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「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(7)平成30年 3月30日 東京地裁 平27(ワ)37147号 損害賠償請求事件

「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(7)平成30年 3月30日 東京地裁 平27(ワ)37147号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成30年 3月30日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)37147号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2018WLJPCA03308003

要旨
◆平成22年に実施された第22回参議院議員比例区選挙に立候補して落選した後、選挙運動の報酬支払約束をしたという公職選挙法違反の罪で有罪判決を受けた原告が、被告に対し、両者の間で被告が原告の同立候補に伴う選挙運動及び政治活動の管理等を行う旨の委任・準委任契約(本件契約)が成立したことを前提に、被告は同契約上の義務に違反したほか、同契約を締結した際に被告の公職選挙法違反等の前科等を説明すべき義務にも違反したなどと主張して、債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償を求めた事案において、被告の具体的な関与行為は、いずれも本件契約の成立を推認させるに足りるものとは評価できないなどとして、同契約の成立を否定した上で、本件事情にかんがみれば、被告が本件選挙運動等に関連する各行為を行うに際し、前科及び本件出版について説明しなかったことについて、信義則上の説明義務違反があるとはいえないと判断するなどして、請求を棄却した事例

参照条文
民法1条2項
民法415条
民法643条
民法656条
民法709条
民法710条
公職選挙法137条の3
公職選挙法252条
政治資金規正法28条

裁判年月日  平成30年 3月30日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)37147号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2018WLJPCA03308003

東京都渋谷区〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 五島幸雄
同 齋藤晴太郎
同 森炎
同 加藤君人
同 田島正広
東京都三鷹市〈以下省略〉
被告 Y
同訴訟代理人弁護士 内野経一郎
同 内野令四郎
同 奥冨昌吾

 

 

主文

1  原告の請求を棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
被告は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成28年1月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,平成22年に実施された第22回参議院議員比例区選挙(以下「本件選挙」という。)に立候補して落選し,その後公職選挙法違反の罪で有罪判決を受けた原告が,被告に対し,原告と被告との間で被告が原告の上記立候補に伴う選挙運動及び政治活動の管理等を行う旨の委任(準委任)契約(以下「本件契約」という。)が成立したことを前提に,被告が上記契約上の義務に違反したほか,上記契約を締結した際に被告の公職選挙法違反等の前科等を説明すべき義務にも違反したと主張し,債務不履行ないし不法行為に基づき,財産的損害及び慰謝料として合計1億円の損害賠償並びに訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1  前提となる事実(当事者間に争いがないか,掲記の証拠又は弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)  当事者等
ア 原告は,株式会社a(以下「a社」という。)を始めとする不動産総合商社○○グループの代表者であり,本件選挙においてb党の公認を得て立候補したが落選した。
イ 被告は,平成22年当時,広告宣伝の企画等を行う株式会社c(以下「c社」という。)において,プロデューサー及び営業職を務めていた。被告は,原告がc社に対して選挙運動用の広報物の制作を発注した際の担当者であった。
ウ A衆議院議員(以下「A議員」という。)は,当時b党に所属していた政治家であり,平成22年5月,原告に対して被告を紹介した。
エ B(以下「B」という。)は,原告の本件選挙に係る後援会(以下「本件後援会」という。)及び選挙対策本部(以下,選挙対策本部のことを「選対」と略記し,原告の選対を「本件選対」という。)の事務局長であった者である。
