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「選挙 公報 広報 ポスター ビラ」に関する裁判例(63)平成15年12月 4日  福岡高裁  平15(行ケ)6号 佐賀市議会議員選挙無効裁決取消請求事件 〔党派名誤記市議会議員選挙無効裁決取消請求事件〕

「選挙 公報 広報 ポスター ビラ」に関する裁判例(63)平成15年12月 4日  福岡高裁  平15(行ケ)6号 佐賀市議会議員選挙無効裁決取消請求事件 〔党派名誤記市議会議員選挙無効裁決取消請求事件〕

裁判年月日  平成15年12月 4日  裁判所名  福岡高裁  裁判区分  判決
事件番号  平15(行ケ)6号
事件名  佐賀市議会議員選挙無効裁決取消請求事件 〔党派名誤記市議会議員選挙無効裁決取消請求事件〕
裁判結果  請求棄却  上訴等  上告、上告受理申立(後上告棄却、上告不受理)  文献番号  2003WLJPCA12040003

要旨
◆佐賀市議会議員選挙における候補者氏名及び党派を記載した掲示において、無所属の候補者を自由民主党と誤記したときは、選挙の規定に違反するものであり、同選挙を無効とした県選挙管理委員会の裁決は正当であるとされた事例

新判例体系
公法編 > 組織法 > 公職選挙法〔昭和二五… > 第一五章 争訟 > 第二〇五条 > ○選挙の無効の決定、… > (五)選挙無効事由 > B 選挙管理機関の行… > (5)選挙公営関係 > (ロ)選挙無効の事例 > 所属政党の誤記
◆市会議員選挙において、投票所内の候補者の氏名・党派別の掲示に、無所属と届け出ていた候補者の党派を「自由民主党」と誤記していたことは、公職選挙法第一七五条に違反しており、かつ、選挙の結果に異動を及ぼす虞が認められるから、本件選挙は無効である。

 

出典
裁判所ウェブサイト
判タ 1157号152頁
判例地方自治 256号10頁
新日本法規提供

参照条文
公職選挙法175条
公職選挙法175条1項
公職選挙法175条2項
公職選挙法205条
公職選挙法205条1項

裁判年月日  平成15年12月 4日  裁判所名  福岡高裁  裁判区分  判決
事件番号  平15(行ケ)6号
事件名  佐賀市議会議員選挙無効裁決取消請求事件 〔党派名誤記市議会議員選挙無効裁決取消請求事件〕
裁判結果  請求棄却  上訴等  上告、上告受理申立(後上告棄却、上告不受理)  文献番号  2003WLJPCA12040003

原告 藤 田 龍 之
同訴訟代理人弁護士 中 吉 章一郎
同 新 井 哲 男
被告 佐賀県選挙管理委員会
同代表者委員長 松 尾 紀 男
同指定代理人 中 野 哲太郎
外4名

 

主文
1  原告の請求を棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1  請求の趣旨
被告が平成15年7月28日なした,異議申出人宮地千里(以下「異議申出人」という。)からの同年4月27日執行の佐賀市議会議員選挙(以下「本件選挙」という。)に係る選挙の効力等に関する異議申出について佐賀市選挙管理委員会(以下「市選管」という。)が同年5月28日になした異議申出を棄却する決定を取り消す旨及び本件選挙を無効とする旨の裁決(以下「本件裁決」という。)は,これを取り消す。
第2  事案の概要
本件は,平成15年4月に実施された本件選挙において,公職選挙法(以下「法」という。)175条所定の候補者の氏名及び党派別の掲示で,党派を無所属と届け出ていたのに「自由民主党」と誤記された候補者である異議申出人が,市選管に対して選挙の効力等に関する異議の申出をしたところ,市選管は同申出を棄却したが,これに対する審査請求について,被告が市選管の決定を取り消して本件選挙を無効とする旨の本件裁決をなしたため,本件選挙の候補者であった原告が,被告に対し,本件裁決の取消しを求めた事案である。
1  争いのない事実及び末尾掲記の証拠により容易に認定できる事実
(1)  本件選挙
本件選挙は,平成15年4月20日告示され,立候補届出は同日午後5時終了し,定員34名に対し44名が立候補届をし,同月27日投票が行われた。不在者投票は,同月20日から同月26日まで行われた。
(2)  本件掲示
