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「選挙 ビラ チラシ」に関する裁判例(44)昭和37年 4月18日  東京高裁  昭35(ナ)15号 選挙無効確認請求事件

「選挙 ビラ チラシ」に関する裁判例(44)昭和37年 4月18日  東京高裁  昭35(ナ)15号 選挙無効確認請求事件

裁判年月日  昭和37年 4月18日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  昭35(ナ)15号
事件名  選挙無効確認請求事件
文献番号  1962WLJPCA04180004

要旨
◆報道機関によるはなはだしい選挙干渉と選挙の効力
◆報道機関による違法な選挙干渉が行なわれた旨の選挙無効の主張が認められなかつた事例
◆候補者がやむをえない理由で放送局へ出頭できない場合と候補者政見放送実施規程九条
◆人口に異動があつた場合に公職選挙法別表第一について変更措置をとらないことと憲法一四条違反の有無
◆選挙無効の訴訟は、選挙の執行機関の選挙の管理が個々の選挙法規に違背しなくとも、著しく選挙の公正が害され選挙の結果に異動を及ぼすおそれがある場合にはこれを提起することができると解するのを相当とするから、報道機関によるはなはだしい選挙干渉の事実があり、これによつて選挙人が自己の自由な意思にしたがつて投票することができなかつたと認められるときは、当該選挙は無効となると解すべきである。
◆候補者政見放送実施規程九条は、候補者が放送局へ出頭して録音することを義務づけてはいるが、候補者が病気、事故等やむをえない理由で放送局へ出頭できない場合に、放送局が候補者のもとへ行つて録音し、または他の放送局から録音テープを借用して放送することまで禁ずる趣旨ではないと解するのを相当とする。
◆各選挙区の選挙すべき議員の数を定めるには、選挙人口の多寡にとどまらず、選挙区域の大小、歴史的沿革、行政区画別議員数の振り合い等さまざまな要素を考慮して決すべきものであるから、人口の異動があつたにもかかわらず、公職選挙法別表第一につきなんら変更の措置がとられなかつたからといつて、ただちに憲法一四条に違反するとはいえない。

新判例体系
公法編 > 組織法 > 公職選挙法〔昭和二五… > 第一五章 争訟 > 第二〇五条 > ○選挙の無効の決定、… > (五)選挙無効事由 > A 選挙管理機関以外… > (4)第三者
◆選挙無効の訴訟は、選挙の執行機関の選挙の管理が個々の選挙法規に違背しなくとも、著しく選挙の公正が害され選挙の結果に異動を及ぼすおそれがある場合にはこれを提起することができると解するのを相当とするから、報道機関によるはなはだしい選挙干渉の事実があり、これによって選挙人が自己の自由な意思にしたがって投票することができなかったと認められるときは、当該選挙は無効となると解すべきである。

 

出典
行集 13巻4号514頁

参照条文
公職選挙法13条
公職選挙法205条
公職選挙法別表
告示等
日本国憲法14条

裁判年月日  昭和37年 4月18日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  昭35(ナ)15号
事件名  選挙無効確認請求事件
文献番号  1962WLJPCA04180004

原告 小田俊与
補助参加人 武久浩子
被告 東京都選挙管理委員会委員長

 

主  文

原告の請求を棄却する。
訴訟費用中参加によつて生じた費用は補助参加人の負担とし、その余は原告の負担とする。

 

事  実

原告は「昭和三五年一一月二〇日施行の東京都第一区の衆議院議員選挙の無効であることを確認する。訴訟費用は被告の負担とする。」との旨の判決を求め、被告の本案前の抗弁にたいする答弁として、原告が本件訴状に被告東京都選挙管理委員会代表者委員長伊木寅雄と記載したことは認めるが、みぎ記載は被告が東京都選挙管理委員会を代表するものであり、かつ、委員長の職責を有するので「代表者」の文字を書き添えたにすぎないのであつて、原告は公職選挙法第二〇四条の規定どおり、東京都選挙管理委員会委員長伊木寅雄を被告として本訴を提起したものであるから、被告の本案前の抗弁は理由がない、と述べ、本案につき、請求原因ならびに被告の主張にたいする答弁としてつぎのとおり補うほか、別紙請求原因事実を陳述した。
一、池田自由民主党総裁が三党首立会演説会において演説できなかつた事実は選挙の結果に影響を及ぼしたものである。(請求原因事実(二)項の補足)
二、請求原因(二)項および(七)項の事実はまた公職選挙法(以下たんに公選法と略称する)第一三五条、第一三六条に違反するものである。
三、東京都選挙管理委員会(以下たんに都選管と略称する)が三党首立会演説会を開催したのは日本国憲法に違反する行為である。すなわち、自治省選挙局長の談話によると、日本全国には政治団体は約一万も存在している、ということであるし、被告自身の調査によつても、東京都において三百四十余の政治団体が存在している、というのにかかわらず、都選管が恣意的にわずか三団体を選び出し、国費を支弁して政談演説をなさしめたが、この差別的な措置はまさに憲法違反である。この点について、被告は「議会主義を採用する我国憲法下の政治は政党を中心として行われるものであるから、各政党の政治上の主張、政策を公にすることによつて現在の政治思潮と政治上の諸問題の解決策について具体的な知識を選挙民に提供すれば、過誤なく選挙権を行使させることができる、という観点から演説会を開催した。もちろん右演説会開催にあたつては、可能な限りの全政治団体を網羅することが望ましいが、数百を超える政治団体の総べてをこれに参加させることは技術上時間的に不可能であるし、政治常識の向上という目的からみれば、必ずしも全政治団体を参加させる必要はなく、現実に政治を担当し、わが国の殆んどの選挙民の支持をえている三政党を選んで演説会を開催した。」と主張するが、わが国の政治が政党を中心として行われるといつても、法制的に政党中心政治が規定されているわけではない。とりわけ国家の最高法規である日本国憲法にも、また選挙法規である公選法にも、政党を中心として政治を行う旨を規定した別段の条文はない。国会法においてすら政党中心の政治を云々した一ケ条の条文も見当らない。したがつて、選挙は法に則つて執行されるものである以上、わが国の現状が政党中心の政治であるからという理由で、特定政党に特に優先的処遇を与えなければならないなんらの法的根拠も存在しない。否、却つて法は選挙の場においても政党による差別を禁じているのである(憲法第一四、第一五、第四四条)。いまさら述べるまでもなく、日本国憲法の基底を貫くものは自然法思想であり、憲法のこの精神に則つて制定された現行公選法の基調は個人、人格代表主義である。ここでは個人の人格の尊厳性と各人の平等とを確保するために、法の下の平等、すなわち平等主義の理念が要求されるのである。法の下の平等の原則は各人の社会的平等を否定するような法の恣意的適用を一般的に禁止することは勿論であるから、この原則に反する行政行為が法的に否定せらるべきことは言を俟たない。選挙権の平等と関連して政党の平等が要請せられるのであるから、選挙法上特定の政党を特別にとり扱うことは平等原則に違反し違憲というべきである。公選法第一五二条ないし第一六〇条にもとずく候補者の立会演説会を開催管理するさい都選管がみぎ三党首立会演説会を開催した考え方、三党優先の扱いをしたとするならば、憲法および公選法に違反することはあきらかである。前記三政党を一般社会人がたんに通俗的な意味で「我国の代表的政党」とか「国会に支配的勢力を有する党派」とか表現するのでなければ許されもしようが、都選管が選挙管理の場においてかかる思想の下に、公務を執行することは違憲以外のなにものでもなく、とうてい許されない。
しかのみならず、国会は未だ解散されておらず、選挙の公示もおこなわれていないのに、三党首をしてそれぞれ「総選挙に臨むわが党の態度」を語らしめるということは、まさに一種の事前運動であつて、しかも、これを選挙を管理すべき公的機関である都選管が共同主催したことは失当である。
四、マスコミが浅沼享子候補を当選させる目的で反覆して掲載した記事は、別紙請求原因(十三)にかかげるほか、つぎのとおりである。
産経新聞昭和三五年一一月六日史上最高得票かバタ屋さんも未亡人に敬礼(甲第三五号証)。読売新聞昭和三五年一〇月三〇日浅沼未亡人もトラツクで(同第三号証の三)。日本経済新聞昭和三五年一〇月三〇日早くも街頭でアイサツする候補者の写真(同第六五号証)。東京新聞昭和三五年一〇月三〇日街頭で第一声を放つ婦人候補の写真(同第二九号証)。毎日新聞昭和三五年一〇月二八日浅沼さんをしのぶ、夫と妻の記録(同第五号証の一七)。東京新聞昭和三五年一〇月二六日浅沼さんは遺影で、大衆政治家の質素な生活ぶりをつたえる(同第七四号証)。読売新聞昭和三五年一〇月二八日沼さんをしのぶ、アパートの婦人を招いて(同第三号証の九)。毎日新聞昭和三五年一一月八日附紙上の婦人公論の広告記載中夫浅沼稲次郎とともに、浅沼享子(同第六号証の一二)。朝日新聞昭和三五年一一月三日合い言葉「故浅沼」(同第二号証の一〇)。東京新聞昭和三五年一〇月三一日涙は安保より強い、同情票(同第三〇号証)。東京新聞昭和三五年一一月二〇日浅沼享子候補の投票風景の写真(同第二五号証)。朝日新聞昭和三五年一一月二〇日紙上のジローもおとも浅沼夫人母娘で投票所への記事と写真(同第三一号証)。読売新聞昭和三五年一一月二〇日投票する浅沼享子さんの写真と愛犬つれ浅沼未亡人も(同第四号証の四)。愛犬おともに浅沼享子さんの記事と浅沼未亡人が投票の写真(同第六号証の八)。産経新聞昭和三五年一一月二〇日浅沼享子さんも娘の衣江さん愛犬ジローに送られて(同第四〇号証)。東京新聞昭和三五年一〇月二五日の注目の浅沼・鳩山票一区(同第二一号証)。毎日新聞昭和三五年一〇月二八日総選挙の焦点浅沼事件で大ゆれ一区(同第五号証の七)。朝日新聞昭和三五年一一月九日激戦地をゆく、保守、派閥で食い合う東京一区票のよめぬ「めくら選挙」(同第二号証の四)。日本経済新聞昭和三五年一一月一五日ゴール寸前の各選挙区、安井・浅沼はまづ当選か(同第六八号証)。読売新聞昭和三五年一一月六日選挙戦を現地にみる(同第四号証の六)。東京新聞昭和三五年一一月一八日微妙な浅沼人気(同第二四号証)。日本経済新聞昭和三五年一〇月三一日全国選挙区の形勢(2)(同第六六号証)。産経新聞昭和三五年一一月一七日大詰めの東京各区潜行運動激しい一区(同第九〇号証)。週刊公論昭和三五年一〇月二五日号ああ浅沼委員長(同第一七号証)。朝日ソノラマ第一一号付録昭和三五年一〇月二一日発行ああ浅沼稲次郎氏(同第五八号証)。ソノブツクス臨時増刊昭和三五年一一月五日発行沼さんは生きている(同第五九号証)。朝日ソノラマ12昭和三五年一一月二一日沼さんの童話(同第六〇号証)。朝日ソノラマ11昭和三五年一〇月二一日発行所得倍増と牛乳三合の一騎打ち(同第六一号証)。東京新聞昭和三五年一一月一日享子未亡人の得票数(同第二三号証)。毎日新聞昭和三五年一一月一六日浅沼、全国最高点か(同第六号証の一〇)。読売新聞昭和三五年一一月一八日四者の差つまる東京一区(同第四号証の一)。朝日新聞昭和三五年一〇月二五日各選挙区の動き、身内同志の食い合い(同第一号証の二)。朝日新聞昭和三五年一一月一七日四候補順位争い一区(同第二号証の三)。朝日新聞昭和三五年一一月一六日あと4日7選挙区の情勢は? 激しい首位争い(同第二号証の六)。東京新聞昭和三五年一一月一四日浅沼、安井の首位争い(同第二〇号証)。日本経済新聞昭和三五年一一月一三日話題の地区に拾う、鳩山、浅沼票の奪い合い(同第六七号証)。毎日新聞昭和三五年一一月六日浅沼未亡人は全期欠席、立会演説会さびしい東京一区(同第六号証の二二)。毎日新聞昭和三五年一〇月二六日投書浅沼未亡人の立候補(同第五号証の一六)。東京新聞昭和三五年一〇月一九日未亡人立てば一位(同第一八号証)。
五、被告は「かりに報道機関(以下マスコミと略称する)が原告主張のような報道、記載をしたとしても、それらは公選法第一四八条、第一四八条の二、第二二三条の二、第二三五条の二等により刑事上の問題となるべき事項であり、選挙の効力に影響を及ぼすものとして論ずべき問題ではない。」と答弁しているが、みぎ主張は誤りである。なるほど新聞紙、雑誌の一回か二回の、そして一紙か二紙の虚偽の事項、事実の歪曲などの記載で表現の自由を乱用して選挙の公正を害したというものであれば、それは刑事上の問題としてのみ論ずるのが妥当であるかと思えるが、本件選挙におけるマスコミのそれは一紙や二紙でなく全マスコミ(あらゆる新聞紙、雑誌、ラヂオ、テレビ等)があげて選挙への不法介入をしたのであつて、これにより自由かつ公正に行われるべき選挙が、選挙の基本原則を全く失つた、選挙の体をなさぬものとなつたのであるから、これをもつて選挙の効力に影響を及ぼすものとして論ずべきでない、という議論は全くあたらない。例えば買収饗応などの選挙違反が三人か五人、或は一〇〇人か二〇〇人という程度であれば刑事上の問題となるべき事項であるが、これが一〇万人、二〇万人という選挙違反、全選挙区をあげての買収違反などということになつたとすれば、選挙の効力に影響を及ぼすものとして論ずべき問題となり、当然選挙無効の原因となりうるのである。本件選挙におけるマスコミの不法介入は空前絶後ともいうべきものであり、このような選挙が万一にも適法な選挙として承認せらるるにおいては、これから後の選挙は一切合財マスコミの思惑どおりとなり、自由自在にマスコミに駆使せられる奴隷時代となり、遂にわが国が赤色独裁の国と化するのは必然である。かくの如きは民主政治を基本原理とする日本国憲法の精神とは全く背反するもので、法の厳存するかぎり、このような結果をもたらす本件選挙は断じて合憲、合法なものと称することはできないのである。
六、本件選挙の公示前及び選挙期間中の新聞記事中、候補者の選挙予想記事はつぎの如きもので、きわめて不平等である。
読売新聞昭和三五年一一月一八日第四頁トツプ記事(甲第四号証の一)に、四者の差つまる東京一区の見出しの下に、「関東東京都一区(四―22)五、五倍で全国一の競争率だ、浅沼享子(社新)が浅沼事件の影響で旧右社の組織票と婦人、同情票を集め、安井誠一郎(自新)は前都知事の肩書により両者のトツプ争いでスタートしたが、その後田中栄一(自前)の巻きかえし、原彪(社前)の地盤固めで差をつめられ、浅沼、原、安井、田中の四人は追いこみいかんでは順位はつけがたい。麻生良方(民新)がこの四者に切りこもうとしており、きくなみかつみ(共元)がこれを追つている。」と記載し、また、毎日新聞昭和三五年一一月一六日六頁トツプ(同第六号証の一〇)には、特集号の「浅沼全国最高点か、強い鈴木(社会)安井(自新)ら」の標題の下に、「浅沼享子(社新)と安井誠一郎(自新)の全国最高点争い、田中栄一(自前)原彪(社前)堅く、麻生良方(民社新)はおくれている」、と記載し、朝日新聞昭和三五年一〇月二五日の記事(同第一号証の二)には、「各選挙区の動き」なる標題の下に、「一区(4)浅沼社会党なきあとだれがその後に立つかは全国注目の的だつたが、結局享子未亡人が立つこととなつた。前回第二位当選ながら、一二万五五〇〇余票を集めた浅沼委員長なので、今度は同情票も加つて、あるいは同未亡人が最高点当選といつたケースを予想する向きもある。これで微妙な影響を受けるのが同じ社会党の原彪(前)で選挙対策の建て直しに迫られている。一方自民の田中栄一(前)安井誠一郎(新)は故鳩山元首相の票を引きつごうとしているが、浅沼暗殺の余波は保守派にも影響しそうで、この区の選挙戦の様相を大きく変えることになりそうだ、名門選挙区のこととて麻生良方(民社新)聴濤克己(共元)らしめて二十人近い数に上つている。」と記載し、朝日新聞昭和三五年一一月一七日第六頁トツプ記事(同第二号証の三)に、「東京一区(四―22)千代田、中央、港、新宿、文京、台東区五、五倍という全国一の激戦区だが、手堅い組織票を持つ原彪(社前)東京都知事を三期つとめた地盤にモノをいわせる安井誠一郎(自新)前回トツプの田中栄一(自前)刺殺された夫の身がわりに出た浅沼享子(社新)の四人が当選圏内に入つている。これらに続いて麻生良方(民社新)が懸命の追込みを続けている。他の候補者はこの五人から大分引きはなされた。一区の興味は前回九万票をとつた故鳩山一郎の票の行くえと、浅沼がどの程度の量を集めるかだが、浅沼は組織票のほかに一般からの同情票を集めて社会党の作戦は一応成功したかにみえる。しかし、原の票の堅さ、安井、田中の全地区に売れた顔、浅沼の同情ブームとそれぞれの特色があつて、順位の判定ばむずかしい。自民支持の票が安井五、田中四、ほか、面白いことに浅沼一の割合に分かれているが、社会支持の票は原六、浅沼四の割合に固つているようだ。問題は麻生ののび方だが、そのカギはどこまで社会自民の支持票に喰いこむかにかかつている。」と記載し、東京新聞昭和三五年一一月一日(甲第二三号証)には「選挙区の話題を追つて」なる標題下に、「定員四人に対し二十人の候補者が立つている全国一の激戦地で享子未亡人が何票とるか、まず数字面からその可能性を探つてみよう。東京一区の有権者数は約九五万九〇〇〇人で前回より約九万五〇〇〇人ふえている。前回の投票率は六六・五七%だつたが、―中略―物理的に計算して一五万以上―結局浅沼享子の票はその中間票をとつて一七、八万票とみるのが常識ではあるまいか。二、三位は自民党の安井誠一郎、田中栄一の二人の争いとなろう。」朝日新聞昭和三五年一一月一六日(同第二号証の六)東京版トツプ記事に、「あと4日7選挙区の情勢は? 激しい首位争い、故鳩山票の行くえ注目、第一区(定員四候補者22)千代田、中央、港、新宿、文京、台東区、有権者九五九、〇五一、競争率五、五倍全国一の激戦地、内訳は自民二、社会二、民社一、共産一、諸派七、無所属九、この名門選挙区の焦点は故鳩山一郎の票がどのような流れ方をするかにあるようだ、それに前都知事の肩書にモノをいわせる安井誠一郎(自新)と、刺殺された故浅沼稲次郎の身がわりで、婦人層ばかりでなく、保守の支持層からも同情票を集めている浅沼享子(社新)のトツプ争いだ。つづいてガツチリ組織の上に乗つた原彪(社前)と、中盤から激しく追込んできた前回トツプの田中栄一(自前)がまず当選圏に飛び込んだ形、調査から強いて順をつければ、原・浅沼・安井・田中といつたところだが、ほとんど一線にクツワを並べた格好で、このうちだれが一位になるかはにわかに判断しがたい。麻生良方(民社新)はこの四人にちよつと差をつけられている。しかし中盤から力走が効を奏してぐんぐんのしているので、当選圏の四人もウカウカできない勢いだ。麻生のカギは社会・自民の堅い城壁をどこまできりくずせるか―にかかつている。中略 候補者の人気を性別にみると、男は原、安井、浅沼、田中、麻生、きくなみ(共元)女は浅沼、原、安井というところ。後略」と記載し、さらに東京新聞昭和三五年一一月一四日都内版 浅沼、安井の首位争い(甲第二〇号証)、日本経済新聞昭和三五年一一月一三日話題の地区に拾う、鳩山・浅沼票の奪い合い(同第六七号証)、東京新聞昭和三五年一〇月二五日東京の選挙情勢、注目の浅沼・鳩山票一区(同第二一号証)、毎日新聞昭和三五年一〇月二八日総選挙の焦点(上)浅沼事件で大ゆれ、一区(同第五号証の七)朝日新聞昭和三五年一一月九日激戦区をゆく、保守派閥で喰い合う、浅沼ブームの気配、大物の死で新事態(同第二号証の四)東京新聞昭和三五年一〇月一九日政界スコープ、浅沼氏亡きあとの東京一区、未亡人立てば一位、低姿勢の外ない保守候補(同第一八号証)、朝日新聞昭和三五年九月二六日故鳩山票の跡目争い(同第九一号証)
