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政治と選挙Q&A「政治資金規正法 ポスター貼り(掲示交渉)代行」に関する裁判例(97)平成18年11月14日 最高裁第三小法廷 平18(オ)597号・平18(受)726号 〔熊谷組株主代表訴訟事件・上告審〕

政治と選挙Q&A「政治資金規正法 ポスター貼り(掲示交渉)代行」に関する裁判例(97)平成18年11月14日 最高裁第三小法廷 平18(オ)597号・平18(受)726号 〔熊谷組株主代表訴訟事件・上告審〕

裁判年月日  平成18年11月14日  裁判所名  最高裁第三小法廷  裁判区分  決定
事件番号  平18(オ)597号・平18(受)726号
事件名   〔熊谷組株主代表訴訟事件・上告審〕
裁判結果  棄却、不受理  上訴等  確定  文献番号  2006WLJPCA11146004

裁判経過
控訴審 平成18年 1月11日 名古屋高裁金沢支部 判決 平15(ネ)63号 熊谷組株主代表訴訟控訴事件 〔熊谷組政治献金事件・控訴審〕
第一審 平成15年 2月12日 福井地裁 判決 平13(ワ)144号・平13(ワ)262号 各熊谷組株主代表訴訟事件 〔熊谷組政治献金事件・第一審〕

出典
資料版商事法務 274号192頁

評釈
宮島司=杉本花織・ビジネス法務 12巻4号131頁
高橋利治・法学研究(愛知学院大学) 48巻3号73頁

裁判官
上田豊三 (ウエダトヨゾウ) 第15期 現所属 定年退官
平成19年5月23日 ~ 定年退官
平成14年2月21日 ~ 平成19年5月22日 最高裁判所判事
平成12年8月14日 ~ 平成14年2月20日 大阪高等裁判所(長官)
平成12年1月31日 ~ 平成12年8月13日 広島高等裁判所(長官)
平成10年3月11日 ~ 平成12年1月30日 東京地方裁判所(所長)
平成6年12月21日 ~ 平成10年3月10日 最高裁判所首席調査官
平成5年11月4日 ~ 平成6年12月20日 前橋地方裁判所(所長)
平成3年6月15日 ~ 平成5年11月3日 事務総局総務局長
昭和63年4月 ~ 平成3年6月14日 最高裁判所上席調査官
昭和59年4月 ~ 司法研修所(事務局長)
昭和58年4月 ~ 司法研修所(教官)
昭和57年10月 ~ 東京地方裁判所(部総括)
昭和55年1月 ~ 東京地方裁判所
昭和52年1月 ~ 事務総局経理局総務課長
昭和50年2月 ~ 事務総局経理局主計課長
昭和48年4月 ~ 東京地方裁判所
昭和44年4月 ~ 大津地方裁判所、大津家庭裁判所
昭和41年6月 ~ 事務総局行政局付
昭和38年4月 ~ 東京地方裁判所、東京家庭裁判所

藤田宙靖 (フジタトキヤス)  現所属 定年退官
平成22年4月6日 ~ 定年退官
平成14年9月30日 ~ 平成22年4月5日 最高裁判所判事
平成14年 ~ 東北大学名誉教授
平成13年 ~ 国土審議会委員情報公開審査会委員中央教育審議会専門委員(大学分科会)
平成12年 ~ 東北大学大学院法学研究科教授国地方係争処理委員会委員
平成8年 ~ 平成10年 行政改革会議委員
平成6年 ~ 平成8年 東北大学法学部長
昭和56年 ~ 法学博士(東京大学)
昭和52年 ~ 東北大学法学部教授
昭和41年 ~ 東北大学法学部助教授
昭和38年 ~ 東京大学法学部助手

堀籠幸男 (ホリゴメユキオ) 第19期 現所属 定年退官
平成22年6月15日 ~ 定年退官
平成17年5月17日 ~ 平成22年6月15日 最高裁判所判事
平成14年11月7日 ~ 平成17年5月16日 大阪高等裁判所(長官)
平成12年3月22日 ~ 平成14年11月6日 最高裁判所事務総長
平成12年1月4日 ~ 平成12年3月21日 最高裁判所事務次長
平成11年9月1日 ~ 平成12年1月3日 最高裁判所事務次長、事務総局総務局事務取扱
平成10年8月10日 ~ 平成11年8月31日 最高裁判所事務次長
平成6年4月8日 ~ 平成10年8月9日 事務総局人事局長
平成4年12月25日 ~ 平成6年4月7日 東京地方裁判所
平成4年12月11日 ~ 平成4年12月24日 東京高等裁判所
昭和59年8月 ~ 内閣法制局
昭和58年8月 ~ 東京地方裁判所
昭和58年7月 ~ 事務総局人事局任用課長
昭和54年8月 ~ 事務総局人事局調査課長、任用課長
昭和54年7月 ~ 事務総局人事局調査課長
昭和51年7月 ~ 事務総局刑事局付
昭和51年4月 ~ 裁判所調査官
昭和51年3月 ~ 東京地方裁判所
昭和48年11月 ~ 那覇地方裁判所
昭和46年8月 ~ 事務総局刑事局付
昭和45年4月 ~ 東京地方裁判所、東京家庭裁判所
昭和42年4月 ~ 東京地方裁判所

那須弘平 (ナスコウヘイ)  現所属 定年退官
平成24年2月10日 ~ 定年退官
平成18年5月25日 ~ 平成24年2月10日 最高裁判所判事
平成16年 ~ 平成18年5月24日 日本弁護士連合会市民のための法教育委員会委員
平成16年 ~ 東京大学法科大学院客員教授
平成10年 ~ 日本弁護士連合会「工業所有権仲裁センター」の事業に関する委員会委員
平成10年 ~ 日弁連法務研究財団研究部会長
昭和63年 ~ 日本弁護士連合会常務理事
昭和62年 ~ 第二東京弁護士会副会長
昭和44年 ~ 第二東京弁護士会

Westlaw作成目次

主文
理由
1 上告について
2 上告受理申立てについて

裁判年月日  平成18年11月14日  裁判所名  最高裁第三小法廷  裁判区分  決定
事件番号  平18(オ)597号・平18(受)726号
事件名   〔熊谷組株主代表訴訟事件・上告審〕
裁判結果  棄却、不受理  上訴等  確定  文献番号  2006WLJPCA11146004

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

上記当事者間の名古屋高等裁判所金沢支部平成15年(ネ)第63号熊谷組株主代表訴訟事件について、同裁判所が平成18年1月11日に言い渡した判決に対し、上告人兼申立人から上告及び上告受理の申立てがあった。よって、当裁判所は、次のとおり決定する。

 

 

主文

本件上告を棄却する。
本件を上告審として受理しない。
上告費用及び申立費用は上告人兼申立人の負担とする。

 

 

理由

1  上告について
民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは、民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ、本件上告理由は、違憲をいうが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。
2  上告受理申立てについて
本件申立ての理由によれば、本件は、民訴法318条1項により受理すべきものとは認められない。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 上田豊三 裁判官 藤田宙靖 裁判官 堀籠幸男 裁判官 那須弘平)

 

当事者目録
<<住所略>>
上告人兼申立人 X
同訴訟代理人弁護士 松丸正
阪口徳雄
三田恵美子
橋本敦
木村晋介
松井繁明
徳井義幸
東中光雄
井上二郎
河野豊
田中俊
伊藤誠基
岩本朗
植田勝博
江野栄
大川一夫
大賀浩一
小田耕平
勝山勝弘
桂充弘
ほか
<<住所略>>
被上告人兼相手方 Y1
<<住所略>>
被上告人兼相手方 Y2
<<住所略>>
被上告人兼相手方 Y3
上記3名訴訟代理人弁護士
髙木裕康
内藤滋
森脇純夫
●上告理由書
平成17年(ネオ)第3号 熊谷組株主代表訴訟上告申立事件
上告人 X
被上告人 Y1  外2名
上告理由書
―憲法違反―
2006(平成18)年3月10日
最高裁判所 御中
上告人訴訟代理人
弁護士(代表) 松丸正

