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政治と選挙Q&A「屋外広告物法 ポスター貼り(掲示交渉)代行」に関する裁判例(57)昭和55年 4月28日 広島高裁松江支部 昭54(う)11号 公職選挙法違反被告事件 〔戸別訪問禁止違憲事件・控訴審〕

政治と選挙Q&A「屋外広告物法 ポスター貼り(掲示交渉)代行」に関する裁判例(57)昭和55年 4月28日 広島高裁松江支部 昭54(う)11号 公職選挙法違反被告事件 〔戸別訪問禁止違憲事件・控訴審〕

裁判年月日  昭和55年 4月28日  裁判所名  広島高裁松江支部  裁判区分  判決
事件番号  昭54(う)11号
事件名  公職選挙法違反被告事件 〔戸別訪問禁止違憲事件・控訴審〕
上訴等  上告  文献番号  1980WLJPCA04280019

要旨
◆公職選挙法一三八条一項所定の戸別訪問の禁止と憲法二一条の関係(違憲)

裁判経過
差戻後上告審 昭和59年 2月21日 最高裁第三小法廷 判決 昭57(あ)1839号 公職選挙法違反被告事件
差戻後控訴審 昭和57年10月26日 広島高裁 判決 昭56(う)93号 公職選挙法違反被告事件
差戻前上告審 昭和56年 6月15日 最高裁第二小法廷 判決 昭55(あ)874号 公職選挙法違反被告事件 〔戸別訪問禁止違憲事件・差戻前上告審〕
第一審 昭和54年 1月24日 松江地裁出雲支部 判決 昭51(わ)42号・昭51(わ)43号 公職選挙法違反被告事件 〔戸別訪問禁止違憲事件〕

出典
判タ 413号75頁
判時 964号134頁

評釈
中山研一・判タ 416号30頁
中原精一・明治大学短期大学紀要 31号99頁

参照条文
公職選挙法138条
公職選挙法239条
日本国憲法21条
裁判官
藤原吉備彦

前川鉄郎 (マエカワテツオ) 第16期 現所属 定年退官
平成15年12月18日 ~ 定年退官
平成11年12月17日 ~ 平成15年12月17日 広島高等裁判所岡山支部(支部長)
平成5年4月1日 ~ 平成11年12月16日 奈良地方裁判所、奈良家庭裁判所
平成2年4月1日 ~ 平成5年3月31日 大阪高等裁判所
~ 平成2年3月31日 大阪地方裁判所堺支部、大阪家庭裁判所堺支部

瀬戸正義 (セトマサヨシ) 第19期 現所属 依願退官
平成14年1月7日 ~ 依願退官
平成11年11月2日 ~ 平成14年1月6日 東京高等裁判所
平成10年9月10日 ~ 平成11年11月1日 新潟地方裁判所(所長)
平成9年1月16日 ~ 平成10年9月9日 札幌高等裁判所
平成3年4月1日 ~ 名古屋地方裁判所
平成1年4月1日 ~ 平成3年3月31日 名古屋高等裁判所
~ 平成9年1月15日 東京高等裁判所
~ 平成1年3月31日 最高裁判所調査官

Westlaw作成目次

主文
理由
1 戸別訪問の禁止が表現内容自体…
2 公職選挙法が戸別訪問を禁止し…
3 結局、戸別訪問を禁止した法の…

裁判年月日  昭和55年 4月28日  裁判所名  広島高裁松江支部  裁判区分  判決
事件番号  昭54(う)11号
事件名  公職選挙法違反被告事件 〔戸別訪問禁止違憲事件・控訴審〕
上訴等  上告  文献番号  1980WLJPCA04280019

 

