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「選挙 立候補 ポスター」に関する裁判例(94)平成28年11月21日  東京地裁立川支部  平27(ワ)2775号 理事長及び理事の地位確認等請求事件

「選挙 立候補 ポスター」に関する裁判例(94)平成28年11月21日  東京地裁立川支部  平27(ワ)2775号 理事長及び理事の地位確認等請求事件

裁判年月日  平成28年11月21日  裁判所名  東京地裁立川支部  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)2775号
事件名  理事長及び理事の地位確認等請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2016WLJPCA11216005

事案の概要
◇学校法人である被告の第22期評議員である原告X1ないし原告X8が、被告の平成27年9月15日開催の理事会における評議員理事の選任方法を改定した理事会決議は、被告の寄附行為に反し無効であるなどとし、原告らは改定後の選任方法によることなく従来の選任方法により第22期理事ないし理事長に選任されたとして、原告X1が被告の理事長の地位にあること、原告らが被告の理事の地位にあること及び第21期の理事等であった訴外Aないし訴外Gが現在、被告の理事の地位にないことの確認を求めた事案

裁判経過
控訴審 平成29年10月11日 東京高裁 判決 平28(ネ)5794号 理事長及び理事の地位確認等請求控訴事件

裁判年月日  平成28年11月21日  裁判所名  東京地裁立川支部  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)2775号
事件名  理事長及び理事の地位確認等請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2016WLJPCA11216005

原告 別紙原告目録記載のとおり
原告ら訴訟代理人弁護士 塩谷太郎
同 柳楽晃秀
東京都八王子市〈以下省略〉
被告 学校法人Y大学
代表者理事長 A
訴訟代理人弁護士 前山信之
同 赤川圭
同 金子涼一
同 早川晃司
同 赤羽根秀宜
同 橋本利久
同 井上惠子
訴訟復代理人弁護士 矢野雅裕

 

 

主文

1  原告らの請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告らの負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  原告X1が,被告の理事長の地位にあることを確認する。
2  原告らが,被告の理事の地位にあることを確認する。
3  Aが,被告の理事長の地位にないことを確認する。
4  A,B,C,D,E,F及びG(以下,上記の7名をまとめて指す場合は「Aら」という。)が被告の理事の地位にないことを確認する。
第2  事案の概要等
1  本件は,被告の評議員である原告らが,被告の平成27年9月15日開催の理事会における評議員理事の選任方法を改定した理事会決議は,被告の学校法人Y大学寄附行為(以下,単に「寄附行為」という。)に反し無効である等と主張して,上記の選任方法によることなく従来の選任方法により第22期理事ないし理事長(以下,理事と理事長を併せて「理事等」という。)に選任された原告らが被告の理事等の地位にあること及び第21期の理事等であったAらが現在,理事等の地位にないことの確認を求める事案である。
2  前提事実(争いのない事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実)
(1)  被告は,教育基本法及び学校教育法に従い,薬学及び生命科学に関する教育を目的とし,私立学校法に基づき設置された学校法人である。被告には,その運営を巡り,当事者双方の用いる呼称に従うならば,理事長派と反理事長派と呼ばれるいわゆる派閥間の対立がある。
被告の第22期評議員である原告らは,上記の反理事長派に属しており,被告の第21期理事会の理事であるAら及び同理事会の理事長であるAは,いずれも上記の理事長派に属している。
(2)  寄附行為等の定め(甲1)
ア 被告の役員及び理事会について
被告の役員は,理事(定数12人以上14人以内)及び監事(定数3人)である(5条1項)。
理事のうち1人を理事長,1人を副理事長とし,理事長,副理事長を除く理事のうち3人以内を常務理事とする(5条2ないし4項)。理事長は被告を代表してその業務を総理し,副理事長は理事長を補佐して被告の業務を掌理し,常務理事は理事長及び副理事長を補佐して被告の業務を分掌する(12ないし14条)。
理事会は理事で組織され,被告の業務を決し,理事の職務執行を監督する(18条1,2項)。理事会は理事長が招集し,招集には,各理事に対して会議開催の場所及び日時並びに会議に付議すべき事項を書面により通知しなければならない(同条3,5項)。理事長は,理事総数の3分の2以上の理事から会議に付議すべき事項を示して理事会の招集を請求された場合には,その請求のあった日から7日以内に理事会を招集しなければならず(同条4項),理事長がこの招集をしない場合には,招集を請求した理事全員が連名で理事会を招集することができ,この場合の議長は出席理事の互選により定める(同条8項)。理事会は,原則として,理事総数の過半数以上が出席の上,出席した理事の過半数で議事を決し,可否同数のときは議長が決する(同条9,11項)。理事会の決議について,直接の利害関係を有する理事は,その議事の議決に加わることができない(同条12項)。
監事は,被告の業務及び財産状況の監査等を行う(17条)。
イ 評議員会及び評議員について
評議員会は,33人以上35人以内の評議員をもって組織され,理事長が招集する(21条2,3項)。評議員会は理事会の諮問機関であり,理事長は,予算,事業計画,予算外の新たな義務の負担又は権利の放棄,合併,寄附行為の変更等,諮問事項として寄附行為に定められた被告の業務に関する一定の重要事項について,予め評議員会の意見を聴かなければならない(23条)。また,評議員会は,被告の業務,財産状況又は役員の業務執行状況について意見の具申等ができる(24条)。評議員会は,評議員総数の過半数が出席の上,出席した評議員の過半数で議事を決し,可否同数のときは議長が決する(21条8,10項)。
ウ 役員及び評議員の選任に関する定め
(ア) 理事は,学長(1号。以下「学長理事」という。)及び学部長(2号。以下「学部長理事」という。)のほか,評議員のうちから評議員会において選任した者7人(3号。以下「評議員理事」という。),学識経験者のうち理事会において選任した者2人以上4人以内(4号。以下「学識理事」という。)からなる(6条1項)。