これらの各記事はいずれも似たりよつたりの選挙予想記事であつて、そのほとんどすべてが浅沼享子、原彪、安井誠一郎、田中栄一、麻生良方の五名の候補者についてのみ報道、評論し、わずかにきくなみ候補を加えた六候補について記載してあるのがたまにあるにすぎない。他の十六候補についてはただの一行の報道評論もなされず、一候補の氏名も記載せられず、完全抹殺である。これでも被告は新聞が選挙予想記事について不平等に取扱つたことはないというのであろうか。いずれにしても、このような新聞記事を読んだ選挙民は、新聞社がまともに取上げた候補者のみを投票選択の対照として検討するのであつて、氏名が抹殺され、または単に申訳的に氏名のみが記載された候補者に対しては、いわゆるマスコミの宣伝するほうまつ候補として蔑視又は憎悪感を抱くのが投票者の心理である。マスコミはその選挙民心理の盲点を巧みについてみぎ様の予想記事をかかげて、特定の数候補者を利し、その他の候補者の得票を妨害した。このようなマスコミ権力の作為的妨害の反覆行為によつて公正を害され、かつ選挙管理委員会が、これを黙認して結果された本件選挙は、日本国憲法の条文にてらしまた、公選法第二〇五条により当然無効である。
七、被告は特定の候補者を泡沫候補と報道評論したことはない、と主張するが、みぎ主張の誤りであることは左記事実によつてあきらかである。
朝日新聞昭和三五年一一月八日(甲第二号証の一)は、「相変らず多い悪質ホウマツ候補、ひとかせぎねらう党総裁などでたらめ、総選挙の立候補届出は五日しめきられたが、いわゆるホウマツ候補がこんども相変らず多く立つている。ホウマツ候補と一口にいわれる人の中にも、いつの日にか当選をとまじめに選挙運動をつずける候補者もいるし、当選第一主義の政党が新顔の進出にブレーキをかけ、このため有能な新顔が結果としてホーマツで終つてしまう例も少くない。だが、選挙の名にかくれて別の目的で立候補するものもいる。こんな悪意のホーマツ候補がどうして出てくるのか。あと二週間にせまつた投票日を前に、ホーマツ候補にスポツトをあててみた、(中略)ある選挙通の話によると、この種の候補には「大マジメ型」「売名型」「思想運動型」などいろいろあるが、悪質なのが職業型。これがのさばる原因は立候補すればもうかるからである。同氏の算術によると、供託金一〇万円を出して立候補すれば、選挙用ハガキ一万五、〇〇〇枚ポスター用紙八、〇〇〇枚をはじめ各種のパス、標札、腕章など選挙の十数種の小道具がタダ貰える。これが他のホーマツでない候補者に売れる。相場はハツキリしないが、ハガキ一枚一五円から二〇円、一五円としてもハガキ丈で二二万五、〇〇〇円、この外ポスターなどもそれぞれ値がつくし、第一票が売れる。こんな具合に供託金一〇万円が何倍にもなつてヌレ手にアワのボロもうけという。こうした悪質な職業のホーマツを締出すため、選挙法を改正しろという声は前から高い。以下略」と記載し、毎日新聞昭和三五年一一月八日(同第六号証の五)には「よく考えよう。公明選挙のために、私のみた選挙運動」なる記事中に、「商売の立候補も? ×日有楽町で不思議な街頭演説を見た。候補者が大きいマイクを持ち奥さんらしいのがノボリを持つてそばに立つている。もちろん徒歩、聞いたこともない名前。ホーマツ候補というのだろう。声をからして道行く人にきれいな選挙を呼びかけている。だがホーマツ候補の中には選挙を商売にして規定のポスターを売つている人もあるという話だ。その横を小型トラツクに乗り、テープレコーダーにあいさつをふきこんだ候補者が通りすぎた」と記載しているが、前者は南俊夫候補であり、後者は原告である。東京新聞昭和三五年一〇月二九日(同第一九号証)にはあなたの票はねらわれている、もうけザツト百万円、ポスター、ハガキ売り渡す、ホーマツ候補という見出しの下に、「解散になつて議員さんは憂うつそうに選挙区に帰つて行つたが、笑いがとまらないのがいつの選挙にも顔を出し、落選するいわゆるほうまつ候補、各地選管では早くもほうまつ候補のリストを作り、その対策を考えている。そのリストから拾つてみる。中略 なかなか立派な主張だがその主張とうらはらに暗いうわさもとぶのである。ある候補者は昨年参議院選挙のとき標識とハガキ三枚を東京地区の保守党某候補に四五万円で売りわたした。T候補の供託金もA候補が負担した。その礼にA候補(T候補とあるのは誤記とみとめる)に投票するようぶちまくつたという。また東京のS候補ははがきを売りわたすのと、八百長演説がうまいので、いま保守党の各候補の間で引張りだこだという。電柱にはられる選挙用ポスターはほとんど色ずりで美しく印刷されているが、Y候補のポスターは墨かマジツクだ。選管から貰つたポスター用紙のうち二、三〇枚を申訳的にはり出すがあとの七千数百枚は一枚一〇円で別の候補者に売渡す。中略 あるほうまつ氏の皮算用によると、こんどの選挙に立候補すると、はがき一万五千枚と自動車用標示板、街頭演説用標示板などそれぞれ一本ずつに運動員用の腕章などが選管から割当てられてくる。これをほかの候補者に売ると、いまの相場が一枚一三円、中盤戦に入れば一五円から一七円位に上るから一五円で手放したとして二二万円、標示板・腕章ひつくるめて一〇万円、ポスター用紙八〇〇〇枚を一〇円で売つて八万円計四〇万。うち供託金に一〇万円出すからさし引三〇万円ふところに入る勘定である。中略 衆議院選挙立候補×回知事立候補××回の名刺をもつてこんど立候補しましたと会社をまわれば腕次第で三〇万や五〇万は集められる。どんなにとちつてもこんどの選挙で一〇〇万円儲けてみせます、とほうまつ氏は張切つていた。中略 候補者のはがきやポスターそれに選管職員の費用まで一切国民の税金でまかなわれている。その費用がこんどの選挙では一人の候補者あたり五〇万円といわれている。つまり私たちはほうまつ候補に五〇万円の資本金を出してやり、一〇〇万円ももうけさせているのだ、その配当が「合法的選挙妨害」なのである。」東京新聞昭和二五年一〇月二七日(同第二八号証)には、選挙には金がかかる。候補者一人に五〇万円、ムダなものもすくなくない、という標題の下に、無料乗車券の制度を利用してもつぱら家族の無銭旅行をしている、と記載し、毎日新聞昭和三五年一〇月二九日(同第五号証の二)には、全く野放し状態、売名や金もうけが多いホウマツ候補、なる見出の下に、「選挙のたびに問題となるのがホウマツ候補のことだ。なかにはまじめな考えの人もいるが、総じて売名とかカネもうけ目的の人が多い。しかし選挙が公平という観念を基本としている以上、これを差別することはできない。適格者であれば、立候補を受け付けざるをえないし、新聞広告・ラヂオの政見放送・立会演説会・無料ハガキの交付などすべて平等に行わねばならない。そこにこれらの人たちのネライがあるわけだ。たとえ供託金(衆議院選挙一〇万円)を没収されても、一人について一万五千枚ももらえる無料ハガキを他の候補者に高く売りつければ楽なものだし、新聞広告なども国で費用を払うのだからただで宣伝ができる。また立候補すれば、額の多少こそあれ陣中見舞も来るだろう。このような盲点をついて悪質なものは「最初から当落を無視している、ネライは選挙を通じてオレの思想を世間に知らせるのだ。」などと大言壮語して衆参両議院議員、都道府県知事、同議員、市町村長と国の選挙、地方選挙の区別なくあらゆる選挙に立候補したものまで出る始末、税金である選挙公営費用を乱費し、選挙管理事務をいたずらに繁雑にするこれらの悪質なホウマツ候補は、自治省や選管にとつて頭痛のタネ。なんとかして締出したいのだが、うつかりしたことをすれば憲法違反のおそれもでてくる。打つべき手としては郵便による立候補届出の禁止、二重立候補の罰則を設ける、供託金を引き上げる等といつたあまり効果が期待できないような方法しかないのだが、それも公選法改正でお流れとなつて現行どおりまつたく野放しとなつた。新聞の選挙情勢の記事に自分の名前が出ていないのは公選法違反だとか抗議や告訴をするのもよく使う手だ。これまでの選挙でも立候補してはみたものの、運動はしない、演説会では自分の意見を述べるよりも、もつぱら他の候補者の応援をするようなものがいた。結局有権者が自覚して少数といえども支持票がある、などと開きなおらせないことが先決だといえよう。」と記載し、さらに毎日新聞昭和三五年一一月一六日(同第六号証の六の二)には、余録欄の記事に、「選挙公報や新聞にのる立候補広告をみると正直なところ精神鑑定が必要じやないかと思うのがある。中略 だが供託金一〇万とは安い売名料だと考えるのもいるし、もつとひどいのはまつたく金もうけが目的の立候補さえあるようだ。供託金は没収されても十分採算がとれるのだからいやになる。立候補すれば選挙用ハガキ一万五千枚ポスター用紙八千枚それにパスや標札・腕章がもらえる。これだけだつてほぼ一〇万円の価値はある。無料政見放送や新聞広告はそつくりおまけになる勘定だ。中略 選挙の完全公営は理想だがヘタをすればますますこの手合をのさばらす結果になる。といつて妙に立候補を制限すれば新人はいよいよ出にくくなる、なんとかこの目ざわりな存在を除く名案はないものか」という記載がある。毎日新聞昭和三五年一一月九日(同第六号証の六の一)余録欄に「東京一区の立会演説会(第二班)は浅沼(社会)安井(自民)の両有力候補に続いてきくなみ(共産)山下(無)候補も欠席を届出た。こうなると残るのは諸派と無所属の候補者だけになり、立会演説会の体をなさなくなる、中略 東京一区は全国注目の選挙区だけに定員の五倍半、二二人もの候補者が立つている。その中には売名やひやかし半分のいわゆるホウマツ候補もいないとはいえない。その連中と公平な時間の割当てで演説させられるのは悪平等だとの不満も出よう。これに費す精力をほかに使つた方がよいという考えも無理はない。有権者にしても、お目当の数人を聞くために愚にもつかぬ演説を抱き合わされては時間の浪費だ、と敬遠したくなる。この矛盾をそのままにして候補者に出席を要求したり、有権者に聞きにこいといつても効果はあがるまい 後略」という記載があり、朝日新聞昭和三五年一一月一七日天声人語欄(同第二号証の八)に「略 なかには初めから立候補商売が目的で選挙用ハガキ・ポスター・パスなどを高く売りつけて供託金一〇万の没収とさし引き大もうけというのもあるようだ。こうした不心得者はこの次から出られぬよう公選法の盲点を改める必要がある。選挙違反の実情は悪い奴ほど法網にもれるものだ。やはり国民のきびしい社会正義感によつて社会的制裁を加えることが第一と思う。」さらに読売新聞昭和三五年一一月一九日には「選挙ハンドブツク、一歩でもよい方向へ、矛盾はいろいろあるけれど」(同第四号証の二)という見出しの下に「いわゆるホウマツ候補という言葉が世間でささやかれている。供託金一〇万円を東京法務局供託課におさめただけで立候補できるシステムは制限がきびしかつたむかしのやり方より自由でよいかも知れない。だが候補者がやたらに乱立する傾向は何んとかならぬものだろうか、立候補に一定数の有権者たちから推薦させるのも一方法だろう」という記載がある。
みぎ各記事内容であきらかなように、朝日、読売、毎日、東京等の大新聞はほうまつ候補を非難攻撃する報道評論をくりかえし行つたが、何某候補がほうまつ候補であつて、これこれしかじかのことを行つたという記載はない、それだから被告は特定候補者を泡沫候補と報道評論した事実はないというのであろうが、各新聞は浅沼、原、安井、麻生、きくなみの六候補についてのみ報道評論し、その他の十六候補については氏名さえも記載しないか、たとえ記載しても六候補について報道評論したその末尾に、申訳的に記載しただけであるから、数多くの予想記事、浅沼候補ら六候補についての報道記事、ほうまつ候補に関する記事を併せて閲読する選挙民や読者は、当然に各大新聞から虐遇される候補者や、氏名さえも記載されぬ候補者は多分ほうまつ候補なのであろう、とおのずから感じとるのである。もし特定候補をほうまつ候補と報道評論したのであれば、その報道が事実であるかぎり、他の候補者にはさしたる被害はないのである。ところが何某候補はほうまつ候補で選挙はがきを誰候補に売つたという風に記載せず、前記のように予想記事と絡み合せて、一六候補がほうまつ候補であるかの如く印象ずける報道評論を行つたので、みぎ一六候補の得票は千票台が二人他は全部百票代というさんたんたる結果に終つたのである。
また、みぎ記事のうち、各地選管がほうまつ候補のリストを作り、その対策を考えている、という中傷記事は事実に反する記載である。選挙の公正を確保すべき被告の任務からいつて、当がい記事について東京新聞に抗議し、取消を要求するのが当然であるにかかわらず、これを行わず、ほうまつ候補が存在することを選管が公認してこれを選挙から排除する意図の下に対策を考慮し、かつ、そのために新聞社にリストを閲覧させて報道評論を行わしている如く、選挙民及び読者に印象ずけた行為はあきらかに違法である。
また、ポスター八千枚の用紙は、二連で時価七、八千円のものであるから、これをポスター大に截断した紙を一〇円で買う愚か者はありえないし、他の候補者の標札や腕章を買つたところで使い道がないからかかるものの売買はありえない。これを要するに、マスコミ各紙は事実を歪曲し、虚偽の事実を記載し、表現の自由をらん用して選挙の公正を害したのである。
以上のとおり、報道機関はほうまつ候補に関する罵言中傷記事を掲載することによつて、原告をふくむ十六候補にたいし執拗に得票妨害をすると共に、浅沼候補ら六人に対しては格段の優遇的報道評論を与えたのであるが、みぎ報道機関の行為が各社の緊密な連絡統制の下に行われたものであることは、その記事内容が符節を合する如く同一であり、その論旨文体まで殆んど軌を一つにするものであることに徴しあきらかである。
八、本件選挙における原告の氏名掲示の文字の大きさは他の候補者と比較して小さく書かれていた。(台東区の氏名掲示において発見、)このことは選挙管理に当る行政庁が国民平等の観念を失つていたことを示すもので、違法な選挙管理であるこというまでもない。
九、選挙用無償交付ハガキが売買された場合につき、公選法は第一七七条第三項に「これらのものを他人に譲渡してはならない」との禁止規定をおき、これが違反にたいし同法第二四四条第八号の罰則を定めているが、これを買受けたものについては、なんら罰則を定めていない。したがつて、現行公選法によれば、ひとしく選挙の公正を害するものでありながら、ハガキを譲渡したもののみが処罰せられ、譲受けたものは処罰せられず、きわめて不合理な差別がつけられている。かかる法規は違憲法規であつて、かような違憲法規によつて執行された本件選挙は当然に無効である。
一〇、かりに都選管に法規違反の事実がなかつたとしても、浅沼委員長刺殺事件のため、本件選挙区の選挙民は強烈な衝撃をうけ、異常な心理状態となり、選挙の自由がうばわれ、いちぢるしく選挙の公正が害された。みぎ刺殺事件の勃発は選挙の結果に異動を及ぼしたこと勿論であるから、本件選挙区における前記選挙は無効である。
被告代理人は、本案前の申立として原告の訴を却下する、との旨の判決を求め、本案につき、主文第一項同旨の判決を求め、本案前の抗弁として、「本件は公選法第二〇四条の規定により提起されたものであるが、同条には衆議院選挙の効力に関する訴訟は都道府県選挙管理委員会の委員長を被告として訴を提起するよう明定されている。しかるに本件訴においては、原告は被告を東京都選挙管理委員会とし、その代表者として委員長名を記載しているに過ぎないから、本訴は被告を誤つており、不適式の訴として却下をまぬかれないものである。なお同法第二一九条において行政事件訴訟特例法第七条の規定を準用していないから、被告の変更も許されないのである。以上のとおり本件の如くあきらかに委員会を被告とした訴は不適法として却下さるべきである」と述べ、本案につき別紙昭和三六年一〇月三日附準備書面のとおり答弁および反対主張を述べた。
(証拠関係)〈省略〉

