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政治と選挙Q&A「政党 衆議院議員 ポスター」に関する裁判例(59)平成 6年 3月31日 長野地裁 昭51(ワ)216号 損害賠償等請求事件 〔長野東電訴訟〕

政治と選挙Q&A「政党 衆議院議員 ポスター」に関する裁判例(59)平成 6年 3月31日 長野地裁 昭51(ワ)216号 損害賠償等請求事件 〔長野東電訴訟〕

裁判年月日  平成 6年 3月31日  裁判所名  長野地裁  裁判区分  判決
事件番号  昭51(ワ)216号
事件名  損害賠償等請求事件 〔長野東電訴訟〕
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴  文献番号  1994WLJPCA03310005

要旨
◆株式会社の従業員らが、会社からその思想信条を理由として賃金の差別的取扱を受けたとして、会社に対し、同学歴、同期入社の従業員らの平均賃金との差額相当分の支払を求めた損害賠償請求が、会社による賃金差別の存在は認められるものの、これによる損害額が確定できないとして棄却された事例
◆株式会社の従業員らが、前項の賃金差別を理由に、会社に対し、慰謝料の支払を求めた損害賠償請求が認容された事例

新判例体系
民事法編 > 民法 > 民法〔明治二九年法律… > 第一編 総則 > 第五章 法律行為 > 第一節 総則 > 第九〇条 > ○公の秩序に反する事… > (一二)ノ四 思想信条による差別
◆共産党員ないしその支持者であることを理由として差別意思の下に不利益な賃金査定を行ったことは不法行為を構成し会社は慰謝料支払義務を免れない。

 

出典
判タ 863号79頁
判時 1497号3頁
労判 660号73頁
労働法律旬報 1337号24頁

評釈
岩下智和・労働法律旬報 1337号6頁
西谷敏・労働法律旬報 1384号6頁
藤川久昭・労判 666号6頁
慰謝料請求事件データファイル(労働関係)

参照条文
民法709条
民法90条
労働基準法3条

裁判年月日  平成 6年 3月31日  裁判所名  長野地裁  裁判区分  判決
事件番号  昭51(ワ)216号
事件名  損害賠償等請求事件 〔長野東電訴訟〕
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴  文献番号  1994WLJPCA03310005

原告 涌井紀二
同 竹内功
同 小俣哲夫
同 涌井春子
右四名訴訟代理人弁護士 佐藤義彌
安西一三
秋山信彦
今村征司
牛久保秀樹
大森鋼三郎
小池振一郎
小島成一
小林亮淳
斎藤健児
坂本修
高橋融
松井繁明
山本真一
竹中喜一
二上護
仁藤峻一
林勝彦
大熊政一
久保田昭夫
清水恵一郎
豊田誠
江藤鉄兵
紙子達子
菊地絋
小林幹治
小見山繁
椎名麻紗枝
島田隆英
福本嘉明
守川幸男
向武男
岡部保男
橋本紀徳
矢花公平
市来八郎
大川隆司
亀井時子
川上耕
清見栄
小池通雄
小林和恵
坂井興一
坂口徳雄
沢藤統一郎
清水順子
船尾徹
村野守義
宮川泰彦
山本政明
岡村親宣
小林良明
内藤功
山田裕祥
飯塚和夫
木村康定
窪田之喜
斉藤展夫
佐治融
関島保雄
戸張順平
二瓶和敏
山下登司夫
我妻真典
荒川晶彦
飯田幸光
石野隆春
茨木茂
川村武郎
木村晋介
清野順一
古城春実
須藤正樹
寺村恒郎
永瀬精一
塙悟
浜口武人
平山知子
松本善明
安田叡
渡部照子
山内忠吉
畑山穣
川又昭
猪俣貞夫
輿石英雄
稲生義隆
根岸義道
堤浩一郎
横山国男
木村和夫
三浦守正
山内道生
星山輝男
林良二
陶山圭之輔
陶山和嘉子
宮代洋一
佐伯剛
谷口隆良
谷口優子
高荒敏明
若林正弘
山本安志
根本孔衛
杉井厳一
篠原義仁
児嶋初子
村野光夫
永尾広久
畑谷嘉宏
増本一彦
増本敏子
長谷川宰
庄司捷彦
野村正勝
中込泰子
岡村共栄
岡村三穂
一木剛太郎
池田輝孝
宇津泰親
柴田睦夫
北光二
石井正二
河本和子
鈴木守
佐藤鋼造
関静夫
高橋勲
高橋高子
田村徹
白井幸男
後藤裕造
藤野善夫
小高丑松
倉内節子
瑞慶山茂
西山明行
飯野春正
野上恭道
野上佳世子
大塚武一
金井厚二
広田繁雄
吉村駿一
小林勝
冨岡恵美子
高坂隆信
白井巧一
寺島勝洋
関本立美
岩崎功
岩下智和
武田芳彦
大門嗣二
木下哲雄
坂東克彦
富森啓児
和田清二
上條剛
内村修
山田安太郎
被告 東京電力株式会社
右代表者代表取締役 荒木浩
右訴訟代理人弁護士 渡辺修
吉澤貞男
橋本武人
田多井啓州
馬場東作
高津幸一
和田良一
山本孝宏
宇田川昌敏
牛嶋勉
河村貞二
竹内桃太郎
山西克彦
富田武夫
成富安信
田中等
八代徹也
江川勝
石川常昌
太田恒久
吉益信治
伊藤昌毅
大下慶郎

 

主文
一  被告は、原告涌井紀二、同竹内功及び同涌井春子に対し、それぞれ金三四〇万円及び内金四〇万円に対する昭五一年一〇月三〇日から、内金三〇〇万円に対する平成五年一〇月一日からそれぞれ支払ずみまで、原告小俣哲夫に対し、金三三八万及び内金三八万円に対する昭和五一年一〇月三〇日から、内金三〇〇万円に対する平成五年一〇月一日からそれぞれ支払ずみまで、各年五分の割合による金員を支払え。
二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
三  訴訟費用は、これを五分し、その四を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。
四  この判決は、第一項に限り仮に執行することができる。

