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「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(19)平成28年 3月30日 東京地裁 平21(行ウ)288号 損害賠償(住民訴訟)請求事件

「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(19)平成28年 3月30日 東京地裁 平21(行ウ)288号 損害賠償(住民訴訟)請求事件

裁判年月日  平成28年 3月30日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(行ウ)288号
事件名  損害賠償(住民訴訟)請求事件
裁判結果  棄却  文献番号  2016WLJPCA03306001

裁判経過
控訴審 平成28年11月16日 東京高裁 判決 平28(行コ)163号 損害賠償(住民訴訟)請求控訴事件

裁判年月日  平成28年 3月30日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(行ウ)288号
事件名  損害賠償(住民訴訟)請求事件
裁判結果  棄却  文献番号  2016WLJPCA03306001

当事者の表示 別紙1「当事者目録」に記載のとおり

 

 

主文

1  原告らの請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用(補助参加によって生じたものを含む。)は原告らの負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
被告は,A(以下「A」という。),B(以下「B」という。),C(以下「C」という。),被告補助参加人Z1(以下「補助参加人Z1」という。)及び同Z2(以下「補助参加人Z2」という。また,補助参加人Z1と補助参加人Z2を併せて「補助参加人ら」といい,これにA,B及びCを併せた5名をまとめて「本件相手方ら」という。)に対し,連帯して金1255億円並びに内金855億円に対する平成20年8月31日から支払済みまで年5分の割合による金員及び内金400億円に対する同年4月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を被告に支払うよう請求せよ。
第2  事案の概要
本件は,東京都が平成16年4月1日に全株式を取得した株式会社a銀行(以下「a銀行」という。)が,経営状態の悪化に伴って,東京都から,当初出資を受けた1000億円のほかに400億円の追加の出資を受けた上で,資本金及び資本準備金(以下,併せて「資本金等」という。)の額を合計1016億円減少する旨の株主総会の決議をしたことに関し,東京都の住民である原告らが,①東京都知事であったA,東京都の職員であり,後にa銀行の役員等を務めたB及びC並びにa銀行の役員等を務めた補助参加人らが,それぞれ東京都に対する不法行為をし,それらが共同不法行為に当たるとした上で,これらにより,東京都に対し,当初の出資の額である1000億円のうち855億円及び追加の出資の額である400億円に相当する合計1255億円の損害を与えたから,東京都は本件相手方らに1255億円及びこれに対する民法所定の遅延損害金(起算日は,855億円については資本金等の額を減少する旨の株主総会の決議がされた日の後の日であり,400億円については追加の出資がされた日である。)の連帯支払の請求権を有しており,また,②Aが,東京都に対する不法行為をし,これにより,東京都が400億円の追加の出資をして,東京都に対し,同額の損害を与えたから,東京都はAに400億円及びこれに対する民法所定の遅延損害金(起算日は追加の出資がされた日である。)の支払の請求権を有している旨の主張をし,東京都の執行機関である被告に対し,地方自治法242条の2第1項4号の規定に基づき,本件相手方らに上記の請求権に係る金員の支払の請求をすることを求める事案である。原告らは,上記①の不法行為として,(a)Aがa銀行の経営を監視する義務を,(b)B及びCが,東京都の職員としては上記の監視する義務,また,a銀行の役員等としては健全な銀行の経営がされるようにする義務を,(c)補助参加人らが財務内容等の情報提供をする義務及び問題のある商品の販売の中止等をする義務をそれぞれ怠ったことを,上記②の不法行為として,Aが,東京都にとって回収の見込みがないことが明らかなものであったにもかかわらず,故意又は過失によって上記の400億円の追加の出資を提案して実行したことを主張している。
1  前提事実(争いのない事実,当裁判所に顕著な事実並びに証拠(丙イ23のほか,後掲のもの)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)  当事者等
ア 原告らは,いずれも東京都の住民である。
イ Aは,平成11年4月23日から平成24年10月31日まで,東京都知事であった者である。
ウ Bは,①東京都において,平成13年7月1日から平成16年7月まで出納長,同月13日から平成19年5月10日まで副知事であった者であり,②a銀行において,同年6月22日から平成21年6月29日まで取締役(社外取締役)兼取締役会議長を務め,同日から取締役(社外取締役)兼取締役会長を務めた(甲7,8,96)。
エ Cは,平成19年11月25日に退職するまで東京都の職員であったところ,①東京都において,平成15年6月1日から出納長室の「銀行設立準備担当理事」,平成16年8月1日から平成17年7月15日まで新銀行設立本部長であった者であり,②a銀行において,平成16年4月1日から同年6月28日まで監査役を務めたほか,東京都を退職した後の平成19年11月30日から平成21年6月29日まで代表執行役を務め,平成19年12月26日から平成21年12月31日まで取締役を務めた(甲7,8,97)。
オ 補助参加人Z1は,a銀行において,平成16年4月1日から同年6月28日まで代表取締役を務め,同日から平成19年6月22日まで取締役兼代表執行役を務めた(甲7,丙イ1)。
カ 補助参加人Z2は,a銀行において,平成16年10月13日から平成18年6月23日まで審議役(代表執行役を補佐する役職であるが,会社法上の役員等(同法423条1項参照)ではない。)を務め,同日から平成19年6月22日まで,執行役を務めて「審査・与信管理」を担当した(甲7,丙ロ1)。
(2)  a銀行の概要等
ア a銀行は,平成16年4月1日,東京都がb銀行の全株式を取得し,「株式会社a銀行」に商号を変更した株式会社であり(以下,この商号の変更の前後を問わず,「a銀行」という。また,同日をもってa銀行が「設立」されたということがある。),預金の受入れ,資金の貸付け及び債務の保証等を目的として,銀行業務及び信託業務を営んでいた。a銀行は,同年6月28日,委員会等設置会社に移行した後,平成21年6月29日,監査役会設置会社に移行した。
イ 東京都議会は,平成16年3月30日,a銀行に対して1000億円の出資をすることを含む平成16年度東京都一般会計予算を議決し,東京都は,上記の出資をした(甲23,乙2,弁論の全趣旨)。
(3)  「新銀行マスタープラン」(甲1。以下「マスタープラン」という。)及び「a銀行事業計画書」(甲117。以下「平成16年事業計画書」という。)の策定等
ア 東京都は,平成15年5月,銀行の創設に向け,本格的な検討を行うことを公表し,同年6月,出納長室に銀行設立準備担当理事(C)を置き,財団法人c協会(以下「c協会」という。)に銀行の創設に係る調査及び研究を委託した(甲96,97,乙1,弁論の全趣旨)。
イ 東京都は,平成16年2月,a銀行について,具体的な業務内容及び業務運営の指針となるマスタープランを策定して公表した(甲28)。マスタープランは,次の内容を含んでいた(甲1)。
(ア) a銀行は,「地域型トランザクション・バンク」として,利益の極大化ではなく,東京都の住民や中小企業への成果の還元を行うこと等を特徴とし,健全な「財務体質」を背景として東京都の中小企業等の資金需要に対して十分な資金供給を行い,地域経済の活性化を支援すること,具体的には,「ポートフォリオ型融資」を中心に,既存の金融機関が十分に提供することができていないリスクの高い分野へ資金を供給するなどの役割を果たすことを経営の理念とする。
(イ) a銀行は,健全性と効率性を重視した経営を行い,開業3年後において,総資産が「地銀中位クラス」の1兆6000億円,融資・保証残高が9300億円,業務純益が161億円,経常利益が54億円(単年度黒字転換),経費率が47.2パーセント,「BIS自己資本比率」が13.1パーセントとなることを目指すこととし,開業準備経費を約100億円と見込み,「第1期」に219億円の赤字を,「第2期」に126億円の赤字を,「第3期」に54億円の黒字をそれぞれ計上することを見込む。
(ウ) a銀行の店舗は,東京都千代田区大手町に所在する本店のほか,支店又は出張所を都内の9か所に設置することとし,開業時に5店舗を設置し,残りはその後に順次設置する。
(エ) 東京都との関係については,「新銀行は,株式会社であり,その経営は取締役等の経営陣に委ねられる。経営陣は,民間企業として,最も効率的な経営を行っていく。しかし,新銀行の経営は,中小企業金融の充実や新しい金融インフラの提供による利便性の向上などの設立趣旨を踏まえて行われる。都は,過半の株式を有する株主の立場から,これらの経営の大枠からの逸脱がないか監視するとともに,適宜,経営の方向性を示していく。具体的には,都は,株主としての権利を行使し,社外取締役として都の関係者を就任させる。また,地方自治法第243条の3に基づき経営状況に関する決算書・事業計画書等を徴し議会へ提出するとともに,東京都監理団体指導監督要綱に基づく報告団体として定期的な報告を受けることとなる。」。
ウ a銀行は,平成16年11月10日,平成16年事業計画書を作成した。平成16年事業計画書は,次の内容を含んでいた(甲117)。
(ア) 「中小企業向け融資戦略」について,「スコアリングモデルを活用したポートフォリオ型融資をコアに,担保・保証に依らない多様なローン商品を準備」などとした上で,ポートフォリオ型融資の特長を,「中小企業の資金繰り実態に合わせ,審査期間を短縮し,スピーディーに資金供給」,「審査結果と実際の倒産状況の突合によるスコアリングモデルの調整・進化」などとする。
(イ) 「リスク管理態勢」について,信用に係るリスクの管理体制等の在り方を定める。
(ウ) 「財務計画」について,「第1期」は158億円の赤字を,「第2期」は113億円の赤字を,「第3期」は4億円の黒字をそれぞれ計上することを見込む(「予測損益計算書」)。
(4)  a銀行のいわゆる主力商品の概要
a銀行は,開業した当初から,中小企業等に対し融資をし,又はその債務を保証すること(以下,併せて「融資等」という。)を内容とし,融資等の金額が小口であり,その条件が定型化された次のアからウまでの内容の商品(以下,併せて「本件小口定型3商品」という。)を販売した。
ア ポートフォリオ型融資
ポートフォリオ型融資は,あらかじめ一定の幅のある貸付条件が定められた定型的な商品であり,原則として担保及び第三者による保証の必要がなく,適用される金利はおおむね年2パーセントから10パーセント程度,無担保の場合の貸付期間は最長で5年間,貸付金額は最高で5000万円であることなどを主な特徴とし,財務的に優れた顧客から「ミドルリスク・ミドルリターン」の取引が可能な顧客までの幅広い顧客層を対象とするもので,a銀行の中小企業等に対する融資等の中核的な商品であった。
イ 「技術力・将来性重視型融資」
技術力・将来性重視型融資は,原則として担保及び第三者による保証の必要がなく,適用される金利はおおむね年2パーセントから12パーセント程度,無担保の場合の貸付期間は最長で5年間,貸付金額は最高で5000万円であることなどを主な特徴とし,既存の金融機関が十分に提供することができないリスクの高い分野へ資金を供給するとの方針から,財務内容に問題があってポートフォリオ型融資の実行が困難と判断される場合であっても,対象事業者の技術力や将来性が見込まれるときには融資を行うことを目的とした商品である。
ウ 「ポートフォリオ型保証」
ポートフォリオ型保証は,提携する信用金庫等の金融機関(以下「提携金融機関」という。)が実行する融資に対してa銀行が独自の審査に基づき保証をする商品であり,原則として担保及び第三者による保証の必要がなく,保証料を定めるに当たり適用される主たる債務の元本に対する割合(以下「保証料率」という。)はおおむね年2パーセントから10パーセント程度,保証期間は最長で5年間,保証をする額は提携金融機関における貸付金額の80パーセント相当額かつ最大で4000万円であることなどを主な特徴とし,提携金融機関との既存の取引のある顧客を前提とし,財務的に優れた顧客からミドルリスク・ミドルリターンの取引が可能な顧客までの幅広い顧客層を対象とするもので,a銀行の中小企業等に対する融資等の主力商品の一つであった。
(5)  融資等の審査における「スコアリングシステム」の利用
ア 本件小口定型3商品の審査には,スコアリングシステムが用いられていた(以下,本件小口定型3商品について用いられたスコアリングシステムを「本件スコアリングシステム」といい,本件スコアリングシステムにおいて用いられるモデルを「本件スコアリングモデル」という)。
本件スコアリングシステムは,融資等を希望する顧客の直近の2期分の決算書の内容と「定性情報」を入力することにより,あらかじめ蓄積された標本(「デフォルト」(以下,特に断らない限り,債務者の区分として「破たん懸念先」,「実質破たん先」及び「破たん先」のいずれかの状態に陥ることをいう。)を起こした貸付先と,デフォルトを起こさずに融資等を回収できた貸付先の両方が含まれる。)に係る財務のデータ及び定性情報と,融資等を希望する顧客についての情報との相関関係に基づき,当該顧客に融資等を行った場合に,融資等から1年以内にデフォルトを起こす確率(以下,特に断らない限り「デフォルト率」という。)を算出し,このようにして見積もられたデフォルト率(以下「想定デフォルト率」という。)の値に応じて「信用格付」(取引先のいわゆる信用に係るリスクを客観的に評価し,その程度に応じて「T0」から「T14」までの15段階に区分すること。信用格付における数字はリスクの度合いを表し,「T0」から「T8」までは「正常先」,「T9」から「T11」までが「要注意先」,「T12」が破たん懸念先,「T13」が実質破たん先,「T14」が破たん先の各債務者の区分と対応する。)を行い,これを融資等の審査の判断に活用すると同時に,想定デフォルト率に見合った金利又は保証料率の決定に活用するという仕組みである。
イ 本件スコアリングシステムの導入に至る経緯等