主文
本件控訴を棄却する。

理由
本件控訴の趣旨及びこれに対する答弁は記録編綴の検察官甲田宗彦提出の控訴趣意書及び被告人両名の弁護人高野孝治、妻波俊一郎、岡崎由美子、大賀良一連名提出の答弁書に各記載のとおりであるから、ここにこれらを引用する。
これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。
所論は、要するに、原判決は、「昭和五一年一二月五日施行の衆議院議員総選挙に際し、島根県選挙区から立候補した中林よし子に投票を得させる目的で、(1)被告人矢田ジユリは同月三日ころ同選挙区の選挙人である出雲市塩治町四〇七の二番地赤木米子方ほか四戸を戸々に訪問し、同候補者のため投票を依頼し、(2)被告人植田広子は、同月一日ころから同月四日ころまでの間同選挙区の選挙人である同町四〇七番地木太敏子方ほか六戸を戸々に訪問し、同候補者のため投票を依頼し、もつてそれぞれ戸別訪問をしたものである。」との事実を認定しながら、公職選挙法一三八条一項、二三九条三号の規定は憲法二一条一項の規定に違反し無効であるとして、被告人両名に対し無罪を言い渡したが、戸別訪問禁止規定の合憲性は最高裁判所の裁判例が示すとおりであり、戸別訪問を無制限のものとするときは必然的に被訪問者の側の基本的人権又は社会的利益と衝突し、ひいては選挙の自由、公正、議会民主政治の健全性にも影響を及ぼす結果を招くおそれがあり、この種の規制は公共の福祉のため憲法上許された必要かつ合理的なものと解すべきであつて、原判決には法令の解釈、適用の誤りがあり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかである、というのである。
そこで検討するに、公職選挙法一三八条一項が選挙に関し、投票を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつてする戸別訪問(以下単に戸別訪問という。)を一律に禁止していることは明白である。このように戸別訪問が禁止されることになると、その機会に行われるべき投票依頼などの政治的言論の表現行為が国民一般にとつて制約される結果がもたらされる。主権者としての国民の政治的活動の自由―すなわち、国民が国の基本的政策決定に直接・間接に関与する機会を持ち、かつそのための積極的活動を行う自由―は、これなくしては発展した民主主義国家における政治的支配を正当づける根拠を欠くものであるから、憲法は一五条、一六条、二一条の各規定でこれを保障していると解される。ことに、憲法二一条の定める表現の自由の保障は民主主義国家の不可欠の要件であつて、国民の基本的人権のうちでもとりわけ重要なものであることには異論の余地がない。
このような自由も、もとよりそれ自体絶対的なものではなく、公共の利益のためやむを得ない場合には程度の差はあれ制限に服することは免れない。問題は、これらの自由をどのような態度でどの程度制約することが憲法上許されるかという点にある。この点について最高裁判所は昭和二五年九月二七日(刑集四巻九号一七九九頁)及び昭和四四年四月二三日(同二三巻四号二三五頁)の二つの大法廷判決のほか相当数の小法廷判決により戸別訪問の禁止を合憲とする判断を示している。そして右昭和四四年の大法廷判決は「戸別訪問の禁止……の如き一定の規制が、憲法二一条に違反するものでないことは昭和二五年九月二七日の判決の明らかにするところであり、いまこれを変更する必要は認められない。」と説示し、昭和二五年の大法廷判決は「憲法二一条は絶対無制限の言論の自由を保障しているのではなく、公共の福祉のためにその時、所、方法等につき合理的制限のおのずから存することはこれを容認するものと考うべきであるから、選挙の公正を期するために戸別訪問を禁止した結果として、言論自由の制限をもたらすことがあるとしてもこれらの禁止規定を憲法に違反するものということはできない。」と説示するところ、他の小法廷判決も昭和四三年一一月一日(刑集二二巻一二号一三一九頁)の判決がその合憲であることを前提に「公職選挙法が戸別訪問を禁止する所以のものは、およそ次のとおりであると考えられる。すなわち、一方において、選挙人の居宅その他一般公衆の目のとどかない場所で、選挙人と直接対面して行われる投票依頼等の行為は、買収、利害誘導等選挙の自由公正を害する犯罪の温床となり易く、他方、選挙人にとつても、居宅や勤務先に頻繁に訪問を受けることは、家事その他業務の妨害となり、私生活の平穏も害せられることになるのであり、それのみならず、戸別訪問が放任されれば、候補者側が訪問回数を競うことになつて、その煩に耐えられなくなるからである。」