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「政治活動 選挙運動」に関する裁判例(67)平成24年 5月11日 名古屋高裁 平22(ネ)1281号 損害賠償請求控訴事件 〔議会代読拒否訴訟・控訴審〕

「政治活動 選挙運動」に関する裁判例(67)平成24年 5月11日 名古屋高裁 平22(ネ)1281号 損害賠償請求控訴事件 〔議会代読拒否訴訟・控訴審〕

裁判年月日  平成24年 5月11日  裁判所名  名古屋高裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ネ)1281号
事件名  損害賠償請求控訴事件 〔議会代読拒否訴訟・控訴審〕
裁判結果  原判決一部変更、一部控訴棄却  上訴等  確定  文献番号  2012WLJPCA05116001

要旨
◆発声障害を負った一審被告市の議員であった一審原告が、本会議や委員会での第三者の代読等による発言を一部認められなかったため、議員としての参政権等を侵害されたとして、一審被告市に対し、国家賠償を求めるなどしたところ、原審が参政権侵害を認めて請求を一部認容したため、一審原告及び一審被告市が控訴した事案において、本件訴えは、裁判所法3条1項の「法律上の争訟」に当たるから適法であるとした上で、議会運営委員会における審議の結果、発声障害者である一審原告は、議会の本議会及び委員会での発言も事実上できない状態が継続していたから、同状態を継続させることになった本件市議会及び議員らの一連の対応は、一審原告の発言の権利、自由を侵害するものとして違法であるなどとし、金額につき、原判決を変更して増額認定し、一審被告市の控訴は棄却した事例
◆地方議会における発言方法の制約に関し、地方議会が、地方議会議員の当該議会等における発言を一般的に阻害し、議会での発言の機会そのものを奪うに等しい状態を惹起するなど、地方議会議員に認められた地方議会等における発言権、自由を侵害していると認められる場合には、一般市民法秩序に関わるものとして、裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たるとの見解が示された事例

新判例体系
公法編 > 憲法 > 国家賠償法〔昭和二二… > 第一条 > ○公権力の行使に基く… > (三)違法性 > G その他 > (1)違法とした事例
◆咽頭がん切除手術により市議会で肉声発言が困難な岐阜県中津川市議会議員が求めていた第三者代読による発言要求を、市議会及び市議会議員が一部認めただけで音声変換装置による発言を強制するなどしたことは市議会議員としての発言の権利・自由を侵害するものとして違法である。

 

裁判経過
第一審 平成22年 9月22日 岐阜地裁 判決 平18(ワ)892号 損害賠償請求事件 〔議会代読拒否訴訟・第一審〕

評釈
植木淳・ジュリ臨増 1453号12頁(平24重判解)
岡田俊幸・日本法学 83巻2号43頁
武川眞固・高田短期大学紀要 31号17頁
井上武史・法教別冊 389号10頁(付録・判例セレクト2012 Ⅰ)
川島聡・法セ増(新判例解説Watch) 13号281頁
川崎和代・法時 84巻11号65頁
三宅裕一郎・法セ 694号128頁
阿部和文・自治研究 91巻1号125頁

参照条文
国家賠償法1条1項
裁判所法3条1項
民法709条
民法719条

裁判年月日  平成24年 5月11日  裁判所名  名古屋高裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ネ)1281号
事件名  損害賠償請求控訴事件 〔議会代読拒否訴訟・控訴審〕
裁判結果  原判決一部変更、一部控訴棄却  上訴等  確定  文献番号  2012WLJPCA05116001

岐阜県中津川市〈以下省略〉
控訴人兼被控訴人(一審原告) X(以下「一審原告」という。)
上記訴訟代理人弁護士 安藤友人
同 中谷雄二
同 仲松正人
同 林真由美
同 岡本浩明
同 山内沙絵子
同 大澤愛
同 山本亮
同 仲松大樹外138名
岐阜県中津川市〈以下省略〉
被控訴人兼控訴人(一審被告) 中津川市(以下「一審被告市」という。)
上記代表者市長 U
上記訴訟代理人弁護士 後藤武夫
同 後藤もゆる
同 鈴木智洋
同 常川尚嗣
同 平田健人
被控訴人(一審被告) 本判決別紙1被控訴人目録記載のとおり(以下「被控訴人議員ら」という。)
上記訴訟代理人弁護士 宇都木寧
同 越智康昭
同 藤森崇雄
被控訴人議員らのうち,
被控訴人Y23,同Y10,
同Y18,同Y22訴訟代理人弁護士
南谷直毅

 

 

