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政治と選挙Q&A「政党 衆議院議員 ポスター」に関する裁判例(47)平成 6年11月15日 横浜地裁 昭51(ワ)1606号 損害賠償請求事件 〔東京電力(神奈川)事件〕

政治と選挙Q&A「政党 衆議院議員 ポスター」に関する裁判例(47)平成 6年11月15日 横浜地裁 昭51(ワ)1606号 損害賠償請求事件 〔東京電力(神奈川)事件〕

裁判年月日  平成 6年11月15日  裁判所名  横浜地裁  裁判区分  判決
事件番号  昭51(ワ)1606号
事件名  損害賠償請求事件 〔東京電力(神奈川)事件〕
裁判結果  一部認容、一部棄却  文献番号  1994WLJPCA11156003

要旨
◆一 原告らの請求している政治的信条を理由とする賃金格差による損害賠償請求は、賃金支払期が到来して損害が発生した分で、本訴提起時までにいまだ時効期間の3年を経過していないことは明らかである。
二 賃金以外の差別又は人権侵害による損害賠償請求権の消滅時効は、その差別意思が包括的かつ継続的なものであったとしても、その具体的発現としての個々の差別又は人権侵害という加害行為の各時点から進行する。
◆職務遂行能力及び勤務実績と現実に会社から受けている処遇との格差が、共産党員であることを理由として特別な考課査定をした結果生じたものであり、会社の裁量権の範囲を超えるものであって、会社の行為は故意による不法行為を構成する。
◆従業員の政治的信条を理由に著しく低い考課査定をして、低い賃金しか支払わなかったときは、その裁量権を逸脱するものとして、労働基準法3条に照らして違法となり、不法行為を構成する。
◆賃金格差による損害は、職務遂行能力及び勤務実績に応じて本来支給されるべき賃金金額と考査査定により賃金支払期に支払うこととした金額との差額全額である。
◆一 政治的信条を理由とする賃金格差により名誉及び名誉感情が傷つけられ、多大な精神的苦痛を受けたと認められることから、慰謝料として150万円が相当である。
二 仕事の差別及び研修からの排除があったとしても、賃金差別による慰謝料とは別に慰謝料を請求することはできない。
◆政治的信条を理由として賃金格差が行われたとしても、被害者の精神的苦痛は慰謝料の支払をもって償うことで十分であり、謝罪文掲載等の必要は認められない。
◆政治的信条を理由とする差別及び人権侵害を理由とする慰藉料請求が、その請求権が消滅時効により消滅したことにより、又はその請求の前提となる差別又は人権侵害行為があるとは認められないことにより、理由がないとされた事例。
◆一 共産党員及びその同調者の従業員に、その政治的信条を理由に著しく低い考課査定をし低い賃金しか支払わなかったことは、会社の裁量権を逸脱するものとして、労働基準法3条に照らして違法となり、故意による不法行為を構成するとし、賃金差額と慰籍料、弁護士費用の損害賠償請求を認めた事例。
二 賃金差別による損害賠償請求権の消滅時効の抗弁が認められなかった事例。〔*〕

出典
労判 667号25頁
労働法律旬報 1354号34頁

評釈
飯塚宏・判タ臨増 913号332頁(平7主判解)
藤川久昭・労判 666号6頁
星山輝男・労働法律旬報 1354号23頁

裁判年月日  平成 6年11月15日  裁判所名  横浜地裁  裁判区分  判決
事件番号  昭51(ワ)1606号
事件名  損害賠償請求事件 〔東京電力(神奈川)事件〕
裁判結果  一部認容、一部棄却  文献番号  1994WLJPCA11156003

当事者の表示 別紙2「当時者目録」記載のとおり

 

 

主文

一  被告は、原告ら各自に対し、別紙1「認容債権目録」の各原告に対応する「認容額合計」の項記載の金員並びにその各内金である同目録の「認容額1」ないし「認容額8」及び「慰藉料」の項記載の各金員に対する各対応の「遅延損害金起算日」の欄記載の日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
三  訴訟費用は、これを三分し、その二を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。
四  この判決の第一項は仮に執行することができる。

 

 

事実

第一  申立て
一  原告ら
1  被告は、原告らに対し、別紙3「請求債権目録」(略)の「請求債権合計」の項記載の金員及び同目録の「請求債権1」の項記載の金員については昭和五一年一一月五日から、「請求債権2」の項記載の金員については昭和五四年一〇月二日から、「請求債権3」の項記載の金員については昭和五六年一〇月二一日から、「請求債権4」の項記載の金員については昭和五九年四月四日から、「請求債権5」の項記載の金員については昭和六〇年一〇月三日から、「請求債権6」の項記載の金員については昭和六三年三月三一日から、「請求債権7」の項記載の金員については平成二年九月二九日から、「請求債権8」の項記載の金員については平成四年八月一日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2  被告は、原告らに対し、別紙4「謝罪文目録」(略)記載の謝罪文を記載した書面を交付し、縦一〇三センチメートル、横一四五・六センチメートルB○判の白紙に右謝罪文を紙面一杯に墨書の上、これを別紙5「掲示場所目録」記載の各場所に本判決確定の日から一か月間掲示し、かつ、右謝罪文を本判決確定の日の直後に発行される被告会社の社報「とうでん」の諸公示欄冒頭に一頁全面を用いて掲載せよ。
3  訴訟費用は被告の負担とする。
4  1につき仮執行宣言。
二  被告会社
1  原告らの請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告らの負担とする。
第二  主張
一  原告ら
1  原告らの主張は、別紙【原告らの主張】(略)記載のとおりである。
2  昭和四八年一〇月から平成四年三月までに原告らに支払われた賃金等の額は、別表17「賃金格差一覧表」(略)の「争いのない支給額」の項記載の金額である。
二  被告会社
1  被告の主張は、別紙【被告の主張】(略)記載のとおりである。
2  原告らの主張第一章第一記載の事実のうち、原告らが別表1「原告ら略歴一覧表」(略)記載のとおりの学歴を有し、同一覧表記載の時期に被告会社(前身の関東配電株式会社及び日本発送電株式会社を含む。)に入社して、同一覧表記載の各事業所で各職種に就いてきたこと、原告守川が平成二年一一月三〇日に、原告大村が昭和六一年八月三一日にそれぞれ退職し、原告梅田が昭和五八年九月一四日に死亡したこと、原告らが東京電力労働組合(東電労組)の組合員又は元組合員であること、第一章第二記載の事実及び第四章第一の一、二記載の事実は、いずれも認める。
3  昭和四八年一〇月から平成四年三月までに原告らに支払われた賃金等の額が、別表17「賃金格差一覧表」の「争いのない支給額」の項記載の金額であることは認める。
第三  証拠関係
本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する(略)。

 

 