と説示するほか、これ以上の具体的な説示はしていない。しかるに、前記昭和四四年の大法廷判決から一〇年以上の時の経過があること、近時最高裁判所が昭和四九年一一月六日の判決(刑集二八巻九号三九三頁)あるいは昭和五〇年四月三〇日の判決(民集二九巻四号五七二頁)などで憲法上保障された自由の制限の必要性及び合理性について具体的に判断・説示していること並びに前記のとおりの表現の自由の重要性にかんがみると、法的安定性の見地よりして累次の最高裁判所の判決の存在については十分な注意が払われるべきではあるけれども、戸別訪問禁止規定の合憲性については、その具体的な根拠について今一度検討が加えられて然るべきであると考える。従つて、戸別訪問の禁止が意見表明そのものの制約を狙いとしているのか、それとも行動のもたらす弊害の防止を狙いとしているのか、後者であるとした場合、禁止されている行動類型以外の行為により意見を表明する自由までも実質的に制約しているか否か、並びにこれを禁止した立法の目的、その目的と禁止された行為との関連性の有無ないしその制約による不利益と禁止することが立法の目的をどの程度すすめるかの考量について審査がなされるべきである。
1  戸別訪問の禁止が表現内容自体の規制ではなく、表現の手段方法たる行動の制限であることは疑いない。しかしながら、そのことの故にその禁止について単に合理的な理由があればこれを制約しうるとの意見には左袒することができない。なぜならば、表現の自由の制約は歴史的にみてその表現内容そのものに対する規制よりも、その手段方法の規制によることが多く、表現の手段方法を欠く表現の自由は無意味であつて、手段方法の規制であるが故に単なる合理的な理由のみによつてその制約が可能であると解するとすれば、表現の自由を保障した憲法の趣旨を没却する結果をもたらすであろう。また、政治的活動の自由は国民の単なる個人としての政治的意見の表明に至るまでの広い範囲にわたる行為の自由を含むものであり、民主主義国家においてはできる限り多数の国民の参加によつて政治が行われることが国民全体にとつて重要な利益であることはいうまでもないところ、戸別訪問による投票依頼あるいは政策及び特定の候補者の宣伝のための表現行為は、これが我が国において永年禁止されてきた結果、自然なものといえるか否かは議論の余地があるにせよ、少なくとも多数の国民が行いうる方法の中では簡易かつ特段の経費を要さないものであるから、容易に他の方法により代替されうるものとは思われない。すなわち、国民の行う戸別訪問による表現行為は、専ら候補者において行うラジオ又はテレビジヨンによる政見放送や立会演説会、個人演説会における演説によつては代替され得ないし、葉書等の文書による方法や電話による方法によつて意見を表明する機会はあつても、経費の点やこれらが殆んど一方的な通信方法であることからして直ちに戸別訪問に代替しうるとは考えられず、更に、いわゆる個々面接もこれが知人に対するものである場合、その機会が偶然に過ぎて戸別訪問との代替性には疑問がある。
しかも、戸別訪問は、通常、それ自体何らの悪性を有するものではなく、規制を外れた屋外広告物がそれ自体で直ちに都市の美観や安全に弊害をもたらすとして規制されうるのや、群集の影響、支配を排除すべき限定された時と場所において行われるデモ行進がそれ自体弊害があるとして規制された場合がありうるのとは異なり、その行動がもたらす弊害が考えられるとしても、それは間接的なものといわざるを得ないのであるから、その規制が憲法上許されるとしても、それは合理的でかつ必要やむを得ない限度においてのみ許されると解するのが相当である。
2  公職選挙法が戸別訪問を禁止した目的が、主として選挙の自由公正に対する種々の弊害を防止するためであることは疑いがない。そこで右の弊害の具体的な内容及び右の弊害の防止と戸別訪問の禁止とが合理的な関連性を有するか否かについて判断する。
