1項に規定する政令で定める者であるときを除く。)は,同法第8条に該当しない場合においても,同日に国民年金の被保険者の資格を取得するものとし,同法附則第5条第1項に該当するときは,同日に同項の申出をしたものとみなす。」
(5)  平成元年改正までの国民年金法の改正経過の概要
昭和62年法律第44号による国民年金法の改正により,障害基礎年金(2級障害)及び昭和60年改正法による改正前の国民年金法による障害年金(2級障害)の額がいずれも引き上げられ,また,昭和63年法律第56号による国民年金法の改正により,障害基礎年金(2級障害)及び上記障害年金(2級障害)の額がいずれも引き上げられた。
(6)  平成元年法律第86号による国民年金法の改正
ア 平成元年12月22日,国民年金法等の一部を改正する法律(平成元年法律第86号。以下「平成元年改正法」という。)が公布されて,日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者であって大学,専修学校の学生等であるものについて国民年金の第1号被保険者とするものとされた(同法による改正後の国民年金法7条1項)が,保険料の免除に関する規定(同法89条,90条)は従前のままとされた。
また,平成元年改正法により,障害基礎年金(2級障害)及び昭和60年改正法による改正前の国民年金法の障害年金(2級障害)の額が引き上げられるとともに,年金額について完全自動物価スライド制が導入され,全国消費者物価指数の変動率を基準としてその翌年の4月以降の年金額を政令により改定するものとされた。
平成元年改正法中学生等に係る国民年金の適用に関する規定は平成3年4月1日に施行された。
イ 平成元年改正法による改正(以下「平成元年改正」という。)後の国民年金法の被保険者の資格に関する定めは,次のとおりである。
国民年金法7条
「1項 次の各号のいずれかに該当する者は,国民年金の被保険者とする。
1号 日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者であって次号及び第3号のいずれにも該当しないもの(被用者年金各法に基づく老齢又は退職を支給事由とする年金たる給付その他の老齢又は退職を支給事由とする給付であって政令で定めるもの(以下「被用者年金各法に基づく老齢給付等」という。)を受けることができる者を除く。以下「第1号被保険者」という。)
2号 被用者年金各法の被保険者又は組合員(以下「第2号被保険者」という。)
3号 第2号被保険者の配偶者であって主として第2号被保険者の収入により生計を維持するもの(第2号被保険者である者を除く。以下「被扶養配偶者」という。)のうち20歳以上60歳未満のもの(以下「第3号被保険者」という。)
2項 略」
平成元年改正法附則3条(国民年金の被保険者資格の取得及び喪失の経過措置)
「1項 平成3年3月31日において,第1条の規定による改正前の国民年金法(以下「改正前の国民年金法」という。)第7条第1項第1号イに該当した者(同日において同項第2号又は第3号に該当した者及び改正前の国民年金法附則第5条第1項の規定による被保険者であった者を除く。)が,同年4月1日において改正後の国民年金法第7条第1項第1号に該当するとき(国民年金法附則第4条第1項に規定する政令で定める者であるときを除く。)は,その者は,同日に,国民年金の被保険者の資格を取得する。ただし,その者が,同日に,改正後の国民年金法第8条の規定により国民年金の被保険者の資格を取得するときは,この限りでない。
2項 平成3年3月31日において,改正前の国民年金法第7条第1項第1号イに該当した者(同号ロに該当しない者に限る。)であって改正前の国民年金法附則第5条第1項の規定による被保険者であったものは,同年4月1日に,当該被保険者の資格を喪失する。この場合において,その者が,同日において改正後の国民年金法第7条第1項第1号に該当するとき(国民年金法附則第4条第1項に規定する政令で定める者であるときを除く。)は,改正後の国民年金法第8条に該当しない場合においても,同日に,国民年金の被保険者の資格を取得する。」
(7)  平成12年法律第18号による国民年金法の改正
平成12年3月31日,国民年金法等の一部を改正する法律(平成12年法律第18号。以下「平成12年改正法」という。)が公布されて,学生の保険料の納付特例制度が創設され,学生等である第1号被保険者であって本人の所得が一定以下のものについて,申請に基づき,保険料を納付することを要しないものとされ(同改正後の国民年金法90条の3),納付することを要しないものとされた保険料は,承認の日の属する月前10年以内の期間に係るものに限り,社会保険庁長官の承認を受けて,その全部又は一部を追納することができるものとされ(同法94条1項),学生の保険料納付特例の対象となった期間は,保険料が追納されない場合は老齢基礎年金の額等の計算には反映されないこととされた(同法26条,27条)。また,一定の低所得の第1号被保険者(学生を除く。)について申請に基づき保険料の半額の納付を要しないこととする保険料の半額免除制度が創設された(同改正後の国民年金法90条の2)。学生の保険料の納付特例制度に関する平成12年改正法による改正(以下「平成12年改正」という。)後の国民年金法の規定は,平成12年4月1日から施行された。
(8)  特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律の制定
平成16年12月10日,特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律(平成16年法律第166号)が公布された。同法は,国民年金制度の発展過程において生じた特別な事情にかんがみ,障害基礎年金等の受給権を有していない障害者に特別障害給付金を支給することにより,その福祉の増進を図ることを目的とし(1条),その傷病に係る初診日において任意加入制度の対象とされていた被用者年金各法の被保険者等の配偶者又は大学等に在籍する生徒若しくは学生で国民年金制度に加入していなかったものであって,65歳に達する日の前日までにおいてその傷病等により現に障害等級1級又は2級の障害の状態にあるものを特定障害者とし(2条),国は,特定障害者が認定の請求をした日の属する月の翌月から,特定障害者に対し,月を単位として特別障害給付金を支給するものとし,その額は,1月につき,障害等級が1級の者には5万円,2級の者には4万円とし(4条,7条),また,その額については毎年の消費者物価指数の変動に応じた物価スライドを実施することとし(5条),所得制限等を設け(9条,16条等),特別障害給付金の支給を受けている者に係る国民年金保険料の免除に関する特例を設け(18条),特別障害給付金の支給に要する費用の全額を国庫が負担するものとし(19条),特別障害給付金の支給を受ける権利は5年を経過したときは時効によって消滅するものとしている(21条)。また,附則において,日本国籍を有していなかったため障害基礎年金の受給権を有していない障害者その他の障害を支給事由とする年金たる給付を受けられない特定障害者以外の障害者に対する福祉的措置については,国民年金制度の発展過程において生じた特別な事情を踏まえ,障害者の福祉に関する施策との整合性等に十分留意しつつ,今後検討が加えられ,必要があると認められるときは,その結果に基づいて所要の措置が講ぜられるものとする旨(附則2条),及び国は,同法に基づく特別障害給付金の支給に要する費用を賄うための安定した財源の確保に努めるものとする旨(附則3条)規定された。
(9)  原告らの受傷ないし発症経過等
ア 原告甲野太郎
(ア) 原告甲野太郎(昭和15年*月*日生)は,大阪医科大学医学部在学中,昭和38年9月ころ,視覚の異常を感じて同大学付属病院を受診し,同年10月同病院に入院して検査した結果,視神経炎と診断され,徐々に視力が低下したため,昭和39年兵庫県立医科大学で手術を受けたが,その後も病状は好転せず,両眼とも視力をほとんど失い,同年11月10日,身体障害者等級表による等級1級(視力障害)の身体障害者手帳の交付を受けた。同原告は,平成10年1月8日当時,視神経萎縮の傷病により,右眼は光覚弁,左眼は視力0で視力改善の見込みのない状態にある。なお,同原告は,昭和40年5月10日から国民年金の被保険者となったものであり,初診日(昭和38年9月)において国民年金の被保険者ではなかった(甲A第1,第2号証,乙A第2号証の1,乙A第3号証の1ないし6,原告甲野)。
(イ) 原告甲野は,平成10年1月30日,大阪府知事に対し,障害基礎年金の裁定請求をした。これに対し,同知事は,同年3月5日付けで障害基礎年金を支給しない旨の決定をした。
(ウ) 原告甲野の初診日が昭和38年9月であるとすれば,障害年金の支給要件について昭和39年法律第87号による改正前の国民年金法30条が適用されることになるが,同原告は昭和39年法律第110号による改正前の国民年金法7条2項8号に該当するため,前記(ア)のとおり初診日において被保険者ではなかったことになる。なお,昭和39年法律第110号による改正前の国民年金法7条1項,2項8号の規定及び昭和39年法律第87号による改正前の国民年金法30条の規定は,次のとおりである。
昭和39年法律第110号による改正前の国民年金法7条(被保険者の資格)
「1項 日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の日本国民は,国民年金の被保険者とする。
2項 次の各号のいずれかに該当する者は,前項の規定にかかわらず,国民年金の被保険者としない。
8号 次に掲げる学校に在学する生徒又は学生。ただし,学校教育法(昭和22年法律第26号)第4条に規定する高等学校の定時制の課程若しくは通信制の課程若しくは同法第54条に規定する大学の夜間の学部に在学し,又は同法第54条の2(同法第76条において準用する場合を含む。)に規定する通信による教育を受ける生徒又は学生を除く。
イ 学校教育法第41条に規定する高等学校(盲学校,聾学校又は養護学校の高等部を含む。)及びこれに相当する国立の学校で厚生大臣の指定するもの
ロ 学校教育法第52条に規定する大学(同法第62条に規定する大学院を含む。)及びこれに相当する国立の学校で厚生大臣の指定するもの
ハ 学校教育法第70条の2に規定する高等専門学校及びこれに相当する国立の学校で厚生大臣の指定するもの」
昭和39年法律第87号による改正前の国民年金法30条(障害年金の支給要件)
「1項 障害年金は,疾病にかかり,又は負傷し,かつ,次の各号の要件に該当する者が,その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)がなおった日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至った日を含むものとし,以下「廃疾認定日」という。)において,その傷病により別表に定める程度の廃疾の状態にあるときに,その者に支給する。ただし,その者が当該傷病についてはじめて医師又は歯科医師の診療を受けた日(以下「初診日」という。)において第28条の規定により老齢年金の支給を受けていたときは,この限りでない。
1号 初診日において被保険者であった者については,初診日の前日において次のいずれかに該当したこと。
イ 初診日の属する月の前月までの被保険者期間に係る保険料納付済期間が15年以上であるか,又はその保険料納付済期間が5年以上であり,かつ,その被保険者期間のうち保険料免除期間を除いたものの3分の2以上を占めること。
ロ 初診日の属する月前における直近の基準月(1月,4月,7月及び10月をいう。以下同じ。)の前月まで引き続き3年間被保険者であり,かつ,その期間のすべてが保険料納付済期間又は保険料免除期間で満たされていること。
ハ 初診日の属する月前における直近の基準月の前月まで引き続き1年間被保険者であり,かつ,その期間のすべてが保険料納付済期間で満たされていること。
ニ 初診日の属する月の前月までの被保険者期間につき,第26条に規定する要件に該当していること。
2号 初診日において被保険者でなかった者については,初診日において65歳未満であり,かつ,初診日の前日において第26条に規定する要件に該当したこと。
2項 略」
イ 原告乙山花子
(ア) 原告乙山花子(昭和20年*月*日生)は,神戸大学教育学部在学中,昭和43年12月18日,交通事故によって頭蓋底骨折,頸部挫傷等の傷害を負い,昭和45年2月まで近藤病院及び関西労災病院に入院して治療を受けたが,下半身横断麻痺の状態となり,昭和44年6月17日,身体障害者等級表による等級1級(第9胸髄損傷による両下肢機能全廃)の身体障害者手帳の交付を受けた。同原告は,平成9年12月27日当時,痙直性,脊髄性の知覚麻痺(鈍麻)及び運動麻痺,両下肢の反射亢進,排尿,排便障害があって,車椅子又は下肢補装具,松葉杖を常時使用する状態にあり,改善の見込みはないとされる。なお,同原告は,昭和44年12月18日から国民年金の被保険者となったものであり,初診日(昭和43年12月18日)において国民年金の被保険者ではなかった(甲B第1,第3,第4,第6号証,乙B第2号証の1,乙B第3号証の1ないし9,原告乙山)。
(イ) 原告乙山は,平成10年1月30日,兵庫県知事に対し,障害基礎年金の裁定請求をした。これに対し,同知事は,同年2月16日付けで障害基礎年金を支給しない旨の決定をした。
(ウ) 原告乙山の初診日が昭和43年12月18日であるとすれば,障害年金の支給要件について昭和51年法律第63号による改正前の国民年金法30条が適用されることになるが,同原告は昭和60年法律第34号による改正(昭和60年改正)前の国民年金法7条2項8号に該当するため,前記(ア)のとおり初診日において被保険者ではなかったことになる。昭和56年法律第86号による改正前の国民年金法7条1項の規定及び昭和60年法律第34号による改正前の国民年金法7条2項8号の規定並びに昭和51年法律第63号による改正前の国民年金法30条の規定は,次のとおりである。
昭和56年法律第86号による改正前の国民年金法7条1項(被保険者の資格)
「日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の日本国民は,国民年金の被保険者とする。」
昭和60年法律第34号による改正前の国民年金法7条2項(被保険者の資格)
「2項 次の各号のいずれかに該当する者は,前項の規定にかかわらず,国民年金の被保険者としない。
8号 次に掲げる学校に在学する生徒又は学生。ただし,学校教育法(昭和22年法律第26号)第4条に規定する高等学校の定時制の課程若しくは通信制の課程若しくは同法第54条に規定する大学の夜間の学部若しくは同法第69条の2第6項に規定する短期大学の夜間の学科に在学し,又は同法第54条の2(同法第76条において準用する場合を含む。)に規定する通信による教育を受ける生徒又は学生を除く。
イ 学校教育法第41条に規定する高等学校(盲学校,聾学校又は養護学校の高等部を含む。)及びこれに相当する国立の学校で厚生大臣の指定するもの
ロ 学校教育法第52条に規定する大学(同法第62条に規定する大学院を含む。)及び同法第69条の2第2項に規定する短期大学並びにこれらに相当する国立の学校で厚生大臣の指定するもの
ハ 学校教育法第70条の2に規定する高等専門学校及びこれに相当する国立の学校で厚生大臣の指定するもの」
昭和51年法律第63号による改正前の国民年金法30条(障害年金の支給要件)
「1項 障害年金は,疾病にかかり,又は負傷し,かつ,次の各号の要件に該当する者が,その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)についてはじめて医師又は歯科医師の診察を受けた日(以下「初診日」という。)から起算して3年を経過した日(その期間内にその傷病がなおった場合においては,そのなおった日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至った日を含む。)とし,以下「廃疾認定日」という。)において,その傷病により別表に定める程度の廃疾の状態にあるときに,その者に支給する。
1号 初診日において被保険者であった者については,廃疾認定日の前日において次のいずれかに該当したこと。
イ 廃疾認定日の属する月の前月までの被保険者期間に係る保険料納付済期間が15年以上であるか,又はその保険料納付済期間が5年以上であり,かつ,その被保険者期間のうち保険料免除期間を除いたものの3分の2以上を占めること。
ロ 廃疾認定日の属する月前における直近の基準月(1月,4月,7月及び10月をいう。以下同じ。)の前月までの被保険者期間が3年以上であり,かつ,その被保険者期間のうち最近の3年間が保険料納付済期間又は保険料免除期間で満たされていること。
ハ 廃疾認定日の属する月前における直近の基準月の前月までの被保険者期間が1年以上であり,かつ,その被保険者期間のうち最近の1年間が保険料納付済期間で満たされていること。
ニ 廃疾認定日の属する月の前月までの被保険者期間につき,第26条に規定する要件に該当していること。
2号 初診日において被保険者でなかった者については,廃疾認定日において65歳未満であり,かつ,廃疾認定日の前日において第26条に規定する要件に該当していること。
2項 略」
ウ 原告丙川次郎
(ア) 原告丙川次郎(昭和25年*月*日生)は,近畿大学商経学部在学中,昭和50年8月15日,交通事故により橋本市民病院に搬入され,同病院,大阪警察病院及び星ヶ丘厚生年金病院に入院して治療を受けたが,第5胸髄損傷による障害の状態となり,昭和51年5月31日,身体障害者等級表による等級1級(両下肢機能全廃)の身体障害者手帳の交付を受けた。同原告は,平成10年1月23日当時,両下肢は自動運動がなく,神経因性膀胱炎による排尿障害があり,車椅子を常時使用する状態にある。なお,同原告は,昭和52年4月1日から国民年金の被保険者となったものであり,初診日(昭和50年8月15日)において国民年金の被保険者ではなかった(甲C第1,第2号証,乙C第2号証の1,乙C第3号証の1ないし9,原告丙川)。
(イ) 原告丙川は,平成10年1月30日,大阪府知事に対し,障害基礎年金の裁定請求をした。これに対し,同知事は,同年3月5日付けで障害基礎年金を支給しない旨の決定をした。
(ウ) 原告丙川の初診日が昭和50年8月15日であるとすれば,障害年金の支給要件について昭和51年法律第63号による改正前の国民年金法30条が適用されることになるが,同原告は昭和60年法律第34号による改正(昭和60年改正)前の国民年金法7条2項8号に該当するため,前記(ア)のとおり初診日において被保険者ではなかったことになる。なお,昭和56年法律第86号による改正前の国民年金法7条1項の規定及び昭和60年法律第34号による改正前の国民年金法7条2項8号の規定並びに昭和51年法律第63号による改正前の国民年金法30条の規定は,前記イ(ウ)のとおりである。
エ 原告丁木三郎
(ア) 原告丁木三郎(昭和25年*月*日生)は,龍谷大学経済学部在学中,昭和46年1月19日,踏切で走行中の列車に接触して頭部外傷の傷害を負い岡本病院に搬入され,同病院,清水外科病院及び白浜国立温泉病院等に入院するなどして治療を受けたが,失語,知能低下,右片麻痺の症状が認められ,昭和49年6月3日,身体障害者等級表による等級3級(頭部外傷による右上下肢機能の著しい障害)の身体障害者手帳の交付を受けた。同原告は,平成10年12月22日当時,右上下肢に著しい痙性麻痺,歩行等の著しい障害が認められ,右下肢補装具を常時使用する状態にあって,予後は不良とされており,平成7年3月,身体障害者手帳における等級が2級(頭部外傷による右上下肢機能の著しい障害)に,平成12年1月,身体障害者手帳における等級が1級(立ち上がることが困難な体幹機能障害及び右上肢の機能の著しい障害)に変更された。なお,同原告は,昭和49年1月5日から国民年金の被保険者となったものであり,初診日(昭和46年1月19日)において国民年金の被保険者ではなかった(甲D第1号証,乙D第2号証の1,乙D第3号証の1ないし8,13,15,証人丁木秋子,原告丁木)。
(イ) 原告丁木は,平成11年3月10日,大阪府知事に対し,障害基礎年金の裁定請求をした。これに対し,同知事は,同年4月23日付けで障害基礎年金を支給しない旨の決定をした。
(ウ) 原告丁木の初診日が昭和46年1月19日であるとすれば,障害年金の支給要件について昭和51年法律第63号による改正前の国民年金法30条が適用されることになるが,同原告は昭和60年法律第34号による改正(昭和60年改正)前の国民年金法7条2項8号に該当するため,前記(ア)のとおり初診日において被保険者ではなかったことになる。なお,昭和56年法律第86号による改正前の国民年金法7条1項の規定及び昭和60年法律第34号による改正前の国民年金法7条2項8号の規定並びに昭和51年法律第63号による改正前の国民年金法30条の規定は,前記イ(ウ)のとおりである。
オ 原告戊谷四郎
(ア) 原告戊谷四郎(昭和29年*月*日生)は,鳥取大学教育学部在学中,昭和49年9月5日,体操クラブの練習中に鉄棒より落下して負傷し,鳥取県立中央病院に搬入され,同病院及び山陰労災病院に入院して治療を受けたが,両下肢運動知覚麻痺の障害が残り,同年12月3日に治癒とされて,そのころ身体障害者手帳の交付を受けた。平成元年3月20日交付の同原告の身体障害者手帳では身体障害者等級表による等級1級(両下肢機能障害)とされており,平成9年12月当時,同原告は,車椅子を常時使用する状態にあり,予後は不良とされている。なお,同原告は,昭和54年4月1日に国民年金の被保険者となったものであり,初診日(昭和49年9月5日)において国民年金の被保険者ではなかった(甲E第1号証,乙E第2号証の1,乙E第3号証の1ないし6,原告戊谷)。
(イ) 原告戊谷は,平成10年1月30日,兵庫県知事に対し,障害基礎年金の裁定請求をした。これに対し,同知事は,同年3月2日付けで障害基礎年金を支給しない旨の決定をした。
(ウ) 原告戊谷の初診日が昭和49年9月5日であるとすれば,障害年金の支給要件について昭和51年法律第63号による改正前の国民年金法30条が適用されることになるが,同原告は昭和60年法律第34号による改正(昭和60年改正)前の国民年金法7条2項8号に該当するため,前記(ア)のとおり初診日において被保険者ではなかったことになる。なお,昭和56年法律第86号による改正前の国民年金法7条1項の規定及び昭和60年法律第34号による改正前の国民年金法7条2項8号の規定並びに昭和51年法律第63号による改正前の国民年金法30条の規定は,前記イ(ウ)のとおりである。
カ 原告己田五郎
(ア) 原告己田五郎(昭和29年*月*日生)は,近畿大学法学部在学中,昭和51年9月17日,体育の授業中トランポリンの着地に失敗して負傷し,東長原病院に搬入され,同病院及び近畿大学医学部付属病院に入院して治療を受けたが,第7頸髄以下完全麻痺,第6頸髄不全麻痺(知覚麻痺及び運動麻痺),膀胱直腸障害の症状が残り,昭和53年3月17日治癒とされ,同年1月7日,身体障害者等級表による等級1級(頸髄損傷による四肢麻痺(第6頸髄不全麻痺,第7頸髄以下全麻痺))の身体障害者手帳の交付を受けた。同原告は,平成10年1月17日当時,車椅子を常時使用し,日常生活に全介助を要する状態にある。なお,同原告は,昭和52年10月1日に国民年金の被保険者となったものであり,初診日(昭和51年9月17日)において国民年金の被保険者ではなかった(甲F第1,第2号証,乙F第2号証の1,乙F第3の1ないし7,12,原告己田)。
(イ) 原告己田は,平成10年1月30日,大阪府知事に対し,障害基礎年金の裁定請求をした。これに対し,同知事は,同年2月4日付けで障害基礎年金を支給しない旨の決定をした。
(ウ) 原告己田の初診日が昭和51年9月17日であるとすれば,障害年金の支給要件について昭和51年法律第63号による改正前の国民年金法30条が適用されることになるが,同原告は昭和60年法律第34号による改正(昭和60年改正)前の国民年金法7条2項8号に該当するため,前記(ア)のとおり初診日において被保険者ではなかったことになる。なお,昭和56年法律第86号による改正前の国民年金法7条1項の規定及び昭和60年法律第34号による改正前の国民年金法7条2項8号の規定並びに昭和51年法律第63号による改正前の国民年金法30条の規定は,前記イ(ウ)のとおりである。
キ 原告庚町六郎
(ア) 原告庚町六郎(昭和31年*月*日生)は,関西学院大学商学部在学中,昭和53年4月23日,アメリカン・フットボールの競技中負傷して病院に搬入され,同月24日から大阪大学医学部付属病院及び星ヶ丘厚生年金病院に入院して治療を受けたが,第7頚髄以下完全麻痺,直腸,膀胱麻痺の状態となり,昭和53年8月11日,治癒とされて,同日,身体障害者等級表による等級1級(頚髄損傷による四肢麻痺)の身体障害者手帳の交付を受けた。同原告は,平成10年8月5日当時,第7頚髄以下完全麻痺,直腸,膀胱麻痺の状態にあり,車椅子を常時使用しており,予後は不変とされている。なお,同原告は,昭和54年3月28日に国民年金の被保険者となったものであり,初診日(昭和53年4月23日)において国民年金の被保険者ではなかった(甲G第1,第2号証,乙G第2号証の1,乙G第3号証の1ないし7,10,原告庚町)。
(イ) 原告庚町は,平成10年10月7日,大阪府知事に対し,障害基礎年金の裁定請求をした。これに対し,同知事は,同月20日付けで障害基礎年金を支給しない旨の決定をした。
(ウ) 原告庚町の初診日が昭和53年4月23日であるとすれば,障害年金の支給要件について昭和57年法律第66号による改正前の国民年金法30条が適用されることになるが,同原告は昭和60年法律第34号による改正(昭和60年改正)前の国民年金法7条2項8号に該当するため,前記(ア)のとおり初診日において被保険者ではなかったことになる。なお,昭和56年法律第86号による改正前の国民年金法7条1項の規定及び昭和60年法律第34号による改正前の国民年金法7条2項8号の規定は,前記イ(ウ)のとおりであり,昭和57年法律第66号による改正前の国民年金法30条の規定は,次のとおりである。
昭和57年法律第66号による改正前の国民年金法30条(障害年金の支給要件)
「1項 障害年金は,疾病にかかり,又は負傷し,かつ,次の各号の要件に該当する者が,その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病(以下「傷病」という。)について初めて医師又は歯科医師の診察を受けた日(以下「初診日」という。)から起算して1年6月を経過した日(その期間内にその傷病が治った場合においては,その治った日(その症状が固定し治療の効果が期待できない状態に至った日を含む。)とし,以下「廃疾認定日」という。)において,その傷病により別表に定める程度の障害の状態にあるときに,その者に支給する。
1号 初診日において被保険者であった者については,初診日の前日において次のいずれかに該当したこと。
イ 初診日の属する月の前月までの被保険者期間に係る保険料納付済期間が15年以上であるか,又はその保険料納付済期間が5年以上であり,かつ,その被保険者期間のうち保険料免除期間を除いたものの3分の2以上を占めること。
ロ 初診日の属する月前における直近の基準月(1月,4月,7月及び10月をいう。以下同じ。)の前月までの被保険者期間が3年以上であり,かつ,その被保険者期間のうち最近の3年間が保険料納付済期間又は保険料免除期間で満たされていること。
ハ 初診日の属する月前における直近の基準月の前月までの通算年金通則法第4条第1項各号に掲げる期間を合算した期間が1年以上であり,かつ,同月までの1年間のうちに保険料納付済期間以外の被保険者期間がないこと。
ニ 初診日の属する月の前月までの被保険者期間につき,第26条に規定する要件に該当していること。
2号 初診日において被保険者でなかった者については,初診日において65歳未満であり,かつ,初診日の前日において第26条に規定する要件に該当したこと。
2項及び3項 略」
ク 原告辛浜夏子
(ア) 原告辛浜夏子(昭和31年*月*日生)は,同志社大学文学部在学中,昭和53年夏ころ教育実習を受けた際の睡眠不足が契機となって躁うつ病(感情障害ないし気分障害)を発症し,同年7月5日,子安病院を受診し,同月6日,箕面神経サナトリウム病院を受診して躁うつ病と診断され,同病院に入院となり,その後,同病院や医療法人サヂカム会三国丘病院(以下「三国丘病院」という。)等に入通院を繰り返し,平成7年ころ障害等級2級の,平成9年8月1日に障害等級1級の各精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた。同原告は,平成10年12月24日当時,抑うつ状態(思考・運動制止,刺戟性,興奮,憂うつ気分)が認められ,表情は沈んでおり,活気がなく,些細な刺激により不安,焦燥が強まり,時に興奮して家族とトラブルを起こす,長期にわたり薬物療法を施行されているが,周期的に躁状態とうつ状態が出現し,抑うつ気分が強まると外出できなくなり,母親に頼りきりになってしまうなどとされ,精神症状を認め,家庭内での単純な日常生活はできるが,時に応じて援助や保護が必要であるとされている。なお,同原告は,昭和54年4月1日に国民年金の被保険者となったものであり,昭和53年7月5日当時国民年金の被保険者ではなかった(甲H第1,第7,第8号証,乙H第2号証の1,乙H第3号証の1,2,7,10ないし12,同号証の13の1,2,証人辛浜冬子,原告辛浜)。
(イ) 原告辛浜は,平成11年1月,奈良県知事に対し,障害基礎年金の裁定請求をした。これに対し,同知事は,同年4月30日付けで障害基礎年金を支給しない旨の決定をした。
(ウ) 原告辛浜の初診日が昭和53年7月5日であるとすれば,障害年金の支給要件について昭和57年法律第66号による改正前の国民年金法30条が適用されることになるが,同原告は昭和60年法律第34号による改正(昭和60年改正)前の国民年金法7条2項8号に該当するため,前記(ア)のとおり初診日において被保険者ではなかったことになる。なお,昭和56年法律第86号による改正前の国民年金法7条1項の規定及び昭和60年法律第34号による改正前の国民年金法7条2項8号の規定は,前記イ(ウ)のとおりであり,昭和57年法律第66号による改正前の国民年金法30条の規定は,前記キ(ウ)のとおりである。
ケ 原告壬村七郎
(ア) 原告壬村七郎(昭和33年*月*日生)は,阪南大学在学中,昭和56年2月ころから幻覚,妄想状態となり,同年3月6日,天理よろづ相談所病院を受診して精神分裂病(統合失調症)と診断され,通院治療を受けたほか,昭和58年5月から同年12月まで同病院に入院して治療を受けるなどした。同原告は,平成9年11月17日当時,幻覚妄想状態(自生的観念)及び分裂病等残遺状態(意欲の減退)が認められ,疲れやすさ,意欲や根気,集中力の減退(特に社会の実際的場面での判断力,能動性の低下)があり,心身のストレス状況下では過緊張,自生的思い出しや空想がみられたり倦怠感が強く無気力になったりするとされ,精神症状を認め,家庭内での単純な日常生活はできるが,時に応じて援助や保護が必要であるとされており,平成7年11月15日ころ,障害等級2級に該当するものとして精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた。なお,同原告は,昭和56年4月1日に国民年金の被保険者となったものであり,同年3月6日当時国民年金の被保険者ではなかった(甲I第1,第2号証,乙I第2号証の1,乙I第3号証の1,2,9,10,原告壬村)。
(イ) 原告壬村は,平成10年1月30日,奈良県知事に対し,障害基礎年金の裁定請求をした。これに対し,同知事は,同年3月6日付けで障害基礎年金を支給しない旨の決定をした。
(ウ) 原告壬村の初診日が昭和56年3月6日であるとすれば,障害年金の支給要件について昭和57年法律第66号による改正前の国民年金法30条が適用されることになるが,同原告は昭和60年法律第34号による改正(昭和60年改正)前の国民年金法7条2項8号に該当するため,前記(ア)のとおり初診日において被保険者ではなかったことになる。なお,昭和60年法律第34号による改正前の国民年金法7条1項の規定は,前記(3)タのとおりであり,同条2項8号の規定は,前記イ(ウ)のとおりであり,昭和57年法律第66号による改正前の国民年金法30条の規定は,前記キ(ウ)のとおりである。
コ 原告癸畑春子
(ア) 原告癸畑春子(昭和39年*月*日生)は,大阪府立千里看護専門学校看護第2科に在学中,昭和61年6月8日,交通事故により負傷して那智勝浦町立温泉病院に搬入され,同病院,高槻理学診療科病院等に入院して治療を受けたが,頚髄損傷による障害が残り,昭和62年2月19日,身体障害者等級表による等級1級(四肢・体幹機能障害)の身体障害者手帳の交付を受けた。同原告は,平成11年3月11日当時,第6頚髄節以下の四肢麻痺があり,同年7月11日当時,車椅子を常時使用(自操)する状態であり,また,神経因性膀胱による排尿障害があり自己導尿中である。なお,同原告は,昭和62年7月1日に再度国民年金の被保険者となったものであり,初診日(昭和61年6月8日)において国民年金の被保険者ではなかった(甲J第1,第2号証,乙J第2号証の1,乙J第3号証の1ないし5,8,原告癸畑)。
(イ) 原告癸畑は,平成11年7月15日,大阪府知事に対し,障害基礎年金の裁定請求をした。これに対し,同知事は,同年9月8日付けで障害基礎年金を支給しない旨の決定をした。
(ウ) 原告癸畑の初診日が昭和61年6月8日であるとすれば,同原告の障害基礎年金の支給要件について国民年金法30条,昭和60年改正法(平成元年法律第86号による改正前のもの)附則20条,21条が適用されることになるが,原告癸畑は,20歳に達した昭和59年4月14日に昭和60年改正法による改正前の国民年金法(昭和34年法)7条1項により国民年金の被保険者の資格を取得したものの,平成元年改正法による改正前の国民年金法(昭和60年法)7条1項1号イ,国民年金法施行令(平成元年政令第336号による改正前のもの)4条4号又は5号,国民年金法施行規則(平成3年厚生省令第23号による改正前のもの)1条の2第4号の規定に該当することとなったため,昭和60年改正法附則6条2項の規定により,昭和61年4月1日に国民年金の被保険者の資格を喪失したことになる(なお,乙J第2号証の1によれば,同原告は,上記のとおり20歳に達した日にいったん国民年金の被保険者の資格を取得したものであるが,昭和60年改正法による改正前の国民年金法(昭和34年法)12条の規定に基づく資格の取得に関する届出がされていなかった事実が認められる。)。なお,平成元年改正法による改正前の国民年金法(昭和60年法)7条1項1号イ,国民年金法施行令(平成元年政令第336号による改正前のもの)4条,国民年金法施行規則(平成3年厚生省令第23号による改正前のもの)1条の2第4号の規定の内容は,前記(4)イ(ア)のとおりであり,国民年金法30条の規定の内容は前記(4)イ(イ)のとおりであり,昭和60年改正法(平成元年法律第86号による改正前のもの)附則20条,21条の規定の内容は,次のとおりである。
昭和60年改正法(平成元年法律第86号による改正前のもの)附則20条(障害基礎年金等の支給要件の特例)
「1項 初診日が昭和71年4月1日前にある傷病による障害について新国民年金法第30条第1項ただし書(同法第30条の2第2項及び第30条の3第2項において準用する場合を含む。)の規定を適用する場合においては,同法第30条第1項ただし書中「3分の2に満たないとき」とあるのは,「3分の2に満たないとき(当該初診日の前日において当該初診日の属する月の前々月までの1年間(当該初診日において被保険者でなかった者については,当該初診日の属する月の前々月以前における直近の被保険者期間に係る月までの1年間)のうちに保険料納付済期間及び保険料免除期間以外の被保険者期間がないときを除く。)」とする。
2項 略」
昭和60年改正法(平成元年法律第86号による改正前のもの)附則21条
「前条並びに新国民年金法第30条第1項ただし書(同法第30条の2第2項及び第30条の3第2項において準用する場合を含む。)及び第37条ただし書の規定の適用については,当分の間,これらの規定中「月の前々月」とあるのは,「月前における直近の基準月(1月,4月,7月及び10月をいう。)の前月」とする。」
(10)  被告社会保険庁長官の被告適格
地方分権の推進を図るための関係法令の整備に関する法律(平成11年法律第87号)により,機関委任事務が廃止されたため,それまで都道府県知事が機関委任事務として行っていた障害基礎年金の裁定に関する事務は被告社会保険庁長官が行うこととなり,これに伴って,被告社会保険庁長官が行政事件訴訟法(平成16年法律第84号による改正前のもの)11条1項により,本件各処分取消訴訟の被告適格を有することとなった。
3  争点及び争点に関する当事者の主張
本件の争点は,① 学生等適用除外規定が憲法25条,14条,13条,31条に違反するか否か(学生等適用除外規定の憲法適合性),② 学生等適用除外規定が違憲無効である場合,本件各処分が違法か否か(学生等適用除外規定の違憲無効と本件各処分の違法),③ 原告辛浜について社会的治癒を認めることにより初診日において被保険者であったと認めることができるか否か(原告辛浜の初診日の認定に係る本件処分の違法),④ 国会及び内閣が学生等適用除外規定を設けてこれを平成元年改正まで存置し,同規定の適用により障害年金ないし障害基礎年金を受給することができない学生無年金障害者に対する救済措置をとらなかったことについて,被告国が国家賠償責任を負うか否か(立法行為ないし立法不作為の違法を理由とする被告国の国家賠償責任),⑤ 被告国が任意加入制度の存在及び内容についての広報,周知徹底ないし個別的教示義務の違反を理由とする国家賠償責任を負うか否か(個別的教示義務等違反を理由とする被告国の国家賠償責任),⑥ 原告らの損害額,であり,これらに関する当事者の主張は,次のとおりである。
(1)  学生等適用除外規定の憲法適合性
(原告らの主張)
ア 学生等適用除外規定(国民年金法(昭和36年法律第167号による改正前のもの)7条2項7号,国民年金法(昭和39年法律第110号による改正前のもの)7条2項8号,国民年金法(昭和60年法律第34号による改正前のもの)7条2項8号,国民年金法(平成元年法律第86号による改正前のもの)7条1項1号イの各規定)は,憲法25条,14条に違反し,無効である。
イ 国民年金法の制定及び改正の経過
(ア) 国民年金法制定に至る経緯
社会保障制度審議会は,昭和25年の社会保障制度に関する勧告で,全国民に対する拠出制の年金保険制度の樹立が望ましいことを述べつつ,その実現は日本経済の回復まで待たなければならないので,とりあえず被用者に対する年金制度を整備すべきであると主張した。次いで,昭和28年の年金制度の整備改革に関する勧告で,現行各種年金制度の一元的統合を図るとともに,5人未満の零細企業の被用者及び一般自営業者をも年金制度の適用者とすべきであると主張したが,実現には至らなかった。昭和32年5月,内閣総理大臣が社会保障制度審議会に対し,「国民年金制度に関する基本方策いかん」との諮問を発したことを受けて,同審議会は,国民年金特別委員会を設け,その具体的検討に着手した。そして,社会保障制度審議会は,昭和33年6月14日,「国民年金制度に関する基本方策について」と題する答申をした。これを受けて,大蔵省は「国民年金制度に関する社会保障制度審議会の答申の問題点」と題する意見を発表し,厚生省の国民年金委員は,同年7月29日に,「国民年金制度構想上の問題点」と題する基本構想を厚生大臣に説明した。同年8月15日,自由民主党の国民年金実施対策特別委員会は,社会保障制度審議会,国民年金委員等から意見を聴取し,国民年金法案についての基本的な考え方となる3原則,すなわち,① 国民年金制度は拠出制の年金を基本とし,無拠出制の年金は経過的,補完的に認めるものとする,② 老齢,障害,母子の3年金は,昭和34年度中に同時に発足させるものとする,③ 拠出制及び無拠出制の両者について,老齢,障害及び母子の3年金を実施するために必要なすべての規定を含む包括的な国民年金法案を昭和34年1月の通常国会冒頭に提出することを目途として,早急に準備を進めるものとする,を発表した。昭和33年9月24日,厚生省は,後に成立する国民年金法とほぼ内容を同じくする「国民年金制度要綱第1次案」を発表した。この第1次案に対し,同年10月7日,大蔵省は,意見書を発表し,同案実施に要する財政支出は過大にすぎ,負担に耐えられないとの見解に立ち,できる限り支出を圧縮することを求めた。同年12月20日,自由民主党国民年金実施対策特別委員会は,厚生省等の意見を聞いた上で,上記第1次案に若干の修正を加え,国民年金法案起草の基礎案となる「国民年金制度要綱」を決定した。なお,この検討過程で,自由民主党内において,上記第1次案を白紙に戻し,無拠出制中心の制度にすべきではないかとの有力な意見も出されていた。
以上の検討過程において,国民年金制度の適用対象は,厚生省第1次案では「全国民」,自由民主党国民年金実施対策特別委員会の国民年金制度に関する試算資料(その一)では「原則として全国民」,社会保障制度審議会答申では「現行公的年金制度の適用対象者及びその被適用者を除く国民,任意適用を認めない」,国民年金委員中間発表(国民年金制度構想上の問題点)では「現行公的年金制度の適用者を含めたできる限り広範囲の国民,妻および無業者については任意適用」,大蔵省意見では「妻を適用対象とすることには問題」とされていた。以上から明らかになるのは,学生に対し当然には被保険者資格を与えないこととしたのは自由民主党の要綱以降であるということである。また,障害年金における無拠出制の支給対象については,厚生省第1次案では「拠出能力がなかったため(または20歳から22歳までに)拠出年金をうけられなかった厚生年金一級程度の外部障害をうけた者」,自由民主党国民年金実施対策特別委員会の国民年金制度に関する試算資料(その一)では「厚生年金一級程度の障害者(外部障害のみ)で20歳以上の者」,社会保障制度審議会答申では「拠出制に同じ(常時介護を要する完全廃疾者で内部障害者を含む。),ただし,6歳以上の者に支給する」,国民年金委員中間発表(国民年金制度構想上の問題点)では「拠出能力のない身体障害者」とされており,20歳以上の学生で障害を負った者に対して無拠出制年金を支給する案も検討されていた。こうした諸案が検討された背景には,政府としても,障害発生時に自動的に所得保障がされ,障害者が窮迫状態に陥ることを未然に防ぐ防貧政策をとる必要性が高いこと,拠出能力の有無を問わずに適用対象とすることが必要であり,拠出制年金しかないと障害年金や母子年金において制度の欠点が強く現れること,拠出制年金だけでは所得保障の必要性が最も高く恒常的に発生する若年障害者に対する保護に欠ける結果となること,拠出制年金についての年金額の3分の1の国費負担分の援助が行われず不公平(障害者に対する貧困による差別)であること,などの認識があった。
しかし,昭和33年12月20日に決定された国民年金制度要綱では,学生を任意適用とし,任意加入しなければ障害を負っても年金が支給されないとする制度が採用された。そして,この要綱を基礎として国民年金法案が策定され,同法案は,昭和34年2月4日,国会に提出された。なお,社会保障制度審議会は,この国民年金制度要綱に対し,同年1月22日,「……国庫負担を保険料収入の2分の1としたことは結構であるが,完全積立方式を前提とする財務収支にこだわり過ぎ,社会保険でありながらむしろ任意保険に近い考え方が各所に見られるとともに,社会保障の精神をかなり大幅に後退せしめ,防貧というよりは救貧的色彩が濃厚にあらわれていることは問題である。たとえば,無拠出年金を単に経過的および補完的にとどめた如き,また,援護の名の下に年金の受給資格に極めて苛酷な所得条件を附した如きは,その適例である。その結果,国民年金制度の必要の最も多いボーダーライン層が,かえってこの制度からしめ出される恐れが多分にある。また拠出年金に対する保険料の納付を怠ったものには無拠出制年金を支給しないことにしていることも見逃しがたい。」などといった答申を行って批判し,さらに,「援護年金については,保険料の納付を要件とすべきではない。」との意見が出された。また,国会審議においては,坂田道太厚生大臣が,保険料免除制度によって低所得者層に対する特別の考慮をしているとの趣旨説明や答弁を行ったほか,小山進次郎政府委員は,全体の保険料免除対象者が約3割になると予測し,保険財政の収支予測の上で,学生について任意加入する者は全体の約3分の1にとどまると予測する答弁,保険料免除基準は一応原則として市町村税の均等割の納付を免除されている者を考えており,均等割納付義務免除者として,学生,生活扶助受給者,身体障害者で13万円以下の所得の者,未婚の女子で所得のない者,前年度所得のなかった者であるとの答弁,突然の怪我や配偶者の喪失のような予測困難な事故に対しては,保険料納付の有無を給付になるべく反映させず,「何か非常に意識的な意図を持って保険料の納入を怠らない限りは,障害年金や母子年金がいくように」従来の社会保険の考え方の枠を外した制度設計をした旨の答弁をした。なお,田中正巳議員からは,大阪市開催の地方意見聴取会において,近藤文二大阪市立大学教授が被保険者から(公的年金対象者の)配偶者と学生をはずし,任意加入としたことに疑問がある旨の意見陳述をしたことが報告されている。
(イ) 昭和34年法の規定
昭和34年4月,国民年金法(昭和34年法)が成立した。その内容は,国民年金法案中,援護年金とあるのを福祉年金と修正したほかは同法案どおりであった。