(2)  本件選挙における原告の選挙活動の経緯等
ア 原告は,平成22年1月中旬頃,a社が所属する業界団体であるd協会の上部組織であるe連合会(以下「e連」という。)から本件選挙への立候補を打診され,同年3月にはb党の公認及びe連の推薦を得たことから,同月末には本件選挙への立候補の意向を固めた。この頃,b党の内部組織であるb党参議院比例区f支部(以下「f支部」という。)も設立された。
本件選挙の公示日は平成22年6月24日,公示期間は同日から同年7月10日まで,選挙期日(投票日)は同月11日であった。
イ 原告は,本件選挙以前に公職に立候補した経験がなかったため,本件後援会を新たに組織し,その本部長にC参議院議員を迎えた。そして,平成22年5月22日には被告から紹介されたBが本件後援会の事務局長に就任し,本件選対発足後は,C参議院議員がその本部長に,Bがその事務局長に就任した。(甲5)
ウ 原告は,本件後援会の発足後,原告への支援を求める政治活動(以下「本件政治活動」という。)を開始し,本件選挙の公示後は,本件選対を中心として原告への投票を呼びかける選挙運動(以下「本件選挙運動」といい,本件政治活動と併せて「本件選挙運動等」という。)を行った。
原告は,a社の社員に対して,本件選挙運動等の一環としてコールセンターにおける選挙人への電話掛け等を行わせたが,これらの社員は,公示日前に休職届を出しておらず,本件選挙運動に対する報酬が支払われないという明確な認識もなかった。
エ 原告ないしf支部は,平成22年5月末から6月下旬にかけて,c社,株式会社g(以下「g社」という。)などの印刷業者に対し,本件選挙運動等に用いる広報物の制作を発注した。
オ 本件後援会の東京事務所(以下「八重洲事務所」という。)は,平成22年6月9日,神田警察署から事前運動(違反文書配布)に関する警告(以下「本件警告」という。)を受けた。同月11日,本件警告に対する対応策を検討する会議が開催され,原告,B,被告,原告の顧問弁護士であったD弁護士(以下「D弁護士」という。)及びその他数名が参加した。上記会議で決まった方針に従い,D弁護士及びBが神田警察署を訪れ再発防止を誓った。
カ 原告は,平成22年7月28日,a社の従業員に対して選挙運動の報酬として給与相当額の金銭の供与を約束したという公職選挙法違反被疑事実により逮捕・勾留され,同年8月18日に起訴された。
(3)  原告の公職選挙法違反の罪による有罪判決(乙2の187頁~204頁)
ア 原告は,平成23年1月7日,東京地方裁判所において,本件選挙運動における公職選挙法違反の罪により懲役2年執行猶予4年の有罪判決(同裁判所平成22年特(わ)第1823号。以下「本件有罪判決」という。)を受けたところ,平成23年6月24日に原告の控訴が棄却され(東京高等裁判所平成23年(う)第309号),平成25年1月28日に原告の上告が棄却されたため,上記一審判決は確定した(以下,原告の本件選挙に係る公職選挙法違反に対する捜査から有罪判決の確定に至る一連の刑事事件を「本件刑事事件」という。)。
イ 本件有罪判決における罪となるべき事実は,概要,原告が,本件選挙に際し,自己の当選を得る目的で,a社の従業員と共謀の上,a社の従業員7名に対し,平成22年6月24日から同年7月10日までの間,本件選挙の選挙人に対して電話をかけて原告への投票を依頼する選挙運動の報酬として,同期間に対応する給与相当額を供与する旨の約束をしたというものである。
(4)  原告とc社との間の訴訟(甲2,乙5の1頁~40頁)
ア c社は,平成22年12月,原告を相手方として,本件選挙運動等に用いる広報物に係る業務委託契約に基づく業務委託料(以下「本件業務委託料」という。)の支払等を求める民事訴訟(東京地方裁判所平成22年(ワ)第47235号。以下「c社訴訟」という。)を提起した。原告は,c社訴訟において,被告が原告の選挙参謀であることを前提に,①上記業務委託契約は選挙参謀である被告が発注者をb党の支部又はb党として締結したものであって原告個人は発注者ではない,②大量発注をしたことは選挙参謀としての債務不履行であるなどと主張して争ったが,東京地方裁判所は,被告及びBが原告の選挙参謀として原告の本件選挙運動等に深く関与したとは認められないなどと判断し,平成25年2月28日,原告がc社に対して業務委託料として435万8550円を支払うべき旨の一部認容判決をした。
イ 上記一審判決について原告が控訴し,平成25年9月18日,東京高等裁判所において訴訟上の和解が成立した。当該和解の主な内容は,①c社が,過剰な量の広告物の発注があったとの原告の主張に鑑み,原告に対し,和解の趣旨に照らし,本件業務委託料の残金を350万円に減額することを了承する,②原告が,c社に対し,和解金として350万円の支払義務があることを認めて和解の席上で支払い,c社がこれを受領したというものである。
(5)  原告とg社との間の訴訟(甲3)