目次
第1 はじめに(上告理由の要旨)
第2 企業の政治献金についての実態認識の問題と裁判所の果たすべき役割
1 八幡製鉄政治献金事件最高裁判決の問題点
2 保守二大政党化の下では立法措置に期待できない
3 日本経団連政治献金斡旋時代における司法審査への期待
第3 企業の政治献金は実質的に憲法は許容していない。
1 企業には政治的活動の自由は保障されてはいないから政治献金をする自由は保障されてはいない
2 企業に政治的活動の自由が保障されているとしても、そこから直ちに企業の政治献金の自由は導き出されてはこないし、むしろ、だからこそ企業に政治献金の自由は保障されてはいない
3 後の南九州税理士会政治献金徴収拒否事件最高裁判決と群馬司法書士会復興支援特別負担金徴収事件最高裁判決の意味
4 企業の政治献金は国民の政治的活動の自由及び国民の多元的活動の自由を侵害し、国民主権主義等の原理に反する
第1 はじめに(上告理由の要旨)
1 企業(会社、法人)が政党等に献金(政治献金)することにつき、最高裁は、今から35年余り前の1970年に八幡製鉄政治献金事件で「会社といえども政治資金の寄附の自由を有する」などとして企業の政治献金を法的に許容した(八幡製鉄政治献金事件最高裁1970年6月24日大法廷判決・民集24巻6号625頁)。本件事件の控訴審において名古屋高裁金沢支部も、この最高裁判決を援用して「会社が政党又は政党資金団体に政治資金を寄附することも…会社の定款所定の目的の範囲内の行為というべきである」と判示している。
しかし、この最高裁判決は、後で詳しく指摘するように企業の政治献金の実態について誤った認識に基づいて判断がなされており、岡原昌男・元最高裁判所長官が国会で述べているように、企業・経営者や政党・政治家を「助けた判決」なのである(『第128回国会衆議院政治改革に関する調査特別委員会議事録』第13号1993年(平成5年)11月2日)。
従って、この最高裁判決を根拠にして訴えを退けることは、その後の最高裁判例との関係でも、決して許されるものではない。
2 企業の政治献金についての法的判断については、〈1〉政治資金規正法の規定のあり方が、政治団体、特に国会内政党の財政を左右し、実質的には「自らの事柄について自らが決定する」ことを意味しているがゆえに、〈2〉また、衆議院議員の選挙制度が小選挙区本位のものであり与党第一党と野党第一党が企業献金を受け取ることを公言している以上、たとえ政権交代が起きても企業献金を全面禁止する法律が成立する可能性がないがゆえに、〈3〉さらに、日本経団連が政党の政策を評価し、その評価に応じて傘下の企業に政治献金を斡旋し始め、ますます政治過程に多大な影響を行使しているがゆえに、これを単に立法政策の問題として処理すべきではない。
従って、八幡製鉄政治献金事件最高裁判決は変更されることが不可避である、と言わざるをえない。
従来、与党第一党の自民党の「自浄能力の喪失」が指摘されてきたが(小林直樹『憲法政治の転換』東京大学出版会・1990年187頁)、今は、野党第一党の民主党も加えて、二大政党の「自浄能力の喪失」という現実から目を背けてはならない。
したがって、裁判所は、国会内政党のお手盛りに歯止めをかけるために、権力を制限するという立憲主義の理念を踏まえて厳格な法解釈が求められているといえよう。
3 企業献金は、以下に述べるとおり、憲法の規定、理念、原理に違反する。
第2 企業の政治献金についての実態認識の問題と裁判所の果たすべき役割
1 八幡製鉄政治献金事件最高裁判決の問題点
(1) 高裁は、1970年に、有名な八幡製鉄政治献金事件において企業の政治献金を許容しているが、その際には、次のような認識とそれに基づく評価が行われていた。
〈1〉 「政党は国民の政治意思を形成する最も有力な媒体であるから、政党のあり方いかんは、国民としての重大な関心事でなければならない。したがって、その健全な発展に協力することは、会社に対しても、社会的実在としての当然の行為として期待されるところであり、協力の一態様として政治資金の寄附についても例外ではないのである。」
〈2〉 「政党への寄附は、事の性質上、国民個々の選挙権その他の参政権の行使そのものに直接影響を及ぼすものではないばかりでなく、政党の資金の一部が選挙人の買収にあてられることがあるにしても、それはたまたま生ずる病理的現象に過ぎず、……」
〈3〉 「「政党は国民の政治意思を形成する最も有力な媒体であるから、政党のあり方いかんは、国民としての重大な関心事でなければならない。したがって、その健全な発展に協力することは、会社に対しても、社会的実在としての当然の行為として期待されるところであり、協力の一態様として政治資金の寄附についても例外ではないのである。」
〈4〉 「会社の構成員が政治的信条を同じくするものでないとしても、会社による政治資金の寄附が、特定の構成員の利益を図りまたその政治的志向を満足させるためでなく、社会の一構成単位たる立場にある会社に対し期待ないし要請されるかぎりにおいてなされるものである以上、会社にそのような政治資金の寄附をする能力がないとはいえないのである。」
〈5〉 「会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有するのである。政治資金の寄附もまさにその自由の一環であり、会社によってそれがなされた場合、政治の動向に影響を与えることがあったとしても、これを自然人たる国民による寄附と別異に扱うべき憲法上の要請があるものではない。」
などと判示している(八幡製鉄政治献金事件最高裁1970年6月24日大法廷判決・民集24巻6号625頁)。
(2) この最高裁判決は、「我が国の政治社会の現実の認識において全く違っている点で、根本的な批判と再検討を必要とする」(小林直樹『憲法政治の転換』東京大学出版会・1990年169頁)。
より具体的に言えば、上記〈1〉は、日本の民主主義において政党以外の政治団体や無所属の存在も軽視できないにもかかわらず政党の存在を過大評価した上で、政党の存在をどのように理解するのかという問題から、企業の政治献金を許容するのかという問題の答えを出しているが、これは、本来別々の次元の問題を強引に結びつけて議論して企業の政治献金を肯定している点で、明らかに論理の飛躍がある(上脇博之『政党国家論と憲法学』信山社・1999年418-419頁)。
上記〈2〉は、選挙における買収で逮捕されるケースがいまだに後を絶たないことから判断すると、間違った認識であることは明らかである。また、大型の金権腐敗の事件は、田中金脈問題、ロッキード事件、リクルート事件、共和事件、佐川急便事件などが発覚してきたし、1994年の「政治改革」後も、中島洋次郎衆議院議員(故人)の政党交付金買収事件、新井将敬衆議院議員(故人)の株取引疑惑、中尾栄一衆議院議員・元建設大臣の汚職事件、KSD事件、土地改良区自民党費肩代わり問題、高祖憲治参議院議員(辞職)の「郵政ぐるみ選挙」、「ムネオハイス疑惑」、迂回献金問題、橋本派「平成研究会」事件などが発覚しており、政治腐敗はいまだに根絶されてはいない(詳細は、古賀純一郎『政治献金 ―実態と論理』岩波新書・2004年を参照)。さらに、いわゆる連座制が「政治改革」により拡大、強化されたことは、政治腐敗が「たまたま生ずる病理現象ではない」ことを裏付けているもいる。日本の金権腐敗が構造的なものであること(室伏哲郎『汚職の構造』岩波書店・1981年)を踏まえる必要がある。
上記〈3〉は、政党の発展に協力することや政党に企業が政治献金することが、企業に期待されているというのは、結社の自由が保障されている政党にとって誠に都合の良い話で、「行きすぎであり妥当ではない」(芦部信喜『憲法学Ⅱ』有斐閣・1994年174頁)だけではなく、あまりにも非常識な見解である。
上記〈4〉は、企業の政治献金が、当該企業やその業界に有利になるよう行われている実態を無視したものである。企業の政治献金について、亀井正夫・住友電工会長(当時)は、端的に「企業献金はそれ自体が利益誘導的な性格を持っている」(東京新聞1989年1月1日)と、また石原俊・経済同友会代表幹事(当時)は、「企業が議員に何のために金をだすのか。投資に対するリターン、株主に対する収益を確保するのが企業だから、企業が政治に金をだせば必ず見返りを期待する」(日本経済新聞1989年6月3日)と評している。
上記〈5〉は、個々の国民の寄付が及ぼしうる政治的影響と企業の政治献金が及ぼしうる影響を同列に論じている点で企業の政治献金の量と質を過小評価している(奥平康弘・杉原泰雄編『憲法学1』有斐閣双書・1976年41頁[寿田竜輔執筆])。後で詳しく紹介するように日本経団連が政党の政策を評価し、それに応じて傘下の企業の政治献金を斡旋し始めたのは、個人の政治的寄附とは異なり企業の政治献金が政治と政策を買収し、政治過程を歪める効果を発揮するとの経験則に基づく確信があったからからであろう。そうでなければ、単に政党の政策を評価するだけに終わっただろう。
(3) 企業の政治献金について実態に基づき正しく認識するならば、本来、企業が政治献金することは、企業の定款の範囲外の行為であり、法人の権利能力の範囲外であると結論づけられるはずである。
(4) これらの点につき元最高裁判所長官の岡原昌男は、1993年11月2日に、衆議院の「政治改革に関する調査特別委員会」で八幡製鉄政治献金事件最高裁判決について次のように解説している。
「企業献金の問題につきまして、例の昭和45年の最高裁判決がございますけれども、あの読み方について自民党の中で非常にあれをルーズに読みまして、その一部だけを読んで企業献金差し支えない、何ぼでもいい、こう解釈しておりますが、あれは違います。我々の立場からいいますと、我々といいますか私の立場から申しますと、あの企業献金というのは、法人がその定款に基づかずして、しかも株主の相当多数が反対する金の使い方でございまして、これは非常に問題がある。」
「本来営利団体である会社でございますから、非取引行為、つまりもうけにならぬこと、これをやることは株主に対する背任になります。もし見返りを要求するような献金でございますと涜職罪になるおそれがある、そういう性質を持ったものでございます。」
「企業献金そのものが悪とか善とかいうことよりも、法律的に余り理屈は通らないものであるということだけば申し上げたいと思います。
それはどういうことかといいますと、さっき言ったとおり、法人というのはその定款なり寄附行為に定められた事業の範囲で生きているものでございまして、それ以外のものについてはできない、つまり適法性がないわけでございます。その意味で、先ほど言った八幡製鉄の事件におきましてもその点が真っ先に唱えられておるわけでございまして、その意味で、企業献金というものが現在のような形で数百万、数千万あるいは億といったような単位で入ってくるというのは、これは悪です、私の評価からいいますと。これはあるべからざることである。だから、これを何とか直してもらわなきゃいかぬ、こういうふうに考えております。」(『第128回国会衆議院政治改革に関する調査特別委員会議事録』第13号1993年11月2日))
(5) また、リクルート事件が1988年に発覚し、1993年衆議院議員総選挙後により細川政権が誕生し、1994年には「政治改革」関連法案が成立しるが、その間に、経済団体連合会(経団連。1946年8月設立)は、1993年に会長・副会長会議が以下のような方針を決定している。
「〈1〉 今後は、政治資金を公的助成と個人献金で賄い、企業献金に過度に依存しない仕組みを確立していく必要があり、政府は、そのための環境整備を早急に行うべきである。
〈2〉 企業献金については、公的助成や個人献金の定着を促進しつつ、一定期間の後、廃止を含めて見直すべきである。
〈3〉 その間は、各企業・団体が、独自の判断で献金を行うこととし、経団連は、来年以降、その斡旋は行わない。…」(経済団体連合会 会長・副会長会議「企業献金に関する考え方」1993年9月2日)。」
このように経団連が企業の政治献金の斡旋を中止し、将来は企業の政治献金の全面廃止を提案していたのであるが、そこには、企業の政治献金が政治腐敗の温床であるとの判断があったからである。言い換えれば、「金権政治」(小林直樹『憲法政治の転換』東京大学出版会・1990年145頁)・「金権民主主義」(岩井奉信『「政治資金」の研究』日本経済新聞社・1990年27頁)を生み出してきたのが企業の政治献金だったとの判断があったからである。
(6) したがって、誤った認識に基づき企業の政治献金を許容した最高裁判決は、一刻も早く見直す必要があるだろう。
ましてや、この八幡事件判決は、岡原元最高裁長官が前記の衆議院における意見陳述で、次のように政治的妥協の「お助け判決」であると述べていたものである。
すなわち、岡原元最高裁長官は、「企業団体献金の全面禁止についてどう考えるか」と問われて、次のように述べている。
「できればそういう方向にいきたいと思います。ただ、あの判決をよく読んでいただきますと分かると思いますが、これだけ企業献金がその当時、あれは昭和35年の事件でございます、行き渡っておったのでは、最高裁があれをやれるわけがないです。違憲であるとか違反であるというふうなことに。全部の候補者がひっかかるような、そういうことは実際上としてやれない。したがって、あれは助けた判決、俗に我々助けた判決というものでございます。」(政治改革に関する調査特別委員会会議事録第13号平成5年11月2日)
岡原元最高裁長官が、このように、「お助け判決」であるとまで酷評する八幡事件判決は、もはや今日では、憲法解釈の上で、到底正当な規範的意義をもち得ないものとして、破棄さるべきものである。
2 保守二大政党化の下では立法措置に期待できない
(1) 八幡製鉄政治献金事件で最高裁は、「弊害に対処する方途は、さしあたり、立法政策にまつべきことであって、…。」と判示していた(最高裁八幡製鉄政治献金事件1970年6月24日大法廷判決・民集24巻6号625頁)が、これは、前述のように企業献金の実態について誤った認識に基づくものであるが、それがたとえ当時正しい実態認識であったとしても、少なくとも現時点では、通用しない理屈である。
(2) 1994年のいわゆる「政治改革」によって衆議院議員の選挙制度は、準比例代表として機能してきた中選挙区制を廃し、いわゆる小選挙区比例代表並立制が採用された。これは、小選挙区本位のものであり、比例代表制を付加しただけの小選挙区制と呼んだほうがわかりやすい。それゆえ、政党は小選挙区選挙で処理するよう政党の合併が誘発されており、そのうえで選挙結果として、大政党の過剰代表と小政党の過少代表を生み出している。
このような形で形成されている政党システムは、保守政党の自民党と、同じく保守政党の民主党の保守二大政党制であり、両党とも企業の政治献金の全面禁止を主張しないどころか、積極的にそれを受け取ることを表明し、現に受け取っている政党である。今の保守二大政党制は、企業の政治献金を固定する二大政党制なのである。
これは、八幡製鉄政治献金事件の最高裁判決が下されたときの政党システム、すなわち、与党第一党は自民党で、野党第一党は革新政党の社会党という政党システムとは根本的に異なり、たとえ政権交代が起きても企業の政治献金は全面的に禁止されることはないだろう。
(3) 例えば、1994年の「政治改革」のときの政治資金規正法附則(1994年2月4日法律第4号)の第10条は、「この法律の施行後5年を経過した場合においては、政治資金の個人による拠出の状況を踏まえ、政党財政の状況等を勘案し、会社、労働組合その他の団体の政党及び政治資金団体に対してする寄附のあり方について見直しを行うものとする。」と規定したが、この「見直し」規定は、当時、政党助成法が制定され、国民の税金を政党に交付することになったため、その5年後には、政治腐敗の温床となってきた企業・団体献金が全面的に禁止されるものとして国民に期待を抱かせた規定である。
ところが、「政治改革」から10年以上が経過している現在でも、国会では「見直し」は行われず、したがって、企業献金は全面禁止されてはいない。
したがって、立法措置を待っていたのでは、企業献金による弊害には十分に対処できないのである。
3 日本経団連政治献金斡旋時代における司法審査への期待
(1) 経団連は、日本経営者団体連盟(日経連。1948年4月設立)と、2002年5月に統合して総合経済団体としての日本経済団体連合会(日本経団連)となったが、この日本経団連は、「これを機に政治との新たな関係の構築に取り組もうと考え」、政治献金斡旋の再開を決定したのである(「【この人に聞く】5分間インタビュー トヨタ自動車会長 日本経済団体連合会会長 奥田氏」国民政治協会のHPの「国政ひろば」のページ2004年4月)。
これを具体的に見ると、従来の斡旋を単に「再開」したのではなく、政党(特に自民党と民主党)の政策を評価し、その評価に応じて傘下の企業に政治献金を斡旋し始めたのであり、従来の斡旋よりも悪質になっている。
すなわち、日本経団連は、2003年5月に、政党の政策評価に基づき企業献金を斡旋する方向を打ち出し(日本経済団体連合会 会長・副会長会議「政策本位の政治に向けた企業・団体寄付の促進について」2003年5月12日)、同年9月に「優先政策事項」を決定し(日本経済団体連合会「『優先政策事項』と『企業の政治寄付の意義』について」2003年9月25日)、同年12月には寄付の申し合わせを行った(日本経済団体連合会「企業の自発的政治寄付に関する申し合せ」2003年12月16日)。
前述の「優先政策事項」は10項目あり、以下のような内容であった。
「1.経済再生、国際競争力強化に向けた税制改革
2.将来不安を払拭するための社会保障改革
3.民間の活力を引き出すための規制・行政改革
4.科学技術創造立国の実現のための環境整備
5.エネルギー戦略の確立と産業界の自主的取り組みを重視した環境政策の推進
6.心豊かで個性ある人材を育成する教育改革の推進
7.個人の多様な力を活かす雇用・就労形態の促進
8.活力とゆとりを生み出すための都市・住環境の整備
9.地方の自立を促す制度改革と活性化対策の推進
10.グローバル競争の激化に即応した通商・投資・経済協力政策の推進」。
以上の10の項目は、日本経団連傘下の企業の利害に関するものも含まれているが、全体としては日本の基本的国家政策事項である。
日本経団連は、この事項につき自民党と民主党の各政策を評価し、翌2004年1月の末には「自民党が85点、民主党は50点以下」という「第一次政策評価の発表」を行った(日本経済団体連合会『2004年第一次政策評価の発表』2004年1月28日)。そして、これに基づいて、2002年には19億円だった会員企業の献金の額を当面40億円に拡大する方向を打ち出したのである(宮原賢次「政党が政策立案能力を高めるための寄付が必要だ」『論座』2004年7月号174頁[175頁])。
日本経団連は、2005年に、自民党、民主党の幹部をそれぞれ経団連会館に呼びつけて、各政党の政策を説明させ、前述の「優先政策事項」の採用と実現を両政党に迫っている(「『自民党と政策を語る会』について」2005年3月29日、「『民主党と政策を語る会』について」2005年4月7日)。
以上のように、日本経団連は、傘下の企業の利益のために政治的発言力を高めるだけではなくカネによる利益誘導を行うことを目指しており、さらに企業献金を通じて政党の政策、ひいては国家の政策を買収すること目指しているのである。
(2) では、日本経団連が、傘下企業のために利益誘導をしている例を具体的に幾つか紹介しておこう。まず、法人税の税率引き下げ要求である。
日本経団連は、法人税の引き下げを主張し続けてきたが、2003年5月に傘下の企業の政治献金の斡旋を行うと発表した後も、それを主張し続けた(経団連意見書「『近い将来の税制改革』についての意見―政府税制調査会中期答申取りまとめに向けて―」2003年5月29日、経団連意見書「今次年金制度改革についての意見」2003年9月10日、経団連「平成16年度税制改正に関する提言」2003年9月16日、経団連意見書「PFIの推進に関する第三次提言~PFI法の見直しに向けて~」2004年1月20日)。
これにつき宮原賢次・日本経団連副会長は以下のように説明している。
「『法人税を下げてくださいということは個別政策じゃないか』と。それは個別かも分かりません。しかし、我々に言わせれば、企業活動のインフラ整備ということです。」(宮原賢次(日本経団連副会長)「政党が政策立案能力を高めるための寄付が必要だ」『論座』2004年7月号174頁[177頁])
以上のような日本経団連の態度につき1994年「政治改革」を主導した武村正義は次のように批判している。
「経団連が法人税、事業税の減税を主張すること自体は当然ですが、国民の中には逆に課税をむしろ強化していくべきという意見もある。税制全体はバランスを考えて取り組む世界です。経済界の視点だけで、献金をするから減税しろと引っ張っていかれたら政治はゆがんでしまいます。」(武村正義「奥田さん!企業献金の再開は時流に反しませんか」『論座』2004年7月号180頁[184頁])
(3) 次に、公正取引委員会が2003年から2004年に進めていた、いわゆる談合防止のために課徴金を引き上げるという独禁法改正案について、日本経団連は、傘下の企業の政治献金の斡旋を行うことを表明後、それに反対する意見書を次々に発表した(経団連「独占禁止法の措置体系見直しについて―日本経団連としての見解―」2003年9月16日、経団連経済法規委員会「『独占禁止法研究会報告書』に対する意見」2003年11月28日、「独禁法正案に反対の意向強調/日本経団連・奥田会長記者会見」経営タイムスNo.2713[2004年3月11日]、経団連「『独占禁止法改正(案)の概要』に対する日本経団連意見」2004年4月15日)。
このような中で、自民党の独禁法調査会は、当時、独禁法の改正を断念し、先送りしたのである(自由民主党独禁法調査会「独占禁止法の見直しに関する取りまとめ」2004年5月14日)。
(4) 日本経団連は日本の平和主義を含め日本国憲法全体まで買収しようとしている。日本経団連の奥田碩会長は、参議院議員通常選挙(2004年7月)を前に、雑誌『文芸春秋』一月号で、「憲法改正」発言をした(奥田碩「緊急提言・この国を変える!」『文藝春秋』2004年1月号94頁[100-101頁])。これは具体的なものではなかったが、その後、徐々に具体化されてゆく。
奥田会長は、2004年4月26日の記者会見で、「経団連としては、本年五月の総会で、憲法問題や安全保障問題などについて検討する委員会の設置を決める予定である」ことを明らかにしていた(日本経済団体連合会「記者会見における奥田会長発言要旨」2004年4月26日)が、実際5月27日の総会において「国の基本問題検討委員会」の新設を決定した。これにつき奥田会長は、「イラク問題やテロの諸状況を背景に、国のあり方や憲法問題、安全保障問題などについて、経済界として検討する必要がある」ことが、「委員会設置の趣旨である」と説明している(「日本経団連第3回定時総会後の会見における奥田会長発言要旨」2004年5月27日)。すでに憲法「改正」の方向を出している経済同友会の北城恪太郎代表は、「他の経済団体から改正の方向で意見が出てくることを期待している。」などと述べ(経済同友会「代表幹事の発言・記者会見発言要旨」2004年5月28日)、日本経団連の同委員会設置を歓迎し期待を表明した。
日本経団連は、11月に発表した評価項目に「内外の情勢変化に対応した戦略的な安全保障・外交政策の推進」を新たに加えた(日本経団連「優先政策事項」2004年11月24日)が、これにつき、2005年2月には、「憲法改正を視野に入れつつ、自衛隊が国際社会と協調して世界平和に向けた活動を一層強化することができるよう、必要な立法などを進める。」と解説されるに至っている(日本経団連『優先政策事項』2005年2月7日改定)。これに先立ち、日本経団連は、同年1月に、「集団的自衛権に関しては、わが国の国益や国際平和の安定のために行使できる旨を、憲法上明らかにすべきである。」などの内容を盛り込んだ憲法「改正」を提言した(日本経団連『わが国の基本問題を考える ― これからの日本を展望して』2005年1月18日)。
このように日本経団連が、憲法「改正」にも影響力を行使し始めたことは、日本の将来の国のあり方までもが日本経団連によって丸ごと買収されようとしているものとしていることを意味しているのである。
(5) 日本経団連は、2005年3月29日、「自民党と政策を語る会」を開催しており、その中で、「憲法については、現実との乖離が大きい9条2項、及び、96条(改正要件)の見直しが必要との意見と考えている。自民党におかれても新憲法制定推進本部で精力的な検討が進められていると承知している。党内における検討状況、国民世論喚起のための方策について、ご教示いただきたい。」と質問した。
これに対し、与謝野馨・自民党政調会長は、「9条1項の戦争の放棄は不戦条約の流れを汲む理想で依然重要である。自衛隊の存在は国を守る実力組織として、9条2項を改め明確化する。自衛隊の新しい名称については未定である。9条の3項として国際貢献を盛り込むべきだという有力な意見もある。」と回答しているのである(日本経団連HP参照http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/seiji/20050329.html)。