事実
第一  当事者の求めた裁判
一  請求の趣旨
1  被告は、原告らに対し、別紙債権目録の請求債権合計欄記載の金員及び同目録の請求債権(1)欄記載の金員については昭和五一年一〇月三〇日以降、請求債権(2)欄記載の金員については昭和五四年一〇月九日以降、請求債権(3)欄記載の金員については昭和五六年一〇月一四日以降、請求債権(4)欄記載の金員については昭和五九年三月二八日以降、請求債権(5)欄記載の金員については昭和六〇年九月三〇日以降、請求債権(6)欄記載の金員については昭和六三年四月五日以降、請求債権(7)欄記載の金員については平成二年九月二七日以降、請求債権(8)欄記載の金員については平成五年三月一九日以降、いずれも支払ずみまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。
2  被告は、原告らに対し、別紙謝罪文を交付し、縦一〇三センチメートル、横145.6センチメートルB0判の白紙に紙面一杯に墨書のうえ、これを別紙掲示場所目録記載の各場所に判決確定日より一か月間掲示し、かつ、右謝罪文を判決確定日直後に発行される被告の社内報「とうでん」の諸公示欄冒頭に一頁全面を用いて掲載せよ。
3  訴訟費用は被告の負担とする。
4  第1項につき仮執行宣言
二  請求の趣旨に対する答弁
1  原告らの請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告らの負担とする。
第二  当事者の主張
一  請求原因
1  原告らの地位等
(一) 原告涌井紀二(以下「原告紀二」という。)
(1) 社内歴
原告紀二は、昭和三四年三月長野県立須坂西高等学校を卒業した後、同年四月一日被告(以下「被告会社」という。)に事務員として入社し、中央社員養成所を経て同月二三日千曲川電力所総務課労務係(同年六月一日組織改正により同電力所労務課となる。)に配属され、昭和三七年八月一日同電力所千曲川保修所(昭和五六年五月一一日組織改正により同電力所千曲川総合制御所発電課となる。)に配転となり、平成四年四月一日同電力所千曲川総合制御所発電グループ副主任の発令を受け、現在に至っており、主として一般事務を担当してきた。
(2) 組合活動歴
同原告は、昭和三六年から昭和四〇年にかけて東京電力労働組合(以下「東電労組」という。)千曲川支部青年婦人部役員を歴任し、その後も同労組本部執行委員や同労組千曲川支部代議員選挙に立候補した。また、他の組合員の不当配転撤回闘争を支援した。
(3) サークル活動歴
同原告は、職場の学習サークルに参加し、昭和三六年サークル「わかもの」委員、昭和三七年二月サークル「くるみ会」会長を務めた。
(4) 日本共産党(以下「共産党」という。)関係活動歴
同原告は、昭和三五年一〇月民主青年同盟(以下「民青同盟」という。)に加盟し、同年一二月共産党に入党し、現在に至っているが、昭和四九年三月から二年間共産党小諸市委員長を務めた。
(5) その他の活動歴
同原告は、昭和三四年ころから、日米安全保障条約(以下「安保」という。)改定反対運動に参加し、三井三池闘争支援や松川裁判支援運動に協力した。
また、昭和四六年から昭和五〇年にかけて、保育園保護者会、小学校PTA等の団体役員を歴任した。
(二) 原告竹内功(以下「原告竹内」という。)
(1) 社内歴
原告竹内は、昭和三四年三月長野県立上田高等学校を卒業した後、同年四月一日被告会社に事務員として入社し、中央社員養成所を経て同月二三日千曲川電力所総務課労務係(同年六月一日組織改正により同電力所労務課となる。)に配属され、同年八月一日同電力所経理課経理係に配転となり、昭和三七年七月一〇日同課資材係に配転となり、平成三年四月一日同係副主任の発令を受け、現在に至っており、主として経理事務を担当してきた。
(2) 組合活動歴
同原告は、昭和三六年五月東電労組千曲川支部常任執行委員財政部長に選任され、同年四月から昭和四〇年にかけて同支部青年婦人部役員を歴任した。また、他の組合員の不当配転撤回闘争を支援した。
(3) サークル活動歴
同原告は、昭和三五年、職場の学習サークル「くるみ会」「わかもの」の結成に参加し、職場の「うたごえサークル」のリーダーを務め、昭和三八年以降、「カチューシャ」「わらび座」公演事務局、小諸勤労者音楽協議会(以下「労音」という。)事務局等の芸術鑑賞活動サークルの役員を歴任した。
(4) 共産党関係活動歴
同原告は、昭和三五年一一月民青同盟に加盟し、昭和三六年一月共産党に入党し、現在に至っているが、昭和三六年四月民青同盟小北地区委員を務めた。
(5) その他の活動歴
同原告は、昭和三四年ころから、安保改正反対運動に参加し、三井三池闘争支援や松川裁判支援運動に協力した。
また、昭和四〇年から昭和六〇年にかけて、保育園保護者会、小中学校PTA等の団体役員を歴任した。
(三) 原告小俣哲夫(以下「原告小俣」という。)
(1) 社内歴
原告小俣は、昭和三五年三月東京都立王子工業高等学校電気通信科を卒業した後、同年四月一日被告会社に工務員として入社し、同月二〇日千曲川電力所島河原通信所(昭和五二年六月三〇日職制改革により千曲川電力所通信課となり、平成元年四月一日職制改革により同電力所電子通信課、平成三年七月一日職制改革により同電力所電子通信グループとなる。)に配属され、平成元年四月一日同電力所電子通信課副主任の、平成二年四月一日同課副班長の発令を受け、現在に至っており、主として通信技術業務を担当してきた。
(2) 組合活動歴
同原告は、昭和三七年二月小諸地区労大会代議員に、同年五月東電労組千曲川支部執行委員に選任され、昭和三八年五月から昭和四一年にかけて同支部青年婦人部役員を歴任し、その後も同支部大会代議員選挙に立候補した。また、他の組合員の不当配転撤回闘争を支援した。
(3) サークル活動歴
同原告は、昭和三七年四月から昭和三九年にかけて職場の学習サークルである「小諸市わかもの会」会長を務め、昭和四七年以降小諸労音役員も歴任した。
(4) 共産党関係活動歴
同原告は、昭和三六年五月民青同盟に加盟し、同年七月共産党に入党し、現在に至っているが、昭和三九年五月から昭和四二年にかけて、民青同盟上小地区委員、民青同盟小諸市委員長、同委員などを歴任した。
(5) その他の活動歴
同原告は、昭和三五年ころから、安保改定反対運動に参加し、三井三池闘争支援や松川裁判支援運動に協力した。
また、昭和四四年、昭和四九年には保育園保護者会、小学校PTA等の団体役員を歴任した。
(四) 原告涌井春子(以下「原告春子」という。)
(1) 社内歴
原告春子は、昭和三五年三月長野県立上田染谷丘高等学校を卒業した後、同年四月一日被告会社に事務員として入社し、同月二〇日千曲川電力所労務課に配属され、昭和三六年一〇月一日同電力所総務課庶務係に、昭和三七年四月二〇日同電力所土木課土木係(昭和五二年六月三〇日職制改革により電力所工務部土木建築課土木係となる。)に各配転となり、現在に至っており、主として課庶務を担当してきた。
(2) 組合活動歴
同原告は、組合役員歴はないが、昭和三五年から東電労組千曲川支部青年婦人部の活動に参加し、組合代表として、同年七月県母親大会に出席し、同年から翌年にかけて、「信濃のうたごえ」「日本のうたごえ」等に参加した。また、他の組合員の不当配転撤回闘争を支援した。
(3) サークル活動歴
同原告は、昭和三五年、職場の学習サークルである「くるみ会」「小諸わかもの会」に参加し、また、昭和四〇年以降、新日本婦人の会小諸支部の事務局長、機関紙部長、支部委員等の役員を歴任し、現在に至っている。
(4) 共産党関係活動歴
同原告は、昭和三六年六月民青同盟に加盟し、同年一〇月共産党に入党し、現在に至っている。
(5) その他の活動歴
同原告は、昭和三五年ころから、安保改定反対運動に参加し、また、昭和四〇年から昭和五〇年にかけて、保育園保護者会の役員を歴任した。
2  被告会社の反共的労務政策
(一) 被告会社の労務政策の背景
電力産業の全国単一産業別組合であった日本電気産業労働組合(以下「電産」という)は、昭和二四年の第二次関配労組の結成、昭和二五年のレッド・パージ、昭和二七年の秋季闘争を契機とするストライキ規制法制定等の被告会社(前身たる関東配電会社を含む。)や国からの組織攻撃により弱体化、分裂化が進行し、被告会社でも企業別労組たる東電労組が結成され、被告会社は、昭和三〇年には電産型賃金体系を廃止し、職務給制度を導入した。
しかし、その後、東電労組が被告会社の人減らし合理化に反対して戦闘的に戦うようになったため、被告会社は危機感をもって同労組を労使協調路線に導くとともに同労組内の積極的活動家である共産党員及びその支持者を孤立させ、排除することを画策した。
(二) 被告会社の労務政策の基本
被告会社の労務政策の基本は、一貫して表向き「組合をして会社のよきパートナーたらしめる」ため「組合関係の合理的調整を図る」ことにあるが、実質は様々な支配、介入を通して東電労組を被告会社の支配下に置き、被告会社の経営方針の遂行に協力させること、そのために被告会社の一方的合理化に反対する共産党員及びその支持者を徹底的に攻撃し、孤立化させ、また、賃金、仕事等あらゆる面で差別し、被告会社から排除することにある反共主義的差別政策である。
右反共差別政策は、東電労組との力関係を反映して次のように時期によりその重点の置き方が異なるが、一時期だけ採用されたわけではなく、被告会社の独占的利潤追求と合理化設備投資の実現のため、長期的展望に立って、今日まで一貫して徹底されている。
(1) 第一期(昭和三一年ないし三五年)
昭和三一年六月、電産関東地方本部と東電労組が組織統一した後、被告会社の一方的合理化に対し階級的に闘い出したため、昭和三五年六月に東電労組が全労加盟決議をするまでの間、東電労組を労使協調路線に仕立てあげるよう種々工作、攻撃を行った。
具体的には、正確な組合情報を収集、把握し、これに基づいて①本店労務部首脳陣を組合活動家の拠点店所に派遣して直接指導すること、②拠点の支部・分会を取り潰すため、賃金カット等の強硬な労務対策を実行すること、③活動家や組合役員に対する配置転換等の直接攻撃をすること、④職制教育を中心とする思想教育を行うこと等が実行された。
また、新規採用者に対する思想調査や、思想を理由とする採用取消に異議がない旨の請書を徴すること等による共産党員及びその支持者の排除が行われた。
(2) 第二期(昭和三五年ないし四一年)
東電労組本部の全労加盟決議後も労使協調路線に反対して闘う支部・分会が存したので、このような被告会社のいわゆる「反主流派」の支部・分会とその中心的活動家に対する攻撃が行われた。
具体的には、昭和三六年一一月に支持政党調査を含むモラル・サーベイ(労働者の帰属意識の調査)が行われたほか、山梨、神奈川支部に対する情報収集の徹底、インフォーマル組織の育成強化、解雇等の懲戒処分、賃金カット、職制人事配置の強化、独身寮対策等が実行された。
千曲川支部においては、昭和三五年五月に青年婦人部が再建されたことから、同部の活動に対し、後述の昇進、昇給差別を含めた青年層対策を本店労務部の指示により実施したほか、家族まで巻き込んだ転向強要、本多一公、鈴木紀元、原告紀二ら青年婦人部活動家に対する不当配転等の攻撃が行われ、この結果、昭和三八年には反主流派は支部執行部を失うに至った。
(3) 第三期(昭和四一年以降)
労使関係は労使協調の状況となり、他方、反主流派とされる共産党員及びその支持者に対する生活干渉、人権侵害、転向強要、賃金差別が一層強化された。
具体的には、若年層への監視、情報収集を継続し、共産党員及びその支持者等を把握するための「特殊名簿」の補完、活動家に対する隔離及び配転、独身寮対策の強化等が行われ、職制に対し、「容共分子に対する徹底締め出し、中間分子の指導、健全分子の育成」を内容とする指導がされ、労務管理は各級管理者の基本任務であるとして全社的に徹底された。
右反共差別政策は今日なお継続している。
(三) 被告会社の反共差別政策の完遂のための組織体制
被告会社の反共差別政策は、被告会社本店の決定に基づき、全社を挙げて推進されたものであり、単に千曲川電力所、あるいはその中の一労務担当者限りのものではない。
(1) 常務会は、被告会社の反共差別政策の方針を決定し、その実施を全社に徹底させるべく指示し、その実施状況について各店所から報告を求め、反共差別政策の推進の要の役を直接果たしている。
(2) 本店労務部労務課は、全社的な労務政策を立案し常務会にはかり、労務関係について各店所の労務課に具体的指示を行い、労務関係の独自調査及び各店所労務課への調査指示、各店所へ労務関係情報を伝えること等被告会社全体にわたる組織的意思統一のための重要な機関的役割を果たしている。
(3) 被告会社や各店所労務課発行の労務管理の手引等を通じて、現場で直接部下を監督する第一線管理者全員が反共差別政策を実施すべきことが指示され、網の目のような管理機構が巡らされている。
(4) 共産党員及びその支持者についての情報は、各店所間で交換され、その対策が周知徹底されている。
これらに基づいて、被告会社の各店所ごとに反共差別政策の具体的立案及びその徹底がなされている。
(四) 千曲川電力所における反共差別政策
被告会社は、原告らの勤務する千曲川電力所に対しても反共差別政策を推進すべきことを指示し、これに基づいて千曲川電力所も被告会社本店及び各店所と一体となって以下のような反共差別政策を忠実に実行するための情報収集を行い、また、共産党及び民青同盟を抑圧、敵視することを目的とした教育、講習を実施した。
(1) 昭和三六年ころ、千曲川電力所では、毎月定例的に主任会議又は係長会議を一回行い、労働情勢を含めて討論、打合せしていたが、昭和三六年三月二二日開催の主任会議では、所長、総務課長が特に出席して、青年婦人の思想対策、即ち民青同盟及び共産党の思想対策について善処方を要請するなどし、その後、主任会議又は係長会議において当時組合青年婦人部活動の中心であった原告ら共産党員の動向を討議した。
(2) 昭和三六年以降、千曲川電力所では、青年婦人対策として教育、講習、懇談会等を実施してきたが、新入社員研修では共産党及び民青同盟に対する非難を繰り返し、勤務時間中の全従業員を対象とする講演会では反共理論家である鍋山貞親を講師に呼ぶなどし、また、従業員を民社研労働学校へ派遣するなどした。
(3) 千曲川電力所では、昭和三六年以降、本店労務部あてに組合役員名簿及び組合大会概況を提出し、青年婦人部活動を警戒し、あるいは反共差別政策の浸透を評価、検討した。
(4) 千曲川電力所職制会議では、昭和三七年一月六日ころ、党員五名、新加入者三名がいるなどと党員数を把握しており、またこれらの者が「東電平和と民主主義を守る会」の結成を呼びかけているなどとその活動についての資料を収集し、対策を協議した。
(5) 昭和三八年ころ、千曲川電力所千曲川保修所では、保修所長の交代の際に事務引継書で共産党員及びその支持者についての情報が引継ぎされていた。
(6) 千曲川電力所では、少なくとも昭和四一、四二年ころ、毎年継続的に地域労働情勢の実態把握と称して警察の治安情報を入手していた。
(7) 昭和四四年ころ、千曲川電力所では、中堅社員労務管理講習会の名の下に「千曲川電力所には、某所からの情報によれば七人の共産党員がいる。このうち六名の名前はわかっているが、残り一名の名前がわからない。」として、残り一名の特定のために中堅社員に発言させ、検討した。
3  千曲川電力所における各原告が共産党員又はその支持者である旨の認定
千曲川電力所では、前記2(四)のようにして収集した各種情報に基づいて、遅くとも2(四)(4)の昭和三七年一月六日の職制会議で千曲川電力所従業員中の共産党員の人数を正確に把握した段階では、各原告を共産党員ないしその支持者であると認定していた(当時、共産党員は松田英孝、鈴木紀元、原告ら四名、ほか二名の合計八名であった)。
4  各原告に対する被告会社の差別・人権侵害
(一) 賃金差別
(1) 賃金差別の意義
被告会社は、前記反共差別政策に基づいて、共産党員又はその支持者と認定した活動家を攻撃する最大の武器として賃金差別を行ってきた。賃金差別は、労働条件の根幹である賃金を被告会社の専断的決定の下に差別することによって、当該活動家の生活を直接脅かし、職場における信用と名誉を著しく傷つけ、精神的苦痛を与えるとともに、他の従業員に対する「見せしめ」の効果を最大限に挙げるものである。
(2) 被告会社の賃金差別意思
被告会社は、昭和三六年五月二九日、千曲川電力所に対し、「火力部門を中心とした青年層対策」と題する書面及びその付属書面を通じて、共産党・民青同盟対策として昇進・昇給面の問題も含めること、給与面の改善と称して「職務内容により重点をおいた配分方法」「職務給の実質的強化」の形式で共産党・民青同盟対策としての給与管理を行うこと、人間関係管理に関する諸対策(例えば昇進、昇給面の問題)を特別に重視することなどを指示し、これにより賃金差別意思に基づいて原告ら共産党員に対する差別賃金の支給を指示した。
(3) 被告会社の賃金体系
被告会社の賃金体系は、基本的に基本給と諸手当の二本立てであるが、基本給と諸手当の一部で①基準内給与をなし、その余の諸手当で②基準外給与をなし、その他の賃金として賞与本体と住宅助成金等からなる③賞与、不定期に支給された④その他一時金がある。
昭和四一年二月一日、被告会社は新基本給体系を採用実施し、その後二回の改定を経て、諸手当を含めた賃金決定の仕組みは概略以下のとおりである。
① 基準内給与は、(ア)基本給、(イ)資格手当 (ウ)職責手当、(エ)世帯手当で構成される
(ア) 基本給は、職級、号数及び人事考課に基づき、別に定める基本給表(別に定める基準基本給表の基準基本給の額の五パーセント増減内の考課運用幅を展開して得た数表)により定まる額を基礎に、定昇調整の結果を加味して決定される。
職級は、具体的職務の内容と被告会社作成の基準職級表の内容を対比照合して決定され(職級決定)、職級の決定された具体的職務に各従業員が配置(職務任用)されることになり、各人の職級が決まってくる。
号数は、勤続年数を基礎にして、学歴、社外経験期間を加味することによる補正を受け、さらに職級変更の際は、別に定める号数基準値表により決定される。
定昇調整は、それぞれの職級、号数ごとに昇給額の標準範囲として定まる第三基準定昇額に職級別に〇ないし四〇パーセント増減の範囲で付加される考課分である。
(イ) 資格手当は、従業員各人の職務を通じて得る知識、技能の蓄積等を評価した結果付与される資格にそれぞれ対応する賃金である。それぞれの資格は、各職級に対応して定められている。
(ウ) 職責手当は、各役職に付与される賃金であり、それぞれの役職位は各職級(ただし六級以上)に対応して定められている。
(エ) 世帯手当は、勤務地別及び年齢別に定まる定額であり、職級及び人事考課とは無関係に決定される。
② 基準外給与は、時間外手当、当直手当、特別労働手当、作業手当、特定勤務手当、保線手当、建築勤務手当及び冬営手当で構成され、いずれも職級及び人事考課とは無関係に決定される。
③ 賞与は、賞与本体、住宅積立助成手当、住宅助成臨時措置特別加算及び財産形成給付金で構成される。
賞与本体は、基本給比例、職級別定額、基準内給与比例及び純査定の総計で決定される。住宅積立助成手当、住宅助成臨時措置特別加算及び財産形成給付金、いずれも基準内給与比例(ただし、職責手当を除く。)で決定される。
④ その他一時金
(ア) 安定供給推進協力一時金(昭和四八年一〇月一六日支給)
(イ) 財産形成促進助成措置(昭和四九年一一月五日支給)
(ウ) 賃金支払日変更貸付金(昭和五二年一月一四日支給)
これらは、基本給、基準内給与に従って支給額が決定された。
(4) 被告会社の賃金体系の年功序列性
① 被告会社の右賃金体系は、職務給制度の形式を採用しているが、同一職務同一賃金という職務給の原則と異なり、定期昇給制度及び資格制度という年功序列制度的要素を含み、また、職級制度についても、同一職務に従事していながら入社年度別に賃金額に一定の差を設ける是正措置や同一職務に従事している間に職級が上昇する弾力的運用をとるなど年功的要素を含み、かつ、実際にも次のような年功序列的運用がなされている。
(ア) 学歴により初任職級及び標準的昇級年数に差がある。
(イ) 同一学歴の場合は勤続年数に比例して昇級する傾向がある。
(ウ) 入社年度別の最多職級の推移を見ると、勤続年数が長くなるにつれて全体として昇級している傾向がある。
② また、被告会社は、右のように全体的には年功序列型賃金としながら、その運用を各従業員ごとに画一的に行うことはせずに一定の幅を設けて、その中で従業員同士を競わせて全体の労務管理を容易にしている。
(5) 賃金差別の仕組み
① 職務任用と人事考課
(ア) 各従業員の職務任用は、被告会社の人事考課によるもので、人事考課は、
(a) 従業員の担当する職務の遂行度合と職務遂行に関連してみられる執務態度を評定すること(業績評定)
(b) 担当する職務等を通じてみられる従業員の職務遂行能力及び人物について、その水準、特性を評価し、適職や研修事項を判定すること(能力評定)からなる。
(イ) 人事考課は、各従業員の職務任用の基礎となるほか、前記のとおり、職級に対応する資格格付、役職発令、毎年の昇給時における定昇調整及び賞与本体の純査定部分にかかわり、また、これらを通じて全ての賃金決定に影響する。
② 共産党員及びその支持者に対する賃金差別の方策
(ア) 被告会社は、共産党員及びその支持者であると会社が認定した従業員に対しては、前記のような賃金体系の年功序列的運用及び通常の人事考課から切り離して、いわば人事考課の別枠を設けること、即ち、当該従業員の業績や職務遂行能力ではなく、職場外の行動や思想・信条を評定の対象とし、一般従業員と異なる差別的な職務任用や賃金査定を行いながら、一見これを合理的かつ正当な任用及び査定であるように見せかけている。
(イ) 具体的には、被告会社は、電気料金の値上げに反対して活動したこと、企業ぐるみ選挙に協力しないこと、組合役員選挙の際の政策内容が不適当であることなど、本来人事考課の査定対象に含めることが許されない事項を人物評価の基準として含ませたり、また、能力開発の主要な機会である研修から共産党員及びその支持者であると会社が認定した従業員を排除したうえで職務遂行能力に欠けるなどと評価したりした。
(ウ) また、人事考課の第一次評定者である職制に対し、前記のように研修等を通じて反共意識を持つよう教育宣伝し、また、十分な評定者訓練を受けさせず、これらにより職制が共産党員及びその支持者であると会社が認定した従業員に対し先入観や偏見を抱いたまま非客観的かつ非公正な評定をする危険を増大させたものである。
(6) 各原告についての資格格差の実態
右のような、被告会社による共産党員及びその支持者であると会社が認定した従業員に対する賃金決定上の差別的取扱の結果、各原告と同学歴かつ同期入社の他の従業員ら(以下「同学歴・同期入社者」という。)との賃金決定の基礎となる職級、資格及び役職上の格差並びに賃金の格差は次のように著しいものとなっている。
① 原告紀二
(ア) 職級格差
原告紀二は、昭和三八年四月には同学歴・同期入社者と同様九級に昇級していたが、同学歴・同期入社者が平均して約八年後には七級まで昇級しているにも関わらず、同原告は、昭和四八年四月まで九級に据え置かれ、昭和五一年四月にやって七級に昇級した。なお、同時期の七級昇級は職場の一三年後輩である昭和四七年入社者と同等の取扱である。その後も職級格差は拡大し、昭和五七年九月時点では同原告と同じ七級の者は昭和四四年以前の入社者には他の原告らを除いて存在しない状態となり、同原告は現在でも七級相当(昭和五七年一〇月一日の制度改正により三級Bとなる。)の職級のまま据え置かれている。
(イ) 資格格差
同原告は、平成二年一〇月一日に主事となったが、同学歴・同期入社者ははるか以前に特任主事となっている。
(ウ) 役職格差
同学歴・同期入社者は平均的には昭和四九年には副主任・副班長に、昭和五三年には主任・班長に発令されており、現在では同原告の二〇年後輩の者でも副主任・副班長に発令されているが、同原告は平成四年四月にようやく副主任の発令を受けたばかりである。
(エ) 賃金格差
同原告は、昭和三八年度の基本給昇給額が同学歴・同期入社者の中で最低額とされ、初めて同学歴・同期入社者と一〇〇円の格差が生じ、その後も(ア)ないし(ウ)の格差に伴って賃金格差は年々増大し、基準内給与では平成四年度の一年間で一八七万二九八六円の格差が生じている。
このような賃金格差は、退職後の退職金・企業年金の格差にも反映される。
② 原告竹内
(ア) 職級格差
原告竹内は、昭和三八年四月には同学歴・同期入社者と同様九級に昇級していたが、同学歴・同期入社者が平均して約八年後には七級まで昇級しているにも関わらず、同原告は、昭和四六年四月まで九級に据え置かれ、昭和五〇年九月にやっと七級に昇級した。なお、同時期の七級昇級は職場の一三年後輩である昭和四七年入社者と同等の取扱である。その後も職級格差は拡大し、昭和五七年九月時点では同原告と同じ七級の者は昭和四四年以前の入社者には他の原告らを除いて存在しない状態となり、同原告は平成四年四月にやっと六級相当(昭和五七年一〇月一日の制度改正により三級Cとなる。)に昇級したばかりである。
(イ) 資格格差
同原告は、平成二年一〇月一日に主事となったが、同学歴・同期入社者ははるか以前に特任主事となっている。
(ウ) 役職格差
同学歴・同期入社者は平均的には昭和四九年には副主任・副班長に、昭和五三年には主任・班長に発令されており、現在では同原告の二〇年後輩の者でも副主任・副班長に発令されているが、同原告は平成三年四月にようやく副主任の発令を受けたばかりである。
(エ) 賃金格差
同原告は、昭和三八年度の基本給昇給額が同学歴・同期入社者の中で最低額とされ、初めて同学歴・同期入社者と一〇〇円の格差が生じ、その後も(ア)ないし(ウ)の格差に伴って賃金格差は年々増大し、基準内給与では平成四年度の一年間で一八五万六七九五円の格差が生じている。
このような賃金格差は、退職後の退職金・企業年金の格差にも反映される。
③ 原告小俣
(ア) 職級格差
原告小俣は、昭和三九年四月には同学歴・同期入社者と同様九級に昇級していたが、同学歴・同期入社者が平均して約八年後には七級まで昇級しているにも関わらず、同原告は、昭和四七年四月まで九級に据え置かれ、昭和五〇年九月にやっと七級に昇級した。なお、同時期の七級昇級は職場の一二年後輩である昭和四八年入社者と同等の取扱である。その後も職級格差は拡大し、昭和五七年九月時点では同原告と同じ七級の者は昭和四四年以前の入社には他の原告らを除いて存在しない状態となり、同原告は現在でも七級相当(昭和五七年一〇月一日の制度改正により三級Bとなる。)の職級のまま据え置かれている。
(イ) 資格格差
同原告は、平成三年一〇月一日に技師となったが、同学歴・同期入社者ははるか以前に特任技師となっている。
(ウ) 役職格差
同学歴・同期入社者は平均的には昭和五〇年には副主任・副班長に、昭和五三年には主任・班長に発令されており、現在では同原告の二〇年後輩の者でも副主任・副班長に発令されているが、同原告は平成元年四月にようやく副主任の発令を受けたばかりである。
(エ) 賃金格差
同原告は、昭和三八年度の基本給昇給額が同学歴・同期入社者の中で最低額とされ、初めて同学歴・同期入社者と一〇〇円の格差が生じ、その後も(ア)ないし(ウ)の格差に伴って賃金格差は年々増大し、基準内給与では平成四年度の一年間で一五八万九一六一円の格差が生じている。
このような賃金格差は、退職後の退職金・企業年金の格差にも反映される。
④ 原告春子
(ア) 職級格差
原告春子は、同学歴・同期入社者が平均して昭和三九年には九級、その約八年後には七級まで昇級しているにも関わらず、同原告は、昭和四一年四月に遅れて九級に昇級して以後、昭和四九年四月まで九級に据え置かれ、昭和五九年一〇月にやっと七級相当(昭和五七年一〇月一日の制度改正により三級Aとなる。)に昇級した。その後も職級格差は拡大し、同原告は現在でも七級相当(昭和五七年一〇月一日の制度改正により三級Bとなる。)の職級のまま据え置かれている。
(イ) 資格格差
同原告は、平成三年一〇月一日に主事となったが、同学歴・同期入社者ははるか以前に特任主事となっている。
(ウ) 役職格差
同学歴・同期入社者は平均的には昭和五〇年には副主任・副班長に、昭和五三年には主任・班長に発令されており、現在では同原告の二〇年後輩の者でも副主任・副班長に発令されているが、同原告は現在でも何の役職も発令されていない。
(エ) 賃金格差
同原告は、昭和三八年度の基本給昇給額が同学歴・同期入社者の中で最低額とされ、初めて同学歴・同期入社者と一〇〇円の格差が生じ、その後も(ア)ないし(ウ)の格差に伴って賃金格差は年々増大し、基準内給与では平成四年度の一年間で二〇四万七七四九円の格差が生じている。
このような賃金格差は、退職後の退職金・企業年金の格差にも反映される。
(7) 各原告の職務遂行能力等
各原告は、同学歴・同期入社者と比較して、次のとおり、少なくとも平均以上の職務遂行能力を有し、少なくとも平均以上の勤務態度であり、かつ、少なくとも平均以上の業績を挙げてきた。
① 原告紀二
(ア) 原告紀二は、小中高の学生時代を通じていわゆる優等生であり、家庭の事情で大学進学を断念して被告会社の昭和三四年度採用募集に応募したところ、県下の事務職希望者約三〇名中から原告竹内と共に二名のみ採用された。
(イ) 同原告は、職場の上司から思想にとらわれない次元では能力や勤務態度を優秀であると評価され、職場の同僚からも正義感が強い、清廉、潔癖、事務職の生き字引などと信頼されていた。
(ウ) 同原告は、東電労組千曲川支部組合員としての組合活動及び種々の社外活動に取り組んだが、自己の担務する仕事についておろそかにすることは全くなかった。
(エ) 同原告は、保育園保護者会やPTAの役員を歴任したが、この事実によっても同原告の一般的な能力と人望が優れていたことがわかる。
② 原告竹内
(ア) 原告竹内は、母子家庭のハンディにも関わらず、中高の学生時代に生徒会役員を務め、成績も良かった。被告会社の昭和三四年度採用募集に応募したところ、県下の事務職希望者約三〇名中から原告紀二と共に二名のみ採用された。入社直後に病床にあった母が亡くなり、一八歳のときから一家の主柱としての責任を担ってきた。
(イ) 同原告は、自己の担務する仕事について勉強家であり、規定集などをよく読み資料を集め、備忘録を充実させた。また、事務用品事前購入や資材の納期管理等の業務改善を行った。
(ウ) 同原告は、保育園保護者会やPTAの役員を歴任したが、この事実によっても同原告の一般的な能力と人望が優れていたことがわかる。
③ 原告小俣
(ア) 原告小俣は、入社と同時に島河原寮に入寮し、寮生と共に出退勤していたから、他の者と異なる勤務状況はなかった。
(イ) 同原告は、仕事に必要な知識を身につけるため、ノートにメモするなどし、まじめに仕事してきた。また、昭和四五年ころには、班長と同等以上のレベルの仕事をしてきた。
(ウ) 同原告は、保育園保護者会やPTAの役員を歴任したが、この事実によっても同原告の一般的な能力と人望が優れていたことがわかる。
④ 原告春子
(ア) 原告春子は、千曲川電力所の女性従業員定期採用の第一号であり、上田市、小県郡、南北佐久の地域から一〇名の希望者の中から、筆記試験・面接試験の結果、ただ一名採用されたものであり、千曲川電力所でも期待されていた。
(イ) 同原告は、職場の上司から思想にとらわれない次元ではまじめで几帳面な仕事振りと明るい性格を評価され、職場の同僚からもベテランの事務職員として信頼されていた。
(ウ) 同原告は、保育園保護者会やPTAの役員を歴任し、また、小諸市青少年補導員、両神青少年育成会役員を務めるなど、社会的にもその能力、人柄を評価されていた。
(8) 被告会社の差別行為と賃金格差の因果関係
① 以上のとおり、被告会社は、共産党員又はその支持者であると認定した各原告について、その思想、信条の故に嫌悪し、賃金差別意思をもって各原告を通常の人事考課の別枠に置き、各原告に対し、同学歴・同期入社者と比較して著しい格差の存する賃金を支払ってきたものである。
② 仮に右主張が認められないにしても、前記のとおり、各原告は、同学歴・同期入社者と比較して少なくとも平均以上の勤務遂行能力、勤務態度及び業績を有していたところ、被告会社は、共産党員又はその支持者であると認定した各原告について、その思想、信条の故に嫌悪し、賃金差別意思をもって査定権者を通じて査定する際、査定内容が抽象的かつ主観的であることを利用して、実際の職務遂行能力等を無視して、故意に社内で低く評価される職務に配属して不当に低い職務に位置付けたうえ、同一職務内での昇級もさせず、さらに、人事考課の査定においても通常の従業員よりも低額の査定を行い、これに基づいて各原告に対し、その同学歴・同期入社者と比較して著しい格差の存する賃金を支払ってきたものである。
(9) 賃金差別額の算定
各原告は、昭和三八年四月の賃金差別開始以前は同学歴・同期入社者と同等の処遇を受けてきたものであるから、被告会社による賃金差別がなければ、原告らは、少なくとも同学歴・同期入社者の平均賃金額に相当する賃金を受けているはずであったことになる。そこで、各原告は、本訴において、同学歴・同期入社者の平均賃金を算出し、そこから各原告が被告会社より実際に受けた賃金を差し引くことによって、賃金差別行為による逸失利益である損害額を算定する。
平均賃金額の算出方法は、次のとおりである。
① 昭和四八年一〇月から同五七年九月まで
(ア) 基準内給与
(a) 基本給及び職級について
(ⅰ) 平均基本給
東電労組本部作成の「賃金実態調査結果の概要」及び「賃金実態調査結果」のうち、「学歴別・年齢別基本給特性値」及び「学歴別・年齢別・基本給平均・特性」表において各原告に対応する同学歴・同期入社者の二分の一位数に示される基本給を平均基本給とする。
(ⅱ) 平均職級
東電労組本部作成の「職級実態調査結果の概要」及び「賃金実態調査結果」のうち、「学歴別・職級別・勤続年数別人員表」及び「学歴・職級別・勤続別人員」において各原告に対応する同学歴・同期入社者の中位数に示される職級を平均職級とする。
(ⅲ) 前記東電労組本部作成資料を原資料として、各入社年度の高校卒の従業員について各年度ごとの平均基本給及び平均職級を発表したものが、別表1の「入社年度別組合員平均基本給・職級一覧表(高卒)」である。
各原告の入社年度を別表1に当てはめることによって、同学歴・同期入社者の平均基本給及び平均職級を認識することができる。
(b) 資格手当について
(ⅰ) 平均資格
東電労組本部作成の「資格運用実態調査結果の概要」及び「賃金実態調査結果」のうち、「勤続別資格等級別人員表」及び「学歴・男女・勤続資格別人員」において各原告に対応する同学歴・同期入社者の中位数に示される資格を平均資格とする。
ただし、昭和四八年度に限っては、被告会社の資格制度運用の改正時(昭和四八年一〇月一日)に労使間で協定した資格と職級の移行措置による。この時点で労使間で協定した資格・対応職級は別表2のとおりであるから、別表1で認識した同学歴・同期入社者の平均職級を、別表2に当てはめることによって、昭和四八年度の平均資格を認識することができる。
(ⅱ) 前記東電労組本部作成資料と労使間で協定した資格・対応職級表を原資料として、各入社年度の従業員について各年度ごとの平均資格を表にしたものが、別表3の「入社年度別組合員平均資格一覧表(高卒)」である。
また、各資格について与えられる資格手当の額を、改定年月日ごとに区分けして表にしたものが別表4の「資格手当年度別推移一覧表」である。
別表3で認識した平均資格を、別表4に当てはめることによって、同学歴・同期入社者の平均資格手当の額を認識することができる。
(c) 職責手当について
(ⅰ) 別表1の平均職級に対応した役職につくこととして職責手当を支給するものとする。
(ⅱ) 職級と役職位、職責手当額の対応関係及びその改定の推移は、別表5の「職責手当改定及び対応職級一覧表」のとおりである。
別表1で認識した平均職級を、別表5に当てはめることによって、同学歴・同期入社者の平均職責手当の額を認識することができる。
(d) 世帯手当について
(ⅰ) 世帯手当は、年令に応じ、家族構成、勤務地・居住地によって支給額が定められ、差別の要因がない。
(ⅱ) 従業員の年令及び扶養家族の人数、勤務地等と世帯手当額の対応関係及びその改定の推移は、別表6の「世帯手当年度別推移一覧表」のとおりである。
各原告の年令及び扶養家族の人数、勤務地等を別表6に当てはめることによって、各原告の受けた世帯手当の額を認識することができるが、差別の要因がなく、最終的な賃金差額の算定結果には影響しないから、右金額をもって、各原告に対応する(年令、家族構成、勤務地等の条件が同じ)同学歴・同期入社者の受けた平均世帯手当額とする。
以上により認識できた平均基本給、平均資格手当、平均職責手当及び平均世帯手当の合計額が平均基準内給与の額である。
(イ) 賞与
賞与は年二回(上期分は一二月、下期分は翌年六月)支給されるもので、支給額は各年度の労使協定による配分項目ごとに算出した額の合計額である。
算出期間は、昭和四八年度上期分(同年一二月支給)から昭和五六年度下期分(昭和五七年六月支給)までであり、昭和四八年度から昭和五六年度までの労使間の賞与妥結額は別表7のとおりである。
平均賞与額の配分項目ごとの額の算出方法は次のとおりである。
なお、上期分賞与は支給年度の九月末の平均基本給(ないし平均基準内給与)をもとに比例部分を算出し、下期分賞与は支給の前年度の三月末のそれをもとに比例部分を算出するが、特に昭和四九年度下期分賞与(昭和五〇年六月支給)は昭和四九年一〇月末の平均基準内給与をもとに、昭和五〇年度及び昭和五一年度の各下期分賞与(昭和五一年六月及び昭和五二年六月の各支給)は昭和五一年三月、五二年三月末の平均基準内給与をもとにそれぞれ算出しつつ、その間の平均資格手当及び平均世帯手当の金額改定を考慮しないものとして算出したから、結果的には支給の前年度の九月末のそれをもとに算出したものと同様になる。
(a) 基本給比例部分は、別表1から認識できる平均基本給に、別表7の「(1)基本給比例」欄記載の各比率を乗じて算出する。