ア 本件選挙に際し,異議申出人は,市選管に対して「保守系無所属 宮地せんり」と申告していた。
イ 市選管は,法175条1項,2項の候補者氏名及び党派を記載した掲示を行った。同掲示は,「平成15年4月27日執行 佐賀市議会議員選挙候補者氏名佐賀市選挙管理委員会」とあり,候補者の氏名欄は上下2列からなり,上列及び下列各22名の計44名が記載され,各候補者について下段に「候補者氏名」(ふりがな付き)が記載され,上段に「党派」がやや小さい字で記載されていた。
異議申出人は上列右から7番目に「宮地(みやち)せんり」と記載されている。同掲示において,異議申出人の党派は「無所属」と記載されるべきところ,市選管は誤って「自由民主党」と記載し(以下「本件掲示」という。),この掲示は不在者投票期間には不在者投票所の19台の投票記載台の各前面に,投票日当日の午前7時からは市内27カ所の投票所の401台の投票台の各前面に掲示された。市選管は,投票日当日に,異議申立人から誤掲示の指摘を受け,各投票所の本件掲示を,異議申出人の党派を「無所属」と訂正した掲示に張り替えた。この張り替え作業は各投票所において,投票日の午後1時ころから始まり午後2時30分までに終了した。(甲2〜4,9)
(3)  選挙結果
ア 開票の結果,異議申出人は1515票を獲得したものの,次点で落選したが,当選人のうち最小得票者との票差は1票であった。
イ 本件選挙の結果は,投票総数は75,395票,有効投票74,575票,無効投票820票であった。また,本件掲示のもとで投票を行った選挙人の人数は,告示日を除く全不在者投票期間に投票した選挙人が6280人,選挙日当日の午後1時までに投票した選挙人が3万6954人であることからすると,少なくとも合計4万3234人であって,投票総数の57パーセントを超える。(甲2,弁論の全趣旨)
(4)  本件裁決に至る経緯
ア 異議申出人は,同年4月28日,市選管に対し,本件選挙の効力に関する異議の申出及び当選の効力に関する異議の申出をした。
イ これに対し,市選管は,同年5月28日,異議申出人の各申出を棄却する決定をした。
ウ 市選管の決定に対し,異議申出人は,同年6月12日,被告に対し審査の申立てをし,これに対し被告は,同年7月28日,本件裁決をし,本件裁決は同年8月4日告示された。
(5)  本件訴訟の提起
本件選挙の候補者であり,同選挙で当選人とされた原告は,同年8月28日,被告のなした本件裁決を不服として,本件訴訟を提起した。
2  争点
(1)  本件掲示は,法205条1項の「選挙の規定に違反することがあるとき」にあたるか。
(被告)
ア 法205条1項の「選挙の規定に違反することがあるとき」とは,「主として選挙の管理の任にある機関が選挙の管理執行の手続きに関する明文の規定に違反すること,又は,直接そのような明文の規定がなくとも,選挙の管理執行の手続上,選挙法の基本理念たる選挙の自由公正の原則が著しく阻害されることを指称する(最高裁昭和61年2月18日第三小法廷判決)。」ところ,本件掲示は,選挙の管理執行の手続きに関する法175条の明文の規定(同条1項本文「市町村の選挙管理委員会は,選挙の当日,投票所内の投票の記載をする場所その他適当な箇所に公職の候補者の氏名及び党派別を掲示しなければならない。」など)に違反しており,法205条1項の「選挙の規定に違反することがあるとき」に該当することは明らかである。
イ 法205条1項についての原告の解釈は,上記最判判旨の前段(明文の規定違反)の場合について,「選挙の自由公正の原則が著しく阻害されると認められる。」という限定を付加するものであって,何らの根拠もなく誤りである。
ウ 法175条は,選挙管理委員会が選挙公営制度の中で行うべき選挙運動の一部であり,その重要な部分を占めるものであり,投票所における氏名,党派の掲示は選挙管理委員会がその費用を負担して行う選挙運動(選挙公営)であるから,表記の正確性を含む手続的な平等がすべての立候補者に保障されなければならない。法175条の投票所の氏名,所属党派の掲示だけがすべての種類の選挙において公営が認められており,このことは,例え経済的な理由から選挙運動を行うことができない候補者がいたとしても,唯一行うことのできる選挙運動であることを示している。そして,法175条が候補者の氏名のほか,特に党派別の掲示をしなければならないと規定したのは,公職の選挙において候補者の所属党派の識別を重視することは,民主主義政体における当然の要請であるとするものであり,近時わが国公職選挙の実態においても候補者の党派別が重視せられているからである。したがって,法175条についての原告の解釈も誤りである。