学長理事,学部長理事(薬学部長と生命科学部長の2人)及び評議員理事は,それぞれ学長,学部長又は評議員の職を退いたときは理事の職を失う(同条2項)。学識理事は,理事総数の過半数の議決によりその職を解任する(同条3項)。
監事は,被告の理事,職員(学長,教員,その他の職員を含む。)又は評議員以外の者であって理事会において選出した候補者のうちから,評議員会の同意を得て,理事長が選任する(7条)。
役員(学長理事と学部長理事を除く。以下,この段落において同じ。)の任期は4年であるが,補欠の役員の任期は前任者の残任期間となる(9条1項)。ただし,役員はその任期満了の後でも,後任の役員が選任されるまでは,なお,その職務を行う(同条3項)。
(イ) 評議員は,学長(1号。以下「学長評議員」という。),学部長(2号。以下「学部長評議員」という。),事務局長(3号。以下「事務局長評議員」という。)のほか,被告の職員のうちから選任された者11人(4号。以下「職員評議員」という。),Y大学又はその前身たるa専門学校,a専門学校女子部及びb学校を卒業し,25歳以上の者で,被告の職員でない者のうちから選任された者15人(5号。以下「卒業生評議員」という。),学識経験者3人以上5人以内(6号。以下「学識評議員」という。)からなる(25条1項)。
学長評議員,学部長評議員,事務局長評議員及び職員評議員は,それぞれ学長,学部長,事務局長又は職員の地位を退いたときは評議員の職を失う(同条2項)。また,職員評議員,卒業生評議員及び学識評議員は,任期4年(補欠のこれら評議員の任期は,前任者の残任期間)であり,その選任方法は,寄附行為施行細則(以下「施行細則」という。)及び評議員選任細則に定める(同条3項,26条1項)。
エ 寄附行為の施行についての細則その他被告及び被告の設置する学校の管理及び運営に関し必要な事項は,理事会が定める(46条)。
オ 評議員理事は,選任された評議員により遅滞なく互選する。なお,投票により決定する場合は,委任状による出席者は投票に加わることができない。(以上について,施行細則2条1項)
(3)  第21期役員及び評議員の選任
第21期評議員の任期は,平成23年10月14日から平成27年10月13日までであり,評議員の互選により平成23年10月8日に評議員理事7人(H,I,D,J,E,F,G)が選任され,同日,上記評議員理事7人に学長理事1人及び学部長理事2人を加えた理事10人により,学識理事2人(A,B)が選任された。第21期理事会の評議員理事と学識理事の任期は,同月30日から平成27年10月29日までであった。
平成25年3月23日開催の理事会で,同月末で被告を定年退職して薬学部の学部長理事の地位を失うCについて,同年4月1日から学識理事に選任し,常務理事とする旨の決議がなされた。この際,任期は他の任期付きの理事と終期を同一にするため,同日から平成27年10月29日とされたが,平成25年6月27日開催の理事会で,同人の学識理事の任期は同年4月1日から平成29年3月31日までと決議された。(任期の終期に関する上記決議の効力については争いがある。)
平成27年3月14日開催の理事会で,同月末で被告を定年退職して被告職員でなくなり,評議員理事を辞任するDについて,同年4月1日から学識理事に選任する旨の決議が行われ,任期は,同日から平成31年3月31日までとされた(任期の終期に関する上記決議の効力については争いがある。)。(甲12)
(4)  学長・学識理事・評議員選挙関連規程等の改正等
平成26年2月25日開催の理事会で,学長任用規程関連規則の改正,学識理事の選任方法に関する取決めの制定,評議員選挙に関する規則の改正が提案され,評議員会へ諮問することが決議された。同年3月15日開催の評議員会で,上記改正等が諮問された後,同日開催の理事会で,上記改正等が決議された。(甲8の1・2,9)
(5)  第22期評議員選挙
第22期評議員の選挙について,卒業生評議員に関しては平成27年5月11日に日程及び選挙方法等が周知され,同年6月頃までに推薦制により5人が選出され,その後,直接選挙制の投票により,同年9月1日の開票で残り10人が選出された。また,職員評議員は,同月25日に選挙が実施され,11人が選出された。
第22期評議員としては,充て職として定められた学長評議員1人,学部長評議員2人,事務局長評議員1人,学識評議員3人のほか,上記選挙で選出された卒業生評議員15人(原告X7及び原告X8を除く原告らを含む。),職員評議員11人(原告X7を含む。)の計33人で構成されることとなった。
(6)  第21期理事会による評議員理事選任方法の決定
平成27年9月15日開催の理事会(以下「本件理事会」という。)で,評議員理事の選任方法が議題とされ,次の①ないし④の方法(以下「本件選任方法」という。)で行うこと及びその後のスケジュールとして,同年10月9日午後3時に立候補届の提出を締め切り,理事立候補者は本人の意思確認のため,同日時までに立候補届及び推薦状を事務局まで持参すること,同月20日に第1回評議員会を開催し,選出した評議員理事の報告,立候補理事が7人未満のときは不足の理事を評議員全員の選挙によって決定すること等が決議された(以下「本件理事会決議」という。この有効性については争いがある。)。(甲18の1・2)
① 理事選出については立候補制とする。
② 立候補しようとする者は,所定の立候補届を事務局に提出する。その際,第22期評議員3人以上の推薦人から所定の推薦状を得て提出する必要がある。
③ 立候補者は他の立候補者の推薦人とはなれず,推薦人は立候補者にも,複数の立候補者の推薦人にもなれない。
④ 学内評議員が決定する平成27年9月25日以降に,必要書類を対象者に送付する。
(7)  第22期評議員会の開催
被告の第22期第1回評議員会は,平成27年10月20日に開催された。この評議員会では,本件選任方法によらず,推薦制,1人による複数推薦可,無記名7名連記の方法により,第22期評議員理事選挙(以下「本件評議員理事選挙」という。)が実施され,原告X8を除く原告ら(以下「原告ら7名」という。)が評議員理事として選任された(この選任の有効性については争いがある。)。
(8)  本件評議員理事選挙後の経緯
被告は,平成27年10月29日,理事長のA名義で,第21期理事会の一部の理事が同日をもって任期満了になるものの,第22期理事の選任が行われていないとして,寄附行為9条3項に基づき,第21期理事会の役員が引き続き職務執行を行う旨を宣言した。
