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「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(13)平成29年 3月 8日 東京地裁 平26(行ウ)300号 地位確認等請求事件

「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(13)平成29年 3月 8日 東京地裁 平26(行ウ)300号 地位確認等請求事件

裁判年月日  平成29年 3月 8日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(行ウ)300号
事件名  地位確認等請求事件
裁判結果  主位的請求棄却、第1次予備的請求一部却下、一部棄却、第2次予備的請求棄却  文献番号  2017WLJPCA03086008

事案の概要
◇原告が、平成20年4月から本件公共職業安定所に早期再就職専任支援員(就職支援ナビゲーター)として期間限定にて採用され、同採用の更新を繰り返してきたが、平成26年3月末日の期間満了時に再採用されなかったことから、期間業務職員制度は日本国憲法73条、41条に違反し、公共職業安定所における恒常的な官職である就職支援ナビゲーターに期間業務職員を充てることは国家公務員法等に違反する上、原告には私法上の雇用契約と同様にいわゆる雇止め法理の類推適用があるなどと主張して、被告国に対し、主位的に、就職支援ナビゲーターとしての地位の確認及びその地位に基づく給与の支払を求め、予備的に、就職支援ナビゲーターに任用することの義務付け及び給与の支払を求め、さらに予備的に、採用の期待権を違法に侵害する職務上の注意義務違反があったと主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた事案

裁判経過
控訴審 平成29年10月17日 東京高裁 判決 平29(行コ)114号 地位確認等請求控訴事件

裁判年月日  平成29年 3月 8日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(行ウ)300号
事件名  地位確認等請求事件
裁判結果  主位的請求棄却、第1次予備的請求一部却下、一部棄却、第2次予備的請求棄却  文献番号  2017WLJPCA03086008

東京都多摩市〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 小島啓達
同 谷村明子
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 国
同代表者法務大臣 A
処分行政庁 東京労働局長
被告指定代理人 W1
同 W2
同 W3
同 W4
同 W5
同 W6
同 W7
同 W8
同 W9
同 W10
同 W11
同 W12
同 W13
同 W14
同 W15

 

 

主文

1  原告の主位的請求をいずれも棄却する。
2  原告の第1次予備的請求のうち,原告を東京労働局a公共職業安定所における就職支援ナビゲーターとして任用することの義務付けを求める訴えを却下する。
3  原告のその余の第1次予備的請求及び第2次予備的請求をいずれも棄却する。
4  訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  主位的請求
(1)  原告が東京労働局a公共職業安定所における就職支援ナビゲーターの地位にあることを確認する。
(2)  被告は,原告に対し,平成26年4月1日から本判決確定の日まで翌月15日限り月額27万3940円の割合による金員及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  第1次予備的請求
(1)  被告は,原告を東京労働局a公共職業安定所における就職支援ナビゲーターとして任用せよ。
(2)  主位的請求(2)と同旨
3  第2次予備的請求
被告は,原告に対し,金330万7531円及びこれに対する平成26年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
原告は,平成20年4月から東京労働局a公共職業安定所(以下「a公共職業安定所」という。)に,早期再就職専任支援員(就職支援ナビゲーター。以下,このように称する。)として期間限定(当初は日々雇用,平成23年からは期間業務職員という地位)にて採用され,同採用の更新を繰り返してきたが,平成26年3月末日の期間満了時に再採用されなかった(以下「本件不採用」という。)。本件は,原告が,本件不採用に関し,①期間業務職員制度は憲法73条,41条に違反すること,②公共職業安定所における恒常的な官職である就職支援ナビゲーターに期間業務職員を充てることは,国家公務員法(以下「国公法」という。)及びその委任を受けた人事院規則並びに国際労働機関(ILO。以下「ILO」という。)の「職業安定組織に関する条約(第88号)」(昭和29年条約第19号。以下「本件ILO条約」という。)に違反すること,③複数回にわたり就職支援ナビゲーターとしての採用を繰り返してきた原告には,私法上の雇用契約と同様にいわゆる雇止め法理の類推適用(労働契約法19条参照)があることを理由に,原告が期間の定めのない就職支援ナビゲーターとしての地位を有する旨主張して,被告に対し,主位的に就職支援ナビゲーターとしての地位の確認及びその地位に基づく給与の支払を請求し,第1次予備的請求として,就職支援ナビゲーターに任用することの義務付け及び給与の支払を請求し,さらに,第2次予備的請求として,主位的請求及び第1次予備的請求がいずれも認容されないときは採用の期待権を違法に侵害する職務上の注意義務違反があったと主張して,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償の支払を請求した事案である。
1  前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠等により容易に認められる事実。証拠等の掲記のない事実は,当事者間に争いがない。)
(1)  公共職業安定所の概要等
ア 被告は,厚生労働省の地方支分局として各都道府県に労働局を,その下部機関として公共職業安定所をそれぞれ設置し,求職者に対しての就職に関する相談や指導,職業紹介,雇用保険の受給手続などのサービスを提供している。東京都b市には,東京労働局管下のa公共職業安定所を設置している。
イ 厚生労働省は,職業相談員規程(平成13年厚生労働省訓第57号)で,①年少就職者,障害者の適正な職業選択及び就職後における職場への適応の促進に関する業務の円滑に資するため,公共職業安定所に職業相談員(以下「相談員」という。)を置くこと,②相談員は,社会的信望があり,かつ,その職務を行うのに必要な熱意と識見を有する者のうちから委嘱すること,③相談員の職務は,公共職業安定所長の定めるところにより,上記①の者及びこれらの者を雇用する事業主の相談に応じ,必要な援助及び指導を行うことであること,④相談員の任期は,その採用の日から同日の属する会計年度の末日までの期間の範囲内とすること,⑤相談員は非常勤とすることなどを定めている。
相談員は,支援対象者等に応じて多数の種類があるが,平成23年度以降は,これらを大括り化した大分類とこれを小分けした小分類で整理されている。厚生労働省は,公共職業安定所に相談員として「早期再就職専任支援員(就職支援ナビゲーター)」(平成23年度以降の名称は「就職支援ナビゲーター(早期再就職支援分)」)を置き,就職支援事業の一つである「就職支援プログラム事業」(雇用保険受給資格者のうち,特に早期の再就職の意欲が高く,支援の必要性が高い求職者に対し,その個々のニーズを踏まえた計画的で一貫した支援を行い,支援開始後二,三か月での再就職の実現に資することを目的に実施される事業)に常勤職員とともに従事させている。また,相談員として「就職支援ナビゲーター(就労支援分)」も置き,就職支援事業の一つとして,矯正施設の出所者並びに保護観察及び更生緊急保護の対象者(以下「刑務所出所者等」という。)の就労を支援し,その改善更生を図り,再犯を防止するため,矯正施設や更生保護機関と連携して,刑務所出所者等の社会的自立等を実現させること等を目的とする事業である「刑務所出所者等就労支援事業」に常勤職員とともに従事させている。「就職支援ナビゲーター(早期再就職支援分)」と「就職支援ナビゲーター(就労支援分)」は,ともに同一の大分類(就職支援ナビゲーター)に属している。
(以上,甲1,乙5ないし乙9,乙13,乙15,乙17,乙19)
ウ 従来,公共職業安定所における求職者に対する求人情報の提供,求職に関する指導等の相談,援助及び指導に関する業務は常勤職員が担っていたが,相談員の導入に伴い,非常勤の職員もこれを担うようになった。平成25年度においては,公共職業安定所の全職員2万7877人のうち,約60パーセントの1万6737人を非常勤職員が占めている。a公共職業安定所では,平成22年度以降,常勤職員七十数名,期間業務職員百数名と期間業務職員の人数が常勤職員の人数を上回っており,東京労働局全体でもほぼ同様の状況となっている。(弁論の全趣旨)
(2)  我が国における国家公務員制度(特に期間業務職員制度の概要)
ア 国公法は,国家公務員の職を一般職と特別職に分け,一般職をその適用対象として(2条1項ないし同条5項),任用,給与その他の勤務条件,服務,身分保障等を定めている。同法は,平等取扱の原則(27条)とともに,職員の任用は同法及び人事院規則の定めるところにより受験成績,勤務成績又はその他の能力の実証に基づき,免職は法律の定める事由に基づくとする任免の根本基準(33条)を定めている。同法は,中央人事行政機関として人事院及び内閣総理大臣を定め(同法第2章),人事院は,その所掌事務について,法律を実施するため,又は法律の委任に基づいて,人事院規則を制定し,又は改廃できる(16条)。また,同法附則13条(以下「国公法附則13条」という。)は,「一般職に属する職員に関し,その職務と責任の特殊性に基いて,この法律の特例を要する場合においては,別に法律又は人事院規則(人事院の所掌する事項以外の事項については,政令)を以て,これを規定することができる。但し,その特例は,この法律第1条の精神に反するものであつてはならない。」と定めて,同法の特例となる人事院規則を制定することを認めている。
イ 労働契約法22条1項は,国家公務員及び地方公務員を同法の適用から除外している。
ウ 一般職の国家公務員は,その勤務形態に応じて,常時勤務することを要する常勤職員と,常時勤務することを要しない非常勤職員に区分される。従前,非常勤職員は,任期を1日単位とする日々雇用職員と,勤務時間が常勤職員の勤務時間の4分の3を超えない範囲で定められているパートタイムの職員に区分されていた。日々雇用職員に関しては,閣議決定(昭和36年2月28日付け「定員外職員の常勤化の防止について」。以下「常勤化防止閣議決定」という。)により一定の任用予定期間を定め,特段の事情がない限り,任用予定期間終了まで雇用し,その後,再度任用される運用もされていたが,任期が1日単位であることから,任用予定期間中でも退職させることができるとされて,制度上,日々雇用職員が不安定な地位に置かれていることが指摘されていた。人事院は,平成21年3月,日々雇用職員の制度を廃止するとともに,人事院規則8-12(職員の任免)を制定して,「期間業務職員」の制度を導入した。(乙2,乙25,乙45,乙46,弁論の全趣旨)
エ 人事院規則8-12及びその運用に関する「人事院規則8-12(職員の任免)の運用について」と題する人事院の通知(乙3。以下「人事院規則8-12通知」という。)は,短時間再任用その他人事院が定める官職(人事院規則8-12通知に基づき,その官職を占める職員の勤務時間が常勤職員の勤務時間の4分の3を超えない時間であるもの)を除く,「相当の期間任用される職員を就けるべき官職以外の官職である非常勤官職であって,一会計年度内に限って臨時的に置かれるものに就けるために任用される職員」を「期間業務職員」と定義し(4条13号),非常勤職員を期間業務職員とそれ以外の非常勤職員に区分した。人事院規則8-12及び同通知は,①職員の採用は原則として採用試験及び面接によること(8条),②「恒常的に置く必要がある官職に充てるべき常勤の職員」は原則として任期を定めて任命してはならないこと(42条)を定める一方,非常勤職員に関する特例として,③期間業務職員は面接及び経歴評定その他の適宜の方法による能力の実証を経て行うことができること(46条1項),④任命権者は,非常勤職員の採用にあたって,インターネットの利用,職業安定所への求人申し込み等による告知を行い,できるかぎり広く募集を行うが,期間業務職員を採用する場合で,能力の実証を面接及び期間業務職員としての従前の勤務実績に基づき行うことができる場合であって公募による必要がないときとして人事院が定めるとき(人事院規則8-12通知に基づき,「前年度に設置されていた官職で,補充しようとする官職と職務の内容が類似するもの(補充しようとする官職の任命権者が任命権を有していたものに限る。)に就いていた者を採用する場合」において,面接及び当該類似する官職における勤務実績で能力の実証ができると明らかに認められる場合)はこの限りでないこと(46条2項),⑤期間業務職員を採用する場合は,当該採用の日から同日の属する会計年度の末日までの期間の範囲内で任期を定めること(46条の2第1項),⑥任命権者は,特別の事情により期間業務職員をその任期終了後も引き続き期間業務職員の職務に従事させる必要が生じた場合には,上記⑤の期間の範囲内で任期を更新できること(46条の2第2項),⑦任命権者は,期間業務職員の採用又は任期の更新に当たっては,業務の遂行に必要かつ十分な任期を定めるものとし,必要以上に短い任期を定めることにより採用又は任期の更新を反復して行うことのないように配慮しなければならず,期間業務職員以外の非常勤職員に任期を定める場合も同様とすること(同条3項,4項),⑧非常勤職員の任期を定めた採用及び更新では,当該職員にその任期を明示しなければならないこと(同条5項,42条3項),⑨任期を定めて採用された場合,その任期が終了したときは,その任期が更新されないときは,職員は当然に退職すること(52条3号)を定めている(乙1,乙3)。