主文

1(1)  一審原告の一審被告市に対する本件控訴に基づき,原判決中一審被告市に係る部分を次のとおり変更する。
(2)  一審被告市は,一審原告に対し,300万円及びこれに対する平成18年12月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)  一審原告の一審被告市に対するその余の請求を棄却する。
2  一審原告の被控訴人議員らに対する本件控訴をいずれも棄却する。
3  一審被告市の本件控訴を棄却する。
4  訴訟費用は,第一,二審を通じて,これを5分し,その1を一審被告市の,その余を一審原告の各負担とする。
5  この判決は,第1項(2)に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  控訴の趣旨
1  一審原告
(1)  原判決を次のとおり変更する。
(2)  一審被告市及び被控訴人議員らは,連帯して1000万円及びこれに対する平成18年12月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  一審被告市
(1)  主位的申立て
ア 原判決を取り消す。
イ 一審原告の一審被告市に対する訴えを却下する。
(2)  予備的申立て
ア 原判決中,一審被告市敗訴部分を取り消す。
イ 前項の取消しに係る一審原告の一審被告市に対する請求を棄却する。
第2  事案の概要
一審原告は,中津川市議会議員を務めていたところ,その在職中,手術により喉頭を切除し,自らの肉声で発言することが困難になったため,市議会において第三者の代読による発言を求めた。しかし,中津川市議会及びその構成員である被控訴人議員らは,平成15年から同19年までの約4年間,本会議や委員会において,第三者の代読による発言を一部認めただけで,音声変換装置を用いて発言するよう求め,また,被控訴人議員らは,一審原告が平成18年12月定例会の本会議に提出した「市議会議員の発言保障に関する決議案」(以下「本件決議案」という。)に反対票を投じ,その結果,中津川市議会は,本件決議案を否決した。一審原告は,一審被告市及び被控訴人議員ら(以下「一審被告ら」という。)が,一審原告が求めた第三者の代読による発言方法を認めず,音声変換装置による発言を強制するなどし,かつ,中津川市議会には,市議会の各議員が自由活発な討論をすることが可能な環境を整備する積極的な作為義務があり,その義務の履行にあたり,代読という代替手段を選択した一審原告の意思を最大限尊重すべき義務があるのに,これを怠り,その結果,一審原告の市議会における表現の自由,発声障害を有する障害者の議会における発言方法を決定する権利,平等権及び市議会議員としての参政権等を侵害され,精神的苦痛を被ったとして,一審被告市に対しては国家賠償法1条1項により,中津川市議会議員である被控訴人議員らに対しては民法709条,719条により,連帯して,慰謝料1000万円とこれに対する本件決議案が否決された平成18年12月1日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。
これに対し,一審被告らは,議員の発言方法等については広く議会の自律権に属する事柄であるから,司法審査の対象とならず,一審原告の訴えは不適法であると主張するとともに,一審被告らについて不法行為は成立しないとして,一審原告の主張を争った。
原審は,地方議会の運営に関する事項は,議会の内部規律の問題として議会及び議長の裁量に委ねられ,議員の議会本会議や各種委員会における発言の方法等も議会の運営に関する事項に含まれるから,議会及び議長が,議員の発言方法等を制限することによって,障害者である議員の表現の自由や自己決定権(障害補助手段を使用する自由や障害補助手段選択の自由を含む。)が制限されたとしても,障害者である議員が発言方法の制限によって障害者であるが故に議会へ参加する権利(参政権)を害されるなど特段の事情がない限り,やむを得ないものであるとした上,本件では,一審原告が主張する加害行為の一部に,上記参政権の侵害があるとして,一審原告の一審被告市に対する請求のうち,慰謝料10万円とこれに対する平成18年12月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の限度でこれを認め,その余の一審被告市に対する請求を棄却した。また,原審は,一審原告の被控訴人議員らに対する損害賠償(慰謝料)請求について,公務員個人は損害賠償責任を負わないとして,いずれも棄却した。
そこで,一審原告は,敗訴部分を不服として控訴するとともに,一審被告市も,敗訴部分を不服として控訴した。
なお,原審では,被控訴人議員ら以外にも,当時中津川市議会議員であったY17,Y20,Y25,Y8,Y13及びY26も,一審被告とされ(以下,これら6名の者を「一審被告議員ら」という。),原審は,被控訴人議員らに対する請求と同様,一審被告議員らに対する一審原告の請求をいずれも棄却したが,一審原告は,一審被告Y8議員,同Y13議員及び同Y26議員については,控訴せず,一審被告Y17議員,同Y20議員及び同Y25議員については,控訴した後に控訴を取り下げた。
1  前提事実(証拠を摘示したものを除いて,当事者間に争いはない。)
(1)  当事者等
ア 一審原告は,平成11年4月から同19年4月29日までの2期,8年の間,中津川市議会議員(以下,単に「議員」という。)の職にあり,日本共産党に所属し,中津川市議会(以下,単に「市議会」という。)において日本共産党中津川市議団(以下「共産党市議団」という。)という会派に所属していた。
一審原告は,平成14年夏に下咽頭がんと診断されて入院し,同年10月23日,喉頭摘出手術を受け,同15年1月に退院した。一審原告は,2期目の市議会議員選挙に立候補し,子らの代読によって選挙運動を行い,平成15年4月23日,市議会議員に再選された。(甲1,120,一審原告本人)
イ 一審被告市は,議事機関として市議会を置く普通地方公共団体であり,市議会は,地方自治法109条の2に基づき,条例で議会運営委員会を設置している。
市議会には,共産党市議団,市議会公明党,市民クラブ,市民ネット21,社民クラブ,新政会等の会派がある(甲14の1,2,甲76及び131)。
ウ 被控訴人議員ら及び一審被告議員ら
(ア) 被控訴人議員らのうち,被控訴人Y1,同Y2,同Y3,同Y4,同Y5,同Y6,同Y7,同Y9,同Y10,同Y11,同Y12,同Y14,同Y15,同Y16,及び,一審被告議員らのうち,一審被告Y8,同Y13は,平成15年から同19年の間,議員の職にあった者である。(以下,被控訴人議員ら及び一審被告議員らについては,「被控訴人Y1議員」「一審被告Y13議員」のようにいい,同姓の議員がいる場合には,「被控訴人Y5議員」,「被控訴人Y16議員」のようにいう。)
(イ) 被控訴人議員ら及び一審被告議員らのうち,一審被告Y17議員,被控訴人Y18議員,同Y19議員,同Y20議員,同Y21議員,同Y22議員,同Y23議員,同Y24議員,一審被告Y25議員,同Y26議員,被控訴人Y27議員,被控訴人Y28議員(このうち,被控訴人議員らである被控訴人Y18議員ら8名を,以下「被控訴人Y18議員ら8名」という。)は,旧岐阜県恵那郡北部町村の各町村議会議員の職にあった者であり,各町村が,平成17年2月28日に市町村合併により中津川市に合併されたことにより,市議会議員の職に就き,同日から平成19年4月までの間,市議会議員の職にあった者である。
(ウ) 被控訴人Y10議員は,平成17年5月18日から同19年3月まで,市議会の議会運営委員会委員長(以下「委員長」といい,同委員会の委員を単に「委員」ともいう。)の職にあった(なお,以下,被控訴人議員ら及び一審被告議員らが,議長等の役職に就き,役職として言動を行った場合には,「被控訴人Y10議長」,「被控訴人Y10委員長」,「被控訴人Y10委員」のようにいう。)。
被控訴人Y14議員は,平成13年5月23日から同14年5月22日まで議会運営委員会副委員長(以下「副委員長」という。),平成14年5月24日から同15年4月29日まで副議長,平成15年5月16日から同17年5月17日まで委員長,平成18年5月18日から同19年4月29日まで副委員長の職にあった(乙ロ17)。
被控訴人Y23議員は,平成18年4月ころから同19年3月ころまでの間,市議会の議長の職にあった。
被控訴人Y3議員は,平成16年5月24日から同17年5月17日までの間,副委員長の職にあった。
エ A議員(以下「A議長」又は「A議員」という。)は,平成16年ころから同18年3月ころまでの間,市議会の議長の職にあった者である。
B議員(以下「B議員」又は「B委員」という。),C議員(以下「C議員」又は「C委員」という。)及びD議員(以下「D議員」又は「D委員」という。)は,平成14年から同19年までの間,市議会議員の職にあり,B議員及びC議員は,一審原告と同一会派である共産党市議団に所属し,D議員は,市民ネット21に所属していた(甲131及び弁論の全趣旨)。
(2)  他の地方議会における障害を有する議員の議員活動保障の状況
ア 鎌倉市議会(甲33の2,甲85,98の1ないし4)
鎌倉市議会議員であるE(以下「E議員」という。)は,重度の脳性麻痺による全身麻痺の重度障害者で,アテトーゼを伴い,両手と右足が不自由で,かろうじて左足の指先を動かせる状態で,字を書くことはできず,発声については不明瞭で理解が難しい状態であるため,左足の指先で文字を指差すことにより意思疎通を図っていた。
E議員は,当選後の平成13年5月1日,議場内外を問わず,他の健常者議員と格差なく生活し,議員としての職務を果たすために必要であるとして,書面で,週40時間以上の介助者を嘱託職員として雇用し市費で賄うこと,言葉を理解し,意思疎通ができる者が求められるので,介助者の人選はE議員にゆだねることを要望した。同書面には,「言語障害のバリアフリーはハードのバリアフリーより人的な介助がもっとも有効である。」と記載されていた。
鎌倉市議会は,各派代表者会議で検討した結果,地方自治法及び鎌倉市議会会議規則に基く発案権や表決権等の議員の公務における公的な権利行使は,当然尊重すべきとし,議会の会議が開催される本会議場及び委員会室内における議員としての権利行使,議員の公務出張及び鎌倉市議会主催の公的行事について,議員活動を保障するため介助することとし,本会議場及び委員会室内では,一般市民による介助対応はすべきでないとして,同市議会事務局職員が介助することを申し合わせた。
上記申し合わせにより,E議員は,平成13年5月15日から少なくとも同17年6月22日まで,鎌倉市議会事務局職員が代読を行う方法により一般質問を行い,再質問を行う場合は,議長が会議を休憩し,その間に,E議員が左足で音声キーボードを押して音声を発し,事務局職員がこれを聴き取った上で書き取り,E議員が確認の上,事務局職員がこれを代読していた。
イ 静岡市議会(甲34の2)
平成15年4月1日に旧清水市と合併する前の静岡市(旧静岡市)議会において,平成14年6月定例会から同15年2月定例会まで,合併後の静岡市議会において,平成15年4月臨時会から平成17年3月末の任期終了前の同年2月定例会まで,委員会でパソコンによる音声変換の方法により発言をしている議員が存在した。
上記議員は,旧静岡市議会議員の任期途中に声帯を切除したことにより,同議員の所属する会派選出の議会運営委員が,議会運営委員会において,「当該議員が手術により発声しにくいことから,本会議,常任委員会,特別委員会の会議でのパソコンのソフトを利用した代替音声システムの使用をお願いしたい。」と申し入れ,議会運営委員会は,これを異議なく受け入れた。なお,上記議員は,本会議において,パソコンによる音声変換の方法で発言したことはなかった。
ウ 岐阜県恵那郡蛭川村(以下「蛭川村」という。)村議会(甲36の1ないし4)
蛭川村村議会のうち,平成10年9月16日から同月25日まで開催された平成10年第3回定例会(甲36の1),平成10年12月15日から同月21日まで開催された平成10年第4回定例会(甲36の2),平成11年3月9日から同月19日まで開催された平成11年第1回定例会(甲36の3)及び平成11年12月15日から同月22日まで開催された平成11年第4回定例会(甲36の4)において,蛭川村村議会議員Fは,同村議会事務局職員による代読の方法で,一般質問を行っていた。
エ 岡崎市議会(甲35)
岡崎市議会議員Gは,平成12年9月定例会において,病気が原因で発言が不自由であるため,同市議会事務局職員による代読の方法で発言を行い,一般質問を行っていた。
2  関連法令等
(1)  平成18年6月7日法律第53号による改正前の地方自治法(以下「法」という。)
104条(議長の権限)
普通地方公共団体の議会の議長は,議場の秩序を保持し,議事を整理し,議会の事務を統理し,議会を代表する。
105条(委員会への出席発言権)
普通地方公共団体の議会の議長は,委員会に出席し,発言することができる。
109条の2(議会運営委員会)
1項 普通地方公共団体の議会は,条例で議会運営委員会を置くことができる。
2項 議会運営委員は,会期の始めに議会において選任し,条例に特別の定めがある場合を除くほか,議員の任期中在任する。
3項 議会運営委員会は,次に掲げる事項に関する調査を行い,議案,陳情等を審査する。
1号 議会の運営に関する事項
2号 議会の会議規則,委員会に関する条例等に関する事項
3号 議長の諮問に関する事項
4項 前条第4項から第6項までの規定は,議会運営委員会について準用する。
109条(常任委員会)
1項ないし3項 略
4項 常任委員会は,予算その他重要な議案,陳情等について公聴会を開き,真に利害関係を有する者又は学識経験を有する者等から意見を聴くことができる。
5項 常任委員会は,当該普通地方公共団体の事務に関する調査又は審査のため必要があると認めるときは,参考人の出頭を求め,その意見を聴くことができる。
6項 常任委員会は,議会の議決により付議された特定の事件については,閉会中も,なお,これを審査することができる。
(2)  中津川市議会委員会条例(乙イ1。以下「市議会委員会条例」という。)
4条(議会運営委員会の設置)
1項 議会に議会運営委員会を置く。
2項以下 略
18条(傍聴の取扱)
1項 委員会は議員のほか委員長の許可を得た者が傍聴することができる。
2項 委員長は必要があると認めるときは,傍聴人の退場を命ずることができる。
21条
1項 何人も,会議中はみだりに発言し,騒ぎ,その他議事の妨害となる言動をしてはならない。
2項 略
22条
1項 委員会において地方自治法,中津川市議会会議規則,又はこの条例に違反し,その他委員会の秩序を乱す委員があるときは,委員長は,これを制止し,又は発言を取り消させることができる。
2項 委員が前項の規定による命令に従わないときは,委員長は,当日の委員会が終るまで発言を禁止し,又は退場させることができる。
3項 委員長は,委員会が騒然として整理することが困難であると認めるときは,委員会を閉じ,又は中止することができる。
(3)  中津川市議会会議規則(以下「会議規則」という。)
47条(発言の許可等)
1項 発言は,すべて議長の許可を得た後,登壇してしなければならない。ただし,簡易な事項については,議席で発言することができる。
2項 略
48条(発言の通告及び順序)
1項 会議において発言しようとする者は,あらかじめ議長に発言通告書を提出しなければならない。ただし,議事進行及び一身上の弁明等についてはこの限りでない。
2項 略
3項 発言の順序は,議長が定める。
4項 略
53条(質疑の回数)
質疑は,同一議員につき,同一議題について2回を超えることができない。ただし,特に議長の許可を得たときは,この限りでない。
54条(発言時間の制限)
1項 議長は,必要があると認めるときは,あらかじめ発言時間を制限することができる。
2項 略
59条(一般質問)
1項 議員は,市の一般事務について議長の許可を得て質問することができる。
2項 質問者は,議長の定めた期間内に,議長にその要旨を文書で通告しなければならない。
61条(準用規定)
質問については,第53条(質疑の回数)及び第57条(質疑,討論の省略又は終結)の規定を準用する。
66条(委員の発言)
委員は,議題について自由に質疑し及び意見を述べることができる。ただし,委員会において別に発言の方法を決めたときは,この限りでない。
67条(委員外議員の発言)
1項 委員会は,審査又は調査中の事件について,必要があると認めるときは,委員でない議員に対し,その出席を求めて説明又は意見を聞くことができる。
2項 委員会は,委員でない議員から発言の申し出があったときは,その許否を決める。
(4)  中津川市議会議事運営要綱(乙ロ4)
第4  一般質問について
(1)  一般質問の順序は,多数会派からとし,同数の場合は協議のうえ決定し,輪番制により行うものとする。
(2)  略
(3)  質問時間は,当初質問(壇上)40分以内,再質問(自席)10分以内の持ち時間で行うものとする。
(4)  再質問は,答弁に対する質問とする。
(5)  略
第5  討論及び質疑について
(1)  討論の通告は,直前開催の議会運営委員会終了までに発言通告書を提出することとする。但し,緊急やむを得ない場合は,議会運営委員会正副委員長で協議する。
(2)  討論及び質疑の発言時間は,1人10分程度とする。
第6  委員会の運営について
(1)ないし(3) 略
(4)  正・副議長は,委員会へ出席するものとする。
(5)ないし(7) 略
(8)  委員会における発言は,委員長の許可を得て行うものとする。
(9)ないし(11) 略
(12)  委員会傍聴はモニターによるものとし,委員長の許可を得た者が傍聴することができるが,許可に当たっては,以下(13)から(15)の事項に留意するものとする。
(13)  傍聴の申し出は,文書をもって委員会開催前日の午後5時までに提出するものとし,委員長は締切り後,可否を決定し通知するものとする。但し,前日が休日の場合は,その前日までとする。
(14),(15) 略
第8  陳情の取扱いについて
(1)  陳情は,本会議初日前の議会運営委員会で付託について協議をするものとする。
(2)  付託された陳情は,委員会の審査のみ行い,陳情者に報告するものとする。
(5) 議会運営委員会に関する申し合わせ(乙ロ4)
1  委員会の構成
委員会は,所属議員2人以上の会派から選出する委員をもって構成する。
2,3 略
4  正副議長の出席
正副議長は,委員会に出席するものとする。
5  委員に事故あるときの取り扱い
委員に事故あるときは,当該会派から委員外議員として出席できるものとする。
6  委員会の意志決定
委員会の意志決定に当たっては,全会派一致を基本として協議調整に努めることとし,決定事項については,各会派においてこれを遵守するものとする。
(6) 中津川市議会の運営に関する慣習
議長は,議事進行権の行使にあたり,議会運営委員会に諮り,同委員会の決定に従って議事を進行するという慣習が存在した(弁論の全趣旨)。
第3  争点及び争点についての当事者の主張
1 争点
(1) 本件訴えの適法性(本案前の主張)
(2) 一審被告らの加害行為の違法性
(3) 被控訴人議員ら個人の不法行為責任の成否
(4) 一審原告に生じた損害の有無,程度
2 争点1(本件訴えの適法性)について
(一審被告らの主張)
(1)ア 地方議会は,地方公共団体の重要な案件に対する審議議決機関であり,憲法が定める議会制民主主義の理念及び住民自治という地方自治の本旨から,当然に,地方議会における議事運営について,議会の自主性,自律性が尊重されなければならない。
法は,議会が自主的,自律的に行為,判断をし,議会の運営に関して議会の自主性,自律性を尊重する目的で,109条の2で「条例において議会運営委員会を設置することができる。」と規定し,議員の身分を奪うが如き処置についてはともかく,議員の発言の手段,方法はもちろんのこと,委員会及び本会議における議事進行について,広く議会の自主性,自律性に委ねているから,この点に関する紛争は,司法審査の対象とはならない。
イ 被控訴人議員らは,一審原告の議会における発言の機会を奪ったわけではなく,一審原告は,会話補助装置による発言方法が保障されていたのに,その方法は自分が要求する方法と違うという理由で試行さえもしなかった。一審原告は,地方議会の議員であり,議会における秩序ある運営を行うため,議員の発言の時期,場所,回数,品位保持等について一定の制約があり,議員という身分を有する以上,議会の機能に内在する制約を免れることはできない。
一審原告は,後記のように,障害者には,健常者と同じ前提条件とするため,障害補助手段の選択の自由があり,それは議会の自律権の範疇に属さないと主張するが,本件では,発声に障害のある人が日常生活でその障害をどのような補助手段でカバーするかということが問われているのでなく,市議会における議員の発言方法が問われているのであるから,それは,議会内の議事の運営に関わる問題である。
ウ したがって,一審原告の一審被告らに対する訴えは不適法であり,却下されるべきである。
(2) 一審原告は,被控訴人議員らが本件決議案に反対票を投じたことも一連一体の加害行為を構成すると主張するが,その当否について司法審査が及ぶとすれば,被控訴人議員らの内心の自由及び政治的意思表明の自由に対する侵害となる。
したがって,一審原告の被控訴人議員らに対する訴えは不適法であり,却下されるべきである。
(一審原告の主張)
自律的法規範を持つ社会又は団体の内部の問題に司法審査が及ばない場合があるとしても,それは,一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる場合に限定される。
一審原告は,下咽頭がんにより手術を受け,発声障害者となったため,人に意思を伝えるためには障害を補助する手段を選択しなければならず,このような障害補助手段の選択は,一審原告が健常者と同一の立場に立つための手段を選択するということである。そして,議会内における発言時間や形式等の発言方法の問題は,通常,自らの発声によって発言可能な(その意味で権利行使が可能な)者の円滑な議事運営のための申し合わせや規則にすぎず,一審原告のような発声障害者の場合,自ら選んだ方法により自分の意思を人に伝えることができて初めて,健常者と同じ前提条件に立つことができるのであって,その方法を他人に強制されるいわれはない。すなわち,発声障害者が,障害を補助し,その意思を伝達するため,どのような方法を選択するかは,「議会の運営に関する事項」に該当せず,議会の自律権の範疇に属さないものである。
一審原告は,後記一審被告らの一連の加害行為により,一市民として,障害者が代替手段を自ら選ぶ権利,すなわち自らのあり方を決める権利(自己決定権。憲法13条)を侵害され,かつ,一審原告個人の表現の自由(自由な討論を通じて民主主義を実現すべく,市議会議員として本会議及び委員会において発言する権利)及び地方議会議員としての表現の自由(地方議会議員は住民の直接選挙によって選出された代表者であるから,憲法上,議員が議会において発言することは当然に保障されている。)を侵害された。また,後記一連の加害行為により,一審原告の参政権が侵害され(地方議会の議員は,主権者である住民の直接選挙によって選出され,住民の多様な意思を政治に反映させ,実現していく役割を担っているため,議会での発言権は極めて重要なものであるところ,その発言の前提条件の整備である意思伝達方法の選択は,可能な限り,議員の希望する方法が尊重されなければならないから,一審原告が意思伝達手段を選択することは,参政権によっても保障されている。),平等権(市議会の認めた意思伝達手段でなければ発言を認めないという行為は,健常者には存在しない権利行使の障碍であり,権利行使に健常者と異なる障碍を設けることは,障害を理由とした不合理な差別である。)を侵害された。さらに,後記一連の加害行為は,議員の自由な発言を前提とする議会制民主主義を脅かす行為であり,市民の知る権利を侵害する行為でもある。
したがって,一審被告らの行為は,一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的問題などとは到底いえず,司法審査が及ぶことは明らかである。議会の自律権を守るため,個人の基本的人権を侵害する行為について司法判断すらなされないのは,明らかに行き過ぎであり,人権と議会の自律権との調整・優劣の判断は,当該侵害行為の違法性の審査の中で行うべき問題である。
3 争点2(一審被告らの加害行為の違法性)について
(一審原告の主張)
一審被告らは,一審原告が求めた代読という発言方法を認めず,音声変換装置を用いた発言を強制するという一連の発言妨害行為を行い,また,市議会は,一審原告について代読による発言方法を講じなかった。その結果,一審原告は,平成15年から同19年までの約4年間,市議会において一般質問をすることや,各種委員会において発言することができなかった。一審被告らの一連の発言妨害行為及び不作為は,一審原告の自己決定権等を侵害するもので,憲法13条,14条1項,21条,市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下「自由権規約」という。)19条2項,障害者の権利に関する条約(以下「障害者権利条約」という。)21条,平成23年8月5日法律第90号改正前の障害者基本法(以下,単に「障害者基本法」という。)3条1項,2項に違反し,国家賠償法1条1項の違法な加害行為又は民法709条,719条の不法行為を構成する。
(1) 被侵害利益
ア 障害者の障害補助手段についての自己決定権
障害者は,社会生活を営むため自己の障害を補完する補助手段を自ら選択する権利(自己決定権)を有している。これは,障害者の人格的生存に直結する重大な利益であり,憲法13条により保障され,同権利は,障害者基本法3条により具体的権利として保障されている。
(ア) 障害者にとって生きることに直結する利益であること
障害者が,社会で生き,社会に主体的に参加していくためには,その障害を補う必要があり,何らかの補助手段を利用しなければならず,補助手段は,その時々の社会の条件により,いくつかの限られたものしかないため,健常者が生きる上で数多くの手段の中から意識的あるいは無意識的に選択しているのに対し,障害者は,限られた手段の中から意識的に選択せざるを得ない。また,障害者は,障害を補完するために様々な工夫を凝らし,そうすることでようやく生活することができるのであり,障害者の意見を無視して障害補助手段を強要されると,障害者は生きる希望を失い,人間らしく生きることができなくなってしまう。
したがって,障害者にとって,障害補助手段を選択することは生きることにも直結する重大事なのであり,人格的生存に不可欠であるといえる。
(イ) 一審原告にとっての代読という表現手段選択の必要性
一審原告は,発声障害を有する者として2期目の選挙戦を戦う中,選挙演説を自分の息子や娘,支援者らに代読してもらい,人の声で話してもらうことで,あたかも自分の分身が話しているような感覚になり,代読による発言の良さ,すばらしさを実感した。人に自分の思いを伝えるためには,その言葉の意味内容だけではなく,言葉と言葉の間や声の調子,話し手の感情など,非言語的な要素が不可欠であることから,一審原告は,市議会においても,機械の音声ではなく人の声で発言をしたいという気持ちが強くなった。一審原告のそのような思いは,障害者であっても人間らしくありたいという切実な願いである。
(ウ) 社会的に見ても個人の自律的決定に委ねられてきた利益であること
a 障害者の権利確立の運動
昭和35年ころまでの障害者を巡る議論は,障害者を権利の主体ではなく保護の客体として捉えて進められてきたが,昭和35年ころ,このような従来の障害者観に異議を唱える形で,ヨーロッパでは,ノーマライゼーション運動が発展し,障害者であっても健常者が通常送る生活リズムやライフサイクルが確保されるべきだと考えられるに至った。また,アメリカでも自立支援運動が展開され,真の自立とは経済的自立や物理的自立ではなく,障害者の自己決定と生活の質を基礎にしたものであるべきだと考えられた。
これら二つの運動は,いずれも障害者に自ら障害補助手段を選ぶ自由があることを前提としており,障害者の自己決定の重要性を再認識するものであった。このように,二つの異なる運動のいずれもが,自己決定の許されない社会の不当性に目を向けたということは,障害者が自ら障害補助手段を選択することは障害者が人間らしく生きるために欠かすことのできない重大な利益であることを裏付けるものである。
b 障害者の自己決定権の尊重は各法規の前提であること
上記の障害者運動の歴史の成果は,国際法上はもとより我が国の国内法上も制度として取り入れられており,障害補助手段を選択する自由は,もはや国際的にはもちろん,我が国の制度上も当然のこととされている。
昭和50年に障害者権利宣言が国連で採択され,その後我が国でも,平成5年に障害者基本法が制定され,これに基づき障害者基本計画が作成されるなど,障害者の自己決定を前提とした制度が制定されてきた。
これらの流れに加え,以下で詳述する国際社会や我が国の立法,行政の動向からすると,一審原告が主張する自己決定権は,社会が当然に障害者の自律的決定に委ねた利益である。
c 障害者基本法の改正
障害者を取り巻く社会経済情勢の変化等に対応し,障害者の自立と社会参加の一層の促進を図るため,障害者基本法は,平成16年6月4日に大幅に改正された。この改正により,平成16年改正前の障害者基本法6条は削除された。
同条は,1項において「障害者は,その有する能力を活用することにより,進んで社会経済活動に参加するよう努めなければならない。」と定め,2項において「障害者の家庭にあっては,障害者の自立の促進に努めなければならない。」と規定していたが,そもそも,誰でも一市民として義務と権利を持っているのは当然であり,障害者だからとして,あるいは,障害者の家族だからとして,それ以上の義務や権利を持つものではなく,障害者やその家族の義務を法律に規定するのは不適切であるとして削除されたものである。
こうして,障害者が普通の市民として,普通の努力をすることによって社会参加できるような社会こそ我々の目指すべき社会であるという考え方が国会の承認するところとなった。
d 障害者権利条約の成立
これまでの障害者の人権に関する運動の集大成ともいうべき障害者権利条約が平成18年12月に国連で採択された。
障害者権利条約では,「固有の尊厳,個人の自律(自ら選択する自由を含む。)及び個人の自立を尊重すること」が原則とされ(3条(a)),「障害を理由とするあらゆる差別」が禁止され(5条2項),締約国に対して,「障害者が,自らの選択する方法で,自らの選択する時に,かつ,妥当な費用で個人的に移動することを容易にすること」及び「障害者が質の高い移動補助具,装置,支援技術,生活支援及び仲介する者を利用することを容易にすること(これらを妥当な費用で利用可能なものとすることを含む。)」を求めており,特に,21条では,締約国は「表現及び意見の自由(他の者と平等に情報及び考えを求め,受け,及び伝える自由を含む。)についての権利を行使することを確保するためのすべての適当な措置をとる」と規定され,締約国がかかる措置をするために,「公的な活動において,手話,点字,補助的及び代替的な意思疎通並びに障害者が自ら選択する他のすべての利用可能な意思疎通の手段,形態及び様式を用いることを受け入れ,及び容易にすること」を行うこととされている(21条(b))。
障害者権利条約の制定過程では,この条約が既存の人権条約では保障されていない「新しい人権」を創るものではないということが再三確認されており,上記の規定は,障害補助手段の選択を現実に保障するために,特に移動手段やコミュニケーションについて締約国に措置義務を課したものである。
障害者が障害補助手段を選択する権利については,すでに障害者権利宣言が採択されたときから国際社会では当然のこととされており,これを現実の社会の中で保障するためにこのような規定が障害者権利条約に盛り込まれたのである。
e 障がい者制度改革推進会議の設置
障がい者制度改革推進本部が内閣に設置されることが平成21年12月8日に閣議決定された。
障がい者制度改革推進本部は,障害者権利条約の締結に必要な国内法の整備を始めとする我が国の障害者に係る制度の集中的な改革を行い,関係行政機関相互間の緊密な連携を確保しつつ,障害者施策の総合的かつ効果的な推進を図るため,当面5年を障害者の制度に係る改革の集中期間と位置付け,障害者のことは障害者で決めるということを実現するため,構成員24人のうち14人を障害者団体の有識者(障害当事者とその家族)から選出しており,改革の推進に関する総合調整,改革推進の基本的な方針案の作成及び推進並びに法令等における「障害」の表記の在り方に関する検討等を行うこととされている。
障がい者制度改革推進本部における審議は,未だ基本方針案の策定に至っていないが,障害者議員の自己決定をより広く認めるような方向で討議がされている。平成22年3月19日開催の推進会議は,障害者の政治参加に関して討議しており,発声障害を持つ議員に,代読により発言するか否かを選択する自由が保障されるということは,当然のこととして認識されていた。
f 障害者基本法による具体的保障
障害者基本法3条1項は,「すべて障害者は,個人の尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有する。」と規定し,同条2項は,「すべて障害者は,社会を構成する一員として社会,経済,文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられる。」と規定しており,障害者の有する自己決定権は,同法により具体的権利として保障されている。
(エ) 以上によれば,発声障害を有する障害者である一審原告が,市議会議員として議会における発言方法として代読という方法を選択する権利もまた一審原告の人格的生存に不可欠な利益であって,憲法13条,障害者基本法3条1項,2項により保障されているといえる。
イ 障害を有する地方議会議員の議会における表現の自由
(ア) 憲法上の保障
地方議会議員は住民の直接選挙により選出された代表者であり,憲法上,議員が議会において発言することは当然に保障されており,この発言は,政治的言論の最たるもので,民主主義の実現,運営に不可欠のものであるから憲法21条1項により保障される。
さらに,憲法21条は,「一切の表現の自由」と規定し,自己の意思を外界へ表現する手段又は方法を決定する自由をも当然に保障していると解すべきである。特に,意思表出手段に障害を持つ者にとっては,表現内容のみならず,表現手段をも保障しなければ,表現活動そのものが否定されることになる。
(イ) 自由権規約及び障害者権利条約による保障
このことは,自由権規約19条2項が,「自ら選択する他の方法」で「あらゆる種類の情報及び考えを」「伝える自由」を保障しており,自由権規約の解釈指針というべき障害者権利条約が,21条において,障害者が「第2条に定めるあらゆる形態の意思疎通」であって,「自ら選択するもの」により,表現する自由(他の者と平等に情報及び考えを求め,受け,及び伝える自由を含む。)についての権利を保障しており,障害者権利条約が,特に「公的な活動」において,「障害者が自ら選択するすべての利用可能な意思疎通の手段,形態及び様式を用いることを受け入れ,及び容易にすること」を求めていることからも明らかである。
(ウ) したがって,一審原告が,議員として市議会において代読の方法により発言する権利は,憲法21条1項,自由権規約19条2項の保障する表現の自由によって保障されている。
ウ 障害者の参政権
国民は,国民主権の原理から,当然に政治に参加する権利(参政権)を有し,憲法が国や地方公共団体において議会制民主主義を採用している(憲法前文,93条)ことから,同権利には,国民が国民又は住民の代表者である議員を選挙する権利や立候補する権利,さらには,国民又は住民の信託に応えるための議員活動を行う権利も含まれる。議員活動を行う権利の中でも,議員が議会で発言する権利は多様な意見を国会又は地方議会での審議に反映するため,最大限尊重されなければならず,発言内容が議員に委ねられるだけでなく,発言の方法や手段についても可能な限り議員の希望する方法が尊重されなければならない。