 

理  由

まず被告の本案前の抗弁について判断する。
公選法第二〇四条の規定によれば、衆議院議員選挙の効力に関する訴訟においては、都道府県選挙管理委員会の委員長を被告として訴を提起すべき旨明定されているところ、本件記録によれば、被告の指摘するとおり、原告が被告を東京都選挙管理委員会とし、その代表者として委員長名を記載したように認められるけれども、本件弁論の全趣旨に徴すれば、みぎ記載は原告の誤記に出でたもので、原告は東京都選挙管理委員会委員長にたいして本訴を提起したものと認めるのを相当とするから、被告の本案前の抗弁は理由がない。
そこで本案について判断をすすめる。
一、原告が昭和三五年一一月二〇日執行の衆議院議員選挙にさいし東京都第一区に立候補したことは当事者間に争いがない。
二、原告が別紙請求原因(二)という見出しの下で、本件選挙無効の訴訟の請求原因として主張するものは
1、都選管は自治省選挙局と話し合いの上、公明選挙連盟、日本放送協会(以下NHKと略称する)と共同して、名を公選法第六条第一項の啓発・周知事業にかりて自由民主党、日本社会党、民主社会党の三党首にそれぞれ「総選挙に臨む我党の態度」なる演題の下に、その政策を論じさせ、これを本件選挙区をはじめ全国の選挙民に吹きこむことによつて、みぎ三党にぞくする立候補者の得票のかくとくをはかり当選に寄与しようとした。
2、都選管管内だけでも正規の届出のある政治団体が三四三もあり、第一区の立候補予定者は二〇人前後もあつたのに、都選管はみぎ演説会の演説政党、演説者を抽せん等公平な方法によらず恣意的に前記三党に決定した。
3、都選管はみぎ演説会の会場において前記三政党の党員九〇名に特別席を設け、他の政党員や一般聴衆に比し差別的な優待をし、これを選挙人に誇示することによつてみぎ三党を有利に、他を不利に導き、選挙の公正を害した。
4、都選管はみぎ演説会開催により事前運動禁止期間中にみぎ三党のため選挙運動をした。
5、前記浅沼委員長刺殺という不詳事件勃発のため、自由民主党総裁池田勇人の演説は不能となり、選挙の結果に異動を及ぼした。みぎ都選管の各行為は日本国憲法(以下憲法と略称する)第一四条、第一五条、第四四条に違反し、かつ公選法に違背するもので、選挙の公正が著しく害されたから本件選挙は無効である、というにある。
よつて案ずるに、都選管が公明選挙連盟、NHKと共同主催で、昭和三五年一〇月一二日原告主張の三党首による立会演説会を開催したこと、みぎ演説会において都委員長が挨拶し、ひきつずき西尾、浅沼両委員長が演説を行い、浅沼委員長が演説半ばにして刺殺され、そのためみぎ演説会は中止のやむなきに至り、自由民主党総裁の演説が不能となつたこと、みぎ演説会においてみぎ三党の関係者各三〇名が原告主張のように配列着席していたことは当事者間に争いのないところである。
そこで原告の1の主張について考える。成立に争いのない甲第六三号証の記載中には原告のみぎ主張にそう記載があるけれども、同号証のみぎ記載部分は昭和三五年一一月二九日東京新聞編集局長酒井寅吉らと会談したさいにおける原告本人の意見の陳述にすぎないから、とつてもつてみぎ事実の認定の資料となすことはできない。その他原告提出援用の全証拠によつても未だみぎ事実を認めるにたりる証拠はない。却つて証人吉田直治の証言、被告伊木寅雄本人尋問の結果(第一回)をあわせると、みぎ三党首立会演説会は都選管において公選法第六条の常時啓発の仕事の一つとして、公明選挙運動推進の立場から、東京都民に政治上の知識を提供してその政治意識の高揚をはかるため開催したものにすぎず、都選管に原告主張のような意図は全くなかつた事実をみとめることができ、この認定をうごかすにたりる証拠はないから、原告のみぎ1の主張は採用しない。
つぎに2の主張について判断する。都選管管内だけでも原告主張のように多数の政治団体があり、第一区の立候補予定者も二〇人前後もあり、みぎ演説会への出席政党を抽せんなどの方法によらずに都選管において選出したことは被告のあきらかに争わないところであるが、つぎに述べる理由からみて、みぎ決定が都選管により恣意的に行われたとする原告の批難はあたらない。すなわち都選管が公選法第六条の常時啓発事業の一つとして三党首立会演説会を開催したことは前認定のとおりであり、証人吉田直治の証言ならびに被告伊木寅雄本人尋問の結果(第一、二回)によれば、主催者側で前記三党を選んだ理由は、当時都選管管内に四百近くの政党が存在していたため、これら政党の党首全部を日比谷公会堂に会して演説させることは技術的に不可能であつたため、当時衆議院で交渉団体としての資格を認められた政党ということを標準としてこれをきめたものであること、都選管としては、みぎ三政党の政策、主張等を選挙民にたいし紹介することを目的としたもので、これを推せん支持するとか、またはこれに反対するためにみぎ演説会を開催したものでなく、ましてその所属立候補者の得票の増大を計り、当選に寄与しようとする考えなどは毛頭なかつた事実を認めることができ、この認定をくつがえすにたりる信用しうべき証拠はない。
なお原告は都選管が特定の二、三の政党の利益のため、公明選挙、常時啓発事業に名を借りて国費によつてその政党の宣伝をし党勢の拡張につとめ、かつ都選管みずから有力かつ支配的と信ずる政党の主義政策を選挙民に下達するため前記演説会を開催したと主張するが、その然らざることは前認定にてらしあきらかである。
原告主張3、5は選挙の執行機関たる都選管の選挙の法規に違反した場合に当らないこと原告の主張自体にてらしあきらかであるから、適法な選挙無効の原因ということをえないし、4については、前記演説会の開催は特定の党の特定の候補者の当選をえさせるためなされたものでないことすでに認定したとおりであるから、いずれも失当である。
惟うに、公明選挙の実現は結局において選挙民の政治にたいする自覚と認識にまたなければならないのであるから、そのためには選挙民各自がみずからの権利に目覚め、これを正しく行使しなければならないのであつて、それには選挙民各自が現実の政治の姿を認識し、これを批判し、みずからの意思によつて政治に参与しなければならない。この政治にたいする認識と批判力がいわゆる政治常識とよばれるものである。そして前記引用の各証拠によれば、この政治常識涵養の一手段として企画されたのが、前記三党首会談であることはあきらかである。しかして被告主張のように、わが国の現時の政治が政党によつて動かされていることは公知の事実であるから、各政党の主義、政策をあきらかにすることにより、現在の政治思潮および政治上の諸問題とその解決策についての具体的知識を選挙民に提示し、これをもとにして選挙民に政治の現実を正しく把握し、批判させることによつて、その政治意識をいちじるしく昂揚させることができるのである。しかして政治常識の向上という点からみれば必ずしも全部の政治団体の意見を聞く必要はなく、当時における三つの代表的な異なる政治思想と政策をもつ党派に、それぞれの立場からの意見を述べさせれば、わが国政の大勢は理解され、みぎ三党のゆき方のいずれに賛成するか、あるいはそのいずれにも賛成しえず、新な政党または政治家の出現を期待するかの判断力を涵養させるに十分であることは、まさに被告の主張するとおりであつて、三党首演説会開催が公選法第六条の常時啓発にあたらないとする原告の主張は失当である。原告は三党首演説会開催は憲法第一四条、第一五条、第四四条に違反する違憲の措置である、と主張するので、この点について判断する、公選法が日本国憲法前文ならびにその各条章の明文の規定にしたがい、かつ、そこに盛られた精神に従つて解釈運用せられなければならないことはいうをまたないところである。そして憲法が個人の人格の尊厳性を強調し、各人の法の下における平等の確保を要請していることはまさに原告の指摘するとおりである。しかしながら、参加政党の選択が前認定の経緯のもとになされたものである以上、みぎ三党首会談開催の措置を以つて憲法前文ならびに前記各法条の精神に反するものということのできないことは、おのずからあきらかである。
以上のしだいで請求原因(二)における原告の主張はすべて理由がない。
三、別紙請求原因(三)についての判断、みぎ演説会において当時の東京都選挙管理委員会委員長吉田直治が開催挨拶中、選挙の公明化実現のために選挙制度の是正を要望する、旨述べたことは当事者間に争いないところで、成立に争いのない甲第一五〇号証の二の記載によれば、原告主張のとおり、同委員長がみぎ演説において中選挙区制の是正を強く要望したことを認めることができるが、みぎは前後の関係からみて選挙の公明化のため選挙制度改正に関する意見を述べたにすぎず、特定の政党の政策を支持推進するためのものでないことはみぎ演説の内容自体にてらしあきらかであるから選挙運動にわたるものといいがたく、公選法第六条第一項に違反しないことは勿論で、もとより選挙無効の原因とならないことはいうまでもないところである。
四、別紙請求原因(四)ないし(六)にたいする判断、
かりに都選管において(四)ないし(六)に主張するような違法行為があつたとしても、みぎはいずれも公選法第二〇五条にいう選挙の法規に違反する場合にあたらないこと明白であるから、適法な選挙無効の原因たりえないのみならず、(四)の(イ)については、前記演説会が公選法第六条による常時啓発事業と認めうること前段説示のとおりであるから、その費用を国の啓発事業委託費から支弁することはなんら違法でなく、(ロ)については、原告の主張事実は選挙の管理と直接なんらの関係はなく、(五)については、都選管は政治資金規正法の適用をうける団体でないことあきらかであるから同法による届出をなす必要はなく((二)(三)が選挙運動でないことはすでに説明したとおりである。)、(六)については、みぎ演説会を開催するにあたつて「集会、集団行進及び集団示威運動条例」にもとずく集会許可申請を行わなかつたことは当事者間に争いがないが、成立に争いのない乙第九号証の記載によれば、官公庁が職務として通常行うものは都条例による集会許可申請書は不要である、旨の決定がなされていることを認めることができ、この認定に反する証拠はないから、この決定があつたためとくに書面による申請をしなかつたことをうかがうことができるのみならず、証人吉田直治の証言によれば、都選管はみぎ演説会開催については、警察当局と十分連絡を保つていたことを認めることができるから、開催の手続に格別の手落ちがあつたと認めることはできない。
五、別紙請求原因(七)についての判断、都選管がNHKと協議してNHKテレビおよびラジオによりみぎ演説会の模様を全国に実況放送したこと、ならびに各報道機関にこれを取材することをゆるした事実は当事者間に争いないところであるが、前記演説会が前説示のとおり公選法第六条による適法のものである以上、同条により周知・啓発の義務を負う都選管がこれをあまねく全国に報道したのはもとより当然のことで、なんら違法ではない。
六、別紙請求原因(八)にたいする判断、公明選挙連盟が原告主張のような団体であることは当事者間に争いがなく、みぎ連盟が都選管らと共同主催して三党首立会演説会を開催したことは前認定のとおりであるが、みぎ行為が違法でないことは前段説示のとおりである。同連盟理事長前田多門が原告主張の談話を新聞紙に発表したことは当事者間に争いのないところであるが、成立に争いのない甲第五号証の五の記載を通読してみても、みぎ談話は選挙の公明化を推進しようとする論旨を展開したもので、特定政党の候補者を有利にするためなされたものと読みとることはとうていできないから、選挙の公正を阻害するものといいがたく、この点に関する原告の主張は失当である。
七、三党首立会演説会は公選法にいう選挙運動にあたらないこと前説示のとおりであるから、請求原因(二)項および(七)項の事実が公選法第一三五条、第一三六条にあたらないことはいうまでもないところである。
八、別紙請求原因(九)ないし(十八)の事実を要約すると、原告の主張は、
1、都選管は公選法第六条の周知・啓発の方法を誤り、違法な三党首立会演説会を開催して浅沼委員長刺殺事件を惹起せしめ、本件係争の東京都第一区はもとより全国の全選挙情勢を激変させ、保守系候補者に不利に、社会党、共産党の候補者に有利に展開せしめ、選挙の結果に異動を及ぼした。
2、いわゆる安保デモ以来国民から不信を買つていたマスコミは、浅沼委員長刺殺事件を契機として、テロ排撃を叫けび、テロの犠牲者浅沼享子候補を一致して支援することにより、安保暴力デモの失態以来頽勢をかこつていた革新政党の挽回をはかり、ひいて、自己にたいする国民の不信感を一掃しようとして、浅沼未亡人ブームを捲きおこすまでの報道評論による選挙介入・干渉をした。前述のように浅沼委員長刺殺事件は都選管が違法に開催した三党首立会演説会がなければ発生しなかつたのであるから都選管の違法行為によりみぎマスコミ機関の選挙干渉も招来されたものである。このため
(イ)  マスコミ機関は浅沼享子候補の選挙運動の気勢をはるため本件選挙区の人々に大げさな取材活動を示し、これを新聞、テレビ等で宣伝した。(別紙請求原因(十二)参照)
(ロ)  マスコミ各社は浅沼享子候補の当選を目的としてその人物、意見等の宣伝のみを専らにした記事を掲載・流布した。(別紙請求原因(十三)参照)
(ハ)  マスコミ各社は選挙期間中くりかえしむしかえし浅沼・安井・原・田中・麻生・きくなみらについてのみ大大的に記事をかかげ、他の候補者についてはほとんどかえりみないていの、きわめて差別的な選挙予想記事をかかげた。(別紙請求原因(十四)参照)
(ニ)  マスコミは安井・浅沼・原候補らを大物と呼び、田中・麻生・きくなみについても相当報道したが、他の一六候補については殆んど記事をのせず、これらの一六候補のすべてが泡沫候補であるかの如く選挙民に強く印象ずけた。(別紙請求原因(十五)参照)
(ホ)  マスコミはしばしば立会演説会につき、大物の浅沼・安井候補らが欠席し、残つた候補者はつまらぬものばかりであるから、聴衆が集まらない淋しい演説会であるという趣旨の記事をかき、選挙人の立会演説会へききにいく意欲を殺ぎ、候補者の言論による選挙運動を妨害した。(別紙請求原因(十六)参照)
(ヘ)  マスコミはみぎ選挙期間中、安井誠一郎候補が重病人であつたにかかわらず、同候補の健康状態につき、虚偽、歪曲の筆先を弄して、同候補が十分国会活動に耐えうる健康状態にあるかの如く選挙人全般に錯誤を抱かせるような報道をした。(別紙請求原因(十七)参照)
(ト)  マスコミは公選法第一四六条で禁止されている候補者の氏名を記載した著述の広告を掲載頒布した。(別紙請求原因(十八)参照)
3、自治省選挙局は昭和三五年七月一四日言渡の「国労静岡」の東京高等裁判所の判決を誤解し、公選法第一四八条に関する誤つた法解釈を周知・啓発し、マスコミの選挙に関する報道を野放しにし、また、同局は、新聞社が過当競争の結果、興味本位の記事を記載し、過当に特定候補を取扱うなど行き過ぎがあつても、これが是正はもつぱらマスコミの良識による自粛にまつべきである、との見解の下に報道を野放しにした。
4、マスコミの本件選挙干渉は従来のものとは異なり、浅沼委員長刺殺事件が大きく影響した上、前記自治省の誤つた法解釈による周知・啓発に災され未曽有の大規模のものであつた。
というにある。
そこで、まず1の主張について判断する。三党首演説会開催が公選法第六条にいわゆる啓発事業にあたり、都選管の違法措置ということができないことが前説示のとおりであるから、たまたまみぎ演説会でおきた浅沼委員長刺殺事件のために、かりに原告主張のように、本件東京第一区はじめ全国選挙区の選挙情勢に相当の変化を与えたとしても、また、このことが選挙民の心理状態に若干の影響を及ぼしたとしても(それが投票の自由を奪うほどのものでなかつたことは後記認定のとおりである)、また、候補者の立会演説会不参加などの事態を生み、さらにまた、事件捜査の影響で右翼系候補者が選挙資金入手につき支障を感ずるなど、一般に保守系候補者が選挙運動上不利益をうけることがあつたとしても、これらはすべて選挙無効の原因とならないことはいうまでもないところである。なお都選管がみぎ刺殺事件の捜査のため選挙準備に多大の齟齬手違を来し、そのため投票率を悪くしたという事実はこれを認めるにたりるてきかくな証拠はなく、(もつとも、成立に争いのない甲第一六四号証の二の記載中に選挙直前におこつた浅沼刺殺事件のため準備が期間的にもズレができ、この事件をきつかけとして非常に事務がむずかしくなつた旨の座談会における都選管職員の談話の記載があるけれども、これのみをもつてしては、選挙準備に多大の齟齬、手違を生じたとする原告主張の事実を認めるに十分でない。)却つて被告伊木寅雄本人尋問の結果によればそのしからざることを認めることができる。したがつて原告の1の主張は理由がない。
なお、原告はかりに都選管の三党首立会演説会開催の行為が法規に違反しないとしても、このため起つた浅沼委員長刺殺事件のため、本件選挙区の選挙民が強烈な衝撃をうけて異常の心理状態となり、選挙の自由がうばわれ、いちじるしく選挙の公正が害されために選挙の結果に異動を及ぼしたと主張するけれども、原告の提出援用にかかる全証拠を綜合してみても、みぎ事件のため、本件選挙区の選挙民が異常の心理状態となり、投票にさいして意思決定の自由をうばわれたという事実はこれを認めることはできいから、この点に関する原告の主張は失当で採用できない。
つぎに、2について判断する。いつぱんに選挙無効の訴訟は、選挙の執行機関の選挙の管理が選挙の法規に違背した場合にかぎり、これを提起しうるのであるが、個々の選挙法規に違背しなくてもいちじるしく選挙の公正が害され、選挙の結果に異動を及ぼすおそれある場合には、これを提起すべきものと解するを相当とするから、もし原告主張のように甚しいマスコミ干渉の事実があり、これによつて選挙人が自己の自由な意思にしたがつて投票することができなかつた、と認められる場合に、当がい選挙は無効となるものと解すべきである。そこで本件について考える。原告主張のころ日米間の安全保障条約をめぐつて、総評、社会党、共産党、全学連が中心となつて、国会周辺に大規模な抗議デモが行われたこと、みぎデモが当時の全国各新聞に大々的に報道されたこと、三党首演説会において勃発した浅沼委員長刺殺事件ならびに同夫人の立候補に関する事実を各新聞紙誌が種々の角度から論評報道したことは当事者間に争いのないところであり、成立に争いのない甲第一二号証の記載によれば、日本新聞労働組合連合会、日本放送労働組合が日本労働組合総評議会(いわゆる総評)の傘下にあることを認めることができるが、マスコミが自己にたいする国民の不信感を一掃しようとして浅沼未亡人を当選せしめるため選挙干渉をしたという原告主張の事実は、いずれもその成立に争いのない甲第六および第六三号証の記載中にみぎ主張にそう部分があるけれども、みぎはいずれも原告本人の意見の陳述であつてみぎ書証中佐藤順一、酒井寅吉らの陳述記載と対比して採用しがたく、成立に争いのない甲第一〇七、第一〇八号証、同第一三二号証ないし第一三六号証の各記載をもつてしてもみぎ事実を認めるにたらず、却つて原告主張の請求原因(十三)掲記の各書証ならびに当審における証人酒井寅吉(第二回)の証言によれば、各新聞社は本件選挙にさいし特に一党一派に偏せず、また特定の候補を支持することもなく、公平に報道評論していたもので、又各社共選挙当時浅沼享子の記事が他候補に比し断然多かつた理由は、野党の指導者が大衆の面前でしかも現職の総理大臣の居合わせた席上でテロのため倒れたという劇的な事件と、そのあとをひきついで未亡人が立つたということ、このように夫の悲劇を背負つて未亡人が立候補したということは、一般社会的な事件として非常に報道価値をもつており、しかも、当時これに対抗しうるような事件がなかつたことから、ジヤーナリズムの関心がここに集中し、自然紙面に反映したにすぎない事実を認めることができ、前記採用しない各証拠を除いてこの認定に反する証拠はない。各雑誌社の浅沼候補関係の記事が多かつたことも反対の証拠の認められない本件においてはみぎ新聞紙におけると同様の理由によるものと解するを相当とする。
されば、かりに浅沼候補の宣伝車を放送車が追かけた事実があり、この事実が新聞テレビ等によつて報道されたとしても―(十三)の事実―また新聞雑誌等に原告が別紙請求原因(十三)において主張するような記事が掲載されていたとしても―(十三)の事実―みぎは浅沼委員長刺殺事件ならびにその直後同未亡人立候補という事実のニユース性のしからしめたものと認めるを相当とし、これを原告主張のようにマスコミの選挙干渉行為と認めることはできない。
また、選挙の結果予想記事も公選法第一四八条本文にいう選挙に関する報道評論にあたると解するを相当とするところ、原告主張のマスコミ機関朝日、毎日、読売、産業経済、東京、日本経済新聞はいずれも同条第三項所定の要件を具備する紙誌であることあきらかであるから、これら新聞紙が選挙期間中当落予想、候補者の人物行動、政見等を報道評論することは虚偽、歪曲その他表現の自由を乱用して選挙の公正を害しないかぎり、選挙の予想記事をかかげることはなんら違法でなく、原告が別紙請求原因(十四)で指摘する甲号各証を点検すると、各候補者によつて報道文の字数その他取扱いにかなりの差異があることはこれを認めることができるけれども、前記証人酒井寅吉(第二回)の証言に徴してもみぎ事実も亦そのニユース性の相違から生じたものと認められるから、これら各紙が報道の自由を乱用し選挙の公正を乱したものと認めることはできない。なお、原告は選挙の結果予想記事は公選法第一三八条の三、第一四二条、第一四六条に違反すると主張するが、みぎ主張が失当であることは前段説示にてらし、あきらかである。
つぎに、いずれも成立に争いのない甲第一一三号証、第一一七号証中には、立会演説会に関連して安井、浅沼両候補者を大物候補と報道し、いずれも成立に争いのない甲第二号証の一、第五号証の二、第六号証の五、第六号証の六中に泡沫候補云々の記事が認められるが、前記各証拠によれば、前者については安井、浅沼両候補者を特に大物候補として同人らのため有利な報道、評論をなしたものでないことはあきらかであるし、また後者については立候補者の一部に選挙用のハガキの売買等を目的として立候補するが如き、不都合なものもいる、という事実の報道をしたにすぎないことが認められるのであつて、原告ら一六候補を一律に泡沫呼わりをしたという事実はこれを認定することができない。したがつてみぎ各記事を掲載することが憲法に反するいわれはなく、この点に関し、選挙管理機関が違憲行為を排除する義務を怠つたという原告の批難はあたらない。
いずれも成立に争いのない甲第一一三号証、第一一七号証その他原告主張の別紙請求原因(十六)にかかげられた各証拠によれば、安井、浅沼等いわゆる大物候補が欠席しているため、立候補者の立会演説会は聴衆がすくなく低調である、と報道した事実を認めることができるが、みぎ各証拠を精査すると、各紙の云わんとするところは立会演説会の低調をなげき、いわゆる大物候補といわれる人々の不参加に遺憾の意を表しようとしたもので、これを選挙人にたいし、東京都第一区の立会演説会に参加しないよう、すすめたものと解することはできない。