(原告)
ア 法205条が選挙無効につき規定したのは,選挙をやり直さなければ選挙の自由公正が保たれない場合のあることを予定してのことであるから,同条1項の「選挙の規定に違反することがあるとき」とは,選挙の自由公正が著しく阻害されるような規定違反の場合と解すべきである。極めて軽微な瑕疵があるにすぎない場合にも選挙を無効とすると,再選挙費用の支出,選挙事務職員の超過負担,資力ある者のみが立候補しうることになるなどの弊害を生み,かえって選挙制度に対する国民の信頼を損なう。
イ 法175条の趣旨は,選挙人が投票を行うに際し,候補者の氏名を誤りなく記載することのできるよう選挙人に便宜を図って設けられたものである。同一氏名又は類似の氏名の候補者がいる場合等については,選挙人が投票する候補者の氏名を確認する際に「党派」を参照することはあろうが,異議申出人については,他に類似の氏名の候補者はいないから,氏名を間違われ誤記されるなどの虞はない。したがって,本件掲示の党派の誤記は,選挙人に投票すべき候補者の「氏名」を誤らしめるものではなく,投票の意思決定に影響を及ぼすなど選挙の自由公正が著しく阻害される場合には当たらない。
ウ 以上によれば,本件掲示は,法205条1項の「選挙の規定に違反すること」に当たらない。
(2)  選挙の結果に異動を及ぼす虞があるか。
(被告)
ア 所属政党に関心を有する選挙人が皆無でない以上,「氏名等の掲示用紙」の誤記により,投票意思の決定に影響を受けた選挙人が存在する可能性を否定することはできない。
本件選挙についてみると,投票総数7万5395票のうち少なくみても4万3234人もの選挙人が誤掲示のもとで投票を行っている。しかも,本件選挙の当選人のうち最小得票者と次点者(異議申立人)との得票差は僅か1票であり,本件選挙における所属党派の誤記の違法が選挙の結果(候補者の当落)に異動を及ぼす虞があるといわざるをえない。
イ 法175条の趣旨は前述のとおりであり,原告の主張は誤っている。また,原告は,党派の誤記により異議申出人の氏名が間違って投票されることはないと主張するが,別の人に投票される可能性はある。すなわち,原告は「表記」の誤りの可能性を論じているが,誤掲示による選挙人の「選択」の誤りの可能性についてはこれをまったく無視しているのであり,誤掲示によって投票の意思決定に影響を受けた選挙人が存在する可能性を無視している点で不当である。
ウ 原告の主張は,すべての選挙人が,投票記載台の掲示を確認する前に,予め投票意思を決定しており,これを決定していない選挙人がいたとしても,同掲示を参考にすることなく投票意思を決定していることが認められないと成り立たないが,このような事実は認められない。
(原告)
法205条1項が,選挙無効という重大な結果をもたらすものである以上,その適用には慎重であるべきであり,同項の「選挙の結果に異動を及ぼす虞」とは,単なる可能性ある場合では足りず,選挙結果への影響が濃厚に認められる場合,すなわち,相当な蓋然性が認められる場合をいうものと考えるべきである。
前述のとおり,法175条の投票所の掲示は,選挙人の投票意思の決定とは関係なく,投票する候補者の「氏名」を正しく記載し投票するための便宜的掲示であり,これによって,選挙人が投票意思を決定するものではない。本件裁決は,最高裁昭和39年12月10日第一小法廷判決を引用するが,同判決は,選挙公営の立場から候補者の氏名と所属党派別を一般の選挙人に周知させるためのものであった旧173条の掲示(昭和37年の法改正で廃止)に関するものであって本件にはあてはまらない。現在では,選挙人の投票の意思決定は,選挙公報,選挙ポスターの掲示,個人演説会等を通じてなされるものであり,法175条の投票所の掲示によって,選挙人が投票意思を決定するものではない。
したがって,本件掲示によって得票数が異動し,当落に影響を及ぼし,選挙の結果に異動を及ぼす虞があるとはいえない。