特に,様々な障害を抱える議員に対しては,障害が様々であるから,その議員の希望する方法や手段が尊重されなければ,その議員が議員として住民から信託された議員としての発言権を行使するという参政権を行使することができなくなるので,健常者の議員よりも一層その希望が尊重されなければならない。
エ 障害者の平等権
憲法14条1項にいう「平等」とは実質的な平等を意味し,国民各自における身体的,肉体的,社会的条件に基づく差違に対しては,当該差違に応じた合理的差別を許容するのみならず,進んで当該差違に応じた合理的差別的取扱いを命ずる原理でもあるから,発声障害を有する議員が,他の議員に保障されている発言権を通常の方法によっては行使し得ない場合,これに代わる手段を議会の側が提供することは,憲法14条1項によって当然に要求されている。
障害者基本法3条1項は,「すべて障害者は,個人の尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有する。」として障害者の人権保障を確認し,同条2項は,「すべて障害者は,社会を構成する一員として社会,経済,文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が与えられる。」と規定して障害者の社会参加を保障し,同条3項は,「何人も,障害者に対して,障害を理由として,差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。」と規定し,障害を理由とする差別を禁止している。
このように,障害を理由として差別されない権利は,憲法14条1項により保障され,障害者基本法3条により権利の内容が具体化されている。
一審原告は,議員であり,市議会という社会を構成する一員であったから,憲法14条1項,障害者基本法3条により,議員として,その地位にふさわしく議会活動に参加する機会が与えられ,他の議員らから発声障害を理由として差別されない権利を有していたものである。
(2) 一審被告らの加害行為は,一審原告の権利,利益に対する違法な侵害であること
一審被告らの加害行為は,以下とおりであるところ,各加害行為は,一審原告の希望する発言方法を決して認めないという1つの加害意思に貫かれており,一連一体の加害行為を構成する。本判決別紙2に挙げた議会運営委員会等における被控訴人議員らの発言は,一連一体の加害行為を構成する一部であり,これらの言動からすれば,一審原告の希望をまったく聞かず,一審原告の希望する発言方法を認めないという一貫した一審被告らの加害意思の存在が認められる。また,市議会の不作為も,一審原告に対する加害行為を構成する。
これら議会運営委員会,議長の行為は,議会の機関の行為であって,議会の行為であり,各議員の議会運営委員会での発言や本件決議案に反対票を投じたことは,議会の不法行為を構成する要素でもある。
個々の加害行為とその違法性は,次のとおりである。
ア 一審被告らの加害行為によって,一審原告の権利,利益が侵害されたこと
(ア) 議会運営委員会の各委員(被控訴人議員らの一部を含む。)は,平成15年5月から同年11月25日までの間,一審原告について,議会での発言は口頭が原則であるから,まずは治療に専念せよと結論付けて,一審原告の肉声以外の発言を認めないと発言し,被控訴人Y14委員長は,これを受けて議論を打ち切った(加害行為①)。
会議規則上,口頭が原則であるという定めは存在しないにもかかわらず,議会運営委員会の各委員(被控訴人議員らの一部を含む。)は,さもそれが原則であるかのように言い,一審原告が発声できないことを知った上で,自分の声が出せるよう治療に専念せよとして一審原告の肉声以外の発言を認めないと発言していて,これは,一審原告の議会での発言を妨害するもので,前記の一審原告の権利,利益を侵害するものである。
(イ) 議会運営委員会の各委員(被控訴人議員らの一部を含む。)は,平成16年9月21日の議会運営委員会において,一審原告がパソコンを使用できないことを知りながら,議会での発言においてはパソコンを使用するよう申し合わせ,その後も一審原告にパソコンの使用を押しつけた(加害行為②)。
議会運営委員会の各委員(被控訴人議員らの一部を含む。)は,代読発言をしたいという一審原告の要望に基づく陳情に対する審議において,一審原告自身の意思を確認しようともせず,一審原告が希望せず,使用することもできないパソコンの使用を申し合わせで決めた上,一審原告に対し,パソコンを使用できるようになるよう自助努力を要求した。これにより,一審原告は,自己の望む方法により議会で発言することを妨害された。
なお,平成16年9月21日開催の議会運営委員会では,一審原告に自助努力を求めるという議論で終始し,一審原告自身がパソコンに入力することを当然の前提とし,第三者が入力してもよいなどという決定はなされていなかった。平成16年9月21日以降も,第三者がパソコンに入力することについて,被控訴人Y10委員長の散発的な意見としては挙がっていたが,その議論が継続的になされていたわけではなく,折衷案が提案された平成17年11月28日まで,一審原告自身がパソコンに入力することを前提としていた。
(ウ) A議長は,一審原告が食道発声で行うとして平成17年3月10日に提出した発言通告書(以下「第1回発言通告書」という。)を,議会運営委員会に諮った上で,食道発声では音声が聞き取れないという理由で受理を拒絶したほか,一審原告が平成17年6月に定例会に向けて提出した発言通告書(以下「第2回発言通告書」という。)を,議会運営委員会による「代読は無理」との答申に基づき受理を拒絶した(加害行為③)。
議会運営委員会の各委員(被控訴人議員らの一部を含む。)は,パソコンを使用しない限り発言を認めないという態度であったため,一審原告は,やむなく食道発声の方法により発言するとした。すると,同委員らは,およそ聞き取れないとわかっていながら,あえて一審原告の食道発声をテストした。これは,一審原告の障害を皆の前で晒させ,自身が発声障害を持つことを,ことさらに一審原告に突きつけるような,障害者を辱めるものであり,一審原告の発言を妨害することに関連して,一審原告の尊厳を害するものであった。
A議長は,議員の提出した発言通告書の受理を拒む権限等を有していないにもかかわらず,一審原告の発言通告書を受理せず,一審原告がその望む方法により発言することを妨害した。
(エ) 議会運営委員会の各委員(被控訴人議員らの一部を含む。)は,平成17年6月24日,C委員が,次回同年7月12日に一審原告の傍聴を認めてほしいと要望したのに,これを拒絶した。また,平成17年9月定例会における一審原告の発言方法についても,あくまでも一審原告の代読発言を認めないという姿勢をとった(加害行為④)。
議会運営委員会の各委員(被控訴人議員らの一部を含む。)は,議会運営委員会を傍聴したいという一審原告の申出を,場面を異にする農業委員の決定の場面と同列に論じて拒絶し,一審原告の発言方法を議論する場である議会運営委員会から,当事者である一審原告を排除し,一審原告の意見を取り入れようとせず,一審原告がその望む方法により発言することを妨害した。
(オ) 議会運営委員会の各委員(被控訴人議員らの一部を含む。)は,「折衷案」の名のもとに一般質問についてパソコンの使用を強制し,当該折衷案を楯に,その後の一審原告の発言通告書を受け付けなかった(加害行為⑤)。
市議会は,一般質問についてはパソコンを使用し,再質問については市議会事務局職員(以下「事務局職員」という。)による代読を行うという「折衷案」を採用し,一審原告の要望や岐阜県弁護士会の勧告に従ったかのように見せかけた。「折衷案」は,形式的には同勧告を一部受け入れたかのように見えるが,その本質は,一審原告の意見を聞かず,一審原告の希望しないパソコンの使用を強制するものであり,一審原告がその望む方法で発言することを妨害するものである。
(カ) 被控訴人Y23議員を除く被控訴人議員ら及び一審被告議員ら27名は,一審原告が平成18年12月定例会の本会議に提出した「市議会議員の発言保障に関する決議案」(本件決議案)に対し,反対票を投じた(加害行為⑥)。
本件決議案は,一審原告が,市議会での一般質問を事務局職員の代読により実施することを求めるものであったが,上記議員らが反対票を投じたことにより,反対多数で否決された。これにより,一審原告は,自らの求める発言方法が実施される道を絶たれ,一審原告の望む方法により議会で発言することを妨害された。
(キ) 市議会の不作為による加害行為(加害行為⑦)
a 作為義務の存在
市議会は,一審被告市の議事機関として,その構成員である各議員が,議会において自由活発な討論をすることが可能な環境を整備する積極的な作為義務を負っており,議員の中に障害を有する者がいれば,議会側に存在するその議員に対するバリアを除去し,同議員が,自由活発な討論をすることが可能な環境を整備する積極的な作為義務(以下「環境整備義務」という。)を負っている。障害のある者に対するバリアの本質とは,社会が一方的に許容した範囲でしか,その者の自立性や社会参加を認めないという点にあるから,環境整備義務の履行にあたっては,障害者の意思を最大限尊重することが何よりも重要である。
したがって,一審被告市の議事機関である市議会は,一審原告に対して,環境整備義務を負っており,同義務の履行にあたっては,代読という代替手段を選択した一審原告の意思を最大限尊重すべき義務(以下「意思尊重義務」という。)があった。
b 市議会の作為義務の法的根拠は次のとおりである。
(a) 市議会が一審原告に対して積極的な作為義務を負っていること,その積極的な作為義務を履行するにあたっては,代読という障害補助手段を選択した一審原告の意思を最大限尊重したうえで,議会側に存在するバリアを除去することが必要であることは,憲法やその趣旨を具体化した障害者基本法の下記の各規定から法的に根拠づけられる。
(b) 障害者基本法は,障害者の自立及び社会参加の支援のための施策に関して,①障害者の個人の尊厳,②障害者の社会参加,③障害者の差別と権利利益侵害の禁止を基本理念とし,国及び地方公共団体は,障害者の自立及び社会参加を支援することなどにより,障害者の福祉を増進する責務を有する旨定めており(同法1条),国や地方公共団体が障害者の福祉に関する施策を講じるに当たっては,障害者の自主性を十分に尊重し,自立した日常生活を営むことができるよう配慮することを要求している(同法8条)。
c 市議会の作為義務違反とそれによる一審原告の権利,利益の侵害
障害者が地方議会議員として健常者議員と同様に活動することは,その者の人格形成発展に寄与するものである。障害者基本法8条が認めるように,障害者に対しては,その自主性が尊重されるとともに,自立した日常生活ができるよう配慮されなければならない。障害者が,社会参加や日常生活をするにあたり,自己の障害補助手段を選択する自由が認められなければ,その者の自主性を尊重したことにならず,自立した日常生活ができるように配慮したことにもならない。
本件において,市議会は,発声障害を有する一審原告の希望を全く聞かず,一審原告が選択した代読という方法による議会での発言を認めて,その実現のための方策を講じることをしなかったのであって,市議会の作為義務違反は明らかである。この市議会の不作為により,一審原告は二期目の4年間,一度も一般質問をすることができなかった。
d 上記の内容は,市議会を構成する被控訴人議員らの作為義務違反,不作為でもあり,仮に,市議会の行為が「公務員」の行為にあたらないとしても,国家賠償法1条1項が適用されることは明らかである。
e 近代憲法が確立した平等の観念は,そもそも生まれによる差別を認めないことにその核心があることからすると,憲法14条は,「先天的に決定された条件」に基づく別異の取扱いを禁止することを中心とする規範と考えられ,生来的不変的特徴によって,歴史的な差別にさらされ,自尊を侵害され,政治的に無力な地位におかれている個人に対して特別の保護と関心を与え,そのような状況から開放することを目的とするものであると理解することができる。そのため,「障害」を理由とする不利益な取扱いは,「社会的身分」による差別として,憲法上,特別の保護と関心の対象となり,憲法14条により,「障害」のみを理由とした不利益な取扱いは「差別」であり(直接的差別の禁止),障害のある人に対して不利益な効果をもたらすような規範,基準,方針を採用することも,原則として,「差別」であるとみなされ(間接差別の禁止),それが「不当な負担」となる場合を除いては,障害のある人の「完全で平等な参加」を保障するための「合理的配慮」を提供しないことは「差別」である(合理的配慮の提供義務)とみなされる。このことは,障害者基本法3条3項や障害者権利条約2条,5条3項からも明らかである。
市議会は,平成15年2月,一審原告が発声障害に至ったこと,口頭以外による発言の希望があることを認識したから,その時点で,具体的に,議員である一審原告に対し,発言保障のための措置を検討する法的義務が発生したというべきである。そして,一審原告は,平成15年4月に再選され,同年5月26日に提出された申し入れ書で第三者による代読を要望したことなどからすれば,それ以降,市議会には,代読を認めるか,あるいは,速やかに代読の代替手段として本人に利用可能な発言保障措置を提案するなどの具体的措置を講じる義務が生じたというべきである。しかるに,市議会は,平成17年12月まで全く代読を認めず,一審原告の発言の機会を保障するための具体的措置を何ら講じようとせず,その結果,長期間にわたって,議員として発言する機会を奪っているから,市議会の発言保障措置の不作為は,憲法14条,障害者基本法3条に違反する違法な行為である。
イ 一審被告らの加害行為が一審原告の自己決定権に対する違法な侵害であること
前記のとおり,一審被告らの一連の加害行為は,一審原告の憲法上保障された権利である,自己の障害補助手段を選択するという自己決定権を侵害するものであるところ,この権利が,一審原告の人格的生存に不可欠なものであることからすれば,これに対する制約は,やむにやまれぬ目的によるもので,かつ,その目的を達成するための必要最小限度のものでなければならない。
しかしながら,一審被告らは,一審原告の望む代読発言を拒否し,これを妨害することについて,正当な目的もなく,その制約も必要最小限等とは到底いえないものであった。
(ア) やむにやまれぬ目的など存在しない
一審被告らは,一審原告の代読を認めない理由について,議会運営委員会等で一切明らかにしておらず,一審被告らの加害行為には正当な目的など一切なく,一審被告らが本件訴訟において主張する誤読のおそれなどというものは,下記のとおり一審原告の求める代読という発言方法を妨害する正当な理由とは到底なりえない。
a 誤読のおそれについて
一審被告らは,代読者の発言内容に誤りがあった場合にその訂正が不可能であることや,代読者の故意による発言内容の改変,趣旨のすり替え等のおそれがあることが,一審原告の求める代読発言を拒む理由であるかのような主張をする。しかし,代読者が誤って発言をした場合にはその場で訂正をすればよいだけのことであり,一審被告らの主張には何ら合理性がない。
b パフォーマンス,選挙活動への悪用のおそれについて
一審被告らは,代読者が代読に際し,何らかのパフォーマンス等をし,代読者によって直近の選挙に向けての選挙活動に悪用されるおそれがあることが,一審原告の求める代読発言を拒む理由であるかのような主張もする。しかし,一審被告らの言う何らかのパフォーマンスとは,いかなる行為,事態を想定しているのか明らかでないし,仮にこのようなおそれが想定されたとしても,事務局職員等,政治色のない客観的立場にある第三者に代読をさせれば,そのようなおそれは払拭できるのであって,一審原告の自己決定権を制約するためのやむにやまれぬ目的とはいえない。
c 代読者の責任,精神的負担について
一審被告らは,事務局職員が誤読した場合に代読者の責任をいかに考えるかという問題があるとか,代読者の精神的負担等が,一審原告の求める代読発言を拒む理由であるかのような主張をする。しかし,前者は誤読した際に一審原告が発言を遮って訂正させれば足りることであり,後者は議会事務局の職務自体が精神的負担だというのとほぼ同旨の主張にすぎない。一審被告らの主張するパソコンへの入力行為も,同じように誤入力による精神的負担があり,両者に違いがあるとしても,それは程度の差にすぎない。
いずれにしても,代読者の責任や精神的負担なるものは,およそ権利,利益等といえないものであるから,これを根拠に憲法上保障される自己決定権の行使を制約することが許されるということはあり得ないし,その制約のためのやむにやまれぬ目的とはいえない。
(イ) 必要最小限度の制約ともいえない
a 一審原告が求めた代読という発言方法は,代読者が一審原告の書いた文章を読み上げるというだけのもので,極めて容易なものであり,広く社会一般で行われている方法である。この方法は,経済的にも特別な負担を及ぼすものではなく,他者の人権を制約するものでもない。また,他の地方議会においては,代読による発言が支障なく行われた実績があることからしても,議会において議員が代読という方法で発言することに何らの支障もないことは明らかである。
b 議会運営委員会の各委員(被控訴人議員らの一部を含む。)は,平成17年11月28日開催の議会運営委員会において,一部代読による発言を認める折衷案を出したことで,あたかも一審原告に譲歩したかのような体裁を装ったが,この時も,同委員らは一審原告の希望を聞こうともせず,一般質問についてはあくまでも音声変換装置による発言を一審原告に押しつけ,一審原告に発言方法を選択する機会を全く与えなかったのであって,この折衷案をもって必要最小限度の制約であるなどとは到底いえない。
ウ 一審被告らの加害行為が一審原告の表現の自由に対する違法な侵害であること
(ア) 地方議会における議員の発言の自由は,上記のごとく重要な憲法上の意義を有しているうえに,個人の尊厳を実現するための根幹をなすものでもあるから,その制約については,極めて厳格な合理性が求められるものというべきである。具体的には,かかる発言の自由に対する制約は,発言の自由が持つ上記価値と比較してもなお保護すべき重要な目的があり,かつ,制約の程度は必要最小限でなければ,違憲,違法となるというべきである。
(イ) 一審被告らは,議会制民主主義及び多数決原理を,議会における表現の自由の制約原理として主張する。
しかし,議会制民主主義及び多数決原理は,各人の自由な発言,意見表明がなされ,十分な議論が尽くされることを最低限の前提としており,少数者に対する十分な発言保障及びそれに基づいた議論を尽くすことにより,多数意見の正当性がチェックされ,これをもってはじめて多数決の結果が正当化されるのであるが,一審被告らの加害行為のように,一審原告の発言の機会そのものを奪うと,多数意見の正当性チェックの機会自体が奪われ,議会制民主主義,多数決原理を支える根本原理が決定的に否定されるため,各人の自由な発言,意見表明が保障されない中でなされた多数決の決定は,その正当性の根拠を失うものというほかない。また,司法府の役割は,立憲主義の下,憲法を頂点とした法秩序に照らし,民主主義によっても侵害し得ない権利を擁護する点にあり,本件は,多数決によって,少数者の意見表明の機会を奪うという事案であり,まさに,司法府による人権救済が必要不可欠な場面であることからも一審被告らの主張は失当であることは明らかである。
(ウ) 一審被告らは,一審被告らの加害行為による発言妨害は,表現の時,所,方法に関する規制にすぎないなどと主張して正当化しようとする。
しかし,規制の態様が,時,所,方法に関する規制であり,内容中立的なものであるというのは,公権力側の視点で規制態様を分類したにすぎず,結果として人権侵害がなされたのであれば,その結果自体には全く違いがないのであるから,規制態様が内容中立的であるということは,違憲審査基準を緩める根拠にはならない。
本件のように議会における議員の発言(特に最後まで一審被告らが認めなかった本会議での一般質問)は,他の時,他の場所で行える性格の言論ではなく,内容中立規制であることを根拠にしてその審査基準を緩めることはできない。
(エ) 一審原告の二期目の4年間は,①口頭以外の発言方法を認めず,一審原告に発声の努力を求めるという状態を一貫して保ち続け,一審原告の市議会における発言そのものを不可能にしてきた時期(平成15年4月23日から平成16年9月21日まで(以下,この項において「第1期」という。)),②議会運営委員会の各委員(被控訴人議員らの一部を含む。)がパソコンを使えない一審原告に対して,パソコン使用による発言を求め続け,一審原告の市議会における発言を拒絶し,一審原告の市議会における発言そのものを不可能にしてきた時期(平成16年9月21日から平成18年2月21日まで(以下,この項において「第2期」という。)),③市議会執行部が,一審原告が原稿を持ってくれば入力は事務局職員が行うことを前提として,パソコンを使用して発言するように求めた時期(平成18年2月22日以降(以下,この項において「第3期」という。))に分けられる。
しかし,第1期,第2期及び第3期のいずれにおいても,前記のとおり,制約を正当化しうる重要な目的はみあたらない。
また,仮に,一審被告らが主張する目的が,「発言の自由がもつ上記価値と比較してもなお保護すべき重要な目的」と認められるのだとしても,本件のように一審原告の発言の機会そのものを奪う行為は,極めて大きな制約であって,代読者を事務局職員等,政治色のない客観的立場にある第三者にするなど,より制限的でない手段を十分にとり得たのであるから,一審被告らの上記代読発言拒否行為が,その目的達成のための必要最小限の制約でないことは明白である。
特に,自助努力と称して「発声」や「パソコン入力」を求め続けた第1期及び第2期において,一審原告は,市議会において発言する機会を一切奪われ,一審原告の表現の自由に対して,必要最小限どころか最大限の制約が加えられていたのである。
また,パソコン入力を事務局職員が行うことを前提とした第3期においても,客観的立場にある第三者に代読させることは十分可能であったから,必要最小限の制約でなかったことは明白である。
エ 一審被告らの加害行為が一審原告の参政権に対する違法な侵害であること
参政権に対する制約は,民主主義の根幹にかかわる重大な権利侵害であるから,民主主義の理念に照らし,原則として不合理というべきであり,当該制約が,やむにやまれぬ必要不可欠な目的のためのものであり,かつ,その目的達成のために必要最小限度に留まるものであることが,制約を課す側によって立証されない限り,違法というべきである。
一審被告らの加害行為による発言妨害は,議会における発言方法を一審原告自らが選択する自由という広い意味での参政権を侵害するものであり,一審被告らの主張する制約目的が何ら合理性を有しないことは,前記のとおりであり,やむにやまれぬ必要不可欠な制限目的など存しないのであるから,違法な侵害というべきである。
オ 一審被告らの加害行為が一審原告の平等権に対する違法な侵害であること
議会が自主的に規則,規律を決定できるといっても,当該規則,規律も憲法による拘束を受けるのであるから,これにより,個人の権利,とりわけ少数者の権利を侵害することがあってはならず,前記のとおり,一審原告は,市議会における発言に際し,発声障害を理由として差別を受けない権利が保障されているから,かかる一審原告の権利が議会制民主主義又は議会の規則,規律の名の下に侵害されることは許されない。
議会における発言に関する差別的取扱いは,参政権及び表現の自由に対する差別であって,これらが民主主義の根幹にかかわる重要な権利であることから,民主主義の理念に照らし,原則として不合理というべきであり,当該取扱いがやむにやまれぬ必要不可欠な目的のためのものであり,かつ,その目的達成のために必要最小限度にとどまるものであることが,当該取扱いを行う側により立証されない限り,原則どおり不合理な差別として違法となる。
一審被告らの加害行為による発言妨害という差別的取扱いについて,一審被告らの主張する目的は何ら合理性を有しないことは,前記のとおりであり,やむにやまれぬ必要不可欠な制限目的など存しないのであるから,違法な侵害というべきである。
カ 積極的な作為義務違反(不作為)の違法性
前記のとおり,市議会に課せられた環境整備義務及び意思尊重義務は,いずれも法的に根拠づけられており,市議会は,これらの義務の履行に支障がなかったにもかかわらず,この義務の履行を怠ったのであるから,その違法性は明らかである。
(3) 一審被告らの故意,過失
ア 一審被告らの加害行為は,一審原告の発言を妨害しようという一貫した加害意思に基づく一連の代読発言妨害行為である。
一審被告らは,一審原告に発言をさせまい,一審原告の希望する発言方法を許すまいという一審原告に対するいじめ,妨害の意図を持ち続け,そのためにこれらの行為を続けたのであるから,当然に故意の要件を満たす。また,一審被告らの加害行為を個別にみても,一審被告らが各加害行為を行っていること及びこれにより一審原告の代読発言が封じられることを認識しつつ行為がなされたことは明らかである。
仮に,一審被告らがこれを認識していなかったとしても,各加害行為の加害性や損害は容易に認識し得たのであるから,一審被告らには過失がある。
したがって,一審被告らには,加害行為につき故意又は過失がある。
イ 市議会に課せられた一審原告が議会において自ら希望する方法で発言できるよう環境を整備する義務の内容は,より具体的にいえば,議会運営委員会において,委員が一審原告の代読発言を認める意思決定を行うこと,又は,議長が自らの権限において一審原告の代読発言を認めてそのように議事進行することであるが,これを怠ることにより一審原告の代読発言が封じられることは,一審被告らに十分に認識され,又は認識可能であったことが明らかである。
ウ 前記のとおり,一審被告らの加害行為は違法と評価するほかなく,その違法性は,憲法上の重要な人権を何の必要もなく制限するという点で,いずれも明白なものであり,一審被告らがこれを認識していたことは明らかである。仮に,一審被告らがこれを認識していなかったとしても,このような明白な違法性については,地方議会議員はおろか通常人でさえ,容易に認識し得たことは明らかである。
したがって,一審被告らには,違法性の認識又は認識可能性も十分にある。
(4) 裁量権の逸脱,濫用について
上記のとおり,一審被告らが一審原告の代読発言を拒否したことは,違憲性,違法性を有するものであるが,市議会が有する裁量権の存在を考慮しても,以下のとおり,その判断の形成過程には看過し難い過誤があるため,国家賠償法上違法な行為というべきである。
ア 市議会は,平成15年2月には,発声障害のある議員の発言を保障する措置を講じる必要があることを認識しながら(あるいは認識すべきでありながら),発言保障措置に関する判断を形成するにあたり,以下のとおり,明白な法令解釈の誤謬あるいは重大な事実誤認を前提として議論を行ってきた。
(ア) 平成15年2月の議会運営委員会において,事務局長から,会議規則で議員は自らの口頭で発言しなければならないと規定されているかのような趣旨の報告がなされ,その結果,各議員は,法令上あるいは会議規則上,代読が許されないものであるかのような認識を前提として発言した(同年2月28日)。また,同年5月の議会運営委員会における事務局長の報告でも,「基本的には第三者が読み上げる方法により発言することはできない。」と述べて,出席議員に対して法令上代読は許されないという認識を強める発言を行った(同年5月26日)。
しかし,法あるいは会議規則等に,代読が許されない根拠があるわけではないから,市議会は,発声障害を有する議員の発言保障の措置の必要性が認識された当初から,相当程度の期間にわたって,会議規則の条文を子細に検討することもなく,「法令上あるいは会議規則上代読は認められない」という誤った認識に基づいて,市議会としての判断を形成してきた。
(イ) 平成15年2月の議会運営委員会において,全国市議会議長会等に対する照会の結果が報告され,市町村議会で代読がなされた事例はないとの認識が共有された(同年2月28日)。しかし,現実には,神奈川県鎌倉市を初めとする複数の市町村議会において,市職員による代読が行われていて,市議会においては,平成16年8月27日の陳情書(中津川市議会におけるバリアフリーの推進に関する陳情)で鎌倉市の事例について指摘され,それを受けた議会運営委員会(同年9月21日)で資料の配付がなされた。
このように,市議会は,長期間にわたって,「代読を認めている市町村議会は存在しない」という誤った事実認識に基づいて,市議会としての判断を形成してきた。
(ウ) したがって,発声障害のある議員のため代読を認めないという市議会の判断は,もっぱら平成15年2月の段階で明白な法令解釈の誤謬及び重大な事実誤認に起因し,それだけで「判断形成過程に重大な過誤があった」と評価することができる。
イ 市議会は,上記のような法令解釈及び事実認識に関する重大な誤認を背景として,正当な理由を明示しないままに代読を拒否し続け,特に,平成15年5月以降,長期間にわたって,代読の可能性及び適切性に関して真摯な議論を行わず,その結果として,代読を拒否するに足りる正当な理由を明らかにすることもなかった。
ウ 以上のように,市議会は,正当に考慮すべき事項を考慮せず,本来は考慮すべきではない事項を考慮することによって,市議会としての判断を形成し,その結果,社会通念上著しく妥当性を欠く行為を行っており,裁量権の逸脱,濫用が認められる。
(一審被告市の主張)
(1) 被侵害利益について
ア 表現の自由
一審原告の議会において発言する権利は,憲法21条1項が直接保障するが,議会において代読という方法で発言するという個別具体的な発言方法についてまで,同条項が直接的に保障しているわけではない。
イ 平等権について
平等とは,常に他者との比較において問題となる性質のものであり,その意味では平等権は相対的な権利であって,それ自体としては無内容,無定型の権利である。すなわち,平等権は,平等権以外の権利などにかかわって,他との区別の合理性が問題となる性質のもので,平等に取り扱われるべき権利等が不平等に取り扱われたときに初めて平等権侵害が問題となる。
したがって,一審原告の「代読による発言方法を要求する権利が平等権で保障される」との主張は,憲法の考え方を無視した独自の見解というほかはない。
ウ 自己決定権について
一審原告は,障害者は社会生活を営むため自己の障害を補完する補助手段を自ら選択する権利(自己決定権)を憲法13条等により保障されているから,発声障害を有する一審原告には,市議会議員として議会における発言方法として代読という方法を選択する権利も保障されていると主張する。
しかし,一般の障害者が,障害を補完する代替手段について自由に選択できるということと,本件のように,発声に障害を持つ議員が議会で発言する場合の代替手段とは,全く次元を異にしている。本件では,発声に障害のある人が日常生活でその障害をどのような補助手段でカバーするかということが問われているわけではない。
市議会では,一審原告が委員会や本会議で発言するにあたり,補助手段を用いることは早い段階で意見が一致し,問題として残ったのは,その代替手段をどうするかということである。この問題は,まさに議会内の議事の運営に関わるもので,当該議会の意思によって決定されたとしても,何ら障害者差別等と非難される余地はない。
エ 参政権について
参政権は,国民が主権者として,直接または代表者を通じて国の政治に参加する権利であり,その具体的内容は,選挙権,被選挙権(公務就任権),国民投票権であるから,参政権に関する一審原告の主張及び原判決の判示は,憲法論的な根拠を持たない独自の誤った見解である。
オ 予備的主張
以上のとおり,一審原告が主張する「地方議会議員が,議会において,どのような方法を用いて発言するかを自ら決定する自由」なるものは,憲法上の人権として保障を受け得ないものであるが,仮に,憲法上の人権として保障されているとしても,それは絶対的なものではなく,「公共の福祉」による制約を受ける。本件で問題になっている発言とは,単なる私生活での意思伝達としての発言などではなく,選挙において有権者からの付託を受けて当選した地方議会の議員である一審原告の,地方議会等公的な場における発言である。市議会は,多くの重要な審議案件をかかえ,後日のため正確な記録を残す必要があることから,スムーズな運営と正確な記録の作成が要請され,そのためのルールが自治的措置として定められ,議員がこれを遵守すべきは当然であるし,そもそも選挙で選ばれた者のみが発言できる場であるから,一審原告が主張する権利,自由を認めるとしても,上記の理由から受ける制約が伴うことは避けられない。
したがって,市議会の定めた発言方法についての措置が,一審原告の何らかの人権を侵害したとしても,それが違法であるとの評価を受けることはありえない。
(2) 一審被告らの行為により,一審原告の権利,利益が侵害されていないこと
ア 加害行為③について
議長は,一審原告の発言通告書を事実上預かっていたが,これは,平成16年9月21日に議会運営委員会の最終決定として決められた適式の方法による発言通告書ではなかったことから受け取れなかったのであり,当然のことながら,一審原告が同日の決定に基づいた適式の発言通告書を提出すれば受理していた。
イ 加害行為⑥について
一審原告が加害行為⑥と主張するのは,地方議会における1つの決議案に対して反対票を投じたことをいうものであるが,議員が議会内での議決に際して投じた票の当否は,当該議案に否決の票を入れることが憲法の文言に一義的に反するというような極めてまれな特段の事情がある場合は別論として,各議員の政治的責任によって担保されるべき問題である。
自らの声で発言できない議員が自らの声に代わって発言する方法は,科学技術の発達した現在では複数存在し,その中のどの方法によるべきとの案も,それぞれの議員らの政治的裁量判断の下に提案されているのであって,一審原告の提案した案が唯一無二のものでなく,他の案を完全に排斥しうるものではない。
ウ 一審原告は,発言する機会が十分に保障されており,一審原告の主張する権利侵害はない。
(3) 加害行為の違法性について
発声障害を有する議員の市議会における発言方法は,市議会の自律に委ねられるべき事柄であり,議会運営委員会の各委員(被控訴人議員らの一部を含む。)が,一審原告の求める代読という発言方法を採用しなかったことには下記のとおり合理性があり,「多数意見による発言方法」は合理的裁量の範囲にあることから,被控訴人議員らの行為等が社会通念上著しく妥当を欠き裁量権を付与した目的を逸脱し,これを濫用したとは認められない。
ア 議会運営委員会は,発声障害を有する議員の代替的な発言方法として,現実に採用できる方法の中から,議会制民主主義の根本である選挙によって選出された議員本人の発言が正確に表現できることが保障され,議員以外の人物が議会において事実上発言する結果を生ぜしめない方法を検討した上で,最終的にそれらの方法のうちの一つとして,平成16年9月21日に音声変換機能付きパソコンを会話補助装置として使用する方法を全会一致で決定した。
パソコンへの入力方法は,予めこれを行うことができるため,一審原告自身が入力する方法に限られるものではなく,一審原告が,親族や第三者の力を借りることが可能であることは当初より明らかである。手書きの原稿を議会事務局に提出して,入力を事務局職員に任せ,その後,一審原告が内容を確認するという方法もその一つであり,こういった方法についても議会運営委員会で議論されていた。
議会運営委員会での議論の内容は,その制度上,出席している会派の代表者から,会派所属の各議員に対して伝達されることとなっており,本件においても,一審原告が所属する共産党市議団の代表者であるB議員やC議員から,一審原告に伝達されている。
イ 議会運営委員会は,平成17年11月28日に,一審原告の発言方法として,原則として発言には会話補助装置を使用し,例外的に,本会議では事務局職員等の第三者が,委員会では委員長又は副委員長が代読するという方法を全員一致で定めた。市議会も多数決により同方法を選択した。
議会運営委員会の決定した会話補助装置は,音声変換機能付きパソコンであり,予め文書をパソコンに入力するなどしてデータ化しておけば,同機能のソフトの入ったパソコンにそのデータを入力し,必要時にスタートボタンをクリックするだけで音声読み上げができるという極めて操作が簡易なものである。同委員会は,会話補助装置へ入力するためのパソコンへの文章の打ち込みについて,第三者の力を借りることを認めており,また,手書きの文書を議会事務局に提出すれば,事務局職員がそれを入力し,一審原告に内容を確認してもらうことも認めており,非常に簡易な方法であった。
