【選挙から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(43)平成20年 9月 9日 東京地裁 平18(ワ)18306号 損害賠償等請求事件

「選挙 コンサルタント」に関する裁判例(43)平成20年 9月 9日 東京地裁 平18(ワ)18306号 損害賠償等請求事件

裁判年月日  平成20年 9月 9日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平18(ワ)18306号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2008WLJPCA09098004

要旨
◆被告が執筆し被告会社が発行した書籍に原告の前科、逮捕歴等が記載されたことにより、原告の名誉が毀損されるとともにプライバシー権が侵害されたと主張して、原告が被告らに対し、不法行為に基づく損賠賠償及び謝罪広告の掲載と当該書籍からの記事の削除を求めた事案において、被告の記事の多くが原告の社会的評価を低下させるものであり、過去に衆議院議員選挙等に立候補したことはあるが、10年以上前であり最近は立候補したことがないなどを理由として公的立場にある人物とはいえないなどとして、違法性阻却を否定し、原告の請求の一部を認容した事例

参照条文
民法710条

裁判年月日  平成20年 9月 9日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平18(ワ)18306号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2008WLJPCA09098004

東京都町田市〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 弘中惇一郎
同 弘中絵里
同 日隅一雄
同 秋山亘
同弘中惇一郎訴訟復代理人弁護士 大木勇
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 Aこと
Y1
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 株式会社ぶんか社
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 中田直茂
同 酒井正之

 

 

主文

1  被告らは,連帯して,原告に対し,220万円及びこれに対する平成18年5月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3  訴訟費用はこれを10分し,その9を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。
4  この判決は,1項に限り,仮に執行することができる。

 

 