(6) また、日本経団連は、2005年4月7日、経団連会館で「民主党と政策を語る会」を開催しており、その中で、「外交・安全保障」問題につき、「憲法については、現実との乖離が大きい9条2項、及び、96条(改正要件)の見直しが必要と考えている。民主党としての意見集約の方向性やスケジュール感について伺いたい。また憲法改正となると国会議員の3分の2という発議要件から、与野党の協力が避けられないが、他党との連携をどう考えるか。」と質問した。
これに対し、仙谷由人・民主党政調会長は、「憲法を改正し、国民主権についての規定を明確にするとともに、国民の代表である政治に国政の執行権があることを明確化したい。…。9条については、専守防衛のための自衛隊を憲法上明確化し、国際協調主義により国連の枠組みの下で実力行使的行動にも関与することを書き込みたい。」などと回答している(日本経団連HP参照http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/seiji/20050407.html)。また、「最後に、経団連の宮原副会長が、政治資金への取り組みに触れつつ、閉会の挨拶を行った。」という(民主党ニュース・トピックス「民主党『次の内閣』と経団連幹部が、『政策を語る会』で一同に会す」2005年4月7日)。
(7) 以上のように、日本経団連が政党の政策を評価し、その評価に応じて傘下の企業の政治献金を斡旋するように決定し、それを開始しているのは、企業の政治献金が政党の政策を誘導するくらい政治的影響力があるからであり、現にその影響力は発揮されていると言っていいのではなかろうか。
これは、主権者国民の自由な意思表明などを通じて民主的に形成されるべき政治過程が、社会権力である日本経団連による政党の政策評価と傘下企業の政治献金斡旋によって歪められていることを意味する。
企業の政治献金についてこのような現状であるにもかかわらず、司法が企業献金を放任しておくならば、日本の国民主権、議会制民主主義はますます形骸化してしまうだろう。
第3 企業の政治献金は実質的に憲法は許容していない。
1 企業には政治的活動の自由は保障されてはいないから政治献金をする自由は保障されてはいない
(1) 八幡製鉄政治献金事件において最高裁は「憲法第3章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解すべきであるから、会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有するのである。政治資金の寄附もまさにその自由の一環であり、会社によってそれがなされた場合、政治の動向に影響を与えることがあったとしても、これを自然人たる国民による寄附と別異に扱うべき憲法上の要請があるものではない。」などとして企業の政治献金を法的に許容した(八幡製鉄政治献金事件最高裁1970年6月24日大法廷判決・民集24巻6号625頁)。
また、本件事件の控訴審において名古屋高裁金沢支部も、「政治資金の寄附をすることは政治的活動の自由の一環として会社にも認められているところ、特定の政党を支持する趣旨で当該政党への政治資金の寄附を行うことは、政治資金の寄附の性質上、当然に予定されているのである。」と判示している。
(2) しかし、このような論理は、企業と国民を全く同列に論じている点で、根本的に間違っている。というのは、そのような論理でいえば、政治的活動を行う会社は政治的結社でもあることになり、政治資金規正法第3条第1項における「政治団体」として取り扱われてはならないことになる。
より具体的に言えば、政治献金をすることを通じて政治的活動を行う企業も、「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体」(同条同項第1号)、「特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体」、「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対すること」又は「特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対すること」を「その主たる活動として組織的かつ継続的に行う団体」のいずれかとして取り扱われることになる。
しかし、現実には、政治献金を行っている企業も政治資金規正法第3条第1項における「政治団体」として取り扱われてはいないし、そのような取り扱いは間違いではない。なぜなら、企業は、あくまでの経済的活動を行う法人であり、「政治団体」(政治的結社)ではないからである。
(3) そもそも法人は自然人と同様の政治的活動の自由が保障されてはいないのである。これにつき、樋口陽一教授は、「『政治的行為をなす自由』にかかわる思想・表現の自由や参政権は、本来、自然人=個人のものであり、今日では、自然人=個人の憲法上の権利と『同様』の資格でそれと対抗的に法人が主張することはできないもの、と考えるべきである。」と説明している(樋口陽一『憲法』創文社・1992年175頁)。
また、佐藤幸治教授も、「会社の巨大な経済力と影響力に鑑み、憲法上自然人と同一の自由が保障されているとすることには疑問が残る」と述べている(佐藤幸治『憲法[第3版]』青林書院・1995年427頁)。
したがって、企業には、個人と同様の政治的活動の自由は保障されてはいないのであり、それゆえ、政治献金をする自由も保障されてはいないのである。
2 企業に政治的活動の自由が保障されているとしても、そこから直ちに企業の政治献金の自由は導き出されてはこないし、むしろ、だからこそ企業に政治献金の自由は保障されてはいない
(1) 企業に関する法制度や政策について企業自身が態度表明してもそれは許容されるのではないかとして、仮に「経済的活動のために設立された企業が全く政治的活動の自由がないとはいえない」との立場が妥当であるとしても、そこから直ちに「企業に政治献金をする自由が保障されている」との結論が導き出されるわけではない。
(2) この点につき、かつて寿田竜輔教授は、「会社のような法人が団体として行う政治献金の場合」、「たとえ法人企業に政治活動を認めるにしても、それを手放しにその自由に含ませることなど、憲法的にはとうてい認めることはできない」と指摘していた(奥平康弘・杉原泰雄編『憲法学1』有斐閣双書・1976年41頁[寿田竜輔執筆])。
近年でも、中島茂樹教授は、「企業を含むもろもろの団体が一定の政治的活動を行うことと、その政治活動の延長線上で政治献金を行うこととの間には、質的な断絶があると考える。」として、「会社が『政治的行為をなす自由』を有するということからストレートに『政治資金の寄附をなす自由』を導くことができるとする最高裁1970年判決は間違っている」と結論づけている(中島茂樹「憲法問題としての政治献金 ― 熊谷組政治献金事件福井地裁判決を素材に」『立命館大学人文科学研究所紀要』84号19頁[41頁中30、37頁])。
また、北野弘久教授は、「企業が社会の構成単位として、また納税者として、政治過程において意見を表明し、また政治に影響を与える一種の政治活動、ロビー活動をすることは許されよう。これは憲法上は表現の自由の問題である(憲法21条参照)。このような一種の政治活動を行うことと、政治献金という形で政党・政治家に対していわば現ナマ(物その他の経済的利益の一切の供与を含む)をぶつけるということとは本質的に区別されなければならない。」として、「企業が陳情したり、要望したりする形で政治に影響を与えることが許されないからといって、現ナマをぶつける政治献金行為を正当化することはできない。」と説明する(北野弘久『現代企業税法論』岩波書店・1994年338頁)。
したがって、たとえ企業に政治活動に自由が保障されているとの解釈が妥当であったとしても、企業に政治献金をする自由が保障されているとの解釈が当然に導き出されるものではない。
このような結論は、企業の政治的活動の自由が憲法上保障されたものではなく、「企業活動が私的自治領域にあることの結果にすぎない」と解釈する立場(森英樹『憲法検証』花伝社・1990年217頁)からすると、尚更のこと当然の帰結であろう。
(3) また、企業が政治的活動の自由が保障されているとすれば、むしろ、だからこそ企業の政治献金は法的に否定されるべきであるとの解釈が導き出される(森英樹『憲法検証』花伝社・1990年216頁)。
というのは、自然人である個々の国民が小額の政治的寄付を行う場合と異なり、企業が政治活動の一環として高額の政治献金をすることは、政治的影響力が大きいことに加えて当該企業にとって都合の良い利益誘導的な資金として機能するからである。一言で言えば、政党の政策あるいは政治過程が、企業の政治献金によって買われることになり、民主的であるべき政治過程が企業の都合のいいように歪められるからである(参照、上脇博之『政党助成法の憲法問題』日本評論社・1999年233頁)。日本経団連が企業の政治献金を斡旋し始めている現状では、尚更のことである。
3 後の南九州税理士会政治献金徴収拒否事件最高裁判決と群馬司法書士会復興支援特別負担金徴収事件最高裁判決の意味
(1) その後の最高裁判例との関係でも、八幡製鉄政治献金事件最高裁判決は、見直しを迫られている。というのは、最高裁は、法人の寄付につき、政治献金の場合とその他の寄付の場合とで異なる結論に至っているからである。
また、本件事件の控訴審において名古屋高裁金沢支部は、「政治資金規正法も会社による政治資金の寄附そのものを禁止することなく、一定の限度でこれを許容していることを考慮すると、特段の事情のない限りは、会社はその社会的役割を果たすためにしたものというべきである。」と判示しているが、このような判断が間違いであることは、最高裁の2つの判決からも明らかである。
そこで、2つの最高裁判決を紹介しておく。
(2) 税理士会は強制加入団体であるが、南九州税理士会が税理士法を業界に有利な方向に改正するための政治工作資金として、南九州各県税理士政治連盟に配布するための特別会費5000円の徴収決議を行ったものの、ある税理士がそれに反対し、納入を拒否したところ、南九州税理士会は会則で定められた会費滞納者に対する役員の選挙権・被選挙権の停止条項に基づいて、同税理士の選挙権・被選挙権を停止したまま役員選挙を実施した。そこで、同税理士は特別会費納入義務の不存在確認などを求めて提訴した。この訴訟について最高裁は以下のように判示した。
「税理士会が政党など規正法上の政治団体に金員の寄付をすることは、たとい税理士に係る法令の制定改廃に関する政治的要求を実現するためのものであっても、法49条2項で定められた税理士会の目的の範囲外の行為であり、右寄付をするために会員から特別会費を徴収する旨の決議は無効であると解すべきである。」
「法が税理士会を強制加入の法人としている以上、その構成員である会員には、様々の思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することが当然に予定されている。したがって、税理士会が右の方式により決定した意思に基づいてする活動にも、そのために会員に要請される協力義務にも、おのずから限界がある。
特に、政党など規正法上の政治団体に対して金員の寄付をするかどうかは、選挙における投票の自由と表裏を成すものとして、会員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄であるというべきである。なぜなら、政党など規正法上の政治団体は、政治上の主義若しくは施策の推進、特定の公職の候補者の推薦等のため、金員の寄付を含む広範囲な政治活動をすることが当然に予定された政治団体であり(規正法3条等)、これらの団体に金員の寄付をすることは、選挙においてどの政党又はどの候補者を支持するかに密接につながる問題だからである。
法は、49条の12第1項の規定において、税理士会が、税務行政や税理士の制度等について権限のある官公署に建議し、又はその諮問に答申することができるとしているが、政党など規正法上の政治団体への金員の寄付を権限のある官公署に対する建議や答申と同視することはできない。」(南九州税理士会政治献金徴収拒否事件最高裁1996年3月19日第3小法廷判決・民集50巻3号615頁)
(3) これに比べ、司法書士会が、阪神・淡路大震災により被災した兵庫県司法書士会に3000万円の復興支援拠出金を寄付することとし、その資金は役員手当ての減額等による一般会計からの繰入金と被上告人の会員から登記申請事件1件当たり50円の復興支援特別負担金の徴収による収入をもって充てる旨の総会決議をしたところ、ある会員らが、本件拠出金を寄付することは被上告人の目的の範囲外の行為であること、強制加入団体である被上告人は本件拠出金を調達するため会員に負担を強制することはできないこと等を理由に、本件決議は無効であって会員には本件負担金の支払義務がないと主張して、債務の不存在の確認を求めた訴訟において、最高裁は以下のように判示した。
「司法書士会は、司法書士の品位を保持し、その業務の改善進歩を図るため、会員の指導及び連絡に関する事務を行うことを目的とするものであるが(司法書士法14条2項)、その目的を遂行する上で直接又は間接に必要な範囲で、他の司法書士会との間で業務その他について提携、協力、援助等をすることもその活動範囲に含まれるというべきである。そして、3000万円という本件拠出金の額については、それがやや多額にすぎるのではないかという見方があり得るとしても、阪神・淡路大震災が甚大な被害を生じさせた大災害であり、早急な支援を行う必要があったことなどの事情を考慮すると、その金額の大きさをもって直ちに本件拠出金の寄付が被上告人の目的の範囲を逸脱するものとまでいうことはできない。したがって、兵庫県司法書士会に本件拠出金を寄付することは、被上告人の権利能力の範囲内にあるというべきである。
そうすると、被上告人は、本件拠出金の調達方法についても、それが公序良俗に反するなど会員の協力義務を否定すべき特段の事情がある場合を除き、多数決原理に基づき自ら決定することができるものというべきである。」(群馬司法書士会復興支援特別負担金徴収事件最高裁2002年4月25日第一小法廷判決・判時1785号31頁・判タ1091号215頁)
(4) 以上の2つの判決については、幾つの視点から分析することができるだろうが、ここでは、少なくとも以下のようにまとめることができる。
第一に、法律が明文で寄附を禁止していないからと言って、如何なる法人にも、如何なる目的でも、政治献金が放任されているとは必ずしも言えず、法人の寄附が違法になる場合がある、ということである。
第二に、企業の政治献金との関係を意識して両判決を分析すれば、法人の政治献金については、それが当該法人の会員の政治的思想・信条を侵害するので法的に許容されえないが、法人の政治献金以外の寄付については、会員の政治的思想・信条を侵害することはないので法的に許容されうる、ということである。
(5) そもそも政治的活動、特に政治的な寄付を行うことは、自然人(及びその集まりである政治的団体)しか行えないはずである。政治的思想・信条に基づく人格は自然人しか有しえないからであり、経済的活動を行うために存在する企業は政治的人格を有することはないからである。だからこそ、参政権、特に選挙権と被選挙権は「国民固有の権利」として自然人にしか保障されてはいないのである(憲法第15条)。
この点では、南九州税理士会政治献金徴収拒否事件において最高裁が「政党など規正法上の政治団体に対して金員の寄付をするかどうかは、選挙における投票の自由と表裏を成すものとして、会員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄であるというべきである。」と判示していることは、企業の政治献金そのものを法的に否定する際にも妥当する重要な結論であるといえよう。
(6) もっとも、これにも、「株主になることは強制ではない」として反論が予想される。現に、本件事件の控訴審において名古屋高裁金沢支部も、「株主は、その保有する株式を自由に譲渡することができ(商法204条1項本文)、いわば自己の思想・信条を異にする会社からの脱退の自由が制度的に担保されているのであるから、仮に株主において会社による政治資金の寄附を通じて示される特定の政党等の政治的思想、見解、判断等への支持が自己の思想・信条と相容れないと考える場合には、その保有株式を他に譲渡することにより当該会社から自由に離脱でき、自己の思想・信条と異なる会社への帰属を強制されるものではないから、会社による政治資金の寄附が株主の思想・信条の自由を侵害するとまではいえない。」と判示している。
しかし、この判決の理屈は間違っている。
第一に、そもそも企業は政治団体ではないのだから、株主は企業の政治的見解を知った上で、当該企業の株式を購入するわけでもないし、当該株式を手放すわけでもないからである。国民は経済活動として株主になっているのであって、政治活動の一環として株主になっているのではない。
第二に、にもかかわらず、企業の政治献金を許容し、その政治献金による自己の政治的思想・信条の自由の侵害を免れたいなら株主は株式を譲渡せよと迫ることは、表向き株主個人の政治的思想・信条の自由に配慮しているようで、実はその反対なのであって、それこそ企業や政党等を「助けた判決」である。なぜなら、株主の本質的実態を無視しており、もはや自由主義国家・社会の論理ではないからである。
(7) 浦部法穂教授は、「政治献金のようなことがらは、まさに『選挙における投票の自由と表裏を成すものとして、……市民としての個人的な政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄』であり(九州税理士会事件最高裁判決)、強制加入であろうと任意加入であろうと、そもそも団体としてなしうるものではない、とするべきである。」と解している(浦部法穂『全訂・憲法学教室』日本評論社・2000年64頁)。
上記の2つの最高裁判決は、強制徴収した団体の性質が強制加入団体か否かを基準にして異なる結論を出したのではなく、政治献金の場合とそれ以外の寄附の場合とで結論を異にしていたのである。両判決には論理矛盾はないし、このことが重要な結論として導き出されうるだろう。
(8) なお、附言するに、原判決が、株主は「保有株式を他に譲渡することにより当該会社から自由に離脱することができ」るから「会社による政治資金の寄附が株主の思想・信条の自由を侵害するとまではいえない」と判示していることは、実は、翻って考えれば、原判決も、会社による特定政党に対する政治献金の実態が、「株主の政治的な思想・信条と抵触する場合があることは否定できない」と判示して、株主の思想の自由を侵害するものであることを認めていることが重要である。
まさしく、企業献金は、それ自体不可避的に必ず株主の思想・信条の自由を侵すものなのである。原判決もこれを認めざるを得ない。それなのに、株式譲渡の自由を持ち出して憲法違反でないとするのは、余りにも皮相な会社のためにする詭弁であると言わねばならない。
それのみならず、思想・信条の自由を侵害された株主が、更にそれに加えて、その企業の政治献金に同意できないために、資産運用のため保有しておきたいと考えている自己の株式の保有の自由まで侵されて、株式譲渡をその意に反して強要されることになれば、それはまさしく株主の思想の自由と経済的資産保有の権利とに対する二重の侵害となるではないか。余りにも明白なこの事実を考慮しない原判決の、実態とかけ離れた形式的判断の誤りは到底容認できるものではない。
「強制加入であろうと、任意加入であろうと、(企業の政治献金は)そもそも、団体としてなし得るものではない」という、前記の浦部教授の説はまさに正論である。
4 企業の政治献金は国民の政治的活動の自由及び国民の多元的活動の自由を侵害し、国民主権主義等の原理に反する
(1) 企業の政治献金を法的に許容することは、企業の経営者に二重の政治献金を認めることになる。つまり、経営者には個人としての政治的寄附と企業を通じての政治献金とを認めることになる。経営者の中には、個人としての政治的寄附を行わず、企業の政治献金により自己の政治的思想・信条を実現するものもあるかもしれないが、2つの寄附の途が認められていることには変わりはない。
また、社会権力である日本経団連のメンバーは、この2つに加え、企業の政治献金の斡旋を通じて政治的影響力を三重に行使できることになる。これは一般庶民にはない特権的な政治的影響の行使である。
しかし、このような特権は、選挙における一人一票の原則の発想から評価すると、個人主義(憲法第13条)からも国民主権主義(前文。第1条)からも、さらには平等原則(憲法第14条)からも、許容されない特権である。国民主権主義の下での議会制民主主義は、主権者国民の「徹底した平等化」を前提にして初めて存在し、存続しえるものであるから、そのような特権は憲法が禁止していると解釈されるべきである。
したがって、企業の政治献金を許容することは、経営者に不当な特権を付与するものであり、憲法が許容してはおらず、禁止しているのである。
(2) 国民主権は、国民一人一人に選挙権を保障している(憲法第15条)。国民は、この選挙権を行使し、あるいはまた、表現の自由など基本的人権を行使して政治的過程に各自影響力を行使している。
ところが、本来、政治献金をすることが認められないのに企業にそれを認め、政治資金規正法の附則(前述)で企業の政治献金が禁止されるはずだったにもかかわらず政党は立法の不作為によりそれを放任していた。これに乗じて日本経団連は、政党の政策を評価し、それに応じて傘下企業の政治献金を斡旋することを開始した。このことは、企業献金を受け取る政党を企業政党・日本経団連政党・財界政党にしてしまうだろう。
その結果、日本経団連とその傘下の企業に買収された政党によって日本の政治や政策が決定及び実行されれば、憲法の国民主権主義は形式的なものになってしまう。かつて北野弘久教授は、企業の政治献金による政治の現状を「企業主権」と表現し、批判したが(北野弘久『現代企業税法論』岩波書店・1994年336頁)、それに倣って、現状を表現すると、憲法の国民主権は実質的には日本経団連主権・財界主権に堕していることになる。
(3) だからこそ、憲法研究者も、企業の政治献金を批判し、否定しているのである。芦部信喜教授(故人)は、「多額の献金が選挙の結果だけなく、『国民個々の選挙権その他参政権の行使そのもの』に大きな影響を及ぼすことは、否定しがたいところであろう。」と批判していた(芦部信喜『憲法学Ⅱ』有斐閣・1994年174頁)。
また、吉田善明教授は、「現に、政治腐敗と企業献金の実態をみるとき、『政治動向に影響を与え』それが結果的に自然人たる国民の人権、わけても個人の参政権の行使を不平等なものにし、公正に行わなければならないはずの政治、選挙活動の自由を侵害していると断言してよいであろう。」「政治献金は健全な選挙権の行使あるいは議会制民主主義の発展を阻害する」と評している(吉田善明「企業献金は個人の参政権行使を不平等にする」『論座』2004年7月号186頁[191頁])。
(4) 様々な基本的人権が保障される社会においては、国民の活動の自由には多元性が確保される必要がある。そうでなければ基本的人権を幾重にも保障している意味がないからである。
国民が経済活動を行いたいのであれば、企業を設立したり、企業に出資したり、あるいはまた株式を購入して株主になったりするし、他方、政治活動を行いたいのであれば、政党を設立したり、政党に加入したり、あるいはまた政党に寄付したりするのであるが、これらの場合、経済活動と政治活動とは別々のチャンネルで行えるようになっていなければならない。
一つのチャンネルを自由に選択し、にもかかわらず、その結果として別のチャンネルまで選択したことになるというのであれば、国民の活動は一元化され、国民の多元的活動の自由は保障されないことになる。それは、企業の経済活動を保障することにもなるだろう。
国民が株主になるという経済行為を行っただけで、その企業の政治献金を通じて結果的に政治活動に動員されることになるようだと、国民の多元的活動の自由は保障されないことになるから、企業の政治献金は、国民の多元的活動の自由を侵害していることになる(上脇博之『政党助成法の憲法問題』日本評論社・1999年233頁、同「議員活動の財政的基盤『ジュリスト』1177号(2000年5月1・15日合併号)119頁-121頁))。
(5) したがって、以上のように本件企業献金は、憲法の規定、理念、原理に違反するのであるから、これに反する原判決の判断には憲法違反がある。
以上
●上告受理申立理由書(その1)
平成17年(ネ受)第2号 熊谷組株主代表訴訟上告受理申立事件
申立人 X
相手方 Y1  外2名
上告受理申立理由書(その1)
―原判決は取締役の善管注意義務に関する法令・解釈を誤った違法がある―
2006(平成18)年3月10日
最高裁判所 御中
上告受理申立人代理人
弁護士(代表) 松丸正