ウ 音声変換機能付きパソコンは,入力した文章を,そのまま音声に変換するため,第三者による代読の場合に起こりうる読み違いのトラブルを防止でき,本人の意思が忠実に音声化され,議事録に記録することができる一方,人間が代読する場合は代読者の独自の判断で読み替えが可能であり,更には,音声の高低・強弱をつけることによって,代読者の感情が表現され議員本人の意図と異なる発言に変化してしまうこともあり得る。代読が選挙のためのパフォーマンスに悪用されるおそれを否定できない一方で,同パソコンを用いた方法であれば,それらの危険性をいずれも排除できる。
エ 有権者からの付託を受けた議員が発言を認められた場合に,当該議員以外の者による代読を無制限に認めれば,前述したような誤読のみならず,故意による発言内容の改変,趣旨のすり替え等のおそれがある。また,代読者が代読に際し,何らかのパフォーマンス等をし,代読者によって直近の選挙に向けての選挙活動に悪用されるおそれも考えられる。このようなことがなされると,議員本人が発言した場合と異なる影響を有権者に与えることになる。実際,平成17年12月定例会の本会議において,一審原告と同じ会派に所属するC議員によって原告の質疑が代読された際,C議員が,「この部分は読んではいけない」との判断を独断で行い,部分的に代読しなかったという事実があった。このように,代読による発言には,代読者の独断によって議員の発言内容がゆがめられるという危険が常につきまとい(上記の事例は,その危険が現実化した場合である。),そのような危険が現実化してしまった場合,事後的に回復を図ることは困難である。
したがって,代読による発言は,議会制民主主義・間接民主制の根幹を揺るがすという重大な弊害を生じさせるおそれがある。
オ 代読という発言方法を採用する場合,仮に代読者が誤読した場合,その代読者の責任をいかに考えるかという難しい問題も存在する。代読者が,議員以外の者であった場合,代読者は,壇上において,議員らの環視の中,誤読のないように細心の注意を払いながら,数十分にわたって代読をしなくてはならず,その精神的負担は極めて大きく,これに対しどのような対応をなすかも問題となる。
カ 加えて,一審原告は,市議会の一員である議員としての職責を果たすことを市民に対して約束して選出された者である以上,民主的な手続で決定された上記発言方法を試みるべく,可能な限りの努力を払うことは,議員という公的地位に内在する義務というべきである。
(被控訴人議員らの主張)
(1) 被控訴人議員らの行為によって,原告の権利,利益が侵害されていないこと
ア 一審原告が主張する被侵害利益は,選択権という抽象的な言葉に凝縮されており,一審原告のいかなる権利が具体的に侵害されたか明らかでない。
イ 一審原告の議員二期目において,一審原告が初めて発言通告書を出したのは平成17年3月10日であり,それまでは,一審原告は本会議において発言する意思すらなかったから,一審原告が発言を封ぜられたことによる権利侵害は生じていない。
ウ 一審原告には,平成17年3月10日以降,パソコンによる会話補助装置での発言が認められており,一審原告が議会において壇上から一般質問を行うことについては,正確な記録の保存と執行部から真摯に正確な答弁を求めるという技術的な課題があるのみであった。これは,一審原告のみならず,等しく被控訴人議員らを含む議員全員に対する課題であるから,被控訴人議員らは,平成17年3月10日以降も,本会議や各種委員会における一審原告の発言を妨害していない。
エ 平成16年9月21日開催の議会運営委員会が決定したのは,一般質問については,パソコンによる会話補助装置により一審原告の発言権を保障するということのみであった。同装置への入力を一審原告本人が行わなければならないといったことまでは決定しておらず,一審原告が家族や支援者等の第三者による助力を得て行うことは当然の前提であり,事務局職員による入力等の助力も,その予定の範疇であった。
オ 議会運営委員会が,陳情第5号の審議に際し,一審原告に対してした質問の回答書は,すべて回答がパソコンで作成されたものであり,平成16年9月21日開催の議会運営委員会に参加していた委員及び一審原告を除く委員外議員の全員は,当然に一審原告はパソコンができるものと信じていたこと,同日の審議においては,一審原告を含め,誰からも異議が出なかったこと,一般質問は事前通告制で,第三者の助力が当然予想されたことから,同日の申し合わせ内容は,一審原告にことさら不便を与えるものでなく,被控訴人議員らに,一審原告に対しことさらに不便を与える意図もなかったことは明らかである。
このことは,平成16年10月12日に,被控訴人Y14議員らが一審原告と面談した際,被控訴人Y14議員が,一審原告に対し,「(パソコン)できる人が家族にいるでしょう。手伝ってもらったらどうですか。」,「フロッピーを事務局まで持ってきてくれれば,事務局でセットする。」と説明したことからも明らかである。
(2) 不作為について
一審原告は,直接的な作為義務の法的根拠を示しておらず,独自の論理を展開するのみであり,主張自体失当である。
(3) 違法性の認識について
議会運営については,議会運営委員会においてすべて全会一致で決定されており,一審原告の発言方法についても,共産党市議団の代表者を含めて全会一致で決定された。議会運営委員会及び議会における共産党市議団の代表者の対応は,被控訴人議員らと何ら変わるところはなく,被控訴人議員らに違法性の認識はない。
4 争点3(被控訴人議員らの不法行為責任の成否)
(一審原告の主張)
(1) 個人責任の原則や平等原則からは,国家賠償法1条1項の存在をもって,当然に,公務員個人の不法行為責任が否定される根拠とはならない。民間企業であれば,企業に民法上の使用者責任が成立する場合にも,被用者個人は不法行為責任を負うのであるから,公務員に対してのみ公務員個人の責任を負わないというのは,公務員に対する不当な優遇である。本件のように,害意ともいうべき悪質な故意による権利侵害の場合,公務員個人の責任を認めるべきである。
また,国家賠償法の存在意義を被害者救済だけで捉えるのは不十分であり,より積極的に公務の適正確保のための制度と捉えるべきである。このように捉えれば,本件のように,地方議会における議員の活動については,上司による指揮監督等はなく,民主主義のルートによる是正が期待できないのであるから,議員個人の不法行為責任を審理,判断することにより,地方議会の適正を確保すべき要請が極めて高い場合であるといえる。
したがって,被控訴人議員らは,民法709条,719条により,一審原告に対し損害賠償責任を負う。
(2) 被控訴人議員らは,それぞれ関与した各加害行為のみならず,自己が関与しなかった加害行為についても不法行為責任を負う。
被控訴人議員らのうち被控訴人Y18議員ら8名は,市町村合併前の行為には関与していないとしても,市議会全体が,4年間一体となって,一審原告に対する発言妨害行為を行ってきたのであるから,その途中で市議会の構成員に変更があったとしても,新たに議員となった者は,それまでの経過を十分に認識したうえ,本件決議案に反対票を投じているから,市議会と一体とみなすことができ,関与していない時期も含めて,4年間にわたり一審原告の市議会での発言を妨害したものと同視できる。
(被控訴人議員らの主張)
(1) 被控訴人議員らは議員で,公務員であったが,公務員の公務に関する損害賠償につき,公務員本人には請求し得ないというのが国家賠償法1条に関する確立した判例である。
(2) 議員の職務行為と無関係な行為が不法行為を構成することは否定しないが,地方議会議員は,住民の意思を議会に反映させるため,様々な政策的観点から政治的意思決定,議員活動を行うのであり,その賠償責任を安易に認めることは議員の活動を萎縮せしめ,ひいては住民の意思を議会に反映させるという住民自治及び民主主義の理念に反することになる。
したがって,具体的な議員の活動が職務行為と無関係と判断されるのは,極めて例外的な場合に限られるべきである。
(3) 仮に,被控訴人議員らの作為又は不作為について,不法行為責任が生じ得るとしても,被控訴人議員らのうち,被控訴人Y18議員ら8名は,旧岐阜県恵那郡北部町村から選出された議員であり,同各町村が平成17年2月28日に市町村合併により中津川市に合併されたことにより,市議会議員の職に就いたのであるから,同日より前に生じたことは無関係である。
5 争点4(一審原告に生じた損害の有無,程度)
(一審原告の主張)
(1)ア 一審原告が代読による発言を求め続けてきたのは,声を失ったときの苦しみ,そして,声を取り戻したときの心からの喜びを一審原告自身が味わったことで,発言を通して自らの思いを表現するためには,代読,すなわち人間の肉声を用いる方法に勝る手段はないと強く実感したからである。
一審被告らは,このような一審原告の切なる要望を,わがままであるなどと切り捨て,一審原告の有する障害に対して配慮するどころか,障害者だから努力せよなどと,パソコンの使用という他の議員には課せられない不当な制約を課した。
このように,一審被告らは,血の通った人間の声によって自らの意思及び主張を伝えたいとの一審原告の思いを踏みにじり,一審原告に対し,筆舌に尽くしがたい精神的苦痛を与えてきた。
イ 議員が議会において発言することは,議員の中核的活動であって,まさに議員の本分であるが,一審原告は,一審被告らによって,議会における発言を妨害され続け,議員活動を全うできなかった。このような一審被告らの発言妨害行為によって被った一審原告の屈辱,及び,障害者の生の声を届ける機会を奪われた一審原告の無念さは,計り知れず,一審原告が被ったこれらの精神的苦痛は,一審原告が議員の職を退いた今となっては,もはや回復不可能である。
(2) 以上のとおり,一審原告は,金銭で慰謝できないほどに重大な精神的苦痛を被ったのであり,その損害は,1000万円をはるかに上回る。
(一審被告らの主張)
一審原告の主張は争う。
第4  当裁判所の判断
1 本件の経緯等
前掲前提事実及び後掲各証拠に弁論の全趣旨を併せると,以下の事実を認めることができる。
(1) 一審原告の一期目における病状報告及び議員活動復帰後の発言方法についての審議の経過(平成15年3月まで)
ア 平成14年9月12日開催の議会運営委員会(乙ロ11)
議長は,「一審原告から,長期入院により議員の職務を休みたいとの申し出があった。」と報告した。B委員は,「1か月か2か月の入院が避けられない。」と報告した。
イ 平成14年9月20日開催の議会運営委員会(乙ロ12)
委員長は,「一審原告が9月9日に入院し,平成14年いっぱいの療養を必要とする旨の診断書が提出された。」と報告した。
ウ 一審原告は,平成14年10月23日,下咽頭がんの治療のため,喉頭を摘出する手術を受け,その結果,発声機能を失い,自らの声では,一般に聞き取れるような発声ができない状態となった。
エ 平成14年12月2日開催の議会運営委員会(乙ロ13)
B委員は,「一審原告の病状は,医師の指導により,家族以外の面会ができない状態が続いている。一審原告の家族によると,12月一杯の療養を必要とする旨の診断書が出ているため,今後は,経過を見ながら判断することになると思う。予想されていた声帯の手術は行わずに済んだので,経過に期待できる。声が出せないため,12月一杯は公務に復帰できない。」旨報告した。
オ 平成15年1月17日開催の議会運営委員会(乙ロ14)
議長は,「平成15年1月15日に,一審原告から,同年3月末まで自宅療養を要するという医師の診断書が提出された。」と報告した。
B委員は,「一審原告は声帯を除去して声が出ないため,食道を使った発声の訓練をしている。のどは感染症にかかりやすいために自宅療養という診断が医師からなされている。」と報告した。
カ 平成15年2月25日開催の議会運営委員会(甲43)
B委員は,「一審原告には,平成15年3月定例会に出席し,一般質問を行いたいという意向があるが,口頭では発言できないため,他の方法でできないかうかがいたいと言っていた。」旨報告し,文書質問という方法で行えないか検討してもらいたいと申し入れた。
H委員及びI委員の提案により,発声障害を有する議員の発言方法として,全国ではどんな方法が採用されているのか,できる限り多数の例を調査の上で,一審原告の発言方法について次回の議会運営委員会にて決定するとされた。
キ 平成15年2月28日開催の議会運営委員会(甲44)
市議会事務局長(以下「事務局長」という。)は,「全国市議会議長会及び岐阜県下の議長会に問い合わせたところ,発声障害を有する議員が口頭以外の発言方法を採った例はない。仮にそのような議員がいる場合には,市町村議会の会議規則による運営となる。規則では口頭により行い,議長の整理権により口頭によることを促すべきであるとされている。」旨報告した。
審議では,事務局長が報告したように,会議規則を重視すべきという意見と,一審原告の意思を尊重すべきという意見が対立したが,委員長は,B委員に一審原告の希望を具体的に聴取してもらい,平成15年3月4日開催の議会運営委員会で,一審原告の具体的な希望を報告の上で検討すると決定した。
ク 平成15年3月4日開催の議会運営委員会(甲45)
B委員は,「一審原告は3月議会での一般質問は行わない意向である。」と報告した。
ケ 日本共産党恵那地区委員会J及び共産党市議団B議員は,平成15年3月20日付けで,当時議長であったKに対し,一審原告を含め,今後障害を有する者が議員に選出された場合,市議会として,当該議員の議会活動を,ケースに応じてどう適切に保障していくかという課題に,早急に取り組むことを要望するという要望書(甲2)を提出した。
同要望書には,「X議員が喉頭がん治療のため声帯を切除しました。この事により同市議は,現時点においては言葉を発することができない状況にあります。しかし,声帯を切除しても他の器官や補助器具により言葉を取り戻すことは十分可能です。そのため,同市議は現在主治医の指導のもとにボランティアの方たちの援助も受け,言葉を取り戻すための機能回復訓練に取り組んでいます。」との記載があった。
(2) 一審原告は,市議会議員選挙に立候補し,平成15年4月23日,市議会議員に再選された。
(3) 一審原告の二期目における発言方法についての審議経過(平成15年5月14日から同年11月25日まで)
ア 平成15年5月14日開催の各派代表者会議(甲46,131)
平成15年4月の市議会議員選挙から間がなく,議会運営委員会の委員がまだ決まっていなかったため,各会派の代表者が本会議の議事進行について協議する代表者会議を開催した。
C議員は,「一審原告はまだ声が出ないため,臨時会ではB議員が一審原告の意見をB議員の意見として発言するかもしれないので承知願いたく,議会運営委員会が設置されたら同委員会に諮りたい。」旨述べた。これに対し,被控訴人Y11議員は,「代弁は許されていないので確認しておきたい。」と述べた。
代表者会議の座長は,「あくまでもB議員の発言でないとまずいので,そのようにお願いします。」と述べた。
イ 日本共産党恵那地区委員会L及び共産党市議団C議員は,平成15年5月26日付けで,被控訴人Y10議長宛に,市議会に対して次の3点について要望する旨の申し入れ書(甲3)を提出した。
① 本会議における一審原告の発言については,用紙を用いた文書を適当だと認められた第三者が読み上げることによって同市議の発言として認めること。
② 常任委員会など各種委員会における一審原告の発言については,用紙を用いた文書を適当だと認められた第三者が読み上げることによって一審原告の発言として認めること。
③ 本会議における一般質問については,一審原告の事前の文書による通告を,申告した質問時間の範囲で適当だと認められた第三者が読み上げることによって一審原告の発言として認めること。
申し入れ書には,要望書(甲2)と同様に,「現時点においてまだ言葉を十分に発することができない状況にあります。言葉をとりもどすことは十分可能です。言葉を取り戻すための機能回復訓練にとりくんでいます。」と記載されていた。
申し入れ書についての審議経過は次のとおりである。
(ア) 被告Y10議長は,申し入れ書の3つの要望事項について,一審原告の意に沿えることがいいが,そうすることで条例等に違反することのないよう,議会運営委員会に当該要望事項についての対応を諮問した。(甲47)
(イ) 平成15年5月26日開催の議会運営委員会(甲47)
a 委員のほか,被控訴人Y10議長,副議長が出席し,被控訴人Y11議員が傍聴した。
b 事務局長は,「本会議や委員会等における議員の発言方法について法に規定はなく,会議規則上に定めがあるのが通例である。東京都と県の中には,文書による質問及び回答を認めているところがあり,会議録に載せることも議会運営委員会で認めているところもある。市町村にはそのような例はない。一審被告市が会議規則を改正すれば,市議会においても同様の運用を行うことができる。第三者が読み上げることについては法や会議規則上に特別の定めはないが,録音テープ再生により質問に代えることはできない。質問当日に急病のため欠席を余儀なくされた議員が書面によって質問をしたり,他の議員に委任して質問することはできない。基本的には第三者が読み上げる方法により発言することはできない。」と報告した。
c 被控訴人Y3委員は,C委員に対し,一審原告の完治や機能回復の見通しについて尋ねた。C委員は,「一審原告は木曜と土曜に名大まで出かけて発声訓練をしている。機能回復には個人差があり,半年から5,6年程度かかる。一審原告の発声が言葉として通じる程度にまでなるには2年くらいかかると聞いている。急速にしゃべれるようになることもあるが,あと1年くらいの見通しである。」と答えた。
d 被控訴人Y11議員は,「これを認め規約を作ることができるのか。一人を対象として規則ができるのか。そこから出発しなければいけない。全員を対象にしたものが規則で,個人を理由に規則,規約を作ってはだめだと思う。それはできないと思う。「第三者」を認めますと,議員,執行部以外の者が議場で発言することになる。地方自治法では認められないことです。参考人として委員長が発言を求めることはできる。それ以外は議会における発言は認められないと思う。認めたら大変なことになると思う。」と述べた。
e C委員は,「申し入れ書にある「第三者」とは,事務局職員を念頭に置いている。委員会では,一審原告の隣に事務局職員を配置して一審原告が書いたものを読んでもらう。本会議場でも事務局職員に読んでもらうことを考えている。」と説明した。
f 副議長は,申し入れ書を受理するにあたり,共産党市議団に対し,申し入れ書の要望事項は臨時的な措置としての要望かどうかを確認したところ,共産党市議団は,普遍的に考えていただきたいと回答した。
g D議員は,意思伝達の方法としてOHP等を持ち込むことはできないかと尋ねた。C委員は,発言機器としては,パソコン,反訳機等,色々な考えがあるが,今回は代読という方法のみを提案したと答えた。
h 副議長は,「今回,代読ということだけですと,そのことだけの協議に終わり,代読がだめになってしまうと一審原告は発言できないということになってしまうので,いくつか道を考えないといけない。本人も努力してもらって,発言できるようにしてもらうことが一番であるが,だめだというときにどういうことができるか研究しないといけないと思う。代読だけでと言われても議会としてもえらい。」と述べた。
i 被控訴人Y14委員長は,C委員に,申し入れ書について,要望事項の3点に絞ると,「第三者」の発言を認めない場合には,発言方法をなしとするのか,もう少し選択肢を広げて検討するのかどうかを尋ねた。これに対し,C委員は,「パソコンによる発言も含めて打ち合わせをしたが,最終的にそういった段階でないことになり,一審原告の意見でこうなった。」と回答した。
j C委員は,被控訴人Y10議長の要望事項は一時的なものかとの問いに対し,「一審原告が発言したいときのための暫定的な流れの中でお願いしたい。議運として一審原告の発言について,今の状態で認めていただくかということになる。ウエイトとして一審原告の発言の機会を認めてもらうことが中心です。」と答えた。
k 被控訴人Y11議員は,「質疑をすることは個人の権限である。自分の都合で発言できない場合は放棄してもらわないといけない。一般質問だけが議員活動ではないので,そのほかのことでがんばればいい。」と述べた。
l 被控訴人Y14委員長は,各委員に対し,委員会での議論を踏まえて会派の意見をまとめるよう依頼するとともに,委員会において忌たんのない発言をしてもらっているので,外に伝える場合は気をつけるよう注意した。
(ウ) 平成15年6月2日開催の議会運営委員会(甲4)
a 各派の検討結果として,次のような報告がなされた。
(a) 被控訴人Y3委員は,「本人の事情はわかるが,個人の事情で条例を改正する必要はない。病気が完治するまで治療に努力してもらい,他の議会活動で頑張ってもらうようお願いする。」と報告した。
(b) 被控訴人Y2委員は,「本人の肉声が原則でということで,第三者では問題ですので申し入れ書は受け入れられない。治療中なので早い時期の一審原告の回復を願い,他の議員活動を一生懸命にしていただくことで努力してもらう。」と報告した。
(c) 被控訴人Y12委員は,「地方においても例がないということ。しゃべることができないことで活動範囲は狭くなるが,まず,声が出るように努力をしてもらいたい。申入れは受け入れられない。」と報告した。
(d) D議員は,「結論は出ませんでした。自分がなった場合のことを考えると新たな例を作る必要もあるかと思うが,具体的にまとまらなかった。」と報告した。
b 上記各派の検討結果を受け,被控訴人Y14委員長は,「事情はわかるが肉声に限られるということになるので,一刻も早く治してもらうことが先決で,早く結論を出してしまうと受け入れることが難しくなるので,引き続き検討をしていくことでお願いをしたい。」と発言して協議をまとめた。
c C委員は,「一審原告は,平成15年6月定例会での一般質問の準備はしていないので,一審原告が多く議会活動ができるような環境を作るため,継続して審議してもらいたい。委員会で,一審原告が発言を希望する場合,ホワイトボードを持ち込み,これに記載して発言するという方法を認めてほしい。」と提案した。
被控訴人Y14委員長は,上記のC委員の提案が委員会当日に初めてなされたため,次回の議会運営委員会までに各会派で検討することを提案した。これに対し,C委員は,さらに,一審原告が委員会において,ホワイトボートを使って発言することを認めてほしいと主張したが,他の委員の了解を得ることはできず,この点について,再度,審議することとなった。
(エ) 平成15年6月23日開催の議会運営委員会(甲5)
a 委員のほか,被控訴人Y11議員及び被控訴人Y15議員が傍聴した。
b 前回の議会運営委員会で,C委員が提案した,各種委員会にホワイトボードを持ち込んで,これを用いて一審原告が発言することにつき,各派の検討結果として,次のとおり報告された。
(a) 副委員長は,「1日も早く回復してもらうことにより,治療に専念してもらうことで一致しましたが,ホワイトボードの使用については認めないということになりました。」と報告した。
(b) 被控訴人Y2委員は,「本人の肉声が基本であるということから,代弁は無理,ボードについてはもう少し議論が必要かと思われます。」と報告した。
(c) 被控訴人Y12委員は,「ボードについては結論が出ておりませんが,代弁は認められないということになりました。」と報告した。
(d) D議員は,「結論は出ておりません。」と報告した。
(e) 被控訴人Y11議員は,「議会内での発言は口頭によることが権利であり,補足で使うことは認められてもすべてをそれですることは認められないので,議会としてのけじめとして慣例をきちんと守るべき。1日も早く口頭でできることを願って認めるわけにはいかない。」と意見を述べた。
c 被控訴人Y14委員長は,上記の意見を受け,「要望は個人の権限により,責任義務については,代弁,筆談ではまずいので,治療に専念してもらい早く回復してもらうことでの意見が大半である。認める,認めないということを決めるのではなく,このことを3回議論したことで止めておいた方がいいと思います。」と述べた。
これに対し,C委員が,「結論を出してしまったということよりも,継続ということで置いてもらった方がいい。」と述べたので,被控訴人Y14委員長は,「様子を見ていく。なんともならないということでなく,経過を見ながら継続していくことでよろしいか」と委員に打診したところ,委員からは異議は出なかった。
d 被控訴人Y14委員長は,「治療に専念していただき,少しでも多くのリハビリに努力してもらいたい。」と述べ,これに対し,C委員は,「突然しゃべり始めることがあるかもしれない。家族の協力でしゃべることについて頑張っていることを聞いている。しゃべり始めることは時間の限りがないが,委員会としては時間が限られている。」と述べた。
被控訴人Y14委員長は,「訓練であるので苦しいかと思うが,これを乗り越えないと声が出ないので頑張ってもらいたい。」と述べた。
(オ) 平成15年10月20日開催の議会運営委員会(甲6)
a C委員は,一審原告の委員会での発言方法として,ホワイトボードを持ち込み,これに記載して発言することを許可してほしいと再度求めた。この時,C委員は,被控訴人Y2委員から,一審原告の発声状況を問われたので,相手に伝えるだけの発言は,今の段階では難しいと答えた。
b 被控訴人Y3委員は,「ボードについては大変無理があると思います。この件はすでに議運で会派の話し合った結論が出ておるわけですから,改めてということになると問題である。治療に専念するべきだという意見があったように早く声を取り戻してもらうことに努力してほしい。」と述べた。
また,被控訴人Y14委員長は,「議事録を見てみますと,6月23日の議運の中では,各会派で検討結果として,早く声を取り戻す努力をしてほしい,ボード,代弁者についてもだめだという議論が尽くされて結論が出ております。早く言葉を取り戻す努力をしてほしいということで,ボードはだめだということになっている。」と述べた。
c C委員は,一審原告が,平成15年9月の委員会審議の過程で,自己の意思表示が必要であると感じ,その際,必ず本人が言わなければいけない状況であったので,ホワイトボードを持ち込むことを許可してほしいと求めた。
これに対し,被告Y14委員長は,「方向は出ていますが,もう一度会派へ持ち帰って,次回,意見を聞かせてもらうこと,本人がどの程度努力しているか何もわからないので,持ち帰っていただくことでお願いします。」と,C委員からの提案を再提案として,次回の議会運営委員会で審議することとした。
(カ) 平成15年11月17日開催の議会運営委員会(甲48)
a 一審原告の委員会における発言方法として,ホワイトボードを持ち込み,これに記載するというC委員の再提案につき,各会派からの検討結果として,次のとおり報告された。
(a) 副委員長は,「6月と同様でした。治療に専念してほしいということで,1日も早い復帰をお願いしたいということです。」と報告した。
(b) 被控訴人Y2委員は,「ボードはまずいということで,治療最優先ということでした。」と報告した。
(c) 被控訴人Y12委員は,「6月と一緒の結果でした。」と報告した。
(d) D議員は,「ボードをやむなく使ってもよいということになりました。」と報告した。
b 被控訴人Y14委員長は,C委員の「会派の結果はしょうがないが,持ち込むことに迷惑をかけるわけでない。」との発言を受け,「持ち込んでいけないということでなく,言葉で伝えないといけないといっていることなので,そこからおかしいことになっている。」と述べた。
C委員は,被控訴人Y14委員長に対し,委員会にホワイトボードを持ち込むことに規則上規制があるのかを尋ねたところ,被控訴人Y14委員長は,「言葉でということが原則だったことを,6月の時点で伝えてある。」と述べたので,C委員は,再度,「規則にあるのかないのかを聞いている。」「一審原告が9月議会において,自分の意思表示が必要だったという経過があったので,意思を伝達する必要があることから,勝手に持ち込んでやることがいいか悪いかを判断してもらいたいということです。」と尋ねた。これに対し,被控訴人Y14委員長は,「勝手に持ち込むことを判断せよということなら,いいとは言えない。」「そういうことなら6月に議論したことはなんだったのかということであり,規則にないことなら何でもやってもいいのかということになってしまう。」などと述べ,「規則になければいいということであれば,会派の意見はわかりましたので,規則の解釈の問題であるため,次回までにもう一度調べる。」と回答した。
(キ) 平成15年11月25日開催の議会運営委員会(甲7)
a 委員のほか,被控訴人Y10議長,副議長が出席し,被控訴人Y11議員が傍聴した。
b 被控訴人Y14委員長は,「委員会へのボードの持込みについて」,会議規則上,「議場には持ち込めないものの記載はありますが,委員会にはありません。なければ持ち込んでいいということにはならないと思いますので,私は議場と同じ扱いでよいと思いますが,皆さんの意見をお聞きしたい。」と述べた。被控訴人Y3委員もこれに同意した。
c 被控訴人Y11議員は,「一審原告に限ってということか。そういったことを認めていくことにより,何をやってもよいということになってしまう。議会は言論で決すべきと思う。自分の声でやるべきと思います。」と述べた。
d C委員は,「本来,議場に持ち込んでいけないものは,必要以上となる場合のもので,ボードといっても自分の机の範囲内のものであり,他人に迷惑がかかるものでもないものなので認めるべきだと思う。9月の民生委員会では,採決のほかに意思を表明しなくてはいけないときがあり,一審原告でいえば発言を補完できるものになり,委員会審議をスムーズにするためにも,審議する材料にすることも含めてお願いしたい。」と述べた。
e 被控訴人Y3委員は,C委員に対し,「一審原告は地域の皆さんに6月議会までには回復すると言われており,C議員も見通しはあると言われた。現在はどの程度なのか。」と尋ねた。C委員は,わからないと答えた。
f 被控訴人Y10議長は,「先ほど本会議場も一緒のようなことを言われたが,本会議場でボードに書いてやられても困る。本会議場の採決は別として,委員会においては挙手で採決しているので必要はない。勝手にボードに書いて,見ても見なくてもいいでは議事録に残すことについても難しい。」と述べた。
g C委員が,「皆さんに認められないので,迷惑をかけない範囲の物を持ち込みたいと言っている。自分が審議に加わることを望んでいる。」と述べた。被控訴人Y10議長は,「議運で決まったことを通してもらいたい。」と述べた。
h 被控訴人Y14委員長は,「結論がでません。本人には声を出すことに努力してもらえないか。」と述べた。C委員は,「党としても活動を制限して専念してもらっている。」と答えた。
i 被控訴人Y14委員長は,「今の時代,パソコンに打ち込んで声が出るものがあるので,そういったものにもチャレンジしてもらったらどうか。それはそれで検討しなくてはいけないものになる。そういう努力もしてもらわないといけないところにきている。この件については,今日はここまでとします。」と述べ,一審原告が委員会でホワイトボードを持ち込んで発言することについての審議を打ち切った。
(4) 一審原告の二期目における発言方法についての審議経過(平成16年8月27日から同年12月6日まで)
ア 「中津川市議会におけるバリアフリーの推進に関する陳情」の陳情者代表M(以下「陳情者代表者M」という。)は,平成16年8月27日,A議長に対し,陳情書に1万4471人(うち8746人が中津川市民)の署名を添えて提出した。(甲8,9,12,49)
陳情書(甲8,以下「陳情第5号」という。)に記載された陳情要旨は次のとおりである。
「① 心身に如何なる障害があっても,その議員が市議会議員としての職責が果せるように,市議会における活動を全面的に保障するよう最大限の配慮を行うことを中津川市議会として確認すること。
② 中津川市議会におけるバリアフリーの推進について現状ではどのような課題や問題点があるのかを具体的に協議され,その改善・解決に努めること。
③ さしあたって,X市議の市議会における活動をどう保障していくのかということについて,然るべき場において協議されること。」
陳情第5号に対する審議経過は次のとおりである。
(ア) 陳情者代表者M及びこぶしの会代表Nは,平成16年9月2日,被控訴人議員らを含むすべての議員に対し,「中津川市議会におけるバリアフリーの推進に関する陳情について」と題する文書を配布した(甲9)。
同文書には,「神奈川県の鎌倉市議会において,脳性麻痺の障害を有し,手足が不自由で発声ができない議員がおり,同議員の議会活動支援として,同市議会では,議会運営委員会での協議の結果,議場における発言については,一般質問,質疑,討論等,事前に発言内容を文書で提出が可能なものについては事前に議長に提出し,再質問など事前に準備できないものは,本会議を休憩した後,改めて文書を作成して,議長に提出する。会議録上は,「E議員(代読)」と表記する。動議等の意思表明の方法についても,発言と同様の取扱いをする。同議員の所属する観光厚生常任委員会においても,本会議と同様の扱いとする。」と記載されていた。
(イ) 陳情第5号に対する審査は,議会運営委員会に付託された(甲49)。
(ウ) 平成16年9月2日開催の議会運営委員会(甲49)
陳情第5号についての審議は,一審原告の病気の進行経過等,プライバシーに関わる可能性があるため,公開になじまないとして,非公開での審議とすることとした。
(エ) 平成16年9月6日開催の議会運営委員会(甲50)
a 陳情第5号に対する審議を非公開とする決定を変更し,同月21日の議会運営委員会において,公開で審議することとした。
b 被控訴人Y3委員が,事前に一審原告に聞きたいことがあるがどうしたらよいかと尋ねたことに対し,次のようなやりとりがなされた。
(a) 被控訴人Y14委員長は,「Y3さんが一審原告に事前に聞いたらどうか。」と述べた。
(b) B委員が,「委員会として聞くこともできる。」と述べた。
(c) 被控訴人Y3委員は,「参考人というような形で来てもらったらどうか。」と述べた。
(d) 副議長は,「来てもらうのではなく,先に本人から議運の方へ聞いてほしいことがあれば言ってもらいたい。話が逆である。」と述べた。
(e) 被控訴人Y10委員は,「一審原告はどう思っているか,過去の経過はどうか整理する必要がある。想像でものを言ってもいけないので,事実関係を調べた方がよい。」と述べた。
(f) 被控訴人Y16委員は,「当日の一審原告の傍聴も含めて出席はまずい。被控訴人Y3委員の提案については,前もって文書で委員会から投げかけをして,回答をもらってから議会運営委員会を開いたらどうか。」と提案した。
(g) 被控訴人Y14委員長は,質問のある人は一審原告に対する質問内容を市議会事務局へ提出するよう言い,一審原告に対し,質問書を提出し,その回答を踏まえた上で審議することを決定した。
c D委員は,上記のやりとりの最中に,「鎌倉市議会では議会が代読を認めているということを聞いた。事務局を通じて調べてもらったらどうか。どのように対処しているか資料の提供をお願いしたい。」と述べた。被控訴人Y14委員長は,「被控訴人Y3委員の提案に戻します。」と議論を戻した。
(オ) 被控訴人Y14委員長は,平成16年9月14日,一審原告に対し,陳情第5号の審議の参考のためとして,「陳情第5号における質問事項」と題する質問書を交付し,これに回答するよう求めた(甲10)。
上記質問書に記載された質問事項は,次のとおりである。
「① 市議会議員選挙戦において,「リハビリ中であり,声が出るようになりますので,議会活動に支障ありません。」と街宣活動をされたと聞いていますが,それを信じた市民にどのように理解を得るつもりですか
② 市議会議員選挙立候補時点で声が出ないことに対して,当選後の議員活動をどのように進めていくおつもりだったのでしょうか
③ 治療に専念された経過・現状について,医師の診断書に基づいて説明してください
④ 昨年の議運でパソコンによる音声変換対応はできないかとの意見がありましたが,パソコン使用は検討しましたか
⑤ これまでの議会運営委員会で,この問題が議論された時,回復のためにもっと努力してほしいという強い要望がありました。それなりの努力はされていると思いますが,自助努力としてどんなことが実行されてきたのかお聞きします