ア g社は,平成23年,原告を相手方として,本件選挙運動等に用いる広報物に係る業務委託契約に基づく業務委託料の支払等を求める民事訴訟(東京地方裁判所平成23年(ワ)第37645号)を提起した。
イ 原告とg社は,平成27年4月10日,g社が原告に対して印刷物の受注が不当又は過剰であったことを認めた上,原告がg社に対し和解金として500万円を支払う旨の訴訟上の和解をした。
2  争点及び当事者の主張
(1)  本件契約の成否及びこれに基づく義務違反の有無(争点1)
(原告の主張)
ア 本件契約の成立
(ア) 原告は,平成22年1月中旬頃,e連から本件選挙への立候補の打診を受け,b党の公認を受けて立候補を決意したが,本件選挙が初めての選挙であり,周囲も選挙の素人ばかりであったため,公職選挙法を遵守しながら効果的に本件選挙運動等を推進し,後援会活動及び選対などを取り仕切る選挙参謀を必要としていたところ,同年5月20日頃,A議員から選挙参謀として被告を紹介された。原告は,被告に対して選挙参謀兼本件選対の事務局長への就任を要請したところ,被告は,選挙参謀として全般的な選挙の指導・監督を行うことには同意したものの,自らは別の候補を応援する立場にあるため本件選対の事務局長としては表に出られないとのことで,本件選対の事務局長としてBを推薦した。以上のような経緯で,原告は被告に対し,同日頃,選挙運動及び政治活動の管理等を行う選挙参謀への就任を依頼し,被告はこれを承諾した。これにより,原告と被告との間で,被告が原告の選挙運動及び事前の政治活動全般について指導,監督,助言等を行う旨の本件契約が成立した。
(イ) 本件契約に基づく被告の債務は,具体的には,①選挙運動及び事前の政治活動全般における効果的な選挙運動・政治活動の計画・実施・指導・監督,②選挙運動及び政治活動全般における選挙違反(公職選挙法違反等)防止のための指導・監督,③選挙運動及び政治活動全般に対する人件費・広告費等の経費の適切な出金・管理に関する指導・監督である(以下,①ないし③の義務を「本件義務1」ないし「本件義務3」という。)。本件義務1ないし3には,契約等の法律行為と事実行為の双方が含まれるから,本件契約の法的性質は委任契約と準委任契約の混合的契約である。なお,報酬については,c社が原告の政治団体であるf支部から選挙関連印刷物の企画・制作・印刷等を受注できれば十分であるとして,原告と被告との間で金銭による別途の報酬支払は合意されなかった。
(ウ) 国政選挙での選対の構成は,一般に,対外的な面で代表者的役割を担う「本部長」と対内的な選挙実務を取り仕切る「事務局長」を二本柱とし,これに弁護士などと連携して選挙運動の適法性を確保する役割の「選挙戦略家」が加わって構築されるところ,「選挙参謀」とは,これらを統括して選挙実務全般について助言,指導,監督する者である。被告は,本件契約に基づき,本件選挙運動等において,選挙戦略家を兼任する「隠れた選挙参謀」の地位,あるいは,実質的な選対本部長であったA議員の代行者としての地位にあった。
イ 本件契約が成立したことを裏付ける事情
本件契約が成立したことは,次の各事情により裏付けられる。
(ア) 原告は,政治経験のない選挙の素人であり,本件選挙運動等を開始するに際し,本件選対を取り仕切ってくれる者を求めて何十人もの政治家秘書等の選考面談を行い,b党の大物政治家たちもそのために奔走していたこと。それにもかかわらず,政界において大した実績のないBが事務局長に就任するのみで選挙参謀は不在のままであったということはあり得ないこと。
(イ) 被告は,選挙に関する書籍も著したことのある選挙コンサルタントであり,A議員から「Yをもっと活用せよ」などの発言により選挙参謀として紹介された者であること。
(ウ) 被告は,平成22年5月23日,本件選対の全体会議にA議員及びBと共に出席して選挙の心構え等を力説し,同月29日にも本件選対の会議を招集し,八重洲事務所の中二階のBの席の近くに席を持つなど,Bと一体となって本件選対を運営する立場にあったこと。
(エ) 被告は,原告が平成22年6月9日に本件警告を受けた際,Bと共に本件選対の最高幹部会議を主宰し,対応方針を主導的に決定するなど,不十分ではあるが公職選挙法違反とならないための助言,指導,監督等をしていたこと。
(オ) 被告は,平成22年6月17日,広報物の配付について投票依頼行為と認定される恐れのある類型を指摘する「建白書」と題する書面(甲6。以下「本件建白書」という。)をa社従業員に交付したほか,同年9月10日には,本件選挙運動等の経過と結果についての報告書(甲1。以下「本件報告書」という。)を「プロデューサーY」名義で作成して原告に交付しており,本件契約に係る報告義務の履行とみられる行為が曲がりなりにも存在すること。
(カ) 被告は,c社が原告から選挙広報物の企画,制作,印刷等の発注を優先的に受けることにより,選挙参謀業務の実質的対価を得ていたこと。
(キ) 被告が本件選挙運動等に関与した背景が,A議員,被告及びBの3名の「トライアングル選対支配体制」による利益簒奪にあったこと。