目次
はじめに
1 一審の判決と高裁の判決の結論が異なった。政治献金とりわけ業界をあげての巨額の献金をどのように見るかによって結論が変わった
2 原判決は35年前の最高裁八幡献金事件を適用したが、本件政治献金に適用すべきでない
3 八幡政治献金事件を適用するのは誤りであるか又はその審査基準は見直されるべきである
第1 原判決が取締役の善管注意義務について認定した事実
1 本件政治献金については八幡政治献金事件の審査基準によるべきである
2 日建連統一献金の実態について審査する義務がない
3 日建連統一献金の実態を調査しなくても経営判断原則に違反しない
第2 日建連統一献金の政治献金の支出における善管注意義務論
1 日建連統一献金とは
(1) 日建連という業界団体から要請を受けて献金したと一審被告が説明している献金である
(2) この献金の性格は日建連加盟企業が統一的意思のもとにする献金である
(3) 日建連統一献金は公序良俗に抵触する献金である
(4) 日建連統一献金は公序良俗に抵触する危険性のある献金である
(5) この献金実態に合致した注意義務論が要請される
2 日建連統一献金に八幡政治献金最高裁判決における審査基準を適用したのは誤りである
(1) 原判決の注意義務
(2) 最高裁八幡政治献金事件の射程距離は本件日建連統一献金事件に適用すべきでない
(3) 最高裁八幡政治献金事件の審査基準を本件日建連統一献金に適用したのは誤りである
3 政権政党への巨額の政治献金については謙抑的でなければならない
(1) 政治献金の一般的な特質からくる抑制である
(2) 政党への政治献金は必ず弊害がある
(3) 与党への巨額の政治献金は政府の政策を左右する危険性、弊害があることによる抑制原理である
4 以上の日建連統一献金の弊害の事実から政権政党への巨額の政治献金にあたっての取締役の注意義務の内容は次のとおり解されるべきである
(1) 日建連統一献金の危険性と有害性
(2) 日建連統一献金の審査にあたっての注意義務の内容
(3) 注意義務の具体的内容
(4) まとめ
5 一審被告の取締役の注意義務違反
(1) 原判決は日建連が政府・自民党に業界固有の要求をしている事実を意識的に無視した
(2) 1996年(平成8年)5月29日の1176万円、5月30日の705.6万円について何ら審査していない
(3) 1997年(平成9年)2月13日の1167万円、2月14日の700.2万円についても審査していない
(4) 1998年(平成10年)3月30日の1627万円についても審査していない
(5) 1999年(平成11年)9月13日の金1627.7万円についても同様である
(6) 2000年(平成12年)4月20日の1209万円についても同様である
6 原判決の善管注意義務についての法令の解釈、判断は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反がある
(1) 原判決は日建連統一献金の弊害、有害性の審査義務そのものを否定した
(2) 日建連が自民党、政府に対し、種々の要求、要望を出していることは証拠上明らかである
(3) 日建連の熊谷組への要請が「どのような理由で、何故その時期に、総額幾らを献金するのか」ということと分離しては存在しない
(4) 一審被告Y2本人も審査しないことを認めている
(5) まとめ
第3 熊谷組固有献金についての善管注意義務論
1 熊谷組固有献金とは
(1) 熊谷組が直接国民政治協会から要請を受けて献金したと一審被告が説明している献金をいう
(2) 熊谷組固有献金の特質
(3) 原判決は八幡政治献金事件の審査基準で本件献金も判断した
2 本件熊谷組固有政治献金の取締役の善管注意義務違反
(1) 政治献金のずさんな支出は取締役の善管注意義務に違反する
(2) 会社が国民政治協会から単独で寄附要請を受けた場合の注意義務
3 一審被告の審査の実態と義務違反の事実
(1) 一審被告らは上記のような具体的な審査を尽くさず、国民政治協会からの要請だということのみで安易にしかもずさんに献金した
(2) 原判決の誤り
第4 取締役の善管注意義務違反
1 原判決が認定した注意義務論
2 経営判断の原則の誤り
(1) 原判決の解釈の誤り
(2) 経営判断原則とは
(3) 原判決の誤り
(4) 取締役が判断した事実だけでなく判断しなかったことも不注意な誤りになる
(5) 政治献金に関する経営判断をする場合にその判断の前提の事実として認識すべき事実
はじめに
1 一審の判決と高裁の判決の結論が異なった。政治献金とりわけ業界をあげての巨額の献金をどのように見るかによって結論が変わった。
一審判決は、
『これに比し、会社が政党に対して政治資金を寄附することは、会社が有する経済力が個々の国民を圧倒的に凌駕するのみでなく、同一産業界の会社が産業団体を結成して政治資金を寄附するときは、その影響力は個々の会社をもはるかに超えると考えられるから、それが政党に及ぼす影響力は、個々の国民による政治資金の寄附に比してはるかに甚大である。政党の政策が会社あるいは産業団体からの政治資金の寄附によって左右されるとすれば、政党の政治上の主義、施策を選挙において訴え、選挙における国民の選択によってその活動に信任を得るという選挙制度の意義を否定し、その根幹をも揺るがすことになりかねず、政党政治そのものへの批判にも結びつくこととなる。従って、会社あるいは産業団体による政治資金の寄附の規模如何によっては、国民の有する選挙権ないし参政権を実質的に侵害するおそれがあることは否定できない。のみならず、会社あるいは産業団体の政治資金の寄附が特定の政党ないし政治団体にのみ集中するときは、当該政党のみが資金力を増大させて政治活動を強化することができ、ひいては国の政策にも決定的な影響力を及ぼすこととなって、過去に幾度となく繰り返された政界と産業界との不正常な癒着を招く温床ともなりかねない。』
という認識から、政治献金の抑制原理に結びついた。
他方、高裁判決は、この産業界あげての巨額の献金の実態を直視せず、政治献金を単に熊谷組個別企業の献金として矮小化し、その上、会社の社会的役割を果たすものとして積極的に評価している。
『政治資金の寄附は、これを客観的、抽象的に観察すれば、政党の健全な発展に協力する趣旨で行われると解されるのであり、政治資金規正法も会社による政治資金の寄附そのものを禁止することなく、一定の限度でこれを許容していることを考慮すると、特段の事情のない限りは、会社がその社会的役割を果たすためにしたものというべきである。』
一審原告は、熊谷組単独で自民党に献金した2000万円や3000万円の献金を問うているのではない。
ゼネコン大手業界(日建連)は、政府、自民党に公共工事予算の増額や請負工事印紙税の免除等、業界固有の要求を出している。それを実現させるために、日建連加盟企業が一斉に4~6億円の巨額献金をしているのである。このような献金の是非を問うているのである。
2 原判決は35年前の最高裁八幡献金事件を適用したが、本件政治献金に適用すべきでない
しかし、八幡政治献金事件の注意義務論を素直に読む限り、「会社の規模…からみて…合理的範囲内においてその金額等を決定すべきであり、この範囲を越えて不相応な寄附をした場合は取締役の注意義務違反になる」としており、会社にとって分不相応な金額をしてはならないという注意義務である。広辞苑によると、不相応とは「つりあわないこと。ふさわしくないこと。その例として身分不相応」を挙げている。最高裁判決の「会社の規模等…の合理的範囲内においてその金額を決定すべきであり、その範囲を越える…」という判旨は、会社にとって分相応かどうかという対内的基準が審査基準となっている。したがって、この基準は、法的にも社会的にも何らの問題もない場合の献金における審査基準である。
一審原告が主張している日建連統一献金は、熊谷組にとって分相応か不相応かという議論ではなく、日建連統一献金の持つ性質、とりわけその有害性、弊害性を審査基準として審査すべきと主張しているのである。
最高裁の判例の審査基準では、日建連統一献金のごとき献金の審査基準とはなり得ない。政治献金の対外的に果たす役割(有害性やその弊害)を審査基準として定立しない以上、本件日建連統一献金の審査基準とはなり得ない。取締役の審査基準は、上記最高裁基準の前に、その政治献金の対外的社会的役割について審査したかどうかである。
原判決には、日建連統一献金のような巨額献金の持つ弊害性、有害性を何ら審査基準として定立していない最高裁八幡政治献金事件の審査基準を適用した違法性がある。熊谷組固有の政治献金についても同様である。
3 八幡政治献金事件を適用するのは誤りであるか、またはその審査基準は見直されるべきである
この最高裁八幡政治献金事件の審査基準そのものが見直されるか、それとも本件事件に最高裁八幡政治献金事件の審査基準を適用したことについてその是非が問われている。日建連統一献金のような、政権政党に自らの要求をつきつけ、業界と政党との癒着の要となる巨額の献金を許すのかどうかが問われている。
第1 原判決が取締役の善管注意義務について認定した事実
1 本件政治献金については、八幡政治献金事件の審査基準によるべきである
取締役は、会社を代表して政治資金の寄附をなすにあたっては、その会社の規模、経営実績その他社会的経済的地位および寄附の相手方など諸般の事情を考慮して、合理的な範囲内において、その金額等を決すべきであり、この範囲を越えて不相応な寄附をした場合には取締役の会社に対する善管注意義務違反となるところ(最高裁昭和45年大法廷判決参照)、上記(1)認定事実によれば、本件政治資金の寄附がされた平成8年ないし平成12年当時、熊谷組の資本の額は820億8500万円であり(乙8の1ないし6)、その売上高も、いわゆるバブル経済崩壊後の厳しい経済環境にありながら、約8000億円ないし1兆円にも達し、建設業界の中でもその企業規模や経営実績は上位に位置するものであったといえるのに対し(乙6によれば、資本金平均第3位、売上高平均第5位であった。)、本件政治資金の寄附額は前記前提事実(四)のとおり1年間当たり約1200万円ないし2800万円程度と政治資金規正法21条の3第2項による制限額(熊谷組の場合、8700万円)と比較してかなり低額にとどまっており、かつ、上記経済環境のもとで、熊谷組の資産、経営等につき種々の改善の必要性があったとしても、同社による寄附額は年々減額されており、特に平成8年時と平成12年時を比較すれば、半額以下にまで減額されていること、熊谷組は、建設業界の統一的な産業団体である日建連の法人会員であり(甲43)、本件政治資金の寄附の中に日建連の要請を受けてなされたものがあるとしても、上記要請に応ずることが相当でないとはいえないこと、本件政治資金の寄附の相手方である国民政治協会(甲10の1ないし3)は、もとより適法な組織団体であり、その寄附を受ける適格性に何ら問題はないこと等の事情に照らすと、本件政治資金の寄附は合理的な範囲内にあるというべきであり、不相応な寄附とまではいえないから、1審被告らに取締役の善管注意義務違反があったということはできない。
2 日建連統一献金の実態について審査する義務がない
1審原告は、会社の取締役が、政権政党等への政治献金を行うに際し、〈1〉法令又は定款に違反しないか、〈2〉仮に法令、定款に違反しなくとも、企業、業界の要求を実現するため、あるいは企業、業界の要求が実現したことへの対価、あるいは今後とも企業、業界の要求に対し特別の配慮を求める等の献金ではないか、〈3〉業界ぐるみの政権政党への寄附は、政治資金規正法21条の3の立法趣旨に実質上違反していないかの3点につき慎重に検討し、このうち1つでも該当すれば政権政党への政治献金を中止すべき注意義務があるのに、1審被告らはこれを怠った旨主張する。
しかし、会社による政権政党等への政治献金が法令、定款に違反しないことは既に説示したところから明らかであり、本件政治資金の寄附が1審原告主張のような違法な趣旨ないし目的に基づくものであったことを認めるに足りる証拠はなく、さらに、上記(1)認定事実に照らせば、本件政治資金の寄附は、政治資金規正法21条の3第2項に違反するものではなく、また、熊谷組が同条1項2号の「会社のする寄附」として行ったものであって、それが日建連の他の加盟企業と同時期になされたとしても、その一事をもって政治資金規正法21条の3の立法趣旨に違反するものともいえないから、1審原告の上記主張は採用できない。そして、上記説示に照らせば、本件政治資金の寄附につき1審原告が種々主張する具体的な調査が行われなかったとしても、取締役の善管注意義務に違反するものでもないというべきである。
3 日建連統一献金の実態を調査しなくても経営判断原則に違反しない
1審原告は、仮に政治献金の支出について経営判断の原則が適用されるとしても、会社の取締役としては、〈1〉経営判断に具体的法令違反及び公序良俗違反がないこと、〈2〉経営判断が「会社のため」に行われたこと、〈3〉経営判断の前提となる事実の認識に不注意な誤りがないこと、〈4〉経営判断の内容及び経営判断に至る過程に著しい不合理がないこと、の4点について慎重に審査すべき注意義務があるのに、1審被告らはこれを怠った旨主張する。
しかし、会社による政治資金の寄附が公序良俗に違反するものでないことは上記1で説示したとおりであり、他に本件政治資金の寄附を行うに当たっての判断に具体的法令違反があったことを認めるに足りる証拠はなく、同様に、熊谷組の名義で行われた本件政治資金の寄附につき、熊谷組のためではなく、取締役その他特定の者のためにこれが行われたことを認めるに足りる証拠もない。そして、証拠(乙23、29、1審被告Y1)によれば、熊谷組が本件政治資金の寄附を行うに至ったのは、主として、日建連を通じての寄附要請を受けて、従前日建連の加盟グループごとに同要請に応じていたにもかかわらず、これに応じないとすれば、熊谷組が寄附要請を断ったという情報が日建連加盟会社全社に広く知れ渡り、激しい受注競争の中で熊谷組の信用不安情報として同社に不利に働くおそれや、資材メーカーからの資材購入条件が厳しくなるおそれが大きく、ひいては市場の信用を失い、株価も大きく下落するおそれもあったことから、1年間当たり1200万円ないし2800万円程度の寄附をしないことのデメリットの方が大きいと判断したためであることが認められるのであり(乙6、証人Gの供述中、本件政治資金の寄附が自由主義経済体制の維持ないし発展に資するためであるとする部分があるが、その供述内容等を全体的に観察すれば、同寄附が違法不当なものではないことを訴えるべく、その大義名分のみを強調する趣旨に出たものと考えられるから、上記認定を左右するものではない。)、その前提事実の認識における不注意な誤りやその判断に至る過程に著しい不合理があるとはいえないから、1審原告の上記主張は採用できない。なお、本件政治資金の寄附につき1審原告が種々主張する具体的な調査が行われなかったとしても、取締役の善管注意義務に違反するものでもないことは上記ウと同様である。
第2 日建連統一献金の政治献金の支出における善管注意義務論
1 日建連統一献金とは
(1) 日建連という業界団体から要請を受けて献金したと一審被告が説明している献金である(以下、「本件日建連統一献金」という。)
〈1〉 1996年(平成8年)  1月22日  2,758,000円
〈2〉 〃          5月29日  11,760,000円
〈3〉 〃          5月30日  7,056,000円
〈4〉 1997年(平成9年)  2月13日  11,670,000円
〈5〉 〃          2月14日  7,002,000円
〈6〉 1998年(平成10年)  3月30日  18,672,000円
〈7〉 1999年(平成11年)  9月13日  16,277,000円
〈8〉 2000年(平成12年)  4月20日  12,090,000円
上記〈1〉の献金は、一審被告の平成15年11月17日付準備書面において、「700万円以下であるが日建連から要請があった献金」としている。
しかし、一審原告の調査によると、この時期に日建連加盟企業は統一的に寄附をしていない。2,758,000円の金額の寄附をしているのは、3月28日の(株)青木建設、2月1日の鹿島建設の3社だけである。3社だけがほぼ同じ時期に統一的に同額を寄附しているところを見ると、何か特別の理由があったと思われるが被告はそれを説明しない。なお、この金は、後に述べる自民党の国会議員らに対する迂回献金の疑いが濃厚である。
上記〈5〉の献金は、従来、1997年(平成9年)9月14日としていた。しかし、国民政治協会の収支報告書(甲49号証4枚目)によると、同年2月14日となっているので訂正する。
(2) この献金の性格は日建連加盟企業が統一的意思のもとにする献金である。
〈1〉 日建連加盟企業が1996年(平成8年)から2000年(平成12年)までの間に国民政治協会を通じて自民党に一斉に献金した金額の合計は、原告に調査によってもほぼ以下のとおりである(甲57号証の1~4)(甲66号証の1~2)。
1996年(平成8年)   462,576,000円
1997年(平成9年)   448,704,000円
1998年(平成10年)   459,936,000円
1999年(平成11年)   345,507,000円
2000年(平成12年)   256,860,000円
(原告が国民政治協会の収支報告書を調査したものだけで以上のとおりであり、実質はこれよりもっと多いと思われる。)
〈2〉 日建連加盟企業が各グループごとに、日建連で分担した金額をほぼ同時期に献金していることから、日建連が統一的意思のもとに何らかの意図をもって加盟企業に献金させた金であると認められる。
1996年(平成8年)5月29日、同年5月30日に、各グループごとに日建連が分担した金額を一斉に献金している。(甲40号証の1)。
1997年(平成9年)2月13日、同年2月14日も同様に献金をしている(甲49号証)(甲66号証の1~2)。
同一団体に献金するのに、2口に、しかも2日間に分けて加盟企業がグループ別に一斉に献金をしていることからも、日建連の「統一的意思」の存在を裏付けする。
何故、2日間に2口に分けて国民政治協会に献金するのか、一審被告は一切説明しない。同一団体に2日間に2口に分けて献金する経済的合理性はない。おそらくどちらかの金は自民党建設族に迂回献金するための金でなかったと思われる。そうでないなら一審被告は説明すべきであるのに何ら説明しない。その2口の献金は、1998年(平成10年)からは無くなっているのであるからなお不思議である。
1998年、1999年、2000年は2口に分けていないが、日建連がグループごとに分担した金額をほぼ同じ時期に献金していることからも、日建連の「統一的意思」を示している。
〈3〉 一審被告は、日建連から熊谷組に要請があったから献金に応じたという説明をするだけで、日建連加盟企業が何故統一的に自民党に献金をするのか、その目的を一切説明しない。少なくとも、日建連が上記のように統一的意思でもって巨額の献金をするのは日建連の要求を実現させるための献金であったと推定できる。
(3) 日建連統一献金は公序良俗に抵触する献金である。
日建連が以上のごとく統一的意思をもって献金しているのは、原審で縷々述べたとおり、その要求を実現させるため、または実現してもらったことへの対価、あるいは今後とも日建連の要求に対して特別の配慮を求める趣旨の献金であると推定される。この推定を覆す一審被告の反論はない。
政府の政策を金で買収あるいは左右することを目的とした献金である。このような献金は著しく社会的に相当でなく、公序良俗に反する。
(4) 日建連統一献金は公序良俗に抵触する危険性のある献金である。
仮に、日建連統一献金がただちに上記のとおり日建連という業界の要求を実現するための献金か又は政府の政策を買収、誘導、お礼等の対価であると認定できなかったとしても、しかし、ときには公序良俗に抵触する可能性、危険性のある政治献金であると言える。少なくとも、社会的にみて相当性に欠ける可能性のある献金である。
(5) この献金実態に合致した注意義務論が要請される。
ある企業が単独で政党に献金した場合の取締役の注意義務違反を問題としているのではない。日建連統一献金は、上記のような公序良俗に違反するかまたは違反する危険性があり、社会的にみて相当性に欠ける可能性のある献金である。このような献金に対し、八幡政治献金事件の善管注意義務論がただちに適用されるかどうかがまず検討されなければならない。
2 日建連統一献金に八幡政治献金最高裁判決における審査基準を適用したのは誤りである
(1) 原判決の注意義務
「取締役は、会社を代表して政治資金の寄附をなすにあたっては、その会社の規模、経営実績その他社会的経済的地位および寄附の相手方など諸般の事情を考慮して、合理的な範囲内において、その金額等を決すべきであり、この範囲を越えて不相応な寄附をした場合には取締役の会社に対する善管注意義務違反となる(最高裁昭和45年大法廷判決参照)。」として、最高裁八幡政治献金事件の政治献金における善管注意義務論を採用し、会社の規模や経営実績の表面的数字を列挙し、献金額は政治資金規正法の制限額より低額にとどまることを認定し、「本件政治献金は日建連の要請を受けてなされたものがあるとしても、上記要請に応じることが相当でないとは言えない。」として合理的な範囲内にある献金であり、不相応な寄附とまでは言えないとした。
(2) 最高裁八幡政治献金事件の射程距離は本件日建連統一献金事件に適用すべきでない。
〈1〉 八幡政治献金事件の注意義務論を素直に読む限り、「会社の規模…からみて…合理的範囲内においてその金額等を決定すべきであり、この範囲を越えて不相応な寄附をした場合は取締役の注意義務違反になる」としており、会社にとって分不相応な金額をしてはならないという注意義務である。広辞苑によると、不相応とは「つりあわないこと。ふさわしくないこと。その例として身分不相応」を挙げている。最高裁判決の「会社の規模等…の合理的範囲内においてその金額を決定すべきであり、その範囲を越える…」という判旨は、会社にとって分相応かどうかという対内的基準が審査基準となっている。したがって、この基準は、法的にも社会的にも何らの問題もない場合の献金における基準である。
〈2〉 一審原告が主張している日建連統一献金は、熊谷組にとって分相応か不相応かという議論ではなく、日建連統一献金の有害性、弊害性を審査基準として審査すべきと主張しているのである。
刑法上の贈賄罪や政治資金規正法に違反する政治献金の場合に、これを取締役が「会社の規模…等からみて合理的範囲内において寄附金額を決定したのであり、その範囲を越えて不相応な寄附をした」のでないという抗弁が出た場合に、上記最高裁判例の「対内的審査基準」だけではこれを取締役の注意義務違反として問えないことになる。
会社の規模等からみて合理的範囲内の金額であり、不相応な寄附でないけれどもその政治献金の支出は法令上許されないというのは、最高裁の判例の審査基準からは生まれてこない。その政治献金の対外的に果たす役割を審査基準として定立しない以上、無理な審査基準となる。この場合の取締役の審査基準は、上記最高裁基準の前にその政治献金の対外的社会的役割について審査したかどうかである。仮に、慎重に審査して違法でないと判断して献金し、結果として法令違反に問われたとしても、当時の取締役の判断にはその政治献金の対外的役割について慎重な審査が行われたので、注意義務違反がないことになる。
〈3〉 特に、政治献金の支出が、表面的には刑法上の賄賂罪に該当しないが、実質的に違反したり、又は政治資金規正法に明白に違反しないが実質上違反する等の迂回献金であったりする可能性もある。(国会議員一人一人に金を寄附すれば賄賂罪になるが、自民党という組織を通じて政策を買収(献金と政策の誘導との間の対価関係がある場合)すれば、法的には刑法上の賄賂罪ではないかもしれない)。
政治献金の支出は法違反とすれすれの場合があり、それが社会的にみて相当でない寄附に該当する場合も多くある。このような場合に、最高裁の審査基準ではこれを審査する基準がないことになる。
とりわけ日建連統一献金は、日建連の要求と自民党との約束如何ではともすれば刑法上の違法性を帯びる危険性があるのであるから、そもそもそれを審査する基準を定立すべきであり、最高裁判決の審査基準を適用してはならない。原判決は適用してはならない基準を単純に適用した違法がある。
〈4〉 八幡最高裁判決における政治献金の取締役の注意義務に関する審査基準は、本件のような献金についてが争点となった事案ではない。
イ.政党の資金はその一部が不正不当に、若しくは無益に乱費されるおそれがあるにも関わらず……その使途を限定する等の防圧の対策を講じないまま漫然と寄附したのであるから忠実義務に違反すると上告人らは主張するが、そのような主張は原審において主張もなく、立証もない(政党への寄附は定款に違反し、公序に反するから忠実義務に違反すると主張しているだけで、被上告人らの具体的行為を云々するものではない)。
よって、忠実義務違反に関する論旨は前提を欠き是認できない。
ロ.取締役が会社を代表して政治献金の寄附をなすにあたっては会社の規模、経営実績、その他社会的経済的地位及び寄附の相手方など諸般の事情を考慮して合理的な範囲内においてその金額等を決定すべきであり、その範囲を越えて不相応な寄附をなすがごときは取締役の忠実義務に違反する。
ハ.原審の認定した事実に即して判断しても本件寄附は合理的範囲を超えたものとすることはできない。
〈5〉 最高裁八幡政治献金事件の争点は、「定款」に違反するかどうかという争点であった。政党への政治献金の弊害を考慮せず漫然と寄附したという主張は、原審において主張もしていないし立証もしていないのである(上記イの判旨)。
上記ロの政治献金の支出にあたっての一般的注意義務論も原被告がお互いに主張しあって最高裁大判廷の結論に達したものでないので、八幡政治献金事件の注意義務論は自ずから限界がある。政治献金が無償の寄附であるので定款に違反する=政治献金の会社、株主に対する対内的効果の点が争点であったからである。会社の規模、経営実績…を考慮して合理的な範囲内でその金額を決定すべきと論じているのは、企業の対内的側面だけを考慮してその金額を決定すべきとしているのである。したがって結論においても、会社にとって分相応でない「不相応な寄附」を違反としていることからも明らかである。
(3) 最高裁八幡政治献金事件の審査基準を本件日建連統一献金に適用したのは誤りである。
最高裁八幡政治献金事件の審査基準を本件日建連統一献金に適用したことは誤りであり、この違法は判決の結果に重大な影響を与える。
以下、日建連統一献金における審査基準を述べる。そのためには日建連統一献金の実態から考察する必要がある。
3 政権政党への巨額の政治献金については謙抑的でなければならない
(1) 政治献金の一般的な特質からくる抑制である。
〈1〉 政治献金の無償性である。
政治献金は企業への見返りを期待してなすことができない性質の寄附である。通常の事業活動は営利追及のためになすのに対し、政治献金はそうではなく又はそうあってはならないのである。
〈2〉 政治献金は通常の事業活動と異なる。経済ルールである費用と効果の関係が全く説明できない性質のものであるからである。
すなわち、通常の事業活動の場合は、これだけの費用を支出(投下)すればこれだけの利益効果が出るということが経済的に予測可能である。しかし、政治献金は、これだけの金を政党に寄附すればその会社にとってこれだけの利益、効果が生じると予測することは経済的に不可能である。しなかったからといってその会社に損失が生じると予測することも経済的に不可能である。
〈3〉 社会貢献活動とも異なる
政治献金は個人の選挙における投票の自由と裏表をなすものであり、かつ極めて政治性が高いものであるから、個人の思想、信条と結びつく事柄である。すなわち、政党への政治献金はイデオロギーの問題であり、必ず対立する問題である。これに対して社会貢献活動は、圧倒的多数の人々が賛同する行為である。
(2) 政党への政治献金は必ず弊害がある。
政治献金は直接その政党そのものを支え、競争政党に敵対する極めて排他的性格を有する支出であるからである
〈1〉 政党は政治上の主義もしくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対することを目的とする団体で、かつ特定の公職の候補者を推薦し、支持し又はこれに反対することを目的とする政治団体(規正法3条1項)のうち、国会議員等を有するもの(政治資金規正法3条2項)であると定められている。
広辞苑によると「政党とは、共通の原理、政策を持ち、一定の政治理念実現の為に政治権力への参与を目的に結ばれた団体である」とされている。
この法律上ならびに政治学上の政党の各定義からみても抽象的一般的に議会制民主主義とか市場主義という理念だけではなく、時々の政治上の主義や施策に賛成、反対等で対立、競争することを本質的に有する団体である。
その点では政党の存在そのものは極めて党派的であり、政治的であり、対立、競争する反対政党の存在を前提としている(この対立、競争がなければ独自の政党として存立基盤がなくなり、その政党は合同するか、一方は消滅する本質を有している)。
〈2〉 議会制民主主義とは政党が政権を掌握し、これを運営して動く政治システムであり、時々にはその交替があることを前提としている。各政党は政権奪取を目的としており、それを目的としない政党はない。
政党が2つ以上存在するとすれば、それはお互いの政治上の主義や施策の違いで対立しているのであり、これが政党の政党たるゆえんである。
この一方の政党に献金することはその対立、競争関係に立つ、他方の政党に反対することを直接意味する弊害を有している。
同じ無償の寄附である社会貢献活動とは基本的に異なる点である。
〈3〉 そして献金額が多くなればなるほどこの弊害が生じる性質のものである。
(3) 与党への巨額の政治献金は、政府の政策を左右する危険性、弊害があることによる抑制原理である。
〈1〉 企業献金一般は上記のとおりの特質があり、かつ上記弊害を有している。業界で統一的に政権政党へ行う巨額の献金は、前記に述べたとおり公序良俗に反する危険性がある。
ゼネコン業界をあげて特定の政党に巨額の献金をすると、その政党はその業界の金に依存し、その結果、その業界の要求に対して積極的に応じるようになり、そのためにまた業界は献金を繰り返す。とりわけ、業界をあげての献金は巨額であるが故に、その影響力で、個々の国民の「言論」によって政党が政策を実現するという民主主義の根本原則を崩してしまうこととなる。
〈2〉 国と請負関係に立つゼネコン業者が業界をあげて国の公共工事費の増額、追加要求を政権政党にすると、その弊害は顕著となる。
政治資金規正法22条の3は、「国から補助金、負担金、利子補給金、その他の給付金を受けている会社はそれを受けた日から1年間政治活動に関する寄附を禁止」している。これに違反すると3年以下の禁固等刑罰でもって禁止されている(法26条の2、1項)。この立法趣旨は、国または地方公共団体から補助金等や出資等を受けている会社その他の法人が、補助金等や出資等を受けているということにより国または地方公共団体と特別な関係に立っており、その特別な関係を維持または強固にすることを目的として不明朗な政治活動に関する寄附がなされるおそれがあるので、それを防止しようとするものである(「政治資金規正法第2次改訂版」ぎょうせい196頁)。