国民年金制度を創設するに当たり,拠出制と無拠出制のいずれを基本にするかについては,制度の根幹にかかわる大きな問題であったが,昭和34年法では,① 自ら保険料を納付し,その納付額に応じて年金を受領するという仕組みをとることによって,老齢のようにだれでもいつかは到達するに違いない事態に対しては,自らの力でできる限りの備えをするという原則を堅持することが,制度の健全な発展にとって不可欠の前提と考えられたこと,② 無拠出制を基本とした場合,その財源を国の一般財源に求めざるを得ないところ,我が国のように老齢人口の急激な増加が予想される社会においては,将来の国の財政負担が膨大なものとなり,将来の国民に過度の負担を負わせることになりかねず,また,給付がその時々の国の財政及び経済の諸事情に左右され,安定的な運営ができないこと,③ 無拠出制を基本として上記②の事態を避けようとすれば,年金額などの制度の内容は社会保障制度の名に値しないほど不十分なものにならざるを得ないことを大きな理由として,拠出制を基本とし,無拠出制の年金は経過的及び補完的なものとされることになった。他方,制度発足時点において,既に高齢や障害などの事故が発生している者,他制度から移行したこと等により加入期間が短いため拠出制の年金の支給要件を満たすことができない者,所得能力が低いため保険料を納めることができない者に対して,全額租税財源による無拠出制の年金を支給するか否かについては議論があったが,① 当時の社会状況,すなわち戦争によって財産を失い,扶養者を亡くした老齢者,障害者及び母子世帯が多数存在するという状況に照らし,生活の資を得る術を失ったこれらの者に年金的保護を及ぼす必要性が高いとされたこと,② 拠出制の年金については,年金額の3分の1を国庫が負担するとされているところ,保険料を拠出することができた者だけが国から国庫負担を通じて援助が受けられ,保険料の支払能力のない者には国費の支出による援助を受けられない結果となり,公平を失すること,③ 公的扶助制度のみによると,扶助の水準は最低生活水準とされてしまうという欠陥があることなどを理由として,経過的,補充的かつ限定的なものとして拠出制年金より低額の福祉年金を給付することとした。
被保険者は,20歳以上60歳未満の国民とされているが,その理由については,「年金制度においては,労働能力を減損した場合に保障が行われ,また,被保険者は,これを備えるため保険料を拠出すべき義務を負っているのであり,したがって,被保険者たるべき者は,労働能力を持つ者,すなわち,一定の所得をあげうる者であることが必要とされる。この点,(中略)雇用関係を前提としない国民年金制度においては,一般に就労していると考えられる年齢により一律に区分することとされている。」と説明されている。検討過程における昭和33年6月14日付けの社会保障審議会の答申では,拠出制年金の拠出期間(被保険者期間)を25歳から54歳までとするとの提案もされたが,① 他の公的制度との均衡,② 拠出の開始年齢を早めることにより保険料を引き下げることができるという実益があること,③ 当時,大部分の国民がせいぜい高等学校卒業程度で所得活動に入っていたことを考えると,拠出の開始年齢を25歳とすることは遅きに失すること,などから,国民年金の被保険者期間の開始時は20歳とされた。しかし,20歳以上60歳未満の国民であっても,既存の被用者年金各法の被保険者とその配偶者,既に年金受給権が発生している者,学生は強制適用の対象外とされた。学生が強制適用の対象から除外するについて国会で議論された形跡はなく,その後に公刊された文献には,① 学生は「一般に稼得活動に従事していない」こと,② 「学生は,通例,卒業後,現行被用者年金各制度の適用者になるものと思われ」ること,③ 「わずかな期間保険料を納付させたままで(国民年金の対象者から)除外するとすれば,多くの場合に保険料が掛け捨てとなること」が考慮された旨の記載がされている。しかし,法制定当時これらの立法事実が存在していたかについてははなはだ疑問である。なお,昭和34年法によって国民年金の被保険者としないとされた者(同法7条2項各号に掲げる者)に対する将来にわたる国民年金法の適用関係については,国民年金制度と被用者年金各法による年金制度及びその他の公的年金制度との関連を考慮して,速やかに検討が加えられた上,別に法律をもって処理されるべきものとするとの条項が設けられた(同条3項)。
ただし,学生は,都道府県知事の承認を受けて国民年金の被保険者となること(任意加入すること)が認められていた(昭和34年法附則6条1項)。この承認の申請はいつでも行うことができ,また,承認は通常の場合は必ず認められ,承認されない場合として考えられるのは,加入しても本人の保険料の納付が行われ難いと認められる場合とか,過去に保険料について未納の分がある場合等の特別の場合に限られていた。ただし,過去にさかのぼって加入の申請をすることは保険の性質上認められなかった。なお,任意加入被保険者には申請免除(昭和34年法90条)は適用されないものとされた(同法附則6条6項)。
障害福祉年金は,制度発足前から障害者であった者等のほか,20歳に達する前に初診日のある傷病によって障害を負った者にも支給されることとされた。その理由は,① 20歳前において重度の障害となった場合には,その回復は極めて困難であって,稼得能力はほとんど永久に失っており,所得保障の必要性は高い,② 年齢的にみて親の扶養を受ける程度をできるだけ少なくすることが望ましい,③ 国民年金制度は皆年金の思想に基づき20歳に到達した国民を一律に被保険者として受け入れている,④ 経過的福祉年金にあっては被保険者でなかった者に対しても年金が支給される,ことが挙げられている。
(ウ) 昭和34年法制定後昭和60年改正までの法改正
昭和34年法制定時に,将来速やかに検討が加えられるべきとされていた(同法7条3項)課題のうちの重要な一つであった国民年金制度と被用者年金各法による年金制度等との通算調整の問題については,昭和36年に通算年金通則法が制定され,問題点の大半が解決された。なお,通算の対象となる期間が一定期間以上(原則として1年)と限定されているなど完全な通算調整が図られたわけではないが,そもそも障害年金の保険料は障害を負わなければ掛け捨てになるものであるから,完全な通算調整の問題は学生を強制適用から除外しなければならないほどの大きな問題ではなかった。
国民年金法は,制定後,頻繁に改正され,年金支給額の増額,制度の拡充,老齢年金において数度にわたる納付特例制度などの救済規定が設けられた。
障害年金については,昭和41年までの法改正によって,① 障害年金の支給対象となる者の障害の範囲が拡大され,すべての種類の障害が含まれるようになったこと,② 事後重症制度が導入されたこと,昭和51年までの改正により,③ 障害年金の支給停止の措置(障害年金の受給権は,受給権者が法別表に定める程度の障害の状態に該当しなくなった場合においても厚生大臣が定める程度以上の障害の状態にあるときは,3年間は受給権を消滅させずその間年金の支給を停止するとされたこと),④ 廃疾認定日を初診日後3年を経過した日から1年6月を経過した日にしたこと,などの変更が加えられた。
(エ) 昭和60年改正に至る経緯
国民年金法(昭和34年法)の制定に伴い,国民皆年金体制が実現して以来,昭和30年代からの高度経済成長の過程で,国民の生活水準が向上したことなどから,前記(ウ)のとおり給付水準の引上げなど年金制度の充実が図られたが,他方,昭和48年のオイルショック以後経済成長の伸びが鈍化し,高度経済成長期ほどの税収増や社会保険料収入増が見込めなくなった上,昭和59年には世界一の長寿国となるなど本格的な高齢化社会を迎える21世紀に向けて年金制度の抜本的改革の必要性が顕著であった。このような社会情勢の中,国民年金制度の全面的な見直しが行われることになり,その際,① 公的年金制度が3種(厚生年金,共済年金,国民年金)8制度に分立し,制度ごとに設計が異なっていたため,給付・負担両面において制度間格差があり,年金の重複給付の問題が指摘されていたこと,② 職域を中心とした縦割りの制度体系が,産業構造,就業構造の変動により個々の年金制度の財政基盤を不安定にしていたこと,③ 本格的な高齢化社会の到来に伴い,受給者数の増加等により給付費の増大が見込まれることなどが問題となり,これらを解決するためには,全国民を一つの年金制度の中に取り込むような制度体系に改めることが必要とされた(基礎年金制度の導入)。厚生省は,各種公的年金制度共通の基礎年金制度を創設することを中心とする国民年金法の全面的改正に向けて検討を進め,昭和58年11月28日,国民年金審議会及び社会保険審議会に対し,制度改正についての諮問を行った。これを受け,昭和59年1月24日には社会保険審議会会長から,同月26日には国民年金審議会会長から,それぞれ厚生大臣宛てに答申がされた。このうち,国民年金審議会においては,昭和58年12月及び昭和59年1月,複数の委員から,学生無年金障害者問題が存在し,非常に酷な状態になっているとの認識が示され,仮適用にして障害年金の支給対象とすること,徴兵猶予になぞらえた保険料納付の猶予といった具体的解決案が提案され,同審議会会長の答申において,制度改正案を了承するが,今後の検討課題として,「学生の適用のあり方については,引き続き検討をすべきである。」との指摘がされた。昭和59年1月25日,厚生大臣から社会保障制度審議会会長に宛てて,国民年金法等の一部を改正する法律案要綱の諮問が行われた。この諮問に対し,同年2月23日,同審議会会長から厚生大臣に対し,「国民年金法等の一部改正について(答申)」が提出された。その中では,要綱案の内容を大筋では理解するものの,重要な問題点が残されているとの指摘がされ,その一つとして,「20歳未満で障害の状態になったときには障害基礎年金が受給できるのに対し,任意加入しなかった学生がその期間中に障害の状態になったときには障害基礎年金が受給できない。」との指摘がされた。
昭和59年3月,政府は,国民年金法改正案を国会に提出した。国会審議においては,学生無年金の問題が取り上げられ,参考人が学生無年金が生じるのは制度的な欠陥であることを指摘するなどし,また,学生の保険料低額負担や制度上やむを得ず無年金者となった者に対する救済措置の必要等が提案されたが,これらの具体的提案等に対して,政府は,「学生さんですから(中略)保険料の負担能力はない。それで免除にすればいいのではないかということでございますけれども,あらかじめ,当然免除対象者というものも一挙に強制適用にしてしまっていいかどうかという別な議論が審議会の中にも出てまいりまして,ちょっと学生の適用についてはいきなり強制適用というのはまだ問題が多いということになった」,「学生の適用問題につきましては,その保険料の負担,あり方,そういった問題も含めまして,ひとつこの法律,新制度の実施後早急に検討さして,できるだけ早く結論を出させていただきたい」,「三十,四十の学生さんもおられる,こういうことになりますと,なかなか議論としては二十歳前の障害者の方と同じように扱えるかどうかというまた別な議論がある(中略),任意加入の道も開かれておる,決してそれが十分だとは思いません」,「任意加入できるのに任意加入しなかった,その期間に障害という事故が生じた場合に,過去にさかのぼって年金の対象にするということは,素直に言いましてなかなか難しい」,などと答弁するのみであって,無年金障害者の救済,今後の発生防止に向けた具体的対策は一切とられなかった。
(オ) 昭和60年改正
国民年金改正法案は国会で一部修正の上,昭和60年4月に成立した。
昭和60年改正の柱は,① 基礎年金制度の導入と制度の再編成(国民年金を全国民共通の基礎年金とし,二階建年金とする),② 給付と負担の適正化(支給要件の統一,給付の重点化,公平化を図る),③ 女性の年金権の確立(専業主婦が任意加入とされていたのを強制加入の対象とした),④ 無年金者の解消(在外邦人の海外居住期間も基礎年金の資格期間に算入する),⑤ 障害年金の大幅改善,であった。
昭和60年改正により,国民年金制度の強制適用対象者の範囲が拡大され,従来,被用者年金適用者に対する年金給付により保障が及んでいるとして任意加入の対象とされるにとどまっていた被用者年金適用者の配偶者(いわゆる専業主婦)に対しても,夫に依存することなく女性独自の年金権の確立を図るべきであるとの考えから,実質的な保険料負担なしに,第3号被保険者として国民年金の強制加入の対象とされた。
また,昭和60年改正により,従来の国民年金の障害年金は,全制度に共通する障害基礎年金として再構成され,次のような改善がされた。すなわち,まず第1に,無拠出制の障害福祉年金が廃止され,改正時に障害福祉年金の受給者であった者は,障害基礎年金の受給者とする裁定替えがされた。従来の障害福祉年金は,拠出制の障害年金に比べより低額の給付であり,所得制限など支給制限があったが,障害基礎年金への一本化が行われた結果,従来障害福祉年金を受給していた者も,より高額の給付(昭和59年度価格で老齢基礎年金額と同額の月額5万円。障害等級1級の者は,その25パーセント増しで,従前の障害福祉年金の約1.6倍,同2級の者につき,その約2倍。)を受けることができるようになった。ただし,20歳に達する前に初診日のある障害(20歳前障害)に係る障害基礎年金については,比較的高率の国庫負担が行われることや,本人が保険料を納付していないことから,従来の障害福祉年金と同様に公的年金併給制限や所得制限といった支給の調整の仕組みが設けられた。次に,従来の国民年金の障害年金には拠出制年金,福祉年金を通じて子の加給はなかったが,障害年金受給者に18歳未満の子又は20歳未満で1,2級の障害のある子があるときは,第一子及び第二子については昭和59年度価格で月1万5000円,第三子以降については月5000円の加給がつくこととなった。次に,従来,国民年金の障害年金を受給するためには,1年以上の保険料納付済期間が必要とされていたが,初診日の属する月前の被保険者期間のうち保険料納付済期間及び保険料免除期間を合算した期間が3分の2以上であれば被保険者期間の長さを問わず障害基礎年金が支給されることとなった。
しかるに,学生は国民年金制度の強制適用の対象とはされず,従来同様,都道府県知事に申し出て国民年金に任意加入することができるものとされるにとどまった。ただし,保険料の免除を受けることができない点は従前どおりであった。このように学生が強制適用の対象とされなかった理由としては,① 学生は定型的に稼得活動に従事しておらず,学生自身に拠出能力がないこと,② 仮に強制適用の対象とした場合,学生の親が保険料を負担する結果となると考えられるところ,その親においても学費の負担が家計を大きく圧迫しているにもかかわらず,さらに保険料の負担をかけることになるなどの問題点があるなどとの説明がされた。そして,学生無年金者の問題は今後の努力課題とされるにとどまり,衆議院においては,「無年金者の問題については,今後ともさらに制度・運用の両面において検討を加え,無年金者が生ずることのないように努力すること」,参議院においては,「無年金者の問題については,適用業務の強化,免除の趣旨徹底等制度・運用の両面において検討を加え,無年金者が生ずることのないように努力すること」との附帯決議がそれぞれされ,昭和60年改正法附則4条1項において,「国民年金制度における学生の取扱いについては,学生の保険料負担能力等を考慮して,今後検討が加えられ,必要な措置が講ぜられるものとする。」と定められた。さらに,この改正において,それまで強制適用の対象とされていた専修学校等の生徒が,国会等において具体的な審議をされることもなく新たに強制適用の対象から除外され,任意加入の対象とされることとなった。
(カ) 平成元年改正の経緯
年金審議会は,昭和63年11月29日付け国民年金・厚生年金保険制度改正に関する意見において,「現在20歳以上の国民のうち,唯一,国民年金の強制適用の対象から外されている学生については,従来から障害年金を中心に無年金問題が指摘されているところであり,さらに,基礎年金のフル・ペンションの確保を図っていくという観点からも,この際,これを強制適用の対象とすべきである。」との意見を述べた。このような年金審議会の意見を受けた厚生省は,国民年金制度及び厚生年金保険制度の改正について準備を進め,学生期間中の障害について障害基礎年金を保障するため学生を国民年金の被保険者とすることなどを内容とする国民年金制度の改正案をまとめた。この改正案は,平成元年2月3日年金審議会に,同月7日に社会保障制度審議会に諮問された。諮問を受けた年金審議会は,同月27日,「学生に対する国民年金の適用に当たっては,親の保険料負担が過大とならないよう,適切な配慮がなされるべきである。」との意見が附されたが,了承された。また,社会保障制度審議会も,同年3月6日,老齢厚生年金の支給開始年齢につき条件付きながらも了承する旨の答申を行った。これらをもとに,国民年金法改正法案が策定された。
平成元年改正法の国会審議の過程においては,厚生省年金局長が「本来的には,今回の制度の運用というのは,学生期間中に発生する障害の無年金を防止するということが大きなねらい」,「現実に任意加入の制度をとっておりますとなかなか加入は進まない。それが結果的にご指摘のような無年金障害者を生ずる可能性が大きいことにかんがみまして,今回当然適用ということに踏み切った」,それによって「完全な皆年金体制が整備される」などと述べ,堀委員と田中委員が制度の不備・欠陥であったと思うということをそれぞれ述べるなどした。
平成元年12月,平成元年改正法が成立し,平成3年4月1日から20歳以上の学生等も初めて国民年金法の強制適用の対象とする旨が定められたが,従来の任意加入時代の学生無年金障害者の救済は一切されなかった。学生等の保険料の免除に関しては,一般に親元の世帯が学費・生活費の全部又は一部を負担しているのが通常であることから,学生等の保険料負担能力の判定を学生等と親元の世帯を含めた経済単位により行うとの基準に従い,申請により免除を行うこととなった。
(キ) 平成12年改正の経緯
平成元年改正後,20歳以上の学生についても国民年金の強制適用の対象となったが,学生には保険料負担能力がないため,親が保険料を負担することとなった。その結果,親は学費負担,自分の保険料負担のみならず,子供の保険料まで負担しなければならないことになり,世代間の公平に反するだけではなく,親の経済的負担が重すぎるということが問題視されるようになった。そこで,親に保険料負担を強いることも,学生に保険料納付という負担を負わせることもなく,かつ,(学生)無年金障害者の発生を防止するために,平成12年改正によって,親の所得ではなく学生等本人の所得を基準に学生等の保険料納付を猶予するという学生納付特例制度が創設された。これにより,20歳以上の学生等(大学,大学院,短大,高等学校,高等専門学校,専修学校及び各種学校その他の教育施設の一部に在学する者)であって,学生等本人の前年の所得が68万円以下(扶養親族等がいない学生等の場合は収入が約133万円以下。)である場合には,市区町村の国民年金担当窓口又は社会保険事務所に備え付けられている「国民年金保険料学生納付特例申請書」に必要事項を記入の上,同申請書を住民票を登録している市区町村の国民年金担当窓口に届け出て,学生納付特例の承認を受けることにより,学生納付特例期間中は国民年金の保険料納付を猶予されることとなった。この学生納付特例期間は,老齢基礎年金の受給資格要件には算入されるが,年金額には反映されないため,10年以内に保険料を追納すれば,満額の老齢基礎年金を受給できることになった。また,学生等は,学生納付特例の承認を受けると,学生納付特例期間中に障害といった不慮の事態が生じた場合,保険料を納付していなくても満額の障害基礎年金を受給し得ることとなった。
ウ 憲法25条1項,2項違反
国民年金制度は,その創設当初から,国庫負担が導入され,無拠出年金制度を整備し,保険料の免除制度も準備するといった措置がとられていたことからも明らかなとおり,全国民を対象として,老齢,障害,死亡による稼得能力の喪失に対し,あまねく年金給付による所得保障を行い,これにより貧困化を防止して最低限度の文化的生活を保障しようとする,国民皆年金の趣旨に基づいて創設されたものである。
また,障害者が人間の尊厳を確保しつつ人たるに値する内容の生活を社会的に営んでいくことを可能にするためには,少なくとも,次のような条件,すなわち,① 合理的な一定の障害水準に該当する者すべてを包摂し得るものであること,② 障害という要保障事故が長期にわたって継続するという特性にかんがみ,一定の支給要件を満たす者はだれでも人たるに値する一定水準の生活を継続的かつ確実に営むことができる展望を持ち得るものであること,③ 給付の内容は,障害を持つことにより失われた稼得能力及び障害を持つことに伴って生じる特別の出費に対する一定の填補を行なうとともに,社会生活上のあらゆる分野への参加の促進を一定程度保障し得るものであること,の3つの条件を満たし得る制度が基本に据えられる必要がある。年金制度上の障害基礎年金制度及び障害厚生年金,障害者手当制度は,少なくとも上記3条件を満たすことのできる可能性を持った制度である。したがって,他の制度との比較においても,年金制度上の所得保障制度が障害者に対する所得保障制度の基本に据えられるべきである。
しかるに,学生等適用除外規定は,20歳以上の学生の期間中に重度の障害を負った者が障害者の所得保障のための制度である障害年金ないし障害基礎年金を受給することを不能にするものであって,当該障害者の個人の尊厳や生存をすら脅かすものであり,国民年金制度の中核であり,全国民にあまねく年金による所得保障を行おうとする国民皆年金の理念に著しく反するものであるから,憲法25条1項,2項(及び13条)に違反し,少なくとも障害年金に関する限り,無効である。
エ 憲法14条違反
(ア) 社会保障立法については,立法政策によるところが大きい面は否めないとしても,社会保障立法にも種々の態様があり,社会保障立法による多種多様な給付の受給者にとっても,緊急度や権利性の軽重には大きな差があることからすれば,単に社会保障立法であることのみをもって直ちに広範囲な立法裁量を認めるのは相当でなく,このような立法内容の違いや適用結果の緊急度,権利性の違いに応じて,立法府の立法裁量の広狭にも当然に違いがあるというべきである。とりわけ,社会保障立法の中でも個人の生命,生存に直結する事柄については,立法府の裁量の範囲は相対的に狭くなるのであるから,その立法の合憲性判定に際しては,より慎重な態度が必要とされなければならない。以上のことから,① 問題となっている利益の重要性,② 非司法的救済の可能性,③ 少数派の利益かどうか,等の要因によっては,裁判所が立法府の行った立法について憲法適合性判断に踏み込むべき場合もあるというべきである。すなわち,差別を受けたと主張する者の境遇が社会においてだれについても共通して見られることでないこと,つまり,社会における少数者であること,また,不利益な取扱いに対する救済を求めようとして政治過程に働きかけてもそれが反映される機会は少なく司法的救済に頼らざるを得ないこと,救済を求める利益は当人の生活にとって重大であることといった要素が認められる場合には,裁判所は,法律の設けた差別が合理的であるか否か単純に判断するのではなく,上記の要素を考慮に入れて法律の目的や手段が合理的であるか否かに立ち入って審査する手法を用いるべきである。
原告らが障害基礎年金を受ける権利は,原告ら重度障害者の尊厳ある生存を可能とするためには必要不可欠といえる極めて重要な権利であること,原告らは極端な少数派であるために代表民主制の政治過程を通じては決して十分な救済を得ることができないことがこれまでの経緯から明らかであること,にかんがみると,原告らを差別してきた国民年金法の学生等適用除外規定が憲法14条に違反しないかどうかを判断するに当たっては,その立法目的が正当なものであるかどうか,目的達成のための手段が合理的関連性を有しているかどうかについて,立法事実に立ち入って実質的な審査をしなければならない。
(イ) 被告らは,昭和34年法が学生を国民年金制度の適用除外とした理由として,① 学生には定型的に稼得能力がないと考えられたため,その拠出能力が問題となったこと,② 当時,大学で教育を受ける程度の学生というのは,卒業後,被用者年金各制度の適用者になるのが通例であったこと,③ 仮に強制加入としたとすると,卒業後,就職して被用者年金各制度に加入することによって,国民年金制度の対象者から除外されることとなるため,多くの場合は,学生の間に納付した保険料が掛け捨てとなることが予想されたこと,を挙げ,当時の社会的経済的情勢や他制度との調整等の諸般の事情に基づくものであって合理的な理由があり,裁量権の逸脱,濫用はないと主張する。被告らが主張する上記理由は,②及び③の事情を前提とすれば,定型的に稼得能力がない学生に対し保険料納付義務を課すことは適当でないとの判断に基づき,保険料負担能力のない学生に保険料納付義務を課さないことを立法目的とし,そのような立法目的達成の手段として学生を国民年金制度の適用除外としたものであるとの主張であると解される。
しかしながら,厚生省が昭和33年9月24日に発表した「国民年金制度要項第1次案」までは,学生を強制適用の対象とした上で保険料の免除対象とすることが検討されていたところ,法案が国会に提出されるたった2か月足らず前の昭和33年12月20日に出された自由民主党国民年金実施対策特別委員会の「国民年金制度要綱」において学生を任意適用とする制度が採用され,昭和34年法において学生を強制適用の対象から除外し任意加入という形となったものであるが,何ゆえに学生が適用除外とされたのかの理由について記載された資料は一切なく,また,上記①ないし③のいずれもが議論された形跡がない。かえって,昭和34年法の立法経過からすれば,昭和34年法の立法時には,政府及び国会は,上記③については,昭和34年法に基づく保険料徴収開始時期である昭和36年4月1日までに国民年金制度と現行公的年金制度との通算調整が行われて解消するとの認識であったことが明らかであり,上記③の保険料の掛け捨てが発生することを理由に学生が強制適用から除外されたことはあり得ない。また,上記②についても,昭和34年当時,学生が卒業後被用者年金各制度の適用者になるのが通例であるとか,学生は卒業後は稼得活動に従事したときには被用者年金制度に加入することが予定されていたといった事実はなかった。仮に上記事実が立法事実になり得るとしても,被用者年金制度に加入する者が非常に多いとの予想は,通算調整がなければ保険料が掛け捨てになる者が多くなることが予測されるとの予想にほかならず,上記③(保険料の掛け捨て)と同義であるところ,上記のとおり,昭和34年立法時には掛け捨て問題は昭和36年4月までには解消されると考えられていたのであるから,上記③は立法理由とはならない。なお,昭和56年当時は,被用者層が増えてきた傾向が顕著であるから,学校を卒業して被用者年金制度の適用者になる者が多いといえようし,現在では,被用者年金各制度の適用者になるのが通例であるといっても過言ではないが,平成元年改正以降は学生は強制適用の対象となっているから,このことからみても,昭和34年当時学生が卒業後被用者年金制度の適用者になることが学生を「適用除外」する理由ではなかったことが明らかである。これらによれば,結局,昭和34年法が学生を国民年金制度の適用除外とした立法目的は,①の保険料負担能力のない学生に保険料納付義務を課さないことに尽きるというべきであり,それ自体は,正当性を有すると考えられる。
(ウ) しかし,上記立法目的である,保険料負担能力のない学生に保険料納付義務を課さないことを達成するための手段として,学生を国民年金制度の適用除外としたことは,以下に述べるとおり,著しく不合理なものといわなければならない。
すなわち,上記立法目的を達成するための手段としては,① 平成元年改正で実現したとおり,学生を国民年金制度の適用除外とせずに強制加入とした上で,一般とは異なる学生用の保険料免除基準(世帯単位)を設けることによって,保険料負担能力のない学生が保険料の免除を受ける余地を残すことや,② 平成12年改正で実現したとおり,学生納付特例制度を設け,学生本人の所得を基準として,届出により保険料の納付を要しないこととする方法で十分であった。とりわけ,平成12年改正においては,学生に保険料を負担させないという立法目的においては昭和34年法と同じであり,学生に稼得能力がない点及び学生が大学卒業後被用者年金制度に加入する点においても差異がなかったが,学生無年金障害者を発生させないことをも立法趣旨として,学生納付特例制度が創設されたものである。それにもかかわらず,昭和34年法が学生を適用除外としたことにより,定型的に所得がなく保険料負担能力のない学生は,極めて例外的な者を除いて,任意加入することができず,学生期間中に障害者となった場合にも障害年金を受給することができないこととなった。このように,保険料負担能力のない者が障害年金を受給するみちを閉ざすことは,国民年金制度の中核であり,全国民にあまねく年金による所得保障を行おうとする国民皆年金の理念に著しく反するものである。昭和34年法の立法経過に照らしても,昭和34年法が学生を国民年金制度の適用除外としたことは極めて唐突であり,慎重な熟慮に基づくものではないことが強く疑われる。昭和34年法の国会審議において,定型的に保険料負担能力のない学生に対していかにすれば障害年金を保障することができるかという問題について検討した形跡も全く認めることができない。
被告らは,昭和34年法は学生を国民年金制度の適用除外としたが,他方で任意加入のみちを開いていたので,何ら問題はない旨主張する。しかし,昭和34年法が学生を適用除外とした結果,毎年大量の無年金障害者が発生することは,次に述べるとおり,客観的に明らかであった。すなわち,昭和34年法の国会審議において内閣が審議資料として提出した資料によれば,内閣は,全体の3分の2に当たる学生は任意加入しないことを見込んでいたことになるところ(この見込み自体が大きな誤りであったことは,その後の経過により,実際の加入割合が約1.25パーセントにすぎなかったことにより明白となった。),当時の重度障害者(廃疾)となる者の見込み人数からすれば,昭和36年4月1日における20歳以上の学生の数として内閣が見積もった学生53万人のうち学生期間中に障害者となると見込まれる人数(ただし,学生における男女の構成比が等しいものと仮定した場合)は381人となり,そのうち254人が国民年金制度に任意加入せず,障害年金を受給することができない無年金障害者となる。このように,昭和34年法は,学生を国民年金制度の適用除外とすることにより,定型的に稼得能力がなく保険料を負担することのできない学生の中に,毎年数百人に上る大量の無年金障害者が発生することを予定するものということができる。
以上のとおり,昭和34年法は,保険料負担能力のない学生に保険料納付義務を課さないことを立法目的として,この立法目的を達成するための手段として学生を国民年金制度の適用除外としたものであるが,そのために毎年数百名にも上る年金受給資格のない重度障害者が生み出される結果となったことは,上記立法目的の達成のためには何らの必要性もなく,およそ関連性がないばかりか,かえって,不幸にして重度障害者となった学生に対し同人らが障害年金を受給するみちを閉ざすことによって学生を一生涯にわたり経済的窮地に追い込むことになるものであって,これは,保険料納付義務を課さないことによって定型的に稼得能力のない学生を保護しようとした立法目的に真っ向から反するものであり,何らの合理性も認められず,著しく不合理な差別であるといわなければならない。
そして,このような学生を国民年金制度の適用除外とした昭和34年法の著しい不合理性は,任意加入制度の存在によって何ら解消されるものではない。すなわち,前記のとおり,学生を適用除外とした立法目的が,定型的に稼得能力がなく保険料負担能力のない学生に保険料納付義務を課さないことであることと,保険料免除制度のない任意加入を学生に期待することとは,明らかに矛盾する背理である。のみならず,実際上も,国による任意加入制度についての学生に対する周知徹底は全く不十分であり,昭和62年時点における任意加入者の割合はわずかに1.25パーセントにすぎなかったこと等の事実からしても,学生に関しては任意加入制度がほとんど全く機能していなかったことはだれの目にも明らかである。このような欠陥制度の存在によって,学生を国民年金制度の適用除外とした昭和34年法の著しい不合理性が治癒されるものではないことは論を待たない。また,学生等適用除外規定を削除した平成元年改正は,学生に障害年金を保障するために行われたのであるが,このことはとりもなおさず,任意加入のみちによっては学生に障害年金が保障されなかったことを意味するのである。
(エ) 以上述べたことから,学生を国民年金制度の適用除外とする昭和34年法は,20歳以上の者のうち学生と学生でない者との間において著しく不合理な差別的取扱いを行うものであり,憲法14条に違反し無効である。
(オ) 学生等適用除外規定を存置していた昭和60年改正後の国民年金法(平成元年改正前のもの)も,同様に,憲法14条に違反し無効である。
(カ) また,国民年金制度の学生への適用を除外した学生等適用除外規定は,昭和60年改正前の国民年金法57条及び同改正後の国民年金法40条の4等の代替措置を伴わないこととあいまって,憲法14条に違反し,無効である。
すなわち,国民年金制度は,20歳以上の学生と同じように20歳未満の学生については稼得能力がないとの理由で被保険者の枠から外している。昭和34年法制定当時,大部分の国民がせいぜい高等学校卒業程度で所得活動に入ると考えられたこと,言い換えれば,20歳未満では所得がなく保険料の負担能力がないと考えられたことから,国民年金制度の枠から外され,その代わり,保険料負担能力がなく制度に加入することができなかった間に障害を負った場合には,無拠出制の障害福祉年金を支給することとされたものであり,それが昭和60年改正を経て無拠出制の障害基礎年金に引き継がれたものである。そして,20歳未満で障害を受けた者に対して障害福祉年金を支給する理由としては,① 若年において重度の障害にあることは,通常その障害が回復することは極めて困難であるから,稼得能力はほとんど永久的に奪われていると考えるのが常識的であり,他方,年齢的にみて親の扶養を受ける程度をできるだけ少なくしなければならず,この意味から所得保障の必要度はこのような者にこそ高いのであり,しかも,このような事例は恒常的に発生するものであること,② 拠出制年金のみとすると,保険料を支払うことができる者だけが3分の1の国庫負担の援助が受けられるという不公平な結果となること,③ 無拠出制年金を認めず公的扶助制度によるものとする制度とした場合,扶助の水準は最低生活にくぎ付けされることになってしまうこと,にあるとされている。しかるところ,これらの理由はすべて20歳以上の学生にもあてはまる。しかるに,学生等適用除外規定により,20歳以上の学生に対しては任意加入をしていない限り障害年金を支給しないとする取扱いがされていたのであり,同じように稼得能力,すなわち保険料負担能力がないことを理由に国民年金制度への加入を認めなかった20歳未満の者に対しては無拠出制の障害福祉年金の支給をするという取扱いとの間に歴然たる格差が存していた。しかも,この格差は,昭和60年改正法が障害福祉年金を障害基礎年金に裁定替えをした(いわば昇格させた)ことによって,さらに広がり,現在では,1級の障害者であれば年間約100万円の年金の支給を受けられる者と,全く年金を受けられない者との格差となっているのであり,これについては到底合理的な理由はない。したがって,平成元年改正前の国民年金法の学生等適用除外規定が昭和60年改正前の国民年金法57条等の代替措置を伴わないこととあいまって憲法14条に違反し無効であることは明らかである。
オ 憲法13条,31条違反
ある制度について,本人の自由意思に基づく加入・不加入の選択が保障されているというためには,加入した場合と加入しない場合の双方につきメリットとデメリットを明確に理解する機会が与えられていることが不可欠の前提条件である。これを20歳以上の学生等の任意加入制度に即していえば,① 任意加入しなくても大学卒業後に厚生年金,共済年金あるいは国民年金の被保険者になれば老齢年金を受給するために必要な加入期間を満たすことができる一方で,在学中に任意加入すれば保険料を支払う義務を負うこと,② 任意加入していない者が傷病により障害を負った場合は,大学卒業後に国民年金の被保険者となっても一生涯障害年金を受給することはできないこと,について個々の学生等が明確に理解していること,少なくとも被告国がこれらのことを学生等が理解することができるように十分な説明をしたこと(個別的教示)が必要である。ところが,被告国はこの個別的教示を全く行わなかったのみならず,任意加入制度が存在することすらほとんど広報せず,かえって,適用を除外された主婦や学生等は加入しなくてよいとする広報や窓口指導がされた。その結果,学生等で任意加入をする者は極めて例外にしかすぎず,任意加入はほとんど実質を持たなかった。
原告らには国民年金に任意加入する機会があったのに自らの選択により加入しなかったのであるから,そのことによる不利益すなわち障害年金を受給することができないことは当然のペナルティーであるとの見解があるとしても,障害年金制度が憲法25条の保障する生存権を具体化するものであることにかんがみれば,そのことが正当化されるためには,憲法13条及び31条に基づき,当該学生等に対し適正手続すなわち告知及び聴聞の機会が保障されていることが必要であるところ,告知及び聴聞の機会は一切保障されず,そのような機会を保障する運用もされていなかった。したがって,平成元年改正前の国民年金法が20歳以上の学生等が任意加入しなかったことに対するペナルティーとして障害年金の受給を許さないものとしていることは,適正手続の保障を欠くものであり,憲法13条及び31条に違反し無効である。
(被告らの主張)
ア 国民年金法の創設とその改正経緯
(ア) 国民年金法の制定に至る経緯
我が国の戦後の社会保障制度は,憲法25条の制定に始まり,生活保護法,失業保険法,労働者災害補償保険法,児童福祉法,身体障害者福祉法等の諸法令の制定や,昭和29年に行われた厚生年金保険に関する改革など,個々の諸制度の整備が行われたが,本格的な社会保障制度という名に値する改革は昭和30年代に入ってからであった。すなわち,戦後における家族制度の変革に伴う核家族化現象や,人口高齢化に基づく老後の生活不安の増大を背景に,全国民を包含する強力な老後保障の必要性が国民の要望となって現れるとともに,我が国の経済も,戦後の混乱期を脱して発展したことによって,やや長期の見通しに立った施策を現実に考慮し得る程度に財政力が回復したのである(それ以前においては,いまだ戦後の国民経済の回復・発展が不十分であって,回復混乱期に中心的役割を果たした生活保護や,戦災孤児,浮浪児の保護等の「救貧」政策が精一杯であり,一般の国民が疾病や老齢などにより貧困状態に陥ることを防ぐといった「防貧」政策を現実の問題として論ずることができなかったのである。)。そして,広く国民一般を対象とする年金制度に関する議論が行われることになったところ,当時存在した年金制度(厚生年金保険法に基づく厚生年金保険,船員保険法に基づく船員保険の年金保険部門,国家公務員共済組合法(昭和33年)に基づく国家公務員共済組合の長期給付部門,市町村職員共済組合法(昭和29年)に基づく市町村職員共済組合の長期給付部門,公共企業体職員等共済組合法(昭和31年)に基づく公共企業体職員等共済組合の長期給付部門,私立学校教職員共済組合法(昭和28年)に基づく私立学校教職員共済組合の長期給付部門,農林漁業団体職員共済組合法(昭和33年)に基づく農林漁業団体職員共済組合の長期給付部門)の適用を受けている者は,公務員や勤労者などの被用者であり,その数は全就業人口の一部(約29パーセント)にすぎず,大部分の国民は,年金制度の外に置かれている状況にあったことから,まずもって,これらの者(被用者以外の者)を年金制度の下に置き,年金的保護を及ぼすことが必要とされた。このような状況の下において,厚生省は,昭和33年9月に,制度創設に向けた検討を進めていた社会保障制度審議会及び国民年金委員の考え方をもとに,国民年金制度要綱第1次案を発表し(なお,同案においては,拠出制の障害年金の支給要件である保険料納付期間が最短で事故発生前まで引き続いて2年間とされていたため,20歳から加入した者が22歳までに障害を受けたときは,たとい保険料の滞納がない場合であっても,この要件を満たすことができないことに配慮し,22歳になるまでに障害になったため拠出制の障害年金を受けられなかったときに無拠出障害年金を給付することを定めたものにすぎず,被保険者ではない22歳までの学生について一般的に無拠出制の障害年金を給付することを定めたものではない。),翌昭和34年1月に法制定について社会保障制度審議会に諮問し,その答申を得て同年2月に国会に提出し,同年4月16日,国民年金法(昭和34年法律第141号。昭和34年法)が公布された。これによって,無拠出の福祉年金が同年11月から,拠出制国民年金が昭和36年4月からそれぞれ実施された。
(イ) 昭和34年法
昭和34年法の制定により,国民年金制度は,被用者年金制度と同様に,社会保険制度として組み立てられ,一定の要件に該当する者を被保険者とし,被保険者は保険料を拠出する義務を負うが,老齢,障害,死亡といった保険事故が発生した場合に,保険料の納付状況に基づいて年金給付を受けられるという仕組みが採用された。国民年金制度をこのような拠出制の社会保険方式とすることについては,国民年金法制定に際して,国民的な議論がされた結果,① 老齢のようにだれでもいつかは到来するに違いない事態についてはもちろんのこと,身体障害や夫の死亡といった事態に対しても,あらかじめ稼得能力のあるうちに,自らの力でできるだけの備えをすることは,生活態度として当然であり,社会経済生活はこのような自己責任の原則の下に成り立っているのであるから,拠出制を基本とすることが,国民年金制度の健全な発展にとって不可欠であること,② 無拠出制を基本とした場合,その財源は租税等国の一般財源に求めざるを得ない関係上,財政支出の急激な膨張は避けられず,将来老齢人口の急激な増加が予想される中,将来の国民に過重な負担を負わせる結果となること,③ 無拠出制によると,その支出を賄うための収入がその時々の財政及び経済の諸事情の影響を受けやすく,年金制度が本来有すべき安定性,確実性が害されることなどの理由から,導き出された結論であって,国民年金制度を本格的な年金制度として発展させようとするならば,拠出制の保険原理に基づくことが最善であると判断されたものである。したがって,いわゆる「国民皆年金」とは,すべての国民が加入することのできる年金保険制度の整備を意味するもの,すなわち,全国民が制度に加入し保険料納付義務を果たせば年金給付を受けられるということを指すものであって,全国民に無条件で年金給付がされることを意味するものではない。
昭和34年法は,日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の日本国民を強制加入の対象者とした(7条1項)。これは,年金制度が所得の喪失に対する填補をその本質とするところ,被用者の場合は,雇用関係という客観的な基準で適用を整理することができるのに対して,就労や所得の態様が一様ではない自営業者等については,年齢をもって稼得活動に従事している期間を区分して適用を整理するという方式によらざるを得なかったことによるものである。20歳という年齢については,国民年金制度の対象となる大部分の国民が,高等学校卒業程度で稼得活動に入っているという実情が考慮されたからである(昭和34年当時の大学進学率は10パーセント程度であった。)。これに対し,被用者年金適用者(昭和34年法7条2項1号)については,国民年金制度の創設に当たって,被用者年金制度加入者以外の者のみを対象とするのか,被用者年金制度に加入している者も含めて対象とするのか(その場合には,被用者年金制度の適用者を二重加入させるのか,先行する被用者年金制度を廃止統合するのか),議論のあったところ,この問題は,国民年金制度と現行制度,あるいは現行制度相互間の期間通算調整をどのように行うのかという困難な問題と絡んでおり,結論として,差し当たり被用者年金制度とは別個の新制度を立ち上げ,将来的に新制度と現行制度との調整を図っていくこととされ,被用者年金適用者を強制加入の対象から除外するとともに,7条3項において「前項各号に掲げる者に対する将来にわたるこの法律の適用関係については,国民年金制度と被用者年金各法による年金制度及びその他の公的年金制度との関連を考慮して,すみやかに検討が加えられたうえ,別に法律をもって処理されるべきものとする。」と規定することにより,先行する被用者年金制度と国民年金制度との関連調整について速やかに具体的方策を講ずることが必要であることが法文上明らかにされた。また,被用者年金加入者の配偶者(7条2項6号)については,妻は当時は稼得活動に従事していないことが通常であったことから,その拠出能力が問題となっただけでなく,被用者年金制度の被保険者に扶養される配偶者については,被用者年金加入者に対する年金給付により一応の保障が及んでいると考えられ,重ねて国民年金制度で保障すべきであるのか,保障するとした場合には前記のような年金制度間の調整問題をどのように解決するのかなど,多数の懸案事項の検討が不可避であったが,被用者年金加入者本人とは異なり,被用者年金制度において必ずしも十分な保障であるとはいい難いこと,また,制度によっては遺族給付の支給要件が厳格であるところもあることから,被用者年金加入者の配偶者を強制加入の対象から除外するとともに,国民年金制度に任意加入することができるものとされた(昭和34年法附則6条1項)。さらに,学生(7条2項7号)については,学生には定型的に稼得能力がないと考えられたため,その拠出能力が問題となったこと,当時,大学で教育を受ける程度の学生というのは,卒業後,被用者年金各制度の適用者になるのが通例であったこと,また,仮に強制加入としたとすると,卒業後,就職して被用者年金制度に加入することによって,国民年金制度の対象者から除外されることとなるため,多くの場合は,学生の間に納付した保険料が掛け捨てとなることが予想されたことから,強制加入対象者とはしないこととされ(なお,夜間部の大学生については,既に社会に出て働いている者であるから,これらの者で被用者年金制度の適用を受けていないものについては国民年金制度の適用を受けるべきものとされた(昭和34年法7条2項7号ただし書)。),将来,自営業に就く者もある等の事情を考慮し,本人が希望する場合には任意加入することができるものとされた(昭和34年法附則6条1項)。
