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「選挙 立候補 ポスター」に関する裁判例(8)平成31年 4月 9日  甲府地裁  平27(行ウ)6号 違法公金支出金返還等請求事件

「選挙 立候補 ポスター」に関する裁判例(8)平成31年 4月 9日  甲府地裁  平27(行ウ)6号 違法公金支出金返還等請求事件

裁判年月日  平成31年 4月 9日  裁判所名  甲府地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(行ウ)6号
事件名  違法公金支出金返還等請求事件
文献番号  2019WLJPCA04096003

裁判年月日  平成31年 4月 9日  裁判所名  甲府地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(行ウ)6号
事件名  違法公金支出金返還等請求事件
文献番号  2019WLJPCA04096003

山梨県〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 牛久保秀樹
同 小笠原忠彦
同 山際誠
同 関本立美
山梨県〈以下省略〉
被告 a市長 Y
同訴訟代理人弁護士 細田浩

 

 

主文

1  本件訴えのうち,YがA,B,C,D,E,F及びGとの間で土地の売買契約を締結した行為を財務会計上の行為としてYに対して損害賠償請求をすることを被告に求める部分を却下する。
2  被告は,Yに対し,5050万円及びこれに対する平成26年7月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。
3  訴訟費用は被告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
被告は,Yに対し,5050万円及びこれに対する平成26年7月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。
第2  事案の概要
1  事案の要旨
a市は,前市長のA(以下「A前市長」という。)ほか6名が所有していた別紙1物件目録記載の各土地(以下,同目録記載の各土地を併せて「本件買受地」といい,同目録記載の各所有者を併せて「A前市長ら」という。なお,a市q所在の土地については,以下では地番のみを記載する。)を市立保育所の建設用地として買い受けることとし,平成26年5月8日,A前市長らとの間で,本件買受地についての売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結し,支出命令及び支出行為を経て,売買代金として合計2億5200万円をA前市長らに支払った。
本件は,a市の住民である原告が,本件売買契約について,①本件買受地を市立保育所の用地として取得する必要性がなく,②本件買受地の取得価額が適正価額を超えており,③本件買受地の中に,A前市長宅に直結し,無償でA前市長に使用を許可する道路を敷設する部分があるが,上記部分を買い受けることは違法であるなどとし,本件売買契約を締結したa市長のY(以下「Y市長」という。)において,その裁量権を逸脱又は濫用して,違法に本件買受地を買い受けたと主張し,これによってa市に損害を与えたとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,a市の執行機関である被告(a市長)に対し,Y市長に対して5050万円及びこれに対する公金支出の日である平成26年7月25日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を請求することを求める住民訴訟である。
2  前提事実(争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実等)
(1)  当事者(争いのない事実)
ア 原告は,a市の住民である。
イ 被告は,a市の執行機関である市長である。
(2)  本件買受地購入の経緯等
ア 本件買受地を含む関連地の従前の状況等
(ア) a町は,昭和44年4月11日,Hとの間において,当時のb郡a町○○の土地(地積7791.439m2)について,同土地をa町立病院及びその附属施設の用地に供することを目的とする土地賃貸借契約を締結し(乙3),同土地上にa町立病院を建設した(以下,上記賃貸借契約を「旧病院賃貸借契約」,上記病院を「旧病院」,上記土地を「旧病院用地」という。)。
なお,本件買受地は,旧病院用地と大部分において重なるが,旧病院用地の一部は含まれていない(本件買受地の地積は,別紙1物件目録のとおり,本件売買契約の契約書上は合計7068.06m2,登記上は合計7043.93m2である。乙45,弁論の全趣旨)。
(イ) 平成17年2月13日,b郡a町とc郡d村が合併してa市が発足した(顕著な事実)。
(ウ) 平成24年10月,e1中学校の跡地に新たにa市立病院の建物が建設され,同年11月頃から,旧病院用地上の旧病院の建物の解体作業が始まり,平成25年3月頃,終了した(乙41,弁論の全趣旨)。
そして,旧病院賃貸借契約は解除され,同月頃,旧病院用地は,各土地の所有者であるA前市長らに返還された(弁論の全趣旨)。
イ 旧病院用地等が新市立保育所の建設予定地に決定されたことに係る経緯
(ア) 平成25年5月8日に開催されたa市の平成25年度第2回企画会議において,旧病院用地を新設するa市立保育所(以下「本件新保育所」という。)の建設予定地とすることが決定された(乙37の1)。
(イ) a市は,平成25年5月27日,入札により,旧病院用地に係る「旧a市立病院跡地測量業務」を株式会社シティー計画(以下「シティー計画」という。)に委託した(履行期限同年10月31日。甲132)。
シティー計画は,用地実測図(乙49の1)及び用地平面図(乙49の2)を作成し,a市に納入した。この用地実測図(乙49の1)は,旧病院用地だけでなく,a市が所有する周辺の土地等も含む一帯の土地を実測したものである。(弁論の全趣旨。以下,上記各図を併せて「シティー計画旧病院用地実測図等」という。)
シティー計画旧病院用地実測図等では,別紙2「各実測図の測量状況」記載1のとおりの測量が行われており,その地積の合計は9228.7662m2となっている(以下,同別紙記載1の各土地を「シティー計画旧病院用地実測図等の①」などという。)。上記各土地のうち,①~③,⑤,⑥,⑧~⑩,⑯~⑱はA前市長らが所有し,④,⑦,⑪~⑬,⑮はa市が所有し,⑭は第三者が所有していたものであり,上記のうち,③については分筆することが予定されていた。
(ウ)a a市は,平成25年10月7日,一般財団法人日本不動産研究所(以下「日本不動産研究所」という。)との間で,業務委託契約書(乙48の1)の不動産鑑定評価業務仕様書上,対象地を「(旧a市立病院跡地)a市大字○○3193番地1他」とする不動産鑑定評価業務に係る業務委託契約を締結し(乙48の1),日本不動産研究所は,同月31日頃,a市に対し,不動産鑑定評価書を提出した。
b しかし,被告は,この時点で日本不動産研究所から提出された不動産鑑定評価書は,破棄して現存していないと主張しており,本件訴訟において証拠として提出していない(以下,日本不動産研究所がこの時点でa市に提出し,本件訴訟では提出されていない不動産鑑定評価書を「旧鑑定書」という。)
c 被告は,日本不動産研究所の鑑定評価業務の対象となった土地に関し,上記契約書(乙48の1)に,株式会社東測(以下「東測」という。)による実測図(乙46,48の3。以下「東測実測図」という。)が,図面袋(乙48の2)に入れられて添付されていたと主張するところ,東測実測図では,別紙2「各実測図の測量状況」記載2のとおりの測量が行われており,その地積の合計は7223.39m2とされている(以下,同別紙記載2の各土地を「東測実測図の①」などという。)。そして,東測実測図では,上記各土地のうち①,②,④,⑦,⑨,⑪,⑬,⑭については分筆することが前提とされており,また,⑮については,測量されているものの,上記の地積の合計を算出するに当たっては除外されている。
被告は,上記のとおり,上記契約書(乙48の1)に東測実測図が添付されていたと主張する一方で,鑑定評価業務の対象となった土地は,東測実測図の①~⑭の土地(合計地積7223.39m2)のうち⑦,⑨,⑬を除いた土地(合計地積7055.89m2)であったとし,平成25年10月2日に行った不動産鑑定評価業務の設計図書閲覧及び現地説明において,a市の当時の保健福祉部長であったI(以下「I部長」という。)が,日本不動産研究所のf支所長である不動産鑑定士J(以下「J」という。)に対し,東測実測図の各土地から上記の⑦,⑨,⑬の各土地を鑑定評価の対象外とするよう口頭で指示したと主張している。
(エ) a市は,平成26年1月8日,入札により,「(仮称)新○○保育所用地測量業務」をシティー計画に委託し(履行期限同年3月27日。甲133),シティー計画は,同月28日,実測図(乙51。以下「シティー計画本件買受地実測図」という。)をa市に提出した。
このときに測量された土地は,本件買受地であり,シティー計画本件買受地実測図では,別紙2「各実測図の測量状況」記載3のとおりの測量が行われており,地積の合計は7059.92125m2で,各筆の小数点第3位以下を切り捨てた値を合計すると7059.88m2となる(以下,同別紙記載3の各土地を「シティー計画本件買受地実測図の①」などという。)。
なお,東測実測図と比較すると,シティー計画本件買受地実測図では,東測実測図の⑦,⑨,⑬の各土地が含まれておらず,他方,東測実測図の⑥の土地では除外されて測量されていた墓地の隅となっている三角形の土地部分3.99m2を含む形で測量されている。
(オ) a市は,平成26年3月31日,日本不動産研究所に対し,シティー計画本件買受地実測図を交付した。日本不動産研究所は,J鑑定士等を担当者として,同年4月,従前提出していた旧鑑定書と同じ日付の平成25年10月31日付けで,本件買受地の同月1日時点の更地の鑑定評価額を2億5200万円とする不動産鑑定評価書(甲4)を作成し,これをa市に提出した(以下,上記評価書を「J鑑定書」,同評価書による鑑定を「J鑑定」という。)。
ウ 本件売買契約の締結等
(ア) Y市長は,平成26年5月8日,A前市長らとの間で,本件買受地(地積合計7068.06m2)を合計2億5200万円(A前市長に対し8406万9284円,Bに対し4730万2786円,Cに対し4730万2786円,Dに対し6201万1286円,E,F及びGに対し各377万1286円)で買い受ける旨の売買契約(本件売買契約)を締結した(甲109~115)。
(イ) 平成26年7月16日,本件買受地に関し,3193番1の土地が3193番1と3193番3に分筆され(別紙1物件目録記載1関係。甲15),3193番2の土地が3193番2と3193番4に分筆され(同目録記載2関係。甲16),3194番1の土地が3194番1と3194番4に分筆され(同目録記載3関係。甲17),3194番3の土地が3193番3と3194番5に分筆され(同目録記載4関係。甲18),3209番1の土地が3209番1と3209番3に分筆され(同目録記載9関係。甲23),3211番2の土地が3211番2と3211番4に分筆された(同目録記載11関係。甲25)。
そして,同年7月18日受付で,本件買受地,すなわち,別紙1物件目録記載5,6,7,8,10の各土地,上記分筆後の3193番1の土地(同目録記載1関係。甲15),3193番4の土地(同目録記載2関係。甲106),3194番1の土地(同目録記載3関係。甲17),3194番5の土地(同目録記載4関係。甲107),3209番3の土地(同目録記載9関係。甲108),3211番2の土地(同目録記載11関係。甲25)について,平成26年5月8日売買を原因とするA前市長らからa市に対する所有権移転登記がされた。
(ウ) Y市長は,平成27年5月11日,長田組土木株式会社との間で,「(仮称)新○○保育所建設工事」について,請負代金額を5億9130万円とする建設工事請負仮契約書を交わした(乙11)。
そして,本件買受地上に本件新保育所として,○○こども園が建設され,平成29年4月に開園した(弁論の全趣旨)。
(3)  A前市長宅に通じる道路についての使用許可等
ア Y市長は,本件売買契約を締結した平成26年5月8日,A前市長との間で,「道路使用に関する覚書」(甲10。以下「本件覚書」という。)を交わした。本件覚書には,「(仮称)○○保育所管理用道路」について,A前市長がこれを生活の用に供するために使用することができる旨の記載がある。
イ Y市長は,平成27年9月16日,A前市長に対し,同日付けでA前市長からされた行政財産の使用の申請に対し,新保育所用地のうちの敷地内通路(122.35m,以下,これを「本件道路」という。)について,同人の生活の用に供する道路として,同日から上記の使用目的を終了するまでの期間,これを使用することを許可し,その使用料は免除とした(乙8)。
(4)  本件買受地購入のための公金支出(後掲証拠のほか,甲1,乙9の1・2,乙10,40の1・2)
ア a市においては,a市事務決裁規程(乙47)により,200万円以上の支出命令に関すること(ただし,支出負担行為と同時に行う支出命令及び職員の給与関係費を除く。)は副市長が専決権者とされているところ,a市の副市長は,平成26年7月23日,A前市長らに対して合計2億5200万円を支出する旨の支出命令をした(以下「本件支出命令」という。)。
イ a市会計課は,平成26年7月25日,本件支出命令に基づき,A前市長らに対し,本件買受地の代金として合計2億5200万円を支出した(以下「本件支出行為」という。)。
(5)  本件買受地及び本件新保育所に係る事業に対する社会資本整備総合交付金の交付
ア 平成25年2月26日の「社会資本整備総合交付金交付要綱」の改正により,地方都市リノベーション事業(都市再生整備計画事業のうち,地方都市の既成市街地において,既存ストックの有効利用を図りつつ,将来にわたって持続可能な都市とするために必要な都市機能(医療・福祉・子育て支援・教育文化・商業等)の整備・維持を支援し,地域の中心拠点の形成を図ることなどを目的とするもの)が新たに国からの社会資本整備総合交付金の交付対象事業とされ,事業ごとに求めた交付対象事業費の合計50%について,同交付金が交付されることになった(乙9の1・2,乙10)。
イ a市は,平成25年8月7日,山梨県都市計画課との間で社会資本整備総合交付金事業(地方都市リノベーション事業)についての打合せを行い,新a市立保育所の建設について,同事業の対象となる旨の回答を得た(乙38の3)。
ウ a市は,平成25年8月30日及び9月6日の庁内会議(企画課,都市計画課,福祉課等)において,同保育所の用地取得・建物建設等について,地方都市リノベーション事業として検討していくことを企画会議に諮ることとした(乙38の4・5)。
エ 平成25年9月9日,平成25年度第6回企画会議において,総務部から,a市立保育所等の整備事業について,地方都市リノベーション事業を活用する方向で検討しているとして,計画状況や以後の手続についての報告がされた(乙4)。
オ Y市長は,平成26年3月19日,国土交通大臣に対し,都市再生整備計画(地方都市リノベーション事業)を提出した(乙40の1)。
カ 国土交通省市街地整備課長は,平成26年3月24日,Y市長に対し,上記計画の確認通知をした(乙40の2。なお,上記確認を受けたときは,当該確認を受けた都市再生整備計画を社会資本総合整備計画に記載できることになるものである(乙9の2・9頁)。)。
キ 以上のような経緯により,a市は,a市立○○保育所事業について社会資本整備総合交付金の交付を受けることになり,これにより,上記事業全体に要する費用のうち50%は上記交付金により賄えることとなった(弁論の全趣旨)。
(6)  原告の監査請求及び監査結果
ア 原告は,平成27年7月15日,a市監査委員に対し,「a市職員措置請求書」と題する住民監査請求書(甲2)を提出した(以下,同請求書による監査請求を「本件監査請求」という。)。上記請求書には,「1-1 請求の要旨」として,「いつ,誰が(対象職員の職氏名),どのような財務会計上の行為又は怠る事実があるか」につき,平成26年7月25日,a市一般会計(a市役所福祉課担当)に基づき,a市会計課からA前市長らに対し,a市立○○保育所建設事業用地代(仮称)として,2億5200万円が支払われた旨が記載され,「1-2 その行為又は怠る事実が違法又は不当である理由」として,上記1-1で記述した支払行為は,必要性の少ない土地を適正時価より著しく高額の売買価格で購入したもので,これはY市長の裁量権の濫用に当たり,違法行為である旨の記載がされ,「1-4 誰がどのような措置を講ずることを求めるか」として,監査委員に対し,Y市長ほか福祉保健部長に対し,市に移転した所有権移転登記を売主に回復するために必要な措置をすること,又は違法な当該公金支出行為による損害を補填する等,必要な措置を講ずるよう勧告することを求める旨が記載されていた。
イ これに対し,a市監査委員は,上記住民監査請求が地方自治法242条所定の要件を具備しているものと認め,請求内容を,①必要性の少ない土地を購入したので,市に移転した所有権移転登記を売主に回復するために必要な措置をすること,②必要性の少ない土地を適正時価より著しく高額の売買価格で購入したので,Y市長ほか福祉保健部長の裁量権の濫用に当たり,違法な当該公金支出行為による損害額8700万円を補填する必要な措置を講じること,以上の2項目と判断した上で,原告の主張について検討し,上記監査請求を理由がないものとして棄却する旨を決定し,平成27年9月10日,原告に対し,その旨を通知した(甲9)。
(7)  本件訴訟の提起
原告は,平成27年10月7日,本件訴訟を提起した(顕著な事実)。
(8)  本件買受地の正常価格(市場性を有する不動産について現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格)の鑑定
ア J鑑定等
J鑑定士(日本不動産研究所)は,別紙3「J鑑定書(甲4)とK鑑定書(甲70)との比較表」記載のとおり,本件買受地につき,取引事例比較法による試算価格を2億5400万円,開発法による試算価格を2億5000万円とし,それぞれ同等に規範性を有すると判断した上で,平成25年10月1日時点の更地の正常価格を2億5200万円とするJ鑑定(甲4)を行った。
また,J鑑定士は,平成27年7月30日付け意見書(乙5の1),平成28年8月1日付け「不動産鑑定評価に係る補足意見書」(乙15),開発法による価格の試算書(乙28),平成29年7月19日付け「K鑑定に対する意見書」(乙32)を作成した。
イ K鑑定士の鑑定等
(ア) 原告の本件監査請求に先立ち,不動産鑑定士L(以下「L鑑定士」という。)は,原告の依頼を受け,J鑑定について,鑑定評価手法の適用及び鑑定評価額の決定に関する検証を行ったとして,平成27年6月19日付け意見書(甲5,以下「L意見書」という。)を作成した。
L意見書は,取引事例比較法による試算価格を1億6700万円,開発法による試算価格を1億6200万円とし,両試算価格を50:50の割合で関連づけて,鑑定評価額を1億6500万円としている。
(イ) みずほ信託銀行株式会社不動産コンサルティング部不動産鑑定室に所属する不動産鑑定士K(以下「K鑑定士」という。)は,原告代理人牛久保秀樹弁護士の顧問先からの依頼を受け,平成29年2月22日付け「不動産鑑定評価書」(甲70。以下「K鑑定書」といい,同評価書による鑑定を「K鑑定」という。)を作成した。K鑑定は,別紙3「J鑑定書(甲4)とK鑑定書(甲70)との比較表」のとおり,本件買受地につき,取引事例比較法による試算価格を1億3700万円,開発法による試算価格を1億6200万円とし,両試算価格を等しく重視し,地価公示価格を規準とした価格との均衡にも留意の上,平成26年5月8日時点の正常価格についての鑑定評価額を1億5000万円としている。
3  争点
〔本案前の争点〕
支出負担行為である本件売買契約が平成26年5月8日に締結された後,原告が本件監査請求をした平成27年7月15日の時点で監査請求期間である1年が経過していたところ,本件訴えのうち,Y市長が本件売買契約を締結した行為を違法な財務会計行為として,Y市長に対して損害賠償請求をすることを被告に求める部分が適法か否か。
〔本案の争点〕
Y市長の本件売買契約締結行為,本件売買契約に基づく本件支出命令及び本件支出行為に係る行為が違法であり,これによってa市に損害が発生しているか否かである。
原告は,Y市長の本件売買契約締結行為,本件支出命令及び本件支出行為に係る行為が違法である根拠として,以下の点を主張しており,その当否が争われている。
(1) 本件買受地を本件新保育所の用地として取得する必要性がなかったこと
(2) 本件買受地を取得する際の手続が適正でないこと
(3) 本件買受地の取得価額が適正価格を超えていること
(4) A前市長宅に直結する道路部分を買い受けたことが違法であること
(5) 本件覚書を交わしたことが違法であること
4  争点についての当事者の主張
〔本案前の争点〕
(原告の主張)
(1) 支出負担行為,支出命令及び支出行為は一体としてみるべきであること
本件売買契約は,Y市長とA前市長らとの間の協議,合意によってa市の審議会の答申を無視して手続が進められ,締結されたものであり,支出負担行為,支出命令及び支出行為はいずれもY市長の権限に属するものであることに照らすと,支出負担行為である本件売買契約の締結は,違法な支出命令及び支出行為と一体としてみるべきである。
原告は,平成27年7月15日,本件監査請求をしており,本件支出命令が行われた日である平成26年7月23日及び本件支出行為が行われた同月25日については監査請求期間を経過していないことから,これらと一体である本件売買契約の締結についても監査請求期間を経過していないというべきである。
(2) 「正当な理由」(地方自治法242条2項ただし書)があること
支出負担行為である本件売買契約の締結について監査請求期間を経過したと評価されるとしても,以下の事情からすれば,地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由がある。
原告が本件買受地に係る本件売買契約の締結が違法であることを知ったのは,平成27年5月11日付けのビラ(甲11)がa市の全戸に配布された時である。
そして,原告は,a市に対して必要な情報開示請求を行い,資料を収集した上で,L鑑定士に意見書の作成を依頼し,L意見書を入手した後,同年7月15日,本件監査請求を行った。
以上のとおり,原告は,上記ビラの配布により本件売買契約の締結が違法であることを知ってから約2か月後の同年7月15日に本件監査請求をしたものであるから,その時点で本件売買契約が締結された日から1年が経過していたとしても,地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由がある。
(被告の主張)
(1) 本件監査請求が監査請求期間経過後にされていること
本件売買契約の締結は平成26年5月8日にされているところ,本件監査請求は,同日から1年が経過した後の平成27年7月15日にされたものであり,監査請求期間を経過していた。
(2) 「正当な理由」があるとはいえないこと
「正当な理由があるとき」(地方自治法242条2項ただし書)とは,当該行為が極めて秘密裡に行われ,1年が経過した後に初めて明るみに出たような場合や天災地変等による交通途絶により監査請求期間を経過したような場合で,1年を経過したものについて特に請求を認めなければ著しく正義に反すると考えられる場合のみがこれに該当すると解するべきである。
したがって,原告が主張する事情を踏まえても,正当な理由があるとはいえない。
〔本案の争点〕
(1) 本件買受地を本件新保育所の用地として取得する必要性がなかったことについて
(原告の主張)
以下のとおり,本件買受地を本件新保育所の用地として取得する必要性はなかった。
ア 200名定員の本件新保育所を建設することは行政の判断として適正ではないこと
(ア) a市では,急激に進む少子化の中で,園児の数は年々減少していた。また,将来的にも,市の人口は減少し,園児数が一層減少することが統計から予測されていた。200名定員の本件新保育所の新設は,このような実態及び統計予測に反していた。
(イ) 200名定員の本件新保育所を新設するに当たっては,a市にある保育所のうちe3保育所,e4保育所,e5保育所及びe6保育所の4か所を統合することになっていた。しかし,実際には,e6保育所は統合されず,e3保育所,e4保育所及びe5保育所が統合されるにとどまった。