事実及び理由

第1  請求
1  被告らは,連帯して,原告に対し,2200万円及びこれに対する平成18年5月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告らは,連名で,読売新聞及び朝日新聞の朝刊全国版の社会面に,1倍,活字2段抜きで,判決確定後10日以内に各1回,別紙1記載の謝罪広告を掲載せよ。
3  被告らは,被告AことY1の著書「Cの黒い真実」につき,未販売のもの及び今後重刷するものから,別紙2記載の文言を削除せよ。
第2  事案の概要
本件は,被告AことY1(以下「被告Y1」という。)が執筆し,被告株式会社ぶんか社(以下「被告ぶんか社」という。)が発行した書籍に,原告の前科,逮捕歴や詐欺的商法との関わり等が記載されたことにより,原告の名誉が毀損されるとともにプライバシー権が侵害されたと主張して,原告(以下,書籍の記載を示す関係で,「X」あるいは「X」という場合がある。)が,被告らに対し,不法行為に基づく損害の賠償及び謝罪広告の掲載と当該書籍からの記事の削除を求めた事案である。
1  前提となる事実(争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実)
(1)  当事者
ア 原告は,著名な占い師であるC(以下「C」という。ただし,書証や書籍の記載を表す関係で「C」あるいは「C」という場合がある。)の実弟であり,現在画家として活動している。
イ(ア) 被告ぶんか社は,雑誌及び一般図書の出版,刊行物の売買等を主たる目的とする会社である。
(イ) 被告Y1は,週刊誌である週刊文春の元記者であり,本件当時,Aの名前で執筆活動をしていた。
(2)  書籍の執筆及び発売
被告Y1は,平成18年ころ,「Cの黒い真実」(以下「本件書籍」という。)と題する書籍を執筆し,被告ぶんか社は,同年4月19日,同年5月10日付けで本件書籍を出版した(甲1)。
本件書籍には,以下のアないしセに記載の内容が掲載されている(なお,以下のアないしセの各記載を,順に「本件目次」,「本件人物相関図」,「本件人生年表」,「本件記事1」,「本件記事2」,…,「本件記事11」というように表記し,これらをまとめて「本件各記事」という。)。
ア 本件目次
実弟・Xをめぐる××××の黒い噂(第5章の見出し)
(ア) 「Cの弟が詐欺容疑で逮捕!」のニュース飛び込む(本件目次1)
(イ) Xがヤクザ者だとバレたらまずい,と出馬を断念させる(本件目次2)
(ウ) 拳銃をぶっ放してa党をぶっつぶしたX(本件目次3)
イ Cをめぐる人物相関図(別紙3参照)
(ア) 以前はb組に出入り(本件人物相関図1)。
(イ) 恐喝や詐欺など黒い噂がある(本件人物相関図2)。
(ウ) 2006年1月にも,詐欺容疑で逮捕されている(本件人物相関図3)。
ウ Cの人生年表(別紙4参照)
(ア) 1994年(平成6年)56歳
弟・Xがc新聞社「週刊千葉」の記事をめぐり恐喝で逮捕―起訴。Cは弁護士費用に7000万円支払う(本件人生年表1)
(イ) 2005年(平成17年)67歳
弟・Xがマルチまがい商法のd会広告塔として訴えられる。Cは「弟とは8年前に絶縁」とマスコミで報告(本件人生年表2)
(ウ) 2006年(平成18年)68歳
1月,弟・Xが信用金庫の公的資金架空請求事件で詐欺容疑,逮捕,不起訴処分となる(本件人生年表3)。
エ 本件記事1(本件書籍138頁)
なおCの実弟・Xも,姉の縁でb組入りしている。
オ 本件記事2(本件書籍164頁)
このときXは町議を恐喝し,“取材謝礼料”として金銭を引っ張り,それが表沙汰になっている。Xは恐喝容疑で逮捕,起訴されて執行猶予つきの有罪判決となった。
つまりこの時期のCのテレビ出演自粛は,大殺界をカモフラージュにして弟の犯罪がらみのバッシングを避けるためだったのである。
カ 本件記事3(本件書籍177頁)
実弟・Xをめぐる××××の黒い噂
2006年1月「Cの弟,逮捕!」。
b組構成員で,6度選挙に出馬するも全敗,いまも恐喝,詐欺を繰り返す
Cの実弟・Xは,姉に勝るとも劣らぬ「お騒がせ男」であった。
キ 本件記事4(本件書籍178頁以下)
(ア) 「Cの弟が詐欺容疑で逮捕!」のニュース飛び込む(本件記事4の1)
(イ) 本書を執筆中の2006年(平成18年)1月,なんと「Cの弟が詐欺容疑で逮捕される」というニュースが飛び込んできた。
この逮捕されたCの弟というのは,前にも何度か名前をあげた「X」である。報道によればXは,融資制度を悪用して茨城県水戸市内の信用金庫から金をだまし取ることを計画。休眠状態にあった共犯者の建築会社を使い,売り上げ高を水増しした決算書を提出して,約3000万円を口座に振り込ませるという詐欺容疑で茨城県警より1月27日に逮捕された。
今回の逮捕は,共犯者の口からXの名前があがったため。Xは20日間の最長拘留期間を経て送検されたが,2月16日付けで「犯行への関与の程度が低かった」とされ釈放,不起訴処分となっている(本件記事4の2)。
ク 本件記事5(本件書籍182頁)
恐喝と詐欺を繰り返し,さすがのCも絶縁宣言?
ケ 本件記事6(本件書籍182頁以下)
●…千葉の町議を恐喝
1994年(平成6年),Xは千葉県でc新聞社の社長をしていた。ある日,千葉県小見川町町議会会長のD氏のもとに,政治経済事件を中心にc新聞社が月2回発行するタウン誌「週刊千葉」の記事が,突然ファックスで送られてきた。その内容は「D氏が福島県内のゴルフ場がらみで,暴利を得ている」というもの。驚いたD氏は,Xと千葉市内の料亭で会う。するとXは「このあいだのゲラみたでしょう。来月議長選があるけど,もう一期議長やりたいでしょう」と,取材経費として200万円を請求。悪評のひとり歩きをおそれたD氏は一度は要求をのんだが,「振り込みは足がつくからダメ」などというXのいいぐさに不穏なものを感じる。
案の定,ふたたびXから「社員の給料を支払えない」などの理由で100万円単位の金銭要求があり,D氏は我慢ならずに警察に駆け込んだ。この訴えにより千葉県警はXを逮捕,執行猶予つきの有罪判決が確定した。Cはこのとき,弁護士費用と示談金で7000万円をつぎこんだといわれているが・・・。
コ 本件記事7(本件書籍185頁以下)
(ア) この事件が世間に発覚したのはごく最近の2004年(平成16年)のことだが,1年後の2005年(平成17年)5月,またもやXは「d会」なるマルチまがい商法の広告塔になっているのだから,もはや確信的常習犯であろう。というよりも,詐欺すれすれのマルチのプロとでもいおうか(本件記事7の1)。
(イ) ●…霊芝商法と焼却炉投資で20億円集めた「d会」
d会のセミナー会場にて,いつも最初に挨拶するのはXである。
Xが「△△占術で有名なCの弟です。わたしは衆議院を5期務め,田中角栄先生からも可愛がられておりました」などというと,会場のほとんどの人間は驚く。そこでXはぬかりなく,セミナーの参加者と丁寧に名刺交換などをはじめる(本件記事7の2)。
(ウ) ここでもXは,「わたしは関係ない。頼まれたから講演しただけ」と繰り返す。しかし「C」の看板にひかれてついお金を出してしまった会員も少なくはないはずだ。
さすがのCもこの騒動を機に,Xとは絶縁宣言をしている(本件記事7の3)。
(エ) Cも,弟が…(略)…いずれは詐欺を繰り返すようになるということまでは予測できなかったようだ(本件記事7の4)。
(オ) この事件以降,毎月CがXに支払っていた顧問料50万円も,いっさいあげなくなったという話だが・・・(本件記事7の5)。
サ 本件記事8(本件書籍189頁以下)
(ア) Xがヤクザ者だとバレたらまずい,と出馬を断念させる(本件記事8の1)
(イ) Cが自分名義の会社から,月々50万円の顧問料をずっとXに支払い続けていた(本件記事8の2)
(ウ) 結局,政治家を断念して詐欺師まがいの道をたどることになる(本件記事8の3)
(エ) 実の話,この出馬断念は,Xが「b組」に出入りしていたことがおもな原因である(本件記事8の4)。
(オ) この大事な時期に,痛い腹(自分も含め,Xがヤクザ者だったというスキャンダル)を探られることを極端におそれたのである。
当時のCと近しい人物の証言によれば,「ここでCの弟が出馬などの派手なことをすれば,遅かれ早かれ黒い過去がバレてしまう。Cは“Xが出馬を断念してくれなければ,自分がいっさいテレビから姿を消す以外にない”とまでいいきった」という。姉からの強い要求を,Xはのんだ。姉の立身出世のために,自分の道を一時期断念して身を潜めるかたちとなったのだ(本件記事8の5)。
(カ) Cは3年間辛抱したXへのお礼の意味も込めて,月々の生活資金50万円を,顧問料の名目で支払い続けたのである。もちろんこの時期,XがCの会社の顧問や事務所の手伝いなどをしていたわけではない(本件記事8の6)。
シ 本件記事9(本件書籍192頁以下)
(ア) 拳銃をぶっ放してa党をぶっつぶしたX(本件記事9の1)
(イ) さて,新興政党であるこの政党の公認で,Xが出馬したのはなぜか。理由はかんたんである。
プロレスをはじめとする格闘技などの韓国団体と通じているEは,当然b組ともつながりがあった(本件記事9の2)。
(ウ) ちなみに,Cはこの関係性を後ろめたく思っているのであろう。あるテレビ番組でEと共演したときには,いつもと反対に「はじめまして」と初対面を装ったのである(本件記事9の3)。
(エ) ところが,a党の後援者幹部が,フランスから拳銃108丁を密輸入していた事件が発覚してしまう。そのきっかけとなった張本人は,またもやお騒がせのXである。
ある日,Xは知人とともに某海岸沿いで,海に向かって拳銃撃ちの練習をしていたというのである。しかも,よりによって実弾である。まるでハワイやグアムで日本人観光客がよくやるシューティングのノリだが,間合い悪く(というか当然というか)釣りにきていた人に目撃されてしまった。
波も荒く,めったに人もこないであろうとタカをくくっていたのが運のつき。目撃者は何事かと即座に警察に通報。現行犯で逮捕されそうになったが,命からがら逃げ出した。しかし,しっかり顔を見られていたことなどからa党には警察の捜査が入り,(以下略)(本件記事9の4)。
(オ) 現場で目撃されたa党の事務局長であるXは,本来ならばなんかの責任をとらなければならない立場なのだが,彼はとっととひとりで逃亡している。
こうして“スポーツを通じて世界平和を”という理念で発足したさわやかなイメージのa党は,どうみてもさわやかではないXのおかげであっさりと解散になった(本件記事9の5)。
ス 本件記事10(本件書籍197頁以下)
(ア) セレブ資産運用コンサルティング会社に加担?(本件記事10の1)
(イ) 実はこの「e社」の幹部に,Xがからんでいるとの噂があり,水面下で捜査が進行中である(本件記事10の2)。