他方で,拠出制の保険制度によってカバーされない人々の救済は,生活保護等の公的扶助制度によるべきとする意見,経過的措置としての無拠出制の給付(制度発足当時既に老齢となっている者,拠出能力のない障害者や母子世帯に限って無拠出制の支給を行う。)のみを認めるとする意見など,議論のあったところであるが,① 戦争によって蓄財や扶養者を亡くした当時の老齢者,障害者ないしは母子世帯には年金的保護を及ぼす必要性が高く,これを除外すれば国民年金制度創設の意義も失われかねない情勢にあったこと,② それらの者に対する年金支給によって結果的に国民年金制度をむらなく普及させる効果が期待できること,③ 保険制度とはいっても3分の1の国庫負担がされていることからすると,保険料を支払うことができる者だけが,その援助を受けられるという不公平な結果となること,④ 公的扶助制度,すなわち,社会扶助方式によるとすると,扶助の水準は最低生活水準にくぎ付けされることになってしまうことなどの理由から,経過的,補完的に限定的な位置付けにおいて,全額租税財源による福祉年金が創設された。したがって,無拠出制の福祉年金は,全額国庫負担で賄われる,いわば公的扶助の色彩の濃い制度であって,そのような無拠出制の福祉年金を設立したのは,上記①,②のような社会保障推進のための政策的な配慮に基づくものである。その意味において,福祉年金は,国民年金制度の経過的,補完的な位置付けにとどまるものであって,仮に,このような全額租税財源による福祉年金を際限なく拡張するとすると,拠出制の保険原理を基に成り立つ国民年金制度の根幹を揺るがしかねないこととなる(一般被保険者の保険料支払意欲を削ぐことになる。)。福祉年金は,その支給対象者が国民年金の被保険者たる資格を有していたか否かにより,補完的福祉年金(貧困のために保険料の免除を受け,そのため拠出制の年金給付に結び付かなくなった者や,保険事故発生時に制度上加入することが不可能であったため,拠出制の年金給付を受けられない者に対し拠出制を補完する意味で支給される年金)と,経過的福祉年金(制度発足時において既に老齢等の事故が生じているため保険料の拠出ができない者に対する経過的な年金)とに区分され,さらに,その支給事由たる事故の種類によって,老齢福祉年金,障害福祉年金及び母子福祉年金の3つにそれぞれ区分された。このうち,障害福祉年金は,① 制度に加入してまだ日が浅いこと,保険料の免除を受けたことにより,拠出制の障害年金の支給要件を満たすことはできないが,保険料の滞納をしていない等の所定の要件を満たした者が,日常生活の用を弁ずることが不能な程度の障害の状態にあるとき,② 20歳に達する前に疾病にかかり又は負傷した者が①に掲げる程度の障害の状態にあるとき,③ 昭和34年11月1日前に疾病にかかり又は負傷した者が同日若しくは同日以後において①に掲げる程度の障害の状態にあるとき,又は同日以後昭和36年4月1日前に疾病にかかり又は負傷した者が同程度の障害の状態にあるとき,又は昭和36年4月1日において50歳を超える者が同日以後疾病にかかり又は負傷し同程度の障害の状態にあるとき,に支給するものとされた。上記①及び②が補完的障害福祉年金であり,③が経過的障害福祉年金である。このうち,②の障害福祉年金は,20歳に到達する前に障害を負った者は,保険事故が起こった時点では被保険者としての資格を有さず,あらかじめ保険料を納付して保険事故に備えることができないが,重度の障害であれば,稼得能力を生涯にわたって喪失しているというべきであるため,社会福祉の見地からこれを救済しようとしたものである。
(ウ) 昭和60年改正
国民年金法については,制定後,社会経済情勢の変動に対応すべく,大小の改正が多数行われているが,その主なものは,財政再計算(死亡率等の保険事業運営に用いる基礎数値を再検討し,保険料等の再吟味をすることをいう。)に伴う改正であった。このように,度重なる年金制度の改正において,給付水準が改善され,年金給付は次第に充実していったが,他方では,職種等により各制度が分立していたため,産業構造・就業構造の変化等により,制度ごとに,被保険者数と受給者数の比率が大きく異なり,年金受給者に比して被保険者数が少なく,財政的に不安定になる例が生じていることが大きな課題となっていた。また,来たるべき本格的な高齢化社会の到来に伴い,受給者数の増加等により給付費の増大が見込まれることに照らし,これに対する対策が急がれることとなり,年金制度の抜本的な改革の必要性が認識されることとなった。そこで,公的年金制度を長期にわたり安定して運営することができる制度とするため,各年金制度を通じた大改正を行ったのが,昭和60年改正であった。したがって,同改正のねらいは,大きく次の2点であった。すなわち,第1に,職種等により分立していた我が国の公的年金制度を一つの年金制度とすることにより,産業構造や就労構造の変化に左右されない安定した仕組みを確立し,年金の重複給付の問題を合理的に調整することである。すなわち,当時,公的年金制度は,自営業者,農業者等を対象とする国民年金のほか,民間被用者を対象とする厚生年金,船員保険,公務員等を対象とする共済組合等に分立しており,このような制度の分立が,各制度の成熟化と産業構造・就業構造の変化等に伴い,個々の年金制度の財政基盤を不安定なものとしており,各制度がそれぞれ独自に給付と負担の設計を行っていたため,結果的に制度ごとに支給要件,給付内容,負担の程度などに違いが存在するばかりか,年金の制度間の併給調整の問題が未解決であったことから,これらの抜本的な解決が必要とされたのである。このための解決策としては,全国民共通の基礎年金制度を導入することとした。第2は,今後の年金の給付と負担の見直しにより,公的年金制度を公平かつ長期的に安定したものとすることである。すなわち,将来,加入年数の伸びによって,老齢者の受ける年金とそれを負担する現役勤労者の賃金とのバランスが崩れ,高い年金水準を可能にするには極めて高い保険料負担を余儀なくされることが強く懸念される状況となっていたため,今後の年金の給付と負担の見直しが喫緊の課題となっていたのである。このための解決策としては,国民年金,厚生年金保険を通じて,施行日(昭和61年4月1日)において60歳未満の者(今後の受給者)について,生年月日別にいわゆる単価や乗率を徐々に逓減させていくことにより,以後15年から20年の経過期間をかけて,年金給付の水準を適正化することとした。この結果,将来の保険料負担は従前の制度のままの場合と比べて大幅に軽減される見込みとなった。
昭和60年改正の概要は,次のとおりである。
第1に,基礎年金制度の導入(制度体系の再構成)が挙げられる。昭和60年改正は,社会保険方式を維持した上で,国民共通の基礎年金を導入することとした。すなわち,国民年金の適用を厚生年金保険の被保険者及びその配偶者にも拡大して,基礎年金を支給する制度とし,厚生年金保険は,原則として基礎年金に上乗せする報酬比例の年金を支給する制度に改められ,いわゆる2階建ての体系に再編成された。この結果,基礎年金の部分については,全国民に共通する給付となり,公平性が確保されるとともに,この給付を各年金制度からの拠出金を通じて全被保険者が支えることにより産業構造や就労構造の変化に左右されない安定した仕組みが確立されることとなり,同時に,基礎年金を通じて1人1年金の原則が確立されるとともに,従来問題とされてきた重複給付の整理が可能になった。
第2に,配偶者の年金権の確立が挙げられる。それまでの被用者年金制度においては,被用者たる夫と職を持たず家事に専念する妻とを給付の標準的な単位とし,これを夫への年金で補うという,いわゆる世帯単位の給付設計が採られていたのに対し,国民年金制度においては,夫と妻がそれぞれ独立に被保険者となり,独自に年金を受給するといういわゆる個人単位の給付設計が採られていた。しかしながら,① 被用者の無業の妻については,国民年金に任意に加入することができたが,任意加入しなかった者については,障害となったり,離婚したりした場合に年金保障に欠ける場合があったこと,② 被用者世帯のうち,単身世帯と夫婦世帯の給付水準の適切な分化が図られる必要があったことが問題となった。そこで,昭和60年改正では,被用者年金制度の被保険者に扶養される配偶者を第3号被保険者として,妻自身の基礎年金給付を保障した(同改正後の国民年金法7条1項3号)。これは,基礎年金制度の導入によって,従前夫に支給されていた定額部分及び加給年金を夫と妻の各基礎年金とし,報酬比例部分を夫の報酬比例年金とすることにより実現したものである。このため,被用者の無業の妻が別個に保険料を負担しないで障害者となったときには自らの障害基礎年金が支給され,離婚した場合であっても自らの老齢基礎年金が支給されることとなり,女性独自の年金権が確立された。
第3に,従前の障害福祉年金に関する改正が挙げられる。従来の障害福祉年金は,全額国庫負担となっていたこともあり,拠出制の障害年金の支給額よりも低額の年金が支給されていた。昭和60年改正においては,全国民を対象とする基礎年金を導入するに際し,これらの者についても,全国民で支える基礎年金の考え方を生かし障害基礎年金として支給することとし,障害福祉年金を廃止し,全国民を対象とする障害基礎年金に一本化した。これにより,これらの者についての年金水準が大幅に改善された(なお,この場合,障害者自身の保険料拠出がないこと,特別に高率の国庫負担を行っていることから,一定の所得制限が存する。)。その結果,20歳に達する前に初診日のある傷病により障害を負った者は,障害認定日後に20歳になった場合は20歳の時点において,障害認定日前に20歳になった場合は障害認定日において,それぞれ障害等級1,2級に該当する程度の障害の状態にあるときは,一定の所得制限(年間360万円未満)の下で,障害基礎年金の支給を受けることとなった(昭和60年改正後の国民年金法30条の4)。同時に,従来の拠出制の障害年金においては,各制度ごとにあらかじめ一定の加入期間があることを支給の要件としていたが,これを,加入直後であっても被保険者期間中に3分の1以上の保険料の滞納がなければ,障害基礎年金を支給することとした。
上記改正の結果,① 基礎年金制度の導入によって制度間の通算問題が解決され,国内に居住する20歳以上60歳未満の者については,学生を除いて,すべて強制加入の対象となるとともに,20歳から60歳までの40年間加入することを前提に満額の老齢基礎年金の支給を受けられるようになったが,大学卒業後の加入では満額の老齢基礎年金が受けられなくなること,② 20歳未満で障害者となった者については,上記のように,全員20歳から障害基礎年金の支給を受けられるようになったところ,20歳以上の学生は,国民年金に任意加入することができることから,これと同様の取扱いは困難であるものの,実際問題として,この間に任意加入していない場合には,無年金となり,結果のみをみれば両者に較差が生じること,③ 進学率も発足当時に比べ上昇していることから,20歳以上の学生を強制加入の対象とすることが検討された。しかしながら,学生は定型的に稼得活動に従事しておらず,学生自身には拠出能力がないこと,そのため強制加入の対象とした場合には,学生の親が保険料を負担する結果となると考えられるところ,その親においても学費の負担が家計を大きく圧迫しているにもかかわらず,さらに,保険料の負担をかけることになることなどの問題があることを前提として,いまだ強制加入の対象とすることが適切とは断じ難いとされて,引き続き強制加入の対象外とされ(昭和60年改正後の国民年金法7条1項1号イ),任意加入をすることができることとされた(同法附則5条1項1号)。
これを敷えんすると,昭和60年改正が審議された国会では,国民年金の被保険者でないため障害年金を受けることのできないいわゆる無年金障害者の存在が指摘され,20歳以上の学生についても,保険料を低額にして強制適用の対象とすべきではないかとの意見も出された。しかしながら,学生は定型的にみて稼得活動に従事しておらず,学生自身には保険料負担能力が乏しいものの,保険料の免除基準は本人及び世帯主の所得を基準としていたため,学生が親と同居する場合には保険料免除の対象とならず,結局は,学生の親が保険料を負担する結果となり,学費の負担が家計を大きく圧迫している親世代に,更なる保険料の負担をかけることになることなどの問題をいかに解決するかが重い課題とされていたのであり,この問題の解決と切り離して適用対象とすること自体が喫緊の課題とされていたわけではない。同国会においては,政府委員が,学生には保険料の負担能力はなく,これを免除すればよいとの考え方については,当然免除の対象となる者をあらかじめ一挙に強制適用の対象としてよいかどうか議論がある旨の説明をしており,当然免除を前提とした制度設計に問題があることが指摘された。そして,結局,学生については,従来どおり,強制適用の対象とせず,任意加入の対象とするにとどめ,昭和60年改正法附則4条において,国民年金制度における学生の取扱いについては,学生の保険料負担能力等を考慮して,今後検討が加えられ,必要な措置が講ぜられるものとすると定められたものである。
(エ) 平成元年改正
平成元年改正は,我が国の高齢化が世界に例をみない速度で進行し,老後の問題が国民の大きな関心事となるとともに,老後生活の支柱としての公的年金制度に寄せる国民の期待が極めて大きなものになっているという状況にかんがみ,必要な年金額の確保(保険料の引上げ等),完全自動物価スライド制の導入,在職老齢年金の改善等各種の給付改善及び保険料(率)の改定を行うとともに,20歳以上の学生を国民年金の第1号被保険者として強制加入の対象とすること並びに国民年金基金制度及び厚生年金基金制度の改善(国民年金基金制度の整備等)を行うことにより,国民年金・厚生年金保険制度の改善・充実を図ることにしたものである。このうち,学生等については,日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者であって大学,専修学校の学生等であるものについて,平成3年4月1日より国民年金の第1号被保険者とすることとし(平成元年改正後の国民年金法7条1項1号),保険料負担の問題については,学生以外の一般の者に適用される免除基準とは異なる「学生に係る保険料免除基準」(平成3年1月30日庁保発第2号)による免除基準を新たに設けることとした。すなわち,上記学生の別建て保険料免除基準では,学生が一般に稼得活動には従事しておらず親元に扶養されており,親元と経済単位を一にしていることに着目し,学生の保険料負担能力を親元世帯の所得で判断することとした上で,親元の世帯においては,既に学生を扶養するため学費を始め相当程度の経済的負担をしていることを考慮して,免除の基準となる所得額を他と比べて高額とすることによって,親の負担が過大なものとならないよう配慮した。
これを敷えんすると,平成元年改正の国会審議の際にもなお,学生を強制適用の対象とすることについては,定型的にみて稼得活動に従事せず,所得のない者に保険料納付義務を負わせるべきではないこと,強制適用とした場合は親に保険料を負担させる結果となること,所得の把握も困難であり,免除の適正な取扱いをすることも困難であること,多くの未納者が生まれるおそれもあること,強制適用とした上保険料を免除した場合,学生と同世代で稼得活動に従事し保険料を負担している者との公平を欠くことなどの問題点を指摘する意見も存在した。そして,学生の保険料負担の問題については,負担が過大なものとならないよう保険料の免除基準につき適切な配慮を行うべき旨の附帯決議がされ,学生については,上記「学生に係る保険料免除基準」が新たに設けられ,学生の保険料負担能力を親元世帯の所得で判断することとしたものである。
(オ) 平成6年改正(平成6年11月9日法律第95号)
平成6年改正は,本格的な高齢・少子社会の到来を目前に控え,国民の生活設計の支柱である公的年金制度が引き続きその役割を十分に果たしていけるよう,60歳台前半の老齢厚生年金の見直し,給付と負担のバランスの確保等,制度全般にわたり必要な制度改正を行ったものである。
平成6年改正のうち,障害年金の改善に関する改正は,次のとおりである。すなわち,20歳前障害に係る障害基礎年金の本人の所得制限について,改正前においては,年収483万2000円(平成6年度・2人世帯)を超えると全額支給停止とされていたが,これを改め,年収483万2000円を超えても年収600万円(2人世帯)以下の場合には,年金額の2分の1相当の支給を停止とし,年収600万円を超える場合に全額支給停止とする2段階制を採った(同改正後の国民年金法36条の3)。これは障害者の就業意欲に配慮する趣旨である。また,従来は,障害年金受給者の障害の程度が軽くなって,3年以上3級程度の障害等級に該当しない場合には,年金が失権となっていたが,これを支給停止として,再び障害が悪化した場合には年金が支給されるようにした(同法35条)。これは,内部障害等ではその後障害が悪化するケースもあることを考慮したものである。さらに,昭和61年4月以前(昭和60年改正法の施行前)に制度に加入し,保険料拠出を行っていた者が,障害の状態となったが,当時の各制度の支給要件には該当しないために,障害年金を受給することができないとされる者(例えば,昭和60年改正前は厚生年金保険では6か月の加入を支給要件としていたため,就職して加入直後に障害の状態となった者には障害年金が支給されないこととなる。)について,現在の支給要件(初診日において年金制度に加入しており,初診日の属する月の前々月までの加入期間に3分の1以上の滞納がないこと)に該当する場合には,障害基礎年金を支給することとした。なお,この場合,20歳前障害に係る障害基礎年金と同様の所得制限が設けられている(平成6年改正法附則6条)。また,昭和60年改正において,障害基礎年金の支給に関する特例的な経過措置として,平成7年度までは初診日前の直近1年間に滞納がない場合には保険料納付要件を満たしているものとしていたが,この経過措置の期間を平成17年度まで延長することとした(昭和60年改正法附則20条)。
(カ) 平成12年改正
平成12年の改正においては,21世紀の年金制度のあり方について,制度全体にわたって見直しを行い,長期的に安定した信頼される年金制度を維持していくことが求められているという認識の下,活力ある長寿社会の実現に資すること,社会連帯と自助努力の適切な均衡を図ること,世代間・世代内の公平性を確保することの3つの項目を具体的な目標として掲げた。
平成12年改正のうち,保険料免除制度に関する改正点は,次のとおりである。すなわち,まず,学生の納付特例制度を創設し(90条の2。なお,平成12年改正法附則2条の規定により,平成14年4月1日より90条の3となる。),国民年金の第1号被保険者である学生について,従前の親元の所得を基準とする保険料免除基準を改め,学生本人の所得が一定以下の場合,申請に基づいて,国民年金の保険料の納付を要しないこととした。ただし,10年間は保険料を追納することができるものとされている。なお,この特例期間(学生の期間)に係る保険料については,上記10年以内に保険料の追納がされなかった場合は,老齢基礎年金の額の計算には反映させないが,年金の受給資格期間としては反映されるものである。次に,保険料半額免除制度を創設し(平成12年改正法附則2条の規定により,平成14年4月1日より90条の2となる。),比較的低所得の被保険者の経済状況に配慮して,保険料の半額のみを免除する制度を導入した。なお,保険料半額免除期間は,年金の受給資格期間には算入されるが,老齢基礎年金の額の算定上は保険料納付済期間の3分の2と評価されることになる。
このうち,学生の納付特例制度について敷えんすると,学生については,平成元年改正によって平成3年4月に国民年金制度の強制適用の対象となり,親元の所得を基準とする保険料免除制度が設けられていたが,通常は無収入と想定される学生について,国民年金の保険料の拠出を求める結果,親に保険料納付を頼る事態を招いていること,子供の老後のために親が保険料を支払うことは,世代間扶養を基本理念とする公的年金制度の趣旨にそぐわないこと,学費や生活費の仕送りに加えて親に保険料を納付させることは,親に過大な負担を強いることなどの理由から,学生については,卒業後に保険料を納付させ,親が子供の保険料を負担する必要がなくなる制度を導入すべきであると批判されていた。そこで,平成12年改正により,従前の免除制度から納付を猶予する納付特例制度に改められ,これにより,学生は,所得が一定以下の場合,申請により,保険料の納付を要しないこととされ,満額の老齢基礎年金を受給するためには追納を要することとされた(平成12年改正後の国民年金法26条,27条,94条)。
イ 憲法25条違反の主張について
憲法25条1項,2項は,いわゆる福祉国家の理念に基づき,すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るよう国政を運営すべきことを,あるいは,社会的立法及び社会的施設の創造拡充に努力すべきことを,国の責務として宣言したものにすぎない。しかも,同条1項にいう「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは,極めて抽象的・相対的な概念であって,その具体的内容は,その時々における文化の発達の程度,経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに,上記規定を現実の立法として具体化するに当たっては,国の財政事情を無視することができず,また,多方面にわたる複雑多様な,しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。したがって,憲法25条の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は,立法府の広い裁量にゆだねられており,それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用とみざるを得ないような場合を除き,違憲,違法となることはないというべきである(最高裁昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁参照)。
我が国の国民年金制度は,憲法25条2項の規定の趣旨を実現するため,老齢,障害又は死亡によって国民生活の安定が損なわれることを国民の共同連帯によって防止することを目的とし,社会保険方式により被保険者の拠出した保険料を基として年金給付を行うことを基本として創設され,制度発足の経過的又は補完的な制度として,無拠出の福祉年金を設けたものである。すなわち,国民年金制度は,老齢,障害,死亡といった稼得能力の喪失に対して,自身の生活の安定のためにあらかじめ貯蓄をするという制度であり,老齢者や障害者等に対する無拠出の所得保障制度を基本として創設された制度ではない。社会保険方式を採る国民年金制度を設けるに当って加入対象者を決定する際には,その時々の社会的必要性と国の財政的制約を考慮しなければならないのはもちろん,対象者に課される保険料納付義務の負担も考慮されるべきである。すなわち,その時々の社会的経済的諸情勢に照らし,一定の合理的範囲の者を強制加入の対象とすることが求められるのである。
当初の国民年金法(昭和34年法)においては,被用者年金各制度との調整において困難な問題が絡んでおり,その解決を待っては国民が要請する国民皆年金制度の創設が著しく遅滞するため,差し当たり被用者年金制度とは別の新制度を立ち上げ,将来的に現行制度との調整を図っていくこととした(同法7条3項参照)。すなわち,国民年金制度は,従来から存在した厚生年金制度,共済年金制度といった被用者年金制度の体系の枠外にあって稼得活動に入っている者を対象とすることを予定した制度として創設されたものである。そして,被用者年金制度に加入し被保険者となっている者に加えて,被保険者とはなっていないが被用者年金各制度の体系による保障が及んでいる,あるいは保障を受ける可能性が高いと考えられる者,具体的には,被用者年金の受給権者,被用者年金の受給資格期間を満たした者,被用者年金の被保険者や受給権者,受給資格期間を満たした者の配偶者,学生は,強制適用の対象とされなかったものである。特に,学生については,卒業後稼得活動に従事したときには被用者年金制度に加入することが予定されていたこと(その点で被用者年金制度の体系の枠内にある。),学生の間は稼得活動に定型的に従事していないため定型的に稼得能力がないと考えられたことなどに加えて,卒業後,就職して被用者年金各制度に加入することによって,国民年金制度の対象者から除外されることとなるため,多くの場合は,学生の間に納付した保険料が掛け捨てとなることが予想されたことをも踏まえて,国民年金制度の適用除外としたものである(なお,夜間部の学生については,既に社会に出て働いている者であるから,これらの者で被用者年金制度の適用を受けていない場合には,国民年金制度の適用を受けるべきものとされた。)。ただ,これら被用者年金制度の体系による保障が及んでいると考えられる者についても,年金受給額が必ずしも十分ではなかったり,被保険者の配偶者が離婚した場合には保障が及ばないなどといった場合があり得たことから,これらの者が自らの保障を充実させたい場合には任意に加入するというみちを開く形で,国民年金制度による保障を及ぼすよう整理がされたものである。学生の取扱いを含めて制度創設時の国民年金制度の適用の整理がこのように行われたことは,年金保障の体系が被用者年金制度の体系と被用者年金制度の体系による保障が及ばない者を対象とする国民年金制度の体系の大きく二つの体系に分立する下で,給付と負担の重複を避けつつ,必要な保障を及ぼそうとしたものであり,当時の制度体系に照らして合理的なものということができる。その上,昭和60年改正前の厚生年金保険の老齢年金の受給資格要件とされる期間は20年であり,平均的な加入期間も40年間加入を標準として設計されている現在の制度と比べて短かったのであり,20歳から60歳になるまでの間の数年間は国民年金に加入しなくても標準的な年金保障を受けることが可能である制度の下では,将来その多くが被用者となることが予想された学生については,被用者年金制度の体系による保障を受ける可能性の高い存在と考えられ,20歳に達してから卒業までの期間の国民年金制度の適用については,自らの保障を充実させたい場合には任意に加入するみちを開くという任意加入の位置付けにとどめたとしても,何ら不合理ではなかった。
また,昭和60年改正による基礎年金制度の導入により被用者年金制度と国民年金制度とを統合することができたが,昭和60年改正の時点でも,学生が,性格上,定型的に稼得活動に従事するものではなく,一律に保険料納付義務を課すことが適切とまでは断じ難い上,実質上,その親が保険料を負担するとしても,学費の負担が家計を大きく圧迫している親世代に更に保険料の負担をかけることの問題があり,結局のところ,学生の意思によらず強制的に加入させることがいまだ必要な段階とまではいい難いという状態であったため,引き続き強制加入の対象外とされた。
そもそも,国民年金法は,前記のとおりその立法の経緯からしても老齢年金(老齢基礎年金)を中心とした制度設計がされているところ,学生の場合は多くの者が卒業後に被用者保険等の被保険者となることが可能であるため,学生の期間中に保険料を納付しないことによって生ずる不利益はほとんど生じないか,生じたとしてもそれほど大きいものではなく,いまだ自らの収入のない状況下で保険料を負担してまで老後に備える必要があるともいえず,制度の中心としての老齢年金(老齢基礎年金)に着目して学生に被保険者資格を認めなかったことには十分な合理性がある。確かに,障害年金(障害基礎年金)について被保険者となる必要性は,学生以外の者と変わりがないことから,あえてその必要性のみに着目して被保険者資格を付与するとの選択肢も考えられないわけでもないが,国民年金法における保険料の額も適切な額の老齢年金(老齢基礎年金)を支給することができるように設定されているのであって,保険料の大部分は老齢年金(老齢基礎年金)のためのものであり,障害年金(障害基礎年金)のためにのみ必要な保険料はそのうちのごく一部にすぎず,しかも,学生のうちに障害を受ける者の割合も相当低いことからすると,このような選択をすることは,必要性に見合う限度をはるかに超える負担を強いる結果を招く点において不適切であるともいえる。このようなことからも,昭和60年改正当時においては,主たる制度である老齢基礎年金に着目して学生には被保険者資格を付与しない方が,障害基礎年金のみに着目して被保険者資格を与えるよりも,むしろ適切な選択であるとして,結局,学生については,従来どおり,強制適用の対象とせず,任意加入の対象とするにとどめ,昭和60年改正法附則4条において,国民年金制度における学生の取扱いについては,学生の保険料負担能力等を考慮して,今後検討が加えられ,必要な措置が講ぜられるものとすると定められたのである。また,学生の取扱いについては,昭和60年改正の際,前記のとおり,親世代に保険料の負担をかけることなどの問題の解決が重い課題となり,保険料免除を前提とした強制適用にも問題があることが指摘されたこと,その当時においても,20歳以後に障害を負った学生に障害基礎年金を支給することとすると,同年齢の学生以外の者が保険料を未納付の場合にこれを受給することができないこととの均衡を失するとの考えが依然として根強かったこと(大学進学率が増加したとはいえ,4人のうち3人が高校卒業後は稼得活動に従事している現状の下にあった。),平成元年改正の際においてすら,前記のとおり,所得のない者に保険料納付義務を負わせるべきではなく,強制適用とした場合は親に保険料を負担させる結果となること,強制適用とした上保険料を免除した場合,学生と同世代で稼得活動に従事し保険料を負担している者との公平を欠くことなどを理由とする反対論もあったことからしても,昭和60年改正法がなお学生を強制適用の対象とせず,今後の検討課題にとどめたことにも何ら不合理な点はない。
以上のとおり,当時の社会的経済的諸情勢に照らし,国民年金制度において学生を強制加入の対象とすることは妥当でないとした判断には合理性があることは明らかである。
さらに,各人の生活実態等に照らし,保険料納付の負担に比して被保険者となることを望み,国民年金制度に加入することを希望する学生に関しては,任意に加入するみちが開かれていた(昭和34年法附則6条1項,昭和60年改正後の国民年金法附則5条1項1号)のであるから,このことをも付加すれば,学生を強制加入の対象としなかったことが,裁量権の逸脱,濫用とみなされなければならない事情は,全く存在しない(もっとも,上記のとおり,学生等適用除外規定はそれ自体として合理的なものであるから,任意加入制度の存在をもって初めて学生等適用除外規定が合憲となるものでは決してない。)。なお,保険料免除規定は,国民年金制度が20歳以上60歳未満という年齢によって稼得活動に従事していると通常期待することができる期間によって強制加入対象者の範囲を確定し,実際の所得の状況にかかわらず,一律に,かつ,自らの意思によらず強制的に国民年金制度に加入させる制度になっていることを前提として,自らの意思によらず一律に加入させられる被保険者の中には低所得の者をも含み得るため,このような者に対して保険料を強制的に徴収するとすることは適切さを欠く場合が生じ得ることから,これらの問題点に対処するために設けられたものであるから,自らの意思によって加入する任意加入者に対してそのような制度をあえて置く必要はなく,任意加入制度に保険料免除規定を置くというのは制度として本来矛盾したものである(なお,昭和34年法75条に規定する高齢任意加入制度の対象者は,国民年金法が施行された当時既に高齢で60歳に達するまでの期間が10年に満たないことから任意加入とされたが,仮にそれ以前に国民年金法が施行されていたならば強制加入の対象となっていたはずの,本来,国民年金制度による保障体系の枠内に位置付けられる者であるのに対し,学生等に係る任意加入制度は,前記のとおり,国民年金制度による保障体系の枠外に位置付けられる学生等について,自らの保障を充実したいと希望する場合には国民年金制度による保障を受けることを許容する制度であるから,高齢任意加入制度において保険料免除規定が適用されていたからといって,これと同列に論じることはできない。)。のみならず,実際にもたやすくこれを採用し難い事情があったことは,上記のとおりである。また,学生の任意加入率が低かったとしても,学生の任意加入制度についても毎年一定の広報活動が行われていたことや,学生と同様に任意加入制度の対象とされた公的年金被保険者の配偶者の任意加入制度への加入率が7割を超えていたことと対比しても,卒業後は被用者年金制度に加入することが通常であった学生の国民年金制度に対する関心の低さなどの周知,広報の程度以外の他の事情に起因するものというべきであり,これをもって制度の欠陥ということはできない。
以上のように,学生等適用除外規定は,当時の社会的経済的状況等諸般の事情を考慮した合理的理由がある規定であるから,憲法25条1項及び2項に違反しているということはできない。
なお,社会保障は諸々の制度,政策によって行われるものであるところ,障害者の社会保障としては,生活保護制度等や各種医療制度,身体障害者福祉法等による各種福祉サービス等が設置,提供されている。したがって,国民年金制度が社会保険方式を採用したことをもって憲法25条の保障する生存権が保障されないことになるわけではないことは,いうまでもない。
ウ 憲法14条違反の主張について
憲法14条1項は,絶対的な法の下の平等を保障したものではなく,合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであるから,各人に存する経済的社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは,その区別が合理性を有する限り,憲法14条1項に反することはない(最高裁昭和37年(あ)第927号同39年11月18日大法廷判決・刑集18巻9号579頁,最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁)。立法府の政策的,技術的裁量に基づく判断にゆだねられるべき立法分野においては,立法府が制定した法律の条項が一方と他とを区別して取り扱うものであっても,それが立法府の政策的,技術的裁量にゆだねられる事項であることから,ある条項が憲法14条1項に違反するかどうかは,それが立法府の裁量を逸脱するかどうかを基準として判断すべきである。すなわち,立法府が法律を制定するに当たり,その政策的,技術的判断に基づき,性質上の差異を理由としてその取扱いに区別を設けることは,それが立法府の裁量の範囲を逸脱するものでない限り,合理性を欠くということはできず,憲法14条1項に違反するものではないというべきである(前掲最高裁昭和57年7月7日大法廷判決,最高裁昭和60年(行ツ)第92号平成元年3月2日第一小法廷判決・裁判集民事156号271頁,最高裁平成13年7月19日第一小法廷判決・金融法務事情1627号51頁)。そして,その判断基準については,合憲というためには,立法目的が正当でその手段が目的達成に合理的に関連していることをもって足り,違憲を主張する側がいかなる合理的根拠もないことを証明する責任を負うとする,いわゆる合理性の基準ないし合理的根拠の基準が妥当すると考えられる(最高裁平成3年(ク)第143号同7年7月5日大法廷決定・民集49巻7号1789頁参照)。しかるところ,憲法25条の規定の要請にこたえて制定される社会保障法制に関する立法府の裁量は広範であり,そのような法令が憲法14条違反の問題を生じ得る場合は極めて限定され,合理的理由を全く欠いた差別的取扱いをし,明らかに裁量の逸脱,濫用とみざるを得ないような場合に限られるというべきである(前掲最高裁昭和57年7月7日大法廷判決参照)。
学生等適用除外規定が設けられた理由については,前記イのとおりであり,当時の社会的経済的情勢や他制度との調整等の諸般の事情に基づくものであって十分に合理的な理由があり,裁量権の逸脱,濫用はない。したがって,20歳以上60歳未満の日本国民の中で学生等を強制加入の対象としないとした学生等適用除外規定が,憲法14条1項に反するということはできない。
この点,原告らは,昭和34年法が学生への適用を除外しながら20歳未満の者に対する旧障害福祉年金(現在の無拠出制の障害基礎年金)といった代替措置を何ら設けなかったという異なった取り扱いが20歳以上の学生と20歳未満の学生との間で合理的な理由のない差別をもたらしているとして,このいわば二重の差別があいまって憲法14条等に違反するなどとも主張する。
しかしながら,昭和34年法における20歳前障害規定に基づく障害福祉年金を始めとする障害福祉年金は,前記のとおり,国民年金制度の経過的又は補完的な制度として創設された無拠出制の年金であり,全額国庫負担で賄われる,いわば公的扶助の色彩の濃い制度であって,そのような無拠出制の福祉年金を設立したのは,社会保障推進のための政策的な配慮に基づくものである。したがって,立法府は,その支給対象者の決定についても,特に広範な裁量権を有している(前掲最高裁平成元年3月2日第一小法廷判決参照)。また,昭和60年法における20歳前障害規定に基づく年金給付も,全額国庫負担ではなくなったものの,特別に高率の費用負担をしており(昭和60年改正後の国民年金法85条1項3号により障害基礎年金の給付に要する費用の4割を負担し,1号によりその残りの費用の3分の1(すなわち,障害基礎年金の給付に要する費用の2割)を負担することから,障害基礎年金の給付に要する費用の6割を負担することになる。),障害者自身は従来どおり保険料を拠出する必要がないことから,障害福祉年金と同様,所得制限等種々の制限が定められているのであって(同改正後の国民年金法36条の2,3),社会福祉的色彩の強い制度であることに変わりはない。したがって,このような福祉的施策の在り方について,20歳前に障害を負った者と20歳以後に障害を負った学生とを比較し,両者の間に制度的な不均衡があるとすること自体失当である。
また,20歳未満の者と20歳以上の学生は,国民年金制度上の位置付けを全く異にしている。すなわち,国民年金法は,昭和34年の創設以来,その被保険者を成人に達した20歳から60歳未満と年齢で一律に区分している。ただ,20歳以上の者のうち,学生は,前記の趣旨から任意加入でよいと規定されたのに対して,20歳未満の学生については,もともと加入者ではなく,社会保険方式を基本とする国民年金制度の中で補完的な位置に置かれた低額の福祉年金で対応をすることとなったものである。この期間が約25年続いた後,基礎年金制度の導入によって,福祉年金もこれに組み入れられて,給付額が保険加入者と同額に引き上げられ,また,各年金制度間の調整がされ,妻の年金権も確立させたことにより,結果として,加入対象者のうちの学生だけが任意加入という形で残る結果となったことから,昭和60年改正時,学生についても強制加入とする方向で検討課題とされたが,学生の親世代の負担増をどのように解決するかなどの保険料負担に関する検討も必要であったことから,これの解決策を整備した上で,5年後の平成元年には強制加入としたものである。したがって,このような改正経過の途中をとらえれば,20歳以上の学生時の障害者と20歳未満の障害者との間で較差が生じているとみることもできようが,それは,上記のような改正経過において,あくまで合理的な理由を有するものである。
さらに,上記のとおり,20歳未満の障害者に対する年金給付は,全額国庫負担(昭和34年法における障害福祉年金)又は国庫が特別に高率の費用負担をし障害者自身は保険料を拠出する必要がないものであって(昭和60年法における20歳前障害規定に基づく障害基礎年金),このような年金給付を際限なく拡張すれば,一般被保険者の保険料支払意欲を削ぎ,拠出制の保険原理を基に成り立つ国民年金制度の根幹を揺るがしかねない。この点をおくとしても,20歳以上の学生に対して20歳未満の障害者に対する年金給付を及ぼすようにした場合には,20歳以上の学生は,任意加入してもしなくても年金給付を受給することができることとなり,任意加入制度の意味が失われてしまうとともに,同年齢の学生以外の者が保険料を未納付の場合にこれを受給することができないこととの均衡を失し,かえって受給者相互間の公平を欠くことになる。
以上のとおりであるから,20歳以上の学生と20歳未満の者との間に合理的理由のない差別が存するということはできない。また,20歳以上の学生と20歳以上の学生以外の者との間に合理的理由のない差別が存するとはいえないことは,前記のとおりである。したがって,二重の差別があいまって憲法14条等に違反するとの原告らの主張は失当である。
エ 憲法31条,13条違反の主張について
強制加入の対象から学生を除外したことが違憲となるものではないことは上述のとおりであるから,任意加入制度の存在をもって初めて学生等適用除外規定が合憲となるかのような原告らの主張は,そもそもその前提を欠き,失当であるが,その点をさておいても,原告らの主張は,いずれも,次のとおり失当である。
原告らは,障害年金制度が憲法25条の保障する生存権を具体化するものであることにかんがみれば,20歳以上の学生等が任意加入しなかったことに対するペナルティーとして障害年金の受給を許さないことが正当化されるためには,憲法13条及び31条に基づき,当該学生等に対し適正手続すなわち告知及び聴聞の機会が保障されていることが必要であると主張する。
しかし,そもそも,国民年金制度は,老齢,障害等という将来発生する事故のために,自己責任の原則でもってあらかじめ備えておくことを基本とする制度であって,その点から社会保険方式を基本として創設されたものであり,いわゆる国民皆年金とは,すべての国民が加入することができる年金制度の整備を意味するものであって,全国民が制度に加入して保険料納付義務を果たせば年金給付を受けられるということを指すものであり,全国民に無条件で年金給付を保障するものではなく,制度に加入せず,保険料を納付していなかった場合にまで,年金が支給されるものでないことは,制度の原理上当然であり,このような制度の本質を超えて年金を支給すべきことが憲法25条から導かれるものではない。したがって,これにペナルティーという評価を与えることは失当であり,このような不利益をもって権利利益の侵害ということはできない。すなわち,原告らが障害基礎年金等を受給することができないことは,国民年金制度に加入せず,保険料も納付しなかったことの結果であって,行政処分による侵害行為の結果ではない。通常,適正手続,告知及び聴聞の機会とは,行政処分をする前に,相手方に処分内容及び理由を知らせ,その言い分を徴することによって,処分の適法性,妥当性を担保し,公権力の侵害から国民の権利・利益を保護しようとするものであるとされる。また,行政処分における憲法31条の適用に関しては,「一般に,行政手続は,刑事手続とその性質においておのずから差異があり,また,行政目的に応じて多種多様であるから,行政処分の相手方に事前の告知,弁解,防御の機会を与えるかどうかは,行政処分により制限を受ける権利利益の内容,性質,制限の程度,行政処分により達成しようとする公益の内容,程度,緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって,常にそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である。」とされる(最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁)。そうであるとすれば,本件は,そもそも,適正手続,告知及び聴聞の機会の付与ひいては憲法31条,13条違反が問題となるものではなく,適正手続,告知及び聴聞の機会の付与,憲法31条,13条違反を問題とする原告らの主張は,この点においても,その前提を欠くものとして,失当というべきである。
さらに,原告らの主張が,あらかじめ学生に任意加入の制度等の説明をすべきであったとの趣旨であるとすれば,後記(5)(被告国の主張)のとおり,そもそも国に社会保障制度の広報及び個別的教示等をする法的義務はないから,原告らの上記主張は失当である。
(2)  学生等適用除外規定の違憲無効と本件各処分の違法
(原告らの主張)
(ア) 原告らはいずれも平成元年改正前の国民年金法別表又は昭和60年改正後の国民年金法施行令別表(以下「別表」という。)に定める障害等級1級に該当するものであるが,本件各処分は,原告らがいずれも当該傷病の初診日において被保険者でなかったことを理由としてされたものであり,原告らが被保険者要件を欠くとされたのは,平成元年改正前の学生等適用除外規定の存在によるものであるところ,(1)(原告らの主張)のとおり,学生等適用除外規定は憲法14条等に違反し無効であるから,違憲無効である学生等適用除外規定を適用してされた本件各処分に違法があることは明らかであり,本件各処分は直ちに取り消されるべきである。
(イ) もっとも,原告らは初診日より前には保険料を納付していない。
しかしながら,本件のような授益処分の申請を拒否(却下ないし棄却)した処分(申請拒否処分)は,申請に係る授益処分の処分要件の少なくとも一つが充足されない場合にされる処分であり,そのような処分においては,行政庁がすべての処分要件の充足,不充足を判断して処分しているわけではない以上,その取消訴訟の訴訟物は,根拠法規上の処分要件のうち行政庁が処分の際に第一次判断権を行使した処分要件(正確にいえば,取消訴訟の時点における後からの評価として第一次判断権を行使したとみることができる処分要件)の充足,不充足というべきである。また,本件のように,ある行政処分をするための要件が複数ある場合に,そのうちの1つの要件を充足しないことを理由としてされた行政処分の取消請求がされている場合,裁判所は,他の要件を充足しているかどうかを判断することなく取消判決をすることができる。本件の場合,法律上,被保険者の資格を有していない者は保険料を納付することはできないのであるから,被保険者資格の要件と保険料納付要件は不可分に連動しているところ,原告らは,被保険者資格の要件を充足しないとされたために,法律上保険料納付要件を充足する機会を全く与えられていなかったのであり,保険料納付要件の充足を求めることは原告らに不能を強いることに他ならない。そうであるとすれば,本件各処分において,その原処分庁は,原告らの被保険者資格の要件の充足についてのみ判断したものと解すべきであり,法律上充足することが不可能であった保険料納付要件について第一次判断権を行使したと考えることはできない。したがって,本件各処分の取消しを求める本件訴訟においては,裁判所は,障害基礎年金を支給すべきか否か,障害基礎年金を支給するためのすべての要件を充足しているか否かを判断する必要はなく,被保険者要件がないことを理由としてした本件各処分が違法か否かを判断し,違法であれば不支給処分を取り消せば足りるというべきである。
(ウ) そうでないとしても,原告らは,平成元年改正前の国民年金法が違憲無効な学生等適用除外規定を存置していたために,その当然の結果として,保険料を納付する方法がなかったのであるから,原告らの障害年金裁定請求に対し,保険料納付要件を欠くことを理由としてこれを棄却ないし却下することは,信義則上許されないというべきである。したがって,原告らは納付要件を満たしていると擬制して同法30条1項の障害基礎年金が支給されるか,又は無拠出年金についての同法30条の4の規定を類推して同条による障害基礎年金が支給されるべきである。
(被告社会保険庁長官の主張)