理由

第一章  当事者
第一  原告ら
原告らの主張第一章第一記載の事実のうち、原告らが別表1「原告ら略歴一覧表」記載のとおりの学歴を有し、同一覧表記載の時期に被告会社(前身の関東配電株式会社及び日本発送電株式会社を含む。)に入社して、同一覧表記載の各事業所で各職種に就いてきたこと、原告守川が平成二年一一月三〇日に、原告大村が昭和六一年八月三一日にそれぞれ退職し、原告梅田が昭和五八年九月一四日に死亡したこと、原告らが東電労組の組合員又は元組合員であることは、当事者間に争いがない。
原告らが共産党に入党した事実は、後に第二章第五で認定するとおりである。
原告梅田について原告ら主張の各相続が開始したことは弁論の全趣旨により明らかであり、原告梅田功が原告梅田の提起した本件訴訟を承継したことは記録により明らかである。
第二  被告会社
原告らの主張第一章第二記載の事実は、当事者間に争いがない。
第二章  東電労組及び原告らの活動
第一  東電労組の組織統一及び活動方針
〔〈証拠・人証略〉。なお、本件で取り調べた書証は、成立に争いがないものか、成立に争いがあっても〈人証略〉の各証言、原告ら各本人の各供述、弁論の全趣旨等によってその成立を認めることができるものであるから、書証の成立についての説示は省略する。〕
昭和二二年五月、前年に設立された企業別組合の協議体である日本電気産業労働組合協議会(電産協)が発展的解消を遂げて、新たに日本電気産業労働組合(電産)が全国単一組織として結成されたが、電産は、賃金引上げ、統一労働協約獲得、統一退職金協定の締結、電気事業の民主化等を闘争目標に掲げ、「地域人民闘争」方式による停電スト、送電停止等の争議行為を中心にしたいわゆる電産争議行動を展開していた。
関東配電株式会社に勤務し、関東配電労働組合に所属していた組合員は、電産が行った右電産争議行動を、共産党の組織介入の下になされたものと批判していたが、昭和二四年九月に電産が低水準の退職金協定を締結したのを契機として、次々と電産を脱退し、同年一二月、政党から支配されない経済闘争重点主義を掲げて、第二次関東配電労働組合を結成した。
電気事業再編政令及び公益事業令に基づいて、昭和二六年五月、関東配電株式会社等が解散し、同会社等から資産譲渡等を受けて新たに被告会社が発足したのに伴い、第二次関東配電労働組合は東京電力労働組合(東電労組)となったが、被告会社内には、電産関東地方本部も存在し、両者は対立していた。
昭和二七年秋のいわゆる電産大争議を契機に、電産内部でも本部の闘争方針を批判する気運が台頭し、電産を脱退して企業組合を結成する動きが活発になり、昭和二九年五月には電産の活動方針を批判して、企業別組合の連合体として全国電力労働組合連合会(電労連)が結成された。
このような気運の中で、電産関東四支部(千曲川、松本、猪苗代、群馬)は電産を脱退して昭和二九年五月に東電労組と組織統一をなし、これが電産関東他支部にも波及して、昭和三一年六月東電労組と電産関東地方本部の組織統一が実現した。
第二  昭和三〇年代の共産党の綱領及び活動方針
〔〈証拠略〉〕
昭和二〇年代に労働者と農民等の同盟による民族解放民主統一戦線の強化、発展を訴え、具体的な武装闘争のありようを説き、革命的闘争を組織して民族解放民主革命を目指した共産党は、昭和三〇年代に入って、それまでの武装闘争主義、極左冒険主義を転換して、議会を通じて平和的に革命を遂行することを方針とするに至った。
しかし、その一方で、昭和三三年七月に行われた第七回党大会において、アメリカ帝国主義と日本独占資本(被告会社も当然包含される。)を人民・労働者の「二つの敵」としてその打倒を目標に掲げ、その達成のためには、労働組合運動の指導に党が最大の努力を注がなければならないとして、企業内に強大な党細胞を作り、労働組合に対する系統的な活動を行って、職場の中で組合活動家を養成し、これを力に労働組合を階級的に強化させ、労働者の経済闘争を政治的に発展させて、労働組合の戦線を統一することを党員に指示していた。
昭和三四年六月に開かれた共産党第六回中央委員会総会において、被告会社等企業が推し進めている経営合理化対策は、日本独占資本による労働者に対する搾取の強化であり、日米安全保障条約の改定(安保改定)は、アメリカ帝国主義と日本独占資本が合理化対策をさらに政治的に強化しようとする意図の表れであると捉えた。そして、資本家的合理化によって労働者に負わされる一切の犠牲に反対する合理化反対闘争を展開して、これを社会的・政治的に高め、広範な労働者を意識的に政治闘争に参加させて安保改定阻止の統一闘争を前進させる旨決議して、前記「二つの敵」に対する反抗闘争として、反独占・反企業・反合理化闘争といった職場闘争の発展強化と共産党及び日本民主青年同盟(民青同)の拡大強化を強く打ち出した。さらに、昭和三六年七月に開かれた第八回党大会で決定した共産党綱領では、アメリカ帝国主義と日本独占資本を明確に「二つの敵」と規定して、日本独占資本が「設備投資」「技術革新」「合理化」によって国家独占資本主義としての特徴と労働者階級への搾取を強め、軍国主義・帝国主義の道を進んでいるとして、反企業・反合理化闘争を扇動し、特に電気事業を名指しでその攻撃目標にし、また、同時に電気事業を含む重要基幹産業における党勢拡大、労働組合の指導権の確立等をも決定して、党員に指示し、「二つの敵」に反対する新しい人民の民主主義革命をとなえるに至った。その後昭和四一年一〇月に開かれた第一〇回党大会において、基幹産業の中に党を建設すること、労働組合に対する支配を確立することなどを決定した。
そして、日本独占資本の中心的存在である電力と鉄鋼、特に京浜重化学工業地帯における電力と鉄鋼の中に党勢を拡大することが極めて重要であり、その電力の中心である被告会社の鶴見火力、潮田火力等は「革命の拠点」とする重要な拠点職場であるとして、同火力等で党勢拡大運動を活発に展開した。
第三  昭和三〇年代前半の東電労組の活動状況
〔〈証拠・人証略〉〕
昭和三一年六月、組織統一後の東電労組第一回定期大会が開催された。当時は、六〇年安保改定反対運動等を中心とした政治運動が高揚し、これに連動した階級的労働組合運動が活発化しており、その中で、電労連が、その上部団体である全労会議(総評を批判して分裂した労働組合の全国組織で、後の同盟)を指向するにもかかわらず、東電労組は、当初は、全労会議加盟問題に対して中立的立場を守り、被告会社が昭和二九年頃から進めてきた生産性向上運動、経営合理化運動に反対する態度を表明し、被告会社との対立姿勢を色濃く示していた。
東電労組は、昭和三一年から昭和三四年にかけて、労働協約・協定等の履行状況の監視、業務量と人員対策等を主要実施項目に掲げて組織総点検運動を展開し、従業員に各権利を把握させて、組合員全体の権利意識の高揚に努めた。その結果、各支部、分会の日常的な労働組合運動は拡がり、活発化した。
また、東電労組は、昭和三一年から昭和三五年にかけて、原水爆禁止運動に参加して世界大会に組合代表を派遣したり、砂川・横田等の基地反対闘争に参加したり、全川崎地区労働組合協議会(川労協議)などの呼びかけに応じて警察官職務執行法反対デモに参加したり、松川事件の被告人を支援する「松川事件対策協議会」に参加して松川闘争行進に参加するなど、政治的運動にも積極的に取り組んでいた。特に、六〇年安保闘争においては、「安保反対協議会」に加盟して、安保反対全国統一行動に参加したり、勤務時間内の職場集会を指令したりして、積極的に反対運動を展開していた。
第四  東電労組の変容
〔〈証拠・人証略〉〕
昭和三三年六月に開かれた東電労組第三回定期大会では、全労会議指向をうたった大塚支部等六支部による共同修正案が提案され、その提案は否決されたものの、電労連の大勢に順応しようとの動きが芽生え、昭和三四年七月に開かれた第四回定期大会では生産性向上運動や階級闘争の是非について激しい論議が展開されるようになった。
そして、昭和三五年に電労連が正式に全労会議に一括加盟したのを受けて、東電労組は、同年六月の第五回定期大会において、主流、反主流両派が激しく対立する中、全労会議一括加盟を決定し、被告会社の進める生産性向上運動、経営合理化運動に積極的に協力する内容の「経対活動を充実させて技術革新に対処する」等の現実的活動方針を採決し、ここに、電労連理念を基調にした労使協調の方向に大きく路線を変更し、続いて、原水爆禁止協議会や安保反対平和と民主主義を守る国民会議から脱退し、昭和三七年の活動方針では「青婦対策」の項で特に民青同対策を示すなど反共労使協調路線を進めていった。
東電労組本部が労使協調へ路線を変更した後も、鶴見火力分会、潮田火力分会、川崎火力分会等原告ら共産党員及びその同調者が執行部を掌握していた分会は、なお階級的労働組合運動を活発に展開していた。
このため、被告会社は、昭和三七年頃から、右鶴見火力、潮田火力等の各分会内に、共産党員及びその同調者の勢力に対抗し得る勢力や指導者を育成する必要性を痛感して、若い気骨のある従業員を選んで組合執行部に積極的に打って出るように仕向けた。
主任、係長等の職制の組合員は、この意を受けて、組合活動に不熱心であった層に働きかけて、仕事ができ、人望もある若手の組合員が進んで東電労組本部の労使協調路線に沿った組合運動に出られるような雰囲気作りをした。その結果、右組合運動をめざす反対勢力が組織され、鶴見火力に「新風会」、同第二機械課に「有志会」、潮田火力に「新潮会」、横浜火力に「横浜火力労働問題研究会(浜労研)」等の名称のインフォーマル組織が生まれた。これらインフォーマル組織の会員は、原告らの青婦人部活動を含めた労働組合運動を全体主義による極左政党運動と決め付け、経済闘争主体の労使協調路線の労働組合運動を標榜して、被告会社の精神的バックアップの下に、活発な活動を展開し、頻繁に、当直長、当直主任ら職制や労使協調路線をとる組合執行部と懇談し、連絡を取り合って、分会役員選挙対策、共産党員らに対する転向工作、職場内における共産党員への対応、監視体制、共産党員及びその同調者の職場での配置、異動などの被告会社の人事にわたる事項などについて協議し、共産党対策を講じた。
その結果、昭和三八年以降次第に労使協調派が分会執行部の多数を占めるようになり、昭和四〇年には原告ら共産党員及びその同調者は分会執行部から完全に排除され、原告らが進めてきた階級的労働組合運動は右分会内においても衰退した。
そして、昭和四三年頃には、被告会社企画室作成の業務計画策定方針に、施策の一つとして労使協働体制の強化=労使関係の長期安定と健全な信頼関係を育成するために、労働組合と意思疎通を円滑にし、会社の方針・施策の十分な理解浸透に努め、問題の迅速・円満な解決をはかる=がうたわれ、昭和四五年には、東電労組役員研修に被告会社の社長を講師として招くまでに労使協調体制は確固たるものとなった。
第五  原告らの活動状況
〔〈証拠・人証略〉〕
昭和三〇年代前半以降、東電労組、特に各分会において階級的労働組合運動が高揚するのに応じて、各分会に所属する原告らは、東電労組本部、支部、分会の執行委員、代議員、青婦人部委員などの各種役員に選出されて、積極的に労働組合活動を指導するとともに、一般組合員としても、組合集会、職場討議等で日常的に積極的に発言し、被告会社の推進していた経営合理化対策及びこれに基づく諸施策に一貫して反対していた。
また、原告らは、いずれも、前記諸活動を通じて、別表1「原告ら略歴一覧表」の「入党時期」の項記載の各時期に共産党に入党し、入党後は、共産党員として、階級的労働組合活動を活発に行うとともに、機関誌「赤旗」や党刊行物などの購読勧誘、配布活動を行って、その普及に努め、各事業所において民青同、共産党への加入工作を展開して、党勢拡大運動に携わり、特に鶴見火力、潮田火力においては職場内での共産党組織の建設に努めた。そして、各種国政、地方選挙において共産党のパンフレット、ビラなどを被告会社の各事業所の門前や駅頭等で配布して支持を訴えるなど、共産党、革新統一候補者の支援活動も活発に行い、共産党の政策を広めて共産党への支持を拡大する活動も積極的に行ってきた。
さらに、東電労組ないし各支部、分会が労使協調路線に転換した後も、経営合理化反対など被告会社の施策に反対する活動を行うとともに、安保反対、原水爆禁止、原子力潜水艦寄港反対等の各種運動にも積極的に参加していた。
第三章  被告会社の労務対策
第一  労務対策に関連する主な書証
一  (証拠略)
右書証は、昭和三六年五月に被告会社本店労務部が作成した「火力部門を中心とした青年層対策について」と題するいわゆるマル秘文書である。
右文書は、被告会社の常務会に付議され、決定された事項(ただし、職制管理機構の改善の点は留保された。)を記載したものであり、その中には、火力発電所について、「注目すべき現象としては、日本共産党の党勢倍加運動等、特に青年層を対象に外部からの働きかけも可成り活発に行われており、現に最近における憂慮すべき傾向として、川崎地区における火力発電所等においては、かかる働きかけに呼応し、党員数の伸びが著しく(ここ一年間に一〇名程度であったものが一〇〇名前後にふえている。)、鶴見、汐田、川崎の各火力細胞が集まって東電川崎地区総細胞を確立した模様である。このような動向に影響を受け、火力発電所従業員の青年層の間に過激な思想をいだいて行動する様な憂慮すべき状態が散見されてきている。」「之が管理の適否が将来における事業の円滑な運営と発展に及ぼす影響は極めて大なるものがあるといわざるを得ない。」との認識を示し、その対策として、青年社員層の会社に対する帰属意識と仕事への自発的意欲とを高めていくために、職制管理機構、人事・給与管理、教育訓練、意思疎通、従業員接触、住宅・文化対策等の多方面にわたる総合性をもった幅の広い労務管理を推進すべきことが記載されている。
二  (証拠略)
右書証は、昭和三八年八月に被告会社本店労務部が作成した「鶴見火力における〈共〉勢力の拡大工作の実態」と題する「嚴秘」扱いの文書である。
右文書は、鶴見火力における「容共左派分子と目される者」の実態と、過去一年間の会社の労務対策の結果をまとめたものである。
その中には、「現在(昭和三八年二月末の時点)鶴見火力において所謂容共左派分子と目される者は、共産党員と思われる者四五名、シンパと思われる者四二名、計八七名であり、全従業員七二二名中に占める割合は一二%である。これを共産党員だけに限ってみると、その割合は六・二%となっており、当社の事業所の中でも潮田火力と並んで高い比率を示している。」「過去一か年を振り返り、今日までの経緯をみると、会社側の労務管理の強化により、党側のやっきな工作にも拘らず、……相対的に拡大のテンポは逆に鈍化傾向を示し、『民青』等の加盟者からは一部脱退者も出はじめている……」との認識が記載され、過去一年間の共産党員、シンパ別に増減の人数を示し、共産党員四五名について、年齢、入社年度、入党時期、学歴・出身校、居住環境、家族構成、家の職業、社内貯金の状況等を詳細に分析した結果と、共産党と民青同との組織連携関係、共産党川崎市上田総細胞、鶴見火力における民青同の状況等について、詳細な組織編成表、構成員名等が記載され、さらに、独身寮工作、文化サークル工作、直工作などによる入党ないし民青同加盟勧誘工作の実態と会社側の管理体制上の反省点が記載されている。
三  (証拠略)
右書証は、昭和三八年一〇月に被告会社本店労務部が作成した「鶴見火力における青年層管理の問題点」と題する「嚴秘」扱いの文書である。
右文書は、青年層管理の参考資料として管理者層に配付されたものであり、その中には、若年従業員層の容共左派化をめぐる問題点、若年従業員層が共産党の思想的影響を受ける時期、その要因(独身寮工作、文化サークル工作、職場工作)を詳細に分析し、これに対する労務管理面からの反省点を掲げてこれを改めるべきであることが記載されている。
四  (証拠略)
右書証は、昭和三九年一〇月に被告会社本店労務部が作成した「生産阻害者対策の実際」と題する「嚴秘」扱いの文書である。
右文書は、(証拠略)の続編として、鶴見火力において実践してきた青年層対策、特に共産党員対策を体系的に整理してまとめたものである。
その中には、会社が昭和三六年から昭和三九年にかけて鶴見火力で行ってきた生産阻害者対策として、まず容共左派勢力の実態を調査し、共産党員数、単独で総細胞制が確立されている実態やその活動の状況を把握したことが記載され、続いて、従業員対策として、「労務対策基本方針の策定とよりどころの明示」「職制一体化のためのコミニ(ママ)ュケーション・ルートの確立と第一線監督者層の再教育」「新入社員対策」「独身寮対策」「若年層に対する特別追指導教育」「レクリエーション対策等」の方策を実施し、組合対策として、「経営のパートナーとしての正しい認識と自主性の尊重」「人望のある若手層の育成と組織化」「左派執行部との交渉は妥協を排しスジで通すこと」等の方策を実施してきたことが記載されている。
そして、原告らへの直接対策は生産阻害者対策の名の下に、「動向の把握と色分け」「問題発生時の的確な措置」「人事考課の厳正実施」「独身寮入居の際の種分け対策」「職場の配転対策」「懲戒事項の適用」「脱落者に対する救済措置」等の項目に分けられ、「動向の把握と色分け」の中には、「多角的な情報活動を通じて動向の正確な把握に努め、その中から容共左派分子を党派性の強弱によりA、B、Cランクに区分けし、諸対策を講じてゆくための基礎資料としました。」「このためには『アカハタ』『民青新聞』等により〈共〉関係行事の事前キャッチとそれへの出席状況、組合役員選挙や地方選挙等の際のビラ配布状況や推薦者名を調べるとともに、その他平常時においても職場や寮内における一寸した兆候でもこれを見逃さないよう留意することが必要であります。」「このためには、〈共〉行事の内容等につき職場においては当直主任や守衛の人達に、又独身寮においては管理人に事前に情報を伝えておくような配慮が必要であります。」と記載されている。
「問題発生時の的確な措置」の中には、「容共左派分子が労協や就業規則に照らし行き過ぎた言動を行った場合は、必ず見逃さずその都度厳重注意をするなり、内容によっては処分することも必要です。」「そして、注意した時は、その日時、内容を必ず記録にとどめておき、後日の疎明資料として整備しておくことが大切で、この資料により、或いは人事考課に反映させ、又家族寮入居の際に特別誓約書をとるよりどころに致しました。この場合、若し特別誓約書を出さなければ入居させない方針で臨み、現に五名の者が家族寮に入れないでおります。」と記載されている。
「人事考課の厳正実施」の中には、昇給査定は「彼等の日頃の言動が服務秩序をみだしたり、生産阻害の行動等、企業の秩序をみだしているという事実に基づいてやりました。」「このような形で信賞必罰をビシビシやってみますと、先ず一年後にはCランクの者が二年後にはBクラス乃至Aクラスの一部が脱落してきました。」「要は賃金査定の厳正化により入党の動機が単純なものほどショックに感じぐらついてくるようであります。」と記載されている。
「独身寮入居の際の種分け対策」の中には、「新しい寮が出来た機会を利用し、……会社の制定した入寮心得に誓約しない者を入れなかったので、結果的に〈共〉民青のみが条件の悪い古い寮に残ってしまい、中間層が左派から離れてしまいました。」「このように種分けし得たことにより、容共左派の動向をみる場合、一方の古い寮の動きをみていればわかるようになり管理しやすくなりました。」と記載されている。
「職場の配転対策」の中には、「直勤務者のうちの中心的な極左分子を日勤の机上勤務にかえ、而も課長の机の近くに配置したり、又、直の入れ替え等まわりの勤務員への影響を考慮し出来るだけ孤立するような配置替えが必要であります。」「このような同一職場内における配転以外に特定の者は機会をみて他の影響性のうすい事業所へ配転することが効果的であります。」と記載されている。
「懲戒事項の適用」の中には、「再三注意しても一向にきかなかったり、配転辞令を拒否した者に対しては、その内容により法廷闘争も考慮のうえ疎明資料は出来るだけ備えた上、懲戒処分にすることが必要です。」と記載されている。
「脱落者に対する救済措置」の中には、「以上の方針を進めてゆく反面、脱落者に対しては逃げ込みの場を設けておくことが必要です。即ち封じ込め一本ではなしに職場の主任や班長クラスや管理人の人達に脱落者への相談世話役的役割を誠心誠意行わせることも必要であります。」「鶴見火力の例では、このような過程を経て昭和三六年春から三九年春にかけ三年間に約二〇名の脱落者が出ております。」と記載されている。
五  (証拠略)
右書証は、昭和四八年一一月に被告会社神奈川支店が作成した「最近の労働情勢―日共系の動き―」と題するいわゆるマル秘文書である。
右文書は、共産党の動向や会社と共産党系従業員との紛争事例等を紹介した上、今後の管理上の問題点と対策として、「要は思想信条には表面的に絶対ふれることなく、業務管理、労務管理面からの『攻めの防御』が大切と思います。」「特定分子に対しては日常の言動、行動をよく注視し、たとえ細かな点でも把握記録しておく、会社の方針に反すること、業務上のミスなどについては機を逸することなく注意を与え、記録しておく。」「この場合思想面には絶対にふれない。」ことが記載されている。
六  (証拠略)
右書証は、中部電力株式会社が作成した「電気産業の性格と電気労働者の闘い」と題する文書の中に参考資料として添付された「東京電力における日共民青同対策について」と題する報告書である。
右文書には、被告会社における共産党及び民青同に対する労務対策として、「動向の把握」「組合機関役員中の良識派の育成」「独身寮対策」「日共、民青同関係員の配置転換」「人事考課」の実施状況が記載されているが、特に「人事考課」の中には、「日共党員、民青同と色分けがはっきりするものについては、一時的に如何に仕事に熱心でも、日共の目的からして会社に対する一種の欺瞞行動とみなし、昇給時の査定額をゼロとしておる。」ことが記載されている。
七  (証拠略)
右書証は、昭和四三年一〇月二八日に当直長、当直主任、班長等が出席して開かれた横浜火力発電課二班連絡会議の報告書である。
右文書の中には、右会議で、「業務計画の一環として各中操ごとに講習、懇談会を実施しているが、これらの司会、報告書の作成については左翼分子には実施させない。」ことを決めたことが記載されている。
八  (証拠略)
右書証は、昭和四四年九月一九日に副長、主任、班長等が出席して開かれた横浜火力発電課二班七、八級職連絡会議の報告書である。
右文書の中には、右会議で、原告らに対する対策が協議され、その対策の一つとして、「一つのガンを克服するために時差パトロール、操作員代行等により監視方法に強力な体制つくりをはかる。」「夜食時の時間帯、バーナー掃除時の業者との監視に十分注意する。」「社内外のレジャーには完全カットする。」ことを決めたことが記載されている。
九  (証拠略)
右書証は、昭和四四年六月一四日に当直長、当直主任、班長等が出席して開かれた横浜火力発電課二班七、八級職以上の合同会議の報告書である。
右文書には、「徐々に戦力として当てにしないんだと云う中操内張り付けの線にもって行き、全員一丸になって之に取り組み、企業の防衛に努力する。」ことを確認し、パトロールに関して、「(1)グループリーダーと一緒に行く、(2)操作員の研修を兼ねて一緒に行く、(3)パトロールはさせず、中操内雑務(をさせる)、(4)作業には年上、経験年数の多い人と一緒に行く」こととし、そのほかに、「出勤時の挨拶はするがその他は話しかけず話されても対話は一切しない。机の配置、電話の取次ぎせず、リクレーション参加等は理由をはっきり言って断っている。」ことを確認し、さらに、「人道的に非人間的ではないか又必要性は理論的には納得するがしっくりせず疑問に思っている人が若干名いる節があるのではないか、故に各中操にて足元の体制を確立して全員一丸となって近い将来にくる中操張付の時期に対応できるよう常日頃職場の体制作り地固めに専念する。」ことを確認したことが記載されている。
一〇  (証拠略)
右書証は、昭和四四年一月二四日に当直長、当直主任、班長等が出席して開かれた横浜火力発電課二班連絡会議の報告書である。
右文書には、右会議で、組合役員選挙について、左翼系の動きに対抗するための具体的対策を協議した内容が記載されている。
一一  (証拠略)
右書証は、鶴見火力所長から被告会社本店社長室あての昭和三七年一一月一九日付け「社員の不都合な行為に関する申請について」と題する書面である。
右文書に添付された「服務規律違背行為に関する経緯報告書」には、原告山田に関して、同原告が共産党員であること、同原告は数年来思想的に偏向し、いわゆる非協力派に属する要注意人物であり、かねてから注意していた者であり、同原告が社内便を使って結婚の案内状を発送しているとの情報を得て、現場をつかまえて徹底的に究明しようとしていたこと、同原告の行為を看過するときは、今後の服務規律の厳正に悪影響を与えるおそれが多分にあり、彼らグループを益々助長させる結果となることを理由に、断固たる措置をもって臨み、現在の労務対策にいささかの仮借もないことを知らしめる必要があることを上申する旨記載されており、さらに、その添付書面には、「同原告に対しては重要な業務は担当させず、かつ、その席も課長の前方で、主任の次に置き、常々その行動を監視している」ことが記載されている。
第二  神奈川県下の事業所の状況
〔〈証拠・人証略〉〕
被告会社は、電産による階級至上主義的労働組合運動が共産党の支配、影響の下になされ、職場内においても共産党員の従業員によって規律紊乱行為、反企業活動が激しくなされたとの認識を持ち、昭和二六年五月の会社設立以来、企業防衛の観点から、共産党員及びその同調者に対しては厳しい態度をとり、労働組合に対しては階級至上主義的労働組合活動を排し、経営の良きパートナーとして労使協調体制をとることを指向してきた(被告会社は、昭和四三年頃までは、高校卒業者の採用に当たって入社志望者の思想調査を行い、採用の際に、共産党員あるいはその同調者であることが判明した時は採用を取り消されても異議がない旨の請書を提出させていた。)。
第二章第四で述べたような経緯で、東電労組は、昭和三五年に、従前被告会社の生産性向上運動や経営合理化運動に反対し、全労会議への加盟問題にも中立的な立場をとっていたのを改め、同年の大会において全労会議加盟を決定し、この大会を契機に、共産主義を全体主義と規定してこれと決別する一方、被告会社の生産性向上運動や経営合理化運動には協力する旨活動方針を大きく転換させた。
ところが、その後も、神奈川県下の事業所においては、鶴見火力分会、潮田火力分会を中心に東電労組本部の方針に反して階級闘争至上主義をとり、被告会社の生産性向上運動や経営合理化運動に反対する活動が活発に行われていた。そして、鶴見火力においては、昭和三六、七年には分会執行委員長に原告瀬尾が選出され、同副委員長、書記長の三役も原告芝宮、同中島ら共産党員が独占し、潮田火力においては、昭和三四年から昭和三七年までの四年間原告大村らが分会執行委員長に選出され、川崎火力においても昭和三七年に原告らと志を同じくする手塚守夫らが分会執行部を構成した。このような事態の下で、被告会社は、鶴見火力、潮田火力等が共産党の党勢拡大運動の重点拠点職場に指定され、共産党員によって、被告会社に対する敵意の扇動、規律紊乱、業務阻害等の反企業活動が活発に行われているとみて強い危機感を抱いていた。
第三  労務対策の実行
〔〈証拠略〉〕
一  共産党員及びその同調者の発見
被告会社は、こうした状況の下で、労使協調体制を強化して経営合理化を進めていくための労務対策の一環として、まず、様々な方法で各従業員の思想傾向を把握し、共産党員及びその同調者の発見に努めた。即ち、被告会社は、原告らに日常接することの多い班長、当直主任等の一般管理者には、日常的に個々の従業員の動向を調査する監視体制をとらせて、面会者、電話の相手、手紙の差出人等の身元や、組合役員選挙、国政、地方選挙時における活動状況を調査させ、独身寮の管理人には、寮内外での原告らの交遊関係や活動状況を調査させ、各事業所の労務課員には、共産党や民青同が主催する各種集会、会合、行事を事前に察知して、参加者を調査させたり、原告ら共産党員及びその同調者の結婚式への参加者をチェックさせたりした。公安警察関係者とも連絡を密にして、川崎市等京浜地区における共産党や共産党員及びその同調者の動向についての情報交換をしたりして、共産党員及びその同調者の把握に努めた。
このようにして、被告会社は、終始階級至上主義的労働組合運動を積極的に展開してきた原告らについては、遅くとも原告らが主張する各時期までには、原告らを共産党員又はその同調者と認定していた。
二  隔離、孤立化及び監視
被告会社は、共産党員又はその同調者と認定した原告らについては、党派性の強弱によってA(手の施しようがない者)、B(ある程度矯正の可能性のある者)、C(矯正可能性のある者)などにランク分けをして、各ランクに応じたきめ細かい対策を講じた。特に火力発電所の直勤務者のうち中心的な極左分子と認定した者は日勤の机上勤務に担当替えし、その机を課長等の職制の近くに設置するなどして、他の従業員特に新入社員と隔離して、原告らが日常的にこれらの者と接触するのを断って、常時監視下に置く体制を整えた。
三  従業員教育
被告会社は、一般従業員に直接接する係長、当直長、主任、当直主任、班長クラスの職制に対し、共産主義や民青同の指導原理とその実態、動向等について詳細に批判的解説をした資料(「歌って、恋して、闘う民青―巧妙な日共の青年組織工作―」「日共勢力の拡大状況、日本民主青年同盟の現況」「資本主義の変貌」「共産主義の主張と批判」「労務読本―労務管理の着眼(青年層管理)」等)を被告会社本店労務部等で作成して配付し、若年労働者管理、労務管理体制の強化、充実等労務対策の指針とさせた。そして、定期的に係長会議、主任会議、班長クラスの労務関係連絡会議を開いて、日常の一般労務管理、民青同、共産党対策等について研究させ、これら職制と一般従業員との各課打合せ、懇談会を定期的に開いて、従業員との意思疎通をも図るようにした。
また、新入社員研修の中で、民青同や共産党を秩序ある活動を阻害する勢力として批判し、これらの勧誘に応じないよう注意を喚起し、新入社員父母との懇談会をも設けて、民青同や共産党の勧誘から新入社員を防御するための家庭内教育をするよう強く要請した。
さらに、一般従業員に対しては、勤務時間中に被告会社の施設を使って、外部から招いた講師により、共産党と民青同の実態、活動等を批判的に解説して、労使協調の労働組合活動を推奨する内容の各種講演会を実施し、その講演録を他の事業所にも回覧し、従業員研修の一環として、民主社会主義の思想と理論の研究、普及等を目的に創設された思想団体である民主社会主義研究会議(民社研)が開催する労働学校、講習会等に被告会社の費用で中堅従業員を派遣して、反民青同、共産党教育を実施した。
四  組合活動の規制
被告会社は、原告ら共産党員及びその同調者が分会を掌握し、階級至上主義的労働組合活動を展開している鶴見火力、潮田火力等においては、従前、放任していた就業規則、労働協約等の諸規程に違反する労働組合活動に厳格な規制を加えるようになり、組合費控除(チェックオフ)を廃止し、勤務時間中の執行委員会への出席を制限し、各事業所の青婦人部の活動を組合活動とは認めず、勤務時間中の委員会開催をすべて禁止し、被告会社の施設を一切貸与しないことにした。
五  独身寮管理体制の強化
被告会社は、昭和三七年に鶴見火力において「独身寮寮生心得」を、昭和三八年に潮田火力において「独身寮内規」を、昭和三九年八月に被告会社本店において「独身寮管理規制」を制定して、独身寮内で政治活動を行うこと、管理人の許可なく面会者若しくは外来者を入寮させることなどを禁止した。また、「管理人服務規程」を制定して、寮の管理人の職務内容を明確にし、寮規則等を厳格に適用させて、寮管理体制を強化した。
六  賃金対策
被告会社は、その労務対策の一環として、「人事考課の厳正実施」の名の下に、原告らに対し、その職務遂行能力及び勤務実績にかかわらず、他の従業員よりも昇級昇格時の査定を低くし、その結果として賃金を低くしていた(〈証拠略〉)。この点については、章を改めて次章以下に詳述する。
第四章  労務対策としての賃金対策
第一  職務給制度及び給与の種類
請求原因第四章第一の一(職務給制度)及び二(給与の種類)記載の事実は、当事者間に争いがない。
第二  被告会社の賃金制度の運用の実態
〔〈証拠・人証略〉〕
一  職務給制度の性格
被告会社は、電産型賃金の生活給賃金体系から職務、職能中心の賃金体系へ移行するため、昭和三〇年一一月、「同一労働、同一賃金」を原則とする職務給制度を導入したが、実際には、その後も、昇給分については、一律定額分(例えば、昭和三二年の場合、三三〇円)、基本給比例分(例えば、昭和三二年の場合、昭和三一年度末の基本給に〇・〇三五を乗じた額)、年齢別定額分(各人の年齢によって定まる額)と職級に応じて配分する査定分を設けるといった年功的な要素をも総合して基本給を決定する運用をしていた。
二  昭和四一年二月導入の定期昇給制度の性格及びその後の見直し
被告会社は、昭和四一年二月、定期昇給制度を導入したが、これは、職級別に昇級基準を作って、昇級基準線を決め、従業員の職務が変らなくても、勤続年数が一年進むごとに定期的に一段ずつ昇給する制度である。この制度は、職務給制度をそのまま直裁に適用すると、日本企業における年功序列的風土になじまないことから、これを修正して、その職務に対する熟練度、勤続貢献といったものも考慮するために導入されたものであり、被告会社も、この制度を導入した際に、従業員向けに作成した「定期昇給制度について」と題するパンフレット(〈証拠略〉)の中で、「能力を重視した賃金といいますが、もちろん年功、勤続という要素を無視しているわけではありません。熟練が形成された段階からは、この勤続貢献の評価を主体にして賃金が上昇していくわけです。」と説明している。そして、この定期昇級制度については、昭和四四年、昭和四七年、昭和五〇年と、その後概ね三年ごとに、その機能を補完するための見直しが行われ、その都度、長期勤続、高号数の従業員の基本給ほど厚く是正された。
三  職級制度の弾力的運用
1 被告会社は、先に述べた職務制度をそのまま直截に適用することによる問題点を是正するため、昭和四六年四月、同一職級に長期間(五年程度)、多数が在級している下位職級(七級以下)にある者で、勤務成績が優秀かつ担当する職務内容が高水準にあると認められるものについて、同一職務のまま一級上位に格付けすることを提案して、東電労組の同意を得て、一八〇〇名程度を対象に職級見直し、上位職級への格付けを実施した。
2 被告会社は、昭和五〇年四月、東電労組からの、二〇年以上の長期勤続の低職級者に対する職級改善の申入れを受けて、基準職級の一部見直しを行い、六級職を拡大した。また、高校卒標準者の一〇、九級の熟練形成期間を短縮し、高校卒標準者は勤続六年で八級に昇級するよう職級改定を行った。
四  職務資格要件
昭和四〇年一二月頃、被告会社の人事室において、人事管理について検討した結果、職級昇進制度の三つの柱として、(1)職務資格要件、(2)標準昇進コース、(3)昇進基準の三つをあげた上、適材適所を長期的、計画的に実施するには、標準昇進コースを決定し、同じ程度の能力水準にある者であれば、多少の先後はあれ、入社後何年目かには大体同じような難しさの仕事に就くようにし、職場刷新のため、一定年限が来れば異動することも考えなければならないこと、そのために、具体的な昇進基準を設定する必要があること、これらにより、大体の標準者が何年位の勤続年数の時にどの水準の職務に配置されてどのような職務経歴を有しているのかがわかるようにすることなどが必要であるとされた(〈証拠略〉)。そして、標準昇進コースと昇進基準を具体的に決めるため約三年間かけて資格要件の調査を実施し、その結果を整理して「職務資格要件記述書」を作成して制度化し、昭和四二年度から特別管理職全員にこれを配付して、従業員の異動、配置等の基準に利用させたが、この職務資格要件記述書には、職務適応期間として在職年限が通常三年、最大五年と記載されていた。
五  昭和四七年資格制度運用の改正
被告会社は、昭和四七年一〇月、資格制度を発足させたが、これは、「仕事」を中心とした労務管理の秩序を体系化したものとしての「職級制度」が、能力構造における平準化傾向をもたらし、これによる昇進の停滞等を来したため、中高年対策の実質効果を狙って、仕事に従事する「人」の側からみての(1)知識や経験の蓄積、(2)会社への貢献の積み重ね、(3)自己啓発への努力(これを「資格の三要素」と従業員には説明した。)等を評価し、「職級制度」を補完するものとして、勤続貢献主体の人事考課をなすために設けられたものである。これにより、標準的昇格制度が導入され、勤続貢献度を加味した標準昇進コースを明らかにして、標準者は同一資格で八年経過すると上位の資格に昇進し、定年までには、課長、係長等の管理職に対応する主事又は技師に到達することとした。
六  配電保守工事専門部のライフサイクル
被告会社の本店配電部では、昭和五七年一一月、配電部重点課題の一つとして、前記標準昇進コース、昇進基準を具体化した「配電保守工事部門のライフサイクル(案)」を作成したが、そこには、工業高校卒業者、学園卒業者は入社後一〇年程度で副班長に、一五年程度で班長に任用する旨記載されていた。
七  昭和五四年度資格の定期昇格における標準的予定昇格年数
労使専門交渉を経て、昭和五四年一〇月、被告会社と東電労組との間で、同年度資格の定期昇格について合意をみたが、その際、標準的予定昇格年数(在資格年数)は、書記補、技手補は四年程度、書記、技手は七年程度、主事補、技師補は一〇年程度、主事、技師は一三年程度と定め、標準的な者とは、平均的な者と最も遅い者との中間的な者(全員の七五パーセント以上の者)と定義付けて、標準者は年功序列的に昇格することを明らかにしていた。また、各資格段階の格付基準についても、副参事は課長級以上、特任主事、技師は課長ないし副長級、主事、技師は副長ないし主任、班長級等、各職位に対応して格付けする旨決められた。
八  賃金実態調査からみた運用の実情
東電労組本部が実施した賃金実態調査(以下「東電労組実態調査」という。)の結果によると、昭和四七年から昭和五一年までと昭和五七年の職級分布の統計上の最頻値は、入社三ないし四年で九級、六ないし八年で八級、九ないし一二年で七級、一二ないし一五年で六級、一八ないし一九年で四、五級になっている(〈証拠略〉)。また、東電労組神奈川支部が実施した職級実態調査の結果によると、昭和五〇年、昭和五二年、昭和五三年、昭和五七年の職級分布の統計上の最頻値も同様の傾向を示している(〈証拠略〉)。このように、統計上からも年功序列的な昇級がなされていることがわかるのであって、東電労組本部の職級分析専門委員会も、昭和四八、九年度の職級実態調査結果を、高校卒入社者では、六級までは若干の先後はあるもののほぼ四年ごとに昇進がなされているが、五級以上は分散傾向が大きくなり、一般職の場合は勤続貢献度が重視されて、標準昇進的な要素が強く働き、五級以上は個々の能力により昇級している傾向が表れていると分析し、昭和五一年度の職級実態調査結果を、職級と勤続年数は相関関係にあり、九級三年、八級四年、七級四年との傾向を明確に示していると分析していた(〈証拠略〉)。
九  小括
このように、被告会社においては、賃金体系について基本的には職務給制度を採用しているが、その運用の実態は、六級以下の職級については多少の先後の差はあるにせよ、年功序列的な面が強く、各学歴ごとに、その勤続年数に応じて、職位、職級、賃金上の処遇が上昇しており、一般管理職となる五級以上は上級になるほどその先後の差が著しくなっていることが認められる。そして、その判断の資料となった東電労組実態調査は、東電労組組合員全員でかつその数も三万人近い多数を調査対象とするものであり、かなりの正確さで実態を表しているものと認められるから、原告らの賃金格差を検討するに当たって、この東電労組実態調査を用いて、同期同学歴者の職位及び職級から算出される平均又は下位グループの給与と、原告らの職位、職級及び実際に支給された給与とを比較することは意味があり、その格差を論じることに合理性があるといえる。
第三  賃金格差の実態
一  原告守川及び同大村以外の原告らの賃金格差の実態
1 被告会社の賃金体系は、職務・職級制度をとっていて、従業員の担当する職務の相対的価値を各職級に分類して基本給決定の基準にする仕組になっており、従って、職級の昇級が基本給の昇給に結び付くものである。昭和四八年から昭和五七年までの原告ら(原告守川、同大村を除く)の職級の昇級状況と、原告ら(同)と同学歴の高校卒の同期入社者の中位数に当たる職級の昇級状況を比較すると別表2「職級推移一覧表(高校卒)」記載のとおりであり、両者の間には同表記載のとおりの格差が生じている。
2 原告相澤清が被告会社の前身である関東配電株式会社に入社した後の昭和二九年三月に法政大学第二工業高校を卒業したこと、原告吉葉が同じく関東配電株式会社に入社した後の昭和二九年三月に横浜市立港高校を卒業したことは、当事者間に争いがないところである。従って、右両原告についての賃金格差を検討するに当たっては、昭和二九年度高校卒入社者と比較するのが相当である。
3 原告倉内が昭和三二年三月に高校を卒業して被告会社に臨時雇いとして入社し、昭和三三年七月に正社員に採用されたことは、当事者間に争いがなく、従って、同原告についての賃金格差を検討するに当たっては、昭和三四年度高校卒入社者と比較するのが相当である。
4 昭和五七年度高校卒男子勤続別職級分布を検討すると、最下位職級、下位職級の八級職、七級職に格付けされている人員及びそのうちの原告ら、他裁判所における本件同種訴訟の原告(以下「他裁判所原告」という。)及び原告らを支援する会会員(以下「支援会員」という。)が占める人員は、別表5「低位職級分布表(高校卒)」記載のとおりであり、最下位職級のほとんどが原告ら、他裁判所原告及び支援会員で占められている(〈証拠略〉)。
5 神奈川県下の事業所に配属された高校卒男子従業員のうち、火力発電所については昭和二九年、昭和三〇年と昭和三二年から昭和三八年まで、神奈川支店については昭和二九年、昭和三四年から昭和三七年までと昭和四〇年の各入社者の昭和五七年四月における職級を検討すると、別表3「神奈川県火力発電所入社者の職級分布表(高校卒)」及び別表4「神奈川支店入社者の職級分布表(高校卒)」記載のとおりであって、他の従業員と比較して、原告ら、他裁判所原告及び支援会員の職級は著しく低くなっている(〈証拠略〉)。
6 神奈川県下の事業所に配属された高校卒男子従業員のうち、火力発電所については昭和二九年、昭和三〇年と昭和三二年から昭和三八年まで、神奈川支店については昭和二九年、昭和三四年から昭和三七年までと昭和四〇年の各入社者の平成三年における職位を検討すると、他の従業員と比較して、原告ら、他裁判所原告及び支援会員の職位についての格差はさらに顕著である(〈証拠略〉)。
二  原告守川及び同大村の賃金格差の実態
1 原告守川が旧長野工業専門学校(現信州大学工学部)を卒業して昭和二六年四月に被告会社に入社したこと、原告大村が高校を卒業して被告会社の前身の日本発送電株式会社に入社した後の昭和二四年三月に旧横浜工業専門学校(現横浜国立大学工学部)を卒業したことは、当事者間に争いがない。原告守川、同大村各本人の供述並びに後記3、4で認定するところに照らすと、被告会社においては、旧制工業専門学校を卒業した従業員については、学歴を大学卒として処遇していたことが認められる。従って、右両原告についての賃金格差を検討するに当たっては、大学卒入社者と比較するのが相当である。
2 東電労組実態調査によると、被告会社においては、大学卒入社者の職級昇進は極めて早く、入社時に八級に任用されて約四年間在級し、その後一、二年ごとに昇級して、概ね勤続一四、五年でほとんどが非組合員(課長、当直長以上の特別管理職)になっている(昭和四八年度において大学卒で組合員である者の八〇パーセントは勤続一二年未満である。)。ところが、原告守川及び同大村の職級昇進状況をみると、原告守川は昭和三四年(勤続九年)に八級、昭和四八年(同二三年)に七級に昇級し、原告大村は昭和三四年(勤続一五年、大学卒としてみると一一年)に七級、昭和三五年(同一六年、一二年)に六級、昭和五一年(同三二年、二八年)に五級にそれぞれ昇級したのであって、他の大学卒入社者と比較して著しく遅れている。
3 原告守川は、平成二年一一月に一般職のまま被告会社を定年退職したが、同原告と同期同学歴(昭和二六年四月旧制専門学校卒業で日本発送電株式会社関東支店に入社し、同年五月被告会社に移籍した。)の従業員のうち、同じ火力部門に配属された庄山光彦は昭和六二年六月に川崎火力所長で定年退職し、同幡野英雄は昭和六〇年一月に本店営業開発部副部長待遇(出向中)で退職し、そのほか、同じ長野工業専門学校卒業の原久義は昭和六二年一月に高瀬川総合制御所所長で退職し、岡雄治は昭和六三年一月に本店工務部副部長待遇(出向中)で退職しており、職位の上でも同原告と同期同学歴者との間に著しい格差が生じていた。(〈証拠略〉)。
4 原告大村と同じ旧制横浜工業専門学校卒業の従業員のうち、昭和五六年当時「主任待遇」にあるのは同原告だけで、同原告の一年先輩の山崎昭は送変電建設本部副部長に、同原告と同期の佐藤吉彦は神奈川支店環境担当の次長になっており、同原告より一〇年後輩の深谷光世は立地環境部副部長待遇、一五年後輩の鈴木好雄でも本店総務部株式課課長、二〇年後輩の松本治雄でも原子力建設部原子力設計課副長になっており、職位の上でも同原告は著しく低位に処遇されていた(〈証拠略〉)。
三  賃金格差の額
1 右一で判断した原告ら(原告守川、同大村を除く)と同期同学歴(高校卒)の中位に該当する者との職級の格差により、具体的にどの位の賃金格差が生ずるかを原告ら主張の計算方法(その計算関係自体は被告会社においても特に争わない。)によって算定すると、別表17「賃金格差一覧表」記載のとおりとなる。
2 被告会社においては、大学卒入社者のほとんどが勤続一四、五年で非組合員になることは、右二で判断したとおりであり、その結果、そのほとんどが東電労組実態調査の資料には表れなくなるので、高校卒入社者のように、右資料を使用して同期同学歴者の「平均賃金」との格差を具体的に算定するのは困難である(右資料に表れている同期同学歴者の大学卒組合員の職級の中位数、又は最頻値の職級が大学卒入社者の同期同学歴の平均値でないことは明らかであり、それを基に賃金格差を算定するのは不合理である。)。
勤続一四、五年でほとんどの大学卒入社者が非組合員になるという統計結果からすると、昭和四八年度において勤続年数二二年の原告守川と勤続年数二四年の原告大村の同期同学歴者の職級の平均及び最頻値が一級以上であることは明らかである。従って、右両原告の昭和四八年度以降の職級を一級とみなした上で、平均基本給について勤続一〇ないし一四年の高校卒入社者と大学卒入社者との賃金の比率をとって、勤続二二年、あるいは勤続二四年の高校卒入社者の中位数に該当する賃金額に右比率を乗じて算出するという、原告ら主張の賃金格差の算定方法は、原告守川、同大村の同期同学歴(大学卒)の「平均賃金」との格差の算定方法としてはごく控え目であり、これによって算定した退職金及び年金も含めた給与の格差は別表17「賃金格差一覧表」記載のとおりである。
第五章  賃金格差の要因その一(被告会社の労務対策)
被告会社が、会社内の共産党勢力を減殺し又は排除するための労務対策の一環として、人事考課による昇給査定を利用し、共産党員及びその同調者について人事考課による昇給査定について特別の扱いをしていたことは、第三章第三の六で判断したとおりである。そして、この間に原告らについて生じた賃金格差の実態は前章で判断したとおりであり、特に神奈川県下火力発電所、神奈川支店入社者の平均的職級、職位と比較すると、原告らの職級は単に同期同学歴の他の従業員より下位にあるというだけでなく、統計上の正規な賃金分布から著しく逸脱して、何らかの作為がなければ偶然では起こり得ないほどのものである。従って、原告らと同期同学歴者の平均のみならず、下位グループとの間においても生じている著しい賃金格差は、原告らの勤務遂行能力及び勤務実績が著しく劣るなどの特段の事情のない限り(この特段の事情の存否は次章で判断する。)、被告会社が、共産党員及びその同調者に対する労務対策の一環として、原告らに対する賃金対策を通常の年功序列的な運用とは別に実施してきたことによるものと推認することができる。
第六章  賃金格差の要因その二(各原告の職務遂行能力及び勤務実績に対する評価)
第一  被告会社の主張の特異性
原告らは、いずれも平均的な職務遂行能力を有し、平均的な勤務実績を有するから、原告らについて生じた賃金格差は、共産党員であることを理由とすること以外に考えられないと主張するのに対し、被告会社は、総論的には、被告会社における共産党員及びその同調者の動向に関する主張をしているが、これは原告らの主張する反共労務対策なるものが存在しないとして反論するためのものであり、原告らに対する具体的な処遇に関しては、終始原告らが共産党員又はその同調者であるとは知らなかったのであるからその思想信条により差別を行うわけがなく、原告らについて生じた賃金格差は、専ら原告らの職務遂行能力や勤務実績が劣悪であるからであるとして、別表19「原告別勤務状況一覧表」記載のとおりの不都合行為なるものを主張するだけであり、被告会社の主張する共産党員及びその同調者の生産阻害活動と原告らを直接結び付ける主張をしていない(被告会社が原告らを共産党員又はその同調者であるとは知らなかったとの主張が理由のないことは、先に認定したとおりである。)。
第二  被告会社の立証の特異性
被告会社は、人事考課を公正かつ客観的に実施するために、能力評定と業績評定に分け、いずれについても多面的に項目を設けて、一括して評定した場合に陥りやすい主観的評価になることを避けており、かつ、第一次評定者と第二次評定者による二段階の評定を行っているなどの工夫をしているとして縷々主張している(被告の主張第五章)。ところが、原告らの職務遂行能力及び勤務実績が劣悪であると主張しながら、その人事考課に関する資料は証拠として何も提出しない。事柄の性質上、そのすべてを証拠として提出することを期待するのは困難であるとしても、少なくとも原告らが被告会社主張の不都合行為をしたとの事実関係に関するものくらいは提出することができると思われるが、その資料すらもほとんど証拠として提出せず、被告会社の従業員又は元従業員の作成した膨大な陳述書とこれらの者の証言をもって立証しようとしている。しかし、これらの陳述書と証言の多くは、当時原告らと厳しく対立していたインフォーマル組織の会員であり、職制でもあった者などが早いものでも本訴提起後約一〇年を経た昭和六一年に、遅いものは平成四年になってから、古いものは二〇年も前、新しいものでも十余年も前の出来事を記憶に基づいて述べるものである。このような時期に作成された陳述書や本訴における証言がそれ以前に原告らについてなされた勤務評定の資料でないことは明らかである。のみならず、以下、第四で各原告ごとの職務遂行能力及び勤務実績についての被告会社の主張について判断する際にも述べることになるが、その内容は、不都合行為の日時、場所、行為の態様等が抽象的に過ぎるものであるか、他の従業員もしている程度の些細な事柄をことさらに悪く述べているものであるか、印象といった程度のあいまいなものであって、被告会社主張の不都合行為についての具体的な事実関係を明らかにし得るものでないばかりでなく、その事実をどの時期の人事考課にどのように反映させたのかも明らかでないものである。特に、陳述書は、その形式からも明らかなように、すべて本訴になってから被告会社の主導で作成され、陳述者が記載したのはその署名だけというものであり、その内容も、原告らの勤務態度をかなり悪し様に述べているが、反証のあげようのない抽象的な、いわば言いっ放しのものである。これらは、中には、陳述者が証人として出頭することを拒んだり、作成者を証人として取り調べてみると、反対尋問にあって、陳述書作成後間がないというのに、ほとんど陳述書に書いてあるとおりであると述べるだけで、その記載に関連する事実については忘れたとか知らないといった供述しかすることができず、ついには、当該原告は同僚とチームワークを保ちながら仲良く仕事をしていたといった陳述書の内容と全く相反する供述をしてしまうようなものもあり、職制として第三章第一に示した証拠により明らかな被告会社の労務対策を直接実施していたにもかかわらず、そのような労務対策は全くなかったと否定しているものもある。さらに、陳述書の中には、当該原告についての双方の人証の取り調べが終わった後に明らかにその証拠調べの結果を意識して作成されたものもある。このようなことから、右陳述書と証言のほとんどは、にわかに信用することができないものである。
第三  他の一般従業員の勤務振り
原告らの職務遂行能力及び勤務実績が劣悪であるとの被告会社の主張は、当然のことながら、他の従業員のそれと比較してのものであるが、被告会社は、比較すべき他の従業員の職務遂行能力及び勤務実績については、積極的に主張立証しないばかりでなく、反証も提出しない。従って、以下に認定する他の従業員の勤務振りは、原告らの申し出た証拠によって認定することができるものだけである。
一  品川火力の従業員の場合
(証拠略)(昭和四七年当時被告会社品川火力の当直長であった田沢謙一が作成したメモ)には、同火力に勤務していた部下の薄井健夫の勤務振りについて、一時間遅刻し、注意したが再度遅刻したこと、副長が代勤を依頼したのに対し、「甘えるんじゃない。」と言ったこと、事故検討会においてもその発言が非常にやくざっぽいこと、チーム内の業務に対して非協力的であることなどが、同花井英明の勤務振りについて、連直日二サイクルを明確な理由もなく休み、中堅社員として休暇の取り方に指導を要することが、それぞれ記載されている。同町田昭一の勤務振りについては、三直遅番の時主任の後ろで新聞を読みながら居眠りをしたこと、台風対策に対して拒否的態度であったこと、早寝したことなどが、同水上省三の勤務振りについては、一、二直時五時頃控室に入ったきりで、中操勤務をしていないこと、タービン起動研修に参加しなかったこと、タービン起動時、一七五〇回転をキープしなかったため振動が高くなり、仕事の指示と操作が悪いことなどが、同平野猛の勤務振りについては、直交替後、業務より洗濯を優先したことが、それぞれ記載されている。その他、関係弁の確認を怠って安全弁を作動させて蒸気漏れを起こした者、増健センターへ行く予定をしていたのを自己都合で止めて休暇をとり、打合せができなかった者、予備直の時ベッドを出して寝ていた者、年休を取得しながら連絡しない者などがいたことが記載されている。