すなわち,A議員は,その支配下にある被告及びBを本件選対に押し込むとともに,自らは実質的な選対本部長として振る舞い,「トライアングル選対支配体制」というべき体制(以下「本件支配体制」という。)を構築し,①c社及びg社への大量発注,②パーティー券代名目での60万円の受領,③E議員の事務所郵送料名目での207万円の受領(Bによる。),④報酬の二重取り(Bによる。),⑤その他の不明金などにより原告の選挙資金から利益を簒奪していたところ,A議員の長年の子飼いであった被告は,本件支配体制におけるキー・マンであった。しかも,A議員は,被告に公職選挙法違反の前科があることを知っており,選挙屋(選挙参謀などの形で選対に入り込んで選挙資金を吸い上げるなどの不祥事を働く一方で,選挙違反を作り上げて警察に内通することにより,上記不祥事を見逃してもらって利益を得る者)として行動させるために,被告を原告の選対に送り込んだのである。
ウ 被告が本件契約上の義務に違反したこと
被告は,次のとおり,本件契約に基づく義務を履行しなかった。かかる被告の行為は,いずれも本件契約上の債務不履行に該当するだけでなく,本件支配体制による利益簒奪行為の一環として,原告に対する不法行為を構成する。
(ア) 被告は,遅くとも平成22年6月24日(本件選挙の公示日)までに,選挙運動を手伝うa社の従業員に対してボランティアの趣旨を周知・徹底せず,これを行うようBに助言又は要請等もしなかったため,原告が報酬支払約束の嫌疑をかけられる一端となった(本件義務2に違反)。
(イ) 被告は,遅くとも平成22年6月24日までに,選挙運動を手伝うa社の従業員から適正な休職届を徴収せず,これを行うようBに助言又は要請等もしなかったところ,このことにより,休職理由の記載が不十分な休職届が提出されたり,休職届を提出しても給与の支給を受けられるとの誤解を抱く従業員が出現したりし,報酬支払約束の嫌疑をかけられる一端となった(本件義務2に違反)。
(ウ) 被告は,平成22年6月9日の本件警告に関し,選挙参謀として,本件選対事務局内の最高幹部会議を主宰し,今後は注意して本件選対を運営していくと宣言したにもかかわらず,同年7月10日(選挙運動期間終了日)までの間に,c社に対してb党の機関誌である「△△」を大量発注するなど上記宣言と相反する行動を取った上,Bに対し同宣言を履践するよう助言,忠告も行わなかった(本件義務2に違反)。なお,被告は同年6月17日付けで文書の大量頒布に警鐘を鳴らすかのような本件建白書をa社の従業員に交付したが,これは自らの責任を隠蔽するための工作にすぎず,これをもって上記宣言を履践したとはいえない。
(エ) 被告は,本件義務2の一環として,公職選挙法違反の嫌疑を受けた場合には,選挙参謀として積極的に警察に真実を説明してその嫌疑を晴らすよう全力を尽くす義務を負っていたが,これを怠り,特に,平成22年6月下旬頃には,警察が内偵を行っていることを知っていたにもかかわらず,これを原告に報告せず,誤解を解くための行動も取らなかった(本件義務2に違反)。
(オ) 被告は,c社及びg社に対して選挙関連印刷物を過剰に発注したことにより,原告に損害を与えた(本件義務1及び3に違反)。
(カ) 被告は,本件選挙終了後,委任事務の処理状況について十分な報告をせず,平成22年9月10日になってようやく本件報告書を提出したが,その内容は極めて不十分であった(本件契約に基づく報告義務違反)。
(被告の主張)
ア 被告はc社の受注担当者にすぎず,原告との間で本件契約を締結していない。また,本件選挙運動におけるa社の従業員のボランティアの話も一切聞いたことはない。
なお,被告が選挙参謀であったという原告の主張は実質的にc社訴訟の蒸し返しであるし,原告に公職選挙法違反の事実がないことを前提とする原告の主張は本件刑事事件の蒸し返しであるから,本件訴え提起は著しく相当性を欠く。
イ 原告が主張する各事実(上記原告の主張イ)は,いずれも本件契約の成立を裏付けるものとはいえない。(ア)及び(イ)については,A議員の「Yをもっと活用せよ」との発言が選挙参謀として紹介する趣旨であるとはいえない。(ウ)については,被告はBの紹介者という立場にすぎず,八重洲事務所に席はなく,Bと共に本件選対を取り仕切っていた事実はない。(エ)については,最高幹部会議なる会議は存在せず,被告は,本件警告への対応を協議する場に広報物の制作業者として同席したにすぎない。(オ)については,いずれの文書も報告義務の履行ではない(なお,本件建白書の作成者はc社である。)。(カ)については,原告はc社以外に,被告と関係のない会社であるg社及び株式会社hにも発注している。(キ)については,原告の主張は事実に反する。
ウ そもそも原告は本件選挙運動等において自己が支配的に経営するa社の組織にトップダウンで指示を出し,違法性を認識した上であえて公職選挙法違反の行為を行ったのであるから,被告が原告の公職選挙法違反に関して何らかの義務に違反したということはあり得ない。
(2)  被告の説明義務違反の有無(争点2)
(原告の主張)