そして,g1駅の南側のh1川を越えたところにあったe5保育所からは,本来,本件新保育所に移るはずであった25名の園児のうち11名が移ってこなかった。e5保育所は,本件買受地からは3km以上離れていて,高低差も100mあり,この距離や高低差の問題から11名が移ってこなかったものとみることができる。そして,このような地理上の問題があることからすれば,今後とも,e5保育所の利用想定者の中で,本件新保育所の入園者が減少することが想定される。こうした地理的な問題を考慮すれば,e3保育所とe4保育所の統合にとどめるべきであり,e5保育所は存続させるべきであった。
そして,その際の定員は,多くとも150人規模として,場所は,h2公園の土地が最適であった。この土地は,本件買受地とは違い,平坦地であり,生活上の利便性が高く,園児を送り迎えする保護者にとっても,園児にとっても好ましい場所である。
e3保育所とe4保育所の2園体制として,市有地に新保育所を建設することこそ,地方自治法2条14項の「最小の経費で最大の効果を挙げる」,地方財政法4条1項の「必要かつ最小の限度」を超えて支出してはならない等の規定に合致した行政の選択である。
(ウ) 本件新保育所は,平成29年4月に開所したが,開所時の園児数は144名であり,このことからも,200名定員が過大であることは明らかである。
イ 本件新保育所の用地として本件買受地を選定したことが誤りであること
(ア) a市立保育所適正化審議会(以下「本件審議会」という。)では,新保育所の用地について,市有地優先とし,面積としては3000~4000m2とされていたのであり,7000m2もの土地が必要であるとする理由はない。
(イ) また,事務局から本件審議会に提出された資料(乙13)には,本件買受地は全く記載されていなかった。本件買受地が本件審議会で新保育所用地として議論されなかったのは,現地を熟知する審議委員が,本件買受地が高台にあり,三方が崖地であり,面積も過大であることから,審議対象として考えられなかったからである。
(ウ) 上記資料に記載されていた5つの候補物件のうち,第2物件の旧病院の第二駐車場の跡地(約4000m2)については,a市が1億7000万円で取得しており,第5物件(約9000m2)については,a市が消防署の用地として平成25年6月に1億1500万円で取得している。これらの土地が本件新保育所の用地として採用されなかった理由は不明であり,本件買受地と比較してどのような検討がされたのかも不明である。
(エ) 本件買受地は,三方が崖地の高台にあり,防災対策上も,本件新保育所の用地としては不適当である。
(オ) 以上のとおり,本件新保育所の用地として本件買受地を選定したことは,本件審議会を無視するものであり,誤りである。
(被告の主張)
ア 本件新保育所の規模やその用地として本件買受地を取得することの適否は,a市の保育行政の政策上の問題であり,財務会計行為とは何ら関係がない。
イ 本件新保育所の定員が200名であることについて
(ア) 原告は,e5保育所の園児のうち11名が本件新保育所に移ってこなかったことを指摘するが,地理的要因から先に新設されたe7こども園への転園も見られ,また,年齢的に幼稚園への転園が可能であった子どももいたことが想定され,本件新保育所に移ってこなかった理由が原告主張の理由とは断定できない。
旧a町役場跡地であるh2公園は,幅員12mで計画された都市計画道路計画線上にあり,都市計画法53条の許可を受けることが建築の条件となることから,公園とされた経緯のある土地であり,保育所用地として適地であるとは考え難い。
(イ) 平成30年4月1日現在の本件新保育所の園児数は162人であり,前年の同時期と比べ18人増である。このことからも,本件新保育所に対する保護者の期待が見てとれる。
ウ 本件買受地の選定について
(ア) 本件審議会において,新保育所の用地の面積について,3000~4000m2が想定されていたのは,平屋建てでの園児の安全確保という理想を捨てて,新保育所の建設を優先すべきだとした結果であり,平屋建てが望ましいことは明らかである。
(イ) 事務局から本件審議会に提出された資料(乙13)は,あくまでその当時の状況から候補地となり得る可能性のあった土地をピックアップしたものであり,当時ピックアップされていなかった本件買受地を選定したことは,本件審議会の答申を無視したことにはならない。
(2) 本件買受地を取得する際の手続が適正でないことについて
(原告の主張)
ア Y市長は,尋問において,平成25年3月末にA前市長を訪問し,a市が本件買受地を本件新保育所用地として取得すること,価格については,後に不動産鑑定を受けることを前提として,2億5000万円といった額を提示したこと,今後の市政運営について協力し合うことを了解・合意したことを供述している。
このY市長とA前市長との合意は,本件新保育所建設についての従前の検討内容を大きく変更するものであるところ,市の担当部局による検討や市の企画会議における検討を経ることなく,Y市長の独断によって行われたものである。
こうして,正式に新保育所の用地が決定する前に,Y市長とA前市長との話合いにより,内容や金額がおおむね決定されたものである。
そして,平成25年4月4日,8日の庁内会議において,本件買受地を本件新保育所の用地とすることが確認され,同年5月8日の企画会議で本件買受地を購入することが決定されたものである。
本件買受地の売買価格はY市長とA前市長の話合いの時点で実質的に決定されていたのであり,J鑑定は,これを裏付けるためのものにすぎなかったのである。
イ また,J鑑定書は,当初,a市の依頼を受けて日本不動産研究所が平成25年10月31日付けで作成した旧鑑定書とは別途に,同日付けで平成26年4月に至ってから作成されたものであるところ,被告は,旧鑑定書を破棄して現存しないとし,これが証拠として提出されていない。
被告は,旧鑑定書を破棄した理由や東測実測図作成の経緯等について,後記の(被告の主張)ウ,エのとおり主張するが,被告の主張する旧鑑定書の破棄の理由は不自然であり,東測が無償で東測実測図を作成したという点,旧鑑定書の鑑定の対象地から東測実測図の⑦,⑨,⑬を除くということをI部長が口頭で指示したとする点も不自然であって,事実とは認められない。
そうすると,J鑑定書は,こうした経緯等も含め,適切な手続を経て作成されたものではないというほかはない。
ウ 以上のとおり,Y市長による本件買受地の購入は,Y市長が独断で行ったA前市長との合意に基づくものであり,適正手続に反して行われたものである。
(被告の主張)
ア 本件審議会においては,本件新保育所建設の候補地について,最終的な決定はせずに,検討に留めるとしていたのであり,新保育所を○○地区に建設するという本件審議会の答申に沿った建設地の決定を行うについて,本件審議会での再度の審議を行う必要はない。
イ Y市長は,尋問において,平成26年3月のことを平成25年3月と誤って供述したものである。このことは,Y市長が,評価額を2億5200万円とする平成25年10月31日付けの日本不動産研究所作成に係る旧鑑定書をA前市長宅に持参してお願いに行っていることを供述していることなどから明らかである。
ウ 旧鑑定書は,a市の依頼を受けて日本不動産研究所が平成25年10月31日付けで作成し,東測実測図に記載された各土地のうち,その⑦,⑨,⑬を除く各土地を鑑定の対象地とするものであり,J鑑定書は,平成26年4月に至ってから,旧鑑定書と同日付けで作成され,シティー計画本件買受地実測図に記載された各土地を鑑定の対象地とするものであるが,J鑑定書が作成,提出されたのは,旧鑑定書における鑑定の対象地であった東測実測図の⑥の土地では除外されて測量されていた墓地の隅となっている三角形の土地部分(3.99m2)について,a市が取得するものとして鑑定の対象地に含めることになったことから,念のため再度鑑定書(J鑑定書)を作成,提出してもらったにすぎず,内容,結論は変わらなかったことから,旧鑑定書は破棄したものである。
エ 東測実測図は,シティー計画旧病院用地実測図等が作成された後,シティー計画と関連する会社である東測がシティー計画からそのデータの提供を受け,無償で作成したものであり,また,旧鑑定書の鑑定の対象地から東測実測図の⑦,⑨,⑬を除くことについては,I部長が口頭で指示したものである。
(3) 本件買受地の取得価格が適正価格を超えていることについて
(原告の主張)
Y市長は,J鑑定に基づいて,本件買受地を2億5200万円で購入したが,本件買受地の適正価額は1億5000万円であり,J鑑定は,以下のとおり,一見して判明する誤りが多数みられ,不適切である。
したがって,Y市長が,これを無批判に容認し,本件売買契約を締結したことは,適正な価格での取引に比して過大な支出を負担するものであって,最小限の支出を求める地方自治法2条14項及び地方財政法4条1項に違反するものであり,Y市長の裁量権の逸脱,濫用に当たる。
そして,副市長が専決で行った本件支出命令に係るY市長の行為も,違法である。
ア J鑑定の明らかな誤り
J鑑定には,開発計画において分譲総区画数を28区画とする誤り,本件買受地が「不整形地」であるにもかかわらず,「規模が大きい整形地」としている誤りがある。これらは,いずれも鑑定評価の内容に関わる問題であって,誤記であるとして済まされることではない。
イ 取引事例比較法による比準価格について
(ア) 取引事例の選択について
a J鑑定が取引事例としている事例は,i市,j市,k市の事例であって,a市の事例がない。
これに対し,K鑑定は,a市の取引事例を2例採用している。そして,K鑑定の47頁別表2の山梨県a市r所在の取引事例X1(以下「a市物件1」という。)を採用できない理由はない。また,K鑑定で採用されている山梨県a市s所在の取引事例X2(以下「a市物件2」という。)についても,問題があるとすれば,個別修正要因とすれば良いことであり,取引事例としての適性は否定されない。a市の土地価格を算定するのであるから,a市の取引事例を優先するべきであり,それによって不必要な修正要因を採用しなくてもよく,また,修正要因があったとしても,その修正の幅は小さくなり,何よりも地元の取引事例が採用されることによって鑑定書の検証が行政機関や市民によってしやすくなるのである。
b J鑑定は,戸建住宅素地の取引事例を中心に比準した価格を比較考量したとするが,J鑑定が取引事例とするi市l町の物件(以下「i市l町物件」という。),j市△△の物件(以下「△△物件」という。),k市□□の物件(以下「□□物件」という。)は,以下のとおり,いずれも,戸建住宅素地の取引事例とはなし得ない物件である。
(a) i市l町物件について
i市l町物件は,7m幅道路に,前面19m接している。この7m幅道路とは,幹線道路である国道139号線であり,この道路に東側で19m接しているとすると,この物件は商業用に適した土地であって,住宅地としては不適切である。
別紙4~7(甲105・別紙3~6)は,国土交通省がインターネットで公表している不動産取引事例から,a市,i市,j市,k市の取引事例を選び,住宅地,住宅見込地とされる地域から,面積500m2以上,取引期間をJ鑑定と同じく平成21年以降として,同年から平成25年分までを抽出し,本件と関連性の薄い項目を削除して,インターネットデータをそのまま使用して作成したものである。
i市における取引は,別紙5(甲105・別紙4)のとおりであり,その取引番号157物件がi市l町物件である。この一覧から見ると,i市l町物件の取引価格4万3000円/m2は格段に高額である。また,i市l町物件を除いた物件の平均価格は1万3956円/m2となり,4万3000円/m2という価格の高さは明らかである。また,i市l町物件を除くと,3万円以上の物件は,100番の3万5000円,153番の3万2000円であり,J鑑定におけるi市l町物件の選定は,バランスを欠いた極端な選定であり,他の取引事例からみても,1万円は高く設定されたことになる。
(b) △△物件について
△△物件は,J鑑定士も認めるとおり,鉄骨造り,倉庫付きの物件であり,そもそも住宅用物件ではない。その地域は,J鑑定士も認めるとおり,h3交差点付近とみられ,大規模店舗が立ち並ぶ地域であって,個人用の分譲住宅用地には不適切な地域である。
別紙6(甲105・別紙5)は,j市の取引を整理したものであり,取引番号210物件が△△物件である。△△物件は,鉄骨造り,倉庫付き物件として,総額6100万円で売買されたものであり,住宅用地として単体で取引されたものではなく,そのため,土地価格は確定されていない。
J鑑定では,土地価格が5万円/m2とされているが,数値が不自然であるとともに,根拠自体がない。また,仮に土地価格を5万円/m2とみると,j市の取引において格段に高額となる。取引の中では,取引番号150,151,152物件が4万円台で売却されているが,それらは,h4大学前という,j市内で最も不動産価格の高い地域内の物件であって,△△地域の住宅用土地とは異なり,取引の全体からみても,特別な要因があるとみられる物件である。そして,それでも5万円までにはなっていないのであって,△△物件をj市の事例として選定することは適正ではなく,また,J鑑定は,1万円は高く判断していることになる。
以上のとおり,△△物件は,そもそも,土地の取引事例としてみることができない物件であり,取引事例として採用されるべきものではない。
(c) □□物件について
□□物件は,k市□□地域で,g2駅から1.6kmの距離であり,J鑑定士も認めるとおり,h5インターチェンジを出たところで,準住居地域とされる地域の物件である。準住居地域は,「道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ,これと調和した住居の環境を保護するため定める地域」(都市計画法9条7項)と規定されており,交通量の多い道路に接して,住宅との緩衝となる施設の建設が望ましい地域であり,個人向け住宅用の土地には適しない地域であって,「戸建て住宅素地の取引事例」には該当しないから,取引事例として選択することは適切ではない。また,準住居地域は,商業用に適する土地として住宅用土地よりも高い価格が設定されており,「平成28年地価公示における甲信越地区の用途地域別平均価格」(乙24)でも,準住居地域の平均価格は,5万2409円/m2であるのに対し,住居地域の平均価格は,4万2132円/m2であり,価格基準も異なる準住居地域の土地を取引事例として選択すべきではない。
別紙7(甲105・別紙6)は,k市の取引を整理したものであり,取引番号214番物件が□□物件である。この一覧からみると,4万2000円/m2という取引価格は,格段に高額であり,準住居地域の価格として,商業施設に準拠した価格が設定されたものとみることができる。
(d) 以上の3事例において,住宅分譲業者が入手したことは確認されず,実際に,個人の分譲住宅は建設されていない。
(イ) 取引事例の比準価格について
a i市l町物件について
J鑑定は,i市l町物件の取引価格を4万3209円/m2とし,地域要因格差の「同一需給圏内の地位」欄で,-15%としている。
しかし,i市l町物件の方がa市の「基準となる土地」よりも15%低いと評価するのは相当ではない。路線価で見ると,i市は,一番高い所で7万8000円/m2であるのに対し,a市は,一番高い所で6万円であり,a市の「基準となる土地」とi市l町物件は,少なくとも同等とみるべきである。また,平成30年度の山梨県の固定資産(土地)の評価替えに係る基準宅地価格(甲97)を見ても,a市の基準宅地価は5万1000円/m2であるところ,i市は6万6990円/m2,j市は5万5500円/m2,k市は4万5300円/m2である。選択された土地によって差が生じることはあるとしても,それらは,いずれも各市の中心部の土地の価格であり,そこに示された,i市,j市,a市,k市と土地価格が下がるという傾向は,その幅も含めて合理的な内容とみることができる。少なくとも,a市地域が山梨県内で最も地価の高い地域ということはできず,また,a市からみて,i市が15%土地価格の低い地域,圏域とみなすことはできない。
なお,同一需給圏内とは,「対象不動産が属する同一需給圏(対象不動産が属する同一需給圏(対象不動産と代替関係が成立し,その価格形成について相互に影響を及ぼすような関係にある地の不動産の存する圏域)をいう。)」(甲70・28頁)とあるように,「不動産の属する圏域」(不動産鑑定評価基準第6章,第1節,Ⅱ,1,(2)の同一需給圏の定義)をいう概念であり,同一需給圏内の調整において,個別の土地のことを考慮するものではない。
b 中心市街地への接近性について
J鑑定は,i市l町物件,△△物件,□□物件について,中心市街地への接近性の項目で,a市の「基準となる土地」よりも15%低いとする。
J鑑定士は,本件買受地が商店街まで歩いて3~5分のところにあることを前提としている。しかし,本件買受地の唯一の出入口となる北側から,h6高校入口までは7~8分はかかるのであって,J鑑定は,本件物件につき,中心市街地との接近性を高めに評価している。
他方,△△物件が所在する地域で商店が集中しているのは,h3交差点付近であり,△△物件から400mの場所である。また,i市l町物件についても,この地域の中心市街地はg7駅前ではなく,同物件は,△△のh3交差点の方が近く,そこまで600~800mくらいの距離である。
J鑑定士は,商店だけでなく,市役所等の公共施設のあるところを中心市街地として選定しているとする。しかし,本件買受地は,商店街と離れ,池に囲まれて,高台に位置し,車でのみ行き来できるところであり,中心市街地が構想されるところではない。日常利用する商店を中心に構成された中心市街地構想からすると,i市l町物件についてg7駅前を中心市街地とし,△△物件についてj市駅のところを中心市街地とするのは,偏り過ぎている。
(ウ) 有効宅地化率等について
a J鑑定は,法地部分を含めた本件買受地全体の価格を算定しており,法地については,-20%の減価をしている。
J鑑定士は,法地であっても価値を認めるべきであるとし,その根拠として,法地も,建蔽率,容積率の計算に当たって敷地面積に算入できるとする。
しかし,建蔽率,容積率は,分譲地ごとに検討されることであり,本件買受地全体のなかに法地があっても,分譲地ごとの建蔽率,容積率には有利に作用しない。
b J鑑定士は,開発法による価格の試算書(乙28)において,本件買受地7059.88m2のうち,平坦地部分5097.50m2を区画割りして分譲する場合の想定図を作成しており,これによれば,有効面積は,3793.50m2であり,本件買受地全体の53.7%である。この開発計画は現実的な計画であり,「形状による阻害を考慮した開発計画」として,採用されるべきである。この開発計画では,本件買受地の中央に道路が設計され,道路部分が本件買受地の15.5%となっており,間口狭小・奥行長大という本件買受地の不整形性は,このような道路の設計に反映されたとみることができる。
K鑑定は,有効宅地化率を55.2%としており,J鑑定士が開発法による価格の試算書(乙28)において有効宅地化率を53.7%としていることからみても,K鑑定の55.2%の有効宅地化率は適正である。
したがって,本件買受地の有効宅地部分が取引価格となり,その上で,崖造成費用がかかることも検討されるべきことになる。
(エ) 不整形地の減価がされていないことについて
a J鑑定では,「規模が大きい整形地」という要因につき,-15パーセントの減価をしている。
J鑑定士は,J鑑定書の「規模が大きい整形地」という記載は,「規模が大きい不整形地」の誤記であるとする。しかし,J鑑定は,「基準となる土地」(2000m2)と本件買受地(約7000m2)の格差から15%減としているのであり,本件買受地の不整形性は考慮されていない。
J鑑定士は,平成28年8月1日付け「不動産鑑定評価に係る補足意見書」(乙15)において,J鑑定では,「規模の減価率と形状(不整形地)による減価率を併せて査定している。これは,同一形状の不整形地であっても,規模の大小によって宅地としての利用効率が変化すること,すなわち大規模地であれば形状による阻害を考慮した開発計画が可能となり,減価の程度が小さくなること等を考慮したためであり,相互に関連する両要因を適切に評価に反映している。」と述べる。しかし,上記意見書がJ鑑定で想定したとする想定開発図では,不整形性は考慮されずに開発計画が策定されている。
b J鑑定において「基準となる土地」とされている土地は,間口40m,奥行き50mの整形地であるが,本件買受地は,間口8m,奥行105mの不整形地である。また,「基準となる土地」は,「幅員6mの舗装市道に等高に接面」とあるところ,本件買受地は,最高で13mの高台にあり,北側,東側及び西側が法地に接面していて出入りができず,立木,雑草等が繁茂しているため,進入路は北東端の幅約6mの通路の1か所であるが,J鑑定においては,こうした本件買受地の接面については全く検討されていない。本件買受地は,上記のとおり,三方が崖で,8mの間口のみが公道に接し,その間口が105mの奥行のある土地の唯一の進入口であったのであり,舗装市道に等高に接している「基準となる土地」とは,面積の相違をみるだけでは解消できない質的な弱点を有しているのであるから,不整形地としての算定がされなければならない。
ウ 開発法による価格について
(ア) J鑑定書には想定開発図(乙16)が添付されておらず,それだけでは第三者が検証できないものであり,不適正である。
さらに,J鑑定書には,開発計画として,分譲総区画数が28区画と記載されているところ,J鑑定士は,これは27区画の誤記であるとするが,このような誤記があることは,想定開発図の不存在と合わせ,第三者による検証を拒絶するものであり,不適正である。
(イ) 法地について
a J鑑定は,全体面積7059.88m2につき,法地を30%とみているが,それにもかかわらず,道路1620m2,公園・緑地900m2を除いた土地の全部を有効面積4539.88m2として,販売対象としている。
しかし,法地の大半を占める崖地は,道路から13mもの高さがある崖地であって,この崖地を含む法地を販売対象としていることは,J鑑定の誤りである。
そして,30%を法地とすると,法地面積は2100m2となり,これに,法地以外の平坦地に造成する道路部分1620m2を加えると,非有効面積は3339.88m2となり,有効面積は,J鑑定書の4539.88m2ではなく,3339.88m2となって,1200m2減少する。これにJ鑑定書の販売価格である8万4000円/m2を乗じると,販売総額では1億0800万円の減少となるから,その他の減額要因を抜きにしたとしても,開発法による算定は,1億5000万円が相当である。
b J鑑定士は,法地の一部は造成せず,自然法面の状態で宅地分譲するという売却形態であるとするが,造成されない法地の所有者は宅地の購入者であり,法地部分も価格に含まれ,購入者がその管理をするというのであれば,それは売価の差で補えるものではなく,そのような販売計画には現実性がない。
c また,J鑑定士が作成した開発法による価格の試算書(乙28)では,法地分は販売するのか,法地の管理はどうするのか,崖地の下の部分こそ安全のために造成が必要であるところ,それは誰がするのかといったことは,いずれも不明である。分譲開発業者が,2100m2もの法地について,分譲後も責任を持たされるとすると,そのことは,分譲開発業者に売却するときの土地価格に重大な影響を及ぼすのであって,そのことは格段の減額事由とされなければならない。
d 仮に,法地上に分譲住宅を建設することが可能であるとして,本件買受地の価格を算定するのであれば,そのことをJ鑑定書に明記しなければならず,そのことを全く開示していないJ鑑定は,不動産鑑定士の裁量権の濫用である。
(ウ) 造成費について
a 平坦地の造成費について
J鑑定士は,平坦地部分のみの造成費を2800万円としているが(乙28),実際には平坦地部分の造成で4369万円かかっており,2800万円との数値に正当性はない。
b 法地の造成費について
法地上に住居を建設することが理論上は可能であるとしても,工事費用は容易には算定し得ない。J鑑定士は,法地の土地造成費用を4万円/m2とし,本件買受地の15%(1050m2)として,4200万円と算定したとするが,その根拠は不明であり,そのように簡易に算定できるものではない。そして,実際に擁壁工事に必要とされた費用は6714万円である。
(エ) 分譲価格について
a J鑑定書は,開発計画における分譲価格を8万4000円/m2としているが,これは適切ではなく,分譲価格は6万円台/m2とみるのが適切である。
J鑑定士は,土地の公示価格の算定のために作成し,国土交通省に平成27年1月15日に提出した鑑定評価書(甲73)において,a市街地を中心とする市内の住宅地域一円について,土地は130m2で総額900万円程度(約6万9200円/m2)が取引の中心となっていると記載しており,この価格が本件買受地の分譲価格として採用されるべきである。
