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「公職選挙法 ポスター」に関する裁判例(82)昭和63年11月17日  大阪高裁  昭63(う)499号 公選法違反被告事件

「公職選挙法 ポスター」に関する裁判例(82)昭和63年11月17日  大阪高裁  昭63(う)499号 公選法違反被告事件

裁判年月日  昭和63年11月17日  裁判所名  大阪高裁  裁判区分  判決
事件番号  昭63(う)499号
事件名  公選法違反被告事件
裁判結果  破棄自判  文献番号  1988WLJPCA11170005

要旨
◆選挙運動の報酬及び費用の両趣旨を含むものとして供与を受けた金員のうち、選挙運動の費用として費消した分についての追徴の可否につき判断した事例(消極)

新判例体系
公法編 > 組織法 > 公職選挙法〔昭和二五… > 第一六章 罰則 > 第二二四条 > ○没収・追徴 > (三)没収・追徴の対… > B 実費の支弁 > (2)実費控除を認めた事例
◆選挙運動の報酬及び費用の両趣旨を含むものとして供与を受けた金員のうち、選挙運動の費用として費消した分については、これを控除して追徴額を算定すべきである。

 

裁判経過
第一審 昭和63年 3月25日 京都地裁 判決 昭61(わ)981号

出典
判時 1302号161頁

参照条文
公職選挙法224条

裁判年月日  昭和63年11月17日  裁判所名  大阪高裁  裁判区分  判決
事件番号  昭63(う)499号
事件名  公選法違反被告事件
裁判結果  破棄自判  文献番号  1988WLJPCA11170005

主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役八月に処する。
この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
被告人から金六万五五〇〇円を追徴する。

 