ところが、(証拠略)によると、昭和四七年当時右のような劣悪な勤務振りであった薄井健夫、町田昭一及び花井英明は、いずれも平成元年一一月一日に品川火力の当直副長に、同平野猛は同じく当直主任に、同水上省三は、昭和五九年四月に鶴見火力当直主任に、昭和六一年五月に品川火力営業開発課副長にそれぞれ昇進していることが認められる。
二  千葉火力の従業員の場合
(証拠略)(千葉地方裁判所における本件同種訴訟の原告の一人である永松好信が作成したメモ)によると、千葉火力の発電課三・四号において、昭和四三年から昭和五〇年までの間に、前日に休暇を申請したのが三五件、うち千葉地方裁判所原告以外の一般従業員のものが二七件あり、また、当日に休暇を申請したのが一五件、うち同原告以外の一般従業員のものが一四件あること、また、千葉火力においては、昭和四三年から昭和五〇年までの間にミスや誤操作事故が合計三九件発生しており、昭和三三年頃から昭和五四年までの間にユニット停止などの誤操作による大事故が一二件発生しているが、いずれも千葉地方裁判所原告以外の従業員がこれらに関与したものであること、これら事故に関与した従業員も右事故に影響なく昇級、昇格していることが認められる。
三  森田欣一郎の場合
(証拠略)と原告志村本人の供述によれば、森田欣一郎は、昭和四三年八月に鶴見火力の労務課主任に、昭和四五年七月に同火力燃料課主任に、昭和五〇年一月に川崎火力燃料課副長に、昭和五四年七月に同課長に順次昇進した者であるが、鶴見火力燃料課主任当時の同人の勤務振りは、次のとおりであったものと認められる。
1 昭和四九年二月九日、森田は、入船した船からパイプで重油ストレージタンクに重油を受ける作業の会社側の担当者であったから、受入終了後、作業に立ち会った納入会社の担当者との間で、受入数量、受入時間等を相互確認する「協定」を取り結ばなければならないところ、午後六時頃受入れが終了すると、納入会社の担当者には後日来てくれと言って、この協定をしないまま帰ってしまった。
2 同年五月二七日、森田は、燃料課の同月の「安全・衛生目標」が「TBM(現場にて当日の作業内容・各自の担当任務・安全のポイントなどを事前に打ち合わせること)を実施しよう」で、同人がその推進担当者であるにもかかわらず、二号重油ストレージタンク内部点検時にこれを実施しなかった。
3 同年一一月二六日、森田がポンプ運転連絡係を、原告志村がBタンク受入弁操作をそれぞれ担当して、重油タンク(移送するAタンク)から重油タンク(移送を受けるBタンク)へ重油を移し替える作業を行ったが、その際、森田は、Bタンク受入弁の状態を確認しないままポンプ運転開始を操作室に連絡したため、タンク受入弁を大きく振動させ、油漏れを起こしそうになった。
4 同月三〇日、森田は、加藤副長と二人で夜間重油サービスタンクの貯油量を測定中、誤ってサーチライトをタンク内に落としたにもかかわらず、数日間上司に報告せずに黙っていた。これは、ポンプの入口側に付いているストレーナー、ひいてはポンプの破損につながりかねないミスであった。
四  三枝静雄の場合
(証拠略)と原告新井本人の供述によれば、三枝静雄は、鶴見火力の当直長であった昭和五七年一月二六日、塩浜南一号線で六万六〇〇〇ボルトの電線をアースさせようとしたが、その際、運転責任者の当直長として安全心得に基づいて検電箇所をチェックして指示すべきところを漫然と検電指示をしたため、操作員が検電箇所を間違い、漏電事故を発生させたこと、この事故は、国鉄塩浜操作場などの大口顧客への送電が止まった大事故であり、近くに操作員がいれば感電して死亡するおそれのあるものであったが、三枝は会社からは口頭で厳重注意を受けただけであったことが認められる。
五  清澤俊一の場合
(証拠略)と原告阿部本人の供述によれば、清澤俊一は、昭和三一年に被告会社に入社し、昭和四六年七月に川崎火力保修課保修班長、昭和五二年二月に同主任、昭和五五年一二月に同火力技術部工事課副長、昭和五七年七月に横須賀火力技術部工事課副長にと昇進したが、同人の川崎火力当時の勤務振りは、次のとおりであったものと認められる。
1 昭和五二年一〇月当時横浜市戸塚区に自宅を新築中で、そのためしばしば二〇分から三〇分近くの遅刻をくり返していた。
2 昼休みに会社内でジョギングをしていたが、その際は昼休み前に着換えたり、ジョギング後もシャワーを済ませて、昼休み時間帯を過ぎてから仕事にとりかかったりしていた。
3 昭和四〇年代後半に一ないし三号タービンの振動監視装置の設置関係の業務を担当し、昭和四九年下期には四ないし六号のタービンの振動監視装置の設置工事も担当していたが、本店考査において、「起動盤の計器類を中操に移設したが、帳簿基礎が明確でない。」「計算間違いあり」などと指摘され、さらに「算定基礎計算書も添付されていない」「本工事予算については予算超過など実施設計を含め三回にわたり稟議決裁を得ているが、この中の給料手当予算の見方が適切でない。」「起動盤から中操に移設した計器類で資産カードと対比するとき一目で明確になる資料が添付されていない。」などと数多くのミスを指摘されていた。
第四  各原告の職務遂行能力及び勤務実績についての被告会社の主張の当否
各原告ごとの職務遂行能力及び勤務実績を判断する前提となる各原告の職歴は、別表1「原告ら略歴一覧表」記載のとおりである。
被告会社が各原告の不都合行為と主張する事柄は多岐にわたるが、まず、次の一ないし五一において、各原告ごとに被告会社の主張の主なものについてその事実関係の存否を中心に判断し、五二においてそのほかの主張事実の存否及び被告会社の主張する不都合行為の全部についての評価を判断することとする。
一  原告守川
1 横須賀火力建設所機械課「工事Ⅰ」の期間
(建設工事の最盛期にかかわらず自分から積極的に仕事に取り組む姿勢がみられず、意欲のない態度で他の者の応援をすることも後輩の指導をすることもなかったとの主張について)
この主張の関係で被告会社の摘示する証拠(別表19「原告別勤務状況一覧表」の「準備書面・調書・乙号証」の項に掲げる証拠をいう。以下、五二小括まで被告会社摘示の証拠とあるのはいずれも同項に掲げる証拠であり、主として被告会社の従業員又は元従業員の陳述書と証言である。)は、抽象的に右主張をなぞるだけのもので、そのように判断した根拠となる事実関係を具体的に述べるものではないから、右証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
2 横須賀火力保修課機械係「機械保修総括」の期間
(1) (計算間違いや誤記入が多かったため、上司が他の者に比べ一通一通細かいところまで審査しなければならなかったとの主張について)
この主張と3の(1)の主張に関する被告会社摘示の証拠のうち(証拠略)(昭和三七年八月から一〇年の間に原告守川がかかわった稟議書)によれば、同原告の直接担当する一六部門に合計二八箇所の訂正箇所があることが認められるが、(証拠略)と同原告本人の供述によれば、うち一四箇所は同原告自身が作成途中で訂正したもので、計算違い、誤記入とはいえないものであり、残り一四箇所が同原告の計算違い、誤記入であると認められる。
この計算違い、誤記入を平均すると年間一・四箇所であるが、この程度の計算違いや誤記入は、平均的な勤務振りの他の従業員にも見られるものである(〈証拠略〉)。
(2) (勤務時間中、業務上の立場を利用して、請負会社の者に対し執拗に「赤旗」の購読を勧誘し、上司のところへ苦情が持ち込まれ、厳しく注意されたにもかかわらず、その後何度も繰り返したとの主張について)
当時、原告らが多くの者に「赤旗」の講読を勧誘していたことは原告らも認めているところであるが、これを勤務評定上不利益な事情と判断するためには、いつ、どのような態様で勧誘がなされたのか、苦情の内容がどのようなものであったのかといった具体的な事実関係を明らかにする必要があるところ、被告会社摘示の証拠をもっては、これが明らかでなく、被告会社がいつどのようにして原告守川に注意をしたのかも明らかでない。当時、被告会社は、原告らを厳しく監視し、不都合行為があれば厳重に注意し、これが続けば懲戒処分をするという方針で対処していたのに(〈証拠略〉)、同原告は勤務時間中に「赤旗」の講読の勧誘を繰り返したことを理由に懲戒処分を受けていない。
3 横須賀火力保修課「機械保修総括」「保修事務」の期間
(1) (工事設計書類や工事計画実施稟議書等に計算間違いや誤記入等が多く、上司がその都度注意して訂正させたり、書き直させたりしていたとの主張について)
この主張に対する判断は、右2の(1)で述べたのと同じである。
(2) (時間外勤務をしようとしなかったため、後輩が補足せざるを得なかったとの主張について)
労働基準法は時間外勤務を命じ得る場合を厳しく制限しているところ、右主張は、抽象的で、どのような要件のもとに、いつ、どのような態様の勤務を命じたのかといった具体的な事実を主張するものではなく、被告会社摘示の証拠によっても、その事実関係が全く明らかでない。この主張の趣旨が、時間外勤務命令が出されなくても、仕事が片づくまで当然に時間外勤務をすべきであるというのであれば、それは、労働基準法が時間外勤務を命じ得る場合を厳しく制限している趣旨に反するものであり、この時間外勤務をしないことをもって勤務評定上同原告に不利益に取り扱うことは許されないというべきである。いずれにしても、右主張は採用することができない。
なお、(証拠略)(賃金支給明細書)によれば、原告守川は、被告会社の主張する時期とは異なるが、昭和五〇年当時、毎月十数時間、多い月には二三時間もの時間外勤務をしていたことが認められる。
(3) (突然休暇を取得することが多く、注意されても一向に改まらなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけのもので、そのように判断した根拠となる事実関係を具体的に述べるものではなく、裏付けとなる証拠もないから、右証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
なお、(証拠略)(勤務表)によれば、原告守川は、被告会社の主張する期間とは異なるが、昭和五五年から昭和五七年までの三年間のうち、当日電話で休暇の届出をしたのは合計六回であり、その理由は頭痛が二回、かぜが一回、休養が一回で、理由を明らかにしないものが二回であることが認められる。
4 横須賀火力保修課「改良定検(指導)」の期間
(1) (自ら勉強する姿勢がなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけのものであって、たやすく信用することができない。
原告守川は、昭和三五年六月危険物取扱主任者(乙種六類)の、昭和三六年三月起重機運転士(天井走行)の各免許を取得し、昭和五五年被告会社から現場技術・技能A級(火力発電保修工事)の認定を受け、昭和六一年一一月足場組立等作業主任者技能講習を修了している。
また、昭和四六年頃、職場で復水器真空ポンプのポンプ軸とモータ軸の結合部の不具合による故障が時々発生していたので、これを防止するため、SFカップリングの勉強をして、大阪製鎖造機株式会社製のものに改造する計画を提案して、被告会社に採用され、三号機から八号機までの合計一六台にこれが取り付けられたことがあり、昭和四七、八年頃の夏に行われた勉強会にも積極的に参加して、「復水器細管について」とのテーマで研究発表をしたこともあり、昭和五一年には、五、六号低圧ヒータードレンポンプ軸のシール部が故障して漏水するのを防止するために、メカニカルシールタイプのものに改良する計画を提案して被告会社に採用され、昭和五二、三年頃からチエスタートンのものが取り付けられたこともある(〈証拠略〉)。
(2) (休日出勤・時間外勤務をしようとしなかったとの主張について)
この主張に対する判断は、右3の(2)で述べたのと同じである。
5 横須賀火力保修課「改良定検総括」の期間
(1) (他の担当者が忙しく働いているのを充分承知していたにもかかわらず、休日出勤、時間外勤務をしようとしなかったとの主張について)
この主張に対する判断は、右3の(2)で述べたのと同じである。
(2) (タービン駆動ボイラー給水ポンプの試運転の途中で立会いを放棄して退社したとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、原告守川は、昭和五一、二年頃、右試運転に担当監理員として立ち会っていた際、時間外勤務命令が出されないまま終業時刻がきたので帰宅したこと、このため、上司の井上武男が同原告に代わってその試運転に立ち会ったことが認められる。
(3) (昭和五三年四月、神奈川支店に乱入し、業務を妨害したため、厳重注意処分を受けたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、被告会社は、昭和五三年四月頃、原告守川が、神奈川争議団の者と一緒に執務中の神奈川支店内に入り込み、業務を妨害したとして、同原告に厳重注意をしたことが認められる。しかしながら、これらの証拠によっても、同原告がどのような態様でどのような業務を妨害したのかまでは明らかでない。
二  原告瀬尾
1 鶴見第二火力建設所「建設業務」、鶴見第二火力及び鶴見火力「巡視」の期間
(1) (バンカーシュートに石炭が詰まった際、他人任せで自分から現場に行こうとしなかったため、分担外の同僚らが代わりに現場に出向いたとの主張について)
被告会社摘示の中には、昭和三七ないし昭和三九年頃、バンカーシュートに石炭が詰り、スートブロワが故障したことがあったが、その際、担当の缶前操作員の原告瀬尾が現場に行こうとしなかったので、ボイラー操作員の川原道彦や小磯美継が行って直した旨を述べる部分がある。しかし、(証拠・人証略)によれば、これらの仕事は缶前操作員とボイラー操作員のいずれもがすべき仕事であり、川原らは、同原告が現場に行くよう指示されたのに拒否したから行ったのではなく、自らの仕事として行ったものであると認められる。
(2) (会社と組合との取決めを曲解し、それを楯に上司の指示を拒否したため、同僚に負担がかかったとの主張について)
昭和三八、九年当時、会社と組合との間に、運転員が行う補修作業は、運転中は原則として三〇分以内とし、緊急時には三〇分経過後も続けて行うとの取決めがあったが、何が緊急時かの明確な基準がなく、当直主任の判断で「運転中であることが緊急時だ」として作業が続行されることがあったので、原告瀬尾は、分会の執行委員として、この取決めを事実上反故にするようなことがあってはならないと思い、緊急時か否かについて意見を述べたことがあった(〈証拠略〉)。被告会社は、これを捉えて、同原告は、会社と組合との取決めを曲解し、上司の指示を拒否したと主張しているものである。
(3) (代勤依頼を反抗的に拒否していたとの主張について)
この主張に対する判断は、右一の3の(3)前段に述べたのと同じである。
(4) (違法なビラ貼りをして厳重注意処分を受けたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、昭和三七年の春闘の際、原告瀬尾は鶴見火力分会執行委員長、原告芝宮は同副執行委員長、原告中島は同書記長として、組合員を指導して、組合事務所のみならず、守衛室、他の事務室の窓、天井等構内各所に大量のビラやステッカーを貼り、被告会社から厳重注意処分を受けたことが認められる。これらのビラやステッカー貼りは、東電労組本部、神奈川支部の指導の下に、争議行為の一環としてしたものである(〈証拠略〉)。
(5) (会社のあらゆる施策に対して「労働者の犠牲のもとに進めようとする合理化である」などと中傷・誹謗しながら会社への敵意を扇動する反合理化闘争をしたとの主張について)
原告らが会社の合理化運動に対して反対していたことは先に認定したとおりである。
(6) (昭和三八年頃、第二次経営刷新方策の施策に反対し、その施策の一つである検定制度に伴って実施された三類検定について「会社に従順な労働者つくり」「合理化に協力することになる」などといってこれを受検しなかったとの主張について)
右主張事実は、(証拠略)と原告瀬尾本人の供述によってこれを認めることができる。
(7) (本部執行委員補欠選挙の推薦ビラの内容が会社を誹謗したものであったため、厳重注意を受けたとの主張について)
被告会社摘示の(証拠略)(労使関係交渉記録)によれば、会社は、右ビラに会社を誹謗する内容があったとして組合に厳重抗議したことは認められるが、被告会社の摘示する(証拠略)と対比してみても、ビラのどの記載をもって事実に反して誹謗するものというのか判然としないものである。
2 鶴見火力第二機械課発電係及び第二発電課「技術事務」「発電運営」の期間
(1) (昭和四二年一〇月、病気により欠勤したため自らの担当する職務を処理することができなかったとの主張について)
(証拠略)(欠勤日数調査表)と(証拠略)(診断書)によれば、原告瀬尾は、十二指腸潰瘍に罹り、昭和四二年一〇月に一五日間欠勤したことが認められる。
(2) (火力新体制(BTG総合運営)は合理化であると位置付け反対したとの主張について)
原告瀬尾が、被告会社の経営合理化対策について、労働者を犠牲にした人減らし策であり、火力新体制は管理、監視体制の強化及び職場の締め付けにつながり、ひいては労働者の搾取につながるとして反対し、そのための組合活動等を行っていたことは、同原告も認めるところである。
3 鶴見火力第二保修課「保修運営」の期間
(1) (胃潰瘍等でたびたび長期間休務し、退院後も深夜業禁止、出張禁止などの就業制限を受けていたため、全く業務に就くことができなかったり、充分に処理することができなかったとの主張について)
(証拠略)(診断書、健康管理上の措置書等)によれば、原告瀬尾は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍等に罹り、昭和四三年から昭和四四年にかけて四七日間(うち四三日間は欠勤扱い)、昭和四五年に六七日間(うち四九日間は欠勤扱い)休務したことが認められる。
(2) (課長に対していきなり要請文を読み上げるという暴挙に出たとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、原告瀬尾、同中島は、課長の梅田恭三に対し、原告らの職級を同期の者の平均まで引き上げるよう記載した要請文を提出し、梅田がこれを拒否すると、その場で大声でその要請文を読み上げたことが認められる。
4 鶴見火力第二保修課「保修運営(調査)」の期間
(1) (業務分担変更指示を拒否したとの主張について)
被告会社摘示の証拠によっても、原告瀬尾は指示を拒否したのではなく、指示には従ったが、指示された時に、自分の意見を主張したというものであると認められる。被告会社は、これを指示を拒否したと主張しているものである。
(2) (保修図面作成指示に対して反抗し、従わなかったため、同僚が処理することになったとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、昭和四九年四月頃、脱気器昇降用階段を改造して階段のステップの幅を広くし、階段の勾配を緩くするための工事をすることになったので、班長の角田哲郎は、原告瀬尾に対し、現場を見た上で保修図面を作成するように指示したこと、角田は着任して間がないため担当外の同原告に指示したものであるが、これに対し、同原告は、現場の工事管理は同原告の担当外の仕事である旨を言ってこれを断ったこと、そこで、角田は別の者に右作業をするよう指示したことが認められる。
(3) (鶴見火力休廃止に当たり反対の理由として「勿体ない」ということをあげ、廃止そのものを合理化であるとして反対し、転出希望聴取にまじめに回答しようとしなかったため、他火力研修にも参加することができなかったとの主張について)
右主張事実は、被告会社摘示の証拠と原告瀬尾本人の供述によってこれを認めることができる。
5 鶴見火力第二保修課「保修(総括)」の期間
(1) (研修に意欲がなく、自己啓発意欲もなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけのものであって、たやすく信用することができない。
原告瀬尾は、昭和三〇年三月起重機運転士(天井走行)の、昭和六〇年一二月電気工事士の各免許を取得し、この間、昭和五五年被告会社から現業技術・技能A級(火力発電保修工事)の認定を受けている(〈証拠略〉)。
(2) (鶴見火力の廃止に関連した転勤希望先聴取に対し「希望なし」と答え、反抗的な態度を取り続けたとの主張について)
右主張事実は、被告会社摘示の証拠と(証拠略)によってこれを認めることができる。
(3) (鶴見火力解体に当たっての時間外勤務や休日出勤等の指示を拒否していたとの主張について)
この主張に対する判断は、右一の3の(2)で述べたのと同じである。
三  原告中島
1 鶴見火力及び鶴見第二火力「計器等の保修関係業務」、鶴見第二火力建設所「建設関係業務」の期間
(1) (時間外勤務の指示があっても拒否していたため、同僚の時間外勤務が多くなったとの主張及び休日勤務を拒否したり、休日出勤予定日の当日になって無断で出勤しないことがあったとの主張について)
時間外勤務及び休日勤務についての主張に対する判断は、右一の3の(2)で述べたのと同じである。無断欠勤に関する被告会社摘示の証拠は、抽象的に述べるもので、裏付けとなる出勤簿その他の客観的な証拠もないからたやすく信用することができない。従って、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2) (計器係内の室内整備に反対し、勤務時間にもかかわらず他の者を扇動して業務を放棄し、抗議行動を繰り返すという職場規律違反を行い、上司の注意に従わなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠中には、昭和三七年、鶴見火力の計器係事務室と計器室の仕切りの壁を取り払うこととし、計器係長の藤岡五郎が係員全員に説明したところ、原告中島、同山本、同安藤ら六名が、これに抗議して、職場内に二、三か月も座り込みをし、業務に就くよう命令してもこれに応じなかった旨を述べるものがある。しかし、これらの証拠を子細に検討すると、原告中島に業務命令を出したという時期は同原告が組合専従であった時期であり、従って同原告に業務命令を出すことはあり得ないと思われるものであったり、到底座りきれないと思われる場所に六名も座り込みをしたというものであって、たやすく信用することができないものである。
当時、被告会社は共産党員らへの対策の一つとして懲戒条項を活用していたのであるから(〈証拠略〉)、被告会社摘示の証拠にあるように共産党員である原告中島、同山本、同安藤を含む五名が二、三か月もの長期間継続的に、業務放棄という重大な規律違反をしたのであれば当然何らかの懲戒処分がなされたと思われるのに、何の処分もないことも考え併せると、右証拠をもって右主張事実を認めるには十分でないといわなければならない。この点について、原告中島は、その頃、職場集会において、「壁の撤去は職場の希望ではないし、騒音の点からも事務所と作業所は別にすべきだ。」との反対意見が出されたので、分会書記長として技術課長の和田忠等にこの壁撤去の中止を申し入れるなどの反対闘争をしていたものであり、右壁撤去工事中に、たまたま現場作業から戻って来た同原告(この時には組合専従を終わっていた。)、原告山本、同安藤らがラジエーターの前で暖をとりながら、壁の撤去について反対意見を述べたことはあったが、業務放棄をしたことはないと述べている(〈証拠略〉)。
(3) (勤務時間中、職場内においてしつこく「赤旗」の購読という政治的活動を行い、上司から厳重注意されたとの主張について)
被告会社摘示の証拠の中には、昭和三七年頃、原告中島が、勤務時間中に計器係長の藤岡五郎と主任の土渕時夫に「赤旗」を勧誘した旨を述べる部分がある。しかしながら、当時の厳しい労務対策の中で、その労務対策を直接担当している上司の藤岡や土渕に対して、勤務時間中に「赤旗」の購読を勧誘したというのはいかにも不自然である。同原告は、この点について、藤岡と土渕から共産党に関する質問をされ、論争を挑まれたので、共産党を理解してもらうために「それなら赤旗を読んでみたらどうですか。」と言ったところ、それを捉えて被告会社が右のように主張しているものであると述べているが(〈証拠略〉)、その方がむしろ事の実態に合っているように思われる。
(4) (昭和三九年、「検定制度」等、会社の人間能力開発について制度の趣旨を曲解し、ただ競争心を煽るもの、生産性向上のため最大利潤の追求をするものであるなどと反対し、一方的な歪曲した解釈を流布していたとの主張について)
被告会社摘示の証拠と(証拠略)によれば、原告中島は、昭和四〇年度分会活動方針修正案の中で、分会員に対し、「検定制度」等、会社の人間能力開発制度について、ただ競争心を煽るもの、生産性向上のため最大利潤の追求をするものであるなどとして反対すべきことを提案していたことが認められる。
(5) (反独占・反合理化・反職制の姿勢を表明していたとの主張について)
右主張事実は、被告会社摘示の証拠、(証拠略)と原告中島本人の供述によってこれを認めることができる。
(6) (昭和四二年頃、勤務時間中に上司の許可なく入浴するという職場規律違反行為をしたとの主張について)
右主張事実は、被告会社摘示の証拠によってこれを認めることができる。
2 鶴見火力第二保修課「保修運営」「保修運営(調査)」の期間
(1) (昇級に関して、自分の仕事振りを棚にあげ勝手な主張をし、課長の面前で要請文を読み上げるという職場秩序を無視した暴挙に出たとの主張について)
この主張に対する判断は、右二の3の(2)で述べたのと同じである。
(2) (請負業者に対して業務上の立場を利用して「赤旗」の購読を勧誘したり、物品の販売に訪問したため、請負会社から会社の上司に苦情が入ったとの主張について)
この主張に対する判断は、右一の2の(2)で述べたのと同じである。
(3) (倉入予定品から無断で部品を取り外し厳重注意を受けたとの主張について)
倉入予定品とは、古くなったり故障が多くなったりして使えなくなった部品や計器等を取り外して更新した場合に、その取り外した部品、計器等をいい、不用品として売却されるものである。当時、被告会社においては、この倉入予定品の中に再利用の可能なものがあれば、これを取り外して「調外品」の名目で帳簿外で保管することが広く行われていた。原告中島は、二号発電機回転子温度計を保管する電気試験室を管理していた主任の櫛田から、撤去計器で使えるものがあれば外してもいいと言われていたので、この「調外品」として活用する目的で、二号ユニットの定期点検の担当監理員であった畠山にも断って、右計器を取り外したものであり、私用に用いるために外したものではない(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠によっても、同原告がそのことで厳重注意を受けたことを認めるには十分でない。
(4) (他火力への駐在を断るなど知識・技能の向上意欲がなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠によっても、原告中島が知識・技能の向上意欲がなかったと認めることはできない。
同原告は、その後、昭和五五年三月特殊無線技士(無線電話乙)の、同年九月同(レーダー)の、昭和五六年二月同(多重無線設備)の、昭和五八年五月第二級無線技術士の、昭和六〇年五月第一級無線技術士の、同年一二月第三種電気主任技術者の各免許を取得している。被告会社においては、第一級無線技術士の資格は公認会計士に比肩する程高く評価されており、同原告は、昭和六二年に祝金三万円を被告会社から支給された(〈証拠略〉)。
(5) (神奈川支店に乱入し業務を妨害したとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、被告会社は、昭和五三年四月四日、原告中島が、神奈川争議団の者と一緒に執務中の神奈川支店内に入り込み、業務を妨害したとして、同原告を厳重注意処分にしたことが認められる。しかしながら、これらの証拠によっても、どのような態様でどのような業務を妨害したのかまでは明らかでない。
四  原告芝宮
1 鶴見火力建設所汽機課「建設業務」及び鶴見第二火力機械課、鶴見火力第二機械課「巡視」の期間
(1) (当直主任に対して反抗し、暴言を吐き罵倒したり吊るし上げたりしたとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけで、その時期や、原告芝宮が当直主任に対して反抗したり、暴言を吐いたり、吊るし上げたりするに至る経緯や、吊るし上げの態様を具体的に述べるものではないから、この証拠をもっては右主張事実を認めるに十分でない。
(2) (中操集中化方式に対して、東電労組も積極的に取り組んでいる中、反対のための反対と受け止められる行動をとっていたとの主張について)
原告芝宮が中操集中化方式に反対していたことは同原告も認めるところであるが、被告会社摘示の証拠によっても、それ以上に何をもって反対のための反対であるのかといった具体的な事実関係は全く明らかでない。
(3) (労使間で妥結した火力新体制について、労働者の搾取につながるなどとして反対闘争を先頭に立って行い、業務面でも反対を実践していたとの主張について)
右主張事実は、被告会社摘示の証拠と原告芝宮本人の供述によってこれを認めることができる。
(4) (昭和三六年、昭和三九年、昭和四〇年、組合役員の立候補ビラにおいて会社施策に反対、会社に対する敵意の扇動を表明していたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、原告は、組合役員に立候補した際、組合員に配布した立候補ビラの中で、会社の経営合理化に反対して闘う意思を表明していたことが認められる。
(5) (無断で職場を離脱していたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、原告芝宮は、昭和三五年から昭和三七年にかけて、東電労組本部、神奈川支部、鶴見火力分会等の執行委員をしていた関係で、勤務時間中に執行委員会等に出席していたことは認められるが、右証拠をもっても、その回数や時間がどの程度のものであるかは明らかでない。
(6) (違法なビラ貼り行為を指導、実践し会社の再三にわたる注意にも改めようとしなかったため、厳重注意を受けたとの主張について)
この主張に対する判断は、右二の1の(4)で述べたのと同じである。
(7) (会社の創設した検定制度に伴って実施された第三類検定を受験せず、研修制度についても否定的な見解を示していたとの主張について)
右主張事実は、被告会社摘示の証拠、(証拠略)と原告芝宮本人の供述によってこれを認めることができる。
2 鶴見火力第二機械課運転係及び第二発電課「技術事務」「発電運営」の期間
(1) (各業務指示に従わなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠の中には、右主張にそう部分があるが、(証拠略)によれば、その間の事情は次のようなものであると認められる。当時、被告会社は、先に述べた「直勤務者のうちの中心的な極左分子を日勤の机上勤務に替える」とか「中操張付け」といった方針の下に(〈証拠略〉)、原告らから仕事を取り上げていたが、そのような状況の下で、原告芝宮は、昭和四一年五月、チェッカープレートを修理していた際に、右足親指を強打して爪が血腫で浮く怪我をしたところ、その治療中、当直勤務から日勤机上勤務に配置換えさせられた。怪我が治癒して同原告が当直勤務に戻すよう再三要請しても、その状態を続け、しかも同原告には補助的業務以外の仕事を与えなかった。このため、同原告は、飛込みで雑務を指示される度に、「このような仕事は私でなければならないという仕事ではない。当直勤務に直ちに戻すように」と繰り返し要求していた。
被告会社摘示の証拠は、同原告がこのような要求をしたことを捉えて業務指示に従わなかったと述べているものである。
(2) (自己啓発意欲に欠け、ボサーと腕組みしてただ漫然と過ごしていたとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、抽象的に右主張事実を述べるだけのものであるから、この証拠をもって右主張を認めることはできない。
原告芝宮は、昭和二九年一二月起重機運転士の、昭和五二年五月第二級ボイラー技士の、昭和五三年八月危険物取扱主任者(乙種四類)の各免許を取得し、昭和五五年被告会社から現業技術・技能A級(火力発電運転操作)の認定を受けている(〈証拠略〉)。
(3) (独身寮において、寮規則に反して度々無断外泊をし、無断で寮生以外の者を宿泊させ、寮内で政治活動をしたとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に伝聞したことを述べるだけのものであるから、右証拠をもっては、右主張を認めるに十分ではない。
3 鶴見火力第二発電課「発電運営(計画)」の期間
(1) (相変わらず規則を無視した休暇取得が多かったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるものであって、勤務表その他これを裏付ける証拠はないから、この証拠をもっては、その休暇がどのようなものであったかを判断することはできない。
(2) (本来中心になってなすべき固定資産管理台帳整備に当たり一六年も後輩が中心になって処理しているのに軽易なことしかしなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけのものであって、具体的な事実関係を明らかにするものではないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
五  原告志村
1 潮田火力汽缶課及び鶴見火力燃料課「運炭」「運炭(指導)」「燃料運営」の期間
(1) (昭和三六年から昭和三九年頃にかけて、職場内での政治活動禁止、運炭業務日勤化、独身寮内規、住宅総合対策、物と金を大切にする運動、第二次経営刷新方策、能力検定制度、住宅総合対策等の会社の施策に対する反対活動をしていたとの主張について)
原告志村が右反対運動をしていたことは、被告会社摘示の証拠、(証拠略)と原告志村本人の供述によってこれを認めることができる。
(2) (意欲的な業務への取り組みがみられず、経験年数に比して業務知識が低かったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけのものであるから、この証拠をもって右事実を認めることはできない。
昭和四二年から昭和四六年九月末まで原告志村の上司(総括及び班長)であった島田良雄は、同原告について、仕事をさぼるようなことはなく、現場の作業依頼には素直に従事し、まじめな男だったと評価している(〈証拠略〉)。
(3) (当日の電話連絡で突然休務することが多かったとの主張について)
この主張に対する判断は、右四の3の(1)で述べたのと同じである。
(4) (貯炭場の火災を防ぐ作業を放棄し、上司の指示に従わず終業時刻とともに黙って退社したとの主張について)
原告志村は、若年性高血圧症で、仮性脳貧血のため立ちくらみがして倒れるという持病があった。昭和四六年の冬の土曜日、高温の石炭を請負業者が移動する作業の監督をしていたが、昼頃めまいがして気分が悪くなったので、終業時刻が過ぎたころ、主任の森田欣一郎に断って帰宅した。右作業については時間外勤務命令は出ていなかった(〈証拠・人証略〉)。被告会社は、このことを捉えて作業を放棄したと主張し、同原告は、時間外勤務命令が出ていなかったから主任の森田欣一郎に断って帰宅したと主張しているものである。
(5) (若年性高血圧症となり、約一か月半休務し、二六日欠勤したとの主張について)
右主張事実は、(証拠略)(勤務表、診断書等)によってこれを認めることができる。
2 鶴見火力「燃料運営(指導)」の期間
(1) (仮棚卸作業時、指示を無視して作業途中で帰ってしまったとの主張について)
昭和四八年の仮棚卸の日は、仮棚卸と船からの重油受入作業とが重なっていたところ、受入タンク以外についての棚卸作業は午後七時頃までに終了し、後は受け入れしているタンクの油面が静かになるまで二時間程度待ってから、同タンクの油量を計り、作業を終了する予定であった。原告志村は、油船からの油受入れが終わった時点で、既に終業時刻を過ぎており、時間外勤務命令も出ていなかったので、森田に断って帰宅した(〈証拠・人証略〉)。被告会社は、これを捉えて指示を無視して帰宅したと主張し、同原告は、時間外勤務命令が出ていなかったから森田に断って帰宅したと主張しているものである。
(2) (意欲的な取り組みがみられず、業務知識が低かったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるだけの抽象的なものであって、具体的な裏付けのあるものではないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(3) (多忙を極める入船日や揚油受入当番日に突然休務したとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、この揚油受入当番日は昭和四八年八月二日であると認められるところ、(証拠略)(勤務表)には、右同日の休暇について、八月二日届出急用の為と記載してあるが、これは、八月一日届出云々と記載されていたものを、別の筆跡で届出の日を八月二日に書き直し、当初記載されていた休務の理由を読み取れないほどに消してその上から急用の為と記載したものであり、先の記載を誰がどのような理由で訂正したのかその経緯の判然としないものである。また、被告会社摘示のそのほかの証拠は抽象的に右主張にそう事実を述べるだけで、原告志村が休務した日が特に多忙を極める日であったかどうかは明らかでないから、これらの証拠をもっては右事実を認めるに十分ではない。
この主張と3の(2)の主張との関係で被告会社の摘示する(証拠略)(原告志村の昭和四七年八月、昭和四八年一、四、六、七、八、一二月、昭和四九年二、八月、昭和五〇年三、一〇月、昭和五一年七月の勤務表)によると、この間同原告が当日届け出た休暇は一四日であり、うち六回は交通スト、かぜ、ねんざ、妻の看病等を理由とするものであり、他は家事都合、急な来客その他を理由とするものであり、前日以前に届け出た休暇は昭和四八年八月二日の休暇を同月一日に届け出たとして含めると二三日であることが認められる。
(4) (送炭計量機の点検作業終了時スイッチハンドルを「入」にすべきところ「切」にしていたため、送炭量を手計算でしなければならなかったとの主張について)
昭和四八年頃、第二保修課で送炭計量機(貯炭場の石炭をベルトコンベアーでバンカーに送る時、その石炭量を計量する機械)の点検を実施した後、請負業者の操作員が送炭を行ったところ、送炭計量機のハンドルが「切」になっていたため、同機械が作動しなかった。送炭計量機は、常にハンドルを「入」の状態にしておいて、送炭している時に自動的に計量するようにしてあり、送炭していない時でも「入」の状態になっているべきものであるが、当日はこれが「切」になっていたため、その間に送炭された量は手作業で計算しなければならなかった。
森田は、立ち会った原告志村の点検が不十分であるとして、同原告を注意したが、同原告は、右点検の際、第二保修課の担当者が「点検終了、じゃあ入れますから」と言ってハンドルを「入」にするのを確認したのを記憶していたので、その旨を申し出たが、森田からは相手にされなかった。翌日同原告が巡回したところ、再び「切」になっており、その旨を森田に申し出たが、同人が取り合わなかったので、その原因は明らかにならなかった(〈証拠略〉)。
3 鶴見火力「燃料運営(計画)」の期間
(1) (燃料課でただ一人危険物取扱主任者の資格を取らなかったとの主張について)
右主張事実は、(証拠略)によってこれを認めることができる。
(2) (当日の電話連絡で突然休務することが多く、上司の注意にも改めなかったとの主張について)
この間の証拠上明らかな休務の状況は、右2の(3)のとおりであり、これに対する上司の注意がどのようになされたのかは、被告会社摘示の証拠をもっても明らかでない。
六  原告藤本経雄
1 潮田火力調査係「分析」「水分析」「燃料分析」の期間
(1) (時間外勤務を拒否したとの主張について)
この主張に対する判断は、右一の3の(2)で述べたのと同じである。
(2) (当日になって突然休暇を取得したとの主張について)
この主張に対する判断は、右四の3の(1)で述べたのと同じである。
(3) (会社の提案した運炭職場の日勤化に反対し、労使間の妥結を遅延させたとの主張について)
右主張事実は、被告会社摘示の証拠、(証拠略)と原告藤本経雄本人の供述によってこれを認めることができる。
2 鶴見火力技術課「水分析」「燃料分析」の期間
(1) (当日になって突然休暇を取得し、仕事の分担で職場に迷惑をかけたとの主張について)
この主張に対する判断は、右四の3の(1)で述べたのと同じである。
(2) (石炭湿分測定が終了しなくても、終業時刻になると引継ぎもせずに退社していたとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、特に土曜日の石炭湿分測定についてのものであるが、右主張をなぞるだけの抽象的なもので、これを裏付ける勤務表等の証拠もないからたやすく信用することができない。特に、被告会社摘示の証拠で原告藤本経雄を非難している土曜日の時間外勤務状況ついてみると、昭和四四年九月に同原告は石炭調整のため二回合計六時間勤務しているが、同僚の手川富三郎は石炭調整のため一回四時間、その他のため二回合計八時間であり、同年一〇月に同原告は石炭調整のため二回合計五時間勤務しているが、同僚の山本八郎は石炭調整のため一回四時間三〇分であり、同僚の野村孝雄も石炭調整のため一回三時間であり、同年一一月に同原告は石炭調整のため三回合計七時間勤務しているが、野村は石炭調整のため一回三時間、その他のため一回四時間であり、同年一二月に同原告は石炭調整のため二回合計九時間勤務しているが、手川は石炭調整のため一回四時間、その他のため一回四時間であって(〈証拠略〉)、同原告だけが特に少ないとも思われないのである。なお、原告らが当然に時間外勤務をなすべき義務を負うものでないことは、右一の3の(2)で判断したとおりである。
(3) (国家試験受験等業務に直接生かせられる自己啓発をしようとする姿勢がなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるだけの抽象的なものであるから、この証拠をもって右事実を認めることはできない。
原告藤本経雄は、その後、昭和五六年一一月有機溶接剤作業主任者技能講習を、昭和五七年一一月特定化学物質等作業主任者技能講習を、昭和六二年二月第二種酸素欠乏危険作業主任者技能講習をそれぞれ修了し、その資格を取得している。また、昭和四九年、同原告は、「水力発電」「水処理技術」「産業公害」といった会社の雑誌や「化学便覧」「工業用水、排水JIS」を読んで自己啓発に取り組み、科学的酸素要求量(COD)の測定に使用する硫酸銀を回収して再利用する方法である「用水、排水分析の化学的酸素要求量測定廃液の銀の回収法」を考案し、鶴見火力でこれを実施して、回収した銀を硫酸に溶かして硫酸銀を作り、これを再利用しても問題がないことまで確認し、横浜火力に転勤後は、原告高橋と協力して燃料油の発熱量測定に使用する自動カロリーメーターの運用改善に取り組み、利用率を高めて発熱量測定の効率向上に役立て、昭和五六年には化学管理業務も担務するようになり、用水水質管理では用水中のアルミニウムの分析法を確立し、分析のマニュアルも作っている(〈証拠略〉)。
3 鶴見火力技術課「化学分析(主要)」「化学分析(特殊)」の期間
(1) (自分の分担が終了しても自ら進んで他の者の仕事を手伝うということがなく、同僚や上司から注意されていたとの主張について)
被告会社摘示の証拠をもっても、右主張事実を認めるには十分ではない。
(2) (当日になって突然休暇を取得し、分析の分担などで職場に大変な迷惑をかけていたとの主張について)
(証拠略)(勤務表)によれば、原告藤本経雄の昭和五〇年四月から昭和五一年三月までの一か年の夏期休暇三日を含む休暇取得日数は二〇日で、うち一〇日について当日届け出ており、さらにそのうち三日は同原告又は子供の急病を理由とするものであることが認められる。その余の期間は勤務表が証拠として提出されていないので、具体的な休暇の取得状況は明らかでない。当日の突然の休務による職場の混乱は、休務する者の担当する職務や他の者の職務に関連するところ、同原告の休務により職場にどのような混乱が生じたのかを具体的に明らかにする証拠はない。
七  原告新井
鶴見火力及び鶴見第一火力「巡視」「操作(補機)」の期間
(1) (オーバー炭排出作業が満足にできなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、(証拠略)に照らしてたやすく信用することができないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2) (中操集中化方式に対して、労務管理に結び付くなどとして反対し、組合からも反対のための反対と受け止められる行動をとっていたとの主張について)
原告新井が、中操集中化方式に対して、労務管理に結び付くなどとして反対していたことは同原告も認めるところであるが、被告会社摘示の証拠によっても何をもって反対のための反対であると受け止められる行動というのかその具体的な事実関係は全く明らかでない。
(3) (他人任せで運転記録をとろうとしなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠の中には、大谷昇が班長の当時(昭和四五年一〇月から昭和五一年三月までの間と思われるが、時期を特定することはできない。)、補機操作員は蒸気流量、給水流量、蒸気圧力、温度等の運転記録を一時間ごとに自主的に交互にとっていたが、原告新井はこの記録をとらなかったと述べる部分がある。しかしながら、その内容は抽象的で、どのような記録簿に、どのような体裁で、どのような事項を記録すべきかも、同原告や他の者がどの程度の記載をしていたのかも全く明らかでない。この点について、同原告は、昭和三九年頃から一、二号タービンの記録をそれぞれ別にとっていたが、記録のとり方は固定されておらず、続けてとるか、交互にとるか話合いで決めており、時には一日交替ということでその日の記録を全部とることもあるなど、臨機応変に記録はとられており、同原告も記録をとっていたと述べている(〈証拠略〉)。
(4) (操作条件の悪い四号機のバーナー脱着操作を嫌がり、ほとんどやらなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、いずれも原告新井に対する印象を述べる程度のものであって、右主張事実を認めるには十分でない。
(5) (勉強・研修会において、発表や質問をすることもなく、ぼんやりしたり、居眠りをしたりしていたとの主張について)
この主張に対する判断も、右(4)で述べたのと同じである。
被告会社主張の時期とは異なるが、原告新井は、昭和三〇年三月トランスポーターの、昭和四四年六月一級ボイラー技士の、昭和四六年七月危険物取扱者(乙種四類)の各免許を取得し、昭和六二年八月有機溶剤作業主任者技能講習を修了してその資格を取得している。被告会社においては、一級ボイラー技士の資格は電検三種、測量士などに比肩するほど高く評価されており、同原告は、昭和六二年に祝金一万円を被告会社から支給された(〈証拠略〉)。
八  原告綿引
1 鶴見第二火力建設所汽缶課「建設業務」、鶴見第二火力機械課及び鶴見火力第二機械課「発電業務」の期間
(1) (研修の感想文提出を思想調査と決めつけ、これを提出しないよう煽り、会社の発行している社報、東電文化、所報等を「紙の爆弾」と捉え、それらは労働者の階級意識を奪うものなどと会社に対する敵意を扇動したとの主張について)
(証拠略)によれば、昭和三八年七月二四日付けで原告綿引を含む山本忠利解雇撤回闘争を支援する者の「山本君守る会」が発行したビラの中に、研修の感想文提出は思想調査であるからその意図を見破ることが必要であること、会社は、社報、東電文化、所報等を「紙の爆弾」のように配布し、労働者の階級意識を奪っていることが記載されていることが認められる。
(2) (当直長、主任を個人攻撃する刊行物を配布し、職制に対する敵意を煽ったとの主張について)
(証拠略)によれば、昭和三八年七月二八日付けで右「山本君守る会」が発行したビラの中に、代勤についての当直長や主任の取扱いが一貫していないことを理解することができない旨の記載があることが認められる。しかし、これが虚偽の事実を記載するものであるとの立証はないし、その記載は控え目で、個人攻撃とか敵意を煽るというようなものではない。
(3) (会社実施の技術講習会不参加を促す刊行物を配布し、技術講習会不参加を呼びかけたとの主張について)
(証拠略)によれば、昭和三八年八月一二日付けで右「山本君守る会」が発行したビラの中に右趣旨の記載があることが認められる。
(4) (提案制度の本質を歪曲した刊行物を配布し、提案制度に対する敵意を煽ったとの主張について)
(証拠略)によれば、昭和三八年八月一五日付けで右「山本君守る会」が発行したビラの中に、会社の提案制度が決して労働条件を向上させることに役立たないことをはっきりさせる必要がある旨の記載があることが認められる。
(5) (昭和三八年一一月一九日から昭和三九年二月二二日まで慢性腎炎により欠勤したとの主張について)
原告綿引が慢性腎炎のため右期間入院をしたことは、同原告も認めるところである。
2 鶴見火力第二機械課「技術事務」及び第二発電課「発電運営」の期間
(1) (度々単純な集計ミスを犯し、上司から注意されても繰り返していたとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、抽象的に印象を述べる程度のものであって、これを裏付ける客観的な証拠はない。原告綿引に被告会社主張の集計ミスが全くなかったとはいえないが、同原告は、運転日誌から運転時間を転記して集計する際、転記ミスを起こさないように集計用紙を見直して新たな集計用紙を考案する(〈証拠略〉)などしてできるだけミスをしないよう工夫していた(〈証拠略〉)。
(2) (発電用消耗品の管理がずさんのため切らせてしまい、当直勤務者に非常な迷惑をかけたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、原告綿引は、発電用消耗品を管理していた時に、用紙類の在庫を切らして納品されるまでの間コピーで代用させたり、潤滑油の在庫を切らして急遽電話で間に合わせたりしたことがあったと認められる。しかし、そのようなことがしばしばあったという点については立証がない。
(3) (慢性腎炎のため健康管理上長期間就業制限措置を受け、正常な勤務ができなかったとの主張について)
原告綿引が右1の(5)の入院後、健康管理上の措置として数年間、時間外勤務、深夜勤務、出張等禁止の就業制限を受けていたことは、同原告も認めるところである。
3 鶴見火力第二発電課「発電運営(調査)」「水質管理(主要)」の期間
(1) (記録用紙への記入ミスが多く、上司から注意されても改まらなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、純水装置運転点検記録表は各機器の状態チェック表と運転記録が一緒になっているもので、原水受入量は、原水送水ポンプの出口についている流量計により、前日の同時刻の流量計積算と当日の同積算の差を単純な引算で算出して記入するものであること、原告綿引は、昭和四八年七月二日から同年九月二六日までの間の八日分について被告会社主張の記入ミスをしたことが認められるが、右証拠をもっては、それ以上の主張事実を認めるには十分でない。
(2) (純水装置の排水弁を閉め忘れ、純水を無駄にしたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、純水装置の運転は、純水を採水する採水工程と、純水を採水している段階で樹脂塔(カチオン塔とアニオン塔がある。)内のイオン交換樹脂が、水道水に含まれている不純物で汚れるため、そのイオン交換樹脂を薬液(硫酸とカセイソーダ)で再生し、さらにその薬液を水道水で洗い流し、イオン交換樹脂を元の機能に回復させる再生工程があるところ、昭和四八、九年頃、原告綿引は、純水装置の再生工程が終了し採水工程に入った際、樹脂塔(アニオン塔)から純水タンクへの配管に設置されている自動弁のすぐ後ろに設置されている手動の排水弁を閉めておかなかったため、その排水弁から既に採水していた純水の一部を側溝に流してしまったことが認められる。
(3) (亜硫酸ソーダの注入用バルブを閉め忘れ、タンク内の亜硫酸ソーダを無駄にし、その後も同様にバルブを閉め忘れていたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、昭和四八、九年頃、原告綿引が、亜硫酸ソーダの注入用バルブを閉め忘れ、タンク内の亜硫酸ソーダを無駄にしたことがあると認められるが、その後も同様にバルブを閉め忘れていたことについては、右証拠をもってもこれを認めることはできない。
九  原告澤野
1 鶴見火力第二機械課運転係、発電係及び第二発電課「巡視」「操作及び巡視」「汽缶操作巡視」「操作(補機)」の期間
(1) (昭和四一年頃、クリンカー・ホッパーの灰出し作業の際灰混じりの水を多量に床にあふれさせることが度々あったとの主張について)