マスコミ(毎日・東京・朝日・産経)において原告が別紙請求原因(十七)で主張するような内容の訪問記事を掲載したことは当事者間に争いがないが、みぎ訪問記事の内容は、被告主張のように、同候補の談話をそのまま記事とし、また取材記者の対話のさいうけた印象を記事としたものであつて、かりに同候補が当時健康を害していたとしても、これと対談する側において、同人の気魄、語調などにより元気だ、との印象をうける場合もありうるので、あながちこれら記事が虚偽歪曲であるという批難はあたらない。さればこの点に関する原告の主張も失当である。
マスコミが候補者の氏名を記載した著述の広告を掲載頒布したことは当事者間に争いがないが、別紙請求原因(十八)でかかげられたすべての証拠をしらべてみても氏名の大さ、記載の形態、方法等からみて公選法第一四二条、第一三四条の禁止を免かれる行為であると認めることはできないから、同法第一四六条に違反するものといいがたい。
このように前記(イ)ないし(ト)の点については公選法違反の事実が認められないのみならず、かりにその一部が公選法に違反すると認められるにしても、それは同法の罰則の適用の問題となるだけのことで、とうてい、原告主張のマスコミ干渉のあらわれとしてこれを観察することはできない。
以上認定のしだいで、原告主張のマスコミによる選挙干渉の事実は、とうていこれを認容することはできないが、マスコミが選挙にさいし選挙民にたいして絶大の影響力を持つものであることは、甲第六号証の一、同第一八一号証の記載をまつまでもなく公知の事実であるから、かりそめにも販売における過当競争(現時大量発行の誌紙の間で激甚な販売競争の行われていることは公知の事実である)の結果、記事が興味本位に走り立候補者の権利を害することがないよう慎重に配慮することが必要である。
おもうに、新聞紙誌等いわゆるマスコミが報道の自由を有することは、民主々義国家の特質であり、憲法第二一条にもこれを明記している所以であるが、すべての自由は他の自由ないし権利を尊重するところに成立するのであつて、マスコミの持つ報道の自由といえどもこれが例外をなすものではない。憲法は報道の自由を保障すると同時にその第一一条以下において国民の基本的人権を保障し個人の尊重、法の下における平等をうたつている。さればマスコミは社会の公器として各種ニユースを正確、かつ、敏速に報道する使命を持つものであるが、そのさい報道の対象となる人のもつ基本的人権をあくまで尊重しなければならないのである。ラジオ・テレビの発達によりマスコミの国民大衆にたいする影響力は、とみに増大したことは顕著な事実であるから、層一層マスコミは個人の自由を尊重し、これに徹しなければならないのである。ことに前述のように選挙にさいしては、投票者の心理はきわめて微妙であるだけに、マスコミの支持を受ける候補者が他の候補者に比し断然優位をしめるであろうことは疑いのないところであるから、立候補者がマスコミの言動にたいし非常な神経を使うであろうことは想像にかたくなく、選挙中はとくにマスコミに対し、その報道につき慎重が要求される所以である。されば、もとよりマスコミは選挙にさいし活溌な報道、評論を行い一般選挙民の選挙にたいする関心を高め、これを意欲的ならしめる社会的使命をもつものであるが、これと同時に選挙中選挙予想記事を記載するときなどは特に不用意な表現、措置をとることがないよう、十分な配慮をしなければならない。
しかしながら、これらによつてマスコミが本件選挙に関し、干渉を行い選挙の公正を害したとまでは認められないことは前説示のとおりで、これらが選挙無効の原因となるものでないことはもちろんである。
3、4の主張について、マスコミ機関による選挙の干渉が行われなかつたこと前説示のとおりであるから、この点に関する原告の主張は更に他の点について判断するまでもなく失当である。
九、別紙請求原因(十九)にたいする判断、原告がその主張のような抗議の申入れを都選管にたいしてしたことは当事者間に争いのないところであるが、マスコミにより本件選挙が無効となるほどの選挙干渉行為がなされなかつたことは前認定のとおりであるから、この点に関する原告の主張も、他の争点につき判断するまでもなく失当である。
一〇、別紙請求原因(二〇)・(二一)についての判断、マスコミ機関による選挙干渉が行われ、その結果いちじるしく選挙の公正が害せられたというような事実のなかつたことは屡説のとおりであるから、これらの点に関する原告の主張は、更に他の点について判断するまでもなく失当で採用できない。(なお証人桜沢東兵衛の証言によれば本件選挙前自治省選挙局において各新聞社編集局長を集め、席上選挙記事の取扱いについて慎重を期するよう要望した事実を認めることができ、この認定に反する証拠はない。)
一一、別紙請求原因(二二)についての判断、自治省選挙局、都選管、マスコミ機関の三者が暗黙の了解の下に、一体となつて弾圧、干渉、妨害誘導を行つたとの原告主張の事実の認むべからざることは前説示によりおのずからあきらかであるから請求原因(二二)の主張は採用しない。
一二、別紙請求原因(二三)の事実についての判断、前段の主張については、本件選挙にあたつて、マスコミ機関、都選管等によつて違憲、違法の事実が行われた事実のなかつたことは前段説示のとおりであるから、これら機関の違法行為を前提とする前段の主張は、他の点について判断するまでもなく失当である。なお同後段の主張についてはかりに原告主張の事実があつたとしても当該行為者の刑事上の処分(公選法第二二六条)の問題となるだけのことで、公選法第二〇五条所定の選挙無効の訴の原因にあたらないことあきらかであるから主張自体理由がない。
一三、別紙請求原因(二四)(イ)についての判断、本件選挙にさいし、自治省選挙局が公選法第一四八条につき原告の同項(イ)にしるすような解釈をし、マスコミ機関の違反行為を許容したとの点については、これをみとめるにたりるてきかくな証拠はないから、みぎ事実を前提とする(イ)の主張は他の点について判断するまでもなく失当で採用できない。
(ロ)における原告の主張の要旨は、公選法第一四八条につき、同条第三項の特定紙誌は虚偽歪曲の記載をしないかぎり、特定候補者の当選を目的として同候補についての人物、意見等の宣伝を専らにする報道、評論を、大量の紙面をさいてくりかえし掲載流布する反面、他の候補者についてはなんら報道することなく、ほとんど抹殺的態度をとつてへんぱな取扱いをした結果、いちぢるしく選挙の公正を害しても、なお同法第一項但書にあたらず、同項の報道の自由の範囲に属する、との見解をとることを仮定し、これを立論の根拠としているもののようであるが、所論の場合が同項但書にがい当し、同項の定めた報道の自由の範囲を逸脱するものであることは勿論であるから、みぎ法条に関する前記解釈を根拠として公選法第一四二条、第一四四条、第一四六条が違憲の規定であるという原告の主張は失当である。(なお、自治省選挙局において、原告が本項で仮定的に主張した同条の解釈を採用して、選挙事務を監督していたものでないことはすでに(イ)で説示したとおりである。)
(ハ)の主張について、当審における証人桜沢東兵衛の証言によれば、自治省選挙局は原告主張のいわゆる国労静岡の東京高等裁判所の判決に示された、公選法第一四八条第一項の特定紙誌の報道の自由の範囲については、その判決理由その他を十分に検討し、一応の見解を定めて本件選挙に臨んだ事実をうかがうことができるから、この点に関する原告の主張もまた理由がない。
一四、別紙請求原因(二五)についての判断、
(イ)の主張について、NHKが都選管と公明選挙連盟と共同して原告主張の政談集会を主催したことは前記認定のとおりであり、みぎ集会の模様ならびに演説内容等を本件選挙区はじめ全国に放送したことは被告のあきらかに争わないところであるが、前記集会が違法なものでなかつたことは前段説示のとおりであるから、みぎ集会が違法集会であることを前提とする原告の(イ)の主張は理由がない。
(ロ)(ハ)の主張については、かりに放送機関に原告主張のような法規違反の事実があつたとしても、マスコミによる選挙干渉の事実がなかつたこと前認定のとおりであるから、みぎ各行為は公選法第二三五条の二および同条の三の処罰の対象となるにすぎず、選挙無効の請求原因となりえないことあきらかであるから、それ自体失当であるのみならず、原告主張のような法規違反の事実もない。すなわち、
(ロ)の主張について、NHKが公選法第一五〇条による政見放送を実施したこと、安井候補の政見放送にあたりNHKが同候補の自宅において録音したこと、東京放送および文化放送がみぎNHKの録音テープを借用放送したことはいずれも当事者間に争いがないが、前記自宅録音はなんら違法ではない。
なるほど候補者政見放送実施規程第九条は候補者が放送局へ出頭して録音することを義務づけてはいるが、みぎ規程は候補者が病気、事故等やむをえない理由で放送局へ出頭できない場合に、放送局が自主的に候補者のもとへ行つて録音し、又は他の放送局から録音テープを借用して放送することまでを禁ずる趣旨と解するのは相当でない。かえつて、みぎのような事故、病気のため政見放送を行わせないとしたら、却つて選挙の自由、公正を侵すものともいえよう。したがつて、NHKその他が安井候補にたいしてとつた措置は違法ということができないし、それによつて選挙の公正が阻害されたともいえないのである。またNHK等において、安井候補が当時再起不能の重態である事実を選挙民にしらさないため、前記措置にいでた、という点については、これを認めるにたりる信用しうべき証拠はない。以上のしだいで(ロ)の主張も理由がない。
(ハ)の主張について、日本教育テレビが「夫と妻の記録」という番組で、浅沼夫妻をとりあげたことは当事者間に争いがなく、同放送局が浅沼享子をして原告主張の日時その主張どおりのテレビ放送をなさしめたことは被告のあきらかに争わないところであるが、いずれもその成立に争いのない甲第三号証の九、同第五号証の一七、同第七四号証の各記載からその内容が選挙運動に亘らないものであることを推認できるから、なんら違法となるものではない。
一五、別紙請求原因(二六)についての判断、本件選挙における東京都第一区および第七区における立会演説会開催回数と人口数が原告主張のとおりであること、演説会開催回数について原告から都選管にたいしその主張どおりの申入れのあつたことは、いずれも当事者間に争いのないところであるが、公選法第一五三条第二項によれば、立候補者の立会演説会は区、市においては人口四万毎に一単位(一回)開催すべきことに定められているにかかわらず、町村についてはなんらの規定もないが、同条の趣旨からみて、人口比例とは別に各町村でこれを各一単位開催することが相当であると考えられるところ、成立に争いない甲第九四号証の記載によれば、みぎ第七区は一〇市のほか三郡二四町を含んでいることを認めることができるから、両区の演説会開催数を人口比のみによつて決定し比較しようとする原告の主張は、必ずしも正当といゝがたく、この点に関して都選管に違法があると断ずるわけにいかない。
つぎに、第一区の候補者の演説会における演説時間が一人につき一四分間であつたことは当事者間に争いないところで、みぎの一四分間が演説時間として十分なものでないことはあきらかであるが、みぎ第一区の立候補者が二二人の多きに達した事実は当事者間に争いがなく、これを二班編成にしても三六単位の開催回数を維持する関係上、一人当りの演説時間をさらに延長することの困難なことは計数上あきらかであるからこの点において都選管になんらの違法もない。
つぎに立会演説会開催の周知方法についても不徹底をきわめたと主張するけれども、これを確認するにたりる信用しうべき証拠はない。却つて乙第四号証の存在からみると甚だ見難い小さなポスターであつたということもできない。
また成立に争いのない甲第一三九号証の記載によれば、文京区の二つの演説会場が粗末で設備も悪く、照明も十分でなかつたことを認めることができるけれども、みぎによつても、候補者の演説の聴取が甚しく困難であつた、という事実までは認められないし、原告提出援用の全証拠によつても、第一区の全演説会場が甚しく不適当であつたという証明はない。マスコミ機関が演説会への不参加を選挙人に書き煽つたことのないことは前認定のとおりである。
また甲第四号証の一二の記載によれば、各演説会場はいずれも一〇人位の制私服の警戒に当つており、従来の演説会に比べて警備が厳重であつたことをうかがうことができるけれども、これがためどの演説会場もきわめて陰惨な空気となり、選挙人らが恐怖萎縮していたという事実はこれをみとめるにたりるなんらの証拠もない。
これを要するに都選管が権威をかざして種々の妨害を加え、立候補者が選挙人に訴える機会を封殺した、という事実はとうていこれを認めることができない、本件選挙区の立会演説会の入場者が原告主張の如く少数であつたことは当事者間に争いのないところであるが、原告提出援用の全証拠によつては、みぎの事実が都選管の原告主張の如き不法の選挙管理に由来するものと断ずることはできない。
さればこの点に関する原告の主張は全部理由がない。
一六、別紙請求原因(二七)についての判断、(イ)の主張について、本件選挙における有権者総数、投票者数、投票率、昭和三五年一〇月一日および昭和三〇年一〇月一日(昭和三三年一〇月一日とあるのは誤記と認む)当時の人口が原告主張の如くであることは当事者間に争いのないところであるが、昭和三三年五月施行の選挙当日の有権者数および失格者数が原告主張のとおりであることはこれを認めるにたりる証拠はないから、これらの数字の比較による原告の主張は採用するに由なきところである。
ただ本件選挙の投票者数が前回選挙より減少したことは当事者間に争いないところであるが、みぎは投票率の低下によるものであるところ、投票率の低下は後記の如く必ずしも都選管の選挙管理の不適切であつたことに由来するものと認められず、また、本件選挙が前回選挙に比し失権者が多い半面、投票率が低かつたことは被告の認めるところであるが、前回選挙が選挙期日の関係上選挙人名簿調製の現在日(九月一五日)から八ケ月経過して行われたのに対し今回選挙は一四ケ月経過して行われ、(各選挙施行のときについては当事者間に争いがない)その間の人口移動が激しいため(都の人口移動の激しいことは公知の事実である)いつたん名簿に登載されていてもその間に、名簿に登載される権利を失つたものも相当数に達したであらうことは想像するにかたくなく、また、今回の選挙にさいしては大都市における投票率がきわめて低かつたことが一般的現象であつたことは公知の事実であるから、これらのことを考えあわせると、投票率の低下等が一がいに都選管が周知、啓発の義務を怠つたことに由来するものとは解しがたい。選挙人名簿の調製に疎漏があつたとする原告の主張事実は、公選法によれば補充選挙人名簿の調製は選挙人からの申告によつて行われる制度となつているところ、成立に争いのない甲第二号証の一一、同第六号証の一三、同第一六四号証の二の記載中にこの制度についての都選管側における周知、啓蒙活動が不足であつたこと、などのひなんがあることを認めることができるけれども、選挙人名簿の調整そのものに違法があつたとの事実はこれを認めるにたりるなんらの証拠もない。したがつて、かりに都選管が補充選挙人名簿登録申請や、投票普及、棄権防止等の周知、啓発にかけるところがあつたとしても、みぎは公選法第六条に違反するに止まり、そのためいちぢるしく選挙の公正をみだしたことの立証がない本件においては、適法な選挙無効の原因とはならないから、この点に関する主張は失当である。
なお、投票普及ならびに棄権防止費から選挙公営費へ金四七七、〇〇〇円を流用したことは当事者間に争いないが、この事実をもつて公選法第二〇五条にいう選挙の規定に違反するものとは解しがたく、いずれもその成立に争いのない甲第二号証の一五、第六号証の二三の各記載、ならびに被告代表者本人尋問の結果(第一回)をあわせると、印刷の手違いにより選挙公報両面同一刷りをしたのはわずか六十数枚で、しかもみぎ誤刷の公報は選挙人に配付前に回収され、なんらの実害も生ぜず、このことのために前記予算流用が行われた事実のなかつた、ことを認めることができる。
(ロ)の主張について、本件選挙において疎漏な開票が行われた、という原告の主張事実については、成立に争いのない甲第一四三号証中みぎ主張にそう記載があるがみぎは同第一四四号証の記載にてらし信用できず、また麻布開票所の開票録中、武久浩子の署名は偽造である、という主張は、証人武久浩子(第一、二回)の証言中これにそう部分があるけれども、みぎは乙第六号証の記載ならびに証人武久浩子(第二回)の証言中、みぎ開票録中の私の署名は私の筆跡に似ている、という供述部分にてらし信用しない、他にこれを認めるにたりる証拠はない。したがつて(ロ)の主張も理由がない。
(ハ)の主張について、本件選挙において第一区二二名の候補者から届出による選挙立会人が一名もいなかつたことは当事者間に争いないところであるが、かような場合には公選法第七六条、第六二条により選挙長において選挙人名簿登録者から選任できることが定められているから、選挙長がかかる措置にいでたとしても、なんらの違法はない。都選管が選挙会の日時、場所、届出の期日を啓発、周知せしめなかつたという原告の主張事実についてはこれを認めるにたりるなんらの証拠もない。
(ニ)の主張について、選挙公報が配布洩れであつたという主張事実についてはこれを認めるにたりるてきかくな証拠はなく、投票場の氏名等掲示のポスターが小さすぎ、その上裁判官国民審査の氏名等掲示と紛れやすく掲示されたため、裁判官に投票した無効投票が原告主張のとおり二〇〇〇票あつたとしても、またかりに、投票当日港区麻布の投票所前に小田天界候補のポスターが掲示されており、それが都選管職員の不注意によるものであつたとしても、成立に争いのない乙第六号証の記載によれば、港区麻布開票区開票所における小田天界候補の得票は二〇票強であることが認められるところ、成立に争いのない同第五号証の記載によれば、みぎ選挙区の最下位当選人と最高位落選人との差は二八、九九六票存することを認めることができ、この認定をうごかすにたりる証拠はないから、前記不適切な氏名等掲示による無効投票の増加、および投票所前のポスター未徹去等の選挙法規違反は、かりに、その事実があつたとしても、選挙の結果に異動を及ぼすおそれのないこと明白で、適法な選挙無効原因とはならない。なお原告は台東区内の氏名掲示において、原告の氏名掲示の文字が他の候補者と比較して小さく書かれていたと主張するけれども、これを認めるにたりるなんらの信用しうべき証拠はなく、かえつて、乙第三号証の記載によればそのしからざることを推認できるからこの点に関する原告の主張も採用しがたい。
一七、別紙請求原因(二八)にたいする判断、昭和三五年一〇月現在わが国の人口総数、東京都第一区の人口数、同選挙区の衆議院議員の当選人数が原告主張のとおりであることは当事者間に争いのないところであるが、憲法第四三条・第四七条の規定によれば、衆議院議員の選挙区、選挙すべき議員の定数は法律で定めることとなつているから、その区域、定数の変更は立法上の措置に委ねられているのであつて、法律による当選人定数の変更のない以上、現行の公選法別表一の定めるところに従つて四名の当選者を決定したことはもとより適法である。人口の異動があつたにかかわらず、現行法別表一につきなんら変更の措置がとられなかつたからといつて、一選挙区の当選人を零とするように、個々の選挙人の権利をうばつて了うのであれば格別、一般にはただちにそれを以つて憲法第一四条にいう国民平等の原則に反し、違憲であるとするのは失当である。けだし、選挙区の当選人の定員数が、第一に選挙人口の多寡に左右されるのはもとより当然であるが、定員数を定める要素はこれにとどまらず、選挙区域の大小、歴史的沿革、行政区劃別議員数の振合い等さまざまな要素が考慮のうちに入れられて、これを決すべきものであるからである。したがつてこの点に関する原告の主張は理由がない。
一八、原告は、選挙用無償交付ハガキを売買した場合につき、買受人をとがめず、売渡人のみを処罰する旨を定めた現行公選法の規定は、国民平等の原則に違反し、違憲である、と主張するので案ずるに、公選法第一七七条第三項により選挙運動用ハガキの無償交付をうけた者がこれを他人に譲渡することは禁ぜられ、これが違反につき同法第二四四条の罰則の規定の存んすること、ならびにみぎハガキを買受けた者につき公選法はなんら罰則を定めていないことは原告主張のとおりであるが、公選法は選挙用無償交付ハガキの売買を取締るには、売主側を処罰することによつてその目的を達しうる、との考えの下にみぎのように規定したものと解すべく、売主と買主とを同様に処遇しなければ国民平等の原則に違反し、憲法に違反するという原告の主張は独自の見解に過ぎず、とうてい採用することはできない。
一九、別紙請求原因(二九)についての判断、(イ)の主張について、都選管の三党首立会演説会の開催運営が憲法第一四条、第一五条、第四四条等に違反するものでないことは前段説示のとおりである。またこの行為は憲法前文に違反しないことは勿論、同法第一一条、第一二条、第一三条、第一九条、第二一条、第二二条、第九七条等に背反する違憲行為でないこと、都選管が同法第一五条第二項、第九九条に違反するものでないことも前説示によりあきらかである。したがつて都選管の前記演説会の開催運営が前記憲法の各法条に違反することを前提とする原告のみぎ(イ)の主張は理由がない。
(ロ)の主張は都選管のみぎ行為が公選法第六条にいちぢるしく違反し、同時に同法第一条、第二〇五条に違反することを前提とするものであるところ、当裁判所はみぎ行為をもつて、同法第六条にそうもので、他の公選法の法条にも違反しない適法のものである、と判断したことは前説示のとおりであるから、この点に関する原告の主張も採用できない。
二〇、別紙請求原因三〇についての判断、(イ)の主張について、請求原因(一)ないし(二九)項の都選管ならびに自治大臣(自治省選挙局)の選挙管理に関する行政行為がなんら憲法に違反するものでないことは屡説のとおりであるから、これらが憲法に違反するものであることを前提とするみぎ原告の主張は理由がない。
(ロ)の主張について、都選管の本件行為がなんら選挙の法規に違反するものでないこと、かりに若干の違反の場合があつたとしても、それらの場合において選挙の結果に異動を及ぼすおそれが全くなかつたことは前説示のとおりであるから、(ロ)の主張も採用しない。
(ハ)の主張について、当裁判所は本件選挙において、本訴請求原因事実中のマスコミ機関、公明選挙連盟、NHK、自治省ならびに都選管等の諸行為によつて、公選法の基本理念たる選挙の自由、公正が害されたものとは判断しないから、(ハ)の主張も理由がない。
以上のしだいで原告の本訴請求はすべて失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条、第九四条、第九五条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 牧野威夫 谷口茂栄 満田文彦)