被告は,公職選挙法違反の前科2犯及び出資法違反の前科1犯を有する上,ナチス・ドイツの選挙手法を礼賛する著書(「□□」i書房)を著したというおよそ公職選挙に関与する者として不適格な履歴があるから,これらを説明せずに公職選挙に関与してはならない信義則上の義務あるいは本件契約上の義務があった。また,Bにも前科があったところ,本件契約においては公職選挙法を確実に遵守することが最重要課題であったから,被告は,原告に対してBの前科についても説明を尽くす信義則上の義務を負っていた。それにもかかわらず,原告は自身の不適格履歴及びBの前科を説明しなかったから,上記義務に違反した。
(被告の主張)
被告が選挙参謀への就任を承諾したという事実はなく,原告の主張する説明義務違反はその前提を欠く。また,平成22年時点において被告の著書出版から16年経過しており,公職選挙法違反の前科についても昭和54年の選挙に係る執行猶予付きのものと平成4年の選挙に係る略式命令で罰金となったものにすぎない上,被告は単にA議員及び原告の依頼を受けてBを紹介しただけであるから,法律上の説明義務が生じるとはいえない。そもそも,被告は前科のあることを原告に対して告知していた。
Bには約30年以上前に交通違反があるのみであるから,被告には,Bの前科に関する説明義務違反も存在しない。
(3)  損害の発生及び損害額(争点3)
(原告の主張)
被告の債務不履行又は不法行為により,原告は,①約2か月に及ぶ逮捕・勾留を受け,②身柄拘束中に会社経営上の重大な支障が生じ,③逮捕報道による名誉,信用の毀損を受けたため,精神的苦痛を被った。また,原告は,被告がc社及びg社に対して架空ないし過大な選挙印刷物を発注したことにより,c社及びg社からそれぞれ業務委託料等の請求を受け,④c社に対して和解金350万円,g社に対して和解金500万円の支払を余儀なくされた。そして,仮に被告が原告に対し被告及びBの前科等を説明していれば,原告は被告を選挙参謀に迎えることはなかったから,これらの損害は発生しなかった。
したがって,これらの損害はすべて被告の本件契約上の債務不履行又は不法行為と相当因果関係のある損害であるところ,①ないし③による精神的苦痛に対する慰謝料に,上記④に係る財産的損害を加えると,損害額は1億円を下らない。
(被告の主張)
原告の主張は,争う。
第3  当裁判所の判断
1  争点1(本件契約の成否及びこれに基づく義務違反の有無)について
(1)  認定事実
ア 前記前提事実,証拠(甲5,11,15~19,39,乙1(275頁~318頁,319頁~360頁,361頁~391頁),2(175頁~186頁,205頁~214頁,269頁~276頁),31,原告本人,被告本人)及び弁論の全趣旨によれば,被告が本件選挙運動等に関与するに至った経緯につき,次の事実が認められる。
(ア) 原告は,本件選挙への立候補を決めたものの,国政選挙の経験がなく,本件後援会にも国政選挙に詳しい者がいなかったことから,選挙実務に詳しい者を選対事務局長又は選挙参謀に迎えるべく,平成22年4月(以下「平成22年」の表記を省略する。)以降,その人選を進めたが,適切な人物を見つけることができずにいた。
(イ) 原告は,4月27日,b党の議員らと会食をした際にA議員と知り合い,同議員から原告の選挙戦を支援したい旨の申出を受け,さらに5月中旬頃に同議員と改めて面会した際,同議員から,同議員の秘書を原告の本件選対に張り付ける旨の申出を受けた。原告は,本件選対の事務局長の人選に苦慮していたことから,この申出をまたとない機会であると考え,これに応ずることとした。
(ウ) A議員は,5月18日に原告と面談した際,秘書が参加することはできなくなったと述べ,それに代わる人物として被告を紹介し,原告に対し,被告は選挙のプロ中のプロであり,被告に選挙を任せておけば間違いないとして,被告と会うことを強く勧めた。
(エ) 被告は,4月半ば頃からc社の担当者として本件後援会に出入りしていたが,A議員から原告を応援して欲しいと依頼されたため,同議員に対し,別の候補を応援するため表立って原告を支援することはできないが,印刷業者の立場でなら応援すると回答していた。
(オ) A議員は,5月20日の朝7時頃,原告に被告を引き合わせ,「Yをもっと活用せよ」と述べて被告を本件選対に入れるよう強く勧めた。そこで,原告は,同日頃,被告に対し本件後援会及び本件選対の事務局長への就任を打診したが,被告は,別の候補を応援する立場にあるため表に出ることはできないとしてこれを断り,その代わりにBを選対事務局長として推薦した上,同人のサポートはさせてもらう旨表明した。
(カ) 原告は5月22日,Bに本件後援会及び本件選対の事務局長への就任を依頼したところ,同人はこれに応じて本件後援会の事務局長に就任し,同日,八重洲事務所にBの席が設けられた。