クリンカー・ホッパーの排出ゲートは重量で、クリンカーと水の圧力が常にかかっており、人力では開けることができず、水圧で開ける構造になっていて、これを力任せに一気に開けることは不可能である。また、床に多量の灰混じりの水を流出させると大勢の作業員が床を掃除しなければならなくなる。こうしたことから、補機操作員は水とクリンカーの排出具合を見ながら慎重に操作していた。それでも、クリンカーの中には排出溝が一杯になるような大きなものもあって、そのまま排出溝に排出されて水をせき止めたり、クリンカーや灰を押し流すためのジェットノズルが詰ったり、ジェット水流の圧力そのものが規定の水量を確保することができずに低下するなど、四号クリンカー・ホッパーの構造的な問題に起因して床面に灰混じりの水があふれ出ることが時々あった(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠の中には、その原因が原告澤野の不注意によって生じたと述べる部分があるが、それが同原告の不注意であると判断した根拠が明らかでないから、この証拠をもっては右主張事実を認めることはできない。
(2) (微粉炭機(ミル)からの異物排出作業が雑で、時々付近の床や壁を微粉炭で汚すことがあったとの主張について)
右異物排出作業は、まず操作員が排出溜まりの入口ゲートを閉め、ミル内部の空気圧を排出溜まりから遮断し、その上で排出溜まりの排出口のハンドルを緩めて排出口を開け、異物を約一メートル下の床面に落下させるという手順で行うが、排出溜まりの中の異物には微粉炭が付着していて、異物と一緒に微粉炭も落下するため、床や壁が汚れることはしばしばあることである。被告会社摘示の証拠をもっても、原告澤野の不注意で汚したと認めることはできない。
(3) (タービン起動・停止時に乱暴な操作をしてピンを折ったり、折ったピンの修理を行わなかったりしたとの主張について)
被告会社摘示の証拠中の右主張にそう部分は、(証拠略)に照らしてたやすく信用することができないものであるから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(4) (重油バーナーの点火操作手順を誤り、重油を噴出させたとの主張について)
昭和四五年頃原告澤野が五号ユニットの重油バーナーの点火操作を行った際、パッキン部から少量の重油が漏れているのを発見し、これを増し締めしたところ、重油が噴出したことがあったことは、同原告も認めるところである。バーナーのパッキン部から少量の油が漏れている程度のときは、運転員は皆その場で増し締めする操作を日常的にしていたが、その時は、たまたまボルトの材質が不適合だったのかボルトのネジ山が一気に丸坊主になり、締め付ける力がなくなって、バーナーパッキン部から重油が噴出したものである(〈証拠略〉)。
(5) (労働者は企業の敵であるとのビラを配布し、会社に対する敵意を扇動したとの主張について)
原告澤野が、組合役員の立候補ビラ等において、階級的労働運動の立場から、会社の施策に反対して闘う意思を表明していたことは、同原告も認めるところである。
(6) (重油張り作業の上司の指示に対し、労働強化であるなどと反発して素直に従わなかったとの主張について)
原告澤野は、昭和三八年一〇月七日、当直主任が、突然、それまで業者に委託していた混焼時の重油張り作業を補機操作員がするよう指示したので、労働条件の変更の問題として意見を述べ、その根拠を問い質したのであって、同原告が業務命令に従わなかったというものではない(〈証拠略〉)。
(7) (トラブル対応に当たり、ただ茫然と中央操作室に居残っていたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によっても、いつの、どのようなトラブルの時に、原告澤野がどのようにしていたのかといった事実関係が全く明らかでないから、右証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
2 鶴見火力第二発電課「操作(補機指導)」「操作(補機総括)」の期間
(1) (技術研修等において、受講中あくびをし、居眠りをするなど、積極的な姿勢がみられなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるだけのものであるから、これをもって積極的な姿勢がみられなかったと認めるには十分でない。
なお、原告澤野は、その頃の昭和五〇年五月に二級ボイラー技士の免許を取得している(〈証拠略〉)。
(2) (鶴見火力の置かれた状況や会社施策について理解しようとせず、転出に反対していたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、鶴見火力は、昭和四九年以降急激に業務量が減少し、他火力等へ転出させる必要が生じたため、従業員から転出先等についての希望を聞いていたが、原告澤野は、鶴見火力が廃止になるまで転出しないと言って、転出先の希望聴取に応じなかったことが認められる。
一〇  原告小林悦治
1 鶴見火力第二機械課運転係「巡視」「技術事務」の期間
(1) (無断離席が多く、上司が注意しても改まらなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠をもっては、右主張事実を認めるに十分ではない。
(2) (業務知識の習得や仕事に対し、意欲をもって取り組まなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠をもっては、右主張事実を認めるに十分ではない。
2 鶴見火力第二機械課運転係、発電係及び第二発電課「技術事務」「汽缶操作巡視」「巡視」の期間
(1) (ドラム水位低下という緊急事態発生時にも無関心で指示に従わず、現場に出向こうとしなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、抽象的に右主張をなぞるものであって、具体的にこれと相反する事実を述べる(証拠略)や原告小林悦治本人の供述に照らしてたやすく信用することができない。
(2) (抱き蒸気圧力の異常低下時、容易にわかるその原因がわからなかったとの主張について)
タービンを回転させる主蒸気とは別に、重油配管や計器配管内のHPP重油が常温では固まってしまうため加熱しておくための蒸気を抱き蒸気という(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠が信用することができないことは、右(1)で述べたのと同じである。
(3) (パトロールがただ漫然と設備を見てくるだけで必要な事項をチェックしないものであったとの主張について)
被告会社摘示の証拠の中には、右主張にそう部分があるが、これらの内容は具体性を欠き、どのような理由でそのように述べるのかその根拠の明らかでないものであるから、この証拠をもって右事実を認めることはできない。
(4) (山本忠利解雇撤回闘争に藉口して会社のあらゆる施策に対して「労働者の犠牲のもとに進めようとする合理化である」などと中傷誹謗しながら会社への敵意を煽ったとの主張について)
原告らが合理化反対闘争をしていたことは、原告らが自認するところである。
(5) (バーナー操作を避けるなど技術レベル向上に積極的に取り組む姿勢がみられなかったので、いつまでも操作をすることができなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、いずれも右主張事実を抽象的に述べるだけのものであるからたやすく信用することができない。
原告小林は、昭和三五年八月一級汽缶士の、昭和三九年七月危険物取扱主任者(乙種四類)の、昭和四〇年一一月熱管理士の、昭和四七年二月一五日特級ボイラー技士の、昭和六〇年二月大気関係第三種公害防止管理者の各免許を取得している。被告会社においては、特級ボイラー技士、熱管理士の資格は税理士に比肩するほど高く評価されており、同原告は、昭和六二年に祝金二万円を被告会社より支給された(〈証拠略〉)。
(6) (給炭機操作中トリップし停止させるなど操作も満足にできなかったとの主張について)
微粉炭機の給炭機は、微粉炭機内の温度が安定した以降は自動で運転しているが、起動時には微妙な操作が必要である。慣れないうちは誰でも給炭機を停止するタイミングがつかめずに石炭を入れ過ぎることがあり、原告小林悦治も養成時においてはその例外ではなかった(〈証拠略〉)。被告会社摘示の証拠は、同原告の、どの時期の、どのような態様での操作であるかを具体的に述べるものではなく、抽象的に満足に操作することができないと述べるものであるから、これと相反する(証拠略)に照らしてたやすく信用することができない。同原告がトリップし停止させたと認めるに足りる証拠もない。
(7) (昭和四二年頃、バイパス弁操作を誤るなど基本的操作もできなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠のうちの(証拠略)(戸口豊友の陳述書)では、この点について、「タービンを停止した場合は、タービン内に残った蒸気がドレン(疎水)化し、ドレントラップ(疎水排出装置)だけでは排出できない量となるので、復水器に連結するバイパス弁が取り付けてあった。」「タービンを停止した時は、必ずバイパス弁を開け、ドレンを復水器の方へ排出しておき、再びタービンを起動する際はバイパス弁を閉じて、蒸気が復水器に行かないように操作していた。」「原告小林悦治は、タービン停止時にこのドレンの排出操作を行っていたが、戸口が翌朝タービンを起動する準備のため現場を点検してみると、しばしばバイパス弁を閉め忘れていることがわかった。」との趣旨を述べている。しかし、(証拠略)によれば、タービン内に残った蒸気のドレンを排出するものは、タービン車室ドレン弁のことであるが、このドレン弁にはドレントラップは付いていないこと、運転操作基準によれば、タービンの起動の準備段階ではドレン弁は開いたままにしておき、閉めてはならないことになっていることが認められるから、この事実に照らすと、被告会社摘示の証拠はいずれもたやすく信用することができず、この証拠をもっては右主張事実を認めるには十分でない。
(8) (セレクター操作をマスターすることができなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠の中には、ボイラーの規定圧力が下がった場合は手動でセレクターを操作し、規定の圧力を保つ必要があるところ、原告小林悦治にはこれができなかったと述べる部分がある。しかし、同原告がいつどのような状態においてその操作ができなかったのかといった具体的な事実関係が明らかでない。(証拠略)によれば、ボイラーの規定圧力が下がっても自動操作で十分圧力の変化に応じていたから、圧力が変化する度に手動に切り替えるようなことはなく、手動にするのは系統事故が発生して急激な負荷変化が生じた場合や解列操作時などであるが、そのようなときは主機操作員がセレクター操作をしていたので、補機操作員の同原告が操作することはなかったことが認められるから、この事実をも考慮すると、被告会社の摘示する右証拠はたやすく信用することができず、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(9) (勤務時間中、上司に無断で入浴したり、中央操作室で作業中安全靴をはかないなど服務規律に違反したとの主張について)
(証拠略)によれば、昭和四八年七月三日に原告小林悦治が右主張の服務規律違反をし、班長の注意に対し、素直に謝り、以後二度としないことを誓っていることが認められる。
一一  原告山本
1 鶴見火力技術課及び第二保修課「計器補修」「計器保守」「補修」「補修(一般)」「保修運営」の期間
(1) (技術レベルの向上を図ろうとする姿勢がなかったため、技術のレベルが低く、重要な作業はペアで当たらせなければならなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠の中には、右主張にそう部分がある。しかし、その内容は、例えば、(証拠略)の関係部分は、「山本君は、上司から与えられた仕事について十分な処理ができないにもかかわらず、自分の知識、技能を高めるため、上司、先輩に聞いたり関連技術資料等による勉強をしようとする意欲がありませんでしたので、山本君の知識、技能は同僚と大きく差がついていました。」といった抽象的なものであり、他の証拠も同様のものであるから、これだけでは右主張事実を認めるには十分でない。むしろ、同原告は、その同じ時期の昭和四三年三月、執行昇と二人で、ロックする際に締め過ぎによる折損が多いロックハンドルの操作を容易、確実にして、取替えの手間を省略するための「一ないし三号ボイラミルのダンバードライブ・ロックハンドルの改造について」と題する提案を行って会社から準優良賞を授与されているのである(〈証拠略〉)。
(2) (夜間や休日作業を命じられると反発し、何かと理由を付けて拒否したとの主張について)
被告会社摘示の証拠の中には、右主張にそう部分があるが、その内容は、例えば、(証拠略)の関係部分は、「原告山本は、藤岡や主任の土渕が夜間や休日の作業を命じると、いちいち、『これは業務命令か』などと言って反抗的な態度をとったり、『休日に休むのは当然』などと、何かと理由を設けては拒否していた。」というものであり、他の証拠も同様である。しかしながら、当時は、あらかじめ毎月の休日出勤や夜間作業の予定を組み、月一回程度順番でこれをするよう予定表に記入して実施していたので(〈証拠略〉)、それについていちいち業務命令を出すということは考えられないし、そのほかにどの程度の夜間・休日勤務の必要があり、実際にどの程度の頻度で業務命令としての夜間・休日勤務を命じたのか、いつどの命令に違反したのか、といった具体的な事実関係が明らかでないから、右証拠をもっては右主張事実を認めるに十分ではない。むしろ、同原告は、昭和三九年三月一五日の日曜日はアメリカ原子力潜水艦が横須賀港に入港する予定で、反対集会が計画されており、これに参加する予定で、前もってこの日の休日出勤はできない旨伝えていたのに、前日になって藤岡から同日の休日出勤をするよう言われたのに対しても、結局これに従って休日出勤しているくらいであって(〈証拠略〉)、夜間や休日の勤務命令を拒否したことを理由に懲戒処分を受けたこともないのである。
(3) (昭和三六年頃、勤務時間中に自己のオートバイの手入れをして上司に厳しく注意されたとの主張について)
被告会社摘示の証拠の中には、原告山本は昭和三七年の初めまで第一計器班に所属していたが、その第一計器班に所属していた昭和三六年頃、自己のオートバイで通勤し、勤務時間中にオートバイの手入れをしていて、上司の藤岡五郎から注意されたと述べる部分がある。しかし、同原告が運転免許を取得したのは第一計器班を離れた昭和三七年一二月で、オートバイで通勤するようになったのは昭和三八年四月頃からであること(〈証拠略〉)に照らすと、被告会社摘示の右証拠はたやすく信用することができない。
(4) (計器係室内整備に反対して業務を放棄し、席に座らず、作業台や床の上に座るなどの抗議行動をとったとの主張について)
右三の1の(2)で述べたのと同じである。
(5) (昭和四二年頃、勤務時間中、上司の許可なく入浴したとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、被告会社においては、現場作業で汚れがひどいときは、上司の許可を得て入浴することを認めていたが、原告山本は、右主張の頃、許可を得ないで入浴したことが認められる。
(6) (昭和四二年頃、設備カード作成に当たり処理が遅く、新カードへの転記の際も誤記入が多く、上司がミスを注意すると反発していたとの主張について)
被告会社摘示の証拠の中には右主張にそう部分があるが、その内容は、例えば、(証拠略)の関係部分は、「昭和四二年頃、原告山本は、業務処理が遅い上、計器類の型式や製造年月日などの誤記入が多く、田中主任にミスを訂正するようしばしば指摘されていた。」というものであり、他の証拠も同様である。しかしながら、それだけでは、どの程度の頻度で、どのような誤記入が多かったのか、といった具体的な事実関係が明らかでない。むしろ、同原告は、当時、原告中島と二人で設備カードを作成するよう命じられたので、膨大な量の処理を合理的に進めるため、品名、形式、仕様、測定方法、製造年月日等が一目瞭然にわかるよう工夫したゴム印を作るなどして、仕事がしやすく、かつ早く処理することができるよう努力したことや、カード記入の元となる現場調整は他の者が行ったもので、記入漏れが多く、その都度現場に出向いて再調査しなければならなかったことを述べているのである(〈証拠略〉)。被告会社摘示の証拠だけで、同原告が他の者よりも処理が遅く、誤記入が多かったと認めるには十分でない。
2 鶴見火力第二保修課「改良・定検(指導)」「保修(総括)」の期間
(1) (他火力駐在研修を勧められた際、「転出と同じだ」などと反発し拒否したとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、原告山本は、昭和五〇年頃、他火力駐在研修を勧められた際、「転出と同じだ。」「同期入社者との差別待遇を解消しない限り返答できない。」などと言って他火力駐在研修の勧めに応じなかったことが認められる。
(2) (他グループの応援を指示されたのに、「電気の仕事は俺には関係ない。」などと反抗的態度をとり、すぐに現場へ行こうとしなかったとの主張について)
昭和五一年頃、一、二号屋内変電所の遮断機(使用電圧六万六千ボルト)修理工事を実施したが、当日が土曜日であった関係で、本来その工事監理を行うべき電気グループの者だけでは人手が足りなかったため、上司の池田明が計器グループの副長の阪口有功に応援を命じ、阪口が班長の内藤と原告山本に応援を命じ、内藤と同原告がその応援に当たったことがあった。その際、同原告は、その点検工事は電気供給の重要な施設に関する工事で、副長、主任、六級職が監理すべき電気グループの仕事である上、日常したことのない仕事であったので、その旨を申し出ているが(〈証拠略〉)、被告会社摘示の証拠では、そのことを捉えて、反抗的態度をとったと述べているものである。
一二  原告安藤
1 鶴見火力技術課計器係及び第二保修課「計器補修」「計器保守」「保修」の期間
(1) (汚れる業務を極端に嫌って度々現場に出向こうとしないことや渋々出向くことがあったとの主張について)
当時、石炭計量機の機能を維持するために、零点調整、テストチェーンによるテスト及び実量試験等を実施していた。これらの作業の大半は下請化されていたので、計器係員の仕事はその作業の監理をすることであるが、その作業を行う際に石炭計量機の中を点検するため、石炭の粉末で体が汚れることがあった。
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるだけの抽象的なものであるから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2) (突然の休暇、無断休暇や遅刻が多く、上司の注意にもかかわらず、一向に改めなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけのものであって、裏付けになる証拠もないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(3) (入社早々会社の施策、上司の指示、命令などにことごとく反対するという反抗的態度をとったとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、原告安藤は、昭和三七年の計器室の壁取外しについて反対闘争をしたというものであるが、この主張に対する判断は、右三の1の(2)で述べたところと同じである。
2 鶴見火力技術課計器係「計器事務」「計器管理」及び第二保修課「保修運営」「保修運営(調査)」の期間
(1) (業務処理においてチェック漏れが目立った上に単純なミスが多かったとの主張について)
この主張に対する判断は、右1の(2)で述べたのと同じである。
(2) (引継書類の一部となる大事な書面から手書きで写し取って作成する仕事を指示したが、素直に従わず、設備移管が予定より遅れたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、昭和四六年五月頃、第二保修課では、設備の保守、管理の効率化を図るため、従来計器グループで保守、管理していた制御機器をボイラー、タービングループに移管することにしたが、その際、主任の阪口有功は、原告安藤に対し、その作業の一部である制御弁本体の図面のトレースをするよう指示したこと、これに対し、同原告は、これを反共労務対策のための嫌がらせの作業であると捉え、「俺にはそのような技術はない。」「トレースは面倒だ。」「その制御弁の大半はベーレー社とフィッシャー社の製品であり、その代理店である極東貿易株式会社等に要求すれば取扱説明書や図面は簡単に手に入れることができる。」などと言って、渋々と行っていたこと、そのこともあって、業務移管の作業が約半月間遅れたことが認められる。
(3) (相変わらず遅刻や突然の休暇取得が多かったとの主張について)
この主張に対する判断は、右1の(2)で述べたのと同じである。
一三  原告山田
1 鶴見火力第一機械課及び第一保修課「技術事務Ⅲ」「技術事務Ⅱ」「保修事務(機械)」「保修事務」「保修運営」「保修運営(調査)」の期間
(1) (自己啓発意欲がなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠によっても、右主張事実を認めることはできない。
原告山田は、昭和三七年半ば頃までタービン関係の補修業務に携わり、主任の幡野と共同で、タービン屋上にスカイライトを設置する業務提案をして被告会社に採用され、賞金を授与されている(〈証拠略〉)。
(2) (昭和三七年一一月二日、私的文書を社用文書の如く偽装して発信しようとして上司から厳しく注意されたとの主張について)
右同日、原告山田は、職場の友人斉藤仁一の結婚を祝う会の案内状を社用封筒を使い第一機械課保修係の名で社内便を装って発送しようとしたところを発見された(〈証拠略〉)。
当時、被告会社の従業員の間では、県人会、同窓会、冠婚葬祭の連絡等の私用についても社内便が利用されていたので(〈証拠略〉)、同原告も安易にこれを利用したところ、同原告だけが厳しく注意されたものである(〈証拠略〉)。これが同原告についてだけ特に厳しく処分されたものであることは、(証拠略)(第三章第一の一一に掲げる書証)の記載からも明らかである。
(3) (一、二階連絡階段の改修設計をしたところ、満足なものができなく、やり直しをさせられたとの主張について)
昭和三七年頃、保修課の事務室が手狭になって改修することになった際、その工事は本来は総務課が行うべきものであったが、保修課で行うことになり、原告山田がその設計を担当したことは、同原告も認めるところである。被告会社摘示の証拠中の右主張にそう部分は、(証拠略)に照らすとたやすく信用することができないものであるから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(4) (配管ルートの図面を作成したが、全く不備のものであったとの主張について)
被告会社摘示の証拠中の右主張にそう部分は、(証拠略)に照らすとたやすく信用することができないものであるから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(5) (タービン回転受台の図面作成に際しきちんと現場調査をしなかったため、現場に取付けができなかったとの主張について)
この主張に対する判断も、右(4)で述べたのと同じである。
(6) (昭和三七年四月、勤務時間中、事務室内に組合のビラを貼付し、同月一八日、二七日、会社の了解を得ないで執行委員会報告をして会社から中止を命じられ、同年八月一四日、無断で職場を離脱して職場委員会に出席して賃金カットを受けたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、労働協約では、勤務時間中の組合活動は、やむを得ない場合に会社の了解を得て行うことができる旨規定されていたが、従前、組合では、分会執行委員会、職場委員会、職場報告、春闘時のステッカー、ビラ貼り等を勤務時間中に会社の了解を得ることなく行っていたこと、これに対し、被告会社は、東電労組本部との交渉で再三その是正を求めていたが、原告山田は、その後も、分会執行委員として、勤務時間中、右主張のような組合活動をしていたこと、このため、被告会社は、昭和三七年八月一四日付けで賃金カットをし、昭和三八年二月二八日付けで、同原告に対し、勤務時間中無断で職場を離脱したこと及び右(2)の私文書を社用文書のように装って発送したことを理由にけん責処分をしたことが認められる。
なお、被告会社は右けん責処分の理由の中では無断職場離脱は数回であるとしている(〈証拠略〉)。
(7) (時間外勤務の途中で勝手に帰宅したことが度々あったとの主張について)
(証拠略)によれば、原告山田は、昭和四四年頃のタービンの試運転時、突然上司から、時間外勤務による振動計測業務を依頼されたが、当日は用事があったので、残業は一時間に限るとの了解を得て右業務を引き受け、一時間後に退社したものであると認められる。被告会社摘示の証拠は、「われわれは、上司からあらためて時間外勤務の指示がなくても、定検工事中の作業の繁忙はよく承知していたし、仕事に生きがいを持っていたので、職場の人達は時間外勤務で帰りが遅くなっても、不平を言わず仕事に没頭していたのに、同原告は、終業時刻がくると帰宅してしまう。」として同原告を非難しているものであり、被告会社も、同じ立場に立って同原告を非難しているものであるが、このような考え方は、労働基準法が時間外勤務を命じ得る場合を厳しく制限している趣旨にそわないものといわなければならない。
2 南横浜火力保修課「保修」「保修(総括)」の期間
(1) (実務研修において自己啓発態度がみられなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠をもっても、何をもってそのように判断したのかその根拠が明らかでないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2) (工事監理が満足にできなかったとの主張について)
この主張に対する判断は、右1の(4)で述べたのと同じである。
(3) (設計書・仕様書などの作成に当たりミスが多かったとの主張について)
この主張に対する判断は、右1の(4)で述べたのと同じである。
一四  原告佐々木
1 鶴見火力第一電気課運転係「巡視」の期間
(1) (会社の「カウンセリング」(相談制度)や「モラル・サーベイ」(従業員意識調査)に対し、反対行動をとっていたとの主張について)
右主張事実は、被告会社摘示の証拠と原告佐々木本人の供述によってこれを認めることができる。
(2) (昭和三五年以降、組合交渉等の場において反合理化闘争に与し、会社の規律維持、業務運営面で支障を生じさせたとの主張について)
原告佐々木が反合理化闘争をしてきたことは、同原告も認めるところである。
被告会社摘示の証拠は日本共産党発行の書籍の「前衛」(〈証拠略〉)と「労働組合運動基本文献集(〈証拠略〉)であるが、このような書籍だけでは、同原告が会社の規律維持、業務運営面にどのような支障を生じさせたのかは全く明らかでない。
(3) (独身寮において無断移室を行い、訓告処分を受けたとの主張について)
第二京町寮に入寮中の寺川伸は、同室者と性格が合わなかったので、昭和三六年一〇月、寮自治会の承諾の下に空き室に移ったところ、これを被告会社が問題化し、寺川を元の部屋に戻すとともに、同年一二月、同人及び関係した寮自治会役員と寮管理人を訓告処分にしたものであり、その際、原告佐々木も寮自治会の役員として寮管理人に空き室の鍵の引渡しを要求したことを理由にその処分を受けた(〈証拠略〉)。もっとも、寮管理人に対して暴行脅迫監禁等の行為をもってその引渡しの要求をしたものではなく、寮管理人は寺川が空き室に移ることを承諾して鍵を渡したものであり、右訓告処分前に寺川は会社の指示に従って原状に回復しており、関係者全員このことを反省していたことも右証拠から明らかである。
2 鶴見火力第一電気課保修課「電気保修」の期間
(1) (昭和三八年頃、シーケンスの解読ができなかったため、故障原因の発見、簡単な修理などもできなかったとの主張について)
高校三年で既に電検三種資格を取得した原告佐々木は、入社してから三年間電気運転員としてシーケンスを基に機器修理を行い、電気保修係においても、定期点検時の機器試運転で油入遮断器の投入不良に際し、シーケンスを基に投入回路のチェックをしたり、各種工事の終了した設備機器の改造や変更による図面の見直し修正などの仕事もしていた(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠は、いずれも右主張をなぞるように抽象的に述べるだけのものであるのみならず、このうちの(証拠略)の作成者である仁平政和は、その証人尋問において、具体的な事実関係を指摘しての反対尋問を受け、同原告がシーケンスを理解した上で点検修理をしていた旨の証言をしているのであるから、被告会社摘示の右証拠が信用することのできないものであることは明らかであり、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2) (業務の繁閑にかかわりなく終業時刻になると退社しており、職場であてにされていなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけのもので、これを裏付ける証拠はないから、この証拠をもっては右主張事実を認めるに十分ではない。むしろ、(証拠略)(賃金明細書)によれば、原告佐々木は、被告会社主張の時期と若干異なるが、昭和四四年一一月から昭和四七年三月までの間に、少ない時で月一八時間、多い時には月七八時間、平均で月四一時間もの時間外勤務を行っていることが認められる。
3 鶴見火力第一電気課及び第一発電課「操作(補機)」の期間
(1) (自分は突然休暇申請をするにもかかわらず、他の者の代勤要請を拒否したとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張を抽象的に述べるだけの裏付けのないものであるから、たやすく信用することができず、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2) (昭和三九、四〇年頃、ワンマンデスクでの勤務中居眠りをして上司に注意されたとの主張について)
当直の運転員は当直主任を含めて一班八名(昭和四〇年一一月から五名)で編成され、ワンマン・コントロール・デスクでの操作は発電機の出力調整操作や計器の監視等神経の疲れる仕事であるため、約三〇分ごとに交替で行っていた。
被告会社摘示の証拠が信用することのできないものであることは、右(1)で述べたとおりである。
(3) (指示されたにもかかわらず、発電機冷却ファンの起動操作を忘れ、発電機の温度を上昇させたとの主張について)
昭和四一年当時、当直電気運転員は五名いて、発電準備操作も全員が分担し、当直主任を含む三名が主配電盤室に残り、原告佐々木を含む二名が屋外変電所の断路器、電気コンバート室の断路器の操作、主変圧器の油ポンプ、海水ポンプの起動操作を行っていた。その際に被告会社主張の事態が発生した(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠の中には、仁平政和が発電機冷却ファンの起動操作を指示したのに同原告が起動操作を忘れたと述べる部分があるが、この部分は、(証拠略)に照らしてたやすく信用することができないから、この証拠をもって右主要事実を認めることはできない。
(4) (油入遮断器の故障原因を解明することができなかったとの主張について)
この主張に対する判断も、右(1)で述べたのと同じである。
4 南横浜火力発電課「操作(補機指導)」「発電運営(調査)」の期間
(1) (異動研修だけでは研修効果がなく、異例の追加研修を受けなければならなかったとの主張について)
他火力から運転員として転入してきた者には、労使間で取り決められた運転員としての所定の研修(異動研修)を実施し、その後に定員として直編入させることになっていた。原告佐々木も、補機操作員として、所定の研修を三交代勤務をしながら五サイクル(一サイクル八日間)を受講し、さらに一サイクル追加して受講した(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠の中には、この追加研修は同原告が基礎知識や技能が不十分であるためもう少し研修サイクルを延長してもらいたいと申し出たので行ったと述べる部分がある。しかしながら、(証拠略)の中には、同原告は、当直長と副長から「急いで定員扱いになる必要はないし、電気屋としてどうしても必要な警報対応操作についてもマスターしてもらわなければならないので、もう一サイクル追加しよう。」と言われてしたものである旨を述べる部分があることや、研修記録等の裏付けとなる証拠が提出されていないことに照らすと、被告会社摘示の右証拠はたやすく信用することができない。
(2) (いい加減な勤務振りが改まらなかったとの主張について)
右3の(1)で述べたのと同じ理由で右主張事実を認めることはできない。
一五  原告田島
1 横浜火力建設所機械課「T工事Ⅱ」「汽機補機設計据付」及び横浜火力保修課「保修事務(機械)」「機械保修」「保修」「保修計画」の期間
(1) (安保改定阻止行動を通じて、会社を「大衆収奪の機関」などと位置付けするようになったの(ママ)主張について)
原告田島が、安保改定阻止行動を通じて、会社を「大衆収奪の機関」と見てきたことは、同原告も認めるところである(〈証拠略〉)。
(2) (第二次経営刷新方策の趣旨を曲解し、社員に会社への敵意を扇動するような言動をとっていたとの主張について)
遠藤利久と添田久が提出した組合の昭和三九年度活動方針に対する修正案の中に、第二次経営刷新方策について、「これは資本の今後進めていく合理化の新たなる出発点になるものであり、労働条件の低下や権利の剥奪をもたらす危険が強いものであるから、十分に討議できる体制を組織内部に確立しなければならない。」とうたう部分があった(〈証拠略〉)。被告会社は、原告田島が右修正案に同調した(原告田島、同伊藤各本人の供述)ことをもって右のように主張しているものである。
(3) (労使間に既に合意した「火力新体制」について、事実を著しく歪曲し、社員に敵意を扇動するような言動をとったとの主張について)
原告田島は、昭和四三年頃、神奈川火力支部代議員選挙に立候補した際、他の立候補者らと連名で、所信を述べるビラを配布したが、そのビラの中に、「新体制移行に際し、労働条件の悪化や業務量の増大には断固反対し、監視を強め、必要ならば新体制の見直し、再検討を行うべきであると考える。」との趣旨を記載していた(〈証拠略〉)。被告会社は、このことを捉えて右のように主張しているものである。
(4) (使用可能なバルブまで取り替えてしまったとの主張について)
昭和四四年頃は、保修課においては職制上工事グループと工務グループとに分かれて業務を遂行しており、工事グループは現場を点検して機器の取替え、修理の必要性を判断し、工務グループは工事グループからの書類や説明に基づいて、不明な点を工事グループと協議しながら設計していた。従って、設計担当の工務グループに属していた原告田島がバルブを取り替えることなどは通常ないことである(〈証拠略〉)。被告会社摘示の証拠は、(証拠略)に照らして信用することができないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(5) (予算編成作業時、指示に反して無断で帰宅してしまったとの主張について)
予算編成時の予算集計業務は、保修課はもとより発電所全体の規模で、深夜にわたって行われており、原告田島も工務グループの一員として工事グループの作成した一年間の保修計画に基づいて工事予算書の作成等に当たっていた。特に一つ一つの工事予算を集計する作業には追加、修正があって時間がかかり、時に明け方まで行うことがあったが、同原告は同僚と一緒にこれをしていた(〈証拠略〉)。被告会社摘示の証拠によっても、たまたま同原告が早く帰宅したことがあったというに過ぎず、それも予算案が出来上ったので、用事があると言って帰ったというものであって、そのようなことが始終行われていたというものではない。
(6) (設計・積算がいい加減で関係課に迷惑をかけたとの主張について)
被告会社摘示の証拠の中には、原告田島は、昭和四五年頃、取水路清掃工事(取水路に付着する貝の処理)の設計に当たり、構内運搬処理費の積算方法を誤ったと述べる部分がある。しかしながら、一方、(証拠略)には、原告田島は、同年二月、この処理費の積算方法を工夫して、構内運搬処理と海上運搬処理の二本立てにし、構内運搬処理費については、積算グラフにより簡易に求められるようにしていたから、被告会社摘示の証拠にあるような積算の間違いをするはずがないと述べる部分がある。被告会社摘示の証拠の方を信用することができるともいい難いから、この証拠をもって右事実を認めることはできない。
2 横浜火力保修課「保修計画(主要)」「保修計画(特殊)」の期間
(1) (「排水設備強化工事のうち一五〇〇立方メートル貯槽曝気管工事」の設計・積算を誤ったとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、原告田島は、右設計に当たり、管継手類を三万八六三五円、雑材料を一万八〇〇〇円と積算したところ、請負業者はそれぞれ一万七〇〇〇円、八八二〇円と見積もったことが認められる。被告会社は、これを同原告のミスであると主張するのに対し、同原告は、設計予算は、実績、市販の月刊誌「積算資料」、市況調査等を基にして平均的なところで積算するが、業者の行う見積りは、その業者側の特殊な事情をも反映して決められるので、両者の間に相違が生ずることはあり得ることであり、むしろ、双方の金額が一致する方が不思議であると主張しているものである。要は、同原告の積算が担当者としての常識外のものであるかどうかであるが、これが常識外のものであると認め得る証拠はないから、被告摘示の証拠によっても右主張事実を認めることはできない。
(2) (排水設備強化工事のうち苛性ソーダ槽移設工事及び六号中和槽PH制御装置除去工事」、「五号一、二次スクリーン点検工事」、「汽缶不安全個所修理工事」及び「一号タービン弁類点検手入工事(大型)」の設計・積算を誤ったとの主張について)
右主張は右(1)と同種の積算額と見積額の相違を原告田島のミスと主張するものである。これに対する判断は、右(1)で述べたのと同じである。
(3) (「一次水処理再生水排水溝修理工事」及び「三号取水路内清掃のうち溝外処理工事」の設計・積算を誤ったとの主張について)
被告会社摘示の証拠によっても、これは単純な記載ミス、転記ミス、計算ミスに過ぎないものである。
(4) (蒸留水タンク塗装の際、請負会社にタンクを間違えて説明したとの主張について)
保修課においては、工務グループ(原告田島所属)で設計が完了すると、請負業者に現場説明をし、その際、工務グループから工事グループに業務を引き継ぐことになっている。しかし、実際には、本件のタンク単体の塗装のように単純な工事についての現場説明は工事の現場ではなく、事務所の机上で行っており、着工時に工事グループの責任で再度現場を指示していた(〈証拠略〉)。被告会社摘示の証拠は、原告田島が現場で誤って指示した旨を述べているが、直接その事実を見たものではなく、伝聞又は再伝聞を内容とするものであり、右認定の現場説明の実情に照らしてたやすく信用することができないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(5) (稟議決裁後の必要部品の購入手続を忘れたとの主張について)
(証拠略)(保修課業務処理要領)と(証拠略)によれば、工事設計に伴って物品を購入する場合には、設計担当者(本件の場合は原告田島)が工事の稟議書を起案する際に請負付託書類とともに資材請求書(購入仕様書添付)を作成し、それらの書類をまとめて決裁を受けるが、その後は、運営担当者が購買伝票を発行し、決裁を得て資材係に回すこととされている。
被告会社摘示の証拠の中には、同原告が購入手続を忘れていたと述べる部分があるが、右処理要領によれば、稟議決裁後の購入手続は運営担当者がするものとされているのであるから、運営担当者でない同原告が稟議決裁後のどの段階でどの手続を忘れたのかを具体的に明らかにしなければ同原告が忘れたとはいえないと思われる。ところが、その関係は全く明らかでないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
一六  原告渡邊
1 潮田火力汽機課運転係、鶴見火力第三機械課発電係及び発電課「巡視」「操作(補機)」の期間
(1) (新鋭火力に関する技術研修に対し「合理化を前提とした研修には反対である。」と公言し、新しい技術を習得しようとしなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠によっても、原告渡邊は、新鋭火力に関する技術研修に対し、合理化を前提とした研修には反対であると述べていたが、研修は拒否することなく受講していたというものである。
(2) (独身寮内規による入寮請書の提出を拒み続け、会社を誹謗するビラを配布し、会社の施策への反対と会社への敵意を扇動しようとして、発電所長から厳重注意を喚起されたとの主張について)
(証拠略)と原告渡邊本人の供述によれば、同原告は、独身寮に入寮中の昭和三八年一二月から翌年にかけて、会社の制定した独身寮内規に反対し、業務命令で同内規による入寮請書の提出を命じられたにもかかわらず、これを拒み続け、従業員らに対し、会社のこの施策に反対し、同原告らと共闘するよう求めるビラを配布していたことが認められる。
2 横浜火力発電課「操作(補機)」「操作(補機指導)」の期間
(1) (意欲的に技術・技能を身に付けようとしなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるものであるから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
原告渡邊は、昭和四一年一二月危険物取扱主任者(乙種四類)の、昭和五〇年一〇月一級ボイラー技士の各免許を取得し、昭和五五年被告会社から現業技術・技能B級(火力発電運転操作)の、昭和五六年同A級(同)の各認定を受けている。被告会社において一級ボイラー技士の資格が高く評価されていることは、右七の(5)で述べたとおりである。また、昭和四二年まで潮田火力で、昭和四五年頃鶴見火力で同原告の直接の上司(発電班長)であった原田茂夫は、同原告の勤務態度について、意見具申はあるが素直で指示にはよく従い、パトロールは的確で、詳細を報告し、同時に主機を手伝っており、研修態度も前向きで質疑応答にも人並み以上の能力を持っていた、と評価している(〈証拠略〉)。
(2) (名指しで指示されないとアラームに対応しなかったとの主張について)
中央操作室には設備の異常を知らせるため、警報装置(アラーム)が設置されていて、このアラームが鳴ると補機操作員はアラームの内容を確認し、主機操作員の指示により現場へ出向くことが原則となっていた(〈証拠略〉)。被告会社摘示の証拠は、アラームが鳴ったときは、主機操作員の指示がなくても積極的に現場に出向いて行くべきであるというものである。しかし、そのようにすると、中央操作室には多数のアラーム表示窓があるので、そのうちの一つが点滅してベルが鳴る度に補機操作員全員が我先にと現場に行くようなことになって混乱するし、不経済でもあるので、自ずから出向いて行くべき者が決まるのでなければ、同原告が述べるように、原則に従って主機操作員が最も適切な補機操作員に指示を出す方が理に叶っているように思われる(〈証拠略〉)。
(3) (パトロールの際、異常箇所の発見、手直し、修理依頼伝票の発行が少なかったとの主張について)
パトロールは一直について二回行い、三直で一日合計六回、同じコースをパトロールしていたが、油漏れ、水漏れ、蒸気漏れ、計器の異常などがよく発見されていたので、直員の手でポンプや弁のグランドパッキンの取替え、増締めなどの補修が日常的に行われており、それが不可能なものについてだけ修理依頼伝票を発行していた(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるだけの抽象的なものであるから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(4) (当日急に休暇を取得することが度々あり、代勤者の手配に困ったとの主張について)
原告渡邊の妻は胆嚢に持病があり、急に具合が悪くなり、時には救急車で運ばれることもあったので、そのような場合に当日届け出て休暇をとったことがあることは、同原告も認めているところである(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるだけの抽象的なもので、裏付けになる勤務表などの証拠はないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
一七  原告金子
1 横浜火力運転課及び発電課「操作及び巡視」「操作(補機)」の期間
(1) (パトロールが最低限守るべき基本事項すら守らない劣悪なものであったとの主張について)
当時、タービン運転員は四名(操作員一名、主機巡視員一名、補機巡視員二名)で、巡視員のパトロールは前直から引き継いだ後と、後直へ引き継ぐ前に行っていた。パトロールの前に操作員からタービン全般についての報告を聞き、主機巡視員も含めて四名が確認し合ってから、巡視員はパトロールに出かけ、パトロール終了後はまず操作員に機器の運転状態などを報告し、チェックシートにその記録をしていた(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠の中には、原告金子はパトロールの報告をしなかったとか、服装が乱れていたとか、コースを外れたといったことを述べる部分があるが、これらは、いずれも抽象的なものであったり、伝聞を内容とするものであったり、報告がないとすれば、後直の者は何故報告を受けないまま引き継いだのかという疑問が残ったりするものであって、(証拠略)に照らしてたやすく信用することができないものである。従って、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2) (技術知識が低く、注意力がないため、発電機をトリップ(停止)させたとの主張について)
昭和三八年七月頃、復水器(タービンで使用した蒸気を海水で冷却し、水に戻す装置)水室を清掃するため、復水器にある二つの部屋の片方を止める片肺運転にしたが、その作業は、タービン担当の四名で行い、うち原告金子と木場田晧二が弁の操作を担当した。操作する弁は、復水器の空気弁とプライミングエゼクター(復水器水室の空気抜きを蒸気で行う抽出器)であった。同原告と木場田は、まず復水機胴体の空気抜き弁を閉めてから循環水ポンプの停止を行うために現場へ行き、中央操作室にページング(通話装置)で右ポンプの停止を頼み、ポンプ・モーターの異常の有無を確認し、循環水ポンプ軸受への潤滑水の供給状況を監視した後、中二階にある復水器水室の変電所側にある空気抜き弁を開いた。続いて同原告がボイラー側の復水器水室空気抜き弁の操作を行っていたところ、木場田が誤ってスターティングエゼクターの空気元弁を開けたため、真空低下によりタービンがトリップして発電機が解列した。その後、当直長の指示に基づき、タービンの再起動操作を行った(〈証拠略〉)。
木場田が誤ってスターティングエゼクターの空気元弁を開けたことは、同人自身が認めているところである(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠の中には、同原告が木場田にその誤った操作を指示したと述べるものがあるが、(証拠略)に照らしてたやすく信用することができないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
被告会社は、同原告の技術知識が低いと主張するが、同原告は、その後、昭和四五年六月玉掛技能講習を、同年八月ガス溶接技能講習を、昭和六一年七月第二種酸素欠乏危険作業主任者技能講習を、昭和六三年五月粉じん作業特別教育をそれぞれ修了して、その資格を取得し、この間、被告会社から昭和五五年現業技術・技能B級(火力発電保修工事)の、昭和六一年同A級(同)の認定を受けている(〈証拠略〉)。
(3) (上司の発言を歪曲したビラを作成して配布したほか、課長に対し、勤務時間中に抗議文を読み上げるという暴挙に出たため、厳重注意を受けたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、原告金子は、昭和四四年三月、分会執行委員に立候補し、原告伊藤、三橋茂と連名で、選挙活動のビラを作成し、職場で配布したが、その際、そのビラの中に、先の班長会議で発電課長の牧英夫が当直主任や班長に対して、操作員研修で余り高いレベルを要求したり、押し付けとなったりして操作員を苦しめることがないよう配慮してもらいたいとの趣旨の発言をしたのを捉えて、「ある課長が班長会議でノイローゼにならないよう気を配って毎日の業務に励んでほしいというような内容の発言にも見られるようにその裏を返せばノイローゼになるぎりぎりの所まで研修だ能力開発だで追い込まれていることだと思います。」と記載したこと、牧は、これを同人の発言の趣旨を故意に歪めたものであるとして、原告金子ら三名に対し、事実に反する部分の訂正と謝罪文の提出を要求したが、同原告らに拒否されたこと、そこで、日を改めて再度同原告らを呼び出し、右の要求をしたところ、同原告らは、これを拒否した上、牧の席の前で、抗議文を読み上げたこと、被告会社は、これらの行為を咎めて同原告らに対して厳重注意をしたことが認められる。
2 横浜火力保修課「保修運営」「保修運営(調査)」の期間
(1) (工事通知票の発行が遅れ、工事に支障が生じたとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけのものであって、いつの、どの工事について、どの程度遅れたのか、それによってどのような支障が生じたのか、といった具体的な事実を述べるものではなく、これを裏付ける証拠もないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2) (会社が電気料金改定への理解を求めて努力している中、横浜火力門前で電気料金改定が不当であるとのビラを配布するなどして反対行動をとっていたとの主張について)
右主張事実は、被告会社摘示の証拠と原告金子本人の供述によってこれを認めることができる。
一八  原告高橋
1 横浜火力技術課「水分析」「燃料分析」の期間
(1) (「危険物取扱主任」「公害防止管理者」等の国家資格を取得しようとする意欲がなかったとの主張について)
右主張事実は、被告会社摘示の証拠によってこれを認めることができる。
原告高橋は、その後、昭和五六年八月特定化学物質等作業主任者技能講習を、昭和五七年七月有機溶剤取扱作業主任者技能講習をそれぞれ終了し、その資格を取得している(〈証拠略〉)。
(2) (いい加減な分析を行い、常識外のデータを出すことが多かったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、いつの、どのような分析結果が、どうして常識外のデータといえるかといった具体的な事実関係が全く明らかでないものであるから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(3) (分析器具の取扱いが粗雑で、しばしば破損したとの主張について)
器具の破損は誰でもあり得ることであるが、被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけのものであるから、これをもっては、原告高橋が他の者に比較してどの程度粗雑で破損が多いかは明らかでない。むしろ、(証拠略)によれば、同原告は、水泥分測定用沈殿管保管具、比重計保管具、硫黄分測定用吸収管保管具、ばい煙測定用のろ紙を入れる秤量びん保管具等をプラスチック板で作って、器具を破損させないよう工夫していたことが認められる。
2 横浜火力技術課「化学分析(主要)」の期間
(1) (海水分析業務をしばしば忘れたとの主張について)
海水分析業務は、定例的に毎週火曜日に行うこととして、作業予定表にそのことを記入して分析室に掲示していた(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠は、時期も特定せずに原告高橋は分析業務をしばしば忘れたことがあると抽象的に述べるだけのもので、被告会社主張の時期と目される時期の分析業務の実施状況を同原告が詳細に記録した書面である(証拠略)に照らして、たやすく信用することができないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2) (二号機の定期点検時にボイラードラム内のスケール採取を忘れたとの主張について)