他方,原告ら7名及び学部長理事であるK(生命科学部長で反理事長派に属する。)は,本件評議員理事選挙によって原告ら7名が評議員理事として適法に選任されたことを前提に,理事長のAに対し,同月30日付け書面で寄附行為18条4項に基づき,理事会の招集を請求し,同書面は同年11月2日に到達した。しかし,この請求に対して理事会が招集されなかったため,原告ら7名及びKは,学長理事のL,薬学部長理事のJ,学識理事のC及びDに対し招集通知を送って寄附行為18条8項に基づく理事会を招集し,同月17日に第22期第1回理事会を開催した。同理事会には,理事10名のうち原告ら7名及びKが出席し,次の内容の決議を行った(この決議の有効性については争いがある。)。(甲36の1・2,38)
ア Aを被告の理事長職から解任する。
イ 原告X1を被告の理事長に選任する。
ウ 第21期の学識理事であるA,B,C及びDの理事の任期は平成27年10月29日で満了していることを確認し,万が一,同人らが本理事会時点でも理事の地位にあるとしても,寄附行為6条3項に基づき学識理事の職から解任する。
エ 本件選任方法を定める本件理事会決議が無効であることを確認する。
オ 原告X8及びMを学識理事として選任する。
第3  争点及びこれに関する当事者の主張
1  理事がその地位にないことの確認を求める訴えの適法性
(被告の主張)
特定の理事がその地位にあるか否かについて,別の理事にこれを争う法的な利益があるかは疑問であり,少なくとも本件訴えのうちAらが理事等の地位にないことの確認を求める訴え(前記第1の4)については,原告らに当事者適格がなく,確認の利益もないから,却下されるべきである。
団体役員の地位不存在確認訴訟は,その確認請求の対象となる役員の手続保障を図るために固有必要的共同訴訟と解し,団体と当該役員を併せて被告とすべきであるから,この観点からも上記訴えは却下されるべきである。
(原告らの主張)
本件において,評議員として評議員理事を選任し,評議員理事として学識理事を選任し得る立場にある原告らは,評議員理事及び学識理事の地位に法律上の利害関係を有しており,理事の地位不存在確認訴訟の原告適格があるし,現に理事の地位にあるかが争われているから,確認の利益も認められる。
本件訴訟の判決には対世効がある以上,固有必要的共同訴訟と解する必要はなく,実質的にも,理事等の地位にないことを求める対象者のAらに対してはそれぞれ訴訟告知を行っており,手続保障に欠けるところもないから,被告適格は被告のみに認めれば足りる。
2  本件理事会決議の効力
(原告らの主張)
本件理事会決議は,下記(1)ないし(3)の事由により無効である。
(1) 寄附行為違反
被告の根本規範である寄附行為は,評議員理事の選任について,「評議員のうちから評議員会において選任した者7人」と定め(6条1項3号),評議員の選任方法は別に定める(25条3項)とする一方,評議員理事の選任方法については同様の定めを置いていない。これを自然に解釈すれば,被告は,評議員会に諮問機関としての権限を越える,評議員理事の選任権限を与えており,その前提として評議員理事の選任方法の決定権限も評議員会に専属している。
寄附行為上,被告においては,評議員会における評議員理事の選任を通じて,評議員会の多数派,ひいては卒業生及び教職員の多数派が,理事会の多数派となる仕組みが採られており,上記6条1項3号の趣旨は,卒業生及び教職員の最大多数から構成される評議員会としての意思を,評議員理事の選任を通じて被告の業務運営に反映する点にある。
本件理事会決議は,評議員4票のみで評議員理事を選任する内容の本件選任方法を理事会で定めて評議員会へ強制し,上記の評議員会の評議員理事選任権限を奪うものであって,寄附行為の趣旨に反する。
仮に,理事会が評議員理事の選任方法について定めることが認められるとしても,本件理事会決議による評議員理事選任方法は,私立学校法41条及び寄附行為21条により必要とされる評議員会の議決を不要としている点,本来評議員のうち誰でも評議員理事に選任することができる権限を侵害する点において,私立学校法及び寄附行為に違反し,無効である。
(2) 変更手続の違法
第21期理事会は,第22期評議員の選挙期間中に,本件選任方法について評議員会に諮問することなく本件理事会決議をしており,平成27年10月21日の時点で本件選任方法に関する規程の整備もされていない上,第22期評議員予定者に対する周知期間も十分に確保されなかった。また,本件選任方法を定めることは理事を選任することと同義であり,第22期理事となり得る資格を持つ評議員予定者が理事会決議に加わることは,利害関係人を決議から排斥する寄附行為18条12項に抵触する。
よって,本件理事会決議は寄附行為又は信義則に反し,違法である。
(3) 内容の著しい不公正
従前からの慣行どおりの評議員選任方法(候補者の推薦人は1人で足り,複数推薦ができる。候補者が7人を超える場合は評議員各人が7票を投じ,得票数の多い候補者から順に7人を選任する。候補者が7人の場合は,評議員全員の賛否を挙手で諮り,賛成多数であれば候補者全員を選任する。以下,この方法を「従来の選任方法」という。)によれば,評議員33人の過半数を占めれば7人の評議員理事を選任できるところ,本件では,第22期の卒業生評議員選挙で反理事長派の候補者10人が当選した時点で,評議員の過半数を反理事長派が占めることはほぼ確実な状況であった。しかし,本件選任方法によると,立候補者は推薦人になれず,評議員1人が推薦できるのは1人のみである一方,充て職理事は推薦人になることができるという,理事長派に都合の良いルールとなっている。理事の立候補者が推薦人となり得ないのであれば,既に理事である充て職理事は,なおさら推薦人から除外されなければ不公平である。
本件理事会決議では,平成27年10月9日に評議員理事の立候補を締め切り,立候補届と推薦状は事務局に直接持参することも定められている。しかし,本件で,理事長派は本件理事会決議の前から充て職評議員らへの根回しを行っていた一方,評議員一般が本件選任方法の定めを知らされたのは同年9月25日以降であり,それから締切日までの2週間程度で,顔合わせもないまま,各地にいる評議員らと相談して立候補者や推薦人を決めることは非現実的で,必要な書類を集めるにも時間がかかるから,このスケジュールは理事長派からの圧力にほかならない。
このように,本件理事会決議は,従来の選任方法によれば自らが被告の運営が継続できない可能性が高いことを悟った理事長派が,支配権を維持するため,評議員理事7人全員が反理事長派から選出されることを封じて理事長派の評議員理事選出を可能にし,理事長派に都合良くスケジュールを定めた著しく不公正な内容の決議であって,信義則等に反し違法である。
(被告の主張)
本件理事会決議は,下記(1)ないし(3)のとおり合理的内容の決議が手続上の瑕疵なく行われたもので,適法かつ有効である。
(1) 寄附行為に抵触しないこと