(ア) スコアリングシステムのような審査の手法(「クレジット・スコアリング」と呼ばれ,信用に係るリスクと関係が深い諸変数(企業の属性や財務状況等)を「説明変数」とする計量モデルによりスコア(評点)を算出して,これを基に融資の実行の可否や融資の条件等を決定する手法を指す。)は,アメリカ合衆国において1990年代初頭から中小企業向けの融資に用いられるようになり,我が国においても,平成15年度において,「銀行の約7割がスコアリングモデル(信用格付モデル)の活用による担保・保証に依存しない融資に取り組」んでいる状況であった(丙イ16)。金融機関がこのような手法による融資を導入する理由は,主として迅速な審査及び融資の実行やコストの削減にあった。
(イ) 東京都は,平成15年7月頃から,c協会を中心としつつ外部のコンサルタントを交え,経営の健全性を確保しながら,既存の金融機関が融資をしていないリスクの高い中小企業等に対して迅速な審査により原則として無担保,無保証で資金供給を行う手段として,スコアリングシステムを導入することを検討し,株式会社d(以下「d社」という。)ほか4社のスコアリングシステムを比較し検討した上で,同年11月にはd社製のスコアリングモデルを導入する方針を決定した。a銀行は,この方針に沿い,d社製の本件スコアリングシステムを導入した。
ウ スコアリングシステムの性質等
スコアリングシステムは,そこに組み込まれたモデルの「パラメーター」(「回帰係数」,「説明変数」とも呼ばれる。)を追加し,又は変更することなど(「チューニング」と呼ばれる。)によって想定デフォルト率の算出の精度を改善することができるものであったが,蓄積されている標本のデータ(以下「サンプルデータ」という。)に基づいて想定デフォルト率を算出する仕組みであるため,その精度は,サンプルデータの特性に制約されるという性質があり,サンプルデータの特性と審査の対象となる顧客の特性とが異なる場合には,クレジット・スコアリングで算出される想定デフォルト率の正確性に問題が生じ得るものであった。
a銀行が本件スコアリングシステムを導入するに当たっては,新規に開業するa銀行には固有の顧客がおらず,利用するサンプルデータがa銀行の顧客のものではないことから,a銀行の実際の顧客についてのサンプルデータが蓄積された後,これを用いて本件スコアリングシステムを修正していくことが必要であると考えられており,補助参加人らは,こうした修正が開業後の課題であることを認識していた。
(6)  本件小口定型3商品の審査の仕組み
ア ポートフォリオ型融資
ポートフォリオ型融資の審査の過程及び融資の実行に至るまでの流れは,次のとおりである。①まず,申込みの受付の時に面談を行い,「定性チェックシート」に基づき「定性評価」を実施し,税金の滞納や不渡りの履歴等の特定の事項が確認された場合や,徴求した決算書等の書類との整合性等について審査した時点の点数が一定の基準を下回った場合には,融資を拒絶する。②その後,株式会社eに対して「COSMOSⅡ」及び定性情報を元にした「倒産予測値」の照会を行うなどして,信用情報を確認した後,③徴求した2期分の決算書の財務情報及び「借入申込書」のアンケートの項目の定性情報を本件スコアリングシステムに入力すると,審査の結果として,「スコアランク」,顧客の想定デフォルト率及び貸付条件(融資を実行する限度額,貸付けが可能な期間,適用される「金利テーブル」,担保の評価,「担保カバー率」等)が表示される。④信用格付は,リスク(想定デフォルト率)の程度に応じて「T0」から「T14」までの15段階に区分されているところ,本件スコアリングシステムが表示するスコアランクに相当する信用格付を付与したうえ,スコアランクが「7」(信用格付「T7」に相当)以下の者については融資を拒絶する。⑤以上の定性評価及び本件スコアリングシステムによる審査の結果に問題がない場合には,原則として,「現地調査チェックシート」(甲132)に従い現地調査を行って顧客の実態の確認をする。⑥最後に,これらの審査の結果,問題がない顧客について,顧客との折衝を通じて最終的な融資の条件を決定し,禀議を申請し,決裁の後,融資が実行される。
適用される金利は,本件スコアリングシステムが算出する想定デフォルト率に応じたスコアランクごとに幅のある金利の中から,貸付期間と貸付金額に従って決定する。
イ 技術力・将来性重視型融資
技術力・将来性重視型融資の審査の過程においては,顧客の財務の状態の評価と技術力や将来性の評価との2段階の評価を行い,この二つの評価を用いて,「与信判断基準表」に基づき,店頭及び現地調査での面談の結果を考慮して,総合的に貸付けの可否及び内容を判断する。受付における審査,本件スコアリングシステムを利用した審査及び現地調査を行うこと並びにその内容は,ポートフォリオ型融資とおおむね同様であり,これに加えて,技術力等の「スコア評価」及び「技術力等評価委員会」による評価を行い,信用格付と技術力等評価委員会の評価結果によって「与信判定基準」が決定され,これを基に,決裁をする権限を有する者において,顧客の申込みの条件,資金の使途,面談の記録等の定性情報等を総合的に考慮して,融資の判断をすることになる。営業店の店長は,顧客からの融資の申込みに対して「財務スコアリング」から算出される「適用基準金利」を勘案し,その基準内で適用される金利を決定することができる。
ウ ポートフォリオ型保証
ポートフォリオ型保証の審査の過程においては,本件スコアリングシステムによりスコアランクを算出し,一定のスコアランク以上のものを採択して,スコアランク及び貸付期間ごとに適用される保証料率を決定する。保証料率は,全て本件スコアリングシステムにより算出されたものを適用する。
(7)  a銀行の開業等
a銀行は,1年間の開業準備を経て,平成17年4月1日,本店における営業を開始し,その後も順次支店を開設した。この間,a銀行は,平成16年11月に平成16年事業計画書を策定し,スコアリングシステムを活用したポートフォリオ型融資を中核的な商品として,経営の理念である「ミドルリスク中小企業融資」を推進していくこと,「第3期事業年度」(平成19年度)の貸付残高を合計7426億円とし,そのうちポートフォリオ型融資の貸付残高を4358億円,技術力・将来性重視型融資の貸付残高を557億円とすることなどを内容とする営業の推進の基本方針を定めた。また,a銀行は,平成17年8月3日,「マスタープランの経営理念を踏襲しつつ,その後の外部環境の変化を踏まえて,業務戦略並びに財務計画を立案したもの」として,「中期経営目標」(甲104,乙4)を発表した(甲104,乙4)。
(8)  デフォルトの発生の状況
f監査法人がa銀行からの依頼に基づき平成16年4月6日付けで開業準備のために作成した資料においては,本件小口定型3商品の残高全体に対する「事業収支計画」上の想定デフォルト率は,ポートフォリオ型融資が2.2パーセント,技術力・将来性重視型融資が2.7パーセント,ポートフォリオ型保証が2.9パーセントとされていた。
平成17年7月に本件小口定型3商品の実行先に初めてデフォルトが発生して以降,本件小口定型3商品の実行先のデフォルトの件数は増加を続け,その後,実際に生じたデフォルトに基づいて算出した融資等の実行先がデフォルトになる確率(以下「実績デフォルト率」という。)は,上記の事業収支計画上の想定デフォルト率を超えるに至った。
(9)  a銀行における純損失の計上
a銀行は,平成18年3月期の決算においては約210億円,平成19年3月期の決算においては約547億円,平成20年3月期の決算においては約167億円の当期純損失を計上した(乙5,6)。
(10)  a銀行の経営の再建と東京都による追加の出資等
a銀行は,平成20年2月20日,「a銀行再建計画(平成20~23年度)」(甲33の3,乙8)を発表し,その後,営業の体制の抜本的な見直し,審査の態勢の再構築,店舗や人員の大掛かりな削減等を行った。
他方,東京都議会は,同年3月28日,a銀行に対して400億円の追加の出資をすることを内容とする補正予算案を議決し,東京都は,同年4月30日,いわゆる第三者割当ての方法による募集株式の発行により,a銀行に対して400億円の追加の出資をした(乙9,10)。
そして,a銀行においては,同年6月30日,資本金等の額を合計1016億円減少する旨の株主総会の決議がされた(乙11。以下,この資本金等の額の減少を「本件減資」という。)。
(11)  本件小口定型3商品の販売の終了
a銀行は,平成21年8月31日,ポートフォリオ型融資の新規申込みの受付を同年9月30日限りで終了することを公表した。
(12)  原告らによる住民監査請求等
ア 原告らは,平成21年3月30日,東京都監査委員に対し,地方自治法242条1項の規定による請求(以下「住民監査請求」という。)をした(以下「本件住民監査請求」という。)。
本件住民監査請求は,①a銀行が本件減資をしたこと(前記(10))により,東京都には,a銀行に対して当初に出資した1000億円(前記(2)イ参照)のうち855億円に相当する損害を生じたことが確定したところ,a銀行の設立及び経営を主導したAには,補助参加人ら並びにその他の取締役及び執行役(かつてその地位にあった者も含む。以下,この段落において同じ。)との共同不法行為により,東京都に対して上記の損害を賠償する責任がある,②東京都は,a銀行に対して400億円の追加の出資をしたところ(前記(10)),かかる出資は違法又は不当な公金の支出であり,また,これを提案したAには,補助参加人ら並びにその他の取締役及び執行役との共同不法行為により,東京都に対して上記の出資に相当する額の損害を賠償する責任がある,③補助参加人ら並びにその他の取締役及び執行役には,Aとの共同不法行為により,上記①及び②の損害を賠償する責任がある,④東京都は,上記①から③までの損害に係る損害賠償請求を怠っていると認められるとして,東京都知事に対し,「A・東京都知事個人,並びにa銀行のZ1・元代表執行役及びZ2・元執行役その他の元・現執行役及び元・現取締役に対して,連帯して1255億円を東京都に返還させるなどの必要な措置を取ること」を勧告するよう求めるものであった。
(アにつき,甲5の1~3)
イ 東京都監査委員は,平成21年5月13日,原告らに対し,本件住民監査請求が地方自治法242条に定める要件を欠いているものと認められたとして,同条4項に定める監査を実施しないこととした旨を通知した(甲6)。
(13)  本件訴えの提起
原告らは,平成21年6月10日,本件訴えを提起した。
(14)  a銀行による訴えの提起等
a銀行は,補助参加人らが,本件小口定型3商品の収益の状況を分析,検討してその販売の継続の是非を検討し,その販売を継続すべきではないとの方針の原案を作成した上,これをa銀行の取締役会等に提出して判断を仰ぐべき善管注意義務又は忠実義務を負っていたのに,これを怠ったなどとして,補助参加人らに対し,会社法423条1項に基づき,連帯して,上記義務違反により生じた損害金の一部である5億円及びこれに対する民法所定の遅延損害金の支払を求める訴え(当庁平成22年(ワ)第3411号損害賠償請求事件。以下「別件訴訟」という。)を提起したところ,平成27年3月26日,a銀行の請求をいずれも棄却する旨の判決(以下「別件判決」という。)の言渡しがされた。別件判決は,控訴の提起がされず,確定した(丙イ24)。
2  争点
(1)  本件訴えの適法性(本件訴えが適法な住民監査請求を経たものであるか否か等)(本案前の争点)
(2)  本件相手方らの東京都に対する共同不法行為の成否(本案の争点1)
(3)  Aの東京都に対する不法行為(前記(2)を除く。)の成否(本案の争点2)
3  争点に関する当事者等の主張
争点に関する当事者等の主張の要点は,本案前の争点(前記2(1))につき別紙2「本案前の争点に関する当事者等の主張の要点」,本案の争点1(前記2(2))につき別紙3「本案の争点1に関する当事者等の主張の要点」,本案の争点2(前記2(3))につき別紙4「本案の争点2に関する当事者の主張の要点」にそれぞれ記載のとおりである(別紙3における略称は,以下においても用いる。)。
第3  当裁判所の判断
1  本案前の争点について
(1)  本件訴えが適法な住民監査請求を経たものであるか否かについて
ア 本件住民監査請求と本件訴えとの同一性
(ア) 前提事実(12)アのとおり,本件住民監査請求は,東京都が,A,補助参加人ら及び「その他の取締役及び執行役(かつてその地位にあった者も含む。)」の共同不法行為により,①a銀行に対して当初に出資した1000億円のうち855億円に相当する損害を受け,また,②a銀行に対して追加の出資をした400億円に相当する損害を受けたにもかかわらず,これらの損害に係る損害賠償請求を怠る事実があるとしてされたものである。そして,本件訴えは,①本件相手方らが,それぞれ東京都に対する不法行為をし,それらが共同不法行為に当たるとし,これらにより,東京都に対し,a銀行に対する当初の出資の額である1000億円のうち855億円及び追加の出資の額である400億円に相当する合計1255億円の損害を与え,また,②Aが,東京都に対する不法行為をし,これにより,東京都が400億円の追加の出資をして,東京都に対し,同額の損害を与えたとして,被告に対し,本件相手方らに上記の不法行為に基づく損害賠償請求権に係る金員の支払の請求をすることを求めるというものである。
そうすると,本件住民監査請求及び本件訴えはいずれも,東京都の「財産」たる損害賠償請求権の行使を怠ったことを請求の原因とするものであって,原告らは,本件住民監査請求及び本件訴えのいずれにおいても,a銀行に対する当初の出資の額である1000億円のうち855億円及び追加の出資の額である400億円に相当する合計1255億円の損害が東京都に生じたとし,この損害を生じさせた本件相手方らの不法行為について,東京都の職員としての注意義務とa銀行の役員等としての注意義務が一体のものとして把握されることを前提とした主張をするものであるから,本件住民監査請求及び本件訴えにおける怠る事実に係る管理の対象となる「財産」は,いずれも,東京都の有する他の財産と区別して認識し得る程度に特定されており,また,そのように特定された範囲で社会的な同一性を有するものであるということができる。
(イ) この点,B及びCについては,前提事実(12)アのとおり,本件住民監査請求において,東京都に対して損害を賠償する責任がある者として氏名が明示されていないが,他方,補助参加人らと併記する形で,「その他の取締役及び執行役(かつてその地位にあった者も含む。)」が,Aとの共同不法行為により東京都に対する損害を賠償する責任があるとされていた。しかるに,前提事実(1)ウ及びエのとおり,Bは平成19年6月22日からa銀行の取締役を務め,Cは,同年11月30日からa銀行の代表執行役を,同年12月26日からその取締役を務めていたのであるから,平成21年3月30日にされた本件住民監査請求における損害賠償請求の相手方(財産の管理を怠る事実に係る相手方)には,B及びCが含まれていたことが明らかである。