ボイラーの定期点検時には必ず分析用としてスケール採取をすることになっている。この作業工程は、ユニットが停止して一定の温度まで下がると、ドラムのマンホールを開放して空気を送り込み、ドラム内で作業ができる程度の温度まで冷却してドラム内に人が入れる状態になると(その旨工事課から技術課化学グループへ連絡する。)、まず最初に化学グループの担当者がドラム内に入り、スケールの堆積状態や缶壁へのスケールの付着状況などを見るためにドラムの内部点検をする。次の作業のため作業員が中に入らないこの段階で、スケール採取を行う。これが終わると、化学グループから工事課にその旨を連絡し、工事課の担当者が内部装置の点検、修理を行うことになっている(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠は、右(1)と同様の理由で信用することができないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(3) (煙道ガスばいじん測定装置の真空ポンプの修理依頼手続を忘れたとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、昭和五〇年五月頃、原告高橋が、右手続を忘れ、数日後に上司の平井晃に言われて処理したと述べるものである。しかし、その頃その修理がなされたと認め得る証拠はなく、むしろ、備品台帳(〈証拠略〉)によれば、真空ポンプの修理が行われたのは、昭和四八年三月一五日と昭和五三年七月五日であって、被告会社主張の時期に修理は行われていないことが認められる。被告会社摘示の右証拠はたやすく信用することができず、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
一九  原告伊藤
1 横浜火力運転課及び発電課「汽機操作巡視」の期間
(1) (技術講習会などで態度が不真面目だったため、知識・技能の向上がみられず、十分業務を処理することができない要因となっていたとの主張について)
被告会社摘示の証拠をもっては、右主張事実を認めることはできない。
原告伊藤は、その後、昭和五二年一〇月一級ボイラー技士の、昭和五四年一月危険物取扱主任者(乙種四類)の各免許を取得し、昭和五五年被告会社から現業技術・技能A級(火力発電運転操作)の認定を受けている(〈証拠略〉)。被告会社において一級ボイラー技士の資格が高く評価されていることは、右七の(5)に述べたとおりである。
(2) (第二次経営刷新方策について、独占資本の利潤追求の手段として用いられるもので安易な妥協は許されないと非難、攻撃したとの主張について)
この主張に対する判断は、右一五の1の(2)で述べたのと同じである。
(3) (自己研究報告制度について、絞れるものは何でも絞りとろうとする方策であると批判、誹謗・中傷したとの主張について)
被告会社摘示の証拠、(証拠略)と原告伊藤本人の供述によれば、昭和四〇年一一月頃、同原告が作成、配布に関与していた共産党準細胞機関紙「声」の中に、会社の施策の一つである自己研究報告制度について、「第二次経営刷新方策が電力労働者を安く使い、しぼれるものは何でもしぼり取ろうとする方策の一つの表れです。」と記載されていたことが認められる。
(4) (会社を「気違いじみた思想攻撃」と事実を歪曲し、会社を誹謗・中傷したビラを配布したため、訓告処分を受け、意図的に会社施策の趣旨を歪曲したことを認め謝罪したとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、原告伊藤は、昭和四一年三月、分会執行委員選挙に立候補したが、その際、その選挙ビラの中に、「『就業規則の徹底』の名のもとにしめつけがきびしくなり、青年層に対する職制を通じての“アカ”攻撃は特に強められ、気ちがいじみたこの思想攻撃のもとでわれわれは考えることの自由も犯され、他人と職場で親しく話もできないような状態が毎日のように、作り出されつつあります。云々」と記載して配布したこと、同月二五日、労務課長と運転課長から事実と相違することを記載し、会社を誹謗・中傷したことについて釈明を求められ、同原告は、具体的な根拠に基づかない記載であることを認めて、所長に謝罪したことが認められる。
(5) (右訓告処分を受けて自己の非を認め、謝罪したにもかかわらず、再び会社を誹謗・中傷したとの主張について)
被告会社摘示の証拠、(証拠略)と原告伊藤本人の供述によれば、同原告が作成、配布に関与していた共産党準細胞機関紙「広報」(昭和四一年六月一九日付け)の中に右(4)のビラに記載されていたのと同趣旨の会社に対する批判が記載されていたことが認められる。
(6) (クラゲによる事故発生時の対応中、中央操作室からの呼出しに何の応答もしなかったとの主張について)
昭和四七年七月一九日、大量のクラゲが発電所の冷却用取水口に押し寄せて一次スクリーンに付着したため、海水の取入れができなくなり、発電機がトリップ(停止)する事故が発生した(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠は、その事故の際、原告伊藤が中央操作室からの呼出しに応じなかったと述べるものであるが、その時の同原告の行動状況を把握してのものではなく、ただ応答しなかったというものである。しかしながら、当日の同原告の行動やページング(通話装置)の使用状況、被告摘示の証拠の矛盾点等を詳細に述べる(証拠略)に照らすと、そのことさえもたやすく信用することができないものであるから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
2 横浜火力発電課「発電運営」の期間
(1) (保管されていた議事録を無断で持ち出し、上司の発言を歪曲したビラを配布したばかりか、勤務時間中に、課長に対し、抗議文を読み上げるという暴挙に出たため、厳重注意を受けたとの主張について)
被告会社摘示の証拠中、原告伊藤が保管されていた議事録を無断で持ち出したと述べる部分は、(証拠略)に照らしてにわかに信用することができない。
その余の主張事実についての判断は、右一七の1の(3)で述べたのと同じである。
(2) (塩素ガスボンベの受払い作業の際、中毒事故を発生させたとの主張について)
昭和四三年三月一四日、原告伊藤立会いの下で、塩素ガスボンベの受払い作業が行われた。その際に、同原告は使用中のボンベがあることを作業員に伝えたが、その作業員が助手の作業員にその旨を伝えなかったので、助手が誤って使用中のボンベをホイストで吊り上げてしまい、塩素ガスを漏洩させた。この事故で、同原告と作業員二名が塩素ガス中毒にかかった。被告会社は、右事故について同原告にも責任があるかのように主張しているが、右ボンベは導管に接続されていた上「使用中」の札が掛けられていて、一見して使用中であることが分かる状態にあったのであるから(〈証拠略〉)、助手の重大な過失によって生じたものであって、同原告の責任ではない。
二〇  原告二宮
1 横浜火力運転課及び発電課「局配電盤」「巡視」「操作(補機)」の期間
(1) (「火力新体制」についていわれなき中傷・誹謗を投げかけ、会社施策に反対していたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、原告二宮は、組合の役員選挙に立候補した際に配布したビラの中で、被告会社の火力新体制を批判し、これに反対する意思を表明していたことが認められる。
(2) (業務研修での説明会に居眠りをしており、向上意欲に欠けていたとの主張について)
被告会社摘示の証拠をもっても右主張事実を認めることはできない。
原告二宮は、昭和四四年八月危険物取扱者(乙種四類)の、昭和四五年九月テレビジョン受信機修理技術者の、昭和五〇年一〇月二級ボイラー技士の、昭和五一年八月甲種危険物取扱者の、昭和五三年一〇月一級ボイラー技士の、昭和五六年二月水質関係第一種公害防止管理者の、昭和五八年二月大気関係第一種公害防止管理者の、同年一二月電検三種の各試験に合格して、各資格を取得し、昭和五五年被告会社から現業技術・技能A級(火力発電運転操作)の認定を受けている。被告会社において電検三種、一級ボイラー技士の資格が高く評価されていることは、右七の(5)で述べたとおりである。また、昭和四七年一一月頃から昭和四八年一一月頃までの間直属の上司であった当直主任の武川正治は、同原告について、昭和四八年度人物所見表(成績査定時の基礎資料の一つである)の知識・技能の欄に「頭は良い方で、知識・技能共優れている方である。」と、把握の欄に「非常に細かく見ており、よく握んでいる。」と、構成・創造の欄に「創造力があり、細かい作業など上手である。」と、実践の欄に「自分のやるべき事については非常に良くやる。それ以外の事でも言われればきちんとやる。」と、人柄・性格の欄に「自分の考えをはっきり持っており、あいまいなことはしない。」と記載して極めて高い評価をしていた(〈証拠略〉)。
(3) (独断でAFC装置(自動周波数制御装置)を操作したためトラブルを誘発し発電機が停止する危険があったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、いずれも伝聞を内容とするもので、(証拠略)に照らしてたやすく信用することができないものであるから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
2 横浜火力発電課「操作(補機指導)」「操作(主機)」の期間
(1) (補機の操作・終了の報告を怠ることが多かったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけのものであるから、これをもって右主張事実を認めることはできない。
(2) (しゃ断器の操作につき依頼票を作成せず、操作の重要性を認識していない仕事振りであったとの主張について)
被告会社摘示の証拠の中には右主張にそう部分がある。しかしながら、被告会社作成の運転心得(〈証拠略〉)によれば、電気運転員は「タービン、ボイラー操作員から、しゃ断器NFB依頼票により操作の依頼を受けたら内容を確認し現場で操作をする。」とされており、被告会社で使用している「しゃ断器・NFB依頼票」(〈証拠略〉)は、ボイラー、タービン操作員がまず作成して、順次、当直主任、電気操作員等の経路で送られていくように作成されている。このことからすると、依頼票はボイラー、タービン操作員が作成すべきものであると思われるから、電気操作員の代行をしていた原告二宮が何故ボイラー、タービン操作員が作成すべき依頼票を作成するのかを明らかにしなければならないところ、被告会社摘示の証拠中のこの点に関する部分は、(証拠略)に照らして信用することができない。従って、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
二一  原告藤本嘉勝
1 横浜火力運転課及び発電課「操作(補機)」の期間
(1) (アラームが鳴っても積極的に現場へ出ようとしなかったとの主張について)
この点についての判断は、右一六の2の(2)で述べたのと同じである。
(2) (起動・停止操作の際、ボイラー・タービンパートの業務に対するやる気のなさが目立ったとの主張について)
被告会社摘示の証拠の中には、右主張にそう部分があるが、どのような根拠でやる気のなさが目立つと判断したのかその根拠が明らかでないものであるから、これをもって右主張事実を認めることはできない。
原告藤本嘉勝は、高校三年の昭和三五年一二月に既に電検三種に合格していたが、昭和四六年一月危険物取扱主任者(乙種四類)の、昭和五一年五月二級ボイラー技士の、同年八月甲種危険物取扱者の、昭和五四年一〇月一級ボイラー技士の各免許を取得し、昭和五五年被告会社から現業技術・技能A級(火力発電運転操作)の認定を受けている(〈証拠略〉)。被告会社において、電検三種、一級ボイラー技士の資格が高く評価されていることは右七の(5)で述べたとおりである。
2 横浜火力発電課「操作(補機指導)」「操作(主機)」の期間
(1) (所在を明確にせず、仕事の引継ぎも十分でなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるものであって、具体的な事実関係が明らかでないから、これをもって右主張事実を認めるには十分ではない。
(2) (昭和五〇年三月頃、中央操作室で主機操作を代行していた際、給電指令所から「特別増出力指令」の連絡を受けたが、上司に無断で出力上昇の操作を行い始めて注意され、さらに、解除指令を受けた時も無断で操作して注意されたとの主張について)
被告会社摘示の証拠の中には、特別増出力運転が行われる場合の取扱いについて、「あらかじめ予定されている場合と当日急にそれが決まる場合とでは取扱いが異なり、前者の場合は、事前に本店の火力発電課から発電所の発電課長に連絡があり、さらに、運転を行う当日、改めて給電所から送電制御室経由で、中央操作室のワンマンデスク(電気主機操作員の机)に指令があり、指令を受けた主機操作員は、当直主任に報告し、当直主任は、当直長に報告し、当直長は、特別増出力の可否を検討し、可と判断したときは、当直主任にその旨を指示し、当直主任は、ボイラー、タービン、電気の各主機操作員にその旨を伝え、電気の主機操作員に操作を指示する。後者の場合は、給電指令所からの指令が送電制御室経由で中央操作室のワンマンデスクにあり、以下前者の場合に準じて指令や操作が行われることになっていた。ところが、原告藤本嘉勝は、給電指令室から指令を受けた際、この手続を経ることなく上司に無断で右操作をした。」との趣旨を述べる部分がある。
しかしながら、昭和四八年七月一六日付けの発電課長から当直長等にあてた「特別増出力運転の実施方法について」と題する通知(〈証拠略〉)によると、特別増出力の要請は、本店発電課から発電課長あてになされ、発電課長から当直長に連絡されるものとし、あらかじめ予定されていた場合と当日それが決まった場合とを区別していないことが認められ、その後右通知が変更されたとの立証はないこと、被告会社摘示の証拠が述べる方法をとることの根拠となる規程、通知の類が明らかでないことや(証拠略)に照らすと、被告会社摘示の証拠はたやすく信用することができないものである。従って、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
二二  原告高木
1 鶴見火力「給水ポンプ」「巡視」の期間
(1) (燃焼調整が満足にできなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるだけの抽象的なもので、何をもって燃焼調整が満足にできないと判断したのか全く明らかでないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2) (違法貼付ビラの撤去を妨害したとの主張について)
被告会社摘示の証拠中の右主張にそう部分は、(証拠略)に照らしてにわかに信用することができないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
2 鶴見火力「発電運営」「水質検査」「操作(補機)」「操作(補機指導)」の期間
(1) (土曜日の時間外勤務を度々拒否したとの主張について)
被告会社摘示の証拠の中には、原告高木は日曜日の発電業務に備えて行う土曜日の午後の純水採取のための時間外勤務を度々拒否していたと述べる部分がある。しかしながら、(証拠略)と原告高木本人の供述によれば、ユニットを運転するためには最低二〇名の要員を必要とするところ、既に原告高木が純水係に配転される前の昭和四〇年一月に日曜日の保安要員は六名とされていたので、被告会社主張の時期には物理的に日曜日の発電業務はできなくなっていたこと、従って、日曜日の発電業務に備えて土曜日の午後に採水運転をすることはなかったこと、また、純水タンクの容量は一〇〇〇トンあり、一日の採水運転で採水することができる量は五〇〇トンであるのに対し、一日のユニットの稼働で消費される純水はせいぜい一五〇トン程度であるから、金曜日までの採水で足り、月曜日の運転のために採水する必要もなかったことが認められるから、この事実に照らすと被告会社摘示の証拠はたやすく信用することができず、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2) (交通事故のため三交替勤務を務められなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠と弁論の全趣旨によれば、原告高木は、昭和四六年三月二七日自転車で帰宅途中自動車と接触して負傷して同年五月三〇日まで休務し、以後同年一一月八日まで高所作業・重作業・深夜業・宿直・出張禁止等の健康管理上の措置を受けていたことが認められる。
3 横浜火力「操作(補機指導)」の期間
(1) (技術・技能が劣っていたにもかかわらず、自己啓発に努めなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
原告高木は、昭和四二年一〇月一級ボイラー技士の、昭和四六年一二月熱管理士の、昭和五六年一月危険物取扱者(乙種四類)の各免許を取得し、昭和五五年被告会社から現業技術・技能B級(火力発電運転操作)の、昭和五六年同A級(同)の認定を受けている。当時鶴見火力には約五〇〇名勤務していたが、熱管理士の資格を有する者は一〇名もいなかった(〈証拠略〉)。被告会社において、一級ボイラー技士と熱管理士の資格が高く評価されていることは、右七の(5)と一〇の2の(5)で述べたとおりである。
(2) (横浜火力においてはいつまでも燃焼調整ができなかったとの主張について)
この主張に対する判断も右1の(1)で述べたのと同じである。
(3) (薬液系統の切替操作を誤り、アラームを発生させたとの主張について)
ユニット停止後、復水器(タービンを回転させるために使用した蒸気を海水で冷却して水に戻す装置)配管の酸化を防止するために連続的に注入されているヒドラジン液の系統切替操作を実施する。これは、注入するヒドラジン液を一パーセント液から二パーセント液に切り替えるため、二パーセントヒドラジンタンクの出口弁を開け、一パーセントヒドラジンタンクの出口弁を閉め、一時間ないし一時間半経過してから復水ポンプと連続薬液注入ポンプを停止し、連続薬液注入ポンプの脱気器(ボイラーで使用する水の中に含まれている酸素や炭酸ガス等を蒸気で加温して除去する装置)出口弁を開け、復水器出口弁を閉めるという操作で、この弁の切替え操作は現場で行う。復水器出口側弁を閉め、脱気器出口側弁を開けるという単純なワンセットの操作である。昭和五〇年一〇月頃、その操作後、警報装置が鳴り、現場を調査したところ、復水器出口側弁が開いていたため、二パーセントヒドラジン液が復水器配管の中に逆流したことがわかった(被告会社摘示の証拠)。この弁の切替え操作の際に復水器出口側弁を閉め忘れたとしても、復水ポンプの出口に逆止弁(逆流防止弁)があるので、復水配管内の純水のレベルが下がることはなく、復水管内にヒドラジン液が流入することはないことになっている。従って、逆流したということは、右逆止弁が正常に働かなかったということである。この種の事故は、その前にも後にも発生している(原告高木本人の供述)。
被告会社摘示の証拠中の右事故は原告高木が操作を誤ったことによると述べる部分は、同原告本人の供述に照らしてたやすく信用することができないから、これをもって右主張事実を認めることはできない。
(4) (総点検でボイラー缶前の不具合箇所を見落したとの主張について)
この主張に対する判断も右1の(2)で述べたのと同じである。
二三  原告後藤
1 横浜火力建設所「汽機補機設計据付」の期間
(意欲的に知識・技能を習得しようとする姿勢がなく、漫然と業務を処理していたとの主張について)
右主張事実を認め得る証拠はない。
2 横浜火力運転課「操作(補機)」の期間
(1) (自己啓発意欲がなく、技術レベルが後輩よりも劣っていたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によっても右主張事実を認めることはできない。
原告後藤は、昭和四七年八月危険物取扱者(乙種四類)の、昭和四八年五月一級ボイラー技士の各免許を取得している(〈証拠略〉)。被告会社において、一級ボイラー技士の資格が高く評価されていることは、右七の(5)で述べたとおりである。
(2) (昭和四七年の年末から昭和四八年元旦まで休暇を取得したとの主張について)
原告後藤が、昭和四七年一二月三〇日、三一日、昭和四八年一月一日の三日間年次休暇をとったことは、同原告も認めるところである。
(3) (業務計画に基づき実施された各種工事等に全く参加しなかったとの主張について)
当時、被告会社は、第三章第一に示す各証拠、特に(証拠略)にあるような「中操張付け」の方針の下に、原告後藤に対しては、昭和四五年四月四班一、二号中央操作室から三、四号中央操作室に配置換えしたのを機に、それまで従事していた機器巡視、ユニット操作等の業務を取り上げ、専ら補助的業務である記録チェック、計器類のインク補充などの雑務をさせていて、業務計画に基づく各種工事に参加させなかった。従って、同原告は、各種工事等に参加しなかったのではなく、参加することができなかったのである(〈証拠略〉)。
二四  原告梅田
横浜火力建設所、横浜火力運転課及び発電課「発電設計工事」「巡視(補助)」「操作(補機)」「操作(補機指導)」の期間
(1) (パトロールを早く済ませ、パトロール結果の報告もせずにいい加減であったとの主張について)
被告会社は、右二三の2の(3)で述べた労務対策に基づき、原告梅田には、昭和四四年四月頃から二班三・四号中央操作室内の雑務を担当させて、パトロールをさせなかったし、同年八月一班一・二号中央操作室に配置換えの後も同様であり、昭和四六年頃この状態を解除した後もパトロールは班長と二人で行わせていたのであるから、右主張のようなことはあり得ない(〈証拠略〉)。
(2) (勉強をしなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠をもっても右主張事実を認めることはできない。
原告梅田は、昭和四一年から昭和四二年にかけて三回横浜火力の同僚と一緒に「周波数高低アラーム新設」等の業務改善提案を行い、被告会社に採用されているほか、昭和五一年五月には、二級ボイラー技士の免許を取得している(〈証拠略〉)。
(3) (母線接地装置を絶縁測定装置と誤って接続し、事故を起こしたとの主張について)
昭和四九年四月、原告梅田が右事故を起こしたことは、同原告も認めるところである。右事故は同原告の不注意によるものであるが、事故発生の背景には、第一に、本来装備されるべき安全装置が付けられていなかったこと、第二に、絶縁抵抗測定基準では、安全のために絶縁抵抗測定は原則として二人で実施することになっていたのに、同原告一人に行わせたこと、第三に、本来は、ボイラーの主機操作員が「遮断器・NFB依頼票」を作成して当直主任の印をもらい、電気の主機操作員に操作を依頼し、電気の主機操作員が補機操作員に操作を指示し、それぞれの所で必要な注意をなすべきところ、右依頼票が作成されずに、ボイラー主機操作員から直接同原告に指示があったこと、第四に、母線接地装置と絶縁抵抗測定装置はほとんど同じ形状をしているところ、母線接地装置が六号メタクラに置かれていたことは、当日の現場の責任者である酒井はじめ、当直の誰も知らず、同原告にも知らされていなかったことなどの事情があった(〈証拠略〉)。
二五  原告西野
1 鶴見火力第一機械課及び第一発電課「操作(補機)」「発電運営」の期間
(1) (検定制度や提案制度について、強い調子で論難し、合理化と結び付けて反対したとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、原告西野は、昭和三九年三月の分会代議員選挙に立候補し、その選挙ビラの中で、検定制度や提案制度は、労働者に競争心を植え付け、労働者をばらばらにするものであると主張していたことが認められる。
(2) (パトロールで大事に至るような異常があっても気付かないことが多かったとの主張について)
被告会社摘示の証拠の中には、昭和四四年頃、原告西野がパトロールをした後、班長の田口がパトロールをしたところ、押込通風機の回転部軸受部が過熱状態になっているのに気付き、調べた結果、潤滑油の劣化と油量低下による加熱が原因であることがわかったと述べる部分がある。
しかしながら、回転軸受部過熱の原因が潤滑油の劣化と油量低下にあるのであれば、これらは長時間にわたって進行するものであるから、当時一日につき六回も行われていたパトロールで同原告以外の者も誰も気付かなかったことになる(〈証拠略〉)。また、加熱状態による異常がいつ生じたのかを確定しなければ、同原告がそれを見過ごしたとはいえないが、その時期を確定する証拠もない。従って、同原告だけが気付かなかったのではなく、誰もが気付かなかったのである。被告会社は、同原告は大事に至るような異常があっても気付かないことが多かったと主張するが、被告会社摘示の証拠によっても右事例以外の事実は認められない。
(3) (旧火力廃止反対、新鋭火力建設反対をとなえていたとの主張について)
右主張事実は、被告会社摘示の証拠によってこれを認めることができる。
(4) (自己啓発意欲がなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠をもっても右主張事実を認めることはできない。
原告西野は、昭和五〇年一月一級ボイラー技士の、昭和五一年二月危険物取扱者(乙種四類)の各免許を取得し、昭和五五年被告会社から現業技術・技能A級(火力発電運転操作)の認定を受けている(〈証拠略〉)。被告会社においては、一級ボイラ技(ママ)士の資格が高く評価されていることは、右七の(5)で述べたとおりである。
2 横浜火力発電課「操作(補機)」「操作(補機指導)」の期間
(1) (異動研修期間中、技能習得意欲が欠けていたため、研修の成果がなく現場でうろうろしていたとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけのものであるから、右証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2) (腎盂炎のため、欠勤を含め約二か月間休務したとの主張について)
右主張事実は、原告西野も認めるところである。
(3) (高圧給水加熱器給水管弁閉止操作をした際、事前に確認された合図を待たずに操作し、危うく事故になりそうだったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように伝聞したことを抽象的に述べるだけのものであるから、右証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(4) (昭和五〇年九月頃、バーナー消火の際、バーナーを炉外に引き出すのを忘れたとの主張について)
バーナーを消火する時は、燃料弁を閉じ、残留燃料を排除するためにアトマイズ蒸気弁(燃料を噴射するために水蒸気を噴射する弁)とバージ弁(バーナー内に残った燃料油を炉内に吹き出して燃焼させるために水蒸気を噴射する弁)は開けておくが、消火には約一〇分位かかるので、その間作業員は中央操作室に戻って待機したり、他の仕事をしたりしている。この間は燃料が噴射されなくなってもバーナーが焼損することはない。アトマイズ蒸気弁とバージ弁を閉め、バーナーをそのまま炉内に放置するとバーナー本体が焼損することがあるが、アトマイズ蒸気弁とバージ弁は、消火が終わり、バーナーを炉外に引出す時閉じるのであるから、消火が終わって作業員が缶前に行って、右両弁を閉じながらバーナーを引き出さずにそのまま放置して帰ってしまうことは通常あり得ないことである(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠をもっては、右主張事実を認めるには十分でない。
二六  原告大村
1 潮田火力機械課汽機係及び汽機課「発電業務」の期間
(1) (分会執行委員長として作成した分会大会における活動方針の中で、会社の合理化方策に反対していたとの主張について)
原告大村が会社の合理化方策に反対していたことは、同原告も認めるところである。
(2) (職級制度について、「働く者の首を締めるような賃金体系を破らなければならない。」と、社内コミュニケーションについて、「我々の目をごまかす宣伝に過ぎない。」と宣伝していたとの主張について)
原告大村が職級制度や社内コミュニケーションについて、このような宣伝をしていたことは、同原告も認めるところである。
2 潮田火力調査係「主任」「計器保守」の期間
(1) (計器の修理依頼を受けても自らすぐ処理しようとしなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるものであって、いつ、どの計器の、どのような故障について、誰から修理を依頼されたのかといった具体的な事実関係が全く明らかでないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2) (第二次経営刷新方策、火力新体制等の会社の施策に反対していたとの主張について)
右主張事実は、原告大村も認めるところである。
(3) (昭和三九年三月、勤務時間中に計器室内でトランプ遊びをし、同年九月、同室内で天ぷらを揚げたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、右主張事実を認めることができる。右証拠のうちの(証拠略)によれば、その時原告大村と一緒にトランプ遊びをしたり、天ぷらを揚げたりしていた土屋良治は、そのことが障害になることなく、昭和五八年七月には鶴見支社営業開発課長に昇進していることが認められる。
3 潮田火力技術課計器係「計器保守」の期間
(1) (グループ内の業務進捗状況に無頓着で管理者としての自覚に欠けていたとの主張について)
被告会社は、昭和五一年頃になってようやく原告大村を計器の現場仕事に就かせたが、右二三の2の(3)で述べた労務対策に基づき、管理者としての処遇をせず、総括的仕事はさせず、年若い平従業員と全く同じ単純作業をさせるだけであった。「ユニット定検」(発電設備全体の分解点検で、技術上高い能力が要求されるし、また能力向上にもつながる業務)もさせなかった。主任会議や班長会議にも参加させなかった(〈証拠略〉)。被告会社摘示の証拠中、右主張にそう部分はたやすく信用することができない。
(2) (挨拶や会話をしないなど職場に溶け込もうとしなかったため、いつも孤立していたとの主張について)
第三章第一に示す各証拠、特に(証拠略)にみられるように、当時、被告会社は、原告らに対しては、話しかけず、話されても対話は一切しない、電話の取次はせず、レクリエーション参加等は理由をはっきり言って断るといった一般従業員の中からも非人間的ではないかとの声の出るような労務対策をとっていたのであるから、会話をせず、打ち解けなかったのは、原告大村ではなく、被告会社の労務対策に協力していた者ではないかと思われる。被告会社摘示の証拠中の右主張にそう部分はたやすく信用することができない。
(3) (上司から指示された工事設計書作成が十分にできなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠の中には、昭和四四年頃、鶴見火力「Ⅲ」の三号タービンの付属設備である温度計の配線修理工事について、右主張にそう部分があるが、この点は、(証拠略)に照らしてたやすく信用することができない。もっとも、原告大村は、当初からすべて完全にできたと主張するものではなく、その頃、頻繁に故障が発生していたラウター式排ガス酸素計を精度の高い故障のしにくい電気式の排ガス酸素計に取り替える工事の設計書の作成を命じられたときには、経験がなかったことから、十分な設計をするのは容易でなかったことは認めている。しかし、同原告は、間もなく習熟し、同じような工事の設計・工事仕様書を多数手がけるようになっていた(〈証拠略〉)。
(4) (資産カードの整理が大幅に遅れたとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、抽象的で、通常どの程度の処理をすべきものであり、これに対して原告大村の処理量がどの程度であったのかといった具体的な事実関係が明らかでない。同原告は、本来の事務を処理するかたわら、原告安藤に手伝ってもらいながら、約六か月かかって、各計器の写真と設置場所を示す略図を付け、カードで約一三〇枚、付属する計器で二〇〇〇個の作業を仕上げている(〈証拠略〉)と述べている。これが通常の処理に比べて劣るものであると認め得る証拠はない。
二七  原告阿部
1 川崎火力建設所及び川崎火力「B工事Ⅱ」「計器補修」「計器事務」の期間
(1) (毎日のように遅刻したとの主張について)
原告阿部も、被告会社主張の頃、遅刻したことがあることは認めている。同原告は、昭和三六年八月から昭和三八年三月まで川崎市市の坪の借上げの第七合宿に入居し、昭和三八年三月から昭和四三年頃まで借上げの境町第二寮に入寮し、その後本合宿の昭和町寮に入寮していたが、いずれの時も通勤に利用していた市営バスや会社がチャーターした臨港バスが道路の渋滞により大幅に遅れたために始業時刻に間に合わなかったものである。しかし、これは、同原告だけでなく、そのバスに乗る他の入寮者も同様に遅れていたのであり、その遅れはひどく、例えば、昭和寮から通勤していたときには、渋滞で停車しているバスから降り、停車しているバスを何台も歩いて追い越し、その先に停車しているバスに再び乗車するといった有り様で、渋滞を見越して早く寮を出ても間に合わず、東電労組が交通渋滞の緩和をスローガンに掲げ、川崎市に対して改善方の申入れをしなければならないほどの事情の下でのことである(〈証拠略〉)。
(2) (腎臓結核による休務及び健康管理上の措置により会社への貢献度が低くなっていたとの主張について)
原告阿部が腎臓結核に罹り、昭和四四年八月二日から約入か月間休務し、その後、昭和四六年九月二日に解除になるまで、健康管理上の措置として時間外勤務、深夜勤務、高所作業、重作業、宿直、出張が禁止されていたことは、同原告も認めるところである。
2 川崎火力保修課「改良・定検(指導)」「改良・定検(総括)」の期間
(1) (定検時に時間外勤務を指示されても拒否し、終業時刻になると無断で退社するとの主張について)
被告会社摘示の証拠は全く信用することができない。その理由を詳しく述べる。これらの証拠は、いずれも原告阿部の上司であった者の陳述書又は証言であるが、例えば、(証拠略)では、この主張に関して、昭和四七、八年頃のこととして、「定時点検時における保修業務は時間外勤務で行わなければならない仕事がありましたが、阿部君はこの時間外に行う仕事をやろうとしませんでした。」とあたかも全く時間外勤務をしなかったかのように述べており、その他の証拠も同様である。しかしながら、(証拠略)(賃金明細書)と(証拠略)によれば、原告阿部は、昭和四六年九月二日に前記健康上の措置が解除されると、その月から時間外勤務をしており、同月に二〇時間、一〇月に六九時間、一一月に四〇時間、一二月に二三時間、昭和四七年一月に一三時間、二月に一五時間、三月に九時間、四月に三八時間、五月に一五時間、六月に二六時間、七月に二八時間、八月に二時間、九月に二七時間、一〇月に四九時間、一一月に二九時間、一二月に一一時間と仕事の頻閑に応じての時間外勤務をしていることは明らかである。これらの上司は、本来、労働基準法により厳しく制限されているはずの時間外勤務について、会社が必要とするならば無定量に時間外勤務をすることが当然であるとの前提に立って、あたかもその時間外勤務をしないことが不都合行為であるかのように同原告を非難しているものである。このような考えは到底同調し得るものではないが、その点は差し置くとしても、同原告の上司として、同原告が健康上の措置が解除されたばかりの身体であるのにこのように長時間の時間外勤務をしていたことは当然に知っていたと思われるのに、会社から頼まれたからとはいえ、平然と時間外勤務をしていなかったと述べているものである。
(2) (三号機の薬液注入ポンプ自動化工事の設計ミスをし、電流スイッチを取り替えざるを得なかったとの主張について)
昭和四九年四月頃行われた右工事は、電源スイッチについていたサーマルの容量が小さいので、代りに遊休品のサーマルを外して入れ替えるというもので、ボイラー、電気、計器の三分野にまたがる仕事であった。原告阿部は、計器に関する部分を設計したが、その内容は、副長の武田が電気グループと連絡調整をすることになっていたので、武田の指図のとおり設計し、その工事設計書、工事実施仕様書、メーカーが提出した承認申請書類もすべて主任の高橋、副長の武田及び課長の立松の審査を受けた。ところが、工事施工後にモーターの容量不足が判明した。このミスは、武田が電気グループとの連絡調整を十分にしなかったことが原因であり、そのことは、武田自身が被告会社側の証人として出廷し、証言していることである。このように、被告会社側の証人でさえ原告阿部の責任でないと述べているような事柄を、被告会社は、何の根拠も示すことなく同原告のミスであると主張しているのである。
(3) (一号発電機定検工事の際、ドラムレベル発信器の調整作業で請負業者への適切な助言を怠り、作業が遅れたとの主張について)
ドラムレベル発信器は、ボイラーを安全に運転するために欠かすことのできない重要な計器であり、その定検工事は、「電気供給の重要な施設に関する工事」であって、監理員には原則として係長(副長)又は主任を充てることになっている。昭和四九年一二月頃行われた右工事もグループの最高責任者である副長の武田をはじめ、主任の高橋、清澤、内海、矢吹と原告阿部の合計六名が監理員として配置され、全員で工事のすべてを監理していた。同原告は、パトロール中にドラムレベル発信器の誤差が大きかったので合格としなかったところ、請負業者の調整員から再調整の申入れがあったので、調整に当たっての基本的バランスの取り方についてアドバイスをしておいた。ところが、この発信器が経年劣化していたため、調整に手間取る結果となったものである(〈証拠略〉)。従って、同原告の責任で作業が遅れたとはいえないものである。
(4) (複雑な仕事、手間ひまもかかる仕事はしなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけのものであるから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
二八  原告山川
1 千葉火力建設所機械課「発電用付属機器の建設関連業務」及び千葉火力運転課「巡視」の期間
(仕事に積極的に取り組まなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけのものであるから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
2 川崎火力建設所機械課「B工事Ⅱ」「汽缶据付」及び川崎火力運転課、発電課「巡視」「操作及び巡視」「汽缶操作巡視」「操作(補機)」の期間
(1) (社内検定制度について、「労働者に出世主義をあおり分断するもの」などとして反対するなど会社への敵意を煽っていたとの主張について)
原告山川が社内検定制度を「労働者に出世主義をあおり分断するもの」として反対していたことは、同原告も認めるところである。
(2) (会社の施策である「住宅総合政策」や賃金体系の改定について反対行動をとっていたとの主張について)
右主張事実は原告山川も認めるところである。
(3) (ボイラーの燃焼調整がうまくいかず、途中で放棄したとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけのものであって、(証拠略)に照らしてたやすく信用することができないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(4) (給水ポンプの停止操作の指示に素直に従わないとの主張について)
発電出力を一二万キロワット以下に減少するときには、三台運転する給水ポンプのうち、一台を停止することができるが、発電出力を一旦減少してもすぐ上昇させなければならない場合もあり、そのような場合は操作が頻雑であるし、ポンプの再起動までに時間がかかることから、昼夜及び平日と土曜、日曜、祭日の需要の変化、送電系統別の需要動向、各発電所の出力動向、天候の動向等を総合的に考慮して、操作員の間で意見を出し合った上で、一台のポンプを停止するか、三台で運転を継続するかを決めていた(〈証拠略〉)。被告会社摘示の証拠は、(証拠略)に照らすと、原告山川が右意見を述べたことをもって右主張のように述べているものと思われるから、右証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(5) (事故発生時に対応がわからず、中央操作室に残っておろおろしていたとの主張について)
昭和四六年七月頃、原告山川が一号ユニットのボイラー補機操作員として勤務していた際に、落雷の影響で一、二号ユニットの周波数、電圧が急変し、出力が低下する事故が発生した(〈証拠略〉)。被告会社摘示の証拠は、その際、同原告が何をしていいのかわからずにうろうろしていたと抽象的に述べるものであるが、その時の同原告や補機操作員の飯島の対応状況を具体的に詳細に述べる(証拠略)に照らしてたやすく信用することができないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
3 川崎火力発電課「操作(補機指導)」の期間
(1) (後輩の補機操作員を指導する立場にありながら、技術・技能が低かったため、指導することができなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠をもっても右主張事実を認めることはできない。
原告山川は、昭和三二年七月二級汽缶士の、昭和四九年三月公害防止主任監理者の、昭和五二年一〇月一級ボイラー技士の、昭和五四年一〇月第一種ボイラー・タービン主任技術者の、平成元年三月危険物取扱主任者(乙種四類)の各資格を取得し、昭和五五年被告会社から現業技術・技能A級(火力発電運転操作)の認定を受けている(〈証拠略〉)。
被告会社において、一級ボイラー技士の資格が高く評価されていることは、右七の(5)で述べたとおりである。
(2) (低圧重油ポンプの切替操作の際、初歩的なミスを犯したとの主張について)
低圧重油ポンプの切替操作は、現場へ出向いた補機操作員と中央操作室の主機操作員がページング(通話装置)で交互に連絡を取り合いながら行うものである。現場へ出向いた補機操作員は起動する側のポンプ(仮にこれをB号ポンプとする。)の逃し弁が「開」であることを確認し、ページングで中央操作室の主機操作員にB号ポンプの起動を依頼する。主機操作員は、B号ポンプの逃し弁が「開」であることを確認してB号ポンプを起動する。補機操作員はB号ポンプの運転状態に異常のないことを確認し、その旨を主機操作員に連絡する。主機操作員は、重油圧力及び流量に変動のないことを確認し、補機操作員にB号ポンプの逃し弁「閉」の指示をする。右指示を受けて、補機操作員は、逃し弁を徐々に「全閉」にする。この時点で停止する側のポンプ(仮にこれをA号ポンプとする。)との二台併列運転になる。徐々に閉めることにより、A号ポンプとB号ポンプの負荷が少しずつ平均になって行き、全閉状態で同じとなる。補機操作員は、逃し弁「閉」、二台併列運転に入ったことを主機操作員に連絡する。主機操作員は、状態に異常がないことを確認し、補機操作員にA号ポンプの逃し弁の操作を指示する。右指示を受けて、補機操作員は、A号ポンプの逃し弁を徐々に「全開」にして負荷をB号ポンプに移し、負荷がすべてB号ポンプに移ったことを確認した上で主機操作員にA号ポンプの停止を依頼する。主機操作員は、重油圧力、流量に変動がないことを確認し、補機操作員にA号ポンプを停止する旨を連絡した上、A号ポンプを停止し、重油圧力、流量に変動がないことを確認し、補機操作員に中央操作室への引き揚げを指示する。これが低圧重油ポンプの切替操作の手順である(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠は、昭和四六、七年頃、原告山川が、A号ポンプの逃し弁を「全開」にしないのに主機操作員にA号ポンプの停止を依頼したため、それに従って主機操作員がA号ポンプを停止したところ、発電機がトリップしそうになったと述べるものであるが、(証拠略)に照らすとたやすく信用することができないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
4 川崎火力発電課「操作(補機総括)」「操作(主機総括)」の期間
(1) (主機操作員としての責務を全うしなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけのものであるから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
原告山川は、主機操作員としての直接の業務のほか、その趣味を生かして会社に貢献し、昭和五一年には、同原告の作成した安全ポスターが川崎火力で掲示され、その後印刷されて全店に配布されているし、昭和五四年の被告会社主催の酷暑期先取り安全運動の際には、同原告の作成したポスターが採用され、社報に掲載されて全社に配布され、さらにその後、このポスターが被告会社の社史(三〇年史)に掲載されたりしている(〈証拠略〉)。
(2) (昭和五一年頃主機操作員として補機操作員の指導、指示をせず、タービン、電気分野の業務については対応が不安であったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけのものであるから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(3) (仮眠後業務に就くのが遅かったり、計器類確認後席に着くなり居眠りをはじめたとの主張について)
この主張に対する判断は、(2)で述べたのと同じである。
二九  原告池田
1 川崎火力建設所機械課「T工事Ⅲ」及び川崎火力保修課機械係「作業」「機械保修」の期間
(1) (多忙な同僚の応援をせずに終業時刻に退社したとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけのものであるから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2) (工事監理中用もないのに無断で現場を離れ、請負会社の詰所で雑談をしていたとの主張について)
当時保修課では、常時複数の工事監理を並行して行っており、監理員は、一つの工事現場に常駐することはなく、重点的にポイントを決めて必要に応じて現場に行っていた。また、監理員は、日常的に請負業者の詰所に行って打合せを行っており、その中で雑談することもあった(〈証拠略〉)。被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるものであって、いつ、どの現場で、誰に断るところを無断で現場を離れたというのか、また、いつの、どの詰所での雑談がどのように常識の範囲を超えるものであったのかといった具体的な事実関係を明らかにするものではないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(3) (「火力新体制」について、人減らし、労働強化、低賃金を押しつけるものであり、軍国調的職場支配の確立を目指すものであると誹謗・中傷していたとの主張について)
原告池田が、昭和四二年当時、「火力新体制」について、人減らし、労働強化、低賃金を押しつけるものであり、軍国調的職場支配の確立を目指すものであるなどと非難して反対行動をしていたことは、同原告も認めるところである。
2 川崎火力保修課「保修運営」「保修運営(調査)」「保修計画(主要)」の期間
(1) (予算消化状況の監理が不十分であったとの主張について)
被告会社摘示の証拠によっても、原告池田の、いつの、どの監理が、どのように不十分であったのかが明らかでないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2) (非定型的工事の設計能力が不足していたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によっても、原告池田の、いつの、どの設計が、どのように不十分であったのかが明らかでないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
3 川崎火力「保修」の期間
(1) (漫然と与えられた仕事を処理するだけであり、知識・技能の習得に努めようとする姿勢がなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠をもっても右主張事実を認めることはできない。
原告池田は、昭和三六年三月起重機運転士免許(天井走行)を取得し、昭和五九年二月足場の組立て等作業主任者技能講習を、昭和六〇年二月第二種酸素欠乏危険作業主任者技能講習を、同年七月有機溶接剤作業主任者技能講習を、昭和六一年四月特定化学物質等作業主任者技能講習を、同年一〇月ガス溶接技能講習をそれぞれ修了して、その資格を取得し、昭和六三年三月アーク溶接等の業務に係る特別教育を修了し、昭和五五年被告会社から現業技術・技能A級(火力発電保修工事)の認定を受けている。また、昭和五三年四月以降川崎火力技術部工事課主任として、同原告の直属の上司であった武菱今朝夫からは、設備を案外良く知っており、請負者とのコミュニケーションがあり、十分責任をもって仕事に取り組んでいた旨の評価を受けていた(〈証拠略〉)。
(2) (初歩的な天井クレーン走行減速機修理工事の工事監理をしていた際、自らの不注意で怪我をしたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、原告池田は、右工事の監理をしていた平成二年八月六日、右工事完了後、試運転中のサドル上で点検をしていたが、その際、ガーター内の同僚に注意をしようとして身を乗り出したところ、タービン建屋の柱に胸を打ちつけ、約三週間の通院治療を要する右第八肋骨骨折の傷害を負ったことが認められる。
三〇  原告小池
1 潮田火力汽缶課運転係「運転」「計量」「ミル」の期間
(1) (「独身寮内規」に反対し、請書の提出を拒否し、寮内で無届集会を開いていたとの主張について)
右主張事実は、被告会社摘示の証拠によってこれを認めることができる。
(2) (潮田火力休廃止を軍国主義復活を目的とするものであるなどとして反対活動をしていたとの主張について)
右主張事実は、被告会社摘示の証拠によってこれを認めることができる。
2 潮田火力汽缶課運転係及び発電係「計量」「巡視」、鶴見火力第三機械課発電係及び第三発電課「巡視」「操作(補機)」の期間
(1) (会社の施策である「住宅総合対策」について、反対活動をしていたとの主張について)
右主張事実は、被告会社摘示の証拠によってこれを認めることができる。
(2) (新鋭火力の設備や運転方法についての研修に反対し、積極的に新しい技術を習得しようとする意欲を欠いていたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、原告小池が新鋭火力の設備や運転方法についての研修に反対していたことが認められるが、同証拠によっても同原告はその研修に反対はしたが、受講を拒否したのではなく、所定の研修を受講したというものである。
3 川崎火力発電課「操作(補機)」の期間
(1) (誤って運転中のABCコンプレッサー冷却水配管のバルブを閉めてしまったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、伝聞を内容とするもので、(証拠略)に照らしてたやすく信用することができないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2) (一号ユニットの蒸化器の起動操作を誤り、蒸化器が危険な状態に陥っているのに、ただ茫然と立ち尽くしていたとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、(証拠略)に照らしてたやすく信用することができないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
4 川崎火力発電課「操作(補機指導)」の期間
(1) (知識・技能を積極的に身に付けようとする姿勢がなく、技術・技能が劣っていたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によっても右主張事実を認めることはできない。
原告小池は、昭和三八年七月危険物取扱主任者(乙種四類)の、昭和四八年五月一級ボイラー技士の、昭和五四年一〇月第一種ボイラー・タービン主任技術者の各資格を取得し、昭和五五年被告会社から現業技術・技能B級(火力発電運転操作)の、昭和五六年同A級(同)の各認定を受けている。そのほか、同原告は、昭和四九年一月三一日の事故想定訓練において「ナフサポンプトリップ事故」につき、同年五月の事故想定訓練において「給水ポンプ給水サクションパッキン破損」につき、昭和五五年七月の事故想定訓練において「ナフサP室粉末設備」につき報告を行っており、平成元年二月NOX低減改良工事の完了に伴って教育資料(汽缶編)の第三次改訂が行われた際には、本件訴訟が係属しているにもかかわらず、会社から選抜されてその執筆者の一人としてこれに携わり、平成二年三月には主機操作員育成研修(ボイラー)の指導員にもなっているのである(〈証拠略〉)。被告会社において、一級ボイラー技士の資格が高く評価されていることは、右七の(5)で述べたとおりである。
(2) (電気料金値上げについて事実に反する内容のビラを配布して厳重注意を受けたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、被告会社は、昭和五一年に電気料金の値上げをするため、その必要性を記載したパンフレット等により会社の内外の理解を求めていた最中の同年九月二日、原告小池が、川崎火力正門前で、右電気料金値上げに反対する旨を記載した日本共産党川崎火力支部発行の機関紙「明るい川崎火力」(同年八月三一日付け)を配布したので、同原告に対し、右機関紙に電気料金値上げに対する批判記事を掲載し、配布したことを理由に厳重注意をしたことが認められる。
三一  原告相澤一宇
1 川崎火力運転課及び発電課「巡視」「主配電盤及び巡視」「電気主配電盤巡視」「操作(補機)」の期間
(1) (業務知識・技能レベルが低位に止まっていたとの主張について)