寄附行為上,評議員理事は評議員会において選任するとの規定(6条1項3号)以外に具体的方法の定めはないから,会議体としての評議員会で評議員理事を選任したといえる限り,評議員理事の選任方法につき寄附行為違反の問題は生じ得ない。そして,理事会は,寄附行為46条に基づき評議員理事の選任方法・手続について決定権限を有しており,被告は本件理事会決議により,「評議員により遅滞なく,互選する」(施行細則2条1項)ための具体的方法として,評議員1人1票制を前提に,立候補者に一定の推薦を要求する内容の本件選任方法を定めたものである。
被告の評議員定数(33人以上35人以内)からは,1人1票の場合,立候補者本人を含め4人以上の支持があれば,理事選出のための最低得票数を得ているため落選することはない。本件選任方法によれば,評議員会における少数派も評議員理事を選出でき,理事会における被告の運営に少数派も含めて多様な意見が反映されることが期待される。寄附行為6条1項3号の趣旨は学校法人の業務運営に多様な意見を反映させ公共性を高めることであり,本件選任方法は「評議員会において選任」する方法として極めて民主的かつ合理的方法で,被告の運営に評議員会の多様な意見を反映させ,その公共性を高めることに資する。原告の主張する従来の選任方法では,事実上評議員の多数派からしか評議員理事が選出されない結果を招き,同条項の趣旨にそぐわない。
原告は,寄附行為6条1項3号から評議員会に評議員選任の具体的方法・手続についての決定権限がある旨主張するが,そもそも評議員会は理事会の諮問機関であり,寄附行為の定めにより授権された範囲での権限を有するに過ぎず,評議員会に評議員理事の選任権限があることは,その選任方法の決定権限が評議員会にあることまで意味しない。
(2) 本件選任決議に手続上の瑕疵は存在しないこと
本件選任方法は,理事会における約50分間の質疑応答及び議論を経て承認され,本件理事会決議は,私立学校法,寄附行為その他諸規程に基づいて適式に行われており,本件理事会決議に手続上の瑕疵はない。原告らは,本件選任方法を決議した時期の不合理性について主張するが,合理的な評議員理事選挙の方法を整備する時期について,特定の時期であるがゆえに禁止する法令,内規は存在しない。
また,評議員理事の選任方法は評議員会への諮問事項ではないし(私立学校法42条1項,寄附行為23条),評議員理事は本件選任方法に従って評議員会により選任されるのであり,本件理事会決議が理事の選任と同義であるという原告らの主張は誤りである。
(3) 本件選任方法に不当な目的等はないこと
上記(1)のとおり,第21期理事会は,1つの派閥が評議員理事7人を推薦し,その全員を選任するという運用を懸念し,少数派を含めた多様な意見を被告の業務運営に反映させること等を目的に,公平性に十分配慮した本件選任方法を整備したもので,内容として何ら不当ではない。また,本件選任方法は,平成25年頃から検討されていたものを,慣例通り9月中旬に開催された定例理事会で決議したものであるし,その決議の時期は,評議員総数の3分の1を占める職員評議員選挙の前で,評議員理事の票読みが確実に行える段階ではなかったことからも,本件理事会決議が「理事長派の支配権維持」目的でないことは明らかである。本件選任方法の告知から第22期評議員理事立候補者締切日である平成27年10月9日までの約2週間で,現に本件選任方法に従い3名が立候補したことからすれば,本件選任方法の決定が第22期評議員理事選挙の実施を不当に妨げるものとは考え難い。
仮に,本件理事会決議の時期が不当と評価されるとしても,その点のみから本件理事会決議が無効になるとは評価し得ない。
3  本件評議員理事選挙の効力
(原告らの主張)
本件理事会決議が有効であっても,それにより直ちに本件評議員理事選挙は無効とはならない。上記2(原告らの主張)(1)のとおり,寄附行為の解釈上,評議員会に評議員理事の選任権限が与えられているのであり,合議制の機関である評議員会が,その決議によって本件選任方法を採用しないで他の方法により評議員理事を選任した場合,評議員会の意向が優越する。
本件では,平成27年10月20日開催の評議員会で,議事定足数を満たす26名が出席した上で,議決定足数を満たす21名の賛成により,従来の選任方法が採用され,これに基づき,評議員会決議により原告ら7名が評議員理事に選任されたから,本件評議員理事選挙は有効である。
(被告の主張)
上記2(被告の主張)(1)のとおり,私立学校法上,諮問機関である評議員会は,寄附行為の定めにより授権された範囲での権限を有するに過ぎず,被告においては,寄附行為上,明確に評議員会に評議員理事の選任方法の決定権限が与えられていないから,寄附行為46条に基づき理事会の決定した本件選任方法に反する方法を評議員会が採用することは許されない。原告の上記主張は誤りであり,本件選任方法に反する方法で実施された本件評議員理事選挙は無効である。
4  原告ら及びAらの理事等の地位の存否
(原告らの主張)
上記2,3の原告らの主張のとおり,原告ら7名は,平成27年10月20日開催の評議員会で,評議員理事の選任権限を有する評議員会により,従来の選任方法に従い,評議員理事として適法に選任された。そして,同年11月17日開催の理事会は第22期評議員理事らにより有効に招集され,同理事会で,原告X1が被告の理事長に,原告X8が学識理事に選任されたから,原告らは理事の,原告X1は理事長の地位をそれぞれ有する。
他方,第21期評議員理事であるE,F及びGは平成27年10月29日の任期満了により,第21期学識理事であるA,B,C及びDは,同日の任期満了又は,同年11月17日開催の理事会で解任されたことにより理事等の地位を失った。
(被告の主張)
上記2,3の被告の主張のとおり,本件理事会決議は有効で,本件選任方法によらずになされた本件評議員理事選挙は無効であるから,原告ら7名は評議員理事の地位にない。そして,理事の地位にない者によりなされた理事会の招集,開催並びに理事長及び学識理事選任決議等はいずれも無効であるから,原告X1は理事長の,原告X8は学識理事の各地位にない。
上記のとおり第22期理事が選任されていない以上,寄附行為9条3項によりAらを含む第21期理事が引き続き職務を行うことになるから,現在もAは理事長及び理事の地位に,他の第21期理事は理事の地位にある。
第4  当裁判所の判断
1  Aらが被告の理事等の地位にないことの確認請求に係る訴えの適法性
被告は,Aらが被告の理事等の地位にないことの確認請求について,原告らに当事者適格がなく,確認の利益もないし,固有必要的共同訴訟であるのにAらを被告にしていないから,不適法であると主張する。