(ウ) この詐欺まがいの投資会社については,東京の所轄警察署の担当が追っていたが,現在捜査の舞台は最初に会社が設立された大阪府警にほぼ移っているという。つまりはF社長をはじめとする会社幹部数名が,不明金の200億円を分割して逃亡中というわけだが,その捜査にXの名前が浮上しているのである(本件記事10の3)。
(エ) Xが稀代の詐欺師であるいうことはほとんど知られてないのが,実は怖いところなのだ(本件記事10の4)。
(オ) 暴力団出身で,政治家への夢をはたせなかった男が,いまでは詐欺行為で金を稼いでいるというのが,Xの真実の姿である。
「わたしは田中角栄に可愛がられ」といったん自己紹介し,「そして占い師Cの弟です」と自分への信憑性を高める。いまや日本でCを知らない者はいない。姉の知名度を利用して,今後もXは詐欺すれすれの商売を繰り返していくのだろうか(本件記事10の5)。
セ 本件記事11(本件書籍220頁)
Cが弟のXとふたりで,皇室関係の品物を15万円で買い取ってくれといって来訪してきたことがある。詐欺まがい品物で皇室とはまったく関係がなかった……etc。
2  争点
(1)  本件各記事による名誉毀損の有無(争点1)。
(2)  本件各記事の執筆ないし掲載についての違法性阻却事由の有無(争点2)
(3)  本件各記事によるプライバシー侵害の有無及びその違法性阻却事由の有無(争点3)
(4)  損害の有無及びその額並びに謝罪広告と記事削除の必要性の有無(争点4)
3  争点に対する当事者双方の主張
(1)  本件各記事による名誉毀損の有無(争点1)。
(原告の主張)
本件各記事は,以下のとおり,原告の社会的評価を低下させるものである。
ア 原告が詐欺罪で逮捕されたことについて(本件記事4,本件目次1,本件人物相関図3,本件人生年表3)
当該記事は,原告が詐欺事件に関与しているという印象を一般読者に与えるものであり,原告の社会的評価を低下させる。
イ 原告が恐喝罪で有罪判決を受けたことについて(本件記事2,同6,本件人生年表1)
当該記載は,原告の社会的評価を低下させるものである。
ウ 原告とd会の関係について(本件記事7,本件人生年表2)
当該記事は,原告が「マルチまがい商法の広告塔」となっており,「詐欺すれすれのマルチのプロ」などと報じるものであって,原告の社会的評価を低下させる。
(本件記事7の3)
当該記事は,原告がCの弟であることを売りにして講演し,会員から金を出させて詐欺商法の片棒を担いだという事実を摘示するものであり,原告の社会的評価を低下させる。
(本件記事7の4)
当該記事は,著者がCの心情を推し量った形をとってはいるが,原告が詐欺を繰り返したという事実を摘示するものであり,原告の社会的評価を低下させる。
エ 原告と暴力団の関係について(本件記事1,同8の1・3・4・5,同9,同10,本件目次2,本件人物相関図1)
当該記載は,全体として,原告が暴力団員であったことを報じるものであり,原告の社会的評価を低下させる。
なお,被告らは,本件記事8の1及び本件目次2は,見出しであり独立して名誉棄損を構成しない旨主張するが,見出しであっても,原告がヤクザ者であるという事実を感得することができる以上,独立して名誉棄損を構成するというべきである。
オ 原告が顧問料50万円を受領していたことについて(本件記事7の5,同8の2・6)
当該記事は,原告が何らCのために働いていないにもかかわらず,毎月50万円の顧問料を支払ってもらっていた旨報じるものであり,原告がCから,長きにわたって,いわゆるただ飯を食わしてもらっているかのような印象を与えるものであるため,当該記事は,原告の社会的評価を低下させる。
カ 原告が拳銃を撃ったことについて(本件記事9の1・4,本件目次3)
当該記事は,原告が某海岸沿いで実弾入りの拳銃を海に向かって撃ったことがきっかけとなり,a党に警察の捜査が入った結果,a党が解散したこと,それにもかかわらず,その事件の端緒となった原告は逃亡したことを報じるものである。
そして,当該記事は,実弾入りの拳銃を撃つなどという銃砲刀剣類所持等取締法(以下「銃刀法」という。)違反を犯した旨報じている点,原告がa党解散の原因であったとする点,原告はその責任を一切取らなかったという点において,原告の社会的評価を低下させるものである。(本件記事9の1,本件目次3)
当該見出しは,それだけでも,原告が拳銃を撃ったことや,a党を解散に追い込んだことが伝わるから,独立して名誉棄損を構成する。
キ 原告とe社との関係について(本件記事10)
当該記事は,原告が被害額200億円にも上る大型投資詐欺会社e社」(以下「e社」という。)の幹部とつながりがあり,e社に関して,原告についても捜査が及んでいる旨報じるものである。そして,このe社に関しては,有名人も被害に遭った巨額の詐欺事件として大きく報道されているところ,原告がe社の幹部とつながりがあり,また捜査対象となっている旨報じることは,原告の社会的評価を低下させるものである。
(本件記事10の1)
当該見出しも,後の記事と相まって,原告が詐欺まがいの投資会社に加担していた事実を摘示するものであり,一体として名誉棄損を構成する。
(本件記事10の4)
当該記事は,原告が世でまれに見るほどの酷い詐欺師であり,田中角栄に可愛がられたとか,姉の知名度を利用したりして,詐欺(ないし詐欺すれすれの行為)を繰り返しているというものであり,かかる記載は,原告の社会的評価を低下させる。
ク 皇室関係の品物に関する詐欺について(本件記事11)
当該記事は,原告とCが,皇室関係の品物であると嘘をついて品物の買取りを迫ったとするもので,原告が詐欺を働いた旨摘示するものであるから,原告の社会的評価を低下させる。
ケ 本件記事3及び5について
当該記事は,原告が恐喝や詐欺を繰り返し,暴力団であるb組構成員であることを指摘するものであり,原告の社会的評価を低下させる。
被告らは,当該記事は,見出しであり独立して名誉棄損を構成しない旨主張するが,見出しであっても事実が摘示されている以上,独立して名誉棄損を構成するというべきである。
(被告らの主張)
本件各記事は,以下のとおり,原告の社会的評価を低下させるものではない。また,原告が主張する事実は,おおむね既に事実として報道され公衆に知られた事実であり,原告の社会的評価が本件書籍により低下するものではない。
ア 原告が詐欺罪で逮捕されたことについて(本件記事4,本件目次1,本件人物相関図3,本件人生年表3)
争う。
本件目次,本件人物相関図,本件人生年表は,単なる見出しに類するものであって,それ自体が独立して名誉棄損を構成することはない。
イ 原告が恐喝罪で有罪判決を受けたことについて(本件記事2,同6,本件人生年表1)
争う。
ウ 原告とd会の関係について(本件記事7,本件人生年表2)
争う。
(本件記事7の4)
当該記載は,Cの心情を推測する記載として,事実摘示には該当せず,独立して名誉棄損を構成するものではない。
(本件人生年表2)
当該記載は,単なる見出しに類するものであり,それ自体独立して名誉棄損が成立するものではない。
エ 原告と暴力団の関係について(本件記事1,同8の1・3・4・5,同9,同10,本件目次2,本件人物相関図1)
一般人は,当該記載を読んで,原告がb組の組員であったと通常理解するものではないし,殊に,当該記載のうち,「ヤクザ者」とは,生活態度等の評価として用いられるのが通常であるため,当該記載は,何ら原告の社会的評価を低下させるものではない。
(本件記事8の1及び本件目次2)
当該記載は,単なる見出しであり,それ自体独立して名誉棄損が成立するものではない。
(本件記事8の4)
そもそも当該記載のうち,原告がCの働きかけによって出馬を取りやめたとの事実は,原告の社会的評価を低下させるものではない。
(本件人物相関図1)
当該記載は,単なる見出しに類するものであり,それ自体独立して名誉棄損が成立するものではない。
オ 原告が顧問料50万円を受領していたことについて(本件記事7の5,同8の2・6)
Cが原告に対して月額50万円の顧問料を支払っていたとの事実及びその理由に係る事実は,それ自体が原告の社会的評価を低下させるものではない。
カ 原告が拳銃を撃ったことについて(本件記事9の1・4,本件目次3)
争う。
(本件記事9と本件目次3)
当該記載は,単なる見出しであり,それ自体独立して名誉棄損が成立するものではない。
キ 原告とe社との関係について(本件記事10)
争う。
(本件記事10の1)
当該記載は,単なる見出しであり,それ自体独立して名誉棄損が成立するものではない。
ク 皇室関係の品物に関する詐欺について(本件記事11)
争う。
ケ 本件記事3及び5について
そもそも,当該記事は,見出しにすぎない。本件書籍のような単行本における見出しは,各章の内容を読者に分かりやすく示す目的で記載されたものであり,限られた字数に要約され,本文の内容を厳密な意味で正確に表現しているとも限らない。そして,単行本においては,見出しだけを読む読者はほとんどおらず,読者は各章本文を読むのが通常である。
したがって,当該記載が原告の社会的評価を低下させるか否かの判断に際しては,見出しと本文とを一体として行うべきであるから,当該記載自体が,独立して名誉棄損を構成するものではない。
(2)  本件各記事の執筆ないし掲載についての違法性阻却事由の有無(争点2)。
(被告らの主張)
ア 本件各記事は,以下のとおり,公共の利害に関する事実であるとともに,専ら公益を図る目的で執筆されたものである上,記載事実の重要な部分が真実であるか,被告らにおいて真実であると信じたことに相当の理由があるため,違法性が阻却されるというべきである。
なお,本件各記事における個別の被告らの主張は,後記イ以下で述べるとおりである。
(ア) 公共の利害に関する事実であること
原告は,衆議院議員選挙3回を含め,平成12年までに5回,公職に立候補するとともに(なお,この他に一度は出馬を準備しながら断念したものもある。),平成13年9月14日付け官報にも,原告が政治資金規正法に基づく資金管理団体の届出をしていることからすれば,最近まで政治活動をしていたことが窺える。また,原告は,マルチまがい商法の事業を営んでいるとして,消費者から民事訴訟を提起されているf社の会長に就任するとともに,g株式会社というパソコン販売会社の代表取締役に就任し,原告がd会によるマルチまがい商法に関連して,その被害者から民事訴訟を提起されており,これらの際,原告は,著名な占い師であるCの実弟であるという知名度を,直接間接に利用している。その他,原告は,平成6年に恐喝罪により起訴され,執行猶予付きの有罪判決を受けるとともに,本件書籍出版の約4か月前の平成18年1月27日には,詐欺罪により逮捕されるなどしている。