被告会社摘示の証拠をもっても右主張事実を認めることはできない。
原告相澤一宇は、高校三年在学中の昭和三五年一二月電検三種に合格し、昭和四九年四月二級ボイラー技士の、昭和五六年一月エネルギー管理士(電気)の、昭和五七年電検二種の、平成元年三月危険物取扱主任者(乙種四類)の各試験に合格して各資格を取得し、昭和五五年には第二種電気主任技術者の認定を受け、昭和六三年一一月には工学技術委員に認定されている。被告会社においては、電検二、三種、エネルギー管理士の資格、特に電検二種、エネルギー管理士の資格は極めて高い評価を受けている。そのほか、同原告は、火力新体制移行前の昭和四〇年頃、電気の知識の薄い機械出身の従業員や新入社員に利用してもらうため、電気グループの者と共同で、「見易いシーケンス」という本を完成させ、昭和四八年から昭和五二年にかけて、手空き時間を利用して、職場の従業員が作業しやすいように盤内裏面結線図(バックシーケンス)を糊・刷毛等を使い関連機器別に順序よく整理し、目次を付して二〇図から三〇図の一冊の本に仕上げ、さらに、三、四号中央操作室への配属替え後、ほとんど一人で三、四号中央操作室関係の図面を整備し、一中央操作室当たり二〇冊、計四〇冊の本を完成させている。昭和三八年に作成した教育資料を昭和五二年に改訂した際には、「汽機編」の執筆者の一員に選抜されて、その作成に携わっている(〈証拠略〉)。
(2) (昭和四八年二月一二日、薬液注入ポンプの起動運転操作を誤り、安全栓を破損し、薬液を流出させたとの主張について)
右主張事実は原告相澤一宇も認めるところである。
(3) (当日になって突然休暇を取得し、代勤の手配などで上司らに迷惑をかけたとの主張について)
当日になって突然休暇を取得しなければならないことは誰でもあり得ることであり、原告相澤一宇もそのようなことが全くなかったと主張しているわけではない。しかし、被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけで、同原告がどの程度の頻度や回数で当日休暇を申し出ていたのかを明らかにするものではなく、勤務表等裏付けとなる証拠もないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
2 川崎火力発電課「操作(補機指導)」の期間
(電気の補機操作員として一〇年以上の経験がありながら業務知識・技能レベルが低位に止まっていたとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、(証拠略)と右1の(1)に述べた原告相澤一宇の能力とに照らしてたやすく信用することができないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
三二  原告丸山
1 川崎火力技術課計器係「計器保守」の期間
(1) (知識・技能の習得に積極的でなく、業務知識が不十分であったとの主張について)
被告会社摘示の証拠によっても右主張事実を認めることはできない。
原告丸山は、昭和三九年二月「三号缶カットダンバー開閉レバー銘板取付」について、昭和四〇年二月「原水タンク(五〇〇〇T)水位制御」について、昭和四一年三月片岡重行と共同で「一号缶ポンプ流量トランスミッター取り付け架台改造」、「二、三号重油加熱器ドレンコントローラー移設」についてそれぞれ業務提案をして、被告会社に採用されている(〈証拠略〉)。
(2) (時間外勤務を拒否し、重要な試験(オルザット分析)の経験が少ないとの主張について)
原告丸山は、昭和三九年四月芝浦工業大学二部機械工学科に入学し、昭和四四年三月同大学を卒業しているが、その在学中は、通学のためにどうしても時間外勤務をすることができない場合もあり、時間外勤務数が少ない月もあった。このことは、同原告も争わない。それでも、(証拠略)によれば、この間、多い月は三二時間、少ない月でも五時間、平均月一六、七時間は超過勤務をし、オルザット分析もしていたことが認められる。
(3) (昭和四二年九、一〇月頃、「誰もが苦しみ、誰もが損をする火力新体制の職場を打破しよう!火力新体制シリーズNo1」と題する反対ビラを作成して配布したとの主張について)
右主張事実は、被告会社摘示の証拠と原告丸山本人の供述によってこれを認めることができる。
2 川崎火力技術課計器係及び保修課「計器管理」「保修運営」「保修計画」「保修計画(主要)」の期間
(1) (休暇取得に当たり上司に届け出なかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠によっても原告丸山がいつ無届けで休暇をとったのか全く明らかでないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2) (見積りを間違えた上、なかなか再検討しようとしなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠と(証拠略)によれば、昭和四六年一〇月頃、原告丸山は、保修課員として、六号機の計器類定検工事の工事設計予算書等を作成したが、その際、制御機器に関する工事の労務費について、メーカー発注用の単価を適用すべきところ、構内常駐業者発注用の単価を適用して大幅に低く積算して決裁を受けたこと、このため、その価格では業者との折り合いがつかず発注することができなかったので、契約担当課から保修課に対して引当予算の検討を求められ、同原告が再検討することになったこと、右工事は、定検期間内に終了させる必要があったので、とりあえず工事請負契約をしないまま業者に着手してもらったこと、ところが、同原告は、同年一一月二一日から三〇日まで結婚のため休暇をとってしまったので、その間、先輩の谷田部恵愛に手伝ってもらい、工期の終了間際にやっと設計変更を終えることができたことが認められる。
三三  原告吉葉
1 神奈川支店川崎営業所営業課「受付」「需要家カード(審査)」の期間
(1) (貸付電球の管理がずさんであったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、原告吉葉は貸付電球受払表に何日かまとめて受払を記載したことがあるというものであるが、この証拠によってもそれ以上のその頻度等の具体的な事実関係は明らかでない。
(2) (料金収納時に入金額を誤ることが多かったとの主張について)
被告会社摘示の証拠によっても、原告吉葉がどの程度誤ったのかその程度を知ることができないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
2 神奈川支店川崎営業所及び川崎支社「電設」「電設(指導)」の期間
(1) (契約期間満了前に電気工事店に継続使用の有無の確認を怠ったとの主張について)
臨時電灯、臨時電力の継続使用の有無の確認について、原告吉葉は、決められたとおり、期限の来る数日前に、申込みを行った電気工事店にハガキで連絡し、さらに前日には電話で連絡をし、それでも留守その他で連絡がつかずに確認することができないときは、当面は継続として扱い、引続きハガキや電話で連絡をとって確認をするようにしていたが、実際には契約期間が過ぎてから連絡をしてくる電気工事店もかなりあった(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠は、期間経過前に確認することができなかったのは同原告が職務を怠ったからであると述べるが、それが職務を怠ったことによるものであるとする理由を具体的に述べるものではないから、この証拠をもって同原告が継続使用の確認を怠ったと認めることはできない。
(2) (契約容量等を決定する過程の計算に誤りが多かったとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、原告吉葉は、昭和四八年一〇月と一一月に、契約容量等を決定する過程で計算を誤ったことがあると認められる。
3 川崎支社営業課「受付(審査)」の期間
(1) (工事費用の算定に誤りがあったとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、原告吉葉は、昭和五〇年九月から昭和五一年二月にかけて、客の負担する工事費用の算定を誤ったことがあると認められる。
(2) (上司の審査を経ないまま勝手に客に工事費用を請求したとの主張について)
被告会社においては、客の負担する工事費用は、工事設計竣工採算総括書により課長までの決裁を受けた後に客にその金額を連絡し、精算金を請求すべき時はこれを請求することになっていた。原告吉葉も、客からの求めにより早急に処理しなければならないのに上司が不在であったような場合に、例外的に課長までの決裁を経ないで採算して請求をしたことがあることは認めているが、被告会社摘示の証拠によっても、それがしばしば行われていたとまでは認めることができない。
三四  原告小原
1 神奈川支店川崎営業所配電課「管理」の期間
(1) (何一つ業務改善に対する前向きな意見を述べようとせず、一人無関心な態度をとっていたとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、約二〇年も前に既に配電課長であった者が、当時の大勢の部下の中の一人であった原告小原について印象程度の記憶を述べるものであり、しかも、それは被告会社が右主張の趣旨を印刷した書面に「右の通り相違ありません。」と記載して署名押印しただけのものであるから(被告会社から提出された陳述書はすべてこの形式である。)、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2) (繁忙期に他の人の業務を積極的に手伝おうとする姿勢がなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は右陳述書であり、その内容は、右主張の事実を伝聞したというものであるから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
2 神奈川支店川崎営業所及び川崎支社配電課「調査」「管理」「機械化運営(指導)」「設計(主要)」「設計(特殊)」の期間
(1) (担当業務をてきぱきと責任をもって処理したり積極的に他の人の仕事を手伝ったりしようという姿勢がなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠(〈証拠略〉)によれば、原告小原は、昭和四四年頃から昭和四六年頃にかけて、会社の中で低い職級に止めおかれていることに不満を持ち、仕事に対する熱意を失って、仕事に積極的に取り組む姿勢に欠けていたことが認められる。もっとも、右証拠中、そのことの表れとして、動力負荷管理カードの補正作業をゆっくりしていたとか、異動表の作成のスピードが遅かったとかを述べる部分は、他の者との比較において処理件数等によって明らかにするものではないから、この証拠をもって、同原告が動力負荷管理カードの補正作業をゆっくりしており、異動表の作成のスピードも遅かったとまでは認めることはできない。
(2) (動力負荷管理カードの補正業務を的確に処理しなかったため他係から苦情を寄せられ、アルバイトを雇って補正作業を行わなければならなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠によっても、原告小原の業務処理のどのような点が的確を欠いたのか、他係からどのような苦情があったのか、同原告のしていた仕事はアルバイトにもできることであるのか、アルバイトが何人で何日かかって何枚のカードの補正をしたのかといった具体的な事実関係が全く明らかでないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(3) (自分勝手な休暇取得の方法をとっていたとの主張について)
この主張に対する判断も右(1)で述べるのと同じであり、原告小原が事前に届けることなく休暇をとっていたことは認められるが、勤務表等の証拠がないから、被告会社摘示の証拠だけではその程度を判断することができない。
三五  原告金城
1 神奈川支店川崎営業所総務課、川崎支社経理課「倉庫(総括)」の期間
(1)(現品台帳の記載に記入漏れや記入相違、ミスが多いとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、(証拠略)に照らしてたやすく信用することができないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2)(直営工事班が使用する資材の事前準備をせずに当日の朝準備するとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、(証拠略)に照らしてたやすく信用することができないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(3)(現品が大量に搬入された時も担当外の現品の荷上げ荷下し作業に協力しないとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、(証拠略)に照らしてたやすく信用することができないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(4)(現品が搬入される日や期末の最も忙しい時に休暇をとることが多かったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、抽象的に右主張のとおり述べているが、勤務表等の具体的な休暇日を明らかにする証拠がないから、その程度を判断することはできない。
2 川崎支社経理課「倉庫管理(総括)」の期間
(1)(資材事務所内での内勤事務の際、大きな声で回りの者に話しかけていたとの主張について)
程度の問題であるが、被告会社摘示の証拠によっても、それが勤務評定上不利益に評価するほどのものであったとは認め難い。
(2)(期末に毎年のように連続して休暇をとるとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、原告金城は、昭和四九年三月二五日から二九日まで、昭和五〇年三月二七日から二九日まで、昭和五一年三月二九日、三〇日といずれも期末に連続して休暇をとっていることが認められる。
三六  原告宮城
1 神奈川支店高津営業所配電課「検査」「図面協議」「調査」の期間
(1)(当日調査分を整理せずに帰ってしまい、社外からの問合わせに答えられなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠によっても、それがいつ、どこから、どのような問合わせがあったのかといった具体的な事実関係が判然としないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2)(飛込みの調査指示に文句を言って反抗的態度をとったとの主張について)
被告会社摘示の証拠の中には、原告宮城はしばしば飛込みの仕事を拒否していた旨を述べる部分があるが、抽象的にそのように述べるだけで、いつ、どの客について調査を拒否したのかといった具体的な事実関係は全く明らかでなく、(証拠略)に照らしてたやすく信用することができないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
なお、新増設について、客の申込みから送電までの仕事の流れは、後記三七の1の(1)で述べるとおりである。
(3)(図面協議担当者として無責任かつ不親切な態度をとっていたため、会社に苦情がきたとの主張について)
当時は、神奈川県電気工事組合との間で電気工事店の申込みは午前中に行うとの合意がなされていて、営業所の店頭にもその旨表示されていたが、電気工事店の中には、そのことを知りながら、午後ならば待たずに済むと決め込んで度々来る者もあった。このため、原告宮城は、事務担当者の村川に右のような申込みを安易に受けるべきではないと言い、同人とやりあったことはあった。また、午後の申込みであってもいったん受け付けたものは図面協議に応じていたが、その際、今後は午前中に受付をしてほしいと要請していた(〈証拠略〉)。被告会社摘示の証拠の中には、同原告は、午後受付をしないことを知らないできた電気工事店の者に対しても不親切であったと述べる部分があるが、この点は、(証拠略)に照らしてたやすく信用することができない。
2 神奈川支店高津営業所配電課「設備管理」の期間
(1)(マップセンターでの検収業務を無理だと言って拒否したとの主張について)
被告会社では、配電工事による電柱、電線、機器類、引込線などの新設や取替え等に伴う架空配電線路図の原図等の補正作業をマップセンター(関係会社)に委託して行い、被告会社の担当者が、マップセンターへ出向いて、検収(正確に補正されているかどうかを調べ、間違っている場合にはそれを訂正させる仕事)と指導を行っている。
被告会社摘示の証拠は、右主張にそうことを述べるものであるが、(証拠略)に照らしてたやすく信用することができない。
原告宮城は、検収する量が多かった上、補正ミスや補正漏れが発見されることが多かったので、上司に対し、一人ではなく複数の者で行うべきだと申し出たことはある(〈証拠略〉)。
(2)(勤務時間中に居眠りを繰り返していたとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、「昭和五一年九月頃、宮城君は仕事中居眠りをしていることが何回もありました。」と述べるものであるが、このような供述だけでは、右主張事実を認めることはできない。
三七  原告小林一太郎
1 神奈川支店鶴見営業所配電課「検査」の期間
(1)(新増設調査業務について、指示された飛込みの仕事を拒否したとの主張について)
新増設について、客の申込みから送電までの仕事の流れはおよそ次のとおりである。客から新増設の依頼を受けた電気工事店は、電気使用申込書と電気工事設計図(内線図面)に所定事項を記入し、申込み受付窓口の営業課電設方に申し込み、受付後、電設方において、電気工事設計図に記載されているものが電気設備技術基準や内線規定に適合しているか、東京電力の供給規定に適合しているかについて、図面協議を行う。図面協議を終わった申込みについては、電設方で設計を依頼し、設計の終わったものは電設方で保管する。電気工事店から屋内配線の工事落成の届出があり、送電依頼のあったものについて、配電工事を依頼し、同時に配電工事の規模と客の希望により送電日を決める。電設方は送電日を記入した電気工事設計書(内線図面)を試験係に送付して調査を依頼する。調査依頼を受けた試験係の事務方では書類を送電日ごとに区分けして保管し、調査日の前日に調査員ごとに申込番号、需要家(客)名を記入した作業日報を作成し、電気工事設計書と申込書とともに調査員に渡す。調査員は翌日調査すべき場所を確かめ、作業のし易いように順路を組み、順番を日報に記入する。当日、調査員は、午前九時頃会社を出て順路に従って現場をまわり、通常午後三時頃帰社する。そして、当日調査した分の調査結果の整理を行い、その後に翌日の調査業務の準備をする。このように、送電日は客の都合に合わせて決められていたから、どうしても当日送電を必要とする客が調査日に不在になることなどごく例外的なことであり、その際は、電気工事店は電設方に連絡をとり、電設方と翌日以降の調査日を打ち合わせて決めることになっていた。さらに、例外的に当日調査をしなければならない緊急事態で、調査員の帰社を待てないような場合は、試験係の事務方や主任が対応していた(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠の中には、原告小林一太郎はしばしば飛込みの仕事を拒否していた旨を述べる部分があるが、抽象的にそのように述べるだけで、いつ、どの客についての調査を拒否したのかといった具体的な事実関係は全く明らかでないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2)(打合わせで決まっていたにもかかわらず、不平を言って積極的に定期調査業務の応援をせず、処理件数も半分程度であったとの主張について)
昭和四一年一二月頃、集団住宅の建設が集中し、定期調査員が新増設調査の仕事の応援にまわったことと定期調査員二名が病気や怪我で入院したことなどが重なって、客の屋内配線の絶縁等を調査する「定期調査」の仕事が四千軒分も未処理のまま残ってしまうという事態になった。このため、二千軒分の処理を他係の工事係に依頼し、残りの二千軒分を自係の試験係内で処理することとした(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠の中には、原告小林一太郎は、新増設調査を担当していたが、他の者が頑張っているのにわれ関せずといった態度であったと述べる部分がある。しかしながら、当時、同原告は、新増設調査を担当しており、新増設調査については定期調査員の応援を受けるほどに忙しかったというのであるから、それにもかかわらず同原告が定期調査を応援しなかったということとの間には矛盾があるように思われる。(証拠・人証略)によれば、同原告は、それでも全く応援をしなかったのではなく、昭和四二年一月から三月にかけて、他の調査員と同様に月二回位、合計六日間位定期調査の応援をしていることが認められる。
2 神奈川支店高津営業所配電課「管理」の期間
(1)(諸統計、報告書の作成が遅く、しかも的確でなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、原告小林一太郎は、配電関係工事実績表を作成しており、その中の請負業者の一人当たりの作業高を表す欄の内容に間違いがあったと述べるものである。
しかしながら、この配電関係工事実績表は稼働人員調書(〈証拠略〉)と呼ばれていたものであるが、それは、請負業者が作成して被告会社に提出するものであって、同原告が作成するものではないし、同調書には請負業者一人当たりの作業高の欄もないのであるから、同原告がこれを誤って作成するはずはないのである(〈証拠略〉)。
(2)(高圧系統図の補正業務の処理を三か月も怠った上、管理グループ全員の応援による補正後もいい加減な作業態度で設計担当者の業務に支障を与えていたとの主張について)
(証拠略)に照らすと、被告会社摘示の証拠をもっては右主張事実を認めるには十分でない。
右主張の時期とは若干ずれるが、昭和四七年七月一日から昭和四九年一二月一〇日まで原告小林一太郎の直属上司であった高津営業所配電課課長の斉藤宗雄は、本件訴訟の証人として、この間の同原告の仕事ぶりを、ひととおり現職級の仕事については一生懸命やってくれていて、勤務成績に特段問題はなかった旨証言しているのである。
三八  原告相澤清
1 神奈川支店鶴見営業所営業課「検針業務」「料金計算業務」「記帳」の期間
(検針業務の処理に手間取り、帰社が遅くなるため、その後の書類整理を同僚が手伝わなければならなかったとの主張について)
被告会社摘示の(人証略)は、昭和二六年当時の原告相澤清の検針業務の処理について、「相澤君の場合は若干帰社時間が遅くなりまして、終わった後、皆さんが手伝って何か処理してたように感じておりました。」といった四〇年も前の印象を述べる程度のものであるから、この証拠をもって同原告の事務処理能力が劣ると認めることはできない。
2 神奈川支店鶴見営業所営業課「受付Ⅰ」「現調・壇用」の期間
(1)(長電話をしたり、受付箋の記入に必要以上の時間をかけるなどマイペースな受付処理をしていたため、客を待たせたとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、原告相澤清は客との電話の応対が長く受付箋への記入が遅いから客を待たせてしまうことがあったと述べるだけのものである。これに対し、同原告は、客からの電話の問合せや受付は必ずしも簡単なものばかりではなく、客の強い要望であっても供給規程などの関係からその要望を受け入れられないときなどには、時間をかけて客の納得を得るまで説明を重ねるので、やむを得ず応対が長くなるときもあったが、受付箋への記入で必要なものは、客の住所、氏名、電話番号、客番号、用件、出向日時などであり、電話を聞きながら受付箋に記入するので、時間がかかるようなことではないと述べている(〈証拠略〉)。それぞれの立場によって見方の異なるものであり、この証拠だけでは、同原告の勤務態度が勤務評定に不利な影響を及ぼすものであるとはいえない。
(2)(違約処理票に違約金算定や交渉経過などがほとんど記載されていないため、客の問合せに即座に回答することができずに迷惑をかけたこともあったとの主張について)
被告会社摘示の(証拠略)によれば、原告相澤清の作成した違約処理票は、営業課長の鈴木治平のもとに回付されてくる段階では、記入されていなければならない事項はそれなりに記入されていたと認められる。被告会社摘示のそのほかの証拠は、右認定の事実に照らしてたやすく信用することができない。
3 神奈川支店鶴見営業所及び鶴見支社営業課「電設」「現調・違約」「営業」「受付(指導)」の期間
(1)(未収電気料金を考慮せずに違約金だけしか収入せず、客に送電することができなかったため苦情を受けたとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、具体的な日時や客先などを明らかにすることなく、抽象的に右主張のとおり述べるだけのものであり、裏付けとなる証拠もないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2)(工事費の有償無償の判定の誤りや請求金額の計算に誤りが多く、上司の審査を経ないまま客に工事費用を請求し、後に誤りが発見され請求費用を訂正したことがあったとの主張について)
原告相澤清に工事費の有償無償の判定や請求金額の計算の誤りが全くなかったとはいえないが、被告会社摘示の証拠中のその誤りが多かったと述べる部分は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけで、裏付けとなる証拠は何もないから、たやすく信用することができない。また、上司の審査を経ないまま客に工事費用を請求し、後に誤りが発見され請求費用を訂正したと述べる部分は、伝聞を内容とする抽象的なものであって、具体的な事実関係を明らかにするものではない。従って、これらの証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(3)(昭和四七年四月二八日、マイカーによる交通事故で約七か月間休務し、復帰後も時間外勤務禁止、宿直勤務禁止、出張禁止等の健康管理上の措置を受けていたとの主張について)
右主張事実は原告相澤清も認めるところである。
右事故は、信号のない交差点で、一時停止の標識を無視して走ってきた相手車が同原告運転の自動車の左側面に衝突したものである。同原告は刑事処分を受けていない(〈証拠略〉)。
三九  原告宮崎
1 神奈川支店鶴見営業所配電係、配電課配電係及び配電課試験係「検査」の期間
(飛込みの調査依頼を渋ったり、繁忙時にも業務量処理が少なかったりしたとの主張について)
この主張の前段についての判断は、右三七の1の(1)で述べるのと同じである。後段については、被告会社摘示の証拠をもってはこれを認めることはできない。
2 神奈川支店鶴見営業所配電課試験係及び鶴見支社工事課試験係「図面協議」「所内検査」「図面協議(自家用)」の期間
(1)(病弱で、他の同僚の半分程度の業務量しか処理し得なかったとの主張について)
原告宮崎が、昭和四四年中耳炎のため入院し、有給休暇のほかに一七日間欠勤したこと、昭和四七年五月一三日から六月一日まで肺炎のため入院したこと、昭和四八年かぜから上気道炎を併発して、有給休暇のほかに数日間欠勤したこと、昭和五一年二月一日から二一日まで腰部椎間板ヘルニアのために入院し、退院後も高所作業・重作業・車両運転禁止等の健康管理上の措置を受けていたことは、同原告も認めるところである。
このほか、昭和五六年一二月は頭部手術のため一七日欠勤している〈証拠略〉。
(2)(一、二日の業務量を一週間もかけて処理するなど、業務処理能率が著しく悪かったとの主張について)
被告会社摘示の証拠の中には、右主張にそう部分もあるが、例えば、このうちの(人証略)は、原告宮崎の業務処理量が少ないということは、他の同僚と比較した上でのものではないと述べるなど、いずれも何を基準にしてそのように判断しているのかわからないものであるから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(3)(直前になって休暇の申請をしていたとの主張について)
(証拠略)(勤務表)によれば、原告宮崎は、昭和五一年四月は、二回家事都合の理由で休暇をとっているが、そのいずれも前日休暇を申し出ていることが認められる。また、(証拠略)(勤務表)は被告会社主張の時期とは異なるものであるが、これによれば、同原告は、昭和四八年一月、昭和四九年四月ないし六月、昭和五〇年一〇月、昭和五六年一〇月の六か月のうち、休暇を前日申し出たのは六回(うち二回は国政調査員としての公務のため)であり、当日申し出たのは三回であることが認められる。そのほかの時期の状況は勤務表等の証拠が提出されていないので明らかでない。
四〇  原告倉内
1 神奈川支店鶴見営業所営業課「作業事務」「電設」「需要家カード(審査)」「受付」及び鶴見支社営業課「営業」の期間
(1)(異動審査業務を迅速に処理しなかったため、電気料金領収証発行に間に合わず客に迷惑をかけたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、平成三年八月現在鶴見支社で使用している需要家カードのうち新吉田地区の四〇〇〇二番から四〇一一九番までの昭和四三年五月から昭和五一年一二月までに異動があったものについて調べたところ、原告倉内の方が同僚の小高や川口よりも一件当たりの審査に要する日数が長かったことが認められる。これは、同原告と小高、川口の担当事務の内容や処理量を考慮に入れないで単純に処理日数だけで比較したものであるが、この間の同原告の処理件数は小高の一三倍、川口の四倍であることも認められる。被告会社摘示の証拠によっても、同原告の事務処理の遅れによってどの客にどのような迷惑をかけたのかといった具体的な事実関係は明らかでない。
(2)(勤務時間中に無断離席することが多く、業務処理量が少なかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけのものであるから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(3)(訂正を要する異動原票を後回しにしたり、机の中にしまったりして業務に支障を来したとの主張について)
この主張に対する判断は、右(2)で述べるのと同じである。
通常、カード方においては、検針日の間近なものなどで急ぐものを優先して処理し、内容が間違っていることがすぐわかるものはその場で訂正し、内容を検討したり、他係に問合せをする必要のあるものなど時間のかかるものは、いつまでもそれに携わっているとほかのものまで滞ってしまうので、後に調べて処理をすることにしていたから、訂正を要する異動票を後回しにすること自体は通常あり得ることであった(〈証拠略〉)。
2 鶴見支社営業課「営業」「受付(指導)」の期間
(1)(異動審査業務の基本を無視し手元の異動原票をその日のうちに処理しなかったとの主張について)
電気設備の増設に伴う契約変更などによるメーターの取替えは、電気工事店や客の都合のよい日に行うので、たまたまメーターの取替工事を行った日が検針日の直前であったり、同日になったりすることもあり、また、メーターの取替工事から各担当者の業務の処理を経て料金課に至るまでには、三、四日を要するので、検針日の近くに工事を行った場合にはどうしても精算が伴うことになる。戸数の多いマンションやアパートが新築された時、三、四月の転居の多い時期、夏のクーラーなどの新、増設で契約変更の多い時期等には大量に異動原票が送付されてきて同日内に処理しきれない場合もある(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠の中には右主張にそう部分があるが、印象程度のことを抽象的に述べるものであるから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2)(雑談をしたり、休暇のとり方に問題があり、仕事の処理量が他の者より少なかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠によっても右主張事実を認めることはできない。
(3)(業務の一元化に際して異動通告票の作成を上司から指示されたがこれを行わなかったとの主張について)
昭和四七年一二月に「需要家照会・異動処理業務の一元化」が実施された際に、従来営業係で行っていた異動審査業務と、料金課台帳係で行っていた電気料金算出等に必要な異動内容を本店の電算機に入力するための異動通告票作成業務を営業係で一元的に処理することとした。しかし、営業係内においては、当面は、従前どおり、原告倉内が異動審査を、料金課から営業係に移ってきた三名が異動通告票の作成を分担することにした(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠は、一元化後数か月して料金課から転勤してきた者も異動審査に慣れてきたので、係長の山下滋が、全員で異動審査から異動通告票作成までを行う構想の下に、同原告に対しても、異動通告票作成を分担するように指示したが、同原告は簡単なものしか行わなかったと述べるものであり、同原告も異動審査事務に自負を持っていたので、これを行っていたと述べている(〈証拠略〉)。
3 鶴見支社営業課「異動審査(指導)」「電設(指導)」の期間
(1)(臨時電灯、臨時電力の継続時における処理を怠り、料金収入、撤去作業に不都合を生じさせたとの主張について)
臨時電灯、臨時電力とは建設工事用等に使用される契約使用期間が一年未満の電灯、電力の需要である。この臨時電灯、臨時電力については、需要場所(工事現場等)が客の居住地と離れていたり、客が移転してしまって連絡がとれなくなったりすることがあるので、債権確保の観点から、前払金、予納金の制度が設けられている。臨時電設担当者は、臨時分についてそれぞれの契約期間終了日を把握しておき、期間終了日の前々日(昭和五二年以降は期間終了日の三日前)までに電気工事店に連絡をとり、期間終了後も継続して使用する意思があるかを確認していた。その確認方法は、担当者から、電気工事店にハガキで連絡し、さらに前日には電話で電気工事店に連絡し、連絡がとれないときは電話で確認するという方法をとっていた(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠の中には、原告倉内が担当していた時には、この意思の確認をしないまま期間が経過してしまい遡って継続手続をして後日入金となることや、継続しない場合に会社の撤去作業が遅れたことがある旨を述べる部分があるが、右三三の2の(1)で述べたように、必ずしも担当者の責めによらない事由で期間を経過することもあるから、期間が経過したからといっていちがいに同原告が処理を怠ったとはいえないはずである。被告会社摘示の証拠によっても、この間の事情は明らかでないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2)(同僚と比べて簡単な資料しか作成することがな(ママ)きなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、昭和五一年の夏頃、毎月一〇日ごとに行われる短期工事の打合せに使う資料を上司が原告倉内に作成させたところ、期待に反した資料しか作成することができなかったというものであるが、その証拠によっても、上司の求める資料は経常的に作成されている日報その他の資料と同じようなものであって、わざわざ作成する必要もないと思われるから、その資料の作成を命じたかどうかも疑わしく、右証拠をもっては右主張事実を認めることはできない。
四一  原告佐藤
神奈川支店鶴見営業所配電課及び鶴見支社配電課「設計」の期間
(1)(設計書に安全などの指示事項の記載が漏れていたため、死亡事故につながったとの主張について)
昭和四二年四月、市道の舗装に伴う地中線管路移設工事に支障となる電柱を移設するため、工事請負業者の作業員三名が電柱上でトランスを降ろす作業をしていた際に、工事基準等で決められている倒壊防止の支えをしなかったため、突然電柱が倒れ、うち一名が死亡し、二名が重傷を負うという事故があった(〈証拠略〉)。
被告会社は、原告佐藤が設計書へその際の注意事項を記載しなかったことが右事故の原因であるかのように主張するが、倒壊防止措置をすることは工事業者としてなすべき基本的事柄であるから、同原告が設計書にその注意事項を記載しなかったことが事故につながったとは思われない。被告会社摘示の証拠でさえも設計書に記載しなかったことが事故の発生に結び付くものではないと述べている(〈証拠略〉)。
(2)(客の理解を十分得ずに設計し、苦情を受けたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、原告佐藤の設計した工事に関して、昭和五〇年六月頃、工事内容について問合せがあり、昭和五八年八月頃、客から苦情が寄せられたこと、後者の苦情は、引込線の改修工事により引込線がベランダの下を通るようになったため、布団が干せなくなったというものであることが認められる。
前者の事実関係は次のとおりである。同原告は、昭和五〇年六月頃、鶴見区東寺尾五丁目の電柱飯山三〇九号柱について建替工事を行うために現場調査をし、近くの上島隆方を訪れて建替えの必要があることと既設柱の隣へ建て替えるのが適当であることを同人の妻に話して承諾を得た上、建替工事の設計をした。ところが、工事業者が工事を完了した後になって、「実は主人から将来車庫を造るかもしれないと言われてしまったが、もし電柱が支障になった時には無償で移動させてくれますか。」との申し出があったので、設計係長の武田稔夫がその際には無償で移動させる旨を記載した確約書(〈証拠略〉)を差し入れたというものである(〈証拠略〉)。
(3)(昭和四六年七月と昭和四九年一一月の配電業務の一部機械化移行に伴い、全員で既に設計が完成した設計書を入力原票に書き替える作業をしている中、何度も上司の時間外勤務の指示を拒否して退社したとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、いずれも抽象的に右主張のとおり述べるものであって、いつ、誰が、どのような根拠で時間外勤務を命じたのか、原告佐藤がいつ拒否したのかといった事実関係が全く明らかでない。
この書替え作業は恒常業務以外の作業であることから、事前に労使で協議し、業務量、期間、時間外勤務時間数等を確認し、時間外勤務が強制とならないよう取り決めていた。係長の大石が、朝のミーティングで「既に予定が入っている者は予定を優先させて結構です。」と述べていたので、同原告は、予定のある日は帰り、予定のない日は時間外勤務をしていた。同原告がした時間外勤務の時間数は、昭和四六年七月が二四時間、昭和四九年一一月が一一時間であった(〈証拠略〉)。
(4)(昭和四七年一二月に飲酒運転による事故を起こし、負傷や運転免許停止により職務を全うすることができなかったとの主張について)
原告佐藤が、昭和四七年一二月一一日飲酒して同原告所有の自動車を運転中、同自動車をガードレールに接触させて負傷するという交通事故を起こし、罰金四万五〇〇〇円、運転免許停止九〇日の処分を受けたことは、同原告も認めるところである。
同原告は、同月二六日頃から出勤し、昭和四八年一月中は現場出向の不要なものの設計を行い、同年二月上旬九〇日間の免許停止処分を受けたが、講習を受けて四五日間に短縮され、同年三月からは通常の業務に戻った(〈証拠略〉)。
四二  原告石森
神奈川支店高島通営業所中山出張所及び中山営業所配電課「調査」「調査(特殊)」「調査(総括)」の期間
(1)(業務上必要な「単独運転可」の認定を取得しようとする意欲がなく取得することもできなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、神奈川支店では、交通安全を確保するため、業務上でバイクや自動車を運転する者には、運転免許のほかに支店による安全運転の技能評定を受けさせ、「単独運転可」の認定(業務上車両運転認定)を受けた者だけに業務車の単独運転を許可していたこと、原告石森は、バイクについてはこの認定を受けていたが、自動車については認定を受けていなかったので、昭和四七年一〇月にその審査を受けたが、会社の技能認定委員会は、株式会社綱島自動車教習所の運転技能評定報告書に基づき、同原告の運転技能を「単独運転不可」と判定したことが認められる。
同原告は、昭和三八年に自動車の運転免許を取得したが、その後はいわゆるペーパードライバーであったため、右認定を受けることができなかったが、その後昭和五七年に「単独運転可」の認定を受けた。(〈証拠略〉)。
(2)(しばしば遅刻し、注意されても改めなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、中川勇の陳述書と証言であるが、抽象的にそのように述べるだけで、出勤簿その他具体的な裏付けのあるものではないから、そのようなことが全くなかったとはいえないにしても、右証拠をもって右主張事実を認めることはできない。特に、中川は原告石森とは組合運動の進め方について鋭く対立し、仕事の上でも何かと対立し、同原告をこころよく思っていなかった者であるから(〈証拠略〉)、同人の述べるところはこの面からもたやすく信用することができない。
(3)(不在再出向、漏電調査依頼に基づく出向の要請に素直に従わず、別の者が出向せざるを得なかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、抽象的に右主張をなぞるだけのものであるから、(証拠略)に照らしてたやすく信用することができず、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
不在再出向は飛込みといわれている仕事であるが、これが度々あるものではないことは、右三七の1の(1)で述べたとおりである。
(4)(業務量が多いと不平を言うため結果として処理する仕事の量も少なかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠も中川勇の陳述書と証言であり、その中には、昭和四七、八年頃には電気使用申込件数が多く、新増設調査件数が増加したため、時間外勤務に及ぶこともしばしばであったが、原告石森は業務量が多いと文句を言うので仕事がやりずらかったと述べる部分があるが、右証拠によっても、同原告の業務処理量が他の者よりも少なかったと認めることはできない。
当時は、恒常的に新増設調査業務の業務量が多かったので、同原告が、主任でもあり当時の東電労組中山分会の委員長であった中川勇に対して度々「調査員の人員を増やしてほしい。」と要求していたので、このことを捉えて中川は右のように述べているものと思われるが、同原告は、自分の業務量だけを減らせと要求したのではなく、職場全体の人員増を要求したのである(〈証拠略〉)。
(5)(検査済みのメーター類を返却せずに放置していたとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、所内検査日には、配電工事の作業方が撤去したメーター、アンペアブレーカーなどを試験室に持ち込み、検査担当者がそれを良品、準良品、不用品に区分けし、区分けが終わるとすぐに作業方に連絡し、返却するようにしていたところ、原告石森は、検査が終了したことを作業方に連絡せず、上司が指示すれば反抗的なことを言ってやっとするといった態度であったと述べるものである。この点について、同原告は、当時は、検査を終えた計器等は検査日の午後四時半頃に試験室に作業方が引き取りに来ることとされていたので、検査を終わっても連絡する必要はなく、仮に放置されていたことがあったとすれば、それは作業方で引き取りに来なかったためであると述べているが(〈証拠略〉)、そのような取決めがあったかどうかについてはいずれとも判断し難い。
(6)(窓口図面協議において手際の悪い処理を行い、電気工事店の者を待たせて苦情を受けたとの主張について)
被告会社摘示の証拠は抽象的に伝聞したことを述べるものであって、具体的な事実関係が明らかでないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(7)(上司から検査結果報告書の書式を作成するよう指示されたのに従わなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、所内検査の一つに、半期に一回、電気工事店のゴム手袋、ゴム長靴、ヘルメット等の対圧試験を実施する仕事があるが、昭和四九年か昭和五〇年頃、会社所有の安全用具類の試験結果は、安全装備品の整理カードへ記録するように定められていたのに、電気工事店所有のものについての試験結果は、口頭で知らせるだけであったので、課長の勝又恒が主任の中川勇を通じて原告石森に対し、これを記録する様式を検討するよう指示したこと、その様式というのは、検査年月日、工事件名、検査品目、検査結果が記載されていればよいという程度の簡単なものであったが、同原告はそれを作成しなかったことを述べるものである。しかし、(証拠略)(昭和五五年一〇月に同原告が起案した検査結果報告書)によれば、被告会社主張の時期とはややずれるが、同原告は電気工事店について実施した試験結果を勝又が指示したのと同様の様式の一覧表に作成して報告していることが認められ、同原告は、被告会社主張の頃からこのような様式で試験結果を一覧表に作成していたと述べているから(〈証拠略〉)、これらの証拠に照らすと、被告会社摘示の証拠はたやすく信用することができず、いずれとも断定し難い。
四三  原告渡部
1 神奈川支店高島通営業所配電課及び中山出張所「設計」「管理」の期間
(1)(上司からの指示に対し反抗的態度をとり、職場の協調を乱していたとの主張について)
原告渡部は、昭和三六年度から昭和四一年度まで組合の執行委員をしており、その立場から、職場の労働条件の改善のために、例えば、設計業務が増えるときには人員を増やすようにとか、時間外勤務をしたときには勤務表に必ずその時間を記録してはっきりさせるようにとか、電柱用地の確保のためのマニュアルを作り、用地交渉員を設置するようにといった要求をしていた。被告会社摘示の証拠は、こうした同原告の行為を捉えて反抗的態度をとり、職場の協調を乱したと述べているものである(〈証拠略〉)。
(2)(用地交渉を熱意をもってしなかったとの主張について)
昭和四〇年か四一年頃、横浜市神奈川区羽沢町地内の市道拡幅工事に伴い一五本程度の電柱の移設工事をすることになったが、その際、原告渡部がその設計を担当し、併せて移設先の民有地の地権者に土地使用の承諾を得る交渉をすることになった。
被告会社摘示の証拠の中には、同原告は地権者との交渉を熱心にしなかったと述べる部分があるが、伝聞を内容とするもので(証拠略)に照らしてたやすく信用することができないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(3)(地中配電線路図面補正・整理業務を滞らせたとの主張について)
地中配電線路工事が完了すると、その落成設計図に基づいて地中配電線路系統図や、地中ケーブル布設平面図などを新規に作成したり、既存のものを補正したりして、地中配電設備の設備内容、布設位置などを正確に一覧することができるように整理していた(〈証拠略〉)。
原告渡部がその業務を滞らせたというためには、当時の業務の量、標準的な処理量、同原告の処理量等が明らかにされなければならないが、被告会社摘示の証拠によってもその関係は全く明らかでない。むしろ、右証拠によれば、昭和四六年頃から、横浜駅西口の再開発により地中配電線化工事が急激に増えた関係で、地中配電線路図面補正・整理業務も急増していたことが認められるから、仮に業務に滞りが生じたとしても、そのことが多分に影響していたものと思われる。従って、右証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
2 神奈川支店高島通営業所配電課「管理」「配電管理」「設計(特殊)」の期間
(1)(机上設計と要現場設計との仕分けが的確にできなかったとの主張について)
被告会社摘示の(証拠略)は、「現場検分を行わずに机上で設計することが十分にできるものについても、要現場設計分として設計担当者へ送付することが度々あったということでした。」といった原供述者も明らかでない伝聞を内容とするものであり、(証拠略)は、「現場設計担当者同士で『これは本当に机上でできないのかな』などといった会話が交わされ、また、渡部君と『どうしてこれが机上でできないの』『だって、……』等と会話しているところをよく見掛けていました。」という程度のものであり、(証拠略)も同様のものである。
原告渡部も、「現場の状況がわからなくては机上設計はできないので、慎重を期するために現場の状況が不明確なものは要現場設計としていた。従って設計者が実際にその現場を検分したところ窓口協議の際工事店の人が現場の状況を的確に話していれば机上設計が可能だったものもあり得る。」と述べていることからすると(〈証拠略〉)、机上設計担当と利害が相反する現場設計担当からみれば、同原告の仕分について不満があったことは窺われるが、被告会社摘示の証拠によっても、同原告に仕分けが的確にできなかったと認めることはできない。
(2)(時間外勤務の指示に従わなかったとの主張について)
この主張に対する判断は、右一の3の(2)で述べたのと同じである。
四四  原告吾妻
1 神奈川支店高島通営業所配電課「工事予定」「請負工事運営」の期間
(1)(工事付託の担当者として臨機応変な付託ができなかったとの主張について)
工事予定業務は配電工事を請負工事会社へ付託し、その進捗状況を把握したり、完了した工事の報告書類を審査、整理するものである。
被告会社摘示の証拠は、抽象的に右主張をなぞるように判断を述べるだけのものであって、その判断の根拠となる事実関係を明らかにするものではないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2)(適切な工程管理を怠っていたとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、例えば、(証拠略)についてみると、「配電設備関係工事は、屋外の仕事のため雨天が続くと全体的に仕事が遅れがちになる。客から、予定された日に是非電気を送ってほしい、一日でも早く送ってほしいといった要請があった場合には、工事付託担当者は、工事請負業者に対し、客の指示にそえるように指示するとともに、客に対しても、受付箇所の営業課電設窓口を通じていつ工事をするかを連絡し、仮に何らかの事情で工事が予定どおり実施することができなくなったときも、工事請負業者の連絡を受けて客に連絡して了解を得ることになっていた。ところが、原告吾妻は、終業時刻になると帰ってしまうことがよくあったので、時間外にこうした事態が起きたときに、他の者が困ったことがよくあった。」というものであり、他の証拠も概ね同趣旨である。しかし、適法な時間外勤務命令もないのに終業時刻に帰宅したからといって工程管理が悪いと非難されるいわれはない。むしろ、(証拠略)によれば、同原告は、工事請負業者への工事付託時に個別管理を要するもの、例えば、開店日が決まっているとか、棟上式の決まっているものについては、その設計書にその旨朱書きし、工事請負会社の担当者にも念を押して付託していたこと、工事付託時に、工事設計書の「控」を各工事請負会社別にバインダーにファイルしておき、必要な日付のところを開けば、その指定工期にどのような工事が付託されているかがすぐわかるようにしており、指定工期までに終わっていない工事がどれだけ残っているかもすぐわかるようにしていたことが認められる。
(3)(道路復旧工事の立会いで道路管理者と打ち合わせた内容を上司に的確に報告しなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、神奈川支店配電課作成の「道路自費復旧工事取扱要領」(〈証拠略〉)であるが、この証拠をもっては右主張事実を認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
2 神奈川支店高島通営業所配電課「検収・立会」「検収・立会(指導)」「配電管理(予算)」の期間
(1)(会社の自動車を運転して現場に出向く途中、前方不注意により交通事故を起こし、厳重注意を受けたとの主張について)
原告吾妻が右事故を起こしたことは同原告も認めるところである。右事故による損害は、相手車の方向指示器のプラスチックのカバーが損傷し、会社の車のバンパーがほんの少しへこんだ程度のものであり、上司がその場で二、三千円を支払って示談した(〈証拠略〉)。
(2)(請負業者の作業現場に出向き、作業員に「赤旗」の購読を勧誘したため、業者の責任者から会社に苦情が寄せられたとの主張について)
この主張に対する判断は右一の2の(2)で述べたのと同じである。
(3)(遅刻することが多かったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、遅刻した日時を特定して述べるものではなく、裏付けとなる出勤簿等の証拠もないから、これをもって右主張事実を認めることはできない。
四五  原告寺脇
1 神奈川支店高島通営業所配電課「定期検査」「調査」の期間
(1)(作業意欲が欠如していたため、定期検査の処理件数が少なかったとの主張について)