なお,原告らは,本件において,B及びCが東京都の職員であった当時の義務の違反についての主張もしているが,住民監査請求の制度は,住民訴訟の前置手続として,まず当該普通地方公共団体の監査委員に住民の請求に係る行為又は怠る事実について監査の機会を与え,当該行為又は当該怠る事実の違法,不当を当該普通地方公共団体の自治的,内部的処理によって予防,是正させることを目的とするものであると解せられるところ,住民訴訟は,住民監査請求の対象とした違法な行為又は怠る事実についてこれを提起すべきものとされているのであって(地方自治法242条の2第1項参照),当該行為又は当該怠る事実について住民監査請求を経た以上,訴訟において住民監査請求の理由として主張した事由以外の違法事由を主張することは何ら禁止されていないものと解せられる(前掲最高裁昭和62年2月20日判決参照)ことに照らすと,上記の判断を左右するものということはできない。
イ 本件住民監査請求の適法性
(ア) 前提事実(12)イのとおり,東京都監査委員は,本件住民監査請求が地方自治法242条に定める要件を欠いているものと認められたとして,本件住民監査請求を却下したが,適法な住民監査請求が誤って不適法であるとして却下された場合においては,適法な住民監査請求を経ているものとして適法に住民訴訟を提起することができる(前掲最高裁平成10年12月18日第三小法廷判決)ところ,本件住民監査請求の適法性を疑わせる事情は見当たらない。
(イ) なお,被告は,①東京都の本件相手方らに対する損害賠償請求権が成立しない旨,②東京都によるa銀行に対する400億円の追加の出資は,回収の見込みがないことのゆえにその支出が違法となることはあり得ない旨の主張をするが,これらの点は,正に本件住民監査請求及び本件訴えに係る請求に理由があるか否かの判断に係る問題であって,本件住民監査請求及び本件訴えの適法性を左右するものではないというべきである。
また,監査請求期間についてみると,本件住民監査請求のうち,不真正怠る事実(a銀行に対する400億円の追加の出資が違法な公金の支出であり,その出資に係るAの行為が不法行為に該当し,かかる不法行為により生じた東京都の損害に係る損害賠償請求を怠る事実)があるとした部分については,前提事実(10)及び(12)アのとおり,上記の出資の日である平成20年4月30日から1年を経過する前である平成21年3月30日に住民監査請求がされたものであり,地方自治法242条2項本文の定める要件を満たしている。
ウ 以上によれば,本件訴えは,適法な住民監査請求を経たものであるというべきである。
(2)  本件訴えのうち400億円の支払を請求することを求める部分の適法性について
被告は,本件訴えのうち400億円の支払を請求することを求める部分が,不真正怠る事実であることを理由に,地方自治法242条の2第1項4号の財産の管理を怠る事実に係る相手方に損害賠償の請求をすることを求める訴えの対象とはならない旨の主張をするが,本件訴えが不真正怠る事実を対象とするものを含むとしても,その訴えが適法性を欠くものと解することはできず,上記の主張は採用することができない。
(3)  本件訴えのうち補助参加人らに対して金員の支払を請求することを求める部分の適法性について
補助参加人Z1は,取締役や執行役に対する善管注意義務違反及び任務懈怠による株主の受ける間接損害の救済について,代表訴訟によるべきであって,直接に民法709条に基づき損害賠償請求をすることができないと解される旨の主張をする。
しかしながら,仮に補助参加人Z1の主張するとおりに解されるとしても,そのことは,かかる損害賠償請求には理由がないとの判断を導くものであって,かかる損害賠償請求をする訴え又はかかる損害賠償請求をすることを求める訴えの適法性を否定するものということはできない。
したがって,上記の補助参加人Z1の主張に照らしても,本件訴えの一部が不適法であるということはできない。
(4)  以上のほかに,本件訴えの適法性を否定すべき事情を見いだすことはできず,本件訴えは適法であるというべきである。
2  本案の争点について
前提事実に証拠(甲96,97,103,106,丙イ1,17,18,23,丙ロ1,証人B,証人C,証人Z1,証人Z2のほか,後掲のもの)及び弁論の全趣旨を併せると,次の事実が認められる。
(1)  a銀行の設立の前後における経過等
ア マスタープランの策定の経過等
(ア) Aは,平成14年2月頃,出納長であったBに対し,銀行を創設することについての検討を指示し,Bは,その頃からかかる検討を開始した。
(イ) Aは,平成15年4月に行われた東京都知事の選挙で,銀行を創設して中小企業に資金を提供することなどを公約に掲げて2度目の当選をし,同年5月,銀行の創設に向け本格的な検討を行う旨の発表をした(甲55)。
(ウ) 東京都は,平成15年6月1日,銀行設立準備担当理事であるCに加え,部長級の職員1名,課長級の職員1名,c協会に派遣される職員23名から成る「銀行設立準備組織」を出納長室に置いた。
(エ) 東京都は,銀行の創設に係る調査及び研究をc協会に委託したところ,c協会には,「特別調査研究室」が置かれ,前記(ウ)のとおり東京都から派遣された職員23名とc協会が委託したいわゆるコンサルティング会社等の従業員や銀行の創設に賛同した民間の会社からの出向者等64名(平成15年10月当時の人数)により,銀行の創設に向けた調査及び研究が行われた。
c協会の特別調査研究室における調査及び研究は,専門分野ごとに,コンサルティング会社,監査法人等に委託がされ,銀行業務の構築,中小企業の資金需要等のいわゆるマーケティング調査,銀行のシステムの基本構想・基本設計等が行われた。
(オ) a銀行の執行役となった者には,創設される銀行の執行役の候補者として,c協会の顧問を務めたものがあったところ,補助参加人Z1は,平成15年11月から,c協会の顧問となった。
(カ) c協会において行われた調査及び研究の結果は,東京都に報告され,東京都は,その報告を踏まえて,マスタープランを取りまとめた。マスタープランは,Aの署名入りの書面として,平成16年2月に発表された。なお,Aは,マスタープランについて,全体の内容をまとめた資料に基づく説明を受けることにより,その内容を把握していた。
補助参加人Z1は,c協会の顧問として,マスタープランを作成するための検討をする会議に出席するという態様で,その作成の作業に関与した。
イ a銀行の設立及び開業の準備に係る経過等
(ア) 東京都議会は,平成16年3月30日,a銀行に対して1000億円の出資をすることを含む平成16年度東京都一般会計予算を議決したところ,これに際し,上記予算案を審査した予算特別委員会において,次のとおりの付帯決議を付して原案を可決すべきものと決定した旨が報告された(乙2)。
「一 都が設立する新銀行においては,東京の産業を担う幅広い中小企業に対し,円滑かつ迅速な資金供給を実施するとともに,多様な手法を通じて,その支援に努めること。また,信用金庫等の地域金融機関と業務提携を含めて,緊密な連携を図るとともに,経営に当たっても,十分な健全性を確保する仕組みを構築すること。
都においても,新銀行の目的を達成するため,経営全般にわたり適切な監視に努めること。」
(イ) a銀行は,平成16年4月1日に設立されたところ,その設立が東京都によるb銀行の買収によるものであったこと,同年度中を開業準備のための期間としていたこと等から,金融庁は,同日,a銀行に対し,銀行法26条1項,金融機関の信託業務の兼営等に関する法律4条(平成16年法律第154号による改正前のもの)において準用する信託業法18条及び担保附社債信託法11条(平成17年法律第87号による改正前のもの)の各規定に基づき,平成16年4月1日から平成17年3月31日までの間,「既存顧客との既存取引に係る管理業務」及び「資本の預け金への運用」を除き,業務を停止することを命じた(甲47,乙15)。
(ウ) 東京都は,平成16年4月1日から平成17年3月31日までの開業準備の期間において,出資の目的を果たすために,a銀行の開業準備の進捗状況を把握し,その内容について東京都議会に報告する役割を担った。
この間,東京都は,平成16年8月1日,「新銀行設立本部」を設置し,Bが副知事(同年7月に就任)として新銀行設立本部を担当し,Cが新銀行設立本部長を務めた。
そして,Cや他の東京都の職員らは,補助参加人らを始めとするa銀行の役員ら等と頻回に会合をもち,a銀行の具体的な業務がマスタープランに示された計画に基づいて行われるように要請するなどした(甲19,20の1~3)。そして,Bは,Cから,a銀行の開業準備の状況について,随時報告を受けていた。
(2)  a銀行が開業する前後のa銀行と東京都との関係等
ア a銀行が設立されるに伴い,c協会に派遣されていた東京都の職員は,a銀行に派遣されて勤務していたが,a銀行の行員等の採用による事業の執行体制の整備に応じて,段階的に上記の派遣が解消されていき,平成17年4月1日にa銀行が開業するに伴い,管理職等の若干名の職員を除いて,a銀行に派遣される東京都の職員はいなくなった。
そして,上記のとおりa銀行に残った管理職等も,同年7月にa銀行が「本格開業」をするに伴い,派遣が解消され,これにより,a銀行に派遣される東京都の職員は全くいなくなった。
イ a銀行は,前記アのとおりa銀行に派遣される東京都の職員が全くいなくなった後,平成19年6月22日に開催された株主総会において役員が交代するまで,固有の職員(東京都から派遣された者でないことを意味する。)による業務運営が行われ,東京都の元職員が社外取締役に就任することはあったが,現役の職員が取締役に就任することはなかった。
そして,東京都は,a銀行が開業した後,①株主として経営上の監視を行うこと(具体的には株主総会における議決権の行使をすることや,「株主連絡会」及び「決算説明会」に出席すること),②地方自治法243条の3第2項の規定に基づく議会への経営状況の報告,東京都監理団体指導監督要綱に定める「その他報告を受ける団体」としての団体の運営状況に関する報告による事後的な報告を受けることという態様で,a銀行の業務運営を監視するにとどまった(甲37~39)。
ウ 東京都の新銀行設立本部は平成17年7月15日に廃止され,その業務は産業労働局に移管された。これにより,副知事のBはa銀行に関する業務の担当から外れ,他方,新銀行設立本部長であったCは,同日,港湾局長に異動した。
(3)  a銀行の組識の概要等
ア a銀行は,平成16年6月28日から平成21年6月29日までの間,委員会等設置会社であったところ,a銀行の取締役会規則(平成18年6月23日施行のもの)においては,①基本的経営方針・戦略の策定及び変更,中・長期経営計画の策定及び変更,リスク管理に関する基本方針の策定及び変更,リスク管理規程の策定及び重要な変更並びにその他リスク管理体制の構築及び重要な変更,執行役,代表執行役及び役付執行役の選任・解任並びに執行役の職務分掌及び権限その他執行役相互の関係に関する事項等は取締役会の決議事項とするが,取締役会は,更に必要と認めた事項については取締役会に付議することができる旨,②以上に定める事項及び法令又は定款その他の規程に別途定める事項以外の業務の決定は,執行役又は執行役会(執行役全員をもって組織される(丙イ2)。)に委任する旨が定められていた。
イ a銀行の業務執行の組織は,「総合企画」,「審査・与信管理」等の6部門に分けられ,執行役のうちの1人がいずれかの部門を担当していた。各執行役は,代表執行役の指揮監督に服するものとされていたほか,「業務執行にかかる重要事項」等が執行役会の決議を要する事項とされ,「事業計画の遂行状況の報告」,「リスク管理の状況報告」等が執行役会に報告すべき事項とされており,執行役会は,上記の各部門を統括していた(丙イ2,3の1・2)。
ウ a銀行において審査・与信管理を担当する執行役は,a銀行が開業した平成17年4月1日から平成18年6月23日まで,D(前g信用金庫常勤理事管理部長)が務め,同日以降は補助参加人Z2が務めた。
(4)  a銀行における信用に係るリスクの管理体制
a銀行は,平成16年事業計画書等において,「リスク管理態勢」について,「小口定型融資から発生する信用リスクが主たる管理対象」であるとし,①取締役会は,「リスク管理方針」を決定するとともに,これに基づく業務執行について管理・監督を行うこと,②執行役会は,「リスク管理手続」を規定し,「リスク管理目標」等の重要事項の決定を行うこと,③全執行役により構成される「統合リスク管理委員会」は,原則として月1回,会合を開催してリスク管理基本方針に従い,業務執行に係る各部門へのけん制が働く仕組みを確保するとともに,業務に内在するリスクについて,「統合的な一元管理」を実施することで経営の健全性や信頼性を安定的に確保することを目的とし,「統合リスク管理グループ」や各部門から報告を受け,取締役会及び執行役会への付議等を行うこととされていた。なお,実際には,リスクの管理については,統合リスク管理委員会における審議がされた後,執行役会における決議がされた上で,取締役会に対して報告されることが多かった。
特に,信用に係るリスクの管理体制については,平成16年事業計画書等において,①審査・与信管理を担当する部門が,信用に係るリスクの状況等を調査,分析,検討し,これを統合リスク管理委員会に報告すること,②統合リスク管理委員会において当該報告の内容を検討した上で執行役会に報告し,執行役会はその検討の結果を取締役会に報告することとされていた。
((4)につき,甲117)
(5)  本件小口定型3商品の実行先のデフォルトの発生状況等
ア a銀行は,平成17年4月からポートフォリオ型融資の取扱いを開始して本件小口定型3商品の販売を開始したところ,同年7月,実行先に初めてデフォルトが発生し,それ以降も実行先のデフォルトの発生件数は増加を続けた(甲32)。
イ デフォルトが発生した実行先の累計の件数及び融資残高等は,平成17年8月22日時点で5件・約4500万円,同年10月21日時点で18件・約3億3200万円(保証1件・1600万円を含む。),同年11月22日時点で38件・約5億9200万円(保証2件・2800万円を含む。),同年12月15日時点で48件・約7億5800万円(保証3件・5400万円を含む。),平成18年1月15日時点で66件・約10億3500万円(保証5件・6600万円を含む。),同年2月10日時点で95件・約14億3200万円(保証11件・1億1200万円を含む。),同年3月15日時点で128件・約20億0500万円(保証11件・1億0500万円を含む。),同年4月17日時点で112件・約19億7100万円(保証12件・1億1900万円を含む。)であった。また,同月以降においてデフォルトが発生した実行先の累計の件数及び融資残高等は,同年5月16日時点で69件・約11億6300万円(保証6件・1億0900万円を含む。),同年6月9日時点で108件・17億9700万円(保証6件・8700万円を含む。),同月末時点で169件・29億7500万円,同年7月末時点で245件・36億3600万円であった。
以上のデフォルトの発生状況は,a銀行の取締役会で配付された「月次経営状況報告書」に記載されていた。
ウ a銀行において作成されていた月次経営状況報告書及び「デフォルト先(法的事情・不渡・取引停止等)状況表」に記載の数値を基に,下記の計算式等に従って各月の実績デフォルト率を計算すると,別表の「1収益状況」の「実績デフォルト率(C=L/J)」の項目に記載のとおりとなる(甲116)。