理由
本件控訴の趣意は、弁護人相馬達雄及び被告人本人作成の各控訴趣意書記載のとおりであるから、これらを引用する(なお、両趣意書とも控訴の趣意としては専ら事実誤認を主張するものである旨弁護人において釈明した。)。
各論旨は、事実誤認を主張し、要するに、原判決は被告人が選挙運動に対する報酬として現金一〇万円の供与を受けたと認定しているが、その現金は選挙運動の費用として交付を受けたに過ぎないものであるから、原判決は事実誤認を犯している、というのである。
そこで、各所論にかんがみ記録を調査して検討すると、まず原判決挙示の関係各証拠によれば、昭和六一年七月六日実施予定の衆議院議員選挙に京都府第二区から立候補予定のA党のBの京都府相楽郡選挙対策本部本部長であったCと同事務次長であったDは、同年六月一七日ころ、選挙情勢が右Bにとって厳しいものであったことから、相計った上、各地区の選挙運動責任者らに投票取りまとめ等の選挙運動に対する報酬としての金員を配ることを決意し、各地区の選挙運動責任者一一名を選び、各地区の有権者数、各人の知名度及び予想される選挙運動の程度等に応じて一万円から一〇万円の範囲で、その者らに金員を配ることとし、同日ころから同月二〇日ころまでの間両名で手分けしてうち九名ほどに順次金員を配ったこと、その金員の配付に当たって、両名は、当該金員の使途、後日の精算などについて特に指示することもなく、「いろいろお世話になりますが、そのお礼のしるしです。」などと言って渡していること、配付を受けた者の中には当初金員の受領を断る者もいたこと、右一一名のうちの一人として被告人に対しては、同月二〇日ころCから現金一〇万円が渡されていること、Dは、右Cと相談した分以外にも、単独で選挙運動の有力者数名に現金三万円から一〇万円を渡していること、本件以前の過去のBに関する選挙運動において地区の責任者に選挙運動の実費の支給がなされた事実はないこと、選挙後Dが買収容疑で逮捕されるや、Bの秘書Eは右金員の配付を受けた者に働きかけ、金員を授与した者が、Bの選挙運動の出納責任者となったCではなく、Dである旨供述するよう口裏を合わせる工作を行っていること、などの諸事実が認められる。そして、D及びCは、その供述内容の意義、重要性を十分認識した上で金員配付の決定と実行に当たった当事者としてその間の事情を率直に語ったものとして高い信用性が認められる各人の検察官に対する供述調書において、前記配付した金員が選挙運動に対する報酬としての趣旨であることを供述しており、また被告人も、過去には選挙運動の実費の支給がなかったことを認めた上改めて本件金員を受領した当時の心境を素直に供述したものとして十分信用性が認められるその検察官に対する供述調書(昭和六一年八月五日付)において、本件金員が選挙運動に対する報酬としての意味をもつものとして提供されるものであることを認識した旨述べているのである。してみると、前記客観的諸事実並びにD、C及び被告人の右検察官に対する各供述調書によれば、D、Cは共謀の上、選挙運動に対する報酬の意味をもつものとして、被告人に本件現金一〇万円を渡したものであること、被告人はその一〇万円が選挙運動に対する報酬の意味をもつものとして提供されたものであることを知りながら、それを受領したものであることは明らかであるといわねばならない。
なお、D、C及び被告人はそれぞれ、原審公判での証人尋問あるいは被告人質問において、本件一〇万円の金員は選挙運動あるいは後援会活動のための費用の前払いないしはその補填の趣旨で被告人に渡され又受け取ったものであり、それは選挙運動に対する報酬の趣旨をもつものではない旨供述しているが、その供述するところは、あいまい不自然であったりあるいは事実を誇張し歪めて供述している点が認められ、前記各検察官に対する供述調書の内容と対比しても、その信用性は低く、それら供述に従って本件金員の性質を判断することは到底できない。また被告人は、本件一〇万円から選挙運動労務者への弁当代及び運転者への謝礼として三万四五〇〇円を支払ったほか、既に自費で支出済のポスター製作のための費用への補填あるいは選挙運動者らが負担した電話代の選挙運動費用の弁償としての支出を予定しており、結局一〇万円全額を選挙運動費用として費消する積もりであったから、それは選挙運動に対する報酬としての性質を有しなかった旨原審公判において弁解するが、右弁解にある既に支払済の三万四五〇〇円以外の費用補填ないし弁償としての支出予定については、その存在あるいは金額が信用するに足る客観的な裏付けを欠くのみならず、果たして真にそれら費用補填ないし弁償として支出する意図であったのかあいまいで疑わしく、更にはたとえ受領後には専ら選挙運動の費用あるいはその補填として使用することを意図したとしても、それから直ちに受領時に選挙運動の報酬として授受されたことの否定につながるものではないので、右弁解をもって本件一〇万円が選挙運動に対する報酬としての趣旨をも有するものであったことを否定することはできない。
従って、原判決が、被告人は本件一〇万円の金員が選挙運動に対する報酬としての趣旨をもつものであることを知りながら、その供与を受けた旨認定したのは(なお、原判決はその罪となるべき事実において、「その報酬として供与されるものであることを知りながら現金一〇万円の供与を受けたものである。」と判示するが、その補足説明と併せ読むならば、右判示部分は、現金一〇万円全額が報酬のみの趣旨で供与されたというのではなく、選挙運動の報酬と費用の両趣旨を不可分的に含むものとして供与されたという旨であると解される。)、これを是認することができ、それは、当審における被告人質問の結果を踏まえて検討しても変わりがないので、前記事実誤認をいう論旨は理由がない。
ところで職種により調査すると、記録によれば、被告人は、現金一〇万円を選挙運動の報酬及び費用の両趣旨を不可分的に含むものとして供与を受け、その後その一〇万円のうちから選挙運動の費用として、ポスター貼りの労務者らの弁当代四五〇〇円及び個人演説会聴衆の送迎用バス運転者三名に対する手当三万円の計三万四五〇〇円を支出していることが明らかであるが、このように、選挙運動の報酬及び費用の両趣旨を不可分的に含むものとして金員の供与を受け、かつ、その供与を受けた金員のうちから選挙運動の費用として一部費消しているときは、その選挙運動の費用として費消した分については、収受した利益が最早存しないものとして、公職選挙法二二四条による追徴の対象とならないものと解すべきであるから、本件においては、被告人が供与を受けた一〇万円のうち選挙運動の費用として支出した三万四五〇〇円相当分については、収受した利益が存しないものとして追徴の対象にならないといわねばならないところ、原判決は右三万四五〇〇円相当分を控除することなく、供与を受けた現金全額相当の一〇万円を追徴しているのであるから、それは法令の解釈適用を誤ったものというべきであり、その誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかである。
よって、刑事訴訟法三九七条一項、三八〇条により原判決を破棄し、同法四〇〇条但書により更に判決することとし、原判決認定の事実(但し、原判示罪となるべき事実のうち、「その報酬として」とある部分を「その報酬等として」と改める。)に原判決挙示の各法条を適用し、被告人を懲役八月、執行猶予三年に処し、また前示の理由から、被告人が供与を受けた現金一〇万円のうち利益として収受した分の価額を追徴することとして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 石松竹雄 裁判官 松浦繁 裁判官村田晃は転任のため署名押印することができない。裁判長裁判官 石松竹雄)