(b) 基準内比例部分は、
(ⅰ) 平均基準内給与に別表7の「(3)基準内比例」欄中の「(イ)基準内含職責手当」欄記載の比率を乗じた額
(ⅱ) 平均基準内給与から平均職責手当額を差し引いた額に別表7の「(3)基準内比例」欄中の「(ロ)基準内除職責手当」欄記載の比率を乗じた額
の合計額である。
ただし、昭和四八年度及び昭和四九年度については、(ⅰ)を賞与に含めていないので、(ⅱ)の算出額のみとなる。
(c) 職級別定額部分は、別表1から認識できる平均職級にそれぞれ対応する別表7の「(2)(イ)の内訳」欄中の「職級別定額」欄記載の当該職級の額とする。
(d) 純査定部分は、基本給7の「(2)査定」欄中の「(ロ)純査定」欄記載の額とする。
以上の(a)ないし(d)の合計額が平均賞与額である。ただし、一〇〇円未満は一〇〇円単位に切り上げて支給される(以下、一〇〇円未満を一〇〇円単位に切り上げることを「一〇〇円単位に切上げ」という。)。
また、昭和四九年度上期分賞与は、分割支給されたので、基本給比例部分の比率を67.4パーセントとして以上の計算を行った額と、平均基本給の30.8パーセントの額及び平均基本給の26.2パーセントの額をそれぞれ一〇〇円単位に切り上げた額の合計額が昭和四九年度上期分の平均賞与額となる。
(ウ) 住宅積立助成手当、住宅助成臨時措置特別加算及び財産形成給付金
以上のものは、いずれも基準内給与から職責手当を差し引いた額に支給率を乗じて算出するもので、支給年月、支給基準及び支給率の推移は、住宅積立助成手当については別表8のとおり、住宅助成臨時措置特別加算については別表9のとおり、財産形成給付金については別表10のとおりである。
住宅積立助成手当、住宅助成臨時措置特別加算及び財産形成給付金の各平均支給額の算出は、平均基準内給与及び平均職責手当の各金額を基礎に、それぞれ別表8、同9及び同10に従って行う。
(エ) 一時金
各一時金の算出方法は次のとおりである。
(a) 安定供給推進協力一時金(昭和四八年一〇月一六日支給)
昭和四八年九月末の基本給の7.5パーセントに四〇〇〇円を加える。
(b) 財産形成促進助成措置(昭和四九年一一月五日支給)
同年九月末の基準内給与から職責手当を差し引いた額の21.4パーセントに三〇〇〇円を加える。
(c) 賃金支払日変更貸付金(昭和五二年一月一四日支給)
これは、賃金支払日の変更に伴って全従業員に貸し付けられたものであるが、従業員が返済したのは貸付額の一部のみで、その余は返済を免除されたため、賃金計算上は一時金として扱うこととする。
その額は、昭和五一年一二月末の基準内給与の二一パーセントである。
安定供給推進協力一時金、財産形成促進助成措置及び賃金支払日変更貸付金の各平均支給額の算出は、各基準月の平均基本給、平均基準内給与、平均職責手当ての各金額を基礎に、それぞれ前記の算出方法に従って行う。
② 昭和五七年一〇月以降
被告会社は、同年同月、職級区分の変更、資格手当の資格給・資格加給への分離、定期昇給の二本立て(職級及び号数による定期昇給から職級及び等級による定期昇給並びに資格による定期昇給へ)などからなる給与体系の大幅な変更を行ったため、従来からの継続的な平均賃金額算出方法は不可能となり、また、昭和五八年度からは東電労組資料の入手が困難となったため、従来と同様の計算方法をとることが不可能である。
そこで、昭和五七年一〇月以降の平均賃金額計算方法は、次のとおりとする。
(ア) 基準内給与
(a) 世帯手当を除いた基準内給与(以下「基準内・除世帯手当」という。)について
(ⅰ) 被告会社が、昭和五七年一〇月に賃金体系新制度への移行を行った際の基準内給与は、同年四月の基準内給与と同一金額とされつつ、移行措置として世帯手当が三〇〇〇円減額され、資格給(旧体系における資格手当に相当する。)が三〇〇〇円増額されたので、結果として、同年一〇月における平均基準内・除世帯手当は同年四月の平均基準内・除世帯手当と同額となる。
(ⅱ) 昭和五八年度以降の平均基準内・除世帯手当の額は、前年度の平均基準内・除世帯手当の額に当年の賃上げ妥結率を乗じた額を上乗せした上で、一〇〇円単位に切り上げたものとする。
昭和五八年度以降の各年度の賃上げ妥結率は、次のとおりである。
昭和五八年度 4.2パーセント
昭和五九年度 4.33パーセント
昭和六〇年度 4.75パーセント
昭和六一年度 4.65パーセント
昭和六二年度 3.85パーセント
昭和六三年度 4.63パーセント
平成元年度 5.18パーセント
平成二年度 5.62パーセント
平成三年度  5.3パーセント
平成四年度  4.9パーセント
このようにして、各入社年度の従業員の平均基準内・除世帯手当の額について、昭和五七年度から昭和五九年度までの推移を表にしたものが別表11の1、昭和六〇年度から平均四年度までの推移を表にしたものが別表11の2である。
各原告の入社年度を別表11の1及び2に当てはめることによって、同学歴・同期入社者の平均基準内・除世帯手当の額を認識することができる。
(b) 世帯手当ないしライフサイクル手当について
従業員の年令及び扶養家族の人数、勤務地等と世帯手当額の対応関係及びその改定の昭和五七年度以降平成四年度四月時点までの年度別推移については、別表12の1ないし10のとおりである。
なお、世帯手当は、平成四年六月からライフサイクル手当に名称が変更になり、年令区分、扶養区分及び支給金額が変更になったが、その内容は別表12の11のとおりである。ライフサイクル手当についても差別の要因はない。平均賃金計算上は、ライフサイクル手当は世帯手当と同様に扱うこととする。したがって、平成四年六月以降の基準内・除世帯手当はライフサイクル手当を除いた基準内給与の意味である。
各原告の年令及び扶養家族の人数、勤務地等を別表12の1ないし11に当てはめることによって、各原告の受けた世帯手当又はライフサイクル手当の額を認識することができるが、差別の要因がなく、最終的な賃金差額の算定結果には影響しないから、右金額をもって、各原告に対応する(年令、家族構成、勤務地等の条件が同じ)同学歴・同期入社者の受けた平均世帯手当額又は平均ライフサイクル手当額とする。
以上の(a)及び(b)の金額の合計が、平均基準内給与の額となる。
(イ) 賞与
(a) 昭和五七年度上期分(昭和五七年一二月支給)については、賞与査定の基準月が同年九月末であるので、昭和五六年度までの算出方法と同じく、労使協定による配分項目ごとに算出した額の合計額として算出する。このときの妥結内容は別表13の1の(1)欄に記載されているとおりであり、項目別妥結内容は、同欄の「内訳」以下に記載されている。
したがって、①で認識できた同学歴・同期入社者の昭和五七年四月時点の平均基本給、平均職級、平均基準内給与、平均職責手当及び平均世帯手当並びに右別表13の1の(1)欄の「内訳」記載の各比率、定額等から計算して得られる金額が昭和五七年度上期分の平均賞与額となる。
(b) 同年度下期以降の平均賞与額については、配分項目ごとに算出するのではなく、賞与の合計額を一括して算出することとし、各期の基準月の平均基準内給与の額に平均妥結率を乗じた上で、一〇〇円単位に切り上げたものとする。
各年度の賞与妥結率及び妥結額について、昭和五七年度上期から昭和五九年度上期までの推移を表にしたものが別表13の1、同年度下期から昭和六一年度下期までの推移を表にしたものが別表13の2、昭和六二年度上期から平成元年度上期までの推移を表にしたものが別表13の3、同年度下期から平成四年度上期までの推移を表にしたものが別表13の4である。
(ウ) 住宅積立助成手当及び財産形成給付金
(a) これらについては、従来は、基準内給与から職責手当を減じた額に支給率を乗じることによって算出していたが、昭和五七年一〇月の賃金体系の新制度への移行により、職責手当の確定が困難となったため、同学歴・同期入社者は、平均してそれぞれ少なくとも係長あるいは副長に任用されているものとして、職責手当は一律に係長・副長相当額(昭和五七年一〇月以降昭和五九年度までは二万円、昭和六〇年度以降は二万五〇〇〇円)として、前記のとおり算出した平成基準内給与から二万円又は二万五〇〇〇円を減じた上で、支給率を乗じることとする。
さらに、財産形成給付金については、一〇〇円単位に切り上げた上、扶養家族の有無によって区別される定額加算を行う。
(b) 住宅積立助成手当の各支給分の算出方法(支給年月、支給基準及び支給率)について、昭和五八年一月支給分から昭和六〇年一月支給分までの推移を表にしたものが別表14の1、同年六月支給分から昭和六二年六月支給分までの推移を表にしたものが別表14の2、昭和六三年一月支給分から平成二年一月支給分までの推移を表にしたものが別表14の3、同年六月支給分から平成五年一月支給分までの推移を表にしたものが別表14の4である。
(c) 財産形成給付金の各支給分の算出方法(支給年月、支給基準及び支給率)について、昭和五七年一〇月支給分から昭和五九年一〇月支給分までの推移を表にしたものが別表15の1、昭和六〇年四月支給分から昭和六二年四月支給分までの推移を表にしたものが別表15の2、同年一〇月支給分から平成元年一〇月支給分までの推移を表にしたものが別表15の3、平成二年四月支給分から平成四年一〇月支給分までの推移を表にしたものが別表15の4である。
(d) 同学歴・同期入社者の住宅積立助成手当及び財産形成給付金の平均支給額の算出は、平均基準内給与から前記職責手当を除いた額に、右別表14の1ないし4及び同15の1ないし4から認識できる支給率を乗じ、又は定額を加算することによって行う。
③(ア) 以上の算出方法に従い、同学歴・同期入社者の平均賃金額を算定し、これから各原告が実際に受けた賃金額を差し引くことにより、賃金差別額が算定される。
(イ) 同学歴・同期入社の者の平均賃金額、原告らが実際に受けた賃金及び両者の差額については、別紙長野県原告差別賃金額一覧表中の平均賃金欄、実際賃金欄及び差別額欄の各記載のとおりである。
(ウ) 以上のような差別賃金の算出根拠とした東電労組資料は、組合員が対象であり、組合員が特別管理職(課長以上)に任用されると対象から外れることになる。したがって、基準内給与の高い組合員が順次課長以上に任用されるため、勤続が経過するごとに、東電労組の賃金実態調査結果の平均額は、実際の同学歴・同期入社の者の全平均の額よりも低めの数値になるから、算出根拠としては控え目の数値であるといえる。
(エ) また、昭和五七年一〇月以降の平均基準内・除世帯手当を賃上げ妥結率を乗じて計算する方法についても、このようにして計算した昭和五八年度の平均基準内・除世帯手当の額は、東電労組の昭和五八年度の賃金実態調査結果から得られる平均基準内・除世帯手当の額と比較して六〇〇〇円ないし六五〇〇円低い結果となっており、その後も同様の計算方法によっていることを考慮すると、控え目の数値であるといえる。
(二) 被告会社による人権侵害行為
被告会社は、前記反共差別政策の具体的方策として、共産党員及びその支持者と認定した者の人権を侵害する意思をもって、各原告に対し、次のとおり、様々な人権侵害行為を行ってきた。
(1) 原告紀二関係
① 転向強要
被告会社は、昭和三六年秋、原告紀二に対し、千曲川電力所労務課副長青島武文を通じ、酒食に誘ったうえで「君は民青に入っているようだね、会社は民青を大変嫌っていることは君も承知しているね。」「もし君がここで民青をやめるなら君の将来は保証できるよ。」などと利益誘導を加えながら、転向を強要した。
② 正当な組合活動に対する介入と脅迫
被告会社は、昭和三六年一一月ころ、東電労組千曲川支部青年婦人部副部長であった原告紀二が青婦ニュースに執筆した小諸合宿の賄婦の首切り問題の記事について、千曲川電力所総務課長田村和彦を通じ、「これは字体から推して君の字のようだか、この項は委員会の決定ではなく君の主観で書いたのではないか。もし後で個人の主観で書いたことが判明した場合は、就業規則に基づいて、それ相当の覚悟をしてもらいたい。」旨述べて、正当な青年婦人部活動に対し脅迫を行った。
③ 原告紀二の母親を巻き込んだ思想攻撃
被告会社は、原告紀二に対する職制を通じての転向強要工作が功を奏さなかったため、昭和三七年六月二〇日の日中、原告紀二の実家を訪ねた前記田村総務課長を通じ、同原告の実母に対し、「お宅の息子さんは会社に不都合な民青や共産党の活動ばかり一生懸命で、将来仕事に差し障りが出てきます。」「もしこれからも活動を続ける気なら、会社を辞めてそちらの方を一生懸命やれば良い。」「以前は良い性格だったが、活動をするようになってから陰険になり、挨拶もしなくなった。」「東京の支社あたりはおとなしい職場なので転勤させることになるかもしれない。」「それとも息子さんに意見をして立ち直らせるようにしていただけますか。」などと高圧的にまくしたて、思想攻撃を行った。
④ 恋愛干渉と結婚妨害
(ア) 原告紀二と同春子は、昭和三六年ころから交際を続けていたが、被告会社は、前記田村総務課長を通じ、昭和三七年五月ころ、原告春子の両親に対し、原告紀二の交際は原告春子を活動に誘いこむためのものであり、交際を止めさせるためには、原告春子の下宿をやめさせた方がよいと述べ、同年六月二〇日ころ、原告紀二の実母に対し、「内山春子さんとの付き合いは仲間に引きずりこむためのもので、真の愛情からではない。」旨述べるなどして個人の恋愛に干渉した。
(イ) 原告紀二、同春子は、右攻撃にも屈せず、昭和三九年五月三日、小諸市内で結婚式を挙げたが、原告春子の上司の土木課長、係長、主任はいずれも出席しなかった。
⑤ 不当配転と島流し
(ア) 前記恋愛干渉問題について、原告紀二、同春子が青年婦人部に告発し、同部委員会は昭和三七年七月二五日、東電労組千曲川支部に問題提起を申し入れるなどの事態になったが、被告会社は、同月二六日、突如原告紀二に対し、千曲川保修所への配転を内示した。
同原告は、同月二日、千曲川電力所労務課内で職種替えになったばかりであり、保修所の現場事務は事務職員から敬遠されていた。
同原告は、右配転内示に同意しなかったが、前記恋愛干渉問題のヤマ場である同年八月一日、被告会社は同原告の配転を強行した。
(イ) 右配転は労使間の運営協議会での人選に無理のないようにする旨の確認事項に抵触するため、同年八月二日、被告会社と東電労組千曲川支部間で交渉が行われ、同原告の電力所の本来の事務職への復帰について「常識的には二、三年」という合意が成立し、同原告は右配転辞令に事後的に同意した。
(ウ) 同原告は、右期間経過後、被告会社に対し、前記合意の履行を求めたが、被告会社は、他店所への配転をほのめかすなどして、現在まで三一年余にわたり、事務職員が敬遠する現場事務に留め置いている。
⑥ 研修差別と自動車運転免許取得拒否
(ア) 原告紀二は、自己の能力開発の見地により、昭和四四年ころから、少なくとも中堅社員研修(入社五年以上の従業員で副主任、副班長に未達の者を対象とする)を受講させるよう自己管理表に明記し、千曲川保修所長との個人面談でも要求してきたが、担当部局に上申するとの回答のみで、結局、被告会社は同原告を右研修に参加させなかった。
(イ) 原告紀二は、昭和三七年八月の千曲川保修所の現場事務への配転以来、現金や文書物品の運搬、消耗品購入等の業務に自動車運転免許を必要としていたところから、約五年間にわたり、会社費用での自動車運転免許取得を申請してきたが、被告会社は、千曲川保修所長を通じて右申請を拒否し続け、結局、同原告は自己費用で自動車運転免許を取得せざるを得なくなった。
⑦ 社宅入居拒否
被告会社は、昭和四二年六月七日、原告紀二が社宅入居申請をしたのに対し、いったんは了承した旨内示したが、同年六月一九日、千曲川保修所長を通じ、「なぜ会社が社宅に入れないのか、君自身うすうすわかっていることではないか。」などと思想差別を暗にほのめかせたうえで同原告を社宅に入居させなかった。
⑧ 職場での吊るし上げ
原告紀二は、昭和五一年二月二四日、被告会社に対し、千曲川電力所への復帰と職給、基本給の改善を文書で申し入れたところ、被告会社は、同年三月四日、千曲川保修所長森泉章及び発送電係長大森弘らを通じて、職場安全例会の席上で、前記文書提出は職場の和を乱そうとする行為だなどと誹謗中傷した。
(2) 原告竹内関係
① 職場八分
(ア) 被告会社は、昭和三八年以降は、原告竹内を一切の業務に関する役職に付けさせなかった。
(イ) 右以外にも、所内報の編集委員、親睦会、文化会の幹事等の持ち回りで担当するべき役にも付けず、千曲川電力所経理課資材係の飲み会やレクリエーション等でもしばしば同原告だけを排除した。
(ウ) 昭和三七年一二月二日、同原告は結婚式を挙げたが、直属上司の須藤係長、石井、田中両主任はいずれも出席しなかった。
② 研修差別
被告会社は、原告竹内に対し、中堅社員研修や、業務に必要な購買資材管理に関する研修(納期管理業務に関する研修を除く)を受けさせなかった。
③ 自動車運転免許取得に関する差別
(ア) 原告竹内は、会社費用での自動車運転免許取得を申請してきたが、被告会社は、右申請を拒否し続け、結局同原告は昭和四三年、自己費用で自動車運転免許を取得せざるを得なくなった。
(イ) 被告会社は、昭和四二年、車両運転技能認定制度を設け、社内認定がないと会社の車両を運転できないように定めたが、原告竹内に対しては本訴提起後の昭和五七年三月まで右認定を受けさせなかった。
④ 転向強要等
(ア) 被告会社は、昭和三六年一二月ころ、千曲川電力所発送電課主任小林清を通じ、就業時間中に、「君は民青同盟に入って地域の幹部をやっているそうじゃないか。会社にはレッドパージでやめさせられた人も大勢いた。その後皆大変な生活をしたらしい。君も将来を考えたら損だから、やめた方がいい。」などと転向を迫った。
(イ) 被告会社は、千曲川電力所経理課資材係長須藤浩を通じ、昭和三七年一〇月ころ、「君は仕事もできるし、共産党に関係していなければどうにでもしてやれるんだが、本当に惜しい。なんとかならねえかい。」、同年一二月ころ、「二〇代は共産党でも三〇代になるとみな自民党だよ。君も結婚して落ち着いたことだし、この辺で考えてみてはどうかね。」などと利益誘導を加えて転向を強要した。
(ウ) 被告会社は、昭和四〇年ころ、資材係長戸樫里克己を通じ、「竹内君も仕事がこれだけできるんだから、考え方さえなんとかなればなあ。どうだい考えなおせよ。」などと利益誘導を加えて転向を強要した。
(エ) 被告会社は、昭和四三年ころ、資材係長中鏡正夫を通じ、「君の考え方は否定しない。ただ、会社の中でやってもらっては困る。」「君の能力は何とかしてやりたいもんだ。課長も努力してくれているが、なかなか店所だけではだめなんだよ。」などと利益誘導を加えて転向を強要した。
(オ) 被告会社は、昭和四五年の賃金改定時に、マイナス査定をした際、原告竹内の理由説明要求に対し、千曲川電力所経理課長萩原作太郎を通じ、「竹さん、会社の中じゃ共産党は無理だよ、あの扱いはあたりまえなんだ。」と回答し、賃金差別により転向を強要した。
(カ) 被告会社は、昭和四七年ころ、原告竹内による差別処遇改善要求に対し、資材係長中西良秀を通じ、「竹さんの実力は認めるが、私個人の力ではどうにもならない。本当に残念だ。」「ところで、もう思想を考え直す余地はないのかい。」などと返答し、転向を強要した。
(3) 原告小俣関係
① 配転攻撃と転向強要
被告会社は、昭和三九年三月ころ、原告小俣に対し、埼玉支店浦和通信所への配転を打診し、同原告がこれを断ると、千曲川電力所島河原通信所の小暮所長を通じ、東京在住の同原告の父親に対し、「哲夫君は仕事がよくできるのに民青に入っていると思われ残念だ。浦和へ転勤して親元から通勤できるようになれば、民青の活動を止めると思うので、お父さんからも説得して欲しい。」旨述べて、親心を利用して転向を強要した。
② 社宅入居拒否
被告会社は、昭和四二年六月二七日、原告小俣が子供が生まれたことから社宅入居申請をしたのに対し、同年七月、島河原通信所長杉本喜八を通じて、「空いている社宅はあるが、古い社宅を建て直すため、空きがなくなるから入居は認められない。」などと述べて社宅入居を拒否し、同原告が文書での回答を求めたところ、これも拒否した。
③ 転向強要
(ア) 被告会社は、昭和四三年三月ころ、前記杉本通信所長を通じて、熱を出して自宅で寝込んでいた原告小俣に対し、「君は共産党に入っているのか、もしそうでないなら一筆書いて会社に出しなさい。」と思想表明を強要し、同原告がこれを拒否したところ、「他の人に義理を感じて抜けられないと思っているなら、自分自身を大切に考え思い切ったらどうだ、誓約書を書いてその後認められた人も沢山いる。小俣君は仕事もまじめだし、よく考えてみたらどうかね。」と利益誘導を加えながら転向を強要した。
(イ) 被告会社は、昭和四三年五月ころ、前記杉本通信所長及び通信係長丸山裕を通じて、自宅で寝込んでいた原告小俣に対し、「考え方を変える気持ちはないかね、そういうことをやっていれば、会社もよく見ないし、損だよ。小俣君は優秀で何をやっても立派にこなす力を持っているんだから本当はもったいない。」などと利益誘導を加えて転向を強要し、さらに同原告の妻に対し、「奥さんからも活動を止めるように言って下さい。」などと説得に協力を求め、同女が「どんな考え方を持っていようと、憲法で保障されていることではないんですか。」と答えると、「それはそうですが、会社の中ではとおらないんですよ。とにかく本人には損なことですよ。考え方を変えなければ社宅に入居させないと会社は言っています。」と転向強要を続けた。
(ウ) 被告会社は、昭和四三年六月ころ、前記杉本通信所長を通じ、勤務中の原告小俣に対し、「これで最後にするのでよく考えてもらいたい。どうしても考え方を変える気持ちはないかね。」と転向を強要した。
④ 研修差別
被告会社は、原告小俣の所属するいわゆる技術系の職場にあっては、各種資格取得のためにも、希望者を対象にして、念入りな現業技術研修を実施しているが、同原告に対しては、昭和四七年一月のマイクロ無線関係研修を一度受けさせたのみで、多重無線技師国家試験のための研修その他の研修から排除した。このため、同原告は、独力で研鑽して各種資格を取得せざるを得なかった。
(4) 原告春子関係
① 仕事上の差別
被告会社は、昭和三七年四月、原告春子を千曲川電力所総務課から土木課へ配転し、今日まで三一年間以上も土木課庶務の単純業務に据え置き、通常行われるべき勤続年数に応じての適宜異動、これによる経験と能力に応じた上位処遇を行わなかった。
② 原告春子の活動に対する圧力・攻撃
(ア) 被告会社は、昭和三六年三月ころ、千曲川電力所経理課資材係の石井主任を通じて、原告春子に対し、「内山さん、悪い虫がつかないように気をつけなさいよ。今日の主任会議でも話が出たんだよ。」などと、民青同盟の活動に近づかないように圧力をかけた。
(イ) 被告会社は、昭和三六年九月ころ、千曲川電力所労務課主任小林一雄を通じて、原告春子に対し、「サークルや青年婦人部の行事には行かないほうが良い。誘われて断れなければ、私に行って来なさい。」などと、同原告の活動に積極的に介入する姿勢を見せた。
(ウ) 被告会社は、昭和三六年一一月ころ、千曲川電力所総務課庶務係主任小宮山俊三を通じて、原告春子に対し、「あなたが民青をやっているのはもう仕方ないけれど、他の女性を誘わないでほしい。」などと、同原告の民青同盟の活動に圧力をかけた。また、そのころ、前記田村総務課長は同原告の姉に対しても活動をやめるよう同原告を説得してほしい旨働きかけた。
③ 恋愛干渉と結婚妨害
(1)④(ア)(イ)と同旨
④ 社宅入居拒否
(1)⑦と同旨
⑤ 研修差別
被告会社は、昭和四四年ころ、原告春子が希望したゼロックス取扱研修について、課庶務担当の女性従業員に順次右研修を受けさせていたのにも関わらず、同原告には受講させなかった。その後も、同原告に対し、中堅社員研修、原子力関係研修、ワープロ研修及び全員対象の研修以外の将来の職務に必要な研修を受けさせなかった。
⑥ 職場八分
(ア) 被告会社は、勤務時間外の会社外での行動についても監視し、昭和四三年一〇月ころ、千曲川電力所土木建築課の高橋コーディネーターを通じ、原告春子に対し、「余り人の嫌がることはしない方がいいですよ。」などと同原告の赤旗日曜版の購読勧誘活動に圧力をかけた。
(イ) 被告会社は、昭和四九年ころ、労務課員の原を通じて、会社内の理髪室の理容師にまで「涌井さんと余り親しくすると損するよ。」などと原告春子との付き合いに干渉した。
(ウ) 被告会社は、原告らの昇進について他の従業員と異なる別枠扱いとして本店でこれを決定するため、昭和四九年四月一日の原告春子の八級昇進の辞令を同年四月中旬、会議室で係長から交付するなど異例の方式で行った。
(エ) 被告会社は、本訴提起後の昭和五七年五月ころ、千曲川電力所総務課を通じて、土木課員柳沢行広が執筆した「所報千曲川」の課職員紹介記事の原告春子に関する部分について、「そして涌井春子さんがいる。」との記述を残して削除した。
(オ) 被告会社は、千曲川電力所労務課を通じて、原告春子による有給休暇申請に対しては理由を含め、連絡するように土木課に指示した。
(カ) 被告会社は、昭和五八年九月三〇日の千曲川電力所新社屋落成式に際し、原告春子を除く他の女性従業員全員を招待客接待係としたのに、同原告のみを車両係とし、事前の打合せにも参加させなかった。
5  被告会社の行為の違法性
被告会社は、原告らに対し、原告らが、共産党員であり、被告会社の思うままになる従業員づくりに抵抗するということのみを理由として、前記の極端な差別賃金の支払及び人権侵害行為を行ってきたものであって、これらにより原告らの思想、信条による不合理な差別的取扱を受けない権利及び他の従業員と同様に昇進、昇格していくという期待利益を侵害したものであるから、右各行為は、憲法一四条、一九条、二一条、労働基準法三条、民法九〇条、東電労組と被告会社間の労働協約六条、二五条に違反する。
6  損害
(一) 差別賃金相当額
この算定方法は、請求原因4(一)(9)のとおりである。
このうち、昭和四八年一〇月ないし昭和五一年九月における差別賃金相当額に、後記の慰藉料及び弁護士費用を加えた額が、別紙債権目録の請求債権(1)欄記載の額、同年一〇月ないし昭和五三年九月における差別賃金相当額が同目録の請求債権(2)欄記載の額、同年一〇月ないし昭和五六年三月における差別賃金相当額が同目録の請求債権(3)欄記載の額、同年四月ないし昭和五七年九月における差別賃金相当額が同目録の請求債権(4)欄記載の額、同年一〇月ないし昭和六〇年三月における差別賃金相当額が同目録の請求債権(5)欄記載の額、同年四月ないし昭和六二年九月における差別賃金相当額が同目録の請求債権(6)欄記載の額、同年一〇月ないし平成二年三月における差別賃金相当額が同目録の請求債権(7)欄記載の額、同年四月ないし平成五年三月における差別賃金相当額が同目録の請求債権(8)欄記載の額である。これらは、被告会社による賃金差別行為によって生じた財産的損害である。
(二) 精神的損害
各原告は、被告会社による前記賃金差別及び人権侵害行為を具体的事例とする差別行為によって、重大な精神的損害を被ったものであり、その一端を金銭によって慰謝するには、原告各自につき金三〇〇万円を下回ることはない。よってその一部として原告各自につき金三〇〇万円の慰藉料を請求するものである。
(三) 名誉毀損
各原告は、被告会社による右差別行為によって、三三年間以上もの長期にわたって人格を無視され、名誉を毀損されてきたので、これを回復するために、民法七二三条に基づき適当な措置として請求の趣旨第二項のとおり、原告らに対する謝罪文の交付、被告会社による謝罪文の掲示及び社内報への掲載を請求するものである。
(四) 弁護士費用
各原告は、被告会社による右差別行為による損害を回復するべく、弁護士に依頼して本訴訟を提起せざるを得なかったから、右弁護士に対する着手金、報酬及び実費等の費用は、被告会社による右差別行為と因果関係のある財産的損害である。右弁護士費用は、各原告について次の額を下回ることはない。
原告紀二 四〇万円
原告竹内 四〇万円
原告小俣 三八万円
原告春子 四〇万円
よって、その一部として、各原告について右の弁護士費用を請求するものである。
7  被告会社の債務不履行による損害賠償請求(賃金差別行為について)
(一) 各原告は、いずれも被告会社の従業員であり、被告会社との間に継続的な労働契約を締結している。
(二)(1) 被告会社は、憲法一四条を労働法規上具体化した労働基準法三条の均等待遇原則を遵守すべき公法上の義務を負い、一方、同法三条の内容は、当然個々の労働契約の内容になっている。
(2) 東電労組と被告会社の間で締結している労働協約六条、二五条もまた、均等待遇の原則を定めているが、右規定は昭和三六年一月以降、一貫して東電労組と被告会社の間で維持されている。
したがって、労働組合法一六条の趣旨に照らしても、各原告と被告会社の間の労働契約の内容として被告会社は平等取扱義務を負担しているものである。
(3) 右平等取扱義務の内容は、「国籍・思想信条・組合活動・政治活動・社会的身分、性別、その他労働の質及び量と無関係な事柄を実質的な理由とする一切の不合理な差別的取扱をしてはならない。」という労働契約上の債務である。
(三) 被告会社が右平等取扱義務に違反し、原告らの思想信条のみを理由として、各原告に対し、同学歴・同期入社者に比較して極端に低い職級・資格・役職しか与えず、著しい賃金差別を行ってきたことは、請求原因6までに述べてきたとおりである。
(四) 損害の発生
各原告は、被告会社による右債務不履行により、物心両面にわたる損害を被っており、賃金相当額の損害としては、同学歴・同期入社者の平均賃金と各原告に実際に支払われた賃金の差額が、右債務不履行と相当因果関係ある損害であり、請求原因6(二)記載の慰藉料(人権侵害行為による慰藉料を除くが、同額とする。)及び同6(四)記載の弁護士費用もまた、右債務不履行と相当因果関係ある損害である。
なお、本件賃金差別は、債務不履行の形態としては履行遅滞であるが、労働債権の特質からして遅延賠償ではなく、補填賠償を請求しうるものである。
8  よって、各原告は、被告に対し、不法行為ないし債務不履行に基づく損害賠償として、別紙債権目録の請求債権合計欄記載の金員(原告春子の請求債権合計額は、前記計算では金二七五四万三五一九円となるが、本件はその内金請求と認める。)及び同目録の請求債権(1)ないし(8)の各弁済期の経過した後である請求の趣旨第一項記載の日から各支払いずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払い並びに不法行為たる名誉毀損に基づく名誉回復措置として、請求の趣旨第二項記載の謝罪文の交付、謝罪広告の掲示及び掲載を求める。
二  請求原因に対する認否及び被告会社の反論
1(一)  請求原因1(一)(1)は認め、同1(一)(2)ないし(5)は知らない。
(二)  同1(二)(1)は認める。同1(二)(2)のうち、原告竹内が東電労組千曲川支部執行委員財政部長になったことは認め、その余は知らない。同1(二)(3)ないし(5)は知らない。
(三)  同1(三)(1)は認める。同1(三)(2)のうち、原告小俣が東電労組千曲川支部執行委員になったことは認め、その余は知らない。同1(三)(3)ないし(5)は知らない。
(四)  同1(四)(1)は認め、同1(四)(2)ないし(5)は知らない。
2(一)  同2(一)の前段のうち、被告会社と国が電産に対する組織攻撃を行ったとの点は否認し、その余は認める。同2(一)の後段は否認する。
(二)  同2(二)の冒頭の部分は否認する。
被告会社の労務管理の基本は、経営の健全な発展と運営を目的として、従業員の士気の高揚と業務能率の増進を図るとともに、従業員の生活福祉の向上をも目指すことにある。東電労組との関係では、労使協調精神に基づいた労働協約を中心に協力関係を育成することを目指してはいるが、東電労組に対する支配、介入などは存しない。
原告らの主張は、要するに被告会社には、共産党員及びその支持者に対する単なる嫌悪あるいは敵視があるというに過ぎず、不法行為に基づく損害賠償請求の原因事実となる加害意思に結びつく具体的な権利侵害の意思の主張ではない。
(1) 同2(二)(1)のうち、電産関東地方本部と東電労組が組織統一したこと、東電労組が全労加盟決議をしたこと及び被告会社が新規採用者の思想調査を行い、昭和二六年ころから昭和四三年ころまでの間、原告ら主張のような文言の請書を徴していたことは認め、その余は否認する。
新規採用者との関係では、被告会社は、応募者の単なる内心の思想のみを問題とすることはないが、共産党員及びその同調者については、採用後、問題のある勤務ぶりに陥り易い具体的危険が大であると考えたものである。なお、採用時に思想調査をすること及び思想内容を採否の一つの要素とすることは何ら違法ではない。
(2) 同2(二)(2)のうち、この時期にモラル・サーベイが実施されたこと、懲戒処分、賃金カットなどが増加したこと、独身寮対策を講じたことは認め、東電労組千曲川支部で青年婦人部が再建されたこと及び昭和三八年の組合役員選挙の結果は知らず、その余は否認する。
被告会社は、電産争議時代に共産党を中心とする容共左派勢力による混乱・異常事態が発生したこと、昭和三五年ころから昭和四〇年ころまで、神奈川県下の各事業所や山梨支店において、共産党員及びその支持者とおぼしき者たちによる会社敵視の煽動、規律紊乱行為、業務阻害行為等の不都合行為が頻発したこと、モラル・サーベイの結果、被告会社の労務管理不在が明らかになったこと、独身寮で無断移室やビラ貼り等の問題行為が頻発したことなどにより、被告会社の公益事業としての使命及び企業防衛の観点から、共産党及び共産党員もしくはその支持者、民青同盟員等に対する相応の関心を抱き、警戒し、文献収集や一部事業所での従業員の不都合行為への関与程度の調査などの情報収集等を行うとともに、前記の意味での労務管理の基本を徹底し、懲戒処分の厳正実施や独身寮管理の正常化を行ったものである。
また千曲川電力所においても、右のような不都合行為は発生しなかったものの、電産争議時代に被害を受けた事実があること及び他店所での不都合行為の飛火が懸念されたことから、共産党員及びその支持者に対する相応の関心を抱き、警戒していたことがある。
(3) 同2(二)(3)のうち、この時期に労使関係が労使協調の状況となったこと、被告会社が若年層に対する情報収集を継続したこと及び労務管理は各級管理者の基本任務と考えていたことは認め、その余は否認する。
前記の被告会社の共産党員及びその支持者に対する関心と警戒は、時期、地域及び事業所の性格等により視点・内容が異なるものであり、この時期は、一般に従業員の会社に対する無理解や不平不満が解消し、会社への帰属意識や業務に対する自発的意欲も回復してきたため、不都合行為も減少ないし鎮静化していたものである。
(三)  同2(三)のうち、(4)は概ね認め、その余は否認する。
(四)  同2(四)の冒頭の部分は否認する。
被告会社本店が千曲川電力所に指示したのは、一般的な意味での青年社員層対策である。
(1) 同2(四)(1)のうち、千曲川電力所で毎月定例的に主任会議又は係長会議が行われたこと、昭和三六年三月二二日開催の主任会議に所長、総務課長が出席したこと、主任会議又は係長会議において共産党員及びその支持者の動向を検討したことは認め、その余は否認する。
右主任会議で所長、総務課長が要請したのは一般的な意味で青年婦人の思想対策であり、共産党員及びその支持者の動向を検討したのは企業防衛の観点からする共産党員及びその支持者に対する相応の関心と警戒によるものである。
(2) 同2(四)(2)のうち、千曲川電力所で青年婦人対策として教育、講習、懇談会等を実施したこと、労働情勢講演会に鍋山貞親を講師に呼んだこと及び従業員に民社研労働学校を受講させたことは認め、その余は否認する。
被告会社においては、労働情勢一般について従業員の認識を深めさせる目的で労働情勢講演会又は民社研労働学校を受講させ、その中で前記不都合行為の拠ってきたるところと考えられる共産党及び民青同盟の実態等について教育したことはあるが、反共教育ではない。
(3) 同2(四)(3)のうち、千曲川電力所が本店労務部あて組合役員名簿及び組合大会概況を提出したことは認め、その余は否認する。
相互信頼に基づく労使関係の安定化、正常化は被告会社として常に指向してきたところであり、千曲川電力所において右観点から適切な手段・方法により組合情報の収集に努めてきた。本店労務部あての報告内容は組合大会状況を客観的に記述したにすぎない。
(4) 同2(四)(4)は否認する。
(5) 同2(四)(5)のうち、千曲川電力所千曲川保修所の所長交代の際、事務引継書で引継ぎがなされていたことは認め、その余は否認する。
(6) 同2(四)(6)は認める。
企業防衛の観点から、千曲川電力所が警察や関係官庁から地域労働情勢について情報収集することは、この当時の状況下では当然許されることである。
(7) 同2(四)(7)は否認する。
3  同3は否認する。
4(一)(1) 同4(一)(1)は否認する。
(2) 同4(一)(2)のうち、被告会社本店労務部が千曲川電力所に対し、青年層対策に関する書面を送付したことは認め、その余は否認する。
右書面は、被告会社の神奈川県下の火力発電所における共産党員及びその支持者による不都合行為を契機として作成されたものであるが、その内容は、人事・給与管理面だけではなく、職制管理、教育訓練、意思疎通、住宅・文化対策をも含めた一般的な労務管理上の諸施策が記載されているにすぎないものである。
(3) 同4(一)(3)の被告会社の賃金体系は概ね認める。
ただし、正確には、基本給は、従業員の入社時の初任基本給の額にその後の改定による増加額を加算していくことにより決定する。基本給の改定は、定期昇給、ベース・アップ、職級変更及び期中是正による。
また、資格及び役職と職級との間に一定の対応関係はあるが、運用により、対応関係職級よりも上位になる場合もある。
住宅積立助成手当及び住宅助成臨時措置特別加算は賞与ではなく、賃金体系以外の支給であり、賃金支払日変更貸付金は賃金ではない。
(4) 同4(一)(4)は①②とも否認する。