オ 人事院事務総局人材局長は,期間業務職員の採用に関し,「期間業務職員の適切な採用について(平成22年8月10日人企-972)」と題する通達(乙4)において,任命権者は,①国公法の平等取扱の原則及び任免の根本基準(成績主義の原則)を踏まえ,前記エの④の期間業務職員の公募によらない採用につき,同一の者について連続2回を限度とするよう努めること,②同じく期間業務職員の公募によらない採用では,面接及び従前の勤務実績に基づき,能力の実証を適切に行う必要があること,③期間業務職員の円滑な人事管理を確保するため,任期終了に際し,期間業務職員に対して公募によらない採用の有無など必要な情報を適切に提供するよう努めることを定めている。
カ 相談員は,従前,日々雇用職員として委嘱されていたが,平成23年度以降は期間業務職員として採用されている(乙24,乙25,弁論の全趣旨)。
(3)  本件ILO条約
ア ILOは,国際労働機関憲章(以下「憲章」という。)に基づいて設置された労働条件の改善などを目的とする国際機関であり,我が国もその加盟国である。
イ 憲章は,①ILOは,その総会で労働に関する国際条約及び勧告を採択し,各加盟国は,立法その他の措置のため条約及び勧告を権限のある機関に提出し,加盟国は,権限のある機関の同意を得なかったときも関係する事項に関する自国の法律及び慣行の現況をILO事務局長に報告すること(19条),②ILO事務局は,各加盟国から当事国となった条約の規定を実施するために執った措置につき年次報告を受けること(22条),③ILO理事会は,使用者又は労働者の産業上の団体から条約の実効的な遵守を当事国が確保していないことの申立てを受け,当該当事国の政府に弁明をするよう勧誘し,一定の場合,この申立て及び弁明を公表すること(24,25条),④ILO理事会は,他の加盟国からの苦情,理事会の発意及び総会における代表からの苦情に基づいて,加盟国が批准した条約の実効的な遵守を確保していないことを審議し,苦情に応ずるために執るべき措置及びその期限についての勧告を含む報告書を作成する審査委員会を設けること(26条,28条),⑤ILO事務局長は,上記④の報告書を理事会及び関係する各政府に送付し,公表すること(29条1項),⑥各政府は,上記④の勧告を受託するか,受託しない場合,国際司法裁判所に付託する意図があるか,ILO事務局長に通知すること(29条2項),⑦加盟国が上記④の報告書又は国際司法裁判所の決定に含まれている勧告を期間内に履行しなかったときは,ILOの理事会は,勧告の履行を確保するための適宜と認める措置を総会に勧告することができること(33条)などを定めている。ILOは,上記①,②の報告を検討する「条約・勧告の適用に関する専門家委員会」(以下「条約勧告適用専門家委員会」という。)及び「基準の適用に関する総会委員会」を設けている。上記③の申立てがあったときは,ILO理事会は,その申立て及び弁明を審査し,理事会に報告する委員会を設けている(甲20,21)。
ウ ILOは,昭和23年7月,その総会において,本件ILO条約を採択した。我が国においては,同条約について,昭和28年,国会承認及び批准登録を経て,昭和29年10月20日,公布を行い,その効力が発生した。同条約9条1項は「職業安定組織の職員は,分限及び勤務条件について,政府の更迭及び不当な外部からの影響と無関係であり,且つ,当該組織上の必要による場合を除く外,身分の安定を保障される公務員でなければならない」と定めている。(乙52)
(4)  原告の採用から本件不採用に至るまでの経緯
原告は,平成20年4月から平成26年3月まで,a公共職業安定所において,相談員として勤務した。原告の国公法上の地位は,平成23年3月までは任期を1日単位とする日々雇用職員,同年4月からは任期を毎会計年度の末日(翌年3月31日)までとする期間業務職員としての地位であった。その経過の概略は,以下のとおりである。
ア 原告は,平成20年2月,a公共職業安定所の公募に応募した。その公募では,求人の条件として,パソコンのスキルのほか,3年以上の職業相談業務の経験又は産業カウンセラー,キャリアコンサルタント等の相談員としての資格が求められていた。
イ 原告は,平成20年4月1日,東京労働局長から委嘱予定期間を平成21年3月31日までとして,早期再就職専任支援員(就職支援ナビゲーター)を委嘱された。原告は,a公共職業安定所の職業相談部(その長は職業相談部長)の職業相談第1部門に所属し,職業相談第1部門の長を務める統括職業指導官(以下「統括」という。)の管理下において,常勤職員概ね3名(うち1名はグループの長となる上席職業指導官)とともにグループを構成して,雇用保険受給者に対する個別支援(履歴書・職務経歴書の作成や採用面接に関する指導,応募先企業に関する情報収集補助,相談,助言等),一般紹介窓口における職業相談・職業紹介(一般相談,継続相談,紹介状発行等),就職支援セミナー(以下「セミナー」という。)の講師等の業務に従事した。以降,平成23年3月まで,毎年4月1日に,それぞれ委嘱予定期間を翌年3月31日までとして,早期就職専任支援員(就職支援ナビゲーター)に委嘱されて,日々雇用職員としてa公共職業安定所に勤務した。グループの構成は,平成21年度以降は,常勤職員概ね2名と早期就職専任支援員(就職支援ナビゲーター)3名の5人体制に変更された。それぞれの委嘱の際には,委嘱書(甲3,甲5,乙8,乙9,乙11)及び労働条件通知書(甲4,甲6,乙10,乙12)が交付されたが,委嘱予定期間は,委嘱書では「任期」と,労働条件通知書では「委嘱期間」と表記されており,いずれの書面にも任期1日の日々雇用職員であることの明記はない。労働条件通知書には「契約更新の有無」として「更新する場合があり得る(自動更新は行わない)」「契約の更新は,次の中で総合的に判断する」「勤務実績,態度,能力,及び従事する業務の予算状況等により判断する」との記載がある。(甲3ないし甲6,乙8ないし乙12,弁論の全趣旨)
ウ 原告は,平成23年4月1日,東京労働局長により,平成24年3月31日までの任期で期間業務職員(就職支援ナビゲーター)に採用された。以降,原告は,平成26年3月まで,毎年4月1日に翌年3月31日までを任期とする期間業務職員(就職支援ナビゲーター)に採用されて,a公共職業安定所に勤務した。それぞれの採用の際には採用辞令(甲7,乙13,乙15,乙17)及び労働条件通知書(甲8,乙14,乙16,乙18)が交付された。平成23年4月1日及び平成24年4月1日の各採用時に交付された労働条件通知書(乙14,乙16)には,「契約更新の有無」又は「契約終了後の再採用の有無」として「更新する場合がありうる(自動更新は行わない)」,「契約の更新」又は「契約終了後の再採用」は「次の中で総合的に判断する」「勤務実績,態度,能力,及び従事する業務の予算状況等により判断する」との記載がある。平成25年4月1日の採用時に交付された労働条件通知書(甲8,乙18)には,「契約終了後の再採用の有無」につき「再採用は行わない。」「契約終了後の採用については,原則として公募による。」との記載がある。(甲7,甲8,乙13ないし乙18)
エ 原告は,平成24年3月31日まで早期就職専任支援員(就職支援ナビゲーター)(平成23年度以降の名称は「就職支援ナビゲーター(早期再就職支援分)」)として,「就職支援プログラム事業」における業務に従事してきた。平成24年4月1日に採用された後は就職支援ナビゲーター(就労支援分)として,刑務所出所者等就労支援事業におけるc拘置所での釈前講話(釈放前の収容者に実施される講話),個別相談,模擬面接等,保護司と協力した協力雇用主の開拓,保護司会の依頼を受けた同会での講話(常勤職員と分担)などを行った。一般求職者を対象とする相談やセミナー講師の業務も務めた。(弁論の全趣旨)
オ 原告は,平成26年1月,同年4月以降も勤務するためには,公募に応募する必要があることを説明され,同年2月,一般公開前の求人票(甲11)を提示された。原告は,同月13日,求職票(甲12)を提出して,これに応募した。原告は,同月17日,選考のための面接を受けた。
カ 原告は,平成26年2月18日ころ,上司から,面接の結果,原告を採用しないことに決まった旨告げられた(本件不採用)。原告は,本件不採用の理由を文書にするよう申し入れたが,a公共職業安定所はこれに応じなかった。
キ 原告は,平成26年3月31日,平成25年4月1日付け採用における平成26年3月31日までの任期を終えた(甲7,乙17,乙18)。
ク 原告の勤務日は,平成20年4月1日から本件不採用まで一貫して,勤務指定表で指定する毎月20日間とされていた。平成25年4月1日の採用では給与は,謝金日額1万3697円(20日分は金27万3940円)と定められていた(甲4,甲6,甲8,乙10,乙12,乙14,乙16,乙18)。
2  争点
(1)  期間業務職員制度の違憲・違法の有無
(2)  就職支援ナビゲーターを期間業務職員として採用することの違法の有無
(3)  本件ILO条約違反の有無等
(4)  雇止め法理の類推適用の可否
(5)  国家賠償法1条1項の責任の有無~期待権侵害の有無等
(6)  義務付けの訴えの適否
3  争点に関する当事者の主張
(1)  争点(1)(期間業務職員制度の違憲・違法の有無)について
(原告の主張)
ア 国公法は,全体の奉仕者(憲法15条2項)として,公務員を職務に専念させ,公務の民主的・能率的運営を期するため,公務員の身分を保障し(国公法75条1項),その任期を原則無期限としており,例外として条件附任用(同法59条)と臨時的任用(同法60条)を定めているにとどまる。国公法自体でなく,人事院規則において,期間の定めのある任用である期間業務職員制度を定めることは,憲法が41条で国会を唯一の立法機関と定め,73条4号で内閣が「法律の定める基準に従ひ,官吏に関する事務を掌理すること」を定めていることに反し,違憲である。
イ 国公法附則13条は,国公法の特例となる定めを人事院規則に置くことを認めているが,人事院規則8-12は,期間業務職員の定義(4条13号)と非常勤職員の採用方法(46条1項)のみを定め,それ以上に期間業務職員の任用,業務について何も規定していないから,期間業務職員の制度を設ける根拠として不十分である。
ウ 以上によれば,期間業務職員の制度は違憲・違法で,原告の期間業務職員としての採用は,そのままでは無効であるが,合憲的,合法的に解釈すれば,国公法の原則どおり,任期無期限として採用されたというべきである。そのような解釈が信義則や権利濫用法理にもかなうというべきである。
(被告の主張)
ア 人事院規則8-12により期間業務職員制度を設けることが違憲・違法である旨の原告の主張は,いずれも争う。
イ 仮に,期間業務職員の制度又は原告の期間業務職員としての採用が違憲又は違法であれば,採用そのものが無効又は不存在となるから,原告が任期無制限の職員の地位を有することにはならない。また,公務員の地位は諸法令を前提とした任用行為(採用)の内容によってのみ決定されるべきもので,任期を定めた採用を任期の定めなく公務員として任用されたものと解釈することは国公法の定めに反し,失当である。
(2)  争点(2)(就職支援ナビゲーターを期間業務職員として採用することの違法の有無)について
(原告の主張)
ア 期間業務職員は,「一会計年度内に限って臨時的に置かれる」官職に就けるために任用される職員と定義され(人事院規則8-12第4条13号),恒常的な業務を担うものではないが,就職支援ナビゲーターは,前身の就職支援相談員の制度が平成12年に開始されて以来,15年にわたって存在しており,公共職業安定所の中核を占める恒常的な官職である。国公法には臨時的任用(60条)以外に期限付任用を認める規定はなく,国公法附則13条に基づく特例としても,業務そのものが一定期間で廃止又は終了となる非恒常的な業務であること,又は一時的な量的拡大に対して緊急かつ臨時的な対応を要する恒常的業務であるという特段の事情を要するべきだが,そのような事情はないから,就職支援ナビゲーターに期間業務職員を充てることは,人事院規則8-12第4条13号に違反する。