また,J鑑定書記載の「a市-2」の公示価格は,7万1900円/m2(平成25年1月1日)であるところ(甲4・26頁別表③),路線価は5万5000円/m2であるが,本件買受地の路線価は4万5000円/m2であり(甲38),その比率から算定すると,本件買受地の価格は5万8800円/m2となり,公示価格からみると,本件買受地の分譲価格は約6万円/m2が適正ということになる。
b J鑑定士は,開発法による価格の試算書(乙28)において,本件買受地7059.88m2のうち,平坦地部分5097.50m2を区画割りして分譲する場合の想定図を作成し,分譲総区画数を18戸としており,これは妥当であるが,1区画当たりの標準的面積は211m2であるから,1m2当たりの分譲価格を8万4000円とすると,1区画当たりの分譲価格は1770万円となり,これは,130m2,900万円という上記鑑定評価書(甲73)記載の想定額よりも870万円も高く,建物を1600万円とすると,2500万円が中心となる取引状況のなかでは販売しきれない価格となってしまうのであり,このことからも,8万4000円/m2を分譲価格とするJ鑑定書が不適切であることは明らかである。
(オ) 投下資本収益率について
J鑑定書は,投下資本収益率を8.5%としている。
しかし,公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会が発行している「不動産鑑定評価の実務に関する講義テキスト」(甲72)では,投下資本収益率は,12~15%とされており,この12~15%という数字の幅は,15%は地方で,12%は東京,大阪,名古屋の分譲地とされているのであって,本件買受地については,特に売りやすいという状況はなく,○○地区が市況として特に際立って良いという事情もないから,本件買受地については,15%が採用されるべきである。
エ 他の土地との比較について
(ア) h6高校前バス停付近の基準値価格との比較
本件買受地のうち,法地を除いた平坦部分は4948m2であり,本件買受地の売買価格である2億5200万円を平坦部分4948m2で割ると,5万0930円/m2となる。
これは,「h6高校前バス停付近」の基準値価格5万1000円(2018年度)と同等の価格である。同地は,h7街道に面し,中心市街地の真ん中の土地であり,本件買受地がそれと同額であることはあり得ない。
(イ) 総合福祉センター用地との比較
a市は,本件買受地の購入と時期を同じくして,崖地を挟んで本件買受地の隣の土地を総合福祉センターの用地として購入している。
そして,総合福祉センター用地の取得価格は,平均4万1800円/m2である。他方,本件買受地は,すべて平坦地としてみると,3万5650円/m2であるが,法地を除くと5万0930円/m2という価格となる。
本件買受地と総合福祉センター用地を比較すると,本件買受地は,総合福祉センターの土地から更に13m以上高い崖の上にあり,旧病院があったときには,エレベーターで昇っていたという不便な土地である。他方,総合福祉センターの土地は,平坦で,三方が道路であり,東西及び南側の道路は,信号機も設置され,片側1車線の市の幹線道路である。総合福祉センター用地の方が本件買受地よりも格段に価値が高いことは,市民の常識である。
路線価を比較すると,総合福祉センター用地の路線価は5万5000円であり,本件買受地の路線価は4万5000円であって(甲38),本件買受地は,総合福祉センター用地よりも20%価値の低い土地ということになる。
J鑑定士は,総合福祉センター用地の価格の鑑定も行っており,その正常価格を1m2当たり4万2935円と鑑定している(甲84)。そうすると,本件買受地は,総合福祉センター土地よりも20%価値が低いから,1m2当たり約3万4300円となる。そして,有効宅地化率が53.7%であることからすると,本件買受地の価格は,1億3980万円(3.43万円×(7059.88m2×0.537)となる。
オ 本件買受地の適正価格について
(ア) 取引事例比較法について
a 前記のとおり,J鑑定が採用したi市l町物件,△△物件,□□物件は,いずれも不適切であり,これらを採用したことは誤りである。また,上記の3取引事例の価格は,いずれも,i市,j市,k市の取引事例の中で格段に高額な物件が選ばれており,不適切な選択である。さらに,3取引事例について,a市の「基準となる土地」よりも15~18%の価格差があるとしていること,中心市街地の距離から一律15%の価格差があるとしていることも誤りである。
K鑑定は,取引事例を,まずa市から選定し,対象物件が少ない場合,i市の物件を追加して検討しており,その選定方法は適切である。
b 個別格差修正率について,J鑑定は,法地による減価率を20%,規模大による減価率を15%として,個別格差修正率を68%としており,K鑑定は,有効宅地化率による減価率を45%,規模大による減価率を5%として,個別格差修正率を52%としている。
個別格差修正率は,「形状による阻害を考慮した開発計画」として,想定される開発計画に沿って設定されるものであり,J鑑定士の見解に立ったとしても,開発法による価格の試算書(乙28)の有効宅地化率53.7%が採用されるべきであり,これはK鑑定の減価率と基本的に同様である。
(イ) 開発法について
a 法地の状況を踏まえると,27戸を造成できるとするJ鑑定の開発計画は採用できず,開発法による価格の試算書(乙28)の18戸造成が適正である。
b 有効宅地化率は,53.7パーセントが採用されるべきである。
c 分譲価格は,J鑑定士が公にしている6万9200円/m2を基準としてみると,J鑑定の8万4000円/m2は採用できず,K鑑定の6万7000円は相当額とみることができる。
d 平坦地の実際の造成工事費は,平坦地部分4900m2で4370万円であり,1m2当たり8900円であって,この工事費が基準とされる。K鑑定は,1m2当たり7000円として,総額4950万円としているが,上記の実際の工事費である4370万円からみても,適正である。
e 投下資本収益率は,15%が採用されるべきである。
(ウ) 以上のとおり,K鑑定は,適切であり,本件買受地の適正価格は,K鑑定による鑑定額である1億5000万円である。
(エ) 仮に,詳細な認定が困難であるとしても,a市は,本件買受地を少なくとも1億円は高額に買い受けたものと認められる。
(被告の主張)
a市は,J鑑定を参考に本件買受地の売買価格を決定しているところ,以下のとおり,J鑑定は,合理的かつ相当である。
ア 不動産鑑定評価における裁量権
不動産鑑定評価は,不動産鑑定士による必要な関連諸資料の収集整理及びこれらの諸資料の分析解釈の練達の程度によって異なることから,不動産鑑定士という専門家としての判断又は意見であり,必ずしも各不動産鑑定士の判断が全く同一になるとは限らない。そして,不動産鑑定評価基準においては,価格形成要因の具体的な格差率の数値等は記載されておらず,各不動産鑑定士が,地域要因,個別分析等を通じて,価格形成要因の影響力を取引実態に基づいて判定することになる。
そうすると,不動産鑑定士には,不動産鑑定評価基準に則っている限り,裁量が認められるのであって,不動産鑑定士の不動産鑑定評価は,明らかに不合理・不相当な点がない限り,不適切なものとはならない。
本件買受地の鑑定は,戸建住宅素地としての更地の不動産鑑定評価であるところ,J鑑定は,不動産鑑定評価基準に則り,必要となる市場分析・地域分析及び個別分析を行い,対象不動産に係る典型的な市場参加者を大手又は中堅の不動産開発業者等,最有効利用は分割利用による戸建住宅地と判定し,この分析結果及び判定結果を踏まえて鑑定評価額を決定しているのであって,その鑑定評価額が不動産鑑定評価基準によって要請されている手順に合致していることは明らかである。
したがって,J鑑定に明らかに不合理・不相当な点がある場合に初めて不適切なものとなることになる。
イ 取引事例比較法による比準価格について
(ア) 取引事例の選択について
a J鑑定では,i市l町物件,△△物件,□□物件を取引事例として採用している。
不動産鑑定評価基準において,採用する取引事例は,原則として近隣地域又は同一需給圏内の類似地域に存する不動産に係るもののうちから選択するものとし,必要やむを得ない場合には近隣地域の周辺の地域に存する不動産に係るもののうちから,対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合等には,同一需給圏内の代替競争不動産に係るもののうちから選択するものとするほか,①取引事情が正常なものと認められるものであること又は正常なものに補正することができるものであること,②時点修正をすることが可能であること,③地域要因の比較及び個別的要因の比較が可能であることという3つの事例比較要件を満たすことが必要となる。
J鑑定においては,主たる市場参加者を大手又は中堅の不動産開発業者等と判断した上で,当該市場参加者の立場からみて,同一需給圏を山梨県東部のm地域の住宅地域としている。山梨県東部のm地域は,山梨県において地域的なまとまりを示すものであり,本件買受地と当該地域内に所在する大規模な住宅開発素地は代替競争等の関係にあり,価格牽連性を有すると認められることから,同一需給圏と判断することは合理的である。
そして,J鑑定が採用した3つの取引事例は,いずれも山梨県東部の住宅地域に所在しており,取引事例として備えるべき上記3つの要件を満たしている。
したがって,J鑑定が採用した取引事例は,不動産鑑定評価基準からみて,合理的かつ相当である。
b 原告は,取引事例としてa市所在の土地がないことが不適切であると主張する。
しかし,取引事例としては,同一需給圏内に所在することが要求されているのであって,同一の行政区域(市)に必ず所在することまでは要求されていない。むしろ,「基準となる土地」は2000m2という比較的大きい土地であり,同一需給圏内においても類似する取引事例数は少ないため,a市内に適切な取引事例が確認できず,より適切な取引事例が市外の同一需給圏内に存する場合には,それを採用することは当然である。
K鑑定が採用したa市物件1については,a市に所在しているものの,面積が684m2であり,「基準となる土地」の面積に比して4割に満たない土地であるため,採用した取引事例と比較すると規模の類似性がやや乏しいことから,採用しなかったものである。
K鑑定が採用したa市物件2については,a市に所在しているものの,特殊事情として「売急ぎ」の事情がある。不動産鑑定評価基準運用上の留意事項に,「事情補正の必要性の有無及び程度の判定に当たっては,多数の取引事例等を総合的に比較対照の上,検討されるべきものであり,事情補正を要すると判定したときは,取引が行われた市場における客観的な価格水準等を考慮して適切に補正を行わなければならない。」と記載されているが,a市内における規模が大きく取引事情がない比較可能な住宅素地の取引事例はないため,事情補正に係る補正率の査定は極めて難しく,客観的な数値の検証が困難である。J鑑定士は,そのために,a市物件2は採用できないと判断したものである。
以上のとおり,K鑑定が採用したa市物件1及び2は,事例適格要件の①又は③を満たしておらず,不適切であって,a市の取引事例がないことが不適切である旨の原告の主張は理由がない。
c △△物件について
△△物件は,同一需給圏内に存する土地であり,用途的観点からも,住宅素地として利用することができることから,不動産鑑定評価基準上,「基準となる土地」と比較対照する取引事例として適切である。
そして,取引事例は,土地上にどのような建物が現実に建築されているかは問題ではなく,当該土地についてどのような利用方法が最有効利用であるかという用途的観点から適切か否かを判断するのであって,△△物件が鉄骨造り,倉庫付き物件であるから,取引事例として不適切である旨の原告の指摘は,明らかに不動産鑑定評価基準における取引事例の選択についての考え方を誤っている。
また,△△物件の事例価格6100万円は,鉄骨造倉庫付きの価格であるが,取引事例として採用している取引価格は,当然,配分法による土地のみの価格を求めたものであるから,鉄骨造倉庫を含めた価格であることを理由に取引事例として不適切であるとの原告の指摘は的外れである。
(イ) 取引事例の比準価格について
a i市l町物件について
原告は,J鑑定がi市l町物件を「基準となる土地」と比較し,「同一需給圏内の地位」として,i市l町物件のほうが15%低いとしていることについて,不当に低すぎると主張する。
しかし,「同一需給圏内における地位」の比較は,a市とi市の不特定の物件に係る一般的な価格水準の傾向を比較しているものではなく,「基準となる土地」が所在する特定の場所(本件買受地が所在する場所)とi市l町の取引事例が所在する場所のひと固まり同士を比較しているものである。
そして,「基準となる土地」が所在する場所は,a市内においても中心市街地に位置し,日照・通風・眺望等に優れ,開発分譲後は街路,住環境が整った新しい街並みができる住宅地として恵まれた場所であり,また,a市は,山梨県内において住宅地の価格水準が最も高額な都市でもある。一方,取引事例が所在するi市l町は,既存の住宅地域であり,価格時点現在における取引事例の推定価格は1m2当たり4万0616円であり,i市内における一般的な住宅地である。
このように,a市における住宅地として恵まれた「基準となる土地」が所在する地域とi市l町物件が所在するi市l町の既存の住宅地域を比較した上で,同一需給圏内における地位としては,前者より後者が15%劣ると判断しているのである。
したがって,J鑑定において,i市l町所在の土地と「基準となる土地」とを比較し,同一需給圏内における地位として,i市l町物件の方が15%低いと判断したことは合理的かつ相当である。
なお,原告は,a市とi市の基準宅地の価格(基準宅地は,地域における最も高い土地を言い,一般的には商業地域を指す。)同士を比較して,同程度が適切と指摘しているが,いずれも対象不動産と代替・競争関係にない商業地域における最高地同士の比較であり,取引事例比較法の考え方を誤ったものといわざるを得ない。
b △△物件について
原告は,△△物件について,「中心市街地への接近性」について,15%のマイナスとしていることに問題があるとも主張する。しかし,商業施設の立地のみを理由として,△△物件の中心市街地への接近性が優るとはいえない。中心市街地への接近性の格差は,「基準となる土地」と△△物件を比較した相対的な価格判定であり,市役所,店舗,郵便局,病院,銀行等が集まっているa市中心市街地に位置する「基準となる土地」と,商業施設にのみ近接している△△物件とでは,土地価格差を反映すべき中心市街地への接近性としては,後者が劣ると判定することは妥当である。
(ウ) 法地の減価率について
a 法地に一定の経済的価値があること
(a) 法地の価値については,単独利用の可否のみならず,有効宅地部分への寄与の程度も判断する必要があり,日照,通風,眺望等の居住環境に係る価格形成要因にプラスの影響を及ぼすことや建蔽率,容積率等の計算に当たって敷地面積に算入できること等を鑑定評価においては考慮しなければならない。
(b) 法地は,造成により平坦地として利用できる可能性もある。本件買受地については,土地を掘り下げ,擁壁の設置を必要最小限に抑えることにより,法地を宅地利用することが可能であり,本件買受地の法地に活用の余地がないとの原告の主張は,原告が平坦な宅地面積の少ない地域における法地を利用した宅地分譲の実例を認識せず,法地を利用した宅地分譲の実務を理解していないことを示すものといわざるを得ない。そもそも,不動産の鑑定評価においては,対象不動産の最有効利用を検討しなければならないところ,費用を最小限に抑えながら,最大の効用を生み出す方法を考えなければならないのであって,法地であっても価値が生じる可能性があれば当然検討をしなければならない。
(c) 相続税等の税制においても,法地については,一定の経済的価値を認めた上で,課税が行われており,原告の主張は,現状の税制の実務的な処理とも矛盾する。
(d) J鑑定においては,法地の有効性,平坦地としての利用可能性等を考慮した上で,法地部分について70%の減価を行い,本件買受地の法地を含む減価率を20%と査定したものであって,それが合理的かつ相当であることは明らかである。
b a市風致地区条例(平成26年a市条例第37号,甲82,以下「風致地区条例」という。)上の寄与について
分譲地の規制については,風致地区条例4条(1)ウ(オ)により,それぞれの分譲地において,木竹が保全され,又は適切な植栽が行われる土地の面積の当該敷地の面積に対する割合(以下「緑化率」という。)は10%以上が必要となる。
次に,開発区域については,風致地区条例4条(5)アにより,開発区域全体についても,緑化率10%以上が必要となる。すなわち,本件買受地の面積は7068.06m2であることから,本件買受地を開発分譲する場合には,約706m2の緑地が必要となる。
K鑑定における有効宅地面積は3904.06m2であることから,各分譲地において10%の緑化を行うので,約390m2の緑地は分譲地で確保できる。しかし,開発区域全体に必要な緑地は706m2であるから,分譲地の緑地390m2以外に最低316m2の緑地が必要不可欠となる。K鑑定の開発計画では,平坦地部分は,有効宅地,道路,公園としてすべて利用していることから,開発区域において最低限必要な緑地は法地を緑化することによって充足していることとなる。
このように,本件買受地の法地は,本件買受地を開発分譲する上で必要となる風致条例上の宅地造成の許可要件を満たす上で寄与するものであるが,K鑑定においては,法地の価値をゼロとしている。
以上のとおり,本件買受地の法地部分は,戸建住宅地として開発分譲するための開発区域全体としての緑化率に寄与しており,その意味でも経済的価値が認められることは明らかである。
(エ) 規模が大きい不整形地の減価率について
a 本件買受地が不整形地であることを適切に考慮していること
本件買受地のように規模が大きい土地については,間口・奥行・形状・規模等の各要因が相互に関連して価格が形成されており,J鑑定においては,間口・奥行・形状についても,規模と一体の減価要因として査定されている。具体的には,間口狭小については,開発道路の進入路部分として,また,奥行長大については,平坦地部分に開発道路を敷設することにより有効な宅地分譲計画が可能となること,さらに,不整形部分を公園等の緑地とするなどして形状による阻害を考慮した形で開発計画を行うことが可能となる。本件のような大規模地の宅地開発においては,大規模であることと不整形(間口狭小・奥行長大)であることは,最有効使用である開発分譲の想定において密接に関連していることから,これらの要因を一体として減価率を査定することは,鑑定評価実務において一般的に行われる処理である。すなわち,不整形であることは,規模が大きい土地であれば,その不整形であることを考慮した開発計画が可能であるため,相対的に不整形であることの減価は小さくなるのである。
J鑑定においては,本件買受地の不整形状の大部分は,開発計画によりその影響を吸収することができ,特に,北東端,南東端,南西端,北西端部分の突出した部分については,効用も考慮した上で法地として減価していることから,不整形地による減価を僅少と判断しているのである。J鑑定において,規模が大きい不整形地として間口狭小・奥行長大も考慮した上,減価を一体として評価していることは,本件買受地のような大規模開発素地の個別的要因に即した処理であり,不整形(間口狭小・奥行長大)の影響は僅少であるとしたことは,合理的かつ相当である。
b 規模減価が合理的かつ相当であること
J鑑定のとおり,規模の減価率は,画一的に数値化することはできず,常に変動する経済情勢や取引市場の状況,対象不動産の所在する地域の特性,対象不動産の個別性等により異なるため,鑑定評価に当たって多面的な分析が必要となる。
J鑑定は,本件買受地の最有効使用が分割利用による戸建住宅地であることを踏まえ,本件買受地が中心市街地に所在する高台地であり,a市においては,中心市街地の住宅地への需要が強いことから,本件買受地のように住宅地として良好な環境を有している大規模の開発素地には希少性が認められ,価格時点現在の金融資本市場の状況から事業資金は低金利で調達が可能であることをも考慮し,規模により取引総額が嵩み,市場性が減退することに伴う減価については,それほど強く認められないと判断しているものである。
その上で,J鑑定は,「基準となる土地」として本件買受地と同じ場所に所在する2000m2の長方形地を想定し,「基準となる土地」との比較において,形状(不整形),規模の観点からの有効利用率(投資効率)及び市場動向をも考慮して,15%の減価が妥当であると判断しているものであり,上記判断が十分な根拠を持ち,合理的かつ相当であることは明らかである。
ウ 開発法による価格について
(ア) 分譲区画数の誤りについて
J鑑定書の分譲区画数28戸との記載は誤記であり,27戸が正しい。
しかし,この誤記は,J鑑定における開発法の価格の適正さを欠く要素とはならない。なぜならば,J鑑定の開発計画では,1区画当たりの標準的面積は169m2,有効面積を4539.88m2とし,販売総額は,分譲単価に開発の有効面積を乗じて査定しており,分譲面積と有効面積に変更がなければ,求める開発法による価格には影響はないからである。
(イ) 27戸の開発計画が可能であることについて
原告は,J鑑定における本件買受地の法地部分を宅地分譲する計画は不可能であると主張する。
確かに,J鑑定の開発計画では,法地の一部は造成せず,自然法面の状態で宅地分譲することを想定している。しかし,J鑑定の開発計画において,開発分譲する15%の法地については,開発道路から3m程度土地を掘り下げ,平坦地部分を造成した上で,深基礎工法等を用いて平坦地部分を中心に住宅を建設することを想定している。そして,擁壁については,当該土地を掘り下げた部分等に施すことを想定しており,原告が想定するような東西の既存道路面から本件買受地の開発面まで積み上げる高層擁壁を想定していない。開発道路から3m程度掘り下げることにより,法面が最も多い開発法想定図(乙16)の⑮の区画においても2階建て延べ床面積100m2超の住宅を建設することが可能である。なお,実際に,傾斜地の分譲地では,法地を自然法面の状態で開発分譲している事例が存在している。
したがって,J鑑定における本件買受地を27戸の戸建宅地とする開発計画は,本件買受地の最有効利用に即した実現可能なものである。
(ウ) 造成工事費について
a 平坦地の造成費について
J鑑定においては,平坦地部分については,地元建設業者から,5000円~6000円/m2程度で施工することが可能であるとのヒアリング結果を得ており,実際に5000円~6000円/m2程度で造成されている実例もある。
そして,大規模宅地の造成工事は,小規模の工事と比較して効率化が可能となること等から,材料費,車両費,人件費等の単価が相対的に低位となり,1m2当たりの単価が下がるのは当然である。
また,原告が摘示する土地価格比準表(甲5・7頁)は,最低額の宅地造成工事費が9000円/m2となっているが,これは,山梨県内で造成工事を行っている業者へのヒアリング結果や実際の造成事例からも乖離しており,明らかに山梨県内の実情に合致していないであって,東京等の大都市圏における造成工事費が山梨県よりも高額となることの証左である。そもそも,土地価格比準表は,公共用地の取得のための大量評価を目的としたものであって,目安にすぎず,不動産鑑定評価基準上,不動産の鑑定評価は,「現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格」を求めるものであり,土地価格基準表等の参考数値をそのまま引用するのではなく,現実の市場を調査・分析して得られた数値を採用しなければならない。
したがって,J鑑定において採用した本件買受地の平坦地部分の造成工事費5500円/m2は,合理的かつ相当である。
b 法地の造成費について
原告は,本件買受地に本件新保育所を建設するために,擁壁工事費で1億0500万円がかかっており,J鑑定における造成工事費7000万円は低すぎる旨主張する。
しかし,そもそも本件新保育所の擁壁工事は,本件新保育所の建設に伴い,通園用の安全を確保し,車両の往来をスムーズにするため,西側では既存の法面を削り,道路を拡幅して歩道を新設したほか,東側においてもa市所有地を含む一部既存の法面を削り,道路拡幅を伴う工事である。さらに,実際の工事費は,北側に隣接するa市所有の旧福祉センター棟跡地の切土及びその既存擁壁の撤去のほか,本件新保育所の敷地内に新たに敷設する道路工事費等が組み込まれた工事費となっている。本件新保育所開設のための道路拡幅工事等を含む多額の造成費用を開発法の価格査定において計上することは,本件買受地の最有効利用を前提とした価値判断により求められるものであり,実際の使用に係る造成工事費と不動産鑑定評価上想定された造成工事費が異なることは何ら不自然なことではない。