したがって,原告のように,著名な占い師の実弟であることを利用し,公職に複数回立候補するとともに,消費者から民事訴訟を提起されるような会社の代表取締役に就任している者で,過去に犯罪歴を有する者は,社会的地位及び社会的影響力も強く,公的な関心の程度もより高いといえ,本件記事は公共性を有する。
(イ) 専ら公益を図る目的で執筆されたものであること
そして,上記(ア)のような事情からすれば,本件記事は,いずれも公的関心の対象である原告本人及びCの双方について,真実を伝え,選挙権者や消費者を含む公衆が,原告本人及びCの実像を理解する一助ともなるものであるから,本件各記事の執筆は,専ら公益を図る目的に出たものといえる。
(ウ) 記載事実の重要な部分が真実であるか,被告らにおいて真実であると信ずべき相当な理由があること
本件各記事の記載内容は,その重要な部分において真実であり,仮にそうでないとしても,被告Y1において,複数の関係者に取材した上で本件各記事を執筆したものであり,被告ぶんか社は被告Y1から取材過程について事情を聴取した上で本件書籍を発行しているから,被告らにおいてその内容を真実と信ずべき相当な理由がある。
イ 原告が詐欺罪で逮捕されたことについて(本件記事4,本件目次1,本件人物相関図3,本件人生年表3)
当該記事の内容は,既に広く報じられていた複数の新聞・雑誌等の記事に依拠したものであって,その内容は,すべて真実である。
なお,原告は,本件書籍の出版が,原告が茨城県警に詐欺容疑で逮捕され,不起訴処分となった2,3か月後であることをもって,当該記事には,公共性も公益目的も認められない旨主張する。しかしながら,書籍の場合には,執筆から出版までに,校正や販売準備のため相当時間を要するため,原告の主張するように解すると,執筆から出版までに多少の時間を要する書籍の出版の態様による表現の自由が,他のメディアよりも著しく制約されることになり,不合理というべきである。
ウ 原告が恐喝罪で有罪判決を受けたことについて(本件記事2,同6,本件人生年表1)
当該記事の内容も,既に各種雑誌等において広く報じられているから,真実性が認められるとともに,真実であると信ずべき相当の理由が認められるというべきである。
なお,原告は,当該記事は,原告が執行猶予付き有罪判決の執行猶予期間経過後,7年も経過した後に執筆されたものであるから,公共性,公益目的が認められない旨主張する。
しかしながら,原告は,上記事件後も,公職選挙に立候補したり,社会問題化したマルチまがい商法に関与し,その中で著名人であるCの弟であることを利用したなどと取りざたされていたほか,複数の民事訴訟の被告ともされたりしていた。そのため,有権者や一般消費者の知る権利の観点からは,当該記事が執筆された平成18年当時もなお,原告の犯罪行為を伝えることについては,事実の公共性及び公益目的が認められるというべきである。
したがって,当該記事には名誉棄損としての違法性は阻却される。
エ 原告とd会の関係について(本件記事7,本件人生年表2)
(ア) 原告は,原告の友人であるGが首謀して実行したパソコンに関するマルチ商法の主体となったf社の代表取締役として登記されていた。そして,f社は,d会の会員からの送金先とされた投資事業有限責任組合の無限責任組合員とされていた。そうすると,d会に出資しようとする者にとって,①当該投資事業有限責任組合の無限責任組合員の誰であるか,②G以外に何らかの社会的信用・知名度がある人物が無限責任組合員である法人(f社)の代表取締役に就任しているかといった事実は,d会への信用に大きく影響する事実である。
したがって,本件記事は,公共の利害に関するものであり,公益目的を有する。
また,原告がd会の広告塔になっていたこと,原告がd会のセミナーで挨拶し,自らがCの実弟であり,田中角栄に可愛がられていたと公言するなどしていたことは,週刊新潮や週刊文春において記載されており,これに対して原告が公に抗議した形跡も窺えないことからすると,当該記事の内容は真実である。
(イ) 仮に,当該記事の内容が一部真実ではなかったとしても,当該記載は,原告本人や被害者に対して取材をした結果記載された週刊新潮等の記事や,原告が自称政治評論家であった当時,原告と同じゴルフコンペに出場していた都内の会社経営者である某氏からの聴取に主として依拠したものであり,被告Y1において,当該記事内容を真実と信じたことについて,相当な理由があるというべきである。
(本件記事7の1)
当該記事のうち,「確信的常習犯であろう」,「詐欺すれすれのマルチのプロとでもいおうか」との記載は,いずれも著者の意見であって,証拠により真否を確定できる事実とは異にするので,名誉棄損は成立しない。
(本件記事7の3)
当該記事のうち,「「C」の看板にひかれて…少なくないはずだ」との記載は,本件記事7の1・2において摘示した事実に基づく意見であり,独立して名誉棄損を構成しない。
オ 原告と暴力団との関係について(本件記事1,同8の1・3・4・5,同9,同10,本件目次2,本件人物相関図1)
被告Y1は,平成17年9月ころ,取材源の一人であるH氏から,①原告の義理の兄はb組の右腕として組織全体で第2の地位にあったこと,②原告らが渋谷で経営していたキャッチバーの用心棒的な役割をb組が務めていたこと,③原告の兄はb組の組員で,原告もb組の事務所に出入りし,組員と親しく交際していたことなど,原告がb組に出入りしていたことを取材した。
さらに,被告Y1は,原告がb組に出入りしていた話を,暴力団の元組員であるI氏,占い師J氏のほか,週刊文春取材班のチーフ(元毎日新聞記者)からも聴取している。
加えて,本件書籍の出版前に,被告会社の専務取締役Kも,b組の元幹部に,上記事実を確認している。
したがって,当該記事は真実であり,また,被告Y1が当該記事の内容につき,真実であると信ずるにつき,相当の理由があるというべきである。
(本件記事8の3)
当該記載は,平成12年を最後に原告が公職選挙に立候補していないという事実を前提とした原告の内心を推測するものとして真実であるし,「詐欺師まがいの道をたどることになる」とするのは,論評的表現である。
そして,事実を前提とした論評については,論評の前提となる事実について,真実性または相当性が認められれば,論評が人身攻撃に及ぶなど,逸脱したものではない限り,名誉棄損としての違法性を欠くところ,当該記載は,①原告がd会の出資金詐欺事件で有罪判決を受けたGと親しく交際していたこと,②原告がf社のパソコン商法に関連してGとともに民事訴訟の被告となったこと,③原告が平成18年1月には,不起訴処分となったものの詐欺の容疑で逮捕・勾留されたことなどを前提事実とするものであり,前提事実は真実であり,かつ当該論評は,論評としての域を逸脱しないと認められるため,当該記載につき,名誉棄損は成立しない。
(本件記事8の4)
当該記載は,被告Y1が,原告やCのことをよく知り,暴力団の内情についても詳しい複数の関係者等に取材した結果である。
被告Y1は,原告の実姉がb組の右腕であったLと婚姻しており,また,原告の父がEの面倒をみていたという縁もあって,Eと親しかったb組関係者と原告が交際していたことは合理的である旨,取材源から説明を受けた。
そのため,被告Y1は,上記説明内容を真実であると信じたものであって,それには相当の理由があるといべきである。
(本件記事8の5)
当該記載は,原告の恐喝の前科やマルチまがい商法への関与・交友関係等を含めた原告の生活態度全般に係る事実関係を前提とし,これに基づく論評として「ヤクザ者」と記載したものである。そして,かかる論評の前提となる事実が真実であり,かつ論評も相当な域を逸脱しないものであるから,当該記事には,名誉棄損は成立しない。
また,被告Y1は,占い師のJ氏から,当該記事につき,聴取した。
カ 原告が顧問料50万円を受領していたことについて(本件記事7の5,同8の2・6)
原告が恐喝罪で有罪判決を受けた後,姉であるCからどのような経済的支援を受け,いつどのような理由でそれが打ち切られたかは,①5回公職選挙に立候補し,②著名人の姉を持つことを利用して(あるいは利用されて),詐欺的商法に関与した疑惑を持たれているなどの点で,公的な関心の対象となるし,また,③著名な占い師であるCが自ら公に明らかにしている家族に対する経済的支援に係る事実という意味でも,公的な関心の対象となる事柄である。
また,当該記事は,フライデーや週刊文春等の複数の雑誌・記事等で報じられており,原告本人が公の場で,当該事実を訂正した形跡も窺えない上,原告自身,少なくともCから月30万円の顧問料の支払を受けていたことを認めている。
したがって,当該記事は,真実であるというべきである。また,仮に真実ではなかったとしても,被告Y1において当該事実を真実と信じたことにつき,相当の理由がある。
キ 原告が拳銃を撃ったことについて(本件記事9の1・4,本件目次3)
原告が知人と共に海岸で発砲したとされる拳銃をフランスから密輸入されたとされる人物は,銃刀法違反の罪で実刑判決を受けている。
また,被告Y1は,当該発砲事件の関係者複数を直接知るH氏から,原告はa党に自分で売り込みに行き事務局長となったこと,原告と某有名芸能人が船に乗って茅ヶ崎沖に行き,船上で拳銃を発射したことがあったこと,拳銃使用を目撃した人が警察に通報し,関係者は警察で事情聴取されたはずであること,政党の事務局長である原告は,逃げ回るばかりで責任をとらなかったこと,この発砲事件がa党の解散原因の一つとなったことなどを聴取した。
したがって,当該記事の内容は真実であり,また,被告Y1が,当該事実を真実と信じたことにつき,相当の理由があるというべきである。
ク 原告とe社との関係について(本件記事10)
被告Y1は,平成17年11月から12月にかけて,H氏から,e社という詐欺団体の事件について捜査が行われているが,その中で,当該団体の幹部として原告の名前が挙がっていることを聞いた。
そして,H氏は,被告Y1との面談中,某交流団体の幹部であるM氏に電話をして,当該事実の確認を求めたところ,さらにM氏は,大阪府警の捜査関係者に電話をし,当該事実が間違いないとの返答をした。
また,被告Y1は,H氏からの紹介により,某都道府県警関係者N氏から,同様の事実を聴取した。
したがって,当該記載は真実であり,仮に真実ではなかったとしても,被告Y1において,当該事実が真実であると信じたことについて相当の理由がある。
(本件記事10の4)
当該記載は,一般読者に対し,原告が詐欺的商法に繰り返し関与した疑惑を持たれているという側面を伝える目的に出た論評的表現である。
そして,当該論評の前提事実は,原告が,Gという出資金詐欺で実刑判決を受けた人物が主導したf社のパソコン商法や,d会の霊芝商法といった新聞雑誌等で報道された大がかりな詐欺的商法への関与が取りざたされていること,原告が,e社のような大規模な出資金詐欺事件でも,捜査の中で関係者として名前が挙がっていること,原告が平成18年1月に茨城県警に詐欺容疑で逮捕されたことなどであり,これらの前提事実は,いずれも真実である。