イ 公共職業安定所では,非常勤職員である期間業務職員が職業紹介の業務も担うなど,常勤職員との業務の違いはほとんどなく,勤務時間,必要な専門性,能力,組織内の位置付けにもほとんど差はない。近年,公共職業安定所の全職員のうち約60パーセントを非常勤職員が占め,求職者の増加にもかかわらず常勤職員の数は減少して,非常勤職員が常勤職員の減少分を担い,相当期間継続して任用されている現状がある。
原告の業務も常勤職員の業務と同様で,原告は,職業相談,職業紹介の業務につき,自己の経験,知識,判断によって従事しており,常勤職員から指揮命令を受けることは皆無であった。常勤職員とのミーティングも連絡事項の伝達や一般的な訓示のみであり,セミナー講師の業務も,具体的な内容の企画は原告が行っていた。
このように,原告を含む就職支援ナビゲーターは,常勤職員と同じく,「特別の習熟,知識,技能又は経験を必要とする業務」に従事していた。これらの業務は,いずれも一会計年度で終了することなく,長期間継続する必要のあるものであって,任期の限られた期間業務職員を充てることは不合理であり,むしろ,これらの業務に従事する者を任期の定めのない公務員と同様に扱うべきである。
ウ 以上によれば,原告を含む就職支援ナビゲーターは,常勤職員と同様に扱われるべきであり,又は任期の限られた期間業務職員には当たらないというべきであるから,本件不採用で原告を採用しないことは,法の下の平等を定める憲法14条1項,国民の勤労の権利を保障した同法27条に違反するとともに,期間業務職員制度を定める人事院規則8-12第4条13号に違反する。
(被告の主張)
ア 職業安定所の常勤職員は,包括的な職業相談・職業紹介業務のほか,部署全体のマネジメント,関係機関との連携,各種事業の企画立案,目標管理,非常勤職員の管理・指導等の重要職務を担っているのに対し,就職支援ナビゲーターを含む相談員は,各種の就職支援事業に基づく業務を実施するため,支援対象者の類型に対応して設置された特定の業務のみを常勤職員の指揮命令下で遂行しており,特定の支援事業と切り離して業務は存在しないものであって,継続して勤務することが前提になるものではないし,常勤職員と同様の高い専門性や能力が要求されるものでもない。厚生労働省は,かかる業務の性質を踏まえ,一会計年度ごとに雇用失業情勢を踏まえて,業務の必要性を検討し,予算の範囲内で就職支援ナビゲーターを含む相談員を設置している。
このように,就職支援ナビゲーターは恒常的に置かれた官職ではなく,常勤職員と同様の業務を行っているものでもないから,「相当の期間任用されるべき職員を就けるべき官職以外の官職である非常勤官職」に該当するのであり,これを期間業務職員として任用することが期間業務職員制度を定める人事院規則8-12第4条13号に違反するものではない。また,就職支援ナビゲーターを常勤職員と同様の扱いをしないことが,憲法14条1項,27条に違反するものでもない。
イ 公務員の勤務条件等は,国公法を始めとする法令で詳細かつ厳格に定められているから,公務員の地位は諸法令を前提とした任用行為(採用)の内容によってのみ決定されるべきものであるところ,原告の任期は終了しており,仮に本件不採用に違法があったとしても,新たな任用行為(採用)がない以上,就職支援ナビゲーターとしての地位にあるということはできない。そもそも,原告が期間業務職員として採用されたのでなければ,採用自体が無効又は不存在となるほかはない。
(3)  争点(3)(本件ILO条約違反の有無)について
(原告の主張)
ア 以下のとおり,就職支援ナビゲーターに期間業務職員を充てることは,職業安定組織の職員は身分の安定を保障される公務員でなければならない旨を定めた本件ILO条約9条1項に違反するから,原告の採用に当たり,期間業務職員として1年間の任期を付したことは,違法・無効である。同様に,原告が「当該組織上の必要による場合」でないにもかかわらず,本件不採用となったことも本件ILO条約9条1項に違反するというべきである。
すなわち,同条項は,求職者に対する指導,相談,職業紹介,雇用保険支給等の業務を行う公共職業安定所職員の職務の民主性,能率性及び公平性を担保するという趣旨に出たものであるところ,「身分の安定を保障される公務員」とは,単に任期途中で免職を受けないというだけでなく,実質的に継続雇用が保障され,地位に不安を抱くことがない程度の真の身分保障がされた公務員を指すというべきである。国公法75条による身分保障が及んでも,一会計年度内という任期しか定められず,労働局長の裁量次第で再採用が左右される,不安定な期間業務職員の地位では不十分である。
イ 被告は,本件ILO条約につき直接適用可能性がない旨主張するが,条約も国内法的効力が認められる以上,原則として直接適用可能と推定すべきで,直接適用可能性がないことは,直接適用を否定する側において,個々の条約の内容,趣旨に即して個別具体的に主張立証すべきである。私人の権利義務が具体的に定められていなくても,国内の司法機関又は行政機関でそれ以上の措置を必要とせずに適用される条約も多く,その点は,国内における直接適用の要件にはならない。条約が「権限ある機関」による決定や予算措置を前提としていても,それだけで直接適用の可能性は否定されない。個人から国家に対する請求の根拠としては条約の内容が明確とはいえなくても,国家の行為の違法性を認定する根拠としては,条約の内容に十分な明確性があるといえることもあるし,直接適用ができなくとも,国内法の解釈基準になることはできる。原告は,本件訴訟において,条約を根拠として創設された権利を主張しているのではなく,期間業務職員としての採用及び本件不採用の違法性の根拠として援用しているに止まるから,本件ILO条約が直接適用されるか否かは問題にならない。
(被告の主張)
ア 就職支援ナビゲーターに期間業務職員を充てることなどが,本件ILO条約9条1項に違反する旨の原告の主張については,いずれも争う。期間業務職員も国公法上の国家公務員であり,本件ILO条約に基づく国内措置の一つでもある国公法75条に基づいて身分が保障されているから「身分の安定を保障される公務員」に当たる。原告は,単に任期終了で公務員としての身分を失ったに過ぎず,本件ILO条約9条1項には反しない。
イ また,以下のとおり,本件ILO条約は,その規定するところに従って,国内法の制定や予算措置等を講ずることを求めるに止まり,同条約が直接国内法規として適用されるものではない。すなわち,条約が国内法的効力を有するとしても,個々の国民が条約を直接の法的根拠として具体的な権利又は法的地位を主張し,裁判所が法的紛争を解決するに際し条約を直接適用して結論を導く可能性(条約の直接適用可能性の問題)は,別途検討されるべき問題であるところ,条約をそのまま国内的に直接適用するためには,①条約の作成・実施の過程において,私人の権利義務を定め,直接に国内裁判所で執行可能な内容のものとするという締約国の意思が確認できること(主観的要件),②私人の権利義務が明白,確定的,完全かつ詳細に定められていて,その内容を具体化する法令を待つまでもなく,又は国家の裁量の余地がなく,国内的に執行できるような条約規定であること(客観的要件)を要するものであって,本件ILO条約については,そのいずれも満たさない。
(4)  争点(4)(雇止め法理の類推適用の可能性の可否)について
(原告の主張)
ア 期間業務職員も賃金で生計を維持する勤労者(憲法28条)であり,被告(国)との関係は両者の合意で成立するもので,労使関係にほかならず,任期終了後,再採用されなければ生活が脅かされるから,有期雇用契約に基づき就労する民間労働者の契約更新(労働契約法19条)と同様,再度の採用が保障されるべきである。
したがって,有期雇用契約の期間終了後も契約更新の期待に合理的理由が認められ,雇止めが客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当と認められないときは雇止めを許さない判例上の雇止め法理(最高裁判所昭和61年12月4日第一小法廷判決・集民149号209頁〔日立メディコ事件〕,最高裁判所平成21年12月18日第二小法廷判決・民集63巻10号2754頁〔パナソニックプラズマディスプレイ事件〕)は,期間業務職員にも類推適用すべきである。
雇止め法理を明文化した労働契約法19条の適用から公務員を排除する同法22条は,民間労働者との間で大きな格差をもたらしており,平等原則に反する。少なくとも公権力の行使につき権限を持たない職員には,民間労働者と別異に取り扱う合理的理由はない。
イ 旧来の公法・私法の峻別や勤務条件法定主義を理由に公務員を民間労働者と区別する理論は,形式的で,公務の民間委託や公務員の非正規化が急速に進んでいる現状において,実態に合わず,不合理である。公務員としての任用は,同意を要する行政行為で,当事者の同意をもって形成される関係は契約と同視することができるから,公務員としての任用関係は,私法上の雇用契約関係と矛盾しない。公務員であっても国家公務員法等に定めのない事項には,当事者自治,当事者の合理的意思解釈による解決の余地,さらには更新を前提とした有期雇用契約における雇止め法理の適用の余地がある。特に原告の採用は,前記(1),(2)のとおり,国公法又は人事院規則に根拠があるとはいえないから,法令による規律が及ぶ余地がなく,私法上の契約関係によるほかない。
ウ 期間業務職員の任期終了後の再採用が任命権者の裁量行為であっても,行政事件訴訟法30条(裁量処分の取消し)の趣旨に照らして,行政庁の裁量行為にも信義則や権利濫用法理が適用されるから,正当な期待を侵害することは許されない。雇止め法理は,実質的に期間の定めなく労働に従事させてきた臨時工を契約期間終了にかこつけて雇止めすることは実質的には解雇と同様であるとして,使用者の安易な雇用調整を制約する必要から権利濫用法理の一種である解雇権濫用法理を類推して形成されたもので,雇用契約の当事者の合理的意思解釈の結果ではないから,公務員関係にも適用できる。
(被告の主張)
ア 原告は,国家公務員たる期間業務職員として採用されたから,原告と被告との間の関係は公法上の任用関係である。公務員の地位は諸法令を前提とした任用行為(採用)の内容によってのみ決定されるべきで,当事者の期待・認識によってその内容が変わる余地はなく,私的自治の原則を前提とする私法上の雇用契約関係とは自ら差異があり,雇止め法理を適用ないし類推適用する前提を欠く。
イ 仮に公法上の任用関係に雇止め法理を適用ないし類推適用すると,実質的に任期の定めのない任用関係や新たな採用がされたのと同様の任用関係を認めて,期間業務職員が常勤職員の採用に求められる競争試験ないし選考(国公法33条,36条)を経ていないのに常勤職員と実質的に同等の地位を得ることになってしまい,国公法の明文に反する。
(5)  争点(5)(国家賠償法1条1項の責任の有無~期待権侵害の有無等)について
(原告の主張)
ア 公共職業安定所では,常勤職員の人数を上回るほどの非常勤職員が長期間配置されている。その業務内容は,特別の習熟,知識,技術又は経験を要するものであった。a公共職業安定所の非常勤職員には長年採用を継続している者,他の公共職業安定所で採用を継続した後,a公共職業安定所に採用された者もおり,希望があれば,ほぼ自動的に勤務が継続していた。被告の主張は,制度の単なる建前をいうものに過ぎない。
このような状況において,原告が本件不採用まで6年間にわたって勤務が継続し,生計を維持してきた中で,よほどのことがない限り,自分の雇用が継続していくであろうと期待を持つことは当然である。
イ 原告は,a公共職業安定所での勤務を開始して間もなく,上司である職業相談部長から,業務態度に特段の問題がなく,予算上の問題がない限り,委嘱が継続されるとの説明を受け,原告も長く相談員として勤務したいとの希望を伝えていた。その後も,6年にわたってa公共職業安定所で勤務する間,業務上の問題や予算上の制約が生じるなど特段の事情がなければ更新ないし再採用が繰り返される旨,説明されてきた。委嘱予定期間又は任期終了後の更新又は再採用は,毎年2月ころ上司から希望を聞かれる意向確認があるだけで,特に試験や面接,審査はなく,ほぼ自動的なものであった。勤務評定のための夏と秋の面接でも問題点の指摘はなかった。平成23年4月の採用に当たり,日々雇用職員から期間業務職員に切り替わる際も公募によらない採用は連続2回に限ることなどの説明は受けなかった。