実績デフォルト率=累積デフォルト額÷貸出金等期中平均残高
貸出金等期中平均残高=当該月までの貸出金等月中平均残高÷当該月までの経過月数
貸出金等月中平均残高=当該月の日々の融資・保証残高の合計額÷当該月の日数の合計
なお,累積デフォルト額とは,当該月までにデフォルトが発生した実行先の融資等の残高の合計額を指す。
エ a銀行の執行役(審議役を務めていた補助参加人Z2も含む。)は,各月において,一定の計算と分析を経て,実績デフォルト率(前記ウ参照)を認識することが可能であり,また,本件小口定型3商品の実際の信用に係る損失(融資等の実行先において返済が不能になった場合に銀行が負担することになる損失であり,実績デフォルト率に相当する。)と実際の資金調達に係る損失(預金に対する利息に相当する。別表の「1 収益状況」において「資金調達コスト」とされているもの)を合わせたものが,融資等に対する利息及び保証料による利益(別表において「貸出金等利回り」とされているもの)を上回った状態にあるか否かを知ることも可能であった。
オ 本件小口定型3商品の実行先の毎月のデフォルトの発生件数及びその額等については,a銀行の統合リスク管理委員会,執行役会及び取締役会に対して,資料を配付することにより報告がされていた(前記イ参照)。
他方,本件小口定型3商品に関し,別表における「貸出金等利回り」,「実績デフォルト率」,「資金調達コスト」のような数値や,平成18年2月以降について,本件小口定型3商品の実際の信用に係る損失と実際の資金調達に係る損失を合わせたものが,融資等に対する利息及び保証料による利益を上回った状態にあること(別表における「利鞘」が負の数値となることに相当する。)については,a銀行の統合リスク管理委員会,執行役会及び取締役会に対して報告がされていなかった。
(6)  a銀行におけるデフォルトへの対策等
ア 平成17年12月まで
(ア) a銀行の執行役会は,平成17年7月に個人の事業主の貸付先が融資の実行から短期間のうちにいわゆる自己破産をしたため,その原因を分析した結果,本件スコアリングシステムのうち,個人の事業主用のモデルにおいて,上位のスコアランクが多く算定される(想定デフォルト率が総じて低めに算出される)傾向にあることが判明したため,同年8月18日,個人の事業主は一律にT3より低位の信用格付となるように本件スコアリングシステムを修正することを決議し,同月23日付けでその旨の通達を発した(甲109)。上記の本件スコアリングシステムの修正については,同月31日に開催された取締役会において報告された。
また,a銀行は,同年9月に通達を発し,審査において,顧客が取引に用いる預金口座の履歴から得られる情報が果たす役割が審査の上で重要であるにもかかわらず,現状では担当者によりばらつきがみられるとして,定性チェックシートに,預金通帳を確認することにより,いわゆる月商の推移,主要な融資先からの入金の状況,主要な仕入先への支払状況,既存の借入金の返済の状況,不自然な入出金の有無等について検証して記載する取引口座チェックシートを追加した。
(イ) a銀行においては,デフォルトへの対策のための客観的なデータの集計及び分析を目的として,「データ分析プロジェクトチーム」(本件データ分析PT)が結成されたところ,本件データ分析PTは,平成17年10月13日付けで「2005年度上期格付遷移による小口定型ローンの損益シュミレーション」と題するレポートを作成し,同レポートにおいて同年度上期に獲得した顧客の将来の動向を確率的に予測し,最終的に融資及び保証についての予想される損益の分布を作成し,今後の検討に役立てることなどを目的とし,上記顧客のうち約230の法人の債務者について決算期を経たことに伴う信用格付の見直しを行った結果,約5割強の債務者の信用格付が下落していること,決算期の前後に融資の申込みが行われている事例では,約1年前の財務情報に基づいて信用格付が付与されていることなどが判明したとして,現状においてデフォルトが発生した実行先は10件弱であるが,今後1年程度のデフォルトに係るデータの蓄積を通じて,デフォルトが発生した実行先の分析を行っていくこと,デフォルトに係るデータをある程度収集できた時点で,これを分析した上,本件スコアリングモデルに反映すること等の対応策を検討する必要がある旨を提言した。同レポートは,統合リスク管理委員会,執行役会及び取締役会に提出された。
(ウ) a銀行は,平成17年11月9日付けで通達を発し,不良な融資先の分析等により,決算書等から得られる情報が審査の上で重要であるにもかかわらず,現状のチェックでは担当者によりばらつきがあることが判明したとして,1年程度前の通帳について決算書等とおおむね整合性があるかどうか等を審査することとする(決算書等チェックシートの導入)とともに,同月17日付けで通達を発し,借入れを申し込む時点で決算期から相当程度の期間が経過している申込先につき,期中に決算期が到来した後に信用格付が下落する事例が散見されたとして,ポートフォリオ型融資について,「試算表徴求ルール」を改め,申込みの受付時に決算期から6か月以上が経過している場合には,原則として「試算表」を徴求し,さらに,売上げの減少等がある場合には,ポートフォリオ型融資の販売の拠点の長の判断で,貸付金額の減額や金利の引上げを行うものとした。
(エ) 補助参加人らも出席して平成17年11月30日に開催された取締役会において,同月の月次の経営状況の報告に対し,取締役のEから,信用格付が低い顧客に対する貸付けや保証が計画に比べて不十分であり,ある程度のリスクを取ってでもそうした貸付けに積極的に取り組むべきではないかとの質問あり,取締役会議長のFから,貸付けを増やすための具体策とその実行が必要であるとの意見があったため,補助参加人らは,「創業者向けの貸付け」や「e社等に掲載されていない企業へのアプローチ」を行うなど,貸付けの対象や枠を広げることを検討したいなどと回答した。
(オ) 本件データ分析PTは,平成17年12月,審査の精度の向上(a銀行においてデフォルトが発生した案件を元にしたd社のスコアリングモデルの有効性の検証)及び審査の作業の効率化を目的として,同年4月以降に受付をした案件のうち本件スコアリングシステムにより評価を行ったものなどを対象として検証を行い,次の内容の「融資審査における定量・定性評価等の分析(案)」と題するレポート(甲118)を取りまとめた(甲118)。
a 検証の作業の結果,①本件小口定型3商品につき信用格付別に実績デフォルト率を算出したところ,信用格付が低下するに従って実績デフォルト率が上昇する構造になっていないこと,②他社製のスコアリングモデルを用いた場合でも,スコアリングモデルから算出される想定デフォルト率とa銀行の実績デフォルト率のかい離が大きいこと,③各種のスコアリングモデルが共通して重視している財務の指標である自己資本比率について,デフォルトとの相関性を調査したところ,a銀行においては必ずしも自己資本比率とデフォルトとの間に相関性があるとはいえないことが判明した。
b その原因としては,デフォルトのデータの数が不十分であり,結果がばらついていること,a銀行の顧客に通常の金融機関の債務者と異なる特性があり,本件スコアリングモデルが有効に機能していないこと,詐欺等の案件が紛れ込んでおり,異常な値が発生していることなどが考えられるが,明確な原因は明らかではなく,今後更に分析を続けていく必要がある。
c 対応策としては,定期的に本件スコアリングシステムの有効性の検証を行い,a銀行に独自のモデル作りに反映させていくこと(ただし,本件スコアリングシステムの制約があり,その範囲内で対応できるものに限る。),申込みを受け付けた時における「目利き審査」を励行し,詐欺等の案件の排除を図ること(定性チェックシートの変更,通帳・決算書チェックの強化により対応中)が必要である。
(カ) 補助参加人らが出席して平成17年12月16日に開催された統合リスク管理委員会においては,本件小口定型3商品についてのデフォルトの状況について,同年11月中に21件が発生し,同年度の下期に入り高水準の状況が続いていること,信用格付別のデフォルトの状況をみると,上位の格付であってもデフォルトが発生した案件がみられるほか,全般的にばらついていること,自己破産の申立てが散見され,その中には詐欺まがいのものがあることも想定されることが報告された。これに対し,執行役のDは,デフォルトが発生した案件について,①徴求した決算書の内容の正当性に疑いがあるものがあり,その場合には上位の信用格付であってもデフォルトが発生し得る,②現在のデフォルトが発生した案件は,受付・審査の担当者が審査の事務に十分習熟していない時点で融資を実行したものであるから,本件スコアリングモデルの想定デフォルト率とかい離が生じることは当然あり得ることである,③他社製のスコアリングモデルにより決算書を審査しても,本件スコアリングモデルとほぼ同様の結果となっており,悪意のある申込者を選別しなければならない旨の発言をした。
(キ) 補助参加人らも出席して平成17年12月21日に開催された取締役会において,月次の実績及び経営状況の報告がされたところ,取締役のGから,2パーセントの破たんに対する引当てで十分か,利息の収入との比較ではどうか,破たん先への対応の状況はどうなっているかとの質問があり,執行役のDが,収支は厳しいこと,対応策として,破たん先の状況により,差押えを行うとともに,債権者集会にはできるところには行っているなどの旨を答えた。
イ 平成18年1月
(ア) 補助参加人らが出席して平成18年1月20日に開催された統合リスク管理委員会においては,本件小口定型3商品のデフォルトの状況や信用に係るリスクの状況が報告され,執行役のDは,デフォルトの発生が想定よりもかなり多い旨の発言をし,補助参加人Z1は,デフォルトの発生が急増したことにより,平成17年10月以降に対策を執ったが,それが功を奏しているのかの検証が必要である旨の発言をし,執行役のHは,現時点では利息の収入よりも個別の貸倒れに対する引当てが多い状況であり,収益を上げるための方策を考えることは喫緊の課題である旨の発言をした。
(イ) 平成18年1月24日に開催された執行役会においては,本件スコアリングシステムにより信用格付が付与された中小企業のデフォルト率が高く,信用に係るリスクに見合った収益の確保が困難な状況になっていることから,デフォルトの発生の状況と信用格付のかい離の緩和を図るため,①信用格付の上位二つの区分である「T0」及び「T1」は,規模が大きく比較的安定性が高い「外部格付先」及び「RADAR格付先」とするものとし,②本件スコアリングシステムにおける法人用のモデルの格付をこれより低位に置くこととして,従来同モデルにおいて「T0」及び「T1」となっていた貸付先を「T2」となるよう修正するなどの信用格付の体系の変更を行うことを決議した(その際に配付された審査・与信管理企画グループの作成に係る資料においては,「T2」以下の信用格付が付与された企業について,想定デフォルト率と実績デフォルト率とのかい離を根本的に解消するためには,本件スコアリングモデルの改善が不可欠であり,今後,蓄積されたデータによる同モデルの修正の作業を継続することが記載されていた。甲110)。
(ウ) 補助参加人らも出席して平成18年1月25日に開催された取締役会においては,平成17年12月の月次の実績及び経営状況の報告がされたところ,取締役会議長のFから,同年4月から同年12月までの月次の損益計算書からは,現状どれだけの損失が資本を棄損しており,当初計画との違いは何かが不明確である,このまま計画どおりにいかないとどのようになるのかを数字で説明してほしいとの発言があったため,補助参加人Z1は,同月時点の貸借対照表及び損益計算書の当期損失及び貸倒引当金への繰入れの水準を説明し,また,150億円の固定費用を賄うためには約6000億円程度の資産(5パーセントの利ざやで300億円の収入を生み出すこと)が必要であると想定される旨の説明をした。また,取締役のIから,人を見て貸す観点が重要と思われるがその点はどうなっているのかとの質問があったため,執行役のDは,定性チェックシート等を作成して対応することで効果が上がっている旨の説明をした。
ウ 平成18年2月
(ア) 本件データ分析PTは,平成18年2月1日付けで,次の内容の「テーマ:融資実行後,何ヶ月経過するとデフォルトが増加するのか?」,「テーマ:現時点での当社デフォルト確率は一体どの位なのか?」とそれぞれ題するレポートを作成した(甲119,126)。
a 本件小口定型3商品については,融資等の実行から経過した月数に比例してデフォルト率が右肩上がりで増加しており,過去の実績では,融資等を実行した後7か月目からデフォルト率が急増する傾向がある。平成18年2月以降は,a銀行が「本格開業」した平成17年7月以降に融資等を実行した先が7か月目を迎えるので,デフォルトの発生が急増する可能性がある。
b 平成18年1月31日を基準日とするデフォルト率(平成17年4月1日から同年12月31日までにスコアリングを実施した融資先又は保証先を母集団として,同年4月1日から平成18年1月31日までにデフォルトが発生した融資先又は保証先を基に算出したもの。ただし,ここでいう「デフォルト」には,返済を延滞する状態に陥ることを含む。)は6.95パーセント(返済を延滞する状態に陥っているものを除くと4.53パーセント)である。
c 平成17年8月までに本件スコアリングシステムによるスコアリングを実施した融資先のデフォルト率が7パーセントから8パーセントまでと非常に高いが,同年10月以降は4パーセント程度となっている。スコアリングを実施した後の経過期間が短いため,今後の推移に留意する必要はあるものの,同年9月以降に取引口座チェックシート及び決算書等チェックシート等を導入したため,この傾向が維持できる可能性がある。
d 融資を実行した案件に付したスコアランク別に実績デフォルト率をみると,スコアランクが「0」の案件を除けばほぼ右肩上がり(スコアランクの数値が上がる(信用格付が下落する)と実績デフォルト率も上がる)になっているものの,実績デフォルト率は当初の想定デフォルト率より大幅に大きくなっており,全ての融資先について信用格付を低めにする必要がある。
(イ) 補助参加人らが出席して平成18年2月15日に開催された統合リスク管理委員会においては,前記(ア)の本件データ分析PTの分析の結果に基づき,融資先のデフォルトは平成17年7月に発生して以降,増加の傾向にあり,その傾向は平成18年1月現在も一貫して継続していること,その結果,デフォルト率は7パーセント弱になっており,信用格付をする際の想定デフォルト率以上のものになっていることが報告され,審議された。その際,補助参加人Z2は,「業務企画グループ」としても問題意識をもっているが,報告された内容は,本件スコアリングシステムが実態からかい離しているという分析を述べるにとどまり,スコアリングの問題以外に,入口(受付の時点)の問題もあり,これらについてより詳細な分析が必要であると考えていること,スコアリングについては,切り分けられた「チャネル」ごとに結果を分析すれば,チャネルごとに対応の方針が立てられること,入口の問題については,現状は通帳のチェック等で確認を行っているが,さらに,実務面でどういった対策が真に有効なのかを審査も含めて分析していく必要があることは十分に認識していることなどの旨の発言をした。しかるところ,執行役のJから,平成17年度の償却の計画25億円に対して,「リスク管理債権」の額が既に30億円であり,これはゆゆしき問題であって,極端なことをいえば,利息の収入よりも貸倒れの金額のほうが大きいため,現状の回復が見込めないならば,ポートフォリオ型融資はやらない方が収益的には望ましいことになる,もちろん,何もしないという判断は,(a銀行の設立の背景から)考えられないが,対応策等も含めて,平成18年度の業務計画にしっかり織り込んでもらいたいなどの旨の発言があった。執行役のKからは,現状に対し方策を講じるのは大事であるが,方策によるデフォルト率の引下げの余地は限られており,通帳の確認等でデフォルト率を劇的に引き下げる効果は期待できない,金利の引上げが借入れの申込みに及ぼす影響は考慮しなければならないが,仮に企業の規模でみて一定の水準以下の先にデフォルトが大きいとすれば,そこに現行よりも高い金利を設定する対応策を執る方が貸倒れへの対策としては効果的ではないか,分析にあるデフォルト率はa銀行の対象となる顧客層の実態を示していると考えるなどの旨の発言があった。さらに,執行役のDからは,保証などの紹介を受ける案件のデフォルト率の実績は小さいので,本件スコアリングシステムに問題があるのではなく,チャネルの問題であると考えている旨の発言があった。
(ウ) 本件データ分析PTは,平成18年2月21日付けで,「テーマ:延滞発生後,何ヶ月で当社債務者はデフォルトするのか?」と題するレポートを作成した。同レポートには,デフォルトが発生した顧客のうち,全体の約6割が延滞の発生後1か月を経過する前に倒産している(延滞の発生からデフォルトの発生までの期間が非常に短い傾向にある)こと,デフォルトが発生した顧客のうち,約5割が融資の実行後3か月以内にデフォルトを発生させており,約9割が融資の実行後6か月以内にデフォルトを発生させていることが記載されていた。
(エ) 補助参加人Z2は,平成18年2月頃,本件スコアリングシステムに組み込まれたサンプルデータの母集団の特性と,a銀行の顧客の特性に相違があることを認識するようになった。
エ 平成18年3月
(ア) 本件データ分析PTは,平成18年3月3日付けで「テーマ:新製造業モデルの方向性:粉飾係数の効きめが大!」と題するレポートを作成した。同レポートには,売上高が1億円を超える製造業者について,本件スコアリングシステムのパラメーターを変更することで,デフォルトが発生する顧客を効率的に排除することができる可能性がある旨が記載されていた。