⑥ 日本共産党大会ではバリアフリーが確保されていますか。代読発言は認められていますか
⑦ 今回の陳情について,議員からの要望ですか
⑧ 前回の貴所属会派から議運への要望及び今回の陳情は,他力を頼りにしている感がしますが,自己で説明・要望すべきだと考えますがいかがですか」
(カ) 一審原告は,平成16年9月14日付けで,議会運営委員会に対し,質問書に対する回答を書面で提出した(以下「回答書」という。甲11)。
回答書の回答欄は,ワープロ又はパソコン等で,回答が印字されていた。
回答書に印字されていた一審原告の各質問に対する回答は次のとおりである。
「① 現時点では,発言できるような発声に至っておりません。選挙戦では,支援者や息子が私に代わって訴えてきました。今回,陳情署名を行う中で,支援者の方々が「X議員は,まだ発言できるまでに至っていないので」と話して署名をお願いし,また,9月6日の市内の全朝刊に市民の皆さんにお礼の気持を伝える折込みをさせて頂きました。選挙での「市民・住民の皆さんの要望を受けとめて,その実現に努力します」と訴えたように,議員活動をすすめています。
尚,選挙戦で「~議会活動に支障ありません」と街宣したということは聞いておりません。
② リハビリ指導員の方々の体験を踏まえた「食道発声」の可能性,同じ障害をもつ元佐世保市長の話などに励まされ,発声できるようにリハビリに努力しながら,議員活動をすすめていこうと考えました。
③ 私は退院後2~3ヶ月に1回の定期検診を受け,その都度「異常なし」と診断され,現在に至っています。今は声帯を失った「障害3級」(別紙)となった身体で,食道を使った発声の訓練中です。この訓練は治療ではなく,体験者が指導員となっておこなわれているリハビリです。毎週土曜日に名古屋大学病院,木曜日に県立多治見病院での教室(各2時間)に通っています。名大では30~50人,県病院では10~20人が上級を目指して頑張っています。私は上級になりましたが「食道発声」は手術の部位・状態等から本人の努力だけではない問題もあって,まだ話ができるまでに至っていません。
付け加えて申し述べることは,自分が障害者になってみて,障害者の思い・人間の尊厳について改めて学んだし,日々学んでいるということです。
④ まずは現時点での状況を受け入れ,対応していただくのが妥当であると考えます。
⑤ 前述のリハビリと,日常生活の中で①基本発声の練習②新聞や本は声に出して読むなどと心掛けています。
⑥ バリアフリーは確保されていますが,発声障害のある代議員は今までのところいなかったと聞いています。
⑦ 私を支持して下さっている方々です。
⑧ 陳情書に書いてありますように,さしあたっては私の問題ですが,市議会全体のバリアフリー化を推進していくことは,全ての市民の参政権を保障していくことでもあり,市民の力を合わせて取り組む問題であると考えます。」
(キ) 平成16年9月21日開催の議会運営委員会(甲12,乙イ4)
被控訴人Y14委員長,被控訴人Y10委員,被控訴人Y16委員,被控訴人Y3委員,被控訴人Y1委員,D委員,B委員,A議長,Y6副議長,委員外議員として,被控訴人Y11議員,被控訴人Y12議員,被控訴人Y2議員,C議員及び一審原告が出席した。また,審議の必要から委員外議員から意見を求めたいときは,委員長の指名により,委員外議員の発言を許可すると申し合わせた。
被控訴人Y14委員長は,開催に先立ち,各委員に対し,回答書と鎌倉市議会,静岡市議会及び東久留米市議会における発声障害を有する議員に対する対応事例について事務局職員がまとめた資料を配付し,当日,委員外議員らにもこれらを配布した。
主な審議の経過は次のとおりである。
a 陳情第5号の要望事項①について
(a) 被控訴人Y16委員は,「陳情第5号にある,全面的に保障するよう最大限の配慮を行うことは当然のことだと思うが,全面的に保障していく方策を講じる責任が市議会全体に課せられているという文言はあたかも市議会に義務があるかのような表現で納得がいかない。市議会におけるバリアフリーが推進されることについては何ら異議がないが,あまりにも権利の主張が目につく文章であり,義務,そこには努力もあるかと思います。」と述べた。
(b) 被控訴人Y10委員は,「個人差があって,どこに,どういう配慮をしなければいけないのか難しい問題だと思っている。本人の意思が通じる形の中で,あらゆる想定をしながら,その場で配慮について議論して対応していくべきだと思います。」と述べた。
(c) 被控訴人Y14委員長が,「市民の付託を受けて議員として出てみえた障害を持たれた方については,できないこともありますが,最大限の配慮を行いどうしたら職責がまっとうできるのか,近づけるのか努力をする。そういった配慮をすることについて,皆さんに確認したいと思います。」と提案すると,被控訴人Y10委員は,「全面的な保障には問題があることを言ったつもりである」と述べたので,被控訴人Y14委員長は,「全面的ということについて,言葉は難しいが,全部保障できるとは限らない。ケースによりますので,ケース・バイ・ケースで最大限努力するという確認に止めたいと思います。」と述べた。
(d) D委員は,「文言にすると全面的に保障と書いてはあるが,一つの解釈として,可能な限りということが中身に入っている気がする。」と述べた。
(e) 被控訴人Y14委員長が,「実現できるように最大限の努力をするという市議会としての姿勢を確認してよろしいか。」と提案した。被控訴人Y16委員は,「配慮することは当然のことだと思います。障害者の方とのお互いの努力も含めてというものをなくして,ただ,権利の主張だけの最大限の努力,配慮はおかしいと思います。その辺があっての最大限の努力を行うことについては,何ら異議ありません。」と述べた。
(f) これを受け,被控訴人Y14委員長は,「最大限の配慮は当然のことながら,本人にも最大限の努力をしていただくことを確認いたします。ケース・バイ・ケースで配慮していくことで確認させていただきますが,よろしいですね。」と提案した。出席者は異議なく承認した。
b 陳情第5号の要望事項②について
(a) 被控訴人Y1委員は,障害といっても色々なものがあり,バリアにもソフトとハードのものがあるから,具体的な改善,解決方法も色々であり,その場,その場で対応を考えざるを得ないとの意見を述べた。被控訴人Y16委員も,バリアフリーの内容については,状況によりケース・バイ・ケースであって,直面したとき具体的に詳細を決めていく必要があり,議会の中でもケースにおいては,十分な解決策を論議していくべきであるとの意見を述べた。
被控訴人Y12委員は,一口にバリアフリーといっても幅広く想定も無理なのでその都度考えるべき問題であると,上記被控訴人Y1委員らと同様の意見を述べた。
(b) 被控訴人Y11議員は,バリアというものは,個人が目的を持って行動する場合に支障をきたすものであり,「最終的には個人の行動を保障してもらうためにバリアフリーをするわけで,最終的な行動というのは,本人がやるわけです。議会というのは,そういった意味ではバリアは一切ないはずです。議員活動については,本会議,委員会における発言だけではないわけですから,例えば,議案の採決,或いは,その途中における問題はできますし,また,議員として住民の要望を本会議や委員会を通じなくてもできるはずですから,そういう意味での議員活動はできるはずです。その点において,議員活動に対するバリアは市議会としては一切設けていないと思います。要は本人のバリアです。本人のバリアは本人がどうクリアしていけるのか,そのことでしか問題の解決はないと思います。そう思いますので,2番目の問題提起が不適当だと思っています。」と意見を述べた。
(c) 被控訴人Y3委員は,今回,1万5千人近くの署名が集まった背景は,議会ということだけでなく世の中にバリアフリーの常識が高まっているからだと思うと述べ,2番目の項目については,認識を高めながら,ケースにあわせて理解を得ていくことでいいのではないかとの意見を述べた。
(d) 上記の意見を受け,被控訴人Y14委員長は,2番目のバリアフリーについては,ケース・バイ・ケースであるので,その都度,その都度,ソフトもハードも積極的に前向きに検討していくことでいいのでないか,いくべきだという意見が大勢のようだとして,事例を挙げながらこういう場合はどうするか,他の自治体の事例を参考にしながら決めておくより,いつ発生するのかわからないので,1番目,2番目を含めて,積極的に前向きに取り組んでいくことで,1番目,2番目をまとめさせていただきたいと提案した。他の委員は異議なく承認した。
c 陳情第5号の要望事項③について
(a) 被控訴人Y14委員長は,「他市の例では,その方にあった配慮をしている中で,中津川市ではどこまで配慮できるのか。議会として最大限の配慮をし,本人も最大限の努力をしてもらう中で接点を見出していかなくてはいけないと思う。」と述べた上で,他の委員に対して意見を求めた。
(b) B委員は,「市議会も自分も,一審原告が1日でも早くリハビリに努められ,自力で発声方法を身につけることに期待し,当面は症状の回復を願うという立場に立ってきたが,陳情書に対する取り組みをする中で,同じ時に同じ席に着いている議員が,障害のため不本意にも4年間の任期内に1字の文字も議事録に記載することができないなどという事態は克服されなければならないと考えるようになった。議運の議論を通して,一審原告の障害による議会活動の困難が1日でも早く克服されることを議運の構成員の一人として強く願い,陳情の趣旨実現のために早急な対応が必要である。」との意見を述べた。
(c) 被控訴人Y10委員は,「代理発声まで行かなくても,自分も努力する,議会も配慮することで議事録に残せるような対応ができるのではないか。」との意見を述べた。
(d) 被控訴人Y1委員は,「最近,パソコンの音声変換機能というソフトもありますので,まずは自助努力をしていただいて,最新のもので対応したらどうか。同時に自らの声が出るようにご努力をいただいきたい。」との意見を述べた。
(e) D委員は,「代弁を認めるかどうかをクリアできれば,至ってすっきりしていいのではないか。鎌倉市議会の事例で「規則等について,議会運営委員会の申し合わせで運用する。」となっていますから,代弁でクリアできる。パソコンは否定しないが,代弁の方がすっきりすると思います。」との意見を述べた。
(f) A議長は,「パソコンの音声変換機能によるのが今のところ最善ではないか。大きな工事も必要なく,そのままパソコンを持って行ってマイクを近づければ,全部録音ができます。音声もクリアです。家で打ってきて,それをクリックだけすれば,そのままきれいに読んでくれます。IT技術というものは,福祉とか障害者の方にとっても人生における不便なことを改善してくれる社会的な文明機器だと思っておりますので,大いに活用することが必要ではないかと思っておりますし,大変使いやすくなっております。まず,それに取り組んでIT機器を活用されたらいかがか。」との意見を述べた。
(g) 被控訴人Y16委員は,「私は,障害者の方は日常生活の中で努力していないということは一切思っておりません。一審原告については,1番,2番の問題と同じように議会として最大の配慮をしていくべきであり,一審原告の一般質問,本会議場での発言をどのように確保してあげることができるのかを考えていくべきで,方法論としては,音声変換機能付きパソコンを利用することがいいのではないか。土曜日に名古屋,木曜日に多治見とかなりの努力をされているわけですが,機械に頼ることもそれなりの努力が必要だと思いますので,あくまでも一審原告の力による音声変換の発言だと理解しますので,そんなことをお願いしたいと思います。」と述べた。
(h) B委員は,「パソコンでもよいと思います。そういう技術をどんどん活かせばいいと思います。一審原告はご承知のようにチラシでさえ手書きで書いてみえますが,僕も曲がりなりにもパソコンを使えるようになりましたので,年齢の差は少しありますが一審原告にも使えないということはないと思います。実物を見たことはありませんが,議長の言われるようにいいものがあるかもしれない。食わず嫌いでということではなくて,一審原告が挑戦することも一つの方法だと思いますが,こういう問題を解決するときには,一審原告の意向を聞いて一番いい方法を考えればいいと思います。代理で読むようにすればお金もかからないし,直ぐできることだと思いますので,できる限り早い時期に一審原告の状況を改善することを考えれば,代理で読むような方法を考えていくのが一番現実的だろう。」との意見を述べ,「しかし,今の提案のそれぞれについても非常にいい案だと思う。」と言い添えた。
(i) 被控訴人Y3委員は,「前提に自助努力をお願いしたいことで,パソコンには,これからも進歩していく可能性があるので,パソコンを活用して発言に代えたらと思います。パソコン導入に賛成します。」との意見を述べた。
(j) 被控訴人Y14委員長は,自己の意見として,「今,非常に便利になっておりまして,文書をもってくれば音声になるわけですから,システムも進んでおり,そんなに難しいことではない。私もコンピューターの声であれ,一審原告の発言にみなしてパソコンの音声変換機能付のものを持ち込んでやってもらってもいいと思います。実現することになれば,それから運用していけばいいと思いますが,そういう方面で努力をお願いしたい。」と述べた。
(k) 被控訴人Y12議員は,「代読ですと質問のみとなると思うのですが,パソコンであれば自分が質問したいことをその場で打ち込めば,多少時間がかかるにしても自分で質問が可能になるようなことが書いてありますので,一審原告が質問し,答弁をしていただいて,自分が再質問したいときにその場でできます。やり取りも可能になるので,パソコンの持ち込みを認めていただいたほうがいい。」と意見を述べた。
(l) 被控訴人Y11議員は,「本人の責任ではないですが,障害を抱えてから議員になられたのですから,議員になったという責任をもう少し考えていただきたい。質問書に回答されているものを見ても,人のせいにされているところがみえます。バリアフリーには異論ありませんので,前提は,本人がどこまで努力をし,行動に責任を持って対処していただけるかということになろうかと思いますので,そういう点で,全力で皆さんの出された結果には,自分の努力でやっていただきたい。そのことをお願いしておきたいと思います。機器の持ち込みについては,本来,議会は自分の声で議論するという場ですから,異例の取扱いとなるので,定着するということではなく,一つの措置であるということに限定していただきたい。皆さんのご意見の中で,代読については認められませんが,努力によるパソコンの音声変換装置という発言については認めていきたいと思っております。」との意見を述べた。
(m) C議員は,「当初は一審原告が努力して早く発声できるようにするとしていたが,機能回復には時間がかかり,実際に議会で周知できる発言まで至らないという現状であるから,一審原告自身の要望である代読という問題について協議してもらいたい。一審原告が努力してパソコンを習得していくとしても,習得するまでの間の発言をどう考えていくのかを協議してもらいたい。具体的には,再質問についてはその場で,自分で打たなくてはならないが,手で書いたものを職員に代読してもらう場合は,その場で渡せば再質問できる。」と述べた。
(n) 被控訴人Y14委員長は,陳情第5号には,一審原告の要望というのは書いておらず,質問に対する一審原告の回答にも,今回の陳情を行ったのは,「私を支持してくださっている方々」との回答があり,要望事項はバリアフリーを検討してほしいということであり,一審原告の要望事項に対する審議ではないと,C議員の発言を制した。
(o) B委員は,「パソコンというのは最新の技術なので,パソコン弱者もいるので押し付けるわけにいかない。将来的には一審原告が暮らしていかれる上で,常に代読で話をするよりはパソコンという技術を使ってやったほうが手っ取り早いし,非常に早くできることは間違いないことだから,その辺については,一審原告にも頑張ってやってほしいと議会から言ってもらうこともいい。」,「是非,一審原告にも前向きに受け止めてほしいという気持ちもありますが,やはり障害者問題を考えるときには,問題を客観的に捉えることが大事で,その時には本人の意思,状況を正確につかまないといけない。一審原告には皆さんの思いは伝わっていると思いますが,それを経て一審原告の思いを確認したうえで,方法については協議できればいい。」と述べた。
(p) 被控訴人Y2委員は,「先ほどパソコン弱者という話がありましたが,健常者が使われているパソコンのイメージではだめだと思います。今,パソコン技術は発達しておりまして,障害者の方にあったパソコンができています。何もパソコンの知識がなくても音声変換できる,つまり電卓を使うという感覚です。「あ」を押せば「あ」という発音ができ,「あい」と押せば「あい」と発音できるパソコンができておりまして,音声変換を調べましたら,そういったものも出ておりました。機能としては十分あると思います。一審原告の声という問題も,あるメーカに本人の声そっくりに出す音声交換ソフトがあります。日本に数社あります。過去にとられたテープで,一審原告の声紋から同じような声を出すことができます。技術的には十分可能で,料金も安くなっています。それからキーボードという問題がありますが,キーボードを押さなくても手書きをそのまま音声変換できるものもあります。つまり,一審原告の字体をそのままコンピューターに登録すれば,そのまま発音するようにできます。今の技術は十分ありますから,逆に代読より早くでき,しかも正確であるということが言えます。そういう面で,今のIT技術を十分活用していただければ,この障害が全て克服できると私は思っています。」との意見を述べた。
(q) 被控訴人Y14委員長は,「さしあたり一審原告のような,発声だけが難しいという議員がいたらどうするかということについて議論をしたが,パソコンの技術も進んでおりますので,パソコンの音声変換機能付きのものを持ち込んで,その議員の発言とみなすことで意見がまとまった。このようなケースについては,音声変換機能付のパソコンを持ち込んで対応できることで,今日の結論を出したい。」と提案した。他の委員は異議を述べなかった。
(r) B委員は,「Y2議員が言われたようなことは知りませんので,是非,調べていけば一審原告も納得できるというか,そのほうが人に頼ることでなく自分の意思を表現できるという点でいいと思います。」と述べた。
d 被告Y14委員長は,陳情第5号に対する審議のまとめとして,「1項については,当然,本人の努力も最大限発揮してもらうわけですが,最大限の配慮をしていくということ。2項は,非常に広範なことが考えられるので,ケース・バイ・ケース,その都度,前向きに検討していくということ。3項のさしあたって一審原告については,本会議場への音声変換機能付のパソコンを持ち込むことを認めることで結論付けて,この陳情者の代表のMさんにその旨を回答して,そこから一審原告に伝わるものだと思います。その結果を受けて一審原告なり,会派の方から議会に要望などあるかもしれませんが,今日のところはこのようにまとめたいと思いますがよろしいですか。」と述べた。他の委員は,異議なく承認した。
e 被控訴人Y3委員は,協議中,委員外議員として,一審原告とC議員が出席していたことから,一審原告の回復の見通しについて,C議員の代弁により説明をしてほしいと求めた。被控訴人Y14委員長は,「まだ代弁を認めて委員会を進めているわけではありませんので,それはまずい。」と述べ,他の委員に対応を諮った。被控訴人Y10委員は,「陳情書に基づいてそういうことをどうするのか議論しているところであり,たまたま本人がいるから聞くのだという話になろうかと思いますが,その辺をきちんとしていかないと議運とは何だということになる。」との意見を述べた。被控訴人Y14委員長は,「一審原告の回復の見通しについては昨年の議運でC議員が会派代表として出席した時にも議論をした経過があり,リハビリの努力をされたけどなかなか発声まで至っておらず,今後も難しいだろうという前提で,どう対応するのかというご意見をいただきたい。」と述べ,被控訴人Y3委員の要望を容れなかった。
f 平成16年9月21日の議会運営委員会での審議の結果,一審原告が本会議場に音声変換機能付のパソコンを持ち込むことが認められたが,一審原告がパソコンを操作できるかどうかや,パソコンによる音声変換機能がどのような内容,操作性のものであるかについて,議会運営委員会や市議会事務局等による調査,検討は何らなされなかった。
イ 一審原告は,平成16年9月21日の議会運営委員会での審議について納得できなかったことから,同年10月2日,今後の議会における活動について協議の場を設けるようA議長に申し入れた(甲120)。
ウ 被控訴人Y14委員長は,平成16年10月12日,A議長,被控訴人Y6副議長,被控訴人Y3副委員長及びB議員とともに,一審原告と面談した。
被控訴人Y14委員長は,一審原告に対し,とりあえずパソコンを使って壇上から質問してほしいと述べたところ,一審原告は,被控訴人Y14委員長に対し,「パソコンは使えない。」という内容のメモを示した。これに対し,被控訴人Y14委員長は,一審原告に対し,「フロッピーを事務局まで持ってくれば事務局でパソコンにセットする。パソコンができる人が家族にいるでしょう。家族や支援者に手伝ってもらったらどうか。」と述べた(甲135,乙ロ17,被控訴人Y14本人)。
エ 共産党市議団(一審原告,C議員及びB議員)は,陳情第5号に対する議会運営委員会での審議結果を受け,平成16年10月25日付けで,A議長に対し,要望書を提出した(甲13)。
同要望書の要望事項は,一審原告の意向を確認した上で,中津川市身体障害者福祉法施行細則(2003年)第10条1項「障害者本人からの聴取」,同3項「身体障害者の意向」の趣旨を踏まえてなされたものとして,次の2点が記載されていた。
「① 毎週2回の発声訓練(名大病院・県立多治見病院),毎週1回のカイロプラクティック治療などの自助努力に対する御理解をお願いいたします。
② 約1年に渡る発声訓練により発声再生のレベルは「上級」の水準に達することができましたが,当面すぐに対応できることとして一般質問や各種委員会等での「代読による発言保障措置」をお願い致します。」と記載されていた。
また,一審原告は,約1年に渡るリハビリ(食道による発声訓練)を行っているが,第三者に発言内容を伝えられる水準までには機能回復はしていない,一刻も早い議会における発言が保障される措置が講じられることを強く望んでいると記載されていた。
要望書に対する審議経過は次のとおりである。
(ア) A議長は,平成16年10月25日,要望書につき,議会運営委員会に協議を付託した(甲51)。
(イ) 平成16年10月25日開催の議会運営委員会(甲51)
a 委員のほか,A議長が出席し,一審原告が傍聴した。
b 被控訴人Y14委員長は,「要望書の要望事項が陳情第5号についての協議結果による音声変換機能ソフトを利用したパソコン使用という発言方法という内容でなく,代読という発言方法であるため,新たな要望である。要望書の要望事項についての対応を各会派で検討した上で,次回の議会運営委員会で協議したい。」と提案した。
c 被控訴人Y3副委員長が,B委員に対し,陳情第5号に対してなされたパソコン使用という方法について検討したか質問した。B委員は,「共産党市議団で,議会事務局に依頼して議会応接室で音声変換機能付きパソコンの確認をした。」と答えた。
d 被控訴人Y14委員長は,パソコン使用の確認は,会派間で行うこととして,各会派で要望事項について検討するよう依頼した。他の委員に異議はなく,次回の議会運営委員会までに各会派が検討することとなった。
(ウ) 平成16年11月9日開催の議会運営委員会(甲14の1,2)
a 一審原告及び被控訴人Y11議員は,委員外議員として同委員会に出席した。
b 要望書の要望事項についての各会派の意見は次のとおりである。
(a) 被控訴人Y1委員は,清新クラブの検討結果として,「代読による発言措置については,昨年の議会運営委員会において,代読やボード等を使うことを色々議論をした経過があり,その経過を踏まえて陳情第5号について,音声変換機能付きのパソコン使用を認めるとしたのであり,代読はだめだったということだったと思う。清新クラブとしては,代読は認められず,音声変換機能付きのパソコンを使用しての発言を一審原告自ら努力してやっていただきたい。」と報告し,私的意見として,「重度障害者の方が実際に使用しているのを聞き,はっきりとした音声だったので,まずは利用していただくことが先決ではないか。」と述べた。
(b) 被控訴人Y16委員は,会派の検討結果として,「陳情第5号に対する検討として色々議論をした結果として,パソコンによる音声変換が一番よいのではないかということで決定したという経緯もあり,代読ではなくて音声変換機能付パソコンを利用していただきたい。」と報告し,「個人的には,第三者を介在させない方法がベターではないかという意見である。」と述べた。
(c) D委員は,市民ネット21の意見として,「基本的には音声変換機能付きパソコンの使用には異議がないが,そこへいくまでは代読を認めるべきではないか。技術の習得ということもあるが,本人の意向を大切にするべきではないか。」と報告した。
(d) 被控訴人Y12委員は,「会派での結論は出なかった。とりあえずパソコンを認めていただいたので,まず一度挑戦していただきたい。挑戦し努力をしたけれどできないということであれば,その時点で考えることはできるが,やってみていただきたい。」と報告した。
(e) 被控訴人Y14委員長は,参考意見として,被控訴人Y11議員に発言を促したところ,同議員は,「社民党の全国レベルの方針としては,いかなる障害のある議員でも政治活動は当然保障すべきという観点から代読という例があるので,そういう要望が出た場合にはその要望に賛成してほしいという要望があった。中央の方針どおり代読でいきたいのですが,パソコンの音声変換から代読に変えたと言われると,おまえの主張はなんだと言われるので,党の方針は党の方針,私としては,前回の議運で決まった,とりあえず努力していただいてパソコンで対応していただくことの皆さんの意見にしかるべく従っていくことを思っております。代読を否定するわけではないが,今の段階では,前回の議運の決定に従ってパソコンで努力していただきたい。」と述べた。
c 上記の各意見を踏まえ,被控訴人Y14委員長は,一度チャレンジをしてパソコンを使う努力をしてみてほしいという意見がほとんどであり,市民ネット21はニュアンスが少し違うものの,音声変換は否定しないが代読がいいのではないかという意見だったとまとめ,B委員に,意見があるかどうかを尋ねた。
d B委員は,「パソコンや音声変換装置については自ら見聞した。第三者が介在することになり,本当に正確に伝わっているかどうか分からず,議会はできる限り自分の意思を伝えるときに直接的であった方がよいというのはよくわかるが,代読であればお金もかからず,全国的には実施している例もあるのに,なぜ代読がだめなのかわからない。」と述べた。
e 被告Y14委員長は,「代読が何故ダメか理解できないということであれば,私は,なぜパソコンを利用してチャレンジすることができないのか疑問になります。難しいことではないわけですので,皆さんが言われるように一度使えるように努力してチャレンジしていただいて,それでだめならまた検討すればよいのでないかという声もありましたが,どうして第三者を介さなければいけないのか,コンピューターが声を出してくれるのになぜだめなのか理解できないです。自分の要求していることはこうだから,それ以外はだめだ,聞けないということでは議論になりませんので,前回もしっかり議論していただいて,本来は自分の発言が大原則だけれど,コンピューターの声でも一審原告の声として認めようと,そして,過去の声紋からよく似た声が出る機械があることまで調べた人がいる中で,チャレンジをなぜしないのかわからない。」と述べた。
f 被控訴人Y11議員は,被控訴人Y14委員長から発言許可を得た上で,参考意見として,1時間から2時間くらいの時間で簡単に習得できるというトーキングエイドという電卓に似た機械があると報告した。
g 被控訴人Y14委員長は,「記録には残らないが,発声するだけの会話補助装置なら色々あると思います。パソコンはフロッピーで入れて字がそのまま言葉になって出るものですから,そういうものを研究して,勉強してチャレンジして努力してほしい。その結果,どうしても何ともならなければ考えればよいのでないか。まず決まったことをチャレンジしてみてはどうかと思います。」と述べた。
h B委員は,「中津川市身体障害者福祉施行細則では,障害者の自己選択権,自己決定権という基本方針が定められているので,そういう視点からもこの問題について認めてほしい。」旨述べた。
i D委員も,「B委員と同様の意見である。体に障害があって,そのことを認めていくことが大事であると思います。今回,一審原告は声が出ないということで,そこをどう認めていくかということになると,一審原告の言いたいことをどう受け止めていくかだと思う。それが代読なのかパソコンなのかだけであって,その意向をどう汲んでいくのかを考えればよいと思う。だから前回の議運で決めた音声変換装置の付いたパソコンを持ち込んでもいいし,それまでの間,代読なら代読を認めていってもよいのではないか,そこを大事にすべきでないか。」と述べた。
j 被控訴人Y14委員長は,「私は一審原告がパソコンを使えないとは思っていない。質問事項の回答はパソコンであったから,本人が打ったのか家族が打ったのか分からないができるじゃないですか。音声変換するだけのことですので,できると判断しております。パソコンを使えるまでというような議論もありますが,違うと思います。少し慣れれば使えると思いますので,したがって努力するべきだと思います。」と発言し,各会派の検討結果につき,改めて,「代読を認めてもよいのではないかという会派が1会派ありましたが,音声変換によるパソコンの習得を努力して使えれば一審原告の音声として置き換えてもよいということは申し合わせておりますので,ここでパソコンを使わないと言ってしまうとその道は閉ざされてしまいますので,そんなことのないように,少し,機器についても,技術にしても勉強して努力していただきたいということを申し上げて本日の委員会を締めたいと思います。各会派の全会一定の意見ではないですが,努力してもらいたいというのが大勢の意見でしたので,要望どおりの結論にはならなかったと思いますが,この議運での議論は閉めたいと思いますが,よろしいですか。」と提案した。
k これに対して,B委員は,「障害を持っている人に特定の努力とか責任を負わせるのはまずいと思います。一見,そのことは当然のように思われますが,障害者運動の流れというものは,障害者の自己決定権というものを尊重するのが大きな流れだと思っておりますので,善意であっても特定の考え方を押しつける,あるいは一定の努力をするべきだということは非常に配慮が欠ける場合があるから議会としてやらない方がいいと思っております。」と述べた。
l 被控訴人Y14委員長は,「まったく無理なことを言っているわけではないと思います。声が出ないので早くしゃべれるようにしなさいと言っているわけでない。自己決定権を主張するだけで,こうしたらどうですかということに耳を貸さないということではないですか。押しつけていることではないと理解してもらわないと。自分たちが言ったことだけが正当であって,押しつけであるという理解はB議員らしくないと思います。できないことを言っているわけではないので,そういう風に理解してもらわないとおかしなことになってしまう。被控訴人Y12議員も努力をしてみて,それでもだめなら検討しようと言ってくれているのに,押しつけと言われるのはここの委員の方々に失礼な言い方だと思います。」と述べた。
m D委員は,「障害がある人の意見をどう聞くか。意見を聞くことを前提としておけば,パソコンであれ,代読だって認めるべきだと思う。いかにこの人の意見を聞く場所を引き出せるのかが議運にかかっていると理解している。」と述べた。
n 被控訴人Y1委員は,「一般的な障害者のバリアフリーと,議会人,議会活動における障害者とは分けて考えるべき。議員というのはやはり制約がある。守秘義務もありますし,議員として色んなことが出てくるわけです。一般的に言われる障害者福祉と議員という身分の中での活動の部分は,多少制約があるということを理解しながら議論する必要があると思います。一般的な障害者は言われたとおりだと思いますが,多少区分けして考えながら議論していくべきだと思います。」と述べた。
o 被控訴人Y16委員は,上記被控訴人Y1委員の意見に同調し,「議員ということですので,市民の付託にどう答えていくのかというところが,一般の障害の方よりもう少し上のところが必要ではないのかと思います。要望書の中の「当面すぐに対応できること」と代読を固定観念で結びつけすぎていると思います。我々は,「当面すぐ対応できること」として,音声変換によるパソコンの使用もすぐ対応できる方法だということで,どうですかと言っていると解釈している。「当面すぐ対応できること」のイコールというものを代読だけではなくて,音声変換もイコールだと思っております。」と述べた。
p 被控訴人Y14委員長は,議論が平行線になっているとして,一度今回の議題を持ち帰り,各会派の意見を再検討するよう提案したところ,B委員は,「私ども具体的な要望として,一審原告の意思を確認した上で申し出たのは今回初めてで,そういう意味でいうと皆さんの議論をうかがいましたので,また持ち帰ってきます。」として再検討を承諾した。
オ 平成16年12月6日開催の同年第7回定例会の本会議(甲52)
被告Y14委員長は,「要望書について,平成16年11月9日開催の議会運営委員会の審議で,代読を認めてもいいではないかという会派は1会派あったが,同年9月21日の協議の結果を踏まえて,音声変換機能付きのパソコンで機器の技術,そういう操作を努力してほしいという形で終わった。代読ではなく,音声変換のパソコンシステムを使えるように努力してくださいという形に結論を出した。」と報告した。
(5) 一審原告は,平成16年12月13日ころ,岐阜県弁護士会に対し,「当選後一年半にわたり,前例がないという理由で発言を許されず,陳情後は,議運で一方的に決めた方法(現在の私の障害の状態ではほとんど不可能な方法)により発言を許可するという対応は,参政権の制限,表現の自由を侵す人権侵害」ではないか調査してほしいと人権救済の申立てをした。(甲15)
(6) 平成17年1月17日開催の議会運営委員会(甲53)
委員らは,岐阜県弁護士会人権擁護委員会からの調査依頼に対する対応について協議した。被控訴人Y11議員及び被控訴人Y7議員は同委員会を傍聴した。
ア 被控訴人Y14委員長は,「議会運営委員会で議論した結論は,パソコンの音声変換で発言してもらうという方法がよいのではないかということで,この方法を決定したのであって,これだけの人が集まって決めたことは尊重してもらいたい。自分の言うことが認められないのでけしからんという一点張りである。「一審原告の障害の状態ではほとんど不可能な方法」と書かれているが,どうなんでしょうか。」と疑問を呈した。
被控訴人Y12委員は,「何で不可能かわからない。その辺がおかしい。」とこれに同調した。
イ 被控訴人Y11議員は,「昨年11月にパソコンより簡単なトーキングエイドを個人的に一審原告へ紹介してあげたが,検討してもらっているのか。」と述べた。
ウ 被控訴人Y14委員長は,「足の悪い人が車いすを使うように,声の出せない人がパソコンを使えないのか。指も動くのでやってみて,やってみないのにこういうことを言われることについて皆同じ事を思っていると思う。」と述べた。
エ 被控訴人Y14委員長は,人権委員会の調査について,議事録に基づいて調査を受けるため,正副議長と正副委員長とで対応することを提案し,他の委員は,異議なく承認した。
(7) 平成17年3月定例会における一般質問の発言通告書を巡る経緯(甲16,17,54,55,131)
ア 一審原告は,平成17年3月10日,A議長に対し,同年3月定例会において一般質問を行う旨の第1回発言通告書を提出した。
第1回発言通告書は,高レベル放射性廃棄物処分場問題について,市長に対して一般質問を行うというもので,発言所要時間は30分と記載されていた。
イ A議長は,第1回発言通告書についての取扱いについて,議会運営委員会に諮問した。