ウ 原告の勤務状況は良好であった。具体的には,原告は,就職活動期間の長い求職者から指名されて相談を希望されて(a公共職業安定所では,支援対象者は,2回目以降の職業相談で,担当者の継続を希望するときは,その担当者の相談枠を予約し,別の担当者を希望するときは予約をせずに,再度,1回目と同様に手空きの担当者の相談を受けることで,担当者を指名することが可能であった。),他の職員よりも圧倒的に相談希望数が多かった。平成22年度からは相談担当者ごとに予約制で個別相談を受け付けるシステムが導入されたが,予約の半数以上が原告を指名するものであった。原告は,原告の処理件数が少ない,業務に何らかの問題があると注意されたりすることはなく(担当者ごとの処理件数の目標設定はなかった。),原告には支援対象者から就職が決まったことに対する感謝の手紙も寄せられていた。原告は,就職が困難な支援対象者にも時間をかけて対応していた。なお,原告の処理件数には,紹介状の発行は他の職員に委ねたため,記録上計上されなかったものもある。
原告は,自発的に事例研究会を企画して,スキルアップにも努めた。また,セミナーのうち,平成22年12月から開催された「中高年セミナー」では,平成26年3月まで唯一の講師であった。原告のセミナーは受講者から好評を得ていた。
エ 原告は,平成24年4月1日,就職支援ナビゲーター(就労支援分)に職種が変更されて採用された。この採用手続は,それまでの更新又は再採用と異なり,相談部長だけでなく,統括及び庶務課長も加わって面接が行われており,支援対象者が就職に大きな困難のある刑務所出所者になったことで,前後の業務内容も大きく変化し,就職支援ナビゲーター(早期再就職支援分)は,就職支援ナビゲーター(就労支援分)と「職務内容が類似する官職」(前記第2の1前提事実(2)エの④)にも当たらないから,公募又はこれに準じる手続に当たる。
オ 原告は,c拘置所での釈前講話や個別支援(刑務所出所者全体で月10ないし20件),協力雇用主からの求人開拓,保護司会からの原告指名の依頼に基づく同会での講演などに従事し,特に刑務所出所者であることを考慮した模擬面接の実施は好評を得た。原告の取り組みは,前任者から引き継いだものではなく,自ら考え,実践してきたもので,c拘置所,保護観察所等からも高く評価されていた。平成25年には,刑務所出所者等を対象としてトライアル雇用事業を利用した求人も初めて出されるようになった。
カ 平成26年度の公募による採用手続では,原告を含む公募に応募する意思のある期間業務職員に一般公開前に求人情報が示されて,応募書類を整えさせ,一般公開直後に応募書類を受理できる態勢が整えられており,一般公開直後にこれらの者からの応募で1件の公開求人における応募受付件数の枠が埋まって,応募受付が締め切られており,公募の建前が取られつつ,現職の期間業務職員の優遇がされていた。公募に応募した現職の期間業務職員86名のうち,原告を含む9名を除いて,77名が採用されており,再採用率も高く,純粋な公募による採用とはいえない。
そして,本件不採用の前には,上司から平成26年度の業務に関する説明書の交付も受け,面接でも問題の指摘はなく,採用を前提とした話がされ,原告が同年度は刑務所の巡回が増えると話すと「ご苦労様。頑張ってください。」と言われていた。
キ 原告は,前記エのとおり,平成24年度に公募又はこれに準じる方法で就職支援ナビゲーター(就労支援分)に採用され,平成25年度の1回目の公募によらない再採用しか経ておらず,連続2回までのという制限(前記第2の1前提事実(2)オの①)には抵触しないから,平成26年度は公募によらないで再採用が認められるはずであった。ところが,本件不採用となり,理由の説明を求めても「他にいい人がいた」と説明されるだけで,具体的な説明はなく,厚生労働省の平成23年2月7日付け「職業安定行政関係相談員の採用等に係る留意事項等について」と題する事務連絡(乙25)に反して,理由を記載した書面の交付も拒絶された。原告は,適任者が応募してきたという話を聞いたことはなく,このような経過からは本件不採用に合理的な理由がないことが推認される。就職支援ナビゲーター(就労支援分)の業務は恒常的で,原告の後任者も採用されているから,業務又は人員を削減する必要がなく,単なる人の入れ替えに過ぎなかったことも明らかである。
ク 以上によれば,本件不採用は原告の採用に対する合理的な期待を信義則に反して客観的に合理的な理由や社会通念上の相当性なく侵害している。本件不採用には雇止め法理が適用ないし類推適用されるべきであるから(前記(4)),原告は平成26年4月1日以降も就職支援ナビゲーターの地位にある,少なくとも東京労働局長は原告を就職支援ナビゲーターとして採用することを義務付けられるべきである。被告は,給与として平成26年4月1日以降,毎月27万3940円の謝金の支払義務も負う。
任期終了の2か月前になって初めて理由を示さないまま突如本件不採用を告げて,合理的理由のないまま,本件不採用とした行為は,原告の期待権を違法に侵害し,原告を失業に追い込んで生活の糧を奪うもので,公務の民主的かつ能率的な運営に資する適切な評価に基づくものともいえないから,職務上の注意義務違反が認められ,原告は,平成25年の年収額330万7531円(甲14)を下らない損害につき賠償を求めることができる。
(被告の主張)
ア 常勤職員が占める官職は,フルタイムの職で,高い専門性や能力を要求される職を含み,組織全体として有機的に機能するよう編成されているから,相当期間存続することが必要不可欠の前提となっており,常勤職員は,行政の能率的な運用のため,採用試験又は選考による厳格な能力実証を経て採用された上で,異動を重ねながら,継続して勤務することを通じて育成されることが求められている。他方,期間業務職員は,「相当の期間任用される職員を就けるべき官職以外の官職である非常勤官職であって,一会計年度内に限って臨時的に置かれるもの」に任用される職員であるから,一会計年度内の任期を超えて,複数年にわたって継続して勤務することは前提になっておらず,任期終了時には当然に退職することが予定されており,常勤職員の占める官職とは性質が異なっている。期間業務職員を充てるべき非常勤官職の設置及び採用は,各任命権者が各府省における業務の必要性等に応じて,予算の範囲内で行うものとされる。任期終了後の再採用も当然には予定されておらず,各任命権者において,能力実証の結果に基づいて適切に判断し,また,平等取扱の原則及び成績主義の原則に照らし問題が生じないよう公募によらない採用は,同一の者については連続2回を限度とするよう努めるものとされている(前記第2の1前提事実(2)オの①)。
イ 原告に対しては,日々雇用職員として採用した時から,委嘱予定期間又は任期が終了した後,自動的に更新又は再採用しないことを伝えており,更新若しくは再採用を約束し,又は期待を抱かせるような言動がされたことはない。公募によらない採用も,面接及び前年度における勤務実績に基づいて能力を実証することが許され,公募によらないでよいというものに過ぎず,何ら再採用を保証して期待させるものではなく,勤務成績不良等で再採用されないことも十分にありうる。本件不採用までも,意向確認と採否の判断を行うための面接を実施し,勤務実績,態度,能力,予算状況等に基づく総合的な判断の下,次年度の再委嘱や採用がされており,自動的な更新や再採用はされていない。
ウ 就職支援ナビゲーターには,業務目標として紹介による就職の目標件数が定められていたが,原告は,他の支援員に比べ,相談件数及び就職件数が少なく,窓口での対応時間が長く,混雑時の円滑な窓口運営に支障を生じていた。求職者が相談担当者を指名する制度も存しない。
セミナーは講師を問わず概ね好評であり,原告のみ評価が高かったことはない。また,a公共職業安定所では,複数のテーマ別セミナーを開催しており,たまたま原告が「中高年セミナー」を担当していたに過ぎない。
エ 原告には前記ウのとおり窓口対応に問題が生じていたことから,a公共職業安定所は,平成24年4月の再採用では,原告から刑務所出所者等を支援対象者として,窓口の繁閑に左右されない就職支援ナビゲーター(就労支援分)としての採用希望を原告に確認し,原告もこれを希望したため,「職務内容が類似する官職」に当たる就職支援ナビゲーター(早期再就職支援分)における勤務実績に基づく能力の実証ができる場合に当たるものとして(前記第2の1前提事実(2)エの④),公募によらないで採用した。釈前講話も,一般求職者に対する職業講習の内容と異ならず,求職者の特性に応じた個別支援の枠内にとどまり,職務内容が類似している。
オ トライアル雇用の求人が初めて出されるのは,協力雇用主を開拓した保護司から求人受理に関する協力の要請があったが,原告が求人受理の知識に乏しかったことから(本来は原告が担当すべきであった。),統括が主導して原告及び保護司を協力雇用主に訪問させるなどして求人受理に至ったもので,原告の取り組みの結果とはいえない。c拘置所での相談時に使用していた資料も前任者とほぼ同様であった。
保護司会からの講演依頼は原告を指名するものではなかった。
カ 平成26年度の採用で,期間業務職員として勤務中の者に一般公開前の求人情報を提示し,一般公開開始時点で応募を受理する扱いとしたのは,勤務時間中は職務専念義務があって応募できないため,応募の機会を均等に与えるとともに,公募の公開直後に応募が集中して問題が生じることを避けるためである。勤務中の期間業務職員の採用率が高くても,採用予定人数を上回る一般求職者からの応募も受け付けた上で採用選考を行っている以上,公募の実質を欠くとはいえない。
平成26年度採用の公募では,原告を含め4名が応募したところ,東京労働局長は,採用選考の面接を実施し,刑務所出所者等の就労支援に当たって,公共職業安定所の各施策の活用等を含めた就労支援ができることをポイントとして総合的に評価して,最も適任と判断した者を採用したもので,採用選考の手続に不自然,不合理な点はない。原告に対し,面接で採用を前提とした話がされたこともなく,それまでの業務の自己評価,課題等を質問し,それを踏まえて,次年度の業務を行うとしたらどのように業務を行っていきたいか質問したに過ぎない。本件不採用は,採用選考の結果であって,客観的に合理的で,社会通念上相当なことは明らかである。
キ 原告は,平成23年度に期間業務職員たる就職支援ナビゲーター(早期再就職支援分)として採用されて,前記エのとおり,公募によらない方法で平成24年度に就職支援ナビゲーター(就労支援分)に採用されて,平成25年度も公募によらない方法で採用された。期間業務職員の採用につき,公募によらない採用は同一の者につき連続2回に限るよう努めるものとされていたから(前記ア),平成26年度の採用では公募を実施し,採用選考をする必要があった。原告にもこのような取扱いは平成24年度以降の各採用手続の際に繰り返し説明しており,平成26年度も公募によらないで採用されるとの原告の期待は合理的なものではない。
原告の主張は,期間業務職員は,特段の事情がない限り前年度まで期間業務職員であった者を再採用すべきというものにほかならず,期間終了後の再採用を当然には予定せず,能力実証の結果に基づいて適切に判断すべきものとする人事院規則8-12第46条に反する。
本件不採用の際,原告に尋ねられて,刑務所出所者等の就労支援に当たって,ハローワークの各施策の活用を含めた就労支援ができるか否かをポイントとして総合的に評価したこと,公募による採用選考の結果として,応募者の中から,当該業務を遂行する上で最も適任と判断した方を採用したことを説明したが,「他にいい人がいた」とは述べていない。
ク 原告は,任期終了で平成26年4月1日以降,就職支援ナビゲーターの地位になく,これを前提とする給与の請求には理由がない。原告の採用の期待は合理的なものではなく,法的保護に値しないから,職務上の注意義務違反も認められない。
(6)  争点(6)(義務付けの訴えの適否)について
(原告の主張)
ア 原告は,平成26年4月以降,就職支援ナビゲーターの業務に従事できず,能力と経験を活かすことができなくなり,反復継続して採用される地位を失い,給与も得られなくなっており,身分,収入の点で不安定を余儀なくされて,重大な損害を受けている。この不安定は,日々不可逆的に発生するもので,損害回復は困難である。本件不採用は,裁量権を逸脱濫用して,原告から仕事と収入を奪う重大な侵害である。
イ 仮に雇止め法理の適用又は類推適用が認められないときは,義務付けの訴えしか原告の地位を保全することができず,他に適当な方法がない。
ウ したがって,行政事件訴訟法3条6項1号,37条の2第2項に基づき,第1次予備的請求のとおり,就職支援ナビゲーターとして再任用することの義務付けを求める。
(被告の主張)
ア 第1次予備的請求における義務付けの訴えは,行政事件訴訟法3条6項1号のいわゆる非申請型の訴えであり,同法37条の2第1項に基づき,訴訟要件として「一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれ」を要する。
イ 原告が本件不採用で就職支援ナビゲーターに採用されないことで不利益を受けても,人事院規則8-12は,期間業務職員の再度の採用につき何の定めも置いておらず,任期終了後の採用が当然に予定されることはなく,原告は採用を請求する権利を有さず,また,前記(4)イのとおり,公法上の任用関係に雇止め法理が適用される余地はなく,原告に再用の合理的な期待が生じたともいえないから,本件不採用は,原告の権利や法的地位に何らの影響を与えるものではなく,単に原告が事実上望んでいる利益を得られなかったというものに過ぎない。