「公職選挙法 ポスター」に関する裁判例一覧
(1)平成31年 4月26日 大阪高裁 平30(行ケ)1号 裁決取消請求事件
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(3)平成30年 4月11日 知財高裁 平29(行ケ)10161号 審決取消請求事件
(4)平成30年 1月22日 東京地裁 平27(特わ)2148号 政治資金規正法違反被告事件
(5)平成29年 8月29日 知財高裁 平28(行ケ)10271号 審決取消請求事件
(6)平成28年11月28日 名古屋高裁 平27(う)131号 受託収賄、事前収賄、公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律違反被告事件
(7)平成28年 8月23日 東京地裁 平27(行ウ)384号 難民不認定処分取消等請求事件
(8)平成28年 5月17日 広島高裁 平28(行ケ)1号 裁決取消請求事件
(9)平成28年 4月28日 青森地裁八戸支部 平28(わ)12号 各公職選挙法違反被告事件
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(18)平成24年 2月29日 東京地裁 平21(行ウ)585号 公金支出差止請求事件
(19)平成23年 5月18日 東京高裁 平22(行ケ)30号 裁決取消等請求事件
(20)平成23年 2月24日 京都地裁 平20(行ウ)49号 不当利得部分返還請求行為請求事件
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(24)平成21年 9月18日 東京地裁 平20(行ウ)149号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(25)平成21年 1月30日 東京地裁 平20(行ウ)393号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
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(47)平成14年 9月30日 広島高裁松江支部 平14(う)24号 公職選挙法違反、詐欺被告事件
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(51)平成12年 2月17日 最高裁第二小法廷 平9(あ)324号 業務妨害被告事件
(52)平成11年11月10日 最高裁大法廷 平11(行ツ)8号 選挙無効請求事件 〔衆議院小選挙区比例代表並立制選挙制度違憲訴訟・上告審〕
(53)平成11年11月10日 最高裁大法廷 平11(行ツ)35号 選挙無効請求事件 〔衆議院小選挙区比例代表並立制選挙制度違憲訴訟・上告審〕
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(55)平成10年10月 9日 東京高裁 平8(行ケ)281号 選挙無効請求事件 〔衆議院小選挙区比例代表並立制選挙制度違憲訴訟・第一審〕
(56)平成10年10月 9日 東京高裁 平8(行ケ)278号 選挙無効請求事件 〔衆議院小選挙区比例代表並立制選挙制度違憲訴訟・第一審〕
(57)平成10年 9月21日 東京高裁 平10(行ケ)121号 選挙無効請求事件
(58)平成 9年12月15日 東京高裁 平8(行ケ)274号 選挙無効請求事件
(59)平成 9年 8月26日 高松高裁 平9(行ケ)2号 立候補禁止請求事件
(60)平成 9年 3月28日 最高裁第二小法廷 平4(行ツ)128号 国税犯則取締法第二条に基づく差押許可状の取消請求等、損害賠償請求、行政事件訴訟法第一九条による請求の追加的併合事件
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(62)平成 9年 3月13日 最高裁第一小法廷 平8(行ツ)193号 当選無効及び立候補禁止請求事件 〔青森県議会議員選挙候補者連座訴訟・上告審〕
(63)平成 8年 9月27日 大阪高裁 平8(行ケ)1号 立候補禁止請求事件