(3)  異議申立権の濫用,憲法違反など
(原告)
ア 異議申立人は,落選した後に異議を申し立てており,落選者の都合により異議が申し立てられたものであって,異議申立制度の趣旨である選挙手続の適正確保という法が本来予定している目的を逸脱しており,異議申立権の濫用である。
イ 本件掲示を理由に本件選挙を無効とすることは,公務員の選定罷免権,すなわち選挙権を保障した憲法15条1項に違反する。すなわち,選挙制度は,すべての選挙民に平等に保障されなければならないが,このような軽微の瑕疵によっても再選挙がなされると,再選挙においては都合により投票できない者が存在することは確実であり,投票をなしえない有権者にとって,本来行使しえた選挙権行使の機会が奪われることになる。再選挙が従前の有権者の意思を覆すものである以上,本件のような軽微な手続的なミスについてまで選挙無効原因とすることには,国民の選挙権を保障した憲法15条1項の趣旨からも,相当に慎重であるべきである。
ウ 本件掲示の誤りは事務的な単純ミスであること,本件選挙を無効とするべきであるとの世論がほとんど認められないこと,再選挙となれば相当の費用がかかり,結局税金の負担となって有権者らに跳ね返ってくること,再選挙の間,政治の停滞を招くこと,新たな争点につき有権者の信を問う再選挙ならいざ知らず,単なる手続上の問題により何度も選挙がなされることは,かえって有権者の選挙制度への信頼を損なうものであることなどの事情を斟酌すべきである。
(被告)
公職選挙法175条,同法205条1項の解釈をめぐる主張ではないから,特に反論しない。
第3  争点に対する判断
1  争点(1)(選挙の規定に違反することがあるときに該当するか。)について
ア 法205条1項の「選挙の規定に違反することがあるとき」とは,主として選挙の管理の任にある機関が選挙の管理執行の手続きに関する明文の規定に違反すること,又は,直接そのような明文の規定がなくとも,選挙の管理執行の手続上,選挙法の基本理念たる選挙の自由公正の原則が著しく阻害された場合を指す(最高裁昭和61年2月18日第三小法廷判決)。そして,法175条1項は,市選管は,選挙の当日,投票所内の投票を記載する場所その他適当な箇所に公職の候補者の氏名及び党派別の掲示をしなければならないと,同条2項は,市選管は,選挙の期日の公示又は告示があった日の翌日から選挙の期日の前日までの間,不在者投票管理者のうち政令で定めるものの管理する投票を記載する場所内の適当な箇所に公職の候補者の氏名及び党派別の掲示をしなければならないと規定している。したがって,党派の記載を誤った本件掲示が,不在者投票期間には不在者投票所の19台の投票記載台の各前面に,投票日当日は,投票開始の午前7時から正しいものに貼り替えられた午後1時ないし午後2時30分までの間,市内27カ所の投票所の401台の投票台の各前面に,いずれも掲示されたことは,市選管が選挙の管理執行の手続きに関する法175条の明文の規定に違反したことになり,法205条1項の「選挙の規定に違反することがあるとき」に該当することは明らかである。
イ  原告は,法205条1項の「選挙の規定に違反することがあるとき」とは,選挙の自由公正が著しく阻害されるような規定違反の場合をいうと解すべきであると主張するが,そもそも,選挙に関する規定は,主として選挙の自由と公正とを確保することを期するものであって,それゆえ,法205条1項は,「選挙の規定に違反する」場合を選挙無効の要件の一つとしているものと解される。原告の上記主張は,市選管が選挙の管理執行の手続きに関する明文の規定に違反した場合についてまで,重大な限定を持込もうとする独自の見解であって採用することができない。しかも,投票記載所の氏名等の掲示を定めた法175条は,選挙の管理執行の手続きの規定のうち,まさしく選挙の自由公正を確保するための選挙運動に関わるものであって,この明文の規定に違反する本件掲示が有効投票の過半の選挙人の投票に当たり掲示されていたという本件を軽く考えて,これをもって,法205条1項にいう「選挙の規定に違反することがあるとき」には当たらないとみる余地はないというべきである。
2  争点(2)(選挙の結果に異動を及ぼす虞があるか。)について