J鑑定は,前記のとおり,開発分譲する15%の法地については,開発道路面から3m程度土地を掘り下げ,平坦地部分を造成した上で,その平坦地部分等に住宅を建設することを想定している。そして,擁壁については,当該土地を掘り下げた部分に施し,東西道路面に接している部分については従前の擁壁を利用することから,4万円/m2で行うことができる。これは,費用対効果の観点から,最小の費用で最大の効用を生み出す本件買受地の最有効利用を検討したものである。
したがって,原告の指摘する本件新保育所設置に係る実際の擁壁工事費と不動産鑑定評価上の擁壁工事費が異なることは当然であり,J鑑定の擁壁工事費が低すぎる理由にはならず,J鑑定における擁壁工事費は,本件買受地の最有効利用を踏まえた金額であり,合理的かつ相当なものであることは明らかである。
(エ) 分譲価格について
原告は,J鑑定における分譲価格である8万4000円/m2が高額に過ぎると主張する。
しかし,J鑑定において,分譲価格を査定するために用いた取引事例比較法の取引事例は,いずれもa市に所在し,g1駅から2km程度の距離にある本件買受地と類似した土地であり,取引事例の選択としては適切である。一方,原告が提示する取引事例や販売広告事例等は,実際のa市における取引事例等としては低額の事例である。
そして,一般に,本件買受地のように立地条件の優れた大規模分譲素地は,開発の技能及び実績を有する事業者が主たる需要者であり,開発に当たっては分譲地の競争力を高めるため,周辺の既存住宅地域と差別化を図り,街路や住環境の整った新たな街並みが造られることになる。本件買受地は,開発分譲により「■■タウンヒル」のような名称で販売されることが想定され,高台地にあり,富士山も望めるような日照・通風・眺望に優れた住環境を有する分譲住宅地になる。
また,山梨県内において,住宅地の最高価格地の場所はa市内であり,原告が指摘した甲府市内の事例と比較して,本件買受地の分譲価格が高くなることは当然であり,新しく開発された住宅地は既存の住宅地よりも高値で取引されている。
さらに,a市内の住宅地が山梨県内で最高価格地であるのは,東京への通勤が可能な地域であることによるものであり,住宅地の需要として首都圏の他のエリアとも競合することから,本件買受地のように住環境に優れた新しく開発された住宅地域の分譲単価が8万4000円/m2となることは,市場原理に則ったものといえる。
したがって,J鑑定において,本件買受地の開発法による分譲単価を8万4000円/m2とした判断が合理的かつ相当であることは明らかである。
(オ) 投下資本収益率について
原告は,J鑑定が投下資本収益率を8.5%としていることが適切でないと主張する。
しかし,本件買受地は住宅需要の強いa市の中心市街地に所在する,住宅地として良好な環境を有している大規模な開発素地として希少性が認められる土地である。そして,投下資本収益率については,更地分譲の場合には,建売住宅分譲及びマンション分譲に比べ,事業総額が少なく,また建物の資産劣化リスクがなく,建物の瑕疵担保責任等を負わないこと等からも,事業リスクは相対的に小さくなることから,投下資本収益率は低くなる。
そもそも,投下資本収益率は,借入金利率・開発利潤率・危険負担率から構成されるが,実際の市場において市場参加者となる開発業者は,販売純利益率及び販売粗利益率により投資採算性を判断し,開発素地に対する投資額を決定している(甲5)。
J鑑定は,投下資本収益率について,画一的な数値ではなく,不動産鑑定評価において必要な市場分析,地域分析及び個別分析を行い,それぞれ対象不動産の属する地域,画地条件及び開発計画等に即した投下資本収益率を査定している。J鑑定における8.5%いう数値は,このような分析結果を踏まえたものであり,不動産開発業者が重視している販売粗利益率及び販売純利益率からの検証においても妥当な水準となっている。
一方,原告が提示する「不動産鑑定評価の実務に関する講義テキスト」(甲72)は,不動産鑑定士の資格を取得しようとする者が使用する研修資料であり,テキストに示された数値は,特定の地域,不動産を前提とするものではなく,参考値にすぎない。前記のとおり,投下資本収益率の算定においては,対象不動産に即した分析を行わなければならないにもかかわらず,上記テキストでは,更地分譲と建売分譲を一括して記載していることからも明らかなように,不動産の取引市場の実態に即した分析が行われているとはいえないのであり,上記テキストのみに依拠した原告の主張は,J鑑定の投下資本収益率が不相当であることの理由にはならない。
以上のとおり,J鑑定における投下資本収益率8.5%が合理的かつ相当なものであることは明らかである。
エ L意見書について
L意見書には,以下の問題点があり,信用できないことは明らかである。
(ア) L意見書は,取引事例法による比準価格の「基準となる土地」の価格について,「一般にバス便の郊外の坂のある高台地は,少子高齢化も相まって敬遠される傾向があり,需要が弱く,減価要因となる。」として,「基準となる土地の価格」について-5パーセントの修正をしている。
しかし,本件買受地は,a市の中心市街地に所在し,a市では高台地であっても住宅地の需要は強いのであって,-5パーセントの減価修正をすることは相当ではない。
(イ) L意見書は,本件買受地の法地部分を価値ゼロとして30%減価している。しかし,法地部分についても一定の価値があることから,価値ゼロと判断するのは相当ではない。
(ウ) L意見書は,法地部分を価値ゼロと判断しているのであるから,法地部分については存在しないものとして取り扱わなければならないにもかかわらず,法地部分を別に不整形地として5%減価している上,規模が大きいことによる減価についても法地部分を含んだ面積を基に26%減価しており,個別格差修正率において二重の減価をしている。
(エ) L意見書では,「基準となる土地」と取引事例の面積の規模減価率の割合が,「基準となる土地」と本件買受地にも正比例的に当てはまるとしており,明らかに過大となっている。
オ K鑑定に対して
K鑑定には,以下の問題点がある。
(ア) K鑑定の比準価格は,標準的画地の価格が開発法により検証される価格と大きく乖離している。K鑑定が想定した分譲価格,造成費,販管費及び一般管理費並びに投下資本収益率(15%)を前提に試算しても,標準的画地は5万2000円/m2になるにもかかわらず,K鑑定では標準的画地を3万7400円/m2としており,標準的画地の価格が低すぎる結果となっている。
(イ) 取引事例における査定価格の補修正が妥当でない。
K鑑定は,a市物件2について,高低差の減価率-15%としているが,この取引事例は,切土のほか,四方に擁壁の設置を要する土地であり,K鑑定が想定した造成費用としての4108円/m2は明らかに低額であり,高低差に係る標準化補正が不十分である。
K鑑定で採用されている山梨県i市n町〈以下省略〉所在の取引事例X3(以下「i市n町物件」という。)は,開発事業者が造成済みの6区画を提携の不動産業者に一括売却した事例であり,この提携業者との売買は,画地数にかかわらず,概ね相場の半値の1万5000円~1万7000円/m2で取引したものであり,このような特殊な事情があるにもかかわらず,取引事情を踏まえた補正がされていない。
(ウ) 法地部分の減価が不適切である。
K鑑定の想定計画では,平坦地部分を全て有効宅地及び広場等としており,法地部分を緑地化することにより風致地区条例の開発規制(緑化率)をクリアしていることになり,法地部分の価値が顕在化しているにもかかわらず,法地の価値をゼロとして評価している。
(エ) 分譲価格が低廉である。
K鑑定の分譲価格(平均単価6万7000円/m2)は,本件買受地周辺の○○地区の取引事例と比べ,明らかに低廉である。また,新たに開発される大規模分譲素地は,周辺の既存住宅地域よりも住環境が整備され高額となるが,K鑑定の平均分譲価格は,そのこととも矛盾する結果となっている。
(オ) 造成工事費が妥当でない。
K鑑定の想定計画では,平坦地部分のみを造成することとし,その造成工事費を1万円/m2としているが,地元建設業者への取材によれば,平坦地部分の造成工事費は,5000円~6000円/m2であり,造成工事費が過大である。
(カ) 投下資本収益率が妥当でない。
K鑑定は,投下資本収益率を年15%としているが,8.5%が妥当である。
(キ) 試算価格の調整が妥当でない。
不動産鑑定評価においては,各手法は,対象不動産の適正な価格を算出するための方法であり,各手法の評価の精度が高まれば,各手法の価格は収斂し,大きく乖離する結果とはならない。K鑑定では,比準価格と開発法による価格に約18%もの乖離が生じているにもかかわらず,各試算結果の再吟味,各手法間の共通要因の整合性,各試算価格間に開差が生じた理由及び各試算結果の説得力に係る判断等の具体的な記載がないままに,両価格を「説得力は高い」,「同等の信頼性を有する」と判断しており,不動産鑑定評価基準に示された試算価格の調整を適切に行っていない。
(4) A前市長宅に直結する道路部分を買い受けたことが違法であることについて
(原告の主張)
ア 本件売買契約は,A前市長宅の自宅車庫に直結する本件道路を市の負担で敷設し,それをA前市長に無償で使用させることを条件とするものであり,このように地方自治法に違反する条件を付した土地の購入はすべきではなく,本件買受地のうちA前市長宅の自宅車庫に直結する本件道路部分を買い受けたことは違法である。
イ a市は,本件新保育所用地と接し,A前市長がなお所有している土地(3198番1,3211番1)にまで道路敷設工事をし,本件買受地上の部分と合わせて一体として,A前市長にその使用を認めている。本件道路の敷設は,何ら公共性を有しない私的個人の優遇であり,当該部分を買い受けたことは裁量権の濫用行為である。
ウ A前市長にとって,A前市長宅に直結する道路が不可欠であり,これを敷設することが必要であるならば,そのことを土地の売買の条件に組み込むことはいくらでも可能である。道路部分を共有とする方法,所有面積を半分ずつとして半分をA前市長名義として共同利用する方法などにより購入する土地面積を減少させ,道路造成費を共同負担とすれば良いことである。
エ 本件新保育所の敷地には,本件道路が通っており,本件道路の奥にA前市長宅があり,本件道路の左側に駐車場が並んでいる。本件新保育所の入口には,門扉や塀はなく,誰でも道路を通行できるような状態になっている。そのため,本件道路により,誰でも本件新保育所敷地に自由に出入りすることができる。
本件新保育所敷地と個人宅への進入道路が区別されることは,最低限不可欠なセキュリティー対策であり,Y市長が,A前市長宅に直結する本件道路部分を購入したことは,裁量権の濫用である。
(被告の主張)
ア 本件道路については,園児の保護者らが車で園児を本件新保育所に連れてくるときに,時間帯によっては車が集中して渋滞・混乱するおそれがあるので,幅員5mのすれ違いが可能な道路を新設するとともに,園児を本件新保育所に連れてくる保護者らのため,駐車可能なスペースを44台分設けたのであり,本件道路はA前市長のために建設したものではない。
イ a市が賃貸借契約により旧病院用地を賃借していた当時も,道路位置は異なるが,A前市長宅に通じる進入道路が存在し,A前市長は,車で自由に出入りすることができた。
そして,A前市長から,a市が本件買受地を購入する前提条件として,これに代わりうる進入道路を提供してほしい旨の申し入れがあった。
そのため,上記の目的で本件道路を建設し,それをA前市長宅への進入道路として併用することとし,使用許可の方法により,A前市長にも了承してもらい,初めて本件売買契約が成立したものである。
ウ a市が本件買受地を購入した時には,保育所建物,付属施設,進入道路をどこにどのように建設するかは決まっていなかった。したがって,道路部分だけをあらかじめ特定して,そこを共有するとか,面積割するなどして土地を購入するといったことは,本件新保育所の自由な創造性ある設計計画あるいは本件新保育所の使い勝手の便利さを損なう結果となり,a市としては当初から考えたこともなかった。
エ A前市長の所有地にまで本件道路が敷設されていることについては,A前市長から,この部分を将来的に市に寄付する旨の申出を受けており,道路としていることに何ら問題はない。
オ セキュリティー問題については,防犯カメラが設置されていること,保育士が園庭を見渡せること,駐車場と園庭との間に1mの柵があることなど,十分に対策がされている。
(5) 本件覚書を交わしたことが違法であることについて
(原告の主張)
ア 地方自治法238条の4,「a市財産の交換,譲与,無償貸付等に関する条例」(平成17年a市条例72号。甲12)4条の2により,市が本件買受地を無償で貸し付けたり,地役権を設定したりすることは認められない。
イ 本件覚書は,A前市長らの所有する土地を要役地とし,本件買受地上の本件道路部分を承役地とする典型的な通行地役権を設定するものであり,無償での設定や個人に対する設定は違法である。
ウ また,A前市長に対する本件買受地上の道路使用の許可は,A前市長らの所有する土地を要役地とし,本件買受地上の本件道路部分を承役地とする典型的な通行地役権の設定であり,違法である。
エ 上記イの本件覚書の締結と上記ウの道路使用の許可は,一体のものである。
そして,これらの違法行為が行われたことは,本件支出命令によりa市に損害が発生している根拠となる。
(被告の主張)
本件買受地は,所有権移転登記がされた平成26年7月18日をもって行政財産となっており,本件覚書により,本件道路が完成した平成27年9月16日,地方自治法238条の4第7項の規定に基づいて,A前市長に対し,本件道路についての一時使用許可を与えたものであり,これは,原告が主張する地方自治法238条の4第2項,第7項とは何ら関係がない。
(6) 損害
(原告の主張)
本件買受地の購入により市が被った損害額は,次のとおりである。
ア A前市長宅に直結する本件道路部分を買い受けたことによる損害
(ア) 本件買受地の1m2当たりの購入額は3万5700円である。
(イ) A前市長宅に直結する本件道路部分の面積は600m2(幅5m×長さ120m)である。
(ウ) a市の負担額は,購入額の50%である。
(エ) したがって,以下の計算式によるa市の負担額1071万円がa市の損害である。
(計算式)
3万5700円×600m2×50%=1071万円
イ 本件買受地のうち上記アの道路部分を除く部分を高額で買い受けたことによる損害
(ア) 上記アの道路部分を除く本件買受地の総面積は,6459.88m2である。
(イ) 本件買受地(全体面積7059.88m2)の適正価格は,K鑑定によれば1億5000万円であり,取得価格2億5200万円との差は,1m2当たり1万4447円であるから,そのうちのa市負担分は7223円である。
(ウ) したがって,本件買受地のうち上記アの道路部分を除く部分を高額で買い受けたことによるa市の損害は,以下のとおり,4665万円となる。
(計算式)
7223円×6459.88m2≒4665万円
ウ アとイの合計額は,5736万円となる。
エ なお,上記アの損害の発生が認められず,本件買受地全体を高額で買い受けたことが違法であると判断された場合,取得価格2億5200万円と適正価格1億5000万円の差額の1億0200万円が違法支出となるから,a市の損害額はその50%の5100万円となる。
オ 以上のとおり,a市の損害が5050万円を超えるが,原告は,内金として5050万円をY市長に請求するよう求める。
(被告の主張)
争う。
第3  当裁判所の判断
1  本案前の争点(本件訴えのうち,Y市長が本件売買契約を締結した行為を違法な財務会計行為として,Y市長に対し損害賠償請求をすることを被告に求める部分が適法か否か)について
(1)  地方自治法上,公金の支出は,支出負担行為(支出の原因となるべき契約その他の行為)及び支出命令がされた上で,支出行為(狭義の支出行為)がされることによって行われるものであるところ(同法232条の3,232条の4第1,2項),これらは公金を支出するために行われる一連の行為ではあるがそれぞれ独立した財務会計上の行為であって,同法242条2項本文所定の監査請求期間は,それぞれの行為があった日から各別に計算すべきものである(最高裁平成14年7月16日第三小法廷判決・民集56巻6号1339頁参照)。
本件では,前記前提事実(6)アの本件監査請求に係る監査請求書の記載からすれば,本件支出命令及び本件支出行為のほか,本件売買契約の締結を財務会計上の行為として監査請求の対象とするものと解されるところ,本件監査請求がされた平成27年7月15日の時点では,平成26年5月8日の本件売買契約の締結から1年以上経過しているから(前記前提事実(2)ウ(ア),(6)ア),本件監査請求のうち,本件売買契約の締結に係る部分は,監査請求期間を経過しており,地方自治法242条2項ただし書にいう「正当な理由」がない限り,不適法であるといわざるを得ない(なお,本件監査請求のうち,平成26年7月23日の本件支出命令及び同月25日の本件支出行為に係る部分は,監査請求期間内にされており,適法であることは明らかである。)。
そこで,以下,上記の「正当な理由」があるかについて検討する。
(2)  普通地方公共団体の執行機関,職員の財務会計上の行為が秘密裡にされた場合,あるいは,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合には,地方自治法242条2項ただし書にいう「正当な理由」の有無は,特段の事情のない限り,当該普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかにより判断すべきである(最高裁平成14年9月12日第一小法廷判決・民集56巻7号1481頁参照)。そして,「監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができた」というためには,当該行為に違法又は不当な点があるか否かを監査請求人自ら判断することが困難ではない程度に,当該行為の具体的な内容を知ることができたことが必要というべきである。
(3)  本件では,証拠(甲11,131)及び弁論の全趣旨によれば,本件新保育所及び本件買受地の購入については,特に秘密裡に進行していたものではない上,遅くとも平成27年3月16日に開催された平成27年度a市議会第1回定例会において,a市議会議員から,本件買受地に関し,敷地内に道路を敷設する旨の合意がA前市長らとの間でされていることや,2億5000万円という取得価格の是非等に関する質問がされ,a市福祉保健部長から答弁がされていることが認められ,さらに,それ以前のa市議会においても,本件新保育所や本件買受地に関してa市議会議員からの質問とa市の答弁がされたことが認められる。
そうすると,遅くとも上記の平成27年3月16日の時点では,原告が,a市の住民として,相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて本件監査請求をするに足りる程度に本件売買契約の内容を知ることができたといえるところ,原告は,同日から約4か月後の同年7月15日に本件監査請求をしたのであるから(前記前提事実(6)ア),相当な期間内に本件監査請求をしたものとはいい難いのであって,本件監査請求のうち本件売買契約の締結を財務会計上の行為とする部分が監査請求期間を超えてされたことについては,地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由があったとはいい難い。
(4)  原告は,上記の正当な理由について,原告が本件買受地の売買契約の締結が違法であることを知ったのは,平成27年5月11日付けのビラ(甲11)がa市の全戸に配布されたときであり,その後,a市に対して必要な情報開示請求を行い,資料を収集した上で,L鑑定士に意見書の作成を依頼し,L意見書を入手した後,上記ビラが配布された時期から約2か月後の同年7月15日には本件監査請求をしたものであるから,正当な理由があると主張する。
そして,前記前提事実,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,平成27年5月11日にh8会という市民団体による「これでよいのか新保育所建設」というビラ(甲11)がa市内において配布され,そこには本件買受地に係る価額等に問題がある旨の記載があったこと,原告は,同月13日以降,本件売買契約に係る契約書等の情報開示請求を行い,その開示決定を受け(甲116~120),同月19日付けのL意見書を作成してもらったことが認められる。
しかし,前記のとおり,平成27年3月のa市議会,更にはそれ以前のa市議会において,本件新保育所や本件買受地の問題に関してa市議会議員からの質問とa市の答弁がされ,上記ビラでもそのことについて言及されているのであるから(甲11),同年5月11日に上記ビラが配布される前の時点でも,a市内の一般住民において,相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて本件監査請求をするに足りる程度に本件売買契約の内容を知ることができる状況にあったものといえる。そして,a市議会で質問がされているような本件売買契約における価額等の問題状況を知れば,本件監査請求をし得たものと評価せざるを得ない。そうすると,原告が上記ビラの配布を受けてからは,上記情報公開請求等をした上で速やかに本件監査請求をしたといえるとしても,そのことは正当な理由の有無についての前記判断を左右するものではないというべきである。
(5)  よって,本件監査請求のうち,本件売買契約の締結を財務会計上の行為とする部分は,監査請求期間を経過しており,そのことについて正当な理由がない不適法なものであるから,本件訴えのうち,Y市長が本件売買契約を締結したことを違法な財務会計行為として,Y市長に対し損害賠償請求をすることを被告に求める部分については,適法な監査請求を経ていないことになり,不適法といわざるを得ない。
2  本案の争点(Y市長の本件支出命令及び本件支出行為に係る行為が違法であり,これによってa市に損害が発生しているか否か)について
(1)  本件の判断枠組み
ア 前記1のとおり,本件訴えのうち,本件売買契約の締結を財務会計上の行為とする部分は不適法であるから,本件では,それ以外の,①専決権者である副市長が行った本件支出命令及びa市会計課が行った本件支出行為が違法であるか,②これらが違法である場合に,Y市長において,副市長等が財務会計法規上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失により上記違法行為を阻止しなかったといえるかについて検討することになる。
イ そして,前記ア①に関しては,前記1(1)のとおり,支出負担行為,支出命令,支出行為がそれぞれ独立した行為であるところ,普通地方公共団体が締結した支出負担行為たる契約が違法に締結されたものであるとしても,それが私法上無効ではない場合には,当該普通地方公共団体が当該契約の取消権又は解除権を有しているときや,当該契約が著しく合理性を欠きそのためその締結に予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存し,かつ,当該普通地方公共団体が当該契約の相手方に事実上の働きかけを真摯に行えば相手方において当該契約の解消に応ずる蓋然性が大きかったというような,客観的にみて当該普通地方公共団体が当該契約を解消することができる特殊な事情があるときでない限り,当該契約に基づく債務の履行として支出命令及び支出行為をする権限を有する職員は,当該契約の是正を行う職務上の権限を有していても,違法な契約に基づいて支出命令を行ってはならないという財務会計法規上の義務を負うものとはいえず,当該職員が上記債務の履行として行う支出命令がこのような財務会計法規上の義務に違反する違法なものとなることはないこと(最高裁平成25年3月21日第一小法廷判決・民集67巻3号375頁参照)を踏まえた上で,検討されるべきである。
したがって,前記ア①の本件支出命令及び本件支出行為の違法性については,〈ア〉その前提となる本件売買契約の締結が,Y市長の裁量権の逸脱又は濫用により,地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反し,違法であるというときに,さらに,〈イ〉Y市長の裁量権の逸脱又は濫用が著しいものであり,本件売買契約を無効としなければ地方自治法2条14項,地方財政法4条1項の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められ,本件売買契約が私法上無効となるのか否か(最高裁平成20年1月18日第二小法廷判決・民集62巻1号1頁参照)を検討し,〈ウ〉本件売買契約が私法上無効でないと解されるときには,客観的にみてa市が本件売買契約を解消することができるような上記の特殊な事情があるのか否かを検討すべきことになる。