確認の訴えにおける確認の利益は,判決をもって法律関係の存否を確定することが,その法律関係に関する法律上の紛争を解決し,当事者の法律上の地位の不安,危険を除去するために必要かつ適切である場合に認められる。本件では,原告らは,第22期評議員により評議員理事として選任されたと主張し,一方で,被告は,原告らが評議員理事として選任されたのは無効であると主張して,第22期理事会が構成できていない以上,第21期理事会の構成員であるAらが引き続き理事等の職にあるとして,理事会として被告の運営等を決している状態にあるのであり,理事等の地位の存否について,現に具体的な法律上の紛争が存在している状態にあるから,原告らは,Aらが被告の理事等の地位にあるかどうかについて法律上の利害関係を有していると解するのが相当である。したがって,原告らは,Aらが理事等の地位にあるかという訴訟において,当事者適格に欠けるところはないし,その確認を求める利益を有しているというべきである。
法人の理事が,当該法人を相手方として,理事の地位の確認を求める場合には,その請求を認容する確定判決により,その者が当該法人との間においてその執行機関としての組織法上の地位にあることが確定されるから,事柄の性質上,何人もその権利関係の存在を認めるべきであり,上記確定判決は対世的効力を有する(最高裁判所第一小法廷昭和44年7月10日判決・民集23巻8号1423頁参照)。したがって,法人の理事たる地位の存否について確認の訴えを提起する場合には,当該法人を相手方とすれば足り,これを固有必要的共同訴訟と解する必要はない。
以上の検討によれば,原告らのAらが被告の理事の地位にないことの確認請求に係る訴えには,不適法であると解する根拠は認められないのであり,上記訴えの不適法とする被告の主張には理由がない。
2  本件理事会決議の効力について
(1)  本件選任方法が寄附行為に違反するとの原告らの主張について
原告らは,評議員会に評議員理事の選任権限を認める寄附行為6条1項3号の解釈上,その前提としてその選任方法の決定権限も評議員会にあるから,本件理事会決議は寄附行為の趣旨に反し無効である旨主張する。
前提事実(2)ウ(ア),エ,オのとおり,寄附行為上,評議員については,その選任方法を施行細則及び評議員選任細則に委任する旨の個別規定(25条3項)がある一方で,評議員理事の選任に関しては,「評議員のうちから評議員会において選任した者7人」(6条1項3号)と規定するのみで具体的選任手続を定めた規定はないものの,46条には「寄附行為の施行についての細則その他この法人及びこの法人の設置する学校の管理及び運営に関し,必要な事項は理事会が定める。」との一般的な委任規定があり,理事会が定める施行細則2条1項には,「評議員理事は,(中略)選任された評議員により遅滞なく,互選する。なお,投票により決定する場合は,委任状による出席者は投票に加わることができない。」と規定している。従前は,これ以外に評議員理事の選任手続についての規定はなかったのであり,原告らは,評議員会において従来の選任方法により評議員理事を選任していたと主張するが,従来の選任方法は特に規則化されている訳ではなく,各期の評議員会においてその都度,選任手続を決していたものと認められる。そうすると,評議員理事の選任方法については,従前は,被告の管理運営に関する必要な事項(寄附行為46条)として,理事会が定めていた施行規則においては,遅滞なく互選することと,投票による場合には代理人による投票を認めないことのみを定め,それ以上に具体的な事項については,特に規則化することなく,寄附行為6条1項3号の「評議員会において選任」の規定に基づいて,その都度の評議員会の判断に委ねていたものと解することになる。そして,寄附行為は,諮問機関である評議員会の権限を具体的に規定しており(23条),評議員理事選任方法については,その権限に加えていないものである。
上記のような寄附行為等の規定の構造によれば,理事会は,評議員理事の選任について,寄附行為6条1項3号に反しない限度であれば,被告の管理運営に関し必要な事項(寄附行為46条)として,評議員理事の具体的な選任方法を定める権限を有しており,寄附行為がこの権限を排除していると解するのは困難であると判断するのが相当である。そうすると,上記のとおり,従前から理事会で定める施行細則による評議員理事の選任方法に加えて,寄附行為6条1項3号に反しない限度でその選任方法を理事会が定める以上は,評議員会がこれを無視して,同号を根拠に評議員理事の選任方法を決定する権限までをも当然に有するという解釈をとることは困難であるといわなければならない。
そして,本件選任方法は,評議員が1人1票を持つことを前提に,事前に3人以上の推薦人を得て評議員理事の立候補をした者から評議員会で理事を選任するというものであり(前提事実(6)),これ自体,特に不合理な制度であると解する余地はないし,「評議員会において選任する」とのみ規定する寄附行為6条1項3号に反するものとは解されない。
したがって,寄附行為上,理事会において,評議員理事の具体的な選任方法を決定することは可能であり,本件選任方法の内容からも,本件理事会決議が寄附行為に反するものとはいえないから,本件理事会決議が寄附行為に反して無効であるとの原告らの上記主張は採用できない。
原告らは,本件選任方法によるとしても,立候補者について,評議員会で信任の決議を経なければ,評議員理事には選任されない旨の主張もするが,寄附行為6条1項3号の文言から,評議員理事の選任について評議員会の信任の決議を要するという根拠を見出すことはできないし,実質的にも,この見解は,理事会が定めた方法を無視して評議員会が自由に評議員理事の選任方法を決し得るとする解釈であって,上記判断に照らして,この主張を採用することはできない。
(2)  本件理事会決議の手続の違法性に関する原告らの主張について
理事会決議の手続については,前提事実(2)アのとおり,招集権者である理事長が,各理事に対し,開催場所,日時及び付議事項を示した通知をした上で理事会が開催され,出席定足数(理事総数の過半数)と議決定足数(出席理事の過半数)を満たした決議がなされる必要があるところ,原告らは,招集手続については特段違法事由を主張しておらず,証拠(甲19,46,乙1,2)によれば,平成27年9月15日に開催された第21期理事会においては,理事全員が出席の上,本件選任方法及び理事選出のスケジュールについて,約35分間にわたり質疑応答と議論がなされた後で全員賛成のもと本件選任方法が決議されており,定足数についても寄附行為の手続に違反する違法な点はない。
原告らは,第22期評議員予定者が本件理事会決議に加わった点が,決議に関して直接利害関係を有する理事の議決への参加を禁じた寄附行為18条12項に抵触する旨の主張をするが,本件理事会決議は,あくまでも評議員の中から評議員理事を選任する具体的方法を定めたもので,同決議により直接評議員理事が選任されるわけではないし,評議員は誰でも評議員理事に選任される可能性があることに照らせば,特定の評議員が決議に関し直接の利害関係を持つと解するのは困難であるから,原告らの主張する上記の寄附行為違反の問題は生じないというべきである。