戸別訪問は大正一四年の衆議院議員選挙法以来、昭和二五年から昭和二七年までの間一部例外規定が置かれたほかは、終始全面的に禁止されてきたのであるが、大正一四年当時、その立法の理由として「戸別訪問の如く情実に基き感情に依つて当選を左右せむとするが如きは之を議員候補者の側より見るも其の品位を傷つけ又選挙人の側より見るも公事を私情によつて行ふの風を馴致すべく今にしてこれを矯正するに非ざれば選挙の公正は遂に失はるるに至るべし。加之戸別訪問に際し双方の交渉は公然行はるるものに非ずして隠密の間に行はるるが為往々にして投票買収等の不法不正なる行為を助成するの虞あり。之其の何人の為すものたるを問はず断然禁止したる所以なり。」と述べられ、また現在まで選挙制度審議会等において、戸別訪問のもたらす弊害として、右に述べられたほか、候補者に無限の競争を強い煩に耐えない、選挙人の生活の平穏を害し、選挙人が迷惑をこうむる、候補者が競つて戸別訪問をするため多額の経費がかかる、次期立候補予定者が当選議員の議会活動中に地盤荒しをし、当選議員にとつて不利益である、などの論議がなされていることが明らかである。
しかしながら、右に論じられている具体的な弊害のうち、議員の品位を傷つける、公事を私事化する、候補者にとつて煩に耐えない、当選議員にとつて不利益である、などの点については、これらの防止を目的として国民一般に対し表現の自由が制約される結果をもたらすような立法をすることが許されないことは明白である。また、個人的感情によつて投票が左右される弊害があるとの点については、投票行動が理性的思考に基づいてなされることは一般的に望ましいことであろうが、もともと人間は感情の動物であつてその選挙権の行使に際し感情的要素を全く払拭することは不可能であり、国家がこれに干渉するにはおのずから限度があるのであるから、戸別訪問を自由化した場合、公開されていない場所での選挙人の感情に訴えての投票依頼の機会が多くなつたとしても、この弊害を防止するため戸別訪問をした者に対して刑罰を科し、ひいては表現の自由を制約することはできないというほかはない。
戸別訪問を放任した場合、立候補者が多数の運動員を動員するため多額の経費を要する結果、財力により候補者間の較差を生じ、選挙の公正を害するおそれがあるとの点について考えるに、戸別訪問に限らず、およそ選挙運動をするうえにおいて一般的に経済的に優位な者が有利な立場に置かれることから、公職選挙法は選挙の公平を期するため選挙運動に関するすべての収入及び支出並びに寄付について規制し、選挙運動に関する支出金額を制限しており(同法第一四章参照)、これを前提とする以上、候補者にとつて戸別訪問に経費がかかるとしても選挙の公正を守ることができると解されるので、右の弊害の防止と戸別訪問の禁止との間には合理的な関連性を見出だすことはできない。
そうすると残る問題は、戸別訪問が不正行為を助長するおそれがあるという点と、被訪問者の生活の平穏を害するという点においてその弊害の防止と戸別訪問の禁止との間に合理的な関連性が存するか否かである。
まず、戸別訪問を禁止しなかつた場合、一般公衆の目の届かない場所で、選挙人と直接対面して行われる投票依頼等の行為が、買収、利害誘導等選挙の自由公正を害する犯罪の温床となり易く、その機会を多からしめるという弊害を生じるとの点につき考える。当審証人勝田洋の供述によれば、昭和五四年に島根県下で行われた統一地方選挙において、候補者らが選挙人方を戸々に訪問して現金、物品を供与し又はその申し込みをしたとして捜査機関に検挙された事例が相当数あつたことは認めることができるものの、判明している限りではこれらは戸別訪問をしたがために買収を行い又は行おうとしたというものではなく、いずれも事前に買収すべく意思決定がなされ、その場所が選挙人方であつたにすぎなかつたことをも認めることができ、右事実から戸別訪問を規制することによりこれを規制しなかつた場合に比べて買収事犯が減少しているとか減少するであろうことを推認することはできない。また、昭和五〇年ないし昭和五三年版の各犯罪白書写及び最近の選挙違反事犯の動向についてと題する論文の写によれば、最近までの衆議院議員総選挙、参議院議員通常選挙、統一地方選挙において全国の検察庁で受理した公職選挙法違反事件のうち、買収事犯がなお高率を占めていることを認めることができるけれども、戸別訪問を規制した結果、買収事犯の数がこの程度に止まつているのか否かについては右資料からこれを窺い知ることはできない。むしろ選挙制度審議会における論議のあとを見ても、戸別訪問を規制しなかつた場合に買収等の不正行為が多発するおそれがあるか否かについては積極消極に意見が分かれているのであつて、このことは、右のおそれがあるとしてもそれは抽象的な可能性があるという程度に止まることを示すものである。