第1回発言通告書に対する対応についての審議経過は以下のとおりである。(甲17,54,55)
(ア) 平成17年3月10日開催の議会運営委員会(甲54,55)
a 被控訴人Y11議員及び一審原告が同委員会を傍聴した。
b 被控訴人Y14委員長は,「一般質問は壇上から,基本的には口頭での発言とされているが,一審原告については,平成16年9月21日開催の議会運営委員会において陳情に対する協議を経て,音声変換機能付きパソコンによる発言方法を認めていくという申し合わせになっている。議会運営委員会では傍聴議員に意見や事情を聴取するわけにはいかない。協議会に切り替えてどちらにするのか一審原告本人に確認しながら進める。」と述べ,議会運営委員会を暫時休憩とし,協議会に切り替えた。
(イ) 平成17年3月10日開催の協議会(甲17,55,131)
a 被控訴人Y14委員長が,一審原告に対し,「一般質問について音声変換機能付きパソコンで行うのか,口頭で行うのか。」と質問したところ,一審原告は,食道発声の方法で,口頭で行うと回答した。
b 被控訴人Y14委員長は,食道発声の方法による音声で,発言内容を議事録に留めることができるかどうか,質問内容が執行部側に伝わるかどうかを確認するため,一審原告に食道発声の方法で第1回発言通告書の1ページ分を読み上げてもらい,その音声をカセットテープに録音して,一審原告の発声状況を確認するというテストを行った。
c 上記テストの結果,協議会に参加した委員の全員一致で,一審原告の食道発声による発言では聞き取ることができず,一審原告が平成17年3月定例会に口頭で一般質問を行うことは無理であるとの判断をした。
d 一審原告は,「今日は無理だが,体調次第によっては聞き取れるような発声ができる可能性もある。一般質問を行う日まで1週間あるから,その間練習してできるようにする。」と述べた。B委員は,当日まで猶予期間がほしいとの要望をした。被控訴人Y14委員長は,その要望について,今日決めなければいけないという理由で却下した。
(ウ) 平成17年3月10日開催の議会運営委員会(甲54)
被控訴人Y14委員長は,協議会の内容については,議員活動報告等に記載しないよう注意の上,今回の内容では,口頭発言は無理であると判断せざるを得ないとA議長に答申した。
ウ A議長は,上記答申を受け,今回は発言通告として受理できない,許可できないとして,一審原告に第1回発言通告書を返した(甲54)。
エ 平成17年3月17日開催の同年第2回定例会の本会議(甲55)
(ア) 被控訴人Y14委員長は,平成17年3月10日の議会運営委員会での協議及び答申の内容並びに同日に開催された協議会の内容について報告をした。
(イ) C議員は,上記委員長報告に対する質疑として,次回の6月定例会に向けて,今回聞き取れなかった部分について,機械によってわかりやすくなるよう介助するなど,一審原告の発言を保障するよう議会運営委員会や全員協議会で検討してほしいと述べた。
(8) 平成17年6月定例会における一審原告の一般質問の発言方法を巡る経緯
ア(ア) D委員が欠席し,O議員が同委員会を傍聴した。
(イ) 被控訴人Y10委員長は,「A議長から,今後の一審原告の発言通告について,前回議会運営委員会で決めた事項を守っていただきながら,会派の中でよく検討してもらい,その場その場の対応がないようにしていただきたいとの発言があった。」として,C委員の意見を求めた。
(ウ) C委員は,会派としては,議会運営がスムーズにいくように研究して,検討するなど努力すると述べた。
(エ) 被控訴人Y10委員長は,C委員に対し,「口頭発言とすることはもちろんですが,パソコンの音声変換による発言という議会運営委員会の決定と一審原告のパソコンに対する障害を取っ払うことをしていただけますか。」と確認した。
(オ) これに対し,C委員は,「議会運営委員会では,パソコンによる発言を決めていることは承知しているが,そういう決め方自体が問題であると本人が認識を持っていることについて否定できない。議会内部で議会運営委員会の決定はおかしいということについては,本人の見解として言っていることで,議会運営委員会ということですから会派を含めた決定がおかしいと言われているので,それについては規制も強制もできない。委員会や議会運営にかかわったときには,決定どおりやるようにしている。」と答えた。
(カ) 被控訴人Y10委員長が,「一審原告のチラシには,6月議会で私も質問しますと書いてあります。前の繰り返しはしたくないとの意味で会派の努力をお願いしたい。」と述べた。C委員は,「本人の意向を含めて,現時点で発言通告が出てくることを確認していないので,含めて会派で検討したい。平成17年6月2日の議会運営委員会で取扱いを協議していただきたい。」と提案した。
(キ) 被控訴人Y10委員長は,上記提案を受け,「お願いに対して会派で努力をしていただいて,2日の議運で努力の結果をお聞きしながら議論していくことにいたします。」と述べた。
(ク) 被控訴人Y10委員長は,今年の議会運営委員会はこういった方向で,これを重視していくという意味であるとして,「議会運営の実際」の「議会運営委員会」について書かれた箇所を読み上げた。当該読み上げ部分の主な内容は以下のとおりである。
a 議会運営委員会は,議長の諮問に応じ,円滑な議会運営をするために,運営上の諸問題について腹蔵なく協議し,議員間の連絡調整をはかることを目的とします。
b 必要によっては,議運で意見が一致した事項を議運申し合わせ,又は議運決定とし,各議員や各会派が紳士的,自主的に守ることによって,この申し合わせ等が議会に関する法令や先例と同様,準法的拘束力を持つようになります。議運での決定事項の遵守を議運設置要網等で明示しているところもあります。
(ケ) 被控訴人Y10委員長は,「議会運営委員会の決定事項については,中津川市でも「議会運営委員会に関する申し合わせ」4ページに6番として委員会の意思決定があります。「委員会の意思決定に当たっては,全会派一致を基本として協議調整に努めることとし,決定事項については,各会派においてこれを遵守するものとする。」という申し合わせができております。この申し合わせで拘束力がないのなら,条例等に記載する方法もあるわけですが,その辺は,各会派で検討していただくようにお願いをしたいがよろしいか。」と提案した。他の委員は,異議なく,各会派で検討することを承認した。
イ A議長,副議長,被控訴人Y10委員長,副委員長,C議員及び一審原告による平成17年5月31日の懇談(甲56)
(ア) 当初,C議員は,口頭による発言の話をした。
A議長は,これまでの議会運営委員会でパソコンを持ち込む話があった旨述べ,口頭でどの程度のことを聞き取れるかを確認しようと,一審原告に口頭で発言してもらいながら協議をした。その結果,一審原告の口頭での発言では,聞こえる単語もあったものの,発言内容を周囲にいる者が聞き取れるという程度には至っていなかった。
(イ) 被控訴人Y10委員長は,パソコンを使うという議会運営委員会の決定がある中で,その運用をどうするのか,一審原告本人の希望である口頭での発言方法を,その運用の中でどう取り入れていくのかについて,懇談での協議のまとめとして,冒頭のあいさつ及び項目についてまでは口頭で発言してもらい,その後は,議会運営委員会で認められた音声変換機能付きパソコンを用いることで一審原告本人の肉声に代えるという,一審原告自身の発声による発言とパソコンを用いた発言とを併用して質問するという方法を提案した。
共産党市議団は,この案を持ち帰り検討することにし,懇談は終了した。
ウ 平成17年6月2日開催の議会運営委員会(甲56)
(ア) 一審原告は,同委員会の傍聴を希望し,同委員会を傍聴した。
(イ) A議長は,平成17年5月31日に6者で懇談を行ったこと及びその内容について報告をした。
(ウ) C委員は,一審原告の問題について,共産党市議団内での議論の経過について次のとおり報告し,共産党市議団として,改めて一審原告の希望する代読の方法による発言を認めるよう,議会運営委員会の申し合わせの変更を求めた。
a 一審原告の発言方法について一審原告本人の意思を最大限尊重していく。
b 共産党市議団は,平成17年3月定例会の時と同様に,口頭で発言をすることを了承していき,その場合,ゆっくり40分でしゃべるようにして発言していくことを確認した。
c 平成17年6月定例会の対応としては,一審原告本人が,リハビリの先生にも相談した結果,2週間の訓練で発言できることが無理と判断されたため,代読の方法で行いたいということなので,議会運営委員会での再検討をお願いし,一審原告の代読発言の許可及び発言通告書の受理をしていただきたい。
d 平成16年9月21日開催の議会運営委員会での陳情第5号についての審議後,会派として代読を要望して,その後の議会運営委員会で音声変換付きパソコンが確認されたようだが,その後の一審原告本人の状況は,食道発声による口頭の発言は,皆さんに周知できる発言ができず,パソコンについては,一審原告本人も色々検討した結果,パソコンについて,触ったり考えたりすると体調が優れなくなることから,実際に使うことができないと判断したと一審原告本人が出した文書の中で言っており,一審原告本人はパソコンを使うことができない状態である。
(エ) 被控訴人Y10委員長は,「一審原告の一般質問の発言方法については,平成16年10月25日に共産党市議団から代読の方法によることを認めてほしい旨の要望書が提出されており,各会派検討の上,同年11月9日開催の議会運営委員会において,代読を認めてもよいという会派が1つあり,全会一致ではないものの,音声変換によるパソコンの習得を努力して使えれば,一審原告の音声として置き換えてもよいということは申し合わせており,パソコンを使う道を閉ざすことのないよう,一審原告に少し勉強して努力していただきたいということで結論が出ている。また同じ要望を各会派持ち帰っても同じ答えが出てくると思う。今まで結論を出してきたものをひっくり返すわけにいかないと思います。一審原告の発言通告については,議長としても議運に諮問して決定したことに従いたいということですので,結論的なものを出して議長の困らないような対応にしていきたいと思います。議運の方向付けや決定については重みがあることを分かっておっていただきたいことをお願いしたいと思います。」と述べた。
また,被控訴人Y10委員長は,「パソコンに打ち込んでもらうことは,皆さん認めていただければ身内でなく自分でなく,事務局にお願いしても努力していただく形をやっていただいて,その後また議論するのなら話し合いの余地はあると思う。」と述べた。
(オ) 被控訴人Y2委員は,「パソコンにこだわってみえると思いますが,声を出せない障害者のための音声変換装置があります。50音順に並んでいて,「あ」と押せば「あ」と出ます。障害者認定されている装置ですので簡単に使えます。その装置はパソコンよりも安く買えますし,障害者の関係でリースという手がありますから利用されたらと思います。それもだめなのか検討されたらどうかと思います。必要なら次回の議運に借りてきます。障害者用にあるので実用してもらいたい。」と述べた。
(カ) 被控訴人Y11委員は,「社民党に障害者の機関があり,パンフレットを取り寄せている。切換もついている。キーボードの配列は「あいうえお」になっており,パンフレットを渡してもらうようお願いしている。電卓や電話のボタンを押すことができれば使えるものです。」と述べた。
(キ) 被控訴人Y1委員は,「アルファベットが難しいのであれば,50音の音声変換機のものがあるからということで,それも含めて議運で提案している。それでも体調が悪くなるということですので,その機器も含まれていると受け取っています。障害者の中で自立ということを考えた場合,これをマスターすることによって,一審原告にとって日常生活の会話にも役立つのではないかと思います。一審原告が音声発生装置を使って何とか障害者の自立ということを考えていただければ,他の障害を持っている方にとっても希望になるわけです。代読ですと介助が必要になりますが,一人で頑張っているのだということで,他の障害者の方にとってもいいのでないかなと思います。そういったことも考えていただけないものか。簡単にできるようですので,再度,チャレンジしていただいて,それがどうしても打てないことであれば,その時はその時で考えればよいのでないか。」と述べた。
(ク) C委員は,「リハビリが更に進めば代読は止められるので,当面,判読できるまでの間,代読を認めてもらいたい。6月議会までは時間が少ないことから,次善の策として,同議会に限り,共産党市議団のP議員の持ち時間40分の中で,P議員自身の発言通告部分のほか,一審原告の発言通告部分を併せて代読するという方法を認めてもらえないか。」と提案した。
(ケ) 被控訴人Y10委員長は,被控訴人Y3委員から,この後特別委員会があり,このまま延々とやっていても時間だけがかかるとの指摘を受け,「3月議会では発言通告書が出てきて一審原告に口頭でできるか確認した経過があり,同じことをしていてもだめである。6月議会での一審原告の発言通告については,今の状況では,パソコン等音声変換装置を使うことなら認めてもよいが,代読の方法によることを認めるわけにはいかない。」と述べた。
(コ) D委員は,「機械の使用についても否定しないが,肉声でできないのなら代読を含めて検討すべきであるし,当面のところ代弁を認めてもよいのではないか。」と述べた。
(サ) C委員は,「継続的に時間のあるときに審議,検討してもらいたい。パソコン以外の検討も必要なので継続としてもらいたい。」と述べた。
(シ) 被控訴人Y10委員長は,「同じ話を同じようにやって同じ答えを出ていてもまずい。今回は,6月議会について,代読は無理であるがパソコンを使うことであれば直ぐ議運を開きます。そういったことでよろしいか。」と確認した。他の委員は異議を述べなかった。
(ス) 議会運営委員会は,A議長に対し,被控訴人Y10委員長の確認した上記内容のとおり答申した。
(セ) A議長は,「代読ということで6日まで変わらないということであれば通告書は受け付けられないが,もうひとつの方法なら運用について協議する。」と確認した。
エ 一審原告は,平成17年6月6日ころ,A議長に対し,中津川市の交通対策について一審被告市の市長,企画部長及び健康福祉部長に答弁を求める発言所要時間40分とし,発言内容が手書きでA4用紙4枚分が記載された一般質問の第2回発言通告書(甲100の1)を提出したが,A議長はこれを受理しなかった。
オ 障害をもつ人の参政権保障連絡会は,平成17年6月20日付けで,A議長及び各会派に対して,一審原告の求める代読による発言方法を認めないことは,差別にあたるため,代読による発言を認めるよう求める「障害をもつ市議会議員の議員活動の保障に関する要望書」(以下「議員活動保障についての要望書」という。)を提出した(甲18)。
議員活動保障についての要望書には,①X議員の要求する「議場での代読」を認めること,②中津川市議会と中津川市において,障害をもつ人に対する全面参加と平等を実現されるよう努力することの二点について要望されていた。
議員活動保障についての要望書の取り扱いは,議会運営委員会に付託され,平成17年6月24日開催の議会運営委員会(甲57)において,議員活動保障についての要望書の要望事項について協議された。この時の協議の概要は次のとおりである。
(ア) 議員活動保障についての要望書に,「パソコン再生のみしか認めないのは不当である。パソコンに習熟していないX議員に音声機能付きパソコンのみを許可したのは不当である。」との記載があることに関して,被控訴人Y2委員は,「パソコン等ということで,VOCA,ボイスアウトコミュニケーションエイド,携帯用会話補助装置ということで,障害者でしゃべれない方がキーボードを持って音声に変える装置で福祉の規定された日常用具も使ってもらえないか議論していた。これは障害者のための給付事業対象のものであるから,給付制度を使えば車椅子などと同じ扱いになるもので,コミュニケーションを阻害するものではない。手段として使ったらどうですかということで,パソコン再生のみということはあまりにも狭い解釈なので,申し入れすべきだ。パソコンや携帯用会話補助装置は本人の意思がないと発声しない。つまり本人が発声したと同じという解釈で進んできた。」と述べた。
(イ) 被控訴人Y10委員長は,「一度,携帯用会話補助装置を各委員も使ってみて,実証してみてから結論を出したい。」と述べた。
(ウ) 被控訴人Y1委員は,「議会運営委員会は,今まで紳士的に十分議論してきた。代表世話人にしっかりと議会運営委員会の見解と議論経過を伝えるべきではないか。音声変換の方で一審原告にご努力いただいて,まずテーブルに着いていただき,着いていただくことで次が見えてくるだろうと思います。頭から否定されていますが,一審原告の日常生活にとってもプラスになるだろうし,議員生活,個人生活,また障害者のためにとっても励みになるのだろうと思います。」と述べた。
(エ) C委員は,「議員活動保障についての要望書は,議長宛と各会派宛に出されているため,次回の9月議会に向けて,一度,各会派へ持ち帰って審議してもらい別の機会に改めて審議してもらいたい。」と提案した。被控訴人Y10委員長は,7月12日の議員連絡協議会終了後,この問題について議会運営委員会を開催することを提案した。他の委員は,異議なく承認した。
(オ) 被控訴人Y5委員は,「色々変わってくるので,ご本人の考えが変われば我々も変わらなくてはいけないけれど,ご本人の考えは変わらないので,我々の考えも変わらない。ご本人が変われば我々も変われると思いますが,変わらない限り平行線である。無理矢理突破しようという発想にはものすごく抵抗を感じますし,憤りを感じています。皆さんも一緒だと思います。どうするか議運の方は決めてしまっているので,ご本人の方がお考えを変えてもらうよりしょうがない。だけど,ある一定時間が経って見直しの時期が来たら見直さないと放っておいてはいけないが,1年も経っていないので,議運の決定事項として変わるということにはならない。」と述べた。
(カ) C委員が,被控訴人Y10委員長に対し,次回7月12日に開催される議会運営委員会への一審原告の傍聴を申し入れた。
a この申入れに対し,被控訴人Y5委員は,「農業委員を決めるときに当事者を除斥するように,まったくの当事者であるので席を外してもらって議論を進めた方がよいと思っている。」と述べた。C委員は,「なぜ代読がいけないか何回も説明しても,説明が悪いのか本人が理解されないことなので,そこが一番なので直接聞いてもらいたい。そうしないと解決しない。」と述べた。
b 被控訴人Y10委員長は,上記各発言を受け,「言われることは分からなくはないが,なぜ代読がいけないのか議論するつもりはなく,今までの経緯を振り返ってきちんと整理することでご理解を賜りたい。本人には遠慮してもらいたい。」と述べた。
(9) 平成17年9月定例会における一審原告の一般質問の発言方法を巡る経緯
ア 平成17年7月12日開催の議会運営委員会(甲58)
(ア) 被控訴人Y10委員長は,事務局に音声変換機能付きパソコンを手配するよう指示していたが,議会運営委員会の休憩中に,業者の持参した音声変換機能付きパソコンのデモンストレーションを行い,一審原告及び被控訴人Y10委員長が実際に使用した。
(イ) 被控訴人Y10委員長は,再開後の議会運営委員会で,「パソコンのキーボードが大きな老人用のものがテレビで紹介されていた。パソコンにもそのようなものがあるので,今日のところはこのくらいにして,次回にしたいと思います。」と述べた。
(ウ) C委員は,「9月議会に向けて,時間の許す限り本人が納得できるようお願いしたい。今回の問題は9月議会までにお願いしたい。」と要望した。
イ 平成17年8月24日開催の議会運営委員会(甲59)
(ア) C委員は,「一審原告本人のことであり,参考人としてもよいと思うので,一審原告に委員会を傍聴させてもらいたい。」と申し入れた。被控訴人Y10委員長は,「事務局職員が一審原告についてのその後の経過の報告をし,それを委員会出席者に聞いてもらった上で,一審原告から聞きたいことも出てくると思うので,それから傍聴してもらうこととする。」と答えた。
(イ) S事務局長は,「岐阜県視覚障害者問題協議会から一審原告の希望する代読を認めていただくよう要請はがきが何通か届いている。」,「8月17日付けで,岐阜県弁護士会会長と同人権委員会委員長から,市議会における代読に関する人権救済申し立てについて,予備調査から本調査に入るための日程調整依頼がある。」,「8月21日付けの中日新聞に「理不尽な決定,市議会に疑問」という一審原告に関する投稿があった。」,「岐阜県障害福祉課のQ課長が,8月23日に,のどの手術で声の出なくなった議員の議会での代読が認められていないので手だてをお願いしたいとの障害者団体からの依頼があったため,県としても障害者のバリアフリー化が支援できる環境作りに取り組んでいること,議会内部の問題と思うということを伝えるつもりである旨電話連絡してきた。」と報告した。
(ウ) D委員は,岡崎市議会で二,三年前に代読が行われたと報告し,C議員及び被控訴人Y21委員は,蛭川村でも議長の許可を得て代読が行われたことがあると報告した。
(エ) 被控訴人Y10委員長は,一審原告が平成17年9月定例会に向けて発言通告書を出すことも予想されるため,自ら一審原告の意向を確認することにし,休憩を入れた。被控訴人Y10委員長は,休憩中,一審原告に,発言通告書についての考えを確認し,委員会再開後,一審原告から,平成17年9月定例会に発言通告書を出すことは考えているが,断言できない旨の返答があったと報告し,同定例会での対応について審議することとなった。
一審原告が平成17年9月定例会に向けて発言通告書を出した場合の対応についての審議内容は,次のとおりである。
a 被控訴人Y5委員は,「市民クラブとしては,議運で決められたとおり進めるべきだと思います。」と述べた。
b 被控訴人Y10委員長は,「非公式に,C議員と議長と共に委員長という立場で一審原告と会い,一審原告に対し,事前に準備できる一般質問は,音声変換装置を使い壇上で行い,再質問については,慣れるまで会派の人に手伝ってもらうようにするという提案をし,音声変換装置でやってくれと頼んだ。」と報告し,「正式な議運での問いかけをするので,共産党市議団の中で話をしてもらえばありがたい。他の会派も,再質問については慣れるまでの間という条件もつくが譲歩できる話として会派に持ち帰り,理解してもらいたい。」旨提案した。他の委員は,異議を述べなかった。
c D委員は,「9月議会は機械で,12月議会は代読でやるという方法もある。被控訴人Y10委員長が提案した上記の方法について,前向きに検討した方がよい。」と述べた。
d 被控訴人Y5委員は,「会派の考え方として,障害者についての考え方の中に,自己の努力に基づく自立型とそうでないものがあり得るが,自立型の方がよいのではないかという考えであり,自立へ向けての代読であればよいが,代読が目標で,その過程で機械を使うことは違うのではないかと思う。」旨述べた。
e C委員は,「一審原告は自分でしゃべるという自立に向かって目標を置いており,その過程の中で代読をしてもらいたいということを望んでいる。」と述べた。
f 被控訴人Y10委員長は,一審原告のホームページを出力したものを各委員に資料として配付した上で,当該ホームページに,「このホームページはX私設応援団によって作成されています。」と記載されてあることを指摘して,「これだけのお力を貸してくださる方がおみえになれば,十分やれるという判断ができると思います。」と述べた。
g D委員は,「自分にできないことを頼んで任せていくことは疑問に思う。本人にやる気のないものをやれというのは酷ではないか。どこかで妥協点を見いだすことが大事であると思う。」と述べた。
被控訴人Y2委員は,「妥協点について,一方的に議会側に求めているもので,本人にも妥協する部分がないとだめである。前々から,音声変換装置は障害者のための機械であり,障害者認定されているものである。それについて,少し努力していただければ,その中でどこまで使えてどうするかの話もできるわけです。それも拒否されており,どこで妥協するかである。」と述べた。
h D委員は,「よその議会で認められている代読という方法がなぜ認められないのかという論議も出てくる。」旨述べた。
被控訴人Y5委員は,「それは立候補された経過だと思う。学歴詐称で立候補して当選した国会議員が,辞職しなければいけない事態があります。しゃべれるということを前提に立候補されて,予定されているようにいかなかったということは大変だと,そうは簡単にいかないと思っています。もうひとつは,選挙という厳しい関門をくぐり抜けてきたわけです。選挙というものは,投票した人がどうして投票してくれたかまで考えないといけないと思っている。基本的にもともと障害が固定したものとして,そのことを前提として立候補し,それを前提として投票した過程がある場合と,そうではなく,変化をする障害の途中の段階で,変化を前提に立候補し当選された。それを前提に投票した選挙とは基本的に違うと思います。そこまで遡らないといけないというところがある。基本的なことを言うと選挙そのものも問われるべきものだと思っている。なぜなら落選した人がいるからです。無投票選挙ならよいです。そういう問題もはらんでいるということです。だから他の議会がどう決めたかは参考になりますが,市議会の問題ではない。」と述べた。
i 被控訴人Y10委員長は,「慣れてくるまでは他の人にお手伝いいただいても,まずやってみてくださいという意味で言っており,できないから譲歩するということで言っているわけではない。」と述べた。
j 被控訴人Y5委員は,「前Y14委員長のときに決めたことは,本来は,口頭,発声がないと議事録ができないから,当選されても一般質問できないことになってしまう。そういうことを承知していたわけです。それを妥協して産物としてあるわけです。人権を認めてこのようにやろうと決めた。」と述べた。
k 被控訴人Y10委員長は,「議運でこういう議論をし,本人のために譲歩したという結果が議論として残ります。会派にお願いしたことはよろしいですね。」と確認した。他の委員は異議を述べなかった。被控訴人Y10委員長は,「C委員には,会派内で頑張っていただいて30日の議運で協議します。」と締めくくった。
ウ 平成17年9月26日開催の議会運営委員会(甲60)
(ア) 被控訴人Y10委員長は,「一審原告の件で,要約をまとめる作業をしており,その要約の中身として,パソコン等による発言が優れている点は,読み違いがなく,本人の意思がきっちりと伝わること,代読による抑揚がなく,第三者の個人的な表現が省かれ,発言内容が相手に素直に伝達できること,職員が代読すると誤読,感情が出る場合があり,やり取りは人を使うとその人の考えが入るから,機械による変換装置がベターであることであり,一審原告の主張する代読で不十分な点としては,議会での発言は選挙で選ばれた人だけが持ち合わせているのが現状であるが,代読となると選挙で選ばれていない人が演説をすることになり,本人が意図する発言内容と異なった発言が行われる可能性があること,公選人以外の人が自分の意思で発言してしまうことはいかがなものかということ,職員が発言するとパフォーマンスはないが,議員の発言にふさわしくない迫力のものとなること,代読した人がパフォーマンスにより,次の選挙にその機会を利用して立候補することに利用される可能性もあること,誤読したことにより,代読者の責任が問われる可能性があることといったことを考えている。」と報告した。
(イ) 被控訴人Y5委員は,「障害者のひとつの考え方としては,残された能力を生かして自立をしていくという方法があります。議会のみでなく,ありとあらゆる日常生活において,発声できない方が補助具を使ってコミュニケーションを図っていくということ,そのことが大事である。議会だけを限定して人権侵害だと言っているが,そうではなくて日常的に活動できるのが議員としての役目,立場ですから,それをどうするのか。すべて代読者がついて回るのかというと考え方がおかしくなるので,自分で自立してできるような形で努力をしてもらう。努力を拒否しているというわけではないが,嫌いだ,やったことがないという言葉で表現をしているが,ポイントはそこだと思います。」と述べた。
(ウ) 被控訴人Y10委員長は,これまで,パソコンという表現を多く使っていたが,これからは会話補助装置(パソコン及びトーキングエイド等)という名称で統一することとし,今回の報告を中間報告とし,引き続き要約文書を検討することを各会派で徹底するよう求めた。
(10) 岐阜県弁護士会人権擁護委員会による調査及び同弁護士会勧告並びに公開質問書に関する経過
ア 平成17年10月24日開催の議会運営委員会(甲61)
(ア) A議長は,平成17年10月12日に,岐阜県弁護士会人権擁護委員会の本審査を受けたこと及びその内容について報告した。
報告内容は大要次のとおりである。
a 人権擁護委員会委員長R弁護士ほか2名の弁護士が審査に来て,発言は口頭に限るなら,何も認めないなら筋が通るが,パソコンを含めた補助具という例外を認めているならなぜ代読は認められないのかとの指摘を受け,また,補助具という機械を用いる場合と代読の場合とでメリットデメリットを比較検討したことがあるかといった質問を受けたので,検討はしていないと回答した。
b これまでの議会運営委員会での経過についての確認と,それに対して説明をした。
c 鎌倉市議会に対する調査の回答書を渡され,これを読んで回答があればいただきたいし,無回答でも構わないと言われた。
(イ) 被控訴人Y10委員長は,岐阜県弁護士会人権擁護委員会に対する鎌倉市議会の回答書を全委員に配布した。
(ウ) S事務局長は,亀山市議会議員から抗議の電話があったこと及び京都府井手町議会議員から抗議のメールがあったことを報告した。
また,被控訴人Y10委員長は,抗議は葉書が905通,点字が185通来ていると報告し,弁護士に相談することも検討している旨述べた。
(エ) 被控訴人Y10委員長は,岐阜県弁護士会人権擁護委員会の調査に対し,議会運営委員会は,まず補助具を使ってみてほしいと頼んでいるのであって,代読を認めないという結論は出しておらず,一審原告の人権を侵害しているつもりはないこと,補助具によることが一番よいことを話したが,勧告が出る可能性もあるのでないかという印象であると述べ,これに対する対応をどうするか,各委員から率直なご意見を出してもらい考えていきたいと提案した。そして,各委員から次のような意見が出された。
a 被控訴人Y1委員は,市議会も本当に一審原告の人権を侵害しているか,議会活動を保障していないのか,法的見地から対応すべきだろうとの意見を述べた。
b 被控訴人Y3委員は,議会運営委員会としては,会話補助装置を導入し,それでもだめだったら次を考えるということで申し合わせてきたのであるから,簡単に譲歩するわけにはいかないとの意見を述べた。
c 被控訴人Y5委員は,一審原告は医学的に機械の操作ができないのかどうか,きちんと診てもらって確認しておく必要があると述べた。
d D委員は,「本人の肉声が原則だということから始まって,本人は発声できると思っている。未だ発声できないために,議運に来て発言することもできず,会派の代表を通すため,なかなか意思が通じず,色々法的手段も考えたのであろうから,どこかで両方できる方策を考えるべきだ。」との意見を述べた。
e C委員は,「代読を認めていくべきだ。一審原告が発言できなかったことで,執行部に対し直接質問事項を出したこともあるが,時間も掛かるため,本会議場で一般質問ができるようにするべきだ。」との意見を述べた。
f 被控訴人Y21委員は,「一審原告は,議会運営委員会に対して,機械を使うことはできないという意思表示をしたことがなく,段階を踏んでいないのではないか。」と述べた。
g D委員は,「本人は,機械を使うことを認めて練習しなさいということで捉えてみえるものですから,とりあえずやってみることに対してバツの意思を表示している。条件的なことを持ち込んでいくことに反発をしている。本人のいう代読,もしくは音声変換機器についてルールができあがればよいと思っているが,本人が納得しない問題は,機械を使えるかどうかを試しなさいということに対して,既に反発を持っている。」と述べた。
h 被控訴人Y2委員は,「本人の障害を支援するという立場で補助具を勧めているわけです。本人のために一番よいことだと判断しているわけです。補助具を使うことは本人にとって体力的にもよいことだと思います。その時点で拒否されるということになると,議運のあり方として考えた場合,原理原則肉声でということで,原点に戻らないといけなくなる。」と述べた。
i 被控訴人Y1委員は,「法的に対応を考えていく方法しかない。そもそも平成15年の選挙のあり方が問題であった。一審原告が声の出ない障害者として選挙戦を戦い市民の信任を受けて当選されていれば,違った結論が出せたかもしれないが,B委員は,当時,議会運営委員会において,リハビリをして,早ければ3か月ないし半年後には声が出ると説明し,その後,声は出ると市民に訴えて二期目に当選しているということを念頭に置かないと市議会は冷たいように捉えられてしまうのではないか。」との意見を述べた。
j D委員は,「議会運営委員会として,一般質問の壇上では機械を使って,再質問の際には代読という方法もあるという含みを持って一審原告に示し,それでもだめなら私も一審原告におかしいと言うつもりだ。壇上での発言,再質問,委員会を分けて考えた場合に一つの条件のようなものを議会運営委員会として提案できないかということを議論してもらえないか。」と述べた。
k 被控訴人Y2委員は,「本人が使ってみてどうしてもだめだと言っているのなら分かるが,一度もトライせずに言っていることは,目が悪い人が眼鏡をかけずに手を引いてくださいと言っていることと同じだと思います。声が出ないことは,生活にかかわることであるから,補助具として眼鏡と同じようにあるわけです。一度もしないまま人権侵害だという考えは飛躍しすぎて,障害者に対する偏見になってしまうのではないか。だめだからステップできることで,前から議運で言っていることをやってみてくださいと,支援するからということで,その支援を断っていることは人権擁護の問題でないと思います。議会としてもなんとか支援する努力をするので,本人も支援を受ける努力をしてほしいということである。」と述べた。
(オ) 被控訴人Y10委員長は,上記の議論に対し,両方の意見が出ており,無理に結論を出すことはできないとして,一旦,議論を切り上げ,議会運営委員会の議論及びその経過を市民に知ってもらう必要があるのではないかという意見もあると紹介し,これと併せて継続審議とした。
イ 一審原告の後援会であるこぶしの会及びX中津川市議の市議会での代読を求める賛同者一同は,平成17年11月8日ころ,A議長及び被控訴人Y10委員長に対し,平成16年8月に提出された多数の署名を添えた陳情書の要望事項に対して議長としてどう応えようとしたのか,障害者議員について全国に例をみない議会活動の差別をしていることについてどう考えているのか,一審原告の発言通告書の受け取り拒否の根拠は何かといった内容の「発声障害を持つX市議の代読を求める公開質問書」(以下「公開質問書」という。)を提出した。(甲62,116の1)
ウ 岐阜県弁護士会は,平成17年11月16日,同会人権擁護委員会の調査結果に基づき,市議会に対し,代読を認めるよう勧告した(甲19。以下「弁護士会勧告」という。)。
勧告の要旨は次のとおりである。
(ア) 勧告の趣旨
中津川市議会及び同議会運営委員会は,申立人(一審原告)が,市議会及びその所属する委員会において,事務局職員による代読による方法をもって発言することを認めるよう勧告する。
(イ) 勧告の理由
申立人は,議員であるが,下咽頭がんのため自ら発声することができない状況にある。申立人は,本会議や所属委員会において,代読または申立人ができる方法により一般質問を許されるよう求めてきたが,議会運営委員会は,発言は口頭によるのが原則であるとして,申立人の希望する代読ではなく,まずはパソコンによる音声変換装置を利用しての発言を認めるとして,事実上代読による発言方法を認めない。
そのため,申立人は議員として本会議や各種委員会で,事実上発言することができない状況におかれている。これは申立人の参政権,表現の自由を不当に制限するものであるので,救済措置を求める。
エ A議長は,平成17年11月22日,同日開催の議会運営委員会おいて,弁護士会勧告について,委員会で検討するよう諮問した(甲62)。
オ 平成17年11月22日開催の議会運営委員会(甲62)