被告会社は職務給体系を採用しているのであって、定期昇給制度やその見直しは年功制を意味するものではなく、運用においても、職級調整、職級の弾力的運用、課業制度等は職務構成と人員構成の不一致を能力対応、服務対応の観点から調整したものであって、年功制をとったものではない。
(5)① 同4(一)(5)①については概ね認める。
業績評定については、評価の対象に執務態度も含まれるが、チームワークを強く求められる会社業務においては、結果だけでなく過程や仕事に立ち向かう姿勢自体も業績の一部とみなすのが適当である。
また、能力評定については、服務内容だけでなく、その従業員の職務遂行能力判断に関係のある一切の事情が考慮される。職務遂行能力は、単なる無色透明の能力ではなく、社員としての服務の本旨に従って会社が期待する方向と内容に即して自らの潜在能力を発揮しうる能力をいうからである。
② 同4(一)(5)②は否認する。
(6) 同4(一)(6)①ないし④について、各原告が原告ら主張の時期にそのような職級、資格及び役職に就いていたこと並びに賃金を受給していたことは認め、同学歴・同期入社者の平均的な職級、資格及び役職並びに賃金額については特に争わない。
被告会社の職務給体系においては、勤務成績に基づく格差発生は本来予定されているから、単に比較対象者との間に職級、資格、役職及び賃金上の格差が生じたこと自体は訴訟上無意味である。
(7) 同4(一)(7)の冒頭部分は否認する。
① 同4(一)(7)①(ア)のうち、原告紀二が県下応募者から二名採用されたうちの一名であることは争わず、その余は知らない。(イ)は否認する。(ウ)のうち、原告紀二の社外活動等は知らず、その余は否認する。(エ)は知らない。
② 同4(一)(7)②(ア)のうち、原告竹内が県下応募者から二名採用されたうちの一名であることは争わず、その余は知らない。(イ)は否認する。(ウ)は知らない。
③ 同4(一)(7)③(ア)のうち、原告小俣が入社当初島河原寮に入寮したことは認め、その余は否認する。(イ)は否認する。(ウ)は知らない。
④ 同4(一)(7)④(ア)は概ね認める。(イ)は否認する。(ウ)は知らない。
原告らが、少なくとも平均以上の勤務遂行能力を有し、平均以上の業績を挙げていたとの事実は後記三で述べる原告らの劣悪な勤務振りから明らかなとおり虚偽であり、このような勤務振りでは人並みの業績を挙げることは不可能であった。
(8)① 同4(一)(8)①は否認する。
原告らは、低い差別賃金を支払っている行為を加害行為として主張するが、不法行為に基づく損害賠償請求の原因事実である加害行為とは、損害を発生させる原因となった行為をいうところ、仮に原告らが主張するように、賃金支払日に差別賃金が支払われたとしても、原告らの権利侵害は、その賃金支払行為によって生じたものではなく、賃金支払行為は、損害を現実化させた事実行為にすぎず、そのような損害のもとになるのは賃金決定行為であり、それはすなわち、被告会社における職務任用(職級決定)、人事考課に基づく査定、資格の格付け及び役職任用といった諸行為の筈である。したがって、原告らはそれらの諸行為を特定して主張しなければならないところ、本訴において原告らはこれを特定して主張していない。
② 同4(一)(8)②は否認する。
前記のとおり、原告らの勤務振りは劣悪であって、原告らが比較的低額の賃金しか受給できていないのは、この劣悪な勤務振りによるものである。すなわち、被告会社の原告らに対する査定は適正なものであって、原告らの思想、信条を理由とする差別的査定は全く行われていない。
また、原告らは、不法行為に基づく損害賠償請求の原因事実である加害行為として、どの時期の、どのような職務任用等の賃金決定行為が行われたかを明確に主張すべきところ、原告らは、このような主張を何らしていない。
(9) 同4(一)(9)のうち、各原告が実際に支給を受けた賃金(実際賃金)の額は認め、原告らの計算による「平均賃金」と右実際賃金の差額が損害額であることは否認する。
① 右「平均賃金」の主張自体の問題点は以下のとおりである。
(ア) 原告らは、各自の受けるべき賃金額を算定するために、統計結果の二分の一位数ないし中位数を取り出し、そこから「平均賃金」を算出しているが、被告会社が個々の従業員をどの職務に任用するかは、業務上の必要性、各従業員の適正と職務遂行能力等を総合勘案して、被告会社の裁量により定められるものであるから、現実に行われた職務任用の実績について統計結果を割り出して得られた「平均賃金」なるものは、単なる結果であって、右結果が、各原告がそれぞれ「平均賃金」を与えられるべきであったことの論拠にはなり得ない。
(イ) 原告らの引用する賃金実態調査結果によれば、実在の職級分布は、中位数を基点として、基本給は二分の一位数を基点として、いずれも上下に大きく広がって分布している。
各原告が、同学歴・同期入社者の「平均賃金」を受けるべきであったとすれば、同学歴・同期入社者の二分の一弱に当たる多数の従業員か、各原告よりも下位に格付けされるべきこと、すなわち、業績と職務遂行能力において、各原告より劣る同学歴・同期入社者が半数近く存在するという結論にならざるを得ないが、これは不合理であり、そもそも「平均賃金」という概念設定が職務給体系下では適切ではない。
(ウ) 「平均賃金」の主張は、各原告とそれぞれの同学歴・同期入社者との比較において成り立っているものであるが、被告会社では入社年次を超えて職務任用が行われており、入社年次の異なる従業員との比較を考慮する必要がある。現に同学歴で各原告よりも勤続年数が長いのに、各原告よりも下位の職級にある従業員は多数存在している。このような考慮に基づかない「平均賃金」が各原告の受けるべき賃金額であるとみることは妥当でない。
② また、「平均賃金」の算定の基礎になる平均職級、平均役職の主張の問題点は、以下のとおりである。
(ア) 職務任用の要件とその裁量性
被告会社が、個々の従業員をどの職務に任用するかは、被告会社が、一方では個々の従業員の適正と職務遂行能力を勘案しつつ、他方では業務の必要性を総合判断して、適材適所の観点から行うものであって、基本的に被告会社の裁量に委ねられているものである。そして、職務任用を中心とする職務給制度の下では、年功序列型賃金体系の場合よりも裁量の幅は大きいといわざるを得ない。
ある従業員が、他の従業員との比較において、仮に適性及び業務遂行能力において平均的であったとしても、それだけでは業務上必要とされる職務に対して適材であるとは必ずしもいえず、そのような職務に任用されることを当然の前提とする平均職級という概念設定は適切ではない。
(イ) 役職任用の要件
被告会社における主任以上の役職者は、業務の指揮命令系統を構成するポストであって、業務方針を正しく理解し、これを現場に即して展開しつつ、業務の指揮監督や部下の指導に当たり、集団の中核として全員が意識行動を共にし常に一致協力して事にあたるような優れたチームづくりに当たるなど一定の組織集団を指揮して、被告会社の業務方針の実現に尽力する職責を担うものである。したがって、これらの役職任用の要件としては、単に勤務成績が優れているというだけでは足りず、(1)高い指導統率力を有し、かつ、責任感が強いこと、(2)折衝力を有すること、(3)協調的かつ積極的であること等組織集団の一部をその指揮下に委ねるに必要な素養が求められることになる。
そうすると、原告らが主張する平均役職を損害額の算定基準とするには、一般管理職の任用基準を各原告が満たしていることが必要であるが、原告らは、右役職任用に必要な要件を有することについて何ら主張していない。
③ 仮に、被告会社に差別意思が存在し、かつ、原告らを同学歴・同期入社者と比較した結果、処遇上の格差が認められたとしても、その格差のすべてが当然に差別意思に基づくものではなく、右差別格差は裁量権濫用の結果であるから、原告らは、被告会社が裁量権を濫用しなければかかる損害は発生しなかったという牽連関係が認められる範囲内でのみ、損害額を主張し得るものである。
(ア) 前記のとおり、人事諸制度は個々の従業員の職務遂行能力及び勤務成績を賃金等の処遇に反映させ、それによって格差が生ずることを当然に予定している制度であるから、右格差は、原告らと同学歴・同期入社者との間の職務遂行能力及び勤務成績による格差であると推定されるべきものである。
(イ) また、右格差のうち、どの範囲が被告会社の差別意思に基づく格差で、どの範囲が職務遂行能力及び勤務成績による格差であるかについては、原告らの主張において、全く特定がなされていないのであるから、結局、差別による賃金上の損害額を算出することはできない。
(二) 同4(二)の冒頭部分は否認する。
(1)① 同4(二)(1)①は否認する。
右のような事実が仮にあったとしても、青島副長は人生の先輩として原告紀二と個人的に酒を飲みながら話したというに過ぎず、転向強要という実態ではないし、被告会社が関知するところではない。
② 同4(二)(1)②は否認する。
田村総務課長は、小諸合宿所の賄婦の円満退職の話し合いを進めている時点で原告紀二が事実に反して「首切り」という刺激的な見出しで青婦ニュースを発行したから抗議をしたものである。東電労組千曲川支部、青年婦人部とも後に正式な抗議に対し、記載上不適切な表現があったことを認めている。
また、この件は青年婦人部発行の機関紙に係る問題であり、原告紀二の思想、信条とは何の関係もない。
③ 同4(二)(1)③のうち、田村総務課長が原告紀二の実家を訪ねたことは認め、その余は否認する。
同総務課長は、原告春子の父親から相談を受け、原告紀二と同春子が交際していることを家族が認識しているかどうか、また原告紀二の転勤に関する家族の意向はどうか面談して事情を聞いたものである。
また、この件は東電労組千曲川支部副委員長らが事実調査を行い、原告紀二が問題にした事実関係とは異なっているとして否定したものである。
④(ア) 同4(二)(1)④(ア)のうち、田村総務課長が原告春子の父親と会ったこと及び原告紀二の母親と会ったことは認め、これらの際の発言内容は否認する。
同総務課長は、原告春子が下宿で一人住まいを始めたことを知って心配したこと、原告春子の父親から相談を受けたことなどから本人らの指導に家族と協力して当たったものである。
この件についても、東電労組千曲川支部副委員長らが事実調査を行い、原告紀二及び同春子が問題にした事実関係とは異なっているとして否定したものである。
(イ) 同4(二)(1)④(イ)のうち、原告春子の上司が結婚披露宴に出席しなかったことは認め、その余は否認する。
被告会社は、原告春子が右上司らを招待したのか否かについて、あるいは右上司らの欠席の事情については個人的な問題であるから関知しない。なお、原告紀二の上司は全員出席している。
⑤(ア) 同4(二)(1)⑤(ア)のうち、原告紀二及び原告春子が前記「恋愛干渉問題」を東電労組千曲川支部で問題にしたこと、原告紀二が配転直前に職種変更になったこと及び千曲川電力所が同原告に対し千曲川保修所への配転を発令したことは認め、その余は否認する。
右発令は、千曲川保修所発足にあたり、東電労組千曲川支部が千曲川電力所に対し現場事務係を改めて配置するよう申し入れてきたので、最適任者として同原告が発令されたものである。
(イ) 同4(二)(1)⑤(イ)のうち、東電労組千曲川支部と千曲川電力所との間で労使交渉が持たれたこと及び原告紀二が配転辞令に同意したことは認め、その余は否認する。
右交渉では、人選自体に異論は出ず、千曲川電力所は、期間について約束はできないが努力すると述べたにすぎない。
(ウ) 同4(二)(1)⑤(ウ)のうち、原告紀二が現在でも千曲川保修所の一般事務担当であることは認め、その余は否認する。
同原告の千曲川保修所勤務が長くなったのは、同原告が千曲川電力所管外への転勤を拒否する姿勢であるため、自ら職務任用と異動可能性を狭めたことによるものである。
また、保修所での現場事務担当が長期にわたった例は同原告の他にも存する。
なお、千曲川保修所は千曲川電力所本部と車で五、六分、徒歩二〇分程度の距離であり、右配転によって同原告の青年婦人部活動に支障が出るということはない。
⑥ 同4(二)(1)⑥(ア)及び(イ)の外形的事実は認める。
中堅社員研修は研修の趣旨内容から適任と判断された者が対象となるものであり、原告紀二は適任ではなかった。また、被告会社の費用負担による自動車運転免許取得は、業務上必要性の高い社員から人選されるもので、外勤者でない同原告には必要性は高くないものであった。
⑦ 同4(二)(1)⑦のうち、原告紀二を社宅に入居させなかった事実は認め、その余は否認する。
そもそも原告紀二及び同春子が、子供が生まれてから二年以上経ってから、しかも同春子の通勤に不便になる小諸発電所構内の社宅に入居申込をするとは考えられない。
⑧ 同4(二)(1)⑧の外形的事実は認める。
安全月例会での発言は、原告紀二が主張する処遇の改善要求は、苦情処理申立等一定手続きに基づいて行うべきであるとの趣旨であり、同原告もこれに対し積極的に反論・反撃していたから、吊るし上げなどという実態ではなかった。
(2)① 同4(二)(2)①(ア)は認め、(イ)及び(ウ)は知らない。
被告会社従業員の配置は、業務上の必要性と本人の能力、適性を総合勘案して実施されるものである。
なお、所報の編集委員や親睦会幹事等は、そのような役職にふさわしい適性、意欲及び人望を備える者に職場の総意で委嘱するのが通例である。また、資材係での飲み会やレクリエーションは公的行事ではなく、有志が行うものであるから被告会社は関知しない。結婚式も個人的な領域に属する事柄であり、右と同様である。
② 同4(二)(2)②の外形的事実は認める。
中堅社員研修は研修の趣旨内容から適任と判断された者が対象となるものであり、原告竹内は適任ではなかった。
③ 同4(二)(2)③(ア)及び(イ)の外形的事実は認める。
被告会社の費用負担による自動車運転免許取得及び車両運転技能検定は、業務上必要性の高い社員から人選されるもので、外勤者でない同原告には必要性は高くないものであった。
④ 同4(二)(2)④(ア)ないし(カ)はいずれも否認する。
仮にそのような発言があったとしても、転向強要というには程遠い態様・内容のものであり、また被告会社の指示に基づくものではない。
(3)① 同4(二)(3)①のうち、小暮所長が原告小俣の父親と会ったことは認め、その余は否認する。
同所長が話した内容は、原告小俣の近況といった世間話に類するものであるし、被告会社が同原告の浦和転勤を予定した事実もない。
② 同4(二)(3)②は否認する。
同原告は、逆に杉本所長から事故対応上の必要から社宅入居を勧められていたのに二回にわたって断ったものであり、その理由は、家庭の事情及び社外活動の事情によるものと思われる。
③ 同4(二)(3)③(ア)及び(イ)のうち、杉本所長が原告小俣の自宅を訪ねたことは認め、その余は否認する。(ウ)は否認する。
同所長は、原告小俣の休務が続くことから、同原告の病状を心配して訪ねたものであり、その際の話の内容も体調や仕事のことなど純粋な見舞い話であった。
④ 同4(二)(3)④は否認する。
被告会社は、原告小俣の業務に必要な研修会や講習会には昭和三七年から昭和五四年までに三五回も同原告を出席させている。ただし、同原告はいくら研修を積み重ねても知識能力とも他に遅れをとっていたものである。
特殊無線技師(多重無線設備)国家試験のための研修については、同原告は右試験を受ける意欲がなく、勉強もしていなかったことから研修の対象者にはなり得なかったものである。
(4)① 同4(二)(4)①のうち、原告春子を千曲川電力所土木課課庶務に配置したこと及びその後異動がなかったことは認め、その余は否認する。
従業員の配置は、業務の必要性、本人の能力、適性を総合判断した結果に基づくものであり、特定の職場に引き続き配置されたこと自体が不当であるわけではない。
原告春子は、共働きで三人の子供を育てていたから、定型的・補助的な右課庶務の仕事は適切だったものであるし、同原告は上位の職務を担当するだけの意欲と業績を挙げていなかったから異動の対象にならなかったものである。
② 同4(二)(4)②の(ア)ないし(ウ)はいずれも否認する。
③ 同4(二)(4)③の認否及び反論は同4(二)(1)④と同旨
④ 同4(二)(4)④の認否及び反論は同4(二)(1)⑦と同旨
⑤ 同4(二)(4)⑤は否認する。
昭和44年ころ、ゼロックスは総務課で管理していたので、富士ゼロックスの講習会には総務課の男女課員数名を派遣したものであり、課庶務の女性職員のほとんどを受講させたというわけではない。
被告会社は、原告春子に業務に必要な研修を受けさせており、同原告が受けた宅地建物取引主任者講座の通信教育費用も被告会社が負担したが、同原告は右試験に合格していない。
⑥ 同4(二)(4)⑥(ア)及び(イ)、(エ)及び(オ)は否認し、(ウ)のうち辞令交付の時期を認め、その余は否認し、(カ)の外形的事実は認める。
(ア)については、高橋コーディネーターの発言からは、職場のつながりを利用して政党機関紙の購読を勧誘された当事者が困惑して上司に相談したことが窺われるし、同コーディネーターの発言内容に被告会社は関知しない。
(ウ)については、辞令交付が発令日付よりも遅れることは被告会社ではよくあることである。
(カ)については、女性従業員間の役割分担がたまたまそうなったに過ぎない。
5  同5は争う。
原告らは、被侵害権利について、「その思想、信条を理由に賃金その他労働条件について差別的取り扱いを受けない権利ないし利益」である旨主張しているが、このような憲法、労働基準法上の均等待遇の原則は、思想、信条を理由とする差別的取り扱いを禁ずるという趣旨にとどまり、右原則から、直接的かつ具体的な権利ないし利益が生ずるものではない。したがって、原告らは、被告会社との雇用契約に基づき取得した具体的な権利ないし利益を特定して主張する責任がある。
従業員が右雇用契約に基づき取得する具体的な権利ないし利益とは、被告会社がその人事諸制度を個々の従業員に適用することによって具体的に発生するものであるが、人事諸制度の適用においては、個々の従業員の職務遂行能力及び勤務成績を処遇に反映させることとされつつも、賃金決定の主たる要素である職級の決定、人事考課、資格の格付け及び役職への任用のいずれもが、被告会社の裁量に委ねられている。そして、右裁量権は公正に行使されるべきものであるが、前記の個々の従業員が雇用契約に基づき処遇に関して有する権利ないし利益とは、被告会社の公正な裁量権行使を期待するところから認められる利益に帰着する。したがって、原告らは、被告会社と雇用契約を締結していることから当然に、統計上の同学歴・同期入社者の平均又は中位数に当たる処遇を受けるべき権利ないし利益を有しているものではない。
6  同6(一) ないし(四)はいずれも否認する。
(一)の算定方法に対する反論は同4(一)(9)で述べたとおりである。
(二)について、原告らは、被告会社に対し、その賃金差別及び人権侵害行為を理由に、各自一律三〇〇万円の慰藉料を請求しているが、何故に原告らが各自一律三〇〇万円の慰藉料を請求し得るのか明らかにすべきところ、原告らはこれを明らかにしていない。
7(一)  同7(一)は認める。
(二)  同7(二)(1)は争い、(2)のうち東電労組と被告会社との間で労働協約六条、二五条の規定が締結維持されていることは認め、その余は争い、(3)は争う。
憲法一四条、労働基準法三条の平等取扱義務は、労働契約上の信義則からする一般的、抽象的責務に過ぎず、右義務から直接的かつ具体的な債務は何ら発生しない。したがって、平等取扱義務を根拠に被告会社が各原告にいくら支払うべきかという具体的債務は生じ得ない。
(三)  同7(三)は否認する。
一般に賃金支払いに際して債務不履行を生じさせ得るものとしては、労働契約上、毎月支払われるべき賃金のうち、一部に未払い差額が存するということでなければならない。
(四)  同7(四)は否認する。
三  被告会社の主張(各原告の勤務振り)
1  原告らは、いずれも「少なくとも平均以上の職務遂行能力を有する」旨主張するが、これは真実に反し、各原告の勤務振りは劣悪であって、各原告が比較的低額の賃金しか受給できていないのは、この劣悪な勤務振りによるものである。被告会社は、以下、各原告の劣悪な勤務振りについての具体的事実を請求原因4(一)(7)①ないし④の反証として主張、立証するが、これらは被告会社の各原告に対する査定は適正なものであって、原告らの思想、信条を理由とする差別的査定は全く行われていないことの間接事実でもある。
(一) 原告紀二関係
(1) 原告紀二は、担当する主要な業務である旅費申請手続において、昭和四四年一〇月から昭和四八年一一月までの間の長期にわたり、千曲川保修所から千曲川電力所までの距離を加えずに距離計算したため、保修所員の外部出張の旅費計算を誤り、過少な旅費を支給し続ける結果となった。
(2) 被告会社においては、業務に従業員個人の自家用車を使用することは厳禁されていたにも関わらず、原告紀二は、昭和四二年ころから、終業時刻間際に千曲川電力所へ書類提出するような場合は自己の通勤用自家用車を使用することが再三あり、昭和五〇年一二月、森泉保修所長が会社の車を使用するように業務指示したが、原告紀二は、その直後に指示を無視して自家用車を使用した。
(3)① 原告紀二は、昭和五一年四月二三日午前の自衛消防団による消防訓練の際、遅刻し、かつ、ヘルメット及び作業服着用のことという業務指示に違反した。
② 原告紀二は、同日午後一時三〇分ころから午後四時過ぎまで、約三時間にわたり、松田英孝の引っ越しの手伝いをして、千曲川電力所から持ち帰るべき現金一三万円を持ったまま無断で業務を離脱した。
③ 原告紀二は、同日朝、森泉保修所長から懇親会の予定のため自動車、バイクでの出勤をしないように指示されていたのを無視してバイク出勤した。
同月二六日、原告紀二は、前記①ないし③の規律違反行為について、森泉保修所長から口頭で厳重注意を受けた。
(4) 原告紀二は、昭和五一年ころ、小型ラジオにイアホンを付けて聞きながら勤務していたことがあり、同年二月ころ、所長決裁を求めるときにまでイアホンを放さなかったので、森泉保修所長が注意したにも関わらず、「今国会中継のいいところなんですよ。」と言って、注意を無視してラジオを聞き続けるなどして職場秩序を乱した。
(5) 原告紀二は、一般事務の仕事で時間的に余裕があったにも関わらず、主任の事務処理を補佐したり、他の保修所員の業務が多忙なときも積極的に応援しようとせず、手空きの時間には茶を飲んだり雑誌や新聞を読んだりして時間を潰し、終業時刻を待ちかねるようにして帰宅した。
(6) 千曲川保修所での毎月一回の安全月例会においても、原告紀二は、業務に関して発言することはなく、消極的な態度に終始した。
(7)① 原告紀二は、一般事務処理の効率化、合理化について具体的な提言をしたことが全くなかった。
② 原告紀二は、被告会社が広く募集している業務改善提案を一件も出さなかった。
(8) 原告紀二は、千曲川保修所でただ一人の一般事務担当者であるのに、給料日や出納日に年次有給休暇を取り、他の者に迷惑をかけた。また、当日朝に年休取得を連絡してくること(以下「突発休」という。)が多かった。
(9) 原告紀二は、週二回程度常習的に遅刻を繰り返し、昼休みに外出して午後の就業時刻に一〇分ないし二〇分遅刻することもたびたびあった。
(10) 原告紀二は、森泉保修所長から勉強する気があるなら図書費で参考書を購入してやるし、勤務時間中の手空きの時間にやってもよいと言われたにも関わらず、経理、労務、総務等の分野での自己啓発をすることなく、手空き時間を雑誌や新聞を読んで過ごした。
(11) 原告紀二は、国、自治体の選挙時期になると勤務時間中にも関わらず、頻繁に私用電話をかけた。
(二) 原告竹内関係
(1) 原告竹内は、昭和四三年ころ、中鏡資材係長から納期管理表の改善を命じられたが、催促されても全く行わず、やむを得ず倉科主任が代わって作成した。また、昭和四四年度から右様式に従って、納期管理経過について上司に回覧することとなったのに、一向に回覧しようとせず、同主任から注意されたところ、逆に「交渉経過を回覧するなど、文書に書いていない。」などと反抗した。
(2)① 原告竹内は、昭和四三年から昭和四四年にかけて、被告会社の車両安全呼唱運動の定めにも関わらず、貯蔵品調達の車中の助手席で居眠りを繰り返し、運転上の安全確保について運転者に協力する姿勢がなかったため、同年七月ころ、調達業務からはずされた。
② 原告竹内は、勤務時間中も、午後、夏場などに自席で居眠りをし、上司からの注意にも反省の色がなかった。
(3) 原告竹内は、昭和四六年五月から六月の合理化推進運動における合理提案、昭和四七年暮れころの安全運動であるZU運動における実施項目提出、昭和四九年一一月の被告会社の秋のサービス週間における標語案提出等の被告会社施策への協力をしないか、あるいは資材係長からの提出指示に従わないばかりか、「そのようなものは意味がない。」「募集となっているので参加の意思がなければ出す必要がない。」などと反抗し、昭和四九年一一月一二日午後、中西資材係長から注意を受けた。
また、昭和五一年の提言運動に際しては、資材係長の異動を奇貨として、前年とほとんど同じ内容の提言を提出するなどの手抜きをした。
(4) 原告竹内は、昭和四八年ころから昭和五四年ころまで、職場外の活動として小諸市労音の責任者をしていたが、被告会社の資材係の立場を利用して小諸市内の信美堂印刷に右労音の印刷物を市価よりも安く請け負わせ、かつ、しばしば支払いを遅れさせたほか、最終的に一〇万円余りの回収不能金を出すなどの損害を負わせた。
(5) 原告竹内は、昭和四八年一一月の物品代支払締切日変更及び昭和五〇年一二月の物品代計上、支払時の業者別内訳表の統一について、担当者として必要な所内稟議手続を行わず、やむを得ず中西資材係長が代わって行った。また、貯蔵品金額管理月報等の報告書の作成に単純計算ミスや基本知識の不足によるミス、記載ルール違反が目立った。
(6) 原告竹内は、昭和四九年六月二四日、同年七月の参議院議員選挙関連のビラを始業時刻後に机上配布し、大井主任に注意されて制止され、直後に中西資材係長に厳重に注意されると「自分の考え方を皆に伝えることは悪いことではない。」などと反抗した。
(7) 原告竹内は、常習的に遅刻を繰り返し、かつ、遅れても悪びれず係長席で勤務表に出勤印を押すなど、反省の色がなかった。
(8) 原告竹内は、必要な仕事の引継ぎをしないで年休を取得することが多く、周囲に迷惑をかけた。また、突発休も多く、中西資材係長から事前連絡をするよう注意を受けると、有賀主任の自宅に前日夜や当日早朝に電話連絡するなど職場の常識を欠いた方法をとった。
(三) 原告小俣関係
(1) 原告小俣は、被告会社の通信設備の技術革新が進展していたのであるから、保守業務を支障なく遂行するために通信ケーブル、自動交換機、予備電源装置、各種無線設備等の設備、機器について実践と自己研鑽を積まなければならないに、知識と技能の習得に消極的であり、経験年数に相応した仕事を安心してまかせることができなかった。
① 昭和四〇年七月、島河原通信所に導入されたクロスバー自動交換機について、原告小俣は、勤務終了後の自主的勉強会に一回も出席しないなど同交換機の技術知識を身につけようとしなかったため、同交換機の電話番号設定等の基本的作業ができず、事故復旧の作業も一人ではやらせることができなかった。
② 昭和四一年、島河原通信所に設置された交流無停電電源装置(EMG)について、原告小俣は、基本的知識を有していなかった。
③ 原告小俣は、昭和四七年一〇月から無線設備の保守点検業務を担当したが、無線の基本的な知識、技能を備えていなかったため、マイクロ無線機のクライストロンの取替え、調整等の作業を行わせることができなかった。
(2) 原告小俣は、通信関係の設備類を保守点検するために望ましい特殊無線技師(多重無線設備)及び構内交換設備等工事担任者の二つの資格の取得に消極的であり、本訴提起後の昭和五七年七月に特殊無線技師(多重無線設備)、昭和六三年四月に構内交換設備等工事担任者の各資格をようやく取得する有り様であったので、それまでの間、資格の必要でない比較的低レベルの作業か有資格者の下での補助的作業しか担当させられなかった。
(3) 通信所では、通信設備の故障の際、早期復旧のため、時間外ないし休日業務が必要なことがたびたびあったにも関わらず、原告小俣は、これらの業務に消極的であり、指示されても拒否することがあった。
① 昭和四三年夏ころ、千曲川のダム警報装置の故障の際、終業後に千明班長から小諸発電所の操作盤の確認を指示されたが、原告小俣は、これを拒否した。
② 昭和四三年一一月ころ、千曲川電力所・島河原通信所間のUHF多重無線の電波障害が発生した際、早朝に千明班長から千曲川電力所の障害状態のモニターを指示されたが、原告小俣は、これを拒否した。
③ 原告小俣は、姫川第七発電所や新町開閉所の巡視点検のための宿泊出張を指示されると、あいまいな理由のまま拒否することが多くあった。
(4) 原告小俣は、生来病弱であり、病気と称して四、五日まとめて休務することが月に一、二回あり、年間三〇日程度休務する状態であったから、予定業務について他の所員にしわよせが行くことが多かったため、昭和四二年四月から昭和四五年九月まで、内勤の回線運用補助に職務変更され、一人前の仕事ができなかった。また、年休日数を超える病気欠勤について賃金補償を受けるために必要な診断書の提出を杉本通信所長の指示にも関わらず提出しなかった。さらに、休務の際にも事前連絡することはほとんどなく、当日朝のミーティング開始ころ、又は始業時刻後に連絡し、あるいは連絡もせずに休務して主任から確認の電話をされることもあった。
(5) 原告小俣は、定時出社定時退社を公言し、朝は始業時刻ぎりぎりにしか出社せず、朝のミーティング開始に二、三分遅刻することもたびたびあったので、所長や主任から注意を受けたが改めることがなかった。
(四) 原告春子関係
(1) 原告春子は、課庶務の業務内容に含まれる消耗品管理について、たびたび不足を生じさせ、かつ、不足時の対応も鈍く、吉田土木係主任らに注意されてようやく動き出す状態であった。
(2) 原告春子は、吉田土木係主任から稟議書に添付するためその日のうちに必要な工事設計書や工事工程表の清書を指示されても、退社が遅くなるのを嫌がって拒否することがあった。
(3) 原告春子は、昭和三七年ころ、吉田土木係主任から研修資料の清書を一か月の余裕をもって指示され、これを行ったが、処理した仕事の報告、提出を速やかに行うという基本動作ができなかった。
(4) 原告春子は、昼間指示された文書の清書などの仕事を、指示者本人が外出している間にやりかけのまま退社し、指示者本人に対する報告ないしメモを残す等の常識的な処理をしなかった。
(5) 原告春子は、昼休みに外出して買い物その他家庭の用事を済ませることが多かったが、そのため、午後の始業時刻に一〇分程度遅刻することがたびたびあった。
(6) 原告春子に対しては、台風や大雨による出水時の土木係総出及び毎年一二月の工事予算額算出と工事の集中実施が重なる繁忙期の時間外勤務を命ずることができず、また、本人からの業務協力の申し出もなかった。
(7) 原告春子は、その担当する課庶務の業務に関し、業務改善の提案を提出したことも上司に申し出たこともなく、消極的であった。
(8) 原告春子は、現状に甘んじ、与えられた定型的補助的業務から脱却して上位の職務をこなすだけの知識や能力を身につけようとする姿勢が全くなかった。
(9) 原告春子は、月一回の土木課の懇談会や随時の土木係ミーティングにおいて、業務上の問題点の検討については全く発言できず、交通安全対策などの一般問題についても積極的に発言することはなかった。
2  各原告の勤務振りとその背景
(一) 各原告の勤務振りから、共通的特徴として、(1)出来るだけ服務量を減らす目的の常習的遅刻、定時退社の徹底、時間外勤務忌避及び無責任な業務処理などの怠業的行為、(2)上司の指示や職場のルールを頭から蔑ろにする指示に対する不服従、職場規律無視などの反抗的行為、(3)業務面での周囲に対する非協力と突発休などの協調性の欠如が挙げられる。これらは原告各自の意思を越えたものである。
(二) 各原告が参加したと主張する職場の学習サークルでは、月刊「学習の友」をテキストとして使用していたが、右雑誌では、労働時間について、八時間労働のうち賃金と同価値を生産するための必要労働時間は約二時間であり、残りは剰余労働時間であって、資本家に搾取されている、残業を承諾することはそれだけ仲間の仕事を奪うことになる、などと特徴的な考え方が筆者を換えつつ繰り返し掲載されており、各原告の怠業的行為は、このような考え方の影響によるものである。
(三) また、各原告の主張によれば、右サークル活動の他、平和運動、うたごえ運動、労音活動、民青同盟・共産党活動、各種選挙における支援活動及び共産党機関紙「赤旗」拡販活動などの社外活動に参加していたことになるが、「赤旗」拡販ノルマの厳しさや共産党規約に盛られた民主集中制のもとでの会議の多さ、拘束の厳しさを考慮すると、各原告は、これらの社外活動に忙殺されて、精神的、肉体的に疲弊して怠業的行為が助長されたものである。
(四) 共産党がアメリカ帝国主義と日本独占資本を二つの敵と規定し、経営内での党勢拡大と労働組合の指導権掌握を指示する中で、原告らは月刊「学習の友」を通じ、独占資本と徹底的に闘うこと、独占資本の手先である職制とも闘うこと、合理化、労働者からの搾取を意図する会社施策に対しては全て反対しなければならないとする姿勢を学習したものであり、各原告の反抗的行為は、これに基づくものである。
(五) 各原告は、自分の仕事で搾取されるのを拒むと同様、周囲の同僚の分の余分な剰余価値を生産することをも拒否し、また、突発休があってもそれを処理すべきは会社の手先である職制がやるべきことであると考えており、周囲の同僚に迷惑をかけるという認識がそもそもないから、協調性の欠如も各原告の労働時間についての特徴的な考え方に基づくものである。
四  抗弁(消滅時効)
1  賃金差別に基づく損害賠償請求について
(一) 原告らは、それぞれ昭和三八年ないし四一年の間に賃金差別を認識しているところ、被告会社が昭和四八年一〇月一二日以前になした賃金決定行為に基づく差額部分の損害賠償請求権は、同決定行為から三年の経過により時効消滅しているので、被告会社は、右時効を援用する。したがって、時効完成後は、同決定行為に基づく差額部分を不法行為における損害として観念することができない。
(二) そうすると、毎年の基本給改定時には、過去の昇給額を見直すということはなく、前年度の確定している基本給額に定期昇給額とベースアップ額を加算して、その都度新たな基本給額を決定することになる扱いであることを考慮すると、仮に被告会社の違法な賃金決定行為があるとしても、昭和四八年一〇月以降の分については、現実に確定している昭和四八年一〇月分の賃金額を基礎とし、それ以降の違法な賃金決定行為により生じた差額のみを損害として観念しうることになるから、原告らの請求する賃金差額中、昭和四八年一〇月以前の賃金決定行為による差額を累積した部分については、そもそも損害とはならない。
2  人権侵害行為に基づく損害賠償請求について
被告会社の行ったとされる各人権侵害行為に基づく慰藉料請求権については、昭和四八年一〇月以降の行為は、原告紀二を千曲川保修所の現場事務に留め置いていること、原告竹内を業務に関する役職に付けさせないでいること、同原告に車両運転技能認定を昭和五七年まで受けさせなかったこと、原告春子に上位処遇を行わないでいること、同原告に対する職場八分と称する行為の(イ)ないし(カ)だけであるところ、これらを除く各行為は昭和四八年一〇月以前の行為であり、行為時から三年の経過により、時効消滅しているので、被告会社は、本訴において右時効を援用する。
五  抗弁に対する認否
被告会社の賃金決定行為及び四2に摘示した人権侵害行為からの期間の経過は認めるが、その余は争う。
六  消滅時効の抗弁に対する原告らの反論
被告会社が原告らに対して行ってきた賃金差別及び人権侵害行為は、単一の加害意思に基づく継続的不法行為である。すなわち、右不法行為は被告会社の反共労務政策という基本方針に基づいて、共産党員又はその支持者と認定された原告らに対し、その集団を対象として、単一の加害意思の発現としてなされた継続的不法行為であるところ、継続的不法行為に基づく損害は、加害行為がやんで初めて損害の総体が明らかになるものであり、被告会社は未だ加害行為をやめていないから、時効は進行を開始していない。
また、一旦差別された賃金決定があると、その差別は回復されることがなく、定年に達するまで差別賃金の支給が続けられるから、被告会社の不法行為は継続しており、損害も賃金支給の都度新たに発生する。
七  再抗弁(権利の濫用)
原告らは、被告会社の支配・従属の下に置かれている労働者であり、被告会社相手の訴訟提起は至難のわざであり、特に東電労組の右傾化の中で共産党員又はその支持者の集団であると認定された者が、そのことを前提とした訴訟を提起することは、いっそう困難であった。
また、被告会社が反共差別政策を実現し、各原告を共産党員又はその支持者と認定し、各原告の賃金が同学歴・同期入社者の平均的な賃金より著しく低位に置かれていることの立証準備は、これらの証拠のほとんどを被告会社が握っている状況の下では著しく困難であった。
右のような条件下で、原告らは、被告会社の不法行為及びこれによる損害を立証するため、立証に必要な資料をあつめて、ようやく本訴の提起をしたものである。
以上の経過に照らせば、被告会社による消滅時効の援用は、権利の濫用であり、許されないというべきである。
八  再抗弁に対する認否
被告会社が反共差別政策を実現し、各原告を共産党員又はその支持者と認定し、各原告の賃金を同学歴・同期入社者の平均的な賃金より著しく低位に置いたことは否認し、原告らの訴訟提起及び立証準備が困難であったことは知らず、その余は争う。権利の濫用というためには、権利の行使を認めることが著しく正義に反する等の特段の事情が存する場合に限られるところ、本件ではそのような事情は何ら認められない。
第三  証拠
証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、その記載を引用する。