ウ したがって,本件不採用に原告に「重大な損害を生ずるおそれ」が存するとは認められないから,第1次予備的請求における義務付けの訴えは,不適法なもので却下されるべきである。
第3  争点に対する判断
1  争点(1)(期間業務職員制度の違憲・違法の有無)について
(1)  原告は,国公法自体ではなく,人事院規則8-12で期間業務職員制度を設けることが憲法73条4号,6号,41条に違反し,違憲・無効であるとした上,原告が期間の定めのない就職支援ナビゲーターとしての地位を有する旨主張する。
(2)  憲法73条4号は,内閣の職権として「法律の定める基準に従ひ,官吏に関する事務を掌理すること」を定めている。これは,国家公務員が国民全体の奉仕者(15条2項)であり,国家公務員制度は適正な行政を実現するための重要な基盤であること,私人としての国家公務員の権利保障の必要があること(11条,27,28条),政治的中立性が求められる国家公務員制度の基準策定を時々の内閣の自由に委ねるべきではないことにかんがみ,国家公務員に関する事務の基準を定めることを,国民代表機関であり,唯一の立法機関である国会の責務とし(41条,43条1項),上記基準を国会が議決した法律で定める法律主義をもって国家公務員制度の民主化及び適正化並びに国家公務員の権利保障を図ろうとしたものと解される(国公法1条1項,2項参照)。ただ,憲法は,もとより行政機関が法律の委任を受けて命令を制定することを予定しているところ(憲法73条6号ただし書参照),国家公務員制度についても,その内容が広範,多岐にわたり,専門的,技術的な事項や情勢の変化に応じた柔軟な改訂を要する事項も含み,法律のみでその全ての基準を細部にわたって定めることは必ずしも適当であるとはいえないことから,法律による委任が許容されていることは明らかであって,法治主義の原則を否定するような白紙委任でない限り,憲法73条4号,6号及び41条に違反するものではないと解される。
(3)  国公法附則13条は,一般職に属する職員に関し,「その職務と責任の特殊性に基いて」,国公法の特例を要する場合,人事院規則で国公法1条の精神に反しない特例を規定することを委任している。これは,国公法の適用対象となる一般職(2条2項)には多種多様な職員が含まれ,その職務と責任も多様であるから,国公法を一律に適用することは必ずしも適当でないこともあることにかんがみたものであって,その場合にも,国会自らが特例を定める法律を制定することもできるが(国公法附則13条),国公法は,両議院の同意を得て任命される人事官から構成され,内閣又は各府省から独立して職権を行使し,政治的中立性及び専門性が確保された合議制の独立行政委員会である人事院(同法3条,4条,5条等)に,ある程度広範かつ概括的に立法を委任し,情勢の変化に応じた柔軟かつ妥当な人事院規則の制定を期待したものと解される。したがって,国会の裁量で自ら特例を定める法律を制定することを控えて,人事院による準立法権限の行使に委ねることが直ちに国会の責務の放棄とはいえないし,「職務と責任の特殊性」に基づく特例として委任事項を特定しており,かつ,国公法1条の精神に反してはならないことも定めて,委任に基づく人事院規則の内容にも制約を加えていると解されるから,全くの白紙委任ともいえない。
(4)  入事院規則8-12の定める期間業務職員は,「相当の期間任用される職員を就けるべき官職以外の官職である非常勤官職であって一会計年度に限って臨時的に置かれるもの」を対象とするもので(4条13号),非常勤で一会計年度に限った臨時性という点で,その職務と責任には常勤官職と異なった特殊性があるところ,人事院規則8-12では,このような特殊性にかんがみ,特例として期間業務職員の定義(4条13号),期間業務職員の採用の方法(46条),任期(46条の2)等を定めたものであって,期間業務職員の採用は,国公法及びその委任を受けた人事院規則に根拠を有するものといえる。
国公法は60条で,6月を超えない任期を定めた臨時的任用を定めているが,同条は常勤官職に欠員を生じた場合に関する特例の定めであって,非常勤職員に関する特例を設けることを否定する趣旨とまでは解されない。また,人事院規則8-12第42条1項に基づく任期を定めた任命の禁止は,「恒常的に置く必要がある官職に充てるべき常勤の職員」を対象とするものであるから,「相当の期間任用されるべき職員を就けるべき官職以外の官職」をその対象とする期間業務職員に任期を定めることは,これに抵触しないというべきである。
(5)  以上によれば,期間業務職員の制度は違憲又は違法であるとはいえない。したがって,期間業務職員の制度が違憲又は違法であることを前提とした原告の主張は,その余の点について判断するまでもなく採用することはできない。
2  争点(2)(就職支援ナビゲーターを期間業務職員として採用することの違法の有無)について
(1)  原告は,恒常的な業務を担う就職支援ナビゲーターを期間業務職員として採用することは,人事院規則8-12第4条13号に違反し,また,常勤職員との関係で憲法14条,27条に違反するとした上,原告が期間の定めのない就職支援ナビゲーターとしての地位を有する旨主張する。
(2)  期間業務職員は「相当の期間任用される職員を就けるべき官職以外の官職である非常勤官職」で「一会計年度に限って臨時的に置かれるもの」を適用対象の官職とし(人事院規則8-12第4条13号),任期も会計年度の末日までの期間の範囲内で定められ(同規則46条の2),その採用は,常勤職員の採用で原則とされている競争試験及びその結果に基づく採用候補者名簿に記載された者からの面接(国公法36条,56条,人事院規則8-12第8条)に比べ,簡易な面接及び経歴評定その他の適宜の方法による能力の実証で足り(人事院規則8-12第46条1項),採用後設けられる条件付任用期間も常勤職員の6月より短期の1月となっており(国公法59条1項,人事院規則8-12第32条,48条2項),臨時的な非常勤官職に就ける職員を簡易な方法で採用することを予定した制度といえる。そして,前記のとおり,「相当の期間任用される職員を就けるべき官職以外の官職である非常勤官職」で「一会計年度に限って臨時的に置かれるもの」という以上の定めはないことからすれば,その対象業務については,同文言に該当するか否かを検討すれば足りると解するのが相当である。
この点,原告は,国公法に臨時的任用(60条)以外に期限付任用を認める規定がないことや,裁判例(最高裁判所平成6年7月14日第一小法廷判決・判例タイムズ871号144頁など)において,「特別の習熟,知識,技能又は経験を必要としない代替的事務で,日々雇用職員でも適正に処理することのできるもの」であるのを主要な理由として再任用拒否が違法でないとされたことを引用して(同種の裁判例として,東京地方裁判所昭和47年5月25日判決・判例時報686号92頁,札幌地方裁判所昭和53年7月21日判決・判例時報918号123頁など),期間業務職員の対象業務は「特別の習熟,知識,技能又は経験を必要としない代替的事務」に限定され,特別の習熟,知識,技能又は経験を必要とする業務である就職支援ナビゲーターを期間業務職員として採用することが違法である旨主張する。しかしながら,上記裁判例は,いずれも任期1日と地位の不安定性が著しい日々雇用職員に関するものであって,期間業務職員とは前提が異なるというべきであるし,ある官職が臨時的なものであることと「特別の習熟,知識,技能又は経験を必要とする」ものであることとは,必ずしも矛盾するわけではないから,前記の文言の人事院規則8-12第4条13号が期間業務職員の担うべき業務を特別の習熟,知識,技術又は経験を必要としない代替的事務のみに限定する趣旨とは解されない。
(3)  そこで,以上の観点から,就職支援ナビゲーターを期間業務職員として採用することの適法性を検討するに,前記第2の1前提事実(1)イ,ウ,(2)エ,カ,(4)ア,イに加え,証拠〔甲11,甲13,甲26,甲27,甲29,乙5ないし乙7,乙29,乙30,原告本人〕及び弁論の全趣旨によれば,①就職支援ナビゲーターは,専ら就職支援プログラム事業,刑務所出所者等就労支援事業等の事業に従事する官職であり,上記各事業を離れて,労働局又は公共職業安定所の事務一般に広く従事することは予定されていないこと,②毎年度の期間業務職員たる就職支援ナビゲーターの定数は,毎年度,予算に応じて定められており,年度ごとの変動があり,また,国会で予算が成立するまではその年度の定数は確定せず,そのことは任期終了後の採用を希望する者にも説明されていたこと,③平成21年度以降,いわゆるリーマンショックによる景気後退に伴う失業問題に対処するための緊急雇用対策のため,相談員の人数を増加させたという事情があること,④相談員は,職業相談等に関する経験又は資格を要するものの,常勤職員とグループを構成して常勤職員の指揮を受けて業務に従事していたことが認められる。これらの事実に照らすと,相談員は,その業務の内容等に照らし,常勤職員とは異なり,労働局又は職業安定所での業務に広く従事することを予定せずにその時々の雇用失業情勢に応じた各種事業に専ら従事することを予定し,その定数も予算の範囲内で毎年定めることとされているから,その官職に臨時的,補助的な性質があることは否定できず,前記の文言の期間業務職員の対象業務に該当するといえる。リーマンショックから約5年が経過した本件不採用時点においても相談員の設置が維持・継続されている状況はうかがえるが,それは,雇用失業情勢に応じた各種対策が継続していることによる事実上の結果に過ぎず,就職支援ナビゲーターと常勤職員が各業務の内容その他の事情に照らして,実質的に同一化しているともいえない。
以上によれば,就職支援ナビゲーターを期間業務職員として採用することが人事院規則8-12第4条13号に違反するということはできない。
また,就職支援ナビゲーターが期間業務職員であるのは,前記のとおり,その官職に臨時的,補助的な性質があることを理由とするものであり,常勤職員との関係で,就職支援ナビゲーターを不当に差別したものとは認められない。そして,原告が任期の定められた期間業務職員として任用された以上,任期終了で退職したものとして扱うことが,直ちに常勤職員との間で憲法14条1項違反の不合理な差別的取扱いに当たるとはいえないし,原告の勤労の権利を何ら否定するものでもなく,憲法27条違反の勤労権侵害であるとはいえない。
したがって,就職支援ナビゲーターを期間業務職員として採用することが人事院規則8-12第4項13号,憲法14条,27条に違反することを前提とした原告の主張は,その余の点について判断するまでもなく採用することはできない。
3  争点(3)(本件ILO条約違反の有無等)について
(1)  原告は,公共職業安定所の相談窓口を担当する職員の多くが任期1年の期間業務職員で占められていることが,職業安定組織の職員が身分の安定を保障される公務員でなければならない旨定めた本件ILO条約9条1項に違反するとした上,原告が期間の定めのない就職支援ナビゲーターとしての地位を有する旨主張するので,以下,検討する。
(2)  我が国で承認,批准及び公布の手続を経た条約は特段の立法措置を講ずるまでもなく,当然に国内で法としての効力(国内法的効力)を有するものと解される(憲法7条1号,73条3号,98条2項参照)。ただ,その条約を国内においてそれ以上の立法措置等がなくても直接に適用することができるか否か,すなわち,私人が条約を直接の法的根拠として個人の具体的な権利ないし法的地位を主張し,裁判所が国家と私人又は私人相互間の法的紛争を解決するにあたり,条約を直接適用して結論を導くことが可能であるか否か,ひいては国内法令の規定と抵触する場合に条約が当該規定を無効ならしめるか否かという直接適用可能性(国内適用可能性,自動執行性)は,国内法的効力と区別された問題で,別途検討する必要がある。
この直接適用可能性の判断に関しては,問題となる直接適用の態様に応じて,条約締結国の直接に国内裁判所で執行可能な内容のものにしようとする具体的な意思の有無(主観的基準)と条約の個々の規定における裁判の準則とするに足りるほど十分に具体的かつ明確な内容の有無(客観的基準)を基礎とすべきものと解される。規定内容の明確性が認められることは,その条約を直接適用可能なものとしようとする条約締約国の意思を推測させる根拠ともなりうると考えられる。
他方,規定内容の明確性を欠くとき,例えば一般的な政策や抽象的な一般的原則,プログラム(実現に努めるべき政治的,道義的な目標や指針)を定めたに止まるものや,大まかな一般的な用語で規定され各加盟国の裁量による明確化を予定しているもの,立法機関に向けてある基本思想に基づいた立法を義務付けるに止まるものであるときは,その条約は,少なくとも,私人に何らかの具体的な権利義務を認める直接の法的根拠を定める法規範としては,直接適用することは困難というべきである。
