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「政治活動 選挙運動」に関する裁判例(44)平成25年 1月18日 東京地裁 平23(行ウ)442号 難民の認定をしない処分取消請求事件

「政治活動 選挙運動」に関する裁判例(44)平成25年 1月18日 東京地裁 平23(行ウ)442号 難民の認定をしない処分取消請求事件

裁判年月日  平成25年 1月18日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(行ウ)442号
事件名  難民の認定をしない処分取消請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2013WLJPCA01188008

事案の概要
◇ギニア共和国(「ギニア」)の国籍を有する外国人男性である原告が、法務大臣から本件不認定処分を受けたことについて、ギニアにおいては、スースー族を支持基盤とする軍事独裁政権が、原告の属するマリンケ族を抑圧し、マリンケ族を支持基盤とするギニア人民結集党(「RPG」)を含む野党を弾圧していたところ、RPGに属する政治活動家であった原告は、ギニアに帰国した場合には迫害を受けるおそれがあり、出入国管理及び難民認定法2条3号の2並びに難民の地位に関する条約1条及び難民の地位に関する議定書1条にいう「難民」に該当するなどと主張して、本件不認定処分の取消しを求めた事案

裁判年月日  平成25年 1月18日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(行ウ)442号
事件名  難民の認定をしない処分取消請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2013WLJPCA01188008

千葉県市川市〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 大橋毅
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 国
同代表者兼処分行政庁 法務大臣 A
被告指定代理人 新保裕子ほか別紙指定代理人目録記載のとおり

 

 

主文

1  原告の請求を棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
法務大臣が原告に対して平成20年11月12日付けでした難民の認定をしない処分(以下「本件不認定処分」という。)を取り消す。
第2  事案の概要等
1  事案の要旨
本件は,ギニア共和国(以下「ギニア」という。)の国籍を有する外国人男性である原告が,法務大臣から本件不認定処分を受けたことについて,ギニアにおいては,スースー族を支持基盤とする軍事独裁政権が,原告の属するマリンケ族を抑圧し,マリンケ族を支持基盤とするギニア人民結集党(以下「RPG」という。)を含む野党を弾圧していたところ,RPGに属する政治活動家であった原告は,ギニアに帰国した場合には迫害を受けるおそれがあり,出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)2条3号の2並びに難民の地位に関する条約(以下「難民条約」という。)1条及び難民の地位に関する議定書(以下「難民議定書」という。)1条にいう「難民」に該当するなどと主張して,本件不認定処分の取消しを求める事案である。
2  前提事実(証拠等の掲記のない事実は,当事者間に争いがないか,当事者において争うことを明らかにしない事実である。以下「前提事実」という。)
(1)  原告の国籍等
原告は,1971年(昭和46年)○月○日にギニアにおいて出生した,ギニアの国籍を有する外国人男性である。
(2)  原告の入国及び在留状況
原告は,平成17年8月22日,成田国際空港に到着し,入国目的を愛知万博参加として上陸の申請をし,東京入国管理局成田空港支局入国審査官から,在留資格を「特定活動」とし在留期間を「6月」とする上陸許可を受けて本邦に上陸したが,その後,在留期間の更新又は在留資格の変更を受けることなく,在留期間の末日である平成18年2月22日を超えて本邦に不法残留した。
(3)  原告についての退去強制の手続
ア 原告は,平成18年7月20日,東京入国管理局入国警備官及び警視庁大井警察署警察官によって摘発され,入管法違反(旅券不携帯)の罪の現行犯人として逮捕された(乙4~6)。
イ 東京入国管理局入国警備官は,①平成18年8月8日,原告が入管法24条4号ロ(平成21年法律第79号による改正前のもの。不法残留)に該当すると疑うに足りる相当の理由があるとして東京入国管理局主任審査官から収容令書の発付を受け,②同月9日,同法64条の規定により,原告の身柄の引渡しを受けた上で,上記収容令書を執行した。
ウ 東京入国管理局入国審査官は,平成18年8月10日,原告が前記(2)に述べた不法残留の退去強制事由に該当し,かつ,出国命令対象者に該当しない旨の認定をし,原告にその旨を通知するとともに,この認定に異議があるときは3日以内に特別審理官に対し口頭審理の請求をすることができる旨を説明した。これに対し,原告は,同日,上記認定に服し,口頭審理の請求をしない旨を述べ,口頭審理の請求を放棄する旨が記載された口頭審理放棄書(乙13)に署名して,これを提出した。
エ 東京入国管理局主任審査官は,平成18年8月10日,原告に対する退去強制令書を発付し,東京入国管理局入国警備官は,同日,これを執行し,原告を東京入国管理局収容場に収容した。
(4)  原告についての難民の認定の手続
ア 原告は,平成19年1月10日,法務大臣に対し,難民の認定の申請(以下「本件難民認定申請」という。)をしたが,法務大臣は,平成20年11月12日,原告について難民の認定をしない処分(本件不認定処分)をし,同年12月5日,原告にその旨を通知した。
イ 法務大臣から権限の委任を受けた東京入国管理局長は,平成20年11月14日,入管法61条の2の2第2項の規定による在留特別許可をしない処分をし,同年12月5日,原告にその旨を通知した。
ウ 原告は,平成20年12月5日,法務大臣に対し,本件不認定処分について異議申立てをしたが,法務大臣は,平成23年3月9日,この異議申立てを棄却する旨の決定をし,同年4月5日,原告にその旨を通知した。
エ 原告は,平成23年4月19日,法務大臣に対し,2回目の難民の認定の申請をした。
(5)  本件訴えの提起
原告は,平成23年7月20日,本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。
3  争点及びこれに関する当事者の主張の要点
本件の争点は,本件不認定処分の適法性であり,これに関する当事者の主張の要点は,次のとおりである。
(1)  原告の主張の要点
ア 難民の意義等
(ア) 「迫害」の意義
難民条約の起草者は,「迫害を受ける」との文言を定義しなかったが,条文の意味の理解のために努力することが必要であり,そのためのアプローチ方法としては,少なくとも,①庇護国の国内人権基準を適用して判断する,②「迫害を受ける」の文言の意味を辞書に求める,③国籍国による保護の欠如による持続的若しくは組織的な人権侵害と解するという3つが考えられる。