ア 法205条1項の「選挙の結果に異動を及ぼす虞がある」というのは,その違反がなかったならば,選挙の結果,すなわち候補者の当落に,現実に生じたところと異なった結果の生ずる可能性のある場合をいう(最高裁昭和29年9月24日第二小法廷判決)。
これを本件についてみるに,個々の選挙人の候補者の選択,投票意思の決定要因は各人各様ではあるが,投票意思の決定に際して,所属党派を重視する選挙人が存在することは明白であるから,本件掲示における党派別の誤記により,投票意思の決定に影響を受けた選挙人が存在する可能性は否定できない。そして,投票総数7万5395票のうち少なくても4万3234人(57パーセントを超える。)もの選挙人が本件掲示のもとで投票を行っているうえ,本件選挙における当落得票差は僅か1票にすぎないから,本件掲示の違法は各候補者の得票数に影響し,その選挙の結果,すなわち当落に異動を及ぼす可能性があるというべきである(しかも,上記事情からすると,その可能性は,単なる抽象的なものに止まらず,より具体的なものであるとみることができる。)。
イ  原告は,法175条の趣旨は,候補者の氏名を誤りなく記載することのできるよう選挙人に便宜を図って設けられたものであり,法175条の投票所の掲示によって,選挙人が投票意思を決定するものではないと主張する。しかし,法175条が,候補者の氏名のほか,特に党派別を掲示しなければならないと規定していることからすれば,同条の趣旨は,選挙人が投票用紙に候補者氏名を記載するに際し,候補者の氏名のみならずその所属党派を再確認する機会を与えることにあると解されるのであって,この確認の際に誤った情報を提供されたために,これが最終的な投票意思に影響し,異議申立人への投票を避けて他の候補者に投票した者などがいる可能性は否定しがたく,原告の主張は採用することができない。
3  争点(3)(異議申立権の濫用,憲法違反など)について
異議申立人は,候補者として,法により認められた異議権を行使し,その結果,その申立てが本件裁決により認められたのであって,本件異議申立ては,公正を欠く選挙の結果を排除するという公益上の要請のために法が認めた権利の正当な行使なのであって,これが異議申立権の乱用にあたらないことは明白である。また,法205条の規定する選挙無効争訟制度は,民主主義の根幹である選挙の自由公正を確保するために規定されているのであり,同条に該当する場合に当該選挙を無効とすることは憲法15条1項の趣旨に反しないばかりか,かえって,これを保障するものというべきである。原告は,本件選挙を無効とすることによる損失等について縷々主張するが,選挙の自由公正の確保の重大性からすれば,このような損失は,無効な選挙を維持する理由とはなりえない(選挙の管理執行の任に当たる市町村選挙管理委員会には,選挙を無効とさせてそのような多大な損失,影響を及ぼすことになるような手続上の過誤が防止されるように,よくよく心して適正な選挙事務執行に当たるべき責務があるのである。)。
4  結論
よって,市選管の決定を取消し,本件選挙を無効とした本件裁決は正当であるから,その取消しを求める原告の請求は理由がないので棄却する。
(裁判長裁判官 小林克已, 裁判官・内藤正之, 裁判官 白石史子)


「選挙 公報 広報 ポスター ビラ」に関する裁判例一覧
(1)令和元年 5月24日  東京地裁  平28(ワ)17007号 選挙供託金制度違憲国家賠償請求事件
(2)平成30年 7月25日  東京高裁  平30(行ケ)8号 裁決取消請求事件
(3)平成30年 7月20日  福岡地裁久留米支部  平28(ワ)69号 損害賠償請求事件
(4)平成30年 7月18日  大阪地裁  平28(ワ)3174号 懲戒処分無効確認請求事件
(5)平成30年 4月11日  知財高裁  平29(行ケ)10161号 審決取消請求事件
(6)平成29年12月22日  東京地裁  平27(行ウ)706号・平28(行ウ)585号 各公文書非公開処分取消等請求事件
(7)平成29年10月11日  東京地裁  平28(ワ)38184号 損害賠償請求事件
(8)平成29年 8月29日  知財高裁  平28(行ケ)10271号 審決取消請求事件