加えて,当該記載は,これらの前提事実に基づく論評として,一般読者の知る権利に応えるための表現として相当と認められる域を逸脱しないものである。
よって,当該記載について名誉棄損は成立しない。
(本件記事10の5)
当該記載のうち,「暴力団出身で」との記載は,既に述べたとおり,被告Y1の取材に基づくとおり真実であり,仮に真実ではなかったとしても,真実であると信じたことにつき,相当な理由が存在したというべきである。
また,当該記載のうち,「いまでは詐欺行為で金を稼いでいる」という記載は,一般読者にとっては,原告のf社のパソコン商法への関与も含め,首謀者であるGらの詐欺的商法につき,原告が被害者の信用を増すような形で関与しているという事実を前提とするものであるところ,これらの事実が真実であることについては,前記のとおりである。
また,当該記事のうち,「姉の知名度を利用して,今後もXは詐欺すれすれの商売を繰り返していくのだろうか」との記載は,原告が過去に詐欺すれすれの商法に関与したという事実を前提として,著者の意見をのべたものであるところ,当該前提事実が真実であることも,既に述べたとおりである上,論評としても相当な域を逸脱してはいない。
よって,当該記事につき,名誉棄損は成立しない。
ケ 皇室関係の品物に関する詐欺について(本件記事11)
被告Y1は,真言宗総本山醍醐寺関係者と面談の上,同人から,原告とCが皇室関係と称する品物を15万円で買い取って欲しいと来訪したことがある旨の事実を聴取している。
当該醍醐寺関係者において,Cや原告につき,虚偽の事実を述べる動機も存在しないので,少なくとも被告Y1が当該事実を真実と信じたことについて相当性が認められる。
(原告の主張)
ア 本件各記事は,以下に述べるとおり,公共の利害に関する事実ではなく,また,専ら公益を図る目的で執筆されたものともいえないことに加え,記載事実の重要な部分が真実ではなく,被告らにおいて真実であると信じたことに相当の理由があるともいえないため,本件各記事の執筆及び掲載につき違法性が阻却されることはない。
なお,具体的な原告の反論は,後記イ以下記載のとおりである。
(ア) 公共の利害に関する事実ではないこと
被告らは,原告が過去にCの弟であることを利用して,衆議院議員選挙に立候補するなどの政治活動あるいは商業活動を行ったり,f社の幹部として消費者から民事訴訟を提起されていたこと,あるいは,詐欺容疑で逮捕されたことなどを理由に,本件各記事には公共性が認められると主張する。
しかしながら,そもそも,原告は,衆議院議員選挙活動や,f社に関する活動において,Cの実弟であることを宣伝した事実はない。本件書籍が発刊された平成18年当時,原告が選挙活動中や政治家として活動中であるならばともかく,原告が最後に衆議院議員選挙に出馬したのは平成2年であるから,約20年近く前に政治活動を行った事実が,本件書籍発刊時点での公共性を裏付けるものとは言えない。
さらに,本件書籍が発刊されるよりも6年も前に,f社の登記簿上の代表者であったことについて,訴訟提起されたことが,本件書籍発刊時点での公共性を裏付けるものとは言えない。
加えて,原告がd会の被害者から民事訴訟を提起されたことについても,当該訴訟は原告勝訴で終わった上,世間の注目を集めていた事件ではなく,また,茨城県内において詐欺事件で逮捕されたことについても,原告は嫌疑不十分で不起訴処分となっていることからすれば,公共性は認められない。
(イ) 出版の目的が専ら公益を図るものではないこと
原告は,本件各記事が,公的関心の対象である原告及びCの双方について,真実を伝え,公衆が原告本人及びCの実像を理解する手助けとなるものであるから,公益目的がある旨主張する。
たしかに,数多くのテレビ番組や雑誌に出演・登場するCについては,視聴者や読者に対し,強い影響力を有するものであって,その実像を明らかにすることは,公益目的があるものといいうる。
しかしながら,一私人にすぎない原告は,Cの有するような強い影響力を持つ者ではなく,Cの弟といった点からの下世話な好奇心はあるとしても,原告自身への公的関心など,まったく認められない。
したがって,原告に関する限りにおいて,本件各記事に公益目的は認められない。
(ウ) 本件各記事は真実ではなく,また被告らにおいて真実であると信じるにつき相当の理由もないこと
本件各記事は,いずれも真実ではなく,被告Y1は杜撰な取材のもとに本件各記事を執筆したものであり,被告らにおいて,真実と信ずべき相当な理由はない。
イ 原告が詐欺罪で逮捕されたことについて(本件記事4,本件目次1,本件人物相関図3,本件人生年表3)
被告らが,本件書籍を出版したのは,不起訴処分の2,3か月後である。そのため,逮捕や釈放直後にニュース記事として報じる場合であればともかく,本件のように,不起訴処分が決まった後で,被疑事実を詳細に記載し,逮捕及び不起訴処分の事実を報じることには,公共性や公益目的が認められないというべきである。
この点,被告らは,書籍の出版の態様を考慮して,不起訴処分の2,3か月後に当該事実を記載することは不当ではない旨主張する。しかしながら,書籍の出版に当たっては,当該記載を削除する措置を講じることも十分可能である上,書籍は継続的に販売されるため,かえって被害者の権利が侵害され続けるという特殊性が存在する。
したがって,被告らの反論には,理由がないというべきである。
ウ 原告が恐喝罪で有罪判決を受けたことについて(本件記事2,同6,本件人生年表1)
当該記事は,平成6年に検挙された原告の恐喝被告事件を取り上げたものであるところ,少なくとも執行猶予の期間である5年が満了してから7年をすぎ,事件から12年も経過した時点で,これを取り上げ広く報じることには,何らの公共性や公益目的も認められない。
エ 原告とd会の関係について(本件記事7,本件人生年表2)
そもそも,原告はd会のセミナー会場で挨拶をしたこともなく,原告がd会と関わりを持った事実は皆無である。
実際にも,被告らが主張する週刊新潮の記事に対しては,原告は損害賠償請求の訴えを提起し,原告らの勝訴的な和解によって終了している。また,被告らが主張する週刊文春の記事に対しては,現在訴訟提起を検討中である。
さらに,原告は,d会の会員であった4名から,Gらと共に損害賠償請求の訴えを提起されたが,原告がGの不法行為に加担したことを認めるに足りる証拠はないとして,原告に対する請求は棄却されている。
したがって,本件各記事が真実であるとはいえない。
なお,被告らは,被告Y1が当該事実を真実であると信じたことにつき,相当の理由があると述べるが,被告らの記事の根拠は,単なる雑誌記事等に由来するものであり,その取材方法は極めて杜撰である。現に,被告Y1は,本件書籍を執筆するに当たり,原告に対し,一度も取材に来てはいない。
したがって,被告Y1が,本件各記事の内容を真実と信じたことにつき,相当の理由などない。
(本件記事7の1)
当該記事は,著者の意見ではあるが,その意見は「原告がd会の広告塔を務めていた」という事実を前提としている。
しかしながら,このような前提事実自体存在しないのであるから,当該意見も当然に名誉棄損が成立するというべきである。
オ 原告と暴力団の関係について(本件記事1,同8の1・3・4・5,同9,同10,本件目次2,本件人物相関図1)
そもそも原告は,b組を含め,何らかの暴力団に属していたという事実はないため,当該記事は真実ではない。
(本件記事8の3)
当該記事は,原告が詐欺的行為を常習的に行い,生活の糧としているという事実を前提としているが,そもそも,被告らが縷々主張する事実のうち,真実であるのは,原告がf社のパソコン商法に関連してGとともに,民事訴訟の被告となった点のみである。
したがって,その前提事実に誤りがある以上,名誉棄損としての違法性が阻却されることはない。
(本件記事8の4)
被告らは,原告の父がEの面倒をみていた旨主張するが,原告の父が死亡した年の1年前に出生したEの面倒を原告の父がみることなどありえないため,当該記事は真実ではない。
カ 原告が顧問料50万円を受領していたことについて(本件記事7の5,同8の2・6)
当該記事は,真実ではないし,週刊誌を拠り所とするような取材方法が極めて杜撰であることは言うまでもなく,被告Y1において,当該記事が真実であると信じたことにつき,相当な理由はない。
カ 原告が拳銃を撃ったことについて(本件記事9の1・4,本件目次3)
当該記事が提示するような事実は存在しない。
キ 原告とe社との関係について(本件記事10)
そもそも,原告は,e社には何ら関与してはいない。
(本件記事10の4)
当該記事は真実ではない。
ク 皇室関係の品物に関する詐欺について(本件記事11)
実際に原告が「皇室関係の品物」を売ろうとした事実はない。
(3)  本件各記事によるプライバシー侵害の有無及び違法性阻却事由の有無(争点3)
(原告の主張)
ア 原告が恐喝罪で有罪判決を受けたことについて(本件記事2,同6,本件人生年表1)
原告の恐喝容疑の前科や,その弁護費用にどの程度の費用がかかったかということは,個人のプライバシーに属するセンシティブ情報であるから,プライバシーを侵害する。
被告は,当該記載は,既に他の雑誌等で報じられているから非公知性がないとして,プライバシー侵害に当たらない旨主張する。
しかしながら,まず,他者が報じているからプライバシー侵害はないという理屈は成り立たない。特に,被告の指摘する週刊文春で報じられている記事も違法なのであるから,そのような違法な記事は,プライバシー侵害の公知性の基礎事実にはなり得ないというべきである。
また,当該事件の当時でさえ,原告が恐喝罪で有罪判決を受けた事実は,広く報道されていたわけではなく,公知の事実とは言えなかった。それにもかかわらず,当該事件に関する判決を受けてから12年,執行猶予期間を満了して7年も経った時点において,改めて当該事実を摘示することは,時の経過によって非公知となった事実を敢えて報道するものであり,プライバシー侵害に当たることは明らかである。
イ 原告が顧問料50万円を受領していたことについて(本件記事7の5,同8の2・6)
当該記事は,原告がCからいついくらの金員を受け取っていたかという事実を摘示するものであり,本来原告のプライバシーに関する事実を摘示するものであるため,当該記事は,原告のプライバシーを侵害する。
ウ 原告の恐喝容疑及び詐欺容疑による逮捕について(本件記事3,同5,本件人物相関図3,本件人生年表3)
これらの記述は,原告の逮捕歴を報じるものであるところ,逮捕歴は個人のプライバシーに属するセンシティブ情報であり,これらの記載が原告のプライバシーを侵害するものである。
(被告らの主張)
ア 原告が恐喝罪で有罪判決を受けたことについて(本件記事2,同6,本件人生年表1)