(イ) 執行役のDは,平成18年3月15日,取締役のL,M及びEと意見交換をした際,延滞をしている案件が増加しており大変危倶しており,このままでは引当金への影響も考えざるを得ないこと,数字を積み上げている営業店がデフォルト率が高いので,営業店に延滞の管理もやらせる方向で検討したいこと,本件スコアリングシステムは飽くまで決算書を審査するための補完的なシステムであり,受付の審査でコントロールする必要があると思っていたことなどを報告した。上記の各取締役からは,a銀行ではリスクを取った貸付けをするのだから,ある程度のデフォルトの発生は仕方がないといった誤った意識が裏目に出たのではないか,いわゆるノルマと審査のバランスが難しい,是非ともDの責任で管理の強化に向け頑張ってもらいたいなどの意見が述べられた。
その後,同日に開催された取締役会においては,補助参加人Z1が同年2月度の「月次実績速報」について報告した。
(ウ) a銀行は,平成18年3月16日までに,「平成18年度上期信用リスク管理方針」を作成したところ,その中で,平成17年度の成果と反省として,信用格付の制度の再構築や本件スコアリングモデルの高度化は未達成であると指摘され,平成18年度上期の具体的な課題として,①信用格付につき,信用格付の制度の再構築(小口定型ローンに対する評価を踏まえた信用格付の基準の見直し)が,②審査につき,本件スコアリングモデルの再構築(「与信業務」の在り方を踏まえた本件スコアリングモデルの抜本的な再構築)が挙げられた。
補助参加人らが出席して平成18年3月16日に開催された統合リスク管理委員会においては,「平成18年度上期信用リスク管理方針」について審議が行われ,執行役のHから,今後,実績の評価に基づき信用格付の制度を再構築すること,本件スコアリングモデルを実績に則して見直すこと,「信用コストを踏まえたプライシング」を実施していくことなどが報告された。
そして,「平成18年度上期信用リスク管理方針」は,同月28日に開催された執行役会において基本的に承認された。
オ 平成18年4月から6月まで
(ア) a銀行は,平成18年4月6日付けで通達を発し,資本金が10億円未満の中小事業者の信用格付は「T2」から「T14」までとし(既に「T0」から「T2」の範囲にあった顧客は一律「T2」に含める。),それに伴い,貸付けの限度額を改定する(例えば,ポートフォリオ型融資の信用格付別の限度額につき,それまで「T2」が4000万円であったところを5000万円に引き上げる。)などとした。
(イ) 補助参加人らが出席して平成18年4月20日に開催された統合リスク管理委員会においては,執行役のDが,デフォルト率に関し,本件小口定型3商品のデフォルトは受付・審査の対応が原因となって発生しているものと認識しており,これが改善されれば,デフォルト率の低下が十分に期待でき,現状の信用格付の内容には影響を及ぼさないデフォルトの水準と考えているなどの旨の発言をした。
(ウ) 補助参加人らも出席して平成18年4月26日に開催された取締役会において,同年3月度の月次の実績及び経営状況の報告がされ,さらに,「平成18年度業務計画:法人営業の具体的展開」についての報告がされたところ,取締役のIから,a銀行との「協調保証」に対する取組みの姿勢について,信用金庫による違いはあるか,信用金庫から不良な案件が多く持ち込まれる懸念はないかとの旨の質問がされ,執行役のDは,現状では協調保証のデフォルトの件数は全体の10分の1であって比較的少ないが,今後も引き受ける件数の増加が見込まれるため,更に精査していきたいなどの旨の回答をした。
(エ) 補助参加人らも出席して平成18年5月31日に開催された取締役会においては,同年4月度の月次の実績及び経営状況の報告がされ,さらに,「第7期(平成17年度)決算」における計算書類及び附属明細書が承認された。もっとも,a銀行は,対外的には,「与信関連残高」が当初の計画を達成したものの,経常収益は36億円にとどまり,営業経費(144億円),一般貸倒引当金(62億円)は,計画より少ないものとなったことなどを公表したのみであった(甲125)。
(オ) a銀行の審査・与信管理企画グループは,平成18年6月1日付けで「融資支援システムの見直しについて」と題する報告書を取りまとめたところ,同報告書においては,「融資支援システム」の現状の問題点は,①当初の想定を超えるデフォルトの発生に対応するための本件スコアリングシステムのチューニング,②信用格付・自己査定の作業におけるa銀行の管理体制と業務のフローの不整合を改善するための格付・自己査定のシステム等の改良等であり,今後の方針としては,現状のd社のスコアリングシステムの改良又は他社のスコアリングシステムへの乗換えの2案を軸に検討を進め,同月中に各部署と協議し,稟議及び承認を受けるなどした後,同年7月には開発に着手し,平成19年4月以降に運用を開始することを目指す旨が記載されていた。同報告書の内容は,補助参加人Z1に対しても報告された。
(カ) a銀行は,融資先等のデータを分析した結果,デフォルトの発生と個人信用情報及び有利子負債利子率との間に相関関係があることが判明したことから,平成18年6月,個人信用情報の照会結果による融資等の案件の採択の不可又は減額の基準及び有利子負債利子率による採択の基準を設定した。
(キ) 本件データ分析PTは,平成18年6月12日付けで「テーマ:スコアリングモデルのパフォーマンス検証実施報告」と題する報告書を取りまとめたところ,同報告書には,①同月1日を基準日とするデフォルト率(平成17年4月1日から平成18年3月31日までにスコアリングを実施した融資先又は保証先を母集団として,平成17年4月1日から平成18年5月31日までにデフォルトが発生した融資先又は保証先を基に算出したもの。ただし,ここでいう「デフォルト」には,返剤を延滞する状態に陥ることを含む。)は8.95パーセント(返済を延滞する状態に陥っているものを除いても6.17パーセント)であり,非常に高い数値であること,②融資等の実行から6か月以上を経過した融資先の方がデフォルトが発生しやすいと考えられ,そのように考えると保守的にみてもデフォルト率は8パーセント程度と見積もられること,③信用格付ごとの実績デフォルト率は,想定デフォルト率を大幅に上回っており,このままでは同年9月末の決算における引当金の計上にも大きな支障を来すこと,④他社製のスコアリングシステムを導入したとしても,本件スコアリングシステムと同様,想定デフォルト率を適切に算出できないことから,スコアリングシステムをいかにチューニングしても見抜くことができない何らかの問題があると考えるべきであり,それは,a銀行の顧客の母集団が既存の銀行では融資に慎重なスタンスになるはずの「純新規先」であることに起因する問題と,純新規先の詐欺及び粉飾の見極めについての受付時の審査の機能が不足していることに起因する問題であると考えられること,⑤今後の方向としては,現時点では,個人信用情報を利用した融資等の「絶対否認」の追加と,有利子負債利子率が0.5パーセント以下の融資先等の絶対否認の追加により,全体の15パーセント程度の顧客に対する融資を断ることになるが,これはデフォルトを発生させる顧客を30パーセントから40パーセントまで減少させ得るものであり,これらの基準を当初から適用していたと仮定して信用格付の変更を行い,「要注意先」を適切に選別することにより,現状の信用格付の体系と本件スコアリングモデルを維持できるのではないかと考えられること,⑥a銀行の顧客の特性が既存の銀行の顧客のそれとは異なることが分かったので,今後は単純なスコアリングモデルによる審査を行うだけではなく,詐欺及び粉飾の案件の発見に注力しなければならないと考えられることなどが記載されていた。
また,本件データ分析PTは,平成18年6月19日付けで「テーマ:実行後1年経過した与信のデフォルト確率は何%か?」と題するレポートを作成したところ,同レポートには,①本件小口定型3商品について,平成17年4月の融資等の実行分の1年経過後のデフォルト率は約27パーセントであるが,同月は実行された件数が少ないので異常値とみられることや,同年5月の融資等の実行分のデフォルト率は約9パーセント,同年6月の融資等の実行分のデフォルト率は約9パーセントであることを勘案すると,デフォルト率はおおむね10パーセント程度になるのではないかと推測されること,②同年11月以降の融資等の実行分はデフォルトの発生のペースがやや落ちてきているように見受けられるが,実行後の経過期間が少ないため,今後更に注視する必要があることなどが記載されていた。
本件データ分析PTの上記の報告書及びレポートは,補助参加人らが出席した「朝会」において報告された。
(ク) 補助参加人らも出席して平成18年6月23日に開催された取締役会においては,同年5月度の月次の実績及び経営状況の報告がされた後,デフォルトの発生の防止のための対策等について審議され,取締役のGから,デフォルトの発生の防止のためにどのような対策をとっているかとの旨の質問がされたため,執行役のDは,これまでのデフォルトが発生した顧客のほとんどが「来店案件」なので,来店案件の審査についてはより時間をかけて精査し,一方で「渉外担当者案件」についてはより迅速に判断をするよう,審査のフローを見直していくなどと回答した。
カ 平成18年7月以降
(ア) 補助参加人らも出席して平成18年7月26日に開催された取締役会においては,同年6月度の月次の実績及び経営状況の報告がされた後,取締役のIから,第1四半期の損益計算書において臨時の費用が多い理由について質問があり,補助参加人Z2が,依然として平成17年9月までに融資等を実行した本件小口定型3商品についてデフォルトが多く,それが想定された以上であることが主な要因であること,平成18年4月以降に審査基準を厳格化しているが,依然として効果は未知数であり,目下分析中であるなどの旨の回答をしたところ,取締役会議長のFから,想定された以上のデフォルトが発生した顧客について分析等がまとまり次第,取締役会に報告するよう指示があった。
(イ) a銀行は,デフォルトに至った案件の7割強が,実行した金額が2000万円以上の案件であり,比較的融資等の金額の大きい案件にデフォルトが集中していること,平成17年7月から同年9月までに融資を実行した件数を基に,来店により受付をした案件と渉外により受付をした案件のデフォルト率を比較したところ,前者のデフォルト率が後者のそれの5.5倍となっていたことから,来店により受付をする案件の「専決決裁」による融資等の限度額を2000万円未満に減額すること及び定性チェックシートに個人信用情報照会等のチェック項目を追加することとし,平成18年8月2日付けでその旨の通達の改正をした。
(ウ) 補助参加人らが出席して平成18年7月28日に開催された統合リスク管理委員会においては,本件データ分析PTが同年6月12日付けで作成した「テーマ:スコアリングモデルのパフォーマンス検証実施報告」と題するレポートに基づいてデフォルトの発生の状況が報告されたところ,補助参加人Z2は,これに関連して,平成17年11月以降,様々な対策を実行してきたが,今回の分析の結果からはその効果はまだ分からないので,今後も分析を継続していくなどの旨を述べた。
(エ) 平成18年8月頃,補助参加人らが出席して開催された朝会において,「経営企画グループ」から,ポートフォリオ型融資のデフォルト率を5.2パーセント,ポートフォリオ型保証のデフォルト率を1.15パーセントと想定すると,a銀行は,同年度の通算で325億円の経常損失となること,最悪の事態として,ポートフォリオ型融資のデフォルト率を16.46パーセント,ポートフォリオ型保証のデフォルト率を6.52パーセントと想定すると,a銀行は,同年度の通算で1001億円の経常損失となることが報告された。
(オ) 審査・与信管理企画グループは,平成18年8月30日付けで「平成18年度上期のデフォルト発生状況と対応策」と題する資料(甲121,127)を作成したところ,その中で,a銀行の過去の融資等の案件について分析した結果を踏まえ,既に通帳のチェックの厳格化,個人信用情報の照会の結果による採択の基準の設定,有利子負債利子率による採択の基準の設定,来店により受付をする案件の貸付金額の制限,定性チェックシートの改良といったデフォルトへの対策を実施しており,今後は,新規の顧客を獲得する活動の中心を渉外による受付に集中すると同時に,来店により受付をした案件における定性チェックシートを含めた審査の過程の厳格化を実施することとし,具体的には,実績の値を踏まえた本件スコアリングモデルの改定や,卸売業を中心としてデフォルト率が他業種と比べて高位にある業種への対応等を行うべきことを提案した(甲121,127)。
(カ) 補助参加人らも出席して平成18年8月30日に開催された取締役会において,補助参加人Z1が同年7月度の月次の実績及び経営状況の報告を行うとともに,補助参加人Z2が前記(オ)の「平成18年度上期のデフォルト発生状況と対応策」と題する資料について報告した。これに対し,出席した取締役から,融資の取引の経験が十分でないいわゆるメガバンクの退職者よりも,融資の取引の経験が豊富ないわゆる政府系金融機関の出身者を採用する方が適切ではないか(取締役のN),本件スコアリングモデルが高めの金利を算出するのであれば,同モデルを改良する余地はないのか(取締役のO)といった質問や,ポートフォリオ型融資に適用される金利が高いと聞いており,中小企業等の経営者は金利に敏感であり,金利が高いことで逃げられている顧客も多いはずであるといった意見(N)が述べられた後,取締役会議長のFから,今後,審査を厳しくしながら融資等を増やすという方針を立てているが,実現性があるのか,執行役は,過去の反省と計画に対する遂行の意欲,結果に対する責任に甘さがないかといった点を十分留意して,「危機意識」を持って事態に対処してほしい,当社にとって合理的なデフォルト率の水準をどのように考えているのかにつき報告してほしいなどの旨の意見及び指示があった。
(キ) 補助参加人Z1は,d社製の本件スコアリングシステムには,デフォルト率の算出のための定性・定量のパラメーター及びその係数が固定されている上,これらの変更をd社が一元的に行っているため,スコアリングモデルのチューニングの都度,費用が発生するなどの問題点があり,株式会社情報企画製のスコアリングシステムがa銀行の審査の体制に最適であると判断し,平成18年9月6日付けで,本件スコアリングシステムを同社製のものと入れ替えることについての決裁をした(甲105)。
(ク) 補助参加人らも出席して平成18年9月27日に開催された取締役会において,補助参加人Z2は,デフォルトへの対策とその効果について,①同年8月末時点における本件小口定型3商品のデフォルト率は,平成17年4月から同年9月までに実行した分については11.82パーセント,同年10月から平成18年3月までに実行した分については7.70パーセント,同年4月から同年8月までに実行した分については3.46パーセントとなっていること,②平成17年9月から顧客が取引に用いる預金口座に係る通帳による売上げの入金や借入金の返済の状況等をチェックすること等の対策を導入したことにより,対策を実施する前に比べて1パーセント程度,デフォルト率が低下したこと,③平成18年6月から導入した個人信用情報及び有利子負債利子率による審査基準の導入によって1パーセント程度のデフォルト率の低下を見込んでいること,④デフォルト率が高くなっている業種(卸売業,サービス業及び建設業)について一定の融資等の拒絶の基準を設定し,これにより,デフォルト率が2パーセント程度低下することを見込んでいることなどを報告した(甲122,128)。
(ケ) a銀行においては,平成18年11月頃から,本件小口定型3商品について,一定のハイリスク層を排除することを目的とした「絶対否認基準」又は「絶対的拒否基準」と称する審査基準(ニューラルネットワークモデルを利用した新審査基準)を導入した。
(コ) a銀行は,平成18年12月1日,東京都産業労働局長から,公表された平成19年3月期の中間決算において,年間の計画上の経常損失180億円に対し既に154億円を計上していることを踏まえ,下期においてどのような対策を講じるのか,回答することの要請を受け,平成19年1月11日,同局長に対し,不良債権の抑制策を含む今後の業務運営上の方策について報告書を提出した。また,a銀行は,銀行法24条1項の規定に基づき,平成18年12月25日,金融庁から収益性の改善等に係る報告の提出を求められ,平成19年2月20日,同庁に対して報告書を提出し,さらに,同月22日,日本銀行から考査を受けて,同年4月20日,同銀行に対して報告書を提出した。
(サ) 補助参加人らが作成し,平成19年6月1日に発表された「新中期経営計画」(乙7)においては,「目指す姿」として,「スコアリングモデルのみに頼らない顧客管理・与信管理の態勢を再構築する。」と記載された上で,「課題解決の方向性」として,「スコアリングモデルの抜本的な見直し」,「フロントチェック機能の強化」等が挙げられ,後者については,さらに,「スコアリングモデルの抜本的な見直しに加えて,過去のデフォルト案件等を参考に不芳案件等を排除するモデルを精緻化」,「定量的な案件審査に加えて,お客さまの実態を十分理解した上で当社としてお貸し出しするために,実際のキャッシュの流れや売り上げの状況など定性的な項目を効果的に確認する事や現地調査による審査を強化」との内容が示されていた(乙7)。
(7)  補助参加人らが退任した後の本件小口定型3商品の取扱い
ア 平成19年6月22日に定時株主総会及び取締役会が開催され,補助参加人らがa銀行の役員等を退任し,Pが取締役兼代表執行役に就任し(なお,同人は同年11月に退任し,代わって,同月30日,Cが代表執行役に就任し,同年12月26日には取締役にも就任したものである。),既に東京都の副知事を退任していたBが取締役(社外取締役)兼取締役会議長に就任した。そして,このとき,「経営体質強化」の観点から,東京都の幹部職員4名がa銀行に派遣された。
代表執行役のPは,上記の取締役会において,①次回の取締役会以降,より分かりやすく資料の体裁を整えることとすること,②臨時の費用の見込みを踏まえたデフォルトへの対策については,債務者の実態の把握を最優先の事項として実施し,これに加えて,債務者の状況に応じたデフォルトを防止する対策を検討して実施していくこと,③貸付金の残高はほぼ計画どおりに進捗しているが,今後は新規の実行について実質的に休止することも含めて検討することを報告した。