(9)平成29年 7月12日  広島高裁松江支部  平28(行コ)4号 市庁舎建築に関する公金支出等差止請求控訴事件
(10)平成29年 4月21日  東京地裁  平26(ワ)29244号 損害賠償請求事件
(11)平成28年 9月16日  福岡高裁那覇支部  平28(行ケ)3号 地方自治法251条の7第1項の規定に基づく不作為の違法確認請求事件
(12)平成28年 8月29日  徳島地裁  平27(ワ)138号 損害賠償等請求事件
(13)平成28年 5月17日  広島高裁  平28(行ケ)1号 裁決取消請求事件
(14)平成27年12月22日  東京高裁  平26(ネ)5388号 損害賠償請求控訴事件
(15)平成27年 3月31日  東京地裁  平26(行ウ)299号 投票効力無効取消等請求事件
(16)平成26年 9月25日  東京地裁  平21(ワ)46404号・平22(ワ)16316号 損害賠償(株主代表訴訟)請求事件(第2事件)、損害賠償(株主代表訴訟)請求事件(第3事件)
(17)平成26年 9月11日  知財高裁  平26(行ケ)10092号 審決取消請求事件
(18)平成26年 5月16日  東京地裁  平24(行ウ)667号 損害賠償履行請求事件(住民訴訟)
(19)平成26年 3月11日  東京地裁  平25(ワ)11889号 損害賠償等請求事件
(20)平成26年 3月 4日  東京地裁  平25(行ウ)9号 公文書不開示処分取消等請求事件
(21)平成25年11月29日  東京地裁  平25(ワ)18098号 被選挙権侵害による損害賠償請求事件
(22)平成25年10月16日  東京地裁  平23(行ウ)292号 報酬返還請求事件
(23)平成25年 9月27日  大阪高裁  平25(行コ)45号 選挙権剥奪違法確認等請求控訴事件
(24)平成25年 8月 5日  東京地裁  平25(ワ)8154号 発信者情報開示請求事件
(25)平成25年 3月14日  東京地裁  平23(行ウ)63号 選挙権確認請求事件 〔成年被後見人選挙件確認訴訟・第一審〕
(26)平成24年12月 6日  東京地裁  平23(行ウ)241号 過料処分取消請求事件
(27)平成24年 8月10日  東京地裁  平24(ワ)17088号 損害賠償請求事件
(28)平成24年 7月19日  東京地裁  平24(行ウ)8号 個人情報非開示決定処分取消請求事件
(29)平成24年 7月10日  東京地裁  平23(ワ)8138号 損害賠償請求事件
(30)平成24年 7月10日  東京地裁  平23(ワ)30770号 損害賠償請求事件
(31)平成24年 2月29日  東京地裁  平21(行ウ)585号 公金支出差止請求事件
(32)平成23年 5月11日  神戸地裁  平21(行ウ)4号 政務調査費違法支出返還請求事件
(33)平成23年 4月26日  東京地裁  平22(行ウ)162号・平22(行ウ)448号・平22(行ウ)453号 在外日本人国民審査権確認等請求事件(甲事件)、在外日本人国民審査権確認等請求事件(乙事件)、在外日本人国民審査権確認等請求事件(丙事件)
(34)平成22年11月30日  京都地裁  平20(行ウ)28号・平20(行ウ)46号 債務不存在確認等請求本訴、政務調査費返還請求反訴事件
(35)平成22年11月29日  東京高裁  平22(行ケ)26号 裁決取消、選挙無効確認請求事件
(36)平成22年11月24日  岐阜地裁  平22(行ウ)2号 個人情報非開示決定処分取消及び個人情報開示処分義務付け請求事件
(37)平成22年11月24日  岐阜地裁  平22(行ウ)1号 行政文書非公開決定処分取消及び行政文書公開処分義務付け請求事件
(38)平成22年11月 9日  東京地裁  平21(行ウ)542号 政務調査費返還(住民訴訟)請求事件
(39)平成22年 9月14日  神戸地裁  平21(行ウ)20号 公文書非公開定取消請求事件 〔兵庫県体罰情報公開訴訟・第一審〕
(40)平成22年 5月26日  東京地裁  平21(ワ)27218号 損害賠償請求事件
(41)平成22年 3月31日  東京地裁  平21(行ウ)259号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(42)平成22年 2月 3日  東京高裁  平21(行ケ)30号 選挙無効請求事件