理事会が評議員理事の具体的選任方法を定めるに際し,同理事の選任権限をもつ評議員会に対して予めその意見を聞くことは望ましいことではあるものの,寄附行為23条所定の評議員会への諮問事項の中に,評議員理事の選任に関する事項は含まれておらず,評議員会への諮問を経ていないことが,私立学校法41条ないし寄附行為21条の手続違背として本件理事会決議の無効事由になるとは解されない。また,本件選任方法は,事柄の性質上,規則化することが望ましいといい得るが,規則化されていないことから,直ちに寄附行為46条に基づく本件理事会決議が違法となって無効になるという根拠は,特にないものというべきである。
さらに,原告らは,本件選任方法について,事前に第22期の評議員予定者に対する十分な周知期間がなく,同期の第1回評議員会開催までに規定の整備もなされていなかったことが本件理事会決議の手続の違法事由である旨主張するが,寄附行為上,上記の内容に関する理事会決議をどの段階までに決するかについての手続を定める規定はないし,これを理事会決議の手続違背による無効事由とするだけの根拠も特にないから,原告らの手続違背に関する上記主張には,いずれも理由がない。
以上より,本件理事会決議は,その手続において違法な点はなく,原告らの上記主張はいずれも採用できない。
(3)  内容の著しい不公正について
原告らは,本件理事会決議の内容である本件選任方法及び評議員理事選出のスケジュールが,理事長派の支配権維持を目的とした,反理事長派にとって著しく不公正な内容であるから,違法無効である旨主張する。
確かに,本件理事会決議がなされた時期は,第22期評議員選挙期間中で,卒業生評議員選挙終了後,職員評議員選挙実施前であること(前提事実(5)),選挙により選出された第22期の卒業生評議員,職員評議員に対して,本件選任方法及びスケジュールが知らされたのは平成27年9月25日以降であったと認められること(甲24)から,事前の周知方法が採られた形跡のない状況に照らせば,第22期評議員に対する評議員理事の立候補の締切りまでに十分な周知期間があったかという疑問が生じ得る(被告は,本件選任方法に従って現に3名が立候補したと主張するが,証拠(甲28)によれば,上記3名はいずれも理事長派の者である。)といわざるを得ない。したがって,理事会で評議員理事の選任方法についての具体的な方法を定めるとしても,既に評議員選挙が始まっている第22期からではなく,次の第23期から実施するという選択肢もあり得たものである。その上,第21期理事会の理事長であるAは,本件理事会の最後のあいさつで,本件選任方法によれば,理事長派が少なくとも評議員理事2名を確保することができ,非改選の5名と合わせて第22期理事会の過半数をとる見通しとなったので,評議員選挙で落選した同志も安心してほしいという趣旨の発言をしていたと認められる(甲46・34~36頁)ことから,同人が,本件選任方法によった場合の同人が属する理事長派の理事の当選者数を考慮していたと認められることを併せ考えれば,第21期理事会が本件選任方法及びスケジュールを定めた本件理事会決議の時期は適切を欠くとの評価をする余地があるというべきである。
しかしながら,本件選任方法は,評議員理事の選出を立候補制とし,事前に3人以上の推薦人を得て立候補届を提出すること,評議員は1人1票が前提で,立候補者は推薦人にはなれないことを内容としており,上記判断のとおり,これ自体に特に不公正,不合理な点は見出し難いし,評議員会の少数派からも評議員理事が選出されるような仕組みを目指して多様な意見を理事会に反映させるという政策判断には,十分な合理性が認められる。一方で,原告らが主張する従来の選任方法は,7名の評議員理事の選任に際して,各評議員が7票を行使するという方法であり,その結果,多数派を有する派閥があれば,その派閥が7名の評議員理事の選出を独占することができるという仕組みであり,そのような政策判断を採用するについても,ことさらに不合理,不公正と認めることはできない。結局,本件選任方法にも,従来の選任方法にも,政策判断としてそれぞれ合理性が認められるものであって,本件選任方法がことさらに不公正とか,不合理であるとは認められない。そして,上記判断のとおり,寄附行為の解釈上,理事会は,被告の管理運営に関し必要な事項(寄附行為46条)として,寄附行為6条1項3号に反しない限度で評議員理事の具体的な選任方法を定める権限を排除しておらず,上記のとおり,合理性のある政策判断に基づいて本件選任方法を定めているところ,本件理事会決議は,理事会における質疑応答や議論を経た上で,反理事長に属するとされる理事も含めて全員賛成の上で議決され(上記(2)),理事長派が強行的に議決したことを窺わせる事情は存しないこと,本件理事会決議が卒業生評議員選挙の後で職員評議員選挙の前の段階でなされたこと(前提事実(5)),証拠(甲18の1,23,24)によれば,本件選任方法による評議員理事の選任のスケジュールは,本件選任方法を同年9月25日以降に第22期評議員に告知してから,同年10月9日に評議員理事の立候補届出を締め切り,同月20日に第22期第1回評議員会を開催して評議員理事を選出するというもので,告知から上記の立候補届出の締切日まで約2週間の期間があり,第22期第1回評議員会まで25日間の期間があるという各事情を併せ考えれば,本件選任方法を定める時期ないしこれを第23期の評議員理事選任からの適用としなかったことが,直ちに本件理事会決議を無効にする程度に著しく不公正であると認めることは困難であるといわなければならない。
また,その他の事情に鑑みても,本件理事会決議が,原告の主張する不公正なものであると認めるだけの事情は存しない。
以上から,原告の上記主張は採用できず,本件理事会決議は有効である。
3  本件評議員理事選挙の効力について
原告は,評議員理事の選任については,理事会決議よりも評議員会の意向が優越するから,第22期評議員会が本件選任方法によらずに従来の選任方法で評議員理事を選任したことは,有効である旨主張する。
原告の主張は,寄附行為6条1項3号の解釈により,理事会で評議員理事選任方法を決しても,評議員会を拘束しないことを前提とするものであるが,上記2(1)のとおり,寄附行為の解釈上,理事会は被告の管理運営に関するものとして(寄附行為46条),評議員理事の選任方法を定める権限があると解するのが相当であり,本件理事会決議によりこれを定めた以上,評議員会がこれに拘束されないと解することはできない。したがって,有効な本件選任方法によらずになされた本件評議員理事選挙は無効となる。
4  原告らの理事ないし理事長の地位の存否
上記2,3のとおり,本件理事会決議は有効であり,本件評議員理事選挙は無効であるから,原告ら7名は被告の評議員理事の地位にはないことになる。そして,平成27年11月17日に開催された第22期理事会(前提事実(8))は,学部長理事のKのみで招集を行ったこととなり,理事会の招集要件(前提事実(2)ア,寄附行為18条4,8項)を満たしていないから,同理事会における決議はすべて無効となり,原告X1は理事長の地位になく,原告X8は学識理事の地位にないことになる。