(3)  そこで,これを本件についてみるに,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の①ないし⑧の各事実を認めることができる。すなわち,① 本件ILO条約は,締結国に無料で誰でも利用できる公共職業安定組織の全国的体系を維持させるとともに,雇用市場を組織化し,失業防止及び雇用増大を図る目的で採択されたものであり,労働市場確保に関する技術的,政策的な条約であると理解されていること(甲22・7頁),② 政府は,本件ILO条約の国会承認のため昭和28年7月に行われた国会審議において,本件ILO条約が規定する条件につき既に職業安定法,失業保険法等で満たされているとの見解を示し,国会審議でもこの見解に特に異論は出なかったこと(乙53の1・2頁),③ 本件ILO条約の批准に伴い,公共職業安定組織に関する組織法又はその職員に関する公務員法制に何らかの特例を設ける必要性が指摘されるようなこともなかったこと(乙53の1ないし乙53の7),④ 政府は,平成18年ころ,いわゆる規制改革・民間開放推進の一環として公共職業安定所における職業紹介事業の民間委託の検討・議論を開始したところ,その中で,内閣府特命担当大臣は,本件ILO条約の解釈を大学教授等からなる懇談会に諮問し,平成19年3月,「ハローワークとILO条約に関する懇談会報告書」(甲22)及びその参考資料編(甲23)が提出されたこと,⑤ 上記報告書及び参考資料編の中では,本件ILO条約9条1項の解釈に関し,(ⅰ)職業安定組織の職員は全て公務員でなければならないか,(ⅱ)条約上の公務員に非常勤職員は含まれるか,といった点に関する議論の結果が記されたところ,(ⅰ)に関して,本件ILO条約6条aの職業安定組織の定義に該当する業務(具体的には求職者の登録,記録,職業紹介及びそのための面接等)に就く職員は,分限及び勤務条件について政府の更迭等と無関係でありかつ身分の安定を保障される公務員(以下「条約上の公務員」という。)である必要があるとする見解と,条約上の公務員による国の指揮監督下で職業紹介の全国システムのネットワークが構築されていれば,職業紹介業務の提供自体は条約上の公務員でなくても足りるとする見解の両論が併記され,(ⅱ)についても,条約上の公務員に,非常勤職員も含まれるとする見解と,非常勤の公務員について,実質的に雇用保障がないなど,その雇用形態によっては「身分の安定を保障される公務員」に該当せず,条約上の公務員に該当しない可能性があるとする見解の両論が併記されたこと,⑥ 本件ILO条約の締約国であるオーストラリアにおいて,公務員から組織される国の機関がサービス提供主体との協定を通じてサービス提供に責任を有するようになっていれば,本件ILO条約9条1項には違反しないという見解が採用され,1998年(平成10年)から,従前,政府の公共職業紹介所(CES)が実施していた職業紹介事業につき,民間委託を可能とする制度が導入されたが,この見解につき,ILOの条約勧告適用専門家委員会から本件ILO条約に違反する疑いがあるなどとの意見が述べられたことはないこと(甲22・17頁以下),⑦ ILOの条約勧告適用専門家委員会は,2005年(平成17年),本件ILO条約の締約国である韓国の労働組合から,公的職業紹介所の職員の8割を構成するカウンセラーが,正規の常勤公務員でなく1年契約であることに関し,本件ILO条約との整合性に問題があるとの申立てを受け,韓国政府に報告を求めたことがあるが(甲23・41頁,53頁,63頁),その後,これが本件ILO条約に違反するとの判断が示された形跡は窺われないこと(弁論の全趣旨),⑧ 内閣府公共サービス推進室は,前記④の懇談会に提出された文書中で,有識者の見解として,「本件ILO条約9条1項の『staff』という文言は,幹部職員だけでなく,基本的業務に携わる全ての職員を指す」「非常勤職員が条約上の公務員に当たるかどうかは,分限や勤務条件,職務専念義務等を踏まえて個別的に判断する必要があるが,日々雇用や短期間雇用の形態であっても雇用契約等で定められた期間について身分が保障されるのであれば,日々雇用であることなどをもって身分の安定を保障されないとはいえない」などという旨の見解を紹介していること(甲23・72頁以下),以上のとおり認めることができる。
(4)  本件ILO条約9条1項の「職業安定組織の職員」が「分限及び勤務条件について政府の更迭及び不当な外部からの影響と無関係であり,且つ,当該組織上の必要による場合を除く外,身分の安定を保障される公務員でなければならない」との定めは,政党,企業等の外部からの介入を排除し,職業安定組織が公益の見地から公正に運営されることを確保するため,職業安定組織の職員が「身分の安定を保障される公務員」であることを要求するものと解される。ただ,「身分の安定」とは,一般的,抽象的な観念であって,その内容,程度については,例えば任期制を禁止する,任期の最低限度を定める,職員に常勤・非常勤の区別を設ける,若しくは非常勤職員を置くことを禁止する又は離職の原因を制限するといった具合に,具体的かつ明確に定められておらず,前記(3)⑤ないし⑧の各認定事実に照らしても,ILOや,我が国を含むその締約国等においても,一定の明確な解釈が確立しているとは認めるに足りない。また,本件ILO条約9条1項には,「当該組織上の必要による場合を除く外」という留保も付されており,職業安定組織における人事・組織運営の必要から職員の身分に影響が及ぶことは排除されていないし,そもそも,職業安定組織における人事・組織運営の在り方は,締約国ごとの雇用慣行,公務員法制一般,その時々の職業安定行政を取り巻く情勢等にも左右されるから,締約国における政策的な裁量判断の余地も大きく,「身分の安定」という文言のみから締約国に共通すべき制度の具体的な在り方を一義的に導くことは不可能といわざるを得ない。
以上によれば,当該条項は,締約国に対し,職業安定組織に関する組織,職員の勤務条件等に関する基本的な原則を示して,その原則に沿った国内措置を求めるに止まり,一定の制度を創設する,ある制度の導入を禁止して,その効力を排除するといった具体的かつ明確な内容を含むものと解することはできない。また,「身分の安定」は,職業安定組織の職員の私人としての権利・利益を保障することを直接の目的としているわけではなく,職業安定組織の適正な運営の確保という目的のための第二次的な位置づけにとどまるから(前記(3)①参照),本件ILO条約が職業安定組織職員個人の具体的な権利・利益を直接に保護しようとしているともいえない。
したがって,本件ILO条約9条1項は,裁判上の準則とするほどに,規定内容が十分に具体的かつ明確なものとはいえず,職業安定組織の職員の勤務条件等につき,何らかの具体的な権利,法的地位又は制度を設定するものであるとはいえないから,裁判所が法的紛争を解決する上でこれを直接適用して結論を導くことは不可能であり,直接適用可能性を欠くというべきである。
なお,原告提出にかかるB教授の意見書(甲15)においては,任期やその更新に制限がある期間業務職員では「身分の安定を保障される公務員」とはいえず,就職支援業務における期間業務職員の利用は本件ILO条約に違反するとの見解が示されているが,直接適用可能性や「当該組織上の必要による場合を除く外」という限定につき十分な検討を経たものとは認められないから,採用できない。
(5)  証拠(甲25)及び弁論の全趣旨によれば,ILOの条約勧告適用専門家委員会は,1997年,ギリシャ政府の労働監督行政を地方行政に移管する法案につき,「工業及び商業における労働監督に関する条約(第八十一号)」(昭和29年条約第18号)の「監督職員は,分限及び勤務条件について,身分の安定を保障され,且つ,政府の更迭及び不当な外部からの影響と無関係である公務員でなければならない。」(6条)などの条項に違反するとの見解を示したことが認められる。原告は,この事実からILOは中央行政による監督を及ぼすことで経験と能力のある公務員が一貫して労働行政を担うことが必要であるとの見解を有していることが分かると主張するが,上記委員会は条約の有権的解釈権まで有しているわけではないし(甲22),上記見解は監督職員の任期制や非常勤職員制度の適否に関するものとは認められない。
(6)  原告は,本件ILO条約の直接適用ができなくとも,ある行為の違法性を認定する根拠として用いること,国内法の解釈基準になること,本件不採用が「当該組織上の必要による場合」に当たらないことも主張するところ,これらの点は,争点(4)(雇止め法理の類推適用の可否)及び争点(5)(国家賠償法1条1項の責任の有無~期待権侵害の有無等)と併せて判断する(後記4,5)。
4  争点(4)(雇止め法理の類推適用の可否)について
(1)  憲法73条4号は国家公務員に関する事務は国民代表機関である国会が定めた法律の定める基準で処理されることを予定しているところ,国公法は,国家公務員の給与,勤務時間その他の勤務条件を契約ではなく,法令で定め,団体一協約締結権の制限(108条の5第2項)などの労働基本権制約に対する代償措置として人事院勧告や人事院に対する行政措置要求の制度を設けた上,法律改正による社会一般の情勢に適応した勤務条件の変更を予定する勤務条件法定主義及び情勢適応の原則をとっていること(28条,63条,86条,106条参照),労働契約法も国家公務員を適用対象から除外していること(22条),国公法では任命権者等と国家公務員との合意で勤務条件等を定めることを認めた規定はなく,むしろ,団体協約締結権を制限していることなどにかんがみると,国家公務員の勤務関係は,私法上の労働契約関係ではなく,公法的規律に服する公法上の関係であり(最高裁判所昭和49年7月19日第二小法廷判決・民集28巻5号897頁参照),国家公務員を採用する行為は,採用される者の同意を前提とする行政行為の一種であると解される。これによると,国家公務員の勤務関係の具体的内容は,国公法,人事院規則等の法令とそれに基づく任命権者等による人事に関する行為によって定まるべきものと解され,私法上の諾成契約のように,契約又は黙示の意思表示の合致によって採用の効力を生じさせる余地はないというべきである。国公法及び人事院規則に,任期の自動若しくは黙示による更新又は任期を超えた勤務継続に関する何らかの優先権や請求権を認めるような定めはなく,むしろ,期限の定めのない採用,定めのある採用,任期の更新をそれぞれ人事異動通知書の交付を要する任命権者の行為とし(人事院規則8-12第53条),任期終了で更新されない限り当然退職となることを明定していることも(同規則52条),上記の解釈の正当性を裏付ける。また,国公法2条6項,7項は外国人との勤務契約を除いて,国公法に基づく一般職及び特別職以外の勤務者を置くことを禁じており,国公法に基づかないで,私法上の雇用契約関係を締結すること自体を許容していないと解される。なお,後記5(4)のとおり,a公共職業安定所では,非常勤職員に関し,しばしば「契約」「契約の更新」などという用語を用いており,このような用語の用い方は,勤務関係の性質に関する誤解を生じさせかねないものであるが,用語の使用に誤りがあるというだけで,法令で定まる勤務関係の客観的な性質が変更されるとはいえない。なお,用語の用い方により,原告に国家賠償法上法的に保護に値する期待を生じさせるか否かは,後記5(4)で判断する。
このように,国家公務員の勤務関係においては,労働契約関係を前提とする雇止め法理の適用の余地はなく,かつ,任期終了後は,新たな行政行為として採用や任期の更新がない限り,その勤務関係が継続することはないというべきである。
労働契約法19条の適用のある民間労働者と国家公務員との間で雇用関係継続の期待保護の上で差異が生じることは否めないが,法律関係の性質の違いによるものであり,法律上,民間労働者の労働関係と国家公務員の勤務関係を法的性質の異なるものと構成することも,両者の特質の違いを踏まえたものである限り国会の立法裁量の範囲を超えるものとはいえないから,もとより,平等原則に反する不合理な差別として,憲法14条1項に違反するとはいえない。
本件ILO条約9条1項の「身分の安定」も,国家公務員の勤務関係を契約関係と扱う,又は民間労働者と同様の雇止め法理の適用を義務付ける趣旨を含むものとは解釈できず,そのような解釈の根拠とするにも足りない。
(2)  以上のとおり,国家公務員の勤務関係に関し雇止め法理の適用がないと解されるから,現に採用又は任期の更新という行政行為がされていない以上は,採用希望者が国家公務員としての地位を取得する余地はなく,裁判所が任命権者に代わって行政行為たる採用又は任期の更新を行うこともできないから,原告が,就職支援ナビゲーターとしての地位の確認を求める主位的請求(1)には理由がない。また,原告が就職支援ナビゲーターとしての地位を現に有しない以上は,給与の支払を受ける余地もないから(仮に第1次予備的請求(2)を認容して採用を義務付ける判決が確定しても,それだけで原告が採用されたことになるわけではない。),給与の支払を求める主位的請求(2),第1次予備的請求(2)も理由がない。
5  争点(5)(国家賠償法1条1項の責任の有無~期待権侵害の有無等)について
(1)  前記4の認定判断に照らすと,原告が期間業務職員としての任期終了後,再度採用される,若しくは採用を要求する権利又は採用を期待する法的利益を有するということはできない。