被控訴人Y10委員長は,弁護士会勧告に対する処理を会派で持ち帰り協議してもらうことを提案し,委員は異議なく承認した。
カ 平成17年11月28日開催の議会運営委員会(甲63)
弁護士会勧告に対する対応について,各会派の意見が報告された。
(ア) 各会派の意見の要旨は次のとおりである。
a 新政会
今まで真剣に議会運営委員会で議論されてきており,一審原告に対し,議会ルールに従って活動していくことをお願いした経緯があること,一審原告は,議会ルールを無視して障害者という立場で言われていたが,この状況は市議会として不名誉であり,心外であるため,お互い一歩踏み出して歩み寄りを模索していきたい。
b 市民クラブ
平成16年9月21日の議会運営委員会で,総論として,障害がある議員が,職責を果たせるよう最大限の配慮を行うことを確認しており,弁護士会勧告では,人権について色々と書かれているが,議会運営委員会はさしあたり音声変換装置を使用するという決定であり,他の方法も模索していたのも事実であるから,人権を尊重するバリアフリーについては考えた範疇であり,具体的な接点を見いだして折衷案を求めていくことがよい。
c 共産党市議団(C委員)
弁護士会勧告どおり事務局職員による代読を認めるよう各会派にお願いしたい。
d 社民クラブ(被控訴人Y11委員)
弁護士会勧告は,中津川市議会の対応について評価していない。現状面だけ捉えて同勧告が出ているので不満に思っている。議員として選出された重みと責任に触れようとしないことが残念で,本人にも熟慮してもらいたい。他人の力を借りるのは最後の手段で,一審原告が自分の力で打開していくということが見えない。それぞれの立場を考えて発言できるよう言っているのに,すべて悪意に捉えられていて残念である。議会としてはルールに従って結論を出したことを,弁護士会勧告が出たからといって,何らか努力したことが認められない限り,ひっくり返すことはできない。努力したことが分かればそれ以上のことはいけないが,我々の出した結論を取り入れてもらいたい。
e 市民ネット21(D委員)
今までの考えと変わっていない。音声変換装置も否定しないし,代読もよいと思っている。折衷案という意見もよいと思う。
f 市議会公明党(被控訴人Y12委員)
弁護士会勧告については圧力をかけられているような気がする。一審原告が議会活動できるよう全会派で決めたことを,一審原告は一度も実行することなく出された勧告である。今後のことについて,今回のことを契機に考えるべきである。
(イ) C委員は,障害者の介助については,障害者の希望を最優先することが大事であり,なぜ一審原告がパソコンを使えないのかを聞く必要があり,発声状態の確認もする必要があるため,一審原告を参考人として議会運営委員会に呼ぶことを提案した。同提案に対し,次のとおりの意見が出された。
a 被控訴人Y10委員長は,各会派から,折衷案という意見が多数出ており,これについて会派で検討したことがあれば議論したいが,一審原告に入ってもらってパソコンを使えない理由を聞いても混乱するだけではないかと述べた。被控訴人Y1委員は,これに同調し,「議論の中で,もし使えなかったら第三者による入力をお願いしてある。」と述べた。
b 被控訴人Y5委員は,「障害者である方を参考人で呼ぶことについては,申し合わせルールを決めていない。どういうルールで彼の意見を聞くのかを決めないといけない。先に弁護士会勧告を受けているので,それを決めておかないと一審原告を呼ぶことはできない。9月21日に決めた陳情の結論の重みも同じである。」と述べ,一審原告を参考人として同委員会に呼ぶことに反対した。
(ウ) 被控訴人Y10委員長は,これらの発言を受け,「その辺も議論して精査していかないといけないと思いますが,歩み寄りもしながら進めていきたい。弁護士会勧告の中身に不服がありますが,これからの歩み寄りをどうするかであります。この議論の経過により歩み寄りができることがあればいいと思っております。」と述べた。
(エ) C委員は,共産党市議団として,一審原告が12月定例会に発言通告書を提出した場合の対応として,一般質問40分,再質問10分という申し合わせ時間の中で,登壇の一般質問については音声変換装置を利用し,再質問については一審原告のメモを見て事務局職員が代読するという折衷案を提案し,議会運営委員会がこれでよいのであれば,議会運営委員会を休憩してもらい,一審原告に伝えることはできると述べた。
各委員は,上記折衷案について了承した。
C委員は,一審原告を含めて共産党市議団で再度議論したが,人間の声による代読しかできないという結論になったとして,折衷案を取り下げ,11月30日に一審原告の発言通告書が出たら受理して議論してもらいたいと要望した。
(オ) 被控訴人Y12副委員長は,C委員に対し,「純粋に一般質問をやらせてほしいという気持ちなのか,その他に目的があるのでないか。議員団からの提案なのに受け入れられないのは目的が違うのでないか。」と尋ねた。C委員は,分からないので,一審原告を参考人として呼んで聞くよう提案した。
(カ) C委員は,「一審原告の発言を議運として抑えるわけでないので,発言通告書を受理して次を審議するということです。声が判読できなければどう広げて考えるべきで,そうしないと今回も発言を封じられたということになる。12月をどうするかですから,出てきて受理してどうするかである。」と述べた。
(キ) 被控訴人Y10委員長は,「先ほど折衷案を議会運営委員会として了承したということを重要視しなければならない。」旨述べた。C委員は,「折衷案は審議の過程であり結論ではない。発言通告書を受理してもらい,議場での発言伝達方法を議運として考えるべき。12月議会に出た通告書を受理すれば,一般質問しようとする場合,口頭ではできないので,やろうとすれば議運の決めた方法しかないわけである。それが嫌ならやらないというだけで,発言を封じたことにはならない。」と述べた。これに対し,被控訴人Y1委員は,「同じことだと思う。受理して議運で提案したことを持って行っても発言を封じられたと言われるのではないか。」と述べた。
(ク) 被控訴人Y1委員は,「今日の結論として出していただき,結果を確認していただいて一審原告にお伝えすることでいいのでないか。」と提案した。被控訴人Y10委員長は,「説得する時間をとって,議運で確認したルールに従ってやっていただくことをお願いしたいと思います。そして,一度やっていただいて,不都合な点があれば見直していくことも申し合わせておりますので,是非,一審原告にはトライしていただきたい。」と述べた。
(ケ) D委員は,「非公式でよいので,一審原告の意向を聞いてもらえないか。」と提案した。被控訴人Y10委員長は,「本日時間があれば対応する。」と答えた。
(11) 平成17年12月定例会における一般質問の発言通告書を巡る経緯(甲64,65,100の2)
ア 一審原告は,平成17年11月30日ころ,A議長に対し,「発言通告書の提出にあたって,このたびの県弁護士会人権擁護委員会による勧告を受け入れ,私の代読による発言が,すべての議会活動(本会議,各種委員会)で保障されるよう特段のご配慮をお願い申し上げます。」と書き添えて,中津川市の障害者,高齢者の防災対策について中津川市長に答弁を求め,発言所要時間30分,発言内容として手書きでA4用紙7枚分が記載された一般質問の発言通告書(甲100の2)を提出した。
イ A議長は,市議会事務局預かりになっているとして,同発言通告書の取扱いについて,議会運営委員会に諮問した。(甲64)
ウ 平成17年11月30日開催の議会運営委員会(甲64,65)
一審原告の提出した発言通告書の取扱いについてなされた審議の経過は次のとおりである。
(ア) 午前9時30分から午前9時57分の間の審議(甲64)
a 被控訴人Y1委員は,「先の議会運営委員会において,一審原告の一般質問における発言方法については音声変換の補助装置による壇上での発言をし,再質問は代読でもよいとの結論及び補助装置の操作は本人ではなくても事前にできるので,市の職員が行うことも認めることが確認されており,当該結論は一審原告本人にも伝わっていると認識しているので,それに従うのであれば一審原告の通告書を受け取ってもよいのではないかと思う。」と述べた。
b 被控訴人Y2委員は,「前回の議運でルールを決めて,それを一審原告に申し入れた上で通告が来ているわけで,議運のルールに従ってやっていただければよいですが,それがいやなら仕方ない。今は,議運で決めたルールを遵守してもらうことで,一審原告に話をしてもらえればよい。」と述べた。
c 被控訴人Y5委員は,「通告書を出したと言うことは,発言したいという意思表示ですが,我々が持っているルールは,議運で決めたルールしかないわけです。そのルールしかないので,従ってやることで発言通告書が出たのか,代読という主張だけで出したのか,そこを確認していただいて,受理できるかどうか決めたらどうでしょうか。今,あれこれ言ってもそのルールしかないわけですから,今の時点で判断するには,それしかないと思っている。発言したいという意思が強いのなら,今ある方法に従ってもらうしかない。発言が目的でないのなら,代読が目的なら違う考えがあるだろうと思いますが,一審原告は議員なのですから,発言をしたいということを優先するべきだと思います。」と述べた。
d D委員は,「弁護士会勧告が出たことについて,弁護士会から市議会に対して,あなた方の取扱いは間違っていることで来ている気がする。だったら,どちらを優先するかという話になるかと思いますが,各会派からの妥協点だけでなく,弁護士会勧告をどう受け止めるか論議しないといけない。」と述べた。被控訴人Y10委員長は,「そのことは22日の議会運営委員会で会派へ持ち帰りとして,28日に弁護士会勧告のことを含んで議論してきた。上記議論のまとめとして,議会運営委員会はルールを作ってきた経過があり,本日,議会において委員長報告をする方法に従ってやっていただければよいが,そうでなければだめだ。これから一審原告に確認する。」と述べた。
e C委員は,「本人が出したということは,当然,このルールに基づいてやるものだと思います。本人の希望の代読も含まれていても,パソコン等で変換することについて,発言しないということが出たとしても,通告した何パーセントを読まないというだけで,壇上に行って始めるということだけなんですよ。認めた上での発言通告だと解釈してもらわないと議論にならない。言葉を発しなくても再質問はできるわけですから,そのときの状態もあるわけですから。」と述べた。
f 被控訴人Y5委員は,「本会議の開会時間が迫っているため,発言通告は預かりという形で,本会議終了後開催される議会運営委員会において継続協議にするしかないのではないか。」と提案した。被控訴人Y10委員長がその旨他の委員に確認したところ,他の委員は異議なく承認した。
(イ) 午後5時20分から午後6時55分までの間の審議(甲65)
a 被控訴人Y10委員長は,「午前中の審議結果として,議会運営委員会としては28日に決定した方法で発言するか一審原告に確認するということだったかと思う。」と述べた。
D委員は,「本人が代読という方法で示されたなら,代読の方がよいのでないかと思う。」との意見を述べた。
被控訴人Y10委員長は,「28日に決定しておいて何をしているのだということになる。今日,委員長報告もいたしましたが,それが変わっていたとなれば,議会とはどういうところなんだろうということになる。」と述べた。
b C委員は,「本件は代読でということで本人の確認が取れており,本人の希望とされる代読が一番であり,今回に限っては一審原告の希望に沿った形の代読,音声変換をやったほうがよいと思う。」旨述べた。
D委員は,「音声変換装置でも人でも代読ということを言われたが,代読を認めることが正しい選択だと思う。あえて変換機は否定しませんが,本人の希望を尊重したらどうですか。」と,11月28日に申し合わせた折衷案に反対する意見を述べた。
被控訴人Y5委員,被控訴人Y11委員を始め他の委員は,28日の折衷案の方法により行っていただきたいとの意見を相次いで述べた。
被控訴人Y10委員長は,「28日の意見が多いようですので,28日の内容でやっていただけるか一審原告に確認をしたい。それに皆さん賛同してもらいたい。」と提案した。他の委員は,異議なく承認した。
(ウ)a 被控訴人Y11委員は,「代読は常に人を配置しなければいけないので,本人のやれる範囲でやるべきである。まったくできなければ別であるが,できないことを言っているわけではない。一審原告も自分のホームページを開設して扱えるということであるので,協力者にやってもらえばよいのに,なぜ,それができないのか。そこまで代読にこだわるのが分からない。」との意見を述べた。
b C委員は,上記の被控訴人Y11委員の発言を受け,そういう意見があるので,参考人として一審原告を呼び,意見を述べてもらうよう提案した。被控訴人Y10委員長もこれに同意した。
これに対し,被控訴人Y5委員は,「一審原告を参考人として呼んだ場合,どのように意思表示を受けるのか,そのルールが確立されていないので,そのためにまたルールを作らないといけない。」と反対意見を述べ,「現時点では申し訳ないですが,議運の正副委員長がメモ書きでよいので,一審原告の意思を確認していただいて委員会へ報告してもらい,委員会としてこういう対応であると確認するほかないのではないか。」と提案した。
c 被控訴人Y2委員は,「受理する受理しないということでなく,受理しますが,こういうルールに従ってもらえますかという確認をするだけである。」との意見を述べた。
被控訴人Y10委員長は,議会運営委員会を休憩し,正副議長と副委員長の立会の下,一審原告の意思を確認することにした。
(エ) 被控訴人Y10委員長は,議会運営委員会の休憩中,副委員長,正副議長の立会の下,一審原告に対し,「28日の議運で決めた,40分の壇上は会話補助装置を使用し,再質問10分はメモを市職員が代読するという形でやっていただけますか。」と尋ねた。
これに対し,一審原告は,「弁護士会勧告で言われているように代読による発言でお願いします。そうでないと同勧告で言う人権侵害を認めることになるからです。議会のルールは憲法違反と言われていますがよいのですか。」と答えた。
(オ) 被控訴人Y10委員長は,上記の一審原告とのやりとりを議会運営委員会に報告した上で,「結論を一審原告にお伝えしないといけません。ルールに従ってやってもらえなければ,受け取れないとせざるを得ないですがよろしいですか。」と提案した。D委員は「本人の希望を受け入れなければと思っている。」と述べたが,他の委員は,被控訴人Y10委員長の提案について,異議を述べなかった。
(カ) 被控訴人Y5委員は,「弁護士会勧告の論理展開は,音声変換装置を使うことは実用性に疑問があることと,やり取りに熟練が必要なことが書いてあり,本人はパソコンを使用したことがないので熟練がいることは困難である。したがって問題であると書いてある。我々が求めていることは,簡単に言えばスタートボタンを押してくださいということを求めているだけです。そうすれば熟練は必要ないことになり,弁護士会勧告に書いてある問題点はクリアされます。このことに立って憲法違反だと言っている内容は憲法違反ではないということになります。同勧告を何回と読んでもらうと分かりますが,やや変更された書き方で統一されているので,憲法違反だと結論付けていると思います。」との意見を述べた。
(キ) 被控訴人Y10委員長は,「結論を出しますが,議運の出したルールに従ってやっていただけないということですので,受理できないということでよろしいですか。」と再度提案した。他の委員は,異議なく承認した。
被控訴人Y10委員長は議会運営委員会を休憩した。
(ク) 被控訴人Y10委員長は,休憩後,「一審原告に対し,再質問については代読を認めているが,一般質問は会話補助装置等を使っていただけないということであれば,通告書は受理するわけにいきませんと確認をし,発言通告書を一審原告に返した。」と報告した。
(ケ) 被控訴人Y5委員は,「常任委員会及び特別委員会における原告の発言保障について,急にボイスエイドを使って発言せよと言っても不十分であるから,委員会の席においては,予め準備できるものは機械を使ってもらい,即時性を要する場合は当該委員会の委員長にメモを渡して同委員長が読み上げるという方法を提案する。」旨述べた。
被控訴人Y10委員長及び被控訴人Y3委員は,「当該委員会の委員長に限定するのでなく,副委員長が読み上げることもできるよう委員長裁量で行えばいいのではないか。」と提案した。
他の委員は,これらの提案を異議なく承認した。
エ 平成17年11月30日開催の同年第6回定例会の本会議(乙ロ1)
被控訴人Y10委員長は,一審原告に関する問題について,議会運営委員会での議論の経過の報告を行った。
オ 一審原告は,A議長と被控訴人Y10委員長に対し,平成17年12月9日付けの手書きの書面及び同月14日付けのワープロソフトで作成された「「X議員に関する議会運営委員会の経過報告」について」と題する書面を提出した。(甲127,乙イ7)
同書面は,12月定例会の本会議で行われた被控訴人Y10委員長の行った「X議員に関する議会運営委員会の経過報告について」(以下「経過報告」という。)についての一審原告の意見と疑問点を記載したものであり,同経過報告の回収と,議事録からの削除を要求するものであった。
カ 一審原告は,平成17年12月15日,市議会の文教消防委員会において,同委員会副委員長が代読する方法で質問を行った。(甲22,120,一審原告本人)
キ 平成17年12月20日開催の議会運営委員会(乙イ7)
(ア) 一審原告が提出した上記オの各書面の取扱いについて,協議がなされた。
a 被控訴人Y1委員は,「議会運営委員会は市議会の円滑な運営のために各会派の代表が集まって調整する場であり,共産党市議団の代表であるC委員が議会運営委員会に出席しているのに,なぜ一審原告から直接このような文書が届くのか。共産党市議団内部ではどういう対応がされているのか。」と質問した。
C委員は,「従来から議会運営委員会で決められたことは一審原告に報告しており,今回の件は,一審原告自身の意見であり,会派がこれを抑えることはできず,この一審原告の意見については,共産党市議団としては,議会運営委員会で審議してもらいたいという意見になった。今回ですと,回収と議事録からの削除を要求するものが会派の意見です。」と述べた。
b 被控訴人Y10委員長,被控訴人Y11委員及び被控訴人Y5委員は,「本会議において,議員全員が承認したことであるから,簡単にこれを覆すことはできない。」旨の意見を相次いで述べた。
議会運営委員会は,経過報告中,「鎌倉市議会,静岡市議会,東久留米市議会の例を参考にして」と,表現を修正するに留まり,経過報告の回収や議事録からの削除は行わないとの決定をした。
(イ) 一審被告市執行部のT部長は,議会運営委員会において,「一審原告は,一般質問以外の質疑等で代読が許されるのか。これに対し,執行部として答弁すべきかどうかを判断する必要があるので,ご確認をお願いしたい。」と述べたことから,議会運営委員会は,これについて協議した。
a C委員は,一審原告が作成した質疑のメモを読んで,これを質疑として取り扱ってもらいたいと述べた。
b 被控訴人Y5委員は,「議会運営委員会での申し合わせは,予め用意できるものは委員会においても会話補助装置を使い,臨機応変にその場で判断しなくてはいけないものは,代読で行うほかないという折衷案であった。実際に一審原告の所属する各種委員会での運用状況については,一審原告が予め文書を用意し,これを代読するよう求め,代読したと聞いた。議会運営委員会で申し合わせたルールと運用に齟齬があり,本来は,たとえ1分の言葉であったとしても予め用意できるのであれば,会話補助装置を使うべきであり,本会議においても,事前に作成した文書を渡して代読を求めることはルールに違反する。」旨の意見を述べた。
c 被控訴人Y1委員は,「基本的には準備できないものは代読を認めているので,本会議場においてもやむを得ないが,各種委員会での一審原告の発言を傍聴したところ,明らかに長い内容のものがあったので,これは簡略化した端的な質問事項だけを代読してもらいたい。」と述べた。
d 被控訴人Y2委員も,「一審原告は各種委員会で予め用意していた原稿を持っていた。発言のうち,一審原告の思い,意見を述べる部分が8割ぐらいで,質問は最後に一つ,二つ程度であり,事前に用意していたことが明らかであって,そのようなことが多数あった。採決の後に質問をする場面もあったので,すぐに取り消してもらうなど,議会運営委員会での申し合わせどおりに行われていなかった。」と報告した。
e 被控訴人Y10委員長は,「平成17年12月定例会の最終日である同月22日開催の本会議では,討論は事前通告制になっているので,一審原告には会話補助装置を使用してもらう必要がある。本会議における質疑については,一審原告がその場で書いたメモを読むという方法によることになり,このメモを誰が代読するのかといった問題があるが,共産党市議団に行ってもらえれば互助の精神が発揮でき,事務局職員を使うためには,しっかり議論する必要がある。」と述べた。
f 被控訴人Y2委員は,「一審原告の各種委員会での発言状況は,委員長,副委員長が,質問だけでよいのではないかと言っても,本人はすべて読めという強い姿勢であった。本会議における質疑については,C委員に共産党市議団の代表として,議会運営委員会が申し合わせたルールを分かっているので,一審原告の作成した文書を見て,質疑事項のみを代読してもらいたい。」と述べた。
g 被控訴人Y10委員長も,「先の委員会の反省に立ってやっていかないといけない。」と述べた上で,重ねて,「共産党市議団で代読をお願いしたい。」と述べた。C委員は,これを承諾した。
h A議長は,一審原告の質疑については,メモを書く時間は間を取って書いてもらえばいいと述べた。
i 被控訴人Y1委員は,議場での一審原告の席とC委員の席が離れていることから,C委員に対し,代読をする場所について確認した。
C委員は,一審原告が手を挙げたら,自分が一審原告のところまで行き,一審原告のマイクを使って行うと述べた。被控訴人Y2委員もこれに賛同した。
j S事務局長は,一審原告が質疑のため,挙手をした場合,議長が一審原告を指名して,C議員が代読することを言ってもらった方がいいかどうかについて確認を求めた。被控訴人Y2委員は,議長がC議員も指名して代読することでどうかという意見を述べた。
k 被控訴人Y10委員長は,委員会のまとめとして,一審原告が予め用意できるものは会話補助装置を使って発言してもらい,質疑については,その場でメモを書いてもらい,代読を行うこと,平成17年12月22日の本会議では,C議員が代読することとすると述べた。他の委員は,異議を述べず,これを承認した。
(12) C議員の代読による質疑とそれに関する経緯
ア 平成17年12月22日開催の同年第6回定例会の本会議(甲86,原告本人)
(ア) 同本会議において,一審原告は,被控訴人Y10委員長の行った議会運営委員会の経過報告について,C委員の代読により,質疑を行った。その際,C委員は,代読のため一審原告から渡された文書の一部について,同議員自身で判断し,代読しなかったが,一審原告は,その場で直ちにC議員に訂正を促すことができなかった。
(イ) 一審原告の上記質疑の内容は,本来各会派で事前に連絡,議論されているはずの問題であったため,A議長は本会議を休憩し,被控訴人Y10委員長が臨時に議会運営委員会を開き,一審原告の質疑内容について審議した。
イ 平成18年1月23日開催の議会運営委員会(甲87)
C委員は,同委員会において,「平成17年12月22日開催の同年12月定例会の本会議で一審原告の質疑の代読を行った際に,一審原告から渡された文書のうち,一部を自己の判断で読まなかった。一審原告から,正しいと思ってやったことでも,代読者が解釈,判断して読まないというのは代読ではないと言われた。改めて臨時会では代読者を変えた方がいいと思う。私が行うのは12月限りの暫定的なものであり,次回からは事務局にお願いしたい。」旨申し出た。委員会は,この申出について協議した。
各委員の意見は次のとおりである。
(ア) 被控訴人Y5委員は,C議員による代読は,12月定例会だけの暫定的な措置ではなく継続性のあるものだと認識しており,一審原告の任期期間中はC議員にやってもらえればよいのではないかという意見を述べた。
(イ) D委員は,本来事務局対応がよいかと思ったが,同一会派でやることで整理して,試験的に行われたものだと解釈したと述べた。
(ウ) 被控訴人Y10委員長は,C議員が,一部代読しなかったことについて,「すばらしい判断をしてくださったと思います。」と述べた。
被控訴人Y2委員は,「だからこそ事務局に任せることができない。発言が適正か判断できる人が代読しないといけない。何でもメモをもらって発言すればいいというものではない。ある程度判断ができる者がやらないと本人の意思が伝えられないし,議会の議事内容にあっているかの判断がいるので,職員では難しくおかしな方向に行ってしまう。逆な面で不備ができてしまう気がしますので,その辺を良く考えておかないとまずいと思う。」と述べた。
(エ) 被控訴人Y11委員は,「事務局職員を巻き込みたくない。議員同士なら,特に同一会派ならあとはどうにでもなる。事務局が引き込まれたら困ってしまうので,議員団でやってもらいたい。」と述べた。
(オ) 被控訴人Y3委員は,「争点になっている部分で,皆が心配していることなので,事務局がやることにならない。一審原告側では,第三者によって変えられることはだめだと言っているわけですから,きちんと議運で結論を出すべきだと思います。」と述べた。
(カ) 被控訴人Y5委員は,「自助,共助,公助であります。自助はなかなかやらないということなので,共助でやってもらう。それができなくなったら公助でやるという順番であります。同一会派でもCさんがすべてやらなくても他にもいらっしゃいますので,順番にやってもらったらと思います。」と述べた。
(キ) 被控訴人Y12副委員長は,「その議題にあっているかの判断について,職員は違っていると思っても議員から出されたものを読まないわけにはいかない。そこまで職員に負担をかけるのはいかがなものかということで,同僚議員であればということで出発しているか分かっているので,交替でやっていただけたらよいと思います。」と述べた。
(ク) C委員は,「代読という本人の意思を伝えるところが変わってくるということです。職員なら合わない発言であったとしても全部読んでいくことで,問題になる発言になるかもしれないが,発言そのものが場内に伝わっていく代読からすると,僕らがやると伝わらないので,ストレートに読む職員の方が正確でないかと思います。」と述べた。
(ケ) 被控訴人Y10委員長は,上記の議論をまとめて,「自助,共助,公助の順番になります。議会の問題ですから,議員自ら助けるところは助けようということで結論を出してきたわけです。その辺のところで問題もあったかもしれませんが必ず定着すると思いますので,ぜひ,会派の中でご努力をお願いしたい。」と述べた。他の委員は,異議なく承諾した。
(コ) 被控訴人Y10委員長は,「議運で確認しております会話補助装置について,議場でデモを準備しておりますので,この議運の最後にまず委員の皆さんに確認していただきたいと思っております。」と述べた。
(13) 平成18年3月定例会における一審原告の一般質問の発言方法を巡る経緯
ア 平成18年2月14日,議場において,議会運営委員会の委員出席の下,音声変換機能付きパソコンのデモンストレーションが行われた。一審原告も,このデモンストレーションに参加し,同パソコンを試用した(甲67)。
イ 一審原告,C議員,B議員,被控訴人Y10委員長,被控訴人Y12副委員長,A議長及び被控訴人Y17副議長は,平成18年2月21日に非公式の話し合いをした(甲128,乙イ8,9)。
ウ 平成18年2月22日開催の議会運営委員会(甲67)
(ア) 平成18年2月14日に行われたデモンストレーションを受けて協議がなされた。
被控訴人Y10委員長は,一審原告から意見を述べたいとの話があったので,一審原告の意見を聞くため,協議会に切り替え,いったん委員会を休憩する旨を告げた。
(イ) 被控訴人Y10委員長は,一審原告の意見を聞いた後,委員会を再開し,2月14日に行われたデモンストレーションの感想を,各会派から述べてもらった。各会派の意見の要旨は,次のとおりである。
a 新政会
想像以上に最新のものは聞きやすかったということです。3年間にわたり議論しており,新政会では新たな意見はありませんでした。
b 市民クラブ
補助装置は有効な手段であると改めて思いました。早く使ってもらい議員としての役目を果たしてもらいたいと思います。
c 社民クラブ
前回の結論どおりでよろしいです。
d 市民ネット21
パソコンも含めて進歩していると思います。前々から言っているとおり,どちらがやられてもいいと思いますが,本人の希望をやることが本位であります。
e 市議会公明党
補助装置はかなりの鮮明に聞こえましたので,やってみてよかったという感想です。それ以外は今までどおりです。
f 共産党市議団
12月議会では,委員会では副委員長の代読,本会議における質疑の代読とありましたが,2月14日も踏まえた上で代読との関係で言いますと,議員が代読することは代読者の意向が入ってしまったので,委員会での発言も含めて職員による代読を発展させていくという意見です。2月14日の議場の感想は,一般質問は緊急的に発言を発展させないといけない場合や,前の人の発言を取り上げて挿入したりすることがあり,壇上での差し替えは難しいことから,本人の希望どおり,市の職員による代読で発言できるよう議運の決定を変えていただきたいというのが会派の意見です。
(ウ) 各会派からの意見が出された後,被控訴人Y5委員,被控訴人Y3委員及び被控訴人Y2委員から補足的な意見が出された。
C委員は,岐阜県弁護士会人権擁護委員会の勧告を踏まえ,「一審原告の希望を取り入れることがされていないところに問題がある。一審原告が納得してパソコンを使うのならいいが,一審原告は議会に対し自分の声か代読かと言っているところで,代読を認めることが議会としての必要な最少の介助であると思う。」と述べた。
(エ) これに対し,被控訴人Y2議員は,「代読は認められている。委員会も認めている。再質問も質疑も認めている。ただ,長時間の代読は,代読者に負担をかけることも考えて,しかも正確に代読することができる代読でないという見解は一方的であると思う。一般質問は通告制になっているので,事前に準備できるものは会話補助装置を使ってもらい,一審原告の参政権も保障している。」と述べた。
また,D委員は,「一審原告がキーを押すことに抵抗があったのが,今回初めてデモンストレーションといえど押されているので,半歩くらい進んだのかなという気もするのだけれど,譲歩してきたという認識に立つのなら,代読について,40分間読むことは事務局にかなりプレッシャーになると言われたが,これから事務局で訓練することも必要であると思います。」と述べた。
(オ) 被控訴人Y10委員長は,このような議論を踏まえて,「委員会の発言におきましては,予め用意できるものについては,自分ができるまで当面の間は,事務局が準備して会話補助装置を使い,質疑は副委員長が代読をすることになっております。本会議の質疑については,同僚議員,同じ会派の議員が代読することを決めております。一般質問については,会話補助装置を使っていただきたい。緊急を要する再質問については,議会事務局職員が行うことで決めさせていただいております。代読の解釈にも人間と機械がありますが,機械でも非常に良いという結果を踏まえてやっていただきたいという会派が多いので,その方向でまとめをしていかざるを得ないと思っております。」などと述べ,一審原告の理解を得ることを提案し,了解を得た。
(カ) 被控訴人Y10委員長は,委員会を休憩して,協議会に切り替え,一審原告に上記の点を伝え,その後,委員会を再開して,上記の内容を確認した。
エ 平成18年3月2日ころ,「一審原告の食道発声はマイクを使えば聞き取れるはずである。一審原告は食道発声で一般質問を行うことを希望している。」旨の新聞,テレビ等の報道があった。そこで,この報道を受け,一審原告,C議員,B議員,被控訴人Y10委員長,被控訴人Y12副委員長,A議長及び被控訴人Y17副議長は,議会運営委員会に先立ち話し合った。被控訴人Y10委員長は,一審原告に対し,議会運営委員会で申し合わせた会話補助装置と併せて行ってほしいと頼んだが,一審原告はこれを断った。(甲70,72)
オ 平成18年3月3日開催の議会運営委員会(甲70)
(ア) 被控訴人Y10委員長は,上記の経過を説明し,そこでの一審原告とのやり取りから,一審原告が壇上で発言した場合,全員に聞こえる可能性はないと思うと述べた。
また,A議長,被控訴人Y17副議長及び被控訴人Y12副委員長も,それぞれ「短い時間でありましたが聞き取れなかった。はっきり言って聞き取れない。単語は2箇所くらい分かりましたが,聞き取れるところまではいきませんでした。」と述べ,一審原告の食道発声について,被控訴人Y10委員長の意見に同意した。
(イ) 被控訴人Y10委員長は,一審原告の食道発声の状況から,議場が混乱を起こすおそれがあり,執行部が聞き取れず答弁ができない状況が起こりうるとして,議会運営委員会としては,一審原告の食道発声の方法による発言方法を認めるわけにはいかないと提案した。
(ウ) 上記提案に対し,C委員は「受け取って発言させるべき。本人の選択を希望する方法でやったらと思います。」と述べ,被控訴人Y1委員は,「確認をしていただいたということでございますので,ルールどおり会話補助装置による代読以外ができないということであれば,聞き取れないということですので,受け取れないと思います。」と述べた。
(エ) 被控訴人Y10委員長は,上記意見を踏まえ,食道発声は無理で,議会運営委員会で決めたルールどおりにやってもらうということで,受け取れないことに決めたいと提案した。C委員は退室し,その余の委員は異議を述べなかった。
カ 一審原告は,平成18年3月6日,平成18年3月議会において,食道発声の方法で発言するとして,発言通告書を市議会事務局に持参した。市議会事務局は,議会運営委員会では会話補助装置を使う方法により発言するよう協議で申し合わせがなされており,事務局では,それ以外の方法で発言する場合は発言通告書を受理できないと話し,発言通告書を受け取らなかった。(甲24,71)
キ 平成18年3月6日開催の議会運営委員会(甲71)
市議会事務局長Sは,上記カの事実を報告した。
ク 平成18年3月13日開催の同年第2回定例会の本会議(甲72)
被控訴人Y10委員長は,一審原告の食道発声の方法での発言について,議会運営委員会で審議した内容を報告した。これに対し,一審原告は,C議員の代読により,この点について質疑を行った。
(14) 平成18年6月定例会における一般質問の発言通告書を巡る経緯(甲73ないし75,100の4)
ア 一審原告は,平成18年6月2日,被控訴人Y23議長に対し,女子中学生殺害事件及び教育基本法改悪問題について,発言所要時間を20分として,発言内容として手書きでA4用紙8枚分が記載された中津川市長及び教育長に答弁を求める旨の一般質問の発言通告書(甲100の4)を提出した。
被控訴人Y23議長は,一審原告に対し,発言方法を尋ねたところ,一審原告が事務局職員による代読で行うと答えたことから,「一審原告の一般質問の発言方法は,議会運営委員会の申し合わせで決まっており,議長だけでは良否の判断はできない。」と述べ,上記発言通告書の取扱いについて議会運営委員会に諮問する旨回答して,上記発言通告書を預かった。
イ 平成18年6月2日開催の議会運営委員会(甲73)
(ア) 被控訴人Y10委員長が欠席であったため,被控訴人Y14副委員長が議長を務め,各委員の意見を求めたところ,一審被告Y26委員,被控訴人Y6委員,被控訴人Y21委員,一審被告Y25委員,被控訴人Y12委員,被控訴人Y11委員及び被控訴人Y9委員は,従前取り決めた方法で行ってほしいとの意見で,D委員は,本人の希望を尊重していくのがいいのではないかとの意見であった。
被控訴人Y14副委員長は,これらの意見を踏まえ,従来どおり決められた方法でやってもらいたいという結論を提案し,了解を得た。
(イ) B委員は,同僚会派の議員による代読を提案することについて,予め一審原告と話し合いをし,了解を得たことから,共産党市議団のP議員が一審原告の一般質問を代読することを提案した。