 

請求の原因事実
(一) 原告は、昭和三十五年十一月二十日執行の衆議院議員選挙(東京都第一区)に立候補した者である。
(二) 東京都選挙管理委員会は、総選挙の日取りが確定的に内定し、かつそれが直前に迫つていた(いわゆる事前運動禁止の期間である)昭和三十五年十月十二日、東京都千代田区日比谷公会堂において、「総選挙に臨む我が党の態度・三党首立会演説会」なる政談集会を、予め同委員会を指揮監督する自治大臣及び自治省選挙局と談合の上、公明選挙連盟及び日本放送協会と三者共同主催で開催した。
東京都選挙管理委員会は、公職選挙法第六条一項の選挙人の啓発周知事業に名を藉り、その実は、この演説会で自由民主党、日本社会党、民主社会党の三党首に、各「総選挙に臨む我が党の政策」を論じさせ、それを該選挙区の選挙人をはじめ全国民に吹き込むことによつて、該選挙区を含む全国のそれらの政党に所属する立候補者の得票の獲得、維持、増大を計り、当選に寄与せんと企図して、この違法を行つたのである。
ところが右の計画を聞知した大日本愛国党々首赤尾敏らその他は、「選管が自ら主催して、他の政党を除外した三政党々首立会演説会を開催するのは違法である。実力で阻止してみせる」と、東京都選挙管理委員会に抗議し、強硬に中止方を迫り、また警視庁選挙取締本部に対しても同様抗議した。
同委員会は、右の抗議を無視し演説会を強行したが、各右翼団体の演説会反対、とくに実力行使等の不穏な動きがあるのに備え、開催に先立ち、三党の代表者らを集めて協議し、演説会当日演説妨害排除のベテラン党員三党より各三十名、計九十名、日本放送協会より若い者十五名位をそれぞれ動員して演説会の妨害排除に当らせた。また警察と打合せて正服警官一〇二名、私服警官五十九名を配置させ、異例の警戒体制を布いた。また同委員会の職員を動員して警備させた。
(甲第五号証の八及び吉田直治証言、被告準備書面第二丁末尾等参照)
昭和三十五年十月十二日午後二時、この演説会が開催されるや、果せるかな大日本愛国党その他の演説妨害は熾烈を極め、会場は終始ヤジ、怒号、ビラ撒きその他で混乱したが、日本放送協会小林アナウンサーの司会挨拶、同委員会委員長吉田直治の開会挨拶につづいて民主社会党委員長西尾末広、日本社会党委員長浅沼稲次郎が各々「総選挙に臨む我が党の態度」なる演題の下に政見、政策を論じ、それぞれ総選挙につき国民に協力を求める政談演説を行つた。
ついに元大日本愛国党々員山口二矢少年が飛び出し、演説中の日本社会党委員長浅沼稲次郎を刺殺した。そのため演説会は混乱の極に達し暫時中絶したが、その際民族社会党々首小田天界(元代議士)が、「選挙管理委員会は、このような三大政党だけを主催して党首演説会を開くこと自体が間違つている。責任は全部………あるんだ。」と壇上のマイクを握つて叫び、拍手、怒号が起つた。かくて司会者小林が、演説会の中止を宣したので、自由民主党総裁池田勇人は演説不能となり退場した。
なお東京都選挙管理委員会は、同会場において、右の特定三政党の党員九十名を報道関係者席の次の二列に特別席を設けて座席せしめ、他の政党員や聴衆たる一般選挙人との間に差別的な優待措置をとり、これを選挙人に誇示することによつて、右三政党を有利に、他を不利にする選挙公正阻害の違法を行つた。
当時東京都選挙管理委員会管内だけでも正規に届出のある政治団体が三百四十三団体存在し、また該選挙区の立候補予定者は二十名前後も存在していたのに、東京都選挙管理委員会は、該演説会の演説政党、演説者を決定するに当り、抽籤などの公平な方法によることなく、恣意的に選択して決定した。
東京都選挙管理委員会は右行為によつて該選挙の自由公正を徹底して阻害したのであるが、同委員会の右行為が違憲かつ違法であることは後述原告主張のとおりである。
(三) 東京都選挙管理委員会委員長吉田直治は、右演説会の開会挨拶中、我が国の政治上の大争点の一である中選挙区制是非の問題に論及し、「中選挙区制の是正を強く要望する」と演説し、(甲第一五〇号証の二参照)公職選挙法第六条第一項の規定の趣旨に著しく違反した違法行為を行つた。
(四)(イ) 東京都選挙管理委員会は、これを指揮監督する自治省選挙局の暗黙の諒解の下に、この政談集会の費用を、公明選挙啓発委託事業費(国費)より支出した。
右は日本国憲法第八十九条(公金、公の財産の支出利用の制限)の条規に違反する違憲行為である。
(ロ) 東京都選挙管理委員会は、同委員会の該違法演説会で、演説中刺殺された浅沼委員長の遺族、浅沼享子に対し、選挙費中より弔慰金名儀で一金二十一万円を贈与した。右行為は、選挙管理機関の職権の範囲を逸脱した違法の会計行為であり、かつ該選挙の公正を阻害した行為である。
右の事実は、同委員会が演説会の開催、運営についての自己の違法と手落ちを認めた証左である。
(五) 東京都選挙管理委員会が、請求原因事実(二)(三)(七)等の行為を行う以上、同委員会は、政治資金規正法第2項にいう政党以外の団体で政治上の主義若しくは施策を支持し、若しくは、これに反対し、又は公職の候補者を推薦し、支持し、若しくは、これに反対する目的を有する協会その他の団体となつたのであるから、当然同法第六条、同法第七条、同法第八条、同法第九条、同法第十条、同法第十一条、等の届出を東京都選挙管理委員会、又は自治大臣に届出なければならないのに拘らず、同委員会はこれを怠る違法を行つた。
(六) 右三党首演説会は、政党活動のための政談集会であつて、選挙管理機関の合憲合法の行政行為としての集会ではない。従つて右集会が単なる政党活動のための集会である以上、東京都選挙管理委員会は主催者として、都条令第四四号に基き集会許可申請を行わねばならなかつたのに、同委員会はこの申請を行わず、条令に違反して東京都公安委員会の正規の許可を得ないで、これを開催した。
(七) 東京都選挙管理委員会は、予め日本放送協会と謀つて、右演説会の模様及び演説の内容を、都民(該選挙区の選挙民を含む)をはじめ、全国民にラジオの実況放送で報道させた。また演説会場の最前列に報道陣の席を特設して取材活動に利便を供し、演説会の模様、演説内容等を逐一新聞、ラジオその他で報道させた。
そのため該演説会における日本社会党委員長浅沼稲次郎、民主社会党委員長西尾末広、東京都選挙管理委員会委員長吉田直治らの演説は、たちまち全国民に周知されたが、浅沼刺殺事件という大事件が突発したこと、またそれが地元の出来事であつただけに、該選挙区の選挙人全般にとくに強烈な衝撃を与え普く周知された。東京都選挙管理委員会は、右行為によつて該選挙の公正阻害をより完璧なものにしたのであるが、右行為が違憲かつ違法であることは原告後述主張のとおりである。
(八) 公明選挙連盟理事長前田多門は同連盟が国費三千万円を委託されて公明選挙啓発委託事業を行う公共的性格の機関であるのに拘らず、その団体で違憲違法の該三党首立会演説会を共同主催して選挙の自由公正を阻害したほか、右団体の代表者として、甲第五号証の五、毎日新聞昭和三十五年十月十三日の新聞紙上に「公明選挙運動を強力に推進することが浅沼さんの弔い合戦とも考える云々」と極めて刺激的に日本社会党の候補者を有利にする新聞談話を公表し、該選挙の自由公正を阻害した。
(九) 東京都選挙管理委員会の違反だらけの、かつ手落ち手抜かりだらけの該演説会開催運営の愚かしい違法行為は、忽ちに「浅沼刺殺事件」という大不祥事件を発生せしめた。このことによつて該選挙区はもとよりのこと、全国の全選挙区の選挙情勢が激変したことは公知の事実である。
該選挙区から立候補が確定していた浅沼委員長に代つて同人の夫人浅沼享子が、マスコミ機関の白熱的意識的支持の下に立候補したので、該選挙区の立候補者一人一人の選挙情勢がそれぞれに深刻な影響を受けた。マスコミ機関は一致結束して前例のない規模と、空前的積極性をもつて、その保持する全媒体を駆使して浅沼享子候補を支援する報道評論を反覆流布し、その当選を期し、しかも圧倒的大量得票による当選を目標に思い切り書き煽つたのである。(原告はマスコミ機関が政治テロ事件に対する本来の正当な報道評論を違法と誣いるのではない。同機関が該事件に藉口して、候補者浅沼享子について、政治テロ事件の範囲を超えて、同候補の当選を目的とし、もつぱら同候補の宣伝のために書き煽つた違法を攻めるのである。)マスコミが何故そうやつたか?
マスコミ機関は該選挙の行われた年、昭和三十五年の五、六月頃、安保阻止国民運動を国民の総意と偽つて、無茶苦茶に煽り立てたため、ついに革命寸前の国会周辺の大集団暴力デモ事件を出来せしめた。
そのため国民は総評、社会党、共産党、全学連などに対して心から嫌忌したと同時に、これを煽つたマスコミ機関に対しても強い不評と不信を示すようになつていた。(マスコミ機関は国内のみならず外国からさえも強い不信を買つたのである)
該選挙では革新政党の大惨敗が予想されていたのである。ところが、東京都選挙管理委員会の違法行為により、たまたま浅沼刺殺事件が突発した。
そこでマスコミ機関は、テロ排撃を叫び、またテロの犠牲者浅沼享子候補を力強く一致して支援して煽り立てれば、安保暴力デモの失態により頽勢にある革新政党の挽回ができるであろう、これによつて意想外に多数の議席を安保阻止勢力が獲得できるならば国民はやはりマスコミ機関が支援した安保阻止に賛成していたのである、マスコミ機関の主張や行動は正しかつたのであると立証することができて、マスコミ機関に対する不信感を完全に一掃することができると判断したのである。
それには「浅沼未亡人ブーム」を捲き起すまでのマスコミ機関の報道評論による選挙介入が必要であり、これをなすならば必ずやマスコミ機関の思うつぼの結果が現われるだろうと見て取つて、そこで原告提出の数多の証拠のような大量宣伝記事が氾濫したのである。すなわち我が国政治史上空前のマスコミ干渉選挙が前述の理由から出来上つたのである。
従つて、もしも東京都選挙管理委員会が該違法集会を開催せず、従つてまた該事件が発生しなかつたならば、マスコミ機関のあの常軌を逸した違憲違法の報道評論の氾濫(選挙不法介入)は起り得なかつたのであるから、証拠の如きマスコミ機関の選挙干渉行為も、東京都選挙管理委員会の違法行為により招来されたものとするのが正当である。
一方国民(選挙民)は、公の機関の行つた立会演説会の席上、総理大臣兼与党総裁の面前において、しかも白昼、多数の正私服警察官の目前で、またラジオ、テレビの生々しい実況放送で、野党の党首がテロによつて即死するという恐るべき場面を目のあたり見て、名状することのできない異常心理状態に陥し入れられたのである。かくて、それを前述した理由でマスコミ機関が意識的に過剰に書き煽つたことから国民の異常心理状態は極限にまで昂められたのである。国中が云うに云えぬ険悪隠惨な恐怖社会の様相を呈したのである。
総選挙の日取りはすでに決つていたが、この如き異常心理状態の中で総選挙を行うことの是非が政府、与党によつて論議された。しかし日本社会党は、予定通り行うのを有利と見てその変更を牽制し、マスコミ機関も予定どおり行うことを暗に支持したので、政府は、この空気に抵抗し得ず、ついに、多分に与党の不利を覚悟して予定どおり選挙を執行することとなつたのである。
右のような国民(選挙民)の異常心理状態の下に執行された該選挙が、東京都選挙管理委員会の違法の政談集会が行われず、従つて該事件が発生せず、適法の選挙管理の下、正常平穏の国民心理の状態の中で執行されて結果された選挙と同一のものと判断することは、合理的に不可能である。
まして前述原告主張事実の如き次第で、原告提出の数多の証拠の如きマスコミ機関の圧倒的空前的選挙干渉が堂々と敢行された該選挙の選挙結果であつてみれば、これを以つて、違法の行われなかつた場合の正常適法に執行された場合の選挙と同一の結果と見做すことは、経験則に照して正当な判断ではない。
現実に該選挙の結果に異動を及ぼす虞を生じたことは明白な事実である。
例えば候補者立会演説会、街頭演説会等は、極度に険悪な空気の中で行われたが、そのため正私服警察官が警戒の名目であらゆる会場に張込み、またテロの危険があるとの理由で候補者立会演説会は、集団不参加事件が起つた。東京都選挙管理委員会自体でさえ、刺殺事件、業務威力妨害事件などの捜査で選挙管理準備に多大の齟齬支障が現われた。この事が投票率を不自然に悪くした。右翼系の候補者らは警察が該事件の資金源を洗うそのとばつちりを受けて、選挙資金の入手に支障を受けた。民社党の候補者は、刺殺事件の影響で尠からず不利な選挙運動を闘わねばならなかつた。これは全保守系候補も同様のことが云える。この半面、浅沼享子候補は云うに及ばず、社会党、共産党等の候補者が、思いがけぬ事態の発展で不測の幸運に恵まれ、不自然に有利な選挙戦を戦い得たのである。
その他あらゆる事柄において、甚大な影響を及ぼしたことは争えぬ顕著な事実であり、それはまた該選挙の結果に大きく異動を及ぼす虞を生じたのである。
(一〇) さらに自治省選挙局が昭和三十五年七月十四日東京高裁判決(「国労静岡」選挙違反事件に関する)の判示を曲解し、公職選挙法第一四八条について謬つた法解釈を啓発周知したことが、該選挙のマスコミ機関による干渉、妨害に大きく役立つた。
即ち「右高裁判決は、適格紙の選挙に関する報道評論は、公職選挙法第一四八条本文によつて保護されており、従つてその報道評論により結果的に特定候補者に有利、不利になつても、それはなお報道評論の自由の範囲内であると判決した。ところがこれを起訴したのが検察官であり、法務省、検察庁と十分打ち合せの上で、上告理由なしとして上告しなかつた。そこで判決が確定した以上は、右判決の解釈に指導性があるので、たとえ適格紙が意志をもつて特定候補者を、結果において有利、不利にする報道評論を行つても、それはあくまで自由である。それがいかに大量長文の記載であつて、またそのような記載をいくら反覆しても、たとえそれによつて選挙の自由公正が害されても何ら違法ではない。従来自治省は起訴した検察官と同じ程度の気持で、報道評論の自由は狭い狭い自由だと思つていたが、もつと広いんだということで、目を開かれた。」との謬つた見解の下に該選挙を始め全国の選挙の管理執行を指揮監督し、また自らも啓発周知を行つた。
また「過当競争の結果、社会面の記事が過重に特定候補を取扱うなど多少の行き過ぎがあつても、それはマスコミ自身の良識による自粛に待つべきである。もし新聞が事実を隠蔽するような記事を書いたとしても、読者は知りたいことを書かない新聞はつまらんから、他の新聞に取かえるということで、読者が逃げるであろうという危険があり、その範囲内において報道評論の自由があるわけで、新聞による選挙の公正阻害の問題は、結局新聞の良識によつて解決すべき問題である。現行法で新聞の行過ぎを是正することは困難である。等々」の見解のもとに、自治省選挙局は、マスコミ機関が選挙の公正を著しく阻害する行為をなくし選挙が公正且つ適正に行われるようにするために何らの啓発周知行為をも行わなかつた。
該選挙区を含む全国の選挙管理行政を実質的に担当する自治省選挙局桜沢選挙課長は、殆んど新聞もロクに気をつけて読むこともなく、行政を行つたのである。公正な選挙を執行する上において、マスコミ機関の報道評論のあり方は絶大な影響力があるのであり従つて新聞もロクに読まないでした選挙管理行政は、到底適法の行政と見做すことはできないのである。
自治大臣(自治省選挙局)の右行為は、公職選挙法第六条一項の趣旨に著しく違反する違法行為である。(甲第八号証、甲第七号証、甲第十六号証、桜沢証言等参照)
(一一) 従来もマスコミ機関の選挙干渉、妨害は選挙の都度常習として行われた。これを不満として、候補者、選挙人から抗議、告訴、告発、選挙訴訟等が屡繰り返えされていた。しかし、従来の干渉行為は、法規(公職選挙法第一四八条一項但書)に幾分遠慮勝ちに行われ、また干渉の規模もさほど大きいものでなかつた。
しかし、前述のとおり、該選挙においては、該違憲集会の「浅沼刺殺事件」が大きく影響しその上自治省の謬つた法解釈による謬つた周知啓発行為に災いされ、両々相俟つてマスコミの干渉行為に安堵感を与え、そのためさながら堤防が決壊して大洪水が氾濫したごとく、未曾有の一大マスコミ干渉選挙が出現したのである。(自治省松村選挙局長は、昭和三十六年八月二日同局長室で、原告と原告の妻つる子に対し、「小田さんが訴訟を起す前に私は、こんどの選挙で、新聞が非常に行き過ぎであつたことについて発表した。うちの者が、東京高裁判決によつて一四八条の法解釈を変えたことは確かである。私はこんどの判決に期待している。」と語つた事実がある。)
自治省選挙局選挙課長皆川迪夫は昭和三十六年五月三十一日付、同課長補佐佐藤順一は同年八月十四日付、同課長補佐篠原幹雄は(発令日不詳)多分六月中に、それぞれ地方へ転出した。右三名は原告が本訴訟に証人申請をし、都合で取止めた者であつた。永く自治省選挙局の法令部門を担当した右三名が急遽総ざらい的に地方転勤となつたことは、果してその理由が奈辺にあるか原告は未だ詳知しないが、前述同局選挙局長松村清之の談話並びに、原告と自治省選挙局との対談(甲第一〇〇号証)等と対応して考察すれば頗る注目に値いする一事である。
(一二) マスコミ機関は、浅沼享子候補の選挙運動に気勢を張るため、物々しく大袈裟な取材活動振りを該選挙区の多くの選挙人の前に示した。浅沼享子候補の空の宣伝車までテレビ機械を積んだ放送車で追い駆けるなどして選挙民を煽つたのである。これらがまた新聞、テレビ等によつて該選挙区をはじめ全国に宣伝周知され、該選挙の公正阻害を増大させた。
マスコミ機関の右各証(新聞写真)に見る如き行為は、公職選挙法第一四〇条(気勢を張る行為)の規定に違反する疑がある。選挙に関する取材に当り、他の候補者と余りに差別のある取材振りを選挙民に誇示して特定候補者の当選に利する行為が選挙の自由公正を害するのは明らかであり、社会の公器として公正であらねばならぬマスコミ機関のやるべきことではない。(甲第三号証の三、甲第二十九号証、甲第六十五号証等参照)
(一三) マスコミ機関の各社は、それぞれ浅沼享子候補の当選のために、甲第九号証アサヒグラフ、喪服は訴える、浅沼未亡人の立候補(朝日新聞社)、甲第十号証週刊読売、沼さんの意志をついで(読売新聞社)、甲第十四号証婦人公論、夫浅沼稲次郎とともに(中央公論社)、甲第十五号証婦人画報、テロに倒れた夫の遺骨を抱きしめて(婦人画報社)、甲第五十六号証マドモアゼル、青年浅沼稲次郎の初恋(小学館)、甲第五十五号証週刊公論、浅沼夫人立候補の波紋(中央公論社)、甲第四十九号証週刊朝日、浅沼未亡人の立候補(朝日新聞社)、甲第五十二号証若い女性、鮮血に倒れて逝つた父(講談社)、甲第五十一号証週刊新潮、次郎物語(新潮社)等その他数多くの違反文書即ち内容の実体が単に同候補者の当選を目的として、その人物、意見等の宣伝のみを専らにした記事「公職選挙法第一四二条或いは同法第一四六条に違反する違法文書」を掲載流布して、該選挙の自由公正を徹底的に阻害した。
右のような違法文書は、甲第四号証の四、甲第六号証の八、甲第二十五号証、甲第三十九号証、甲第四十号証、甲第三十一号証等の如く投票日の投票函を閉めるぎりぎりの時間まで、執拗にあらゆる角度からあらゆる表現形式をかりて繰り返し流布された。マスコミ機関は、また甲第四十九号証の一、甲第五十五号証その他の証拠の如く浅沼享子候補を当選させるため、同候補にとつて最強の敵と目した民社党麻生良方候補を歪曲誇大の逆宣伝記事を流して妨害し、選挙の公正を害した。
(一四) マスコミ機関の各紙(朝日、毎日、読売、産経、東京、日経)は、蒸し返し選挙の結果予想記事を掲載流布して、該選挙の公正を阻害した。
これらの予想記載は、当該選挙の二十二名の候補者中、或る場合は浅沼享子、安井誠一郎、原彪、田中栄一、麻生良方の五候補についてのみ報道評論し、或る場合はそれにきくなみかつみを加えた六候補についてのみ報道評論し、また或る場合はそれら六候補について詳細に報道評論した末尾に、他の十六候補の所属と氏名のみをつけたり的に記載する差別的記事を掲載流布した。
証拠(甲第十八号証、甲第六号証の十、甲第五号証の七、甲第二号証の三、甲第九十一号証、甲第二十一号証、甲第六十七号証、甲第二号証の六、甲第二十号証、甲第二号証の四、甲第三号証の五、甲第一号証の二、甲第四号証の一、甲第二十三号証、甲第九十二号証、甲第六号証の四、甲第四号証の六、甲第六十八号証、甲第九十号証、甲第二十四号証、甲第三十四号証、甲第六十六号証、甲第八十号証、甲第八十一号証、甲第八十九号証、甲第三号証の六)
右の如き選挙結果予想記事こそ、今日のマスコミ時代の選挙においては、選挙干渉、妨害の花形であり、主役である。マスコミ機関の御意に召さぬ立候補者らに与えられる最高、最残虐の野蛮極まる村八分的私刑行為である。選挙の自由公正を阻害し、選挙人全般の自由な判断によつて投票することを阻害する威力においてこれに優るものはない。マスコミ機関はこの原爆的悪魔的凶器を自在に駆使して、選挙を冒涜すると共に、候補者並びに選挙人の憲法によつて保障された基本的人権を遺憾なく蹂躪したのである。甲第一五五号証民声新聞(昭和三十五年十一月一日発行、発行責任者吉村法俊、編集責任者中堂利夫―浅沼委員長を刺殺した山口二矢少年の同志であつた―)は、「商業新聞の選挙干渉―当選予想記事を取締れ」と題して、国家と国民に極めて甚大な害悪を及ぼす選挙結果予想記事についての論文を掲載している。即ち
「(中略)選挙が始まると、各新聞は一せいに選挙関係の記事で紙面をかざりたてる。その中に、当落の予想記事がある。東京第何区の誰は当選確実である。誰と誰とが有望で、誰と誰とは当選圏内を去つた、という調子の記事である。一体選挙というものは、一定の範囲の中で、一定のルールに従つて行われるものであり、前の総理大臣も、無名の新人候補も原則としては、同じ範囲内で斗うのである。そのために、運動資金にも制限が加えられ、ポスターや葉書の枚数も、ラジオ放送、新聞広告、立会演説の回数も、すべて平等に与えられている。
完全とはいえぬまでも、こういつたほぼ同じ条件で斗つた場合、誰が当選し、誰が落選するかの予想をたてる事は、極めて難かしい。もちろん各候補の総合的実力を調査する事は、必ずしも不可能ではないにしても、何百万の発行部数を誇る大新聞が、これを紙面に表して報道するという事が、果して許されるべき行為であろうか。当選圏外と書かれたもの、或いは「泡沫候補」として名前すら紙面から抹殺されたもの、それらの人人の間には、天と地ほどの差が生じて来る事は必然である。
悲しい事には、日本の有権者の大多数は、立会演説にも行かず、ラジオの政見放送も聞かず、興味本位で無責任な新聞の予想記事に暗示を受け、貴重な一票を行使する傾向がまだまだ強いのだ。多くの愛国的政治家が、大新聞から泡沫候補の扱いを受け、そのため言語に絶する困難な選挙戦を続けて来ている事を我々は見落してはならない。他の事なら笑つてすませもする。が問題は国家の運命をかけた重大な選挙だ。その選挙が、金によつて動くといわれている新聞、左翼偏向しているといわれている新聞の、机でデツチ上げられた予想記事によつて左右されるという事は、我々の断じて黙視し得ぬところである。
商業新聞の自粛と、当局の断乎たる措置を要望する。」
正に右所論の通りであつて、選挙結果の予想記事が公職選挙法第一四八条第一項の許容する正当な報道評論の範囲内の行為でないことは明白である。にも拘らず右の如き民主政治に対する、反逆行為が、選挙管理機関、取締り機関等の行なう法の下に、綿綿と継続されてきたことは、国辱的不祥事と云わねばならぬ。
選挙結果の予想記事は、公職選挙法第一三八条の三の人気投票の禁止の規定違反として処分するか乃至は、同法第一四二条または同法第一四六条に云う違反文書として、厳重処断するのが正当である。
東京都第七区において昭和三十三年の衆議院議員選挙に元裁判官弁護士が読売新聞三多摩版の一記事を、しかも各政党支部の獲らぬ狸の皮算用の談話を新聞が取材してそれを有りのままに報道した選挙結果の予想記事を唯一の訴因事実として最高裁にまで無効訴訟を争つた(最高裁昭和三十四年八月九日判決)事実を考えても、本件の場合単に右各証の選挙結果の予想記事についてだけでも、どれほど該選挙の自由公正が阻害されたかが理解できるのである。
(一五) マスコミ機関は、現実に安井、浅沼両候補を大物候補と報道評論し(甲第一一七号証、甲第九〇号証、甲第一一三号証)また原彪候補を大物と報道した。(甲第二号証の四)また、浅沼候補について、あらゆる事柄にかこつけて無数の報道評論を氾濫させることにより該選挙区の選挙人に同候補があたかも他の候補に比し遥かに大物候補であるかの印象を与えた。
安井、原、田中、麻生、きくなみ候補らについては、選挙結果予想記事中他の十六候補の氏名を抹殺する等差別的報道評論により十六候補に比して大物候補であるとの印象を選挙民に与えて、公正を阻害した。その上、甲第二号証の一、甲第十九号証、甲第五号証の二、甲第六号証の六の一、甲第六号証の六の二、甲第六号証の五、甲第二号証の八、甲第二十八号証等のいわゆる泡沫候補に関し虚偽、歪曲の中傷、妨害記事を掲載流布し、これと前述選挙結果予想記事の候補者名抹殺、差別記事等とを読み合わせることによつて、前述六候補が大物で他の十六候補が泡沫候補であるかの如く選挙民に強力に印象された。