理由
第一  本件に至る経緯について
一  原告らの地位等
1  請求原因1(一)ないし(四)の各(1)の各原告の社内歴並びに同1(二)(2)及び同1(三)(2)のうち、原告竹内と原告小俣が東電労組千曲川支部執行委員等になった事実は、当事者間に争いがない。
2  原告紀二本人尋問の結果及びこれにより真正に成立したものと認められる〈書証番号略〉、原告竹内本人尋問の結果及びこれにより真正に成立したものと認められる〈書証番号略〉、原告小俣本人尋問の結果及びこれにより真正に成立したものと認められる〈書証番号略〉、原告春子本人尋問の結果及びこれにより真正に成立したものと認められる〈書証番号略〉、弁論の全趣旨及びこれにより真正に成立したものと認められる〈書証番号略〉を総合すれば、請求原因1(一)ないし(四)の各(2)ないし(4)の事実(前記争いのない事実を除く。)を認めることができる。
3  証人松田英孝の証言及びこれにより真正に成立したものと認められる〈書証番号略〉、弁論の全趣旨及び〈書証番号略〉並びに前掲各証拠によれば、さらに次の事実を認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
(一) 原告らが被告会社に入社した昭和三四、三五年当時、東電労組千曲川支部は、長野県評に加盟し、東電労組本部の労使協調路線と被告会社の合理化政策に反対し、資本からの独立と労働者の地位向上をめざすいわゆる階級的労働組合運動を展開し、六〇年安保改定反対運動や「日本のうたごえ」運動にも組合支部として参加するなどしていた。
(二) 原告らは、右のような内容の労働組合運動に積極的に参加するとともに、被告会社鶴見第二火発から配転されてきた松田英孝の呼びかけにより、東電労組千曲川支部内の青年婦人部の再建、同部機関紙「きずな」の再刊、週刊「わかもの」を使用して学習会を行ったり地域の青年婦人労働者と交流会を行う「小諸サークルわかもの」の結成、月刊「学習の友」を中心とする学習サークル「くるみ会」の結成、三井三池争議や松川事件裁判の支援活動などに参加し、いわゆる民主運動、平和運動及び階級的労働組合運動の高揚期に活動したことから、いわゆる階級意識に目覚め、共産党及びその関連組織である民青同盟の思想及び活動に共感し、昭和三五、三六年ころ相次いで加盟及び入党するに至った。
(三) 右の当時、共産党は、青年婦人労働者の諸要求実現の職場闘争や反合理化闘争を通じて、経営内での党勢拡大と労働組合運動の階級的民主的強化を図る、いわゆる大衆路線活動方針を採用していた。
(四) 原告らは、共産党入党後、右方針にしたがって、昭和三六、三七年ころ、組合支部執行委員や青年婦人部役員に立候補、選出されるとともに、前記諸活動の維持展開、前記松田英孝の配転撤回闘争の支援や青年婦人部の積極的活動家であった本多一公及び鈴木紀元の他店所への配転反対運動、被告会社による独身寮内規制反対運動に組合支部、同青年婦人部として取り組むほか、小諸労音結成に至る芸術鑑賞活動や原水禁運動などのいわゆる平和運動などにも参加するなど大衆活動を積極的に行った。
また、党勢拡大方針にしたがって、共産党機関紙「赤旗」拡販運動にも従事した。
(五) その後、階級的労働組合運動自体の衰退や後記被告会社の労務管理政策など様々な要因により東電労組千曲川支部や同青年婦人部の役員は被告会社のいわゆる「主流派」(以下、東電労組の運動路線等を巡る対立関係を便宜上「主流派」「反主流派」などと呼ぶこととする。)で占められ、昭和三九年の長野県評脱退、翌年の長野地方同盟加盟に見られるように労使協調路線を強め、原告らも職場内では孤立化する状況となり、前記サークル等の活動も低調となり、原告らの活動の中心は階級的労働組合運動から共産党の地域活動、労音や保育園保護者会、PTAなどの社外活動などへ移行していった。
二  被告会社の労務政策
1  被告会社の概要
被告会社は、昭和二六年五月一日、日本発送電株式会社及び九配電会社を解散して設立された電力の生産及び供給を事業目的とする会社であり、関東一円、山梨県及び富士川以東の静岡県を電力供給地域とし、右供給地域のほか、福島県、長野県及び新潟県に発送電設備を置き、肩書地に本社を置き、多数の支店、支社、発電所、変電所のほか多数の営業所等の現業機関を有する巨大企業である(右概要は当事者間に争いがない。)。
2  東電労組の結成とその後の歩み
〈書証番号略〉によれば、次の事実を認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
(一) 電産は、昭和二二年五月、企業別組合の協議体である日本電気産業労働組合協議会(電産協)が発展解消して全国単一組織として結成され、賃金闘争、統一労働協約獲得闘争、統一退職金協定締結闘争、電気事業の民主化などを目標に掲げ、同年から昭和二五年まで第二次から第五次にわたる電産争議(ただし、第四次争議はストライキ突入前に回避された。)として「地域人民闘争方式」による停電スト、送電停止などの争議行為を行ったが、充分な成果を勝ち取ることができず、昭和二五年の全国統一代表者会議派と民主化同盟派の対立による組織混乱、電産本部のレッド・パージ通告受入れを経て産別会議(全日本産業別労働組合会議の略称。)脱退、昭和二六年の総評(日本労働組合総評議会の略称。)加盟の動きを見せたが、総評自体が、全面講和、軍事基地反対、永世中立、再軍備反対の平和四原則を中心とする政治路線を採用し、電産はさらに昭和二七年秋、賃上げ要求にかかる秋期闘争(電産大争議)を闘い、長期かつ多波にわたるストライキを行って電力需要企業及び一般家庭に停電、電圧低下の被害を出し、社会的批判と国によるストライキ規制(昭和二八年五月の電気事業及び石炭鉱業における争議方法の規制に関する法律制定)を受け、各地方本部では組織分裂と企業別組織再編の動きが活発になった。
(二) 東電労組は、昭和二四年一二月、第三次電産争議における低水準の退職金協定妥結を契機として、既得権維持を目標に掲げて関東配電株式会社の組合員が電産を脱退して企業別組織である第二次関東配電労働組合を結成し、その後も組織拡大し、昭和二六年五月の被告会社設立に際し、東電労組と改称したものである。
(三) その後しばらくは電産関東地方本部と東電労組の組合併存状態が続いたが、前記電産大争議を契機として企業別組織の結成が全国化するに及んで、昭和二九年五月、経済闘争第一主義と各電力労組の自主性尊重を標榜して企業別組合の連合体である全国電力労働組合連合会(電労連)が結成され、電力労働者全体を見ても電労連系が多数派を占める状態となり、昭和三一年六月、電産関東地方本部と東電労組の組織合同の合意に基づいて被告会社従業員の唯一の労働組合組織としての東電労組が発足し、電産関東地方本部は消滅するに至った。
(四) 東電労組は、被告会社との間の労働協約の冒頭に第一条(目的の確認)として「電気事業は、需要家の福祉と産業の興隆に重大な関係を有しているので、公共に対する特別の義務と責任の忠実な履行によってその健全な発展を期し得るものである。したがって、会社組合間の紛義は、常に公共に対する奉仕を無視することなく解決せられるよう、相互間において努力せらるべきであることをここに会社と組合は確認する。かかる確認に基づいて、会社及び組合は、対等の立場に立ち、相互の関係を合理的に調整し、従業員の労働条件の維持改善を図るとともに、労働能率を増進し、これにより労使間の平和を維持し、会社、従業員及び一般公共の互恵を高めることをもって、この協約締結の目的とする。」(第一文及び第二文は東電労組の前身である第二次関東配電労働組合時代から一貫している。)との内容を掲げるなど、労使協調路線に基盤を置いていたが、前記電産関東地方本部との組織統一、六〇年安保改定反対運動期の階級的労働組合運動の高揚など様々な要因から当初は組合本部においてさえ、運動方針、上部団体加盟問題、政党支持問題等を巡る主流派、反主流派の対立があり、支部運営についても、東電労組の前身である第二次関東配電労働組合時代からの職場組織中心の体質があったため、支部執行部を反主流派が占める支部も相当数存し、特に昭和三五年六月の電労連の全労会議(全日本労働組合会議の略称。後の全日本労働総同盟。)一括加盟決定の承認を巡り、県評や地区労に止まる支部も残るなど対立が目立った。
また、神奈川県下の火力発電所や山梨支店においては、後述のように被告会社が会社敵視、規律紊乱、業務阻害行為であると認識したような反合理化闘争も青年婦人労働者を中心として行われた。
(五) その後、階級的労働組合運動自体の衰退や後記被告会社の労務管理政策など様々な要因により、東電労組の反主流派各支部においても主流派が多数を占めるに至り、昭和四一年二月の山梨支部の県労連脱退、県同盟結成参加によって反主流派の組織的抵抗は消滅し、事実上の民社党一党支持や青年婦人部活動の転換等を経て、前記労働協約第一条に見られる労使協調路線は定着し、昭和四五年には被告会社社長を東電労組の役員研修の講師として招請するなど東電労組と被告会社の関係は安定化し、被告会社の特別管理職に東電労組の組合役員経験者が登用されるのが常態となり、このような労使協調路線や被告会社との安定した関係が維持されたまま現在に至っている。
3  被告会社の労務政策
〈書証番号略〉、証人寺尾一夫の証言及び〈書証番号略〉、弁論の全趣旨及び〈書証番号略〉を総合すれば、次の事実を認めることができ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
(一)  被告会社は、前記のような電産の労働組合運動は階級闘争至上主義に偏向しているものと見做し、また実際に電産争議により甚大な被害を受けていた経緯もあって、企業防衛の見地から、また、設備産業である被告会社では技術革新と合理化による投資効率・賃金効率の向上が不可欠であるという見地から、労使協調路線を採用する企業別組合が望ましいと考え、電産から東電労組が分裂して結成されたことを高く評価し、前記内容の労働協約を締結し、さらに東電労組内の主流派との信頼関係強化に努めた。
具体的には、被告会社は、東電労組の各支部・分会の活動傾向を常時、詳細に把握、分析し、職制に対し、東電労組の組合活動の穏健化に努めるよう指示徹底し、反主流派勢力の伸長を抑制することを図った。
(二)  また、被告会社は、共産党はマルクス・レーニン主義を奉じるものであり、前記電産争議は共産党の労働組合支配によるもの、レッド・パージ後も共産党の影響力は共産党地下中央ビュウローから総評への介入を通じて残っているものと考え、昭和三〇年六月の共産党六全協において戦術転換した後も、究極的には暴力革命を是認しているから、企業活動に害を及ぼすものと認識していた。
そして、被告会社は、前記一3(三)の共産党の大衆路線活動方針及び六〇年安保改定反対運動を通じて昭和二九年以降被告会社で大量採用した高校卒若年従業員間に共産党が勢力を拡大したことを察知し、東電労組の共産党指導による左傾化のおそれに非常な危惧を抱き、特に昭和三五年ころから昭和四〇年ころまで、神奈川県下の各事業所や山梨支店において生じた分会ないし支部執行部の共産党員による掌握及び反合理化闘争の実施、職場や独身寮における勧誘活動及びビラ貼り活動並びに被告会社認定にかかる勤務時間中の無断組合活動及び職制の職務命令に対する無視、反抗の頻発といった事態を重視し、これを共産党員及びその支持者による会社敵視の煽動、規律紊乱行為、業務阻害行為であると認識し(以下、被告会社認定にかかる右行為等を便宜上「不都合行為」と呼ぶ。)、被告会社内の共産党員及びその支持者並びに被告会社が共産党の下部組織であると見做した民青同盟員の動向に格別の関心と警戒を抱き、情報収集を行う(情報収集については、被告会社が自認するところである。)とともに、次のような共産党対策に腐心した。
(三)  被告会社は、具体的な共産党対策として、昭和四一年ころまで、次のような労務政策を行った。
(1)  昭和二六年ころから昭和四三年ころまでの間、新規採用時に思想調査を行い、新規採用従業員から、「共産党員ないしはその同調者と判明したときは採用を取り消されても異議なきこと」との記載が含まれている請書を徴していた。
(2)  被告会社内の共産党員及びその支持者並びに民青同盟員の動向の把握のための情報収集を徹底し、場合によっては警察情報も利用し、店所間で右情報を交換した。
(3)  被告会社本店労務部労務課ほか労務担当部課において、共産主義、共産党、民青同盟及び共産党関連組織と被告会社が見做した諸団体についてその現状分析や批判をまとめた労務資料を現場の労務担当者の教材として配付し、職制教育を徹底した。
(4)  昭和三六年一一月実施の支持政党調査を含むモラル・サーベイの結果を独身寮対策並びに神奈川県下の各事業所や山梨支店における「不都合行為」の情勢分析及び対策立案に利用し、独身寮の寮監に労務担当者を配置し、寮内での政治活動を厳禁する独身寮内規を制定し、あるいは職場集会出席者に対する賃金カットなどを強行するなどした。
(5)  一般従業員に対し、新人教育や労働情勢講演会の場を利用して、共産主義及び共産党批判を行い、または共産主義に批判的な講師を招請し、積極的に共産主義に反対する思想を有する若年従業員の育成を図った。
(6)  共産党員ないしその支持者である従業員に対しては、影響力の大きい中心的活動家を他店所に配転し、又は日常的監視の目の届く机上業務に配転したうえ、課長席のそばに配置するなどし、また懲罰条項を活用すること、思想堅固ではないと判断した者に対しては、個別善導として思想転向を促し、あるいは友人、保護者、保証人を人選して説得工作を行い、効果がない場合には昇進・昇給を含めた後述の人事考課上の対策を行うべきことを各店所に指示した。
(四)  被告会社の右のような労務政策は、前記の電産争議以来の経過、被告会社の共産党の方針に対する認識及び右認定の具体的対策の内容に鑑みれば、被告会社主張のような一般的な青年層対策にとどまるものではなく、また、共産党員及びその支持者に対する概括的な嫌悪ないし敵視の表現にとどまるものでもなく、これを反共差別政策と呼び得るか否かは別として、特定時期の被告会社内の共産党員及びその支持者の労働組合活動及び政治活動を対象にした被告会社としての具体的労務政策であったものと認めることができる。
そして、被告会社の労務政策である以上、常務会決定、本店労務部労務課による具体的な指示により、各店所でより個別的な対策が検討立案され、各級管理者を通じて徹底されたことはけだし当然の推移であるし、右推移は前掲各証拠により認めるに十分である。
(五) 被告会社の右労務政策の継続した期間については、
(1) 昭和四五年の安保自動延長期には、昭和三五年の安保改定期と同様の労働組合運動の高揚ないし共産党の党勢拡大が予想されたところ、七〇年対策として、「a(日共、民青活動)、b社会党関係(社青同活動)、c創価学会関係」に分類した特殊名簿の補完、活動者の隔離及び配転の配意、独身寮対策等を講じたこと、
(2) 昭和四八年ころ、「最近の労働情勢について―日共系の動き」と題した労働情勢分析を行い、その対策として業務管理、労務管理面からの「攻めの防御」を提唱したこと
が認められ、その後に被告会社の労務政策が大きく変更されたと認めるに足りる証拠はないから、時期、地域及び事業所の性格等により視点・内容が異なるにしても、前記労務政策の一定の効果が挙がった後も継続し、現在に至っているものと認められる。
(六) しかし、請求原因2(二)(2)のうち、被告会社がインフォーマル組織を育成強化したとの事実は、これを認めるに足りる的確な証拠はない。
4  千曲川電力所における労務政策としての情報収集等
(一)  〈書証番号略〉によれば、昭和三六年四月一三日、被告会社労務部労務課長が千曲川電力所長に対し、昭和三五年度下期の同電力所での労務関係諸施策の推進状況について書面で報告することを求めたこと及び昭和三六年五月二九日、被告会社労務部長から常務会決定である「火力部門を中心とした青年層対策」の資料配付が行われたことが認められ、また、証人田村和彦の証言及び前記二3(三)に認定した被告会社の労務政策の内容を併せて考慮すると、この当時、被告会社が関心を寄せる思想問題とは共産党ないし民青同盟の思想以外には考えられないことが認められ、これらの事実を総合すると、昭和三六年三月以前に被告会社は、千曲川電力所に対し、共産党員対策を推進すべきことを指示したことが推認できる。
(二) 〈書証番号略〉、証人田村和彦の証言、当事者間に争いのない事実を総合すれば、請求原因2(四)(1)の事実が認められる。
(三) 〈書証番号略〉、証人松田英孝の証言、当事者間に争いのない事実を総合すれば、請求原因2(四)(2)の事実が認められる。
(四) 〈書証番号略〉、弁論の全趣旨から真正に成立したものと認められる〈書証番号略〉、前記二3(一)に認定した被告会社の組合対策を総合すれば、千曲川電力所は、東電労組千曲川支部において主流派が役員選挙に勝ち、また組合大会が青年婦人部活動に批判的になったことを高く評価していたものと認められる。
(五) 〈書証番号略〉、原告竹内本人尋問の結果及び〈書証番号略〉によれば、請求原因2(四)(4)の事実が認められる。
なお、〈書証番号略〉については、その作成経過に関する〈書証番号略〉(原告竹内作成の陳述書)の内容は、〈書証番号略〉により認められる千曲川電力所本館二階事務室の状況と対比すると不自然な部分もあり、原告竹内が偶然に発送電課岡本主任のノートを発見したのではなく、意図して盗み見たものと認めるのが相当であるが、このような作成経過のメモであっても、当時の定例主任会議等で共産党員らの動向を討議していたこと、右メモが契機となって原告らが当時計画していた「東電平和と民主主義を守る会」結成を見合わせることになった事情を併せて考慮すると、右メモの記載内容の信憑性が疑われるものではない。
(六) 〈書証番号略〉(事務引継書)の成立について、〈書証番号略〉によれば、右事務引継書の記載項目が事務引継内規に反していることが認められるが、一方で、〈書証番号略〉により認められる筆跡とほぼ同一の筆跡で終始作成されていること、千曲川保修所長としては当時の被告会社で全社的に推進されていた共産党対策を優先事項と考えた可能性が十分にあること、〈書証番号略〉と対比しても、右事務引継書の記載項目は例示に過ぎず、必ずこの項目に従って記載しなければならないわけではないこと、〈書証番号略〉の内容を併せて考慮すると、右〈書証番号略〉は、昭和四七、八年ころ、原告紀二が千曲川保修所の書類棚を整理していた際に、本件事務引継書のファイルを発見し、その中に原告紀二と松田幸雄の名前があったことから、右事務引継書の全文をコピーして作成したものと認められ、〈書証番号略〉中、右認定に反する部分については、仮に佐野一雄が考えたように本文一枚目を改竄ないし差し替えたとしても、残りの部分を含めて文書全体が事務引継内規に反した項目立てになっていることから信用できず、他に右認定に反する証拠はない。
以上により〈書証番号略〉によれば、請求原因2(四)(5)の事実が認められる。
(七) 請求原因2(四)(6)の事実は当事者間に争いがない。
(八) 請求原因2(四)(7)の事実については、〈書証番号略〉によれば、昭和四五年三月二四日付の「赤旗」でそのような報道がなされたことは認められるが、右記事のニュースソースは明かでなく、またこの点に関する証人松田英孝の証言は、右事実を誰から聞いたか、聞いた時期が記事の出る前か後かあいまいな点があり、にわかに信用することができず、他に右事実を認定するに足りる証拠はない。
以上に認められる(一)ないし(七)の各事実、前記二3(三)に認定した被告会社の労務政策の内容、〈書証番号略〉、証人松田英孝の証言、原告紀二本人尋問の結果を総合すると、昭和三六年ころから昭和四一、二年ころまで、被告会社千曲川電力所においては、日常的に共産党員及びその支持者に関する資料を収集し、情報を交換していたことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
三  各原告が共産党員である旨の千曲川電力所における認定
1  〈書証番号略〉によれば、昭和三六年八月千曲川電力所労務課副長として赴任してきた青島武文は、高原敏雄労務課長から千曲川電力所管内には民青同盟員がいること、そのメンバーは松田英孝、原告紀二、原告竹内、鈴木紀元、原告小俣などであることを知らされたことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
2  〈書証番号略〉によれば、共産党は、昭和三六年五月ころ、同年二月の同党全国組織部長会議での議論に基づいて、経営内の党細胞について、組織を露出せず、防衛しなければならない旨の指示を出したことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
3  〈書証番号略〉及び弁論の全趣旨によれば、昭和三七年一月当時、千曲川電力所管内の従業員中、共産党員は松田英孝、鈴木紀元、原告ら四名、氏名不詳者二名の合計八名であったことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
また、〈書証番号略〉、弁論の全趣旨及び〈書証番号略〉、証人田村和彦の証言、右(一)ないし(三)認定の各事実、既に認定したように原告らが共産党員として活発に階級的労働組合運動及び大衆運動を行っていた事実、被告会社千曲川電力所において日常的に共産党員及びその支持者に関する資料を収集し情報を交換していた事実を総合考慮すると、各原告が、自己が共産党員であることを被告会社千曲川電力所に対して秘匿していたにも関わらず、被告会社千曲川電力所は、綿密な情報収集活動に基づいて、遅くとも昭和三七年一月六日開催の職制会議の時点においては、各原告を共産党員であると認定していたことが認められる。
第二  各原告に対する被告会社の賃金差別、人権侵害の有無
一  賃金差別について
1  被告会社の賃金差別意思
(一) 既に認定したように、昭和三六年五月二九日、被告会社労務部長は、千曲川電力所長に対し、常務会決定である「火力部門を中心とした青年層対策」の資料配付を行なった。右資料(〈書証番号略〉)は、被告会社が反論するように職制機構、人事給与管理、教育訓練、意思疎通・従業員接触、住宅・文化対策など一般的労務管理の諸施策を記載した体裁の文書であり、人事給与管理の改善についても職務給の実質的強化という内容しか述べられていないけれども、一方で、その提案の趣旨として、「注目すべき現象として、党勢拡大重点職場として日本共産党の党員倍増運動等特に青年層を対象に外部からの働きかけも活発に行われており、現に最近における憂慮すべき傾向として、川崎地区における各火力発電所等においては、かかる働きかけに呼応し、党員数の伸びが著しく、鶴見、汐田、川崎の各火力細胞が集まって東電川崎地区総細胞を確立した模様である。」などの記載があり、これが共産党対策の一環としての青年層対策であること、これにからめて人事給与管理をその手段として挙げていること、被告会社の労務対策の最高決定機関である常務会決定であること及び被告会社本店労務部が右対策を各店所に資料として送付する際、「全般的な共通事項として当然必要であると思われる人間関係管理に関する諸施策(例えば、昇進、昇給面の問題、意思疎通、従業員接触の問題等)も可成り多く含まれております」と昇進、昇給面の問題を強調していると思われる紹介をしていることが認められ、これらの事実によれば、被告会社が昭和三六年五月当時、共産党対策として人事給与管理を問題とすべきものと考えていたことが窺われる。
(二) 〈書証番号略〉によれば、被告会社の他店所において、共産党対策として人事給与管理、特に査定ないし人事考課に従業員の思想傾向を反映させたこと及び九電力労務担当者会議等で被告会社労務担当者がその報告を行ったことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
昭和三九年一〇月に被告会社により作成された「生産阻害者対策の実際」(〈書証番号略〉)の内容は重要であるからここに要約すると、「思想により査定するということではなく、彼等の日頃の言動が服務秩序を乱したり、生産阻害の行動等、企業の秩序を乱しているという事実に基づいてやりましたので、(略)苦情提起や法廷闘争になっても問題になりません。」「このような形で信賞必罰でビシビシやってみますと、先ず一年後にはCクラスの者が二年後にはBクラスないしAクラスの一部が脱落してきました。(略)要は賃金査定の厳正化により入党の動機が単純なものほどショックに感じぐらついているようであります。」などの記載があり、共産党対策として査定を利用したこと及びこれにより相当に効果が挙がった旨の報告がなされたことが認められる。
(三) 〈書証番号略〉、証人松田英孝及び同田村和彦の各証言によれば、既に認定したとおり、千曲川電力所において共産党員であり、かつ、被告会社によりその旨認定されていた松田英孝が千曲川電力所苦情処理委員会に対し、賃金に関する苦情を提起した際、昭和三六年七月及び昭和三七年一〇月の第二次苦情処理委員会において会社側田村和彦委員が「職場でアジビラをまくようなものは良い裁定がないのは当然だ。」「青年婦人部の活動や機関紙論調がアカハタ子分的であり、そういう印象を持っているのが事実である。「」この問題は本人的問題と○○主義による問題であり、組合としてもこれ等の排除に協力する必要がある。」などと発言したことが認められ、これによれば、当時総務課長であり、会社側委員として被告会社の意向を代弁する立場の右田村が、右松田の昇給額が平均昇給額より低く、従来から低い賃金なのに格差が拡大している旨の苦情申立に対し、右松田の思想信条を理由とする低査定である旨述べたことが認められる。
右(一)ないし(三)の認定事実を総合すると、被告会社は、千曲川電力所に対し、共産党・民青同盟対策として昇進・昇給面を含めた給与管理、特に人事考課ないし査定を利用した対策を行うべきことを指示したものと推認することができ、証人田村和彦の証言中、右認定に反する部分は信用することができない。
2  被告会社の賃金体系
(一) 請求原因4(一)(3)の冒頭部分中、被告会社が昭和四一年二月一日から新基本給体系を実施したことは、当事者間に争いがない。
住宅積立助成手当等及びその他一時金は、〈書証番号略〉の就業規則中の賃金規則に記載のある賃金ではなく、その余の被告会社の賃金支給区分は当事者間に争いがない。
(二) 基本給について
〈書証番号略〉、弁論の全趣旨及び〈書証番号略〉並びに証人秋山俊輔の証言を総合すると、次の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
(1) 被告会社の賃金体系は、昭和二六年五月以降、基本的には生活給体系であったところ、昭和三〇年一一月三〇日、被告会社と東電労組との間で職務給導入協定が締結された。これによれば、被告会社の賃金の中心を基本給とし、基本給は職務評価と人事考課により決定されるものとし、基本給は毎年四月に改訂されることになり、その後、右基本給の決定方法の基本的な枠組みに重大な変更は加えられていない。
したがって、被告会社の従業員の基本給は、入社時の初任基本給の額にその後の改定による増加額の加算されたものを改定基本給とし、さらにその後の基本給改定時にも同様に改定がなされていくことにより決定される。
(2) 昭和四一年二月一日から実施された新基本給体系の下においては、職級ごとに異なる昇給基準線を設定し、これに基づいて定期昇給を行うこととし、定期昇給と後述のベースアップが前記基本給改定の中心になることとなった。
すなわち、昭和四〇年度の基準基本給表(職級別に号数、基準基本給額、基準定昇額を表示した一覧表)、基本給表(基準基本給額を五パーセント増減内の幅で展開して得た数値の一覧表)、昇給基準線(職級ごとに同一職級について号数ごとの基準定昇額の高さの勾配を示す直線を結んで得たもの)、号数決定基準(号数=勤続年数+学歴による基礎号数+社外経験期間×社外経験換算係数)、職級変更の場合の号数決定基準(職級変更時現在基本給に直近の基準基本給を持つ号数とする。)などの基準を定めて、毎年四月一日に号数を一号ずつすすめて定期昇給を行うこととし、具体的な定期昇給額は、基準定昇額に査定に基づく補正(基本給表の各職級ごとに同一の基準定昇額を一単位として低号数部分から数えて三番目の基準定昇額を第三基準定昇額とし、この金額に各職級ごとにプラスマイナスの係数を乗じて得た額の範囲内で増減する。)を行ったうえで決定される。
また、その都度の被告会社と東電労組との間の協議決定により、毎年四月一日に定期昇給以外に職級別定額と各従業員の前年度基本給に一定の比率を乗じて得た基本給比例分(ただし一〇〇円単位に切上げ)を上乗せするベースアップを行い、これにより毎年基準基本給表及び基本給表が改定された。
(3) 右の取扱は、途中、数回の基本給の期中是正、定昇補正の範囲を画する係数の変更、昇給基準線の勾配の変更、職級変更時の号数基準値の設定、職級変更時の基本給改定額の基準設定等、細部の変更を受けたが、基本的な枠組みに重大な変更は加えられていない。
(4) その他の基本給改定は、基本給の期中是正及び職級変更により生ずることになる。
(三) 職級制度について
〈書証番号略〉、弁論の全趣旨及び〈書証番号略〉、証人秋山俊輔及び同内藤久夫の各証言を総合すると、次の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
(1) 被告会社の職級制度は、前記昭和三〇年一一月三〇日の労使協定により、職務給制度の基本として採用実施されたものであり、個別職務の職給は、職務の被告会社における相対的価値を給与に反映させる重要な基準になっている。
(2) 職給制度の実施にあたっては、労使協定に基づいて、全事業所の全職務の中から業務の各系統にわたって基準となる職務を選定し、個々の基準職務について必要となる労働の質と量を調査分析し、職務内容を基礎知識、習熟、判断、心的緊張、肉体負荷、災害危険、作業環境、指導監督責任及び業務責任の評価要素に分類し、右評価要素ごとに個々の職務の評価内容を等級に分類し、かつ評価要素ごとにウェイトをつけて点数に換算し、右評点の合計点から、基準職務の職級を決定し、職級表を作成し、各従業員の個別職務については基準職務と同じ内容であればその職級に、あてはまらない場合は類似又は近接した基準職務の職級に決定した(職級決定)。
こうして決定した個別職務の職級に全従業員を格付けし、当該職級と号数、金額を発令したものである。
(3) 右職級決定は、その後職級区分の変更や基準職務とその職級の見直しなどにより改定された。また、右によれば、一つの職務には一つの職級が対応することになるが、その後、専門職制度、フォアマン制度、職級調整、職級の弾力的運用、課業制度など、時期により態様は異なるが、従業員の個別職務に決定されている職級よりも上位の職級が発令される場合が生じた。
(4) 被告会社においては、業務の必要性に応じて、全実働従業員が何らかの職務(ある職級に格付けされている職務)に任用され(職務任用)、配置されており、また、業務の必要性に応じて、異動(勤務箇所の異なる職務への任用又は異なる役職位への任用)又は職務変更(同一勤務箇所で異なる職務への任用)する。
店所内の異動又は職務変更は、その要否を店所長が決定し、その必要の生じた課所長が課所内の適格者を推薦し、又は人事担当課が他の課所から適格者を選考し、店所長の決裁を経て決定する。異動の場合は、本人の意向、生活条件及び技能並びに各職場間の業務量の均衡を考慮して公平に行うことを要する。
(四) その他の基準内給与
〈書証番号略〉、弁論の全趣旨及び〈書証番号略〉、証人内藤久夫の証言を総合すると、次の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
(1) 資格手当は、資格別の定額を、その資格を付与された従業員に支給するものである。
資格は、従業員の社内的位置づけを表示するものであり、従業員各人の職務を通じて得る知識・技能の蓄積等を評価した結果付与され、主事・技師段階以下の昇格は店所長が決定し、毎年一〇月一日付をもって行われる。
資格が賃金と結びついたのは、昭和四七年一〇月の労使協議決定からであり、導入時に各従業員の職級との対応関係にある資格への格付けから発足した経緯もあり、資格と職級の間には一応の対応関係が認められるが、昇格が先行する場合もあり、対応職級より資格が上位になることがある。
(2) 職責手当は、職制上定められた役職別の定額を、その役職にある従業員に支給するものである。
役職と職級は対応関係にあり、対応職級より低い職級の従業員がその役職を発令されることはないが、一対一の対応ではなく、また、役職区分を越えて対応するから、特定職級の者がどのような役職を発令されるかは一定ではない。
(3) 世帯手当は、扶養区分と地域区分の相関において定めた金額基準に基づいて、各従業員の扶養区分と地域区分に応じて定額を支給するものである。職級や人事考課とは無関係に定まることになる。
(五) 基準外給与
基準外給与は、時間外手当、当直手当、特別労働手当、作業手当、特定勤務手当、保線手当、建設勤務手当及び冬営手当で構成され、いずれも職級及び人事考課とは無関係に決定されることは、当事者間に争いがない。
(六) 賞与
〈書証番号略〉、弁論の全趣旨及び〈書証番号略〉によれば、賞与は、被告会社が東電労組と支給基準につき協議のうえ、年二回支給するものであること、昭和四八年度上期分以降は、各従業員の基準給比例部分、職責手当を除く基準内給与比例部分、職級別定額部分、査定部分を支給基準として、休務をした場合は基本給比例部分及び職級別定額部分に一定の減額計算をしたうえ、上期分は当年一二月に、下期分は翌年六月に支給(ただし、一〇〇円単位に切上げ)していること及び査定部分は従業員一人平均いくらという計算に基づく金額を原資にして、全従業員の四〇パーセント程度の者に、基本給の三ないし三〇パーセントの範囲内で人事考課に基づいて支給するものであることがそれぞれ認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
(七) その他の賃金体系外の支給
弁論の趣旨及び〈書証番号略〉によれば、以下の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
(1) 住宅積立助成手当は、支給日現在及びその前一か月に在籍する全従業員に対し、その職責手当を除く基準内手当に一定の比率を乗じて得た金額(ただし一〇〇円単位に切上げ)が昭和五一年三月までは隔月、同年四月以降は年二回六月と一月に支給された。
(2) 住宅助成臨時措置特別加算は、全従業員に対し、その職責手当を除く基準内手当に一定の比率を乗じて得た金額(ただし一〇〇円単位に切上げ)が昭和四八年一二月から昭和五〇年七月までの五回にわたって支給された。
(3) 安定供給推進協力一時金は、全従業員に対し、昭和四八年度一〇月分の基本給の7.5パーセントに四〇〇〇円と加算した金額が同年一〇月一六日に支給された。
(4) 財産形成促進助成措置は、全従業員に対し、昭和四九年九月分の職責手当を除く基準内手当の21.4パーセントに三〇〇〇円を加算した金額が同年一一月五日に支給された。
(5) 賃金支払日変更貸付金は、昭和五二年度実施された賃金支払日変更に伴って全従業員に昭和五一年一二月末の基準内給与の二一パーセントの金額が昭和五二年一月一四日に貸し付けられ、その返済を大部分免除された。
3  被告会社の賃金体系の性質に対する判断
(一) 定期昇給制度とその見直しの性質
〈書証番号略〉、弁論の全趣旨及び〈書証番号略〉、証人秋山俊輔の証言、前記2(二)(2)ないし(4)認定の新基本給制度に関する認定事実を総合すると、以下の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
(1) 定期昇給制度は、勤続年数が一年進むごとに号数を一号進めて昇給を行う制度であり、号数決定にあたっては、勤続年数を主体として学歴、経験等の要素が加味されるから、高学歴、高勤続の従業員ほど高賃金が保証される。
(2) 被告会社においては、昇給基準線は職級別に定められ、全体として上位職級のほうが下位職級よりも高賃金を維持しながら昇給していくことになり、また、昇給基準線そのものが在職年数の短い熟練形成期は基準定昇額が高く急勾配であり、その後は基準定昇額が低くなるように設定されており、熟練形成曲線に対応している。
(3) 被告会社発行のパンフレットや被告会社の給与関係の管理職者が外部の雑誌に発表した論文では、年功、勤続の要素を無視できないこと、職務給の日本的修正であることなどを述べている。
(4) 昭和四四年四月に各職級の昇給基準線の勾配の数を増やし、また基本給の期中是正を行い、昭和四七年四月に下位職級、低号数を中心に基準定昇額を増やし、上位職級については昇給基準線の屈曲点を高号数の方に伸ばし、また基本給の期中是正を行い、昭和五〇年四月に昇給基準線の低号数部分の勾配を立て、下位職級について昇給基準線の屈曲点を高号数の方に伸ばし、また基本給の期中是正を行い、昭和五三年四月にも高勤続を中心に基準定昇額が増加するように、それぞれ見直しを行った。
以上の認定事実を総合すると、定期昇給制度そのものが学歴及び勤続年数に応じて基本給が改定されていくという点で年功序列的要素を含んでいること、職級別に昇給基準線を設定し、熟練形成曲線に対応させるなど職務的な要素を持たせてはいるが、年功序列的昇給を求める東電労組との関係もあって、三年ごとに見直しをせざるを得ない状況であったことが推認される。
(二) 資格制度の運用
〈書証番号略〉、弁論の全趣旨及び〈書証番号略〉、証人内藤久夫の証言、前記2(四)(1)認定の資格制度に関する認定事実を総合すると、以下の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
(1) 資格手当と結びついた資格制度は、職級制度が上級職級ほど定員が少なくなるピラミッド型構造を建前とするのに、被告会社の人員構成が昭和二〇年代の引揚者の大量採用及び昭和三〇年代後半の高卒者の大量定期採用のためにこれと対応しなくなっていたことから、職級制度を補完するものとして発足し、そのため資格手当の金額も資格間で相当の格差をつけており、また、標準的昇格基準を設定して、在資格年数を重要な要素として昇格を行っている。
(2) 資格制度そのものは、職務ではなく人に着目し、蓄積・貢献・態度を資格格付けの三要素とするものであるが、資格段階格付け基準を見る限り、基準は抽象的なものである。
(3) 資格制度運用の統計的結果を見ると、職級に対応した資格運用が最も多く、これに次いで対応職級よりも上位の資格を付与されている者が多く、対応職級よりも下位の資格しか付与されていない者はごく少数である。
以上の認定事実を総合すると、資格制度は、その発足の経緯及び年功序列的昇格を求める東電労組との関係もあって、厳密な服務対応制度ではなく、在資格年数を中心とする年功序列的運用が行われているものと推認される。
(三) 職級制度の運用の性質
〈書証番号略〉、弁論の全趣旨及び〈書証番号略〉、証人秋山俊輔及び同内藤久夫の各証言、前記2(三)認定の職級制度に関する認定事実を総合すると、以下の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
(1) 被告会社は、職務給制度の実施後しばらくは、職務と基本給の結びつきが希薄であり、年令、勤続、考課などの要素を総合判断して決める総合決定給として運用していくしかないと捉えていたものであり、昭和三六年以降は、初任給の上昇に伴う直近入社者との間の賃金不均衡是正、下位職級の中高年層と若年層との間の賃金不均衡是正のため基本給改定を行わなければならなかった。
(2) 昭和四一年の新基本給体系採用後も、
① 昭和四三年四月一日及び昭和四四年四月一日、八ないし一〇級職者で四〇歳以上在級期間五ないし六年の者に対し、個別に上位職級に任用し(職級調整)、
② 昭和四六年四月一日以降、同一職級に五年程度以上在級している者について、職務内容が高水準に達している者については、一級上位に昇級する(職級の弾力的運用)ことを制度化し、
③ 昭和五〇年九月二五日、課業制度を採用し、個別職務を機能的まとまりを持った仕事の単位(課業)に細分化し、その時間比率を上位にあたるものから順次累積して、累積値が個別職務全体の四〇パーセント以上に達する課業を決め、その課業を重点課業とする上位基準職務の職級をその個別職務の職級とする、職務編成の弾力化を行った。
(3) 東電労組の職級実態調査結果に基づく入社年度別の最多職級の推移の分析結果は、請求原因4(一)(4)①(ア)ないし(ウ)の傾向があることを示している。
以上の認定事実を総合すると、被告会社の職級制度そのものに年功序列的要素が含まれているとまでは認められないが、基本給是正、職級調整、職級の弾力的運用、課業制度の採用に見られるように、年功序列的修正を余儀なくされており、その運用の実態も、全体として年功序列的傾向があることは否定できない。
(四)  被告会社の賃金制度の性質に対する判断
(1)  一般に、ある会社の賃金制度が純然たる年功序列賃金であるときは、学歴、年令、勤続年数等に賃率が結びつけられる結果、従業員の賃金は、これにより機械的自動的に定まることになり、純然たる職務給賃金であるときは、職務内容に賃率が結びつけられて、学歴、年令、勤続年数等に関わらず、従業員の賃金は担当職務内容のみによって定まることとなるものと解される。
もっとも、電産型賃金体系においても能力給が存したように、賃金制度は、いくつかの支給区分の柱を有しているのが通常であって、純然たる年功序列賃金ないし職務給賃金はむしろ希有でしかなく、もちろん、被告会社の賃金制度も純然たる年功序列賃金ないし職務給賃金ではないものと認められる。
ここで、被告会社の賃金制度の性質を判断するにあたっては、原告ら主張の「年功序列的」とは、純然たる年功序列賃金そのものではなく、賃金決定方法について、学歴、年令、勤続年数等を重要な要素として採り入れ、ないしはこれらに対する重要な配慮を行っていることをいうものとして考えることとする。
(2)  既に認定したように、被告会社の賃金体系は基本給と諸手当の二本立てであり、毎月支給される基準内給与の大半は基本給が占めている。したがって、たとえ資格制度が年功序列的性格のものであり、そのように運用されているとしても、それだけでは被告会社の賃金制度を年功序列的であると断定することはできない。
基本給の決定方法は、既に認定したように、初任基本給が順次改定されることによって定まるものである。そして、毎年四月の定期昇給制度は、それ自体、学歴及び勤続年数を主たる要素とし、年功序列的要素を有するものである。
しかしながら、基準基本給表及び基本給表からは、基本給の額は職級の違いにより相当大きな格差がつけられていることが認められ、昇給基準線が職級別に上下に展開するように設定されていることを併せて考慮すると、職級変更(昇級)が、被告会社のある従業員の賃金上昇の最重要な契機になっているものと解される。そして、職級制度は、既に認定したとおり、あくまでも個別職務を職務評価により職級に格付けされた基準職務と比較して職級を決定し、従業員を個別職務に任用することを本質とするものであり、また、昇級の原因となる職務任用は、後述のように従業員の業績と能力に対する評定に基づいてするのが原則であるから、学歴、年令、勤続年数等を重要な要素とするものではなく、職務、能力、服務に対応するものであると認められる。
なお、毎年四月のベースアップは、前年度基本給比例部分と職級別定額から構成されるから、前者は勤続年数対応、後者は職務対応であり、双方の性格を兼ね備えるものである。
ところで、既に認定したように、被告会社の職級制度そのものは、年功序列的修正を余儀なくされ、また運用の実態も年功序列的傾向が見られるが、このような修正や運用は、職級制度の職務、能力、服務対応という原則に反しない限り、被告会社の賃金制度自体の性質の判断に影響しないものと考えられる。なぜなら、高学歴、高勤続の従業員が、能力及び職務熟練の点でそれだけ優れてくることは、一般論として首肯せざるを得ず、これにより、被告会社の予定した職務構成と実際の人員構成の不均衡に応じた修正を行うこと及び運用の統計的結果が年功序列的傾向を見せることは、学歴、年令、勤続年数等を重視することとは直接関係しないと解されるからである。
(3)  以上の判断を総合すると、被告会社の賃金制度の性質は、基本的には職務、能力、服務対応の職務給制度にあり、従業員の提供する労働の質及び量に応じて定まる仕組みであるということができる。ただし、右職務給制度は、定期昇給制度、ベースアップ及び資格制度と併存しており、年功序列的な要素の存在及び運用がなされていることも否めない。したがって、高学歴、高勤続であることは直ちに高賃金であるべきことを意味しないが、学歴・勤続年数と全く無関係に賃金が決定するということもできず、一つの賃金決定要素として配慮されているとみるべきである。
4  被告会社の人事考課制度及び共産党員らに対する差別的取扱の有無
(一) 被告会社の人事考課制度の概要
〈書証番号略〉、弁論の全趣旨及び〈書証番号略〉、証人内藤久夫の証言を総合すると、以下の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
(1) 被告会社の人事考課制度は、昭和四一年の新基本給制度採用と同時に業績評定及び能力評定の二本立てとなった。
(2) 業績評定は、従前の服務内容評定と同様であり、各年度を上期下期の二回に分け、各期末に各期間中の職務の遂行度合いと職務遂行に関連してみられる執務態度を評定の対象とし、課制をしいている場合の主任以下の一般職の場合は、仕事の質(業務の成果の正確さと妥当性、創意工夫)、仕事の量(所定の仕事量の達成、期日・期間の遵守)、管理(下位職者の指導、情報伝達の十分性)、執務態度(仕事に対する熱意・積極性、責任感、関係者との協調性、職場規律遵守)、その他(安全確認、地域との協調に対する貢献)を評定項目とし、係長が第一次評定者として同一職級者を一つのグループとして評定項目ごとに普通、不完全、完全を目安に分析評定し、さらに評定項目にウェイトをつけて総合評定し、同一グループ内の全員を上位から順に一次序列をつけ、次に課長が二次評定者として一次評定と同様の分析評定、総合評定を行い、二次序列をつけ、結果が一次評定と著しく食い違う場合は一定の調整を行い、最後に二次評定者が上位から順にE、F、S(それぞれ二五パーセント、五〇パーセント、二五パーセントの割合)で評点を付ける方法により行う。
業務評定結果は、定期昇給時の基準定昇額の補正、賞与における査定額決定、職務任用及び資格の昇格の資料として使用される。
(3) 能力評定は、毎年一回、一月一日現在で直前一年間の職務遂行に現れた職務遂行能力と人物特性を評定の対象とし、蓄積、能力・態度、人柄・性格をさらに細分化した評定項目について、本人が人物所見表にチェックと記入を行い、これをもとにして一次評定者が評定し、さらに二次評定者が一次評定の内容を審査、補正し、必要があれば配置異動に関する意見を付記する方法により行う。
能力評定結果は、職務任用の候補者選定、資格昇格の候補者選定の資料として使用するほか、能力開発の推進方策の検討資料とする。
(二) 被告会社の人事考課及び職務任用の問題点
〈書証番号略〉、弁論の全趣旨及び〈書証番号略〉、証人内藤久夫の証言、前記(一)認定の事実を総合すると、以下のような問題点の存することが窺われる。
(1) 被告会社の職務任用においては、前記の業績評定及び能力評定の結果だけでなく、年令や勤続年数に基づいた適応年令、適応在級期間、ないしは昇進標準コース、昇進標準といった基準が併用されていたことが推認される。
しかしながら、これをもって、被告会社の職務任用が年功序列的に運用されていたと認めるには足りない。右の基準のうち、最低勤続年数や最低年令を定めたものは、右年数ないし年令に達すれば昇進させるという性質のものではなく、適応年令や適応在級期間を定めたものは相当な幅を持たせており、昇進標準コースや昇進標準も、おおよその目安を定めたに過ぎず、これに拘束される趣旨のものとは証拠上認められない。人事考課という労務管理の性格上、例外なく年功序列で運用するということは背理であるといわなければならない。
ただし、最下位職級である一〇級、九級については、ほぼ例外なく入社後一年経過、四年経過時点で任用されているが、これは人事考課の積み重ねがされる以前の運用であり、これをもって右の判断を覆すには足りない。
(2) 被告会社の人事考課においては、その正確性、客観性の担保が不十分ではないかとの疑いがある。
既に認定した業績評定及び能力評定の評定項目は、いずれも抽象的、概括的であり、何らかの客観的基準をもって評定することは困難であると認められること、評定自体も普通、完全、不完全ないしE、F、Sなどとおおまかであり、かつ、評定者が評定項目間に自由にウェイトをつけることができること、一次評定者と二次評定者が各一名ずつであることなどを考慮すると、評定者の主観的判断によらざるを得ず、その正確性、客観性の担保は、結局のところ評定者の経験という無形的なものに依存することになる。
そして、被告会社は、評定者訓練が不十分であり、その信憑性に不安がある場合のことを、その人事考課の手引や人事担当者の論文を通じて自認していたものと認めることができる。