更に、当審証人相見昌吾の供述によれば、東京都品川区長候補者選定に関する条例に基づいて昭和四七年に行われた右区長候補者を選定するための区民投票においては、選挙運動の経費が高額化しないように配慮し、買収、饗応及び他候補に対する誹謗、中傷をしないことを立候補者と投票管理委員会とで協定したほかは、戸別訪問の禁止等の規制を外して選挙運動が行われたところ、戸別訪問がかなりなされたと思われるにもかかわらず、買収、饗応等があつたとの苦情や報告が投票管理委員会に申し出られたことはなく、右申出がなかつたからといつて直ちに買収、饗応等が全くなかつたということはできないにせよ、少なくとも右区民投票は公職選挙法が適用される一般の選挙よりも公正、明朗で質素に実施されたことを認めることができる。そして右条例によれば、区民投票の結果最高の投票を得た者が直ちに区長候補者に選定されるものではなく、区民投票の結果は区議会が区長候補者を選定する際にその参考とされるに過ぎないので、最高得票者といえども買収、饗応等をした場合には公職選挙法上の刑罰を科せられることはないけれどもこれが斟酌されて区長候補者に選定されないこともあり得、このことが非違行為を抑制する効果をもたらしたであろうことは否定し得ないが、このような点を考慮に入れても、前記のように区民投票が公正、明朗で質素に行われたという事実は、戸別訪問が選挙の自由、公正を害する機会を多からしめる蓋然性が必ずしも高いものではないことを裏づける一つの事実であるということができる。なお、昭和二五年四月公職選挙法の制定に伴い戸別訪問禁止の例外規定として「公職の候補者が親族、平素親交の間柄にある知己その他密接な間柄にある者を訪問することはこの限りではない。」との条項が設けられたところ、昭和二六年四月施行の地方選挙において脱法行為の弊害が著しく、昭和二七年八月の改正により右例外規定は削除されているのであるが、改正にあたり右例外規定に基づく戸別訪問のため買収事犯が多発するという弊害が生じた旨の論議がなされた形跡はなく、第七次選挙制度審議会議事速記録(下)九八三頁、検察官提出の戸別訪問禁止規定改正(昭和二七年八月一六日法律第三〇七号)経緯と題する書面、同最新公職選挙法解説(写)によれば、例外規定を置いたことによる弊害とは「平素親交の間柄にある知己その他密接な間柄にある者」の範囲が不明確であつたため、その公平な取り締りをすることが困難となり、候補者にとつても戸別訪問すべき範囲に悩むという弊害が生じたにすぎないと窺うことができる。
従つて戸別訪問を禁止しなかつた場合、不正行為の温床となり易く、その機会を多からしめるという弊害を生じる蓋然性が高いということはできず、右弊害を生じるおそれは極めて抽象的な可能性にとどまるというほかはないから、右弊害の防止と戸別訪問の禁止との間には関連性が全くないわけではないにしても、これが合理的な関連性を有すると考えることはできない。
最後に戸別訪問が被訪問者の生活の平穏を害するか否かについて検討する。たしかに時と方法を選ばずに行われる戸別訪問が被訪問者の生活の平穏を害し、その迷惑となる場合があることは明らかであつて、その限りで戸別訪問の禁止は被訪問者の生活の平穏を守るという目的と一応の関連性を有するといわなければならない。しかしながら、前記のような国民一般にとつての戸別訪問の意義に照らしても、また、被訪問者の生活の平穏を害するような戸別訪問は、時間的な制限を置いたり、集団的な訪問を禁ずることなどによつて容易にその弊害を除くことができると考えられることに照らしても、右の目的は戸別訪問を一律に禁止する理由とはなり得ず、戸別訪問を全面的に禁止することは、被訪問者の生活の平穏を守るための手段としては行きすぎていることが明らかである。
3 結局、戸別訪問を禁止した法の目的を各別に検討してみても、あるいはその目的自体が表現の自由を制約すべき根拠となり得なかつたり、あるいはその手段によりその目的を達成しうるか否かの点で合理的な関連性を欠いたり、あるいは選択された手段がその目的を達成するうえで行きすぎていたりしているというほかはなく、これらを併せて考えてみても、戸別訪問の禁止が憲法上許される合理的でかつ必要やむを得ない限度の規制であると考えることはできない。
以上の次第で記録上原判決が認定しているとおり、被告人らが戸別訪問をした事実を認めることはできるけれども、戸別訪問を一律に禁止した公職選挙法一三八条一項の規定は憲法二一条に違反するというべきであるから、原判決には、その説示するところに一部首肯し難い点がないではないが判決に影響を及ぼすべき法令の解釈、適用に誤りがあるということはできない。論旨は理由がない。
よつて刑訴法三九六条により本件控訴を棄却することとして主文のとおり判決する。
(藤原吉備彦 前川鉄郎 瀬戸正義)