イ また,前掲各証拠に加え,証拠(甲1,6)及び弁論の全趣旨を総合すれば,Bが本件後援会の事務局長に就任した後に被告が本件選挙運動等に関与したことを示す具体的事実として,①5月23日,100名近くが集まって行われた八重洲事務所の全体集会にA議員及びBと共に参加し,出席者の前で挨拶をして選挙の心構えを説明したこと,②同日から同月29日までの間,八重洲事務所にしばしば出入りしてBに対しアドバイスをしていたこと,③同月29日,Bが計画していた八重洲事務所における会議に参加するため,A議員及びBと共に同事務所を訪れたこと(もっとも,上記会議は,原告が別の会合を予定していたため開催できなかった。),④6月11日,本件警告に対する対応を検討する会議に原告,D弁護士,Bらと共に参加し,対応を協議したこと,⑤同月19日頃,「本件警告がされたという状況において,合法な政治活動として行った広報物の配布活動についても,配布が大量にわたり,他の配布物と共に配布され,あるいは配布先や配布の方法等の状況によっては,投票依頼行為と認定されるおそれがあるため,弁護士の決裁の下で慎重な行動をするよう期待する」という内容のc社名義(ただし,「プロデューサーY」との記名がある。)の原告宛て本件建白書(甲6)をa社の社員に交付したこと,⑥7月10日,警察車両らしき車両に乗った者が,本件選対が設置したコールセンターのあるjビルを見張っていることに気付き,本件選対を手伝っていたF(原告の長男)に対して「警察が内偵している」と告げた上,同人に指示をして,遊説中でまさに演説の最中であった原告にその旨を電話で伝えさせたこと,⑦9月10日頃,本件選挙及び本件刑事事件の強制捜査に関する事項をまとめた全5頁の同日付けのc社名義(ただし,「プロデューサーY」との記名がある。)の本件報告書(甲1)を原告に交付したこと,以上の事実が認められる。
(2)  本件契約の成否について
ア 上記認定の各事実によれば,被告は,A議員から原告の選挙を支援するよう依頼され,原告に対し,表だって支援はできないがサポートはさせてもらう旨表明した上,本件後援会ないし本件選対の事務局長としてBを紹介し,同人が本件後援会の事務局長に就任した後は八重洲事務所にしばしば出入りしてBにアドバイスをしたり,同人と共に本件後援会の会議に参加したりした上,本件建白書及び本件報告書を作成・交付し,警察の内偵を原告に知らせるなど,本件選挙運動等について,選挙運動用の広報物の制作というc社の担当者としての活動にとどまらない関与をしていたことは否定できない。
イ しかしながら,他方で,被告は,A議員から原告の応援を頼まれたが自らは事務局長に就任することなく,代わりにBを紹介したという立場にあり,被告自らが,原告との間で,原告の選挙活動を全面的に支援し,管理する旨約したことを認めるに足りる証拠はないこと,被告が,前記(1)イ①の挨拶を除き,本件選挙運動等に従事していたa社の従業員らに対し直接指示をしたりアドバイスをしたりした形跡がないこと,被告が本件選挙運動等に関して明確な形で対価を受領したことがないこと(この点に関し,原告は,c社が原告から優先的な発注を受けることにより被告が実質的対価を得ていたと主張するが,被告の選挙参謀への就任と引き換えにc社への発注がされたことを裏付ける的確な証拠は見当たらないから,上記主張は採用できない。)からすれば,被告による原告の選挙活動に対する関与は,飽くまで,A議員から原告の選挙戦を支援するよう依頼されBを事務局長として紹介したという立場,あるいは,選挙運動用の広報物を作成するというc社の担当者としての立場に基づき,事実上原告の選挙運動等を支援していたにすぎないものと認めるのが相当であり,被告が,原告に対し,本件選挙運動等に係る指導・監督等を行う契約上の法的義務を負う立場にあったと認めることはできない。
ウ この点,確かに,被告は,上記(1)イに認定したとおり,本件選挙運動等に具体的に関与していることが認められる。しかしながら,同①ないし④については,それらがいずれも被告とBが共にとった行動であったことからすれば,被告が任意にBをサポートするために出たものにすぎないとみることが可能であり,同⑤及び⑦についても,被告がc社の担当者として本件後援会及び本件選対に出入りしていたことや,本件建白書及び本件報告書はいずれもc社名義で作成されていることからすれば,いずれもc社の担当者としての業務に関連して行われたものと解することが可能であって,いずれも前記認定を左右するものではない。また,同⑥についても,被告がjビル周辺に出向いた理由等が必ずしも明らかでないものの,事務局長であるBのサポートあるいはc社の担当者としての行為としてみることも不自然ではない。そうすると,上記認定のとおりの被告の具体的な関与行為は,いずれも,本件契約の成立を推認させるに足りるものと評価することはできない。
エ 以上によれば,原告と被告との間で本件契約が成立したということはできないから,被告の同契約上の義務違反をいう原告の主張は,その前提を欠き,採用することができない。また,被告の不法行為をいう原告の主張も,本件契約の成立を前提とするものと考えられるから,やはりその前提を欠き,採用することができない。
(3)  原告の主張についての検討