原告らは,平成3年4月1日までに学生であった者については,保険料納付を擬制することができると主張するが,この主張は,何ら法律上の根拠もないまま,学生以外の20歳以上60歳未満の者との間の取扱いに差違を生じさせようとするものであり,採用することができないことは明らかである。
(3)  原告辛浜の初診日の認定に係る本件処分の違法
(原告辛浜の主張)
ア 国民年金基本通知集によれば,社会的治癒とは,「医療を行う必要がなくなって社会復帰していることを言い,薬治下又は療養所内にいるときは一般社会における労働に従事している状態にある場合でも社会的治癒とは認められない」とされている。しかし,治療の必要はなくても再発予防のために薬を飲用している場合には,社会的治癒ということができる。
イ 原告辛浜は,大学4年生であった昭和53年の夏,教育実習を受けた際,約2週間ほど眠らなかったところ,気分が高揚し,多弁等となり,同年7月5日,子安医院を受診し,医師の指示で翌日(同月6日)から同月14日まで箕面神経サナトリウムに入院した後(このときは心因反応と記載されていた。),同年12月14日まで同サナトリウムに通院し,昭和54年7月9日から同年8月17日まで医療法人恒星昭会アイノクリニック(以下「アイノクリニック」という。)に入院していたが,その後,昭和56年8月までは通院入院歴がない。この間,昭和55年4月から同年11月ころまで,原告辛浜は,母である辛浜冬子の行きつけの美容院である「クララ美容室」において,掃除,先生の食事の支度,タオルの洗濯,シャンプーなどといった雑用に従事し(美容院の手伝い),週に4日くらい出て,午前8時45分から午後5時まで稼働し,月に3万円の給与を得ていた。その後,歳暮の季節で手伝って欲しいと食料品店を営んでいた親戚から声がかかり,原告辛浜は,美容院を辞めて食料品店を手伝うことになり,食料品店において,梱包,のし書き,徒歩での配達,掃除などを担当し,ほとんど毎日午前9時から午後5時まで稼働していた(商店の販売員のアルバイト)。もっとも,そのころお茶とお花も始めたので,そのお稽古のある日には仕事は休んでいた。原告辛浜は,同食料品店を昭和56年4月一杯で辞めることになったが,さらにその後,お花とお茶のお稽古に通いながら普通自動車の運転免許を取得するため自動車教習所に通い,仮免許試験を2回落としたのみで,昭和56年8月14日に免許証を取得した。このように,原告辛浜は,昭和55年4月から昭和56年8月までは,一般の社会人と同じように社会的活動をし,さらには運転免許証の取得まで果たしている。しかも,この期間,本人や母親の記憶によれば薬の服用もしていないようである。特に,普通自動車運転免許の取得については昭和53年7月に発症した「そううつ病」の状態では到底不可能な行為である。したがって,原告辛浜は,昭和54年8月17日以降その症状は緩和し,昭和55年4月には医療を行う必要がなくなって社会復帰している状態になったということができるのであって,昭和55年4月から昭和56年8月までは社会的治癒期間であったと認められる。
ウ 原告辛浜は,昭和59年12月に三国丘病院を退院した後,昭和63年4月に同病院に再入院するまでの間は入院歴がない。この期間中,中神経科(大阪市)等に通院はしていたが,服薬を全く要しない期間もあった。薬を飲んだとしても,それはあくまでも再発予防的な意味合いであり,治療のためではなかった。原告辛浜は,この間,昭和60年9月から昭和62年8月まで土井勝料理学校の本科及び補修科に通い,また,これらと並行して通っていた着物着付教室も同年3月4日で所定の学習を修了した。そして,同年4月6日から昭和63年3月30日までは,日本編物文化協会の編物製図基礎科に通って修了しているほか,デッサンの受講もしていた。カルチャーセンターには本人が1人で電車に乗って通っており,母親の付き添いはなかった。土井勝料理学校は,週に2回,家からバスに乗って近鉄学園前駅まで行き,近鉄学園前駅から上本町六丁目駅の先生のところまで1人で通い,着物着付教室は近くの公民館に1人で通っていた。さらに,この期間中,家族で日本の各地を旅行することも多かったが,特に問題行動はなかった。したがって,原告辛浜は,昭和59年12月から昭和63年3月30日まで医療を行う必要がなくなって社会復帰していた,すなわち,この期間は社会的治癒期間であったということができる。
エ 以上のとおりであるから,原告辛浜については,上記各社会的治癒期間の後である昭和56年8月21日医療法人利田会久米田病院(以下「久米田病院」という。)に入院した時点,ないし,昭和63年4月8日三国丘病院に入院した時点をもってそれぞれ初診日というべきである。そうであるとすれば,原告辛浜は,昭和54年4月1日に国民年金の被保険者資格を取得しているから,昭和56年8月18日,昭和63年4月8日の各初診日はいずれも国民年金の被保険者期間であったことになり,したがって,原告辛浜に係る障害基礎年金不支給処分は取り消されなければならない。
(被告社会保険庁長官の主張)
ア 原告辛浜は,昭和53年に躁うつ病を発症し,同年7月5日に子安医院初診となり,以後一度も社会的に治癒することなく,現在に至るまで躁うつ病に罹患しているものであり,初診日は同原告が国民年金に加入していなかった昭和53年7月5日である。
イ 障害基礎年金は,障害の原因となった傷病につき初めて医師の診療を受けた日である「初診日」が支給開始に当たって問題とされるため,ある傷病が発症した後に,さらに同一の傷病名で傷病が発症したときには,先に発症した傷病が治癒していたのか,あるいは,後に発症した傷病が先に発症した傷病と同一なのか,を判断する必要が生じる。先の傷病が治癒していた場合には,後の傷病は別傷病として取り扱い,後の傷病の初診日において受給資格要件を問うことになる。先の傷病が治癒していたといい得るかの判断については,医学的観点から先の傷病が治癒したといえるか否かをもって判断するという考え方もあり得るが,国民年金制度という社会保障制度の運用の観点から,国民年金制度担当行政庁においては,仮に医学的には治癒に至っていない場合であっても,「医療を行う必要がなくなって社会復帰している」という状態が確認できる場合には,これを「社会的治癒」として,治癒と同様の状態であるとみなしている(国民年金基本通知集,国民年金障害等級の認定指針参照)。ここにいう「社会的治癒」の状態と認められる基準については,個々の傷病・症例によって判断せざるを得ないため,一般社会において労働に従事している状態が一定期間継続することなどの一律の基準を設けることはできないものの,少なくとも,医師の管理の下での薬物療法や療養所内での諸療法が行われている状態にあったり,投薬等の具体的診療が終了していても経過観察等,医師の管理下に置くべき状態にあったりするときには,一般社会において労働に従事していたとしても,治癒と同様の状態にある「社会的治癒」であると認めることはできない。なお,薬物治療の点について補足すると,社会的治癒の判断において薬物治療の有無は問わないとすると,投薬をしなくても発症しないのに念のために薬物治療が続けられている患者と,投薬によって初めて発症が抑えられている患者とを同列に扱うことになって,不合理である。また,投薬によって症状を抑えている者について「治った」と判断することは,社会通念にも合致しない。さらに,他の疾病では,薬物治療が続けられていれば社会的治癒とは認められないにもかかわらず,精神疾患についてのみ別異の取扱いをする理由は存しない。したがって,薬物治療が続けられており,又はその必要がある場合には,社会的治癒とは認められないというべきである。そして,社会保険給付の不支給決定の取消訴訟において,社会保険給付請求権の発生を根拠付ける事実については,原告に証明責任があると解されるのであり,原告辛浜が社会的に治癒したため国民年金の被保険者である期間内に初診日があるとの事実は,障害基礎年金受給権の発生を根拠付ける事実であるから,原告辛浜が証明責任を負うというべきである。
ウ 躁うつ病とは,精神分裂病と並ぶ二大内因性精神病(個体に内在する要因によって生ずる精神病)の1つで,躁状態あるいはうつ状態という感情の障害を基礎とする病態が,はっきりとした病期を限って交代的にあるいは周期的に出現し,通常,病期経過後に人格欠陥を残さずに完全な回復に至るものである。
ところで,うつ状態における感情障害の特徴は抑うつ気分である。うつ状態になると,はっきりした原因なしに気分がゆううつになり,すべてがおもしろくなくなる。周囲の物や出来事が生き生きと感じられなくなり,喜怒哀楽の感情が薄れるなど離人症の状態になり,頭が空になったと訴える。思考障害の形式面の特徴は思考制止,すなわち,考えようとしても観念,着想が頭に浮かばない,自信がなく判断力,決断力が低下するため,思考のテンポが遅くなり,考えが進行しないというものである。内容面の特徴は微小念慮,すなわち,自己を実際よりも低く評価し,物事を悪いほうにばかり解釈して取り越し苦労をするというものである。さらには,症例によっては罪業・貧困・心気妄想などの精神病症状を呈することがある。意欲・行為障害の特徴は精神運動制止,すなわち,物事をやらねばならぬと分かっているのに「おっくう」,「大儀」でどうしてもできないというものである。身体症状としては,睡眠障害がうつ病者の90%以上に出現する最も重要な症状の1つである。不眠が大部分で,入眠障害,中途覚醒(眠りが浅く,中途で覚醒してあと寝付けない。),早朝覚醒などが現れる。朝方に気分が悪く,寝床を離れにくい。食欲低下もうつ病の重要な症状で,体重が数キログラムもやせるのが特徴である。便秘や下痢もうつ病にほとんど必発の症状である。性欲も極度に低下することが多い。
これに対し,躁状態における感情障害としては,定型的躁状態の際には,気分は爽快で,いかにも楽しそうによく笑い,好機嫌で元気よく話す。しかし自分の考えや行為が妨げられると容易に刺激的になり,些細なことに激怒し,周囲の人に対して攻撃的になりやすい。身体感情は好調で健康感にあふれ,いくら動き回っても疲れを感じない。自我感情も亢進し,自己評価は過大で自信に満ちあふれ,楽観的で世の中のすべての人が自分に共感してくれるように感じる。思考障害の形式面の特徴は観念奔逸,すなわち,観念が次々と湧き出し,観念の連合が論理よりも好き嫌いなどの感情傾向や語音の類似などによって行われるために,思考のまとまりがなくなり,一定の目標に向かう理論的思考が不可能になるというものである。上司や同僚などに対しても無遠慮,尊大,傲慢な態度をとり,思考内容の特徴は誇大傾向,すなわち,自分は天才だから大発明をする,自分は将来総理大臣になるなどと誇大的なことを述べ,ときにはそのような内容の妄想を呈する。意欲,行為障害としては,感情の高揚とともに欲動も亢進し,絶え間なくしゃべる。動きが多く,あちこち歩き回る。意欲の亢進が強くなると瞬時もじっとしていられず,絶えず動き回り,手当たり次第に何かをしようとするが,作業にまとまりがない。身体症状としては,睡眠障害が必発の症状で,比較的軽い場合には,入眠は良いが,短時間眠った後午前2時ないし3時ころから覚醒して活動を始める。重症のときにはほとんど一睡もせず興奮状態を続ける。食欲は一般に亢進するが,活動量が多く休息をとらないために衰弱しやせが起こる。重症の場合には興奮のため食事も十分に摂れない。性欲も亢進することが多く,飲酒量も増加する。
躁うつ病は,躁状態あるいはうつ状態の病相期を繰り返すので,循環精神病,循環病とも呼ばれる。一般に各病相期の間の寛解期にほぼ正常な状態に回復するのが特徴で,統合失調症では病勢増悪期が過ぎても完全には寛解しないことが少なくないのとは異なっている。躁うつ病には,原告辛浜のように躁病相とうつ病相の両方を持つ双極型と,いずれか一方の病相だけを持つ単極型とがある。双極型のうちには,躁病相とうつ病相がほとんど寛解期なしに反復して現れるものと,両病相が寛解期を挟んだりして不規則に出現するものとがある。最初は単極型に見えても,長い経過のうちに他方の病相が現れてくることがあるので,単極型,双極型の判定には十分に長い期間の観察が必要である。病相と病相の間の間欠期の長さは,ほとんど間欠期がないものから,30年ないし40年に及ぶものまである。単極型うつ病では平均5年前後で,双極型では1年ないし3年のものが多い。双極型躁うつ病,単極型うつ病とも,経過とともに間欠期が短縮するものが多いが,双極型ではその傾向が著しい。
躁うつ病の治療は,薬物療法の登場以前には電撃療法,持続睡眠療法などの対症療法が行われてきたが,最近では薬物療法が盛んに行われている。うつ病には感情調整薬(うつ病,うつ状態の治療に用いられる薬物の総称)が主に用いられ,精神賦活薬(抗うつ性あるいは気分を高揚させる性質をもつ薬物。精神刺激薬)が補助的に使用される。うつ病の薬物療法には,外来通院,必要な場合には入院させ,十分な薬物を使用してうつ症状が改善するまで行う急性期治療,急性期治療に引き続いて,うつ症状の再燃(2か月以内の症状再現)を防ぐために行う持続療法,持続療法の後に病相の再発を予防するために行う維持療法がある。躁状態で精神運動興奮が強い場合には,入院治療を必要とする。興奮がそれほど強くなくても,躁状態のときには,家人や職場の人との争いが多く,仕事上のやり過ぎや社会的脱線行為が少なくなく,また睡眠障害や食事をとらないための身体衰弱が起こることが多いので,軽症例以外は入院治療を行うのがよいとされる。薬物治療としては,炭酸リチウム,カルバマゼピンが第一選択薬であるが,興奮が強い時期には抗精神病薬と併用する。炭酸リチウムは強い抗躁効果を持ち,躁状態を取り除いてしまうように自然な形で鎮静させる。また,炭酸リチウムを連続投与すると,双極型の半数以上において,躁・うつ病相の反復出現に対する予防効果が見られる。
エ 原告辛浜が昭和59年12月から昭和63年4月までの期間において社会的に治癒していたとは認められない。
前記のとおり,双極型の躁うつ病には,躁病相とうつ病相が寛解期を挟んだりして不規則に出現するものがある。そして,病相と病相の間の間欠期の長さは,ほとんど間欠期がないものから,30年ないし40年に及ぶものまであり,単極型うつ病では平均5年前後で,双極型では1年ないし3年のものが多い。それゆえ,躁うつ病が治癒していなくても,数年間症状が現れないことは当然にあり得るのであり,また,そのような症状が現れない時期に社会的な活動を行うことは可能である。したがって,原告辛浜が社会的治癒を主張する昭和59年12月から昭和63年4月までの期間に入院治療を受けていなかったことや,社会的な活動をしていたことをもって,医療を行う必要がなくなったとすることはできない。
しかるところ,原告辛浜を診察した医師らは,次のとおり,同原告が継続して躁うつ病に罹患していたとの判断を示している。すなわち,原告辛浜が昭和59年12月3日に三国丘病院を退院した際の退院記録によれば,転帰は,「家庭内療養」,「不全完解」とされており,三国丘病院の医師は,原告ら代理人弁護士からの「通院してない時期があるので治ゆしていたと見なして初発で診断日をずらせないか。」との照会に対し難しい旨の回答をしているほか,原告辛浜を診察した医師らは,診断書中「発病から現在までの病歴」等の欄に,同原告が昭和53年に発病した後現在に至るまで継続して躁うつ病に罹患していた趣旨の記載をしており,「転帰」の欄については,法山医師の診断書においては,同原告が上記のとおり三国丘病院を退院した際の転帰について,精神医学において入院時に比して症状が少し良くなった程度の状態を意味し「不全寛解」よりも悪い状態とされる「軽快」としているのを始め,その他多くの医師は「病状不安定」としている。
また,一般に,躁うつ病の治療のために薬物治療が必要かつ有効であること,薬物治療が続けられており又はその必要がある場合には社会的治癒とは認められないことは,前記のとおりであるところ,原告辛浜は,社会的治癒を主張する昭和59年12月から昭和63年4月までの期間にもリーマスの服用を継続していたのであり,同原告が昭和63年3月29日にリーマスの服用をやめると,その後急速に症状が悪化したというのである。そうすると,原告辛浜が上記期間に比較的症状の良い状態が続いていたとしても,それは,リーマスの服用によって発症が抑えられていたにすぎず,薬物治療を継続する必要があったことは明らかである。
さらに,上記期間における原告辛浜の症状をみても,上記期間において同原告自身にも躁うつ病であるとの病識があり,症状の再発を避けるため,規則正しく変化のない生活をするように,また集中しすぎないように注意しており,母の辛浜冬子から見ても,自殺を危惧するような状態であった。また,原告辛浜は,昭和58年10月末ころに寒さが怖いと訴えるようになり,上記期間の直前の三国丘病院入院中にも,寒いのが怖いと訴え,上記期間後の三国丘病院通院中にも同様の訴えをしている。そして,原告辛浜は,編み物教室を受講した動機等につき,寒いのが怖くなって編み物教室に入ったところ,寒いのが怖くなくなり,うれしくてうれしくてしようがなかったと供述しているのであるから,上記期間にも当該期間前後の三国丘病院入通院中と同様の症状が継続していたと認められる。
以上のとおりであるから,原告辛浜が社会的治癒を主張する上記期間に医療を行う必要がなくなったとは認められない。
また,原告辛浜が社会的治癒を主張する昭和59年12月から昭和63年4月までの期間において社会復帰していたとも認められない。すなわち,仮に原告辛浜が美容院及び食料品店におけるアルバイト並びにデッサンの受講をしていたとしても,上記アルバイトをしていたのは昭和55年9月から昭和56年4月までの期間であり,デッサンの受講をしていたのは昭和58年4月から同年5月6日までであって,同月7日に症状が悪化したことから受講を中断したものと認められる。また,原告辛浜は,上記期間に料理学校,ヨガ教室,着物着付け教室,編み物製図教室及びスイミングスクールに通っていたとも主張,供述するが,同原告の供述を前提にしても,上記各教室等は,週1回,各2,3時間にすぎないというのであり,この程度の活動をしていたからといって社会復帰していたということは到底できない。
したがって,上記期間について社会的治癒を認めることはできない。
オ 原告辛浜が昭和55年4月から昭和56年8月までの期間において社会的に治癒していたとも認められない。
本件記録中には,原告辛浜が昭和55年4月15日にアイノクリニックの通院をやめた際の転帰について医師が所見を述べたものは見当たらず,医療を行う必要がなくなったと認めるべき証拠は存しない。かえって,前記のとおり,原告辛浜を診察した医師らは,診断書に同原告が昭和53年に発病した後現在に至るまで継続して躁うつ病に罹患していたとの趣旨の記載をしていること,昭和54年8月17日に「藍野病院」を退院した際の「転帰」について,法山医師は「軽快」とし,その他の多くの医師も「病状不安定」としていることからすれば,同原告が社会的治癒を主張する昭和55年4月から昭和56年8月までの期間の病状も不安定であったと推認される。
また,仮に原告辛浜が上記期間には全く通院もせず,薬物治療も受けていなかったとしても,同原告は,昭和55年4月15日にアイノクリニックの通院をやめる際,医師から「あと2年ぐらい,リチウム飲みゃ治るんだがな」と言われたにもかかわらず,その指示に従わなかったというにすぎない。そして,原告辛浜は,昭和56年4月ころに躁症状を発症してアルバイトを辞めさせられたのみならず,同年8月には入院することになったというのであるから,薬物治療を継続する必要があったことは明らかである。
以上のとおりであるから,原告辛浜が社会的治癒を主張する昭和55年4月から昭和56年8月までの期間に同原告について医療を行う必要がなくなったとは認められない。
さらに,原告辛浜が上記期間において社会復帰していたとも認められない。すなわち,原告辛浜及び辛浜冬子の供述によっても,原告辛浜が美容院及び食料品店で行っていた仕事の内容は雑用にすぎない。美容院については週4日又は毎日,9時から17時まで働いて1か月3万円,食料品店については週5日又はほとんど毎日,9時から17時まで働いて1か月5万円という賃金の低さも,このことを裏付けている。そして,原告辛浜は,食料品店においては,昭和56年4月に躁症状を発症して社長の悪口を言ったために辞めさせられたというのであり,結局,同原告が美容院及び食料品店でアルバイトをしていた期間は,それぞれ数か月間にすぎない。また,原告辛浜は,自動車学校に通って免許を取得したが,男性教官を好きになったことや熱心にやりすぎたこと等が原因で失神し,救急車で運ばれて入院することになったというのであるから,自動車学校に通って普通自動車運転免許を取得したことをもって社会復帰していたとは認められないことは明らかである。
したがって,上記期間について社会的治癒を認めることはできない。
カ 以上のとおり,原告辛浜は,昭和53年に躁うつ病を発症し,同年7月5日に子安医院初診となり,以後一度も社会的に治癒することなく,現在に至るまで躁うつ病に罹患している。したがって,原告辛浜の初診日は昭和53年7月5日であるところ,同原告が同日において被保険者でなかったことは同原告と被告社会保険庁長官との間において争いがないので,同原告が障害基礎年金給付の支給要件を満たしていないことは明らかである。よって,原告辛浜につき奈良県知事のした本件処分は適法である。
(4)  立法行為ないし立法不作為の違法を理由とする被告国の国家賠償責任
(原告らの主張)
ア 立法行為ないし立法不作為が国家賠償法上違法となる場合
立法内容の違憲性が明白であるにもかかわらず当該立法を行い,あるいは,立法後違憲性が明白となってから相当期間を経過しても必要な立法措置がされず,そのため重大な人権侵害など国民が著しい不利益を受けており,司法的救済の必要性が認められるような,極めて特殊で例外的な場合には,国会議員(及びその総体としての国会)において個別の国民の権利に対応した関係での法的義務及びその違反を認めることができるというべきであり,これによって国家賠償法1条1項所定の違法性を基礎付けることができる。最高裁昭和53年(オ)第1240号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁にいう容易に想定し難いような例外的場合とは,以上の趣旨に解すべきである。
イ 学生等適用除外規定の明白な違憲性
前記(1)(原告らの主張)のとおり,昭和34年に制定された国民年金法(昭和34年法)の学生等適用除外規定において20歳以上の学生等について国民年金制度の適用を除外したことが憲法14条に違反していることは明らかである。また,その結果として,20歳以上の学生の期間中に重度の障害を負った者に対しては一生涯にわたって障害年金が支給されないことが,当該障害者の個人の尊厳や生存すらも脅かすものであって,憲法13条ないし25条に明確に違反していることも,前記のとおりである。
ウ 違憲性が明白となってからの相当期間の経過
この学生等適用除外規定の違憲性は,その後の期間の経過に伴って,より一層明白になっていった。
(ア) 昭和36年の通算年金通則法の制定
そもそも学生を強制加入対象から除外した理由として被告らが主張している保険料の掛け捨て問題については,昭和36年に制定された通算年金通則法(昭和36年11月1日公布され,昭和36年4月1日にさかのぼって適用)により解決が図られている。それゆえ,仮に被告らが主張するように保険料の掛け捨て問題が学生等適用除外規定の立法理由であったとしても,既に昭和36年の時点においてはこの立法理由は消滅したのであるから,それ以降については学生を強制加入対象から除外したことの違憲性はより明白になっているといわなければならない。
(イ) 任意加入制度が機能していなかったこと
昭和34年法の制定に当たっては,20歳以上の学生のうち任意加入する学生はその3分の1と見込んでいたが,実際に任意加入した学生の数は予想をはるかに下回っており,わずかに1パーセントあまりにすぎなかった。それにもかかわらず,被告国は,任意加入を積極的に勧めるような広報周知を行うことがなかったのみならず,実際の現場の窓口においては,むしろ「学生は入らなくてもいい」といった誤った教示が平然と横行していた。このことからも,学生等適用除外規定の違憲性はより一層明白になっているということができる。
(ウ) 障害発生率の増加
他方,昭和30年代後半から急速に進展したモータリゼーション等により,むしろ昭和34年法制定当時の予想よりも高い確率で重度障害者が発生するようになっていたことが推測される。このように重度の障害者となる可能性が高くなるに伴って,当然,障害年金による所得保障の必要性もまた高くなるのであり,学生無年金障害者を必然的に発生させる学生等適用除外規定の違憲性は,年々明白になってきたといわなければならない。
(エ) 学生数の増加
人口の増加と大学進学率の増加があいまって,昭和34年当時は57万人と見込まれていた学生数は,年々増加の一途をたどり,昭和40年には93万人,昭和45年には140万人,昭和50年には173万人,昭和60年には184万人へと急増している。この学生数の増加と,前記の障害発生率の増加とがあいまって,学生無年金障害者の発生数(絶対数)は,年々増加の一途をたどっていったことが容易に推認できるのであり,このことからも,学生等適用除外規定の違憲性が年月の経過に伴って年々明白になってくるとともに,その違憲な学生等適用除外規定のゆえに発生してしまった学生無年金障害者に対して今後も一生涯にわたって障害年金を支給しないこと(救済立法を行わないこと)の違憲性もまた明白になってきた。
(オ) 昭和40年代半ばからの障害者団体等の運動の進展
昭和40年代半ばから各種障害者団体が障害者の所得保障を求める運動を強め,昭和50年代に入っては全国脊髄損傷者連合会(脊損の会)などが重度障害者で無年金状態にある者に対する年金給付等の救済措置を求めて政府(厚生省)や国会議員等に陳情を繰り返すようになった。殊に,昭和53年ころからは,「学生で20歳過ぎて障害を負い,国民年金制度の被保険者資格を与えられていないために,障害福祉年金をも受給できないでいる者」(学生無年金障害者)に対する障害年金の支給を求める陳述・請願が,衆参両院議長や厚生大臣宛てに行われ,あるいは,国会議員の政府に対する質問主意書の提出という形で,政府や国会に対して再三の要請が行われるようになった。これら障害者団体からの陳情・請願・要望を踏まえて,国会・政府としては,年金制度の谷間を埋めるべく,将来に向かっては新たな学生無年金障害者を発生させないために学生等適用除外規定の改定等の立法措置を行うとともに,既に障害を負って無年金状態を強いられてきた学生無年金障害者に対しては,(少なくとも将来に向かって)障害年金の支給が受けられるように是正立法(救済立法)を行うべきであった。ところが,これら障害者団体からの要請・陳情・請願等に対して政府・厚生省が示した対応は,「わが国の公的年金制度は社会保険方式を採用しており,制度に加入して,一定期間保険料を納めた者にのみ年金が支給される仕組みとなっているから,保険料を納めなかった者はダメだ」(昭和51年1月厚生省年金局長回答),「現行の国民年金制度では,重度障害者で保険料納付期間不足のため無年金となった者について,特例納付制度を設けて救済措置を講ずることは極めて困難であり,社会福祉政策全体を通じて配慮していくべきもの」(昭和51年ないし昭和53年厚生省回答),「障害者で無年金の人達を含めて,何らかの生活保障を考えねばという問題意識はあるが,その方法は目下検討中だ」(昭和56年6月厚生省回答),「無年金の人達は本当に気の毒で,是非とも救済しなければならないが,具体的な方法はいま暫く検討させてほしい。また,無年金障害者はどれ位いるか,調査を厚生省担当部局に命じておいた」(昭和60年9月厚生政務次官回答),などという消極的・否定的な内容に終始した。それどころか,無年金障害者救済施策の前提として必要不可欠と考えられる実態調査についても,昭和53年4月八代英太参議院議員の政府に対する質問主意書以来幾度も要求され続けてきた課題であったにもかかわらず,これを怠り続けてきた。
(カ) 障害者に対する人権保障の認識の深まり
昭和50年の国連障害者の権利宣言を踏まえて,昭和50年以降,国内的にも国際的にも,障害者に対する人権保障がクローズアップされてきた。厚生省は,昭和58年8月に,障害者生活保障問題専門家会議の報告書をまとめ,現行の障害者に対する所得保障において保障の手が及び得ないものがみられるので,すべての成人障害者が自立生活を営める基盤を形成する観点から所得保障全般にわたる見直しを行うべきであるとした。
(キ) 昭和60年改正時の状況
昭和60年の国民年金法の改正(昭和60年改正)は,昭和34年に国民年金法が制定されて以来の大改正であり,すべての国民に共通する基礎年金制度を導入し,厚生年金等はその上乗せ分として統合を図るという,いわば公的年金制度の一元化に向けた抜本的改革の第一歩ともいうべき性格のものであったが,この改革は既に昭和50年ころから検討が始まり,昭和57年の臨調行政改革の基本答申以後急速に準備が加速されて,年金制度改革の構想が次第に固められる趨勢となっていった。このような状況の中で,厚生省は昭和57年末から実施した有識者調査の結果や各方面の提言等を踏まえて国民年金法,厚生年金保険法,船員保険法の改正案をまとめ,昭和58年末から昭和59年1月にかけて,三法改正要綱についての諮問を国民年金審議会や社会保険審議会,社会保障制度審議会に対して行った。これを受けた国民年金審議会は,同月に提出した答申で,諮問された年金制度改革案について,「国民年金制度の適用を拡大し,全国民共通の基礎年金を支給する制度に発展させるものであり,……了承する」としながらも,「なお,さらに検討すべき課題」として,「学生の適用のあり方については,引き続き検討すべきである」ことを挙げた。また,社会保障制度審議会も,同様に,諮問された改革を「大筋において理解する」としつつも,「なお留意されるべき問題点」としてほぼ10項目を掲げ,その中で「(六) 20才未満で障害の状態になったときには障害基礎年金が受給できるのに対し,任意加入しなかった学生がその期間中に障害の状態になったときには障害基礎年金が受給できない」と厳しく指摘した。以上の動きを察知した全国脊髄損傷者連合会は,こういう「大改革のときに無年金のことが解決されなければ,ほとんどチャンスがなくなるだろうという悲壮感」で,昭和58年12月には厚生大臣宛てに陳情書を提出したり,翌昭和59年3月ころには厚生省の年金法改正案に対する意見書をまとめ,その中で「20歳以上の重度障害者については,無年金者として依然として救済されていないし,無年金障害者を出さないという歯止めもない」という主旨の見解を厚生省に表明した。また,同年11月には,衆参両院の社会労働委員会の委員達に対して,国会に上程された国民年金法改正案には,障害(学生)無年金者の救済策が含まれていないことを指摘して抗議したり,それとは別に,衆参両院議長宛てに無年金者救済を求める請願を,同年中にも翌昭和60年4月にも重ねて行った。ところが,これに対して,衆議院では昭和59年4月の第101国会から同年12月の第102国会まで,また,参議院では第102国会において,それぞれ審議と議決を行い,国民年金法の改正案の審議に約1年をかけたが,改正法の中で学生無年金障害者の発生を防止する措置も,既に生じた学生無年金障害者を救済する措置も全く講じることなく,違憲の状態のままに放置した。
(ク) 平成元年改正時の状況
平成元年改正法により,平成3年4月から20歳以上の学生も国民年金制度の強制適用の対象とする旨が定められた。平成元年改正法においては,更に,学生の保険料納付義務の免除に関しては,親の所得を考慮して,申請により免除を行う制度が導入されることとなった(平成元年改正後の国民年金法90条1項5号)。このように,平成元年改正法により,学生の被保険者資格の問題は解決されたが,既に生じていた学生無年金障害者に対しては何らの救済措置もとられずになおも放置され続けた。平成元年12月14日の参議院社会労働委員会では,「学生時の障害無年金の対策等障害者の所得保障の充実について,障害者の『完全参加と平等』を促進する見地から,今後総合的に検討すること」とする附帯決議が可決されているが,このことは,国会が正に学生無年金障害者の救済の必要性を強く認識していたからにほかならない。
(ケ) その後今日に至るまでの状況
平成元年改正により学生等適用除外規定が撤廃され,平成3年4月1日の施行時より学生も強制加入とされた結果,それ以降,将来に向かっては学生無年金障害者の発生が一応防止された。ただ,そもそも学生は類型的に稼得活動に従事しておらず,それゆえに保険料拠出能力が一般的に認められないにもかかわらず,これに対する有効な措置を整備しなかったため,強制加入とされたものの保険料拠出が困難な学生は,やはり無年金障害者となるおそれがあり,この問題が解消されるのは,平成12年改正法によって学生納付特例制度が創設されるまで待たなければならなかった。また,平成元年改正法の施行以前に既に発生していた多数の学生無年金障害者に対する救済は更に遅れて,平成16年12月の臨時国会において,特定障害者に対する特別給付金の支給に関する法律が可決されるまで放置され続けた。しかも,同法の施行は平成17年4月1日であり,その内容は,請求手続を行った時点から将来に向かってのみ,障害基礎年金の6割にすぎない金額を,特別の福祉的手当として支給するという極めて不十分なものにとどまっている。
エ 原告らの人権侵害の重大性
学生が国民年金制度の強制適用から除外された結果,原告らには,次のような著しい不利益,人権侵害が生じている。
① 保険料免除制度の欠如及び国民年金未加入による不利益情報の不告知によって,国民年金に加入することができなかった。
② ①の結果として,障害等級1級の場合が年間99万3125円(月額8万2760円),2級の場合が年間79万4500円(月額6万6208円)の障害基礎年金が受給できない。
③ ②の結果として,障害基礎年金受給者に認められる,老齢基礎年金の保険料の法定免除が認められず,原則として保険料を負担し続けなければならない。
障害者の権利保障の根幹が所得保障であることに異論はないところ,上記の状態は,原告らの社会保障を平等に受ける権利を侵害していることはもとより,正に生命維持に直結する生存権の重大な侵害である。
オ 司法的救済の必要性
国民年金制度は,国民の社会保障の問題であり,その制度設計に当たっては,政府ないし国会の裁量が大きく認められる分野であるから,本来は議会という政治的過程を通してその不合理性が是正されるべき問題であるということができるとしても,学生無年金障害者は,国民全体の中では極めて少数者であり,それゆえ,自らの人権侵害状態を多数決原理に基づく議会制民主主義による政治過程の中で解決していくことがほとんど期待できないことは,実態として明らかであり,学生無年金障害者に対する司法的救済の必要性は極めて高い。
なお,特定障害者に対する特別給付金の支給に関する法律は,平成17年4月1日から施行されることとなったが,対象を任意加入時代の主婦と学生に限定していること,請求の手続をとった時点から将来に向かってのみ給付されること,給付金額も障害基礎年金を相当下回ること,給付の性格はあくまでも年金ではなく特別の福祉的手当であることなど,その内容は不十分であり,同法が成立したからといって,原告らに対する司法的救済の必要性はいささかも変わるところはない。
カ 学生等適用除外規定を存置し,原告ら学生無年金障害者に対する救済措置をとらなかった立法行為ないし立法不作為の違法性
以上のとおり,昭和34年法において学生等適用除外規定を設け,平成元年改正までこれを改正せずに存置し,原告らを始め学生当時重度の障害を負いながら学生等適用除外規定によって国民年金制度の適用から除外されたため障害年金ないし障害基礎年金を受給することができない者に対する救済措置を今日に至るまでとらなかった立法行為ないし立法不作為は,前掲60年11月21日第一小法廷判決にいう容易に想定し難いような例外的場合に該当するのであって,国家賠償法上も違法との評価を免れない。
キ 国会,内閣の故意,過失
(ア) 昭和34年法制定時
国会(国会議員)及び内閣は,昭和34年法の制定当時において,既に学生無年金障害者が毎年必ず一定の割合で発生することを十分に予測しており,昭和34年法7条3項において学生等を含む「前項各号に掲げる者に対する将来にわたるこの法律の適用関係については,国民年金制度と被用者年金各法による年金制度及びその他の公的年金制度との関連を考慮して,すみやかに検討が加えられたうえ,別に法律をもって処理されるものとする。」旨規定されて,学生等に関する国民年金の適用関係の見直しが国民年金法の制定当初から予定されていたにもかかわらず,学生を強制加入から除外する立法をあえて行った上,学生当時重度障害を負ったにもかかわらず障害年金を受給することができない障害者に対して何らの救済策をも講じないままに放置したのであるから,国会(国会議員)及び内閣には,過失どころか故意が認められるといわなければならない。
(イ) 昭和40年代当時
昭和40年代にかけての爆発的なモータリゼーションの進展と,学生数の増加によって,学生無年金障害者の数もまた急増していたことは容易に推認することができるにもかかわらず,障害年金及び障害福祉年金の支給の範囲,程度を拡充しながら,漫然と学生等適用除外規定を放置し続けた上,発生してしまった学生無年金障害者に対する何らの救済措置をも講じなかったのであるから,国会や内閣には故意ないしは重大な過失が認められる。
(ウ) 昭和50年代当時
昭和50年代には,全国脊髄損傷者連合会を始めとする各種の障害者団体が無年金障害者に対する障害年金支給のための取組みを開始し,厚生省,衆参両議院や個々の国会議員に対して,陳情,請願,要望書の提出を繰り返し行った。特に,昭和60年改正法が国会で審議されていた昭和58年から昭和59年にかけては,政府提出改正法案の中に無年金障害者の救済が含まれていないことに対する抗議や,改正案に無年金障害者の救済措置を盛り込む要求が,衆参両院の社会労働委員会所属の国会議員に対して直接に行われていたのであるから,国会(国会議員)や内閣の故意ないしは重大な過失はより一層明らかである。
(エ) 昭和60年改正時
昭和60年改正時には,国会議員及び内閣(厚生大臣)には,既に学生無年金障害者の問題について十分な認識があり,学生を仮適用にする方法,学生期間中の保険料納付を猶予する方法,学生期間中は保険料を半額納付とする方法,学生期間中の障害事故に対しては無拠出での年金支給などの具体案も出尽くしており,学生無年金障害者発生防止と既に生じている学生無年金障害者の救済を図ることは十分に可能であった。それにもかかわらず,これを無為に先延ばしにした国会や内閣の故意,過失は重大である。
(オ) 平成元年改正時
平成元年改正法により,学生等も一律に被保険者とした上で,学生以外の者に適用される免除基準とは異なる「学生に係る保険料免除基準」(平成3年1月30日保発第2号)による新たな免除基準を設け,学生の保険料負担能力を親元世帯の収入で判断することとした上で,免除の基準となる所得額を学生以外の者と比べて高額にすることによって,親の負担が過大なものとならないように配慮した。この改正法は学生無年金障害者の発生を将来的に防止することを一つの目的としていたが,改正以前に学生無年金障害者となった者に対する救済は図られぬまま放置された。国会は,平成元年改正時点において,既発生の学生無年金障害者に対し年金を保障しなければ昭和34年法による違憲状態が解消されないという結果を十分認識しており,かつ,平成元年改正において上記違憲状態を解消する立法を行うことが可能であったから,当該立法を行わなかった国会や内閣には故意又は重大な過失があるというべきである。
(カ) 平成元年ないし平成12年当時
平成元年,参議院社会労働委員会において,「学生時の障害無年金の対策等障害者の所得保障の充実について,……,今後総合的に検討すること」との附帯決議が採択された。また,平成6年には,衆参両院の厚生委員会において,「無年金である障害者の所得保障については,福祉的措置による対応を含め検討する」旨の附帯決議が採択された。これらの附帯決議にもかかわらず,学生無年金障害者の問題を放置し,自らこの問題を解決する立法を怠った国会や内閣の責任はますます重大となった。
(キ) 平成12年改正時以降
平成12年,学生等であって,本人所得が一定(政令により年間約133万円以下)のものについて,申請によって保険料を免除する旨の法改正(平成12年改正)がされた(同改正後の国民年金法90条の3第1項)。これは,学生無年金障害者の発生が制度の根本的欠陥によって生じたものであるとの指摘を国会が自認したものにほかならず,学生無年金障害者の救済の必要性を国会が認めざるを得なかったからである。しかし,依然として既に生じた学生無年金障害者らについては何らの対応もされなかった。前記のとおり,国会や内閣はそれまでに学生無年金障害者問題の解決の必要性を強く認識していたのであるから,この改正法において,あえて既存の学生無年金障害者の問題を無視したことは,憲法25条2項(向上増進義務)からみても許されない対応である。したがって,平成12年改正時から現在に至るまで学生無年金障害者に年金を保障する立法を行わなかった国会や内閣に過失があることは明らかである。
ク 小結
以上によれば,昭和34年の国民年金法(昭和34年法)制定時における国会の立法行為及び内閣の法案提出行為は,国家賠償法上も違法の評価を免れず,そのことにつき国会及び内閣には重大な過失が存在したものである。
また,国は,昭和36年の通算年金通則法の成立時,昭和40年代,昭和50年代,あるいは昭和60年改正時において,学生等適用除外規定の改正を行って将来に向かって学生無年金障害者の発生を防ぐ措置を採らなかったことも国家賠償法上違法の評価を免れない。さらに,上記の各時期,あるいは,遅くとも平成元年改正時において,既に重度の障害を負っていた無年金障害者が一切の所得保障措置を受けられない不平等状態を是正し,違憲状態を解消するための立法措置をとらなかったこともまた国家賠償法上違法との評価を免れない。そして,これら立法不作為につき,国会及び内閣に故意ないしは重大な過失があったことも明らかである。国会及び内閣のこの責任は,平成元年改正以降平成12年改正を経て今日に至るまでなおも学生無年金障害者の問題を放置し,学生無年金障害者に年金を保障する立法を行わないことにより,ますます重大なものとなったというべきである。
(被告国の主張)
ア 国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責に任ずることを規定するものであり,国会(議員)の立法行為(立法不作為を含む。)が同項の適用上違法となるかどうかは,国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかの問題であって,当該立法の内容の違憲性の問題とは区別されるべきであり,仮に当該立法の内容が憲法の規定に違反するおそれがあるとしても,その故に国会の立法行為が直ちに違法の評価を受けるものではない。そして,「国会議員は,立法に関しては,原則として,国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり,個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではないというべきであって,国会議員の立法行為は,立法内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというがごとき容易に想定し難いような例外的場合でない限り,国家賠償法1条1項の規定の適用上,違法の評価を受けないものといわなければならない」(前掲最高裁昭和60年11月21日第一小法廷判決)。
しかるに,国民年金法の学生等適用除外規定が憲法の一義的な文言に反するものでないのは明らかである上,前記のとおり,学生等適用除外規定は十分な合理性を有するものであって,そもそも憲法に反するようなものでない。また,憲法上,20歳に達してから在学中に障害を受けた者について障害を理由とする年金の受給がより容易となるような措置等を講じたり,20歳以上の学生を国民年金の強制適用の対象とする立法を行ったりすることを命ずる明文の規定は存せず,このような立法をすべきことが一義的に定められているものではない。したがって,被告国に原告らが主張するような国家賠償法1条1項の違法は認められないというべきである。
イ 制定当初の国民年金法(昭和34年法)7条2項7号について
制定当初の国民年金法(昭和34年法)7条2項7号が憲法25条にも憲法14条1項にも違反していないことは,前記のとおりである。
なお,この点に関し,原告らは,制定当初の国民年金法(昭和34年法)7条3項をもって学生無年金障害者が発生することを認識していたことの証左とし,立法義務が生じた旨主張するようであるが,そもそも,その旨の認識によって国家賠償法上の立法義務が生じるとする論拠自体成り立たない上,同項は,先行する被用者年金制度との関連調整,とりわけ国民年金法制定当時には未整理となっていた他の制度との間の資格期間の通算を念頭に置いた規定であって,原告らが主張するような趣旨のものではない。したがって,同条項をもって,立法の内容が憲法の一義的な文言に違反している事情や立法すべき義務の根拠とすることはできない。
ウ 昭和60年改正当時学生等適用除外規定の内容が憲法に違反しないことも前記のとおりであるが,その点をおいても,昭和60年改正当時,学生等適用除外規定の内容が憲法に違反するという議論すら見当たらなかったのであるから,違憲であることが一義的ないし明白であったということができないことは明らかである。
エ 平成3年4月1日より前に初診日があった学生障害者に対して障害基礎年金等が支給されるとの特別措置を定める立法がされていないことに関する原告らの主張について
そもそも,前記のとおり,国民年金制度の本質に照らし,加入もせず,保険料も納付していなかった者に障害基礎年金等が支給されないことが合理性を欠くとは到底いえない。また,原告らが主張するような立法を行う義務が憲法上一義的に定められているものでないことは明らかである。さらに,原告らが指摘する制度の新設,改正が行われてきたとしても,これらは,制度に加入し,保険料を納付してきた者を対象として,国民年金制度の保障を充実させたものであって,制度に加入もせず,保険料も納付しなかった者をも国民年金制度の保障対象とするか否かという問題とは,観点を異にするものであって,立法義務の根拠となるものではない。