これらのうち上記①は,国際基準に従い解釈され,適用されるべきいわゆる国際人権条約の枠組みにおいては本質的に好ましくない上,イデオロギーの押し付け及び出身国に対する非難の暗示を同時に容易に許してしまうという欠点を有する。また,上記②は,多くの用語は様々な異なる意味を持つものであることや,条約又は法規において用いられている用語の意味は,その背景及び目標ないし目的に照らして解釈することが必要であることに照らし,妥当ではない。一方,上記③は,文脈(状況)を重視するアプローチであり,条約解釈の周知の原則にしっかりと基礎を持つものであって,いわゆる難民法がいかなるものであれ重大な仕方で人間の尊厳を否定する行為に関わるべきものであることに照らし,適切な基準であるものというべきである。
そうすると,「迫害」とは,国籍国による保護を受けられないことを明確に示す,基本的人権の継続的若しくは組織的な否定をいうものと解すべきである。
(イ) 立証責任等
a 少なくとも,難民認定の申請者の出身国の一般的状況については,認定者側にも立証責任があるというべきである。
また,当該申請者の個別事情についても,迫害から逃走してくる者はごく最小の必需品のみを所持しているにすぎず,その陳述の全てについてこれを補強する書類等の証拠を提出することができる場合の方が例外に属するのであって,難民に対して当該事案の全てを立証することを要求するとすれば,大半は難民認定を受けることができないことになる。誤った難民不認定の決定が難民にもたらす極めて深刻な結果と,客観的な証拠が存在せず若しくは入手不可能である場合が多いという難民の置かれた状況を考慮し,立証責任は柔軟にとらえられるべきであり,当該申請者の陳述に立証できないものが存在する場合において,その説明が信ぴょう性を有すると思われるときは,反対の十分な理由がない限り,当該申請者は「灰色の利益」を与えられるべきである(UNHCR難民認定基準ハンドブック196,203パラグラフ)。すなわち,申請者が明白な証拠を提出することができなくても,恐れている迫害の種類と恐怖の理由について一貫性のある妥当な供述ができていれば,立証責任が果たされていると解すべきである。
b 被告は,本件においては,「原告を難民と認定しなかった法務大臣の判断の適否」,すなわち,「原告が本件不認定処分当時において難民と認められるに必要な十分に理由のある迫害の恐怖を有していたか否か」が訴訟の場において争われていると主張する。
しかし,「原告を難民と認定しなかった法務大臣の判断の適否」が「原告が本件不認定処分当時において難民と認められるに必要な十分に理由のある迫害の恐怖を有していたか否か」のみを指すとは限らない。ある行政処分において,行政判断に関する一定の基準が法令上存する場合に,当該基準を適用せずに処分がされたときは,当該処分には瑕疵があるということになる。法務大臣は,難民の認定の申請の当否の判断に際し,前記(ア)に述べた判断基準を適用しなければならないものであり,これを適用せず,あるいは誤って適用して判断がされた場合には,当該判断は瑕疵があるものとなるものというべきであって,前記(ア)の基準に基づけば難民と認定されるべきものが認定されなかったことが立証されれば,本件不認定処分には瑕疵があることになる。
c 難民条約及び入管法における難民の定義によれば,立証の対象は「迫害の発生」ではなく「迫害を受けるおそれについての恐怖を抱く相当な理由」であることに注意すべきである。このように迫害についての一定の蓋然性の立証で足りることは,根本的には,将来の予測の不確実さと保護すべき法益の重要性との衡量の結果であると考えられる。法務省は,難民の保護と,ともすれば対立する「非正規滞在者に対する厳しい措置」を志向するゆえに,難民該当性の立証について厳格な主張を繰り返すが,迫害が確実でない場合でも,帰国後に迫害を受けるおそれがあるのであれば,保護すべきなのである。
イ 原告の難民該当性
(ア) ギニアの状況
a ギニアには,マリンケ,スースー等多数の民族がおり,同国の政治勢力は,民族及び当該民族の居住地域を基盤とする。同国においては,1984年(昭和59年)以降,スースー族を基盤とするコンテ大統領が軍事独裁制を敷いていた。一方,マリンケ族のほとんどは,その居住地域であるキルワネ県を基盤とする政治政党であるRPGを支持し,上記政権と対立していた。上記政権は,マリンケ族を抑圧し,首都であるコナクリでは,デモの際にマリンケ語を話しただけで逮捕されるような状況であった。2007年(平成19年)1月から2月にかけて,大規模なゼネストが行われ,コナクリを中心に全土でデモが発生し,同月中旬にはコナクリの一部で治安部隊との衝突による死傷者が発生し,ギニア全土に外出禁止令及び戒厳令が発出された。
b 2008年(平成20年)12月にコンテ大統領の死去が発表された後,ムサ・カマラが大統領に就任したが,その政権は,次第に独裁を強め,マリンケ族に対する抑圧は続いた。民族的・宗教的少数者の人権状況を監視する国際NGOであるマイノリティ・ライツ・グループ・インターナショナルの2009年(平成21年)の報告では,ギニアで抑圧されている少数者の2つのうちの1つとしてマリンケが挙げられている(乙36の7)。
c 2009年(平成21年)9月28日,カマラ大統領が翌年の大統領選挙に出馬することに反対するグループ(RPGを含む野党等)による大規模なデモがコナクリ内のスタジアムで行われたが,そこに軍及び治安部隊が発砲し,デモ参加者に多数の死者及び逮捕者が発生するとともに,兵士によって女性が強姦されるなどした。上記デモの参加者に何らの暴力行為や挑発行為はなく,軍及び治安部隊の行為は,平和的集会に対する一方的な虐殺であった。また,上記のような虐殺の後,数時間から数日間にわたり,集会参加者の多くが居住する上記スタジアムのスタジアム周辺では,兵士や民兵によって殺人,強姦,略奪などの多くの人権侵害行為がされた。
ヒューマンライツ・ウォッチの調査によれば,上記のようなデモに対する襲撃は,前もって計画されており,政府の高官たちも少なくともその計画を事前に知っていたものであり,治安部隊が虐殺を組織的に隠ぺいした。また,人権侵害の中心になったのは,大統領防衛部隊,精鋭憲兵隊等であった。
このように,当時の政府の治安当局は,野党勢力を計画的に虐殺したり,マークした人物に対する人権侵害を行ったりしたものである。
(イ) 原告の個別事情
a 原告は,前記(ア)のとおりギニアにおいて抑圧されているマリンケ族に属しているところ,原告の父は,住民のほとんどがマリンケ族であるキルワネ県の出身であり,原告の家族は,ほぼ全てRPGの党員である。原告の祖父は,軍に殺され,県職員であった原告の父は,軍の圧力によって更迭された。原告は,1993年(平成5年)にRPGに参加し,キルワネ県における青年部のリーダーを務めていたものであり,兄弟の中で最も活発にRPGの活動をしていた。
b RPGは,1993年(平成5年)に大統領選挙,市長選挙及び国会議員選挙が一度に行われた際に,初めて政府と対立する独自の候補を擁立し,原告もその選挙運動に参加した。また,原告は,ADEKERという社会奉仕団体にも所属して活動をしたところ,同団体は,表面上は非政治的団体であったが,その構成員のほとんどがRPG党員の若者であった。
1995年(平成7年)に,RPGの指導者であるアルファコンデがキルワネ県を訪れてRPGの事務所で演説をし,原告を含む党員が事務所の外で同人の警護をした。その集会中に,事務所の周りを取り囲んで監視をしていた軍から催涙ガスが発射され,原告を含む多くの者が無差別に拘束され,軍のキャンプに連行された(その後,RPGのキルワネ地区の指導者の活動により,原告を含む被拘束者は解放された。)。