(ア) プライバシー侵害の成立には,対象事実が,①私生活上の事実,あるいは私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事柄であること(私事性)のほか,②一般人に未だ知られていない事柄であること(非公知性)が必要とされているところ,原告の恐喝前科等は,本件書籍の刊行日の約2か月ないし3か月前に頒布された週刊文春平成18年2月9日号をはじめ,f社のパソコン商法問題や,平成18年1月の詐欺容疑での逮捕の際を含め,これまで原告がマスコミ等を騒がせる事件を起こした都度,報道されてきており,同年4月当時においても公知の事実であったから,②の非公知性の要件を満たさず,プライバシー侵害は成立しない。
(イ) また,当該記事につき,プライバシー侵害の成否が問題となるとしても,当該記事の執筆は,本件書籍出版当時,3つの政治団体を通じて政治活動を行い,数百名の会員から政治活動資金を集めるなどしていた原告に係る本件書籍記載の事実は,国民の正当な関心の対象であって,本件書籍の表現は,そのような正当な関心事について原告の実像を伝えようとする公益目的に出たものであることからすると,公共の利害に係る事実につき,専ら公益を図る目的で行われたものと認められる上,当該事実を公表しないことによって,守られる法的利益と公表する理由とを比較衡量した場合,前者が後者に優越するものとは認められないため,当該記事にはプライバシー侵害としての違法性は阻却されるというべきである。
イ 原告が顧問料50万円を受領していたことについて(本件記事7の5,同8の2,6)
(ア) 当該事実は,複数の雑誌等で広く報じられた事実であり,非公知性が認められないため,当該記載は,原告のプライバシーを侵害するものではない。
(イ) また,前記(2)(被告らの主張)カで記載したとおり,本件各記事は,公共の利害に係る事実につき,専ら公益を図る目的で行われたものであり,本件各記事を公表しないことによって守られる法的利益と,公表する理由とを比較衡量した場合,前者が後者に優越するとは認められないため,プライバシー侵害としての違法性も阻却される。
ウ 原告の恐喝容疑及び詐欺容疑による逮捕について(本件記事3,同5,本件人物相関図3,本件人生年表3)
前記アで主張したとおり。
(4)  損害の有無及びその額並びに謝罪広告及び記事削除の必要性の有無(争点4)
(原告の主張)
ア 原告に生じた損害
被告Y1が本件書籍を執筆し,被告ぶんか社がこれを発行・販売したことにより,原告は,名誉が毀損されるとともにプライバシーを侵害され,多大な精神的苦痛を被った。これを金銭に評価すると,損害額は2000万円を下らない。
そして,これと相当因果関係の範囲内にある弁護士費用としては,上記損害額の1割に相当する200万円とするのが相当である。
イ 謝罪広告の必要性
本件違法行為の内容に照らすと,金銭賠償に加えて,名誉回復のための措置として,別紙1記載の謝罪広告を掲載する必要がある。
ウ 記事削除の必要性
人格的価値は極めて重要な保護利益であって,物権と同様の排他性を有しており,人格権侵害が認められる場合には,加害者に対し,人格権の排他性に基づいて,現に行われている侵害行為を排除し,又は将来生ずべき侵害を予防するため,侵害行為の差止めを求めることができると解すべきところ,本件各記事によって原告の名誉やプライバシーが侵害され続けているため,これを差し止める必要性は極めて高い。よって,原告にとって,未販売及び今後重刷する本件書籍から,別紙2記載の文言を削除させる必要がある。
エ よって,原告は,被告らに対し,不法行為に基づく損害の賠償として,2200万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成18年5月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払うよう求めるとともに,名誉毀損における名誉回復のための適当な処分としての謝罪広告を求め,さらに,人格権に基づき,侵害行為の差止処分としての記事の削除を求める。
(被告らの主張)
否認ないし争う。
(被告ぶんか社の主張)
原告が平成18年1月27日に詐欺容疑で逮捕されたことについては,当日ないし翌日に,各種日刊紙(毎日,読売,朝日,産経,共同通信,茨城新聞)で全国的に報道されており,その後3か月足らずで同様の記載をして出版したものあること,恐喝有罪判決,詐欺逮捕,f社提訴などの前科・逮捕歴等は,種々のメディアに既に登場しており,本件書籍が初めて公開した事実ではないことからすれば,原告の社会的評価は,本件書籍の出版によりほとんど低下していないというべきであるから,損害額は限定されるべきである。
第3  争点に対する判断
1  本件各記事による名誉毀損の有無(争点1)について
原告は,本件各記事によって,原告の名誉が毀損された旨主張するところ,ある表現内容が,個人の名誉を毀損するのか否か,すなわち,社会的評価を低下させるのか否かについては,一般の読者の普通の注意と読み方を基準として解釈された内容に従って判断されるべきであるから,この観点から,本件各記事が原告の社会的地位を低下させることになるか否かについて個別に検討することとする。
(1)  原告が詐欺罪で逮捕されたことについて(本件記事4の1・2,本件目次1,本件人物相関図3,本件人生年表3)
まず,本件記事4の1・2は,見出しとこれに引き続く一連の文章であることから,両者が一体となって原告が詐欺容疑で逮捕されたこと,及びその後不起訴処分となったことを摘示するものであり,結果として不起訴処分となったとはいえ,同記事によれば,原告は融資制度を悪用して信用金庫から約3000万円を詐取するという詐欺犯罪に関与したことにより強制捜査の対象となったとの印象を与えるものであるから,原告の社会的評価を低下させるものであることは明らかである。
次に,本件目次,本件人物相関図及び本件人生年表は,いずれも見出しに類するものあるいは記事の理解を補助するためのものと解され,それ自体が独立して名誉棄損を構成するに足る具体的な事実を摘示したものということはできない場合が多いと解されるが,一般読者が書籍を読む場合には,書籍における目次や人物相関図,人生年表などの図表についても,記事本文と共に読むのが通常であると解されること,後記2(1)エで認定する本件書籍における本件人物相関図及び本件人生年表の配置されている位置,これらの記載には具体性があることを考慮すると,これらの記載は,本文の記載とあいまって,一般読者に,原告に具体的犯罪についての逮捕歴があることを印象づけるものと言いうるから,本件においては,全体として原告の社会的評価を低下させるものと認めるのが相当である。
(2)  原告が恐喝罪で有罪判決を受けたことについて(本件記事2,同6,本件人生年表1)
これらの記載は,原告が恐喝罪で逮捕,起訴されて執行猶予付きの有罪判決が下された事実を摘示するものであるから,原告の社会的評価を低下させるものであることは明らかである。
(3)  原告とd会の関係について(本件記事7の1ないし4,本件人生年表2)
これらの記載は,原告が,焼却炉事業への投資勧誘や霊芝栽培セットの販売といったマルチまがい商法を行っているd会の広告塔となって,そのセミナーにおいて講演を行った事実を摘示するものであり,全体として原告が繰り返し詐欺的商法に関与していたとの印象を与えるものであるから,原告の社会的評価を低下させるものということができる。
被告らは,本件記事7の4について,Cの心情を推測する記載として,事実摘示には該当せず,独立して名誉毀損を構成するものではない旨主張するが,同記事においては,本件記事7の1ないし3に引き続いて「詐欺」という言葉が使用されており,一般の読者は原告とd会の関係に関する一連の記事として本件記事7の4を読み,詐欺を繰り返しているとの印象をもつものと解されるから,事実を摘示するものということができ,被告らの主張は採用できない。
また,被告らは,本件人生年表2の記載は,見出しに類するものであり,それ自体独立して名誉毀損が成立するものではないと主張するが,この主張については,前記(1)で説示したとおりである。
なお,本件記事5については,見出しであって,それ自体としては具体的な犯罪事実の摘示を含むものではないが,これに引き続く本件記事6と本件記事7の1ないし4の記載と相まって,全体として原告の社会的地位を低下させるものというべきである。
(4)  原告と暴力団との関係について(本件記事1,同8の1・3・4・5,同9の2・3,同10の5,本件目次2,本件人物相関図1)
本件記事1,同8の1・3・4・5,同9の2・3,及び同10の5は,原告が過去に暴力団であるb組と関わりがあったとの事実を摘示するものであり,原告が暴力団と関係を有していた人物であるとの印象を与えるものであるから,原告の社会的名誉を低下させることになる。
被告らは,「ヤクザ者」とは,生活態度等の評価として用いられるのが通常であるから,一般人は,当該記載を読んで,原告がb組の組員であったと通常理解するものではないなどと主張するが,一般読者がこれらの記事を読む場合には,まず,本件書籍138頁で本件記事1を見ることにより,原告がb組に入ったとされていることから,同189頁以下の本件記事8において「ヤクザ者」であったとの記載を読むことにより,当該記載を原告が暴力団との関わりがあるものという印象を受けるものというべきであり,そのこと自体で社会的評価は低下するものと考えられるから,被告らの主張には理由がない。
なお,被告らは,本件目次2,本件人物相関図1は本件人生年表等の見出しないしそれに類するものであり,それ自体独立して名誉毀損が成立するものではないと主張するが,この主張については,前記(1)で説示したとおりである。
(5)  原告が顧問料50万円を受領していたことについて(本件記事7の5,同8の2・6)
これらの記事は,Cが原告に月々50万円の顧問料を支払っていた事実を摘示するものであるが,顧問料として50万円が支払われていた事実をもって原告の社会的評価が低下するとは認めがたいというべきである。
この点について,原告は,いわゆる「ただ飯」を食わしてもらっているかのような印象を与えるものであり,原告の社会的評価を低下させるものであると主張するが,上記記事が仮にそのような印象を与えるものであったとしても,そのことをもって直ちに原告の社会的評価を低下させるものであるとはいえない。すなわち,原告が実姉であるCから顧問料名目の生活資金を得ていたこと自体は,特に社会的な信頼を損ねるとか,非難に値する事実とは言えない上,これらの記事の前後の記載を全体としてみると,この部分は,Cが原告に選挙への出馬を断念させたことに対する批判として書かれていると解することができるのであり,原告に対する名誉毀損に当たるということはできない。