しかし、これをもって被告会社の人事考課が常に信憑性に欠け、当てにならないものとまではいうことができず、結局は個別の事例につき、正確かつ客観的に行われたかを判断する以外にない。
(三)  人事考課における共産党員らに対する差別的取扱
(1)  原告らは、被告会社は、共産党員ないしその支持者であると会社が認定した従業員に対しては、通常の人事考課から切り離して、いわば人事考課の別枠を設け、当該従業員の業績や職務遂行能力ではなく、職場外の行動や思想・信条のみを評定の対象とし、一般従業員と異なる差別的な職務任用や賃金査定を行ったと主張するが、これを認めるに足りる的確な証拠はない。
前記第二の一1で窺われる被告会社の方策も、具体的に共産党員らの従業員に対して通常の人事考課から切り離して別枠を設けることまでをも考えていたとまでは認めるに足りない。なお、証人鈴木章治の証言中には、右主張に沿う部分があるが、「別枠」の意味が不明確であり、信用することができない。
(2)  次に原告らは、被告会社は本来人事考課の査定対象に含めることが許されない事項を人物評価の基準として含ましめ、あるいは、能力開発の主要な機会である研修から共産党員ないしその支持者であると会社が認定した従業員を排除したうえで職務遂行能力に欠けるなどと評価したりすることにより、人事考課上差別的取扱をしたと主張するところ、この点については、被告会社が共産党対策として昇進・昇給面を含めた給与管理、特に人事考課ないし査定を利用した対策を行うべきことを人事管理者に指示していたものとみられることは前記認定のとおりであり、また、〈書証番号略〉によれば、被告会社としては、電気料金の値上げに反対して活動したこと、企業ぐるみ選挙に協力しないこと、組合役員選挙の際の政策内容が不適当であることなどを人事考課の評定対象とすべきと考えていることが認められるうえ、さらに、前記認定のとおり被告会社が一般的に職制に対し、共産主義に批判的な教育を行ってきたこと、特別管理職に共産党と一線を画することを標榜する東電労組の組合役員経験者が多く登用されていることなどを併せ考慮すると、被告会社が当該従業員を共産党員ないしその支持者であると認定した場合に、評定者が業績評定及び能力評定に際し、当該従業員にそのことのみで不利益な評定を行った蓋然性は十分に認められるというべきである。
なお、このほか、被告会社の人事考課制度が評定者の主観的判断に依存せざるを得ないこと、評定者訓練が不十分であることなど前記評価制度に内在する弱点が個々の業績評定及び能力評定にあたって影響を及ぼしたであろうことは否定できないものと思料される。
5  各原告についての賃金格差の実態
(一) 各原告の主張の時期における職級、資格及び役職並びに受給賃金額については当事者間に争いがなく、昭和五七年九月三〇日現在の各原告の職場の他の従業員の職級、役職については被告会社が明らかに争わないからこれを自白したものとみなす。これによれば、請求原因4(一)(6)①ないし④の各(ア)ないし(ウ)の事実が認められる。
(二) 右に認定した職級、資格及び役職についての格差の存在、これが年々増大していったこと並びに既に認定した被告会社の賃金制度の内容を総合すると、各原告の受けた世帯手当を除く基準内給与と同学歴・同期入社者の平均的な者が受けたそれとの格差は、年々増大していったものと認められ、また、弁論の全趣旨によれば、各原告と同学歴・同期入社者の間の賃金格差が昭和三八年四月の基本給昇給額の一〇〇円の格差から始まったこと、これらの賃金格差が退職後の退職金・企業年金の格差にも反映されることが認められる。
(三)  各原告と同学歴・同期入社者の間の平成四年度一年間の基準内給与の格差として主張する額については、請求原因4(一)(9)記載の計算方法によるものであるが、右計算方法の基礎となる統計的数字が〈書証番号略〉から認識される東電労組作成の職級実態調査概要及び賃金実態調査結果等に現れた統計数字であること、弁論の全趣旨によれば右各実態調査が各組合員からの聞き取り等ではなく被告会社の賃金資料等に基づく正確なものであることが一応推認されること、右の統計数字がない年度については当事者間に争いがない賃上げ妥結率等を利用して計算していることを併せて考慮すると、右計算方法の損害額算定方法としての当否は別として、各原告と同学歴・同期入社者の賃金格差(この数字は千曲川電力所の範囲ではなく、全店大になる。)の認識方法としては一応相当であり、計算自体は正確であるものと認められる。
したがって、請求原因4(一)(6)①ないし④の各(エ)の事実が認められる。
(四) 次に右賃金格差の中心的な基礎となる職級の格差の程度について判断する。
(1) 右(一)の認定事実によれば、原告紀二は、九級の在級期間が一〇年間、八級の在級期間が三年間、七級(昭和五七年一〇月以降は三級B)の在級期間は一七年以上に及び、同竹内は、九級の在級期間が八年間、八級の在級期間が約四年六か月、七級(昭和五七年一〇月以降は三級B)の在級期間が約一六年六か月であり、同小俣は、九級の在職期間が八年間、八級の在職期間が約三年六か月、七級(昭和五七年一〇月以降は三級B)の在級期間は約一七年六か月以上に及び、同春子は、一〇級の在級期間が五年間、九級の在級期間が七年間、八級(昭和五七年一〇月以降は二級A)の在級期間が一〇年六か月、七級(三級AないしB)の在級期間は八年六か月以上に及ぶ。
右認定の在級期間のうち、原告紀二、同竹内、同小俣の八級在級期間を除けば、いずれも既に認定した被告会社の人事考課上用いられている職務適応期間ないし昇進基準等の目安並びに前掲〈書証番号略〉から認められる全体的な職級人員及び比率の推移から認められる平均的在級期間が三年間から五年間位であることに比較して、下位職級における在級期間が著しく長いものといえる。
(2)  また、〈書証番号略〉から認められる同学歴・同期入社者の二分の一位数者の存在する職級と各原告の職級を比較すると、原告紀二、同竹内及び同小俣については昭和五三年度以降、二分の一位数者と三級差以上の開きが生じ、同春子については昭和五三年度以降、二分の一位数者と四級差以上の開きが生じている。
前記職務適応期間ないし昇進基準等の目安にしたがって昇級が行われると仮定した場合、右の程度の職級差が生じると、それ以降は当該従業員がどれだけ業績及び能力評定で優れていると評定されても、二分の一位数者の職級と同じになることは不可能になるから、右の程度の職級差は著しく大きいものといえる。
(3)  以上に認定した職級格差は、いずれの角度から観察しても格段に大きく、被告会社の賃金制度上、賃金決定における職級の果たす役割を考慮すると、これから生ずる賃金格差も著しく大きくなり、かつ、これが年々増大してきたことが推認される。
6 被告会社の差別的取扱と賃金格差の因果関係に対する判断
(一)  原告らの主位的主張である、被告会社が各原告を人事考課の別枠に置き、各原告の業績や職務遂行能力ではなく、職場外の行動や思想、信条のみを評定の対象としたということについては、既に認定したように、被告会社が一般的にそのような取扱をしたと認めるに足りる証拠はなく、また、各原告に対する関係についても同様である。かえって、5に認定したように各原告について、同学歴・同期入社者と比較して著しい格差が生じているにしても、原告により格差の程度が異なることは、被告会社として共産党員ないしその支持者と認定した従業員に対する何らかの画一的な差別的取扱の基準に類するものは存在しなかったことを窺わせる。
(二) そこで、原告らの予備的主張である、被告会社が各原告に対する評定権者を通じて評定する際に、評定項目が抽象的かつ主観的であることを利用して、共産党員ないしその支持者と認定した従業員に対し、実際の職務遂行能力に比して、不当に低い職務に位置づけ、同一職務内での昇給もさせず、さらに定昇補正においても低額になるような査定を行い、これらの差別的賃金決定行為(以下「差別的査定」という。)により同学歴・同期入社者と比較して著しい格差の存する賃金しか支払わなかったとの主張について検討する。
(1)  まず、被告会社の各原告に対する加害行為は何であるのかについて検討する。
被告会社の各原告に対する個別の賃金差別意思が存するのは差別的査定の時点であり、また、右加害意思が端的に現れるのも、右査定においてであることは明らかである。
しかしながら、差別的査定に基づいて算定された格差のある賃金の支払行為(毎月の賃金支払日、年二回の賞与支払日、その他一時金等の支払日における支払)を、右差別的査定により生じた損害を現実化させる事実行為に過ぎないと解することはできない。なぜなら、第一に、被告会社の使用者としての査定手続は非公開であり、右査定に基づく賃金算定行為もまた非公開であるから、各原告は、被告会社の個別的賃金差別意思の存在ないしはそのような加害意思がどのように賃金算定に反映されているのかを認識することができず(〈書証番号略〉によれば、給与明細上も、基本給額が表示されているのみで、算定過程は明かにされていないことが認められる。)、各原告としては、支払われた賃金と被告会社の一般的賃金差別意思を結びつけて初めて差別的取扱を受けたことを認識するという関係にあり、第二に、被告会社としては、本来は、従業員に対する違法ないし不当な賃金支払を行った場合は、次の基本給改定を待たず、期中であってもこれを是正すべき一般的な責務を負っているものと解すべきところ、これをしないで差別的査定に基づいた格差のある賃金を支払い続けるときは、各賃金支払行為も、被告会社の個別的賃金差別意思に基づいているものと見ることが可能であり、したがって、第一及び第二の関係から、差別的査定と格差のある賃金支払は原因と結果の関係に立つのではあるが、これを別々に捉えるのは相当ではなく、不可分一体の行為として理解するのが実情に適しているからである。
よって、被告会社の各原告に対する加害行為は、個別的賃金差別意思に基づく差別的査定と、これに基づいて算定された格差のある賃金支払行為の複合的行為であると解するのが相当である。
(2)  次に、原告らの差別的査定の内容に関する主張が十分であるか否かについて検討する。
原告らは、具体的にどの時期の、どのような賃金決定行為を加害行為として捉えているのかについて、逐一主張はしていないが、既に認定したように、被告会社の人事考課における業績評定及び能力評定は、同一職級に属する他の被評定者と比較して相対的に行われることが認められ、このような場合は、被告会社においても人事考課の機密を保持する必要があること、また、具体的な職務任用ないし定昇補正は、右の業績評定及び能力評定の結果を総合的に判断して候補者選定ないし決定を行うものであることから、職務任用ないし定昇補正と個々の評定結果との結びつきも通常明白ではないことなどを考慮すると、原告らが特定時期の特定内容の賃金決定行為の内容を逐一主張することは不可能であるものと認められる。
そして、このような場合には、原告らにおいて、各時期の、当事者間に争いのない各原告に対する賃金支払行為とこれに対応する査定が差別的であることを主張しさえすれば、既に認定した被告会社の賃金制度及び人事考課制度上、業績評定(前年度下期末、通常は毎年二月ないし三月ころと推認できる。)及び能力評定(前年度一月一日現在)について実際の業績ないし能力と異なる著しく低い評定をし、これにより総合判断として業務上、職務任用が必要になったときに各原告について原級維持相当であるとして候補者に選定せず、又は候補者に入れても決定せず、あるいは定期昇給時の定昇補正を低額とし、賞与の査定を付けないなどの方法により差別的な賃金決定を行った旨の主張がなされたものと見ることができるから、これをもって差別的査定の主張は十分特定されていると解するのが相当である。
(3)  ところで、被告会社の差別的取扱と賃金格差の因果関係を判断するにあたって、この争点についての当事者双方の主張立証責任について検討しておく。
①  本訴請求は、原告らと同学歴・同期入社者との間の比較において格差のある賃金相当分の支払いを求めるものであるところ、既に判断したように、被告会社の賃金制度の基本的性格は、職務、能力、服務対応の職務給制度にあるから、原告らは、単に自己の学歴及び勤続年数を主張立証するのみでは足りず、提供した労働が比較対象と少なくとも同質かつ同量であることの主張立証責任を有するものというべきである。右の理は、原告らの主張する被告会社の差別的査定の内容が各原告の実際の職務遂行能力等に比して、不当に低い職務に位置づけるなどしたこととすることから見ても、当然であり、賃金格差と差別的査定の因果関係立証の前提である。
しかし、既に認定したように被告会社において共産党対策を主要な労務対策としていたこと、千曲川電力所に対し、昇進・昇給面を含めた給与管理、特に人事考課を利用した対策を行うべきことを指示したこと、現に各原告と同学歴・同期入社者の間に著しい職級、賃金上の格差が存することを考慮すると、その主張、立証の程度は、具体的な職務内容、能率、勤務成績などについて、同学歴・同期入社者と思想、信条以外の全ての条件が同一であることまで主張立証する必要はなく、業績と能力に関して概括的、一般的におおむね平均的であることを窺わせるに足りる条件、例えば潜在的能力の存在、定められた職務を一応無難にこなしたこと、周囲と通常程度に協調していたこと、休務が多くはなかったことなどの主張立証をもって一応足りると解するべきである。このことは、比較対象者についての職務遂行能力等に関する資料がすべて被告会社の手の内にあり、これらの詳細についてまで原告らに主張、立証責任を負わせることは公平の視点から妥当でないことからしても、右のとおり解するのが相当である。
なお、原告らは、人身被害における消極損害の算定において、被害主体の個別的能力を問題とせず、平均的能力を有することを当然の前提とする例から、本件においても、与えられた職務に全く耐えられない等の特段の事情がない限り、各原告について、平均的な能力があったものと事実上推定すべきと主張するが、本件を人身被害の例と同視すべき根拠はなく、また、原告らの請求は、賃金センサス等によるものではなく、被告会社の賃金制度を前提として賃金差額を求めるものであるから、個別的な業績及び能力を捨象して右のような推定を行うことは相当ではない。
②  他方、被告会社においては、その労務政策の内容、人事考課を利用した対策についての指示、人事考課における評定項目が抽象的であり評定者の主観的判断に依存していること、著しい職級及び賃金の格差等が既に認定されているから、被告会社の差別的査定と賃金格差の因果関係は一応推定されているというべきであり、右推定を覆すには、右著しい格差を正当化しうるに足りる特段の事情を主張立証する必要がある。
その主張立証方法には何ら制約はないものであるし、また被告会社として人事考課の機密保持及び同一職級に属する他の被評定者のプライバシー保持の必要性があることも考慮すると、被告会社において、各原告の評定結果及び他の被評定者の評定結果を具体的に示して主張立証しなければならないものではなく、これをしないからといって、当然に各原告の業績及び能力が平均以上であったとの推定を受ける性質のものでもない。被告会社が人事の機密及び他の従業員のプライバシー等を害さないような方法でより具体的に右主張立証をすることは必ずしも不可能ではないと思われるが、そのような方法をとるか否かは被告会社の訴訟追行上自由である。
(4) 以上の主張立証責任に対する判断を踏まえて、以下、各原告の業績及び能力並びに勤務に関する特段の事情の有無を判断する。
(三) 原告紀二について
(1) 昭和三四年度の県下応募者数、採用者数は、被告会社が明らかに争わないから、これを自白したものとみなし、〈書証番号略〉、弁論の全趣旨及び〈書証番号略〉によれば、原告紀二の学生時代の成績が良好であったこと、家庭の事情で大学進学を断念したことが認められ、よって、請求原因4(一)(7)①(ア)の事実が認められる。
また、原告紀二が保育園保護者会、PTAなどの役員を歴任したことは既に認定したとおりであるから、右事情によれば、一般的な能力、人望に大きく欠けることはなかったものと推認される。
したがって、原告紀二は、職務遂行上発揮しうる潜在的能力を有していたものと認められる。
(2) 前掲〈書証番号略〉によれば、原告紀二の上司であった青島武文労務課副長は、昭和三六年から昭和三七年ころの原告紀二の仕事の正確さ、積極的な勤務態度を評価していたことが認められ、また、〈書証番号略〉によれば、昭和三八年一一月ころまで、千曲川保修所の事務処理(原告紀二の担当職務)は順調に進んでいたことが認められる。しかし、〈書証番号略〉は所報の職員紹介記事であって、通常悪い内容を書かれることはないものであり、〈書証番号略〉は、原告紀二本人の自己評価であって、いずれも客観的かつ正確な内容であるとは認め難い。
(3) 〈書証番号略〉、証人森泉章の証言及び〈書証番号略〉によれば、原告紀二が長期間被告会社の主張1(一)(1)の旅費の計算ミスを犯していた事実が認められる。
〈書証番号略〉、原告紀二本人尋問の結果中、右認定に反する部分は、右ミスが旅費規定等から明らかなミスと認められること、同原告の申出により旅費精算が行われたというのは不合理であり、また、旅費領収書の記載とも合致しないことなどに照らして信用できない。
そして、右旅費計算が原告紀二の本来的職務であることに照らすと、誤った計算について上司や労務課の承認がなされていたことをもって、ミスを正当化することも矮小化することもできないものである。
(4) 〈書証番号略〉、証人森泉章の証言によれば、原告紀二が業務行為に関して被告会社の業務用車両ではなく自己の自家用車を使用したことがあること、これが被告会社の業務上の指示及び被告会社と東電労組の間の協定での確認事項に違反した行為であることが認められる。
(5) 〈書証番号略〉、証人森泉章及び同福岡鋭一の各証言によれば、昭和五一年四月二三日、原告紀二は、消防訓練に遅刻し、かつ服装違反をしたこと、松田英孝の引っ越しの手伝いをするため上司の許可を得ずに業務を離れたこと、同月二六日に森泉保修所長から後述バイク出勤の件を含めて指摘され、注意を受けたことが認められる。ただし、懇親会の予定のため自動車、バイクで出勤しないようにとの指示が業務上なされたものであるとは、これを認めるに足りる証拠がなく、また、口頭厳重注意なるものがどのような性質のものであるかは必ずしも明かではない。
(6) 〈書証番号略〉、証人森泉章の証言によれば、昭和五一年ころ、原告紀二が勤務中にイアホンでラジオを聞いていたことが認められる。当時、職場で多人数でテレビ、ラジオを視聴取したことがあったにしても、右は原告紀二が個人でした行為であるから、職場規律上問題のある為であったといわざるを得ない。
(7) 原告紀二が主任の事務処理の補佐や他の業務の応援をしなかったこと、安全月例会で消極的であったこと(被告会社の主張1(一)(5)及び(6))については、これを認めるに足りる的確な証拠がない。
〈書証番号略〉、証人内山繁樹の証言及び〈書証番号略〉、証人森泉章及び同福岡鋭一の各証言中には右に沿う部分があるが、原告紀二が千曲川保修所でただ一名の一般事務職員であったことから、業務応援や安全対策といっても制約があること、同原告が全く業務応援をしなかったとまでは認められないところ、これを自ら申し出て積極的にしたか、業務命令を下されるまでしなかったかの点については客観的な裏付けがないことなどに照らすと信用できない。
(8) 原告紀二が一般事務処理の効率化、合理化について提言をしなかったこと、業務改善提案を出さなかったこと(被告会社の主張1(一)(7))については、これを認めるに足りる的確な証拠がない。
〈書証番号略〉によれば、原告紀二が右意見具申をしたことないしその準備をしたことが認められ、被告会社がこれを受け入れるかどうかは別の問題であるし、また、〈書証番号略〉によれば、千曲川電力所全体としても、改善提案等を広く募集してはいたが、提案数自体は多くはなかったことが認められる。
(9) 被告会社の主張1(一)(8)中、原告紀二が給料日や出納日に年次有給休暇を取得したことがあることは、同原告が明らに争わないから、これを自白したものとみなす。しかし、これが突発休であったと認めるに足りる証拠はなく、そうだとすると、業務に差し支えがあるのであれば、被告会社は時季指定権を行使するなど適切な方法を取ることが可能であったと思われるのに、そのような方法をとることなく、右年休取得により他の者に迷惑をかけたとして人事考課上不利益に取り扱うのは相当ではない。
また原告紀二に総体的に突発休が多かったとの事実は、これを認めるに足りる的確な証拠がない。〈書証番号略〉及び証人福岡鋭一の証言中には右に沿う部分があるが、出勤簿ないし休務日報等の客観的な証拠による裏付けがなく、信用するに足りない。
(10) 被告会社の主張1(一)(9)の事実は、これを認めるに足りる的確な証拠がない。
〈書証番号略〉、証人内山繁樹、同福岡鋭一および同森泉章の各証言中には右に沿う部分があるが、遅刻については出勤簿ないし休務日報等の客観的な証拠による裏付けがなく、また、〈書証番号略〉、原告春子本人尋問の結果によれば、昭和四二年以降、原告紀二が自動車通勤を始めてからは、原告紀二が同春子と子供を保育園などまで送ってから出勤したことが認められ、これによれば、常習的な遅刻という事態は生じなかったはずであり、午後の就業時刻に遅刻したことについては時期、回数等明確な記憶に基づくものとは言えず、いずれも信用するに足りない。
もっとも、証人内山繁樹の証言から認められる、千曲川保修所において遅刻管理がルーズであったことについては、電車通勤者についての慣例と解するのが相当であり、原告紀二が遅刻したことがあることについて何ら正当化する事由とはいえない。
(11) 被告会社の主張1(一)(10)の事実は、これを認めるに足りる的確な証拠がない。
〈書証番号略〉、証人福岡鋭一及び同森泉章の各証言中には右に沿う部分があるが、原告紀二が専ら空き時間を雑誌や新聞を読んで潰していたことについて、時期、回数等明確な記憶に基づくものとはいえず、いずれも信用するに足りない。
また、同原告が国家資格の取得をしていないとしても、同原告の職務に必要な簿記・会計分野の資格は技術的な資格に比較して取得が困難であるから、これをもって自己啓発の努力がなかったとはいえない。
もっとも、前記(3)認定事実から見て、同原告が〈書証番号略〉に見られるような業務に必要な規定や規則をよく読んで勉強していたとの姿勢を一貫して通していたと認めることもできない。
(12) 被告会社の主張1(一)(11)の事実については、原告紀二が社外関係者と電話で話すことが多かった時期があることを明らかに争わないから、右範囲で自白したものとみなす。もっとも、同原告から社外へ頻繁に私用電話をかけたことについては、これを認めるに足りる的確な証拠がない。
〈書証番号略〉及び証人森泉章の証言中には右に沿う部分があるが、私用電話簿等の客観的な裏付けがなく、信用するに足りない。
そして、既に認定したように、同原告は社外活動に熱心に取り組んでおり、また共産党の選挙活動も積極的に行っていたものであるから、同原告に対し、時期によっては社外から頻繁に電話がかかってきたことが推認でき、このような電話も回数、時間によっては職務に差し障りが生ずることも考えられるところ、原告紀二本人尋問の結果によれば、これを社外関係者に電話をしないよう依頼するなどして回避した様子は窺われないものである。
(13)  以上の認定事実によれば、原告紀二は、職務遂行上発揮しうる潜在的能力は有していたものであり、勤務態度上も、被告会社が主張するような業務応援をしない、業務改善提案をしない、突発休が多い、遅刻が常習的であるなどの劣悪な勤務振りであったとは認められず、仮に突発休や遅刻があったとしても、長い勤務生活中には誰にでもある程度のものであったと解するのが相当であり、これらの面については、同原告が社会通念上考えられる平均的な従業員と比較して劣るものではないといって差し支えない。
しかしながら、前記(3)ないし(6)、(12)に認定した事実によれば、同原告に本来の職務におけるミスや職場規律違反があったことが認められ、これらは、被告会社の人事考課上、相当程度不利益な取扱を受けても止むを得ない事由であると認めざるを得ない。
(四) 原告竹内について
(1) 昭和三四年度の県下応募者数、採用者数は、被告会社が明らかに争わないから、これを自白したものとみなし、〈書証番号略〉によれば、原告竹内は、母子家庭であったこと、学生時代成績が良かったこと、入社直後に母親が亡くなって一家の主柱となったことが認められ、よって、請求原因4(一)(7)②(ア)の事実が認められる。
また原告竹内が保育園保護者会、PTAなどの役員を歴任したことは既に認定したとおりであるから、右事情によれば、一般的な能力、人望に大きく欠けるところはなかったものと推認される。
したがって、原告竹内は、職務遂行上発揮しうる潜在的能力を有していたものと認められる。
(2) 〈書証番号略〉を総合すると、請求原因4(一)(7)②(イ)の事実が認められる。
被告会社は、原告竹内の右仕事の成果について、本人が自発的にやったものではないとか、内容的に大したものではないなどと反論し、〈書証番号略〉、証人中西良秀の証言中には右反論に沿う部分があるが、右仕事の成果の内容とその蓄積に鑑みると、原告竹内に有利な点をあえて伏せており、客観性を欠く反論であるといわざるを得ない。
しかし、〈書証番号略〉に見られるような「竹さんは筆頭主任扱いだ。」「主任の人達と比較しても一級主任だよ」などと上司から褒められたことは、〈書証番号略〉の内容から見て有り得ず、他にこれを認めるに足りる証拠ない。
また、〈書証番号略〉は、原告竹内本人の自己評価であって、いずれも客観的かつ正確な内容であるとは認め難い。
(3) 〈書証番号略〉、証人倉科富雄の証言及び〈書証番号略〉によれば、被告会社の主張1(二)(1)のうち、原告竹内が納期管理表の改善を指示どおり行わなかったこと(いつまで遅れたかは右証人の証言はあいまいであり確定できない。)及び納期管理経過について上司に回覧しなかったことが認められる。
〈書証番号略〉、原告竹内本人尋問の結果中、右認定に反する部分は、〈書証番号略〉の様式の「納期・事務工程管理表」が同原告が昭和四四年ころ作成した手書きの様式をもとに作成したものであるとの主張の裏付けとして提出した〈書証番号略〉の作成時期について、「検収予定日」の用語の点から証拠説明を撤回した経過、これにより同原告の右主張を裏付ける客観的証拠がなくなったことなどに照らして信用できない。
(4) 〈書証番号略〉、証人倉科富雄の証言によれば、被告会社の主張1(二)(2)①の事実が認められる。
〈書証番号略〉、原告竹内本人尋問の結果中、右認定に反する部分は、同原告が一年余りで貯蔵品調達業務からはずされた原因について、業務整理のためと主張するが、これを裏付ける客観的な証拠がなく、居眠り等の職務怠慢が理由であったものと推認せざるを得ないから、信用できない。
しかし、同1(二)(2)②の事実については、これを認めるに足りる的確な証拠がない。
〈書証番号略〉には、右事実があった旨の記載があるが、いずれも、時期、頻度等についてあいまいなまま印象を述べてあるに過ぎず、信用するに足りない。
(5) 〈書証番号略〉、証人中西良秀の証言及び〈書証番号略〉、証人倉科富雄及び同大井年男の各証言によれば、被告会社の主張1(二)(3)の事実が認められる。
原告竹内が反論するように、仮に他の従業員の提言や標語のレベルが低いとしても、係長の全員提出の指示に反して提出しなかったり、期限に遅れたり、期限を過ぎてから標語募集の意義について口論したり、前年度と同じ内容の提言を提出したりすることが正当化されるわけではなく、職場の協調性を乱す行為と評価されても止むを得ない。
(6) 〈書証番号略〉、証人大井年男の証言によれば、小諸労音の責任者をしていた原告竹内が小諸労音の印刷物や自己の名刺を被告会社の取引業者である信美堂印刷に市価よりも安く請け負わせたこと、また、小諸労音はしばしばその支払を遅らせ、最終的にも一〇万円余りの回収不能金を出したことが認められる。
しかし、右事実のほか、同原告が被告会社の資材係の優越的立場を利用して便宜を図らせ、また、右関係が昭和四八年秋ころ主任の大井年男や係長の中西良秀に発覚して厳重注意を受けたことは、これを認めるに足りる的確な証拠がない。
証人大井年男の証言中右経過に関する部分の記憶はあいまいであり、仮に原告竹内の優越的立場の利用があれば重大な非違行為ということになり、被告会社の共産党対策からすれば、口頭注意などではなく、当然懲戒処分の対象となるべきところ、このような処分が行われたことはないのであり、また信美堂印刷関係者よるこの点に関する陳述書等による裏付けもない。
(7) 証人中西良秀の証言及び〈書証番号略〉によれば、被告会社の主張1(二)(5)のうち、原告竹内が昭和四八年の物品代支払締切日変更に関する所内稟議手続を行わなかったことが認められるが、その余の事実についてはこれを認めるに足りる的確な証拠がない。
原告竹内本人尋問の結果及び〈書証番号略〉中、右認定に反する部分は、〈書証番号略〉の日付が〈書証番号略〉の日付より早いことから、係長の中西良秀が起案した〈書証番号略〉を同原告が社内連絡用文書として写して〈書証番号略〉を作成したものと見るのが相当であり、信用できない。
また、証人中西良秀の証言及び〈書証番号略〉には、被告会社の主張1(二)(5)のうち、昭和五〇年の物品代計上、支払時の業者内訳表の統一の件に沿う部分があるが、原告竹内本人尋問の結果及び〈書証番号略〉によれば、同原告と中西係長が共同で検討し、同原告がまとめた〈書証番号略〉を中西係長が写して〈書証番号略〉を作成したものと見るのが相当であり、信用するに足りない。
さらに、〈書証番号略〉及び証人中西良秀の証言中には、被告会社の主張1(二)(5)のうち、原告竹内の貯蔵品金額管理月報の記載ミスの件に沿う部分があるが、〈書証番号略〉によれば、他の係員や中西係長自身も単純ミスを訂正印で訂正していたことが認められ、原告竹内に特にミスが多いと認めるに足りる証拠は他にないから、信用するに足りない。
(8) 被告会社の主張1(二)(6)の事実のうち、原告竹内が共産党の宣伝ビラを職場内で数枚配付した事実は当事者間に争いがなく、〈書証番号略〉、証人中西良秀の証言によれば、被告会社の主張1(二)(6)のその余の事実が認められる。
〈書証番号略〉中、右認定に反する部分は、仮に始業時刻前であれば、これを注意した大井主任との間で、時刻の問題について口論になるはずと思われるところ、そのような形跡がないこと、いわゆる企業ぐるみ選挙が問題となっていたとしても、これをもって勤務時間中の政治活動が黙認される職場慣行になっていたとはいえず、同原告の行為を正当化する理由にならないことなどに照らして信用できない。
(9) 被告会社の主張1(二)(7)の事実は、これを認めるに足りる的確な証拠がない。
〈書証番号略〉、証人中西良秀、同倉科富雄及び同大井年男の各証言中には右に沿う部分があるが、出勤簿ないし休務日報等の客観的な証拠による裏付けがなく、いずれも信用するに足りない。
(10) 被告会社の主張1(二)(8)の事実は、これを認めるに足りる的確な証拠がない。
〈書証番号略〉、証人中西良秀及び同倉科富雄の各証言中には右に沿う部分があるが、出勤簿ないし休務日報等の客観的な証拠による裏付けがなく、いずれも信用するに足りない。
(11)  以上の認定事実によれば、原告竹内は、職務遂行上発揮しうる潜在的能力は有していたものであり、また、職務遂行の上でも右能力を生かすよう自己啓発につとめ、自主的に業務改善等を検討、実行したこともあり、勤務態度上も、被告会社が主張するような自席での居眠りが多い、突発休が多い、遅刻が常習的であるなどの劣悪な勤務振りであったとは認められず、仮に突発休や遅刻があったとしても、長い勤務生活中には誰にでもある程度のことと解するのが相当であり、これらの面については、同原告が社会通念上考えられる平均的な従業員と比較して劣るものではなく、かえって、職務についてはある部分で優れたところもあったと評価し得る。
しかしながら、前記(3)ないし(5)、(7)、(8)に認定した事実によれば、同原告には指示された仕事の期限を守らなかったり、自動車同乗中に安全呼唱に協力しなかったり、提言等の提出に関し職場の協調を乱したり、勤務時間中のビラ配付等の職場規律違反があったことが認められ、これらは、被告会社の人事考課上、相当程度不利益な取扱を受けても止むを得ない事由であると認められる。
(五) 原告小俣について
(1) 原告小俣が入社当初島河原寮に入寮したことは当事者間に争いがなく、これによれば、少なくとも出退勤に関しては他の寮生と特に異なる状況ではなかったものと推認することができる。
また、原告小俣が保育園保護者会、PTAなどの役員を歴任したことは既に認定したとおりであるから、右事情によれば、一般的な能力、人望に大きく欠けるところはなかったものと推認される。
したがって、原告小俣は、入社当初の出退勤に特別の事情はなく、また、職務遂行上発揮しうる潜在的能力を有していたものと認められる。
(2) 〈書証番号略〉、原告小俣本人尋問の結果及び〈書証番号略〉を総合すると、原告小俣が保守用技術知識等についてメモ、ノートを作成してきたこと、各種の仕様書や図面を作成してきたことが認められる。
被告会社は、原告小俣の右ノートについて、量が少なく、内容も不十分、不正確である、仕様書や図面については、量が少なく、仕事細目等を詰めた上で指示された内容を図面にしただけであると反論し、〈書証番号略〉には右反論に沿う部分があり、また、確かに大箭英雄作成の保守ノートに比較すると見劣りする部分がないとはいえない。
しかし、原告小俣本人尋問の結果によれば、ノートの量、質については、同原告の作成したノートがこれに尽きるわけではないことが認められるうえ、右大箭が特に優秀な従業員であった可能性を否定できないこと、また、図面等の作成量が少ないこと、仕様細目が既に決まっていたことについては、これを裏付ける客観的証拠がないことなどを考慮すると、原告小俣に有利な点をあえて伏せており、客観性を欠く反論であるといわざるを得ない。
他方、昭和四五年ころ、原告小俣が班長と同等レベル以上の仕事をしていたことまでの事実を認めるに足りる的確な証拠はない。
〈書証番号略〉によっても、班長の仕事のレベルが右各図面作成の域に止まものと認めるには足りないからである。
(3) 〈書証番号略〉、証人林彰茂の証言及び〈書証番号略〉、証人千明秀彦の証言によれば、被告会社の主張1(三)(1)①ないし③の事実が認められる。
〈書証番号略〉、原告小俣本人尋問の結果中、右認定に反する部分は、クロスバー自動交換機の電話番号設定、マイクロ無線機のクライストロンの取替、調整などの作業を同原告がいつどのくらい行ったかの点が明かでないばかりか、〈書証番号略〉、証人千明秀彦の証言及び〈書証番号略〉から認められる自動交換機切替作業内容、EMG再起動作業内容等の客観的事実と相当食い違う説明がなされており、信用することができない。
(4) 被告会社の主張1(三)(2)の事実のうち、原告小俣が昭和五七年七月まで特殊無線技師(多重無線設備)の資格を、昭和六三年四月まで構内交換設備等工事担任者の資格をそれぞれ取得しなかったことは当事者間に争いがなく、右各資格は単独工事に必要であることは弁論の全趣旨から明らかであるから、同原告は、それまで資格の必要のない作業か有資格者の下での補助的作業しかできなかったものと認められる。
反面、同原告が昭和五五年に社内技能認定制度によりA級認定に合格したことは当事者間に争いがない。被告会社は、右制度は全員を合格させるものであり、技術水準は高くないと反論し、〈書証番号略〉には合格者数についてこれに沿う部分があるが、全く意味のない制度を被告会社が実施することは有り得ないから、同原告に右時点で一応の技術水準があったことは否定できない。
(5) 〈書証番号略〉、証人杉本喜八の証言及び〈書証番号略〉、証人千明秀彦の証言によれば、被告会社の主張1(三)(3)①及び②の事実を認めることができる。
しかしながら、右各証拠中、同1(三)(3)③に関する部分は、時間外の業務を指示した経緯があいまいであり、また、宿泊出張の拒否の時期、回数も明確でなく、信用することができない。
かえって、〈書証番号略〉、原告小俣本人尋問の結果及び〈書証番号略〉によれば、同原告が時間外業務の指示に応じたことがあると認められる。被告会社は、残業実績が少ないと反論するが、同原告の残業がこれに尽きるものと認めることはできず、右認定事実に照らしても客観性を欠く反論である。
(6) 被告会社の主張1(三)(4)の事実は、これを認めるに足りる的確な証拠がない。
〈書証番号略〉、証人杉本喜八、同千明秀彦及び同林彰茂の各証言中には右に沿う部分があるが、既に認定した被告会社の共産党対策を主要な部分とする労務対策と千曲川電力所に対する人事考課を利用した対策についての指示を考慮すると、原告小俣の病気欠勤を勤務表に記録させなかったということは考えられないから、同原告の休務が多いことを前提とした回線運用補助への職務変更の理由及び診断書不提出については客観的な証拠による裏付けがなく、休務の際の手続についても時期、頻度が明らかでなく、いずれも信用するに足りない。
もっとも、原告小俣は、昭和四二年から昭和四五年にかけて病気をしたため年次有給休暇の範囲内で休務が多かったことを自認しており、このため保守業務のチーム編成上、支障が生じたことは考えられる。
また、〈書証番号略〉によれば、右の時期に同原告が担当した回線運用業務は、それ自体重要であるにしても、千曲川保修所で必要な業務量は多くはなく、昭和四七年には係自体を廃止したことが認められる。
(7) 被告会社の主張1(三)(5)の事実は、これを認めるに足りる的確な証拠がない。
〈書証番号略〉及び証人千明秀彦の証言中には右に沿う部分があるが、勤務表等の客観的な証拠による裏付けがなく、いずれも信用するに足りない。
(8)  以上の認定事実によれば、原告小俣は、職務遂行上発揮しうる潜在的能力は有していたものであり、また、勤務態度上も、被告会社が主張するような時間外勤務や宿泊出張をしない、突発休が多い、遅刻が常習的であるなどの劣悪な勤務振りであったとは認められず、仮に突発休や遅刻があったとしても、長い勤務生活中には誰にでもある程度のことと解するのが相当であり、これらの面については、同原告が社会通念上考えられる平均的な従業員と比較して劣るものではないと評価できる。
しかしながら、前記(3)及び(4)に認定した事実によれば、同原告がノートやメモをとっていたにしても、業務に必要な設備、機器について知識及び技能習得にやや劣る面があり、業務に必要な資格取得が遅れたことは否定できず、また、同原告が時間外ではあるが緊急の業務指示を拒否したこと、一時期休務が多く、業務上支障を生じたことを併せて考慮すると、これらは、被告会社の人事考課上、相当程度不利益な取扱を受けても止むを得ない事由であると認められる。
(六) 原告春子について
(1) 原告春子の採用状況は、被告会社が明らかに争わないから、これを自白したものとみなし、これによれば、同原告は被告会社の女性従業員定期採用の第一期生であるから、被告会社において相応の期待をしていたことが推認され、請求原因4(一)(7)④(ア)の事実が認められる。
また、同原告が保育園保護者会、PTAなどの役員を歴任したことは既に認定したとおりであるから、右事情によれば、一般的な能力、人望に大きく欠けるところはなかったものと推認される。
したがって、原告春子は、職務遂行上発揮しうる潜在的能力を有していたものと認められる。
(2) 〈書証番号略〉によれば、昭和四四年から昭和四六年ころ、深沢善夫土木係長は、原告春子の真面目で几帳面、かつ積極的な勤務態度を評価していたことが認められる。しかし、〈書証番号略〉は、所報の職員紹介記事であって、通常悪い内容を書かれることはないものであり、〈書証番号略〉は、原告春子本人の自己評価であって、いずれも客観的かつ正確な内容であるとは認め難い。
(3) 被告会社の主張1(四)(1)の事実は、これを認めるに足りる的確な証拠がない。
証人吉田康之の証言及び〈書証番号略〉には、右に沿う部分があるが、客観的な裏付けがなく、また、消耗品補充は資材係に購入伝票を切って請求すべきところを「早く買ってこい。」と言ったなど、事務手続に符合しない部分があり、信用するに足りない。
(4) 〈書証番号略〉、証人吉田康之の証言によれば、昭和三六年から昭和四〇年ころにかけて、千曲川電力所においては大型工事を含めて工事が集中し、土木係の業務は多忙であったこと、吉田康之土木係主任が工事設計書や工事工程表の清書を指示したところ、原告春子がこれを拒否したことがあったことが認められる。
もっとも、右指示を拒否した理由については、同原告が退社が遅くなるのを嫌ったためであると認めるに足りる的確な証拠はなく、〈書証番号略〉、証人吉田康之の証言中、右に沿う部分は、根拠のない憶測であり、信用するに足りない。むしろ、原告春子本人尋問の結果によれば、同原告は、右吉田主任をわがままで協調性がないと見ており、同主任と言い合いをしたことがあると認められるから、同原告が右吉田主任に対し、反抗や嫌悪の態度をとったことがあると推認することができ、これによれば、右拒否の理由は、同原告の右吉田主任に対する個人的感情に基づくものであったと窺われる。
なお、〈書証番号略〉、証人横山泰の証言及び〈書証番号略〉によれば、昭和四六年から昭和五一年ころは、上司や担当者が書類の清書を同原告に依頼することが多く、横山泰土木課長としては、各担当者に仕事を覚えさせる意味でなるべく自分で書くよう指導しなければならなかったほどであることが認められ、同原告の清書依頼に対する拒否は吉田主任時代の一時期に限られていたものと認められる。
原告春子の右行状は、一時期とはいえ、上司に対する個人的な好き嫌いの感情によって業務上の指示に従わなかったのであるから、被告会社の人事考課上、不利益に取り扱われても止むを得ない事由といえる。
(5) 〈書証番号略〉、証人吉田康之の証言によれば、被告会社の主張1(四)(3)の事実が認められる。〈書証番号略〉中、右認定に反する部分は、そのような事実はあるはずがなく、あったとすれば依頼者に何か確かめたいことがあったなどの特別な事情があったはずという、当該文書の件についての確実な記憶に基づくものではなく、また既に認定した原告春子の吉田主任に対する個人的感情に照らすと、信用することができない。
(6) 〈書証番号略〉、証人吉田康之の証言によれば、被告会社の主張1(四)(4)の事実のうち、原告春子が時間中に完成できなかった仕事について、指示者本人に対する報告ないしメモを残すなどの処理をしないことがあったことが認められる。〈書証番号略〉、原告春子本人尋問の結果中、右認定に反する部分は、同原告自身が「主任に頼まれた仕事をたまたま主任がいないので係長に報告しておいたのが伝わらなかったことがあったかも知れない。」と述べていること及び既に認定した原告春子の吉田主任に対する個人的感情に照らして信用できない。
原告春子は、右事態について、主任が職場の同僚に確かめたり、翌朝同原告が出勤したときに確かめればそれで済む問題であると反論するが、指示者本人への報告やメモに比較すれば不確実な方法であることは否定できない。
(7) 被告会社の主張1(四)(5)の事実は、これを認めるに足りる的確な証拠がない。
〈書証番号略〉、証人灘谷和嘉士の証言及び〈書証番号略〉中には右に沿う部分があるが、原告春子が朝遅刻したかどうかは記憶がなく、昼休み後の遅参のみ覚えているなど不自然であり、信用するに足りない。
なお、〈書証番号略〉、原告春子本人尋問の結果によれば、同原告が昼休みに外出して日用品等の家庭の買い物をしたり、社外の習い事に長期間通ったりしたことが認められるが、これらの外出と昼休み後の遅参が必然的な関係に立つわけではない。
(8) 〈書証番号略〉及び弁論の全趣旨によれば、被告会社の主張1(四)(6)のうち、台風や出水時の土木係総出の際に原告春子に時間外勤務を命じられなかったこと、また、同原告から業務協力の申し出がなかったことが認められる。しかし、女性従業員である同原告に深夜勤務になる徹夜勤務を命ずることは法律上できないのであるから、同原告がこのような命令の対象にならないからといって期待感がないとして、そのことのみで格別人事考課上不利益な取扱をするのは相当ではない。もっとも、このような緊急時の対応として課庶務担当者にも可能な補助的作業は考え得るから、自己の担当業務に含まれないから業務協力の申し出をしないことを勤務態度の消極性と解し、あるいは職場の協調に協力しないものとして積極評価しなかったとしても、これを一概に不当とはいえない。
また、被告会社の主張1(四)(6)のうち、予算額算出の繁忙時に原告春子が時間外勤務をしなかったことは、これを認めるに足りる的確な証拠がない。
〈書証番号略〉及び証人灘谷和嘉士の証言中、右に沿う部分は、土木課の予算資料や勤務表などの客観的な裏付けがなく、信用するに足りない。
(9) 〈書証番号略〉及び証人灘谷和嘉士の証言によれば、被告会社の主張1(四)(7)の事実が認められる。
原告春子は、課庶務の業務改善の余地は極めて限られていると反論するが、〈書証番号略〉によれば、同原告は、昭和六三年以降、相当数の業務改善提案を行ったことが認められ、これによれば、業務改善の余地が限られているとはいえない。また、〈書証番号略〉によれば、千曲川電力所全体としても、改善提案等を広く募集してはいたものの提案数自体は多くはなかったことが認められるが、昭和六三年まで一回も業務改善提案を行わなかった以上、同原告が業務改善に消極的であったと評価されたことは止むを得ない。
(10) 原告春子本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、課庶務の本来の業務は比較的単純であり、定型的・補助的であること、一方で、課庶務担当者は右業務以外にも目に見えない雑用があり、かつ、報告書等の清書、図面のコピー、計算チェック、資料作成等の課全般の職務の補助も行う必要があり、無為に過ごす時間がないこと、また、原告春子が時期によっては家事や育児に追われたこともあることが認められる。
右の認定事実と、既に認定したように、同原告が業務改善の提案に消極的であった時期が長いこと、同原告の主張中に「業務に含まれないから問題にならない。」とする論法が目立つことを総合して判断すると、被告主張のように知識や能力を身につけようとする姿勢が皆無とまではいえないにしても、同原告が異動を希望した普通高校卒業者としての事務職本来の職務に相応する積極性にいささか欠ける面があったものと推認することができる。
もっとも、〈書証番号略〉によれば、原告春子は、タイプ、ペン習字などを習い、NHKの文章教室を受講したことが認められ、これらは、被告が主張するように趣味の範囲とはいえないが、職務に発揮しうる能力開発としては、なお潜在的能力のそれに止まるものといわざるを得ない。
また、原告春子本人尋問の結果及び〈書証番号略〉によれば、同原告が工事の精算業務の機械入力のマニュアルを作成したことが認められるが、〈書証番号略〉と比較して右マニュアルの内容を見ると、右作成に要する作業は僅少であり、これを同原告の職務上の成果とまで評価することはできない。
(11) 〈書証番号略〉、証人横山泰の証言によれば、被告会社の主張1(四)(8)の事実が認められる。
(12)  以上の認定事実によれば、原告春子は、職務遂行上発揮しうる潜在的能力は有していたものであり、また、現実の職務遂行上も、課庶務本来の職務である消耗品補充を怠ったことはなく、かつ、勤務態度上も、被告会社が主張するような昼休み後に遅参する、業務繁忙期に時間外勤務をしないなどの劣悪な勤務振りであったとは認められず、前記潜在的能力を伸ばすように一定の自己啓発も行ってきており、これらの面については、同原告が社会通念上考えられる平均的な従業員と比較して劣るものではないと評価できる。
しかしながら、前記(4)ないし(6)、(9)ないし(11)に認定した事実によれば、特定の上司に対する個人的感情から、指示された仕事を拒否したり、仕事の進捗状況の報告を怠ったり、不確実であったり、また、業務改善提案に消極的であったり、職場懇談会で消極的であったり、全体として積極性にいささか欠ける面があったことが認められ、これらは、被告会社の人事考課上、相当程度不利益な取扱を受けても止むを得ない事由であると認められる。
(七) 被告会社の主張2に対する判断
被告会社は、各原告の勤務振りから、原告各自の意思を越えた共通的特徴として、(1)怠業的行為、(2)反抗的行為、(3)協調性の欠如を挙げ、これらが月刊「学習の友」の労働時間についての特徴的な考え方、原告らの社外活動及び民青同盟・共産党活動による肉体的・精神的疲弊並びに共産党の「二つの敵」論によるものであると主張するが、既に(三)ないし(六)において認定したように、各原告について共通的特徴として右(1)及び(3)の事実を認めるに足りる的確な証拠はなく、また、右各事実が認められない以上、被告の主張2(二)、(三)、(五)については、その余の点について判断するまでもなく理由がなく、右(2)については各原告について若干の職場規律違反、上司に対する反抗的態度があったことが認められるが、各原告について認められる他の面の業績及び勤務態度と総合して考慮すると、会社施策に対し全て反対するという意図に基づくものと解するのは相当ではなく、また、各原告について認められる各問題点は、原告各自により、時期、内容がまちまちであるから、共産党の基本的な政策や特定時期の党勢拡大、労働組合運動の階級的民主的強化などの指示に基づくものとは断じ難く、むしろ、原告各自の個人的な問題と解するのが相当である。