国等の公共工事を受注することにその企業の存立が関わっているゼネコン業者が国の公共工事の増額、追加要求を求めて政権政党に巨額の献金をすると、法22条の3に直ちには違反しないが、この立法趣旨に反することになる。
〈3〉 特に、業界ぐるみで統一した巨額の献金で1億円を大幅に超える場合には、政治資金規正法21条の3(寄附の総額の制限)の趣旨にも違反または抵触する。
同法は、会社の行う寄付について資本金別に寄附の総額を制限している。750万円から最高1億円までである。この寄附制限は1社あたりの寄附総額を規制し、その違反は1年以下の禁固または50万円以下の罰金となり、刑罰をもって禁止されている(法26条)。従前は、会社、団体の総額規制はなかったが、この条文が設けられたのは昭和51年であり、企業、団体の巨額の献金が政党、政治家を腐敗、汚染した結果である。
この条文が新設された立法上の根拠は、一企業が1億円を超える献金を政党等に行うと、それだけでその政党の活動への支配力は絶大となる。そのため、その政党への影響の甚大さを少なくするために制限したものである。金額の大きさに着目して、1億円以上の献金を政党等にしてはならないとしたのである。
この趣旨からすると、一企業からの献金では政党が支配されるが、業界からの献金だと政党は支配されないということにはならない。政治資金規正法の条文上、1億円以上の献金が禁止されているのは一企業単位であるが、仮に業界が意思統一をなしてその加盟企業が特定の政党に献金するとなると、個別企業単位でみれば同法違反とはならないものの、業界単位で献金すれば1億円以上が自由に許されることとなり、同法の1億円以上を禁止した立法趣旨が没却されることになる。
その点から見ても、業界で統一した1億円以上の献金を目的として個々の企業が献金することは、法令に直接違反しなくともその立法の趣旨に違反するのであるから、そのような業界での統一的な献金は禁止またはきわめて慎重でなければならない。
4 以上の日建連統一献金の弊害の事実から、政権政党への巨額の政治献金にあたっての取締役の注意義務の内容は次のとおり解されるべきである。
(1) 日建連統一献金の危険性と有害性
〈1〉 会社の取締役は、政権政党等への政治献金をするに際して、政治資金規正法等法令の範囲内であれば、取締役が何らかの「有用性」があると判断すれば自由になし得るわけではない。
そもそも、政党等への政治献金は前記のとおり弊害を有している。とりわけ、政権政党への国と請負関係に立つゼネコン会社の献金は、金額如何ではその政策を左右する危険性や弊害がある。一企業だけでなく、業界全体での与党への巨額献金も与党の政策を通じて政府の政策をも左右する危険性がある。公序良俗に違反するか、仮に違反しなくても違反する危険性のある献金である。少なくとも、社会的にみて相当な行為であるとはいえない献金である。そのような巨額献金についての弊害面を慎重に検討し、その弊害面が少しでもある場合にはそのような政治献金を中止すべき注意義務がある。
何故なら、政権政党の政策を業界全体で左右すれば、政府の政策にそれを反映させ、政府の政策を業界全体で金で左右または買収することになり、民主主義の根本秩序に反することになるからである。
〈2〉 政権政党への業界の統一的献金が直ちに政府の政策を左右するかどうか因果関係に疑義がある場合であっても、政権政党への政治献金をするかどうかは慎重に検討すべき注意義務がある。少なくとも社会的にみて相当な行為でない以上、慎重な審査をしない政権政党への献金は取締役の注意義務に違反する。
(2) 日建連統一献金の審査にあたっての注意義務の内容
以上を前提にすると、国と請負関係に立つ会社の取締役が政権政党への政治献金を行うか否かの取締役の審査基準は次のとおり定立されるべきである。
〈1〉イ.法令または定款に違反するかどうか
ロ.仮に法令、定款に違反しなくとも、企業、業界の要求を実現するため、あるいは企業、業界の要求が実現したことへの対価、あるいは今後とも企業、業界の要求に対し特別の配慮を求める等の献金であるかどうか。
をまず審査すべきであり、もし上記イ、ロのひとつにでも該当すれば政権政党への政治献金をしていはならない注意義務があるのである。何故なら、上記イ、ロに反すれば公序に反するからである。
〈2〉 仮に、公序に反すると断定できない場合でも、日建連で統一して献金する献金は日建連の政府、自民党への要求との関係で業界の要求を実現する献金、それへの対価、あるいは今後へ特別の配慮を求める献金に抵触する危険性があるのであるから、通常の献金とは異なった慎重な審査が要求される。慎重な審査をしないで行う献金は、ずさんな献金として取締役の注意義務違反となる。
(3) 注意義務の具体的内容
その結果、日建連から要請があったとき、取締役は上記のとおり公序に反するか又はその危険性があるのであるから、その審査義務内容は次のとおり具体的な審査が要求される。
・国民政治協会から日建連に対し、総額いくらの寄附要請があるのか。
・それに対し、日建連がどのような理由でどれくらいの献金を加盟企業に要請するのか。
・日建連が自民党、政府に具体的に要求している事柄との間で、賄賂性や公序良俗に抵触しないのかどうか。またはその危険性がないのかどうか。
・献金するとすればいつ献金するのか。
等の前提事実について、慎重に審査すべき注意義務がある。
(4) まとめ
以上の審査を行わず、漫然となす政治献金は、審査義務を尽くしていないいわばずさんな献金であり、善管注意義務に違反すると解すべきである。
5 一審被告の取締役の注意義務違反
(1) 原判決は、日建連が政府・自民党に業界固定の要求をしている事実を意識的に無視した。
一審被告のY2証人は、日建連が、「どのような理由で、何故その時期に、総額いくらと決めて献金するのか」という事実に対してどのように判断して献金したのかという説明をしない。日建連という業界で決まったから、それに応じて献金するのが妥当だと判断したということばかりである。
日建連統一献金は、下記の図のように〈A〉と〈B〉は一体なのである。すなわち、〈C〉の献金は日建連の〈A〉の活動を抜きに判断することは許されないのである。
〈省略〉
日建連加盟企業が統一的に献金する以上、まず上記〈A〉が基本なのである。その日建連加盟企業の自民党への献金理由〈A〉を具体的に審査せず、〈B〉の面だけ、すなわち決まったことだからそれを拒否するか否かという判断は日建連という統一的献金の一面を判断しただけであり、最も重要な日建連で政府・自民党に要求を出し、統一的に献金する〈A〉という本質部分を審査していない。
(2) 1996年(平成8年)5月29日の1176万円、5月30日の705.6万円について、何ら審査していない。
日建連からの統一的献金であることは甲40号証の1を見れば明白である。この支出についてはきわめて非合理的である。日建連が国民政治協会=自民党に統一的に献金をするとしても、何故2口に分けてするのか。しかも5月29日は総額の62.5%、5月30日は総額の37.5%である。何故2日に分けて一斉に献金するのか、その理由が一切説明されていない。
ところで、日建連から仮に要請があったとしても、熊谷組がこれに応じる以上、一審被告としては、
・日建連として総額いくら自民党に寄附するのか
・どのような理由から日建連で統一的に献金するのか
・日建連が自民党、政府に要求していることとの関係で公序に反しないかどうか
・何故この時期にするのか
・何故2口に分けて連続して支払うのか
について慎重な審査をすべき義務があるが、それをしていない。
主張も立証もないとなれば、この献金について慎重な審査を尽くしたことにはならないことを示している。
(3) 1997年(平成9年)2月13日の1167万円、2月14日の700.2万円についても審査していない。
日建連が統一的に献金している(甲66号証の1、2)ことは、証拠上明白である。
この場合についても、
・日建連としては国民政治協会=自民党に総額いくら献金するのか
・何故この時期にするのか(昨年は5月29日、5月30日であったのに、今年は2月14日、15日)
・日建連として、自民党、建設族議員にどのような要望を出し、この金が対価性=賄賂性を帯びないのかどうか
・何故2日に分けて2日に連続して分割して支払うのか
・一方は自民党建設族の議員に対する迂回献金ではないのか
等について、慎重な審査が求められるべきところ、それを一切検討した形跡がない。
(4) 1998年(平成10年)3月30日の1627万円についても審査していない。
日建連が統一的に献金をしている(甲40号証の2)ことも証拠上明白である。このような日建連の統一的献金についても、
・日建連として国民政治協会=自民党に総額いくら献金するのか
・日建連として自民党、建設族議員にどのような要望を出し、この金の交付が対価性や賄賂性を帯びないのか
・昨年までは2日に分けて献金していたのにどうして今年は1口にするのか
等について、慎重に審査すべきであるのにそれを一切していないずさんな支出である。
(5) 1999年(平成11年)9月13日の1627.7万円(甲40号証の3)についても同様である。
これについても前記(4)同様に慎重に審査をすべきであるのに、それを尽くしていない。
(6) 2000年(平成12年)4月20日の1209万円についても同様である。
上記(4)同様に慎重に審査をすべきであるのにそれを尽くしていない。
6 原判決の善管注意義務についての法令の解釈、判断は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反がある。
(1) 原判決は日建連統一献金の弊害、有害性の審査義務そのものを否定した。
原判決は、「一審原告は種々主張する具体的な調査が行われなかったとしても、取締役の善管注意義務に違反するものでない」と上記審査義務そのものを否定した(34頁の15行目)。
しかし、「日建連として総額いくら自民党に寄附をするのか」特に「どのような理由から日建連で統一的に献金するのか」について審査しなければ、業界をあげて与党である自民党ひいては政府の政策を買収する危険性、弊害面を一切審査する必要がないということになる。これでは法例違反について審査義務を否定したことになる。
一審原告らは本件日建連統一献金は控除に反すると主張した。これに対し、原判決は、「違法な趣旨ないし目的に基づくものであることを認める証拠はない」として証拠上採用しなかった。
しかし、一審原告は、本件献金が客観的に違法な趣旨ないし目的に基づくものでなかったとしても、取締役として、それに該当するかどうか具体的審査内容を挙げ慎重な審査義務のあることを主張しているのである。いわば前者は違法な趣旨、目的の献金に客観的に該当するかどうかの問題であるのに対し、一審原告が縷々主張しているのは、取締役が献金にあたってどのような事情を考慮し判断したのかという主観的な問題を述べているのである。原判決はこのような主観的な審査基準を一切否定したのである。
一審被告らがこのようなことも審査した上でなお法令にも違反しないし又は公序にも反しないと判断したのなら、それは一種の経営判断として是認される余地もあるが、一審被告らはそもそもそれを審査していないのである。原判決のこの点に関する善管注意義務の判断は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があることになる。
(2) 日建連が自民党、政府に対し、種々の要求、要望を出していることは証拠上明らかである。
日建連が各社に対し統一的に献金するよう要請し、そのもとで国民政治協会に各社が一斉に献金していることも証拠上明らかである(日建連のHP上に掲載されている甲18~19号証、甲40号証、甲44~47号証、甲49号証の収支報告書、甲57号証)。
ところが、原判決は違法な趣旨、目的で献金したという証拠がないと認定した。これはいわば上記の客観的問題である。しかし、一審被告は、日建連の要求や日建連全体で統一的に献金している事実についてはそもそも審査していないのであるから、原判決がそのように判断することはそもそも不可能なはずである。
(3) 日建連の熊谷組への要請が「どのような理由で、何故その時期に、総額幾らを献金するのか」ということと分離しては存在しない。
〈省略〉
すなわち、〈B〉(要請)と〈A〉(要求)は不可分なものである。〈B〉(要請)があるのは、〈A〉(要求)の自民党、政府への要求があるからであり、日建連加盟企業の〈C〉(献金)と因果の連鎖である。これは経験則と是認される。
しかし、原判決は〈A〉(要求)を何ら考慮せず、〈B〉(要請)だけを分離して前記のとおり判断しているのであるから、このような〈A〉と〈B〉とを分離するだけの「特段の事情」について何ら理由を述べることなく「日建連の要請に応じることが相当でないとはいえない」とする原審の判断は、証拠及び微表の評価考量を十分尽くさなかった違法があり、破棄を免れない。
講学上、この点については次のとおり述べられている。
原審の証拠および微表の評価考量が十分尽くされていなかったと認められる場合(評価を尽くすべき義務の違反)、これは実務上採証法則の違反と呼ばれる場合である。
この類型に属するものとしては、
〈1〉 原審が一定の証拠資料または微表を顧慮しなかったが、もし正当に顧慮していたならば反対の事実認定に至りうることが経験則上認められる場合
〈2〉 一定の証拠資料に基づきある事実が認定されているが、その証拠資料からは逆の事実が認定されるべき場合
〈3〉 経験則に基づかないでみだりに証拠を排除する場合(最判昭34・6・23裁判集民36号763頁、最判昭38・4・19裁判集民65号593頁(債務者が領収書は所持していないが借用証書を所持しているほか、証人らが債務の弁済を証言している場合、原審がこれを排除して弁済の事実を否定したのを審理不尽ないし理由不備の違法があるとして破棄))
〈4〉 成立が認められた書証に原審認定の事実と相容れない記載があるのに、この点につき何ら説明を加えないで判断の資料としない場合(大判昭6・6・23裁判例5巻民事117頁、大判昭9・3・16裁判例8巻民事56頁、最判昭32・10・31民集11巻10号1779頁、最判昭40・2・5・裁判集民77号305頁など多数)。
(4) 一審被告Y2本人も審査しないことを認めている。
十日会で、自民党に対し、総額どれだけの献金をするかという問いに対しては、
その中には、日建連、十日会で総額自民党に対してどれだけの献金をするかというような数字は書いていないですか。
「これには書いておりませんが、十日会で協議されたと聞いております。」
あなたの稟議書の中には出ていないんですか。
「出ておりません。」
あなたの方の稟議書が上がってきたときには、じゃ日建連全体でどれだけの総額を自民党にするからという数字は、一切あなたはわからないわけですね。
「わかりません。」
(同調書27~28頁)
十日会で議論された内容についても、
あなたは、この3月30日の十日会で議論された内容というのは聞いていらっしゃるわけ。
「聞いておりません。」
(同調書27頁)
十日会に要請があったというのはいつごろの話なんですか。国民政治協会か自民党というのがこのときあったというのは。
「わかりません。」
それも聞いてはいないんですか。
「はい、記憶にありません。」
平成11年もあなたの方の会社が献金していますけども、十日会に国民政治協会か、または自民党から要請があったのはいつかと、こういうことも御存じないですか。
「はい。」
平成12年、あなたが決裁されたものも同じですか。
「はい。」
一般的な話、あなたが知っている範囲で結構ですけれども、十日会に要請があるのは国民政治協会ですか、それとも自民党ですか。
「国民政治協会です。」
国民政治協会、どなたさんから要請があると聞いていますか。
「人の名前は聞いておりません。」
いや、役職でいいです。
「役職も聞いておりません。国民政治協会から十日会の方にあったということで。」
具体的にどんな要請があるんですか。
「具体的には、正確な内容は全く知りません。」
正確な内容なくして、あなたの方は、じゃ十日会で決まったんだから、これはよしとして献金したと、こういうことなんですね。
「はい。」
(同調書31頁)
平成11年9月13日の1627万7000円の献金については、
何で、じゃこの時期に献金要請があったんですか。
「それはわかりません。」
(同調書32頁)
日建連が何故この時期にどのような理由で自民党に総額献金をするのかについて、Y2社長は一切審査していないことは明らかである。
日建連が自民党に対して要求していることについては、
「先ほども申し上げましたけど、十日会でどのような議論して決めているかということは、私は存じておりません。」
あなたは知らないから、あなたが献金するに当たって、そのことは考慮はしなかったということですね。
「はい。」
十日会でなぜこの時期に全体として約3億円とか5億円を献金するということを相談した内容というのは、…あなたのところには報告が上がっていないんですね。
「はい。」
あなたは、じゃそのことを考慮しないで献金しているわけですね。
「はい。」
(同調書37頁)
(5) まとめ
原判決も違法な趣旨ないし目的の献金であれば許されないと解しているように思われるが、そうであるならば取締役はその政治献金をする以上、その献金が違法な趣旨ないし目的の献金であるかどうか審査する義務があるはずである。
しかるに、原判決は、そのような審査義務そのものを否定した。このような善管注意義務に関する法令の解釈は判決に影響を与えることになる。
第3 熊谷組固有献金についての善管注意義務論
1 熊谷組固有献金とは
(1) 熊谷組が直接国民政治協会から要請を受けて献金したと一審被告が説明している献金をいう(以下これを「本件熊谷組固有献金」という。)
〈1〉 1996年(平成8年)  3月14日 1,000,000円
〈2〉 〃          5月10日  600,000円
〈3〉 〃          9月13日 5,000,000円
〈4〉 1997年(平成9年)  2月10日 3,000,000円
〈5〉 1998年(平成10年)  3月19日 2,000,000円
〈6〉 1999年(平成11年)  4月8日   24,000円
〈7〉 〃          12月29日   24,000円
〈8〉 2000年(平成12年)  4月27日  200,000円
(2) 熊谷組固有献金の特質
〈1〉 一審被告は、以上の献金は国民政治協会から要請があったので献金したと説明している。しかし、国民政治協会が上記の献金を特別に熊谷組1社にだけ、または数社にだけ要請することはあり得ない。熊谷組が自民党のある特定の国会議員に向けたいわゆる迂回献金の可能性が高い献金である。このような趣旨の献金も政治資金規正法を脱法する献金である疑いが濃厚であるから社会的に相当でなく、公序良俗に反する。
〈2〉 仮に脱法献金でなかったとしても、そのような疑いのある献金については慎重な審査が要求される。
(3) 原判決は八幡政治献金事件の審査基準で本件献金も判断した。
このような献金の善管注意義務を検討するにあたっては、この献金の実態特質を検討すべきであるのにそれをなさなかった違法がある。八幡政治献金事件の審査基準で本件献金も判断した違法性は、日建連統一献金にのった理由と同一である。
2 本件熊谷組固有政治献金の取締役の善管注意義務違反
(1) 政治献金のずさんな支出は取締役の善管注意義務に違反する。
〈1〉 政治献金は抑制的でなければならない
政治献金は、通常の事業活動や社会貢献活動と異なる特質を有している。このような政治献金の支出が会社にとって直接の対価性が認められない無償の支出である以上、政党の政策が自由主義体制等において実績と能力があると判断したというだけでは正当化できない。そのような抽象的理由で政党への政治献金ができるとなれば、法の枠内である限り取締役の大幅な自由裁量を認めたことに等しいからである。
〈2〉 訴外会社は国の公共工事を継続的に受注するという特別な関係に立っているので、政治献金についてはなお抑制的でなければならない。
熊谷組は政治資金規正法22条の3の補助金等を給付されていないことは事実である。しかし、同条の立法趣旨から見ると、売上金の30%前後が官公庁の公共工事である(甲41号証の8、27頁以下)以上、政治献金について慎重に審査をして献金すべきである。まして、政治資金規正法12条を脱法するかのごとき迂回献金に該当する疑いがあるときは献金を中止すべきである。
(2) 会社が国民政治協会から単独で寄附要請を受けた場合の注意義務
〈1〉 何故熊谷組だけに国民政治協会から要請がくるのか、何故要請のある金額でなければならないのか。何故この時期に献金をするのか、何故日建連統一献金以外に献金をする必要性があるのか、さらには、国民政治協会から自民党に交付されたあと何に使われるのか、迂回献金ではないのか、等について慎重に審査をして、その要請に合理的理由がある時は献金に応じることは許されるが、その要請に合理的理由がない場合は献金を中止すべき注意義務があると解すべきである。
〈2〉 何故なら、国民政治協会は約1万人の法人と約8000人の個人会員が会員登録をしており、個人献金5億円、企業、団体献金41億円等、計74億円を集めて自民党に寄附している政治団体である(甲10号証の1~3)。
このような企業献金を統一的にしている団体が、ある特定の企業に対してある特定の金額の要請を行うことは一般的に考えられない。
通常、国民政治協会が個別企業へ直接要請する場合は年会費等の費用負担であると思われるが、法人企業は年間1口5万円くらいである(甲10号証の3、4枚目の法人会費欄参照)。
熊谷組は、上記個別献金のうちどれが年会費であるかの主張も立証もないので、一般寄附と考えざるを得ない。そうすると、前記のとおり、国民政治協会が約1万社もある企業の中の特定の企業に対し、500万円、100万円、2.4万円などと要請することはあり得ない。あるとすれば、結局のところ、国民政治協会を通じての個別国会議員に対する迂回献金であると考えるのが経験則である。
迂回献金とは、企業が自民党の国会議員または国会議員が主催する政治団体(政党支部等)に対して直接支払うと賄賂性が認定または疑われるため、国民政治協会の事務局と自民党の事務局が事前に了解して支払うやり方である(甲48号証の1~4)。このような報道は日歯連の件であるが、前記熊谷組の個別献金を見ると、単に国民政治協会から要請があった献金という認定をすることはできない。
〈3〉 よって、このように、もし国民政治協会を通じての献金要請があったとすれば、
・何故国民政治協会から熊谷組に対してだけ献金要請があるのか
・他の企業に対しても要請があるのか
・何故この時期で、何故そのような金額なのか
・企業と国会議員との迂回献金でないかどうか
等の事実について、「前提となる事実」について正確な情報を収集して献金をすべき注意義務があるはずである。
3 一審被告の審査の実態と義務違反の事実
(1) 一審被告らは、上記のような具体的な審査を尽くさず、国民政治協会からの要請だということのみで安易にしかもずさんに献金した。
以下、審査の実態を述べる。
3月19日に200万円献金をしているんですけれども、これは日建連とは別なんですね。
「はい。」
それは、どういう要請があったんですか。
「これは、国民政治協会から直接秘書部にあったと聞いております。」
何と言って。
「寄附の要請としてです。」
寄附の要請としてって、寄附をしてくださいと、こういうことなんですか。
「はい、そのとおりです。」
金額は。
「これは200万円だと思います。」
200万円してくださいと。
「はい。」
(同調書40~41頁)
熊谷組以外に数社、ここで200万円した企業とか若干ありますから、この前後のところに。A社、B社、C社及び熊谷組に対しての献金を今国民政治協会は要請していますと、ぜひ御協力をお願いします、こういう要請があったんですかと聞いている。
「今のおっしゃった意味は、他の会社の名前もあったかということですか。」
そう。
「それはなかったと思います。」
そうすると、あなたの会社自体の判断では、国民政治協会が直接あなたの会社に要請に来たら、何でうちだけだということになるんじゃないんですか。
「私は、特別にそこに疑問を感じませんでした。」
感じなかったので、国民政治協会から言われるままに、まあいいだろうということで決裁をしたと、こういうことですか。
「はい。」
それ以外の理由はないんですか。
「はい。」
甲第40号証の4を示す
4月27日に20万円をしていますね。
「はい。」
これは、だれから要請があったんですか。
「これも国民政治協会と聞いております。」
どういう要請があったんですか。
「一般的に寄附の要請があったと。」
あなたの会社は、じゃ国民政治協会からあれば、みんな言われたままに寄附しているんですか。
「国民政治協会につきましては、先ほど言ったように趣旨に協賛しておりますので、特に金額的にも大きくなかったんで、していると思います。」
20万円ですからね。
「はい。」
ただ、4月20日にあなたの方が1209万円しているんですよ。その後何でまた追加来るねんと、普通やったらだれでも疑問に思いますけどね。4月20日の1週間後ですよ、これ。あなたは疑問に思わなかったの、それは。
「疑問に思いませんでした。」
(同調書41~42頁)
(2) 原判決の誤り
しかるに、原判決は、このようなずさんな献金について何らの審査をせず、国民政治協会から言われるままに献金した献金でも「不相応な寄附」でないとして肯定した違法がある。
第4 取締役の善管注意義務違反
仮に、政治献金の支出について経営判断原則が適用されるとしても、一審被告の経営判断はその原則を逸脱している。
1 原判決が認定した注意義務論
1審原告は、仮に政治献金の支出について経営判断の原則が適用されるとしても、会社の取締役としては、〈1〉経営判断に具体的法令違反及び公序良俗違反がないこと、〈2〉経営判断が「会社のため」に行われたこと、〈3〉経営判断の前提となる事実の認識に不注意な誤りがないこと、〈4〉経営判断の内容及び経営判断に至る過程に著しい不合理がないこと、の4点について慎重に審査すべき注意義務があるのに、1審被告らはこれを怠った旨主張する。
しかし、会社による政治資金の寄附が公序良俗に違反するものでないことは上記1で説示したとおりであり、……。
そして、証拠(乙23、29、1審被告Y1)によれば、熊谷組が本件政治資金の寄附を行うに至ったのは、主として、日建連を通じての寄附要請を受けて、従前日建連の加盟グループごとに同要請に応じていたにもかかわらず、これに応じないとすれば、熊谷組が寄附要請を断ったという情報が日建連加盟会社全社に広く知れ渡り、………1年間当たり1200万円ないし2800万円程度の寄附をしないことのデメリットの方が大きいと判断したためであることが認められるのであり(乙6)……その前提事実の認識における不注意な誤りやその判断に至る過程に著しい不合理があるとはいえないから、1審原告の上記主張は採用できない。なお、本件政治資金の寄附につき1審原告が種々主張する具体的な調査が行われなかったとしても、取締役の善管注意義務に違反するものでもないことは上記ウと同様である。
2 経営判断の原則の誤り
(1) 原判決の解釈の誤り
原判決の、前記のとおり、その前提となる事実の認識に不注意な誤りやその判断に至る過程に著しい不合理があるとはいえないという解釈は誤りである。
(2) 経営判断原則とは
〈1〉 経営判断の前提となる事実の認識に不注意な誤りがないこととは、次のとおりである。
経営判断をするには、判断の基礎となる資料・情報に基づく事実の認識が必要である。経営判断が適切になされるには、その前提となる事実の認識が正しいことが必要である。そのため、経営判断をするに際して、調査や必要があれば専門家への意見聴取等をして十分な資料・情報を収集する必要がある。その上で、収集した資料・情報を検討し、経営判断の前提である事実を認識することになる。
〈2〉 経営判断の内容および経営判断に至る過程に著しい不合理がないことは、次のように解されている。
ⅰ)経営判断の内容の合理性
その意味では、経営判断に合理性が要請されるとしても、著しく不合理でない限りは、経営判断に義務違反を認めるべきではない。換言すれば、経営判断の内容が同じ企業人の目から見て明らかに不合理である場合には、経営判断の原則の適用を認めることはできない。
ⅱ)経営判断に至る過程の合理性
会社にとって重大な影響をもたらす経営判断は、取締役会で十分な検討の上で、経営判断が下される。
(3) 原判決の誤り
日建連統一献金について、日建連が「どのような理由で、何故その時期に、総額いくらと決めて献金するのか」という事実に対してどのように判断して献金したのかということについて、原審は判断する必要がないという。日建連という業界で決まったから、それに応じて献金するという理由に著しい誤りがないというのである。
しかし、前記に述べたように、日建連から要請のある献金は日建連の活動を抜きに判断することは許されない。
〈省略〉
日建連加盟企業が統一的に献金する以上、上記〈A〉がまず基本であって、そして〈B〉の要請があるのである。その日建連加盟企業の自民党への献金理由〈A〉を何ら吟味せず、〈B〉の面だけ、すなわち決まったことだからそれを拒否するか否かという判断に著しい合理性を欠かないという原審の判断は、最も重要な日建連で統一的に献金する〈A〉という本質部分を検討していない。
(4) 取締役が判断した事実だけでなく、判断しなかったことも不注意な誤りになる。
原判決の判断の誤りは、例えば脱法的な政治献金をした場合でも同じように取締役の判断のみを見ているのであるから、「不注意な誤りやその判断に至る過程に著しい不合理があるとはいえない」ことになる。
ある企業に融資した金が不良債権となった場合に、取締役の当時の「回収の可能性」だけを判断すればよいというのでは、全て取締役の判断に誤りがないことになる。問題は、取締役がそのように判断した場合に、その他の諸事情をどう考慮すべきか、それとも一切考慮する必要がないのかという問題に帰着する。原審は、その必要性がないということである。取締役の当時「主観的な理由」の合理性だけであり、それ以外の反対の可能性や危険性についておよそ考慮する必要がないということになる。その点で、原審の判断には法令の解釈の誤りがあることになる。
以上を前提にすると、取締役の注意義務の判断には次のことが要求される。
(5) 政治献金に関する経営判断をする場合に、その判断の前提の事実として認識すべき事実。
本件日建連統一献金について、日建連から要請がある以上、
・国民政治協会から日建連に対し、総額いくらの寄附要請があるのか。
・それに対し、日建連がどのような理由でどれくらいの献金を加盟企業に要請するのか。
・日建連が自民党、政府に具体的に要求している事柄との間で、賄賂性や公序良俗に抵触しないのかどうか。
・献金するとすれば、いつ献金するのか。
・自民党本部に入った企業献金は何に費消されるのか。
等の前提事実について、正確な認識をすべきである。
何故なら、政治献金に関する経営判断をする場合には、その判断の前提として、上記の事実認識なくして政治献金に関する適切な判断ができないからである。
以上
●上告受理申立理由書(その2)
平成17年(ネ受)第2号 熊谷組株主代表訴訟上告受理申立事件
申立人 X
相手方 Y1  外2名
上告受理申立理由書(その2)
― 原判決における熊谷組の経営、財務状況の判断は経験則に違背し、経営が危殆に瀕していたことを正当に判断すれば、原判決の善管注意義務違反はより明白である ―
2006(平成18)年3月10日
最高裁判所 御中
上告受理申立人代理人
弁護士(代表) 松丸正