原告らは,平成元年の参議院社会労働委員会において,「学生時の障害無年金の対策等障害者の所得保障の充実について,今後総合的に検討すること」との附帯決議がされたこと,平成6年の衆参両院の厚生委員会において,「無年金である障害者の所得保障については,福祉的措置による対応を含め検討する」旨の附帯決議がされたことをもって,平成3年4月1日より前に初診日のある学生障害者に対し,障害基礎年金等の支給をすべき立法をすべき義務が生じたかのような主張をするが,このような附帯決議という立法機関の行為によって,将来の立法機関ないしそれに所属する公務員(国会議員)を拘束し,法的な義務を課すことはあり得ないから,原告らの主張はそもそもその前提において失当である。また,このような問題は,国民年金制度の本質,社会保障制度全体の枠組みにかかる問題であって,この点に関し憲法上一義的に定まっているようなものではないことは明らかであるから,原告らの主張するような立法をしないことをもって国家賠償法上の違法と評価することは到底できないというべきである。さらに,保険料を納付していなかったために公的年金の受給権を有しない者は,20歳以上の学生時に未加入で障害を負った者だけではなく,高齢者や遺族など他にも存在するのであり,これらの障害者に対していかなる対応を行うかは,年金制度の在り方全体を視野に入れながら検討すべき問題であるところ,平成元年参議院社会労働委員会において,「総合的に検討」を行うものとされ,平成6年の衆参両院の厚生委員会においては「福祉的措置による対応を含む検討」を行うものとされているのは,以上の問題を検討すべきことを述べているものにすぎず,これらの附帯決議をしたことをもって法的義務を課すものということはできない。
原告らは,平成12年に学生に関する新たな免除規定が設けられたことをもって,原告らの問題を無視したことは憲法25条2項からみて許されず,国家賠償法1条1項上違法である旨主張する。しかしながら,免除規定の有無と,国民年金制度に加入せず,保険料も納付していない者に対する年金の支給とは,全く次元を異にする問題であって,加入した上で保険料免除を問題にしているわけではなく,全く加入もしていない原告らにとって,免除規定の有無が問題となるものではない。さらには,国民年金制度が,保険料の納付という国民の共同連帯によって支えられていることなどを前提とすれば,免除規定を設けないことが憲法の一義的な文言に違反しているということができないことも明らかである。
オ 以上から明らかなように,本件については国会議員の立法行為において職務上の義務違反は認められず,国家賠償法1条1項の違法性はない。
カ 内閣の制度存置・法案不提出の違法性に関する原告らの主張について
法律の改正の権限は立法府にあり,内閣に認められているのは法律の改正案の提出権であること,内閣は立法府が制定した法律を誠実に執行しなければならないこと(憲法73条1号),立法府(そこに属する国会議員)は,立法行為に関し,原則として,国民全体に対する関係で政治責任を負うにとどまり,立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うがごとき,容易に想定し難いような例外的な場合でない限り,国家賠償法上違法の評価を受けないと解されること(前掲最高裁昭和60年11月21日第一小法廷判決)などを考え併せると,国家賠償法1条1項の適用上,立法行為(不作為を含む。)の違法性を肯定することができない場合には,内閣は,法律の改正案の提出に関し,国民全体に対する関係で政治責任を負うことはあっても,個別の国民に対応した関係で法的義務を負うものではないと解するのが相当である(最高裁昭和58年(オ)第1337号同62年6月26日第二小法廷判決・裁判集民事151号147頁(判例時報1262号100頁),東京地裁昭和62年10月7日判決・判例時報1248号32頁参照)。本件において,国会の立法行為について職務上の義務違反が認められず,国家賠償法1条1項の適用上違法とは認められないことは上記アで述べたとおりであるから,内閣の改正案不提出について同条項の適用上違法と認められないことは,明らかである。
(5)  個別的教示義務等違反を理由とする被告国の国家賠償責任
(原告らの主張)
ア 昭和34年制定時の国民年金法(昭和34年法)においては,20歳以上の学生等は国民年金制度の適用除外とされ(昭和34年法7条2項7号),都道府県知事の承認を受けて被保険者となることができるのみであった(同法附則6条)。そして,国民年金の給付を受給するためには,国民年金制度に加入していることの他にも,保険料の納付(法30条)なども要件とされ,障害を負ってから保険料を追納して給付を受けることは認められていないため,任意加入しなかった学生が学生期間中に障害を負った場合,一生涯にわたって障害基礎年金を受給することができなくなるという事態を招くこととなった。そのような事態を招く学生等適用除外規定自体が憲法25条,14条等に違反するものであることは前記(1)(原告らの主張)ウ,エのとおりである。被告国(内閣)は,このような事態を招くことが明らかな学生等適用除外規定を設け,学生等を一律に国民年金制度の枠外に置いたのであるから(先行行為),学生等が上記のような事態に陥ることを防ぐことのできる制度である任意加入制度を学生等に積極的に利用させるようにすべき(先行行為に基づく)義務がある。すなわち,被告国(内閣)は,国民年金制度の適用を除外した者に対して,任意加入制度が存在すること及び国民年金制度に任意加入しなかった場合に予想される不利益について,個別的に教示し,周知徹底して,強制加入から除外された者らが任意加入するか否かを選択する機会を与えなければならない義務を負う。
また,任意加入制度の下においては,強制加入から除外された個々の任意加入資格取得者が,自らの判断により,国民年金に加入するか否かを決め,都道府県知事の承認を受けて被保険者となるのであり(昭和34年法附則6条),このような判断を行うためには,当然,その前提として,任意加入制度の内容等についての十分な知識,情報が与えられていることが必要不可欠であり,昭和34年法附則6条は,個々の任意加入資格取得者がそのような知識,情報を与えられていることを前提とした規定であると解される。
以上のように,任意加入制度の下においては,適用対象者に対し,任意加入制度の存在及び制度を利用しない場合の不利益について十分周知徹底させることが制度上当然予定されているのであり,しかも,自ら学生等を強制加入から除外するという先行行為を行っている被告国(内閣)には,広報,周知徹底義務及び個別的教示義務が認められ,しかも,その義務は,単なる責務にとどまるものではなく,憲法上,法律上の解釈から導かれる法的義務として認められるものである。すなわち,国民年金任意加入制度についての広報,周知徹底義務ないし個別的教示義務は,憲法25条,同法14条,国民年金法(昭和34年法)1条,7条2項7号,同附則6条の解釈から当然導かれるものであり,次に述べるとおり,広報,周知徹底すべき内容や範囲は明確であることから,法的拘束力を持つ法的義務といえる。
イ 被告国(内閣)が広報・周知徹底すべき内容は,上記のとおり,国民年金任意加入制度の存在,及び,任意加入制度を利用しない場合についての不利益であり,内容が不明確とはいえないことは明らかである。また,国民年金任意加入制度において被告国が広報・周知徹底すべき対象者は,国民年金制度の適用除外とされた20才以上の学生等であり,他の社会保障制度と比べてその対象者は限定されており,広報,周知すべき範囲は明確である。そして,以下に述べるように,広報,周知徹底のための容易かつ具体的な方法もあった。すなわち,「国民年金被保険者の適用について」(昭和39年4月27日庁保険発第18号)は,国民年金の適用業務について,適用対象者名簿を作成した上,該当者に対して年齢が20歳に達した都度又は一定の時期に文書をもって国民年金の被保険者となった旨を通知し,国民年金被保険者資格取得届を提出させるなどといった手順を具体的に規定し,上記通知を行うに当たって,その者が既に国民年金制度の適用除外規定に該当する者であるときは,該当者又は該当者の属する世帯の世帯主をしてその旨期限を定めて回答させる措置を講じ,該当者が強制適用を受ける被保険者でないことを挙証させるものと定めており,「国民年金被保険者の適用」(昭和40年3月30日庁保険発第9号),「国民年金被保険者の適用について」(昭和40年3月30日庁保険発第15号),「国民年金被保険者の適用について」(昭和41年5月6日庁保険発第18号)等の一連の通知においても,前記「国民年金被保険者の適用について」(昭和39年4月27日庁保険発第18号)に従った取扱いの励行や被保険者に対する制度内容の周知徹底を図ることなどが定められていた。これら一連の通知,通達から明らかなように,20歳になった者という限定され,かつ,選挙人名簿等により把握することが容易な国民年金制度の適用対象者に対して,被告国は,極めて詳細,具体的かつ実行可能な方法を示しつつ,国民年金制度の内容等について,個別的に周知徹底及び適用の推進を図るべきであるとしていたのである。そして,国民年金制度の適用除外とされた学生等であっても,20歳になった者であることは強制適用を受ける者と異ならないことから,被告国は,学生等に対しても上記適用事務を行うことになっており,さらに,学生等を含む任意加入資格取得者には,強制適用を受ける者でないことを挙証させることになっていたのである。したがって,この挙証を要求する過程で個々の学生等に対して任意加入制度の内容等についての情報を提供して任意加入制度の周知徹底を図ることは,極めて容易に実行可能であった。
ウ しかるに,国の機関委任事務としての上記イの適用事務は,全国的にみてほとんど誠実に執行されておらず,原告らに対する個別的教示もされなかった。むしろ,窓口では担当者から誤った教示がされた例すら存する。例えば,たまたま親族から国民年金への加入を勧められた原告丙川は,自ら積極的に自治体の国民年金の窓口に出向き,任意加入の相談をしたにもかかわらず,当該窓口の担当者から,厚生年金等老齢年金の給付に関して国民年金より有利な制度に加入することが見込まれるのであるから,あえて学生等であるうちに国民年金に加入する必要はないといった教示を受けたために任意加入をしなかった。もちろん,その際に,国民年金に任意加入しなければ厚生年金保険等に加入する前に障害を負っても障害基礎年金が支給されない旨の教示は全くなされていない。このように,国民年金の任意加入制度のみちを行政の担当者の誤った教示によって閉ざされた者すら存在するのである。また,被告国(内閣)が行った広報についても,学生は大学卒業後厚生年金保険制度に加入しない場合にのみ加入すればよく,学生期間中に任意加入する必要はないとしたものさえ存在するなど,甚だ不十分なものであって,配偶者の任意加入制度に関する広報の実態と比較してもその差は歴然としており,原告らの手元に任意加入制度の存在及び任意加入しなかった場合の不利益について記載された広報誌が送られてきたことはなかった。原告らは,このような被告国(内閣)の広報,周知徹底義務違反により任意加入する機会を奪われた結果,任意加入していれば受給することができた年金を受給できなかったのである。
エ 以上のように,被告国(内閣)は,学生等に対し,任意加入制度の存在及び任意加入しなかった場合の不利益について広報,周知徹底する法的義務ないし個別的教示義務(ないし告知聴聞の機会付与の義務)があったにもかかわらず,これを怠り,その結果,原告らは,国民年金制度に任意加入する機会を奪われ,任意加入していれば受給することができた年金を受給することができなかったのであるから,被告国には原告らに生じている損害を賠償すべき義務がある。
(被告国の主張)
社会保障制度の告知・教示については,法令で義務付けられている場合を除いて,これを行わないからといって行政庁に何らかの法的責任が生じるものではない。なぜならば,国の法令は,公布によって国民に周知されたものとして,国民の権利義務を創設あるいは規制する効力を発するものであり,法的義務としての周知徹底義務は存在しないからである。まして,個別的な告知ないしは教示の義務が存在することはあり得ない。現行法上,社会保障制度の広報及び個別教示を一般的に義務付ける明文の規定は存在せず,国民年金法上も,任意加入制度の広報及び個別教示を義務付ける明文の規定は存しない。原告らは,被告国は,任意加入しなかった学生が学生期間中に障害を負った場合に一生涯にわたって障害基礎年金を受給することができなくなるという悲惨な事態を招き憲法25条,14条等に違反する学生等適用除外規定を設けたという先行行為に基づいて広報及び個別教示をすべき義務を負う旨主張するが,学生等適用除外規定がそれ自体として合理的なものであり,憲法25条,14条に違反するものではないことは,前記のとおりであるから,被告国が先行行為に基づく義務を負うと考える余地はない。また,原告らは,任意加入制度の下では,その対象者に対し,同制度の存在及びこれを利用しない場合の不利益について十分周知徹底することが制度上予定されていると主張するが,学生は,国民年金制度の保障の枠外に位置付けられる者であり,ただ,自らの保障を充実したいと希望する場合には国民年金制度による保障を受けることが許容されるにとどまるのであり,制度を利用しないことが何ら不利益と評価されるものではないから,このような立場にある学生に対し,国民年金制度に任意に加入するみちの存在を周知徹底することが制度上予定されているということはできず,任意加入制度を設けた国民年金法附則の規定から原告らの主張するような周知徹底義務を導き出すこともできない。したがって,原告らの主張するような法的義務がない以上,原告らの主張するような法的義務の存在を前提とする,国家賠償法1条1項の違法性もないということとなる。また,本件について告知,聴聞の機会付与の問題が生じないことは,前記(1)(被告らの主張)エのとおりである。
(6)  原告らの損害
(原告らの主張)
ア 原告らが障害を負った当時,国が学生等適用除外規定を改正し,あるいは,学生無年金障害者を救済する法改正を行っていれば,原告らは,症状固定日又は障害認定日から遠くない時期に裁定請求を行っていたであろうし,原告らはそのころから障害年金の支給を受けていたはずである。しかるに,原告らは被告国による前記のような度重なる違憲違法な立法行為ないし立法不作為等により,本来受けられるべき障害年金ないし障害基礎年金を受けられず,年金額と同額の損害を受けたほか,年金が支給されていれば経済的に安定し精神的にも安心した生活を送ることができたにもかかわらずその利益を侵害され,日常生活において多大の精神的苦痛を被っている。さらに,原告らは障害年金の支給を受けられないために,所得がない状態のなかにあっても,自らの老後のために老齢年金の掛け金を支払い続けざるを得なかった。原告らのうち最も早く障害を受けた原告甲野についてみても,原告甲野は昭和38年9月に両視神経萎縮の障害を受けており,障害の固定した昭和39年11月(身体障害者手帳1級認定時)から現在までの約40年余りの間,受けられるはずであった障害年金を受けられなかったのであり,当初の障害年金額は現在と比べると低額であったことを含めて考えても,原告甲野が受けることのできなかった障害年金額と支払う必要のなかったはずの国民年金保険料の合計は数千万円に上る。国会及び内閣の違憲違法な立法行為・立法不作為等によって原告らが長年にわたって強いられてきた極めて厳しい生活実態及び著しい精神的苦痛などにかんがみると,原告らに支払われるべき慰謝料は,1人当たり2000万円を下ることはない。
(被告国の主張)
否認ないし争う。
第3  争点に対する判断
1  国民年金法の制定及び改正の経過
前記前提事実等に加えて甲第11,第12号証,甲第13号証の1,2,甲第14号証の1,2,4ないし7,甲第44号証,甲第49ないし第62号証,甲第80,第106,第111,第128号証,甲第129号証の2,3,甲第147号証,乙第1ないし第3号証,乙第8,第9,第11,第12号証,乙第13号証の1,2,乙第14号証の1,乙第15ないし第21号証,原告乙山及び弁論の全趣旨によれば,国民年金法の制定及び改正の経過等について,次のとおり認めることができる。
(1)  昭和34年法の制定
ア 昭和34年法の概要は,前提事実等(2)のとおりである。
イ 昭和34年法は,当時の我が国において,厚生年金保険制度を始め恩給,各種共済組合による年金制度等,既存の各制度がいずれも一定の条件を備えた被用者を対象とするものであって,国民の大半を占める農民,商工業者,零細企業の被用者等は,年金制度から取り残されたままになっているところ,国民の死亡率が激減し,平均余命は戦前に比べて飛躍的な伸びを見せ,その結果,老齢人口が絶対数においても国民全体の中において占める比率においても著しい増加の傾向を見せており,他方で,これら老齢者の置かれている生活状態は戦前に比べてむしろ厳しさを加えており,身体障害者や母子世帯の場合も程度の差こそあれ同様の状態にあるとの認識から,社会保障制度の一環として全国民に年金制度を及ぼし,これを生活設計のよりどころとして国民生活の安定を図っていく体制を確立することを目的として,国民年金制度を創設することとしたものである。
昭和34年法においては,いわゆる拠出制(社会保険方式)を基本とし,経過的及び補完的にいわゆる無拠出制を認める建前がとられた。拠出制年金については,国庫は毎年度納付された保険料の総額の2分の1に相当する額(すなわち,給付額の3分の1)及び国民年金事業の事務の執行に要する費用の全額を負担するものとされ,無拠出制年金についてはその全額を国庫が負担するものとされた。
拠出制を基本としたのは,① 自ら保険料を支払い,その保険料に応じて年金の支給を受けるという仕組みを取ることにより,老齢のように予測することができる事態はもとより,身体障害又は夫の死亡という事態に対しても,すべての人が,若年のうちから,自らの力でできるだけの備えをするという原則を堅持していくことが,国民年金制度が将来にわたり健全な発展を遂げていくための不可欠の前提と考えられたこと,② 無拠出制を基本とした場合,その財源は国の一般財源に求めざるを得ない関係上,財政支出の急激な膨張は避けられず,将来老齢人口の急激な増加が予想される中,将来における国の財政負担が膨大になり,それだけ将来の国民に対して過度の負担を負わせる結果となることから,これを避けるためにも,拠出制を基本とした積立方式をとり,積立金及びこれから生ずる利子収入を有力な財源として給付費を賄っていく仕組みが必要であると考えられたこと,③ 無拠出制を基本とすると,その支出を賄うための収入がその時々の財政及び経済の諸事情の影響を受けやすく,年金制度が本来有すべき安定性,確実性が害されると考えられたこと,によるものであるなどと説明されている(乙第1,第2,第12号証,乙第13号証の1)。
ウ 拠出制年金の被保険者については,日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の日本国民とするものとされたが,厚生年金保険法,船員保険法その他の被用者年金各法(昭和34年法5条1項各号に掲げる法律及び条例)の被保険者等,公的年金各法に基づく年金たる給付(同法5条2項各号に掲げる給付)の受給権者等,これらの者の配偶者及び学生等(定時制課程及び夜間部の学生等,通信教育を受ける者を除く。)は被保険者から除外され(同法7条1項,2項),同条3項において「前項各号に掲げる者に対する将来にわたるこの法律の適用関係については,国民年金制度と被用者年金各法による年金制度及びその他の公的年金制度との関連を考慮して,すみやかに検討が加えられたうえ,別に法律をもって処理されるべきものとする。」旨規定された。
被保険者を20歳以上60歳未満としたのは,大部分の国民が高等学校卒業程度で稼得活動に入ること,老齢年金の支給開始年齢が65歳とされていること,被用者の定年が一般に55歳であるのに対し,自営業者の場合は稼得活動に従事する期間がこれよりも長いこと,被保険者期間を40年とすることが,他の公的年金制度との釣合いを考慮した結果実情にかなうだけでなく,保険料を引き下げる点で実益があること,などの点を考慮したものであるとされる(乙第12号証)。
被用者年金各法の被保険者等及び公的年金各法に基づく年金たる給付の受給権者等が国民年金制度の適用除外とされたのは,国民年金制度を創設するに当たり,これら現行被用者年金制度等の適用者をも含めた全国民を対象とするのか(その場合,現行被用者年金制度等の適用者に国民年金制度を重ねて適用するのか,それとも,現行被用者年金制度等を廃止して一つの基本的な国民年金制度を創設するのか),議論のあったところ,これら現行被用者年金制度等にはそれぞれ独自の沿革や目的があることなどから,国民年金制度を全国民に対する年金的保護の最低基準を定める制度として位置付け,これら現行被用者年金制度等の適用を受けている者や既にこれらの制度によって年金の支給を受けている者は,一応国民年金制度で考えられている以上の給付を保障されていることから,さしあたりこれら現行被用者年金制度等の適用者を除外した制度を創設しても,特に不合理ではないし,国民年金制度をこれら現行被用者年金制度等とは別個の制度として創設することとしたことによるものである。もっとも,国民年金制度の適用者から現行被用者年金制度等の適用者を除外すると,国民年金制度と現行被用者年金制度等の通算調整や現行被用者年金制度等相互間の通算調整を行わなければ,各制度の被保険者でありながら各制度間を移動すると年金の支給を受けることができなくなる者が多数生ずることとなって国民年金制度等の意義が減ずるおそれがあることから,上記のとおり,これについて具体的方策を講ずべきことを同法7条3項の規定の形で明記したとされる(乙第1,第12号証,乙第13号証の1)。
被用者年金制度等の適用者の配偶者が国民年金制度の適用除外とされたのは,これら現行被用者年金制度等は被用者である夫と職を持たず家事に専念する妻という通常のいわゆるサラリーマン世帯を給付の標準的な単位とするいわゆる世帯単位の給付設計がされていて,現行被用者年金制度等の適用者の妻は,一応これら被用者年金制度等による保障が及んでいる上,稼得活動に従事していないことが通常で保険料の拠出能力に問題があることから,国民年金制度を創設するに当たり,これら現行被用者年金制度等の適用者の妻に対する年金的保護の不十分な点をこれら被用者年金制度等の改正によって行うか妻に国民年金制度を適用することにより行うかについて議論があったところ,一応これら現行被用者年金制度等の適用者の妻を適用除外とした上,国民年金制度に任意加入することができるものとされたことによる。なお,これに対し,いわゆる無業の妻をも被保険者とした理由については,妻にも老齢になった場合夫とは別な他の者によって侵されることのない老齢年金を与える現実の必要があること,妻には所得がなくても,夫婦の共同生活が,夫が所得を得,妻が家庭内労働を分担するということによって営まれている以上,その必要経費の一部として妻の保険料が夫婦共同の経済により負担され,妻自身のものとして拠出されるのは,むしろ生活の実際からみて自然であること,妻のみを適用除外とすることは,結婚前の女子,離婚又は死別後の女子との関係上技術的にも難点が多いこと,などにあるとされている(乙第12号証)。
学生等が国民年金制度の適用除外とされたのは,学生には定型的に稼得能力がないと考えられたため,その拠出能力が問題となったこと,当時,大学で教育を受ける程度の学生というのは,卒業後,被用者年金制度の適用者になるのが通例であったこと,仮に強制加入とした場合卒業後就職して被用者年金制度に加入することによって国民年金制度の適用から除外されることとなるため多くの場合学生の間に納付した保険料が掛け捨てとなることが予想されたこと,によるものとされ,夜間の学部に在学する学生等については,既に社会に出て働いていることから,被用者年金制度の適用を受けていない場合には国民年金制度の適用を受けるものとされ,また,将来自営業に就く者もあるなどの事情を考慮して,国民年金制度に任意加入することができるものとされた(乙第2,第11,第12号証)。これに対し,高等学校の定時制課程にある者,通信教育を受ける者,夜間の学部に在学する者等については,既に社会に出て働いている者であるから,これらの者で被用者年金の適用を受けていないものは国民年金の被保険者とされた(昭和34年法7条2項7号ただし書,乙第12号証)。
拠出制年金における年金給付の種類としては,老齢年金,障害年金並びに母子年金,遺児年金及び寡婦年金を支給するものとされた(同法15条)。そもそも,国民年金制度は,人口の老齢化のすう勢,戦後における家族制度の崩壊,国民経済の発展とそれに基づく国民生活の向上などといった社会,経済の流れを受けて創設されたものであり,このような経緯から老齢年金を基本とした制度設計がされたが,身体障害者や母子世帯の場合も老齢者の置かれている生活状態と大差がないことから,社会保障制度の一環としてこれらの者にも年金制度を及ぼし,その生活の安定を図っていくものとされたものである(乙第12号証)。
保険料の額は,全国的規模において被保険者の所得に応じた保険料を徴収することが不可能であるとの理由から,定額制とされ,適切な額の老齢年金を支給することができることを基本として,障害年金及び母子年金の分も含めて計算の上,設定された(乙第12,第20号証)。被保険者は保険料を納付しなければならず,世帯主はその世帯に属する被保険者の保険料を,配偶者の一方は被保険者たる他方の保険料をそれぞれ連帯して納付するものとされたが(同法88条),障害年金の受給権者や低所得者等について保険料の免除制度が設けられた(同法89条,90条)。
エ 拠出制年金に加えて無拠出制の福祉年金が設けられたのは,拠出制の年金制度によってカバーされない人々の解決は,生活保護等公的扶助の制度によるべきであり,現在の生活保護制度がこの種の問題解決に役立たないならば,これを役立つ程度まで強化すべきであるという意見や,制度発足当時既に老齢となっている者,拠出能力のない障害者や母子世帯に限って無拠出制の給付を行う(すなわち,経過的にのみ無拠出制を認める)という意見等も存したところ,当時の社会情勢の下においては,将来における人口の老齢化に備えることと同等又はそれ以上に,現在の老齢者,身体障害者及び母子世帯に年金的保護を及ぼす必要性が高いと考えられたこと,拠出制年金においては給付額の3分の1を国庫が負担する仕組みとされていることからすると,拠出制年金のみでは,保険料を拠出することができた者だけが国から国庫負担を通じて援助を受けられるという不公平な結果となること,公的扶助制度は本質的に事後的な救貧を目的とする制度であって,受給者の収入額によって扶助支給額が調整され,全体として収入水準は最低生活水準にくぎ付けにされることになってしまうことなどから,拠出制の建前を堅持しつつ,その財源を一般会計に求める無拠出制年金を経過的及び補完的に存置することとしたものであるとされている(乙第2,第9,第12号証)。
福祉年金は,その支給対象者が国民年金の被保険者たる資格を有していたか否かによって,補完的福祉年金と経過的福祉年金に区分され,さらに,その支給事由である事故の種類によって,老齢福祉年金,障害福祉年金及び母子福祉年金の3つにそれぞれ区分された。このうち,老齢福祉年金は,① 老齢年金の支給要件を満たすために必要な保険料を納付しなかった者であって,保険料免除期間又は保険料免除期間と保険料納付済期間とを合算した期間が30年を超えるものが70歳に達したとき(補完的老齢福祉年金),② 昭和34年11月1日において70歳以上の者については昭和34年11月1日から,昭和36年4月1日において50歳を超える者についてはその者が70歳に達したとき(経過的老齢福祉年金),にそれぞれ支給されるものとされた。障害福祉年金は,① 拠出制の障害年金の支給要件を満たすために必要な保険料を納付しなかった被保険者等であって,保険料免除期間等所定の要件を満たした者が,別表に定める1級に該当する程度の障害の状態(日常生活の用を弁ずることが不能な程度の障害の状態)にあるとき(同法56条。補完的障害福祉年金),② 20歳に達する前に疾病にかかり又は負傷した者(初診日において20歳未満であった者)が20歳に達した日以後において①に掲げる程度の障害の状態にあるとき(同法57条。補完的障害福祉年金),③ 昭和34年11月1日前に疾病にかかり又は負傷した者が同日若しくは同日以後において①に掲げる程度の障害の状態にあるとき,又は同日以後昭和36年4月1日前に疾病にかかり又は負傷した者が同程度の障害の状態にあるとき,又は昭和36年4月1日において50歳を超える者が同日以後疾病にかかり又は負傷し同程度の障害の状態にあるとき(同法81条。経過的障害福祉年金),に支給するものとされた。母子福祉年金は,① 拠出制の母子年金の支給要件を満たすために必要な保険料を納付しなかった被保険者等であって保険料免除期間等所定の要件を満たした者が,夫と死別し,夫によって生計を維持した義務教育終了前の子の生計を維持するとき(補完的母子福祉年金),② 昭和34年11月1日において20歳以上の女子が既に夫と死別し,義務教育終了前の子の生計を維持するとき,昭和34年11月1日以後昭和36年4月1日前に夫と死別した20歳以上の女子が同様の状態にあるとき,又は昭和36年4月1日において50歳を超える女子が夫と死別し,同様の状態にあるとき,に支給するものとされた(経過的母子福祉年金)。
なお,補完的福祉年金の一つとして20歳に達する前に初診日のある障害(20歳前障害)に対する障害福祉年金の制度が設けられた趣旨は,若年において別表に定める1級に該当する程度の障害の状態にあるということは,通常その障害が回復することが極めて困難であり,稼働能力はほとんど永久的に奪われており,かつ,年齢的にみて親の扶養を受ける程度をできる限り少なくしなければならないという意味において,最も所得保障をする必要性が高いものであるからであるとされる(乙第12号証)。無拠出制年金においては,すべて一般財源から支出するものであることにかんがみ,既に現行公的年金制度による年金の支給を受けている者や一定程度以上所得のある者等については支給制限を課すものとされた(乙第12号証)。
オ 被用者年金制度等の適用者の配偶者及び学生等についての任意加入制度は,拠出制年金の被保険者から除外された被用者年金制度等の適用者の配偶者及び学生等について,本人の希望により国民年金制度の適用を受けることを認めたものであり,これらの者は,任意加入により被保険者となった後も,任意の時に申し出て被保険者の資格を喪失することができるものとされ(昭和34年法附則6条4項),このように加入及び脱退が任意であることから,保険料の負担の免除の規定を適用しないものとされたものである(乙第12号証)。
(2)  昭和60年改正までの国民年金法の改正経過の概要
昭和60年改正までの国民年金法の改正経過の概要は,前提事実等(3)のとおりであり,障害年金及び障害福祉年金の支給額が増額され,支給の対象となる障害の範囲が拡大され,当初別表に定める1級に相当する程度の障害の状態にある者に限定されていた障害福祉年金が別表に定める2級に相当する程度の障害の状態にある者に対しても支給するものとされ,障害年金の支給の要件が緩和されるなどしたが,昭和34年法により創設された国民年金制度の前記基本的仕組みに変更はなかった。
なお,昭和34年法7条3項により別に法律をもって処理されるべきものとされた国民年金制度と現行被用者年金制度等の通算調整や現行被用者年金制度等相互間の通算調整問題については,前提事実等(3)アのとおり,昭和36年11月,通算年金通則法(昭和36年法律第181号)が制定され,老齢年金及び退職年金について,ある被用者年金制度等の被保険者等であった者で当該制度において定める老齢年金又は退職年金の受給資格期間を満たしていないが,他の被用者年金制度等の被保険者期間を合算すれば受給資格期間を充足するか,他の被用者年金制度等に係る通算対象期間が当該制度において定める老齢年金又は退職年金の給付を受けるに必要な資格期間に相当する期間以上であるか,又は他の被用者年金制度等における老齢年金又は退職年金の給付を受けることができるものに対して,老齢又は退職を支給事由として老齢年金又は退職年金の給付を認めることとされた(通算の対象は1年以上の被保険者期間とされた。同法6条2項)。
(3)  無年金障害者問題の発生とその推移
国民年金法(昭和34年法)が制定された当時,大学(短期大学及び高等専門学校を含む。)進学率は約10パーセント程度(そのうち大学進学率は約8パーセント程度)であり,昭和34年2月付けで厚生省が作成した国民年金法案参考資料(甲第128号証)によれば,昭和36年度における20歳以上の学生数は53万人,このうち任意加入者数は17万6000人,20歳から22歳の間に障害となる者は男子で10万人中63人,女子で10万人中81人とされていた。
国民年金制度の施行後,学生数は年々増加し,昭和33年当時約57万人と見積もられていた学生数が,昭和35年当時約62万人,昭和40年当時約93万人,昭和45年当時約140万人,昭和50年当時約173万人,昭和55年当時約183万人,昭和60年当時約184万人,平成2年当時約213万人となった(甲第111,第147号証)。また,大学等進学率(短期大学,高等専門学校及び専修学校専門課程を含む。)も,昭和35年当時約10.3パーセント(そのうち大学進学率は8.2パーセント)であったのが,昭和40年には約17.0パーセント(そのうち大学進学率は12.7パーセント),昭和45年には約24.0パーセント(そのうち大学進学率は17.0パーセント),昭和50年には約38.9パーセント(そのうち大学進学率は27.1パーセント),昭和55年には約49.9パーセント(そのうち大学進学率は26.1パーセント),昭和60年には約51.6パーセント(そのうち大学進学率は26.4パーセント)となった(乙第3号証)。
ところが,20歳以上の学生で国民年金制度に任意加入する者は極めて少数にとどまり(後記のとおり平成元年当時の任意加入率は約1.25パーセント程度であった。),学生である間に障害を負っても障害年金の支給を受けることができないいわゆる学生無年金障害者の発生が問題化するようになった。そして,昭和51年1月,全国脊髄損傷者連合会により厚生省年金局長に対して無年金重度障害者に障害福祉年金と同額の年金の支給を要請する要望書が提出されたのを始め,昭和53年4月ころには,衆参両院議長に対し,学生無年金者を含む無年金障害者に障害福祉年金と同額の年金の支給を要請する請願書が提出され,また,昭和60年改正に向けた立法作業の過程で,昭和58年12月,同会により厚生大臣に対して学生無年金者を含む無年金障害者に対し年金改革における厚生省の基礎年金試算と同額給付を要請等する重度身体障害者の年金・生活保障に関する陳情書が提出され,20歳以上の無年金障害者に対する救済等を国会に訴えるなど,学生無年金障害者を含むいわゆる無年金障害者に対する年金給付等を求める運動が活発に展開された(甲第44号証,甲第49ないし第54号証)。
なお,昭和50年には国連総会決議において障害者の権利宣言が採択され,我が国においても,昭和56年の国際障害者年を契機に,障害者の生活保障について所得保障を始めリハビリテーション,施設サービス,住宅サービス,就労対策等による総合的な対応を図る必要性についての認識が高まり,昭和58年7月にまとめられた「障害者生活保障問題専門家会議報告書」においても,すべての成人障害者が自立生活を営める基盤を形成する観点から,所得保障制度全般にわたる見直しを行うべきであり,現行の障害年金制度における拠出制の年金受給者と福祉年金受給者の間の給付格差の解消を図るべきであるなどといった指摘がされるなどした(甲第11,第12号証,乙第11号証)。
(4)  昭和60年改正に至る経緯
昭和35年当時の就業構造は,自営業者が25.1パーセント,家族従事者が31.4パーセント,被用者が43.5パーセントであったのが,昭和56年当時は,自営業者が16.9パーセント,家族従事者が10.6パーセント,被用者が72.3パーセントとなり,被用者化が著しく進行するなど(甲第111号証),国民年金制度の施行当時から昭和60年までの間に,社会経済は,人口構造の高齢化の進行,産業構造,就業構造の変化により大きく変動し,年金給付に関する各制度が分立する体系の下各制度の成熟化が進行する中で,本格的な高齢化社会を迎えるに当たり,年金制度の抜本的な改革が認識されるようになった。こうした背景から,厚生省は,国民年金,厚生年金保険及び船員保険の制度改正案をとりまとめ,昭和58年11月28日,国民年金審議会及び社会保険審議会に諮問を行い,社会保険審議会においては昭和59年1月24日に,国民年金審議会においては同月26日にそれぞれの答申がされた。そして,同日,厚生大臣から社会保険審議会会長に宛てて国民年金法の一部を改正する法律案要綱についての諮問が行われ,同年2月23日,同会長から厚生大臣に宛てて答申がされたのを受けて,同月24日,国民年金法等の一部を改正する法律案が閣議決定され,同年3月2日,国会に提出された(乙第11,第20号証)。
なお,上記昭和59年1月26日付け国民年金審議会の答申においては,学生の適用の在り方については引き続き検討すべきであるとされ,同年2月23日付け社会保険審議会の答申においては,「審議中に指摘された以下のような重要な問題点について留意すべきである。」とされた上,その一つとして,「20歳未満で障害の状態になったときは障害基礎年金が受給できるのに対し,任意加入しなかった学生がその期間中に障害の状態になったときには障害基礎年金が受給できない。」ことが挙げられていた(甲第13号証の1,2,乙第11,第20,第21号証)。
(5)  昭和60年改正
ア 昭和60年改正の概要は,前提事実等(4)のとおりである。
イ 昭和60年改正は,社会経済が人口構造の高齢化の進行,産業構造,就業構造の変化等により大きく変動しつつあることに伴い,年金制度のよって立つ基盤そのものにも重大な変化が生じているところ,年金制度が国民が安心して老後生活を営んでいく上で最も重要な柱であり,このような社会経済情勢の変化に的確に対応しつつ長期的に安定した制度運営が維持されなければならず,とりわけ,我が国社会が高齢化のピークを迎える21世紀前半においても健全で安定した年金制度の運営が図られるよう長期的視点に立った制度全般にわたる見直しが迫られているという認識にかんがみ,本格的な高齢化社会の到来に備え,公的年金制度の長期的な安定と整合性ある発展を図るため,国民共通の基礎年金を導入するとともに,給付と負担の均衡を長期的に確保するための措置を計画的に講じることを主眼とし,その第1段階として,国民年金,厚生年金保険及び船員保険の再編成を図るなどし,また,基礎年金の導入に伴い,障害者の所得保障の大幅な改善を図ることとし,具体的には,20歳前に生じた障害についても基礎年金を支給することとするとともに,成人障害者が自立生活を営む基盤を形成する観点から,特別児童扶養手当等の支給に関する法律を改正し,20歳以上の在宅の重度障害者に対し,新たに特別障害者手当を支給することとするなどしたものである(乙第11号証,乙第14号証の1,乙第20号証)。
ウ 昭和60年改正においては,まず,制度体系の再編成として,基本的には社会保険方式を維持し,現行制度の独自性を尊重しながら,一方で共通の基礎年金給付を導入することにより,公的年金制度全体の整合性を確保することを目的とし,そのために,国民年金制度を基礎年金を支給する制度として位置付け,国民年金制度の適用者が厚生年金保険ほかの被用者年金制度の被保険者及びその配偶者にも拡大された。そして,被用者年金制度は,自己の加入者の分の基礎年金の費用を一括して国民年金に拠出するとともに,これらの者に原則として基礎年金に上乗せする報酬比例の年金を支給する制度に改められ,この結果,我が国のすべての年金制度が1階部分を全国民共通の定額制の基礎年金,2階部分を各制度独自の所得比例ないし報酬比例の年金とするいわゆる2階建ての年金体系に再編成された。基礎年金の給付に要する費用は,国民年金の保険料,被用者年金制度の拠出金及び国庫負担で賄うものとされ,国民年金を含む各制度が被保険者(国民年金については自営業者等)の頭数に応じた割合で公平に負担するものとされ,国庫負担は原則として基礎年金に要する費用に一元化され,その負担率は給付費の3分の1とされた。これにより,基礎年金の部分は全国民に共通する給付となり,その費用を各制度が加入者の頭割りで持ち寄ることとなって,給付の面でも負担の面でも国民がすべて同じ条件で扱われることとなり,制度間の整合性と公平性が確保されるとともに,産業構造や就業構造の変化に左右されない安定した制度の基盤が確立されることとなった。そして,同時に,全国民について個人単位の1人1年金の原則が確立され,女性についても固有の年金権が保障されることとなり,重複給付の整理も可能となった。なお,国民年金の保険料については,昭和60年改正前において,現実の保険料と数理的に必要とされる保険料との乖離が指摘されていたこともあり,その適正化を図り,年金財政の安定を確保する等の趣旨から,昭和60年改正後の国民年金法による給付に要する費用の予想額並びに予定運用収入及び国庫負担の額に照らし,将来にわたって,財政の均衡を保つことができるものでなければならず,かつ,少なくとも5年ごとに,この基礎に従って再計算され,その結果に基づいて所要の調整が加えられるべきものとされ(同法87条3項),また,保険料の額は,その額が同条3項の基準に適合するに至るまでの間,段階的に引き上げられるべきものとされた(同条5項)。
エ 昭和60年改正においては,被用者年金制度の被保険者等に扶養される配偶者を第3号被保険者として被用者年金制度等の適用者の配偶者にすべて国民年金制度を適用することとされた。昭和60年改正前においても,いわゆる被用者の無業の妻は国民年金に任意加入することができたが,任意加入しなかった場合には,夫の老齢年金の加給対象となり,夫が死亡したときは遺族年金等を受けることができるなど,一応被用者年金制度等による保障が及んでいるものの,自ら障害年金等を受けることができず,離婚した場合など,年金保障に欠ける場合があったこと,被用者世帯のうち単身世帯と夫婦世帯の給付水準の均衡を図る必要があったことなどから,被用者の妻自身の基礎年金給付を保障することにより,女性の年金権を確立することとされたものであり,その背景としては,稼得活動に従事する女性の数が著しく増加したこと,被用者年金制度の被保険者の妻で国民年金に任意加入している者が昭和50年代で約6割から7割に達していたことなどがあった。もっとも,被用者の妻の保険料負担については,被用者世帯についてまで個々に収入調査をして保険料の負担能力の有無の認定をすることは実際上不可能であることなどから,現実的,実際的な方法として,被用者である夫の被用者年金の保険料の中に妻の国民年金の保険料の分も含まれていることにして,夫婦の国民年金の保険料分を一括して基礎年金の拠出金として国民年金会計の中の基礎年金勘定に払い込むこととされたが,これについては,立法過程において,被用者の妻だけが自ら保険料を納めないで給付が受けられるのは社会保険の理論からいっておかしい,夫の保険料に妻の分を含めるのであれば,妻がいる場合といない場合で夫の保険料率に差を設けるべきではないか,これまで多数の被用者の妻が任意加入の方法により自分の老後の年金のために自ら保険料を納めることによって年金に対する自助努力や自己責任の意識が育ってきたのにこれをやめるのは惜しい,などといった意見も存在した(乙第20号証)。
オ 昭和60年改正においては,障害年金についても,基礎年金と報酬比例年金のいわゆる2階建て年金の仕組みとされたのみならず,被保険者であった間に初診日のある傷病に関し,障害認定日において別表に定める1級及び2級に該当する程度の障害の状態にある者について,被保険者期間中に3分の1以上の保険料の滞納がなければ障害基礎年金を支給するものとされるとともに,国民年金の障害福祉年金が廃止されて,既裁定の障害福祉年金は障害基礎年金に裁定替えされるものとされた。そして,改正前において障害福祉年金の対象であった20歳に達する前に初診日のある障害(20歳前障害)についても20歳から障害基礎年金を支給するものとされて,その額が大幅に引き上げられ,拠出者の場合との給付水準の格差を解消するものとされた。そして,20歳前障害に係る障害基礎年金及び障害福祉年金から裁定替えされる障害基礎年金等に対しては,特別にその費用の40パーセントを国庫が負担するものとされた(なお,残りの60パーセントは拠出金によって賄われることになるが,拠出金の3分の1の国庫負担を併せれば,障害基礎年金の給付に要する費用の6割を負担することになる。)。もっとも,これについては,本人の保険料負担が全くなく,費用の全額が国庫負担及び他人の保険料によって賄われることから,改正前の障害福祉年金と同様に,本人について一定の所得制限が課されるものとされた。このように昭和60年改正において障害年金の大幅改善が図られたことについては,国際障害者年を受けて障害者生活保障問題専門家会議が検討結果をまとめた前記(3)の「障害者生活保障問題専門家会議報告書」に示された意見に依拠したものであるとされており(乙第20号証),20歳前障害について20歳から障害基礎年金を支給する旨の改正については,同報告書に示された障害者に対する強い社会連帯の考え方及び改正前の障害年金制度の下における拠出制年金の受給者と福祉年金受給者の間の給付格差の解消の提言等を受けたものであるとされている。
カ 昭和60年改正においても,学生等は国民年金制度の適用から除外される旨の学生等適用除外規定が存置された上,適用が除外される学生等の範囲については政令で定めるものとされた。学生等については,大学卒業後の加入では満額の老齢基礎年金を受けることができなくなること(なお,学生や被用者の妻の期間等についてはこれを老齢基礎年金の資格期間の計算の対象に入れるものとされた。),20歳以上の学生等が国民年金制度に任意加入していない場合における学生等の間に発生した障害に対しては無年金となり,20歳未満の間に障害が発生した場合と結果的にみて較差が生じること,制度創設当時に比べて進学率が上昇していることなどから,20歳以上の学生等をも強制加入の対象とすることが検討されたが,学生等は定型的に稼得活動に従事しておらず,学生等自身には保険料の拠出能力が乏しいため,強制加入の対象とした場合には,学生等の親が保険料を負担する結果となると考えられるところ(保険料の免除が本人及び世帯の所得を基準としていたことから,学生等が親と同居する場合は保険料免除の対象とならないことになる。),学費の負担が家計を大きく圧迫している親世代に更に保険料の負担をかけることになるなどといった問題があることから,いまだ強制加入の対象とすることが適切であるとは断じ難いとされたものである。