もっとも,任命権者において,期間業務職員に対し,任期終了後も採用して勤務を続けさせることを確約ないし保障するなど,任期終了後,必ず採用されると期待するのが無理からぬ言動をして,期間業務職員にそのような誤った期待を抱かせたことで損害を生じさせたと認められるとき,又は任期終了後の採用・不採用の判断において,任命権者の裁量権の行使に著しい不適切や不公正といった濫用又は逸脱があり,採用されなかった期間業務職員が合理的な理由なく差別的な取扱いを受けない人格的利益を侵害されたと認められるときは,国家賠償法に基づく損害賠償を認容する余地があるものと解される(最高裁判所平成6年7月14日判決・判例タイムズ871号144頁,東京高等裁判所平成18年5月25日判決・労働判例919号22頁,同平成19年11月28日判決・判例タイムズ1274号168頁,福岡高等裁判所平成25年9月27日判決・判例時報2207号39頁参照)。
(2)  後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,原告の本件不採用に至る経緯等として,以下の事実が認められる(以下,頁数の記載は,書証ないし尋問調書のそれを示す。)。
ア 原告に交付された平成20年度,平成21年度の各労働条件通知書(甲4,6)では,「更新の有無」として「更新する場合があり得る(自動更新は行わない)」「契約の更新は次の中で総合的に判断する」「勤務実績,態度,能力,及び従事する業務の予算状況等により判断する」と記載されていた。原告は,口頭でも更新の有無につき同様の説明を受けており,本件不採用まで,少なくとも自動的に委嘱期間又は任期が更新されるものではないことは理解していた(甲30,原告本人・18頁)。
イ 厚生労働省は,各都道府県労働局に対し,公共職業安定所に配置される日々雇用職員である相談員に係る管理につき,次の内容を含む平成20年1月28日付け「職業安定行政関係の相談員に係る管理業務について」(乙20)を発していた。
(ア) 求人
縁故による採用は一切行ってはならず,国民が広く応募の機会を得られるよう,原則としてすべて公共職業安定所の求人として,庁舎内及びインターネットサービスで公開する(求人公開の原則)。
(イ) 能力・適性による選考
面接等を実施し,応募した者の中から能力,適性が十分備わっているかという点に着目して行う。既に他の相談員として委嘱されている者を再委嘱する場合も求人公開の場合と同じ選考基準を用いて,公正,公平な手続を行う。公正性及び公平性確保の観点から職業安定行政OB(過去に職業安定行政の職員であった者を指す。以下,同じ。)が公募に応募した場合も,他の応募者と比較しての能力及び適性面で優れている場合のみ委嘱でき,単に職員として勤務していたことをもって能力・適性が備わっていると判断し,選考に際し,優遇してはならない。
(ウ) 委嘱条件の確認
応募した者には,委嘱条件,特に委嘱予定期間を示し確認させるとともに,委嘱予定期間が終了した後には自動更新しない旨を伝えること。
(エ) 委嘱期間
任期は1日とするが,発令日の属する会計年度を超えない範囲で委嘱予定期間を定め,その期間内は日々更新できる。委嘱予定期間終了後の自動更新は行わない。
(オ) 委嘱の通知
委嘱に当たっては,勤務条件を記載した人事異動通知書等の書面を交付するものとする。委嘱更新の有無に関しては,「更新する場合がありうる。なお,委嘱予定期間終了後の自動更新は行わない」とし,更新を約束し,又は期待を抱かせる文言は一切用いない。所属長は,平素においても,委嘱更新や長期間の委嘱への期待を抱かせるような言動をとらない。
ウ 厚生労働省は,各都道府県労働局に対し,平成23年度からの期間業務職員制度の導入に伴い,公共職業安定所に配置される相談員に係る管理に関する通達として,平成22年12月8日付け「期間業務職員の任用等に当たっての留意事項について」(乙28),平成23年2月7日付け「職業安定行政関係の相談員に係る管理業務について」(乙21),同日付け「職業安定行政関係相談員の採用等に係る留意事項等について」(乙25),平成24年2月17日付け「職業安定行政関係の相談員の再採用に係る作業及び採用に関する留意事項について」(乙54),平成25年2月18日付け「職業安定行政関係の相談員に係る管理業務について」(乙22)及び同日付け「職業安定行政関係相談員に係る管理業務の留意事項について」(乙38)を発しており,上記各通達には,次のような内容が含まれている(乙23,乙55)。
(ア) 求人
縁故による採用は一切行ってはならず,国民が広く応募の機会を得られるよう,原則としてすべて公共職業安定所の求人として,庁舎内及びインターネットサービスで公開すること(求人公開の原則)。
(イ) 能力適性による選考
採用は,面接及び経歴評定その他の適宜の方法による能力の実証を経て行う。原則として面接により,応募した者の中から能力,適性が十分備わっているかという点に着目して行う。既に同一の大分類に属する他の小分類の相談員(平成25年度以降は「職務の内容が類似する相談員」。以下同じ。)として採用されている者を再採用する場合も求人公開の場合と同様の選考基準を用いて,公正,公平な手続を行う。公正性及び公平性確保の観点から職業安定行政OBが公募に応募した場合も,他の応募者と比較しての能力及び適性面で優れている場合のみ採用でき,単に職員として勤務していたことをもって能力・適性が備わっていると判断し,選考に際し,優遇してはならない。
(ウ) 任用条件の確認
応募した者に対しては,特に任期を示し,確認させるとともに任期が終了した後に自動的に再採用することはしない旨を伝える。あらかじめ任用終了後の再採用が確実であると誤解されるような対応を行わないよう注意する。
(エ) 任期
任期は,採用の日から同日の属する会計年度の末日までの範囲内で定める期間とする。任期終了後には自動的再採用は行わない。
(オ) 任用条件の通知
任用条件の通知では,再採用の有無に関し,労働条件通知書等に「任期終了後に再採用を行う場合があり得る。なお,委嘱予定期間終了後の自動更新は行わない」と記載し,更新を約束し,又は期待を抱かせる文言は一切用いない。
所属長は,平素においても,再採用を約束し,又は再採用への期待を抱かせるような言動を取らないことを徹底すること。
(カ) 再採用
前年度において設置されていた相談員で補充しようとする相談員と同一の大分類に属する他の小分類の(平成25年度からは「職務の内容が類似する」)相談員を再採用する場合において,面接に加え,利用者に対する接遇・応対能力,業務遂行能力,勤務態度及び本人の意思に基づいて相談員としての適性と能力を十分に見極めることで能力の実証等を行った場合は,公募によらないことができる。なお,公募によらない採用は,同一者について連続2回を限度とするよう努める。
既に同一の大分類に属する他の小分類の(平成25年度以降は「職務の内容が類似する」)相談員について,単にそれまで勤務していたことをもって業務に精通していると判断するのではなく,適性と能力の見極めで真に再採用の必要性があるか判断する。同一の大分類に属する他の小分類の相談員であることをもって優遇することがあってはならない。他の大分類に属する(平成25年度以降は「職務の内容が類似する」。就職支援ナビゲーターは,全体として「主として求職者等に対する個別支援業務に従事する相談員」として職務内容が類似する相談員に分類されている。)相談員を再採用する場合には必ず公募を行い,他の応募者と比較しても能力及び適性に優れている場合に限る。公募を行う際には,単に既に相談員であることをもって優遇することがあってはならない。
日々雇用職員として委嘱している相談員の期間業務職員への切替え及び期間業務職員として雇用している相談員の任期終了後の再採用につき単に長期間にわたり更新を繰り返している等の理由では行わず,相談員としての適性と能力を十分に見極めた上で行って,手続が公正なものとなるよう留意する。公募によらず再び同じ種類の相談員として採用できるのは,上記見極めに加え,再採用を繰り返すことによって期間の定めのない契約と同視しうるような実態が生じることがないよう常勤化防止閣議決定の趣旨を踏まえた措置が講じられ,上記見極めの判断が公募による場合と同様,適切な能力の検証の上で行われ,その判断資料の記録・保管が必要となる。
エ a公共職業安定所は,平成23年3月,日々雇用職員として勤務中の相談員のうち期間業務職員として採用予定の者(原告を含む。)に対し,同年4月1日から期間業務職員として採用することを内示する書面(乙29)を交付し,その内容を説明した。その書面には,予算が国会審議中で,内示の段階であるから,今後の動きによっては,東京労働局から内示された定数が変動する可能性があるので,この書面で平成23年度の雇用が確約されているものではない旨も記載されていた(乙56,証人C・原告本人。原告は,上記書面の交付を受けた記憶はないとしつつも,内容につき口頭で説明を受けた旨供述している〔原告本人・19頁〕。)。
オ a公共職業安定所は,平成24年2月,相談部長,統括及び庶務課長による意向確認を兼ねた面接を行った上,公募によらずに,原告を次年度も再採用することを決定した。この再採用の際,a公共職業安定所は,原告を従前の就職支援ナビゲーター(早期再就職支援分)ではなく,刑務所出所者等を支援対象者とする就職支援ナビゲーター(就労支援分)として採用することが適当であると判断して,原告にその旨を打診し,原告もこれを了承して,就職支援ナビゲーター(就労支援分)として採用された(甲30,乙55,乙56,証人D,証人C,原告本人。なお,就職支援ナビゲーター(早期再就職支援分)と就職支援ナビゲーター(就労支援分)は,前記ウ(イ),(カ)のとおり,ともに「同一の大分類」に属するから,平成24年度の採用が公募によらなかったことに手続違反はない。)。
カ a公共職業安定所は,平成24年2月,平成24年度も再採用する予定の原告を含む期間業務職員に対し,東京労働局から相談員定数の内々示があり,その者の意向を確認しており,今後の適性,能力も十分と認められるとして,再採用の予定を知らせる書面(乙30)を交付し,口頭でその内容も説明した。その書面には,今回のような公募によらない再採用は,連続2回が限度となっており,平成25年度も再採用されても,平成26年度の採用は公募に応募し,一般の求職者と同様に面接を受けなければならないこと,任期終了後は自動的に再採用が行われるわけではなく,任期中の勤務実績,態度,能力,従事する事業の次年度の予算状況等総合的に判断し,再採用が行われることも記載されていた(乙55,乙56,証人D,証人C)。
キ 原告は,平成24年,東京都内のd公共職業安定所に就職支援ナビゲーターとして勤務するE(以下「E」という。)とともに職員団体であるe非正規職員労働組合(以下「非正規職員組合」という。)の結成に参加し,原告は執行委員長に,Eは副執行委員長にそれぞれ就任した。原告及びEは,期間業務職員制度の下で,年度末で相談員が任期終了後の採用がされない可能性があることに不安を感じ,組合活動の一環として関係する人事院規則や関連する通達の調査も行った。原告及びEは,平成25年,非正規職員組合の役員選挙に立候補したが,落選し,非正規職員組合の執行部から退いた(甲9,29,証人E,原告本人)。
ク a公共職業安定所は,相談員の再採用手続を担当者に指示するための平成25年1月7日付け「平成24年度の相談員再採用事務について」(乙32)を作成し,管理職らにその内容を周知した。この中では,再採用を希望する者には,意向確認のヒアリングをもって再採用されるものではなく,別途再採用に係る面接が行われることを必ず説明すること,現在,何回目の再採用であるか説明し,3回目は一般公募によることも説明することなどが記載されている(乙56,証人C)。
ケ a公共職業安定所は,原告に対し,平成25年1月,相談部長及び統括による再採用の意向確認及び評価のための面談を実施し,同年2月,相談部長,統括及び庶務課長による選考のための面接を実施した上,公募によらないで,原告の再採用を決定した。この各面接では,原告が平成26年度に再採用されるためには公募に応募し,他の応募者と同様に,採用選考を受ける必要があることも説明された。同年3月にも原告に同様の説明を行った(乙31,乙33,乙55,乙56,証人D,証人C)。
コ 東京労働局は,公共職業安定所に対し,平成25年2月20日付け「職業安定行政関係相談員に係る管理業務の留意事項について」(乙23)において,相談員の公募や再採用につき,①公募では原則として毎週月曜及び木曜の午前10時に求人票を公開すること,②現職の相談員には,原則として前記①の公開日の前日の午後零時以降に書面で情報提供を行うこと,③現職の相談員には公募に係る求人票が公開された後に応募を行うよう指示すること,④年度途中に採用した相談員を再採用しても年度当初の採用者と同様に再採用1回目と取り扱い,再採用の可否の判断で,任用期間を短いことを理由として再採用を行うことがないよう,公正に能力実証等を行った上で判断することを指示していた。上記③の応募に関しては,現職の相談員に予め応募書類を準備させ,公開直後に受理し,応募に必要な公共職業安定所発行の紹介状も公開と同時に発行する扱いもしていた。上記②の情報提供や応募書類の公開直後の受理の扱いは,現職の相談員は求人票の公開時点では勤務中で,業務に専念しなければならないが,応募の受付件数には募集人数の概ね5倍を上限とする制限(いわゆる「枠」)があって応募が遅れると応募が受け付けられなくなるおそれがあるため,現職相談員の応募の機会を確保するためのものとして行われていた(甲30,乙57・2頁,証人E,原告本人,弁論の全趣旨)。