また,上記判断によると,被告の第22期評議員理事は有効に選任されていないことになるから,第21期の評議員理事であるE,F及びG並びに同期の学識理事であるA,B,C及びDは,その任期が満了していたとしても,寄付行為9条3項により,後任の役員が選任されるまでは,なおその職務を行うことになり,現在も被告の理事の地位にあることとなる。
5  結論
以上によれば,原告らの各請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所立川支部民事第2部
(裁判長裁判官 渡邉弘 裁判官 和久田道雄 裁判官 村上若奈)

 

別紙
原告目録
〒〈省略〉 東京都八王子市〈以下省略〉
原告 X1
〒〈省略〉 東京都世田谷区〈以下省略〉
原告 X2
〒〈省略〉 埼玉県所沢市〈以下省略〉
原告 X3
〒〈省略〉 神奈川県横浜市〈以下省略〉
原告 X4
〒〈省略〉 東京都品川区〈以下省略〉
原告 X5
〒〈省略〉 東京都八王子市〈以下省略〉
原告 X6
〒〈省略〉 山梨県上野原市〈以下省略〉
原告 X7
〒〈省略〉 東京都八王子市〈以下省略〉
原告 X8
以上


「選挙 立候補」に関する裁判例一覧
(1)令和元年10月 8日  神戸地裁  平29(ワ)1051号 損害賠償請求事件
(2)令和元年 9月 6日  大阪地裁  令元(わ)2059号 公職選挙法違反被告事件
(3)令和元年 6月25日  東京地裁  平26(行ウ)615号 損害賠償等請求事件
(4)令和元年 5月24日  東京地裁  平28(ワ)17007号 選挙供託金制度違憲国家賠償請求事件
(5)平成31年 4月26日  大阪高裁  平30(行ケ)1号 裁決取消請求事件
(6)平成31年 4月25日  東京高裁  平30(ネ)4794号 総会決議無効確認等請求控訴事件
(7)平成31年 4月12日  大阪地裁  平29(ワ)7325号 賃金等請求事件
(8)平成31年 4月 9日  甲府地裁  平27(行ウ)6号 違法公金支出金返還等請求事件
(9)平成31年 3月20日  水戸地裁 平29(わ)655号
(10)平成31年 3月 7日  知財高裁  平30(行ケ)10141号 審決取消請求事件
(11)平成31年 3月 5日  東京高裁  平30(う)1422号 政治資金規正法違反被告事件
(12)平成31年 3月 5日  東京地裁  平29(ワ)18277号 謝罪広告等請求事件
(13)平成31年 1月17日  盛岡地裁  平30(行ウ)8号 旧庁舎解体等公金支出等差止請求事件
(14)平成31年 1月15日  名古屋地裁  平28(ワ)3178号・平28(ワ)3179号 損害賠償請求事件
(15)平成30年11月29日  東京地裁  平29(行ウ)149号・平29(行ウ)375号 不当労働行為再審査申立棄却命令取消事件
(16)平成30年11月22日  東京地裁  平30(ワ)16336号 損害賠償等請求事件
(17)平成30年11月22日  東京地裁  平28(ワ)31683号 損害賠償請求事件
(18)平成30年10月31日  東京地裁  平27(ワ)18282号 損害賠償請求事件
(19)平成30年10月24日  仙台高裁  平29(行コ)26号 政務調査費返還履行等請求控訴事件
(20)平成30年10月11日  東京高裁  平30(う)441号 政治資金規正法違反被告事件
(21)平成30年10月 5日  東京地裁  平27(ワ)36817号・平28(ワ)18096号 損害賠償請求事件、損害賠償等請求事件
(22)平成30年10月 4日  東京地裁  平27(ワ)2650号 代表権不存在確認等請求事件
(23)平成30年 9月28日  東京地裁  平26(ワ)10773号・平29(ワ)3602号 損害賠償請求事件(本訴)、損害賠償請求反訴事件(反訴)
(24)平成30年 9月28日  東京地裁  平28(ワ)23496号 損害賠償請求事件
(25)平成30年 9月27日  大阪高裁  平29(行コ)173号 高等学校等就学支援金支給校指定義務付等請求控訴事件
(26)平成30年 9月27日  東京地裁  平28(ワ)36676号 総会決議無効確認等請求事件
(27)平成30年 9月19日  東京高裁  平30(ネ)2451号 社員総会決議不存在確認等,代議員選挙無効確認等請求控訴事件
(28)平成30年 8月30日  東京高裁  平30(行コ)111号 労働委員会救済命令取消請求控訴事件
(29)平成30年 8月28日  東京地裁  平28(行ウ)281号 政務活動費返還請求事件
(30)平成30年 7月25日  東京高裁  平30(行ケ)8号 裁決取消請求事件
(31)平成30年 7月20日  福岡地裁久留米支部  平28(ワ)69号 損害賠償請求事件
(32)平成30年 6月27日  東京地裁  平27(特わ)2148号 各政治資金規正法違反被告事件
(33)平成30年 5月24日  東京高裁  平30(行ケ)4号 選挙無効及び当選無効請求事件
(34)平成30年 4月25日  東京地裁  平28(ワ)31号・平28(ワ)37044号・平28(ワ)37820号 証書真否確認、立替金等返還債務不存在確認等請求事件、立替金返還請求反訴事件、立替金請求反訴事件
(35)平成30年 4月20日  高松高裁  平29(行コ)21号 権利変換計画不認可処分取消等請求控訴事件
(36)平成30年 4月18日  東京高裁  平29(行コ)302号 埼玉県議会政務調査費返還請求控訴事件
(37)平成30年 3月30日  東京地裁  平27(ワ)37147号 損害賠償請求事件
(38)平成30年 3月26日  東京地裁  平28(ワ)31536号・平28(ワ)44146号 社員総会決議不存在確認等請求事件、代議員選挙無効確認等請求事件
(39)平成30年 3月19日  東京地裁  平28(ワ)1085号 損害賠償等請求事件
(40)平成30年 3月13日  東京高裁  平29(う)1154号 公職選挙法違反被告事件
(41)平成30年 3月 8日  東京地裁  平29(ワ)30031号 損害賠償及び慰謝料請求事件
(42)平成30年 2月21日  東京地裁  平28(行ウ)6号 労働委員会救済命令取消請求事件
(43)平成30年 2月13日  東京地裁  平29(行ウ)45号 非常勤職員報酬返還請求事件
(44)平成30年 2月 6日  東京高裁  平29(行ケ)35号
(45)平成30年 2月 6日  東京地裁  平27(ワ)35223号 仮払金精算請求事件
(46)平成30年 1月22日  東京地裁  平27(特わ)2148号 政治資金規正法違反被告事件