ア 原告は,A議員が「Yをもっと活用せよ」などの発言をして被告を「選挙参謀」として紹介し,被告もこれを了承したのであるから,本件契約が成立したことは明らかである旨を主張する。
しかしながら,仮にA議員の内心としては原告に対して被告を選挙参謀(以下,選対において原告の主張する義務1ないし3を負う立場の者を「選挙参謀」ということとする。)にすることを勧める趣旨であったとしても,被告が同議員の勧めに応じて選挙参謀に就任するとの意向を原告に伝えたことを認めるに足りる証拠はない。かえって,前記認定のとおり,被告は,原告及びA議員の双方に対し,別の候補を応援しており表に出られない旨を述べたことや,本件選挙運動等に関し明確な形で対価を受領した事実もないことからすれば,被告には政治活動ないし選挙運動の指導・監督等に関する契約上の法的義務を負う形で本件後援会・本件選対に関与する意向はなかったものと認めるのが相当であるから,原告の上記主張は採用することができない。
イ 原告は,本件選対を組織した経緯からしても本件選対に選挙参謀が不在であったということはあり得ないなどと主張する。
しかしながら,事務局長に就任したBを被告が一定程度サポートしていたことなどにかんがみれば,本件選対に選挙参謀が不在であったとしても不自然であるとはいえない。また,原告が,本件刑事事件で証拠とされた検察官面前調書(乙7)においてBのことを「選挙参謀的な立場で選挙に関する活動を手伝ってくれていた」と述べ(なお,同供述調書において被告についての言及はない。),別の検察官面前調書(乙8)においては「Yさんとは,A衆院議員の紹介で八重洲の後援会事務所に出入りしていた人で,Bを紹介してくれた選挙のプロでもありました。」と述べていること,本件刑事事件における原告の弁護人が作成した控訴趣意書(乙28)には,選挙参謀としてBの名前が出てくるものの,被告についての言及は一切ないことからすれば,原告において,本件選挙運動等を行った当時,本件選対の事務局長や本部長に就任した者とは別の者を選挙参謀に就任させる必要があるとの認識を有していたとは認められないし,被告がBの紹介者としての立場を超えて選挙参謀に就任したとの認識を有していたとも認められない。よって,原告の上記主張は採用できない。
ウ 原告は,被告がA議員及びBと共に,本件選対において利益を簒奪する目的で本件選対に入り込み,本件支配体制を築いたことを指摘する。
しかしながら,原告の主張によっても,本件支配体制の趣旨及び本件支配体制と本件契約との関係は明らかでない上,A議員が本件支配体制を築くために被告を本件選対に押し込んだと評価し得るような事実関係も証拠上認められない。この点,原告は,印刷物の過剰発注が本件支配体制による利益簒奪の一環であると主張するが,c社訴訟の和解内容にかんがみれば,c社に対する印刷物の発注が過剰であったと直ちに認めることはできないし,証拠(甲3,14)によれば,g社への発注については一部過剰ないし不当なものがあったことがうかがわれるものの,これに被告が関与していたことを示す的確な証拠はなく,A議員らがg社を利益簒奪の手段とするような人的関係もうかがわれないから,これをもって本件支配体制の存在を裏付ける事実とみることもできない。その他,原告は,A議員,被告及びBの三者による不正な資金流出についてるる主張するが,これが不正な資金流出であること及びこれに被告が関与していたことを認めるに足りる的確な証拠はないし,これをもって原告が主張する本件契約の成立を裏付ける事情であるともいい難い。
よって,本件支配体制に関する原告の主張を踏まえても,本件契約の成否に関する前記判断は左右されないし,本件支配体制による利益簒奪が被告の原告に対する不法行為責任を基礎づけるものとみることもできない。
エ なお,原告は,原告が本件選挙運動に関し公職選挙法違反の罪で処罰されることになったのは,被告及びBが,原告に対し適切なアドバイスをしなかったため,捜査当局からあらぬ嫌疑を受けるようになったためであると主張しているところ,その趣旨は,本件契約の成否にかかわらず,被告が本件選挙運動に関し原告が処罰されたことにつき不法行為責任を負うことをいうものと解する余地もある。
しかしながら,証拠(乙6,7,26)によれば,原告は,1月下旬頃以降,b党の衆議院議員であるG,参議院議員であるH及び元国会議員のI(以下「I」という。)から選挙運動のスケジュールや戦略についての説明を受ける中で,ウグイス嬢など限定された場合を除き選挙運動員に金銭を支払うことはできないため,a社の社員を選挙運動に携わらせる場合には休職届を提出させてボランティアとして行わせる必要があることの説明を受け,その後,選挙コンサルタント契約を締結してアドバイスを受けていたIから,a社の社員には休職届を出させてボランティアでやっていることをはっきりさせないと運動員買収という罪になるが,例えば9時5時はきちんと仕事をさせて5時以降にボランティアでやらせる方法もあるし,もし完全に選挙運動に専従させるのであれば,4月から6月までは全く給料を出さずに半年くらい経ってから支払うという方法もあるなどと具体的なアドバイスを受けたこと,原告は,上記のアドバイス及びBのアドバイスに従い,幹部社員に命じて選挙運動に従事させていた社員らから休職届を提出させたものの,ボランティアの趣旨を徹底しなかったため,当該幹部社員らは,当該社員らに対し給与を何らかの方法で支払うから心配ない旨説明したことが認められる。