定期検査は営業「画」を単位として作業を進める。検査員は、営業課が管理をしている画単位にまとめられた営業カードを検査前日に画単位で借り出し、翌日調査する需要家の場所等をその営業カードと地図で確認しておく。検査員は営業画を単位として調査を担当し、担当した画については自らの責任で作業を行う。この調査区域は無作為に振り分けられ、構成軒数の少ない営業画だけを選んで担当することはできないようになっている(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけのものであり、これを裏付ける各検査員の処理件数等の統計資料は何も証拠として提出されていないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2)(職場を無断で離脱し、帰途交通事故を起こし、厳重注意を受けたとの主張について)
原告寺脇が、昭和三九年一二月一六日午後三時頃、バイクを運転して神奈川区松見町の港北小学校前の交差点を進行中、道路に飛び出してきた小学生(当時七歳)にそのバイクを衝突させて全治一か月の傷害を負わせ、罰金二万五〇〇〇円の略式命令を受けたことは同原告も認めるところである。
その日、同原告は、同原告の住んでいた横浜火力馬場町独身寮の近くで定期検査を午後二時頃まで行い、昼食のため同独身寮に立ち寄った後、会社に帰る途中で右事故を起こしたものである。同原告はこの事故で懲戒処分を受けていない(〈証拠略〉)。
2 神奈川支店高島通営業所配電課「設計」「設計(主要)」「検収・立会」の期間
(1)(簡単な設計ばかり選んで処理していたため技術力が上達しなかったとの主張について)
当時、設計係員が現場検分のために客の申込書を持ち出すときは積み重ねてある下の方の古いものから持ち出すのが約束事になっていたし、また、簡単な設計かどうかは実際に現場へ出向き、申込書の内容に基づいて配電設備、周囲の建築物や樹木、道路等の状況を検分してはじめてわかるもので、申込書を見ただけで判断することはできないから、簡単な設計だけを選ぶことはできなかった(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べているだけのものか、又は他人の判断を伝聞したものであって、右のような事務処理形態の中で、原告寺脇がどのようにして簡単な設計を選んでいたのかといった具体的な事実関係を述べるものではないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2)(地中線工事など高度な設計を担当しようという意欲に欠けており、技術向上がなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠のうちの(証拠略)は、昭和四四年六月から昭和四七年六月まで原告寺脇と同じ職場に勤務していた加藤嘉貞が、その時期のこととして右主張にそう事実を述べているものであるが、(証拠略)によれば、地中線設計は八級職以上の職務とされているところ、同原告が八級職になったのはそれより後の昭和四九年四月であり、従って、地中線の設計を担当するようになったのはそれ以降であるのに、加藤がどのような根拠で右のように述べているのかは明らかでない。また、(証拠略)は、昭和五〇年三月から昭和五一年九月まで同原告と同じ職場に勤務していた杉山勤が、その時期のこととして述べているものであるが、抽象的に右の主張にそう判断を述べるだけで、そう判断した根拠となる事実関係を具体的に述べるものではない。従って、これらの証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(3)(設計書を作成するのが遅く、設計工量も少なかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように「設計書を作成するスピードが遅く、設計工量も少なかった。」といった程度のことを抽象的に述べるだけのものであり、これを裏付ける統計資料等は何も提出されていないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。当時、設計係では、各人別の処理状況を把握するため設計処理工量一覧表を作成していたが(〈証拠略〉)、それも証拠として提出されていない。
四六  原告白井
1 神奈川支店中営業所配電課「定期検査」の期間
(1)(積極的に知識・技能を身に付けようという姿勢に欠けていたとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に判断を述べるだけで、その判断の根拠となる事実関係を明らかにするものではないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2)(不良通知書の発行に当たり電気工事店への対応が不親切であったとの主張について)
この主張に対する判断は、右(1)で述べるのと同じである。
2 神奈川支店中営業所配電課「設計」「設計(主要)」「設計(特殊)」の期間
(1)(昭和四八年八月頃、いい加減な設計を行い、工事完了後も客が電気を使うことができなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、原告白井は、昭和四八年八月頃、磯子区内のスーパーマーケット(カワハラマート)の新設に伴う動力線の設計をしたが、その際負荷計算を誤り、工事完了後、負荷をかけると電圧が降下するという事態を生じさせたことが認められる。
(2)(設計書の作成がずさんなことから、追加伝票の発行や工事工量の訂正が多かったとの主張について)
原告白井が、小口他発及び小口自発設計を担当していた当時、設計書の作成や工量、材料、附属書類の作成の段階でミスをしたことがあったことは、同原告も否定しない。当時、同原告は、相当多数の件数の設計書を作成しており、例えば、昭和四五年一〇月分の供給・改修その他及び電圧各項目の設計件数は合計四四九件で、その他に小口多(ママ)発設計もあったし、被告会社主張の時期とは異なるが昭和五二、三年頃の現場設計は年間約一七〇〇件前後あったので、相対的にミスも多くなったものである。そのほか、設計担当者のミスではなくても、請負業者が現場へ行った際に現場の状況が変り、設計どおりに工事ができなくて工量や材料が変更になる場合がよくあり、請負業者が工事をした後に工事管理係検収担当が工量の訂正及び倉出入伝票の追加発行を依頼することもあった。被告会社もこのような設計書の訂正がしばしばあることを前提として「S―二一設計業務基準」(〈証拠略〉)において設計書の訂正の項を設け、設計の訂正の具体的方法を定めている(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠は、被告会社の主張にそうものであるが、原告白井の処理が他の者よりもずさんで、ミスが多いというだけのものであって、その判断の根拠となる事実関係は明らかでないから、この証拠をもって同原告の設計がずさんで、ミスが多いものであったとはにわかに判断し難い。
(3)(標準処理日数を考慮し、責任をもって処理する姿勢に欠けていたとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、クーラーの需要の急増する夏季や家屋新築の多くなる年末などの供給工事が集中する時期には、設計件数が他の時期より多くなり、勤務時間内では処理しきれなくなるので、各設計担当者は自発的に時間外勤務を申し出るなどして処理しているのに、原告白井は終業時刻になると帰ってしまっていたと述べて、仕事があれば時間外勤務命令がなくても当然に勤務すべきであるとの考えに基づいて自発的な時間外勤務をしない同原告を非難しているものである。右証拠は、同原告が時間外勤務をしなかったのがたまたまのことであるのか、毎日であるのか、他の者はどの程度の時間外勤務をしていたのかといった具体的な事情を述べるものではないから、この証拠をもっては右主張事実を認めるに十分でない。
(4)(前日ないし当日の朝申請の休暇が多かったとの主張について)
(証拠略)(勤務表)によれば、昭和四九年一月から昭和五一年四月までの間に原告白井が当日申請した休暇は合計二四日で(うち家事都合、急用、所用を理由とするのが一一日)、前日申請した休暇は合計一七日である(うち家事都合を理由とするのが一一日)ことが認められる。それ以外の時期の休暇の状況を明らかにする証拠はない。
(5)(手際の悪いマイペースな仕事振りで、処理件数及び設計工量が少なかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、抽象的に印象を述べる程度のものであるから、この証拠をもって右主張を認めることはできない。
(証拠略)(昭和六一年四月から同年九月までの中営業所の配電課及び地中配電課の設計者別設計通数工量を集計したもの)と(証拠略)によれば、被告会社主張の時期とは異なるが、原告白井は、昭和六一年当時においては、設計係の中では設計通数工量とも常に上位の成績をあげていたことが認められる。
(6)(マークカード作成に当たりエラーが多かったとの主張について)
昭和五〇年頃、配電関係業務の機械化に伴い、各設計員が設計書の内容をマークカードに記入し、機械に入力することになったが、原告白井の場合は、契約内容や材料、数量の未記入や誤記入等が多く、エラーとして機械から打ち出される数が多かった。例えば、昭和五〇年上期では、設計総工量七万六四〇五中エラー通数五〇で一万工量当たりのエラー通数は六・五四であるのに対し、最もエラーの少ない者は設計総工量一〇万〇三八八中エラー通数一〇で一万工量当たりのエラー通数は〇・九六であり、同原告は設計係一四人中一二番目の成績である。同年下期では、設計総工量七万七七五八中エラー通数一九で一万工量当たりのエラー通数は二・四四であるのに対し、最もエラーの少ない者は設計総工量九万五三〇八中エラー通数五で一万工量当たりのエラー通数は〇・五二であり、同原告は設計係一三人中一〇番目の成績である。その他、昭和五一年上期、下期を調べても同原告のエラーは他の者に比較して多かった(〈証拠略〉)。
(7)(腰椎間板ヘルニアで昭和五一年四月末日から七月末日まで三か月間休務したとの主張について)
右主張事実は原告白井も認めるところである。
四七  原告古川
1 神奈川支店川崎現業所川崎保修所「点検」「作業」の期間
(1)(継電器外蓋のネジの締付けを手抜きしたとの主張について)
被告会社摘示の証拠の中には、原告古川が継電器本体の点検や修理のために外しておいた継電器の外蓋を配電盤に取り付けた際に、片締めのものや締め付けの甘いものがあったと述べる部分があるが、その内容は抽象的で、時期も場所も判然としないものであるから、たやすく信用することができない。
(2)(飛込みの仕事などに非協力的な態度であったとの主張について)
川崎保修所では、通常点検作業は月間計画に基づいて進めていたが、計画以外に事故や異常時の対応や他の事業所の事故に伴う同型機器類の点検、改修対策等のため飛込みの作業をすることがあった(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠によっても、原告古川は、事故や異常時の緊急対応はしており、ただ、実際に支障を生じていないものについては、翌月の月間計画に入れて調査、点検をすればいいと文句を言うことがあったが、そうだからといって命じられた仕事を拒否したわけではないというものである。むしろ、被告会社摘示の(人証略)によれば、当時は、同証人と同原告を含む四人がチームを組み、仲よく仕事を進めていたことが認められる。
2 神奈川支店川崎現業所登戸変電所「運転」の期間
(1)(研修に対して批判的であり、上司から参加を勧められても拒んでいたとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、(証拠略)に照らしてたやすく信用することができないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2)(仕事へのやりがいのなさを放言しており、不真面目な勤務振りのわけが窺われるとの主張について)
この主張に対する判断も右(1)で述べたのと同じである。
3 神奈川支店川崎工務所中原自動制御所「運転」の期間
(1)(当日申請の休暇取得があり、上司が注意しても一向に改めなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるもので、勤務表等の裏付けとなる証拠も提出されていないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2)(車両運転日誌の整理業務が粗雑であったとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけのものであるから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
四八  原告斎藤
1 神奈川支店発変電課戸塚給電所及び川崎給電所「給電指令」の期間
(1)(送電系統図等の補正作業に対し協力的でなかったとの主張について)
給電所では、変電所などの現場設備が変更になると、給電指令範囲、送電関係図(発電所、変電所、送電線等の接続状態を表した図)等を補正していた。
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけのものであるから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2)(自分勝手な休暇の取得をして、同僚に迷惑をかける一方、同僚の代勤については非協力的であったとの主張について)
生麦変電所は所長、主任各一名、運転勤務員八名で三直三交代勤務体制をとっていたので、運転員が休むと運転員が一名となる。このため、他の運転員が代勤することになるが、その代勤は前の直に勤務していた者が引き続いてしたり、休日の者がしたりしていた。また、三交代勤務体制をとっていると、土曜日や日曜日に出勤しなければならないことも多かった(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠の中には、右主張にそう部分もあるが、具体的でなく、容易に提出することができる勤務表等の裏付けとなる証拠が提出されていないことと(証拠略)に照らすと、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
2 神奈川支店横浜現業所(工務所)市ケ尾変電所及び生麦変電所「運転」「運転(指導)」の期間
(1)(パイロットランプの球切れを見落とすずさんな巡視をしていたとの主張について)
生麦変電所の巡視は、巡視内規(〈証拠略〉)に定めるとおり一日一回通常午後二時の記録をとった後に行っていた。
機器のパイロットランプは約五〇〇個あり、うち約四〇〇個は三階に集中していた。パイロットランプの寿命は種類及び使用箇所により異なり、いちがいにはいえないが平均して約半年程度であるから(〈証拠略〉)、巡視した時に異常がなくても翌日の巡視までに切れることは十分あり得ることである(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠も、原告斎藤の巡視した後にパイロットランプの球切れがあったという程度のものであるから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2)(知識・技能不足から生麦変電所管内で事故が発生した時に満足な対応ができなかったとの主張について)
被告会社摘示の証拠の中には、昭和四六年四月の夜間、生麦変電所管内の日東化学線で事故が発生した際、事故発生のベルを聞いて社宅に居住していた同変電所長の上田早苗が変電所に駆けつけたところ、当直の班長の長岡正男は給電所との連絡に追われていたが、原告斎藤はただうろうろしているだけであったと述べる部分があるが(証拠略)と原告斎藤本人の供述に照らしてたやすく信用することができないから、この証拠をもって右主張を認めることはできない。
3 神奈川支店横浜工務所保土ケ谷変電所「運転(指導)」「運転(総括)」の期間
(1)(業務計画実施管理表を作成せず、再三注意されても改まらなかったとの主張について)
保土ケ谷変電所では、年度の初めに作成した業務計画を全員で協力しながら遂行する目的で、計画項目を所員全員に分担させ、その計画の月々の実施状況を報告させていた(被告会社摘示の証拠)。被告会社摘示の証拠によっても、原告斎藤が右管理表を作成しなかったのではなく、遅れることが多かったというものであり、同原告もその頻度や日数はともかく遅れることがあったことは認めているものである。
(2)(相変わらず身勝手な休暇のとり方をしていたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、原告斎藤は、昭和四九年七月一三日から同年末までの間に一三日、昭和五〇年一月から一〇月二日までの間に一七日休暇をとっていること、このうち月曜日が三日、火曜日が二日、水曜日が五日、木曜日が二日、金曜日が四日、土曜日が六日、日曜日が一一日で、土曜日と日曜日で半分以上を占めていることが認められる。
四九  原告杉山
1 神奈川支店平塚営業所配電係及び配電課配電係「設計」の期間
(1)(漫然とのんびり業務を処理し、処理量も少ないとの主張につい)
昭和四一、二年当時、原告杉山は、配電係設計グループに所属し、小口の他発設計の仕事を担当していた。被告会社摘示の証拠は、抽象的な判断を述べるものであって、その判断の根拠となる事実関係を明らかにするものではないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2)(設計書の処理量を向上させようとする意欲に欠けていたとの主張について)
この主張に対する判断も右(1)で述べたのと同じである。
2 神奈川支店平塚営業所配電課「計画調査(資料)」「配電計画(資料)」「設計(主要)」「管理」「配電管理」「設備管理(指導)」の期間
(1)(マップセンターの検収に関して上司に対する報告を怠ることが多かったとの主張について)
工事監理係から管理グループに回付された架空線落成設計書はマップセンター(関係会社)に送付され、マップセンターは、保管している原図をこの落成設計書の図面により補正する作業を行っている。原告杉山は、毎月一回マップセンターに行ってこの架空配電線路図の補正審査を行うほか、三か月に一回マップセンターに行って高圧系統図の補正審査に行っていた(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠は、原告杉山はマップセンターでの照合結果や要望事項等を速やかに報告するようにと指示されていたのにもかかわらず、その報告を怠ることがあるということを聞いたことがある程度のもので、報告はどのような方法でなされるべきものであるか、同原告がいつ、どのような事項について報告を怠ったのかといった具体的な内容が明らかでなく、その証拠によっても、報告を怠ることが多かったというものではないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2)(地中配電線図面の補正整理が遅れ、上司への報告も怠っていたとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、(証拠略)に照らしてたやすく信用することができないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(3)(工事業者との事前確認が不十分で停電事故が発生したとの主張について)
昭和四九年二月頃、水道工事の業者が、送水管工事のため道路の掘削工事をした際、そこに埋設されていた被告会社の地中線ケーブルを切断したため、約二千軒が一時間にわたって停電したことがあった。その事故は、原告杉山が工事業者に渡した地中線図上に、地中線が工事箇所と離れて記載されていたことも一因であったが、工事業者が「最初のケーブルが見つかるまでは手堀りにする。」という初歩的な注意を怠り、手堀りを行わずにシートパイルを打ち込んだため生じたものであり、同原告は、その図面がその職務を担当する前に作成されていたものであったため、図面上の地中線の位置と現場が相違していることを知らずに工事業者に渡したに過ぎないのであるから(〈証拠略〉)、これをもって同原告が停電事故を発生させたということはできない。
五〇  原告勝又
1 神奈川支店平塚営業所総務課経理係「記帳」「会計」の期間
(1)(勘定科目、所属等誤った伝票を繰り返し発行することが多かったとの主張について)
原告勝又は、昭和四一年一〇月頃から支払伝票の発行事務に関与するようになったところ、その事務に関して勘定科目や勘定所属の記載を間違えて伝票を作成したことがある(〈証拠略〉)。この中には、損害賠償金の収入の科目を総務課が誤って指定し、それに基づいて同原告が伝票を発行したため誤ったものもある(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠(伝票類)によれば、ミスはこの事務に関与してから約一年、特に当初の約三か月間に多いが、その後も昭和四九年頃まで数は大きく減少したものの、同種のミスを繰り返していたことが認められる。
(2)(営業受付居残りに協力的でなかったとの主張について)
平塚営業所においては、勤務時間外や休日に来所したり電話をかけてきたりする客に応対するため、課長以上の管理職と女性職員を除く全員に均等に時間外勤務及び休日勤務を割り当てていた。原告勝又は、昭和四九年度にこの割当を一二回受けたが、うち一〇回を他の者、主に同僚の鈴木泰治に頼んで交替してもらっていた(〈証拠略〉)。同原告が被告会社へ届け出た交代の理由は、家事都合やかぜのためとなっているが、実際には、心筋梗塞の持病を持つ同原告の父が静岡県富士市で一人暮らしをしていたため、そのころ、平塚市内の社宅から父の許に転居し、父の看病をしながら長距離通勤をしていたという事情があったからである(〈証拠略〉)。
(3)(審査、照合が不十分で業者に過払したとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、昭和四六年四月、原告勝又は、請求書に記載された金額と振込送金依頼書に記載された金額との照合を怠り、有限会社丸和運送に対して運搬代六九〇〇円を支払うべきところ、誤って六万九〇〇〇円の支払伝票を作成して支払ったことが認められる。
2 神奈川支店平塚営業所営業課営業係「受付」の期間
(1)(時間外・休日の営業受付当番をほとんど回避していたとの主張について)
被告会社摘示の証拠は、右主張をなぞるように抽象的に述べるだけのもので、これを裏付ける勤務表等の証拠はないから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2)(発行した改修箋を関係箇所に任せきりにして工程管理、進渉状況のフォローができておらず、客の問合せに的確な回答をすることができなかったとの主張について)
原告勝又は、昭和五〇年一月から営業課営業係で一般受付業務を担当し、同年八月頃から約一年間改修箋業務も担当した。改修箋の担当者は、改修工事の各工程の進渉状況を把握して工事が遅滞なく完了するよう工程管理を十分行うとともに、客との連絡窓口として、遅滞なく的確な情報を提供することが求められていた。同原告が前任者から受け継いだ当初の改修箋の処理の方法は、無償工事については設計が完了すると設計書類は設計係から工事監理係へ直接送られていたので(ベルトコンベアー方式)、同原告が設計現場に立ち会ったり、他係に足を運んで現況を把握したりして自ら情報の収集をしない限り、工程の把握は難しく、現在どの工程にあるのか、工事内容はどのようなものか、工事を行うにはどのような手配が必要であるかということもわからない状態だった。同原告が改修箋業務を引き継いだ当時、改修箋による改修工事の受付件数は月約一〇〇件、改修箋による工事未了分一〇〇ないし一五〇件で、常時約二五〇件の改修箋を抱えていたこともあって、その管理は十分でなかった。そこで、同原告の在任中に、工事管理を適切に行えるようその各工程の都度改修箋を同原告のもとに戻すというピストン方式に変更された(〈証拠略〉)。被告会社は同原告の事務処理が的確に行われなかったので、ベルトコンベアー方式からピストン方式に変更したものであると主張するのに対し、同原告は、ベルトコンベアー方式では工程管理が難しいので同原告が提案してピストン方式に変更したものであると主張しているものであるが、そのいずれであるかを的確に証明する証拠はない。
五一  原告原
神奈川支店平塚営業所総務課経理係「倉庫管理」「倉庫管理(指導)」の期間
(1)(現品の受払の際、現品台帳の現品数と在庫数をきちんと照合していなかったため、変圧器の在庫数と現品数が相違していたとの主張について)
昭和四七年頃、変圧器の在庫が現品台帳残高より一台少ないことがあり、後に関係請負業者に個別に確認して、関東電気工事株式会社平塚営業所に一台余分に払い出されていることがわかった。この変圧器の数量不足は、実際に払出請求をした者もこれに応じて払い出した者も伝票に全く記帳しないまま現品の授受を行ったために生じたのである(〈証拠・人証略〉)。当時、現品担当係は、原告原のほか、鈴木泰治と委託者一名がいたが、だれがどのような事情でその授受をしたのかといった具体的な事実関係は明らかでない。
原告原は、当時、変圧器だけでなく一か月に数千個にも及ぶ電気計器や内線材料等の管理を行っており、その中には端子台のようにマッチ箱位の小さなものまであった。毎日の現品受払については実際に受払した品目の数量を照合し、移動のない現品を含めた倉庫内の現品総体については全店一斉の棚卸し日、あるいは自主棚卸しとして別に決めた日に現品台帳と在庫数を照合する取扱いをしていたが、これとは別に同原告自身が自ら倉庫内現品を変圧器、電気計器、内線材料、殊別品等と品種別に照合する日を決めて現品台帳と照合していた(〈証拠略〉)。
被告会社摘示の証拠中の右の変圧器以外の点について述べる部分は、抽象的に述べるだけのものであるから、この証拠をもって右主張事実を認めることはできない。
(2)(倉出入集計表から現品台帳への転記ミスや転記漏れが多かったとの主張について)
当時平塚営業所には毎月末尾に一、二、三の付く日に、メーカーから現品が直納便で納入されることになっていた。直納便のある日は一か月に九日間以上あり、一日に数便のトラックが電線ドラムや変圧器等の資材をそれぞれ数十個の単位で納入していた。また、一週間に一度の割合で神奈川支店から計器、内線材料、雑品等の貯蔵品材料が運び込まれ、さらに、それ以外に営業所、直営工事班、秦野出張所、工事研修班、関連会社である関東電気工事株式会社、神奈川県電気工事株式会社等による倉出入があったので、そのための受払伝票類は毎日膨大な枚数にのぼっていた(〈証拠略〉)。原告原は、このような職場で約八年間資材倉庫現品管理を担当したのであるから、その間に多少の転記・記入ミスのあったことまでを否定しているわけではないが、被告会社摘示の証拠は、どのようなミスがどのような頻度であったのかといった具体的な事実関係を述べるものではないから、この証拠をもって同原告のミスが特に多かったとは認めることはできない。
(3)(直納便のある日でも始業時刻ぎりぎりに出社し、他の同僚が行っている作業に途中から参加していたとの主張について)
被告会社摘示の証拠の中には、毎月末尾に一、二、三の付く日のメーカーからの直納便は、同営業所の始業時刻よりも早く到着するので、同僚はそれに合わせて始業時刻よりも早く出社して処理していたのに、原告原は、始業時刻間際に出社していたと述べる部分がある。被告会社は、恒常的に生ずるこのような始業時刻前の就労の必要について、自らは勤務時間の割振りの変更その他の考慮をしないまま、従業員に対しては時間外勤務命令がなくても当然に就業規則に定められた始業時刻よりも前に出社して時間外勤務をすべきであるとして、就業規則の定めどおり勤務している同原告を非難しているものである。
(4)(業務上の立場を利用して請負業者の従業員に対して「赤旗」の講読を執拗に勧誘し、会社に苦情が持ち込まれたとの主張について)
被告会社摘示の証拠によれば、昭和四八、九年頃、原告原は、勤務時間外の土曜日の午後に下請業者の神奈川県電気工事株式会社の平塚営業所に出向いて、同営業所に勤務していた従業員に対して「赤旗」の講読を勧誘したこと、そのことで、同営業所から被告会社の平塚営業所に迷惑したと申し出があったことが認められる。
五二  小括
1 被告会社は、原告らの職務遂行能力及び勤務実績の劣ることの根拠として極めて多岐にわたる事実を主張しているが、その主なものについて検討した結果は右のとおりである。
2 被告会社は、このほか、ほとんどの原告について、労働意欲がないとか、能力が劣るとか、自己啓発意欲がないとか、仕事がいい加減であるとか、仕事が遅いとか、漫然と業務を処理していたとか、同僚に協力的でないといった被告会社の判断を伴った主張をしている。
しかしながら、右主張は、その主張自体が抽象的であって、被告会社がそのように判断した根拠となる事実を具体的に主張してするものでないばかりでなく、被告会社の申し出によりそれを証するものとして取り調べた証拠も、大半は、先に第二で述べたとおり、たやすく信用することができないものであり、被告会社が原告らについて各年の人事考課及び賃金査定(以下「考課査定」という。)時に存在したとみられる資料はごく僅かな断片的なものだけであるから、このような証拠をもっては、右主張を認めることができない。
3 原告らの中には、職務遂行の過程で、機械の操作を誤って薬品を流してしまったり、母線接地装置を絶縁測定装置と誤って接続したりする等の事故を起こした者や、私的に交通事故を起こした者もある。これらの事故は、その態様と程度によっては、考課査定に影響を及ぼすことがないとはいえないが、原告らの場合はいわば一回的な事故であって、度々その種の事故を起こしたというものではなく、その過失も重大なものではなく、これをもって当該原告の職務遂行能力や勤務実績が劣ることを表象するものといえるようなものではない。
被告会社においては、職務上のこの種の事故はかなり頻繁に起きていて、これに関係した者は原告らだけではないし、私的に交通違反をし、交通事故を起こした者も原告らに限らない。先に第六章第三の二ないし四に述べた事故のほか、同僚と酒を飲んだ後、エンジンをかけたまま停車していた他人の自動車を運転して電柱に衝突させる事故を起こしてけん責処分を受けたり(〈証拠略〉)、深夜社有車を運転して帰宅する途中、運転を誤り、同車を河原に転落させて大破させる事故を起こして一〇〇〇円の減給処分を受けたり、飲酒後、自己所有の自動車を運転して帰宅する途中、運転を誤り、郵便局の建物に衝突させる事故を起こしてけん責処分を受けたり、社有車を無断で運転して病院に向かう途中、運転を誤り、先行車の後部に衝突させる事故を起こしてけん責処分を受けたりした例もある(〈証拠略〉)。しかし、これらは従業員の起こした事故のうちのごく一部であって、被告会社総務部文書課が作成した統計表(〈証拠略〉)によれば、被告会社加害の損害賠償事故は、昭和三八年から昭和四七年までの一〇年間で、感電死亡事故一五件、感電負傷事故二六件、漏電出火事故三〇件、自動車人身事故四四七件、自動車物件事故八二四件、電気機器損傷事故三二二三件、その他の事故七八九件、合計五三五四件にも及んでいると認められるから、被告会社が損害賠償義務を追わない職務上の事故や、従業員が私的に起こした事故を加えれば、その数はさらに膨大なものになると思われる。また、昭和四七年七月に川崎火力発電課が作成した過誤操作事例集(〈証拠略〉)には、それまでに発生した過誤操作事例が汽缶関係、汽機関係、電機関係、送電制御室関係、一時処理水及び一般共通関係の分野別に合計一六〇件あげられている。その過誤操作事例の発生した時期は同書面からは明らかでないが、仮に川崎火力が発足した昭和三七年以降のものの全部であるとしても、同火力だけで年平均一六件は発生していることになる。
このような単発的な出来事は、それがその者の責任に属するものであれば、その程度に応じて、指導や注意をし、あるいは懲戒処分を行うことによって責任を問うのが筋道であり、そうすれば、その段階で指導、注意、懲戒処分等の対象となる事実関係、帰責事由の存否、処分等の程度等について十分な調査や慎重な判断を期待することができるし、これを受ける者に弁明の機会も与えられることになる。またその懲戒処分等の程度も、その責任に応じたものとなり(減給については労働基準法九一条に制限規定がある。)、その懲戒処分等を受けたことが考課査定に及ぼす範囲も自ずと限られることになるのであって、原告らのように大きな賃金格差となる低い処遇を受ける事由にはならないはずである。従って、被告会社においては、原告ら共産党員及びその同調者以外の者がこの種の事故を起こした場合には、これを理由に原告らに対してしたような著しく低い処遇をすることはない(〈証拠略〉)。原告ら以外の者の中にはこれらの事故を起こして懲戒処分を受けた者がいるが、原告らは、ほとんどが懲戒処分はおろか注意すら受けていないのである。
被告会社が、このような単発的な事故に関与したことを理由に原告らを特別に低く処遇していることは、その事実関係や責任の所在を明らかにすることなく、原告らに弁明の機会を与えることもないまま、勤務評定という不服申立ての困難な制度を利用して、懲戒処分とは比較にならないほどの大きな不利益を課すものであって明らかに不当である。
4 原告らの中には、その職務遂行の過程で、計算ミスをしたり、管理する備品を切らせてしまったりした者がある。また、ある限られた時期についてであるが、比較的記帳ミス等が多いとみられる者もないわけではない。しかしながら、こうしたミスは、新たな仕事に慣れないうちに生じたものや、程度に多少の差はあるにしても通常どのような従業員でも起こし得る種類のものであって、原告らだけが常に他の従業員に比較して著しくそのミスが多いというものではない。
5 原告らの中には、それが違法とはいえないにしても、あらかじめ予測され、又はあらかじめ調整することができるような事由であるのに、当日になって休暇を申し出るといった自分勝手とみられる者や、業務上のものでない疾病又は傷害のために休務した者がある。
それはその時期における考課査定上不利益に評価されるものといえるが、しかし、証拠上明らかなのはある限られた時期のものであるから、それがそれ以前の考課査定の資料になるわけがなく、また、その後定年まで十年、二十年にもわたって極端に低く処遇をする理由になるものでもない。
6 被告会社は、原告らが時間外勤務をしないとしてその点を非難するが、その時間外勤務をいつ、誰が、どのような形式で命じたのかといった具体的な事実関係が明らかでないばかりでなく、時間外勤務は、労働基準法が許容する場合に限って命じ得るものであるのに、その許容される場合に該当するかどうかも明らかでない。むしろ、会社が必要とするならば、いつでも、何時間でも無限定に時間外勤務をなすべきであるとの立場から原告らを非難しているように思われるが、その時間外勤務命令が適法なものでなければ、その時間外勤務をしないことで考課査定上不利益に評価されるべきではない。
7 原告らは、会社の決定した経営合理化対策等の諸施策にことごとく反対し、これを行動に表してきており、原告らも全員がその点については、自らそれを階級闘争の輝かしい成果であるとして現在においてもその正当性を主張している。被告会社が原告らの職務遂行能力及び勤務実績が劣るとして主張するもののうち証拠上認められるもの、あるいは原告らとの間に争いのないものの大半は、こうした原告らの反会社闘争にかかわるものである。もっとも、こうした反会社闘争が激しかったのは、昭和三〇年代から昭和四〇年代の前半にかけての時期であり、その後は、具体的な行動を伴った反対闘争は散発的であり、被告会社も別表19「原告別勤務状況一覧表」において僅かに主張しているだけである。
第五  原告らの職務遂行能力及び勤務実績の程度
原告らの職務遂行能力及び勤務実績(被告会社が正当な処遇をしたならばあげることができたと考えられる勤務実績を含む。以下同じ。)の程度は、比較の対象との関係で相対的に決まるものである。
原告らが比較の対象とするのは同期同学歴者の「平均職級」及び「平均賃金」であるが、先に述べたように同期同学歴者であっても、職位、職級が上がるに連れてその職位、職級に大きなばらつきが生じている上、原告らにも考課査定上不利益に評価すべき点もあり、さらに、その「平均職級」及び「平均賃金」の中には、一般管理職が属する一級から五級までの職級及び賃金が含まれていて、この職級については、原告らが下位の職級にあるときとは別の適性と被告会社の裁量が考慮されなければならないから、これらの点を考慮することなく、右に認定した事実関係から直ちに原告らが同期同学歴者の「平均職級」及び「平均賃金」を受けるべき職務遂行能力及び勤務実績を有するということはできない。
被告会社においては、大学卒入社者のほとんどは非組合員である特別管理職に昇進し、さらに高校卒以下の入社者もかなりの者が特別管理職に昇進する。会社の中枢はこれら多数の特別管理職に占められており、一般管理職はその下位にある。ここに格付けされるのは副長、係長、主任、班長クラスである(被告の主張第三章第四の一)。
この意味では、一般管理職は、特別管理職と異なり、権限の範囲は狭いが(人事関係など特別の職にある者を除いてすべて労働組合員である)、それでも会社の指揮命令系統を構成し、部下を統率して会社の施策を積極的に推進すべき立場にあるから、その点で、経営的な判断の入らない機械的な単純作業をする下位の職級の従業員とは異なる。
その一方で、被告会社においては、基本的には職務給制度をとりながらも、生活給的な要素を含む年功序列的な運用をしてきており、大半の従業員は、先後の差はあるものの下位の一般管理職程度には昇進している。
以上の点を踏まえて原告らの職務遂行能力と勤務実績をみると、原告らは、機械の操作や設計、記帳等の経営的判断の比較的入らない仕事に関しては、先に述べたように考課査定上不利益となる事実は比較的少ないが、実際に会社の施策に反対してきている者であるから、会社の施策を積極的に推進すべき立場にある管理職の職務とは相容れない面があり、この点で、職務遂行能力と勤務実績において劣るといわざるを得ない。
このような比較は、標準対象者を設定してそれとの比較で行えば容易であるが、被告会社の職種、職級別の職務の範囲、定員数、他の従業員の任用状況等の資料が乏しいといった証拠上の制約があってそれは困難である。しかし、原告らの職務遂行能力と勤務実績の程度を問題にするのは、原告らに対する被告会社の処遇がその裁量権の範囲を超えるものであるかという意味での不法行為の成否とその不法行為による損害額を判断するためであるから、必ずしも被告会社のいうような標準対象者との比較において判断しなくても、本件訴訟に表れた一切の事情を考慮して証拠上確実とみられる限度で認定すれば足りるものと解すべきである。この場合であっても、証拠上の制約がある上、管理職としての適性や会社の裁量権の範囲といった計量化の困難な要素を考慮するということになるから、確実とみるためには、かなり控え目なものになることは止むを得ない。
このような見地から、先にみてきた原告らの職種、他の従業員の勤務振りと原告らの勤務振りの実態、他の従業員と原告らの昇給、昇格の状況、仕事と関係なく昇給の査定をゼロにするという原告らに対する賃金対策(〈証拠略〉)、一般管理職の職務内容とこれに対する原告らの適性等を考慮して原告らの職務遂行能力及び勤務実績の程度をみてみると、原告大村及び同守川以外の原告らについては、どのように控え目にみても、同期同学歴者のうちの特異な例を除いた最下位グループよりも下回る処遇を受けるものではないということができる。原告大村及び同守川は、学歴としては大学卒に準じた扱いを受けるものであるが、会社の施策に反対し、これを行動に移してきた者であるから、その職務遂行能力及び勤務実績の程度(特に、管理職としての適性)を、特別管理職として会社の中枢となり、その施策を決定しこれを実行している同期の大学卒入社者に準じたものとみるのは相当でない。他の原告らに準じてみるべきものである。
第七章  不法行為の成否
第一  会社の裁量権との関係
短期の期間を定めた労働契約にあっては、その期間内に昇級、昇格をすることは少なく、また労働契約上も賃金を含む処遇の内容が明らかにされるから、比較的問題は少ないが、いわゆる終身雇用制をとり、定年まで勤務することを前提に期間の定めなく雇用される者については、就業規則や労働契約上いつどのような条件で昇級、昇格させるかといった定年までの労働条件を個別具体的に定める例は少ない。被告会社にあっても具体的な定めはない。
このような場合においては、従業員の職務任用、賃金査定、職級昇格、資格格付け等の処遇の決定は、従業員個々の経歴、学歴、知識、資格、能力、適性、勤務実績等を総合的に勘案して会社が裁量をもって行うことになり、この裁量の幅は職種職級等によって広狭の差があり、上級の職位、職級になるほどその裁量権の幅は大きくなるものである。従って、その裁量の範囲内の処遇が行われた場合には、結果として昇級、昇格等において差がつくことがあってもこれが違法となることはない。
しかしながら、その場合であっても、従業員は、考課査定をすべて使用者の自由裁量として承認したのではなく、事柄の性質上、職務任用について考慮すべきこれらの点に相応した取扱いを受けることを当然のこととして期待し、使用者もそのことを当然のこととして雇用契約をしているものとみるべきであるから、その裁量の幅はその者の勤務遂行能力と勤務実績との関係で自ずから一定の限度があり、職務任用等について考慮すべきこれらの点について格別の相違がないにもかかわらず、当該従業員の政治的信条を理由に著しく低い考課査定をして、低い賃金しか支払わなかったときは、その裁量権を逸脱するものとして、労働基準法三条に照らして違法となり、当該従業員に対する不法行為を構成することになるというべきである。
第二  違法行為と故意
先にみてきたように、被告会社は、会社ぐるみで、原告ら以外の従業員の中からも「非人間的」であるとの声が出るほどに(〈証拠略〉)苛酷な反共労務対策を実行し、その労務対策のうちの賃金対策は、「日共党員、民青同と色分けがはっきりするものについては、一時的に如何に仕事に熱心でも、日共の目的からして会社に対する一種の欺瞞行動とみなし、昇給時の査定額をゼロとしておる。」(〈証拠略〉)と被告会社自らが報告するような取扱いをしてきたことからすれば、被告会社が、原告らを含む共産党員及びその同調者を他の従業員と区別して特別に低い考課査定をしてきたことは明らかというべきである。このことは、次の事実からも裏付けられる。即ち、本訴元原告の生井正弘は、昭和二九年入社で原告芝宮、同瀬尾、同中島、同綿引らと同期同学歴で、鶴見火力に勤務していたが、被告会社は、生井が原告として訴訟を追行している間は、同人の勤務態度、職務遂行能力について、パトロールが必要以上に時間がかかり、パトロール後の報告もしない、自ら進んで知識・技能を習得しようという態度が見られず、技術レベルは低い、機器の誤操作が度々あった、ボイラー内の火力調整の際指示された数以上のバーナを勝手に点・消火した、度々無断離席した等々と主張し(昭和五七年九月二日付準備書面三二)、同人の職務態度及び職務遂行能力は極めて低劣だと評価して、昭和五七年当時、七級の一般職に止めていたのに、同人が共産党を脱党して昭和六二年一〇月二〇日本訴を取り下げると、その後遅くとも平成元年一〇月までには副主任に、平成三年四月までには主任にそれぞれ昇格させている。
このようにみてくると、先に述べた原告らの職務遂行能力及び勤務実績と現実に被告会社から受けている処遇との格差は、原告らが共産党員であることを理由として特別な考課査定をした結果生じたものであり、それは、被告会社の裁量の範囲を超えるものであるから、この点で、被告会社の右行為は故意による不法行為を構成するものというべきである。
第八章  損害
第一  賃金格差相当損害
東電労組実態調査を基に、本件証拠に表れたその他の資料を加えて、原告大村及び同守川を除いた原告らについて右認定の格差による賃金差額をみてみると、その額は、同原告らの主張する六級以下の期間については、先にみてきた高校卒入社者の「平均賃金」と同原告らが実際に支給を受けた額との差額の概ね五割、一般管理職となる五級以上の期間については、その「平均賃金」と同原告らが支給を受けた額との差額の概ね三割を下ることはないということはできるが、その金額を超えると認め得る的確な証拠はないから、その金額に当たる別紙1「認容債権目録」の「認容額1」ないし「認容額8」の項記載の各金額をもって賃金差別による損害額と認め、原告大村及び同守川については、これに準じて、同債権目録の各項記載の各金額をもって賃金差別による損害額と認めることとする。
第二  精神的損害
原告らは、被告会社の右不法行為により、名誉及び名誉感情を傷付けられるなどして、差額賃金の支払によっては到底回復し難いほどの多大の精神的苦痛を受けたものと認められる。その苦痛に対する慰藉料は、各原告につき一五〇万円とするのが相当である。
第三  名誉毀損
原告らが名誉を毀損されたことによる損害は前記慰藉料の支払をもって償うことで十分であり、それ以上に、原告らが請求する謝罪文掲載等の必要があるとは認められない。
第四  弁護士費用
原告らが本訴の提起、遂行を原告ら訴訟代理人に委任したことは当裁判所に顕著であり、本件の事案の内容、認容額その他一切の事情を考慮すると、本件不法行為と相当因果関係のある弁護士費用の損害は、原告らの請求金額である別紙3「請求債権目録」添付の別表記載の弁護士費用額を下ることはないと認められる。
第九章  賃金差別による損害賠償請求権の消滅時効の抗弁
被告会社は、原告らの職級、職位及び基本給は、毎年の考課査定により積み重ねられてきたものであるから、仮に低く考課査定をしたことが不法行為に当たるとしても、昭和四八年一〇月一三日以前の考課査定で生じた格差に相当する分の損害賠償請求権は消滅時効により消滅したと主張する。
しかしながら、本件は、被告会社が、毎年の考課査定時において、その時における相当の職位、職級に格付けして、それに対応する賃金額を決定すべきところ、それよりも低位の職位、職級に格付けしてそれに対応する低い賃金額を決定し、毎月の賃金支払時期において、それに基づく低い賃金を支払い、差額相当の損害を発生させたことを不法行為としているものであるから、その各考課査定による損害金額は、原告らの職務遂行能力及び勤務実績に応じて本来支給されるべき賃金額と考課査定により賃金支払期に支払うこととした金額との差額全額ということになる。そして、原告らの請求している差額賃金相当損害金は、昭和四八年一〇月一三日以降に賃金支払期(当時の賃金支払期は毎月一五日)が到来して損害が発生した分であるから、本訴提起時(昭和五一年一〇月一三日)までにいまだ時効期間の三年を経過していないことは明らかである。従って、被告会社の右主張は理由がない。
第一〇章  その他の差別及び人権侵害による損害賠償請求
第一  時効期間が経過した行為
原告らが賃金以外の差別及び人権侵害と主張する事実のうち次の第二に述べる事実以外のものについては、仮にその事実があったとしても、事柄の性質上、原告らは遅くとも本訴提起より三年前までには、加害者及び損害を知ったとみられるから、これを理由とする損害賠償請求権は、本訴提起までに時効期間の三年を経過したことにより、時効消滅したというべきである。
原告らは、賃金以外の差別及び人権侵害は、共産党員又はその同調者と認定された原告らに対する被告会社による単一の差別意思の発現としてなされた継続的な加害行為であって、未だ不法行為は終了しておらず、消滅時効は、進行しない旨主張するが、被告会社の原告ら共産党員に対する差別意思が包括的かつ継続的なものであったとしても、その具体的発現としての個々の差別及び人権侵害という加害行為はそれぞれ異なる形態で個々に発生して、個々に完了しているのであるから、右各個々の加害行為による不法行為に基づく損害賠償請求権についての消滅時効は、その各時点から進行するものと解すべきである。原告らの右主張は理由がない。
原告らは、被告会社の消滅時効の援用が信義則に反し、権利の濫用に当たるものと主張するが、本件全証拠によってもそのような事情を認めることはできないから、右主張も理由がない。
第二  時効期間が経過しない行為
一  文化会活動からの排除
原告杉山は、昭和四九年四月、文化会の山岳部部長をやめさせられた旨主張するが、被告会社がその行為に関与したと認めるに足りる証拠はないから、この点で右主張は理由がない。
二  職場八分
原告澤野、同小林悦治、同佐々木、同高木、同小池、同相澤一宇が、その主張の頃、各職場において、その主張の職場八分の扱いを受けたことは、同原告ら作成の陳述書と同原告らの供述によって概ねこれを認めることができるが、この時期になってから起きた職場八分に被告会社が関与していたと認めるに足りる証拠はないから、この点で理由がない。
三  仕事の差別及び研修からの排除
原告らの中には、この期間においても、仕事の差別を受け、研修から排除されていたとして、賃金差別による慰藉料とは別に慰藉料の支払を請求するが、それらの主張する事実は賃金差別の一態様とみられるものであるから、そのことによる精神的苦痛は先に述べた賃金差別による精神的苦痛の中に包含されるべきものであり、従って、そのことを理由に賃金差別による慰藉料とは別に慰藉料を請求することはできない。右主張は理由がない。
四  転向強要
原告渡邊、同金城は、上司又は学校の先輩から転向を強要されたことが人権侵害に当たると主張するが、同原告ら作成の陳述書と供述をもっても、転向を強要されたとまでは認められないから、右主張はこの点で理由がない。
五  共産党のビラを配布したことに対する吊るし上げ
原告金子は、昭和四九年六月に共産党の政策ビラを横浜火力の門前で配布したことを理由に職場懇談会で同僚から吊るし上げを受けたと主張するが、その吊るし上げの内容が明らかでないばかりか、これにどのように被告会社が関与していたのかも明らかでないから、右主張はこの点で理由がない。
六  ビラの門前配布に対する攻撃
原告金子は、昭和五〇年二月から「ぢひびき」を横浜火力の門前で配布したところ、会社の意を受けた東電労組横浜火力支部から攻撃を受けたと主張するが、その攻撃の内容が明らかでないばかりか、これにどのように被告会社が関与していたのかも明らかでないから、右主張はこの点で理由がない。
七  ビラの門前配布に対する不当注意処分
原告金子は、昭和五五年三月電気料金値上げの不当性を訴える機関誌を門前配布して、石田保修課長から厳重注意を受けたことが人権侵害であると主張するが、電気料金値上げという、被告会社の経営の根幹に関わる施策について反対行動を起こした同原告に対して、直属の課長として会社の不利益となる行為をしないよう注意を与えたという程度のものであり、これが同原告の人権を侵害したとまではいえないから、右主張はこの点で理由がない。
八  私生活に対する干渉
原告阿部は、その結婚に関して被告会社から干渉されたと主張するが、その主張によっても職制から干渉を受けたのは、同原告ではなく坂本洋子であるから、同人について人権侵害になるかどうかはともかく、婚約者であるというだけの同原告について人権侵害になることはない。右主張は理由がない。
九  事故想定訓練報告書の握りつぶし
本件各証拠によっても、その事実関係は明らかでないから、この点で右主張は理由がない。
一〇  組合役員選挙への介入
1 原告古川の主張は、昭和四九年三月中旬、川崎現業所中原自動制御所の職場の業務懇談会終了後、次期分会執行委員の選出が話し合われ、執行委員の安藤から同原告を選出したい旨の提案がなされ、欠席していた組合員である所長の石井文夫と班長一名を除く一〇名全員がこれを了承したのに、翌日石井がこれに異議をとなえ、結局選挙をすることになり、同原告が当選したというものであるから、その主張自体からこれが組合内部の争いであることは明らかであるところ、この争いに被告会社が関与したと認めるに足りる証拠はない。右主張は理由がない。
2 原告原は、話合いで選出されるものと思って昭和四九年度の分会執行委員の選挙に立候補する意思を表明したところ、組合員である総務係長の大山らの意思によって選挙で選出することになったので、立候補を取り止めざるを得なかったと主張するが、その主張自体からこれを(ママ)組合内部の争いであることは明らかである。
この争いに被告会社が関与したと認めるに足りる証拠はないから、右主張は理由がない。
3 原告原は、昭和四九年一一月に開かれた分会の青婦人部の集会で同原告の発言に関して、翌朝、総務課長から話しかけられたというものであるが、その話しかけた内容からして同原告の人権を侵害するものでないことは、その主張自体から明らかである。右主張は理由がない。
一一  友人の結婚式に際しての妨害
原告杉山は、同原告が友人の佐藤の厚生資金借受けについて保証人になれなかったこと、佐藤の結婚式の司会者になれなかったことが人権侵害になると主張するが、同原告に佐藤の保証人になることや結婚式の司会をすることについて同原告に法律上保護するに値する利益があるとはいえないから、この点で右主張は理由がない。
第三  小括
以上の次第で、原告らの主張する賃金以外の差別及び人権侵害を理由とする慰藉料請求は、その請求権が消滅時効により消滅したことにより、又はその請求の前提となる差別又は人権侵害行為があるとは認められないことにより、いずれも理由がないといわなければならない。
第一一章  債務不履行による損害賠償請求
原告らが債務不履行を請求原因として損害賠償を請求したのは、平成二年八月三〇日であることは記録により明らかであるから、これより五年前までに発生した債務不履行による損害賠償請求権は、消滅時効により消滅したというべきである。そして、その後に生じた債務不履行を理由とする損害賠償請求も、その請求原因事実は不法行為による損害賠償請求の請求原因事実と基本的には同じであり、仮にこれが労働契約上の債務不履行に当たるとしても、これによる損害が右に判断した不法行為による損害額を上回ることはない。
第一二章  結語
以上により、原告らの請求は、主文一項に掲げる限度で理由があるからこれを認容し、その余を棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小林亘 裁判官 木下秀樹 裁判官 柳澤直人)