政治と選挙Q&A「屋外広告物法 ポスター貼り(掲示交渉)代行」に関する裁判例一覧
(1)平成29年12月20日 東京地裁 平27(ワ)16748号・平28(ワ)32555号・平28(ワ)36394号 建物明渡等請求事件、賃料減額確認請求事件(本訴)、賃料増額確認請求反訴事件(反訴)
(2)平成29年 5月11日 大阪地裁 平28(ワ)5249号 商標権侵害差止請求事件
(3)平成29年 3月16日 東京地裁 平26(特わ)914号・平26(特わ)1029号 薬事法違反被告事件
(4)平成28年11月17日 大阪地裁 平25(わ)3198号 公務執行妨害、傷害被告事件
(5)平成28年10月26日 東京地裁 平24(ワ)16956号 請負代金請求事件
(6)平成28年 3月25日 東京地裁 平25(ワ)32886号 未払賃料請求事件
(7)平成27年 3月31日 東京地裁 平24(ワ)22117号 損害賠償等請求事件
(8)平成26年 2月27日 東京地裁 平24(ワ)9450号 著作物頒布広告掲載契約に基づく著作物頒布広告掲載撤去損害賠償請求事件
(9)平成25年 9月12日 大阪高裁 平25(う)633号 詐欺被告事件
(10)平成25年 1月22日 名古屋地裁 平20(ワ)3887号 損害賠償請求事件
(11)平成24年12月 7日 静岡地裁 平19(ワ)1624号・平20(ワ)691号 損害賠償請求(第一事件)、保険金請求(第二事件)事件
(12)平成23年11月18日 東京地裁 平23(レ)307号・平23(レ)549号 損害賠償等請求控訴事件、同附帯控訴事件
(13)平成23年 9月30日 東京地裁 平20(ワ)31581号・平21(ワ)36858号 損害賠償請求事件(本訴)、同反訴請求事件(反訴)
(14)平成23年 2月23日 東京高裁 平21(ネ)2508号 損害賠償請求控訴事件
(15)平成23年 1月14日 大阪高裁 平22(う)460号 大阪市屋外広告物条例違反被告事件
(16)平成22年10月 5日 京都地裁 平19(ワ)824号 損害賠償請求事件
(17)平成22年 7月27日 東京地裁 平20(ワ)30423号・平21(ワ)3223号 損害賠償請求事件(本訴)、払戻金返還請求事件(反訴)
(18)平成22年 3月29日 東京地裁 平20(ワ)22960号 建物明渡請求事件
(19)平成22年 2月 8日 東京地裁 平21(ワ)8227号・平21(ワ)21846号 損害賠償請求事件
(20)平成22年 1月27日 東京地裁 平21(ワ)9971号・平21(ワ)9621号 土地建物所有権移転登記抹消登記請求事件、鉄塔明渡請求事件
(21)平成22年 1月27日 東京地裁 平21(ワ)13019号 屋外広告塔撤去請求事件
(22)平成21年12月24日 東京地裁 平20(行ウ)494号 計画通知確認処分取消等請求事件
(23)平成21年 7月22日 東京地裁 平19(ワ)24869号 損害賠償請求事件
(24)平成21年 1月20日 那覇地裁 平19(行ウ)16号・平20(行ウ)2号 建築確認処分差止請求事件(甲事件)、建築確認処分差止請求事件(乙事件)
(25)平成20年10月17日 東京地裁 平20(行ク)214号 執行停止申立事件
(26)平成20年 9月19日 東京地裁 平19(行ウ)274号・平19(行ウ)645号 退去強制令書発付処分取消請求事件
(27)平成20年 4月11日 最高裁第二小法廷 平17(あ)2652号 住居侵入被告事件 〔立川反戦ビラ事件・上告審〕
(28)平成19年 2月21日 東京地裁 平18(行ウ)206号 損害賠償請求事件(住民訴訟)
(29)平成17年12月21日 東京地裁 平15(ワ)14821号 看板設置請求事件
(30)平成17年 3月31日 東京地裁 平15(ワ)27464号・平15(ワ)21451号 商標使用差止等請求本訴、損害賠償請求反訴事件 〔tabitama.net事件〕