c 原告は,地元であるキルワネ県においてRPGの活動家として当局からマークされたため,2000年(平成12年)に1人でコナクリに転居し,その後,危険のあるキルワネ県には戻らなかった。
原告は,コナクリにあるRPGの事務所の手伝いをし,デモにも参加し,選挙ではRPGに投票をしたが,同市においても,治安当局がRPG関係者を捕まえて拷問し,間もなく釈放するということが頻繁に行われており,単独で政治活動をすることが危険であったため,原告はこれを控えていた。
d 原告は,2003年~2004年(平成15年~平成16年)頃から,ギニアを出国したいとの気持ちが潜在的にあったところ,相談していた叔母から日本にならば行けるかもしれないとの連絡があったため,2005年(平成17年)4月4日に旅券を取得し,その後,叔母から紹介された愛知万博に参加するダンスグループのスタッフという名目で日本の査証を取得し,同年8月,来日した。
原告は,来日直後から我が国に庇護を求める意思はあったが,先進国である日本にも庇護制度があるであろうとの推測は抱いていたものの,具体的な知識はなく,日本において知り合ったマリンケ族の知人からも難民認定申請手続について適切な情報を得ることはできなかった。また,原告は,検挙され,収容された際には,同手続を知らなかった上,送還に対する恐怖からパニックに陥り,適切な意見表明をすることができなかったものである。
e 被告は,RPGが合法政党であるから迫害のおそれがないとか,RPGの党員について役職者等でなければ迫害のおそれがなかったなどと主張するが,前記(ア)cの事件等に照らしても,そのような主張に理由がないことは明らかである(なお,前記aのとおり,原告はRPGの役職に就いており,単なる一般党員ではなかった。)。
また,原告が正規の旅券を取得した上で合法的にギニアから出国した点については,そもそも,旅券の申請は,申請者が迫害を恐れていないことの表れであるということはできないし,真正な旅券が発給され,その使用によって出国することができたからといって,国籍国政府に難民認定申請者に対する迫害の意図がないということにはならない(当該申請者において,当局との関係で危険な地位に自らを置くことになるような政治的意見を隠し,逃亡の唯一の手段として合法的な出国を選ぶこともあるし,国籍国政府が迫害を意図していたとしても,旅券発給や出国審査の担当公務員がその情報を共有していなければ,旅券取得や出国は可能となる。)。そして,原告においては,本邦に入国した後,在留資格がないと警察に検挙されるのではないかとの不安から在東京ギニア大使館において身分証明書を取得したものであって,上記の点は,何ら原告の難民該当性とは矛盾しない。
さらに,原告が来日後すぐに難民認定の申請をしなかったのは,日本における難民認定申請制度を知らなかったからにすぎない(外国人が日本の難民認定制度の存在を知らずに過ごすということは,2000年代半ばまで,別段珍しいことではなかった。)。
(ウ) 総括
以上のとおり,ギニアにおいて,マリンケ族は,コンデ政権,カマラ政権を通じて抑圧されており,また,政権に対する批判勢力に対しては,厳しい弾圧がされており(計画的,組織的な虐殺もあり得た。),弾圧の対象は著名な政治活動家に限られていなかった。このような状況下において,マリンケ族に属し,RPG党員であり,地元であるキルワネ県では熱心な政治活動家であったために当局からマークされ,コナクリでもその活動を継続していた原告には,ギニアに帰国すれば迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱くに十分な理由があったものというべきであって,原告は,難民に該当するものというべきである。
ウ 本件不認定処分の問題点
(ア) 原告は,本件難民認定申請に係る手続において乙33の1~7,34の1~6,35の3~7を提出したが,答弁書第5の1の記載を見る限り,法務大臣は,これらの資料を何ら前提とせず判断をしている。また,原告が出身国の情勢に関する資料を提出しているにもかかわらず,乙34の2~6については,「受領の扱いとせず」単に「写しを保管していた」というのであるから(被告の平成23年10月31日付け証拠説明書参照),これらについては,資料としてすら認めていなかった。これは,入管法61条の2の14に基づき必要があるときに事実の調査をする職務を怠ったものというべきであり,また,前記ア(イ)aに述べたような出身国情報に関する立証責任を怠るものである。
(イ) また,答弁書第5の1の記載を見る限り,法務大臣はギニアにおける政権の変遷について事実認定をしているのみで,前記イ(ア)において述べたような人権保障の状況ないし人権侵害の実情について何ら認定をせず,これを前提としないで判断をしている。この点において,本件不認定処分は妥当ではない。
(2)  被告の主張の要点
ア 難民の意義等について
入管法に定める「難民」とは,難民条約1条又は難民議定書1条の規定により難民条約の適用を受ける難民をいうところ(入管法2条3号の2),これらの各規定によれば,難民とは,「人種,宗教,国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために,国籍国の外にいる者であって,その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの及び常居所を有していた国の外にいる無国籍者であって,当該常居所を有していた国に帰ることができないもの又はそのような恐怖を有するために当該常居所を有していた国に帰ることを望まないもの」をいうと解される。そして,ここにいう「迫害」とは,通常人において受忍し得ない苦痛をもたらす攻撃ないし圧迫であって,生命又は身体の自由の侵害又は抑圧をいい,「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由がある恐怖を有する」というためには,申請者が,迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱いているという主観的事情のほかに,通常人が当該人の立場に置かれた場合にも迫害の恐怖を抱くような客観的事情が存在していることが必要であると解するべきである。さらに,「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由がある恐怖」とは,単に迫害を受けるおそれがあるという抽象的な可能性があるだけでは足りず,迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱くような個別,具体的な事情が存することが必要である。
そして,難民であることを主張する原告は,自らが難民に該当することの立証責任を負い,「合理的な疑いをいれない程度の証明」をしなければならない。
イ 原告の難民該当性について
以下において述べるところに照らせば,原告が難民に該当するとは認められないものというべきである。
(ア) 原告は,これまでに,マリンケ族であることのみを理由に格別の迫害を受けたことはなく,ギニアのキルワネでは,現在も原告の父,継母2人,兄弟及び叔母が平穏無事に生活している上,父は,高校教師として大過なく稼働していることからすれば,ギニアにおいて,マリンケ族が,そのことのみをもって政府等から迫害を受ける状況にあるとはいえない。
(イ) 原告は,ギニアにおいて1993年(平成5年)にRPGに参加し,キルワネ県内の青年部のリーダーであり,選挙運動に参加したなどと主張する。