ウ そして,前記イ〈ア〉に関しては,地方公共団体の不動産買取契約の締結については,当該不動産を買い受ける目的やその必要性,契約の締結に至る経緯,契約の内容に影響を及ぼす社会的,経済的要因その他の諸般の事情を総合考慮した合理的な裁量に委ねられており,当該契約に定められた買取価格が鑑定評価等において適正とされた正常価格を超える場合であっても,上記のような諸般の事情を総合考慮した上で,なお,地方公共団体(その執行機関や担当職員)の判断が裁量権を逸脱又は濫用するものと評価されるときでなければ,当該契約に定められた買取価格をもって直ちに当該契約の締結が地方自治法2条14項に反し違法となるものではないと解されること(最高裁平成28年6月27日第一小法廷判決・裁判集民事第253号1頁参照)を踏まえた上で,検討されるべきである。
したがって,前記イ〈ア〉の本件売買契約の締結が,Y市長の裁量権の逸脱又は濫用により,地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反し,違法であるか否かについては,本件売買契約に定められた買取価格が鑑定評価等において適正とされた正常価格を超えるか否かのみならず,当該不動産を買い受ける目的やその必要性,契約の締結に至る経緯,契約の内容に影響を及ぼす社会的,経済的要因その他の諸般の事情を総合考慮して,裁量権の逸脱又は濫用があるのか否かを検討すべきことになる。
エ 以上を判断枠組みとして,以下,検討する。
(2)  本件買受地を本件新保育所の用地として取得した経緯等
ア 認定事実
前記前提事実並びに証拠(後掲証拠のほか,乙41,証人I部長,Y市長)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(ア) 平成19年,本件審議会が発足し,本件審議会は,平成20年3月,平成23年度には大規模保育所を○○地区に建設し,平成27年度には●●地区の保育所を再編し,a市全体として4園に統合することが適切である旨の答申をした(乙2の1・2)。
(イ) a市は,平成20年11月7日,平成20年度第8回企画会議において,旧病院の移転を決定した(甲99)。
(ウ) a市には,平成22年4月1日時点で,正規保育所として,e3保育所(定員90名,在籍数91名),e4保育所(定員60名,在籍数62名),e8保育所(定員90名,在籍数65名),e5保育所(定員60名,在籍数25名),e9保育所(定員60名,在籍数44名)の5園が,へき地保育所として,e10保育所(定員60名,在籍数8名),e11保育所(定員60名,在籍数14名),e6保育所(定員60名,在籍数8名),e12保育所(定員60名,在籍数9名)の4園の合計9園の市立保育所が設置されていたところ,本件審議会の資料において,いずれも昭和40年代から50年代に建設され,耐震構造上の問題等から,改築等の対応が迫られている旨が指摘されていた(乙1)。
(エ)a a市は,厳しい財政状況と○○地区における大規模保育所の建設用地を確保することができなかったことから,本件審議会から受けた前記(ア)の答申に基づく平成23年度を目処とした市立保育所の再編を実施することができなかった。
b そこで,a市は,改めて本件審議会を設けることとし,平成22年10月26日,その第1回審議会が開催された(乙2の2)。
c 平成22年11月18日の第2回審議会では,保育所の統合の在り方,既存の保育所の状況について議論され,○○地区の新保育所につき,事務局から,3000m2程度の面積が必要であるとの説明がされ,候補地としては,a市が所有する土地が挙げられ,委員の中からは,旧病院が移転されれば,その関係地が空くのではないかとの意見も述べられていた(乙2の3)。
d 平成22年12月15日の第3回審議会では,事務局から,○○地区の新保育所の候補地として,①e13小学校用地(3800m2,平成23年3月まで使用,a市所有,短所として○○地区から距離があるなど),②e14小学校用地(4100m2,平成23年3月まで使用,a市所有,短所として○○地区からの距離が約4kmなど),③e4保育所西の土地(3600m2,畑,個人所有,○○地区内,長所としてアクセスがよい,短所として買収費用が必要など),④市立病院(旧病院)第二駐車場(3600m2,アクセスが非常によい,○○地区内,短所として借地料がかかるなど),⑤消防署用地(1万2000m2,公園,山梨県所有,短所として○○地区からの距離がある,全て買い上げが条件など)が記載された資料(乙13)が配布され,議長からは,審議会としては,候補地について検討はするが,最終的な場所の決定まではできないこと,提案があった土地もあるということにとどめたいことが確認された(乙2の4。なお,上記の資料に挙げられた市立病院第二駐車場は,旧病院用地とは別個の土地である(乙48の4)。)。
e その後の,平成23年1月12日の第4回審議会,同年2月9日の第5回審議会を経て,本件審議会は,同年3月23日,Y市長に対し,①市立保育所の再編は4園への再編が望ましいこと(e3保育所,e4保育所,e5保育所及びe6保育所をグループとした○○地区のほか,e8保育所,e10保育所及びe11保育所をグループとした●●地区,▲▲地区,◎◎地区の4園),②○○地区に新設する保育所については,その周辺を含めた市有地の利活用や,地理的なバランス,人口分布の状況等を考慮した中で,関係部署との協議・調整を図った上で決定することが必要であること,③○○地区に設置する保育所については200名の定員規模とすること(●●地区は90名,▲▲地区・◎◎地区は現状規模),④再編の時期は,厳しい財政状況の中,新たな施設の建設に当たって多額の費用が必要となることから,合併特例債等の利用を検討する中で,平成27年度までに行うことが望まれることなどを答申した(乙2の1)。
(オ) 平成23年6月3日,a市の平成23年度第3回企画会議において,福祉保健部から,保育所の建設につき,○○地区については,e3保育所,e4保育所,e5保育所,e6保育所を統合して定員200名規模の保育所を同区内に新たに建設するとした上で,その建設地について,h9土地改良区が所有する市立病院(旧病院)第二駐車場が候補として挙げられるが,風致地区に指定されており,建蔽率等の基準をクリアしなければならない旨の説明がされた(甲93,弁論の全趣旨)。
(カ) 平成24年6月5日,a市の平成24年度第3回企画会議において,旧病院の解体工事に伴い,順次,整地した上で,旧病院用地をA前市長らに返還することが確認された(甲100)。
(キ) 平成24年10月,e1中学校の跡地に新たにa市立病院の建物が建設され,同年11月頃から,旧病院用地上の旧病院の建物の解体作業が始まり,平成25年3月頃,同作業が終了し,旧病院賃貸借契約は解除され,旧病院用地は,各土地の所有者であるA前市長らに返還された(前記前提事実(2)ア(ウ))。
(ク) a市の総務課は,平成25年2月4日付けで,Y市長が,旧病院用地について,A前市長との間で,賃貸期間を同年4月1日から平成26年3月31日までとし,賃料年額703万4000円とする賃貸借契約を締結し,旧病院第二駐車場跡地について,h9土地改良区との間で,賃貸期間を平成25年4月1日から平成26年3月31日までとし,賃料年額を274万6548円とする賃貸借契約を締結してもよいかという内容の伺い文書(乙52)を作成した。Y市長は,平成25年2月6日,上記伺い文書の決裁をした。
なお,上記伺い文書に添付されている土地賃貸借契約書(案)の借受土地一覧には,旧病院跡地の地積計が7553.37m2と記載されているが,同一覧に記載された各土地の地積を合計すると7553.7m2となり,上記記載は誤記と考えられる。
(ケ)a 平成25年2月17日,a市長選挙が実施され,Y市長は,5761票を獲得し,A前市長が支持した候補者であるM(得票数4917票)を退け,再選された。
b Y市長は,上記選挙でA前市長が対立候補を支持していたことから,上記選挙が終わるまではA前市長と直接接触することはできなかったが,保健福祉部の職員を通じて,A前市長に対し,Y市長が再選された場合には,a市が旧病院用地に係る土地を本件新保育所用地として買い受ける意向があることを伝えていた(Y市長・24~25頁)。
c Y市長は,上記選挙で再選された後の平成25年3月下旬頃,一人でA前市長を訪ね,本件新保育所用地として旧病院用地に係る土地を購入したい旨を伝え,協力を依頼した。その際,Y市長は,A前市長に対し,上記土地の購入代金の見込額を伝えた。Y市長は,その額について,尋問において,「2億5000万円か,2億5200万円だったか,どちらかだと思っております。」(12頁),「うちの担当がはじき出した2億5800万円くらいですかね」(15頁),「大体の金額というのは,担当課のほうで,ざっくりの数字を出してますので,そのへんの話はしたと思います。」(21頁),「ざっくりした数字と,鑑定の数字って,どっちが高かったんですか。」との質問に対して,ざっくりした数字の方が「600万から800万ぐらい」高かったなどと供述している(24頁)。Y市長のこうした供述からすると,Y市長は,担当課ではじき出した「ざっくりの金額」をA前市長に話したものであり,その額は,J鑑定書記載の2億5200万円よりも「600万から800万ぐらい」高かったという供述や,「うちの担当がはじきだした2億5800万円くらいですかね」という供述からすると,2億5000万円台の100万円単位まで特定した金額であったとみられる。
なお,被告は,Y市長の尋問における上記供述について,同人の勘違いがあり,Y市長がA前市長と会ったのは,平成25年3月下旬ではなく,平成26年3月であると主張する。
しかし,Y市長は,「選挙が終わって,再度,私が,市政を担うこととになりましたので,ある程度,時間をおいて,3月の下旬だったと思いますけれども,地権者のA氏のところにお願いに伺いました。」と供述した後に,原告代理人から「平成26年の3月ということですか。」という質問に対し,「そうです,えーと,二十・・・五年だと思います。」と供述し,原告代理人から「失礼しました,25年の3月。」と聞かれ,「はい,そうです。」と供述し(3頁),平成25年2月の市長選が終わった後の同年3月にA前市長と会ったことを明確に供述している。Y市長は,その後の尋問においても,A前市長を訪れた時期について,「私は,選挙が終わった3月の末に行っただけであります。」(12頁)と供述し,原告代理人からの「何年何月という記憶がずれることがあっても,流れとしては,御記憶は違わないと思うんで,確認なんですけど,25年の2月に選挙がされましたね。」という質問に対し,「はい。」と答え,直後の原告代理人からの「それでAさんの側と選挙を戦ったので,25年の2月の選挙が終わった後,3月の下旬にAさんと会ったということですね。」という質問に対し,「はい。」と答えている(17~18頁)。
以上のとおり,Y市長は,平成25年2月の市長選の後の同年3月下旬にA前市長と会ったと一貫して供述しているのであって,平成26年3月と勘違いしたとみる余地はない。
そして,Y市長は,A前市長とは市長選では戦ってきたが,この話合いについて,「お互いに,市民のために何が一番いいのかというところで話合いをしました。」と述べ(6頁),これについては意見が一致し,A前市長との関係も好転したという趣旨のことを述べている。
(コ) 平成25年4月4日,a市の庁内協議において,保健福祉部から,旧病院用地を○○地区に新設する本件新保育所用地として,旧病院第二駐車場を総合施設用地として検討するとの報告が行われ,同月8日の庁内会議において,土地開発基金により旧病院用地に係る土地を取得することが協議された(乙37の2)。
(サ) 平成25年5月8日,平成25年度第2回企画会議において,本件新保育所の計画候補地を旧病院用地に係る土地とすることが決定された(乙37の1)。
その際にa市の福祉保健部福祉課福祉総務担当が「企画会議資料」として作成した書面として,被告から,「a市総合保険福祉センター(仮称)の整備について」と題する書面(乙37の2)が提出され,他方,原告から,原告が情報開示請求により取得した同じく「a市総合保険福祉センター(仮称)の整備について」(甲103)と題する書面が提出されているところ,被告が提出した上記書面(乙37の2)には,同年4月8日の庁内協議について記載した箇所に,「旧病院用地」及び「旧病院第2駐車場」について,場所と面積の記載があるだけであるが,原告が提出した上記書面(甲103)には,場所と面積の他に想定購入費の欄があり,この欄が黒塗りにされている。この事実については,もともとは原告が提出した書面(甲103)が存在し,原告からの文書開示請求に対しては,想定購入費の欄を黒塗りにしたものが開示されたが,被告は,この文書を証拠として本件訴訟に提出するに当たり,想定購入費の欄を削除したものを乙37の2として提出したと推認するのが合理的であるところ,I部長は,黒塗りのない甲103の原本の書面は現存せず,想定購入費の欄が削除された乙37の2しか現存していないと供述し,想定購入費の額については,固定資産税評価額や公示価格から算出した旨供述している(証人I・34頁)。
Y市長がA前市長に示した旧病院用地に係る土地の買取価格は,Y市長の尋問における供述からすると,a市の担当部署がさしあたり算定した想定購入費とみられ,原告が提出した書面(甲103)の原本の想定購入費の欄に記載されていた金額と一致するのではないかとみられるが,被告は,a市が算定した想定購入費の額を明らかにしていない。
(シ) 平成25年5月23日,a市福祉保健部福祉課は,旧病院用地に係る土地を本件新保育所の建設適地とすることの了解・報告をするため,課長等会議に付す旨の庁議付議依頼書を発出し,同月29日,課長等会議において,上記の趣旨の報告がされた(乙38の1・2)。
(ス) a市は,平成25年5月27日,シティー計画に対し,入札により,履行(納入)期限を同年10月31日として,旧a市立病院跡地測量業務を委託し,これに対し,シティー計画は,作成日付を「平成25年7月」として,別紙2「各実測図の測量状況」記載1のとおりのシティー計画旧病院用地実測図等(乙49の1・2)を作成した(前記前提事実(2)イ(イ))。
なお,被告は,上記測量業務の目的について,旧病院用地に係る土地を本件新保育所用地とすることを決定したところ,上記土地を買い受けることを前提に,入札によりシティー計画に上記測量業務を委託し,その測量結果に基づいて不動産鑑定評価を委託することを予定していたのかとの裁判所の釈明に対し,一旦は,そのとおりであると回答したが,その後,上記測量業務の目的は,本件新保育所用地として購入することで庁内合意が形成されていた旧病院跡地について,今後の土地利用の基礎資料とするため,賃借していた土地のみならず,市の公有地も含めた敷地全体の実測図を作成することであったとして,主張を一部訂正した。
(セ)a 他方,時期は不明であるが,東測によって別紙2「各実測図の測量状況」記載2のとおり,東測実測図(乙46,48の3)が作成されている(前記前提事実(2)イ(ウ)c)。
被告は,日本不動産研究所に旧鑑定書に係る鑑定を委託するに当たり,東測実測図が,図面袋(乙48の2)に入れられて交付されていた旨を主張するが,この点は,後記イで検討する。
b 東測実測図では,前記前提事実(2)イ(ウ)cのとおり,分筆が予定されているところ,A前市長宅への直結道路の入口部分を直線とする目的で土地の一部を購入するための分筆(④の土地),A前市長が所有する賃貸マンションであるh11マンションの敷地の道路沿いの法地部分を道路拡幅のための用地として購入するための分筆(②の土地),本件買受地の東側の避難階段がある部分をa市が管理するために購入するための分筆(⑪,⑫の土地)が予定されていることが認められる。
そして,⑥の土地については,隣接する墓地の三角形の部分に分筆点を置き(q3,q4,q5として青色で囲まれた部分),⑦,⑨,⑬の土地については,旧病院の敷地として利用されていた部分がA前市長の所有する土地(地番3211番1,3198番1及び3199番)との境界となるように分筆点を置き(東測実測図中の⑦,⑨,⑬の土地に係る緑色の線),⑪,⑭の土地については後に避難経路として設定された階段を確保するように分筆点を置き(q7,605,q5,612,613,614,615上に引かれた青い分筆線),⑮の土地については,Nが所有する3200番の土地のうち旧病院の敷地として利用されていた部分について複数の分筆点が置かれ,分筆後の各土地の地積を算定している。
c a市は,3200番の土地(東測実測図の⑮)の一部を取得することを検討し,不動産登記簿上の所有者であるNの所在調査をしたところ,同人が死亡していることが判明し,その後の調査により,Nの相続人が多数に上り,代表者と呼べるような親族が判明しなかったことから,上記土地の一部を取得することは困難であると判断した(乙50の1・2)。
そのため,3200番の土地の一部については,測量はされたものの,東測実測図では,対象土地(①~⑭)とは別に,⑮の土地として,地積数量の数字を含め,緑色で記載され,対象土地には含まれないという趣旨がうかがわれる記載がされている。
d 東測実測図の⑦,⑨,⑬の土地は,測量はされたが,分筆登記の申請をするためには,分筆後の各土地の地積測量図が必要であるところ(不動産登記規則73条~75条,77条,78条参照),⑦,⑨の土地については,⑮の土地と隣接しており,⑬の土地については同土地に隣接する土地(地番3211番1)の所有者との間で境界が争われており,分筆後の残地についての境界が確定できず,地積測量図を添付することができないため,分筆登記の申請ができないことが判明したことから,買受対象から除外されることになった(弁論の全趣旨)。
(ソ) 平成25年9月9日,平成25年度第6回企画会議において,副市長から本件新保育所の建設地につき,旧病院用地に係る土地を予定地としていたことにつき,同日をもって適地とすることが確認された(乙4)。
(タ) a市は,2社から相見積りを取った結果,平成25年10月7日,日本不動産研究所との間で,a市立保育所用地取得に伴う不動産鑑定評価業務について業務委託契約を締結した(乙48の1~4)。
なお,被告は,上記業務委託契約について,入札によるものと主張し,Y市長も入札であることを前提とする供述をしたが(被告・10頁),その後,随意契約によるものと主張を変更した。
(チ) シティー計画は,平成25年10月10日,A前市長らの立会いの下,本件買受地の境界確認を行い,同月25日,本件買受地の面積を算定した「旧a市立病院跡地測量業務 面積計算 計算書 直角座標法」を作成した(甲136,137。なお,その際の地積の測量結果は,端数を除き,おおむね別紙2「各実測図の測量状況」記載1のシティー計画旧病院用地実測図等(乙49の1・2)と同じ数値となっている。)。
(ツ) 日本不動産研究所(J鑑定士)は,平成25年10月31日,a市に対し,旧鑑定書を納入した。
被告は,旧鑑定書は破棄されており,現存していないと主張しており,旧鑑定書における不動産評価額は明らかではない。
(テ) a市は,平成26年1月8日,シティー計画に対し,入札により,履行(納入)期限を同年3月27日として,「(仮称)新○○保育所用地測量業務」を委託した(前記前提事実(2)イ(エ))。
シティー計画は,同月28日,a市に対し,上記測量業務の成果品として別紙2「各実測図の測量状況」記載3のとおり,シティー計画本件買受地実測図(乙51)を提出した(前記前提事実(2)イ(エ))。
なお,東測実測図と比較すると,シティー計画本件買受地実測図では,東測実測図の⑦,⑨,⑬の各土地が含まれておらず,他方,東測実測図の⑥の土地では除外されて測量されていた墓地の隅となっている三角形の土地部分(3.99m2)を含む形で測量されている(なお,シティー計画本件買受地実測図①~③と東測実測図の①~③の地積にも若干の数字の違いが見られるが,上記よりも更に少ない端数にとどまり,その他の土地については,各測量結果は一致している。)。
(ト) 日本不動産研究所は,a市に対し,J鑑定書を納入し,J鑑定書には,シティー計画作成本件買受地実測図(乙51)が添付された。
(ナ) Y市長とA前市長らは,平成26年5月8日,本件売買契約を締結した(前記前提事実(2)ウ(ア))。
(ニ) Y市長は,平成29年2月のa市長選挙で6065票を獲得し,三選された。次点の候補者の得票数は5493票であった。Y市長は,この選挙では,A前市長から支持を受けていた。(甲92,Y市長,弁論の全趣旨)
イ J鑑定書が作成されるまでの経緯に係る被告の主張について
(ア) 被告は,上記の経緯について,おおむね,次のとおり主張する。
a 平成25年5月8日,平成25年度第2回企画会議において,旧病院用地を本件新保育所建設用地として取得することが決定された後,a市においては,今後の土地利用の基礎資料とするため,旧病院用地のみならず,a市が所有する周辺地も含めた土地の実測図等を作成することになり,同月27日,シティー計画に対し,上記の土地についての測量が委託された。この委託に基づいて作成されたのがシティー計画旧病院用地実測図等である。もっとも,同図等に基づいて不動産鑑定評価を委託することまで予定されていたものではない。
その後の平成25年8月頃,I部長は,本件買受地の不動産鑑定評価を行うに当たって,用地取得範囲の実測数量を確定するため,シティー計画に実測図の作成を依頼しようとしたところ,シティー計画から,協力関係にある東測に上記依頼をするよう提案されたため,東測にこれを依頼することとした。この委託に基づいて作成されたのが,東測実測図である。
以上の過程において,a市は,あくまで市の計画に必要な土地とそうでない土地の選別を行って各委託を行ったもので,A前市長らの意向を踏まえて委託を行ったことはない。
b 東測は,シティー計画から上記測量業務の基礎データの提供を受けることができたこともあり,無償で本件買受地の実測図の作成を引き受けた。
c その後,3200番の土地の北側の土地(東測実測図の⑮の土地)が取得範囲から除外されることになり,I部長は,平成25年9月頃,東測に対し,⑮の土地を除いた土地(①~⑭の土地)の実測数量を求める実測図の作成をするよう修正依頼をし,東測は,被告に対し,東測実測図を納品した。
さらに,その後,⑦,⑨,⑬の各土地が取得範囲から除外されることになり,a市の担当者は,平成25年10月2日,本件買受地の不動産鑑定評価業務を発注するために現場説明会を行い,東測実測図に基づき,これに記載された⑦,⑨,⑬の各土地を鑑定の対象から除外する旨を口頭で説明した。
そして,同月7日,日本不動産研究所との間で本件買受地の鑑定評価に係る業務委託契約を締結した際には,東測実測図(乙48の3)を図面袋内(乙48の2)に添付した。
d 日本不動産研究所は,当初,平成25年10月31日付けで,上記の不動産を対象として,鑑定評価額を2億5200万円とする旧鑑定書を提出した。
その後,a市は,本件買受地の取得に向け,平成26年1月8日に改めてシティー計画に測量業務を依頼し,同年3月28日にシティー計画本件買受地実測図の提出を受けたところ,東測実測図に記載された⑦,⑨,⑬の各土地を除く土地と,シティー計画本件買受地実測図に記載された本件買受地とでは,東測実測図の⑥の土地では除外されて測量されていた墓地の隅となっている三角形の土地部分(3.99m2)を含むかどうかの違いがあった。
そのため,a市は,平成26年3月31日,旧鑑定書の鑑定評価額に変更が生じないのかについて日本不動産研究所に問合せをし,同年4月上旬,面積の差が上記のとおり3.99m2とわずかであることから,鑑定評価額に変動は生じないとの回答を得,改めて不動産鑑定評価書の修正を依頼し,日本不動産研究所は,J鑑定書を提出した。
旧鑑定書とJ鑑定書の違いは以上の点にとどまることから,a市においては,両者を差し替えることとし,旧鑑定書を廃棄したものである。
(イ) しかし,被告の上記主張には,次のような疑問がある。
a A前市長らの意向と無関係に東測実測図が作成されたとする点について
東測実測図で予定されている分筆は,前記ア(セ)bのとおり,いずれもA前市長らの利便・利益に大きく配慮する内容のものであり,その意向を反映したものとみるのが自然であって,その意向と無関係にこうした分筆が計画されたとは考え難いから,a市とA前市長らとの間で協議がされた上でこのような分筆をすることが予定されるに至ったとみるのが合理的である。
b 東測が無償で実測図を作成したとの点について