マスコミ機関の悪らつな右企図は、完全に成功し、前述十六候補が千票台が二名、五、六百票以下百票台までが十四名という悲惨な貝殻投票的過少得票となつた。(乙第五号証参照)
マスコミ機関は右結果を以つても充ち足りたとせず、宛かも首つりの足をひつぱる如く、甲第二十七号証の一及二、甲第三十八号証の一及二、甲第二号証の九、甲第六号証の二十一等侮辱、中傷記事を流布し右十六候補に苛酷の追い打ちの迫害をかけた。
マスコミ機関の右行為は、日本国憲法の保障する国民固有の基本的人権を蹂躙し、また候補者及び選挙人の選挙権、被選挙権を完ぷなく冒涜した違憲行為である。
進歩的文化人を自負するマスコミ機関にして、この野蛮人も裸足で逃げる野蛮行為を平気でやつてのけている我が国なればこそ、「独立宣言以前だ」とか「精神年令十二歳だ」とか寔に不名誉な異名を頂かなければならない所以があるのであろうか。
憲法擁護尊重の義務を有つ行政機関は、当然に右の如き違憲行為を排除する義務を有するのである。然るに選挙管理機関は右の重大な違憲行為を排除する何らの措置もとることなく放置したばかりでなく、寧ろ自らマスコミ機関の行為を積極的に支持推進して、主権者の尊厳を遺憾なく冒涜し、かつ選挙の公正の阻害したのである。この事実は、甲第二号証の九、甲第十九号証、甲第一六四号証の二等の証拠に照して明白である。
(一六) マスコミ機関は、甲第一一七号証(ソツポ向く大物候補)、甲第一一三号証(遺憾な大物候補の欠席)、甲第六号証の二十二(浅沼未亡人は全期欠席)、甲第二号証の十三(ヤジもなく閑散)、甲第一一五号証(ガラあき会場で熱弁)、甲第一一六号証(三氏が不参加)、第四号証の十二(聴衆の中にも私服警官)、第二号証の五(立ち会い演説は欠席浅沼享子候補)、甲第六号証の六の一(余録)、甲第六号証の六の二(余録)、甲第二号証の八(天声人語)、甲第五十七号証(そろわぬ候補者、嘆げく選管)、等の報道、評論、写真等を掲載して「大物の浅沼、安井候補らが欠席し、残つた候補者は詰らぬ候補者ばかりで、聴衆も集らず、まことにお淋しい演説会である。だから聴きに行く必要はない」と暗に東京都第一区の立会演説会に選挙人を不参加不聴取せしめるための悪辣な隠謀記事を執拗に流布した。これによつて候補者の言論による選挙運動を違法に妨害して選挙の公正を害した。
(一七) マスコミ機関(毎日、東京、朝日、産経)は、該選挙中安井誠一郎候補が重病人であつたのに拘らず、「本人はすこぶる元気。……語る表情には自信がよみがえつていた。……並々ならぬ気迫がほの見えた。」(毎日)「ガンだなどとあらぬウワサを流されたが………元気に抱負を語つている。」(東京)「……会つてみると元気だ。都知事時代より十二キロほどやせたが、かえつて調子がよくなつた。」(朝日)「東京のためなら身命を投げすてて惜しくないと断言する……抱負と自信には、十三年の年輪を思わせる強さがあつた。」(産経)などと、極めて巧妙に虚偽歪曲の筆の先を弄して、同候補が、当選後十分国会活動に耐え得る健康状態であるかの如く、該選挙区の選挙人全般に錯誤を抱かせる選挙公正阻害の報道行為を行つた。なお安井候補は当選後、国会に一度も登院していない。(衆議院事務局にて原告調査)従つて、証人野々上武敏の「安井はその後二~三回登院しているようです」の点は事実に相違する。
(一八) マスコミ機関は、公職選挙法第一四六条で禁止されている候補者の氏名を記載した著述の広告を掲載頒布して該選挙の自由公正を阻害した。(甲第十四号証、甲第十五号証、甲第五十二号証、甲第五十六号証、甲第六号証の十二、甲第一七六号証~甲第一七七号証)
(一九) 原告はマスコミ機関の選挙干渉行為の排除のため東京都選挙管理委員会が適切な措置を講ずるよう再度にわたつて申入れを行つたが、被告は適切な措置を講ぜず、マスコミ機関の不法干渉を放任し、これを支援した。
右に関し被告は、曩に「乙第一号証の書面を新聞協会理事長に発送し、その最大の努力を払つたのである。」と陳述したが、新聞協会には理事長の職制はなく、この書面についての新聞協会の回答も被告が該選挙の翌年二月十五日以後に受領した事実、該選挙後原告が被告委員長及び大内都選管事務局長(同人は本年四月転出)に「協会はどういう手配をしたか御存じですか」と質したところ、大内事務局長は「いや、それは分りません」と答えた事実等からみても、被告の努力なるものが真実でないことは明白である。
被告は準備書面の陳述において、「元来右要請文書は選挙の円滑を図るための予防的措置として、新聞協会に発送したに止まり、同協会からの回答を要するものではなかつた。回答を本年二月に受領したのは、本件訴訟のために特に回答を求めたからである。」と、従来からの陳述の矛盾を糊塗すべく試みたが、準備書面の陳述こそは、被告がマスコミ機関の違法干渉に一顧の関心も払わなかつたことを明らかにしたものである。
(二〇) 自治省選挙局もまた東京都選挙管理委員会の選挙管理を指揮監督する責任の地位にある以上、当然マスコミ機関の不法干渉を排除するため適切の措置(たとえば公職選挙法第七条の義務をもつ取締り機関に遵法を啓発する等その他)を講ずべきであつたに拘らず、何ら措置を講じなかつた。のみならず、寧ろマスコミ機関の干渉を助長し、以つて該選挙の公正阻害に拍車をかける違法の行政行為を行つた。(甲第十九号証、甲第二号証の九、甲第一六四号証の二、酒井寅吉証言等参照)
(二一) 原告提出の数多の証拠が示す如く、マスコミ機関は間然する処なく該選挙の自由公正を阻害したのであるが、マスコミ各社の公正阻害記事は、問題毎に題材の内容、評論の態度、主張の趣旨等、尽く符節を合するごとく相酷似している。これは各社の編集局が、各各独自の立場で、諸証拠の記事を取材、執筆、編集したものでないことを示している。少くとも該選挙の期間中の選挙関係記事に関する限り、各社は常時緊密な連絡をとり、同一協同の歩調で臨んだことを明らかにしている。例えば浅沼享子候補に関する宣伝記事、安井候補に関する重病隠蔽記事、ホウマツ候補に関する中傷妨害記事、立会演説会の不参加、不聴取促進記事等その他さながら戦時中の記事統制と結果的に異らない美事な自主統制ぶりであつた事を、数多の証拠(新聞記事)自体が雄弁に物語つている。
おそらく社団法人日本新聞協会の編集委員会で在京各社編集幹部が鳩首協議の上、該選挙に関する取材、報道、評論の扱い方等が決定され、その方針に随つて各社の執筆がなされたものと思料する。
酒井東京新聞編集局長の「新聞協会は、加盟新聞社の共通の利害を擁するという協会であると申し上げていいだろうと思います。」(共通の利害とは)「例えば、取材上の共同の便宜を計るとか、そういうことでいろいろございます。」の証言は、その間の消息を窺知せしむるに足るものである。
右マスコミ機関の言論統制による集団干渉行為は、新憲法下断じて許し難い重大の上にも重大な違憲行為である。日本新聞協会の右行為は勿論、現機能での存在は、日本国憲法前文、同第一条、同第十一条、同第十二条、同第十三条、同第十四条、同第十九条、同第二十一条、同第四十四条等の条規精神に違反するものである。この如き違憲団体の違憲行為によつて弾圧干渉せられた該選挙は無効である。(同協会は即時解散すべきである。)
(二二) 該選挙は、自治省選挙局、東京都選挙管理委員会、マスコミ機関の三者が、暗目の諒解の下に一体となつて弾圧、干渉、妨害、誘導を行い、それによつて、憲法及び公職選挙法の基本理念である自由公正の原則を阻害し、選挙人全般の自由な判断による投票を妨げた選挙で、悪質さにおいて比類をみない干渉選挙であつた。この事実は、自治省選挙局、東京都選挙管理委員会、マスコミ機関の三者の該選挙の公正阻害事実に対する被告陳述、新聞社の釈明、自治省の談話、証言等が完全に符号する点からも十分に判断することができる。
(二三) 該選挙に当つて、前述のごときマスコミ機関、東京都選挙管理委員会等によつて多くの違憲違法行為が行われ、これによつて選挙の自由公正が顕著に阻害されていることが明白であつたに拘らず、公選法第七条により選挙の取締り規定を公正に執行しなければならないことを義務づけられている取締り機関は、何ら公正な取締りをなさずこれを放置し不作為の干渉を行つた。また田中栄一候補の連日にわたる連呼行為等は不問とせられた。(原告ら目撃)右は公職選挙法第七条の取締公正確保の規定に違反し、公職選挙法第二〇五条に云う選挙の規定に違反する行為である。
原告らの街頭演説は、大塚署前においてパトカー、トラツクで追尾をうけ、(甲第一八二号証の一~甲第一八二号証の八)また毎日新聞社前、朝日新聞社前、浅草署前、品川駅前等で街頭演説が正私服の警察官に制止妨害を受ける等、取締り機関により逆に干渉妨害がなされた。右は公職選挙法第二二六条に抵触する違法行為である。
(二四)(イ) 公職選挙法第一四八条に対する自治省の解釈(第十項既述)は、正当の解釈ではない。何故ならば、たとえ、虚偽歪曲の記載でなく、事実に即した報道評論の記載であつても、特定候補者について人物、意見等の宣伝を専らにする報道評論を(またはそれを度々反覆し、或は大量のスペースを割いて)掲載流布する半面、他の候補者については全く抹殺し、或は極く稀少に記載して流布するならば、選挙の公正はこの新聞行為によつて十分に害されるのである。選挙の公正は、単に虚偽歪曲の記載によつてのみ害されるのではなく、前述の如く真実の記載であつても、それが他の候補者との間に不合理な差別的記載を行うことによつても阻害の目的を達し得るのである。従つて、適格紙に選挙に関する報道評論の自由が保護されているといつても、選挙の公正を害するまでの自由は保証されてはいない。同条但書には「……等表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない」とあり、右の如き場合は同条一項但書違反となるものである。然るに自治省選挙局は、これを「差支えなし」としてマスコミの違反行為を許容した。
もしも、第一四八条に対する自治省選挙局の解釈が正解だとすれば、同条の規定は、日本国憲法第十二条、同法第十四条、同法第二十一条、同法第四十四条等の条規、精神に反する違憲の法規である。憲法第十二条には、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う」と規定してあり、また同法第十四条には、国民の法の下の平等が規定してある。選挙の公正を阻害する行為は、即ち、公共の福祉に反する行為であつて、何人にも公共の福祉に反する行為が許されないのである以上、選挙公正阻害の行為が許されるいわれはないのである。また法の下の平等が規定されている以上、マスコミ機関と一般国民との間に不合理に法の下に差別を加えることも許されない。
公職選挙法第一四八条一項によつて、適格紙の選挙に関する表現の自由が保証されているのは、マスコミ機関はいわゆる社会の公器として公正を担保し、常に公共の福祉に合致する性格の、世論形成機関と考えられるからであり、逆にその者が公正を害し、公共の福祉に反するならば、公職選挙法第一四八条第一項を制定した法意は全く失われるばかりか、むしろ同法条文は有害の法規となるのである。
従つて、もしも自治省選挙局の解釈が正当とすれば、公選法第一四八条は憲法第十二条、同法第十四条、同法第二十一条、同法第四十四条等の条規、精神に反する違憲の法規である。
違憲の法規は無効であり、その無効の法規に基き執行された該選挙は無効である。
(ロ) もしも、公職選挙法第一四八条が違憲法規でないとすれば、同法第一四二条、同法第一四四条、同法第一四六条等の規定は、違憲の条規である。従つて憲法第九十八条に照し効力を有しないものである。
何故となれば、法第一四八条の本文によつて、適格紙の選挙に関する報道評論は保護されており、その他の一般国民(候補者も含めて)の文書による表現の自由は極めて苛酷な制限が加えられており、その差別には何ら合理的な理由が存在しないからである。公職選挙法が一般国民の選挙に関する文書による表現の自由を制限するのは、これを野放しに放任すれば、その結果各候補者間で経済力等の差異により不平等を生じたり、選挙民に対して不当な圧力を加えられるおそれがあり、公職選挙法第一条の目的が阻害せられることになるというのが、立法趣旨といわれるが、今日の商業新聞の発行部数は昔日のそれと異り、数百万部を擁するのであり、尨大な資本力、機械力、組織を有するマスコミ権力の実状において、自治省の第一四八条の見解に従つて野放しにその表現の自由を許すとすれば、それによつて候補者間に不平等をもたらし選挙民に対し不当な圧力をかけ影響を及ぼす方が、一般国民のそれによるよりも遥かに強力であることは論ずるまでもないのであつて、こうしたことを日本国憲法が許容している筈がないのである。
よつて右無効の法規に基き執行された当該選挙は無効である。
(ハ) 自治省選挙局が、高裁判決に基き従来の法解釈を変更して公職選挙法第一四八条はかくかくであると新たな解釈を下す以上は、同局は右判決の厳格な謄本ぐらいは取寄せて、これに基いて検討を加え、然る上に自治省の正式見解を定め、それによつて啓発周知するのが、慎重を要する国務行為として当然であつた。しかるに自治省には甲第七号証の如き同判決の一部を粗雑に抜き書きして写した文書しか綴込みとして保管されてはいない。
軽卒も甚だしいといわなければならぬ。このことが、ひいてついに醜劣マスコミ違憲選挙を示現せしめる原因となつたのである。右行為は、選挙管理行政上の重大カシであり、選挙管理機関の行つた選挙の規定違反であつて、該選挙の無効原因となるものである。
(二五)(イ) 日本放送協会は、東京都選挙管理委員会、公明選挙連盟と共謀して、請求原因事実(二)記載の政談集会を共同主催し、また同じく共謀の上同(七)一項記載のとおり、右集会の模様並びに演説内容等を該選挙区を始め全国に放送して、選挙の公正を阻害し、国民多数の基本的人権を侵害する違法を行つた。
(ロ) 日本放送協会は、公職選挙法第一五〇条による該選挙の政見放送を実施したが、同法及び同法施行令に違反して、該選挙区候補者中安井誠一郎の政見放送についてのみ、他候補と差別する自宅録音を行つた。(昭和三十五年十一月十一日昼頃、同局員海林澣一郎が安井の自宅で録音した。)当時安井候補は重態であつたので、もし同協会が法規に遵うならば、安井候補の録音は不能となり、それによつて同候補の重態の事実が全選挙民に知れわたることになり、選挙に頗る不利となり、場合によつては落選する場合が起り得るとして、是が非にも録音、放送をしなければならぬ破目になつていたので、日本放送協会は、公職選挙法及び同法施行令並びに政見放送実施規程等に違反して安井候補の自宅に赴いて録音したものである。
東京放送及び文化放送は、日本放送協会から右海林澣一郎が違法に録音した安井候補の録音テープを借りて、これにより違法の政見放送を行つた。
右三放送機関の行為は、公職選挙法第一五一条の三(選挙放送の公正確保)の規定にも違反する違法行為である。
右の三放送機関の違法行為(公職選挙法第二〇五条にいう選挙の規定違反)の結果、該選挙区の多数の選挙人が、安井候補が当時殆んど再起不能の重態である事実を隠蔽せられ、当選後十分国会議員として活動ができる候補者と錯誤させられて投票した。すなわち自由な判断によつて投票することを妨害されたのである。(甲第二十号証、昭和三十五年十一月十四日東京新聞、参照=本証には「浅沼、安井の首位争い」との標題で『当の安井はいまだに自宅で静養を続けているが「顔をみせないと五万票減る」というので最後の数日だけ本人が歩くことにした。……』との記載がある。本証も安井候補の重態隠蔽記事である。)本証の記載は、安井候補の重態の真相が明らかにされれば、当選が危ぶまれていた事実を立証し、同時に、右三放送機関の違法行為の結果、該選挙に異動を及ぼす虞のあることを立証している。
(ハ) 日本教育テレビは、該選挙の公示の前々日の昭和三十五年十月二十八日午後八時三十分から同九時までの三十分間、「大衆の心に永遠に、夫と妻の記録」と題して該選挙に立候補が決定していた浅沼享子をテレビに出場せしめ、該選挙民を含む全聴取者に向け放送した。この放送には中島デイレクターが担当した。(甲第七十四号証、甲第五号証の十七、甲第三号証の九)右により該選挙の公正を害した。日本教育テレビの右行為は、公職選挙法第一五一条の三、または同条の四の規定に違反する違法行為である。
(二六) 東京都選挙管理委員会は、公職選挙法第一五二条の候補者立会演説会を開催するに当つて、人口一、〇二九、五〇三人の東京都第七区には四十回、人口一、四四四、三五七人の該東京都第一区においては、逆に三十六回しか開催しなかつた。第七区の単位を標準とすれば該選挙区においては五十五回開催するのが人口比よりして至当である。原告らは、同法第一五五条三項の規定により開催された聴問会において、右は不合理であるから回数を増やすよう強く要望したが、同委員会は善処すると答えながら、同委員会の計画予定案のとおり強行した。
東京都選挙管理委員会の右行為は公職選挙法第一五三条第三項及び同法第一五五条第三項等の規定の趣旨に違反する行為である。東京都選挙管理委員会はまた、一候補者の演説時間を僅か十四分と定めて、候補者の政見政策等の周知を困難ならしめた。
また立会演説会開催の周知方法についても、見難い小さなポスターを見難い場所に若干張つた程度で、真に不徹底を極めた。
また会場撰定の拙劣、設備、照明の不完全等その他聴衆の参集に少なからず不便を与えた。さらに東京都選挙管理委員会は、マスコミ機関が熾んに選挙人の立会演説会への不参加と演説の不聴取を一致して違法に書き煽つたに拘らず、右妨害行為を排除するための適切の措置を講ぜず、放任した。また立会演説会場の内外に常時正私服の警察官を繰入れ、どの会場も極度に陰惨な立会演説会たらしめ、(甲第五十七号証、甲第四号証の十二)選挙人らを恐怖萎縮させたなど、公職選挙法第一五八条等の規定の趣旨に著しく違反した管理を行つた。
そのため、該選挙区の立会演説会は、三十六回の全会場を合して第一班の最多時入場者合計五、三六一人、最少時入場者合計二、〇六六人、第二班の最多時入場者合計二、七七九人、最少時合計九八六名という惨憺寥々たる立会演説会となつた。
一方マスコミ機関に対しては特定候補者のために大宣伝を許し、一方その他の候補者のためには、選挙管理委員会の権威をかざして、種々の妨害を加え、これをもつて選挙人へのアピールの機会を封殺して成果されたのが該選挙である。従つてかかる不公正の選挙は無効である。
(二七)(イ) 該選挙においては、有権者総数八五九、六二六人、投票者数五一二、九五六人、投票率五九・六%であつた。該選挙の際の実質人口は、前回選挙の際一、四四四、三五七人(昭和三十三年十月一日現在国勢調査)に対し一五三七、二二九人(昭和三十五年十月一日現在国勢調査)で、人口増九二、八七二人である。
従つて、選挙当日の有権者は前回選挙の有権者数より大巾に増加して然るべきであるが、逆に前回の八六四、二一四人に対し四、五八八人の減少となつている。
失格者数は前回の七七、四一六人に対し該選挙は一二五、三二八人で四七、九一二人の増となつている。投票率は前回の六六・六%に対し該選挙は五九・六%であつて、七%の低下を示している。右の数字は、東京都選挙管理委員会の行つた選挙人名簿調製の疎漏、補充選挙人名簿登録申請や投票普及、棄権防止等の周知啓発の懈怠を物語るものである。
特に該選挙において必要とされた補充選挙人名簿の登録申請についての啓発周知に懈怠があつた事実は、実質有権者であつて、当日投票所に足を運びながら、名簿に登録されてないために投票不能となつた者が頗る多数あつた事実が明証している。東京都全七区では十数万と推定された。(甲第二号証の十一)おそらく該選挙区で二万~三万あつたであろう。大内都選管事務局長が「手落ちによる脱落については全く申訳ないと思う」と遺憾の意を表する新聞談話を発表している。(右証)右は被告の懈怠によるカシの事実を立証している。
東京都選挙管理委員会が右補充選挙人名簿の申請についての啓発周知を怠つた事実は、投票普及並びに棄権防止費から選挙公報両面同一刷りの失敗による選挙公報印刷製本費の増加分を補うために四七万七千円を流用した事実でも明らかに立証される。
棄権防止費や投票普及費のような重要な費用を省くべきでなく、節約すべきものは他にいくらでもある。
右の如き選挙管理は、公職選挙法第一条の趣旨に反し、同法第六条等の規定の趣旨に著しく違反する公職選挙法第二〇五条にいう選挙の規定違反の行為である。
右の補充選挙人名簿登録申請についての啓発周知の不徹底、立会演説会、投票普及、棄権防止等各種の啓発周知の不徹底は、同委員会が行つた違法政談集会で発生した浅沼刺殺事件のために、すべての選挙管理準備行為が手違いや時間的ズレを生じた。その影響を受けたことも、重要な一因をなした。(甲第一六四号証の二「選挙」記載沼口庄太郎の談話参照)
また同証の重川延英談話の愛媛県の場合と該選挙の場合と対比する時、被告選管の懈怠カシは一目瞭然である。
(ロ) 該選挙は開票管理者、開票立会人らによつて疎漏な開票が行われた。また、港区麻布開票立会人武久浩子は開票録の記載の真実なることを確認せず、従つて署名しなかつたのに拘らず、乙第五号証の開票録には開票立会人の同人の署名がなされているが、これは明らかに偽造の署名であり、その行為は選挙の公正を害するものであり、選挙の規定違反である。(公職選挙法第七〇条違反)
(ハ) 該選挙においては、二十二名の候補者があつたが、候補者の届出による選挙立会人は一人もいなかつた。
三名の選挙立会人は全員、御手盛りの選任による者であつた。公正を義務とする選挙管理機関としては各候補者に選挙会の日時、場所、届出の期日等を十分啓発周知して、可能な限り候補者の届出による選挙立会人を立会わしめ、あくまで公正を期すべきである。
東京都選挙管理委員会が、この啓発周知を怠つたのは、違法のそしりを免かれないものである。
(ニ) 投票場の氏名等掲示のポスターなども、小さ過ぎ、かつ裁判官国民審査の氏名等掲示と紛れ易い小さ過ぎるものであり、その上紛れ易く掲示されたため裁判官に投票した無効投票多数(約二千票)を出した。(推算)さらに選挙公報の配布洩れ、投票日当日の麻布開票区の投票所玄関前、数米の場所の候補者ポスターのはぎ残し等、数多違法の選挙管理が行われ、それらの違法が相より相協けて選挙の自由公正を満遍なく阻害した。
(二八) 昭和三十五年十月現在、我が国の総人口は九三、四〇六、八三〇人であつた。東京都第一区の人口は一四四四、三五七人であるから全国人口と定員の平均比率からすれば該東京都第一区においては、八名か少くとも七名の当選者を決定すべきであつたが、僅か四名の当選者を決定した。右は日本国憲法の国民平等、選挙平等の原則に違反する違法である。また、公職選挙法別表一の規定に違反する違法である。
従つて、右憲法に違反し、選挙の規定に著しく違反して執行された該選挙は無効である。
(二九)(イ) 前述第二項及び第七項の東京都選挙管理委員会の(三党首立会演説会の開催運営)行為は、日本国憲法第十四条、同法第十五条、同法第四四条等の国民平等、選挙平等、政党平等等の原則を侵した違憲行為である。また憲法前文、同法第十一条、同法第十二条、同法第十三条、同法第十五条、同法第十九条、同法第二一条、同法第二二条、同法第九七条等の国民に保障された基本的人権を蹂躙した重大な違憲行為である。
また同法第十五条の2項(すべて公務員は、全体の奉仕者であつて一部の奉仕者ではない)の規定に違反し、同時に同法第九九条の憲法尊重擁護の義務の規定に違反した違憲行為である。東京都選挙管理委員会の日本国憲法の数々の条規に違反した違憲の行政行為は、同法第九八条1項の(この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部または一部は、その効力を有しない。)の条規に照し効力を有しないものであり、従つて、効力を有しない違憲の行政行為によつて成果された該選挙は、当然に効力を有しないものである。
(ロ) また同委員会の右行為は、公職選挙法第六条一項の趣旨に著しく違反した同法第二〇五条に云う選挙の規定に違反する違法行為である。そもそも選挙は日本国憲法の精神に則り制定された公職選挙法に基いて行われるのであるから、選挙管理機関が選挙の管理執行に当つて、卑しくも日本国憲法の条規精神に反する行政行為を行うことは許されないのである。たとえ公職選挙法第六条一項の選挙に関する啓発周知事業に名目を借りた行為であつても、その行政行為の実体が、国民の基本的人権を侵害し、国民平等、選挙平等、政党平等の原則を破壊するなど違憲行為の内容を有するものなるときは、これをもつて、公職選挙法第六条第一項の趣旨に合致した適法の行政行為と見做すことはできないのである。同法第一条、並びに同法第六条一項の規定の趣旨に著しく反する選挙の規定違反であつて、何ら争う余地はないのである。
同委員会の右の行政行為が、いかに悪質の違反行為であるかを理解するためには、仮りに右行為が黙認され、全国の都道府県並びに各市町村選挙管理委員会で一斉に同様或いは類似の行為を行つたと仮定して、それによつていかなる事態が全国都道府県市町村に起るかを想像して見ることが早道である。浅沼刺殺事件や赤尾ら威力業務妨害事件の如き不祥事件が随時随所に発生することが必至であろう。