しかし,原告が本件不認定処分についての異議申立手続において提出したRPGの党員証と称するカード3葉(乙32の1~3)が真正なものであるか疑わしく,原告本人尋問において,RPGの設立時期について事実に反する供述をしていることなども考慮すれば,原告がRPGの党員であったこと自体疑わしい。
また,RPGはギニアの合法政党なのであるから,同党における活動が直ちに政府当局の取締りの対象となるとは考え難く,さらに,原告の供述等を前提としても,原告は,20歳代の頃,一時期,RPGにおける一地方における青年部のまとめ役のような地位に就いていたにすぎず,RPGにおいて格別重要な地位に就いていたことはうかがわれないのであって,原告がギニア本国政府等から格段の注視を受けるべき地位にあったとはいい難いから,上記主張の点をもって,原告が迫害を受けるおそれがあるとはいえない。
(ウ) 原告の供述によれば,RPG党員がギニア政府の警察に拘束されるのは常にデモがきっかけであるというのであり,また,デモに警察が介入するのは,政党側において政府からの許可のないまま集まりを強行してしまったようなときであるというのであるから,原告が出国する前のギニアにおいて,RPG党員が,何らの示威活動等をしなくとも警察や軍に拘束される状況にあったとはいえず,警察は,政治活動というよりも,むしろ無許可のデモに対して取締りを行っている面もうかがわれる。また,原告の供述を前提としても,原告は,コナクリでは単なるデモ参加者の1人にすぎなかったことがうかがえ,原告がコナクリにおいてギニア政府から特段注視を受けていたことはうかがえない。原告がギニアにおいてデモに参加していたという説明は疑わしい上,仮にそのような事実があったとしても,そのことをもって,原告がギニア政府等から迫害を受けるおそれがあるとはいえない。
なお,原告がADKERに参加していたという点についても,同団体は何ら政治的色彩を有するものではなく,原告自身もその活動を理由に迫害を受けたことはないことを自認しているのであって,原告の難民該当性を基礎付ける事情とはいえない。
(エ) 原告は,2003年(平成15年)~2004年(平成16年)頃からずっとギニアを出国したい気持ちがあった旨述べているが,実際には2005年(平成17年)8月までギニア国内にとどまっていた上,速やかに出国する準備もしていなかったことがうかがわれ,さらに,コナクリ在住時において,原告が,ギニア政府等から迫害を受けることもなかった。原告は,来日前,ギニア政府等から迫害を受けるなど,早急にギニアを出国しなければならなかった状況にあったものとはいえず,本件不認定処分時において,原告が,ギニア政府から迫害を受ける恐怖を有していたとはいえない。
(オ) 原告は,1995年(平成7年)に軍に身柄拘束をされたことがあることをもって,迫害のおそれがあることの根拠とする。しかし,原告の供述等を前提としても,原告は,RPGの事務所におけるアルファコンデの演説に参加した機会において,多数の者とともに無差別に拘束を受けたというにすぎず,かつ,翌日直ちに釈放され,格別の拷問や尋問を受けていないというのであって,上記のような軍による身柄拘束は,治安上の理由により一時的に多数の人々の行動を制限したにとどまるものとも考えられるところであり,原告がRPG党員であることやマリンケ族であることのみをもって行われたものとまではいえない。また,原告は,上記身柄拘束の後,2005年(平成17年)8月までギニアを出国することはなく,そもそもキルワネからコナクリに転居したのも1999年(平成11年)又は2000年(平成12年)であったというのであるから,この点からも,原告が,かかる拘束後においてもギニア政府等から格別の迫害を受ける恐怖を有していたことはうかがわれない。以上からすれば,上記の点をもって,原告がギニア政府等から迫害を受けるおそれがあるとはいえない。
(カ) 原告の供述等によれば,原告は,祖父が政党のデモに参加して射殺された際,原告自身も同じデモに参加しており,当時,原告がRPGの青年部のリーダーであることを軍が知っていたにもかかわらず,原告が軍や警察によって危害を加えられたことはなかったというのであり,また,原告の父は,現在は高校の教師の職にあり,同人や原告の兄弟等は,現在もキルワネで平穏に生活しているというのであるから,原告が主張するような家族に関する事情をもって,原告がギニア政府等から迫害を受けるおそれがあることの根拠とはならない。
(キ) 原告は,ギニアにおいて,旅券発給に必要な書類を提出するため警察署に自ら出向いて手続をし,自己名義の真正な旅券の発給を受けた上で,正規の出国手続を経て何ら問題なくギニアを出国することができており,来日後に在東京ギニア大使館において身分証明書の発給を受けた際にも,大使館員から格別不審を抱かれたり,手続に問題が生じたりしたことはうかがわれない。これらのことからしても,原告が,ギニア政府から特段注視されていたことはうかがわれず,また,迫害を受ける恐怖を有していたともいえない。
(ク) 原告は,来日した際の入国審査において,難民認定申請や庇護を求めることはしておらず,原告の供述を前提としても,在留期間の末日の1週間前に東京入国管理局に赴き,職員に在留期間の延長について相談したというのみで,その際に難民認定申請の手続について尋ねたり,知人から聞いたという日本では難民を受け入れていない旨の話につき本当かどうかを確認したりしたことはなかった。また,原告は,本邦に上陸した後,入管法違反で平成18年7月に逮捕されるまでの間,本邦において庇護を求めるための行動をしておらず,専ら不法就労をしていたものであり,退去強制令書が発付された後の平成19年1月10日において,ようやく本件難民認定申請をするに至った。以上のことからも,原告がギニア政府等から迫害を受けるおそれがある恐怖を有していたとは認め難い。
第3  当裁判所の判断
1  難民の意義等について
入管法2条3号の2は,同法における「難民」の意義について,難民条約1条の規定又は難民議定書1条の規定により難民条約の適用を受ける難民をいうと規定している。このような同法の規定に照らせば,同法にいう難民とは,「人種,宗教,国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために,国籍国の外にいる者であって,その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの及び常居所を有していた国の外にいる無国籍者であって,当該常居所を有していた国に帰ることができないもの又はそのような恐怖を有するために当該常居所を有していた国に帰ることを望まないもの」をいうと解するのが相当である。