仮に,東測がシティー計画から本件買受地の測量に関するデータの提供を受けたとしても,前記ア(セ)b及び証拠(乙46,48の3,49の1・2)によれば,独自の分筆点も定めた上で地積の算定が行われているのであって,東測が無償でこのような作業を引き受けたとは考え難い(なお,被告は,CAD(コンピュータを用いた設計支援システム)を活用して,シティー計画旧病院用地実測図等の基礎となる数値を利用すれば,東測実測図を作成することは容易であると主張するが,上記のとおり,東測実測図には,シティー計画旧病院用地実測図等にはない分筆点が置かれており,東測が,シティー計画からデータの提供を受けただけでなく,独自に測量をして分筆点を置いたことは明らかであるから,東測実測図の作成が容易であって,無償で引き受ける作業量であったという被告の上記主張を採用することはできない。)。
a市が東測に対して測量代金を支払っていないこと自体は事実であるとすれば,他からその支払がされたと考えるほかなく,この測量結果に基づく分筆によって利益を受けるのがA前市長らであることからすれば,測量代金の支払をしたのはA前市長らではないかとも考えられる。
c 旧鑑定書において鑑定の対象となっていた土地について
被告は,日本不動産研究所に鑑定業務を依頼した際の契約書に東測実測図を添付していたと主張しつつ,鑑定評価の対象となったのは,東測実測図の⑦,⑨,⑬の各土地を除いた土地であり,a市の担当者が,本件買受地の不動産鑑定評価業務を発注するための現場説明会において,東測実測図の⑦,⑨,⑬の土地を鑑定の対象から除外する旨の説明を口頭で行ったと主張する。
しかし,まず,東測実測図では,取得範囲から除外された⑮の土地については,地積数量の表示を含めて緑色で記載されており,この記載からも,測量はされたものの,その後に取得範囲から除外されたことが看取されるが,⑦,⑨,⑬の各土地については,他の土地と同様に赤色で記載されており,東測実測図には,測量後に,⑦,⑨,⑬の各土地が取得範囲から除外されたことをうかがわせる記載はない。
そして,a市が,本件買受地の不動産鑑定評価業務を発注するに当たって,東測実測図を添付しつつ,⑦,⑨,⑬の各土地を鑑定対象から除外したとすれば,担当者から口頭でその旨を説明するだけでなく,契約書にそのことを明らかにする記載をすべきであり,それは容易であるにもかかわらず,契約書にはそのような記載はされていない。
被告は,旧鑑定書を破棄し,現存していないと主張するところ,旧鑑定書が鑑定対象とした土地に⑦,⑨,⑬の土地が含まれていなかったとする上記主張については,上記のとおり疑問が大きく,信用することはできない。
さらに,そもそも,a市が日本不動産研究所に鑑定業務を依頼した際の契約書に東測実測図が添付されていたとの点についても,原告からは疑問が示されている。
東測実測図が作成された時期を認定できる的確な証拠はなく,被告の上記主張を裏付けるに足りる証拠はないから,a市が日本不動産研究所に鑑定業務を依頼した際の契約書に東測実測図が添付されていたとの点も,本件全証拠を検討しても確実に認定できるものではない。
d 旧鑑定書からJ鑑定書への差し替えについて
被告は,シティー計画本件買受地実測図が納品されたことにより,対象不動産の地積が3.99m2増えたために旧鑑定書からJ鑑定書に差し替えたと主張する。
しかし,対象不動産の地積が3.99m2増えたのは,3196番(東測実測図の⑥,シティー計画本件買受地実測図の⑥)の土地のうちの墓地の隅となっている三角形の土地部分も買い受けることにしたからにすぎず,その他には変更点はなく,それによって鑑定評価額に変更が生じることもなかったというのであるから,J鑑定士に補充の報告書等の作成を依頼し,上記の三角形の土地部分を買い受けることによる不動産鑑定評価額への影響がない旨の説明をしてもらえば足りるはずであって,新たに鑑定評価書を作成する必要があったとは考えられず,a市がそのような理由で旧鑑定書からJ鑑定書への差し替えを行ったとは考えられない。
被告が,旧鑑定書を破棄し,現存していないと主張しているのは,旧鑑定書を公にすることができない理由があるからであると考えるほかない。
(ウ) 以上によれば,旧鑑定書で評価の対象とされた土地と,J鑑定で評価の対象とされた土地について,3196番(東測実測図の⑥,シティー計画本件買受地実測図の⑥)の土地のうちの三角形の土地部分が含まれているか否かの違いがあるだけであると認めることはできない。
旧鑑定書において鑑定の対象となった土地には,東測実測図の⑦,⑨,⑬の土地も含まれていたのではないかとの疑念があり,さらには,そもそも東測実測図に基づいて旧鑑定書が作成されたのかについての疑念すら払拭できない。
そして,J鑑定で評価の対象とされた土地は,旧鑑定書において評価の対象とされた土地よりも減少したにもかかわらず,鑑定評価額は維持されたのではないかという重大な疑念も生じる。
ウ 小括
(ア) 以上の検討結果によれば,本件買受地の取得の経緯について,以下の指摘をすることができる。
a a市においては,平成19年に設けられた本件審議会により,平成20年3月,平成23年度には大規模保育所を○○地区に建設新設するよう答申されたが,厳しい財政状況に加えて○○地区における大規模保育所の建設用地を確保することができなかったことから,平成23年度を目途とした市立保育所の再編を実施することができず,そのため,平成22年10月26日から平成23年2月9日まで,改めて本件審議会による検討が行われ,同年3月23日,○○地区の本件新保育所の建設を含む再編は,平成27年度までに行うことが望まれる旨の答申がされた(前記ア(ア),(ウ),(エ))。
本件新保育所の用地については,本件審議会において,委員から,旧病院の移転に伴って空いた関係地を本件新保育所用地とすることが考えられないのかとの意見が述べられたことはあったが,旧病院用地自体が明確に議論の対象とされたことはなく,本件審議会の平成23年3月23日の答申も,旧病院用地の周辺を含めた市有地の利活用に言及していたものの,本件新保育所の具体的な用地について触れるものではなく,関係部署との協議・調整を図った上で決定することが必要であるとされていた(前記ア(エ))。
平成23年6月3日の企画会議では,福祉保健部から,本件新保育所の用地について,旧病院第二駐車場が候補として挙げられる旨の説明がされ,それとは別個の土地である旧病院用地は候補地として取り上げられていなかった(前記ア(オ))。
平成24年6月5日の企画会議では,旧病院用地をA前市長らに返還することが確認され,平成25年3月頃,旧病院賃貸借契約は解除され,A前市長らに返還されたが,同年4月1日からは,A前市長との間で,旧病院用地について賃貸借契約(年額賃料703万4000円)を締結して,これを借り受けた(前記ア(カ),(キ),(ク))。
その後,平成25年4月4日に,a市の庁内会議において,保健福祉部から,旧病院用地を○○地区に新設する本件新保育所用地として検討するとの報告が行われ,同年5月8日の企画会議において,本件新保育所の計画候補地を旧病院用地に係る土地とすることが決定された(前記(2)ア(コ),(サ))。
b 以上の経過からすると,平成25年4月4日の庁内会議までの時点で,旧病院用地を本件新保育所用地とする方向性が定まったものとみることができるが,本件全証拠によっても,上記審議会が平成23年3月23日に,○○地区に新設する保育所については,関係部署との協議・調整を図った上で決定することが必要であるとの答申をしてから,上記の方向性が定まるまでの間に,a市の関係部署等において,旧病院用地に係る土地を本件新保育所の用地として選定することについての議論がされた形跡は見られない。
そうした中で,Y市長は,平成25年2月のa市長選挙に際し,対立候補を支持していたA前市長に対し,職員を通じて,Y市長が再選された場合には,a市が旧病院用地に係る土地を本件新保育所の用地として買い受ける意向があることを伝え,上記選挙で再選された後の同年3月下旬頃には,A前市長を訪ね,同人に対し,a市が市立保育所の建設用地として旧病院用地に係る土地を取得することに協力してほしいと要請し,その購入見込額として2億5000万円余りの額を伝えたものである。
そうすると,a市の関係部署等において,旧病院用地に係る土地に本件新保育所を建設することが適切であるかについての議論がなされないまま,Y市長がA前市長に対して上記のような要請をしたことによって,旧病院用地を本件新保育所用地とすることが事実上定まったものとみることができる。
c そして,Y市長がA前市長に対して本件買受地の購入見込額として2億5000万円余りの額を伝えたことについてみると,この時点ではa市が本件新保育所の建設用地を旧病院用地に係る土地とすることが正式に決定されていたわけではなく,当然のこととして,a市が買い受ける土地の範囲も確定していたわけではないのであり,a市が土地を買い受けることになれば鑑定評価が行われることになるにもかかわらず,Y市長が,地権者であるA前市長に対して,a市が買い受けることについての決定すらされていないこの段階で購入見込額を伝えたことは,本来の手続から外れており,明らかに不適切である。
d その後,本件買受地をa市が買い受けるに当たって行われた分筆は,A前市長らの利便・利益に大きく配慮した内容のものとなっており,東測に対して東測実測図作成の依頼がされる前に,a市とA前市長らの協議がされて,A氏宅に直結する道路の敷設位置が決定していたとみるのが自然である。
e そして,J鑑定における本件買受地の評価額は2億5200万円であり,この評価額は,Y市長がA前市長に伝えた購入見込額とほぼ一致する。
(イ) 以上によれば,本件買受地の取得の経緯には多くの不明朗な部分があり,旧鑑定の内容も不明であって,J鑑定とY市長がA前市長に伝えた購入見込額がほぼ一致することからすれば,J鑑定については,A前市長に伝えられた購入見込額に沿うようにするための配慮や操作がされたところがないかについて慎重な検討を要するというべきである。
そこで,以下,本件の最大の争点である本件買受地の取得価額が適正価額を超えているか(本案の争点(3))についての検討を行う。
(3)  本件買受地の取得価格が適正価格を超えているかについて
ア J鑑定について
J鑑定は,別紙3のとおり,本件買受地につき,取引事例比較法による試算価格を2億5400万円,開発法による試算価格を2億5000万円とし,それぞれ同等に規範性を有すると判断した上で,平成25年10月1日時点の更地の正常価格を2億5200万円としているところ(前記前提事実(8)ア),その取引事例比較法及び開発法の各試算価格については,それぞれ以下の問題点が指摘できる。
(ア) J鑑定の取引事例比較法による試算価格について
a a市の取引事例が選択されていないことについて
(a) J鑑定は,同一需給圏内として,山梨県東部のm地域の住宅地域一円とし,代替競争不動産の取引事例としてi市のi市l町物件,j市の△△物件,k市の□□物件という事例を挙げているが,a市の事例を選択していない(甲4・9頁,別表①)。
他方,K鑑定では,a市の事例として,a市物件1,2の2件が採用されている(甲70・別表2)。
(b) この点について,J鑑定士は,尋問において,J鑑定でa市の事例を採用しなかった理由として,a市に的確な分譲相似事例がなかったからであると供述する(証人J・14頁)。
しかし,K鑑定ではa市物件1,2が採用されているところ,J鑑定士は,a市物件1を採用しなかった理由については供述しておらず,かえってK鑑定士がa市物件1を採用したことは不適切ではない旨の供述をしている(証人J・15頁)。また,J鑑定士は,a市物件2について,平成29年7月19日付け「K鑑定に対する意見書」(乙32・3頁)及び尋問(証人J・15頁)において,この土地は,切土のほか,四方に擁壁の設置を要する土地であるところ,K鑑定では,取引後の追加造成費用を考慮して高低差の減価率を-15%と査定しており,これは計算上追加造成工事費用を4108円/m2と査定していることになるが,これは明らかに低く,地元建設業者からのヒアリング結果等からすると,その2倍程度の費用が必要となるから,高低差に係る標準化補正が不十分であり,自分としては取引事例としては採用すべき土地とは考えない旨を述べるが,K鑑定士が取引事例として選択したことが不適切であったとまではいえないとも供述する。
以上によれば,J鑑定が,取引事例比較法における取引事例の選択においてa市の事例を選択しなかったことについて,特段積極的な理由があるとはいえない。
b J鑑定における各取引事例の適性について
J鑑定は,取引事例の選択について,類似性の高い戸建住宅素地の取引事例を中心に比準した価格を比較考量したとしているので(甲4・18頁),以下,J鑑定士が選択した各取引事例が,主として戸建住宅素地の取引事例として適切な物件であったかという観点から検討する。
(a) i市l町物件
平成21年から平成25年までの間のi市における取引事例(甲105・別紙4〔本判決別紙5〕)中,面積が500m2以上のものからi市l町物件(同別紙の取引番号157)を除くと,その平均取引価格は1万5331円/m2である上,3万円/m2以上の物件は3万5000円/m2(同別紙の取引番号100)及び3万2000円/m2(同別紙の取引番号153)の2件のみであって,i市l町物件の4万3000円/m2という取引価格は,他のi市の取引事例と比較して特に高額である(弁論の全趣旨。なお,上記は原告のインターネット上の検索結果によるところ,国土交通省の土地総合情報システムにおいて公表されている不動産取引価格情報検索において調査されたものと考えられる。以下同じ。)。
また,証拠(甲105・別紙4の取引番号157・i市l町物件に係る記載)によれば,i市l町物件は,幅員7mの市道に,前面が19m接している物件であり,上記市道は幹線道路である国道139号線であることが認められ,このような土地の状況に照らせば,同土地は商業用に適した土地であって,戸建住宅素地の取引事例として把握することが適切であるとは評価し難い。
以上によれば,J鑑定が,i市における他の取引事例に比して特に高額であり,戸建住宅素地として把握することが適切とはいい難いi市l町物件を取引事例として選択したことについては,疑問が大きい。
(b) △△物件
△△物件(平成21年から平成25年までの間のj市における取引事例を示す甲105・別紙5〔本判決別紙6〕の取引番号210)は,鉄骨造りの倉庫と共に総額6100万円で売却された物件であることが認められるところ(証人J・16,17頁),J鑑定は,土地の取引価格を5万円/m2としている。
J鑑定士は,この点について,尋問において,△△物件の土地の取引価格を配分法により算出した資料が存在し,それに基づいて,△△物件の土地の価格を5万円/m2と算出したと供述するが(証人J・17,50頁),これを裏付ける証拠はなく,土地の価格を5万円/m2と算出したことが合理的であると評価することができない。さらに,平成21年から平成25年までの間のj市における他の取引事例(甲105・別紙5)と比較すると,J鑑定が△△物件の取引価格とする5万円/m2は特に高額であるといえるところ,証拠(甲105・別紙5〔取引番号210・△△物件に係る記載〕,別紙11)によれば,△△物件は,富士急行g3線g4駅から1.3kmに位置し,h3交差点から約220mの位置にあり,その周辺は,h12店,h13店,h14店,h15店,h16店等の商業施設が散在しており,前面に4.5m道路があることが認められる。このような△△物件の状況からすれば,商業施設用地として把握するのが適切であって,戸建住宅素地として把握することが適切であるとはいい難いから,仮に,土地の価格を5万円/m2と算出したことに理由があるとしても,これを取引事例として選択することが適切であるとはいい難い。
(c) □□物件
□□物件(平成21年から平成25年までの間のk市における取引事例を示す甲105・別紙6〔本判決別紙7〕の取引番号214)は,都市計画法上の用途地域のうち準住居地域(道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ,これと調和した住居の環境を保護するため定める地域〔都市計画法9条7項〕)と定められた区域に位置するところ,平成21年から平成25年までの間のk市における取引事例(甲105・別紙6)のうち,準住居地域の物件の平均取引価格は3万4600円/m2であり,□□物件の4万2221円/m2という取引価格は,他のk市の準住居地域の物件と比較して高額である。
また,平成21年から平成25年までの間のk市における取引事例(甲105・別紙6)のうち,J鑑定において「基準となる土地」の用途として設定された第一種中高層住居専用地域の物件(甲4・11頁)の平均取引価格は1万6860円/m2であるところ,平成28年地価公示における甲信越地区の用途地域別平均価格(乙24)をみると,第一種中高層住居専用地域の平均価格は4万2533円/m2であるのに対し,準住居地域の平均価格は5万2409円/m2であり,準住居地域の平均価格と第一種中高層住居専用地域の平均価格の差は約1万円であって,このことからみても,□□物件の4万2221円/m2という取引価格は高額である。
そして,証拠(甲4・別表1,105・別紙12)によれば,□□物件は,g2駅から1.6km離れた場所に位置し,国道139号(富士パノラマライン)から路地に入った土地であると認められるから,住宅素地として把握することが適切であるとはいい難く,取引価格が比較的高額であることについては,こうしたことが関係しているのではないかとみることができる。
そうすると,□□物件を取引事例として選択することが適切であるとはいい難い。
(d) 小括
以上によれば,J鑑定が採用した取引事例については,いずれも,戸建住宅素地の取引事例として適切な物件とは評価し難く,かつ,特に高額であるといわざるを得ない。
c 修正率について
(a) 同一需給圏内の地位による減価率(地域要因格差のうち「eその他」関係。甲4・別表①注3)
ⅰ J鑑定では,対象不動産と同じ街路条件,交通・接近条件,環境条件,行政的条件を備える「基準となる土地」を,間口:40m,奥行:50m,規模:2000m2,形状:長方形地,接面道路との関係:中間画地,幅員6mの舗装市道に等高に接面と想定している。
そして,i市l町物件,△△物件,□□物件に係る地域要因格差について,「基準となる土地」よりも同一需給圏内の地位が劣っているとして,それぞれ-15%,-18%,-18%の減価をしている。
ⅱ しかし,J鑑定における上記の減価の数値が具体的にどのような根拠や過程で算出されたのかは明らかではない。
かえって,i市における路線価の最高価格は7万8000円であるのに対し(弁論の全趣旨),a市における路線価の最高価格は6万円であり(甲38),平成30年度の山梨県の固定資産(土地)の評価替えに係る基準宅地価格(評価が行われる標準宅地のうち各市町村における最高価格の地点の価格)をみても,i市が6万6990円/m2,a市が5万1000円/m2であって(甲97),J鑑定が行われた平成25年当時の上記各価格から大きな変動がないとうかがわれることに照らせば,i市よりもa市の方が高額であるとみることはできない。
また,平成30年度の山梨県の固定資産(土地)の評価替えに係る基準宅地価格をみると,j市が5万5500円/m2,k市が4万5300円/m2であり,a市の5万1000円/m2という価格と単純に比較しても,j市及びk市が-18%の圏域であるとみることには疑問がある。
以上によれば,a市とi市,j市及びk市との間の不動産価格を比較すると,a市の不動産価格は,i市及びj市を上回ってはおらず,k市に対しても大きく上回っているとまではいい難いから,J鑑定が,i市l町物件,△△物件,□□物件に係る地域要因格差について,同一需給圏内の地位が劣っているとして,それぞれ-15%,-18%,-18%の減価をしていることが適切であるとはいい難い(なお,J鑑定士は,「基準となる土地」とi市l町物件との間で同一需給圏内の地位として15%の格差があると考えた理由について,i市よりもa市の方がg5線を利用して都心に通勤する上で利便性が高いことを挙げているが,そのような事情だけでは,上記の程度の大きな格差が生じている実態があることについての十分な説明にはならないと考えられる。)。
ⅲ 以上によれば,J鑑定が,取引事例として選択した上記3物件に係る地域要因格差について,同一需給圏内の地位が劣っているとして,上記のような大幅な減価をしたことについては,実態とは異なり,a市を不当に高額な圏域として算定している疑いがある。
(b) 中心市街地への接近性による減価率について(地域要因格差のうち「b交通・接近条件」関係。甲4・別表①注3)
ⅰ J鑑定では,i市l町物件,△△物件,□□物件に係る地域要因格差について,中心市街地への接近性が劣るとして,いずれも-15%の減価をしている。
そして,J鑑定士は,この点について,a市全体から相対的にみると,本件買受地は,a市役所まで800m,a市立病院,国道20号線沿いの商店街まで徒歩圏内であること等から,中心市街地に属すると述べる(証人J・4頁)。
ⅱ しかし,J鑑定における上記の数値が具体的にどのような根拠や過程で算出されたのかは明らかではない。
また,証拠(甲4・10頁,甲70・34頁)及び弁論の全趣旨によれば,本件買受地は,a市立病院から約450~600m,a市役所から約800mの位置にあり,公共機関への接近性は比較的高いといえるが,食料品や日用品などの小売店舗であるh18店からは約1km,h19店からは約1.4km離れた位置にあって,商店街からも離れており,商業的な観点からすると接近性が必ずしも高いとはいえず,また,JR・g1駅からは約2.5~2.6kmの距離があり,三方を崖地に囲まれた高台地にあって,交通アクセスが優れているとまではいえず,北東端からしか舗装市道に出ることができない間口狭小な土地であることなどを考慮すると,中心市街地への接近性が高いとの評価は疑問である。
これに対し,証拠(甲105・別紙11,証人J・19,20頁)及び弁論の全趣旨によれば,△△物件については,開発が進行しているh3交差点から約1.3kmの位置にあり,その周辺に商業施設が多く存在していることが認められ,j市役所等の主要な公共機関が富士急行g3線g6駅周辺に所在することを踏まえても,商業的な観点からすると,「基準となる土地」から15%減価するほど中心市街地への接近性が低いとはいえない。また,証拠(甲105・別紙10・11,証人J・20,21頁)及び弁論の全趣旨によれば,i市l町物件は,i市l町の西側の東日本旅客鉄道g5線g7駅から約1.4kmの位置にあり,i市役所等の主要な官公庁への接近性が低いとはいえないことに加え,上記の△△物件に関連して指摘した開発の進んでいるh3交差点までの距離は,g7駅までの距離よりも短いことが認められるから,商業的な観点からみても,中心市街地への接近性が低い物件とはいい難い。
ⅲ 以上によれば,J鑑定が,i市l町物件及び△△物件に係る地域要因格差について,中心市街地への接近性が劣るとして,いずれも-15%の減価をしていることには疑問があるといわざるを得ず,また,□□物件についても,その具体的な根拠が明確ではなく,疑問があるといわざるを得ない。
d 法地の減価について
(a) J鑑定は,本件買受地の約30%を占める法地に関し,法地にも価値があることを前提として,全体として20%の減価をするにとどめている(甲4・15頁)。
そして,J鑑定士は,このことについて,法地にも効用があることから一定の価値があるとみることが合理的であるとし,相続税,固定資産税等の税制の実務的な処理において法地に価値があることが前提となっていること,建蔽率,容積率の算定において法地が考慮される等の利点があることも根拠として,本件買受地のうちの法地の価値を平坦地と比較して70%劣るものと評価した上で,本件買受地全体として,20%の減価をした旨供述する(乙15・2~6頁,乙32・3~4頁,証人J・3頁)。
(b) しかしながら,J鑑定は,本件買受地に係る主な市場参加者として,大手又は中堅の不動産開発業者等を想定しているのであるから(甲4・9頁),税制等の面から法地にも効用があるか否かといったことではなく,まずもって,このような業者等が本件買受地を購入しようとするときに,本件買受地に含まれる法地にどれだけの価値があると評価することができるのかを検討すべきである。
そうすると,本件買受地は,東側,西側,北側の三方が法地に囲われ,最大で13mの高さがあるという現況であるから(甲4・13頁,甲70・33頁),本件買受地を購入する業者が,これだけの法地を利用するために造成をするとなれば,多額の費用がかかることになり,他方,法地を造成しないのであれば,そこに特段の価値はない上,その管理をしなければならない責任を負担することになるのであって,このような法地に相応の価値があると評価することはないものとみるのが合理的である。
したがって,J鑑定士が述べるような理由によって本件買受地に含まれる法地に価値があるとみることは,合理性を欠くというべきである。