ついに我が国における選挙は忽ちに不可能となり、民主政治は完全に破壊され、独裁混乱の社会が訪れるであろう。実に該選挙において東京都選挙管理委員会の右の違法の「行政行為」が辿つた経過は、図らずも、多くの教訓を示していると云えるのである。公職選挙法が民主選挙の終焉や民主政治の破滅を冀い願つているものでないことは明らかであるから、同委員会の行つた右行為が、同法第二〇五条のいう選挙の規定違反に該当することは余りにも明白である。
(三〇)(イ) 以上述べた「請求の原因事実」第(一)から同第(二九)項までの中、自治大臣(自治省選挙局)が該選挙について行つた憲法違反の選挙管理の行政行為の全事項ならびに東京都選挙管理委員会の行つた憲法違反の選挙管理の行政行為の全事項については、憲法第九八条によつてそれらの行政行為は効力を有しないのであり、それらの効力を有しない行政行為に基いて監理執行された結果成果された当該選挙も同法第九八条により効力を有しない。よつて原告は該選挙の無効確認を請求する。
(ロ) 前述全ての請求の原因事実中第(二)項をはじめ、東京都選挙管理委員会の行つた選挙の規定違反(公職選挙法第二〇五条に云う)の全事実については、その数多くの規定違反によつて、これがため該選挙の公正が完璧に阻害され、かつ選挙の結果に異動を及ぼす虞ある場合に該当する選挙となつたのであるから、公職選挙法第二〇五条により原告は該選挙の無効確認を求める。
(ハ) 前述全「請求の原因事実」の中、マスコミ機関及び公明選挙連盟、日本放送協会、自治省並びに東京都選挙管理委員会等其他の者の行つたすべての違憲違法の選挙の公正阻害行為(本訴請求の原因事実の全事実)の結果、該選挙は公職選挙法の基本理念たる選挙の自由公正が害され、該選挙区の選挙人全般がその自由なる判断によつて投票することが妨げられた場合に相当する選挙である。よつて原告は公職選挙法第二〇五条により当該選挙の無効確認を請求する。
準備書面(被告提出のもの)
一 請求の原因事実
(一)は認める。
(二)のうち、東京都選挙管理委員会(以下都委員会という。)が、公明選挙連盟、日本放送協会(以下NHKという。)と共同主催により昭和三五年一〇月一二日、日比谷公会堂において、自由民主党、日本社会党、民主社会党の三党首による立会演説会を開催した事実、大日本愛国党赤尾敏らが都委員会に対し、右演説会の主催者に加わらないよう申し入れた事実(同様な申入を警視庁公安部に対して行つた点は不知。)、右演説会において、都委員長が挨拶をし、引き続き西尾、浅沼両委員長が演説を行い浅沼委員長が演説なかばにして刺殺され、そのため、同演説会が中絶の止むなきに至つた事実、小田天界なる者がその混乱に乗じ同演説会に反対する旨叫んだ事実及び同演説会開催中聴集の中から演説妨害のヤジ、ビラ等が撒かれた事実は認める。
しかしながら、都委員会が、右演説会を該選挙区をはじめ全国の右三党所属立候補者の得票の増大を計り、右立候補者等の当選に寄与せんと企図して開催した旨の主張は否認する。
また、同演説会の開催にあたつては、不祥事の発生に備えて警察当局、主催者であるNHK及び都委員会職員で会場の警備にあたつた事実は認める。しかし、右三党の党員をもつて警備にあてた事実はない。ただ、従来の政談演説会の実状からして、各党派閥に相当激しいヤジ等の応酬があることが予想されたため、主催者側において事前に三党の代表者を集めて、演説会の円満裡遂行に協力を求めた結果、自党々員のヤジ等の自粛を目的として最前列に設けられた報道関係者席の次の二列に右三党の関係者席(各三十名)が配列されたことはある。この事実をもつて原告は右三党々員をして会場の警備にあたらせたと誤認したに過ぎないのである。
なお、同演説会は不測の刺殺事件(これについて原告は都委員会が右演説会を主催した結果と主張しているが、二者の間に何らの合理的な因果関係はない。)のため自由民主党党首が演説不能となつた事実は認める。
しかして、右の事実が何ら違法性を有しないことは被告主張1において後述するとおりである。
(三)については、右演説会において、吉田前都委員長が開会挨拶中、選挙の公明化実現のために選挙制度の是正を要望する旨述べた事実は認める。しかしながら、右は特定の政党の政策を支持推進せんがためのものではなく、選挙制度改正に対する意見を開陳したに過ぎないものであり、また前後の関係からみて選挙の公明化を望む趣旨が明白である。更に、何ら選挙運動にわたるものでないから、右は何れも法令に違反するものではない。
(四)については、右演説会の費用を国の啓発事業委託費より支弁した事実は認める。しかし、違法でないことは被告主張1で後述のとおりである。
(五)について、都委員会は、政治資金規正法の適用を受ける団体ではなく、従つて同法に基く諸届出をなす必要はない。
(六)については、右演説会を開催するにあたつて、「集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例」(昭二五、七都条例四四号)に基く集会許可申請を行わなかつた事実は認める。これは、官公庁の職務として通常行うものは都条例による集会許可申請は不要とする旨の東京都公安委員会の決定(昭和三五、一、八)に基き、同申請を行わなかつたのである。従つて、何ら法令違反はないのであるが、加えて都委員会は右演説会開催については、警察当局と十分な連絡を保つたのであり、開催手続に少しの粗漏もなかつたのである。
(七)については、都委員会とNHKの協議によりNHKテレビ及びラジオにより右演説会の模様を全国に実況放送したこと及び各報道機関の取材を認めた事実は認める。しかし、これは、法の趣旨に則したもので違法とすることはできない。
(八)については、公明選挙連盟が原告主張のような団体であること及び同連盟理事長前田多門が原告主張の談話を新聞に発表したことは認める。右談話は特定政党の候補者を特に有利にする趣旨のものということはできず、選挙の公明化を推進する論旨を展開した談話であること明らかであるから選挙の自由公正を阻害するものではない。
(九)の主張事実は全部否認する。マスコミ機関による選挙不当干渉の事実がないことは後述の被告主張2のとおりである。
(一〇)については、自治省選挙局が東京高裁判決(「国労静岡」選挙違反事件に対する判決)を曲解して、法第一四八条についての解釈適用を誤つたということ及び右謬見に基き都委員会を指揮監督したという事実は否認する。また、本件について、都委員会が自治省から特に指示通達を受けたことはないし、同省が原告主張の如き見解をもつて、直接周知啓発を行つたという事実もない。
(一一)については、マスコミ機関による選挙干渉、妨害が常習として実行されて来たとの主張は否認する。原告らと自治省選挙局長との対話の有無については不知。その余の事実については争う。
(一二)については、その主張事実は全部否認する。
(一三)は全部否認する。マスコミ機関が浅沼享子候補を当選させる目的のもとに報道評論を行い、かつ麻生良方候補に対し、これを落選させるために故意に虚偽、歪曲記事を掲載した事実はない。
(一四)については、選挙結果の予想記事が一部新聞に掲載された事実は認める。しかしながら、右は法第一四八条第一項の範囲内の行為であつて何ら違法でないことは後述被告主張2及び3のとおりである。
(一五)は否認する。マスコミ機関が、誰が大物で誰が泡沫候補である等と指摘して、選挙民を錯誤させるための記事を掲載して、特定の候補者の得票を妨害した事実はない。
(一六)は否認する。マスコミ機関が原告主張の如く選挙人に対し立会演説会への不参集を促進した事実はない。
(一七)については、原告主張のような訪問記事が掲載された事実は認める。しかし、右事実が選挙の公正を阻害する違法のものでないことは被告主張2のとおりである。
(一八)については、原告主張のような広告が掲載された事実は認める。しかしながら、右は法一四二条又は同一四三条の禁止を免れる行為とは、大きさ、形態、内容、方法その他の諸条件からみて認められないから違法とすることはできない。
(一九)については、マスコミ機関による選挙干渉等の違法行為は全く認め得ないものであるが、原告らから原告主張のような申入があつたので都委員会は、選挙の円滑を図るための予防措置として新聞協会に対し、選挙記事の扱い方について慎重を期するよう文書で要請したのであるが、しかしながら、元来右要請文書は予防的な措置であるため、都委員会宛の回答を要する趣旨のものではなかつた。また、その要請についての回答を本年二月に受領した事実は認めるが、これは都委員会が本件訴訟のため特にその頃回答を求めたからである。
(二〇)については、マスコミ機関の該選挙に対する不法干渉の事実が認められないので、自治省選挙局にも原告主張のような違法事実はない。
(二一)については、日本新聞協会において各新聞社が協議し、その方針に基き各社の執筆が同一歩調で行われたという事実は否認する。該協会には、編集方針について、各社を拘束する等の権限は全くなく、また、原告提出の全証拠を精査しても、各社が同一の編集方針を決定し、その方針の統制下において、報道評論を行つたとは認め難い。それが、たまたま相似したところがあつたとしても、右は各社の取材及び整理が該記事に限り類似していたに過ぎないものである。まして、マスコミ機関の言論統制による集団干渉等の主張は全く、論拠不明も甚しいといわざるを得ない。
(二二)については否認する。
(二三)については、都委員会、マスコミ機関等が該選挙において何ら違法行為を行つた事実はないのであるから、取締機関がその義務を怠つた事実もない。
田中候補の連呼行為の事実並びに原告の街頭演説において大塚署前でパトカー、トラツクで追尾を受け、毎日、朝日新聞社前その他で警察官に制止された等取締機関による選挙干渉行為がなされたという主張事実については不知。
(二四)については、自治省が法第一四八条について原告主張の如き解釈をもつて選挙に関し、周知啓発を行つたという主張事実は否認する。なお、同条に対する解釈については被告主張3で後述するとおりである。
(二五)については、安井候補の政見放送にあたり、NHKが同候補の自宅において録音した事実、東京放送及び文化放送が右NHKの録音テープを借用した事実は認めるが、右取扱が違法でないことについては後述被告主張4のとおりである。
また、日本教育テレビの「夫と妻の記録」で浅沼夫妻を取り上げた事実は認めるが、内容等からみて選挙運動とは認められないから違法となるものではない。
(二六)については、該選挙東京都第一区及び第七区における立会演説会開催回数と人口数、開催回数について原告らから都委員会に申入があつた事実、第一区の候補者の演説時間が一人十四分であつた事実、また入場者数については、原告主張事実を認める。しかしながら、これら事実が何ら違法でないことは被告主張5において後述のとおりである。その余の事実は否認する。
(二七)については、総て否認する。これら主張事実に対する被告の主張は被告主張6において後述する。
(二八)については、わが国の総人口及び東京都第一区の人口並びに同選挙区の当選人が四名であつた事実は認める。しかし、右当選人の決定について違法がないことは被告主張7で後述のとおりである。
以上、右各条項において答弁した他原告の主張については総て争う。
二 請求原因についての原告の主張中、吉田前都委員長が大日本愛国党に対し、委員会主催名を抹消する旨回答した事実は否認する。また、新聞の発行部数及びラジオテレビの普及台数に関する主張事実については不知。他の原告の主張はすべてこれを争う。
三 原告の主張に対する被告の主張の要約
1 三党首立会演説会の合法性
法は、選挙管理委員会は、選挙の公正な管理執行と共に、常にあらゆる機会をとらえて、選挙民の政治常識の向上に努めるよう規定(法六条)している。これは、公明選挙の実現は、結局は選挙民の政治に対する自覚と認識にまたなければならないからである。いうまでもなく、民主々義政治は、国民による政治である。従つて、現実の政治の姿を正しく認識し、これを批判し、自らの意思によつて政治に参与しなければならない。この政治に対する認識、批判力が政治常識であり、右三党首演説会開催の趣旨もここにあつたのである。即ち、わが国の政治が政党によつて動かされていることは公知の事実であることからして、各政党の政治上の主義、政策を明らかにすることにより現在の政治思潮、政治上の諸問題とその解決策についての具体的な知識を選挙民に提示し、政治の現状を正しく把握し、批判することによつて選挙民の政治意識を著しく昂揚することができるのである。もちろん、右演説会開催にあたつては、可能な限り全政治団体を網羅することが望ましいが、数百を超える政治団体の総てをこれに参加させることは技術上、時間的に不可能である。しかし政治常識の向上という目的からみれば、必ずしも全部の政治団体を参加させる必要はなく、現実に政治を担当しわが国の殆んどの選挙民の支持を得ている三つの代表的な異る政治思想、政策をもつ党派の各々から意見を述べさせれば、わが国政の大勢は理解され、右三党の行き方の何れかに賛成するか、或いは右三党の何れにも賛同し得ず新たな政党又は政治家の出現を期待するかの判断力を涵養するに充分であると考えられる。よつて、国会の議席の九九%以上を占める右三政党を公平に選んで開催に至つたものであるが、都委員会は、特に右三政党のみを政党として推薦する意思をもつて開催したものではないし、またかかる宣伝をしたこともない。要するに、選挙民をして政治の現状を知らしめ、多数ある政党のうち如何なる政党に政治を担当せしめるのが最良であるかの判断力を涵養せしめるところに意義があるのである。従つて、右三政党の政策主義等を推薦支持又はこれに反対するためのものではなく、ましてその所属立候補者の得票の維持と増大を計り当選に寄与するためのものでは毛頭ないところからも原告の主張は全く当を得ないものである。よつて、都委員会が右演説会を開催したことに何らの違法違憲の事実もないのである。
また、右演説会の模様を実況放送し、更に報道させたことについては、右趣旨からして当然のことであり、違法かつ選挙の自由公正を阻害するものではない。
前述のように右演説会は、法六条の趣旨に適合したものであり、何ら違法のものではないから、原告主張(四)のように公明選挙啓発委託事業費によりその費用を支弁することは差支えなく、都委員会は右三党を支持推進したものでもないから政治資金規正法の適用も受けないことは明らかである。
同演説会は、不測の刺殺事件によりその続行が不可能となり、中止の止むなきに至つたが、同演説会は、選挙告示前に開催されたものであり、政治団体の行う政談演説会の開催は自由であり、原告が補足(2)において主張するが如く、右演説会において自由民主党総裁が演説不能になつた一事をもつて選挙の結果に異動を及ぼすことは到底考えられるところではない。右は、同演説会に参加しなかつた右三党以外の政治団体についても同様で、右開催当時、各政治団体が単独又は協同で政談演説会を開催することは何らの制限も受けず、またその実況を報道することも差支えないのであるから(報道機関が報道するかどうかは別として)、右演説会に参加しなかつたことをもつて直ちに選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるとすることはできない。
2 マスコミ機関に選挙干渉のない事実
浅沼委員長の刺殺事件及び同夫人に関する事実を各新聞雑誌等が種々の角度から報道したことは原告主張のとおりであるが、右各種報道は、浅沼候補の当選を得せしめ、同時に左翼政党所属候補者を大量当選せしめる目的に出たものではなく、浅沼氏刺殺の異常な大事件に基因する社会的関心に従い報道評論したに過ぎない。また、選挙の結果予想記事においても、そのニユース価値の差により字数又は取扱いに多少の差異があつても、これらは各紙の自主取材によるものであり特定候補者の当選又は落選を目的として掲載されたものではなく、単なる事実の報道と解されるものである。また、これらは人気投票の経過又は結果の公表でないことも明らかである。新聞によつては、一部に悪質な候補者に関する記事を掲載したがこれら新聞が社会の木たくとして社会悪を絶滅する使命から出たもので、誰が悪徳候補であると宣伝して、その当選を妨害したものではない。要するに、特定候補者の当選又は落選を目的としてマスコミ機関が宣伝記事又は妨害記事を掲載した事実は原告提出の全証拠をもつてしても証明できないのであり、右は何れも法令に違反する何らの理由もない。
なお、安井候補に対する訪問記事は、同候補の談話そのまゝを記事とし、又は取材記者の受けた印象を記事としたものであり、かりに、同候補が健康を害していたとしても気魄語調等により元気だとの印象を受ける場合がありうるので、これらの記事をもつて虚偽歪曲と誹謗するのは不当である。
以上、マスコミ機関の報道評論は、何ら選挙に不法干渉する違法な事実はないのであるが、都委員会は原告らの強い要望によつて新聞協会に対し、予防的措置として選挙記事の扱い方について慎重を期すよう要請したが、右要請は回答を要するものでなく、都委員会は本件訴訟の答弁に必要なため、右回答を受けたものである。従つて、マスコミ機関及び都委員会、自治省に違法があり、かつ右三者が暗目のうちに一体となつて弾圧干渉妨害誘導を行つたという事実は曲解も甚だしい。もともと、選挙を無効とするには、選挙管理機関による選挙の手続規定の違反又は選挙の自由公正の原則が著しく阻害された事実があり、かつ選挙の結果に異動を及ぼす虞があるときに限られるのである。従つてマスコミ機関の違法を選挙無効の原因として論ずべきでなく、それはむしろ刑事上の処断を待つべき性質のものである。
3 法第一四八条の解釈
法第一四八条は、憲法第二一条による表現の自由の精神を妨げない趣旨である。民主々義政治においては、政治に対する批判はあくまで自由でなければならない。これは選挙の期間中といえども例外ではない。たゞ、法第一四二条ないし同第一四六条等の各法規により、ポスター葉書等による選挙運動を制限しているのは、これらを放任すれば選挙運動の不当競争を招き却つて選挙の自由公正を阻害することになるため、その弊害を防止するための憲法上許される最少限の必要かつ合理的な制限であつて何ら憲法違反ではない。しかるに、新聞雑誌は公益的性格を有し、また、右のような選挙運動の不当競争を惹起する虞も少いところから、表現の自由を濫用して選挙の公正を害さない限り制限を設けないのである。そして、法第一四八条第一項但書は、その濫用の場合を例示したものと解すべく濫用に該当する場合は虚偽又は歪曲記事に限らないけれども、憲法第二一条の精神からみて濫用の場合を拡張解釈することも許されないものである。この観点から考えた場合、新聞雑誌の言論の自由は、虚偽歪曲等表現の自由を濫用して選挙の自由公正を害しない限り政党等の政策、主義、選挙運動、当落の予想、候補者の人物、行動、政見等を報道評論することは何ら制限を受けないものであり、これらの事実をありのまゝ報道し、又は評論するのであれば、たまたま結果において特定の政党又は候補者に利益をもたらしたとしても、何ら法令に違反するものではない。元来、新聞等が社会の木たくであることを考えれば、選挙人に正しい候補者を選択させるため選挙に関する正しい報道評論を行うことはマスコミ機関に課せられた使命であつて、これを奪うことは到底許されないものと云うべきである。なお、同条第二項で、紙誌に一定の資格条件を付しているのは、紙誌に表現の自由を認めた結果、それに便乗することを防ぐためである。ひるがえつて、原告提出の各証拠によれば何れも特定候補者を当選又は落選させるための宣伝記事でないことは前項のとおりであるから、右証拠の事実はすべて法第一四八条の報道評論の域を出ないものであつて、マスコミ機関の違法事実を認めることはできない。
4 候補者政見放送実施規程の趣旨
右規程第九条の規定は、候補者が放送局へ出頭して録音することを義務付けているが、候補者が病気事故等の止むを得ない理由で、放送局へ出頭できない場合、放送局が自主的に候補者の下へ行き録音し、又は他の放送局から録音テープを借用して放送することまで禁止する趣旨ではない。政見放送は候補者の政見を選挙民に周知させ、その候補者選択に便宜を与えるものであり、かつ、候補者にとつては、法一五〇条によつて政見放送を行う権利を有するものであるから、右のような事故病気のために政見放送を行わせないとしたら却つて選挙の自由公正を侵すものとなる。従つて、NHKその他が安井候補に対してとつた措置は違法というべきではないし、それによつて選挙の自由公正を阻害したともいえない。
5 立会演説会の合法性
法第一五三条第二項によれば、区市においては、人口四万毎に一単位(一回)開催することになつており、第一区は、三六単位開催することになる。他方、第七区は、都下十市と三多摩郡全町村を含む選挙区であり、町村については、同法には開催回数について何ら規定されていない。しかして、同条の趣旨からみて人口比例とは別に各町村で各一単位開催する様決定したものであつて、市において一六単位、町村において二四単位開催することになつたわけである。立会演説会の開催回数は都委員会が決定することになつており、右決定は原告らの申入を充分検討しながら最も妥当と判断した結果の措置であつた。また、第一区の候補者は二二名に達し、二班編成をもつてしても一人一四分が限度であり、これ以上時間を延長すれば、一日三回開催することができなくなり従つて同選挙区において三六単位の開催回数は不可能となるのである。
その他、立会演説会周知用ポスターは充分見易い大きさであり、掲示箇所も法定の二倍の枚数を掲示し、会場の選定、設備についても聴集に不便を与えたことはなかつた。このことは会場の警備についてもいえることで、選挙人に恐怖の念を抱かせるような方法で正服警察官を演説会会場の内外に配置したことはなかつた。
右のとおり立会演説会開催に関して選挙管理機関はもとよりマスコミ機関においても何ら違法な事実はなく、かりに聴集数が少なかつたとすれば原因は他に求むべきであろう。
6 選挙人名簿、ポスター撤去等に関する合法性
基本選挙人名簿は職権により補充選挙人名簿は選挙人の申請により名簿を調製し、これを正当な期間選挙人の縦覧に供し、脱漏者、誤載者に関し異議申立をなさしめた後確定したものであり、調製の手続に関し何らの違法もない。また、本件選挙は基本名簿調製時から長期間経過し、その間の都内における人口移動は極めて激しく、失格者及び補充名簿登録者が多数にのぼることが予想されたため、都委員会及び区市町村委員会は、ラジオ・テレビ・ポスター・チラシ等あらゆる機会をとらえて住民に申請を呼びかけたのであつて周知啓発を怠つたことはない。
名簿登録の脱漏がなかつたことは、昭和三十年から同三十五年までにおける人口増と登録者数の増加がほぼ同数であることからも証明されるのである。
また、投票者が前回選挙より少いのは、前回より投票率が低いためであるが、都市におけ投票率が低いのは公知の事実であり、選挙管理機関の啓発の懈怠によるものではない。なお六大都市においてはその殆んどが前回選挙より投票率が低下したのもまた共通の傾向である。
投票所における氏名等掲示については候補者多数のため、最高裁判所裁判官国民審査における裁判官の氏名等掲示より小さかつたが、そのため無効投票が増えたことはない。また、投票当日投票所前に小田天界候補のポスターが掲示されていたとするが、かりにそうだとしても、それは前日選管職員の撤去後掲示されたものと考えられるから選挙管理に違法はない。しかも前述氏名等掲示による無効投票の増加及び投票所前のポスター未撤去の問題は、同選挙区の無効投票の内候補者でないものの氏名を記載したものが三、五〇一票、また小田天界候補の関係開票区における得票が二〇票強であり、同選挙区の最下位当選人と最高位落選人との差二万八千余票であるところから全く問題にならない。
7 該選挙区における定数の合憲性
衆議院議員の選挙区及び選挙すべき議員の定数は、憲法に基き法律で定めることになつている。従つて、その区域定数の変更は立法上の措置に委ねられているのであつて、現行法別表一が人口の異動によつて何らの措置がとられなかつたといつて、個々の選挙人の権利を奪つてしまうのであれば格別、一般には直ちにそれをもつて国民平等の原則に反し、違憲とするのは早計である。また、四名の当選人を決定したことは法別表一に違反するものでもない。
8 他の選挙と本件選挙との間に特に選挙結果が認められない事実
三党首演説会が開催されず、またマスコミ機関の違法事実の有無も争われなかつた他の選挙と本件選挙の結果をみるに、いわゆる大政党所属候補者以外の候補者の得票率は極めて少く、両者とも僅か有効投票の2%程度であつて、両者の間に殆んど相異がない。従つて右の演説会マスコミ機関等原告主張の事実が原告らの得票に影響を及ぼしたとすることはできない。
以上何れにおいても、本件選挙を無効とすべき違法違憲の事実もなく、選挙の自由公正も阻害された事実も存しないのであるから原告の主張は全く誤解と偏見に立脚したものであつて何らの根拠も有しないのである。