そして,上記の「迫害」の意義については,難民条約31条1項が,「締結国は,その生命又は自由が第1条の意味において脅威にさらされていた領域から直接来た難民」について「不法に入国し又は不法にいることを理由として刑罰を科してはならない。」とし,難民条約33条1項が,「締結国は,難民を,いかなる方法によっても,人種,宗教,国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見のためにその生命又は自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放し又は送還してはならない。」としていることに照らすと,「生命又は自由」の侵害又は抑圧をいうと解するのが相当であり,ここにおいて「自由」が「生命」と並置されており,「難民」となり得るのは,迫害を受けるおそれがあるという状況に直面したときに「恐怖を有する」ような場合であると考えられること(難民条約1条A(2)参照)からすれば,この「自由」は,生命活動に関する自由,すなわち肉体活動の自由を意味するものと解するのが合理的である。そして,難民条約は,農業,工業,手工業,商業などの自営業に関して(18条),自由業に関して(19条),また,初等教育以外の教育に関して(22条2項),いずれも,締約国は,「できるだけ有利な待遇」を与え,かつ,「いかなる場合にも同一の事情の下で一般に外国人に対して与える待遇よりも不利でない待遇を与え」るものとしており,動産及び不動産に関する権利に関して(13条),賃金が支払われる職業に関して(17条),公的扶助に関して(23条),また,労働法制及び社会保障に関しても(24条),類似の定めがあるが,上記のような待遇が外国人に付与されるか否かは,難民条約の締約国の国内法制によるものと考えられることに照らすと,上記の「自由」に経済的自由等が含まれるとは解し難い。そうすると,上記の「迫害」の意義については,通常人において受忍し得ない苦痛をもたらす攻撃ないし圧迫であって,生命又は身体の自由の侵害又は抑圧を意味するものと解するのが相当である。また,上記にいう「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」というためには,当該人が迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱いているという主観的事情のほかに,通常人が当該人の立場に置かれた場合にも迫害の恐怖を抱くような客観的事情が存在していることが必要であると解される。
なお,上記の難民該当性に係る各要件については,難民の認定を申請しようとする外国人に対して難民に該当することを証する資料の提出を求めている入管法61条の2第1項及び出入国管理及び難民認定法施行規則55条1項の趣旨に照らし,申請者たる原告が立証すべきものと解するのが相当である。
以上と異なる原告の主張は,採用することができない。
2  原告の難民該当性について
(1)  原告は,①原告がギニアにおいて抑圧されているとされるマリンケ族に属していること,②原告の家族のほぼ全てがRPGの党員であり,原告の祖父は1976年(昭和51年)に軍に殺害され,原告の父は軍の圧力により県職員の職から更迭されたこと,③原告が,マリンケ族を支持基盤とするRPGに参加し,キルワネ県における青年部のリーダーを務め,1993年(平成5年)に実施された国政選挙においてRPGの選挙運動にも参加したこと,④原告が,構成員のほとんどがRPG党員の若者である社会奉仕団体ADEKERにも所属して活動していたこと,⑤原告は,1995年(平成7年)にアルファコンデがキルワネ県のRPGの事務所で演説をした際に拘束され,軍のキャンプに連行されたこと,⑥原告が,コナクリにおいてもRPGの事務所の手伝いをし,デモにも参加したことを挙げて,原告が「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」ものと主張する。そこで,まず,前記1において述べた観点から,原告が掲げるこれらの事情が本件不認定処分のされた当時における原告の難民該当性を基礎付けるに足りるものであるかについて検討する。
ア 前記①の事情について
後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,〈ア〉原告自身は,マリンケ族であること自体を理由として迫害を受けたことはないこと(乙31),〈イ〉ギニアのキルワネ県においては,マリンケ族である原告の父,継母2人及びきょうだいが平穏無事に生活しており,原告の父は高等学校の教師として特に問題なく稼働していること(乙28,29,31,38,原告本人)が認められることに加えて,〈ウ〉原告がマリンケ族に対する「抑圧」として述べるところは,主として,コンテ大統領が就任した当時において政府の高官の地位にあった者に対するものであるか,政権の要職がスースー族によって占められたこと等から生じた経済的な格差をいうものにとどまること(甲3,4,乙29,原告本人)などに照らせば,原告が主張するように乙36の7にギニアにおいて抑圧されている少数者としてマリンケ族が挙げられているとしても(乙31,36の1。なお,原告又はその代理人が本件不認定処分についての異議申立ての手続において提出したものである乙36の7及びこれと同内容の乙33の2には,訳文が添付されていない。),前記①の事情をもって,前記1において述べた意味において原告が「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」ことを基礎付けるに十分なものとまではいい難いものというべきである。
イ 前記②の事情について
原告の供述等(甲3,乙28,30,31,38,原告本人)を前提としても,〈ア〉原告の祖父がデモに参加して射殺された際(なお,甲3,乙28,38において,その時期は1996年〔平成8年〕とされている。),原告も同じデモに参加していたものであるところ,その当時,原告は,RPGのキルワネ県における青年部のリーダーを務めており,そのことを軍も知っていたのに,原告自身が軍や警察によって危害を加えられるなどすることはなかったというのであり,〈イ〉また,原告の祖父はRPGにおいて役職を有していなかったというのであり,また,デモの際に殺害されたとされることからすると,同人が,RPGに所属していることやマリンケ族であることそれ自体を理由として射殺されたものであるとも断定はし難い上,〈ウ〉原告によればそのほぼ全てがRPGの党員であるという原告の家族は,前記ア〈イ〉のとおり,ギニアのキルワネ県において平穏無事に生活しており,原告の父は高校の教師として特に問題なく稼働していることにも照らせば,前記②の点をもって,前記1において述べた意味において原告が「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」ことを基礎付ける事情とはいい難いものというべきである。
ウ 前記③及び⑥の各事情について
原告の供述等(甲3,乙28~31,35の2,37,38,原告本人)を前提としても,〈ア〉原告(本件不認定処分がされた平成20年11月12日当時37歳)がRPGの活動に関与するようになったのは1993年(平成5年)に大統領選挙等が施行された頃からで,その後,原告において「RPGのキルワネ県における青年部のリーダー」を務めていたのは2000年(平成12年)頃にコナクリに転居するまでの20歳代の頃であり,その活動の内容も,街の若者にRPGの方針や活動を説明して入会の勧誘をし,あるいは,「上」から降りてきた情報を党員の若者に伝える等というものにすぎず,原告は1993年(平成5年)当時は高等学校の生徒であり,1994年(平成6年)から1998年(平成10年)までは看護学校に通い,その後はコナクリとの間を行き来してクリニックのインターンとして勤務するなどの生活の状況であったことも考慮すると,原告がRPGの重要な意思決定に関与するような地位に就いていたものとはうかがわれず,〈イ〉また,原告が1993年(平成5年)の上記の選挙の際に行った選挙運動の内容も,投票が始まる前に投票箱が空であることを確かめて鍵をし,その後投票に不正をする人がいないかを見ていたとか,選挙の際に村に行ってその村のRPGの活動家に対して必ず投票に行くよう呼びかけたという程度のものであって,RPGの選挙運動において重要な役割を果たしていたものともいえず,〈ウ〉さらに,2000年(平成12年)にコナクリに転居した後は,看護士としての実習に従事するなどし,RPGにおいて特段の役職には就いておらず,その活動も,事務所の手伝いや歩きのデモ(マルシュ)への参加といった程度のものにとどまり,同所においては,格別,活動家として周囲に知られた存在ではなかったというのであって,前記③及び⑥の各事情をもって,前記1において述べた意味において原告が「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」ことを基礎付けるような事情とはいい難いものというべきである。