(43)平成20年11月28日  東京地裁  平20(行ウ)114号 政務調査費返還命令処分取消請求事件
(44)平成20年11月17日  知財高裁  平19(行ケ)10433号 審決取消請求事件
(45)平成20年11月11日  仙台高裁  平20(行コ)13号 政務調査費返還代位請求控訴事件
(46)平成20年 3月14日  和歌山地裁田辺支部  平18(ワ)167号 債務不存在確認等請求事件
(47)平成19年11月22日  仙台高裁  平19(行ケ)2号 裁決取消等請求事件
(48)平成19年 9月 7日  福岡高裁  平18(う)116号 公職選挙法違反被告事件
(49)平成19年 7月26日  東京地裁  平19(行ウ)55号 公文書非開示決定処分取消請求事件
(50)平成19年 3月13日  静岡地裁沼津支部  平17(ワ)21号 損害賠償請求事件
(51)平成18年12月13日  名古屋高裁  平18(行ケ)4号 選挙の効力に関する裁決取消請求事件
(52)平成18年11月 6日  高松高裁  平18(行ケ)2号 裁決取消請求事件
(53)平成18年 8月10日  大阪地裁  平18(行ウ)75号 行政文書不開示決定処分取消請求事件
(54)平成18年 6月20日  京都地裁  平16(行ウ)40号 地労委任命処分取消等請求事件
(55)平成18年 1月20日  大阪地裁  平13(行ウ)47号・平13(行ウ)53号・平13(行ウ)54号・平13(行ウ)55号・平13(行ウ)56号・平13(行ウ)57号・平13(行ウ)58号・平13(行ウ)59号・平13(行ウ)60号・平13(行ウ)61号 障害基礎年金不支給決定取消等請求事件 〔学生無年金障害者訴訟〕
(56)平成17年 9月14日  最高裁大法廷  平13(行ヒ)77号・平13(行ツ)83号・平13(行ツ)82号・平13(行ヒ)76号 在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件 〔在外選挙権最高裁大法廷判決〕
(57)平成17年 8月31日  東京地裁  平17(行ウ)78号 供託金返還等請求事件
(58)平成17年 7月 6日  大阪地裁  平15(ワ)13831号 損害賠償請求事件 〔中国残留孤児国賠訴訟〕
(59)平成17年 1月27日  名古屋地裁  平16(行ウ)26号 調整手当支給差止請求事件
(60)平成16年 3月29日  神戸地裁姫路支部  平10(ワ)686号 新日本製鐵思想差別損害賠償請求事件
(61)平成16年 1月16日  東京地裁  平14(ワ)15520号 損害賠償請求事件
(62)平成15年12月15日  大津地裁  平14(行ウ)8号 損害賠償請求事件
(63)平成15年12月 4日  福岡高裁  平15(行ケ)6号 佐賀市議会議員選挙無効裁決取消請求事件 〔党派名誤記市議会議員選挙無効裁決取消請求事件〕
(64)平成15年10月28日  東京高裁  平15(行ケ)1号 商標登録取消決定取消請求事件
(65)平成15年10月28日  東京高裁  平14(行ケ)615号 商標登録取消決定取消請求事件
(66)平成15年10月28日  東京高裁  平14(行ケ)614号 商標登録取消決定取消請求事件 〔刀剣と歴史事件〕
(67)平成15年10月16日  東京高裁  平15(行ケ)349号 審決取消請求事件 〔「フォルッアジャパン/がんばれ日本」不使用取消事件〕
(68)平成15年 9月30日  札幌地裁  平15(わ)701号 公職選挙法違反被告事件
(69)平成15年 7月 1日  東京高裁  平14(行ケ)3号 審決取消請求事件 〔ゲーム、パチンコなどのネットワーク伝送システム装置事件〕
(70)平成15年 6月18日  大阪地裁堺支部  平12(ワ)377号 損害賠償請求事件 〔大阪いずみ市民生協(内部告発)事件〕
(71)平成15年 3月28日  名古屋地裁  平7(ワ)3237号 出向無効確認請求事件 〔住友軽金属工業(スミケイ梱包出向)事件〕
(72)平成15年 3月26日  宇都宮地裁  平12(行ウ)8号 文書非開示決定処分取消請求事件