国会審議においても,学生等が国民年金制度に任意加入しなかった場合における学生等の間に発生した障害に対して障害基礎年金が支給されないことなどについての問題が議論され,20歳以上の学生等についても保険料を低額にした上強制加入の対象とすべきではないかなどといった意見も出されたが,政府委員からは,上記のとおり学生等の保険料の負担能力等を考えると学生等を始めから一律に強制加入にしてしまうことには問題があり,また,社会保険方式をとる国民年金制度において保険料の当然免除を前提とした強制加入を認める制度設計にも問題があること,さらに,30歳,40歳の学生も存在していることからすると,学生を20歳前の障害者と当然に同じように扱うことができるのか,任意加入のみちもない20歳前の者と同列に考えてよいのかという議論もあり,20歳以後に障害を負った学生等に障害基礎年金を支給することとすると同年齢の学生等以外の者が保険料を未納付の場合に障害基礎年金の支給を受けられないこととの均衡を失するとの意見も存したことなどから,学生等については,改正前と同様に任意適用の対象とするにとどめ,5年後の大改正までに結論を出したいなどとされた。そして,衆議院社会労働委員会においては,「無年金者の問題については,今後ともさらに制度・運用の両面において検討を加え,無年金者が生ずることのないよう努力すること」との,参議院社会労働委員会においては,「無年金者の問題については,適用業務の強化,免除の趣旨徹底等制度・運用の両面において検討を加え,無年金者が生ずることのないよう努力すること」との附帯決議がそれぞれされ,衆議院における修正により,昭和60年改正法附則4条1項において,国民年金制度における学生の取扱いについては,学生の保険料負担能力等を考慮して,今後検討が加えられ,必要な措置が講ぜられるものとする旨規定された(乙第14号証の1)。
なお,国会審議においては,政府委員から,任意加入することができるのにしなかった期間に生じた障害について過去にさかのぼって年金支給の対象とするのは困難であるとの見解も示された(乙第14号証の1)。
上記のとおり,被保険者から除外される学生等の範囲については,高等学校の生徒,大学の学生その他の生徒又は学生であって政令で定めるものとされ(昭和60年改正後の国民年金法7条1項1号イ),これを受けて制定された国民年金法施行令等の一部を改正する等の政令(昭和61年政令第53号)により,昭和60年改正前の国民年金法7条2項8号と同様の対象に加えて新たに専修学校等の生徒が被保険者から除外されるものとされた(前提事実等(4)イ(ア)参照)。そして,これら被保険者から除外するものとされた専修学校等の生徒についても,都道府県知事に申し出て被保険者となることができるものとされたが,保険料の免除に関する規定(昭和60年改正後の国民年金法89条,90条)は適用しないものとされた。なお,上記政令により新たに被保険者から除外されるものとされた専修学校等の生徒については,昭和60年改正法の施行日(昭和61年4月1日)に被保険者資格を喪失するものとされたが,昭和60年改正法附則6条3項,昭和60年改正後の国民年金法附則6条により,納付すべき保険料を昭和61年4月以降の期間について同法93条1項の規定により前納しているとき又はその年の4月末日までに納付したときは,上記施行日において同法附則5条1項の被保険者となる旨の申出(任意加入の申出)をしたものとみなすものとされた(前提事実等(4)イ(ウ)参照)。上記政令により新たに専修学校等の生徒が被保険者から除外されるものとされた立法理由は本件全証拠によるも明らかではない。
(6)  平成元年改正に至る経緯
昭和63年11月29日,年金審議会は,国民年金・厚生年金保険制度改正に関する意見を厚生省に提出したが,同意見書においては,現在20歳以上の国民のうち,唯一,国民年金の強制適用の対象から外されている学生については,従来から障害年金を中心に無年金問題が指摘されているところであり,さらに,基礎年金のフル・ペンションの確保を図っていくという観点からも,この際,これを強制適用の対象とすべきであるとされていた。これを受けて,厚生省は,① 基礎年金等の年金水準は昭和60年改正時に設定された水準を維持する,② 年金の物価スライドに完全自動物価スライド制を導入する,③ 自営業者のために基礎年金の上乗せ給付として国民年金基金制度を整備,創設する,④ 学生期間中の障害について障害基礎年金を保障するため学生を国民年金の被保険者とする,等の内容を骨子とする国民年金制度の改正案をとりまとめ,平成元年2月3日年金審議会に,同月7日社会保障制度審議会にそれぞれ諮問し,年金審議会は同月27日に,社会保障制度審議会は同年3月6日にそれぞれ厚生大臣に対して答申を行ったが,年金審議会の答申においては,学生に対する国民年金の適用に当たっては親の保険料負担が過大とならないよう適切な配慮がされるべきであるとの意見が含まれていた。これらの答申を受けて,同月28日,国民年金法等の一部を改正する法律案が閣議決定され,同月29日国会に提出された。
なお,この間,昭和61年には,全国脊髄損傷者連合会により,学生無年金障害者を含む無年金重度障害者に対する基礎年金の支給を要望する「無年金者救済に関する請願書」が衆議院議長に提出され,また,昭和62年にも,同会により,同様の「無年金者救済に関する重度身体障害者の請願書」が衆議院議長に提出され,さらに,昭和63年12月27日付けで,同会により,厚生大臣に対し,「無年金者救済についての要望」が提出されたが,同要望には,「6ケ月間,国民年金保険料を現行制度に準じて毎月納付する。納付後の翌年4月から障害基礎年金を支給する」という方法が提案されていた(甲第55ないし第57号証)。
(7)  平成元年改正
ア 平成元年改正の概要は,前提事実等(6)のとおりである。
イ 平成元年改正において,日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者であって大学,専修学校の学生等であるものについて国民年金の第1号被保険者とするものとされたが,保険料の免除に関する規定(同法による改正後の国民年金法89条,90条)は従前のままとされた。学生等について国民年金の強制適用の対象とした目的については,学生の期間中に障害となる者が少なくなく,障害となった場合に無年金となることを防ぐこと及び40年加入の満額の基礎年金を受給することができるようにすることにあるとされる(甲第14号証の4,乙第8号証)。
国会審議においては,政府委員から,これまで任意加入のみちを開いていたので,政府の公報の徹底の問題もあったと思われるが,制度の不備とは必ずしもとらえていないものの,任意加入制度の下ではなかなか加入が進まないため,無年金障害者を生ずる可能性が大きいことにかんがみて,強制適用の対象とすることに踏み切ったなどといった趣旨の説明がされた。これに対し,強制適用とした場合は親に保険料を負担させる結果となる,所得の把握も困難であり,免除の適正な取扱いをすることも困難であるなどといった問題が指摘され,保険料の額を軽減して後日追納するみちを選択することができるようにすべきではないかとの意見も出されたが,政府委員からは,強制適用とした上で保険料を免除した場合,学生と同世代で稼得活動に従事し保険料を負担している者との公平を欠くことになるのでいかがなものかと逡巡せざるを得ないといった見解が示された。また,学生を年金体系の中に組み入れるに当たり,サラリーマンの妻に対してとったのと同じような方法がとれないかとの意見もあったが,政府委員からはサラリーマンの子と自営業者の子とで保険料の負担の取扱いが異なるのは問題であるとの認識が示された。そして,衆議院社会労働委員会及び参議院社会労働委員会において,学生の国民年金の適用については,関係者の協力も得ながら,その趣旨を周知,徹底するとともに,保険料負担が過大にならないよう,免除基準につき適切な配慮を行うことという附帯決議がされた。また,参議院社会労働委員会においては,障害基礎年金の水準,学生時の障害無年金の対策等障害者の所得保障の充実について,障害者の「完全参加と平等」を促進する見地から,今後総合的に検討することという附帯決議がされた。
なお,国会審議においては,政府委員から,任意加入をしている学生の数は昭和62年度末で2万人程度であろうと推計しており,平成元年改正により強制加入の対象となる20歳以上の学生は平成2年度平均で160万人程度であろうといった見通しが示され(これらの数値によれば,平成元年当時の学生の任意加入率は約1.25パーセント程度となる。),また,学生のみの障害の発生率は把握していないが,国民年金制度における障害年金全体の出現率は1000人に1.1人の割合で1級障害が約3分の2,2級障害が約3分の1と試算しているといった見解が示された。さらに,その時々の支給要件に該当しなかったために無年金となった者をさかのぼって救済することについては,公的年金制度の基本にかかわる問題であるだけに非常に困難な点が多い,過去に3回老齢年金について権利発生前に保険料の追納というみちを開いたことがあるが,社会保険方式をとっている以上,無年金障害者について事後的に保険料を追納する方法による救済は,逆選択という問題に帰着することとなって,困難であるといった意見も,国務大臣や政府委員から示された(乙第11,第15号証)。
平成元年改正法中学生等に係る国民年金の適用に関する規定は平成3年4月1日に施行されたが,その施行に先立って,保険料の負担について,一般の者に適用される免除基準とは異なる,「学生たる被保険者に係る保険料免除基準について」及びその別添の「学生に係る保険料免除基準(平成3年1月30日庁保発第2号)」が定められた。これによれば,学生は一般に親元の世帯員と同居しているか別居しているかにかかわらず,親元の世帯が学費・生活費の全部又は一部を負担しているのが通常であることから,学生被保険者の保険料負担能力の判定を学生被保険者とその親元の世帯を含めた世帯単位により行うこととし,学生被保険者とその親元の所得状況により,学生被保険者の保険料免除の適否を判断するものとした上,親元の世帯においては,既に学生を扶養するため学費を始め相当程度の経済的負担をしていることを考慮して,免除の基準となる所得額を他と比べて高額とした(甲第106号証,弁論の全趣旨)。
(8)  平成元年改正後の無年金障害者問題の推移
平成元年改正後,全国脊髄損傷者連合会は,平成2年3月及び平成3年4月,衆議院議長に対し,学生無年金障害者を含む重度身体障害者無年金者の救済措置に関する請願書を提出し,平成4年から平成5年にかけても,無年金障害者の救済制度の早期実現に関する請願書,無年金重度障害者の救済策の早期策定に関する請願書を衆議院議長ないし参議院議長に提出し,平成11年には無年金障害者の解消に関する請願書を衆議院議長に提出するなどの運動を展開した(甲第58ないし第62号証)。また,平成元年8月,原告乙山を中心として無年金障害者の会が結成され,平成3年11月26日付けで尼崎市長に対して障害年金の未受給者に関する陳情書を提出したり,国会に働きかけたり,厚生省に陳情に赴くなどの運動を展開した(甲第80号証,原告乙山)。なお,国民年金法等の一部を改正する法律(平成6年法律第95号)の法律案の国会審議に当たり,衆議院厚生委員会において,無年金である障害者の所得保障については,福祉的措置による対応を含め検討することという附帯決議がされ,参議院厚生委員会においても,無年金障害者の所得保障については,福祉的措置による対応を含め速やかに検討することという附帯決議がされた(甲第129号証の2,3)。
(9)  平成12年改正
ア 平成12年改正の概要は,前提事実等(7)のとおりである。
イ 平成12年改正により学生の保険料の納付特例制度が創設され,学生等である第1号被保険者であって本人の所得が一定以下のものについて,申請に基づき,保険料を納付することを要しないものとされ(同改正後の国民年金法90条の3),納付することを要しないものとされた保険料は,承認の日の属する月前10年以内の期間に係るものに限り,社会保険庁長官の承認を受けて,その全部又は一部を追納することができるものとされ(同法94条1項),学生の保険料納付特例の対象となった期間は,保険料が追納されない場合は老齢基礎年金の額等の計算には反映されないこととされた(同法26条,27条)。
平成12年改正に先立って,年金審議会の平成10年10月9日付け国民年金・厚生年金保険制度改正に関する意見において,学生等に国民年金が強制適用されているが,学生本人には所得がなく,保険料は親が支払っている例が多いので,このような親の負担を解消し,本人が社会人になってから納付することができるような何らかの対策を検討すべきであるとの意見が述べられていた(乙第8号証)。国会審議においては,政府参考人から,学生の保険料の納付特例制度を創設した趣旨について,親がなぜ子の年金のための保険料を支払わなければならないのかという指摘が多く,教育で費用がかかるときに更に保険料負担もかかるということで親の非常に大きな負担となっている状況にかんがみ,こういった負担を解消するとともに,学生納付特例期間中の事故については障害基礎年金を満額支給するという当初の目的を堅持することにあるなどといった趣旨の説明がされた(甲第14号証の4,5)。
なお,年金審議会の上記意見においては,年金制度に加入していなかったり,保険料を納付していないことによる無年金障害者の問題については,社会保険方式をとる現行の年金制度では,年金給付を行うことは困難であり,今後,障害者プランを踏まえ,適切な検討が必要であるとされていた(乙第8号証)。また,国会審議においても,国務大臣,政務次官及び政府参考人から,過去において国民年金制度に加入していなかったり保険料を納付していなかったりしたため無年金となっている障害者を年金制度で救済することについては,制度への加入と保険料の負担に応じて給付を行うという社会保険方式をとっている現行制度の根幹に触れる問題であり,保険料を納付していた者との均衡の問題もあって,一義的な解決は困難であるなどといった趣旨の説明がされた(甲第14号証の1,2,4ないし7)。これに対しては,サラリーマンの妻と比較しても問題があるのではないかといった意見も出されたが,政府参考人からは,サラリーマンの妻については夫の属する公的年金制度全体でその費用負担をするという仕組みが明確にされているので,無年金障害者の問題とは別の次元の問題であるといった説明がされた(甲第14号証の5)。また,政府参考人からは,平成10年度の20歳から24歳の障害基礎年金の新規裁定受給権者数は1万7241人,そのうち20歳前の国民年金加入前に障害となり障害基礎年金受給者となった者は1万6608人,その余は633人で,その中には厚生年金保険から給付を受けている者,自営業者,サラリーマンの妻など,学生以外の者も含まれているといった説明がされている(甲第14号証の7)。
(10)  特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律の制定
ア 特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律の概要は,前提事実等(8)のとおりである。
イ 特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律案の提案理由においては,我が国の国民年金制度は,昭和36年に創設されて以降,原則として,20歳以上60歳未満の自営業者等をその対象にし,制度創設時において,諸般の事情を総合的に勘案の上,学生や被用者の配偶者は任意加入の対象としてきたところであり,これらの者は,その後の制度の発展に伴い,現在は強制加入とされているが,こうした国民年金制度の発展過程において,制度の対象としつつも,強制加入ではなく任意加入とされていた結果として,加入していなかったために障害年金や障害基礎年金の受給権を有していない障害者が生じており,このため,こうした国民年金制度の発展過程において生じた特別な事情にかんがみ,障害基礎年金の受給権を有していない障害者に特別障害給付金を支給することにより,その福祉の増進を図ることとしたものであるとされている(乙第16,第18号証)。そして,衆議院厚生労働委員会及び参議院厚生労働委員会において,障害者の基礎的な生活の支えとなる特別障害給付金の額については,今後の障害基礎年金等の水準の推移を踏まえて検討すること,今後,無年金障害者が発生することがないよう努めること,などといった附帯決議がされた(乙第17,第19号証)。
2  学生等適用除外規定の憲法適合性(争点(1))について
(1)  憲法25条違反の主張について
ア 原告らは,学生等適用除外規定(国民年金法(昭和36年法律第167号による改正前のもの)7条2項7号,国民年金法(昭和39年法律第110号による改正前のもの)7条2項8号,国民年金法(昭和60年法律第34号による改正前のもの)7条2項8号,国民年金法(平成元年法律第86号による改正前のもの)7条1項1号イの各規定)は,20歳を超えた学生の期間中に重度の障害を負った者が障害者の所得保障のための制度である障害年金ないし障害基礎年金を受給することを不能にするものであって,当該障害者の個人の尊厳や生存をすら脅かすものであり,国民年金制度の中核であり,全国民にあまねく年金による所得保障を行おうとする国民皆年金の理念に著しく反するものであるから,憲法25条1項,2項(及び13条)に違反し,少なくとも障害年金に関する限り,無効であるなどと主張する。
イ 憲法25条は,いわゆる福祉国家の理念に基づき,すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るよう国政を運営すべきこと(1項)並びに社会的立法及び社会的施設の創造拡充に努力すべきこと(2項)を国の責務として宣言したものであるが,同条1項は,国が個々の国民に対して具体的・現実的に上記のような義務を有することを規定したものではなく,同条2項によって国の責務であるとされている社会的立法及び社会的施設の創造拡充により個々の国民の具体的・現実的な生活権が設定充実されていくものであると解すべきである。そして,同条の規定が,国権の作用に対し,一定の目的を設定しその実現のための積極的な発動を期待するという性質のものであり,しかも,同規定にいう「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは,極めて抽象的・相対的な概念であって,その具体的内容は,その時々における文化の発達の程度,経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに,同条の規定の趣旨を現実の立法として具体化するに当たっては,国の財政事情を無視することができず,また,多方面にわたる複雑多様な,しかも,高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。したがって,同条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は,立法府の広い裁量にゆだねられており,それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用とみざるを得ないような場合を除き,裁判所が審査判断するに適しない事柄であるというべきである(最高裁昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁,最高裁昭和60年(行ツ)第92号平成元年3月2日第一小法廷判決・裁判集民事156号271頁参照)。
ウ ところで,前提事実等及び前記1において認定説示したところによれば,我が国の国民年金制度は,憲法25条2項の規定の趣旨を実現するため,老齢,障害又は死亡によって国民生活の安定が損なわれることを国民の共同連帯によって防止し,もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とし,いわゆる拠出制,すなわち,保険方式により被保険者の拠出した保険料を基として年金給付を行うことを基本とし,年金給付の中でも老齢年金を制度の基本とし,障害者や遺族等についても年金制度を及ぼすものとし,さらに,保険原則によるときは給付を受けることができない者についても制度の保障する利益を享受させるため,経過的及び補完的にいわゆる無拠出制の年金給付の制度を設けることとして,創設され,維持されてきた,社会保障法上のいわゆる所得保障の制度であると認められる。
また,前に認定説示したとおり,国民年金制度は,昭和60年改正により大幅に改められたものであるところ,昭和60年改正前の国民年金制度は,厚生年金保険その他の被用者年金制度等の適用を受けない者を対象とし,被用者年金制度等と分立する制度として創設され,維持されてきたものであり,そのうち,拠出制年金については,大部分の国民が高等学校卒業程度で稼得活動に入ること,老齢年金の支給開始年齢が65歳とされていること,被用者の定年が一般に55歳であるのに対し,自営業者の場合は稼得活動に従事する期間がこれよりも長いこと,被保険者期間を40年とすることが,他の公的年金制度との釣合いを考慮した結果実情にかなうだけでなく,保険料を引き下げる点で実益があること,などの点を考慮して,日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の日本国民(者)を被保険者としつつ,被用者年金制度等の適用者の配偶者(妻)については,被用者年金制度等による一応の保障が及んでいる上,稼得活動に従事していないことが通常で保険料の拠出能力に問題があることから,原則として国民年金制度の適用除外とした上,国民年金制度に任意加入することができるものとし,また,学生等については,定型的に稼得能力がないと考えられ,その拠出能力に問題があること,当時,大学で教育を受ける程度の学生というのは,卒業後,被用者年金制度の適用者になるのが通例であると考えられたこと,仮に学生等を被保険者とした場合,卒業後就職して被用者年金制度に加入することによって国民年金制度の適用から除外されることとなるため,多くの場合,学生等の間に納付した保険料が掛け捨てとなることが予想されたことから,原則として国民年金制度の適用除外とした上,国民年金制度に任意加入することができるものとして,制度が設計され,維持されてきた(学生等が原則として国民年金制度の適用除外とされた主たる理由が,学生等については定型的に稼得能力がなくその拠出能力に問題があると考えられたことにあることは,定時制課程及び夜間部の学生等,通信教育を受ける者が適用除外とされる学生等の範囲から明文の規定をもって除かれているところからも明らかに読み取れるところである。これに対し,学生等を被保険者とした場合,卒業後就職して被用者年金制度に加入することによって国民年金制度の適用から除外されることとなるため,多くの場合,学生等の間に納付した保険料が掛け捨てとなるという問題については,通算年金通則法(昭和36年法律第181号)及び通算年金制度を創設するための関係法律の一部を改正する法律(昭和36年法律第182号)が制定されて,各公的年金制度において当該制度の老齢年金又は退職年金を受けるに必要な資格期間を満たしていない場合においても,各制度に加入した期間を通算すれば一定の期間に達する者に対して,通算老齢年金又は通算退職年金を支給する通算年金制度が創設されたことにより,その後一応の解決をみたということができる。)。他方,無拠出制の福祉年金については,制度創設当時の社会情勢の下においては,将来における人口の老齢化に備えることと同等又はそれ以上に,現在の老齢者,身体障害者及び母子世帯に年金的保護を及ぼす必要性が高いと考えられたこと,拠出制年金においては給付額の3分の1を国庫が負担する仕組みとされていることからすると,拠出制年金のみでは,保険料を拠出することができた者だけが国から国庫負担を通じて援助を受けられるという不公平な結果となること,公的扶助制度は本質的に事後的な救貧を目的とする制度であって,受給者の収入額によって扶助支給額が調整され,全体として収入水準は最低生活水準にくぎ付けにされることになってしまうことなどから,拠出制の建前を堅持しつつ,制度発足当時において既に老齢又は一定程度の障害の状態にある者あるいは保険料を必要期間納付することができない見込みの者等についても制度の保障する利益を享受させることとし,経過的及び補完的な制度として,その全額を国庫が負担するものとして,設けられたものということができる。そして,補完的福祉年金の一つとして,20歳に達する前に疾病にかかり又は負傷した者(初診日において20歳未満であった者)であって20歳に達した日以後において日常生活の用を弁ずることが不能な程度の障害の状態(別表に定める1級に該当する程度の障害の状態)にあるものに対する障害福祉年金の制度が,若年において1級に該当する程度の障害にあるということは,通常その障害が回復することが極めて困難であり,稼働能力はほとんど永久的に奪われており,かつ,年齢的にみて親の扶養を受ける程度をできる限り少なくしなければならないという意味において,最も所得保障をする必要性が高いものであることを理由として,設けられたが,障害福祉年金を含めた無拠出制年金においては,すべて一般財源から支出するものであることにかんがみ,既に現行公的年金制度による年金の支給を受けている者や一定程度以上所得のある者等については支給制限を課すものとされたほか,障害福祉年金についても,制度創設当初は障害年金と異なり別表に定める1級に相当する程度の障害の状態にある者に限定され,その後,障害年金と並行して支給額が増額され,支給の対象となる障害の範囲が拡大され,別表に定める2級に相当する程度の障害の状態にある者に対しても支給されるようになったが,昭和60年改正まで一貫してその支給額は障害年金の支給額に比べて低額なものに設定されてきた。
昭和60年改正により,基本的には保険方式を維持しながら,公的年金制度の長期的な安定と整合性ある発展を図る目的から,国民共通の基礎年金制度が導入され,同改正後の国民年金制度は,公的年金制度の適用者のすべてに共通の定額制の基礎年金を支給する制度として位置付けられ,我が国のすべての公的年金制度がいわゆる1階部分を共通の定額の基礎年金,いわゆる2階部分を各制度独自の所得比例ないし報酬比例の年金とするいわゆる2階建ての年金体系に再編成され,被用者年金制度の被保険者等の被扶養配偶者についても国民年金の被保険者とされ,その保険料負担については被用者である配偶者の被用者年金の保険料の中に含まれているものとする処理がされたが,学生等については,定型的に稼得活動に従事しておらず,保険料の拠出能力が乏しいため,国民年金の被保険者とした場合には,学生等の親が保険料を負担する結果となると考えられるところ,学費の負担が家計を大きく圧迫している親世代に更に保険料の負担をかけることになるなどといった問題があることから,平成元年改正までは,原則として国民年金制度の適用除外とした上,国民年金制度に任意加入することができるものとする制度が維持された。他方,昭和60年改正により,障害年金についても,基礎年金と報酬比例年金のいわゆる2階建て年金の仕組みとされたのみならず,障害者の所得保障の大幅な改善を図る目的から,被保険者期間中に3分の1以上の保険料の滞納がなければ障害基礎年金を支給するものとしてその支給要件(拠出要件)が緩和されるとともに,同改正前に障害福祉年金を受給していた者ないし同改正前において障害福祉年金の支給対象とされていた20歳に達する前に初診日のある障害(20歳前障害)についても,拠出制の障害基礎年金と同額の無拠出制の障害基礎年金を支給することとし,特別にその費用の40パーセントを国庫が負担するものとされ,残りの60パーセントを拠出金によって賄うものとされた(なお,基礎年金の給付に要する費用のうちの3分の1を国庫が負担し,その余を国民年金の保険料及び被用者年金制度の拠出金で賄うものとされているから,無拠出制の障害基礎年金の給付に要する費用の6割を国庫が負担することになる。)が,本人について一定の所得制限が課されるものとされたものである。
エ  もとより,憲法25条2項の規定の趣旨を実現するため,社会保障法上の制度の一つとして,老齢,障害又は死亡によって国民生活の安定が損なわれることに対する所得保障の制度を設定するに当たっては,国の財政事情を無視することができず,また,多方面にわたる複雑多様な,しかも,高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものであることはいうまでもなく,その具体的な制度設計は立法府の広い裁量にゆだねられているというべきである。
前に認定したところによれば,国民年金制度は,① 自ら保険料を支払い,その保険料に応じて年金の支給を受けるという仕組みを取ることにより,老齢のように予測することができる事態はもとより,身体障害又は夫の死亡という事態に対しても,すべての人が,若年のうちから,自らの力でできるだけの備えをするという原則を堅持していくことが,国民年金制度が将来にわたり健全な発展を遂げていくための不可欠の前提と考えられたこと,② 無拠出制を基本とした場合,その財源は国の一般財源に求めざるを得ない関係上,財政支出の急激な膨張は避けられず,将来老齢人口の急激な増加が予想される中,将来における国の財政負担が膨大になり,それだけ将来の国民に対して過度の負担を負わせる結果となることから,これを避けるためにも,拠出制を基本とした積立方式をとり,積立金及びこれから生ずる利子収入を有力な財源として給付費を賄っていく仕組みが必要であると考えられたこと,③ 無拠出制を基本とすると,その支出を賄うための収入がその時々の財政及び経済の諸事情の影響を受けやすく,年金制度が本来有すべき安定性,確実性が害されると考えられたこと,等の理由から,いわゆる拠出制,すなわち,保険方式により被保険者の拠出した保険料を基として年金給付を行うことを基本とする制度設計がされ,昭和60年改正の前後を通じて,このような仕組みが基本的に維持されてきたものである。後記オにおいて説示するとおり,憲法25条の規定が拠出制を基本とする所得保障制度の設定をも許容する趣旨のものであることは明らかというべきであるから,社会保障法上の所得保障としての制度の設計等に当たり,このような拠出制を基本とする選択決定をすることが,立法政策として合理性を欠くということができないことはいうまでもない。
また,保険方式を基本とする制度設計をするに当たり,被保険者の範囲(拠出制の制度の適用範囲)をどのように設定するかについても,以上説示した観点から立法府の裁量事項に属するものというべきところ,前に認定したところによれば,昭和34年法による国民年金制度の創設に当たっては,国民年金制度を厚生年金保険その他の被用者年金制度等の適用を受けない者を対象とし,被用者年金制度等と分立する制度として創設し,当時は大部分の国民が高等学校卒業程度で稼得活動に入ること,老齢年金の支給開始年齢が65歳とされていること,被用者の定年が一般に55歳であるのに対し,自営業者の場合は稼得活動に従事する期間がこれよりも長いこと,被保険者期間を40年とすることが,他の公的年金制度との釣合いを考慮した結果実情にかなうだけでなく,保険料を引き下げる点で実益があること,などの点を考慮して,原則として被用者年金制度等の適用者を除いた日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の日本国民(者)を被保険者とする制度設計がされたものであり,そのうち,被用者年金制度等の適用者の配偶者(妻)については,被用者年金制度等による一応の保障が及んでいる上,稼得活動に従事していないことが通常で保険料の拠出能力に問題があることから,原則として国民年金制度の適用除外とした上,国民年金制度に任意加入することができるものとし,また,学生等については,定型的に稼得能力がないと考えられ,その拠出能力に問題があること,当時,大学で教育を受ける程度の学生というのは,卒業後,被用者年金制度の適用者になるのが通例であると考えられたこと,仮に学生等を被保険者とした場合,卒業後就職して被用者年金制度に加入することによって国民年金制度の適用から除外されることとなるため,多くの場合,学生等の間に納付した保険料が掛け捨てとなることが予想されたことから,原則として国民年金制度の適用除外とした上,国民年金制度に任意加入することができるものとされたものであり,このような制度設計が昭和60年改正まで維持されてきたものである。制度創設当時の人口すう勢,社会状況,公的年金制度等の存在状況,前記1(3)において認定した大学進学率の推移(国民年金制度が創設された昭和34年当時の大学進学率は約8パーセント程度であり,昭和60年当時の大学進学率も約26.4パーセントであった。),前記1(4)において認定した就業構造の推移等に加えて,制度設計における被保険者資格の設定がその性質上技術的かつ画一的な側面を強く有することにもかんがみると,国民年金制度を既存の被用者年金制度等と分立する制度として創設した上,その被保険者の範囲を原則として被用者年金制度等の適用者を除いた日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の日本国民(者)とすることとした選択決定は,立法政策として合理性を欠くということはできず,昭和60年改正までこのような制度を維持したことについても,同様に立法政策として合理性を欠くということはできない。
そして,学生等を原則として国民年金制度の被保険者の範囲から除外したことについても,学生等(定時制課程及び夜間部の学生等,通信教育を受ける者を除く。以下同じ。)が一般に稼得活動に従事しておらず類型的にみて保険料の拠出能力に乏しいことは制度創設当時においても今日においても公知の事実というべきである(平成元年改正により学生等が被保険者とされた後においても,学生等の保険料負担能力にかんがみて,平成12年改正により学生等について保険料の納付特例制度が設けられたところでもある。)から,拠出制を基本とする制度設計の下において,学生等が類型的にみて保険料の負担能力に乏しいことにかんがみて,20歳以上の学生等を被保険者の範囲から一律に除外した上,国民年金制度に任意加入することができるものとした選択決定は,立法政策として合理性を欠くということはできず,昭和60年改正までこのような制度を維持したことについても,同様に立法政策として合理性を欠くということはできない(なお,制度創設当初から,自営業者の配偶者(いわゆる無業の妻)は被保険者とされているが,前記1(1)ウにおいて認定したとおり,これは,当該配偶者(妻)には所得がなくても,夫婦の共同生活が,一方の配偶者(夫)が所得を得,他方の配偶者(妻)が家庭内労働を分担するということによって営まれている以上,その必要経費の一部として当該配偶者(妻)の保険料が夫婦共同の経済により負担され,当該配偶者(妻)自身のものとして拠出されるのは,むしろ生活の実際からみて自然であることなどを理由とするものであって,このような選択決定が立法政策として合理性を欠くということはできない。これに対し,昭和60年改正から平成12年改正に至る過程でも明らかにされたとおり(前記1(5)カ,(6),(7)及び(9)参照),学生等については,拠出制年金の被保険者とした場合には,親世代に学費の負担に加えて更に保険料の負担をかけるという問題が存するのであるから,このような差異にかんがみ,学生等について自営業者の配偶者(妻)と異なった取扱いをすることが,立法政策として合理性を欠くということはできないというべきである。)。
オ もっとも,昭和34年法により20歳以上の学生等が拠出制年金の適用除外とされ,他方で,20歳に達する前に疾病にかかり又は負傷した者(初診日において20歳未満であった者)であって20歳に達した日以後において一定程度の障害の状態にあるもの(前記のとおり制度創設当時は別表に定める1級に該当する程度の障害の状態にある者に限定されていたが,昭和48年法律第92号による国民年金法の改正により,障害年金の場合と同様に別表に定める2級に該当する程度の障害の状態にある者も支給対象とされるようになった。)に対する無拠出制の障害福祉年金の制度が設けられ,このような制度設計が昭和60年改正まで維持されたことにより,学生等は,拠出制年金に任意加入していない限り,20歳に達した以後疾病にかかり又は負傷し,別表に定める1級ないし2級に該当する程度の障害の状態になったとしても,拠出制年金としての障害年金はもとより,無拠出制の障害福祉年金の支給を受けることもできない状態に置かれてきたものである。国民年金制度が老齢年金を基本として設計されたものであるとしても,昭和60年改正までの国民年金法は,老齢と並んで障害及び死亡によって国民生活の安定が損なわれることに対する所得保障についてもこれを制度内に組み入れて,全体として拠出制を基本とし経過的,補完的に無拠出制を取り入れた所得保障制度を構築しており,また,学生等が20歳に達した以後疾病にかかり又は負傷し重度の障害の状態になる頻度も,少ないとはいえ,決して無視し得るものではなく,しかも大学進学率の増加傾向に伴って増加してきたことは,前記1(3),(4)及び(7)において認定した事実等からも容易に認められるところであるから,拠出制年金への任意加入制度について保険料負担能力に応じた保険料の減免制度が設けられていなかったことをも併せ考えると,20歳以上の学生等を原則として拠出制年金の適用除外とした上,無拠出制年金の対象ともしなかった立法政策についても検討すべきであり,学生等適用除外規定の憲法25条適合性については,このような観点からの検討をも加える必要があろう(原告らの主張には上記の趣旨も含まれているものと解される。)。
老齢,障害又は死亡によって国民生活の安定が損なわれることを国民の共同連帯によって防止し,もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とし,この目的を達成するため,国民の老齢,障害又は死亡に関して必要な給付を行うという国民年金制度の趣旨からすれば,学生等のように類型的に保険料の負担能力を欠くと考えられる者についても,拠出制を基本とする所得保障制度の中に組み入れた上,拠出金ないし国庫の負担において制度の保障する利益を享受させるという立法政策も十分考えられるところであり,学生等については,平成元年改正及び平成12年改正を経て,今日においては,一律に被保険者として拠出制年金の枠内に組み入れた上,納付特例制度を設けることにより保険料の負担能力との調整が図られているところである。
しかしながら,一般に,国民年金制度のような憲法25条の規定の趣旨を実現するためのいわゆる所得保障制度を創設し,又はこれを変更するにおいては,制度としての性格上,その適用範囲の設定ないし変更については画一的,技術的な側面が強く現れるのであり,それ自体合理性を有する基準によりその適用範囲を画したとしても,その結果として制度の適用を受けることになる者とある意味で同様の状態にありながらそのままでは制度の適用から除外される者が必然的に生じてくるのであって,このような者をも当該制度の枠内に取り込んで当該制度による利益を享受させるか否か,当該制度の枠内に取り込むとした場合にも,どの範囲で,また,いかなる態様で行うべきか等については,自ずからそれぞれの利害状況を反映した多様な考え方が存在するところであり,その選択決定に当たっては,その時々における国の財政事情の制約の下において,正に多方面にわたる複雑多様な利害を調整し,一定の方向性を見いだして,もって憲法の負託に応えていくという,高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。もとより,我が国の憲法がいわゆる福祉国家の理念に基づいていることは,憲法25条の規定の趣旨等からも明らかであるが,イにおいて説示したような同条の規範としての性格に加えて,他方で憲法が営業の自由(22条1項)及び財産権(29条)を保障している趣旨等にもかんがみると,憲法25条の規定の趣旨を現実の立法として具体化するに当たり,同条が,その時々の国の財政事情が許す限りにおいて,各人に存する経済的,社会的その他種々の事実関係上の差異いかんにかかわらず,各人が常に均一な利益を享受することができるような制度を設定することまでをも規範として要求しているものと解することは困難であり,憲法14条1項の規定ないし憲法13条の規定からそのような解釈を導くことも困難である。国民年金制度のようないわゆる社会保障法上の所得保障制度の創設又は変更についてみても,前記のとおり,無拠出制を基本とする制度設計を行った場合には,その財源は国の一般財源に求めざるを得ない関係上,給付の充実を図ろうとすれば,それだけ国民に対して重い負担を負わせる結果となることに加えて,その支出を賄うための収入がその時々の財政及び経済の諸事情の影響を受けやすく,制度が本来有すべき安定性,確実性が害されるおそれがあるという困難な問題が,制度創設当時のみならず今日においても存するのであって,かえって,所得保障により国民生活の安定を図るという憲法25条の規定の趣旨の実現に支障を来すことにもなりかねないのであるから,このことからしても,同条の規定が拠出制を基本とする所得保障制度の設定をも許容する趣旨のものであることは明らかというべきである。しかるところ,拠出制を基本とした場合,拠出能力を欠く者ないし現実に拠出をしていない者に対しても,拠出を行った者と等しく当該制度による所得保障の利益を享受させるべきであるとの選択肢も,国民の共同連帯の一態様としてあり得るところではあるが,このような考え方に対しては,現実に拠出の負担をしている者との公平,均衡という問題が自ずから生じてくるのであり,現に昭和60年改正から平成元年改正に至る過程においても,学生等を保険料を減免した上被保険者(強制加入の対象)とすることについては,学生等と同世代で稼得活動に従事し保険料を負担している者との公平を欠くのではないかなどといった議論がされたところでもある(前記1(5)カ,(7)参照)。上記のとおり,我が国の憲法における基本的人権の保障の在り方ないし体系等にもかんがみると,憲法25条(ないし14条,13条)が上記のような負担の公平といった価値選択を許容せず,拠出能力を欠く者等に対しても拠出の負担をしている者と等しく当該制度による所得保障の利益を享受させるような制度の設定を規範として要求しているとまで解することはできないものというべきであり,拠出制を基本とする所得保障制度の設定又は変更に当たり,学生等のように類型的に拠出能力を欠くと考えられる者について,これを被保険者として拠出制の枠内に取り込んだ上保険料の減免等の措置を講ずるのか,当該制度に補完的に無拠出制を設けた上当該無拠出制の枠内で一定の利益を享受させるのか,その場合,無拠出制の適用範囲をどのように設定するのか,享受させる利益の内容,態様,程度をどのように設定するのか,あるいは当該制度とは別の制度でもって憲法25条の規定の趣旨の実現を図るのか,などといった事柄に関する選択決定については,憲法は,25条1項において健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障した趣旨に反しない限り,その時々における国の財政事情の制約を勘案し,上記のような負担の公平といった問題等をも含めて多方面にわたる複雑多様な利害を調整し,一定の方向性を見いだして,もって憲法の負託にこたえていくという,立法府の高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断にゆだねているものと解されるのである。
以上説示したところに加えて,後記(2)エにおいて説示するところ及び昭和34年法による国民年金制度の創設当時,生活保護法,身体障害者福祉法等の社会保障立法が存在していたことなどにもかんがみると,昭和34年法による国民年金制度の創設から昭和60年改正までの間,20歳以上の学生等を原則として被保険者から除外し,任意加入することができるものとするにとどめ,任意加入制度について保険料負担能力に応じた保険料の減免制度を設けず,20歳以上の学生等を無拠出制の障害福祉年金の支給対象ともしなかった選択決定が,立法政策として著しく合理性を欠き,憲法25条の規定の趣旨に照らして明らかに立法府の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものということはできないというべきである。
カ  以上のとおりであるから,昭和60年改正までの学生等適用除外規定が憲法25条(及び13条)に違反する旨の原告らの主張を採用することはできない。
キ 前記ウのとおり,昭和60年改正により,基本的には保険方式を維持しながら,公的年金制度の長期的な安定と整合性ある発展を図る目的から,国民共通の基礎年金制度が導入され,同改正後の国民年金制度は,公的年金制度の適用者のすべてに共通の定額制の基礎年金を支給する制度として位置付けられるとともに,被用者年金制度の被保険者等の被扶養配偶者についても国民年金の被保険者とされ,他方で,障害者の所得保障の大幅な改善を図る目的から,被保険者期間中に3分の1以上の滞納がなければ障害基礎年金を支給するものとしてその支給要件(拠出要件)が緩和されるとともに,同改正前に障害福祉年金を受給していた者ないし同改正前において障害福祉年金の支給対象とされていた20歳に達する前に初診日のある障害(20歳前障害)についても,拠出制の障害基礎年金と同額の無拠出制の障害基礎年金を支給することとされたが,学生等については,定型的に稼得活動に従事しておらず,保険料の拠出能力が乏しいことを理由として,平成元年改正までは,原則として拠出制年金の被保険者から除外した上,国民年金制度に任意加入することができるものとする制度が維持され,無拠出制の障害基礎年金の支給対象ともされなかった。
昭和60年改正後の国民年金制度においても拠出制の保険方式を基本とする制度を維持したことが立法政策として合理性を欠くものでないことは,前記ウ及びエに説示したとおりであり,また,前記1(3)において認定した大学進学率の推移(昭和60年当時の大学進学率も約26.4パーセントであった。)等に加えて,制度設計における被保険者資格の設定がその性質上技術的かつ画一的な側面を強く有することにもかんがみると,拠出制年金の被保険者の範囲を原則として日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者とすることとした選択決定も,立法政策として合理性を欠くということはできない。そして,拠出制を基本とする制度設計の下において,学生等が類型的にみて保険料の負担能力に乏しいことにかんがみて,平成元年改正まで20歳以上の学生等を被保険者の範囲から一律に除外した上,国民年金制度に任意加入することができるものとした選択決定も,立法政策として合理性を欠くということはできないというべきである。もっとも,昭和60年改正においては,被用者年金制度の被保険者等の被扶養配偶者についても国民年金の被保険者とし,その保険料負担については被用者である配偶者の被用者年金の保険料の中に含まれているものとする処理がされたが,前記1(5)エにおいて認定したところによれば,これについては,拠出制の建前からして問題であるとの批判的意見も存したものの,女性の年金権を確立するとの政策目的が優先されたものと解されるのであり,このような選択決定が憲法25条の趣旨に照らして合理性を欠くということができないことはいうまでもないが,20歳以上の学生等について,被用者年金制度の被保険者等の被扶養配偶者と同様の処理ないしは保険料について特別の減免措置を講ずる等の処理をしなかったからといって,稼得活動に従事し保険料を負担している者との公平,均衡にもかんがみると,そのような選択決定が同条の趣旨に照らして直ちに合理性を欠くということはできない(なお,平成元年改正及び平成12年改正の結果,今日においては,20歳以上の学生等は,一律に被保険者とされた上,保険料の納付特例制度が設けられているが,これは,20歳以上の学生等についても障害となった場合に無年金となることを防ぐとともに40年加入の満額の基礎年金を受給することができるようにするとの政策目的を優先させたものと解されるのであって(前記1(7)イ参照),そのことのゆえに平成元年改正までの20歳以上の学生等の取扱いが直ちに合理性を欠くことになるものではないというべきである。)。