(31)平成17年 2月22日 岡山地裁 平14(ワ)1299号 損害賠償請求事件
(32)平成13年12月21日 秋田地裁 平10(ワ)324号・平12(ワ)53号・平12(ワ)416号 土地明渡等請求、損害賠償請求事件
(33)平成13年 2月23日 大阪地裁 平10(ワ)13935号 損害賠償請求事件
(34)平成11年 2月15日 仙台地裁 平9(行ウ)6号 法人税更正処分等取消請求事件
(35)平成 9年 7月22日 神戸地裁 平8(ワ)2214号 損害賠償請求事件
(36)平成 8年 6月21日 最高裁第二小法廷 平6(あ)110号 愛媛県屋外広告物条例違反、軽犯罪法違反
(37)平成 8年 4月12日 最高裁第二小法廷 平4(あ)1224号 京都府屋外広告物条例違反
(38)平成 8年 3月 8日 最高裁第二小法廷 平4(オ)78号 損害賠償請求事件
(39)平成 8年 3月 8日 最高裁第二小法廷 平4(オ)77号 損害賠償請求事件
(40)平成 7年12月11日 最高裁第一小法廷 平4(あ)526号 各滋賀県屋外広告物条例違反、軽犯罪法違反
(41)平成 7年 6月23日 最高裁第二小法廷 平元(オ)1260号 損害賠償、民訴法一九八条二項による返還及び損害賠償請求事件 〔クロロキン薬害訴訟・上告審〕
(42)平成 6年 2月21日 福岡高裁 平元(ネ)608号 接見交通妨害損害賠償請求事件
(43)平成 4年 6月30日 東京地裁 平3(ワ)17640号・平3(ワ)16526号 損害賠償請求事件
(44)平成 4年 6月15日 最高裁第二小法廷 平元(あ)710号 大阪府屋外広告物条例違反、軽犯罪法違反被告事件
(45)平成 4年 6月15日 最高裁第二小法廷 平元(あ)511号 大阪市屋外広告物条例違反、軽犯罪法違反
(46)平成 4年 2月 4日 神戸地裁 昭49(ワ)578号 損害賠償請求事件 〔全税関神戸訴訟・第一審〕
(47)平成 4年 2月 4日 神戸地裁 昭49(ワ)578号 損害賠償請求事件 〔全税関神戸訴訟・第一審〕
(48)昭和60年 7月22日 最高裁第一小法廷 昭59(あ)1498号 所得税法違反被告事件
(49)昭和59年 9月28日 奈良地裁 昭58(行ウ)4号 都市計画変更決定一部取消請求事件
(50)昭和59年 7月17日 福岡高裁 昭58(う)487号 大分県屋外広告物条例違反被告事件
(51)昭和58年10月27日 最高裁第一小法廷 昭57(あ)859号 猥褻図画販売、猥褻図画販売目的所持被告事件
(52)昭和58年 8月24日 福岡高裁 昭57(う)254号 軽犯罪法違反、佐賀県屋外広告物条例違反事件
(53)昭和58年 6月21日 大分簡裁 昭55(ろ)66号 大分県屋外広告物条例違反被告事件
(54)昭和57年 3月 5日 佐賀簡裁 昭55(ろ)24号 軽犯罪法違反、佐賀県屋外広告物条例違反事件
(55)昭和56年 8月 5日 東京高裁 昭55(う)189号 軽犯罪法違反被告事件
(56)昭和56年 7月31日 神戸簡裁 昭56(ろ)167号 軽犯罪法違反、兵庫県屋外広告物条例違反事件
(57)昭和55年 4月28日 広島高裁松江支部 昭54(う)11号 公職選挙法違反被告事件 〔戸別訪問禁止違憲事件・控訴審〕
(58)昭和54年12月25日 大森簡裁 昭48(う)207号・昭48(う)208号 軽犯罪法違反被告事件
(59)昭和53年 7月19日 横浜地裁 昭51(ワ)1147号 損害賠償事件
(60)昭和53年 5月30日 大阪高裁 昭52(ネ)1884号 敷金返還請求事件
(61)昭和51年 3月 9日 東京高裁 昭47(う)3294号 埼玉県屋外広告物条例違反等被告事件
(62)昭和51年 1月29日 大阪高裁 昭50(う)488号
(63)昭和50年 9月10日 最高裁大法廷 昭48(あ)910号 集団行進及び集団示威運動に関する徳島市条例違反、道路交通法違反被告事件 〔徳島市公安条例事件・上告審〕