イ 平成19年6月25日に開催された執行役会においては,本件小口定型3商品について,本件スコアリングシステムに依存した審査のシステムの下で,無担保の貸付けを積み上げたことがデフォルトの発生の主たる要因であるとの認識に立ち,本件スコアリングモデルを利用した融資等の金額を抑制することや,「リレーションシップ」を基礎とする審査の手法及び新たな信用格付の体系に基づく融資等の確立までの暫定的な措置等を決定した。
その後,同年10月からはポートフォリオ型保証は実行されず,ポートフォリオ型融資も,実行された件数が同年3月までは月200件を超えていたものが,同年4月は135件,同年5月は90件,同年6月は70件,同年7月は12件と推移する中,同年8月からは月5件に満たない程度となり,平成20年4月からは,本件小口定型3商品が新規に実行されることはなくなった(甲32,107,乙14)。
そして,a銀行は,平成21年8月31日,ポートフォリオ型融資の新規の申込みの受付を同年9月30日をもって終了することを公表した(甲112,丙ロ2)。
(8)  a銀行の店舗の変遷
ア マスタープランにおいて,a銀行の店舗は,本店のほか,支店又は出張所を都内の9か所に設置することとし,開業時に5店舗を設置することとされたところ,a銀行がその開業後である平成17年8月に発表した中期経営目標においても,「当社は,平成17年4月1日に本店(大手町),5月13日に新宿,蒲田の両店(出張所),7月1日には上野,錦糸町,立川の3店(出張所)を開設し,6店舗体制による営業を展開」,「平成18年度には,さらに4店舗の開設を見込む」として,「都内10店舗体制」を採る方針を示していた(乙4)。
そして,a銀行の店舗は,平成18年9月までに,本店を含めて10店舗が設置されるに至った(丙イ6)。
イ もっとも,補助参加人らが作成し,平成19年6月1日に発表された上で,同月22日に開催された取締役会で承認された「新中期経営計画」(乙7)においては,「当社の経営理念である『中小企業・個人事業者の支援及び地域経済の活性化』を改めて明確化すると共に,開業後2年間の状況を十分に踏まえた経営体制,営業体制やリスク管理体制の刷新を図ります。」と述べた上で,「課題解決の方向性」として,「営業推進体制の再構築」「効率的な拠点運営(営業拠点の再編)」を行うものとされ,10店舗を8店舗に再編する方針が示された(乙7,丙イ6)。
そして,a銀行の店舗は,同年12月までに,本店を含めて6店舗が設置されるのみとなった(丙イ6)。
ウ さらに,補助参加人らが役員等を退任し,B及びCが役員等に就任した後の平成20年2月にa銀行が発表した「a銀行再建計画(平成20~23年度)」においては,「組織・店舗」につき,「6店舗から1店舗へ集約(平成20年度予定)」との方針が示された(甲33の3,乙8)。
そして,a銀行の店舗は,同年5月までに,本店を含めた全ての店舗が新宿店に統合され,同店が設置されるのみとなった(丙イ6)。
(9)  東京都による追加の出資,本件減資等
ア a銀行は,取締役会の決議に基づき,平成20年2月19日,東京都に対し,a銀行に対して400億円の追加の出資をすることを要請した。東京都は,上記の要請に応じて,追加の出資をすることとし,同月20日,平成20年度補正予算案として東京都議会への提案をした。東京都議会は,同年3月28日,上記の補正予算案を議決し,東京都は,同年4月30日,a銀行に対して400億円の追加の出資をした。(甲33の1~4,53)
イ a銀行においては,前記アの追加の出資の要請をするまで,東京都からの追加の出資を受けずに経営の再建をすることを目指し,他の金融機関との提携や出資先の確保等の交渉を進めたが,協議が整うまでに至らなかった。そして,東京都からの追加の出資を受けない場合,平成21年3月末には自己資本比率が銀行業務を継続する上で最低限必要となる4パーセントを下回ることが見込まれ,事業を継続することが困難になることが予想された。
ウ 東京都は,前記アの補正予算案の提案に際し,「追加出資にあたっての基本的考え方」として,「a銀行は,既存の金融機関では支援が難しい中小企業に対しても融資を行うなど,中小企業金融において,独自の役割を果たしてきた。」,「高い事業意欲がありながら,資金繰りに窮している中小企業等への支援を継続していく。」,「店舗を1ヶ所に集約し,人員を大幅に削減するなど抜本的なリストラを進めるとともに,都の関連団体や他の金融機関のノウハウを活用して,確実に収益を見込める事業へ重点化する『再建計画』を策定した。これを着実に実現する。」,「懸命に努力している既存融資先の中小企業に重大な影響を及ぼしてはならない。」との考えを示し,これを公表した(甲33の2,乙9)。
エ そして,a銀行においては,平成20年6月30日に本件減資をする旨の株主総会の決議がされた。なお,本件減資自体は,a銀行の会社財産の増減を来すものではなかった。
3  本案の争点1について
原告らは,本件において,東京都からa銀行に対して出資された1000億円について,①Aなどの東京都の責任者が財務内容の情報提供を受けa銀行の経営を監視する義務を怠り,また,②補助参加人らなどが情報提供をする義務や本件小口定型3商品の販売の中止をする義務等を怠り,その結果,1000億円のうち855億円を棄損させ,さらに,回収の見込みのない400億円の追加の出資を東京都に実施させるに至ったことにより,a銀行の株主である東京都に1225億円の損害を与えたことが共同不法行為に該当すると主張する。
この点,前記2(1)イ(ア)及び(9)のとおり,東京都は,議会において,a銀行に対して1000億円の出資をすることを含む平成16年度東京都一般会計予算を議決するに当たり,予算特別委員会における審議の結果,「都が設立する新銀行においては,東京の産業を担う幅広い中小企業に対し,円滑かつ迅速な資金供給を実施するとともに,多様な手法を通じて,その支援に努めること。また,信用金庫等の地域金融機関と業務提携を含めて,緊密な連携を図るとともに,経営に当たっても,十分な健全性を確保する仕組みを構築すること。」との付帯決議がされ,東京都議会は,これを踏まえた上でa銀行に対する1000億円の出資をすることを含む予算を議決するに至っていること,また,400億円の追加の出資についても,東京都議会は,産業労働局から「a銀行は,既存の金融機関では支援が難しい中小企業に対しても融資を行うなど,中小企業金融において,独自の役割を果たしてきた。」,「高い事業意欲がありながら,資金繰りに窮している中小企業等への支援を継続していく。」などという考え方が示されていることを踏まえ,追加の出資に係る補正予算を議決していることに照らすと,東京都は,自らの判断により,議会の議決を経てa銀行の株主となっているといえる。
これらを踏まえると,上記①の義務については,自らの判断により株主の立場に立った東京都に対し,東京都の責任者が,原告らの主張するようなa銀行の経営を直接監視すべき義務を負うとまでいうことができるかどうかについて疑義がないとはいえず,また,上記②の義務については,a銀行の経営に関与する者における経営判断に関わるものであって,a銀行の役員等が,a銀行に対して負う善管注意義務等を超えて,株主である東京都に対する不法行為責任を基礎付ける注意義務として十分であるかどうかについて疑義があるといわざるを得ない。
そこで,以下においては,上記に述べた点を踏まえ,本件相手方らの東京都に対する不法行為責任に係る義務ないし義務違反の有無を個別に検討することとする。
(1)  Aの不法行為について
ア 東京都の職員が直接にa銀行の設立の準備や開業準備等の業務に従事した期間について
(ア) 前記2(1)によれば,a銀行は,Aの発案により設立されるに至ったものであり,a銀行の設立の前後においては,東京都の出納長室に銀行設立準備組織が置かれ,a銀行の設立の後である平成16年8月1日からは,新銀行設立本部が置かれ,これらの東京都に置かれた組織が,ポートフォリオ型融資を中心にリスクの高い分野へ資金を提供すること等を経営の理念とするマスタープラン(前提事実(3)イ(ア)参照)の取りまとめや,ポートフォリオ型融資を中核的な商品とすること,信用に係るリスクの管理体制等について定めた平成16年事業計画書等の作成を始めとするa銀行の設立の準備及び開業準備について,中心的又は重要な役割を担っていたということができる。そして,前記2(2)アのとおり,銀行設立準備組織に所属していた東京都の職員は,c協会に派遣されてa銀行の設立に向けた調査及び研究に携わっていたところ,これらの職員は,a銀行が設立された後,少なくともその一部がa銀行の開業後3か月程度を経過した平成17年7月までの間,a銀行に派遣されて勤務しており,引き続きa銀行の開業準備等の業務に従事していたと認められる。
このように,a銀行に係る業務は,設立後の一定の時期に至るまで,東京都の職員が直接に従事していたといえる。
(イ) 原告らは,Aの不法行為の前提として,ポートフォリオ型融資を始めとする本件小口定型3商品による融資をa銀行の中核に据えたマスタープランには,かかる融資についてスコアリングシステムを採用した点や,本店のほかに支店又は出張所を都内の9か所に設置するという「都内10店舗体制」を採用した点において,「重大な欠陥」がある旨の主張をする。
しかしながら,前記(ア)のとおり,東京都の職員が直接にa銀行に係る業務に従事した期間においては,a銀行は,その経営方針や経営体制についてのいわば大枠を形成する段階にあったにとどまり,東京都の職員も,その限度でa銀行に係る業務に従事していたものと解されるところ,前提事実(5)イ(ア)のとおり,スコアリングシステムのような審査の手法は,アメリカ合衆国において1990年代初頭から中小企業向けの融資に用いられるようになり,我が国においても,平成15年度において,銀行の約7割が上記のような審査の手法を活用した融資に取り組んでいた状態にあったことからすると,そもそも,a銀行の中核となる融資についてスコアリングシステムを採用することが,その経営判断として著しく不合理なことであったということはできない。また,銀行の店舗について,その数や設置場所をどのようにするかについては,銀行の財務状況等を踏まえて,店舗を運営する経費ばかりでなく,顧客の利便性の程度に関する予測等にも鑑みて検討されるべきものであるところ,a銀行が東京都内に10店舗を設置することが,a銀行の設立の準備や開業準備等をする段階において不合理なことであったということもできない。
そうすると,東京都が,a銀行の中核となる融資についてスコアリングシステムを採用したこと及びa銀行の店舗について「都内10店舗体制」を採用したこと,そして,これらの内容を含むマスタープランを策定したことについて,Aを含む東京都の職員について,a銀行の株主である東京都に対する不法行為責任を発生させるような義務違反があったということはできない。
イ 東京都の職員が直接にa銀行の業務に従事することがなかった期間について
(ア) 前記2(2)アのとおり,平成17年4月1日にa銀行が開業するに伴い,管理職等の若干名の職員を除いて,a銀行に派遣される東京都の職員はいなくなり,同年7月には,上記のとおりa銀行に残った管理職等についても派遣が解消され,これにより,a銀行に派遣される東京都の職員は全くいなくなった。また,前記2(2)イのとおり,それ以後,a銀行は,平成19年6月22日に至るまで,固有の職員による業務運営が行われ,東京都の現役の職員が取締役に就任することもなかった。
このように,a銀行は,平成17年7月から平成19年6月22日までの間,東京都の職員が直接にa銀行の業務に従事することがなかったと認められる。
(イ) 原告らは,a銀行が開業した後の経営の状態が悪かったことを前提として,Aは,a銀行の財務内容の情報提供を受けa銀行の経営を監視する義務を怠り,本件小口定型3商品の販売を中止し,スコアリングシステムに依存した融資の判断を改善するよう積極的に働きかけず,また,店舗数についての抜本的な改善策を実現することを求めなかったなどと主張する。
しかしながら,東京都の職員が直接にa銀行の業務に従事することがなくなった平成17年7月以降,平成19年6月22日に至るまで,東京都は,株主としての地位にある者としてa銀行との関わりを有していたものにすぎない。また,前提事実(3)イ(エ)のとおり,マスタープランにおいても,a銀行と東京都との関係につき,「都は,・・・経営の大枠からの逸脱がないか監視するとともに,適宜,経営の方向性を示していく。」とされており,東京都は,①株主としての権利を行使すること,②社外取締役として東京都の関係者を就任させること,③地方自治法243条の3の規定に基づき経営状況に関する決算書・事業計画書等を入手して東京都議会に提出するとともに,東京都監理団体指導監督要綱に基づく報告団体として定期的な報告を受けることが予定されていたにとどまるのであって,これらのことを超えて,a銀行の個別の業務執行に対する監視は予定されていなかったものと認められる。実際にも,前記2(2)イのとおり,東京都は,a銀行が開業した後,東京都の元職員が社外取締役に就任したほかは,①株主として経営上の監視を行うこと,②地方自治法243条の3第2項の規定に基づく議会への経営状況の報告,東京都監理団体指導監督要綱に定める「その他報告を受ける団体」としての団体の運営状況に関する報告による事後的な報告を受けることという態様で,a銀行の業務運営を監視するにとどまっていた。
以上の事情に鑑みると,東京都の職員が直接にa銀行の業務に従事することがなかった平成17年7月から平成19年6月22日までの間において,Aを含む東京都の職員が,東京都に対し,原告らが主張するような具体的な行為(a銀行に対して,本件小口定型3商品の販売を中止し,スコアリングシステムに依存した融資の判断を改善するよう積極的に働きかけることや,店舗数についての抜本的な改善策を実現することを求めること)をする義務を負っていたということはできない。
(ウ) なお,前記2(1)イ(ア)のとおり,東京都がa銀行に対して1000億円の出資をすることを含む平成16年度東京都一般会計予算案(前提事実(2)イ参照)を審査した東京都議会の予算特別委員会は,「都においても,新銀行の目的を達成するため,経営全般にわたり適切な監視に努めること」との内容を含む付帯決議を付して原案を可決すべきものと決定したところ,かかる付帯決議が付されたことが東京都自身の政治的な責任を明確にする趣旨でされたものであるとしても,そのことをもって,Aを含む東京都の職員の東京都に対する法的な義務が導かれるということはできないものというほかはない。
ウ a銀行の役員等が交代し,東京都の職員が再び直接にa銀行の業務に従事することとなった時期について
前記2(7)アのとおり,a銀行において,平成19年6月22日に定時株主総会及び取締役会が開催され,役員等が交代するとともに,東京都の幹部職員4名がa銀行に派遣された。これらのことは,東京都が,a銀行に対する株主としての経営上の監視を行った結果であるということができるし,また,この時期から,再び東京都の職員がa銀行の業務に直接従事することとなったということができる。
もっとも,前記2(7)イのとおり,上記のとおり役員等が交代するなどした直後の同月25日に開催された執行役会において,本件スコアリングモデルを利用した融資等の金額を抑制することが決定され,その後は本件小口定型3商品が実行された件数が減少し,平成20年4月からは本件小口定型3商品が新規に実行されることがなくなり,平成21年8月31日には,対外的にもポートフォリオ型融資の新規の申込みの受付を終了することが公表されるに至ったものであり,新たな役員等の下で,本件小口定型3商品の販売の中止に向けた施策が進められていたとみることができるし,前記2(8)イ及びウのとおり,a銀行の店舗についても,整理及び統合の方針が示された上で,平成20年5月までに,本店を含めた全ての店舗が新宿店に統合され,同店が設置されるのみとなったものである。
以上の事情によれば,a銀行の役員等が交代し,東京都の職員が再び直接にa銀行の業務に従事することとなった平成19年6月22日以降において,Aを含む東京都の職員について,a銀行の株主である東京都に対する不法行為責任を発生させるような義務違反があったということはできない。
エ 以上によれば,Aの不法行為についての原告らの主張(本案の争点2において主張するものを除く。)を採用することはできない。
(2)  Bの不法行為について
ア 東京都の職員としての義務違反の有無
前提事実(1)ウのとおり,Bは,平成13年7月10日から平成19年5月10日まで,東京都の職員(出納長又は副知事)であったところ,Bが東京都の職員であった時期において,a銀行の設立,開業準備及び経営について,Bを含む東京都の職員の東京都に対する義務又は義務違反があったということができないことは,前記(1)ア及びイに述べたとおりである。
なお,前記2(2)ウのとおり,Bは,平成17年7月15日に東京都の新銀行設立本部が廃止されたこと等に伴い,a銀行に関する業務の担当から外れたことからすると,同日以降において,Bが,東京都の職員として,a銀行の経営に関し,東京都に対して前記のような義務を負うものと解することはできない。原告らは,Bがa銀行の設立の際に主導的な役割を果たしていたこと,担当を外れたとしても,副知事として,東京都議会での議事に立ち会うなどしていたこと等から,少なくとも信義則上は,a銀行における財務内容の情報提供を受けa銀行の経営を監視する高度の義務を負っていたなどと主張するが,原告らの挙げる上記の事情を考慮しても,かかる主張を採用することはできない。
イ a銀行の役員等としての義務違反の有無
前提事実(1)ウのとおり,Bは,東京都の副知事を退任した後の平成19年6月22日からa銀行の役員等(取締役(社外取締役)兼取締役会議長又は取締役(社外取締役)兼取締役会長)を務めていた。