また,昭和60年改正においては,障害者の所得保障の大幅な改善を図る目的から,被保険者期間中に3分の1以上の滞納がなければ障害基礎年金を支給するものとしてその支給要件(拠出要件)が緩和されるとともに,同改正前において障害福祉年金の支給対象とされていた20歳前に生じた障害等についても拠出制の障害基礎年金と同額の無拠出制の障害基礎年金を支給することとされたものの,学生等についてはこのような無拠出制の障害基礎年金の支給対象とされなかったものであるが,前記オにおいて説示したとおり,そもそも,憲法は,拠出制を基本とする所得保障制度の設定又は変更に当たり,学生等のように類型的に拠出能力を欠くと考えられる者の取扱いに関する選択決定については,25条1項の趣旨に反しない限り,立法府の高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断にゆだねているものと解されるところ,後記(2)エにおいて説示するところに加えて,同改正後の国民年金制度においては,無拠出制の障害基礎年金については,その費用の40パーセントを国庫が負担するものの,残りの60パーセントを拠出金によって賄うものとされている(ただし,基礎年金の給付に要する費用のうちの3分の1を国庫が負担するものとされている。)ことや,同改正時までには,障害者基本法が制定されるなど,障害者のための施策の一層の推進が図られていたことなどをもしんしゃくすれば,同改正後平成元年改正までの間,20歳以上の学生等を原則として被保険者から除外し,任意加入することができるものとするにとどめ,任意加入制度について保険料負担能力に応じた保険料の減免制度を設けず,20歳以上の学生等を無拠出制の障害基礎年金の支給対象ともしなかった選択決定が,立法政策として著しく合理性を欠き,憲法25条の規定の趣旨に照らして明らかに立法府の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものということはできないというべきである。
ク  以上のとおりであるから,昭和60年改正後平成元年改正までの学生等適用除外規定が憲法25条(及び13条)に違反する旨の原告らの主張を採用することはできない。
ケ  以上によれば,学生等適用除外規定(国民年金法(昭和36年法律第167号による改正前のもの)7条2項7号,国民年金法(昭和39年法律第110号による改正前のもの)7条2項8号,国民年金法(昭和60年法律第34号による改正前のもの)7条2項8号,国民年金法(平成元年法律第86号による改正前のもの)7条1項1号イの各規定)が,憲法25条1項,2項(及び13条)に違反し,少なくとも障害年金に関する限り無効である旨の原告らの主張は,理由がなく,採用することはできない。
(2)  憲法14条違反の主張について
ア 原告らは,学生等を国民年金制度の適用除外とすることは,保険料負担能力のない学生等に保険料納付義務を課さないという立法目的の達成のための手段としては,何らの必要性もなく,およそ関連性もない,著しく不合理なものであるから,学生等適用除外規定(国民年金法(昭和36年法律第167号による改正前のもの)7条2項7号,国民年金法(昭和39年法律第110号による改正前のもの)7条2項8号,国民年金法(昭和60年法律第34号による改正前のもの)7条2項8号,国民年金法(平成元年法律第86号による改正前のもの)7条1項1号イの各規定)は,20歳以上の学生等を学生等でない20歳以上の者との間において著しく不合理な差別的取扱いを行うものであって,憲法14条1項に違反し無効であり,また,昭和60年改正前の国民年金制度は,20歳に達する前に初診日のある障害(20歳前障害)については無拠出制の障害福祉年金を支給するものとし(同改正前の国民年金法57条),同改正後の国民年金制度は,20歳前障害について無拠出制の障害基礎年金を支給するものとしている(同改正後の国民年金法30条の4)にもかかわらず,20歳未満で障害を生じた者と同じ状況にある20歳以上の学生等については,国民年金制度に任意加入しない限り障害年金ないし障害基礎年金の支給を受けることができないものとされていたのであり,このような取扱いに到底合理的な理由はないから,学生等適用除外規定は,昭和60年改正前の国民年金法57条及び同改正後の国民年金法30条の4等の代替措置を伴わないこととあいまって,憲法14条1項に違反し無効であるなどと主張する。
イ 憲法14条1項の規定は,合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって,各人に存する経済的,社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは,その区別が合理性を有する限り,何らこの規定に違反するものではないが,憲法25条の規定の要請にこたえて制定された法令において,受給者の範囲,支給要件,支給金額等につき何ら合理的理由のない不当な差別的取扱いをするような内容の定めを設けているときは,憲法14条1項違反の問題を生じ得るものと解される(最高裁昭和37年(あ)第927号同39年11月18日大法廷判決・刑集18巻9号579頁,最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁,前掲最高裁昭和57年7月7日大法廷判決参照)。
ウ そこで,まず,学生等適用除外規定が,20歳以上の学生等を学生等でない20歳以上の者との間において著しく不合理な差別的取扱いを行うものとして,憲法14条1項に違反するか否かについて検討する。
我が国の国民年金制度は,昭和60年改正の前後を通じて,拠出制を基本とする仕組みが採用されているところ,前記(1)エ及びオにおいて説示したとおり,拠出制を基本としたのは,将来予想される人口の老齢化を踏まえて,一定の給付水準を維持し,他方で,国民に過度の負担を負わせることなく,制度の安定性,確実性を確保し,その健全な発展を図ることにあるものと理解される。前記(1)オにおいて説示したとおり,憲法25条の規定が拠出制を基本とする所得保障制度の設定をも許容する趣旨のものであることは明らかというべきであるから,国民年金法が拠出制を基本とする制度の仕組みを採用したこと自体が立法政策として合理性を欠くということはできない。
また,昭和34年法による国民年金制度の創設に当たっては,国民年金制度を厚生年金保険その他の被用者年金制度等の適用を受けない者を対象とし,被用者年金制度等と分立する制度として創設し,当時は大部分の国民が高等学校卒業程度で稼得活動に入ることなどの点を考慮して,原則として被用者年金制度等の適用者を除いた日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の日本国民(者)を拠出制年金の被保険者とする制度設計がされ,昭和60年改正においても,国民年金制度を公的年金制度の適用者のすべてに共通の定額制の基礎年金を支給する制度として位置付けた上で,被保険者の範囲を原則として日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者とする制度設計がされたものである。このような選択決定が,これを裏付ける立法事実の存在を認めることができる上,制度設計における被保険者資格の設定がその性質上技術的かつ画一的な側面を強く有することにもかんがみると,立法政策として合理性を欠くということができないことも,前記(1)エ及びキにおいて説示したとおりである。そして,昭和60年改正前においてはもとより,昭和60年改正後も平成元年改正までは,20歳以上の学生等は,国民年金制度における拠出制年金の被保険者から原則として除外され,国民年金制度に任意加入することができるものとされていたところ,前記(1)ウにおいて説示したとおり,20歳以上の学生等を原則として拠出制年金の被保険者から除外したのは,拠出制を基本とする制度設計の下において,学生等が類型的にみて保険料の負担能力に乏しいことを考慮したものであり,学生等が一般に稼得活動に従事しておらず類型的にみて保険料の拠出能力に乏しいことは,制度創設当時においても,今日においても,公知の事実というべきであるから,拠出制を基本とする制度の下において,20歳以上の学生等を拠出制年金の被保険者の範囲から一律に除外した上,国民年金制度に任意加入することができるものとした選択決定は,立法政策として合理性を欠くということはできない。
この点,原告らは,学生等には定型的に稼得能力がなくその拠出能力に問題があるとしても,平成元年改正で実現したとおり,学生等を国民年金制度の適用除外とせずに強制加入とした上で,一般とは異なる学生等用の保険料免除基準(世帯単位)を設けることによって,保険料負担能力のない学生等が保険料の免除を受ける余地を残すことや,② 平成12年改正で実現したとおり,保険料の納付特例制度を設け,学生等本人の所得を基準として,届出により保険料の納付を要しないこととする方法をとることが可能であったのであり,それにもかかわらず,学生等を適用除外として,保険料の負担能力のない学生等が障害年金ないし障害基礎年金を受給するみちを閉ざしたことは,国民年金制度の中核であり,全国民にあまねく年金による所得保障を行おうとする国民皆年金の理念に著しく反し,著しく不合理な差別的取扱いであるなどと主張する。
しかしながら,前記(1)オにおいて説示したとおり,我が国の憲法がいわゆる福祉国家の理念に基づいているとしても,憲法における基本的人権の保障の在り方ないし体系等にかんがみると,憲法25条の規定の趣旨を現実の立法として具体化するに当たり,同条が,その時々の国の財政事情が許す限りにおいて,各人に存する経済的,社会的その他種々の事実関係上の差異いかんにかかわらず,各人が常に均一な利益を享受することができるような制度を設定することまでをも規範として要求しているものと解することは困難であって,憲法14条1項の規定ないし憲法13条の規定からそのような解釈を導くことも困難である。拠出制を基本とする所得保障制度を設定する場合において,拠出能力を欠く者ないし現実に拠出をしていない者に対しても,拠出を行った者と等しく当該制度による所得保障の利益を享受させるべきであるとの考え方に対しては,現実に拠出の負担をしている者との公平,均衡という問題が自ずから生じてくるところ,憲法25条,14条等が上記のような負担の公平といった価値選択を許容せず,拠出能力を欠く者等に対しても拠出の負担をしている者と等しく当該制度による所得保障の利益を享受させるような制度の設定を規範として要求しているとまで解することはできないものというべきであり,拠出制を基本とする所得保障制度の設定又は変更に当たり,学生等のように類型的に拠出能力を欠くと考えられる者について,これを被保険者として拠出制の枠内に取り込んだ上保険料の減免等の措置を講ずるのか,当該制度に補完的に無拠出制を設けた上当該無拠出制の枠内で一定の利益を享受させるのか,その場合,無拠出制の適用範囲をどのように設定するのか,享受させる利益の内容,態様,程度をどのように設定するのか,あるいは当該制度とは別の制度でもって憲法25条の規定の趣旨の実現を図るのか,などといった事柄に関する選択決定については,憲法は,25条1項において健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障した趣旨に反しない限り,その時々における国の財政事情の制約を勘案し,上記のような負担の公平といった問題等をも含めて多方面にわたる複雑多様な利害を調整し,一定の方向性を見いだして,もって憲法の負託にこたえていくという,立法府の高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断にゆだねているものと解されるのである。確かに,20歳以上の学生等について,一律に拠出制年金の被保険者とした上,学生等用の特別の保険料免除基準を設けることや,昭和60年改正における被用者年金制度の被保険者等の被扶養配偶者と同様の処理をすることも,選択肢としてはあり得たところであり,また,平成元年改正及び平成12年改正の結果,今日においては,20歳以上の学生等は,一律に被保険者とされた上,保険料の納付特例制度が設けられているところでもあるが,前記のとおり,このような考え方に対しては,学生等と同世代で稼得活動に従事し保険料を負担している者との公平を欠くのではないかなどといった議論がされていたところであり,それにもかかわらず,平成元年改正及び平成12年改正により20歳以上の学生等について上記のような選択決定がされたのは,20歳以上の学生等についても障害となった場合に無年金となることを防ぐとともに40年加入の満額の基礎年金を受給することができるようにするとの政策目的を優先させたものと解されるのである。
以上のとおりであるから,平成元年改正までの間,20歳以上の学生等について,拠出制年金の被保険者とした上で学生等用の特別の保険料免除基準を設けたり,あるいは,拠出制年金の被保険者とした上で保険料の納付特例制度を設けたりするなどの方法をとらずに,原則として拠出制年金の被保険者から除外した上,国民年金制度に任意加入することができるものとするにとどめたことが,学生等でない20歳以上の者との関係において何ら合理的理由のない不当な差別的取扱いであるということはできないというべきである。
エ 次に,学生等適用除外規定が,20歳に達する前に初診日のある障害(20歳前障害)については昭和60年改正前の国民年金制度が無拠出制の障害福祉年金を支給するものとし(同改正前の国民年金法57条),同改正後の国民年金制度が無拠出制の障害基礎年金を支給するものとしている(同改正後の国民年金法30条の4)こととの関係において,20歳以上の学生等について著しく不合理な差別的取扱いを行うものとして,憲法14条1項に違反するか否かについて検討する。
前記認定のとおり,我が国の国民年金制度は,拠出制,すなわち,保険方式により被保険者の拠出した保険料を基として年金給付を行うことを基本とし,保険原則によるときは給付を受けることができない者についても制度の保障する利益を享受させるため,経過的及び補完的に無拠出制の年金給付の制度を設けることとして,創設され,維持されてきたものである。国民年金制度の創設に当たり経過的及び補完的に無拠出制の福祉年金制度が設けられた趣旨は,制度創設当時の社会情勢の下においては,将来における人口の老齢化に備えることと同等又はそれ以上に,現在の老齢者,身体障害者及び母子世帯に年金的保護を及ぼす必要性が高いと考えられたこと,拠出制年金においては給付額の3分の1を国庫が負担する仕組みとされていることからすると,拠出制年金のみでは,保険料を拠出することができた者だけが国から国庫負担を通じて援助を受けられるという不公平な結果となること,公的扶助制度は本質的に事後的な救貧を目的とする制度であって,受給者の収入額によって扶助支給額が調整され,全体として収入水準は最低生活水準にくぎ付けにされることになってしまうことなどによるものである。
昭和60年改正前の国民年金制度は,補完的無拠出制(福祉)年金の一つとして,20歳に達する前に疾病にかかり又は負傷した者(初診日において20歳未満であった者)が20歳に達した日以後において別表に定める1級に該当する程度の障害の状態(日常生活の用を弁ずることが不能な程度の障害の状態)にあるときに障害福祉年金を支給するものとしていた(同改正前の国民年金法57条)。補完的福祉年金の一つとして20歳前障害に対する障害福祉年金の制度が設けられた趣旨は,若年において別表に定める1級に該当する程度の障害の状態にあるということは,通常その障害が回復することが極めて困難であり,稼働能力はほとんど永久的に奪われており,かつ,年齢的にみて親の扶養を受ける程度をできる限り少なくしなければならないという意味において,最も所得保障をする必要性が高いものであると考えられたことによるものである(前記1(1)エ参照)。そして,20歳前障害に対する障害福祉年金を含む無拠出制年金の給付に要する費用はその全額を国庫が負担するものとされ,既に現行公的年金制度による年金の支給を受けている者や一定程度以上所得のある者等については支給制限を課すものとされていた。この障害福祉年金は,昭和34年法による国民年金制度の創設当初は障害年金と異なり別表に定める1級に相当する程度の障害の状態にある者に限定され,その後,障害年金と並行して支給額が増額され,支給の対象となる障害の範囲が拡大され,別表に定める2級に相当する程度の障害の状態にある者に対しても支給されるようになったが,昭和60年改正まで一貫してその支給額は障害年金の支給額に比べて低額なものに設定されてきた。
昭和60年改正により,基本的には保険方式を維持しながら,公的年金制度の長期的な安定と整合性ある発展を図る目的から,国民共通の基礎年金制度が導入され,同改正後の国民年金制度は,公的年金制度の適用者のすべてに共通の定額制の基礎年金を支給する制度として位置付けられ,我が国のすべての公的年金制度がいわゆる1階部分を共通の定額の基礎年金,いわゆる2階部分を各制度独自の所得比例ないし報酬比例の年金とするいわゆる2階建ての年金体系に再編成され,障害年金についても,基礎年金と報酬比例年金のいわゆる2階建て年金の仕組みとされた。そして,それとともに,障害者の所得保障の大幅な改善を図る目的から,被保険者期間中に3分の1以上の保険料の滞納がなければ障害基礎年金を支給するものとしてその支給要件(拠出要件)が緩和されるとともに,同改正前に障害福祉年金を受給していた者ないし同改正前において障害福祉年金の支給対象とされていた20歳前に生じた障害についても,拠出制の障害基礎年金と同額の無拠出制の障害基礎年金を支給することとし,特別にその費用の40パーセントを国庫が負担するものとされ,残りの60パーセントを拠出金によって賄うものとされた(なお,基礎年金の給付に要する費用のうちの3分の1を国庫が負担し,その余を国民年金の保険料及び被用者年金制度の拠出金で賄うものとされている。)が,本人について一定の所得制限が課されるものとされた。
確かに,原告らが主張するとおり,20歳以上の学生等についても,学生等である間に疾病にかかり又は負傷して重度の障害の状態となった場合,通常その障害が回復することが極めて困難であり,稼働能力はほとんど永久的に奪われており,多くの場合,年齢的にみて親にかなりの扶養の負担を負わせることになるという点において,20歳に達する前に疾病にかかり又は負傷して重度の障害の状態となった場合と異なるところがないということができる。それにもかかわらず,20歳に達する前に初診日のある障害(20歳前障害)については障害福祉年金ないし障害基礎年金の支給対象とされ,他方,20歳以上の学生等に生じた障害については,平成元年改正までの間,当該学生等が国民年金制度に任意加入していない限り,年金給付の対象とされていなかったのであり,このことからすれば,国民年金制度の創設当初から,20歳未満の者と20歳以上の学生等との間には,疾病にかかり又は負傷して重度の障害となった場合における国民年金制度上の取扱いについて格差が存在し,当該格差は,昭和60年改正により障害者の所得保障の大幅な改善を図る目的から同改正前の障害福祉年金に代えて拠出制の障害基礎年金と同額の障害基礎年金を支給するものとされたこと等によって拡大したものということができる。
しかしながら,前に説示したとおり,国民年金制度が,拠出制を基本とする制度設計の下において,大多数の国民が高等学校卒業程度で稼得活動に入ることなどの点を考慮して,拠出制年金の被保険者の範囲を原則として日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者とした上で,学生等が類型的にみて保険料の負担能力に乏しいことを考慮して,20歳以上の学生等を原則として被保険者の範囲から除外し,国民年金制度に任意加入することができるものとするにとどめたことが,立法政策として合理性を欠くものでないことは,昭和60年改正の前においても後においても異なるところがない。しかるところ,そもそも,国民年金制度のような憲法25条の規定の趣旨を実現するためのいわゆる所得保障制度を創設し,又はこれを変更するにおいては,制度としての性格上,その適用範囲の設定ないし変更については画一的,技術的な側面が強く現れるのであり,それ自体合理性を有する基準によりその適用範囲を画したとしても,その結果として制度の適用を受けることになる者とある意味で同様の状態にありながらそのままでは制度の適用から除外される者が必然的に生じてくるのであって,このような者をも当該制度の枠内に取り込んで当該制度による利益を享受させるか否か,当該制度の枠内に取り込むとした場合にも,どの範囲で,また,いかなる態様で行うべきか等については,自ずからそれぞれの利害状況を反映した多様な考え方が存在するところであり,その選択決定に当たっては,その時々における国の財政事情の制約の下において,正に多方面にわたる複雑多様な利害を調整し,一定の方向性を見いだして,もって憲法の負託に応えていくという,高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。憲法25条の規定の趣旨を実現するため,拠出制を基本とする所得保障制度を設定する場合においても,拠出能力を欠く者ないし現実に拠出をしていない者について,拠出を行った者と等しく当該制度による所得保障の利益を享受させるべきであるとの立法政策をとることも,十分検討に値するところであるが,このような考え方に対しては,現実に拠出の負担をしている者との公平,均衡という問題が自ずから生じてくるところ,我が国の憲法がいわゆる福祉国家の理念に基づいているとしても,憲法における基本的人権の保障の在り方ないし体系等にかんがみると,憲法25条,14条等が上記のような負担の公平といった価値選択を許容せず,拠出能力を欠く者等に対しても拠出の負担をしている者と等しく当該制度による所得保障の利益を享受させるような制度の設定を規範として要求しているとまで解することはできないのであり,学生等のように類型的に拠出能力を欠くと考えられる者について,これを被保険者として拠出制の枠内に取り込んだ上保険料の減免等の措置を講ずるのか,当該制度に補完的に無拠出制を設けた上当該無拠出制の枠内で一定の利益を享受させるのか,その場合,無拠出制の適用範囲をどのように設定するのか,享受させる利益の内容,態様,程度をどのように設定するのか,あるいは当該制度とは別の制度でもって憲法25条の規定の趣旨の実現を図るのか,などといった事柄に関する選択決定については,憲法は,25条1項において健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障した趣旨に反しない限り,その時々における国の財政事情の制約を勘案し,上記のような負担の公平といった問題等をも含めて多方面にわたる複雑多様な利害を調整し,一定の方向性を見いだして,もって憲法の負託にこたえていくという,立法府の高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断にゆだねているものと解されるのである。20歳に達する前に疾病にかかり又は負傷して障害の状態となった者(初診日において20歳未満であった者)について,無拠出制の障害福祉年金又は障害基礎年金を支給することとされたのも,前記のとおり,若年において1級に該当する程度の障害にあるということは,通常その障害が回復することが極めて困難であり,稼働能力はほとんど永久的に奪われており,かつ,年齢的にみて親の扶養を受ける程度をできる限り少なくしなければならないという意味において,最も所得保障をする必要性が高いものであるとの政策的判断に基づいた立法政策の一態様として理解されるものであり,このような選択決定は,それらの者が初診日においては一般に社会から保護されるべきものとされている未成年者であった上,その大多数が就労能力を有していなかったことなどにもかんがみると,立法政策として不合理ということはできないものというべきである。このことからすれば,確かに,20歳以上の学生等であって国民年金制度に任意加入していない者についても,学生等である間に疾病にかかり又は負傷して障害年金ないし障害基礎年金の支給対象と同じ程度の障害の状態となった場合に無拠出制の障害福祉年金又は障害基礎年金を支給するものとする立法政策も,選択肢としてはあり得たところであり,そのような選択肢も,国民年金制度が目的とする,障害によって国民生活の安定が損なわれることを国民の共同連帯によって防止する一つの在り方ということができる。しかしながら,それらの者が初診日において既に成人年齢に達している上,成人年齢に達した者の多数が就労している実情にもかんがみると,20歳に達する前に疾病にかかり又は負傷して障害の状態となった場合と異なり,20歳以上の学生等が疾病にかかり又は負傷して障害の状態となった場合に無拠出制の年金給付を行うものとした場合については,現実に保険料を負担して拠出をし又は拠出をすべきものとされている拠出制年金の被保険者との公平,均衡の問題が生じることは否定することができないのであり(前記のとおり,現に昭和60年改正から平成元年改正に至る過程においても,学生等を保険料を減免した上被保険者とすることについて,学生等と同世代で稼得活動に従事し保険料を負担している者との公平を欠くのではないかなどといった議論がされたところでもある。),前記のとおり,憲法25条,14条等が上記のような負担の公平といった価値選択を許容せず,拠出の負担をしている者と等しく当該制度による所得保障の利益を享受させるような制度の設定を規範として要求しているとまで解することはできないのである。
以上説示したところに加えて,昭和34年法による国民年金制度の創設当時から,生活保護法,身体障害者福祉法等の社会保障立法が存在していたことなどにもかんがみると,昭和34年法による国民年金制度の創設から昭和60年改正までの間,20歳以上の学生等について,原則として拠出制年金の被保険者から除外し,国民年金制度に任意加入することができるものとするにとどめ,無拠出制の障害福祉年金の支給対象としなかったことが,何ら合理的理由のない不当な差別的取扱いであるということはできないというべきである。また,昭和60年改正時までには,障害者基本法が制定されるなど,障害者のための施策の一層の推進が図られていたことに加えて,同改正後の国民年金制度においては,無拠出制の障害基礎年金については,その費用の40パーセントを国庫が負担するものの,残りの60パーセントを拠出金によって賄うものとされている(ただし,基礎年金の給付に要する費用のうちの3分の1を国庫が負担するものとされている。)ことにもかんがみると,同改正により同改正前の障害福祉年金に代えて拠出制の障害福祉年金と同額の障害基礎年金を支給するものとされたこと等によりその受給権者との格差が拡大したなどの点を考慮してもなお,同改正後平成元年改正までの間,20歳以上の学生等を原則として拠出制年金の被保険者から除外し,国民年金制度に任意加入することができるものとするにとどめた上,無拠出制の障害基礎年金の支給対象としなかったことが,何ら合理的理由のない不当な差別的取扱いであるということはできないというべきである。
オ  以上によれば,学生等適用除外規定(国民年金法(昭和36年法律第167号による改正前のもの)7条2項7号,国民年金法(昭和39年法律第110号による改正前のもの)7条2項8号,国民年金法(昭和60年法律第34号による改正前のもの)7条2項8号,国民年金法(平成元年法律第86号による改正前のもの)7条1項1号イの各規定)が憲法14条1項に違反し無効である旨の原告らの主張は,理由がなく,採用することができない。
(3)  憲法13条,31条違反の主張について
ア 原告らは,平成元年改正前における国民年金制度において20歳以上の学生等について国民年金制度への任意加入制度が設けられていたとしても,① 任意加入しなくても大学等卒業後に厚生年金保険,共済年金あるいは国民年金の被保険者になれば老齢年金を受給するために必要な加入期間を満たすことができる一方で,在学中に国民年金に任意加入すれば保険料を支払う義務を負うこと,② 国民年金に任意加入していない者が傷病により障害を負った場合は,大学等卒業後に国民年金の被保険者となっても一生涯障害年金ないし障害福祉年金を受給することはできないこと,について個々の学生等が明確に理解していること,少なくとも被告国がこれらのことを学生等が理解することができるように十分な説明をしたこと(個別的教示)が必要であったにもかかわらず,被告国は,この個別的教示を全く行わなかったのみならず,任意加入制度が存在することすらほとんど広報せず,かえって,適用を除外された主婦や学生等は加入しなくてよいとする広報や窓口指導がされ,その結果,学生等で任意加入をする者はごくわずかであって,任意加入制度はほとんどその実質を持たなかったのであり,任意加入しなかった学生等は,任意加入しない限り学生等の間に疾病にかかり又は負傷して障害の状態となった場合であっても,障害年金ないし障害福祉年金を受給することができないことについての告知,聴聞の機会が保障されなかったに等しいというべきであるから,学生等適用除外規定(国民年金法(昭和36年法律第167号による改正前のもの)7条2項7号,国民年金法(昭和39年法律第110号による改正前のもの)7条2項8号,国民年金法(昭和60年法律第34号による改正前のもの)7条2項8号,国民年金法(平成元年法律第86号による改正前のもの)7条1項1号イの各規定)は,適正手続の保障を欠くものであり,憲法13条及び31条に違反し無効であるなどといった趣旨の主張をする。
イ しかしながら,昭和60年改正の前後を通じて,国民年金制度における任意加入制度は,種々の政策的理由等により拠出制年金の被保険者から除外された者に対して,拠出制年金への加入のみちを設けたものであり,その性格上,拠出制年金の被保険者(強制加入の対象者)のために設けられている保険料の減免制度は適用されず,拠出制年金への加入を希望する者が保険料を負担することを前提に被保険者となることを認めたものである。昭和34年法による国民年金制度の創設から平成元年改正までの間,20歳以上の学生等を原則として拠出制年金の被保険者から除外し,国民年金制度に任意加入することができるものとするにとどめた上,無拠出制の障害福祉年金ないし障害基礎年金の支給対象ともしなかったことが,立法政策として著しく合理性を欠くとも,何ら合理的理由のない不当な差別的取扱いであるということもできないことは,既に説示したとおりであることに加えて,そもそも,20歳以上の学生等を原則として拠出制年金の被保険者の範囲から除外した立法趣旨が,学生等が類型的にみて保険料の負担能力に乏しいことにあること及び上記のとおり,任意加入制度が,種々の政策的理由等により拠出制年金の被保険者から除外された者について,拠出制年金への加入を希望する場合に保険料を負担することを前提として被保険者となることを認めたものであることにもかんがみると,20歳以上の学生等に対して保険料の負担を前提とする国民年金制度への任意加入制度の存在及びその意義等について周知徹底する等の措置が制度的にとられなかったとしても(なお,後記のとおり,学生等適用除外規定が設けられていた間,学生等の間は国民年金制度にあえて加入しなくてもよいといった趣旨の窓口指導が行われていた事例も存在する事実が認められるが,20歳以上の学生等について任意加入を抑制するような措置が制度的にとられていた事実を認めるに足りる証拠はない。),そのことのゆえに,学生等適用除外規定が著しく不合理であるということはできず,適正手続の保障を欠くものとして憲法13条及び31条に違反し無効であるということもできない。
ウ  以上によれば,学生等適用除外規定(国民年金法(昭和36年法律第167号による改正前のもの)7条2項7号,国民年金法(昭和39年法律第110号による改正前のもの)7条2項8号,国民年金法(昭和60年法律第34号による改正前のもの)7条2項8号,国民年金法(平成元年法律第86号による改正前のもの)7条1項1号イの各規定)が憲法13条及び31条に違反し無効である旨の原告らの主張は,理由がなく,採用することができない。
(4)  昭和60年改正において専修学校等の生徒を適用除外としたことの合法性について
昭和60年改正により,国民年金の被保険者から除外される学生等の範囲について政令で定めるものと規定され(平成元年改正前の国民年金法7条1項1号イ),昭和61年政令第53号による国民年金法施行令の改正により,新たに専修学校及び各種学校その他の教育施設であって専修学校に準ずるものとして厚生省令で定めるもの(以下「専修学校等」という。)に在学する生徒(厚生省令で定める専修学校の学科に在学する者を除く。以下同じ。)が被保険者から除外された(国民年金法施行令(平成元年政令第336号による改正前のもの)4条4号,5号,国民年金法施行規則(平成3年厚生省令第23号による改正前のもの)1条の2)。前記1(5)カのとおり,平成元年改正前の国民年金法7条1項1号イの規定を受けた政令(平成元年政令第336号による改正前の国民年金法施行令)において新たに専修学校等の生徒が被保険者から除外されるものとされた立法理由は本件全証拠によるも明らかではないが,国民年金法施行規則(平成3年厚生省令第23号による改正前のもの)1条,1条の2ただし書の規定等にかんがみると,一般に稼得活動に従事しておらず類型的にみて保険料の拠出能力に乏しい点において昭和60年改正まで被保険者から除外するものとされていた学生等と異なるところがないと考えられたことによるものと推認される。
ところで,平成元年改正前の国民年金法7条1項1号イの規定が学校教育法41条に規定する高等学校の生徒,同法52条に規定する大学の学生その他の生徒又は学生であって政令で定めるものを国民年金の被保険者から除外するものとした趣旨は,拠出制を基本とする制度設計の下において学生等が類型的にみて保険料の負担能力に乏しいことを考慮したものであり,同規定が立法政策として合理性を欠くものではなく憲法25条,14条1項等に違反するものでないことは,既に説示したとおりであるから,平成元年改正前の国民年金法7条1項1号イの規定は,国民年金の被保険者から除外されるものとして,一般に稼得活動に従事しておらず類型的にみて保険料の拠出能力に乏しい学生等を整理して規定することを政令にゆだねたものと解するのが相当である。そうであるとすれば,平成元年改正前の国民年金法7条1項1号イの規定の委任に基づき国民年金の被保険者から除外される学生等の範囲を定める国民年金法施行令(平成元年政令第336号による改正前のもの)が4条4号,5号において専修学校等の生徒を国民年金の被保険者から除外されるものと規定したことは,平成元年改正前の国民年金法の委任範囲を逸脱したものということはできないというべきである。
もっとも,前記1(3)ないし(5)において認定したとおり,昭和60年改正時点においては,いわゆる学生無年金障害者の問題が顕在化し,学生無年金障害者を含む無年金障害者に対する年金給付を求める運動が活発に展開され,昭和60年改正法の法案検討段階においても,学生等を国民年金の被保険者とすべきか否かが検討課題の一つとされ,国会審議においても,学生等が国民年金制度に任意加入しなかった場合における学生等の間に発生した障害に対して障害基礎年金が支給されないことなどについての問題が議論された上,衆議院社会労働委員会においては,「無年金者の問題については,今後ともさらに制度・運用の両面において検討を加え,無年金者が生ずることのないよう努力すること」との,参議院社会労働委員会においては,「無年金者の問題については,適用業務の強化,免除の趣旨徹底等制度・運用の両面において検討を加え,無年金者が生ずることのないよう努力すること」との附帯決議がそれぞれされ,衆議院における修正により,昭和60年改正法附則4条1項において,国民年金制度における学生の取扱いについては,学生の保険料負担能力等を考慮して,今後検討が加えられ,必要な措置が講ぜられるものとする旨規定されたところである。このような立法経緯に照らすと,平成元年改正前の国民年金法7条1項1号イの規定は,国民年金の被保険者から除外される学生等の範囲について少なくとも昭和60年改正前の国民年金法7条2項8号が定める範囲を拡大する方向での規定をすることまでをも委任する趣旨のものではないと解する余地も考えられなくはない。
しかしながら,昭和60年改正法の成立までに行われた上記のような議論,検討を踏まえた上で,昭和60年改正法は,学生等の取扱いについて,結論として,類型的にみて保険料の負担能力に乏しいことを理由に拠出制を基本とする国民年金の被保険者から除外するものとする旨の選択決定をしたものであるから,上記のような立法経緯が存するからといって,直ちに,平成元年改正前の国民年金法7条1項1号イの規定が,国民年金の被保険者から除外される学生等の範囲について昭和60年改正前の国民年金法7条2項8号が定める範囲を拡大する方向での規定をすることを禁じる趣旨のものであると解するのは無理があるというべきである。のみならず,昭和60年改正法附則6条は,国民年金の被保険者資格の取得及び喪失の経過措置として,「施行日の前日において国民年金の被保険者(旧国民年金法附則第6条第1項の規定による被保険者を除く。)であった者が,施行日において,新国民年金法第7条第1項第1号イに規定する政令で定める生徒又は学生であるときは,その者は,同日に,当該被保険者の資格を喪失する。」(2項),「新国民年金法附則第6条の規定は,前項の規定により国民年金の被保険者の資格を喪失した者について準用する。」(3項)旨規定しているところ,これらの規定は,昭和60年改正前において国民年金の被保険者とされていた学生等であって平成元年改正前の国民年金法7条1項1号イの規定の委任を受けて制定された政令により昭和60年改正法の施行日において被保険者の資格を喪失するものの存在を予定したものということができるから,これらの規定をも併せ考えると,平成元年改正前の国民年金法7条1項1号イの規定が,国民年金の被保険者から除外される学生等の範囲について少なくとも昭和60年改正前の国民年金法7条2項8号が定める範囲を拡大する方向での規定をすることまでをも委任する趣旨のものではないと解することはできないものというべきである。
以上のとおり,国民年金法施行令(平成元年政令第336号による改正前のもの)が4条4号,5号において専修学校等の生徒を国民年金の被保険者から除外されるものと規定したことは,平成元年改正前の国民年金法の委任の範囲を逸脱したものということはできないというべきである。そうであるとすれば,国民年金法施行令(平成元年政令第336号による改正前のもの)4条4号,5号の規定が平成元年改正前の国民年金法に違反し無効ということはできない。
3  学生等適用除外規定が違憲無効であることを理由とする原告らの本件各処分の取消請求について
前記2において説示したとおり,学生等適用除外規定(国民年金法(昭和36年法律第167号による改正前のもの)7条2項7号,国民年金法(昭和39年法律第110号による改正前のもの)7条2項8号,国民年金法(昭和60年法律第34号による改正前のもの)7条2項8号,国民年金法(平成元年法律第86号による改正前のもの)7条1項1号イの各規定)が違憲無効であると解することはできず,また,国民年金法施行令(平成元年政令第336号による改正前のもの)4条4号,5号の規定を違法無効と解することもできないから,原告らの本件各処分の取消請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
4  原告辛浜の初診日の認定に係る本件処分の違法(争点(3))について
(1)  前記前提事実等(9)クに加えて甲H第1ないし第5号証,乙H第7,第8号証,乙H第3号証の1,同号証の13の1,2,乙H第5ないし第9号証,乙H第11ないし第13号証,乙H第15,第16号証,証人辛浜冬子,原告辛浜及び弁論の全趣旨によれば,原告辛浜の発症経緯及び症状の推移等について,次の事実が認められる。
ア 原告辛浜(昭和31年*月*日生)は,大学4年生であった昭和53年6月末ないし同年7月初めころ,教育実習を受けた際,教育実習に熱中して不眠状態が続き,また,実習先で高校生当時好意を抱いていた男性と再会したこともあって,気分が高揚し,多弁等となり,同年7月5日子安医院(神経科)で受診し,医師の指示で翌日更に箕面神経サナトリウムに同月14日まで入院した後,同サナトリウムに同年8月21日まで通院し,その後,子安医院に同年12月14日まで通院し,さらに,昭和54年7月9日から同年8月17日までアイノクリニックに入院した。
イ 原告辛浜は,昭和54年8月17日にアイノクリニックを退院した後,昭和56年8月21日に久米田病院に入院するまでの間,神経科ないし精神科に入通院していた形跡はない。その間,原告辛浜は,遅くとも昭和55年9月ころから母の行きつけの「クララ美容室」においてアルバイトをし,また,同年暮れころから,伯母の経営していた鈴木食料品店においてアルバイトをしていた。美容院でのアルバイトは,週に4日くらい,午前9時ころから午後5時ころまでの間,掃除,タオルの洗濯,シャンプーなどといった店の雑用に従事していたものであり,同店へは徒歩で通勤し,給料として1か月3万円程度を得ていた。食料品店でのアルバイトは,梱包,のし書き,徒歩での配達,掃除などを担当し,ほとんど毎日,午前9時から午後5時まで稼働していたものであるが,そのころ,お茶とお花の稽古事も始めたので,その稽古事のある日には仕事を休んでいた。原告辛浜は,昭和56年4月ころ,気分がいわゆる躁状態となり,いとこである社長の悪口を言うなどしたことから,同店でのアルバイトを辞めさせられた。原告辛浜は,その後,同年5月ころから自動車運転免許を取得するため奈良自動車学校に通うようになり,同年8月14日,普通自動車運転免許を取得した。ところが,原告辛浜は,教習に熱中して不眠状態が続き,また,同学校の男性教官を好きになったりしたこともあって,同月21日引きつけを起こして救急車で久米田病院に搬送され,同病院に入院となった。
ウ 原告辛浜は,昭和56年8月21日から同年9月28日まで久米田病院に入院し,昭和58年7月2日ころから同年8月31日まで箕面神経サナトリウムに入院し,同年9月7日ころから同年10月28日ころまで及び昭和59年4月9日ころから同年6月11日ころまで同サナトリウムに通院し,同年10月3日から同年12月3日まで三国丘病院に入院した。同病院の退院記録(乙H第8号証)によれば,原告辛浜の診断名は躁うつ病(うつ状態)であり,経過として,昭和58年9月ころからうつ傾向でそれが遷延し,最近は自信喪失,抑うつ感情はあまり訴えないが意欲,気力の減退があり不活発,将来に悲観的で死にたいと訴えるため入院した,徐々に活気が出て外泊時家事手伝いができるようになり退院したなどと記載され,転帰として家庭内療養,不完全解とされ,退院時処方としてリーマス(炭酸リチウムを成分とする躁病・躁状態治療剤)等が処方された。
エ 原告辛浜は,三国丘病院を退院後,中神経科に通院して投薬を受け,リーマスを継続して服用しながら,家事手伝いをしていたほか,昭和60年ころから昭和63年3月ころまでの間,土井勝料理学校,ヨーガ教室,公民館の着物着付教室等にそれぞれ週1回程度通い,週1回スイミングスクールに行くなどしていた。また,この間,3回程度見合いをしたこともあった。
オ 原告辛浜は,昭和63年3月29日からそれまで続けてきた服薬をやめたことから,症状が急速に悪化し,同年4月8日から同年8月12日まで三国丘病院に入院した。中神経科奥村医師の同年4月9日付け三国丘病院医師宛て紹介状(乙H第3号証の13の2)には,昭和59年12月3日の同病院の退院後,リーマスで順調に経過していたが,昭和60年3月29日から嫁入りの準備のためと信仰で薬をやめよと勧められたため,服薬を中止したところ,その後急速に悪くなってきたなどと記載されている。三国丘病院の退院記録(乙H第8号証)によれば,入院当初は緊張病性の興奮状態であったが,同年7月ころより改善してきて,静かすぎるくらいおとなしくなったため,通院治療に切り換えたなどと記載されており,転帰として完解,家庭復帰などと記載されている。
カ 原告辛浜は,昭和63年8月18日から同年11月30日まで三国丘病院に通院して投薬治療を受けたが,同日から昭和64年1月5日まで同病院に入院した。同病院の退院記録(乙H第8号証)によれば,入院当初,寒いのが怖い,死にたいなどと訴えていたとされ,転帰として,軽快,家庭内療養と記載されている。
キ 原告辛浜は,平成元年1月9日から平成5年11月24日まで奈良県立医科大学附属病院に通院し,同日から平成6年2月4日まで同病院に入院し,同月14日ころから平成9年10月8日ころまで同病院に通院し,同日から同年12月22日まで同病院に入院し,平成10年1月5日ころから平成11年1月28日ころまで同病院に通院した。同病院精神科の平岡医師の平成9年7月5日付け診断書(乙H第11号証)によれば,平成6年2月4日の退院後は症状不安定ながらも家族が付き添って頻回の外来受診をしつつ現在に至っているとされ,また,現在の状態像として,抑うつ状態(思考・運動抑制,刺激性,興奮,憂うつ気分),そう状態(感情高揚・刺激性),精神運動興奮及び昏迷の状態(興奮,拒絶)とされ,その具体的な程度,症状として,病状は不安定であり,沈み込んで何もできないと無気力,抑うつ気分を呈したと思うと,不穏,興奮,易怒的となり暴言,暴力がみられ,激しい感情の変化は抑制困難である,以前は幻覚,妄想がみられたが,現在は了解可能な範囲の被害関係念慮にとどまっている,不安,焦燥は常時存在し,頻回に外来や救急外来に受診しているなどと記載され,また,同病院精神科の法山医師の平成10年12月24日付け診断書(乙H第3号証の1)によれば,現在の状態像として,抑うつ状態(思考・運動制止,刺戟性,興奮,憂うつ気分)とされ,その具体的な程度,症状として,表情は沈んでおり,活気がなく,些細な刺激により不安,焦燥が強まり,時に興奮し,家族とトラブルを起こす,長期にわたり薬物療法を施行されているが,周期的に躁状態とうつ状態が出現し,抑うつ気分が強まると,外出できなくなり,母親に頼りきりになってしまうなどと記載されている。