なお,原告は,本件不認定処分がされた後の2009年(平成21年)9月28日に軍などがデモ隊に対して発砲し,デモ参加者に多数の死傷者が生ずるなどしたとされる出来事(前記第2の3(1)イ(ア)c参照)についても言及するが,上記の出来事に関するものと認められる証拠(乙33の1・3~7,34の1・6,36の3・4・6)を見ても,上記の出来事がRPGないしマリンケ族に向けられたものであるかは不明であるというほかない上,マリンケ族でありそのほとんど全てがRPGの党員であるという原告の家族のギニアにおける生活状況(前記ア〈イ〉及びイ〈ウ〉)等にも照らせば,本件不認定処分の当時において,その供述等によっても,RPGにおいて上記程度の活動を過去にしたことがあるにとどまり(なお,原告は,本邦においてRPGに関するものを含めていわゆる政治活動をしたことはないと述べている。乙37,38),コナクリにおいては活動家として知られた存在ではなかった原告に対する迫害のおそれを基礎付けるような事情とは評価し難い。
エ 前記④の事情について
原告の供述等(乙28,29,38)によっても,ADKERは,地区の互助による社会奉仕団体であるというにすぎず,原告自身,その活動を理由として迫害を受けたことはないというのであるから,前記④の点をもって,前記1において述べた意味において原告が「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」ことを基礎付けるような事情であるとはいえないものというべきである。
オ 前記⑤の事情について
原告の供述等(甲3,乙28,29,31,原告本人)によっても,〈ア〉原告が拘束された際に開かれていた演説会には,RPG党員以外の一般市民も多数参加し,300人~400人が集まっており,軍は,RPG党員のみならず一般市民についても無差別に身柄を拘束したというのであり,〈イ〉また,身柄拘束の際に手錠を掛けられたことはなく,拘束中に尋問を受けたり暴力を振るわれたりしたこともなく,〈ウ〉RPGの地区事務総長が県知事に対して身柄を拘束された者の釈放を求めた結果,翌朝には原告も含めた全員が釈放されたというのであって,原告が軍から受けたという身柄の拘束は,地域の一般的な治安維持を目的として一時的に不特定多数の者の行動を制限するために行われたものとも考えられるのであって,原告がマリンケ族であることや,RPG党員であることのみを理由としてされたものとまでは認め難い。そうすると,前記⑤の事情についても,前記1において述べた意味において原告が「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」ことを基礎付けるような事情であるとはいえないものというべきである。
(2)  前記(1)において述べたところに加えて,①原告は,ギニアにおいて,旅券の発給を受けるために警察署に自ら出向いて所要の手続をし,2005年(平成17年)4月4日付けで自己名義の真正な旅券の発給を受け,同年8月20日,正規の出国手続を経てギニアから出国しており,本邦に上陸した後の同年10月,在東京ギニア大使館において身分証明書の発給も受けているのであり(甲3,乙2,29,31,原告本人),これらの行動は,本件における原告の弁解内容を勘案しても,迫害を恐れている者のものとしては,いささか不自然なものである感が否めない上,②これらの手続の際に,特段の問題は生じていないこと(甲3,乙29,31,原告本人),③原告は,〈ア〉同年8月22日の成田国際空港における入国の審査の際に,入国審査官等に対し,ギニアにおける迫害のおそれを訴えるなどせず,その後,在留期間の末日の1週間前に東京入国管理局に赴いた際にも,職員に対して在留期間の更新について相談したのみで,難民の認定の申請の手続について尋ねるなどしておらず,入管法違反の罪の容疑で平成18年7月20日に摘発されるまでの間,本邦において難民として庇護を求めるための行動をしておらず,不法就労を続けていたものであり(前提事実(2)及び(3)ア,乙9,29,原告本人),〈イ〉摘発後の退去強制の手続における違反調査の際にも,ギニアにおける迫害のおそれについては何ら言及していない上,入国審査官の退去強制対象者に該当する旨の認定についての口頭審理の請求を放棄しており(前提事実(3)ウ,乙9,11~13),〈ウ〉本邦に上陸してから1年半近くが経過した後(原告についての退去強制令書の発付時点から見ても5か月後)になってようやく本件難民認定申請をしたものであって(前提事実(3)エ及び(4)ア),このような原告の行動は,仮に,原告が,その供述等(甲3,乙29,原告本人)のように,日本にも難民についての制度があるだろうと考え,日本で難民の認定の申請をする意図を持って来日したのであるとすれば,極めて不自然なものというほかなく,これらの点についての原告の弁解も,上記のような不自然さを払拭するには到底足りないものというほかないことを併せ考慮すれば,本件難民不認定処分の当時において,原告が難民に該当していたものとは認め難いものというべきである。
3  本件不認定処分の違法性に関する原告のその余の主張について
原告は,ある行政処分において,行政判断に関する一定の基準が法令上存する場合に,当該基準を適用せずに処分がされたときは,当該処分には瑕疵があるということになるところ,法務大臣は,難民の認定の申請の当否の判断に際し,前記第2の3(1)ア(ア)に述べた判断基準を適用しなければならず,これを適用せず,あるいは誤って適用して判断がされた場合には,当該判断は瑕疵があるものとなるものというべきであって,上記基準に基づけば難民と認定されるべきものが認定されなかったことが立証されれば,本件不認定処分には瑕疵があることになるとした上で(前記第2の3(1)ア(イ)b),本件不認定処分には,前記第2の3(1)ウのような問題点があるなどと主張する。
しかし,原告の上記主張は,①前記1において述べたところと異なる見解を前提とするものである上,②前記第2の3(1)ウにおいて述べてられているところも,基本的には被告の答弁書及び証拠説明書の記載の文言のみをとらえた客観的裏付けが不十分な主張であるか,入管法の規定に関する独自の見解を前提とするものというほかないものであって,採用の限りではない。
4  結論
以上の次第であって,原告の請求は,理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 八木一洋 裁判官 田中一彦 裁判官 塚原洋一)

 

別紙
指定代理人目録 〈省略〉


「政治活動 選挙運動」に関する裁判例一覧
(1)平成30年10月31日 東京地裁 平27(ワ)18282号 損害賠償請求事件
(2)平成30年 5月15日 東京地裁 平28(行ウ)332号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(3)平成30年 4月18日 東京高裁 平29(行コ)302号 埼玉県議会政務調査費返還請求控訴事件