(73)平成15年 2月10日  大阪地裁  平12(ワ)6589号 損害賠償請求事件 〔不安神経症患者による選挙権訴訟・第一審〕
(74)平成15年 1月31日  名古屋地裁  平12(行ウ)59号 名古屋市公金違法支出金返還請求事件 〔市政調査研究費返還請求住民訴訟事件〕
(75)平成14年 8月27日  東京地裁  平9(ワ)16684号・平11(ワ)27579号 損害賠償等請求事件 〔旧日本軍の細菌兵器使用事件・第一審〕
(76)平成14年 7月30日  最高裁第一小法廷  平14(行ヒ)95号 選挙無効確認請求事件
(77)平成14年 5月10日  静岡地裁  平12(行ウ)13号 労働者委員任命処分取消等請求事件
(78)平成14年 4月26日  東京地裁  平14(ワ)1865号 慰謝料請求事件
(79)平成14年 4月22日  大津地裁  平12(行ウ)7号・平13(行ウ)1号 各損害賠償請求事件
(80)平成14年 3月26日  東京地裁  平12(行ウ)256号・平12(行ウ)261号・平12(行ウ)262号・平12(行ウ)263号・平12(行ウ)264号・平12(行ウ)265号・平12(行ウ)266号・平12(行ウ)267号・平12(行ウ)268号・平12(行ウ)269号・平12(行ウ)270号・平12(行ウ)271号・平12(行ウ)272号・平12(行ウ)273号・平12(行ウ)274号・平12(行ウ)275号・平12(行ウ)276号・平12(行ウ)277号・平12(行ウ)278号・平12(行ウ)279号・平12(行ウ)280号 東京都外形標準課税条例無効確認等請求事件
(81)平成13年12月19日  神戸地裁  平9(行ウ)46号 公金違法支出による損害賠償請求事件
(82)平成13年12月18日  最高裁第三小法廷  平13(行ツ)233号 選挙無効請求事件
(83)平成13年 4月25日  東京高裁  平12(行ケ)272号 選挙無効請求事件
(84)平成13年 3月15日  静岡地裁  平9(行ウ)6号 公費違法支出差止等請求事件
(85)平成12年10月 4日  東京地裁  平9(ワ)24号 損害賠償請求事件
(86)平成12年 9月 5日  福島地裁  平10(行ウ)9号 損害賠償代位請求事件
(87)平成12年 3月 8日  福井地裁  平7(行ウ)4号 仮換地指定処分取消請求事件
(88)平成11年 5月19日  青森地裁  平10(ワ)307号・平9(ワ)312号 定時総会決議無効確認請求、損害賠償請求事件
(89)平成11年 5月12日  名古屋地裁  平2(行ウ)7号 労働者委員任命取消等請求事件
(90)平成10年10月 9日  東京高裁  平8(行ケ)296号 選挙無効請求事件 〔衆議院小選挙区比例代表並立制選挙制度違憲訴訟・第一審〕
(91)平成10年 9月21日  東京高裁  平10(行ケ)121号 選挙無効請求事件
(92)平成10年 5月14日  津地裁  平5(ワ)82号 謝罪広告等請求事件
(93)平成10年 4月22日  名古屋地裁豊橋支部  平8(ワ)142号 損害賠償請求事件
(94)平成10年 3月26日  名古屋地裁  平3(ワ)1419号・平2(ワ)1496号・平3(ワ)3792号 損害賠償請求事件 〔青春を返せ名古屋訴訟判決〕
(95)平成10年 1月27日  横浜地裁  平7(行ウ)29号 分限免職処分取消等請求 〔神奈川県教委(県立外語短大)事件・第一審〕
(96)平成 9年 3月18日  大阪高裁  平8(行コ)35号 供託金返還請求控訴事件
(97)平成 8年11月22日  東京地裁  平4(行ウ)79号・平4(行ウ)75号・平4(行ウ)15号・平3(行ウ)253号 強制徴兵徴用者等に対する補償請求等事件
(98)平成 8年 8月 7日  神戸地裁  平7(行ウ)41号 選挙供託による供託金返還請求事件
(99)平成 8年 3月25日  東京地裁  平6(行ウ)348号 損害賠償請求事件
(100)平成 7年 2月22日  東京地裁  昭49(ワ)4723号 損害賠償請求事件 〔全税関東京損害賠償事件〕


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