目次
原判決の本件政治資金の寄附がなされた当時の熊谷組の経営、財務状況の判断は経験則に違背するものである
1.原判決の判示した熊谷組の経営、財務状況についての判断
2.熊谷組の資産、損益についての実質的判断を踏まえた善管注意義務
(1) 本件政治資金の寄附にあたっての経営実績、財務状況の判断について
(2) 商法、企業会計原則による販売用不動産等の流動資産の評価原則
(3) 熊谷組らゼネコン各社の強制評価減先送りを注意喚起した公認会計士協会の通知
3.有価証券報告書による熊谷組の営業状況
(1) 「営業の状況」
(2) 損益状況
(3) 各経営計画の破綻
4.熊谷組の最大の経営課題としての特別損失処理
(1) バブル崩壊期の国内外の大規模開発事業失敗による巨額損失の発生
(2) 平成10年、13年、15年各3月期の特別損失
ア.各期の特別損失
イ.平成13年3月期の特別損失の要因
ウ.平成10年3月期の特別損失の要因
(ア) 海外開発事業の特別損失について
(イ) 貸倒引当金、貸倒償却について
(ウ) 任意準備金、法定準備金取崩による含み損の損失処理
(エ) 巨額の有利子負債
(オ) バブル経済崩壊時に発生していた含み損
エ.小括
(3) 取締役の熊谷組の資産、負債の実質的な状況の認識
5.原判決には判決の結論に影響を及ぼすべき経験則違背の法令違反の誤りがある
6.まとめ
原判決の本件政治資金の寄附がなされた当時の熊谷組の経営、財務状況の判断は経験則に違背するものである
1.原判決の判示した熊谷組の経営、財務状況についての判断
取締役は、会社を代表して政治資金の寄附をなすにあたっては、その会社の規模、経営実績その他社会的経済的地位および寄附の相手方など諸般の事情を考慮して、合理的な範囲内において、その金額等を決すべきであり、この範囲を越えて不相応な寄附をした場合には取締役の会社に対する善管注意義務違反となる。
本件政治資金の寄附についての善管注意義務を考えるにあたっては、取締役が寄附に際して熊谷組の経営実績、財務状況がいかなる状況であるか、またその点について取締役がいかなる認識を有していたかが問題となる。熊谷組の経営、財務状況が危殆に瀕しており、それを取締役が認識しているにも拘らず、会社の営利目的に反する無償の利益の供与である政治資金の寄附をなすことは、特段の事情がない限り善管注意義務に反することになる。
原判決は、1審原告の「熊谷組が平成7年3月期以降は実質的には欠損が生じている財務状況にあり、熊谷組の取締役においても、従前の経営状況がそのまま推移すれば更に巨額の欠損が生ずるとの確定的認識を有していたから、1審被告らは、少なくとも平成9年10月の『経営革新中期計画』の策定以降に政治資金の寄附を行なうに際し、会社の経営状況と当該寄附の必要性ないし有用性を厳格に対比して検討し、その可否・範囲・数額・時期等を慎重に判断すべき注意義務があるのにこれを怠った」との主張に対し、つぎのとおり判断している。
即ち、「認定事実によれば、1審被告らを含む熊谷組の取締役は、従前の経営状況を漫然と放置していたものではなく、平成5年7月策定の『株式会社熊谷組体質改善3ヶ年計画』や、平成8年5月策定の『第2次体質改善3ヶ年計画』により経営、財務体質の改善を進めていたものであって、平成9年10月策定の『経営革新中期計画』もその延長線上に位置づけられるものであり、同時期に熊谷組の資産、経営状況が急激に悪化したものとはいえず、また、特別損失の計上や欠損の発生も、むしろ熊谷組が過去の損失を一括処理し得るだけの体力があったことの証左と考えられる」として、1審原告の前記主張を斥けている。
原判決は、
〈1〉 前記各計画により経営、財務体質の改善を進めていた。
〈2〉 同時期に熊谷組の資産、経営状況が急激に悪化したものではない。
〈3〉 特別損失の計上や欠損の発生は、熊谷組が過去の損失を一括処理し得るだけの体力があったことの証左である。
としているのである。
この判断は、原判決が熊谷組の有価証券報告書記載の営業状況、並びに前記各計画に基づき認定した事実からしても、到底認定できない事実であり、かえって反対の事実、即ち本件政治資金の寄附が行なわれた当時の熊谷組の経営、財務状況は危殆に瀕しており、かつそれを取締役が認識していた事実が認定されるものである。
2.熊谷組の資産、損益についての実質的判断を踏まえた善管注意義務
(1) 本件政治資金の寄附にあたっての経営実績、財務状況の判断について
取締役の本件政治資金の寄附が熊谷組の経営実績、財務状況に照らし善管注意義務に違背するものであるか否かを判断するにあたっては、寄附当時の熊谷組の有価証券報告書に記載された資産並びに損益上の数値のみによることなく、取締役としての善管注意義務をもって把握しうる実質的な資産、損益状況を下に判断すべきものであることは当然である。
とりわけ熊谷組にあっては、後述するように1兆円を超える巨額の特別損失を本件政治資金の寄附の前後に計上しているものであり、取締役は以下に述べるように商法、並びに企業会計原則に従って、熊谷組の資産並びに負債を評価すれば、本件政治資金の寄附当時において、その経営は巨額の欠損を計上せざるを得ない危機状況にあったことを容易に認識しえたものである。
(2) 商法、企業会計原則による販売用不動産等の流動資産の評価原則
株式会社における貸借対照表、損益計算書等を含む商業帳簿につき商法第32条2項は、「商業帳簿の作成に関する規定の解釈に付ては公正なる会計慣行を斟酌すべし」と定めている。公正な会計慣行とは、企業会計原則、並びにその付属諸規定であるとされている。
有価証券報告書における資産・負債並びに損益についての数値は公正な会計慣行に基づくことを前提にしている。
企業会計原則は、企業の健全、堅実な経営を確保するために、会計上の保守主義の原則に基づき資産の評価については慎重に行なうこととしている。
企業会計原則第3貸借対照表原則(注解)資産の貸借対照表価額につき、当該資産の取得原価を基礎として計上しなければならないとするとともに、たな卸資産(販売用不動産、未成工事支出金等はこれに該当する)につき、「時価が取得原価より著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額としなければならない」と定めている。
有価証券(関係会社株式等)についても、原則として取得原価をもって貸借対照表価額とするとしたうえ、取引所の相場のない有価証券のうち株式(関連会社株式はほぼこれに該当する)については、「当該会社の財政状態を反映する株式の実質価額が著しく低下したときは相当の減額をしなければならない」と定めている。
一方、商法では第285条の2(流動資産の評価)において、流動資産(有価証券、販売用不動産、未成工事支出金を含む)につき、「その取得価額又は製作価額を付することを要し、但し時価が取得価額又は製作価額より著しく低きときはその価額が取得価額又は製作価額まで回復すると認められる場合を除くの外時価を付することを要す」と定めている。
このように、株式会社が貸借対照表、損益計算書等を作成するにあたっては、有価証券等の流動資産の時価が取得原価、製作価額より著しく下落しているか否かについて、少なくも毎年度毎にその実質価額を評価しなおして判断することが求められるし、訴外熊谷組においても当然実質価額の評価がなされてきたものと考えられ、これさえも懈怠しているとしたら、それ自体善管注意義務違反となるのは当然である。
以上の商法並びに企業会計原則の流動資産についての定めは従前より存在しており、株式会社はこれに従って毎年度流動資産の実質価額を評価し、それに基づいて取得価額より著しく低いか等について判断し、貸借対照表価額を決定することが求められていたものである。
(3) 熊谷組らゼネコン各社の強制評価減先送りを注意喚起した公認会計士協会の通知
「販売用不動産等の強制評価減の要否の判断に関する監査上の取扱い」(乙13)は、その「はじめに」で述べているように、
「我が国の経済は、バブル崩壊後長期間低迷しており、現在も回復の手懸かりを模索している状況にある。その間、住宅業界、建設業界、商社等が抱える不動産についても動きが鈍く、事業採算の目処が立たずに長期間滞留しているものが見受けられる。また、バブル崩壊後地価が著しく下落したことにより、これらの業界は、大幅な含み損を抱える不動産を多く保有する状況となっている。」
「総合建設会社、不動産業に属する会社や商社等に共通する問題として、これらの会社及びその関係会社が、会社の事業又はその付帯事業に関連して取得した販売用不動産及び開発事業等支出金(未成工事支出金等で処理されているものを含む。)(以下「販売用不動産等」という。)については、著しい価格の下落に対応して評価減を適時に実施する必要があるにもかかわらず、資産の時価の算定が一般に困難であるとの理由等から、強制評価減が適時に実施されず、資産の処分時まで損失計上が先送りされる傾向にあることが見受けられた。このため、同調査会では、現行会計基準の下で、長期滞留たな卸資産の評価などについて強制評価減を適時に実施する必要があることを、会員に注意喚起するとともに、会社が強制評価減を実施する際の監査上の判断基準として、ガイドラインを当協会として用意する必要があることを提言した。」
ものである。
即ち、ゼネコン等の業界では、バブル経済崩壊後、販売用不動産等につき著しい価格の下落に対応して評価減を適時に実施する必要があるのにこれが行なわれず損失計上が先送りされる傾向があったことを踏まえ、商法、企業会計原則上強制評価減を適時に実施する必要があることを注意喚起したものである。この報告によって強制評価減の必要が熊谷組に生じたものではなく、既に販売用不動産等の価額の著しい下落が生じた時点で、これを先送りすることなく適時に強制評価減すべき義務が熊谷組には生じていたものである。
平成12年に販売用不動産等の評価をなし、それに基づき減損処理を行ない、約5700億円という巨額の特別損失を計上したことは、バブル崩壊後既に生じていたその著しい減価を損失計上しないまま先送りしていたことの証左である。
また、その後の年度においても引き続き巨額の特別損失を計上したことは、なすべき強制評価減等を更に先送りしていたものである。
以下、これらの言につき詳述することによって、原判決の本件政治資金寄附時における熊谷組の経営状況の判断が経験則に反し、その結果善管注意義務違背はないとした原判決の誤りについて述べる。
3.有価証券報告書による熊谷組の営業状況
(1) 「営業の状況」
原判決は、熊谷組の各期の有価証券報告書の営業の状況の記載内容に基づき、「売上高もいわゆるバブル経済崩壊後の厳しい経済環境にありながら、約8000億円ないし1兆円にも達し」と述べ、営業状況を積極的に評価している。
当時の熊谷組の経営、財務上の最大の課題であり問題点は、営業状況以上にバブル経済崩壊によって生じた巨額の国内外の開発事業損失や不良債権による損失の発生であったことは明らかである。この点は後に詳述することにして、当時の熊谷組はその営業状況からしても、受注環境は氷河期とも言える厳しいものであったことは有価証券報告書によって明白である。
原判決も引用している有価証券報告書の「営業の状況」によってそれをみてみよう。
平成3年3月期(第54期)
建設業界においては、景気の先行き不透明感から、製造業において設備投資の伸びが減速したが、非製造業を中心にマンション、事務所ビルなど旺盛な建築需要に支えられ、受注環境は比較的好調に推移した。
平成4月3月期(第55期)
建設業界においては、公共投資は堅調ながら、民間での不動産不況、株式市場の低迷、設備投資意欲の減退などにより、受注環境は厳しさを増した。
平成5年3月期(第56期)
建設業界においても、公共投資の増加等により一部に明るい兆しが見られたが、民間設備投資は抑制され、建設需要の落ち込みが著しいことにより、受注環境は一段と厳しさを増した。
平成6年3月期(第57期)
建設業界においては、公共工事は堅調であったが大型工事が減少し、また、民間工事においても住宅建設は好調を維持したものの、事務所ビルや工事などの建設投資の抑制が続いたため、受注環境は誠に厳しいものとなった。
平成7年3月期(第58期)
建設業界においては、住宅建設は好調を持続したが、公共工事は大型工事が少なく、事務所ビルや工場等の民間建設需要が依然として低迷し、価格競争も激化するなど、受注環境は一段と厳しいものとなった。
平成8年3月期(第59期)
建設業界においては、官庁工事は、公共投資の増加により堅調に推移したが、民間工事は、事務所ビル等の建設需要が依然として低迷しており、住宅建設も減少するなど、総じて受注環境は厳しいものとなった。
平成9年3月期(第60期)
建設業界においては、官庁工事は減少に転じたが、住宅投資は高水準を維持し、民間設備投資の堅調な増加や消費税率引き上げに伴う駆け込み需要もあったため、受注環境は厳しいながらも回復の兆しが見えてきた。
平成10年3月期(第61期)
建設業界においては、公共投資は減少し、また、住宅投資に回復がみられず、増加傾向にあった設備投資も企業収益の悪化から投資意欲が減退するなど、受注環境はいっそう厳しいものとなった。
平成11年3月期(第62期)
建設業界においては、公共投資の増加により官公庁工事は回復に転じたが、住宅投資やオフィスビル建設は低迷し、製造業の生産施設等の民間設備投資も減少を続けるなど、受注環境は大変厳しいものとなった。
(2) 損益状況
また、この間の損益状況は有価証券報告書によればつぎのとおりである。
〈省略〉
このようにゼネコン全体の厳しい受注環境を反映して、熊谷組の受注環境も「氷河期」とも表現される厳しいものであったことは明らかである。
原判決は、売上高は約8000億円ないし1兆円にも達しと述べている。ゼネコンにとっては各年度の受注高と利益が重要であり、売上高は受注した工事の進行に従って計上されるものであり、いわば過去の受注高という遺産の食いつぶしと言えるものである。売上高(これもバブル経済崩壊後における売上高の激減した時期における比較にしかすぎないが)より受注環境を反映した受注高について検討すれば、平成3年、4年の3月期においては1兆5000億円を超えていたが、以降の年度では9000億円前後にとどまっている。
経常利益をみれば一貫して極端な下落傾向にあり、当期純利益にあっては、平成3年3月期は182億円、同4年3月期は150億円であったのが、平成6年度以降は10億円となり、平成10年3月期は2176億円の損失が計上されるに至っている。
原判決は有価証券報告書等に基づき熊谷組の当時の営業状況を積極的に評価し、それも含めて「過去の損失を一括処理できるだけの体力を有していた」と認定しているのであるが、有価証券報告書から明らかになる熊谷組の営業状況はそれと全く反対のものであることは明らかである。
(3) 各経営計画の破綻
原判決は、熊谷組の取締役は経営状況を漫然と放置していたものではなく、平成5年7月策定の「体質改善3ヶ年計画」や、平成8年5月策定の「第2次体質改善3ヶ年計画」、更に平成9年10月策定の「経営革新中期計画」により経営、財務体質の改善を進めていたと判示している。
取締役が経営状況を漫然と放置していたものではないことは1審原告としても争うものではない。問題はこれら経営努力をもってしても、バブル経済期における国内外の開発事業を中心に生じた巨額損失によって、実質的には欠損状況にあった熊谷組の経営は破綻状態にあり、債務免除なしには破産必至の状況にあったことである。
しかも、これら計画の予定した損益計画の実績は、いずれも計画を大きく下まわるものであった。
平成9年10月策定の「経営革新中期計画」についてこれをみてみよう。
同計画が策定された平成9年10月当時の営業状況について同計画は、「バブル経済の崩壊による民間建設需要の低迷、公共投資削減要請等により極めて厳しい環境にあり、まさに『建設業淘汰の時代』『氷河期』とも評される状況におかれております」と述べている。
この厳しさを踏まえた同計画の業績計画(乙9、9頁)は平成10年から平成14年までの5年度についての計画を立てている。計画(カッコ内)と実績を対照するとつぎのようになる。(単位億円)
〈省略〉
このように経営革新中期計画の業績計画は、計画立案して半年も経過していない時点で、営業、経常利益とも大幅にこれを下まわり、その後も計画を実情が下まわることによる乖離は著しいものとなっていった。資産、財務状況のみならず、営業状況もまさにバブル経済崩壊以降の「氷河期」が続き、その冷え込みは益々厳しさを増していたことは明らかである。
4.熊谷組の最大の経営課題としての特別損失処理
(1) バブル崩壊期の国内外の大規模開発事業失敗による巨額損失の発生
原判決は、平成9年10月策定の経営革新中期計画について、「同時期に熊谷組の資産、経営状況が急激に悪化したものとはいえず、また、特別損失の計上や欠損の発生も、むしろ熊谷組が過去の損失を一括処理し得るだけの体力があったことの証左と考えられる」と判示している。
平成9年当時において熊谷組の資産、経営状況が急激に悪化したものではないことについては言うまでもない。
1審被告である当時のY2社長が「株主の皆様へ」(甲15)で自認するように、「50年代後半からの国内外の数多くの大規模開発事業に参画し、投資やプロジェクトの保証を行なうことで飛躍的に受注を拡大いたしましたが、その後の経済情勢の激変もあって、この投資や保証が有利子負債に転化し、今日の苦境を招く結果となった。」ものである。
即ち、熊谷組の特別損失はバブル経済のなかでの国内外の大規模開発事業が、その後のバブル崩壊という経済事情の激変のなかで巨額損失を招来し、それが当時のみならず、それ以前、それ以降においても熊谷組の経営にとって最大の課題であったことは明白である。
熊谷組が経営危機を脱却すべく策定した計画は、以下のとおり、いずれもこの点の克服を企図したものである。
・平成5年6月「体質改善計画」(乙23)
固定化債権の整理回収と海外資産の圧縮
・同9年「経営革新中期計画」(乙9)
国内外の一括損失処理を軸とした財務体質の抜本的改革
・同12年9月「新経営革新計画」(甲13)
不良債権の一括処理による財務体質の抜本的改革
(不良債権では、海外事業、国内債権によるもの)
・同15年4月「経営構造改革3ヶ年計画」(甲36)
「過去・現在・未来」の3つの不安要素から脱却
(過去の不安とは多額の有利子負債と資産の含み損)
原判決は、平成9年10月策定の「経営革新中期計画」(乙9)による特別損失や欠損の発生も、むしろ熊谷組が過去の損失を一括処理し得るだけの体力があったことの証左と判断するが、この判断が経験則に著しく乖離したものであることは、つぎの点から明らかである。
(2) 平成10年、13年、15年各3月期の特別損失
ア.各期の特別損失
即ち、熊谷組の特別損失は、平成10年、13年、15年の3月期(他の年度にも計上されているが)に巨額計上されており、その額はつぎのようになる。(億円未満切捨て)
〈1〉平成10年3月期
海外事業整理損          1536億円
貸倒引当金繰入額         647億円
開発事業整理損失引当金繰入額   116億円
貸倒損失              66億円
その他               60億円
合計               2425億円
〈2〉平成13年3月期
固定資産売却損          214億円
たな卸不動産評価損        438億円
投資有価証券償却損        933億円
関係会社株式評価損        1500億円
貸倒引当金繰入額         1859億円
その他              824億円
合計               5768億円
〈3〉平成15年3月期
貸倒引当金繰入額         1080億円
関係会社株式評価損        626億円
固定資産評価損          375億円
たな卸不動産評価損        312億円
その他              518億円
合計               2911億円
原判決は「経営革新中期計画」により過去の損失を一括処理したとするが、平成13年度3月期に5768億円、同15年3月期に2911億円を重ねて巨額の特別損失を計上し、この3年度分だけでも合計1兆1100億円余の巨額特別損失を計上している(他の年度の特別損失を含めれば更に巨額となる)。この額は熊谷組の資本金(平成10年3月期)820億円の10倍をはるかに超える額である。また平成15年の減資前の資本金である334億円の30倍をも超える額である。売上高との比較でも平成10年3月期の年間売上高約1兆円を上まわり平成15年3月期の4400億円の2.5倍に及んでいる。
最近の特別損失である平成15年3月期の2911億円の特別損失はどのような理由によって生じたのであろう。当該年度、即ち平成14年4月から同15年3月までの間に生じたものであろうか。答は当然否である。平成15年3月期において、各評価損、貸倒引当金として会計上計上されたものの、これら資産の実質的な劣化はバブル経済崩壊によって急激に生じた国内・海外の開発事業の損失によるものであることは明白である。
この特別損失は平成15年3月の「経済構造改革3ヶ年計画」(甲36)の一環として計上されているが、資産について「厳格に査定、評価し」計上したもので、
過去:過剰債務・含み損
現在:収益力低迷
未来:建設投資縮小
の3つの不安のうち「過去の不安」からの脱却を目ざして計上されたものである。(甲36、2、4頁)
同計画によると、前記特別損失の内容は
海外開発事業等     △930億円
国内問題債権等     △830億円
国内不動産       △650億円
その他         △590億円
合計          △3000億円
としている。
後述するように、平成13年3月期の5771億円の特別損失計上は、同じく資産を厳格に査定し、国内外の不良債権を一掃し、過去の含み損についてのそれまでの先送りは解消したはずである(甲15)にも拘らず、平成15年3月期に再び3000億円という巨額損失が生じ、金融機関の2700億円の債務免除等によってこれを処理しているのである。汚水を絞りきり、乾いたはずの雑巾を絞ったら、汚水があふれ出たというのである。
この特別損失は、「経済構造改革3ヶ年計画」でも自認するとおり、「過去の不安」である多額の有利子負債と含み損に要因があり、バブル崩壊以降その全面的な処理を先送りしてきたことにより生じたものであることは明白である。
イ.平成13年3月期の特別損失の要因
平成13年3月期の5771億円の特別損失について検討してみよう。これについても、当該年度あるいは平成10年3月期に特別損失を計上したのちの要因によって発生したものではないことは明らかである。一審被告は時価会計の採用によってこれが生じたと主張する。しかしその根拠とする公認会計士協会の「販売用不動産等の強制評価減の要否の判断に関する監査上の取扱い」(乙13)は、
「調査の結果、総合建設会社、不動産業に関する会社や商社等に共通する問題として、これらの会社及びその関係会社が、会社の事業又はその付帯事業に関連して取得した販売用不動産及び開発事業等支出金(未成工事支出金等で処理されているものを含む。)(以下「販売用不動産等」という。)については、著しい価格の下落に対応して評価減を適時に実施する必要があるにもかかわらず、資産の時価の算定が一般に困難であるとの理由等から、強制評価減が適時に実施されず、資産の処分時まで損失計上が先送りされる傾向にあることが見受けられた。このため、同調査会では、現行会計基準の下で、長期滞留たな卸資産の評価などについて強制評価減を適時に実施する必要があることを、会員に注意喚起するとともに、会社が強制評価減を実施する際の監査上の判断基準として、ガイドラインを当協会として用意する必要があることを提言した。」
と述べている。即ち総合建設会社(ゼネコン)等では大幅な含み損を抱える不動産を多く保有するにも拘らず損失計上が先送りされる傾向があるので、現在会計基準の下で強制評価減を適時に実施する必要があることを注意喚起するために定められたガイドラインである、従来の商法・企業会計原則の下でも強制評価減が必要であることを前提にそれを「注意喚起」としているのである。
このガイドラインに従って、5771億円もの特別損失を計上したことは、熊谷組が強制評価減を適時に実施せず先送りしてきたことの結果に外ならない。
「第64期資産の評価について」(乙16)は、この特別損失計上にあたっての案件別調査(平成12年8月実施)である。一審被告Y2は、当時代表取締役に在任している。これによれば、試査範囲についてつぎのような結果となっている。(単位億円)
〈省略〉
海外事業については、時価は簿価の3分の1、国内問題債権は2分の1、販売用不動産は3分の1、その他の資産(その内容は不明だが)に至っては全額が評価損で時価は0になっている。回復しがたい著しい減価が生じていたことは明らかで、商法・企業会計原則によっても、より早い時期に強制評価減がなされるべき状態であったものである。これらの評価損は、何度も繰り返すが、バブル期の過剰な国内外事業への投資が要因である。またこのような著しい資産の減価については、一審被告は当然認識しており、時価による実質的な資産評価をすれば欠損どころか金融機関の債務免除なしには破産必至という経営危機の状況を把握していたものである。
熊谷組に限らず、当時熊谷組ら中堅ゼネコンの多くは同様の特別損失を抱えており、当時の新聞記事(乙11の3~8)は「ゼネコンの多くはバブル期の積極的な不動産投資で膨らんだ過剰債務の圧縮を経営の最重要課題」「海外の不動産会社の借入金を本体に付け替えた(熊谷組)」等と述べられている。
重要なのは、これら特別損失は平成15年3月期に計上された特別損失と同様、それを計上した各年度に発生した損失ではなく、バブル経済崩壊期に実質的に発生していた資産の減価を、会計上評価減により減損処理することを先送りし、この各期に及んでその会計処理を行なったという点である。これらの特別損失を熊谷組が抱えていることは、1審被告ら取締役は把握している。熊谷組の資産並びに経営状況は危殆に瀕していることは、平成10年3月期以前の、遅くとも「固定化した不良債権、資産の整理回収」「海外物件の早期整理」「財務管理部の新設」を課題とした平成5年7月の「体質改善3ヶ年計画」策定時においては認識していたものである。
ウ.平成10年3月期の特別損失の要因
(ア) 海外開発事業の特別損失について
平成10年3月期の2426億円の特別損失を考えてみよう。1審被告Y2の陳述書(乙29)によれば、海外開発事業、国内債権について厳しく査定を行なって計上したとしている。しかし、平成13年3月期の関係会社株式評価損1500億円の多くは海外開発事業関連であり、平成15年3月期でも930億円の海外開発事業による特別損失が計上されている。平成10年3月期で厳しく査定し、絞りきった雑巾から再度、再々度と汚水があふれ出ているのである。含み損、不良債権処理を先送りし、適時に行なわなかったことはこのことからも証明できよう。
取締役会議事録に添付された討議資料である海外事業の概要書(甲42)によれば、その営業開始日等の記載のあるものについては、概ねの当該事業の開始時期が判明する。
・英国「ホワイトフライヤーズ」開発事業(甲42の4、H9年11月18日資料)
営業開始日 1990年4月6日
売却による損失 235.7億円
・「25ベッドフォード」開発事業(甲42の7、H9年12月17日資料)
営業開始日 1991年3月
売却による損失 85億円
・慶州「135キング・ストリートビル開発事業」(甲42の9、H9年12月17日資料)
工事期間 1986年4月~1989年12月
売却による損失 296.3億円
他の当時の取締役会で討議されている海外開発事業についての減損処理案件も昭和50年代後半以降に行なわれた大規模開発事業であり、その後の経済情勢の激変のなかで平成10年以前において、既に実質的な減損は発生していたものである。
しかも、平成10年3月期における海外開発事業についての整理損は1536億円を計上したものの、その多くの処理を先送りしたため、平成13年3月期、同15年3月期にそれぞれ巨額の海外開発事業整理損を計上したことは既述したとおりであり、これを先送りせず適時に商法・企業会計原則に従い強制評価減していれば、同期の決算書類上の欠損額はより深刻なものとなっていたことは明らかである。
(イ) 貸倒引当金、貸倒償却について
また平成10年3月期において国内開発事業等についての貸倒引当金、貸倒償却を行ない、その内訳が取締役会で討議されている(甲42の21)。これによれば、その処理を先送りせず、同期に特別損失として処理したものでも北海道から九州まで全国に亘り、引当済の額を差引いても貸倒引当金繰入が522億円余、貸倒償却分が72億円余となっている。相手方、件名が黒塗りのため、内容は定かではないが、いずれもバブル期に行なわれた大規模開発事業関連のものと考えられ、平成13、15年の各3月期においても更に先送り分の損失処理がなされていること、海外開発事業案件と同様である。
(ウ) 任意準備金、法廷準備金取崩による含み損の損失処理
このように、平成10年3月期に2426億円余の特別損失を計上しているが、これは同期以前のバブル崩壊期において既に発生していた資産の含み損の先送り分の一部を任意積立金、法定準備金の各取崩額をもって補填できる限りにおいて損失処理したものと言えよう(甲41の9、39頁)。即ち、欠損金488億円を出したこの年度には、当期末処理損失2172億7900万円を任意積立金、更に利益準備金98億円の全額及び資本準備金のうち390億0580万円を取り崩すことによって補填しているのである。
(エ) 巨額の有利子負債
平成10年中間期における熊谷組の有利子負債についてみても、8204億円余とゼネコンの中ではトップの額となっている。平成11年度中間期においては前年度と較べ、691億円増の8835億円となり、金融機関から債務免除を受ける一方で関係会社12社の債務を引き受けたことにより、有利子負債が急増した長谷工コーポレーションについでゼネコンのなかで2位となっている(甲61)。
当時の年間売上高に匹敵する有利子負債の額を抱えてした熊谷組の経営状況は、この点のみをもってしても危機的状況であったと言えよう。
(オ) バブル経済崩壊時に発生していた含み損
しかし、この特別損失は、1審被告らを含めた取締役が当然認識していた熊谷組の資産、実質的価値(時価)からするなら、その一部にすぎず、かつ、平成13、15年度の各3月期の特別損失計上分も含め、その減損の発生は平成10年3月期に先立つバブル経済崩壊時点においてその多くは既に発生していたものなのである。熊谷組が、国内開発事業をなしていた六大都市の商業地の地価の価格指数(平成12年を100とする)は、バブル期の500台から平成10年には128.9と4分の1に下落している(甲58)。また、バブル期には38915円の高値に至った日経平均株価も、平成10年には15000円前後と半値以下になっている(甲59)。
エ.小括
このように、バブル経済崩壊以降、熊谷組の経営上の最大の課題は、バブル期に行われた国内外の大規模開発事業がその崩壊により資産の急激の消耗、あるいは不良債権となり、これをどう克服するかとの点にあった。
平成10年3月期において欠損を生じてまでも特別損失を計上してさえも処理しきれない、特別損失の処理を先送りし、平成13年度、平成15年度の各3月期において更に巨額の特別損失を金融機関の債務免除(実質は経営破綻である)をもって処理したのである。平成10年3月期において熊谷組の取締役、とりわけそのトップである代表取締役社長は、この先送りされた損失が決算上は計上されていないものの、資産を商法や会社原則に従って評価すれば発生していたことを確定的に認識していたものである。
(3) 取締役の熊谷組の資産、負債の実質的な状況の認識
取締役が、熊谷組の資産、負債状況を判断するにあたっては、決算書類上の判断ではなく、熊谷組の実質的な資産、負債状況に基づき判断すべき注意義務を有していることは当然である。
なぜなら、熊谷組を含め、少なくとも上場している大企業にあっては毎年度簿価と時価との比較を行い、会社の資産・負債の実質的な状況を毎年度把握しており、その状況については取締役は報告を受けているのは当然だからである。
乙16の会社作成の評価に関する一覧表は、熊谷組の資産についての実質的価値(時価)を評価したものであるが、これと同様の簿価と時価を対照比較する判断は毎年度ごとに行なわれているものである。
家計においても、株式や、投資信託や土地、貸付金等の資産を保有している場合、それを簿価、即ち、取得時の価格のままで、毎年度評価することなく、時価の変動に応じて資産計画するのは当然である。熊谷組において、このような資産の実質的な価値の判断がなされていたのは当然であり、もしそれがなされていなかったとすれば、会社の資産状況という最も基礎的な事項を把握することについての善管注意義務に重大な懈怠があったことは明白である。
更に付言すれば、商法・企業会計原則は資産が著しく減価したとき(回復の見込みがないとき)は、時価に減額して貸借対照表上の価格としなくてはいけない旨定めており、その判断のためには実質的な資産評価は不可欠である。
なお、熊谷組が平成5年7月に策定した「体質改善3ヵ年計画」(乙23)の「体質改善方策の骨子」には、「国内外固定化資産とそれを用いた債権資産の回収促進、海外物件の早期整理、『財務管理部』の新設」とある。「財務管理部」も熊谷組の資産の実質的な価値の評価を行い、それに基づき「債権資産の回収促進、海外物件の早期整理」にあたっていたものと考えられる(甲42の21の2も財務管理部により作成されている。)。
熊谷組の特別損失の原因は、バブル経済期における国内外の大規模開発事業にあり、バブル経済崩壊とともに著しい資産の劣化が生じていたことは、平成5年7月の「体質改善3ヶ年計画」策定時、遅くとも平成10年3月期に欠損を生じた時点においては、取締役は確定的に認識していたものである。
5.原判決には判決の結論に影響を及ぼすべき経験則違背の法令違反の誤りがある
以上、本件各政治資金の寄附当時、遅くとも平成10年3月期に熊谷組が欠損を計上した時期以降においては、原判決が認定した事実並びに事実認定にあたり採用した熊谷組の有価証券報告書、各経営計画等の証拠を正当に評価考量すれば、熊谷組の経営が危殆に瀕しており、取締役がこれを確定的に認識していたとの事実が認定されるものである。
原判決の平成9年10月の「経営革新中期計画」策定時において過去の損失を一括処理し得るだけの体力があったとの判断は、経験則に違背するものである。
かつ、経験則に従って、当時の熊谷組の経営、財務状況が正当に証拠に基づき考量され、熊谷組の経営、財務状況が危殆に瀕していた事実が認定されたならば、そのような経済状況下でなされた無償の利益の供与である政治資金の寄附は善管注意義務に違背した行為と判断されるものであり、判決の結論に影響するものである。
6.まとめ
上告受理申立理由書(その1)において述べた、1審被告らの善管注意義務違反に加え、本書面で詳述した熊谷組の経営、財務状況を本件政治資金の寄附にあたり考慮すれば、その善管注意義務違反はより明白である。
●上告受理申立理由書(その3)
平成17年(ネ受)第2号 熊谷組株主代表訴訟上告受理申立事件
申立人 X
相手方 Y1  外2名
上告受理申立理由書(その3)
― 公序良俗違反及び定款目的に関する法令解釈の誤り ―
2006(平成18年)年3月10日
最高裁判所 御中
上告受理申立人代理人
弁護士(代表) 松丸正