「選挙 ビラ チラシ」に関する裁判例一覧

(1)平成23年 1月18日  東京地裁  平22(行ウ)287号 政務調査費交付額確定処分取消請求事件
(2)平成22年 6月 8日  東京地裁  平21(行ウ)144号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(3)平成21年 2月17日  東京地裁  平20(行ウ)307号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(4)平成21年 1月28日  東京地裁  平17(ワ)9248号 損害賠償等請求事件
(5)平成20年11月28日  東京地裁  平19(行ウ)435号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(6)平成20年 9月19日  東京地裁  平17(特わ)5633号 国家公務員法被告事件
(7)平成20年 7月25日  東京地裁  平19(行ウ)654号 政務調査費返還命令取消請求事件
(8)平成20年 4月11日  最高裁第二小法廷  平17(あ)2652号 住居侵入被告事件 〔立川反戦ビラ事件・上告審〕
(9)平成20年 3月25日  東京地裁  平19(行ウ)14号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(10)平成19年 6月14日  宇都宮地裁  平15(ワ)407号 損害賠償請求事件
(11)平成18年12月 7日  東京高裁  平17(ネ)4922号 損害賠償等請求控訴事件 〔スズキ事件・控訴審〕
(12)平成18年 4月14日  名古屋地裁  平16(ワ)695号・平16(ワ)1458号・平16(ワ)2632号・平16(ワ)4887号・平17(ワ)2956号 自衛隊のイラク派兵差止等請求事件
(13)平成17年 9月 5日  静岡地裁浜松支部  平12(ワ)274号・平13(ワ)384号 損害賠償請求事件、損害賠償等請求事件 〔スズキ事件・第一審〕
(14)平成17年 5月19日  東京地裁  平12(行ウ)319号・平12(行ウ)327号・平12(行ウ)315号・平12(行ウ)313号・平12(行ウ)317号・平12(行ウ)323号・平12(行ウ)321号・平12(行ウ)325号・平12(行ウ)329号・平12(行ウ)311号 固定資産税賦課徴収懈怠違法確認請求、損害賠償(住民訴訟)請求事件
(15)平成16年11月29日  東京高裁  平15(ネ)1464号 損害賠償等請求控訴事件 〔創価学会写真ビラ事件・控訴審〕
(16)平成16年10月 1日  東京地裁  平14(行ウ)53号・平14(行ウ)218号 退去強制令書発付処分取消等請求、退去強制令書発付処分無効確認等請求事件
(17)平成16年 4月15日  名古屋地裁  平14(行ウ)49号 難民不認定処分取消等請求事件
(18)平成15年 4月24日  神戸地裁  平11(わ)433号 公職選挙法違反被告事件
(19)平成15年 2月26日  さいたま地裁  平12(ワ)2782号 損害賠償請求事件 〔桶川女子大生刺殺事件国賠訴訟・第一審〕
(20)平成14年12月20日  東京地裁  平10(ワ)3147号 損害賠償請求事件
(21)平成14年 1月25日  福岡高裁宮崎支部  平13(行ケ)4号 当選無効及び立候補禁止請求事件
(22)平成13年12月26日  東京高裁  平13(ネ)1786号 謝罪広告等請求控訴事件
(23)平成12年10月25日  東京高裁  平12(ネ)1759号 損害賠償請求控訴事件
(24)平成12年 8月 7日  名古屋地裁  平10(ワ)2510号 損害賠償請求事件
(25)平成12年 6月26日  東京地裁  平8(ワ)15300号・平9(ワ)16055号 損害賠償等請求事件
(26)平成12年 2月24日  東京地裁八王子支部  平8(ワ)815号・平6(ワ)2029号 損害賠償請求事件
(27)平成11年 4月15日  東京地裁  平6(行ウ)277号 懲戒戒告処分裁決取消請求事件 〔人事院(全日本国立医療労組)事件〕
(28)平成 6年 3月31日  長野地裁  昭51(ワ)216号 損害賠償等請求事件 〔長野東電訴訟〕
(29)平成 5年12月22日  甲府地裁  昭51(ワ)289号 損害賠償請求事件 〔山梨東電訴訟〕
(30)平成 4年 7月16日  東京地裁  昭60(ワ)10866号・昭60(ワ)10864号・昭60(ワ)10867号・昭60(ワ)10865号・平2(ワ)10447号・昭60(ワ)10868号 立替金請求併合事件 〔全逓信労働組合事件〕
(31)平成 2年 6月29日  水戸地裁  昭63(ワ)264号 市立コミュニティセンターの使用許可を取消されたことによる損害賠償請求事件
(32)昭和63年 4月28日  宮崎地裁  昭47(行ウ)3号 行政処分取消請求事件 〔宮崎県立大宮第二高校事件〕
(33)昭和57年 4月30日  東京地裁  昭56(行ク)118号 緊急命令申立事件 〔学習研究社緊急命令事件〕
(34)昭和56年 9月28日  大阪地裁  昭48(ワ)6008号 謝罪文交付等請求事件 〔全電通大阪東支部事件〕
(35)昭和55年 9月26日  長崎地裁  昭50(ワ)412号 未払給与請求事件 〔福江市未払給与請求事件〕
(36)昭和54年 7月30日  大阪高裁  昭53(行コ)24号 助成金交付申請却下処分無効確認等請求控訴事件
(37)昭和53年 5月12日  新潟地裁  昭48(ワ)375号・昭45(ワ)583号 懲戒処分無効確認等、損害賠償金請求事件 〔新潟放送出勤停止事件〕
(38)昭和52年 7月13日  東京地裁  昭49(ワ)6408号 反論文掲載請求訴訟 〔サンケイ新聞意見広告に対する反論文掲載請求事件・第一審〕
(39)昭和50年 4月30日  大阪高裁  昭45(ネ)860号 損害賠償ならびに謝罪文交付請求控訴事件
(40)昭和47年 3月29日  東京地裁  昭47(行ク)8号 緊急命令申立事件 〔五所川原市緊急命令申立事件〕
(41)昭和46年 4月14日  広島高裁  昭46(行ス)2号 行政処分執行停止決定に対する即時抗告申立事件 〔天皇来広糾弾広島県民集会事件〕
(42)昭和46年 4月12日  広島地裁  昭46(行ク)5号 行政処分執行停止申立事件
(43)昭和45年 4月 9日  青森地裁  昭43(ヨ)143号 仮処分申請事件 〔青森銀行懲戒解雇事件〕
(44)昭和37年 4月18日  東京高裁  昭35(ナ)15号 選挙無効確認請求事件
(45)昭和36年 6月 6日  東京高裁  昭35(う)2624号 公職選挙法違反被告事件
(46)昭和35年 6月18日  東京高裁  昭34(ナ)12号 選挙無効請求事件
(47)昭和29年 8月 3日  名古屋高裁  昭29(う)487号 公職選挙法違反事件
(48)昭和27年 3月19日  仙台高裁  昭26(ナ)7号 当選無効請求事件
(49)平成30年 7月20日  福岡地裁久留米支部  平28(ワ)69号 損害賠償請求事件


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