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(65)平成 8年 7月 8日 仙台高裁 平7(行ケ)3号 当選無効及び立候補禁止請求事件 〔青森県議会議員選挙候補者連座訴訟・第一審〕
(66)平成 7年12月11日 名古屋高裁金沢支部 平5(行ケ)1号 珠洲市長選無効訴訟判決
(67)平成 7年11月30日 名古屋高裁 平7(う)111号 政治資金規正法違反、所得税法違反被告事件
(68)平成 7年10月 9日 仙台高裁 平7(行ケ)2号 当選無効及び立候補禁止請求事件 〔山形県議会議員選挙候補者連座訴訟〕
(69)平成 5年10月12日 松山地裁 平2(わ)207号 公職選挙法違反被告事件
(70)平成 5年 5月13日 大阪地裁 平4(ワ)619号 損害賠償請求事件
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(72)平成 4年 7月30日 名古屋高裁 平3(行ケ)6号 市議会議員の当選の効力に関する裁決取消請求事件
(73)平成 4年 6月26日 大阪高裁 平2(う)966号 公職選挙法違反被告事件
(74)平成 3年 9月25日 東京地裁 昭61(ワ)7031号 警察官違法同行損害賠償請求事件
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(77)平成 3年 4月11日 大阪高裁 平2(行ケ)8号 選挙無効請求事件
(78)平成 3年 3月18日 大阪地裁 昭61(わ)5533号 公職選挙法違反被告事件 〔大阪高槻選挙違反事件〕
(79)平成 3年 3月 4日 大阪地裁 昭61(わ)3072号 公職選挙法違反被告事件 〔大阪高槻選挙違反事件〕
(80)平成 2年 5月30日 名古屋高裁金沢支部 平元(行ケ)1号 参議院石川県選挙区選出議員選挙当選無効請求事件判決
(81)平成元年 9月27日 福岡高裁宮崎支部 昭63(行ケ)1号 選挙の効力に関する審査申立に対する裁決取消請求事件
(82)昭和63年11月17日 大阪高裁 昭63(う)499号 公選法違反被告事件
(83)昭和63年11月 9日 東京高裁 昭62(行ケ)172号 裁決取消請求事件
(84)昭和62年11月26日 名古屋高裁 昭62(う)294号 公選法違反被告事件
(85)昭和60年12月25日 福岡高裁 昭58(う)793号 公職選挙法違反被告事件
(86)昭和60年 8月 7日 福岡高裁 昭59(行ケ)1号 裁決取消請求事件
(87)昭和60年 5月28日 仙台高裁 昭59(う)125号 公職選挙法違反被告事件
(88)昭和59年 9月17日 東京高裁 昭58(う)726号 公職選挙法違反被告事件
(89)昭和59年 7月17日 福岡高裁 昭58(う)487号 大分県屋外広告物条例違反被告事件
(90)昭和59年 7月12日 東京高裁 昭59(う)768号 公職選挙法違反被告事件
(91)昭和59年 5月28日 高松高裁 昭58(行ケ)4号 裁決取消請求事件
(92)昭和59年 3月28日 広島地裁 昭57(ワ)1588号 参議院全国区制改革による損害賠償請求事件
(93)昭和59年 1月20日 最高裁第二小法廷 昭57(あ)1400号 公職選挙法違反被告事件
(94)昭和59年 1月20日 大阪高裁 昭57(う)1010号 公職選挙法違反被告事件
(95)昭和57年10月 8日 最高裁第二小法廷 昭57(行ツ)43号 三重県久居市の長の選挙の効力に関する裁決取消等請求事件
(96)昭和57年 4月15日 東京高裁 昭54(行コ)104号 供託申請却下決定取消請求事件
(97)昭和57年 2月22日 松山地裁宇和島支部 昭55(わ)81号 公職選挙法違反被告事件
(98)昭和57年 2月18日 大阪高裁 昭55(う)332号 公職選挙法違反事件 〔糸山派選挙違反事件・控訴審〕
(99)昭和57年 2月16日 名古屋高裁 昭56(行ケ)1号 当選が無効とならないことの確認請求事件
(100)昭和57年 1月19日 最高裁第三小法廷 昭55(行ツ)162号 町議会議員一般選挙の当選の効力に関する裁決取消、当選決定処分有効確認請求事件


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