(4)平成30年 3月30日 東京地裁 平27(ワ)37147号 損害賠償請求事件
(5)平成30年 2月21日 東京地裁 平28(行ウ)6号 労働委員会救済命令取消請求事件
(6)平成29年12月20日 大阪地裁 平27(ワ)9169号 損害賠償請求事件
(7)平成29年11月 2日 仙台地裁 平26(行ウ)2号 政務調査費返還履行等請求事件
(8)平成29年10月11日 東京地裁 平28(ワ)38184号 損害賠償請求事件
(9)平成29年 9月28日 東京高裁 平28(う)2243号 業務上横領被告事件
(10)平成29年 9月28日 東京地裁 平26(行ウ)229号 難民不認定処分取消請求事件
(11)平成29年 9月 8日 東京地裁 平28(行ウ)117号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(12)平成29年 7月24日 東京地裁 平28(特わ)807号 公職選挙法違反被告事件
(13)平成29年 6月29日 宇都宮地裁 平23(行ウ)8号 政務調査費返還履行請求事件
(14)平成29年 5月18日 東京高裁 平28(う)1194号 公職選挙法違反被告事件
(15)平成29年 3月30日 広島高裁岡山支部 平28(行コ)2号 不当利得返還請求控訴事件
(16)平成29年 3月15日 東京地裁 平27(行ウ)403号 地位確認等請求事件
(17)平成29年 1月31日 大阪高裁 平28(ネ)1109号 損害賠償等請求控訴事件
(18)平成29年 1月31日 仙台地裁 平25(行ウ)11号 政務調査費返還履行等請求事件
(19)平成28年10月12日 東京地裁 平25(刑わ)2945号 業務上横領被告事件
(20)平成28年 8月23日 東京地裁 平27(行ウ)384号 難民不認定処分取消等請求事件
(21)平成28年 7月28日 名古屋高裁 平28(行コ)19号 難民不認定処分等取消請求控訴事件
(22)平成28年 7月19日 東京高裁 平27(ネ)3610号 株主代表訴訟控訴事件
(23)平成28年 6月 3日 静岡地裁 平27(わ)241号 公職選挙法違反被告事件
(24)平成28年 3月25日 大阪高裁 平27(ネ)1608号 損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件
(25)平成28年 3月15日 大阪地裁 平27(ワ)3109号 損害賠償等請求事件
(26)平成28年 2月17日 東京地裁 平26(行ウ)219号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(27)平成28年 1月28日 名古屋地裁 平23(行ウ)109号 難民不認定処分等取消請求事件
(28)平成27年12月16日 大阪高裁 平27(ネ)697号 損害賠償請求控訴事件、同附帯控訴事件
(29)平成27年12月11日 東京地裁 平26(行ウ)245号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(30)平成27年 7月 3日 東京地裁 平26(行ウ)13号 難民不認定処分取消請求事件
(31)平成27年 6月26日 大阪高裁 平26(行コ)163号 建物使用不許可処分取消等・建物明渡・使用不許可処分取消等請求控訴事件
(32)平成27年 6月24日 宇都宮地裁 平22(行ウ)8号 政務調査費返還履行請求事件
(33)平成27年 6月 1日 大阪地裁 平27(ヨ)290号 投稿動画削除等仮処分命令申立事件
(34)平成27年 3月30日 大阪地裁 平24(ワ)8227号 損害賠償請求事件(第一事件)、損害賠償請求事件(第二事件)
(35)平成27年 1月21日 大阪地裁 平24(ワ)4348号 損害賠償請求事件
(36)平成26年10月28日 東京地裁 平24(行ウ)496号 三鷹市議会議員および市長選挙公営費返還請求事件
(37)平成26年10月24日 和歌山地裁 平23(行ウ)7号 政務調査費違法支出金返還請求事件
(38)平成26年10月20日 東京地裁 平25(ワ)8482号 損害賠償請求事件
(39)平成26年 8月25日 東京地裁 平24(行ウ)405号 不当労働行為救済命令一部取消請求事件(第1事件)、不当労働行為救済命令一部取消請求事件(第2事件)
(40)平成26年 7月11日 札幌地裁 平22(行ウ)42号 政務調査費返還履行請求事件
(41)平成25年10月16日 東京地裁 平23(行ウ)292号 報酬返還請求事件
(42)平成25年 6月19日 横浜地裁 平20(行ウ)19号 政務調査費返還履行等代位請求事件
(43)平成25年 2月28日 東京地裁 平22(ワ)47235号 業務委託料請求事件
(44)平成25年 1月18日 東京地裁 平23(行ウ)442号 難民の認定をしない処分取消請求事件
(45)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)95号 選挙無効請求事件
(46)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)72号 選挙無効請求事件
(47)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)65号 選挙無効請求事件
(48)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)64号 選挙無効請求事件
(49)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)59号 選挙無効請求事件
(50)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)52号 選挙無効請求事件
(51)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)51号 選挙無効請求事件 〔参議院議員定数訴訟・大法廷判決〕
(52)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)179号 
(53)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)174号 参議院議員選挙無効請求事件
(54)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)171号 選挙無効請求事件
(55)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)155号 選挙無効請求事件
(56)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)154号 選挙無効請求事件
(57)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)153号 選挙無効請求事件
(58)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)135号 選挙無効請求事件
(59)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)133号 選挙無効請求事件