(6)  原告が拳銃を撃ったことについて(本件記事9の1・4・5,本件目次3)
これらの記事は,原告が海に向かって拳銃を撃っていたことを目撃され,それがきっかけとなって原告が事務局長を務めていたa党が警察の捜査の対象となったことを摘示するものであって,原告が銃刀法に違反するような行動を行い,それがa党解散の契機となったとの印象を与えるものであるから,原告の社会的評価を低下させるものということができる。
なお,被告らは,本件記事9の1及び本件目次3の記載は,見出しであり,それ自体独立して名誉毀損が成立するものではないと主張するが,この主張については前記(1)で説示したとおりである。
(7)  原告とe社との関係について(本件記事10の1ないし4)
これらの記事は,原告が詐欺まがいの投資会社とされるe社の幹部との関わりがあり,捜査対象となっている疑いがあるとの事実を摘示するものであって,原告が詐欺的商法との関わりを有しているとの印象を与えるものであるから,原告の社会的評価を低下させるものである。
なお,被告らは,本件記事10の1の記載は,見出しであり,それ自体独立して名誉毀損が成立するものではないと主張するが,本件記事2ないし4と一体として原告の名誉を毀損するものと認められる。
(8)  皇室関係の品物に関する詐欺について(本件記事11)
この記事は,原告がCとともに詐欺を持ちかけたとの事実を摘示するものであって,原告が詐欺的商法との関わりを有しているとの印象を与えるものであるから,原告の社会的評価を低下させるものである。
(9)  本件記事3について
本件記事3は,本件書籍中の第5章の扉として,該当ページ1面を用いて,章のタイトル「実弟・Xをめぐる××××の黒い噂」の記載の下に小文字の短いコメントを付したものである。上記タイトルのみでは具体性がないものの,小文字の短いコメントにおいて,原告が「b組構成員で,6度選挙に出馬するも全敗,いまも恐喝,詐欺を繰り返す」という事実を摘示し,これとタイトルが相まって原告の不正に関する数々の噂があるとの印象を与え,社会的評価を低下させるものということができる。よって,名誉毀損にあたる。
(10)  よって,本件記事7の5,同8の2・6を除くその余の本件各記事は,原告の社会的評価を低下させるものであることが認められる。
2  本件各記事(以下においては,本件記事7の5及び同8の2・6を除いたものを本件各記事という。)の執筆ないし掲載についての違法性阻却事由の有無(争点2)について
本件各記事が原告の社会的評価を低下させるものであっても,当該行為が公共の利害に関する事実に係り,専ら公益を図る目的に出た場合において,摘示された事実が真実であることが証明されたとき,又は真実の証明がなくても真実と信ずるにつき相当の理由があるときには,違法性が阻却されるものと解されるから,以下これらの点について順次検討する。
(1)  まず,本件各記事の摘示する事実が公共の利害に関する事実に該当するか否か,本件各記事の目的が専ら公益を図ることにあったか否かについて検討する。
ア この点について,被告は,原告は著名な占い師であるCの実弟であることを利用し,公職に複数回立候補するとともに,消費者から民事訴訟を提起されるような会社の代表取締役に就任している者で,過去に犯罪歴を有しており,社会的地位及び社会的影響力も強く,公的な関心の程度もより高いといえるため,本件各記事は公共性を有する,そして,本件各記事の執筆は,専ら公益を図る目的に出たものであるなどと主張する。
イ 事実認定
前記前提となる事実等,証拠(甲2,3,5,6,27,乙5ないし16,42,45,51,52,53の1)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実を認めることができ,同認定を左右するに足る的確な証拠はない。
(ア) 原告(昭和○年○月○日生)は,大学卒業後,主に飲食店経営に携わっており,その後,経営コンサルタントなどを経て,現在は画家等として活動している(甲6,27)。
(イ) 原告は,昭和51年,同54年,同61年及び平成2年の衆議院議員選挙にそれぞれ立候補し,昭和58年には杉並区長選挙にも立候補したが,いずれも落選した(乙53の1,弁論の全趣旨)。
(ウ) 原告は,平成4年にc新聞社社長に就任したが,平成6年に千葉県小見川町議会議長らに対する恐喝の容疑で逮捕(以下「本件逮捕1」という。)及び起訴され,懲役3年,執行猶予期間5年とする有罪判決の言渡しを受けた(原告本人)。本件逮捕1は,同年6月11日の日刊スポーツ紙により報道された(乙16)。
(エ) 平成13年9月14日の官報には,政治資金規正法の規定に基づいて提出された政治団体の収支に関する平成12年分の報告書の要旨として,以下のとおりの記載が公表されている(乙51)。
ⅰ 新経済懇話会(X)
資金管理団体の届出をした者の氏名 X
資金管理団体の届出に係る公職の種類 参議院議員
本年収入の内訳 個人の党費・会費(137人) 443万円
ⅱ 東京都中小企業育成政治連盟
寄附の内訳 (個人分) X 100万円
ⅲ X後援会
個人の党費・会費(75人) 75万円
寄付の内訳 (個人分) X 55万円
(オ) 平成14年9月13日の官報には,政治資金規正法の規定に基づいて提出された政治団体の収支に関する平成13年分の報告書の要旨として,以下のとおりの記載が公表されている(乙52)。
ⅰ 新経済懇話会(X)
資金管理団体の届出をした者の氏名 X
資金管理団体の届出に係る公職の種類 参議院議員
本年収入の内訳 個人の党費・会費(124人) 356万円
ⅱ 東京都中小企業育成政治連盟
寄附の内訳 (個人分) X 100万円
ⅲ X後援会
個人の党費・会費(82人) 82万円
寄付の内訳 (個人分) X 50万円
(カ) 原告は,平成11年にf社の会長に就任したところ(甲5),平成13年に,f社会員から,g株式会社ほかと共に,パソコンの貸与及びこれに関連する事業についての損害賠償請求訴訟を提起され(福岡地方裁判所平成13年(ワ)第906号),平成17年6月,その控訴審である福岡高等裁判所から約76万円の限度で損害賠償義務があるとしてその連帯支払を命じる旨の判決の言渡しを受けた(福岡高等裁判所平成13年(ネ)第651号,乙45)。
(キ) また,原告は,平成16年,d会の会員から,原告らによる焼却炉の製造・販売事業に関する架空の投資話に騙されて金員を詐取されたとして,損害賠償請求訴訟を提訴された(当庁平成16年(ワ)第4069号)が,原告が不法行為に加担したことは認められないとして,原告に対する請求は棄却された(甲3)。
(ク) 原告は,平成16年ころから絵を描き始めて画家を主たる生業としているとするが,政治・思想に関する講演活動や経営コンサルタントと称して活動を行っており,また,平成17年ころ,衆議院議員選挙に立候補するために事務所開設の準備をしたことがあった(甲2,27,乙42,原告本人)。
(ケ) 原告は,平成18年1月27日,実体のない会社に対する融資という不正な方法で,信用金庫から約3000万円を詐取したとして詐欺容疑で逮捕された(以下「本件逮捕2」という。)が,嫌疑不十分により不起訴処分がなされた。
(コ) 本件逮捕2は,その翌日に発行された日刊スポーツ,産経新聞等の日刊新聞やその直後に発行された週刊文春,週刊フライデー,サンデー毎日などの週刊誌でも報道されており,その後の不起訴に至る経緯も追って報道された(乙5ないし15)。なお,これらの記事のうち,週刊文春,週刊フライデー及び産経新聞の記事には,原告がCの弟であり,以前恐喝容疑で逮捕され,有罪判決を受けた旨が記載されていた(乙5,9,15)。
ウ 原告の社会的地位等について
以上の事実からすると,原告は,過去に衆議院議員選挙及び杉並区長選挙に立候補したことがあるものの,直近の立候補は,平成2年のことであり,その後に選挙に立候補をした事実が窺えないことからすれば,原告が公選による公務員の候補者又は候補者になることを予定している者という意味において社会一般の正当な関心の対象となる公的立場にある人物ということはできない。
この点について,前記2(1)の(エ)(オ)で認定したところによれば,原告は,平成13年,14年ころ,新経済懇話会,東京都中小企業育成政治連盟,X後援会を通じて資金を集めていたことが窺え,かつ,平成17年ころに衆議院議員選挙に出馬するための事務所の準備をしていたことが窺えるものの,これらの事実が,本件書籍の出版時点で原告が具体的な政治活動を行っていたと認めるべき的確な根拠事実となるとは言い難く,他に原告がこの当時政治活動を行っていたと認めるべき証拠はない。
また,被告らが主張するように,原告がd会の活動等をする際にCの弟であることを利用していたとしても,そのこと自体から,原告が何らかの意味で社会的地位にあるとか,社会的な影響力を有していると認めることはできない。
さらに,原告は,現在画家を主たる生業とし,その傍ら経営コンサルタントを行っている旨を述べるものの,そのことから原告が何らかの意味で社会的地位にあるとか,社会的な影響力を有していると認めることもできない。
そして,その他に原告が社会的に影響力のある地位に就いていたことを認めるに足りる証拠はない。
エ 本件各記事の目的,性格等について
本件各記事が記載された本件書籍の表題は,「Cの黒い真実」であるところ,その内容の構成は,「目次」,「Cをめぐる人物相関図」,「Cの人生年表」に引き続いて,「序章 こんな占い信じられない!Cよ,どこへゆく!」「第1章 C,その生い立ちからO問題まで」「第2章 六占星術は他人のパクリ?インチキ占いで大儲け」「第3章 ビッグネームのP氏をダマして結婚」「第4章 Cのまわりにはヤクザがいっぱい!(その中の一節として「兄弟はヤクザ入り,父親は聞きかじりの占いで生計を立てる」との節がある。)」「第5章 実弟・Xをめぐる××××の黒い噂」「終章 C流 お金のダマしとりかた」,「あとがき」となっていて,本件記事1ないし10が記載された第5章は,本件書籍全222頁中,23頁と約1割を占めている(甲1,28)。
上記のような本件書籍の構成やその内容及び本件書籍全体における本件各記事の位置づけに照らせば,本件書籍は,著名な占い師であるCに関する情報提供及び人物評を行うことをその中心的な内容としており,本件各記事は,原告自身の経歴や行動の問題点を指摘する部分が多々あるものの,全体としてみると,あくまでCに関する情報提供及び人物評を行う一環として,Cの弟である原告に言及したものであり,原告の人物や経歴,活動履歴等についての問題提起や責任追及等を直接の目的としたものではないというべきである。
オ 本件各記事の記載内容の社会的意義等について