(c) また,J鑑定士は,本件買受地の東側に位置する総合福祉センター用地の不動産鑑定評価も行っているところ,上記土地の鑑定評価においては,上記土地の南側に約17%を占める法面があることを踏まえ,その減価率を全体として13%と評価している(甲85・14,17頁)。これに対し,本件買受地には約30%の法地があるところ,全体としての減価率は20%とされており,総合福祉センター用地の鑑定評価における減価率と比較すると,より低い減価率となっているのであるが,そこに合理的な理由を見出すことは困難である。
(d) 以上によれば,J鑑定は,適正に法地に係る減価をしているのかにつき疑義があるといわざるを得ない。
e 不整形地による減価について
(a) J鑑定書には,「規模が大きい整形地」として,15%の減価をする旨の記載がある(甲4・15頁)。
J鑑定士は,この「規模が大きい整形地」との記載について,「規模が大きい不整形地」の誤記であって,規模による減価と形状(不整形地)による減価を併せて査定し,15%の減価をしていると述べる(乙5の1・2頁,乙15・7~8頁,証人J・4~5頁)。
(b) しかし,J鑑定書には,本件買受地に係る個別格差修正率について,不整形性も考慮されていると明確に判断することのできる記載はない。
かえって,J鑑定士が作成した「不動産鑑定評価書に係る補足意見書」(乙15・7~8頁)には,J鑑定における「規模が大きい不整形地」の個別格差修正率について,「対象不動産の地積7,059.88m2と基準となる土地の地積2,000m2の格差を査定したものである。」として,規模の大きさだけで上記の15%の率を査定したかのような記載がある上,「対象不動産の形状は,北東端,南東端,南西端,北西端部分がそれぞれ突出しており,当該部分の利用価値は低い。しかし,その大部分が法地であり,研究所鑑定では効用も考慮して法地を別途減価要因としているため,当該部分については形状を重ねて減価する必要はない。したがって,対象不動産の形状による減価は僅少である。」とも記載されており,この記載によれば,不整形地という形状による減価はほとんどされていないことになる。
さらに,前記(2)イ,ウのとおり,J鑑定書は旧鑑定書から差し替えられたという経緯があることに加え,被告は,旧鑑定書が破棄されて現存していないと主張し,旧鑑定書が証拠として提出されず,旧鑑定書との比較もできないことも併せ考えると,上記記載が単なる誤記であるとのJ鑑定士の供述をそのまま信用することはできない。
そして,本件買受地の形状について検討すると,本件買受地は,北側,東側及び西側が最高で13mの高さのある法地に囲まれ,北東端にある約6mの進入路しか舗装市道に出ることができない土地であるから(甲4・13頁,甲70・33頁,弁論の全趣旨),不整形地であることを理由とする減価をすべきと考えられ,J鑑定が,これを実質的に考慮することなく,規模の大きさのみを根拠として減価率を15%と算定していることには疑問がある。
(イ) J鑑定の開発法による試算価格について
a J鑑定に想定開発図が添付されていないことについて
J鑑定には開発法で用いた想定開発計画に基づく想定開発図が添付されていなかったところ,本件訴訟において,J鑑定において想定した開発図として,乙第16号証の想定開発図が証拠として提出された。
J鑑定士は,J鑑定に想定開発図を添付していなかったことについて,想定開発図を添付することは義務的ではないと供述するが,開発法に基づく不動産鑑定においては,想定した開発計画が鑑定評価額に直結するのであり,想定開発図がなければ,想定した開発計画の妥当性を検証することが困難となるから,想定開発図を添付していなかったこと自体不適切であったというべきである。
b 想定開発計画における分譲総区画数が28区画と記載されていることについて
J鑑定では,開発計画における分譲総区画数が28区画と記載されているところ,有効面積は4539.88m2,1区画当たりの標準的面積は約169m2とされており(甲4・別表②),有効面積を1区画当たりの標準的面積で割ると,約26.8となるから,28区画を分譲することは不可能である。
J鑑定士は,このことについて,公園を区画数に含めてしまい28区画と誤って記載してしまったのであって,27区画が正しいと供述するが(乙15・10頁,証人J・5頁),想定開発図(乙16)には①~〈27〉までの区画の記載があり,公園については「公園」と記載されているのであるから,このような間違いをすることは考えにくく,前記aのとおり,J鑑定には想定開発図が添付されておらず,前記(2)イ,ウのとおり,旧鑑定書との比較もできないのであって,上記記載が単なる誤記であるとのJ鑑定士の供述をそのまま信用することはできない。
c 法地について
(a) J鑑定の開発計画は,本件買受地の面積7059.88m2のうち法地部分を30%とみているが,道路1620m2,公園・緑地900m2を除いた土地全部を有効面積4539.88m2として販売対象としている(甲4・別表②)。
そして,J鑑定士は,このことについて,法地部分の約半分を緑地・公園部分として利用するので,法地で分譲(販売)区画となるのは本件買受地全体の約15%であるとし(乙15・11頁),販売対象となる法地については,敷地内のうち開発道路側に建物を配置することを前提に造成して,擁壁を設置し,西側部分の各区画については,開発道路側の建物を配置する敷地部分を除き,法地をそのまま活用するという開発計画を想定したなどと説明している(乙15・9~10頁,乙16,乙25の1・2,証人J・8,32~34頁)。
(b) しかし,法地の一部を造成して宅地として利用する例があるとはいえ(乙25の2,乙26),前記(ア)dで法地の減価について検討したとおり,J鑑定は,本件買受地に係る主な市場参加者として,大手又は中堅の不動産開発業者等を想定しているところ,かかる業者等が,本件買受地に含まれる法地部分を多額の費用をかけて造成した上で,宅地として分譲することを見込んで,本件買受地を購入しようとするとは考えにくい。J鑑定士は,切土をした上で深礎工法により崖地にも建物が建築することができる旨供述するが(証人J・32頁),そのような工法による造成を想定するのであれば,より厳密な造成工事費の査定が必要と考えられるが,それについては説明がない。また,法地の一部を造成せず,自然法面の状態でエンドユーザーに宅地分譲するという売却形態についてみれば,こうした土地を買い受けた者は,法地の管理の負担も負うことになるのであり,こうした販売計画に現実性があるとは考えにくい。
J鑑定士は,本件買受地7059.88m2のうち平坦地部分5097.88m2を区画割りして分譲することを想定した開発法による価格も試算したとして,試算書(乙28)を作成しており,これによれば,有効面積は3793.59m2,分譲総区画数は18区画となっており,造成工事費は2803万6250円(5500円/m2×5097.50m2)で,本件買受地の価格は2億4200万円と査定されているのであるが,有効面積に関しては,このように法地を除いた部分を有効面積として販売対象とする方が合理的である。
K鑑定は,開発法による価格の査定において,本件買受地のうち道路,公園等,法地を除いた部分を有効宅地面積=分譲面積(3904.06m2)として開発計画を策定しており(甲70),有効宅地面積については,J鑑定士の乙28号証の試算による数値と大きな差はなく,特に問題となる点はない。
(c) 以上のとおり,J鑑定が,開発法による試算において,法地を販売対象としていることには問題があるといわざるを得ない。
d 造成工事費について
(a) J鑑定においては,造成工事費について,土工事・道路敷設工事・供給処理施設工事等を想定し,周辺の類似工事における工事費を参考として,開発面積1m2当たりの宅地造成工事費を1万円/m2,本件買受地全体(7059.88m2)の造成工事費総額を7059万8800円と査定した旨記載されている。
そして,J鑑定士は,補足意見書(乙15)において,複数の建設業者への取材結果等を踏まえ,標準的な山梨県内における造成工事費を5000円~6000円/m2と把握した上で,本件買受地の約70%を占める平坦地部分については造成費を5500円/m2と査定し,本件買受地の約30%を占める法地部分については,その約半分(本件買受地の約15%)が造成する部分となり,これについては,道路と高低差があり,擁壁の設置が必要となること等から,造成費を4万円/m2と査定して,以上を加重平均(5500円/m2×平坦地面積割合70%+4万円/m2×法地造成部分面積割合15%)≒1万円/m2)して,造成工事費単価を1万円/m2と査定したと説明している(乙15・11頁)。
(b) しかし,前記(ア)dのとおり,大手又は中堅の不動産開発業者等を主な市場参加者と想定した上で,法地を造成して宅地化するといった開発計画の現実性には疑問があり,また,J鑑定士は,法地部分の造成費用を4万円/m2と査定したことについては,尋問において,資料に基づくものではなく,内部で,「ざっくりと」査定したと供述しており(証人J・42頁),その額に確たる根拠があるものではない。
他方,K鑑定においては,法地部分の造成を想定しないで,本件買受地全体(7059.88m2)の造成工事費(上下水道工事を含む。)を4950万円(7000円/m2)と査定しており,この額については,市が実際に本件買受地を造成するに当たって平坦地部分の造成費(上下水道工事を含む。)として支出した費用が約4370万円であったことに照らしても(甲83),特段不合理とは見られない。
(c) 以上からすれば,J鑑定が,法地部分の約半分について造成工事を行うことを想定しつつ,本件買受地全体の造成工事費総額を7059万8800円と査定したことについては,低く見積もり過ぎているのではないかとの疑義がある。
e 分譲価格について
(a) J鑑定は,開発計画における1区画の平均分譲単価を8万4000円/m2(1区画の平均分譲価格1419万6000円)としている(甲4・別表②)。
(b) しかし,J鑑定士が国土交通省による地価公示のために鑑定を行って国土交通省に提出した平成27年1月15日付け「鑑定評価書(平成27年地価公示)」(甲73)においては,a市o3521番地13所在の144m2の土地の正常価格の鑑定がされているところ,当該土地についての「市場の特性」の欄に,a市街地を中心とする住宅地域一円の取引の中心価格について,「土地は130m2で総額900万円程度,新築の戸建物件は2500万円前後が取引の中心となっている」と記載され,当該土地の1m2当たりの価格は,約6万8300円/m2と鑑定評価されており,別の不動産鑑定士(O)による同月16日付け「鑑定評価書(平成27年地価公示)」(甲74)においても,a市t〈以下省略〉所在の113m2の土地の正常価格の鑑定がされているところ,当該土地についての「市場の特性」の欄に,a市及びその周辺一円に展開する住宅地域について,「土地は700万円~900万円程度,新築の戸建物件は2,800万円程度が取引の中心である」と記載され,当該土地の1m2当たりの価格は6万8800円と鑑定評価されている。
J鑑定士及び別の不動産鑑定士が国土交通省に提出した公示価格に係る上記の鑑定評価書に照らすと,J鑑定における1区画の平均分譲単価8万4000円/m2(1区画(標準的面積169m2)の平均分譲価格1419万6000円)は,市場の状況からみて高すぎるのではないかとの疑義が生じる。
また,J鑑定書(甲4・別表③)に記載された「a市-2」(a市q〈以下省略〉外)の平成25年1月1日基準日の公示価格は7万1900円/m2(平成25年1月1日)であり,J鑑定書では,主として当該土地と本件買受地との地域要因格差の要素としての住環境(本件買受地を100としたときに当該土地は83とする。)を理由として,本件買受地の価格を8万3200円としている。しかし,上記「a市-2」は本件買受地の周辺の土地であるところ,本件買受地及びその周辺の土地の平成27年の路線価をみると,本件買受地の周辺には,5万5000円~5万6000円/m2の土地があるが,本件買受地の路線価は4万5000円/m2であり(甲38),一般に,路線価は正常価格(実勢価格)の約8割を目安としているとされており,本件買受地が住環境の点で,地価公示がされた「a市-2」の土地を大きく上回り,その正常価格を8万3200円とすることが妥当であるのかについては疑義が生じる。
さらに,J鑑定士が作成した本件買受地の平坦地部分5097.50m2を区画割りして18戸を分譲することを想定した試算書(乙28)においては,1区画当たりの標準的面積が211m2,平均分譲単価が8万4000円/m2と設定されており,1区画当たりの平均分譲価格は約1770万円となるが,これは,J鑑定士作成の鑑定評価書(甲73)記載の「土地は130m2で総額900万円程度」というa市街地を中心とする住宅地域一円の取引の中心価格とは大きく離れた高い価格である。
(c) 以上からすると,J鑑定における分譲価格については,高額に過ぎるとの疑義がある。
f 投下資本収益率について
(a) J鑑定は,開発法における投下資本収益率を8.5%と算定しているところ,J鑑定士は,その内訳として,借入金利率2%,開発利潤率5%,危険負担率1.5%と査定した旨説明している(乙15・12頁)。
そして,J鑑定士は,社団法人日本不動産鑑定協会(現在の公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会)の調査研究委員会開発法等検討専門委員会が平成16年11月付けで作成した「開発法に係る鑑定評価手法について」(乙17)には,投下資本収益率の平成16年10月現在の目安として,更地分譲に関して「年8%~13%」と記載されていること,社団法人日本不動産鑑定協会の研究指導委員会が平成9年3月付けで作成した「開発法に係る鑑定評価手法に関する研究について」(乙18)には,一般的に採用されている更地分譲の投下資本収益率について「年6%~12%」と記載されていることなどを指摘し,J鑑定における8.5%という投下資本収益率は適切であるとの意見を述べる(乙14)。
(b) 他方,公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会が作成した「不動産鑑定評価の実務に関する講義テキスト」(甲72)には,分割利用(更地分譲,建売分譲)の場合で,地元業者が総事業期間を1ないし1.5年程度の小規模開発を行う場合には,年12~15%の投下資本収益率が標準的な範囲であるとの記載がある。
K鑑定は,投下資本収益率を15%とし,その内訳として借入金利率2%,開発利潤率10%,危険負担率(リスク率)3%と査定しており(弁論の全趣旨),この値は上記テキストの記載に沿うものである。
さらに,J鑑定士による他の鑑定をみると,証拠(甲84,85の各別表②,不動産登記法14条地図)及び弁論の全趣旨によれば,J鑑定士は,本件買受地の東側にある総合福祉センター用地の鑑定を行っているところ(①平成26年10月31日付け不動産鑑定評価書(84)は,山梨県a市p3163番6(同土地は,同3163番1を分筆した北側部分の土地であり,不動産鑑定評価当時は分筆前の状態であった。)及び同3164番の各土地を,②平成27年12月22日付け不動産鑑定評価書(甲85)は,上記分筆後の同3163番1及び同3162番の各土地をそれぞれ鑑定の対象としていた。),この鑑定においては,投下資本収益率を9.5%と算定していることが認められるところ,そのうち,上記①の各土地における想定開発計画は,分譲総区画数を11区画(1区画当たりの標準的面積を223m2),分譲価格を8万3000円/m2とし,上記②の各土地における想定開発計画は,分譲総区画数を12区画(1区画当たりの標準的面積を253m2),分譲価格を8万1500円/m2と算定しているが,これらの開発計画は,本件買受地よりも小規模開発分譲であることに加え,本件買受地とは異なり,四方が幅員6mの路地に囲まれており,販売条件としては優れていると考えられ,本件買受地を分譲する計画よりも事業のリスク等が低いとみることができるにもかかわらず,投下資本収益率は9.5%と算定されている。J鑑定における投下資本収益率は,これよりも低い8.5%となっているのであるが,これについては,借入金利率や開発利潤率に違いがあるとは考えにくいから,危険負担率の違いではないかと想定されるが,本件買受地の方がより危険負担率が低いとしたのであれば,それについての合理的な説明は困難と考えられる。
J鑑定士が指摘する投下資本収益率に関する資料の記載についてみても,その基準時は平成16年と平成9年であって,J鑑定が実施された平成25年10月当時の経済情勢等は,上記基準時から変化していることがあり得るから,上記の資料に記載されている投下資本収益率が,開発法による本件買受地の鑑定評価における投下資本収益率として適切であるとは直ちにいい難いことに加え,J鑑定が採用した8.5%の投下資本収益率は,上記各資料に記載されている投下資本収益率の範囲の中央値よりも低い値であるところ,本件買受地の開発計画が通常の開発計画に比して特段事業リスクが低いということはできないから,上記各資料の記載がJ鑑定における8.5%の投下資本収益率が適切であることを裏付けるものであるとはいえない。
(c) 以上のとおり,J鑑定が投下資本収益率を8.5%としていることについては,J鑑定士による他の鑑定と比較しても疑問が生じるのであり,上記の各資料に照らしてもその疑問は解消されるものではなく,むしろより大きなものとなるのであって,この8.5%という値は低すぎるのではないかとの疑問がある。
g A前市長宅に通じる道路について
前記前提事実(3)及び証拠(甲10,証人I)によれば,Y市長は,本件売買契約を締結した平成26年5月8日,A前市長との間で,本件覚書(甲10)を交わしているところ,本件買受地の購入を交渉するに当たって,A前市長から,旧病院が存したときと同様に,本件新保育所を新設するに際して敷設される道路の使用許可を求められており,本件買受地の購入に当たっては,A前市長宅に通じる道路を敷設し,その使用を許可することが必須の条件であったことが認められる。
そして,本件鑑定は,大手又は中堅の不動産開発業者が本件買受地を地権者から買い受けることを想定しているものであるところ,その場合においても,本件買受地の中にA前市長宅に通じる道路を敷設することが地権者であるA市長らとの売買契約における必須の条件となると考えられ,このことは分譲区画の配置に大きく影響し,有効宅地面積にも影響するものであるから,本件買受地の鑑定評価に当たり,開発法による査定をするに当たっても,そのことが考慮されなければならないはずである。したがって,本来,本件買受地の鑑定評価を依頼するに当たっては,A前市長宅に通じる道路を敷設することが必要となることを考慮することを条件として付加すべきであったといえる。
しかし,a市が本件買受地の鑑定評価を依頼するに当たって,そのような条件は付加されず,J鑑定における想定開発図(乙16)においては,A前市長宅に通じる道路を敷設する必要があることは考慮されておらず,本件買受地のうち平坦地部分を区画割りして18区画を分譲する場合の想定図(乙28)においても,そのことは考慮されていおらず,また,K鑑定においても,このことが考慮されずに開発計画が策定されているのであるが,これは不適切であり,この点は評価額を減額する要素となるといえる。
(ウ) J鑑定士による総合福祉センター用地の鑑定との比較について
J鑑定士は,前記(イ)f(b)のとおり,総合福祉センター用地の鑑定を行っているところ,平成26年10月31日付け不動産鑑定評価書(甲84)の鑑定評価額は1億7075万円で,4万2935円/m2であり,この土地には法地は含まれていない。他方,本件買受地の鑑定評価額は2億5200万円で,3万5694円/m2であるが,本件買受地の約30%の法地を除くと5万0992円/m2となる。甲第84号証の鑑定評価書では,取引事例比較法の個別格差修正率において,「道路部分を含む」とし,「道路部分の価値をゼロと査定」として17%の減価をしているところ,本件買受地では,道路部分のほかに法地部分があるのであるから,J鑑定において,「法地を含む」として20%の減価にとどめているのは,甲第84号証の鑑定評価書との比較においても不合理である。
また,路線価(平成27年)を比較すると,総合福祉センター用地の路線価は5万5000円であるのに対して,本件買受地の路線価は4万5000円であり(甲38),路線価の比較からみても,本件買受地の鑑定評価額は高すぎると考えざるを得ない。
なお,J鑑定書と総合福祉センター用地に係る不動産鑑定評価書(甲84)の投下資本収益率の違いについては,前記ア(イ)fのとおりであるが,販売費及び一般管理費についても,J鑑定書では9%であるのに対し,総合福祉センター用地に係る不動産鑑定評価書(甲84)では10%とされていて,J鑑定書ではより低くなっているが,この違いについても合理的な説明がつくのか疑問である。
(エ) 小括
不動産鑑定士が不動産鑑定評価をするに当たっては裁量権があるが,これまで検討してきたとおり,J鑑定における本件買受地の鑑定評価額の算定の過程には,いずれも鑑定評価額を高くする方向に作用する要素について多くの疑問があり,J鑑定士による他の鑑定と比較しても,取引事例比較法の個別格差修正率において法地の減価を20%にとどめていること,開発法において法地を販売対象としていることについては不合理というべきであって,客観的にみて合理的な鑑定評価が行われているとは評価し難い。
そして,前記(2)ウのとおり,平成25年3月の時点において,Y市長とA前市長との間で本件買受地を市が買い受けることについての話がされ,2億五千数百万円といった金額まで示されていたものであるところ,Y市長がA前市長に示した額とJ鑑定の鑑定評価額がほぼ一致することからすれば,J鑑定は,Y市長がA前市長に示した額を意識し,これと乖離しないようにしようとして,正常価格よりも高額に査定をしたものとみざるを得ない。
さらに,J鑑定士による総合福祉センター用地の鑑定との比較などからすると,旧鑑定書における鑑定評価額もY市長がA前市長に示した2億五千数百万円といった金額であったところ,J鑑定で評価の対象となった本件買受地は,旧鑑定書において評価の対象とされた土地よりも減少したにもかかわらず,J鑑定を行う際に操作が加えられ,鑑定評価額は維持されたのではないかという重大な疑念もますます深まるのである。
したがって,J鑑定が不動産鑑定士の鑑定評価における裁量権の範囲内にあるものと評価することはできない。
イ K鑑定について
K鑑定は,別紙3のとおり,本件買受地につき,取引事例比較法による試算価格を1億3700万円,開発法による試算価格を1億6200万円とし,両試算価格を等しく重視し,地価公示価格を規準とした価格との均衡にも留意の上,平成26年5月8日時点の正常価格についての鑑定評価額を1億5000万円としている(前記前提事実(8)イ(イ))。
(ア) K鑑定における取引事例比較法による試算価格について
a 取引事例の選定について
(a) a市物件1について
a市物件1を選定したことについては不合理な点はみられず,a市物件1から算定された3万7500円/m2という価格は適切な価格であるということができる。
(b) a市物件2について
前記ア(ア)a(b)のとおり,J鑑定士は,a市物件2につき,高低差に係る標準化補正が不十分であり,自分としては取引事例としては採用すべき土地とは考えない旨を述べるが,K鑑定士が取引事例として選択したことが不適切であったとまではいえないとも供述するところ,追加造成費用が多額となることからみて高低差に係る標準化補正が不十分であるとの点については,これを裏付ける的確な証拠はないので,a市物件2から算定された価格が不適切であるとまでは判断できない。
(c) i市n町物件について
証拠(乙32・3頁,証人J・42~44頁)によれば,i市n町物件は,山梨県i市n町〈以下省略〉所在の大規模分譲地であるh20住宅地の土地であり,開発事業者が造成済みの6区画(1203m2)を不動産業者に一括売却した事例であることが認められる。J鑑定士は,K鑑定に対する意見書(乙32)において,上記団地の分譲価格(ユーザーへの販売価格)は3万円~3万3000円/m2であるが,多くの在庫が残っていることから,提携の不動産業者に複数回にわたって採算を度外視して相場の半値の1万5000円~1万7000円/m2の特別処分価格で売却されており,i市n町物件については,このような特殊な取引事情があるところ,K鑑定においては,このような取引事情を踏まえた補正がされていないとする。上記団地の分譲価格(ユーザーへの販売価格)が3万円~3万3000円/m2であるとすると,i市n町物件の不動産業者への売却価格(1万6795円/m2)はかなり低廉であり,J鑑定士が指摘するような取引事情があったことが推認される。もっとも,多くの在庫が残っているとされており,そうであれば,上記の分譲価格が維持されるとは限らないし,相場の半値とまでいえるのかは疑問であるが,事情補正として上記事情を考慮していない点は問題であるといえる。
(d) 小括