(60)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)132号 選挙無効請求事件
(61)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)131号 選挙無効請求事件
(62)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)130号 選挙無効請求事件
(63)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)113号 選挙無効請求事件
(64)平成24年10月17日 最高裁大法廷 平23(行ツ)112号 選挙無効請求事件
(65)平成24年 9月 6日 東京地裁 平24(ワ)2339号 損害賠償等請求事件、販売差止請求権不存在確認等請求事件
(66)平成24年 5月17日 東京地裁 平22(行ウ)456号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(67)平成24年 5月11日 名古屋高裁 平22(ネ)1281号 損害賠償請求控訴事件 〔議会代読拒否訴訟・控訴審〕
(68)平成24年 1月24日 東京地裁 平23(ワ)1471号 組合長選挙無効確認等請求事件 〔全日本海員組合事件〕
(69)平成23年12月21日 横浜地裁 平22(ワ)6435号 交通事故による損害賠償請求事件
(70)平成23年 9月 2日 東京地裁 平22(行ウ)36号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(71)平成23年 7月22日 東京地裁 平22(行ウ)555号 難民の認定をしない処分取消請求事件、追加的併合申立事件
(72)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)303号 衆議院議員選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(73)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)268号 選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(74)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)257号 選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(75)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)256号 選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(76)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)235号 選挙無効請求事件
(77)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)234号 選挙無効請求事件
(78)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)207号 選挙無効請求事件
(79)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)206号 選挙無効請求事件
(80)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)203号 選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(81)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)201号 選挙無効請求事件
(82)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)200号 選挙無効請求事件
(83)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)199号 選挙無効請求事件 〔衆院選定数訴訟・上告審〕
(84)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)189号 選挙無効請求事件
(85)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)188号 選挙無効請求事件
(86)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)130号 選挙無効請求事件
(87)平成23年 3月23日 最高裁大法廷 平22(行ツ)129号 選挙無効請求事件
(88)平成22年11月 9日 東京地裁 平21(行ウ)542号 政務調査費返還(住民訴訟)請求事件
(89)平成22年10月29日 東京地裁 平19(行ウ)472号 難民の認定をしない処分取消等請求事件、在留特別許可をしない処分取消請求事件
(90)平成22年 7月30日 東京地裁 平21(行ウ)281号 難民の認定をしない処分取消請求事件
(91)平成22年 6月 1日 札幌高裁 平22(う)62号 公職選挙法違反被告事件
(92)平成22年 3月31日 東京地裁 平21(行ウ)259号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(93)平成22年 2月12日 札幌地裁 平21(わ)1258号 公職選挙法違反被告事件
(94)平成22年 2月 3日 東京高裁 平21(行ケ)30号 選挙無効請求事件
(95)平成21年 3月27日 宮崎地裁 平18(わ)526号 競売入札妨害、事前収賄、第三者供賄被告事件
(96)平成21年 2月26日 名古屋高裁 平20(行コ)32号 損害賠償(住民訴訟)請求等控訴事件
(97)平成20年10月 8日 東京地裁 平13(ワ)12188号 各損害賠償請求事件
(98)平成20年 8月 8日 東京地裁 平18(刑わ)3785号 収賄、競売入札妨害被告事件〔福島県談合汚職事件〕
(99)平成20年 5月26日 長崎地裁 平19(わ)131号 殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反、公職選挙法違反等被告事件
(100)平成20年 4月22日 東京地裁 平18(ワ)21980号 地位確認等請求事件 〔財団法人市川房江記念会事件〕


■選挙の種類一覧
選挙①【衆議院議員総選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙②【参議院議員通常選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙③【一般選挙(地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙④【特別選挙(国政選挙|地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)


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