加えて,前記2(1)アの(ウ)で認定したところによれば,原告が恐喝罪で有罪判決の言渡しを受けたのは平成6年であり,本件書籍が出版されるまでに約12年間が経過していること,原告に対する詐欺容疑での本件逮捕2については嫌疑不十分で不起訴処分になったこと,平成13年と平成16年に原告がd会の会員から損害賠償請求の訴えを提起された経緯はあるものの,原告とd会との関係がそれ以上に社会的に問題となった事実は窺えず,訴訟提起から数年が経過していることをも考慮すると,原告とd会との関係が多数一般の利害に関する事実とまでいえるか疑問が残ること,本件記事1及び8については,原告が過去に暴力団員であったことを抽象的に摘示するものにとどまるものであること,本件記事10については,何ら具体的な事実及び根拠を示すことなく原告がe社の幹部との関わりがあり,捜査対象となっている疑惑を摘示するにすぎないことなどからすれば,本件各記事の摘示する事実が本件書籍の発売された時点において多数一般の利害に関するものであり,それを摘示することが公共の利益に沿うものであるとまでは認めがたいというべきである。
カ 以上に認定,説示したところを総合的に考慮すれば,本件各記事が公共の利害に関する事実を摘示するものであるということはできないし,本件各記事の掲載目的が専ら公益を図る目的に出たものであるということもできない。
(2)  以上に認定,説示したところによれば,被告らは,本件各記事により原告の名誉を毀損したことにつき,真実性及び相当性の抗弁について判断するまでもなく,違法性阻却が認められないこととなるから,原告に対する不法行為責任を負うことになる。
3  本件各記事によるプライバシー権侵害の有無及びその違法性阻却事由の有無(争点3)について
(1)  原告が恐喝罪で有罪判決を受けたことについて(本件記事2,同6,本件人生年表1)
ア 原告は,原告に恐喝罪の前科があることを摘示することが原告のプライバシーを侵害すると主張するところ,前科又は逮捕歴をみだりに公表されないことは,プライバシー権の一側面として法的保護に値する利益というべきである。
そして,ある者の前科又は逮捕歴に関わる事実を実名を使用して著作物で公表したことが不法行為を構成するか否かは,その者のその後の生活状況,事件それ自体の歴史的又は社会的な意義,その当事者の重要性,その者の社会的活動及びその影響力について,その著作物の目的,性格等に照らした実名使用の意義及び必要性をも併せて判断すべきもので,その結果,前科又は逮捕歴に関わる事実を公表されない法的利益が優越するとされる場合には,その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができると解される(最高裁平成6年2月8日第三小法廷判決・民集48巻2号149頁参照)。
イ これを本件にあてはめると,前記2(1)ウで説示したとおり,原告が,本件書籍の出版当時,何らかの意味で社会的地位にあったとか,社会的な影響力を有していたとは認められず,当該刑事事件は,平成6年当時,新聞社社長がその地位を利用して恐喝した事件として,その逮捕時に報道され,本件逮捕2の報道時にも新聞紙上等で報道されていたことが認められるものの,これが歴史的又は社会的意義のある事件であるとまでいうことはできないし,他方,前記2(1)エで説示したとおり,同記事は,あくまでCに関する情報提供及び人物評を行う一環として,Cの弟である原告に言及したものであり,原告の人物や経歴,活動履歴等についての問題提起や責任追及等を直接の目的としたものではないことからすると,実名使用による前科公表の意義及び必要性は認めがたいというべきであって,以上の事実を総合考慮すると,前科に関わる事実を公表されない法的利益がこれを公表することによる利益に優越するということができる。
したがって,上記事実の摘示は,原告のプライバシーを侵害するものであると認められる。
なお,被告らは,上記事実が既に事実として報道され,公衆に知られていたことからすると,プライバシー侵害には当たらないと主張するが,上記事実が公知の事実であるとは到底認められないことに加え,上記事実が過去に他の報道機関により報道されたことがあるからといって当然にプライバシー侵害がないと解することはできず,上記のとおり前科に関わる事実を公表されない法的利益がこれを公表することによる利益に優越するというべきであるから,被告らの主張には理由がない。
(2)  原告が詐欺罪で逮捕されたこと(本件逮捕2)について(本件記事3,同5,本件人生年表3,本件人物相関図3)
本件逮捕2の事実は,原告の逮捕歴を示すものであるため,前記(1)アで説示した基準によってその適法性を判断するのが相当である。
そして,前記2(1)ウで説示したとおり,原告が,本件書籍の出版当時,何らかの意味で社会的地位にあったとか,社会的な影響力を有していたとは認められず,当該逮捕は,Cの弟による事件として複数の報道機関により報道され,社会的に相応の注目を集めていたことは否定できないものの,嫌疑不十分として不起訴処分がなされていることからすると,本件各記事の執筆時点で歴史的又は社会的意義のある事件であったとまでいうことはできないのであって,他方,前記2(1)エで説示したように,同記事は,あくまで著名な占い師であるCに関する情報提供及び人物評を行う一環として,Cの弟である原告に言及したに過ぎないものであり,その記載内容からして,原告の反社会的行為についての問題提起や責任追及等を直接の目的としたものではないことからすると,実名使用による前科公表の意義及び必要性が認めがたいというべきであって,以上の事実を併せ考慮すると,前科に関わる事実を公表されない法的利益がこれを公表することによる利益に優越するというべきである。
したがって,上記事実の摘示は,原告のプライバシーを侵害するものであると認められる。
(3)  原告が顧問料50万円を受領していたことについて(本件記事7の5,同8の2・6)
原告は上記事実が原告のプライバシーを侵害すると主張するが,ある事実の摘示がプライバシーを侵害するか否かは,摘示された事実が,一般人を基準として他人に知られることで私生活上の平穏を害されるような事実か否かで判断すべきところ,一般人を基準として考えた場合,上記事実を他人に知られることで私生活上の平穏が害されるとまでいうことはできないから,上記事実の摘示によりプライバシーが侵害されるということはできない。
(4)  よって,顧問料に関する事実の摘示が原告のプライバシーを侵害するとはいえないものの,原告が恐喝罪で有罪判決を受けたこと及び詐欺罪で逮捕されたことを摘示することは,原告のプライバシー権を侵害する。
(5)  そこで,次に,プライバシー侵害に関する違法性阻却事由の有無についてみるに,2で認定,説示したとおり,これらの記事は,公共の利害に関する事実を摘示したものということはできず,その掲載目的が専ら公益を図る目的に出たものということもできないから,違法性は阻却されないというべきである。
よって,被告らは原告に対して不法責任を負うことになる。
5  損害の有無及びその額並びに謝罪広告及び記事削除の必要性の有無(争点4)について
(1)  本件書籍は,平成18年5月10日までに6万部が印刷され(乙48),また,本件書籍について,平成18年12月17日に新聞に掲載された広告には,「話題沸騰!10万部を突破!!」との記載があって(甲35),実際にもよく売れたことを推認することができるほか,被告Y1はそれなりの取材活動を行った上で本件書籍を執筆している(乙37)ものの,その取材の手法として,他の週刊誌に既に掲載されている事実については,独自の立場で更に取材してその裏付けをとるべく努力した形跡はさほど窺えず,そのままこれに依拠して記事を書いている部分も少なくなく,その意味で取材が十分であったとはいい難い部分があり,原告に対する直接の取材も行っていない(乙37)。しかしながら,他方で,原告は,本件書籍の出版当時は画家や経営コンサルタントとして活動をしており,原告が社会的影響力を有する地位にあったとは認められないこと,原告の恐喝前科及び詐欺罪による逮捕は,本件書籍の出版直前に社会的に広く報道されたものであったこと,本件各記事は,あくまで著名な占い師であるCに関する情報提供や人物評を行う一環として,Cの弟である原告に言及したに過ぎないものと解され,本件書籍における本件各記事の占める割合はさほど高いものではないことなどの諸事情を総合考慮すると,被告らが本件各記事を含む本件書籍を執筆,出版したことによる名誉毀損及びプライバシー権侵害によって原告が被った精神的苦痛を慰謝するには,併せて200万円の慰謝料の支払をもってするのが相当である。
弁論の全趣旨によれば,原告は,本件訴えの提起,追行を原告ら訴訟代理人に委任し,相当額の報酬の支払を約束したことを認めることができるところ,本件事案の内容,争点,難易度,認容額等を考慮すると,被告らの不法行為と相当因果関係の範囲内にある弁護士費用としては,20万円が相当である。
そして,本件書籍は,前記前提となる事実で認定したとおり平成18年4月19日に発行されているから,少なくとも原告の請求する同年5月10日から上記損害につき遅延損害金が発生しているものと認められる。
(2)  なお,被告らは,本件各記事について,慰謝料及び弁護士費用に加えて,謝罪広告の掲載及び記事の削除も求めているところ,原告は本件書籍の出版当時,画家や経営コンサルタントとして活動をしていたものの,何らかの意味で社会的地位にあったとか,社会的な影響力を有していたとは認められないこと,原告の恐喝前科及び詐欺罪による逮捕は,本件書籍の出版直前に社会的に広く報道されたものであったこと,本件各記事は,あくまで著名な占い師であるCに関する人物評等を行う一環として,Cの弟である原告に言及したに過ぎないものであり,本件書籍における本件各記事の占める割合がさほど高いものではないこと,前記のとおり慰謝料が認容されることにより,原告の名誉はある程度回復されると考えられること,その他本件に現れた一切の事情を総合的に考慮すると,被告らに対し,慰謝料の支払を命じることに加えて,謝罪広告の掲載及び記事の削除まで命じる必要があるほど原告の社会的評価が低下したということはできない。
6  以上によれば,原告の請求は,被告らに対し,220万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成18年5月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度において理由があるから,その限度で認容すべきであるが,その余は理由がないからこれを棄却すべきである。
よって,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 奥田正昭 裁判官 吉村美夏子 裁判官 園田稔)

 

〈以下省略〉

 

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