目次
第1 はじめに(上告受理申立理由の要旨)
第2 企業の政治献金についての実態認識の問題と裁判所の果たすべき役割
1 八幡製鉄政治献金事件最高裁判決の問題点
2 保守二大政党化の下では立法措置に期待できない
3 日本経団連政治献金斡旋時代における司法審査への期待
第3 企業の政治献金は実質的に憲法は許容していない
1 企業には政治的活動の自由は保障されてはいないから政治献金をする自由は保障されてはいない
2 企業に政治的活動の自由が保障されているとしても、そこから直ちに企業の政治献金の自由は導き出されてはこないし、むしろ、だからこそ企業に政治献金の自由は保障されてはいない
3 後の南九州税理士会政治献金徴収拒否事件最高裁判決と群馬司法書士会復興支援特別負担金徴収事件最高裁判決の意味
4 企業の政治献金は国民の政治的活動の自由及び国民の多元的活動の自由を侵害し、国民主権主義等の原理に反する
第4 本件政治献金を定款の目的の範囲内とした原判決には民法43条の解釈につき重要な誤りがある
1 はじめに
2 本件政治献金は客観的・抽象的な行為の性質からするなら、定款の目的の範囲外行為である
3 本件政治献金は社会通念上期待・要請されるものでない
4 本件政治献金は「社会的役割を果たすためになした」ものではない
5 結論
(編注・以下、前出「上告理由書」と同旨の部分は省略している。該当部分を参照されたい。)
第1 はじめに(上告受理申立理由の要旨)
1・2 <<略>>
3 企業献金に関しては、公の秩序(民法第90条)及び法人の権利能力(民法第43条)の解釈が問題となるが、いずれも、憲法の規定、理念、原理を基準にして解釈されるべきである。
第2 企業の政治献金についての実態認識の問題と裁判所の果たすべき役割
1 八幡製鉄政治献金事件最高裁判決の問題点 <<略>>
2 保守二大政党化の下では立法措置に期待できない <<略>>
3 日本経団連政治献金斡旋時代における司法審査への期待
(1)~(7) <<略>>
(8) なお、附言するに、原判決が、株主は「保有株式を他に譲渡することにより当該会社から自由に離脱することができ」るから「会社による政治資金の寄附が株主の思想・信条の自由を侵害するとまではいえない」と判示していることは、実は、翻って考えれば、原判決も、会社による特定政党に対する政治献金の実態が、「株主の政治的な思想・信条と抵触する場合があることは否定できない」と判示して、株主の思想の自由を侵害するものであることを認めていることが重要である。
まさしく、企業献金は、それ自体不可避的に必ず株主の思想・信条の自由を侵すものなのである。原判決もこれを認めざるを得ない。それなのに、株式譲渡の自由を持ち出して憲法違反でないとするのは、余りにも皮相な会社のためにする詭弁であると言わねばならない。
それのみならず、思想・信条の自由を侵害された株主が、更にそれに加えて、その企業の政治献金に同意できないために、資産運用のため保有しておきたいと考えている自己の株式の保有の自由まで侵されて、株式譲渡をその意に反して強要されることになれば、それはまさしく株主の思想の自由と経済的資産保有の権利とに対する二重の侵害となるではないか。余りにも明白なこの事実を考慮しない原判決の、実態とかけ離れた形式的判断の誤りは到底容認できるものではない。
「強制加入であろうと、任意加入であろうと、(企業の政治献金は)そもそも、団体としてなし得るものではない」という、前記の浦部教授の説はまさに正論である。
第3 企業の政治献金は実質的に憲法が許容せず、民法第90条に違反している
1 企業には政治的活動の自由は保障されてはいないから政治献金をする自由は保障されてはいない <<略>>
2 企業に政治的活動の自由が保障されているとしても、そこから直ちに企業の政治献金の自由は導き出されてはこないし、むしろ、だからこそ企業に政治献金の自由は保障されてはいない <<略>>
3 後の南九州税理士会政治献金徴収拒否事件最高裁判決と群馬司法書士会復興支援特別負担金徴収事件最高裁判決の意味
(1)~(7) <<略>>
4 企業の政治献金は国民の政治的活動の自由及び国民の多元的活動の自由を侵害し、国民主権主義等の原理に反する
(1)~(4) <<略>>
(5) したがって、以上のように憲法に抵触する企業の政治献金は、民法第90条の「公の秩序」に反するので無効となると結論づけられるのであり(北野弘久『現代企業税法論』岩波書店・1994年339頁)、これに反する原判決の判断には法令解釈に関する重大な誤りがある。
第4 本件政治献金を定款の目的の範囲内とした原判決には民法43条の解釈につき重要な誤りがある
1 はじめに
原判決は、企業献金を、「客観的、抽象的に観察すれば、政党の健全な発展に協力する趣旨で行なわれるもの」と解した上で、「特段の事情のない限りは、会社がその社会的役割を果たすためにしたもの」と判断することによって、本件企業献金が定款所定の目的の範囲内であることを、いとも簡単に認めている。
しかし、既に述べたとおり、現在における企業献金は、政策誘導と受注確保のためだけに行なわれていることが公知の事実であるから、企業献金を「客観的、抽象的に観察すれば、政党の健全な発展に協力する趣旨で行なわれるもの」と解することは不可能であるし、そのように政策を歪めてまで経済的利益を追求するようなことが会社の社会的役割である筈がない。
かかる点で、原判決の判断には法令解釈に関する重大な誤りがある。
2 本件政治献金は客観的・抽象的な行為の性質からするなら、定款の目的の範囲外行為である
(1) 無償利益の供与である本件政治献金は目的の範囲外の行為である
原判決は、『政治資金の寄附は、これを客観的、抽象的に観察すれば、政党の健全な発展に協力する趣旨で行われると解されるのであり、政治資金規正法も会社による政治資金の寄附そのものを禁止することなく、一定の限度でこれを許容していることを考慮すると、特段の事情のない限りは、会社がその社会的役割を果たすためにしたものというべきである。』として、本件政治献金は目的の範囲内としている(40頁)。
政治献金は、無償の利益の供与は客観的・抽象的に明らかに会社の営利性目的に違背するものである。利益の供与であっても、その対価性が明らかなものもある。取引先あるいは取引先となることが将来期待される相手に対する中元・歳暮や接待、取引先に対する債務保証や物上保証をなす行為がこれである。これらの行為は目的の範囲となるのは顧客・取引先の獲得、維持という取引上の対価を前提とする対価性のある利益供与のためである。
これに対し政治献金は対価を求めればそれは贈賄罪を構成するものである。
従って政治献金を含む対価性のない無償利益の供与は、客観的・抽象的に観察すれば目的の遂行に直接・間接に必要な行為どころか、株主共同資産の一方的流出という目的違背の行為にならざるを得ない。
しかし、慈善的寄付や災害救助などを含む無償利益の供与という行為がすべて目的の範囲外となるものではなく、後述するようなその行為の具体的・個別的検討を加えたうえで目的の範囲内の行為となり得るものである。
無償利益の供与は客観的・抽象的に観察すれば目的の範囲外となること以上に述べたとおりである。
なお、アメリカの法律協会「コーポレート・ガバナンスの原理:分析と勧告」は無償の寄附は定款の目的の範囲外の行為に抵触するのでそれをわざわざ法律的に明示している。又、アメリカの州法には同様の内容が殆ど成文化されている(アメリカ模範会社法・北沢正啓外1名訳・22頁)。
(a) 本条(b)項が定める場合を除き、会社は会社の利潤及び株主の利益を増進させるために事業活動を行うことをその目的とすべきである。
(b) 会社はその事業を行うにあたり、会社の利潤及び株主の利益がそのために増進させられない場合においても、
イ.自然人と同様に、法が定める範囲内において行動しなければならず、
ロ.責任ある事業活動にとり適当であると合理的にみなされる倫理上の考慮を加えることができ、並びに、
ハ.「公共の福祉、人道上、教育上、及び慈善の目的に合理的な額の資源を充てる事ができる」という条文を入れている。
この背景には慈善団体等への寄附は、会社の利潤及び株主の利益が増進させられないという行為の客観的性質からみて、矛盾が生じるからこの条文をわざわざ導入し、法律的に明確にしているのである。
これは、アメリカの20世紀初頭の判例は、会社の営利目的を狭くとらえたり、能力外法理(ultra Vires)を厳格に適用するとか、あるいはその両方を援用し、会社が公共の福祉・人道目的・教育目的または慈善目的のために支出することには否定的であったからである(コーポレートガバナンス アメリカ法律協会「コーポレート・ガバナンスの原理:分析と勧告の研究」証券取引法研究会国際部会訳編・112頁)。
一方的な株主共同資産の流出という無償利益の供与が、なぜ目的の達成のため直接・間接に必要な行為と言えるのか、原判決は全く述べていない。
また無償利益の供与にあっては、一方的に利益を受けるだけの第三者にとっての法的安定性より株主の利益こそが、重視されなければなるまい。
3 本件政治献金は社会通念上期待・要請されるものでない
(1) 本件政治献金は、憲法の求める選挙権の「徹底した平等化」に違背する
企業、とりわけ熊谷組等の経済的・社会的に巨大な企業によりなされる政治献金は、選挙権を有し、国政決定の主体である一人一人の国民では到底出捐することのできない巨額なものである。
国民の選挙権につき最高裁昭和51年4月14日衆議院議員定数是正事件判決(民集30巻3号223頁)は、
ア 選挙権は、国民の国政への参加の機会を保障する権利として議会制民主主義の根幹をなす。
イ 選挙権に関しては、国民はすべて政治的価値において平等であるべきであるとする徹底した平等化を志向する。
ウ 各選挙人の投票の価値の平等もまた、憲法の要求するところである。
としている。
この最高裁判決の述べている「徹底した平等化」とは、選挙結果そのもののみならず、選挙結果に至る選挙のプロセス全体を通じて個々の選挙人たる国民が選挙結果に対し同じ影響力を及ぼすことのできる平等な法的可能性と解することができよう。
企業による巨額の政治献金は、個人の浄財である個人献金の額を桁違いに凌駕し、その献金を受けた政党の経済的基盤を強固にさせる。それによって政党の選挙運動を有利に展開し、得票率を国民の総意以上に上昇させる結果をもたらすことは、政治の世界においては公知の事実と言えよう。逆に企業の政治献金に依存しない政党を相対的に経済的劣位に置くことになる。
選挙のプロセス全体を通じた、選挙人たる個々の国民の政治的価値の「徹底した平等化」にとって企業とりわけ産業界の巨額の政治献金は大きな阻害物となっている。
この点からして、本件政治献金は社会通念上期待要請される行為でないこと明白であり、それを行うことが会社の社会的役割を果たすことに通じるとの社会的評価が失われているものである。
(2) 本件政治献金は特定政党並びに献金を行っている一部企業のみが期待・要請するにすぎない
社会貢献活動(社会事業・文化事業・教育事業等)は、その特定の事業が担う利益や価値は社会の構成員が共通に肯定しうる性質のものであり、その事業の発展に社会の一般的利益がかかっていると評価できる事業である。株主の思想、信条に反してでも、社会的利益・価値を積極的に実現すべしという社会的な要請・期待のある行為である。
しかし、本件政治献金は特定の政党(自民党)に対する献金であり、その主義・主張を支持し、その政治活動・選挙活動を支援するためになされたものである。政党政治を発展させるという一般的・公益的価値を有するものではないことは明らかである。本件政治献金を期待・要請しているのは、社会一般ではなく、献金を受ける特定政党である。
政治献金を社会が期待・要請しないことは、献金している企業そのものが最も悉知している。即ち、熊谷組を含めて、企業は政治献金をしている事実を、つぎに述べる社会貢献活動とは反対に隠すことに努めている。ディスクロージャー誌には一切記載がなく、株主総会でも報告もされず、株主に知らされることもない。政治(宗教でも同じであるが)の分野においては異なる信条が存在し、相互に対立しあう関係は避けられない。いずれの信条の価値を認めるかは個々人の信条の自由に委ねている。特定政党に対する献金は、他の政党を支持する者(それは多くの場合社会の多数派である)が期待・要請しておらず、有用な行為とはみていないことを会社は悉知しているからこそ、社会貢献活動とは全く逆にその事実の公開を避けているのである。
自民党の政治資金団体への本件政治献金は現在においてはなお更、社会から期待ないし要請されていないことは、つぎの点からも明らかである。
第1は市場主義を党是とする政党に対立する政党は存在しない点である。自由民主党は自由主義経済体制を擁護し、社会党は党綱領で社会主義を、共産党も民主主義革命を経て社会主義から共産主義への綱領をもっていた時代があった。当時世界の状況も米(自由主義経済)ソ(社会主義経済)との体制をめぐる争いであった。
なお、この当時の自民党の得票率は57.8%であり、過半数以上に支持されていた。
この当時、共産党はともかく、自民党は財界から、社会党は労働組合から献金を受け、それによって政党の財政が支えられていたことは事実である。
しかし、1989年ベルリンの壁は崩壊し、ソ連という国家もその後消滅した。戦後政治を支配していた米ソ対立、即ち自由主義体制対社会主義の対立は基本的に消滅し、自社対決と言われていた社会党も1990年3月党規約から社会主義革命を削除し、西欧型の社会民主主義に路線を転換した。国内での政治上の社会主義か自由主義かとの対立は解消した。
そして我が国の政党も多様化していった。1990年代に入り自民党と社会党が連立する時代に至った(公知の事実)。
いずれの政党も議会制民主主義を前提とし、市場主義経済体制を前提としての中での政治方針や経済政策、社会政策の相違でしかなくなった。
第2に、国民の自民党に対する支持率からみても社会から期待要請されているとは思われない点である。
八幡製鉄政治献金事件の当時の自民党の選挙における支持率は50%を超え、60%前後となっていた。
しかし、自民党は政党の中では相対的に大きい政党ではあるが、最近の自民党の選挙における支持率は30~40%前後である。
マスコミも「東西対立という冷戦構造の崩壊と共に国内政治面での保革の越えがたい溝が急速に埋まりつつある」、「自由主義経済体制を守るためという政治献金の大義名分が失われた今、献金を維持する論理はどこにあるのか」と述べている。
マスコミが上記のような社説で主張するように、企業の政治献金は多くの国民から期待ないし要請もされていないことを如実に示している。
第3に、政党の側からみても企業献金の必要性は不存在である点である。
政党助成法成立以前は、自民党の収入の大半は国民政治協会からの献金によって支えられていた。その後1995年に政党助成法が施行された。自民党を除く大多数の政党は、上記助成金によって基本的には運営されている。組織活動費と飲食代金等を除外すると、自民党も基本的にはその助成金で運用されている。
少なくとも企業献金が存在しないからといって、自民党の財政の基本的部分が維持されないことにはならない。
逆に、自民党も「組織活動費」を除外すると、基本的には政党助成金と個人献金によって維持されている。自民党の組織活動費は他党に比べて何十、何百倍の金額が多い。この組織活動費が実質、財界が献金する額に匹敵する。そしてこの組織活動費なるものは、その使途はアングラマネーと化している。
以上のとおり、政党助成法についての考え方はともかく、現実に前記のとおりの多額の金が支給されている以上、企業が政党に献金する必要性は不存在である。あとは、政党の自助努力に委ねるべきであり、企業が政党、それも特定の政党に献金する必要性はきわめて乏しくなる。この点からみても、企業献金が政党一般から期待ないし要請されているとはいえない。
(3) 本件政治献金は政治腐敗や利益誘導に結びつく危険性を有している
巨額の献金を受けた政党に、当該企業あるいは当該業界にとって有利な政策誘導をさせる機能を有することも否定できない。昭電疑獄事件、造船疑獄事件、ロッキード事件、また近年のリクルート事件、共和事件、佐川急便事件、金丸巨額脱税事件、ゼネコン汚職事件、KSD事件など、企業・団体献金が利権・利益誘導と結びつくことによって、政治腐敗や汚職の原因となってきたことは明らかである。仮にそこまでに至らずとも、企業・団体の献金は少なくも、当該企業あるいは当該業界の業務に支障が生ずるような政策決定を未然に予防させるという機能を有し、またそれを期待してなされていることは明らかと言える。
国民の参政権を阻害し、企業にとって有利な政策誘導の呼び水となるおそれという点からも社会的に期待・要請されるものではなく、有用な役割を果たすものでもない。
社会通念は、政党の政治資金については、党費並びに浄財たる個人献金並びに政党助成金によるべきとしており、企業・団体の政治献金についてはそれを受領する政党、並びにそれを献金することによって何らかの事業上、営業上の利益を期待する一部企業・団体のみが期待・要請しているものにすぎない。
4 本件政治献金は「社会的役割を果たすためになした」ものではない
(1) 本件政治献金は企業のイメージダウンしか招かない
原判決は、本件政治献金は「社会的役割を果たすためにしたもの」としている(15頁)。原判決のこの点の判断は誤りである。
社会的役割を果たしているとすれば、各社はその旨社会に対して宣伝するはずである。
各社がディスクロージャー誌において広報している社会福祉、学術研究、教育、芸術、文化等の社会貢献活動はイメージアップの効果をもたらすことは当然である。だからこそ企業は、ディスクロージャー誌やマスコミ、文化行事等に企業名を「冠」して積極的に広報し、これが国民に広く知られるよう努力し、また知られることを期待してなされているものである。
これに対し、同じ無償の利益の供与であっても、政治献金にあっては、全く反対に、その事実をひた隠しているのである。これは、政治献金をすることが社会的にイメージアップどころかイメージダウンになるものであり、そのことを自認しているからこそ、その事実が社会的に知られることを極力回避しているのである。
このように、本件政治献金は「社会的役割を果たすこと」にとってもかえって障害になっており、イメージアップという「相当な価値と効果」にとっては全く逆のイメージダウンをもたらすにすぎないものである。
(2) 政治資金規正法上容認されても、定款の目的の範囲の行為とならない
原判決は、本件政治献金が、「政治資金規正法もこれを禁止することなく、これを許容していることを考慮すると、特段の事情のない限り会社からの社会的役割を果たすためにしたもの」と認容した。
しかし、一審原告が縷々主張・立証した最高裁八幡製鉄政治献金判決以降の政治的・社会的・経済的状況等の変化、あるいは参政権を有する国民の政治献金に対する考え方の変化については一顧だにしていない。
政治資金規正法は、既述したような企業の政治献金による多くの疑獄・汚職事件が発生するなかでそれを規正するために制定されたものであり、これにより政治献金が社会的意義あるものと認められているものではない。却って、一定限度を超えた献金を刑事罰の対象とし、その抑制を図っているものである。また立法は、政治献金を受けている多数党たる自民党を中心になされており、同法の内容は社会通念との齟齬が生じている点も充分検討されるべきである。法が遵守されている行為(違法と評価されない行為)であるということと「社会的役割を果たすことに通じる」行為(積極的に期待要請される行為)であることとは別個のことである。
定款の目的の範囲内か否かについては民商法上の解釈の問題であり、その要件は既述してきたところであり、政治資金規正法上認められていても、それが「客観的・抽象的な性質に即し目的の範囲内かどうか」「社会通念上期待・要請される行為かどうか」等によって判断されるべきことである。
(3) 原判決は自ら定立した規範についてその適用を誤った違法がある。
日建連統一献金は、熊谷組一社でみる限りその額が著しく巨額であることとはならず、政治と産業界の不正な癒着が恒常的であるものとなっているが、日建連加盟企業が統一的に4億円から6億円を政権政党に献金し、そして、日建連の固有の業界要求を政府、自民党に要求していることは、原判決が定立した規範、すなわち「その額が著しく巨額であるため、政治と産業界の不正な癒着を恒常的なもの」になり「特段の事情」がある場合に該当するのに、それを熊谷組だけの献金額に矮小化し、その実態を見ない判断になっている。これは法令の解釈を間違えている。
5 結論
以上の、熊谷組の、特定の政党の政治資金団体に対する本件政治献金は、定款の目的の範囲を逸脱したものであることは明らかである。
にもかかわらず、これを定款の目的の範囲内の行為とした原判決には、民法第43条についての解釈につき重要な違反がある。
以上