したがって、被告会社の主張2については、いずれも理由がない。
(八)  各原告の賃金格差と差別的査定の間の因果関係の存否に対する判断
(1)  ところで、前記のとおり、本件においては、各原告と同学歴・同期入社者の具体的な業績、勤務態度が一切明かでないので、その平均的な従業員と各原告の業績、勤務態度とを直接比較対照することは困難である。しかし、給与、人事資料を一手に握っている被告会社が、これを明らかにしようとしない本件において、直接の比較ができないからといって、その作業を断念することは、公平の観点から相当とはいえない。このような場合には、前記各原告の業績、能力の検討においてみたとおり、社会通念上平均的な従業員を想定し、これを同学歴・同期入社者の平均的従業員とみなし、その業績、勤務態度と比較対照することをもって足りるものと解するのが相当である。なお、右方法は、あくまで「平均的な」従業員を想定することによってするものであるから、格別異常、困難な作業でもなく、結果的に実態と大きく異なる蓋然性は有しないものと思料される。
そして、前記認定によれば、各原告とも、社会通念上想定しうる平均的従業員像と比較して、現に存する賃金格差に相当する程度に労働の質及び量が低いものとは認められないが、反面、右平均的従業員と同等もしくはそれ以上であったと認めることもできず、結局、各原告の実際の業績及び能力の程度は、同学歴・同期入社者の平均的な者には及ばないが、実際に受けた賃金に相応する程度に低いわけではなく、その中間段階のいずれかにあるものと認めるのが相当である。
(2)  これによれば、原告らの賃金格差と差別的査定の間の因果関係に関する主張を全て排斥することはできず、各原告は、実際の業績及び能力に比して、相当に低い職務に位置づけられ、相当に低い賃金を受けているものであるが、既に認定したように被告会社において共産党対策を主要な労務政策としていたこと、千曲川電力所に対し、昇進・昇給面を含めた給与管理、特に人事考課を利用した対策を行うべきことを指示したこと、被告会社は各原告につき、共産党員ないしその支持者であると認定していたことを考慮すると、右のような実際の業績及び能力と被告会社の人事考課の結果に齟齬が生じた理由は、各原告に対する個々の人事考課の偶発的な過誤ではなく、被告会社が各原告の思想、信条を問題とする賃金差別意思に基づいて、各原告に対する評定権者を通じて評定する際に、評定項目が抽象的かつ主観的であることを利用して、実際の業績及び能力に比して、不当に低い職務に位置づけ、同一職務内での昇級もさせず、さらに定昇補正においても低額になるような査定を行ったことにより生じたものと解するのが相当であり、この限度で原告らの因果関係に関する主張は理由がある。
(3)  もっとも、前記認定によれば、各原告について、被告会社の人事考課上、相当程度不利益な取扱を受けても止むを得ない事由も存するから、各原告が実際に受けた賃金と、同学歴・同期入社者の平均賃金との間に存在する格差の全部が被告会社の差別的査定によるものとの推定は破れており、その内には、各原告について正当な人事考課の結果に基づく部分も含まれているとみるべきである。
7 賃金差別額の算定について
原告らは、同学歴・同期入社従業員らの平均賃金を算出し、そこから各原告が実際に受けた賃金を差し引くことによって逸失利益である損害額を算定し得ると主張するので、その当否について判断する。
(一)  平均賃金の主張について
(1)  原告らの平均賃金の主張は、請求原因4(一)(9)記載の計算方法によるものであるところ、既に認定したように、右計算方法の基礎となる統計的数字が東電労組作成の職級実態調査概要並びに賃金実態調査結果等に現れた統計数字であり、右各実態調査が各組合員からの聞き取り等ではなく被告会社の賃金資料等に基づく一応正確なものであり、右の統計数字がない年度については当事者間に争いがない賃上げ妥結率等を利用して計算しているものであるから、これに基づく平均賃金の数字は、統計的に信憑性のあるものと考えられる。
(2)  被告会社は、現実に行われた職務任用の実績についての統計結果は、各原告がそれぞれ平均賃金を受けるべきであったとの根拠にならないと主張するが、原告らは、賃金差別行為による逸失利益を求めているのであるから、仮に差別的査定がなければ平均賃金額を確実に得られたはずであるという点についての立証は不要であり、差別的査定がなければ平均賃金額になるのが通常であること、言い換えればその蓋然性があることの立証で足りると解するのが相当である。
そして、既に認定したように、被告会社の賃金制度は、その主要な部分は、職務、能力、服務対応の職務給制度にあるが、右職務給制度は、定期昇給制度、ベースアップ及び資格制度と併存しており、年功序列的な要素が存在し、かつ、年功序列的な運用がなされており、また、高学歴、高勤続の従業員が能力及び職務熟練の点でそれだけ優れてくることは、一般論として肯定できるから、特段の事情のない限り、特定学歴、特定年次入社の従業員が、その同学歴・同期入社者の平均賃金額を受ける蓋然性は、これを認めることができる。
したがって、原告らが、逸失利益の算定の基礎として(1)の統計的結果を用いることは、合理性があるものと認められる。被告会社が、人事考課を公正に行うならば、特定の従業員が、一定の能力を有し、それを業務に発揮することによって、それに見合う処遇を受け得るという期待利益が生じ、これを法的に保護するべきだからである。
(3)  よって、統計的結果に基づく平均賃金を逸失利益の算定根拠とすることそれ自体に付着する問題点に関する被告会社の主張は理由がない。
統計的結果に従う以上、実際の職級分布、基本給分布が平均値の上下にばらついて存在することは当然有り得ることであるし、これら実際の分布を捨象するところにこそ平均値の意味が存するのである。また、特定入社年次の従業員より勤続年数が長い従業員が、その入社年次の平均値よりも低い職級、低い賃金に分布していることも問題にならない。
また、被告会社に対し、逸失利益の損害賠償を命ずることは、特定の従業員を特定の職級に格付け、又は特定の役職に任命することを義務付けることを意味しないから、職務任用の要件や役職任用の要件を現実に備えているか否かも問題にならない。要は、蓋然性の次元であるから、当該従業員が平均的な業績及び能力であるか否かの問題だけが残るのである。
(二)  損害の認定について
原告らは、請求原因4(一)(9)記載の計算方法により算定した平均賃金と各原告が実際に支払いを受けた賃金の差額が、差別的査定による逸失利益であると主張する。
しかしながら、この理が妥当するのは、右格差の全てが差別的査定に基づくといえる場合だけであり、本件のように差別的査定と正当な査定に基づく部分が競合する場合には、後者の部分を控除しなければならないことはいうまでもないところである。しかして、この点については、本件全証拠によるも、各原告に現に存在する右格差のうち、差別的査定と正当な査定との割合を区別し、あるいはその各部分を特定することは困難であるといわざるを得ない。
原告らは、右格差が損害でないことについては、被告会社が主張立証すべきであると主張する。しかし、この点についてのみ、一般の不法行為の法理を変更すべき理由は見出し難い。
結局、本件においては、差別的査定がなされたことは認められるものの、具体的な損害額を確定することはできないから、賃金差別による差額相当分の損害賠償請求は理由がないというべきである。
なお、このように解した場合、被告会社が原告らや比較対照すべき従業員らの査定結果を記載した書類等の手持証拠を提出開示しない限り、原告らに不可能な立証を強いることになるとの批判がありうると思われるが、この点の不都合は、後記慰藉料請求において考慮することで補わざるを得ないものと解される。
二 被告会社の人権侵害行為について
1 原告らは、被告会社がその労務対策の具体的方策として、共産党員ないしその支持者であると認定した従業員の人権を侵害する意思をもって、各原告に人権侵害行為をしたものと主張するが、個々の行為について、その性質上被告会社がその会社の行為として行ったことが明らかなものを除いては、各原告の上司が行った行為が当然に被告会社の行為となるわけではなく、当該行為が被告会社の加害意思の発現としてなされたという関係が、直接立証されるか、又は行為の内容、侵害の程度などから推認できるという場合でなければ、これを被告会社の人権侵害行為と認定することはできないものと解される。被告会社の行為であることが明らかで、かつ、各店所に対する指示内容から加害意思を明確に認定できた賃金差別の場合と異なり、原告ら主張の人権侵害行為は、時期、内容、程度がまちまちであり、被告会社の労務政策の内容から見て、これら全般について被告会社が明確な加害意思を有していたとまでは認められないからである。以下、右のような観点から、原告らが人権侵害行為として主張する各行為につき検討する。
2  原告二紀関係
(一)(1) 請求原因4(二)(1)①のうち、昭和三六年秋ころ、青島武文労務課副長が原告紀二に対し、同原告主張の内容の言動を行った外形的事実は、〈書証番号略〉、原告紀二本人尋問の結果から認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
(2)  ここで、転向強要について検討すると、被告会社がその従業員の思想、信条を問題にし、その意に反してこれを変えることを強暴又は公然の方法により行う場合、例えば上司が従業員本人に対する強い利益誘導ないし害悪の告知により行う場合はもちろん、従業員の友人、保護者、保証人を通じて行う場合も、事情によっては、その人間関係による当該従業員に対する強い規制力を期待できることがあり、このような内容、程度、方法にわたるものは、被告会社の一方的行為により従業員の思想、信条の自由をみだりに侵害する転向強要ということができる。
しかし、右の内容、程度、方法にわたることなく、上司が参考意見として自己の見解を述べ、再検討を促すに止まる行為は、従業員が会社内で政治的思想、信条の自由を有し、就業規則等に触れない一定の範囲で、その内容の表明、教育宣伝ないし政党の党員募集などの対外的活動の自由を有するのと同様に社会的に許される相当な行為といわざるを得ない。
もっとも、被告会社は、既に認定したとおり、その労務対策の具体的内容として、共産党員ないしその支持者に対する転向を促し、従業員の友人、保護者、保証人を通じて説得工作を行うべきことを各店所に指示していたものであるから、本人の意に反して行われる可能性も高く、上司などが行う右工作の内容、程度、方法によっては、人権侵害行為としての転向強要になるおそれも高いものと解される。
(3) 右(1)認定の外形的事実は、その意味で問題がないわけではないが、〈書証番号略〉のその余の内容に照らして考慮すると、未だ社会的に許容し得る限界を越えた転向強要の内容、程度にまでは至っていないもの解とするのが相当である。
(二)(1) 請求原因4(二)(1)②のうち、昭和三六年一一月ころ、田村和彦総務課長が、同原告に対し、同月八日付け青婦ニュースNo.3に同原告が執筆した記事について抗議したことは、当事者間に争いがない。
(2) ところで、〈書証番号略〉、証人田村和彦の証言によれば、右記事の記載内容である独身寮賄婦の退職問題は、いわゆる首切り問題という性質のものではなかったこと、青年婦人部としても被告会社に抗議を申し入れたものの、事実関係を確認のうえ、右記事を削除するに至ったことが認められ、これらの事情によれば、前記抗議は、総務課長の原告紀二に対する個人攻撃ではなかったものと推認することができる。
〈書証番号略〉、証人松田英孝の証言、原告紀二本人尋問の結果中、請求原因4(二)(1)②のうち、その余の脅迫的言辞について沿う部分は、右認定の事情に照らして信用できない。
(3) したがって、前記争いのない事実が、原告紀二の思想、信条を問題とした個人攻撃であるか否かについて判断するまでもなく、人権侵害行為に当たらないことは明らかである。
(三)(1) 請求原因4(二)(1)③のうち、昭和三七年ころ、田村和彦総務課長が原告紀二の実家を訪ねたことは、当事者間に争いがない。
(2) 同総務課長がそこで原告紀二の母志げ子に話した内容は、〈書証番号略〉、証人松田英孝の証言、原告紀二本人尋問の結果によれば、多少の文言の相違はあっても、原告紀二主張の内容の趣旨のものであったと認められる。
〈書証番号略〉、証人田村和彦及び同内山繁樹の各証言中、右認定に反する部分は、証人田村和彦の記憶があいまいであること、〈書証番号略〉から認定できる組合支部の右問題の取上げ方や組合役員による調査の結果、事実関係を確定できないという結論に達したことなどに照らして信用できない。
(3) 同総務課長がわざわざ原告紀二の実家に出かけて右のような発言をしたのは、直接同原告に前記話をした後のことであって、同原告の意に反するものであることは容易に推察し得るところであるから、既に転向強要について検討した内容に照らして、被告会社の行為として、同原告の思想、信条の自由をみだりに侵害する行為であると認められる。
(四)(1) 請求原因4(二)(1)④(ア)のうち、田村和彦総務課長が昭和三七年ころ、原告春子の実家を訪ねたことは、当事者間に争いがない。
(2) 〈書証番号略〉、原告春子本人尋問の結果、前記(三)(2)に掲げた各証拠を総合すると、同総務課長がそこで話した内容は、多少の文言の相違はあっても、原告紀二主張の内容の趣旨のものであったと認められる。
〈書証番号略〉、証人田村和彦及び同内山繁樹の各証言中、右認定に反する部分が信用できないことは、前記(三)(2)と同様である。
(3) 同総務課長がわざわざ原告春子の実家に出かけて右のような発言をしたことは、従業員の私生活に対する重大な干渉であるばかりでなく、右発言の趣旨から、被告会社が原告紀二は同春子を共産党の活動に誘いこむために同原告と交際しているものと見做していたことが窺われるから、被告会社の行為として、原告らの思想、信条の自由をみだりに侵害する行為であると認められる。
(4) 請求原因4(二)(1)④(イ)の外形的事実は、当事者間に争いがない。しかし、弁論の全趣旨から、原告紀二の上司は全員出席していること、原告春子本人尋問の結果から同原告の職場の同僚である加藤絢子の結婚式も近かったことも認められ、これらの事実に照らして、他店所において共産党員ないしその支持者と認定された従業員の結婚披露宴への出席に被告会社が介入する働きかけを行った例があることを考慮しても、なお被告会社の行為として原告紀二ないし同春子の思想、信条を理由とする、私生活である結婚披露宴への干渉を行ったものと認めることはできない。
(五)(1) 請求原因4(二)(1)⑤(ア)ないし(ウ)の事実のうち、前記「恋愛干渉問題」が組合で取り上げられた昭和三七年八月ころ、被告会社が原告紀二に対し千曲川保修所への異動を発令したこと、右異動に関し、東電労組千曲川支部と千曲川電力所との間で交渉が行われたこと、同原告が最終的に配転辞令に同意したこと、同原告が右配転以来三一年余り千曲川保修所の一般事務を担当していることは、当事者間に争いがない。
(2) 右配転が不当配転であるか否かを検討すると、〈書証番号略〉、証人内山繁樹の証言によれば、被告会社は、東電労組千曲川支部との協定に基づき、千曲川保修所に事務担当者一名を配置する業務上の必要があったこと、当時、原告紀二が該当職級者であり、労務関係の事務を担当できる従業員であったことが認められ、また、弁論の全趣旨によれば、千曲川保修所は千曲川電力所本部と車で五、六分、徒歩で二〇分程度の距離であり、同原告以外にも千曲川保修所で組合支部や青年婦人部などで活動していた従業員はいたことが認められるから、配転時期の問題も、必ずしも前記「恋愛干渉問題」の鎮静化を目的としたものとはいえない。
したがって、既に認定したように、被告会社が共産党・民青同盟対策として、活動家を影響力の少ない事業所へ配転することを具体的対策として各店所に指示していたにしても、右配転自体がこれに基づくものであると認めるに足りる証拠はなく、被告会社が同原告の思想、信条を理由として、人事考課に基づく異動権限を濫用して不当に行ったものとはいえないというべきである。
(3) 右配転の際の労使交渉の結果については、〈書証番号略〉、証人田村和彦及び同内山繁樹の証言によれば、原告紀二の事務職復帰について、組合主張に沿って、常識的な線で努力する旨の合意が成立したものと認められ、〈書証番号略〉中、右認定に反する部分は信用できない。
ところで、右常識的な線の内容について、〈書証番号略〉、原告紀二本人尋問の結果及び〈書証番号略〉、証人松田英孝の証言中には、これを二、三年内に復帰させることとする部分があるが、このような場合に会社が期限を切ったり、具体的な言質を与えることは通常考えられないことに照らして、右各証拠は信用するに足りず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
したがって、被告会社が、原告紀二主張の右二、三年ないし上限としての五、六年を越えて異動を行わなかったとしても、そのことだけでは直ちに不当とはいえない。
(4) 原告紀二本人尋問の結果によれば、同原告は、昭和四三年以降、千曲川保修所長に対し、千曲川電力所の事務職へ戻すよう要求したことが認められるが、〈書証番号略〉、証人福岡鋭一の証言によれば、同原告は、自己管理表や人物所見表を通じて、千曲川電力所管外への転勤意思がないことを表明しており、これによれば、被告会社としては、本人の意向に反する管外転勤を強行するよりは原職に留めることを選択するのは止むを得ないから、同原告の要求どおりの異動を行わなかったとしても、そのことだけでは直ちに不当とはいえない。
なお、同原告が三一年余り千曲川保修所の一般事務を担当していることによって、昇級等の面で不利益を被ったことは弁論の全趣旨から認められるが、この点については、既に賃金差別の項で検討ずみである。
(六) 請求原因4(二)(1)⑥(ア)及び(イ)の各外形的事実は当事者間に争いがないが、被告会社があえて原告紀二を中堅社員研修及び会社費用での自動車運転免許取得から排除したと認めるに足りる的確な証拠がないから、被告会社が同原告の研修受講希望や会社費用での運転免許取得申請に応じなかったとしても、それだけでは不当な差別であるとはいえない。
(七) 請求原因4(二)(1)⑦の事実は、〈書証番号略〉、原告紀二及び同春子各本人尋問の結果によれば、これを認めることができる。
被告会社は、もともと原告紀二による社宅入居申請自体がなく、この時期に申請をするのは同原告の長女が生まれた時期や同原告及び原告春子の免許取得時期から不自然であるなどと反論するが、乳児期はともかく、子供の成長に伴って住宅の狭さを感ずるのは特に不自然ではなく、原告春子の通勤と運転免許取得時期の関係も、右(六)で認定したように、原告紀二が会社費用での運転免許取得申請をしていたことから、これの認可を容易にするために通勤の不便な社宅への入居を申請することは考え得ることであり、被告会社の反論は理由がない。
被告会社が、原告紀二及び同春子夫婦の社宅入居を拒否した理由は、被告会社が独身寮対策を講じたのと同様、会社施設での共産党・民青同盟の活動を嫌悪したこと以外に考えられる合理的な理由がなく、また、千曲川電力所において、同時期に原告小俣が社宅入居拒否を受けたほかは従業員の社宅入居を拒否した例がないことが窺われることを考慮すると、原告紀二及び同春子夫婦の思想、信条を理由とする差別的取扱であるといわざるを得ない。
(八) 請求原因4(二)(1)⑧の外形的事実は、当事者間に争いがない。
右安全月例会における森泉章保修所長、大森弘係長及び原告紀二の発言内容は、〈書証番号略〉により認めることができるが、右発言内容からは、被告会社が同原告の思想、信条の自由をみだりに侵害する意思で、大勢の力で同原告を封じ込め、その行為を誹謗中傷したとはいえない。右大森係長が東京での日本共産党電力委員会名のチラシ配付を引き合いに出したとしても、これにより同原告の思想、信条を問題にしたものとは認め難く、また、同原告も、所長や係長に対し、いわば言いたいことを言って終わっており、同原告の発言が制限された形跡は窺われないからである。
3  原告竹内関係
(一) 請求原因4(二)(2)①(ア)の外形的事実は、当事者間に争いがない。
しかし、(ア)については、賃金差別の項で検討ずみである。
(イ)については、被告会社があえて原告竹内を業務外の役職、飲み会、レクから排除したと認めるに足りる的確な証拠がなく、(ウ)については、被告会社が原告竹内の結婚披露宴に介入したのであれば、経理課長が出席し、直属上司が欠席するというのは不合理であり、いずれの事実についても、被告会社が同原告の思想、信条を理由として差別的取扱をしたことによるものとはいえない。
(二) 請求原因4(二)(2)②の外形的事実は、当事者間に争いがないが、被告会社があえて原告竹内を中堅社員研修その他の研修から排除したと認めるに足りる的確な証拠がなく、また、同原告に対し、納期管理業務に関する研修を受講させたことから考えても、右外形的事実だけでは不当な差別であるとはいえない。
(三) 請求原因4(二)(2)③(ア)及び(イ)の外形的事実は、当事者間に争いがないが、被告会社があえて原告竹内を会社費用での自動車運転免許取得及び車両運転技能認定から排除したと認めるに足りる的確な証拠がないから、被告会社が同原告の会社費用での運転免許取得申請や運転技能認定の受検申請に応じなかったとしても、それだけでは不当な差別であるとはいえない。
(四)(1) 請求原因4(二)(2)④(ア)のうち、昭和三六年一二月ころ、小林清発送電課主任が原告竹内に対し、同原告主張の内容の言動を行った外形的事実は、〈書証番号略〉から認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
しかし、右認定の外形的事実は、右〈書証番号略〉のその余の内容に照らして考慮すると、未だ前示の転向強要の内容、程度に至っていないものと解するのが相当である。
(2) 請求原因4(二)(2)④(イ)ないし(カ)の各事実は、これを認めるに足りる的確な証拠がない。
〈書証番号略〉、原告竹内本人尋問の結果中、右各事実に沿う部分は、これを裏付ける他の証拠が全くないことに照らして信用できない。なお、仮に右事実が認められたとしても、その文言に照らし、未だ違法な転向強要の程度に至っているとは解し難い。
4  原告小俣関係
(一)(1) 請求原因4(二)(3)①のうち、昭和三九年三月ころ、木暮通信所長が原告小俣の父親と東京で会ったことは、当事者間に争いがない。
(2) 同所長がそこで話した内容は、〈書証番号略〉、原告小俣本人尋問の結果及び〈書証番号略〉によれば、多少の文言の相違はあっても、原告小俣主張の内容の趣旨のものであったと認められる。
〈書証番号略〉中、右認定に反する部分は、原告小俣の所属長である通信所長が東京まで出かけて行って、同原告の父親と同原告の近況程度の世間話をしてくるというのは不合理であり、信用できない。
(3) 同通信所長がわざわざ原告小俣の父親と会って、右認定のような発言をしたことは、既に転向強要について検討した内容に照らして、被告会社の行為として、同原告の思想、信条の自由をみだりに侵害する違法な行為であると認められる。
(二)(1) 〈書証番号略〉の成立について
〈書証番号略〉、原告小俣本人尋問の結果によれば、〈書証番号略〉は、昭和四二年六月二七日に同原告が、被告会社の定型様式の社宅申込書(同書証がこの様式のものであることについて当事者間に争いはない。)に記入して、提出し、杉本喜八通信所長が認印を押し、その後申込み時の職場である同通信所に保管されていたが、昭和五三年の島河原通信所統廃合の際に廃棄され、同原告が廃棄書類の中から〈書証番号略〉とともにこれを見つけ、拾得したものと認められ、右認定を覆すに足りる的確な証拠はない。
〈書証番号略〉中、右認定に反する部分は、被告会社において、社宅入居申込手続は口頭申込、労務課への入居の可否確認、内諾が申込書作成に先行する、また、所轄社宅を所有する事業所では申込書は一部作成で足りるなどと説明するものであるが、〈書証番号略〉の規定内容や、定型様式の社宅申込書に不動文字で印刷されている「提出部数二部」部分と異なる事務手続が行われているのであれば、これを客観的に裏付ける事務手続内規等が当然あるはずであるのに、陳述書による説明しかなされていないことに照らして、前記手続に関する説明は信用できず、右手続を前提とする前記各陳述内容も信用できないものであり、また、原告小俣が杉本所長の認印を盗用してまで社宅申込の外形を作出する必要があるとはおよそ考えられない。
(2) 請求原因4(二)(3)②の事実は、〈書証番号略〉から認められ、右認定を覆すに足りる的確な証拠はない。
〈書証番号略〉、証人杉本喜八の証言中、右認定に反する部分は、〈書証番号略〉の存在にも関わらず、原告小俣による社宅入居申込申請がなかったという点で信用できず、また、祖父の看病の手伝いや妻の実家での共同保育という同原告の家庭の事情及び同原告が当時小諸市内での民青同盟活動の中心であったという事情があったにせよ、同原告が社宅入居申込申請をした事実には疑いがないことに照らして、杉本所長が昭和四一年七月及び昭和四二年五月の二回にわたって同原告に対し社宅入居を勧めたが断られたという事実は、これを認めることができない。
(3) 被告会社が、原告小俣の社宅入居を拒否した理由は、被告会社が独身寮対策を講じたのと同様、会社施設での民青同盟の活動を嫌悪したこと以外に考えられる合理的な理由がなく、また、千曲川電力所において、同時期に原告紀二及び同春子夫婦が社宅入居拒否を受けたほかは従業員の社宅入居を拒否した例がないことが窺われることを考慮すると、その思想、信条を理由とする差別的取扱であるといわざるを得ない。
(三)(1) 請求原因4(二)(3)③(ア)及び(イ)のうち、昭和四三年ころ、二回にわたって杉本所長が原告小俣の自宅を訪れたことは、当事者間に争いがない。
(2) 同所長がそこで話した内容は、〈書証番号略〉、原告小俣本人尋問の結果及び〈書証番号略〉によれば、多少の文言の相違はあっても、原告小俣主張の内容の趣旨のものであったと認められる。
〈書証番号略〉、証人杉本喜八の証言中、右認定に反する部分は、陳述内容が単にそのようなことがあるはずがないというに止まること、同証人の証言が全般的に客観的事実に反することを記憶のみに基づいて断言する傾向があることに照らして信用できない。
(3) 同所長が、原告小俣が病気で寝込んでおり、弱気になっているところを狙い、かつ、同原告の妻をも巻き込んで、右のような発言をしたことは、既に転向強要について検討した内容に照らして、被告会社の行為として、同原告の思想、信条の自由をみだりに侵害する行為であると認められる。
(4) 請求原因4(二)(3)③(ウ)の事実は、これを認めるに足りる的確な証拠がない。
〈書証番号略〉中、これに沿う部分は、これを裏付ける他の証拠が全くないことに照らして信用できない。
(四) 請求原因4(二)(3)④のうち、被告会社が原告小俣に特殊無線技師(多重無線設備)の国家試験のための研修を受講させなかった事実は、当事者間に争いがない。
しかし、右研修を年功順に受講する慣行になっていたことは、これを認めるに足りる的確な証拠がない。
〈書証番号略〉中、右慣行に沿う部分は、客観的な裏付けがなく、信用できない。
また、〈書証番号略〉によれば、同原告は、入社以来、多数回にわたって技術的な研修、講習会、説明会等を受講したことが認められる。
以上によれば、被告会社が原告小俣を特殊無線技師(多重無線設備)の国家試験のための研修その他の技術的な研修から排除したと認めるに足りる的確な証拠がなく、不当な差別があったとは認められない。
5  原告春子関係
(一)(1) 請求原因4(二)(4)①のうち、昭和三七年四月、被告会社が原告春子に対し総務課から土木課への異動を発令したこと及びその後異動がなく、同原告が右配転以来三一年余り千曲川電力所土木課課庶務を担当していることは、当事者間に争いがない。
(2) 右配転自体が不当であるか否かを検討すると、既に認定したように、原告春子は、昭和三六年六月ころ、民青同盟に加盟し、同年一〇月ころ、共産党に入党したものであり、当時、原告紀二と交際しており、同年一〇月五日、労務課から総務課へ配転になったものであるが、原告春子が主張するように、右配転が、被告会社が前記事実を察知して、同原告を原告紀二から切離し、田村和彦総務課長の下で監視しようとしたものであると認めるに足りる的確な証拠はないことに照らすと、既に認定したように被告会社が共産党・民青同盟対策として活動家を影響力の少ない事業所へ配転することを具体的対策として各店所に指示していた事実があるにしても、昭和三七年四月の総務課から土木課への配転自体が、被告会社が原告春子による総務課女性従業員への民青同盟加盟の働きかけを察知して、これを嫌悪して行ったと認めるには足りず、また、総務課から土木課への異動は、同じ建屋内の一階から二階へ移るのみであることに照らして、被告会社が同原告の思想、信条を理由として、人事考課に基づく異動権限を濫用して不当に行ったものとはいえないというべきである。
(3) 既に賃金差別の項で認定したように、原告春子は、普通高校卒業者としての事務職本来の職務への異動を希望していたものであるが、同項で認定したように、同原告には、右のような職務に相応する積極性にいささか欠ける面があったから、被告会社としては、同原告が共働きであり、家事や三人の子の育児が必要であることを考慮して、同原告を定型的・補助的業務である課庶務に留めたことは、ある意味で止むを得ないといえるのであり、同原告の要求どおりの異動を行わなかったとしても、それだけでは不当とはいえない。
なお、同原告が三一年余り課庶務を担当していることによって、昇級等の面で不利益を被ったことは弁論の全趣旨から認められるが、この点については、既に賃金差別の項で検討ずみである。
(二) 請求原因4(二)(4)②(ア)ないし(ウ)の各事実は、これ認めるに足りる的確な証拠がない。
〈書証番号略〉中、右各事実に沿う部分は、これを裏付ける他の証拠がないことに照らして信用できない。
(三) 請求原因4(二)(4)③及び④の事実は、同4(二)(1)④(ア)(イ)及び⑦と同旨であり、既に認定したように、同4(二)(1)④(イ)の事実を除き、これを認めることができる。
(四) 請求原因4(二)(4)⑤のうち、被告会社が原告春子に対し、ゼロックス研修を受講させなかったことは当事者間に争いがない。
しかし、右研修を課庶務担当の女性従業員が順次受講することになっていたことは、これを認めるに足りる的確な証拠がない。
〈書証番号略〉中、右に沿う部分は、客観的な裏付けがなく、信用できない。
また、同原告が、中堅社員研修、原子力研修、ワープロ研修及び全員対象の研修については、これを受講したことは当事者間に争いがなく、かつ、弁論の全趣旨によれば、「原子力発電所見学と地域対応の向上研修」及びOA研修も受講したことが認められる。
さらに、〈書証番号略〉、原告春子本人尋問の結果によれば、原告が受講した宅地建物取引主任者講座の通信教育費用を被告会社が負担したことが認められる。
以上によれば、被告会社が原告春子を業務及び将来の職務に必要な研修から排除したと認めるに足りず、不当な差別があったとは認められない。
(五)(1) 〈書証番号略〉によれば、請求原因4(二)(4)⑥(ア)の外形的事実が認められる。
しかし、右外形的事実だけでは、どのような経緯で高橋コーディネーターが同原告の社外での行動を知ったのか明かでなく、これだけでは、被告会社が原告春子の思想、信条を問題として会社外での行動を監視し、また、社外での政治活動を規制することにより同原告の思想、信条の自由をみだりに侵害したものと推認することはできず、他にこれを認めるに足りる的確な証拠はない。
(2) 請求原因4(二)(4)⑥(イ)の事実は、これを認めるに足りる的確な証拠がない。
〈書証番号略〉中、右事実に沿う部分は、〈書証番号略〉、証人横山泰の証言から、同原告と今井千恵子が相当親しく付き合っていたことが認められることに照らして信用できない。
(3) 請求原因4(二)(4)⑥(ウ)の事実は、これを認めるに足りる的確な証拠がない。
〈書証番号略〉、原告春子本人尋問の結果中、右事実に沿う部分は、〈書証番号略〉、証人横山泰の証言の各内容に照らして信用できない。
(4) 請求原因4(二)(4)⑥(エ)のうち、昭和五七年五月ころ、「所報千曲川」の職員紹介記事に原告春子主張の職員紹介記事が掲載されたことは〈書証番号略〉により、これを認めることができる。
しかし、被告会社が原告春子の思想、信条を理由とする差別的取扱として、千曲川電力所総務課を通じ、わざわざ職員紹介記事を不自然な形に削除するというのは不合理であり、これを認めることはできない。
(5) 請求原因4(二)(4)⑥(オ)の事実は、これを認めるに足りる的確な証拠がない。
〈書証番号略〉中、右事実に沿う部分は、客観的な裏付けがなく、また、原告春子本人尋問の結果から認められる同原告の休暇申請の際の対応とも食い違いがあり、信用できない。
(6) 請求原因4(二)(4)⑥(カ)の外形的事実は当事者間に争いがない。
しかし、被告会社が原告春子の思想、信条を理由とする差別的取扱として、新社屋落成式の接待係とした女性従業員の役割分担にまであえて介入するというのは不合理であり、これを認めることはできない。
三 被告会社の行為の違法性についての判断
1 憲法一四条は、思想、信条による差別待遇を禁止し、同法一九条は、思想の自由を侵害することを禁止し、同法二一条は、言論等一切の表現の自由を保障しているが、右各規定は、もっぱら国又は公共団体と個人との間の関係を規律するものであって、私人相互の関係を直接規律するものではないと解されるから、私人間において、思想、信条に基づく差別がなされ、あるいは思想の自由が侵害されても、直ちに右各規定を適用ないし類推適用することはできない。
2 労働基準法三条は、使用者による労働者の信条等を理由とする賃金、労働時間その他の労働条件について差別的取扱をすることを禁止している。右規定にいう信条には、特定の政治的信条が含まれることに疑いの余地がなく、また、政治的信条は、政治的基本理念のみならず、政治そのものの性質からして当然に具体的な政治の方向について実践的な志向を有するものであるから、右政治的信条には、かような志向を有する政治的意見も含まれるものと解される。そして、右規定にいうその他の労働条件とは、要するに職場における労働者の待遇の一切をいうものと解するのが相当である。
右労働基準法三条は、憲法一四条の理念を労働関係において具体化したものであり、その違反に対する罰則規定が存するから、強行法規性を有する。
3 〈書証番号略〉によれば、被告会社と東電労組の間で締結された労働協約六条には、被告会社は、従業員に対し、政治的信条等を理由として差別待遇をしない旨定められており、さらに、同協約二五条には、賃金については、六条に定めた均等待遇の原則による旨確認しており、しかも、同協約二条二項でユニオン・ショップ制を採用しているから、右協約は、原則として全従業員に適用されるものと認められる。
右認定によれば、被告会社は、従業員の賃金その他の労働条件について、政治的信条等による差別待遇をしてはならない労働協約上の義務を負うものである。
4 以上の労働基準法三条の強行法規性、ユニオン・ショップ制の労働協約上の義務に鑑みれば、均等待遇の原則を全従業員に宣明している企業においては、経営秩序の維持、生産性向上を目的とするなど、私企業の性質上合理的理由のある場合を除いて、その優越的地位を利用してみだりに労働者の思想、信条を理由とする差別的待遇を行い、あるいはその思想、信条の自由を直接間接に侵すことがあってはならないのであり、右経営秩序の維持、生産性向上を目的として労働者の思想、信条の自由を制約する場合においても、これらを阻害する抽象的危険では足りず、労働者の特定の思想、信条が原因となって、当該企業の経営秩序、生産性が阻害される現実的かつ具体的な危険が認められる場合に限定されるとともに、その手段、方法において相当であることを要するものと考えられる。
5 ところで、右差別待遇禁止の原則から、抽象的には、被告会社の従業員は、その思想、信条を理由とする賃金その他労働条件について差別的取扱を受けない権利及び他の従業員と同様に昇進、昇格していく期待利益を有するといえるが、右権利ないし利益が、直ちに原告らの被告会社に対する賃金差額請求を基礎づけるほど強度の権利性を有するものであるかは問題であり、そのように直接的かつ具体的な権利にまで高められた性質を有するものであるか否かは、各原告と被告会社との間の雇用契約に則してその内容を検討する必要がある。
被告会社の従業員が、雇用契約に基づいて具体的に取得する賃金、昇進、昇格に関する権利ないし利益は、被告会社がその人事諸制度を個々の従業員に適用することによって生ずるが、賃金決定の主たる要素である職務任用、人事考課、資格の格付け及び役職への任用のいずれについても、被告会社の業務運営の必要性の観点並びに経営上及び人事管理上の判断に由来する被告会社の裁量権に委ねられているものと解するのが相当である。そして、右裁量の余地は、被告会社が私企業であることから国又は公共団体におけるそれよりは大きいが、被告会社の公益企業性及び企業規模からくる制約、被告会社の人事諸制度において個々の従業員の業績及び能力を処遇に反映させる建前(むしろ、右を適切に反映させることが企業経営の合理性追求に資するといえる。)並びに前記差別待遇禁止の原則の趣旨による限定を受け、全くの自由裁量とはいえないものであり、したがって、被告会社としては右裁量権を公正に行使するべきであり、被告会社の従業員も右公正な行使を期待してよいものと解する。
以上によれば、被告会社の従業員は、被告会社の公正な裁量権行使を期待し得る限度において、雇用契約に則して、その思想、信条を理由とする賃金その他労働条件について差別的取扱を受けない権利及び同程度の業績及び能力を有する他の従業員と同様に昇進、昇格していく期待利益を直接的かつ具体的に有するものというべく、これが法的保護に値することは明白である。
6 本件について検討すると、既に認定したように、被告会社は、共産党対策をその労務政策の主なものとし、共産党員に対する賃金差別意思をもって各原告が共産党員ないしその支持者であるとの認定の下に、その人事諸制度の適用を通じて差別的査定を行い、これと一定の因果関係を有する著しい格差のある賃金を支払ってきたものであるから、その裁量権を濫用して、各原告の思想、信条を理由とする賃金その他の労働条件について差別的取扱を受けない権利及び同程度の業績及び能力を有する他の従業員と同様に昇進、昇格していく期待利益を侵害し、また、前記認定の各行為(原告紀二について理由第二の二2(三)、(四)、(七)、原告小俣について同第二の二4(一)ないし(三)、原告春子について同第二の二5(三))により直接に当該原告の思想、信条の自由をみだりに侵害し、又は賃金以外の労働条件について差別的待遇を行ったものであるから、これらの行為は、前記4の差別待遇禁止の原則に反して違法性を帯び、不法行為を構成するものというべきである。
7 なお、被告会社においては、電産争議時代に混乱・異常事態が発生したこと、昭和三五年ころから昭和四〇年ころまで、神奈川県下の各事業所や山梨支店において、被告会社認定にかかる不都合行為が頻発したこと、モラル・サーベイの結果により被告会社の労務管理不在が明らかになったこと、独身寮で問題行為が頻発したことなどにより、被告会社の公益事業としての使命及び破壊活動に対する企業防衛の観点から、共産党及び共産党員もしくはその支持者、民青同盟員等に対する相応の関心を抱き、警戒することは止むを得なかったと被告会社は主張するが、本件の全証拠によっても、被告会社主張の共産党による会社敵視の煽動、規律紊乱行為、業務阻害行為などと原告らを直接関連づけるものは何ら見出すことができない。
まして、先に説示したとおり、労働者の思想、信条の自由に対する制約は、経営秩序、生産性が阻害される現実かつ具体的な危険が認められる場合にのみ許されるものであるところ、原告らによる右危険が現実的、具体的になったことを首肯せしめるに足りる証拠はない。かえって、千曲川電力所で被告会社主張の不都合行為が発生しなかったことは被告会社も自認するところであるが、これによっても、被告会社主張の危険を原告らと結びつけて考えたのは情勢分析に欠けるところがあったといわざるを得ない。
また、被告会社がとった手段、方法においても、直接に当該原告の思想、信条の自由を侵害し、あるいは、懲戒制度等の本来の手段を用いずに、雇用契約に基づく人事諸制度の適用を通じ、原告らの思想、信条を理由として賃金その他労働条件について差別的取扱を受けない権利及び同程度の業績及び能力を有する他の従業員と同様に昇進、昇格していく期待利益を侵害したものであって、相当でなく、これを肯認することはできない。
第三  消滅時効の抗弁について
一  抗弁1については、前記のとおり、原告らの求める賃金差別による差額相当分の損害賠償請求はこれを認容しないから判断の必要がない。
二  抗弁2について判断する。
被告会社が行ったと認められる人権侵害行為は、原告紀二について理由第二の二2(三)、(四)、(七)、原告小俣について同第二の二4(一)ないし(三)、原告春子について同第二の二5(三)の各事実であるが、これらは、いずれも昭和四八年一〇月一二日以前の行為であるところ、右各行為から三年以上経過していること、被告会社が本訴において右時効を援用したことは、当裁判所に顕著である。
三  消滅時効の抗弁に対する反論について判断する。
被告会社が各原告に対して行ってきた個々の差別的査定及びこれに基づく差別賃金の支払並びに人権侵害行為が、被告会社の共産党対策を主柱とする労務政策に基づいて、被告会社から共産党員を駆逐し、あるいはその勢力を抑制するという単一の意思の下に行われてきたであろうことは、既に認定した各事実により明らかであるが、人権侵害行為については、原告竹内を除く各原告(以下「当該各原告」という。)に精神的苦痛を与える原因となった右加害行為は、行為態様が様々であり、かつ、時間的にも継続性が認められないから、継続的行為ではなく、被告会社による個別の行為であり、当該各原告の精神的苦痛もその都度新たに発生するというべきであるから、当該各原告が損害及び加害者を知った時から消滅時効が進行を開始すると解するのが相当である。
そして、前記認定の各人権侵害行為は、いずれも、行為と同時に当該各原告が精神的苦痛を感じ、かつ加害者が被告会社であることを認識できる性質のものであるから、消滅時効期間が経過していることは明らかである。
四  したがって、右抗弁2は理由がある。
第四  再抗弁について
原告ら主張の、被告会社相手の訴訟を東電労組の右傾化の中で提起することの困難性、立証準備の困難性は、個別的に見ても、総合して見ても、もっぱら原告ら側の事情に終始するものであるから、被告会社の消滅時効の援用が権利濫用となる基礎事実となるものと解することはできない。
二 なお、本件全証拠を検討しても、被告会社による本件時効の援用を権利濫用であると認めるに足りる事情は認められないから、原告らの再抗弁は、採用することができない。
第五 損害額について
一 前述のように、各原告の本訴請求のうち、賃金差別による差額相当分の損害賠償請求は、その全てが被告会社の差別的査定によるものではないと認められるところ、正当な査定による差額を控除して具体的な損害額を確定することができないから認められず、当該各原告の人権侵害行為に基づく慰藉料請求も、消滅時効が完成していることから、認められないものである。
二 ところで、被告会社は、各原告が共産党員ないしその支持者であるとの認定の下に、差別的査定を行い、これと一定の因果関係を有する著しい格差のある賃金を支払ってきたものであり、これによって、各原告の思想、信条を理由として賃金その他労働条件について差別的取扱を受けない権利及び同程度の業績及び能力を有する他の従業員と同様に昇進、昇格していく期待利益を侵害したものと認定することができるところ、これらの権利ないし利益の侵害に対する救済としては、財産的損害の回復が認められない場合には、精神的損害の回復をも検討するのが相当である。
そこで検討するに、右差別は、その性質上、労働者にとって基本的な労働条件である賃金に関するものであること、いったん生じた格差は、これが著しい程度に達したときは、将来にわたって解消するのが困難であることが認められ、また、著しい格差のある賃金の受給及び差別的査定による昇進、昇格の遅れは、各原告の職場の内外、家庭における社会的名誉を毀損し、その人格的評価を低下せしめたことが窺われ、実際にも、各原告の陳述及び本人尋問の結果から、各原告が重大な精神的苦痛を被ったことが認められる。
そして、既に認定した差別的査定などの態様、実在する賃金格差が著しく、かつ、本訴提起後もそれが更に増大していること、そのほか本件記録上窺われる各原告の諸事情をそれぞれ考慮すると、各原告の右精神的苦痛に対する慰藉料は、各原告それぞれにつき金三〇〇万円を下回ることはないと認めるのが相当である。なお、各原告は、本訴の慰藉料請求を、全体額を明示せずに一部請求であるとするものであるから、請求額を越えて認容するのは相当でないと解する。
右慰藉料請求権は、観念的には、被告会社の各原告に対する昭和四八年一〇月以降の各査定時及びこれに基づく格差のある賃金支払時に、それぞれ相応する慰藉料請求権が発生し、直ちに遅延損害金も発生することになるが、本件係争期間が長期にわたり、かつ、各時点での相応する慰藉料額の判定は困難であるから、右各遅延損害金の発生分をも考慮したうえで、本件の弁論終結日までの係争全期間を通じて金三〇〇万円を下らない額と判断したものである。したがって、右慰藉料に対する遅延損害金の付帯請求は、本件弁論終結の日の翌日から認容することとする。
各原告は、本訴の慰藉料請求額を昭和五一年一〇月三〇日時点で金三〇〇万円とし、この日からの遅延損害金を求めているが、既に判断したように、当該各原告の人権侵害行為に基づく慰藉料請求権は時効消滅していること、差別的査定とこれに基づく格差のある賃金支給についても、右時点では、原告らの計算方法によっても賃金格差が七七万円から一〇三万円の範囲であったことなどを考慮すると、金三〇〇万円について昭和五一年一〇月三〇日からの遅延損害金の付帯請求を認めるのは相当ではなく、一部認容として前記範囲の遅延損害金の付帯請求を認めるのが相当である。
三  各原告の名誉毀損については、前項で認容した慰藉料の支払をもって填補され得るものというべきであり、それ以上に本件謝罪文の掲示等の必要性を認めることはできない。
四  弁護士費用については、各原告が原告訴訟代理人らに本件訴えの提起及び訴訟追行を委任したことは、本件記録上明らかであり、右弁護士費用は、被告会社の本件不法行為と相当因果関係のある財産的損害である。本件訴訟の経過、難易度を考慮すると、右弁護士費用は、原告紀二、同竹内、同春子については各金四〇万円、原告小俣については金三八万円をそれぞれ下回ることはないと認めるのが相当である。
右弁護士費用については、慰藉料について判断したところと異なり、昭和五一年一〇月三〇日からの遅延損害金を付するのが相当である。
第六 債務不履行に基づく損害賠償請求について
一 一般に、不法行為に基づく損害賠償請求権と債務不履行に基づく損害賠償請求権は、請求権競合の関係に立ち、それぞれの権利発生要件事実が異なるから、訴訟物としては別個であると考えられる。
原告は、賃金差別行為による賃金差額相当損害金、慰藉料、弁護士費用について、不法行為に基づく損害賠償と債務不履行に基づく損害賠償請求を選択的に併合請求しているものである。
二 ところで、既に判断してきたように、各原告の不法行為に基づく損害賠償請求の当否の判断において、被告会社と各原告の間の雇用契約に則した検討は不可欠であったところ、各原告の債務不履行に基づく損害賠償請求も、契約上の賃金債権に基づく履行請求に代わる填補賠償そのものではなく、被告会社の平等取扱義務違反による積極損害を問題にするものであるから、判断対象は共通しており、かつ、認容し得る範囲も同じであるか、少なくとも不法行為に基づくそれを上回ることはないものと考えられる。
したがって、不法行為に基づく慰藉料請求を一部認容したことにより、債務不履行に基づく損害賠償請求については、選択的併合請求の解除条件が成就したものと判断してよいものと解される。
第七  結論
以上によれば、各原告の本訴請求は、各原告が被告会社に対し、不法行為に基づく損害賠償として、原告紀二、同竹内、同春子については金三四〇万円及び内金四〇万円に対する昭和五一年一〇月三〇日から、内金三〇〇万円に対する平成五年一〇月一日からそれぞれ支払ずみまで、原告小俣については金三三八万円及び内金三八万円に対する昭和五一年一〇月三〇日から、、内金三〇〇万円に対する平成五年一〇月一日からそれぞれ支払ずみまで、民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求はいずれも理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法八九条、九二条本文、九三条を、仮執行の宣言につき、同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官前島勝三 裁判官菊地健治 裁判官忠鉢孝史)