原告らは,Bが,a銀行の役員等として,本件小口定型3商品について直ちに販売を中止すべきであったにもかかわらず,漫然とこれを放置した旨の主張をし,かかる行為が,東京都に対する義務違反に該当する旨の主張をする。
しかしながら,前記のとおり,原告らの指摘するa銀行の役員等であるBの行為が,a銀行でなく東京都に対する義務違反に該当し得るものであるかはおくとしても,前記2(7)イのとおり,Bがa銀行の役員等に就任した直後の同月25日に開催された執行役会において,本件スコアリングモデルを利用した融資等の金額を抑制することが決定され,その後に実行されたポートフォリオ型融資は,同月は70件であったものが,同年7月には12件に減少し,同年8月からは月5件に満たない程度となり,平成20年4月からは本件小口定型3商品が新規に実行されることがなくなり,平成21年8月31日には,対外的にもポートフォリオ型融資の新規の申込みの受付を終了することが公表されるに至ったのであるから,Bが,本件小口定型3商品を販売することについて「漫然とこれを放置した」などと評価することはできないといわざるを得ない。
ウ 以上によれば,Bの不法行為についての原告らの主張を採用することはできない。
(3)  Cの不法行為について
ア 東京都の職員としての義務違反の有無
前提事実(1)エのとおり,Cは,平成19年11月25日まで東京都の職員であったところ,Cが東京都の職員であった時期において,a銀行の設立,開業準備及び経営について,Cを含む東京都の職員の東京都に対する義務又は義務違反があったということができないことは,前記(1)アからウまでに述べたとおりである。
なお,前記2(2)ウのとおり,Cは,平成17年7月15日に東京都の新銀行設立本部が廃止されたことに伴い,新銀行設立本部長から港湾局長に異動したことからすると,同日以降において,Cが,東京都の職員として,a銀行の経営に関し,東京都に対する義務を負うものと解することはできない。原告らは,Cが,名実共にa銀行の設立の責任者であったこと等から,a銀行における財務内容の情報提供を受けa銀行の経営を監視する義務を負っていたなどと主張するが,原告らの挙げる上記の事情を考慮しても,かかる主張を採用することはできない。
イ a銀行の役員等としての義務違反の有無
前提事実(1)エのとおり,Cは,東京都を退職した後の平成19年11月30日からa銀行の役員等(代表執行役又は取締役兼代表執行役)を務めていたところ,原告らは,Cが,a銀行の代表執行役として,東京都が出資した資本金を減少させることなく健全な銀行の経営がされるようにする善管注意義務及び監視義務があったにもかかわらず,a銀行の融資による損失を発生し続けさせる対応を完全には変更することができず,また,10店舗体制により人件費及び物件費が増大することを抑制することも直ちに実施することができなかったとして,かかる行為が,東京都に対する義務違反に該当する旨の主張をする。
しかしながら,a銀行の役員等であるCの行為が,a銀行でなく東京都に対する義務違反に該当し得るものであるかはおくとしても,前記2(7)イのとおり,Cがa銀行の代表執行役に就任した時には,既に執行役会において本件スコアリングモデルを利用した融資等の金額を抑制することが決定された後であり,その就任した翌月である同年12月以降に実行されたポートフォリオ型融資は,月5件に満たない程度となっていたこと,また,前記2(8)イ及びウのとおり,Cがa銀行の代表執行役に就任した翌月である同月には,a銀行の店舗は,本店を含めて6店舗が設置されるのみとなっていた上,平成20年2月には6店舗から1店舗に集約する方針が示され,同年5月までにその方針のとおりに本店を含めた全ての店舗が新宿店に統合され,同店が設置されるのみとなったことからすれば,Cが,a銀行の役員等として,東京都に対する不法行為責任を発生させるような義務に違反したなどと評価することはできないといわざるを得ない。
ウ 以上によれば,Cの不法行為についての原告らの主張を採用することはできない。
(4)  補助参加人らの不法行為について
ア 補助参加人らが本件小口定型3商品の販売の中止等をし,又はこれを提案すべき義務を怠ったか否か
(ア) 原告らは,補助参加人らが,a銀行の役員等として,平成17年12月2日以降,執行役を退任するまでのいずれかの時期において,本件小口定型3商品の販売の中止等をし,又はこれを提案する義務を怠った旨の主張をする。
(イ) この点,前提事実(5)及び(6)によれば,本件小口定型3商品は,個々の融資等の実行先に一定の確率でデフォルトが発生することを所与の事柄とし,事前に見積もられた想定デフォルト率に応じて適用される金利又は保証料率(以下「金利等」という。)を設定することにより,デフォルトから生じる損失を融資等の残高全体から生ずる利息及び保証料による収入で埋め合わせる仕組みの商品であること,適用される金利等は,本件スコアリングシステムが想定デフォルト率に応じたスコアランクごとに幅のある金利等の中から,貸付期間と貸付金額に従って決定されるものであったことが認められる。また,前提事実(4)のとおり,本件小口定型3商品は,いずれも原則として担保及び第三者による保証の必要がないものであり,デフォルトが発生した場合に,担保及び保証人から貸付金等の回収をすることが期待できないものであった。したがって,本件小口定型3商品において,融資等を実行する場合に適切に適用される金利等を設定してデフォルトから生じる損失を利息及び保証料による収入で埋め合わせるためには,本件スコアリングシステムにより算出される想定デフォルト率が適切なものであることが不可欠であり,また,想定デフォルト率が適切なものでない場合には,本件小口定型3商品の販売を継続することがa銀行の損失を発生させ続けることにつながり得るものであったということができる。
そして,前記2(5)アからウまでのとおり,本件小口定型3商品は,平成17年7月,実行先に初めてデフォルトが発生し,それ以降も実行先のデフォルトの発生件数は増加を続け,平成18年2月以降には,本件小口定型3商品の実際の信用に係る損失と実際の資金調達に係る損失を合わせたものが,融資等に対する利息及び保証料による利益を上回った状態になった(別表における「利鞘」が負の数値となった。なお,前記2(5)エのとおり,補助参加人らは,一定の計算と分析を経て,このような状態であることを知ることができた。)。以上のような同月以降の収益の状況を基にすると,本件スコアリングシステムが算出する想定デフォルト率が適切なものとはいえず,本件小口定型3商品の審査が有効に機能していなかったことが明らかであったといえる。
また,前記2(6)オ(キ)のとおり,デフォルトへの対策のための客観的なデータの集計及び分析を目的として結成された本件データ分析PTが平成18年6月12日付けで取りまとめた報告書においては,他社製のスコアリングシステムを導入したとしても,本件スコアリングシステムと同様,想定デフォルト率を適切に算出できないことから,スコアリングシステムをいかにチューニングしても見抜くことができない何らかの問題があると考えるべきであり,それは,a銀行の顧客の母集団が既存の銀行では融資に慎重なスタンスになるはずの者であることに起因する問題と,詐欺及び粉飾の案件の見極めについての受付時の審査の機能が不足していることに起因する問題であると考えられることが指摘され,単純なスコアリングモデルによる審査を行うだけではなく,詐欺及び粉飾の案件の発見に注力しなければならないと考えられることなどが記載されていた(なお,本件データ分析PTの上記の報告書は,補助参加人らが出席した「朝会」において報告されたものであり,補助参加人らは,その内容を知っていたと認められる。)。
以上の事情を踏まえると,遅くとも平成18年2月以降の収益の状況が明らかになった後においては,本件スコアリングシステムを用いた審査をする本件小口定型3商品の販売を継続することにより,a銀行の損失が発生し続けることとなる可能性に鑑みて,本件小口定型3商品の販売の中止又は停止をすることは,a銀行の経営の方針として採り得る選択肢の一つであったということができる。
(ウ) 他方,前記2(6)アのとおり,a銀行においては,平成17年7月に個人の事業主の貸付先が融資の実行から短期間のうちに自己破産をしたことを受けて,その原因を分析した上で,同年8月,本件スコアリングシステムを修正することとし,また,同年9月,定性チェックシートに取引口座チェックシートを追加して,顧客が取引に用いる預金口座に係る預金通帳を確認する取扱いを開始し,さらに,本件データ分析PTの分析を踏まえて,同年11月,新たに決算書チェックシートを導入し,申込みの受付時に決算期から6か月以上が経過している場合に「試算表」を徴求することとするなど,逐次デフォルトへの対策が執られていた。
また,前記2(6)イのとおり,a銀行の執行役会は,平成18年1月,信用格付の体系の変更を行うことを決議したところ,その決議の際に配付された資料においては,想定デフォルト率と実績デフォルト率とのかい離を根本的に解消するためには,本件スコアリングモデルの改善が不可欠である旨の指摘がされていた。そして,前記2(6)エ及びオのとおり,a銀行の執行役会は,同年3月,同年度上期の具体的な課題として,信用格付の制度の再構築及び本件スコアリングモデルの再構築が挙げられた「平成18年度上期信用リスク管理方針」を承認し,同年6月には,a銀行の審査・与信管理企画グループが,現状のd社のスコアリングシステムの改良及び他社のスコアリングシステムへの乗換えの2案を軸に,信用格付及び自己査定のシステム等の改良等をする方針が示された。
さらに,前記2(6)オ,カのとおり,a銀行においては,同月,個人信用情報の照会結果による融資等の案件の採択の賦課又は減額の基準及び有利子負債利子率による採択の基準を設定し,同年8月,来店により受付をする案件の専決決裁による融資等の限度額を2000万円未満に減額すること及び定性チェックシートに個人信用情報照会等のチェック項目を追加し,同月以降は,新規の顧客を獲得する活動の中心を渉外による受付に集中すると同時に,来店により受付をした案件における定性チェックシートを含めた審査の過程の厳格化を実施することとするなど,本件小口定型3商品に係る審査の厳格化等が進められた。
加えて,前記2(6)カ(キ)のとおり,補助参加人Z1は,d社製の本件スコアリングシステムはその都度費用が発生するなどの問題があり,むしろ他社製のスコアリングシステムがa銀行の審査の体制に最適であると判断し,同年9月6日付けで,本件スコアリングシステムを他社製のものと入れ替えることについての決裁をし,a銀行において,本件小口定型3商品に用いるスコアリングシステムを入れ替える対策も執られようとしていた。
以上の事情を踏まえると,補助参加人らは,本件小口定型3商品の実行先にデフォルトが発生し始めた頃から継続的に,本件スコアリングシステムの修正や本件小口定型3商品に用いるスコアリングシステムの入替えに加え,スコアリングシステム以外の面での審査の厳格化等を進める施策を執っていたということができる。実際に,同月27日に開催された取締役会における報告(前記2(6)カ(ク))にあるとおり,本件小口定型3商品のデフォルト率は,上記のような審査の厳格化等の対策を執り始めて以降,低下する傾向を示し,また,低下することが見込まれていた。そして,前提事実(4)のとおり,本件小口定型3商品は,いずれも,貸付期間又は保証期間が最長で5年間とされていたもので,デフォルトへの対策が功を奏するものであるか否かが判明するためにはある程度の期間を経る必要があることは明らかであるところ,証拠(丙イ19)によれば,デフォルトへの対策の効果があるかどうかの判別をするためには,6か月から1年程度は掛かると認められる。しかるに,前記2(6)のとおりに認定したa銀行におけるデフォルトへの対策は,最終のもので同年11月頃に導入されたのであるから,補助参加人らがa銀行の役員等を退任した平成19年6月22日までの間に,デフォルトへの対策の効果の有無及び程度が明らかになったとまではいうことができない。
(エ) 以上に加え,前提事実(3)イのとおり,a銀行は,そもそも,利益の極大化を目指さず,東京都の中小企業等の資金需要に対して,リスクの高い分野であっても資金を供給することなどの役割を果たすことを経営の理念とする銀行として設立されたものであること,前記2(6)カ(サ),(7)のとおり,補助参加人がa銀行の役員等を退任する直前である平成19年6月1日に発表された新中期経営計画の下では,本件小口定型3商品についていわば「制限的に実行する」(丙イ18の52頁)ものとされていたところ,補助参加人らが退任した後においても本件小口定型3商品の販売が中止又は停止をされるには至っていなかったことにも鑑みると,補助参加人らが,a銀行の役員等を退任するまでの間,本件小口定型3商品の販売について,上記の新中期経営計画に述べられていたところを超えて,その販売を全く中止し,又は停止すべき状況に至っていたとまではいえないと解するのが相当である。
したがって,前記(ア)のとおりの補助参加人らの義務違反についての原告らの主張は,当該義務がa銀行ではなく東京都に対するものとして成り立ち得るものか否かはおくとしても,採用することができないものといわざるを得ない。
イ 補助参加人Z1が10店舗体制を縮小する大掛かりなリストラ等をし,又はこれを提案する義務を怠ったか否か
(ア) 原告らは,補助参加人Z1が,a銀行の役員等として,10店舗体制を縮小する大掛かりなリストラ等をし,又はこれを提案する義務を怠った旨の主張をする。
(イ) 前記(1)ア(イ)に述べたとおり,銀行の店舗について,その数や設置場所をどのようにするかについては,銀行の財務状況等を踏まえて,店舗を運営する経費ばかりでなく,顧客の利便性の程度に関する予測等にも鑑みて検討されるべきものである。そして,a銀行の店舗の変遷の経過は前記2(8)のとおりであるところ,a銀行の店舗が本店を含めて10店舗となった平成18年9月までに,10店舗体制とすることを取りやめるなどの措置を執るべき状況にあったことを認めるに足りる的確な証拠はない。また,前記2(8)イのとおり,補助参加人らが作成し,a銀行の店舗が10店舗となった平成18年9月から9か月程度を経過したにすぎない平成19年6月1日に発表された新中期経営計画においては,店舗数を8店舗に再編する方針が示されたが,これより前の時期に店舗の再編をする措置を執るべき状況にあったとか,これより大幅な店舗数の削減をする措置を執るべき状況にあったことを認めるに足りる的確な証拠もない。
(ウ) 以上のとおり,前記(ア)のとおりの補助参加人Z1の義務違反についての原告らの主張は,当該義務がa銀行ではなく東京都に対するものとして成り立ち得るものか否かはおくとしても,採用することができないものといわざるを得ない。
ウ 補助参加人らがa銀行の財務内容を東京都に情報提供する義務を怠ったか否か
原告らは,補助参加人らが,a銀行の役員等として,a銀行の財務内容を東京都に情報提供する義務を怠った旨の主張をするところ,この主張は,原告らの主張する東京都の損害との関係では,補助参加人らがa銀行の役員等であった当時に,a銀行が,本件小口定型3商品の販売の中止等及び10店舗体制を縮小する大掛かりなリストラ等をすべき状況にあったことを前提として,かかる措置を執る契機となるべき東京都への情報提供がされなかったことについて,補助参加人らの東京都に対する義務違反があるというものと解される。
しかるところ,前記ア及びイのとおり,補助参加人らがa銀行の役員等であった当時に,a銀行が,原告らの主張の措置を執るべき状況にあったとはいえないから,東京都に対する情報提供の義務違反をいう原告らの主張は,その前提を欠くものといわざるを得ない。
したがって,上記の原告らの主張は,当該義務がa銀行ではなく東京都に対するものとして成り立ち得るものか否かはおくとしても,採用することのできないものといわざるを得ない。
エ 以上のほか,前提事実及び前記2の事実を踏まえ,また,本件全証拠をみても,補助参加人らの東京都に対する不法行為があったと認めることはできず,補助参加人らの不法行為についての原告らの主張を採用することはできない。
(5)  まとめ
以上によれば,その他の点について判断するまでもなく,本案の争点1に関する原告らの主張は採用することができない。なお,原告らは,補助参加人Z2の主張の一部(別紙3「本案の争点1に関する当事者等の主張の要点」の4(2)エ(カ)a)について,時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法であるとして,これを却下することを求める申立てをするが,これまで述べてきたところに加え,本件訴訟の審理の経過に照らすと,上記の主張がされたことにより訴訟の完結を遅延させることとなるとは認められないから,原告らの上記の申立ては理由がない。
4  本案の争点2について
原告らは,東京都がa銀行に対する400億円の追加の出資(前提事実(10)参照)に係るAの行為が不法行為に該当する旨の主張をする。
しかしながら,前記2(9)アからウまでのとおり,上記の追加の出資は,平成20年度補正予算案として提案された東京都議会において審議され,議決を経た上でされたものである上,a銀行は,この追加の出資を受けない場合,事業を継続することが困難になることが予想されており,東京都としては,「懸命に努力している既存融資先の中小企業に重大な影響を及ぼしてはならない。」との考え方を基に上記の追加の出資をすることとしたものであるところ,以上のような事情を踏まえると,上記の追加の出資に係るAの行為が,東京都に対する不法行為責任を発生させるような義務に違反するものということはできない。
以上によれば,本案の争点2に関する原告らの主張は採用することができない。
5  結論
よって,原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 舘内比佐志 裁判官 大竹敬人 裁判官 大畠崇史)