ク 原告辛浜は,平成11年4月21日から同年6月5日まで医療法人平和会吉田病院(以下「吉田病院」という。)に通院し,同日から同年10月9日まで同病院に入院し,同月13日ころから同月25日まで同病院に通院し,同日から平成12年3月23日まで,同月24日から同年6月30日まで及び同年12月15日ころから平成13年1月12日までいずれも同病院に入院し,同日以降平成13年6月30日ころまで同病院に通院していた。吉田病院精神科の古高医師の平成12年3月30日付け診断書(乙H第12号証)によれば,現在の状態像として,そう状態(多弁,感情昂揚・刺戟性),精神運動興奮及び昏迷の状態(興奮)とされ,その具体的な程度,症状として,刺激に反応して激怒し,大声を出したり,ドアをどんどんたたいたり,感情が突然変化したり,衝動的行為がみられ,保護室隔離を要する状態などと記載されている。また,同病院精神科の辻本医師の平成13年6月30日付け診断書(乙H第13号証)によれば,現在の状態像として,抑うつ状態(思考・運動抑制,刺激性,興奮,憂うつ気分),そう状態(多弁,感情高揚・刺激性),易怒的,精神運動興奮及び昏迷の状態(興奮)とされ,その具体的な程度,症状として,気分の変動が激しい,多弁で興奮状態にあるかと思うと,涙をぽろぽろ流し,私なんかもういない方がましなどと言う,また蓑虫になりましたと言って自宅にこもっている時もある,被刺激性が亢進し,何でもないようなことで怒り出したり,攻撃的となることもある,母,父と本人との間のやりとりに気分変動がかなり左右される,感情のコントロールはかなり困難である,などと記載されている。
ケ 躁うつ病(感情障害ないし気分障害)とは,精神分裂病(統合失調症)と並ぶ二大内因性精神病の一つであって,躁状態あるいはうつ状態という感情の障害を基礎とする病態が,はっきりとした病期を限って交代的にあるいは周期的に出現し,通常,病期経過後に人格欠陥を残さずに完全な回復に至るものであるとされている(乙H第6号証)。
うつ状態の症状については,感情障害の基本として抑うつ気分が挙げられており,不安感や焦燥感が強いものもあるとされ,思考障害の形式面の特徴として思考制止,内容面の特徴として微小念慮(妄想)が挙げられ,意欲・行為障害の特徴として,精神運動制止が挙げられ,身体症状として,睡眠障害,食欲低下などといった各種の自律神経障害,内分泌機能障害が出現するとされている。
躁状態の症状については,感情障害として躁性感情障害が挙げられ,定型的躁状態の際には,気分はそう快で,いかにも楽しそうによく笑い,好機嫌で元気よく話すが,自分の考えや行為が妨げられると,容易に刺激的になり,些細なことに激怒し,周囲の人に対して攻撃的になりやすいなどとされ,思考障害の形式面の特徴として,観念奔逸,内容面の特徴として誇大傾向が挙げられ,意欲・行為障害として,感情の高揚,欲動(意欲)亢進,多弁,多動が挙げられ,意欲の亢進が強くなると行為心迫ないし作業心迫の状態になり,更に高度になると精神運動興奮の状態となるとされ,身体症状として,睡眠障害が必発の症状とされている。
躁うつ病は,躁状態あるいはうつ状態の病相期を繰り返し,一般に各病相期の間の寛解期にほぼ正常な状態に回復するのが特徴である。躁うつ病には,躁病相とうつ病相の両方を持つ双極型と,いずれか一方の病相だけを持つ単極型(非双曲型)とがある。双極型のうちには,躁病相とうつ病相がほとんど寛解期なしに反復して現れるものと,両病相が寛解期を挟んだりして不規則に出現するものとがあり,最初は単極型にみえても,長い経過のうちに他方の病相が現れてくることがあるので,単極型,双極型の判定には十分に長い期間の観察が必要であるとされる。病相と病相の間の間欠期の長さは,ほとんど間欠期がないものから,30年ないし40年に及ぶものまであるとされ,単極型うつ病では平均5年前後で,双極型では1年ないし3年のものが多く,また,双極型躁うつ病,単極型うつ病とも,経過とともに間欠期が短縮するものが多いが,双極型ではその傾向が著しいとされる。
躁うつ病の治療は,最近では薬物療法が盛んに行われている。うつ状態の治療については,感情調整薬(抗うつ薬)が主に用いられ,精神賦活薬が補助的に使用されており,急性期治療として,外来通院,必要な場合には入院をさせて,十分な薬物を使用してうつ症状が改善するまで行い,急性期治療に引き続いて,うつ症状の再燃(2か月以内の症状再現)を防ぐため,持続療法を行い,持続療法の後に病相の再発を予防するために維持療法を行うものとされる。躁状態の治療については,炭酸リチウム,カルバマゼピンが第一選択薬であるが,興奮が強い時期には抗精神病薬と併用するものとされ,精神運動興奮が強い場合には,入院治療を必要とし,興奮がそれほど強くなくても,躁状態のときには,家人や職場の人との争いが多く,仕事上のやり過ぎや社会的脱線行為が少なくなく,また,睡眠障害や食事をとらないための身体衰弱が起こることが多いので,軽症例以外は入院治療を行うのがよいとされている。なお,炭酸リチウムは強い抗躁効果を持ち,有効例では躁状態を取り除いてしまうように自然な形で鎮静させ,これを連続投与すると,双極型の半数以上において,躁・うつ病相の反復出現に対する予防効果がみられるとされている(乙H第7号証)。
(2)  以上認定した事実によれば,原告辛浜は,昭和53年6月末ないし同年7月初めころにその症状を発症して以降今日に至るまで一貫して躁うつ病に罹患しているものと認めるのが相当である。
この点,原告辛浜は,昭和55年4月から昭和56年8月までの間ないし昭和59年12月から昭和63年3月30日までの間医療を行う必要がなくなって社会復帰していたということができるから,これらの期間において社会的に治癒していたというべきであり,昭和56年8月21日久米田病院に入院した時点ないし昭和63年4月8日三国丘病院に入院した時点をもってそれぞれ初診日とみるべきであるなどと主張する。
そこで,まず,原告辛浜の昭和55年4月から昭和56年8月までの期間の症状について検討するに,確かに,原告辛浜は,昭和54年8月17日にアイノクリニックを退院した後,昭和56年8月21日に久米田病院に入院するまでの間,神経科ないし精神科に入院していた形跡はなく,薬物治療を受けていたことを認めるに足りる的確な証拠もない。そして,前記(1)イにおいて認定したとおり,原告辛浜は,遅くとも昭和55年9月ころから,母の行きつけの美容室において,アルバイトとして,週に4日くらい,午前9時ころから午後5時ころまでの間,店の雑用に従事し,また,同年暮れころから昭和56年4月ころまで,伯母の経営していた食料品店において,アルバイトとして,稽古事のある日を除いてほとんど毎日,午前9時から午後5時まで,梱包,のし書き,徒歩での配達,掃除などに従事し,さらに,同年5月ころから自動車学校に通い,同年8月14日に普通自動車運転免許を取得するなどしている事実が認められる。
しかしながら,前記(1)において認定した事実によれば,原告辛浜は,昭和56年8月21日に久米田病院に入院して以降現在に至るまで躁うつ病の症状で入院及び通院治療を繰り返しているのであって,前記(1)ケにおいて認定したとおり,躁うつ病は,躁状態あるいはうつ状態の病相期を繰り返し,一般に各病相期の間の寛解期にほぼ正常な状態に回復するのが特徴であるとされ,病相と病相の間の間欠期の長さは,ほとんど間欠期がないものから,30年ないし40年に及ぶものまであるとされ,単極型うつ病では平均5年前後で,双極型では1年ないし3年のものが多く,また,双極型躁うつ病,単極型うつ病とも,経過とともに間欠期が短縮するものが多いが,双極型ではその傾向が著しいとされていること,原告辛浜が社会的治癒を主張する上記期間中についても,昭和56年4月ころ,気分がいわゆる躁状態となり,同原告がアルバイト勤務をしていた食料品店において,いとこである社長の悪口を言うなどしたことから,同店でのアルバイトをやめさせられたことがあるなど,躁うつ病の特徴的症状が看取されること,同年8月に久米田病院に入院するに至る経過をみても,前記(1)イにおいて認定したとおり,自動車教習に熱中して不眠状態が続き,また,通っていた自動車教習所の男性教官を好きになったりしたこともあって,引きつけを起こしたなどというのであって,前記(1)アにおいて認定した原告辛浜が躁うつ病を発症したときの経過(教育実習に熱中して不眠状態が続き,また,実習先で高校生当時好意を抱いていた男性と再会したこともあって,気分が高揚し,多弁等となった等)と似たような経過をたどっていることなどを併せ考えると,原告辛浜は,上記期間において,医療を行う必要がないまでに躁うつ病の症状が快復し,社会復帰していたと認めることは困難というべきである。
次に,原告辛浜の昭和59年12月から昭和63年3月30日までの期間の症状について検討するに,確かに,原告辛浜は,昭和59年12月3日に三国丘病院を退院した後,昭和63年4月8日に同病院に入院するまでの間,神経科ないし精神科に入院していた形跡はなく,前記(1)エにおいて認定したとおり,昭和59年12月に三国丘病院を退院した後,家事手伝いをしていたほか,昭和60年ころから昭和63年3月ころまでの間,土井勝料理学校,ヨーガ教室,公民館の着物着付教室等にそれぞれ週1回程度通い,週1回スイミングスクールに行くなどし,また,この間,3回程度見合いをしたこともあった事実が認められる。
しかしながら,前記(1)ウないしオにおいて認定した事実によれば,原告辛浜が昭和59年12月に三国丘病院を退院した際の同病院の退院記録には,転帰として,家庭内療養,不完全解と記載され,原告辛浜は,退院後も,中神経科に通院して投薬を受け,炭酸リチウムを成分とする躁病・躁状態治療剤であるリーマスを継続して服用し(乙H第3号証の10中昭和61年5月から昭和63年4月までリーマスを服用していなかった趣旨の記載部分は,乙H第3号証の13の2,乙H第15,第16号証の記載に照らし,採用することができない。),昭和63年3月29日からそれまで続けてきた服薬をやめたところ,症状が急速に悪化し,同年4月8日に三国丘病院に入院となり,入院当初は緊張病性の興奮状態であったというのであり,このことに加えて,前記説示のとおり,原告辛浜は,昭和56年8月21日に久米田病院に入院して以降現在に至るまで躁うつ病の症状で入院及び通院治療を繰り返していること,躁うつ病は,躁状態あるいはうつ状態の病相期を繰り返し,一般に各病相期の間の寛解期にほぼ正常な状態に回復するのが特徴であるとされ,病相と病相の間の間欠期の長さは,ほとんど間欠期がないものから,30年ないし40年に及ぶものまであるとされ,単極型うつ病では平均5年前後で,双極型では1年ないし3年のものが多く,また,双極型躁うつ病,単極型うつ病とも,経過とともに間欠期が短縮するものが多いが,双極型ではその傾向が著しいとされていること,原告辛浜本人の供述からは原告辛浜が社会的治癒を主張する上記期間中についても躁うつ病の特徴的症状がうかがわれることなどを併せ考えると,原告辛浜は,上記期間において,医療を行う必要がないまでに躁うつ病の症状が快復し,社会復帰していたと認めることは困難というべきである。
以上のとおりであるから,昭和56年8月21日久米田病院に入院した時点ないし昭和63年4月8日三国丘病院に入院した時点をもってそれぞれ初診日とみるべきである旨の原告辛浜の上記主張を採用することはできない。
(3)  したがって,原告辛浜の初診日の認定の誤りを理由とする本件処分の取消請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
5  立法行為ないし立法不作為の違法を理由とする被告国の国家賠償責任(争点(4))について
(1)  原告らは,被告国が,昭和34年法において学生等適用除外規定を設け,平成元年改正までこれを改正せずに存置し,また,原告らを始め学生等の間に重度の障害を負いながら学生等適用除外規定によって国民年金制度の適用から除外されたため障害年金ないし障害基礎年金を受給することができない者に対する救済措置を今日に至るまでとらなかった立法行為ないし立法不作為(国会の立法行為ないしその不作為及び内閣の法案提出行為ないしその不作為)は,国家賠償法上も違法であり,国会及び内閣にはこれについて重大な過失が存したから,被告国は,原告らに対し,同法1条1項に基づく損害賠償責任を負う旨主張する。
(2)  国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものである。したがって,国会議員の立法行為又は立法不作為が同項の適用上違法となるかどうかは,国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかの問題であって,当該立法の内容又は立法不作為の違憲性の問題とは区別されるべきであり,仮に当該立法の内容又は立法不作為が憲法の規定に違反するものであるとしても,そのゆえに国会議員の立法行為又は立法不作為が直ちに違法の評価を受けるものではない。しかしながら,立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や,国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり,それが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには,例外的に,国会議員の立法行為又は立法不作為は,国家賠償法1条1項の規定の適用上,違法の評価を受けるものというべきである(最高裁平成13年(行ツ)第82号,第83号,同(行ヒ)第76号,第77号同17年9月14日大法廷判決・民集登載予定参照)。この理は立法過程の一部を成す内閣の法案提出行為又はその不作為についても異なるところがないと解すべきである。
(3) 昭和34年法の制定から平成元年改正までの間,国民年金法に学生等適用除外規定を設け,これを存置したことが,憲法25条,14条1項,13条及び31条に違反するものでないことは,前記2において説示したとおりであるから,被告国が,昭和34年法において学生等適用除外規定を設け,平成元年改正までこれを改正せずに存置した立法行為ないし立法不作為(国会の立法行為ないしその不作為及び内閣の法案提出行為ないしその不作為)の違法を理由とする原告らの被告国に対する国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
(4)  被告国が原告らを始め学生等の間に重度の障害を負いながら学生等適用除外規定によって国民年金制度の適用から除外されたため障害年金ないし障害基礎年金を受給することができない者に対する所得保障上の救済措置を今日に至るまでとらなかった立法不作為の違法に関する原告らの主張について検討する。
確かに,昭和34年法の制定から平成元年改正までの間,国民年金法に学生等適用除外規定を設け,これを存置したことが,憲法25条,14条1項,13条及び31条に違反するものでないとしても,昭和34年法による国民年金制度の創設から平成元年改正までの間,20歳以上の学生等は,原則として拠出制年金の被保険者から除外され,国民年金制度に任意加入することができるものとするにとどめられた上,無拠出制の障害福祉年金ないし障害基礎年金の支給対象ともされず,国民年金法の定める所得保障制度の枠外に置かれたため,20歳以上の学生等の間に疾病にかかり又は負傷して別表に定める1級又は2級に該当する程度の重度の障害の状態になった場合であっても,昭和60年改正までの間は,障害年金はもとよりこれより低額の障害福祉年金も受給することができないものとされ,昭和60年改正後も平成元年改正までの間は,障害基礎年金を受給することができないものとされ,しかも,平成16年12月に制定され平成17年4月1日から施行された特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律による給付を別にすれば,これら学生等の間に重度の障害となった者に対する他の所得保障制度も設けられなかった結果,20歳以上の学生等の間に国民年金制度に任意加入しないまま疾病にかかり又は負傷して別表に定める1級又は2級に該当する程度の重度の障害の状態になった者と20歳以上の被保険者(いわゆる強制適用の対象とされた者)及び20歳に達する前に疾病にかかり又は負傷して同程度の重度の障害となった者(初診日において20歳未満であった者)との間に,所得保障の点において著しい格差が生じていることを否定することはできない。
しかしながら,社会保障法上の所得保障制度を設定することが憲法25条の規定の趣旨を実現するため国に課せられた責務であるということができるとしても,その具体的な制度設計については,同条1項にいう「健康で文化的な最低限度の生活」なるものが極めて抽象的,相対的な概念であって,その具体的内容はその時々における文化の発達の程度,経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに,同規定を現実の立法として具体化するに当たっては,国の財政事情を無視することができず,また,多方面にわたる複雑多様な,しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものであることからして,立法府の広い裁量にゆだねられているのである。前記のとおり,社会保障法上の所得保障制度を設定するに当たり,全国民に等しく制度の保障する利益を享受させるため,無拠出制を基本とする制度設計を行うことも,立法政策として考えられるところではあるが,無拠出制を基本とする制度設計を行った場合には,その財源は国の一般財源に求めざるを得ない関係上,給付の充実を図ろうとすれば,それだけ国民に対して重い負担を負わせる結果となることに加えて,その支出を賄うための収入がその時々の財政及び経済の諸事情の影響を受けやすく,制度が本来有すべき安定性,確実性が害されるおそれがあるという困難な問題が,国民年金制度の創設当時のみならず今日においても存するのであって,かえって,所得保障により国民生活の安定を図るという憲法25条の規定の趣旨の実現に支障を来すことにもなりかねないのであり,このことからしても,同条の規定が拠出制を基本とする所得保障制度の設定をも許容するものであることは明らかである。しかるところ,拠出制を基本とする制度設計を行う場合,拠出能力を欠く者ないし現実に拠出をしていない者に対しても,拠出を行った者と等しく当該制度による所得保障の利益を享受させるべきであるとの立法政策もあり得るところではあるが,このような考え方に対しては,現実に拠出の負担をしている者との公平,均衡という問題が自ずから生じてくるところ,我が国の憲法における基本的人権の保障の在り方ないし体系等にもかんがみると,憲法が上記のような負担の公平といった価値選択を許容せず,拠出能力を欠く者等に対しても拠出の負担をしている者と等しく当該制度による所得保障の利益を享受させるような制度の設定を規範として要求しているとまで解することはできず,拠出制を基本とする制度設計を行うに当たり,学生等のように類型的に拠出能力を欠くと考えられる者について,これを被保険者として拠出制の枠内に取り込んだ上保険料の減免等の措置を講ずるのか,当該制度に補完的に無拠出制を設けた上当該無拠出制の枠内で一定の利益を享受させるのか,その場合,無拠出制の適用範囲をどのように設定するのか,享受させる利益の内容,態様,程度をどのように設定するのか,あるいは当該制度とは別の制度でもって憲法25条の規定の趣旨の実現を図るのか,などといった事柄に関する選択決定については,憲法は,25条1項において健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障した趣旨に反しない限り,その時々における国の財政事情の制約を勘案し,以上のような負担の公平といった問題等をも含めて多方面にわたる複雑多様な利害を調整し,一定の方向性を見いだして,もって憲法の負託にこたえていくという,立法府の高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断にゆだねているものと解されるのである。
また,拠出制を基本とする所得保障制度が設定されている場合において,拠出能力を欠く等のため当該制度による利益を享受することができないとされた者について,当該制度とは別の制度を設定することにより所得保障の利益を享受させるのか,享受させるとしたときにその要件,享受させる利益の内容,態様,程度等をどのように設定するのかなどといった選択決定に当たっても,同様に拠出制を基本とする制度の下において現実に拠出の負担をしている者との公平,均衡をどう考えるかといった問題を無視することはできないのであって,以上説示したところからすれば,我が国の憲法が拠出能力を欠く等のため拠出制を基本とする所得保障制度による利益を享受することができないとされた者についても当該制度に代わる制度において当該所得保障制度による利益と同等の利益を享受させることまでをも規範として要求しているものと解するのは困難であり,結局のところ,これらの者について憲法25条の規定の趣旨を具体的にどのように実現していくかについては,同条1項において健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障した趣旨に反しない限り,上記のような問題をどう解決するかなどといった点も含めて,立法府の高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断にゆだねているものと解するほかないのである。
このような観点からすれば,昭和34年法による国民年金制度の創設当時において,生活保護法,身体障害者福祉法等の社会保障立法が存在し,昭和60年改正時までには,障害者基本法が制定されるなど,障害者のための施策の一層の推進が図られていた状況の下において,平成16年12月の特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律の制定まで,学生等適用除外規定によって国民年金制度の被保険者から除外された者であって学生等の間に疾病にかかり又は負傷して別表の定める1級又は2級に該当する程度の重度の障害を負ったものに対する所得保障上の救済措置をとらなかったことが,立法政策として著しく合理性を欠き,憲法25条の規定の趣旨に照らして明らかに立法府の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとまでいうことはできず,何ら合理的理由のない不当な差別的取扱いであるとまでいうこともできないというべきである。また,以上説示したところからすれば,特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律において,特別障害給付金の額を障害基礎年金の額よりも低額に設定した上,支給制限を設け,支給を受ける権利について5年の消滅時効を規定するなどしたことが,立法政策として合理性を欠くということもできないというべきである。
以上のとおりであるから,被告国が原告らを始め学生等の間に重度の障害を負いながら学生等適用除外規定によって国民年金制度の適用から除外されたため障害年金ないし障害基礎年金を受給することができない者に対する所得保障上の救済措置を今日に至るまでとらなかった立法不作為(国会の立法不作為及び内閣の法案提出行為の不作為)は,国家賠償法1条1項の適用上,違法の評価を受けるものということはできず,したがって,上記立法不作為の違法を理由とする原告らの被告国に対する同項に基づく損害賠償請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
(5) 以上によれば,立法行為ないし立法不作為の違法を理由とする原告らの被告国に対する国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
6  個別的教示義務等違反を理由とする被告国の国家賠償責任(争点(5))について
(1)  原告らは,国民年金制度における任意加入制度は,当該制度の存在及び当該制度を利用しない場合に予想される不利益について十分に周知徹底させることを前提とするものである上,学生等適用除外規定は,憲法25条,14条1項等に違反するものであるから,被告国(内閣)は,20歳以上の学生等に対し,国民年金制度における任意加入制度の存在及び任意加入しなかった場合に予想される不利益について,広報,周知徹底を行い,あるいは個別的に教示する法的義務ないし個別的教示義務(ないし告知聴聞の機会付与の義務)を負っていたにもかかわらず,これを怠り,原告らに対して個別的教示を行わなかったのみならず,原告丙川についてはあえて学生等である間に国民年金制度に加入する必要はないなどといった誤った教示がされるなどした結果,原告らは,国民年金制度に任意加入する機会を奪われ,任意加入していれば受給することができた障害年金ないし障害基礎年金を受給することができなかったのであるから,被告国には原告らに生じている損害を賠償すべき義務があるなどと主張する。
(2)  しかしながら,原告らが主張するような広報,周知徹底ないし個別的教示を国民年金制度の運用機関等に義務付ける実定法上の規定は存在せず,任意加入制度の根拠規定(国民年金法(昭和60年改正前のもの)附則6条,国民年金法附則5条等)から直ちに原告らの主張するような法的義務を導き出すのも困難である。のみならず,前記2において説示したとおり,昭和34年法による国民年金制度の創設から平成元年改正までの間,20歳以上の学生等を原則として拠出制年金の被保険者から除外し,国民年金制度に任意加入することができるものとするにとどめた上,無拠出制の障害福祉年金ないし障害基礎年金の支給対象ともしなかったことが,立法政策として著しく合理性を欠くとも,何ら合理的理由のない不当な差別的取扱いであるということもできないことに加えて,そもそも,20歳以上の学生等を原則として拠出制年金の被保険者の範囲から除外した立法趣旨が,学生等が類型的にみて保険料の負担能力に乏しいことにあること及び任意加入制度が,種々の政策的理由等により拠出制年金の被保険者から除外された者について,拠出制年金への加入を希望する場合に保険料を負担することを前提として被保険者となることを認めたものであることにもかんがみると,20歳以上の学生等に対して保険料の負担を前提とする国民年金制度への任意加入制度の存在及びその意義等について周知徹底する等の措置が制度的にとられなかったとしても,そのことのゆえに,学生等適用除外規定により拠出制年金の被保険者から除外された20歳以上の学生等に対する適正手続の保障を欠くということはできない。
もっとも,確かに,甲第22号証ないし第41号証,甲第55,第56,第58,第59,第64,第72号証,甲A第1号証,甲B第1号証,甲C第1号証,甲D第1号証,甲E第1号証,甲J第1号証,乙第14号証の1,原告ら各本人(原告丁木を除く。)及び弁論の全趣旨によれば,学生等適用除外規定が設けられていた間,昭和60年改正まで同じく任意加入の対象とされていた被用者年金制度等の適用者の配偶者(いわゆるサラリーマンの妻)について任意加入を奨励するような広報活動が行われていたのと対比して,学生等が国民年金制度に任意加入することができることについての周知広報活動が不十分であり,学生等の間は国民年金制度にあえて加入しなくてもよいといった趣旨の窓口指導が行われていた事例も存在する事実が認められ,このことは,前記認定のとおり,被用者年金制度の被保険者の妻で国民年金制度に任意加入している者が昭和50年代で約6割から7割に達していたのに対し,平成元年当時の学生の任意加入率が約1.25パーセント程度にとどまっていた事実からも裏付けられるところである。また,原告丙川については,20歳になる直前のころ,東大阪市役所に国民年金制度への任意加入について相談に赴いた際,担当者から,主として老齢年金制度についての説明を受けた上,卒業後被用者として厚生年金や共済年金に加入する可能性があるのであれば,あえて国民年金制度に任意加入しなくてもよいといった趣旨のことを言われた事実が認められる(甲C第1号証,乙C第3号証の4,原告丙川本人)。
しかしながら,甲第22ないし第24号証,甲第26,第39号証及び弁論の全趣旨によれば,学生等が国民年金制度に任意加入することができることについてもある程度の周知広報活動が行われていた事実が認められるのであって,学生等が一般的に任意加入制度の存在を認識することが不可能な環境に置かれていたとまで認めることはできない。
以上のとおりであるから,被告国(内閣)が,20歳以上の学生等に対し,国民年金制度における任意加入制度の存在及び任意加入しなかった場合に予想される不利益について,広報,周知徹底を行い,あるいは個別的に教示する法的義務ないし個別的教示義務(ないし告知聴聞の機会付与の義務)を負っていたことを前提とする原告らの被告国に対する国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
(3)  もっとも,国民年金制度の運用機関が,国民年金制度への任意加入を希望する者に対して,誤った教示を行ったり,あるいは加入を断念するよう強要するなどして,その意思に反して任意加入を断念させるなど,違法に任意加入の機会を奪ったような場合には,個々の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背したものとして,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任が生じる余地もあると解される(原告らの主張にはその趣旨も含まれているものと解される。)。
確かに,前記のとおり,学生等適用除外規定が設けられていた間,学生等が国民年金制度に任意加入することができることについての周知広報活動が不十分であり,学生等の間は国民年金制度にあえて加入しなくてもよいといった趣旨の窓口指導が行われていた事例も存在する事実が認められる上,原告丙川については,20歳になる直前のころ,東大阪市役所に国民年金制度への任意加入について相談に赴いた際,担当者から,主として老齢年金制度についての説明を受けた上,卒業後被用者として厚生年金や共済年金に加入する可能性があるのであれば,あえて国民年金制度に任意加入しなくてもよいといった趣旨のことを言われたというのである。
しかしながら,原告丙川の供述及び陳述(甲C第1号証,乙C第3号証の4)によっても,同原告が東大阪市役所に国民年金制度への任意加入について相談に赴いた際,障害年金制度ないし学生等の間に生じた障害についての保障等について質問したことはなく,また,担当者も,卒業したときには就職するだろうからその場合は厚生年金保険の方が有利であるから,卒業後に厚生年金保険に加入すればよいなどといった趣旨の説明をしたというにすぎず,担当者が障害年金ないし障害福祉年金の支給要件等について虚偽の説明を行ったり,同原告に対しその意思に反して国民年金制度への任意加入を断念させるような指導をあえて行ったりした事実を認めることはできず,他に当該担当者が原告丙川に対し違法に任意加入の機会を奪ったと評価し得るような事実を認めるに足りる証拠はない。また,原告丙川を除くその余の原告らについても,国民年金制度の運用機関が誤った教示を行ったりその意思に反して国民年金制度への任意加入を断念するよう強要するなど,違法に任意加入の機会を奪ったと評価し得るような事実を認めるに足りる証拠はない。
以上のとおりであるから,被告国に対し原告らについて国民年金制度の運用機関が違法に任意加入の機会を奪ったことを理由とする国家賠償責任を認めることもできない。
(4) 以上によれば,個別的教示義務等違反を理由とする原告らの被告国に対する国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
7  結論
以上認定説示したところによれば,原告らの被告社会保険庁長官に対する本件各処分の取消請求は,いずれも理由がないからこれを棄却すべきであり,原告らの被告国に対する請求も,いずれも理由がないからこれを棄却すべきである。
よって,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官・西川知一郎,裁判官・田中健治,裁判官・和久一彦)


「選挙 公報 広報 ポスター ビラ」に関する裁判例一覧
(1)令和元年 5月24日  東京地裁  平28(ワ)17007号 選挙供託金制度違憲国家賠償請求事件
(2)平成30年 7月25日  東京高裁  平30(行ケ)8号 裁決取消請求事件
(3)平成30年 7月20日  福岡地裁久留米支部  平28(ワ)69号 損害賠償請求事件
(4)平成30年 7月18日  大阪地裁  平28(ワ)3174号 懲戒処分無効確認請求事件
(5)平成30年 4月11日  知財高裁  平29(行ケ)10161号 審決取消請求事件
(6)平成29年12月22日  東京地裁  平27(行ウ)706号・平28(行ウ)585号 各公文書非公開処分取消等請求事件
(7)平成29年10月11日  東京地裁  平28(ワ)38184号 損害賠償請求事件
(8)平成29年 8月29日  知財高裁  平28(行ケ)10271号 審決取消請求事件
(9)平成29年 7月12日  広島高裁松江支部  平28(行コ)4号 市庁舎建築に関する公金支出等差止請求控訴事件
(10)平成29年 4月21日  東京地裁  平26(ワ)29244号 損害賠償請求事件
(11)平成28年 9月16日  福岡高裁那覇支部  平28(行ケ)3号 地方自治法251条の7第1項の規定に基づく不作為の違法確認請求事件
(12)平成28年 8月29日  徳島地裁  平27(ワ)138号 損害賠償等請求事件
(13)平成28年 5月17日  広島高裁  平28(行ケ)1号 裁決取消請求事件
(14)平成27年12月22日  東京高裁  平26(ネ)5388号 損害賠償請求控訴事件
(15)平成27年 3月31日  東京地裁  平26(行ウ)299号 投票効力無効取消等請求事件
(16)平成26年 9月25日  東京地裁  平21(ワ)46404号・平22(ワ)16316号 損害賠償(株主代表訴訟)請求事件(第2事件)、損害賠償(株主代表訴訟)請求事件(第3事件)
(17)平成26年 9月11日  知財高裁  平26(行ケ)10092号 審決取消請求事件
(18)平成26年 5月16日  東京地裁  平24(行ウ)667号 損害賠償履行請求事件(住民訴訟)
(19)平成26年 3月11日  東京地裁  平25(ワ)11889号 損害賠償等請求事件
(20)平成26年 3月 4日  東京地裁  平25(行ウ)9号 公文書不開示処分取消等請求事件
(21)平成25年11月29日  東京地裁  平25(ワ)18098号 被選挙権侵害による損害賠償請求事件
(22)平成25年10月16日  東京地裁  平23(行ウ)292号 報酬返還請求事件
(23)平成25年 9月27日  大阪高裁  平25(行コ)45号 選挙権剥奪違法確認等請求控訴事件
(24)平成25年 8月 5日  東京地裁  平25(ワ)8154号 発信者情報開示請求事件
(25)平成25年 3月14日  東京地裁  平23(行ウ)63号 選挙権確認請求事件 〔成年被後見人選挙件確認訴訟・第一審〕
(26)平成24年12月 6日  東京地裁  平23(行ウ)241号 過料処分取消請求事件
(27)平成24年 8月10日  東京地裁  平24(ワ)17088号 損害賠償請求事件
(28)平成24年 7月19日  東京地裁  平24(行ウ)8号 個人情報非開示決定処分取消請求事件
(29)平成24年 7月10日  東京地裁  平23(ワ)8138号 損害賠償請求事件
(30)平成24年 7月10日  東京地裁  平23(ワ)30770号 損害賠償請求事件
(31)平成24年 2月29日  東京地裁  平21(行ウ)585号 公金支出差止請求事件
(32)平成23年 5月11日  神戸地裁  平21(行ウ)4号 政務調査費違法支出返還請求事件
(33)平成23年 4月26日  東京地裁  平22(行ウ)162号・平22(行ウ)448号・平22(行ウ)453号 在外日本人国民審査権確認等請求事件(甲事件)、在外日本人国民審査権確認等請求事件(乙事件)、在外日本人国民審査権確認等請求事件(丙事件)
(34)平成22年11月30日  京都地裁  平20(行ウ)28号・平20(行ウ)46号 債務不存在確認等請求本訴、政務調査費返還請求反訴事件
(35)平成22年11月29日  東京高裁  平22(行ケ)26号 裁決取消、選挙無効確認請求事件
(36)平成22年11月24日  岐阜地裁  平22(行ウ)2号 個人情報非開示決定処分取消及び個人情報開示処分義務付け請求事件
(37)平成22年11月24日  岐阜地裁  平22(行ウ)1号 行政文書非公開決定処分取消及び行政文書公開処分義務付け請求事件
(38)平成22年11月 9日  東京地裁  平21(行ウ)542号 政務調査費返還(住民訴訟)請求事件
(39)平成22年 9月14日  神戸地裁  平21(行ウ)20号 公文書非公開定取消請求事件 〔兵庫県体罰情報公開訴訟・第一審〕
(40)平成22年 5月26日  東京地裁  平21(ワ)27218号 損害賠償請求事件
(41)平成22年 3月31日  東京地裁  平21(行ウ)259号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(42)平成22年 2月 3日  東京高裁  平21(行ケ)30号 選挙無効請求事件
(43)平成20年11月28日  東京地裁  平20(行ウ)114号 政務調査費返還命令処分取消請求事件
(44)平成20年11月17日  知財高裁  平19(行ケ)10433号 審決取消請求事件
(45)平成20年11月11日  仙台高裁  平20(行コ)13号 政務調査費返還代位請求控訴事件
(46)平成20年 3月14日  和歌山地裁田辺支部  平18(ワ)167号 債務不存在確認等請求事件
(47)平成19年11月22日  仙台高裁  平19(行ケ)2号 裁決取消等請求事件
(48)平成19年 9月 7日  福岡高裁  平18(う)116号 公職選挙法違反被告事件
(49)平成19年 7月26日  東京地裁  平19(行ウ)55号 公文書非開示決定処分取消請求事件
(50)平成19年 3月13日  静岡地裁沼津支部  平17(ワ)21号 損害賠償請求事件
(51)平成18年12月13日  名古屋高裁  平18(行ケ)4号 選挙の効力に関する裁決取消請求事件
(52)平成18年11月 6日  高松高裁  平18(行ケ)2号 裁決取消請求事件
(53)平成18年 8月10日  大阪地裁  平18(行ウ)75号 行政文書不開示決定処分取消請求事件
(54)平成18年 6月20日  京都地裁  平16(行ウ)40号 地労委任命処分取消等請求事件
(55)平成18年 1月20日  大阪地裁  平13(行ウ)47号・平13(行ウ)53号・平13(行ウ)54号・平13(行ウ)55号・平13(行ウ)56号・平13(行ウ)57号・平13(行ウ)58号・平13(行ウ)59号・平13(行ウ)60号・平13(行ウ)61号 障害基礎年金不支給決定取消等請求事件 〔学生無年金障害者訴訟〕
(56)平成17年 9月14日  最高裁大法廷  平13(行ヒ)77号・平13(行ツ)83号・平13(行ツ)82号・平13(行ヒ)76号 在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件 〔在外選挙権最高裁大法廷判決〕
(57)平成17年 8月31日  東京地裁  平17(行ウ)78号 供託金返還等請求事件
(58)平成17年 7月 6日  大阪地裁  平15(ワ)13831号 損害賠償請求事件 〔中国残留孤児国賠訴訟〕
(59)平成17年 1月27日  名古屋地裁  平16(行ウ)26号 調整手当支給差止請求事件
(60)平成16年 3月29日  神戸地裁姫路支部  平10(ワ)686号 新日本製鐵思想差別損害賠償請求事件
(61)平成16年 1月16日  東京地裁  平14(ワ)15520号 損害賠償請求事件
(62)平成15年12月15日  大津地裁  平14(行ウ)8号 損害賠償請求事件
(63)平成15年12月 4日  福岡高裁  平15(行ケ)6号 佐賀市議会議員選挙無効裁決取消請求事件 〔党派名誤記市議会議員選挙無効裁決取消請求事件〕
(64)平成15年10月28日  東京高裁  平15(行ケ)1号 商標登録取消決定取消請求事件
(65)平成15年10月28日  東京高裁  平14(行ケ)615号 商標登録取消決定取消請求事件
(66)平成15年10月28日  東京高裁  平14(行ケ)614号 商標登録取消決定取消請求事件 〔刀剣と歴史事件〕
(67)平成15年10月16日  東京高裁  平15(行ケ)349号 審決取消請求事件 〔「フォルッアジャパン/がんばれ日本」不使用取消事件〕
(68)平成15年 9月30日  札幌地裁  平15(わ)701号 公職選挙法違反被告事件
(69)平成15年 7月 1日  東京高裁  平14(行ケ)3号 審決取消請求事件 〔ゲーム、パチンコなどのネットワーク伝送システム装置事件〕
(70)平成15年 6月18日  大阪地裁堺支部  平12(ワ)377号 損害賠償請求事件 〔大阪いずみ市民生協(内部告発)事件〕
(71)平成15年 3月28日  名古屋地裁  平7(ワ)3237号 出向無効確認請求事件 〔住友軽金属工業(スミケイ梱包出向)事件〕
(72)平成15年 3月26日  宇都宮地裁  平12(行ウ)8号 文書非開示決定処分取消請求事件
(73)平成15年 2月10日  大阪地裁  平12(ワ)6589号 損害賠償請求事件 〔不安神経症患者による選挙権訴訟・第一審〕
(74)平成15年 1月31日  名古屋地裁  平12(行ウ)59号 名古屋市公金違法支出金返還請求事件 〔市政調査研究費返還請求住民訴訟事件〕
(75)平成14年 8月27日  東京地裁  平9(ワ)16684号・平11(ワ)27579号 損害賠償等請求事件 〔旧日本軍の細菌兵器使用事件・第一審〕
(76)平成14年 7月30日  最高裁第一小法廷  平14(行ヒ)95号 選挙無効確認請求事件
(77)平成14年 5月10日  静岡地裁  平12(行ウ)13号 労働者委員任命処分取消等請求事件
(78)平成14年 4月26日  東京地裁  平14(ワ)1865号 慰謝料請求事件
(79)平成14年 4月22日  大津地裁  平12(行ウ)7号・平13(行ウ)1号 各損害賠償請求事件
(80)平成14年 3月26日  東京地裁  平12(行ウ)256号・平12(行ウ)261号・平12(行ウ)262号・平12(行ウ)263号・平12(行ウ)264号・平12(行ウ)265号・平12(行ウ)266号・平12(行ウ)267号・平12(行ウ)268号・平12(行ウ)269号・平12(行ウ)270号・平12(行ウ)271号・平12(行ウ)272号・平12(行ウ)273号・平12(行ウ)274号・平12(行ウ)275号・平12(行ウ)276号・平12(行ウ)277号・平12(行ウ)278号・平12(行ウ)279号・平12(行ウ)280号 東京都外形標準課税条例無効確認等請求事件
(81)平成13年12月19日  神戸地裁  平9(行ウ)46号 公金違法支出による損害賠償請求事件
(82)平成13年12月18日  最高裁第三小法廷  平13(行ツ)233号 選挙無効請求事件
(83)平成13年 4月25日  東京高裁  平12(行ケ)272号 選挙無効請求事件
(84)平成13年 3月15日  静岡地裁  平9(行ウ)6号 公費違法支出差止等請求事件
(85)平成12年10月 4日  東京地裁  平9(ワ)24号 損害賠償請求事件
(86)平成12年 9月 5日  福島地裁  平10(行ウ)9号 損害賠償代位請求事件
(87)平成12年 3月 8日  福井地裁  平7(行ウ)4号 仮換地指定処分取消請求事件
(88)平成11年 5月19日  青森地裁  平10(ワ)307号・平9(ワ)312号 定時総会決議無効確認請求、損害賠償請求事件
(89)平成11年 5月12日  名古屋地裁  平2(行ウ)7号 労働者委員任命取消等請求事件
(90)平成10年10月 9日  東京高裁  平8(行ケ)296号 選挙無効請求事件 〔衆議院小選挙区比例代表並立制選挙制度違憲訴訟・第一審〕
(91)平成10年 9月21日  東京高裁  平10(行ケ)121号 選挙無効請求事件
(92)平成10年 5月14日  津地裁  平5(ワ)82号 謝罪広告等請求事件
(93)平成10年 4月22日  名古屋地裁豊橋支部  平8(ワ)142号 損害賠償請求事件
(94)平成10年 3月26日  名古屋地裁  平3(ワ)1419号・平2(ワ)1496号・平3(ワ)3792号 損害賠償請求事件 〔青春を返せ名古屋訴訟判決〕
(95)平成10年 1月27日  横浜地裁  平7(行ウ)29号 分限免職処分取消等請求 〔神奈川県教委(県立外語短大)事件・第一審〕
(96)平成 9年 3月18日  大阪高裁  平8(行コ)35号 供託金返還請求控訴事件
(97)平成 8年11月22日  東京地裁  平4(行ウ)79号・平4(行ウ)75号・平4(行ウ)15号・平3(行ウ)253号 強制徴兵徴用者等に対する補償請求等事件
(98)平成 8年 8月 7日  神戸地裁  平7(行ウ)41号 選挙供託による供託金返還請求事件
(99)平成 8年 3月25日  東京地裁  平6(行ウ)348号 損害賠償請求事件
(100)平成 7年 2月22日  東京地裁  昭49(ワ)4723号 損害賠償請求事件 〔全税関東京損害賠償事件〕


■選挙の種類一覧
選挙①【衆議院議員総選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙②【参議院議員通常選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙③【一般選挙(地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙④【特別選挙(国政選挙|地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)


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