以上の事実からすると,原告は,被告を紹介される以前から本件選挙運動等における選挙違反防止のための指導を受けながら,これに沿った対応をあえて行わなかったのであり,そのために本件有罪判決を受けるに至ったものというべきであって,かかる経緯に被告又はBが何らかの積極的な関与を行ったことをうかがわせる証拠は見当たらない。
そうすると,原告が本件選挙運動に関し検挙され,有罪判決を受けたことについて,被告が原告に対し不法行為責任を負うとは認められない。
2  争点2(被告の説明義務違反の有無)について
(1)  被告の前科について
ア 被告が公職選挙法違反の前科2犯及び出資法違反の前科1犯を有すること及び平成6年にヒトラーの選挙戦略に関する書籍を出版したこと(以下「本件出版」という。)については,争いがない。
イ 被告は,5月20日頃にA議員及び原告の同席の下で,前科があるので事務所には入れない旨を説明したと供述するとともに,この際の状況について,前科の具体的な内容を説明することはしなかったが,A議員及び原告において被告の前科に対して驚いた様子はなかった旨供述する。しかしながら,後記ウのとおり一定の期間内に一定の前科を有する者は選挙運動をすることができないことからすれば,A議員が原告に対して被告を紹介した場面においては,被告の前科の有無及びその具体的内容はA議員及び原告の関心事であったはずである。そうすると,被告の供述内容は,A議員が原告に対して被告を紹介した際の各自の言動として不自然な内容といわざるを得ず,信用することはできない。
よって,被告は,原告に対して自身の前科を説明していなかったと認められる。また,弁論の全趣旨によれば,被告は,本件出版についても原告に説明していなかったと認められる。
ウ ところで,公職選挙法137条の3が,同法252条又は政治資金規正法28条により選挙権及び被選挙権を有しない者(公職選挙法252条については,同法所定の罪を犯して罰金の刑に処せられ,裁判の確定から5年以内の者や,同法所定の罪を犯して禁固以上の刑に処せられ,刑の執行を終えるまでの者及び終えた後5年以内の者など。政治資金規正法28条については,同法所定の罪を犯して罰金の刑に処せられ,裁判の確定から5年以内の者など。)は選挙運動をすることができない旨を定めていることからすれば,上記各規定に該当する者又は上記各規定に準ずる事由を有する者が,候補者のために選挙運動又はこれに類する活動を行おうとする場合には,当該候補者に対し,その旨を説明するべき信義則上の義務があると解する余地がある。
エ もっとも,被告と原告との間で本件契約が成立したとは認められないことは前記のとおりであり,被告は事務局長であるBの事実上のサポート,あるいはc社の担当者としての立場で前記1(1)認定の各行為を行ったにすぎないから,そもそも選挙参謀としての適格性に関する事項について説明すべき信義則上の義務を負うということはできない。加えて,証拠(乙1(275頁~318頁),31)及び弁論の全趣旨によれば,被告の公職選挙法違反の前科は昭和54年の選挙に係る執行猶予付きのもの及び平成4年の選挙に係る略式命令で罰金となったもの,出資法違反の前科は平成10年の行為に係るものであると認められ,いずれも上記各規定に該当したり,それらの事由に準じたりするとはいえない。また,本件出版については,選挙運動に関与するに際し,選挙に関する過去の著作についてすべて告知すべき義務があるとは直ちにはいい難い上,証拠(甲10の1)によれば,本件出版の事実はインターネット上で広く公開されていたことが認められる。これらの事情にかんがみれば,被告が本件選挙運動等に関連する行為である前記1(1)認定の各行為を行うに際し,前科及び本件出版について説明しなかったことについて,信義則上の説明義務違反があるとはいえない。
(2)  Bの前科について
証拠(乙1(319頁~360頁))によれば,Bには本件選挙運動等に関与する約30年弱前に交通違反の前科があると認められるところ,被告本人によれば,被告はBを原告に紹介するに際し,上記前科を原告に伝えていなかったと認められる。しかしながら,Bの上記前科は,前記公職選挙法又は政治資金規正法の各規定に該当したり,それらの事由に準じたりするとはいえないことに加え,被告がBを原告に紹介した立場にすぎないことにかんがみれば,被告にこれを説明すべき信義則上の義務があったとはいえない。
3  結論
以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第16部
(裁判長裁判官 谷口安史 裁判官 川﨑学 裁判官 丹野由莉)

 

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