 

別紙1
当事者目録
東京都世田谷区〈以下省略〉
原告 X1
東京都品川区〈以下省略〉
原告 X2
東京都新宿区〈以下省略〉
原告 X3
上記3名訴訟代理人弁護士 三宅弘
西村啓聡
同訴訟復代理人弁護士 川上愛
渡部豊和
高橋涼子
今浦啓
尾渡雄一朗
相原啓介
東京都新宿区〈以下省略〉
被告 東京都知事 Y
同訴訟代理人弁護士 橋本勇
同指定代理人 W1
W2
W3
W4
愛知県豊田市〈以下省略〉
被告補助参加人 Z1
同訴訟代理人弁護士 髙岡信男
同訴訟復代理人弁護士 緒方理恵子
東京都荒川区〈以下省略〉
被告補助参加人 Z2
同訴訟代理人弁護士 栄枝明典
石井尚子
同訴訟復代理人弁護士 三浦友裕

〈以下省略〉


「選挙 コンサルタント」に関する裁判例一覧
(1)令和元年 9月 6日 大阪地裁 令元(わ)2059号 公職選挙法違反被告事件
(2)平成31年 3月 7日 知財高裁 平30(行ケ)10141号 審決取消請求事件
(3)平成30年12月18日 高知地裁 平28(行ウ)8号 損害賠償請求及び公金支出差止請求事件
(4)平成30年 9月28日 東京地裁 平26(ワ)10773号 損害賠償請求事件(本訴)、損害賠償請求反訴事件(反訴)
(5)平成30年 6月 6日 東京高裁 平29(ネ)2854号 株主代表訴訟控訴事件
(6)平成30年 4月25日 東京地裁 平28(ワ)31号 証書真否確認、立替金等返還債務不存在確認等請求事件、立替金返還請求反訴事件、立替金請求反訴事件
(7)平成30年 3月30日 東京地裁 平27(ワ)37147号 損害賠償請求事件
(8)平成30年 3月28日 東京地裁 平27(行ウ)616号 閲覧謄写請求事件
(9)平成30年 3月26日 東京地裁立川支部 平28(ワ)2678号 損害賠償請求事件
(10)平成30年 2月 8日 仙台高裁 平29(行コ)5号 政務調査費返還履行等請求控訴事件、同附帯控訴事件
(11)平成29年 5月22日 東京地裁 平28(特わ)807号 公職選挙法違反被告事件
(12)平成29年 3月28日 東京地裁 平25(ワ)28292号 謝罪広告等請求事件
(13)平成29年 3月 8日 東京地裁 平26(行ウ)300号 地位確認等請求事件
(14)平成29年 2月 2日 東京地裁 平26(ワ)25493号 株式代金等請求事件(本訴)、損害賠償請求反訴事件(反訴)
(15)平成29年 1月31日 仙台地裁 平25(行ウ)11号 政務調査費返還履行等請求事件
(16)平成28年 9月16日 福岡高裁那覇支部 平28(行ケ)3号 地方自治法251条の7第1項の規定に基づく不作為の違法確認請求事件
(17)平成28年 9月 2日 福岡高裁 平28(う)180号 入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反、公契約関係競売入札妨害、加重収賄被告事件
(18)平成28年 4月22日 新潟地裁 平25(行ウ)7号 政務調査費返還履行請求事件
(19)平成28年 3月30日 東京地裁 平21(行ウ)288号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(20)平成28年 3月17日 東京地裁 平26(ワ)23904号 地位確認等請求事件
(21)平成28年 3月17日 福岡地裁 平26(わ)1215号 入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反,公契約関係競売入札妨害,加重収賄被告事件
(22)平成28年 3月17日 福岡地裁 平26(わ)968号 入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反、公契約関係競売入札妨害、加重収賄被告事件
(23)平成27年 4月22日 東京地裁 平25(行ウ)792号 土地区画整理組合設立認可取消等請求事件
(24)平成27年 2月19日 東京地裁 平25(ワ)19575号 遺言無効確認請求事件、不当利得返還請求事件
(25)平成26年10月27日 熊本地裁 平23(行ウ)9号 損害賠償履行請求事件
(26)平成26年10月20日 東京地裁 平25(ワ)8482号 損害賠償請求事件
(27)平成26年 2月28日 東京地裁 平25(ヨ)21134号 配転命令無効確認仮処分申立事件 〔東京測器研究所(仮処分)事件〕
(28)平成26年 2月26日 東京地裁 平24(ワ)10342号 謝罪広告掲載等請求事件
(29)平成25年 1月29日 和歌山地裁 平19(行ウ)7号 政務調査費違法支出金返還請求事件
(30)平成24年 5月28日 東京地裁 平24(ヨ)20045号 職務執行停止・代行者選任等仮処分命令申立事件
(31)平成23年 8月31日 東京地裁 平22(行ウ)24号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(32)平成22年 7月22日 東京地裁 平20(ワ)15879号 損害賠償請求事件
(33)平成21年10月14日 東京高裁 平20(う)2284号
(34)平成21年 7月28日 東京地裁 平18(ワ)22579号 請負代金請求事件
(35)平成21年 4月28日 大阪地裁 平19(わ)4648号 談合被告事件
(36)平成21年 4月28日 大阪地裁 平19(わ)3456号 談合、収賄被告事件
(37)平成21年 3月27日 宮崎地裁 平18(わ)526号 競売入札妨害、事前収賄、第三者供賄被告事件
(38)平成21年 3月 3日 東京地裁 平19(ワ)10972号 謝罪広告等請求事件
(39)平成21年 3月 3日 水戸地裁 平18(行ウ)7号 小型風力発電機設置事業に係わる損害賠償請求事件
(40)平成21年 3月 2日 東京地裁 平20(ワ)6444号 売上代金請求事件
(41)平成20年10月31日 大阪地裁 平17(行ウ)3号 損害賠償請求、不当利得金返還請求事件(住民訴訟) 〔枚方市非常勤職員特別報酬住民訴訟〕
(42)平成20年 9月29日 東京地裁 平18(ワ)7294号 損害賠償請求事件 〔つくば市 対 早稲田大学 風力発電機事件・第一審〕
(43)平成20年 9月 9日 東京地裁 平18(ワ)18306号 損害賠償等請求事件
(44)平成20年 8月 8日 東京地裁 平18(刑わ)3785号 収賄、競売入札妨害被告事件〔福島県談合汚職事件〕
(45)平成20年 5月27日 東京地裁 平18(ワ)24618号 損害賠償請求事件
(46)平成20年 3月27日 東京地裁 平18(ワ)18305号 損害賠償等請求事件
(47)平成20年 1月18日 東京地裁 平18(ワ)28649号 損害賠償請求事件
(48)平成19年11月 2日 東京地裁 平19(ワ)4118号 損害賠償請求事件
(49)平成19年 3月13日 静岡地裁沼津支部 平17(ワ)21号 損害賠償請求事件
(50)平成17年11月18日 和歌山地裁 平15(わ)29号 収賄、背任被告事件
(51)平成17年 8月29日 東京地裁 平16(ワ)667号 保険金請求事件
(52)平成17年 7月 6日 東京地裁 平17(ワ)229号 請負代金等請求事件
(53)平成17年 5月31日 東京高裁 平16(ネ)5007号 損害賠償等請求控訴事件
(54)平成17年 5月24日 岡山地裁 平8(行ウ)23号 損害賠償等請求事件
(55)平成17年 2月23日 名古屋地裁 平13(ワ)1718号 労働契約上の地位確認等請求事件 〔山田紡績事件〕
(56)平成17年 2月22日 福島地裁郡山支部 平14(ワ)115号 損害賠償請求事件
(57)平成16年 9月 9日 名古屋地裁 平15(行ウ)34号 損害賠償請求事件
(58)平成16年 8月10日 青森地裁 平15(ワ)32号 名誉毀損に基づく損害賠償請求事件
(59)平成16年 5月28日 東京地裁 平5(刑わ)2335号 贈賄被告事件 〔ゼネコン汚職事件〕
(60)平成15年11月26日 大阪地裁 平14(行ウ)186号 不当労働行為救済命令取消請求事件 〔大阪地労委(大阪ローリー運輸労組・双辰商会)事件・第一審〕
(61)平成15年 7月28日 東京地裁 平14(ワ)21486号 損害賠償請求事件
(62)平成15年 4月10日 大阪地裁 平12(行ウ)107号 埋立不許可処分取消請求事件
(63)平成15年 3月 4日 東京地裁 平元(刑わ)1047号 日本電信電話株式会社法違反、贈賄被告事件 〔リクルート事件(政界・労働省ルート)社長室次長関係判決〕
(64)平成15年 2月20日 広島高裁 平14(う)140号 背任被告事件
(65)平成15年 1月29日 広島地裁 平12(ワ)1268号 漁業補償金支払に対する株主代表訴訟事件 〔中国電力株主代表訴訟事件・第一審〕
(66)平成14年10月10日 福岡地裁小倉支部 平11(ワ)754号 損害賠償請求事件
(67)平成14年10月 3日 新潟地裁 平13(行ウ)1号 仮換地指定取消請求事件
(68)平成14年 5月13日 東京地裁 平13(ワ)2570号 謝罪広告等請求事件
(69)平成13年 7月18日 大阪地裁 平12(ワ)4692号 社員代表訴訟等、共同訴訟参加事件 〔日本生命政治献金社員代表訴訟事件〕
(70)平成12年 8月24日 東京地裁 平10(ワ)8449号 損害賠償等請求事件
(71)平成12年 3月14日 名古屋高裁 平10(う)249号 収賄、贈賄被告事件
(72)平成12年 2月18日 徳島地裁 平7(行ウ)13号 住民訴訟による原状回復等請求事件
(73)平成10年 4月20日 大阪地裁 平6(ワ)11996号 損害賠償請求事件 〔誠光社事件・第一審〕
(74)平成10年 3月31日 東京地裁 平7(ワ)22711号 謝罪広告請求事件
(75)平成10年 3月26日 名古屋地裁 平3(ワ)1419号 損害賠償請求事件 〔青春を返せ名古屋訴訟判決〕
(76)平成 9年10月24日 最高裁第一小法廷 平7(あ)1178号 法人税法違反被告事件
(77)平成 9年 3月21日 東京地裁 平5(刑わ)2020号 収賄、贈賄等被告事件 〔ゼネコン汚職事件(宮城県知事ルート)〕
(78)平成 8年 2月14日 東京高裁 平6(う)342号 法人税法違反被告事件
(79)平成 7年 9月20日 福岡地裁 平5(行ウ)17号 地方労働委員会命令取消請求事件 〔西福岡自動車学校救済命令取消等事件〕
(80)平成 7年 2月23日 最高裁第一小法廷 平5(行ツ)99号 法人税更正処分等取消請求上告事件
(81)平成 6年12月21日 東京地裁 平元(刑わ)1048号 日本電信電話林式会社法違反、贈賄被告事件 〔リクルート事件政界ルート判決〕
(82)平成 6年 5月 6日 奈良地裁 昭60(わ)20号 法人税法違反被告事件
(83)平成 5年 3月16日 札幌地裁 平元(わ)559号 受託収賄被告事件 〔北海道新長計汚職事件〕
(84)平成 2年 8月30日 福岡地裁 昭58(ワ)1458号 損害賠償請求事件
(85)平成 2年 4月25日 東京高裁 昭63(う)1249号 相続税法違反被告事件
(86)平成 2年 3月30日 広島地裁呉支部 昭59(ワ)160号 慰謝料請求事件
(87)平成元年 3月27日 東京地裁 昭62(特わ)1889号 強盗殺人、死体遺棄、通貨偽造、銃砲刀剣類所持等取締法違反、火薬類取締法違反、強盗殺人幇助、死体遺棄幇助被告事件 〔板橋宝石商殺し事件・第一審〕
(88)昭和63年11月 2日 松山地裁 昭59(行ウ)4号 織田が浜埋立工事費用支出差止請求訴訟第一審判決
(89)昭和62年 7月29日 東京高裁 昭59(う)263号 受託収賄、外国為替及び外国貿易管理法違反、贈賄、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律違反被告事件 〔ロッキード事件丸紅ルート・控訴審〕
(90)昭和62年 2月19日 東京高裁 昭61(ネ)833号 損害賠償等請求控訴事件 〔総選挙当落予想表事件〕
(91)昭和61年 6月23日 大阪地裁 昭55(ワ)5741号
(92)昭和61年 3月31日 大阪地裁 昭59(ヨ)5089号
(93)昭和60年 9月26日 東京地裁 昭53(行ウ)120号 権利変換処分取消請求事件
(94)昭和60年 3月26日 東京地裁 昭56(刑わ)288号 恐喝、同未遂被告事件 〔創価学会恐喝事件〕
(95)昭和60年 3月22日 東京地裁 昭56(特わ)387号 所得税法違反事件 〔誠備グループ脱税事件〕
(96)昭和59年12月19日 那覇地裁 昭58(ワ)409号 損害賠償請求事件
(97)昭和58年10月12日 東京地裁 昭51(特わ)1948号 受託収賄、外国為替及び外国貿易管理法違反、贈賄、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律違反事件 〔ロッキード事件(丸紅ルート)〕
(98)昭和56年 9月 3日 旭川地裁 昭53(ワ)359号 謝罪広告等請求事件
(99)昭和55年 7月24日 東京地裁 昭54(特わ)996号 外国為替及び外国貿易管理法違反、有印私文書偽造、有印私文書偽造行使、業務上横領、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律違反事件 〔日商岩井不正事件(海部関係)判決〕
(100)昭和52年 9月30日 名古屋地裁 昭48(わ)2147号 商法違反、横領被告事件 〔いわゆる中日スタジアム事件・第一審〕
(101)昭和50年10月 1日 那覇地裁 昭49(ワ)51号 損害賠償請求事件 〔沖縄大蔵興業工場建設協力拒否事件・第一審〕


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最強の立札看板設置代行/広報(公報)支援/選挙立候補者後援会立札看板/選挙立候補者連絡所立札看板/政治活動用事務所に掲示する立て札・看板/証票申請代行/ガンガン独占設置!


政治活動用事前街頭ポスター新規掲示交渉実績一覧
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