(47)平成30年 1月18日  東京高裁  平29(行ケ)27号・平29(行ケ)28号 裁決取消請求事件
(48)平成29年12月21日  東京地裁  平29(ワ)24097号 損害賠償等請求事件
(49)平成29年12月19日  最高裁第三小法廷  平29(行フ)3号 執行停止決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
(50)平成29年12月19日  千葉地裁  平28(行ウ)5号 農業委員会会長解任無効確認請求事件
(51)平成29年12月15日  福岡地裁  平26(わ)1284号・平27(わ)231号・平27(わ)918号 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
(52)平成29年12月 8日  札幌地裁  平24(行ウ)3号 政務調査費返還履行請求事件
(53)平成29年11月16日  東京地裁  平28(ワ)6761号 懲戒処分無効確認等請求事件
(54)平成29年11月 2日  東京地裁  平28(ワ)32978号 損害賠償請求事件
(55)平成29年11月 2日  仙台地裁  平26(行ウ)2号 政務調査費返還履行等請求事件
(56)平成29年10月11日  東京高裁  平28(ネ)5794号 理事長及び理事の地位確認等請求控訴事件
(57)平成29年10月11日  東京地裁  平28(ワ)38184号 損害賠償請求事件
(58)平成29年10月11日  神戸地裁  平28(行ウ)49号 退職手当金不支給処分取消請求事件
(59)平成29年10月 2日  東京地裁  平29(ワ)21232号 発信者情報開示請求事件
(60)平成29年 9月28日  東京地裁  平26(行ウ)229号 難民不認定処分取消請求事件
(61)平成29年 9月26日  東京地裁  平28(ワ)18742号 損害賠償請求事件
(62)平成29年 9月25日  東京地裁  平27(行ウ)331号・平28(行ウ)526号 観察処分期間更新決定取消請求事件、訴えの追加的変更申立て事件
(63)平成29年 9月25日  東京地裁  平27(行ウ)444号 観察処分期間更新処分取消請求事件
(64)平成29年 9月20日  徳島地裁  平28(行ウ)9号 権利変換計画不認可処分取消等請求事件
(65)平成29年 9月 8日  東京地裁  平28(行ウ)117号 難民の認定をしない処分取消等請求事件
(66)平成29年 9月 1日  青森地裁  平29(わ)55号・平29(わ)67号・平29(わ)71号 公職選挙法違反被告事件
(67)平成29年 8月25日  東京地裁  平27(行ウ)732号 難民不認定処分等取消請求事件
(68)平成29年 8月25日  青森地裁  平28(ワ)143号 損害賠償請求事件
(69)平成29年 7月25日  青森地裁  平29(わ)48号・平29(わ)56号・平29(わ)66号・平29(わ)70号 公職選挙法違反被告事件
(70)平成29年 7月24日  東京地裁  平28(特わ)807号 公職選挙法違反被告事件
(71)平成29年 7月12日  広島高裁松江支部  平28(行コ)4号 市庁舎建築に関する公金支出等差止請求控訴事件
(72)平成29年 6月27日  東京地裁  平28(ワ)26217号 損害賠償請求事件
(73)平成29年 5月22日  東京地裁  平28(特わ)807号 公職選挙法違反被告事件
(74)平成29年 5月18日  東京高裁  平28(う)1194号 公職選挙法違反被告事件
(75)平成29年 5月 9日  東京地裁  平28(ワ)36100号 決議無効確認請求事件
(76)平成29年 4月13日  東京地裁  平27(行ウ)480号 退去強制令書発付処分等取消請求事件
(77)平成29年 4月11日  東京地裁  平26(ワ)10342号 損害賠償請求事件
(78)平成29年 4月 7日  東京地裁  平26(ワ)27864号 土地建物所有権移転登記抹消登記手続等請求事件
(79)平成29年 3月29日  東京地裁  平28(ワ)4513号・平28(ワ)28465号 マンション管理組合法人総会決議無効確認請求事件、反訴請求事件
(80)平成29年 3月28日  東京地裁  平25(ワ)28292号 謝罪広告等請求事件
(81)平成29年 3月28日  仙台地裁  平28(ワ)254号 損害賠償請求事件
(82)平成29年 3月24日  東京地裁  平26(ワ)30381号 損害賠償請求事件
(83)平成29年 3月15日  東京地裁  平27(行ウ)403号 地位確認等請求事件
(84)平成29年 3月 8日  東京地裁  平26(行ウ)300号 地位確認等請求事件
(85)平成29年 2月 9日  静岡地裁  平28(ワ)409号 損害賠償請求事件
(86)平成29年 2月 2日  東京地裁  平26(ワ)25493号・平27(ワ)20403号 株式代金等請求事件(本訴)、損害賠償請求反訴事件(反訴)
(87)平成29年 2月 1日  仙台地裁  平26(行ウ)31号 海外視察費返還履行請求事件
(88)平成29年 1月31日  大阪高裁  平28(ネ)1109号 損害賠償等請求控訴事件
(89)平成29年 1月31日  高松高裁  平28(行コ)23号 資格決定処分取消請求控訴事件
(90)平成29年 1月31日  東京地裁  平27(行ウ)360号 難民の認定をしない処分等取消請求事件
(91)平成29年 1月31日  神戸地裁豊岡支部  平28(わ)63号
(92)平成29年 1月17日  静岡地裁  平28(わ)407号 公職選挙法違反被告事件
(93)平成28年11月28日  名古屋高裁  平27(う)131号 受託収賄、事前収賄、公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律違反被告事件
(94)平成28年11月21日  東京地裁立川支部  平27(ワ)2775号 理事長及び理事の地位確認等請求事件
(95)平成28年11月18日  東京地裁  平28(特わ)1764号 公職選挙法違反被告事件
(96)平成28年11月16日  大阪高裁  平27(ネ)3176号 損害賠償請求控訴事件
(97)平成28年11月15日  東京高裁  平28(行ケ)16号 選挙無効請求事件
(98)平成28年11月10日  東京高裁  平28(行ケ)17号 選挙無効請求事件
(99)平成28年11月 9日  東京地裁  平27(ワ)1724号 損害賠償等請求事件
(100)平成28年10月31日  東京地裁  平28(特わ)1764号 公職選挙法違反被告事件


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