(64)昭和50年 6月30日 東京高裁 昭47(う)3293号 埼玉県屋外広告物条例違反・軽犯罪法違反被告事件
(65)昭和50年 6月12日 最高裁第一小法廷 昭49(あ)2752号
(66)昭和50年 5月29日 最高裁第一小法廷 昭49(あ)1377号 大阪市屋外広告物条例違反被告事件
(67)昭和49年12月16日 大阪高裁 昭49(う)712号 神戸市屋外広告物条例違反等事件
(68)昭和49年 5月17日 大阪高裁 昭45(う)868号
(69)昭和49年 5月17日 大阪高裁 昭45(う)713号 大阪市屋外広告物条例違反被告事件
(70)昭和49年 4月30日 東京高裁 昭48(行コ)35号 行政処分取消請求控訴事件 〔国立歩道橋事件〕
(71)昭和48年12月20日 最高裁第一小法廷 昭47(あ)1564号
(72)昭和48年11月27日 大阪高裁 昭48(う)951号 大阪市屋外広告物条例違反被告事件
(73)昭和47年 7月11日 大阪高裁 昭43(う)1666号 大阪府屋外広告物法施行条例違反事件 〔いわゆる寝屋川ビラ貼り事件・控訴審〕
(74)昭和46年 9月29日 福岡高裁 昭45(う)600号 福岡県屋外広告物条例違反被告事件
(75)昭和45年11月10日 柳川簡裁 昭40(ろ)61号・昭40(ろ)62号 福岡県屋外広告物条例違反被告事件
(76)昭和45年 4月30日 最高裁第一小法廷 昭44(あ)893号 高知県屋外広告物取締条例違反・軽犯罪法違反被告事件
(77)昭和45年 4月 8日 東京地裁 昭40(行ウ)105号 法人事業税の更正決定取消請求事件
(78)昭和44年 9月 5日 金沢地裁 昭34(ワ)401号 損害賠償請求事件 〔北陸鉄道労組損害賠償請求事件〕
(79)昭和44年 8月 1日 大阪地裁 昭44(む)205号 裁判官忌避申立却下の裁判に対する準抗告事件
(80)昭和44年 3月28日 高松高裁 昭42(う)372号 外国人登録法違反・高知県屋外広告物取締条例違反・軽犯罪法違反被告事件
(81)昭和43年12月18日 最高裁大法廷 昭41(あ)536号 大阪市屋外広告物条例違反被告事件
(82)昭和43年10月 9日 枚方簡裁 昭41(ろ)42号 大阪府屋外広告物法施行条例違反被告事件
(83)昭和43年 7月23日 松山地裁 昭43(行ク)2号 執行停止申立事件
(84)昭和43年 4月30日 高松高裁 昭41(う)278号 愛媛県屋外広告物条例違反・軽犯罪法違反被告事件
(85)昭和43年 2月 5日 呉簡裁 昭41(ろ)100号 軽犯罪法違反被告事件
(86)昭和42年 9月29日 高知簡裁 昭41(ろ)66号 外国人登録法違反被告事件
(87)昭和42年 3月 1日 大阪地裁 昭42(む)57号・昭42(む)58号 勾留請求却下の裁判に対する準抗告事件
(88)昭和41年 2月12日 大阪高裁 昭40(う)1276号
(89)昭和41年 2月12日 大阪高裁 事件番号不詳 大阪市屋外広告物条例違反被告事件
(90)昭和40年10月21日 大阪地裁 昭40(む)407号 勾留取消の裁判に対する準抗告事件
(91)昭和40年10月11日 大阪地裁 昭40(む)404号 勾留取消の裁判に対する準抗告申立事件
(92)昭和39年12月28日 名古屋高裁 昭38(う)736号 建造物損壊、建造物侵入等事件 〔東海電通局事件・控訴審〕
(93)昭和39年 8月19日 名古屋高裁 昭39(う)166号 軽犯罪法違反被告事件
(94)昭和39年 6月16日 大阪高裁 昭38(う)1452号
(95)昭和29年 5月 8日 福岡高裁 昭29(う)480号・昭29(う)481号 外国人登録法違反等事件
(96)昭和29年 1月 5日 佐賀地裁 事件番号不詳 外国人登録法違反窃盗被告事件
(97)昭和28年 5月 4日 福岡高裁 昭28(う)503号 熊本県屋外広告物条例違反被告事件


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