これに対し,被控訴人Y14副委員長は,「議長の諮問に対して結論を出さないと先に進まない。」と述べ,B委員に,皆さんの意見を聞くかどうかを尋ねたところ,B委員は,「新たな提案なので今日結論が出るとは思われない。」と回答した。
そこで,被控訴人Y14副委員長は,議会運営委員会として上記のとおり被控訴人Y23議長に答申することを提案し,了解を得た。
ウ 被控訴人Y23議長は,上記議会運営委員会の答申を受け,一審原告に対し,議会運営委員会への諮問結果に基づき,事務局職員がパソコンを打って入力し,音声変換装置を用いて発言する方法によって質問を行うのであれば受理するが,そうでなければ受理できないとして,発言通告書を受理せず返した。(甲73)
エ 平成18年6月26日午前9時開催の議会運営委員会(甲74)
陳情第8号「X市議会議員の発言を事務局職員による代読による方法をもって認める事」について,被控訴人Y23議長から付託を受け,審議した。
B委員は,「障害者問題として受け止めた場合,明確な差別が存在しているので解消すべきだと思う。陳情者は憲法に抵触している問題だと言っているが,個々の議運の委員はどのように考えるか。」と述べて,委員の意見を求めた。
これに対し,D委員は,「本人の希望する形で収拾を図れるのがベターだと思う。」と述べたが,他の委員は,概ね議会運営委員会で議論した方法で行ってほしいという意見であった。
オ 平成18年6月26日開催の同年第4回定例会の本会議(甲75)
(ア) 一審原告は,被控訴人Y10委員長による,議会運営委員会での審議事項についての報告に対する質疑として,B議員による代読の方法により,「「X市議の発言を事務局職員の代読による方法で認める事」に関する陳情について質問します。弁護士会勧告どおり事務局職員による代読を認めるよう,陳情書が4300人の署名をつけて提出されています。署名数は6月23日現在4800人に増え続けていると聞いています。また,四十数団体からの署名も提出されたと聞きます。この陳情審議がどういうわけか非公開とされたということですが,賛成,反対,どのような討論があって非公開になったのか,多くの市民は本会議上での説明を求めておりますので,お答え願います。」と述べた。
(イ) 被控訴人Y10委員長は,一審原告のいう陳情が議会運営委員会に付託されていることを認めた上で,陳情については各種委員会等が本会議で報告した事例がなく,非公開としたことは議会運営委員会全員で議論して決めたので,会派の代表者から聞いてほしいと回答した。
(15) 平成18年9月定例会における一般質問の発言通告書を巡る経緯(甲25,76,100の5)
ア 一審原告は,平成18年9月4日,被控訴人Y23議長に対し,障害者自立支援法について,発言所要時間15分として,中津川市長及び中津川市健康福祉部長に答弁を求める旨の,手書きで記載されたA4用紙9枚分の一般質問の発言通告書(甲100の5)を提出した。
イ 被控訴人Y23議長は,一審原告に対し,現在示している音声変換装置を用いた方法で発言してもらえるか尋ねたところ,一審原告は,弁護士会勧告による方法で行う旨答えたため,議会運営委員会の決定した方法で発言するのでなければ受け取ることはできないとして,発言通告書を受理せず返した(甲76)。
ウ 被控訴人Y23議長は,上記経緯を平成18年9月4日開催の議会運営委員会において報告した(甲76)。
エ 平成18年9月4日開催の同年第5回定例会の本会議(甲77)
一審原告は,被控訴人Y10委員長の議会運営委員会報告に対し,事務局職員による代読の方法による発言保障を求める要請,抗議が団体署名を含めて1496通届いていることについて議会運営委員会で審議されたか否か,教育基本法改正に慎重を期するよう求める意見書採択への陳情について賛成,反対それぞれの理由は何かといった質疑を,B議員による代読の方法で行った。
(16) 平成18年12月定例会における一般質問の発言通告書を巡る経緯(甲27,78,100の6)
ア(ア) 一審原告を含む共産党市議団の議員4名は,平成18年11月28日,被控訴人Y23議長に対し,「X市議の発言保障問題についての申し入れ」と題する書面(甲27)を提出して,平成18年12月定例会において,一審原告が,同人の意向を尊重した形での一般質問が認められるよう申入れをした。
同書面には,一審原告の平成18年12月定例会における市職員の代読を前提とした一般通告書が受理されなかった場合又は議会運営委員会において,従来どおり,「議運の決定に従った発言方法」でしか発言を認めないとした場合には,共産党市議団は,一審原告の意向を尊重した形での一般質問の実施を求める決議を同定例会の本会議で議員提案し,同本会議初日での採択を求めるつもりである旨記載されていた。(甲27)
(イ) また,一審原告は,平成18年11月28日,被控訴人Y23議長に対し,安全・安心まちづくりについて,発言所要時間を20分とし,発言内容は,ワープロ打ちで,A4用紙6枚分が記載された一般質問の発言通告書(甲100の6)を提出した。
これに対し,被控訴人Y23議長は,再度議会運営委員会で協議するよう諮問するとして,一審原告の発言通告書を預かった。
イ 平成18年11月29日開催の議会運営委員会(甲78)
(ア) 被控訴人Y23議長は,一審原告の発言通告書に対する取扱いについて,再度協議するよう,議会運営委員会に諮問した。
a D委員は,一審原告の選択を尊重すべきとの意見を述べた。
一審被告Y26委員,被控訴人Y6委員,被控訴人Y11委員及び被控訴人Y12委員は,「議会運営委員会で何度も議論し,結論が出ている。一審原告の一般質問については,従来の議会運営委員会の申し合わせどおりの方法で発言すべきである。」との意見を述べた。
b 被控訴人Y10委員長は,ほとんどの会派は従前どおりの方法で行ってほしいとの意見であるため,そのように申し合わせたいと提案した。他の委員は,異議なく承認した。
(イ) 一審原告を含む共産党市議団所属の議員4名は,被控訴人Y23議長に対し,「岐阜県弁護士会と同人権擁護委員会が,平成17年11月16日に中津川市議会に勧告したとおり,X市議の市議会一般質問の壇上における発言を,職員の代読による方法をもって今12月市議会より実施すること。」という「市議会議員の発言保障に関する決議」案(甲28。本件決議案)を提出した。
被控訴人Y23議長は,本件決議案の取扱いについて,議会運営委員会に諮問した。
(ウ) 上記諮問につき,被控訴人Y10委員長及び被控訴人Y14副委員長は,議会運営委員会で決めてきたことに反対する旨の本件決議案について,提出者の中に,同委員会を構成していたB議員やC議員が含まれているのはおかしいと指摘した。そこで,共産党市議団は,この点について協議し,所属議員のうちP議員が本件決議案を提案するということに修正し,平成18年12月1日の定例会の本会議において議題とすることに決まった。
ウ 一審原告は,平成18年11月30日,被控訴人議員らを含む議員に対し,共産党市議団が翌日の定例会の本会議で提出する本件決議案について賛成するよう求める書面(甲29)を送った。
同書面には,一審原告が障害者として障害者の生の声を市政に反映させていくためには,一審原告自身の声で発言することが一番いいと思って食道発声訓練に取り組んできたこと,今のところ,会話が十分できるまでには至っていないが,一審原告は,やがて健常者の中に溶け込んでコミュニケーションの場を広げることができると確信していること,一審原告が,議会での代読発言にこだわるのは,機器による音声では,声を失った者の本当の心の苦しみ,声を取り戻した時の心からの喜びを実感した一審原告の思いが通じないと思うためであり,いつでも,どこでもすぐ対応できる一番やりやすい,また他人の迷惑を最小限にできるやり方だと思うためであることなどが記載されていた。
エ 平成18年12月1日開催の同年第6回定例会の本会議(甲28,79,88,乙イ6)
共産党市議団のP議員は,同本会議において,本件決議案を提出し,同本会議で質疑がなされた後,採決に移り,記名投票の結果,賛成5,反対27で,本件決議案は否決された。
本件決議案につき,被控訴人Y23議長を除く被控訴人議員らは,いずれも反対票を投じた。
(17) 議決後の経過
ア 一審原告は,平成19年1月22日ころ,被控訴人Y23議長に対し,「新聞報道(1/19中旬)によりますと恵那市で産婦人科医がゼロとなる可能性が出てきたといわれています。当市としても産婦人科医の不足解決のための対策が早急に求められていると思います。市長の見解をお聞かせ下さい。」という市長に対する緊急質問の発言通告書を提出した。被控訴人Y23議長は,緊急性がないということで一審原告の発言を認めなかった。(甲100の7)
イ 平成19年3月定例会における一般質問の発言通告書
一審原告は,平成19年3月5日ころ,被控訴人Y23議長に対し,安全・安心まちづくりについて,発言所要時間30分,発言内容は,手書きで,A4用紙15枚分が記載された一般質問の発言通告書を提出した。被控訴人Y23議長は,これを受理しなかった。(甲85,98の3,甲100の8)
(18) 一審原告の市議会議員二期目の任期は,平成19年4月29日に終了した。
2 争点1(本件訴えの適法性)について
(1)ア 司法裁判権が,憲法又は他の法律によってその権限に属するものとされているものの外,一切の法律上の争訟に及ぶことは,裁判所法3条の明定するところであるが,ここに一切の法律上の争訟とはあらゆる法律上の係争という意味ではない。一口に法律上の係争といっても,その範囲は広汎であり,その中には事柄の特質上司法裁判権の対象の外におくを相当とするものがある。なぜなら,自律的な法規範をもつ社会ないしは団体にあっては,当該規範の実現を内部規律の問題として自治的措置に任せ,必ずしも,裁判にまつを適当としないものがあるからである(最高裁判所昭和35年10月19日大法廷判決・民集14巻12号2633頁)。
ところで,地方議会は,憲法上に定められた地方公共団体の議事機関であり(憲法93条1項),憲法の採用する議会制民主主義と地方自治,住民自治制度の下において,当該地方公共団体における住民の間に存する多元的な意見及び諸々の利益を,住民の直接選挙によって選出された地方議会議員の自由な討論を通して調整し,究極的には多数決原理によって,地方公共団体の重要事項について統一的な意思を形成するとともに,執行機関の事務を監視,調査等すべき役割を担っており,その役割・機能を適正・円滑に果たすため,その内部の組織や運営に関する一定の事項について,他の機関等から関与を受けることなく,自主的,自律的に決定し,処理する権限(自律権)を有していると解され(法103条ないし137条,市議会委員会条例,会議規則),このような地方議会の運営に関する事項は,地方議会の内部規律の問題として,議会の裁量に委ねられていると解するのが相当である。そして,議員の議会本会議や各種委員会における発言の方法等もまた,上記の議会の運営に関する事項に含まれると解される。
したがって,議会が,議員の発言方法等について規制したとしても,それが議会の内部規律の問題にとどまる限り,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」にはあたらないというべきである。
イ しかし,他方,議会の議員に対する措置が,一般市民法秩序において保障されている権利利益を侵害する場合,もはや議会の内部規律の問題にとどまるものとはいえないから,当該措置に関する紛争は,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」にあたるというべきである。
地方議会議員は,憲法で定められた地方公共団体の議事機関である地方議会(憲法93条1項)の構成員として,当該地方公共団体の住民による直接選挙で選出され(同条2項),議会本会議や委員会等における自由な討論,質問・質疑等を通じて,当該地方公共団体の住民の間に存する多元的な意見や諸々の利益を,当該地方公共団体の意思形成・事務執行等に反映させる役割を担っているのであるから,地方議会の議員には,表現の自由(憲法21条)及び参政権の一態様として,地方議会等において発言する自由が保障されていて,議会等で発言することは,議員としての最も基本的・中核的な権利というべきである。
したがって,地方議会が,地方議会議員の当該議会等における発言を一般的に阻害し,その機会を与えないに等しい状態を惹起するなど,地方議会議員に認められた上記権利,自由を侵害していると認められる場合には,一般市民法秩序に関わるものとして,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」にあたるというべきである。
(2)ア 一審被告らは,議員の発言の手段,方法はもちろんのこと,委員会及び本会議における議事進行について,広く市議会の自主性,自律性に委ねられているところ,被控訴人議員らは,一審原告の議会における発言の機会を奪ったわけではなく,会話補助装置による発言方法を保障したのに,一審原告が自分の要求する発言方法と違うという理由で試行さえしなかったのであるから,司法審査の対象にならないと主張する。
前記のように,市議会における委員会及び本会議の議事進行等について,広く市議会の自主性,自律性が認められていることは否定しえないところである。しかし,このような市議会の自主性,自律性は,市議会議員各自に議会において発言する権利,自由が認められることを前提として,各議員の発言方法や発言時期,場所等を調整し,地方議会としての統一的な意思を適正・円滑に形成するためのものであるから,その前提となる各議員の発言の自由や権利そのものを一般的に阻害し,その機会を奪うに等しい状態を惹起することは,市議会の自主性,自律性の範囲を超えるものといわなければならない。
一審原告は,一審被告らによる一連の加害行為により,一市民として,障害者が代替手段を自ら選ぶ権利,すなわち,自らのあり方を決める権利(自己決定権)を侵害され,かつ,一審原告個人の表現の自由及び地方議会議員としての表現の自由,参政権,平等権を侵害されたと主張しているが,地方議会議員の議会における発言方法の制約如何によっては,議会における発言を一般的に阻害し,その機会そのものを奪うに等しい事態も生じうるところであり,特に,一審原告のような発声障害者の場合,健常者と異なり,その発言し得る方法が限定されることから,議会における発言方法の制約により,議会での発言の機会そのものを奪われる結果となるおそれが大きいといえる。
したがって,地方議会における議員の発言方法の制約も,上記のような状態を惹起する場合には,一般市民法秩序に関わり,一審原告の一審被告らに対する訴えは,裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」にあたるというべきである。
イ これにつき,一審原告は,発声障害者にとって障害補助手段の選択は,健常者と同一の立場に立つための手段の選択であり,その方法を他人に強制されるいわれはないから,議会の自律権の範疇に属さないものであると主張する。
しかし,一審原告は,市議会議員である以上,一審原告の市議会における発言方法等については,前記のとおり,基本的に,市議会の地位・役割・機能に由来する自主性,自律性に委ねられていると解され,このこと自体については,障害者か健常者かによって違いがあるわけではない。発声障害者の場合,健常者に比べ,発言し得る方法が限定され,議員として議会で発言する場合,発言方法の規制により,議会での発言の機会が奪われる結果となるおそれがより大きいため,そのような結果を招来しないよう,健常者である議員の発言方法を制約する場合とは異なる配慮が必要となるにすぎない。
したがって,上記一審原告の主張を採用することはできない。
(3) 一審被告らは,被控訴人議員らが本件決議案に対する反対票を投じたことについて司法審査が及ぶとすれば,被控訴人議員らの内心の自由及び政治的意思表明の自由に対する侵害となると主張する。
しかし,一審原告は,市議会議員に再選された平成15年4月以降,市議会での一審原告の発言方法として代読を認めなかったことを違法行為として主張していて,本件決議案が否決されたことのみを問題にしているわけではない。また,議員が議会で行った質疑,演説,討論等であっても,議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認められ得るような特別の事情があれば,国家賠償法1条1項の違法な行為となりうると解されているところである(最高裁判所平成9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3850頁)。
したがって,上記一審被告らの主張を認めることはできない。
(4) 以上から,一審原告の一審被告らに対する本件訴えは適法であり,これを却下することはできない。
3 争点2(一審被告らの加害行為の違法性)について
(1)ア 前提事実及び前記1で認定した事実によれば,一審原告は,平成11年4月から市議会議員を務めていたが,平成14年夏に下咽頭がんと診断されて入院し,同年10月23日,喉頭を摘出する手術を受けたこと,一審原告は,平成15年1月に退院し,その後,2期目の市議会議員選挙に立候補し,子らの代読によって選挙運動を行い,同年4月23日,市議会議員に再選されたこと,共産党市議団のC議員は,平成15年5月14日の各会派代表者会議で,一審原告の意見を同一会派に所属するB議員の意見として発言することがあるかもしれないと述べたが,代表者会議の座長は,あくまでもB議員の発言でないとまずい旨を指摘したこと,日本共産党恵那地区委員会LとC議員は,平成15年5月26日付け申し入れ書を,市議会に提出し,一審原告の本会議及び委員会での発言方法として,第三者による代読を要望したこと,被控訴人Y10議長は,一審原告の要望について議会運営委員会に諮問したこと,平成15年5月26日開催の議会運営委員会において,C委員は,現在,一審原告は,発声訓練をしているものの,機能回復には,半年から5,6年程度かかることを伝え,一審原告が肉声で発言することが困難であることを指摘し,被控訴人Y14委員長は,各会派の意見をまとめるよう依頼したこと,平成15年6月2日開催の議会運営委員会において,被控訴人Y14委員長は,各会派の意見を聞いた上,議会での発言は,本人の肉声に限られるとして,上記申し入れ書の要望を受け入れなかったこと,この時,C議員から,一審原告は,平成15年6月定例会での一般質問の準備はしていないが,委員会で,一審原告が発言を希望する場合,ホワイトボードを持ち込み,これに記載して発言することを認めてほしいとの提案があり,この点について次回に審議することになったこと,平成15年6月23日開催の議会運営委員会において,被控訴人Y14委員長は,C議員の上記提案について,各会派の意見を確認したところ,各会派からは,ホワイトボードの使用を認める意見はなかったこと,平成15年10月20日開催の議会運営委員会で,C委員は,一審原告が同年9月の委員会で意思表示をする必要があると感じたとして,委員会での発言方法として,ホワイトボードを持ち込むことを再度提案したこと,これに対し,被控訴人Y14委員長は,平成15年6月23日の議会運営委員会の議事録を確認しながら,その日の議会運営委員会において,各会派で検討した結果,ホワイトボードの持ち込み,代読とも認められないという結論になっているとし,その上で,再度,各会派の意見を求める旨述べたこと,平成15年11月17日開催の議会運営委員会では,各会派の意見として,ホワイトボードの持ち込みを認めないとの意見が大半を占めたこと,平成15年11月25日開催の議会運営委員会で,被控訴人Y14委員長は,再度,各会派の意見を確認した上,一審原告の委員会へのホワイトボードの持ち込みについての審議を打ち切ったこと,これらの審議の過程で,一審原告に肉声による発言ができるようになってほしいとか,他の議会活動で頑張ってほしいなどの発言があったものの,一審原告の議会での発言について,他の発言方法を具体的に審議するなどのことは全くなされていないことが認められる。
市議会委員会条例4条1項は,法109条の2を受けて,市議会に議会運営委員会を設置し,市議会の運営に関する事項を審査する旨を規定しているところ,上記認定事実によれば,議会運営委員会における上記のとおりの審議の結果,発声障害者である一審原告は,議会の本会議のみならず委員会での発言も事実上できない状態が継続していたのであるから,上記市議会及び被控訴人議員らの対応は,一審原告の議会での発言の権利,自由を侵害するものと評価せざるを得ない。
イ 証拠(甲152ないし175)によれば,市議会の議会運営委員会は,平成15年12月2日から同16年8月24日まで,一審原告の議会での発言方法について具体的な審議を行っていないこと,前記1で認定したように,市議会のA議長は,平成16年8月末に市議会に提出された陳情第5号について,議会運営委員会に付託したこと,被控訴人Y14委員長は,平成16年9月14日,議会運営委員会での審議の参考とするため,一審原告に質問書を交付し,一審原告は,ワープロ又はパソコン等で印字された回答書を提出したこと,一審原告の回答書の提出を受けて,平成16年9月21日,議会運営委員会が開催され,被控訴人Y14委員長は,各会派等の意見を聞いた上,議会運営委員会として,一審原告が本会議場に音声変換機能付きパソコンを持ち込むことを認めることとしたことが認められる。
しかし,他方,前記1で認定したように,議会運営委員会は,一審原告が本会議場に音声変換機能付きパソコンを持ち込むことを認めただけで,一審原告が実際にパソコンを操作できるかどうかや,パソコンによる音声変換機能がどのような内容,操作性のものであるかなどについての調査,検討は何らなされていないこと,各種委員会における一審原告の発言方法については何ら検討されていないことからすると,上記平成16年9月21日開催の議会運営委員会の決議をもって,一審原告の市議会における発言の機会が確保され,その阻害状態が解消されたとみることはできない。
したがって,同日の議会運営委員会の決議によっても,一審原告の発言の権利,自由が侵害されている状態に変わりはないというべきである。
なお,一審被告らは,一審原告からの回答書(甲11)がパソコン等で印字されていたことなどから,平成16年9月21日の時点で,一審原告がパソコンを操作できないことを知らなかったと主張するが,同日の議会運営委員会で,B委員は,一審原告がチラシを手書きで作成していることを指摘し,C委員も,一審原告がパソコンを習得するまでの発言方法について協議を求めているのであるから,上記主張を認めることはできない。
ウ 前記1で認定したように,一審原告は,平成16年9月21日の議会運営委員会で,音声変換機能付きのパソコンの本会議場への持ち込みが認められた後も,代読の方法での発言を求めたが,議会運営委員会は,代読を認めず,パソコンの使用を求めたこと,そこで,一審原告は,平成16年12月,岐阜県弁護士会に人権救済の申立てをしたこと,岐阜県弁護士会は,同会人権擁護委員会の調査結果に基づき,平成17年11月16日,市議会に対し,一審原告に代読での発言を認めるよう勧告したこと(弁護士会勧告),この間,被控訴人Y10委員長は,事務局に音声変換機能付きパソコンを手配するよう指示し,平成17年7月12日,業者の持参した音声変換機能付きパソコンについてデモンストレーションを行い,被控訴人Y10委員長及び一審原告も,実際に使用したこと,平成17年11月28日,弁護士会勧告を受けて,議会運営委員会が開催され,C委員から,本会議の一般質問では音声変換機能付きパソコンを利用し,再質問については,一審原告のメモを見て事務局職員が代読するという共産党市議団としての折衷案を提案し,各委員の了承を得たこと,一審原告は,平成17年12月15日,市議会の文教消防委員会において,副委員長による代読の方法で質問をしたこと,平成18年2月14日,議場において,議会運営委員会の委員も出席して,音声変換機能付きパソコンのデモンストレーションが行われ,一審原告も,このデモンストレーションに参加し,同パソコンを試用したこと,平成18年2月22日開催の議会運営委員会において,上記デモンストレーションの結果について,各会派の意見が示され,音声変換機能付きパソコンの利用に問題はないというのが多数であったこと,それを受けて,議会運営委員会は,一審原告の議会での発言方法につき,本会議での一般質問については会話補助装置を使い,質疑については同じ会派の議員が代読し,委員会での発言については,一審原告が予め用意できるものは,当面,事務局が準備して会話補助装置を使い,質疑は副委員長が代読をすることを確認したことが認められる。
そして,このような事実経過に照らせば,平成17年11月28日の議会運営委員会において,C委員から上記折衷案が提案され,各委員の了承を得た時点以降,一審原告が市議会で発言することを阻害していた市議会の対応は解消し,発言することに格別の支障はなくなったと評価するのが相当である。
もっとも,この時点での一審原告のパソコンの習熟度は明らかではないが,すでに認定したように,平成16年9月21日開催の議会運営委員会で,音声変換機能付きパソコンの持ち込みが認められていて,それからすでに1年以上を経過していること,平成17年7月12日に音声変換機能付きパソコンのデモンストレーションが行われ,一審原告も使用したこと,前記1の各委員の発言等にもあるとおり,近時のパソコンそれ自体は,一般人にも普通の努力で使用可能となる操作性を備えていることからすると,一審原告において,普通程度の努力によってパソコンを操作できるようになるための習熟期間は十分あったと解するのが相当である。なお,前記1にあるように,C委員は,平成16年9月21日開催の議会運営委員会において,一審原告が,パソコンについて,触ったり考えたりすると体調が優れなくなることから,実際に使うことができないと,一審原告本人が出した文書の中で言っている旨を報告しているが,その具体的内容は不明であり,これをもって,前記の判断を覆すものではない。
エ 以上によれば,一審原告は,平成15年4月23日に市議会議員に再選された後,同17年11月28日まで,市議会議員として市議会での発言の権利,自由を侵害されていたといえる。そのため,一審原告が加害行為として指摘し主張する市議会及び被控訴人議員らの対応のうち,上記期間になされたものとして前記1で認定した一連の対応は,一審原告の市議会議員としての議会での発言の権利,自由を侵害するものとして,違法な行為であったといわなければならない。
そして,上記のように,一審原告は,発声障害者として市議会議員選挙に臨んで当選したのであり,市議会の各議員も,そのことを認識していたと推認されるから,上記のような市議会及び被控訴人議員らの対応について,一審被告市には,国家賠償法1条1項による損害賠償責任があるというべきである。
オ(ア) これに対し,平成17年11月29日以降は,一審原告の市議会での発言に格別の支障はなくなっている以上,同日以降の市議会及び被控訴人議員らの対応は,違法とはいえない。また,すでに判示したところから,一審原告の平等権を侵害するものでもない。
したがって,A議長及び被控訴人Y23議長が,平成17年11月28日の議会運営委員会の申し合わせやその後の議会運営委員会の審議の結果を理由に,一審原告の発言通告書を受理しなかったとしても(加害行為⑤),これもまた違法なものとはいえない。
(イ) 一審原告は,被控訴人Y23議員を除く被控訴人議員ら及び一審被告議員ら27名が,平成18年12月定例会の本会議に提出された本件決議案について,反対票を投じたこと(加害行為⑥)をもって,違法な行為であると主張する。
しかし,すでに判示したように,平成17年11月29日以降,一審原告の議会での発言に支障はなくなっているから,本件決議案が否決されたからといって,そのような状態に何ら変動をもたらすものではない。
したがって,被控訴人Y23議員を除く被控訴人議員ら及び一審被告議員ら27名が,本件決議案について反対票を投じたこと(加害行為⑥)をもって,一審原告に対する違法行為となるものではない。
(2)ア 一審原告は,一審被告らの各加害行為は一審原告の希望する発言方法を決して認めないという1つの加害意思に基づき,憲法13条,21条,15条及び14条で保障された障害者の障害補助手段を選択する権利(自己決定権)を侵害するものであると主張する。
しかし,すでに判示したように,このような自己決定権が憲法上保障されているとしても,地方議会議員の地方議会における発言方法それ自体は,基本的に,議会の自主性,自律性に委ねられるべきもので,このことは,健常者か障害者かによって区別されるものではない。
したがって,前示のとおり,一審原告の市議会での発言に格別の支障がなくなっている以上,平成17年11月29日以降も一審原告の希望する代読による方法そのものでの発言が認められなかったとしても,一審原告の障害者の自己決定権が侵害されたとして,市議会及び被控訴人議員らの対応が違法であるとみることはできない。
イ 一審原告は,市議会には,憲法14条,障害者基本法3条等により,障害者である議員の議会側に存在するバリアを除去し,自由活発な討論をすることが可能な環境を整備する義務(環境整備義務)があり,その履行にあたり,一審原告の意思を最大限に尊重すべき義務(意思尊重義務)があるのに,それを怠った不作為があると主張する。
一般的に,一審原告が主張するような義務が憲法上認められるかどうかは別として,市議会は,平成17年11月28日,一審原告の市議会における発言方法を明確に示しており,これによって,一審原告が討議に参加することに格別の支障はなくなったと解されるから,市議会に,一審原告の主張するような作為義務違反を認めることはできない。
したがって,上記一審原告の主張は認められない。
ウ 一審原告は,自己の希望する代読による発言を拒否し,これを妨害することについて,正当といえる目的は存せず,制約の手段としても,必要最小限のものとはいえないと主張する。
しかし,すでに判示したように,地方議会議員の地方議会における発言方法それ自体は,基本的に,議会の自主性,自律性に委ねられるべきもので,議会の裁量に属すべきものであるから,上記一審原告の主張を採用することはできない。
エ 一審原告は,仮に,議員の発言方法について市議会に裁量が認められるとしても,その判断の形成過程において,法令上あるいは会議規則上,代読が許されないという誤った認識を前提とし,かつ,市町村議会で代読が許された事例はないとの誤った事実認識を前提とし,正当な理由を明らかにすることなく代読を拒否しているから,裁量権の逸脱,濫用があると主張する。
前記認定事実及び証拠(甲44)によれば,平成15年2月28日に開催された議会運営委員会において,事務局長は,会議規則により議員の発言は口頭で行うとされていることを指摘するとともに,全国の事例を調べたところ,代読を認めた例はないと報告したこと,以後,これを前提として,議会運営委員会で代読による発言を認めるかどうかが議論されたことが認められる。
そして,一審原告が主張するように,法や会議規則には,代読による発言を禁止する明文の規定はないが,地方議会の議員は,住民の直接選挙によって選出され,議会において,住民の代表として発言するのであるから,従来は,議員自らが口頭で発言することを当然の前提としていて,法や会議規則等も,このことを前提として各種規定を設けてきたものと解される。したがって,市議会(議会運営委員会)に,法令上あるいは会議規則上の認識に誤りがあったとまでは認められない。
また,代読による発言に関する他の市町村議会の事例は,市議会が一審原告の代読による発言を認めるかどうかを判断する際の参考事例にすぎないから,この点の認識に誤りがあったからといって,直ちに,市議会(議会運営委員会)の判断の形成過程に誤りがあったとはいえない。
さらに,前記1で認定したように,一審原告の代読による発言を認めるかどうかを議会運営委員会で審議する際,被控訴人議員らを含めた委員らは,代読による発言の問題点等も指摘しながら議論し,実際に音声変換装置のデモンストレーションを行った上で,平成17年11月28日開催の議会運営委員会で上記のような内容を申し合わせている。
したがって,市議会(議会運営委員会)が一審原告の希望する代読による発言を認めなかった判断の過程に問題はなく,その判断について,裁量権の逸脱,濫用があるとはいえない。
(3) 一審被告市は,発声障害を有する議員の市議会における発言方法は,市議会の自律に委ねられるべき事柄であり,議会運営委員会の各委員(被控訴人議員らの一部を含む。)が,一審原告の求める代読という発言方法を採用しなかったことには合理性があり,「多数意見による発言方法」は合理的裁量の範囲にあることから,市議会及び被控訴人議員らの対応が,社会通念上著しく妥当を欠き,裁量権を付与した目的を逸脱し,これを濫用したとは認められないと主張する。
議員の発言方法等の議会の運営に関する事項は,市議会の内部規律の問題として,基本的に,市議会の自主性,自律性に委ねられているが,すでに判示したように,議員の発言方法等を規制することにより,結果として,議員の議会での発言を一般的に阻害し,その機会を奪うような場合(特に一審原告のような発声障害者の場合,発言し得る方法が限られるため,そのおそれが大きいといえる。),もはや議会の自主性,自律性の範囲を超えるものといわざるを得ない。
したがって,上記一審被告市の主張を認めることはできない。
4 争点3(被控訴人議員らの不法行為責任の成否)について
国又は地方公共団体の公権力の行使に当たる公務員が,その職務を行うについて違法に他人に損害を与えた場合,当該公務員個人は損害賠償責任を負わないと解するのが相当であるから(最高裁判所昭和30年4月19日第三小法廷判決・民集9巻5号534頁,最高裁判所昭和46年9月3日第二小法廷判決・最高裁判所裁判集民事103号491頁,最高裁判所53年10月20日第二小法廷判決・民集32巻7号1367頁),一審原告は,被控訴人議員らに対し,民法709条,719条に基づく損害賠償を請求することはできない。
これにつき,一審原告は,個人責任の原則や平等原則からは,国家賠償法1条1項の存在をもって,当然に,公務員個人の不法行為責任が否定される根拠とはならないし,民間企業の被用者と公務員とを区別する必要はなく,本件のように,害意ともいうべき悪質な故意による権利侵害の場合,公務員個人の責任を認めるべきで,国家賠償法の存在意義をより積極的に公務の適正確保のための制度と捉えるべきであると主張する。
しかし,上記主張は,一審原告の独自の見解であって,これを採用することはできないし,前記1で認定した事実に照らせば,一審原告の代読による発言を認めなかったことにつき,被控訴人議員らに悪質な故意による権利侵害があると評価することもできない。
5 争点4(一審原告に生じた損害の有無,程度)について
前記1で認定したように,一審原告は,市議会及び被控訴人議員らの前記一連の対応により,平成15年4月23日に市議会議員に再選された後,同17年11月28日まで,市議会議員として議会で発言することを一般的に阻害されて,発言の権利,自由を侵害されていたものであり,議会で発言することは,議員として最も基本的,中核的な権利であることからすれば,これにより,一審原告が多大な精神的苦痛を被ったことは明らかというべきである。
そして,上記の点に加え,前記1で認定した事実経過等に照らせば,一審原告に認められるべき慰謝料の額としては300万円が相当である。
6 以上によれば,一審原告の一審被告市に対する請求は,300万円とこれに対する不法行為後である平成18年12月1日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないから棄却すべきところ,これと異なり,一審原告の請求を10万円とこれに対する遅延損害金の限度で一部認容し,その余を棄却した原判決は一部失当といわざるを得ない。
これに対し,一審原告の被控訴人議員らに対する請求を認めることはできず,これらを棄却した原判決は相当である。
7 よって,一審原告の一審被告市に対する本件控訴は一部理由があるので,一審被告市に係る原判決を主文1項(2)(3)のとおり変更し,一審原告の被控訴人議員らに対する本件控訴はいずれも理由がないので,これらを棄却し,一審被告市の本件控訴は理由がないので,これを棄却することとする。
(裁判長裁判官 渡辺修明 裁判官 末吉幹和 裁判官嶋末和秀は転補のため,署名押印することができない。裁判長裁判官 渡辺修明)

 

〈以下省略〉

 

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