 

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政治と選挙Q&A「政治資金規正法 ポスター貼り(掲示交渉)代行」に関する裁判例一覧
(1)平成30年10月11日 東京高裁 平30(う)441号 政治資金規正法違反被告事件
(2)平成30年 6月27日 東京地裁 平27(特わ)2148号 各政治資金規正法違反被告事件
(3)平成30年 4月18日 東京高裁 平29(行コ)302号 埼玉県議会政務調査費返還請求控訴事件
(4)平成30年 3月30日 東京地裁 平27(ワ)37147号 損害賠償請求事件
(5)平成30年 3月20日 大阪高裁 平29(行コ)60号 補助金不交付処分取消等請求控訴事件
(6)平成30年 1月22日 東京地裁 平27(特わ)2148号 政治資金規正法違反被告事件
(7)平成29年12月14日 札幌高裁 平29(ネ)259号 損害賠償等請求控訴事件
(8)平成29年12月 8日 札幌地裁 平24(行ウ)3号 政務調査費返還履行請求事件
(9)平成29年 7月18日 奈良地裁 平29(わ)82号 虚偽有印公文書作成・同行使、詐欺、有印私文書偽造・同行使、政治資金規正法違反被告事件
(10)平成29年 3月28日 東京地裁 平25(ワ)28292号 謝罪広告等請求事件
(11)平成29年 3月28日 仙台地裁 平28(ワ)254号 損害賠償請求事件
(12)平成29年 3月15日 東京地裁 平27(行ウ)403号 地位確認等請求事件
(13)平成29年 1月26日 大阪地裁 平24(行ウ)197号・平26(行ウ)163号 補助金不交付処分取消等請求事件
(14)平成28年12月27日 奈良地裁 平27(行ウ)15号 奈良県議会会派並びに同議会議員に係る不当利得返還請求事件
(15)平成28年10月12日 大阪高裁 平28(ネ)1060号 損害賠償等請求控訴事件
(16)平成28年10月12日 東京地裁 平25(刑わ)2945号 業務上横領被告事件
(17)平成28年10月 6日 大阪高裁 平27(行コ)162号 不開示決定処分取消等請求控訴事件
(18)平成28年 9月13日 札幌高裁 平28(う)91号 事前収賄被告事件
(19)平成28年 8月31日 東京地裁 平25(ワ)13065号 損害賠償請求事件
(20)平成28年 7月26日 東京地裁 平27(ワ)22544号 損害賠償請求事件
(21)平成28年 7月19日 東京高裁 平27(ネ)3610号 株主代表訴訟控訴事件
(22)平成28年 7月 4日 東京地裁 平27(レ)413号 損害賠償請求控訴事件
(23)平成28年 4月26日 東京地裁 平27(ワ)11311号 精神的慰謝料及び損害賠償請求事件
(24)平成28年 2月24日 大阪高裁 平25(行コ)2号 行政文書不開示決定処分取消請求控訴事件
(25)平成28年 2月24日 大阪高裁 平24(行コ)77号 不開示決定処分取消請求控訴事件
(26)平成27年10月27日 岡山地裁 平24(行ウ)15号 不当利得返還請求事件
(27)平成27年10月22日 大阪地裁 平26(行ウ)186号 不開示決定処分取消等請求事件
(28)平成27年10月 9日 東京地裁 平27(特わ)853号 政治資金規正法違反被告事件
(29)平成27年 6月17日 大阪地裁 平26(行ウ)117号 公金支出金返還請求事件
(30)平成27年 5月28日 東京地裁 平23(ワ)21209号 株主代表訴訟事件
(31)平成27年 3月24日 東京地裁 平26(ワ)9407号 損害賠償等請求事件
(32)平成27年 2月26日 東京地裁 平26(行ウ)209号 政務調査費返還請求事件
(33)平成27年 2月 3日 東京地裁 平25(ワ)15071号 損害賠償等請求事件
(34)平成26年12月24日 横浜地裁 平26(行ウ)15号 損害賠償請求事件(住民訴訟)
(35)平成26年 9月25日 東京地裁 平21(ワ)46404号・平22(ワ)16316号 損害賠償(株主代表訴訟)請求事件(第2事件)、損害賠償(株主代表訴訟)請求事件(第3事件)
(36)平成26年 9月17日 知財高裁 平26(行ケ)10090号 審決取消請求事件
(37)平成26年 9月11日 知財高裁 平26(行ケ)10092号 審決取消請求事件
(38)平成26年 9月 3日 東京地裁 平25(行ウ)184号 政務調査費返還請求事件
(39)平成26年 4月 9日 東京地裁 平24(ワ)33978号 損害賠償請求事件
(40)平成26年 2月21日 宮崎地裁 平25(ワ)276号 謝罪放送等請求事件
(41)平成25年 7月19日 東京地裁 平22(ワ)37754号 謝罪広告等請求事件
(42)平成25年 6月19日 横浜地裁 平20(行ウ)19号 政務調査費返還履行等代位請求事件
(43)平成25年 3月28日 京都地裁 平20(行ウ)10号 不当利得返還等請求行為請求事件
(44)平成25年 2月28日 東京地裁 平22(ワ)47235号 業務委託料請求事件
(45)平成25年 1月23日 東京地裁 平23(ワ)39861号 損害賠償請求事件
(46)平成24年12月26日 東京地裁 平23(ワ)24047号 謝罪広告等請求事件
(47)平成24年11月12日 東京高裁 平24(う)988号 政治資金規正法違反被告事件
(48)平成24年 8月29日 東京地裁 平22(ワ)38734号 損害賠償請求事件
(49)平成24年 6月26日 仙台地裁 平21(行ウ)16号 公金支出差止請求事件
(50)平成24年 4月26日 東京地裁 平23(特わ)111号 政治資金規正法違反被告事件 〔陸山会事件・控訴審〕
(51)平成24年 2月29日 東京地裁 平21(行ウ)585号 公金支出差止請求事件
(52)平成24年 2月14日 東京地裁 平22(行ウ)323号 難民の認定をしない処分取消請求事件
(53)平成24年 2月13日 東京地裁 平23(ワ)23522号 街頭宣伝行為等禁止請求事件
(54)平成24年 1月18日 横浜地裁 平19(行ウ)105号 政務調査費返還履行等代位請求事件
(55)平成23年11月16日 東京地裁 平21(ワ)38850号 損害賠償等請求事件
(56)平成23年 9月29日 東京地裁 平20(行ウ)745号 退会命令無効確認等請求事件
(57)平成23年 7月25日 大阪地裁 平19(ワ)286号・平19(ワ)2853号 損害賠償請求事件
(58)平成23年 4月26日 東京地裁 平22(行ウ)162号・平22(行ウ)448号・平22(行ウ)453号 在外日本人国民審査権確認等請求事件(甲事件)、在外日本人国民審査権確認等請求事件(乙事件)、在外日本人国民審査権確認等請求事件(丙事件)
(59)平成23年 4月14日 東京地裁 平22(ワ)20007号 損害賠償等請求事件
(60)平成23年 1月31日 東京高裁 平22(行コ)91号 損害賠償請求住民訴訟控訴事件
(61)平成23年 1月21日 福岡地裁 平21(行ウ)28号 政務調査費返還請求事件
(62)平成22年11月 9日 東京地裁 平21(行ウ)542号 政務調査費返還(住民訴訟)請求事件
(63)平成22年10月18日 東京地裁 平22(行ク)276号
(64)平成22年 9月30日 東京地裁 平21(行ウ)231号 報酬支出差止請求事件
(65)平成22年 9月 7日 最高裁第一小法廷 決定 平20(あ)738号 あっせん収賄、受託収賄、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律違反、政治資金規正法違反被告事件 〔鈴木宗男事件・上告審〕
(66)平成22年 4月13日 東京地裁 平20(ワ)34451号 貸金等請求事件
(67)平成22年 3月31日 東京地裁 平21(行ウ)259号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(68)平成22年 3月15日 東京地裁 平20(ワ)38604号 損害賠償請求事件
(69)平成22年 1月28日 名古屋地裁 平20(ワ)3188号 応援妨害予防等請求事件
(70)平成21年 6月17日 大阪高裁 平20(行コ)159号 政務調査費返還請求行為請求控訴事件
(71)平成21年 5月26日 東京地裁 平21(む)1220号 政治資金規正法被告事件
(72)平成21年 5月13日 東京地裁 平19(ワ)20791号 業務委託料請求事件
(73)平成21年 4月28日 大阪地裁 平19(わ)3456号 談合、収賄被告事件
(74)平成21年 2月25日 東京地裁 平19(行ウ)325号 損害賠償(住民訴訟)請求事件
(75)平成21年 1月28日 東京地裁 平17(ワ)9248号 損害賠償等請求事件
(76)平成20年12月 9日 東京地裁 平19(ワ)24563号 謝罪広告等請求事件
(77)平成20年11月12日 大阪高裁 平20(ネ)1189号・平20(ネ)1764号 債務不存在確認等請求控訴、会費請求反訴事件
(78)平成20年 9月 9日 東京地裁 平18(ワ)18306号 損害賠償等請求事件
(79)平成20年 8月 8日 東京地裁 平18(刑わ)3785号・平18(刑わ)4225号 収賄、競売入札妨害被告事件〔福島県談合汚職事件〕
(80)平成20年 7月14日 最高裁第一小法廷 平19(あ)1112号 政治資金規正法違反被告事件
(81)平成20年 3月27日 最高裁第三小法廷 平18(あ)348号 受託収賄被告事件 〔KSD事件〕
(82)平成20年 3月14日 和歌山地裁田辺支部 平18(ワ)167号 債務不存在確認等請求事件
(83)平成20年 2月26日 東京高裁 平16(う)3226号
(84)平成20年 1月18日 東京地裁 平18(ワ)28649号 損害賠償請求事件
(85)平成19年 8月30日 東京地裁 平17(ワ)21062号 地位確認等請求事件
(86)平成19年 8月30日 大阪地裁 平19(行ウ)83号 行政文書不開示決定処分取消等請求事件
(87)平成19年 8月10日 東京地裁 平18(ワ)19755号 謝罪広告等請求事件
(88)平成19年 8月10日 大阪地裁 平19(行ク)47号 仮の義務付け申立て事件
(89)平成19年 7月17日 神戸地裁尼崎支部 平17(ワ)1227号 総会決議一部無効確認等請求事件
(90)平成19年 5月10日 東京高裁 平18(う)2029号 政治資金規正法違反被告事件 〔いわゆる1億円ヤミ献金事件・控訴審〕
(91)平成19年 4月 3日 大阪地裁 平19(行ク)27号 執行停止申立て事件
(92)平成19年 3月28日 大阪地裁 平19(行ク)24号 仮の差止め申立て事件
(93)平成19年 2月20日 大阪地裁 平19(行ク)7号 執行停止申立て事件
(94)平成19年 2月 7日 新潟地裁長岡支部 平16(ワ)143号・平18(ワ)109号 損害賠償請求事件
(95)平成19年 2月 5日 東京地裁 平16(ワ)26484号 不当利得返還請求事件
(96)平成19年 1月31日 大阪地裁 平15(ワ)12141号・平15(ワ)13033号 権利停止処分等無効確認請求事件、除名処分無効確認請求事件 〔全日本建設運輸連帯労組近畿地本(支部役員統制処分等)事件〕
(97)平成18年11月14日 最高裁第三小法廷 平18(オ)597号・平18(受)726号 〔熊谷組株主代表訴訟事件・上告審〕
(98)平成18年 9月29日 大阪高裁 平18(ネ)1204号 地位不存在確認請求控訴事件
(99)平成18年 9月11日 東京地裁 平15(刑わ)4146号 各詐欺被告事件 〔偽有栖川詐欺事件〕
(100)平成18年 8月10日 大阪地裁 平18(行ウ)75号 行政文書不開示決定処分取消請求事件
(101)平成18年 3月30日 東京地裁 平16(特わ)5359号 政治資金規正法違反被告事件〔いわゆる1億円ヤミ献金事件・第一審〕
(102)平成18年 3月30日 京都地裁 平17(ワ)1776号・平17(ワ)3127号 地位不存在確認請求事件
(103)平成18年 1月11日 名古屋高裁金沢支部 平15(ネ)63号 熊谷組株主代表訴訟控訴事件 〔熊谷組政治献金事件・控訴審〕
(104)平成17年11月30日 大阪高裁 平17(ネ)1286号 損害賠償請求控訴事件
(105)平成17年 8月25日 大阪地裁 平17(行ウ)91号 行政文書不開示決定処分取消請求事件
(106)平成17年 5月31日 東京地裁 平16(刑わ)1835号・平16(刑わ)2219号・平16(刑わ)3329号・平16(特わ)5239号 贈賄、業務上横領、政治資金規正法違反被告事件 〔日本歯科医師会事件〕
(107)平成17年 4月27日 仙台高裁 平17(行ケ)1号 当選無効及び立候補禁止請求事件
(108)平成16年12月24日 東京地裁 平15(特わ)1313号・平15(刑わ)1202号・平15(特わ)1422号 政治資金規正法違反、詐欺被告事件 〔衆議院議員秘書給与詐取事件〕
(109)平成16年12月22日 東京地裁 平15(ワ)26644号 損害賠償等請求事件
(110)平成16年11月 5日 東京地裁 平14(刑わ)2384号・平14(特わ)4259号・平14(刑わ)2931号 あっせん収賄、受託収賄、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律違反、政治資金規正法違反被告事件 〔鈴木宗男事件・第一審〕
(111)平成16年 5月28日 東京地裁 平5(刑わ)2335号・平5(刑わ)2271号 贈賄被告事件 〔ゼネコン汚職事件〕
(112)平成16年 2月27日 東京地裁 平7(合わ)141号・平8(合わ)31号・平7(合わ)282号・平8(合わ)75号・平7(合わ)380号・平7(合わ)187号・平7(合わ)417号・平7(合わ)443号・平7(合わ)329号・平7(合わ)254号 殺人、殺人未遂、死体損壊、逮捕監禁致死、武器等製造法違反、殺人予備被告事件 〔オウム真理教代表者に対する地下鉄サリン事件等判決〕
(113)平成16年 2月26日 津地裁 平11(行ウ)1号 損害賠償請求住民訴訟事件
(114)平成16年 2月25日 東京地裁 平14(ワ)6504号 損害賠償請求事件
(115)平成15年12月 8日 福岡地裁小倉支部 平15(わ)427号・平15(わ)542号・平15(わ)725号 被告人Aに対する政治資金規正法違反、公職選挙法違反被告事件、被告人B及び同Cに対する政治資金規正法違反被告事件
(116)平成15年10月16日 大津地裁 平13(ワ)570号 会員地位不存在確認等請求事件
(117)平成15年10月 1日 さいたま地裁 平14(行ウ)50号 損害賠償代位請求事件
(118)平成15年 5月20日 東京地裁 平13(刑わ)710号 各受託収賄被告事件 〔KSD関連元労働大臣収賄事件判決〕
(119)平成15年 3月19日 横浜地裁 平12(行ウ)16号 損害賠償等請求事件
(120)平成15年 3月 4日 東京地裁 平元(刑わ)1047号・平元(刑わ)632号・平元(刑わ)1048号・平元(特わ)361号・平元(特わ)259号・平元(刑わ)753号 日本電信電話株式会社法違反、贈賄被告事件 〔リクルート事件(政界・労働省ルート)社長室次長関係判決〕
(121)平成15年 2月12日 福井地裁 平13(ワ)144号・平13(ワ)262号 各熊谷組株主代表訴訟事件 〔熊谷組政治献金事件・第一審〕
(122)平成15年 1月20日 釧路地裁帯広支部 平13(わ)15号 収賄被告事件
(123)平成15年 1月16日 東京地裁 平13(行ウ)84号 損害賠償請求事件 〔区長交際費支出損害賠償請求住民訴訟事件〕
(124)平成14年 4月22日 東京地裁 平12(ワ)21560号 損害賠償等請求事件
(125)平成14年 4月11日 大阪高裁 平13(ネ)2757号 社員代表訴訟等控訴事件 〔住友生命政治献金事件・控訴審〕
(126)平成14年 2月25日 東京地裁 平9(刑わ)270号 詐欺被告事件
(127)平成13年12月17日 東京地裁 平13(行ウ)85号 住民票不受理処分取消等請求事件
(128)平成13年10月25日 東京地裁 平12(ワ)448号 損害賠償請求事件
(129)平成13年10月11日 横浜地裁 平12(ワ)2369号 謝罪広告等請求事件 〔鎌倉市長名誉毀損垂れ幕訴訟判決〕
(130)平成13年 9月26日 東京高裁 平13(行コ)90号 公文書非公開処分取消請求控訴事件
(131)平成13年 7月18日 大阪地裁 平12(ワ)4693号 社員代表訴訟等事件 〔住友生命政治献金事件・第一審〕
(132)平成13年 7月18日 大阪地裁 平12(ワ)4692号・平12(ワ)13927号 社員代表訴訟等、共同訴訟参加事件 〔日本生命政治献金社員代表訴訟事件〕
(133)平成13年 5月29日 東京地裁 平9(ワ)7838号・平9(ワ)12555号 損害賠償請求事件
(134)平成13年 4月25日 東京高裁 平10(う)360号 斡旋贈収賄被告事件 〔ゼネコン汚職政界ルート事件・控訴審〕
(135)平成13年 3月28日 東京地裁 平9(ワ)27738号 損害賠償請求事件
(136)平成13年 3月 7日 横浜地裁 平11(行ウ)45号 公文書非公開処分取消請求事件
(137)平成13年 2月28日 東京地裁 平12(刑わ)3020号 詐欺、政治資金規正法違反被告事件
(138)平成13年 2月16日 東京地裁 平12(行ク)112号 住民票消除処分執行停止申立事件
(139)平成12年11月27日 最高裁第三小法廷 平9(あ)821号 政治資金規正法違反被告事件
(140)平成12年 9月28日 東京高裁 平11(う)1703号 公職選挙法違反、政党助成法違反、政治資金規正法違反、受託収賄、詐欺被告事件 〔元代議士受託収賄等・控訴審〕
(141)平成11年 7月14日 東京地裁 平10(特わ)3935号・平10(刑わ)3503号・平10(特わ)4230号 公職選挙法違反、政党助成法違反、政治資金規正法違反、受託収賄、詐欺被告事件 〔元代議士受託収賄等・第一審〕
(142)平成10年 6月26日 東京地裁 平8(行ウ)109号 課税処分取消請求事件 〔野呂栄太郎記念塩沢学習館事件〕
(143)平成10年 5月25日 大阪高裁 平9(行ケ)4号 当選無効及び立候補禁止請求事件 〔衆議院議員選挙候補者連座訴訟・第一審〕
(144)平成10年 4月27日 東京地裁 平10(ワ)1858号 損害賠償請求事件
(145)平成 9年10月 1日 東京地裁 平6(刑わ)571号・平6(刑わ)509号 斡旋贈収賄被告事件 〔ゼネコン汚職政界ルート事件・第一審〕
(146)平成 9年 7月 3日 最高裁第二小法廷 平6(あ)403号 所得税法違反被告事件
(147)平成 9年 5月21日 大阪高裁 平8(う)944号 政治資金規正法違反被告事件
(148)平成 9年 4月28日 東京地裁 平6(ワ)21652号 損害賠償等請求事件
(149)平成 9年 2月20日 大阪地裁 平7(行ウ)60号・平7(行ウ)70号 政党助成法に基づく政党交付金交付差止等請求事件
(150)平成 8年 9月 4日 大阪地裁 平7(わ)534号 政治資金規正法違反被告事件
(151)平成 8年 3月29日 東京地裁 平5(特わ)546号・平5(特わ)682号 所得税法違反被告事件
(152)平成 8年 3月27日 大阪高裁 平6(ネ)3497号 損害賠償請求控訴事件
(153)平成 8年 3月25日 東京高裁 平6(う)1237号 受託収賄被告事件 〔共和汚職事件・控訴審〕
(154)平成 8年 3月19日 最高裁第三小法廷 平4(オ)1796号 選挙権被選挙権停止処分無効確認等請求事件 〔南九州税理士会政治献金徴収拒否訴訟・上告審〕
(155)平成 8年 2月20日 名古屋高裁 平7(う)200号 政治資金規正法違反、所得税違反被告事件
(156)平成 7年11月30日 名古屋高裁 平7(う)111号 政治資金規正法違反、所得税法違反被告事件
(157)平成 7年10月25日 東京地裁 平5(ワ)9489号・平5(ワ)16740号・平6(ワ)565号 債務不存在確認請求(本訴)事件、謝罪広告請求(反訴)事件、不作為命令請求(本訴と併合)事件
(158)平成 7年 8月 8日 名古屋高裁 平7(う)35号 政治資金規正法違反、所得税法違反被告事件
(159)平成 7年 4月26日 名古屋地裁 平6(わ)116号 政治資金規正法違反、所得税法違反被告事件
(160)平成 7年 3月30日 名古屋地裁 平6(わ)1706号 政治資金規正法違反、所得税法違反被告事件
(161)平成 7年 3月20日 宮崎地裁 平6(ワ)169号 損害賠償請求事件
(162)平成 7年 2月24日 最高裁第二小法廷 平5(行ツ)56号 公文書非公開決定処分取消請求事件 〔政治資金収支報告書コピー拒否事件〕
(163)平成 7年 2月13日 大阪地裁 平6(わ)3556号 政治資金規正法違反被告事件 〔大阪府知事後援会ヤミ献金事件〕
(164)平成 7年 2月 1日 名古屋地裁 平6(わ)116号 所得税法違反被告事件
(165)平成 7年 1月26日 東京地裁 平5(行ウ)353号 損害賠償請求事件
(166)平成 6年12月22日 東京地裁 平5(ワ)18447号 損害賠償請求事件 〔ハザマ株主代表訴訟〕
(167)平成 6年12月 9日 大阪地裁 平5(ワ)1384号 損害賠償請求事件
(168)平成 6年11月21日 名古屋地裁 平5(わ)1697号・平6(わ)117号 政治資金規正法違反、所得税法違反被告事件
(169)平成 6年10月25日 新潟地裁 平4(わ)223号 政治資金規正法違反被告事件 〔佐川急便新潟県知事事件〕
(170)平成 6年 7月27日 東京地裁 平5(ワ)398号 謝罪広告等請求事件
(171)平成 6年 4月19日 横浜地裁 平5(わ)1946号 政治資金規正法違反・所得税法違反事件
(172)平成 6年 3月 4日 東京高裁 平4(う)166号 所得税法違反被告事件 〔元環境庁長官脱税事件・控訴審〕
(173)平成 6年 2月 1日 横浜地裁 平2(ワ)775号 損害賠償請求事件
(174)平成 5年12月17日 横浜地裁 平5(わ)1842号 所得税法違反等被告事件
(175)平成 5年11月29日 横浜地裁 平5(わ)1687号 所得税法違反等被告事件
(176)平成 5年 9月21日 横浜地裁 平5(わ)291号・平5(わ)182号・平5(わ)286号 政治資金規正法違反、所得税法違反、有印私文書偽造・同行使、税理士法違反被告事件
(177)平成 5年 7月15日 福岡高裁那覇支部 平4(行ケ)1号 当選無効等請求事件
(178)平成 5年 5月28日 徳島地裁 昭63(行ウ)12号 徳島県議会県政調査研究費交付金返還等請求事件
(179)平成 5年 5月27日 最高裁第一小法廷 平元(オ)1605号 会費一部返還請求事件 〔大阪合同税理士会会費返還請求事件・上告審〕
(180)平成 4年12月18日 大阪高裁 平3(行コ)49号 公文書非公開決定処分取消請求控訴事件 〔大阪府公文書公開等条例事件・控訴審〕
(181)平成 4年10月26日 東京地裁 平4(む)615号 準抗告申立事件 〔自民党前副総裁刑事確定訴訟記録閲覧請求事件〕
(182)平成 4年 4月24日 福岡高裁 昭62(ネ)551号・昭61(ネ)106号 選挙権被選挙権停止処分無効確認等請求控訴、附帯控訴事件 〔南九州税理士会政治献金徴収拒否訴訟・控訴審〕
(183)平成 4年 2月25日 大阪地裁 昭62(わ)4573号・昭62(わ)4183号・昭63(わ)238号 砂利船汚職事件判決
(184)平成 3年12月25日 大阪地裁 平2(行ウ)6号 公文書非公開決定処分取消請求事件 〔府公文書公開条例事件〕
(185)平成 3年11月29日 東京地裁 平2(特わ)2104号 所得税法違反被告事件 〔元環境庁長官脱税事件・第一審〕
(186)平成 2年11月20日 東京高裁 昭63(ネ)665号 損害賠償等請求控訴事件
(187)平成元年 8月30日 大阪高裁 昭61(ネ)1802号 会費一部返還請求控訴事件 〔大阪合同税理士会会費返還請求訴訟・控訴審〕
(188)昭和63年 4月11日 最高裁第三小法廷 昭58(あ)770号 贈賄被告事件 〔大阪タクシー汚職事件・上告審〕
(189)昭和62年 7月29日 東京高裁 昭59(う)263号 受託収賄、外国為替及び外国貿易管理法違反、贈賄、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律違反被告事件 〔ロッキード事件丸紅ルート・控訴審〕
(190)昭和61年 8月21日 大阪地裁 昭55(ワ)869号 会費一部返還請求事件 〔大阪合同税理士会会費返還請求事件・第一審〕
(191)昭和61年 5月16日 東京高裁 昭57(う)1978号 ロツキード事件・全日空ルート〈橋本関係〉受託収賄被告事件 〔ロッキード事件(全日空ルート)・控訴審〕
(192)昭和61年 5月14日 東京高裁 昭57(う)1978号 受託収賄被告事件 〔ロッキード事件(全日空ルート)・控訴審〕
(193)昭和61年 2月13日 熊本地裁 昭55(ワ)55号 選挙権被選挙権停止処分無効確認等請求事件 〔南九州税理士会政治献金徴収拒否訴訟・第一審〕
(194)昭和59年 7月 3日 神戸地裁 昭59(わ)59号 所得税法違反被告事件
(195)昭和59年 3月 7日 神戸地裁 昭57(行ウ)24号 市議会各会派に対する市会調査研究費等支出差止住民訴訟事件
(196)昭和57年 7月 6日 大阪簡裁 昭56(ハ)5528号 売掛金代金請求事件
(197)昭和57年 6月 8日 東京地裁 昭51(刑わ)4312号・昭51(刑わ)4311号 受託収賄事件 〔ロッキード事件(全日空ルート)(橋本・佐藤関係)〕
(198)昭和57年 5月28日 岡山地裁 昭54(わ)566号 公職選挙法違反被告事件
(199)昭和56年 3月 3日 東京高裁 昭54(う)2209号・昭54(う)2210号 地方自治法違反被告事件
(200)昭和55年 3月10日 東京地裁 昭53(特わ)1013号・昭53(特わ)920号 法人税法違反被告事件
(201)昭和54年 9月20日 大阪地裁 昭43(わ)121号 贈賄、収賄事件 〔大阪タクシー汚職事件・第一審〕
(202)昭和54年 5月29日 水戸地裁 昭46(わ)198号 地方自治法違反被告事件
(203)昭和53年11月20日 名古屋地裁 決定 昭52(ヨ)1908号・昭52(ヨ)1658号・昭52(ヨ)1657号 仮処分申請事件 〔日本共産党員除名処分事件〕
(204)昭和53年 8月29日 最高裁第三小法廷 昭51(行ツ)76号 損害賠償請求事件
(205)昭和51年 4月28日 名古屋高裁 昭45(行コ)14号 損害賠償請求控訴事件
(206)昭和50年10月21日 那覇地裁 昭49(ワ)111号 損害賠償請求事件
(207)昭和48年 2月24日 東京地裁 昭40(ワ)7597号 謝罪広告請求事件
(208)昭和47年 3月 7日 最高裁第三小法廷 昭45(あ)2464号 政治資金規制法違反
(209)昭和46年 9月20日 東京地裁 昭43(刑わ)2238号・昭43(刑わ)3482号・昭43(刑わ)3031号・昭43(刑わ)3027号・昭43(刑わ)2002号・昭43(刑わ)3022号 業務上横領、斡旋贈賄、贈賄、斡旋収賄、受託収賄各被告事件 〔いわゆる日通事件・第一審〕
(210)昭和45年11月14日 札幌地裁 昭38(わ)450号 公職選挙法違反・政治資金規正法違反被告事件
(211)昭和45年11月13日 高松高裁 昭44(う)119号 政治資金規正法違反被告事件
(212)昭和45年 7月11日 名古屋地裁 昭42(行ウ)28号 損害賠償請求事件
(213)昭和45年 3月 2日 長野地裁 昭40(行ウ)14号 入場税等賦課決定取消請求事件
(214)昭和43年11月12日 福井地裁 昭41(わ)291号 収賄・贈賄被告事件
(215)昭和42年 7月11日 東京地裁 昭42(行ク)28号 行政処分執行停止申立事件
(216)昭和42年 7月10日 東京地裁 昭42(行ク)28号 行政処分執行停止申立事件
(217)昭和41年10月24日 東京高裁 昭38(ナ)6号・昭38(ナ)7号・昭38(ナ)5号・昭38(ナ)11号・昭38(ナ)10号 裁決取消、選挙無効確認併合事件 〔東京都知事選ニセ証紙事件・第二審〕
(218)昭和41年 1月31日 東京高裁 昭38(ネ)791号 取締役の責任追及請求事件 〔八幡製鉄政治献金事件・控訴審〕
(219)昭和40年11月26日 東京高裁 昭39(う)642号 公職選挙法違反被告事件
(220)昭和39年12月15日 東京地裁 昭38(刑わ)2385号 公職選挙法違反、公記号偽造、公記号偽造行使等事件
(221)昭和39年 3月11日 東京高裁 昭38(う)2547号 公職選挙法違反被告事件
(222)昭和38年 4月 5日 東京地裁 昭36(ワ)2825号 取締役の責任追求事件 〔八幡製鉄政治献金事件・第一審〕
(223)昭和37年12月25日 東京地裁 昭30(ワ)1306号 損害賠償請求事件
(224)昭和37年 8月22日 東京高裁 昭36(う)1737号
(225)昭和37年 8月16日 名古屋高裁金沢支部 昭36(う)169号 公職選挙法違反事件
(226)昭和37年 4月18日 東京高裁 昭35(ナ)15号 選挙無効確認請求事件
(227)昭和35年 9月19日 東京高裁 昭34(ナ)2号 選挙無効確認請求事件
(228)昭和35年 3月 2日 札幌地裁 昭32(わ)412号 受託収賄事件
(229)昭和34年 8月 5日 東京地裁 昭34(行)27号 政党名削除制限抹消の越権不法指示通牒取消確認請求事件
(230)昭和32年10月 9日 最高裁大法廷 昭29(あ)499号 国家公務員法違反被告事件
(231)昭和29年 5月20日 仙台高裁 昭29(う)2号 公職選挙法違反事件
(232)昭和29年 4月17日 札幌高裁 昭28(う)684号・昭28(う)681号・昭28(う)685号・昭28(う)682号・昭28(う)683号 政治資金規正法違反被告事件
(233)昭和29年 2月 4日 名古屋高裁金沢支部 昭28(う)442号 公職選挙法違反被告事件
(234)昭和27年 8月12日 福島地裁若松支部 事件番号不詳 地方税法違反被告事件
(235)昭和26年10月24日 広島高裁松江支部 昭26(う)54号 収賄被告事件
(236)昭和26年 9月27日 最高裁第一小法廷 昭26(あ)1189号 衆議院議員選挙法違反・政治資金規正法違反
(237)昭和26年 5月31日 最高裁第一小法廷 昭25(あ)1747号 衆議院議員選挙法違反・政治資金規正法違反等
(238)昭和25年 7月12日 札幌高裁 昭25(う)277号・昭25(う)280号
(239)昭和25年 7月10日 札幌高裁 昭25(う)277号・昭25(う)278号・昭25(う)279号・昭25(う)280号 衆議院議員選挙法違反被告事件
(240)昭和25年 7月10日 札幌高裁 昭25(う)275号 衆議院議員選挙法違反被告事件
(241)昭和24年10月13日 名古屋高裁 事件番号不詳
(242)昭和24年 6月13日 最高裁大法廷 昭23(れ)1862号 昭和二二年勅令第一号違反被告事件
(243)昭和24年 6月 3日 東京高裁 昭24(ナ)9号 衆議院議員選挙無効請求事件

■【政治と選挙の裁判例一覧】「政治資金規正法 選挙ポスター」に関する裁判例カテゴリー
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