別紙  債権目録〈省略〉

別紙  謝罪文〈省略〉

別紙  掲示場所目録〈省略〉
別表一 組合員平均基本給・職給一覧表(高卒)〈省略〉
別表二 資格段階・等級・対応職級表〈省略〉
別表三 入社年度別 組合員平均資格一覧表(高卒)〈省略〉
別表四 資格手当 年度別推移一覧表〈省略〉
別表五 職責手当改定及び対応職級一覧表〈省略〉
別表六 世帯手当年度別推移一覧表〈省略〉
別表七 賞与妥結額年度別一覧表〈省略〉
別表八 住宅積立助成手当支給率推移表〈省略〉
別表九 住宅助成臨時措置特別加算支給率推移表〈省略〉
別表一〇 財産形成給付金〈省略〉
別表一一の一 基本給及び基準内給与除く世帯手当一覧表〈省略〉
別表一一の二 基準内給与除く世帯手当一覧表〈省略〉
別表一二の一ないし一〇 世帯手当一覧表〈省略〉
別表一三の一ないし三 賞与妥結率及び妥結額〈省略〉
別表一四の一 住宅積立助成手当〈省略〉
別表一五の一 財産形成給付金〈省略〉

別紙  長野県原告差別賃金額一覧表〈省略〉
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政治と選挙の裁判例「政党 衆議院議員 ポスター」に関する裁判例一覧
(1)平成 9年 7月17日 大阪地裁 平5(行ウ)34号 違法支出金返還等請求事件
(2)平成 9年 6月26日 東京高裁 平6(ネ)3688号・平6(ネ)3881号・平6(ネ)3908号・平6(ネ)3960号 損害賠償請求控訴事件 〔日本共産党幹部宅盗聴損害賠償訴訟控訴審判決〕
(3)平成 9年 6月20日 静岡地裁 平4(ワ)307号・平7(ワ)481号 損害賠償請求事件 〔ヤマト運輸事件・第一審〕
(4)平成 9年 6月18日 東京高裁 平8(ネ)354号 損害賠償請求控訴事件
(5)平成 9年 5月30日 大阪地裁 平7(ワ)892号 損害賠償請求事件
(6)平成 9年 3月31日 秋田地裁 平4(行ウ)3号・平4(行ウ)5号・平6(行ウ)2号 違法公金支出差止請求事件、損害賠償請求事件
(7)平成 9年 3月21日 東京地裁 平5(刑わ)2020号・平5(刑わ)2442号・平6(刑わ)161号・平5(刑わ)2220号 収賄、贈賄等被告事件 〔ゼネコン汚職事件(宮城県知事ルート)〕
(8)平成 9年 3月21日 秋田地裁 平4(行ウ)3号・平4(行ウ)5号・平6(行ウ)2号 違法公金支出差止請求事件、損害賠償請求事件 〔秋田県・秋田市工業用水道料金補助・産廃処分場許可事件〕
(9)平成 9年 3月18日 大阪高裁 平8(行コ)35号 供託金返還請求控訴事件
(10)平成 9年 2月20日 大阪地裁 平7(行ウ)60号・平7(行ウ)70号 政党助成法に基づく政党交付金交付差止等請求事件
(11)平成 9年 2月13日 大阪高裁 平8(う)518号 業務妨害被告事件
(12)平成 9年 2月 7日 盛岡地裁 平5(ワ)339号 建物明渡請求事件
(13)平成 9年 2月 4日 東京地裁 平8(行ウ)31号 都非公開処分取消請求事件
(14)平成 8年12月25日 千葉地裁 平4(行ウ)8号・平4(行ウ)22号・平6(行ウ)24号 損害賠償請求(関連請求の追加的併合の訴え)、労働者委員選任処分取消等請求事件 〔千葉県地方労働委員会事件〕
(15)平成 8年12月20日 札幌地裁 平7(ワ)1598号 損害賠償等請求事件
(16)平成 8年10月28日 大津地裁 平7(行ウ)11号 損害賠償請求事件
(17)平成 8年 9月11日 最高裁大法廷 平6(行ツ)59号 選挙無効請求事件 〔参議院議員定数配分規定不均衡訴訟・大法廷判決〕
(18)平成 8年 8月 7日 神戸地裁 平7(行ウ)41号 選挙供託による供託金返還請求事件
(19)平成 8年 7月 8日 仙台高裁 平7(行ケ)3号 当選無効及び立候補禁止請求事件 〔青森県議会議員選挙候補者連座訴訟・第一審〕
(20)平成 8年 5月20日 大阪地裁 平4(ワ)8931号・平5(ワ)3260号・平5(ワ)3261号・平4(ワ)9972号・平4(ワ)8064号 各損害賠償請求事件 〔関西PKO訴訟判決〕
(21)平成 8年 4月10日 東京地裁 平6(ワ)23782号・平5(ワ)23246号 預金返還請求事件 〔自由民主党同志会預金訴訟判決〕
(22)平成 8年 3月29日 東京地裁 平5(特わ)546号・平5(特わ)682号 所得税法違反被告事件
(23)平成 8年 3月27日 大阪高裁 平6(ネ)3497号 損害賠償請求控訴事件
(24)平成 8年 3月25日 東京地裁 平元(ワ)14010号 損害賠償等請求事件
(25)平成 8年 3月19日 最高裁第三小法廷 平4(オ)1796号 選挙権被選挙権停止処分無効確認等請求事件 〔南九州税理士会政治献金徴収拒否訴訟・上告審〕
(26)平成 8年 3月15日 最高裁第二小法廷 平5(オ)1285号 国家賠償請求事件 〔上尾市福祉会館使用不許可に対する損害賠償請求訴訟・告審〕
(27)平成 8年 3月 8日 最高裁第二小法廷 平4(オ)78号 損害賠償請求事件
(28)平成 8年 1月18日 東京高裁 平7(行ケ)236号 当選無効及び立候補禁止請求事件
(29)平成 7年12月26日 東京高裁 平5(ネ)931号 航空機発着差止等請求控訴、同附帯控訴事件 〔厚木基地騒音公害第一次訴訟差戻後・控訴審〕
(30)平成 7年12月19日 大阪地裁 昭61(ワ)1542号 損害賠償等請求事件 〔小説「捜査一課長」訴訟〕
(31)平成 7年11月21日 東京高裁 平6(行コ)207号 建物取壊決定処分取消請求控訴事件
(32)平成 7年10月 9日 仙台高裁 平7(行ケ)2号 当選無効及び立候補禁止請求事件 〔山形県議会議員選挙候補者連座訴訟〕
(33)平成 7年 9月20日 東京地裁 平5(行ウ)301号 損害賠償請求事件
(34)平成 7年 6月22日 東京高裁 平6(行コ)26号 不当労働行為救済命令取消請求控訴事件 〔千代田化工建設事件・控訴審〕
(35)平成 7年 5月25日 最高裁第一小法廷 平7(行ツ)19号 選挙無効請求事件 〔日本新党繰上当選無効訴訟・上告審〕
(36)平成 7年 3月20日 宮崎地裁 平6(ワ)169号 損害賠償請求事件
(37)平成 7年 3月 7日 最高裁第三小法廷 平元(オ)762号 損害賠償請求事件 〔泉佐野市民会館使用不許可に対する損害賠償請求訴訟・上告審〕
(38)平成 7年 2月22日 東京地裁 昭49(ワ)4723号 損害賠償請求事件 〔全税関東京損害賠償事件〕
(39)平成 7年 2月13日 大阪地裁 平6(わ)3556号 政治資金規正法違反被告事件 〔大阪府知事後援会ヤミ献金事件〕
(40)平成 7年 2月 9日 大阪高裁 平6(ネ)292号・平4(ネ)2265号 損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件 〔全税関大阪訴訟・控訴審〕
(41)平成 7年 1月26日 東京地裁 平5(行ウ)353号 損害賠償請求事件
(42)平成 6年12月20日 浦和地裁 平5(わ)564号 受託収賄被告事件
(43)平成 6年12月 9日 大阪地裁 平5(ワ)1384号 損害賠償請求事件
(44)平成 6年12月 6日 東京地裁 平2(ワ)2211号 除名処分無効確認請求事件
(45)平成 6年11月29日 東京高裁 平5(行ケ)108号 選挙無効請求事件 〔日本新党参議院議員比例代表選出繰上当選無効請求訴訟〕
(46)平成 6年11月25日 東京地裁 平6(ヨ)21141号 地位保全仮処分申立事件
(47)平成 6年11月15日 横浜地裁 昭51(ワ)1606号 損害賠償請求事件 〔東京電力(神奈川)事件〕
(48)平成 6年10月27日 名古屋高裁 平6(ネ)134号 慰謝料等請求控訴事件
(49)平成 6年10月25日 新潟地裁 平4(わ)223号 政治資金規正法違反被告事件 〔佐川急便新潟県知事事件〕
(50)平成 6年 9月30日 広島高裁 平5(行ケ)1号 衆議院議員定数配分規定違憲訴訟広島高裁判決
(51)平成 6年 9月 6日 東京地裁 昭63(ワ)12066号 共産党幹部宅盗聴事件
(52)平成 6年 8月31日 東京地裁八王子支部 平3(ワ)1677号 譴責処分無効確認等請求事件 〔日本電信電話事件〕
(53)平成 6年 6月 3日 東京高裁 平5(行ケ)134号 衆議院議員定数配分規定違憲訴訟東京高裁判決
(54)平成 6年 6月 3日 東京高裁 平5(行ケ)133号 選挙無効請求事件
(55)平成 6年 6月 3日 東京高裁 平5(行ケ)118号 選挙無効確認請求事件 〔衆議院議員定数配分違憲訴訟・第一審〕
(56)平成 6年 6月 3日 東京高裁 平5(行ケ)114号 選挙無効請求事件
(57)平成 6年 5月23日 千葉地裁 昭51(ワ)698号 損害賠償等請求事件 〔千葉東電訴訟判決〕
(58)平成 6年 4月26日 旭川地裁 平2(行ウ)1号 地方自治法第二四二条の二第一項に基づく住民訴訟事件
(59)平成 6年 3月31日 長野地裁 昭51(ワ)216号 損害賠償等請求事件 〔長野東電訴訟〕
(60)平成 6年 3月16日 東京高裁 平5(行コ)68号・平5(行コ)86号 所得税更正処分・過少申告加算税賦課決定処分取消請求各控訴事件
(61)平成 6年 2月 1日 横浜地裁 平2(ワ)775号 損害賠償請求事件
(62)平成 6年 1月31日 最高裁第二小法廷 平5(行ツ)158号 当選無効等請求事件
(63)平成 6年 1月31日 津地裁 平4(ワ)117号 慰謝料等請求事件
(64)平成 6年 1月27日 最高裁第一小法廷 平3(行ツ)18号 行政処分取消請求事件 〔大阪府知事交際費情報公開請求事件・差戻前上告審〕
(65)平成 6年 1月27日 東京地裁 平4(行ウ)126号 不当労働行為救済命令取消請求事件 〔千代田化工建設事件・第一審〕
(66)平成 5年12月24日 名古屋地裁 平5(わ)1207号 公職選挙法違反被告事件 〔参議院議員経歴詐称事件・第一審〕
(67)平成 5年12月22日 甲府地裁 昭51(ワ)289号 損害賠償請求事件 〔山梨東電訴訟〕
(68)平成 5年12月16日 大阪高裁 平4(行ケ)5号 選挙無効請求事件 〔参議院(選挙区選出)議員定数配分規定違憲判決〕
(69)平成 5年12月15日 大阪高裁 平5(行コ)17号 大阪府会議員運転手付自家用車供用損害賠償請求控訴事件 〔大阪府議運転手付庁用車供用損害賠償訴訟・控訴審〕
(70)平成 5年 9月10日 最高裁第二小法廷 平4(行ツ)46号 損害賠償請求上告事件
(71)平成 5年 8月24日 前橋地裁 昭51(ワ)313号 損害賠償請求事件 〔東京電力(群馬)事件〕
(72)平成 5年 7月20日 最高裁第三小法廷 平2(オ)1231号 建物明渡、地位確認等請求事件 〔日蓮正宗末寺事件・上告審〕
(73)平成 5年 7月15日 福岡高裁那覇支部 平4(行ケ)1号 当選無効等請求事件
(74)平成 5年 7月15日 福岡地裁大牟田支部 平5(わ)18号 強制執行不正免脱、公正証書原本不実記載、同行使被告事件
(75)平成 5年 6月29日 名古屋高裁 平5(行ケ)1号 当選の効力に関する審査裁決取消請求事件
(76)平成 5年 5月28日 徳島地裁 昭63(行ウ)12号 徳島県議会県政調査研究費交付金返還等請求事件
(77)平成 5年 5月27日 最高裁第一小法廷 平元(オ)1605号 会費一部返還請求事件 〔大阪合同税理士会会費返還請求事件・上告審〕
(78)平成 5年 5月25日 福井地裁武生支部 昭63(ワ)4号 損害賠償請求事件 〔福井鉄道事件〕
(79)平成 5年 5月13日 大阪地裁 平4(ワ)619号 損害賠償請求事件
(80)平成 5年 3月25日 仙台高裁 事件番号不詳 公職選挙法違反被告事件
(81)平成 5年 3月22日 福岡高裁宮崎支部 昭63(行コ)1号 行政処分取消請求控訴事件 〔宮崎県立大宮第二高校懲戒処分取消請求訴訟・控訴審〕
(82)平成 5年 3月22日 浦和地裁 平元(行ウ)4号 所得税更正処分・過少申告加算税賦課決定処分取消請求事件
(83)平成 5年 3月17日 東京地裁 平元(行ウ)219号 一般旅券返納命令処分取消請求事件
(84)平成 5年 3月17日 神戸地裁 昭62(ワ)1670号 損害賠償請求事件
(85)平成 5年 3月16日 札幌地裁 平元(わ)559号・平元(わ)561号・平元(わ)560号 受託収賄被告事件 〔北海道新長計汚職事件〕
(86)平成 5年 3月15日 東京地裁 平4(行ウ)175号 教科書検定合格処分無効確認等請求事件
(87)平成 5年 1月22日 東京地裁 平3(ワ)6321号 損害賠償等請求事件
(88)平成 5年 1月20日 最高裁大法廷 平3(行ツ)184号 選挙無効請求事件
(89)平成 4年12月24日 横浜地裁 昭49(ワ)847号・昭50(ワ)111号 損害賠償請求事件 〔全税関横浜訴訟・第一審〕
(90)平成 4年12月17日 名古屋高裁 平4(行ケ)1号 参議院議員選挙当選無効請求事件
(91)平成 4年11月25日 東京高裁 平4(く)200号 接見等禁止一部解除決定に対する抗告申立事件 〔東京佐川急便事件関連接見等禁止一部解除事件〕
(92)平成 4年11月24日 大阪地裁 平2(行ウ)81号・平2(行ウ)97号・平2(行ウ)94号 即位の礼・大嘗祭訴訟第一審判決
(93)平成 4年10月26日 東京地裁 昭61(ワ)4793号 損害賠償請求事件 〔報徳会宇都宮病院訴訟〕
(94)平成 4年10月23日 東京高裁 昭59(行コ)38号 事業認定処分取消請求、特定公共事業認定処分取消請求各控訴事件 〔成田空港訴訟・控訴審〕
(95)平成 4年 9月22日 大阪地裁 昭49(ワ)2701号 損害賠償請求事件 〔全税関大阪訴訟・第一審〕
(96)平成 4年 7月16日 東京地裁 昭60(ワ)10866号・昭60(ワ)10864号・昭60(ワ)10867号・昭60(ワ)10865号・平2(ワ)10447号・昭60(ワ)10868号 立替金請求併合事件 〔全逓信労働組合事件〕
(97)平成 4年 6月26日 大阪高裁 平2(う)966号 公職選挙法違反被告事件
(98)平成 4年 6月15日 東京地裁 平3(ワ)4745号 謝罪広告等請求事件
(99)平成 4年 4月28日 最高裁第三小法廷 昭60(オ)1427号 損害賠償請求事件 〔台湾住民元日本兵戦死傷者の損失補償請求事件・上告審〕
(100)平成 4年 4月24日 福岡高裁 昭62(ネ)551号・昭61(ネ)106号 選挙権被選挙権停止処分無効確認等請求控訴、附帯控訴事件 〔南九州税理士会政治献金徴収拒否訴訟・控訴審〕


政治と選挙の裁判例(裁判例リスト)

■「選挙 コンサルタント」に関する裁判例一覧【1-101】
https://www.senkyo.win/hanrei-senkyo-consultant/

■「選挙 立候補」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-senkyo-rikkouho/

■「政治活動 選挙運動」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seijikatsudou-senkyoundou/

■「公職選挙法 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kousyokusenkyohou-poster/

■「選挙 ビラ チラシ」に関する裁判例一覧【1~49】
https://www.senkyo.win/hanrei-senkyo-bira-chirashi/

■「政務活動費 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seimu-katsudouhi-poster/

■「演説会 告知 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/senkyo-seiji-enzetsukai-kokuchi-poster/

■「公職選挙法 ポスター 掲示交渉」に関する裁判例一覧【101~210】
https://www.senkyo.win/kousyokusenkyohou-negotiate-put-up-poster/

■「政治ポスター貼り 公職選挙法 解釈」に関する裁判例一覧【211~327】
https://www.senkyo.win/political-poster-kousyokusenkyohou-explanation/

■「公職選挙法」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kousyokusenkyohou/

■「選挙 公報 広報 ポスター ビラ」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/senkyo-kouhou-poster-bira/

■「選挙妨害」に関する裁判例一覧【1~90】
https://www.senkyo.win/hanrei-senkyo-bougai-poster/

■「二連(三連)ポスター 政党 公認 候補者」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-2ren-3ren-poster-political-party-official-candidate/

■「個人(単独)ポスター 政党 公認 候補者」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kojin-tandoku-poster-political-party-official-candidate/

■「政党 公認 候補者 公募 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-political-party-official-candidate-koubo-poster/

■「告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター 政党 議員 政治家」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kokuji-kouji-kouei-kousetsu-keijiban-poster-political-party-politician/

■「告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター 政党 公報 広報」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kokuji-kouji-kouei-kousetsu-keijiban-poster-political-party-campaign-bulletin-gazette-public-relations/

■「国政政党 地域政党 二連(三連)ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kokusei-seitou-chiiki-seitou-2ren-3ren-poster/

■「国政政党 地域政党 個人(単独)ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kokusei-seitou-chiiki-seitou-kojin-tandoku-poster/

■「公認 候補者 公募 ポスター 国政政党 地域政党」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-official-candidate-koubo-poster-kokusei-seitou-chiiki-seitou/

■「政治団体 公認 候補者 告示(公示)日 公営(公設)掲示板ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-political-organization-official-candidate-kokuji-kouji-kouei-kousetsu-keijiban-poster/

■「政治団体 後援会 選挙事務所 候補者 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-political-organization-kouenkai-senkyo-jimusho-official-candidate-poster/

■「政党 衆議院議員 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-shuugiin-giin-poster/

■「政党 参議院議員 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-sangiin-giin-poster/

■「政党 地方議員 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-chihou-giin-poster/

■「政党 代議士 ポスター」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-daigishi-giin-poster/

■「政党 ポスター貼り ボランティア」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-poster-hari-volunteer/

■「政党 党員 入党 入会 獲得 募集 代行」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seitou-touin-nyuutou-nyuukai-kakutoku-boshuu-daikou/

■「政治団体 党員 入党 入会 獲得 募集 代行」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-seiji-dantai-nyuutou-nyuukai-kakutoku-boshuu-daikou/

■「後援会 入会 募集 獲得 代行」に関する裁判例一覧【1~100】
https://www.senkyo.win/hanrei-kouenkai-nyuukai-boshuu-kakutoku-daikou/


■選挙の種類一覧
選挙①【衆議院議員総選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙②【参議院議員通常選挙】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙③【一般選挙(地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)
選挙④【特別選挙(国政選挙|地方選挙)】に向けた、政治活動ポスター貼り(掲示交渉代行)


【資料】政治活動用事前街頭ポスター新規掲示交渉実績一覧【PRドットウィン!】選挙,ポスター,貼り,代行,ポスター貼り,業者,選挙,ポスター,貼り,業者,ポスター,貼り,依頼,タウン,ポスター,ポスター,貼る,許可,ポスター,貼ってもらう,頼み方,ポスター,貼れる場所,ポスター,貼付,街,貼り,ポスター,政治活動ポスター,演説会,告知,選挙ポスター,イラスト,選挙ポスター,画像,明るい選挙ポスター,書き方,明るい選挙ポスター,東京,中学生,選挙ポスター,デザイン


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(6)握手代行/戸別訪問/ご挨拶回り 御用聞きによる戸別訪問型ご挨拶回り代行をいたします!
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(7)地域密着型ポスターPR広告貼り 地域密着型ポスターPR広告(街頭外壁掲示許可交渉代行)
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(8)貼る専門!ポスター新規掲示! ☆貼!勝つ!広報活動・事前街頭(単独/二連)選挙ポスター!
政治活動/選挙運動ポスター貼り 勝つ!選挙広報支援事前ポスター 1枚から貼る事前選挙ポスター!
「政治活動・選挙運動ポスターを貼りたい!」という選挙立候補(予定)者のための、選挙広報支援プロ集団「選挙.WIN!」の事前街頭ポスター新規掲示プランです。

(9)選挙立札看板設置/証票申請代行 絶対ここに設置したい!選挙立札看板(選挙事務所/後援会連絡所)
選挙事務所/後援会連絡所届出代行 公職選挙法の上限/立て札看板設置 1台から可能な選挙立札看板設置
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