サ a公共職業安定所は,平成26年1月,幹部職員に宛てて,同月9日付け「各種相談員に係る26年度の採用に関する意向確認について」と題する書面(甲10,乙35)で,①次年度の採用につき意向確認を行うこと,②今回の意向確認をもって次年度の雇用を確約するものではないので誤解のないようにすること,③再採用の選考は別途行うことを指示した。a公共職業安定所の管理部長及び庶務課長は,同月14日,原告と面談して,再採用の意向を確認し,公募による採用手続を説明した。この公募に係る求人票(甲11)にも再採用は「勤務実績・勤務態度・能力及び従事する事業の予算状況により判断」し,「再採用は2回までとする」ことが明記されていた(甲10,甲11,甲30,乙35ないし乙37,乙57,原告本人)。
シ 原告が応募した「就職支援ナビゲーター(就労支援分)※刑務所出所者」(募集人員1名)は,原告のほかに4名の応募があった。相談部長及び統括は,同年2月17日,就職支援ナビゲーター(就労支援分)に応募した者4名(原告を含む。)に対し,面接チェックシート(乙41)を用いた採用選考の面接を実施した。その面接では,原告に対して,これまでの業務の自己評価,課題,仮に採用されたときの次年度の業務に関する考えなどが聴取された。この採用選考は,公募による複数の応募者の中から最も適任と考えられるものを選抜して採用する競争試験であり,採用選考の結果,東京労働局長は,原告以外の者が最も適任であると判断して,その者を採用し,原告は採用しないとの判断をした。a公共職業安定所全体では平成26年度の期間業務職員75名の募集に,合計225名(原告を含む勤務中の期間業務職員66名及び一般求職者159名)が応募し,現職の期間業務職員のうち,不採用になった者の人数は原告を含め9名であった(甲29,甲30,乙40,乙41,乙57・3頁,証人D,原告本人,弁論の全趣旨)。
ス 原告の下には,a公共職業安定所で担当した求職者から,その就職や近況を報告したり,感謝の気持ちを伝えたりする礼状が少なからず寄せられていた(甲29ないし甲31の5,証人E,原告本人)。
セ a公共職業安定所の常勤職員は,前記イ,ウ,ク,コ,サの文書を受けて,相談員に対し,普段から更新や再採用を約束したり,その期待を抱かせる発言をしたりしないよう注意していた(乙55,56)。
(3)  前記第2の1前提事実(4)イ,ウ,オ及び前記(2)アないしシ,セで認定した事実を総合すると,①原告は,日々雇用職員であったときから,年度末までの任期ないし委嘱期間の終了後においてそれらが自動的に更新されたり当然に再採用されることはなく,公募に応募しなければならないこともあることを繰り返し説明されるなどして更新又は採用の保障がないことを認識,理解していたこと,②a公共職業安定所は,原告に対し,平成24年度の採用を内示する際も「確約」ではないことを付言していたこと,③原告の期間業務職員としての任期終了後の採用では,公募によらない場合でも採用選考のための面接を必ず経ていたこと,④厚生労働省は,日々雇用職員又は期間業務職員たる就職支援ナビゲーターを含む相談員につき現在勤務していることのみでは再採用に関し優遇しないという方針を有しており,相談員に対し,自動更新がないことを繰り返し説明し,更新を約束し,又は期待させる言動を行わないことを徹底しており,a公共職業安定所の職員もこの徹底を意識し,その徹底の内容を確認する文書もしばしば作成されており,原告に対する面談等の中でも,更新を約束し,期待させるような言動を行っていないこと,⑤東京労働局の公共職業安定所では,現職の期間業務職員が公募に応募する際には便宜を図っていたものの,それは応募の機会の確保に止まり,再採用を保障する趣旨のものではなかったことが認められる。これらの事実を総合すれば,任命権者たる東京労働局長,更にはその管下の職員において,原告に対し,任期終了後,採用して勤務を続けさせることを確約ないし保障するなど,任期終了後,必ず採用されると期待するのが無理からぬ言動があったとは認めることはできず,むしろ,期間業務職員には任期の定めがあり,必ず再度採用される保障があるわけではないことを繰り返し理解させる措置を講じ,原告も一応これを理解していたことがうかがえる。
(4)  前記第2の1前提事実(4)イ,ウ,前記(2)ア,ウ(カ),エの認定事実に加え,証拠(甲11)及び弁論の全趣旨によれば,a公共職業安定所から原告に交付された書面では,しばしば「契約」「契約の更新」と,原告と被告との間の関係が私法上の契約関係であるかのような用語が使用されていることが認められる。ただ,証拠(甲4,甲6,甲8,甲30,乙10,乙12,乙14,乙16,乙18,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告が国公法の適用のある国家公務員の立場にあることは複数回にわたって説明されていることが認められるから,東京労働局長その他の被告の機関において,原告と被告との間に私法上の契約関係を成立させようとする効果意思があったとはいえないし,「契約」「契約の更新」という用語が勤務の継続に何らかの期待を抱かせるような意味合いを含意して使用されていたことをうかがわせる証拠もなく,労働契約書を取り交わすなど,契約関係であるかのような誤解を強めるような事情も見当たらない。このような点に加えて,前記(3)の説示にも照らすと,用語の使用に不適切な点があることをもって,任命権者において,原告につき,任期終了後必ず採用されると期待するのが無理からぬ言動を行ったと認めることはできない。
原告は,本人尋問及び陳述書(甲30)において,原告の平成26年度における業務の予定は既に決まっており,上司からの次年度の方針や変更を示した書面を交付されていたと供述するが,仮にそのような事実があったとしても,そのことをもって,必ず採用されると期待するのが無理からぬ言動であると評価することはできない。
(5)  本件全証拠に照らしても,原告の本件不採用に関し,平等取扱の原則(国公法27条)に反するような差別的な取扱いがあったと認めるには足りない。原告は,原告の勤務状況は良好であったと主張し,原告が熱心に業務に取り組んだことがうかがわれる証拠もあるものの(前記(2)ス),本件における採用選考は,公募によらない場合でも要する能力の実証に加え,他の応募者と比較した上でも最も適任であると認められることを要し(前記第2の1前提事実(2)エ,オ,前記(2)アないしウ),その評価,判断は,任命権者の広範な裁量に委ねられるべきものである上,現職の相談員の中で,原告以外にも公募による採用選考の結果,採用されなかった者がいることをも考慮すれば(前記(2)シ),本件不採用に関し,任命権者の裁量権の行使に著しい不適切や不公正があったと推認することはできない。
原告(甲30)及びE(甲29)の陳述書,証人Eの証言及び原告本人の供述中には,本件不採用は,原告の非正規職員組合での役員選挙立候補その他の活動(前記(2)キ)を動機とする不当なものである旨の部分があるが,そのような不当な動機の存在を裏付けるに足りる客観的な証拠は何ら見当たらないし,むしろ,原告の本件不採用の後も,同様の立場にあるEの就職支援ナビゲーターとしての採用は続いていることにも照らすと,上記各供述については,いずれも採用することができない。
(6)  原告は,本人尋問及び陳述書(甲30)において,本件不採用を告げられる際,上司から「ほかにいい人がいたから」との説明しかされなかった旨供述するところ,確かに,原告に関し,年間にわたって就職支援ナビゲーターとしての勤務が継続され,複数回にわたって,その委嘱が繰り返されてきたことからすれば,不採用を告知するに当たって,もう少し丁寧な説明がされてしかるべきであったとも考えられる。しかしながら,前記(1)の説示に照らすと,この点をもって,任命権者に国家賠償法上違法な行為があったということはできないのは明らかであるし,また,上記のような言動が,任命権者の裁量権の行使に逸脱ないし濫用があったことをうかがわせるということもできない。
証拠(乙21,25)及び弁論の全趣旨によれば,厚生労働省職業安定局総務課長の平成23年2月7日付け「職業安定行政関係の相談員に係る管理業務について」と題する内かん並びに同省大臣官房地方課長補佐及び職業安定局総務課公共職業安定所運営企画室長補佐の同日付け「職業安定行政関係相談員の採用等に係る留意事項等について」と題する事務連絡は,期間業務職員である相談員の「再採用を行わないことが確実になった場合」,本人から「再採用しない理由」を書面で交付するよう求められた際は,遅滞なく交付することを定めているが,これらの文書は,全体的に見て公募によらない方法で勤務中の者を採用しなかった場合を想定しているようにうかがわれ,本件不採用のように公募による採用選考の結果,採用しなかった場合を対象として明記しているわけではなく,また,説明すべき理由も応募者に対する評価,他の応募者との比較等の詳細に及ぶことを予定しているとも認められず,a公共職業安定所もそのような理解の下,書面による説明を行わなかったものとうかがわれる。
したがって,本件不採用後の原告に対する説明の状況をもって,本件不採用が不合理な理由によるものであると推認することはできない。
(7)  以上によれば,本件不採用をもって,原告の法的に保護される期待,人格的利益その他の権利又は利益の違法な侵害に当たるということはできない。
本件不採用が「当該組織上の必要」によらず,外部からの不当な介入によるものと認めるに足りる証拠はないから,本件ILO条約9条1項の趣旨を考慮しても,前記(5)の認定判断は左右されない。
したがって,損害賠償を求める第2次予備的請求には理由がない。
6  争点(6)(義務付けの訴えの適否)について
(1)  国公法その他の法令が,公務員志望者からの採用希望を受けて,任命権者に志望者を採用し,又は採用を拒む何らかの処分をすべき応答義務を課して,志望者に法令に基づく申請権を認めているとは解されないから(国公法56条,57条参照),原告からの採用の希望は,「一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求」(行政事件訴訟法3条6項2号)には当たらず,原告の第1次予備的請求における任用の義務付けの訴えは,行政事件訴訟法3条6項1号のいわゆる非申請型の訴えであり,同法37条の2第1項,第2項に基づき,これを提起できるときは,損害の回復の困難の程度,損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質を考慮・勘案して「一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり,かつ,その損害を避けるため他に適当な方法がないとき」に当たることを要する。
(2)  原告の主張する損害は,自己の意思に反して就職支援ナビゲーターの業務に従事できないこと,将来の再採用で勤務を継続する余地がなくなること,給与を得られないことの3点に要約されるが,その損害の内容,性質,程度及び本件不採用の内容,性質を考慮・勘案するに,①原告は平成26年4月以降の勤務継続による給与その他の利益を得られなくなったが,それ以上に本件不採用で自己の利益を積極的に侵害されたわけではないこと,②一般に労働者は使用者に対し就労自体を請求する具体的な権利(就労請求権)を有さないこと,③将来の再採用で勤務を継続することは何ら権利として保障されていないこと(前記4,5参照),④原告が就職支援ナビゲーターとして給与を得ることはできないが,他に職を得て賃金を得ることは何ら妨げられないこと,⑤本件不採用で原告に仮に何らかの損害が生じるとしても事後的な賠償で回復することが困難なものとまではいえないことも指摘でき,「一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれ」があるとは認めるに足りない。
(3)  したがって,原告の第1次予備的請求における任用の義務付けの訴えは不適法であり,これを却下すべきである。
なお,前記5の認定の判断に照らせば,本件不採用につき,被告が採用の義務を負う,又は裁量権の逸脱若しくは濫用があったとはいえないから,行政事件訴訟法37条5項の要件を欠き,第1次予備的請求における義務付けの訴えは理由も欠くものというべきである。
7  結論
以上のとおり,主位的請求は棄却すべきであり,第1次予備的請求における義務付けの訴えは却下し,その余の第1次予備的請求及び第2次予備的請求はいずれも棄却すべきであるから,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第19部
(裁判長裁判官 西村康一郎 裁判官 若松光晴 裁判官 宮川広臣)

 

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