 

〈別紙2〉 当事者目録
(原告番号7及び33は欠番)
原告 守川二郎
外五〇名
右訴訟代理人弁護士 佐藤義彌
外一五七名
右訴訟代理人山内忠吉訴訟復代理人弁護士 四位直毅
岡崎一夫
右訴訟代理人星山輝男訴訟復代理人弁護士 武井共夫
三竹厚行
小口千恵子
鈴木宏明
小島周一
南雲芳夫
古川武志
中村宏
被告 東京電力株式会社
右代表者代表取締役 荒木浩
右訴訟代理人弁護士 橋本武人
竹内桃太郎
石川常昌
江川勝
田多井啓州
吉益信治
馬場東作
高津幸一
大下慶郎
山本孝宏
宇田川昌敏
牛嶋勉
西修一郎
太田恒久
河村貞二
渡辺修
吉澤貞男
山西克彦
冨田武夫
成富安信
田中等

 

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政治と選挙の裁判例「政党 衆議院議員 ポスター」に関する裁判例一覧
(1)平成 9年 7月17日 大阪地裁 平5(行ウ)34号 違法支出金返還等請求事件
(2)平成 9年 6月26日 東京高裁 平6(ネ)3688号・平6(ネ)3881号・平6(ネ)3908号・平6(ネ)3960号 損害賠償請求控訴事件 〔日本共産党幹部宅盗聴損害賠償訴訟控訴審判決〕
(3)平成 9年 6月20日 静岡地裁 平4(ワ)307号・平7(ワ)481号 損害賠償請求事件 〔ヤマト運輸事件・第一審〕
(4)平成 9年 6月18日 東京高裁 平8(ネ)354号 損害賠償請求控訴事件
(5)平成 9年 5月30日 大阪地裁 平7(ワ)892号 損害賠償請求事件
(6)平成 9年 3月31日 秋田地裁 平4(行ウ)3号・平4(行ウ)5号・平6(行ウ)2号 違法公金支出差止請求事件、損害賠償請求事件
(7)平成 9年 3月21日 東京地裁 平5(刑わ)2020号・平5(刑わ)2442号・平6(刑わ)161号・平5(刑わ)2220号 収賄、贈賄等被告事件 〔ゼネコン汚職事件(宮城県知事ルート)〕
(8)平成 9年 3月21日 秋田地裁 平4(行ウ)3号・平4(行ウ)5号・平6(行ウ)2号 違法公金支出差止請求事件、損害賠償請求事件 〔秋田県・秋田市工業用水道料金補助・産廃処分場許可事件〕
(9)平成 9年 3月18日 大阪高裁 平8(行コ)35号 供託金返還請求控訴事件
(10)平成 9年 2月20日 大阪地裁 平7(行ウ)60号・平7(行ウ)70号 政党助成法に基づく政党交付金交付差止等請求事件
(11)平成 9年 2月13日 大阪高裁 平8(う)518号 業務妨害被告事件
(12)平成 9年 2月 7日 盛岡地裁 平5(ワ)339号 建物明渡請求事件
(13)平成 9年 2月 4日 東京地裁 平8(行ウ)31号 都非公開処分取消請求事件
(14)平成 8年12月25日 千葉地裁 平4(行ウ)8号・平4(行ウ)22号・平6(行ウ)24号 損害賠償請求(関連請求の追加的併合の訴え)、労働者委員選任処分取消等請求事件 〔千葉県地方労働委員会事件〕
(15)平成 8年12月20日 札幌地裁 平7(ワ)1598号 損害賠償等請求事件
(16)平成 8年10月28日 大津地裁 平7(行ウ)11号 損害賠償請求事件
(17)平成 8年 9月11日 最高裁大法廷 平6(行ツ)59号 選挙無効請求事件 〔参議院議員定数配分規定不均衡訴訟・大法廷判決〕
(18)平成 8年 8月 7日 神戸地裁 平7(行ウ)41号 選挙供託による供託金返還請求事件
(19)平成 8年 7月 8日 仙台高裁 平7(行ケ)3号 当選無効及び立候補禁止請求事件 〔青森県議会議員選挙候補者連座訴訟・第一審〕
(20)平成 8年 5月20日 大阪地裁 平4(ワ)8931号・平5(ワ)3260号・平5(ワ)3261号・平4(ワ)9972号・平4(ワ)8064号 各損害賠償請求事件 〔関西PKO訴訟判決〕
(21)平成 8年 4月10日 東京地裁 平6(ワ)23782号・平5(ワ)23246号 預金返還請求事件 〔自由民主党同志会預金訴訟判決〕
(22)平成 8年 3月29日 東京地裁 平5(特わ)546号・平5(特わ)682号 所得税法違反被告事件
(23)平成 8年 3月27日 大阪高裁 平6(ネ)3497号 損害賠償請求控訴事件
(24)平成 8年 3月25日 東京地裁 平元(ワ)14010号 損害賠償等請求事件
(25)平成 8年 3月19日 最高裁第三小法廷 平4(オ)1796号 選挙権被選挙権停止処分無効確認等請求事件 〔南九州税理士会政治献金徴収拒否訴訟・上告審〕
(26)平成 8年 3月15日 最高裁第二小法廷 平5(オ)1285号 国家賠償請求事件 〔上尾市福祉会館使用不許可に対する損害賠償請求訴訟・告審〕
(27)平成 8年 3月 8日 最高裁第二小法廷 平4(オ)78号 損害賠償請求事件
(28)平成 8年 1月18日 東京高裁 平7(行ケ)236号 当選無効及び立候補禁止請求事件
(29)平成 7年12月26日 東京高裁 平5(ネ)931号 航空機発着差止等請求控訴、同附帯控訴事件 〔厚木基地騒音公害第一次訴訟差戻後・控訴審〕
(30)平成 7年12月19日 大阪地裁 昭61(ワ)1542号 損害賠償等請求事件 〔小説「捜査一課長」訴訟〕
(31)平成 7年11月21日 東京高裁 平6(行コ)207号 建物取壊決定処分取消請求控訴事件
(32)平成 7年10月 9日 仙台高裁 平7(行ケ)2号 当選無効及び立候補禁止請求事件 〔山形県議会議員選挙候補者連座訴訟〕
(33)平成 7年 9月20日 東京地裁 平5(行ウ)301号 損害賠償請求事件
(34)平成 7年 6月22日 東京高裁 平6(行コ)26号 不当労働行為救済命令取消請求控訴事件 〔千代田化工建設事件・控訴審〕
(35)平成 7年 5月25日 最高裁第一小法廷 平7(行ツ)19号 選挙無効請求事件 〔日本新党繰上当選無効訴訟・上告審〕
(36)平成 7年 3月20日 宮崎地裁 平6(ワ)169号 損害賠償請求事件
(37)平成 7年 3月 7日 最高裁第三小法廷 平元(オ)762号 損害賠償請求事件 〔泉佐野市民会館使用不許可に対する損害賠償請求訴訟・上告審〕
(38)平成 7年 2月22日 東京地裁 昭49(ワ)4723号 損害賠償請求事件 〔全税関東京損害賠償事件〕
(39)平成 7年 2月13日 大阪地裁 平6(わ)3556号 政治資金規正法違反被告事件 〔大阪府知事後援会ヤミ献金事件〕
(40)平成 7年 2月 9日 大阪高裁 平6(ネ)292号・平4(ネ)2265号 損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件 〔全税関大阪訴訟・控訴審〕
(41)平成 7年 1月26日 東京地裁 平5(行ウ)353号 損害賠償請求事件
(42)平成 6年12月20日 浦和地裁 平5(わ)564号 受託収賄被告事件
(43)平成 6年12月 9日 大阪地裁 平5(ワ)1384号 損害賠償請求事件
(44)平成 6年12月 6日 東京地裁 平2(ワ)2211号 除名処分無効確認請求事件
(45)平成 6年11月29日 東京高裁 平5(行ケ)108号 選挙無効請求事件 〔日本新党参議院議員比例代表選出繰上当選無効請求訴訟〕
(46)平成 6年11月25日 東京地裁 平6(ヨ)21141号 地位保全仮処分申立事件
(47)平成 6年11月15日 横浜地裁 昭51(ワ)1606号 損害賠償請求事件 〔東京電力(神奈川)事件〕
(48)平成 6年10月27日 名古屋高裁 平6(ネ)134号 慰謝料等請求控訴事件
(49)平成 6年10月25日 新潟地裁 平4(わ)223号 政治資金規正法違反被告事件 〔佐川急便新潟県知事事件〕
(50)平成 6年 9月30日 広島高裁 平5(行ケ)1号 衆議院議員定数配分規定違憲訴訟広島高裁判決
(51)平成 6年 9月 6日 東京地裁 昭63(ワ)12066号 共産党幹部宅盗聴事件
(52)平成 6年 8月31日 東京地裁八王子支部 平3(ワ)1677号 譴責処分無効確認等請求事件 〔日本電信電話事件〕
(53)平成 6年 6月 3日 東京高裁 平5(行ケ)134号 衆議院議員定数配分規定違憲訴訟東京高裁判決
(54)平成 6年 6月 3日 東京高裁 平5(行ケ)133号 選挙無効請求事件
(55)平成 6年 6月 3日 東京高裁 平5(行ケ)118号 選挙無効確認請求事件 〔衆議院議員定数配分違憲訴訟・第一審〕
(56)平成 6年 6月 3日 東京高裁 平5(行ケ)114号 選挙無効請求事件
(57)平成 6年 5月23日 千葉地裁 昭51(ワ)698号 損害賠償等請求事件 〔千葉東電訴訟判決〕
(58)平成 6年 4月26日 旭川地裁 平2(行ウ)1号 地方自治法第二四二条の二第一項に基づく住民訴訟事件
(59)平成 6年 3月31日 長野地裁 昭51(ワ)216号 損害賠償等請求事件 〔長野東電訴訟〕
(60)平成 6年 3月16日 東京高裁 平5(行コ)68号・平5(行コ)86号 所得税更正処分・過少申告加算税賦課決定処分取消請求各控訴事件
(61)平成 6年 2月 1日 横浜地裁 平2(ワ)775号 損害賠償請求事件
(62)平成 6年 1月31日 最高裁第二小法廷 平5(行ツ)158号 当選無効等請求事件
(63)平成 6年 1月31日 津地裁 平4(ワ)117号 慰謝料等請求事件
(64)平成 6年 1月27日 最高裁第一小法廷 平3(行ツ)18号 行政処分取消請求事件 〔大阪府知事交際費情報公開請求事件・差戻前上告審〕
(65)平成 6年 1月27日 東京地裁 平4(行ウ)126号 不当労働行為救済命令取消請求事件 〔千代田化工建設事件・第一審〕
(66)平成 5年12月24日 名古屋地裁 平5(わ)1207号 公職選挙法違反被告事件 〔参議院議員経歴詐称事件・第一審〕
(67)平成 5年12月22日 甲府地裁 昭51(ワ)289号 損害賠償請求事件 〔山梨東電訴訟〕
(68)平成 5年12月16日 大阪高裁 平4(行ケ)5号 選挙無効請求事件 〔参議院(選挙区選出)議員定数配分規定違憲判決〕
(69)平成 5年12月15日 大阪高裁 平5(行コ)17号 大阪府会議員運転手付自家用車供用損害賠償請求控訴事件 〔大阪府議運転手付庁用車供用損害賠償訴訟・控訴審〕
(70)平成 5年 9月10日 最高裁第二小法廷 平4(行ツ)46号 損害賠償請求上告事件
(71)平成 5年 8月24日 前橋地裁 昭51(ワ)313号 損害賠償請求事件 〔東京電力(群馬)事件〕
(72)平成 5年 7月20日 最高裁第三小法廷 平2(オ)1231号 建物明渡、地位確認等請求事件 〔日蓮正宗末寺事件・上告審〕
(73)平成 5年 7月15日 福岡高裁那覇支部 平4(行ケ)1号 当選無効等請求事件
(74)平成 5年 7月15日 福岡地裁大牟田支部 平5(わ)18号 強制執行不正免脱、公正証書原本不実記載、同行使被告事件
(75)平成 5年 6月29日 名古屋高裁 平5(行ケ)1号 当選の効力に関する審査裁決取消請求事件
(76)平成 5年 5月28日 徳島地裁 昭63(行ウ)12号 徳島県議会県政調査研究費交付金返還等請求事件
(77)平成 5年 5月27日 最高裁第一小法廷 平元(オ)1605号 会費一部返還請求事件 〔大阪合同税理士会会費返還請求事件・上告審〕
(78)平成 5年 5月25日 福井地裁武生支部 昭63(ワ)4号 損害賠償請求事件 〔福井鉄道事件〕
(79)平成 5年 5月13日 大阪地裁 平4(ワ)619号 損害賠償請求事件
(80)平成 5年 3月25日 仙台高裁 事件番号不詳 公職選挙法違反被告事件
(81)平成 5年 3月22日 福岡高裁宮崎支部 昭63(行コ)1号 行政処分取消請求控訴事件 〔宮崎県立大宮第二高校懲戒処分取消請求訴訟・控訴審〕
(82)平成 5年 3月22日 浦和地裁 平元(行ウ)4号 所得税更正処分・過少申告加算税賦課決定処分取消請求事件
(83)平成 5年 3月17日 東京地裁 平元(行ウ)219号 一般旅券返納命令処分取消請求事件
(84)平成 5年 3月17日 神戸地裁 昭62(ワ)1670号 損害賠償請求事件
(85)平成 5年 3月16日 札幌地裁 平元(わ)559号・平元(わ)561号・平元(わ)560号 受託収賄被告事件 〔北海道新長計汚職事件〕
(86)平成 5年 3月15日 東京地裁 平4(行ウ)175号 教科書検定合格処分無効確認等請求事件
(87)平成 5年 1月22日 東京地裁 平3(ワ)6321号 損害賠償等請求事件
(88)平成 5年 1月20日 最高裁大法廷 平3(行ツ)184号 選挙無効請求事件
(89)平成 4年12月24日 横浜地裁 昭49(ワ)847号・昭50(ワ)111号 損害賠償請求事件 〔全税関横浜訴訟・第一審〕
(90)平成 4年12月17日 名古屋高裁 平4(行ケ)1号 参議院議員選挙当選無効請求事件
(91)平成 4年11月25日 東京高裁 平4(く)200号 接見等禁止一部解除決定に対する抗告申立事件 〔東京佐川急便事件関連接見等禁止一部解除事件〕
(92)平成 4年11月24日 大阪地裁 平2(行ウ)81号・平2(行ウ)97号・平2(行ウ)94号 即位の礼・大嘗祭訴訟第一審判決
(93)平成 4年10月26日 東京地裁 昭61(ワ)4793号 損害賠償請求事件 〔報徳会宇都宮病院訴訟〕
(94)平成 4年10月23日 東京高裁 昭59(行コ)38号 事業認定処分取消請求、特定公共事業認定処分取消請求各控訴事件 〔成田空港訴訟・控訴審〕
(95)平成 4年 9月22日 大阪地裁 昭49(ワ)2701号 損害賠償請求事件 〔全税関大阪訴訟・第一審〕
(96)平成 4年 7月16日 東京地裁 昭60(ワ)10866号・昭60(ワ)10864号・昭60(ワ)10867号・昭60(ワ)10865号・平2(ワ)10447号・昭60(ワ)10868号 立替金請求併合事件 〔全逓信労働組合事件〕
(97)平成 4年 6月26日 大阪高裁 平2(う)966号 公職選挙法違反被告事件
(98)平成 4年 6月15日 東京地裁 平3(ワ)4745号 謝罪広告等請求事件
(99)平成 4年 4月28日 最高裁第三小法廷 昭60(オ)1427号 損害賠償請求事件 〔台湾住民元日本兵戦死傷者の損失補償請求事件・上告審〕
(100)平成 4年 4月24日 福岡高裁 昭62(ネ)551号・昭61(ネ)106号 選挙権被選挙権停止処分無効確認等請求控訴、附帯控訴事件 〔南九州税理士会政治献金徴収拒否訴訟・控訴審〕


政治と選挙の裁判例(裁判例リスト)

■「選挙 コンサルタント」に関する裁判例一覧【1-101】
https://www.senkyo.win/hanrei-senkyo-consultant/

■「選挙 立候補」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-senkyo-rikkouho/

■「政治活動 選挙運動」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seijikatsudou-senkyoundou/

■「公職選挙法 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kousyokusenkyohou-poster/

■「選挙 ビラ チラシ」に関する裁判例一覧【1~49】
https://www.senkyo.win/hanrei-senkyo-bira-chirashi/

■「政務活動費 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seimu-katsudouhi-poster/

■「演説会 告知 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/senkyo-seiji-enzetsukai-kokuchi-poster/

■「公職選挙法 ポスター 掲示交渉」に関する裁判例一覧【101~210】
https://www.senkyo.win/kousyokusenkyohou-negotiate-put-up-poster/

■「政治ポスター貼り 公職選挙法 解釈」に関する裁判例一覧【211~327】
https://www.senkyo.win/political-poster-kousyokusenkyohou-explanation/

■「公職選挙法」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kousyokusenkyohou/

■「選挙 公報 広報 ポスター ビラ」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/senkyo-kouhou-poster-bira/

■「選挙妨害」に関する裁判例一覧【1~90】
https://www.senkyo.win/hanrei-senkyo-bougai-poster/

■「二連(三連)ポスター 政党 公認 候補者」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-2ren-3ren-poster-political-party-official-candidate/

■「個人(単独)ポスター 政党 公認 候補者」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kojin-tandoku-poster-political-party-official-candidate/

■「政党 公認 候補者 公募 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-political-party-official-candidate-koubo-poster/

■「告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター 政党 議員 政治家」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kokuji-kouji-kouei-kousetsu-keijiban-poster-political-party-politician/

■「告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター 政党 公報 広報」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kokuji-kouji-kouei-kousetsu-keijiban-poster-political-party-campaign-bulletin-gazette-public-relations/

■「国政政党 地域政党 二連(三連)ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kokusei-seitou-chiiki-seitou-2ren-3ren-poster/

■「国政政党 地域政党 個人(単独)ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kokusei-seitou-chiiki-seitou-kojin-tandoku-poster/

■「公認 候補者 公募 ポスター 国政政党 地域政党」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-official-candidate-koubo-poster-kokusei-seitou-chiiki-seitou/

■「政治団体 公認 候補者 告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-political-organization-official-candidate-kokuji-kouji-kouei-kousetsu-keijiban-poster/

■「政治団体 後援会 選挙事務所 候補者 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-political-organization-kouenkai-senkyo-jimusho-official-candidate-poster/

■「政党 衆議院議員 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-shuugiin-giin-poster/

■「政党 参議院議員 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-sangiin-giin-poster/

■「政党 地方議員 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-chihou-giin-poster/

■「政党 代議士 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-daigishi-giin-poster/

■「政党 ポスター貼り ボランティア」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-poster-hari-volunteer/

■「政党 党員 入党 入会 獲得 募集 代行」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-touin-nyuutou-nyuukai-kakutoku-boshuu-daikou/

■「政治団体 党員 入党 入会 獲得 募集 代行」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seiji-dantai-nyuutou-nyuukai-kakutoku-boshuu-daikou/

■「後援会 入会 募集 獲得 代行」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kouenkai-nyuukai-boshuu-kakutoku-daikou/


■選挙の種類一覧
選挙①【衆議院議員総選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙②【参議院議員通常選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙③【一般選挙(地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙④【特別選挙(国政選挙|地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)


【資料】政治活動用事前街頭ポスター新規掲示交渉実績一覧【PRドットウィン!】選挙,ポスター,貼り,代行,ポスター貼り,業者,選挙,ポスター,貼り,業者,ポスター,貼り,依頼,タウン,ポスター,ポスター,貼る,許可,ポスター,貼ってもらう,頼み方,ポスター,貼れる場所,ポスター,貼付,街,貼り,ポスター,政治活動ポスター,演説会,告知,選挙ポスター,イラスト,選挙ポスター,画像,明るい選挙ポスター,書き方,明るい選挙ポスター,東京,中学生,選挙ポスター,デザイン


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