以上によれば,a市物件1による価格については疑義があるとはいえず,a市物件2による価格についても本件証拠からは問題があることが明らかとはいえない。i市n町物件から算出された価格については,事情補正がされていない点で問題があるが,K鑑定が取引事例比較法による標準的画地の価格を3万7400円/m2としたことに大きな問題があるとまではいえない。
b 法地の減価について
K鑑定は,J鑑定と同様に典型的な買手として戸建住宅用の分譲開発を行う不動産事業者が中心となると想定しており(甲70・28頁),これを前提に標準的画地と比較した減価要因として,有効宅地化率(宅地分譲を行う場合に販売できない法地を含んでいるほか,開発道路等の潰地が発生することによる減価)として45%の減価をしており(甲70・38頁),本件買受地のうちの法地部分に価値があるとは考えられないことからすれば,K鑑定の法地に関する減価率は適切であるといえる。
c そして,本件全証拠を検討しても,前記a(c)のほかには,K鑑定における取引事例比較法について,不適切な点があるとはうかがわれない。
(イ) K鑑定における開発法による試算価格について
a 分譲価格
(a) J鑑定士は,①K鑑定が想定した1区画の分譲価格について,取り上げられている4つの物件のうち,a市uの物件については,売り急ぎ等の事情があることが推察され,5万2000円/m2という価格は参考事例として不適切である上,②本件買受地周辺の○○地区における他の取引事例の販売価格は7万4100円~9万3255円/m2であって,K鑑定の分譲価格6万7000円/m2は明らかに低廉であると述べる(乙32・4~5頁)。
(b) しかし,前記ア(イ)e(b)のとおり,J鑑定士が地価公示のために鑑定を行って国土交通省に提出した平成27年1月15日付け「鑑定評価書(平成27年地価公示)」(甲73)においては,a市街地を中心とする住宅地域一円の取引の中心価格について,「土地は130m2で総額900万円程度」と記載され,当該土地(a市o3521番13)の1m2当たりの価格は約6万8300円/m2と鑑定評価されているのであるから,J鑑定士が指摘する②の点をもって,K鑑定の分譲価格が低廉に過ぎるとまではいえない。
b 造成後の住環境
(a) J鑑定士は,本件買受地のように立地条件が優れた大規模分譲住宅素地については,開発の技能及び実績を有する事業者が主たる需要者であり,開発に当たっては分譲地の競争力を高めるため,周辺の既存住宅地域と差別化を図り,街路や住環境の整った新しい街並みが造られることとなって,大規模分譲地の画地は,周辺の既存住宅地と比較すると高い価格帯で分譲されることが多く,このような価格形成要因を考慮していないK鑑定は妥当性を欠いていると述べる(乙32・5頁,証人J・7,35頁)。
(b) しかし,一般論としてそのようにいうことができるとしても,本件買受地について,周辺の既存住宅地と比較して高い価格帯で分譲することができるためには,その前提として,J鑑定士がいうような街路や住環境の整った新しい街並みが造られることが必要となるのであるから,これを前提として開発後の分譲価格を周辺の既存住宅地域よりも高く設定するのであれば,そのような開発をするための費用についてもより厳密な査定が必要というべきであるが,J鑑定においてそのような厳密な査定がされているわけではないから,J鑑定士の上記指摘は,K鑑定に対する批判として説得的なものとはいえない。
c 造成工事費
前記ア(イ)dで説示したとおり,K鑑定における造成工事費は不相当とはいえない。
d 投下資本収益率
前記ア(イ)fで説示したとおり,K鑑定が投下資本収益率を15%としていることが不相当とはいえない。
e A前市長宅への直結道路を想定開発図において考慮していない点
本件買受地の鑑定評価に当たり,開発法による査定をする際には,本件買受地の中にA前市長宅に通じる道路を敷設することが必須であることを考慮すべきところ(前記ア(イ)g),K鑑定における開発計画は,J鑑定と同様,この点を考慮せずに策定されており(甲70・39頁),この点は減額事由として考慮すべきであるといえる。
f そして,本件全証拠を検討しても,K鑑定における開発法による試算価格について,これを低額とさせる方向での不適当な点があるとはうかがわれない。
(ウ) 小括
以上のとおり,K鑑定の取引事例比較法及び開発法における本件買受地の不動産評価額の算出過程には,前記(ア)a(c)及び(イ)eを除き不相当な点はみられず,上記の不相当とみられる点を考慮すると,取引事例比較法による比準価格(1億3700万円)はやや低額で,逆に,開発法による価格(1億6200万円)がやや高額になっているのではないかもと考えられるが,両試算価格からすれば,本件買受地の正常価格を1億5000万円と鑑定評価したK鑑定に大きな問題はないものとみることができる。
ウ 結論
そうすると,J鑑定における本件買受地の不動産評価額,そして,それに依拠した本件売買契約の代金額2億5200万円は,正常価格を1億0200万円程度上回るといわざるを得ない。
(4)  本件買受地を買い受ける目的や必要性,契約の内容に影響を及ぼす社会的,経済的要因等
以上の(2)及び(3)の検討結果によれば,a市が本件買受地を買い受ける目的や必要性及び契約の内容に影響を及ぼす社会的,経済的要因等について,以下の指摘をすることができる。
a市においては,平成27年度の本件新保育所の新設を目指し,その用地の確保が求められていたが,旧病院用地に係る土地,ひいては本件買受地を本件新保育所用地とすることが適切であるのかについての実質的な議論がされた形跡がみられない状況において,Y市長により本件新保育所を建設するために旧病院用地に係る土地を買い受けるという判断がされたものであるところ,その他の前記(2)の経緯に鑑みると,本件審議会が平成23年3月23日にした答申に沿って○○地区に200名の定員規模の本件新保育所を設置するとしても,本件審議会においては3000m2程度の面積が必要との説明がされていたことや,旧病院用地に係る土地が候補地として挙げられていたわけではないことなどからすれば,Y市長が7000m2もの面積のある本件買受地を本件新保育所の適地と判断した理由は不分明である。そして,本件売買契約の相手方は,Y市長とは平成25年までの市長選挙では対立関係にあったA前市長であったところ,平成25年2月の市長選挙の前から,Y市長が再選された場合には,a市が旧病院用地に係る土地を買い受ける意向があることがA前市長に示され,選挙後の同年3月下旬頃,正常価格についての鑑定評価がされる前に,Y市長からA前市長に対して購入見込額が直接伝えられたこと,Y市長は,この話合いによってA前市長との関係が好転したという趣旨のことを述べていること,その後にA前市長の利便・利益に大きく配慮した分筆がされて本件売買契約に至ったこと,平成29年2月の市長選では,A前市長はY市長の支持に転じたことなどの事実からすれば,旧病院用地に係る土地を本件新保育所の用地としてa市が買い受けるとのA前市長の判断には,A前市長との関係を好転させ,政治的な協力を得たいというY市長の思惑も伏在していたものと考えざるを得ない。
(5)  本件売買契約に基づく本件支出命令及び本件支出行為に係るY市長の行為が違法か否かについて
ア 以上によれば,本件売買契約については,2億5200万円という代金が正常価格と評価できる1億5000万円を1億0200万円も上回っているというだけでなく,本件買受地の取得の経緯につき,a市が買い受ける土地について,鑑定評価が行われることが予定されているにもかかわらず,Y市長が,地権者であるA前市長に対して,鑑定評価が行われる前の時点で購入見込額を伝えるなど,適正手続の観点からの重大な問題があり,さらに,本件買受地が本件新保育所の用地として適地であると判断された理由が不分明である上,その目的には,Y市長において,それまでの市長選では対立関係にあったA前市長から政治的な協力を得たいという思惑も伏在していたとみられるのであって,これは,財政上必要最小限の支出を行うことを求める地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に照らし,許容し難い他事考慮であるといわざるを得ない。
そうすると,本件売買契約締結に係るY市長の判断には,裁量権の逸脱又は濫用があり,これが地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反し違法であることは明らかである上,その裁量権の逸脱又は濫用の程度は著しく,本件売買契約を無効としなければ地方自治法2条14項,地方財政法4条1項の趣旨を没却する結果となる特段の事情があるというべきであるから,本件売買契約は私法上無効というべきである。
なお,仮に本件売買契約が私法上無効とまではいえないとしても,これまで述べてきた事情からすれば,本件売買契約の締結は,著しく合理性を欠きそのためその締結には予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存在するというべきであるし,本件売買契約においては,契約に疑義を生じたとき,又は契約に定めない事項については,被告及び売主が協議して定める旨(11条)の条項が置かれているところ(甲109~115),本件売買契約の相手方は,a市長としてa市政に携わってきたA前市長とその親族であり(弁論の全趣旨),こうした地位にある者に対して正常価格を著しく超える高額な売買代金額が提示されて本件売買契約が締結され,そのまま本件売買契約に基づく支出がされれば,a市に多大な損害が発生する事態が生じたのであるから,A前市長らに対して,本件売買契約の解消又は売買代金額の減額に向けた働きかけを真摯に行えば,A前市長らにおいて本件売買契約の有効性に固執することはその立場上困難であって,本件売買契約の解消又は売買代金額の減額に応ずる蓋然性が高かったと認められ,客観的にみてa市が本件売買契約の解消又は売買代金額の減額をすることができる特殊な事情があったともいい得る。
イ そうすると,副市長が行った本件支出命令及びa市会計課が行った本件支出行為は違法というべきであるし,これまで述べてきたところによれば,本件売買契約の締結は,Y市長が主導的に進めていたというべきであるから,Y市長において,本件支出命令及び本件支出行為を阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,故意により本件支出命令を阻止しなかったと認められる。
したがって,被告は,Y市長に対し,不法行為に基づく損害を賠償するよう請求しなければならないというべきである。
(6)  損害額
ア 原告は,本件の損害額に関し,A前市長宅に直結する道路部分を買い受けたことについては,そもそも上記道路部分を買い受けたことが違法であるとして,その面積に対応する購入額全額が損害となる旨主張する。
しかし,a市は,上記道路部分を含む本件買受地を買い受け,上記道路部分を本件新保育所への通路として使用しており,上記道路部分の財産的価値を取得したということはできるから,上記道路部分の購入額の全額が直ちに損害になるとは認め難い。
イ 原告は,上記の損害の発生が認められない場合は,上記道路部分を含む本件買受地の取得価格と正常価格との差額が損害になると主張するところ,前記のとおり,本件買受地の正常価格は1億5000万円を上回るものではないと認められ,本件支出命令及び本件支出行為によってA前市長らに支払われた代金は2億5200万円であるから,その差額は1億0200万円となる。そして,原告が,本件買受地の購入に当たっては,地方都市リノベーション事業として事業費の50%の社会資本整備総合交付金が支給されることから,差額の半額を損害と算定していることに照らすと,上記の半額の5100万円を損害と認定すべきであり,原告が一部請求として5050万円をY市長に請求するよう求めていることから,原告の請求を認容すべきである。
3  結論
以上によれば,本件訴えのうち,Y市長がA前市長らとの間で本件買受地の売買契約を締結した行為を財務会計上の行為としてY市長に対して損害賠償請求をすることを被告に求める部分については却下すべきこととなるが,本件支出命令及び本件支出行為に係るY市長の行為が違法であることを理由として,Y市長に対して5050万円及びこれに対する本件支出行為がされた日である平成26年7月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求することを被告に求める原告の請求は理由があるから,これを認容することとし,主文のとおり判決する。
甲府地方裁判所民事部
(裁判長裁判官 峯俊之 裁判官 大畠崇史 裁判官 新居拓馬)

 

〈以下省略〉

「選挙 立候補」に関する裁判例一覧
(1)令和元年10月 8日  神戸地裁  平29(ワ)1051号 損害賠償請求事件
(2)令和元年 9月 6日  大阪地裁  令元(わ)2059号 公職選挙法違反被告事件
(3)令和元年 6月25日  東京地裁  平26(行ウ)615号 損害賠償等請求事件
(4)令和元年 5月24日  東京地裁  平28(ワ)17007号 選挙供託金制度違憲国家賠償請求事件
(5)平成31年 4月26日  大阪高裁  平30(行ケ)1号 裁決取消請求事件
(6)平成31年 4月25日  東京高裁  平30(ネ)4794号 総会決議無効確認等請求控訴事件
(7)平成31年 4月12日  大阪地裁  平29(ワ)7325号 賃金等請求事件
(8)平成31年 4月 9日  甲府地裁  平27(行ウ)6号 違法公金支出金返還等請求事件
(9)平成31年 3月20日  水戸地裁 平29(わ)655号
(10)平成31年 3月 7日  知財高裁  平30(行ケ)10141号 審決取消請求事件
(11)平成31年 3月 5日  東京高裁  平30(う)1422号 政治資金規正法違反被告事件
(12)平成31年 3月 5日  東京地裁  平29(ワ)18277号 謝罪広告等請求事件
(13)平成31年 1月17日  盛岡地裁  平30(行ウ)8号 旧庁舎解体等公金支出等差止請求事件
(14)平成31年 1月15日  名古屋地裁  平28(ワ)3178号・平28(ワ)3179号 損害賠償請求事件
(15)平成30年11月29日  東京地裁  平29(行ウ)149号・平29(行ウ)375号 不当労働行為再審査申立棄却命令取消事件
(16)平成30年11月22日  東京地裁  平30(ワ)16336号 損害賠償等請求事件
(17)平成30年11月22日  東京地裁  平28(ワ)31683号 損害賠償請求事件
(18)平成30年10月31日  東京地裁  平27(ワ)18282号 損害賠償請求事件
(19)平成30年10月24日  仙台高裁  平29(行コ)26号 政務調査費返還履行等請求控訴事件
(20)平成30年10月11日  東京高裁  平30(う)441号 政治資金規正法違反被告事件
(21)平成30年10月 5日  東京地裁  平27(ワ)36817号・平28(ワ)18096号 損害賠償請求事件、損害賠償等請求事件
(22)平成30年10月 4日  東京地裁  平27(ワ)2650号 代表権不存在確認等請求事件
(23)平成30年 9月28日  東京地裁  平26(ワ)10773号・平29(ワ)3602号 損害賠償請求事件(本訴)、損害賠償請求反訴事件(反訴)
(24)平成30年 9月28日  東京地裁  平28(ワ)23496号 損害賠償請求事件
(25)平成30年 9月27日  大阪高裁  平29(行コ)173号 高等学校等就学支援金支給校指定義務付等請求控訴事件
(26)平成30年 9月27日  東京地裁  平28(ワ)36676号 総会決議無効確認等請求事件
(27)平成30年 9月19日  東京高裁  平30(ネ)2451号 社員総会決議不存在確認等,代議員選挙無効確認等請求控訴事件
(28)平成30年 8月30日  東京高裁  平30(行コ)111号 労働委員会救済命令取消請求控訴事件
(29)平成30年 8月28日  東京地裁  平28(行ウ)281号 政務活動費返還請求事件
(30)平成30年 7月25日  東京高裁  平30(行ケ)8号 裁決取消請求事件
(31)平成30年 7月20日  福岡地裁久留米支部  平28(ワ)69号 損害賠償請求事件
(32)平成30年 6月27日  東京地裁  平27(特わ)2148号 各政治資金規正法違反被告事件
(33)平成30年 5月24日  東京高裁  平30(行ケ)4号 選挙無効及び当選無効請求事件
(34)平成30年 4月25日  東京地裁  平28(ワ)31号・平28(ワ)37044号・平28(ワ)37820号 証書真否確認、立替金等返還債務不存在確認等請求事件、立替金返還請求反訴事件、立替金請求反訴事件
(35)平成30年 4月20日  高松高裁  平29(行コ)21号 権利変換計画不認可処分取消等請求控訴事件
(36)平成30年 4月18日  東京高裁  平29(行コ)302号 埼玉県議会政務調査費返還請求控訴事件
(37)平成30年 3月30日  東京地裁  平27(ワ)37147号 損害賠償請求事件
(38)平成30年 3月26日  東京地裁  平28(ワ)31536号・平28(ワ)44146号 社員総会決議不存在確認等請求事件、代議員選挙無効確認等請求事件
(39)平成30年 3月19日  東京地裁  平28(ワ)1085号 損害賠償等請求事件
(40)平成30年 3月13日  東京高裁  平29(う)1154号 公職選挙法違反被告事件
(41)平成30年 3月 8日  東京地裁  平29(ワ)30031号 損害賠償及び慰謝料請求事件
(42)平成30年 2月21日  東京地裁  平28(行ウ)6号 労働委員会救済命令取消請求事件
(43)平成30年 2月13日  東京地裁  平29(行ウ)45号 非常勤職員報酬返還請求事件
(44)平成30年 2月 6日  東京高裁  平29(行ケ)35号
(45)平成30年 2月 6日  東京地裁  平27(ワ)35223号 仮払金精算請求事件
(46)平成30年 1月22日  東京地裁  平27(特わ)2148号 政治資金規正法違反被告事件
(47)平成30年 1月18日  東京高裁  平29(行ケ)27号・平29(行ケ)28号 裁決取消請求事件
(48)平成29年12月21日  東京地裁  平29(ワ)24097号 損害賠償等請求事件
(49)平成29年12月19日  最高裁第三小法廷  平29(行フ)3号 執行停止決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
(50)平成29年12月19日  千葉地裁  平28(行ウ)5号 農業委員会会長解任無効確認請求事件
(51)平成29年12月15日  福岡地裁  平26(わ)1284号・平27(わ)231号・平27(わ)918号 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
(52)平成29年12月 8日  札幌地裁  平24(行ウ)3号 政務調査費返還履行請求事件
(53)平成29年11月16日  東京地裁  平28(ワ)6761号 懲戒処分無効確認等請求事件
(54)平成29年11月 2日  東京地裁  平28(ワ)32978号 損害賠償請求事件
(55)平成29年11月 2日  仙台地裁  平26(行ウ)2号 政務調査費返還履行等請求事件
(56)平成29年10月11日  東京高裁  平28(ネ)5794号 理事長及び理事の地位確認等請求控訴事件
(57)平成29年10月11日  東京地裁  平28(ワ)38184号 損害賠償請求事件
(58)平成29年10月11日  神戸地裁  平28(行ウ)49号 退職手当金不支給処分取消請求事件
(59)平成29年10月 2日  東京地裁  平29(ワ)21232号 発信者情報開示請求事件
(60)平成29年 9月28日  東京地裁  平26(行ウ)229号 難民不認定処分取消請求事件
(61)平成29年 9月26日  東京地裁  平28(ワ)18742号 損害賠償請求事件
(62)平成29年 9月25日  東京地裁  平27(行ウ)331号・平28(行ウ)526号 観察処分期間更新決定取消請求事件、訴えの追加的変更申立て事件
(63)平成29年 9月25日  東京地裁  平27(行ウ)444号 観察処分期間更新処分取消請求事件
(64)平成29年 9月20日  徳島地裁  平28(行ウ)9号 権利変換計画不認可処分取消等請求事件
(65)平成29年 9月 8日  東京地裁  平28(行ウ)117号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(66)平成29年 9月 1日  青森地裁  平29(わ)55号・平29(わ)67号・平29(わ)71号 公職選挙法違反被告事件
(67)平成29年 8月25日  東京地裁  平27(行ウ)732号 難民不認定処分等取消請求事件
(68)平成29年 8月25日  青森地裁  平28(ワ)143号 損害賠償請求事件
(69)平成29年 7月25日  青森地裁  平29(わ)48号・平29(わ)56号・平29(わ)66号・平29(わ)70号 公職選挙法違反被告事件
(70)平成29年 7月24日  東京地裁  平28(特わ)807号 公職選挙法違反被告事件
(71)平成29年 7月12日  広島高裁松江支部  平28(行コ)4号 市庁舎建築に関する公金支出等差止請求控訴事件
(72)平成29年 6月27日  東京地裁  平28(ワ)26217号 損害賠償請求事件
(73)平成29年 5月22日  東京地裁  平28(特わ)807号 公職選挙法違反被告事件
(74)平成29年 5月18日  東京高裁  平28(う)1194号 公職選挙法違反被告事件
(75)平成29年 5月 9日  東京地裁  平28(ワ)36100号 決議無効確認請求事件
(76)平成29年 4月13日  東京地裁  平27(行ウ)480号 退去強制令書発付処分等取消請求事件
(77)平成29年 4月11日  東京地裁  平26(ワ)10342号 損害賠償請求事件
(78)平成29年 4月 7日  東京地裁  平26(ワ)27864号 土地建物所有権移転登記抹消登記手続等請求事件
(79)平成29年 3月29日  東京地裁  平28(ワ)4513号・平28(ワ)28465号 マンション管理組合法人総会決議無効確認請求事件、反訴請求事件
(80)平成29年 3月28日  東京地裁  平25(ワ)28292号 謝罪広告等請求事件
(81)平成29年 3月28日  仙台地裁  平28(ワ)254号 損害賠償請求事件
(82)平成29年 3月24日  東京地裁  平26(ワ)30381号 損害賠償請求事件
(83)平成29年 3月15日  東京地裁  平27(行ウ)403号 地位確認等請求事件
(84)平成29年 3月 8日  東京地裁  平26(行ウ)300号 地位確認等請求事件
(85)平成29年 2月 9日  静岡地裁  平28(ワ)409号 損害賠償請求事件
(86)平成29年 2月 2日  東京地裁  平26(ワ)25493号・平27(ワ)20403号 株式代金等請求事件(本訴)、損害賠償請求反訴事件(反訴)
(87)平成29年 2月 1日  仙台地裁  平26(行ウ)31号 海外視察費返還履行請求事件
(88)平成29年 1月31日  大阪高裁  平28(ネ)1109号 損害賠償等請求控訴事件
(89)平成29年 1月31日  高松高裁  平28(行コ)23号 資格決定処分取消請求控訴事件
(90)平成29年 1月31日  東京地裁  平27(行ウ)360号 難民の認定をしない処分等取消請求事件
(91)平成29年 1月31日  神戸地裁豊岡支部  平28(わ)63号
(92)平成29年 1月17日  静岡地裁  平28(わ)407号 公職選挙法違反被告事件
(93)平成28年11月28日  名古屋高裁  平27(う)131号 受託収賄、事前収賄、公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律違反被告事件
(94)平成28年11月21日  東京地裁立川支部  平27(ワ)2775号 理事長及び理事の地位確認等請求事件
(95)平成28年11月18日  東京地裁  平28(特わ)1764号 公職選挙法違反被告事件
(96)平成28年11月16日  大阪高裁  平27(ネ)3176号 損害賠償請求控訴事件
(97)平成28年11月15日  東京高裁  平28(行ケ)16号 選挙無効請求事件
(98)平成28年11月10日  東京高裁  平28(行ケ)17号 選挙無効請求事件
(99)平成28年11月 9日  東京地裁  平27(ワ)1724号 損害賠償等請求事件
(100)平成28年10月31日  東京地裁  平28(特わ)1764号 公職選挙法違反被告事件


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